ssって容量食うのね
なんにせよ乙です
3 :
名無しさん@秘密の花園:2011/12/27(火) 16:39:58.27 ID:CTJXMnSe
スレ立て乙
SS投下します。
内容としてはトトミミなんだけど、実際に絡んでいるのはトトリ&ケイナ。
はしたなくないよう控えめに、中の人に聞こえるようしっかりと。ケイナはアトリエのドアを、規則正しくノックした。
そのまましばらく待つ。返事は……ない。
現在メルルは町の外へお出かけ中。アトリエにはトトリが残っているはずだが、今は誰もいないようだ。
「失礼します。お部屋の掃除に来ました」
しかし一応の礼儀として、声をかけて中に入る。メルルがいない時でも、ケイナは定期的にアトリエの掃除に来ていた。アトリエが留守の時でも中に入っていいと、家主であるトトリの許可はあらかじめ得てある。
のだが、
「ひゃあっ!?」
「きゃっ!?」
アトリエに入った途端、素っ頓狂な声が響き、ケイナは小さな悲鳴を上げる。
「あ……ケ、ケイナちゃん?」
そこにいたのは、ソファに腰掛けていたトトリだった。
「トトリ様……ご在宅だったのですね。失礼しました」
「ううん、こっちこそ。驚かせてごめん」
ケイナがノックを忘れるような子ではないと分かっているので、トトリは自分に非があると素直に謝った。
「あの……ケイナちゃん」
「何でしょう?」
「……見た?」
「え?」
トトリは『何か』を後ろ手に隠しながら、ケイナの様子をうかがっている。
「何のことでしょうか?」
とぼけているのではなく、ケイナには本当に何のことなのか分からなかった。
「いや、その、何でもないよ! 見てないならそれでいいから」
「はあ……あの、何だかお顔が赤いようですが、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫大丈夫! 全然いつも通りだから! さてっ、お仕事再開しないと――」
その時、勢いよく立ち上がった拍子に、トトリが隠し持っていた『何か』が床に落ちた。
「……マント?」
ふわりと床に広がったのは、黒色基調のマントだった。
「わああっ、違うの! 何でもないの! ミミちゃんのお古のマントの匂いかいだりなんてしてないからーっ!」
「え」
「あ」
盛大な自爆をしたことに気付いたトトリは、さっきから赤くしていた顔をさらに真っ赤にする。
「それ、ミミ様の――」
「ち、違うの! これはそんな、そういうんじゃなくてね、アールズに出発する時ミミちゃんが道中冷えないようにってくれたのでね! だからそんな、そういう目的で持ってたんじゃなくてね! つい出来心というか、色々ガマンできなかったっていうか――」
「あの、ちょっと、落ち着いてくださいトトリ様」
「あうぅぅ……まさかケイナちゃんに見られるなんて〜」
「見てませんから。全部ご自分でばらしてますよ」
「でもっ、でもね! それもこれも全部ミミちゃんが悪いんだよ!」
「は、はあ……」
「私、ミミちゃんがアーランドから追いかけてきてくれるのずっと待ってたのに、半年も待たせるし、来たら来たで相変わらず素直になってくれないし!
その上最近は何だかメルルちゃんとばっかり仲良くしてる気がするし! 二人で内緒話とかしてるっぽいし!」
「あの、トトリ様……?」
「大体ミミちゃんは昔っからああなの! 私はずっとミミちゃんのこと思ってるのに、いつまで経ってもツンツンツンツンして、そこが可愛いとこでもあるんだけど、もう出会ってから何年も経つんだから、もっとこう――」
その後、数十分ほど、トトリから愚痴とものろけともつかないミミちゃんトークを聞かされ続けるケイナだった。
「えーと……ごめん。何か熱くなっちゃって」
「いえ、お気になさらず」
ひとしきりミミへの不満をぶちまけてすっきりしたトトリは、ようやく平常心に戻ってケイナに謝っていた。
「あの、ケイナちゃん。さっきのこと、ミミちゃんとメルルちゃんには――」
「内緒ですね。承知しました」
一切含みなくケイナがうなずくと、トトリはホッと胸をなで下ろした。
「でも、そんなに恥ずかしがることでもないと思いますけど」
「そ、そうかな?」
「ええ。メルルもたまに私の匂いかぎたがったりしますし」
もっともメルルの場合は衣類の残り香などとまどろっこしいことは言わず、ケイナ本人にソフトなタックルをかました後ダイレクトにくんかくんかしてくるが。
「うーん……でも、やっぱりミミちゃんに知られるのは、ちょっと……怒られちゃいそうだし」
「そうですか……むしろ喜びそうですけど」
「え?」
「いえ、何でも。それでは、アトリエのお掃除を始めますね」
「あ、邪魔しちゃってごめんね。私も手伝うよ」
「いえ、トトリ様はお仕事もあるでしょうから。こちらは私にお任せ下さい」
「そう? ……それじゃあ、お願いね」
仕事を再開するトトリの邪魔にならないよう、ケイナは掃除を始める。
(それにしても……)
トトリは先ほどの周章狼狽ぶりを微塵も感じさせず、調合に集中している。その後ろ姿を見ながら、ケイナは小さくため息をついた。
(素直になれないミミ様もミミ様ですけど、こちらはこちらで何と言いますか……)
「? ……ケイナちゃん、どうかした?」
「いえ、何でも。そうして調合をしていらっしゃる姿は、とても凛々しいと思いまして」
「え、そうかな? えへへ……ありがと」
照れるトトリに微笑み返しながら、不器用な二人の行く末を案じるケイナだった。
ちなみに後日、ミミがトトリのお古のリボン(アーランド時代、腰に付けてたやつ)を持っているのをメルルが目撃したとかしないとか。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
タイミング悪くて災難なケイナだけど、あと一分遅ければ始まっていたので実は危機一髪だったというお話。
(何がとはあえて言わない)
設定資料集に、トトリはケイナにもっと打ち解けてもらいたいと思っている、とあったのがちょっと嬉しかった。
この二人の組み合わせは結構好きなのでまた機会があったら書きたい。
連投になって申し訳ないですが、SS投下します。
トトリエ時代のロロクー&トトミミ。そろそろトトミミ分が不足してきてやばい。
昼下がりのアーランド城門前。トトリとミミの二人が、冒険から帰ってきた。
「ふー、着いた。ミミちゃん、お疲れ様。助かったよ」
「これぐらい何でもないわよ」
いつも冒険に出るときはトトリも含めて三人ほどで挑むのだが、今回は近場で素材を採取するだけで、最初に護衛を頼んだミミが「それくらいなら私と二人きり――じゃなくて、私一人いれば護衛は十分でしょ」と言い、それならばと二人だけで冒険に出ていた。
事実、二人だけでも全く問題はなかった。冒険の最中、時折ミミが何か言いたげ(したげ?)にモジモジしていたが、トトリは全然まったく微塵も気付かなかった。
「ミミちゃん、この後何か予定ある?」
「別に無いけど」
「そう。それじゃあ、よかったらアトリエでお茶にしない?」
「え……!」
不意のお誘いに戸惑うミミ。たちまち頬が赤くなるが、無論のことそんな動揺をトトリに悟られるわけにはいかず、顔をそらして平静を装う。
「わ、私は、別にいいけど、その……ロロナさんに迷惑じゃないかしら」
「それなら大丈夫だよ。先生『いつでもお友達を連れておいで』って言ってるし」
「そう……それなら、まあ、付き合ってあげないこともないわよ」
「よかった! それじゃあ、行こっか」
「ちょっと、気をつけなさいよ。カゴの中いっぱいでしょうが」
「あ、そうだった」
カゴから溢れそうな素材に気がついたトトリは、慌てて歩調を緩める。
「ったく……ほら、持ってあげるから」
ミミはトトリのカゴを持って、とっとと歩き出す。
「ありがと、ミミちゃん」
「……」
ニッコリ笑ってお礼を言うトトリに、どう返していいか分からず、つい仏頂面になるミミだった。
二人並んで石畳の道をテクテク歩き、間もなくロロナのアトリエにたどり着いた。
「ただいま帰りましたー」
トトリがドアを開けて帰ってきたことを報告する。が、返事はない。
それもそのはず。
「あ……」
「どうしたのよ?」
「ミミちゃん、しー」
口の前に人差し指を立てて「静かに」のジェスチャーをするトトリ。ミミは黙ってアトリエに入り、中の様子をうかがう。
「? …………っ!?」
それを見たミミが、驚き目を丸くする。
静かにしろという意味は、なるほど分かった。ソファに横になって、このアトリエの主であるロロナがお昼寝をしていたのだ。
だがしかし、ミミを驚かせたのはそれよりも――
(ちょ、ちょっとトトリ! この人達何やってるのよ!?)
(二人でお昼寝してるみたいだね)
(お昼寝って……)
ソファで寝ていたのはロロナだけではなく、もう一人……ギルドの受付嬢であるクーデリアもだった。ロロナがクーデリアをぎゅっと抱きしめるような形で。
(うるさくしちゃ悪いから、場所を変えよっか。イクセルさんのお店でいい?)
(いや、いいけど、それよりその……何であんた、そんな平然としてるのよ?)
(何でって……)
小さい子供ならともかく、妙齢の女性二人(片方は見かけ的に何というかアレだが)が、こんな風に仲睦まじげに眠っている図というのは、ミミにはいささか刺激が強かった。
(先生とクーデリアさんは親友だし、別に変じゃないでしょ。それに先生、たまに私のことも抱っこして寝るし)
「なっ!?」
聞き捨てならないことを聞いたミミが思わず大きな声を上げる。
と、
「ん……ん〜……誰〜……?」
ソファの上で身じろぎしながら、ロロナが声を上げた。
「あ、先生。起こしちゃいました?」
「あ〜トトリちゃんだ〜」
「ん……とっ、わわっ!?」
寝ぼけ眼のロロナが身を起こそうとして、一緒に寝ていたクーデリアが危うく床に落ちそうになったが、ぎりぎり体勢を立て直す。
「あぶな……」
「くーちゃんおはよー」
「おはよう……って、言ってる場合じゃないわよ! ちょっと小休止するつもりだったのにもうこんな時間……!」
「あ、ホントだ」
「だーっもうっ、あんたが一緒にお昼寝しようとか言うから!」
「えへへ……だってくーちゃん抱っこしてると、ものすごくよく寝られるから」
「私はあんたの抱き枕じゃないっつーの! ったくもう、いつまでも子供みたいなんだから……」
「でもクーデリアさんの方だって、先生と一緒に寝ることOKしたんですよね」
「ま、まあ、そりゃあ、一緒に寝るくらい親友として当然っていうか、私とロロナの仲だし、別にそんな気負うようなことでも………………………………ちょっ、あんた達二人、いつから?」
トトリとミミの存在にようやく気付いたクーデリアが、顔を引きつらせながら訊ねる。
「さっき帰ってきたところですけど」
「み、見てた?」
「え?」
「私とロロナが、い、一緒に寝てるの、見てたの!?」
「は、はい。見てましたけど」
「〜〜っっ!」
クーデリアの顔がたちまち茹で蛸のように真っ赤になる。
「だ、だ、誰にも言うんじゃないわよ! いい!?」
「え? あ、はい」
「本当よ! 絶対に口外厳禁だからね! じゃあ、私は仕事に戻るから!」
言うだけ言って、クーデリアは足早にアトリエから去っていった。
「……えーと」
「トトリちゃん、おかえり」
「あ、はい。ただいま」
「ミミちゃんも来てたんだ。いらっしゃい」
「お、おじゃましてます……」
ロロナもトトリも平然としているので、一人動揺していたミミも何とか平常心を取り戻そうと努力する。
(ひょっとして、泡食ってる私の方が変なのかしら……友達同士って、一緒に抱っこして寝たりするのが当たり前なの……?)
普通なら「んなこたぁない」とセルフツッコミを入れて終わるところだが、悲しいかなトトリと出会うまで友達らしい友達がいなかったミミは、比較対象を持たないが故に答えを出せなかった。
「それじゃあ、私お茶入れてくるね。先生も一緒にお茶しますよね」
「うん、お願い。戸棚にパイがあるから、それも出して。三人で食べよ」
「はーい」
トトリはいそいそとお茶の支度を始める。手持ち無沙汰なミミは、何気なくロロナの方を伺おうとして、バッチリ目があってしまった。
「ミミちゃん、どうかした?」
「あ……いえ、その……ロロナさん、さっきみたいなことって」
「さっきって?」
「だからその……クーデリアさんと、一緒に寝る、みたいなこと……いつもしてるんですか?」
「うん。割と」
「割とって……」
「私、結構どこでも寝られる方なんだけど、やっぱりくーちゃんと一緒なのが一番寝心地いいんだよね」
「そ、そうですか……」
「あ、でも、トトリちゃんを抱っこして寝るのも気持ち良いんだよ」
「!!」
その問題発言にミミの顔色が変わるが、ロロナは気付かず話を進める。
「最初のうちは恥ずかしがってたけど、最近は慣れてくれて、トトリちゃんがお休みしてるときは私も一緒にお休みすることも多いんだ」
「……」
もしも今のミミが何か効果音を背負うとしたら、間違いなく『ゴゴゴゴゴゴゴ……』という文字が浮かんでいただろう。つまりはまあ、そんな不穏なオーラを放っていた。
が、ロロナは気付いているのかいないのか。全く調子を乱さず話を続ける。
「くーちゃんはこう、あったかくてぷにぷにしてるんだけど、トトリちゃんはふわふわすべすべしてて肌触りが最高なんだよね」
「へー……そう、なんですか……」
淡々と頷くミミだが、その目の光がどことなく虚ろなのは気のせいだろうか。
「…………ミミちゃん、ひょっとして怒ってる?」
「っ!」
不意に、ロロナがミミの心情をズバリ突いてきた。
「な、何のことですか?」
「私がトトリちゃんを抱っこして寝てたこと、怒ってる? って聞いてるの」
「……何で私がそんなことで怒らなきゃいけないんですか」
「さー、何でだろうね?」
ロロナはにんまり笑みを浮かべている。その笑顔が、ミミには何もかも見透かされているようで居心地が悪い。
「じゃあ、今度ミミちゃんも、トトリちゃんにお願いしてみたらいいよ」
「はいっ!?」
唐突な話の展開に、ミミが素っ頓狂な声を上げる。
「な、何をですか!?」
「だから、一緒に寝ようって。トトリちゃんに」
「なっ、そっ、そんな、恥ずかしいこと、言えるわけ――」
「お待たせー」
トトリが三人分のお茶と切り分けたパイをお盆に乗せてやってきた。
「先生、さっきから何の話してるんですか?」
「ミミちゃんに、トトリちゃんと一緒に寝てみたらって言ってたの」
「ちょっ……ちがっ……」
ミミは慌てて弁解しようとするが、言葉がつっかえてしまう。
「え。ミミちゃん、私と一緒に寝たいの?」
「いやっ、それは、その……あの……」
「ミミちゃんがしたいなら……私は、いつでもいいけど」
「――っ!」
少し恥ずかしそうに、うつむき加減でそんなことを言われたミミは、
「わ、私ちょっと急用思い出したからっ! 失礼します!」
顔を真っ赤にしながら慌ただしくアトリエを出ていった。
「ミミちゃん……どうしたんだろ?」
「うーん……なんて言うか、本人の方にも乗り越えるハードルが多いみたいだね……」
「え?」
「ううん、何でもないよ。それよりお茶にしよっか」
「はい。一人分多くなっちゃいましたけど」
「じゃあ余ったのは私が食べるね」
トトリと二人でお茶を楽しみながら、心の中で、先達としてミミへの声援を送るロロナだった。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
前スレに引き続きロロクー強化月間……のつもりだったけど今回はだいぶトトミミに偏ってしまった。
GJ
年末にいいものが読めました
ああ、よかった人がいた。
またしても連投気味にSS投下します。
今回はロロリエ時代のロロクー……なんだけど直接の絡みは薄いです。
アーランドの職人通りを、クーデリアは歩いていた。その足が向かう先は、ここ最近ご無沙汰だったロロナのアトリエである。
(ロロナってば、忙しいのは分かるけど、ここんところくに顔も見せないんだから……たまにはひとこと言ってやんないと)
頭の中ではそんなことを思いながら、アトリエに向かう足取りは妙に軽い。久々にロロナに会えると思うと、体の方は正直になってしまうのだろう。
武器屋の前を過ぎ、ようやく目的地に到着。扉の前で何となく深呼吸をし、気合いを入れてクーデリアはアトリエに入った。
「ロロナー、ひさしぶ――」
「ではマスター、ホムは採取に行ってきます。可能な限りスケジュールを詰めなければ厳しい状況ですので、呼び戻すタイミングを誤らぬようお願いします」
「うぅ、苦労かけてごめんね……いってらっしゃい」
ドアの前に立つクーデリアの横を、少女型のホムンクルス――ホムがいつになく急いで出ていった。それを見送ったロロナは、アトリエの中で軽く項垂れている。
「ちょっとロロナ。何があったのよ?」
「あれ? くーちゃん、いつの間に」
「さっきからいたわよ」
先ほどアトリエを飛び出していったホムは、クーデリアがここに立っていることにも気付かなかったようだ。
「それがその……うっかり仕事受けすぎちゃって……最初のうちは何とかなるかなー、って思ってたけど、段々スケジュールがカツカツになってきて……」
今に至る、と。涙目なロロナに、クーデリアは呆れてため息をつく。
「全くあんたは……無理なら断ればいいじゃない」
「それは何か悪いし、最近ちょっと金欠気味ってのもあって……とにかく頑張ろうってことになって」
「ふぅん……」
それなら私が手伝ってあげても――と、クーデリアは言おうとしたのだが、
「それに、今はホムちゃんがいてくれるから。すっごく頼りになるからね」
「……」
続いたロロナの一言に、たちまち不機嫌オーラが吹き出してきた。
「ふーん、そう……そんなに頼りにしてるんだ」
「うん! ホムちゃんがいてくれるおかげで、とっても助かってるから」
「どうなのかしらねぇ……作ったのがあのアストリッドでしょ」
「う……確かに、師匠はちょっとぐーたら気味なところもあったりするかもだけど、ホムちゃんは本当に働きものなんだよ」
「…………」
ロロナがホムをフォローすればするほど、クーデリアの方はだんだんと不愉快な気分になってくる。
「採取でも調合でも頼りになるし、今じゃホムちゃん無しのアトリエなんて考えられないからね!」
そしてクーデリアの沸点は身長に比例――なんてことはないんだけど、低い。
「ああそう! 分かったわよ! そんなにホムが頼りになるんなら、あんた達だけでよろしくやってればいいでしょ!」
「え? え? くーちゃん?」
怒鳴り散らすや、クーデリアは呼び止める間もなくアトリエから出て行った。
「くーちゃん……何で怒るの……?」
「ったく……何よ。人がせっかく会いに行ったっていうのに……」
勢いでアトリエを飛び出したクーデリアは、ぶつぶつと不満をこぼしながら街を歩いていた。
「そもそもいの一番にロロナの力になってあげてたのは私だってのに、ホムンクルスなんかやたらと持ち上げたりして……最近はろくに街の外にも連れて行かないし。これじゃ私がいらないみ、た……い……」
自分で言っている内容を反芻して、クーデリアは黙り込んでしまう。
確かに、アトリエを任されたロロナにとって、当初、確実に頼りになる人間といえばクーデリアぐらいのものだった。
それが今ではどうだろう。
アトリエの外では、何人もの有能な人物がロロナに力を貸しているし、地道な努力が実を結んで街の人達からの信頼も得ている。
アトリエの中では、師匠のアストリッドが相変わらずなのは良いとして(良くない)、これまた有能なホムンクルスが助手に就いている。
クーデリアはあくまで客観的に、今の自分がロロナにとってどれだけ役に立っているかを考える。
錬金術の知識や技術に関して自分が力になれることは無い。
護衛としてはそこそこ役に立ってはいるはずだ。銃の扱いには自信があるし、最近は体力もついてきてそこいらにいる並のモンスターなら楽勝できる。
だがしかし、ステルクやジオといった本格的な戦闘技術を学んだ人間に比べれば確実に弱い。その他のメンツと比べても、せいぜいトントンといったところだ。
総合して考えるに……
(……私、ひょっとしてロロナから本当にいらない子扱いされつつある?)
クーデリアの顔から血の気が引いた。
(いや、でもまさかそんな……!)
確かにここ最近は採取にも誘ってくれないし、依頼だって顔を合わせた時に余裕があれば引き受けてくれる、といった感じだった。
「こ、このままじゃいけない……何とか……何とかしないと……」
焦燥感にかられたクーデリアは、歩調を早めながら考えに没頭する。如何にしてロロナから頼られる自分に立ち戻るかを。
「またエスティの所でロロナ宛ての依頼を出しておくとか……でもあれは匿名だし、あんまり多すぎても怪しまれるだろうし……うーん……こうなったら今からでも本格的な戦いの訓練を受けるとか……でもそんなことすると会える時間がものすごく減るだろうし……
いっそ思い切って私も錬金術の勉強を――ってダメだわ。この街だとロロナ以外で錬金術ができるのはあの女しかいないし、引き受けてくれるわけがないし私もあれを先生にするの嫌だし……」
小声でぶつぶつ呟きながら、クーデリアの足はふらふらと彷徨い、いつの間にか広場も大通りも抜けて、城門の前まで来てしまっていた。
「……何やってんだろ私……」
誰もいない城門前でしばし立ちつくしてから、クーデリアはため息をついた。
「今日はもう帰ろうかな……」
踵を返そうとしたその時、クーデリアの頭に一つ閃きが走った。
「……」
視線を城門の外へ向ける。いつもならロロナ達と一緒にくぐる門の、その先へ。
アーランド国有鉱山。坑道の中、灯火が作る陰影を縫うように、ホムは足早に歩いていた。
要所要所で素材を採取し、脇目もふらず次のポイントへ向かう。
時折モンスターの姿を確認すると、素早く身を隠してやり過ごすか、隙を突いて通り過ぎる。採取が目的なのだから、無駄な戦闘など一切しない。
ゴーストの群れを眼前にやり過ごし、ホムは小さく息をついた。付近に他のモンスターの気配が無いことを確認すると、素早く採取ポイントに取り付く。
(鉱石の量はこれだけあれば十分……フロジストンと燃える土は、出来ればもっと高品質なのが欲しいですが……)
可能な限り量と質とを揃えたいのは当たり前だが、今は時間も惜しい。その配分が難しいところだ。
極力モンスターとの接触を避けながら、ホムは鉱山の奥に急いだ。
ふと、進行方向から何かが聞こえた。ホムは足を止め、耳を澄ませる。
(鳴き声……おそらくドナーン)
かなりの数がこの先にいるようだ。ホムは坑道の作りを思い浮かべながら、迂回を検討する。
その時である。
(……銃声?)
発砲の火薬音が、坑道の中に響いた。それに続くようにドナーンの鳴き声がさらに増える。
(誰かが戦闘をしている……しかし)
発砲音は断続的で撃っているのはおそらく一人。人が発しているであろう音はそれしかない。つまり。
「……一人」
誰かが孤軍でモンスターの群れを相手にしている。ホムは推測を付けると同時に走り出していた。
走っている最中も、銃声は続いている。反響する轟音に、ホムは思考を巡らせる。
(二連装の小型拳銃……発射間隔からして二丁……装填も手慣れている……しかしそれにしても一体多数というのは無茶)
前方にモンスターの影を確認したホムは、素早く呼吸を整えると同時に、護身用のアイテムを手に取った。
岩陰に身を隠したクーデリアは、素早く残弾を確認する。余裕が無いわけではないが、牽制や脅しに無駄弾を使えるほど潤沢でもない。
すぐ近くでドナーンの咆吼が聞こえる。既に三匹は倒していた。
音が立たないように空薬莢を捨てたクーデリアは、二丁のデリンジャーに新たな弾丸、計四発を込める。岩陰から僅かに身を乗り出して敵の姿を見る。
すぐ正面に一匹。向かって右に離れて一匹。
(……ここから正面のに二発浴びせて、飛び出して右のに二発、か)
普段ならあの程度のモンスター、苦戦することもない。たとえ一人であったとしても、問題ない。最初はそう過信していた。
だが、孤軍でモンスターの群れと対峙することが、どれほどプレッシャーになるのか、クーデリアはすぐに思い知らされた。
本来補い合うべき仲間がいないことが、どれだけ緊迫した状況を生むか。一体多数という戦闘がどれだけ危険なものか。
それを悟ったクーデリアは、即座に戦法を切り替えていた。正面から対峙することは避け、さながら暗殺者のように身を隠し、敵の隙を突いて撃ち、また隠れる。その繰り返しで敵の群れを駆逐していた。
深呼吸を一つ。二つ。
敵を撃つという、その一点に向かって、思考が研ぎ澄まされる。
氷のように静かに、心気が張りつめていく感覚。これは皆と一緒に戦っている時には味わえなかったものだ。クーデリアの口端に、乾いた笑みが湧いていた。
構える。
引き金を、
「っ……!」
引いた。二発の弾丸は過たず正面のドナーンの頭部に吸い込まれた。
(次っ!)
飛び出すと同時に発砲。右方にいたドナーンへ。一発は頭、一発は心臓部へ、見事に入った。
二匹のドナーンは、ほぼ同時に地へ伏した。
「ふう……」
銃口を下ろし、息をつく。周囲に敵の姿は見えない。
こちらの損傷はゼロ。それで敵を全滅できたのだから、上々だ。クーデリアは満足げに微笑みながら、デリンジャーの薬莢を落とし、薬室の状態を確認する。
「伏せてください」
「え?」
不意に聞こえた声に驚いた次の瞬間、小さな物体がクーデリアの頭上高くに放り投げられ、さらに次の瞬間、上方からクーデリアを狙っていたゴーストが作動したレヘルンによって凍りついていた。
クーデリアは一拍置いて、自分が油断し、危機にあったということ。それを誰かに助けられたということを理解した。
「お怪我はありませんか」
「あ、あんた……何でここに?」
現れたホムに、クーデリアが訊ねる。
「ホムはマスターの指示で錬金術の素材を採取しに来ました」
いつも通りの無表情で淡々と答えたホムは、反対にクーデリアに問う。
「あなたはここへ何をしにきたのですか? ただの散策にはいささか不向きな場所と思われます」
「う……」
クーデリアは気まずそうに目をそらす。
「何か言えないような事情でもあるのですか?」
「……別にそんな大したことじゃないわよ。ただ、その……退屈でしょうがなかったし、ロロナが何か忙しいみたいだし、ちょっと、錬金術の素材でも取ってきてあげようかと思って……」
「一人で、ですか?」
「そうよ」
「何故そのような無茶を」
「それは、その……一人でも何とかなると思って。あんただって、一人で来てるわけでしょ?」
「ホムは戦闘を極力避けます。万一のために十分な護身用のアイテムも持っています。あなたがしていることは無謀です」
「なっ……見くびらないでよ! ここのモンスターぐらいなら、一人だって平気よ! さっき証明――」
できてはいないことに気付いて、クーデリアの声が尻つぼみに小さくなる。先ほど一匹潜んでいるのに気付かず、油断していたのは事実である。
「……」
への字口になって黙り込むクーデリア。ホムはしばらくその様子を見つめてから、口を開いた。
「……失礼しました。そもそもホムがあなたの自由意思に関わる筋合いはありません」
「わ……分かったならいいのよ」
「しかしマスターの親友を危険な場所へ置き去りにしたなどということがあっては、マスターに顔向けできませんし、万一のことがあってはホムンクルスの名折れです」
「……何が言いたいわけ?」
「あなたに同行します。幸いにもお互いマスターのための素材集めということで、目的も共通です」
「なっ……頼んでないわよこっちは!」
「私も頼まれてはいませんので、断られても勝手について行かせてもらいます」
「〜っ」
暖簾に腕押しというか、何をどう言ってものらりくらりとかわされそうである。クーデリアはどうにもやりにくい感じに歯がみした。
「では、行きましょう。先導は――」
「私が行くわよ!」
怒鳴るように言い放つや、クーデリアはのっしのっしと歩き出した。
ホムは相変わらず無表情のまま、その後ろを歩いていく。
お互い良い迷惑な流れだが、ホム単独での採取作業はクーデリアと二人での探索に変更となった。
ふくれっ面でスタスタ歩いていくクーデリアだが、一応目的である素材集めを忘れてはいない。採取できるポイントできちんと足を止める。そしてホムと二人、素材を拾い集める。
クーデリアが集めた分の素材を確認したホムは、数こそ少ないがなかなか良質なものが揃っているのに感心する。
「……どうかしたの?」
「あなたは、マスターのことが本当に好きなのですね」
「んなっ……!」
どストレートに思ったことを言うホム。クーデリアの顔がたちまち赤くなる。
「いきなり何言い出すのよ!」
「好きでもない人のために、わざわざ危険な場所に素材を取りに来たりはしないはずです」
「う……それはまあ、その……」
「話を蒸し返すようですが、だからこそ無茶なことはしないでください。あなたにもしものことがあれば、マスターはとても悲しみます」
「……」
「行きましょう。あまり遅くなっては、マスターが心配します」
「うん……」
二人はまた、坑道の薄闇を歩いていく。
歩きながら、クーデリアは冷静に考えていた。
ホムの言うことは正しい。
自分の力を過信していたことも、今のクーデリアは自覚できている。が、それを認めたくないから、ここに来たのだ。
しかし、そのためにロロナを悲しませるようなことになれば、本末転倒もいいところだ。現にさっき、そうなっていたかもしれない。
クーデリアは深呼吸を一つして、不意に足を止めた。それから、ホムに振り向いた。
「……ホム」
「何ですか?」
「一つ言うことを忘れてたわ……さっきは、助けてくれてありがとう」
「……どういたしまして」
頷いたホムは、少し微笑んでいた。……ような気がした。
「ただいま戻りました。遅くなってすみません」
「あ、ホムちゃんおかえり――って、何でくーちゃんも一緒?」
採取から帰ってきたホムの横に、何故か仏頂面したクーデリアが立っているのを見て、ロロナの目が点になる。
「何よ。私が一緒にいたら悪い?」
「悪くないけど……二人ともいつの間に友達になってたの?」
「べ、別に友達とかそういうんじゃなくて、ちょっと色々あったっていうか」
「色々って……」
「あ、変な意味じゃないからね!?」
「? 変な意味って?」
「っ……だーもうっ、とにかくこれ!」
怒ったように顔を赤くしながら、クーデリアは自前のカゴをロロナに差し出した。
「これって……錬金術の素材?」
「これはその、退屈だからちょっと、散歩がてら取りに行ってたのよ。別にロロナのためとかじゃないからね。ついでよ、ついで!」
(あれはグランドマスターが以前言っていたテンプレートのようなツンデレ台詞……把握しました)
採取してきた素材をコンテナに整理しながら、ホムはそんなことを思っていた。
「ありがとうくーちゃん! とっても助かるよ!」
「へ? あ……えっと、本当に?」
「もっちろん!」
満面の笑みでクーデリアに礼を言うロロナ。世辞や社交の類でないことは、長い付き合いのクーデリアにはすぐ分かる。
アクシデントはあったが、ロロナの役に立とうという目的は達成できたわけだ。クーデリアは安堵と満足で胸を満たしていた。
「じゃあさ、ロロナ。良かったらこれから――」
「ごめんくーちゃん。予定が押してるから、お仕事の続きに取りかかっていいかな?」
「え……あの、ロロナ、まだ忙しいの?」
「うん。材料はくーちゃんのおかげもあって十分集まったから、むしろこれからがピークだね」
「……じゃあ、また何日もアトリエに籠もりきり?」
「そうなるね」
「……」
クーデリアのこめかみが震える。理不尽な怒りだと自分でも分かっている。分かっているのだが……
「……じ……じゃあ、私はもう、行くわね。仕事、頑張りなさいよ」
「う……うん」
明らかに不機嫌を押し殺した表情のクーデリアを、ロロナは訝しく思いながら見送った。
帰り際、クーデリアは街の住民が共用している井戸の前に立った。周囲に人気が無いことを確認し、井戸の底に顔を向けて、息を一杯に吸い込み――
「……いい加減、仕事ばっかじゃなくて私にかまえロロナの馬鹿――っ!!」
たまりにたまった本音を、思いっきり吐き出した。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
何でこんなに連投しまくってるかというと、まあコミケに行きたくても行けない鬱憤をSSにぶつけているというか何というか。
とりあえず姫始めSSまで突っ走ろうと思います。
あと今更だけど
>>5のミミちゃんのマントは赤色だね。ちゃんと見直さないとね……o...rz
なんかすごく心が晴れやかになった。
ロロクートトミミはいいのう
SS投下します。
前スレ569-572、582-587、673-678、704-722のトトミミ新婚生活編の続きに当たりますが、今回はケイナ視点のお話です。
※メルルがかなりやさぐれています。むしろキャラ崩壊してます。あくまでギャグです。あしからずご了承下さい。
アールズとアーランドの合併は滞りなく成立し、開拓のおかげで慌ただしかった日々もようやく終わり……と言いたいところですが、そう甘くはないのが世の常と申しますか。
私の主であり、一番の親友でもあるメルルは、アーランドから来た錬金術士トトリ様の弟子として五年間の開拓事業を乗り切り、錬金術士として、また人としても大きく成長されました。
今は手狭になった街はずれのアトリエを引き払い、元アールズ王城の中に新しいアトリエを作って、日々訪れる依頼に応えて、以前にも劣らぬ忙しい日々を送っています。
……ですが、最近少し、困ったことがありまして……。
「ケイナ〜……とりあえず今月分の依頼は終わったんだけど、何か他に来てるのあった?」
数日かかりきりだった調合を終えたメルルは、お世辞にも溌剌とは言えない様相です。
このところ仕事が立て込んでアトリエにこもりきりでしたから、せっかくの綺麗な御髪も乱れてしまって……ああ、嘆かわしい。あとで櫛を入れてさしあげないと。
「今来ている分はこれで全部ですよ」
「そう……それじゃあ、お茶入れてくれる? うんと濃いやつ」
「はい」
そう言われると思って、あらかじめお茶の支度はしておきました。一匙分茶葉を多くして、じっくり蒸らし、暖めておいたティーカップに注いで出来上がり。
「はい、どうぞメルル」
「あんがと……」
心底くたびれた様子のメルルは、受け取ったお茶にかなりの量のお砂糖を入れ、香りを楽しむ間もなくぐいっと飲み干します。せっかく私がメルルの好みも考えて茶葉を選んで、丁寧に入れてさしあげたのに、気付け薬か何かのように飲まれるのはちょっと……。
「ぷはぁ……あ゛ー……」
メルルってば、はしたない。天井を仰いで大きな息をついて……本当に疲れてますね。
「メルル、大丈夫ですか? 体調とか……」
「んー、まあ平気平気。トトリ先生の分まで私が気張らないとね」
元々このアトリエではメルルだけでなく、メルルの師匠であるトトリ様、それからトトリ様の師匠であるロロナ様、三人の錬金術士がいたのですが、現在ロロナ様はアーランドのご自分のアトリエに戻られています。
そしてトトリ様は……一年ほど前にご結婚、その後めでたく双子の女の子を出産され、現在は育児休暇を取られています。
「はー……でも、トトリ先生がうらやましいなぁ……私も結婚したいなぁ……」
「……」
「私も結婚したいなぁ」
二回言わないでください。しかも私の方をじっと見ながら。
「ケイナ」
「何ですか?」
「結婚して」
「ダメです」
「何でよー!? ケイナ私のこと嫌い?」
「好きですよ。でも、デジエ様とルーフェスさんのお許しが無い限りはダメです」
「許可なんて必要ないでしょ! 結婚は二人の問題なんだから! 私、ケイナ、好き! ケイナ、私、好き! 結婚、OK!」
「何でカタコトなんですか。ダメなものはダメです」
「じゃあ今からお父様とルーフェスを説得してくるから!」
メルルがドタバタとアトリエを去っていきます。残った私がティーセットを片づけ、ついでに錬金術の機材の整理整頓を終えた頃、ドタバタと戻ってきたメルルが開口一番。
「ケイナ! 駆け落ちしよう!」
ここまで予想通りというか、いつも通りの流れです。
「どこへ駆け落ちするっていうんですか。それにアトリエのお仕事はどうするんですか」
「うぅ……」
しょんぼりと肩を落とすメルルですが、こればっかりはどうにも……。
「う゛ー……お父様とルーフェスの意地悪……ついでにケイナも意地悪……」
「いじけないでくださいメルル。結婚しなくたって、私はメルルといつまでも一緒のつもりですよ」
「いつまでも一緒なら結婚してくれてもいいじゃない!」
「ダメです」
「けちー!」
「はぁ……」
ふてくされるメルルに、私はつい、小さなため息をついてしまいます。
アールズ・アーランドで同性婚が正式に認められるようになってからすぐ、メルルは私にプロポーズというか何というか……ごく当たり前のように「結婚しよう」と言いだしました。
しかし当たり前のようにメルルの父である元国王のデジエ様、そして執事のルーフェスさんに反対されてそのお話は無しになりました。
それ以後、幾度と無くメルルはお二人を説得しようとしているのですが埒があかず……
「……そういえばさ、ライアス君に彼女ができたそうなんだけど、ケイナ知ってた?」
「ええ。それなら聞いてますよ。どんな人かは存じませんけど」
以前はお城の門番兼メルルの護衛役をしていたライアスさんは、現在はアーランド王国アールズ方面の守備隊に所属。なかなか責任のある立場を任されているそうです。
「フィリーさん経由の情報だと、国立図書館の司書さんで、ライアス君より二つ年下。ライアス君が図書館に調べ物しにきたのがきっかけで知り合ったそうなんだけど、どういう経緯で付き合うまでに至ったのかは現在調査中。
顔はトトリ先生とケイナを足してパメラさんで割った感じで、性格は大人しめなんだけど結構明るくて、家事が得意で気立ての良い良妻賢母タイプだって。
家族構成は両親とお兄さんの四人家族。お母さんは専業主婦、お父さんは製鉄工場の技術部長、お兄さんは国営印刷所の事務員。
五年前にお父さんが技師として招聘されたのをきっかけに家族そろってアールズに引っ越してきて、現在は職人通りに在住。家庭状況は極めて円満。……だそうだよ」
「はあ……何でそこまで詳しいんでしょうか、フィリーさんは」
「ここまでハッキリとした情報が出ている以上、やっぱり事実と考えるべきだよね」
「ええ。でもそれが何か……メルル? さっきから目がすわってるんですけど……あの、コンテナから何を」
「安心してケイナ。この対リア充殲滅用戦術兵器『ピースメーカー2nd〜解放への雄叫び〜』でイチコロだから」
「安心できませんよ! 何をイチコロする気なんですか!? その物騒すぎるアイテムをしまってください!」
「止めないで! 裏切り者のライアス君をこのまま捨て置くわけには――」
「さっきから馬鹿なやり取りが通路まで聞こえてるわけだが……誰が裏切り者だって?」
噂をすれば何とやら。タイミング良く(悪く?)ライアスさんご本人がアトリエにいらっしゃいました。
「出たなーライアス君! 爆発しろーっ!」
「久しぶりに会った途端、何で爆破宣言されなきゃならないんだよ」
「すみません、メルルは今ちょっと疲れてまして」
「そうか」
これだけで納得するあたり、ライアスさんもさすがにメルルの幼なじみなだけはありますよね。
「ライアスさんは、ルーフェスさんに定期報告ですか?」
「ああ。ついでにメルルの様子を見に来たんだが……相変わらずやさぐれてるのか」
「ええ、まあ……」
「やさぐれてなんかないもん! お父様とルーフェスが意地悪なのが悪いんだもん!」
「やれやれ……」
肩をすくめるライアスさん。気持ちは私も同じです。
「ていうかライアス君からもルーフェスに何とか言ってよ。私もケイナも同意してるのに、何で結婚しちゃダメなの」
「兄貴には兄貴の考えがあるんだろ。そもそもメルルが言ってダメなのに、俺の説得で兄貴が意見を変えるとは思えないしな。まあ、焦らず機会を待てばいいんじゃないか?」
「むー……何さ! 自分は彼女できたからって余裕ぶっちゃって!」
「彼女って……誰から聞いたんだよ、それ」
「フィリーさんとエスティさんとフアナさんとパメラさんとハゲルさんと街で井戸端会議してる奥様方その他諸々だよ」
「どんだけ情報広がってんだ!? ていうかエスティさんとハゲルのオッサンはアーランドに帰ってるはずだろ!?」
「色恋沙汰は万里を越えるってことね」
「格言っぽく言ってんじゃねえ!」
「で、ホントのところはどうなわけ? 今からケイナがカツ丼作るから、洗いざらい吐いちゃいなさい」
「刑事かお前は。今そんなこってりしたもん食いたくねえよ」
「ふうん……どうあってもシラを切るつもりね」
「シラを切るも何も……おい、メルル……コンテナから何を」
「まさかこれを使うことになるなんてね……この、対リア充絶滅用戦略兵器『十二連装式N/A弾頭搭載ミサイルランチャー〜アールズの夜明け〜』を……」
「どこと戦争する気だお前は!? それ確実に人を狙ったらダメな類の武器だろオイ!」
「うるさーいっ! ライアス君なんかに結婚したくても出来ない私の気持ちが分かるかーっ!」
「分からないけどとにかく落ち着け!」
「何さーっ! 同性同士でも結婚OKになったんだから、どうせならライアス君だって彼女じゃなくて彼氏作ればいいでしょーっ! そんでもってご自慢のパイルバンカーを後ろに突っ込んだり突っ込まれたりしちゃえばいいんだーっ!」
「あの、メルル……年頃の女性としてそういう発言はいかがなものかと」
「完全に錯乱状態だな……」
……最近のメルルはこんな調子で、結婚を許してもらえないせいですっかりやさぐれて、時々おかしなことを言い出すようになってしまいました。
「メルル。少しは落ち着きましたか」
「うん……」
ひとしきりライアスさんへの『リア充爆発しろ』シャウトを終えたメルルは、大きなため息をついてから、改めてライアスさんの方に向き直ります。
「それでライアス君。実際のところどうなの? 恋人できたの?」
「いや、それは、その……まだそんな関係じゃないっていうか」
「てことはやっぱり彼女らしき人がいるんだ。確定したね」
「あっ、てめ」
「別に隠すことないでしょ。彼女にウニ投げつけようってわけじゃないんだから」
「俺にはそれどころじゃない物騒なもんをぶち込もうとしたけどな」
「で、どんな子なの? 美人? 可愛い? 性格は?」
「どうでもいいだろそんなこと」
「どうでもよくないよ! 幼なじみとして、ライアス君がどんな子とお付き合いしてるのか気になるし。万が一にも良くない人に引っかかったりしてないか心配だし」
なるほど、それが本心ですか。やさぐれていても、やっぱりメルルはメルルですね。
「心配してくれるのはありがたいが……本当にまだそういう段階じゃねえから。なんていうか、その……今度、機会があったら紹介する。それでいいだろ。じゃあな」
長居をしては何を言わされるか分からないと思ったのか、ライアスさんはそそくさとアトリエを出ていってしまいました。
「ああ、行っちゃった。久しぶりに会ったんだから、もっとゆっくりしていけばいいのに」
「メルルがあんまり根掘り葉掘りと聞きたがるからですよ」
まあそれ以前に、危ないアイテムを振り回して咆え猛っていたのが主な原因な気もしますけど。
「さてと……私は少し休もううかな」
「そうですね。ここ最近はずっとお仕事続きでしたから」
「うん」
そう言ってメルルはソファに深く腰掛けました。
「……あ、ケイナ。悪いんだけど酒場に納品する分、フィリーさんのとこに持ってってくれる?」
「はい。かしこまりました」
「ついでに先生のとこに寄って、赤ちゃん達の様子も見てきてよ」
「分かりました」
並木通りの酒場で納品を終えた後、まっすぐトトリ様のお家に向かいます。トトリ様のお家も並木通りにあり、酒場からさほど遠くはありません。
歩いて数分のうちに見えてきたのですが……何だか中が騒がしいですね。トトリ様とは別の、聞き覚えのある声がします。
ともあれ、ドアの前で耳を澄ましていても意味がありません。
「失礼し――」
「だってトトリちゃんは私の弟子で私はトトリちゃんの師匠なんだから! 弟子の赤ちゃんの面倒を見るのは師匠として当然のことだもん!」
「いいえ! 私には伯母として姪っ子の面倒を見る義務があります! だからこの子達の世話は私が引き受けます!」
「独り占めなんてずるいよ! お姉さんはただでさえトトリちゃんのちっちゃかった頃を独り占めしてたくせに!」
「今はそんなこと関係ありません! 大体独り占めっていうなら、トトリちゃんが冒険者になってから長い間トトリちゃんのことをとってたのは先生じゃないですか!」
ベビーベッドのすぐそばで、不毛な言い争いをしているお二方……トトリ様の師匠であるロロナ様と、トトリ様の姉であるツェツィ様ですね。
「ケイナ。久しぶり」
「あ、ピアニャさんもいらしたのですね」
もう一人いらっしゃいました。この方はピアニャさん。アーランドから海を挟んで東の大陸で錬金術士として活躍されている、メルルと私共通の友人です。
「今日はツェツィとロロナと一緒に、トトリに会いに来たんだ」
「そうでしたか。ところでトトリ様達は?」
「それなんだけどね……ロロナとツェツィが『普段子育て大変だろうから、たまには夫婦水入らずで羽を伸ばしておいで』って言って、トトリ達は出かけてったの」
「なるほど」
「――で。そのあとどっちが赤ちゃんの面倒見るかで揉めてるの」
「それはまた……双子なんですから、手分けすればいいのに」
「ねー」
確かにトトリ様の赤ちゃんは、二人ともとても可愛くて、独り占めしたい気持ちは分からなくもないですが。
天使のように愛らしい赤ちゃん二人は、自分が争いの種になっていることも知らずスヤスヤと眠っています。近くでこれだけ騒がしくしていても平気なあたり、大した肝の据わりっぷりですね。
「……そろそろお止めした方がよいのでは?」
「そうだね」
頷いたピアニャさんは、言い争いを続ける二人に静かに近づき。
「ほい」
手に持っていた砂時計型のアイテムを作動させました。
「さ。これで大丈夫」
「え? あの、どうなってるんですか?」
さっきまで騒がしかったお二人が、途端に黙り込んで……というより、言い争いをしていたその姿勢のまま、完全に固まっていました。
「竜の砂時計で、あの二人の時間だけを停止させたんだよ。それよりケイナ、そろそろ赤ちゃん達がおなか空かせる頃だから、手伝ってくれる?」
「あ、はい」
さすがピアニャさんも向こうの大陸で奮闘されているだけあって、頼もしい錬金術士ですね。
その後、私とピアニャさんで赤ちゃん二人にミルクを準備しました。タイミングよくおなかを空かせて泣き出した二人の赤ちゃんにミルクをあげている最中、砂時計の効果が切れて、
「ぴあちゃんとケイちゃんばっかりず〜る〜い〜! 私もだっこする〜!」
とロロナ様が言い出し、
「もうツェツィとケンカしないって約束する? ツェツィもロロナとケンカしない?」
とピアニャさんに言われて、二人仲良く良い返事をしていました。
「そういえばケイちゃんに会うのも結構久しぶりだね。メルルちゃんはどうしてるの?」
「相変わらずです。毎日アトリエで大忙しですよ」
「そっかー」
「トトリちゃんがお休みしてると、そうなるわよね……やっぱり赤ちゃん達は私が面倒を見て、トトリちゃんはお仕事に復帰した方がいいんじゃないかしら?」
「お姉さんってばそんなこと言って、赤ちゃん達とずっと一緒にいたいだけでしょ」
「う……だってだって! こんなに可愛らしいトトリちゃんの赤ちゃんなのに、アールズまで来ないと会えないなんて、あまりにも残酷じゃないですか!」
「トラベルゲートを使えば、簡単に会いに来られるのでは?」
「そういう問題じゃないのよケイナちゃん。私はいつでもすぐそばにいたいのよ。トトリちゃんが冒険者になった時も、アールズに行ってしまった時も、どれだけ辛かったか……」
「私が故郷に戻る時も、ツェツィすっごく騒いだもんねー……」
どことなく遠い目をするピアニャさん。話に聞いたところ、幼かった頃はずいぶんツェツィさんに猫可愛がりされていたそうです。
ピアニャさんとロロナ様、ツェツィ様に後の子守はお任せして、私はメルルの待つアトリエへ帰ってきました。お休み中のメルルのために、お菓子でも作ってさしあげましょうか。
――なんてことを考えていたのですが、
「ああケイナ! さっき急に大口の仕事がいくつか入っちゃって! 悪いんだけどトラベルゲート使ってアーランドのギルドに納品する分も配達頼める!?」
アトリエではメルルがいつにも増して忙しい様子でした。
「ええ、それは構いませんけど……本当に急なお仕事ですね」
「何かアーランドの方でまたロロナ先生がどっか行っちゃって連絡取れないんだって。アストリッドさんも相変わらず所在不明で、それでこっちのアトリエしか頼めるところがないとかで」
「えーと、それは……」
「あーもうっ、育児休暇のトトリ先生はともかくとして、せっかく元に戻ったロロナ先生は放浪癖まで戻っちゃうし、アストリッドさんは相変わらず自分のペースでしか仕事しないしおまけにホムちゃん達つれていっちゃうし、
ピアニャは向こうの大陸の仕事で忙しいし、ちむちゃん達はパメラさんのお店だし……だーっ! 人手が足りないーっ!」
名前を挙げられた錬金術士のうち半分は、現在並木通りで赤ちゃんのお世話をしています……とはさすがに言えませんでした。
「こうなったらケイナ! 今からでも錬金術士を目指さない!? 私が手取り足取り指導するよ!」
「結構です」
私はあくまでメルルのお世話係として、この道を行くと決めているんですから。
とにかく今はアーランドのギルドに向かわなくては。
「あ゛ーっ! この仕事終わったらお休み取って半日ぐらいケイナをもふもふしてやるーっ!」
勝手な予約をしないで下さい。……別に構いませんけど。
トラベルゲートを使ってアーランドにやって来た私は、急いで冒険者ギルドに向かいます。
「失礼します。アールズのアトリエから、依頼された品物を持ってきました」
「あら、ケイナじゃない。一人で来るなんて珍しいわね。メルルは?」
「お久しぶりです、クーデリア様」
アーランド冒険者ギルドの受付で、ギルドの責任者兼受付嬢であるクーデリア様に挨拶します。見かけは小さくて可愛らしいですけど、私より年上でとてもしっかりした方なんですよ。
「メルルは今、アールズのアトリエで急な仕事にかかりっきりです」
「あー……ロロナがまたどっかふらついてるからね。そのしわ寄せが行っちゃってるわけか。苦労かけるわね」
「いえ……それなんですが、その――」
私は現在アールズのトトリ様のお宅にロロナ様がいることを、かいつまんでクーデリア様に報告しました。
「あんの馬鹿たれーっ!」
怒鳴るや否や、クーデリア様は「これ借りるわよ!」と私が持っていたトラベルゲートを取って、ギルドの外に出て行ってしまいました。
あれが無いと私は帰れないのですが……と、不安になりましたが、十分も経たないうちにクーデリア様は戻ってこられました。半べそかいているロロナ様を連れて。
「うわーん、くーちゃんごめんってばーっ」
「私に謝る暇があったら、まず仕事に戻りなさい! 孫弟子があんたの分まで働いてんのよ!」
「うう……はぁい」
ロロナ様はすっかりうなだれて、その場を去って行かれました。
「悪かったわね。ロロナってば、出かける時はちゃんと私に行き先を教えろって言ってるのに、いっつも右の耳から左の耳へなんだから…………やっぱり一緒に暮らす件を真剣に考えるべきかしら……」
「クーデリア様、ロロナ様とご結婚なさるんですか?」
「へっ!?」
私が訊ねると、クーデリア様はとてもびっくりされていました。
「な、何で急にそんな話になるのよ!?」
「先ほど、一緒に暮らすと聞こえたので」
「……声、出してた?」
「ええ」
「〜〜っ!」
クーデリア様は顔を真っ赤にされました。こうして恥ずかしがっているご様子は、失礼かもしれませんけど、ずっと幼くて可愛く見えてしまいますね。
「べ、別にそんな、一緒に暮らすって言っても、イコール結婚ってわけじゃないわよ。そりゃまあ、同性婚がOKにはなったのは確かだけど、ロロナとはもうずっと昔からの付き合いだし、そんな今更……ふ、夫婦になるだなんて……柄じゃないわよ、そんなの」
「そうでしょうか? トトリ様達に負けないぐらい、お似合いのご夫婦だと思いますけど」
「っっ……と、年上をからかうんじゃないの! もう用事は済んだんだから、とっとと帰りなさいよ!」
「分かりました。それでは失礼します」
「あ、ちょっと。今の仕事を半分以上ロロナのアトリエに回すよう、メルルに伝えておいて。首に縄付けてでも完遂させるから」
「かしこまりました」
クーデリア様にお辞儀をして、私はギルドを後にし、アールズへ帰ります。
「はぁ〜……ロロナ先生が復帰したのはいいけど、それにしても忙しいなぁ〜……」
調合釜を一生懸命かき混ぜながら、メルルがため息をつきます。
「私もお手伝いしますから、頑張りましょう」
「うん……あ、そうだ。この仕事終わったらさ、久しぶりにどこか遊びに行かない?」
「ええ。いいですよ。どこに行きたいですか?」
「ウェディングドレス選び! それから式場の下見!」
「遊びじゃないでしょうそれは」
「ええー、いいじゃないのー。結婚してよー」
「お許しが出るまではダメです」
「お父様もルーフェスも絶対許してくれないじゃない! そんなの結婚したくないって言ってるのと同じだよ!」
「そうでもないですよ。きっと」
「え?」
メルルはキョトンとした顔で首をかしげますが、これ以上は言わずもがなですね。
「それより、今はお仕事に集中しましょう。終わったら、美味しいお弁当とお菓子を作りますから、久しぶりにピクニックにでも行きましょう」
「やった! そうと決まったら、とっとと終わらせないとね!」
気合い十分なメルルに、思わず笑みがこぼれます。
その調子で、これからも頑張ってくださいね……未来の旦那様。
日も落ちた頃――並木通りの酒場。
カウンター席に、二人の男が並んで腰掛けていた。ライアスとルーフェスの兄弟である。
「考えてみれば、兄貴とこうやって酒飲むのって初めてかもな」
「そうだな」
木製のジョッキを傾けながら、ルーフェスが相づちを打つ。
「……で、話というのは何だ?」
「ん? ああ……メルルとケイナのことなんだけど」
「ああ、そのことか」
それだけで、ルーフェスにはライアスが何を聞きたいのか察した様子だった。
「何で結婚させてやらないんだ? 同性でも結婚できるよう、法改正したんだろ」
「トトリ様のおかげで、同性婚の多発が少子化の一因となることはなくなったからな。デジエ様もジオ様も、その点に関して異論は無かった」
「だったら何でメルル達のことは反対なんだよ?」
「根本的に誤解しているな。デジエ様と私は、姫様とケイナの結婚に反対はしていない。ただ許可をしないだけだ」
「それって……ああ、そういうことか」
合点して頷くライアス。
「今はまだ、ってことだな?」
「そうだ」
ルーフェスも頷く。
「姫様はまだ、所帯を持つには早すぎる。ただそれだけのことだ」
「相変わらず厳しいな、兄貴は」
「当たり前のことだ。姫様にはもうしばらく社会の荒波に揉まれてもらわないとな」
ジョッキに半分ほど残ったビアを一気にあおり、ルーフェスが息をつく。
「もっとも、姫様はともかく、ケイナの方はその辺りには気付いていそうだがな……」
「メルルよりよっぽど聡いとこあるからな、あいつは」
「人のことよりもライアス、お前はどうなんだ」
「えっ……お、俺かよ。俺は別に……ていうか、そういうのは兄貴の方が先だろ。年上なんだから」
「現状、私は妻を娶る気はないからな。というわけでお前の話だ。せっかくの腰を据えて話せる機会だからな。件の交際相手について、じっくり聞かせてもらうとしよう」
「うう……メルル達のことを話すつもりだったのに、何でこうなるんだよ……」
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
トトミミの続きと銘打っておきながら、トトミミ不在ですみません。
トトミミで子育て編も挑戦してみたくはあるんですが、それだとどうしても子供の名前を出さざるを得ない(=オリジナル臭が強くなってしまう)ので、どうにもこうにも……。
細かいネタはあるんですけどね。
産後でお乳が張ってるトトリ先生にムラムラしちゃうミミちゃんとか。そして、連日子育てで疲れているトトリに無理させるわけには……と自重するミミちゃんだけど、それを分かっていながらあえてミミちゃんを挑発するトトリ先生とか。
それはさておき。
今年はお世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いします。
乙
今年はアトリエSS豊作だったなぁ
お古のマントをおくるみにして育った双子がミミちゃんの匂いと温もりを求め
ソファで読書しながらうとうとしているミミたんの懐に潜り込んで寝ているところを
観察するトトリちゃんの子育て編……?
