仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.9

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636創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 09:51:17 ID:C54pNupQ
しえーん
637創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 09:52:45 ID:C54pNupQ
支援
638代理投下:Fatality-Cross ◇N4mOHcAfck:2008/12/23(火) 09:53:09 ID:/L7sMD57


「……何のつもりだ」
「それは俺の台詞だ。何故あの場で退いた」

 D-4西部。
 二つの大路が重なるこの地にて、ガドルの制服の胸倉を取りながら牙王が激昂する。
 ガドルはそれを突き放すと、静かに一言呟いた。

「お前一人で、あの局面を切り抜けるのは無理と判断した」
「アァ?」

 オルタナティブ・ゼロにガドルの怪人体が制限を受けた時点で、残された戦力はガオウへの変身のみ。
 大して相手はまだハナが時間を残していた上、使い回しが可能なカードデッキ。
 ガオウを集中して狙っている節のあったドラグブラッカー。
 ダグバにこそ及ばないものの、確かな戦慄を最強の「ゴ」、ゴ・ガドル・バに与えたクウガの愛憎に満ちた飛び蹴り――
 これだけの不安要素を抱えてあの場に残るのは得策では無いとガドルは結論付け、行動に移したのだ。

「チッ、過ぎたことをウダウダぼやいても無駄か。
 ……おい、探知器を貸せ」



 ガドルが取り出した携帯を奪い取り、首輪探知機能を起動する牙王。
 南のE-4にある反応は四つに減少している。首輪諸共黒龍の餌となったのだろう。
 結果はそうであれ、殺したのは、喰ったのは自分だ。未練など露程も残っていない。
 まして次の獲物が見つかったのだ。何を嘆くことがあるだろうか。
 以前このD-4エリアで検知された、もう一つの反応。それが目前に迫っていたのだ。
 嬉笑を浮かべた牙王が、ガドルに新たな参加者の接近を告げようと顔を上げる。
 予想外なことに、ガドルは既に表情を強張らせていた。彼が静かに、それでいてハッキリ聞き取れる声量で来訪者の名を告げる。

「ダグバ…………」

 その言葉を聞いて満足したのか、牙王がマスターパスを構え走り出す。
 ガオウへの変身を完了させる過程で明確に感じる威圧感は、正に喰うに相応しい極上のものだ。
 笑顔で白服の青年が腰のバックルを開く。展開と同時に正面へ現れた黄色のゲートは、突っ込んできたガオウを吹き飛ばした。

 青年が静止したゲートを通過すると、金色のスーツが纏い付いた。
 腰から剣を抜くと、右腰から一枚カードを抜いて態勢を立て直したガオウと対峙する。

「リントにしては、随分好戦的なんだね」
「俺はお前みたいな奴を喰らう為に存在するんでなぁ……ダグバ」
「名前を知ってるのは、ガドルと一緒にいるからかな? ……まあ良いや、始めよう」

 ラウザーに一枚のカードが通される。マッハのコールが示す通りグレイブが加速、ガオウの懐で剣を振るう。
 音声を聞くと同時に一歩だけ下がったガオウがガッシャーを構え、一太刀を阻止した。

「どうした、もっと喰い甲斐のあるところを見せろ」
「へぇ、凄いじゃない。その調子で楽しませてよ……」

 ガドルは沈黙したまま、二人のライダーの手探り合いを見据える。
 ダグバが本気を出しているのならともかく、今はリントの纏う鎧で戦っているのだ。
 その真意は読めなかったが、やがて読む必要がないという結論に至る。今はただ決着を待つのみだ。
 ダグバの勝利か、牙王の勝利か、それとも――
639代理投下:Fatality-Cross ◇N4mOHcAfck:2008/12/23(火) 09:54:30 ID:/L7sMD57
【D-4 交差点】
【1日目 日中】
【牙王@仮面ライダー電王】
【時間軸】:最終決戦前。
【状態】:全身打撲、疲労大、あばら3本骨折、腹部に重度のダメージ、1時間40分変身不可(オルタナティブゼロ)、ガオウに変身中
【装備】:ガオウベルト
【道具】:マスターパス、基本支給品一式×2、ランダム支給品1?6(牙王、ゾル大佐分。共に未確認)、オルタナティブゼロのデッキ
     コンビニから持ってきた大量の飲食料(中量消 費)
【思考・状況】
基本行動方針:全て喰らい尽くした上で優勝
1:ダグバを喰らう。ガドルはしばらく連れまわす。
2:最終的に全参加者を食う。
3:人が集まりそうな施設を適当に目指す。
4:機会があれば煩わしい首輪を外す。
5:ガオウライナーを取り戻して村上も喰う。
6:餌(人質)が確保できたら放送局を利用して死にたがりな獲物を誘き寄せるか?
備考
※会場のどこかに時の列車(予想ではガオウライナー)が隠されていると推測しています。
※木場の生存には未だ気づいていません
※ゾル大佐のデイパックを偶然奪いました。
【ドラグブラッカーについて】
※デッキが破壊された事によりドラグブラッカーとの契約が無くなりました。
※ドラグブラッカーはイブキを捕食した為、ある程度傷が回復、空腹状態は脱しました。
※牙王に対して非情に強い恨みを抱えています。
※E-4民家でミラーワールドに戻って以降の消息は不明です。
※今後の行動はリレーしてくださる書き手さんにお任せします。

【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:D-3エリア南部】
[時間軸]:ゴ・ジャーザ・ギのゲゲルを開始後
[状態]:全身打撲、疲労大、右目と左腕に違和感、右足部装甲破損、気絶中、2時間変身不可(怪人体、オルタナティブゼロ)
[装備]:基本支給品×1、首輪探知携帯
[道具]:
[思考・状況]
基本行動方針:強き者と戦い、強くなる。
1:リントの戦士を倒す。
2:再びあの二人と戦う。
3:桜井侑斗と決着をつける。
4:戦闘を繰り返し、強くなる。
5:最終的にダグバを倒す。
6:クウガの異変に僅かの恐怖。何れ再戦する
備考
※ガドルは自分にルールを課しているため、抵抗しないただのリントには攻撃しません。
※左腕は超常現象が起きたのか何故か治りました。右足の装甲が直らないのは、謎です
※保養所内の浴場が大破しました、使おうと思えばもしかしたら使えるかもしれません

