1 :
Mr.名無しさん:
2 :
Mr.名無しさん:2007/03/14(水) 12:21:04
うんこ(笑)
3 :
Mr.名無しさん:2007/03/14(水) 12:23:57
ちんこ(笑)
4 :
Mr.名無しさん:2007/03/14(水) 12:26:21
おめこ(笑)
人がいない
少しお久しぶりです〜。
前スレ落ちちゃって大変でしたね^^;
立ててくださった方ありがとうございます。
まとめさんもdat拾ってくださってありがとうございます。
助かりました。
それでは久しぶりに書いていきますね。
私は手を引かれて暗くなった道を歩いていた。
空君は嬉しそうにどこかへ向かっている。
町を外れた人通りの少ないところへ出る。
そうすると少し山道に入っていった。
「どこへ連れてくの〜。こんな人気のないとこ・・・まさか?」
「え、あ、いや、違う、違う。俺がそんなことするヤツに見えるのか?」
「まだ、まさかしか言ってないけど?」
「う、うるせー、黙ってついてこ〜い」
「あははは、空君のえっち〜」
空君はからかいやすいおもしろい人だな〜。
そんな姿がちょっと可愛かった。
「ふぅ、久々。着いたよ」
暗い道を抜けて一番に見えた
月明かりに照らされた空君の笑顔は今日一番輝いていたような気がした。
そこは少し小高い町が見下ろせるような場所だった。
そこには一つポツンとベンチや休憩所みたいなトコがあるだけの広場で
何もない所だったけど、それは違った。
空君は一番に駆け出して、子供みたいにはしゃいで私を手招きした。
「こっち、こっちきてみなよ〜」
そこには光の世界が広がっていた。
町の明かり、そしてこの位置、月明かり、
そんなのが全て絶妙な配置で整った絶景だった。
「す、すごぃ・・・」
「だろ〜。俺のとっておきの場所さ。たまにくるんだけどな」
「ねーねー、私もここたまに来ていい?」
「ん?仕方ないなぁ。特別許可してやるよ」
「空君の所有地じゃないでしょ〜」
「違いないな。あははは」
「も〜、ふふふ」
私たちはしばらく黙ってその景色に見とれていた。
町のいろんな所を見回した。
普段はさびれたような場所もここからなら
綺麗なイルミネーションの一部だ。
ほんとに時間を忘れるぐらい、ううん、とまったようだった。
今日一日を町を追って思い出す。
本当に楽しい時間だった。もしかしたら生まれてから一番かも。
そんな時間をとなりの彼は私にくれた。
彼にしてみれば遊んでただけかもしれないけれど
私はこの景色を今日の思い出を決して忘れないだろう。
「茜、ちょっと来てよ」
空君が突然に静寂をやぶって私の名前を呼んだ。
私はトコトコと空君の前に立った。
「どしたの?」
「少しだけ目を閉じていてくれないか?」
「え、うん」
何故か私はそれに素直に従った。
そんな事言うのはきっと違いないのに。私は従った。
目を閉じると真っ暗な闇に包まれる。
そんな少しな時間も私はもどかしかった。
空君の手が頬に触れる。
やっぱりそうなんだ。でもいい。私もきっと・・・
空君のことが好きなんだから・・・
11 :
◆ROM7FNz6Kg :2007/03/15(木) 06:09:01
今日はここで〆です。
サイドエピソード茜編もあと少しで終わりです。
さて先生方戻ってきて〜!ノシ
12 :
塩 ◆jkonqwrcaw :2007/03/15(木) 07:23:07
中学生の同人誌並みだな。
普通にシマラン。
13 :
Mr.名無しさん:2007/03/16(金) 06:52:46
ほ
て
初代先生のクオリティの高さは異常
16 :
Mr.名無しさん:2007/03/17(土) 12:07:45
ho
17 :
最低 ◆vkX54tTRD. :2007/03/17(土) 12:13:58
面白そう……
18 :
さくさく:2007/03/17(土) 14:14:51
いやー
久々描こうかなって
19 :
Mr.名無しさん:2007/03/17(土) 18:07:08
wktk
21 :
塩 ◆jkonqwrcaw :2007/03/17(土) 19:31:13
このスレ面白いの書ける奴いるの?
研究所にたどり着いたアキとジン。
ジン 「アキは先に入っててくれ。俺は外の奴が中に入らないように…。」
アキ 「分かった。」
内に姿を消すアキ。
その姿を見送り、銃を握りしめるジン。
ジン 「この先は俺には荷が重いからな…。さて…。」
まだ焼け跡が残る研究所内。
暗く鈍い匂いと雰囲気が体を包む。
アキ 「リュファ…リュファ…。どこにいる!」
人気は無いが、予感が走る。
『何か…いる!』
その時、壁に亀裂が入る。
アキ 「!?」
破壊された壁から姿を現したのは体格がいい男だった。
マオ 「ほぅ…なかなか良い感をしてるな。
ハンター・アキ!」
アキ 「おまえは!」
アキはマオを睨みつけた。
アキ 「『百鬼』マオか…。
幾度の乱戦の生き残り。」
マオ 「ほぅ…私の事を知っているのか。」
アキ 「お前がこの事件の首謀者か!」
マオ 「…?。俺はただ雇われ兵だ。
やはり落ち着く。お前のような強者が放つ緊張感。」
アキ 「戦う前に聴く。黒い刀を持った男を知っているか?」
マオ 「あぁリュファのことか…?
奴ならここにはいない。」
アキはこそっり石を取り出す。
アキ 「あーそうかい。ならあんたに用はない。」
アキの握ってる石が光る。
『天王。』
空間に稲妻が走り爆発がマオを包む。
壁が砕け堕ちる。
アキ 「悪いな…。時間が無いんだ。」
マオ 「いや…悪いのは私のほうだ…説明がなくて」
熱と煙で歪む空間から無傷でマオが現れた。
マオ 「奴は良い物をくれた。私に魔法は効かない。」
アキ 「何!?」
マオ 「私を倒すなら我を超える剣が必要なんだよ。」
マオは剣を向ける。再びアキは石を握り光だす。
『恐空。』
立ち上る風がマオを襲う。
アキ 「こいつからは逃げられ…。」
しかし、マオに影響は無い。
マオ 「無駄だ!」
強風の中、剣を振るうマオ。
アキ 「馬鹿なぁ!」
マオ 「魔法は効かない。剣を抜け!アキ!」
言われるがまま、剣を抜きマオの攻撃を受ける。
マオ 「それでいい…。」
アキ 「(コイツ…魔法が効かない?
それに剣が…見えない。
音や殺気が無い。)」
柄を握る手に力が入るアキ
マオ 「さぁ始めるか。」
外での戦闘も激しいモノとなっていた。
疾走を続けるシューサ。
シューサ 「思ったより…護衛が少ない。」
ユカ 「そうね。前よりも手抜きな…。」
ラシク 「そろそろ我々も研究所内にいくか…。」
シューサ 「あぁ…アキの事もあるしな。」
研究所内。
激しい攻防が続くが、アキが圧されている。
力も速さも経験も…
すべてマオが上回っていた。
アキ 「(こ…こいつ。やはり…)」
一瞬の隙…アキは足を払われ地面に転ぶ。
マオ 「ふふっ…焦っているな。
気づいたか?この『違和感』。」
アキ 「(やはり…何か『仕掛け』があるな。)」
マオが放つ剣にはスピードがあり実体が見えない。
それだけではなく気配や音もない。
距離をとるアキ。
アキ 「くっ…魔法も使えない…。不利だ。」
マオの攻撃がアキを捉える。
防具により守られたもののダメージはさけられない。
アキ 「…うっ!!」
マオ 「ふふっ…仲間に助けられたな。
しかし、『ハンター』のアキがこの程度だとは…。」
アキ 「(くそっ!ざまねぇな。教授に助けられた。)」
足が軋む。空間が止まる錯覚。
教授の言ってた事がフッと思い出す。
教授 『お前自身が争いを望んでる。』
アキ 「ははぁ…あんたの言う通りかもな。」
その時…アキの剣が吹き飛ばされる。
アキ 「(リュファにかき回されて死ぬか…。
俺に相応しい死に方かもな。)」
剣を向けられる。
マオ 「気にするな。お前も私の歴史の一部になるのだ。」
さらにアキの脳裏に懐かしく心地良い声が響く。
ティナ 『…アキ。』
マオの放った剣はアキではなく壁を裂いた。
マオ 「…何?」
アキの姿はそこには無い。
アキ 「(見えた。今…見えた。
相手の動きが…未来が…。)」
地面に刺さった剣を取り構える。
アキ 「(リュファ…これが俺の答えだ。)」
マオが放つ攻撃はアキには当たらない。
マオ 「バカな!見えているのか!?」
アキ 「攻撃が見えなくても緊張感が俺に教えてくれる。
未来が見える。」
マオの剣をいなし、突き飛ばした。
アキ 「見落としていたよ。
気配や実体が見えない攻撃でも、パターンがある。
そしてこのもう1つの違和感の正体…。」
連続で放たれる剣はアキを捕らえられない。
アキの放つ剣は徐々にマオをかすめる。
マオ 「くっ!こいつ早い!
いや…違う…死角を突かれている。
私の動きが見えているのか…?」
『ガチャ!!』
マオの剣は折られそれと同時に地につく。
アキ 「勝負あったな。」
アキは剣を地面に刺し付け石を握りしめる。
マオ 「ば…バカが。私に魔法は…」
アクセサリーを握りしめるマオ。
31 :
Mr.名無しさん:2007/03/18(日) 09:37:57
久々に…なんとなくね
32 :
塩 ◆jkonqwrcaw :2007/03/18(日) 12:45:11
>>22 少なくとも ◆ROM7FNz6Kg と 9話・始まり 「アキ」 よりはいいの書くと思うぜ。
それともネタ?
このしまらなさ加減は。
33 :
Mr.名無しさん:2007/03/18(日) 16:51:14
>>32 仕様です
つかどんな理由であれ書き手が増えるの俺は賛成
つーわけで、書いてくれ。
塩って小説書けるのか
しらなんだ
>>32 お言葉ですが、例えばいきなり一冊の小説を渡されたとします。
その本を途中から読み始めておもしろいと思いますか?
登場人物、ストーリー、それまでの経緯
などがわからなければおもしろいはずありませんよね
あなたがこれまでのモノを読んでくださってそう思うのでしたら
すいません、仕様です。軽く流してください。
と小言はここまで。
書いてくださるのは大変嬉しいです。是非お願いします。
最近スレに少し活気が出てきて嬉しいです。
さてしまらない続きですがどーぞ
ふいに鼻にかかる軽い感覚が消える。
「それっ」
私の目の前には・・・あれ見えないや。
「うぉぉ、か、可愛いじゃん」
私は手早くかばんからコンタクトレンズを取り出し付ける。
そして一息。呼吸を落ち着ける。ふぅ。
パシーン。
その小気味いい音は光り輝く夜景によく響いていった。
「いや、あのスイマセンでした」
「も〜いきなり何すんのよ〜」
もう自分がバカみたいだ。
なんであんなことを期待してしまったんだろう。
こんな目の前のヘラヘラ笑ってる男の子に。
「いや〜なんとなく気になってさ。眼鏡かけてる女の子の素顔とか
気になるじゃんか。いや〜でも驚いたなぁ。そっちのが可愛いよ
コンタクトにしちゃえばいいのに」
む〜全然反省の色がない。だけど可愛いって言われて
喜ばない女の子もいないわけであって・・・
本当に前向きな人だ。ある意味うらやましい。
「そ、そうかな。ど、どうし・・・はぅっぅぅぅぅ」
ふいに空君の手のひらが私の頭に乗っかった。
空君はにっこりと笑って優しく頭を撫でてくれた。
その時、頭をなでられる感覚、笑顔の天使の人形、
そしてこの場所が突然に私の記憶を呼び覚ました。
そう、あれは夏が少し過ぎたある夕暮れ時・・・
「ないよぉ、ひっ、くっ、ない、うぅぅ」
私は一人泣いていた。
見る人の影は私に誰一人振り向かず通り過ぎる。
それが悲しかった、空しかった。
私は一人泣いていた。痛みと悲しみに耐えながら。
「どうしたの?泣かないで」
そこに救いの手を差し伸べてくれたのは名も顔もわからない男の子だった
・・・と思う。
「めが、うっ、ひっ、眼鏡ない、の」
その子は頭をそっと撫でて、探すのを手伝ってくれた。
きっと私の顔は涙でくしゃくしゃで
その子の顔もよくわからなかったけれど
その子は笑ってくれていたような気がした。
「あったぁぁぁ!」
しかし、転んだ時、もしくは自分で踏んでしまったのか
眼鏡は割れてしまっていた。
再び涙があふれてくる。
小学校2、3年生くらいだった私。
私はそんなには強くはなれていなかった。
「泣かないで。笑ってるほうがきっと可愛いよ」
そういって私に笑顔の天使の人形と虫眼鏡を渡してくれた。
「それあげる。だから泣かないで。あ、そうだ。いいところ教えてあげる」
その子は私の手を引いて駆け出した。
私は虫眼鏡を片手に持って、なんとか着いていった。
けれど、やっぱり虫眼鏡なわけで見えるようにはなったものの度が強すぎる。
その子の顔はハッキリとは見えなかった。
40 :
◆ROM7FNz6Kg :2007/03/19(月) 00:22:15
今日はここで〆です。
ではまた〜ノシ
41 :
Mr.名無しさん:2007/03/19(月) 06:42:13
期待age
42 :
さくさく:2007/03/19(月) 19:12:12
でも、俺も思った
自分の読み返すとつまんねーっておもうな。
つか、読みにくい上意味わかんねーな失敗したなとか思う。
まぁrpgツクールのネタそのまま持ってきたのが失敗だったな
ゲームだと結構やれるよ。
まぁ日々がんばりますあげ
43 :
Mr.名無しさん:2007/03/20(火) 09:49:46
今日もage
44 :
最低 ◆vkX54tTRD. :2007/03/20(火) 16:09:36
うーん……かぎかっこにいちいち名前つけちゃったら脚本だから厳しいね
ツクールなら確かにあれていいが
45 :
Mr.名無しさん:2007/03/21(水) 11:19:37
あげとく
>>42 僕はそれでいいと思います。僕達は所詮ド素人の書き手なワケですし、
おもしろいものをかけと言われて簡単に書けたらプロは必要ないワケです。
そうやって一つ、一つ見つけていくんだと思いますよ。
僕も読み返してみて失敗したなぁなんて事は山ほどあります。
でもそんな中wktkとかおもしろいとかレスしてもらえると
やっぱ嬉しいし、頑張ろうって思えますよね。
さて続きます。
47 :
Mr.名無しさん:2007/03/21(水) 18:57:00
塩の執筆マダー?
48 :
Mr.名無しさん:2007/03/21(水) 19:01:57
潮は逃げた
49 :
Mr.名無しさん:2007/03/21(水) 19:02:51
わかめ禿げはどーせ口だけだからな
夕暮れの中数多のとんぼが秋の始まりを告げるように
私達を見下ろすように飛んで、飛んで太陽の中に消える。
私はただ引かれるままについて行く、
そんな景色が変わっていくのを感じながら・・・
「ついたぁ〜。ね、すごいでしょ」
そこには夕暮れの太陽が作り出す茜色の世界が広がっていた。
私達の町は静かにたたずみ、秋風は音を立て通り過ぎる。
そんな世界に私はただただ必死に虫眼鏡を覗いていた。
「笑ってたほうがいいよ」
突然彼は一言言った。
気がつくと私は微笑んでいた。
さっきまであんなに悲しかったのに・・・
彼は笑顔の魔術師と言ったところだ。
「このまえ見つけて、嬉しくてつれてきちゃった」
「ありが・・・とう」
夕日は町の向こうにもう沈みかけていた。
その時を悟るように。この不思議な少年との別れを・・・
「ここ夜になると町が光ってとっても綺麗なんだよ。また行こうよ」
「うん、また来たいな。約束・・・だよ」
「そうだ。君の名前は?」
「私?私は茜。神崎茜ってゆうの」
彼は満足そうに笑うとまた私の手を引いた。
「あの、今日はありがとう。あなたのお名前は?」
彼は最後にもう一度頭を撫でてそういった。
「僕?僕は・・・」
その彼の名前はもう覚えていない。
それはその後私は父の都合で引越し、
この町に戻ってきたのは2年前だった。
私は私のした約束を自分で守れなかった。
53 :
塩 ◆jkonqwrcaw :2007/03/22(木) 14:49:37
>>35 おもしろい小説は途中から読んでも面白い。
おまえの場合、文の書き方が下手。
ストーリー以前の問題。
糞シマンネストーリーでも書き方次第で面白くなるの。
おまえはひとつの情景があったとして、それをスムーズに書きすぎ。
語彙少なすぎ。
ストーリーが先行してしまってそれがつまりどんな状況なのかを書ききれてねぇの。
54 :
Mr.名無しさん:2007/03/22(木) 15:29:43
>>53 コテはキャラも書き込みも面白い奴は面白い。
おまえの場合、存在そのものが残念。
コテ付ける以前の問題。
糞コテだと言われても、空気嫁りゃ周りもスルーしたり理解したりするの。
おまえはひとつのスレがあったとしても、それをよく考えず変な書き込みしすぎ。
知能低すぎ。
書き込み欲求と構って欲求が先行してしまって、スレがどんな状況なのか飲み込めてねぇの。
55 :
塩 ◆jkonqwrcaw :2007/03/22(木) 15:45:10
56 :
Mr.名無しさん:2007/03/22(木) 15:45:57
でもZA先生が去ってから書き込みが激減したのは事実だとオモ
今は塩効果で活性化してはいるがな
59 :
Mr.名無しさん:2007/03/22(木) 22:30:29
塩の執筆マダー?
60 :
Mr.名無しさん:2007/03/23(金) 18:35:19
塩の執筆マダー?
>>58 あの人は冗談抜きで凄すぎ
丁度ZA先生の作品読んでた時期、別スレの会いたい先生の作品も読んでたから、スゲー楽しかったよ
神っているんだな
>>53 おっしゃるとおり・・・ですね。
前回は失礼な発言をしてすいませんでした。
そこまで見てくださってるなんていいアドバイスありがとうございます。
確かにストーリーの進行を進めすぎて登場人物の発言、行動だけに
気を使いすぎていた気がします。
自分で情景が作れても伝われなきゃ意味ないですからね。
執筆の方期待しております。お手本にさせていただきますよw
さていきなり変われないと思いますが、頑張っていきたいと思います。
続きます。
そんな記憶の断片が私の中でパズルのように組み立てられていった。
約束、遠い記憶、それを呼び起こしてくれた彼の手の温もり。
今あの頃から成長した私はまたこの場所にいる。
少し冷たい夜風が吹き抜けるこの光の丘に・・・
「約束守ってくれたな・・・」
彼は優しい双眸で私をそっと包んでくれた。
目から熱いものがこみ上げて、感情が抑えきれなかった。
「おかえり、茜」
見つからなかった最後のピースを
やっと私は見つけることができたんだ。
記憶のと共にあの時流せなかった涙まであふれてくる。
もう二度と会えない・・・
約束を私はもう守れない・・・
そんな絶望した感情に押さえ込まれていたものが解き放たれる。
「ご、ごめん。私、私・・・」
何もいわず私をそっと包んで涙を拭いてくれた。
そんな空君の顔はあの時の笑顔だった。
私は彼の顔を見ていなかったわけじゃない。
心に鍵をかけていたんだ。
もう悲しまないように、笑顔でいられるように。
そんな後に私たちは積もる話を懐かしのベンチに座って
時を忘れ話し明かした。
最初に会った時にビックリしたとか、本人か確信がもてなかったとか
この目的の一つとしてそれを確かめるためだとか・・・本当に色々。
そんな下らない話を聞いているのは隣にいる彼と三日月だけだった。
そんな中一本の電話がその終焉を教えてくれた。
PiPiPiPiPiPi
「あり?ハイ。あ、葵?あ、スマン。すぐ帰る。え、そんなに怒るなって」
終わりなんだ。
そう感じるとこれまでの時間の経過を急に感じさせる。
時間は予定より大分過ぎていた。これは私も怒られるなぁ。
そんな時空君はもう一つ真剣な表情でこう私に告げた。
「最後に一つ、報告と相談。茜なら聞いてくれると思ってさ」
その時私はこの最後を終わらせたくなかった。この時を逃したら、
きっと私はもう・・・
そんな中を対峙した二人を吹き付ける夜風はいっそう冷たさを感じさせ
月明かりは二人のための舞台を輝かせてくれた。
「私も、一つ伝えたい。お先にどうぞ」
告げてしまった。後戻りはできない。
心臓の鼓動は高まっていく。なんせ初めての・・・
「実は俺、沙奈と付き合ってるんだ」
え?
自分の精神だけが異世界に飛ばされたように暗闇に包まれていく。
心臓はまだ鼓動を早くさせていた。でも、もういい。
静まってよ、私を一人にさせて。静まってよ・・・
その後の空君の言葉は覚えていなかった・・・
「やっぱ、そだよな。ありがとう。茜」
私は何て言ったんだろう。覚えていない。
月は雲に隠れ、光の世界は一つ一つと光をかき消す。
空君はまたあの時と同じように手を貸してくれた。
なんでだろう。笑ってるよ。私。
なんでだろう。喜んでるよ。私。
これが私の欲しかった笑顔?喜び?
「待って!!」
空君は驚いたように振り向いた。
「これ、空君に持っていて欲しい」
それは今日空君からもらった笑顔の天使だった。
「わかったよ、これもらっとく」
空君は何も聞かずそれを受け取って頭をもう一度なでてくれた。
きっとこれが最後・・・なんだろうな。
私は抗った。私の今に。芽生えてしまった恋心に。
私はもう一度鍵をかける。
過去を開けてしまった代償に、今に私は鍵をかけた。
その鍵を私は空君に渡した。
それは自分自身のケジメでもある。
「じゃ、また明日な。今日は楽しかったよ。ありがとな」
空君の無邪気な笑顔が今の私には痛かった。
「うん。また明日。沙奈ちゃんに私とデートした事報告しちゃうから」
もう少し私は強がった。帰りの私の様子が少し心配だったから。
「そりゃ、勘弁だぜ〜。折角茜のために用意した一日だぞ〜」
「嘘、嘘。また明日追求しちゃうから〜、バイバイ」
帰るともちろんお説教が待っていた。
だけど今の私の耳には届かない。
ベッドに倒れこむ。
「うぅ、ぅっうぇわぁぁああぅ・・・」
閉じ込めきれなかったあの時と同じ悲しみ。
空君との思い出が走馬灯のように駆け巡る。
あと少し私が帰ってくるのが早かったら・・・
私がずっとここにいたら・・・
私はあなたの傍に寄り添えたのでしょうか・・・?
一つの恋は幸福をもたらす。
二人は笑っていられる。
だけど、その恋は二つに変わると不幸、争い、悲しみを呼んでしまう。
なぜこうも変わってしまうのか・・・?
私は空君に笑ってて欲しいから、心から幸福を祈るから鍵をかける。
私を閉じ込める事で彼が笑えるのなら、私は・・・
「くぅ・・・」
私はいつの間にか眠っていた。
今日の長い長い一日を私は今度こそ忘れない。
そんな一日が終わるとき笑顔の天使から一粒の雫か零れ落ちた。
Fin
72 :
◆ROM7FNz6Kg :2007/03/24(土) 20:30:48
サイドエピソード茜編をなんとか終わらせることができましたぁ。
多分サイドエピソードの中で一番長くなってしまいました。
中々出番少ないかな〜と思ったので頑張ってしまいました。
さて最後は塩さんのご指摘があったように意識して書いてみたんですが
どうでしょうか??自分なりに情景をできるだけ描いてみたつもりですが・・・
さて次から久々に学園祭編に戻ります。ではまた次回ノシ
73 :
Mr.名無しさん:2007/03/24(土) 20:34:37
【出版先】は世間だよなあ。出版元なら出版社の名前だろうが。なんか変なの。
持ち込み先、とか言うのならまだわかるんだが。
74 :
Mr.名無しさん:2007/03/25(日) 10:21:19
age
75 :
塩 ◆jkonqwrcaw :2007/03/25(日) 15:25:35
>>63 え、ごめん、僕、口だけのへたれなんだ…。
パーン
( *^ω^)
⊂彡☆))ω´)
>>75
77 :
Mr.名無しさん:2007/03/25(日) 19:43:57
パーン
( *^ω^)
⊂彡☆))ω´)
>>75
つかZA先生は逃げたのか・・・?
ZA先生いたらかなり活気戻るんだろうが・・・
>>78 パソコンがぶっ壊れたんだっけ?
ボーナスで新しいの買うとは言ってた希ガスるんだがどうなったんだろ・・・・・・
今の先生もなかなかいいんだがやっぱZA先生がいないとしまらんな
81 :
Mr.名無しさん:2007/03/28(水) 02:17:50
なんたる過疎
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
83 :
さくさく:2007/03/28(水) 19:50:51
ネタだすから誰か描いてください。
普段は地味系でおとなしいんだけどギターの名手。
目立つのがあまり好まないのでそのことは幼なじみ以外には内緒。
ところがある日、ギターのことがクラスのコにバレて
一緒に文化祭のライブに参加することになった。
ってなハチャメチャラブコメディかいてください
よし、ソレ乗った
今から最初の一話考えるからちっと待っててくれ
ただし、俺はギターの知識はまるで無いのでその辺でリアルさを失うことになる
あと途中で力尽きるかもしらんがそれでも良いか?
85 :
飛び林檎:2007/03/28(水) 23:01:36
>>83のご意向に答えて書いてみました。
途中で力尽きたらごめんね
それはまったくの不運としか言いようの無い出来事だった。
僕はただ、真面目に放課後掃除当番の任を果たそうと、
体育館の中にある体育倉庫のそのまた隅っこに備え付けられた
掃除道具用のロッカーに箒とちりとりを返却に行っただけのこと。
すると幸運なんことにそのロッカーの足元に
どこぞの運動部員が忘れて行ったと思しき
三週間前に発売された週間漫画雑誌が放置されていた。
特に急ぐ用事もなかった僕は、ほんのちょっとのつもりで、
ちょうどそばにあった跳び箱を背もたれにして座り込みページをひらく。
本当にすぐに止めるつもりだったのだが、
久々に読んだ一般向け漫画雑誌が以外と面白いことを再発見したこと、
薄汚れた体育倉庫で漫画を読むという突飛な状況が
理由も無く楽しいことをしているような気分になってきてしまったことが相まってすっかり読みふけってしまった。
そうしてページがこの秋からアニメ化されたスポーツ漫画にさしかかったころ、
静かだった体育倉庫に入っていく何者かの気配がした。
「ほら、ここなら誰もいないから」
「なに?そんな大事な話ならマキの家にでも行った方がいいんじゃない?」
やってきたのは女子生徒二人。
ちょうど僕の座り込んでいるところは倉庫の入り口からは見れば背にした跳び箱の影になっているらしく、
二人は僕がいることに気がつかないようだ。
「家なんてダメダメ、何時誰が部屋に入ってくるかわかったもんじゃないんだから」
「だからってこんなトコじゃなくても…そうだ、じゃあマックにでも寄ろう」
「ダメ、学校帰りのマックなんてどこに誰の目があるかわかんないんだから、すぐ済むからさ」
向こうから見えない以上、当然こちらからも向こうの様子などわからない。
どうも人に聞かれたくない話をする様子だ。
これはそそくさと姿を見せて退散するべきではないだろうかとほんの一瞬逡巡したが、
検討の余地もなく、二人は会話をはじめてしまった。
「で、いったいなんなの?バンドのこと?」
86 :
飛び林檎:2007/03/28(水) 23:28:46
「いや、まぁ、そのなんというか…バンドってよりはバンドメンバーのことかな・・」
「なに?誰かと喧嘩でもしたの?よしてよ文化祭も近いってのに。
間に入ったげるからさっさと仲直りしてよね、で、誰と喧嘩したの?トモコ?チハル?」
「いや、そういうワケじゃないんだけど…ってよりはもっと仲良くなりたいって方かな…」
ハキハキと物をしゃべる一方の女子に対して、体育倉庫に連れ込んだ側の子は言葉の端々の切れ味ががわるい。
「はぁ?いったいどういうこと?ちょっと話がみえてこないんだけど?」
「いやその、ちょっと言いにくんだけどさぁ…」
「どうしたの?マキらしく無いよ?大丈夫、どんな話か知らないけど、私誰にも言わないから。
だから思い切って言っちゃいなよ、絶対すっきりするから」
「うんまぁその…うん。そうだね、よし、言っちゃおう。マコのおかげで勇気が出たよ」
「よし、その意気だ。ドーンと言っちゃえ!」
「うん!実はその…私…」
「うんうん、私はどうした?」
「私実は…」
「うんうんうん、実は実は?」
「私実は…マコのことが…」
「ほうほう、私のことが?…て、ん?ちょっと待ってよなんかこの展開って…」
「私実は、マコのことが好きなの!!」
「…はい?」
その瞬間、ホコリっぽさ全開の体育倉庫の空気が時間の流れから切り取られたような気がした。
まったくの部外者である僕を含めて、
その場に居合わせた人間全員がそれぞれの思いを胸に(僕は思いもくそも無いのだが)言葉を失ってしまった。
すっかり気が動転した僕は意味も無く湿気た漫画雑誌で顔を隠してうずくまってしまう。
「えっとその…本気で言ってる?」
「もちろん!…そりゃ、自分でも変だとは思うんだけど…」
相変わらず僕に届く情報は声だけなのだが、二人の間がいかに気まずいのか手にとるように伝わってきてしまう。
「そう言われてもその…私どうしたら良いのか…」
「ごめんね突然変なこと言って。でも私ここんとこマコのことばっかり考えてて、もうこうするしかしょうがないかかって…」
「いや、誤ることでも無いけど…」
「言ったってマコのこと困らせるだけって判ってたんだけど、でももしかしてもしかしたら両思いになれるかもなんて…」
87 :
飛び林檎:2007/03/28(水) 23:29:43
続きはまた後日にいたします
それでは
_n
( l _、_
\ \ ( <_,` )
ヽ___ ̄ ̄ ) グッジョブ!!
