第一回 天下一暗黒史的創作発表会

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1名無しさん@お腹いっぱい。
フヒフ、サーセンwww
2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 18:37:42 ID:GJn1zsdn
初2げと!ずさー!
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 18:56:05 ID:fb10fl1K
ラ板からワナビがやって来ましたよ
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 18:57:08 ID:SWUGXpQA
壷から
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 19:03:41 ID:PYii2Rlh
VIPから
6村田おめこ ◆Mjk4PcAe16 :2008/08/27(水) 19:43:32 ID:UOR6LvpI
やきうちゃんねるの有名人が保守
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 20:44:08 ID:rHFJzuZD
アニメキャラ総合板から
8名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 20:48:44 ID:fjtoXp+s
エロパロから
9名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 21:01:14 ID:JLHTotbm
通りすがりだけど、何か晒してみていい?
10名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 21:03:21 ID:0gJJYRJ8
どうぞどうぞ
11名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 21:07:18 ID:JLHTotbm
>>10
じゃあこんなものを。某所で晒していたものです。

http://wannabee.mine.nu/uploader/files/up1777.txt
12名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 21:12:34 ID:0gJJYRJ8
これはひどいwwwwwwwww
13名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 21:17:21 ID:qe34dTS2
ここか('A`)
14名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 22:58:17 ID:XQeUJgyh
>>11
普通に面白いだろこれ 少なくとも黒歴史ではない気がする
15名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 23:03:41 ID:55b2YhS0
>>11
さっと読んだが、普通に読めるよ?
地の文がかなり簡素だから、
そこに味があったらもっといいだろうけど。
16名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/27(水) 23:57:52 ID:0gJJYRJ8
ホントのこと言うと読むのめんどくなって適当にレスした
17名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 04:58:20 ID:E7uPG8wY
>>11
途中までざっと読んだが、どこが黒歴史だ
読みやすいし面白いよ
18名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 09:19:54 ID:NiTvpDxX
>>6
こんなところで何してるww
19名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 14:28:04 ID:0Y0H3YON BE:1559931269-PLT(12000)
創作発表板最古のヌレッドに記念カキコ
20名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 19:50:51 ID:UtYZgxXE BE:685458454-2BP(560)
創価学会
21名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 11:52:06 ID:WiXX9f1y
保守をしてみる
22名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/01(月) 09:39:31 ID:Rxaw6MRF
【お知らせ】♭♯♪ 第九回モエリーナ祭 〜歌〜 ♪♯♭【告知】

♪開催期間 2008/10/12(sun)00:00 - 2008/10/21(tue)23:59

♪企画趣旨 テーマに関連した男女カプ作品をみんなで楽しむ

♪募集要項 今回のテーマは「歌」
 テーマの扱い方やとらえ方などは全て描き手さんの自由です
 その他基本的なルールは開催地である投下スレのルールに従ってください。
 投下は男女カプ作品(女体化・夢・捏造女主は除く)に限ります。
 テーマと上記禁止事項にふれない作品であればお一人様何点でも投下できます、
 作品形式の制限は一切ありません、絵・文・漫画などご自由にどうぞ。
 投下にはアップローダもご活用ください。

♪参加方法 祭の開催期間中にスレにテーマに沿った作品を投下してください
 スレルールを守っていればURL張り付けや直接張り付けなど投下方法は問いません
 今回のトリップは「#歌」となります、名前欄の最後に#歌と記入してください
 トリップの#は半角ですのでお間違えの無いように。

♪モエリーナ祭開催地 小ネタ・SS投下スレ@男女板
 http://yy10.kakiko.com/test/read.cgi/danzyo/1118422048/l50
 携帯版
 http://same.u.la/test/r.so/yy10.kakiko.com/danzyo/1118422048/l10

♪ 関連URL
 男女同人板@アップローダー 祭のバナーもこちら
 http://www9.uploader.jp/home/danzyoup/
 (テキスト、画像、音楽、動画などのアップが可能)
 男女同人お絵描き掲示板
 http://heavenbody.s40.xrea.com/cgi-bin/bbsnote/
 投下スレにリクエストするスレ 祭へのリクやお題投下はこちら
 http://yy10.kakiko.com/test/read.cgi/danzyo/1138455242/
23名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/01(月) 17:14:20 ID:2MHxFY+L
100スレ目にこんなのがあったのか……気付かなかった
しゃーない、俺も1章だけ晒すわ。週末までには。
24 ◆KYxVXVVDTE :2008/09/01(月) 23:26:53 ID:2MHxFY+L
週末までに全部書けるか……? 一応一丁前に鳥付けてみたりして、始めてみる。突っ込みどころだらけ。
この時点でのタイトルは
「みんなのんだよ!!改」。
25みんなのんだよ!!改・1:2008/09/01(月) 23:30:04 ID:2MHxFY+L
宇宙のとある所に、とてもおいしいくだものがありました。
しかも、食べると幸せになれるらしいのです。しかし、そのくだものの形、色などは一さい不明。ただ分かっているのは、
名前が「みんなのんだよフルーツ」だということだけなのです。
この物語は、そんなフルーツをさがすハンターの、ハチャメチャストーリーらしい……。
26みんなのんだよ!!改・1:2008/09/01(月) 23:38:44 ID:2MHxFY+L
ゲバゲバっん「はぁ……。伝説のフルーツはどこかなぁ……」
ジェームズ「大丈夫だ! こっちにはコレがある!」
ジェームズ「はげ分身!」

ジェームズはつるっぱげのおじさん(50才)60人になった。

おじさん「み、見付からん……」
ゲバゲバっん「とーぜんだ!」

この二人、あのくだものをさがしているようです。
ゲバゲバっんは、げんきはつらつ22才。いつも絵を書くことがしゅみと言っているが、ジェームズは見たことがない。
ジェームズは、しっかり者だが天然の23才。はげ分身を2日でマスター。
会社でボヤさわぎをおこし、リストラ。2人は幼なじみで、フルーツをさがそうと、3年前から旅をしているのだが……

まったく見付からないっ!! っていうか当然!
だってこの二人、3年前から2km以内しか動いてないもん!
この世界には、魔法もちゃんとあるのだが、
ゲバゲバっんはブァイヤとブワーズ、ジェームズははげ分身とか言ってるけど全然ちがうから!!

ブァイヤとかマッチだから!!
ブワーズとか殺虫剤敵にかけてるだけだから!!
気付け……
27みんなのんだよ!!改・2:2008/09/01(月) 23:45:43 ID:2MHxFY+L
とにかく2人は進んでいた。すると……

ゲバ「あれは何だ?」
ジェ「遺せき……みたいだな」
ゲバ「何だかお宝のにおいがするぜ!! 入ってみよう!!」
ジェ「お宝のにおい? どんなにおいだ?」
ゲバ「いや、そういうにおいじゃなくて……」

2人は中に入った。中は、とてつもなく入り組んでいた。

ゲバ「いつになったら出口につくんだ……うわっ!」

とつぜん、足元から針が!! ゲバゲバっんはなんとかよけた。

ゲバ「これは一体……」
ジェ「しん入者をふせぐための罠か? とにかく気を付けて進もう」
ゲバ「ああ……」

しばらく進むと、入口に戻ってしまった。

ジェ「これは……どういうことなんだ」
ゲバ「何もない遺せきなんてあるんだ。へぇ」
ジェ「いや、それはないだろ。こういう時は、道のりをしらべてみるんだ!」
ゲバ「はあ?」
ジェ「いいか、ここから入って、ここを曲がって、ここを上がって下りて、ここで罠があって……できた! ……これは!」
ゲバ「はあ?」
28みんなのんだよ!!改・2:2008/09/01(月) 23:50:42 ID:2MHxFY+L
ジェ「ほら、まずオレらが通ったあとがこうだ」
ゲバ「ああ」
ジェ「そこをこう囲むと、針トラップが一つ。そこに点をうって。中にあった黒いはこの所にひっぱると……」

ゲバ「4……の反転?」
ジェ「そう。4のウラだ」
ゲバ「だから?」
ジェ「さあ」
2人「………………」

しかたがないので、もっと森のおくに進んでみた。でも、何のへんてつもない岩山ばかり。
もちろん、ここはいつも彼らがねどこにしている村の2km以内ですよ。
29名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/01(月) 23:52:11 ID:2MHxFY+L
よし、2ページ消化。
今日はここまでにしとく

もう精神がもたない
30名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/01(月) 23:53:21 ID:H9ElL1l9

才能のほとばしりを感じた
31名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 00:13:23 ID:6D7Y6yMD
トリコの原作者がいると聞いて
32 ◆KYxVXVVDTE :2008/09/05(金) 00:50:17 ID:Nx4schD2
そっーと続き投下していこっと。
>>31
確かに、トリコに似てるなこれ……
最終的には(トリコ+ハンタ+DB+魔法)÷40みたいな設定になってるみたい。
33みんなのんだよ!!改・3:2008/09/05(金) 00:57:11 ID:Nx4schD2
ゲバ「あーもうくそ〜っ! いつになったらこの剣を使えるんだ!!」
ジェ「そうだ! モンスターにおそわれた時のために、オレと練習しよーぜ!」

    ゲバ VS ジェ

ゲバ「はっはっは! この大剣パルチェーノできさまをつぶーす!!」

ゲバゲバっんはジェームズに向かって剣をふった。

ジェ「甘い! はげ分身!」

 分身したジェームズに剣はあたらない。

ゲバ「くっそ〜。ならば魔法ブワーズ!」

 殺虫ざいをおじさん(つるっぱげ)にかけまくった。

ジェ「うわ〜っ!」

 どんどんおじさんが消えていく。

ゲバ「いまだ! 新魔法!」
ジェ「なに!」
ゲバ「日々オレは進化しているのさ! いくぜ口寄せ×××」

あれ?何か聞こえなかったけど? いったい何をよんだんだ?
口寄せって久しぶりにまとも〜。6年の修行のせいかか?

アヒル「クェッ。クェッ。クェッ」
34みんなのんだよ!!改・3:2008/09/05(金) 01:01:12 ID:Nx4schD2
ゲバ「なぜだーー!!」
ジェ「バカだーー……」

ゲバ「すきありぃっ!」

ジュッシャア!!

ジェ「ぐばあっ!」
ゲバ「新魔法『スキアリ』!」

あーあ。また変な魔法おぼえちゃったよ。どーせドラ○エの「スクルト」のパクリだろうけど全然違うから!!
あれ防ぎょ力あげる魔法だから!!
だいたいその魔法使うためにわざわざ口寄せ覚えたのかよ!!

ジェ「さ、さすがだな……やるじゃねぇか」

なんでだよ!! こいつらバカか?
35みんなのんだよ!!改・4:2008/09/05(金) 01:12:46 ID:Nx4schD2
少したち、ジェームズのけがが治ったころ、友達のヘムから電話がかかってきた。

ヘム「よぉ、ひさしぶり! 元気してるか〜?」
ゲバとジェ「元ーーー!!! 気〜〜〜!!!」
ヘム「耳いたくなったわ! プチッ」

いきなり切れ

ヘム「なーんてな! ハンターのおまえらにいい情報だぜ!」
ゲバ「それはありがてえぜうふふえへへ。これでくだものを……」
ヘム「おまえ欲望むきだしだぞ! 読者のみなさんに失礼だろーが!」
ジェ「それで、その情報というのは?」

ヘム「ああ。ここから……おっと、オレはいまアンクランにいるんだが、そこから東に2kmいった場所にいせきがあって、
   そこには「エルフの宝玉」を手に入れるのに必要な暗号があるって話だ。
   その宝を手に入れると、伝説のフルーツに近づけるらしいぜ」
ゲバ「おい、アンクランって、おれらがねどこにしてるとこじゃ……」
ジェ「それじゃああの遺せきがそうだったのか!」
ヘム「???」
ゲバ「おい! エルフの宝玉はどこにねむっている!」
ヘム「え? ああ、東マルガースの「岩山のはて」だが……?」
ジェ「よしゲバゲバっん! いくぞ「岩山のはて」へ!」
ゲバ「おうよ!」プチッ


ヘム「おーい。ピーピーピー。だめだ。切れてる。岩山のはてには宝玉をまもるために、モンスターがわんさかいるってのに……」

はたして、ゲバゲバっんとジェームズはエルフの宝玉を手に入れることができるのだろうか。
そしてジェームズがかいどくしたあの暗号はあっているのだろうか。
モンスターたちがまっているぞ!
36名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 01:16:25 ID:Nx4schD2
2ページ消化。なんで地の文(?)がツッコミ役してんだこの小説……しかし、やっぱり恥ずかしすぎるぞこれ
37名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 05:05:19 ID:cWR+c9Gs
恥ずかしくない暗黒史なんてない!!
38 ◆KYxVXVVDTE :2008/09/07(日) 12:12:20 ID:TbzfvoCF
>>37
言われてみれば確かにw

週末までといいつつもう週末だけど、一応続きを少し投下。
39名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 12:14:09 ID:UKjFahXG
お、投下くる?
40みんなのんだよ!!改・5:2008/09/07(日) 12:17:13 ID:TbzfvoCF
2日後、町で買った地図をもとに、二人は「岩山のはて」の入口まで来た。

ゲバ「ついにここまできたな……」
ジェ「ああ。ここまでくる途中大変だったな、どぶにおちたり車に水かけられたり……」
ゲバ「鳥にフンおとされたり、サイフを落としたりましたよな」

最悪だな。おまえら。でも、それが原因で2時間かかるところを2日かかったのは変だと思うぜ。

ジェ「よっしゃあ! エルフの宝玉取りにいくぞ〜!!」
リブス「オー!!」
ゲバ「オー!!」



ジェとゲバ「………??」
リブス「?」


ゲバ「おまえはだれだーーーー!!!」
リブス「あんたらこそだれだ!?」
41名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 12:22:29 ID:UKjFahXG
支援
42みんなのんだよ!!改・5:2008/09/07(日) 12:23:33 ID:TbzfvoCF
ジェ「……あいつは一体だれなんだ? ヘム」

ジェームズはとっさにヘムに電話をかけた。
ヘムは人物ならだれでもしってるすごいやつなのだ。

ヘム「あいつは……おまえらと同じハンター仲間の、リブス・チーズマロードだな。今度エルフの宝玉を取りに行くといってたから、まあそこにいるのは当然だな」

ヘムはなぜこんなことまでしっているのであろうか。
そのころゲバゲバっんは……

ゲバ「へぇーっ! もう魔法7つもおぼえたのか!」
リブス「ええ。まあまだ初級ばかりですけどね」
ゲバ「おれもあるぜ! 3つ!」
リブス「おお! すごいですねー!」

ゲバゲバっんはリブスと仲良しになっていた。そして……

3人「よっしゃあ! お宝ゲットだ〜!」

結局、3人で取りにいくことに……
このときゲバ12Lv(ハンターにはちゃんとLvもあるのだ)ジェ12Lv、リブス22Lvであった。

ヘム「ま、リブスがついてるし、大丈夫かな?」

リブス……実はかなりのうでまえなのだ。
43名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 12:24:14 ID:UKjFahXG
支援
44名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 12:25:42 ID:TbzfvoCF
1ページ消化。支援ありがとー。
リブス・チーズマロードの名前の由来は、確かチーズがまろやかだったから。自分でつけといてネタな名前だこいつ……

予定が入ったんでここまでで、続きはまたゆっくりと。
45名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 12:27:22 ID:UKjFahXG
投下乙!
地の文がつっこみ入れるとかこれはいい厨二病w
46 ◆KYxVXVVDTE :2008/09/08(月) 20:28:02 ID:dd1RQVfd
>>45
しかも、これ書いたの小6の時だしな……自分でも笑うしかないw

最下スレを目指しつつ、続きを投下。
47名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:29:43 ID:1t4CZUM/
小6とはw

支援
48みんなのんだよ!!改・6:2008/09/08(月) 20:32:47 ID:dd1RQVfd
3人はどうくつの中に入った。中は暗く、今にもおばけが出そうなふいんき。

リブス「暗いですね……みんな武器を持ってください。ここはモンスターだらけですよ」

リブスは「しこみづえ」を手にした。

ゲバ「おう!」

ゲバゲバっんは「パルチェーノLv1」を手にした。

ジェ「ああ」

ジェームズは「ジェームズとくせいガン」を手にした。

リブス「……きた!」

モンスターが現れた!
49名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:33:59 ID:1t4CZUM/
 
50挿絵 ◆KYxVXVVDTE :2008/09/08(月) 20:36:25 ID:dd1RQVfd
51名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:39:37 ID:1t4CZUM/
ピクトはこの時間PCからみれんぞー
52みんなのんだよ!!改・6:2008/09/08(月) 20:43:08 ID:dd1RQVfd
ペルーニャ「ペルペルペル〜二ャ〜!!」

ペルー二ャはゲバゲバっんにとびかかった。

ゲバ「はぁっ!」

ゲバゲバっんはふりはらった。

ゲバ「今だジェームズ!」
ジェ「おう! いくぞ! ジェームズ・スパイラル!」

ジェームズが放った弾丸は、放物線をえがき、
ジェームズの足元におちた。

ジェ「なぜだー」
リブス「どうしたんですか! そんなことではハンターとは言えませんよ! はあっ!」

リブスの《ライトニング》がさくれつ。ペルー二ャはたおれた。

アイテム「牙」と「その他のものいろいろ」が手に入った。


リブス「いったいどうやってLv12まで上がったんですか?」
ジェ「いや……それは6年間の長たびの成果っていうか……」
ゲバ「ハエ、カ、アブ、ハチ、アリ……いろいろたおしたよな」
リブス(そんなんで経験値かせげるわけねーよバーカ)

リブス「だから、モンスターをたおしたんでしょう? じゃなければ経験値をかくとくできません! さぁ、一体何をたおしたんですか?」
53名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:44:21 ID:1t4CZUM/
崩壊具合が酷いなw
54名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:46:20 ID:dd1RQVfd
>>51mjd?どこに上げれば……?
55名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:47:36 ID:EnAwvAJ9
この板専用のロダがなかったっけ?
56名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:48:43 ID:1t4CZUM/
57みんなのんだよ!!改・6:2008/09/08(月) 20:50:21 ID:dd1RQVfd
ゲバ「アルティメット・サンダーライトニング・マックスオブ・ディスティニー・ミラクルファイヤー・ドラゴンオブ・エクスカリバー・キャリーナイト・ヒースカタパルト・グラデナドロンズ・クラッシャープラチナ・ロテン・ラテン・ルギラ・ギリルランド・ゴールドトンボか?」

ジェ「ああ! それたおしたな!」
リブス「なにそれ?」

ゲバ「い、めずらしいトンボを倒したらなぜか「24Lvをふりわけてください」ってでて、それでこの「モンスター図鑑」でしらべたら」

ジェ「そんな名前だったというわけで」


リブス(めちゃめちゃな人たちだ……くそっ、こうなったら1人でも宝を取るぞ)

そう心に決めたリブスであった。
58名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:51:43 ID:1t4CZUM/
>アルティメット・サンダーライトニング・マックスオブ・ディスティニー・ミラクルファイヤー・ドラゴンオブ・エクスカリバー・キャリーナイト・ヒースカタパルト・グラデナドロンズ・クラッシャープラチナ・ロテン・ラテン・ルギラ・ギリルランド・ゴールドトンボ

いやこれはさすがに狙いすぎだろw
59名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:53:58 ID:dd1RQVfd
1ページ半消化。やべ、俺PCは規制されてんだよな……メールでPCに送ってURLは携帯から書き込めば行けるかな?

ちょっち頑張ってくる
60名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:15:53 ID:dd1RQVfd
これでどうだろう……
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00006.jpg

>>58当時の俺もネタで書いた、と思う……
ゴールドトンボの前まで見開き右ページ一番下に書かれてるし、確信犯としか

あと、支援ありがとー。今日はここまでで。
61 ◆KYxVXVVDTE :2008/09/20(土) 19:30:42 ID:SF3JkYIP
うぼああ、SSが全く書けないー……初心を思い出すため、これの投下を再開してみる。
前回gdgdになったんで、黒歴史ノートに描いてある挿絵はスルー。最後まで行きたいなー……
62みんなのんだよ改・7:2008/09/20(土) 19:37:29 ID:SF3JkYIP
めちゃくちゃにモンスターをたおしていると、大広間みたいな所にでた。

リブス「どうやら半分くらいきたようですね……みなさん気を付けてください! 今に中ボス、マイルドサンダーが……」

マイルドサンダーが出てきた。(ここに挿絵あり)

リブス「ひょえーーーっ!! 早っ!」
ゲバ「やっと強そうなのが出てきたじゃねーか!」
ジェ「たおしがいがあるぜ! ジェームズ・スパイラル!」

ジェームズのはなった弾は、真っ直ぐにマイルドサンダーのつめにあたった。

ジェ「おおおお! やったよー!」

弾がはじけてきえた。

ジェ「固っ!!」

マイルドサンダーは怒って攻撃してきた。

マイルド「《ライトニング・クラッシュクロー》!」
全員「うぎゃおえええ!」

全員にかなりのダメージ。


リブス「あいつに弱点はない……Lv50くらいにならないととてもあいつには……」
ゲバ「そんなぁ……」
ジェ「ゲバゲバっんが12、オレが12、リブスが22で、足すと……くそっ、46かよ」

ジェームズ、そういうことではないぞ。
63みんなのんだよ改・7:2008/09/20(土) 19:44:33 ID:SF3JkYIP
リブス「そんなことより、なんとかあいつにダメージを与える方法を見つけないと……一応、鉄でもダメだったし……」
ゲバ「そうだ! パルチェーノのひっさつ剣なら……」
リブス「そ、そんなのあるんですか?」
ゲバ「一応、ね。たしかここのコマンドボタンをどうにかして……」

ガチャ

ゲバ「そのあとここを……」

ガチャギチャ

ゲバ「さいごにここも……」

ガチャギチャギチドチャガチャケカ

ゲバ「よし! できた!」

大剣パルチェーノは、ミスリルチェーノになった(挿絵あり)。

ゲバ「鉄より固いミスリル銀なら、あいつの体を……」

ジェ「まずい! 岩影にかくれてたのがバレた!」

マイルド「《ボルテージスイング》!」

リブスとジェ「これまでか……」

キィィイイイン!!

ゲバ「くっ……」

なんと!
ゲバゲバっんのミスリルチェーノが、マイルドサンダーのツメをくいとめたぁあああ!


ゲバ「今のうちににげろ!」
リブス「は、はい!」
ジェ「ああ!」

ゲバ「ふぅ……ぐっ!!」

しかし、無情にもマイルドサンダーの力と互角。なかなかふりきれない。
64みんなのんだよ改・7:2008/09/20(土) 19:53:37 ID:SF3JkYIP
ゲバ「ぐうううぅ……」
リブス「このままでは……ジェームズさん、できるかぎりの攻撃をやつに当てますよ!」
ジェ「OKだ! 本気だすぜ!」

リブス「《ライトニング》!《ファイアボール》!《バブルシュート》!《ガイアニードル》!《コメットミニ》!《カオスブレス》! はあ……!」

ジェ「《はげ分身・カーニバル》!」

ジェームズははげのおじさん700人になった。

ジェ「そして発展技、《はげ分身・スパイラルシュート!》」

700の弾がうずとなり、敵に向かって飛んでいく。

マイルド「ギャアアアエウオオオ!!!」
リブス「マイルドサンダーのたいせいがくずれた! 今ですゲバゲバっんさん!」
ゲバ「おうよ!」

ゲバゲバっんはマイルドサンダーのツメをふりきり、そして……

ゲバ「必殺!《ミスリルスラッシュ》!!」

マイルド「グウウゥウ!」
マイルドサンダーはけっこうダメージを受けた。
しかし、まだ体力はありあまるくらいのこっている。

ジェ「くそっ! このままではやつをたおすことはできない!」
リブス「いえ……まだ手はのこされてるかもしれません」

おおっ! リブスがなにかひらめいたぞ!

ゲバ「手はのこされてるって……そりゃふつうあるでしょ」
ジェ「? ゲバゲバっん、おまえも何か思いついたのか?」
ゲバ「にげる」
リブスとジェ「えー………………」

ゲバゲバっん、会話をじゃまするな。
65みんなのんだよ改・7:2008/09/20(土) 19:58:57 ID:SF3JkYIP
リブス「それはさておき属性をしっていますか?」
ゲバとジェ「属性?」

リブス「ええ、この世の生物はみな何かしら属性をもっているんです。それは火、金、土、水……など、いろいろあるんですが、マイルドサンダーは『電』なんですね」
ゲバ「それで?」
リブス「ええ、それぞれの属性には得意、不得意な属性があります。『電』の苦手属性は『木』と『土』です。ぼくの《ガイアニードル》なら効果ばつぐんなんですけど……」
ジェ「なんですけど、なんなんだ?」
リブス「なにぶん相手がめちゃくちゃ強いので……。たぶん、[ピーッ]なら大丈夫なんですけど……いいですか?」

ゲバとジェ「当然!」

ちょっとまてよ!
さっきのピーッってなんだよ!
おい!!
66みんなのんだよ改・8:2008/09/20(土) 20:07:43 ID:SF3JkYIP
リブス「さあ、いきますよ! 用意はいいですか?」

ゲバとジェ「OK!!」

リブス「マイルドサンダー!」
ジェ「オレたちはこっちだぜ!」

マイルド「ウオエエエエ?」

なんと、自分たちの位置を敵におしえた!
よほど自信があるのか、自殺しにいくのか。

マイルド「ゴロジデヤル……《ギガクロー》!」

リブス「今です! ゲバゲバっんさん!」
ゲバ「よっしゃあ!」

よくみたらいつのまにかゲバゲバっんがマイルドの背後にまわっていた!
何をするつもりだ?

リブス「《ガイアニードル》《ガイアニードル》……ぐふぅ!」

リブス! ギガクローをみぞうちにくらったああ!
しかし、2発のガイアニードルはミスリルチェーノとジェームズとくせいガンに当たってしまった!

ゲバ「いくぜえええ! ジェームズ!」
ジェ「おう! OKだ!」

ゲバとジェ「《ダブルガイア・ジェネラル》」!!

まさか! 武器にリブスの呪文のパワーをためこみ、それを一気に爆発させるとは!!

リブス「やった……」
マイルド「グア゙ア゙アアア゙ア゙ア゙イ゙イ゙エ゙エ゙ギイイルド! 〇△□×☆@! Åξゑ♪〒⊇♯!」

マイルドサンダー、かなりの傷を負い、逃げた!

全員Lvが10上がった!
67みんなのんだよ改・8:2008/09/20(土) 20:16:48 ID:SF3JkYIP
ゲバ「なんとか追い払ったな……」
ジェ「そうだ! リブスは?」


リブス「うぅ……」

リブスは、戦闘のダメージが残っているようだ。

ジェ「このままじゃリブス死んじゃうぞ! どうする?」
ゲバ「フフフ……」
ジェ「何かあるのか?」
ゲバ「けいたい電話ぁ!」
ジェ「なるほど! ヘムに助けを呼ぶんだな!」
ゲバ「おう!」

ピッポッパポップペムットッ……
プルルルル……

ゲバ「これでリブスを助ける!」

プルルルル……

ジェ「早く出てくれーー」

プルルルル……

リブス「ハアッ……ハアッ……」

プルルルル……

ゲバ「来い ヘムーーー!!!」

プルルルッ、




女の人「おかけになった場所は圏外のようです。電波の通りのよい所で、再度おかけになって下さい」
リブス「やはり……」

ジェとゲバ「どうくつ内だってこと忘れてたーー!」

リブス「もう!《ケアレラ》!」

リブスの傷が回復した。

リブス「ちゃんと考えて行動して下さいよ!」
ジェ「すまん……」
ゲバ「まったくだ……」
68名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/20(土) 20:19:36 ID:SF3JkYIP
5ページ消化、あと7ページ分くらい。
一区切りついたんで、このへんで今日は勘弁させて下さい。なんだこの突っ込みどころの巣窟は。電話繋がってるじゃねーか。
69 ◆KYxVXVVDTE :2008/09/21(日) 23:45:16 ID:KxeMkve4
今日もそっと投下開始ー。
70みんなのんだよ改・9:2008/09/21(日) 23:51:43 ID:KxeMkve4
とりあえず、3人でザコをたおしながら進んでいると、わかれ道に出た。

リブス「3つに分かれてますね……」
ゲバ「1人1つ行きゃいいじゃん」
リブス「いえ、ザコモンスターも強くなってきましたし、ここは3人で1つの道を行きましょう!」
ジェ「で、どの道を行くんだ?」

@右の道 やけに整った道で、人口の道のよう。
A真ん中の道 牙のような岩が突き出た、じゃあくな道。
B左の道 延々と坂が続いてる、上につづく道。


全員「うーん………」

リブス「@は人口的すぎませんか? 罠の可能性がとても高いです」
ジェ「Bもあやしいぜ。モンスターまんさいって感じが伝わってくるようだ」
ゲバ「いや、意表をついてBも、上から岩がころがってきたりしそうだし………」

全員「……………………」
71@の場合:2008/09/21(日) 23:59:59 ID:KxeMkve4
リブス「……まあ、もともと人がエルフの宝玉をおいたわけだし、右の道にいきますか!」
ジェとゲバ「だな」



ゲバ「罠に気を付けろよ……とくに床のタイルが盛り上がってる所とか」

床のタイルが盛り上がってる所を、ゲバゲバっんは踏んだ。

ゲバ「あ、いけね……うおわっ!?」

ヒュッ

ゲバ「ころぶーー!!」

グサッ! 矢が20本飛んできた。

ゲバ「あぶねぇ! こけてなかったら死んでた……」
ジェ「うわあ」
リブス「どうしました! ジェームズさん!」
ジェ「すまん。いろいろスイッチ押しちゃった」

全員「……………」

ゴオオオオオオオ

ゲバ「火炎放射だー!」

カパッ!

リブス「こっちは落とし穴!」

ドサササッ!

ジェームズ「しまった! よけきれない!」

ジェームズは納豆をもろにくらった。
ジェームズはオクラをもろにくらった。
ジェームズはスライムをもろにくらった。

ジェ「ねばって動きにくいー」
ゲバ「うわっ納豆くせっ!」
リブス「あ……、行き止まりみたいですね……」

リブスの指差すさきには、ただの土の壁があった。
72Aの場合:2008/09/22(月) 00:07:46 ID:khvGB7FN
ジェ「ヘムは魔物が守ってるって言ってたし、真ん中に行ってみようぜ!」
リブス「そうですね、あぶなくなったら引き返せばいいことですし」
ゲバ「だな」


いきなり、モンスターがとてつもなく出てきた。(挿絵あり)

ゴーストナイツ(けっこうつよい)があらわれた!
顔ボール(いろんなやつがいる)があらわれた!
サラマン太(地面から抜け出せなくてはや一年)があらわれた!
槍 があらわれた!
手だけ があらわれた!
ドラゴン仮面(地面から抜け出せなくて50年)があらわれた!
むち があらわれた!



ゲバ「なにぃぃぃぃぃ!!」
リブス「しまった……囲まれましたね……」
ジェ「しかも行き止まりやん。ハズレかよー(涙)」

ゲバ「大丈夫! 2体動けないし、手だけとか槍とかむち除けば2体!」
リブス「そう、十分倒せる!」
全員「いくぜ! うおおおおおーー!!」

ドンガラズゴビジャーン!

てき「ぐああああ!」
ジェ「よし! サラマン太とドラゴン仮面以外はたおした!」
リブス「ずらかりますか!」
ジェとゲバ「イエッサ!」
73Bの場合:2008/09/22(月) 00:10:49 ID:khvGB7FN
ゲバ「やっぱ左だろ!」
リブス「おう、いくぞー!」


 


 

 


 

 

 






た だ の 穴 ボ コ で し た 。






全員「……………………」
ジェ「上に続いてるとか言ったやつだれだよ!」
ゲバ「そうだそうだ」
リブス「ゲバゲバっんさんでは?」

ゲバ「………………」
74みんなのんだよ改・10:2008/09/22(月) 00:15:21 ID:khvGB7FN
リブス「他の道もいったけど、3つとも……」
ゲバ「もう言わないでくれリブス」
ジェ「なあ、そういえば前遺せきで手に入れた暗号って、どこで使うんだ?」
リブス「暗号?」
ゲバ「ああ、4をウラにした感じの図形だ。そういや、どこで使うんだろ」


リブス「それってもしかして、3つの道じゃなくて、4つ目のウラルートがあるって意味なんじゃ……」

ジェとゲバ「そ れ だ !」
75みんなのんだよ改・10:2008/09/22(月) 00:19:18 ID:khvGB7FN
ゲバ「とりあえずここをくまなく調べよう!」

ガサッ ドサッ ズサッ。

ジェ「ん?」

よく見ると上から光が。

ジェ「これだ! みんな、上を見てくれ!」

ひとすじの光がそこにはあった。

リブス「気付きませんでした……」
ゲバ「よっしゃあ! あれに向かっていくぜ!」

ゲバゲバっんは大剣を突き上げた!
すると日の光がどうくつの中へ……
76みんなのんだよ改・10:2008/09/22(月) 00:24:31 ID:khvGB7FN
ゲバ「ん?」

すると
ゴゴゴゴゴと何かの音が!

ジェ「これは!」

いつのまにか地面が下に下がっているではないか!

そして今度は、3つの穴ボコと外につづく道が現れたのだ!(挿絵あり)

リブス「最初の3つの道は、冒険者をだますためのワナ……」
ジェ「どうくつの上のかべは外につながっていて、そこをこわすことで日の光でうごく床をいどうさせるということか……」
ゲバ「よっしゃ外いくぞ外! エルフの宝玉もとめて、レッツゴー!」


???「そうは、させんぞ……」

リブス「ん?」

外へつづく道の方から声が……

ゲバ「だれだ!」
77みんなのんだよ改・10:2008/09/22(月) 00:29:59 ID:khvGB7FN
???「我はエルフの宝玉を守りし十神官の一人……ガイア! この先は通さん!」

うわー、なんかへんなのでてきたよ……果たして勝てるのかゲバゲバっん達!


ゲバ「あのー。ちと質問いいすか?」
ガイア「何だ?」
ゲバ「十神官ってことは……この先九人倒さないとエルフの宝玉は取れないってことですよね?」
ガイア「いやちがう。ここにあるのは《緑》のエルフの宝玉。他に九個エルフの宝玉がある」
ジェ「まじっすか! そんなに多いのかよ!」
78みんなのんだよ改・10:2008/09/22(月) 00:34:04 ID:khvGB7FN
ガイア「もちろんエルフの宝玉を10個あつめないかぎり、お主らの求める《みんなのんだよフルーツ》は手に入らぬからな」
リブス「くっ、そんな厳重な仕組みになっていたとは!」
ゲバ「だが! 今その一つが目の前にある!」
ジェ「おう! こいつをたおして、緑エルフの宝玉をゲットするんだ!」

ガイア「まぁまぁ」
ゲバ「なんだ神官野郎!」
ガイア「私は争いがきらいでな。ひとつ、“ゲーム”といこうじゃないか」
ゲバ「よっしゃ! うけてやる!」
ガイア「…………フッ」
リブス「……?」
79 ◆KYxVXVVDTE :2008/09/22(月) 00:38:21 ID:khvGB7FN
6ページ消化。三択分岐とはまた恥ずかしい……1時間ノートの文を打ち込み続ける作業つかれた……
次で終わりにするんで、晒しage。最後まで読めたらすごい。
80名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 13:07:30 ID:GR/oFBzU
これは逆に面白いぞw
81 ◆KYxVXVVDTE :2008/09/24(水) 23:33:45 ID:+LbQFvqz
>>80
おお、そう言ってくれると嬉しいぜ。ありがとうー。
では、1章ラスト投下ー。今見返してもここからの流れはちょっと感心してしまう。
82みんなのんだよ改・11:2008/09/24(水) 23:39:50 ID:+LbQFvqz
そして、神官ガイアのゲームが始まった。
しかしそれは、とてつもなく過こくなゲームだということを、ゲバゲバっんたちはまだ知らないのであった……。

ガイア「では、3人ともあの3つの穴のどれかに入れ!」
ゲバ「おう!」

ゲバゲバっん達は3つの穴ボコに入った。

ガイア「よし。全員、いまから私が言うことをよく聞けい!」
リブス「何ですか?」
ゲバ「何だ!!」
ジェ「何でござりませうか?」

ジェームズがなんか変だーー!!


ガイア「今からその穴ボコの内どれか一つに、横からギロチンをおくる! くらった物は首、胴、足と3つに分かれ、そして死ぬ」
三人「なにぃーーーー!!!」
ガイア「一度だけ場所を交かんしてもよいぞ。フフフ……」
83みんなのんだよ改・11:2008/09/24(水) 23:45:04 ID:+LbQFvqz
三人「くっ……。仲間を見殺しにしなければ、ここは突破できないのか……?」

困る三人。しかしそこにジェームズの閃きが!

ジェ「あ! ひらめいた!」
ゲバ「何だ! 何をひらめいたんだ!」
ジェ「実は[ピーッ]すればいいと思って!」

リブス「まあ、だれかが死ぬよりはましですかね」
ゲバ「この際だ、運命を共にするのも悪くねェな」

また出たよ[ピーッ]! 2度目だよ! まあいいや……で、
さあ果たしてゲバゲバっんたちはどんな秘策を考えたのか!!
そしてそれは、果たしてこのゲームをとっ破するカギとなるのか!

ヘム「んじゃ、続きいこっか」

こらぁヘム! ナレーションのじゃまするなこのクソボケェ!
84みんなのんだよ改・12:2008/09/24(水) 23:51:08 ID:+LbQFvqz
ガイア「ところで……場所はきまったのか? そこの冒険者」
ゲバ「ああ! ……だが、その前に言っておくぜ! このゲームおれたちは……死ぬか、あるいは勝つ! それも三人でな!」
ガイア「ほう……。(この者たち、どうやら……)」


リブス「ぼくたちみんな、三人で一つの穴に入る!」

85みんなのんだよ改・12:2008/09/24(水) 23:53:27 ID:+LbQFvqz
ジェ「これならはずれたときはみんな一緒だぜ!」
ガイア「……まあ、いいだろう。どの穴に入るのだ?」
ゲバ「オレが言うぜ? いいな?」
ジェ「ああ! もうオレは命を捨てたからな!」
リブス「どうせ本当ならマイルドサンダーの所で死んでましたし……いいですよ!」

ゲバ「じや、まん中だ!」

まん中の穴に、三人は入った。
一人も死なせまいとみんなで団結したゲバゲバっんたち。
そして神官ガイアは……

ガイア「合格だ」
ゲバ「……へ?」
ガイア「仲間を見殺しにするヤツに、みんなのんだよフルーツを渡せるか! お主たちはわしの試験に通った、ということじゃよ」


三人「やったああああーーー!!!」
86みんなのんだよ改・12:2008/09/25(木) 00:00:52 ID:gc0VwlwF
なんと、ゲバゲバっん達は、エルフの宝玉をゲットしてしまった!

ガイア「ただし、ここから南に20kmの『大地の神宮』にある『黄エルフの宝玉』を手に入れないと、ここは開かんぞ」

あ、まだだったのね。

ゲバ「………………えーー!?」
リブス「そうか……だからあんなに強いマイルドサンダーがいたのか……」
ジェ「入る順番を間違えたってことかよ。トホホ」

それまでの明るいふんいきは消え、暗いムードがただよっている三人の周り。
かわいそうになったガイア神官は、ふっと口をもらした。

ガイア「まあ、その黄エルフの宝玉を手に入れるには、赤エルフの宝玉が必要で、赤エルフの宝玉は……ってなると、実は『黄緑エルフの宝玉』からなんだけど……な」
リブス「そうなんですか! じゃ、早速黄緑エルフの宝玉、探しにいきましょうよゲバゲバっんさん!」
ゲバ「そうだな、行くか!」
ジェ「あんがとねー、ガイアのおっちゃん!」

こうして、ゲバゲバっんたちは岩山のはてをあとにしたのだった。


END

2章へつづけ
87 ◆KYxVXVVDTE :2008/09/25(木) 00:11:11 ID:gc0VwlwF
全20ページ、消化完了。

三週間近くスレ占領して申し訳なかった……。
さすがにこの続き(5章で書く気なくした)は、グダグダに設定付け加え過ぎて人に見せられるようなもんじゃないし、あまり気が進まないぜ。
章ごとに分量増えてくし。
果たして見たいひとはいるのだろうか
88名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/28(日) 11:15:05 ID:fsZhxtGl
見た見た
若さにあふれてていいなw
89名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/30(火) 16:09:33 ID:QUNTaK5h
通して読んだけど面白かったw
攻略順間違えるとか中々出ない発想がステキ
90名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 15:25:31 ID:UaiFONNq
age
91創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 07:33:32 ID:SmfV90Su
宣誓!
一週間後、ここを俺の黒歴史になる予定的な作品発表の場として乗っ取る!
異論がある者は申し立てよ!
92創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 18:25:29 ID:q7eMJIk3
>>91
いいんじゃね。応援するわ
93創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 17:47:13 ID:zfBsrbeY
じゃあ宣言どおり明日から週刊ペースで投下
ジャンルは格闘モノ
スレタイに則って痛い設定でやる
94雷龍の後継者:2008/11/18(火) 17:47:48 ID:3QtQDCDm
闇闘戯……それはルール無用の地下武闘会。血に飢えた者が集う宴の場。闘士も、観客も……!

「決まったアアアアア!! 強いッ!! 圧倒的ッ!! 期待の新星、ここまで無敗!!
 これで遂に闇闘戯頂上決定戦出場資格を得たアッ!!」

怒号に似た歓声の嵐の中、実況の声が木霊する。
俺は倒れた相手を見ることなく、右拳を高々と挙げて静かに勝利をアピールした。
そして客席にいるオーナーに、さり気なく視線を送る。
オーナーは満足そうに微笑んでいた。

――――俺の名はハルト・リュウ。年齢は多分16。正確には判らない。孤児だからだ。
同じ孤児院の兄弟達の中でも体格が良かった俺は、主に力仕事を任されていた。
決して豊かとは言えないが、飢えるほど貧しくもなく、日々を生きるだけの暮らし……。
そんな俺の生活を変えたのは、ある人物との出会いだった。
孤児院で生活していた俺を引き取った女……北月夜。
彼女は俺を、名家の元当主の隠し子だと言った。余りに突飛な話。
俺は信じられなかったが、彼女は虚実を問題とはしていなかった。
名家の財産と権力を欲するなら、実力を証明する為に、闇闘戯で勝ち上がれと……!

北月夜は俺を闇闘戯に参加させる為、俺のオーナーとなった。
長く辛い訓練に耐え、俺はオーナーの期待通り順調に強くなり、今がある!
95創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 17:49:49 ID:3QtQDCDm
まあこんな感じで
誰が見ているともわからんけど、過疎スレの延命にゆっくりやらせてもらいます
96創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 23:57:08 ID:VVMC1nro
リア厨時代、学校を舞台にした殺人事件を書いた。
学生探偵二人が華麗に事件解決する!ってやつ。
探偵のモデルは自分でした。HAHAHA☆彡

女のくせに話のなかでは男。いつしか現実でも俺女になった、痛いオマケつき。
ノートは来年のどんと祭でお焚き上げします…
97創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 23:52:24 ID:mdEeWQOP
>>96
結婚しよう
98雷龍の後継者:2008/11/25(火) 17:57:06 ID:dD050nAJ
闇闘戯帝王決定戦進出を決めた翌日の夜、俺はオーナーに高級料理店に呼び出された。
服装は勿論、正装。こういう時の作法は、将来名家の主になる者に必要な物だと、オーナーに教え込まれた。

――――オーナーは不思議な雰囲気を持っている。俺は何故かオーナーに頭が上がらない。
幼い頃の名残だろうか、今では俺の方がオーナーより大きくなったのに、刃向かう気すら起こらないのだ。
言動や行動で威圧されなくても、オーナーが『そこにいる』だけで、俺は緊張してしまう。
オーナーの指導が厳しかった所為もあるだろうが、冷たい眼差しで睨み付けられると、生きた心地がしない。

しかし、テーフルに向かい合わせに座ったオーナーは、何時になく上機嫌だった。
黒いシックなドレスを身に纏い、紅い唇と仄かに上気した表情が色っぽい。
黙々と料理を食べるだけなのも何なので、俺はオーナーに話し掛けた。

「珍しく機嫌が良さそうですね。何か良い事でもあったんですか?」
「私とて人間だ。贔屓の闘士が勝てば嬉しいさ」
「へえー、誰か応援している人でもいるんですか?」
「ハルト、君は私が誰のオーナーだと思っているんだ?」
「……え? 俺の事ですか?」

意外な事に、オーナーは俺の勝利を喜んでいた。何時もは、『勝って当然』と片付けられるのだが……。
昨日だって、楽勝の相手だった。決定戦進出条件を満たす為に、ひたすら勝利数を稼ぐだけの戦い。
強過ぎず弱過ぎない、闇闘戯でも中ランク程度の相手とばかり戦わされ、正直、物足りなさを覚えていた。
決定戦進出も、オーナーが喜ぶような事ではない。

そんな俺の疑問も他所に、オーナーはグラスを傾けながら妖しく微笑んでいた。
99創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 18:08:24 ID:dD050nAJ
タイトル名消しにカキコ。別名、後書き。
痛いと判ってやれば、(自分は)それほど痛く感じないという新事実を発見。
>>96
このスレに来たからには、うpか投下だ
100VS古流空手の不動:2008/12/02(火) 20:12:40 ID:p8Hax8oi
闇闘戯帝王決定戦はトーナメント方式。64人の闘士が鎬を削り、頂点を目指す!
素手で、相手が棄権するか戦闘不能になるまで戦う。それ以外のルールは無し!

俺の試合は一回戦から。相手は古流空手の不動剛。
しかし、それ以上は知らない。オーナーの命令で、俺は他人の試合を見ていないのだ。

戦う前から勝負は始まっている。拳を交える時は、勝算がある時。俺はオーナーに、そう教えられた。
これは闇闘戯で『生き残る』為の知恵だ。『素手で戦う』以外のルールが無に等しい闇闘戯では、
『格上と戦う』=『死』と言って過言では無い。

それなのに何故、他人の試合を見てはいけないのか?
答えは、先入観の排除。上位実力者は、下位との戦いに全力を出したりはしない。
これから戦う相手を騙す戦いをするのだ。そう、俺の様に……。

情報は『今から』仕入れる。見た目、足音、試合前の一挙手一投足を見逃すことなく……。
不動剛――身長175cm前後、体重80kg程度、やや細身。オープンフィンガーグローブに空手胴着。
短髪。目立った外傷は無し。

「第一戦から期待の新人同士の激突!! 勝利の女神が微笑むのは、どちらか!?
 今は失われし古流空手の継承者、不動剛! 対するは豪腕で相手を打ち負かして来た、ハルト・リュウ!
 技と力の戦いの行方は!?」

怒鳴り声にも似た実況の叫びが響く。俺は小さく毒吐いた。

「フン、勝敗は既に――決まっている」

カァアアアン!

「闇闘戯の帝王を決める頂上決定戦! その火蓋が切って落とされたッ!!」

開始の鐘の音と同時に、不動は姿勢を低くして突進して来た。
101創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 20:23:06 ID:p8Hax8oi
64人と言う事は、5回戦わないといけない訳だが?
……何とかなるでしょう。
102創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 22:53:16 ID:Oe865HNW
最悪、何回か不戦勝にすればおkw
103VS古流空手の不動:2008/12/09(火) 18:22:58 ID:bEbffmH0
(空手だから、仕合前には礼でもするかと思っていたが?)

俺は身を低くして衝突に備えたが、不動は受けに回った俺を嘲笑うかの様に――――跳んだ。

「先に仕掛けた不動! タックルと見せ掛けて、前方宙返りから踵落としイィッ!!」

ガッ!!

不意を突かれたが、反応出来ない速さではない。俺は右腕一本で不動の脚を受け止めた。
しかし、不動は隙を見せない。バランスを崩しながらも、地面に降りると同時に水面蹴り、後ろ回し蹴り、
一連の動作で体勢を立て直し、突きと蹴りのコンビネーションアタック!
時折フェイントを交え、防御が難しい連撃を浴びせて来る。

「不動、休まない! ラッシュで攻めるッ!」

予想通りだ。不動はパワーではなく、手数で押すタイプ。スタミナには自信があると見える。
力で勝る俺に手を出させない作戦だろう。一撃の重みは無いので、不動が疲れるまで耐えれば楽だが、
古流空手は人体の弱所を狙い、防御する手足を破壊する!

「何時まで続く!? 不動のターン!! ハルト・リュウ、手も足も出ない!」
(チッ、好き勝手言いやがって……)

実況に苛立った俺は、不動の連撃の合間を縫って、左手で突きを繰り出し、牽制した。

「――甘いッ! 獲ったりイィッ!!」

不動は隙を逃さない。気勢を上げて俺の腕を取り、体を丸める!