640代理投下:Fatality-Cross ◇N4mOHcAfck:2008/12/23(火) 09:55:46 ID:/L7sMD57
【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[時間軸]:47話、クウガアメイジングマイティに勝利後。
[状態]:脇腹に刺し傷、胸部に蹴りによるダメージ、右肩に清めの音によるダメージ、グレイブに変身中。
[装備]:グレイブバックル
[道具]:基本支給品×3 ラウズカード(スペードA〜9、ハートQ)、サバイブ『疾風』
【思考・状況】
基本行動方針:究極の闇を齎す。
1: 究極の闇を齎す。
2:強くなったクウガ、龍騎、響鬼、ライア(サソード)と再戦 。
3:『仮面ライダー』と思われる一文字隼人、風見志郎、城戸真司と戦う。
4: 志村は次も本気で来ないのならば容赦しない。
5:向かってくるガオウは倒す。ガドルに関しては保留
※自身の戦闘能力に制限がかかっていることを何となく把握。
※志村が人間でない事を知りました。
※ハートのKが無くなっている事に気付いていません。
※どこへ向かうかは次の方にお任せします。

873 Fatality-Cross ◆N4mOHcAfck 2008/12/23(火) 06:47:08 ID:1j4WoUs0
投下完了です。
今後はもう少しスケジュールと相談して予約していく次第です

御意見・感想、修正点等ありましたらよろしくお願いします。
641創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 09:58:52 ID:C54pNupQ
しえん
642創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 16:43:11 ID:oDnLYzL2
やっと見れた。
投下乙です!

多人数戦闘話、とても迫力がありました。
北崎の圧倒的強さに押される木場と葦原、死んでしまったイブキ。
ダグバとついに遭遇したガルドにガオウ。個人的にこのマーダータッグ好きなので切り抜けてほしいところ。
GJ!
643創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 17:42:33 ID:ApC9SMx9
投下乙!お疲れ様でした!
おぉ、こんな大人数をここまで生き生きと動かせるとは……凄いとしか言いようがない
それぞれの闘いに緊張と迫力があり、まさに圧巻!
特に海堂の事で木場を煽る北崎、遂に本郷からの言葉を受け取った一文字が良かったです。
イブキさんの死には衝撃を……長田さんが彼の死を経て、どうなってしまうかも気になりますね……。!
それと忘れられていた三田村に思わず吹いたw存在感がwww
GJ!!
644創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 18:44:50 ID:GFN26faz
氏にとっても死闘といえる投下、本当に乙でした!
イブキさんの死、そして長田さんの声。
迫力のあるバトルが目に浮かんできた!
今日はゆっくり休まれたでしょうか?
GJ!
645創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 20:54:02 ID:C54pNupQ
投下乙です!!
複数の場所で同時に話が進んで行く話の形態に引き込まれました。
イブキさんの喰われるシーンが無かったのはかえって恐い・・・・・
木場や五代関係の不穏な空気に、戦闘突入で引きとなったバイク対決にガオウとダグバがどうなるか気になります!!
改めて乙でした!!
646創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 21:01:45 ID:/L7sMD57
投下乙です。
イブキさんが死ぬシーンが直接ない事でなんかよりこう良い演出でした。
ああ、長田さんが心配だ。
それとやはり北崎の最強っぷりは半端ないw
647創る名無しに見る名無し:2008/12/24(水) 05:25:09 ID:31aG3wp/
ガドルがまだ二時間オルタナティブゼロに返信できないのはおかしくね?
この話で変身した牙王が1時間40分なのに
648 ◆N4mOHcAfck :2008/12/24(水) 07:20:17 ID:jurZVj4z
>>647
失礼しました。
ガドルはYAMAHA T MAX回収のためオルタナティブに変身させたので
ガドルの変身制限は1時間(オルタナティブゼロ)、1時間40分(怪人体)
となります。
649創る名無しに見る名無し:2008/12/24(水) 20:44:32 ID:gir9nVx/
しばらくは予約無いだろうし生き残ってるマーダーをまとめてみたり
「ゴ・ガドル・バ」
強者限定マーダー、というかむしろサラマンダー。風呂入ってノホホンとした事もあり
牙王とタッグを組むもダグバと急接近で次の話が気になるところ
「ゴ・バダー・バ」
バイク乗り限定マーダー、むしろ(ry。ジャングラーになっても運転スキルは健在
コーカサス様が見てる、な状況下でバイクバトルの行く末が気になるところ
「ン・ダグバ・ゼバ」
無差別マーダー。2人殺害。キングのカードが無い事には未だ気付いてない模様
牙王と衝突中。怪人体ではなくグレイブに変身して戦うその意図は…?
「風のエル」
無差別マーダー。おやっさん殺害。血液だーいすき☆
飛行能力+パーゼク持ちというよくよく考えれば恐ろしい手負いの獣が死神チームに迫る!?
「東條悟」
無差別マーダー。3人殺害で殺害数単独トップ。不意打ちに定評有り
芝浦、金居とステルス2名を殺害しステルスキラーとの噂も。現在位置的に絡めそうな相手は多い
「北崎」
無差別マーダー。かなりの強者のはずが殺害数は未だ1名のみ
三田村を玩具代わりに遊んでいるが飽きた時の事を考えると恐ろしい
「澤田亜希」
無差別マーダー。2名殺害。別名帽子の王子様
オルフェノク、カイザ、ダブトと3種類の変身を使いこなせるのがかなりの強み。真魚の存在が気がかりなところ
「志村純一」
ステルス。一時は空気化したりしてステルスが危ぶまれたがなんとか復帰した
上手い事対主催グループに潜み、傷を癒すため病院に移動中。彼の正体を知るダグバが今後絡むか…?
「歌舞鬼」
マーダー。2名殺害。アマゾン、海堂と2名の仮面ライダーを不意打ちに近い形で仕留める
マーダーなのは間違いないがこれが無差別に転ぶかステルスに転ぶかは今後次第
「牙王」
無差別マーダー。1名殺害。腹ペコキング
現在ダグバと衝突中だが正直5分とは言い難い戦力差、乗り切れるか!?ドラグブラッカーの復讐も怖いところ
「風見志郎」
無差別マーダー。2名殺害。ダブルホッパー爆弾魔
妹の為に外道の道を突き進む仮面ライダー。風間と勘違いしたままのかがみんとの腐れ縁は今も継続中…
650創る名無しに見る名無し:2008/12/24(水) 22:02:34 ID:2kRUnqRj
おぉ…よくまとめたなぁ…w