/ /
んでもって
_ ∩
( ゚∀゚)彡 続き!続き!
⊂彡
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
89 :
さくさく:2007/03/29(木) 18:55:45
>>87 ありがとう期待にこたえてくれて
続きまってます
90 :
Mr.名無しさん:2007/03/31(土) 10:33:51
また落ちるから
91 :
Mr.名無しさん:2007/04/02(月) 06:33:00
age
92 :
飛び林檎:2007/04/02(月) 23:44:36
そして不意に訪れる沈黙。
向かい合った二人(見えないけど)は互いに相手に言葉を失い、また相手の言葉を待っていた。
思い切って言ってみたはいいものの、その後が続かないマキ。
まったく予想だにしえなかった展開に混乱し、現実に頭が追いつかないマコ。
その静寂はほんの数十秒ほどだったが、
僕を含めこの場に居合わせた全員が
その時間をまるで壊れたビデオのスロー再生のように長く感じていた。
「あの、えっとその…なんて言っていいのか…」
「ご、ごめんね突然変なこと私…」
「いや、その、変とかってわけじゃなくて、
ほ、ほら、女子高じゃこういうの結構あるって話だしさ、そういうこともあるよきっと、あははは…」
まるで他人ごとのような言いようだった。
いや、実際まだマキの気持ちが自分に向けられたものだと頭の中で整理しきれていないのだろう。
その言葉にはまったく感情がこもっていない。低く沈殿した空気の上を浮ついて流れて行くのみだった。
そして再び沈黙。
まるで我慢比べのように、重苦しい時間がゆっくりと進む。
93 :
Mr.名無しさん:2007/04/03(火) 21:05:37
保守
94 :
Mr.名無しさん:2007/04/04(水) 23:14:35
あげ
95 :
さくさく:2007/04/05(木) 12:55:50
結構いままでの読み返してます。
あげ
おしろいで自肌を隠し
墨で眉を描き
朱色で唇を染める
お洒落なんてした事なかった私の、最初で最後の贅沢――死化粧
97 :
飛び林檎:2007/04/05(木) 22:34:53
「えっとその…今更だけど、それって本気?」
「うん、…これでも…結構真剣」
「正直なんて答えたらいいのかわかんないよ、そんなこと私考えたことも無かったし…」
「うん」
「とにかくマキは友達で、大事なバンドの仲間で…」
「うん」
「だからその、なんて言うか…」
「と、とにかくさ、私がマコのことそういう風に考えてるって、
それだけは知っておいて欲しかったの、答えは、すぐじゃなくていいから。」
「…そう、」
「今日はホントごめん、おかしなこと言って」
「いや、だからあやまんなくても良いって…」
「でも、やっぱりゴメン。それじゃっ!」
リノリウムの床を駆ける音。
どうやらついに状況に耐えられなくなって体育倉庫を飛び出していったようだ。
(やれやれ、ようやく終わったか)
じっと身を潜めているというのも意外と疲れるものだ。
不意に突飛な話を盗み聞きしてしまった。
それにしてもレズッ娘ってリアルでいるんだね、マリみての中だけかとおもってたよ。
驚くのもいいが、そろそろ小さく縮こまって血の巡りが悪くなった体をそろそろ伸ばしたい。
跳び箱の影から立ち上がり、「あ〜」とだらしない声をあげながら伸びをしてみる。
程よい開放感の中で目を開くと、そこにはそれなりに見知った女子生徒がいた。
「へ?」
この場に自分たち以外の誰かがいたことに驚くことすら忘れて
ただただ呆然とこちらを見ているのは、ショートカットに大きな青い髪留めがトレードマーク、同じクラスの沢城真琴。
「あ」
そして僕、野森哲史はといえば、
一人が走り去った足音だけで事がすべて終わったと思い込んだ浅はかな自分の後悔を
そのわずか一文字の発声で表現してこの場に立ち尽くしている。
季節は秋。遠くから文化祭へ向けての練習に熱が入るブラスバンド部のトランペットが高らかに鳴り響いていた。
98 :
Mr.名無しさん:2007/04/08(日) 11:06:59
ほ
99 :
Mr.名無しさん:2007/04/08(日) 12:15:29
も
100 :
Mr.名無しさん:2007/04/10(火) 06:43:44
も
101 :
Mr.名無しさん:2007/04/10(火) 21:33:49
も
102 :
Mr.名無しさん:2007/04/11(水) 00:57:12
これは久しぶりに名士来たな
飛び林檎先生、ZA先生越え頑張れ
他の先生も頑張れ
103 :
Mr.名無しさん:2007/04/12(木) 22:34:48
ほ
しゅ
書き手が少ないので書かせてもらいます。
前スレでどこまで書いたかわからいんで3つ目の話から書きます。
「はぁ〜。」
由衣はため息をついた。机の上に広げてあるプリントには『進路希望』と題があった。
「考えられないよ〜。急に…。」
「いいかぁ!今週中に提出な。」
全員、あいまいな声で返事をする。
「由衣!あんたどこの大学いくの?」
由衣は自身なさげな表情をだす。
「う〜ん。迷ってるんだけど…
お父さんの大学がいいんだけど…
あたしじゃ難しくて…なんて書くのも恥ずかしいっていうか…。」
「ハハハッ…あと一年。なんとかなるって!」
楽天的に考える真弓に対して、慎重な由衣。
プリントに書くだけなのに緊張している。
そんなときオドオドとした様子の佳奈がやってきた。
佳奈 「由衣ちゃん…ちょっといい?」
由衣 「えっ…」
由衣 「えっ!好きな人ができたぁ?」
由衣に相談しているのは甘え上手な佳奈。
佳奈 「…うん。実は…」
佳奈の目に映る1人の男。友達と談笑をしているその男は金田葉という。
「えっ?金田君?」
「…うん。」
「なんで?」
「話ていたらだんだん…みたいなぁ
なんか好きなんだよねぇ〜。
何でも10位以内って人。」
由衣はもう一度、葉を見る。
「(あっ、なるほど)」
葉はそこそこ勉強もできてスポーツもできるほうだ。
目立ちもしないが出来が良い高校生。
「明日、告白しようかな…って」
「えっ!そんな急に…」
「だって、だって…すぐ告白しないと他のコと付き合っちゃうかもしれないし…」
慌てる佳奈。
「大丈夫だよ。佳奈なら絶対OKしてくれるって…自信持ちな。」
由衣が励ますと佳奈は明るく笑った。
「うん。なんか元気でた!ありがとう。由衣ちゃん。」
由衣に抱きつく佳奈。
自宅に戻って、ベッドに倒れ込み枕を抱く由衣。
由衣 「『自信持ちな。』…かぁ。
他人事だと前向きになれるんだ。
あたしって嫌なコ…。」
夕食の時間。斎藤家では久々3人揃っての夕食だ。
「…真一くん。」
悟はテーブルに学校のパンフレットを広げた。
「(…う゛っ)」
箸を噛む真一。月に一度は求人票や学校のパンフレットを持ってきては真一に見せる。
「目を通しておきなさい。」
「俺…今で充分満足してますって…。」
真一は時々バイトもしていて小遣いには困っていない。
「…でも、いつまでも家に留まるのももったいないだろ。気晴らしにでも目を通してない。」
部屋に戻った真一は机にパンフレットを並べ頭を抱える。
「まいったなぁ〜」
その時、由衣が部屋に入ってくる。
「おっ!さっそく見てたんだ。」
「あっ由衣ちゃん」
「どこか行きたい所あった?」
「いやぁ〜なんかさ抵抗があるっていうか…いまいち踏み込めないっていうか。」
「何言ってるの!何事もチャレンジだって!」
それだけ言うと由衣は自分の部屋に戻った。
「…最低だね。私…。」
警察署では…
威が軽薙のコクピットに座りシミュレーション訓練をしていた。
「じゃ映像流すわよ。北岡くん。」
「お願いします。」
軽薙のコクピットの画面には作られた映像が移る。
映された映像を次々と打つ威。
「…くっ。」
10分後…コクピットから降りる。
「お疲れ様です。」
「お疲れ…北岡くん。」
「67パーセント…まだまだですね。」
落ち込む威。
「…徐々に命中率はだけど上がっていってるわ。30分後…もう一度やってみましょう。」
「これじゃ…実践では役にたたない。
もっと…もっと」
112 :
さくさく:2007/04/14(土) 09:32:13
「」の名前を消して文もちょっと変えてみました。あと題名も変更しました。
あげときます
「ゆうれいたいじ?」
怪訝そうに聞かれた少女は、ウン、と小さく頷く。
頭の上で束ねた長い紅茶色の髪が揺れ、緩いウェーブを描きながら少女の頬を撫でた。
年の頃は10歳程度…小学生半ばあたりか。
白いタンクトップに赤のチェックのプリッツスカート、というスタイルは、
か弱く、かつ儚く見える少女の外見を健康に見せるのに大いに役立っている。
髪と同じ色をした大きな瞳に見つめられ、白衣の男――史郎は小さくため息をついた。
「管轄外です」
冷たく言い放って、腕の中で震えている仔犬の耳を撫でた。
「獣医さんが、患者さんが怖がらせちゃ駄目じゃないの」
こちらも負けじと冷たい声で返し、少女が史郎の腕から怯える仔犬を取り上げる。
くぅくぅと喉を鳴らしながら少女にしがみつく仔犬を恨めしそうに見、次に少女へ視線を移した。
安っぽいパイプ椅子に腰掛け、足を組む。
「学校に幽霊なんか出る訳ないでしょう」
決め付けると、少女は不服そうな表情でそれに応じた。
「だって、見たってコがいるの」
「見間違いだろう。人間って不安になると、何でもオバケに見えるものなんだよ」
うつむき黙り込んでしまった少女の扱いに困り、史郎は諭すように少女の名を優しく呼んだ。
「ねぇ、まりあ」
少女――まりあがゆっくりと顔をあげる。その頭を大きな手のひらで撫でると、少女はまたうつむいてしまった。
「幽霊を見たって人が出てから、学校で3人も人が倒れてるの」
頭を撫でる手のひらがピクリと反応した事を敏感に感じ取り、まりあは顔をあげて身を乗り出した。
「倒れた人って誰も目を覚まさないの。長い人でもう4日め。見た人だっていっぱいいるの」
まくしたてられ、史郎は思わずあとずさりたくなった。
「ゆかりちゃんも・・・」
一番の友人の名をあげ、まりあは正面から白衣の青年の顔をみつめた。
「ゆかりちゃんも見たって言ってた。見間違いなんかじゃない」
小さい声で、しかし信念を持って断言した。
見つめられた青年の方も、娘のように可愛がってる少女の親友の名をあげられては無下にする訳にもいかない。
下手すると、幼いプライドを傷つけてしまう。
頭をかきむしりながら、史郎は再び溜息をつき、ブラインドの開いた窓から見える景色と、壁の時計を見比べた。
外は闇に覆われ、時計の針は9時半過ぎを指している。
「――わかった、明日までに考えるから、今日はもうお休みなさい」
渋々納得してみせると、少女の顔がぱっと輝いた。
「その代わり、患者さんはこっちに返してね」
一言付け加えると、まりあは仔犬の頭を撫で、素直に「患者さん」を差し出した。
照れくさそうな笑顔を、敬愛する獣医に向ける。
「ありがとう、せんせい。大好き、おやすみなさい」
頬に軽くキスをくれた後、ぱたぱたと元気良く部屋をかけ出る少女の後姿を見つめ、
乱したくせっ毛を手櫛で軽く直しながら、視線を腕の中におとした。
見捨てられたとばかりに呆然とドアを見つめる鼻垂れの仔犬が、そこにはいた。
思わず、今日何度目かの溜息をついた。
翌日…。
「おはよう!由衣ちゃん!」
「おはよう。」
「…由衣ちゃん。今日、告白してみるね」
由衣は笑って
「うん。がんばってね」
チラリと葉を見る。
自宅では真一が掃除をしていた。
その時…
真一 「うっ!」
身体に悪寒が走る。
真一 「…あいつらだ!」
それと同時に美奈子のパソコンにも反応があった。
「今までとは違い…突然空中に現れましたね。」
「肉眼で確認後。そして反応…」
拓哉と美奈子の目に映るのは空中浮かぶ巨体…その巨体を囲い浮かぶ2つの球体。
「無人ヘリを飛ばし観測したところ球体から光線が放たれ破壊されました。」
「アーク本体から1キロ以内のモノは狙撃される…か。
それなら長距離射撃で撃つしかないわね。
準備はいい?北岡くん」
「はい!」
軽薙は巨大なライフルをアークに向け構えていた。
「アークが住宅外のとこまで移動したら狙撃するのよ。一撃で仕留めなさい。」
ブレる標準を定め、息を飲む威。
そして…
「今よ!」
威はトリガーを弾く。
空気を切り、激しい唸り声をだす弾丸
しかし、弾丸は球体から発射された光線により破壊された。
「くっ!」
「高速の弾丸をあっさりと…やってくれるわね。」
威はもう一度照準を合わせる。
その時アーク本体が光出す。
「本体にエネルギーが!」
アーク本体から光線が放たれ、軽薙のライフルが破壊される。
「くっ!」
「本体からも光線なんて…。」
そのとき真一が戦場にいた。
「Aghgtato」
日を塞ぎ、闇を作り巨体を持つドルチェが姿を現した。その姿を目にする。
「でたわね。ドルチェ!」
そのころ学校では、
「佳奈…ファイト!」
両手で拳を作りギュッと構える。
「う…うん。」
佳奈は葉のところへ向かう。
「ちょっといいかな?」
「…?」
ドルチェの足が光だし、ボードを出現させる。
ボードはドルチェを乗せて浮く。
「接近戦!?」
「いくらドルチェでも無理ですよ!」
勢いよく動き出し接近するドルチェ。
すかさず球体が反応し光線がだされる。
「…くっ!」
119 :
Mr.名無しさん:2007/04/15(日) 19:40:05
ほ
お久しぶりです。
最近はとても忙しくて中々書ける機会がありませんでした。
新先生お二方、さく先生お疲れ様です。
特に飛び林檎先生は文の書き方が上手だなぁと思いました。
見習いたいと思います。
では久しぶりに書きます。
秋の空はいい。
夏の雲はふわふわと手が届きそうに感じられる。
しかし、秋の空は遠く雄大に、この広さを再確認させてくれる。
暑苦しい空気からまるで窓を開けたように吹き抜ける秋の風。
こんなことをしみじみ思える高校生も俺ぐらいなもんだ。
こんな放課後には練習に燃える高校生が汗をかき、必死になっている。
そんな姿を見ると自分が情けなくなってくる。
しかし、それを行動に移せない自分がいる。
「こんなのボーッと見てて何が楽しいかわかんないよぉ」
おっと、少し感傷に浸りすぎたようだ。
お姫様はご立腹らしい。
「わかんないかぁ、そりゃそうかもな」
俺はわざとらしく大きな声で笑った。
「も〜早く帰って遊びに行こっ」
わがままなお姫様は俺の手をぐいっと引っ張る。
だがその笑顔を見るとなんでも聞いてあげたくなる。
付き合い始めてから、いやそれはフツーのことだと思うけれど、
沙奈といる時間は多くなった。
もちろんいつものメンバーは毎日顔をあわせている。
昼休みは大体屋上に集まるわけだ。
だが、このことはまだ皆には言えていない。
沙奈は言いたがってるみたいだが、俺はどうもそういうのは苦手だ。
一緒にいてもいつものことで皆が気づくこともない。
そもそも付き合ってるといっても、何が付き合うなのかわかんないし、
ただ遊んでるという実感しかないような・・・
さてそんなある日の昼休みのこと。
いつも通りの昼休み・・・のハズだったんだが。
昼休みになると続々と屋上に集まってくる。
一番最初に来るのはいつも俺なんだが、今日は・・・
荒い息遣いの茜が飛び込んできた。
「ハァ、ハァ、も〜疲れたよ。
やっぱ眼鏡かけたままにしたほうがいいいかな?」
茜は最近メガネをはずしてコンタクトにしたんだが、
その変わりようファンが急増。青いと並ぶ学園のアイドル候補にまで
なってしまった。
「あはは、お疲れ様。モテモテじゃないか。よかったなぁ」
俺は陽気に笑ったが、茜に睨み殺されそうな視線を突きつけられる。
昼は生徒は大体教室なので、俺たちのように屋上に来るヤツはいない。
ここで〆。
少し余裕が出てきたのでまた書きに来ますね〜。
ほ
126 :
Mr.名無しさん:2007/04/19(木) 23:16:11
age
ほ
なんだってヲレはこんな山道を歩いているんだ?
歩き続けた足が疲労を訴えはじめた頃、ふと、冷静になった。
ヲレはこんなに疲労を感じ、
長く歩かされ続けた事に不快感を覚えているというのに
前を歩く少女はさも楽しげにスキップしている
あぁ、不快だ。腹の立つガキだ。
だが、その苛立ちとは裏腹に股間はこれからの期待に痛いほど膨れ上がり
窮屈なジーンズから早く出たいと脈打ちながら主張している。
「ね、ねぇ?どこまで行くのかな?おじさんちょっと疲れたよ」
気持ち悪いほど穏やかな声。顔には不気味な作り笑い。
「だらしないなぁ〜。おじさん運動不足なんじゃないの〜?」
何がおかしいのか少女はケタケタと笑う。
もう周囲には人影も無い。もうここでやってしまおうか、と考えた。
「この先には何があるんだい?」
そう思うと、ふと余裕が生まれ、心からの笑顔が出た。
それはとても歪つな笑顔。
「なにもないよ」
対する少女も心底愉快そうに答えた。
何もない、だと?
もはや我慢の限界だった。
もう抵抗されようが構わない。やってしまおう。
一歩、少女の背後に近づいた。
「この先にはなんにもないの。あなたにとってはね」
相変わらず少女の言っている意味がわからない
「そうね。あたしも早く・・・したくて・・したくて。もう我慢できないから」
笑いながら振り向いた少女の顔を見てようやく男は気がついた。
-だがもう遅かった。
空が、高い。
寝転がった草の上、
俺の気分はどうしようもなくささくれだっていた。
薄汚れたブレザー越しに感じる草の感触も
遠慮がちに頬を撫でる風も、苦々しくて仕方がない。
いつもと変わらない毎日になるはずだった。
今朝のニュースを見るまでは。
山奥で男の変死体が発見された。
今の世の中じゃなんの変哲もないニュースである。
けれど、被害者の顔がテレビに映った瞬間
その、忘れたくても忘れられない顔を見た時から
ただのニュースは心の底に大きく根を張った。
その男の死にはなんの感慨もわかない。
あんなクズは死んで良かったとさえ思う。
しかし、どうしてもあの男の顔とリンクして
鮮明に蘇った忌まわしい記憶が何にも増して不快だった。
131 :
Mr.名無しさん:2007/04/22(日) 22:14:13
なんだ新先生か?
wktk
目を閉じて
草木が風に揺れ、じゃれあう音を聞いていた。
ここは不思議なほど「街」を感じさせない。
この街は都会とは呼べないが、それなりに車も人通りもある。
この丘を降りれば当然そこにはそれらの喧騒がある。
俺はそういった喧騒が大の苦手だった。
ずっと物音ひとつない場所で育った影響もある。
しかしそれ以上に…
「そっとしておいてください」
草を踏む音を聞分けて先に声をかけた。
「…あのね」
寝転がった俺の頭上からは呆れた声。
「今日はとても疲れてます。頼むから見逃してください。」
目を開けて顔を覗き込んでいる瞳を見つめ返して言った。
「もう…!ひとんちの庭に勝手に入るな!勝手に昼寝するなって言ったでしょ」
ぶつかった目線を泳がしながら少女は言った。
口調や腕を組んでいる姿勢の割にあたふたと頼りない。
目があっただけでこれではこいつに交渉能力など皆無だと即座にわかる。
「別に、絶対来るな!なんて言ってるんじゃなくて…来るならちゃんと知らせるとか」
「腕を組む時、左腕が上に来る人は感情・創造タイプの人間らしいぞ」
なんだか小言が始まりそうなので話を逸らした。
「人の事いやらしい目で観察しないでよ!」
即座に組んでいた腕を解いて話を遮られた。
ちなみに解いた腕は所在無げに腰にあてられている
こいつはそれっぽいポーズを取らないと威厳を保てないのだろう
「で、なんかあったの?」
隣に腰を下ろすとこいつは唐突に聞いてきた。
「…何が?」
「さっき今日は疲れてるって言ってたじゃん。それになんか難しい顔してる」
「人のこと観察しないでって言ったくせに、おまえは観察するのな」
「観察なんてしてないよ。観察なんかしなくてもあんたの事はわかるし」
思わず赤面した。
こいつは自分が言ってる事をわかっているのだろうか?
当人は小首を傾げて言葉を待っている。
「別に、話すようなことじゃない。ただ凶悪な事件に胸を痛めてただけだよ」
「凶悪事件って海外の銃乱射事件?」
「そうだな…あとはまぁ、今朝あった殺人事件とか…」
「そんなのあったの?この近く?」
「近く、ではないな…。山で木に張り付けられてる死体が見つかったんだとか…」
「うぇ…そんな事件があったの…?」
反応を見る限りそれほど世間じゃ注目されてないようだ。
事件の詳細について話そうとも思ったが本気で気味悪がってるのでやめた。
「それで…その事件がどうかしたの?」
「いや…」
「まさかバイトに関係するの?」
「殺しを扱うような探偵は日本中探してもいないだろ」
「なら…いいけど。絶対に変な事に首突っ込んじゃダメだからね」
事件の詳細はこうだ。
20XX年X月X日
X山展望台への登山道付近で
木に張り付けられた遺体が発見された。
争った形跡も衣服や金品が盗られた形跡は無し。
持ち物から被害者は丸山秀雄45才無職と断定。
死因は腹部に刺さった杭による失血死。
つまり無抵抗、あるいは抵抗も出来ずに生きたまま杭を打ち込まれたわけだ。
公にはなっていないが拷問のような跡もあるらしい。
また現場には被害者の足跡が残されており、自らの足で現場に来たということになる。
足音は日常の壁のすぐ向こうから聞こえていた
新先生お疲れ様です。
あんま余裕できてなかったみたいで
中々かけませんでした^^;
さて続きです。
秋風が気持ちよく拭きぬける中、
唸るお腹を押さえ俺達は全員が集まるのを他愛無い話をして待つ。
そうして続々と集まっていくメンバー、俺たちは小学生の給食のように
いただきますとバカみたいに大きな声を合図に互いの弁当をつつきあう。
だがそれが俺達にとって大切な時間になっている。
学校の中での安らぎとでも言おうか。そんなトコ。
「いただきまーす」
だが、今日は・・・
「どーーーん」
にぎやかな空気は凍る。招かれざる来客。
ソイツは勢いよく扉を開けると
俺達をまるで子供が新しいおもちゃをもらったかのようなまなざしで見つめていた。
「わー、皆そろってるね〜。僕にも教えてよぉ〜」
空気が凍ったのは飛奈の登場に驚いたわけじゃない。
いつも神出鬼没もう慣れっこだが、問題なのはヤツの格好だ。
「オイ、オマエナンテカッコウシテンダ?」
俺は思わず日本語を覚えたての外国人みたいになってしまった。
「え〜かわぃ〜とぉ思いますよ〜」
美久さんはほのぼのとゆっくりと食事続行。
うん、美久さんはある意味一番貫禄がある。
そして足音はまた一つ、足音は忍び寄っていた。
「こぉらぁぁぁ、飛奈ぁぁぁぁぁ」
近づくにつれ大きくなる叫び声。
もはや昼食どころではない予感を全員が感じていた。
扉の前で止まる足音と声、そして不気味に聞こえる笑い声。
「ックックッククククク、ア〜ッハッハッハァ」
謎の声に沙奈は怯え、俺の背中に隠れて震えている。
他の皆も身をこわばらせている。
謎の不審者?とにかくマトモなヤツでないことは確かだ。
飛奈はそんなことお構いなしに自分の弁当まで広げだしている。
「飛奈、あの声はなんなんだい?」
亮平はいざという時のため身構えながらひっそりと聞いた。
「ほぇ?あ、あれはね・・・」
「もう逃げられないぞぉ〜飛奈ぁぁぁ」
その声の主は正体を告げようとする飛奈をさえぎる様に登場した。
う〜ん、メガネ?
多分皆の第一印象。
そこにはいかにも優等生。
真面目が服を着た学生の鏡であろう人物が息を荒げ立っていた。
「飛奈君君は男子生徒だね。なぜ君がそのようなセーラー服をぉ!!!」
メガネ君は少し恥ずかしそうになにやら怒っている。まぁ、コイツの格好をみれば
そこらへんのマトモな人間なら怒りかねないが・・・
ミニスカセーラーに猫耳メガネにしっぽってヲイヲイ。
「あはは、かわぃ〜ぃ?あはははは」
ほ
(1/8)
「ここが地獄だよ諸君!」
ダンテ伯爵は言った。そして古びたフロックコートからステッキを突き出して裾をはだけ、胸毛が密生
した地肌が露わにした。そこから覗く弛緩した肉体は荒縄で亀甲縛りに縛られている。そう、このよう
な状況にもかかわらずダンテ伯爵はSM放置プレイを楽しんでいるのだ。なんたる余裕!なんという変
態なのか!
「そんなことはないっ!俺たちがいる限りこの世界はまだ終わっちゃいないんだ!」
少年探偵団の斉藤団長は言った。副団長の美佐も叫んだ。
「そうよダンテ伯爵!あなたみたいな真性の変態なんかに、この美しい世界をわたすものですか!」
美佐の紺色のスカートの裾が風にたなびく。すると捲れたスカートの下から水色の毛糸のパンツが現れ、
地獄の業火に照らし出された。
「…ほう、美佐よ。なかなかカワユいパンツを履いておるのう…」
ダンテ伯爵は少しニヤケながら美佐に言った。美佐はハッと気付くと「いや〜ん!」と言いながらスカ
ートの裾を両手で押さえ、その場にペタンと座り込んでしまった。両手で顔を覆って泣き出す美佐。そ
のとき少年団員の渡辺くんは思わず美佐のスカートの中を覗こうとしたが残念ながら見ることが出来な
かった。
(チィッ!)
渡辺少年は舌打ちをした。渡辺少年は密かに少年探偵団のヒロイン美佐に恋をしていたのだ。しかし美
佐は団長の斉藤少年といい仲であり、普段から他の団員達に見せ付けるようにいちゃついている。渡辺
少年は二人を、いつも嫉妬と羨望の眼差しで見つめていた。…しかし渡辺少年の美佐への想いは絶ちが
たく、毎晩自分が彼女とイチャつく妄想で憶えたてのオナニーに励んでいた。そして濃厚なザーメンを
発射しながら美佐をモノにしたいと思った。美佐の発達した乳房を鷲掴みにしてモミモミしたいと激し
く熱望した。しかし現実は厳しい。小林少年は団員のなかで最も地味な少年でしかなく、普段美佐から
は軽蔑まじりの一瞥を向けられるのが関の山だった。
(2/8)
「…ゆ、ゆるさないぞダンテ伯爵!よくも、よくも美佐ちゃんを泣かせたな!」
しゃがんで泣く美佐の横に立つ斉藤団長がダンテ伯爵に向かって叫んだ。そして少年団支給の秘密武
器であるソードステッキを抜き払った。
「うおおおっ!」
斉藤団長は叫びながらダンテ伯爵に向かって突進した。ソードステッキの刃が地獄の業火に照らし出さ
れてギラリと光った。
ダンテ伯爵笑った。笑いながら黒マントをヒラリと翻すと軽やかに宙を舞った。そして硫黄の噴煙を噴
出する溶岩石の上を跳ね回って避けた。
「はははっ!斉藤団長よ!そんな程度の攻撃で私が倒せると思ったのかね!」
「く、くそ〜!」
斉藤団長は尚もダンテ伯爵に向かってゆく。
…それを後ろから渡辺少年は薄笑いを浮かべて眺めた。
(もうすぐだよ斉藤くん。ボクがキミ達のお弁当に密かに盛った睡眠薬が効いてくるのは…)
渡辺少年は斉藤団長が倒れるのを今か今かと待った。…そう、渡辺少年は裏切り者なのだ。
…美佐に対する歪んだ情欲をもち美佐のヌードを想像しながら毎晩のように覚えたてのオナニーに励ん
でいた渡辺少年のもとへある日、ダンテ伯爵が訪れた。
「…俺こと地獄の変態ダンテ伯爵に協力してくれれば、お前に愛しの美佐をくれてやろう…」
ダンテ伯爵は渡辺少年にそう申し出た。オナニー途中の勃起したペニスを右手で握りながら渡辺少年
は悩んだ。(…ダンテ伯爵はこの世を破滅させようと企む人類史上最高の極悪人だ。しかし、俺はど
うしても美佐をこの腕で抱きたい!…)
苦悶する渡辺少年を微笑みながら見下ろすダンテ伯爵。
「少年団を裏切り、俺こと地獄の変態ダンテ伯爵に協力すれば地獄の変態軍団に迎えてやる。そうす
れば、この世が崩壊した後の新世界において支配者の一員になれるぞ!」
ダンテ伯爵は渡辺少年に囁いた。このまま少年探偵団にいてもずっとうだつの上がらない生活を続け
ていかなければならない、そう渡辺少年は想像して絶望感を覚えた。
(…このままずっと虐げられる生活を続けるくらいなら、いっそのこと…)
そして渡辺少年は悪魔に魂を売ったのだった。
(3/8)
「…う、うぐっ!」
急に斉藤団長がよろめいた。
「ど、どうしたのダーリン!」
美佐は叫んだ。
美佐の言った”ダーリン”という言葉に渡辺少年の嫉妬心が思わず疼いた。しかし
(…これが成功すれば美佐を小林の野郎から奪い取れる…)
そう思うと耐えられた。そして回りのメンバー達と一緒に心配するフリを続けた。すると
周りのメンバー達も徐々に薬が回ってきたらしく、次々によろめき膝をついた。
(…やったぜ!…)
思わず渡辺少年は心の中で叫んだ。一瞬ダンテ伯爵の方を見た。ダンテ伯爵は良くやった、
という感じで笑い顔を浮かべている。渡辺少年は微笑み返した。
(そう、これで美佐は俺の女だ!)