「出たアァーッ!!! 柔剛併せ持つ古流空手ッ!!」

俺の左腕を右肩に担ぎ、逆一本! 投げられたら地面と接吻! 耐えれば腕を折られる!
不動が投げの体勢に入り背を向ける一瞬、その顔には笑みが見られた……。
104創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 18:30:40 ID:bEbffmH0
何かバキとかあの辺の影響受け過ぎだろ……と自分で思った

Wikiによると、古流空手は空手が『手』と呼ばれていた時代の、
柔と剛が未分化だった頃の物を指すようです。
言葉の響きがカッコイイので、よく知らん癖に使ってますがね
105VS古流空手の不動 :2008/12/16(火) 17:43:41 ID:7nxTt/f9
――――焦っていたのは、俺ではない。不動だ。連撃を悉く防がれ、人体破壊も通用しない。
そこに餌が投げ込まれた。『左腕』――取られる瞬間、俺は自ら不動に背を向けた。

(左腕はくれてやる! その代わり……貴様の首を貰おうか!)
「ぐっ……」

不動は小さな呻き声を上げた。俺の右手は不動の首を捕らえ、五指を深々と喉に突き立てている。
喉を抉られる苦しみにも不動は怯まない。勢いに任せ、俺を腰に担ぐ……。

「必殺の逆一本ッ!!! これで決まりかァ!!?」

実況が叫ぶ。不動が投げに入ってからの一連の動きは、刹那の攻防。傍目には不動の優勢……。

(早く死んで貰うか)

ゴリッ……!

右手に更に力を込めると、指先が不動の頸椎に触れた。

不動は捨て身になる。いや、『なってしまう』。――――全て、計算通りだ。間もなく不動は気絶する。
俺を背負ったまま、投げは不完全で……!

ドダン!!

不動は顔面から落下し、動かなくなった。不動の不自然な倒れ方に異常を感じ取ったのか、
観客席は静まり返っている。

「……い、今のは……? 不動、立ち上がらない! どうした!?」

理解が追い着かない実況の声が間抜けに響く……。
俺はゆっくり立ち上がって両肩を竦め、どよめく闘戯場を後にした。

勝者:ハルト・リュウ  決め技:喉潰し→(不動剛の投げ失敗による自爆)
106創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 17:46:26 ID:7nxTt/f9
主人公が悪役みたいだし、必殺技が地味過ぎる……
二回戦は頑張ろう。
107創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 21:47:16 ID:WgEveW7D
地味だけど避け難そうだな、喉潰しw
108VS朧:2008/12/23(火) 19:26:15 ID:YufmYiIk
闇闘戯帝王決定戦二回戦。俺の相手は、数年前から闇闘戯で戦っていると言う少女、朧。
闇闘戯では、数少ない女闘士だ。

「二回戦第一試合は、ハルト・リュウ対朧!! ハルト・リュウが一回戦で不動剛を破ったのは、
 圧倒的な『力』だった! 対する朧は、これまで頂上決定戦に進出した事が無いッ!!
 去年までの彼女の戦歴は、殆どが試合放棄!? それが今年に入って覚醒し、連戦連勝!!
 一回戦も難無く勝ち上がったが、果たして新人の快進撃は止められるか!?」

これまでの数年間、朧は上位陣の観察に徹し、虎視眈々と機を窺っていたのだろう。
今なら勝ち上がれると踏んだから、正体を現したのだ。……そう思っていた。

腰まである長い髪を編んで下げ、ゆったりとした拳法着に身を包んでいる朧に、俺は違和感を覚えた。
体格は華奢で、然程腕力がある様には見えない。しかし、所作に全く恐怖や緊張感が見られない。

(負ける気はしない……。だが、この湧き上がる不安は何だ? 俺が恐れている?
 ……力勝負なら俺が勝つ。必ず。……臆病するな!)

俺は混乱していた。相手を観察すればする程、訳が解らなくなる。

カァアアアン!

戦いが始まっても、俺は迂濶に動けないでいた。対して、朧は構えもしない。嫌な汗が流れる……。
朧は動けないでいる俺に話し掛けて来た。

「初めまして龍大翔様。私は龍の一族四家が一、東家が正系、東明月に御座います。
 お気軽に明明とお呼び下さいませ」
(……何を言っている?)

朧が突然始めた自己紹介に、俺は戸惑いを隠せなかった。
109創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 19:33:01 ID:YufmYiIk
ヒロインになる予定のミンミンさん登場。
大翔は今年一番人気だった男の子の名前。
何通りかある読みの中にハルトを見掛けた。
シンクロニシティ?
110VS朧:2008/12/30(火) 10:06:48 ID:aJbfXpY2
「月様から既にお伺いの事と思って居りましたが……? どうやら何も御存知ないようですね。
 では僭越ながら私めが御教授させて頂きます。
 龍の一族とは3000年前から続く名家の血筋で御座います。始祖は龍から生まれた半龍半人。
 龍の血を絶やさぬ様、一族間で血を継ぎ、何時の日か龍に帰る時を迎えるのです」
(……よく喋る女だ。話の内容はよく解らないが、詰まる所は名家の所以たる伝説。聞くに値しない)

退屈し始めた俺の様子を察したのか、朧の口調は僅かに強くなった。

「私も信じては居りません。しかし、一族で高い能力を示した者を『龍の血が濃い』として長に据え、
 それを繰り返した結果、常人とは掛け離れた能力を持つ存在となったのは事実です。
 東西南北の四家は龍を支える存在。男系の南家、女系の北家、武具の西家、そして知略の我が東家。
 我等四家の系図は龍を始祖とし、龍の直系を中心に複雑に絡み合う様は稲妻――」
「御託は結構だ! お前は何をしに来た?」

長話は好かない。俺は単刀直入に訊いた。
朧は額に手を当て俯き、溜め息を吐いた。

「……今、何を言った所で無駄ですか……。解りました。簡潔に申し上げましょう。
 これまでの貴方様の戦い振り、拝見させて頂きました。確かに素養はお有りの様です。
 しかし、一族を纏め上げるには未だ不足! 私を倒せとは申しません。
 一撃入れる事が出来たなら、貴方様の価値を認め、引き下がりましょう。
 一族の長の座に就かんとせん者ならば、せめて龍の名に恥じぬ戦いを……!」

倒せとは言わない、一撃入れれば勝ちになる……。侮辱だと思ったが、
朧が放った強烈な殺気は、それが単なる挑発では無い事を物語っていた。

朧は俺に向かって一歩一歩近付く……。その歩き方は奇妙で、歩幅と速度が安定しない。
実力差は不明。こちらから仕掛けるにはリスクが高過ぎた。自然と受身になる。

(射程内まで後……5、4、3――ッ!?)

ドスッ!!

一瞬何が起こったのか理解出来なかった。
朧は射程外から瞬間移動でもしたかの様に、俺の懐に飛び込み、手刀で気管を潰していた。
111創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 10:15:34 ID:aJbfXpY2
ミス発見。……臆するな!
『臆する』が変換で出なかったから、臆病から病を消そうと思って忘れてた。

あと『大翔』について補足。
2008年度(平成20年度)生まれで人気の高かった名前を明治安田生命が発表。
赤ちゃんの名前の人気の一番は男の子は「大翔」くん。女の子は「陽菜」ちゃん。

さて話の方は邪気眼っぽくなって来たかな?
112創る名無しに見る名無し:2009/01/01(木) 20:29:45 ID:VLGE5owa
ちんこさわっておっきおっき!
113創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:07:10 ID:wJunh43g
今から過去の黒歴史ゲーム企画書を投下します
昔のゲーム甲子園というイベントに応募した物のコピーです

はっきり言ってめちゃくちゃ書いてます
序文から痛さ全開です
こうやって逃げ道用意しとかないと開き直れないくらい酷いです
笑ってやってください
誰か一人でもニヤついてくれたら本望ということで
114創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:09:09 ID:Zs4EUjz3
6年ほど前のものです。だいたい12レスほど頂きます。

ゲーム甲子園企画

真RPG「End of Tears 〜世界の涙を止める者〜」

・企画意図

昨今のRPGをプレイしていて思うことがあります。
それはロールプレイングの名の通りに役を演じきれなくなってきていることです。
定められた容姿、定められた名前、生い立ち、その能力さえも決められた通りに成長していく。
全てのRPGがそうだとは言いませんが、まるで映画のように進行していくゲームが多いこともまた事実です。
もちろんそれはより深くストーリーを見せる方法として有効なものではありますが、
どんなに優れたストーリーがあってもそれは所詮他人ごとです。
感動することはできても、自身でない以上、深く感情移入するにも限界があります。
今のRPGはプレイヤーの想像力を殺してしまっているのではないでしょうか?
思えば、ファミコンなどの初期の家庭用ゲーム機に登城したRPGの主人公には生い立ちがありませんでした。
名前もプレイヤーが入力し、選択肢以外に喋ることもない。
少々味気ない感もありますが、考えてみれば主人公に個性がないことで私たちは主人公になりきることが
できたのではないでしょうか。
それこそがまさに、ロールプレイングゲームだったのではありませんか?

主人公=自分自身として感情移入できる存在。

私はそれが本当に面白いRPGの条件だと思います。
そこで思いついたのが今回の企画です。
キャラクターのメイキングシステム、成長システムを突き詰め、
自分の思い通りにキャラをカスタマイズしていくことができるようにします。
サブキャラとの会話に選択肢を散りばめ、選択によって主人公の立場や仲間との信頼度、
イベントなどが変化していきます。
仲間と共に危機に立ち向かうのか?
仲間を裏切り、敵の側に立つのか?
世界の謎に立ち向かうのか?
どれを選んでもそれぞれの結末に行き着きます。
それはみんな主人公次第、すなわちプレイヤー次第なのです。
本当の意味でプレイヤーがゲームのストーリーに介入できるゲーム。
それこそが本当に面白いロールプレイングゲームだと、私は思います。
115創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:10:20 ID:wJunh43g
・プロローグストーリー

主人公は夢を見ています。
夢の中で聞こえるのは儚げな女性の訴えです。「私を助けて……世界を救って……」
視界が真っ白になり、目が覚めるとそこは見知らぬ森の中でした。
夢心地で歩いていると突然モンスターに襲われてしまいます。
怪我を負い、激痛の中現実だということを認識する主人公。
絶体絶命のその時、女性冒険格闘家エリュシアが現れ、主人公を救います。
遅れて、エリュシアの相棒、女性魔剣士ヴァレリーが登場、モンスターを瞬殺。
主人公はエリュシアの親切で近くの村まで送ってもらうことになりました。
(この時ヴァレリーから木剣を貰います。)
村に到着すると、宿を取ってこれからのことを相談することになります
別世界から来たという主人公の話をヴァレリーは笑い飛ばしますが、エリュシアは信じてくれます。
主人公の同行を提案するエリュシアですが、ヴァレリーは頑なに反対します。
平行線のまま真夜中になり、結論は明日ということでみんな床につきます。
深夜、突然村がモンスターの群れに襲撃されます。
混乱する村人たちの中、ヴァレリーはエリュシアに主人公のことを任せ、モンスターの群れの中に飛び込んでいきます。
エリュシアと主人公は近くの山の坑道に逃げ込みます。
坑道に巣食うモンスターを倒し、夜明けを待つ二人。
朝になり村に戻るとそこには、無残に破壊された家屋と死体だけでありました。
生存者を捜して回る二人ですが突如一匹残っていた魔人に遭遇します。
その魔人は闇の魔術でバリアを張り、こちらの攻撃が全く通用しません。
逃げ込んだ先の廃屋で、二人はヴァレリーの帯剣のはずの地帝剣を発見します。
ヴァレリーの姿がないことにエリュシアは動揺します。
魔人に追い詰められ、絶体絶命のその時、主人公の抜いた地帝剣が魔人の闇のバリアを消し去り、ダメージを与えます。
激怒した魔人の攻撃に主人公は反射的に地帝剣を盾にします。
すると今度は地帝剣から闇のバリアが発動し、魔人の攻撃を防ぎます。
地帝剣は魔術を吸収、増幅して効果を奪う吸魔の能力を備えていたのです。
それを悟り、肉弾戦に切り替えてくる魔人に主人公たちは応戦しますが、主人公の能力は低く
エリュシアも主人公を庇いながらかろうじて反撃しますが、次第に追い詰められていきます。
魔人が勝ち誇ったその時、旅の道化師マックスとその娘の僧侶クリスが登場。
二人が参戦し、形勢逆転します。
マックスが主人公を庇い、クリスの術とエリュシアの拳が魔人を打倒します。
しかし、安堵したのも束の間、再生能力の高い魔人は再び立ち上がります。
主人公の持つ地帝剣の能力を見抜いたマックスはクリスの破邪の法術を地帝剣に吸収させ、
その増幅された破邪の一撃で主人公は魔人を絶命させます。
一段落した後、情報を交換する4人。
マックスとクリスは主人公が別の世界から来たという話をエリュシア以上にあっさりと信じ、
逆にエリュシアに怪しまれます。
クリスの説明によると世界に満ちる神秘の力「マナ」がこの地で異様な反応を示したため、様子を見に来たといいます。
モンスターの群れが襲来したのもそのマナの異常のせいかもしれないと聞き、ショックを受けるエリュシアと主人公。
この時から主人公は元の世界に還る方法を探すため、旅に出ることになります。
主人公の未来を決めるのはプレイヤーの選択次第、主人公は無事に元の世界に帰還できるでしょうか。
116創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:11:56 ID:wJunh43g
・仲間キャラクター
主人公を助けてくれるみんなの協力を得て、冒険は進んでいきますが、主人公の行動したり仲間にならなかったり、
別れてしまうこともあります。
(パラメータの横のアルファベットは成長率です。最高がS、順にA〜Dと下がっていきます)

名前:エリュシア 年齢:19 性別:女 職業:グラップラー 武器:ナックル
筋力:A 敏捷:A 技量:A 精神:B 魔力:D
ヴァレリーとのコンビで活躍する女冒険者、通称「灼髪のエリュシア」
主人公に似た弟(妹)を病気で死なせており、困っている主人公を見て面倒を見ようと勝手に決める強引な人。
世話好きで姉御肌。口癖は「アタシにまかせときなっ!」

名前:ヴァレリー 年齢:20 性別:女 職業:ソーサルナイト 武器:ブレード
筋力:B 敏捷:B 技量:S 精神:C 魔力:A
エリュシアとのコンビで活躍する女冒険者、通称「閃紅のヴァレリー」
無表情、無感動、無愛想を地でいくが、それは仮面であり心根はやさしい女性。
序盤でパーティから離脱するが中盤のイベント次第で再び仲間になる。
魔界の貴族の娘で、それを隠していることに強い罪悪感を持っている。

名前:ベアラン 年齢:35 性別:男 職業:ウォーリアー 武器:ハンドアックス×2
筋力:S 敏捷:D 技量:A 精神:A 魔力:D
盗賊団「ナイトノッカーズ」のリーダー。
盗賊団討伐イベントでベアランを救うことを選択すると仲間になる。
ある王国で史上最年少の将軍に選ばれかけたが陰謀により失脚した過去を持つ。
彼を陥れた人物を彼は皆殺し、逃走の果てに盗賊に落ちぶれていた。
賢者マキシミリアンとは親友同士であった。

名前:マックス 年齢:35 性別:男 職業:ピエロ(ワイズマン) 武器:ステッキ
筋力:C 敏捷:B 技量:C 精神:A 魔力:S
寒いギャグを連発しては娘のクリスに撲殺される日々が続く道化師。
ふざけた会話の中に時折、重要な真実を含ませることもあり、侮れない。
その正体は伝説の三賢者の中で最年少でありながら筆頭に数えられるというマキシミリアンである。
主人公を監視するために近付いた。

名前:クリス 年齢:15 性別:女 職業:クレリック 武器:メイス
筋力:A 敏捷:B 技量:C 精神:A 魔力:D
マックスの娘である不幸に嘆き常識を謳う乙女。
術師でありながら筋力が高く、巨大なメイスをぶん回す非常識な僧侶。
寒いギャグを連発する父親のマックスを撲殺する日々が続く。
父親の正体を聞かされてはいるが、今だに信じてはいない。
あ、ちなみに法術の腕はそこそこである。

名前:ネグローニ 年齢:22 性別:男 職業:ソードマスター 武器:ソード
筋力:B 敏捷:A 技量:A 精神:B 魔力:B
魔王と人間のハーフで、魔族のスパイとして仲間になる。
温厚そうな人柄に見えるがその実、残忍で狡猾。
世の中のすべてを憎んでおり、魔族に対しても忠誠心など微塵もない。
最初はヴァレリーと接触するために主人公に近付いたが、主人公の潜在能力を見て利用しようとする。

名前:アロー・ボゥ 年齢:16 性別:女 職業:ウイッチ 武器:プルーム
筋力:D 敏捷:B 技量:D 精神:C 魔力:S
とんがり帽子にマント、ほうきで空を飛ぶまさに魔女っ娘。
噂話が大好きで町中を放棄で飛び回っては騒動を起こす。
それはもはや町の名物であり、町中の人々から好かれている人気者。
人を励ます天才で、自分も励まされた人も気付かないうちに元気づける。
彼女を仲間にすると様々なトラブルと幸いを呼び込むことになる。
117創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:13:05 ID:wJunh43g
名前:ユラ・ムラサメ 年齢:17 性別:男 職業:シノビ 武器:ナイフ×2
筋力:B 敏捷:A 技量:S 精神:B 魔力:D
くノ一、ユリの双子の兄で、主人公に救われた国の王の命令で仲間になる。
主人公のために平気で命を捨てることができると公言するが、徐々に命の大切さを学んでいく。
権力者の道具として育てられたため、普通の人間として接せられることに戸惑いを感じる。

名前:ユリ・ムラサメ 年齢:17 性別:女 職業:クノイチ 武器:ダガー
筋力:C 敏捷:S 技量:A 精神:B 魔力:C
シノビ、ユラの双子の妹で、主人公に救われた国の王の命令で仲間になる。
主人公に尽くすことに喜びを感じ、主人公が男の場合、夜伽に参上して騒動を起こすこともある。
権力者の道具として育てられたが、それとなく兄に守られていたため、ユラよりは主人公たちの態度に戸惑いが少ない。

名前:ピック 年齢:13 性別:男 職業:プチアドベンチャラー 武器:ウイップ
筋力:B 敏捷:B 技量:B 精神:B 魔力:B
少年ながらに世界を股に掛ける冒険家、を夢見るやっぱり少年。
主人公に憧れて無理やりくっついてくるがその能力は決して低くはない。まぁ高くもないが。
パーティキャラの必殺技を見様見真似で習得するので(自分なりのアレンジを加えて)、
育て方によっては化けるキャラ。

名前:フリッツ 年齢:18 性別:男 職業:ハンター 武器:ボウ
筋力:C 敏捷:B 技量:S 精神:B 魔力:C
ある高山で狩猟をして生計を立てている一族の末っ子。
地味な生活に飽き飽きして家を飛び出し、都会に出てきた。
少年(少女)ながら貴族として自分の領地をもつ主人公にくっついていれば自分も成りあがれると思って仲間になる。
彼の弓さばきは神技で、一撃死の追加効果を持つ。

名前:オアシス 年齢:14 性別:女 職業:シャーマン 武器:ボウガン
筋力:D 敏捷:C 技量:C 精神:S 魔力:D
世界樹の麓の樹海に住むエルフ族の巫女として生まれた少女。
非力だが力を必要としないボウガンと高い感応能力で活躍する。
世界の危機を感じ取っており、自分に何ができるのか思い悩んでいたが、
閉鎖的なエルフの社会において外の世界を想う事は禁忌だった。
エルフの集落を訪れた主人公によって外へ連れ出されることになる。

名前:マリオン 年齢:30 性別:女 職業:バスター 武器:ハルバード
筋力:A 敏捷:S 技量:C 精神:A 魔力:D
未開の地、「遥かなる大地」に住む女だけの集団アマゾネス、その中でも魔物狩りを生業とするバスターの一人。
獣のごとき俊敏さと強靭な体躯で戦上を駆け巡るパワーファイター。
主人公にであることで世界の危機を知り、娘と仲間の為に参戦する。
普段は母性本能の強い素晴らしき熟女だが、戦闘になった途端狂戦士化する彼女は敵にとって悪魔以外の何者でもない。

名前:ジ・エンド 年齢:31 性別:男 職業:アサシン 武器:ナイフ&ダガー
筋力:A 敏捷:A 技量:S 精神:B 魔力:B
主人公を暗殺するために雇われた凄腕の殺し屋。
法術以外、格闘、武器、魔術と何でもこなし、戦闘で活躍する万能キャラ。
主人公暗殺に王手をかけたところで、ムラサメ兄妹に阻止されてしまう。
一時引いている間に雇い主の貴族が失脚してしまい、居場所をなくした彼を
ムラサメ兄妹が仲間に引き入れることになる。

名前:デルバリシア 年齢:283 性別:女 職業:ハーミット 武器:ロッド
筋力:D 敏捷:D 技量:S 精神:S 魔力:S
世界の謎を知り、未来に絶望して世界の果てに隠居した元大教主。
彼女の絶望を払い、希望を示すことで仲間になってくれる。
非常に博識で説明が大好きなので解らない事があれば彼女に訊けば、大抵教えてくれる。(訊かなくても教えてくれる)
世界中に広まったサライア神教は、元々彼女が教主となって広めた。
118創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:13:13 ID:iQ8KFXhX
一応支援
119創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:14:32 ID:wJunh43g
名前:シン 年齢:24 性別:男 職業:ディバインナイト 武器:スピア
筋力:A 敏捷:C 技量:A 精神:A 魔力:C
デルバリシアの教義に心酔してテンプルナイツに入団し、瞬く間に騎士団長の位にまで登りつめたが
教団上層部の腐敗ぶりに落胆して、道を見失っていた。
主人公と行動を共にするデルバリシアと出会い、彼女の盾となるべく仲間になる。
寡黙で敵を分析することに優れる。

名前:リュード 年齢:500 性別:男 職業:ドラゴンパピー 武器:クロー
筋力:C 敏捷:C 技量:C 精神:C 魔力:C
主人公の領地である島のモンスターを支配していた雲竜ルヴィオンの息子。
ルヴィオンを倒した後、和平の証としてルヴィオンから主人公に預けられた。
能力が低い代わりに、魔術・ステータス攻撃無効化の特殊能力を持つ。
五百歳でまだ幼生体だが、成長期を間近に控えているらしい。

名前:リュード 年齢:501 性別:男 職業:クラウドドラゴン 武器:ブレス
筋力:S 敏捷:S 技量:S 精神:S 魔力:S
リュードが成長して成竜となった姿。
彼が成竜となってからは彼の背にのって、大空を移動することができる。
能力も超進化しており、イベントでのみだが空戦で彼に敵うものはいない。
パーティに彼を入れることはできなくなってしまうが、代わりに主人公が戦闘でのリュード召喚の特技を覚える。


・信頼度
仲間キャラクターには主人公に対して、それぞれ信頼度が設定されています。
バトルパーティに入れる、会話する、イベントを起こすなどで増減します。
信頼度が高いと戦闘で回復してくれたり、特技を教えてくれるイベントが発生したり、
エンディングに影響したりします。

その他のキャラクター

・魔王ヴェルザード
不毛の大地である魔界に見切りをつけ、人間界を手に入れようとする魔界の王。
人間界から迷い込んできた女性によって人間界の存在を知り、侵攻を決意する。
その女性を娶り、ネグローニを産ませる。
彼なりにネグローニを愛しているが、王としての立場から他の魔族に迫害される妻とネグローニを助ける事ができず、
結果憎まれることに哀しんでいる。
ネグローニを人間界のスパイとして送り込んだのは、他の魔族から隔離して、手柄をたてさせ認めさせようとする
親心からであったがそれがネグローニに通じることはなかった。

・プラチナとシルヴィア
主人公の行く先々で邪魔をするキューピッドと小悪魔。
他世界からの異分子である主人公を排除するために世界に生み出されたワクチンである。
女神サライアによって呼び込まれた主人公はこの世界にとっては異物でしかなく、
主人公を消し去る為に世界はプラチナとシルヴィアを生み出した。
(サライアはこれに対抗する為に主人公に様々な能力を与えている)
ワクチンの核として選ばれたのは双子の少女であり、活発なプラチナは世界を守護するイメージから天使の、
引っ込み思案なシルヴィアは異物を殺すイメージから悪魔の姿をとった。
自分たちで直接手を下して主人公を消し去るのが嫌な二人は、様々な陰謀(笑)を巡らして、
間接的に亡き者にしようとする。

・ウトガルディロクス(ウトガルド・ロキ)
天上天下唯我独尊、傍若無人で一匹狼の冒険者ロクス。
戦闘そのものに快感を覚え、強力なモンスターを倒すことを至上の喜びとする。
その戦闘力は強大で、彼の二刀流剣術、破壊魔術の右に出るものはない。
双子のワクチン、プラチナとシルヴィアに誑かされ(彼はロリコンである)、主人公を世界の敵として認識し
執拗に付け狙う。
二人から魔剣レーヴァンティンを与えられ、魔狼フェンリルを従え、最強の存在となった彼は双子の思惑を外れ、
自らを魔神とするために動き始める。
120創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:16:15 ID:wJunh43g
・女神サライア
主人公の夢に現れ、この世界に召還した張本人。
旧世界で彼女は元々人間だったが、世界に充満する神秘の力「マナ」の存在を解明した科学者たちによって
マナを現出させる触媒として事故で長期間植物状態だった彼女が選ばれてしまう。
実験は成功し、サライアの脳を核として大量のマナが現出したが、その結果世界を支えるマナの力が薄くなってしまい、
世界崩壊の危機を迎えてしまう。
現出したマナはサライアを核として神とも呼べる超常の存在へ自らを固定する。
神となったサライアは世界の崩壊を防ぐため、薄くなったマナでも支えることができるように世界を二つに分ける。
その際、マナの配分が狂いマナの豊かな世界とマナの薄い世界が出来てしまった。
これが人間界と魔界である。
文明が崩壊し世界が二つとなって約千年。世界のバランスが徐々に崩れ始めてきてしまう。
サライアはこの不安定な世界を矯正する為に主人公を召喚する。
異世界の人間に自分を殺してもらうことで、元の力としてのマナに戻り、世界を支えるために。
(同世界の人間では意味的に世界の自殺となってしまい、世界そのものの自滅を招いてしまう。
 主人公が選ばれたのはサライアの呼びかけを聴くことが出来るほど同調能力が高かったため)
サライアはマナの集積体として、世界に大きな影響力を持つが、世界の意思そのものという訳ではない。


・3つのエンドルート
主人公が織りなす物語はプレイヤーの選択、行動次第で如何様にも変わりますが、最終的には大きく分けて三種類の
エンディングが待っています。
(今まで通ってきた道のりによって、そこからさらに細かくエンディングは変化します。)
達成が困難な順に「通常エンドルート」「魔王エンドルート」「真エンドルート」となります。

・通常エンドルート
通常エンドルートには特別な条件はありません。
魔王エンド、真エンドの条件を満たさずに物語を進めるとこのエンドになります。
最終的に人間界を侵略する魔王ヴェルザードを倒してエンディングです。

・魔王エンドルート
魔王エンドになる鍵はネグローニという仲間キャラクターです。
ネグローニとの信頼度を上げて、ネガティブな選択を多くしていると
物語終盤でネグローニに魔王になることを持ちかけられます。
恐怖支配によって平和を創ろうという提案に乗ると魔王エンドが確定します。
エリュシア、ネグローニ、ムラサメ兄妹、ジ・エンド、リュード以外のキャラクターを全員敵にまわし、
魔王ヴェルザードを倒し、成り代わって魔王になり、エンディングになります。

・真エンドルート
大団円で迎える本当のエンディングです。
条件は仲間にできるすべてのキャラクターを最後まで仲間にし続けること。
このルートでも鍵はネグローニです。
通常ではほぼ確実にネグローニは終盤で裏切りますが、信頼度を上げてポジティブな選択をし続けていると
終盤でネグローニとの口論イベントが発生します。
ここで彼を論破できると、一時的に彼は姿を消しますが、今度は本当の仲間となって再び主人公の前に現れます。
プラチナとシルヴィアを世界の意思から解放し、魔剣レーヴァンティンを吸収して破壊神ラグナロクスと化した
ロクスを倒すと、女神サライアがラスボスとして登場します。彼女を神としての責から解放できるでしょうか。



システム

・キャラクターのメイキング
ビジュアル:男女の選択、髪型、メガネ、利き腕など自分自身の見た目を設定します。
データ:名前、愛称、誕生日、身長体重の設定。これにより体格が自動的に決定されます。(年齢は16歳で固定)
パラメータ:上記で決定された体格によってパラメータに差が出ます。
        (大柄だと敏捷は低いが筋力の高いパワータイプ、小柄だと敏捷、技量の高いテクニカルタイプ)
        これにさらにスタートボーナスポイントで自分好みに補正をかけることになります。
121創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:17:12 ID:iQ8KFXhX
C
122創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:17:41 ID:wJunh43g
・レベルアップ
レベルアップごとにもらえる成長ポイントを各パラメータに振り分けることにより主人公は成長します。
しかし他のサブキャラクターはそれぞれに設定された成長率によって成長していきます。

HP:耐久値。攻撃を受けるごとに減っていき、0になると戦闘不能になります。
MP:精神値。術を使用するごとに減っていき、0になると気絶します。
TP:技巧値。技を使用するごとに減っていき、0になると技が使えなくなります。
筋力:この値が高いほど攻撃力・防御力が高くなります。
敏捷:この値が高いほど行動力・回避力が高くなります。
技量:この値が高いほど物理攻撃の命中率・クリティカル率が高くなります。
精神:この値が高いほど法術の威力と耐性、精神系状態異常の耐性が高くなります。
魔力:この値が高いほど魔術の威力と耐性、肉体系状態異常の耐性が高くなります。

・肩書きの変化
主人公の装備している武器や、術の熟練度によって、主人公の肩書が変化します。
一度名乗った肩書きはリストにストックされ、どういう状態でその肩書きを名乗れるかが保存されます。
<例>
剣を装備している:剣士
両手に剣を装備している:双剣士
剣を装備し、尚且つ術の熟練度が高い:魔剣士 等

・特殊肩書き・二つ名
きわめて特殊な状態でのみ名乗ることのできる肩書きです。
レベルアップの際に隠し必殺技や術を習得できたりします。
<例>
二刀流で熟練度も高く、敏捷、技量のパラメータが高い:双剣舞踏(隠し技・剣嵐を覚える) 等

・熟練度
同じ行動をとればとるほどその行動に熟達し、成功率、補正がアップします。
決戦前のイベントで主人公が手に入れる武器はその時点で最も熟練度が高い武器の最高位になります。
熟練度には4つの種類があります。

武器熟練度:その武器の扱いにどれだけ長けているかを表します。高いほど攻撃力が高まります(武器は12種類)
技の熟練度:高いほど発動時間が短くなり、CT率が上がります。技によっては派生技を覚えることもあります。
術の熟練度:高いほど発動時間が短くなり、効果が高まります。一定以上高まると上位呪文を覚えます。
パーティ熟練度:バトルパーティのコンビネーションに関係します。
          作戦指示に対する忠実さや連携攻撃の発動時間と攻撃力に関係します。
          メンバーが一人でも入れ替わると0に戻り、1から上げなおしになります。
          (過去のメンバーの熟練度は保存されます)

・スピリッツゲージ(SG)
敵味方キャラクターのバトル中の戦意を表すゲージです。(0〜100まで)
SGが高いほど強力な技や術を発動できるようになり、バトルを有利に進めることができるようになります。
また、攻撃力や防御力、ステータス攻撃への耐久力などが補正されます。
バトルスタート時のSGはキャラクターのLVによって決定されます。
すなわちキャラクターのLVが1ならSG初期値は1で始まり、LVが100なら、SGは100(上限)から始まります。
SGがバトル中に増加する条件は、行動が成功する、SGを増やすアイテムを使う、味方の援護行動を受ける等があります。
SGが減少する条件は、行動が失敗する、敵の特殊攻撃を受ける、SG消費型の技や術を使用する、
コマンドスキルを使用する等があります。
敵の攻撃の威力もSGによって増減されますので、いかに敵の戦意を下げ、味方の戦意をあげるかが
バトルの勝敗を左右することになります。


・スキル
バトルを有利に進めるための能力です。
コマンドスキル、オートスキル、サポートスキルの3種類があります。
アイテムのスキルブックや特定のNPCに教えてもらうことで習得します。
123創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:19:16 ID:wJunh43g
・コマンドスキル
バトル中、コマンドを選択して使用するスキルです。SGを消費します。
<例>
コンセントレーション:しばらく無防備になることで、命中、CT、回避率を一定時間100%にする
アイテムスティール:敵からアイテムを盗む
ブーストマジック:MPを2倍消費して、術の効果を高める 等

・オートスキル
バトル中、条件を満たすと自動で発動するスキルです。
<例>
カウンターアタック:敵の攻撃を回避した時、クリティカルで反撃する
レジスト:敵の魔術攻撃を無効化する 等

・サポートスキル
バトル中、常に効果を発揮し続けるスキルです。二つまでしか装備できません。
<例>
リジェネレイション:バトル中、行動順ごとにHPが一定値回復する
筋力+:パラメータ「筋力」を一定値プラスする


・パーティ編成
主人公率いるパーティは最大6人までの編成になります。
その他の仲間は序盤で手に入る本拠地に待機することになります。
戦闘は4人の前衛によって行われ、残りの2人の後衛は任意に援護行動をとります。

・戦闘
戦闘はランダムエンカウント方式です。
ストーリーの進行にストレスを感じさせない為、エンカウント率は低く設定します。
またLV上げの為に、エンカウント率アップのアイテムを序盤から安価に購入できるようにします。
戦闘での行動順は敵味方全体で行動力(敏捷+装備補正+SG補正)の高い順番で決定されます。
戦闘に参加する敵味方のキャラクター一人一人が独自に行動し、プレイヤーが操作するのは主人公だけです。
仲間の行動に関しては全体作戦と個別指示により、間接的に干渉するしかありません。
仲間の信頼度が低いと、作戦や指示を無視されてしまうので、仲間との交流も戦闘には重要になってきます。

・戦略コマンド
敵とエンカウントすると、まず戦略コマンドを選択することになります。

戦闘:戦術コマンドに移行し、敵と戦闘することになります。
作戦:仲間への個別指示や全体作戦を設定します。オートバトルへの移行も設定できます。
逃走:逃走します。敵のレベルによって逃走確率は増減します。
交渉:敵と交渉して戦闘を回避したり、仲間にしたりします。失敗すると戦闘になります。
システム:戦闘に関するシステムを設定します。バトルスピード、メッセージスピード等

・戦術コマンド
戦略コマンドで戦闘を選んだり、交渉に失敗すると戦闘に移行し戦術コマンドによって
主人公の行動を決定します。

攻撃:装備している武器で敵を攻撃します。
技・術:習得している技や術を使用します。
スキル:コマンドスキルを使用します。(被ダメージを半減するガードは最初から覚えています)
連携:仲間との連携攻撃や後衛の援護行動を行います。
道具:装備を付け替えたり、アイテムを使用します。

・連携攻撃
バトル中、複数の味方キャラのスピリッツゲージが頂点に達した時に使用できる強力な攻撃です。
参加するキャラ、人数によって攻撃の種類が変わります。
TPを使用せずに強力な攻撃が出来るためお得ですが、参加するキャラの行動順を揃えるため待機時間が長く、
一度使用するとそのキャラのSGが0になってしまう為、敵が残っている場合は不利になる等のデメリットがあります。
パーティ熟練度が高いほど威力は増加します。
124創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:21:19 ID:wJunh43g
・援護行動
後衛の2人による援護を行います。
援護行動には回数制限があり、バトル中の何時でも使用できますが、制限回数以上に使用することはできません。
また、援護回数を回復することもできません。
唯一戦闘終了のみが回復手段です。
援護行動の内容はキャラクター個々によって差があります。
<例>
応援:味方のSGを増加させます
煙幕:敵の命中率を減少させます
祈祷:味方全体のステータス異常を一定時間回復、予防します 等


魔術・法術そして魔法&特技

・魔術
キャラクターの魔力によって発動する術、それが魔術です。
主に攻撃用の術、物理的に作用する術が多いのが特徴です。
行く先々の魔道士協会で魔術書を購入して、基本魔術を覚えるところから始まります。
基本魔術の熟練度を上げていくことで、派生魔術、上位魔術を習得することができます。

・魔術合成
魔術には光、火、地、闇、水、風の根源六属性と、隣り合う属性を合成した
爆裂(光、火)、溶岩(火、地)、重力(地、闇)、腐敗(闇、水)、氷雪(水、風)、雷電(風、光)の
合成六属性と合わせて12属性が存在します。
合成六属性の術を覚えるにはある程度対応する根源属性魔術の熟練度が必要です。
魔術の合成は魔術士協会の研究所で料金を支払って行ってもらえます。
合成で生まれた術は熟練度を高めても上位魔術を習得できません。
合成属性の上位魔術は根源魔術の上位魔術の熟練度を高めて新たに合成しなくては習得できないのです。
その代わり、合成された魔術には強力な追加効果が存在するので、戦闘で重宝します。

爆裂属性:敵を眠らせる
溶岩属性:攻撃が残留し、一定時間相手の行動ごとにダメージ
重力属性:敵の防御効果を無視
腐敗属性:敵の防御、攻撃を低下
氷雪属性:敵を凍傷にする
雷電属性:敵を痺れさせる

・法術
キャラクターの精神によって発動する術、それが法術です。
防御用の術、精神的に作用する術が多いのが特徴です。
行く先々の教会で寄付を納めることにより、司祭、シスターより教わることができます。
魔術と違い、すべての術をNPCから教わることになります。
また、術の一つ一つに熟練度がつくのではなく、法術全体で熟練度が上がっていきます。
つまり一つだけの術を使い続けても、熟練度が上がれば他の術も効果が上がるのです。
その代わり教会で習得できる法術は全体の半分に満たず、教えてくれる他のNPCを探すのに苦労することになります。

・魔法
魔法とは魔術、法術に分裂する前の真なる奇跡。世界そのものに干渉する大いなる力です。
終盤に発生するサブイベントで主人公の魔術の熟練度合計と法術の熟練度が一定以上の場合、
主人公のみが習得できる非常に強力な術です。
全部で数種しか存在しませんが、その効果は既存の魔術、法術をはるかに凌駕します。
(ただし、MPとSGを大きく消費します。)
魔法を習得する、しないによってゲームの難易度は大きく変化するでしょう。

・特技
TPを消費して使用する特技です。大抵通常攻撃よりも強力に設定されています。
主人公以外のキャラクターはレベルアップすることで習得しますが、
主人公は特訓したり、誰かに教わることによって習得します。
その際、パラメータ「技量」が覚えようとする技の必要技量値よりも低いと覚えることができません。
強力な技を持つキャラとは積極的に仲良くなった方が良いでしょう。
125創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:23:40 ID:iQ8KFXhX
いい感じだwww支援
126創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:26:57 ID:iQ8KFXhX
ありゃ、さるか?
127創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:27:27 ID:nS3dupSJ
さるさん喰らったので30分くらい休憩するっす。ノシ
128創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:27:45 ID:h186jMm/
遅ればせながら支援
さるぽ?
129創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:28:17 ID:h186jMm/
おk 乙w
130創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:30:09 ID:iQ8KFXhX
支援足りなかったスマソ
131創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 00:41:11 ID:kXZvbiMK
意外とそれほどでも……感覚が麻痺しているのだろうか
132創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 01:02:26 ID:wJunh43g
テスト
133創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 01:03:29 ID:wJunh43g
・SG消費型の術と技
術や技の中にはTPやMP以外にSGを消費するものが存在します。
SG消費型の術や技は非常に強力で、バトルの切り札となれる威力を持っています。
しかしSGを減らすのですから使いどころを誤ると即ピンチに繋がるでしょう。
敵のSGと味方のSGの値を見極めることが重要となります。

・ステータス異常
敵の特殊攻撃などにより、不利なステータス異常になることがあります。
ステータス異常のほとんどは数ターンで自然に治癒しますが、重効果になると自然に治癒することはありえません。
猛毒、暗黒、呪縛以外の重効果異常に全員がなると全滅してしまいます。
ステータス異常になったらすばやくアイテムや術で回復させることが重要になります。

毒:行動ごとに最大HPの5%のダメージを受ける
猛毒:毒の重効果。攻撃不能になり、行動ごとに最大HPの10%のダメージを受ける
睡眠:一定時間行動不能になり、被ダメージが倍になる。攻撃を受けると目を覚ます
昏睡:睡眠の重効果。行動不能になり、被ダメージが倍になる。攻撃を受けても目を覚まさない
痺れ:一定時間攻撃不能になる
麻痺:痺れの重効果。行動不能になり、行動ごとに最大MPの10%のダメージを受ける
呪い:一定時間術・技のコストが三倍になる
呪縛:呪いの重効果。アイテムの効果を受け付けなくなり、MP1、TP0になる
暗闇:命中率が低下する
暗黒:暗闇の重効果。命中不能になり、術、アイテムも無効化される
混乱:一定時間操作不能。攻撃以外の行動をランダムに行う。攻撃を受けると正気に戻る
狂乱:混乱の重効果。攻撃・技・術を敵味方問わずランダムに行う。主に味方に対して強力な攻撃をする
凍傷:攻撃不能になる
氷結:凍傷の重効果。行動不能になり、攻撃を受けると即戦闘不能になる
恐怖:行動ごとにSGが減少する
畏怖:恐怖の重効果。行動不能になり、SGが0になる

気絶:MPが0になった状態。SGが0になり一定時間の行動不能後、最大MPの10%回復して復活する
戦闘不能:HPが0になった状態。回復させるまで永久に行動不能となる。全員が戦闘不能になると全滅する
134創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 01:03:32 ID:h186jMm/
ぼちぼち支援再開かな
135創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 01:05:50 ID:wJunh43g

領地の運営


物語の序盤、ある王国の危機を救い、一躍救世主となった主人公は国王より褒賞として
ある領地の領主として封ぜられることになります。
しかし主人公はあくまで元の世界に帰還することが目的なので信頼できる人物を幹部として登用し、
冒険をしながら領主代行と共に領地を運営することになります。
主人公はこれ以降、領地を基点として世界中の情報を集め行動することになります。
領地は王国のそばに位置する島で、だいたい日本の四国くらいの広さがあります。
山河あり、湖あり、平野あり、森林ありとかなり豊かな土地ですが、一つだけ問題があります。
その島には強力なモンスターが多数住みついてしまっているのです。
そのため全く開拓されておらず、町村も領民も0から始めなければなりません。

まず入江周辺のモンスターを掃討し、建物や港、城壁を建設し港町を作ります。
町の名前を決定すると、王国から最低限の官僚と兵、その家族が移住してきてそれが最初の領民となります。

上記の行動が終了して初めて通常の領地コマンドに移行します。
建物を建て、軍備を増強してモンスターに備え、王国や他の国に移民を呼びかけます。
そうやって少しずつ町を大きくしていき、領民が多くなるとまた別の地域のモンスターを退治して新たな街を作ります。
島の支配地域が増えるたびに国王より新たな爵位を授かり、報奨金を貰うことができます。
爵位が上がるほど出来ることが増え、ゲームを有利に進めることができるようになります。

・爵位
卿士(エスカイア):最初に貰える爵位です。
騎士(ナイト):最初に街を作ったときに貰える爵位です。
従男爵(バロネット):最初に街を最大レベルまで大きくしたときに貰える爵位です。
男爵(バロン):最初に領地を広げた時に貰える爵位です。
子爵(バイカウント):島の1/3を支配した時に貰える爵位です。
伯爵(アール):島の2/3を支配した時に貰える爵位です。
侯爵(マーキス):雲竜ルヴィオンの住む竜の山以外を支配した時に貰える爵位です。
公爵(デューク):島の全域を支配した時に貰える爵位です。これが最高位になります。

・領主代行
王国に名高い女傑が主人公の補佐兼領主代行として派遣されます。
彼女は領地コマンドの選択画面で司会進行役として活躍します。

政治

政治は5つの部門から成り、各部門長官の能力によって結果が変わります。
それぞれ、内務部門、外務部門、軍事部門、情報部門、開発部門になります。
最初はそれぞれの長官に王国から派遣された官僚が就きますが、能力が低いため
主人公が最適なコマンドを選択しても思った結果が出ないことがあります。
その為、早めに有能な人材をスカウトする必要があります。
世界各地を飛び回り、有能な人材を探しましょう。

領地コマンド

・内政(内務部門)
領民の要望や苦情などを受け付け、それに対応した法律の制定や施設の建築を行います。
中には無茶な要望もあるため、何も考えずに対応すると財政が苦しくなったり支持率が下がるので注意が必要です。
支持率に最も強い影響を与えるコマンドです。
要望や陳情の解決には、法律や施設を作るだけでなく、主人公自ら領地を歩き回って直接解決する方法もあります。

「領民の要望」:領民からの要望を閲覧します。
「部下の陳情」:部下(仲間)からの陳情を閲覧します。仲間との信頼度に影響します。
「法律の制定」:要望や陳情に対して解決となるような法律を作ります。
「施設の建築」:要望や陳情に対して解決となるような施設を建築します。爵位に応じて建設できる施設が増加します。
「税率の設定」:税率を設定します。高すぎると支持率が下がり、低すぎると財政が苦しくなります。慎重にどうぞ。
136創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 01:07:50 ID:iQ8KFXhX
しえん
137創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 01:08:26 ID:wJunh43g
・外交(外務部門)
他領や外国との貿易を担当するコマンドです。
貿易は一度相手の領地に足を運んで、その地の領主に許可を得ないと実行することができません。
自領で発掘した資源や、名産品などを輸出することで資金を稼ぎ、必要な物資や資源を輸入します。
財政に強く影響を与えるコマンドです。

「輸入する」:他領から必要なものを輸入します。友好度が高いほど貴重なものを輸入できます。
「輸出する」:他領に自領の資源などを輸出します。友好度が高いほど多く買い取ってもらえます。
「贈り物をする」:他領主に贈り物をして、友好度を上昇させることができます。
         しかし嫌いなものを贈ってしまうと逆に友好度が下降してしまうので注意が必要です。
「対外関係」:自領と他領の友好度を閲覧します。

・軍事(軍事部門)
領内の治安維持やモンスターの討伐を行う軍の設定をします。
普段は兵士を徴募して部隊の数を増やしたり、訓練をして部隊の強さを上げたりします。
自領を拡げるためのモンスター討伐以外にも反乱の鎮圧や盗賊の討伐などにも出兵します。
また特定のキャラクターを長官に据えることでクーデターイベントが発生してしまうこともあります。
長官は慎重に選びましょう。

「兵士の徴募」:領民の中から兵士を徴募して部隊数を増やします。
        支持率が低く、移民の数が少ないと思うように増えません。領地人口の5%が最大値です。
「軍備の増強」:部隊ごとに資金を投入して装備を整えます。部隊の強度を5段階まで上昇させることができます。
「部隊の訓練」:部隊ごとに訓練をして、部隊の練度を5段階まで上昇させることができます。
「部隊の編成」:部隊の仕様を変更します。騎兵、歩兵、弓兵、術兵の4種があります。
「出兵する」:目標に対して戦闘を仕掛けます。目標には他地域のモンスター、盗賊、反乱軍などがあります。
       盗賊は「情報コマンド」でアジトを見つけない限り、何度でも発生します。
       反乱は支持率を回復させない限り、何度でも発生します。
       戦闘は一部隊を一ユニットとした戦略SLGのミニゲームになります。

・情報(情報部門)
冒険や政治に関する様々な情報が手に入る、領地コマンドの中で最も重要と言えるコマンドです。
この部門は長官以外に各国に送り込むエージェントを数人設定でき、エージェント次第で情報が変化します。
情報の有無で冒険や政治の難易度が変化したり、特別なイベントが発生したりする場合があります。

「冒険の情報」:ゲームクリアに必要な情報です。主人公はこの情報をもとに世界各地を冒険します。
「領地の情報」:自領に関する情報です。この情報を活用することで内政を有利に進めることができます。
        盗賊や反乱軍のアジトもこのコマンドで発見することができます。
「外国の情報」:外交を有利にするための情報です。他領主の好き嫌いや他領の名産や気候などの情報が入手できます。
「その他の情報」:サブイベントやどうでもいい情報を閲覧することができます。どうでもいい情報と見せかけて
        貴重なアイテムが入手できるイベントのきっかけとなる情報も存在するので、慎重に見極めましょう。