こうしてみると意外と殺害数はどっこいどっこいなんだな
まだ中盤弱くらいだから当然っちゃ当然だが
理由が十人十色なのがなかなか面白いぜ
651創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 00:27:03 ID:SHX5AraQ
>「ン・ダグバ・ゼバ」
>2人殺害。


ははぁ、さてはG4になれなかった男の事を忘れてるな。
652創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 00:39:55 ID:SHX5AraQ
と思ったら剣崎は五代のスコアだったな
すまん
653創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 01:02:14 ID:GheMZViO
>>649
北崎は変身できなくなったところを三田村に殺されそうな気がする(琢磨くんの仕返しみたいな感じ)
澤田と風谷はBRの秋也と典子のポジだと思ってる。
654創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 07:40:29 ID:gaFq8+Ah
>>653
澤田あれでも一応ジョーカーなのにw
655 ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:15:10 ID:ntKMdQ0o
死神博士 影山瞬 風間大介 城戸真司 風のエル
投下します。
656完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:16:05 ID:ntKMdQ0o
それは本来、ここにあるべきではない究極の力。
だが、その飾り気のないシンプルかつ銀色のカブトムシを象った力が確かにここにはあった。
「ハイパーゼクターか…」
その力を片手に死神博士は病院の廊下を歩いていた。
そして適当な空き部屋に、といっても空いていない部屋など1つしかないのだが、入ると腰を落ち着けてハイパーゼクターの観察を始めた。
少し確認しただけでも湧き上がる疑問点。
まず、このゼクターは何故動かないのか?
これまでに確認してきたゼクターは皆、まるで生きているかのように動き回っていた。
動く機能を持っていない? いや違う。影山の持っていたザビーゼクター同様の移動機構と思しき装置が取り付けられている。
次に、その容姿と名前だ。何故カブトムシの形をしているのにハイパーゼクターなのか? 素直にカブトゼクターと呼べばいいものだ。
既に存在しているゼクターと名前が被るといってもハイパーゼクターと名前をつける理由にはならない。蜂でザビー、蜻蛉でドレイクならビートルゼクターなどと名づけそうなものだ。
そして何より対応するアイテムの存在だ。やはりこれまでに確認してきたゼクターは皆、対応するアイテムが存在した。ゼクターはそれらと組み合わせることで仮面ライダーへの変身を可能とするのだ。
見ればこのハイパーゼクターにも何かにはめるような溝が刻まれてある。
影山のようなブレスにでもはめるのだろうか。ならば影山にこのゼクターが使えるのだろうか?
(それはないな…)
即座にその意見は却下された。これまでの考察を結びつけた上での結論だ。
1つ、スマートブレインが異世界の多種多様なアイテム全てを解析し、能力調整をしている可能性は低い。
2つ、ゼクターは生きているかのように動き回り、ハイパーゼクターも同様の移動機構をもっている。
3つ、各ゼクターにはそれぞれ対応するアイテムが存在する。
4つ、動いているゼクターの所有者はまた、そのゼクターの対応アイテムも所持している。
5つ、ハイパーゼクターのみネーミングが他のゼクターと異なる。
これらの情報から次のように考えられる。
各ゼクターには仮面ライダーへの変身に必要な対応アイテムが存在する。
しかし、ハイパーゼクターは例外だ。ZECTによって開発された仮面ライダーを強化するためのゼクターであり、これ単体で用いるものではないのだろう。
仮面ライダーに新たな力を与えるゼクター。だから名前がハイパーゼクターなのだ。
そしてハイパーゼクターが動かないのは近くにその対象となる強化すべき仮面ライダーがいないからであろう。
この理屈に従えば影山、ならびに風間はハイパーゼクターの対象外だと判断される。
(となると…これ以上はどうしようもあるまい)
推論が正しければ、現状ではハイパーゼクターは戦力にはなりえない。
かといって無駄にできる力でもないので科学設備の整った施設でもなければ迂闊に分解するわけにもいかない。
(まあ、ダメ元で影山のブレスにでもはめさせてみるか…)
死神博士は重い腰を上げて、影山の待つ玄関ロビーへと向かった。
657完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:16:39 ID:ntKMdQ0o
「博士! 本当に私が…私が使ってもいいんですか!?」
「ああ、いいから早くはめてみろ」
「はい!」
死神博士の絶望的な推論を知らない影山は生き生きとしながらハイパーゼクターを受け取る。
「変身!」
そう叫びながらハイパーゼクターをブレスへとあてがう。が…
「…あ、あれ…これ、はまらない…何で…?」
「…やはりな。影山、もういい」
「ちょっと、ちょっと待ってください! もう少しで入りそうなんですよ!」
ブレスになんとかハイパーゼクターをはめ込もうと必死な影山の回りをザビーゼクターが飛び回っている。
(まあ、予想通りというところか)
慌てふためく影山を尻目に思考を続ける。
やはり影山にはハイパーゼクターは使えなかった。そもそもカブトムシの形をしたアイテムだ。
(使えるとしたらカブトムシ型のゼクターの所有者であろう)
そう結論づけた。
「影山、もういい。ザビーがハイパーゼクターに対応していないのは予想済みだ。分かったらその辺りにしておけ」
「…はい」
影山がしぶしぶとハイパーゼクターを返却すると時刻は正午を迎えた。