少年団員のみんなが意識を失って倒れる中で、渡辺少年は喜びのあまり遂に声を出して笑い出した。
…美佐は暗い部屋の中で目を覚ました。床も壁も天井も重い巨石で作られた部屋だった。
(どこ、ここは?まさか私達、捕まって閉じ込められたのかしら…?)
美佐は思った。そして不安になった。周りのみんなが居ない!それに…
「斉藤君、どこ!どこにいるの!」
「…斉藤は死んだよ」
いきなり背後から声を掛けられた。驚いた美佐は反射的に向かい合う壁際まで飛び跳ねて逃げた。
そして声のする方に向き直った。
「誰!そこにいるのは誰よ!」
美佐は叫んだ。その声は恐怖に震え上ずっている。窓から差し込む地獄の月明かりが独房を照らし
出す。そしてその明かりの向こうにある部屋の四隅の暗がりになにやら人影が蠢くのを認めた。
「誰よ!出てきなさいよ!」
美佐は叫ぶ。すると今まで座っていたその人影はゆっくりと立ち上がった。そしてゆっくりとした
足取りで美佐のいる方へと歩みだす。そして窓の月明かりに照らされる独房の中央の辺りで立ち止
まった。
…渡辺少年だった。
(4/8)
「わ、渡辺君じゃない。どうしてあなたがここに?…そ、それよりも斉藤君が死んだってどういう
ことよ!」
しかし渡辺少年はその質問に答えず無言だった。その顔にいやらしい笑顔を浮かべている。そして
血走った目が美佐の肉体を嘗め回すように動いた。
「…な、なによ渡辺君。ど、どうしたのよ。…な、なんのつもりなの?」
不安をおぼえた美佐は壁に背中がつくまで後ずさった。一方渡辺君は美佐の身体を無遠慮に見なが
らさらに歩みる。
そして今まで陰になって見えなかった渡辺少年の下半身が月明かりの中に現れた…その下半身は丸
裸で、股間から勃起したペニスが隆々と突き立っていた。
「ひっ!きゃあー!」
美佐は叫んだ。叫んで壁際にへたり込んでしまった。逃げようと尻込みしたが、狭い監獄のなかで
直ぐに逃げ場を失ってしまう。歩み寄る渡辺少年は遂に、美佐の手首を掴んだ。
「ほら、美佐ちゃん見てごらんよボクのちんちん。凄いでしょ」
渡辺少年は自分のペニスを右手で握ると、美佐の前に突き出すように向けた。驚きと恐怖のあまり
声も出せない美佐は、何とか視線を逸らそうとする。しかし渡辺少年は左手で美佐の横面を掴むと
強引に自分のペニスの方へ美佐の顔を向かせた。
「ボクねえ、美佐ちゃん。勉強も運動も苦手だし、みてくれもこんなで女の子にはさっぱり人気は
無いんだけど…少年団の仲間の中で一番おちんちんが大きかったんだよ、美佐ちゃん見てごらん?
…ほら、見るんだよっ!」
渡辺少年は怒鳴った。美佐は悲鳴を上げる。そして振り絞るように言った。
「き、気持ち悪いわっ!ち、近寄らないでよ変態!あ、あんたなんか斉藤君に比べたら全然よ!」
叫ぶ美佐の表情を見下ろしながら、渡辺少年は微笑んだ。そして静かな口調で言った。
「…だから、斉藤はもう死んだって言ったじゃん、美佐ちゃん。それよりも早くセックスしようよ。
多分斉藤団長より俺のちんこのほうがいいって思うようになるよ…」
(5/8)
そういうと渡辺少年は、嫌がる美佐に圧し掛かった。そして嫌がる美佐を体全体で押さえつけて
上着を剥ぎ、スカートをまくった。抵抗して暴れる美佐の太ももが、渡辺少年の勃起したチンコ
に当たる。亀頭の表皮はそのたびに太ももの滑らかな肌の感触を感じ取った。…渡辺少年は射精
しそうな程の快感を覚えた。
(…遂に美佐とエッチが出来るぜ…)
渡辺少年は笑った。泣きながら抵抗する美佐を押さえつけながらゲラゲラ笑った。
渡辺少年は美佐の股間をまさぐった。すると思わぬ感触が指先に伝わった。…毛糸?まさか美佐
は毛糸のパンツを履いているのか!渡辺少年は思わず美佐の顔を見た。恥ずかしそうに顔を赤ら
め美佐は目を背ける。そして美佐は暴れて抵抗しながら履き捨てるように言った。
「…わ、私は冷え性なの!も、文句あるの!それより止めなさいっ!パパに言いつけるからね!」
しかし既に毛糸のパンツの真ん中はしっとりと濡れてきていた。渡辺少年はさらに指先を毛糸のパ
ンツの上からしごく。すると必死の閉じようとしていた美佐の両モモが一瞬痙攣するように強張り
同時に「ああっ!」と鋭い喘ぎ声を上げた。
「美佐ちゃん…感じてるんだね」
「そ、そんなわけないでしょ!ふ、ふざけないで!…あっあうっ!」
渡辺少年の指先が毛糸のパンツの裾から中へ入り、とても敏感な溝を撫でると思わず美佐は喘いだ。
そして見る見るうちに抵抗する力が弱まった。
「ほらやっぱり。美佐ちゃんて結構エッチなんだね。」
渡辺少年がそう言って笑うと、美佐は悔しそうに顔を横に背けた。
「…美佐ちゃん。ほら、これを握ってごらん?」
渡辺少年は抵抗を止めた美佐に言った。そして美佐の右手首を掴むと自分のペニスまで運び、少し
強引に手の平を開かせると自分の巨根を握らせた。
「…えっ?」
美佐は一瞬、虚を突かれたように身を強張らせた。そしてもう一度渡辺少年のペニスを握り返した。
「こ、こんなに…こんなに大きい…」
「だから言ったろ。俺のチンチンは少年団で一番でかかったって。…しかもこれが、これから美佐
ちゃんのモノになるんだよ」
美佐は背けていた顔を起こし、渡辺少年の股間をまじまじと見つめた。
(6/8)
(…信じられない!)
美佐は思った。密集する陰毛の中から、なにか別の生物であるかのような巨大な茎がそそり
立っていた。ちょっとした握りこぶしほどもある亀頭はパンパンに充血し、赤黒く鈍い光を
放っている。ゴツゴツと節くれだったパイプは、まるで古木の根のようだ。しかもその表面
にはグロテスクなほどに静脈が浮き上がり、渡辺少年が荒く息をするたびにビクンビクンと
脈打つ。そしてなおも怒張してゆくそれは握っている美佐の手に抗するように硬直して力ん
でゆく。…美佐は思わずその巨大な肉茎に魅入ってしまった。
「す、凄い…」
美佐は思わず生唾を飲み込んだ。そして思わず肉茎をギュッと力強く握ってしまった。
「そ、そんなに握ったら、もうガマンできなくなっちゃうよ美佐ちゃん」
渡辺少年が呻いた。美佐は思わず
「ご、ごめんなさい!」
と言って、掴んでいた右手を引っ込めた。
「美佐ちゃん。美佐ちゃんの大事なところも見せてよ。僕ばっかりでずるいよ…」
渡辺少年の言葉に促され、美佐は恥ずかしそうに両モモを広げた。既に毛糸のパンツは剥ぎ
取られ下半身は丸裸だ。渡辺少年の好奇の目線に戸惑いながらも、美佐は自分の秘部を晒した。
…生々しいピンク色の秘肉が月明かりの中に晒された。うっすらと生え揃った恥毛には彼女
自身の愛液が滴って、輝きを放っている。
「き、綺麗だよ美佐ちゃん。凄いよ!」
渡辺少年は興奮するように叫ぶと、むしゃぶりつくように美佐の秘肉に舌を這わせた。
「ああっ!」
美佐は身体を捩って喘いだ。渡辺少年の舌が美佐の溝をさらい、美佐の身体の奥から溢れ出る
熱い液を掬い取る。舌先のざらつく感触が美佐の敏感な粘膜を苛め、益々美佐を昂ぶらせた。
ジュルジュルと粘液質の音が監獄内に響き、それを美佐の喘ぎがそれを掻き消す。
(7/8)
渡辺少年の舌先が美佐の蜜壺の入り口辺りをなぞった。すでにグシュグシュに濡れた蜜壺は
さらに愛液を溢れさせて、遂には監獄の石床を濡らした。
「そろそろ良いかい?」
渡辺少年は美佐に言った。美佐は恥ずかしそうに顔を背けて目を瞑った。それを無言の了承
と理解した渡辺少年は、美佐の唇に自身の唇を重ね、一度微笑んだ。そして力なく両脚を広
げる美佐の腰を引き寄せると、一気に自身の巨根を美佐の蜜壺へ突入させた。
「ひ、ひぎいっ!」
挿入と同時に美佐は悲鳴を上げた。それと同時に背中を大きく逸らした。丸みを帯びた大きな
両乳房が重力に抗うように弾んだ。上向きの乳首が月明かりの中で渡辺少年の視界を過ぎる。
渡辺少年は美佐の子宮を思い切り突き上げながら、美佐のその乳首を口に含んだ。そしてそれ
を舌先で乱暴に転がす。
「ああっ!す、凄い、裂けちゃう!ああっ!」
美佐は狂ったように叫ぶ。そして渡辺少年に縋りついて自ら腰をグラインドさせた。渡辺少年
が奥深く突き進むほどに美佐の肉穴はギュウギュウ締め付けを増す。粘膜の熱い襞が渡辺少年
の巨根に絡みつき亀頭のカリの敏感な辺りをくすぐるように刺激した。
(8/8)
「はあっ!凄いよ美佐ちゃん!…こ、こんなに凄いなんて思わなかったよ!」
渡辺少年は美佐の乳房をしゃぶりながら叫んだ。
腰を大きく振りかぶり、美佐の尻に向かって叩きつけるようにペニスを突き出す。床の上の美佐
はそのたびに甲高い叫びを上げる。…歓喜の叫びだった。何度目かの突き出しで美佐は絶頂に達
した。しかし渡辺少年はそれだけでは美佐を許さず、さらに敏感な粘膜を苛めた。
「ひぃっ!も、もう駄目ぇ!こ、壊れちゃうよっ!」
美佐は訴える。しかし同時に渡辺少年に抱きつくと両脚で渡辺少年の腰を締め付け、その巨根を
さらに奥へと誘う。滴る愛液、締め付ける括約筋、絡みつく蜜壺の襞、すでに子宮の奥壁にまで
到達した渡辺少年の亀頭は、さらにその奥壁さえも突き破ろうと暴れた。そしてそのころには渡
辺少年も限界だった。
「い、イクよ美佐ちゃん!もう、ボクも駄目だぁ…あうっ!」
一瞬渡辺少年は動きを止めた。そして前立腺のさらに奥辺りから、熱いモノが湧き上がるのを感
じた。尿道を伝ったそれは遂に尿道の先端から迸り、美佐の子宮の奥底に向かって思いっきり吐
き出された。
【完】
∧_∧ お・ち・ケ・ツ!
(´Д` )
/⌒ ヽ
/ ィ、 ヽ
/ / ヽ ヽ 、_
/ / 〉 _)_,) =3
⊂ノ / /, '
/ //
( く <
\ ヽ、`、
\ nn
〉' ( (
しイノ
(1/6)
「馬鹿めっ、こんにゃくマンは死んだわ!」
地下聖堂の礼拝室に不気味な声が響いた。それはダンテ伯爵の声であった。その声は暗く歪み、とても人間の
ものと思えない。嘲笑うような、そして凄まじい怨念がこもったような、そんな声だった。
「…ま、まさか、こんにゃくマンが死んだなんて…嘘だぁっ!」
団長の小林君が叫んだ。その声は怒りに震えていた。僕たち少年探偵団とってこんにゃくマンは単なる友人で
は無い。探偵団を何度も危機から救ってくれた命の恩人なのだ。ダンテ伯爵との激しい戦いで傷ついたこんに
ゃくマン。彼を助けようと必死の思いでここまで辿り着いたのに…
「嘘をつくなダンテ伯爵!…こんにゃくマンが、そんな簡単にお前にやられるわけがない!」
「そうだそうだ!」
少年探偵団のメンバーである秋山君や山口君、それに川村君も口々に叫んだ。いつもは物静かで引っ込み思案
の吉田さんも、普段とは打って変わって感情を露わにして叫んでいる。
(…ど、どうしよう。ボクの裏切りのせいで、こんにゃくマンが…)
周りのメンバーたちが騒いでいるなか、一人田村君だけが黙り込んでいた。少年団の中でも目立たず、いつも
他のメンバーに対してコンプレックスを抱いていた田村君。
そう、彼はついつい悪の権化ダンテ伯爵の誘いに乗ってしまったのだ。
■
「…童貞を早く捨ててみないかい? 田村くん」
その日の夜も自室でオナニーに励んでいた田村君に向かって、ダンテ伯爵は微笑みながらそう語りかけた。
田村君は突然のことに驚愕した。しかし青年誌の水着グラビアに刺激されたペニスは、まるで弾けるように
勃起したままだった。
「…まあ、とっても逞しいのね、田村君」
ダンテ伯爵の後ろから、見事な脚線美が歩み出た。タイトな網タイツ、切れ上がったハイレグボンテージ、
メロンのような二つの乳房、厚めの肉感的な唇から舌がチロチロ覗き、熱く潤った目線が田村君の股間の
チンコを注視する…それはダンテ軍団きっての美女、キャットウーマンであった。
(2/6)
キャットウーマンは妖しげな微笑みを浮かべながら、田村君に歩み寄る。その視線は睨みつけるようで
田村君を捉えて離さない。
「えっ…う、あっ」
田村君は身を強張らせた。予想外の展開に混乱し、緊張した。しかしそのちんこは激しく勃起したまま
先端からカウパー腺液を滲ませる。
キャットウーマンは田村君の目の前に立ちはだかった。
「大丈夫よ田村君、そんなに緊張しなくても…おねえさんが優しく教えてあげるからあっ!」
そう言うとキャットウーマンはひざまづいた。そして長く細い指で田村君のペニスを軽く握る。
「あっ! ああっ!」
「…こんなにしちゃって。 うふっ! おねえさんが気持ちいいことしてあげるっ!」
キャットウーマンはそう言って微笑むと、田村君のペニスの先を舌でチロチロとなめた。
その生暖かい感触に思わず腰を引かせた田村君、しかしキャットウーマンの舌先は尿道口から亀頭のカリ
をゆっくりと這う。そして遂に、田村君のペニスを全てくわえ込んだ。
「ああっ!」
田村君は思わず喘いだ。いけない、このままダンテ伯爵のたくらみにハマってはダメだ。しかし…何て
気持ちいいんだっ!
ディープスロートでのバキュームフェラで未知の快感を知った田村君は、一分も立たないうちに最初の精
を放ってしまった…。
そしてその後、ベッドの上で絡みあう田村君とキャットウーマン。そのあられもない痴態を見下ろしながら
ダンテ伯爵はニヤリと笑った…。
■
「…ダンテ伯爵っ! 僕たち少年探偵団はキサマを決して許さない! 最後まで戦うぞっ!」
「そうだそうだ、こんにゃくマンは僕たちの心の中で生きているんだあっ!」
少年探偵団のみんながダンテ伯爵への復讐を口々叫ぶなかで、田村君は一人俯いてしまった。
ボクはなんてことをしてしまったんだ、という後悔の念が田村君を苛めた。
(3/6)
「どうしたの?田村君」
俯く田村君に、いきなり声をかける者がいた。ハッとして振り返る田村君。
その声の主は、少年探偵団の副団長で少年団のアイドル、中村由里ちゃんだった。
「え、いや。なんでもないよ由里ちゃん」
ジッと田村君を見つめる由里の視線に、田村君は困惑した。
田村君が密かに想いを寄せる由里ちゃん…しかし既にキャットウーマンによって大人への扉を開け
放っててしまった田村君は、由里ちゃんの真っ直ぐな視線に思わずたじろいだ。
(僕は…僕は、穢れてしまったんだ。僕は裏切り者なんだよ!)
田村君は心の中で叫んだ。しかしそれは声にはならず、気恥ずかしさと自己嫌悪に襲われた。そし
て苦渋の表情を浮かべながら顔を背けた。
(僕には、もう由里ちゃんに会わせる顔は無いんだ…)
「…田村君も、ダンテ伯爵に忠誠を誓っているんでしょ?」
黙りこくっている田村君に向かって、唐突に由里ちゃんは言った。思わず耳を疑った。
(…何を言っているの由里ちゃん。)
田村君は戸惑った。すると由里ちゃんは田村君の困惑を見透かしたようにニヤリと微笑むと、
「実は、私もそうなのよ田村君。…だから私達は、同志ってわけ!」
そう言って由里ちゃんは天使のような笑顔で笑った。
(えっ!…まさか、信じられない)
田村君は驚いた。少年団の中の誰よりもマジメで正義感が強く、団長の小林君とともに先頭に立って
悪の軍団と戦い続けてきた由里ちゃんが…田村君は驚き、思わず由里ちゃんの目を見た。
整った面立ちのなかで一際美しく輝く瞳は澄み切って純粋だった。
…その目には純粋悪、紛れもなく純粋な狂気が現れていた。
(4/6)
思わずたじろぐ田村君。しかし由里はその女神の微笑みのまま田村君に近づき、言った。
「今がチャンスじゃない田村君。ほら、少年団の馬鹿共はみんなダンテ伯爵に向かって阿呆みたいに
喚き散らして冷静さを失っているわ。今こそこの馬鹿共を皆殺しにするチャンスよ!」
そして由里ちゃんはナップザックを肩から下ろし、ジッパーを開けた。中にはサブマシンガンとその
弾倉が十数本、それにパイナップル型手榴弾が十数個入っていた。
田村君は由里ちゃんの変貌ぶりに驚いた。そしてどうしてよいかわからず、戸惑いの表情を浮かべなが
ら由里ちゃんを見つめていた。
「ほら、早くしなさい。今がチャンスよ何やってるの?」
「で、でも。由里ちゃんは、一体…」
(少年探偵団のみんなを殺せだって? しかも俺が? そんな無茶苦茶な!)
尚も戸惑う田村君。すると煮え切らない田村君の態度を見かねた由里ちゃんは急に怒りだした。
「何よ意気地なし!アンタがやらないんなら私がやるわ!」
今まで天使のような笑顔だった由里ちゃんの表情が、急に悪鬼のように凄まじく歪んだ。憎悪と悪意と
そして狂気が由里ちゃんの美しい顔を邪悪な色に染め上げた。
すると突然
「由里ちゃん! …それに田村!一体そこでなにをやってるんだよ! これから地下迷宮に逃げ込んだ
ダンテ伯爵を追跡するぞっ、こんにゃくマンの弔い合戦だ!」
団長の小林君はそう声を掛けてきた。と、同時に二人の間に漂う異様な空気に気付いた。
しかし、まさか二人が裏切り者だとは思ってもいない様子だ。
不審な表情を浮かべながら小林君はズカズカと歩み寄り、由里ちゃんの肩にその手を掛けた。小林君
と由里ちゃんは付き合っていると噂されるほど普段は仲が良いが…しかし今は。
小林君は田村君に向き直った。そして由里は俺の女なんだと言わんばかりに抱き寄せると、田村君を
睨みつけながら叫んだ。
「…田村っ! お前はいつもモタモタしてどうしようもないな。俺達のこんにゃくマンが死んだって
のに、呑気に突っ立ってんだよ! …ん?何だこれは」
小林君は足元に転がる由里ちゃんのナップザックに気付いた。そしてその中に手を突っ込み、覗いた。
「わっ!こ、これ本物か?UZIサブマシンガンじゃないか!どうしたんだよこれ!」
(5/6)
その声に少年探偵団のみんなが一斉に振り向いた。みんなの視線が一気にこちらに集まる。
(まずい、まずいぞこのままでは…俺たちが裏切り者だって、ばれてしまうかもしれない)
田村君は焦った。しかし立ち竦んだままどうすることも出来ない。
「うるせえんだよっ! この豚野郎があっ!」
突然、由里ちゃんが叫んだ。そして腰のベルトに吊っていたランドールM14アタックサバイバル
ナイフ抜き払うと、それを小林少年の腿に突き立てた。
「ぐわああっ!」
血を流しながら床に転げまわる小林少年。それを軽蔑するように見下ろしながら、由里ちゃんは
ナップザックから機関銃を取り出した。そして田村君の方に向き直ると、そのうちの一丁を田村少年
に投げ渡した。
「さあ田村君! ぐずぐずしないでこの豚共を皆殺しにするのよっ!」
田村君に向かって由里ちゃんはそう叫んだ。そしていきなり少年探偵団の団員達に向かって機関銃を
フルオートでぶっ放し始めた。
血しぶきを上げて倒れてゆく少年団のメンバー達。ある者は獣のように叫び、また別のある者は脳漿
をぶち撒けながら倒れてゆく。
そして機関銃を乱射しながら悪魔の微笑みを浮かべる由里ちゃん。
田村君は驚愕しながらも、その由里ちゃんの横顔を眺めた。そしてその由里ちゃんの表情に思わず惹
きこまれてしまった。
…血まみれのその横顔は、喩えようもなく美しかった…
…気付くと田村君は、大声で叫びながら機関銃を連射していた。
自分が引き金を振り絞り続けると、目の前で次々とかつての友人だった仲間達が倒れてゆく。
…それは背徳的であり、そして喩えようも無く爽快であった。
礼拝堂の床一面に血と内臓が撒き散らされる。少年団員たちの悲鳴と鼻腔を満たす血の匂いが、さら
に田村君を昂ぶらせてゆく。
(6/6)
「…な、何で? 由里ちゃん。俺はお前を愛していたのに…」
床の上に倒れていた小林少年が弱々しく呟いた。
その肉体は殆ど引き千切られていた…右腕は肩の辺りから吹き飛び、破れた腹から中身が床にあふれ出
ている。そして残った左手を由里ちゃんの方へ伸ばしながらもう一度呟いた。
「どうして僕を? 由里ちゃん。…嘘だといってくれよ」
「うっせーんだよボケがっ! 一回キスしたぐらいで勘違いしていい気になってんじゃねーよ! あんな
のはテメエに取り入って少年探偵団の運用資金を横領するためにしただけだよバ〜カ! いい気になり
やがって彼氏ヅラすんじゃねえってのっ! テメエなんざ虫ケラ以下だよボケッ! 死ねやぁっ!」
そう叫んだ由里ちゃんは、瀕死の小林君に向かって機関銃の弾を一弾倉分30発全て叩き込んだ。小林
君は一瞬にしてミンチになった。
「…あなた、中々やるじゃない」
由里ちゃんは田村君に声を掛けた。残った生存者に一人一人止めを刺して回っていた田村君はその声に
ハッと我に返った。そして興奮したまま後ろに振り返った。
そこには由里ちゃんがいた。一糸纏わぬ美しい姿で。
大量殺戮に興奮した田村君は、今までの鬱屈とした自分が嘘であるかのように逞しく生き生きとしてい
る自分を感じた。そして今、目の前に立つ由里ちゃんの姿に、原始的で激しい欲情が沸き立ってゆくの
を抑え切れなかった。
…百人近い少年探偵団の糞ガキ共の死体が散乱する礼拝堂。その血肉の飛び散るなかで、田村君と由里
ちゃんは激しく交わった。
透き通るように白く艶やかな由里ちゃんの身体。強く抱きしめたら壊れてしまいそうなその肉体にむしゃ
ぶりつく田村君。そして田村君は由里ちゃんの肉壺の奥へとペニスを突き出した。由里のヴァギナは熱く
濡れ、敏感で柔らかな粘膜が田村君の男根にネットリと絡みつく。
「ああっ!凄い、凄いわっ!もう、私イッちゃう〜!」
「俺もだよ由里ちゃん!も、もう駄目だぁっ!」
二人は同時に絶頂に達した。熱い精液が由里ちゃんの子宮の中に吐き出された。 【完】
∩___∩
| ノ\ ヽ
/ ●゛ ● |
| ∪ ( _●_) ミ
彡、 |∪| |
/ ∩ノ ⊃ ヽ
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
新先生お疲れ様です。
随分と独創的だなぁなんておもいました。
前回はいきなり友達が乱入してきて中途半端に終わってしまって
しまいました^^;
では新キャラも続々登場の続きをどーぞ。
え〜混乱している自分+その他納得の状況説明を展開してみる。
いつもと同じ日常の昼休み、
↓
突然の飛奈乱入
↓
ありえな〜い、萌え?衣装着用
↓
皆固まる。
↓
突然のメガネ君乱入。
↓
さらに固まる。
そこで俺が導き出した一番の解決方法は・・・
「とりあえず、そこのメガネ君黙れ」
俺はこの混乱を膨らませるようなおっかっけっこをしている、
メガネ君を黙らせることにした。
だが、やはりメガネ君は黙りそうなタチじゃなかったってワケだ。
「メガネじゃない、僕の名は橘真(タチバナ マコト)だ。南野君」
トレードマークの眼鏡をキラリと光らせ、眼鏡の位置を直す。
俺は仕切りなおして説得を再開することにした。
「わかった、橘君。君の目的はこの変態の確保。違うか?」
橘君は当然とも言うかのように鼻でフッと笑う。
「いかにも。生徒会長ともあろうものが自ら風紀を乱すとは許していられようか」
うむ。確かに。つか、俺はなんろなくだがコイツとは合わないような気がした。
橘君の方は大体理解したような感じがしたので次に変態に問い詰める。
「おい、そこの変態。なぜ生徒会長ともあろうお方が変態になった?趣味か?」
変態は勝手に昼食を進めていたが俺に変態呼ばわりされてちょっと不機嫌そうだ。
「違うよ〜。ホラ、もうすぐ学園祭あるでしょ〜。
なんか目立てて盛り上がれるような衣装を考案してたのさ〜」
なるほど。飛奈らしいと言えばらしいか。行事には萌える?いや、燃えるヤツだからな。
周りのメンバーも状況を理解し始めたらしい。
「そっか〜も〜すぐ学園祭なんだね〜」
なんて口々に呟いていた。
その時葵がなんとなく思い出してしまった。
「あ、橘君って飛奈君と一緒に生徒会長に立候補して惨敗したと言う橘君じゃ?」
グサッという音が聞こえたような気がした。
163 :
◆ROM7FNz6Kg :2007/04/29(日) 00:08:29
今日はこんなトコまで。
橘君のプロフは↓に載せときます。
ではまたノシ
名前:橘 真
身長:180cm
体重:65`
趣味:ニュースを見ること、お芝居
好きなモノ:静かな雰囲気、和食、指図、メガネ
嫌いなモノ:空気の読めないヤツ、暴力
容姿:がっちりした体系。髪は深めの緑、おかっぱの少しのびた感じ。
一言:とっても真面目な優等生君です。ですが、いつも自分が正しいと思っているので
いつも上から指図してます。しかし、生徒会長の座を奪われ飛奈をライバル視しています。
なんでも飛奈がさぼっている事務の仕事は橘君がすべて引き受けているとかいないとか・・・
素早く上下左右に動き球体からの光線をかわす。
「す…すごい」
険しい顔を作る真一。
「これ以上は…辛い!」
避け続け、本体には近づけない。そして…。
「よし!ここで!」
一瞬のタイミングで球体をはじく。
本体を目掛け拳を突き出す。
しかし…
「何…?」
「さらに2つ…球体が出現しました!合計4つです!」
ドルチェの背中が光線により焼かれ、同時に真一の背中にも激痛が走る。
球体に囲まれるドルチェ。
真一 「うっ…ああ」
佳奈が由衣のもとに報告しにきた。
「どうだった?」
佳奈が涙目を作り震えながら…
「ダメだった…。なんか…『興味ない』とか言われた。」
友達の涙に落ち込む由衣。
「えっ、そうなの…なんか酷いね。」
佳奈の頭を抱える由衣。
「大丈夫だよ。佳奈。」
由衣の胸で泣く佳奈。
大きな体を崩すドルチェ。
「ドルチェが…」
光と共に消えるドルチェ。
真一が姿を現し物陰に座り込む。
健在するアークの姿に恐怖を覚える。
「俺は…ダメ?だったのか…。
いやダメだったんだろうな…最初から。」
影が真一を被う。
涙が佳奈を隠す。
絶望が世界を作る。
…
…
「現状は…?」
「はい。軽薙の腕が破損しましたが…アークを一時活動停止に成功しました。
現在、自己修復中です。」
「今のうちに破壊できないのかね?」
「はい。球体のほうは活動して本体を守っています。
この様子だと2日後には活動を再開します。」
「対策は?」
「ありますよ。」
会議室をでて、部屋に戻る美奈子。
「どうでした?」
「なんでもなかったわ。今回は…」
「北岡さんのおかげですね。」
「ええっ…」
「それにしても…ドルチェに決定的な弱点があったわね。」
「なんですか?弱点って…」
「ドルチェは…軽薙より反応もパワーも上だわ。
でも…武装が少なく、長距離戦・長期戦に弱いのよ。
今回はアテにできないわね。」
拓哉は冗談混じりで言う。
「僕たちいつのまにかドルチェをアテにしてたんですね。」
自覚ない意識に気づかされる美奈子。
予想していなかったドルチェと呼ばれる『生物』の出現。
いつのまにか頼りにしていた。
「そう言えばそうね。」
『奇跡』に頼る私自身…濁ることになるだろう
斎藤の家では…
「ご馳走さま…。食器は水に漬けといてください。」
それだけ言うと真一は自分の部屋に戻った。
「何かあったのか…?真一くん」
同時に由衣も箸を置く。
「ご馳走さま」
それだけ言うとそっけない態度で由衣も部屋に行った。
「…由衣もか…。どうしたんだろ?」
明かりを消した部屋のベッドにうずくまってる真一。
由衣は真一の部屋の前にいる。
「真一くん…。」
「…。」
「どうしたの?真一君。」
「由衣ちゃん…。俺…ダメだったんだ。
自分が出来る事…やってみようと思ったけど…
ダメだったんだ!」
「…真一君」
与える言葉が思い浮かばなかった。
人を励まし鑑賞に浸る自分の行為…。まるで卑しい『動物』。
それでも構わない。
今は…。
「あのね…。友達が今日告白して振られちゃったの。」
「…。」
「真一君も…今日何かあったんだよね?」
「…。」
「でもね…。あたしは何もしてないの。
泣いてる友達を見ても…落ち込んでる真一君を見ても、ただ『頑張れ!』とか言って良い人、気取ってるだけ…。
最低だよね、私…。」
涙を浮かべる由衣。部屋から真一が出てくる。
「…由衣ちゃんはそれでいいと思うよ。
優しさだって誰もがもってるものじゃないし…。」
「でも、私は…」
「由衣ちゃんは自分の事嫌いなんだ…。
俺は!優しい由衣ちゃんも…わがままな由衣ちゃんも…大好きだけど。」
「俺…負けちゃったけど…。また負けるかもしれないけど…。
俺のこと見ていてよ。」
涙を拭う由衣。
「私…私も真一君が負けたって何したって真一君のこと好きでいられるよ。だから…頑張って。」
勝ち負けで一喜一憂し、判断で優劣を競う。
弱い生き物だろう。人を頼り期待をし、分かり合うよう努力する。
それは良いことだろうか?悪いことだろうか?