・開発(開発部門)
土地から資源を発掘したり、様々なアイテムや贈り物を開発したりするコマンドです。
活用することでゲームを有利にできますが、実行しても確実に成功するわけではなく、資金も相当に掛かりますので
使いどころの難しいコマンドです。このコマンドでしか入手できないアイテムも多数存在します。

「資源の発掘」:自領内でめぼしい場所を採掘します。
「資源の加工」:発掘や輸入で入手した資源から既存のアイテムや贈り物を作成します。
「アイテムの開発」:発掘や輸入で入手した資源から全く新しいアイテムを開発します。成功率は低いです。
「アイテムの合成」:アイテムを2つ以上かけ合わせて、別のアイテムを作成します。
          アイテムによって成功率はまちまちです。

・人事
各部門の長官を変更したり、情報部門のエージェントを登録したりするコマンドです。
特定のキャラクターを特定の役職につけることで発生する特殊イベントも存在します。
138創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 01:08:49 ID:h186jMm/
さんごくしぽいなw
139創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 01:10:36 ID:iQ8KFXhX
ちょっとやってみたかったりw
140創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 01:13:11 ID:wJunh43g
・領地イベント
領地コマンドを設定して冒険に出かけ、クリアして領地に帰ってくると様々なイベントが発生している場合があります。
主人公は領地コマンドの司会役である領主代行よりイベント発生の報告を受け、イベント解決のために奔走します。
イベントによっては放っておくことも出来ますが、大抵の場合支持率が下がる、資金が大幅に減少するなどの
弊害が出ます。

<例>
盗賊の跋扈:町が二つ以上できた後、街道沿いに一定確率で出現します。
      アジトを見つけて潰さないと何度でも被害を受けます。
反乱:支持率が一定以上低くなると高確率で発生します。鎮圧しても支持率を回復させないと、何度も発生します。
   延々と資金と戦力を削られ続け、補充もままならない状態が続くので支持率には常に気を配りましょう。
クーデター:特定のキャラクターを軍事長官にした時、一定確率で発生します。
      主人公が領地に帰還するといきなり拘束されて牢に入れられてしまいます。
      主人公は牢を脱出し、軍事長官を打倒しなければなりません。
密室殺人事件:ランダムで発生します。迷宮入り間近のこの事件を主人公は解決できるでしょうか?
       推理を楽しむミニゲームで、クリアすると支持率がアップします。
怪盗レッドブーツ:施設「ミュージアム」を建設すると一定の確率で発生します。
         怪盗の出した予告状を元に、美術品や宝石が盗まれるのを阻止して下さい。
         連鎖イベントであり、クリアしても怪盗は次々に挑戦してきます。
         怪盗の正体(領主代行)を主人公は暴くことができるでしょうか。
その他にも様々なイベントが発生します。


----------------------------
以上で唐突に終了します。
どうやらゲーム甲子園のルールである21ページ制限を使いきったようでここで企画書は終了しています。
ゲーム甲子園の公式サイトはまだ残っているので見てもらえば解ると思いますが
このイベントが求めていたのは斬新なアイデアのゲームであり、既存の寄せ集めのようなRPGは求めていなかったでしょう。
入賞した数々のゲームに比べ、この企画の浮いていることといったら……
これをプロのゲームクリエイターに見られたのだと思うと部屋中を転げ回りたくなってしまいますw


まさかこんな投下に支援を貰えるとは思ってもみませんでした。
支援してくれた方、どうもありがとうございます。
141創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 01:15:35 ID:iQ8KFXhX
乙〜
142創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 01:15:44 ID:h186jMm/
密室殺人事件は奇抜なアイディアでいいとおもいますたw
143創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 09:48:45 ID:2+xYl/eF
設定妄想大爆発って感じだなw
でもうまく焼直せば結構いいゲームになりそうな感じもする
つくるのはめちゃくちゃ大変そうだけどw
144創る名無しに見る名無し:2009/01/04(日) 01:28:44 ID:4HO1GiTb
怪盗の正体、領主代行かよw
145創る名無しに見る名無し:2009/01/05(月) 00:35:00 ID:YYQotYR9
黒歴史寸前の小説作品がいくつかあるけどそのままペタペタ貼っていいのかね?
146創る名無しに見る名無し:2009/01/06(火) 18:14:51 ID:Cf0ivOfF
地味に保守していた甲斐があったな
もう少し深く下がったら再開しよう
今週は休み

>>145良いんじゃない?
俺は構わん
147創る名無しに見る名無し:2009/01/06(火) 23:09:52 ID:UKmNDaZe
よーし、パパ古いのから貼ってちゃうぞー
ちなみに何個か作品あるんで次の作品は明日の夜にでも貼るかもわからんね

文化祭前夜連続殺人事件
それは小さな村で起きた事件。それは文化祭前日の話。
準備期間は沢山あったはずなのになんで終わってないのだろう。
隼は窓の外をみながら呟いた。外は既に日が落ちて暗闇に包まれている。作業などとっくに終わっていてもおかしくないのになぜ終わってないのだろう。理由はわかっている。
現実逃避したかった。隼は外から目を離し、部屋の隅で絵の具を混ぜている黒髪の男を見た。絵に関してはこの男は限りなく天才なのだが性格に問題がある。男は隼の視線に気付いて隼を見た。
「なんだよ、おれっちなんもやってないぞ。まじで」
「黙れ。お前の存在自体が既に犯罪なんだよ」
「なんだよなんだよ、おれっちが頑張ってるのが馬鹿みたいじゃん」
「そうだな、どこぞの馬鹿がせっかく作った作品をぶっ壊さなければ頑張らなくてもよかったのにねぇ」
「…………お前って結構やなやつだよな……」
そういうと重郎は絵の具の調合に戻ってしまった。重郎はみんなで頑張って完成していた作品を手で触れただけで見事に壊してくれた。
本人は故意的にやったわけではないだろう。しかし彼の周りでは日常茶飯事的に物が壊れていくのでなるべく物に触らせないようにしていたが
どうやら最後の最後でつめが甘かったらしい。そんなわけで作品をつくり直している。
「隼! 外みてないで手伝ってよ! 女子二人と先生にまかせっきりでいいと思ってんの!?」
思わず「あぁ」と答えたくなったがここはこらえて
「確かによくないかもな」
「なら手伝いなさいよ。反省は行動で示しなさいよ」
「はいはい。わかったよ。おれはなにすればいいんだ?」
「この紙に書いてあるとおりにそこにある木を切ってくれる?」
「了解。ってのこぎりはどこだ?」
「技術室よ。自分でとってきて」
「……わかった」
「隼君……。私もついていこうか?」
「いや。大丈夫だよ。早由利さん」
「そう……。」
早由利はうつむいて作業を黙々とこなし始めた。
「赤木先生、技術室の鍵貸してもらえますか?」
隼は早由利の隣で看板に絵を描いている男の先生に聞いた。
「それなら持っているのは明理だろ?」
「隼。はい」
明理は鍵の束を顔面に向かって投げてきた。当たる寸前でキャッチした。どうやら非常に怒ってらっしゃるみたいだ。触らぬ神がなんとやらってとこか……。
教室から廊下に出るとひんやりとした空気が流れた。灯りが点いていうがうす暗くなにか出そうな気がして体を震わした。
教室を出て右に曲がりまっすぐ行って階段を過ぎたところが技術室。自然とはや歩きになって廊下を歩く。隼が歩く音しかしない。
技術室のドアが見えてきた。駆け足になってきた。階段をすぎて技術室のドアに触れようとした瞬間、
「おい」
二階と三階の踊り場に男子が立っていた。見覚えのある長身で短髪の男。
「なんだ……。お前か……。脅かすなよ……」
一語一語ゆっくりと言った。まだ心臓がどきどきいっている。
「そんなことどうでもいい。天平知らないか?」
「お前が天平でないのなら知らないな」
「おれは龍平だ。10年以上の付き合いでまだわからないのか」
双子の兄、龍平は呆れ顔で言う。
「親すら見分けがつかないのに俺たちにつくはずないだろ? というかお前ら近藤先生の薬品の手伝いしていたんじゃないのか?」
「親父の薬品の片付けほどつまらないものはない。だから抜け出してきた」
「で、追いかけっこしているわけだ。それなら文化祭のほうも手伝ってくれよ」
「断る。面倒だ。それじゃあまたな」
「おいっ! 待ちやがれ!」
言うが早し、脱兎のごとく階段を駆け上っていってしまった。手伝いもしないで遊んでいるなんて。明理が聞いたら確実に怒るな。
隼はそんなことを考えながら技術室のドアの鍵を開けた。
隼はすぐに入り口近くにあったのこぎりをつかむとドアを閉めて鍵を掛けてちゃんと閉まっていることを確認したら、隼はダッシュで教室に戻った。
148創る名無しに見る名無し:2009/01/06(火) 23:11:55 ID:UKmNDaZe
教室ではなにも変わっていなかった。明理と早由利と赤木先生は看板に絵を描き、重郎は絵の具を混ぜている。
赤木先生が顔を上げて額の汗を手で拭うとこっちをみた。
「隼、やっと帰ってきたか。さっさと木を切ってくれ」
「わかりました」
「そういえば龍平と天平しらない?」
明理も顔を上げて訊いてきた。
「龍平はさっき階段のところであった。また追いかけっこしているみたいだ」
「ふうん。あとで殴っとかないと」
ご愁傷様。双子よ。
「あれ? じゃあまだ近藤さんは薬品の整理しているのか?」
「はい。龍平はそう言っていましたけど」
「なるほどね。そんなに量多かったのか……」
「らしいですね」
「ありゃ?」
突然間の抜けた声が聞こえて話が中断した。
「なんだよ。重郎」
「外。すげー雨」
言われたとおり外を見る。たしかに雨が降っている。なんで今まで気付かなかったのだろうというほど降っている。
「ふむ。これ以上強くなる前に帰ったほうがいいかもな。私は大丈夫だが近藤さんに言ったほうがいいな。
すまないが隼と重郎。近藤さんに雨降っていること言ってきてくれないか?」
「わかりました」
重郎がぶつぶつ文句をいいながら立ち上がりドアのほうに歩き始めた。
「ほらっ、いくぞ。隼」
隼も重郎のあとを追いかけた。
廊下は相変わらずひんやりしてうす暗かったが重郎がひっきりなしに話しかけてくるので怖くはなかった。
宇宙人の話とか幽霊を信じるかとかツチノコは絶対にいるとかそんな話ばっかでいちいち反応するのがめんどくさいので適当に相槌を打って聞き流していた。
「お前……。俺の話聞いてないだろ?」
重郎が話しを中断して聞いてきた。
「うん、聞いてない」
「……まあ、いいや。着いたし」
化学準備室と書かれた看板が付いている古びた木でできたドアの向こうから薬品を整理する音が……しない。
重郎がノックをしてドアを開けた。部屋の中は真っ暗で変なにおいが漂っている。
「先生――、どこですかー?」
重郎が呼んだが返事が来ない。しかしすぐに先生を見つけた。先生は奥に置いてある椅子に座り……寝ていた。いびきも掻いている。
「先生、起きてください。先生」
重郎が先生の体を揺り動かす。必要以上に強く。
「ん。んん? んー」
「先生、早く起きてください」
「ん。…………ん? おお、お前たちなにやってんだ?」
「今、雨降っているんですけどこれ以上強くなる前に帰ったほうがいいと思いますよ」
「おぉ、そうか。知らせに来てくれたのか。悪いな。そうだな。薬品の整理はあとでいいか。
僕の息子たちはどうせ逃げ出して追いかけっこしていると思うから君たちが帰るときに一緒に帰らしてくれ。
それじゃあ、善は急げだ。では、文化祭準備頑張ってくれ。あと重郎はもっと勉強しなさい。
この前の点数は一桁だったな。特に人間の構造のところがなっていない。まあ、次はがんばれ」
近藤先生は言い終わったと同時に化学準備室から消えた。やっぱり親子なんだなと改めて実感した。
「いつまでもここにいてもしかたないし、行くか」
「そうだな」
隼はそう答えると机の上に置きっぱなしになっていた鍵を取り部屋から出てドアに鍵を掛けて教室に戻った。
149創る名無しに見る名無し:2009/01/06(火) 23:12:57 ID:UKmNDaZe
教室では明理と早由利と赤木先生で談笑していた。
「お、おかえり。近藤さんはもう帰った?」
「はい。準備室でぐっすり寝ていたので起こしたら帰りました」
「そうか。こっちの作業はまだまだかかりそうだから今日は学校に泊まることになるな」
「えぇ! じゃあ、今日お風呂は入れないの!?」
明理が悲鳴に近い声で言った。
「一日ぐらい風呂に入らなかったって死なないから別にいいだろ?」
「先生はそうかもしれませんけど私は耐えられません!」
「しかしそうしないと終わらないんだし我慢しろよ」
珍しく重郎がまともなことを言った。
「おれっちだって風呂に入りたいのを我慢してこんなとこに残っているんだぞ」
とりあえず殴っといた。そもそも誰のせいだと思っているんだ。この馬鹿は。
「とりあえずすこし休憩をとろう。家に電話したい人は職員室から電話していいよ」
「じゃあ私電話してくるー。早由利。いこ」
「うん……。隼君たちもいきませんか?」
「そうだな。お袋が心配するだろうから電話しとくか。重郎いくぞ」
「おれっちいいや、めんどうだし。その辺散歩してるわ」
「逃げんなよ」
何かの爆発音が聞こえた。ぐらりっと地面がゆれる。
「地震かな。にしては一回ぐらりと来ただけだな。こんぐらいなら別に気にしなくていいな」
重郎が冷静に言う。そのままドアまで歩いていくとなにも言わず出て行った。
「俺たちもいくか。先生、それではすこしの間行ってきます」
「うん、気をつけてね」
隼たちも教室をあとにする。おしゃべりをしながら歩いていたらすぐに着いた。鍵を開けて部屋に入り電気をつける。
「さてと電話するか」
近くにあった電話機をとった。
「あれ……?」
いつもの受話器を取ったときになる音がしない……。一応番号を押してみるが反応しない。
「この電話機壊れてる――」
「こちらのも反応がありません……」
一応全ての電話機を調べるが反応なし。
「さっきの地震でおかしくなっちゃったのかな?」
「あの程度じゃおかしくならないよ。別の理由だな」
「故意的に切られた……?」
空気が重くなった。
「早由利さん……。縁起でもないこと言わないで下さいよ。もし百歩譲ってそうだとしても誰が何のためにやるんですか?」
「それはやった人に聞かないとわからない……」
「とりあえずここにいてもしょうがないから教室に戻ろう」
職員室からでたところで廊下に赤いペンキがついていることに気付いた。
「明理、こんなとこにペンキこぼすなよ」
「えっ? 私こんなところにペンキ持ってきてないよ」
「じゃあ重郎か。掃除が大変じゃないか」
「でも……赤いペンキって今回使ってないよ」
「へっ? じゃあこれはなんなんだ?」
ペンキは点々と廊下の奥に続いている。奥は電気が切れているのか暗くてよく見えない。
「ちょっとみてくる……」
隼は跡を追っていった。しかし結果はわかっていた。ここまで言われて気付かない奴のほうが少ないだろう。
電話線は故意的に切られた。それも助けを呼ばないためだろう。行き止まりまで着た。そこには予想通りの光景があった。
150創る名無しに見る名無し:2009/01/06(火) 23:14:14 ID:UKmNDaZe
近藤先生が死んでいた。
首、心臓、足首、手首、眼、頭、足の付け根の血管、アキレス腱、手の腱、その他主要血管、筋肉。
あらゆる人間の急所に解剖用のメスで斬られ、メスが刺さっている。隼はすぐに振り返ると明理たちのところへ戻った。
明理たちには何も言わずに教室に戻った。教室に戻るとそこにはだれもいなかった。
赤木先生もたばこを吸いに外にでたのだろう。明理が沈んだ声で訊いて来た。
「隼……。あの先になにがあった?」
隠してもしょうがないと思い真実を言った。
「近藤先生が死んでいた」
ばたりとものが倒れる音がした。
「早由利!」
明理がすぐに早由利を起こす。
「隼! 手伝って! とりあえず水飲み場まで運ぶわ!」
「あいよ。俺がおんぶするんだな」
隼がしゃがみ、明理が背中にゆっくりと早由利を乗せる。
一番近くの水飲み場まで急いだ。しかしそこには先客がいた。
赤木先生が死んでいた。口からは血が出ている。
「明理見るな!」
遅かった。すでにそれを見てしまった。呆然と立ち尽くしている。
「教室にもどろう」
教室に戻ってもやはりだれもいなかった。重郎は散歩から帰ってきてないということか。
「いったい……誰が……」
「…………帰ろう……。ここにいたら…………」
「そうだな。その前に早由利さんを起こそう」
「そうね……、早由利。起きて、早由利、早由利」
何回か揺り動かすと目を開けた。
「明理さん……、隼君……」
「ここから逃げるわよ。いいね!」
「はい…………」
「玄関に向かおう」
「赤木先生は……?」
隼と明理は俯いて黙った。
「……そ、それじゃあ……赤木先生も……」
「…………死んだ」
「そ、そんなこと…………」
早由利は突然立ち上がると走って教室からでた。一瞬驚いて立ち尽くしたが隼と明理は目を見合わせて頷くと急いであとを追いかけた。
「早由利……さ、ん。足、速すぎ……」
隼が走りながら途切れ途切れ言った。どんどん早由利との差がついていく。
「当たり前……よ。この村で……一番速いんだもん!」
その通りと言おうとしたが呼吸が乱れて言えなかった。名前に早いという字がつくだけある。そんな現実逃避をしていたら、玄関に既に着いていた。誰もいない。
「はやく靴を履き替えて!」
「わかってるって!」
急いで靴を履くと玄関から飛び出た。外はかなり暗い。しかも雨が大量に降っている。さっきよりも随分激しい。
しかしそこは通いなれた道だ。山道を一気に下っていく。が、すぐに前を走っていた明理は止まった。
「なにこれ…………」
目の前には本来だったら道のはずなのにそこには大きな山があった。
「土砂崩れ……?」
「くそっ! こんなタイミングで……!」
「早由利は……?」
「土砂に巻き込まれたのか……?」
「早由利、早由利、さゆり――――!」
「諦めろ……この土砂じゃ助からない」
「逃げなきゃ!」
「さすがにこの山は登れないな。この学校が谷みたいなとこにできてるから……。」
「逃げ場がない……!」
山に囲まれた学校。まるで山を無理矢理掘って作ったような場所。山というより絶壁に近い。
151創る名無しに見る名無し:2009/01/06(火) 23:15:22 ID:UKmNDaZe
どうすればいいんだ……!」
「学校にもどりましょう!」
「そうだな。それしかないか……。」
山道を登ろうとしたとき坂道をなにかが転がってきた。暗くてよく見えないがバスケットボールより小さいもの。足元まで来てそれが何だかわかった。
近藤先生の頭。赤木先生の頭。重郎の頭。早由利の頭。
「うわああああぁぁぁぁぁぁ!」
絶叫を上げる。木霊でその声が続く。
「来るな!」
足元にあった赤来先生と重郎の頭を蹴飛ばす。それらは驚くほど軽く遠くまで飛んでいった。が、すぐにまた転がってくる。
「うううぅぅ…………ひっく、ひっく」
隣で明理が泣いている。隼も涙が出てきた。
「いったい……なんのために……」
明理の嗚咽と雨の音しか聞こえない。
「一人殺せば殺人者。百人殺せば英雄」
坂の上から聞こえてきた。
「数十万人殺せば指導者で全滅させれば神となる」
坂の上から聞こえてきた。
「だれっ! 誰なの!」
明理が声を絞り出して言った。
そんなことすでにわかっている。
「あそこに残っていた人はお前たちを含めて八人いる」
「隼、明理、重郎、早由利、赤木先生、近藤先生」
「お前たちの場合は近藤先生より親父だろ? 龍平。天平」
「ふん、その通りだ」
暗がりから二人歩いてきた。しかしそれは鏡のごとく同じ人間だった。
「いつから気付いていたかな?」
右が訊く。
「近藤先生が殺された時点かな。近藤先生を殺せる時間があったのはお前らぐらいだからな」
「この犯罪なら重郎にも可能だろ?」
左が訊く。
「確かにそうだ。奴にも可能だ。しかし違うな。あいつならもっと違う殺しかただな。だいたいあの馬鹿じゃあ、近藤先生の殺し方はできない」
「なぜだ?」
右が訊く。
「簡単だ。あいつは頭が悪い。あんなに正確に刺したり斬ったりできない」
「なるほど」
左が納得する。
「おれからの質問もいいか?」
「冥土の土産に答えてやろう」
右が答える。
「なぜこんなことを? なぜみんなを殺したんだ?」
「英雄になりたかったんだ」
左が答える。
「それではあなたがたで六人になります」
右が微笑みながら言う。
「それではさようなら」
左が微笑みながら言う。
左右が同時にメスを構える。
「終わりか……」
隼は呟いた。隣をみると双子を鋭くにらむ明理がいた。
「簡単に死んでたまるもんですか!」
明理が怒鳴った。
152創る名無しに見る名無し:2009/01/06(火) 23:16:31 ID:UKmNDaZe
「諦め悪いねぇ」
右がメスを片手にお手上げするようなポーズをとった。
「助けがくる確立は0%だよ?」
左も同じようなポーズをとる。
「絶対ということはないのよ! 助けは来る!」
明理が怒鳴る。
「それじゃあ」
右が構える。
「その希望を胸に死ね」
左が構える。
そして同時に襲ってきた。
思わず目をつぶっていた。何かの爆発音が聞こえた。目を開けると双子は手を押さえていた。
持っているはずのメスは無くなっている。いったいなにがあったんだ?
「少年、少女よ。大丈夫か?」
上から人間が二人降ってきた。一人は真っ黒な恰好をしている。丁度暗がりに隠れられそうな恰好だ。
もう一人はスーツ姿をしている。一般的なスーツ。恐ろしく似合っている。
「ありがとうございます……。ちなみにあなたたち誰ですか?」
「名乗るほどの人間じゃない」
明里はさっきの調子で怒鳴る。
「あなたたちどっから来たんですか!? というか誰ですか!?」
「あぁ。少年、少女達よ」
「なんですか?」
「黙って眠れ」
双子と隼と明里はその場に崩れ落ちるように倒れた。
 気付くとそこは病院のベッドの上。上半身を起こすとお袋に抱きつかれた。そのあと全ての話を聞いた。
 あの日の明け方村に六人の人間と四つの頭が訪れた。四つの頭。すなわち重郎、早百合、赤木先生、近藤先生。
6人の人間。すなわち俺、明里、双子。そして謎の二人組。二人組は四人と四つを持ってきた後そのときの状況を話した。
その後風呂にゆっくりつかり十人分の飯を平らげ次の日の明け方に行ってしまった。あの事件から既に三日が過ぎていた。
 双子はすでに警察に捕まってしまった。明里も順調に回復しているが、一部分の記憶がない。
彼女にとってそれはきっといいことなんだろう。文化祭は当然潰れた。
そして事件は幕を閉じた。多くの傷跡を残して。

  了
153創る名無しに見る名無し:2009/01/07(水) 20:26:43 ID:Cu8QWRRi
頼むから視点を統一してくれ……。難解過ぎる。
154創る名無しに見る名無し:2009/01/07(水) 21:42:40 ID:L+oTU8/k
昔の俺に言ってくれ……
155創る名無しに見る名無し:2009/01/07(水) 23:45:41 ID:L+oTU8/k
需要皆無でもやっちゃうぞー

とある雨降る日の宿での話
その日はどしゃぶりの雨が降っていた。そんな雨が降りしきる街に一軒の宿があった。
それはコンクリートでできている大型ホテルとは違い、年季が入った木でできた木造の小さな宿。
その宿の食堂には大人数専用の大きな長方形テーブルがあった。そこには五人の男が座っていた。
食堂にある大きな柱時計は11時を知らせる鐘を鳴らした。
「さてと状況を考えてみよう」
家の中だということにもかまわずサングラスをつけている浴衣姿の男がそう言った。
男はフォークとナイフをうまくつかい肉を小さくして口に運んだ。幸せそうな顔をしている。
 こんなときでも食事できるのは彼ぐらいだろう。火野はそう思いつつも大きめのグラスにいっぱいのワインを飲み干して新しく注いだ。
「浴場で男性死体を見つけたのは夜の十時だよな? 主人さん」
 主人といわれた頭がほとんど禿げている男は俯きながら頷いた。
「最初にぼくと先輩が入ったのが五時でしたよ」
「その通りだ。浴場から出たときに丁度よく夕飯のアナウンスが入ったから出たのは六時だな。
夕食の時にはちゃんと全員いたよな。夕飯が終わったのが七時。で、被害者が風呂に入った。そのあと八時に使用人さんが入ったんだな」
「ええ、そうです」
金髪の青年が同意した。髪がどことなく乱れてるところをみると髪の拭き方が適当なんだろう。間が抜けているのだな。
そのときの状況は?」
「ぼくが入ったときは被害者さんはまだ露天風呂に浸かってゆっくりしていました。すこしお話をしたあとぼくが料理人さんと入れ違いで先に出ました」
「そのあと九時に料理人さんが風呂に入ったんだよな」
「おう、そうだ」
恰幅のいい赤い髪の中年の男は答えた。料理人は野菜を食べながらワインはすこし飲んだ。
火野も真似して野菜をすこし食べた後グラス一杯分のワインを全部飲み干してみた。
ふむ、なかなか野菜もおいしいな。地元産かな。ワインもおいしいから食が進む。
とりあえず先輩も飯を食べているので肉でも食べよう。すこし冷めてしまったステーキをナイフとフォークを使い食べた。
これもまたうまい。暖かいうちに食べたかったな。
「おれが風呂入ったときは被害者は中の風呂に入ってたぞ。もちろん生きてな。それで話もせずにおれが先出たんだ」
「なるほど。ちなみに風呂から出たのはいつだ?」
「すぐ出たからな。主人と入れ違いだから多分十時前にはでた」
「で、十時に入ったときには死んでた。ということは犯行時間は九時半から十時の間だ」
 その場を沈黙が覆う。雨の音も聞こえない。止んだわけではないのだろう。口火を切ったのはやっぱり先輩だった。
「とりあえずここで段落をつけるか。飯を食った後次を話そう」
「それって先輩が食べたいだけじゃないんですか?」
「そうだ。悪いか?」
「別になにも悪くないですよ」
 火野はグラスに注いどいたワインを一気に飲み干しまた新しく注いだ。
「にいちゃん、あんまり飲みすぎると体によくないぜ」
 料理人がワインを自分のグラスに注ぎながら言った。
「大丈夫ですよ。この程度では酔いません」
 火野は再び一気飲みすると小さくしといた肉を食べた。
「先輩いつまで食べているんですか?」
 火野は呆れ顔で言った。既に先輩に出された料理は片付いていて火野の分も食べ始めている。
「残すのもったいないだろ? 食べものを粗末にする人間はばちがあたるぞ」
「人の分まで勝手に食べるのはどうかと思いますけどね」
「足りないなら厨房から新しいの持ってくるか? 主人さんと使用人が食べなかった分あるのだが」
 料理人が席を立ちながら言った。
「じゃあ、頼もうかね。あとワインも五本ほど持ってきてくれ」
「あんたも食いすぎはよくないよ」
 そういうと料理人は食堂の奥にある厨房に入っていった。
「あのぅ」
 主人が震えた声で聞いてきた。
「お客さんたち、警察の人なんですか?」
156創る名無しに見る名無し:2009/01/07(水) 23:47:21 ID:L+oTU8/k
「なんでそう思うんだ?」
「私が警察を呼ぼうとしたら止めたし、アリバイ調査みたいのやってるじゃないですか?」
「確かに俺もこいつも警察の者だ。一応な」
「一応、ですか」
「それ以上聞くな」
 主人はどこか納得してないような表情を浮かべて黙った。そのとき丁度料理人が台に料理を載せて持ってきた。
「一応全部持ってきたが食べ切れるのか?」
「このぐらい軽いものだ。じゃあ話を続けるぞ」
「料理食べてからじゃないんですか?」
「気が変わった」
「そうですか……」
 火野は新しく注いどいたワインを一気飲みをして、皿にあった最後の肉を口に放り込んだ。
「まず被害者についてだが、俺は専門家じゃないから死亡時刻はわからん。
ただ被害者の致命傷である心臓にある刺し傷と左手首が斬られている傷は時間差がある。
つまり心臓を刺された後時間が経ってから左手首を切られた。で、どちらとも新しい傷じゃない。
凶器は切れ味のいいものなんだがこの宿にはそういうものはあるか?」
 先輩が使用人に問いかけた。主人の声が聞き取りづらいからだろう。
「いえ、そういうものはないと思います」
「ふむ。ということは包丁かね。凶器は」
 使用人と主人の目線が先輩から料理人に移った。
「なんだ? 俺を疑ってるのか?」
「はやとちりするな。包丁っていうのはだれでも持ち出せるのか?」
「いや、持ち出せないように包丁をしまってある棚は鍵を掛けている」
「なるほどね。その鍵を開けられるのは誰なんだ?」
「俺だけだ」
 料理人がワインをちびちび飲みながら答えた。
「なるほど。その鍵は常に持っているんだよな?」
「ああ」
「これじゃあ疑いようがなく料理人さんが犯人ですね」
 火野はワインを一気飲みしながら口をはさんだ。
「俺が犯人じゃねぇ!」
 料理人がテーブルを叩く。だんっ、と音がしてワインのボトルが危うく倒れそうになったのを火野が止めた。
そのままボトルをあけて自分のグラスに注いだ。何杯目なんだろう、と朦朧としている頭で考えながら一気飲みした。
「落ち着け。まだ俺が犯人だと言ってないだろ。酔っ払いの世迷言などほっとけ。それじゃあ、夕食の後何してたか教えてくれるか?」
「夕食が終わったら皿の片付けをしていたんだ。使用人とな。で、皿洗いが終わった頃使用人が風呂に入りに行ったんだ。
そのあと九時まではあんたたちと一緒に食堂で話をしていたんだ。で、使用人と入れ違いで風呂に入ってそのあとはまた食堂にきて話をしていたんだ」
どこか怒っているような声で料理人は答えた。
「ふむ。じゃあ次主人」
「私は……夕食が終わった後自分の部屋へ行って二時間半ほど仕事をしたあと食堂に来てみなさんとお話して十時に風呂へ行って……」
 先輩が顔をしかめた。聞き取りづらかったのだろう。
「ふむ、では次」
「夕食がおわったあと厨房で料理人さんと後片付けをしてました。そのあとお風呂に入り出た後は食堂にきて皆さんと話をしてました」
 使用人さんが落ち着いた声で言った。火野はワインを一気飲みして新しく注いだ。さて、犯人は誰かね……。
先輩はもうわかっているのだろう。さっさといってしまえばいいのに。そういうふうにもったいぶっているからいつもいつも……。
「新入り。ワインを飲みまくるのはいいがぶつぶつうるさいぞ」
「はい。以後気をつけますー」
「酔っ払いの馬鹿はほっといて話を続ける」
 先輩を残っていた最後の肉を食べた。
「まず死体の状況だがさっき言ったとおり致命傷と左手切断の傷は時間差がある。最低でも一時間ぐらいはあるだろう。
そしてどちらもそこまで新しくない傷。これで料理人の証言がおかしくなる」
157創る名無しに見る名無し:2009/01/07(水) 23:49:13 ID:L+oTU8/k
「じゃあお前は俺が犯人だとでもいうのか!」
 料理人は声を荒げて言った。
「はやとちりするなと言ったろ。もしここで料理人が被害者を殺したとしたら主人が手首を斬ったことになる。
しかし傷は新しくはない。ということは料理人は殺したわけじゃないんだな。ここで重要なのは刺し傷と手首切断の切り傷の時間差だ。
斬る必要があるのならばすぐに斬ってしまえばいい。なのに時間差がある。一時間以上もな。
つまり斬った本人は気付かなかったのをあとから来て斬ったやつがいるということだ。ここから考えると犯人は複数。
こっからは簡単だな。小学生でもわかる。ほぼ全員はアリバイがある。ないのは風呂場。
そして主人が手首斬ったわけじゃないなら犯人はお前らだな。使用人と料理人」
 二人は先輩を黙って睨んでいる。
「睨んだって仕方ないだろ? 大体鍵をずっと料理人が持っているなら凶器を取り出せるのは料理人だけだろ?
犯行手段はまず被害者が風呂に入る。そのあと厨房で皿洗いをしていたお前たちは皿洗いが終わったら料理人から
包丁をもらった使用人は風呂に入ってた被害者を刺して殺す。そのときすこし取っ組み合いになったんだな。
で、とりあえず刺した。そのときに被害者の左手が証拠を掴んだのだろう。髪の毛でもつかんだのかね。
偶然ながらここにいる主人、使用人、料理人は三者三様に髪の色が違うんだよな。髪の毛を掴めば動かぬ証拠になる。
そのあとそれに気付かずに風呂から出て脱衣所に包丁を置いていったのだろう。
入れ替わりで来た料理人が包丁を自分の服にでも隠していたのだろう。
風呂場に行って死体を見て左手がなにか握ってることに気付いたのだろう。隠しといた包丁で左手を切断した」
 料理人も使用人も何も言わず先輩を睨んでいる。
「お前ら……」
 ここで声を出したのは意外にも主人だった。火野はワインを一気飲みして新しく注いだ。
「信頼していたのに……見損なったぞ!」
 主人が今までとは違うと違う口調で言った。
 火野は見逃さなかった。使用人が一瞬、不思議そうな顔をした。そのあとすぐに悲しそうな表情をした。
酔っ払いが見逃さなかったのだからきっと先輩も見てただろう。
「まだ続きがある」
 先輩は冷静に何もなかったのごとく言った。
「切断したあと手首と包丁をどうしたかだ。それは主人が取りに来たのだろう。つまり計画的犯行。
使用人が殺して料理人が後片付けをして主人が証拠を持ち帰る。あとは俺たちを殺せば終わりだったんじゃないか。
三人で強盗がやってきた、とでも言えばいいからな」
「何を言う! 私にはそんな時間が」
「ある」
 主人の荒い声に対して先輩は冷静に答えた。
「仕事の時間と称して手伝ったのだろう。ただそれだけだ」
 主人は一瞬黙った。そして突然笑い始めた。
 使用人と料理人が一斉に銃を構える。瞬間的に火野がグラスのワインを料理人にかける。
料理人が驚いて誰もいない空間に発砲する。と同時に料理人の手が燃え上がる。アルコールを利用した引火。
火野は我ながらうまいとにやりと笑った。先輩は相変わらず肉を切るナイフを銃口に投げ込むという離れ業で使用人の銃を使えなくした。
「雑魚どもが……」
先輩がポツリと呟くと使用人から銃を奪い取り殴って気絶させた。そのまま同じように料理人、主人も気絶させた。
「ずらかるぞ」
「りょーかい」
 先輩が笑いながら言い日野もつられて笑いながら答える
158創る名無しに見る名無し:2009/01/07(水) 23:50:21 ID:L+oTU8/k
雨が降りしきる中、男が二人傘を指して歩いている。
「先輩、このまま病院行くんですよね?」
 先輩といわれた男が答える。
「ああ、相棒の様子を見ないと。ところで新入り。本当に大丈夫か?」
 新入りといわれた男が答える。
「お酒ならあの程度大丈夫ですよ。多分」
 先輩がにやりと笑いながら答える。
「お前酒弱いだろ? そろそろやばいんだろ?」
 新入りも笑いながら答える。
「人の心配より自分の心配したほうがいいんじゃないですか? あんな推理、あなたの親愛なる相棒さんに聞かしたら失神しますよ?」
 先輩が大声で笑う。その笑い声は木霊となるが雨の音にかき消された。


続きあるけどまた明日
159創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 21:21:22 ID:L2tEH8c/
てことは、昔書いてた小説?をそのまま貼ってるのか
了解
160創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 22:47:17 ID:O8Q/r9oq
>>159
そういうことさ。まぁ高校の文芸部で書いてたやつだけどね。もう遠い昔の話さ

その後の話
あれからすこし時間が経った。相変わらず雨が降る中、男が二人病院の入り口の前で立ち止まっていた。
二人組みはどちらとも青い浴衣を着ている。片方は髪が黒くサングラスをかけている。
もう片方は茶髪で傘を持っていないほうの手にワインボトルを持っている。
「新入り。今何時だ?」
新入りと言われた茶髪の男が答える。
「ええっと、ぼくの頭がちゃんと働いていれば12時を回っています」
新入りは片手に持っていたボトルの中身を飲んだ。
「そうか。さすがに夜中の12時には病院も開いてないか」
そりゃそうだ、と突っ込む代わりに新入りはもう一口ワインを飲んだ。
「どうしますか? あの宿には戻りたくないですよ。先輩」
先輩と言われた男は頭をぽりぽり掻いた。
「荷物は持ってきてるし野宿でもするか……」
「この雨の中でですか? いやですよ。濡れますよ。寒いですよ」
「しかたないだろ。宿戻ったら間違いなく犯人扱いされるぞ」
「実際あの状況を作ったのは先輩じゃないですか」
「確かにそうだ。しかし正当防衛というやつだ。絶対そうだ」
「でも圧勝だったじゃないですか」
「相手は銃を発砲してきたぞ」
「その銃を使って男三人気絶させたじゃないですか」
「俺は撃ってない」
「当たり前です。だいたいあれが正当防衛になるとは思えません。余裕たっぷりで台詞決めながら倒したじゃないですか。
あれじゃあまるであっちが正当防衛しているみたいですよ」
先輩は黙った。新入りはワインを飲んだ。
「酒の飲みすぎだな。酔っ払いだな」
「酔っ払いって言わないでください」
「しかしここにいてもしかたないしお前の酔い覚ましついでに歩くぞ。今日はずっと起き続けだな。文句は却下だ」
「わかりました」
新入りは持っていたボトルに入っていたワインを一気に飲み病院の入り口に置いた。
雨は段々弱まってきた。もうじきやむだろう。やむころには自分の頭もすっきりしているだろう。新入りは酔った頭で考えた。夜中なので出歩く人もない。そのかわりネコがいっぱいいる。海が近くにあるからか、すこし塩のにおいがする。
「そういえば先輩。質問いいですか?」
新入りは片端からネコをなでまくっている先輩に問いかけた。
「許可する」
先輩は茶色と白色のしましまのネコをなでながらこちらを向いた。
「さっきの事件、本当にあの推理であっているのですか?」
「出鱈目だ」
ほう、つまりこの人は自分の口から出た出任せで人が殺されている殺人事件を解決したわけだ。
結局は相手も銃で抵抗してきたのだからあっているのだろうけどそれでいいのだろうか。見習えない先輩だ。
新入りはそこまで考えてため息をついた。
「それにしてもなんで一般人が銃なんて持っていたのだろう」
「答えは簡単明瞭」
先輩は肩に黒猫を乗せて頬ずりしながら言った。
「あいつらは一般人じゃないからな」
「なるほど。でも先輩。そこらにいるネコに頬ずりしたりなでたりしながらじゃまったく迫力ないのでやめてください」
「しょうがないな」
先輩は肩から黒猫を下ろした。黒猫は先輩の足に身体をこすり付けニャーと鳴きそのまま夜の闇に消えていった。
「気をつけてね、だってよ」
先輩は笑いながら言った。
161創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 22:48:43 ID:O8Q/r9oq
「ネコの言葉がわかるのですか。先輩は」
「もちろんだ」
「ずいぶんとスゴイ能力をお持ちで……。それで話の続きは?」
「すこし考えればわかるだろ? あの事件の被害者の傷を覚えているか?」
「つい一時間ぐらい前の話じゃないですか。心臓に一突きの刺し傷。それと手首切断の傷」
「そうだ。ここで重要なのは心臓への一突きだ。あれは素人にはできないんだよ。
静止してればできなくもないがさっき言ったとおり被害者は抵抗してきた。その上で心臓に正確に一突きなんていうのは無理だ」
「つまりどういうことですか?」
「あいつはプロだ。もみ合いのときに髪の毛抜かれて気付かなかった部分があるから熟練したプロではないがそこまで下手なプロではないな」
「なるほど。あの使用人の青年は殺し屋だったのですか」
「そこまで大げさなものではないがそんなとこだ。今度はあの手首の傷だ。あれも素人には無理だ」
「そうですか? 力があればできそうですけど」
「手首の辺りは骨があるから結構丈夫なんだ。それにいくら中華包丁でも力技でできる技じゃない。多分お前でも無理だ」
「つまりあの調理師も殺し屋ですか?」
「殺し屋というより人間解体専門じゃないかね。あんなにふとっちまったらナイフで殺すときに必要な俊敏がないからな」
「ということは主人もあっち系ですか? どうみても単なる小心者の男にしか見えませんでしたけど」
「あれは演技だろ。しかもご丁寧にカツラと整形までちゃんとしてたな」
「先輩知っているのですか? あの人を」
「もちろん。世界中にネットワークを広げている麻薬会社の社長さんだな。どっかの国だったかで賞金首にされていたような」
「それってすごいじゃないですか!? 早く戻って捕まえないと!」
新入りが反対側を向き走り出そうとすると先輩が腕を掴んで止めた。
「そうあわてるな。もう遅い」
「行って見ないとわからないじゃないですか! そんな大物をみすみす逃していいのですか!?」
「今頃気絶から覚めて俺たちを血眼で探しているだろう」
「それじゃあ早くここから逃げないと」
「おれの相棒がここの病院で入院中だろ? あいつが退院するまで待つしかない。だから俺の話でも聞いとけ。文句は許さん」
「わかりました」
「それでよし。話を戻す。そこで疑問がでる。なんでそんな悪名高いやつが宿の主人なんかやっているのか。
それはあいつが偽者の主人だからだ。本物は多分被害者だな。きっと隠れ家にしようかと考えたのだろう。
それで他の従業員も既に殺されていてその罪を俺たちになすりつけようとしたのだろう。
だが俺が口からのでたらめで推理しちまったから寝込みを襲おうと思っていた作戦を変更してあの場で殺そうとした。
しかしそれすら失敗したわけだ。あいつらもお怒りのことだろう。まあ、あくまで推理と予想だがな」
「それってやばくないですか?」
「ふむ、なにがだ?」
「隠れ家にするということは追いかけられる身で警察に見つかっていないということですよね?」
「もちろんだとも」
「それで僕たちが隠れ家発見したわけですよね?」
「まったくもってそのとおりだ」
「さらに僕たちが警察だって言っちゃいましたよね?」
「言ったな」
「それじゃあ目撃者っていうのは普通殺すものじゃないですか?」
「そのとおりだ」
「やられた上顔を見られて逃げられてさらにその人が警察とわかったら急いでその人の身元を探るのが普通じゃないですか?」
「そうだな。警察じゃなくてもそうするだろうけど」
「そしたら先輩の相棒さんが入院していることがばれちゃうじゃないですか? 警視庁にも一応報告しましたし」
先輩の動きが止まった。
「まずいじゃないか」
「なんでもっと早く気付かなかったのですか?」
先輩は大声で笑い始めた。
162創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 22:50:21 ID:O8Q/r9oq
「笑ってごまかさないでください」
「さて今何時かな?」
今までのことを無視して真面目な口調で訊いてきた。
「ほぼ一時です」
「ここからの始発のバスが何時だかわかるか?」
「四時に中心街行きへのバスがあったと思いますけど」
「それに乗る。相棒は強制退院だな。あと三時間以内に相棒を病院から連れ出してバスに乗って行く」
「そんなことして大丈夫なんですか?」
「多分大丈夫だ」
「わかりました」
「それじゃあ後ろを見ろ。ここから街が一望できる」
言われたとおり振り向くと本当に街が一望できた。どうやら話している間に丘の上に来ていたらしい。左のほうに海が見えた。
「病院はあそこだ」
先輩が指差した方向に米粒サイズの白い建物が見えた。病院かどうかまでは判別できない。
「あそこまで一直線に行く。あんまり騒ぎを起こしたくないから隠密行動でいくぞ」
「わかりました。それで相棒さんを運び出したらどうするのですか?」
「逃げ回る。相手は多分この町から歩きで出ようとしているだろうと予想するからバスを使って逃げるぞ」
「わかりました」
「それじゃあいくか」
「了解!」
二人は丘を駆け下りた。雨はもう降っていない。時計の針は一時を指した。
街はすごいことになっていた。あらゆるところに明らか一般人じゃなさそうな人間が歩いている。見つかったら一発でアウトだろう。
僕は先輩と遠回りしたり迂回したり近道をしたりしてうまくかわしていった。
「さて問題はここだな」
病院前まで来た。時計は二時半を指している。思ったより時間がかかった。
角から顔を出すと病院前には黒人が三人入り口を張っているのが見えて頭を引っ込めた。
「三人か。すこしきついかもな。麻酔銃なんてないだろ?」
「持ってませんよ。あるのは拳銃一丁だけです」
「ふむ。どうしたものか」
「何階に入院しているんでしたっけ?」
「確か一階だ」
「相棒さん携帯持っていませんよね?」
「持ってたかもな。電話してみるか」
先輩は懐から携帯を取り出し電話を掛けた。
「ふむ。出ないな」
先輩は携帯をしまうと代わりに拳銃を取り出した。
「強行突破だな。お前はあいつらが通信機器や拳銃を使おうとしたらそれを撃ってくれ。おれの銃貸すから貸してやるから」
先輩は僕に「改」と大きく持ち手に彫られた銃を渡した。
「えっと、どこがどういう風に改造されてるんですか?」
「音なし、手振れなし、錆びない、反動少なめ、連射可能などだ」
「とりあえず使い勝手がよさそうですね」
「当たり前だ。それじゃあいくぞ!」
先輩が角から黒人目指して走っていった。遅れて僕も飛び出す。距離は50メートルほど。
そのうちのひとりがポケットからトランシーバーらしいものを取り出した。引き金を引く。
見事命中してトランシーバーに当たり黒人がおしゃかになったそれを落とす。続いて他の二人の拳銃を構えたので発砲。どちらとも命中する。
そこに先輩が拳銃を撃たれて驚愕の表情を浮かべている黒人の腹にとび膝蹴りをいれる。さらに回転蹴りをくらわして他の黒人にあてる。
残りのトランシーバーを持っていた黒人が拳銃を取り出したので打ち抜く。命中。先輩の踵落としも頭に命中して倒れる。
最後に先輩に飛ばされた人の下敷きになっていたやつの頭に蹴りを入れる。
「ふう。終わりだな」
「ご苦労様です」
先輩は病院の入り口の扉の前まで来た。扉を開けると意外にも開いていた。
「誰か入ったみたいだな」
「急がないと!」
扉を開けて中に入り込む。中は真っ暗で非常に物が見にくい。先輩がペンライトをポケットから取り出し点ける。
「えっと、七号室はここだな」
表札には「ヨス・デ・イメギ」と書かれている。
突っ込むのはよしとくことにした。
163創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 22:50:49 ID:ErVEJVS6
会話の連続多いなw
164創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 22:52:03 ID:O8Q/r9oq
先輩が扉を開ける。中は暗かった。ぼくが扉を閉めて電気を点ける。
ベッドはひとつしかない。どうやら個室らしい。そのひとつしかないベッドの上には金髪の青年がいた。
先輩とベッドまで歩いていく。整った顔立ちをしている。寝相が悪く枕が床に落ちていて本来頭があるはずの場所に足がある。
「おい。おきろ」
先輩が顔を何回が叩く。青年がうっすらと目を開ける。
「ん……看護師さんじゃなくて火野君と艸神じゃないか」
「そうですよ。寝ぼけてないで起きてください」
「なんだい、君たち。こんな夜中に面会しなくてもいいじゃないか」
「お前は馬鹿か? どこのどいつがこんな夜中にお見舞いに来る?」
「君たちだよ。当たり前じゃないか。はっはっはっはっは」
「とどめをさすか。そうしよう」
「オーケー。オーケー。時に落ち着け。相棒よ」
「感動の再開はそのへんで終わりにしてください。逃げないといけないのですから。艸神先輩も病み上がりの人を攻撃しないでください」
火野はそう言いつつ艸神の拳銃を病み上がりの先輩のこめかみに当てる動作をやめさした。
「なんだい。面倒なことに巻き込まないで欲しいな」
「うるせー。さっさとずらかるぞ。病み上がり野郎もさっさと用意しろ」
「はいはい」
病み上がり先輩は適当に相槌を打ちつつベッドの横に置いてあった机の引き出しを開けた。
中には古びた小さな鞄があった。病み上がり先輩はそれを腰につけた。
「うし。準備完了だよ」
「新入り。今の時間は?」
「三時です」
「あと一時間か」
「さてとこれからあと一時間どうすればいいのか説明してくれ」
病み上がり先輩は自分が着ている白いゆったりとした服の袖に鞄を入れながら訊いてきた。その質問は艸神先輩が答えた。
「説明しよう。今、指名手配の麻薬会社を相手に鬼ごっこをしているんだ。ちなみに鬼はあちら側ね」
「火野君。説明よろしく」
艸神先輩の言葉を華麗にスルーして火野に訊いてきた。
「実はですね、かくかくじかじかなんですよ」
「ふむ、なるほど。つまりどっかの誰かさのおかげで犯罪会社の社長さんを怒らしたからバスで中心街までいこうとしているのだな?」
「そのとおりです。というわけで一度外に出ましょう」
先輩たちは自分なりの肯定の言葉を返して外に出た。外には相変わらず黒人が倒れていた。
「ところでひとつ質問してもいいかな?」
病院からバス停へ歩き始めてすこしたってから病み上がり先輩が切り出した
どうぞ」
火野が答える。
「タクシー使えばいいのではないか?」
「そういえばそんな便利なものがありましたね」
今頃ながら思い出す。
「そんなときに丁度よくタクシーが来るのはどういうわけだかわからんな」
艸神先輩が指差した方向の黄色いタクシーがこっちに向かって走ってきた。
「いかにもって感じですけどね」
火野は目を瞑って考え始めた。さて、どうしようかな。
「ほい、早く入れ。もう来てるぞ」
目を開けるとそこにはタクシーが止まっていて艸神先輩は助手席に座っていて病み上がり先輩も運転席の後ろの後部席に座っていた。
どうやら迷うことなくタクシーに乗るらしい。火野は思った。もうどうでもいいや。
火野は疑いの替わりに人生を捨てた。
「お客様、どちらまで?」
若い男の運転手が訊いて来た。
「駅まで頼む」
「あいよ」
タクシーが発進する。まだだれもいない街の中を走る。
異変はすぐに起きた。右に行くべき道を直進した。
「運転手さん、道違いますよ」
答えがわかっていたが火野は一応訊いた。
「これでいいんですよ、お客さん。このまま港に行ってあんたたちの身体をばらして南の海にすてるんですからあってるよ」
「ふむ」
艸神先輩がなにかに納得したように声を出した。
「君たちのタクシー会社はだめそうだな。運転手失格。車から落ちな」
165創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 22:54:36 ID:O8Q/r9oq
そういい終わるか終わらないかのうちに艸神先輩は運転手を無理な体勢から蹴りを入れた。
いつのまにか運転席の扉は開いていたらしくシートベルトを着用していたにもかかわらず運転手は車道に落ちた。
すかさず艸神先輩が運転席に入り扉を閉めて運転し始めた。車は大きくUターンして正しい道に戻った。
「さてと駅まで十分でいくぞ」
艸神先輩がそういうと加速し始めた。
「次は僕の出番ですね」
火野はそういうと後ろを見た。
車が八台追いかけている。火野は自分の銃を構えた。この銃には六発入っている。
艸神先輩のやつも一応は原型は同じやつだから六発入り。さっき四発使ったから残り二発。ぎりぎり丁度みたいだ。
窓を開けて顔を出す。それと同時に自分の銃で車のタイヤを撃つ。弾は手前にいた車とその横にいた車に当たった。あとは六台。
病み上がり先輩は銃を持っていないので一発でもはずしたら終わりだろう。
そんなことを考えながらまた三台消える。残り三台。そのうちの真ん中の一番豪華そうな車には例の社長さんが乗っていた。
あれは最後にとっておこうと思い自分の銃の最後の弾で右を撃つ。すぐに艸神先輩の銃と取り替えて左の車を撃つ。最後の一台。
火野はにやりと笑うと最後の弾を撃った。
かちっ
「艸神先輩、弾が五発しか入っていないんですけど」
「改造したからな」
どうやら先輩の銃は五発入りだったらしい。なんで五発なんだよ。なんで言ってくれないんだよ。
火野が自分の世界に旅立とうとしたとき横にいた病み上がり先輩が懐をあさり始めた。
「じゃーん」
病み上がり先輩がだしたのはさっきまで火野が飲んでいた酒瓶だった。
「病院前においてあったから拾ってきたんだ」
そういうと窓から顔を出し酒瓶を最後の車に投げた。見事にフロントガラスに当たりハンドル操作を誤った車は電柱に激突した。
これでよし」
病み上がり先輩はにっこり笑いながらこっちを見た。
「丁度よく駅についたぞ」
前を見ると目的地である駅まで来ていた。艸神先輩は華麗かつ危険なドリフト駐車で駅前のタクシー乗り場に止めた。
「艸神先輩。意味もなく危険行為はやめてください」
「別にいいだろ。人轢くわけじゃないし」
艸神先輩はそういうと近くで呆然としていた駅員に話しかけた。
「最初に出る電車は何時だ?」
「始発はあと三十分後となっております」
駅員は懐からカードを取り出して冷静に答えた。
「ふむ、質問が悪かったかな。警視庁の特別警官なのだが急いで電車に乗りたいのだが最初の電車は何時に出る?」
脅しだ。絶対脅しだ。火野はそう思ったがここで口に出すほど馬鹿ではない。隣の病み上がり先輩もあきれた表情をしている。
「そろそろ線路点検の車両が出ると思います。乗りますか?」
「ありがたい。乗らしてくれ」
あっけなく駅員は脅しに屈してしまった。
「それではホームで待っていてください。運賃はただで結構です」
「ご協力感謝します」
最後は病み上がり先輩がしめた。
ホームにはすでに電車が来ていた。
「悪いんですけど後ろの車両に乗ってくれますか?」
さっきの駅員が言った。後ろの車両は丁度トラックの後ろの荷物置きのような形をしていた。
屋根がついていたらしく中は濡れていなかった。日野たちは後ろに乗り腰を下ろした。笛を吹く音がホームに響き渡ると電車はゆっくり発車し始めた。
蝉の鳴く音が聞こえる。山から太陽が出てきた。
「今日も暑くなりそうですね」
火野が誰ともなしに呟く。
「そうだな」
艸神先輩は答えた。
太陽が街を包み始める中、電車が三人の男を乗せて走り始めた。


文章長すぎでちょっと改行するぐらいの手は加えてるよ
>>163
そんなもんなんですよ
166創る名無しに見る名無し:2009/01/09(金) 22:34:16 ID:t8T8GB/G
ヒャッハー今日も投下だぜー!
と思ったがやりすぎだと思うのでしばらく自粛
167創る名無しに見る名無し:2009/01/10(土) 18:49:34 ID:6vzLMvv+
そこはいっちゃおうぜ
どうせ暗黒史なんだから吐き出して楽になろうぜ
168VS朧:2009/01/13(火) 20:54:24 ID:ASevxvjG
>>110続き

「……ぐハッ!?」

咳き込み、泡を吐く。俺が怯んだ隙に、朧は距離を取った。

(ヒットアンドアウェイ? あの移動法は……)

俺には心当たりがあった。

――縮地――!
歩法と動作で相手の距離感を狂わせる技。朧が使っているのは、その発展型。
ゆったりとした拳法着は遅れて音を伝え、聴覚を惑わす。

「奇怪な朧の動き! これは一体ィッ!? 何気にハルト・リュウが怯むのは初めてだったりするかァ!?」

それは対峙者だけでなく傍観者までをも騙すのだ! これを見切るのは至難の業!

