動物の認知能力について

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784心理屋
>>783

心理学では行動主義,というときにはまず大きくふたつにわけます。

 方法論的行動主義 客観的に観察可能な行動だけを研究対象にする心理学。
          直接観察可能な行動だけを指標に直接観察不能な過程を
          分析する心理学も含む。心的過程を操作的に定義して
          客観データから研究するような研究がその代表だし,
          その意味では認知心理学も方法論的には行動主義です。

 徹底的行動主義  生物の行動を環境との直接の相互作用から分析しようとする
          心理学。主な概念装置はオペラント条件づけ。また,心的過程は
          行動の原因ではなく,心的過程自体も環境と相互作用する
          行動であると考える。「自称」行動分析学,あるいはいわゆる
          スキナリアン。

方法論的には「科学的」と自称する心理学はすべて行動主義です。
徹底的行動主義は「スキナー的行動主義の原理主義者」で,日本の心理学界では
いま500名くらいの勢力です。

で,誤解してもらいたくないのは,徹底的行動主義は「内的過程を否定」などまったく
していません。環境と生体の相互作用で行動が成立,変化していくことを内的に支えて
いる生理的,物理的過程の存在はもちろん肯定しています。ただ,そうした過程の
活動は基本的には「環境の構造を行動につなぐ」ことだと考えていること,環境の
構造と行動との直接の関係を分析すれば,内的過程を考慮しなくても行動の予測や
制御が可能であること,などから,内的過程を自分たちの研究対象にしていない
だけです。スキナーは,内的過程の分析も行動の全体的理解に必要だが,それは
生理学者の領域であり,われわれはその成果を利用した方が合理的だと言っています。
785心理屋:01/11/02 09:52
で,徹底的行動主義が何かを否定しているとすれば,
それは「心的過程が行動の原因である」というテーゼです。
他の心理学が原因的,あるいは過程的に心的過程の行動への
先行性,因果性を考えている,あるいは行動の内的過程イコール
心的過程と考えているのに対し,徹底的行動主義は
行動を支える内的過程は心的過程ではないこと,そして,
心的過程(たとえば意識,意思決定など)は環境と人との
相互作用が行動を決定する時に,それに随伴して生じる現象である,
また,心的過程も環境の構造に影響される「行動」であり,
外的行動と同じ原理で予測,制御が可能だと考えています。

ですから,行動の内的過程の生理学的,生物学的分析は
徹底的行動主義とはなんら対立的ではなく,相補的です。
行動主義が認知心理学と対立するのは,それが内的過程を
扱っているからではなく,認知心理学が内的過程として
提唱している諸概念の多くがが生理学的,生物学的な基盤を
もたない心的過程の概念にすぎないからです。

それから,「現在の行動主義」ということに興味をお持ちでしたら,
国内なら「行動分析学研究」「行動療法研究」など,
国外でしたらJournal of experimental behavior analysis,
Journal of applied behavior analysisなどに徹底的行動主義の
現状が示されていますし,方法論的行動主義の現状としては
国内では「行動科学」などのジャーナルをご覧になったらよいかと思います。
いずれも心理学科,教育学部(障害児教育)のある大学であれば
所蔵されていると思います。