「いい?今回ドルチェに期待はできないわ。
頼れるのはあなただけ!」
「はい!いつでも開始してください。」
シミュレーション訓練最中。
「74…74,8…%。凄い!」
10分後…。
「凄いですよ!次こそいけます!」
グッと拳をにぎる美奈子 。
翌日…。
「おはよう!由衣!」
「おはよう。」
「なんかさぁ〜佳奈のやつ元気ないんだけど…。どうしたか知ってる?」
落ち込んでる佳奈。
一瞬沈黙。
「あとで話してみる。」
放課後。
「佳奈…大丈夫?」
「…うん。なんか嫌だね。今まで当たり前のように話していたのに…。
告白なんか…するんじゃなかったかな?」
汗ばむ手で自分の制服を掴む。励ます資格なんて無いだろうが…
「私はね…。告白できる佳奈が凄いと思うよ。
私なんて…自分の将来も決められないで立ちすくんでるだけだから…。」
沈黙が教室を湿らす。
由衣 「私も…挑戦してみようと思う。
だから、佳奈から話かけてみなよ。」
最終的な軽薙のチェックしている美奈子。
「この挑戦…不安要素しかないですね。」
「『勇気』…って何のために持つんでしょうね?」
「…?。」
「現状を…ちょっとでも変えられたら…
それだけで十分『持つ』意味、『与える』意味があるものだと思うの…。」
「…『失敗』してもですか?」
「何か『きっかけ』をつくれれば…
それを私は 『成功』と呼ぶわ。」
理解していないが威を見てそう感じたのだ。
勝利こそ出来ないものの少しづつではあるが軽薙に慣れ、戦いにも慣れてきている。
今までの自分には無い『考え』。
大事なのは、『きっかけ』が出来る『過程』。
眠っていたアークが活動を再開した。
そこには軽薙の姿もあった。
「準備はいいですよ!」
「位置もタイミングもこちらで指示するから
きっちり照準をあわせて!」
息を飲む威。
「神崎くん!今よ!」
その合図で、近隣の建造物から激しい蒸気が放たれアークと軽薙を包む。
「北岡くん!照準きっちり合わせているわね!いまよ!」
威はトリガーを弾きライフルを放つ。
放たれた弾丸に、光線が刺さる。
しかし弾丸は破壊されず軌道をはずれた。
「ちっ!蒸気じゃ完璧には防げないか…。」
「それなら…!」
すかさず威は2発目を放つ。
弾丸は球体を捕らえた。
3発目の照準をアークに向けた時、本体から光線が放たれライフルは破壊される。
軽薙は腰に備えつけてある銃を取り出しアークに向ける。
荒れる街角。真一が戦場に現れる。
「Agitato…。Tempestoso。」
「(見てて…由衣ちゃん。
君の『やさしさ』で戦える人間もいるってこと!)」
勇気とは容易いものではないだろう。俺の場合…。
真一の姿は消え、ドルチェが現れた。
「ドルチェ!」
「でも…ドルチェじゃあのアークには…」
美奈子はドルチェを見つめる。
ドルチェの足にボードが出現する。
そして勢いよく動き出す。
それと同時にアークを囲う3つの球体がドルチェを襲う。
美奈子 「…前より速い?」
光線を次々とかわす。
アークに近づいたとき、アーク本体から光線が放たれる。
「まずい!」
「…くっ!」
ドルチェはボードの後端を軸に激しく回転し、光線を弾く。
「光線を…弾いた!」
一気に距離を縮め、ドルチェは拳を突きつけ、アークを吹き飛ばす。
『ギィギギ…』
唸るアークに追い討ちをしかけるドルチェ。
地にふせるアークに拳を突き刺す。
『ギィィィィィィ!!』
アークは激しく炎上しその姿を消した。
その姿が印象的だった。
日に照らされる象徴。
美奈子の恐怖が言葉を作る。
「これが…生物なの…?」
炎上する光がその大きな生物を照らす。
重厚な建物より無様に…。
学校では佳奈が葉に話かけようとしていた。
「か・金田くん…今日は…。」
金田がスッと立ち上がる。
「佳奈さん…」
金田はあらたまって話始める。
「ごめん。なんか…変な断りかたしちゃって
別に…佳奈さんのこと嫌いじゃないんだ。」
「…えっ?」
「俺…告白とかされたの初めてで何か戸惑ったんだ。
何て言っていいのかわかんなくて…。
だから、友達からってことで…」
葉は手を差し出す。
にっこりする佳奈はその手をとる。
2人で 作った勇気は今後の未来を作るだろう。
そして…由衣は。
定めた未来が明るいモノであるように…。
179 :
さくさく:2007/04/29(日) 22:29:30
この3話目終わりです。
なるべく早く4話目も描きたいと思います。
よろしくお願いします。
あげときます
180 :
Mr.名無しさん:2007/05/01(火) 19:30:45
ほ
し
の
ようこそドクヲホテルへ!!
このホテルは全てお客様ご一行の貸切りです。
なお、このホテルにスタッフはおりません。全てセルフサービスです。
電気やガス、水道はご自由にお使いください!
厨房には食材をバーカウンターには各種お酒をおいてあります。
それではごゆっくりとお楽しみください!!
追伸、9039号室には絶対に入らないでください!
ホテルのフロントに置かれたカードにはこう書かれていた。
この時の僕はこんな大きなホテルを貸切りに出来る事に浮かれて
みんなにこの重要なカードを見せるのを忘れてしまったのだ。
長くなりそうでスマソ 投下
薄汚れたガラスの向こうで、何かが蠢いた
時刻は午後七時を回っている。風通駅前から伸びるメインストリート、そこをひとつ外れた通
りに建つ風通学園第一男子寮では夕食を終え、自由時間を迎えた生徒達の喧噪の中にあった。
一階の十二号室でぼんやり漫画雑誌を読んでいた有三は、それを横目で捉えていた。同室の
楓は気付いていないらしく、TVの音楽番組に
夢中になっている。
最近多い、と思った。
「楓」
「ん」
「そのままゆっくり、左に顔向けてみ」
なぜかと聞き返しもせず、楓は言われた通りに窓の方を向いた。表情は変わらない。ただ、視線が
あれこれと泳いでいる。
「見える?」
「あ、なんかいるねー」
「二十センチくらいのオッサンがおるわ。昨日とおんなし、着物着たヤツっぽい」
どうやら有三には、窓の外に何かが見えているらしい。
「消えた」
有三が楓の方に向いた一瞬の間に、それはどこかに消えてしまったらしい。窓際で辺りを探してみるが、どこにも
姿はない。
「最近よく見るね。寮にもよく入り込んでるみたいだし」
「そうなんや」
「この部屋にはまだ来てないけど」
市内随一の進学校である風通高校に通う一年生、小泉有三には、昔からこのようなことがあった。
実家のある奈良にいた頃から場所や
時間を問わず、尋常ではない「何か」が見えるのである。もちろん彼以外周囲の人間は、それを見る
ことも感じることもできない。
その枯れ枝のように痩せた体と鋭い細目という容姿もあって、ほとんど友達が出来たことがなかったりする。
と、
「小泉ー」
ノックもなく部屋のドアが勢いよく開き、隣室の添田が上がり込んできた。
一学年上の同じ放送部の先輩であり、秀才として知られる人物である。友達がいない有三とも
他と平等に接し、こうして部屋に
来ることも度々である。
「悪いんだけどさ、ケータイの充電器貸して」
「あ、ハイ」
言いながら古びた机の中を探り、丁寧にコードをまとめられた充電器を取り出す。
「つかいつの時代の机使ってんだよ……サンキュ」
「俺んトコに借りに来んのって、珍しいすね。しかも添田さんが」
「ちゃんとしまってたんだけどさ、なくなっちまったんだよ」
このところ、第一男子寮では私物を紛失する生徒が増えていた。小物やささいな日用品がなくなる
場合がほとんどで、いずれも個人の責任ということで済まされている。
「お前、また猫連れ込んでると怒られんぞ」
そう言って、添田は自室に戻っていった。
返事をするように、猫の鳴き声が後に続く。
「……らしいで?」
「いいのさ別に。猫禁止なんて規則を作った覚えはないし」
ベッドで丸くなっている黒猫が、顔をTVに向けたまま答えた。
186 :
Mr.名無しさん:2007/05/05(土) 21:40:35
新作あげ
187 :
Mr.名無しさん:2007/05/07(月) 20:05:08
ほ
188 :
Mr.名無しさん:2007/05/08(火) 21:58:18
し
189 :
Mr.名無しさん:2007/05/11(金) 00:44:41
の
190 :
Mr.名無しさん:2007/05/13(日) 06:04:02
人がいない
191 :
Mr.名無しさん:2007/05/14(月) 06:32:21
age
192 :
Mr.名無しさん:2007/05/15(火) 20:09:49
誰もいない
このスレ終わったか?
>>192 初代のクオリティーが高杉た
もうだめかもわからんね
ストーリー考えて
それを時間書けて打ち込んでも
感想の一つも無ければ
書き手の方の意欲は萎えるし
テンション下るよね
面白くてもつまらなくても
書いたものに対して
何かレスやアドバイスがあれば・・・
書き手の方も何か刺激されるものがあるかもね
最近中々書けなくてスイマセン。
忙しい日々が続いております。
来週中には書けると思いますので・・・
ホントZA先生どうしちゃったんでしょうか・・・
>>194 その小説がつまらないからレスしないんじゃね?
俺は読み専だから書き手の気持ちは分からんが自己満足で終わる小説は
読んでいてアドバイスする気にもならないな。
後ツマラナイとかレスしてスレが荒れるのも嫌だし。
まぁ今過疎ってるから言うんだけどさ。コレ本音
はやくーまだー
198 :
Mr.名無しさん:2007/05/20(日) 10:37:19
age
「マジカルミドル」
第1章「木刀セレナーデ」
今思えば人生ってのはどれだけのことを知ってどれだけの事を自分がしてきたのかって事に
帰結するんだと思うんだよ。
何が起こるか分からないのが人生な訳で、イノシシレースのイノシシが柵を乗り越え暴走タックルかまして
俺は死んじまうかも知れないし、宝くじが当たって喜びのあまりショック死するのかも知れない。
自分の魂がこの世を離れてしまう理由を知るよしも無いわけで
いつ訪れるか分からない天国行きの転勤届けに怯えながら
俺達は生きる意味を探しているのだろう。
いや、別に大そうな事を言っている訳じゃなくてさ、簡単に言えば生きている間に何かを残したかったんだろうって話。
自分が・・・・・・ここにいる理由をこじつけるためにさ。
桜の花びらがそろそろ開こうかどうか迷っている。
新入社員がハツラツとした顔で会社の部署に配属される。
真新しいピカピカのランドセルを背負った子供達が我が子以上におめかしをした母親と一緒に
始業式と書かれた看板横の門をくぐる。
昼はぽわぽわした気候で眠くなり、夜は布団をしっかりかけないと肌寒い。
これは春に片足をつっこんだぐらいの時期。
そんな色んな物事が始まる、いわばスタートの季節に起こった話だ。
新たな四季の再来をそれとなく肌で感じられることの喜びは日本人ならではの感性じゃないだろうかと
そんな文学的思想を考察した所で俺の忙しくも慎ましい日々は変わりはしない。
まぁ、朝のニュース番組でお気に入りのお天気キャスターが
桜前線がすぐそこまで来ている事を知らせてくれるまでそれに気がつかなかった俺が言うのも何だがな。
誰だって年はとるし誰だって死からは逃れる事は出来ない。
生まれた瞬間から人は死に向かって歩幅は違えども歩いていくものなのだ。
どちらかといえばネガティブな考え方に属するこの自論も考えれば考える程意味の無い事で
俺はまだ口をすぼめているマンションの前にある桜の花のつぼみをそれとなく眺めながら
そんなとりとめのない事を頭の中で巡らせている。
何度と無く繰り返して来た桃色の季節は今年も俺にとってはただの通過点でしかなく
特急列車が小さな駅に止まらないのと同じように過ぎ去ってゆくものなのだと無意識のうちに自覚していた。
そうさ、36回も春を迎えてりゃそれに対する期待値も減って来るってもんなの。
最初に伝えるべき考察事項として俺の事について少しばかり説明させていただこうと思う。
何を隠そうこの俺は全教科オールマイティーにこなす学校でモテモテのイカしたアイツ
みたいな高校生でもなけりゃ、ごくごく普通の中校生でもない。
ましてや恋のイロハも知らない小さなギャング、小学生なんてもんでもない訳だ。
そんな道のりとっくの昔に走破しちまったさ。
じゃあお前は何なんだよと、言うのが人の性だよな。うん分かるぜその気持ち。
こんな所で引っ張っちまってもしょうがないし、ストレートかつシンプルに言っちまうと
中年男性と呼ばれるカテゴリに俺は属している。
ヨレヨレのカッターシャツに年季の入ったフォーマルスーツ。
ネクタイは少し曲がっていてどこに出しても恥ずかしくないリーマンルックなのがこの俺さ。
あ〜ガッカリしたかい?
主人公がこんなパッとしない36歳のおっさんなんだもんなぁ。分からんでもないよ。
平々凡々な生活を語ってみたところでそれは普遍的な生活風景に他ならない訳だしな。
でもなぁ少年少女よ、あーそうでない人もだけどさ。
人って言うのは不思議なもので、気がいたら二十歳こえててよ?
いつの間にか働いてて漠然とああなりたいこうなりたいって思ってた夢みたいなものを無くしてるモンなのさ。
時間の流れはキャメルバックからサイクロンに移行するジェットコースターみたいに加速していく一方だし
幼い頃想い描いてた夢とはまったく違った場所に立っていたりしてね。
アメリカ大陸目指してたどり着いた先は淡路島だった、みたいなさ。
小さい頃自分はウルトラマンになれると本気で信じていたのに今の俺を見てみろ、ウルトラマンがサラリーマンだぜ?
笑えねー。
何が悪で何が正義なのか、なんてまったく関係の無い世界で3分間と言わずその160倍の時間
会社で書類とパソコンを前に戦ってる。残業入れたら何回地球を守れる事か。
高校ぐらいの時はそこまで真剣に社会人になった時のことなんて考えてなかった。
正直社会を舐めてたよ。あの時のサッカリンより甘い考えを殴ってでも止めなきゃと思うね。
義務教育という要塞に守られてちょっと天狗になっちまってたのさ。
人生なんてチョロイチョロイ・・・・・・とね。
それとなくお経みたいな授業を聞き流して友達と十倍ぐらいの水で割ったカルピスぐらい薄い話して
そんでいそいそと帰路に着くわけだ。
今思えば無駄に青春時代を過ごしちまったなって後悔してる。
まぁ無駄じゃない事も少なからずはあったけど無駄なことの方が多かった気がするね。
ああしておけば良かった、こうしておけば良かったと。
働き出したら自由も増えるけどその分背負うものも沢山あるのさ。
こればっかりは社会に飛び出さなきゃわかんないだろうな。
時間に追われて、理不尽な怒られ方してな。
自分がいつか大人になって実現しているであろう夢を心の押入れにポーンと仕舞い込んじまって。
そうやっていつしかその事を忘れちまってる。
悲しい事だけど皆そうやって生きてる。
心を麻痺させていく事が大人になるって事なのかもしれない。
悲観的な自論だけどそう遠く外れても無いと思うぜ。
何の変哲も無い超クールで平凡な人生を送ってきた俺が言ってるんだ。
アイドルやアーティストみたく特殊な人種には当てはまらんかもしれんが後の95%の人間には
少なからず当てはまってるんじゃないかな。
おっと、小難しい話を説教臭く話しちまうのも年のせいか。
いやはや、こうやって何も無いまま年食ってエンディング迎えちまうモンなのかね。
ん?何が終わるのかって?
1回こっきりで終わっちまう俺の人生が……さ。
*
夕日をあこがれの先輩を見る女子高生のような目で電車の窓越しに傍観している中年男性というのは
はたから見ればさも気持ち悪かった事だろう。
俺だってたまにはセンチメンタルに浸りたい時もあるのだ。
つり革につかまって、ガッタンゴットン揺られる会社の帰り道ってのは何でこう哀愁が次から次へとアラブの石油みたく
沸き出てくるものなのだろう。
周りの同じようなスーツ姿のおっさん量産型達もどこと無く表情が悲しげに俺の目には映った。
死神に魂を刈り取られたかの如くぐったりとした彼らは、だらんと首を垂れつり革につかまり
その身を日高昆布の様にたゆたゆと揺らしていた。
体から滲み出してくる加齢臭を身にまとった彼らが今日も私鉄の車両をサバ寿司状態にしている。
純度100%のオッサン車両に自分が含まれているこの事実。
そのジレンマがまた、かさぶただらけのマイハートを締付ける。
この現実を放棄して「妖精がみえるぅううう!」とか叫びながらツイストをバンバン踊るのも悪くないかもしれない。
まぁ、やらないけど。
嗚呼、世間は花見だの入学式だのと騒いでるのにいつの頃からか季節をゆっくり味わう事すら忘れちまった。
会社で行く花見もメインは酒で、誰一人として桜なんて見ちゃいない。
無論、俺も会場に到着するや否や、年中頭の上でスケートが出来るのではないかと密かに噂されている部長の
アルコール強制給水によって毎年その日のバックアップデータを消されてしまう有様だ。
バッカスはネプチューンよりも多くの者を溺死させたというローマの諺も大いに頷ける話じゃないか。
もっとこう情緒ある季節の感じ方を味わいたい俺のささやかな夢でさえ適わないのが現実なのさ。
電車の外を次から次に流れていく街の景色はタケノコみたいに生えるビル群から
逃げるように住宅密集地へとその風景を変える。
モグラみたいに地面に潜ってはひょっこりと顔を出すこの路線にも随分と世話になった。
トンネルに差し掛かると車内を照らしていた蛍光灯の光が窓ガラスに見たくも無い自分の顔を映し出す。
無精ヒゲが俺のアゴの先端にちょこんと居座っているのが何ともまぁ可愛らしいじゃないか。
1ミリ伸びたヒゲが働きアリの勲章さ。俺はぼんやりとその少し伸びたヒゲを触った。
あーあ、やつれちまってるなぁ相変わらず。
ちゃりちゃりちゃり
そういや娘も俺のヒゲ嫌いだよな。慣れると気持ちいいのに。
そんな取り留めのない事を考えていると列車はトンネルを抜けた。
そこは雪国でも何でもなく一戸建ての住宅がフジツボみたいにぎっちり密集した新興住宅地区であった。
丘を削り取って出来たその段々畑は森林を伐採し山を削る人間の利己的な性質を具現化してる。
申し訳ない程度に残った木々達がビオトーブの役割を細々と続けているのがなんだか寂しい。
そういや今日は近所のトマトストアー(地域密着型スーパー火曜は特売日)で鶏肉の特売があるんだった。
これは買いに行かなければなるまい。
そんな主婦みたいな事を考えながら帰る俺って結構カッコいいかもしれんな。
美的感覚のズレにいちいち突っ込むのは無しだ。
何が美しいかなんて人それぞれなのさ。
仕事と家事の両方を捌く二天一流ちっくな所がクールダディーたる由縁なんだよ。
勿論、自称だけどな、。
鶏肉、鶏肉、うーん。今晩は何にするかな。
車窓から見える無機質な建物が立ち並ぶ景色を眺めながら俺のカンピュータが今晩のおかずをシュミレートする。
冷蔵庫の中に何が入っていたかを想起しつつ俺はその食材に合った最もベターな回答を導き出した。
今夜はカレーライスに決定だな。
安易なレシピをちくちく考えていると車内にあるスピーカーから
妙に鼻につく「次は〜」と最寄り駅の名前を知らせるアナウンスが流れた。
俺は幾分かすいて来た車内の中を企業戦士の間を縫って出口である銀色ドアの前に立つ。
電車はゆっくりと停止、その後気の抜けたガス音と共に目の前のドアがカクガクンと開いた。
最近改装が終わったばかりのその駅はホームが4つあるデカくもなけりゃ小さくも無い中途半端な広さの駅であった。
ただいま我が街。
ここに来ると帰ってきたーって感じがするんだよなぁ。
ホームからとぼとぼと陸橋を登ると線路をはさみ北側と南側に分かれているT字路に出た。
俺は我が家とトマトストアーのある北の方角へ歩き出すと、連絡橋の両サイドについているはめ殺しの窓を覗き込む。
乗ってきた電車がゆっくりと発進するのを何気なしに確認すると、長い鉄の芋虫はやがてその姿を視界から消し
俺は再び歩き出して自動改札をくぐった。
いつもの風景のその繰り返しの中で俺は生きてきたし、これからもきっとそうなのだろう。
そんな少し感傷じみたどうでもいい事を考えながら駅を出た。
今日の血液占いでB型は運勢が1位だ。
きっとこれから何か良い事があるに違いない。そう思いたい。
さぁ、気を取り直して今から楽しいお買い物だ。
お久しぶりです
ZAです
アク禁食らったんで
今日はこのへんでー
ノシ
210 :
Mr.名無しさん:2007/05/21(月) 08:02:57
ZA先生お帰りなさい〜。
もう戻って来ないんじゃないかって心配してましたが、本当によかった。
新作のようですね
期待しております
携帯からなので酉ないですがROでした〜
211 :
Mr.名無しさん:2007/05/21(月) 10:41:22
先生キタコレ!
212 :
Mr.名無しさん:2007/05/22(火) 06:30:16
ktkr
ほ
214 :
Mr.名無しさん:2007/05/24(木) 22:05:26
し
215 :
Mr.名無しさん:2007/05/25(金) 04:27:24
ゆ
ずいぶんと書くのも久しぶりになってしまいましたが、
少しづつですが、再開していきます。
今年中に終わるかどうかも怪しくなってきてしまいましたけどねw
ZA先生もご帰還なさったことですし、また活気のあるスレになってくれたら
と思います。それではどぞ
数秒の間の石像化。
相当ショックな様子であるのは確かだ。
まぁ、それもごもっともだよな。
こんなワケノワカラナイ格好したヤツに負けたら
自分がしてることも馬鹿馬鹿しく思えてくる。
思った以上に酷いことを言ってしまったらしい葵は挙動不審に周りの目を気にする。
まぁ、その中にはおもしろがってたりするヤツや、弁当食ってるヤツとか・・・
今この場合における正常な判断ができる人間が俺しかいないと判断し、
慰めの一言でもかけてやろうと肩にポンと手をかける。
「そう。やはり、そうなのだよ!!」
いきなりの魂の叫びに俺一人ではなく周りも一斉に驚く。
そして彼は明後日の方向を向いて語りだすのだった。
「僕は学校を安定した生活の場にすること、当たり前の生活を支えることが
生徒会長の一番の仕事と考えていた。しかし、現実は違う!!
生徒諸君が求めるのはレボリューション革命だ!!
いつもと違うスリリングな日常。
日の当たらない努力はただの自己満足にしか過ぎない。
僕は変わる、そして今度こそ、勝利を掴むのだぁ〜〜〜〜〜!!」
彼は拳を太陽に向けて高笑いだ。
そして俺たちはただただお互い引き笑いだ。
その時、彼は身を翻し葵の方へと一歩一歩、歩みを進める。
葵は笑顔を引きつらせながら後ずさりするが、追いこめれるのも時間の問題だった。
ドアの方へと追い詰められる葵。
しかし、俺達は状況把握ができないまま立ちつくすことしかできなかった。
「Ms葵。僕は君の一言で今変わろうとしている。
これからの僕をずっと・・・」
ドガーン
乱暴に開けられるドア。
そこから飛び出した小さな影は橘君の顔面を蹴り倒した。
「あぶねぇ!!」
亮平は倒れ掛かる葵の元へギリギリのヘッドスライデェング。
「キャッ」
葵はなんとか亮平が下になってくれたおかげで無傷なようだ。
「あつつつ、ゴメン。葵ちゃん、もう少し早く助けるべきだったわ」
「ううん、大丈夫。ありがとう。助かったよ」
「もう、ホンマこのバカ弟は〜このこの!」
そこに現れていた小さな姿はこの場にそぐわなかった。
「え〜と小学生?」
俺は思わず声を上げて言ってしまった。
「誰が小学生や、ウチは橘 末利(タチバナ マツリ)この弟の双子の姉や」
「えええええ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
一同一斉に驚きの声を上げる。もちろん突っ込みどころ満載だからだ。
「ホントに?ボクより小さいのに?わ〜い。うれしいなぁ。よろしくねぇ」
沙奈は初めて自分より小さな高校生に共感するところがあるようだ。
「う、ウチの気にしてるコトを。でもホンマウチと同じくらいの子も初めて見たわよろしくな」
「あの、失礼だと思うのですが、真君は弟おっしょいましたか?」
茜はこの二人が兄弟という人類の神秘を失礼がないように冷静に分析しているようだ。
「あはははは、そりゃ、そう思われても仕方ないわ。一応弟やわ。
時々さっきみたいに暴走するけど、ホンマはイイヤツやから堪忍したってな」
「あ、飛奈ちゃんや〜。かわええ格好しとるやん」
「ありがと〜。末利ちゃ〜ん。今日も元気で何よりだよ〜」
この二人はどうやら知り合いみたいだな。
橘君が追っかけまわしてるみたいdし、接点は見えてくるか。
そんな時橘君が不意に目を覚ました。
「う、あつつ、あ、あ、ね、姉さん!どうしてこんなトコに?」
さっきとは一変した橘君の様子を見ると
体格差はこんなんだけど権力差はさすがは姉か。
「アホ。アンタが大騒ぎしてるらしいから駆けつけてみたらこれやわ。
ホンマ周りに迷惑駆け寄ってちゃんと謝りや」
「はい。姉さん。あの、昼食の邪魔してしまってすいません。早々に退却しますので」
橘君は後ろに感じる恐怖と戦いながらも誠実に謝ってくれた。やはり悪いヤツではないな。
「橘さん方。せっかく会えたのも何かの縁ですし〜一緒に昼食をとりませんかぁ〜?」
美久さんはゆったりした笑顔で二人を諭すように誘った。
こういう心の広い方はホント羨ましいな。
「ホンマにええの?ありがとぉ〜。」
「スイマセン。ではお言葉に甘えさせていただきます」
そうしてコトはなんとか一段落つくことができ・・・た?
