>>783 心理学では行動主義,というときにはまず大きくふたつにわけます。
方法論的行動主義 客観的に観察可能な行動だけを研究対象にする心理学。
直接観察可能な行動だけを指標に直接観察不能な過程を
分析する心理学も含む。心的過程を操作的に定義して
客観データから研究するような研究がその代表だし,
その意味では認知心理学も方法論的には行動主義です。
徹底的行動主義 生物の行動を環境との直接の相互作用から分析しようとする
心理学。主な概念装置はオペラント条件づけ。また,心的過程は
行動の原因ではなく,心的過程自体も環境と相互作用する
行動であると考える。「自称」行動分析学,あるいはいわゆる
スキナリアン。
方法論的には「科学的」と自称する心理学はすべて行動主義です。
徹底的行動主義は「スキナー的行動主義の原理主義者」で,日本の心理学界では
いま500名くらいの勢力です。
で,誤解してもらいたくないのは,徹底的行動主義は「内的過程を否定」などまったく
していません。環境と生体の相互作用で行動が成立,変化していくことを内的に支えて
いる生理的,物理的過程の存在はもちろん肯定しています。ただ,そうした過程の
活動は基本的には「環境の構造を行動につなぐ」ことだと考えていること,環境の
構造と行動との直接の関係を分析すれば,内的過程を考慮しなくても行動の予測や
制御が可能であること,などから,内的過程を自分たちの研究対象にしていない
だけです。スキナーは,内的過程の分析も行動の全体的理解に必要だが,それは
生理学者の領域であり,われわれはその成果を利用した方が合理的だと言っています。