病院内のある一室に放送を聞き終えた男が2人。
「そんな…本郷さんまで…嘘だろ…」
死の放送で告げられた名前に城戸は悲しみを隠せなかった。
「…スマートブレインは絶対に許さない! こんな闘い…俺が必ず止めてやる!!」
「ええ、今回ばかりは私もあなたに同意しますね」
城戸の隣りで風間も静かに闘志を燃やしていた。
それはあすかの名前が呼ばれたためであろう。
(ハナさんが無事だったのは幸いですが…あすかさんは守ることが出来なかった。美しき女性を粗末に扱うなど…スマートブレインを許すわけにはいきませんね)
「風間さん。見張りの交代に行きましょう! 俺、もうここでじっとなんかしてらられない!」
「そうですね。もうだいぶ休みましたしね」
方向は違えどもスマートブレインの打倒を胸に2人は歩きだした。
658完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:17:10 ID:ntKMdQ0o
「本郷が死んだだと…馬鹿な…」
死神博士もまた驚きを隠せなかった。本郷猛。その名が2回呼ばれたということは自分の知る本郷も、そうでない本郷もどちらも死んだということになる。
ショッカーの宿敵たるダブルライダーがこれほど早くに敗退するとは思ってもみなかった。
そして、あの本郷が死んだということは既に死んでいる一文字も自分が以前から知っている方の一文字だったのかもしれない。
さらに死亡者の中にはゾル大佐の名前もあった。
(自分の考えに自惚れるつもるなどないが…ここまで想定外の展開になるとはな…)
死神博士は自分の現状に対する認識不足を痛感していた。
思えば、天道総司とやらが死んだときの影山の反応も今の自分と大差はなかったのであろう。
この殺し合いには様々な世界から強力な力をもった参加者、それこそあのダブルライダーさえ凌駕するような強者が集められている。
(…これからはより注意せねばならんな)
利用できる駒はとことん利用する。
死神の冷たい視線は影山に刺さっていた。
(無事だったみたいだな…木場の奴)
自分の安全のために見捨てた男、木場。助かるためには仕方がなかったとはいえ多少は悔いが残るものだ。
(ここに来ないかな? 今なら受け入れてやれるかもしれないのに…)
死神博士は自分の本心を隠し、対主催者を集めて集団を形成しようとしている。
その真意はまだ分かりかねるが、せっかく集めた仲間に不信感をもたれるようなことはしないだろう。
ならば、木場を受け入れないということもないだろうし、いざとなればその程度の口利きは出来るだろう。
(まあ、木場がここに来たら…だけどな)
「Hyper Cannon」
影山の柄にもない優しさが垣間見えたとき、静寂を破る砲撃が彼らを襲った。
「…な!?」
遠方より放たれた光線は病院玄関の自動ドアを軽く粉砕し、受付の窓口を跡形もなく消し飛ばした。
「尋常ではないな…」
いきなりの砲撃。まず間違いなく来訪者は友好的な人物ではない。しかも、ダブルライダーのキックと同等か、はたまたそれ以上だろう。
「なんですか! 今の音!!」
「…これは酷い」
城戸と風間も轟音に驚き、慌てて駆けつけた。
「敵襲! 各自、戦闘体制!!」
死神博士の声を皮切りに皆が一斉に変身準備を整える。
それとほぼ同時。完璧と名にもつ兵器を片手に今は悪魔と化した神の使いが突入してきた。


倉庫を後にした風のエルは放送を聴くすべもなく、ただ血を求めて彷徨う獣と化していた。そして、その獣の目に留まったのがこの病院だった。
傷ついた人間達が集いし場所。エルの中での病院の認識だ。手負いの身としては少しでもいいから血が欲しい。その欲求が彼を病院へと突撃させた。
659完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:17:52 ID:ntKMdQ0o
「「変身!」」
狂気に満ちた異形の出現に即座に対応し、変身を済ませる。
人を守り、殺し合いを阻止するために戦う戦士。仮面ライダー龍騎。
戦場の風となり、美しき花を守る戦士。仮面ライダードレイク。
2人の仮面ライダーが悪魔と対面する。
「おっしゃ!」
「SWORD VENT」
天より舞い降りた刀を手に龍騎が切りかかる。
その太刀を風のエルはパーフェクトゼクターの刃で受けるとすぐにボタンに触れる。
「KABUTO POWER」
「なっ!」
「HYPER BLADE」
目が眩むほどの閃光と共に、赤い光刀がドラグブレードごと龍騎を弾き飛ばし、壁へと叩きつけた。
「力づくで…強引な方のようですね」
近距離戦の困難さを察したドレイクは間合いを取って射撃を行う。
鈍い閃光が風のエルの体表で弾け、鮮血が宙を舞う。
「血だ…血が欲しい…」
「GUN MODE」
自らの流血に興奮したのか、風のエルはすばやく飛びのきさらなる射撃をかわすとパーフェクトゼクターをガンモードへと切り替える。
「KABUTO POWER」
銃口をドレイクへと向けると、ためらうことなく引き金を引いた。
「Hyper Cannon」
先ほど龍騎を弾き飛ばした刀と同質のエネルギーが砲撃となり、ドレイクを襲った。
「!」
ドレイクは慌てて回避を試みるが、病院ロビーの壁ごと爆発に巻き込まれ、弾け飛んだ。

(まさか…これほどとは…)
その様子を影から見ていた死神博士。油断したつもりなどなかった。だが、敵は一人。どれほど強力だろうとライダー3人がかりで撃退できぬはずはないとタカをくくり、自らの能力温存のため、不意打ちのために隣の病室へと回った。
だが、誤算があった。
1つ、敵の戦力は予想以上に高かった。普通、あのような強力な攻撃はとどめに用いるものだ。それを初撃から用いるような単細胞に負ける気がしなかった。まさか連発できるとは…
2つ、こちらの戦力は自分を除いて3人のはず。
(影山はどこへいった?)
辺りを見渡すと、敵に見つからないようにこそこそと何かを探し回る。男の姿が見えた。
「…影山、何をしている」
戦力として勘定に入れておいたはずの男が変身もせずに自分の周りをうろついている。疑問に思わぬはずがない。
「ザビーが…俺のザビーがいないんです…」
「何?」
影山の発言に耳を疑い、死神博士が戦場から目を離した瞬間にそれはやってきた。
「Hyper Sting」
槍状に噴出されたエネルギーが2人を隠す壁を貫き、ロビーを隣の部屋まで拡張した。
「…また見つけた」
血に飢えた獣はさらなる獲物を見つけた喜びと共にソードモードの刃先を向けて2人へ歩み寄る。
「俺の…ザビー!」
気が付けばザビーゼクターはパーフェクトゼクターの一部と化していた。
660完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:19:59 ID:ntKMdQ0o
事の始まりは、影山がハイパーゼクターに興味を示したことだった。元々気難しく、適任者を見定めることに熱心なザビーゼクターはそのときから影山を注意視していた。
そして、先ほどのこと、ついに影山は自らが納まるべき場所であるライダーブレスへ、喜びを露わにしながら他のゼクターを装着しようとしていた。
前から他者の顔色ばかり伺い、シャドウの、組織のリーダーとしては少々頼りない一面も感じさせていた。
影山を見限ろう。ザビーゼクターがそう判断したのと、完璧と名にもつ力の保持者が現れたのはほぼ同時だった。