「どうしました? 動かないのなら、こちらから仕掛けますよ!」

迂闊に動けば縮地の餌食になるのは目に見えていた。
……となれば、俺が狙うのは一つ!

朧は再び縮地で俺の懐に飛び込んだ。

防御は捨てるッ! 喰らって動きを止め、カウンター!!
朧の突きが俺の鳩尾を貫く! 同時に俺の拳が朧を……!?

グォン!!!

……俺の拳は空を切った。朧は接近していなかった。縮地の応用で、そう見せ掛けていただけ……。

「そう来ると思っていました。素晴らしい反応速度です。飛び込んでいたら、やられていました」

(……チィッ! 打つ手無しか……!?)

技量が上の相手と、どう戦えば良いのか……?
169創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 20:58:26 ID:ASevxvjG
程好い深度になったので再開。

>>166
続けるなら、お構いなく。
170創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 18:05:26 ID:agFR2+Jv
お言葉に甘えてやっちゃうぜー
 男は死に掛けていた。地図はなく、食料も水も尽きている。昼なのか夜なのかすらわからない。
上を見上げても空は見えることなく、ただ木ばかりがある。そして暑い。しかも道がない。
 この暑苦しい森には草がほとんど生えていない。理由はわからない。草が生えていないせいか、地上を歩く動物もほとんどいない
。稀にやけにでかく黄色と黒の斑点模様の首長の生き物を見かける。あれはきっとこの地方に生息する生き物なのだろう。
捕まえて食おうかと思ったが一蹴されて終わった。おかげで右手がやけに痛む。
木の上に木の実はないか登ったがなんだかよくわからない凄まじくカラフルな鳥に突かれて、木から落ちた。
おかげで左手も痛い。思い切って鳥を食おうと思い、石を探して投げたが当たることはなかった。
 男は二週間前のことを思い出した。森に入るときのころ。案内人に
「この森を抜けた先に大きい町がある。真っ直ぐ歩けば三日で着くぞ!」
と言っていた。あれは嘘だったのだろうか。たったあれだけの説明に金貨5枚請求してきたときにおかしいとは思った。し
かし、相場を知らなかった俺はしつこい請求に耐え切れず払ってしまった。金貨一枚あれば一週間分の食料が買える。
ポケットの中にある金が忌々しく思えてきた。ポケットから金の入った袋を出す。この旅で使う全財産だ。家一個くらいは買えるだろう。
「こんなもの!」
男は天に向かって袋を投げた。今、金があってもなんの解決にもならない。袋は木を抜けて上がっていった。そして、二度と降って来なかった。
どうやら木に引っ掛かってしまったようだ。男は鞄を降ろし、地面に横になった。俺はここで死ぬのだろうか。上を見ても木しか見えない。
そこで、ふと思った。なんで空の明かりもなく、自分も灯りを持っていないのに周りが見渡せるのだろうか。光ってそうなものはない。
あるのは木と地面のみ。考えるがわからない。まあ、いいだろう。このことについて研究するのもいいだろう。
ならここで死ぬわけには行かない。男は手を庇いつつ立ち上がると歩き始めた。ひたすら真っ直ぐ歩けばなにかに着くかもしれない。
ここで待つよりかは幾分ましだろう。荷物を背負い、静けさが支配する森を歩き始めた。だが歩けど歩けどなにも辿り着かない。
 どのくらい歩いただろうが。
     風景は変わらない。
  そこにあるのは木とじめんだけ
         からだがおもくなってくる
 ふうけいがぼやける
  からだがおもい
           あしがじめんにつく
                 めはなにもうつさない
  みみはなにもきかない
         からだはなにもかんじない
    おれ しぬのか
171創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 18:09:33 ID:agFR2+Jv
ふと、目がさめる。おれの上には白い天井が見える。ここは俺の部屋か? 俺は生きている……?
 もしかしてこれが物書きがオチをつけることができず、最終手段として投入される、あらゆる終わりからつなぐことができるオチ。
夢オチというものなのだろうか。まさかそんな終わりなのだろうか。
おれの今までの冒険は実は夢? とりあえず生きている。それは素晴らしいことだ。全く死んでしまうとは何事だ。
まだ、身体が重いので首だけを回して辺りを見る。おれの部屋はもっと芸術的かつハゲシッく散らかっていた気がするが
この部屋はベッドの横に水の入ったビンが置いてある家具しか置いていない。そうか、きっと誰かが整理してくれたんだ。
誰だか知らないが感謝。今までの涙と汗と努力の冒険がなくなるのは惜しい気がするが仕方ないことだ。命には代えられない。
俺は上半身だけ起こし、ビンを手に取り、水を口に含んだ。……ウマすぎる! なんだこの水は。素晴らしい!
飲んだだけでまるで今まで全く水を飲んでいなかった体が一気に潤う感じだ!
なんか口で言うとわかりにくいが、とりあえず素晴らしいの一言に尽きる。もう一口水を飲む。
 そこで冷静になった。この水は普通の水だ。氷が入ってる分美味しく感じるだけだ。そもそも俺の部屋を片付けてくれる人なんていない。
大体俺の部屋の壁の色は白ではなく緑だ。
 カチャリと扉が開いた。ドアはベッドの反対側にあったらしい。ドアの色も白いので保護色になっていた。
ドアから出てきたのはオールバックのちょび髭を生やした、いかにもバーテンダーな人おやじさんだった。
というか何俺の部屋に入って来てるわけ? と頭のどこかが言っている。
「起きたようだな。お前が森の近くで倒れているところを偶然見つけてな。うちまで運んできたんだ」
 おやじさんがダンディな声で衝撃的なことを告げる。夢だけど夢ではなかったようだ。残念。
「腕は両方とも骨に異常はないそうだ。すぐに回復するだろう。ほかに怪我をしてる場所はないな。それとこれを食いな」
 おやじさんは手に持っていたお盆を家具の上に置いた。あまりにもおやじさんのインパクトが強く今まで持っていたことに気付かなかった。
お盆に載っていたのは「コメ」と呼ばれる小さいマメに似たものがいっぱい入っているスープだった。初めて見るものだが美味しかった……。
炊いて食べても美味しいらしい。今度食べてみたい。
 おやじさんが言うには俺は森の終わりに程近い場所で倒れていたそうだ。そこを偶然通りかかったおやじさんは俺を背負ってここまで運んできた。
ちなみにあの森で迷う人は結構いるらしい。たまに森の近くで人が死んでいることがあるそうだ。森についての話も聞いた。
あの森はよくある地元の人でも迷う場所らしい。そのことから自殺するときにあの森に入る人が多いそうだ。
ここからは非科学的だけど。おやじさんは一度話しを切り、俺の水を飲んでから話し始めた。
 自殺の人の念は森に宿り、通る人々を死へと誘う。死が死を呼び、昔は子どもの遊び場所でもあった森は立ち入り禁止になってしまった。
木々の葉の色も年々黒くなっていく。子どもは大人にばれないように森へ入って行き、行方不明になる。
森を焼いてしまおうという意見もあった。しかし、森は傷つくことなく、ただ無駄に人は死んでいく。そのことから森は放置されるようになった。
「なるほどね……。でもそこまで事が大きくなれば人も入ることがないし、被害はなくなったんだろう?」
 俺は話が聞き終わった後、そう言った。おやじさんは頭を振った。
「そういうわけでもない。森は年々拡大していっている」
「拡大? どういうことだ?」
 おやじさんは話を続けた。
 これだけのことが起きたらさすがの国も黙ってはいなかった。森を焼こうとしたり、伐ろうとしたりしたが一向に成功することはなかった。
そこで、国のトップは決断した。
「付近住民を避難させ、枯葉剤を投与する」
172創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 18:13:08 ID:agFR2+Jv
反対意見はもちろん出た。そんなことすれば人体への被害も出ることになるだろう。しかし、その意見は強行された。
住民を避難させ、空から何トン、何十トンという枯葉剤を落として、同時に森の計測、観察等を開始する予定だった。
だが、当日になって作戦は中止された。枯葉剤を積んだヘリが墜落した。しかも一機二機ではない。何十機も。
枯葉剤を積んだヘリというヘリが全て墜落した。ヘリは本来のコースから外れた政府の中心や、住宅地等に落ちた。
被害は計り知れない。さらにこの計画に関わった人々も残らず死んでいった。政府が下した決断はロープを張り、入れなくすることだけだった。
さすがにそれぐらいの行為は大丈夫だった。作業は急ピッチで進み、森はロープで囲まれた。だが、誰かが気付いてしまった。
ロープは森よりちょっと離れたとこにあったはず。作ったときは枝の影すら掛かってなかったはず。
それなのになんで、ローブが木に触れているんだ? と。移動させた形跡はない。木も人の背丈よりかも遥かに高い。
人々は考えるのをやめた。答えを出すのをやめた。
「なるほどね。面白い話だ」
「おかげで一週間に一回森がどのくらい成長しているか調べなきゃいけなくなったよ」
 おやじさんは笑いながら話す。
「ところで、あの森を通るとき森の中が薄く明るかったのだがそれはなんでだが知ってるか?」
「ああ、それは多分……霊魂ですよ」

 その後は今後のことについて話した。おやじさんはやはりバーテンダーだそうだ。
自営業らしいが多少赤字でも国からの「森調査委員」という役目で給料が入るのでやっていけるらしい。
「君はこれからどうするんだ?」
 おやじさんは尋ねてきた。
「旅を続けようと思う。怪我はそこまでひどくないし、大丈夫だろう。食料を買って行こうと思う」
 そういって懐を探った。お金の入った袋はどこかな。
……ない。なぜない。あっ。そういえばさっき投げたな。全財産。
「どうしたん? まるで全財産をなくして呆然としているみたいだぞ」
「全くもってその通りだ」
 俺は素直に告白する。
「その鞄にはないのか?」
 いつの間にかまくらの脇に置いてあった鞄を指差した。最初からあったのかもしれない。とりあえず鞄を床にひっくり返してみる。
中からは食器類、水筒、何着かの服、小さな布団、銀貨一枚。そして……
「これは……フルートか?」
「まあ、そんなとこだな。父親が作ったものだからなんともいえない」
 各地を回って演奏と語り部で金を稼ぐ親父が残してくれたたった一つのもの。それがこの笛だった。
だから俺は親父が回れなかったとこを回ろうと思い、同じ職に就いたのだ。
「ということは演奏もできるし物語も話せるんだよな?」
 おやじさんが訊いて来た。
「ああ、一応はできる」
「だったらウチで働いていきな。給料は出そう。金が貯まるまでこの部屋にいればいい。もちろんメシ付き。風呂もあり。服も支給してやろう」
「ありがたいがそれはさすがに悪いだろう」
「いや、もう決定だ。早速だが服のサイズを教えてくれ」
 俺は諦めて服のサイズを告げた。おやじさんは服を持ってくると行って、部屋から出ていった。
 おやじさんは服をすぐに持ってきた。俺は風呂で体を洗い、腹を満たす。おやじさんからあとどのくらいで自分の出番か訊いたら部屋に戻り笛の調整をした。
どうやらあと一時間後らしい。俺は笛の調整が終わると何を演奏しようか考えた。
 そして、出番。店の雰囲気に合わせて曲を演奏した。夜が深くなってくると酔っ払いが増えてきた。
その中でも常連らしい人三人組がひときわ騒いでいた。今は机をどかし、どこから持ってきたのか木の棒でチャンバラをし始めている。
他の客はいけーだの、そこだーだの野次を飛ばしている。おやじさんも野次を飛ばしている。いいのか、それで!
「必殺! 連続突きぃ!」
 サングラスをかけた黒髪の男がネーミングまんまの攻撃をする。仲間の一人だと思われるスーツが似合う茶髪の男が
「やめてくださいー」と言っているがきっと聴こえないだろう
「そんなもの食らうかぁ!」
 赤髪の男が叫びながら素早く身を引いてよける。そして近くにあった椅子から机に飛び乗り……
「ネーミングセンスがねぇ! 僕の素晴らしい一撃を受けな!」
 ジャンプした。高く高く飛び、天井すれすれのところから剣を振りかぶり、切りかかった。
173創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 18:14:03 ID:agFR2+Jv
「スカージ!」
 どこかで聞き覚えのある言葉だ。どこで聞いたのだろう。黒髪はそれを木の棒で防ぐ。が、棒が中ほどで折れる。
「なに!」
 赤髪の棒はそのまま振り落とされ、黒髪の首で寸止めされた。
 拍手が起こる。俺も祝福の曲を演奏する。勝ったほうの赤髪は酒を手に持つと、いつの間にか店の真ん中に移動していた机に乗って喋り始めた。
「みんな! 応援ありがとう! この勝利も僕の実力とみんなの応援と吟遊詩人様のおかげだ。それではみんな。勝利を胸に乾杯!」
 このときばっかりは俺も演奏をやめて一緒に乾杯した。コップに注がれていた酒を一気に飲む。ちなみに酒にはかなり弱い。コップ一杯で酔える。経済的な体だ。
「なぁ。吟遊詩人さん。なんかいい話ないのか?」
 勝負に負けてしまった黒髪の男がうなだれながら話しかけてきた。
「どんな話がいいですか?」
「そうだな……。今の気分的には破滅的な物語がいいな」
 彼は自虐的に笑いながら言った。こんな状態の人にそんな話ししていいのだろうか。だがこれも仕事だ。頭の中を探るいい話を探す。
 見つかった。笛を手に取る。
「今ではないいつかの話。ここではないどこかの話…………
174創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 18:16:48 ID:agFR2+Jv
『故郷のみんなへ
みなさん、元気ですか? お父さん。酒は控えてますか。お母さん、働きすぎないように気をつけてください。
妹へ。試験合格おめでとう。今度プレゼント送ります。弟へ。勉強しろ。
僕はとても元気です。今は工業が最も発展していると言われている島で博士の助手をやってます。
この島では一般市民の車も飛んでいます。ロボットが店番をしてます。そんな島で僕の博士が研究している物は……』
「助手君! 大変! 来て!」
 手紙を書いている僕の耳に博士の叫び声が聞こえる。緊急事態か!
「博士!」
 僕は筆をほっぽり出し、急いで博士のもとへ駆けつける。
 博士は隣の部屋にいた。ソファーに座って新聞紙を持って震えている。今日の新聞にそんな衝撃的なことが書いてあっただろうか。
見出しには『平和交渉決裂か!?』と書いてあったな。他国との溝は深まるばかりだ。戦争でも起きるのだろうか。
領土ごときでケチケチするなんて。博士は平和主義だからそこに驚いているのだろうか。むしろ怒っているのか?
「これ、見て!」
 博士は新聞の番組欄を指差す。指の先には特番らしき番組が書いてある。
「これがどうかしましたか?」
 僕は博士に尋ねる。特番自体は占いについての番組なので、特に興味はない。
「これのせいでアニメ潰れちゃったじゃない!」
 博士が怒鳴る。だからなんだ、と突っ込みたいが突っ込まない。突っ込んでも被害が拡大するだけだ。
そもそも次回予告で出るはずだろ。緊急特番ではないみたいだし。
「どうしてくれるのよ! 助手君」
「いや、僕に言われても……」
「まあ、いいわ。そんなことよりお腹減ったからご飯作ってね」
 自分で叫んどきながらそんなことって……。僕はなんのために走ったんですか? そういえば、前にもこんな風に呼ばれたな。
あの時は「塩ってどっちかな?」って言われたな。しかも小麦粉の小瓶と洗剤の箱を持っていた。
博士の実家では塩を箱に入れたのだろうか? というかそもそも料理をやらなかったのだろうか……。謎が深まる。
それよりかさ、根本的な問題さ。それ朝刊だ。今、午後7時過ぎ……。気にしてはいけないのだろうか……。
「早く作ってきてよ。私、風呂入ってくるから出たら丁度ぐらいにしといてね」
「わかりました……」
 博士はそのまま自慢の(無駄に)長い三つ編みの髪を一本振りながらスキップして僕が出てきた部屋に消えた。
 この研究所は小高い丘の上にあり、周りには草原ぐらいしかない。一番近い町でも車で二十分かかる。研究所は逆コの字をしている。
左上の部屋に応接間兼食卓。右上がキッチンや風呂などの水周り。
真ん中に実験室。左下に物置。右下に寝室などがある。一個一個の部屋はドアで仕切られているが音は結構漏れている。
なんで周りに土地がいっぱいあるのに研究所は五部屋しかないのか訊いたことあるが「金がなかったのよ。この世は金だからね」言っていた。
 とりあえず飯を作る。博士も僕も嫌いなものがないからなんでもいい。冷蔵庫の中身を確認して、野菜の炒め物にすることにした。
特に、問題もなく食事ができる。丁度博士も上がってきたことだしテレビをつけながらごはんにする。
「おいしいー」
 と博士はそう言いながらもりもりパクパク食べている。食欲は二人前にあるらしい。
「褒めてもなにもでませんよ。今日は実験進んだのですか?」
 僕は適当に受け流しながら訊いた。
「んー。微妙だねー。やり方は間違ってないと思うんだけどねー」
 博士はさして困ったような表情をせずに言った。
「この研究始めてからもう何日経ってるんですか?」
「研究所開いてから今日で三年と三ヶ月ぐらいだねー。助手君が着てからは二ヶ月かな。そもそも助手君。研究内容把握してる?」
 突然の質問にうろたえる。頭の中から記憶を引っ張り出す。えーっとっ……
「人工的にブラックホール及びホワイトホールを作り出し時間的影響を受けずにワームホール経由で移動する、でしたっけ?」
「質問に質問で答えない。今の回答は60点くらいかな」
 博士の厳しい指摘を受ける。
「そもそもブラックホールの説明すら怪しいね。助手君」
「ブラックホールは重力がとても強く光すら抜け出せないもの」
 とりあえず答える。だいたいこんな感じのはず。
175創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 18:20:09 ID:agFR2+Jv
「ダメね。5点ってとこ。そもそもブラックホールというのはさっき助手君が言ったとおり重力が強すぎて光が抜け出せない。
よってほとんど見えない、もしくは黒く見える領域のことを言うの。遠い昔は『凍った星』って言われていたね。
宇宙では結構あってねー、中々強い電波を発しているのよ。この電波はブラックホールに莫大な質量のものが落ち込むときに発生する。
そしてブラックホールに飲み込まれるとどうなるか。飲み込まれたものは永遠に中心の一点に向かって進むことになるわ。
そしてそこに物体は集まったら重力は無限大になり、空間、時空というものは破綻していく。そういうところを特異点と言うの。
特異点に吸い込まれると宇宙からあとかたもなく消え去るとも言われているし、ワームホールを伝ってホワイトホールから排出されるとも言われているわ。
そこまでは人間もわからなないの。ワームホールっていうのは(中略)だから時間が(中略)そこから(中略)虫食いりんご(中略)かゆ(中略)
ベイビー(中略)うま(中略)スーパー(中略)ナッパ(中略)内藤さんの(中略)生活が(中略)一般相対性理論(中略)ゴム膜(中略)便利な(中略)
という画期的な移動方法なのよ!」
「なるほどー。よくわかりました」
 途中適当に流しながら聞いたけどあまりの熱弁で気がつかなかっただろう。
「でもそれじゃあ一般凡人にはわかりませんよ?」
 とりあえず言ってみる。大体把握できればそれでいいと思う。
「つまり、ブラックホールの先にホワイトホールがあると仮定して、その二つの特性をもつ『ゲート』を作り、ワームホール経由で『ゲート』同士を
瞬間移動できるようにするの。名づけて『瞬間移動装置』ってとこね」
 なるほど、これで理解できた。ネーミングセンスはさておきいくつか質問をする。
「もしワームホールというものがなかったらどうするのですか?」
「作る! たとえ自然には存在しないとしても私が作る!」
 博士はガッツポーズをする。多分、博士なら可能なのだろう。
「博士一人でもできるのになぜ助手が必要なのですか?」
 素朴な質問をする。自分で作れるなら助手いらないじゃん。
「それはもちろん……」
 博士はにやりとして言った。
「私には生活に必要なあらゆるモノが欠けているからお世話してくれる人がいないと死んでしまうの」
 ということはさしずめ僕はお世話係ってとこか。ずいぶん人事みたいな言い草だ。その後は特に当たり障りのない話をした。
食事が終わると博士は
「食後の実験!」
 と言って、食器も片付けずに実験室へ消えていった。僕はテーブルの上をきれいに片付け、皿洗いをした。
 実験室に入ると博士はメモリを弄っていた。
 実験室にはよくわからない機器がいっぱいとどこからどう見てもドアの外枠のフレームが二つ、離されて置いてある。
片方は博士から数メートルのとこにある。普通のフレームよりかは横幅が厚くこれが『ゲート』になるそうだ。
「スイッチオン!」
 博士が『ゲート』を見ながら左手で機器を操作する。ドアのフレーム両方の内側に水色の膜が張る。その膜は段々黒くなっていく。
博士は膜に向かって手元にあった紙を丸めたもの投げる。紙は山なりに飛んで行き、『ゲート』の近くまでいくと吸い困られるようにフレームの中に入っていった。
もうひとつの『ゲート』に異変はない。
「んー、失敗かな」
 博士はぼやきながら機器を操作する。フレームに張っていた膜は徐々に薄くなっていき消えた。
「手伝いましょうか?」
 僕が博士に声をかける。博士は僕のほうを向く
「えーっとね。とりあえず中がどうなってるか見てみるからカメラとケーブルの用意お願いー」
「わかりました」
 僕は物置のほうへ行き、カメラとケーブルを探す。カメラは箱詰めにされて山積みにされている。
『ゲート』の中を捜査することはよくあるのでまとめて購入したものだ。ケーブルも同じく山積みにされている。
ちなみにこのケーブルは飲み込まれても大丈夫なように相当長いものを買っている。
それでも毎回捜査するたびにケーブルとカメラは飲み込まれて帰って来ないのでなかなか費用が掛かる。ちなみに費用は国が負担している。
物置から持ってきたカメラとケーブルをミニモニターにセットする。カメラのスイッチオン。ミニモニターにカメラの映像が映る。
更にカメラで写した映像が保存できるようにモニター側に録画用の機器をセットする。この作業はここに来てから何回もやった作業だ。
「準備できましたよ」
「ありがとー。助手君、操作お願いー。カメラ投げ入れるのもよろしくー。私はモニターの前で待ってるから」
176創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 18:22:08 ID:agFR2+Jv
 僕は頷くとカメラを持って機器の近くまで行く。機器には多く『電波発生装置』と書いてあり、下にはメーターやらなんやらがついている。
「それじゃあ、助手君。まず、赤メーターの出力を八十。青を七十五。白、九十五。黒九十にして」
 言われたとおりに色の着いたメモリを動かす。出力最大は百らしい。それ以降はレッドゾーンと書いてある。
「完了です。スイッチを入れます」
 僕は黒いボタンを押す。さっきと同じように『ゲート』に黒い膜が発生する。
「じゃあ、カメラ投入したらこっち来てモニターみるよー」
「了解」
 僕はカメラを持って『ゲート』から三歩のとこまで近づく。近づいてくと身体が『ゲート』に吸い込まれるような感覚がする。
『ゲート』の向こうには真っ黒な世界がある。まるで口を開けて待っている怪物のようだ
「投入します」
 僕はカメラを投げる。カメラは吸い込まれて黒い世界へ消えていく。駆け足で博士のとこまで戻る
 画面は特に変わりなく黒い世界を移している。横にあるケーブルが向こうから引っ張られているように徐々に『ゲート』に吸い込まれている。ケーブルはカメラが投げられた場所から吸い込まれていく。
「なんの変化もないねー。つまんない」
 博士が隣で文句を言っている。確かに黒い画面だとモニターが点いているのかどうかわからない。
「これ、なんですか?」
 僕は画面を指す。なにか白い点が徐々にカメラに接近している。いや、カメラが接近しているのか? わからない。
博士は隣でじっと画面を見ている。まさか出口か? 点はどんどん大きくなっていく。そして、カメラの近くまできた。
「これ、さっき投げた紙だねー」
 博士は残念そうにいった。紙はカメラに当たると画面から消えていった。その後はまた黒い世界が広がる。
「今回も特に収穫なしかなー」
 と博士が呟いた瞬間、横においてあったケーブルがひゅんひゅん音を流しながら凄まじい速さで『ゲート』に吸い込まれていく。
と、同時に画面にまた白い点が写る。点は急接近してくる。
「助手君! ケーブルを!」
 博士が指示をだす。僕は手が擦り切れないように近くにあった手袋を急いではめてケーブルを抑え、綱引き状態になる。
しかし、徐々に吸い込まれていく。
「博士! ケーブルをモニターからとって!」
 カチと音がする。
「離して!」
 ケーブルから手を離す。ケーブルは僕の横をひゅんと音を立てて通ると『ゲート』に吸い込まれていった。博士は無言で機器まで近づき、スイッチをオフにした。
「モニターの白い点はなんでした?」
 僕が博士に訊いた。博士はゆっくりこちらに歩いてきて、僕の目の前で止まった。そして、にっこりと嬉しそうに笑いながら抱きついてきた。
「ちょっと、博士。なんですか」
「助手君! ついにやったよ!」
 博士が僕から離れて、眼鏡を上げる。
「やったよ! 諸主君!」
「なにをですか?」
 僕は困惑しながら訊く。なにか相当嬉しかったのだろう。まだ満面の笑みを浮かべている。
「あの白い点の正体は出口だ! 壁が写ったのよ!」
「おお! やったじゃないですか!」
 成功まで行かなくても大きな進歩だ。
「今までで一番の進歩!」
 博士は嬉しそうに飛び跳ねている。まるで子どものようだ。それだけ嬉しいのだろう。
「今日は祝杯よ! 助手君、用意しなさい!」
「はいはい」
 僕は笑いながら手袋を外し、扉を開けてキッチンへ向かう。冷蔵庫には酒があるはずだ。おつまみは野菜のまるかじりでいいだろう。
僕が酒とおつまみを持ってくときには博士はコップを用意して待っていた。僕はコップになみなみと酒を注ぐ。
「今夜は飲むわよ!」
 乾杯をする。二人だけの宴会が始まった。
翌日、僕は町まで買い物に出掛けた。食料と酒の酔いに効くクスリを買いに。博士はまだ研究所でベッドで死んでいる。
昨日、ワインをラッパ飲みするなどの暴挙にでたからには当然の代価だろう。ちゃんと自分が飲める量を把握して飲まないと酒に飲まれるのはわかっていることだ。
と言うことで僕が飲んだ量は瓶一本も飲んでいない。
177創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 18:24:15 ID:agFR2+Jv
 買い物が済み、実験所に戻ったがまだ死んでいた。とりあえずクスリを渡す。
博士から指示がないとなにもできないので家の掃除をする頃にした。博士が復活したのは僕がお昼を食べているときだった。
「助手君……。頭が猛烈に痛い……。クスリと水を……」
 今にも死にそうな声でそう言った。クスリを飲むと顔色も幾分よくなった。
「助かったよぉ。さすがに飲み過ぎたかな」
「僕は人間の酒飲みの限界を見させて貰いました」
「そんなこと言わなくてもいいでしょ」
 と博士は言うとぼくの昼飯のおかずを平らげた。一瞬だった。
「僕の昼飯なんですけどそれ」
「細かいこと気にしてたらいい男になれないよ。助手君。ということでお昼ご飯よろしく。それとも私が作ろうか?」
「やめてください。僕が作ります」
 博士に料理を作らせたら「やっちゃいました!」とか言いながらなにかよくわからないモノを作るに違いない。それは止めなければいけない。
「それで博士。今日はどうするんですか?」
 僕は新しく作った昼飯を食べながら訊いた。
「そうだねぇ。昨日と同じ状況を作ることからかなぁ」
 片手にスプーン。片手にフォークを持ち、食事をしている。かなり器用だとは思うが口は一つしかないのでどっちかの手は順番待ちをしている。
「ということは昨日と同じ数値で設定してまたカメラ放り投げるのですか?」
「そだねー。で、昨日と同じものが映ったらそこからは私が機器の内部をちょいちょいと弄るの」
「ということは後半は僕、必要なしですか?」
「そんなことないよ。助手君にも機器弄って貰うから」
 博士はフォークで僕を指す。
「でも僕そんなスキルありませんよ?」
「大丈夫。簡単な作業だから」
「でも機器弄ってどうするんですか?」
「そもそもあの機器は穴と穴を繋ぐためにあるの。でもね、どうもあの状態の機器だと穴と穴を完璧に接合することはできないの。
だからあの機器の内部に更に機器を仕込んで重力の密集率を(中略)なので(中略)つまり(中略)双子のパラドックス(中略)
ダークマター(中略)メモリーの(中略)完全安定(中略)と言う訳なのよ」
「博士。もっと一般的にお願いします」
 もっとも聞いてなかったけど。
「んーと。つまり機器と機器を組み合わせることにより更なる力を引き出すの」
 なるほど。一個、一個は小さいけど合体すると強化されるということか。
「むふふー。これで私の長年の夢が叶うねー」
 博士は夢見る表情で言う。本当に嬉しそうだ。
「そういえば博士はなんでこの研究を?」
「むー。前に言わなかったっけ? まあいいや。この研究が成功したらさ、世界がもっと近くなるでしょ?
今までは簡単に行けなかったところにこの『ゲート』があればすぐ行ける。これを作れば世界の人々みんなに役に立つと思うの。だからね……」
「結構いい人なんですね」
「当たり前だよ。私はハトを愛する平和主義だからね。それに……」
 博士の表情が暗くなる。
「どこにでも移動出来るようになったら戦争もきっとなくなると思うの。理由はなんとなくだけど。
ヒトは愚かだけど考えることも出来るからこれができればきっと大丈夫だと思うの」
 よくわからないが本心はそれなのだろう。博士は世界が平和で有って欲しいからこれを作るのか。
「それじゃあ、頑張らないといけませんね。博士」
「うん。そうだね! その為にもまずは腹一杯ごはんを食べなきゃ!」
 博士は今までの遅れを取り戻すかのように食べ始めた。このままでは僕の飯もなくなりそうなので僕も食べることにした。
 食事が終わり、片付けをした後実験は再開された。昨日と同じ数値に合わせてカメラを投げる。穴を確認する。
「それじゃあちょっと弄るから手伝ってね」
 というと機器の内部に入って弄り始めた。どうやら僕は道具を渡す係らしい。途中で大人の頭ぐらいあると思われる機器を中に入れる。
というか入るのだろうか。改造は一時間ほどで終わった。
「さっきの数値でもう一回やってみてー」
 博士が機械の中から言う。僕は言われたとおりに作業する。『ゲート』が開く。だが今回は様子が違う。
真っ暗な世界の真ん中当たりに握り拳一個ほどの白い点が見える。
178創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 18:25:03 ID:agFR2+Jv
「なんか見えるー?」
「握り拳一個分ぐらいの大きさの白い点が見えます」
博士の質問に答える。
「ちょっと弄ってくから近くまで来たら言ってー」
 そういうと白い点が段々と迫ってきた。それと同時に白い点の中側も見えてきた。それはまさしくこの実験室の壁だった。壁が段々と迫ってくる。
「ストップ」
 枠の縁に黒いのがすこし見えるくらいで止めた。博士が機器の中から出てくる。
「うん。いい感じ。そこの紙取って向かい側に言ってみて」
 むもう一つの『ゲート』のほうに行く。向かい側には博士がいた。
「繋がってるみたいね。それじゃあ、紙投げるよ」
 博士はそういうとくしゃくしゃにした紙を投げてきた。紙は放物線を描いて僕の手元に来た。
「紙に異常ない?」
「ないです」
 紙は白紙で汚れの一つも付いていない。
「じゃあ次はこれ!」
 そういうと時計を投げてきた。特に異常はない。そのあともいろいろなモノを『ゲート』に通したが異常は見当たらなかった。
「大丈夫そうですね」
 僕は投げられてきたリンゴを囓りながら言った。
「まだ、大切なものを試してないよ」
「まだあるんですか?」
 研究所にある、大体のモノはやったはずだがまだあるのだろうか。
「ヒトを試してないの」
「ヒト……ですか」
「うん……。だから助手君入ってきて」
「僕ですか!」
「うん。そのための助手君だもん。ほら、文句言わずさっさと入る!」
「わかりました……」
 僕は『ゲート』の前まで移動する。たしかに研究所の壁が映っているが端を見ると黒いものがもにゃもにゃとしている。なんかすごく入りたくない。
「はら、さっさと行きなさい!」
 後ろから押される。まだ心の準備が! 思わず目を閉じる。一瞬浮いたような気がしたがすぐに床に激突した。
「助手君、大丈夫?」
「鼻が痛いです」
「気分は?」
「特に気持ち悪くはないです」
「なら、大丈夫だね」
 鼻が痛いのは想定の範囲内なのだろうか? なかなか痛いが鼻血が出る様子はないのですこし安心した。
「よし、一応完成だね!」
 博士が昨日と同じように喜ぶ。が、すぐに普通の顔に戻る。
「あとは、複数の『ゲート』に対応できるようにしないと」
「ということはまだまだ終わりそうにないですね」
 僕は落胆した。まだまだ作業は続くのか……。
「そうでもないよ?」
「そうなんですか?」
 僕は聞き返す。
「まずねー、『ゲート』ごとにナンバーかなんか付けて、その番号に対応するように作ればいいんだもん。
大雑把に説明するとこんな感じ。細かい説明しても聞かないだろうし」
 聞いてないことばれてるし。まあいいか。
「その作業は簡単なんですか?」
「簡単、簡単。『ゲート』を作ればちょちょいと作れるよ。ということで『ゲート』の素材持ってきてー」
 その日はその後いくつかの『ゲート』を作り、僕はそこを行ったり来たりした。
179創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 18:26:54 ID:0KLMS+75
支援
ドキドキしてきた
180創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 18:27:24 ID:agFR2+Jv
 次の日、国に完成を報告した。国の技術者たちが大量にきて研究所はてんやわんやだった。
その時、博士は『瞬間移動装置』についての全ての権利を条件付で国に売り、本人曰く「これで一生遊べる!」という金を手に入れた。
僕も報酬として一生分は安泰だと思われる金額を貰った。
条件の内容は『ゲート』は全て博士が作る。最終的なチェックも博士がやる。そして、これを平和的な理由でしか使わない。
それらを守るならばこれの権利を売るとのことだった。国は二つ返事で返し、更に博士を『瞬間移動装置』専門の部署での部長にしようとしたが
博士は僕に副部長の座を押し付けて辞退した。当然ながら僕の意見は通ってない。
一方『ゲート』の実験は順調に進んでいた。『ゲート』の有効距離を測るものだ。隣町から隣町へ。島の端から端へ。
さらに海を越えて向かい側の大陸へとどんどん距離は離れていった。最後にはどんなところでも『ゲート』があれば移動可能が証明された。
『ゲート』を作ること自体は基となるフレームと機器と電気があれば十分だった。国はさらに手を加え、衛星回線を通じて『ゲート』を制御するプログラムを作った。
もちろん最終チェックの確認は博士が行った。
やがて時が過ぎ、ついに『瞬間移動装置』の正式運行が始まる前日まで来た。僕は元・研究所。
現・『国営運輸庁瞬間移動装置運行部』の部屋で博士に最終チェックを手伝わされていた。
名前が変わっただけで実際は使われそうにない壁いっぱいのモニターが作られたぐらいだった。ほかに人はいない
「ついに明日からだねー」
 博士はモニターを見ながら言った。
「そうですね。長かったですね」
「君は大してなにもやってないでしょ? 副部長さん」
「博士のせいでこんな役職に就いちゃったんですよ」
 博士は僕に向かってにやりと笑った。
「ハッカー対策は済んでるの?」
 博士は質問を変えてきた。
「いえ。それはまだですけど。こんなとこにハッキングする人なんているんですか?」
「いると思うよ。これにハッキング成功したら世界中の『ゲート』操れるんだもん。ちょっと出力弄ったら……」
 博士は言葉を一度切った。
「どうなるんですか?」
「多分、世界中のあちこちで小規模な爆発。もしくは小さなブラックホールができるかもね。まあ、『ゲート』があるぶんこの程度で済んでくれるけど」
「それは確かに危ないですね。では対策準備を……」
「そう言うだろうと思ったからはい、餞別」
 博士は一枚のディスクを差し出した。
「これはなんですか?」
「それ、インストールするだけで防衛ライン百個はできるね! 仕組みは教えても聞かないから教えない」
「はぁ。ありがおうございます」
 残念ながらどのくらい凄いのかわからないがとりあえず御礼を言う。
「さてと最終チェック終了。私の仕事はおしまい!」
 博士はそう言って椅子から腰を上げた。
「お疲れ様でした」
 博士はそのまま部屋から出て行った。
 僕は博士が残していったディスクを機器に入れようとした。が、ディスクに折りたたまれた紙かがついていることに気付いた。
こんなことしたらディスクに傷が付くような気がするがいいのだろうかと疑問に思いつつも紙を剥がし読んだ。手紙と言うのはあまりにも短い文だった。
『どうせ『瞬間移動装置』に名前付けてないんでしょ? なら製作者権限であの装置に『スカージ』と名を付けます。以上』
 スカージ? どこの言葉だろうか。聞き覚えはない。名前は決まってないからこれでもいいだろう。僕はディスクを機器に入れた。
明日は世界が変わる日になるだろう。そしてその日が博士と普通に話せた最後の日だった。
181創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 18:39:13 ID:0KLMS+75
さるかな?
支援遅くなってすまん
182創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 19:04:02 ID:agFR2+Jv
解除されたかな?