>>33 GJ。ミミちゃんを挑発するトトリ先生とか俺得すぎるので、投下されるのを心待ちにすることにします。
今年もSS繁盛なスレになりますように。
>>33 >トトミミで子育て編
と思ったら、トトリちゃんの中の人が女の子を出産したそうで…
それは兎も角、挑発するトトリちゃんと、葛藤の末に狼になるミミちゃん(その後自己嫌悪に)とか見てみたいな
あけましておめでとうございます。
SS投下します。
トトリエ時代のトトミミ。
「ねえねえミミちゃん。『姫始め』って知ってる?」
「ぶっ……!?」
年が明けてから間もないある日のこと。アランヤ村のアトリエで、遊びに来ていたミミにトトリがそんなことを言い出した。
ソファに腰掛けていたミミは、思わずむせ返りそうになったが、どうにか堪える。
「い、いきなり何を言い出すのよあんたは!?」
「何って、別に……ただミミちゃんが知ってるかなーって思って」
「そ、そりゃ……知ってはいるけど……」
折しも年が明けてすぐのこの時期。二人っきりのアトリエでそんな話題を振られたら、ミミとしてはついつい変な方向に意識をしてしまう。
「ミミちゃん? 顔赤いけど、大丈夫?」
「――っ!」
トトリがぐいっと顔を近づけ、ミミのおでこに手を当てる。ミミの心音がたちまち跳ね上がる。
「熱はそんなに無いみたいだね」
「っ……ぁ……ぃ……」
「ん? ミミちゃんどうしたの?」
顔が近い。と、それだけ言いたいのだが、緊張しているミミは口をパクパク開くばかりだ。
「ミミちゃん?」
「ぁ、ぁ……あんたがっ、変なこと言い出すせいでしょ!?」
「へ?」
「あっ……」
しまった、と思った時にはもう遅い。これでは『姫始め』という単語に過剰反応しているのを告白したようなものだ。
「変なことって……姫始めのこと?」
「っ……そ、そうよ。何で急に、そんな……エ、エッチな話題、振ったりするのよ」
「姫始めって、元々外国の風習で――」
「ええ。要するに、新年になってから、初めて、その……」
「お米を軟らか〜く炊いた姫飯(ひめいい)っていうのを食べることでしょ」
「……え?」
予想外の話の流れに、目を丸くするミミ。トトリの方はというと、不思議そうに首をかしげている。
「それって何かエッチなの?」
「ちっ、違っ……何でもないわよ!」
「何が何でもないの?」
トトリはあくまで無邪気に、それでいて興味津々に訊ねてくる。
「だからもうっ……いいってば! 私の勘違いだったから!」
「勘違いって、何と?」
「聞くんじゃないわよ!」
「え〜、だって気になるんだもん」
「気にしなくていいから!」
「ふ〜ん……」
聞き出すのを諦めたのか、大人しくなったトトリに、ホッとするミミ。
「ミミちゃん」
「何? ……――っ!?」
油断大敵。一瞬の不意を突いて、トトリの唇がミミのそれを奪っていた。
「……教えてくれなきゃ、もっとエッチなことするよ?」
「なっ……ちょっ……」
もう一度キス。今度は深く、舌まで入れて。
「ん、っ、あ……ちょっ、トトリ、やめ……!」
「だーめ♪」
「んんっ!?」
身をよじって離れようとするミミだが、トトリからは逃げられない。
「ん……ミミちゃんのお口の中……とっても甘いね……んっ」
「あっ、ぁ……ん……っっ」
口づけを繰り返し、舌が絡み合って銀の糸を引く。
トトリの手のひらが、衣服ごしにミミの胸を触る。ミミはびくりと体を震わせた。
「ふふ……ミミちゃんてば、緊張してるの?」
「そ、そんなこと……ひゃうっ!?」
トトリの指がミミの下腹部に伸びて、熱く火照ったそこへふれる。
「あれ? ミミちゃんのここ、何だか湿ってるみたいだよ? キスしてるだけなのに、ね」
「あっ、う……ト、トトリぃ……それ以上は、だめ……」
「何がだめなのかな?」
「あっ、んっ……」
舌を絡ませながら、トトリの手がミミのホットパンツの中をまさぐる。潤んだそこに直接指を這わせると、ミミの口から声が漏れた。
「ひゃ、ん……」
「ミミちゃん……そろそろ観念して、何を勘違いしたのか教えてほしいな」
「そ、そんなのっ……っぁ」
ミミの首筋にトトリが唇を当て、吸い上げる。
「うふふ……ミミちゃんてば、新年早々すっごく目立つキスマークが付いちゃったね」
「〜〜っ」
「でも一つじゃ寂しいから、もっともっと付けてあげようかな」
「やっ、待って……!」
ミミの服をはだけさせ、露わになった胸元にトトリが唇を当て、舌を這わせる。
「やっ、あっ、あっ、んぁ……」
汗ばんだ肌にトトリの唇や指が愛撫を加えるたび、ミミの口から艶めかしい声が零れてくる。
上半身いっぱいにキスマークを付けられたミミは、息も絶え絶えといった様子だった。
「ミミちゃんったらそんなにエッチな声出して……ひょっとして、誘ってるのかな?」
「ちっ、違っ……そんな、わけ……やっ」
「うわぁ……さっきよりも濡れてるね」
ミミの上だけでなく下も脱がせて、トトリは割れ目に指を潜らせる。しばらくその感触を反応を楽しむと、濡れた指を離し、仰向けになったミミの下半身に顔を近付けた。
「ミミちゃん、足開いてくれなきゃよく見えないよ」
「い、いやよ、そんな……」
「だめ。開くの」
強引に両膝を開かせると、トトリは存分に潤んだそこへ口付けた。
「やっ、あんっ……ト、トトリ……そんなとこ……汚い、わよ……」
ミミは羞恥に顔を真っ赤にしているが、トトリはそんなことお構いなしだ。
「そんなことないよ。ミミちゃんのここ、すっごく綺麗だし、美味しいよ」
「――っ!」
目を背けるミミに構わず、こなたは割れ目にもう一度キス。それから舌を伸ばして中まで這わせ始めた。
「あっ、んっ、あ、ふぁ、あ……」
トトリの舌が、陰唇からクリトリスまで丹念に舐め回していく。ざわざわとわき上がってくるような快感に、ミミは声を漏らす。
「んっ、あ……トトリぃ……んんっ、あっ、あっ、あっ……あ――」
敏感なところを執拗に舐められていくうちに、ミミの中で何かが昂ぶっていく。やがて強い快感が全身を貫き、ミミはトトリの名前を強く叫びながら、激しく体を痙攣させた。
「……は……ぁ…………」
「ミミちゃん……イっちゃったね」
「〜っ!」
嬉しそうな笑みを浮かべるトトリに、ミミは恥ずかしいやら悔しいやらで、目を合わせられない。
「ねえ、ミミちゃん。そろそろ教えてほしいな……」
「あっ」
トトリの指が、達したばかりで敏感になっているそこにふれ、吐息が耳元にかかる。
「ミミちゃんは、何を勘違いしたのかな? 教えてくれるまで、今日は帰してあげないかも……♪」
天使のように無垢な笑みを浮かべながら、トトリはミミに覆い被さる。
そしてそのまま――そのまま――
「――はっ!?」
ミミは目を見開いた。自分はベッドで横になっている。目に映っているのは、アランヤ村滞在中にいつも利用している宿屋の天井。
「ゆ……夢……?」
体を起こし、口に呟いて確認したミミは、大きく安堵の息をついた。リアリティのある夢だったが、覚めてしまえば何と言うことはない。ただの夢だ。
だがしかし、
「……今日は……一月一日……」
年が明けて最初の日の朝。つまり、
「……な……なんて初夢を見てるのよ、私は……」
恥ずかしさと自己嫌悪に、ベッドの上で頭を抱えるミミだった。
ひどい初夢のおかげでトトリと顔を合わせ辛いミミだったが、今日会う約束をしていたので、やや重い足取りでアトリエにやってきた。
「ミミちゃんいらっしゃい。あけましておめでとう」
「え、ええ……」
当たり前のことだがトトリはいつも通り朗らかな様子だ。変に意識してしまっているのはミミだけである。
(落ち着きなさい……あれはただの夢なんだから)
小さく深呼吸をして、ミミは改めてトトリに向き合う。
「あけましておめでとう。今年もよろしくお願いするわね、トトリ」
「……」
精一杯いつも通りを振る舞って新年の挨拶をしたのに、トトリは何か変なものでも見たようにキョトンとしている。
「どうしたのよ?」
「その……ミミちゃんが普通にお淑やかな挨拶するから」
「なっ……どういう意味よそれ!?」
「だってミミちゃんなら『今年こそ私が最強の冒険者になってみせるんだから、見てなさいよー!』とかそういう感じかと。確か去年もそんなだったし」
「ぐ……あんたねぇ……」
「あ、ウソウソ。ミミちゃんはいつもお淑やかだよね」
「わざとらしいわよ! まったく……」
腹は立ったが、概ね事実だから否定しようがない。しかしこのやり取りのおかげで、ミミはいつもの調子を取り戻すことができた。
(変に意識するのが馬鹿らしかったわね……所詮はただの夢なんだから)
落ち着いたミミは、トトリに促されるまま、奥のソファに腰掛けた。
「ねえねえミミちゃん」
お茶の支度をしながら、トトリが声をかけてくる。
「何よ?」
「『姫始め』って知ってる?」
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
>>37 昨夜SS投下した後でそれを知ってびっくりした。
そして旦那さんの想像図がミミちゃんか某扶桑の魔女になってしまう自分はもうダメだと思った。
43 :
42:2012/01/01(日) 22:41:41.80 ID:WsQ2nkj8
あー……
>>40に一カ所別作品のキャラの名前が入ってるのは見なかったことにしてください。
以前に他所で書いたSSの一部を流用した名残です……新年早々見苦しいことしてすみません……o...rz
SS投下します。
今回はロロクー。時代はロロナ〜トトリ間ぐらいなイメージで。
「ねえねえくーちゃん。『姫始め』って知ってる?」
「ええ。外国の風習で、年の初めにお米を柔らかく炊いた姫飯(ひめいい)を食べることでしょ」
年が明けてすぐのある日のこと。アトリエに来ていたクーデリアは、ロロナの唐突な質問に淡々と答えていた。
「へー。そういう意味もあるんだ」
「そういう意味もって……他にどういう意味があるのよ?」
「くーちゃん知らないの?」
「何のこと?」
「あのね……」
並んでソファに座っていたロロナが、内緒話をするように、クーデリアの耳元に顔を近づける。
「ひゃっ……ちょっと、こそばゆいわよ!」
「あ、ごめん」
ロロナの吐息が耳たぶにかかり、クーデリアはつい変な声を上げてしまった。
「あのね、姫始めってね、年の初めに――ヒソヒソ」
「……!」
囁き声でのロロナの説明を聞いたクーデリアは、たちまち頬を赤くする。
「何よそれ? ホントなの?」
「うん。むしろこっちの意味の方が有名だと思うんだけど」
「ふ、ふーん……そうなんだ」
「……」
「…………」
二人の間に、少し妙な沈黙が降りる。
「くーちゃん」
「なっ……何?」
ただ呼びかけられただけで過剰に反応してしまうクーデリアに、ロロナは首をかしげる。
「お茶のおかわりどう? ……って聞こうとしたんだけど、どうかした?」
「あ……そう。いただくわ」
「はーい」
ロロナはいそいそとお茶のおかわりを用意し始める。
誰に似たのか(多分師匠)、最近になって時折ふらっと姿を消してしまう放浪癖のついてしまったロロナだが、年末年始ぐらいはなるべくアーランドに帰ってきて、両親や顔馴染みの面々、そして一番の親友であるクーデリアと顔を合わせるようにしていた。
「それでくーちゃん、さっきの話なんだけど」
「話って?」
「姫始めのこと」
「ぶはっ……!?」
クーデリアは飲みかけていたお茶を吹き出してしまう。
「くーちゃん、大丈夫?」
「だ、大丈夫……って、それより何よ? 姫始めの話って? さっきのはただの世間話でしょ」
「んー……まあ、そうなんだけど」
ロロナは何気なくクーデリアとの距離を詰めてきた。
「くーちゃん……」
「な……何よ?」
「くーちゃんと姫始めしていい?」
「っ!!」
ドが付くほどストレートな要求に、クーデリアの顔がたちまち火がついたように真っ赤になる。
「あ、あ、あんたねぇ!」
「あぅ……くーちゃんが怒った……やっぱりだめ?」
「だ、だめだなんて言ってないでしょ……でも、その……もっとこう、オブラートに包みなさいよ!」
「え? えーと……くーちゃんをオブラートに包んでいい?」
「包むな馬鹿! そういう意味じゃないわよ!」
「じゃあどういう意味?」
「だからその……姫始め……するにしても、もうちょっと、雰囲気を出してほしいっていうか……」
「くーちゃん」
「何? ……!」
顔を上げたクーデリアに、ロロナが優しく唇を重ねていた。
「くーちゃん……これじゃだめ?」
「……」
恥ずかしそうに目をそらしながら、クーデリアは首を小さく横に振る。だめじゃない、と理解したロロナは、もう一度クーデリアに口づけた。
「ん……」
最初は軽めに。二度目は少し深く。ロロナの舌がクーデリアの中に入っていく。
クーデリアの縮こまった舌を、ロロナの舌先がつっつき、解きほぐす。
「ぁ……んっ……ロロナ……」
「くーちゃん、可愛い……んん」
キスをしたまま、ロロナはクーデリアの胸に手を伸ばす。慣れた手つきで服をはだけさせると、小ぶりな乳房を手のひらで包んだ。
「くーちゃんのおっぱい、ちっちゃくて可愛いよ」
「……っ、ちっちゃくて悪かったわね」
「全然悪くないよ。ほら」
「あっ」
ロロナの手に少し力が籠もる。クーデリアの口から思わず声が漏れた。
「相変わらず感じやすいんだね」
「〜っ」
恥ずかしさと悔しさが入り交じった目をしたクーデリアは、負けじとロロナのスカートの中に手を伸ばしてきた。下着越しにそこへふれると、濡れているのがよく分かった。
「やっ……くーちゃん」
「いやらしいわね……キスしてるだけでこんなにして……」
「はっ……あっ、ん……」
そのまま指先で強くこすると、ロロナが押し殺したような声を漏らす。
「あんただって、人のこと言えないぐらい感じやすいじゃない」
「そんなこと……ないよ……くーちゃんだから、だもん……んっ」
もう一度唇を重ねる。舌を絡ませながら、お互いの指がお互いの大切なところに伸びる。熱く湿ったそこへ、細い指が潜り込む。
「くーちゃん……好き……大好きぃ……!」
「んっ……ロロナ……ぁ……私も……」
唇と舌と指とで繋がった二人は、甘い囁きを交わしながら、強く体を重ね、音が立つほど激しく愛撫しあう。
「あっ、あっ……くーちゃんっ……私、もう、もう……!」
「ロロナっ……ロロナっ……あ、っ――」
やがて、二人の体の中を、大きな何かが弾けるような感覚が走った。
「……はぁ……くーちゃん……イっちゃったね……」
「はぁ……はぁ……」
行為の余韻も覚めず、息を荒げているクーデリアに、ロロナはそっとキスをする。
「……続きは脱いでからしよっか」
「……まだやるんだ」
「だって姫始めは一回だけとは決まってないし」
「……ったく」
やれやれ、と言いたげな表情をしながら、ロロナのキスを受け入れるクーデリアだった。
すでに日は落ちている。
「くーちゃん、晩ご飯食べていくでしょ」
「ええ。いただくわ」
ことが終わって格好を整えて、いつも通りに戻った二人は、どことなく晴れ晴れとした表情だった。
「今夜は何にしよっかなぁ……久しぶりにキノコ尽くしとかがいいかなぁ」
「それでしたら、調理はホムにお任せ下さい」
「そう? それじゃあお願いね。ホムちゃん」
「はい」
「それじゃあ、くーちゃん、ご飯はホムちゃんが作ってくれるから…………え?」
目を丸くしてロロナが先ほど自分が会話していた方向へ振り向くと、そこには少女型のホムンクルス――ホムが立っていた。
「ホ、ホムちゃん!? 何でここにー!?」
「確認します。マスターのその一連の言動は『ノリツッコミ』と呼ばれるもので間違いないでしょうか?」
「この子の場合は天然よ。ていうかそれより、あんた、いつからここに……?」
クーデリアが「まさか……?」と背中に冷や汗を流しながら訊ねる。
「つい先ほどです。グランドマスターから『正月ぐらいロロナも帰っているだろうから、たまには様子でも見てこい』と言われてやってきました」
平然と答えるホムに、ロロナとクーデリアはホッと胸をなで下ろす。
「本当はお昼過ぎに到着していたのですが」
「「……え?」」
続くホムの言葉に、ロロナ達の表情が固まる。
「グランドマスターから『そういえば時期的に姫始めの真っ最中かもしれんなぁ。そのときは気を遣って終わるまで待ってやれ。親しき仲にも礼儀あり、だな。ハッハッハ』と言われていたので、その通り実行いたしました」
「―――○×△っ!!」
耳まで真っ赤にして、声にならない悲鳴を上げるクーデリア。
「えっと、じゃあ、ホムちゃん、さっきの……見てたの?」
「さっきの、というのがマスター達の性行為を指すのでしたら、はい、見ました」
「えぇぇ!?」
さすがにロロナの顔も真っ赤になる。
「日が沈む前に終わるだろうと思っていましたが、まさか五回戦までいくとは、ホムの予想外――」
「ちょっ……ホームーちゃーん!!」
詰めの甘い気遣いは気遣いじゃない。
アストリッドとホムに強くそう訴えたい、そんなロロナのお正月だった。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
昨年末からのSS連投はここまでです。
駆け足で執筆投下してお見苦しい点も多く、失礼いたしました。
新作の情報等まだ不明ですが、今年もアトリエシリーズの百合が盛り上がりますように。
49 :
名無しさん@秘密の花園:2012/01/02(月) 22:55:28.15 ID:TO+Yh4tl
GJ
俺は今素晴らしいロロクーを見た、GJ
GJ。ほむちゃんいい仕事してるw
52 :
名無しさん@秘密の花園:2012/01/03(火) 11:57:30.78 ID:DAnOk8Q/
ホムのオチ最高w
お疲れ様でした!
自分が子育て書いたとき、たしかに名前つけるとオリジナルになっちゃうから
お姉ちゃん、妹ちゃんって呼ばせてたな。それで書いてくれ頼む
GJ!
これはいいホムwww
年始からいいもの見せてもらいました!
乙です!
ちょっと質問なんだけどさ、ここに投稿したSSって、本人なら例えばPixivにも投稿してもいいのかね?
イマイチローカルルールには詳しくなくて……
別に自由だよ
>>59 Thanks。
なら、前スレに投下した奴の続きでも書いてみるかな……
SS投下します。
続きものなんで、おkの方のみ見てやって下せっ!
ミミとトトリの話。メルル時代のいつか。
『ガラスの花』 第一話
――――ぽつん
何かが頬に当たる感じがした。雨だろうか。
たちどまり力の無い仕草で、ゆっくりと首を上に向ける。
振り仰ぐようにして空模様を見ると、どこまでも続く灰色が広がっていた。
周りを歩く人々も雨が本降りになる前にと、各々急ぎ足でどこかへ向かって行く。
あぁ、これは……すぐに酷い雨になるわね。
冒険者として養った勘と洞察力は、こんな時すらも働く。
命のやりとりを行う場で、自分の状態がどのようなものであれ常に冷静に状況判断が出来てこその一流冒険者だ。
もちろん普段から心がけなければそんな技は身につかない。
シュヴァルツラングの名に恥じぬ一流冒険者となるべく磨いて来た技。
あの子と一緒に―――培ってきた技だ。
今は、だめだ。
何がダメなのかは自分でもよく分かっていない。
ただ、今はまだダメなのだ。
私はどこで間違えたのかな。
浮かんだ疑問は心の中で淀んだまま消えはしなかった。
◆
それは理解していた事だった。
初めて告白したあの時。
あふれ出る想いをこらえる事が出来なくて。
他の誰よりも自分が近くに居たくて。誰かに渡すなんて許せなくて。
そしてあの子も、少しくらい私の事を――なんて夢も見ていた。
しかしそんなのは都合の良い夢でしかなかった。
私が決定的な言葉を口にした時、それを一瞬で悟った。答えを聞くまでもなかった。
トトリの戸惑った視線を見れば、否が応でも理解せざるを得なかった。
トトリと私は相容れぬのだと分かったその時に『冗談よ』と一言言えたらよかったのかもしれない。
そうしたらあの子だって『本気に見えたよ、もう!』なんて怒って
『本気にするほうが悪いのよ』なんて私も返して。
そうして二人で笑いあっただろう。
今までもこれからも、一番の友達としてトトリのそばに居続ける事が出来たのかもしれない。
でも私は言えなかった。この想いを嘘でも冗談なんかにしたくなかった。
けれど最愛の人を潔く諦めきれるほど、出来た人間でもない。
だから、優しいあの子を困らせると分かっていたけれど、ある提案をした。
『三月付き合ってみて、それでトトリの答えを聞かせて。私との関係をよく考えてみて欲しいの』と。
あの子はそれに頷いてくれた。
とりあえず出来た猶予期間。
私はいつも通りを心掛けた。特に何かした訳じゃない。
いつも通りに近場で冒険にいって、錬金術の材料を集めたり依頼を引き受けたり、
本当に日常を送るばかりだった。
というよりもトトリも私も忙しくて、普段の生活をするのが精いっぱいだったと言うのが本音だ。
でもトトリが私の事を意識してるのは感じてた。
なんとなく会話がぎくしゃくする。
あれほど多かったスキンシップもなりを潜めていた。
二人で話している時など、目線をなかなか合わそうとしなかったのだ。
でもそれは仕方ないと思っていた。
だって友達から告白されれば誰だってそうなると思うし。
それでもトトリは笑っていたし、普通に見えた。
三月後に何を言われるか、分かってはいた。
少なくともその時はわかった気持ちになっていた、というのが正しいかもしれないけれど。
きっとあんな提案をしようがしまいが、トトリの答えは変わらないだろうと思っていた。
それでもトトリが私の事を考えてくれている時間が増えるのは、少しだけ嬉しかったりした。
我ながら単純だと思うが、仮初のものとはいえ、
トトリと付き合っているという事実に幸せを感じていたのだと思う。
だけど終わりは思いのほか早くやってくる。
あの告白の日から、一月後。
トトリは思いつめた顔をして私と相対する。
『……ごめん、ミミちゃん。私、やっぱり……無理だよ』
そんな風な出だしからの決別の言葉は、またたく間に私の頭を真っ白に染め上げた。
とつとつと話すトトリの言葉が耳をすり抜けていく。
トトリの話を聞く私に分かったのは、自分の愚かさだけだった。
トトリは笑顔の下で日々悩んでいたのだ。
好きになってくれた事は素直にうれしい。
でも私の事を好きになれる気がしないのに、恋人としてそばにいていいのか。
余計な希望を持たせていいのか。
隣に居て笑っていていいのか。
そんな悩みは私の事を騙しているような、耐えがたい罪悪感を生む。
その罪悪感にのまれそうになっても、人に相談する訳にはいかないから、
一人で悩み続けていた。
泣きそうになりながら話し続けるトトリの姿から、
私と想いは違うけど私を大切に思ってくれている気持ちが伝わってきた。
泣きそうなのは自分の悩みが辛かったからではない。
トトリ自身が発する言葉で私が傷つくのが苦しいのだろう。
私の想いを否定する言葉を吐かねばならないのが、たまらなく辛いのだろう。
本当に優しい子。
そうとも。そんな優しいトトリに私は魅かれたのだから。
同時に、そんな最愛の人の顔を酷く歪めているのは紛れもなく、私のせいだった。
しばらくの平穏な時間と引き換えに、私はトトリに負担をしいたのだ。
だから、決断した。
私の想いがトトリにとって重荷にしかならないのなら。
この想いをこれから先永久に封印する事を。
◆
ぼつ、ぽつぽつ―――ざぁあああ
ぼぅ、としていたらしい。
本格的に降り出した雨が、回想を遮った。
気づけば通りにはあまり人が歩いておらず、僅かにいる人も皆、傘をさし道を急いでいる。
道にとどまりぼんやりと立ち止まっているのは私だけだった。
降りしきる雨粒が全身をくまなく濡らしていく。
不思議と寒さは感じない。
寒さを感じる器官など初めから存在しないかのようだ。
感じるのは濡れているという事実だけ。
いや、それも視覚から入ってくる情報がそう頭の中に伝えているだけなのか。
まるで、自分が自分では無いような、大切な半身を失ったような虚無感。
ゆっくりと歩きだす。
もはや土を踏みしめている感覚すら危うい。
私はどこに居るんだろう。どこに向かっているんだろう。もう、よく分からない。
考えたくなくて、思考を放棄した。
しかし足は前に進んで行く。
景色は流れる。
降りしきる雨が頬を流れ落ちる。
ふと気付くと、借りている宿屋の室内に立っていた。
いつのまに帰ってきたのだろう。
びしょびしょの自分の体をみると、相当長い時間外に居たようだが、記憶は曖昧だ。
ぽたぽたと水が床に落ちる。
服の端から髪の毛からとめどなく水が垂れている。
このままでは床がびしょぬれになってしまう。
こういう時、何をすればいいんだっけ…?
まともに動かない頭とは裏腹に、手が荷物をあさり始める。
動き始めた自分の体を見て、あぁ、私はタオルを探しているのかと思う。
無造作に動く手を、はるか遠くから見るように眺め続ける。
冷えてしまったように頭は働かない。
動きを止めた心はその場にとどまり続ける。動き出す事など無いかのように。
ふと、手が止まる。
目に入ったのは、花。
小さな瓶に入ったドライフラワー。
荷物の中から顔をのぞかせたそれに、目を奪われる。
どくん。
心臓が動く音が聞こえた。
震える手がゆっくりと、小瓶をつかむ。
そっと持ち上げて顔の前にもってくる。
『はい、これあげるよ! 材料が余ったからメルルちゃんと作ったんだ!』
波紋が一つ。
『メルルちゃんはケイナちゃんにあげるんだって。私は日ごろの感謝もこめてミミちゃんに!』
波紋が二つ、三つ。
『え? ううん、いいの!ミミちゃんの喜ぶ顔が見たかっただけだから』
揺れる心のしぶきが思い出させる。
もう戻らない温かな日常を。
叶わなかった想いを。
そして、これをくれたのは誰だったかを。
「…………トト、リ」
呟いたその声とともに、水が頬を伝う。
ぽたん、と持っていた小瓶に水がかかる。
「――――あ」
あぁ、私は泣いているのか。
いけない。自分の涙なんかでトトリからのプレゼントを汚してはいけない。
だから、はやくこの小瓶をしまわなきゃ。
もしくは泣きやまなきゃ。
だって分かっていた結論を、再び目の前につきだされただけじゃない。
今更落ち込んでどうするのよ。
さぁ、小瓶をしまって泣きやんで、体をふくのよ、ミミ・ウリエ・フォン・シュヴァルツラング。
「あ……れ?」
かくん、と膝が落ちる。
壊れたように流れ始めた涙は、次々に小瓶に降りかかる。
「あ、ははは、なにやってるのよ、私は……。早く……動かなきゃ」
ひび割れたように響く自分の声が、室内に溶け込む。
足に力は入らず、ピクリとも動かない。
「あ……あ…ぅ……」
ぼろぼろとこぼれる雫にもはや抗う術などない。
落ちる雫は小瓶にはじかれ、中の花には届かない。
それはまるで―――――私の想いのような。
そう思い当った時に、決壊した。
「う、うぁあああああああ!」
振りしぼるような叫び声が喉の奥から発される。
小瓶を胸に抱きかかえるようにして、私は泣き叫ぶ。
振りしぼるような叫び声が喉の奥から発される。
小瓶を胸に抱きかかえるようにして、私は泣き叫ぶ。
叫んだ声は降り注ぐ雨音にかき消され、あの子のもとに届く事はない。
だからあの子がこの声をききつけ心配する事はない。
だから、今は。
届かなかった想いの切なさを、涙に変えさせて下さい。
続く
以上第一話でした。なげえよ!終わりが見えない!
読んでくれた人ありがとう。次はいつだか分らんが完結目指すよ。
続きものの投下がダメだったりしたら一言下され。
続きもの全然大丈夫です
これは先が気になる類のものだぞ・・・面白かったので期待してる
ぜひ続けて
っていうかここでやめられたら生殺しすぎる
でも二人を幸せにしたげてね
続きが気になる
ミミちゃんが暗黒面に堕ちないか心配だな
>>88 >>89 >>90 続きものおkと聞いてほっと一息。皆さん、あざすっ。
遅筆だから、相当気長に待ってくれると嬉しいんだ。
まとめサイトの管理人て生きてるー?
ほす
前スレでロロリオss投下させていただいた者です。
今回もロロリオssが出来上がったので、投下させていただきます。
ちょっと長いので、もしかしたら規制に引っ掛かるかもしれません。
設定は、リオネラEDの後の世界です。
タイトルは「二人のアトリエ〜ロロナとリオネラ〜」
96 :
名無しさん@秘密の花園:2012/02/03(金) 05:44:02.05 ID:1y7yL2SA
>>95 GJ! ターン制ワロタ
pixivって小説も投稿できるんだな
「メルル、ちょっと相談があるんだけど……」
「何ですかミミさん? 相談って」
「もうすぐ……アレがあるじゃない」
「アレって何ですか?」
「だから、その……二月だし……もうすぐ、バ……バレ……バレンタ――……〜っ、二月の十四日があるでしょ!」
「あと二文字ぐらい頑張りましょうよ……どれだけバレンタイン恥ずかしがってるんですか」
「う、うるさいわね。それよりその、あんたが今、口にした浮かれた行事のことよ」
「バレンタインがどうしたんです?」
「私個人としては、別にそんな、何とも思ってない日なんだけど……トトリはこういうの好きらしくて、何ていうかその……毎年、かなり凝ったチョコをくれたりするのよね」
「……ツンデレ王国の言葉では"のろけ"を"相談"って言うんですか?」
「最後まで聞きなさい。あくまで私としてはこの行事に大した興味は無いんだけど、いつも貰ってばかりじゃ悪いし、今年は、こっちからトトリにあげようと思って」
「なるほど、いいですね。先生きっと喜びますよ」
「それで相談っていうのは、どんなチョコを送ったらトトリが一番喜んでくれるかっていうことなんだけど」
「ミミさんの体に生チョコをトッピングして『私を食べて』ってやればいいんじゃないですか?」
「張り倒すわよ! いいわけないでしょそんなの!」
「冗談ですってば。それじゃあ先生に、どんなチョコを貰ったら嬉しいか聞いてみますね」
「分かってるでしょうけど――」
「ミミさんの名前は出さないように、ですよね」
「そういえばトトリ先生、もうすぐバレンタインですね」
「そうだね。メルルちゃんはケイナちゃんにチョコ貰ったりするの?」
「はい。先生は?」
「私はどっちかというと、上げる方かな」
「そうなんですか。ちなみに先生は貰うとしたら、どんなチョコが嬉しいですか?」
「う〜ん……前にロロナ先生が作ってくれたチョコパイとか、すごく美味しくて嬉しかったなー。あと、お姉ちゃんがくれた手作りのチョコクッキーとかも嬉しかったし……」
「ふむふむ……」
「あ、そうだ」
「何です?」
「もしもミミちゃんに貰えるなら、ミミちゃんの体に生チョコをトッピングして『私を食べて』ってやってほしいなぁ」
「あ。いいんだそれで」
あ、終わりなのかGJ!
ミミちゃんはどういうチョコをあげるんですかねえw
SS投下します。
カップリングはメルケイ&ミミトトetc…。
前半から男衆の出番が多いですが、ちゃんと百合ですのでご安心を。
アーランド、アールズはともに温暖な土地で、シュテル高地など一部の地域を除いて雪が降ることなど滅多に無い。
……のだが、何事にも例外というものはある。もっと分かりやすく言うならば、異常気象というものがある。
「うわあ……!」
暦の上では冬の、ある日の朝。凍てつくような寒さの中、目を覚ましたメルルは、アトリエの窓の外を見て絶句する。
辺り一面銀世界、などという表現では生ぬるい。景色のほぼ全てが雪で埋まっている状況だ。
「先生。外、すごいですよ」
「うん。夕べから冷えてたしね。一晩中降ってたみたいだね」
「こんなに雪が降ったのって、多分アールズの歴史上初めてのことですよ」
メルルは興奮した様子でアトリエの外に出ようとする。が、雪で固まっているのか、ドアが動かない。
「先生大変です! 外に出られません!」
「じゃあ窓から出る……のは難しいかな、やっぱり」
「余裕で腰ぐらいまで積もってますよね……出たとしても雪に埋まって身動き取れないですよ」
「でもこのままじゃ雪かきもできないし……」
「う〜ん……」
二人してどうしたものかと考え込む。
――と、
「メ〜ル〜ル〜ちゃ〜ん!」
「ん? 誰か呼んだ?」
「この声、ロロナ先生だよ。窓の外から」
メルルとトトリが窓の外に目をやると――
「あ。いたいた。メルルちゃん、トトリちゃん。おはよ〜」
「メルル、大丈夫ですか?」
そこにいたのはモコモコの帽子・手袋・マフラーと完全防寒仕様のロロナと、転ばないようその手を握っているケイナ。そしてその二人が歩く前方の雪を、大きなスコップでかき分けている男三人。
「ロロナちゃん、ケイナ! ……と、ライアス君とジーノさんとステルクさんまで」
「よおメルル! すっげえ雪だなぁ」
「メルル姫、もうしばらくご辛抱下さい。すぐにアトリエから出られるようにします」
ライアス、ジーノ、ステルクの三人がえっさほいさと雪をかき進み、どうにかアトリエ前を歩ける程度になった。
「よっ、と……」
縁の方がまだ少し凍り付いているドアを、ジーノが慎重に開ける。
「お。ちゃんと開いたな」
「はい。ありがとうございます、ジーノさん。ステルクさんとライアス君も」
「これしきのこと、お安い御用です」
「俺は兄貴に言われて来ただけだぞ」
ライアスが言うには、現在この大雪に対処するため、市街に在勤している兵士総員と冒険者達とで協力して、朝早くから除雪作業に当たっているのだという。
ライアスも当然その作業に従事するつもりだったのだが、ルーフェスから、ケイナと一緒にアトリエに行ってメルルの手伝いをするよう命じられ、こうしてやってきた。
「――というわけだ」
「んで、その途中で俺や師匠やロロナさんと合流して、一緒にやって来たってわけだな」
並木通りからここまで雪かき道中してきた三人は、アトリエでケイナの入れてくれたお茶を飲みながらひとまず休憩していた。
「ねーねーメルルちゃんきいてー。すーくんいじわるなんだよー」
「どうしたのメルルちゃん? ステルクさんがいじわるって?」
「あのね、ロロナがおそとであそびたいっていったらね、こわいかおで、だめだ〜! って」
ロロナがメルルに訴えるのを聞いて、ステルクは慌てて弁解する。
「だからそれは、除雪作業がある程度完了するまでは危険だからと何度も――」
「はうっ、またこわいかお……」
「ちょっとステルクさん! ダメじゃないですかそんな怖い顔して」
「いや、怖い顔をしているつもりは……全く無いのですが……」
怒られてマジ凹みしている四十代自称騎士は置いといて、メルルはロロナと目線を合わせて、優しく言い聞かせる。
「あのねロロナちゃん。今お城の兵隊さんや冒険者さん達が、ロロナちゃん達が雪でケガしたり埋もれちゃったりしないように、頑張って雪かきしてるの。だからお外で遊ぶのは、もうちょっと待ってほしいの」
「そうなんだー……」
「ロロナちゃんは、良い子だから待てるよね?」
「うん! ロロナいいこだからまてるよ!」
元気よく返事するロロナに、メルルは「よろしい」と頷いた。
「ところでジーノさんはどうして?」
「ああ。俺も他の連中と一緒に街の雪かきしようと思ったんだけど、その前にトトリの様子見ておこうと思ってな。トトリのことだし、ドアから出られないからって、窓から出て雪に埋まったりしてるんじゃねえかなって」
「むー。いくら何でも、そんな間が抜けたことしないもん」
トトリがふくれっ面でジーノに抗議する。「でも窓の外から出るのを提案したのは事実ですよね」……という台詞は、敬愛する師の名誉のため胸にしまっておくメルルだった。
「よく言うぜ。何年前だっけかな。初めて東の大陸に行った時に、トトリがもうマンガみたいにスッポリ綺麗に雪の中に埋まっちまってさ、俺とミミが慌てて――」
「わーっ! もうっ、そんな昔の話しないでよ! ジーノ君のバカっ!」
が、そんなメルルの気遣いも虚しく、代わりに恥ずかしい過去を暴露されるトトリだった。
「皆さん、お茶のおかわりはいかがですか?」
「おう、いただくわ。サンキュ」
「さて、このお茶を飲んだら、そろそろアトリエの雪かきを再開しなくてはな」
「え? もう出られるようになったから十分なんじゃ」
首を傾げるメルルに、ライアスが呆れたようなため息をつく。
「獣道みたいなのが一本通っただけだろうが。それに一番肝心なところが手付かずだ」
「肝心なところって?」
「……ちょっと外に出て、屋根見てみろ」
ライアスに言われた通り、メルルは外に出てアトリエの屋根を見上げる。
「うわ厚っ!? 怖っ!」
かなり傾斜があるはずのアトリエの屋根に、発揮しなくていいド根性を発揮してへばり付いた雪の層が、こんもりと積もっていた。
「うわー……これは確かに下ろしておかないと危ないね」
メルルと一緒に出てきたトトリも、屋根を見上げて呟く。
「元々アールズの建物って、雪を想定した建て方してませんしね……」
住人が状況を理解したところで、作業を再開だ。
「よーし! 先生、張り切っていきましょう!」
「おーっ!」
いつもは杖を持つ手にスコップを握ったメルルとトトリは、やる気まんまんな面持ちだ。
「メルル姫、やる気を出されているのは大変結構ですが、ここは我々に任せて――」
「ステルクさん、ここは私達のアトリエなんですから。任せっきりになんて出来ませんよ」
「お前がケガしたら、兄貴に怒られるのは俺なんだけどな……」
「大丈夫だよ。むしろライアス君は、自分がケガしないように気をつけないと。不幸体質なんだから」
「ぐ……」
全くもってメルルの言うとおりなので、言葉に詰まるライアスだった。
「まあ別にいいんじゃねえの? 屋根の上とか危ないところは俺達でやって、メルル達はそれ以外のところってことで」
「……致し方ないな」
「ねーねー、ロロナもゆきかきするー」
「ロロナちゃんは、アトリエの中からみんなを応援してて」
「おーえん?」
「そう、応援。ケイナ、ロロナちゃんのことよろしくね」
「はい。メルル、ケガだけはしないように注意して下さいね」
そんなこんなで、アトリエとその周辺の雪かきが開始された。
メルルとトトリだけでは大変だっただろうが、やはり男手が三人あると作業の効率が段違いで、お昼前には屋根の雪下ろしも含めてあらかた終わってしまった。
「ふー……こんなもんかな」
「お疲れ様、メルルちゃん」
「先生もお疲れ様です。アトリエに入って休みますか」
「俺達はこのままよそに回るからな」
「ええ? ライアス君達まだやるの?」
「アールズ全体で除雪作業中って言ったろ。市街地の方を手伝いに行くんだよ」
「じゃあ私も――」
「いえ、メルル姫はこのままアトリエに留まって下さい」
「でも……」
「兄貴からの伝言だ。除雪の作業員でケガしたり風邪引いたりするやつが出るかもしれないから、アトリエの雪かきが済んだら、メルルは医薬品の準備をしてくれってさ」
「あ、なるほど」
そのためにルーフェスはわざわざライアス達をアトリエに寄越したのだ。合点がいったメルルは、大人しく三人を見送った。
「こういう時って、やっぱり男の人が頼りになりますね」
「そうだねー……」
「さて、私達はお薬の準備ですね。コンテナにかなりストックがあるから、多分それほど調合はしなくていいと思いますけど」
「うん……」
「……先生?」
雪を眺めるトトリは、さっきからどこか上の空だ。
「……メルルちゃん、ごめん。私、ちょっとミミちゃんの様子見てきていいかな?」
「あ……そうですね。すぐ行って下さい」
そういえば毎日のようにアトリエを訪れてくるミミが、今日に限って姿を見せていない。おそらく真面目に雪かきをしているのだろうが、トトリとしては少し心配になっていた。
「じゃ、行ってくるね」
除雪を終えたばかりの道を、トトリは急いで駆けて行った。
「……そういえば途中からロロナちゃんの声援が聞こえなかったけど、疲れて寝ちゃったのかな?」
そんなことを呟きながらアトリエの中に戻ると、
「できた〜っ!」
ちょうどロロナが何かの調合を完了したところだった。
「あ! メルルちゃんおかえりー」
「ただいま……ロロナちゃん何作ってたの? って、聞かなくても想像つくけど」
メルルがケイナに視線を送ると、「お察しの通りです」と頷いていた。
「ロロナねー、パイをつくってたのー」
「やっぱり。で、今度のはどんなパイなのかな?」
「なづけて『スーパーホットパイ』!!」
「ス、スーパーホットパイ!? 何か凄そうかも」
「このパイをたべたら、からだのなかからポカポカあったかくなるんだよ」
「あれ、案外普通な効果……でもある意味名前の通りかも」
ロロナの言う通りの効果なら、今日のように寒い日にはまさにピッタリだろう。
「みんなのためにたくさんつくったから。メルルちゃんとケイちゃんもたべてみてー」
「それじゃあ遠慮なく……」
メルルとケイナが出来たてのパイにかじりつく。
「ん――辛っ!」
中身はスパイスがばっちり効いた、ピリ辛のミートパイだ。
「これは確かに……辛いですね」
「けど美味しい! 癖になりそうな味かも」
夢中になって食べているうちに、ロロナが言っていた通り体が中からポカポカしてきた。
「ロロナちゃん。このパイすごく美味しいし、効き目もばっちりだよ!」
「よかった。それじゃあみんなにもわけてくるねー」
ロロナは大量に作ったスーパーホットパイを自前の秘密バッグに詰め込んで、意気揚々と出て行った。
「さて、と……私はお薬の用意しないと」
「その前に少し休憩して下さい。だいぶお疲れの様子ですよ」
「んー、そうかな」
ケイナが言うならそうなのだろう。メルルは言われた通り、ソファに深く腰掛ける。
「お茶を入れましょうか」
「んー……それもいいんだけど」
メルルは少し考えた末、無言でケイナを手招きした。反対の手はソファをポンポンと叩いている。
意図を理解したケイナは、「仕方ないですね」と苦笑しながらメルルのすぐ隣に腰掛ける。
そしてメルルはその膝の上に、遠慮なく頭を乗せた。
「えへへ……ケイナの膝枕久しぶり」
ご機嫌なメルルに、ケイナの表情もつい綻んでしまう。
「何かケイナ、いつもよりあったかくない?」
「かもしれません。先ほどのパイの効果かと」
「きっとそうだね。私も全身ポカポカしてるし」
「外で雪かきをしている人達も、あのパイを食べたら作業がはかどりそうですね」
「うん……」
「……」
「……」
しばしの沈黙。
不意にメルルが、ケイナの膝枕から離れて体を起こした。
「メルル、もういいんですか?」
「……ねえケイナ」
「何ですか?」
「体、熱いよね」
「ええ」
「さっきからどんどん熱くなってきてるよね」
「ええ……そうですね」
話しながら、メルルはケイナにじりじりと顔を寄せている。
「ケイナ」
「何です?」
「何か変な感じしない?」
「変……ですか?」
「……ケイナ」
「はい?」
「襲っていい?」
「はい!?」
唐突すぎるメルルの言葉に、目を丸くするケイナ。
「な、何言い出すんですか!?」
「何かね、さっきから体が熱くて、熱くなるのと一緒に、ケイナにムラムラしてきてるの」
「む、ムラムラって……」
顔だけでなく全身の肌を赤く火照らせたメルルは、熱に潤んだような目でケイナを見つめる。
「ひょっとしてケイナも同じなんじゃない?」
「っ!」
図星を突かれたように、狼狽するケイナ。
「やっぱり。さっきから顔真っ赤だし、息もちょっと荒いし」
「そ、それはさっきのパイのせいで――」
「そうそれ。さっきのパイのせい」
「あ」
そう言われて、ケイナも気がついた。
「……副作用、でしょうか」
「分かんないけど……ロロナちゃん、みんなにもわけてくるって言ってたよね」
「言ってましたね……」
「このままだとまずいよね……パイは美味しかったけど」
「急いで止めに行かないと……」
「うん……そうなんだけど……分かってはいるんだけど」
「メルル……?」
「……何か、さらに熱くなってきた……ダメだよ、もうケイナのことしか考えられない。ケイナは?」
「えっと……実は、私も……体が熱くて、メルルのことばかり思ってしまって……」
「じゃ同意ってことで」
「え? やっ、きゃああ!?」
問答無用でケイナを押し倒すメルルだった。
メルルがケイナを押し倒しているのと同じ頃。アールズ市街、ミミの部屋。
「あの……ミミちゃん? どうしたの?」
ベッドの上、仰向けに倒れながら、戸惑っているトトリ。手を突いて覆い被さるミミは、客観的には主導権を握っている体勢なはずだが、トトリ以上に狼狽していた。
「わ……私にも分からないわよ! 何か知らないけど、さっきから体が熱くて、自分でもどうしようもないくらいにトトリのことが……!」
「体が熱く……それってひょっとして、さっきロロナ先生が持ってきたパイを食べてから?」
「ええ、そうよ。あのパイ食べてから、どんどん体が熱くて変な気持ちに――……」
「…………」
「…………」
「もしかしなくても、原因あのパイだよね」
「そうね……間違いないわね」
しかし理由が分かったところでパイの効果が切れるわけでもなく、押し倒し中なミミと押し倒され中なトトリである。
「ごめんトトリ……そろそろ……我慢の限界……」
パイの効果が強まってきているのか、ミミは湧き上がってくる感情を必死で抑えようとする。
「ミミちゃん……」
「頭では分かってるんだけど……どうにもできない……今すぐトトリを抱き締めたい……」
「……いいよ」
「え……?」
不意に優しく囁かれた言葉に、ミミはハッと目を見開く。
トトリは邪気の無い瞳でミミを見つめ、言った。
「いいよ。ミミちゃん」
「え、でも、こんな、パイのせいでおかしくなってて……こんな状況で、いいの?」
「だって私も同じパイ食べたんだよ。私の方も、さっきから我慢してるんだから」
「あ……」
「それに……」
トトリは恥ずかしげに、少し目を伏せた。
「パイのことがなくても……ミミちゃんだったら、構わないから」
「トトリ……」
「だから、いいよ。私のこと……ミミちゃんの好きにして」
トトリの台詞で興奮のあまりミミが鼻血を吹いたのと同じ頃。並木通りの酒場。
「ちょ、ちょっとフアナさん!? どうしちゃったのー!?」
「ふっふっふ……うりゃー!」
「きゃあああ!?」
「捕まえたー!」
雪のせいで開店休業状態な昼間の酒場で、フィリーがフアナに襲われていた。
「んふふ……観念するんだよフィリーちゃん」
「フ、フアナさん酔ってるの?」
「んー、さっきロロナちゃんがくれたパイがピリッと辛くてお酒と相性よくてさ。つい昼間から開けちゃった♪ そしたら何か体が熱くて、すっごく人肌恋しくてさー。性的な意味で」
「だからって何で私を――ひゃあ!? ど、ど、どこに手入れてるのー!?」
「おっぱいに決まってるじゃん。お手頃サイズだけど感度はなかなか……うりゃうりゃ」
「や、やめっ、やめてってば!」
「いいじゃん別にー。年下攻めだよー。フィリーちゃん下克上とか好きでしょー」
「自分がやられるのは別なの! 嫌なの!」
「好き嫌いはいけないなぁ。そんないけない子には、おじさんがおしおきしてあげないとなぁ」
「ひゃうっ!? だっ、だめっ、そんなとこ触っちゃ……だ、誰かっ……メルルちゃん助けてーっ!」
「メルちゃんなら今ごろケイナちゃんと乳繰りあってるんじゃないの〜」
「だったら私それ見に行くーっ! は〜な〜し〜て〜!」
「つれないこと言わないで、今日はもうフアナさんと仲良くしてましょうよ〜」
「だっ、だからっ、やめっ…………アッー!」
フィリーがフアナに最終防衛ラインを突破されそうになったのと同じ頃。除雪作業員のために用意された簡易休憩所。
「……師匠」
「……何だ。ジーノ」
休憩用の椅子に座って向かい合うジーノとステルクの肌は、熱さに上気し、首筋からはほのかに湯気すら漂っている。
「何かさ……さっきロロナさんが差し入れしてくれたパイ食ってからさ……」
「うむ……お前も感じていたか」
二人とも、身の内にたぎる感情を抑えるかのように微動だにしない。
「師匠」
「……やるか」
「おう」
二人はおもむろに立ち上がると、羽織っていた上着を脱いだ。そしてその逞しい腕を露わにして、それぞれ手にスコップを取った。
休憩所の外は、ある意味異様な光景だった。大勢の兵士と冒険者達が協力して街の雪かき・雪おろしをしているが、その全員がこの雪の中あり得ないような薄着をしているのだ。なのに全く寒そうな様子がない。
おまけに全員妙にテンションが高く、大きな掛け声を上げながらものすごいハイペースで作業を進めている。
「ぃよっしゃあーっ!! やるぞーっ!!」
休憩所から出てきたジーノも、やたらハイテンションで作業に加わった。
「さて、私も――」
ジーノほどかっ飛んではいないが、気合い十分なステルクも、いざ作業に取りかかろうとする。
と、そこへある人がやってきた。
「ステルク殿」
「おお、ルーフェス殿か」
「除雪作業の進捗状況を視察に来たのですが……どうやら全く心配無用のようですね。むしろ予想を遥かに上回るハイペースだ」
「だとしたら、それはロロナ君の手柄だな」
「ロロナ様の、ですか?」
「うむ。実は先ほど差し入れとして、大量のパイを皆に振る舞ってくれてな。体の温まるパイとのことだったが、実際食べてみるとそれだけでなく、体の内側から沸々と燃えたぎるように力が沸いてきたのだ」
「なるほど……ロロナ様お得意の不思議なパイが、今回は大きくプラスに働いたというわけですね」
「そうだな。さて、私も作業に戻るとしよう」
「机の上で出来るだけの仕事は終わったので、私も手伝いましょう」
「そうか。なら、休憩所に例のパイが残っているから是非食べるといい」
「では、いただきましょう」
「ただし味は辛口のミートパイだぞ」
「おや……それは少し残念ですね」
この日、アールズ王国を記録的な大雪が襲った。予想外の天災ということに加え、開拓が進み多くの人が暮らすアールズでは、各種の被害も甚大なものになるだろうと予想された。
しかし、国王デジエ及び執事ルーフェスの素早く的確な指示の元、アールズの兵士とアーランドから出向していた冒険者が見事に連携し、除雪作業は極めて迅速に行われ、被害は最小限に留められたという。
なお、アーランドの錬金術士ロロナが作ったパイが、除雪作業に当たっていた作業員達の士気を大いに盛り上げたことも特筆に値する。
件のパイは男性陣から非常に好評で、後日ロロナのパイショップのラインナップに加えることも検討されたが、何故かメルルを始めとする女性陣の激しい反対があり、なかったことになったという。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
先週、雪と寒さがひどい中、ふと思い付いたお話。
ちなみにパイの効果が切れた後、メルルとトトリ先生はちゃんとお薬用意したし、ケイナとミミちゃんは色々お手伝いしたし、フアナさんは地面に頭がめり込む勢いでフィリーちゃんに謝りました。
現在保管庫が機能してないようですが、トトミミ新婚生活編とかできたら続き書きたいなと思っているので、とりあえず前スレ分をピクシブに投下しておきます。
GJです
野郎共もいいキャラしてるなぁw
>>110乙です!
トトミミ新婚生活編も期待!
トトミミ初体験だと、自分の中では誘い受けなトトリちゃんにヘタレ攻めなミミちゃんが手探りでプレイし、
気持ちよくなってるかどうか不安なミミちゃんにトトリちゃんが総てを受け入れるというイメージが…
あと、緊張の糸が切れて狼になってしまうミミちゃんというのも…
SS投下します。
バレンタインネタでロロクー、トトミミ、メルケイの三組(+α)です。
……もう日付変わっちゃいましたけど。
二月十四日。バレンタインデー。
恋人達の縁結びを張り切りすぎて、非リア充の王様に縛り首にされた聖人の命日である。しかし、王様は非リア充ではなくヘテロ厨であり、百合ップルばかりを祝福していた百合聖人を処罰したという説もある。史家の間でも議論の的であり、結論は出されていない。
アーランドにおいては、近代以降、製菓会社の陰謀によって、女の子が好きな男の子にチョコレートを送る日という位置付けをされてきた。
しかし近年になってある一派が前述の『バレンタイン百合聖人説』を根拠に「女の子が男の子にとか意味が分からない。バレンタインとは女の子が女の子にチョコと共に愛を伝える日である」と強固に主張。
一派は古くから国内外で暗躍する地下組織『アーランド掛け算同盟』を通じてその概念を流布した。
その活動の影響もあってか、現在は女の子同士でのチョコのやり取りも、珍しいものではなくなっている。
まあそういう諸々の事情は置いといて、バレンタインである。
上げる人にも上げられない人にも。貰える人にも貰えない人にも。全ての人に等しくバレンタインは訪れていた。
〈1:クーデリア〉
「はぁ……」
アーランド冒険者ギルドの受付嬢クーデリアは、深々とため息をついていた。
ため息の原因は一つではない。今日は仕事が立て込んでいて残業がほぼ確定だったり、最近疲れが溜まって体調が思わしくなかったり……
しかし原因の最たるものは、今日がバレンタインであるということだろう。
(別にそんな、羨ましいとかではないけどね。今さら)
冒険者ギルドに関しては落ち着いたもので、職員は浮ついた様子もなく、真面目に仕事をしている。
訪れる冒険者も当然仕事で来ているから真面目だが、たま〜に空気が読めてないのかわざとなのか、男女ペアの冒険者が「今日バレンタインでしたよねー」と言わんばかりのオーラを振りまいて、周囲の人間の魂をどす黒く汚染している。
あと女同士でそれをやる輩もいる。ごく稀に男同士でもいる。
クーデリアとしてはそんな連中、仕事の邪魔にならなければどうでもいい。いちいち過剰反応していたフィリーがいないのも快適なものだ。
バレンタイン絡みでクーデリアが憂鬱なのはただ一点。今、アーランドにロロナがいないことだ。
(ホントだったら毎年この日は、ロロナと過ごすはずなのに……)
クーデリアの親友――当人はあくまで親友と言い張る――ロロナは、現在アーランドから遠く北西の地、アールズ王国にいる。
(アストリッドが馬鹿げた実験にロロナを巻き込んだりしなければ!)