「あの〜一つええかな?」
どうやら俺に話しかけてるみたいなんで応答しておく。
「ん?どうかした?」
「さっきからウチをギンギンに見てるこの嬢ちゃん大丈夫かいな?」
あ、しまった。忘れてた・・・
「え〜と、とりあえず、逃げることをおススメします・・・あ」
「わぁぁぁ、ちょっとわ〜、なんやなんや?」
遅かったか・・・。既に葵にロックオンされていた末利ちゃんに逃げる術はなかった。
223 :
◆ROM7FNz6Kg :2007/05/25(金) 23:29:28
今日はこんなトコまで。
末利のプロフもこの後載せときます。
ではノシシ
名前:橘 末利
身長:137cm
体重:28`
B/W/H:63/47/ 66
趣味:演劇、物語、弟の指導
好きなモノ:弟、甘いもの、動物
嫌いなモノ:おばけ、暗い所、騒音
容姿: 腰をすぎるくらいのロングでふわふわのクリーム色?の髪。幼児体系。
一言:橘家の双子の姉さんです。京都?大阪?弁は関東の生まれからです。
小さくてもしっかりもので弟には厳しくも優しい姉さんです。
異常なまでに小さい体を気にしています。
*
いきなりだが、男ってのは基本的に馬鹿だ。
どう馬鹿かって、そう言われると少し頭を悩ませてしまうのだけれど
やっぱ馬鹿だって最後はそこに行き着いてしまう。
ずっと昔のことをズルズルと引きずるし性格の本質的な所は高校の頃から成長しない。
結局、ちゃんとした大人になれない大人が多いのさ。
図体ばっかりデカくて思考形態は思春期の餓鬼のまんまなのだ。
高校生の頃と違うのは回りの環境だけなのであって自分自身はそれほど変化しちゃいない。
けれど立ち向かう敵を倒して前に進むのが社会のルールでありそれによってモラルが正常に機能しているメカニズムを
俺達人類は産業革命以降ずっと採用していた。
上司、部下、仕事、嫁、いわば強制スクロールって訳。
そのベルトコンベアーに乗っちまったら最後、辞表を叩きつけるか
年金もらう年まで頑張るぐらいの道しか残されていない。
決断力の無い人間は特にそうさ。
色んな仮面を心につけていって自分の芯を守る術ばかりを学んでゆく。
ドグマティズムを展開するのが俺の悪いところなのだがそれにはちゃんと理由があるのさ。
今日はレタスも安い。
淡い黄緑をむんずと掴むと俺は持っていたカゴヘそれを放り込む。
トマトストアーはそんなささやかな幸せを大きな幸せと感じる庶民の味方だ。
しかも今日は第3回トマトストアー福引大会というイベントが行われており優勝商品は焼肉丸福の食事券だった。
丸福は昔からある庶民派タイプの焼肉屋ではあるのだが味は格別に美味い知る人ぞ知る名店なのだ。
しかしまぁ、俺もそんな偉そうな事言ってる割には大したこと無かったんだ。
起こりうる色んなトラブルやイベントをクリアーして見聞は一般人レベルにまで育て上げたつもりだ。
ニヒリズムという名の鎧を身にまとってね。
けど経験値は関東ローム層のように積もれどもやっぱ根っこは変わりゃしなかった。
気がつけば青春と呼ばれる時間はいつの間にか過ぎちまっていて、驚く事に結婚というハードルもクリアーしていた。
回りの環境が目まぐるしく変わってゆくのに自分自身はなんら変わらない。
生活や性格の劇的な変化が起こらない限り、回りで何が起ころうがそれは普通の出来事でしか無く
皆がクリアーしていく、またはしたであろう障害物でしかない訳で。
そうやって日々を消費してしまう事が時々とても怖く思う時があるのだ。
気がつけば病院のベッドの上でヨボヨボのじいさんになっちまっているのでは無いかとね。
あ、そういやゴミ袋も切れてたんだった。生活雑貨の棚に行かなきゃな。
トマトストアーは生活雑貨が何でも揃う俺たち庶民のパートナー。
遠くの惣菜コーナーでコロッケの歌がエンドレスで流れ続けているのが妙に耳に残る
そんな春先午後6時の出来事であった。
くじ引き?
ああ、ティッシュ2個もらった。
あーうれしい。
*
片手にピチピチのビニール袋を、もう一方の手にはサラリーマンアイテムがぎっしり詰まった
こりゃまたビニール製革使用の安物鞄を持つ俺はよっぽどポリエチレンが好きらしい。
さながらヤジロベエのように俺はフラフラとバランスをとりながら家路に着いた。
辺りはすっかり暗くなって遠くの犬の遠吠えがなんとまぁ
哀愁を感じさせる良い舞台装置を演出してくれてるじゃないの。
夜の住宅街は人の気配が本当に少なくて等間隔にならんだ街灯が妙に寂しそうだ。
「ばっくしゅん!」
春といってもまだ夜は寒い。
俺は不意にくしゃみする。
結果、鼻が痒いが両手は荷物に占領されているという、どうでもいい事態に陥ってしまった。
荷物を置いてそれをぽりぽりとかいてやろうかそれとも己の忍耐力でそれを耐え切ろうかなんて
馬鹿な事を両皿天秤の上に置いて重さを量ってやる、重要度はイーブンか。
しょうがない、脳内首脳会議を開催してやる。
もっと別のことでニューロンを使ってやるのが利口な生き方のコツなのだろう。
しかしオートメーション化された不変的生活の中では他の脊椎動物に比べて発達した脳も
寝息を立ててぐーぐーと眠っているのが最近の定石となってしまっている。
会議の結果、鞄を持ったまま鼻をかくというナイスなアイデアが立案
可決され俺は鞄をもったままポリポリと鼻をかいた。
この間約二秒。
「うおっ」
顔を上げた俺は一瞬たじろいだ。
鼻をかいた後、目線を前に移してやると見知らぬ女の子が一人行く手を阻むように静かに立っていたからだ。
さっきまで俺の前方には誰もいなかった筈だぞ?
俺は相当疲れているのだろうか。もしそうだとしたら有給休暇をさっさとシフトにねじ込まないと。
そう思わせるまでに不自然だったのだ。
彼女の登場の仕方が。
電柱に備え付けられたその白い蛍光灯は人工的な光の輪をアスファルトに投影し
さながらスポットライトの様であった。
光の輪の中にたたずむ少女は俺の娘、雪奈の高校と同じ制服だった。
通学鞄も娘が持っている見慣れたものだ。
紺のベストにスカート、白いカッターの首元には赤いネクタイが顔をのぞかせている。
そして一番目を引いたのが
「ぼ……木刀?」
誰がどう見ても木刀だ。
まごの手に見える奴がいたら即、眼科に行くことを俺はお勧めする。
彼女は左手に修学旅行のどうでもいいお土産ナンバーワン武器をたずさ携え一人佇む。
。
透き通る白いシルクのような肌。
なめらかな黒髪がゆれるポニーテール。
そして少し狐みたいにつり上がりつつも凛とした目。
雪女というものがこの世にいたとするならばきっとこんな顔をしているんだろうなと
その時俺は漠然と思うのだった。
堂々としたその風貌はさながら侍という言葉を脳裏に連想させる。
ポニーテールがチョンマゲにも見えたしな。
今日はここまで
ノシ
230 :
Mr.名無しさん:2007/05/28(月) 22:37:04
期待age
231 :
Mr.名無しさん:2007/05/31(木) 06:46:32
人増えないなー
日の落ちた誰もいない住宅街の道端で、木刀を携えた少女とトマトストアーと書かれたビニール袋をぶら下げた
サラリーマンが対峙している風景はとてもシュールなものであった。
これをシュールと言わずして何と言うべきか?それ以上の表現方法を俺は思いつかん。
いやまて、今はどうするのがベターなのかを導き出すのが最重要課題であろう。
そもそもコイツは何者なのだ?
と言うより、さっきからじっと俺の目を睨んでいる訳だが。
再び脳内サミット緊急収集。題目は目の前の少女は何者か、だ。
普段半分寝ている俺のぐうたらな脳味噌もこの時ばかりはミニ四駆のモーターの如くブンブンと回転を開始しだす。
右脳左脳前頭葉によるエグゼクティブ集団がミーティングを開始。
結果、次のようなデーターが算出、羅列された。
1、 俺に一目ぼれした剣道少女
2、 親父狩り
3、 ドッキリ
ううう、どれが正解か分からんぞ、なんてこったい。
俺的には1が……いやいやいやいくら何でもそりゃー援助交際になっちまうからな。
人生の折り返し地点で豚箱に入っちまうストーリーなんて俺はまっぴら御免だぜ。
娘の悲しそうな顔なんて自ら進んで見ようとは思わん。
ここは社会人のお手本としてきっぱり断らなければならないだろう。
スマン少女よ.
涙を流した数だけお前はきっと綺麗になるさ、ベイベ。
彼女との対峙から数秒後、混乱している俺をよそに先に口火を切ったのはチョンマゲ雪女だった。
「お前エリカの旦那だな」
初対面の奴が言う言葉にしてはそれは妙に刺々しく、これが彼女との突飛なファーストコンタクトであった。
俺の見当違いでとんちんかん頓珍漢なシュミレーションとは裏腹に少女の顔は妙にシリアスだ。
少し足を開き俺の真正面5メートル先で尚も彼女はコンバットナイフのような鋭い視線を俺に浴びせかけてくる。
と、言うよりもだ。今なんと言ったコイツ。
「エリカ……だって?」
「そうだ」
口を開けば彼女は男みたいな喋り方だった。
しかしそれが妙に似合っているんだな。
キッとした目つきや妙に堂々としたその姿にマッチしているのだろう。
ボーイズ系のファッションがこの娘ならきっと似合う事だろう。
「斉藤エリカ、旧姓は日比野エリカだ。知らないとは言わせない」
アホか、その名前を俺が忘れる訳が無いだろ?
と喉元まで出かけたがいい年なんだしそれは思うだけに留まり
俺は自分の嫁の事を何故彼女は知っているのかという新たなナゾにぶち当たっていた。
そう、エリカは正真正銘俺の妻……だった女性の名前だ。
不意に東風が無精ひげの生えた俺の顎をふわりと撫でる。
春に吹くやわらかい風に、彼女のやわらかそうな髪とスカートの裾が
申し訳ない程度にはたはたと揺らめいた。
脅迫めいた言葉を口にする木刀少女はどこかミステリアスで、そんな状況に居合わせている俺は
ここがどこか違う世界なのではないかという錯覚すら感じ始めていた。
いや、その錯覚は間違ってはいなかったことを後で知る事になる訳だが
そのときの俺が未来を予測するなどあるはずも無い。
3日後の自分が焼肉を食っていると誰が想像できようか?
オーバーシュートな人生の幕開けはこんな感じで始まった。
この時点で俺の左足はどっぷりと『あっちの世界』にハマッちまってたんだからな。
ま、不思議の国のアリスにしては年を取りすぎちゃいたがね。
今日はここまで
コソコソと書くよ
じゃあコソコソと保守しておくよ
237 :
Mr.名無しさん:2007/06/06(水) 19:46:20
age
第2章「イエスタデイ・ワンスモア」
「えっ……えっ……エリカさん」
その小さな教室で少年の声は思いの他大きく響く。
3月、その日の空は六甲の天然水のようにどこまでも透き通っていた。
兄貴のお下がり学生服を着た少年が椅子に座っている一人の少女に声をかけている。
彼女は読書が好きなことを彼は知っていた。
「はい?」
その少年の声に彼女はふっと読んでいた文庫本を膝に置きゆっくりと顔を上げる。
甘く透き通るような声。子猫のような目と揺れるショートカット。
さわやかなレモンスカッシュのようなあの日の出来事を俺は一生忘れない。
つまらない俺の人生の中でパイナップル入り酢豚以上に甘酸っぱい唯一の思い出。
そうさこの俺、斉藤少年とマドンナ日比野エリカは
こうして出会っちまったのさ。
*
今から20年前の事だ。
あらら?俺そんなに年食ってたっけ?
えっと……1,2,3、あ、合ってる。
もう、なんか色々やべーな。
自分の年齢を悲観的に考察するのはこの際後回しにするとしよう。
キリが無いからな、うん。
俺はこの街にある中堅レベルに相当する県立白涼高校の一生徒だった。
取り分け特技があったわけじゃない。
頭出来も中の中。
顔の出来も……まぁ……聞いてくれるな。
思い返せばその頃の俺は何がしたいでもなく、授業はそれとなく聞き流し
テスト前になると必死に友達のノートをひたすらに複写するコピー機となり下がっていた。
それなりの成績を収めていれば親は何も言わなかったし学校ではこれといった問題を起こさない俺は
はたから見れば超模範的な平均的高校生だったのだろう。
早退イベントが試行されるラッキーウィーク三者面談においても黒ぶちメガネの担任に
「あー斉藤君は皆とも仲良くやっていますし、勉学のほうももっと上を狙えますよ。
そうだなぁ、英語もうちょっと頑張ろう、な?」
等と当たり障りの無いことを言われる、いやはや文章にしてみれば何の面白みも無い
英語が少し苦手なただの少年Aなのであった。
しかし何だな、彼の…いや昔の俺の心の中は外見の装いとは少し違っていた。
中学の頃から漠然とした日々を漠然とした気持ちで過ごす自分は
どこか他の奴らより気持ちが冷めていたのかもしれない。
いくら頑張って勉強してみても菅原道真公が降臨したであろうライフ・イズ勉学
ガリベン君にはとてもじゃないが適わない。
あいつら飯の変わりに教科書食ってるんじゃねーの?と当時は悪態をついていたものだ。
かといってスポーツも月並みでどちらかといえば嫌いなカテゴリに類されちまう。
恋愛にしたって初心者マークをいつまで経っても外せず
告白という名のイベントを発生させぬままセーフティードライバーを貫き通していた。
そんなこんなで表向きは普通の少年、心の中はささくれだらけの斉藤少年は
すくすくと人に怒られない術と人を怒らせないフレキシブルな対人術を学んでいったって訳なのさ。
さて、ここいらで俺のセピア色に染まった思い出話でも始めるとしようか。
しかも俺の人生を大きく変えた思い出だ。
いやその時点で世界は変わっちまってたのかもしれない。
のほほんと暮らす俺達の足元をゆっくりと、それでいて静かに。
今思えば全ての始まりはココから始まったんだろう
・・・・・・たぶん
*
「あーどーしよっかなー」
高校の形式的でつまらない入学式から1週間が経とうとしていた頃。
俺は〈その〉提出の期限が迫ってきている事に少しの不安と苛立ちをそことなく隠せずにいた。
今は家の勉強机として一度も機能していない勉強机に足を投げ出し
背もたれにめい一杯もたれかかってロッキングチェアーのように椅子をゆらゆらと揺らす事に
脳の約半数のニューロンを動員している。
俺は鉛筆を上唇と鼻の下に挟ませるという昭和ギャグマンガの一コマみたいな格好で
一つの懸案事項について考えている真っ最中なのだ、もちろんもう半分の脳で。
さてこの高校、入学式早々割り振られた教室ついた俺たちに
担任の黒ぶちメガネは入部希望書なるワラ半紙を全新入生に配りやがった。
ずらっと順番に書かれた選択可能な部活の中に切り取られたかの如く帰宅部の文字が無い。
裏に帰宅部と書いてあると期待したが、ものの2秒でそのわずかな希望さえも叶う事は無かった。
無常とは正にこの事例であろう。
まぁかいつまんで言うなれば、この高校に来たからには最低一つ部活動に入部しなければならず
誰が得をするのか分からない忌々しいシステムを採用しているというのが現時点で判明している。
俺は球技を始めとする運動、スポーツと総称されるものが大嫌いだし
(剛速球で迫ってくる球を受けたり弾いたりする事に楽しさを見いだせない)
かといって絵が描ける訳でもなく
(鳥を書いたらペンギンにしかならない)
音楽関係もてんで駄目だ
(縦笛でチャルメラをエンドレスで吹くことは出来る)
未来から来たネコ型ロボットに個性を磨く為の道具をせびれる泣き虫メガネ少年が羨ましい事この上ない。
考えあぐねた結果、別に部活動なんてしてもしなくても
俺の人生のベクトルは変わりはしないのさ等という大義名分をでっち上げ
即ドロン出来るであろう文化部欄の一番端、文芸部に入部希望のサインを書き込んだ。
さて、もしこれがオカルト研究部や放送部なんかであったとしたならば俺の人生は大きく変わっていたんだろうな。
しかし俺は文芸部を選んだ。
後でしかるべき人物にこれを聞いてみたところどうやらこれは必然であったのだという。
結果運命の方向性はこの時既に決められていたのだ。
しかしそんなもの知る由も無いだろう?
世界の真意を知らない正真正銘普通のホモ・サピエンス。
それが当時の俺だったんだからな。
翌日俺は朝のHRが終わった後、担任にその紙切れを他の生徒に混じって提出すると
すぐさま席に戻りチュパカブラに脳だけをキャトルミューティレーションされた牛みたくぼーっとした。
空っぽだから吸っても無駄だんだけどね。
暗号にしか聞こえない歴史の授業を聞き流しつつ窓際の席で
綿飴みたいな雲を見ながらアレが実際綿飴だったら何人分ぐらいになるのだろう
と現実逃避も甚だしい漆塗りの馬鹿妄想を膨らませては青春時代の貴重な時間をただ浪費していくのであった。
*
いきなりであるが、文芸部とは詩や小説を愛する人たちが集い作品を執筆したり製本するという
とても静かで繊細な部である。少なくとも我が高の文芸部はそうであった。
しかし、当時の俺は文芸部が何をする部なのかをちっとも理解しておらず、演劇とか手品とか影絵をするんだろうという
滅茶苦茶な設定を自分の中で組み上げており入部希望書に名前を書くだけ書いて
一度も文芸部に顔を見せる事は無かった。
長いような短いような、しかし内容は和紙より薄い1年はあっという間に過ぎ行き、俺は2度目の1年生となるのを回避
めでたく2年への昇格を果たしていた。
ささくれだっていた俺は結局ささくれ立ったままで意味も無く空を見上げては
進歩しない可愛そうな妄想を繰り返す日々を、朝乾布摩擦している近所の爺のように
毎日休むことなく律儀に続けていた。
そんな高校2年生になった2ヵ月後の水無月。
梅雨が始まるかな?と曇った空を誰かが見上げた
そんな少し雨水とあじさい紫陽花の匂いが鼻をくすぐる時期がやって来た。
放課後いつものように帰り支度を済ませてくてく歩いていると
廊下の窓ガラスにぽたりぽたりと水滴が付着していくのが見えた。
冬のモスクワの空をごっそりワープさせてきたような色で
午前中に熱光線をこれでもかとグラウンドとコンクリ校舎に浴びせかけていた太陽も
木星だか金星との約束事を思い出したのだろうか、その姿を眩ませている。
空から舞い落ちる水滴の槍は徐々にその本数を増し、気がつけば爪楊枝の様な雨も
いつしかバケツに入れたパチンコ玉をひっくり返したかのような豪雨へ変貌を遂げていた。
「はぁ……まいったな」
下駄箱に着いても雨の勢いは未だ継続中。
俺は神様がもたらした土砂降りの雨を干害に苦しむ村人のように喜ぶ心を持ち合わせておらず
ため息ばかりが幸せと一緒に口からぽつりぽつりと出て行くばかりであった。
「あの、いいですか?」
声がした。
野性的にずぶ濡れになって帰ろうか、
それとも辛抱強く鳴くまで待とうホトトギスの精神でこの雨が止むのを待とうか、
はたまた呪詛的方法でこの忌々しい雨を止まそうかと下駄箱で考えていた俺に
妙におどおどした、けれどどこか柔らかい不思議な声を後方から掛けられた。
「えあ?」
俺はそんな間抜けな声を出し振り返る。そこには一人の女子生徒が立っていた。
「斉藤君だよね?」
そう俺に確認する彼女はショートカットが良く似合う目が少し大きめの、雰囲気で言うなら行儀のいい猫のような
全体的にしゃんとしつつも柔らかなイメージも合わせ持つ、不思議な調和の取れた少女。
簡単に言うと
美人、カワイイ、彼女にしたい
「そう、ですけど」
俺は少しどもりがちにそう答える。
いや、誰だってあの状況で彼女に声を掛けられたならどもってしまうというものだ。
彼女の姿を見たとき雨と一緒に天使が落ちてきたと思ったぐらいだからな、そう言っても決して言い過ぎじゃなかったさ。
「あの、話したい事があるんだけど。いいかな?」
彼女は少しうつむき加減でそう言うと俺の顔を上目づかいでちらりと見た。
意味ありげな表情をする彼女。おいおいおい、まいっちゃったなぁ。
「ありょ、いや、その暇ッスよ。全然暇ッス、はいっす」
死ぬほどダサくイモ臭い斬り返しを俺は見事に達成。女への免疫の無さがこの世に露呈された瞬間でもある。
「ほんとに?よかったぁ」
ホッと胸を撫で下ろす彼女は菩薩のように柔和な笑顔を浮かべ
「3年の日比野エリカです」
と、俺に名前を教えてくれた。
「あ、ども」
間抜けなジャガイモと成り果てた俺はぺこりと能の無い頭を下げる。
「取りあえず場所、移動しよっか」
そう言ってまたサーチライトを直射したような眩し過ぎる笑顔を俺にぶち当てると彼女はてくてくと歩き出した。
そして言われるがままアヒルのひな雛のように彼女の後についてひょこひょこ歩く。
告白されるのではないだろうかというメロンクリームソーダみたいな期待の泡が
俺の心臓をさっきからガッツンガッツン殴りつけている。
昼に食べたメンチカツサンドとコロッケとコーヒー牛乳が緊張のあまり口から逃げ出そうとするのを俺は阻止すべく
食道に全神経を集中させる。
最悪の結果を抑止するために丸いパン顔ヒーローのアンコは果たして脳としての機能を果たしつつもアンであるのか
という漫筆的思索で自分の気を紛らわす事に懸命である事を誰が攻められようか。
今日はここまで
ノシ
乙です
明日?も楽しみにしてます!!
やっぱZA先生いないといかんなこのスレは
私怨
249 :
Mr.名無しさん:2007/06/08(金) 23:37:40
懐かしいスレハケソ
そんなこんなで彼女にくっ付き着いた先は文芸室と書かれたプレートのかかってある教室の前だった。
俺がソフトボールの試合で外野がめちゃんこ高いフライを見ているかのような
ぽかんとした面持ちでその文字を見上げていると
「どうぞ」
と彼女は中に入る事を進めてきた。
木製の引き戸を開けると目に飛び込んできたその部室は俺たちが勉強している教室の半分以下の大きさであった。
小さな教室の真ん中に折りたたみ可能な長机が2つくっつけてあって、それらは大きな長方形の机を形成している。
その回りに4つの椅子が向かい合うように並んでいるという何とも簡素なたたずまいであった。
何となく手前の椅子を引いておずおずと座った俺はその部室内をさながらハムスターのようにキョロキョロと見回す。
「何も無い部室でごめんなさい」
そう言う彼女はかすかな苦笑顔で俺にそう言った。
いえいえ、彼方が何故謝るのですか。それにしても殺風景な部屋ですな。
勿論いい意味で。
ぽつんと忘れ去られたように直立していた大きめの本棚には
『文集棚 貸し出しは一声かけて』
と書かれた張り紙が張られており今まで創刊してきたのであろう、文集がずらりと年代順に並べられていた。
棚に整列した文集の列をつうーと流すように見ていくとどれもB5のノートぐらい薄っぺらい。
それは代々この文芸部にはすずめの涙ほどの部員しか居らず
くもの糸で綱渡りをするように細々と活動してきたのだと容易に連想させるのだった。
彼女は本棚に興味を示しているチンパンジーの為にそこから1冊の本を取り出し
「これ、去年のなの。もし良かったら読んでみてよ」
と去年製作されたであろう文集を手渡してくれた。
表紙には魔方陣みたいなものが書いてあって俺は一瞬その表紙に目を奪われた。
丸い円の中に見たことも無い文字が書き連なっていて三角や四角のが幾何学的にその模様を形成している。
形容するならそれは歯車のように見えなくも無い。
貧血を起こしたときのような何か吸い込まれるような感覚を覚え俺はふるふると首を横に振る。
もう一度見てみればなんてことは無いただの紙の束だった。
俺はそれを受け取りパラパラと中身をめくった。
なるほど文芸部とは文章を書く部活なのかと初歩的な常識を己の辞書にインプット。
内容は何やら小説のようで綺麗な字体でアリンコみたいにびっしりと文章が書き連ねてある。
いくら日比野先輩が書いたものとはいえ俺はその文章量に拒絶反応を示した。
言わずもがなその反応は表には出さず、へーとか、ほーとかと相づちを打っているのでカモフラージュは
ヤマトナナフシの如く完璧なはずだ。
いや今はそんな場合では無いのである。
俺の心臓も無駄な血液を運搬しすぎたせいで疲れてきたらしい。
さっきからの緊張で自分が何をすべきなのか的確な判断が出来ずになりつつあるのは
日頃の鍛錬を怠けていたせいであろう。
今や俺の頭の中は完全に秩序と言うべきものが崩壊しており
実行されることのない機密文書に手違いでGOサインを出してしまいそうなほど
視床下部企画課はてんやわんやなのである。
この趣旨を彼女には分かって頂きたい。
『俺はエルヴィス・アーロン・プレスリーの生まれ変わりなんだぜぇぇぇ!!』
と口に出してしまいそうな茶目っ気のある自分がさっきから怖いのだ。
人は極度の緊張を強いられたときこんな訳の分からん事を思い浮かべてしまうんだねぇ、人体って不思議!
「あの、話って何なんですか?」
俺は意を決してそう聞いてみた。
キング・オブ・ロックンロールの話をするよりも現実的かつ自分が変人だと思われない為の安全牌である事は
火を見るよりも明らかだ。
「あ、えっと、その」
と彼女は少しもじもじした。その動作がとても自然で子猫が餌をおねだりするようなそんな感覚が
何ともまぁ、いじらしいね。
抱きしめたくなるがここは理性がストッパーをかける。
犯罪者と後ろ指を指される学園生活を俺は望んじゃいない。
ついにこの時が来てしまった。さようなら過去の俺。こんにちは新しい俺。
日比野さんは意を決したのかすっと俺の顔をまっすぐ見つめる。
嗚呼そんなまっすぐな目で見ないでください。
貴方が愛の告白をする前にOK&GOサインを出してしまいそうだ。
心の準備は万端だ。
脳内はさながら発射5秒前のスプトーニクロケット状態であり操縦席に座っているライカ犬もさぞかし興奮していることだろう。
彼女のフィレステーキより柔らかそうな唇がゆっくりと動く。
「実は」
今の俺は3国1の家宝者だぜ。俺の意識は既にお花畑と化していた。
「この文芸部が無くなってしまうかもしれないんです」
*
聞くところによると彼女の所属する、いや俺もなのだがこの部活が現在存続の危機に直面しているという事らしかった。
いや告白されるなんて思ってなかったさ。
うん、ホント、マジで、うん。
先ほどとは打って変わって落ち武者の亡霊みたくダークパープルな心境で俺は日比野先輩の身の上話を聞いていた。
今現在俺を含めて文芸部員は総勢2名ということらしく
入部希望者もインド人が考えた偉大なる数字ゼロをカウントしていた。
彼女は3年生、俺は2年生。
このままだと文芸部は細く長く続いてきた歴史にピリオドを打たねばならない。
彼女は今年の新入生に賭けていたらしかったのだが、文芸期待のエースどころか
ネズミ一匹入ってこなかったのだと言う。
ネズミが入ってきたら入ってきたで夢が広がる話なんじゃないかとメルヘンチックな空想をひけらかすこと無く
黙って彼女の話を聞いた。
この判断は今になって思えば正解であると言えよう。
「このままだと顧問の先生にも存続は難しいって言われちゃって、それで」
「それで名簿上は文芸部員の俺に声を掛けたという訳なんですね?」
「すいません、なんだか」
なるほど、いい話じゃないか。
彼女の容姿に似合った何とも美しい話だぜ。幽霊部員の俺が言うのも何だがな。
「あ、いえ滅相もない」
俺は小さく縮こまると引きつりスマイルで彼女に答えた。
結局その日は新入部員勧誘の話や今後文芸部をどう存続させるべきか答えの無い議論を交わしつつ
気がつけばカラスが帰宅のチャイム代わりに鳴き声を上げ部活動それを合図に終了となった。
「ごめんなさい、私の我がままに付き合ってもらって」
そう言うと彼女は廊下を歩きながらぺこりと頭を下げた。
「いや、いいッスよ。俺も暇なとき寄らせてもらいます」
俺はそう言って彼女の真似事をするかのようにお辞儀を返す。
彼女は俺より少し背が低くて良い匂いがした。
「じゃあね、斉藤君」
俺がガチャガチャと自転車の鍵を開けるのに戸惑っている隙に彼女は軽やかに挨拶を済ませ
さっそう颯爽と風のように姿を消してしまった。
一緒に帰りませんか?
と肉じゃがみたいな俺がそんな一つ上の次元に存在している呪文を彼女に言える筈も無い。
今日一番のため息をつきながら嬉しさと情けなさと期待が混じる
フタを空けて2日経った野菜ジュースみたいなえも言えない心境で、俺は一人とぼとぼと家路につくのであった。
アイ・アム・ア・フール。ベリベリ・フール。
もぉおおおおお、バカバカバカバカ俺のバカ!
日比野先輩と言う女神との楽しいスクールライフを1年間も無駄にしちまったんだぞ?
むっきょおおおおおおおお!
家に帰って布団にくるまりやり場のない青春のエネルギーを身もだえという形で発散するしかない俺は
過去の自分を攻め立てるも、1年前の斉藤少年は何事も無かったように文芸部の幽霊っぷりを完璧に演じている。
要するに過去はどう足掻いても過去なのだという当たり前の事を再認識する機会を
イエスだかアッラーの神様に与えられていた。もしくはアフラ・マズダーか?
