あ、鋏角亜綱じゃない鋏角亜門だ
549 :
名無しゲノムのクローンさん:2009/02/11(水) 10:50:06
寄生虫でも、外部寄生虫はあんまり体制が退行しないんだよ?
それに、ウミグモが寄生生、っていうのは、よくわからないから寄生にしておけ、
という感じが強い気がする。
古生代の化石は現代のウミグモの先祖としては納得しやすい形だが、やっぱり他の
節足動物とはリンクさせにくいんだよね。鋏角類、というのが一番納得するんだけど、
なんかどこかずれてるというか。節足動物なのは納得できるからなお不思議。
553 :
名無しゲノムのクローンさん:2009/03/03(火) 19:32:44
前に出た成虫原基の話が面白かったんで
他にも例がないか探していたら強烈なのがいた、フクロムシだ
有名なカニの寄生虫だがれっきとした甲殻類でフジツボに近い仲間
木の根っこのような奇怪な本体をカニの体内に張り巡らせ、カニの腹部に袋のような生殖器官を作り、カニに自分の卵と勘違いさせて抱卵、産卵させる
抱卵をしないオスのカニは強引にメス化してしまうというやりたい放題な生物
これはノープリウスで生まれキプリスに進み宿主に到達するとケントロゴンという幼生になるのだが、これが注射器のような構造になっていてカニの外骨格を破って自分の細胞を注入する
この細胞がカニの体内で成体に育つのだ。外部に残った注射器は破棄される
どうもこの時注入する細胞が1コしかない種類がいるらしい
つまりこのフクロムシは成虫原基どころかたった1コの細胞から体を作り直すのだ
ただ完全変態類が祖先から受け継いだ複雑な体制を再構築するのに対して
フクロムシが作るのは生殖器官を除けば木の根めいた単純な組織でどこにも甲殻類の面影はない
これはもう動物ですらなく界を飛び越えて菌茸類になってしまった感じだ
なぜ汎甲殻類にはこうも奇怪な奴がいるのか・・・・
良スレだな
>>553 Larnaeodiscus porcellanae?。興味があるんだがわかりやすい資料に辿り着けない。
通常のフクロムシが注入するバーミゴン幼体でさえ節足動物の概念をブチ壊してるのに、
多核体でも形成するのか?グールドが言ってるんだから嘘じゃないのは確かだろうが、
「細胞一個」となると既に理解を超えてるんでどう考えたらいいかわからない。
身体半分切って捨ててしまう奴とか、寄生性節足動物の生命サイクルって無茶苦茶だ。
そう言えばY幼生を人工的に変態させたらバーミゴンそっくりの幼体、
「イプシゴン」になったらしいな。
>>556 >>553はwebで集めたいくつかの資料や文章をもとに書いたのですが
おそらく同じブログのグールドの著書の書評を見ていると思います。
Larnaeodiscus porcellanaeはおそらく誤植で
Lernaeodiscus porcellanaeが正しいのではないでしょうか
そのフクロムシについての論文を見つけました(英語です)
ttp://www.jstor.org/pss/1547966 図書館や研究機関では無料で見られるようなのですが
自分にはアクセス権もなく英語も苦手でちょっと手が出ません
フクロムシがどういう過程を辿ってあんな生活方法を手に入れるに至ったか
想像しようと試みるのですが、ぜんぜんわかりません
Y幼生の正体は根頭類でしょうかね?
えっと、ニワトリの卵も細胞一個じゃなかったけ?
それとも別な話?
人生のスタートはみんな一個の受精卵だ
そこから体を作り上げる過程が「発生」
そして発生は普通人生で一度きりのスペシャルイベントだ
件のフクロムシは人生の中に発生と呼べる規模の根本的な体の構築が二度あって、
二度目は祖先型とは全く別の体制になっているという希有な例なのです
560 :
名無しゲノムのクローンさん:2009/03/12(木) 07:30:30
系統発生の方だと、多細胞から進化して単細胞になったミクソゾアという例はある。
フクロムシは「フィールドの寄生虫学」本が優しくて面白かった
俺の生きている間にy幼生の成体(もしくは寄生先)がわかると良いな
>>557 ああどうも。Lernaeodiscus porcellanaeで検索すると結構ヒットします。
けどwebで読めるのは通り一遍のレビューばっかりで。
cellsって複数型で書いてある所が多いのが気になるんすが???