風のエルがザビーゼクターの存在に気が付いたのはドレイクを消し飛ばした後だった。
先ほどまではいなかった蜂が新たに装着された。蜂の体色から考え、黄色のボタンが使えるようになった可能性を見出し、敵が潜んでいそうな場所へ向かって実験を試みた。
そして、今へとつながる。

「俺のザビー…俺のザビーを返してくれよ!」
泣き叫ぶ影山を気にもせず、風のエルは刃先を2人に向ける。
「血が欲しい…血が欲しい…」
こいつは狂ってる。説得に応じる相手ではない。死神博士はそう判断した。
さらに変身能力を失い、ただのお荷物へと成り下がった影山に、敵の攻撃を喰らってまだ起き上がれない他のライダー。
(どいつもこいつも…役立たずが!)
苛立ちながらも自らの身を守るために死神博士は戦闘体制に入る。
「狂った怪人…わしを誰だと思っている」
老人の姿がおぞましきイカの怪物へと変化していく。
「偉大なるショッカー大幹部! 死神博士の力、思い知るがいい!!」
向かい合う異形の闘いの先に何があるのか…その答えはまだ誰も知らない…
661完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:20:38 ID:ntKMdQ0o
【G-4 病院】【日中】

【風のエル@仮面ライダーアギト】
[時間軸]:48話
[状態]:頭部にダメージ。全身に大程度の負傷・行動原理に異常発生。左手首欠損。能力発揮中。
[装備]:パーフェクトゼクター
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して帰る。 帰還した暁には、主に未知の力を報告。
1:「仲間」を持つ「強き者」を殺す。容赦する気はない。
2:人を殺すことに、快楽を覚えた。
3:人間の血から、主の人間へ抱く感情の一端を知りたい。
4:パーフェクトゼクター(名前は知らない)を有効活用したい。
[備考]
※デネブの放送、および第一回放送を聞いていません。
※首輪の制限時間に大体の目星を付け始めました。
※ショッピングセンター内に風のエルの左手首が落ちています。
※パーフェクトゼクターの使用法を理解しました。
※パーフェクトゼクターへの各ゼクターの装着よりも、基本的には各ライダーへの変身が優先されます。現在は資格者不在のザビーゼクターのみ装着されています。

【死神博士@仮面ライダー(初代)】
【時間軸】:一号に勝利後。
【状態】:擦り傷程度の傷多数  イカデビルに変身中
【装備】:鞭
【道具】:基本支給品一式、デスイマジンの鎌@仮面ライダー電王、ハイパーゼクター
【思考・状況】
基本行動方針:この殺し合いをショッカーの実験場と化す。
1:目の前の怪人を倒す。
2:集団を結成し、スマートブレインに対抗する。
3:影山、風間が役立たずで苛立ち。
4:首輪を外す方法を研究する。その為にも研究施設へ向かう。首輪のサンプルが欲しい。
5:未知のライダーシステムおよびハイパーゼクターの技術を可能な限り把握する。
6:利用できそうな人物を集める、障害となりうるのであらば排除。
7:真司はいずれ切り捨てる。
※一文字隼人(R)の事を一文字隼人(O)だとは信じていません。
※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。
 尚、キック殺しは問題なく使えます。
※変身解除の原因が、何らかの抑止力からではないかと推測しています。
※風間と城戸の所持品、カブト世界、 龍騎世界について把握しました。
※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。
【考察まとめ】
1.首輪の100%解析は不可だが、解除することは可能。
2.首輪を外せるのは罠で、タイミングが重要。
3.時空を超越して逃げても、追跡される。
4.会場に時の列車はない。あるとしてもスマートブレインの手の中。
5.ガオウから聞いた、デンライナーの持ち主は干渉を避けるために既に死んでいる可能性が高い。
6.ハイパーゼクターはカブトムシ型ゼクターで変身するライダーの強化アイテム。
662完璧の名の下に ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 10:21:15 ID:ntKMdQ0o
【影山瞬@仮面ライダーカブト】
【時間軸:33話・天道司令官就任後】
【状態】:全身に若干の疲労。背中に軽い裂傷。 ザビーを失った悲しみ。
【装備】:ザビーゼクター、ブレス
【道具】:支給品一式×2、ラウズカード(◆J)、不明支給品0〜2(確認済)
【思考・状況】
基本行動方針:??????
1:ザビーを返してくれ!
※午前1時過ぎの時点でG-2のガソリンスタンドに乗り物はありませんでした。
※不明支給品は彼に戦力として見なされていません。
※風間と城戸の所持品、龍騎世界について把握しました。

【風間大介@仮面ライダーカブト】
[時間軸]:ゴンと別れた後
[状態]:鼻痛(鼻血は止まっています) 仮面ライダードレイクに変身中。気絶中。全身に大ダメージ。
[装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター
[道具]:支給品一式、オロナミンC2本(ぬるめ)
【思考・状況】早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒
基本行動方針:打倒スマートブレイン
1:都市部の探索。仲間との合流。
2:協力者を集める(女性優先)
3:謎のゼクターについて調べる。
4:あすかの死に怒りと悲しみ。
5:移動車両を探す。
6:影山瞬に気をつける
※変身制限に疑問を持っています。

【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
[時間軸]:劇場版、レイドラグーンへの特攻直前
[状態]:仮面ライダー龍騎に変身中。気絶中。全身に大ダメージ。本郷、芝浦の死に悲しみ
[装備]:カードデッキ(龍騎)
[道具]:支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒
1:仲間を集めて主催者打倒 。
2:金色の仮面ライダー(グレイブ)に注意する。茶髪の男?まさか…?
3:本郷の分まで戦う。
4:志村の後を追い、長田結花との合流を目指すついでに話を紐解く。
5:手塚に似てるなぁー。
[備考]
※不信感を多少持ちましたが、志村をまだ信用しています。
※名簿に手塚、芝浦、東條、香川の名前がある事から、スマートブレインが死者蘇生の技術を持っていると考えています。
※連続変身出来なかった事に疑問を感じています。
※志村について話していません。
※カブト世界について把握しました。
663創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 12:28:18 ID:Yfx5G9rF
投下乙です。
死神博士渋カッコイイ……。
ついに影山ザビーに見捨てられたww
あっさりと蹴散らされる城戸と大介だけど、相手はアギトのラスボスの一人+パフェゼクだからなーw
GJでした
664 ◆WBRXcNtpf. :2008/12/25(木) 16:02:43 ID:ntKMdQ0o
すみません。
状態表のザビーゼクターを移動し忘れていました。
wiki収録時の修正でいいでしょうか?