アリストテレスのように哲学し苦悩する俺はいとも簡単に日比野先輩の虜となってしまっていた。
学習する事。
それはこの地球において人間がここまで繁栄来た理由の一つであり
そして俺も人類という霊長類のカテゴリに属しているこの事実。
イコールそれは『俺は学習する』と言う事の証明でもあった。
同じ鉄は二度と踏むまい。
過去のマヌケな自分の分まで青春を取り戻すべく文芸部に日比野先輩を拝みに
いやいや文芸作品の制作及び構想を練りに放課後部室へと足を運ぶ事を決意した。
早々と布団に潜り込むも上がったテンションなかなか下がらず
「うひー」とか「ひゃあ」とかあふれ出る感情をそのまま言葉にしつつ
ミノムシみたいな格好で寝ずに夢を見るという荒業をその日やってのけたのだった。
今日はここまで
ノシ
257 :
Mr.名無しさん:2007/06/11(月) 06:47:49
期待あげ
*
翌日俺は目の下にクマを作りいつも以上にハッピーな気持ちで登校。
選挙カーの上で演説する議員の話のような授業を日比野先輩との楽しいラブラブ妄想という有意義な時間とし
放課後それが現実となることを夢見て、部室へと足を運んだ。
それはもう軽やかな、アルプスの少女のようなステップで。
「こんにちはぁ」
6回ほどトイレの鏡で練習した一番爽やかな顔で部室の扉を開くも
そこには誰も居らず無駄に爽快感溢れる挨拶だけが虚空に空しく消えていった。
「っと、誰もいないのか……」
独り言を言ったところで聞いてくれる人も居らず空しいだけと分かっていても言ってしまう。
メンタル的に人間とはいかに矛盾している生き物なのだろうかという良いサンプルだ。
俺は例の如くドアの近くにある椅子を手前に引いてぼんやりと日比野先輩が来るのを待っていた。
十分、二十分と時間は無常にも過ぎ去ってゆく。
待つだけでは退屈なので俺は普段やらない宿題をやってみたり窓から見えるグラウンドで
野球部の汗臭い青春を遠巻きに見つめるも、田んぼから捕ってきたアマガエルの世話同様すぐに飽きてしまった。
俺は家の勉強机に座る時みたいに足をぽーんと長机に投げ出しぐでんと椅子にもたれ掛かった。
岩場に打ち上げられた明石ダコは椅子の足2本を作用点として椅子を前後にゆらゆらと揺らし
そのバランスゲームにいそ勤しんだ。
このまま文芸部の部室にいた所で何ら面白い事が1ミリも無い事は明白であり
日比野先輩がいるからこそ、こののっぺらぼうみたいな部室も存在意義を得ると言うものである。
先輩が今日は来ないだろうと踏んだ俺は机の上に散乱した宿題の残党軍を通学鞄にしまい込む。
アルファベットばかりで構成された俺が最も嫌いとする教科書を鞄に封印しようとした時にはたと目に付くものがあった。
日比野先輩が昨日俺に貸してくれた文集だ。
和訳すれば「楽しい英語」という俺にとってはケンカを売っているとしか思えない題名の本と入れ替わりに
何気なくその文集を手に取りもう一度パラパラとめくった。
窓から漏れる光は少しばかり赤みを帯びてきている。
俺は最初のページを開き、本当に何となくその一文を読み始めた。
『我ここに契約の署名を提示せしめん。
崇高なる神々よ、崇高なる世界よ
崇高なる生きとし生ける者たちよ。
森羅万象の理を経て我はここに命ずる。
契りを交わし我が力となれ
契約の元、我命ず』
この魔法の呪文チックな書き出しで始まる小説に俺は気が付けばのめり込んでいた。
なるほどファンタジー物だから表紙が魔法陣だったのか。
今までマンガか国語の教科書以外読んだことの無い俺にとってその出会いは衝撃的なものだったのだ。
文章だけでその世界を構築する事の凄さをまざまざと見せ付けられた気がしたのである。
それは普通の少年と伝説の魔女の物語で、伝説の魔女に恋をした少年がブリキの剣士や生意気な小竜と共に
その魔女の魔力を我が物にしようと付けねらう悪魔に立ち向かうと言うストーリーだった。
描写の一つ一つがリアルで、さも自分がその世界にいるような・・・・・・そんな錯覚に俺は襲われる。
時間が経つのを忘れ辺りが暗くなっても貪り食うようにその小説を読み漁っていた。
俺の価値観が変革してゆくのを感じたね。
それほどまでに繊細で力強い彼女の文章は、魔女が死ぬくだりで涙腺から塩辛い液体を流させた。
文章で人に涙を流させる事が出来るのかと俺はショックを隠せない。
泣いたのは小学生の時ソフトボールで顔面に白球が直撃した以来だ。
全てを読み終える頃、空は闇のカーディガンを羽織り長時間同じ体勢だった間接の節々はぎちぎちと軋んだ。
小説の余韻に浸りつつ俺はふらふらと立ち上がり電気を消すと茫然自失の状態で部室を出る。
物語は完結しておらず悪魔と残された少年の2度目の対峙のところで話は途切れていたのだった。
学内にも人は職員室に教師がほんの少し残っているだけの状態で、普段とは違った静かで暗い廊下を俺は歩いた。
続編が気になってどうにかなりそうだったので、早速明日先輩にその事を聞いてみるつもりだ。
遊んでいたオモチャを取り上げられた子供の心境が今なら良く分かる。
下駄箱で上履きから下履きに履き替え校門にへとその足を向けた。
ふと後ろを振り返ると抜け殻となった新校舎が横にぶっ倒れたモノリスのように何もいわず横たわっていて
少し不気味な印象を受ける。
頭の芯をハンマーでぶん殴られたような衝撃を受けていた俺はぼんやりそんな事を考えながら
ノロノロとガラパゴス大陸ガメのように家路につくのだった。
今日はここまでで
ノシ
262 :
Mr.名無しさん:2007/06/13(水) 01:37:15
ZA先生乙です
あげ
263 :
Mr.名無しさん:2007/06/14(木) 21:49:24
age
age
265 :
Mr.名無しさん:2007/06/16(土) 21:38:44
あげ
*
「ごめんね、毎日来てるわけじゃないんだ」
翌日の放課後、彼女はその何も無いタクラマカン岩石砂漠の方がまだ楽しめそうな部室に花を咲かせにやって来ていた。
「いや、気にしないでください」
俺は昨日の小説の余韻もそこそこに彼女に借りていた文集を取り出し彼女の前に差し出す。
「ど、どうだった?うまく書けてたかな?」
およそ上級生に見えない、マイ・リトルマーメイドはサクランボ少年撃沈必須の上目づかいをスパークさせた。
一瞬、昇天しそうになる。
「だ、大丈夫?」
こめかみを押さえる俺は何とかまともな思考形態を維持しようとするも
先輩は俺が気分が悪くなったのだと勘違いしたのであろう背中をさすってくれた。
ハチミツをぶちまけてくるかの様な優しさの波状攻撃を向こうの大将はなかなか止めようとしてくれない。
徹底抗戦の構えである。
理性という名の城壁はもう既に穴だらけだ。
「あ、いや、本当に面白かったです。この小説。うん」
俺はドンドコドコドコとミクマク族がアルゴンキン語の歌を歌いながら打ち鳴らす太鼓のような高鳴る鼓動を抑え
ぶんぶんとヘビメタのボーカルのようにうなずいて見せた。
先輩は俺の手から文集を受け取ると部屋の数少ないオブジェである本棚にそれをしまいこむ。
「俺今まで小説とか読んだこと無くて。いやー恥ずかしい話なんスけどね」
俺はさっきからコメツキバッタみたいにぺこぺこしている。
「私も高校に入ってからなんだ、書き出したの」
「そうなんですか?」
「うん、楽しいよ?」
そういう彼女は無垢な子供のように笑って、心から小説を書くことが楽しいと思っているのであろうと感じた。
「ねぇ、斉藤君も書いてみたらどうかな?」
「俺ッスか?いやー俺は読む方専門って事で」
「うう、そっかぁ」
俺が小説なんぞを執筆した所でそれは脳みそが空っぽであるという証明書を書くようなものであり
これは流石に日比野先輩の提案であろうと却下せざるを得ない。
すいません、日比野先輩、自分への戒めとして家で腹筋二百回頑張ります。
すると彼女はそんな妄想癖のある少年の横で原稿用紙をゴソゴソと鞄の中から出し
「今から書くんだけど、退屈なら帰って良いよ?」
と野に咲く健気で綺麗な名も知らぬ花のようにキラめくオーラを放ち、俺に優しい助言を掛けてくださった。
「あ、いや、暇ですしどーせ。他の文集も一通り読みたかったんですよ」
と、半分本当で半分嘘の事を彼女に言った。
そうさ。
単純な話、彼女のそばに居たかったんだな。
恋愛感情は脳内で分泌されるホルモンが引き起こす一種の幻覚である、なんていう奴がいるが
それがどうしたバカヤロウと俺は言ってやりたい。
そんな冷やし中華みたいに冷め切った恋愛誰が好き好んでするんだよ。
ハラミだかホルモンだかしらねーがいつだって俺の体を突き動かしているのはハートなのさ。
は、あ、と。
静かにペンを走らせる先輩を俺は文集越しに眺めながら、もうすぐノート写させてもらわんとなぁ
とテスト前の準備計画についてぼんやりと考えていた。
一緒の空間に居るだけで幸せであり、俺が生きてきた中で最初で最後の恋だった。
それは俺の世界が変わった瞬間だったのだと思う・・・・・・きっと。
*
ヒト科ホモ属サピエンス種である日比野エリカは客観的に言うなれば頭の良い人物であった。
成績も顔も良かったのだがそれだけが理由じゃ無い気がする。
高校といってもそれはまだ未発達な思考の集まりでしかなく、大人のフリをしてタバコを吸う奴もいたが
やはりそれは「大人に憧れている子供」なのであって、俺からすれば高校に通っているクラスメイトの話から察するに
どんぐりの背比べだ、と言うのが正直な所であった。
ん、自分自身はどうだったかって?その他大勢に俺も含まれてたさ。
結局それは20年後も変わらず俺の中でくすぶり続ける訳だがまぁ、その話は置いておこう。
男は誰もがピーターパンなのさ。
そんな中唯一、自分たちとは違った存在感をかもし出していたのが日比野エリカだった。
言うなれば他人との距離を的確に開けるのが上手いのである。
ヤマアラシのジレンマをよく理解している、と言ったところか。
それを高三で既に彼女はマスターしていた。
本気でも投げやりでもない優しい返答を彼女はいつもしてくれる。
全てを悟ったようなそんな気さえするのだ。
「先輩は、その、悩みとか無いんですか?」
俺は日の暮れ掛けた部室で1度だけ彼女にそう聞いた事がある。
先輩は執筆中で、俺は人類が犯してきたであろう間違いだらけの世界史宿題プリントを
ようやく黒鉛で埋めたところであった。
ただ単に会話のきっかけを作りたかっただけなのかもしれない。
会話のきっかけなんて野良猫に魚肉ソーセージをやろうかアタリメをやろうかと迷うような事で
要は何でも良かったのだ。
「ありすぎて困っちゃうわよ」
そう言って彼女はぜんぜん困ってなさそうに笑った。
「たとえばどんな事で困っちゃうんですか?」
「そうねぇ」
彼女はペンを置き、たまに点滅するそろそろ交換しなければならない蛍光灯を見つめながら考え
「世界滅亡の危機とか?」
と、天使が光臨なされたかのごとき微笑で笑むのだった。
彼女は毎日学校に来ていると言う訳ではないようで、週に1、2回。ひどい時には1週間学校を休む時があったりした。
病気がちにも見えず、俺は彼女にその事を聞いてみたものの有耶無耶な回答をよこされ疑問に思ったが
深く追求して彼女に嫌われるよりはマシだとその事を深く聞いたりはしなかった。
そんな深く知れば知るほど謎の多い日比野エリカは文芸部というだけあり書いた小説はとても面白くそれでいてリアルだった。彼女の作品で共通して言えるのが龍や妖精が出てくるという事柄でありそれが彼女の作品の特徴であると言えよう。
いや、もしかしたらポリシーなのかもしれない。そして最後はハッピーエンド、と言うわけでは無く物語は徐々にフェードアウトして行き最終的な結論を出さぬまま尻切れトンボの状態で終わってしまうのだ。
「先が気になりますよ、この先どうなるんですか?」
好奇心をかき立てられている俺に彼女は
「さーどうなるんでしょ」
と道化のような曖昧な返答をよこした。
「続編アリって事ですよね?」
「それは彼方次第」
「へ?」
好きという感情に順応してきた頃、俺は彼女が時折見せる不思議な感覚にいささかの好奇心を覚えていたのだった。
しかし、その正体を掴めぬまま季節は無情にも過ぎてゆく。
かの哲学者アウグスティヌスは時間という概念についてこう述べたのだという。
「私はそれについて尋ねられない時、時間が何かを知っている。尋ねられる時、知らない」
と。
どういう意味かって?
ワケわかんねーって事だよ。
そう、時間とは俺達人類がどう足掻いても
核を使おうが泣いて母親にすがりつこうが平等にやってきて平等に去っていってしまうものなのだ。
戦隊ものの戦闘員ばりに普通な俺はともかくとして日比野先輩だって例外を適応された訳じゃなかった。
彼女はこの年の3月学校を卒業する。
今日はここまで
ノシ
楽しそうなスレだな。
誰も居ないみたいだし、俺もちょっと投下しちまうかなw
カチャ・・・。
今晩も俺の部屋の扉がそっと開く。
衣擦れの音とともに、人の気配が俺のベッドに迫る。
「ああ・・・今晩もなのか・・・」
俺は狸寝入りを決め込んだ。
侵入者は俺のベッドの脇まで来ると立ち止まった。
フワッとかすかな石鹸の香り。
「おにいちゃん・・・」
俺の顔のすぐ横で、妹の舞が囁いた。
二歳違いの妹。
高校一年の夏、クラスの男子に乱暴されて心に傷を負っていた。
舞が頼れるのは実の兄である俺だけ。
やがて、妹は夜な夜な俺の部屋を訪れるようになった。
もちろん、俺には兄妹以上の感情は無い。
でも、舞は・・・
「お兄ちゃん?・・・」
俺が寝ているのを確かめると、
隣の僅かなスペースにスルッっと体を滑り込ませる。
ひんやりと冷たい舞の体温を感じる。
「う、うん・・」
不自然が無いように俺は身を捩る。
しかし、舞は逃がさないように絡み付き、俺の自由を奪う。
そして、一方の手を俺のパジャマの合わせ目から滑り込ませ、
俺の腹から胸にかけて冷たい手を這わせる。
「・・・はっ・・はふっ・・・んっ」
舞の息使いが耳をくすぐるたびに、
俺は漏れ出しそうになる声を抑え込む。
なぜなら、寝ていない事を悟られたくないから。
275 :
Mr.名無しさん:2007/06/19(火) 13:12:58
次第に上昇していく舞の体温。
薄いパジャマを通して、舞の身体の変化が手に取るようにわかる。
もう少し、もう少し、我慢すればこの状態から開放される。
いつものことだ、なんて思っていたら今日は違っていた。
舞の手は俺の腹や胸では飽き足らず、
パジャマのズボンの中へゆっくりと侵入してくる。
「・・・!!」
さすがに不味いと思ったが遅かった。
舞の手は、俺の一物をパンツの上から探りだす。
先ほどの愛撫によって充分に隆起している俺の一物。
確認が済むと、舞は手をパンツの中へ進めた。
つづくw
乙
277 :
Mr.名無しさん:2007/06/20(水) 00:17:27
>>272 つづきマダー?
パンツ脱いで待っているから、風邪ひいちゃうよ
wktk
*
駆け足で訪れた先輩最後の登校日。
仰げば尊しが体育館に響いたその日、俺は卒業式という2年最後のイベントを他の在校生に混じって参加していた。
君が代を歌っているときも、校長の催眠術のような訓辞も、俺の頭の中に何一つ入ってはこない。
クソ、考える事は日比野先輩の事ばかりだ、大声で叫びまくりたい心境だぜ。
俺はそれをこらえるかの様に握りこぶしをぐっと握る。
結局斉藤少年は3月になっても自分の気持ちを日比野先輩に伝えずにいた。
友達に遊びに行こうと言うのとは訳が違う。
一世一代の大舞台、俺にとってはスカイダイビングをするようなものだ。
空中落下の想像を頭に思い描いている横で、拍手の海の中を卒業生達が体育館の外へ列を作り出て行く。
その中ほどに日比野先輩はいた。目が合うと彼女はいつもの優しい笑顔で俺に微笑んでくれた。
その笑顔が俺の干からびた心に染み、痛みを生じさせた。
1人この場所に置き去りにされてしまう、そんな気さえする。
いつかこの日が来ると分かっていた。
先輩がこの高校からいなくなるって事を。
そばに居るだけでいいと日ごろ思っていたからこそ、彼女がいなくなるというその事実が俺にとってたまらなく苦しく
たまらなく切なかったのだろう。
彼女を知ったその日から、それは少しずつ蓄積していった。
卒業生の何人かはぐすぐすと涙と鼻水で顔面を濡らしていた。
俺は鼻腔と涙腺に阻止線を引いて液体が外に漏れないように注意を払う。
男が泣くのは格好悪いもんな。
卒業式が終わり、俺は酒の切れたアル中患者のようにフラフラと体育館を出る。
グラウンドでは皆に送り出された卒業生達が寄せ書きを書きあったり写真を撮ったりしていて
俺は無意識のうちに先輩の姿を体育館横のベンチから探していた。
数ある女の子のグループの1つに日比野先輩はいた。
部室でしか顔を合わせる事が無かった俺は、他の人と話して笑っている先輩を
あまり見た事が無く少し新鮮な感触を得ていた。
他の上級生に混じって談笑する彼女は笑って少し泣いてまた笑ってを繰り返し
卒業と言う最後のイベントを本当に、かみ締めるように楽しんでた。
俺は東京タワーのてっぺんにある双眼鏡で景色を見渡すような客観的心境で彼女をぼんやりと眺めている。
遠くに彼女を感じる。
日比野先輩は一通り友達としゃべり終えた後、グラウンドを背にして一人校舎へと歩き出した。
部室へ行くのだ、と俺は直感的に感じた。そして勝手に自分の足もその姿を追うように部室へと向かう。
彼女との文芸部で過ごす日々は終わるのだ。それは俺にとって素晴らしくかけがえの無い日々であった。
先輩と出会ったことで少なからず俺の心は変わった。
人を好きになると言う事を彼女は教えてくれたのである。
ありがちな言葉なのかもしれないけれど俺にとっては生まれて初めての事だった。
そりゃ、感情的にもなるさ。
俺はロボットじゃないんだからな。
思春期のごくごく普通高生な俺はごくごく普通に恋をしてその旨を今日彼女に伝えようとしている。
そして始まるのだろう。
フラれようが付き合おうが、今までと違う新しい日々が。
*
「えっ……えっ……エリカさん」
俺は自分でも嫌になるくらいの引きつった声を上げていた。
3月、肌寒い文芸部の部室が寒さでより一層殺伐と見えたその日。
その荒野のようなイメージすらするその中で一輪の花が静かに、しかし圧倒的存在感でそこにいる。
「はい?」
その声に彼女はふっと読んでいた文庫本を膝に置きゆっくりと顔を上げた。
甘く透き通るような声。
子猫のような目と揺れるショートカット。
鞄からはみ出た卒業証書の黒い筒と真っ赤なバラのカーネーションが
この日が来たのだという現実を俺に突きつけていた、来て欲しくなかったね。
頭の中が明日提出の英語の宿題のように真っ白になる。
いつもどうやって会話していたのか思い出せない。
緊張で俺の指は小さくカタカタ震えていた。
「卒業しちゃった」
そんな今から告白しようとしている少年の意図を知ってか知らずか彼女はそう言うと
窓から見えるグラウンドを授業中の俺のような目でぼんやりと眺めた。
澄んだ透明感溢れる空気は部室の中にも流れ込み、きらきらしたほこりが舞っていて
教室の少しカビ臭い匂いが鼻をかすめる。
「お、俺は馬鹿だし」
指と同様俺の声は驚くくらい震えていた。
「何か特技があるわけでもありません」
そりゃそうだ。分かりきった事だ。
「ずっと……その、毎日が退屈で」
何も無かったからな、俺には。
「やりたい事、なりたいものなんて一つも無かった」
けれど一つだけ見つけたんだろ?
「けどあの日……日比野さんに会って」
あの日は雨が振ってたっけな、忘れもしない。
「俺の世界は」
そうだ
「変わりました」
そして今日またその世界は終わりを告げる。
「日比野さん」
ああ、願わくば
「俺は」
もう少し傍に居たかった。
「あなたの事が好きです」
あーいっちゃった、いっちゃったよ俺。うっひょう
今日はここまで〜
ノシ
乙です
隠れた良スレだわ
285 :
Mr.名無しさん:2007/06/20(水) 21:26:29
乙です。
age
286 :
Mr.名無しさん:2007/06/22(金) 22:37:24
やばいよ、昔の良スレが戻ってきたよ
287 :
Mr.名無しさん:2007/06/24(日) 21:01:04
age
288 :
Mr.名無しさん:2007/06/25(月) 21:27:01
wktk
*
勢いで告白したはいいものの後の事をまったく考えていなかった俺はハチ公のようにひたすら彼女の言葉を待っていた。
この時ばかりは世界が時間対称性理論を無視し時計の針を止めたかと思ったね。
あれだけの緊張感は後にも先にも無かったからな。
「斉藤君はさ」
彼女は遠くの空を見ながらぽつりと言葉を口にした。
沈黙という名の均衡が崩れる。
「世界って……どう思う?」
「世界、ですか?」
「そう・・・・・・」
それはそれは突拍子も無い質問で俺は少し困惑してしまう。
告白後の返答にしては斬新過ぎやしないか?
「世界は一つなんて言葉があるけどさ、実際そうじゃないの」
彼女は儚げな表情を浮かべそう言った。
「それがどれだけもろい存在か彼方は知ってる?」
これは新手の男を振る手口なのだろうか?
「私はこの世界が好き。鳥も草もこの街も太陽もお父さんもお母さんも友達も、それに」
彼女は俺を見つめる。
後ろの窓の白いカーテンが3月の肌寒い風に揺られておいでおいでをし
その向こうには眩しいぐらいの青空が広がる〈世界〉がそこにあった。
「彼方の事も」
吸い込まれそうな、そんな瞳。
彼女の黒い眼精に俺は、銀河を見た気がした。
「だから私はこの大好きな世界を、守りたいんだ」
結局彼女の言った好きという言葉が友達として向けられた言葉なのか
異性として向けられた言葉だったのか俺には分からなかった。
「守りたい……ですか。それじゃあ先輩は世界を守るヒーローだとでもいうんですか?」
俺は安易にもそう口にしていた。
ふと昔自分がなりたかった黄色い丸目玉の銀色巨人を思い出す。
3分間だけこの星に滞在できる光の国出身のヒーローだ。
日比野先輩の比喩は良く分からない、と言うのが正直な所であり先輩の言う〈世界〉が
何を意味しているのか見当もつかなかった。
そして「好きです」と既に言ってしまった俺は先輩の後ろに広がる蒼空のように清々しく
いつもの態度で先輩と接する事が出来る自分に少し驚いる。
「ヒーローなんて大層なモノじゃないよ。けど・・・・・・ちょっとはそうかもしれないな」
そう言って先輩は力無く笑った。
「俺馬鹿だから先輩が何のこと言ってるか分かんないし、その、なんて言うか」
「あ・・・・・・ごめんなさい。その・・・・・・変な事言っちゃったね。
・・・えと、疲れてるのかも・・・・・・あはは」
次の言葉を捜しているうちに彼女はそう言って俺の言わんとしたことを遮った。
「何だか最近私の身の回りが忙しくってさ」
その時俺は、その世界とやらが先輩を疲れさせている原因なのだと、密かに察知していた。
彼女が言わんとしているその〈世界〉という言葉が具体的に何を指しているのかやっぱり分からなかったが
それでもその言葉の持つ意味は理解できた気がした。
それは彼女にとてもとても重く大きいものであるのだろう。
そして、きっとかけがえの無いものなのだ。
俺が日比野先輩を想う気持ちのように。
日比野先輩の姿はどこか名前も知らない戦場で黄昏れ一人うなだれる兵士の姿を俺に連想させた。
しかし目の前にいるその少女は普通高の上級生でしかない。
網膜に映る光景と彼女の発する雰囲気がとてもアンバランスな筈なのに
それはとても儚くて、とてもとても美しいと感じた。
何の変哲もない県立高校の小さな部室で頭を垂れるワンマンアーミーに俺は
次の瞬間こんな言葉を口にしていた。
「世界なんてほったらかしてしまえばいいんですよ」
「へ?」
彼女は豆をリボルバーで心臓を撃ち抜かれたハトの様な顔をした。
「いくら先輩が好きな世界でも、先輩に全部押しつけるような……そんな自分の足で立てない世界なんて
いっそのこと無くなってもいいんじゃないですか?俺にはそう聞こえましたよ。その世界の在り方」
何故俺はこんな事を言っているのだろう。
「先輩はその世界が好きかも知れませんが、それがもし先輩を駄目にしてしまうような事があるならば」
あの時の俺は確かに恋に恋してたね。
歯の浮くような台詞平気で口走ってたし自分にも酔っていた。
何を言ってるのか自分でも分からない。
けど、そうさせる何かがあったんだ。
恋愛は確率論で論破できる物じゃないなんて思ってたあの頃。
今思うと死にたい。
「俺は世界の敵にでも何でもなるッスよ。守りたいんです、世界より彼方を」
まぁ、それは本心だった訳だが。
しばし目を丸くしていた先輩は急にくすくすと笑い出しせきを切ったかのようにあっはっはっはと笑い出した。
「分かった、分かったよ斉藤君」
彼女は笑いすぎて溜まったのか、違う理由なのか分からない水溜りをその小動物のように可愛らしい目に作って
「やっぱり、彼方しかいないよ。うん。間違いじゃなかった」
何か自分がトンでもなく恥ずかしい事を言ってしまったのでは無いのだろうかと後悔し始めた矢先
彼女はスッと席を立つ。
先輩の後ろでガタンとイスが踊った。
ほんの数秒で俺の目の前に彼女はいて、俺のだらりとぶら下がった手を彼女の柔らかくやさしい手が包み込む。
彼女は俺の左腕を両手で握っていた。
暖かかった。
確かに俺と彼女はそこにいたのだ。
「これからも、よろしくね。斉藤君」
そう言って彼女はその唇をゆっくりと俺の唇に重ねた。
視界の端、窓の向こうに広がる青々とした空と胴上げされている先生が印象的だった。
*
それから20年後、俺が淡い思い出を脳裏に描いていたのを一瞥するかのように
サムライガールの冷たい視線が少しネチャつくテーブル越し光っていた。
俺は冴えないサラリーマン、目の前の少女は女子高生。
そこは24時間営業しているファミリーレストランで、しきりに鳴る他の客が押す呼び出しベルが
間抜けでやたらでかい音を奏で非常に耳障りである。
「大人しくついてきたんだ、そろそろ君が何をしたいのか教えてくれないか?」
俺は一回り以上年齢が違うであろう少女にやや呆れた口調でそう言った。
*
今から20分前。ショッキングな木刀少女と路上での遭遇後、俺はいきなり彼女に木刀を喉元に突きつけられた。
もう最近の十代が何をしたいのか全く分からん。
オヤジ狩りに遭う年に俺もなっちまったのかと悲観しつつその危なっかしい棒の切れ端をぐっと持った瞬間
目に映る世界は見事に一周して俺はしこたまアスファルトに体を打ち付けた。
唯一幸いだったのは買い物袋を地面に置いていた事ぐらいだろう。
卵が潰れなくてすんだんだからな。
「下手な行動は慎むことだ。私は手加減と言うものを知らない」
街の濁った夜空を眺める俺に彼女ははそう言い放ち
「ついて来い、時間があまり無いんだ」
と奥襟をむんずとつかみ片手でズルズル引きずりだしたのだった。
「おい!何すんだよ」
「場所を変える、お前は黙ってろ」
死体を引きずるように彼女は俺を引っ張ってゆく。
凄い馬力だマウンテンゴリラか、こいつ。
彼女の好物はフィリピンバナナに違いあるまい。
「わかった、わかったから。話を聞いてやるから、とりあえずこの手を離せ!」
ずんずん歩く猿人侍にそう言って襟首から手を離すよう申請すると
不意に彼女はパッと手を離し俺はまたもや後頭部をアスファルトに激突させていた。
「おぅうう……なにすんだよ!」
ズキズキと痛む後頭部を抑えつつそう叫んだ。
何か悪い事したのか俺?