>>561 internaとexternaを持つ寄生形態だったら既に成体が見つかってておかしくないし、
成体が見つかってれば幼体も知られてそうなんだけどねえ。
おまけにY幼生は沖縄の一海域だけでも40種類(「種」とは断定されてないけど)以上が見つかってる。
世界各地、日本各地にも分布して、決して珍しくない生物群の筈なんだけど。
よっぽど意外な所に意外な形でいるに違いない。「え!?これだったの!?」みたいな。
下手すりゃ寄生生物とすら認識されてないんじゃなかろうか?
ある種のアンコウの寄生雄が昔は寄生虫と認識されてたのと逆パターンで。
敢えて極端な例えで言えば(勿論それはないだろうが)「これ、クダクラゲの個虫じゃなかったの!?」みたいな。
563 :
561:2009/03/15(日) 16:57:31
> 562
> よっぽど意外な所に意外な形でいるに違いない。「え!?これだったの!?」みたいな。
> 下手すりゃ寄生生物とすら認識されてないんじゃなかろうか?
確かに
海綿やサンゴみたいなモノに寄生していて宿主の行動が変わらないとか
実はそこに生息している宿主全てに寄生するので個体群の行動に変化がないとか
宿主の生殖器をまねてexternaを出しているので気づかないとか
おそらく寄生したものを既に目にしているんだと思うんだけどな
余りにもありふれていて気づかないだけで
根頭類の寄生相手には十脚類(エビ、カニ、ヤドカリ)の他に
シャコや等脚類、フジツボも居るそうです
フジツボは個体数も多く、寄生が外からは見えないので実体が把握しにくく
けっこう落とし穴かもしれません
566 :
名無しゲノムのクローンさん:2009/04/26(日) 18:09:36
昆虫には卵ノープリウス期さえないからね
まあ、だから今まで系統が分からなかったんだが
>565
>どれももはや節足動物とは思えない姿です
どれも立派に、節足動物の形をしてますけど。
>一方で鋏角類はせいぜいダニかウミグモ(寄生退化型と仮定して)程度だし
寄生性のダニもウミグモも、そんなに変形してませんよ。
>多足類にいたっては寄生自体を知りません
多足類で寄生する動物は報告されてませんね。
何が言いたいのですか?
568 :
名無しゲノムのクローンさん:2009/05/06(水) 05:02:42
>>567 >どれも立派に、節足動物の形をしてますけど。
そう思うのはきちんと分類された色々な節足動物の形を学んでいるからでしょう
それを分類した先人はきっと悩んだのではないでしょうかね
フジツボみたいに幼生が分かって初めてああそうかみたいな
シタムシもつい最近まで別門でした
>寄生性のダニもウミグモも、そんなに変形してませんよ。
そう書きました
>何が言いたいのですか?
書いてある通り
>甲殻系のこの体作りの自由さはいったい何処から来るのでしょうね
という疑問に尽きます
あと、忘れちゃいけないのはシタムシだね。
ただ、節足動物にこだわらなければもっと変形した例はあるにはある。
最高はミクソゾア。中生動物連中も変。
ミクソゾアの例は驚きますね、クラゲの仲間らしいですね
これも生殖細胞以外のほとんどを捨てていて、寄生生物の究極の形に近いでしょう
寄生では多かれ少なかれこんな方向に淘汰圧がかかってくるのだと想像します
変形の例はもちろん沢山ありますが
やはり汎甲殻類が質、量、奇天烈さから言ってもトップのような気がします
ニハイチュウを含むと思われる扁形動物も寄生が多いですが、もともと蠕虫型で
汎甲殻類ほど元の形とのギャップがない分インパクトは弱いでしょうか
たいへん主観的な話ですが
拙速動物?
572 :
名無しゲノムのクローンさん:2009/07/11(土) 11:09:27
そう考えると昆虫の時代なんだな 現在は
このスレで節足動物と聞いて昆虫を言う愚
とりあえず、岡田ゴキブリ涼子を晒しておくか
まあ、来月から節足動物の講義をする、
おじさんが、あげとくよw
先生、多足類の起源を教えてください
いつごろからいるのですか?