それとパーフェクトゼクターの扱いは前回ロワを参考にしたんですが大丈夫だったでしょうか?
665創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 16:08:16 ID:Yfx5G9rF
>>664
パーフェクトゼクターはちょうどいいかと。
修正もwiki収録で問題ないと思います。
666創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 17:48:39 ID:gaFq8+Ah
投下乙です!!
影山…………wハイパーゼクターで変身しようとすんなwwww
前話の学習が生かされてるエルが何とも恐ろしい。
問答無用でパーゼク乱射はかなりの脅威ですねw
昭和勢最後の砦・死神博士の奮戦に期待!!
GJ!
667創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 03:16:53 ID:3K6YeujK
投下乙です!
うわ〜ん!俺のザビーを返してくれよぅ…迷台詞だな、影山w。
影山のヘタレっぷりと風のエルの怖さが対比して面白かったです。
668創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 14:10:34 ID:lKq90Q9R
「蜂でザビー、蜻蛉でドレイクならビートルゼクター」という件がありますが、蜂と蜻蛉が英語じゃないのに、〜ならビートルって英語を出すのはちょっと変じゃないですか?
死神博士はあんまり英語を知らない設定?
まぁ、話の筋に関係無いしどうでもいい事ですが一応。
669創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 14:20:11 ID:hp6msiL2
蜂=ワスプ、蜻蛉=ドラゴンフライだっけ?
まぁ本当にどうでもいい事だけど、気にはなるな
670創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 14:32:43 ID:Kh5Ys3XF
「カブト虫を髣髴させないハイパーゼクターという名はおかしい」であって、
「英語名じゃないゼクターはおかしい」ってわけじゃないと思うんだが。
671 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:09:54 ID:e4TKaWD3
香川英行。城光、五代雄介、ハナ、長田結花
投下します。
672僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:12:22 ID:e4TKaWD3
「あれは…!」
ホテルの窓から眺める香川英行は、をある物に見て驚いていた。

共に戦ってきたはずの木場勇治に突如として襲われ川へと突き落とされ、そうして這い上がった先で今居るホテルを発見した。
「プラトン」そう看板に書かれているがホテルの名前だろうか、別に気には留めなかった。濡れた衣服のまま行動していては体力は落ち病に冒されてもしかたがない。着替えと体力回復にうってつけと考えホテル内へと潜入した。
やはり人の気配は無く無人と化している。
誰かが潜むには持ってこいの場所だが、今のところは敵の気配すら感じない。
そうして辺りを警戒しながらホテル内を探索する香川は従業員用の更衣室を見つけた。
着替えがないかと思い、入った結果、当たりだった。
ホテルマンの制服と、誰かが着てきたであろう黒いスーツがハンガーに掛けられていた。
スーツの方を掴み取った香川は次にフロントへと向かった。

シャワーを浴びるための客室の鍵を手に入れるからだ
。難なくフロントに辿りつき適当に鍵を掴んだ香川。
「315号室」そう書かれた部屋を求めて階段を昇った。
意図も容易く辿りついた客室に素早く入り鍵を掛けると、軽くシャワーを終わらせた。
そして濡れた衣服を余所目に、新たに手に入れたスーツへ着替え始める。

その時だった、島全体に響き渡る放送が聞こえたのは…。
673僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:15:41 ID:e4TKaWD3
その時だった、島全体に響き渡る放送が聞こえたのは…。

次々に呼ばれる死者の名前、その中で知った名前が出てきた。
『海道直也』、共に赤い化物と戦った者だった。木場勇治と同じくオルフェノクだった青年。
彼は、危険視すべきだと判断したオルフェノクの中でも除外だと思っていた。しかしその彼も死んでしまった。
これで信頼しうるオルフェノクはいなくなった。
だとすれば残りのオルフェノクは全て危険人物だと見たほうがよさそうだ。
主催社スマートブレイン、龍のような怪人、木場勇治。しかし木場勇治に仲間が他にいてもおかしくはない…。

「…海堂君、君の死を無駄にはしません」
そう考えながら香川は新たに着替えたなスーツに袖を通して呟いた
と、そこへ2つの排気音が外から聞こえてきた。
それに少しだけ目線を移すと、道路を走り抜けていく2台のバイクが見えた。
眼鏡を掛けているとはいえ肉眼では顔まで判別できなかったが、どちらも2人づつ計4人が乗っていたようだ。
高速のスピードに走り抜けていった2台のバイク。
それほどに急行することがあるのだろうか。

僅かに思考しながらも着替えを済ませた香川はデイパックを担ぎ直した。
そして、窓から視線を外そうとしたとき、まだ何かやってくるのが見えた。
バイクが去った後を歩く5人の集団。この地に着てからは集団行動をしているのは余り見ていない。
敵対する者同士が組む可能性は低い…だとすればおそらく戦いに乗っていないのだろう。
「…ふむ」
集団を見つめながら香川考える。今は武器も何も無い状態、このまま戦うにも無理がある。
いくら頭脳で勝負できるとはいえ限度というものもある。
先程のバイクと、この集団があの距離で気付いていないはずが無い。
ならば協力的な関係にあり、何らかの理由で2手に分かれたと考えるのが妥当だ。
つまり、あの集団に近づいても害は無いだろう。もしかしたら新たな脱出への情報、戦う術が見つかるかもしれない。
そう考えた香川は急いで客室を飛び出し、ホテルの外へと出た。
674僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:17:16 ID:e4TKaWD3
しかし、その幾分か後だった。ある物、黒き龍が空を舞うのが見えたのは。
「あれは…!ミラーモンスター!?」
遠目にだが、黒い巨体は明らかにミラーモンスターだとわかった。
城戸真司の契約する赤い龍と酷似してからでもある。
モンスターに色違いの亜種がいるのは断然把握している。問題は、龍が先程の集団の近くに存在することだ。
可能性として「仮面ライダー」が操っている確率が高い。
はたまた、モンスターさえスマートブレインの駒なのか。