…………と言う話でした。」
 やっとのことで話し終えた。喉が痛いので酒を飲む。
「それで終わりなのか?」
 黒髪は何か文句の言いたげな顔をしている。話すことに夢中になっていたがどうやら酒場の人みんなが聞いていたようだ。
みんなが文句の言いたそうな顔をしている。酒場なのに不気味なくらい静か。
「そんな尻切れトンボみたいな終わりなのか?」
 黒髪は言う。あいにくトンボなる物は知らないがうまり中途半端なのかということだろう。
「一応ここまでなんですけど。続き聞きたいですか?」
 酒場のみんなが頷く。髭を生やした親父たちがまるでおばあちゃんに話の続きをせがむような仕草をしても不気味以外なにものでもない。
「ここまでがいいと思うんですが……。では続きを。運行が開始されていくらかの時が過ぎたころです…………
183創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 19:06:38 ID:agFR2+Jv
次から投下するときはどっかのあぷろだ使ったほうがいいね

 『スカージ』の状態は良好で毎日何十万ともしれない人々が利用した。
博士は最後に『ゲート』を大量に作っていったがそれでは足りないのではないかと言われた。
だが、実際作れるのは博士本人なので残りを利用するしか手立てはなかった。
 博士が予想した通りハッキングは毎日された。博士が残した防衛ラインプログラムには今ハッカーがどこまで防衛ラインを突破したかわかる機能が付いていた。
事故も問題も発生しないので大して仕事のない部署の職員は毎日ハッキングされているかモニターを見るかハッキング元を探すかサボるかの三択だった。
だが博士の防衛ラインはあまりにも厳しくて第五防衛ライン行くことすら珍しかった。
それを利用してランキングをつけたり賭け事をしたりした。そして、部長に怒られて責任は僕だった。なにもやってないのに。
 そんなある日。いつもの通りみんながだらけていると
「ハッキングされています〜」
 とだらけた声が部屋に響いた。職員はどれどれとハッキングされてる様子が映るモニターを眺めた。
僕はいつものことなので書類を書いていた。するとモニター方面から歓声が上がった。
「なんだ、なんだ。なにがどうしたんだ」
 僕はモニターのほうへ近づく。
「この人すごいです! 今までのランキング一位だった第七防衛ラインを突破しました!」
「ほう。ハッキング元割り出しといてね」
 僕は元の席に戻る。と、同時にあぁ〜、と声がする。どうやら引っ掛かってしまったようだ。ランキングの記録が少し伸びた程度だろう。
いつものことだ。その日もいつもどおりのだらけた一日かと思っていた。仕事がひと段落したので新聞を読むことにした。
最近の新聞は外交や戦争のことばっかで特に面白い記事はない。この国も領土を理由に宣戦布告されたばっかだった。
残念ながらこのまま行けば確実に戦争になるだろう。この部署には関係ないことだ。
宣戦布告の見出しの下のほうにはこの国の防衛庁長官の写真とコメントが記載されていた。
そこには角刈りで髭を蓄えた非常に見た目が怖い男が写っていた。目つきも鋭いし本当に政府の人なのだろうかと疑いたくなる。
コメントには戦争も辞さないとおっかないことが書いてあった。博士が聞いたら憤怒するだろう。
 ぴんぽーん
「来客がきたようだ。出てくれ」
 部長が僕に言う。他の職員を見てもだれけていて誰もいきそうにないので仕方なく僕がいった。
 玄関には黒いサングラスを掛けた角刈りで髭の蓄えた男がいた。どっからどうみても悪人。というかなんかデジャブだ……。
「部長さんに会えますかな?」
 滅茶苦茶低い声で聞いてきた。てか怖いんですけど。マジで。
「あのどなたですか? アポイントがないかたは会えないんですけど」
 なんとか声を絞り出す。震えてはいないはず。
「防衛庁長官だが」
 サングラスを外す。さっき写真で見た人だった。
「それで何の用でしょうか?」
 部長は言った。僕は部長の隣にいた。大変嬉しいことに応接間は全く汚れていなかった。
だがこれで「ちょっと視察に」などでもいったら非常にまずいことになる。正直冷や汗がたれる。相手はなぜかお供を付けていない。
本物なのだろうかと疑ったが残念ながら本物のようだ。長官は部長を見る。
「新聞見ました?」
 相変わらず低い声で訊く。
「宣戦布告のことですか」
「その通りです」
「『スカージ』は戦争に使用することは禁止されています」
「もちろんそんなことは知っている。しかし状況は変わった」
「どう変わったというんですか」
 思わず口を挟んでしまった。長官がこちらを見る。
「あなたは製作者の助手ですね」
「はい」
「確かに製作者はこれを平和的理由でしか使用を許可しなかった。だが今、その平和が脅かされています。その平和を守るために使うのも平和的利用と言うだろう」
「それは違います。あなたたちは平和を取り返すために戦争をする。戦争をしたらそれは平和的理由ではないです」
「何かを得るには何かを犠牲にしなければならない。我が国の平和を貫くにも多少の犠牲が必要だ」
「じゃあ、あなたは平和のために国民の犠牲が必要だと言うのですか」
「必要ならば」
 長官は冷たく言い放った。
184創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 19:08:38 ID:agFR2+Jv
「それを犠牲なしで済ますのがあなたたちの役目ではないんですか?」
「どんなに努力しても犠牲が付いてしまうときもある。それぞれの平和、正義を得るには仕方ないことだ」
「……あなたにとって正義ってなんですか? 世界の人々が平和に暮らすことではないんですか?」
「私にとっては正義とは絶対的な力だ」
「あなたたちは平和や正義の名の下に戦争をしたいだけなんじゃないんですか」
 長官は黙った。こちらをじっと見ている。隣で部長があわあわしているが気にしない。
「…………明日、軍のものたちがココにくる。その用意をしといてくれ」
「待ってください! まだ……」
「これは決定事項だ。政府がそう判断を下した」
 長官はそういうと席から立ち上がり出て行った。僕はうつむいて動かなかった。
次の日、新聞には大きく『政府、戦争状態を宣言』と書いてあり、その下に『スカージ使用決定』と書いてあった。
昼ごろには軍人が来た。職員は来た軍人たちに機器の使い方の説明をしていた。僕はなにもすることもなくそれを眺めていた。
「ハッキングされてます」
 職員の一人の報告が部屋を響いた。いつものとおりだ。軍人もほとんど反応を示さない。
そういえばハッキングされるというのは機器を弄られた跡に言うものではないのだろうかと考えた。どっちにしろ最早意味ないことかなと思い笑う。
「大変です! 防衛ラインが突破されます!」
 いつもより緊張に満ちた声がする。さすがにただごとではないと思い職員の下に向かう。ほかの職員や軍人もモニターのとこまで来る。
「第二十一防衛ライン突破だと?」
 職員の一人が叫ぶ。今までほとんど突破されてないのになぜ今突破されるんだ。そうこうするうちにどんどん突破されていく。
「すぐにハッキング元を調べろ!」
 僕が叫ぶ。職員は一斉に自分の機器に向かい調べる。だがそうこうしているうちに防衛ラインは突破されていく。
「副部長!」
 第六十七防衛ライン突破したときに職員が僕のことを呼んだ。
「ハッキング元が……。『スカージ』としか表示されないんですけど」
「なんだと?」
 僕はモニターを見る。確かに本来ならばハッキング元の住所が出るところには大きく『スカージ』としか書いていない。
「どういうことだ……」
 僕は近くにあった椅子に座る。わからない。そもそもそういうことは専門ではないので考えても意味ないことだ。
「第九十防衛ライン突破!」
 誰かが叫ぶ。
「勢いが止まりません! 九十一……九十二……」
 なにか手はないのか。考えろ。考えろ。
「九十五……九十六……」
 咄嗟に考えが浮かぶ。電気で動いているんだ。電気を消せば。
「誰かブレーカーを落とせ! 電源を切るんだ!」
「無駄だよん」
 モニターから声が聞こえる。聞き覚えのある声が。
「博士……?」
「『スカージ』はもしも電源が切れた場合でも緊急状態として三日は自分でフル稼働できるようになってるの」
 モニターの中の博士はそう言った。
「ハッキングしたのは博士ですか?」
「そうだよ。こんな簡単に防衛ライン突破できるのは製作者ぐらいでしょ」
「なんでハッキングなんて?」
「条件に背いたから。私の『スカージ』をそんなことに利用するなんて赦せないね」
「どうする気ですか?」
「えっとね……。こうかな」
 今まで点いた事のなかった大モニターが点いた。画面は四分割されていてそれぞれの画面にはどこかの『ゲート』が映っていた。
「左上のがそこから星挟んで大体反対側にあるやつ。あとはどっかで適当なとこのやつ。副部長さん。『スカージ』が暴走するとどうなるか答えてみて」
 急に質問されて記憶を引っ張り出す。
「小爆発か小さなブラックホールくらいでしたっけ」
「うん。大正解。でもね、それは『ゲート』で制御されての状態ね。じゃあ、『ゲート』がなかったらどうなると思う?」
「まさか……。博士もしかしてそんなことやりませんよね」
 博士はにっこり笑った。
「やります」
 画面の中の博士が手元のなにかを弄る動作をした。突然左上にあった『ゲート』のフレームが弾けて倒れる。
黒いなにかがフレームから漏れ出している。『ゲート』はなにも映していない。黒い世界が広がっている。人が恐る恐る近づく。
185創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 19:11:09 ID:agFR2+Jv
「ポチっとな」
 博士が何かをする。突然黒いなにかが小さくなり球体になる。そして、光を放つ。画像はそこで途切れて砂嵐になった。
他の画像にも異変が起きる。同じように光を放つものや徐々に球体が大きくなっていき人が吸い込まれていくものもある。
「博士! なんでこんなことを!」
 僕は叫ぶ。
「こうでもしないと『スカージ』を使って戦争始めちゃうでしょ? 私にはそれは耐えられないの。すこしは期待したんだけどね。
ヒトの可能性を。でもだめだね。ヒトは便利なものがあれば私利私欲のために使うし戦争はしたがるし。そんな生き物この星にはいらないと思う。
だから私自ら滅ぼしてあげる」
「博士はヒトが死ぬのを嫌がっていたじゃないですか。なんでこんなことをやるんですか」
「私がいつそんなこと言った?」
 そう言われると一度もそんなこといってないような気がした。
「私の戦争が嫌いな理由はね、他の生き物に迷惑が掛かるからだよ。
自分勝手なことし始めて関係ない生き物たちまで被害がでるでしょ」
「でも、こんなことしたら他の生き物にまで迷惑掛かる……」
「掛からないよ。私がなんで『ゲート』の作り方を残さなかったかわかる? 数が増えたらいろんなところに置いちゃうでしょ。
数を限定させておけば都市部のみに配置することしかできなくするのもできるの。都市部ならヒトばかりだから問題ないし。
もっともこっちでどこを爆発させるか制御できるからその必要もなかったかもだけど。最初のやつはそこにあるみたいだけど」
「全て計算済みだったんですか……」
「まあね。こうなることも予測してたし。さてと、話してる間にもどんどん爆発してるわけだけど。ぽちっとな」
 先ほどまで砂嵐ばかり移していた画像が街の風景のものに変わる。ずいぶん高いところから移しているようだ。
「この画像はそこのふもとにある街の固定カメラの映像なんだけど。ここの『ゲート』はカメラの正面をずっと言った先にあるビルの中らしいんだけど。
どの程度の威力か見せてあげる」
 画像にはビルが乱雑に建っているのでどれのことだからわからない。突然、かなりの奥のほうにあったビルがなくなった。
なくなるというより下がっていくのほうが正しい。そこを中心にビルがそこに吸収されるようになくなっていく。段々被害がこちらのほうに向かってきている。
ビルが邪魔で中心になにがあるか見えない。しかしすぐに目の前のビルがなくなる。
 黒い球体が迫ってきていた。大きさは相当大きい。段々大きくなっている。画像がゆれ始める。吸い込まれているのだろうか。
と思ったら今度は縮小を始めた。目に見えて小さくなっていく。やがて画像に映っているのかわからないくらいになった。そして、さっきと同じように光を放つ。
画像が途切れるのと同時に大きな爆発音と地震が起きた。思わず床に足を着く。博士のモニターの画像も途切れた。
周りを見て他にも人がいたことを思い出した。他の人々は呆然と座り込んでいる。
 ぱきんと音がした。僕は振り向いた。部屋の片隅に置いてある最初に作った二つの『ゲート』。
黒い霧のようなものが漏れ出している。ここも爆発するのだろう。大人しく待つしかないだろう。モニターの画像が復活する。博士はとくに慌てている様子はない。
「最後に言おうかと思ったら画像途切れちゃった」
 博士が最後に言うことか……。助かる方法でも教えてくれるのかな。もちろん期待はしてない。
「『スカージ』の意味知ってる?」
 『スカージ』……。ヒトが作った最悪のモノとでも言うべきか。これを使えば博士の言うとおりなんでもできるからな。
「わかりません」
 僕は無難な言葉を選んだ。
「『スカージ』……。古い言葉で直訳すると『天罰』って言うの」
 天罰。神の裁きというとこか。皮肉かな。
「それじゃね、ばいばい」
 『ゲート』が光り天罰が下る。
 神はいない。だからヒトはヒトを裁かないといけない。
186創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 19:11:41 ID:agFR2+Jv
…………という話でした」
 やっと語り終わった。どこかで聞き覚えのある言葉かと思ったらここだったか。
「感動した!」
 赤髪の男が涙声で言った。と言うか泣きすぎ。どこにそんな感動する要素があるんだよ。
「御伽噺ってとこだな」
「そうですね。もともとはどこかの民話だったと思います」
 黒髪の言葉に答える
「それにしても面白みのない話だな。しかし暇つぶしにはなった」
 黒髪はそう言うとコップに入っていた酒を飲んだ。
「御伽噺なんてそんなものですよ。なにせ夢物語ですから」
 どこからか拍手が沸く。微妙に遅い拍手だがいいだろう。
 男はコップを取り、中身を飲み干した。人の見る夢は儚いものだ。
男はゆっくり目を閉じた。
187創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 19:13:14 ID:agFR2+Jv
以上です。まだ三個ほどありますけど長いので明日以降あぷろだにでも乗せてぺたりしますね
188創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 12:11:37 ID:VeQfBQoB
あぷろだだと読む気しないから
出来ればスレに直接ぺたこんして欲しいなぁ

時間次第ではあるけども支援も入れれるし
189創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 22:06:21 ID:zrJ4HsTU
今日発掘したポエム

「ぬめり」

すもうのおじさん こんにちわ
かえるのおじさん さようなら
うなぎのおじさん かんさいべん
みっつにふえたよ のどちんこ
190創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 17:55:35 ID:iD9OSc7Q
何だか賑わって来たな。
191創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:43:08 ID:nyceWde/
ヒャッハー! 履歴書を最後の最後で書き損じたぜー!
今夜もしばしの間、スレを拝借させていただきますぜー!


愚人礼賛
我思う、ゆえに我あり     〜ルネ・デカルト〜

がたん、がたん、がたん、がたん……
 電車が走る。同じ音を繰り返しながら。
 よく電車の走る音の例えで
「がたん、ごとん、がたん、ごとん……」
というものがあるが自分にはがたんしか聞こえない。
 僕はポケットに入っている。折りたたみ式携帯を取り出した。最近買い換えたものだ。間に指を挟みこみ開ける。
8月31日 16時37分
待ち受けに大きく表示された日付と時間。
 夏休みがもうすぐ終わる。また、あのつまらない無色の日常が始まる。朝起きて、学校へ行き、帰ってきて寝る。
それの繰り返し。変化のない日々。もうすぐ文化祭が始まるかもしれないが興味はない。つまらないから。
 時間の下には「新着メール23件 不在着信34件」と書いてある。不在着信のとこからみる。同じ名前が続く。
34件のうち、ほとんどが同じ人。電話はしない。
 待ち受けに戻ると不在着信の欄が消える。続いて新着メールを見る。やはり、ほとんど同じ名前が続く。
メールの本文を見ず、待ちうけに戻し携帯を閉じる。そして、ポケットにしまう。僕をため息をついた。なんでこんなことになったのだろう……。彼は思った。
 彼は前日に家から出かけた。行き先を告げずに。そしてまだ家に帰っていない。いわゆる家出というものだ。
 計画していたわけではない。あの日もいつもの通り夏休みをだらだら過ごしていた。いつも通りのはずだった。
とりあえず宿題をやろうと思い机に向かってもやる気は起きない。これもいつものことだ。なんとなく机の中から封筒を引き出した。
中にはほぼ全財産に近いお金が入っている。そのお札を数えてみると結構な額があった。その封筒を机にしまった。
母親にご飯よ、と呼ばれて居間に行く。親二人と妹で食事をする。僕の母親はよく小言をいう人だった。
親にしてみれば単なるしつけかもしれないが子どもにとっては単なる小言だ。その日もいつもの通り言われていた。
僕も妹も適当に聞き流していた。何を言われたかは忘れた。しかし、なにかとてもとても嫌なことを言われた。
頭にきた。カッとなった。僕は椅子から乱暴に立ち上がり、すぐ自分の部屋に戻り、適当なバックに適当に服などを詰めた。
机の引き出しから封筒を取ったとき丁度母親が部屋に入ってきた。封筒をバックにしまいそのバックを持つ。
母親はなにかを僕に言ったが無視してドアのとこに立つ母親に
「どけ」
と言い母親を突き飛ばした、そのまま玄関に急ぐ。誰かに腕をつかまれる。父親だった。後ろには母親が泣きそうな顔でこっちを見ている。
そのまた後ろでは妹がにやにやしている。父親と母親が喚いている。何を言っているのかわからない。
ふと学校の授業でやった柔道を思い出す。なんという技だったかは忘れた。むしろオリジナルかもしれない。
足を引っ掛けて床に叩きつける。父親の手が離れた。素早く靴を履き、玄関のドアを開ける。夜だからか外はひんやりしている。閉める前にもう一度、家の中を見る。
 床で呆然としている父親。
 両手で顔を隠しながら泣く母親。
 にっこり笑顔で親指を立てている妹。
最後に僕は何かを言った。何を言ったか覚えてないがひどい言葉だったと思う。
 僕はその後駅へ向かい、電車に乗って家出をした。目指すは北。とりあえず北。
 そして今がある。かなり家からは離れた。電車の車内にもほとんど人が乗っていない。車両も少ない。帰る気はない。
 がたん、がたん、がたん、がたん……
192創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:45:44 ID:nyceWde/
 僕は家では「いい子」にしていた。親の言うことをよく聞く、手伝いはする、勉強もトップとまではいかないが、かなりいい成績だった
。絵に描いたような「優等生」だった。親に反抗したことすらなかった。あの日なにが僕を駆り立てたのだろう。学校への不安もあったのかもしれない。
考えても答えは出ない。ふと、後ろの窓から外を見る。手前には田んぼが広がっていて、奥には緑に染まった山がある。日は傾きつつあるがまだまだ明るい。
山の上のほうで光り輝いている。空は青く果てしない。
 こんな光景はテレビでしか見たことがなかった。都会では絶対に見られないような光景。まるで夢世界のようだ。いや、もしかしたら夢なのかもしれない。
全て夢、嘘の世界なんだ。そうだったらどんなに楽か。僕はそう思った。
 眠くなってきたので目を閉じた。駅のベンチで寝たのはいいが硬くてよく眠れなかった。今頃になってようやく眠気が来たようだ。そのまま僕の意識は落ちて行った。

どのくらい寝たのだろうか。ずいぶん寝たような気がする。電車の車内には他の人はいない。今、どこなのだろうか。
ポケットの携帯を取り出してサブディスプレイで時間を確認する。
20時57分
 かなり寝てしまったようだ。お腹も減ってきたので次の駅で降りて飯を買おうかな。そう思っていると丁度アナウンスが流れた。
「つぎ……ざざざざ……ぎは……まがは…………うてんで……ざざざざ」
 聞き取れない……。ノイズ入りすぎ……。さっきまでは普通に放送していたのに。なんで急に?
僕は疑問に思いつつ、顔を上げる。
外は見える限りずーっと草原が続いていた。夕日に照らされているのか緑の草原はオレンジ色になっている。電車は徐々にスピードを落とし始めた。
がらっと音をたててドアが開く。僕が降りるとドアは再び音を上げてしまると、電車は来た方向に進んでいった。
そういえばここは線路が一本しかないと思った。相当田舎まで来たらしい。
駅のホームには屋根があるベンチがひとつと看板があった。看板も錆付いていて全て読み取ることはできないが「終点駅 高…………」
と読めた。
「というかほとんど読めないし……」
 僕はそう呟いた。ここの隣の駅の名前も読めない。というかなんで取り替えないのだろうと思った。
 ここにいてもしかたないのでとりあえず駅から出ることにした。
と言っても駅自体は改札もあるわけではないのでバスの停留所がコンクリートに乗った程度のものだ。周りはやはり草原しかない。
「ん……?」
 よくみると遠くに黒いなにかがある。ゴマより小さいのではなかろうか。よく見つけたものだ。
「店かな。とりあえず行ってみよう」
 僕はそれに向かって歩き始めた。
 程なくして黒い建物は茶色い建物だということがわかった。さらにその奥に川があるらしい。なにかが浮いているのが見える。
草を踏む音しかなかった世界に水の音が加わる。
 建物に到着する。建物は1階しかなく、どうやら木材でできているらしい。丁度裏側を見てきたらしい。正面に回りこむ。
建物はどうやら店らしい。店の前にはやはり木材でできたベンチがおいてあり店の窓ガラスには「外出中」と書いてある紙がはってある。
店の屋根のところには「貸しボート屋」と書いてある。振り返って川を見る。
 特に大きい川ではない。船が縄に繋がれてぷかぷか浮いている。一人用の船サイズだがそれでも後ろから勢い押してもらえば向こう岸に着く程度の幅。
10メートルというとこだろうか。流れも特に急ではない。川によって中を覗く。
 底まで見えるきれいな水。右から左に流れている。夕日のせいかオレンジ色をしている。小魚が流れに逆らって泳いでいる姿も見える。
「手で捕まえられるかな……」
 僕は川に手を入れようとした。
「やめな」
 右手のほうから声が聞こえた。少年の声だ。僕は右を向く。
「その川はうちの船じゃないと越せないよ。あんたも借りるのか?」
 黒い少年だった。全身真っ黒の服を着ている。夏だというのに暑くないのだろうか。頭には麦藁帽子を深く被っていて目元が見えない。
左手を腰に当てて、右手に竿を持っている。脇には錆びたバケツがある。
 怪しい人間からは逃げる。
 頭に学習したことが流れる。先生にも親にも言われた。怪しい人からは逃げろ、と。
「黙ってないでなんか言ってみろ。せっかく口があるんだからな」
 少年はそういいながら近づいてくる。逃げろと誰かが言っている。しかし、僕は動かなかった。
確かに滅茶苦茶怪しい。確実に逃げたほうがいいと思う。だけどそれじゃあ、また言いなりになるだけ。
193創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:47:09 ID:nyceWde/
「僕は……」
「ん? なんだ?」
「ここに電車で来たのですが……。ここはどこですか?」
 僕は思い切って言ってみた。少年は少し黙った。
「そうかそうか。お前は迷ったのか。そうかそうか」
 少年はそういうと大きな声で笑い始めた。何を言っているのかわからない。もしかしたら逃げたほうがよかったのだろうか。
「あの……。あなたはあの貸しボート屋の方ですか?」
 そうだろうと思うが一応聞いてみた。
「ああ、そうだ。と言っても店員は俺しかいないから実質俺が店長だな。あと一応神」
 最後のは無視したほうがいいだろう。やっぱり逃げたほうがよかった。
「あんた、なんでこんなところに? 普通ならここは来られないからな」
「普通?」
「おう。ここに来られるのは特殊な人だけだ。例えば家出とか家出とか家出とか」
 少年の口元がにやりと笑った。
「……なんでそのことが?」
「神だからな。わかるんだよ。今までの自分を変えたくて、再び来る無色の日常を恐れて、家出したんだな?」
 今度は僕が黙った。なんでここまでわかるのだろう。やっぱり本当に神なのだろうか。
「青春だねぇ。いいねぇ。束縛から逃げた夜! 盗んだバイクで走り出す15の夜!」
 そういうとまた大きな声で笑った。そんなにおかしいのだろうか。
「でもねぇ。少年よ」
 少年がさっきとは打って変わって静かな声で言い始めた。
「逃げることはできないんだよ。残念ながらね」
「なんでですか?」
「例えばだ。君は帰る気はないのだろう?」
「はい」
「しかしだ、金がなくなったらどうする気だ?」
「それは……」
 そこまでは考えていなかった。どこかにあったかもしれないけど考えなかっただけかもしれない。
「バイトしたりして食いつなぐって手もあるかもしれない。でもね、そんなに世の中甘くないの。雇う方もね、怪しい人間には近寄りたくないからね」
 少年はにやりと笑った。僕は何も言わない。
「例えばだ。ここにA君とB君がいたとしよう。
 A君は非常に真面目な生徒。学校では優秀な成績を残し、いい学校、いい大学に入る。当然、トップの成績を保つ。
彼はいつしかいい会社に就職する。会社じゃないかもしれない。医者や公務員になるかもしれない。いわゆる「エリートコース」だな。
 片や、B君は。学校では問題児。いつも親にも先生にも怒られっぱなし。一応最低クラスの学校へ行き、卒業する。
大学には行かずやりたい放題波乱万丈な人生を送る。これは「波乱万丈コース」だな。
 さて、あんたはどっちがいい?」
「当然、A君です」
「そう。普通の人間ならA君を選ぶ。将来も安泰。妻も出来て、子どもも産まれて。まさに絵に描いたような人生だ。
 しかし、もしこの道がA君が望んだ道じゃないとしたらどう?」
「望んだ道じゃない?」
「そうだ。望んだ道じゃない。本当は違う道を選びたかった。だけど先生が、親がそうしろと言ったからそうした。
 B君のほうは、やりたいことが出来た。自分の望んだ道が選べた。
 どっちのほうが幸せだと思う?」
 不満はあるが将来に心配のない人生。
 満足はしているが不安定な人生。
 果たしてどちらのほうが幸せなのだろうか?
194創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:52:58 ID:nyceWde/
「僕はA君だと思います。たとえ不満が残ろうと安定した人生が送れたほうが結果的に幸せだと思います」
「確かにそうかもしれない。しかし、人によってはB君のほうがいいと言う人はいるだろう。
人の言いなりになるのがイヤだと言う人だな。幸せのカタチなんて人それぞれなんだ。
 君はA君がいいといった。結果的に幸せだ、と言った。しかしだ、そんな自分のやりたいことも出来ずに親や先生の「操り人形」みたいな人生送って本当に幸せか?
それは俺にはさっぱり理解できない。まぁ、すこし言い過ぎかもしれないがな。
 俺ならB君を選ぶ。自分の人生なんだ。自分の好きなようにやってなにが悪い。波乱万丈奇奇怪怪奇想天外吃驚仰天。すごく楽しい人生になりそうじゃないか」
「でも、もしそんな道選んだら人に迷惑かかるじゃないですか。人に迷惑振りまいてまでやりたいことをやる。そんな人に存在理由なんてないと思います」
「存在理由と来たか」
 彼は黙った。すこし、熱くなりすぎたかもしれない。だいたいなんでこんなことで議論しなきゃいけないんだ?
「それじゃあさ。A君の存在理由ってなに?」
「医者にしろ公務員にしろ人のために役に立つことができます。それは立派な存在理由だと思います。多少のマイナスはあってもプラスが大きければ問題ありません。
 B君の場合、マイナスが大きすぎます。やりたい放題なんてやったら絶対に周りの人に迷惑掛けてばっかです。プラス面もなさそうですしね」
「つまりなんだ。君は人の役に立つ人だけ残して、存在するに値しない人間はいなくていいと言うのか」
「極論ですがだいたいそうです。さらに続けるとその人の存在自体が社会の負担。事件へのきっかけになりえる可能性もあります」
「それも習ったことか?」
 人に迷惑を掛けるな。人の役に立つ仕事に就くのよ。習ったこと。
「はい。そうです。そう習いました」
「ふーん。存在理由ね。自分は他人にとってどのくらいの価値があるのだろうか。もしかしたら自分は価値のない人間なんじゃないか。
自分が存在するに値する価値があるのだろうか。「葛藤」だな。
確かにB君のほうには「お前にとっては」価値がないかもしれない。しかし、他の人にとっては勝ちがあるかもしれない。俺に言わせればな。少年。
俺にとってはあんたは存在に値する価値なんてないんだよ」
「なっ……!」
「人の役に立つことが存在理由になるのならば、あんたは人の役に立っているといえるか?」
 僕の存在理由。僕は答えられない。
「あんたが存在するだけで食費、教育費、生活費。その他諸々。親に迷惑かけっぱなしじゃないか?」
 僕は答えられない。
「そんな人間は存在するに値しないんだろ? なら早く死ねよ」
 僕は……答えられない。
「遠慮すんなって。自分で言ったんだぞ? 「人の役に立たない人間はいらない」ってな。それともなんだ?
子どもだから別にいいって言うのか? 子どもは特別なのか?」
 僕は……。
「まさかそんなこと言わないよな。子ども。大人。誰がどうやって分別するんだ? 20になったら大人か?
だが20になっても大学に通っているやつもいる。そういうやつも少なからず親に迷惑かけている。人の役に立っているやつも極々少数だろう」
 僕は
「さて、本題に戻るか。お前の理論から言うとお前に存在理由なんてない。ならば死ぬのが道理だろ? どうなんだ? 少年よ」
 僕は…………答えられない。
「そうか。自分で死ねないか。なら殺してやるよ。全く死ぬときまで迷惑なやつだな」
 少年が寄ってくる。釣竿を握っていたはずの手にはナイフが握られている。ナイフはオレンジ色の光を放っている。鈍く。
「…………嫌だ」
 僕は声を振り絞っていった。
「あ?」
「僕は……死にたくない!」
 イヤだ。死にたくない。僕は来た道を走り始めた。全速力で。逃げて逃げて走って走って。振り向かずに、ひたすら、壊れたように。
「おいおい。つれないねぇ」
 目の前にいた。少年は。
「せっかく殺してやるっていっているのに」
 僕は少年と反対側に逃げようとした。しかし走り出そうとしたらそこには少年がいた。
「さて、少年よ。今一度問う」
 左に逃げようとした。しかし、そこにも少年はいた。右にも。
 有り得ない。人間は増えない。習ったこと。いや、常識。
195創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:55:26 ID:nyceWde/
 四人の少年が言う。
「あんたは何のために存在するんだ?」
「僕は……僕は……僕は……」
 答えが出ない。自分は何のために生きているのか。自分の価値。存在理由。僕は……。
「そこまでだ」
 少年でもない。当然、僕でもない誰かの言葉が聞こえた。
「追い詰めても仕方がないだろ」
 少年が三人消え、一人になる。消えた少年の背後に彼はいた。
 彼は見るからにイケメンの男だった。遠目で見ても背は高め。どこか高貴な雰囲気をただ寄せている。黒い長髪。
対照的な白い長ズボンと半袖。近づいてきたが青い眼をしている。
「少年よ。我が友人の無礼許してくれ」
 そういうと彼は頭を下げた。
「少年よ。君の存在価値は今の君にはわからないだろう」
「それは……なぜですか?」
「なぜならば存在価値など人によって変わるからだよ。君には君なりの存在価値がある。だが必ずそれを否定する輩もいる。
人それぞれの存在価値、幸せ。決めるのは君だ。周りの意見を参考にするのはいいだろう。けど、最後に決めるのは君。どんなことでもそうだ。
A君が幸せか。B君が幸せか。私にとってはその質問の答えはだね、わからない、だ。A君はその道を不満だと思っている。
けど、その道を選んだのはA君だ。彼が選んだ道なんだよ。やろうと思えば反発ぐらい出来た。なのに、反発しなかった。そういうことさ。
 B君は徹底的に反発したらどうなるかだな。そしてそういうことになった。でもそれもB君が選んだ道。わかるかい?」
「はい……。わかります」
「君がイヤだと思うときは反発すればいい。その結果どうなるかは君次第だ。
 いいかい。存在価値や幸せなんて自分が決めるもの。人に決めてもらうものではない。人生も同じだ。
自分がやりたいことを親に意見するというのは大事なことだ。親に小言言われたら言い返してやればいいさ」
 自分で決める……。
「ちなみに私にとってはだね。存在価値というのはその人が「存在したい」と思えばそれが理由になりうるのさ。
 さて、君はそろそろ帰りなさい」
 彼はそういうと僕の頭に手を置いた。
「あの……ありがとうございます。なにか胸のもやもやがなくなった気がします」
「どういたしまして」
 彼はにっこり笑った。
「それでは、まだあとで」
 眠気が襲ってきた。立っていられない。僕はそのまま倒れた。
がたん、がたん、がたん、がたん……
 電車が走る。同じ音を繰り返しながら。
 よく電車の走る音の例えで
「がたん、ごとん、がたん、ごとん……」
というものがあるが自分にはがたんしか聞こえない。
 僕はポケットに入っている。折りたたみ式携帯を取り出した。最近買い換えたものだ。間に指を挟みこみ開ける。
8月31日 16時40分
待ち受けに大きく表示された日付と時間。
 夢だったのだろうか。それにしては睡眠時間が短すぎるような気がする。一体なんだったのだろう。
しかも最後「またあとで」って言っていたような気がする。僕が考え始めようとしたとき、がちゃんと音がした。
それと同時に身体がふらっと前に倒れそうになった。僕はうまくバランスを保とうとする。しかし、失敗しえそのまま前に転がる。
鼻を窓にしたたかに打ちつける。痛い。そのまま外を見ると地面が段々と迫ってくるのがわかる。
「あれ?」

 目の前に川がある。
底まで見えるきれいな水。右から左に流れている。夕日のせいかオレンジ色をしている。小魚が流れに逆らって泳いでいる姿も見える。
ふと、右を見ると少年と彼が立っていた。
「おかえり。今度はちゃんと来たみたいだね」



おわり
196創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:58:27 ID:nyceWde/
今さら過ぎで今さらなんですけど
>>170-186の作品タイトルは
破滅に至る病
流行は偶然から生まれる     〜とある人の書置き〜
です

なんで名言をタイトルの横にくっつけたがるのかね
197創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 00:44:54 ID:TEzXVlLl
背伸びしてる感があるなー

>>196
決まってるだろ? かっこいいからさ
198創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:53:24 ID:waYurwuO
今日もぺたぺたしにきたよ! いつも長くてすみません

クリスマスの夜だから
人が空想できる全ての出来事は起こりうる現実である      〜ウィリー・ガロン〜

 その部屋には中心にテーブルと四個の椅子が置いてある簡素なものだった。表には『会議室』というプレートが付いている。
ほんの五分前までは無人だったが今は満席状態だった。
「またこの季節がきたか……」
 白髪の初老の男が言った。
「一年を過ごせば必ず通る道です。諦めるしかないです」
 向かい側にいた若い男が答えた。
 その場にいる全員がため息を吐く。
「実質的な被害は全くない。が、やはり犯罪は犯罪だ。警察としてもこれを許すことはできないのだが……」
「むしろ慈善活動と言えば聞こえはいいかもしれないな」
 白髪の言葉に右手にいる髪の薄い男が答える。
「確認されているだけでも今までで被害総数は千件を超えているそうだ」
「千件もですか……。で、それ全部が……」
「家宅侵入罪だ」
 また全員がため息を吐く。
「子どものいる家庭のみ。しかもたったの五年で。さらに毎年限られた時間内のみの犯行」
「もっと昔からいるのかもしれませんね」
 沈黙が流れる。全員が手元にある資料をじっと見つめている。
 最初に口火を切ったのは今まで喋ってなかった髪の薄い男だった。
「最近ね、ウチの孫に訊かれたよ。『サンタって本当にいるの?』って」
「なんて……答えたんですか?」
 今まで喋ってなかった女が質問する。
「『信じればきっといる』って答えたよ……。とてもじゃないけど本当のことなんて言えないさ……。君ならなんて答えるかね?」
「私も同じ答えだと思います。『今、そのサンタを逮捕するために大忙しだよ』なんて答えたらどうなるかわかりませんから……」
 その場にいた全員が再びため息を吐いた。

十二月二十二日
町全体がイルミネーションで飾られ、それぞれ楽しみや希望や喜びや憎悪や絶望や嫉妬など様々な感情が飛び交う季節がやって来た。
窓から見る町はいつもと同じように見えるが、あの日が迫るにつれてなんとなく活気が出てきたような気がする。昨日の夜からは雪化粧までし始めた。
そんな希望に満ち溢れた町を見ながら俺は絶望を感じている。それは何故か? 俺は目の前の折りたたんである紙を開く。
数学U 二十六点
 もう一回閉じる。さて、落ち着こう俺。きっとなにかの見間違えだ。そうに決まっている。
自慢じゃないが俺は今までずっと平気点よりすこし上くらいの点数を取っていた。総合成績でも真ん中よりか少し上。
当然ながら赤点など取ったことはない。普通であることを密かな誇りにしてきたんだ。今回だって勉強は普通にしている。
ならばこんな点数は有り得ないはずだ。もしかしたら採点ミスかもしれない。いや、実はこれは俺のテストじゃなかったんだ。なら安心だ。
 もう一度紙を開く。
 神宮 春来 二十六点
 何回読んでもカナミヤハルキにしか読めない。まさしく俺の名だ。つまりこれは俺のテストと言うことか。いや、まだ採点ミスの可能性がある。
 俺が通算3回目の採点ミスチェックをやっていると後ろから声がかかった。
「神宮、お前何点だ?」
 答案用紙が取り上げられる。俺はゆっくりと取った本人のほうを見た。
茶色に染まったくしゃくしゃの髪の男が答案用紙を見ている。
「お前、頭悪いな」
 そいつはニヤニヤしながら言った。
「うるせえな。柳は何点なんだよ」
 俺は自分の答案用紙と一緒に茶髪の答案用紙も奪った。
 柳川 寛 九十七点
「おぉと、見られちまった。まぁ、自慢する気はないけど勉強しなくてもこんなもんだぜ?」
 柳川は自分の答案用紙を俺の手から取るとそのまま自分の席へ戻った。残された俺はそのまま呆然としていた。
199創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:54:19 ID:nFw0vDB8
支援
200創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:56:14 ID:waYurwuO
 テスト明け初日。テストが終わり、解放された気分になった瞬間またどん底へ突き落とされる日。
俺も例外ではなく、しっかりと突き落とされた。ちなみに他のテストはそれほどひどくもなく平均点の少し上。いつも通りの点数だった。
数学Uも赤点決定かと思ったが平均点もとてもとても低く、赤点基準が平均点の半分だったことから何とか赤点を免れた。ちょっと気分が明るくなった。
 帰りのホームルームが終わり、柳川と帰ろうと廊下を歩いていると
「ヒロぉ。待ってぇ!」
 後ろから女子の呼び止める声が聞こえた。
「げ、日暮だ。神宮、俺は先帰る。また明日な!」
 そういうと脱兎の如く柳川は走っていった。
 後ろから遅れて、ポニーテールの日暮が来る。
「ハル君! ヒロは?」
「さっきあっちへ逃げてったぞ」
 俺が答えると日暮はあからさまがっくりと肩を落とす。傍から見るとまるで俺が悪いことをしているみたいだ。
しかも日暮は男子に人気があったりするから特に男子からの目線が滅茶苦茶痛く感じる。
「女の子泣かして何やっているのかな? きみ?」
 また声がかかる。誰がいるのかはわかっている。振り向くと想像通りの女子がいた。
「工藤、俺は無罪だ」
「はいはい。夕日、いつも逃げられているんだから落ち込まないの」
 工藤が明らかに間違った慰め方をしている。だが、俺は決して突っ込まない。
「きっとヒロは恥ずかしくて逃げてるのよ」
 確かに美少女に追いかけられたら恥ずかしいかもしれない。その辺は俺にも理解できる。だが、会う度に
「拘束! 確保!」
 とか叫びながらフライパンや竹刀でぶん殴って来たらさすがに逃げる。今、現在もその手には木の棒が握られている。
「うん……。そうだよね。うん、きっとそうだ!」
 日暮は顔を上げるとそのままの勢いで両手を上に上げて伸びをした。
「それじゃあ、カズとシズ迎えに行って帰ろっかー」
 そういうわけで俺たち一行は旧化学室へ向かった。
 俺たちの教室と同じ階。学校の端っこに位置する旧化学室。教室から少し離れた場所にあるので用のない生徒は行かない場所。
授業では一階に新しく作られた化学室へ行くのでこの教室目的で来る生徒はほとんどいない。だが人が寄らない一番の理由はほかにある。
「……なぁ、ここっていつになったらちゃんとした空き教室になるんだ?」
「多分あたしたち在学中はないと思う……」
 ボロボロに塗装のはがれた引き戸のドア。元は白いドアだったはずだがうっすら黒くなっている。
新教室ができたのでここは整備していない。窓があるべき場所にはダンボールが張ってありダンボールには大きく
『化学部 関係者以外立ち入り禁止』と書かれている。しかも赤ペンキで。
「お邪魔するよぉ」
 日暮はそういうとドアを開けようとした。が、開かない。日暮は取っ手に両手を掛けて……
「こんにょぉぉ」
 力いっぱい開ける。ドアはギギギと明らかに引き戸が出さないような音を出して開いた。
 旧化学室。この学校の七不思議のひとつにされている部屋。誰も使ってないはずなのに中から声が聞こえたり、
突然笑い声や破裂音が聞こえたりという噂が絶えない。挙句のはてには「中には化学者の幽霊がいて日夜人体実験をやっている。
ドアの赤文字は人の血」という話が出来てしまった。しかし所詮噂。
 真実はというと中はかなりきれいに整理整頓されている。カーテンも開けっぱなしで窓際には水槽が置いてある。
水槽の中には水草と小さなエビや魚が入っている。もちろんきれいに整備されている。
前に聞いた話では水槽の中で自然を再現する実験と言っていたが水槽の大きさが馬鹿でかいのでそれだけではないような気がする。
ちなみに大きさは両手を伸ばしても届かないぐらい。
 他には机が四つと椅子が数個。ひとつは水槽が載っているので普通に使えるのは三つ。
棚もひとつしかなく必要最低限の設備になっている。そのせいか通常教室と同じ大きさだが自分たちのクラスに比べすっきりしている。
201創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:00:47 ID:waYurwuO
 そして幽霊の元となった人が椅子に座って本を読んでいた。ひとつの教室を一人で丸々使うことが許されている彼女がそこに。
 彼女はこの学校でも珍しくちゃんと制服を着こなしている。そこだけ見ればちゃんと校則を守る優等生だが三つだけ他の生徒とはかけ離れた特徴がある。
 一つは白衣を着ていること。科学者とかのイメージで出てくるアレ。
 二つ目は持ち物。一般生徒ならば間違っても持たないようなものを携帯している。
ポケットの中から紫色の花が出てきたときはどうしようかと思った。
 三つ目は髪型。これのせいで幽霊と言われ、人から避けられている。彼女は一定の位置以上に髪を伸ばさない。
理由はわからないが初めて会ったときからずっと髪型は変わらない。肩で切りそろえるならまだわかる。胸で切りそろえるのも前髪をちゃんと切ってれば理解できる。腰で切りそろえるってどういうことだ。しかも前髪も後ろ髪も全く同じ長さで垂らしている。
遠くから見ると黒い布を頭から被っているように見える。髪のせいで近くに来ても顔がわからない。
そんな俺も彼女の顔を見たことはない。髪を捲って見たことはあるがなぜか木の仮面を被っていた。
 そんな異常に浮いている彼女は扉の音に気付きこちらを(多分)見た。
「夕日。うるさい。静かに入れないの?」
 見た目に反してはっきりとした口調。いつも他の誰かがいっているのではないかと錯覚する。
「だってぇ、この扉が壊れてるんだもん。文句言うんだったらシズがちゃんと直してよぉ」
 シズこと樹梨静の言葉に夕日が反論する。樹梨はそれを聞くと立ち上がり俺たちの横を素通りしドアの前まで来た。
しゃがんで何かを確認しているようだ。確認し終わったのか立ち上がる。
 そしてドアを蹴った。ボールを蹴るように。
「お前、なにしてんだ?」
 俺は樹梨に思わず質問した。樹梨は俺の質問に答えずドアを左右に動かしている。さっきのように音はならない。滑らかに動いている。
「つまりドアがずれてたから蹴って治したってことね」
 工藤の言葉に樹梨が身体を動かす。多分頷いているのだと思う。
「シズ、帰ろぉ」
「わかった」
 樹梨は自分が先ほどまでいた場所に戻り、物を片付け始めた。
「なぁ、樹梨。毎度毎度言ってるが髪切らないのか?」
 俺は会うたびに言っているいつもの言葉を言った。
「いいでしょ。別に」
 樹梨もいつもと同じ言葉で返す。いつも通りの日常。
 旧化学室をあとにした俺たち四人は学校裏へ向かった。この学校裏にはベンチが置いてあるだけの小さな公園になっている。
秋になると紅葉が見れて中々いい景色になっていたりする。今は枯れ木しかないが。
更に学校の裏には池があるということと夕日が見られるということが重なり、夕日が照らす公園で告白……。
なんてロマンチックなことができる。しかし現実は非常で専ら運動部が筋トレをしていたりするので雰囲気など全くない。
 そんな悲運な少し雪の積もった公園で一人黙々と竹刀を振っている短髪のがたいのいい男子とベンチに座ってそれを眺める茶髪の男子がいた。
「よお、古山。がんb」
「カズ! ヒロを抑えて!」
 俺の言葉の途中で夕日が叫ぶ。その言葉でこちらに気付いた二人。
「やっべ」と呟きながら脱走しようとした柳川にカズこと古山和一が持っていた竹刀で足払いを掛けようとする。
「甘い!」
 柳川は小さくジャンプして竹刀を避ける。が、すぐに腿を叩かれて悲鳴を上げながら倒れた。そこへ夕日が文字通り飛びつく。また悲鳴を出す。
「わぁい。ヒロ確保ぉ。カズありがとねぇ」
 夕日は嬉しそうに抱きついている。当の柳川は腿を叩かれるやら人に飛びつかれるやら散々な目にあっているが見ているほうはいつものことなので慣れた。
「日暮……。わかったからどいてくれ……。お前が飛びついてきたとき肘鉄が入った……」
 柳川が息も絶え絶えに日暮に言う。
「結婚してくれたらいいよ!」
 日暮が待ってましたと言わんばかりに即答する。
「死んでも断る」
 柳川も即答。日暮は体制を立て直して柳川の腹の上に座ると無言で軽くビンタをし始めた。
202創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:05:28 ID:AGV9J9PL
「まだ時間かかる?」
 そんな光景を無視して樹梨が古山に質問する。
「五分」
 古山が答える。ほとんど言葉を省いているがこれはきっと五分かかるってことなのだろう。これもいつものこと。
「わかった」
 樹梨はそう言うとベンチまで歩き座った。ちなみにベンチは二人がけ。当然のように工藤が空いているところに座る。
俺はベンチの隣に立つ。古山は素振りを再開している。日暮は相変わらず柳川を叩く。柳川は無言で叩かれている。
いつも通りの変わらない日常。いつもの通り六人のメンバーの変わらない日常。俺はこれがずっと続くものだと思っていた。
「そういえばクリスマスどうするか決めないとね。今日、カズの家大丈夫?」
 工藤のこの提案があるまでは。

 古山一族は昔、この地方を治めていたそうだ。
その名残からか今でも町内にある一番大きな山通称「池山」(山頂付近に池があると言われているから)を所有している。
古山の家もその山の中腹にある。さらに剣道場、弓道場、蔵、家が大きいのが一個に離れが三個。ちなみに山を一周できる散歩道まである。広すぎる。
 俺たち一行は古山の家に続く長い階段を登っている。いったい何段あるのだろうか……。来るたび思っているが数えるのすらめんどくさい段数。
階段の幅は大人四人ほど。両側にはカエデが植えられていて秋になるときれいな赤に染まる。だが今は冬。葉は既に枯れ落ちて、昔の名残はない。
 その道を六人で歩いている。雪は両側に寄せられている。その上には剣道場や弓道場に通う子が作ったのか小さな雪球を二つ重ねたのが置いてある。
そしてそれを片っ端から取っては投げを繰り返す、柳川と日暮と工藤。柳川はさっきの分があるので既に雪まみれ。
それを後ろから歩きながら眺める俺と樹梨(多分眺めている)と古川。
雪合戦は無駄に熾烈を極めていて見ている感じでは日暮と工藤がタッグを組み柳川を攻撃。柳川は飛んでくる雪球を手で取って投げ返すという芸当をこなしている。
 しかしここで事件が起きた。
 ぼすっ
「「「「あっ」」」」
思いがけず四重奏。ちなみに声を出したのは雪合戦メンバーと俺。当てたのは柳川。当たったのは樹梨。雪球は黒いカーテンのような髪に当たりそのまま沿って地面に落ちた。
 静寂。聞こえるのは鳥の囀り。
「あぁ、すまん。ごめんな」
 柳川が本当に申し訳なさそうに言う。樹梨は何も言わず階段の雪のあるところまで行きしゃがみこんだ。
「へぇ、ヒロって女の子泣かすんだ? 夕日。こんな男やめちゃったほうがいいよ?」
 工藤が冷ややかに言う。だが柳川はその言葉にはあまり反応を示さなかった。
「…………そうかもねぇ。ちょっと幻滅」
 あ……、肩を落として明らかに落ち込んでいる。いつも嫌がっているのになんでこんなに落ち込んでいるのだろうか。
「樹梨……。すm」
 ぼすっ
 雪球が顔面に直撃する。投げたのは俺でもなく古山でもなく被害者の樹梨だった。
「土下座したら許す」
 それは涙声ではなく威圧的な言い方。
「ははは、あははははははは」
 それを聞いて突然笑い始める柳川。そして突拍子もなく雪のあるところに駆け出しすばやく雪を取って……
 ぼすっ
 柳川が投げる前に樹梨の二発目が飛ぶ。
 五分後、俺たち一行は古山家の門をくぐった。雪が付いてない人はいなかった。
 気の古めかしい門をくぐると左手に大きな木造でできた平屋がある。そこは道場が開かれていて古山の親が弓道と剣道を教えている。
正面にはあまりにも大きいやはり木造の建築物。旅館が開業できるのではないかというくらい大きい。
右手には小さな二階建ての離れが一個とその隣に大きめの蔵。更に離れの裏あたりから散歩道があってそれが道場裏に繋がっている。
そして散歩道沿いに離れが二個……。
203創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:11:05 ID:AGV9J9PL
 いつもならばこの時間は道場のほうから子どもたちの稽古の声が聞こえてくるはずだが今日は様子が違った。
目の前を飛び交う雪球。当たるだびに上がる歓声と悲鳴。今日の稽古は雪合戦のようだ。
 こちらに気付いたのか一人の白髪交じりの男性が寄ってくる。右手に雪球、左手には竹刀を持っている。古山の父親だ。挨拶を交わす。
「おかえり。今日はみんな揃ってなにかするのかい?」
 見た目が怖い割には優しい声。その辺は息子は受け継いでない。
「部屋は?」
 父親の言葉に息子が答える。言葉のキャッチボールになってない。いつものことだが。
「その前に君たちに頼みたいことがあるんだがいいかな?」
「俺たちにですか?」
 俺が聞き返す。ちなみに疑問文を疑問文で返すのはよくないこと。みんなは真似しないように。
「僕は今、手が離せないからさ」
 にやりとしながら言う。確かに今、両手は塞がっているな。ここで古山父は声を落とす。
「さっき聞いた話なんだが子どもたちが林の奥でトナカイを見たそうだ」
「トナカイ!?」
 工藤が大声を上げる。そんなに驚くことじゃないだろ。声落とした意味ないし。幸いにも雪合戦のおかげでこちらを気にしている子どもはいない。
「何かの見間違いでは?」
「それは見つけたと同時に森の奥に逃げてしまったらしい。トナカイにしろシカにしろ。確認は取っておきたい。
散歩道を一周するだけでいいよ。部屋は途中の離れを使ってくれ」
 そう言ってポケットから鍵を出した。ここまでされたら引き受けるしかあるまい。
「わかりました。最善を尽くします」
 俺が鍵を受け取りながら答える。古山父はその言葉に頷くと振り返り、再び戦場へ身を投げていった。