ロロナと同じくアールズ王国にいる宿敵を、クーデリアは胸中で罵る。
(あいつさえ余計なことしなけりゃ、今頃は出来たてのチョコレートパイを持ったロロナが――)
「くーちゃ〜ん!」
(そうそう。こんな感じで職場にまで押し掛けてきて――)
「くーちゃんってば〜!」
(今は仕事中だからって私が言うと「え〜、だって〜」って子供みたいに駄々こねて――)
「く〜う〜ちゃ〜ん〜っ!!」
「へっ!? あっ、ロ、ロロナ!?」
クーデリアの目の前には、まぎれもなくロロナ本人――ただし妄想の中の実年齢ではなく八歳児の姿――がいた。
「むー……くーちゃんロロナのことむししたー」
「ち、違うわよ! ちょっとボーっとしてただけで……」
「おしごとちゅうにボーっとしちゃだめなんだよー」
「ごもっとも……」
お仕事中に押し掛けてきた自分を棚に上げるロロナだが、クーデリアは素直に反省した。
「ところでロロナ、どうしてここに?」
突然ロロナに会えて嬉しいやら驚くやら諸々の感情は置いておいて、クーデリアはまず事情を確認する。
「あのね、くーちゃん」
「ん?」
ロロナは持っていた秘密バッグをガサゴソと手探りし、
「はいこれ! ハッピーバレンタイン!」
「え……」
ロロナが差し出したのは、パステルカラーで可愛くラッピングされた包み……言うまでもなく、バレンタインのチョコだった。
「ロロナ……このために、アールズから……?」
「うんっ! だってくーちゃんはロロナのほんめーだもん!」
「っ……」
どんな顔をしたらいいのか。分からないほどクーデリアは嬉しかった。
「あ、ありがとう……ロロナ……ありがとう」
できる限り感謝の気持ちを伝えたいのに、中途半端な泣き笑いみたいな表情で、ありきたりなお礼しか出てこないのが恨めしい。
「くーちゃん、ないてるの?」
「泣いてないわよ。ちょっと感極まって……」
「かんきわ……? んー、それってかなしいの?」
「違うわ。すごくすごく嬉しいのよ」
クーデリアがそう言うと、ロロナは満開の花が咲くような笑顔になった。
「よかった〜! くーちゃんがよろこんでくれて」
ニコニコとそんなことを言うロロナ。そんなロロナが、クーデリアには堪らないほど愛おしかった。
(か、可愛い……今すぐ抱き締めて頬ずりしたりキスしたり他にも色々……ってダメダメ!)
衝動が生み出す妄想を理性で打ち消す。
(戸籍上は成人でも、今のロロナは八歳児なんだから、行き過ぎた行為は御法度よ!
そう、許されるのはせいぜい、ハグしたり頭を撫でてあげたりおでこにチューしたり一緒にお風呂に入ったりお着替えを手伝ってあげたり添い寝してあげたり――って、止まれ! そこで止まれ私のイマジネーション!!)
衝動と理性と実年齢と肉体年齢の狭間で悩み悶えているクーデリア。それに気付くはずもなく、ロロナは屈託なく話しかける。
「ねーねーくーちゃん。きょうはおしごといそがしい?」
「え? まあ、そこそこ量はあるわね」
ロロナに気を使わせるのが嫌で控えめに言ったが、実際は「そこそこ」どころではない。
「そっかぁ……」
言おうか言うまいか迷っている。ロロナはそんな様子だった。クーデリアは努めて明るく助け舟を出す。
「どうしたのよロロナ? 私とロロナの仲なんだから、何でも遠慮なく言いなさい」
「うん……あのね」
「なぁに?」
「……きょう、くーちゃんのおうちにおとまりしたかったの」
「え……」
「でも……くーちゃんおしごといそがしいんだよね?」
少し寂しげな上目遣いで、ロロナはクーデリアを見つめる。
「くーちゃん……おとまりしちゃ……だめ?」
「……!」
――この日、クーデリアの業務処理速度は音速を超えた。
〈2:ミミ〉
「ミ〜ミちゃ〜ん!」
並木通り。ミミがアトリエへ向かう道すがら、進行方向からやってきたトトリが嬉しそうに呼びかけてきた。
「あらトトリ。どうしたの?」
「ミミちゃんに会いに行くところだったの」
嬉しそうにそう言うトトリだが、
「ふーん」
ミミは素っ気なく頷くのみ。
「ミミちゃんは?」
「えっ……わ、私はその……アトリエに用事があって……」
しかし問い返された途端、慌ててとってつけたような答えを返す。
「ふーん……"アトリエに"なんだ」
「そ、そうよ……」
「……(じー)」
「う……」
「……(じー)」
トトリは真っ直ぐミミを見ている。見ている。見続けている。
「……(じ〜〜〜〜〜〜〜〜)」
「っ……ああもうっ、トトリに用事があったの! トトリに会いに行くところだったの!」
根負けしたミミは、頬を真っ赤にして本音を白状する。
「そうだったんだ。奇遇だね」
「そうね……」
諦めたようなため息とともに、ミミは同意する。実のところ用件が用件なので心の準備が整わず、ここまでずっと牛歩戦術をしてきたのだが。
「ねえミミちゃん。ここだとちょっと人が多いから、場所変えよっか」
「ええ、いいわよ」
人目に付きたくないのはミミも同じだった。
二人は並木通りから少し外れた小川のほとりまでやってきた。周囲を雑木林に囲まれた、ひっそりとした空間だ。
「ミミちゃん。はいこれ。ハッピーバレンタイン」
トトリは優しく微笑みながら、小洒落た箱に入ったチョコレートを差し出した。
トトリがミミにバレンタインチョコをくれるのは、毎年恒例だ。最初のうちは姉のツェツィに教わりながら四苦八苦していた手作りチョコだが、最近は一人てもかなりの出来映えになっている。
「あ……ありがと」
二人の仲で今さら照れるようなこともないだろうが、恥ずかしいものはやはり恥ずかしい。だがミミの顔が熱くなっているのは、トトリのチョコばかりが原因ではなかった。
「あ、あの、トトリ」
「なぁに? ミミちゃん」
「っ……」
小首を傾げて澄んだ目で見詰められると、やたらとドギマギしてしまう。ミミの心臓には優しくないトトリの仕草だ。
「こ、これっ」
「え……これって……」
「今年は、その、私も作ってみたの……チョコレート……」
「じゃあこれ、ミミちゃんが私に?」
「あ、当たり前でしょ。他に誰がいるっていうのよ」
「ミミちゃん……!」
「わっ!?」
トトリは嬉しさのあまり、ミミに抱きついてきた。
「ありがとうミミちゃん! すっごく嬉しいよ!」
「分かった! 分かったから離しなさいトトリ!」
予想以上にトトリが喜び興奮したので、かえって冷静になるミミだった。
チョコ渡し終わったからハイ解散……ではあまりに味気ない。せっかく綺麗な川のほとりにまで来ているのだからと、二人はその場に腰を下ろした。
「トトリのチョコ、開けていいかしら?」
「うん、どうぞ」
ミミが箱の蓋を開けると、一口サイズの可愛いトリュフチョコが、お行儀よく並んでいた。
「うん。見かけはすごく良いわね」
「む。見かけは、ってどういう意味?」
「そのままの意味よ。アランヤ村でツェツィさんに教わってた頃は、まずちゃんと形を整えるので苦労してたでしょ」
「う……今は上手に出来てるんだからいいでしょ」
「まあね。手作りでこれだけ出来てれば大したものだわ」
「んー……」
トトリは少しの間、何か考え込んでから言った。
「ミミちゃん」
「何?」
「実は今回のチョコは、錬金術で作ってみたの」
「え……?」
今し方、一つ目のチョコを口に運ぼうとしていたミミの手が、ピタリと止まる。
「だから厳密には手作りとは違うんだけど……でも手を抜いたりはしてないからね。むしろ今までで最高の出来だって自負してるよ」
「…………」
トトリの話を聞きながら、ミミは冷やしたチョコのように固まっていた。
チョコが錬金術で作られた。それ自体は嫌でも何でもない。トトリからチョコを貰えたという喜びは変わらない。
錬金術で作られた食べ物が嫌なのではない。錬金術製の食べ物や薬を口にするのは、ミミにとって日常茶飯事だ。
だがしかし。錬金術で作られたバレンタインチョコ。これはどことなく、ミミにあるものを連想させ――
「ロロナ先生のパイほど上手くはないけど、それでもかなり上手に出来たんだよ」
「っ!」
そのものズバリがトトリの口から出てきて、ミミは身をすくませる。
錬金術士ロロナが作る、不思議なパイ。味に関してはどれも最高なのだが、迂闊に食べるとかなりの確率で何かしら厄介な事態が待ち受けている。
そのロロナの弟子トトリが、精魂込めて作ったチョコレート……ここにその不思議な効果の一端でも紛れてはいないと、誰が証明できようか。
「あの……トトリ……念のため聞きたいんだけど」
ミミは恐る恐る尋ねてみる。
「このチョコ……変なものは入ってないわよね?」
「変なものって?」
「だから、その……本来チョコに入ってないものっていうか」
「ドライフルーツとかお酒とか? 入ってないけど、ミミちゃん、入ってる方がよかった?」
「いやそうじゃなくて、何ていうか、食べ物じゃない類のものとか……」
「……ミミちゃん」
「え……」
トトリが無表情でミミを見ている。
(しまった……!)
これはかなり怒っている状態だ。せっかくあげたチョコに、食べもしないで異物混入の疑いをかけられたら、気を悪くするのも当然だが。
「それってどういう意味?」
「ち、違うの! 別にそんな、トトリが何か入れたって疑ってるわけじゃなくてね」
「じゃあどうして? 何でそんなこと言うの?」
「その……錬金術で作ったっていうから、ひょっとして何か、おかしな効果が付いてるんじゃないかと思って」
「おかしな効果って、例えば?」
「別にそんな、具体的な想像をしたわけじゃなくて……ただちょっと、漠然と不安になっただけなのよ。ごめん! 私の言い方が悪かったわ!」
非を認めて、ミミは誠心誠意謝る。トトリは少しの間黙っていたが、やがて、
「いいよミミちゃん。気にしないで」
といつもの笑顔で言ってくれた。
ホッとするミミだが、
「じゃあミミちゃん、早く食べてみて」
と言われてまた固まった。
トトリを疑っているわけではない。しかしさっきの一連の流れの中で、トトリは一度も、このチョコが安全だという主旨の発言をしていないのだ。
「今は……お腹空いてないから」
とりあえずそう言って逃れようとしてみる。が、
「嘘。さっき食べようとしてたのに」
すぐに嘘だとばれた。
「ミミちゃん……やっぱり私のチョコに、変なものが入ってるって思ってるんだ」
「いや、そういうつもりじゃ……ないんだけど……」
「むー……」
怒ってはいないが納得できない。今のトトリはそんな様子だ。
「じゃあこうしてあげる」
そう言うとトトリは、ミミが持っていたチョコを一つ摘んで、自分の口に放り込んだ。
自分で食べてみることで、安全なことを証明してみせた――と、ミミが思った次の瞬間、
「んっ――」
「――っ!?」
トトリがいきなりミミと唇を重ねて、舌をねじ込んで――否。舌の上に乗せたチョコを、ミミの口の中に押し込んだ。
甘いチョコの味と、トトリの舌の熱さと柔らかさ。いくつもの感触が、ミミの中に広がっていく。
「ん……んっ……ぁ、ん……」
トトリはチョコをまぶした舌で、存分にミミの口の中を蹂躙する。
口の中のチョコが全て溶けて流れると、トトリはようやく唇を離した。
「どう? ミミちゃん。変なものなんて入ってなかったでしょ?」
「なっ……そ、そんな問題じゃなくて――んんっ!?」
何か言おうとしたミミの口に、二個目のチョコが放り込まれる。もちろんトトリの舌に乗せて。
溶けたチョコがこぼれたりしないよう、両手でしっかり抱き締めながら、トトリはたっぷりじっくりミミにチョコを味合わせてあげる。
「ふぁ……んっ……ミミちゃん……遠慮しないで、どんどん食べてね……」
ミミの中でチョコが溶けてしまうたびに、トトリはまた一つ、また一つと、口移しでチョコを運んでいく。
「は、ぁ……ん、んっ……ト、トリぃ……やっ、んっ……〜っ」
放り込まれたチョコがいくつ目なのか、ミミにはもう分からない。甘い感触に火照った体は、もうトトリの成すがままだ。
「ん、ちゅ……ふぁ……ミミちゃんが食べ終わったら、今度は私が……ミミちゃんのを全部食べてあげるからね……んっ」
また一つ……また一つ……
張り切って作ったトトリとミミ、二人のチョコは、まだまだ当分なくなりそうにはなかった。
〈3:ケイナ〉
はしたなくないよう控えめに。規則正しくノックをしてアトリエに入る。
「失礼します」
そして軽く一礼。ここまではいつも通りだ。
しかし、
「いらっしゃいケイナ!」
迎え入れるメルルのテンションとテーブルの状態だけが、いつものアトリエと少し違っていた。
「メルル、これは?」
アトリエのテーブルには、いつもならケイナが整えるはずのお茶の用意が二人分。
「えへへ……いつもはケイナにしてもらってるから、今日のお茶会は私がお世話してあげようと思って。さ、座ってケイナ」
「そんな……ダメですよメルル」
「いいからいいから」
椅子を引かれても遠慮しようとしたケイナだが、メルル相手に強く迫られては断れず、言われるがまま腰掛ける。
「コホン……」
ケイナが席についたところで、メルルはわざとらしく咳払いなどする。
「ねえ、ケイナ。今日って何の日だっけ?」
「……?」
もちろんケイナには分かっている。二月十四日、バレンタインデーだ。そもそも今ケイナがここにいること自体、メルルがバレンタインのお茶会をやると言ったからだ。
(それをわざわざ確認するということは、何かあるのでしょうか……?)
「えーと……ケイナ? 分からなくはないよね? 普通に答えてくれていいんだよ」
「あ、はい。バレンタインですよね」
「そうそう。今日はバレンタインなんだよね」
「はい。そうですね」
「……」
「……」
「……えーと…………あーもうっ、やっぱりまどろっこしいことやめ!」
そう言うと、ケイナの席から見えない位置に隠していたあるものを取り出した。
「はい、ケイナ」
「え。これは……」
「今年は私も作ったんだ。バレンタインチョコ。毎年ケイナにもらってばっかりじゃ悪いもんね」
メルルはどこか照れくさそうにしている。
「これを……メルルが……私のために」
「うん。まあ、トトリ先生が作るのに便乗して、作り方を教えてもらったんだけどね。……って、ケイナ? 何で泣いてるの?」
受け取ったチョコの包みを胸に抱いて、ケイナはポロポロと涙をこぼしていた。
「嬉しいからです……とても……とても嬉しいです、メルル」
「大げさだよケイナ! チョコあげたぐらいで泣かれたら、私なんてバレンタインだけじゃなくて年がら年中ケイナのために大号泣だよ?」
「そんなことないですよ。でも……そうですね。急に泣いたりしてごめんなさい」
涙を拭ったケイナは、深呼吸を一つ。
「ではメルル。これは私から」
ケイナは用意していたチョコレートをメルルに手渡す。
「わぁい! ありがとうケイナ!」
子供みたいに喜ぶメルルに、笑みがこぼれるケイナだった。
「じゃあ主役のお菓子も揃ったところで、お茶会を始めようか」
「私達二人だけですか?」
「うん。トトリ先生はミミさんのところで、ロロナちゃんはトラベルゲート使ってアーランドに。二人とも今日はお泊まりするって言ってたから」
「そうなんですか」
「二人とも今日はお泊まりするって言ってたから」
「?」
何故か同じことを二回繰り返すメルルに、ケイナが首を傾げる。
「ケイナも」
「え?」
「ケイナも今日はアトリエにお泊まりするの」
「ええ!?」
それ自体は別に初めてではないし、嫌でもない。むしろ嬉しいのが正直なところだが、あまりに話が急である。
「私、聞いてないですよ?」
「うん。私の方で決めたから。お城の方にはちゃんと連絡してあるよ」
「メルルってば、もう……強引なんですから」
「ケイナのパジャマとかお泊まりセットもちゃんと持ってきてあるから」
「……」
それは強引の域を越えてはいないだろうか? 疑問を抱くケイナ。
「あと、せっかくだからホラこれ、YES・NO枕も買ってきたよ」
「買わなくていいですそんなもの! 何がどう『せっかくだから』なんですか!?」
コテコテのアイテムを手にしているメルルに、顔を赤らめながら珍しく強めの突っ込みを入れるケイナだった。
「だってケイナがお泊まりするの久しぶりだから。何かテンション上がっちゃって」
「だからって、そんな恥ずかしい枕をよく買えましたね……」
「ふっふっふ……実はこのYES・NO枕、ただのYES・NO枕じゃないんだよ」
「え?」
「なんとこれ、裏も表も両方YESなんだよ!」
「意味あるんですかそれ」
今度は落ち着いて冷静に突っ込むケイナだった。
〈4:エスティ ……?〉
日も落ちた頃……並木通りの酒場。冒険者ギルドの受付も兼ねているこの店だが、酒場である以上やはり夜が本番だ。
多くの客が賑わうその中で、一人の女性がカウンター席に腰掛けていた。どこか物憂げな影を、その背中に漂わせながら。
「フィリー。ウイスキーをロックで」
「お姉ちゃん……そんなに飲んだら体に毒だよ」
「いいでしょ、別に……」
「もう……」
注文は注文だ。フィリーはため息をつきながら、グラスに氷とウイスキーをそそぐ。
エスティは受け取ったグラスを掲げて、澄んだ琥珀色をしばし眺めている。
「ねえ、お姉ちゃん……」
「何?」
フィリーが声を掛けると、エスティはどことなくトゲのある返事。しかしこれしきで怯んでいては、この姉の妹は勤まらない。
「今日……何かあったの?」
女一人で酒場のカウンターに陣取り大酒を飲む――何かしら理由がなければ、取る行動ではない。
「別に。"何もない"わよ」
エスティは淡々とそう答えた。
そしてフィリーは、姉の言いたいことを理解した。
(何もなかった……それがつまり、問題なのよね)
フィリーは酒場の壁に掛かったカレンダーをチラリと見る。二月十四日、バレンタインデー。年に数回しかないラブ度上昇イベントのうち、かなりのウエイトを持つ日だ。
そんな日に、何もなかった……だから静かに荒れている。
(口では仕事に生きるみたいなこと言って、何だかんだで未練があるのよね……)
複雑な姉の胸中を思い、同情というより多分に呆れるフィリー。ちなみにフィリーはよそのカップルを見て自分も盛り上がれるタイプだし、何だかんだで義理チョコはいくつか貰えたりしたので、それなりに充実したバレンタインだった。
とにかく、このまま放置して飲ませ続けるのも良くないだろう。フィリーは大きく息を吸って、覚悟を決めた。
「ねえ、お姉ちゃん。今日バレ――」
――キン
と、剣の鯉口を切る音が辺りに響いた。
「ねえフィリー……私は今、バから始まってンで終わる六文字の単語は絶対聞きたくない気分なの」
「あ、うん、分かりました」
フィリー、すごすごと退散。
しかし諦めはしない。
(だってお姉ちゃん、悪い酔い方した日は何故か私の部屋に泊まろうとするんだもん! ダメだって言っても無理矢理上がるし、人のベッドで服脱ぐし……)
そういう事態は可能な限り避けたい。フィリーは再度覚悟を決める。
(百合聖人様……どうか私に御加護を……!)
祈りを胸に、フィリーは口を開く。
「あのっ、お姉ちゃん、これっ」
「……何それ?」
突然差し出された紙箱を、エスティは怪訝な目で見る。
「何って、その……チョコレート……」
「な……」
驚愕に目を見開くエスティ。しかしフィリーは怒号が飛ぶ前に先回りする。
「お姉ちゃんには何だかんだでお世話になってるから頑張って作ってみたの! もちろん義理だからね! 姉妹百合とかフィクションだから!
あとそれからロロナちゃんがアーランドに出発する前に仲の良い人みんなに義理チョコパイ配ってたけど、お姉ちゃんもらいそびれてたでしょ! 私が預かってるからそれも明日渡すからね!
チョコレートってウイスキーのおつまみにもなるからちょうどいいよね! でも飲みすぎは体に良くないからそれ飲んだらもうお開きにした方がいいよ!」
一気にまくし立てたフィリーを、エスティは呆然と見つめている。
「えっと……つまり……チョコレート、くれるの? 私に?」
「う、うん」
「…………」
「……? お姉ちゃ――」
「うが――――っ!!」
「きゃあああ!?」
いきなりエスティが吼えて暴れ出した。他の客も何事かと目を向ける。
「お、お姉ちゃん落ち着いてぇ! そんなに私のチョコ嫌だったの?」
「嫌じゃないわよ! 嬉しいわよ! でも……でも……妹に義理チョコ貰っただけで、『バレンタインに参加できた喜び』みたいなものを感じてしまった自分が……自分が許せないのよーっ!!」
「いやああ! 暴れないでってばー! そんなのもうどうしたらいいのー!?」
多くの恋人達が寄り添うバレンタインの夜……酒場では酔っ払いの姉と戦う妹の叫びがこだましていた……。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
途中で規制を食らったため、一時投下がストップしていました。もしリアルタイムで見ている方がいたら、すみませんでした。
乙
アーランドのバレンタインは素晴らしいな
GJ!!
SS投下します。
一月くらい前に投下した続きものの第二話です!
遅筆おつ!すいませっ!orz
『ガラスの花』
二話
それはいつもの風景だった。
何も変わらない、心休まるミミちゃんとの時間。
久しぶりにお互いゆっくりと時間を取れて、お茶を飲みながらアトリエでおしゃべりに興じていた。
前兆は無かったと思う。――――私が気付かなかっただけかもしれないけど。
ふと、会話が途切れた。
会話の小休止。
お茶を口に運んだミミちゃんがカップをコツンとソーサーに戻す。
「ねぇ、トトリ。私、あなたの事が好きなの」
何でもない事のように、ミミちゃんはそう告げた。
「……え? あ、え〜と、ありがとう、私もミミちゃんの事好きだよ!」
驚いた。そして一瞬の驚嘆が過ぎて、胸に感じたのは、単純な嬉しさ。
だってあのミミちゃんが、こんな台詞を言ってくれるなんて。
私は、何も気づいていなかった。
ミミちゃんが何を告げようとしていた、いや、たった今何を告げたのかの意味が。
「……違うわ、トトリ。私はあなたの事を“愛している”の」
まっすぐに私を見つめるミミちゃんの顔色に、朱が混じる事はない。
その様子があまりにも普段通りで。
言った事への恥ずかしさも含まないその声音が、ミミちゃんが真剣なのだと何よりも訴えかける。
その時、私は何を感じていたのかな。
今思い出そうとしても、分からない。
何も考えられていなかったのかもしれない。
だってミミちゃんの言葉は、これからの日常を、今までと乖離させてしまうものだったから。
◆
「――――いっ!先生!トトリ先生ってば!!」
「…………え? あ、メルルちゃん?」
横を向くとむすっとしたメルルちゃんが立っていた。
あれ? 何時の間にメルルちゃんが横に来たんだろう。
「もう、どうしたんですかトトリ先生。何度呼びかけてもぼーとして返事してくれないなんて」
「そう、だった?ごめんね、気づかなくて……」
慌ててメルルちゃんに謝った。そう言えば今日、メルルちゃんに錬金術の事を教えてほしいって頼まれていたんだった。
ミミちゃんの事を思い出していて、深く考えこみ過ぎていたみたい。
まずいなぁ。あれから……ミミちゃんと、別れてから一週間もたっている。
さすがに普段通りにいようって決めているのに。
「気にしてないですけど……。本当に何でもないんですか?」
「うん、ちょっとぼーとしてただけだから」
「……そうですか? でもちょっと休んだ方がいいですよ。その鍋の調合も、かき混ぜすぎてるみたいですよ」
「え!? わ、ほんとう! あーあ、これはもうだめだなぁ……」
鍋の中身をのぞきこむと、紫色になっていた。
本来は緑色になってなきゃいけない所なのに、撹拌を促しすぎたみたいだ。
こんな簡単な錬金術での集中力すら途切れているなんて、本格的に少し休憩した方がいいかもしれない。
ふぅ、と一つ息をついて鍋の中身を諦め、メルルちゃんの方を向いて笑う。
「ごたごたしててごめんね、メルルちゃん。錬金術の話、今からしようか」
「え、でも、鍋の中身はいいんですか?」
「うーん、これはもうダメみたいだから、いいよ。私も少し休憩したいし、ちょっとお茶入れてくるね。それからゆっくり話そ」
「すいません、忙しいのに。トトリ先生ってほんと、優しいですね!」
そのセリフにぴくんと体が揺れる。
『――――本当に、トトリは優しいのね』
メルルちゃんの台詞に被るように響いた記憶。
思わず両手を強く握る。
「違うよ、私は……優しくなんて……ないよ」
絞り出すように漏らした声は、床に吸い込まれて行く。
「どうかしました?」
ごくごく小さい声だったためメルルちゃんには聞こえなかったみたい。
「……ううん、なんでもないの。お茶入れてくるから、テーブルの方で待ってて」
はい、とにこやかに返事をしてメルルちゃんがテーブルの方へ向かう。
私は台所の方へ向かい、お茶の準備をする。
お茶っぱを入れたティーセットにお湯を注ぐと、ふわりといい香りが鼻をくすぐった。
その香りすら、ミミちゃんとの会話を思い出させるスイッチにしかならない。
そして思いだす内容は、自分自身の汚さの再確認を促してくる。
徐々に煮出されていく紅茶と供に、私の記憶もひも解かれる。
◆
告白された時、私は、ミミちゃんからの試しに付き合ってみないかという誘いに1も2もなく飛びついた。
とにかくその時に答えを出したくなかった。
考える時間が欲しかった。
混乱を鎮める時間も欲しかった。
なにより、ミミちゃんとの心地のいい時間を今すぐに失いたくなかった。
だから安直に目の前の提案に飛びついた。少し時間をおけば名案も浮かぶだろう、なんて。
それがどういう事なのか、考えもせずに。
すでに告げられてしまった事実は変わらない。
その事実から目をそむけて、いつもの生活を送るなんて事、私には無理だった。
普段通りに接してくれるミミちゃんに、私は過剰に反応してしまう。
思えばミミちゃんが一歩を踏み出した時点で、今まで通りの関係でいるなんて事出来るはずがなかった。
だって私とミミちゃんの立ち位置は明確にずれたんだから。
だから、そう気付いた時、ミミちゃんの提案に乗った自分が醜く思えた。
今までの関係を失いたくなくて、ただただ少しでもしがみついていようとする自分。
自分の想いをさらけ出して、苦しくてもつらくても我慢を重ねようとするミミちゃん。
どちらが綺麗に見えるかなんて、問いを放つまでもない。
まるで自分が真っ黒に汚れてしまったかのような感覚。
ミミちゃんと一緒に時を過ごせば過ごすぼど、どんどん追い詰められていく。
ミミちゃんは優しくて、普段通り。ただ、その瞳の中にある、まあるい優しさを感じ取れるようになった。
向けられる想いは気付かなかっただけで、きっと、前からそうだったんだと思う。
その優しさは心地よくて、嬉しくて――――すごく、眩しかった。
眩しすぎて、目を向けていられない。
黒い自分と光のようなミミちゃん。
ふと気づけば、ミミちゃんが告白してこなければ、今まで通りの関係だったのになって考えてしまう自分がいた。
自分が対応出来ない事を人のせいにしている。ミミちゃんが悪い訳じゃないのに。
理性で言い聞かせようとしても、心の奥底にどろりと留まる感情は消えない。
頭で考えている事が、心を動かさない。
その矛盾した苦しさは今まで感じた事のないもので。
一月後。耐えきれなくなった私は、自分で日常を壊してしまった。
ミミちゃんに、こんな関係は無理だと、告げてしまった。
提案を飲んだのは自分なのに。時間がたてば……なんて考えて。
人の真剣な想いに、真剣に答えようとしていなかった。
ミミちゃんはあっちこっちへ前後する私の話を最後まで聞いてくれた。
一つ頷くと、
『――――本当に、トトリは優しいのね』
『辛い想いをさせてごめん。わかったわ、もうこの関係は解消しましょう』
と、そう言った。
自分の想いを否定されたのに、涙もみせず。ただ淡々と、やさしくそう言ってくれた。
どうしてそんなに強くあれるんだろう。なぜ、そんなにも……。
私との強さの差を見せつけられたようで、顔を上げられなかった。
ゆっくりと背を向け出ていこうとするミミちゃんの足音。
まるでその音が別離の合図のように思えて、私は思わず声をかけていた。
『ミミちゃん!……あの、私と、まだ友達で…居てくれる?』
ふわりと振り向いたミミちゃんの笑顔は、優しくて。
『心配しないで。トトリが望むなら、私とあなたはいつまでも……友達よ』
そう言ってくれたミミちゃんの言葉が、私にとっての光だった。
ミミちゃんの優しさに甘えてばかりの自分を、酷く黒く感じた。
◆
「……っつ」
手のひらを開くと、強く握りしめていたせいで爪が食い込んで、すこしだけ血がにじんでいた。
こんなの、なんでもない。ミミちゃんをどれだけ傷つけたかに比べれば、こんなもの。
一つ頭を振る。今はメルルちゃんが来ているんだ。そちらに集中しないと。
お茶そろそろ、かな。ううん、煮出しすぎたかも。
あの日起こった事を思い出していたら、紅茶の色がかなり濃くなってしまっていた。
「……まぁ、いいか。飲めないほどじゃないよね」
一人ごちてメルルちゃんの方へティーセットを持っていく。
「お待たせメルルちゃん。時間かかっちゃってごめんね」
「いいですよ。それにしても、本当に大丈夫ですか? 顔色あんまりよくないですよ?」
メルルちゃんにそんなに心配されるほど、自己嫌悪が顔に出ちゃってるかな。
自分の弱さに苦笑しながら、カップを置いて、メルルちゃんの前に座る。
「そんなに疲れているように見える?」
「いえ、疲れているっていうか……なんて言ったらいいのかな、こう、迷子の子供みたいな雰囲気がするっていうか」
「そう、かな」
メルルちゃんの歯に衣着せぬいい方が心地よかった。
その内容が的を射ている感じもしたから、なおさらに。
日常を見失って、悩みながら手探りで過ごした日々すらも今は遠い気がする。私は、迷子なのかもしれない。
口元にカップを運ぶ。
「あ、ひょっとして先生さびしいんですか? ミミさんがいなくて」
言われた言葉に手が止まる。
飲もうとした紅茶をゆっくりと下して、ソーサーに戻す。
なんで、ミミちゃんの名前が? メルルちゃんは何か知ってるの?
跳ね上がるように心臓が動きまわる。
頭の中の疑問符は際限のない増殖を繰り返すが、口元からは飛びださない。
私の無言を肯定と受け取ったのか、メルルちゃんは話を続ける。
「そっか。だから先生そんなに元気ないんですね。でもそんなに心配しなくても大丈夫ですよ、だってミミさんですよ?必ず先生の所に帰ってきますって」
心配?帰ってくる?何の事かさっぱり分からない。
ミミちゃんが、どうしたの?
微かに震えている唇を、無理矢理動かす。
「あの……ごめん、メルルちゃん。何の話かな」
そう聞き返すと、メルルちゃんはきょとんとした顔をした。
質問が予想外だったんだってすぐに分かる表情だ。
そしてその後の台詞は、私にとって想像外だった。
「え? 先生ご存じないんですか? ミミさん、数日前に長めの旅の依頼に出たんですよ?」
また、日常が一つ壊れていく。
続く。
というわけで第二話ですた。また長い。
終わり?見えるわけなんてなかった!話し暗い!
途中で規制が入って焦ったのは秘密。
色々立て込んでるので、次話はちょっと先になるかもしれない。
気長〜に待ってもらえると泣いて喜ぶ所存です。
おつおつ
胃が痛くなるような展開は大好物だが、一気に読み切れないともどかしくてしょうがないのぜ
シリアスなのは珍しいから期待してた、続編乙です
乙
SS投下します。
>>25-32と同じく前スレ569-572、582-587、673-678、704-722のトトミミ新婚生活編の続きに当たりますが、今回はくーちゃん視点でロロクーのお話です。
拙作中、多少世界観にそぐわない描写等ありますが、悪しからずご了承下さい。
あと長いので規制に引っかかったらごめんなさい。
「旅行に行こう!」
唐突に、本当に何の前置きも突拍子もなく、ロロナがそんなことを言い出した。
場所は冒険者ギルド……つまり私の職場で、すぐそばには私の部下が何人もいるわけで。
「あのロロナ。私、今は仕事中――」
「くーちゃん明日からお休み取れるんだよね!?」
「ええ、そうよ。それはつまり今日はまだ仕事があるってことで――」
「私もくーちゃんのお休みに合わせて、お仕事終わらせたから! くーちゃんがスケジュール整理してくれたおかげだよ!」
「そう、良かったわ。それはともかく、私は仕事中――」
「でねっ、でねっ、明日からくーちゃんと何しようってずっと考えてたんだけどね!」
「あの、ロロナ、そろそろあんたの後ろに報告待ちの冒険者が列作り始めてるんだけど――」
「アールズのヴェルス山の近くにね、もうじき――」
「ひ・と・の・は・な・し・を・聞かんかぁぁーーっ!!!!」
……淑女の仮面をかなぐり捨て、天に轟かんばかりに吼えた私を、一体誰が責められるというのか。
不本意ながら、今日の休み時間はお説教タイムだ。
「あのねロロナ。アールズに行ってた間はアストリッドのせいでアレだったけど、あんたはもう戸籍上三十半ばに差し掛かろうっていう成人なわけよ」
「うん……」
「常にそうであれとは言わないけど、成人なら成人らしく、TPOに合わせて、落ち着いた態度が必要なの。分かる?」
「はい……」
「しかるにあんたは――」
ったく……まさかこの年になってもロロナを叱るはめになるとは思わなかったわ。
童心を失わないのは悪いことじゃないし、無邪気なのもロロナの可愛いところっていうか、魅力でもあるわけだし、そういう点を否定するわけじゃないけど、やっぱりある程度の節度はあってほしいわけで。
まあ今回に関していえば、久しぶりに私と一緒にお休みを過ごせるってことで、舞い上がっちゃったんでしょうけど。まったくロロナってば……って、ダメダメ! そんなこと考えたら顔がにやける! 今はお説教に集中するのよクーデリア!
「――ということよ。分かった?」
「はい……」
「反省した?」
「はい……」
「よろしい」
理性と根性で頬の緩みを封じ込めた私は、どうにか切りの良いところまでロロナへのお説教を終わらせた。
「それじゃ私は仕事に戻るから」
「あ、あの、くーちゃん……」「……」
何? って聞くまでもないでしょうね。散々叱られたあとで、言いにくいんだろうけど。
「仕事引けたらすぐアトリエに行くから、明日の予定はその時聞くわ」
そう言った途端、ロロナの表情は曇り空が一息に晴れ上がったような笑顔になった。あーっもうっ、可愛いわねまったく! とっとと仕事終わらせないと!
そんなこんなで夕方になってから、私はロロナのアトリエにやってきた。
現在、ロロナの弟子のトトリと孫弟子のメルルはアールズ在住。ホム達はアストリッドが連れ出していて、今のロロナは基本一人でアトリエにいる。
ロロナとしては寂しいらしくて、隙あらばどこかへ(主にアールズへ)行こうとする。
数少ない錬金術士にそうそう留守にされたら仕事にも支障が出るし、最近は頻繁に、というかほぼ毎日、私はアトリエを訪れるようにしている。……あくまで仕事の一環だからね。他意はないからね。
でもまあ、いくら忙しいとはいえ四六時中アトリエで仕事させるわけじゃなく、スケジュールを調整して(無論私が。ロロナに自分でスケジュール管理をやらせたら色々とひどい)休みを取って遊びに行ったりもする。
そんなわけで、明日から私とロロナはお休みなわけだけど……
「温泉旅館?」
「うん。アールズのヴェルス山の温泉は知ってるでしょ?」
「ええ。そこからアールズの市街地まで温泉を引いて、健康ランドを経営してるのよね」
「そうそう」
「で、そのアールズの温泉施設に旅館ができたの?」
「ううん。そっちじゃなくてヴェルス山近くの開拓地に、素敵な露天風呂のある温泉旅館が今度オープンするの。外国風のお宿らしいよ」
「今度オープンってことは、まだ泊まれないんじゃ?」
「えへへ……」
ロロナは何やら意味深な笑みを浮かべている。焦らさないでよね、もう。
「実はちょっとしたコネでね、オープン直前の旅館を貸し切りで泊めてもらえるの」
「旅館を貸し切りって……また豪儀な話ね」
「一泊二日で、行きと帰りはトラベルゲートになるけど、どうかな?」
「……」
ロロナと二人っきりで旅行……しかも温泉……そして貸し切り……断る理由が無さすぎるにもほどかあるわね。
――あ。
「ちょっとロロナ! 確認するけど、その旅行って私とロロナの二人で行くのよね?」
「うん。そうだけど」
「そう。それならよし」
危ないところだったわ……ここでそこんとこハッキリしておかないと、当日になって実はみんなで団体旅行でしたー、なんてオチになりかねないもの。
「あの、くーちゃん。何かまずかった?」
「あ、いや、何もまずくないわよ、全然」
ロロナと二人っきりが確定したからには、むしろ本格的に美味しすぎるわけで。
「温泉貸し切りなんてめったにできることじゃないし、断る理由はないわね」
「良かった! 実はもう二人で泊まるって伝えてあるから」
「気が早いわね、あんたは」
つい苦笑が漏れる。私が断るなんて、考えもしなかったのかしら。
「……そういえばロロナ。行き帰りにトラベルゲートを使うって言ってたけど、旅館がゲート拠点になってるの?」
「あー、うん。そのへんは行けば分かるよ」
「?」
まあいいか。何はともあれ、明日は温泉。楽しみだわ。
翌朝。
ロロナと一緒にトラベルゲートを使って飛んだ先は、ヴェルス山の麓の開拓地、ユヴェルの村――規模的にはもう町と言っていいわね。その郊外。
「へえ……なかなか良さげな所じゃない」
「でしょう?」
私達二人の目の前には、できたてホカホカの旅館が『近日オープン』の看板とともに立っていた。アーランドでは非常に珍しい、瓦葺きの和風建築物だ。
「さあ、早く入ろう」
「あ、ちょっと待ってよ」
ロロナは遠慮なく旅館の中に入っていき、私はその後について行く。
オープン前だから正規の従業員はいないって話だったんだけど――
「ちむー!」
「ちむちむ!」
「ちむむ〜」
非正規の従業員は大勢いた。っていうか、ちむがわんさかいた。
「あの、ロロナ……ここって」
私がロロナに確認するよりも早く、奥から仲居らしき人物がやってきた。
「ようこそお越し下さいました。ロロナ様、クーデリア様」
丁寧にお辞儀をするその人物を見て、私は思わず手のひらで額を押さえた。
「クーデリア様? どうかなさいましたか?」
「いえ、何でもないわ……久しぶりね、ケイナ」
きっちり着物を着てどっからどう見ても温泉旅館の仲居にしか見えないその人物。しかしてその実体は、ロロナの孫弟子メルルの大親友にして一流のメイドさん、ケイナ・スウェーヤだ。
「ロロナ……今さらだけどあんたの言ってた『ちょっとしたコネ』って……」
「うん。実はこの旅館、メルルちゃんがオーナーなんだ」
「はあ……」
ロロナとケイナから話を聞くところによると……
アールズの錬金術士として多忙な日々を送っていたメルルは、あんまり仕事ばっかりしていて、気付いたら貯金額が物凄いことになってたらしい。
使う当ての無い大金を抱え込んでいてもしょうがない、ってことで何か有効な使い道はないかと考えた末、観光地として有力なヴェルス山の温泉に目を付けたと。
「先日、無事に竣工を終えたのですが、本格的に旅館としてスタートする前に、お世話になった方々を招待しようとメルルが提案いたしまして」
「なるほど。そういうことか……」
話が美味すぎると思ったわよ。どうせメルル本人だのライアスだのも臨時の従業員やってて、他の泊まり客としてトトリ達やらもいるって話でしょ。確かに私達は二人で来たけど、結局みんなで団体旅行みたいなもんじゃないの。
「残念ながら今回は皆さんスケジュールの都合が悪く、ロロナ様とクーデリア様のお二人だけとなってしまいましたが」
「……へ?」
つい間抜けな声を上げてしまった。
「メルルも大口の仕事をいくつか抱えてしまって、今日明日と従業員を務めるのは私とちむさん達だけということになります」
「ふ、ふーん、そうなんだ。でも、まあ、それだけいれば問題ないんじゃない? ケイナもちむも万能選手だし」
「恐れ入ります。ではお部屋にご案内しますね。荷物はちむさん達にお預け下さい」
二人っきりの旅行だと思っていたらフェイントで団体旅行だと思ったらさらにフェイントでやっぱり二人っきりだった。
「おー、畳だ畳! これメルルちゃんが作ったの?」
「はい。屋根の瓦やその他の建材なども、メルルが錬金術で調合しました」
「やるなぁメルルちゃん」
旅先でテンションが上がっているロロナは、年甲斐もなくはしゃいでいる。
お風呂や御手洗いの場所、食事の時間等に関するケイナの説明を上の空で聞きながら、私は今さら緊張を覚えていた。
だって温泉よ!? 旅館で一泊よ!? ロロナと二人っきりよ!?
つまり何ていうか、その、二人で温泉に入ったりだとか! 夜は、また、こう、それ以上のアレだったりとか! する可能性が無きにしも非ずというかあってしかるべきなのは確定的に明らかであって!
……ダメだ、錯乱してる。落ち着け私。
私もロロナも大人だし。幼なじみの大親友であり、なおかつとっくに大人としての関係も契ってるわけだから。今さらそんなウブな反応するのはおかしいのよ。
「くーちゃん、早速お風呂に行こう!」
――て、いくら自分に言い聞かせたって、今この瞬間の胸の高鳴りは誤魔化せないわけで。
「そ……そうね。行きましょうか」
なるべく平常心を装いながら、私はロロナと二人、埃一つ落ちていない廊下を歩いて行く。
「室内風呂と露天風呂で何種類かあるって言ってたよね。まずどこに行こっか? やっぱり露天?」
「どっちでもいいから、早く行きましょう」
「あ、くーちゃん」
内心の動揺を悟られたくなくて、私はスタスタと先を歩く。
特に考えてのことではないが、私の足は露天風呂へと向かっていた。
「ふぃ〜……お湯も景色も最高だね〜」
「そうね……」
確かに。自然石を活かした大胆かつ優雅な温泉に浸かりながら、ヴェルス山と彼方の海原を同時に楽しめるこのロケーションは見事だわ。オープン後は間違いなくこの旅館の目玉になるでしょうね。
だけど私にとっては景色に負けないぐらい、ロロナの裸体に目を引かれるわけで……別にいやらしい意味じゃないわよ? 年の割に肌とか凄く綺麗だし、純粋に感心の眼差しを送ってるわけで。
「くーちゃん♪」
「っ!」
ロロナがすぐそばまで寄ってきた。熱いお湯の中で、肌が触れ合いそうなほど身を寄せて。
「ねえ」
「な、何よ?」
ロロナの顔が近い。湯のせいで赤く火照った表情が妙に色っぽい。
そっ、と。ロロナがお湯の中で手を重ねてきた。ちょっ…………こんなところで……何を……?