人生の折り返し地点に着く前にノータリンになるのは御免こうむりたいし娘の花嫁姿を拝むまでは
病院の世話になる事は断固として回避しなければなるまい。
若い頃とは違って体中にガタが来はじめているのだ。
四十肩と蛋白尿の他に持病が付属するのは勘弁して欲しい。
「手を離せと言った。だから離した」
「アホンダラ!変な所だけ愚直になってんじゃねーよっ、いつつ」
ズンズン痛む頭を撫でながら俺はしかたなく彼女の後ろについて
彼女が言うその目的地に重い足を向けたのだ。
*
そんなやり取りがあり今その暴力女子高生とFCレストランにて向かい合いお茶している訳なのだか
傍から見れば女子高生とスーツ姿の冴えない親父とのデートであり
それは援助交際に見え無い事もなく、俺はまた違う意味でスリルを味わっていた。
「本題に入る前にひとつ聞いておきたい」
ドリンクバーで拝借してきた烏龍茶に口をつけず彼女はキッと俺の目を見据えたままでそう言った。
「なんだよ、だんまりの後は一方的に質問タイムか?名前を先に名乗るのが大人のルールだぜ」
「犬飼だ。犬飼京香」
彼女はそっけなく自分の名前を俺に伝えると
「男なら最後まで黙って聞け」
と、付け加えた。
「・・・・・・へいへい」
女子高生の尻に敷かれる事を至福に思う同世代の奴らもいるのだろうが
俺にはそのような性癖は微塵も無く、正体不明なこの存在から開放される事ばかりをその時は考えていた。
「お前は日比野エリカにとってどの様な存在だったのだ?」
番狼少女が銀色に鈍く光る視線を俺に投げてよこす。
またエリカか。
「これは上が下した命令じゃない、私の個人的質問だ」
上?お前に上司でもいるのかよ。
「俺は、アイツの片割れだ」
そう答えてやる。
「そんな事は分かっている。戸籍上の話じゃない」
「じゃあ、何を聞きたいんだよ」
エリカの事になると相手が女子高生であろうとイライラしてしまう自分が少し惨めだとその時感じた。
「日比野エリカが何故お前を選んだのか。私には理解が出来ないんだ」
嫌な質問だった。
「余計なお世話だ。お子様のお前にエリカの何が分かる」
「その言葉をそっくりそのままお前に反そう。アンタにエリカの何が分かるというんだ?」
「そ・・・・・・そりゃあ・・・・・・」
一瞬俺は口ごもってしまう。
ロビンフットに矢で額を貫かれたとしたらきっとこんな感じなのだろうな。
俺はエリカと十二年連れ添った。
彼女の事は一番俺が良く知っている筈なのだ。
けれど。
「彼女が残してきた功績も苦労も知らずにのうのうと彼女の横でそれに気づきもせず
生きてきたお前に、彼女の意思を告ぐ資格なんて無い!」
犬飼京香と名乗った少女は俺の言葉を待たずに大声でそう叫んでいた。
周りの客の視線が一斉に俺達のいるテーブルに十字砲火を浴びせかける。
犬飼はそんな野次馬どもを知ってか知らずか烏龍茶をストローも使わずガブガブ飲み
空になったグラスを机の上へ乱暴に置くのだった。
>彼女は豆をリボルバーで心臓を撃ち抜かれたハトの様な顔をした。
こういう表現がたたまらん・・・
今日はここまで
ノシ
>彼女は豆をリボルバーで心臓を撃ち抜かれたハトの様な顔をした。
こういう表現がわわからん・・・
300 :
Mr.名無しさん:2007/06/30(土) 09:08:04
age
ほ
*
昔をこうやって思い返してみると、結構色んなことがあって思い出の引き出しを開けるのも
そう悪いもんじゃないと感じる俺がいる。
普通の人生だったとしてもそれはそれで色々あったって事なのかもな。
自称ちょこっとだけ世界のヒーロー日比野エリカと何の変哲も無いめでたくボンクラ社会人となった斉藤君ことこの俺は
めでたく交際四年目を迎えていた。
ケンカもしたし何度か別れかけたがそれでも二人は互いが互いに寄り添ってそれなりに幸せだった、と思う。
うん、そう思いたい。
そして彼女が二十一歳、俺が二十歳の時二人は結婚した。
いささか早すぎる結婚であったのには理由がある。
若気の至りとはこの事で俺はこの若さにして父親となってしまったのだ。
言うなれば出来ちゃった婚ってやつだ。
保健体育の授業を真面目に受けておくべきだったが、後悔しても時既に遅くエリカの腹の中では
新たな生命がすくすくと育っていた。
ご利用は計画的にってね。
エリカは短大を卒業後、父親が運営する企業に就職していたが子供が出来たため休職。
一方俺は家がそれほど裕福でも無く、将来なりたかったものがウルトラマンだった為高校が斡旋してくれた
それなりの企業でそれなりに頑張っていた。
今サラッと俺がすごい事を言ったのに気づいただろうか。
そう、日比野エリカの家柄の事である。
実のところ彼女は社長令嬢だったりした。
いや、後づけ設定でも何でもなく俺だって一年ぐらい付き合って初めて知ったんだ。
別に逆玉の輿を狙ってた訳じゃない。
「親は何してるの?」
と俺が聞いても
「うーん、自営業なんだけどあまり仕事の話を父さんしたがらないから」
という答えが帰ってくるだけだったのだから、まさかそこまでのお嬢様だったなんてお釈迦様でも思うまい。
文芸部と金持ちの関連図など俺なんかが描ける訳も無かろうて。
だから初めて彼女の家に訪れた時は腰が砕けるかと思った。
家族で旅行に行った折、温泉饅頭を土産に買ったのでそれを彼女の家に持っていったのが最初だったのだが
その時はまだ彼女が平凡な家庭で育ってきたのだとばかり思っていのだ。
知ってたらパサパサの温泉饅頭なんか買って持っていくものか。
彼女の家の塀はベルリンの壁よりも長い気がしたし
馬鹿でかい門も監視カメラや自動開錠自動開閉でセキュリティーは万全だった。
鍵がさび付いて動かなくなった俺ん家のガラス戸とは訳が違う。
ちなみに盗るものが無いという、ある意味最高のセキュリティーが働いている我が家は
壊れた鍵がそのまま修理されず放置されている。
敷地中に一歩足を踏み入ればマッチ箱みたいな俺の実家が百個以上入りそうな日本庭園が目の前に広がり
それを横断するかのように小さな人工の川が流れている。
金の力は自然をも作り変えちまうらしい。
ゴットだよ、ゴット、天地創造できるんだな金って。
その先にある池には一匹百何万もする錦鯉が佃煮にして売るぐらいひしめき合っており
貧乏人から見れば車が泳いでいるようなものであった。
この辺で俺は偏頭痛を起こし始めたね。
石畳の道をもう少し先に行くと今度は放し飼いのゴールデンレトリバーが二匹尻尾を振りながら
俺とエリカを出迎えじゃれ付いてきた。
やはり金持ちはゴールデンレトリバーなのか、と歪んだ偏見をより一層強める俺。
ちなみに斉藤家で飼っている犬は正真正銘の雑種で物覚えが激しく悪い
カニカマボコが好物な年中発情期のオスである。
この色んな遺伝子が混ざりまくったキメラ犬は未だにご主人様と不審者の区別が付かない様子で
俺に噛み付いてくるのだから始末に負えない上にかわいげが無い。
いやはや家の駄犬と同じ種類とは思えないこの二匹のゴールデンレトリバーが
普段何を食っているのか聞こうと思ったが俺より良い物を食っていそうな気がして
自分の尊厳を守るためそこはあえて聞かなかった。
もしかしたらコイの餌にも負けているやもしれん。
もうお腹一杯だろうがやっとメインの本宅である。
言わずもがなただただ豪勢な純和風屋敷で時代劇の撮影が出来るんじゃないかとその時思ったくらいだったな。
玄関を開けるとデカい木の輪切りがででんと飾ってあって、樹齢何百年という木の剥製は
形の崩れたバームクーヘンのようでありこんなのを飾る金持ちの思考形態を俺は理解出来ず
またしようとも思わなかった。
まだまだ驚いた事は山のようにあるのだがこれ以上説明しているとウンザリすると共に
自分の給料明細を破り捨てたくなってしまうのでここら辺で勘弁していただきたい。
そしてその時の俺は一箱千円の温泉饅頭がより一層みすぼらしさを引き立て
泡となって消えてしまいたいと切に思うのであった。
幸か不幸かその時彼女のご両親は外出中で俺はほっと胸を撫で下ろした。
いや、別にエロい事出来るって喜んだわけじゃないよ?緊張するじゃない。
ま、部屋でチューぐらいはしたんだけどさ。
そんな巨大迷路のような屋敷に住んでいる妖精の事であるからどこの馬の骨か分からん奴が子を宿させる等
もっての外で、向こうの親に首がブン回るぐらい殴られる事を俺は覚悟していた。
二人は自分たちに子供が出来た事、結婚を許してほしいという事を彼女の両親に告げるため
二度目になるその迷路屋敷に足を向かわせていた。
「大丈夫よ、きっと」
お土産の少し奮発した高いケーキの箱を持って日比野家へ挨拶に行く俺にエリカは
あの頃と変わらない笑顔で笑いかけてきた。
付き合いは始めた頃こうやって彼女が横にいると想像もしていなかったな。
そして何度この笑顔に俺は救われて来たのだろう。
高校を卒業し外の世界にポンと投げ出され社会の現実に晒された時も
つまらない俺の意地でケンカになり一週間口を利かなかった時も
結局はその笑顔に救われて、そいつのお陰でこうやって二人並び歩いている。
俺はケーキを持った違う方の手で彼女の手をぐっと握った。
エリカもそれに答えるように握り返す。
もし、彼女の両親が結婚を許してくれないのであれば俺は彼女と駆け落ちしようと、そんな事まで考えていた。
エリカが全てだ。
その気持ちだけは出会った当時からなんら変わってはいなかった。
*
「いやいや、中々の好青年じゃーないか、ええ母さん?」
「ホント、エリカが選んだだけあるわぁ」
安っぽい昼ドラみたいな展開にどう対応すべきなのか答えを模索してみたものの
それは無駄な事だと断念し、南国土産の魔除け人形みたいな表情で
終始ニヤニヤしている不気味なオブジェとしてその場をしのいでいた。
エリカの親にマウントポジションを取られ乱打をお見舞いされると踏んでいた俺だったが、
そんな血みどろな展開とは程遠い何とも平穏な会合を四人は展開させている。
純和風様式の外装とはイメージが全然違う洋風の応接間に通された俺は
自分の背丈ほどもある振り子時計や鹿の首から上だけの剥製を映画以外で初めて見る機会を得ていた。
何だかふかふかしすぎて落ち着かない応接椅子に俺とエリカ
そしてエリカのご両親が向かい合って座り、英国王族御用達完全無欠の紅茶キング、ヴェノアティーが
目の前にあるテーブルでゆらゆらと高貴な湯気を立てている。
エリカの親父さんは白いポロシャツの上からラフなジャケットを羽織りモカブラウンのブーツカットデニムズボンを
カジュアルに着こなしていた。
白髪の混じった短髪が妙に若々しく見える。
「斉藤君は何か趣味とか好きなこととかあるのかね?」
親父さんは俺を覗き込むように先制攻撃をしかけて来た。
友好的なエリカのご両親にボロを出す訳にはいくまい。
俺は全神経を脳細胞に集中させベストな答えを瞬間的にはじき出していた。
「あ、えっと読書なんかを少々」
緊張しつつも的確に斬り返す俺。
漫画も読書に入るよな?本は本なんだし。
紙の束なんだから問題無いだろ。
「まぁ、どんなものをお読みになるんですか?」
クリーム色のコンパクトジャケットの下に白いカットソー、ハニーブラウンのランダムブリーツスカートを穿いた
いかにも上品そうな母親が突っ込んで聞いてくる。
「えっと、い、色々と。これといってジャンルにはこだわらないんですよ。あは。あははは」
我ながら良い斬り返しだ。
今日の俺には諸葛亮が降臨しているらしい、素晴らしい戦術であろう。
「斉藤君はエリカのどこが気に入ったのかな?この子は変な所で頑固だからなぁ」
「ちょっと、お父さん」
エリカは囲炉裏の上で焼かれた餅のようにプクッと小さな頬を膨らます。
「あっはっは、こりゃ失敬」
親父さんは目を細めて笑い母親もそれに釣られて笑った。
俺は終始ニヤニヤしていたのでその必要は無い。
全てが良い方向へ向かっている気がする。
「そうだ、イギリスに出張の際買っておいたクッキーがあったんだった。
いやね、これが物凄く美味いんだな。良かったら斉藤君も一緒にどうだい?それとも甘いのは苦手かな?」
「いえいえ、甘いものはむしろ好物ですよ」
それは本当だった。
イギリス出張か、今日は上流階級の片鱗に触れまくりだな。
「そうか、それは良かった。エリカ、台所に行ってそれを持ってきてくれんか?後紅茶も」
「はいはい」
エリカはそう言うと席を立ち部屋を出て行こうとする。
「じゃあ私も手伝おうかしら。さ、エリカ行きましょう」
と母親も立ち上がり一緒に部屋を後にした。
応接間に残されたのは俺とエリカの親父さんだけで、俺は先ほどとは打って変わって
緊張の糸がピンと張るのを嫌でも感じざるを得なかった。
「さて、斉藤君」
「は、はい」
急に親父さんの声のトーンが1オクターブ下がる。
娘はやらんと急な方向転換をされたらどうしようとビクついていると父親は話を続けた。
「私はエリカを本当に大事に育ててきた。
私や妻にとって彼女は掛け替えの無い存在といえるだろう。
優しくて気立てもいいし、とても頭の良い子だと我々は自負している」
さっきとはうって変わって真剣なまなざしで俺を見つめてきた。
背筋に緊張が走る。
「君は世界の本質を見極める事が出来るかね?」
それはデジャヴだった、特に唐突に聞いてくるあたりが。
世界か。
たしか学生の頃そんな感じのことをエリカにも聞かされた事があったよな。
告白の直後だったから今でもよく覚えている。
「世界って何かの比喩なんですか?」
俺はあの時エリカに聞けなかった事を親父さんに聞いた。
「いや、比喩でもなんでもないさ」
彼はそう言うと高貴な紅茶をすすった。
「文字通りの意味だよ。
いや、我々一団はスピチュアリティに重きを置いて活動している訳だが近年難解な
世界規模の問題が次から次へと噴出している。
過去人類は均一化の一途を辿っていた訳だが個の損失による安泰が必ずしも人類
ひいては世界の平和であるとは言い切れない。
けれど人間の共通深層心理はその道を選び我々は個を魂を一つの平均化された規格へと収束しつつあった。
それに抗おうとする者もいれば、その考えに賛同しない者がいるのもまた事実。
この矛盾が進化への不確定要素なのだろう。
だからこそ人は運命にあらがうように出来ているものだと私は考える。
そうやってその不確定因子が重なり合うからこそ進化というメカニズムが生まれ
今の私たちの世界が形成されていると言っても過言じゃない。
しかしその何かを変えるためのきっかけである人の不確定因子が無くなりつつあるのは確かだった。
今までに無いほどのスピードで変化する世界に順応する為
より大きな影響を与える因子を我々は欲していたのだろう。
心の・・・・・・ずっと、ずっと深い所で」
エリカの親父はぶっ壊れたラジオのように何だかよく分からない話を俺にしやがった。全然意味が分からない。サイン、コサイン、タンジェントの三つ子話の方がまだ理解出来る気がする。
「ネーブルオレンジを君は知っているかな?」
「は、はい知ってます」
「十九世紀初頭、ブラジルの農場にオレンジの突然変異体が現れた。
それまでのオレンジには種があった訳だがその突然変異体には種が無かったのさ。
人間は次々にそれを他の木に接ぎ木し、それはまたたく間に世界中に広がった」
「はぁ」
俺は間抜けな返事しか出来ずぽりぽりと頭をかいた。
何が言いたいのかさっぱりだった。
紅茶の代わりにオレンジジュースでも飲みたいのだろうか?
「それは我々にも当てはまることだ。人類は火を使い道具を作り言葉を話した。
加速度的に世界膨れ上がって行くのに我々には進化の限界が目の前に迫っている。
さっきも言ったが不確定因子を人類は欲したんだ。
それが人の限界を突破する鍵となると信じて、ね。」
親父さんはゆっくりと窓の外を眺めた。
何とも美しい庭園が目の前に広がり青すぎる空が目に刺さる。
「そして21年前我々人類の状況は一変した」
何故かエリカの親父はにやりと挑発的な目で空を見たまま笑う。
「ついに・・・・・・この世界均衡が破られてしまったんだ」
今日はここまで
ノシ
314 :
Mr.名無しさん:2007/07/04(水) 23:56:30
ゴクリ・・・
てか犬飼て・・・関係あるんだろうか・・・?
は!まさか前の小説を中断したのにも何か訳が?!
ええええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜???
ほ
318 :
Mr.名無しさん:2007/07/10(火) 06:44:30
age
*
結婚する際やはり彼女も俺の家に連れて行かなければならなるまい。
忌々しい日本のしきたりを呪いつつあんな武家屋敷みたいな家を見せ付けられた後で
物理限界ギリギリの境界線で建っているボロ家に彼女を連れて行くのには中々勇気のいることであった。
俺の生まれ育った我が家はまるでゴキブリホイホイのようで
辛うじて居間と呼べるその部屋で終始お化け屋敷の幽霊スタッフみたいな顔つきでいる俺と
ニコニコとアルプスの雪どけ水のような笑顔を振りまくエリカが鎮座していた。
ボロボロの座布団ぐらい気を利かせて変えておけよな。
水色のリボンジジャケットとレイヤードスカート、白のカットワークニットを着込んだエリカは
お出かけ仕様で髪も美容院に行ったのか少しウェーブがかかっていた、気合十分と言う出で立ちであったのだが
その上品なお嬢様っぷりは俺の家と全くマッチしておらず完全に浮いている状態である。
エリカがおかしいのではない。
ドラスティックにクレイジーなこの館がおかしいのだ。
家庭内でそれほど恋愛の話をしない人種である俺は案の定
マッチ箱のような部屋で家族の好奇の目に晒される事となっていた。
「いやぁーもぉーエリカちゃんみたいな女の子がウチの馬鹿と一緒になってくれるなんて
ホント何ていえばいいのかしら!
もうね、ミラクルよ、お父さん。ミラクル」
母親が妙に甲高い声でエリカを褒めまくるのに、エリカの家で起こった偏頭痛とは違ったを痛みをこめかみに覚える。
モルヒネくれ、一リットルほど。
「ん」
親父はヨレヨレのTシャツにGパンを穿いているという何ともやる気の無い格好で偉そうに頷いている。
親父の胸のところには英語でロゴが入っているのだが頭の良いエリカの事だきっと読めているに違いない。
おい、親父その胸に書いてある文字訳すと「世界中の女は俺のもの」って書いてあるんだぜ。
友人がアメリカ土産に買ってきたものでそれは俺のTシャツであり、さっきからひじきをボロボロこぼしてんじゃねーよ。
元々好き好んで着る事は無かったがオカズの染みがつくのには抵抗を覚える。
思春期真っ只中の弟はそんな心底具合の悪そうな俺を『笑うせーるすまん』みたいな顔で見つめていやがった。
俺をおちょくるのが好きな長男が居ないのがせめてもの救いだ。
サファリパークが凝縮したようなこの応接間兼居間でエリカは母親のおもちゃと化し
その横で俺は先日のエリカの父親の言葉の意味を考えていた。
心にあの言葉が魚の小骨のように喉に引っ掛かっている。
世界の本質?
世界の均衡が破られた?
エリカの親父さんとのすべての会話を覚えていた訳ではない。
けれど断片的な言葉なら思い出せる。
しかしそのピースの一つ一つが意味不明な単語ばかりで凡人たる俺が理解できる筈も無く
無駄に脳のエネルギーを消費するだけに留まった。
俺が頭から煙を出している横でウチの母親が揚げすぎて黒みがかったから揚げを山盛りにし
エリカに渡している様を目撃、これ以上我が家の恥部を露呈させまいと阻止することで
そのエリカの親父さんが言った事を心の奥底に放り投げたのだった。
*
結婚は人生の墓場だ、と言う奴がいるが果たしてそうなのだろうか?
自分の肩にのしかかる責任は結婚することで増大し、色んなしがらみに絡めとられてしまうのが嫌だから
人は結婚の事をそう悪く言ってしまうのかも知れない。
じゃあお前はどうなんだよと聞かれたら俺は「それどころじゃねえ!」と
頑固な大工頭領のような顔つきで怒鳴るところだ。
エリカの腹の中ではかわいいベイビーがすくすくと成長している訳だし
俺はまだまだ会社の中でペーペーであったのだから給料もあまり高くない。
エリカの実家に頼ると言う手もあったが俺はそれが嫌だった。
単にこれは意地なのだがこの子供は自分たちの力で育てたかったのだ。
金に目がくらむ、という言葉があるがやはり権力や富と言うものは人を堕落させてしまう。
今までそういう奴らを何人か見てきたし、自分がそれに屈してしまうのが堪らなく嫌だったのだ。
変な所で強情なのは自分でも分かっている。
そのせいでエリカと何回か喧嘩したのだから。
誰にでもない自分に負けると言うことが何より悔しいと考えるようになるまで俺も成長していたって事にしておこう。
だから両親には出来るだけ甘えないようにしていこうと言うのが俺の考えであり
そういう家庭の方向性を独断で決めてしまう所は亭主関白だったのかもしれない。
最小限の援助と最大限の愛情に育まれ生れた待望の第一子は女の子であった。
俺はもう阪神が優勝した関西人の如きはしゃぎようで、知人に電話をかけまくってはその喜びを一方的に押付けていた。
道頓堀が近所にあったら奇声を発しながら確実に飛び込んだだろうね、良かったよ道頓堀が近所に無くて。
電話の相手にしてみれば鬱陶しいことこの上なかったのであろうが
そのときの俺は完全に脳内麻薬の調節レバーが壊れており一人しゃべり続ける壊れかけのレイディオと化していた。
エリカが出産した総合病院はエリカの親父さんの知り合いが院長を務める所で
金持ちの知り合いは金持ちなのだと言う湾曲した情報を頭の片隅に置きつつ俺はいそいそと病院へその足を進めた。
病室のドアを開けるとベットで文庫本を読むエリカとすやすやと眠る赤ん坊がそこにいた。
幸せで鳥肌が立ったのは初めてエロ本を見たとき以来だね。
感動が薄れる例えをしてすまん。
だがそれほどに衝撃的だったのさ、生命の神秘ってやつがね。
勿論赤ちゃんの事を言ってるんだぜ?
「よ」
俺が小さく手を振ると彼女は文庫本をひざの上に置く。
天女の如きその表情は見ているだけでふわふわと幸せな気分に浸ることが出来た。
「どう?痛む」
「うーん、もうだいぶラクになってきたかも」
病室で眠っている我が子を抱きながらエリカとたわいも無い話をする事がどんなに幸せでどんなに素晴らしい事か
俺はそれをかみ締めていた。
誰もが通る道だと分かっていても、俺にとってそれが幸せであり唯一無二の存在であったのだった。
いつかエリカが言っていた世界とやらを敵に回してでも俺は彼女を守ってやりたいと柄にも無く熱く思う。
それから4年後エリカは二人目の子供を出産。
何の変哲も無い家庭で、他人から見たらそれなりの、俺にとっては大きな幸せを掴み取ったかに思えた。
そういう時間の繰り返しが全人類永遠に続けば戦争だとかテロだとかが起こらないのにと言うのは
やはり無責任すぎる身勝手なことなのであろうか?
地球の裏側で名も知らぬ兵士が銃を握り骸がそこいらに転がる戦場を歩いていることも
飢えに苦しむ発展途上国の少年が物を盗んで店主に殴りつけられていることも
俺達に関係がないと言えるのだろうか?
いつの頃だっただろう、エリカは言った。
生きとし生けるものはそれぞれ生まれてきた意味がある。
例えそれが生れてきてすぐに死んでしまったのだとしても、意味があるのだ・・・・・・と
。
じゃあ俺にも生まれてきた意味ってあるのかな、と思春期の高校生がいかにも考えそうな事を
はずかしいのを我慢して聞いておけば良かったと思う今日。
それは、もう出来ずにいる。
何故ならエリカはもうこの世にいないからだ。
*
付き合って4年結婚して8年。上の娘が8歳、下の娘が4歳の時エリカは死んだ。
不意に現れた死の影は緩やかな坂道を下ってゆくように、ゆっくりとしかし確実に彼女の体を蝕んでいった。
病名不明。原因すらも分からないと医師に説明された俺は愕然とした。
急なことであったし最初は本当にこれが夢だと思った。
風邪をこじらせただけと思っていたのにそんなのアリかよ、ってな感じで神を呪ったね。
こんな悲しくてドラマティックな展開神様に俺は望んじゃいなかったのに、どうしてだよと
俺は空につばを吐いた。
エリカ最後の一年は病院のベットの上で過ごす事となる。
仕事に追われ育児に追われ時間に追われ、逃げるように季節はその表情を変えていく。
時間があれば病院に顔を出したし幼い二人の娘も連れて行った。
白い病室で日に日にやつれて行くエリカを見るのは耐えがたい苦痛だった。
何故もっとそばに居てやれなかったのだと後悔してみたところでそれは後の祭りであったし、
やつれて行く彼女を見るのが憂鬱であった。
告白したのが昨日のように思い返される。
理屈抜きで嫌だった。
彼女がこの世から居なくなる。
単純に怖かったのだ
一人ぼっちになることが。
耐えられ無かったのだ
エリカを失っちまう絶望に。
エリカがこの世界にもういないと言うのにその直後の俺は彼女の実家で行われた葬式や親戚への挨拶回りに忙しく
それどころではないと言うのが正直な気持ちだった。
葬式の日、自分の薄情さと人間都合のいいように出来ているんだなという妙に落ち着いた思考を巡らせつつ
知り合いや親戚の似たり寄ったりな慰めの言葉を聞き流していた。
その日は俺がエリカに告白した日和にとてもよく似ていた。
いい天気だった。
娘は二人とも親戚の子らと一緒にエリカの実家にある広大な庭で遊んでおり
俺は黒すぎる喪服に身を包み、長く豪勢な木の縁側に腰掛けて走り回るエリカの残した宝物の姿を
イカの腐ったような目でぼんやりと眺めていた。
彼女らには死という概念をちゃんと理解させようとするにはいささか早すぎる。
きっと彼女もいつかエリカの死を乗り越えてくれるさ。
そんな投げやりな考えを俺がめぐらせていると
「エリカは役目をちゃんと果たしたようだな」
と後ろで声がした。
振り返るとエリカの親父さんが俺と同じように黒いスーツに身を包んで親戚の子らを眺めていた。
「役目、ですか」
「そうだ」
エリカの親父さんの声が妙にしわ枯れた声に聞こえたのは気のせいではなかっただろう。
役目って何だ?
雪奈やカスミを生んだ事か?
まだまだ彼女は生きてやらなきゃならない事がもっと沢山あったはずだ。
何より俺自身彼女に何もしてやれなかった。
「エリカは良くやった。短い人生を精一杯生きた。自慢の……娘だよ」
親父さんはそう言うと目頭を押さえた。
俺は流れる白子みたいな雲と、はしゃぎ回る子供たちに視線を戻した。
「俺は、エリカに何かしてやれたでしょうか」
子供たちが大人たちの陰鬱な雰囲気と反比例して無邪気に笑う。
「この先俺はどうすれば?」
先の事なんて考えられない。
いつ襲ってくるか分からない絶望の波に呑まれないように身を縮ませる事ぐらいしか俺には考えられん。
エリカの父親がゆっくりその場を離れるのを俺は感じ取っていた。
そして最後にボソッと呟く。。
「慰めるわけじゃないが、エリカにとって君は無くてはならない存在だったさ」
しかし俺にとってはそれも下手な慰めでしか無かったのだった。
悲しみに飲み込まれたのはそれから2日後の事で俺は世界中の全てを憎んだ。
そしてそのやり場の無い憎悪も悲しみも時間と共に風化していき俺は
また仕事と育児の波に押し流されていく。
人は悲しみを忘れられるから前へ進める、果たしてそれは正しい事なのだろうか?
俺は未だに分からないでいる。
その問いに答えてくれそうな俺の初恋の人は
もうこの世には存在しないのだから。
今日はここまで
ノシ
スマン、この話は他の話と完全に独立していると考えておくれ(;ω; )
ハゲしく乙
え〜お久しぶりでございます。
ROです・・・
実は僕も最近PCが逝ってしまい、
携帯からROM専となっていました。
やっと復活なのですが、酉が見つからないし、
書き溜めといたのも全部パーいなってしまったので
また、ちまちまZA先生の影でコソコソ書かせていただきたいと思います。
ZA先生のついでに読んでいただけたらありがたいです。
では久しぶりにいきます。
「キャ〜かわぃ〜。この子、橘君の妹さん?」
葵が獲物を見つけた獣のように飛び掛り、
万力のごとくあの小さな体を締め付ける。
「いたたたっ、嬢ちゃん何や?痛いねん。ウチは姉や」
必死にこの人間万力化した葵から逃れようとするも
あの小さな体にそんな力を秘めているわけでもなく・・・
あ、飛んだ・・・
「え、こんなにちっちゃいのにぃ〜かっわぃぃ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
もはや葵の目は狂喜と化しマンガでしかありえないような
両手を掴んでジャイアントスイングを目の当たりにする。
俺は儚き命に合唱し、幸運を祈り、一人思い出にふけていた。
葵の癖?だろうか。
小動物、小さくてかわいいものを見ると人格が変わるかのごとく
狂喜し、冷静さを失いどこまでも追い続ける。
かわいい子猫なんぞ見つければどこへ逃げようと捕まえるまでついて行くし、
家中猫だらけになっていたこともあったっけな・・・
大変だったのは初めて沙奈にあった時だ。
そう今の末利ちゃんのような状態。
沙奈は今じゃ考えられないが内気で静かな少女だったから
随分と葵を恐れたもんだ。
だが、一緒にいるうちに葵も沙奈も随分と仲良くなって
今は丸く収まってるってわけなんだが・・・
だが・・・
俺はため息をつかずにはいられない。
葵は成長したとはいえあれ直るのに・・・
1年かかったしなぁ・・・
と俺が再確認を終えているころには末利ちゃんは力尽きていた。
あの小さな体がぐったりとし、首が傾き、目はうつろ・・・
ご愁傷様です。
当の本人は悪びれる様子もなく今だ一人で狂喜乱舞中。
周りはというとその壮絶な光景に唖然として、誰一人とめることができなかった。
あれを止めたら自分はどうなるんだろ?って思ってるに違いない。
だが死を覚悟しても誰かが行かなくては末利ちゃんを助け出すことはできないからな。
仕方ない。
俺は一つ大きく深呼吸して葵の肩に手をかける。
・・・
いや、本当にまさかだと思っていたさ。
マンガでしかありえないよな。こういうのって・・・
俺と葵の唇はそっと触れていた。
ばっち〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん☆
俺の左頬には真っ赤な手のひらマークが点滅していた。
「あいうあえあぃああぁぁ???」
葵は違う意味で狂気乱舞。
俺はぶっ倒れたまま青い空を見ながら状況を整理する。
俺は止めにかかるために手をかけた、振り向いた葵が勢い余って・・・だ。
勢い余って?何だ?え?え?え?
「えぇぇえぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!???」
沸き起こる周囲の歓声。
「ち、っちが・・違う、違うちが〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ぅ」
必死に否定を続けるが相手にされず・・・
「いや〜やっぱ一つ屋根の下じゃ、しょ〜がないよねぇ〜」
飛奈め余計な一言を・・・
「で、でもキ、キスで止めるなんてそうとしか・・・」
茜まで顔を真っ赤にしやがって・・・
俺も一緒に狂気乱舞してりゃよかった・・・
そこで今だ目がクルクルマークの葵が乗り込んでくる。
「あ、あ、あ、あ、あ、ああああああにお」
舌が回ってないぞ、マジ大丈夫かよ・・・
「ほ、ほ、ほ、んつおうに・・・」
周囲はにっこり笑顔でうなずいて反応を待っている、約一名除いて、いや二名か
「・・・・」
ドサッ
あ、倒れた・・・
キーンコーンカーンコーン
そこに残るのは昼休みの終わりを告げるチャイムの甲高い音色だけだった。
今日はこんなトコまでです。
ではノシ
336 :
314:2007/07/13(金) 23:21:49
337 :
Mr.名無しさん:2007/07/13(金) 23:23:12
あ、あと先生方乙!