 散歩道までは雪かきをしていないらしく雪は積もったままだった。つまりなにかが歩けばわかる状態になっている。
雪の上には鳥の足跡と猫のような足跡、それに交じって明らかに違う足跡。
「多分トナカイ」
 樹梨はしゃがみこんで見た後そう判断した。
「鹿じゃないのぉ?」
 夕日が疑問の声を上げる。確かに普通に考えてこんなところにトナカイがいるはずがない。
「トナカイは雪の上を歩くことに適応した蹄を持っている。この足跡は蹄の跡だと思う」
 そこで樹梨は首を横に振った。
「生物は苦手だからなんとも言えない」
「仮にトナカイだとしたらいったいどうやってこんなとこに?」
 俺は疑問を言う。
「ペットにしてたとか?」
 工藤が答える。確かにそのくらいしか理由が浮かばない。
「それは違うな」
 樹梨ではなく柳川が即答で答える。そういえば今までこいつなにも喋ってなかったな。
「なんでよ」
 工藤がむっとしながら聞き返す。
「だってさ、トナカイってあれだろ?」
 柳川が俺たちの後ろのほうを指差す。みんながそちらのほうを見る。
 そこには深い茶色をした大きい生き物がいた。頭には立派な角が生えている。こちらをじっと見つめている。
「あれってトナカイかな?」
「トナカイじゃね?」
「トナカイだろ」
「トナカイだぁ」
「どうみてもトナカイね」
「……それより捕獲だ」
 最後の言葉で全員がトナカイに向かって走り始める。
が、当然トナカイのほうが足が速いので俺たちが走り出した時点で既に林の奥へと向かっていた。
204創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:15:38 ID:AGV9J9PL
「山頂のほうに向かってったな……」
 柳川が呟く。ここからは足跡を追っていくしかない。
「ところでさぁ、どうやって捕まえるの?」
 雪の積もった斜面を歩いているとに夕日が質問した。
「どうにかなるさ。きっと」
 柳川が答える。歩き出してからずいぶんと時間が経った。雪のせいで歩きにくく思うように前に進めない。
跡どのくらいで山頂なんだろうか……。山頂までの道はないので普段から山頂に上るのは難しい。
山頂に上ろうとしても崖があったり木が邪魔をしたりとなかなか上ることが叶わない。
事実今まで何回も山頂を目指したが登れたことは一度もない。行くことができないのかもしれない。
「さっきからぶつぶつうるさいよ。ハル」
 工藤に文句を言われる。どうやら独り言になっていたらしい。想定外だ。
「すまん。しかしいつになったら山頂に着くんだ?」
「行けないんじゃね?」
 柳川が自嘲気味に答える。日も傾いてきた。戻ったほうがいいのだろうかと考えていると目の前に足跡以外のものが目に入った。
「足跡が増えてる。それになんだ、この線は」
 二本の線が平行に並んでいる。
しかし線はうっすらと消えかけていることから昨日の雪が降ってるときに付いた線なのかもしれないその線はトナカイの足跡と同じ方向についている。
「この先になにかあるな」
 そういうと柳川が走り始める。それを追いかけて夕日が走る。その二人を追いかけてみんなが走り出す。心なしか足取りが軽い。
走っていると途中で木が途切れているのが見えてきた。
 山頂には開けていて大きな池とその側に大きな白い木があった。その木のそばに四匹のトナカイとソリが置いてあった。
トナカイは近寄っても逃げずにこちらをじっと見つめていた。ソリには大きな白い袋が一個だけ置いてあった。
「これってもしかしてもしかするのかな」
「もしかしてもしかするのかもな」
 とりあえず六人で手分けして乗っていた人を探すことにした。すでに日は落ちて暗くなってきたが月明かりでどうにか探せる程度に明るい。
「見当たらないねぇ」
「だな」
 探し始めてから十分が経過して一度ソリのところに集合した。四匹のトナカイは相変わらずソリを離れようとしない。
「どうしたものか」
 俺は腕を組んで考える。
「戻る? トナカイは置いてくことになるけど」
「それもなんか気が引けるよねぇ」
 俺と日暮と工藤で話す。古山は目を閉じ腕を組んで木に寄りかかっている。樹梨はトナカイを観察しているみたいだ。
心なしかトナカイが怯えているような気がする。
「そういえばまた柳川の姿が見えないな」
 今まで気付かなかったがよくみたらどこにもいない。
「ああ! またどこか行っちゃったぁ」
「あいつは放浪癖を治すべきだね」
 工藤は文句を言い、日暮は世話しなく周りをキョロキョロし始めた。
「おーい、こっちだー」
 声のほうを振り向くと柳川と白い服を着た人がいた。白い服の人は柳川に横から抱きつくように歩いている。
柳川はそれを両手で支えながら歩いている。そのままソリまで運んで行き最後はだっこしてソリに寝かせるようにして下ろした。
 歳は俺たちと同じくらいだろうか。なんとなくあどけなさが残ってる。髪は茶色で少し赤みがある。青い珠のついた首飾りに白い長袖とスカート。意外にも女だった。
「呼吸はあるけどずいぶん衰弱してるみたい。トナカイにソリを引かせて古川の家まで連れて行こう」
205創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:20:18 ID:AGV9J9PL
 そこまで言うと柳川の身体は引っ張られるようにソリから離れていった。突然の出来事に柳川は転びそうになるがなんとか持ちこたえる。
「ヒロの馬鹿……」
 引っ張った張本人の日暮は涙の溜まった眼で柳川を叩く。
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!」
「痛い痛いやめて、というかその木の棒はまずいだろ」
 日暮はどこから取り出したのか太鼓のバチのようなもので柳川を叩き始めた。
柳川は必死にその攻撃をガードしているがガードしていても痛いものは痛いので悲鳴を上げている。
そんな暴行シーンを無視して古山と樹梨は着々と出発の準備を整えている。
「どうやって山を降りるんだ? 乗ってくには木が邪魔だろ」
「歩く」
 古山が短すぎる答えで返す。なるほど。確かにそれしかなさそうだな。またあの道を行くとなると悲しくなるが。
「途中までソリで行く。下りはそっちのほうが早い」
 樹梨が付け加える。確かにそちらのほうが早く着くだろうな。散歩道に着いたら降りて歩けばいいか。
 しかしこの考えが甘かったことを五分後に痛感する。

 高速で流れる景色。凍てつくような風。トナカイは止まらない。甘かった。一度走り出したらトナカイは止まらなくなった。
イノシシじゃあるまいし止まってくれたっていいじゃないか。しかしいくらなんでも早すぎる。車と同じくらいのスピードではないだろうか。
なによりもどこに向かって走っているのかわからない。しかし不思議なことにほとんど揺れない。
そしてあれだけ木が密集しているのに一回も木に当たってない。木が避けるなんてことはないだろうから木の間を抜けているのだろう。
それで揺れないというのはどういうことなんだろうか……。
「伏せろ!」
 突然古山が叫ぶ。言われなくても最初から伏せてる。今更なにを言い出すんだ。
 うす暗い林の景色が途切れた。代わりに暗い空が映る。同時にトナカイの足音やソリの走る音も切れた。
まるで浮いているようだ。直後衝撃。同時に焼き物が割れるような音がする。そしてまた音のない世界へ。今度はさっきよりか長かった。
再び衝撃。今度は音はほとんどなかった。周りを見渡せばそこは古山家の中庭だった。
「着いた……」
 俺は呟いた。変な体勢でいたせいか体が強張っている。ソリから降りて伸びをする。子どもたちは稽古を終え既に帰宅したらしい。雪はほとんど無くなっている。
「なんか夢見てるみたいだな」
 そういうと誰かに背中を叩かれた。
「痛い?」
 工藤だった。顔が青い。
「痛い。お前顔が青いぞ? 大丈夫か?」
「酔った……。肩貸して」
 そういえばこいつは昔から乗り物に乗るたびに酔っていた記憶があるな。肩を貸してあげる。こうなると当分は大人しくなる。
「ほらぁ、ヒロも立ちなよぉ」
 柳川もよろよろしながら立ち上がる。しかしこれは酔っているわけではないのだろう。日暮はこちらをちらっと見た後、柳川のほうを向き
「ねぇ、ヒロ。肩貸してあげるよ!」
「断る」
 柳川が再び地面と仲良くしてるのを横目に見つつソリのほうに視線を戻す。樹梨が少女を背負っていた。
「その子大丈夫なのか?」
「大丈夫。食料と水があれば治る」
 誰かの腹の音が鳴る。今まで気付かなかったがつまりそういうことか。
古山はトナカイをつなげている紐を持つとトナカイを引っ張って本館のほうへ歩き出す。こっちへ来いってことだろう。
柳川たちのほうをみると柳川は自分で立ち上がりなんとか歩いている。その側を日暮が付き添うように歩いている。俺たちも古山の後を追うことにした。
206創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:25:35 ID:AGV9J9PL
 本館の前に人影が見えた。ここで工藤が俺から離れる。もう大丈夫みたいだ。
「おかえり。本当にトナカイがいるとは思ってなかったよ」
 本館の前にいたのは古山父だった。トナカイを見て驚いているようだ。当たり前か。
「それにソリに女の子……。その子サンタだったりしてな」
 古山父が大声で笑う。まさかそんなことないだろ。さすがに。
「食料と水をもらえませんか? 多分この子お腹減っているみたいなので」
「ああ、いいとも。上がりなさい」
 古山父は快く承諾してくれた。遠慮せずに上がることにした。トナカイとソリは玄関の前に括っといた。
俺たち一行は大きいテーブルが置いてある畳の部屋に通された。
「厨房からなにか取ってくるからすこし待っててね」
 そういうと古山父は襖を開けて消えていった。部屋には疲れきった六人と謎の少女が残された。
「なぁ、その子生きてるのか?」
 さっきから腹の音が鳴っているので生きてることは生きているのだろうけど全く動かない。
「生きてる。ただ意識がないだけかもしれない」
 柳川がそう言うと隣にいる少女の手首に指を当てた。
「まぁ、心臓も動いてるよな。当然」
 次に少女の頬を軽く叩き始めた。
「生きてますか? おぉい」
手が動いた。日暮の。その手はそのまま背を向けていた柳川の後頭部を叩いた。
「いてぇよ! なんだよ!」
 柳川の抗議にそっぽを向いて無視をする。
「俺が何をやったって言うんだ……お?」
 視線を少女に戻す。瞼がゆっくりと開く。
「やっと起きたか……。大丈夫か?」
 少女はじっと柳川を見ながら頷いた。その後 周りを見回して再び柳川をじっと見つめた。
「あの……」
 少女が口を開く。みんなが彼女の次の言葉を待つ。
「私さんはとても空腹を感じておりますです」
 その言葉とともに古山父が食料と水を持って帰ってきた。
「とりあえず麦茶とおじやを持ってきたよ」
 その言葉を聞くと少女はそれをすばやく受け取るとすごい勢いで食べ始めた。
見てて気持ちいいくらいの食べっぷりとはこのことなのだろう。あっという間に平らげる。
「おかわりいるかい?」
 少女は頷いた。古山父は再び皿を持って厨房へ行った。少女は片手にスプーンを持ってそれをじっと眺めている。
「あのさ、君って日本人?」
 柳川が質問する。髪の色を見た感じでは日本人ではなさそうだ。
「違うです」
 彼女は短く答えた。ここで二杯目のおじやと麦茶を来たので再び怒涛の勢いで食べる。
さっきよりか容器が大きくなっているのはこのことを予想していたのだろう。しかし程なくして平らげる。
容器を古山父に差し出してるところから見るとおかわりを催促しているのだろう。
「次で最後だよ?」
 再び苦笑いしながら厨房へ向かう古山父。考えてみればおじやというのはそんなに早くできるものではないはず。もしかしたら元から出来ていたのか……?
「君はどこから来たんだ?」
 柳川の言葉に彼女は下を指差した。
「下って……。まさか地底からとでも言うのか?」
 柳川が笑いながら言った。しかし彼女は真剣な顔で頷いた。
「地底からって……」
 そこで三杯目のおじやがきたので会話が中断される。さきほどと変わらないスピードで食べる。食べつくす。
最後に麦茶を飲みコップを置く。食器をまとめて古山父のほうへ渡しお辞儀する。古山父はそれを受け取ると退出した。そこ初めてにっこりと笑顔を浮かべる。
「ごちそうさまです。てめえらのせいで助かったです」
 場が一瞬凍った。さっきから日本語がおかしいとは思ってたけど今のは狙ってたのか? さらに少女は続ける。
「あのままだったら私さん、崩御なされてしまいましたです。どういたしましてです」
「君、日本語苦手なんでしょ?」
 柳川が即答で返す。確かにこれはひどすぎる。狙ってるようにしか思えなくなってきた。
207創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:30:23 ID:AGV9J9PL
「苦手です。それと私さんのお名前は君じゃありませんです。私さんのお名前はフラングラン・フレグランス・サンタです」
「そうか……。よくわかった。それこれからどうするんだ?」
 柳川はひるまずに質問する。というか聞き流しているのだろう。
「私さんの目的は……」
「待って」
 日暮が話しに割り込む。また柳川になにかをやる気なのだろうか。
「この子、ウチの家で引き取って明日中にちゃんとした日本語が喋れるようにしとく。
今のままだと日本語がわかりにくくて意味を取り違えたら大変だからねぇ」
 途中までは真剣だったが最後まで待たなかったようだ。
日暮が真剣になるときは柳川捕獲作戦実行時とあちら側の人間と会話するときだけだと思ってたがどうやら違うらしい。
頭の中の情報を訂正する。ちなみに日暮家は世界を跨ぐ大企業を運営してたりその創立者の子どもが夕日だったり大金持ちだったりする。
「それでいいかなぁ? フラングランさん」
「あぁ、了承したです」
 日暮はにっこり笑う。なにか企んでそうな気がするが気にしたら負けなのだろう。
「それじゃあ、今日はこれで解散かな」
 工藤が締める。そういえば本来の目的が達成されていないがいいのだろうか。これもまた突っ込んだら負けなのだろう。言わないでおく。
 この後俺たちは古山家を後にした。トナカイとソリは古山家に、フラングランは日暮家に行くことになった。離れの家を返し急いでそれぞれの帰路につく。
既に時間は七時を過ぎていたりするので大金持ちで甘く育てられている日暮や一人暮らしの柳川、
どんな生活を送ってるか想像すらできない樹梨はまだしも俺や工藤は一般家庭なので急いで帰る。
工藤の家は隣にあるので怒鳴り声がこちらまで響いた。こっちの怒鳴り声もあちらまで響いただろう。そんなこんなでハプニングだらけの一日は終わった。

十二月二十三日
 素晴らしい快晴。空は青く、広く、そして限りない。こんな日は川沿いを散歩したい気分だ。と、思いつつも制服に着替える。
もうすぐ冬休みだし最後の踏ん張りだ。いつもの通りの朝が始まる。部屋から出て、隣の部屋の妹を蹴り起こして反撃されてリビングに向かう。
「で、あの子はどうなんだ?」
 柳川を餌にして釣れた日暮に聞いてみる。
「もうねぇ、すごいよ。悔しいけど彼女相当頭いいねぇ」
 話によるとフラングランは昨日の夜には既に日本語の勉強を始めたそうだ。ちなみに教えているのは執事らしい。
元から基礎は出来ていたそうなのでそこまで時間がかからないものかと思っていたが飲み込みが異常なほど早く、二時間で日本語の文法を完璧にマスター。
今は読み書きをやっているそうだ。
「ということは今日中にちゃんと話が聞けるってことだな」
「うん。だから帰りにウチに寄っていきなぁ」
 日暮は柳川が逃げないように前から抱きついている。公然の目の前でこんなことできるのはこいつぐらいではないだろうかと思う。
 この後は特にハプニングはなく放課後になった。いつもの六人で日暮家に向かった。
日暮家は学校から歩いて十五分ほどの場所にある。周りの家とは比べ物にならないくらい大きいが敷地面積から言うと古山家のほうが広い。
三階建ての家で門のところには警備員がいる。駐車場には車がいっぱい置けるそうだ。
「到着ぅ」
日暮家に着く。警備員に挨拶しながら門を抜け、庭を歩きこれまた無駄にでかいドアを開けて入る。
「ただいまぁ」
 十秒もしないうちにタキシードを着た黒人の男がやってくる。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「ドゥエッサ、フラングランは?」
「ただいま休憩時間を取られています」
「わかった。ありがとう」
 執事のドゥエッサはさっと去っていった。
「上がっていいよぉ。多分二階にいると思う」
 豪華な螺旋階段を登り二階へ行く。内装はホテルのようになっていて番号まで振ってある。元々はホテルとして開こうとしたらしい。
日暮は二百三号室の前に来るとすばやくドアを開けて持っていた荷物をほおりこんで閉めた。
208創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:35:17 ID:AGV9J9PL
「えへへ、ちょっと汚くてみせたくないのぉ」
「ちゃんと部屋はきれいにしとけよ……」
 柳川が呆れ声で返す。そんな会話をしながら歩いていると日暮は二百十五号室で止まった。
「ここだねぇ」
日暮がドアをノックする。部屋の中から声が聞こえる。どうやら入っていいらしい日暮がドアを開ける。
 部屋の中は壁も床も天井も布団も家具すらも白で統一されていた。椅子に座っているフラングラン自体も昨日と同じ服を着ている。
青い珠の付いた首飾りがよく目立つ。モノの境界線がわかりにくい部屋だ。
「こんにちは。昨日はありがとうございますです」
フラングランが頭を下げる。と同時に疑問が浮かぶ。日本語をマスターしたはずなのにまた間違った用法をしている。
「なんで語尾に「です」を付けるんだ?」
 俺の質問にフラングランは笑って答える。
「普通の喋り方だと個性がないです。だから付けてみたです」
 なるほどね。確かに普通の喋り方だと個性はなくなるな。しかし語尾に「です」はないだろ。普通に考えて。      
こほん、とフラングランが咳払いをする。
「改めて自己紹介するです。私の名前はフラングラン・フレグランス・サンタ。サンタの子孫です。フランと呼んでほしいです」
 柳川が手を上げる。
「質問いいかな?」
「どうぞです」
「サンタの子孫ってどういうこと?」
「そのままの意味です。一般的にサンタというのは赤い帽子と服を着て白い髭を蓄えた人間って思われているみたいですけど、
それはすこし間違っているです。そういう人も確かいるけどサンタには私みたいな女性の人もいるです」
 なるほど。確かに話はわかる。だが大事なことを言っていない。
「サンタは確か昔の人をモデルにした仮想の人物だろ?」
 フランはその台詞を聞くと俯く。
「確かにそれが普通の人のものの考え方です。常識的に考えればサンタなんているはずがないです」
 彼女は沈んだ声で言っていたがここで顔を上げる。
「どうやって家に入っているのかとかプレゼントはどこから持ってくるかとか疑問はいっぱいあるです。だけどサンタは実在するです。ずっと昔からいるです」
「そういえば昨日どこから来たのか聞いたとき地底って言ったよな? あれはどういうことだ?」
 彼女はサンタについて話し始めた。普段は北極のどこかにある大穴をくぐって行った先の地底に住んでること。
サンタの一族はそこで生まれ育つということ。そしてサンタはクリスマスになるとトナカイの引くソリに乗って自分の担当地域へ行き、純粋な願いだけ叶えるということ。
しかし最近ではサンタを信じる人が少なくなってきてもしかしたらサンタ本当にいなくなるかもしれないということ。
自分は新人なので担当地域に視察に来たらトラブルがあって墜落したこと。たくさんのことを時には身振り手振りを使って喋った。
「信じてくれますか?」
 最後に彼女はそう聞いてきた。
「最後に三ついいかな?」
 俺が彼女に質問する。
「どうぞです」
「どうやって家に入っているのか、プレゼントはどこからだしているのか、フランがサンタだという証拠はあるのか」
 大事な三つの質問。ずっと子どもの頃から思っていた思っていた二つの質問と今まで疑問に思ってた一つの質問。
「全部の答えはこれでわかります」
 フランはそういうと首飾りを触った。
「見ててください……」
 右手で首飾りを握り締めて目を閉じる。異変はすぐに起きた。
 彼女の身体が薄くなっていく。消えるスピードは速く驚いている間に完全にいなくなってしまった。
209創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:41:00 ID:AGV9J9PL
「消えた……?」
 信じられない。ありえない。場を静寂が包む。
 がちゃりとドアの開く音が聞こえる。ドアのほうを見るとそこにはフランがいた。にっこりと笑っている。
『驚いたです? びっくりしたです?」
 嬉しそうに言いながら元の席に戻る。
「どうやって?」
 樹梨が質問する。こんなときでも声に揺らぎはない
「この石の特殊な能力です。姿を消すこととモノを透け通ることができる能力です。原理はわからないです。それとモノを生み出す能力もついているです」
 胸を張りながら誇らしげに言う。
「今、モノを生み出せる?」
「見せてあげたいのは山々ですけどできないです。モノを生み出すにはさっき話したとおり純粋な願いがないといけないんです。純粋の基準はこの石が判断するんです」
「なるほど」
 樹梨は納得したらしい。俺は納得できないが実際に実演されたのでは俺も認めるしかない。
「筆者ついにめんどくさくなったのか……」
 後ろで柳川がぽつりとつぶやく。何言ってるんだこいつは? あまりのことに頭狂ったか? 聞こえたのは俺だけらしいので無視することにした。
「クリスマスはプレゼントしに回るのぉ?」
「するです。当然です。その前にトナカイさんとソリの状態を見に行きたいです」
 ということで俺たちは古山の家へ向かった。ソリは本館の玄関の前に、トナカイは散歩道を少し入ったところにいた。
トナカイを見ると突然フランが宇宙語を喋り始めた。考えればフランは日本人ではないのだから外国語がし喋れてもおかしくない。
「トナカイさんも元気そうで安心です」
 次にソリを見に行く。フランが点検した結果損傷もなく無事だそうだ。
「ソリに乗っていた荷物知らないです?」
古山が玄関を開けて白くて大きい袋を持ってくる。玄関に置いてあったらしい。フランが中身を確認する。
「全部あるです。ありがとうです。これでクリスマスにはプレゼントを配ることが出来るです」
「中に何が入ってるんだ?」
 フランは俺のほうを向いてにやりと笑うと
「ヒミツです」
 ヒミツか……。プレゼントは出せるから入ってないとしてなにが入っているのだろうか。
「思ったんだけど石で食料とか水とか出せないの?」
「許可がないと自分の願いで物を出すことは出来ないんです。あとあまりにも大きすぎるものとか物でないものは出せないんです」
 工藤の質問に残念そうにフランが答える。微妙に不便なんだな……。しかも許可ってなんだろうか……。疑問は尽きない。
「どのくらいの大きさのものが出せるんだ?」
 柳川が質問する。
「どのくらいというと答えにくいです……。私もどのくらい大きいものが出せるか知らないです。けど大きすぎるものは出せないって習ったです。
私が出した今までで一番大きいものはヘリコプターです」
「ヘリコプターってあのヘリコプターだよな? 空飛んでるアレだよな?」
「そうです。アレです。昔、石からモノを出すテストで出したです。記録では石から取り出した今までで一番大きいものはセコイアだそうです。
私もセコイアというのがどんなのだが知らないです」
 セコイアってなんだろうか。大きいらしいし建築物かなにかか? しかしそんなもの出しても困るしな。
「セコイアって植物のセコイアかな」
「お、樹梨知ってるのか?」
 樹梨の頭が動く。多分頷いているのだろう。てか植物か。それならそこまで大きくなさそうだな。
ヘリより大きいといっても長いだけだろうから大きさは十メートルくらいかな。
210創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:45:38 ID:AGV9J9PL
「セコイアはアメリカの西海岸、海岸山脈に自生する植物。世界一の樹高を誇り平均的な長さ八十メートル。
直径五メートルほど。樹皮の厚さが三十センチほどある木」
 化け物じゃないか。何をどうすればそんだけでかくなるんだよ。しかも植物が。
「そんなでかいものなんで出したんだ?」
「記録には出したものの名前しか残ってないんです。だからなんで出したかはわからないです」
 その後は少し雑談した後、帰ることにした。クリスマスは古山の家から飛ぶそうだ。
 その帰り道、いつもの通り工藤と歩いていた。
「なんか夢みてるみたいだね」
「そうだな。昨日から俺たちは不思議なもの見てるからな」
 俺は空を見上げながら答える。空はきれいなオレンジ色をしている。
「サンタなんて本当にいたんだね。しかも女の子だし」
「フランの言ってた通り、今の世の中にサンタを本気で信じる人間なんていないもんな……」
「夢見る心をなくしたらいけないってことね」
「そうだな」
 ここで俺の家の前まで来たので別れる。玄関を開けると妹がいた。
「ただいま。ちょっと聞きたいことがあるんだがいいか?」
「おかえり、なに?」
 意を決して質問する。
「お前さ、サンタがいると思う?」
「いるんじゃない? 世界は広いし人が考えるものなんて何でもありそうじゃん」
 妹はそう答えた。確かにそうかもしれない。俺は相槌を打って自分の部屋に戻った。その後は特になにもない普通の一日だった。

十二月二十四日
今日も雲ひとつない快晴が晴れ渡っている。いつもの通り妹を起こしてトーストをかじり学校へ行く。
気のせいだろうか。学校内までウキウキした人がいるような気がする。ウキウキするのは明日からだろと突っ込みを入れたくなるような気がするがどっちでもいいことだ。
放課後、今日は何もなさそうなので帰宅しようとすると日暮に呼び出された。
「フランががさぁ、明日の夜もしよければ一緒にソリに乗ってプレゼント配らないか、だってさぁ」
 突然の話に戸惑う。
「乗っても大丈夫なのか?」
「大丈夫らしいよぉ」
どうやら六人全員にお礼を兼ねて乗せたいらしい。 返事はとりあえず保留にしとく。と、言ってもきっと乗ることにはなるだろう。
フランは準備をするため今日から古山の家へ行くらしい。特に行くこともないので俺は帰宅することにした。
家の玄関のドアを開けた瞬間、妹が飛んできてプレゼントをせがんだが無視した。
 十二月二十五日
 今日も快晴。ホワイトクリスマスはだめそうだ。妹を起こしにいこうとすると既に起きていた。どうやら終業式おいうこともあって早く起きたらしい。
普段から早く起きろと突っ込んどく。トーストを食べていると母親に何かほしいものはあるかと聞かれたのでカリナンと答えといた。今日の夜が楽しみだ。
学校はウキウキが頂点に達しているらしくどこ行っても同じような単語ばかり聞こえる。午前で終業式が終わり一度帰宅。
十時に古山の家集合と日暮からメールが来た。サンタは二十五日から二十六日に掛けてプレゼントを配るらしい。夕食は豪華だった。
クリスマスにうまいもの食えて正月にうまいもの食えるというのはいいことだ。無宗教に感謝。プレゼントはなかった。
母親いわく「ちょっと買えなかったから今年のプレゼントはなしね」だそうだ。カリナンなんか買えるはずないよな。
 そして現在。時刻は十時。場所は古山家の庭。フランも含め全員が揃ってる。
「全員揃ったのでそろそろ行くです。その前にみんなこれを舐めるです」
 フランが全員に赤い飴のようなものを配る。真っ赤でひとつの傷もない赤い珠。
「これはなんだ?」
「舐めればわかるです」
 口に含む。まずい味かと思ったら意外にもおいしい。今までに食べたことないおいしさだ。同時にみんなの姿がぼやけていく。
211創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 01:00:53 ID:AGV9J9PL
「おぉ? なんかみんながぼやけていくぞ」
 柳川が楽しそうに言う。最早驚くこともない。
「これは変身飴と言ってですね。身体の回りにサンタ服と白い髭を生やす幻を発生させるんです。
幻と言っても重さはなくても実物として存在するから風に吹き飛ばされないように注意するです。効果時間は舐めている間だけだからなくなる前に言うです」
 そういってる間にフランがサンタ服を着ている。みんなの想像する赤い帽子と服。そして白く長い髭。ほとんど誰だかわからない。見渡せばみんな確かにわからなくなって……
「…………」
 一人だけすごくわかる奴がいる。どうしようもなくわかる奴がいる。
「……当然の結果」
 樹梨の黒い髪はどうやら隠れないらしく赤い帽子の端から黒い髪が出てきている。
「えっとえっと……」
 さすがの出来事にフランもオロオロしている。まぁ、これはさすがに想定外だな。
「ちょっと待ってて」
 そういうとサンタ服の下……つまり元着ていた服に手を突っ込んで探っている。取り出したのははさみだった。
なんでそんなものをポケットに入れているのだろうかと思っていると帽子をとってサンタ服のポケットに突っ込み
 じょき
 髪を切った。ばっさりと。アレだけ切りたがらなかった髪を容赦なく切っていく。
「シズ……。髪切っていいの?」
「仕方ない……」
 どんどん短くなっていく髪。前髪は既に首のところまで来ている。
「そういえばなんで髪を伸ばしてたです? 最初に会ったときから思ってたですけど」
「対人恐怖症。これがあれば人は寄ってこないし」
 後ろ髪も切り始めた。足元には髪の束がある。
「髪を伸ばす前のときは自分でよく切っていたから髪は自分で切れるけど……」
 段々と様子がおかしくなってきた。樹梨がこんなに饒舌になるのはありえない。
「久しぶりだなー。この髪型。何年ぶりだろう。最後にこの髪型に切ったのは中学卒業前だから三年前くらいかな。みんなと会う前だね。
あっ、でも古山は長馴染みだから知ってるかな」
 どんどん口調がおかしくなるし髪は整っていく。というか馴染みという衝撃的な事実。この二人はあまり喋らないから昔話も聞いたことない。
「四年前だ。俺と会ったのは幼稚園入学からだ」
 古山が答える。そういえばこの会ったときもこいつら二人でいたな。
「あれ? そうだっけかな。昔のことは覚えてないさ! よしこれで散発終了!」
 腰まで伸ばしてあった髪は普通に人と同じくらいの髪に戻っている。当然だが樹梨という点で言えばすごいことだ。
後ろ髪は首よりかすこし長いくらいだろうか。初めて顔が見れると期待したが狐のお面を被っていて見ることは出来ない。
「お面は外さないです?」
「コレはフランの言う個性、アイデンティティってやつね。つけてないと日暮と微妙にキャラ被っちゃうからね」
 樹梨は楽しそうに言う。仮面で見えないがきっと笑っているのだろう。
「ところで何でそんなに饒舌なんだ?」
「人って髪型で結構性格変わるものなんだよ。私はそれの究極系」
 なるほどな。極端すぎるがそれも個性か。樹梨はポケットから今度はビニールの袋を出すとそれに髪を入れる。お前のポケットは四次元か?
「ごめんねー。時間使わせちゃって」
 袋の口を縛りながら申し訳なさそうに言う。
「いいですよ。時間は多めに見積もってるから大丈夫です」
「ありがとう。ちょっとコレ玄関に置かせてもらっていい?」
 後半部分は古山に向けて言ったのだろう。古山が頷く。それを見ると袋を玄関に投げる樹梨。袋は放物線を描き玄関前に着地をする。
212創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 01:06:46 ID:AGV9J9PL
「準備完了! それじゃあ行こうか」
 フランが笛を吹く。スタンバイしてたトナカイはこっちに走ってきて通り過ぎてから止まる。ソリが丁度俺たちの前で止まる。
「みんな乗るんです。私は乗る前に……」
 白い大きな袋から筒を取り出す。何も書いてない。何でできているかもわからない筒。
端っこから出ている糸だけがそれの不完全な部分だった。そこに火をつけて導火線の着いてない部分を上に向かせる。導火線はどんどん短くして筒に触れる。
 どんっと大きな音と同時に光る何かが上に飛んでく。空の彼方まで飛んで行きいつの間にか見えなくなった。
「で、どうなるんだ?」
「効果がでるのは一分後です。とりあえず飛ぶです」
 フランがすばやく筒を回収して袋に入れ、ソリに乗り込む。ソリ自体は結構大きいので七人乗っても大丈夫。
「行くですよ。ちゃんと捕まるです」
 フランが戦闘に立ち、また笛を吹く。トナカイは走り出す。このままいくと階段に突っ込む。スピードはどんどん上がり
飛んだ。浮いている。どんどん地上から離れていく。同時に雪が降り始める。空には雲がほんの少しだが出てきた。
「さっきのはですね、雪を降らせる装置なんです。昔、いたレインメーカーって人の技術の応用です」
 すごいものを作る人がいるものだ。雪はゆっくりと空から降ってくる。地上は遥か下に見える。
「姿消さなくていいのか?」
「変身してればばれても見ても普通の人は幻覚だと思うですよ」
 空にサンタが飛んでるみたら普通の人は「疲れてるな」程度にしか思わないか。俺もそう思うだろうけど。
 フランが袋からまた道具を出す。今度はどこかの星の書いてあるボールを捜す漫画で出てきたようなレーダーだ。
円形で上にボタンがあるだけのシンプルな形。画面にはなにも映っていない。
「いないですね……。もうすこし検索範囲を広くするです」
 ボタンを押す。すると上のほうに反応がある。
「まだ一件です……。もうちょい広くです……」
 また押す。またひとつだけ一つ目の近くに反応が増えた。それを見てフランがため息をつく。
「私の担当地域の反応は二件だけです……。今日中に終わりそうです。まあいいです。早めに終わらして夜景を楽しむですよ」
 そういうとトナカイの縄を引く。スピードが加速する。風の如く走るとはこのことだろう。下はきれいなネオンの光であふれている。鈴の音を鳴らしながら走る。
 何分立っただろうか。みんなが景色に見惚れているとトナカイが減速を始めた。
「そろそろ目的地付近です。反応が密集してるですから楽です」
 減速しながら下降も始める。目的地は住宅地らしい。まだまだ明るい住宅街の赤い屋根の家の屋根に降りる。あっという間だ。
「じゃあ、プレゼントに行くです」
「まだ寝てないんじゃない?」
「大丈夫です。誰かついてくるです?」
 工藤はやはり乗り物酔いらしくダウン。古山は興味がないらしくパス。樹梨は工藤の介護でパス。ということで日暮と柳川と俺で行くことになった。
「じゃあこの珠を触るです」
 首飾りの青い珠を前に出す。三人がその珠に順番に触る。全員の姿が消えて準備が整うとフランが頷いてソリから降りて屋根を抜けて下へ行く。俺たち三人も続いていく。
降りたとこは小さな部屋で男の子が一人寝ている。ほかにも布団が並んでいるところから言うと親と一緒に寝ているのだろう。
フランが首飾りを外し青い珠を男の子に近づける。一瞬、大きく光り目をつぶる。次の瞬間には男の子の枕元にはヒーローもののおもちゃが置いてあった。
一瞬すぎてなんだかわからないうちに終わってしまった。フランは首飾りを首にすると上を指差した。帰るということだろう。
しかしどうやって上に戻るんだと思っているとフランがジャンプした。そのままフランは壁を突き抜けて行ってしまった。
真似してジャンプすると宙を浮き、勢いは止まらずそのまま天井をすり抜けた。
天井を抜けてもそのまま突き抜けてしまうのだろうかと思ったが天井を抜けた瞬間、石の効果が切れたらしく屋根に足が付く。
「どうだったです? ジャンプしたりするのは慣れるまで少し混乱するかもです」
「なんとも言えないな」
 それが素直な感想だった。サンタよりか魔法使いと言ったほうが正しい。次のとこに向かうためにまたソリに乗り込む。後ろにいた柳川が
「眠いから適当になってきてるな」
 とつぶやいていたがどうやら俺にしか聞こえなかったらしいので無視することにした。
213創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 01:12:04 ID:AGV9J9PL
 次のところはフラン一人で入り問題なく済んだ。時間はまだ十二時になっていない。
「配り終えたので帰るです。早く帰ったほうがいいです?」
 工藤の酔いは治ったらしいので遠回りしながらゆっくり帰ることになった。空はすっかり曇っている。雪はさきほどと変わらずゆっくり降っている。鈴の音が聞こえる静かな世界。
 何分経っただろうか。すこし雑談しながら空中観光を楽しんでいるとどこからともなく空を切る鈍い音が聞こえてきた。
「なんだ、この音?」
 柳川が雑談を中断して言う。
「アレかな?」
 遠くのほうになにかある。
「あれはヘリコプターだねぇ。こっち向かってきてるけど大丈夫かなぁ?」
「大丈夫です。きっと多分違うことが目的ですよ」
 ヘリが段々近づいてくる。本当に大丈夫なのだろうか。と思っていると
『そこのサンタ。停止しろ』
「なんか呼ばれているけどいいのぉ?」
「あはははは。逃げるですよ!」
 トナカイの縄を強く引く。トナカイはスピードを加速させる。
『待てって行ってんだろ!』
 ヘリも負けないぐらいのスピードで追いかけてくる。というかヘリってあんなに速かったのか。
「まずいです。トナカイさんの体力切れたら負けちゃうです。只でさえさっき急いで配ったから体力ないのにです」
「なんかヒミツ道具ないのか?」
「私はあくまでサンタで青い猫じゃないです」
 フランが頭を抱えて悩んでいる。ヘリはぴったし追いかけてきている。
『止まらないのか。なら後悔するなよ!』
 ヘリのドアががらっと空く。そこには漫画で見たことあるランチャーというものを背負った男がでてきた。
男はスーツを着ている。顔はよくわからないが男だと思う。
「でりゃ!」
 撃ちやがったと思ったら爆発するわけでもなくかぎ爪が飛んできてソリに引っ掛かった。慌てて樹梨がはずす。
かぎ爪には紐が付いていることとその紐を巻き上げていることからあれで捕獲して速度を落とすつもりなのだろう。
「フラン! その石を私に使って物をだすよ!」
 フランが急いで首飾りを外して樹梨に近づける。青い珠がさきほどと同じように一瞬光ると樹梨の目の前に竹刀が出てきた。
「俺にもやってくれ」
 古山が申し出る。樹梨と同じように近づける。今度は弓と矢が出てきた。
「なんでこんなに出るんです?」
 フランが驚きながら言う。
「仲間を守りたい。友達を守りたいというのは純粋な願いなんじゃない?」
 樹梨がにやりと笑いながらフランの質問に返す。
『武器を捨ててくれたら怪我しないですむぞー』
 さっきとは違う声が拡張機から聞こえる。もうランチャー打つ時点でそれはおかしいと思う。
ランチャー野郎は一発目のリチャージが間に合わないらしく二個目のランチャーを手に取った。
「次、発射!」
 どごんというと共にかぎ爪が飛んでくる。
「はっ!」
 樹梨がそれを竹刀で弾く。てかすごいな。続けて古山が矢をランチャー野郎に射る。野郎は転がって矢を避けた。
ヘリの中で何か怒鳴っているらしい。良く聞こえない。ランチャー野郎と一緒に違う男が出てきた。
野郎と同じスーツを着ているが、手には細長い黒いものを持っている。軽い発砲音。それを撃ってきた。同時に樹梨の足元に穴が開く。
「動かないでください。コレはライフルです。動くと死にますよ」
 ライフル男ははっきりとそう言った。実銃を投入するとはそこまでサンタを捕獲したいのか? 俺には何もすることができない。
214創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 01:18:32 ID:AGV9J9PL
「ゆっくりと速度を落としてください。あと武器は捨ててください」
 古山と樹梨が武器を足元に捨てる。さすがに実銃には抵抗できない。フランがゆっくり速度を落とす。距離が段々短くなってくる。
「フラン、モノって思ったところに出せたりする?」
「一応できるです」
 後ろでフランと柳川の会話が聞こえる。
「じゃあ、俺が合図したらかざして、そんで聞いてるだろ? 神宮。お前はソリを加速させろ」
「何をする気だ?」
「そこ。こそこそ喋らない。撃ちますよ?」
 ライフル男に言われて話をやめる。反論はできない。言われたとおり実行するしかない。段々とヘリが近づいてくる。
もうすこしで接触する。ライフルもこの近距離では逆に使いにくいのかライフルを下ろした。
「なあ、お前ら。そこに七人の人がいて一人の犠牲で六人が助かるならどうする? 普通なら自分じゃない誰かを犠牲にしようと考える。だけど俺は違うぜ?」
「何を言っているんだ?」
 ランチャー男が答える。
「今だ!」
 フランが石を柳川にかざすのが目の端に見えた。俺はトナカイの縄を掴むと思いっきりトナカイを縄で叩いてみた。一気に加速する。
と、同時になにかが後ろに出てきてそれがすぐに消えたのがわかった。
「なんだよこれは!」
「なんですかこれは!」
 後ろからヘリの男たちの驚く声が聞こえた。後ろを向くとそこには大きな人型のロボットが両手を広げ飛んでいた。
「先に行け! 俺はこいつで足止めをする」
 そのロボットの背中に柳川はいた。発砲音と金属の擦れる音が聞こえる。しかしその音はどんどん遠くなっていく。ヘリもロボットもいつしか見えなくなった。
「戻ってよ! ヒロが死んじゃう!」
「できないです。彼は行けといったです。さっきの言葉聞いてたです? 彼は自分から私たちを助けるために身を投げたです。私は彼の意思を尊重するです」
 フランはきっぱりと言い切りトナカイの操縦に戻る。日暮は涙をぽろぽろ流している。
「大丈夫だよ。ヒロなら帰ってくるよ」
「そうよ、私たちに出来るのは泣くことでもなく祈ることでもなく彼の言われたとおり逃げることよ」
 女二人が日暮を励ます。日暮は俯いてしゃくりながら呟いた。
「ヒロ……。待ってるから……」

一方その頃ヘリのほうでは……
「お前、今それどこから出したんだよ!」
「夢のない大人には理解できないさ。さてとこれ以上戦う? これの恐ろしさぐらいあんたたちでも理解できるだろ」
「それってアレですよね? アレに出てきた」
「アレだらけじゃわかりませんよ? まぁ、あんたが思っている通りのものと考えていいよ」
「ラピュタのロボットとは俺がほしいくらいだが光線撃たれたら一瞬でヘリ沈むな」
「それじゃあ撤退してね。さもないと撃つよ」
「ああ、わかった。ところでそこの極悪サンタ」
「なんだ? ランチャー野郎」
「お前、名前はなんて言うんだ?」
「おいおい、自分から名乗れよ」
「俺の名前は艸神だ」
「俺の名前はコー・イ・ヌールだ」
 そう言って彼はロボットを旋回させて行ってしまった。
「追いかけますか?」
「いや、攻撃されたらシャレにならん。撤退だ」
「あいつ、自分の魔法の変身が切れてるのに気が付かなかったみたいだな」

その後、古山の家に到着したサンタ一行の数分後柳川は到着した。特に怪我はなく無事だった。
最もその直後日暮のタックルを受けてロボットに頭をぶつけ怪我を負った。その夜のうちにフランは別れを惜しみつつ帰国した。ロボットもそのときに持っていった。
 冒険はこれで終わった。明日から始まる冬休みを楽しみにしながら彼らはそろそろの帰路についた。雪は静かに降っていた。
215創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 01:20:13 ID:AGV9J9PL
これにて終了。いつもすみません
216創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 02:11:46 ID:0SaEvD7J
投下きてるけど忙しくて読めねぇぇぇぇ
いつも投下乙です
217創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 21:10:42 ID:bLh1Czis
投下乙!面白かったよ
でてくる人数が多いのに一人称でそれぞれのキャラを立てて書けてるのは凄いなー
218創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 23:02:25 ID:AGV9J9PL
やめて! 褒めないで! 顔真っ赤で転がっちゃうから!
ということで本日も投下。これが最後となります

井戸

 ある村のはずれ。鬼がいると伝えられる枯れ井戸の近くに父親をなくした家族がいた。
母親は二人の子どもを養うため朝から晩まで働き二人の幼い兄妹は協力して家事をこなしていた。
 兄のほうは父親に似たのかとても短気でちょっとしたことがあるとすぐに暴力を振るうような癇癪持ちで、妹のほうは母親に似たのかとても涙もろくすぐに泣く性格であった。