「背中、流してあげよっか」
ですよねー。
分かってたわよ、そういう流れだってことは。何年連れ添ってると思ってんのよ。
お言葉に甘えて、ロロナに背中を流してもらう。
「くーちゃんの肌って、いくつになってもぷにぷにしてるよね。いーなぁ」
「……それは遠回しに子供っぽいって言われてるのかしら」
「違うよ。うらやましいんだよ」
「そういうあんただって、十分若作りよ」
「そうでもないよ。一度子供に戻ってみて実感したけど、何ていうか、色々とね……」
背中を流してくれているロロナの表情は見えないが、おそらく遠い目をしているのが気配で分かった。
「ティファナさんみたいに、綺麗に年を取れたらいいんだけどねー」
「あー……確かにあの人は理想的ね」
主に中高年の男性から多くの支持を集める雑貨屋の店主は、既に四十の半ばを過ぎているが、いまだに『美しい』と言うに相応しい容色を保っている。
もちろん若い見かけのままってわけじゃなくて、当たり前に年を重ねてはいる。だけどそれでも綺麗だ。いうなれば、格調高く年を取っている。
「今度ティファナさんに聞いてみようかな。どうしたら綺麗なままでいられるのか」
「若返りの薬すら作れる錬金術士がそんな質問したら、イヤミに聞こえるわよ」
「師匠じゃないし、そんなの作らないよ。また記憶なくなったら嫌だもん」
「じゃあ記憶がなくならないとしたら?」
「それでもやだ」
「でも、若返り……っていうか不老不死って錬金術の一つの到達点なわけでしょ。そうでなくても、なれるならなりたいのが人情じゃないの?」
「興味はあるけど、それを実際にやりたいのかは別。だって不老不死なんかになったら、もうみんなと一緒の時間を生きられなくかるんだよ」
「確かにそれは寂しいかもね」
「かもじゃなくて、絶対寂しいよ! いくら長く生きられたって、もうりおちゃんの踊りを見たり、イクセ君のご飯を食べたり、ステルクさんのハトさんと遊んだりもできなくなるんだよ!」
「それは不老不死と天秤に掛けるようなことなの? 特にハト」
「それに何より、くーちゃんと一緒にいられなくなるから」
「……じゃあ仮に、私も一緒に不老不死になれるとしたら――」
「だめっ!」
「え……」
予想よりも強い語気で拒否されて、少し面食らった。
「それはだめだよ。だって、だって――」
「ロロナ……」
「そんなことしたら、おばあちゃんになったくーちゃんを見られなくなっちゃう!」
「へ……?」
「くーちゃんはね、今もすっごく可愛いけど、おばあちゃんになったらすっごく可愛いおばあちゃんになると思うの!」
「はあ……」
「それで、私も一緒におばあちゃんになるの!」
「へえ……」
「だから私、若返りの薬は作らないよ」
「そう。それならまあ――へっくしっ!」
くしゃみが出た。露天とはいえ、まだ昼間だし、冷えるってほどじゃないんだけど。
「くーちゃん大丈夫?」
「ん……どうせまたフィリーあたりがくだらない噂でもしてるんでしょ」
冗談のつもりだったけど、不思議と事実のような気がした。後でフィリーをとっちめておこう。
「くーちゃん。冷えたなら、あっためてあげよっか」
「え?」
背中を流す手を止めたロロナは、
「えいっ」
「やっ……!?」
いきなり背中から私を抱き締めてきた。
「くーちゃんプニプニ〜♪」
「ちょっ……何するのよ!?」
「だからくーちゃんをあっためてあげようって」
「そんなことしなくたって、お湯に浸かれば――ひゃうっ!? ど、どこ舐めてんのよ!」
「耳」
「普通に答えるんじゃないわよ! やっ、あっ」
「ふっふっふ……くーちゃん、耳の後ろが弱いんだよね」
「〜っ」
うう……ロロナの熱い舌が後ろのとこを集中的に……おまけに胸まで揉んでくるし。
「乳首立ってきてるよ。やっぱり冷えたからかな?」
「いや間違いなくあんたのせいだから!」
「風邪ひいたりしないように、もっとあったかくしてあげないとね♪」
「ちょっ……ロロナ……嫌、じゃないけど、その、こんなところで……」
「大丈夫だよ。貸し切りなんだから」
「いや、でも……」
旅館の敷地内とはいえ屋外だし……と、渋る私の気持ちを知ってか知らずか。
「くーちゃん」
「何――〜〜っ」
迂闊に振り向いてしまった私に、ロロナはねじ込むようにキスしてきた。
「ん〜〜〜〜〜〜♪」
「ん……んんっ、ん……!」
最近ご無沙汰だったロロナの唇の感触。強引だし、場所が場所だけど、それでも暖かくて柔らかくて、こうしているだけで、頭の芯が甘く痺れてくる。どうしようもないくらい強制的に、私の思考力を奪っていく。
「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………………ぷはぁ」
長いキスを終えたロロナは――
「はむっ、ん〜〜〜〜♪」
訂正。終わってなかった。息継ぎだった。
ロロナの舌が私の中に入ってくる。焦らすようなことはしないで、野生獣が獲物を狩るように、真っ直ぐ私の舌を奪いにくる。
私はそれを受け入れる。受け入れてしまう。だって仕方ないでしょ。何かもうスイッチ入っちゃったし。
「ん……ちゅ……ふぁ……くーちゃん……私、すごくあったかくなってきたよ……くーちゃんは?」
「聞かなくても……分かるでしょうが……んんっ」
唇と舌を絡め合いながら、ロロナの手が私の、私の手がロロナの、互いに体で覚えてしまっている、敏感なところを刺激する。
「は、ぁ……くーちゃん……深いよぉ……」
「強引にしてきた分、お返しよ」
「そんなの……っ……だったら、んっ、私も……」
「あっ、ちょっと……それ、声出ちゃ、やっ、んあっ」
「知ってるよ。くーちゃんの声、聞かせてほしいから」
「ロ、ロナぁ……っ」
「くーちゃん……こんなに熱くなってるよ……いやらしいね」
「〜〜っ」
ほとんど唇を当てて耳元で囁きながら、ロロナの指が全てをさらけ出させるような勢いで、私の奥を弄ぶ。
「あっ、あっ、ロロナっだめっ、まっ」
「待たないよ〜♪」
「っ、ぁ、あっ、あっ」
ロロナの指先が踊るたび、私の口から声が漏れる。
「やっ、あっ……ロ、ロロナぁ……も、うっ……だめ……っ」
「くーちゃん、いいよ。我慢しないで、ほら」
「あ」
ロロナの指が、より激しく私を攻め立て――
「――っ、あ、あ……あああっ……!」
――そのまま最初の頂にまで導いてしまった。
「はぁ……はぁ……」
「くーちゃんってば、外なのにすごい声出すね」
「あ、あんたのせいでしょうが!」
「怒らないで。それよりもっと――……ん……ふ……ふぇ…………ぶぇぇっくしょいっ!!」
……盛大なくしゃみをしたロロナの鼻から、長いのが一筋。並の付き合いなら百年の恋も冷めるわね。私の場合は行為の余韻が覚める程度だけど。
「あんたの方が体冷やしてるじゃないの」
「うう〜……くーちゃん、あっためて〜」
「普通にね。ほら鼻かんで。お湯に入って」
ぐずるロロナと一緒にお湯に浸かる。長く外気に晒していた肌に、熱い湯が心地良い。
「はぁ〜……あったか〜い」
「ったく……さっきみたいなこと続けてたら、風邪ひいてたわよ」
「そうだね。じゃあさ、くーちゃん」
「何?」
「お風呂の中で続きしよっか」
「……」
私は大きく息をつき、
「せいっ」
「あいたっ」
ロロナの脳天にチョップを打ち込んだ。
「調子に乗るな。馬鹿なこと言ってないで、適当に暖まったら出るわよ」
「ぶー……」
ぶーたれるロロナだけど、そんなの実行したらのぼせて倒れるオチが目に見えてるっての。
夕食までの時間を潰しがてら、私とロロナは町の中を歩いて見て回ることにした。
元は荒れ地を切り開いて人を住まわせる純粋な開拓地だったこの場所は、温泉の発見によって方針を大きく転換。アールズ最大の観光地にしようと計画されている。
その計画の舵取りをしているのはもちろん、開拓事業最大の立役者であるメルルだ。
「メルルちゃんすごいよねー。アーランドと合併してからも、アールズ地方をどんどん発展させてるんだよ」
真新しい商店の並ぶ町並みを眺めながら、ロロナが嬉しそうに言った。
「私やギルドの人間に言わせたら、あんたも十二分にすごいんだけどね」
ロロナだけでなく、弟子のトトリもアーランド、アールズ発展への功績は並み大抵のものじゃない。
ついでに正式な弟子とは違うけど、ロロナが錬金術を手ほどきしたピアニャも、東の大陸で目覚ましい活躍をしていて、その結果は年々健全な上昇を続ける大陸との通商利益に如実に表れている。
ついこの間も定期船の数を増やすことが決定されて、担当の職員が悲鳴を上げてたわね。どこも人手が不足してるから……フィリーは結局アールズに居着いちゃったし。
「改めて思うんだけど、錬金術士の存在って反則みたいなもんよね」
「ええ? どうして?」
「普通に考えて、一つの国家がここまで急速に、且つ健全に発展するなんて有り得ないのよ。でも、優秀な錬金術士がいればそれが可能になる。知り合いの経済学者が頭抱えてたわよ。彼女らが一人いるだけで既存の理論が全て覆される、って」
「う〜ん……」
私の話を聞いたロロナは、目を閉じ顎に手を当てて、何やら考え込んでしまう。
やがてロロナは、珍しく真面表情で私を見て、言った。
「くーちゃん、それは間違ってるよ」
「何で?」
「だって、私は一人じゃないから。一人の力じゃ何もできなかったから。
くーちゃんやりおちゃんやイクセ君やステルクさん、タントさん、ジオさん……師匠にほむちゃん、それに街のみんな……大勢の人が力を貸してくれたから、私は錬金術を続けられて、アトリエを守ることが出来たんだよ。
トトリちゃんもメルルちゃんも、ピアちゃんだって同じ。一緒にいて、支えてくれる人がいるから、みんなで頑張って、すごいことが出来るんだよ」
「……そう。確かにその通りね」
規制予防かきこ
謙遜でも韜晦でもなく、きちんとそれが分かっている。まったく……アストリッド以外の錬金術士はみんな、にくったらしいぐらいに素直で良い子ばかりだ。
「でも、ロロナ。私が反則だって思うのは、あんた達錬金術士が揃いも揃って、それだけの人の力を集めてしまうっていう事実なんだけどね」
「え? えーと……」
「つまり、錬金術士ってのは、不思議と人を引き寄せてしまう。変な引力みたいなものがあるんじゃないかってこと」
「そんなのあるかな?」
「あるわよ。確実に。あんた達錬金術士なら、どこの土地行っても、すぐに仲間作ってやってけるんじゃない」
「えー、やだよそんなの。私くーちゃんのいない生活なんて無理だもん」
「そう? その割にはアールズで――いや待てこの話無し」
「そういえば、元に戻って直後は私もくーちゃんも反動がすごかったよねー。数年分のブランクが一気に来てそれはもう――」
「この話無しって言ってるでしょうが!!」
あの一時期のことは、今思い出しても顔から火が出そうになる……だからもう思い出さないようにしている。
「コホン……とにかく、私が言いたいのは、あんた達錬金術士の強みは、そういう一種カリスマめいた引力にあるんじゃないかってこと」
「ん〜……私はあんまりカリスマって柄じゃないけど、メルルちゃんなんかは確かにそうかもね。メルルちゃんには、すごく人を惹き付ける力があると思う」
「生まれる時代が違ってたら、それこそ稀代の英雄になってたかもしれないわね。まあ今の時点でも、十分歴史に名を残すレベルだけど」
「かもね。ところでくーちゃん」
「何?」
「えいっ」
「うわっ!?」
何かロロナがいきなり抱きついてきた。
「えへへ……私に引力があるかは分からないけど、くーちゃんに私を引き付ける引力があるのは明らかだよ」
「ば、馬鹿なこと言ってんじゃないわよ! 恥ずかしいでしょうが、往来で! 離れなさい!」
「難しいかなぁ。何故ならくーちゃん引力は、くーちゃんの可愛さに比例してその力を増していくから」
「そんな理屈はどうでもいいから!」
「うーん、やっぱりくーちゃんの抱き心地は最高だよねー……くーちゃんのいない生活なんてどう考えても無理だよ、うん」
「分かったから! もう離してってば!」
「はいはい」
160 :
名無しさん@秘密の花園:2012/02/20(月) 20:26:05.60 ID:pW5ShblS
ロロナは渋々といった感じで手を離す。うう……幸い周囲にあまり人気が無かったからいいけど。いや、よくない。決して。
「抱きつくなとは言わないけど、もうちょっと時と場合を考えなさいよね」
「私とくーちゃんの仲なんだし、今さら気にすることないのに」
「気にするわよ! 夫婦や恋人にだって常識としての節度があるでしょうが!」
「夫婦……」
「あ……」
まずい。
ここ最近、出来れば触れないようにしていたワードの一つだ。
「ねえ、くーちゃ――」
「あー! そういえばお土産買うんだったわね! ほらロロナ行きましょう!」
「あ……うん」
ロロナの手を引いて、だけど目を合わせないようにしながら、私は歩き出す。
……決心が付かないなんて、いいわけでしかない。
ただの臆病だと、自分でも分かっていた。
適当に土産物を見繕った後、夕暮れ時になって、私達は旅館に戻ってきた。
「ケイちゃんのご飯食べるの久しぶりだな〜♪ 楽しみだな〜♪」
「楽しみなのは分かったから、ちょっと落ち着きなさい」
夕食を待つ間、部屋で子供みたいにはしゃいでいるロロナをたしなめる。……町での会話が尾を引かなかったのにホッとしていたなんて、もちろんおくびにも出さない。
やがてケイナとちむ達がお膳を運んできた。
ロロナが楽しみにはしゃいでいただけあって、ケイナの料理の腕前は見事なもの。特にアールズ名産と名高いキノコ料理の数々は絶品だった。
ロロナの話によると、この料理に使われているキノコは元々アールズでも幻と言われるほどの珍品だったけど、メルルが錬金術を使って、天然に等しいものを栽培するのに成功したそうな。
「メルルちゃん、キノコにはこだわりあるからねー。美味しいキノコを作るために、品種改良とか色々挑戦してるし」
「へえ」
つまりロロナにとってのパイみたいなものかしらね。
食事の後は、部屋でゆっくりロロナとくつろぐ。
――つもりだったんだけど。 せっかくだから中のお風呂も入りたい、というロロナに引っ張られて、二人一緒に檜のお風呂にやってきた。
「はふぅぅぅ〜……」
熱めのお湯にザブンと浸かったロロナが、大きく息をつく。続いて私も。ロロナほどじゃないけど、お湯の熱さと気持ちよさに息が漏れた。
この広々とした檜の湯は、湯船だけでなく浴場の壁や天井まで良質の檜(もちろんメルルが錬金術で加工済み)で出来ていて、柔らかい質感と木の香りがとても心地良い。
「ふぅ……露天も良かったけど、室内風呂も悪くないわね」
「そうだねぇ〜……」
弛緩しきった表情でロロナが頷く。昼間の露天みたいに余計なことは考えず、全身全霊で温泉を満喫しているみたいね。……物足りないだなんて微塵も思ってないわよ。
「でもくーちゃん、露天とここだけじゃなくて、まだ他にも色んな種類のお風呂があるらしいよ」
「それを売りにした温泉旅館なわけだしね」
「今から全部回れないかなぁ」
「無理でしょ。ていうか確実にのぼせて倒れるからやめなさい」
「ん〜……でももったいないなぁ〜……」
「また来ればいいでしょ。オフシーズンにでも、二人でお休み取って」
「くーちゃんも一緒に来てくれるの?」
「当たり前でしょ。ロロナ一人でこんな良い温泉旅館に行かせたら、いつまで経っても帰ってこないかもしれないしね」
「ふーん、くーちゃんもここ気に入ったんだ?」
「まあね」
メインの温泉は文句無し。料理その他のおもてなしに関しても、今回はオープン前ということでケイナ&ちむ軍団のドリームチームだったけど、オーナーがメルルなら正規の従業員の質も安心していいでしょう。
総合して、星三つの評価は間違いない。
「それじゃ、今はこのお風呂をめいっぱい楽しんでおこうっと。次はいつ来れるかなぁ……」
「お互い忙しい身だからね……」
だからこそ、こんな時間を大切にしたい。二人っきりで過ごせる時を。
「ねえ、くーちゃん……」
「……何?」
「お風呂上がったら、したいことがあるの」
「…………」
「いいかな?」
「……ええ」
微かに頷く私の頬は、きっと真っ赤に火照っていた。もちろんお湯のせいで。
「…………で、ロロナ、何するって?」
「枕投げ!」
お風呂から上がった後、私もロロナも浴衣――外国の民族衣装なんだけど、妙にしっくりくるのよねこれ――に着替えていた。
そして浴衣姿で大きな枕を手に構えて、両目をキラッキラに輝かせているロロナ……この表情、嫌いじゃないわね。
「だが断る」
「えー何でー? 旅行といえば枕投げはお約束だよ」
「この年になってやることじゃないでしょうが。それに、せっかくケイナとちむ達が綺麗に布団敷いてくれたんだから」
数分前、向きと角度まできっちり整えて二人分の布団を敷いたケイナとちむ達は、
「では、私とちむさん達は離れにいますので、ご用があればお呼び下さい」
と去っていった。ちなみに離れは本当に離れで、よほど大きな声でも上げなきゃ聞こえないぐらいで、何ていうかその……やっぱり気を使われてるのかしらね。
「お布団はすぐに乱れちゃうでしょ」
「なっ……」
またこの子はそういうことを平然と――
「どうせ寝るんだし」
「あ、うん、そりゃそうなんだけど……」
ダメだ。意識しすぎだ私。
「それでもパス。いい年こいた大人が――わぷっ」
……問答無用で枕を投げつけてきた。
「ふっふっふー、先制点は貰ったよ」
「このっ……何が先制点よ。枕投げにそんなレギュレーション無いでしょうが」
そんなにしたけりゃ付き合ってあげるわよ。私は投げつけられた枕を、そのままロロナに投げ返す。
「わっ……やったな〜」
さらにロロナも投げ返してくる。
「くっ、舐めるんじゃないわよっ」
「何のまだまだっ」
「えいっ」
「やっ」
「はっ」
「とうっ」
………
……
…
……結局、ムキになって枕投げに熱中してしまった。旅先のテンションが成せる業よね。
「ふー、引き分けー」
「はぁー」
二人して息をついて、布団の上に倒れ込む。疲れた……せっかくお風呂入ったのに、また汗かいたし。
「ふふ……楽しかったねくーちゃん」
仰向けのままロロナは、本当に無邪気な、子供みたいな笑顔を浮かべている。
「そうねー」
一緒になって枕を投げ合った以上、否定してもしょうがない。何だかんだで楽しかったのは事実だし。
「でもこんな、二人して小さな子供みたいなこと……年甲斐ないわね」
「んー……じゃあさ、くーちゃん」
ロロナは私の方へ身を寄せ――
「今からは大人なことしようか」
――無邪気な笑顔のまま、そんなことを囁いて、キスしてきた。
「……汗かいてるから、先にお風呂――」
「だーめ。今のくーちゃんがいいの」
「あ……」
首筋に唇の感触。敏感な肌に何度もキスされて、私の体が中から熱くなってくる。
ロロナの手が私の浴衣の帯にかかった。この浴衣というのは、帯一枚ほどけば上も下もはだけてしまうあたり、何とも便利――もとい心もとない。
「くーちゃん、ブラしてないんだ」
「い、いいでしょ別に。もう寝るだけだと思ってたし、他に客もいないし」
「うん、いいよ。私も同じだしね」
「あ、ん……」
もう一度、ロロナの唇が私のそれに重なる。ロロナの手が私を、私の手がロロナを、抱き締めながらキスを交わす。熱い舌を絡ませて、吐息と唾を混じらせ合う。
「ん……くーちゃん……もっと……」
「ロロナ……は、ん、ん……」
キスを繰り返しながら、ロロナの手が浴衣の裾を割ってくる。
ショーツの生地ごしに、指先の感触が走る。それだけでそこがじわりと火照ってしまう。
そのままじわじわと弄ぶ……ようなまどろっこしいことをロロナはせず、あっさりショーツを脱がされた。
「くーちゃん、もう濡れてきてるよ」
「っ……そういうあんたの方はどうなのよ」
「あっ……」
私も負けじと、ロロナのそこに指を潜らせる。
「ほらやっぱり。濡れてるわね」
「ん……だってくーちゃんが可愛いから、つい」
「こっちの台詞よ」
「あ……」
今度はこちらからキスした。舌を入れて、たっぷり吸い上げながら、手の方はロロナの浴衣の帯を解く。
下手したら二十歳過ぎと言っても通じる、張りの良いロロナの乳房が露わになる。普段は服装のおかげで大きめに見えているけど、それを差し引いてもなかなかのサイズだ。まあ……比較対照が私じゃ説得力ないけど。
ロロナの胸元、ちょうど谷間に舌を這わせる。枕投げで汗をかいたせいか、少ししょっぱいし、むわっとしている。でも、それがいいって言ったのはロロナよね。
「ん……くーちゃん、くすぐったい」
「あらそう? じゃあすぐ気持ちよくしてあげるわね」
乳首を口に含んで、転がすように舌先で舐め回す。
「はっ、あ、くーちゃ、ん……」
口や指で愛撫を加えるたび、ロロナは可愛らしい声を上げる。
「ん……さっきから、くーちゃんばっかり、ずるい、よ」
「昼間のお返しよ」
「う〜……やっぱりやだ。私もくーちゃんにする」
「ちょっ……」
ロロナは強引に体勢を変えて……私の股関に顔を寄せた。
「ちょっと、ロロナ……やっ、あっ」
ロロナの舌が私のそこを、円を描くように舐め回す。下腹部から、ぞくりと熱いものが湧き上がってくる。
「れろ、ちゅ、ん……くーちゃんのここ、とっても美味しいね……匂いも、すごく甘くてエッチで……」
「んっ、ロロナぁ……や、ぁ」
どうしようもなく気持ちよくて、熱い吐息が止まらない。
「くーちゃん……くーちゃんも、して……」
「うん……」
私とロロナはいわゆる69の形になって、お互いの割れ目に舌を這わせる。もちろん見るのも舐めるのも初めてじゃない。それでも、興奮混じりの羞恥心というのはある。
だけどそんなもの、今は互いに与える快感の添え物でしかない。
「ん……ちゅ」
「あっ、くーちゃん、いいっ……」
花びらに優しく口づけて、そのままゆっくりと舌を這わせる。するとロロナも、鏡合わせみたいに同じことを私にしてくれた。
私は舌先をロロナの中に、少しずつ潜らせる。
「あっあっ、くーちゃん、んくぅ……!」
「ん……ロロナの中、もうトロトロになってるわね。蜜がどんどん溢れてきて……」
私の方も似たようなものだけどね。太ももを愛液が伝うほど溢れたそこに、ロロナの舌が中に入ってきて、気持ちよさでどうにかなりそう。
「んっ……くーちゃん……くーちゃんの、すごく美味しい……ちゅ、ちゅ」
「あ、ぅ……ロロナ……私、もう……」
体の奥で何かが膨らんでいく。ロロナにしたい、ロロナにしてほしい、二つの気持ちがどうしようもなく大きくなっていく。
「うん……くーちゃん……私も……っ」
お互いにどこが一番感じるのか、もう相手以上に分かっている。
「あ、は、ぁ、あ、くーちゃん……くーちゃん……もっとぉ……っ」
「ロロナ、っ、ふ……っ、ぁ……あっ、あっ」
愛おしさを込めた舌と指とで、私はロロナをめいっぱいに攻め立てる。ロロナも私のことをめいっぱい愛してくれる。
「くーちゃん……くーちゃんっ……〜〜――っ!」
「ロロナ……あ、あ、あ……――っ!」
……体を震わせ声を上げて、私とロロナは同時に達した。
「くーちゃん……」
布団の上で脱力しているロロナが、息を整えながら囁く。
「……今日はあと何回しよっか?」
「……この休憩が終わってから考えましょう」
そう。
夜はまだ長いんだから、ね。
部屋の灯りは落としたけれど、窓から差す月明かりがぼんやり視界を保っている。
「ねえ、くーちゃん……聞いていい?」
記憶が確かならば六回戦が終わった後、布団の中で私のことを抱き締めながら、ロロナがそんなことを言い出した。
「何?」
「あのね……くーちゃんは、私といつまで一緒にいてくれるの?」
「……」
――いつまでもに決まってるじゃない。
そんな答えを返すのは簡単だった。
だけど、それはきっと、無責任な話だ。ロロナも、そんな単純な答えを望んではいない。
だから私は、向き合わなくちゃいけない。私の気持ちと、ロロナの思いに。
……不思議と落ち着いていた。何となく予感していたのかもしれない。今まで先延ばしにしてきた件に、ここでぶつかるのだと。
私は布団を抜け出して、浴衣を着直してから、その場に座る。ロロナも同じように。
「ロロナ」
「うん」
「ありのままに私が思ってることを言うわね」
「うん」
「私は――」
大きく息を吸って、度胸を決める。
「……ロロナと結婚したい」
「くーちゃん……」
「だけど……そのためには問題があるの」
「問題って?」
「うん……私の家――フォイエルバッハ家のこと」
「ひょっとして、くーちゃんのお父さんとお母さん、結婚に反対なの?」
「……トトリ達が結婚してから、お父様が急に縁談を勧めてくるようになったの。遠回しに何かを言おうとしてるっていうのは、すぐ分かったわ。
法改正したと言っても、多かれ少なかれ、同性婚が世間から奇異の目で見られるのは事実なわけだし。
名の通った実業家でもあるお父様にすれば、娘の伴侶としてあまり進歩的すぎる相手はどうかと思うんでしょうね」
「……」
「皮肉な話よね。誰よりも貴族の名に誇りとこだわりを持っていたあの子は、世間の常識やしがらみなんてあっさり乗り越えて、好きな人と一緒になったのに……家名なんて犬に食わせても惜しくない私が、家のために縛られている」
「くーちゃん……」
「それにね」
私の口元には、自嘲の笑みが浮かんでいた。
「私自身も……結局お父様と同じなのよ。そういう家や世間のしがらみから逃れられずに、尻込みしてるの。
私がロロナと結婚することで、何かが壊れてしまうんじゃないかって……だから、今のままの関係が続けられるなら、そうしたいと思っていた」
「でも、くーちゃん――」
「ええ。そろそろ覚悟を決めるわ。捨てることも壊すことも、もう恐れない」
私は改めて、宣言する。
「私はロロナと結婚したい。いつまでもずっと一緒にいられるように、ロロナとの形のある絆が欲しい」
ロロナは真っ直ぐに私を見つめて、頷いてくれた。
「私も……くーちゃんと結婚したい。くーちゃんと、ずっとずっと、おばあちゃんになっても、一緒にいたい」
「……本当にいいのね? 最悪、私の実家と一族郎党全部が敵になるのよ」
「うん、全然いいよ。私達なら、絶対に負けないから」
「そうね……私達二人なら、きっと」
「くーちゃん。それちょっと間違ってる」
「え……?」
「私とくーちゃんは、二人だけど、二人っきりじゃないんだよ」
……ああ、そうか。そうだった。
「そうね……私達には、仲間がいるのよね」
昼間の町での会話を思い出す。
「うん! みんなきっと力になってくれるよ」
その通りだ。今までロロナを支えてきてくれたあのお節介達が、今さらになってこの子を放り出したりするばずがない。
そしてロロナが愛し育てた弟子とそのまた弟子が、師匠のために頼まれなくても一肌脱ぐのは想像に難くない。
私達は二人だけど、二人きりじゃない。その事実の、何と心強いことだろう。
「ふ……ふふ……」
「くーちゃん? どうしたの?」
「いえ、ちょっと……今まで怖じ気づいてた自分が、馬鹿みたいだと思ってね」
「?」
ロロナは不思議そうに首を傾げていた。
「ロロナ」
「なぁに?」
「お風呂、行きましょうか」
快晴の夜空に、星と月明かりがこれでもかと映えている。
「ん〜……夜の露天はまた別格だねぇ」
「んー……」
つい生返事。夜の温泉の風情を楽しみながら、頭の中はまだ色々と考えている。
「ねえロロナ。そっちのご両親は、私との結婚に賛成してくれそうなの?」
「うん。全然大丈夫だよ。この前帰った時もお父さん『ロロナはいつになったらクーデリアさんと結婚するんだ?』って言ってたし、お母さんも『ロロナとクーデリアさんなら、きっと可愛い子が生まれるでしょうね』って言ってたし」
「……何ていうか……前向きな家庭で羨ましいわ」
心配するだけ無駄だったわね。何といってもこのロロナの両親だし。
「……子供、か」
結婚するということは、それも当然考えるべきことよね。
本来なら養子を取るんでしょうけど、今はロロナの弟子トトリが、画期的という言葉では片付けられないような凄い錬金術の利用法を編み出して、女同士でも子供が作れるようになっている。
「ん〜……私が産むかくーちゃんが産むか、それが問題だね」
「ま、産むかどうかも含めて、おいおい検討しましょう」
「そうだね……ふふ」
「? どうしたの?」
「何か、こういう話してたら、本当に結婚するんだなーって実感湧いてきちゃって」
「……さっきも言ったように、結婚するにはうちの実家の問題をクリアしないといけないんだからね」
「うん、分かってる。でも、案ずるより産むが安しっていうから、案外簡単だったりするかも」
「だといいんだけどね……」
「頑張ろうね」
「うん……」
私はお湯の中で、そっとロロナの手を握った。
ロロナはやや強く握り返してきた。
「ロロナ……」
「くーちゃん……」
どちらともなく、私達は顔を寄せ合い、口付けを交わしていた。
これは、誓いのキスだ。
神様にではなく、今この二人が、お互いの人生を約束するための。
手と手と。
唇と唇と。
熱いお湯に浸かりながら、ロロナと繋がっている部分だけが、別世界の熱を持っているような気がした。
――その後のことを簡単に。
私とロロナが婚約したことは瞬く間にアーランドに広がって、周囲の人間は、
「やっとかよ! 待ちかねたぜ。披露宴の料理はもちろん俺に任せてくれよな!」
「あ……やっと結婚するんだ。その……おめでとう」
「おーやっとか! そいつぁめでてぇ! にしても、どんだけ待たされるかと思ったぜ。式に使う衣装は、是非俺んとこに注文してくれよ!」
「うむ、やっと決意したか……ずいぶん遠回りだったな」
「やっとですか! 先輩、デレ入ってからが長すぎます! 本来ならば法改正後即ゴールインでもおかしくないでしょうに、自覚が足りませんよ自覚が! いいですか? 今後アーランドにおいて公式百合ップルを増加させるためには先輩達のように(以下略)」
とまあ、「やっと」という単語がゲシュタルト崩壊起こす勢いで祝福してくれたわ。
そこまではまあ、予想の範囲だったから別にいいのよ。
問題は……そう。最大の問題だった私のお父様。
いざとなったらフォイエルバッハの名前を捨てるつもりで、それだけの覚悟をして、私はロロナとの婚約を告げた。
それに対して、お父様は言った。
「ああ、やっとか」
――この瞬間、私は世界で一番間抜けな表情をしていたと思う。
「最近ライアン氏ともよく話していたんだよ。いつになったら娘達は結婚するのかと」
いやいやいや、そもそもロロナの父親とお父様が知己なのが初耳なんですけど。
「もう何年も前から飲み友達だ。まあ、知り合ったきっかけはティファナさんの――ゴホン! 何はともあれ、めでたいことだ。で、式の日取りは?」
……とまあこんな感じで、私の長きに渡る懸念は実にあっさり、簡単に解決した。
ちなみにお父様がやたらとお見合い話を持ってきていたのは、早いとこロロナと結婚する決意を固めさせるための後押しのつもりだったとか。
「だから言ったでしよ。案ずるより産むが安しって」
アトリエで引出物のパイを調合しているロロナが、ニコニコとそんなことを言う。
複雑な気分ではあったけど、最良の結果なのは間違いないのだから、よしとしよう。
何といっても、私達の夫婦(婦婦?)生活はこれからなんだから。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
案の定規制食らいましたけど、何とか投下終了できました。
>>158支援感謝。
とりあえずこれでトトミミからメルケイ、ロロクー3カプ補完ということで。
今回登場した旅館は思いっきり日本の温泉旅館をイメージしました。
世界観としてどうかと思いましたが、お米とお箸の存在はゲーム本編でも確認されているし、「健康ランド」なんて名称もあるので、まあいいかなと。
あと作中で触れようと思って触れられなかった、くーちゃんがジオさんへ抱いている感情についてなのですが、
恋愛感情ではなく憧れと尊敬、つまりステルクさんと似たようなものだと解釈しています。
さらに触れようと思って触れられなかったりおちゃんがロロナに抱いている気持ちの行き場なのですが、
このお話よりだいぶ前の段階でロロナのことは諦めています。
りおちゃんはロロナのことを好きであると同時に、くーちゃんのことも友達として大事に思っていますので……。
基本ロロクーですけど、ロロリオももちろん大好きですよ。
乙です
乙
>>169 GJ!
今後も楽しみにさせて頂きますー
久々にスレ開いたらこんなに良いものが!
素晴らし過ぎるわ、グッジョブ!
a
そろそろアトリエ新作が発表される時期が近付いてきたので、何となくアーランド以外のアトリエシリーズで印象に残った百合カプを振り返ってみる。
プレイしたのはだいぶ前なので、記憶がおぼろげな部分もあるけど。
・マリー×シア(マリーのアトリエ)
初代にして基本。
病弱なヒロインを主人公が錬金術で救うという黄金パターンの元祖でもある。アーランドでは病弱というより重度のロロコン患者とトトコン患者ばかりだけど……あ、ケイナさんは既に内縁の妻ですので。
しかしシアは次回作で普通にどこかの誰かと結婚……orz
・エリー×アイゼル(エリーのアトリエ)
くーちゃん、ミミちゃんまで連なるアトリエツンデレヒロインの元祖アイゼル。
ヴィオアトでのチーズケーキイベントでにやけが止まらなかった奴は大人しく手を挙げろ!
・ユーディー×ラステル(ユーディーのアトリエ)
アーランド以外のアトリエシリーズでは最高レベルの百合度。
トゥルーエンドでは主人公が旅立つのが定番だったのに、旅立つ(元の世界に帰る)ことなく留まるユーディー。理由はラステルに「お願い」されたから。
そしてラステルのイベントで流れる曲のタイトルが「ちぎり」。
どう見てもガチです。ありがとうございました。
・ヴィオ×ブリギット(ヴィオラートのアトリエ)
ツンデレ+病弱と定番に定番を重ねた最強ヒロイン・ブリギット。デレに入れば他にどんなフラグを立てようがエンディング確定というガチっぷり。
ED確定イベントの一枚絵が二人一緒のベッドでタイトルが「告白」ってオイ。
……だがあえて言おう。デレやりすぎ。
・リリア×ウィム(マナケミア2)
リリアは主人公のロゼ(♂)が好きなので、全体として百合度は低い。
だがしかし、メイドさん兼水のマナであるウィムを、夏は水枕代わりに抱いて寝たり、冬は暖炉で温めて湯たんぽ代わりに抱いて寝たり、色々とけしからん主従である。
物語後半、リリアがウィムのために本気で怒るシーンはすごく良かった(直後にへたれたけど)。
・アニー×フィズ(アニーのアトリエ)
アトリエシリーズでは比較的珍しい、妹タイプのフィズ。
ツンデレ属性も備えているのだが、出会って速攻デレが入りアニーを慕うように。
……くーちゃんなんかにも言えることだけど、もうちょっとツン期のボリューム増やしてもいいのよ?
以上。
新作でも良い百合カプがいますように。
183 :
名無しさん@秘密の花園:2012/02/29(水) 20:30:38.09 ID:PZfw/BE9
面白かったからついでにアーランドも書いてくださる?
>>183 書いてみた
・ロロナ×クーデリア(ロロナのアトリエ)
定番カプその1。今さら何を語るのかってぐらい定番。
幼なじみで、ずっと一緒で、喧嘩して仲直りして、大人になっても相変わらずで……とっとと結婚しろお前ら。
オフィシャルクロニクルの描き下ろしとか、もう後朝にしか見えない。
・ロロナ×リオネラ(ロロナのアトリエ)
ロロクーと双璧を成すアーランド初代カップル。りおちゃんのエロ可愛さは寿命が伸びるレベル。何故トトリエ以降出番を切られたのか、ガストちゃんを小一時間問い詰めたい。
エンディングのロロナの衣装はもちろん夜の実戦でも使うんですよね。
・トトリ×ミミ(トトリ〜メルルのアトリエ)
定番カプその2。トトリエ時代でも十分なぐらい百合ん百合んだったのに、メルリエでの全力プッシュはもう悶絶死させる気かと。
中の人もお子さん生んだことだし、トトリ先生がミミちゃんの子供を産む続編を急いで早く。
・メルル×ケイナ(メルルのアトリエ)
ストーリー開始時点で既にフラグ完成済み。「幼なじみ」と書いて「夫婦」と読みます。
シリーズ定番の放置イベントで、めちゃくちゃ傷ついてるのにメルルとの友好度は1ミリたりとも下がらないケイナさんマジ天使。
以上。
>>184は(ロロナ〜トトリのアトリエ)とするべきだった。
189 :
名無しさん@秘密の花園:2012/02/29(水) 21:37:59.91 ID:PZfw/BE9
サンキュー
アーランドしかしたことないけど全部やりたくなってくるわ
ユーディはいいよね
男はスルー可で女キャラ優遇で期限ないからまったりできるし
エンディングは両方ともラステルエンドな感じだし
ヴィオのブリギットもいいんだがデレた後のお泊まりのベッドで聞かれることが
イケメンとの仲についてなのでちょっとテンションが下がった
ユーディーはアトリエ移動できるのがすごく好きで
ラステルとふたり旅行とか、人のベッドでごろ寝してるヘルミーナさんとか
いろいろ連れてまわったなw
3月3日はミミ(33)ちゃんの日!
というわけでトトミミSS投下します。トトリのアトリエ時代。冒頭にロロクー分を含みます。
「えへへ〜くーちゃん可愛い〜」
「わあっ!? ちょっ、こらっ、くっつくな!」
「か〜わ〜い〜い〜」
「なでるなーっ!」
ある晴れた日。アーランドのロロナのアトリエ。
日常的というと語弊があるが、割とよく見られる光景として、店主のロロナと所用で訪れていたクーデリアがいちゃついている。
形としてはロロナがクーデリアを一方的に愛でているのだが、愛でられている側は口で何だかんだ言いながら抵抗しないあたり、言わずもがなだ。
ロロナの弟子トトリは、そんな二人の様子を、もう完全に慣れたものとして眺めている――はずなのだが、
「はぁ……」
何か思うところでもあるのか、聞こえない程度のため息をついていた。
しばらく経って気が済んだのか、ロロナがクーデリアを解放する。
「ったくあんたは……何でそういつも見境なくくっつこうとするのよ」
「そこにくーちゃんがいるからだよ!」
「登山家か」
呆れるクーデリアだが、当のロロナは真剣である。
「……もうこんな時間か。用も済んだし、そろそろ帰るわ。トトリ、騒がしくして悪かったわね」
「いえ、お気になさらず」
「くーちゃん、またね」
クーデリアを見送った後、トトリは中断していた作業を再開する。
ギルドから引き受けている依頼内容を再チェックして、調合するアイテムと必要材料をコンテナからピックアップ。品質と特性を吟味して使う素材を決め、調合を始める。
錬金術士と冒険者、二足の草鞋を履いてはや数年。既に慣れきった作業で、考えるよりも先に手の方が動く。
「ねえトトリちゃん」
「……」
「トトリちゃん?」
「……」
「トートーリーちゃーん!」
「はいっ? ……あ、すみません。何ですか先生?」
作業しながら考えごとをしていたトトリは、ロロナの呼びかけにようやく気付いた。
「ぼんやり調合してたら危ないよ」
「ごめんなさい……」
「何か悩みごと?」
「悩み……っていうほどのことじゃないんですけど……」
トトリはうつむいて少し考えた末、改めてロロナに目を向けた。
「あの、ロロナ先生。質問していいですか? 錬金術と関係ないことなんですけど……」
「全然いいよ。トトリちゃんの質問なら何でも答えてあげる」
にこやかにそう言ってくれるロロナにホッとしながら、トトリは口を開く。
「あの……先生って、クーデリアさんと仲良しじゃないですか」
「うん、そうだよ。くーちゃんは大親友だもん」
「それでその、さっきみたいにぎゅーってしたりなでなでしたり、よくしてるじゃないですか」
「うん、よくしてるよ」
「ああいうのって……どうやるんですか?」
「………………?」
首を傾げるロロナの頭上には、目には見えない巨大な「?」マークが浮かんでいた。
「どうやるって……どういうこと?」
「ですから、その、クーデリアさんを抱きしめたりそういうのって、どうやってるのかってことで……」
「どうやってるのか……?」
さらに首を傾げるロロナ。質問の意味は分かったのだが、答えられるかは別である。何せロロナにとってみればそんな質問、「どうやって呼吸してるんですか?」と聞かれているようなものだ。
「あの、そんな、別に難しいことじゃなくてですね、タイミングとか間合いとか、空気の読み方とか、そういう――」
何やら恥ずかしいのか、トトリはしどろもどろになりながら顔を赤くしている。
「落ち着いてトトリちゃん。まず質問の理由から、順番に説明してくれるかな?」
普段ぽやぽやしていてもそこは年の功。ロロナは冷静にトトリから話を聞き出そうとする。
「その……この前、ミミちゃんとお出かけした時のことなんですけど……」
「うんうん」
やっぱりミミちゃん絡みのことかー……と、心の中で呟きながら、ロロナは話の先を促す。
「そろそろアトリエに帰ろうかなっていう時、ミミちゃんに……手、つないでいい? って聞いたんです」
「むむむ……それで?」
「そしたらミミちゃん……顔真っ赤にして、嫌だって……」
「あー……」
その時のことを思い出したのか、トトリは目の端に涙を浮かべている。
「その後もずっと怒った顔して黙ってて……そのままさよならしちゃいました」
「トトリちゃん……」
涙目だったトトリは深く息を吸って気持ちを整え、改めて話を続ける。
「私、前からずっとミミちゃんと……もっとこう、ロロナ先生とクーデリアさんみたいに……スキンシップ、っていうんですか? できたらいいなって思ってたんです」
「……」
「だから、いきなり抱き締めたりは無理だから、まずは手をつないで、って……思ったんですけど」
勇気を出して伸ばした手は、すげなく振り払われてしまった……と。
「先生……ひょっとして、ミミちゃん私のこと嫌いなんでしょうか?」
「あー、ないない。それは絶対ないから。安心してトトリちゃん」
話を聞くに、ミミのその態度は明らかに照れ隠しだろう。顔を赤くしていたのも怒ったのではなく、単に恥ずかしかったからで間違いない。
「話は大体分かったよ。私とくーちゃんがどうやってスキンシップしてるのかを、ミミちゃんとの参考にしたかったんだね」
「はい……」
ロロナは少しの間、目を閉じて考えをまとめる。
「うーん……あのねトトリちゃん。今の私とくーちゃんのことを話しても、トトリちゃんの役には立たないと思うの」
「そうですか……」
「うん。だからその代わり、私からアドバイスしてあげる」
ロロナは笑顔でビシッと一本指を立てて、言った。
「思い切ってやっちゃえばいいよ!」
「ええ!? やっちゃうって、何をですか?」
「だから手をつないだり抱きしめたりとか、トトリちゃんのしたいこと全部」
「ぜ、全部って……いきなりそんなこと……」
「もちろんどこかでブレーキかけられると思うけど、手をつなぐくらいだったら全然大丈夫だよ。むしろミミちゃん喜ぶよ」
「じゃあどうしてこの前は――」
「それは単に照れ隠し。くーちゃんにもそういうことあったから、分かるよ」
「そう……なんですか?」
「うん! そもそもトトリちゃんみたいな可愛い子に手をつなごうって言われて嫌がるなんて、あり得ないから!」
「はあ……」
自信満々に断言するロロナだが、トトリはまだ若干不安そうだ。
「トトリちゃん……思い切る勇気が出ない?」
「はい……すみません」
「……よしっ。それじゃあトトリちゃんのために、とっておきのパイを作ってあげる」
そう言ってロロナはコンテナをガサゴソと漁り――
「じゃじゃーん!」
一本のキノコを取り出した。
「先生、そのキノコは?」
「この前イクセ君が外国の珍しい食材を色々仕入れてたんだけど、イクセ君キノコあんまり好きじゃないからってこれくれたんだ」
「へえ、外国の。どうりで珍しい形してるんですね」
「ふっふっふ……珍しいのは形だけじゃないんだよ」
ロロナは不敵な笑みを浮かべる。
「実はこのキノコ『ピュアトリフ』って言って、食べると純粋な心のうちを素直に出せるようになる不思議な力があるんだって」
「本当ですかそれ?」
「まあ、試したわけじゃないから分かんないけど、本当だったら素敵でしょ。これを使って美味しいキノコパイ作ってあげるから、おまじないだと思って食べてみて」
「先生……」
自分のために貴重な材料まで使って励ましてくれるロロナに、トトリは深い感謝の気持ちでいっぱいだった。
「ありがとうございます先生。私、先生のパイを食べたら、きっと勇気を出せる気がします!」
「その意気その意気! トトリちゃんの気持ちを、ありのままに全部ミミちゃんにぶつけたらいいよ!」
ロロナがトトリのためのパイ作りに精を出している頃――冒険者ギルド。
「ふむ……規定のポイントに達したわね。おめでとう、ランクアップよ」
何点かの書類にサインして、クーデリアはランクアップの処理を終える。
更新された冒険者免許を、ミミは愛想の無い表情で受け取った。特別機嫌が悪いわけではなく、クーデリアの前では大体いつもこんな感じである。初対面の印象が悪すぎたのが原因だ。
しかしクーデリアの側はさすがに大人で、そんなことをいつまでも根に持ってはいない。
「最近調子がいいみたいね」
今は書類仕事も溜まっていないし、受け付け業務の方もかなり暇だ。そんなわけでクーデリアはミミに話しかけた。
「ええ、まあ……誰かさんのおかげでね」
ミミは何の気なしにそんな返答をするが、
「へえ。トトリのおかげって、ちゃんと分かってるんだ」
「なっ……」
曖昧にした部分をズバリ突かれて動揺してしまう。
「だ、誰もあの子のことだなんて言ってないでしょ!」
「じゃあ誰のことよ?」
「う……」
迂闊なことを口に出した時点でミミの負けである。
「別に恥ずかしがることじゃないわよ。コンビやチームを組んでる冒険者なんていくらでもいるし」
「そういうことじゃなくて……」
「プライドの問題? だったらなおさら安心しなさい。あんたのランクは間違いなくあんたの努力と実力に対する評価よ。他人に寄っ掛かって得たような功績があったら、見抜いた上で容赦なく削るから」
「……」
小気味良いくらい断固とした物言い。クーデリアのこういうところが、ミミは嫌いではない。もちろんそんなこと口には出さないが。
規制予防カキコ
「そういうわけだから、これからもトトリとは仲良くすることをおすすめするわ。実利の面でも、それ以外でも」
「余計なお世話よ」
穏やかなクーデリアの言葉に、ミミは憮然と返す。
「相変わらず素直じゃないわねぇ……いつまでもそんな態度で、向こうの愛想が尽きても知らないわよ」
「……!」
トトリはミミのことを掛け値なしに一番の親友だと思っているから、そんな心配はするだけ無駄だ。それを分かった上で、クーデリアは意地の悪いことを言った。
しかし真に受けたミミは、目に見えて動揺している。
「……ねえ、ちょっと……聞きたいことがあるんだけど」
「何かしら?」
「その……この前、トトリと街を歩いてた時なんだけど……あの子、急に……手、つなぎたいって言ってきたの」
「へえ……それで?」
「急だったし、外で、人目もあったから……嫌って、ちょっときつめに言っちゃって」
(うわぁー……)
昔の自分を鏡に写されているようで、クーデリアは話を聞きながらつい顔が熱くなる。
「その日はそれきりで……あとはもう会ってない」
「それ、いつの話?」
「……一昨日」
クーデリアの肩がガクリと落ちる。ミミの表情ときたら、恋人が半年以上音信不通ですとでも言わんぱかりに沈んでいたからだ。
結局のところ、たった二日会っていないだけでそんなにも寂しさを感じるぐらい、ミミはトトリのことを親密に思っているということではないか。
「ひょっとしてトトリ……もうあれで私に愛想尽かしたとか」
「あー、ないない。それは絶対ないから安心しなさい」
多少ショックは受けているだろうが、めげたりはせずに次のことを考え行動しているだろう。何せあのロロナの弟子である。
「なるほどね……不景気な顔してたのはそれが原因か」
「っ……悪かったわね」
「別に悪くないわよ。まあ、あんたの気持ちは分かるわ。私も似たような経験あるし」
「それって……ロロナさんと?」
「ええ、そうよ」
あっさり認めてしまえるクーデリアの清々しさが、ミミには羨ましかった。
「ねえ、ミミ。あなたってさ、欲しいものを欲しいって、ちゃんと言えないタイプでしょ」
「……何よ急に」
「ちょっとしたアドバイスよ。欲しいものを欲しいって言えなくても、それはそれでいいの。でも、誰かが自分のためにくれたものは、素直に受け止めといた方がいいわ。そうすれば、夜になって枕に顔をうずめながら後悔するようなこともなくなるわよ」
「な……何でそんな見てきたようなことを」
「経験者だからに決まってるでしょうが。みなまで言わせるんじゃないわよ」
そう言いながら、クーデリアがいつになく率直且つ饒舌なのは、やはりミミに自分の過去を重ねているからだろうか。
「あなた、トトリのこと、嫌いじゃないんでしょ?」
「……ええ」
「手をつなぐのだって、ちょっと恥ずかしいだけで、嫌じゃないでしょ?」
「ええ」
「だったら、その通り受け止めたらいいのよ」
「受け止める……」
「そう。向こうが手をつなぎたいって言うんだから、遠慮なくもらっておきなさいってこと。恥ずかしいのなんて一瞬のことよ」
「……」
歯切れの良いクーデリアの言葉に、ミミは胸のうちのもやが晴れていくような気がした。
「まあ、そんな身構えなくても、ロロナに比べたらトトリは引っ込み思案なところがあるからね。せいぜい勇気を出して手をつなぐまでだろうし、ノーガートで全部受け入れるぐらいの気持ちでいなさい」
「ノーガートで……」
「そう。あの子相手なら、それぐらいでちょうどいいわよ。一つ年上なんだから、懐の広いとこ見せてやったらいいわ」
「なるほど……」
クーデリアの言葉に合点のいったミミは、大きく頷いた。
「……なかなか参考になる話だったわ。その……ありがとう」
珍しく。本当に珍しく、ミミがクーデリアに対して素直にお礼を言った。
「どういたしまして。暇ができたら、アトリエに出向いてみたら」
「そうね……気が向いたらそうするわ。それじゃ」
ギルドを去っていくミミ。その背中にクーデリアは、
「……まあ、言うは易しなんだけどね。一歩でも前進すれば重畳かしら」
と、小さく独り言を漏らしていた。
「お邪魔するわよ」
「あ、ミミちゃん」
アトリエを訪れてきたミミを、トトリは少し驚きながら出迎える。ちなみに現在、ロロナもちむ達も留守である。
「偶然だね。今からミミちゃんに会いに行こうと思ってたんだ」
「あら、そうだったの」
「うん。だから来てくれてとっても嬉しいよ」
「っ!」
満面の笑みでそんなことを言われて、ミミの顔がたちまち赤くなる。
「そ、それで、何の用なのよ?」
「え? ミミちゃんが用事あって来たんじゃないの?」
「う……そうだけど、そっちも会いたかったってことは用事があるんでしょ。まずあんたから言いなさい」
「うーん……用事と言えば用事なんだけど……」
「何よ。ハッキリ言いなさい」
「ミミちゃんに会いたかったの」
「……え?」
「だから、ミミちゃんに会いたかったの。それが用事」
ミミの目を真っ直ぐ見つめながら、トトリは言った。
「……そ……そう……それだけ?」
「うん。それでミミちゃんの用事は?」
「え、あ、私? 私はその、単に暇だったから、トトリの顔でも見ておこうかなって……」
「それってつまり、私に会いたかったってこと?」
「そ、そう解釈できないこともないわね」
「ふーん……そっかぁ。そうなんだぁ」
トトリはニコニコと笑みを浮かべながら頷いている。
「な、何よニヤニヤして。気味悪いわね」
「ねえミミちゃん」
「何?」
「ぎゅーって抱きしめていい?」
「はいっ!? な、な、何で!?」
「したいから」
「し、したいからって、でも、そんな、いきなり……て、手をつなぐとかからじゃないの?」
「あ、うん。手もつなぎたい」
「でしょう! それぐらいだったら私も――」
「あと腕も組んでみたいし、頭をなでなでとかもしてほしいし、ご飯をあーんて食べさせあったりもしたいし、一緒にお風呂も入りたいし、一緒のお布団で寝たりもしたいし、キ――」
「スト――ップ!」
次々と欲求を述べるトトリを、ミミは慌てて止める。
「ちょっとトトリ、今日のあんたおかしいわよ!」
「え……そうかな?」
「そうよ! 今日に限って何でそんな……普段ならそんなこと、思ってたとしても言わないでしょ!?」
「んー、だとしたら先生のパイのおかげかも」
「え?」
「ううん何でもない。それよりミミちゃん。抱きしめていい?」
「だっ……そっ……そんなの――」
嫌……と口から出かかったところで、ミミはクーデリアの助言を思い出す。
「……ミミちゃん?」
「……し……仕方ないわね。特別に、許可してあげるわ」
「いいの?」
「いいって言ってるでしょうが! は、早くしなさい」
顔を真っ赤にしながら、ミミは両手を後ろに回す。トトリは少し遠慮がちに手を伸ばして……ギュッとその体を抱きしめた。
「えへへ……ミミちゃん柔らかい」
「〜っ」
トトリの吐息と体温とが、これ以上ないほど間近にある。そのおかげでミミの心臓は、早鐘のような鼓動を打っている。
「ねえ、ミミちゃん」
「な……何?」
「キスしていい?」
「ぶっ……なっ、きっ……」
抱きしめられているだけで倒れそうなミミに、さらに容赦なく追撃を加えようとするトトリ。
「ねえ……いいでしょ?」
ミミを抱きしめながら、上目遣いでそんなことを言う。
「い、い……」
(ノーガートで全部受け入れるって言っても、いくらなんでもこれはアウトよね!? 止めるべきよね!?)
錯乱しながらもミミは、危機を脱すべくトトリの腕を振りほどこうとする。
……が、しっかりホールドされていてほどけない。トトリの腕力は日頃の調合作業と冒険稼業で鍛えられ、ミミが思っているよりずっと強かった。
「ミミちゃん……」
返事が無いのを了承と受け取ったトトリは、そのまま顔を寄せ――
「ちょっ……トトリ……やっ……まっ……――っ!」
…………。
……ロロナもクーデリアも、お互いの立場から、良かれと思ってアドバイスをした。ただそれだけである。
そしてピュアトリフの持つ力を、正しく知る人はいなかった。ましてやロロナが錬金術でパイにすることでその力が倍増するなど、誰にも予想できはしない。
だから今回の出来事は全て、偶然と不可抗力によるものだ。
「……というわけで、今回の件は悪い人なんて誰もいなかったっていう方向でまとめ――」
「やかましい! 八割方あんたの作ったパイが原因でしょうが!」
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
>>197 支援感謝。
少し前からピクシブやツイッターで告知されてるけど、夏コミにてトトミミアンソロジーが出されるとのこと。
企画を知った時は「これだよ! こういうのを待ってたんだよ!」ってな具合にテンション上がった。
問題は書店委託で入手できるかどうかだな……いやマジで切実に('A`)
乙、とっても悶えたw
トトミミアンソロ企画した人はほんと神だよな、絶対買いにいくわ
乙
先輩二人のアドバイスはためになるなw
>>202氏乙!
先輩二人がいるだけに、微笑ましさが倍増ですな
トトミミアンソロ企画者のサークルが書店委託やってるから期待したいところだけど…
トトミミアンソロ企画、参加したいけど書ききる自信ないんだよな・・・・・・どうしようかな
後であの時やっぱり参加しておけばよかった…と、後悔するのは辛いぞ?
>>206氏の作品を紙面で読めるのを楽しみにしている
>>169 >「やっとかよ! 待ちかねたぜ。
>披露宴の料理はもちろん俺に任せてくれよな!」
このセリフにグッときた。
周りの人達が本当に温かい目で
ロロナとクーデリアを見守っていたのが感じられる、
そんな一言だった。
>>202 >ノーガートで全部受け入れるぐらいの気持ちでいなさい
ここ読んだ瞬間「クーデリアさん抱いてッ!!」って思った。
捏造トトミミです。
3レスくらい。
雨が止まない。
あの日からずっと、雨が止まない。
雨が、止まなくて、ずっとずっと止まないから
わたしはどこにも行けなくて、ここから動けない。
眠る彼女のそばでわたしは錬金術の最奥の、その先へ向かう。
愛する人にもう一度会うために。
「トトリちゃん」
懐かしい声に、振り返ると、やっぱりロロナ先生がいた。
わたしは、錬金釜をかき回す手を止める。
最後に会ったの何年前だろう。
思い出せないくらい私には遠い日のことに思える。
記憶の中のロロナ先生と同じ姿だからきっと
それほど前ではないのだろう。
ミミちゃんが、眠り続ける呪いを受けてから
私は暦を数えるをのをやめた。
「先生。」
「はい、これ。」
そう言って、ロロナ先生が差し出したのは
見たことのないような貴重な素材の山だった。
そうだ、わたし、
先生に素材をお願いしていたんだった。
お寝坊さんなミミちゃんを起こすのに、足りない素材をお願いしたの、すっかり忘れていた。
これでまた少し、ミミちゃんに会える日が近づいた。
それが嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。
「先生……」
「うん?」
「ありがとうございます。」
私がお礼を言うと、ロロナ先生は悲しそうな顔をした。
なぜそんな顔をするのか、わからなくて
不思議そうにする私をみて、ロロナ先生は微笑んだ。
何かを隠す笑みだったけれど、私は特に気にならなかった。
早く、目の前の素材を試したい。そちらに心が奪われつつあったから。
不意に、先生が私を抱きしめた。
「?」
「……。」
ロロナ先生は、何も言わず、ギュッと私を抱いたまま。
静かに、でもどうしてだかわからないけど
私は、先生が泣いているように見えた。
錬金釜の中で、私の杖が鈍い音を立てた。
溶け合う素材の中でずるずると杖が飲み込まれていった。
212 :
名無しさん@秘密の花園:2012/03/08(木) 22:32:22.35 ID:AupJs4dD
「また、連絡します。」
「うん。」
長いこと私を抱きしめていたロロナ先生は
また明日ねと微笑みながらアトリエを後にした。
錬金釜のそばにあつらえた、小さな小窓から
背中を丸めて震えるロロナ先生と抱きしめるクーデリアさんが見えた。
(ミミちゃんとお話したいな――。)
そう思いながら、私はロロナ先生が持ってきてくれたコンテナを開けた。
「トトリ……」
ベットで横になる私と、その傍らによりそうあなた。
皺だらけの私の手を握る瑞々しい手。
二十歳のミミちゃんが、老いた私の手握る。
目を醒ますのに数十年掛かった。
それから彼女の声を聞くために、更に十年掛かった。
永遠の命を生きるあなたと、私は共に生きられない。
お寝坊さんなあなたを起こすのに私は時間を掛けすぎた。
「トト……っ」
泣かないで、ミミちゃん。
親しい人たちはもう遠い過去の人――。
こんな世界にあなたを残して行くことが本当に苦しいけれど。
あなたと出会ったあの日から、私の運命は動き出したの。
「トトリ!トトリ――!!」
”ミミちゃん――”
ミミちゃん、雨は止むよ。
だから待っていてね。
少し待ちくたびれてしまうけれど。
雨は、必ず、止むから。
おわり。
sage忘れたごめんなさい。
214 :
名無しさん@秘密の花園:2012/03/08(木) 23:15:55.23 ID:3fwCWyRr
GJ!