>576
> 先生、多足類の起源を教えてください
> いつごろからいるのですか?
化石記録なら、
ムカデ類 古生代デボン紀
ヤスデ類 古生代シルル紀
コムカデ類 新生代第三紀(琥珀)
エダヒゲムシ類 新生代第三紀(琥珀)
コムカデとエダヒゲムシが新しいのは、化石になりにくかったからだろうね。
>>577 回答ありがとうございます
よく分かりました
月に一度の保守w
三中信宏の本は面白いよ。
581 :
名無しゲノムのクローンさん:2009/12/26(土) 14:50:29
甲殻類がまだ一生ノープリウスだった太古の海に想いを馳せる
一部昆虫の完全変態・・・・・
生物として驚異的なメカニズムだと感じます。
NHKで、フジツボをやってるぞ。
584 :
名無しゲノムのクローンさん:2010/02/21(日) 23:32:20
585 :
名無しゲノムのクローンさん:2010/02/22(月) 12:02:55
縁起物だよ、それ
586 :
名無しゲノムのクローンさん:2010/02/27(土) 20:19:16
>>556,562
注入するのが細胞一個だけって説(Hoeg 1984)はバーミゴン期を報告する論文で本人が否定してる(Glenner and Hoeg 1995)。
さらにこのとき「バーミゴンは宿主体内で破裂して十数個の細胞になり、おのおのが成長してエクステルナになる」としてるけど(Glenner and Hoeg 1995)、
これも後に本人がバーミゴンがそのまま成長することを確かめて、「バーミゴン破裂して細胞バラマキ説」を否定している(Hoeg 2000だったかな?).
このような複雑な経緯があるから、細胞が注入されるとか、"Cells"になってたりするんだと思われ。
フクロムシもすげーが、このHoegって研究者がすげーよ。だいたいフクロムシ関連はこの人がやってる。
(ちなみにバーミゴンを報告した1995年の論文は、NatureかScienceだ)
587 :
名無しゲノムのクローンさん:2010/03/24(水) 18:24:29
>>586 おお、一年前の疑問に答えてくれてありがとう。
研究者が少ない上に成長過程の観察が難しそうだから無理もないね。
どんなに突拍子もない様に思えても見た物を見たままに受け止める勇気と、
そしてそれを決して信じない勇気と、それを覆す勇気。
生物学は英雄の冒険譚の様にスリリングだ。
589 :
586:2010/05/26(水) 14:52:08
>>588 いえいえ。
そんな勇気を持った研究者になりたいもんだね。
にしてもこんな良スレが伸びないのは惜しい。
590 :
名無しゲノムのクローンさん:2010/05/27(木) 03:12:04
ということは、今のところバーミゴン幼生の詳細については保留しておいて
Hoeg氏の結論待ちと言う事で良いんだろか
何にしてもバーミゴン幼生からインテルナへの成長は植物のカルス培養を思わせる異様な光景だ
宿主から単離したフクロムシは全く動物の体をなしていない
生殖器がなければカイメン以下の構造だろう
この一様に見えるインテルナも、詳しく調べればもっと色々あるのだろうか
591 :
586:2010/06/06(日) 17:12:30
>>590 「詳細」が何を指すのかはわかりかねるけど、
彼ら(Hoeg and Glenner)しか研究者がいない以上、
我々は進展を待つほかないと思われ。
>この一様に見えるインテルナも、詳しく調べればもっと色々あるのだろうか
おそらく。
インテルナは体中に「根」をはりめぐらすけど、たしかホストの生存に関わる中枢系は破壊しないんよ。
この「生かさず殺さずのファインチューニング」もすばらしい。
そして忘れちゃいけないのはインテルナは「すべて♀」ってことだ。
>>591 フクロムシのオスが生殖巣化しているのと同じように、メスもまた生殖巣化していると見る事はできないだろうか?