「…急いだほうが良さそうですね」
武器がないのは何度も確認した。
あのモンスターを集団が召喚したのか、それとも別の誰かが召喚したのか。
どちらにしても戦いに乗っていないであろう集団が何らかの戦闘に巻き込まれているのは明白だ。
助けようにも力が無いが、あの集団を失うわけにはいかない。
「東條君…あなたではありませんよね」
眼鏡越しに姿の見えなくなった黒龍を睨みつけた香川は、集団の元へと駆け出した。

東條を止める。

そして……オルフェノクは全て危険人物と頭に叩き込みながら。


※※※※
675僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:21:27 ID:e4TKaWD3
「立て。ここで立ち止まっていては、イブキに申し訳が立たない」
強く言う光の言葉に長田結花は、小さく頷きながら腰を上げた。
余りにも残酷な「鬼」の死を目の辺りした結花の表情は暗く悲しみに暮れていた。
それは光もハナも、そして五代も同じ思いだった。だがそれを顔に出す事は無かった。

「俺は…俺はまた…守れなかった」
五代は拳を強く握り締めて、悔しく呟く。
「五代さんのせいじゃ…悪いのはガオウです…」
気付いたハナが、慰めるよう言う。
あの黒い仮面に変身していた男はガオウだった。
そしてイブキは、その牙と、黒き龍によって葬られた。
ハナも、その光景を思い出し唇を噛み締めるしかなかった。

「……わかった。少しだけ休もう」
そんな3人の表情に溜息をついた光は、言葉を告げた。
もちろん自分だって悲しんでいないわけではない。割り切っているだけだ。
イブキと言う戦力を欠き痛手であるということは充分承知している。
イブキに心を開いていた分、結花の悲しみの大きいのも分かる。
しかしそれでも今は北条奪還のため任務を遂行しなくてはならない。
そのためにも急ぎ放送局へ向かわなくては。
(だが…)
現状として戦闘能力は芳しくない。
自分、五代、ハナと変身制限が掛かってしまっている。
唯一、結花が制限を受けていないが戦力としては見ることはできない。
と、なると自分と五代がファムとナイトのデッキを使用するしかない。
それだとハナは戦闘できず、結花の護身用が無くなってしまう。
それでも今はこれしかない。闘うことになった場合は、だが。

すると考える光を他所に3人は軽く土を盛り、簡単な墓を作っていた。
そうして結花は墓の前に音笛を添えると、青いバラを握り締めて祈るように目を瞑った。
それにただ見つめるだけのハナと五代。光もその行為を納得し見つめていた。

676僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:23:30 ID:e4TKaWD3
「…もう、大丈夫か」
「はい……」
静かに応えた結花だったが、今だ心の動揺は収まらない。
祷を捧げることで少しは落ち着いた気もするが、やはり何もできなかった自分が憎い。
ファムのデッキも、オルフェノクの力もあったのに…逃げることしかできなかった。
結果、イブキは命を落とした。
しかしあの時、闘ったとしても自分はやられていただろう。自分の力などその程度だ。
(イブキさん、海堂さん、木場さん、啓太郎さん、私はどうすればよかったの?)
逃げた事によって生まれたイブキの死。
それならばイブキを殺したのは自分も同然。その罪を背負わねばならない。
(逃げなかったら…闘っていれば…でも…それじゃ…)
まるで終わりなきジレンマのように結花の中を自問自答が駆け巡る。

そんな、俯く結花を見て溜息をつく光。

と、その時――。

「誰だ!?」
光が声を荒げて裏の茂みへ振り返った。
驚いて同じく振り返った3人。

するとそこへ、男の声が聞こえた。

※※※※
677僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:26:28 ID:e4TKaWD3
「遅かった…ようですね」
香川が、その場に辿りついた時には事はもう終わっていた。
黒龍も見えず、確認できたのは民家の前で立ち尽くす4人の人物だった。
武器が無い故、慎重に茂みの中を移動して集団へと近づいてきた。
何度か金属音や叫び声が聞こえたが、今は唯静寂が包むだけだった。
(たしか集団は5人だったはず…)
茂みの中に身を低くして様子伺う香川は人数が足りないことに気付く。
これは1人やられたと考えるのが妥当だろうか…。

「誰だ!?」
そう思考する中、女性の声で此方へと叫びが飛んだ。
見つかると思っていなかったが、別に構わない。始めから接触するつもりだったのだ。
すると香川は茂みから身を起こして声を発した。

「少し、よろしいですか」
礼儀正しい声に光、五代、ハナ、結花が目線を移した。
そこから黒いスーツを着た眼鏡の男、香川英行は姿を現した。
「あなた方が戦いに乗ってないと見込んでいます」
香川は一番近くに居た光へと話しかけた。

「お前も乗っていないんだろうな…?」
「当然です」
光の警戒の眼も予想していたと言わん態度で応える香川。
「私はここからの脱出を考えています。そこであなた方との情報交換をさせて貰えませんか?」
そう提案した香川の言葉に4人は目を見合わせて、お互いの心情を探る。
戦いに乗っていないというなら敵ではないだろうし、情報はこちらも欲しいところだ。
すると皆の意見を受け止めたように代表して光が応えた。

「いいだろう、しかし我々も放送局に向かわねばならない。歩きながらにしてもらうぞ」
「それで結構です」
光の言葉を快く受け止めた香川は、小さく頷いて4人の輪の中へと入る。
再び5人となった集団が道路を歩いていく。そして香川と光達5人、それぞれが自己紹介を始めた。
678創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 23:27:10 ID:pwUNV3y7
 
679僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:28:48 ID:e4TKaWD3
「私は香川英行、清明院大学で教授をしています」
「城光だ」「五代雄介、冒険家です」「ハナです」
順番に名乗っていく4人、それを流すように聞く香川。
この場において職業や肩書きなど大した意味は成さない。
それでも彼の頭脳には全てがインプットされていく。
一度覚えたものを忘れはしない、ズバ抜けた記憶力があるからだ。
そして次の名前を、より深く記憶に刻むことになった。