SS投下します。
トトリエ時代のトトミミ。
前スレ652-657でミミちゃんの誕生日にトトリちゃんがメイドさんになって〜……な話を書きましたが、
今回はその流れとは別の、逆バージョンです。
三月十七日。
大抵の人間にはどうってことのない、ただの一日である。
だがしかし、一部の人間……中でもある一人にとって、その日は非常に重要な意味を持っていた。
話は数日前に遡る。
「むむむむ……」
部屋の壁に掛けられたカレンダーの「17」の文字を、ミミは何やら難しい表情で、穴が開くほどに見つめていた。
「……別にそんな、深く考える必要無い……わよね……でも……やっぱり……うぅぅ……」
部屋の中で一人苦悩し、身悶える。端から見れば珍妙な状況だが、当人は至って真剣である。
「ダメだわ。部屋にこもって考えても、頭の中がこじれるだけだし……」
気分転換も兼ねて外に出よう。そう思い、ミミは外に飛び出した。
おだやかな日の差すアーランドの街を、ミミは歩いていく。特に目的地があったわけではないが、足は自然と最も通い慣れた場所――冒険者ギルドへと向かっていた。
昼間のギルドには、何人かの冒険者や依頼人が散見される。今日は比較的空いているようだ。
ミミも家名を上げるため、普段はここで依頼を受けて冒険者としての仕事をこなしている。しかし今悩んでいるのは仕事とは関係なく、プライベートな事柄だ。
――と、ギルドの中に、見覚えのある人物がいた。
「あ、ミミちゃんだ。こんにちは」
「こんにちは、ロロナさん」
錬金術士ロロナ。ミミにとって、アーランドでの顔馴染みの一人である。
「ここで会うのはちょっと珍しいね。私はくーちゃんに用事があったんだけど、ミミちゃんはお仕事?」
「いえ、今日はちょっと……」
言葉を濁すミミだが、その時、ふと脳裏にひらめきが走る。
(そうだ、ロロナさんなら適任かも……)
「? ミミちゃん、どうしたの?」
「あの、ロロナさん。折り入って相談したいことがあるんですけど」
「うん、いいよ」
細かいことは聞かずに快諾してくれるあたり、ロロナの大らかな性格が伺える。
「実は、今度の三月十七日のことなんですけど……」
「三月十七日……あー! トトリちゃんのたんじょ――」
「声が大きいです!」
ミミは慌てて周囲に視線を走らせ、誰かに話を聞かれている心配がないことを確認してから、再度口を開く。
「それでその……あの子の誕生日なわけですけど。
一応、あの子とはそれなりに良好な人間関係を築けてるし、何だかんだで世話になってることもないこともないわけですから、何といいますか、義理というか礼儀としてですね、その、別に深い意味とかはなく、ごく普遍的な、一般に言うところの――」
「つまりトトリちゃんの誕生日をお祝いしたいんだよね」
まどろっこしいミミの話の核を、ロロナがズバンと突いてきた。
「っ……そ、そう。つまりそれです」
「そっかぁ。ミミちゃんがお祝いしてくれたら、トトリちゃんきっとすごく喜ぶよ」
ロロナは自分のことのように、嬉しそうな笑みを浮かべる。
「それで、相談っていうのは、お祝いの内容……普通は誕生日のプレゼントとかを渡すと思うんですけど」
「うんうん」
「私、実は今までそういうものを選んだことがなくて……何をプレゼントしたらいいのか、さっぱり分からないんです」
有り体に悩みを打ち明けたミミは、期待を込めた眼差しをロロナに向ける。
「それでロロナさんに、何をプレゼントしたらあの子が喜ぶのか、教えてほしいんです」
「なるほど……話は分かったよ」
ロロナは大きく頷き、一呼吸置いてから口を開く。
「あのね、トトリちゃんはきっと、ミミちゃんが選んだものなら、それがどんなものでも喜ぶと思うの」
「でも――」
「うん。それじゃあ答えにならないよね。だからまず、トトリちゃんが欲しいものじゃなくて、ミミちゃんがトトリちゃんにあげたいと思うものを考えてみよう」
「私が……あげたいと思うもの……」
そう言われても、簡単には出てこない。ミミは眉間にシワを寄せて考え込んでしまう。
「具体的な物じゃなくてもいいんだよ」
「例えば、どんな?」
「何かをしてあげるとか。歌や音楽を聞かせてあげたり」
「そういうのは、ちょっと……」
教養の一環として多少嗜んではいるが、進んで人に披露するようなものではない。
「じゃあトトリちゃんのお仕事を手伝ってあげるとか」
「錬金術をですか? 素人が迂闊に手を出すと危険なんじゃ……」
以前、アトリエで調合を見学したときの爆発を思い出し、ミミは尻込みする。
「錬金術じゃなくても、トトリちゃんのご飯を作ってあげたり、代わりにお掃除してあげたり……うん。つまり、一日メイドさんみたいな」
「い、一日メイドさん!?」
「いいですねそれ! 是非やりましょう!」
「わああっ!?」
いきなり横から湧いて出てきたギルド受付嬢フィリーに、ミミは飛び上がらんほど驚いた。
「ちょっ、あんたいつから……さては盗み聞きを――」
「ち、違うよ! 私はそんなつもりなかったけど、この、私のこの耳がね、意識しなくても、ついつい美味そうなお話を勝手に聞きつけちゃって」
「人の耳ってコツを知ってれば結構簡単にむしり取れるのよ。知ってた?」
「知らないです! 教えてほしくないですぅ!」
淡々と怖いことを言うミミに、フィリーは両耳を手で押さえて後ずさる。
「ったく……盗み聞きに関しては特別に執行猶予をあげるけど、話に入ってくるんじゃないわよ。一日メイドさんなんてそんな冗談本気に――」
「いや、いいかもしれない」
「……え?」
ロロナの言葉に、耳を疑うミミ。
「ロロナさん……?」
戸惑うミミの両肩を、ロロナはがっしりと掴む。
「ミミちゃん。トトリちゃんの誕生日に一日メイドさん、やってみない?」
そう尋ねるロロナの瞳は驚くほど澄み、その表情はどこまでも真剣だった。
「ほ、本気で聞いてるんですか……?」
「もちろん」
強く真っ直ぐなその視線は、ミミの眼を捕らえて離さない。
「ミミちゃんがメイドさんになってトトリちゃんにご奉仕すれば、きっとすごくすごく喜んでくれるよ」
「いや、そんな、いくらなんでもメイドだなんて」
「ミミちゃん、結構家事得意でしょ。料理もできるし」
「う……」
その通り。幼い時から自立した人間になれるようにと、身の回りのことは全て自分でしていたので、家事に関しては下手な主婦よりも出来る。
料理も密かに得意で、冒険中の野営で時折、あり合わせの食材でその腕前を披露すると、トトリを始め仲間達には大変好評だった。
といっても、ミミとしてはことさらその技能を誇る気はなく、ごく当たり前に、必要だから覚えたというだけの話だ。
「この機会にそれを活かさない手はないよ、ミミちゃん!」
「た、ただ家事が出来るってだけでメイドだなんて、無茶ですよ」
「ノープロブレム! メイドさんに必要なのは、小手先の技能に非ず!」
「その通りですロロナさん!」
熱く語るロロナに、フィリーも乗ってきた。
「メイドさんに必要なもの――それは!」
「可愛いメイド服と!」
「ご主人様への『ご奉仕の精神(こころ)』!」
「「この二つだよ!」」
事前の打ち合わせを疑いたくなるような、ロロナ・フィリーの息の合いっぷりだった。
「というわけでメイド服は私が作るから! ハゲルさんにもデザイン手伝ってもらって」
「え、ちょっ……まだ私メイドをやるなんて一言も――」
「じゃあ私はミミさんにこの本を貸しますね! メイドさんを主人公にした小説なんだけど、お仕事なんかの描写がリアルで、きっと参考になるから!」
「いや、だから、ちょっと――」
「頑張りましょうロロナさん!」
「うん、そうだね! ミミちゃんを最高のメイドさんにするために!」
「ちょっ、だから、話を――」
――結局。なし崩しに、トトリの誕生日に一日メイドさんをやることになったミミだった。
「はぁ……何でこんなことに」
ギルドから帰ってきたミミは、自室で大きなため息をついた。
トトリの誕生日を祝いたいという気持ちに偽りはないが、よりによって一日メイドとは――ロロナに相談を持ち掛けた数時間前の自分を、可能ならば全力で引き留めてやりたかった。
ふと、手に持っていた本を見やる。フィリーが半ば押し付けるように貸してきた、メイドの小説だ。
さして興味もなかったが、パラパラとページをめくってみる。
「っ……!?」
そしてすぐおかしいことに気付いた。
『――羞恥に身を震わせながら、少女はスカートの裾に手をかけた。
まだまだ着慣れてはいないメイド服。紺色のその生地を、ゆっくりと持ち上げる。
白い太ももが露わになったところで、少女は手を止めた。
すがるような目をする少女に、女主人は冷たく告げる。
「誰もやめろと言っていないわよ」
「……っ」
「私に同じことを二度、命じさせる気かしら」
少女がなけなしの勇気で無言の抵抗を試みても、女主人は冷酷なほど美しい顔を微動だにしない。
少女は震える手でスカートを持ち上げ……ついにショーツがむき出しなった。
同性とはいえ人前で下着を晒すのは、ようやく恥じらいを覚える頃の少女にとって、酷なことだった。
「だめよ」
だが女主人は、一切の躊躇をせずに言った。
「私はこう命じたはずよ。あなたのスカートの下を全て見せなさい、と。下着を見せろとは言っていないわ」
「ああ……そんな」
絶望が少女の声に滲む。今すぐにこの場から逃げ出してしまいたい。だが少女には、この屋敷を出ても、行く当てなどはない。
何より女主人の美しい瞳は、逆らうことなど決して許されない、強い光で少女を捕らえていた。
「そんなに恥ずかしいのなら、手伝ってあげようかしら」
「え……」
「動かないで」
女主人が、緊張に固まる少女のすぐ目の前に立った。吐息が当たるほどの距離。そのまま、女主人の指先が――』
「ちょっ……何よこれ……」
まるで官能小説のようなシーンが目に入り、間違った本を貸されたのかと思った。
ミミは心を落ち着かせて、最初からその本を読んでみる。
物語は不幸にも両親をなくした貧しい農家の少女が、親代わりのはずの親戚に奴隷として売り飛ばされる場面から始まる。
馬車で大きな街まで運ばれた少女は、無鉄砲にも脱走を試みる。だがあえなく失敗し、ひどい目に合わされそうになったところを、通りがかった裕福な女性に救われ、そのまま穏便に『買い取られる』こととなった。
それから少女はメイドになって、その女主人の屋敷で暮らし始める。
屋敷には少女以外にもベテランの若いメイドが何人かいて、それぞれがメイドとして専門の技術を持っている。
新人の少女はひとまず雑役女中として、先輩メイドから一つずつ仕事を教わっていく。そのシーンはかなり詳しく丁寧に描写されており、フィリーの「参考になる」という言葉も頷けた。
だが、しかし問題は……
「これって……やっぱりそういう話よね……」
物語の中で、まだ幼さを残す少女は、女主人から淫らな行為を強いられるようになる。だけでなく、先輩メイドの何人かからも悪戯をされてしまう。
実はその屋敷は、女主人以下住人全員が、女性同士の性愛を嗜む百合の園だったのだ。
何のことはない。ミミが借りたのは、まごうことなき官能小説だった。
「……あんの大ボケ受付嬢……何てものを人に読ませるのよ!」
ミミは思わず憤りの叫びを上げた。既に夜更け。件の小説を、最後まで一気に読み終えてから。
そんなこんなで、三月十七日――トトリの誕生日当日。
「先生、ただい――」
小用で出かけていたトトリは、アトリエのドアを開けた状態で固まってしまった。
「お帰りなさいませ……ご、ごしゅ、ご主人様……」
「え? ……えーと……あれ?」
見慣れたはずのアトリエの、全く見慣れない光景に、トトリは戸惑う。
帰宅した玄関先でロロナお手製のフリフリメイド服を着たミミが「お帰りなさいませ」である。混乱しながらも平常を保っているトトリの理性は、大いに讃えられるべきだろう。
「ミミちゃん……何してるの?」
「――っ!」
改まって質問され、ミミの顔が羞恥に赤く染まる。
「な、な、な……何だっていいでしょ!」
「いや、全然よくないと思うんだけど……」
「細かいこと気にするんじゃないわよ!」
「細かいことも何も、状況がさっぱり分かんないし……まず落ち着いてミミちゃん。何でメイドさんなのか、理由を教えて。ね?」
「う、うん……」
トトリに諭され、ミミはことの経緯を説明する。
「そっかー……私の誕生日のお祝いに、一日メイドさん……」
「ごめんなさい……自分でもどうかしてたわ」
冷静になったミミは、深く反省する。ロロナとフィリーの勢いに引きずられたとはいえ、ミミ本人も妙なテンションになっていたらしい。
しかしトトリは、特に気にする様子もなかった。
「何で謝るの?」
「だって、せっかくの誕生日なのに、こんなおかしなこと――」
「おかしくなんかないよ。すごく嬉しいよ」
「え……?」
気を使って嘘をついている……という感じではなかった。トトリは本当に嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「ミミちゃん、私のために今日一日メイドさんになってくれるんだよね」
「え、ええ。トトリさえ良かったら」
「大歓迎だよ! ミミちゃんすっごく可愛い、素敵なメイドさんだもん!」
「〜っ!」
あまりに直球で褒められて、ミミの頭は危うく沸騰しそうだった。
「そ……それじゃあ、今日一日私がトトリのメイドをやるってことで、いいのね?」
「もちろん!」
こうして、ご主人様トトリとメイドさんミミの、一日雇用契約が成立した。
「それじゃあト――ご主人様。まず何からすればよろしいでしょうか」
一旦覚悟を決めてしまえば堂々としたもので、ミミは恭しくご主人様に伺いをたてる。
しかし肝心のご主人様は、
「えっと……ん……何か、やっぱり恥ずかしい、かも」
もじもじと顔を赤らめ、照れてしまっていた。
「ちょっと……あんたがそんなだと、こっちまで恥ずかしくなるでしょ」
「う、うん、ちょっと待ってね……スー……ハー……」
大きく深呼吸したトトリは、改めてミミと向き合った。
「それじゃあミミちゃん、まずは――」
「うん」
炊事・洗濯・掃除……何でも来いと待ち構えるミミ。
「――キス、して」
「…………………………はい?」
トトリの要求の意味が飲み込めず、ミミの目が点になる。
「えっと……キス……あ。魚の鱚ね? 市場に行って買ってきたらいいのかしら」
「違うよ。キスだってば。その……唇で……」
「え……」
ミミの表情が固まり、数秒後、火がついたように真っ赤になった。
「なななな何で!?」
「だって、ご主人様とメイドさんだし……でもいきなり、色々しちゃうのは恥ずかしいから、まずは、キスからって……」
恥ずかしげに顔を赤らめているトトリ。
何かがおかしい。何かがずれている。ミミはひしひしとそう感じた。
「トトリ……あんた、何か、メイドっていうものを誤解してない?」
「え、そうなの? でもフィリーさんに借りた本には」
「ちょっと! その本って何!?」
「これだけど」
アトリエの書棚からトトリが取り出したのは、先日ミミがフィリーから借りた例の官能小説と同じものだった(ちなみにミミが借りたのは読む用。トトリが借りたのは布教用)。
「ちょっと前にフィリーさんが、オススメって貸してくれたの。メイドさんのお仕事について、すごくリアルに書かれてるって」
(あ……あの女〜……!)
田舎育ちの無垢なトトリにそんな言い方をすれば、それこそ一冊丸々をリアルな『メイドさんの仕事』と勘違いしてしまうだろう。それを見越してフィリーが根回ししたのか、定かではないが。
「あいつの話を真に受けてるんじゃないわよ! メイドっていうのはあくまで労働者なんだから! こういうメイド服だって、本来はもっと地味な作業服なんだから! だからそんな……エ、エッチなことは、メイドの業務に含まれないの!」
「そうなの?」
「そうなの!」
「そっかぁ……」
キッパリと断じるミミに、トトリは残念そうに肩を落とした。
(…………ちょっと待って……フィリーのせいで勘違いしてたけど、それが前提であったとしても、トトリが私と……キスしようとしたのは事実であって……それはつまり……つまり……えっと……つまり――)
「ミミちゃん」
「はいっ?」
ふと浮かんだ思考をこじらせかけていたミミは、トトリに呼びかけられて慌てて返事をする。
「じゃあ改めてお願い、いいかな?」
「え、ええ。いいわよ」
――ミミはアトリエのソファに腰掛けている。そしてその太ももの上には、嬉しそうに笑っているトトリの顔。
「……これもメイドの仕事としては、どうかと思うんだけど」
「えへへ……あったかくて気持ちいいよ、ミミちゃん」
「ちょっと……あんまり動かないでよ」
「あ、ひょっとして足痛い?」
「痛くないわよ。くすぐったいの」
ご主人様であるトトリが命じた最初の仕事『ご主人様に膝枕』をしながら、ミミは小さくため息をついた。
「もっとこう……料理とか掃除とか、メイドにさせるべき仕事ってのがあるでしょうに」
「んー……今はアトリエ汚れてないし、お掃除はいいよ。でもミミちゃんのご飯は食べたいかな。頼んでいい?」
「当然いいわよ。今の私はメイドさんですからね、ご主人様」
「それじゃあこの後は『ご主人様にご飯を作って、一緒に食べる』ってことで」
「何で一緒なのよ。普通は給仕をさせるものでしょうが」
「いいよそんなの。それより一緒に食べた方が絶対美味しいもん」
「ったく……」
しまらないご主人様ね……と胸中で呟きながら、口元には柔らかい笑みを浮かべるミミだった。
その後、メイドさんとご主人様は、仲良く楽しく、一日を過ごしましたとさ。
……余計なことしいな受付嬢は、後でメイドさんからきっついお仕置きを受けましたとさ。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
以前メイドさんの話を投下した後、自分の心の中のフィリーさんが、
「トトリちゃんのメイドさんも悪くないけど、プライドの高いミミちゃんがあえてメイドさんをやるシチュエーションのがよくない? むしろそっちの方が正義じゃない?」
と囁きました。
というわけで、トトリちゃんの誕生日にミミちゃんメイドさんに変身して健全ご奉仕でござるの巻。
>>225 素晴らしいGJ!
ミミちゃんもかわええのー
乙
健全じゃないご奉仕verも書いていいのよ?
本日アトリエ新作の発表がある(……はず)。
というわけで今回はアーランド以外で印象に残ったアトリエヒロインを振り返ってみる。
>>175と同じく記憶がおぼろなとこもあるし、「ヒロイン?」っていうのもいるし、百合以外も含むけど悪しからず。
・マルローネ(マリーのアトリエ)
言わずとしれた初代主人公。携帯機も含めると、アトリエシリーズにおいて一人で複数の作品の主人公を勤めているのはエリーとこの人だけ。
メルルで四十路のエスティさんを揶揄する人が多いけど、その場所は既にアニスのアトリエ時代のマリーさんが通過しているッッ!
ちなみに初代最強騎士のエンデルク様をしばき倒したのは、マリーではなく相方の病弱お嬢様・シアだったりする。
ロロナのアトリエ小説版では、このマリーの話が物語としてアーランドに残っているという設定。
・ユーディット・フォルトーネ(ユーディーのアトリエ)
ある意味、元祖百合百合錬金術士。
調合中の事故によって二百年先の未来に飛ばされてしまうというヘビーな状況に陥るが、根が明るい性格のためか悲壮感は無い。
そんなユーディーとの出会いについて、後にラステルが語るのだが、要約すると一目惚れということでよろしいですか。よろしいですよね。
ラステル関連だけでなく、他のイベントも女性絡みが非常に多い。ユー×ラス、ユー×クリ、ユー×エス、ユー×ヘル、ユー×パメ……夢と希望が広がりんぐ。
・パメラ・イービス(ユーディーのアトリエ、その他)
ユーディーのアトリエ以降、シリーズの看板娘としてお馴染みな幽霊さん(イリス2のトレーネは別人で単なるそっくりさん)。
作品によって設定が微妙に違い、戦闘キャラにもなったりならなかったりだが、幽霊である特性を活かして大いに活躍するのは共通。
イケメン好きという設定があって、百合要素はイマイチ。だがしかし、そこはどっち付かずが得意な(?)ガストちゃん。彼女のトレードマークにもなっているクマのぬいぐるみは、実は元々ユーディーの持ち物なのである。はい脳内補完脳内補完。
……そういえばもうすぐ幽霊が主人公の百合ゲーが出るよね。ステマステマ。
・フィー 本名:アウテリート・ゼヒツェン・スレイフ(イリスのアトリエ2)
主人公フェルトの命を狙う刺客として現れるが、後にそれが誤解からだと判明。色々あって行動を共にするようになる。
幼い頃から孤児として教会で育てられた彼女だが、その正体は亡国の危機にあるスレイフ王朝の王女様という天下無敵のヒロインっぷり。
イリス三部作は主人公が男性ということもあって、百合的にはイマイチなんだけどね。
とりあえず第二部でヴィーゼと初めて会うシーンが下着姿なのは眼福……もといびっくりした。
・ヴェイン・アウレオルス(マナケミア)
男じゃねーか! と石を投げられるかもしれませんが、設定やら何やら、いちいちヒロインくさいのよこの子。基本気弱で内気で、周囲の勢いに流されることが多くて、おまけに色々重苦しい生い立ちで。
そんな受け受けしいヴェインきゅんに、インテリ眼鏡のロクシスが一言。
「この首輪で君を思い通りに操れれば、さぞ気持ちいいんだろうな」
どう見てもBLです。ありがとうございました。
ちなみに主人公で唯一アインツェルカンプの使い手だったり、エンディングによってはアトリエ主人公初の既婚者になったり、なかなか美味しいキャラである。
……2よりむしろ1を男女選択式にするべきだったんじゃ。
・ウィム(マナケミア2)
本業は水のマナだが、何故かメイドさんとしてのアイデンティティに重きを置いている、マナケミア2のおっぱい担当その1(その2はエト。独断と偏見による)。中の人がロロナ先生と一緒なのは五歳児でも知っている常識である。
戦闘には主君であるリリアと二人一組で参加する。が、リリアは指示を出すだけで実質的に戦うのはウィム一人。お嬢様、少しはメルル姫を見習って下さい。
敬愛するリリアのために文字通り身を盾にして戦うウィムの姿は、健気なメイドさんそのもの。おまけに専用武器が首輪……リリアはいい加減ロゼのことは諦めて、一刻も早くウィムを本格的に調教してあげるべき。
以上。
新作では果たしてどんなヒロインと百合が我々を待ち受けているのか……。
>>227 ――トトリの指先が、ミミの下腹部に伸びる。ふっくらとしたそこを、下着ごしに軽くつつかれる。
「あっ……」
羞恥に心を満たされていたミミは、それだけで小さな悲鳴を上げてしまった。思わず腰を引いてしまう。
「ダメだよミミちゃん、動いたら」
「だ、だって、こんな……ねえトトリ、もう――」
「『ご主人様』でしょ」
「やっ……!?」
小振りなミミの乳房が服の上からわしづかみにされ、乱暴にもみし抱かれる。
「ご主人様を呼び捨てなんて、いけないメイドさんだね。お仕置きしてあげないと……」
「や……ん、く……」
一方的な愛撫が、ミミの乳房に施される。いたわりの感じられない、強引な行為。しかしミミの体は、少しずつ、だが確実に、官能にうずき始めていた。
(おかしい……身体が……こんなに熱いなんて……)
戸惑うミミの脳裏には、フィリーから借りたあの小説の一幕が浮かんでいた。女主人の性の手ほどきによって、身の内に潜む淫らな本能を目覚めさせていく、幼いメイドの少女……。
肢体に熱を帯びてきたミミを、トトリが見つめている。その瞳は妖しく潤み、汗ばんだ肌はほのかに甘い香りを漂わせていた。
トトリの指が、ミミのショーツの脇にかかる。秘部を覆っている薄布には、いつの間にか淫らな潤みが滲んでいた。
「あれ? ミミちゃんってば、ご主人様にお仕置きされながら、ここをこんなにしちゃってるんだ」
「……っ」
「服の上から触っただけなのに、エッチなメイドさんだね。じゃあ、中がどうなってるのか見てあげる」
「ちょっ、待っ……」
ミミの声など聞く耳もたず、白い薄布がスルリと下ろされる。
「へえ……ミミちゃんのここ、可愛らしいね」
「〜〜っ!」
ミミの顔が、火のついたように赤くなる。
まだ汚れを知らないミミの秘部が露わになる。綺麗な肌色をしたそこには、まだ毛も生えていない、さながら童女のようにうぶな割れ目を示していた。
「ふ〜ん……ミミちゃん、まだ生えてないんだ」
「こ……こういうのは、個人差があるし……」
「別に気にすることないよ。私も似たような感じだし。さて、それじゃあ中身も見てあげるからね」
「え、ちょっ――」
トトリの指が、ぴったりと閉じていたミミのそこを、遠慮なく押し開いた。
「ひゃうっ!?」
秘部の中身を露わにされたミミは、思わず声を上げた。桜色をした花びらが、不安そうに震えている。
「ミミちゃん綺麗……それに、こんなにいやらしく濡れて……」
ふう、とトトリはそこへ息を吹きかけた。
「っあ……」
ひやりとしたこそばゆさに、ミミの体が小さくはねる。座り込みそうになったが、どうにか堪える。熱く火照ったそこは、わずかな刺激にも敏感になっていた。
「ミミちゃんってば……ホントにエッチだね」
「っ……ち、違う……私は……そんな……」
否定の言葉は弱々しい。口でどう言っても、濡れそぼった秘所と、官能にうずく体は隠しようがない。
親友のはずのトトリに、下半身を剥き出しにされ、濡れた陰部を凝視されている。『ご主人様』と『メイドさん』という、仮初めの関係の下に。
倒錯した状況に、逃げ出したいほどの羞恥を覚えながら、ミミは奇妙に甘いような、不思議な興奮を抱いていた。
「ミミちゃん……」
「あっ」
ミミの潤んだ膣穴に、トトリの指先が触れる。人に触れられるのは、もちろん初めてだった。破瓜には至らないほどの浅い行為。微かな痛みに、ひくひくとそこが震える。
「んっ……は、ぁ……」
固かったそこが、トトリの指づかいで少しずつほぐされていく。切なく甘美な快感が、ミミの下腹部から湧き上がってくる。
「ふぅん……ミミちゃん、初めてでこんなになっちゃうんだ……オナニーとかしてるの?」
「そ、そんなこと……」
「ご主人様の質問には答えないとね? メイドさん」
「〜っ……し……して……ます」
「どれくらい?」
「……た……たまに……家にいる時に……」
「どんな風に?」
「どんなって……」
「やってみて」
「え……」
トトリの声音は穏やかだったが、それは明らかに命令だった。今この場で、ミミに自慰をしろと。
「……っ……」
真っ直ぐなトトリの視線に晒されながら、ミミは震える手を自らの股関へ伸ばす。
「ん……」
そこの盛り上がりを、中指で浅く撫で回す。円を描くように動かしながら、秘裂の中に少しずつ指先をうずめていく。
軽く、優しく、その中を愛撫する。
「んっ……んぅ……」
快感が湧き上がってくる。しかし反面、ミミはひどく物足りなさを感じていた。
自分の指で慰めながら、頭の中ではついさっきトトリに施された、戯れのような愛撫を繰り返し夢想している。
(……何で……私……トトリの指の方が……気持ちいいの……?)
トトリはじっとミミの一人遊びを見つめている。楽しそうに、嬉しそうに。
「どうしたのミミちゃん。手が止まってるよ」
「ト――……ご、ご主人様……あの……」
「ん? なぁに?」
無邪気なトトリに、ミミはすがるような目を向ける。
「その……まだ……続けるの……?」
「やめたいの?」
「あ、違っ……あ」
「……やめたくないんだ?」
にんまりと、トトリが意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「それじゃあほら、続けて」
「……〜っ」
ミミは憎々しげに歯を食いしばる。
「どうしたのかな? そんな風にご主人様を見つめて」
トトリは超然とした態度を崩すことなく、ミミを見返す。
「ご主人様の言うことが聞けないのかな? それとも……ご主人様に、言いたいことがあるのかな?」
「……」
「ねえ、ミミちゃん。黙っていたら、何にも分からないよ」
「わ、私は……別に……」
「別に……何かな? ここをもう、こんなにして……」
「やっ、あっ……!」
トトリの指先がミミの秘部に触れる。密かに待ち望んだ感触。ミミの体が歓喜にうずく。
だがしかし、待ち望んだ愛撫は与えられず、ただ無機質にそこへ触れられただけだった。
「ほら、すごく濡れてる」
ミミの愛液にまみれて、トトリの指先が光っている。
「〜っ」
ミミは顔を真っ赤にして目をそらす。
「ミミちゃん、オナニーでこんなに感じるんだね」
「ち……違……」
「違うの? じゃあこれは何なのかな?」
指先の蜜を、トトリの舌がペロリと舐めとる。
「ねえ、ミミちゃん? どうしてここがこんなになってるの?」
「そ……それは……」
「それは?」
「ご主人様、が……した、から……」
「へえ……私のせいなんだ」
「……」
「でもミミちゃん、自分の指でしてたじゃない」
「それは……だから、その……ご主人様が……してたから……」
「つまり……私の指の余韻で感じてたの?」
「……」
目をそらす、無言の肯定。
「ふ〜ん……そうなんだぁ」
もう一度指先を舐めて、トトリは濡れた視線をミミに向ける。
「それじゃあミミちゃん。ミミちゃんはどうしてほしいのかな?」
「え……どうって……それは、その……」
困惑したように、ミミは目を泳がせる。
「ねえ、ミミちゃん……ミミちゃんみたいに可愛いメイドさんのお願いだったら、聞いてあげてもいいんだよ?」
「っ、ぁ……」
トトリがミミに顔を寄せる。互いの吐息が触れ合う距離。ミミの鼻孔を、甘い香りがくすぐる。
「ねえ? ミミちゃん……こんなに体を熱くして、恥ずかしいところをびしょ濡れにして……ミミちゃんは何をしてほしいのかな?」
「わ、私……私は……」
「うん?」
「……ト……トトリに……トトリに……もっと……して、ほしい……」
「ん〜……それじゃあちょっと分からないなぁ」
「え……」
「もっと具体的に言ってほしいな」
また、意地の悪い笑みがトトリの口元に浮かんでいる。
「そっ……その……わ、私の……」
「私の?」
「私の……――を、トトリの指で……してほしい……」
「どう、してほしいのかな?」
「っ……き、気持ちよく、してほしいのっ……!」
羞恥を堪えて、絞り出すように、ミミは言った。
「ふふ……よく言えました」
「く……」
「じゃあ、お望み通りしてあげるね」
「……え――?」
いきなり、トトリがその場に屈みこんで、その唇をミミの秘部に寄せた。
ミミは反射的にそこを逃がそうとするが、しっかりと腰を抱えられている。そのまま、恥ずかしい場所にキスされてしまった。
そのまま強く唇を押し付けられ、チュッチュッと音を立てながら蜜を吸われる。
「あっ、あっ……ご、ご主人様……そんな、口でなんて……」
困惑するミミに構わず、トトリは口での愛撫を容赦なく続ける。舌が割れ目の中を何度も往復し、溢れる蜜を猫のように舐めとる。
「あっあっあっ……く、んぅ……っ……ぁ……」
羞恥心と、それを遥かに超える快感が、洪水のようにミミの中を満たしていた。
「ふふ……ミミちゃんってば可愛い声あげて……そんなの聞かされたら、意地悪したくなっちゃう」
「あっ――」
トトリの舌先が、最も敏感な蕾に触れる。まだ皮をかぶったそこを、チロチロと舌先がなぶる。
「ひゃっ、あっ」
「ん……ミミちゃんのここ、まだ剥けてないんだね……ん……」
小さな突起に、何度も何度も口付けを繰り返す。
「あ、あ、ああっ、ひっ、んっ、ぃ……あっ、あっ」
トトリの唇が音を立ててそこに吸い付くたび、ミミの口から声が上がる。
やがて、トトリの舌が強く押し当てられ、渦を巻くように激しくねぶられる。
「あっ、あっ……!」
膨れ上がる官能の高まりに、体と思考が耐えられなくなり、ミミの全身が、がくがくと震える。
やがて――
「あっ、あっ、あっ……――っ!」
ミミの体中を満たした快感の波が、絶頂を告げ、はじけ散った。
「は……あ……」
もはや足に力が入らない。ミミの腰が落ち、その場に座り込んでしまう。
「ミミちゃん……すごかったね」
「はぁ……はぁ……」
「でも……」
トトリはスカートをめくり上げ、レオタードに包まれたそこをミミに示す。
「あ……」
トトリの太ももを伝う、粘質の液体。
「ミミちゃんにしてるだけで、私こんなになっちゃった……」
淫靡に潤んだトトリの瞳は、ミミを見据えて離さない。
「責任……取ってよね」
ミミのご奉仕は、ここからが本番らしい――
「――というような展開を期待していたなんてことは、微塵たりともないから!
あの小説を貸したのは本当に純粋な親切心からであって、純真無垢なトトリちゃんならあわよくば本の内容を丸々鵜呑みにしてミミさんにエッチな要求をしちゃったりするんじゃないかなんて期待は全然全く持っていなくて、
だからそんなミミさんが疑ってる根回しだなんて言うのは完全な邪推であって――ちょっと、落ち着いて、そんな抜き身の槍だなんて、物騒なものをしまって……
やっ、だ、だからっ、誤解! 誤解なんですぅーっ! だ、誰かっ、たすっ、助けっ、助けてーっ! いーやーっ!!」
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
メイドミミちゃんご主人様トトリに健全じゃないご奉仕(提供:腐ィリーさんの妄想世界)でござるの巻。
乙
しかしメイドごっこでなくても時々ミミちゃんにご主人様と呼ばせているような気がするのはなぜなんだぜ
プロジェクトA14が決まったのに過疎
新作は姉妹百合が期待できるんですかね
そのへんは期待したいな>姉妹百合
ツェツィはトトリ大好きだけどイベントとかはどっちかというとメル姉寄りだったもんな
>>241 ちょっとエッチに仲良しすぎるトトミミサイコー!
GJ!GJ!GJ!
しかし、フィリーさんの長い妄想をちゃんと話し終わるまで聞いてあげてから
槍を抜きにかかるミミちゃんはとっても優しいなwww
>>244 親友百合好物な俺にはトトリ、ミミにメル姉、ツェツィでトトリエ最高でした
ツェツィのツボってトトリとかちむちゃんとかピアニャとかちっちゃ可愛い子なんだよな
正反対なタイプのメル姉は密かにそのことを気にしてたりして
そしてある時そんなメル姉の気持ちに気付いたツェツィが
新作でロングヘアーのふわふわお姉さんがショートヘアーで活発な愛しい妹を
探すのがメインとはプレイするモチベーション上がるなー
まあトトリの時みたいに本来の目的からそれて他の娘といちゃいちゃルート
にも当然いくんだろうけど
トトリの場合は最果てに到着するまではそれほどぶれてなかったと思うけど
船での慰めイベントの後はもうミミちゃんまっしぐらだろうな
新作は妹との思い出を辿りながら物語を進めていくらしいから
他キャラとの絡みがどうなるのか気になるところ
もし「妹は既にこの世には…」みたいなエンディングがあったら主人公ヤンデレ化もあり得るか?
エイプリルフールでミミちゃんに「あんたのこと好きじゃないから。嫌いだから」と言われて嘘だと気付かずマジ凹みするトトリちゃん
後になってエイプリルフールにこの発言が意味することに気付いて赤面ミミちゃん
「ミミちゃん好き! 大好き!」
「なっ……いきなり何よ?」
「だってほら、今日はエイプリルフールだから」
「えっ……それって……つまり……」
「……なーんてね。エイプリルフールで嘘をついていいのは午前中までなんだよ。ミミちゃん知らなかった?」
「あ……し、知ってたわよそれくらい! 馬鹿にしないでよね!」
「ふーん、そっかぁ……じゃあミミちゃんは私のこと好き?」
「なっ……そっ……」
「もう午後だから嘘ついちゃダメなんだよ?」
「そ、そんなこと……知らないわよ!」
「知らない? あれ? さっきは知ってるって言ったよね?」
「いや、それは、その……」
「ミミちゃん、もう午後なのに嘘ついたんだ」
「そうじゃなくて!」
「ミミちゃんってばいけないんだー。そんないけないミミちゃんにはお仕置きしないとね」
「お仕置きって、ちょっ、何を……!?」
「ふふふ……ミミちゃんが嘘をつけなくなるまでしてあげるからね」
「〜〜っ!」
いつもロロリオ投下させていただいてる者です。
また新しいロロリオssができたので投下させていただきます。
ロロナとリオネラが、もしゲーム開始前に出会っていたら、というIFストーリーです。
忍法帖の制限があるので、もしかしたら途中で切れるかもしれません。
彼女と初めて出会ったのは、私が十三歳の時だった。
当時、旅芸人としての経験が浅かった私は、町から町へと移動する道中の森で、見事に道に迷っていた。
「おいおいリオネラ。さっきもこの道通らなかったか?」
猫のぬいぐるみのホロホロが、呆れたように言った。右も左も、同じような木と木の風景が続いている。今自分たちがどこにいるかなど、皆目検討もつかなかった。
「ご、ごめんなさい……」
私は涙を拭いながら、小さな声で謝る。
「こら、ホロホロ。リオネラを責めないの。元はと言えば、あんたが近道だって言ったんでしょ?」
同じく猫のぬいぐるみであるアラーニャが、ホロホロを叱る。彼はバツが悪そうに俯いた。
「わ、悪かったって。ごめんな、リオネラ」
「ほら、リオネラも泣かない」
「うん……」
空にある太陽は、とっくに傾きかけていた。このままでは、数時間としないうちに夜になってしまうだろう。
「最悪の場合、ここで野宿になるかもね……」
「野宿って、ここ、モンスターとか出ないのか?」
ホロホロの言葉に反応するように、近くの茂みががさがさと音を立てた。私たちは身を固くする。
「ど、どうしよう……?」
「しっ。リオネラは、後ろに隠れて」
「やれやれ。さっそくお出ましかよ」
全員が身構える中、ついに茂みから何かが顔を出す。
女の子だった。帽子を被って、マントのようなケープを羽織った、私と同い年くらいの子だ。
「あれ、師匠じゃない。こんにちは」
彼女がぺこりと頭を下げたのを合図に、一気にその場の空気が緩んだ。ホロホロが胸を撫で下ろしながら言う。
「何だよ、驚かせやがって」
「あれ? ぬいぐるみが喋ってる?」
どきり。私は慌ててアラーニャとホロホロを背中に隠した。
「えっと、あの、その、これは、そう! 腹話術、なんだ。私、色々なところで人形劇をしているの」
「わー、すごいね! ほんとに喋ってるみたいだったよ」
彼女は怪しむ様子もなく、素直に感心した様子だった。慣れない誉め言葉に居心地が悪くなって、話題を変えることにする。
「あ、あの、あなたは、こんなところで何をしてるの?」
そこで彼女は、自分のことを思い出したようにはっとなった。
「そうそう。師匠の付き添いで来たんだけれど、はぐれちゃったんだ」
「師匠? あなたの?」
「うん! 錬金術の、お師匠さんなんだよ」
錬金術。確か、物質と物質を組み合わせて、まったく別の物を作る技術、だったはずだ。耳にしたことはあったけれど、私はいまいちピンとこなかった。何だか、遠い世界の話みたいだ。
とりあえず、彼女の言うことをまとめると、こういうことだった。
錬金術で使う素材を集めに、自分の師匠の付き添いでこの森に来たのはいいけれど、はぐれてしまって今に至る、ということらしい。
「そうなんだ。実は私たち……私、道に迷ってて」
「ほんと?」
彼女は目を輝かせた。
「私、師匠の付き添いでしょっちゅうここに来るから、道案内できると思うよ」
「しょ、しょっちゅう?」
「うん。私の住んでるところ、この森の近くなの」
そう言って彼女は得意げにはにかんだ。年相応の、幼い笑顔だ。
「おい大丈夫なのか? こいつ錬金術とか訳わかんないことばっか言って、めちゃくちゃ怪しいぞ」
ひそひそとホロホロが私に耳打ちする。確かに今までも、親切なふりをして、私の「力」を利用しようとする人たちはいた。
でも、彼女は、と思う。悪いことを企んだ人は、こんな風に無邪気に笑うことなんて、出来っこない。
「それじゃあ、お願いできるかな。えっと……」
そういえば、自己紹介がまだだったことを思い出す。向こうもそれに気づいたらしい。
「ロロナだよ。あなたは?」
「私は、リオネラ」
「よろしくね、りおちゃん!」
「えっ? それって……私のこと?」
「うん。そうだよ、りおちゃん!」
親しげに呼ばれた、自分の名前。
何故だか、涙が溢れ出しそうになった。
ロロナちゃんの案内を受けてから、数分後。
「あれれ? おかしいなぁ」
先頭に立っていたロロナちゃんが、立ち止まって首を傾げた。
「この切り株、さっきも見たよね?」
「う、うん。そうみたいだけど……」
「まっすぐ歩いてたはずなのになぁ」
更に歩くこと数十分。再び問題の切り株が、私たちの前に立ちはだかった。それをじっと見つめた後、ロロナちゃんは今にも泣きそうな顔で振り向く。
「りおちゃん、どうしよう。迷っちゃったみたい」
まさかとは思ったが、どうやら悪い予感が的中してしまったらしい。密かにアラーニャとホロホロがうなだれる。
「おいおい、さっきと状況がまったく変わってないぞ」
「困ったわね……」
空模様は、とっくに夕暮れ時を示していた。夜は刻々と近づいている。
「ど、どうしよう……」
ロロナちゃんは不安そうにきょろきょろとしていた。まさか、慣れているはずの場所で迷うとは思わなかったのだろう。
「だ、大丈夫。きっと、何とかなるよ」
彼女を宥めるために言ってみたが、自分でも情けなくなるくらい小さな声だった。実際、何とかなるとは思えない。
「一旦休憩しましょう。焦っても解決しないしね」
アラーニャの提案に、私も頷く。それが今できる最善のことだと思った。
ロロナちゃんにもそのことを伝えようと、口を開きかけた時。
突然目の前の茂みから、ウォルフの群れが飛び出してきた。複数の眼光がこちらを睨み、重なり合った唸り声をあげる。
早まり始めた鼓動を、必死に押さえる。落ち着いて、私。頭を働かせるの。
向こうの数が多い以上、逃げるのが得策だろう。しかし、こちらにはロロナちゃんがいるのだ。彼女を守りながら、逃げ切れるだろうか。
いっそ、「力」を使って……。そこまで考えて、私は首を振るった。
いや、駄目だ。自分の体がいきなり宙に浮いて、しかもそれを私がやったと知ったら――彼女は、どう思うだろう。
……もう誰かに、不気味なものを見るような目を向けられるのは、耐えられない。
私のことを親しげに呼んでくれたロロナちゃんに、嫌われたく、なかった。
でも、どうしたら……。迷っている間に、群れの一匹が、吠えながら私に突進してくる。答えを出せないまま、私は痛みに備えてぎゅっと目を閉じた。
「りおちゃん! 伏せて!」
暗闇の中で、ロロナちゃんの声がした。同時に、ピキキ、と甲高い音が連続で鳴り響く。
おそるおそる目を開けて、私は驚いた。目の前のウォルフの大群が、凍り付いている。一匹の残らず。
「今のうちに!」
唖然としている私の手を、ロロナちゃんが掴んで走り出した。
何がなんだかわからなくて、頭がついていかないけれど。私は今、彼女に手を引かれている。さっきまで頼りなかったその背中が、妙に頼もしくて、繋いだ手がとても、温かくて。
このままずっとこうしていられたらなんて、変なことを思った。
「こ、ここまできたら……大丈夫だよね」
無我夢中で走り続けて、私たちはようやく一息ついた。乱れた呼吸が、かなりの距離を走ってきたことを告げている。
「もしもの時のためにって、師匠からレヘルン貰っといてよかった……」
「レヘルン?」
「氷の爆弾なんだ。師匠が、錬金術で作ったの」
へえ、とホロホロが感心したように呟く。
「錬金術ってのは、結構役に立つもんだな」
「あら? さっきは怪しいとか言ってなかった?」
「う、うるせえなぁ」
「二人とも、しーっ」
アラーニャたちの会話がロロナちゃんに聞かれたらとひやひやしていたが、当の本人は気づいていない様子で声を上げた。
「あっ! 出口だ!」
顔を上げると、森が途中で途切れていて、沈みかけた夕日がよく見えた。さっきまで血眼になって探していたのに、こうもあっさり見つかるとは。力が抜けて、思わず頬が緩んだ。
「あ、やっと笑顔が見られた」
「え?」
「笑うとやっぱり可愛いね、りおちゃんは」
嬉しそうな顔をした彼女に言われて、私はたじろいだ。可愛いなんて、そんな言葉。誰にも言われたこと、なかった。
どうしてだろう。また、涙が出てきそうになる。
「こらっ! ロロナ!」
不意に凛とした声が響いた。長い黒髪に眼鏡をかけた女性が、こちらに駆け寄ってくる。
「あっ! 師匠!」
ロロナちゃんが彼女をそう呼んだ。師匠と言うからには、てっきり立派なおヒゲのおじいさんかと思っていたが、女性だったらしい。
彼女はロロナちゃんの前に来るなり、ぽかり、とその頭にゲンコツをお見舞いした。
「勝手に離れるなと、あれほど言っただろう!」
「ううっ……ごめんなさい」
「分かればよしっ」
彼女は頷いた後、ロロナちゃんの隣にいる私を見た。知らない大人の人と接するのはやっぱり苦手で、私はもじもじする。
「おや、君は?」
「あ、えっと、私は……」
単に自己紹介をすればいいのに、言葉が出てこない。そんな私を見かねてか、すかさずロロナちゃんが言った。
「師匠、この子はりおちゃん。さっき森の中で会ったんです」
「そ、そうなんです。よろしく、お願いします」
「ふむ、そうか。ロロナのやつが、迷惑を掛けてしまったな」
さて、と彼女はくるりと身を翻した。
「私とロロナはこれから近くのアーランドに帰るが、君はどうする?」
「わ、私は、他の町へ向かうところなので……」
「そうなのか。ではここで、お別れだな。……さあロロナ、帰るぞ」
「……はい。りおちゃん、またね!」
私と繋いでいた手を、今度は師匠に引かれて、ロロナちゃんは歩いていく。途中、何度もこちらを振り返って、元気よく手を振ってくれた。私も小さくなっていく彼女に向かって、大きく手を振り続けた。
「またね、か。まるでまた会えるみたいな感じね」
ぬいぐるみのフリをやめたアラーニャが言う。心なしか、その横顔はどこか寂しそうだった。
「まあ、そのうちまた会えるだろ、きっと」
「……そうだね」
ホロホロの言葉に頷く。根拠はないけれど、彼女とはまた、会えるような気がした。
濃い青へと色を変えつつある空には、ぽつぽつと星の姿が現れ始めている。さあ、夜になる前に、宿を見つけなくちゃ。私たちは彼女とは違う方角へと、歩き出す。
いつか、と思う。彼女のいる街――アーランドに行ってみよう。そしてまた、彼女に会うことができたなら、その時は。
彼女の笑顔を思い浮かべると、胸がかすかな熱を帯びる。
私がこの想いを恋だと知るのは、それから三年後のことだ。
そしてそれはまた、別のお話。
以上です。よかった、何とか全部載せられた。
未だにロロナしかやったことないけど、トトリ購入の暁には、りおちゃんが登場する設定でロロナといちゃいちゃするssを書くんだ。
リアルタイムGJ
真面目に師匠らしいことをしている師匠が新鮮だったw
トトリエ時代のりおちゃんはロロナ先生が「この前会った」っていうぐらいだからアーランドの領土内にはいるはずなんだよな
メルリエではOPの背景に登場しているし
冒険中のトトリやメルルにバッタリ出会っても不思議じゃないというか、何故そうならなかったのか
乙です。いつもpixivでも読ませてもらっています
相変わらず優しい気持ちになれる作品ですね
「またね」、ロロアトのリオネラ編で好きなセリフの一つを思い出しますね
「それじゃまたね、りおちゃん、ラニャちゃん、ホロくん」
二か月前ほどに投稿した長編の続きです
うげげげ、おそくなりまくりおろろろrrr
記憶からきれいさっぱりの方が多いとおもいます。
60と129から一話と二話が読めますんで!!ほんとすいません!!
以下3話になります
『ガラスの花』
3話
「……また、失敗しちゃったな」
そっと右手の指先を左手でなぞる。
撫でられた箇所は赤くなっている。先程、錬金中に鍋の中身がかかり火傷した個所だ。
よく冷やしたものの、未だに少し痛む。
ピリピリとした感覚が右手の先から消えない。
これで、3度目だ。
錬金術をやり始めてからもう、何年たっただろう。
こんな基本的なミスは、ロロナ先生に教わっていた初めのころにやったかやらないか。
それがここ3カ月で3度目。あり得ない頻度だ。
しかもこれだけじゃない。
些細な失敗を繰り返している。
メルルちゃんと一緒に採取に出かけた時は、危うくモンスターに背後を取られる所だった。
すんでの所で軽い傷を負いながらもとどめを刺したけれど、それは運が良かったのと、メルルちゃんのおかげ。
あそこでメルルちゃんがフォローしてくれていなければ、どうなっていたか分からない。
メルルちゃんは不注意の私を責めるでもなく、いの一番に傷の事を心配してくれた。
手を付いている私に手を差し出して、大丈夫ですかって聞いてくれた。
差し出されたその手には、土すらも付いていなくて。
メルルちゃんは、すごくすごく成長してると思った。
そしてそれ以上に。
「私、先生……失格だよね」
誰もいないアトリエだからこそ呟ける本音。
ここ最近の私は、本当に府抜けている。
そう、ミミちゃんが旅立ったあの日から特に顕著だ。
心ここにあらずな状態が長期間続いていて、周りに迷惑をかけていると自覚もある。気をつけようと思ってもいる。
でも今一つ集中できない。
何かをやろうとしても、心のどこかでミミちゃんの事がちらついてしまう。
あの時、メルルちゃんから、ミミちゃんが旅立ったと聞いて驚いた。
今までだったら2〜3日採取や依頼に出かける事があれば、お互いに必ず一言伝えあっていた。出かけてくるねって。いってらっしゃい、気をつけてってミミちゃんも私も何度いい合ったか分からない。
時間が取れなかったり、急ぎの旅立ちなら伝言を頼んだりしていた。
それが突然長期の旅の依頼に出ただなんて。
もう、3か月になるだろうか。
音沙汰は、何もない。
手紙も。伝言も。何一つ、ない。
「…………………いつまでも友達でいてくれるんじゃなかったの? ミミちゃんの……」
――――――うそつき
はっとした。
口から出そうになった言葉を、かろうじて口内でとどめる。
今、私は何を呟こうとした?
ミミちゃんを、悪者にしようとしたの?
悪者は、私だっていうのに。
火傷した個所を握り締める。
ひきつれるような痛みが指先を通り抜ける。
もっと痛めばいいのに。頭を真っ白に染め上げて、何も考えられなくなるくらいに。
そうしたら、自分の汚い部分を見つめないですむのかな。
……無理だよね。だって私はもう、自分が弱虫の卑怯者だって知っちゃったんだから。
ぐしゃっと髪をかき上げる。
あぁ、ダメだ。また自己嫌悪しちゃっている。
これがいけないんだと分かってはいるけれど、どうしても止められない。
水でも飲んで気分を変えようと、たちあがった。
すると、机の上に置いてある小瓶が目に入る。
小瓶の中には小さなドライフラワー。
ミミちゃんが帰ってきたら渡そうと思っているものだ。
ミミちゃんと別れたちょっと後の旅先で見つけた、小さな花。
とてもきれいな赤い花びらの可愛い花だった。
たくさんの友達たちと一緒に、その花は風に揺られていて。まるで、おとぎ話のような場所で。
規制よけ支援
ミミちゃんに、見せてあげたいな。
真っ先にそう思った私は、花を持ち帰りドライフラワーにする事にした。
以前ミミちゃんに渡して喜んでくれた、小瓶入りのドライフラワーを思い出しながら作り上げた。
そして、喧嘩した訳じゃないけど、仲直りのきっかけにしたいなって思っている。
こんな事があったんだよ、今度ミミちゃんも一緒に行こう!って誘うんだ。
そしたら、また、昔みたいに。
昔みたいに……また、ミミちゃんの優しさに甘えるの?
刺すように胸が痛む。元の関係に戻りたいのは偽らざる本音。
でも同時にいいようのない後ろめたさも感じる。
ミミちゃんに昔通りの関係を望むと言う事は、あの出来事を無かった事にするという事だ。
あの出来事があったから、いかに自分がミミちゃんに甘えて寄りかかって、守られていたのかが分かった。
府抜けた今の自分を見れば嫌でも気づく。
それが嫌だから、一人は寂しいから―――自分の弱さを見つめたくないから。
だからミミちゃんに元の友達に戻ってほしいなんて、そんなの。
「…………ただの最低なわがまま、だよね」
つらいなぁ。
決して言葉には出せない。
出せば、もっともっと今の自分が崩れてしまう気がして。
私よりもつらかったミミちゃんの事を、おとしめてしまう気がするから。
こんな私の事なんて、ミミちゃんはもう忘れているかもしれない。
どうでもいい事だと、吹っ切れているかもしれない。だから連絡もないのかな。手紙一つないのかな。
もう、私と友達でいるのすら、嫌になったのかな。
ドンドンドンッ!
突然鳴り響く音。
一瞬体が硬直してしまった。
「トトリ先生―っ!いますかーっ!?」
メルルちゃんの声が、玄関の向こうから聞こえる。
どうやらメルルちゃんのノック音だったようだ。
びっくりした。それにしてもあんなに急いでどうしたんだろう。焦った様子が伝わってくる。
「どうぞ、鍵は空いてるよ!」
大きく声を張り上げて、扉の向こうに届くようにする。
ここ最近、落ち込んだ気分の日が多いため、急に誰かが入ってこないように鍵を閉めている時がある。
泣き顔に近い顔なんて、人には見せられない。
「失礼します!」
元気よく扉を開けたメルルちゃんが、私の方へ走り寄ってくる。
はぁはぁと息が切れていても、浮かべているその笑顔には曇りがない。
しかし、さすがに息が切れすぎていて喋れないのか、私の前で息を整えようとている。
かなり体力があるメルルちゃんが、ここまで息を切らすなんて。
どこから走ってきたのか。よっぽど急いでいたのかな。
「どうかしたの? メルルちゃん」
「はい、はぁっ、はっ、あの、ですね」
息を整えるのと、喋るのとを一緒にやろうとして、息継ぎがうまくいっていない。
思わずほほえましくて頬が緩む。
まるで昔の私を見ているようだ。
「急がなくていいよ、落ち着いて。ほら、深呼吸だよ」
「は、はい、す〜〜〜は〜〜〜す〜〜〜は〜〜〜……」
助言に従ってすぐに深呼吸する所も、すごく素直だ。
うん、そろそろ落ち着いたかな。
「そんなに急いで、どうかしたの?」
「あ、は、はい、トトリ先生!!みたんですよ!私みたんです!!」
「えっと……何をみたの?」
幽霊でも見ちゃったっていうのかな。でもそれならこんなにはしゃいだ感じには―――
支援
ついでに誤字指摘
府抜け→腑抜け
この板の連投規制ってどのくらいなんだろう?
スマプリスレにこんな事書いてあった↓
★連投規制
30分以内に10レス目を書き込むと規制対象になります。
10レス以上の投下には9レス毎に30分のインターバルが必要です。支援は無効です。
次から
>>1のテンプレに追加しよう。
276 :
代理:2012/04/23(月) 00:41:36.83 ID:/2HolI/4
「ミミさんです!フィリーさんに依頼の報告してるのを見かけたんです!帰ってきたんですよ!!」
ひゅっと息を吸い込む。それ以上の行動が出来ない。瞬きすら忘れる。
ミミちゃんが……帰って来た?本当に?
「そう…なの」
「そうですそうです!今ならまだあそこに居るかもですよ!会いに行きましょうよ!」
「会いに…?」
これから、ミミちゃんに会いに行く?
「そうですよ!さぁ、行きましょう、トトリ先生!」
メルルちゃんが手を掴んで、そのまま外に向かおうとする。
ミミちゃんに会う。これから。すぐに。
会って何をするの?おかえりなさいと言えばいいの?心配したんだよって笑えばいいの?
ミミちゃんはもう―――私の友達としてすら居てくれないかもしれないのに?
そう思った瞬間、メルルちゃんの手を振り払っていた。
パシッと乾いた音が響く。
「え?トトリ先生……?」
きょとんとした眼が私をとらえる。
「あ、ごめ……ん」
払ってしまった手は宙に浮いている。
無意識にふるまったから、強い力ではなかった。痛くは無かっただろう。
でもその手をまたつかんで、ミミちゃんの元に行く事は今の私には出来そうもない。
「あの、ごめんね……。でも、私は……ここに、いるよ」
私の言葉を聞いて、メルルちゃんの瞳の怪訝な色が濃くなっていく。
前の私ならこんな長い期間ミミちゃんと会わなかったら、ためらわずに向かっていたと思う。メルルちゃんには、きっとそれが分かってる。
「えっと……何か急ぎの依頼でもあるんですか?」
「特には、ないよ」
「じゃあどうして?ミミさんが帰ってきたんですよ?」
「―――そうだね」
ミミちゃんが帰ってきたんだよね。
ミミちゃんが、そばに居る。会いに行けば、会える。話せる。顔を見れる。
でも、そのすべてが怖い。
会って話すのが怖い。声を聞くのが怖い。目を見るのが怖い。
もう友達ですら居られないかもしれないのだと、現実を突き付けられるのが何より怖い。
嫌な事を聞きたくないから、見たくないから耳をふさぎ目をそらす。まるで、子供だ。
お母さんの事を忘れてしまったあの頃から私は、何にも変わっていないのかもしれない。
そう理解していても、固まってしまった足は前に動こうとはしないのだ。
277 :
代理:2012/04/23(月) 00:43:42.48 ID:/2HolI/4
無理矢理、頬を釣り上げる。
「ごめん。私は、いけないよ」
「本当に……どうしたんですか?何があったんですか?最近のトトリ先生、おかしいです」
「何にもないよ。ただ……少し、疲れてるだけだよ」
「嘘です!絶対なんかありましたよね!?」
即座に否定される。まいったな。今の私に、上手い言い訳を思いつける余裕なんてないのに。
「……なんで、かな?」
「最近トトリ先生、うっかりミスも多いし、どこかぼうっとしてます。今のミミさんの事だってそうです。変です。なによりトトリ先生の最近の笑顔、なんだか苦しそうで見てられませんよ。笑顔なのに泣き顔みたいなんです」
ミミさんがいないからさびしいんだと思って、今まで何も言いませんでしたけど。
そう続けるメルルちゃんの声が耳を抜ける。
その声音は気づかいと優しさ満ちていて、心底心配してくれているのだと感じる。
ふと、涙がこぼれそうなった。
一人で葛藤していた期間は私にとってあまりにも長くて孤独で。
気づいてくれていた人がいたのだと、ただそれだけの事実で少し気持ちが軽くなる。
震える唇を開く。
「あのね、メルルちゃん――――」
こんな事で弟子に甘えるなんて、先生として失格かもしれない。
それでも抱えきれないこの想いを、少しだけ聞いてもらってもいいかな。
続く。
278 :
代理:2012/04/23(月) 00:45:47.32 ID:/2HolI/4
某御方のご支援を頂き、無事投稿できました!某様ありがとうございました(土下座 規制怖いです。 さて、まだ終わりが見えないこの話。まだまだ暗いのよHAHAHA。次回投稿までまた気長にお待ちくだされば嬉しいです。お、遅いとさ、三か月…後…とかかかkkがんばります。
うおおおお!!GJGJ!!
トトリちゃんとミミちゃんの間に何があったんだよおおおお!!!
続編気長に待ってるよー!
うわあああこれ例の3話だったのかあああ!
シブで、スゲー待ってたお話だよおおおおお!!!
ありがとう!超ありがとう!
猛烈に続きが気になります
頑張って完結させてください
SS投下します。
今回はロロナ時代のロロリオ。
くーちゃんやらイクセ君やらスケさんやらも出てきます。
……か、勘違いしないでよね!
>>259さんに影響されたとかじゃないんだから!