 そんなある日のことである……
 俺は学校から帰って来たら早速皿洗いを始めた。妹は台所には手が届くもののかなりの高確率で割るからだ。
とは言っても今日は学校で嫌なことがあったから腹の虫の居所が悪い。どうにか抑えつつ皿をひたすら洗う。
これが終わったら風呂掃除が俺を待っている。皿洗いが終わり風呂を洗っていると妹が帰ってきた。泣いているようだが構ってはいられない。風呂を洗い続けた。
 風呂掃除が終わりリビングに向かうとまだ泣いていた。
「なにがあったんだ?」
 と聞いても泣いているだけで要領を得ない。泣き止ませようとしても泣き止まない。段々と腹が立ってきた。
 それでも我慢して優しく頭を撫でようとした。妹はそれを振り払った。もしかしたら反射的にやったのかもしれない。しかしそんなの関係ない。
 気付いたら殴っていた。妹は頭を抑えて泣いている。さっきよりもはるかにうるさい。うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい。
 殴る。ひたすら何回も殴りつける。殴って泣いているのを聞くとさらに殴った。次第に妹は殴っても反応しなくなった。
 気が付くと部屋は夕日が差しているわけでもなく赤くなっていた。足元の妹は蹴っても何も反応しない。揺さぶっても何も言わない。
震える手で手首を握るがただ冷たいだけだった。
 妹を背負って外に出る。思えば人が見ていたらまずかっただろう。しかしそんなこと考える余裕はない。俺は枯れ井戸の中を覗く。
中は相変わらずなにも入ってない。大雨が降ると溢れることがあるがそんなこと滅多に起こらない。俺は決心して妹を中に投げ込んだ。
 ややあってから重いものが落ちる音が聞こえた。中を覗くと妹頭がわずかに見えた。しかしきっと石かなにかと見間違えするだろ。俺はその場をあとにした。
 部屋に戻り床を吹く。幸い服以外の布にはついていないおかげで全部落とすことができた。服は井戸に捨てる。
妹のカバンと靴も井戸に捨てる。これで大丈夫だ。
 日が暮れた頃に母親が帰ってきた。玄関に迎えに出て妹がまだ帰ってきてないと言う。
普通なら妹は日が高いうちに帰ってくるので母親は慌てて妹の友人の家に電話を入れる。もちろん見つかるはずもない。母親は続けて警察に連絡した。
 一晩中警察も探したが妹は見つかることはなかった。
 しかしこれでいい。見つかったら殺人だ。俺は自分の保身を一番に考えていた。母親が休んでいいと言ったので俺は寝ることにした。
母親は何に使うのか、大きいロープを肩に掛けて出かけていった。
 次の日。起きると母親は寝ていた。疲れているだろうからゆっくり寝かせることにした。今日もまた警察が捜すのだろうか。
一抹の不安を抱きながら学校に向かう前に井戸を覗いた。
 妹の頭が見えない。見つかったのか。パニックになるのを抑える。そもそも見つかったら騒ぎになる。
むしろ見えなくなった以上は妹も見つからない。これで俺は大丈夫になったんだ。
 俺は上機嫌で学校へ向かった。
219創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 23:07:49 ID:AGV9J9PL
 父親の仏壇の前で手を合わせる。仏壇の隣には妹の写真が置いてある。妹が行方不明になって五年。
警察はとっくのとうに捜査を打ち切り行方不明者リストに入れて終わった。母親もそれで吹っ切れたのか妹を探すのをやめて前と変わらない日常を送っている。
 もう俺は捕まることはないだろう。だからと言って自首する気もない。せっかく捕まらなかったのに捕まりに行くなんてまぬけだ。
 そんなある日のことである……。
 俺は学校の友人と帰っていた。下らないことを話していたと思う。ふと思い出したかのように友人は話し始めた。
「そういやーさー、俺、彼女出来たんだぜ」
「自慢か? 殺すぞ」
 友人を睨みつける。友人は慌てたように話を続ける。
「睨むなって。お前が言うと本当に殺そうなんだよ。お前、人殺したことあるだろ」
「あるはずねーだろ。て、誰なんだ? 彼女って」
 友人はにんまりと笑って同級生の名前を口にした。
 その女子はクラスでは全く目立たないが密かに男子からの人気が高い子だった。そして何よりも俺が好きな子だった。
 俺は動揺しないように気をつけながら答える。
「へぇー、よかったじゃないか。おめでとう」
「いやぁ、もう最高にかわいいぜぇ。こうちょっとした仕草がもう可愛くて可愛くて」
 嬉しそうに友人は話す。段々と腹が立ってきた。
「ノロケ話ならいらないぞ」
「まぁそう言うなって。この前なんて料理作ってくれたんだけどさ。それが滅茶苦茶うまくてよー」
「いらねーって言ってんだろ」
 口調が荒くなる。友人はムッとした顔になった。
「んなに怒れなくてもいいだろ?」
「お前がやめねーからだろ」
 それを聞いた友人は笑い始めた。
「もしかしてお前、嫉妬してるのか?」
 笑いながら言う友人。頭に血が上った。
「……おい、ウチ今から来るか?」
「お? なんだ祝ってくれるのか? 行かせてもらうぜ」
 馬鹿な友人はそれで今までの話を忘れたらしく機嫌がよくなった。俺は努めて冷静を装い友人と話をしながらウチへと向かった。
 村からはずれる林の道を歩く。友人は何度も「こっちであってんの?」と聞いてきた。確かに人が通りそうにない道だ。
しかし間違いなく俺の家はこっちにある。そのたびに俺は「あってる」と返して進んだ。
 やがて林を抜けうちが見えてきた。まだ母親は帰ってきていないはずだ。
「うおー、すっげー! なんかいい感じの家だな!」
「おう、そうだろ。あっちには井戸があるぞ」
「お、まじでー? 俺井戸見たことねーんだよな!」
 何が楽しいのか滅茶苦茶にはしゃいでいる友人は走って井戸に駆け寄っていった。
「すげー! なんか出てきそうだな。中に死体でも入ってんじゃねー?」
 友人は体を乗り出して中を覗きこむ。
 今だ。
「自分で確認すればいい」
 俺は友人を押す。半分身を乗り出していた油断していた友人はそのまま井戸に引き込まれていった。
叫び声が井戸の中を行きかっている。ややあってから壁に頭が当たったらしくとてもいい音が響く。
これで死んだかと思っていたが生きているらしくなにか叫んでいる。
 うるさい。
 俺は近くの大きめの石を拾う。だいたい顔と同じくらいの大きさだ。中々重い。それを井戸に投げ込んだ。
 悲鳴が聞こえた。しかしまだ生きている。俺は近くの石を次々と投げ込んでいく。最初は聞こえてきた声はもう聞こえない。
 近くに石がなくなったので手を止めて井戸の縁に腰を下ろした。汗が吹き出てくる。
こんな汗は体育でマラソンでもやらないと出ることはないだろう。手で汗を拭きつつ井戸を覗く。
220創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 23:12:16 ID:AGV9J9PL
 かなり投げ込んだつもりでいたがそこまで石は目立っていない。最もこの井戸を覗くようなやつは母親しかいないし母親も井戸の中がどうなっていたなんか覚えていないだろう。
 俺は井戸から離れて家に帰った。
 その夜。予想通り連絡網が回ってきた。内容はもちろん俺が殺したやつが家に帰ってこないというものだ。当たり前だ。そいつはウチの井戸で永眠しているからな。
 無駄だとわかっていても一応友人となっている以上は捜索を手伝わなければならない。
絶対に見つかるはずのないものを探すほどめんどくさいこともないだろう。仕方なしに夜の中を走る。
 適当に歩いていると前に人影が見えた。あれは友人の彼女だったやつだ。俺はなんて声を掛けようか悩みつつ近くによる。
 俺の足音に気付いたのか彼女はこっちを見た。最初はびっくりしていたが段々といつも通りの顔に戻っていった。その顔には涙の欠片もない。仕方ないので俺から話しかける。
「見つかったか?」
「いえ……。見つからなければいいのです」
 彼女の思いがけない言葉に耳を疑う。驚いている俺を無視して彼女は話を続けた。
「あの人、私と付き合っていたんですよ。彼から告白されてびっくりして好きな人いるのにそのまま返事しちゃったんだけど……」
 彼女がうつむいて話を切る。どこか悲しげな表情だ。
「無理に話さなくてもいいんだぞ」
 彼女は首を横に振る。話したいらしい。俺は黙って聞くことにした。
「最初は優しかったんだけど段々と命令が多くなってきてね……。この間も弁当作って来いって言われてさ。ちょっと抵抗したら暴力振ってきて……」
 嗚咽を漏らす。あいつこんなにひどいことしときながらあんな楽しそうにそのことを話していたのか。死んで当然のやつだな。
「もしもあのまま続いてたら私はきっと彼を殺してたわ。だから見つからないほうがいいの。見つかって戻ってきたら私は殺しちゃうかもしれないから」
 俺は話を止めるように肩を触る。ビクッと動いたので思わず手が離れる。
「あー、すまないな。余計だったか」
「ごめん。驚いちゃって……。嬉しいよ」
 そう言うと今度は彼女のほうから近づいてきた。自然に抱きついてくるような形になる。衝撃の連続だ。
「私、あなたのことが好きなの……」
 さらに体が密着する。彼女の頭が俺の肩に当たる。俺はどうにか彼女の頭を撫でることに成功した。
 その後彼女と少し話し別れた。俺は頭の中に花畑を咲き乱れさせながら家路についた。家に帰るとまだ電気はついていた。母親がまだ起きているようだ。
 だが家に帰る前にばれないように井戸を覗く。月明かりは奥まで差し込んでいるが死体は見えない。とりあえず一安心する。
 玄関を開けると母親が出迎えてくれた。心配そうな顔をしている。言いたいことがなんとなくわかったので首を横に振ると母親は小さな溜息をして家の奥に戻っていった。
疲れていた俺はそのまま部屋に戻り布団の上に倒れこんだ。
 まどろむ意識の中、母親が何かを背負って出て行くのが見えた。
 翌日、俺は眠っている母親を起こさないように学校へ行った。行く前に井戸を覗く。朝の陽射しは井戸の底まで照らす。とは言っても全部は見えない。
見た感じでは死体は見えないようだ。俺は安心して待ち合わせ場所へ向かった。
 待ち合わせ場所にいる女子が俺に向かって手を小さく振っている。
221創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 23:18:04 ID:AGV9J9PL
 煙草を灰皿に押し付ける。もうすぐ彼女が来る。彼女は五年前から煙草の煙は嫌いだって言っていたからな……。
 一人の女性が駆け足で寄って来る。彼女は肩で息をしながらこっちを見る。俺は笑って答える。
今日は付き合い始めてから五周年だ。これは友人が行方不明者リストに加わった日から五年ということにもなるがそんなことはどうでもいい。
今日は五周年ということでどこかのレストランで食事でもするつもりだ。最も学生の身分じゃそんなに高級なとこはいけない。安いところだけどな。
「もう五年か……」
「早かったね」
「いや、随分長かったような気がするよ」
 今までの思い出が蘇る。いろいろとあったもんだ。十年前のあの頃からは想像のつかない未来だ。あの日妹を殺したからこの運命が回ってきたのだろうか。
 だけど俺は決心した。もう人は殺さないと。元からだめだしな。俺はきっと彼女と結婚するだろう。そしたら子どもが二人ほしいな。
一人目は女で二人目は男。一姫二太郎ってやつだ。学生の身分上は子どもを産むわけにもいかないしな。
 そんなこんなでレストランに着いた。予約されていた席に通される。値段の割にはなかなかいい夜景だ。
「あのね、話しておかないといけないことがあるの」
 彼女は料理が来るとそう話し始めた。真剣な表情だ。落ち着かせるためにワインに口を付ける。
「子どもが出来たの」
 流れる動作でワインを吹く。周りの客にはどうにか気付かれていない。小規模で助かった。しばらく咳をしたあと聞き返す。
「なんだって?」
「子どもできたの」
「俺の?」
「当たり前じゃない」
 視界が白くなっていく。学生という身分でありがなら子どもを持つ……。このさき風当たりも強くなるかもしれない。下手したら就職希望のとこも落とされるかもしれない。
 赤ちゃんさえいなければいいんだ。
「産むのか……?」
「当然よ。嫌なの?」
「いや、俺たちはまだ学生だし……」
「平気よ。どうにかなるわよ」
 邪魔をするならば……。俺の未来のために。
 レストランを出たところで俺は彼女に一つの提案をした。まだ夜は始まったばかりだ。どうせだからウチの母親に挨拶しておかないかと言ったのだ。彼女はもちろん快諾した。
 昔はのどかな場所だった村も波寄る開発の手によって随分と変わってしまった。昔通った畦道にはコンクリートが塗られザリガニを釣っていた田んぼは家となっていた。
しかしどういうわけだかウチの周辺だけは昔と同じように自然が色濃く残っている。なぜこの一帯に手を出さないのかはわからない。
 暗くなった林の道を歩く。街頭の電気がぼんやりと点いている。彼女は興味深そうに周りをキョロキョロしている。実は彼女がウチに来るのは初めてのことだ。
ずっと何かと理由をつけてこさせないようにしていた。こんなところでそれが役立つとは思っていなかった。俺は彼女を前に歩かせてこっそりとベルトを外す。彼女は気付いていない。
 ベルトに両手にしっかり持ち後ろに回りこむ。彼女が振り向く前にベルトで首を絞める。
 うめき声を少し上げた。指でベルトを外そうとしている。無駄だ。段々と抵抗しなくなっていく。段々と体が重くなってきた。手が動かなくなる。
重力に従って宙を揺れる。ベルトを外すと彼女はその場に倒れこんだ。
222創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 23:25:53 ID:AGV9J9PL
 念のため首をベルトで絞めたままにする。これで死んでくれるだろう。彼女を肩に担いで家へ向かう。もちろん捨てる場所は決まっている。
 重くなった死体を井戸に放り込む。ややあって音が響く。覗いても見えない。いい感じに影になってくれたのだろう。このまま帰るのもアレなので家に寄っていくことにした。
 玄関で迎えてくれた母親は快く迎えてくれた。さらに酒まで振舞ってくれた。急に来た時用に用意していたらしい。
準備のいい母親だ。母親と積もる話をしているうちに俺は睡魔に飲まれていった。
 翌朝、眠る母親を起こさないように家の外に出る。今日は偶然にも学校は午後からなのですこしゆっくりできそうだ。当然無目的に散歩をするわけじゃない。
井戸に近づいて中を覗く。日が出ているおかげで底まで見える。
死体はない。見えないのではない。ないのだ。何回見てもそこにはむき出しの石しか落ちていない。井戸の周りを見ても近くには樹皮がはげている枯れ木しかない。
ほかに井戸があるはずがない。誰が? そもそも見つかっていたら確実に警察に転送されている。野生の動物が持っていた? 
そんなはずない。かなりの深さがある。自然消滅? ここは現実だ。
 叫びたくなる衝動を抑える。吐き気もする。胸にこみ上げるものを井戸に吐き出す。必然的に下を向く。やはり死体はない。胃の中のものを全部吐き出す。
家の外にある水道で口をゆすぐ。落ち着いてきた。なぜ死体がなくなるか。考えればわかりそうだ。井戸をもう一回見る。ふと母から昔聞いた話を思い出す。
『あそこの井戸にはね、むかーしむかしから鬼が住んでいるんだよ。いつも上から人が降ってこないか待っているのよ。だからあの井戸に何か捨てたら鬼に食われちゃうわよ』
 寝る前によく話していた。寝る前に話すような内容じゃない気がするが突っ込んではいけないのだろう。そうか。鬼なんて全く信用していなかったがいるのか。
だから死体がない。そうだ。その通りだ。
 無理矢理な理由で納得させる。そうしないと不安で押しつぶされてしまう。どうせなので散歩することにした。
 畑も田んぼもずいぶんとなくなってしまった。村は町になった。それはいいことなのだろうけどどこか寂しい。家は簡単に建つが自然はそうそう戻らない。
いや、もう戻ってくることもない。たったの五年でこんなにかわるものなのかと改めて実感する。あと五年もすればここは○○ニュータウンなんて名前になるのかもしれない。
というかもうなっているのか。
 俺は一人感傷に浸りながら家に戻った。
223創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 23:31:45 ID:AGV9J9PL
 鍵を差込む。かちゃりと軽い音がしてドアが開く。
 中から今まで貯まっていた分の澱んだ空気が流れる。俺はスイッチを入れてドアを閉める。
 今日も嫌味な上司にいろいろ言われた。忌々しい上司だ。イスに着ていたスーツを引っ掛けて冷蔵庫を開ける。相変わらず何も入ってない。
男の一人暮らしはこれだからだめだ。唯一いつも入っているビールを取って飲む。
 カレンダーの年を見てあれから五年経ったことを実感する。妹を殺してから十五年。友人殺して十年。彼女殺して五年。
 気付いたら小さな笑いが漏れていた。三人も殺した殺人鬼がのうのうと生きている。しかも自分の故郷の開発についての仕事だ。実に面白い。
罪悪感など微塵もない。どうせだから今年も殺してみるか。丁度殺したいやつもいる。俺の頭には上司のうざったい顔が浮かんでいた。
 翌日、会社に出勤してスケジュールを見て愕然とした。
 なんと今日はあの上司と二人で現場視察になっているじゃないか。一応上司にそれについて聞きに行くと「あの田舎出身のヤツはお前しかいないからな。
さっさと用意していくぞ」とおっしゃってくれた。もう迷うことはない。
 上司と電車に乗って故郷へ向かう。最近では急行を止めるかどうか検討中らしい。十年前からは想像できない発展だ。
 電車を下りて駅から出る。そこはもうどこから見ても田舎ではなかった。大きな道が通り交通量も多い。
人口も急激に上がりテレビで今住みたい場所ランキングをやれば上位に食い込むようになった。
急な発展についてこられなかった馴染みのある店は軒並みなくなり、何でも揃っている駄菓子のみがこっそりと残っている。
「ふん。昔とは比べ物にならないくらい発展したな。田舎という印象を改めないとな」
 横にいる上司が鼻で笑いながら言う。前半には同意できるが後半を出身者の目の前で言う必要があるのか? さっさと殺そう。
そう決めると今すぐにも殺したくなってきた。しかしここでカバンに入っている包丁で斬りつけたら今までの努力が水の泡だ。あくまでクールにいかないとな。
「あちらのほうにまだ余っている土地があるようです。ご覧になりますか?」
「そうか。タクシーでいくぞ。道案内は頼んだ」
 言い終わるか終わらないかのうちに通っていたタクシーを止める。目的地を告げてドアを閉める。さてどうやって殺したものか。
 タクシー内での会話はなくうちの前の林の道に着く。タクシーから降りて目の前の道を見る。ここだけは十五年前と何も変わらない。
「なかなか広そうな土地だな。資料をくれ」
 すぐさまカバンの中から資料を出す。当然ながら俺の家のことも書いてあると思う。ちなみに俺はちゃんとは読んではいない。
「ん? お前の実家はこの奥か?」
「はい、そうです」
「なら話は早い。説得してこの山を買い取るぞ。金は出来るだけ出すな」
 そう言って一人ですたすたと歩いていく、この隙にカバンの中から包丁を出して、うまくベルトに挟む。
 相変わらず何も変わらない林道が続いている。もうすぐ彼女を殺したところだ。そこが丁度いいだろう。
上司はいつも少し前を進んでいるおかげで簡単に後ろを取れる。あとは楽だ。足を払って地面に叩きつける。
突然のことに対応できなかった上司は無様にも地面に転がった。
「なにをす」
 言葉が出る前に喉を踏みつける。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
 笑いながら。リズムよく。小気味のいい音を聞きながら。踏む。
 どうせだから腹も踏んでみる。反応がない。
224創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 23:38:33 ID:AGV9J9PL
「ちぇっ、もう死んじゃったのか……」
 しかしよくよく考えれば首が人間ではちょっとありえない形をしている。これは死んでいるな。包丁は使わずに済んだのでカバンに戻す。
 靴を見たら血がついていた。汚いので仕方なく上司の靴と履き替える。悔しいがなかなかの高級品だ。履き心地もいい。
つぎにスーツを脱がせて、上司の顔に巻きつける。運ぶのに血がついたらいやだしな。重い荷物を担いでおなじみの場所に向かう。
 ややあってドサッと重い音が鈍く反響する。さすがに重くて汗をかいてしまった。自分の着ていたスーツを肩に引っ掛ける。
中身は見る必要はない。明日には鬼が処理してくれるからな。
 家によると母親が笑顔で迎えてくれた。五年前からあまり変わっていない。それなりの歳であるにもかかわらず、かなり元気だ。
案外鬼は母親なのかもしれない、なんて悪い冗談が頭を過ぎる。
 その日もいつも通り酒盛りして俺が先に睡魔に飲まれていった。母親はかなりの酒豪で酒では滅多に酔わない。俺はその特製を受け継いではいない。
 翌日、携帯のアラームで起こされる。ゆっくりしたいが朝から仕事だ。母親は気付かなかったようで助かった。俺は気付かれないように出勤した。
もちろんその前に井戸を覗いたが死体はなくなっていた。
225創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 23:44:16 ID:AGV9J9PL
 デスクの資料とにらめっこする。資料とは故郷の地図だ。もはや開発の余地がないと言いたい。一箇所を覗けば。
 地図のある地域だけは大きく赤で囲まれている、かなり大きめの土地だ。そしてそこは俺の家が含まれた山。
 その地域の権利書を見ると持ち主は俺の母親になっている。まさかウチの家の所有物だとは思わなかった。しかしここで引くわけにはいかない。
故郷一帯の開発部長として。上からも散々言われている。出世にも大きく関わってくることだろう。
「仕方ない……」
 俺は重い腰を上げて実家へと向かった。実に五年ぶりのことだった。
 電車から望む光景は地方都市そのものでもはや田舎のいの字もない。駅から出ると活気に溢れた町並みがそこにあった。
 懐かしい駄菓子屋は相変わらず時間停止でもしているかのようにそのままひっそりと建っている。
 タクシーで目的地へ向かう。たったの五年しか経っていないのに外から見えるのは別の町のようだった。いや、別の町なのかもしれない。
 時が止まった場所で下りる。林はゆっくりと揺れている。周りを見ながら歩くがそこは二十年前から何も変わっていない。しかしもうすぐここもなくなる。
感傷に浸ってはいられない。
 家もそろそろガタがきてもおかしくない。そのくらい長く変わっていない。なじみの井戸も変わらない。玄関を叩くと母親が出迎えてくれた。相変わらず若い。
居間に通されて茶を飲む。多少世間話をした後、話を切り出した。
「だめよ」
 母親の答えは簡潔だった。しかたなく金を積むが頷かない。仕方なしに多少法外な値段を出したが了承しない。
「それならば仕方ない」
 いくら若く見ても所詮母対息子。一分後には母親は血を流しながら地面に伏せていた。
 後は首を絞めるだけだ。
 俺は体をこっちに向けて母親の首を絞める。あらん限りの力をこめて。
 母親は抵抗しなかった。しかし最後に笑って俺に一言呟いて死んだ。
「逃げられない」
 と。
 すこし動揺したが頭を振る。世迷言だ。そう決めた俺は動かなくなった死体をいつもの通り井戸に投げ捨てた。これでいい。
俺の道に邪魔なものは全て消してやる。俺には鬼が味方についている。
 空を見上げると今にも泣き出しそうな雲をしていた。
 ほどなくして大量の雨が降り始めた。映りの悪いテレビにチョップを食らわせながら聞くとどうやら今日はずっと雨が降り続けるようだ。
会社に戻るのもめんどうなので「話が長引きそうだから今日は戻らない」と受付に伝える。
 本人が死んでしまった以上は土地の権利書を探さなければならない。聞いてから殺せばよかったと多少後悔しながら探す。
 雨の音を聞きながらタンスをひっくり返して探す。しかしいままでよくも殺人がばれなかったようなと今さながら思う。
彼女のほうも俺と会った後、行方不明になっていることになっている。上司は駅で俺と別れてそのまま行方不明。明らかに二件とも俺が最後の目撃者となっている。
警察での取調べは受けていない。運がいいのか悪いのか。
 お袋のタンスをひっくり返したらロープやらなんやらに混じって目的のものが見つかった。しかし土地の権利書といっしょに白い封筒が貼り付けられている。
「なんだろ」
 俺は特に疑問も持たず封筒を開けた。
 中からはこれまた白い紙が一枚だけ出てきた。
 その紙に書かれた文字を読む。
 雨の音が止まったように思えた。

 とある地方の都市にある山。そこには鬼の住む井戸と古い家がある。その井戸に近づくものは例外なく鬼に食われてしまう……。
 ある若者がそこへ近づいた時荒れ果てた家で一枚の手紙を見つけた。そこには達筆な文字でこう書いてあった。


『次の鬼はお前だ』
226創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 23:46:25 ID:AGV9J9PL
以上で終わりです。長い間お世話になりました。
これでやっと全ての作品を心置きなく消せます。ありがとうございました
227創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 00:07:39 ID:9QCibsWw
ロープは井戸に降りるためのものか…こええ
母親は子への愛情のために死体を他の場所に隠して埋めていたのか?
それとも本当に鬼で食べていたのか、解釈がわかれるところだね
228創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 00:17:22 ID:TTmhL6a0
途中で気が付いたけど、あのコピペが元ネタか
ううむ、いいオチだ
229創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 08:17:40 ID:MuBS02tU
凄い怖かったけどおもしろかった
230VS朧:2009/02/03(火) 18:52:33 ID:lQTnwuvN
>>168続き

それからは一方的な展開だった。俺は朧の攻撃に成す術が無かった。
黙ってやられていた訳では無いが、攻撃も反撃も悉く躱される……。

「信じられない! この展開を誰が予想したでしょうか! あのハルト・リュウが少女に子供扱いッ!!」

実況の言葉に、焦りが生じる。

(このままでは負ける――! 何か、何か無いのか!?)

朧は離れた位置から俺の様子を窺う。
俺の一挙手一投足を見逃さない様に……。

(俺を観察している……。己を知り、敵を知れ。オーナーに教えられた事だ。相手を視る、か……)

今更、何が判る訳でも無いだろうとは思ったが……俺は朧を視返した。

(ゆったりとした拳法着。細身だな……。それは最初から判っていた。その通り、一撃は重くなかった……!? 重くなかった!!)

――閃き。一つの希望。心の暗雲は晴れ、一歩踏み出す。大きく――そして力強く!!

ジリッ、ジリッ……。

俺が進み出ると、朧は一歩一歩後退して行った。
そう、俺に足りなかったのは、必死に相手に向かって行く気迫! 腕力では俺に分がある!
打ち合いになれば、手数では劣っても勝てる!

追い詰められた朧は、不敵な笑みを浮かべた。

「お気づきになったようですね……! 最早、私の姑息な児戯は通用致しません。 では、これで仕舞いに致しましょう!」

――風が舞い、朧が消えた。
同時に、後頭部に衝撃が走る!!

「襲!!」

朧の両脚が俺の首を固定し、肩車の体勢になる!

「鷲爪――」

そして両手は俺の後頭部を押し付ける!

「断崖衝突撃墜!!」

勢いに負け、俺は前のめりに倒れ込んだ……。
地面が眼前に迫る――!!
231創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 18:53:43 ID:lQTnwuvN
誰も居ない。
再開するなら今の内……!
過疎は落ち着くな。
232VS朧:2009/02/10(火) 19:00:50 ID:SZcYSLLc
(受身は――――)

肩には上腿、腋の下には下腿、朧の両脚は俺の腕を完全に固めて封じている……!

(――不可能!? ここで敗れて堪るかァッ!!)

思うより先に、身体が動く! 全身を捻って、半回転!

「何ィッ!? 未だ……」

朧は膝を伸ばして、体を入れ替え様とした。

「させるかアァァーッ!!!」

俺は腋を締めて、朧の両脚を固定する。

「はっ、放しなさいッ!!」
「死ねやッ!!!」

ズダァン!!

脳が揺れ、青白い星が幾つも瞬いた。朧がクッションになり衝撃は然程でも無いが、受身を取れなかったのは痛い。
この機を逃さず、マウントを――――と思ったが、朧は既に抜け出して、距離を取っていた。
落下の衝撃で俺の拘束が緩んだ一瞬に、転げながら移動したのだ。
俺も隙を見せない様に、朧を睨みながら立ち上がる。これで仕切り直しとなった。

「おぉ……不覚ッ! 息吐かせぬ攻防に、言葉を失ってしまいました! 実況失格ですッ!」
(見えなかったのか……)

大袈裟に嘆く実況……だが、その口を封じたのは他でもない――朧の動きの所為だ。
実際に対峙している俺だけでなく、傍観者も朧が俺の背後に回る瞬間を捉え切れなかった。
それが彼女の“本気”なのだ! 本当の闘いは、これから―――――!?

しかし、朧は直ぐに構えを止めた。

「お見事……! 宣言通り、この闘いは私の負けに御座います。潔く引きましょう」
「……はァ!?」

朧は降参の証として、両手を上げて俺に背を向けた。

「しっ……失格ゥ!?!? 朧、突然の棄権!!! どうしたと言うんだアァッ!?!?」

暫しの沈黙の後、激しいブーイングが巻き起こる。
俺は茫然と去り行く朧の背を見詰めていた。

勝者:ハルト・リュウ  決め技:無し(朧の棄権)
233創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 19:02:53 ID:SZcYSLLc
好い加減、決め技の項を普通に埋めたい
234湯葉とわたくし1/2:2009/02/14(土) 04:46:32 ID:NQ2I44Zd
俺の黒歴史晒すよー


 まだ駆け出しで創作メニューについて試行錯誤してたころ、なんとなく湯葉に手を出そうと思った事がある。
 当時はまさにイソフラボンブーム真っ只中。不勉強ながら自分はそれまで食べた事はなかったけど、揚げてディップ風にしたり海鮮で巻き寿司にしたりと、なーに、料理方法はいくらでもあるさと考えていた。シンプルなものほど応用が利くのである。
 次の土曜日深夜。いや、日曜日の早朝といった方が正確だろうか。仕事帰りの俺は、仕事場の近くの24時間開いてるスーパーへと買出しに向かった。
 これは同業者ならわかってもらえるかもしれないが、土日の仕入れ量はタイトでなくてはならない。青果・魚市場は日曜日が休みであることが多く、営業用に足りない食材が出ても出入りの業者に配達を頼む事が出来ないのだ。
 土曜の配達に土日両日分を発注すれば良いと思われた方もいらっしゃるかもしれない。しかしそれをやって土日に集客できない可能性を、商売人は決して忘れてはならない。その場合、よりにもよって足の速い食材ばかりが在庫の山を築き上げる事になる。
 ある程度の予測が出来ない事もないのだが、サービス業の客足というものは兎角読み難いものなのだ。土曜日の営業分が足りれば良し。だが、欠品を出せばお客様に、在庫を出せば経営者様に迷惑を掛ける事となる。
 勿論土曜の集客が悪ければ買い出しの必要もない。だがその日は幸運な事に売り上げが芳しかった。体はへとへとに疲れているがそれは嬉しい疲れであり、買出しは面倒な手間ではあるがそれは嬉しい手間なのである。
 閑話休題。俺はその日の営業を終えて経理報告を済ませた後、翌日分の買出しに向かった。翌日になってそれをやるよりも、早朝の道路が混雑していない時間の方が早く用事を済ませられるからだ。
 時間を無駄にしないのが良い社会人なのである。そしてそれは買出しのタイムロスとは矛盾しない……と思う。いや、どうなんだろ? 正直自信ない。しないで済むなら別にやらなくても良いよ、と後達には言っておく。
 さて、その日の買出しは山ほどあった。前述の通り、それは喜ばしい事である。忙しさの余韻で目は冴えているし、どうせすぐには眠りにつけない。
 だらだらと商品を見ていると、ふと湯葉を使った料理が出来ないだろうかという気がしてきた。所謂深夜のテンションという奴だ。なんだか今日いけそうな気がするー。あると思います。
 そうと決まれば話は早い。湯葉は豆乳から作るものと聞くが、スーパーには乾燥湯葉なるものもあるのだ。俺はすぐさまそれを買い物籠に放り込んだ。はい! 今買った! 俺の湯葉を作りたい気持ち今買ったよ!
 一応言わせて貰うというまでもなく自腹である。実現するかどうかわからぬ新メニューの試作に、貴重な店の経費を使うわけがない。精神的に向上心のない社会人は鮒だ。鮒じゃ。鮒料理人じゃ。こんな事を書いてますが、わたくし吉良贔屓です。
235湯葉とわたくし2/2:2009/02/14(土) 04:47:22 ID:NQ2I44Zd
 再び閑話休題。創作料理というのは、実は案外保守的なものだったりする。珍しい食材を流行に任せて組み合わせている様に見えて、ある程度の定石があるのだ。創作料理の極意とは、その定石を試行錯誤する事なのである。
 例えばイタリア料理。これもただ出鱈目にトマトを使えば良いというものではない。まずベースとなるブイヨンを鶏にするか魚介にするか。この選択肢は料理の可能性を広げるのではなく、寧ろ狭める為にこそある。
 例えばフランス料理。ブイヨンを使うという意味では他の調理方と共通するのだが、その使い方は素材を活かすイタリアンと趣を異にする。その素材を解体し、別種の調和によって再構築するのがフレンチなのだ。
 欧風料理だけでここまでの差異がある。料理の定石とは、単純明快でいて、しかし探れば探るほど複雑化する、木の根のようなものなのである。
「ふむ」
 買い物籠の湯葉を見ながら、俺はイメージでそれを何度も調理し嚥下した。それは甘く舌に広がり、それでいて香ばしい風味がある。その光景を傍から見ればただの怪しい人だが、明け方のスーパーなんて殆ど客はいないから大丈夫だ。きっと大丈夫!
 必要な食材を揃えてレジへ向かう。いつもの疲れたオバちゃんである。
 何しろ量が量なので、カートは二台だ。華麗な二刀流である。少しでもバランスを崩せばその場でくるくると回ってしまうことだろう。素人にはお勧め出来ない。
「宜しくお願いします」
 乳酸の凝り固まった体を鞭打ち、少し気取った声でカートをレジ台に置く。
 こういうのは身元が割れているものなのだ。店のオープン当初は宣伝の為にわざと領収書を切って貰った事もある。いわば看板を背負っているようなもの。失礼や無様な真似は出来ない。
「あ、湯葉だけレシート別で」
 おっといけない。うっかりこれを忘れると業務上横領になりかねない。
 俺は二度代金を払い二枚のレシートを手に、食材を袋に詰めはじめた。思えばこれも無駄な資源だ。いつかエコバッグを買おう、十枚くらい。
「さぁ、帰るか」
 外は明るくなり始めている。徹夜明けの俺の瞳に、朝露に濡れる青葉が眩しい。
 俺は買ったばかりの食材を収める為、再びさっき閉めてきたばかりの店へ向かった。

 俺と湯葉とのはじめての出会いは以上である。
 社会人の毎日は繰り返しのなかで洗練されていくものだ。故に、なかなかドラマチックなことは起こらないのであった。
 え?
 肝心の湯葉が出てこない? どうしたんだ、って?
 …………。
 袋に詰め忘れて、買い物籠の中に置いてきちゃったんだよ!!
 ほら、あれ薄いから!!
 ちくしょう、こんな事が起こらないようにもう絶対エコバック買うもんね!!!
236創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 05:18:04 ID:MXbvi4f4
文章が小気味いいw
これだけいろいろやって結局湯葉料理はつくらなかったのね
237創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 08:10:20 ID:AacZQknQ
あー、スーパーで買ったはずのもの忘れてくることってあるよね
こないだ烏龍茶の2gペット忘れてきたわwwwww
拙者の目は節穴にござる
238VS Gift:2009/02/17(火) 19:03:22 ID:Hyo5KIe4
朧との仕合後から、俺は行き場の無い不満を抱えていた。オーナーに説明を求めようにも連絡手段は無い。
俺が闇闘戯での戦いに慣れ始めた頃から、オーナーは滅多な事では姿を現さなくなった。
初めは気楽になると思って喜んだが、こういう時は恨めしい。

(早く――早く、闘いたい)

俺は自ら進んで何時も以上に訓練を厳しくし、次の仕合が始まるのを待ち望んだ。


――そして三回戦。

「快進撃を続ける新人、ハルト・リュウッ! しかし、三回戦の相手は甘く無いぞォッ!? 闇闘戯でも屈指の実力者!
 その才覚は天の賜物、天才ギフトだァッ!」

ワアアアアアッ!!!

実況の後に続いて、地鳴りの様な歓声が上がる。俺の前に現れたのは、金髪の筋肉達磨だった。
上下トレーニングウェア。身長は180オーバー……190近い。体重は推定110〜120。俺より体格が良い。
しかし……筋肉の塊は、どう見ても飾り。防御は堅そうだが、機敏な動きは出来ないだろう。

「ハルト・リュウ、貴様が勝ち上がって来たのは、偶然ではなかろう」

ギフトは俺に歩み寄り、話し掛けて来た。

「一回戦の相手は同じ新人、そして二回戦の相手は棄権……。これは仕組まれた結果だ」
「あァ?」

訳の解らん理屈を捏ねる奴なのかと思ったが、そうではなかった。

「観客を喜ばせる為の出来試合。貴様は自分が強いと勘違いしている。この私の手で、悪夢から醒めるが良い!」

自信満々で言い放つギフト。俺は笑いを堪え切れなかった。

「……くっ、ふふふ、はははははは!!」
「ん? どうした?」

俺は嬉しかった。朧の次の相手がこいつで、本当に良かったと思った。

これから、この無性にムカつく奴を――遠慮無く打ち伸めせるのだから……!!
239創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 19:05:44 ID:Hyo5KIe4
どう見ても噛ませです。
本当に有り難う御座いました。
240VS Gift:2009/02/24(火) 20:05:22 ID:cZ/utg8Z
カァアアアン!

開始と同時に、俺は真っ直ぐギフトに突進した。目が合う。ギフトは僅かに驚き、怯えている様に見えた。

「怯んでいる暇は無いぜッ!! ゼあァッ!!」

ギフトの胴を狙って、渾身の回し蹴り。技も何も無い。全力の蹴り!
ギフトの反応は……防御だった。両腕で頭部をガードし、背を丸め、膝を曲げ……縮こまる。

バシッ!

俺の蹴りは、ギフトの腕に弾かれた。……しかし、ギフトは反撃に転じる様子が無い。

「何だァ!? そんなんで闘いになるかッ!!」

これ幸いと、休まず攻め続ける。ギフトは木偶人形の様に、俺の攻撃を受けるのみだった。

「攻める攻める! さア、ハルト・リュウ! ギフトの防御を崩せるかァッ!?」

実況に声に、違和感を覚える。

(『崩せるか』……?)

一抹の不安を抱きながら、俺は攻撃を続けた。


そして――――30分後……俺の予感は的中した。

「何とッ! 遂に……30分を越えましたッ!」

ギフトは防御体勢のまま、立ち続けていた。俺は30分間、一瞬たりとも休む事無く攻撃を続けたのに……!
“天才”ギフトは『防御の天才』だった。攻撃を『受け』てダメージを最小限に抑える技術は、努力云々の水準では無い。
回避を捨て、受ける。受ける。受ける。何と効率の悪い!
しかし――俺は、こんな奴を相手に、一度、手を休めざるを、得なかった……!

「ははは、どうした? 終わりか?」

縮こまった状態で挑発するギフト。傍目には間抜けだが、その実力は本物だ。

「終わり? ――違う! これからだ!」

俺は再びラッシュを開始した。
241創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 20:12:28 ID:cZ/utg8Z
筋肉が付き過ぎると、体重が重くなり、動きが鈍くなる。相対的に持久力も減る。
瞬間的な反応も遅れるらしい。欠点だらけ……でも、そんなの無視。
242VS Gift:2009/03/03(火) 19:20:22 ID:kP3Q8WSO
準備運動は終わった。これからが本番……と言いたい所だったが、俺は違和感を覚えていた。

(何だか……怠い……?)

そろそろ身体が軽くなり始める頃のはずだが、どうした事か徐々に重くなって行く様に感じられる。
食事、トレーニング、今日の行いを思い返してみるが、心当たりは無い。
打ち続ければ疲れるのは当然だが、力を出し切った覚えは無い。

(まさか……)
「おオォっとオ!? どうしたハルト・リュウッ!? 動きが止まったァ……スタミナ切れかアァ!?」

俺はラッシュを止めた。ギフトは、ゆっくり身体を伸ばす。

「……漸く止まったか? 侮って悪かったな。それなりの実力は認めよう。主に体力の点で」

ギフトは勝利を確信した様に言った。俺は膝を突いて、筋肉達磨を睨み付ける。

「あァーっと!! ハルト・リュウ! ダウンだッ!!」

湧き上がる歓声の中、俺は声を搾り出した。

「毒か」
「その通りだ……! 私の名、Giftとは即ち“毒”の意! バトラコトキシンの味は如何かな?」

俺とギフトの会話は観客には聞こえない。ギフトは今まで、こうやって勝ち上がって来たのだ。

(最後は殺して口封じか……)
「ギフト、悠々と歩み寄るッ! これは決まったも同然か!?」

不敵な笑みとは裏腹に、ギフトの行動は慎重。俺の様子を窺いながら距離を詰める。

(……特異体質? それとも……仕込みか?)

眩暈と同時に、ギフトに触れた手足から、滝の様に汗が流れる。思考は冷静だが、故に自由の利かない身体が憎い。

「では――終わりだ」

野球グラブの様なギフトの手が、俺の頭を鷲掴みにしようと大きく開く……。
243創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 19:23:29 ID:kP3Q8WSO
バトラコトキシン。毒蛙が持つ神経毒。吹き矢に塗られたり。
グーグルとウィキペディアは便利。
244創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 20:51:00 ID:BUTAyNhu
ヤドクガエルか 下手すりゃ自分が死んじゃいそうだが
読んでるからまーぼちぼち書いてってちょうだい
245VS Gift:2009/03/10(火) 20:00:22 ID:d+ngIpZ3
ギフトの掌は、傷だらけの甲とは違い、全くと言って良い程、傷が無い。
迫るギフトの手を見詰めていると――――反射的に、腕が動いた。

「貴様……毒が効かないのか!?」

ギフトは目を見開く。俺は無意識に、自分の手より一回り大きいギフトの手を握り返していた。

「……さあな……。これが朧の言う、『龍の一族』の優れた性質なら……己が血と生まれに感謝すべきか」
「何の話をしているッ!!」
「あんたには関係の無い話さ……」

怯むギフトを押し返し、ゆらりと立ち上がる。……しかし、未だ本調子には遠い。

「おオッ!? 立ったッ!!! 今度の挑戦者は一味違うぞォッ!! ハルト・リュウ、未だ終わらなァいッ!!」
「効かない……? 否、確かに効いていた! 超人並みの回復力を持っているのかッ!? きっ、貴様は一体!?」

ギフトは動揺しながらも、握力を強める。毒で上手く力が入らない俺は、力負けして徐々に押されて行った。
俺が万全の状態でない事を見抜いたギフトは、気を入れ直して勝負を急ぐ。

「この隙に一気に終わらせるッ!!」

ギフトの巨腕が唸りを上げ、俺の鳩尾を狙う――。

(……思った通り……、鈍いなァ……)

ブォン!!

「空振ったァー!? どうしたギフト、至近距離!! それともハルト・リュウが避けたというのかァアアッ!?」

――そう、俺は流れに逆らわず、ボクシンググローブの様なギフトの拳を撫でる様に『避けた』。
程好い痺れの御蔭で、余計な力が入らず、身体が軽い。ギフトは苛立ちを見せた。

「ぐっ……! 紙切れの様に……」
「……下手だな」
「何だとっ!? 貴様ッ!!」

ギフトは顔を紅潮させて怒鳴ったが、俺は挑発する気など無かった。下手というのは、率直な感想だ。
掴み掛かって、投げや関節技に持ち込む事だって出来るはず。それをしないのは……単に技量が低いからだ。

「そろそろ体力が戻る。毒に頼る剰り、攻めの技術を磨かなかった、あんたの負けだ!! 降参するんだな!」
「黙れェッ!! 貴様とて、攻める術が無いはずだ!!」
「……それはどうかな!?」

俺は手刀でギフトの脇腹を狙った。
246創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 20:02:35 ID:d+ngIpZ3
>>244
マイペースで行きます。
247VS Gift:2009/03/17(火) 21:31:22 ID:0Yt4jtaK
ギフトは『予想通り』素早く反応し、腕で防御し様とした。

「喰らうかっ……ぐおォ!?」

完全に防がれるタイミングだったが、俺は掴んでいるギフトの手を引いて、強引に隙を作った。
俺の五指がギフトの肋骨の下から鋭く肺を貫く!

「が……ハッァ……!!」「ああァーッ!! 喰らったァーッ!! ギフトの……天才の防御が破られたァーッ!!」
「身体を丸めて防御するのは、“内側”が弱いから――! 毒の仕込みは背面だけだ!」
「クッ……!」

ギフトは怯みながらも俺の手を振り払い、距離を取った。……ここで追撃はしない。既に勝敗は決したも同然。
俺はギフトに問い掛けた。

「未だ……続けるか? “続けられる”か?」
「……ふーっ、ふーっ、はは……はははッ!」

肩で大きく息をしながら笑い、ギフトは叫ぶ。

「終わりだ! ああ――終わりだ! 貴様が終わらせてくれる……!」

呆気に取られる俺を他所に、ギフトは長袖のトレーニングウェアを脱ぎ捨てた。
(何だ……!? これは……)
「おぉっ!? ギフト、上着を取って……!! な、何だァーッ!!? これは何だッ!? ギフトッ!!!」

俺は我が目を疑った。実況も観客も、同様している。上半身裸になったギフト。
その背中は――――毒々しい朱に、黒の斑模様……!!

「これが『Gift』の正体だッ!! 私を倒せ! ハルト・リュウ!!」

ギフトは朱い肩を俺に向け、真っ直ぐ体当たりして来た。
248創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 21:35:31 ID:0Yt4jtaK
誤字だ……。
同様じゃなくて動揺。
249VS Gift:2009/03/24(火) 19:41:49 ID:BX2me98j
俺はショルダータックルを側面に跳んで素早く避けたが……。

「シィッ!!」
「うっ!?」

ギフトが腕を振り払って飛ばした汗が右目に入った。遅れて、目が灼ける様に熱くなる。
僅かに身体が痺れ出し、強烈な眩暈に視界を封じられた。それでも姿勢は崩さず、耐える。

「オオォ……」
「私の闇闘戯での戦いは、これで最後だ。この姿を晒した今、王座は夢と消えた!
 代わりに貴様の命を奪い、終いにしてくれるッ!! 去らば! 若き闘士よ!」

静まり返った暗闇の中、ギフトの声だけが聞こえる。
毒を洗い流そうと、閉じた両目から涙が湧く。身体の痺れは動きを妨げる程では無い。

(……行ける!)

長身巨体のギフトが動く度、振動が地を伝って来る。居所を察知するのは容易。
ダッダッダッ!!

勢いを増して駆ける足音が響く。俺はギフトに対して、半身になって構えた。

(……2、1、今だッ!)

バシィッ!

半歩飛び退いた俺の腕を、ギフトの手が掴んだ。次の行動は……?
250創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 19:44:04 ID:BX2me98j
今更だけど、Giftはドイツ語で毒
251VS Gift:2009/03/31(火) 20:46:23 ID:xvNZXx1T
「ウオォッ!!」

突然の浮遊感。雄叫びを上げ、ギフトは俺の腕を振り上げた。見えずとも判る。

(力任せに打ん投げる気か!)

しかし、想定の範囲内。身体が完全に浮く前に、片足を軸にして胴を捻り、後ろ回し蹴りをギフトの喉に……!
厭きる程の訓練の成果。相手の身体に触れてさえいれば、目に頼らず正確な攻撃が出来る!

「ぜィッ!」
「ぐ……」

ギフトは短く呻いた。確かな手応え。食道の脇を貫いた軟らかい感触。
同時に掴まれた腕が下がる。……ギフトは倒れたのだ。

「お、終わったァー!! 勝者、ハルト・リュウ! 奇怪異形なるギフトの姿に動じる事無く!」

オオォ……!

何時もとは違う、どよめきに似た歓声。盛り上がりは無く。感心している様な、驚いている様な……。

(……多少は動じた)

前の対戦相手が朧で無く、ギフトが鈍重な外見で無かったら、俺は不用意に仕掛けなかっただろう。
慢心が無かったとは言えないが、巡り合わせが悪かった故の苦戦だった。……言い訳か。

(それにしても、この男は……)

俺は薄目を開けてギフトを見た。朱い背中を天に向けて倒れた姿は、仰向けのイモリの様。

涙が風に乾き、熱を奪って目が冴える。俺は静かにギフトに背を向けた。

勝者:ハルト・リュウ  決め技:バックスピンニードルキック(後ろ回し蹴り)
252創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 20:47:56 ID:xvNZXx1T
準決勝へ。長かった。
253創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 23:55:18 ID:O/MWZBOD
age
254創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:19:37 ID:fWq+QDUB
バックスピンニードルキック
 ↓
スピニンバックードルキック
 ↓
スピニンクバードキッックル

    [ ゚д゚]y-~~~ デフラグガカンリョウシマシタ
    /[へへ
255VS スマイルマン:2009/04/07(火) 21:54:10 ID:INqzLpEN
迎えた準決勝……。しかし、オーナーは変わらず姿を見せず、連絡すら無かった。
何処かで俺の戦い振りを見ているならば、文句の一つでも付けて来るのだろうが……。

それ程、前回の戦いは酷かった。自分でも判る。

(オーナーは俺の不安を知って、敢えて放置しているのか……?)

厳しい……が、今更甘えを必要とする様な年齢ではない。これは試練なのだ。

「さア、準決勝!! ハルト・リュウ、ここまで来たら、その実力は本物だ! 迎え撃つは……スマイルマン!!」

オオオオオオオオオオ!!!

観客の歓声に、闘戯場が奮える――! 実況が一時、中断しなければならない程の大音量。

「……闘戯場最高と云われる実力者、スマイルマン! この男の戦いに、長い前置きは野暮でしょう!
 今日も最高の試合を見せてくれ! スマイルマン!!」

俺の相手は巨大な男。放たれる圧倒的な威圧感。ギフトより大きい……! 身長は推定220、体重140!
ボクサーパンツ一つで仁王立ちする姿は、絶対の自信に満ちている。

……それよりも俺の印象に強く残ったのは――――顔。表情だ。
満面の笑顔。前が見えるのかと思う位に目を細めて、大きく横に裂けた口からは白い歯を覗かせている。
スキンヘッドは、笑顔で締まった額と米神の筋肉までをも見せている。

「初めまして。君の名前は?」

スマイルマンは笑顔を崩さず、俺に手を差し伸べて、握手を求めて来た……が、罠の可能性があるので無視。

「おォ……残念。良い勝負をしよう」

俺の無愛想な態度を、然して気にした様子無く、底抜けに明るい声。表情は変わらず。一言で表すなら――不気味。

ドオオオオオン!!

(なっ……あ……?! 鐘……準決勝では銅鑼に……!!)

予想外の事に反応が遅れた。スマイルマンの立ち位置からは既に、リーチの長い拳が届く!
256創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 21:55:05 ID:INqzLpEN
デフラグさん……。
257VS スマイルマン:2009/04/14(火) 19:25:53 ID:1RSbFfTC
(しまった!!)

焦り。瞬間とは言え、気を取られた。負け……とは言わないが、先制攻撃を受ける覚悟は出来ていた。
しかし……スマイルマンは打つ前に大きな溜めを作ったのだ!!

(テレフォンパンチ!?)

明らかに態と! タイミング的に避ける事は出来ないが、上手く受ければダメージに繋がらない!
スマイルマンの真意は解らないが、ここは……!!

ブォン!!

「あーッ!! 油断したかハルト・リュウ!! 天高く殴り飛ばされたァーッ!!

俺の鳩尾目掛けて唸る拳に、優しく両手を重ねて、衝撃を和らげる。勢いに抗わず、身体は宙を舞う。
傍目には吹っ飛ばされた様に見えるだろうが……。

ストッ……!

俺は難無く足から地に降り立った。

「何とッ!? 軽やかな着地ッ! そして無傷!?」

……スマイルマンは追撃して来ない。素振りすら見せない。俺は構えを解いて問い掛けた。

「どうした? 絶好のチャンスだったのに……」
「フフフッ、実力を試させて貰っただけの事」

スマイルマンは変わらぬ笑顔で答える。

「イやァあ、素晴らしい! 素晴らしい防御だった! ……しかし、満点は与えられないな」
「何だと?」

反抗心剥き出しで凄んで見せた俺に、スマイルマンは表情を変えずに怒った。

「甘いのは君の方だ!! 遊んでいるのか!? この私を相手に実力を隠そう等、思い上がりも甚だしい!!!」

強烈な怒気に、空気が震える。しかし笑顔……笑顔なのだ! 俺は気迫に圧され、僅かに後退った。
それを見逃さず、スマイルマンは突進して来る!

同じ長身巨体でも、スマイルマンはギフトとは決定的に違う点が二つある。
一つは防御! ギフトを一回り大きくした様な身体は、何処を攻撃しようがダメージを与えられそうに無い!
もう一つは攻撃! スマイルマンは俺に逃げ場を与えない様、突進方向を微修正している!
戦い慣れているのだ!!
258創る名無しに見る名無し:2009/04/14(火) 19:29:04 ID:1RSbFfTC
全力で笑顔を作ると、顔の筋肉が痛くなる!
259VS スマイルマン:2009/04/21(火) 18:37:20 ID:wW89hDY/
(さあ、どうする? どうするッ!?)

突進して来るスマイルマンを前に、俺は焦った。避ければ隙を見せる事になる。迎撃したいところだが、
勢いを止められるとは思えない。受けるのは論外だ。

……結論、八方塞り。

(あァ……、仕方ない……。確かに、俺は甘かった)

俺は徐に右足を前に突き出し、軽く跳ねて、目前に迫ったスマイルマンの肩に乗せた。

「なァーッ!? ハルト・リュウ、突進するスマイルマンの上に乗っかったァー!!」

突進の勢いで、俺はスマイルマンの肩に立つ格好になる。

「俺の負けだ……。ハルト・リュウは死んだ。ここからは拳法家、龍大翔がお相手する!」

今まで隠して来た俺の技。決勝まで見せる予定は無かった。しかし今、このスマイルマンを強敵と認め、封印を解く!