「長田結花…学生です……」
「…どうしました?」
香川は少し気になった。彼女だけが声を小さく震わせていた。
このような場で当然といえば当然だが。何故か周りから浮きだって見えた。
「…いえ、別に…」
暗い表情のままで俯いて喋る長田。

「たった今、仲間を1人失った…名はイブキ。知ってるか?」
「…そう…でしたか。申し訳ありませんでした、それにその名前も聞いたことがありません」
光の言葉から事情を察して結花へと謝罪する香川。同時に5人の集団っだったのが4人になった理由も理解した。

「海…さんに…イブキさん…まで…私…私…」
するとうわごとのように呟く結花の儚い声が香川の耳に届いた。
そして言葉の先頭に出た名前が気になった。
「…失礼ですが、今、イブキという名前以外に誰かの名前を呟きませんでしたか?」
「…海堂…さん…の…ことですか?」
「……っ!?」
長田の応えと同時に香川は声を失った。た
しか木場勇治と海堂は仲間だった…そして彼女は海堂の事を知っているということだ。
ここに来てからの知り得たのかもしれないが、結論から言えば木場勇治の仲間にしてオルフェノクの可能性が高い。

「…その人とはここへ連れて来られる前から?」
「…はい…仲間でした……」
その言葉に香川は確信した。
彼女もまたオルフェノクであると。
まだ決定的な証拠は無いが、ここに来る以前から海堂と仲間だったということは同時に木場の仲間でもあるはず。

680創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 23:28:55 ID:pwUNV3y7
 
681僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:32:12 ID:e4TKaWD3
「あの…香川さん、そのへんで…」
そこへ結花を心配した五代が声をかけてきた。
「あ…あぁ すみません。生徒に同じ名前がいたので…つい…」
咄嗟に誤魔化した。
長田結花がオルフェノクとして海堂のようなタイプか、木場のようなタイプか。
それが問題である。
海堂のようであって欲しいとは思うが、スマートブレイン、龍の怪人、木場勇治と危険視すべき輩が多い、ならば長田結花も危険視したほうが良いだろう。
しかし何故人の皮を被った化物であるオルフェノクが何故この集団の中にいるのか?
答えはおそらくまとめて殺害するためであろう、そのために大人しく振る舞い、油断させているのだろう。
だとしたら今ここで正体をバラせば、襲い掛かってくる可能性がある。
今の自分は武器も無く無力だ。後の3人も戦えるという保障があるわけではない。
それにもしかしたら彼女がオルフェノクと知っている可能性もある。
ここはもう少し話を進める必要がある。

「……それでは、私が出会った人たちと、得た情報を教えます」
軽く咳払いをした香川は長田に警戒を強めながら喋り始めた。
桜井祐斗、金居、一条という刑事、龍の怪人、カブトムシの怪人、東条、羽の生えた怪人、赤い岩石のような巨大な怪物、そうして現時点では海堂と木場のことは伏せて伝えた。

その情報にそれぞれ感想を漏らす4人。
「金居め…」「一条さん…」
城は地を睨み、五代は警察手帳握って呟いていた。

「龍の…もしかして…」
そして小さく呟く結花の言葉も香川は漏らさず聞き取る。
龍の怪人、それに心当たりがあるということは、ますます彼女がオルフェノクである可能性を高める。
682僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/26(金) 23:33:51 ID:e4TKaWD3
そう考える中でもう1人の少女が尋ねてきた。

「祐斗に会ったんですか!?」
ハナの大きな声に視線を移した香川。
「えぇ、勇敢な青年で時の列車という脱出の情報も教えてもらいました」
「それで、祐斗は今どこに!?」
香川の言葉もそこそこにハナは急かす様に問いかける。

「…わかりません、とある人物によってチームを分断されてしまいました」
「……そんな」
香川は急に暗い表情を見せて応える。それにただ呟くしかできないハナ。
「…しかしそれも放送前の話です、放送で呼ばれなかったのだから生きてはいるはずです」
すると香川は肩を落としたハナへと励ますように言った。その言葉に僅かな希望を見出したようにハナは微笑んだ。

「さて次は皆さんの情報を教えてもらえませんか」
そして今度は情報を得ようと5人に問いかけた。
それに順々に頷き喋り始める光たち。
先を走っていった2台のバイク、イブキの死、カブトムシの怪人、ガオウと黒龍、研究所と青いバラ、志村という男にそっくりな人間、城戸真司、風間大介、赤いマフラーの怪人…。
様々な新たな情報が香川の脳に刻まれていく。
683創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 23:45:57 ID:LDlYx3ve
もう手遅れかな? 支援
684創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 23:58:50 ID:pwUNV3y7
もしかしてスレ容量オーバー?
685僕らはどこへ行くのだろう ◆Z9EUSuuwiU
「なるほど…イブキ君を襲った黒い龍、おそらくミラーモンスターです。反射するもの中に潜み敵を狙っています。」
黒龍について説明する香川に皆は無言で歩みを進める。
ホテルから遠目に見えた黒龍と、桜井の言っていたガオウがイブキという人物を殺害した。
あのモンスターは見たことが無かったがガオウが契約している可能性が高いだろう。
そしてなにより気になるのは青いバラと首輪の関係。
しかし解析するための研究所は占拠され、北條なる人物が人質に取られている。
そのため指令を受けて放送局へ向かう途中だと言う。
そして怪我人たちは急ぎ病院へ向ったと言う。妥当な判断だ。
「…人質がいる以上は指示に従うしかありませんねしかし…」
様々な情報を得たが奇妙な人物が一人浮かび上がった。
「…話を聞くに、志村という人物がどうにも臭い…」
するとその言葉に反応した者がいた。
「やはりそう思うか」「なにか怪しいですよね」
城とハナが息を合わせたように言った。

「でも、一文字さんと手塚さんみたいに本当に似た人がいるかもしれないじゃないですか」
そこへ五代の反論の声が飛んだ。
「…たしかに金居君も桜井君にそっくりな少年を見たとも言っていました。ここには相似した人物が多数いるのかもしれません。名簿にも同姓同名がありますしね」
「したがって、志村なる人物が嘘をついているかは現時点ではわかりません」
その言葉に光とハナは溜息を付き、五代、結花は難しい顔をしている。
「……まぁ、そちらで抱えている問題まで解決する力は私にはありません。
今は脱出の方法を知りたいだけです」
すると香川は、ハナの方へと眼を向けた。