あの人のようになれたらと、そう思っていた。
あの人のように近く――
あの人のように強く――
あの人のように優しく――
――あの子の傍にいられたら。
「あ、ありがとうございましたー」
今日は大きなミスをすることなく、最後まで演目を終えられた。ぎこちなくお礼をするリオネラに、広場に集まった観客達がおひねりを差し出し、アラーニャとホロホロがそれを集めてくれる。
二人(匹?)と一緒に大道芸をして生活のためのお金を稼ぐ。これがリオネラの生業だ。
「今日は上々だな」
「明日もこの調子でお願いね、リオネラ」
本日の収入をざっと勘定して、二人が声をかけてくる。リオネラはそれにうなずきながら、去っていくお客さんの中に視線を走らせていた。
「今日はあの子来てないわよ」
「王国依頼の期限が近いから行けないって、この前言ってただろ」
「あ……うん」
それは分かっていた。しかし、期待をしていた。ひょっとしたら気が変わったんじゃないか。それか早く仕事を終わらせて、駆けつけてくれたんじゃないかと。
(そんなこと、あるわけないのに……)
あの子――ロロナは自分の居場所を守るために、毎日必死で頑張っている。リオネラはそれを知っているのに、その真逆の期待をしてしまう。『お仕事よりも、私を見てほしい』……そんなことを思ってしまう。
ただ臆病で気が小さいから表に出さないだけで、心の中ではひどく我が儘な願いを抱いている。そんな自分に、リオネラは大きなため息をついた。
「ちょっと。何暗い顔してんのよ、リオネラ」
「え?」
「気になるなら会いにいけばいいだろ」
「でも、忙しいだろうし――」
「だったら陣中見舞いだ。さあ、行こうぜ」
「あ、ちょっと……!」
アラーニャもホロホロも、さっさとアトリエに向かって行ってしまう。リオネラは慌ててそれを追いかけた。
二人に先導されて真っ直ぐアトリエまでは来たけれど、そのまますぐにドアを開ける気にはなれず、リオネラは外で立ち往生している。
「リオネラ……行動パターンが最初にここ来た時と一緒じゃねーか」
「うぅ……だ、だって」
「だってじゃないだろ。もうあいつとはとっくに友達なんだから、堂々と会いに行けよ」
「でも、やっぱり仕事で忙しくしてるかもしれないし……」
「もしそうなら出直せばいい話じゃない」
「そうそう。もたもたしてるとまた前みたいに誰かが――」
「何やってんのよ、そんなところで?」
「わひゃああっ!?」
不意に背後からかけられた声に、リオネラは素っ頓狂な叫びを上げ、飛び上がらんばかりに驚いた。
「あ、く、クーデリア……さん」
「ええ、そうよ。一応友達として声をかけた相手に、白昼化け物にでも会ったようなリアクションされたクーデリアさんよ」
「はぅっ……ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」
皮肉を返すクーデリアに対し、平謝りに謝るリオネラだった。
「おいおい……悪気は無いんだろうし、あんまいじめてやるなよ」
「いじめてないわよ!」
ついでと言っては何だが、イクセルもいた。二人揃って来たというよりは、たまたまタイミングが重なったという感じだが。
「リオネラも! 別に本気で怒ったりしてないから、もう謝らなくていいわよ」
「う、うん……」
涙目になっていたリオネラだが、どうにか深呼吸して気持ちを落ち着ける。
どうやらクーデリアもイクセルも、リオネラと同じくロロナの様子を見に来たらしい。
「あの子、王国依頼の期限が近くなると必要以上に根詰め過ぎることが多いからね。その辺は注意するようホムにも言い含めてはいるけど、たまに出向いて様子見ておかないと」
「俺もそこんとこを考慮して、滋養バッチリの弁当を差し入れに持ってきてあるからな」
「へえ……そうなんだ」
「そうなんだ、って、リオネラも同じ用件じゃないの。ロロナの様子見に」
「えっと……そうだけど、その……私は二人みたいに、ちゃんと考えてのことじゃないし、差し入れなんかも持ってきてないし」
ただ自分がロロナに会いたいだけという、ただそれだけの理由でしかなかったことが、リオネラはひどく恥ずかしかった。
「友達に会うのに、そんな細かいこと必要ないでしょうが。ほら、さっさと行くわよ」
リオネラの胸中など知らず、クーデリアとイクセルは遠慮なくアトリエに入っていく。リオネラはおずおずとその後に付いていった。
「ロロナー、お邪魔するわよ」
「あ。くーちゃん、いらっしゃ――って、イクセ君とりおちゃん達まで。今日、何かあったっけ?」
ぞろぞろとやってきた団体客に、ロロナが目を丸くする。
「たまたま来るタイミングが三人重なっただけよ」
「もうじき王国依頼の期限だしな。またいつぞやみたいにぶっ倒れてないかと思って」
「やだなぁ。もうそんなこと――」
「その推測は的確です。つい先日、マスターは体力気力ともに著しく低下した状態のまま調合を行おうとしました。ホムが強く警告しなければ、調合中に昏倒するところでした」
「わーっ、ほむちゃん、しーっしーっ!」
少女型のホムンクルス――ホムが淡々と事実を報告した。
「やっぱり来て正解だったわね……」
「だな。最近食堂にも顔出してないけど、ちゃんとメシは食ってるのか?」
「だ、大丈夫だよ。ちゃんと三食たべてるよ」
「ふーん……おい、ホム。ロロナは今日の朝、何食った?」
「パイです」
「昨日の夜は?」
「パイです」
「昨日の昼は?」
「パイです」
「昨日の朝は?」
「パイです」
「……ロロナ」
「はい……」
「たんぱく質と脂質と糖質とビタミンと無機質をバランスよく摂れこの馬鹿!」
さすがにイクセルが咆えた。
「ご、ごめんなさい! 忙しいとつい、ご飯作る暇も惜しくなっちゃって……作り置きのパイでいいやって……」
「だからって、あんたねぇ……そんな食生活続けてたら、本気で病気になるわよ」
「作るのが面倒ならうちの店に来りゃいいだろうが。ほら、差し入れの弁当だ。これ食って足りない栄養素を補え」
「わ。ありがとうイクセ君」
お弁当を受け取ってホクホク笑顔のロロナ。その様子を見て、クーデリアとイクセルは「やれやれ……」とばかりに苦笑していた。
「リオネラ……さっきから何で黙り込んでだよ」
「うう……」
「何にも話さないんじゃ、来た意味がないでしょう」
「そ、それはそうなんだけど……」
アトリエに入ってから一言も発していないリオネラを、ホロホロとアラーニャがせっつく。
別に好きで黙っているわけではなく、幼馴染み三人の会話のテンポに、引っ込み思案なリオネラではとてもついていけないのだ。
「うじうじしてる場合かよ。この際、何でもいいから」
「そうそう。お仕事頑張ってねーとか、とにかく声を掛けときなさい」
「う、うん……」
深呼吸を、一つ、二つ――
(……よしっ)
「あ……あ……あのっ、ロロナちゃんっ!」
気負いすぎて、自分でもびっくりするぐらい大声を出してしまった。呼びかけられたロロナだけでなく、クーデリアとイクセルも何事かという表情をしている。
「りおちゃん? どうしたの?」
「え、あ……あの、その……お、お仕事……」
「お仕事? お仕事がどうかした?」
首を傾げるロロナに、リオネラはただ一言だけ伝えようとする。……のだが、
(……やっぱり……無理……)
ロロナと二人きりなら、平気だったかもしれない。しかしクーデリアとイクセルがすぐ近くにいるだけで、異常に緊張してしまう。いや、緊張とは少し違うのかもしれない。とにかく、思うように声が出てくれなかった。
「うぅ……」
「ひょっとしてリオネラ、ロロナの仕事手伝うって言いたいの?」
助け船のつもりかどうか、言葉に詰まったリオネラに、クーデリアがそう訊いた。
「え? りおちゃんそうなの?」
「あ、その、ち……」
違う。が、この際それで良かった。むしろその方が良い。
「う、うん……そう。お仕事、手伝えること、ないかな、って」
「りおちゃんの方はお仕事大丈夫なの?」
「うん。今日は失敗もしなくて、お客さんすごく喜んでくれてた」
「そうなんだ。見に行けなくてごめんね」
「あ、ううん、気にしないで。それで、その、何か、手伝えたら……」
「うーん……今のところは特に……王国依頼の方も大体目星付いたし」
「そう……」
リオネラは肩を落とす。しかし、
「あ、そうだ。もしりおちゃんが良かったら、今度冒険に行くのに付き合ってくれる?」
「あ……!」
ロロナの言葉に、たちまち目を輝かせた。
「う、うんっ! 私で良かったら、是非……!」
怪我の功名か、棚からぼた餅か。何はともあれ、久々にロロナと冒険できることに、喜びを隠しきれないリオネラだった。
――黒い大樹の森。
アーランドから北東に位置する、人が踏み入ることの滅多に無い深い森林。高レベルのモンスターも生息している危険地帯だが、同時に稀少な植物の宝庫でもあり、錬金術士にとって魅力の多い土地だ。
そういうわけでロロナはこの森に仲間を連れて、錬金術の材料採取に勤しんでいるのだが……
「えーいっ!」
ロロナの投げたフラムが、放物線を描き、直後、炸裂する。錬金術の力で爆破範囲を拡大強化されたフラムが、数匹のウォルフを炎の渦に飲み込んだ。
だが、全滅には至らない。生き残った二匹の森ウォルフが、うなり声を上げて迫る。鋭い爪と牙が向かう先は――
「りおちゃん下がってっ!」
「あっ……!」
猛獣の殺気に当てられたリオネラは、恐怖のあまり硬直してしまう。
「伏せろっ!」
「っ!」
その指示を理解したというより、ほとんど反射でリオネラは身をかがめていた。
次の瞬間、黒いマントが躍り出る。大剣が閃きウォルフを迎え撃つ。一匹を素早く薙ぎ払い、返す刃で二匹目の胴体を存分に切り裂いた。手負いの獣二匹を一息で斬り伏せる、水際だった剣腕だ。
「ふむ……今ので最後のようだな」
周囲に気を配りながら、ステルクは低く呟いた。
冒険にモンスターの襲撃は付きものである。ロロナもステルクも慣れたものだ。が、リオネラは旅の経験は長くても基本モンスター相手には逃げの一手だったので、実戦では正直弱かった。
「りおちゃん、大丈夫? 怪我してない?」
「あ、うん……大丈夫、だよ」
ロロナに手を引いて貰い、リオネラは立ち上がる。
「無事でよかったよ。やっぱりステルクさんにも来て貰って正解だったね」
「う……うん」
同意して頷くリオネラだが、その胸中は複雑だった。
ロロナと冒険をする際は、二人きりというのはまず無い。大抵は三人でパーティーを組むことになる。
そのこと自体に不満は無いのだが……リオネラにとって問題なのは、組む相手だ。
クーデリアやイクセルは、年も近いしロロナの幼馴染みということもあって、比較的親しみやすい。
タントリスはキザな言動が目立つが、基本的に紳士で気遣いのできるタイプなので、一緒にいて不快ではない。
ジオは年の功とでも言うべきか、落ち着いた雰囲気で安心できる。
だがしかし……
「……君、どうかしたか?」
「ひっ……あ、いえ、何もない、です」
俯いて考え事をしていたら、ステルクに声を掛けられた。それだけでリオネラの体がビクリと震える。
「おいおい、後ろにヌッと立って声掛けるのやめてくれよ」
「そうよ。ただでさえリオネラは怖がりなんだから」
「む……そうか、すまんな」
注意するホロホロとアラーニャに、ステルクが律儀に謝る。シュールな光景だが、それを笑う余裕はリオネラにはなかった。
ステルクは口をつぐむ。
「……」
「ご、ごめんなさい」
「黙っているだけで、何故謝られるんだ……」
「あうっ……ごめんなさい」
「いや、もういい……私は離れて周囲を警戒しているから、君は彼女のそばにいてくれ」
ため息をついて、ステルクはその場を去る。申し訳なかったが、リオネラは心底ホッとしていた。
ステルクは怖い。顔が怖い。それだけでなく、重苦しい雰囲気がリオネラにとって近寄りがたく、ハッキリ言って苦手だった。
「あれ? りおちゃん、ステルクさんは?」
草むらで錬金術の素材を物色していたロロナが戻ってきた。
「あ……その、離れたところで、見張ってるって」
「ふーん……ねえ、りおちゃん」
「何?」
「りおちゃんって、ステルクさんのこと苦手?」
「!?」
思っていることをズバリ指摘され、リオネラは図星丸出しの表情をしてしまう。
「あー……やっぱり、そうなんだ」
「ち、ちがっ……そういうんじゃなくて、その、か、顔が……」
「うん。ステルクさん顔怖いもんね。分かる分かる」
あっさり同意して頷くロロナ。本人が聞けば傷付くだろうに。
(これって、陰口……だよね? ロロナちゃんも、あの人のこと苦手なのかな……)
「でもね、りおちゃん。ステルクさん、顔は怖いけど、ホントは凄く優しい人なんだよ」
「え……」
ロロナは曇りの無い笑顔で、リオネラの目を見ている。
「私も最初は取っつきにくかったけど、何度かお話したり一緒に冒険してるうちに、そういうのが分かってきたの」
「そう……なんだ」
「うん。顔が怖かったり無愛想だったりするのは、ステルクさんの性分みたいなものだから、慣れちゃえば平気だよ」
「あれに慣れるとなると、リオネラには十年かけても無理なんじゃねーか?」
「そうねー。まともに目を合わせたことすら、一度も無いんだから」
「あはは……まあ私も、今でもいきなり顔見たらびっくりしちゃうんだけどね」
ホロホロ達の率直な意見に、ロロナも苦笑いだった。
「そういうわけだから、りおちゃんも怖がらずにお話してみたらいいよ。怒ってるように見えても全然怒ってないのがほとんどだから」
「……」
「りおちゃん?」
「あ、う、うん……分かった。努力、してみる」
ロロナの言葉に頷きながら、リオネラは激しい自己嫌悪に襲われていた。
先ほど、ロロナがステルクの顔を怖いと言ったのを、リオネラは陰口と勘違いした。そしてそれを、心のどこかで喜んでいたのだ。
(最低だ、私……)
ロロナの品格を貶めるような勘違いをして、しかもそれを密かに喜んでしまうなど……穴があったら入りたい気分だった。
規制よけのため次は30分後に投下します。
悩むリオネラをよそに、ロロナの方は話を切り上げ、何やら周囲に視線を巡らせている。
「う〜ん……この辺だと思うんだけどなぁ……」
きょろきょろと辺りを見回すロロナ。もしかしなくても、何かを探しているのは明らかだった。
「ロロナちゃん、何探してるの?」
「うん、この辺でしか採れない珍しい花なんだけどね。ドンケルハイトって言って、赤い花びらがいっぱい付いてるの。すごく貴重な錬金術の材料なんだよ」
「へえ……」
説明を聞いたリオネラは、ロロナと一緒にその花を探す。
しかし、小一時間ほど周囲を探しても、目当てのものは見つからない。
「う〜ん……ないなぁ……」
「それって、どうしても必要なの?」
「うん……植物系の材料としては最高だし、あれがないと調合できないものもあるから……」
「……」
ロロナの話を聞きながら、リオネラはもう一度周りに視線を送る。
――と。
「あっ」
「えっ?」
不意に声を上げたリオネラが、小走りに駆け出す。ロロナもそれを追いかける。
「ロロナちゃん、ひょっとしてこれ――」
木の根と草の陰に隠れるような場所。リオネラが指さしたそれは――
「ドンケルハイト! すごいよりおちゃん! よく見つけたね。こんな見えにくいところにあるのに」
「た、たまたまだよ。たまたま、赤い色が目について……」
「それでもすごいよ! ありがとう!」
「〜っ……」
ロロナからの素直な感謝が、リオネラにはひどくこそばゆかった。
ロロナはニコニコ笑顔でドンケルハイトを採取し、愛用のカゴに入れる。
「見つかって良かったぁ……時期を間違えたのかと思って焦っちゃったよ」
「時期?」
「うん。ドンケルハイトは一年のうちのごく短い間しか咲かないの。咲く場所も限られてるから、見つけるのが難しいんだよね」
「そうなんだ……」
「ホント良かった。りおちゃんに来て貰って正解だったよ」
「た、ただの偶然だから……そんなの、別に私じゃなくたって……」
リオネラの声は、段々と尻つぼみに小さくなり、独り言のような呟きに変わっていく。
「私なんて……戦いの役にも立たないし……ただいるだけだし……」
「りおちゃん……?」
「嫌なことだって考えちゃうし……別に私なんて、いてもいなくても……」
「りおちゃんってば!」
「あ……」
暗く沈んだ思考に囚われていたリオネラは、ロロナの呼びかけにハッとする。
「どうして急にそんなこと言うの? りおちゃんがいてもいなくてもなんて、そんなこと絶対にないよ」
ロロナの言葉に嘘はないだろう。しかし、リオネラの表情は晴れなかった。
「……だって、私……他の人達みたいに……ロロナちゃんの役に立ってないから……クーデリアさんやイクセルさんみたいに、傍で支えてあげるわけでも……ステルクさんみたいに、剣で守ってあげるわけでもなくて……ただ、いるだけで……いるだけでしかなくて……」
自分の言葉が身に堪え、涙がにじんだ。
リオネラはアーランドの人間ではなく、いずれ時が過ぎれば他所の土地へ移っていく。
だからせめて、再び旅立つまでの短い間だけでも、ロロナと共に過ごすことが出来ればと、そう思っていた。
今も、その気持ちは変わっていない。
いや、むしろ大きくなっている。
自分でも驚くぐらいその気持ちは大きくなっていて、気が付けばリオネラは、いつまでもロロナの傍にいることの出来ない自分が、恨めしいほどになっていた。
しかし、リオネラには理由がない。
いつまでもロロナの傍にいるだけの理由を、リオネラは持っていなかった。それこそリオネラ以外の仲間は全て等しく備えている『アーランドの住民である』という条件ですら、リオネラは満たしていない。
そしてリオネラには、いつまでも一つ所にとどまることの出来ない事情がある。
だから、いくらロロナのことを想っていても、ただ偶然出会った相手として、今一時を一緒にいるだけしか出来ない。
「りおちゃん……なんて言うか、色々間違ってるよ」
「え……?」
「りおちゃんの言い方だと、役に立たない人は私と一緒にいちゃいけないみたいに聞こえるけど、私ってそんなに傲慢?」
「ち、ちがっ……そういうつもりじゃなくて、その、ただ、私が、役立たず、だから……」
「それも間違い。りおちゃんは役立たずなんかじゃないよ」
ロロナは真っ直ぐにリオネラの目を見据える。世辞や哀れみの色は、その瞳に一切見えなかった。
「りおちゃんには良いところが沢山あるし、りおちゃんのおかげで、私も助かってることがいっぱいあるんだから」
「……でも……私は、他の人みたいに――」
「ああもうっ、他の人がどうとかじゃなくて、りおちゃんがいいの! いちいち比べなくたって、りおちゃんはりおちゃんでいいの!」
いつまでもネガティブな反応しか返さないリオネラに業を煮やしたか、ロロナは強い口調で断言する。
「役に立つ立たないなんて関係ないし、りおちゃんは役立たずなんかじゃないの。分かった?」
「は、はい……」
一気にまくし立てたロロナの勢いにつられ、リオネラはつい頷いてしまった。
「分かればよろしい。もう自分を卑下するようなこと言っちゃダメだよ」
「うん……」
戸惑いもあったが、ロロナの言葉はリオネラのわだかまりを、幾分か吹き飛ばしてくれた。
「……ねえ、ロロナちゃん」
数秒の躊躇いを挟んで、リオネラは思い切って口を開く。
「ん? なぁに?」
「その……もし、ね。もしも、私がずっとアーランドにいたいって言ったら……」
「え? りおちゃん、どこかに行っちゃうの?」
「え……」
そもそもロロナの頭の中では、リオネラがよそ者だということ自体、抜け落ちていたらしい。
「それは、その……私、旅、してるから……そのうちには……」
「そっか……そういえば、そうなんだよね……」
ロロナはどこかしょんぼりしたように肩を落とす。が、すぐに立ち直り期待を込めた眼差しをリオネラに送る。
「あ。でもさっき、ずっとアーランドにいたいって言ったよね? ひょっとして定住するの?」
「あ、それは、その……」
「もしも、って言ったでしょ。あくまで仮定の話よ」
「そうだな。根無し草のオレ様達には、一つの街にとどまるなんて縁遠いことだぜ」
リオネラが答えるよりも先に、アラーニャとホロホロの二人が消極的な返答をした。
「え〜……そんなぁ……」
あからさまにガッカリするロロナ。
「ご、ごめんね……でも、その……やっぱり、ずっと同じところにいるのは、私、難しいから……」
「そうなんだ……」
「うん……変な質問して、ごめん」
「嬉しいよ」
「え?」
「だから、質問の答え。りおちゃんがずっとアーランドにいてくれたら、一緒にいられたら、私、嬉しいよ」
「あ……」
いつものように、嘘偽りのない笑顔で、ロロナはそう言ってくれた。
「でも……私、アーランドにいる理由なんて――」
「理由なんて必要ないでしょ」
「え……?」
「だって私たち、友達じゃない。友達が一緒にいたいのに、理由なんていらないよ」
「とも……だち……」
「だからりおちゃん。仮定じゃなくて、アーランドにずっといること、考えてみてよ」
「……」
その言葉は嬉しかった。
堪らないほどに嬉しかった。
しかし、堪らないほどの嬉しさが込み上げてくる胸の内に、飲み下すことの出来ない塊があることに、その時リオネラは気付いてしまった。
(……そうか……私……ロロナちゃんのこと――)
「そろそろ行こっか。ステルクさんも待ちくたびれてるよ」
「うん……」
ロロナと並んで歩きだしながら、リオネラは、手の平を自分の胸に押し当てる。
友達という、その言葉が示すよりも強く重い感情が、リオネラの心を、いつまでも切なく締め付けていた。
おわり
以上、読んでくれた人、ありがとう。
りおちゃんが何故トトリエ以降登場しないのか、ガストちゃんを一日三十時間は問い詰めたい(リオネラ絡みの話題のたびにこれ言い続けてる気がする)。
まあ実際問題として、アラーニャとホロホロが設定上扱い辛いというのもあるかもしれないけど。
それにトトリエに出たら大垣さんがフィリーちゃん・ティファナさん・アラーニャと一人三役になってしまう……でもそれはそれで見てみたいような。
あとりおちゃんがトトリエ時代のトトリちゃんと知り合いになったら、ミミちゃんの「友達いないの?→ごめん図星だった?」コンボや、スケさんの「自覚なかったんですか?→それはお気の毒に→そりゃあこど…」コンボ以上の惨劇が起こりそう。
乙です
この先何か起こりそうな締めですね
続きも期待してます。ヤンデレ化しそうな…
>天然毒舌
きっとロロナが間に入って頑張ってくれるでしょうww
乙でした。
>>259です。いつもpixivでお世話になってます。
待ちに待った新作がまさかのロロリオ!ごちそうさまでした。
続き、楽しみにしてますね。
マジ乙
ロロリオはくーちゃんのお陰でっていうかくーちゃんのせいっていうかでトトミミロロクーメルケイにはないシリアスさがありますな
SS投下します。
トトリエ時代のトトミミ。
近場での冒険を終えてアーランドに帰る道すがら、そろそろ城門が見えるというところで不意にポツポツと雨が降り出してきた。
街道を歩いていたトトリとミミは、慌てて雨宿りできる場所を探して掛けだす。雨足が強くなり始めた頃、ようやく雨粒を防げる程度に大きな木の陰へ駆け込んだ。
「やれやれ……絵に描いたようなにわか雨ね」
髪先に滴る雫をタオルで拭き取りながら、ミミが呟く。つい先ほどまで晴天だったはずなのに、空にはどこからともなく陰気な雲が湧いている。
「うん。しばらくここであまや――へっくしっ」
小さなくしゃみをしたトトリが、鼻を啜りながら身震いしていた。
「ちょっとトトリ、大丈夫?」
「ん……大丈夫。ちょっと濡れただけだから」
「ちょっとじゃないでしょ。あんたカゴばっか気にして、体の方がびしょびしょじゃないの」
「だってせっかく集めた素材がダメになったら嫌だし」
「あんたが風邪ひいて寝込みでもしたら、せっかく集めた素材だって腐らせるはめになるでしょうが。ほら、私のタオルも使って良いから」
「あ、うん。ありがとうミミちゃん」
自分のとミミのと、二つのタオルを使わせて貰って、トトリは体に付いた水気を丹念に拭き取る。
「ただでさえヒラヒラしてて寒そうな格好なのに、こういう状況だと一層体を冷やしそうね。その服」
「あはは……でもこれ、ロロナ先生が作ってくれた服だから。色々工夫してあって、見かけよりずっと機能的なんだよ。半分水着みたいなデザインだから濡れても結構平気だし」
「ふぅん……確かにそう言われ、れ……ば……っ」
「? ……ミミちゃん? どうしたの?」
「ど、どうもしてないわよ! 何でもないわよ!」
かぶりを振るミミに、トトリが疑問符を浮かべる。
小首を傾げている当の本人は気付いていないが、ミミを動揺させているのは他でもないトトリだった。
透けている。どこがというと服が。全体的に。雨に濡れたせいで透けている。それをバッチリ肉眼で確認してしまったミミである。
無論のこと、一流錬金術士と名高いロロナお手製の衣装であるから、肝心な部分に関しては抜かりなくガードされている。
が、それ以外の部分がおざなりというか、むしろ一種のフェチズム的な需要を満たすためにあえてそうしているんじゃないかとデザインの経緯を問い詰めたくなるような状況だ。
(お、落ち着きなさいミミ・ウリエ・フォン・シュヴァルツラング! たかだかトトリの服が透けたぐらいで……心を静めるのよ……!)
波立つ精神を必死に抑えようとしながら、ミミはどうしても意識をそらすことが出来ず、トトリの衣装にちらちらと視線を送ることになる。
「……ミミちゃん? 顔赤いけど、ひょっとして風邪ひいた?」
「ひ、ひいてないわよ! こんなすぐに風邪ひくわけないでしょ!」
訝しげなトトリに、大慌てで顔をそらす。が、トトリの追求は終わらない。
「あ、やっぱり顔赤いよ。熱があるんじゃ」
「無いってば! いいから私のことはほっといて!」
照れ隠しもあって、ついきつい口調になってしまった。トトリはひとまず黙るが、不満そうな顔をしている。
(……ごめん……って、言いたいけど、さすがに理由が説明できないし……)
「む〜……」
への字口になって唸っていたトトリは、
「えいっ!」
「っ!?」
強行手段。突如背中からミミに抱きついてきた。
「な、な、何すんのよ!?」
「あ、やっぱり。ミミちゃん体熱いし、胸もすごいドキドキしてる」
「〜〜っ!」
風邪の諸症状として捉えるトトリだが、それらの状態の原因はおそらく……いや、間違いなく別にある。
「は、放しなさい馬鹿! そんなことしなくても熱ぐらい測れるでしょ!」
「それじゃあ、ちゃんとこっち向いて」
「ったく……」
改めてトトリに向き合ったミミの顔は、さっきほどではないが少し赤い。その額に、トトリの手の平がそっと当てられる。雨に濡れたせいか少しヒヤリとした、でも不快ではない感触に、ミミの体が少し震える。
「ん〜……熱はそんなにないかな?」
「そりゃそうよ。そんな簡単に風邪ひくほどヤワな体してないわ」
「でもだいぶ濡れちゃったし、気をつけないとね。今日はお家帰ったら、熱めのお風呂に入って、あったかくして早めに寝ないと」
幼い頃のトトリが雨に濡れた時などは、姉のツェツィがこんな風に言っていたのだろう。そう思うと少し微笑ましく、ミミは苦笑しながら「はいはい」と頷いていた。
「そういえばミミちゃん……風邪ひいたらどうするの?」
「どうするって?」
「看病してくれる人とか、誰かいるの?」
「いないわよ、そんなの。そもそも病気らしい病気なんて、小さい頃におたふく風邪にかかったぐらいだし」
「そうなの? でもミミちゃんちって、大きな貴族なんでしょ。メイドさんとか執事さんとかいないの?」
「あんたも痛いとこ突くわね……権勢華やかなりし頃ならともかく、旧来通りの家人を置いてる貴族なんて、今じゃほとんどいないわよ。一部のお金持ちを除いて、ね」
最後の一言でミミが誰を思い浮かべているのか丸分かりで、トトリはつい笑みを漏らしそうになった。
「ふ〜ん、そうなんだ……じゃあさ、ミミちゃん」
「何?」
「ミミちゃんが風邪ひいたら、私が看病してあげるね」
「なっ……」
真っ直ぐな目でそんなことを言うトトリに、ミミの顔がまたまた赤くなる。
「何でよ!?」
「何でって……当たり前じゃないの?」
「あ、当たり前なんかじゃないわよ! わざわざそんなの、してもらう理由なんか無いでしょ!」
「友達の看病に理由なんて必要ないでしょ。ミミちゃんが一人で病気してるのに、じっとなんてしてられないもん」
「別に放っておけば治るわよ! っていうか、そもそも風邪とかひかないから私は!」
「そんなの分からないよ。風邪じゃなくても、ひょっとしたらミミちゃんが何か原因不明の病気にかかっちゃうこともあるかもしれないし……そういえば前にロロナ先生が、錬金術士が病気の親友を錬金術の力で助けるのは王道だって言ってたし」
「いや、意味が分からないから」
「とにかく、ミミちゃんが病気したら私が看病して治すからね」
「あんたねぇ……そんなに人を病人にしたいわけ?」
意固地なほどの決意を固めているトトリに、深い深いため息をつくミミだった。
……ちなみに雨はとっくに上がっているのだが、言い争いだかじゃれ合いだかよく分からないことを続けている二人は、まだそのことに気付いていなかった。
そんなことがあった翌日。
「38.5℃……完全に風邪ね」
水銀式の体温計の数値を確認したミミは、アトリエのベッドで寝込んでいるトトリに声を掛ける。
「具合どう? 何か食べたいものとかない?」
「ううん……特には……」
トトリは額に汗をにじませ、苦しげな呼吸をしている。
昨日、アーランドのアトリエに帰ってから雨に濡れた服を着替えたトトリは、あったかくして早めに休む――
つもりだったのだが、つい仕事の虫が顔を出し、集めた素材をチェックして依頼内容と調合のスケジュール整理を行い、夜遅くまで起きていて……翌日にはバッチリ風邪菌まみれになっていた。
「ごめんね、ミミちゃん……迷惑かけちゃって……」
『全くよ。昨日あんなこと言っておいて、あんたが風邪ひいちゃ世話ないわ』……などとは、さすがのミミもこの状況で口にしたりはしない。
「そんなの気にしなくていいから。今、ロロナさんがギルドの方に連絡に行ってるから、仕事のことは忘れて、しっかり休みなさい。私が看ててあげるから」
「でも……ミミちゃんも冒険者の仕事、あるでしょ……」
「だから仕事のことは忘れなさいっての」
「……ミミちゃんに、うつるかも……」
「いいから。あんたは大人しくしてなさい」
「でも……ぁ……げほっ、げほっ」
何か言おうとするトトリだが、咳が出て、おまけに意識が朦朧としてきた。
咳き込むトトリの額に、枕元までよじ登ってきたちむが氷嚢を乗せる。
「うぅ……ちむちゃん達もごめんね……」
「ちむ〜」
相変わらず何を言っているのか分からないが、表情から察するに「気にするな」というニュアンスだろう。
「さて……薬はロロナさんが作るって言ってたから、問題は食事かしら……とりあえずサンライズ食堂で、何か食べやすそうなもの買ってくるわね」
「あ……」
「え……?」
ミミの足が止まる。
買い物のためにその場を離れようとしたミミの、その服の袖を、トトリの手が弱々しくつかんでいた。
「あ、ご、ごめん……つい」
「あんた……ひょっとして、寂しいの?」
「……っ」
決まり悪そうに、トトリが目を伏せる。
さっきまで散々仕事があるだの風邪がうつるだのと言っていたくせに、いざミミがどこかへ行きそうになったら、一気に心細さが襲ってきたのだ。
誇張ではなく風邪をひいた経験の無いミミだが、トトリの気持ちは、何となく分かるような気がした。
「えーと……ちみゅみゅ、で良かったかしら? あなた、サンライズ食堂に行って、ジャガイモとネギと卵と生姜と、あと何か果物を買ってきて」
「ちむー」
お財布と買い物カゴを受け取ったちみゅみゅは、急ぎ足で出かけていった。ちなみに食堂の料理人イクセルは、嘘かホントかちむ語が理解できるので買い物に支障はない。
ミミはベッドの傍まで椅子を持ってきて、腰掛ける。
「トトリ。あんたって、風邪ひいたらいつもこんな感じで、ツェツィさんに甘えてたんでしょ」
「甘えてたっていうか……お姉ちゃんの場合、甘えさせられるっていうか……お粥作ったりするとき以外は、ずっと手にぎってくれてて……」
話しながら、トトリは熱に潤んだ目をじっとミミに向けている。
「……ひょっとして……手、握って欲しいの?」
「……ミミちゃんが、よかったら」
「……」
小さくため息をついて、ミミはトトリの手を握った。
「ありがと……」
「……別に」
気安く引き受けてしまったが、やってみるとどうにも気恥ずかしくて、ミミはぶっきらぼうに返す。
繋いだ手から、トトリの体温が伝わってくる。当たり前だが、熱い。
(小さい手してるわよね、この子……)
この小さな手で、アトリエでは何日も杖をぐるぐると回し、街の外ではモンスターを退治するため杖を振ったり爆弾を投げたり、毎日頑張っているのだ。
疲れだってたまるだろう。今回は雨に打たれたのがきっかけだが、体調を崩してしまうのも無理のない話だ。
「……」
片手で握っていたトトリの手に、ミミはもう片方の手をそっと重ねた。別に意味があったわけではない。ただ何となく、そうしたかった。
トトリは熱のためか、少しうつらうつらとしている。
そのまま、何分か過ぎただろうか。
「ちむ〜!」
「あら、早かったわね」
買い物を任せていたちみゅみゅが帰ってきた。買い物カゴには伝えたとおりの食材が入っている。
「トトリ、起きてる? 生姜湯作ってあげるから、飲んで体を温めなさい。コンテナのハチミツ使うわよ」
「ん……ありがとう」
小さく返事をしたトトリは、そのまま言葉の穂を次ぐ。
「ミミちゃん……今日は何だか、すごく優しいね」
「……」
当たり前でしょう。……という台詞を、ミミは喉の奥に飲み込んでおく。
――友達の看病に理由なんて必要ない。
トトリの言葉を胸中で反芻し、確かにその通りだと、実感とともに納得するミミだった。
「安心しなさい。きっちり借しにしておくから」
飲み込んだ台詞の代わりに、ピシャリと答える。それをどう捉えたのか、トトリは嬉しそうな笑みを浮かべていた。
おわり
以上、読んでくれた人、ありがとう。
リハビリがてら久々にトトミミ。
諸々不調だけど、アーシャが発売されたらまた沢山SS書けたらいいなぁ。もちろんアーランドのも書きたいし。
オレ……アーシャのアトリエが発売したら、故郷で結婚式あげてパインサラダ作ってもらって殺人鬼なんかと一緒にいられないから自分の部屋に戻ってここは俺に任せて先に行ってもらってイデオンのBメカに乗るんだ……ああ、窓に! 窓に!
不調を感じさせない出来GJ!
最後wwwwwwwwwwwww
ロロリオの者です。
ロロアトで目標だったくーちゃんEDを見られたので、その記念のロロリオssを投下させていただきます。
ロロクーじゃないのはご愛嬌でw
タイトルは「しあわせになろう」
ステルクさんに最後の報告を終えて、私はその場で大きく息を吐き出した。
とりあえず、やれるだけのことはやった、と思うけど。
「あらロロナちゃん。報告は終わったの?」
「あ、エスティさん」
ギルドの受付を担当しているエスティさんが、声をかけてきた。彼女にはお仕事をアトリエに回してもらったりして、大変お世話になった。
「そっか、これで最後だものね。大丈夫? 受かりそう?」
「たぶん……ううん、絶対大丈夫です!」
「ふふ、自信満々ね。私、信じてるからね」
笑顔で手を振ってくれる彼女に一礼して、私はお城を後にした。
アトリエを師匠に任されてから三年。お城からの依頼を四苦八苦しながらこなして、ついに最後の依頼が出された。
内容は、今までの錬金術の集大成を見せること。つまり、出来うる限りのすごいものを、錬金術で作ってみせろ、ということだ。
それもたった今、終わらせてきた。結果は今月の三十日に発表されることになっている。
思えばこの三年間は、本当に苦労の連続だった。私一人の力では、きっとここまでたどり着けなかっただろう。
くーちゃん、ステルクさん、イクセくん、ハ……おやじさん、ティファナさん。みんなの力があったからこそだ。
そしてなにより、りおちゃん。彼女の存在が、私を強く支えてくれた。
早く、りおちゃんに会いたい。依頼が終わったことを、真っ先に知らせに行かなくちゃ。
胸が弾み、自然と私は駆け足になっていた。
りおちゃんを探して、アーランド中を走って回る。工場通りに差し掛かったところで、ようやく見慣れた後ろ姿を見つけた。息を整えるのも忘れて、私は手を振りながら駆け寄っていく。
「りおちゃーん!」
呼びかけると、びくり、とその背中が反応する。振り向いたりおちゃんは私を見て、何故か顔を赤らめたようだった。
「ロロナちゃ……っ!」
それから、思ってもいなかったことが起こった。
彼女は私に背を向けて、そのまま逃げるように走っていてしまったのだ。
「あ、おい、リオネラ!」
「待ちなさい、リオネラ!」
慌ててラニャちゃんとホロくんが追いかけていく。私の足は段々と速度を失い、止まった。
彼女は、行ってしまった。
「……りお、ちゃん……?」
取り残された私は、ただその場に立ち尽くすしかなかった。
「はぁー……」
錬金釜をかき混ぜる手を止めて、私は深くため息をついた。
「マスター、今のでため息は九十八回目です」
「えっ、うそ。あと少しで百回突入かぁ……」
「マスターは、元気がないみたいです。もう遅いので、そろそろ休まれては?」
ホムちゃんの言葉で顔を上げると、窓の外は真っ暗になっていた。もうこんな時間になってたんだ……。
「……ううん、どうせ眠れないと思うからいいや。ホムちゃん、先に休んでて」
「了解しました」
寝室へと消えていくホムちゃんの背中を見送って、私はまた錬金釜と向き合う。お城の依頼は終わったから、急いで調合しなければならない物もないのだけれど、何かしていないと更に深く落ち込んでしまいそうだった。
「……はぁ」
自然と口からため息が漏れる。今ので、九十九回目。
……りおちゃん。遠ざかっていく彼女の後ろ姿が、何度も頭の中でよみがえる。
彼女は、明らかに私を見て逃げ出した。……どうしたんだろう。私、何か悪いことしちゃった?
りおちゃんに、嫌われちゃったのかな……。目の前が潤み始めて、涙がこぼれ落ちる。
「りおちゃん……」
最初に彼女を広場で見たとき、天使がいる、と思った。
大勢の人々の前で、優雅にひらひらと舞う彼女の姿。重力をものともせずに、そのまま空へと羽ばたいていってしまいそうで。
一瞬で、心を奪われた。それ以来私は、ずっと彼女のことばかり考えるようになった。つま先から髪の一本一本が宝石のような彼女の美しさが、目に焼き付いて離れない。
あの子は、どこから来たんだろう。名前は? どうして旅芸人をしているのかな。
もっと、彼女のことを知りたいと思った。出来ることなら、仲良くなりたいな、なんて。
だから友達になれたとき、私はすごく嬉しかった。りおちゃんが素材集めについてきてくれると、いつも以上に張り切っちゃったり、
偶然会うことが出来た日は、帰り道の足取りが軽くなったりもした。アトリエに遊びに行きたいと言われた日は、楽しみすぎて眠れなかったものだ。
彼女のことを知るたびに、実感する。この子とずっと一緒にいたい、という気持ちを。
そして彼女は、自分に秘められた力について、私だけに話してくれた。
「私のこと、怖くないの……?」
不安そうに、彼女は私に尋ねてくる。怖いなんて、とんでもない。私は彼女の両手をとった。
「すごいっ! 魔法使いみたいだよ、りおちゃん!」
そのとき彼女が浮かべた涙は、とても綺麗だった。少し照れたような笑顔に光る、一粒の雫。
胸の中で弾けた鼓動が、告げていた。私はこの子と、もっともっと仲良くなれたのだと。
そう、思っていたのに。
「どうして、こうなっちゃったんだろう……」
またため息。ついに今日だけで、百回目になってしまった。疲労感が、ずっしりと体にのしかかってくる。
今日はもう休もう。肩を落として、調合に使っていたものを片づけている時だった。
入り口の扉から、ノックの音が聞こえてきた。こんな時間に、一体誰だろう。
「はーい、どなたで……」
扉を開けた私は、そのまま固まってしまう。そこに立っていたのは――りおちゃんだったからだ。
「……その、入っても、いい?」
「えっ、あ、うん……」
考えるよりも先に、口が動いていた。彼女がおずおずとアトリエの中へ入ってくる。
後ろ手に扉を閉めて、私は改めてりおちゃんと向き合う。正直、意表をつかれて、頭の整理がまったく追いついていなかった。ただ心臓の音が、どきどきと勝手に騒いでいる。
「……あ、その、ラニャちゃんとホロくんは?」
「えっと……二人とも、宿で待ってもらってるの」
「そうなんだ……」
すぐに会話が途切れて、重い沈黙が続く。しばらく二人で目も合わせずにもじもじしていたが、先にりおちゃんが口を開いた。
「……あのね、ロロナちゃん」
「は、はひっ!」
勢い余って、返事を思い切り噛んでしまう。
「あ、ごめんなさい! びっくりさせちゃった?」
「だ、大丈夫。それより、どうしたの?」
「う、うん。あ、ちょっと待って」
何度か深呼吸をしてから、彼女は続けた。
「さっきは、ごめんね? ロロナちゃんの顔を見たら、えっと、恥ずかしくなっちゃって。わ、私、ロロナちゃんに……その、伝えたいことが、あったから」
私に、伝えたいこと? 彼女の緊張した様子から、ものすごく大事なお話なのは何となくわかった。一体なんだろうと、思わず身構えてしまう。
「いきなりで、驚くかもしれないけれど……私ね、ロロナちゃんのこと……」
そこで彼女は言葉を詰まらせた。二の句がなかなか継げないようだ。私はじっと、彼女が話してくれるのを待った。
やがてりおちゃんは、今までの想いを全て吐き出すように、言い放った。
「ロロナちゃんのこと、す、好きなの……!」
時が、止まる。
私は息を吸うのも忘れていた。「好き」という言葉が、気づかせてくれたのだ。私の、本当の気持ちに。
りおちゃんの姿を思い浮かべるたびに起きる、胸の痛みとその意味。
そうか。そうだったんだ。
「私もりおちゃんが、好き……」
「えっ? 今、なんて……」
見開かれた彼女の瞳を、正面から見つめる。そしてもう一度、言った。
「私もりおちゃんが、好き……ぐすっ」
「ど、どうして泣くのっ!?」
「だってぇ……りおちゃんに、嫌われたと、思ってたから」
「そんなわけ、ないよ。な、泣かないで」
「りおちゃんだって、涙出てるよぉ……」
「えっ? うそ、なんで……」
「あはは、変なのぉ……」
「ふふ……えへへ……」
二人して子供のように声を上げて泣きじゃくり、それがおかしくて笑い合った。薄暗いアトリエの中に、私達の震えた笑い声が何度もこだまする。
深い霧が一気に晴れたような清々しさが、心を満たしていた。だけど、もうちょっと。
もうちょっとだけ、欲張ってもいいかな?
「りおちゃん。涙、まだついてるよ」
「えっ? どこ?」
「拭いてあげる」
「あっ、ロロナちゃ……」
そう言って私は彼女を抱き寄せ、唇を合わせた。受け止めた感触は、びっくりするほど柔らかくて、温かかった。舌先に感じた彼女の味は、言葉にするのなら。
「甘い、ね」
「う、うん……」
「りおちゃん」
「な、なに?」
間を空けて、私は大きく息を吸い込んだ。
今度は、私が勇気を出す番。
「もっと、その、りおちゃんに触りたい、かも……」
「それって……」
「駄目?」
彼女は目に見えて戸惑っていた。もしかしたら、私は少し焦りすぎたのかもしれない。そんな後悔がちらついた矢先だった。
「ううん、駄目じゃない」
彼女が私の手を、強く握りしめてくれた。
「ど、どうしようか……」
「そ、そうだね……」
広げたお布団の上で、私とりおちゃんは正座をして向かい合っていた。一応そういう知識はあるのだけれど、お互い初めての経験だから、何から手をつけたらいいのかさっぱりわからない状況だ。
とはいえ、このままだと正座で夜が明けてしまう。私は思いきって言った。
「と、とりあえず、キスするね……」
「う、うん」
膝を伸ばして、近づく。ぎゅっと閉じられた彼女の瞼に気恥ずかしくなりつつ、私は唇を重ねた。
「ん……ふっ」
頬を、彼女からもれた吐息がくすぐってくる。欲張りな心が、更に加速した。
口が開いたタイミングを見計らって、ゆっくりと舌を入れてみる。彼女の長いまつげが、かすかに震えた。
「んんっ、んむ……」
彼女の舌に触れてみると、ぎこちないながら絡んできてくれた。口の中に広がる彼女の甘さが、一層濃くなる。それをもっと味わいたくて、更に舌を動かし続けた。
「んっ……ぷあっ」
しばらく貪るようにキスを続けて、ようやく私達は離れた。繋がった銀の糸の先に、赤くとろけきった彼女の顔がある。私は無意識に唾を飲み下した。
「りおちゃん、服、脱ごっか」
「う、うん……」
一枚一枚、身に纏っているものを脱ぎ捨てて、生まれたままの姿へ。振り向いた私は、彼女のそんな姿に釘付けになった。
「りおちゃん、綺麗……」
体はくっきりした曲線を描き、肌は雪のように真っ白だ。やっぱり、天使みたい。
そっと彼女の肩に手をやって、優しく布団に押し倒していく。
「……髪、ほどいていいかな?」
「お、お願い……」
二つのヘアゴムを解くと、金色に光る髪が扇状に広がった。掬った途端、砂のように指の間からこぼれ落ちていく。
「りおちゃんの髪、さらさらだね」
「そ、そうかな」
「うん。可愛い」
手の中に納めた一房の髪に、そっと口づけをする。かすかにシャンプーの香りがした。
そのまま、耳、頬、首筋へと舌を這わせていく。
「あっ……ん」
声を抑えようと手の甲を口に当てる姿が、すごく可愛い。その様子を横目で見ながら、私はやや遠慮がちに胸に触れてみた。
「わっ、柔らかい……」
思わず声に出てしまった。抵抗らしい抵抗もなく、指先が胸の中へ沈んでいくのだ。彼女の体が、私を受け入れてくれているようで、それが少しだけ嬉しかった。
「ふあっ……」
胸に置いた指に力を込めると、すぐに彼女は反応を返してくれる。そんな様子にいたずら心がむくむくと湧いてきた私は、すかさず彼女の乳首を口に含んだ。
「ひゃんっ!」
彼女の体が一瞬だけ持ち上がる。やっぱり彼女は、すごく敏感なようだ。既に堅くなっている乳首を、舌先でつつくように刺激していく。
「気持ちいい?」
「ロ、ロロナちゃ……く、くすぐったい」
「ふふ、気持ちいいんだ」
感じて、と思う。私のことを。あなたを想う、私のことを、強く。
手を滑らせて、そっと彼女の大事な場所に触れた。
「はぁっ……」
水音、湿った感触。彼女の赤い頬と、甘い声。全てのものが、私の頭を痺れさせた。
指を、さするようにゆっくりと動かしてみる。優しく、優しく。どこよりも繊細で、傷つきやすい場所だから。
「……ひゃうっ!」
ふと、指先が突起のようなものを擦れたかと思うと、一際大きく彼女がのけぞった。
そうか。ここが一番、女の子の敏感なトコロなんだ……。円を描くように、何度もその上を往復してやる。
「あっあっ……ロロナ、ちゃ……」
「りおちゃん……可愛いよ」
「あんっ……も、だ、だめ……んんっ!」
彼女の体がびくり、と跳ね上がった。どうやらこれが、達した、ということらしい。手を離して、肩で息をしている彼女を抱き止める。
「平気? 疲れちゃった?」
「ううん、大丈夫……」
それより、と彼女が体を起こして、私をのぞき込んでくる。
「私も……その、ロロナちゃんに、お返ししたいの」
「えっ? お、お返し?」
顔をリンゴのように赤くして、彼女が頷く。私に対しての、お願い。応えないわけにはいかなかった。
「じゃ、じゃあお願いしても……いい?」
「う、うん」
すると彼女は、体を下の方にずらして私の両足を開き始めた。これって、もしかして……。
「り、りおちゃん? ひょっとして、な、舐めるの?」
「え? そうだけど……」
「だ、だめっ! 汚いよ!」
「そんなことないよ」
押し返す私の手を振り切って、彼女は足の間に潜り込んできた。
「それに私も……我慢、できないから」
生ぬるいものが、私の大事な部分に触れた。りおちゃんの、舌……。そう考えるだけで、体の熱が増していくようだ。
「あっ、やぁ……んっ」
「ロロナちゃん、すごい濡れてる……」
「いやぁ……そこで喋らない、でぇ……」
触れる息がこそばゆくて、身をよじる。そんな私の手を、彼女はきゅっと掴んでくれた。その手の温度さえ、今の私には気持ちよすぎた。
「りおちゃん……好き」
高ぶる意識に振り落とされないように、彼女の手を握り返す。気持ちを声に出してしまうと、もう止まらなかった。
「好きなの、りおちゃん。好き、好きぃ……」
「……私も、ロロナちゃんが好き……愛してる」
そんな言葉を、貰ってしまったら。私はもう、どうにかなってしまうくらい、嬉しすぎて。
「りおちゃん、りお、ちゃ……ああっ!」
大きな波のようなものが、私の思考を押し流していく。私の全部を、りおちゃんの温かさで、染め上げていく。
「ロロナちゃん、大丈夫?」
目を開いた先に、心配そうな彼女の顔があった。私は腕を伸ばして、ぎゅっと彼女を抱きしめる。
「ちょっ、ロロナちゃん!」
「このまま、くっついていよ?」
そうだね、と彼女は頷いて、笑った。
なんだろう。うまく言い表すことができないけれど。なんだかとても、ぽかぽかする。
「あ、そうか」
わかった。これがきっと、幸せということなのだ。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
不思議そうなりおちゃんに、私は近づいて静かにキスをした。
どこかで鳥が元気に鳴いている。窓からは爽やかな朝日が燦々と入り込んできていた。
私達は肩を寄せあって、ソファに座っていた。二つの手は、当然のように重なり合っている。
「ねえ、りおちゃん」
「なあに?」
私は、先ほどからずっと考えていたことを、彼女に言おうと思った。
「私と一緒に、ここで暮らさない?」
「……えぇっ!?」
案の定、彼女は大げさに驚いた。可愛いな、と思わず笑ってしまいそうになる。
「この街の人たちは優しいから、大丈夫だよ。りおちゃんに、ひどいことなんてしない。それにね」
――私、りおちゃんとずっと一緒にいたいの。
ひとつひとつ、言葉を噛みしめるように私は言った。
こんなに誰かのことを強く想うなんて、初めてだった。一度近づいてしまったら、もう離れられない。離れたくない。
私はりおちゃんのことが、本当に好きだから。
彼女は目を開いて、私の両手をとった。視線と視線が、正面から交わる。
「……うん。私も、ロロナちゃんとずっと一緒にいたい」
顔が熱い。私は口を両手で抑えこんだ。こうしなければ、今にも私の気持ちが暴走して、飛び出してしまいそうだったから。
「ほんと? ほんとにいいの? りおちゃん」
「あ、ロロナちゃんがよければ、だけど……」
「いい! 全然いいよ! やったぁ!」
「話は盗み聞きさせてもらった!」
突如寝室の扉が開いて、決めポーズをした師匠が現れた。
「し、師匠?」
「プロポーズとは、我が弟子ながらなかなか活きなことをするじゃないか。それで、入籍はいつするんだ?」
「えっ、プロポーズ? 入籍?」
「子供を作るときはいつでも言ってくれ。私らしくはないが、ここで力を見せなくては錬金術師の名がすたるからな。さて、さっそく街の住人に、このことを広めてこなくては」
「あれ、あれ? 師匠?」
ひとしきり言うことを言ってしまうと、師匠は慌ただしく出て行ってしまった。なんだか、話がよくわからない方向へと進んでいるような気がするけれど。
「まあ、いっか」
「いいの? ロロナちゃん」
「うん。りおちゃんと、一緒にいられるなら」
彼女を抱き寄せる。ぎこちないけれど、向こうも私の背中に手を回してくれた。もう一度心の中が、ぽかぽかしたもので溢れていく。
今だって、十分にそうだけれど。これからも、もっともっと。
「幸せになろうね、りおちゃん」
「うん」
朝の日溜まりが、私達のことを温かく包み込んでくれた。
以上です。ありがとうございました。規制を受けてiPhoneから。
念願のトトリも買えたので、これの続きでトトアトのねつ造ロロリオも書けたらなぁと思います。
>>303 いつもお世話になってます。乙です。
このイベントのDLCはどこで買えま(ry
乙です
ロロリオも充実してきたな
エリーとアイゼル、ヘルミーナとイングリドの組み合わせが好きだ
>>303 全然不調じゃないよ!!!wwwwGJ!GJ!
このDLCはどこで買えま(ry
>肝心な部分に関しては抜かりなくガードされている。
>が、それ以外の部分がおざなりというか、
>むしろ一種のフェチズム的な需要を満たすために
もう、
>>303が書くロロナ先生とはいい酒が呑めそうだwwww
全快した後のトトリはきっと、ミミちゃんへ看病のお礼をすると思うんだけど、
たぶん「ミミちゃんのお願い何でも訊くよ券」とかを発行しようとして、
ツン全開ミミちゃんに拒否られたりする気がする。
そして、ミミちゃんへどうしてもお礼をしたいが
あまりにロロナ先生の(いい感じ)にネジが外れたアドバイスを受け入れて、
更にミミちゃんのモラルが(強制的に)色々崩壊……まで想像した。
>>315 ロロリオキター!!!
GJ!!GJ!!
純愛なのにエーローイー!!!wwww
トトミミも好きだけど、ロロリオはリオネラの背負ってるモノとか
ロロナの背負ってるモノ(ロロアトでは「師匠の名誉を回復したい」って部分も真面目にあったと思う)とか
そういう「普段は笑顔に隠してるけど本当は――」みたいなとこが見えるのが凄くいいと思う。
で、このDLCもどこで買えま(ry
……しかし、アストリッドは寝室でずっと聞き耳立ててたんだろうか……。
いや、この、見てきた様な描写は、むしろ
>>315がアストリッドなんじゃないだろうか?
ほら、アストリッドなら、ロロナの後をずっとつけてとかって簡単に出来――あれ?こんな遅くに誰か来(ry
>>315 ロロリオGJ!
トトリエ時代でりおちゃんがどう動くのか、期待してます。
SS投下します。
トトリエ時代のトトミミ。
トトミミなのにフィリーちゃんの妄想(暴走?)ネタが半分近くを占めているという。
「ねえミミちゃん。ミミちゃんって好きな人いる?」
ある晴れた日のアーランドのアトリエ。トトリからのあまりに唐突かつ意外すぎる質問に、ミミは口に含んでいたお茶を吹き出しそうになった。どうにか堪えたが、代わりに盛大に咽せてしまう。
「げほっ、げほっ……っ」
「だ、大丈夫ミミちゃん? お水いる?」
「いい……平気よ……はぁ」
ミミは大きく息をつき、呼吸を整える。
「……で、何なのよ急に?」
「何って……えっと……」
「何でそんな質問するのって聞いてるんだけど?」
歯切れの悪いトトリに、ミミは苛立たしげに問いを繰り返す。
「あの、ごめん。別に深い理由があったわけじゃなくて、ミミちゃんと、その……女の子らしいお話とか、してみたいなって……」
「女の子らしい……?」
ミミの声には、あからさまに呆れた響きが混ざっていた。
「何を言い出すかと思えば、くっだらない……どうせフィリーあたりに変なこと吹き込まれたんでしょ」
「え? 何で分かるの?」
「うわ、当たったし……」
嫌な方向で予想通りな展開に、ミミはげんなりする。
「この前、お仕事でギルドに行った時に、ちょっとそういう話になって……」
ちなみにその時のフィリーとの会話をノーカットで再現するとこんな感じ。↓
「ねえトトリちゃん。お仕事を一生懸命頑張るのもいいけど、たまには女の子らしいこともしてる?」
「女の子らしいこと……ですか?」
「そう! 何と言ってもトトリちゃんは青春真っ直中なお年頃なんだから。お約束なところで、好きな人とかいないの?」
「別に……そういうのは」
「じゃあ友達と恋バナしたりとかは?」
「恋バナって……ハゲルさんと同じようなこと言いますね、フィリーさん」
「ハゲルさんはある意味乙女の心を持つ漢の人だからいいの! それよりどうなのトトリちゃん? 例えばミミちゃ――さんと、ガールズトーク的なことしたりとか」
「ミ、ミミちゃんと? ミミちゃん、そういう浮ついたこととか嫌いなんじゃ……」
「そんなことないってば! そりゃミミさんはあの性格だから素直にのってこないかもしれないけど、やっぱり年頃の女の子なんだから、内心では興味津々よ!
(※この辺でクーデリアがフィリーに向けて「そろそろ仕事に戻れよ」オーラを放ち始める)
例えばトトリちゃんが『ミミちゃんって好きな子とかいる?』って聞いたらミミさんは『い、いきなり何言いだすのよあんたは! 私は、そんなの……』てな感じで何故か顔を赤らめて目を背けたりするわけよ!
そんでトトリちゃんが『ミミちゃん? ひょっとして、ホントに好きな人いるの?』って聞くと『そ、そんなことないわよ! 別に、好きとかそんなんじゃ……』って、明らかに”誰か”を意識した反応をしちゃうわけよ!