ただしメスから栄養供給を受けられるオスとは違い、メスにはどうしても卵を作るのに相応の栄養が必要なので
退化した本体の代わりに栄養を収集する器官として根のような組織インテルナを持つ
インテルナが根頭類以外に見られない事や構造が極めて単純な事は、それが祖先形質に由来しない急造物であることを匂わせるね
593 :
586:2010/06/08(火) 21:01:20
>>592 >>フクロムシのオスが生殖巣化しているのと同じように、
>>メスもまた生殖巣化していると見る事はできないだろうか?
もちろんそう思う。ただ性特異的にそういうことが起こるメカニズムって面白いと思う。
>>それが祖先形質に由来しない急造物であることを匂わせるね
この言い方にはちょっと賛同しかねるな。
「祖先形質とは大きく異なってしまった」というのが適切かと思う。
あと「急造」ならば、逆に祖先形質の面影を残している気がする。
「他の分類群で見られない」「極度に単純化」というのは、むしろ「高度に特殊化が進んだ洗練された構造」とも言えるのではないだろうか?
594 :
592:2010/06/09(水) 17:33:36
>>593 >「他の分類群で見られない」「極度に単純化」というのは、むしろ「高度に特殊化が進んだ洗練された構造」とも言えるのではないだろうか?
つまり、インテルナは寄生の為に高度に適応したフクロムシの全身
言い換えれば祖先形質の体が進化してインテルナになったという見方でしょうか?
私が先に書いたのは全く逆で、インテルナは寄生によって一度生殖巣規模にまで退行進化していた古フクロムシが
大型化の為に後から作り出した場当たり的な栄養収集器官(おそらくは生殖腺の一部が伸びただけの文字通りの根っこ)という見方です
これだとエクステルナとインテルナは同じような組織なので、インテルナからエクステルナが何度でも再生出来る事も説明できますし
構造が単純なのも当然ということになります
まあほとんど空想の域ですが
595 :
586:2010/06/10(木) 19:39:31
>>594 >>祖先形質の体が進化してインテルナになったという見方でしょうか?
そうですね。「体」という言葉は「全身」という言葉では使っていませんが。
>>空想の域
そうなのですよ。我々がここであーだこーだ言っても完全に空想なんですよね。
なので、議論のポイントとなるであろう疑問について過去の論文を探してみました。
Q1・インテルナ・エクステルナはフジツボのどの器官と相同?
→全然わからない。
Q2・フクロムシの祖先形態って既知?
→固着性の(おそらくフジツボに似た)生物から進化。
多分カニにくっついてたフジツボ的な生物が、ホストの皮下に入り込んだのでは?(Glenner and Hebsgaard 2006)
Q3・フクロムシの極端な性的二型っていつ進化?フジツボでもあんの?
→まだ調べてない。知ってる?
596 :
592:2010/06/11(金) 12:39:43
論文探索おつかれさま、参考になります。英語お強いのですね
>Q3・フクロムシの極端な性的二型っていつ進化?フジツボでもあんの?
フジツボは普通雌雄同体ですがオスとメスに分かれるものもいて、この場合オスはかなり小型の矮雄になります
雌雄同体のフジツボは配偶相手がいない場合、自分の卵に自分の精子を受精させてしまう事があるそうで
自家受精をする動物としても知られています
顎脚綱というレベルで見ると雌雄異体、体内受精が基本的なスタイルのようで
蔓脚類の雌雄同体は例外的な固着生活への適応とも考えられます。
そうするとフクロムシはキプリウス期を共有するものの、キプリウス自体は複眼を持つ徘徊性の幼生ですから、
フクロムシは雌雄同体から雌雄異体に進化したのではなく、ずっと雌雄異体だったという可能性もあります(固着生活を経験していない可能性も)
もしフクロムシが雌雄同体のフジツボのような生物からスタートしたのだとすると、オスとメスが分かれ
現在のようなメスがオスを取り込む雌雄関係への進化は、寄生適応への重要なステージであった筈です
オスがメスの体内に寄生、あるいは癒合して生殖巣化してしまうような極端な例は、
寄生虫や深海魚などオスとメスの出会いの乏しい生物にはよく現れるようです。
魚類ならチョウチンアンコウ、甲殻類ならホタテノエラカザリなどですね
生存条件が強いる進化という事なのでしょうか
>596
> 生存条件が強いる進化という事なのでしょうか
いい質問ですね。
そのとおりですよ。