338 :
Mr.名無しさん:2007/07/15(日) 14:41:46
age
>>302 マンドクセじゃなくて、時代はボンパなんだ。
それが芥川賞なのだから。。。
340 :
Mr.名無しさん:2007/07/21(土) 14:23:49
age
341 :
Mr.名無しさん:2007/07/23(月) 19:01:43
なんたる過疎
第三章「金魚の黙示録」
街と空にドラム缶たっぷりに入った墨汁をぶちまけたようなそんな闇の直中な仕事の帰り道
街灯の頼りない灯りでさえもホッとしてしまう俺はきっと前世が羽虫であったに違いあるまい。
片手には会社の書類が詰まった鞄。
もう一方の手にはトマトストアーで買った食品の数々。
俺はよたよたとフンボルトペンギンのように愛しの我が家に足を進ませる。
今日の夕食の当番は長女ではなく俺であり、安物腕時計の針が短針が9長針が12を指しているのを確認し
俺はため息をつかずにいられなかった。
こんな日に限って携帯電話はバッテリー切れを起こし沈黙
それと反比例して腹をすかせた次女が不平不満を声高らかに提示するのは目に見えている。
12歳になる次女は昼はソーラーパワー夜は蓄電池に溜め込んだポテンシャルエネルギーを原動力とし、
おしとやかとは程遠い振る舞いで長女と俺を困らせていた。
属性的に俺にもエリカにも似ていない次女はもしかしたら違う男の娘なのではと疑心暗鬼になるも
心なしか目元が俺に似ているのでその見解は棄却。
エリカはそりゃもうベッピンでアメノウズメと見まごうほどの美貌を持ち合わせていたが、
彼女に限ってほかの男をくわえ込むなぞ絶対無いと断言できるし考えたくも無いね。
そもそもこんな時間に帰る羽目となったのは頭のネジが緩んだスケ番刑事犬飼京香のせいであり、
挙句変な土産まで俺は持たされる事となったのだった。
おい、誰かプラスドライバー持って行ってやれよ。
その変なお土産は俺の会社鞄を今も圧迫している訳だがいやはや彼女は何がしたかったのか
皆目検討つかず彼女の奇行の数々は俺の中で諦観の域に達していた。
ゆとり教育の弊害か、はたまた宇宙人の怪電波を受信しちまったかどちらにしても
早急に病院に行ってCTスキャンしてもらう事が彼女のためにも、
いや社会のためにもこの事柄は避けては通れない道なのであろう。
ゆるやかな坂道を上ってゆくとそこは既に住宅区であり俺はえっちらおっちらその坂道を登ってゆく。
なだらかな傾斜から眺める夜空は街の汚れた空気のせいで星はおろか月までも影って見えた。
駅から早足で歩くこと15分、我が家は山を浸食する癌細胞の如き広がりを見せる新興住宅街にその身を置いている。
俺と2人の娘が住む家はエレベーターとか防犯機構が装備されている訳でも無ければ、
庭から戦闘機が発進するような格納式滑走路も装備されてないし
玩具メーカーが商品化しそうなロボットに変形するというマッドな設定なぞ微塵もありゃしない。
2階建てのごくごく普通の2LDK、凡常たる我々にとってその一戸建てを所有する事が
サリーマンの夢であり希望な訳だ。
それを何の苦労も無く手に入れちまった俺は相当な幸せ者なのだろう。
その物件はエリカの親父さんが手に余らせていた物件であると聞いていたのだが
一軒家を手に余らすなど金持ちの金銭感覚レベルの差は一生埋まりそうにない。
その大富豪が手に余らせた物件に足を向かわせる間、ファミリーレストランで起こったその後のことを少し説明しよう。
あの犬飼という少女を忘却したいのは山々だがインパクトが強すぎて当分忘れることは出来なさそうだ。
日本もついにここまでおかしくなっちまったのかね。
我が母国の終末は案外近いのかも知れん。
*
今から30分前。
ファミレスのテーブルで何やらもめている中年男性と女子高生というこの不可解なコンビは
周囲の好奇の目に晒されつつ論議を再開していた。
犬飼は終始ご機嫌が四五度に傾いており東大寺南大門の両脇に立つ「あ」と「ん」の口をしている
木彫りの仲良し巨像みたいな顔をしている為、俺はさっきから気分を害している次第だ。
「こんな時間に君は何をしてるんだ?親御さんは心配しないのか?」
「私の任務はアンタの護衛と開錠レベルの調査だ」
だめだ・・・・・・こいつとは全然かみ合わん。
開錠レベルだ?俺は鍵屋でも泥棒でも無い。
「エリカがどうとか言ってたな。
逆に聞くがお前にとってエリカは何だったんだよ」
「師だ」
「し?」
「そうだ」
ぶっきらぼうに答える彼女の瞳はまっすぐで一度たりとも俺から視線を外そうとはせず何だか変に落ち着かない。
「師って先生って事か?」
「そうだ」
「何の先生なんだよエリカは」
「私の生き方そのもののだ」
打った鉄のような熱さを眼球に宿す彼女には底知れぬ何かがあった。
エリカが死んだのは八年前だ。
もし犬飼が仮に娘と同じ一六歳だとするとこいつが八歳の時にエリカは死んだこととなる。
八歳やそこらで生き方という哲学的思想を持つなんて有り得ない事であるし、見ず知らずのコイツに
それこそ丸々人生かけて探すようなお題目をエリカがレクチャーする理由が見あたらないじゃないか。
「えらく抽象的なんだよ表現が。俺にはわからん」
そう言って俺は氷の溶けきったドリンクバーのアイスレモンティーに口を付けた。
し
しかしだ、エリカが普通じゃないことは何となく分かっていたのだ、知らなかった訳じゃない。
いくら俺がアホだったとしてもずっと十二年連れ添っていればそれぐらいの事は分かる。
エリカの不可解な言葉も彼女の親父さんが言った世界の構築論も全く信じていなかったか、と言われれば嘘になる。
どこか心の奥底で疼くものがあったのさ。
しかし、それは俺の一般的常識論によって押さえつけられていた。
だってそうだろ?
人間ってのは多数決に弱い生き物であり、例えば新商品なんかの企画会議であからさまに売れないであろうと
自分が思っていても、大多数のメンバーがそれに賞賛の声を浴びせかければその考えも自ずと変わってくる。
他のサラリーマンがスーツを着るから俺もそれを着るし、同じ考えの奴らが99%いるから
それが社会のルールになっちまってる。
一人だけアロハで仕事をするのも妙な話だ。
ハワイではアロハが仕事着だって言うのにな。
俺の中の常識論ってのは三六年生きた中でやっと創り上げた数少ない基準の一つなのだ。
安心しちまうのさ。
他の奴らと同じように満員電車に揺られて大量生産された缶コーヒーを飲む事が。
それに世界の真意という概念的な話を信じられるほど俺の脳みそは子供じゃない。
つまらない人生だって?
そんなもんだろ。
今の世の中、人の生きる道なんてさ。
ブラウン管からのぞくその世界と肉眼で確認できるこの街が俺にとっての世界だったんだからな。
それが自分にとってのコモンセンスであり普遍的な生活を送る上での基礎となってる。
だから、この見ず知らずの不良少女の言う言葉をホイホイと信じてしまえば今まで自分が気づかなかった
何かに気づいてしまう気がして無意識のうちにそれを否定していたのかも知れない。
言ってることは電波だしやってることは犯罪スレスレと来てる。けど何かが引っかかるのだ。
俺の世界が本当にまともなのかと言う懐疑をね。
「もう既に事態は進行している」
考えを巡らせる俺に追い打ちをかけてくる彼女は意味不明な会話を終わらせる気はないらしい。
「ここから先、評議会の決定に従い、お前にある程度の情報開示と護衛を付けさせる」
「あのよ、評議会って」
「護衛は常時スピンに任せる」
「話聞けよ、おい」
ある意味マイペースな彼女はごそごそと自分の通学鞄からクリアファイルを机の上に放り出し、
その中から1枚の靭皮紙を取り出した。
やや薄茶色したその紙は所々欠けており、どれぐらい前のものなのか想像がつかなかった。
そこにはミミズが這ったような文字がびっしりと書き込まれており何が書かれているのか全く分からない。
語学の勉強会でもするつもりなのだろうか。
「なんだよ、これ」
「約定書だ」
「約定書?」
「そうだ、アンタにはスピンと契約を交わしてもらう」
おいおい契約って。
コイツ新手の詐欺師か、馬鹿高い壺や魔よけの指輪なんぞに興味は無い。
俺は金の無駄遣いが大嫌いなんだ。
もしそんな訳の分からんものを買った日にゃ、
我が家の大蔵大臣、長女斉藤雪奈に何を言われるか分かったものでは無い。
「その手には乗らんぞ」
「何のことだ」
ぎろりと獲物を狙う狼みたいな目で俺を睨んでも俺のがま口は決しては開かん。
「訳の分からん物を買うほど我が家は裕福でもないしお人好しでも無い。
お前詐欺師かなんかなのか?」
「何かを買わせようと言うのではない、心配するな」
「馬鹿言え、こんな訳の分からん契約書見せられて不安にならん奴は
骨董屋のオッサンかオラウータンぐらいのもんだろ」
俺が悪態をつくのを華麗に聞き流した彼女は
「直に分かる」
と言い放つとそのボロボロの紙切れを俺の目の前に差し出した。
「な、何だよ」
「約定書にサインするんだ」
「は?」
「このままでは確実にお前は死ぬんだぞ?」
「おいおい、脅しのつもりか?俺が死ぬだって?」
「事実を述べているだけだ」
「仮にだ、百歩譲って俺がこの約定書にサインしたとして俺はそのスピンとかいう奴に何を提供すんだよ。
腎臓か?家の利権書か?」
「マナだ」
「え、えあ?マナ?なんだよそれ」
もう勘弁してくれ、だから結局何がしたいんだコイツは。
「お前の貯蓄からあふれ出したマナがスピンへの駄賃だ。
これはお前が垂れ流す純マナの処理とトラブルから守る盾の役割を担っている。
パンデモニウムの中でもA級機密事項だがこの際そんな事を気にしていられるほど
我々が置かれている状況は甘くない」
「あのなぁ……」
俗に言う中二病というやつか?
口に出してるやつはじめて見たぜ。
「エリカの残しておいてくれた九十九のマナ拘束陣と護封印が八年足らずで効力の弱体化を招いている、これは異常な事だ。
人間が本来持つマナ統御の数値がでたらめだなんだよ。
エリカがそれを知っていたのかそうでなかったのか定かではないが、
お前のその莫大なマナ水準のお陰で評議会は今だもって恐慌状態だ。
この日本に、いや世界にどんな影響を及ぼすのか想像もつかないとね。
この変革を期に次元外交も活発化してきている。
エリカが生きていた時よりもこの世界は大きく変動しているんだ」
「話を聞け」
「これは国家レベル、いや地球規模の問題だ。
人類が力を持ちすぎるのを恐れ暗躍している組織は年々増加の傾向にある。
不安定で強大な力を利用せんとする輩によってそれこそ世界の終わりを迎えることを
この星に住んでいる奴は誰も望んでいない。
その為にも現段階で初期対処をお前に取らざるを得ない状況に陥ってしまったのだ」
「だから話を聞けって!」
俺は一方的に訳の分からん演説を続ける犬飼に異存の意を伝えようと強くテーブルに手を着いた。
テーブルがガタンと音を鳴らす。
しかしまぁ何だな、どうやらこれが不味かったらしい。
俺の手のひらはその約定書なるもの上に置いてあったのだが何かがおかしい。
何だか手の平をホットプレートの上に広げているような間隔を覚える、すごい違和感だ。
いや待て、熱いぞおい。
「うわっ」
俺は驚いてその手を退けるとその約定書なるボロボロの紙に俺の黒い手形が
言い訳できるレベルをはるかに通り越してそりゃもうくっきりと残っていた。
「な、なんだ」
俺の手にインクなるものは全くついておらずその約定書は次の瞬間、
端からちりちり黒ずんでいき青く小さい炎を紙面に這わせつつ見る見るうちに小さくなって、
最後は黒いカスも残さずパッと消えた。
手品・・・・・・だと思う。
だってそう考えるしかないだろ?
俺のCPUではここいらの推理までが限界だ。
これが手品だとしたら俺はまんまと犬飼のショーにハマっちまってた事になる。
開いた口は塞がらなかったし『うぉ』等と驚きの声を上げちまったんだから彼女のサプライズパーティーは成功だ。
とんだピエロを俺は演じてしまったようだな。
「なんだよ、ドッキリだよなコレ?」
俺は変な汗が体中の毛穴から出てくるのを感じつつCCDカメラがどこかに隠されているのではと
キョロキョロと辺りを見回した。
しかし非常に残念な事にその小さな希望は見当たらず、おかしな世界の1歩手前まで俺はコマを進めていた。
「これがいたずら悪戯ならばどれだけ良い事か」
犬飼はフゥとため息をつくとまた鞄からごそごそと何かを取り出そうとしていた。
4次元ポケットから今度は何を出そうってんだ。
卓上マジックに付き合うほど俺はアフターファイブを暇してる訳じゃないんだぜ?
「お前の契約者、スピン=マクラウドだ」
彼女はファミレスの所々べたつくテーブルの上にそれを静かに置いた。
「おい」
俺は彼女が鞄から取り出したその物体を見てほとほと呆れつつも、
やはり悪戯なのだろうという確信にも似た心の平安を得ていた。
どう見てもこれはおかしい。
おかしすぎる。
「こいつがスピンって訳かい?」
「そうだ」
尚も目を逸らさず俺を見つめる犬飼。
一方俺は先ほどとはうってかわって安心しきっていた。
やはり今のは手品だったのだ。
「なぁ、学校が辛いのは分かるけどさ現実逃避をしてみたところでなんら状況は変わらないんだぜ?
何なら俺が相談に乗ってやっからさ」
「スピン=マクラウドに以後任務の継続を申請する」
「いや、話聞けよ」
彼女の三半規管は俺の言葉を素通りするシステムを採用しているらしい。
俺はテーブルに目を落とす。
テーブルの真ん中にはやや大きめのジャムが入っているようなビンが置かれていた。
「ボケならまだ笑えるが、これがマジなら悪い事は言わない。
病院にいこう、恥ずかしい事じゃないさ、な?」
そんな俺を無視し彼女はその小さなビンに向かって、いや、中の生物に向かって話しかけた。
「スピン、後はお前に任す。
私は学校の編入手続きの事でまだやらなければならない事がある。
後は手はず通り頼んだぞ」
そう言うと彼女は立ち上がりさよならも言わずに店を出て行った。
ビンと俺を残したまま彼女は木刀の入った竹刀袋と鞄を持って霞のように消えてしまったのだ。
呆気にとられていた俺はテーブルに残されたスピン=マクラウドに目をやる。
彼は何も考えていなさそうな顔で悠々と泳いでいた。
コイツみたいに悩みなんか無縁の生活をしてみたいものだ。
「はぁ・・・・・・帰るか、スピン」
俺がそうため息混じりに話しかけてもビンの中の生物は何食わぬ顔で泳ぎ続けていた。
ま、しょうがねーよ。
硬骨魚目のコイツに話しかけたところで何もアクションが無いのは分かりきっていた事さ。
ビンの中には金魚が1匹
泳いでるだけだったんだからな。
今日はここまで
ノシ
352 :
Mr.名無しさん:2007/07/27(金) 06:20:01
age
>>352 糞スレあげんな( ゚Д゚)ヴォケ!!
この小説スレどこにでもあるな
問題はどこに書くかだが
ここに書け
356 :
Mr.名無しさん:2007/07/31(火) 23:02:51
つかこのスレはZA先生が書いてるから持ってるわけで
ま、俺はROMに徹する
*
「ただいまー」
木製の扉を開けると我が家特有の匂いが家に帰ってきたんだと言う事を俺に実感させてくれる。
やっぱ我が家っていいもんだ。
今日1日本当に疲れたからな。
俺は取っ手の部分がユルユルになったビニール袋と鞄を置き、靴を脱ぎながら安堵のため息をついていた。
ふと顔を上げると我が娘、長女雪奈が腕を組んで廊下に立ち口をへの字に結んでいる。
犬飼と同じ制服を身にまとい髪はボブをベースにしたショートカットで少し跳ねた毛先が特徴的だ。
雪奈の方が次女のカスミよりも母親似で次女は死んだ俺のばーさんに似ていると俺の母親が言っていたっけな。
我が子ながら中々の美人だと思うのは単なる親バカなのであろうか?
「おとーさん、今日は夕食当番でしょ!」
おたまを持ったまま仁王像のように動かない雪奈は帰りが遅くなると連絡を入れなかった事に腹を立てているようだった。
「んー、急な残業が入っちまったんだ」
俺は嘘を言った。
「じゃーなんで電話入れてくれなかったのよ、私もカスミも待ってたんだよ、もう!」
「あ、すまんすまん。携帯電話の充電が切れてしまってな」
コレは本当だ。
「今日は私が作っといたから明日はお父さんね、いい?」
「異存ございません、はい」
「もう、カスミはごねるし材料はないし大変だったんだからね」
雪奈はプリプリしながら台所へ消えていった。俺もその後にノソノソとついていき食材を冷蔵庫にしまってゆく。
「あ、今日スーパーでレタス安く無かったっけ?」
「買っといた」
そう言いながら爆弾価格であった高原野菜である黄緑色の弾丸を野菜室に入れてやる。
「いい仕事してるね」
高一になったばかりだと言うのにスーパーの安い食材情報を頭に叩き込んでいる我が家の炊事隊長が不憫でならない。少し大きめのエプロンをひらひらさせながら雪奈は手際よく料理を皿に盛って行く。
「今日お父さん、残業無かったら何作ろうとしてたの?」
片手鍋を火に掛けながら雪奈は茶碗にご飯を盛る。機嫌はレタスを買ってきたお陰で直ったようだ。
「カレーだな」
「ええええ、またカレーにしようとしてたの?」
「な、なんだよ」
俺の完璧な献立を前に、さながら英語の抜き打ちテストの開始を宣告された顔をする雪奈はその整った眉を寄せた。
「この前もカレーだったじゃない」
「この前はシーフードカレー、今日はチキンカレー」
「いっその事ターバンでもまいたら?」
雪奈はそう冗談を言いながらテーブルに肉じゃがとひじきの煮物と味噌汁とほうれん草のお浸しを並べた。
これらは全て雪奈の手作りで料理は見た目を裏切らない美味さだと食う前から断言できる。
いや、俺だって料理の腕は負けてはいないがな。
「お、肉じゃがか。いいねー」
「ジャガイモ残ってたからさ」
すでに彼女は食器を洗い出しており、テキパキした仕事っぷりを小さな背中ごしに見守った。
雪奈の家事スキル無しに今の斉藤家は成り立たない。
「今週の日曜日お友達連れてきていい?」
エプロンで手を拭きながらつい先日始業式を終えたばかりの雪奈は俺にそう言って来た。
「男じゃなけりゃつれて来ていいぞ」
そう言いながら味噌汁をすする。
お、ダシ変えたね。
「あははは、大丈夫だよ。始業式の後すぐ仲良くなった子がいるんだ」
本人はそれに気づいていないのかも知れんが雪奈は中々の器量良しだ。
すぐに友達が出来るのには頷ける。
そのせいで思春期真っ盛りの悪い虫がつかなければ良いんだがな。
「どうしたの?ダシかえたんだけどやっぱ駄目だった?」
雪奈の行く末ついてラグランジュ点を算出する科学者のような顔で考察している俺に本人が心配そうに問いかけてきた。
「味噌汁は美味いよ。ただヒジキがちょっとベチョベチョしてるかもな」
雪奈は料理に関して厳しい、だから俺はあえて本当の事を言う。
そうした方が彼女が喜ぶことを知っているからだ。
「あちゃ、水入れすぎちゃたかなぁ」
そう言いながら雪奈は台所から廊下へ顔だけを覗かせた。
「カスミー、アンタお風呂ちゃんと止めたのー?」
風呂場からはさっきからドバドバと水の流れる音がしていた。
その後、ドカドカドカという音が2階から響きその物音は1階に降下、風呂場でギャーという叫び声を発した。
俺は何食わぬ顔でほうれん草のお浸しに箸を進める。
「もう、カスミもお父さんも頼りないんだから!」
今日は長女雪奈にとって厄日だったようだ。
心配するな娘よ、お前の父親も厄日だったさ。
「カスミー先お風呂入っちゃいなさい」
大声で風呂場の方に声をかける雪奈。
「りょーかーい、おっふろ!おっふろ!」
さらに元気のいい返答が脱衣所から帰ってくる。
デタラメな歌を歌いながら次女は今日も直列繋ぎした豆電球のようにエネルギッシュであった。
少しぐらいそのバイタリティーを分けてほしいもんだね。
「あ、そうだ。雪奈、金魚鉢どこにしまったっけかな?」
食器を水洗いしている雪奈の背中に俺は声をかけた。
犬飼京香の被害者は俺だけじゃない。
あのスピン……何だっけかな、マクドナルドとかそういう名前の金魚も
言わば俺と同じ被害者なのであり彼、もしくは彼女に罪は無いのだ。
あんな狭いビンの中に閉じ込められているよりは幾分か広い金魚鉢の中のほうが
夜行列車のベットと温泉宿の一室ぐらいの差があるってもんだろ。
「金魚鉢?」
雪奈は目を丸くして聞き返した。
「そう、金魚鉢」
ジャガイモを口に放り込みうなずく俺。
「えーっとどこにしまったかなぁ、捨ててなきゃいいんだけど」
雪奈はエプロンで手を拭きつつ首を斜めに傾けながら部屋を出て行った。
俺は残った飯を味噌汁で流し込み、最後に雪奈がいつの間にか入れておいてくれた宇治の緑茶を
ゆっくりと味わった。
京都のお茶は上品なお味ですこと。
分かりもしない茶の味に浸っているとトレジャーハンターが例のブツを探し出してくれた。
「あったよ、これでしょ」
雪奈はそう言いながら台所に舞い戻るとテーブルの上にそのガラス鉢を置いた。
ずっと使っていなかったので表面にはほこりがうっすらと霜のようにコーティングされてある。
俺はその金魚鉢と食べ終わった夕食の食器を持って台所へ向かい蛇口をひねった。
勢いよく水が飛び出しすぐさま水流を調節する。
「なんか買ってきたの?」
雪奈は俺の座っていた椅子に腰掛けお茶を飲みながら聞いて来た。
「貰いもんだ」
「なになに?またフナでも飼うの?」
フナか……一度、次女が近所の子供らと一緒に用水路で得体の知れない魚を取ってきた事がある。
元々飼っていた金魚と一緒に生活させてみようと一緒の鉢に入れたところ彼は縄張り意識が強いのか
一夜にして3匹の金魚を全滅させた。
野生味あふれるそのハンターは縁日で取ってきた赤き三銃士よりもカースト制で言うところの上位に位置していたらしく、
キングたる称号をガラスの闘技場でまざまざと俺ら家族に証明して見せた。
挙句彼は有り余る情熱を金魚鉢からの無謀な脱出にその方向性を見出してしまったようで、
水面をジャンプしたはいいものの翌朝一夜干しとなった姿で床に転がっているのを長女に発見されるという
痛ましくも苦い過去があるのだ。
「金魚だよ、金魚」
そんな過去の惨劇を思い出しつつそう答えてやる。
すっかりピカピカになった金魚鉢をタオルで拭き水道水を入れてやった。
「お父さん、水道水はやっぱまずいんじゃない?」
「大丈夫大丈夫、毒になるようなモン入ってないさ」
俺はそう言うと使ってない鍋敷きの上にリッター2円の水道水がなみなみと入った金魚鉢を鎮座させた。
「さ、主役の登場だ」
部屋の隅に置いてあった仕事鞄からビンを取り出し蓋を開ける。
ビンの中のスピンは驚いたのかせわしなく動き回っていた。
「ほーら、新しい家だぞ」
ぽちゃんと小気味のいい音を立てスピンは金魚鉢の中へと滑り込み気持ちよさそうに泳ぎ回った。
「名前はスピン」
「へぇーもう決まってるんだ、名前」
雪奈は湾曲したガラスに顔を近づけながらそう言う。
と、そこに何かが近づいてくる気配がした。その能天気な足音が誰のものなのか容易に想像出来るんだけどな。
「わっ、なになにフナニコフちゃんまた飼ったの?」
ネーミングセンスがあるのか無いのか分からない事を口走りながらテーブルに飛びついたのは
永遠のギャング・エイジこと次女カスミだ。
てか、フナニコフは無いだろう。
普段ツインテールにしているその髪も今は風呂上りでほどけており淡い黄色のパジャマをはたはたさせながら
小さな暴君は金魚鉢を雪奈同様覗き込む。
「なーんだ、フツーの金魚じゃん」
金魚鉢の中で泳ぎまわる赤い魚を見ながら不満の声を彼女は漏らした。
「じゃあ何か、アマゾンの人食いピラニアか電気ウナギでも持って帰ってくればよかったのか?」
「おお、それいいかも!」
ビー玉みたいに目輝かして賛同する事でもないだろ?
どうせ面倒を見るのは俺に決まってる。
仮にも女の子なんだから、お前はもっとおしとやかにしてなさい!
「二人とも馬鹿なこと言ってないで、ほらエリカも宿題やっちゃいなさい」
雪奈も同じ事を考えていたのかそれともこの前もって帰ってきたカスミの算数のテストに
〈レの字〉が赤文字で書かれまくっていたのが原因なのか知るところではないが俺はその意見に賛同するね。
「えぇー、めんどくさー」
下唇を前面に押し出し擬似的にシャクレ顔を作りつつも鬼の形相の雪奈には適わないと悟ったのだろう
トボトボと階段を上がっていった。
「もう、お父さんもエリカ甘やかしちゃ駄目だよ。親の背中を見て子供ってのは育つんだからね」
およそ高校生らしからぬ発言をする雪奈はエプロンを脱ぐとそのまま浴室へと消えていった。
「はぁ……疲れたな」
俺は椅子にぐったりともたれ掛かり天井の安っぽい照明を見上げた。
天井の木目が人の顔に見えないことも無い。
今日の出来事を振り返るも犬飼って奴が何をしたかったのか考えれば考えるほど分からず、
何故エリカのことを知っているのかと言う事も俺の心にわだかまりを残存させる理由となっていた。
「ま、考えてもしかたねぇ」
俺は大きなあくびをしながら背伸びした。
『そうそう考えてもわかんねー事は忘れるに限るぜ、旦那』
ガタンと椅子からずれ落ちそうになる。
何だ、今の声は。
キョロキョロ辺りを見回すも人影は皆無だ。
『ケッヘッヘ、いいリアクションだなぁお前。ずっと黙ってた甲斐があるってもんだぜ』
俺は頭がおかしくなっちまったのか?
おかしいのは犬飼だけで十分だ。
『ここだよ、ここ。広い視野を持つことも短い人生を楽しむコツだぜ」
耳から音を拾ってくるというよりも脳に直接言葉を送りつけられているような、そんな感じがする。
いや、しかしそんな事を思ってみたところで声の主は分からない。
心臓の鼓動が痛いぐらいに早くなる。
ちくしょう、今日は何なんだよ一体。
今朝の血液占いは嘘ばっかだな。
『そろそろ教えてやってもいいか、ケッヘッヘ』
笑い方がどうにもシャクだ。
『スピンだよ、スーピーン。言わなきゃずっと気づかないだろうからな』
「な、何?」
俺は金魚鉢を恐る恐る覗き込む。
脳みそが5ミリグラムあるかないかぐらいの金魚が間抜けな顔をして口をパクパクさせながらこっちを見ている。
『おいオッサン、お前アホみたいな顔してるぞ。ケヘヘヘ』
およそ利巧とは程遠い人相、いや魚相でスピンは水の中を漂っていた。
「な、何なんだよ!勘弁してくれ」
俺はとっさに身を反らせると座ったまま少しずつ椅子ごと後ずさる。
フローリングの床に椅子の足がこすれて傷がついたがこの際そんな事はどうでも良かった。
『アホか、犬飼が言ってたこと聞いてなかったのかよ。
俺はお前のお守りを仰せつかった哀れなナイトなのさ、ヒヒヒッ』
騎士と言うよりその笑い声は死神を連想させたね。
「あの電波話を信じろってか?冗談じゃない」
俺はぶんぶんと顔を横に振る。
金魚鉢の中でスピンはくるりと宙返りした。
『ケヘヘ、まぁ無理もねーか。犬飼のお嬢ちゃんは人とのコミニュケーションが不得意だからな。
それにお前のことをあんまよく思ってねーと来てる』
「そういう問題じゃない、手品まがいの事をやってのけたと思ったら今度は喋る金魚だって?冗談だろ!」
俺は引きつった声でそう言った。
こんな現実あってたまるか。
アニミズム的思想を俺は持ち合わせてはいないんだぞ。
『ケヘヘ、まぁ今回の件に関してはお前にとって急な話だったからなぁ。
でもな、俺たちにとっちゃお前の住む世界とやらの方が異常だぜ?毎日同じことの繰り返し、量産化された思想。
それじゃまるでロボットだ』
「う、うるさい!魚類風情に何が分かる」
『ケヒヒヒッヒ、馬鹿。この姿はあくまでカモフラージュだよ。
マナを制限されてるのもあるがこっちの方が何かと行動しやすいのさ』
口を開けば皮肉しか言わないこの気持ち悪い金魚をどうしてくれようかと迷っていると、それを感じ取ったのか
『おっと、俺を捨てるなんて馬鹿な考えはよした方がいいぜぇ』
と俺に釘を刺した。
捨てて欲しくなかったら普通の金魚でいろ。
『取り合えず話だけでも聞けや。金魚と話す機会なんて滅多に無いことだろ?
もしかしたら凄え事聞けるかもしれないぜ。
それがお前の毒になるか薬になるかは俺の知ったこっちゃ無いけどな、ケヘヘヘヘヘ』
「は、話って何だ?」
『その前に一つ約束しろ』
「何を」
『俺様の言うことを信じろ、話はそれからだ。
俺はお前のコントラクターなんだぜ?ケヘヘ』
そう言うとスピンは小気味良い雫の音を立て金魚鉢から元気良く跳ねるのだった。
乙!
367 :
Mr.名無しさん:2007/08/04(土) 22:53:50
なんじゃこりゃ
文に引き込まれるな・・・
368 :
Mr.名無しさん:
たまらん