(※クーデリア、あからさまに不機嫌な様子で大きな咳払いをするが、フィリー話に夢中で気付かず)
気になったトトリちゃんが『それって誰のこと?』、ミミさん『だ、誰でもいいでしょ別に! あんたには関係ない話よ!』『関係なくなんてないよ! ミミちゃんが気になる人、私も気になるもん!』『えっ……』
(※クーデリア、デリンジャーに実弾を装填。トトリが不穏な気配を察知するが、フィリー相変わらず気付かず)
恥じらいと微かな期待で頬を染めたミミさんが『そ、それって、どういう意味よ?』って聞くとトトリちゃんは『だって私……ミミちゃんのことが――』
(※クーデリア、少し思い直して非殺傷用のゴム弾に詰め替える。一見すると優しさのようだが、本気で撃つ意思の表れとも取れる)
『わ、私のことが……何なのよ?』『私……ミミちゃんのことが好きなの!』『なっ――!? じ、冗談言わないでよ!』
『冗談なんかじゃないよ! 本気だもん!』『ほ、本気って……いきなり、そんな……こっちにも、心の準備が……』『ミミちゃん? 心の準備って……』『実は……私も、トトリのことが――』『えっ?』
……って、さすがにこれはミミさんのデレが急過ぎよね。でもやっぱり、ミミさんみたいなタイプはいざフラグが立った時と、それ以降のデレっぷりが肝だもんね!
ほら、身近な例だとクーデリア先輩とか、昔はそれはそれは見事なツンデレだったらしいけど、今ではもう完全にデレ寄りだもんね、ロロクー的な意味で!
(※クーデリア、さらに思い直して受付テーブル下の収納からライフル銃を取り出す。アーランド国営工廠製のボルトアクション式7.92mm軍用小銃を改造したもの。
クーデリアはオープンサイトでこれを使い、天候条件如何に関わらず300メートル先のぷにぷにをヘッドショットできる。ちなみに現在フィリーとの距離は10メートル足らず)
だからミミさんもこれから時間が経つごとにどんどんデレ寄りになるかも! ううん、なるべきよね! いや、むしろなれ!
(※クーデリア、別の職員になだめられて銃火器をしまう。その代わりにクリップボードを手に取る。角が鉄で補強してあるやつ)
というわけでトトリちゃん! 機会があったらどんどんミミさんに恋バナを持ちかけてフラグを立て痛ぁっ!?」
(※クーデリアの縦持ちしたクリップボードがフィリーの頭を直撃)
以上。回想終わり。
「フィリーさんの言ってたことはともかくとして、たまにはそんな話してみてもいいかなって……」
「だからって、あんたねぇ……」
ミミはため息をついて、偏頭痛のように額を抑える。
「で、どうなのミミちゃん? 好きな人」
「……」
いるわけないでしょ。――と、答えてしまうのは簡単である。だがしかし、ここは一つ驚かされた意趣返しをしておこうと、ミミは含みありげな表情を作って見せた。
「そうね……いないこともないかも」
「え……!?」
トトリの目が、驚愕に見開かれる。
「い、いるの!?」
「んー……まあ」
「っ……!」
予想以上のトトリの驚きぶりに、ミミは満足げな笑みを浮かべる。もちろん心の中で。
「それって、私の知ってる人!?」
ぐいっと身を乗り出してきた訊ねるトトリの表情は、妙に切羽詰まっていた。
「え? ……ええ。そうね」
具体的に誰かなどは無論何も考えていないが、ミミはテキトーに話を合わせる。
「……誰?」
問いかけるトトリの視線は、真っ直ぐにミミの目を捉えて離さない。
「だ……誰でもいいでしょう。ていうか――」
嘘だから、冗談だから――というミミの台詞は、続くトトリの問い詰めに遮られる。
「教えてミミちゃん! お願いだから!」
「ちょっ、ちょっと落ち着きなさいよトトリ!」
「落ち着いてられないよ! ミミちゃん誰が好きなの!? ねえ!」
「いや、その……嘘だから」
「へ……?」
風船の空気が抜けてしぼむように、トトリの肩から力が抜ける。
「う、そ……?」
「ええ。さっき驚かされたから、仕返しにからかっただけよ」
「そう……なんだ……はあ〜……」
トトリは安堵し、大きなため息をついていた。
「そこまで過敏に反応するようなことでもないでしょうが」
「……そんなことないもん」
からかわれたことはやはり悔しいのか、トトリは頬を膨らませる。
そして言った。
「私、ミミちゃんが好きだもん」
「…………はい?」
ミミの目が丸くなる。
「ミミちゃんが好きだから、ミミちゃんが好きな人いるって言ったら、すごく気になるもん」
「ちょっ……トトリ……?」
冗談を言っている目ではなかった。あまりにも真剣すぎて、向き合うのが怖いぐらいだ。その様相のまま、トトリはじりじりとミミとの距離を詰めてくる。
「じょ、冗談よね?」
「本当だよ」
言い切った。あくまで真っ直ぐに。
「ねえ、ミミちゃん……私がこんなにミミちゃんを好きなのに、からかうなんてひどいよね……?」
「や……そ……そんなこと、言われても……」
じりじりと詰めてくるトトリに押され、ミミは少しずつ後ずさる。
やがて、ミミの背中にアトリエの壁が当たった。
「ミミちゃん……」
「ト、トトリ……ちょっと落ち着いて、ね?」
「落ち着いてるよ」
トトリの顔が近付いてくる。吐息の熱さがミミの肌を打つ。澄んだ髪の匂いが、鼻孔をくすぐる。
「ミミちゃん……好き」
「っ!」
思わず目を閉じる。そのまま、トトリの唇が――
「…………なんちゃって」
「え……あ……」
ペロリと舌を出して微笑んでいるトトリに、ミミは仕返しの仕返しをされたことにようやく気が付いた。
「とっ……トトリ! あんた、よくもだましてくれたわね!」
「えへへ、お互い様だよ」
顔を真っ赤にして怒るミミだが、トトリは悪びれず笑みを浮かべていた。
「はぁ……ったく」
からかわれたのは腹が立ったが、お互い様なのも確かなことだと、ミミは自分に言い聞かせる。
「……これで分かったでしょ、トトリ。私達二人とも、恋だのなんだの、女の子らしい話をするような柄じゃないわよ。嘘ついてからかい合うだけどか、端から見たら空しすぎるわ」
「そうかもね」
「そういうわけだから、次の冒険の予定でも話し合いましょうか。私達らしく有意義に、ね」
「うん!」
二人は地図を広げて、今度はどこへ繰り出そうかと思いを巡らせる。その表情は、恋バナをする女の子にも負けないぐらいに、活き活きと輝いていた。
「……ホントにしてもよかったんだけどね」
「ん? トトリ、何か言った?」
「ううん、何でも」
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
乙
フィリーさんのサポートは素晴らしいな
ガイアが俺にもっと百合れと囁いている……
SS投下します。
トトリエ時代でトトミミ&ピアトト。
盛夏にしては日差しも柔らかく、吹く風が肌に心地よい、そんなある日こと。
アランヤ村の海辺――元々根っからの漁村な上、海中にはクラゲが多い&たまにフカも出るので、海水浴をする人間などはまず見られない。そんなストイックな夏の海の砂浜を、トトリとピアニャの二人が歩いていた。
特に何をしているわけではなく、ただのお散歩である。
「ねえねえトトリ! これなぁに?」
足下に何か見つけたピアニャが、笑顔でそれを指さしトトリに訊ねる。
「それはヒトデだね」
「じゃあこっちは?」
「それはヤドカリ。あ、貝殻から出しちゃダメだよ」
「へぇー……あ! ねえねえトトリ、あれは――」
ピアニャは何か目に触れるたび、楽しそうにトトリにそれが何かを訊ねてくる。
アランヤ村に来るまでは、雪に閉ざされた一種の隠れ里のような所で、塔の悪魔に怯えながら暮らしていたピアニャである。外の世界のものは、全てが珍しく新鮮だった。
「トトリってすごいね。何でも知ってるね」
「あはは、それほどでもないよ」
無邪気なピアニャに、トトリも笑顔で答える。一時、感情のもつれでギクシャクしたこともあった二人だが、今ではすっかり打ち解け、ピアニャはトトリが大好きで、トトリもピアニャを妹のように可愛がっている。
事実、夏の砂浜を仲良く散策している二人は、端からみれば仲睦まじい姉妹のようで、大変微笑ましい光景だった。
……が、
「ぬぐぐぐぐ……何よトトリってば……わざわざ私がアトリエまで会いに行ったっていうのに、こんなところで遊んで……仕事ならまだしも……!」
やや離れた地点から、和やかな二人に焼き餅レベル天元突破な視線を送っている名門貴族様が約一名。
仲良しなトトリとピアニャに、珍しく(もないか?)ジェラシー全開なミミである。
トトリがアランヤ村のアトリエにいる間、ミミは村の宿屋に滞在している。冒険に出る予定のないときは、お互い自由行動が基本だ。だから予定の無い今、トトリが誰と何をしていようが自由である。
だがしかし、理屈と感情は別物というか……。
ミミの視線の先では、水しぶきに驚いたピアニャが、トトリの体に抱きついたりしている。
「っ……ピ、ピアニャ〜……邪気のない素振りを装って何てうらやま――じゃなくて、ハレンチなことを〜……!」
子供相手に本気で嫉妬するなよ……と、誰か常識的なツッコミを入れてあげれば良いのだが、生憎周囲に人影はなく――
「うううう……トトリちゃんってばいつの間にぴあちゃんを独り占めして……私だってぴあちゃんと遊びたいのにぃ〜……うううう〜!」
訂正。驚くほど近距離にミミと同レベルなのがいた。
「ロロナさん? 何やってるんですか?」
気付いたミミが声をかけると、
「夏の日差しに照らされながらトトリちゃんへの嫉妬の心に身を焦がしているんだよ!」
妙にハキハキ答えてくれたロロナである。
「師匠が弟子に嫉妬してどうするんですか……しかもそんな理由で」
「だって羨ましいんだもん! それにミミちゃんだってぴあちゃんに嫉妬してるんでしょ」
「なっ……ち、違います! 私はそんなんじゃなくて、その、トトリが仕事もせずにフラフラ遊んでいることを憤っているんであって」
「あ、ぴあちゃんがトトリちゃんにチューしてる」
「なぁっ!?」
ロロナの言葉に怒髪天を衝くような形相で振り向いたミミだが、
「って言ったらどうする?」
「……」
当の二人は海水に素足を浸してはしゃいでいる。ミミは恨みがましい目をロロナに向けた。
「謀りましたね……!」
「なんのことかなー?」
曇りのない笑顔でとぼけるあたり、ミミとは役者が違うようだ(「いや、あれは天然だから。マジで」byくーちゃん)。
「それよりもミミちゃん。今はこの状況を打開することに全力を注ぐべきだよ」
「と言いますと?」
「ミミちゃん」
ロロナはミミの肩にポンと手を置いた。
「ちょっとトトリちゃんに告白してきて」
「はいっ!?」
言われたことの意味が分からず――いや、意味は通じているのだが、前後の文脈に理解が及ばない。
「な、何でですか!?」
「ミミちゃんがトトリちゃんとくっついたら、二人はラヴラヴになって、私はぴあちゃんと遊べる。万事オッケーでしょ!」
「それはそうかも――って違う違う! わ、私は別にそんな、トトリのこと――」
「いいからいいから。ほら行くよ」
「え、ちょっ、まっ……」
「あ! ロロナとミミだー」
「え? あ、ホントだ。先生、どうしたんですか?」
連れだって歩いてくるロロナとミミの姿を見つけたトトリ達が、早速声を掛けてきた。
「うん、ちょっとねー。トトリちゃんにミミちゃんからおはな――フガ」
「散歩してたら、たまたま会ったのよ。たまたまね」
放っておいたら本気で何を言わされるか分からない。ミミはロロナの口を塞いで、当たり障りのないことを言っておく。
「ふーん、そうなんだ。私もピアニャちゃんとお散歩してるの。お姉ちゃん、今日は酒場のお仕事休めなくて」
要するに、トトリは子守をしているわけである。
実際のところピアニャは子守が必要なほど幼い年齢ではないのだが、生い立ちが生い立ちだけに精神年齢が低く、常識に欠けている部分もある。何よりピアニャ本人が一人になるのを極端に嫌がるのだ(トトリ達の父親グイードの存在は、現在のピアニャの眼力では認識が困難)。
それはさておき。
「じー……」
何やらピアニャがさっきから、ミミのことをじっと見つめている。
「じー……」
「……あの、何か用かしら?」
「ミミ。何か怒ってる?」
「なっ……!」
怒っている、わけではない。トトリがピアニャと一緒にいるのが何となく面白くなくてムシャクシャしているだけだ――と、ミミは自分に言い聞かせながら、動揺を悟られまいと平常心を装う。
「何を言い出すのよ、いきなり。別に、怒ってなんか――」
「分かった! ミミ、ピアニャがトトリと仲良しだから焼き餅やいてるんだ!」
「――っ!?」
さらに抉り込むように核を突いてくるピアニャである。無論のこと本人に悪気は一切なく、ただミミの表情を読んで気付いたことを、正直に言っているだけなのだが。
「やっ、焼き餅って、何で、私が、そんな――」
「だってミミ、トトリのことが好きなんでしょ?」
「〜〜っ!?」
(無邪気さに裏打ちされた真の天然だからこそ可能な、怒濤の波状攻撃……ぴあちゃん、恐ろしい子!)
端から見て一人戦慄しているロロナはさておき、慌てに慌てているのはミミである。
「なななな……何を言い出すのよあんたは!」
「違うの?」
「そりゃ――」
違うわよ! ――と、言い切ってしまうのを、本能に近い部分が躊躇する。トトリは今ここにいて、ミミとピアニャのやり取りをハラハラと見守っているのである。
しかし、否定しなければ認めることになる。それは、先ほどロロナが提案したことを実行するのと同じことだ。
「ちっ…………違うわよ!」
絞り出すように、ミミはその一言を吐き出す。
「そうなの?」
「そうよ!」
「じゃあトトリのこと嫌いなの?」
「き、嫌いだなんて言わないわよ!」
「じゃあ好き?」
「だから好きじゃないってば!」
「む〜……どっちなの?」
「0か1しかないのか、あんたは……」
どうしたものかと頭を抱えそうになるミミだった。
「ピアニャちゃん、あんまりミミちゃんを困らせちゃダメだよ」
「トトリ。トトリは、ミミのこと好き?」
「うん、好きだよ」
「っ……!」
恥じらいもなくサラリと言ってのけるトトリに、ミミの顔が真っ赤になる。
が、
「ピアニャのことは?」
「もちろん、好きだよ」
「じゃあ、ツェツィやロロナは?」
「うん、みんな好きだよ」
ポンポンと軽いノリで交わされるやり取りを聞いて、ミミの肩ががくりと落ちる。
つまりピアニャの言う『好き』はその程度の意味なのだ。よくよく考えれば当然のことである。ムキになっていた自分が恥ずかしくなるミミだった。
「……もうこんな時間だね。ピアニャちゃん、そろそろお家に帰ろうか」
「うん!」
「そうだ、先生。よかったら今日、うちでご飯食べませんか?」
「いいの? じゃあお邪魔するね」
「はい。歓迎しますよ」
トトリはピアニャの手を引いて、家の方へ歩き出す。
(…………あれ?)
「あの……トトリ?」
疑問、というか何というか。違和感を覚えたミミが、トトリへ声を掛ける。
「…………」
返事がない。
「トトリってば!」
「……何か用? ミミちゃん」
強く呼びかけられて振り返ったトトリは、いつも通りの笑顔……のはずなのだが。
「いや、その……」
ロロナを食事に誘っておいて、何故ミミに声を掛けないのか。それを問いただしたかった。
しかし……トトリの目が、正確には目の奥の感情が、笑ってない。
(……もしかして……)
「あの、ひょっとして……怒ってる?」
「何を?」
「いや、あの……さっきの」
好きじゃないって言ったこと――
「さっきの……何かな?」
「……ッッ!」
その一瞬。トトリの目が氷のような温度を放ったことを、ミミは見逃さなかった。
怒っていた。確実に。
「聞いてトトリ。さっきのは、別にあんたのこと――」
「ピアニャちゃん、何か食べたいものある?」
「ん〜……あ! おさかなパイが食べたい!」
「おさかなパイ、ピアニャちゃんも好きなんだ?」
「うん! この前ツェツィが作ってくれたの、すっごく美味しかったよ」
「そうだね。私もお姉ちゃんが作ってくれたおさかなパイ、大好物だよ」
「あの、トトリ? ねえ、話を――」
「じゃあ今日は私がおさかなパイ作ってあげるね」
「わーい! トトリのおさかなパイだー!」
「ふふ……そんなに喜んでくれるなら、はりきって作らないとね」
「ちょっとトトリ! お願いだから話を――」
「よーしっ、ピアニャちゃん。お家まで競争しよう!」
「おーっ!」
「ちょっ、待っ……待ってってばーっ!」
夏の浜辺で、楽しそうに駆け出すトトリとピアニャ。それを追いかけるミミ。そしてそんな三人を暖かく(?)見守るロロナ。
外側だけ見ると、これ以上なく爽やかな光景だった。
……で、結局。ミミがちゃんと素直に『本当はどうなのか』を伝えるまで、トトリの態度は硬化したままでしたとさ。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
『おれはジェラシー全開のミミちゃんが天真爛漫なピアニャちゃんに振り回されるSSを書こうと思っていたらいつの間にかトトリさんがご立腹していた』
>>330 GJ!!!!GJ!!!!
ありがとうガイア!
>>330に囁いてくれてありがとう!!
もっ、もっと囁いてくれて良いんだぜ?
>>素直に『本当はどうなのか』
ここまでしないと態度変えなかったってことは
トトリは「嫌い」よりも「好きじゃない」の方がよりイヤだったんだろうなと想像。
超えちゃいけないラインを、見誤ったなミミちゃん(だからって嫌いとは言えないよね……)。
『本当はどうなのか』を聞いた直後のトトリは
「よろしい」って感じだったのか
それとも「――しょうがないから、許してあげる」なのか、
はたまた「わたしもだよ――」→抱きしめるだったのか、
あるいは、突然、頬チュー→「……ミミちゃんの意地っ張り」だとか、
いやいや、「ありがとうミミちゃん、私も意地張ってごめんね?
お詫びにきのこのパイ焼いてきたの。よかったら食べて欲しいな……」
→ピュアトリフ入りのパイを食べさせるとか、
もしかすると「ミミちゃん、わたしもう我慢するの止めるね」→明日の朝は黄色い太陽が見えるなのか、
全然わからなくてとても興味があります。
最初から全部読んでやっと追いついた・・・
何このすばらしいスレ
>>324 クーちゃんがステキすぎるwwww
容赦ゼロ、手抜きナシ、元冒険者舐めんな上等な感が
この短いシークエンスにいっぱいwww
あと、最後の「……ホントにしてもよかったんだけどね」って
トトリにキューっときた。
ミミちゃんよりちょっとだけ大人のトトリがすごいイイ!!
そして十年後くらいに、トトリはミミちゃんから仕返しくらうといいと思う。
ミミちゃんだっていつまでも
自分でいっぱいいっぱいのヘタレじゃないんだぜ、たぶん。
SS投下します。トトリエ時代のトトミミ。
「ねえ、ミミちゃん。今日って何の日か知ってる?」
ある晴れた日のこと。いつものようにアランヤ村のアトリエを訪れていたミミは、ソファで休憩中のトトリから、不意にそんな話を振られた。
ミミは椅子に腰掛けながら広げていた本を閉じ、今日の日付を思い浮かべてしばし考え込む。
五月二十三日。誰か知り合いの誕生日ではない。これといった行事があるわけではない。しばらく黙考してみたが、特に思い当たるものはなかった。ミミは降参してかぶりを振る。
「思いつかないわね。何かの記念日とか?」
「うん。じゃあヒントを一つ――」
「クイズ形式続けなくていいから。とっとと答えを教えなさい」
「え〜、ミミちゃんせっかちだよ」
「いいから」
「むー」
もったいぶりたかったらしいトトリは不満顔だったが、ミミとしてはそこまで付き合うほどの興味はない。
「じゃあ教えてあげるね……今日、五月二十三日は、キスの日なんだよ」
「っ!?」
予想外の単語がトトリの口から出てきて、ミミは危うく咽せそうになった。
「……何よそれ? ふざけてるの?」
「ふざけてないよ。今日、本当にそういう日なの」
トトリの話すところによると、演劇史に由来する記念日らしく、この日は大衆演劇において初めてキスシーンが登場した日なのだという。
「――というわけなの。フィリーさんの受け売りだけどね」
「またあいつは余計なことを……」
あの偏った趣味と知識はどうにかならないものかと、ミミは本気で頭を抱える。同じ頃、その当人の職場の上司がミミとほぼ同じ悩みを抱えていたが、それは余談。
「ねえミミちゃん」
「何?」
「ミミちゃんはキスしたことある?」
「っ……なっ」
真っ直ぐな好奇心を込めた目で、トトリがミミを見つめている。
「ないに決まってるでしょ!」
ただ質問をされただけなのに、ミミは顔を赤くして、怒鳴るように答えを返した。
「そっか。ないんだ」
何を思っているのかミミには分からないが、トトリは納得したように何度も頷いている。
「ねえミミちゃん」
「な、何?」
今度はどんな質問をされるのか、警戒して身構えるミミ。だが、
「私、ミミちゃんとキスしたい」
「なっ……!?」
質問ではなく要求だった。ミミの顔が、先ほどとは比較にならないくらい真っ赤になる。
「な、な、な、何で!?」
「したいから」
「そんなんじゃなくて、もっと……ちゃんと理由を言いなさいよ!」
「理由を言ったらしていいの?」
「そっ……そういうわけじゃない、けど……」
「けど、何?」
「だ、だから、その……」
いつの間にか、トトリの顔がミミの間近に迫っていた。既に吐息がかかるほど近い。
「ちょっ……待っ……」
気が付いた。トトリはミミの『答え』など待ってはいない。先ほどの「キスしたい」という発言は要求ではなく、宣言だったのだ
透明感のある唇。瑞々しい艶を帯びたトトリのそれが、ゆっくりと近付いてくる。
「ま、待って、ま――」
あとは、くぐもった呻きにしかならない。ミミの唇を、暖かく柔らかいものが覆っていた。
(キス……してる……初めて……トトリと……)
初めて感じる、人の――トトリの唇の柔らかさ。ミミの体は完全に硬直して、心臓だけが早鐘のように忙しく鳴り響いている。
抵抗の意思がなかったわけではない。しかし、唇をついばむように何度も吸われ、閉じた唇をノックするように舌先で刺激されるうちに、ミミの体からどんどん力が抜けていく。
そして、僅かに気が緩んだ瞬間、トトリの舌先が、貝をこじ開けるようにミミの中へ入ってきた。
ミミは慌てて唇を引き結ぶが、かえってトトリの舌をその場にとどめるように、強くくわえ込んでしまった。
そのままトトリの舌先が、縮こまっているミミの舌を、解きほぐすようにくすぐり、つっつき、絡み合おうとする。
初めて味わう舌同士がこすり合う感覚。トトリの舌がミミのそれを、表も裏もまさぐっていく。
「……ん……ミミちゃん……もっと……んんっ……」
「っ……ぅ……っ……ふぁ……ぁ……」
唇を吸われ、舌を弄ばれ――少しずつ、確実に、ミミはトトリとの口付けに、その心を囚われていった。
「……ぷは」
長い口付けを繰り返し、ようやく一段落付けて唇と舌を離したトトリは、ミミに向けて呟く。
「ミミちゃん……強引にしてごめんね」
「……」
ミミは黙ったまま、恨めしげな視線をトトリに向ける。肌の火照りはまだ収まらず、胸の鼓動は落ち着かないままだ。
「……他に、言うことがあるんじゃないの?」
ミミのその言葉に、トトリは少し驚いて目を丸くする。そしてすぐ、優しく微笑んだ。
「ミミちゃん」
「何?」
「……大好き」
「……順序が逆でしょうが。馬鹿」
「あっ」
悔しまぎれの腹立ちまぎれに、ミミはトトリに仕返しのキスをした。
おわり
せっかくのキスの日なんでもう一本おまけを投下。上のSSとほぼ同じ時間で、ロロクー。
ポカポカと暖かい陽気が初夏の訪れを思わせる、そんなある日。アーランドのロロナのアトリエ。
クーデリアがお昼休みにちょっとロロナの顔を見ておこうとアトリエに寄ると、「今日は五月二十三日でキスの日だよ!」と宣言したロロナがその0.5秒後にクーデリアの唇を奪っていた。
「んっ……ふぁ……ん……」
「〜っ……っ、ちょっ、ロロナ、ストッ……んんっ!?」
「ん〜……♪」
少し離れたロロナの唇が、またすぐクーデリアのそれに重なる。
ロロナは無邪気に口付け、唇を吸い、舌を絡ませる。
強引にされているクーデリアは、止めようとはしながらも本気で拒んだりはせず、少しずつ、その行為に応えている。
「ん……くーちゃん……もっと、欲しい……」
「っ……」
クーデリアの小さな唇が、ロロナの唇にふさがれる。
ロロナは色々な角度から唇をついばみ、舌を差し込んでくる。クーデリアもそれを受け入れ、互いに積極的に舌を絡ませる。
息継ぎのように唇を離すたび、どちらのものとも分からない唾液が、銀色の糸を引く。
「っ、ぁ……ロロナ、ぁ……」
唇を交わしながら、クーデリアは自分の体の中が、芯から熱くなっていくのを感じていた。
年の割には幼い顔立ちの二人だが、体は年相応に大人の官能を知っている。
キスしたまま、ロロナの手がクーデリアのスカートの中に入り、あっという間に指をショーツの中に侵入させてきた。潤ったそこへ、指先を潜らせる。
「っ……あっ」
暖かい蜜で滑った指先で敏感な突起をこすると、クーデリアは声を漏らす。
「は、ぁ……ロロナぁ……」
クーデリアは全身を真っ赤に火照らせている。荒い呼吸を繰り返し、瞳は熱にうかされたように潤んでいる。
キスを繰り返しながら、ロロナの指先は、クーデリアの秘部を執拗に愛撫する。
「あっ……あっ……」
甘い疼きが体の奥に染みていく。すでに限界が近かった。
「くーちゃん……もっと……してあげる……んっ」
「んっ……ん〜〜っ……!」
目に涙を浮かべながら、クーデリアはロロナと舌を絡ませる。
ロロナの指先がクーデリアのクリトリスを激しく擦りたてる。そして、
「っ、ぅ……っ……んっ、あっ……――っ!」
膨らんだ快感の波が、一気に弾ける。声を噛み殺したまま、クーデリアは大きく体を震わせていた。
「あのね、ロロナ……今日は休日でもなんでもなくて、私は昼休みにちょっとアトリエに寄ったってだけなのよ。仕事中なのよ」
「はい……」
場所は変わらず、アトリエで二人っきり。睦み合いが終わってすっきりした後は、お待ちかね(?)のお説教タイムだ。
ちなみにまだ昼休みの時間は終わっておらず、あと五分はロロナに説教できる。
「さかりの付いた犬じゃないんだから、もうちょっと社会人としての分別というかTPOってもんをわきまえられないわけ?」
「うう……でも、くーちゃんだってノリノリだったじゃない」
「なし崩しにされるがままだったってのは認めるわよ。そこはこっちが反省するところよ。でもね、問答無用で引きずり込んだのは完全にあんたでしょうが!」
「ごめんなさい……」
そこは反論の余地もなく、ロロナはしゅんと項垂れながら謝る。
「ったく……五月の二十三日、キスの日だっけ? よくもまあ、下らないこと知ってるわね」
「この前フィリーちゃんが教えてくれたの」
「あいつは……」
沸き起こる偏頭痛に額を抑えるクーデリア。あの偏りきった嗜好は、もう物理的にどうにかしないといけないのではないかと、半ば本気で検討していた。
「じゃ。そろそろ時間だから行くわね」
「あ、うん。ねえくーちゃん」
「何?」
「今日、お仕事終わってからアトリエに来ない?」
「……」
想定の範囲内のお誘いだ。小さく息をついたクーデリアは、ロロナの耳元に唇を寄せ、
「残業が無ければ、ね」
囁きついでに、耳たぶにキスしてやった。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
いいねいいね
トトミミもいいがやっぱロロクー良いわぁ
>>339 今朝、このスレを開いてしまったことを
猛烈に後悔した一日だった……。
ああん!もう!どうして!グッジョブだよ!!
トトミミもロロクーもステキすぎだよ!!!
お日様が高いのに脳内でこの2組のやりとりが
リピートエンドレスだったよ!!とっても幸せでしたありがとう!
トトミミの「甘酸っぱいなー!ちくしょー!wwwwww」って感じも
もちろん大好きなんだけど
>年の割には幼い顔立ちの二人だが、体は年相応に大人の官能を知っている。
すっごいここにグッときて、あれだよ、グッときたんだwww
聞こえるはずのないロロナとクーデリアのベーゼが、何故か耳元で微熱を帯びて聞こえた。
目から入った文章が、耳に到達した瞬間だった。最高です、ありがとう!
メルケイはキスの日とか関係なく日頃から
ナチュラルにおはようのキスとかおやすみのキスとかしてそう
ケイナはメルルのことが好きなのを自覚しててメルルは無自覚だけど実は好きみたいなシチュが王道だけど好きだ
そしていつしかメルルがケイナへの想いを自覚していろいろすれ違いとかありつつも最終的にはくっついてめでたしめでたし
と、そんな妄想をよくしてる
・・・本編での2人の関係とかもそんな感じじゃなかっただろうか、ケイナがガチでメルルが無自覚な好意みたいな
ケイナは、メルルのことが好きなのをちゃんと自覚してるけど、
でも、メルルは無意識レベルでしかわかってなくて。
それでも構わないと、ケイナは普段思ってる。
けれどメルルは王族で、この国をそして、そこに住む国民を心の底から愛している。
だからメルルはケイナだけのものには絶対にならない。
そんなメルルを支えて生きたいと思っているのに、
合併が進むにつれて、ケイナは怖くなっていく。
自分は一介のメイドで、しかも主に対して不実な想いを抱いている。
色恋沙汰に疎いこの王女のそばに、自分のような人間が居てもいいのか?
トトリたちと出会い、世界を広げて行くメルルのそばで
ケイナは悩んで悩んで、
そうしてついに彼女はメルルが素材集めの冒険に出ている間に姿を消す。
冒険から戻ったメルルはケイナないなくなったことを知り
ケイナが消えた理由を、また一番近くにいた自分が
彼女がかかえていた苦悩に全く気づいていなかったことにショックを受ける。
国中を探しまわりながら、メルルはケイナへ抱いているこの気持ちが
主従のそれでも幼なじみでもないことに気づく――
とか妄想するのが好きだwww
346 :
名無しさん@秘密の花園:2012/05/28(月) 00:47:46.64 ID:g+OU0Rmn
>>345 いいイメージだ!
……書いてくれるんだね,ありがとう!
そういえばケイナって、どういう生まれでどういう経緯でメルルのメイドさんになったのか、そのへんが不明なんだよね。
一番親しいメルルですら「ひょっとしてケイナって、いいところのお嬢様とか?」って言ってるし、ハッキリしたことを知らないらしい。
ケイナの生まれがアールズで家族も国内にいるとしたら、開拓前の人工から考えても親友のメルルが知らないのは不自然だし……。
もしかしてヘビーな事情があったりとか?
……という疑問からケイナの身元についていくつか仮説を立ててみた。
・仮説1:元貴族説
ケイナの家はアーランド(もしくは他の国)の貴族だったが、経済的に困窮し、一家揃って夜逃げ同然の状態でアールズに流れてくる。
アールズ王家と交流のあったケイナの両親は、幼い娘に貧困を味合わせるのが忍びなく、せめてこの子をアールズに置いてくれないかと頼み、デジエはこれを引き受ける。
その後、ケイナの両親は借金取りから逃れるため遠方に旅立ち、ケイナは身分を隠してメルルの世話係としてお城で暮らすようになる。
・仮説2:本当に姉妹説
実はメルルと腹違いの姉妹だが、諸々の事情から公に認めることができず、せめてお城で面倒を見ようとメルル付きのメイドとして雇われた。
……幼馴染みの親友でさらにメイドと主人でおまけに腹違いの姉妹ってさすがに盛りすぎか。
・仮説3:孤児説
ケイナがまだ幼い頃、両親が何らかの理由(モンスターの襲撃、流行病、etc...)で亡くなり、その後お城に引き取られた。
メルルに余計な気遣いをさせたくないのでケイナは両親のことは話さず、周囲の大人もあえて触れないので、メルルだけ事情を知らない。
・仮説4:某受付嬢の意見
「やっぱり一流のメイドさんたるもの、ミステリアスな設定の一つや二つは必須でしょ!
たとえば遙か昔に滅びた古代王家の末裔だとか! 代々アールズ王家を守り続けていた影の一族だとか! メルルちゃんを守るために某国から雇われた凄腕のエージェントとか!
前世でメルルちゃんと悲恋の末に死に別れた恋人同士(♀×♀)だったりとか! あるいは現在進行形でメルルちゃんと恋人同士だとか! 実は親同士の決めたメルルちゃんの婚約者だとか!
いっそのこともうメルルちゃんと籍を入れてるとか! それどころかすでにメルルちゃんとの間に一児をもうけてるとか! さらにさらに――」
「あの〜フィリーさん……想像するだけなら別にいいんですけど、公共の場で口からだだ漏れさせるのやめてもらえませんか。変な噂が立つとケイナが困るんで……後半とかもうただの願望だし」
おっと誤字った
人工→人口ね
>>347 相変わらずの腐ィリーwww
実際どうなんだろうな、言われてみると気になるもんだね
・・・まぁ実際のところ設定が無いだけな気もするが
てか『ひょっとしてケイナって、いいところのお嬢様とか?』って台詞どこで言ってたっけ、よく覚えてないや
>>349 台詞じゃなくて図鑑
「由緒あるかばん」の説明文に書かれてる。
他のヒロインの場合、
くーちゃん:アーランド屈指の資産家のご令嬢。ロロナとは幼馴染みで、アトリエ存続のためにすすんで協力してくれる。
りおちゃん:どこかの村出身。不思議な能力が原因で村人と両親に嫌われ、旅に出た。アーランドでロロナと出会い友達になる。
ミミちゃん:アーランドの名門貴族出身。形骸化した家名を高めるため冒険者になった。貴重な錬金術士であるトトリの力に目を付け、利用しようとする。でも割とあっさりデレる。
という感じに、ある程度出自と主人公との経緯がはっきりしてるのに、ケイナだけ情報が少ないなぁと。
普通にアールズ出身っていう設定なら分かりやすいんだけど、
>>347で言っているようにそれだとメルルがケイナの家のことを知らないとは考えにくいし……。
ちなみに設定資料集を確認したら「平民の出」ってはっきり書いてあったので、少なくとも仮説1と2は無い模様。
……まあ確かに、設定が無い、あるいは図鑑の記述が設定と整合取れていないってオチかとも思うけど。
>>347 なるほどこれは興味深いわー!新しいケイナの一面だわー!
って、仮設3まで真面目に読んだら、仮設4でフイタwww
いいぞ、フィリー!もっとやれ!!www
んでも、ちゃんと「変な噂が立つとケイナが困るんで……」と
諌めているあたり、メルルは良い主君ですね。結婚してくれ。
ケイナについては
やっぱり「メルルが事情を知らない」っていうのが、
結構ポイントな気がする。
妄想するに、最初はそんなに大した理由でなく
「子供だから悪意なく人に話してしまうかもしれない」って感じで
メルルに告げられなかったケイナの『あまり良くない事情』。
それが年を重ねるにつれて、ケイナの出自は
「次期女王(当時?)メルル姫のそばに、そんなメイドは相応しくない」
という話になりかねないということに。
ある日、ケイナからの申し出で、彼女の事情を知る数少ない人物である
デジエとルーフェス、そしてケイナの3人で話し合いが持たれ
これまで特に話題にもならなかったので隠してもいなかったが、
今後は無用のトラブルを避けるため
周囲は元より、メルル本人にも秘密にしよう、という取り決めがなされる。
デジエは、ケイナの提案とはいえ
時にはケイナに嘘をつかせてしまうことを心配するが、
ケイナはメルルに害が及ぶことを考えれば、些細な問題だと微笑む。
「知らなければ、誰も探さない」ということで一件落着したかに見えたが、
ある日、王宮内で探し物をしていたメルルが古い手紙を見つける。
保存状態が悪く、字が消えかかった手紙と、同封されていた色の薄い肖像画を
興味本位でメルルが復元させるとそこにはケイナの出自に関わる内容が……。
ちょうど出かけていたケイナが戻ってきた時、メルルは咄嗟にそれを隠してしまう。
ケイナの秘密を知ったメルル。
すごく気になるけれど、でも本人にはとても聞けない。
まわりにはもっと聞けない。
そして悶々と悩むメルルを心配するケイナ。
なにがあったのか話して欲しいのに、話してくれないメルルから
ついに、放って置いて!と言われ、ケイナはショックを受ける。
『やっぱり自分は、メルルのそばに居てはいけないのでは?』という思いが一瞬頭を過ぎるが、
『いや、そんな簡単に諦められる想いではなかったはずだ』と
ケイナはひとり、決意を新たにする。
メルルはメルルで、ケイナにひどいことを言ってしまったと激しく落ち込む。
かといって、自分が塞ぎこむ本当の理由を本人には言えず途方にくれる。
「私はどんな時でもメルルの味方です」
と明るく前向きにメルルに寄り添うケイナ。
そんなケイナに罪悪感を覚え、
また、秘密を独りで抱えることに限界を感じ始めていたメルルは
ある日、ルーフェスに詳細を隠して相談する。
国政を取り仕切る彼であれば、『誰にもいえない秘密』を持つ苦悩や
『自分独りで決断しなければならない大きな問題』に対する解決策を
知っているのでは?と考えたからだった。
思い悩むメルルにルーフェスは
得るものと失うものを天秤にかけるのではなく、本当に大切なことは何か?
それを考えれば自ずと答えが見えてくると教えてくれる。
”そんなの決まってる――!”
『本当に大切なもの』については一瞬たりともブレなかったメルルは
ケイナを探し出し、強く抱きしめる。
驚くケイナに「私はケイナのことが、大好きだよ!」と
メルルは本当に大切なものに告げる。
そして、復元した手紙と肖像画を差し出し、
意図しなかったこととはいえ
勝手にケイナの秘密を知ったことについて謝罪する。
ケイナは自分はメルルのそばに居てもいいのか問う。
「居てもいいじゃなくて、居て欲しいの!わたしが!ケイナに!」
即答するメルルの返事に、ケイナは静かに喜びと安堵の涙を流しながら、
メルルと秘密を共有出来るのなら、こんな秘密も悪くはないのだなと思うのだった。
いかん、妄想にしては長すぎた。
突然2レス使ってごめんなさい。
仮設4のフィリーのことを笑えないwww
>>353 正直なのは感心だ。
気に入った、家に来て弟をファックしていいぞ
メルケイ分が増えて幸せだわー
設定好きな?土屋さんがいる以上何もないとは思えないけど
仮設→仮説ね。
兄者、弟は謹んでご遠慮しますwww
>>354 プラトニックなロロクーが超好きだけど、
でも、時々、ガチな大人の情事を見たい時もある。
あとロロナよりクーデリアの方がいろいろ後悔してたり
申し訳なく思ったり、後ろめたかったりしてそう。
ロロナは「クーデリアが抱えている悩み」そのものは
ロロナ自身に置き換えると全然大した問題じゃないと考えてるけど、
でもクーデリアがそのことで苦しんでるのはちゃんと感じているから、
いろいろ適当な風なことを言いつつも
クーデリア自身が答えを見つけるまでいつまでも見守ってる感じがする。
ホントにダメな時は助けるけど、
でもクーデリアは自分で答え見つける力がある!って信じてるみたいな。
てか、最初に大人のお付き合いに誘ったのはロロナなんだろうか??
最近の流れに乗ってメルケイss投下させていただきます。
「ねえ、ケイナ」
「なんですか、メルル?」
いつものようにアトリエをお掃除していたわたしはメルルに呼ばれて振り返ります。
するとわたしを見つめる美しい双眸が目に入り、ふいにメルルへの抑えきれない思いが湧き上がります。
しかし同時にやりきれない思いに身が裂けそうな気持ちになるのです。
「むー、やっぱり変だ」
「もう、メルルったら。突然どうしたんですか?」
どうにか普段通りこたえました。でもあの子は時々鋭いところがありますから、
この思いに気づかれたのではと気が気じゃありません。そう、わたしは従者だから、
メルルがほしいと独占欲をもつのはいけないことで、でもどうしてもこの思いだけは
押さえられなくて、毎晩毎晩枕を濡らしても一向おさまることはなくて、
メルルに会いたいけど会いたくなくて…
「ねえケイナ!大丈夫?」
突然肩を揺さぶられはっと現実に引き戻されます。どうやら思索にふけりすぎたようです。
心配してくれるのは嬉しいし、ずっとこのままでいたいけど気づかれてはいけませんから。
「大丈夫で…
「うそ」
メルルはそう言ってわたしが言い終わる前に、なんと抱き留めてきて、ドキドキして何も考えられなくなってしまいます。
「大丈夫ならなんで泣いてるの? ねえケイナ、何かあるんだったらわたしに頼ってくれていいんだよ。」
「うっ…メルルっ!、メルルっ…」
ああ気が付かないうちに涙が流れていたんだなぁとか、ついにばれちゃったなぁとか困ってるはずなのに、
でもやっぱりメルルが気づいてくれたのはうれしくて、取り留めもない思いを抱えメルルの胸の中で嗚咽してしまうのでした。
思い返せばわたしがメルルへの恋心に気が付いたのは、メルルの錬金術がきっかけでした。
仕方のないことですが、弟子入りしてからというものメルルと会う機会はかなり減ってしまいました。
お城から出て行ってわたしのいないアトリエに住み込んでしまいました。
身の回りの世話をしにアトリエに行っても採取に行っていて何日も会えないこともよくありました。
調合中には邪魔するわけにはいけません。そして錬金術を通じて、メルルにはたくさんの仲間ができました。
はじめは一緒に採取に出かけてましたがいつしかそうしたことも少なくなり、
寂しさで仕事が思うようにいかなくなったこともありました。そういう中でわたしはこの寂しさは、
むしろメルルを独占したい、わたしのものにしたいといったものだと気が付いて、
でもそれは従者失格だとも思って今の今まで悩んでいたのです。
泣いてしまったわたしを、メルルは優しくひざまくらしてくれました。
「ふふ、おちついた?なんだかこうしてると普段と逆で新鮮だよね、わたしって結構ケイナに甘えてたんだなぁ」
メルルは私の頭をなでながらそんな嬉しいことを言ってくれます。
「でもよかったぁ、ケイナってば最近わたし見るたび様子がおかしいし嫌われちゃったかと思って」
「そんなこと!」
つい語気を荒げてしまいます。メルルに気づかれているにしてもそんな風には思われたくないのです。
「友達なんだから、もっと頼ってくれてもいいんだからね」
友達、ト・モ・ダ・チ
恋人と言ってもらえなかったことよりも、むしろメルルが従者でなく対等なものとして見てくれることがうれしくて、
今まで悩んでいたことがばからしくなりました。ああ、もっと早くからこうしていればよかったのでしょう。
わたしは起き上がって、メルルをしっかりと見つめます。
「メルル」
「うん」
「わたし…メルルのことが大好きで仕方がないんです!」
「えっ?えええぇぇぇ!」
「わたしは従者なんだからいけないんだって、そう思ってたけど抑えられなくて…」
その言葉はさっきと同じように、突然抱き留められて止まってしまいました。
ふんわりとメルルのいいにおいがします。
「ねえケイナ」
「なんですか、メルル」
「わたしもドキドキしてるよね」
「ええ」
「わたしねケイナに告白されてすっごくドキドキしてね、ケイナがかわいくて思わず抱き着いちゃってね」
わたしは期待に胸を膨らませながら次の言葉を待ちます。
「ケイナ、わたしもケイナのことが大好き!」
わたしはうれしくて思いっきりメルルを抱きしめ返しました。
以上です、お粗末さまでした。
ケイナの正体ってなんなんだろうなぁとは考えたけど結局いい案は浮かびませんでした。
いったん気にしだすと気になって困りますね。
>>356 ロロクーの互いへの考え方の仮説がすごく良くわかる気がする
>>360 こういうストレートなのもいいね。
ケイナについては特に奇をてらった設定でもない限り、アールズ出身だけど何かの事情で家族は国内におらず、幼い頃からお城に住み込みで働いているってあたりが妥当だろうな。
メルルがケイナの家のことを知らないのは、小さい頃からずっと一緒だったから自分がケイナの家族みたいな感覚になってて、特に考えたことがなかったとか。
「そういえば気付いたんだけど、わたしとケイナって戸籍上は他人なんだよね」
「当たり前じゃないですか」
「じゃあ今から一緒にしよっか。この書類にハンコ押したらすぐだから」
「えっ」
>>360 GJ!
やっぱり王道って良いなwこの2人はこういう関係が一番妄想しやすいw
ものすごくどうでもいい話だけど同性同士で結婚とかできなくても養子縁組で事実婚って方法があるって百合な人が言ってた
今後の妄想の糧になればイイナ
シリーズ通して未プレイなので
5/31発売の価格調整版でロロナ→トトリ→メルルの順でやろうと思ってるんだけど、
ロロナはとにかくバグがひどいって評判が目に付きます。
ロロナ諦めてトトリから始めても百合的に楽しめるかな?
あるいは、5/31版はその辺のバグ修正されてたりしますかね?
新シリーズ発売前なのにアーランドの話題ばっかですな・・・
アーシャのアトリエにも期待してる
>>364 ロロナはフリーズの頻度が他二作より高い。
けど初期から比べて緩和されてるし、注意すれば避けられる。
詳しくはWiki等を見るべし。
余裕があるなら三作ともプレイしてほしいけど、トトリからでも特に問題はない。
百合的には「くーちゃんはロロナの嫁」「クーデリア→ジオさんの感情はあくまで憧れ」という点だけおさえておけば問題なし。
あ、りおちゃんは旅先の現地妻ね。
なに?
トトリエはステロロ押しが強いのが百合的にNG?
それはゲーム画面に映るものだけを見ようとするからだよ。
逆に考えるんだ。
ロロナとくーちゃんはCERO:Aでは表に出せないようなことをしていると考えるんだ。
sage
ごめんミスったw
>>365 アーシャ×ニオが基本っぽいけど、リンカの「マリオンに強い恩義を感じていて」という一文に社会人百合を期待せざるを得ない。
それからウィルベルちゃん。まさかの公式クンカクンカw
そしてそのあとの「隠すと為にならないよ? 甘ーいキャンディー、持ってるね?」という台詞の「キャンディー」という単語が、何か百合的な隠語に聞こえてしまった俺はもう駄目だと思った。
SS投下します。
ロロリエ時代のロロクー。王国の課題が全部終わってちょっと経った頃のお話です。
――きっかけらしいきっかけなど、特になかった。
いつものようにアトリエを訪ねたクーデリアを、いつものように笑顔でロロナが迎え、ソファに腰掛け、他愛ないお喋りに興じて、ふと短い沈黙が下りた。そんな時。
ロロナはごく自然に、当たり前のように、クーデリアにキスしていた。
理由は、強いて言うなら「したかったから」。クーデリアの顔を見ていたら、不意に耐え難い衝動に襲われて、気が付けば、優しく抱きしめ、それだけでは済まず、唇を重ねていた。
不思議な気分だった。
小さい頃からずっと一緒で、一緒にあちこち遊び回って、二人で泣いたり笑ったりしていた。
少し大きくなってからも、当たり前のように一緒にいた。
すれ違ってケンカをしてしまった時は、とてもとても悲しくて、どうしたらいいのかずっと悩み続けていた。もしもこのまま仲直りできなかったら、そんな想像をしたら泣きそうになった。
でも、二人ともちゃんと謝って、また仲良しに戻ることができた。二人で過ごす、当たり前の日々が戻ってきた。
だからこれは、そんな当たり前の日常の、ほんの少しの延長に過ぎないはずだ。
――と、ロロナは自分に言い聞かせてはいるのだが。
「あ……えっと……なんか、やっぱり、ドキドキするね」
しばしの時間を置いて唇を離したロロナは、顔を赤くして照れ笑いを浮かべる。勢いでしてしまったことだが、やはり恥ずかしい。
「〜……っ」
クーデリアはそんなロロナに対して、口をパクパク目を白黒させている。ごく普通に会話をしていたら、いきなり抱きしめられてキスまでされたのだから、当然の反応と言えよう。
「あの、くーちゃん……怒った?」
「おっ……あっ……当たり前でしょうが!!」
「痛っ!?」
クーデリア怒りのチョップがロロナの脳天を直撃した。
「う〜……くーちゃん痛いよぅ」
「それぐらい当然の報いよ! いきなりなっ、何で、その……キ、キ――〜したりするのよ!?」
「それはその……何となく」
「何となくで人のファーストキスを奪うな!」
「あ、やっぱりくーちゃんも初めてだったんだ。わたしも一緒だよ」
「そこは重要だけど今問題にはしていない! 何でこういうことしたのか聞いてるでしょうが!」
「何でって……今日はほら、久しぶりにくーちゃんが来てくれたでしょ」
「ええ」
「王国からの課題はもう終わったけど、お仕事は相変わらずいっぱいあって、最近は二人っきりになれることも少なかったでしょ」
「そうね」
「でも、今はちょっとお仕事落ち着いて、ほむちゃんもお出かけしてて、くーちゃんと二人っきりだったでしょ」
「うんうん」
「だからキスしたの」
「うぉい! 理由になってないでしょうが!」
マイペースというか感覚的な返答をするロロナに、クーデリアが咆える。
「理由って言われても……久しぶりにくーちゃんと二人きりだなって思って嬉しくて、それでくーちゃんの顔を見てたら、何だか抱きしめたりちゅーしたり色々したくなって……」
「い、色々って……」
何を想像したのか、さっきから赤かったクーデリアの顔が、ますます真っ赤になる。
「じゃあくーちゃん」
「え?」
「理由は説明したから……続きしていい?」
「なっ……!?」
顔と口調は遠慮がちというか恥ずかしそうなのに、ロロナは大胆にも再びクーデリアとの距離を詰めてくる。既にゼロ距離といっていいぐらいだったのを、マイナスに突入しそうな勢いで。
「ちょっ、ちょっ……まっ、待って! 待ってお願いだから!」
慌てふためき制止するクーデリアに、ロロナは動きを止めた。
「くーちゃん……やっぱりダメ?」
「だっ………………」
長〜〜………………い沈黙を挟んで、
「ダメ……じゃ、ない、けど」
結局、流れを受け入れることにしたクーデリアは、目をそらしながら、か細い声で答える。
「でもその……ちゃんと、その前に言って欲しいことがあるっていうか」
「言って欲しいことって?」
「それは、その……つまり……あんたの……気持ちっていうか……」
ごにょごにょと言葉を濁すクーデリア。ロロナはそんなクーデリアの耳元に唇を寄せ、
「くーちゃん……好き」
「ひゃっ……!」
ハッキリ聞こえるように囁き、ついでに耳元にキスまでした。
「大好き……だから、ギュって抱きしめて、キスしたい」
「っ……最初から、そう言いなさいよ」
「うん、ごめんね。でも、これからは何百回でも言ってあげるから」
「一回でいいわよ、そういうのは」
「うん、分かった……」
「……」
「……」
指先を優しく絡ませて、そのまま、二人の唇が重なった。
「ん……くーちゃん……もっと、するね……」
「う、うん……」
頷くクーデリアの背中に、ロロナの腕が回され、優しく抱きしめる。
ロロナの表情はいつもと変わらず、にこやかな笑みを浮かべている。ただその目の奥には、いつもと少しだけ違う、艶っぽい光が漂っていた。
もう一度、ロロナがクーデリアに口付けた。ロロナの舌が中まで入り、縮こまっているクーデリアの舌を解きほぐす。
「んっ……ふ、ぁ……」
クーデリアが声を漏らす。
ロロナは抱きしめる手に力を込め、クーデリアと舌を絡ませる。ほのかに甘く、暖かい感触をたっぷり味わう。口付けを繰り返すたび、唾液が糸を引く。
何十回とキスを繰り返したロロナは、今度はクーデリアの首筋に口付け、舌を這わせた。
「……あ……」
クーデリアの体が、ぶるりと震える。
跡が残りそうなほど強くクーデリアの首筋に吸い付きながら、ロロナはクーデリアの控えめな乳房へ、服の生地越しに手を這わせる。
「やっ、ちょっ……さ、さわらないでよ……あたしの、小さいし……」
「どうして? くーちゃんのちっちゃなおっぱい、可愛いよ」
「っ! ……ちっちゃい言うな……!」
「あ、ごめん。でも、可愛いのはホントだから」
「っぁ……!」
耳元で囁く。吐息のくすぐったさに、クーデリアの体が熱くなる。
ロロナはクーデリアの衣服を、少しずつはだけさせていく。
「ま、待って……誰か、来るかもしれないし……」
「大丈夫だよ。お休みの札出してるし、ほむちゃんはおでかけ中だし」
「いや、それだけじゃなくて、やっぱり、その……脱ぐの、恥ずかしいっていうか……」
「それじゃあ、わたしも一緒に脱ぐね」
ロロナは瞬く間に上半身裸になると、続けてクーデリアの服をたくし上げた。
クーデリアのまだまだ発展途上な乳房が露わになる。外気に触れたせいか、はたまた羞恥のためか、桃色の小振りな乳首がツンと立っている。
「くーちゃん……」
「あっ……っ、ぅ……」
クーデリアの小振りな乳房は、ロロナの手にすっかり収まってしまう。その手が、クーデリアの愛らしい膨らみをゆっくりと撫で回す。
「っ……」
「くーちゃん、ひょっとして痛い?」
「い、痛くはないわよ……でも、何か、変な感じっていうか……」
「嫌な感じ?」
「嫌じゃないわよ……だから、あの……もっと、して、いいけど……」
「じゃあ、するね」
「ひゃうっ!?」
ロロナの唇が、首筋から胸元、そして乳房へ、キスを繰り返す。乳首を吸うようにキスされた途端、クーデリアの体が一際大きく震えた。
「くーちゃん、ここが敏感なんだ」
「〜っ」
恥ずかしいやら気持ちいいやらで、クーデリアの顔はもう茹で蛸みたいになっている。
「じゃあ、もっとしてあげるね」
「やっ、あっ……!」
クーデリアの乳首をロロナの口が優しく包み込み、舌先で転がすように舐め回す。その次には、音が立つぐらい強く吸い上げる。
「んっ……くーちゃん……好き……もっと、くーちゃんのこと、いっぱいいっぱい、しちゃいたい……」
「ロロナ……」
「くーちゃん……」
また、唇を重ねる。露わになった肌と肌とが、吸い付き合うように重なる。
二人の舌が絡まり合う。ロロナだけでなく、クーデリアからも舌を入れてきた。遠慮がちに差し込まれてきた舌先を、ロロナはするりと受け入れ、自分の中で舌を絡ませる。
「んっ……ぁ……ん……」
「んっ……」
二人の唇が、何度も口付けを繰り返し、舌と舌が銀の糸を引いて、水音がアトリエに響く。
「ロロナ……ロロナぁ……!」
「くーちゃん……っ」
互いの名前を何度も呼び合い、強く強く抱きしめ合う。飽きることなく、唇を重ね、肌を触れあわせる。
二人の初めての睦み合いは、いつ果てるともなく続いていった――
「――とまあ、こんな感じかな。お互い本当に初めてだったから、キス以上のことってよく分からなくて、色々なところ触ったりキスしたり、何かもう無我夢中だったけどね。
でもくーちゃんのぷにぷにあったかい体を抱きしめてるだけで、すご〜く気持ちよくて……あれ? トトリちゃん?」
アトリエにて、先ほどからロロナとクーデリアの『初めて』の話を聞かされていたトトリは、頭から湯気を出しそうなほど真っ赤っかだった。
「どうしたのトトリちゃん? フラムみたいな顔色して」
「どっ……どうしたもこうしたもないですよ! 何でそんな話をするんですか!?」
年頃の女の子には少しどころではなく刺激の強い話を聞かされて、トトリは恥ずかしいやら何やらで、完全にテンパっていた。
「ええ!? だってトトリちゃんが、わたしとくーちゃんが関係を持ったときのこと聞きたいって――」
「違います! わたしは『先生とクーデリアさんが今みたいな関係になったきっかけはなんですか?』って聞いたんです!」
「…………………………………………そうだっけ?」
「そうです!」
「……てへ♪」
「可愛く誤魔化さないで下さい!」
「ごめんごめん。でも、あれからさらに仲良くなったっていうか、体だけじゃなくて心の繋がりも深くなったから。質問の回答として間違ってはいないってことで」
「……そうですか……」
その言い訳も誤魔化してる感じはしたが、とりあえず納得しておくトトリだった。
「というわけでトトリちゃんも、思い切ってミミちゃんにキスしたり押し倒したりしたらいいよ!」
「はい!? な、何でそんな話になるんですか!?」
「だってミミちゃんともっと仲良くなりたくて、さっきの質問したんでしょ?」
「違っ……べ、別にそんなつもりじゃなくて」
「何ならこのアトリエ使ってもいいから! 邪魔が入らないように周囲との繋がりを完全に遮断する結界とか張っちゃうから!」
「使いませんよいりませんよ!」
「それじゃあアランヤ村のアトリエで? それだとお姉さんがいるし、なかなかタイミングが難しいんじゃ」
「だからそもそも、そういうつもりはないですってば!」
「……本当に?」
「え?」
ロロナの表情が急に真剣になり、トトリが鼻白む。
「本当に、そういうつもりないの?」
「な、ない……です、よ」
「じゃあ、例えばミミちゃんが、トトリちゃんを好きって言ったら?」
「え……」
「ミミちゃんの方がトトリちゃんを好きって言って、トトリちゃんにキスしたり押し倒したりしたいって言っても、トトリちゃんはそれを断固拒否するの?」
「あ……え……それは……その……」
トトリの言葉が尻つぼみに小さくなり、黙り込んでしまう。
「答えないってことは、つまり、拒否はしないんだよね?」
「……うぅ」
「うふふ……トトリちゃん、か〜わいい♪」
「きゃっ!?」
顔を真っ赤にしているトトリを、ロロナがギュッと抱きしめる。
「な、何するんですか先生!?」
「ん〜、だって可愛いから。つい」
「つい、って……」
「ねえ」
「ひゃ……」
耳元でロロナが囁く。吐息が耳にかかる。くすぐったさに、トトリは身をすくませた。
「トトリちゃん、やっぱり『まだ』なんだよね?」
「な、何がですか……?」
「だから、『初めて』が」
「っ!」
トトリの顔が、さらに赤くなる。さっき聞いた話の情景が頭に浮かんで、体が熱くなる。
「ねえ、トトリちゃん……よかったら、先生が教えてあげよっか? 多分ミミちゃんも初めてだろうし、少しは知識があった方がいいよ、色々と」
「い、色々って……」
「大丈夫。肝心なとこまではしないから」
「や……ちょっ、まっ、待って下さい……いきなり、そんな――」
ロロナの手が、トトリの背中に回り、しっかりと引き寄せられる。そしてそのまま、ロロナの唇が――
その時。
かちん――と、何か固い音がアトリエに響いた。ロロナにも、トトリにも、多少は聞き覚えのある金属音。
銃の撃鉄を起こす音だ。
「あ……クーデリアさん」
一体いつの間にいたのか。アトリエに踏み込んでいたクーデリアは、氷のように冷たい瞳で、ロロナの後頭部に銃口を突き付けていた。
「こんにちはトトリ。今、未成年への淫らな行為をしている犯罪者を、現場の判断でやむを得ず速やかに処分するところだから、ちょっと待っててね。後の問題は全部、内々で処理するから」
「やめてくーちゃん! 権力と司法の闇を覗かせるようなことやめて!」
一切容赦のないクーデリアの態度に、全力でホールドアップするロロナだった。
「ったく……ちょっと時間が取れたんで顔を見に来たら、弟子に対して何をやろうとしてるのよあんたは」
「それはその、トトリちゃんの師匠として、保健体育の実習をしようかと――」
「錬金術に関係あんのそれ?」
「すみません、無いです……」
トトリとクーデリアに対し、ロロナは深々と頭を下げる。
「あの、先生……別にそんな、そこまで気にしてませんから。もういいですよ」
未遂だったので、トトリは別に怒っていない。が、クーデリアの方はそうはいかない。
「本人の自覚が無いのは重々承知してるけど、あんたはアーランドどころか、大陸でもかなり名の通った人物なんだからね。未成年、しかも自分の教え子に手を出してスキャンダルとか、洒落にならないから」
「はい……」
「そもそもあんたは昔っから――」
完全に長丁場のお説教モードに入ってしまったクーデリア。子供みたいに大人しくしているロロナ。
怒る側と怒られる側。だけど口調も表情も、不思議と刺々しいところがない。トトリの目にはむしろ、犬も食わない何とやらのように、仲睦まじく見えてしまう。それは、二人の関係を知っているが故の錯覚だろうか。
さておき、お説教は続いている。お茶でも入れて場を和ませるか、それとも気を利かせて席を外すべきか、真剣に悩んでしまうトトリだった。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
嬉し恥ずかし初体験の思い出を語ったロロナ先生がつい出来心でトトリちゃんをつまみ食いしようとしてくーちゃんご立腹でござるの巻。
ちなみにエンカウントしたのがミミちゃんだった場合、
→アトリエ内の事態に気付いたけど、くーちゃんみたいに堂々と乗り込んでいけず、つい覗き見をしてしまうミミちゃん。
→でも割と早い段階でロロナ先生に気付かれる。「こっそり覗いてるなんて、いけない子だねミミちゃん」
→『お仕置き』と称してロロナ先生とトトリちゃんが二人がかりでミミちゃんを――
という妄想をトトリちゃんに語り終えた腐ィリーさんが、後ろで全て聞いていたミミちゃん&くーちゃんに連行されました。
>>375 GJ!