(先ずは挨拶代わりに、ニヤけた面を蹴っ飛ばす!)

バシィイン!

「そして強烈なキック!!」

小気味良い音がして、スマイルマンの顔が90度横を……向かない! 切り株の様に太い首が顔を固定!
全力で笑う頬の笑筋が俺の蹴りを完全に無効化!

「……だが、効いてない! 効いてないぞォ!! さァさァ、スマイルマンの反撃だァー!!!」
(こいつ……化け物か!?)

スマイルマンは、蹴り付けた俺の足首を片手で掴み、力任せにグルグルと振り回した。

「出たッ! パワー・スイングッ!!」

何度も地面に打ち付けられるが、その度に受け身を取り、ダメージを最小限に抑える。
しかし、回転速度は徐々に増して行く……!

「はァーッ!!」

スマイルマンは掛け声と共に、俺を真上に放り投げた。闘戯場の天上に届くかという位、高く!

頂点で重力が戻り、俺は地面に向かって落下した。落下点では、スマイルマンが屈伸運動をしている……。
何をするのかと思ったら、スマイルマンは落下中の俺に向かって跳び上がった!!

「アトミック・ボンバー!!」

空中で逆さに俺の胴を抱え……頭から叩き落す!?!?
260創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 18:38:41 ID:wW89hDY/
ここからテンション変わる。
261創る名無しに見る名無し:2009/04/28(火) 18:19:36 ID:u08/q7nn
(この高さと速度は死ねる!)

逃れようにも、スマイルマンの怪力と落下の空気抵抗で身体が自由に動かない……!
俺は覚悟を決め、地面を見上げた。

ドドォン!

(うげェッ!!)

背骨が軋む……!!

「完璧に決まったァアア!! スマイルマン最凶の必殺技、宙に放り投げた相手を抱え渾身のリバース・スラム!
 名付けてアトミック・ボンバー!!」

俺は地面に頭が叩き付けられる瞬間、両手を突いて衝撃を和らげ様とした。
当然ながら両腕だけではスマイルマンと俺の身体を支え切れず、背が縮むかと思う位、押し付けられる。

「何ィッ!?」

スマイルマンは驚いて声を上げた。顔は相変わらす笑顔だったが。
……自分でも、どうして助かったのか判らない。龍の一族だからだろうか……?
俺は落下の衝撃を耐え切った後、身体をバネの様に伸ばし、スマイルマンの顎に逆立ち蹴りを喰らわせた。

「なっ……なっ、何だとォオオオ?!?!?!? ハルト・リュウ、生きているゥ!?」
「強いな」
「……どうも」

俺は嬉しそうに褒めて来たスマイルマンに対して、垂れて来た鼻血を拭いながら愛想無く答えた。
錆の匂いが口に広がる。直ぐに攻めて来ないところを見ると、スマイルマンは俺のタフさに動揺している様だった。

(……攻めるなら、今しかない!)

俺は駆け出した。足を動かす速度は変えず、歩幅だけを変えて――――!

「こ、この奇怪な動き! これは……!!」

実況の声に、俺は少し安心する。どうやら成功した様だ。朧が見せたあの――縮地!!

(先ずは、足から――)

射程外から一瞬で距離を詰め、スマイルマンの膝裏を狙って回し蹴りを放つ!
262創る名無しに見る名無し:2009/04/28(火) 18:25:02 ID:u08/q7nn
タイトル忘れた。
VSスマイルマン

黙々と保守スクリプトの如く。
263VS スマイルマン:2009/05/05(火) 18:21:52 ID:KX5DowQq
体勢を低くして、鞭の様なローキック!

バシィン!!

スマイルマンは腰を低くして、両脚を肩幅2倍程度に開き、受ける! 避けない! 元から避ける気が無いのだ!
俺の蹴りは、スマイルマンの足を僅かも動かす事が出来なかった!

「……少し痛かったな」

全く苦痛を感じていないかの様な笑顔は、相変わらず不気味!

「流石のスマイルマン、全然効いてないぞォオオー!!」
(実況……そんなに歓ぶな。魅せ所は――――ここからだ!!)

ローキックを繰り出した足を、スマイルマンの膝裏に引っ掛ける――――。
上半身を逸らせて半回転捻り、反対の足の踵を――――!

(脇腹目掛けて――――骨盤の上に乗せる様に……突き刺す!!)

ドスッ!!

手応え有り!! しかし、この体勢からではスマイルマンの顔は見えない。苦痛に歪んでいるか? それとも……?

(今は考えない!! 未だ続くぞッ!!)
「なァッ!? こ、これはッ――――!?」

踵を支えに、上半身を屈めて再び半回転捻り、次は――――!

(延髄蹴りだッ!!)
「この業は何だッ!? ハルト・リュウ、回し蹴りでスマイルマンの身体を登って行くゥうううッ!!??」

ボグッ!!

必殺の一撃。俺は地に降り立った。素早くバックステップで距離を取る。

…………完璧に決まった。回転で勢いの増した足の甲は、スマイルマンの首を撥ねた。常人なら首が飛んでいる。
鍛えられた者でも首の骨が折れ、運が悪ければ死亡…………なのに、こいつは……!!

「何故……」
「効いたねェ……鞭打ちになりそうだったよ」
「しかししかし効いていないィイイイイ!!?」

笑っている――――!!
スマイルマンは俺の動揺を覚り、忠告して来た。

「ふんふん、だがしかしどうするか……? ここらで降参してくれると有り難いけれど」
「ああ、確かに、楽に、なりたい」

お前を倒してな……。俺は内心を隠さず、不敵に笑った。スマイルマンは余裕を見せながら言う。

「否々、君は強い。……そう何度も喰らってあげられないよ」
「……こいつで終わりだ」

この時、興奮の所為か地面に叩き付けられた痛みは殆ど感じていなかった。俺は生まれ付いての闘士の様だ。

(次の一撃が効かなければ、本当に降参を考えよう……)

再びスマイルマンに駆け寄る。先の攻撃でも有効打止まり……ならば、より威力の高い決定打を喰らわせるまで!!
問題は上手く喰らってくれるか……。縮地から――――跳躍!!
264創る名無しに見る名無し:2009/05/05(火) 18:25:12 ID:KX5DowQq
イメージ的には黒くないオリバ。
必殺技なんて存在しませんよ。
ゲームじゃないんですから……。
265VS スマイルマン:2009/05/12(火) 21:13:28 ID:0DosDDVS
スマイルマンは釣られて上を向く――――!

(掛かった!!)

縮地の応用。跳び上がると見せ掛けて……。スマイルマンは上空に誰もいない事に気付き、再び下を向くだろう。
そこで――スマイルマンの両耳に――人差し指を――――突き刺す! 鼓膜まで深々と!
指先を生温い液体が濡らす!

「死ねッ!!」

俺は大きく飛び跳ね、逆さになりながら身体を伸ばし、螺子の様に捻った。スマイルマンの切り株の様な首が回る!

グキン!!

「ああぁぁぁぁッ!! スマイルマンの首がぁああッ!!」

骨の逝った音。首は180度、真後ろを向いていた。
――――が、スマイルマンは倒れず、耳に突き刺した俺の手を掴んだ。

……流石に驚きはしない。この位のタフネスは予想出来た。これが止め!

「決勝戦を前に、強い者に会えて……良かった」

俺は身体を反らした。スマイルマンは前……顔が逆を向いているから後ろ?
……に倒れると思い、踏ん張る。

予定通り。俺は反らしていた身体を丸めた。反動を付けて、一気に倒す!
身体を丸めたので、遠心力と角速度の関係で、回転速度が増す。

回転速度が増すと何が起こるか……? 答えは――――膝蹴りの威力が上がる!!

バギッ!!

俺の膝はスマイルマンの顔面に喰い込んだ。鼻血が飛び散る。

「こ、これは兇悪ゥウウーッ!! 追撃の膝蹴りだァアアッ!!」
(倒れろ! 倒れろ!!)

スマイルマンの膝が折れる。俺はスマイルマンの耳から指を抜かず、そのまま地面に押し付けた。

「墜撃!!」

ズゥン……。

スマイルマンは動かない。俺はスマイルマンから離れ、ゆっくりと片手を上げた。

「ス、スマイルマンが……負けた……!! ハルト・リュウ、決勝進出……です!!」

闘戯場の空気は、ギフトに勝った時とも違う微妙な空気だった。
驚き、衝撃、そして……俺を認めつつある様な……?

兎も角、これで決勝進出。血塗れの指先が乾く。

勝者:ハルト・リュウ  決め技:螺子回し→クラッカー式ニーキック→後頭部叩き付け
266創る名無しに見る名無し:2009/05/12(火) 21:14:34 ID:0DosDDVS
やっとこさ決勝進出ですよ。
個人スレ立てようかと思わんでもない。
267創る名無しに見る名無し:2009/05/13(水) 06:33:03 ID:EGHAYU/e
おお更新されとる 兇悪w痛そうww
まあガンガレ
268雷龍の後継者―決勝戦 VS???:2009/05/19(火) 20:24:50 ID:6KDG8xa2
決勝戦前夜――。

オーナーは、遂に姿を見せなかった。気になるのは、朧の言っていた『一族』の事……。

(その長に俺が? 朧を倒せなかった俺が?)

あの朧が一族最強という事は無いだろう。口振りからして、寧ろ下っ端だと思われる。
化け物クラスの強さを持つ集団の長……果たして俺に務まるのか?
そもそもオーナーは何故俺を……?

明日は万全の状態で臨まなければならないというのに、余計な考えに気を取られて寝付けない。
全ては明日、仕合に勝ってから……。


そして決勝戦当日!

「遂に今日という日を迎えました!! 闇闘戯の帝王を決める王座決定戦、決勝戦!!
 世界的な破壊工作、そして戦争……様々な理由により、永きに亘って空位だった王座に誰が就くのか!?
 その人物は二人!! 先ずは――」

俺は実況の声に合わせ、闘戯場の中央に歩み出た。歓声が巻き起こる。

「ハルト・リュウ!! まさかまさか、新人が決勝戦に勝ち進むとは、誰が予想したでしょうか!!
 闘戯場屈指の実力者、ギフト、スマイルマンまでをも倒した実力は本物!! そして対するは……」

俺は向かい側の通路を見た。

……誰も……出て来ない?

「対するは……? おや? これはどうした事でしょう? 闘士が出て来ません……」

何かアクシデントでもあったのだろうか……と思った直後、強烈な殺気!!
闘戯場全体が震える!!

向かいの通路の暗闇から、大きな塊が……!!

よく目を凝らすと……それは人を担いだ男!!

男は拳法着に身を包んでいる。嫌な予感に鼓動が早くなる。

(あれは……あの服は……朧の物と……似ている!!)
「誰だ!? 誰だぁあああ!? 突如現れた謎の人物!! 肩に担がれているのは、決勝戦に出場予定だった……」

実況は言葉を詰まらせた。男は無造作に肩に担いだ人を放り投げる。

ドサッ!

目立った外傷は無い。察するに、急所を突かれて一撃……。仮にも決勝に進出するはずだった実力者が――!!

「この俺を差し置いて王座決定とは笑わせる!」
「まさか、まさかまさかまさか!! この男は! この男は――――」

実況は莫迦みたいに同じ言葉を繰り返す。
269創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 20:26:28 ID:6KDG8xa2
前作とか誰も知らない。
270VS ストライク・ジョー:2009/05/26(火) 19:03:04 ID:lL9nf9F0
「10年前、忽然と姿を消した――――闇闘戯帝王!!! ストライク・ジョーなのかァ!?」
「やァやァ、未だこんな気違い遊戯を愉しんでいたのかい? 諸君」
(この男が――『元』帝王?)

ざわめく闘戯場。相手は一見したところでは、中年優男にしか見えないし、何のオーラも感じない。

「た、大変な事になりましたッ!! 闇闘戯帝王……いえ、『元』帝王が現れるとは……!!」
「さァ、始めようじゃないか? ハルト・リュウ……いや――ロンの血族、龍大翔よ」

その自信と余裕は何処から出て来るのか。ジョーという男は全くの無防備。構えも殺気も無い。

「こっ、ここで水を差すのは無粋でしょう!! 私達は二度と見る事が叶わないと思っていた、帝王の戦いを見られる!
 10年は長い空白でした! 初めての方々も、よく、よく御覧下さい!! あれが帝王です!!」

ドオオオオオン!!

銅鑼の音。俺は…………ジョーの姿を見た気がした。

(あれ?)

何も見えない。

(おい?)

何も聞こえない。

(……おい!!)

何が何だか理解不能。頭痛がする。

「ジョー!! 一体何の真似だ!!!!」
(オーナー?)

怒鳴るオーナーの声が聞こえた。

(幻聴? 夢か? 俺は……寝ている!?)

目が開いた。俺の前にはオーナーが立っていた。オーナーは俺に背を向け、ジョーに向かって怒鳴っている。
俺は壁に身体を預けて、座り込んでいた。顔面と後頭部が痛い。

「あーッ!! 誰だ!? 係員を打っ飛ばして闘戯場に乱入して来た女性は!? こちらも割り込みかァ!?」
「お、オーナー、退いて下さい。俺は未だ未だ戦え……」

俺は立ち上がってオーナーに声を掛けたが、オーナーは俺の方を振り向こうともせず、ジョーを睨んでいた。
ジョーは驚いた様な顔をして、ファイティングポーズを取った俺を見る。

「成る程ね……。あの方の息子と言うのは、根も葉も無い話という訳じゃあ無さそうだ。……だが――」

ボグシャッ!!

「この程度で龍の一族は纏められん。暗黒武技連盟に首を刈られるのが落ちだ」

またしても見えなかった。理解した時には遅過ぎた。『殴られた』後に見えたのは、拳を突き出すジョー。

「出たァアアア!! 必殺の音速突きィイイイ!! 二発目ェエエエ!!」

……何もかも終わった。俺には再び立ち上がる気力も体力も無かった。
271創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 19:04:38 ID:lL9nf9F0
ここで打ち切りっぽく。
272創る名無しに見る名無し:2009/06/19(金) 08:33:00 ID:DgUQoCla
273創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:17:00 ID:G+jhiE+S
創発暦2374年、世界は核の炎に包まれた。
――それから四半世紀。2399年、未だ人類が混乱から立ち直れずに
いる中、先の戦禍によって生じた権力のエアポケットを埋めるべく様々な
勢力が暗躍していた。


「現在、主義者達は恐るべき早さで勢力を拡大している。我々は政府内で
の地位を一層、確かなものとして、邪教との戦いに当たらねばならない」
ギリシャ総督直属特別高等警察――通称GGG特高隊

「超法規的手段によって世界を牛耳るGGGを我々が打ち倒し、権力をあ
るべき場所に戻さねばならない」
南部鉄鋼局付き私設軍――通称SSS

「魔王復活の時は近い。言葉は不要。各々、行動で信念を示せ」
ハルト主義者

「ふぉふぉふぉ」
バンディッド霧崎

「上位世界からの指示だ。我々も動く」
スーパーモバイラー

「……」
古代兵器スティックアーネン

「職が……ない……」
裏ハルトシュラー


今、世界は再び戦場になる。

創作発表板一周年特別企画
〜第一次スーパー創発大戦〜
274創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:23:17 ID:p2i7qfBw
職とかそういう次元じゃねえだろ裏ハルさんw 核耐えた癖にwww
275創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:24:08 ID:xaO7VaXz
裏ハルトだけやたらせつねぇww
276創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:33:08 ID:G+jhiE+S
「ハーツ少尉? 聞かん名だな」
大佐はその巨大な体躯でもって、大上段から値踏みするように見下ろしてきた。やれやれ、やりづらそうな相手だ。ソウは内心呟いた。
「ソウ・ハーツです。一応、政府から辞令を受けた正規の軍人ですよ。就任は本日付ですがね」
大佐はまだ訝しげな視線を投げかけてくる。
「いきなりその階級ということは、何か特殊な事情があるのだろう? 何の目的でアテネに?」
「GGG隊の監査と顧問ですよ。今回、新設された役職です。手続きの書類は出してあるんで、気になるなら目を通しておいてください」
大佐は渋い顔を隠そうともしない。予想はしていたが、たいした嫌われようだ。こちらが実質的な権限はほとんど持たないのは分かっているだろうに。それでも、これか。ソウは再度、嘆息せざるを得なかった。
277創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:33:57 ID:G+jhiE+S
「そうか。他に何か?」
大佐は早々にソウを追い出したがっているようだったが、ソウにはまだ一つ仕事が残っていた。
「情報をお渡しするよう言づかっています。極秘事項であるから口頭で伝えるようにと」
「ほう」
大佐の目ににわかに光が灯った。ソウがただのこうるさい形式上の監督者ではないと悟ったのだろう。
「最後のモバイラーの居場所が分かりました。先の会議からこちら、血眼になって探していたでしょう?」
大佐の眼球がカッと見開かれた。額には玉のような汗が浮かんでいた。
278創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:34:32 ID:xaO7VaXz
おい、続きが気になるじゃねえか
279創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:35:32 ID:G+jhiE+S
「白い家」。それがカサブランカという都市の名が持つ意味である。先
の戦火を免れたこの街は、今尚かつての景観を留めていた。海風を受けつ
つ高所から見下ろせば、そこにはその名の通り、白い街が広がっている。
ソウのGGG隊への接触から遡ること数日、この街では政府の要人達が
集まる定例会議が開かれていた。
「鉄屋の私兵どもめ……!」
世界的に復興が進む中、鉄鋼の需要が高まるのに伴ってSSSは勢力を
伸ばしていた。もはや彼らの影響力は鉄のみに止まらない。この会議でも
SSSの発言力は急速に強まっている。大佐はそのことに苛立ちを隠せな
かった。
「現在、急激な広がりを見せている過激思想、ハルト主義に不穏な動きが
あります」
ハルト主義! 反吐が出る! 大佐は、自分の思うようにならない世の
中に怒りすら感じていた。
「さらにまずいことにはモバイラーズが主義者達と接触した形跡があるの
です。最悪の場合、ハルト主義者と手を結ぶ可能性もあります」
「馬鹿なっ!」
大佐は思わず叫んでいた。
280創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:36:24 ID:g1R2bpqQ
これは用意ありの投下ww
面白いんだがw
281創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:36:30 ID:xaO7VaXz
支援w
282創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:36:34 ID:G+jhiE+S
「モバイラーは政治的中立の立場にあるはずだ! そのようなことは許されない!」
「そんなものはただの建て前です。実際には彼らは政府から独立した何ら
かの指示系統によって動いています」
そんなことは大佐とて百も承知である。モバイラーズが敵に回るかもし
れないという非常事態に冷静さを欠いていたのだ。そして、それを指摘し
たのがSSSの幹部であったのが良くなかった。もはや大佐は完全に怒り
に染まっていた。
「黙れ! 貴様達が口出しをすることではない!」
対するSSSにも確実に動揺が見える。いや、彼らのそれはもはや怯え
に近かった。
「しかし我々が持っている情報には興味がおありでしょう。ハルト主義者
の動きが活発化している原因です」
ざわついていた会議場が静まり返る。大佐すらも一旦、彼らの話を聞く
側に回った。
283創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:37:31 ID:G+jhiE+S
「先日、満徳妃廟の発掘に当たっていた調査隊から我々に報告がありまし
た。そこで発掘された石盤の文字が解読されたというのです。そこにはこ
う記されていました。「2399年の7の月、魔王ハルトシュラーは復活する」と。恐らく主義者
達にはこれが口承で伝わっていて、今復活の儀式のために何かをしている
のでしょう」
会議場には再びざわめきが広がっていった。彼らが考えていることは一
様に同じである。魔王ハルトシュラー復活の動き、モバイラーズの離反、
そして欠けた最後のモバイラー。モバイラーズは五人揃えば誰も太刀打ち
出来ない力を手に入れる。ならば、最後のモバイラーを手中に収めた者こ
そが事態の沈静化を主導していくことになる。この瞬間から、大佐の戦い
は始まっていた。
284創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:38:18 ID:xaO7VaXz
なんだか本格的なようでいてそうじゃねえw
285創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:39:09 ID:G+jhiE+S
「ウパ太郎さん……大丈夫なんですか? あれからスーパーモバイラーさ
んもモバイラーさんもブラックモバイラーさんも姿を見せませんが」
辺りのハルト主義者達は皆、不安そうな視線をウパ太郎に向ける
「私には今現在、彼らが何をしているかは分からない。ただ言えるのは「上」から
の指示で動いているらしいということだけだ」
「上?」
ウパ太郎は青空を見上げた。思い起こすのは数日前のこと。

「ウパ太郎はここで彼らを守っていてくれ。俺達はこれから五人目のモバ
イラーを探しに行く」
スーパーモバイラーの提案はいつも唐突だ。この時も突然そんなことを
言われて、ウパ太郎は少々面食らった。
「探すといっても当てはあるのか?」
「これから逐一、上位世界の指示を受けながら進んでいく」
ウパ太郎の疑問に答えたのはブラックだ。
「早速、最初の行き先を決めよう。モバイラー!」
「分かっている。今問い合わせた。最初の行き先は>>287だ」
こうして彼らは旅立っていった。
286創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:39:43 ID:xaO7VaXz
ウパ太郎がモバイラーじゃねえだろww
287創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:40:48 ID:g1R2bpqQ
雑談スレ
288創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:41:01 ID:zUlyCtLU
これはお出かけ先指定とみました

宇宙
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1219839883/
289創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:41:35 ID:xaO7VaXz
雑談スレにとかwwww
290創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:42:32 ID:g1R2bpqQ
ちょい無茶目だったか
291創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:43:57 ID:G+jhiE+S
え?お出かけ?
これは予想外
どうすればいいんだ?
292創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:45:32 ID:g1R2bpqQ
なんで安価したんだよwww
293創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:46:03 ID:p2i7qfBw
普通にネタ振りを期待した訳ですなw
仕切り直しでいいんじゃなかろうかw
294創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:47:03 ID:xaO7VaXz
さあ、再安価だ
295創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:47:31 ID:g1R2bpqQ
んだね、すんませんした
296創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:47:43 ID:zUlyCtLU
お出かけ先指定じゃなかったんですねwごめんなさい
297創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:50:55 ID:G+jhiE+S
まあいいやw
とりあえず書きためはここまで
お出かけはしないけど雑談スレに向かう方向で続き書いてくる
遅筆だから、ここからは超スローペースになる
ちなみにスパロボはほとんどやったことないから、そっち方面のパロは期待しないでくれw
298創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:52:18 ID:xaO7VaXz
やべえ、楽しみでならないww
続き期待してるぜ!
299創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:53:11 ID:g1R2bpqQ
同じく期待!
300創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:53:57 ID:xt7xbdKZ
おもしろいwwがんがれwwww
301創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:55:04 ID:g1R2bpqQ
同じく期待!
302創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:55:11 ID:EvT+BGcM
これはwww
303創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:56:28 ID:g1R2bpqQ
>>301の件すみません
二度レスしてしまいました…
304創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 18:41:57 ID:EvT+BGcM
>1 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2008/08/27(水) 18:36:30 ID:jwkQYPse

スレ立て一周年おめ!
305創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 18:42:37 ID:IoZ+qBs8
最古スレが一年を迎えたか……
306創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:12:07 ID:G+jhiE+S
ここで空気を読まずに続きを投下
307創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:13:02 ID:G+jhiE+S
『世界最古の都市』、ダマスカス。しかし、そこにはもはや連綿と続く
歴史の面影は見られない。あの戦争で、この街はとりわけ集中的な核攻撃
を受けた。焼き尽くされた街は、死の灰に覆われていた。
そんな有り様であるから、廃墟に佇むスーパーモバイラー達の他には街
には人っ子一人見当たらなかった。
「ここは?」
「シリア最大の要塞ザツダーンの跡地だ。ここの管理者はかつて強大な軍
事力で欧州、アジア、アフリカに睨みを利かせていた。GGG隊の母体に
もなっている。それが今ではこの様だ」
ブラックの問いにモバイラーが答える。
「本当にこんなところに五人目の手がかりがあるのだろうか」
スーパーモバイラーの声が虚しく虚空に響いた。

一時間が経過した。未だ手がかりらしきものは見つかっていない。彼ら
に諦めの色が見え始めたその時だった。
「おじちゃんたちはこんなところでなにをしてるの?」
308創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:13:58 ID:g1R2bpqQ
雑幼女w
309創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:14:26 ID:G+jhiE+S
それは、まだあどけなさの残る少女であった。ブラックは彼女の接近を
自分が探知できなかったことに驚いていた。気が弛んでいたのかもしれな
い。そう思った。
「ちょっと人捜しをね。無駄足になったみたいだけど」
「のんきだね。おじちゃんたちのじんせいもこれからむだになるのに」
ブラックはここでようやく強烈な違和感を感じた。なぜこんな子供が独
りでこんな場所にいるのか。――こいつ、ただの幼女ではない。本能がそ
う告げていた。
「何を言ってるんだ? それにパパやママは一緒じゃないのかい?」
「モバイラー! そいつに近づくな!」
ブラックが叫んだ時にはもう遅かった。モバイラーは幼女が右手から放
った光弾を正面から受けていた。
「ぐはっ!」
「無事か! モバイラー!」
慌てて駆け寄るスーパーモバイラーを幼女はあざ笑う。
「おじちゃんたち、ひっしだね」
310創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:14:31 ID:xt7xbdKZ
雑幼女キタ!?
311創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:15:08 ID:g1R2bpqQ
これは間違いなくザツダーン
312創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:15:50 ID:G+jhiE+S
「貴様っ!」
スーパーモバイラーの顔に怒りが浮かぶ。
「……スーパーモバイラー。ここは俺に任せろ。お前はモバイラーを連れて先へ進め」
「だがっ……!」
「誰の差し金かは知らないが、こいつの目的はおそらく俺達の足止めだ。
ならば全員で相手をしてやる必要はない」
「……任せたぞ」
スーパーモバイラー達が去るのを見届けると、ブラックはゆっくりと幼
女に向き直った。
「先程は不意をつかれたが、今度はこちらから攻めさせてもらう。俺がモ
バイラーの中でも“ブラック”と呼ばれる所以を見せてやろう。くらえっ!
最初の攻撃は>>315だ!」
313創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:17:21 ID:g1R2bpqQ
ksks
314創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:19:30 ID:IoZ+qBs8
ksks
315創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:19:38 ID:g1R2bpqQ
真・暗黒ウパ刻み!
316創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:21:18 ID:G+jhiE+S
真・暗黒ウパ刻み把握
317創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:21:49 ID:zUlyCtLU
ウパ太郎が仲間なのにウパ刻みですか!?
318創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 19:22:06 ID:xaO7VaXz
狙い撃ちじゃねえかwwwww
319創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 20:36:35 ID:ctw0a/rl
さよならウパ太郎ww
320創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 21:33:07 ID:G+jhiE+S
決まった! ブラックは勝利を確信した。
「真・暗黒ウパ刻み。アホロートル狩りの始祖アナリが開発した技だ。幼
形成熟個体に対して抜群の威力を誇る。お前がただの幼女でないことは分
かっている。その姿に沿わぬ内面、まさに真・暗黒ウパ刻みの餌食だ。も
はや生きてはおるまい」
ブラックはゆっくりと振り返った。が――
「どうしておじちゃんはじぶんからしぼうふらぐをたてるの?」
「なん……だと……」
全く効いていない! そんなはずはない! 「筆記者」の指示も確かに
あの技だった! ブラックは動揺していた。
「おしかったね。ろりばばぁがあいてだったらかっていたのに」
「違う……というのか……お前は……」
読みは外れていた。幼女はやはり幼女だった。
「じゃあ、おじちゃんにはそろそろしんでもらうよ」
「!!」
幼女が放った光段は先程のものとは全く異なっていた。スピードもパワ
ーも。そして、それは瞬時に無数に放たれた。攻撃は目前に迫っている。
一発でも当たれば命はない。ブラックは決断を迫られていた。
321創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 21:33:52 ID:G+jhiE+S
(どうやら使うしかないようだな。“あれ”を。スーパーモバイラー、モ
バイラー、ウパ太郎、後のことは頼んだぜ)
モバイラー最強にして禁断の攻撃。モバイルによって開かれた多次元世
界の通路を通して神格生物の獣性を直接自己に憑着させ、平行宇宙から呼
び寄せた膨大な熱エネルギーを制御、敵の眼前で収束させ大爆発を起こす。
この間10万分の1秒未満。そのようなことをすれば人の身であるブラッ
クは負荷に耐えきれず四散する。しかし、彼に迷いはなかった。
「今度こそ終わりだぜ……!」
ダマスカスは爆炎に包まれた。
322創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 21:34:51 ID:G+jhiE+S
スーパーモバイラー達はモバイルによって発生した超空間を経由して転
移することに成功した。しかし、緊急時であったため、移動先の座標を設
定する暇がなかった。
「ここは……どこだ?」「どこかの洞窟のようだが……く……」
「大丈夫か、モバイラー」
モバイラーの傷は予想より深い。とりあえず治療のため人がいる所に出
たい。
「スーパーモバイラー、向こうから何か物音がする」
「物音? 俺には聞こえ……」
その時である。何か得体の知れぬ巨大な生き物の鳴き声のようなものが
薄暗い洞窟内に轟いた。さらに――
「おい、気づいたか?」
「ああ。この洞窟内でモバイルに呼びかけた者がいる」
スーパーモバイラーはモバイラーを連れて先程の轟音が発せられた方向
へ急いだ。この洞窟では何かが起こっている。
そして一際開けた空間へ出た時、そこには――
323創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 21:35:11 ID:xaO7VaXz
ブラアアアアアアックウウウウウ!!
324創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 21:35:43 ID:G+jhiE+S
ドイツ、ミュンヘン。戦時には甚大な被害を受けたが、GGG主導の下
で復興が進み、今では世界中から労働者の集まる活気ある街となっている。
「なあ佐藤さん、田中さんに貸した金がさっぱり帰ってこないんだが、あ
んたからも何とか言ってやってくれないか」
「馬鹿やろう! あいつには金を貸すなって言っただろう! 諦めるんだ
な。もう絶対に返ってこねえよ」
男は嘆息した。これで六人目だ。誰に聞いても答えは同じ。絶対に返っ
てこない。あの田中という女はそんなに金に汚いのだろうか。まあ、いい。
今日は帰って酒でも飲もう。このことはまた後で考えればいい。
こうして男は家路についた。そのはずだった。
325創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 21:35:58 ID:EvT+BGcM
ブラック…そんな、嘘だろ?
326創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 21:36:47 ID:G+jhiE+S

男は、まるで状況が理解出来なかった。自分は家に帰る途中だったはず
だ。突然、周囲の景色が歪んで、立ち眩みかと思った次の瞬間にはこの洞
窟にいた。このような考えが何度も頭を回る。五感はいつにも増して冴え
渡っている。どこかで水滴が落ちる音もはっきりと聞こえる。しかし――
目の前で大口を開ける巨大な化け物を前にして、男に出来ることは何もな
かった。
「おい……嘘だろ……」
巨大で鋭い歯に五体を引き裂かれる激痛を最後に、男の意識は戻らなか
った。
327創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 21:37:05 ID:g1R2bpqQ
嘘だと言ってよモヴァイラァアアア!
328 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/08/27(木) 21:38:09 ID:G+jhiE+S
以上投下終了
一応酉付けとく
329創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 21:40:57 ID:zUlyCtLU
ブラック(´;ω;`)
330 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/08/30(日) 20:50:19 ID:x/nHwK8W
「山椒魚?」
ソウの言葉に、大佐は怪訝そうな表情を浮かべた。
「ええ。数ヶ月前、とある施設で実験体となっていた個体が逃亡していま
す。多くの不可解な現象を起こした後に、絶対脱出不可能なはずの厳重な
警備を破って」
「それがモバイルによるものだと?」
「まず間違いないでしょう。後に現場を調査した結果、超空間発生の痕跡
が見られましたから」
大佐は納得したようだったが、同時に不安げな表情を見せた。
「ふむ。だが、逃亡したのなら結局行方は……」
「居場所に関しては有力な候補地があります。日本のとある山地に、最近
“人を喰う化け物”が出る洞窟があるという情報が入り、調査したところ、
モバイルによる空間歪曲に伴う微弱な電波の乱れが観測され……」
説明を続けようとするソウを制止すると、大佐は小声で問いかけてきた。
「このことを知っているのは?」
「政府でも上層部の少数だけです。SSSに伝わっているかは何とも」
「そうか。では信用できる者を数人連れて、一度現地に確認に向かった方
がいいようだな」
ソウは緊迫した面もちの大佐に向かってゆっくりと頷いた。
「ことは急を要します。今すぐ発ちましょう。サラ万次郎の洞窟へ」
331 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/08/30(日) 20:52:25 ID:x/nHwK8W
以上投下終了

活躍を続けるスーパーモバイラー達
しかし世界にはもっと凄いモバイラーがいた!


1 いやあ名無しってほんとにいいもんですね@3ch 09/05/02 16:19 ID:Td+U8zjo
俺スーパーモバイラー。よろしく。

2 いやあ名無しってほんとにいいもんですね@3ch 09/05/03 01:47 ID:EL4vjZbI
じゃあ俺ハイパーモバイラー。
よし勝った。

3 いやあ名無しってほんとにいいもんですね@3ch 09/05/04 00:25 ID:9VL8ZxvM
ところが俺ウルトラモバイラー。
もはや敵なし。

4 いやあ名無しってほんとにいいもんですね@3ch 09/05/05 12:28 ID:Y23ysAH+
そして俺こそグレイテストモバイラー。
圧倒的だな。

5 かばとっと 09/05/10 19:14 ID:Zxl+tVZk
年賀状の配達は無事すんだかどうかわかりますでしょうか。

6 いやあ名無しってほんとにいいもんですね@3ch 09/05/15 20:03 ID:8X9Fb04M
スペースモバイラーの俺でも。さすがにわからんな。
332創る名無しに見る名無し:2009/08/31(月) 01:30:17 ID:Zw9+QoBl
不覚にも吹いたwww
333 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/13(日) 22:08:59 ID:CQC4Sicg
島根県某所。その一帯には、近頃妙な噂が流れていた。曰わく、山中の
洞穴に足を踏み入れた者はことごとく「怪物」に捕食される。この風評の
せいで、山に立ち入る人間はほとんどいなくなったという。
間違いない。ここに奴がいる。ソウはほとんど確信に近いものを感じて
いた。
 サラ万次郎は人肉を好む。その供給が困難である為、施設では代用品が
与えられていたが、しばしば与えたはずのない「生きた人間」が食われた
痕跡が見つかったという。モバイルが使用されたのだ。奴の能力があれば
他にいくらでもできることがある。しかし、力は食材の確保に使われた。
奴のカニバリズムの衝動は根深い。今でも、食人の何らかの痕跡を残して
いないはずはない。それがこの地域に広まった噂なのだ。
334 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/13(日) 22:10:25 ID:CQC4Sicg
「ここが例の洞窟か。意外に小さいな」
俄に吹き始めた強風が木々をざわめかせる中、大佐は山の中腹にぽっか
りと開いた2メートルほどの縦穴を睨みつけていた。非常時に想定される
布陣を考えているのだろう。選りすぐったとはいえ、こちらの戦力は大佐
と自分を除いて僅か十人。誰一人として生きて帰れないという事態も十分
考えられる。
「入り口はこの通りですが、中は結構広くて入り組んでいるらしいですよ。
地下水脈も通っているそうですから、途中で水路にぶつかって先に進めな
くなるかもしれません」
「厄介だな」
いつしか風はぴたりと止んでいた。


陽の光の届かない暗闇の中は、時間の感覚を狂わせる。探索を始めてま
だ小一時間だが、ソウは既に半日は洞窟内をさまよっているように感じた。
整備された道などあるはずもない入り組んだ通路を、時に腰まで浸かるよ
うな深さの水も超えていくのは、激しく体力を消耗する。屈強な兵士達に
も疲れが見え始めていた。元気なのは大佐だけだ。
335 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/13(日) 22:12:00 ID:CQC4Sicg
「まだ見つからんのか! 本当にここに居るんだろうな!」
水流て水滴以外の一切の音がない不気味な静寂は、一向の神経を確実に
すり減らしていた。大佐は苛立ちを露わにする。
「十中八九間違いないでしょう。この広さですから、そう簡単には見つか
ら……」
ソウの言葉はそこで途切れた。その時、これまでなかったような広い空
間に出たのである。そして――
「奴がサラ万次郎か……」
ぬめりのある黒光りした皮膚の奥から、二つの丸い眼がこちらに向けら
れている。体長は8メートル程であろうか。それは山椒魚というにはあま
りに大きすぎた。
「さて、見つけたはいいがこれからどうする?」
「そうですね。できるなら穏便に協力を仰ぎたいところですが、人語を解
するかは分かっていません。ですから……」
ソウの言葉は再び遮られることになった。先程まで隣に控えていた兵の
一人が突如として姿を消し、サラ万次郎の前に現れたのである。一同が気
付いた時には既に遅く、頭から飲まれた兵士の断末魔が響いていた。
336 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/13(日) 22:12:41 ID:CQC4Sicg
――我々は重大な思い違いをしていた。奴は人の手に負える相手ではない。完全に「野生」の側の存在なのだ。
ソウは己の死を予感した。
「やむを得ん! 捕獲は断念する! 撃て! 撃ち殺せ!」
大佐の号令に、兵達は一斉に銃を構える。が――
「どうした! 早く撃たんか!」
「そ、それが……」
モバイルだ! 銃の機構に何らかの干渉をして、無効化してきている!
こちらに向かって歩き出した巨大山椒魚を前に、ソウは成す術もなかった。

「どうやらここまでらしいな。敵の戦力を甘く見すぎた」
「……」
あれからものの数十秒である。ソウと大佐を除いた兵士達は、既に全員
山椒魚の腹の中だ。GGGの精鋭も奴の前では無力だった。サラ万次郎。
血溜まりの中に立つ彼は、何かこの世のものではない禍禍しい存在に思え
た。山椒魚はゆっくりとこちらに歩みを進めてくる。全てを覚悟したソウ
はゆっくりと目を閉じた。
その直後である。何か金属音のような大きな音が聞こえたかと思うと、
それに続いてサラ万次郎のものと思われる甲高い悲鳴が洞穴の壁面に木霊
した。
 ――何かが起こった!
ソウは恐る恐る目を開いた。
337 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/13(日) 22:17:53 ID:CQC4Sicg
以上投下終了

大分間が空いてしまって申し訳ない
某所でも早くしろとせっつかれました
本当すいません
二周年になっても完成さてなかったとか、みっともないことにならないよう頑張りますん
338創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 22:21:10 ID:8pgpnC2x
投下乙です!
せ、せっついた訳ではありませんよ?

それにしても相変わらず良いところで切れるので続きが気になります
339創る名無しに見る名無し:2009/09/14(月) 00:44:29 ID:Q1B8VGRU
続いた―っ!?
340 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/19(土) 20:44:29 ID:ZfWEfa5w
「あいつらの動きはどうだ?」
「シナイ半島を越えてシリア方面へと向かっているようです。居住者が極
端に少ないダマスカス付近で接触を図るとの報告がありました」
 部下の言葉を耳にしつつも、裏刀は眼前の壁画から目を離すことをしな
かった。そこには古代の帝王の生涯が、複雑で幾何学的な意匠で描かれて
いる。もう位置を覚えてしまったその場所に掌を這わせると、ミミズの這
った跡のような奇怪な文字の凹凸を指の裏に感じた。
「丁度いい。連中を足止めしている間に、例の山椒魚を始末してしまおう」
「ほっほっほ、Gにはあれを捕獲しようという動きもあるようだぞ?」
 突然背後から聞こえた声に振り返ると、そこには長い銀色の髪を照明の
光で濡らした小柄な少女が立っていた。
「なんだ。バンディッドのおばばか。なに、気にすることはない。どうせ
あの化け物は連中の手に負える相手じゃない。あれを葬るのは俺達SSS
を置いて他にないよ」
「大した自信だね。何ぞ策でもあるのかえ?」
「ああ。おい、そこのお前。照明を天井に向けろ」
341 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/19(土) 20:45:29 ID:ZfWEfa5w



____
| |
| |
ヽ〇ノ
 ノ
ノ)




「……ほう。あそこにぶら下がっている妙ちきりんな人形は何だえ?」
「オートマタだよ。古代文明が生んだ超兵器だ。ようやく制御できる目処
が立ったところだが、早速実戦に投入することになりそうだ」
霧崎はそれに応えることなく、壁画へと目を向け、煙管を取り出し始め
た。苦労して見つけた隠し玉にもっと驚いてくれることを期待していた裏
刀は、若干の失望を感じつつ、彼女の視線の先へと目を移した。
それは、王の戦死の場面だった。圧倒的多数である王の軍勢を掻き分け
て、本陣へと突撃してくる敵軍が悪鬼羅刹のように描かれている。そして、
その中には一際異彩を放つ金髪の少女――S・ハルトシュラーがいた。
「……さて、奴がモバイラーをどれだけ足止めできるか分からない。そろ
そろ行かなければいけないな。日本へ」
342 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/19(土) 20:46:49 ID:ZfWEfa5w


 スーパーモバイラーは混乱していた。負傷したモバイラーを引きずって、
やっとのことで問題の現場にたどり着いた。しかし、そこには血を流す巨
大な両生類と
                   
                   
                        ヽ○ノ   
                         /
                        ノ)
                   
                   
                   
飛び回る棒のような何かがいた。
「な、何が起こってやがるんだ……」
よく見れば他にもガタイのいいおっさんや、ガタガタ震えてるイケメン
の兄ちゃん、たった今反対側の入り口から入ってきたらしい帽子と眼鏡の
男なんかもいたのだが、ニ体のクリーチャーのインパクトがあまりに強す
ぎて目に入らなかった。
343 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/19(土) 20:47:51 ID:ZfWEfa5w
「ウラトゥ! 貴様、こんなところに何しに来た!」
「命を救ってもらったっていうのに大した言いぐさだな。もちろん、あの
山椒魚を始末しに来たんだよ。捕まえようなんて馬鹿なことは考えてない。
どうだ、俺達SSSが誇る古代兵器スティック・アーネンは!」
おっさんと眼鏡の会話からすると、あの棒人間は眼鏡の仲間らしい。そ
して忙しく動き回る棒に目を戻すと、



  ヽ△ ∧、、 ギュルルルル
   /ーl\\> 
  ノ)  ∨´´ 



変形していた。
馬鹿デカい山椒魚の方は相変わらず悲鳴を甲高い悲鳴をあげながら血潮
を撒き散らしている。ありゃあ、もう駄目かもわからんね。そう思ったそ
の時だった。
344 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/19(土) 20:49:25 ID:ZfWEfa5w
         
                   
                   
                        ヽ○ノ   「GYAAAAAAA!」
                         /
                        ノ)
                   
                   
                   
頭が割れそうになる金属音に思わず耳を覆う。棒人間は瞬時に数メート
ル吹っ飛んでいた。
「スーパーモバイラー、今のは!」
「ああ、間違いない。モバイルを使ってどこかと空間を繋げていた。今の
はその気圧の差を利用した攻撃だろう。あの山椒魚、五人目の適性者だ」
思いがけず当初の目的を見つけたことで、スーパーモバイラーの心は沸
き立っていた。
(待ってろよブラック! 邪魔な奴を蹴散らしたら、新しい仲間を連れてお
前を助けに行くぜ!)
そしてスーパーモバイラーは、山椒魚の攻撃を受けて隙を見せている棒
人間に、「筆記者」の導き出した最適の先制攻撃、>>346を浴びせかけた。
345 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/19(土) 20:50:38 ID:ZfWEfa5w
以上投下終了
安価が遠すぎたかも
346創る名無しに見る名無し:2009/09/20(日) 01:09:05 ID:lHDEiyLO
しいたけ
347創る名無しに見る名無し:2009/09/20(日) 06:08:20 ID:ueGoUG2A
乙 おもすれー
棒姉wつええ
そしてしいたけ…これは…
348創る名無しに見る名無し:2009/09/20(日) 17:08:20 ID:Zue1U4r+
投下乙
ここにもしいたけがw
349 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/28(月) 00:18:59 ID:aCXklxzv
モバイルと接続。目標の座標を割り出す。大分県の山中、肉眼では視認出来な
い小さな一点――椎茸の胞子を構成する物質界の要素を総て解析し、蓄積する。
それを原子レベルから再構築し、自身の右腕に着床させる。さらに、最適な湿度、
気温等を割り出し再現。標的部位の時の流れを周囲の空間から隔絶、加速。瞬時
に右腕に椎茸を育成する。
この間僅か0.87秒。無論、広い椎茸の世界でも右に出る者はいない。

椎茸とは本来、死遺茸と表記される。かつて椎茸を用いた暗殺術が広く用いら
れていた頃、椎茸使いの暗殺者に狙われた者は悉く死を覚悟して遺書をしたため
たということからついた名であるという。
 その恐るべき戦闘能力に加えて、籠城時には椎茸を非常食にすることもできる
という柔軟性から、椎茸を右腕に宿す能力者達は軍事の要として裏の世界を牛耳
っていた。
今、この暗殺術を実戦レベルで行使できる者はほとんどいない。その中でもス
ーパーモバイラーは最も熟達した技術を有している。

オートマタが右腕の椎茸を察知した時、既に事は終わっていた。空中に散布さ
れた胞子は正確に目標へと収束し、硬い装甲の内側へと入り込んでいる。
「――弾けろ!」
スーパーモバイラーの声と時を同じくして、胞子は一斉に爆炎へと姿を変えた。
350 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/28(月) 00:19:46 ID:aCXklxzv
――終わった。スーパーモバイラーは炎と黒煙に包まれたオートマタに
背を向け、急いで負傷したモバイラーの下へと向かった。
案外早くけりをつけられた。早いとこ、あのデカいのを連れてブラック
の所へ行こう。そう言おうと口を開こうとした、その時だった。
「スーパーモバイラー! 危ない! 後ろだ!」
一瞬、世界が暗転した。強い衝撃だけが辛うじて知覚できた。
 腹から生暖かい液体が溢れているのを感じながら、ゆっくりと振り向くと、
そこには



  ヽ△ ∧、、 GYAAAAN!!!!
   /ーl\\> 
  ノ)  ∨´´ 



自分の背中をえぐる機械人形の姿があった。

「馬鹿め。スティック・アーネンがそう簡単に倒れると思ったか。お前らの命もここまでだな」
眼鏡め! 勝手なことを言いやがって! モバイラーズはそんなにヤワ
じゃないぜ!
そう言って棒野郎を弾き飛ばしてやろうとしたが、どうしても腕が上が
らない。スーパーモバイラーはいつしかヒューヒューと浅い呼吸を繰り返
していた。
351 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/28(月) 00:20:33 ID:aCXklxzv
「スーパーモバイラー、ここは俺にまかせろ」
いつになく真剣なモバイラーの声に、スーパーモバイラーの遠のきかけ
ていた意識は呼び戻された。
「お前……怪我を……」
「お前に比べればマシだ。ここは俺が何とかするからお前は一時離脱しろ」
こいつ……あの時のブラックと同じ顔をしてやがる。その一瞬の動揺の
間に全ては決していた。
スーパーモバイラーの周囲の空間が、転移時特有の歪みを見せ始めた。
敵は異変を察知するや、すぐに大きく距離をとった。モバイラーがスーパ
ーモバイラーに強制転移を行ったのだ。
「……モバイラー!」
モバイラーはもう振り返らなかった。再び山椒魚の絶叫が響く中、傷だ
らけの体で凶悪な機械人形と対峙していた。
閉じていく視界の中で、最後にモバイラーが>>353の攻撃を仕掛けてい
るのが見えた。
352 ◆P9vPR2iIAFi4 :2009/09/28(月) 00:22:47 ID:aCXklxzv
以上投下終了
一応スパロボの形式にのっとって主人公格のオリキャラを出してはみたが、この空気っぷりは既に主人公じゃないな
353創る名無しに見る名無し:2009/09/28(月) 00:37:24 ID:z+IN4mMH
ソウルオブ雑幼女
354創る名無しに見る名無し:2009/09/28(月) 01:22:06 ID:aCXklxzv
把握
355創る名無しに見る名無し:2009/11/12(木) 17:40:20 ID:ZeBpcDTj
先月の某板での投下でにより黒歴史がまたひとつ出来上がった
とはいえ台詞系の、新ジャンルなんだよな
えらく不評だったので黒歴史には違いないが、ここで投下するのはスレチかね?
356創る名無しに見る名無し:2009/11/12(木) 19:25:26 ID:kk8sB/Pv
【mitemite】過去創作物を投下するスレ【見て見て】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1257853255/l50

こんなスレもあるよ
357創る名無しに見る名無し
>>356
どうも。検討させていただく