ロロナ先生は天然でくーちゃん押し倒すのが似合ってるよね
もっとにゃんにゃんするべき
>>375 乙でした。毎度ながら素晴らしいクオリティ。
そして安定のフィリーさんw
>>375 乙、ロロクーGJです!ロロナてんてーいいキャラしてるなぁw
そしてオチに困った時の腐ィリーさんw
>>375 GJ!GJ!最高だよロロクー!
ありがとう!なんかいろいろガンバれたよ!
>「錬金術に関係あんのそれ?」
>「すみません、無いです……」
ここが、凄くロロクーだったwww
あと、トトリはロロナ先生相手だと割と常識人なのに
ミミちゃん相手だといろいろ振り切れちゃうのは
やっぱり師匠の教えが良いからですねwwww
てか、ロロナはクーちゃん途中で入って来たの
絶対気づいてて、きっと日常にちょっとしたスパイスと想像。
そういうプレイだ、きっと。
トトリには今回のようなロロナ先生の経験談と
あと、ロロナとクーちゃんの実技見学で勉強して
来るべきミミちゃんとの決戦に備えて欲しい。
アーシャのアトリエ楽しみだなあ……。
どうでもいいけど、さっきケイナのフルネームなんだっけ?と思って
「ケイナ」でググッたら『ケイナの服透け裏技』が上位に出てきた。
メルルはケイナのこと検索しすぎだと思うんだ……。
>>380 「メルル、ちょっと話があるのですが。これ、なんですか?」(検索結果を見せる)
「えっと、それは…」
「メルルは私としてますよね」
「あのぅ、それは、わたしじゃなくて」
「メルルぅ?」(ブラウザの検索履歴を見せる)
「えっと、なんていうか、出来心でつい…」
「こんなことしなくても、メルルになら何されてもいいのに。メルルは生身の私よりこっちが好きなんですか!」
「あっと…ごめんなさい…」
「メルル、反省してますよね」
「はい…」
「それじゃぁなんでもしてくれますよね?」
「えっと…」
「メルル」
「はいすいません、なんでも聞きます。うぅ、今日はわたしが攻めのはずなのに…」
こうですかわかりません><
・メルルの検索履歴
「ケイナ ラブラブ」
「ケイナ コスプレ」
「ケイナ パンツ」
「ケイナ 受け」
「ケイナ 隠れ巨乳」
・トトリ先生の検索履歴
「ミミちゃん 総受け」
「ミミちゃん おしり」
「ミミちゃん ピュアトリフ」
「ミミちゃん デレ」
「ミミちゃん 位置情報」
・ロロナ先生の検索履歴
「くーちゃん かわいい」
「くーちゃん 好き」
「くーちゃん もふもふ」
「りおちゃん 旅ブログ」
「ロロナのパイショップ 評判」
・フィリーさんの検索履歴
「錬金術士 百合」
「クーデリア 総受け」
「トトリ ミミ 王道」
「ケイナ メルル 下克上」
「メルル ケイナ 結婚」
「ロロナ トトリ 師弟カプ」
「クーデリア 寝取られ」
「リオネラ 三角関係」
「ロロナ クーデリア リオネラ 3P」
「ティファナ 未亡人 百合」
「ツェツィ 姉妹百合」
「ピアニャ ロリ百合」
「最果ての村 性生活 詳細」
「アーランド 同人 イベント」
「アールズ 印刷所」
「アーランド 冒険者 TS」
「トトリ ぬし 触手」
「百合オンリー アーランド」
「ホムちゃん ロロナ 主従百合」
「百合 新刊委託」
「ちむちゃん 飼育」
(※これで全体の10分の1ぐらい)
フィリーさんじゃないけどアトリエ百合オンリーはまだ開催されないのですか
触手は百合とは全然違うジャンルだと俺は思う
>>383 触手の性別が女の場合、をテーマの一つにした小説があってだな……
イカ娘の触手が唯一つ平気だったけど、基本あれってチ×ポの化け物扱い
だと思う・・・女性生殖器のような触手って・・・ないか
最後の「ちむちゃん 飼育」て何やね?
ちむ(♀)がトトリ達相手に下克上して飼育でもするのか?
既出の話題かもしれないけど
メルルとケイナの中身が入れ替わった時、メルルはケイナの胸が重くてぷるぷるしてるって言ったよね
つまり胸のサイズはケイナ>メルルなわけだ
だけどケイナがメルルの服を着るイベントでは、ケイナが胸のところが少し余ってると発言
ということはメルル>ケイナになっている
この矛盾を解消する答えは、メルルの胸がそれだけ成長したということだ
メルルはまだ十代なんだから成長すること自体はおかしくない
けど「重い」と感じるほど差のあった相手を短期間で追い抜くというのは普通では考えにくい
つまりそれだけ急成長を促す刺激が与えられているという推測が成り立つわけで、きっと夜な夜なケイナが
アーシャはさらにシスコンをこじらせるのか
レジナお姉さん大家族の新しい妹になるのか
末っ子気質ウィルベルの姉ちゃんになるのか
天然ダメ騎士リンカの世話焼き妹になるのか
あと何があったっけ
>>389 サイズと重さは必ずしも一致しないぞ、ある程度は比例してるが
それこそパットとか寄せて上げる服とか?
そういえば例の統合式典の時も普段よりもあるように思ふ
ケイナは露出が少ないからそのへんも謎だな
温泉でもきっちり胸元を隠してるし
リンカが可愛い。早くマリオンとの従仕関係がみてえ
リンカとマリオンの関係は気になるところだよね
トトリのときのツェツィメルみたいに、主人公とは別枠でカプになったりするんだろうか
ユリップルがヒロインを取り合うハーレムエンドは不評になるからしない方がいいかも
俺は平気だが
こんな日だから腐ィリーさんは大急がしなのか?とも考えたりした
>>396 人気者エンドはハーレムが不評というより、メルルが八方美人なせいでみんなの仲が険悪になった、みたいに描かれてるのが問題だと思う
直前に私情友情愛情イベント見てると、違和感がすごい
メルルは何かスッキリしないエンディングが多かったし、アーシャはその辺ちゃんとしてほしいな
鬱なバッドエンドがあったとしても、説得力のある展開なら受け入れられると思うし
>>397 それぞれのカプでどっちが上か下かを考えていたら1日終わってたそうな
メルルモテモテだもんなぁ
ケイナにトトリちゃんにミミちゃんにエスティさんにフィリーさんにフアナさん・・・
ルーフェス以外はみんな相手が女の子ってのが百合的にポイント高い
ロロリオの者です。
空気ぶった切ってss投下させていただきます。
トトリエ時代のトトミミのお話。ミミ視点で短いです。
タイトルは「あなたが私を呼ぶたびに」
トトリは私を、「ミミちゃん」と親しげに呼ぶ。まるで、ずっと前から一緒にいた幼なじみのように。
最初は、ただ変な奴だと思っていた。あくまで距離を取ろうとする私にずかずかと歩み寄ってきたり、こんな私といて楽しいと、にこにこしながら言ってきたり。
だけど、いつからだろう。彼女が私を呼ぶ声を聞くと、くすぐったくなるような、そんなよくわからない感情が湧くようになったのは。
「ミミちゃんって、やっぱり強いよね。格好いいなぁ」
トトリと過ごす時間は、私の胸の中にぽかぽかとした温かさをもたらす。
「ミミちゃんミミちゃん! 見て見て、珍しい鉱石取れたよ!」
トトリが私に笑顔を見せると、心臓が騒いで顔が熱くなって、落ち着かなくなる。
「ミミちゃん。ねえ、ミミちゃん。今のお話聞いてた?」
この気持ちは一体何なのだろう。今まで誰にも抱かなかった、この想いは。
「ミミさんとトトリちゃんって、いつも一緒にいますよね。何だか友達と言うよりは、恋人みたいで微笑ましいなぁ」
ある時、ギルドの受付嬢のフィリーにそう言われて、気がついた。
どんな男にだって、私は一度だって何も感じたことはなかった。だからそれは、私には一生無縁なものだろうと思いこんでいたのだ。
だが私は、同じ女であるはずのトトリに、惹かれ始めている。否定をしたって、心ではわかっていた。
私はトトリに、恋をしているのだ。
彼女には絶対言い出せない。もしこの気持ちは伝えてしまったら、彼女はもう私を呼んではくれないだろう。それが怖かった。何よりも、怖かった。
もしかしたら、私はこのまま、ずっと。
彼女の隣で報われない想いを抱えたまま、生きていくのだろうか。
「ミミちゃーん!」
今日もトトリは、私の名前を呼ぶ。私は無表情を取り繕って振り返る。
胸に広がっていたあの温かさは、微かな鈍い痛みへと変わっていた。
以上です。読んでいただいた方ありがとうございました。1レスで収まってしまった…。
世間はアーシャのアトリエ発売間近なのに、まだトトリエでにやにやしている私を笑うがいいさ!
そして最近不調気味で、もしロロリオが結婚していたらinトトリエ妄想が全然書けないというorz
>>399 健康ランドのイベントとかを見るに、ライアスもメルルのことをちゃんと女の子として意識してるっぽい。
このスレとしてはどうでもいいことかもしれないけど。
メルルはうに投げの女の子とか家庭教師補佐とかマリエとか、モブキャラにも好かれてる気がする。
うに投げの子はエンディングでツンデレなこと言うし、
家庭教師補佐は補佐なのに正規の家庭教師(ルーフェス)より熱心に課題出してくるし、
マリエに至っては往来でメルルのテーマソングを力いっぱい歌うし(しかもちゃんと本人に許可を取って)
>>402 乙GJ
同じツンデレでも付き合いの長い分安定してるロロクーと違って、ミミちゃんは色々とこじらせそうだよね。
メルリエだともう立派なトトコン患者になってたけど。
マリオン×リンカはカプ名はマリンカでいいのかな?
まあ二人の子供の名前としての方がしっくりきそう
ちなみに祐巳と可南子のスールだと今気づいた
>>403 ライアスにはルーフェスいるしメルルとのフラグ皆無だからいいよ((
>>402 おつー!よくやった!
ミミちゃんらしくていいなw
トトミミ長編をコソーリ書いてる者です。
全くと言っていいほどSS書く時間がないので続きがどんどん遅れるフラグがががgggg
お詫びも兼ねて前に書いたトトミミ学パロを公開。
学パロです。学生パロディです。トトリ後輩ミミ先輩。細かい事は気にしない!
苦手な方はガンスルーでひとつお願いします!!!
いつも通りの生徒会の仕事がいつも通りに長引いた放課後。
私の仕事が終わるのを錬金術の本を読みながら待っていたトトリが、ふと顔を上げて呟いた。
「ミミ先輩って私に対する態度と他の人に対する態度と違うよね」
「……何よ、突然」
訝しげな声になる。だって仕方ない。そんなのは今更な事だからだ。
ペンを動かしながらトトリの方に気を向ける。
「だって他の人には清楚でお淑やかに振舞ってるのに、私には『何やってるのよ、このぐずっ!』とか『あんたみたいな凡人以下がどうして錬金術なんて出来るのよ!おかしいわっ!?』とか言ってたじゃない?」
「そんな事言って……たけど、それは大分前の話じゃない」
「まぁ、そうだけど」
軽い返答に溜息が漏れる。
トトリはどうやら本を読むのに飽きて、雑談に誘っているようだ。
ちらりとまだ片付いてない単調作業の仕事の残りに目を向ける。まぁ、話しながらでも大丈夫な量よね。
私の溜息の返答をどう受け取ったのか、やや慌てながらトトリが言う。
「あ、でも最近はミミ先輩も優しくなったよね!笑ってくれるようになったし!前のミミ先輩ってなんか鬼のようだったもの。角とか幻視しちゃいそうで怖かったな」
「ほほう、あんたは最初そういう事思ってたわけね。ふーん」
「え?あ。いや、その〜…ご、ごめんミミ先輩!ごめんね!」
失言に気づいて、とたんに謝りだすトトリ。
私は若干怒ったふりをしながら、別にいいわよ、と伝える。
事実、鬼のような態度を取っていたのは私なのだから。
「あの、だから、私に対する態度と皆への態度の違いの理由が知りたいなぁー、なんて」
「そんなもの考えれば分かるでしょうよ。」
思い返すのは4月の出来ごと。
出会い方から最悪だったこいつと、最初から普通の人と同じような態度なんて私が振舞えるはずもなし。
見かけるたびに、言葉を交わすたびに、肌に刺さる様な態度を取っていた。
爆風によって引き合わされた私達が今のような関係になる事は、出会った当初の私からしたら天地がひっくり返ってもあり得ないと断言していた事だろう。
そんな相手がこうして、一番近い位置に居る。
変わるものだな。
改めて時の流れは偉大だと感じる。
「まだ知り合ってそんな長い訳じゃないけど、腐れ縁みたいなものよね」
好意的な意味で、とは口が裂けても言えない。
がたんと立ち上がる音がする。
思い出へのダイビングを余儀なくされた相手に、どうしたのかと問いかけようとした。
「えい」
後ろから抱きつかれた。
伝わるトトリの体温と呼気に心臓が跳ねまわり始める。
「わ!あ、あんた何してるのよ!仕事できないじゃない!」
「スキンシップだよー。もー、顔赤くしてミミ先輩ったら可愛いなぁ」
「べ、別に赤くなんてなってないわよ!いいいいいいから早く離れなさい!」
「やーだー。えへへ、ミミ先輩の湯たんぽだ」
がっちりと首のあたりに腕をからめて、私から離れようとしない。
恥ずかしさと嬉しさが綯交ぜになったおかしな感情を抱えて、トトリの腕をつかんだ。
「ねぇ、私、ミミ先輩と友達になれたかな?」
ふいに耳元で呟かれた小さな言葉。
引き剥がそうとトトリの腕を握った手に、それ以上の力を込められなくなっていた。
暴れまわる心臓とか、不自然に感じる緊張とか、真赤になっているだろう顔とかのせいではなく―――トトリの声に、寂しさを、感じた気がしたから。
「な……にを言って……」
かすれてしまう声。
それ以上の言語を紡げず、固まってしまう。論理的な思考がつむげない。
この子は何を言ってるの?
何も言えないまま、私にとっては相応の時間だけが流れる。
前触れなく、す、と首に絡まっていた両腕が外される。
「ごめんね、ちょっとからかってみたんだ」
いつも通りのトトリの声。
それがスイッチとなり私の両肩から力が抜けた。
色々な解放感からはぁ、と息をつき文句の一つでも言ってやろうと後ろに居るトトリの方を見上げる。
そこに居たトトリは、トトリじゃ無かった。
表情こそ笑っていたけど、これは絶対にいつものトトリじゃない。
何かを押し隠して、それを隠し通そうとしてる顔だ。
それが、分かった。
だって。そうだ。見れば分かる。トトリと私は、もうとっくに。
「……によ、その顔は」
「――え?ミミ先輩?」
出会い方は最悪。
第一印象は最低。
いい所なんて見つけられるはずがないと思ってた。
こんな奴がどうしてうちの学校の生徒なんだと思った。
でも言葉を交わして。
優しさに触れて。
助けて、助けられて。
家事能力が無い事を知って。
錬金術はぴか一だけど、他の勉強がまるでダメな事も知って。
怒鳴って。
笑って。
同じ時間を過ごして。
自分が一番素のままで居られる相手なんだって悟った。
だから。
友達。
そんなの。
当たり前じゃないの。
たちあがっていきなりトトリの手を握って私の方へ引っ張る。
「え!?わ!!」
倒れこんでくるトトリをしっかりと抱きとめた。
「そんな顔……するんじゃないわよ」
「ミ、ミ先輩?」
気持ちを伝えてくれるのはいつもいつもトトリばかりだった。
恥ずかしくて照れくさくて、自分の素直な気持ちをトトリに伝えた事なんて無かった。
トトリの優しさに甘えていたのだ。
自分よりも年下の小さな女の子に不安を抱かせる程度には。
「あんたと私は、もうとっくのとうに……友達よ」
腕の中の体かぴくんと小さく揺れた。
「――――うん、ありがとう」
「なんでお礼なんて言うのよ。変な子ね」
「うん……ごめんね?」
「謝る事でも、ないわよ」
そのままの体勢で二人でくすくすと笑いあう。
顔は見えないけど、聞こえてくる笑い声が普段通りのトトリだった。
明るくて、優しくて、私の気の置けない小さな友人。
初めて自分から抱きしめる柔らかで華奢な体は、想像よりもずっと細くて。
――――ずっと、この愛しい存在を抱きしめていられたら。
泡がはじけるように浮かんだその想い。
自覚したとたん、急激に現状が恥ずかしくなってきた。
慌ててトトリと自分の体を突き飛ばすようにして距離をとる。
「ミミ先輩…?」
突発的な私の行動がおかしく思えたのか、トトリが首を傾けて訝しげに問いかけてくる。
その顔を正面から見ていられなくて体ごと横を向く。
だって…だって、そんな、まさか。私がトトリの事を、とか。
でも前から感じてたトトリと一緒に居る時の心地よさとか、トトリが他の人と話してる時のもやもやとかの説明がこれでつく訳だ。
そうか、なーるほどなんて納得できず、頭をかきむしりそうになってしまう。
あーもう!なにがどうなっているの!!
「ぷ、あははっ!ミミ先輩百面相してるみたい」
私の懊悩という名の一人芝居をポカンと見ていたトトリがこらえきれずに笑いだした。
底抜けに明るい、気持ちのいい声が生徒会室に響く。
その声を聞いて気持ちがなんとなく、すとんとあるべき場所に収まった。
そうだ、今私は自覚したに過ぎない。きっと前から惹かれていたのだ。
素のままの私と向き合ってくれた、たったひとりの友達に。
「……いつまで笑ってるのよ!」
「ご、ごめんね、ミミ先輩。ふふ」
少しばかり目に涙をためながらようやくトトリが笑いやむ。
別にトトリが悪い訳じゃないけど、やや恨めしい気持ちになってしまうのは仕方ない事だと思う。
そういう気持ちを感じる以上に、笑うトトリを見るのは嬉しかったのだが。
丁度いい。恥じのかきついでに、前から言いたかった事を提案しよう。
今言わなかったら、もう二度と言えない気がする。
「あの、さ。その……人目がある所ではアレだけど……、名前でよんでいいわよ」
「え?でももう名前で呼んでるよ?ミミ先輩って……」
キョトンとして問い返してくるトトリ。
その純粋無垢な瞳をみて、ついに恥ずかしさが臨界点を突破する。
「あーっもう!違うわよ!察しが悪いわね!!ミミって……呼び捨てていいって言ってるのよ!!」
「呼び捨て?」
「そ、そうよ!とととと友達だから、その……『先輩』なんて付けなくていいって事よ!」
ふんぞり返って、そう告げる。
今でさえこんなに恥ずかしいのだ。
まともな精神状態の時に伝えたら爆死してしまうだろう。
いや、きっとあとで思い出すだけで爆死レベルの事態かもしれない。
でも、きっと後悔はしないのだろう。
「――――ありがとう、“ミミちゃん”!」
そう言って、この上なく嬉しそうに笑う好きな人が目の前に居たのだから。
と言う訳で学パロでした。トトミミhshs。
単にトトリちゃんに『ミミ先輩』と呼ばせたかっただけとか何をバカな、ははh(ry
それではまた会う日まで!新作ももうすぐ。盛り上がれアーランド!!
GJ!
錬金術があるってことはマナケミアみたいにファンタジー設定の学園ものかな?
どんな世界でもラブラブなトトミミは素晴らしい。
でもそんな微笑ましい2人の様子をこっそり物陰から観察している非常勤講師のフィリーちゃんを幻視してしまう俺はだいぶ毒されているなと思った。
その昔ザールブルグってあってだな(ry
ああ、うん。元々学園ものっていうか、学園が舞台なのがアトリエなんだよね。
ただマリーもエリーも試験以外に学生らしいイベントがあんまりないし、リリーは学園自体を建てることが目的だしで、
あんまり学園ものって感じがしなくて。
PS3持ってないしアトリエは敷居高いから…って見送ってたのにターニャちゃんの容姿と設定がツボにハマって困る
他にも購入予定のがあるのに…でもターニャちゃん可愛いよおおおおおお
でもターニャってサブキャラだから仲間にできないぞ
まあ自分もアーシャは割と期待してる。今回は個別エンドあるらしいし
ストーリーも妹探しだし今まで一番百合っぽい感じ
ただ幼馴染的女の子がいないのが残念だが
>幼馴染み的女の子
パナを擬人化すれば・・・
>418
確かにその伝統は今回はないな〜妹に重点置いてるからなのか〜
マリオンとリンカが幼馴染でもいいと思ってる、主人公とのではなくとも
マリオンに服着せてもらってるリンカさんかわいい
幼馴染キャラがいないのは残念だけど、シリーズ通して見ると主人公&幼馴染が両方とも女の子なのって
マリー&シア
ウルリカ&クロエ
ロロナ&くーちゃん
メルル&ケイナ
ぐらいでそんなに多くないんだよね
幼馴染だとむしろノマカプが多いという(ヴィオ&ロード、フェルト&ヴィーゼ、エッジ&イリス、ロゼ&リリア、ロロナ&イクセル、トトリ&ジーノ、メルル&ライアス、アニス&サイード、リーナ&リュオン)
まあ幼馴染に限らず、アイゼルとかミミみたいな同年代キャラもいないよね
ウィルベルは妹タイプだしリンカやレジナは年上だし
アーシャ(17)と一番近いのだとメリエッタ(19)か
ナナカは年が近いって書かれてるけど、実際何歳なんだろうな
年齢確認してて気付いたけど
ウィルベル(14)が身長141センチ
ターニャ(11)が身長154センチ
この事実に何かを期待せざるをえない
なんでもよく食べることを誇りに思ってるリンカちゃん
マリオンさんの教育の賜物なのか…?w
SS投下します。
トトリエ時代のトトミミ。
雨が降っている。
ここ数日振りっぱなしの長雨だ。雨足は強まったり弱まったりだが、一向にやむ気配が無い。
トトリのアトリエ。ソファに腰掛け本を読んでいたミミは、ふと窓の外、分厚く陰鬱な雲を見て、小さくため息をついた。
最近、天気がずっとこれなので、冒険にも出ることができない。冒険の最中に降る雨ならやむを得ないが、好きこのんで雨の中を冒険に出る人間はいないからだ。
開店休業はミミに限らず、この辺りで活動している冒険者全てに等しいことなのだが――
「ふんふんふふ〜ん♪」
楽しそうにハミングしながら調合釜をかき混ぜるトトリの姿に、ひどく不公平なものを感じてしまうミミである。
トトリはアウトドア派の冒険者であると同時に、インドア派の錬金術士でもある(実際には錬金術も大概アウトドアだが)。なので、こういう悪天候の時は、思いっきり錬金術の方に精を出せばいいと言うわけだ。
外で槍の稽古をすることもできず、せいぜい暇つぶしにこのアトリエに来て、調合をするトトリを眺め――もとい、本を読むぐらいしかできないミミとは大違いである。
もっともミミとしては、長雨を口実にトトリのアトリエに入り浸れるのだから、そう悪いことでもない。
――などと思っている事実は一切決して微塵もなく「こんな田舎の村じゃ他に行くようなところもないし、冒険に誘ったのはあんたなんだから、せいぜい長雨の無聊を慰めなさいよね」というのが専らの言い分である。『慰め』という単語を拡大解釈しないように。
「……よし! これでひとまずOKかな」
調合に一区切りついたらしいトトリが、ミミの傍に寄ってくる。
「ミミちゃん、退屈させちゃってごめんね」
「別に、気にしなくていいわよ。そういえばお姉さんは? 最近見かけないけど」
「酒場のお仕事が忙しいみたい。海の方もずっと時化ちゃってて、漁師さん達が酒場に入り浸ってるんだって。珍しくお店が繁盛してるから、ゲラルドさんは喜んでるみたいだけど」
「ふーん……」
ということは、この長雨が続く間、トトリとミミはほとんど二人っきりということで――
「ちむ〜」
「ちむむー」
いや、違った。この雨の中、外に材料採取に行かせるのは酷なので、全員揃って室内作業なちむちゃんズである。
「あ、ちむちゃん。今日のお仕事終わったの? じゃあ、はい。ご褒美のパイね」
「ちむ〜♪」
「ち〜む〜♪」
パイを受け取ったちむ達は、早速嬉しそうにかじり付く。
「ミミちゃんもパイ食べる?」
「ちむ達のついでに?」
「そんなんじゃなくて……」
「冗談よ。いただくわ」
「じゃあお茶入れてくるね」
そう言って、トトリは台所へ向かう。
残ったミミの耳には、外の雨音と、ちむ達がもぐもぐとパイを食べる音だけが響く。
ミミはぼんやりと、ちむ達に視線を向ける。
「ちむ〜?」
いち早くパイを食べ終えたちむが、ミミの視線に気付いて首を傾げる。
「ちむ〜……」
しばらくそのままミミと目を合わせていたちむは、ふと何かに気付いたようにポンと手を打った。
「ちむ! ちむむ!」
ちむは両手を上げて、パイを食べ終えた仲間達に呼びかける。どうやら「集合」の合図らしい。
ちむ達は顔を寄せ合い、何やら「ちむちむ」「ちむ〜?」「ちむ、ちむ……」「ちむっ」と話し合い(だろう。多分)をしている。
「ちむ! ちむむ! ちむっ!」
「「「「ち〜むっ!」」」」
どうやら結論が出たらしい。ちむ達は大きくうなずき合う。
「ミミちゃんお待たせー。あれ? ちむちゃん達どうしたの?」
「ちむむー!」
お茶を運んできたトトリに、ちむは身振り手振りで何事かを伝えるや、五人で団子になって大きな傘を差し、アトリエを出て行ってしまった。
「ちむちゃん……雨なのに出かけちゃった」
「何て言ってたの?」
「さあ……? でも、行き先は多分、お姉ちゃんかパメラさんのところだと思う」
「……」
ミミは少し考える。先ほど、アトリエを出て行く間際、ちむがミミに向けてグッと親指を立てていたのだ。
(まさか、ちむ達……気を遣ったつもりじゃ……?)
「ミミちゃん? どうかした?」
「あ、いや、何でも……」
たとえちむが気を遣って席を外したからといって、それが何だというのだろう。ミミとトトリがアトリエで二人っきりという、ただそれだけのどうということもない状況になるだけの話だ。
(そう。そうよね……それだけよね……別にそんな、気にするようなことじゃないわよね……うん)
「はい、ミミちゃん」
「ありがと」
お茶とパイをトトリから受け取って、早速いただくことにする。
「ん……トトリもまあまあなお茶を入れられるようになったわね」
「えー? まだ『まあまあ』なの?」
「最初にあんたが入れたのなんて、ひどかったでしょうが。茶葉の量は悪い意味で適当だし、ほとんど蒸らさずカップに注ぐし」
「でもほら、錬金術で作った黒の香茶は美味しかったでしょ」
「……確かあれも、最初に飲ませてもらったやつはやたら渋かった覚えがあるんだけど」
「う……で、でもまあ、今は美味しいのが入れられるんだから、いいじゃない」
「やれやれ……」
苦笑いするミミだが、事実、今飲んでいるトトリのお茶は美味しい。そしてそれ以上に、トトリが作ったパイも美味しい。
「……」
「ねえミミちゃん」
「何?」
「ミミちゃんって、やっぱり雨嫌い?」
「……雨が好きって人は少数派だと思うけど」
「うん。わたしも、雨あんまり好きじゃないんだけど……最近、ちょっと好きかなって思うようになって」
「どうして?」
ミミが訪ねると、トトリは嬉しそうな笑みを浮かべて、言った。
「雨が降ってると、ミミちゃんがよく来てくれるから」
「なっ……!?」
ミミの顔がたちまち赤くなったのは、ただトトリが恥ずかしいことを言ったからではなかった。
「ミミちゃん? どうしたの?」
「べ、別に何でもないわよ!」
「ミミちゃん、顔赤いよ? ひょっとして風邪ひいた?」
「ひいてない! ひいてないから!」
大慌てで首を横に振るミミ。今この状況で、もしも「熱計りおでこコッツン」などやられでもしたら、確実にミミのテンパりメーターは限界を突破するだろう。
「ホントに大丈夫?」
「だ、大丈夫! っていうか、そもそも何でもないから!」
「うん、ならいいんだけど……えーと、何の話してたんだっけ? 雨が降ってると、ミミちゃんが来てくれるって話だっけ」
「わ……私は、別に雨が降ってるから来てるってわけじゃ」
「あ、そうなの? じゃあ、晴れの日なんかでもこうして毎日みたいに来てくれたり――」
「違う!」
(何でそこでそんなに嬉しそうな顔をするのよあんたは!)
無邪気なトトリの笑顔は、ひたすらミミを困惑させる。
「私がアトリエに来てるのは、その……長雨のせいで冒険にも行けないし、退屈で他に行くところが無いからであって、別にあんたのために来てるわけじゃないんだからね!」
「うん、それは知ってる」
「なら――」
「でも、ミミちゃんの理由とは関係なしで、わたしはミミちゃんが来てくれたら嬉しいから。だからわたし、雨が好きなの」
「――〜〜っ!」
「……ミミちゃん? 何かまた顔が真っ赤……」
「だから何でもないってば!!」
ミミはそっぽを向いた。
言えるわけがない。
まさかミミも(雨は嫌いだけど、こうしてトトリと過ごせるなら悪くないわね……)なんてことを考えていたなど、口が裂けても言えるわけがなかった。
ふと窓の外を見る。
長雨は、まだまだ一向に、やむ気配を見せてはくれなかった。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
※グイード氏の所在については「台所でちむがそれらしき影を目撃した」「酒場の客の中に気配があった」等の未確認情報が錯綜しており、現在も把握出来ておりません。
発売まで一週間を切ったアーシャのアトリエが超楽しみ。
日常生活に支障をきたすレベルでパナが可愛い。パナ可愛いよパナ。
>>426 GJです。楽しませてもらいました
アーシャといえば杖が百合の花?っぽいことに今更気づいたんだけど
これは狙ってるのだろうか
杖もそうだけど姉が妹を探すのが目的ってのも充分狙ってるストーリーと
思える
あと今回はパメラさんはいないのか‥
トトミミgj
パメラさんどころかぷにぷにもいないんじゃないっけ
性格違うのにベルちゃんをニオの代わりにして擬似姉妹プレイに走って
ニオと再会後気まずくなるアーシャを早くプレイしたい
ターニャとナナカも手懐けて妹ハーレム築きたい
オディーリアがパメラ枠っぽい感じ
人外だし丈が長くて姫袖な服とかパメラに似てるし
そういえばパメラさんもイリスGFのときに図書館の司書さんしてたね
マナケミアでも図書室の管理人(自称)してたし
アーシャの前髪の関係で右からのアングルだとウィルベルと同じでドヤ顔カワイイ
今回は早々に女の子パーティできるね
パツキンは咲の弁当係にしかみえぬ
新作発売したのにこのスレの静けさは・・・
まだアーシャで遊べてないんだよね
百合的にはどうですか?
百合度はぼちぼちかな
まんべんなくイベントが発生するんで好み分かれそう
個人的にはナナカ×アーシャ推し
メルリエのトトミミみたいなのはなさそうだよね、となるとCPが固定されないだろうから二次創作的には面白いかも
アーシャがシスコンすぎてニオを薬漬けにしようとしたところは笑った
>>437 始めたばっかりだし、調合のシステムとか武器防具の強化とか
基本的にヌルゲーマーなんでまだよくわからんしまだ序盤…
でも序盤から女の子パーティーで進むのはいいんじゃないですかね
なんか本スレみると男二人は仲間にできるの遅いみたいだし
ただ自分らみたいに百合とかあんま興味ない層にはこれってどうなんだろう
ヘテロ派に避けられてしまうような事態も困る(次回作が出るかって意味で)
アーシャも2、3作目出たりするのかな?主人公変えて
アトリエシリーズはもともと女性向けの女の子主人公のゲームだったと
聞く。ロロナあたりで一気に男性ファンが増えたらしいが
それはそうと裕巳と可南子の従仕カップリングはどうなの?脈あるの?
咲と和でもいいけど
電撃プレイステーションでキャラ相関図でアーシャとナナカの関係が
「牛友達」って何だよ牛友達って・・・
乳を絞るのか
乳を
ウィルベルイベント「お礼は身体で返す」
アーシャ「期待してるね」
今このイベントを観て飲み物吹いた。護衛での意味だろうとは分かりつつも
期待しちゃうじゃないか。アーシャマジ天然な返事
>445
なるほど錬金術による搾乳プレイですね、薄い本向けだな
gdgdしてたから無理かと思ったが
クリアした?3年目の5月に 調合も失敗しないし今回かなり簡単だと思うわ
>>443 シリーズは違えどメルルの後が出たんだから大丈夫だと思うよ
シリーズとして続くならアーシャニオ姉妹くらいは出してほしいな
その辺はある程度アーランドを継承してほしいところ
>>443 >アトリエシリーズはもともと女性向けの女の子主人公のゲームだったと
でもイリス〜マナケミアの頃は男主人公で普通のRPG風味になってたんだよなあ
正直迷走していたというか
同シリーズ内でキャラが引き続き出演するのは定番だからその辺は大丈夫じゃないか?
ザールブルグでは主人公のマリーがエリーでも登場したし、イングリド先生とかその他のキャラもかなりの割合で再登場してた
グラムナートではユーディー→ヴィオでパメラさんが引き続き登場(それどころか以後アトリエシリーズの看板に)
イリスではタイトル通り三作ともイリスが出るし
マナケミアだとグンナル先輩と一部教師陣が引き続き登場
アーランドだとロロナ・ステルク・パメラ・ハゲルが皆勤賞だな
6月は百合的においしい作品が出まくったせいでまだ買えてない・・・
ここ見てる感じだとよさげだから出たばかりの給料使って買ってしまおうか
>>450 基本的にはいいんだけど、街の人の依頼を確認するメニューがないのは辛い
なぜかそこは退化しちゃってるw
アーシャネタバレあり?
俺がへたくそなのは分かるんだけど助けられる寸前のダンジョンボスにやられて
タイムリミットが来て終わったw
終わり方もニオは助かったんだけどすげぇ納得いかないから今二週目いってる
早く姉妹百合みたい・・・
若干二名ほどの男キャラのイベントが煩わしいと俺は感じた。
まあノーマル好きには美味しくて良いキャラなのは分かるんだけど
なんだかなー
イベントの入り方も半強制だし避けようがない
頑張ればかなり早い段階で助けられるからがんばれ
男キャラは別に俺は気にならんかったな、皆良いキャラしてるし。キースさんツンデレかわいい。あと個人的にアーニーさんはくろあきと似た雰囲気を感じるw
ところでオディーリアENDとターニャENDとナナカENDがいくら探しても見つからないんですけどこれバグですかね
アーニーは嫌いじゃないけど
ストーリー性を重視してのことなのだろうかイベントが片っ端から起きるのは2週目だるいな
イベント相手がペアになってるのも少しだけ残念
リンカ×マリオン
ナナカ×アーシャ
ニオ×アーシャ
は良かった
>>451 マウス買いに行ったらみかけて衝動買いしちまった、金が・・・
まだ序盤だけど結構楽しいな
戦闘が最初意味不明すぎて慣れるまで時間かかったけど
やはり歴代最高百合はととみみだな。
他のカップリングを否定する気はないがトトミミが最高なのは同意
リンカEDの会話からすると、マリオン達の母国がアーランドの可能性もあるね
それならパメラさんとハゲルさんが不在なのも納得いくし
ザールブルグとグラムナートみたいな感じだろうか
つまりマリオンさんの言う上司ってエスt…
SS投下します。
アーシャのアトリエでマリオン×リンカ。アーシャ×リンカ風味も込み。
発売前に書いたのを、加筆修正したものです。
間もなく夜が明ける。白み始めた空。闇に少しずつ藍が混ざっていく。
フィルツベルクの郊外、東の山の稜線を望む小高い丘に、一人の女性――リンカが立っていた。長い髪を風に吹かれるまま、無心に遠くを見つめている。
東の山脈の、そのさらに向こう。薄雲に霞んだ稜線の向こうまで、リンカは遠見をしているかのようだった。真っ直ぐな瞳。朝はまだ冷えるこの時期。時折、口から白い吐息が漏れる。
不意に、その目が細められた。日の出だ。日輪が山の頂から顔を出す。淡く優しい暁の光が、リンカの体を包んでいた。
「……よし」
一人小さく呟き、リンカは傍らの地面に突き刺していた剣を手に取った。
ただの剣ではない。持ち主の身の丈を超えるほどの長大な大剣。大の男でも、持つだけで精一杯と思われる代物だ。
リンカはその鉄塊のような大剣を、軽々と手に持ち、構えてみせた。
「……」
静かに、呼吸を整える。
周囲には誰もいない。自分一人。手には大剣を一振り。背筋を真っ直ぐに伸ばし、刃を前へ、正眼に構える。
一つ、二つ、呼吸を整え――
剣を振りかぶる。袈裟懸けに振り下ろす。
目にも止まらぬ、というほど速い動作ではない。しかし、淀み無く、流れるように滑らかな動きだ。
刃が風を斬る。短く、鋭く、音が鳴る。
右袈裟に斬った姿勢から、手首を返し、逆袈裟に振り上げる。続いて右薙ぎ、左薙ぎ。そして正面に、唐竹割り。
まるで演舞のように華麗な動き。だが、もしこの剣の間合いに、魔物、あるいは斬られるに値する悪党が居たのなら、間違いなく無惨な、かつ無慈悲な光景が広がっていただろう。
「……うん」
確認するかのように、リンカは頷く。
東の山から金色の太陽が顔を覗かせている。眩い朝日が地上へ降り注ぐ。光に抱かれ、なだらかな丘が輝きだす。
夜明け。朝が来たようだ。
「リンカ」
ふと後ろからかけられた声に、リンカは振り向いた。
そこにいたのは、肩で揃えた艶やかな黒髪と、大きな瞳が印象的な、小柄な女性だった。
「マリオン、おはようございます」
大剣を持ち替え、リンカはきっちりお辞儀して朝の挨拶をする。
堅苦しいくらい礼儀正しいリンカの態度に、マリオンは苦笑半分の笑みを浮かべた。
「おはよう。朝から精が出るわね」
「これが私の本分ですから」
どこか誇らしげな表情で、リンカが答える。
朝、必ず一度は剣を握り、振るう。リンカにとって日課の一つ。その日一日を始める儀式のようなものだ。
「そう。本分ね……」
「はい」
「護衛としての?」
「はい」
「……リンカ」
「はい?」
「もう何度も繰り返し言ってきたことだけど」
「はい……?」
マリオンは偏頭痛のように、指先で額を押さえる。
「女の子としての本分――を、忘れてない?」
「え……」
マリオンの目が、鋭く光る。リンカの表情が、明らかな怯みを見せる。
「朝起きたら、外に出る前に髪をきちんと梳かして、身なりを整えろって言ったでしょ。寝癖で髪はボサボサだし、服はあちこち皺だらけだし」
マリオンの言う通り、リンカの身なりは、お世辞にもキチンとしているとは言えない状態だった。
「いや、しかし、まだ早朝ですし、人目もほとんど――」
「人目がどうとかいう問題じゃないの」
中途半端な反論など許さぬ断固とした口調。たちまちリンカも黙り込む、
「ほら、戻るわよ。久しぶりに私が髪梳かしてあげるから。まったく、そんなに綺麗で長い髪してるのに、もったいないったらありゃしない」
「あの、しかし、まだ朝の鍛錬が――」
「黙りなさい。鍛錬と身だしなみ、女の子としてどっちが大事なのか、言うまでもないことでしょう」
「は、はあ……」
こうなってはもう従う他はない。肩を落とし、リンカは大きな剣を引きずるようにしてマリオンについて行った。
「――ということが、今朝方ありまして」
「はあ……それでリンカさん、ちょっと寝不足気味なんですか?」
すっかり日は昇った朝の時刻。フィルツベルグの街角。顔を合わせたアーシャと立ち話しているリンカは、どこか疲れた様子だ。
「いえ、早起きは元々の習性です。これは寝不足というより、慣れないことによる気疲れというのが正確かと。
マリオンはあの後『早起きしちゃって時間あるしせっかくだから』などと理由を付けて、髪の毛だけでなく爪やまつげの手入れといった、未知なる行為を私に強いたのです」
「未知なるって、そんな大げさな……」
「私は爪用のヤスリなるものが存在することを、初めて知りました……」
軽いカルチャーショックを受けているらしいリンカに、アーシャは苦笑いを浮かべる。
「でもリンカさん。マリオンさんがそれだけ手を掛けただけあって、今日はいつも以上にキレイな気がします」
「そう言われても、私は違いが全く分かりませんが……」
「少しは分かりましょうよ……」
アーシャはリンカの顔をしげしげ眺めながら、マリオンに同情していた。
「……? アーシャ。どうかしましたか?」
自分のことをじっと見つめているアーシャに、リンカは訝しげに声をかける。
「あ、いえ。単に再確認というか、大したことじゃないんですけど……」
「何でしょう?」
「リンカさんって、美人ですよね。今さらですけど」
「それは……マリオンもそう言ってくれますが、私は正直、自身の美醜というものに関心がありませんので」
どことなく苦い表情で、リンカはそんなことを言う。
「関心がないって……じゃあ、美人だっていう自覚もないんですか?」
「そうですね、あまりそういう意識は……そもそも私は護衛が任務です。見てくれなど関係のない話です」
「えー、そんなのもったいないですよ。美人だし、髪だって長くてキレイだし。ちょっと憧れちゃうくらいですよ?」
「は、はあ……」
真っ直ぐな目で熱弁を振るうアーシャに、リンカは戸惑いつつ、少し頬を赤くしていた。
「あれ? リンカさん、照れてます?」
「それはまあ、その……アーシャにそんなことを言われれば、私だって照れもします」
「へえ……リンカさんも照れたりするんですね。ちょっと可愛いかも」
「か、可愛い、ですか? 美人ではなくて?」
「いえいえ。リンカさんは美人で、なおかつ可愛いです」
「可愛いと美人は、両立するものなのですか?」
「もちろんですよ」
「……私はてっきり、その二つは両極に位置するものとばかり思っていました」
リンカは関心したようにしきりと頷いている。
「例えばですが、パナはどうでしょう? あの子はとても可愛いですが、美人だったりもするのでは?」
「あ、そうですね。パナは可愛いですし、毛並みが良くて美人だって、前にナナカさんが褒めてくれてました」
「うむ、やはり……なるほど。勉強になりました」
何がどう勉強になったのか定かではないが、リンカの学習のツボがちょっとズレているのは今に始まったことではないので、アーシャも突っ込まずにおく。
「でもリンカさん、美醜に関心がない、とか言う割には、普段から恰好いいですよね。その服もよく似合ってますし、髪の毛もちゃんと手入れしてキレイですし」
「以前も話しましたが、この服は一式、マリオンが選んだものなのです。元々私は、もっと質素で頑丈な服を着ていたのですが、マリオンから『年頃の女の子がそんな恰好なんてもってのほかよ!』と言われまして、強制的に服を新調することになりました」
「ふむふむ……」
アーシャは興味深げに相づちを打つ。
「私は出来るだけ実用性重視の服装でとお願いしたのですが、マリオンはちゃんと女の子らしい服にしろと言って、聞き入れてくれず……その結果がこれというわけです」
「なるほど」
「ちなみにこの髪も、元は別に手入れらしい手入れなどせずにいたのですが、一緒になって間もない頃、マリオンから『そんなにキレイな髪してるのに、もったいないおばけが出るわよ!』と凄い剣幕で言われまして」
「そりゃ言いたくもなりますよ……」
「ちなみに私は『もったいないおばけ』というものを見たことがないのですが、どのようなものなのでしょう? モンスターだとすれば、強敵でしょうか?」
「えーと……多分、そんなに強くはないと思いますよ。そもそも実在するのかどうか分かりませんけど」
もったいないおばけについては、とりあえず置いといて。
「それからしばらくは、マリオンが髪を梳かしてくれたり、日頃の手入れについて徹底的に教え込まれました」
「なるほど……」
「正直な話、剣術以外で一つのことをあれだけ集中的に教わったのは、生まれて初めてでしたよ」
「あはは……でも、そのおかげでいつも綺麗な髪でいられるようになったんだから、良かったじゃないですか」
「良かった……のでしょうか? 正直、よく分かりません。やはり、身だしなみを整えるなど、自分に必要なことと思えないので……」
リンカは口調を濁らせる。
「リンカさん……マリオンさんに、髪のお手入れとかしてもらうの、嫌なんですか?」
「いいえ。マリオンに髪を梳かしてもらうことは、好きです」
やけにきっぱりと、リンカは言った。
「そうなんですか?」
「はい。自分で手入れできるようになってからは、マリオンの言いつけ通り、自分で髪を梳かしたりしていたのですが……正直、マリオンに櫛を通して貰えないと、味気ないというか、つまらないです」
「……」
「ですから今朝、久しぶりにマリオンに髪を触って貰えたのは嬉しかったです。鍛錬を中断させられなければ、なお良かったのですが――」
「…………」
「……? あの、アーシャ? 私は、何かおかしいことを言ったでしょうか?」
キョトンとした様子のアーシャに、リンカは少し慌ててしまう。
「リンカさん」
「はい?」
「リンカさんって、ものすごく可愛いです」
「え!? な、何です急に?」
「いえいえ、別に何となくです。ところでリンカさん。よかったら今度、わたしもリンカさんの髪を梳かしてもいいですか?」
「アーシャが……ですか? ええ、それは構いませんけど」
「やった! 前からリンカさんの髪、触ってみたかったんです」
「……梳かすだけですからね? 変に弄くらないでくださいね?」
「はーい」
ニコニコ笑顔で返事をするアーシャに、少々不安を感じるリンカだった。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
アーシャがさっそく…GJ
3人ともかわええなGJ
強制イベでモチベ下がってたけど頑張るかな
「アーシャ。話がある」
「どうしたんですかユーリスさん? 急に改まって」
「お前を見込んで、頼みたいことがあるんだ」
「はあ……どんな頼みですか?」
「うむ……アーシャよ」
「はい」
「ナナカの婿に来てくれないか」
「はい!? ど、どういう意味ですかそれ!?」
「どういうも何も、そのままナナカと結婚してくれないかという意味だ。お前もナナカも、そろそろ所帯を持っておかしくない年頃だろう」
「だからって何でわたしとナナカさんが!?」
「確かに、急な話だから驚くのも無理はないだろう。だがどう考えても、お前以上にナナカを任せられそうな人間はいないんだ」
「いやそうじゃなくて! わたしが選択岐に入ってる前提がおかしくないですか!?」
「謙遜するな。錬金術士として一流なのは周知のことだが、お前は狩りにも牛飼いにも才がある。ナナカの婿として、これ以上の好条件は無い」
「条件を満たす以前の問題があるはずですよね!? そもそもナナカさんがこんな話承知するわけが――」
「案ずるな。それとなくナナカに打診してみたが、アーシャとなら結婚を考えてもいいと言っていた」
「ちょっ……ナナカさーん!?」
「ついでにお前の妹にも話してみたが、ナナカが義姉になるなら歓迎だと言っていた」
「ニオーっ!?」
ユーリスEDって見方によってはナナカEDじゃね?
むしろそっちのが正義じゃね?
なんてことを考えてたらふとこんな会話が頭に浮かんだ
SS投下します。メルリエ時代のロロクー。だけどあんまり百合っぽくはない内容です。
※前スレ455-460のSSでメルルとくーちゃんは既に面識ありという設定。
くーちゃんがやけに強くなってますけど、伝説の冒険者像の電波がアーランドにも届いて、貯まってた経験値でレベル99になったってことで一つ。
今日も今日とて良い天気な、アールズ街はずれのアトリエ。
毎度お馴染みの光景として、ロロナが調合を行っている。作っているのは言うまでもなく、新作のパイ。
――と、思われるのだが。
「………………」
いつもならご機嫌で愉快な歌をうたいながら調合しているはずのロロナが、今日に限って終始無言である。ムスーっと頬を膨らませて、険しい顔でひたすら釜の中をかき混ぜている。
「えーと……」
その様子を見守るメルルも、どうしたものかと困惑していた。
「あの……ロロナちゃん?」
「……なに?」
一応返事はしてくれた。愛想の欠片もないが。
「えっと、その……何か、今日はご機嫌ナナメだね。何かあった?」
「……なんにもない」
「あ、そうなんだ……じゃあ、その、誰かとケンカしたとか?」
「してない」
「あ、そう……」
とりつく島もない。少し前にアトリエにやってきてから何も言わず調合を始めて、ずっとこんな調子である。
「えーっと……今日もパイ作ってるんだよね?」
「…………」
「あの……ロロナちゃん?」
「……………………」
ガン無視である。
(ううぅ……ここまで不機嫌なロロナちゃん初めてだよ……こんな時に限ってトトリ先生もホムちゃん達もいないし……)
重苦しいアトリエの空気に居たたまれないメルルだが、火の入ったアトリエに幼いロロナを一人放っておくわけにもいかず、どうにか針のむしろのようなこの空間に耐え続ける。
「ねえ、ロロナちゃん、今作ってるのって、どんなパイなのかな?」
気まずい空気を何とかしようと、めげずに話しかけるメルル。
「……」
「あ、その……教えたくなかったら、別にいいんだけど」
「……――くないパイ」
「え?」
「……いたくないパイ」
相変わらず怒ったように頬を膨らませたロロナが、ぼそりと呟くように答えた。
「痛くないパイ……? え? ちょっと意味が分からないんだけど。パイってそもそも痛いものじゃないよね?」
例えば超激辛で「舌が痛いパイ」とかならまだ分かるが、「痛くないパイ」となると、一体何がどういうことなのか、メルルにはさっぱりだった。
「それって、食べたらどうなるの?」
「……メルルちゃんにはかんけーないでしょ」
「うっ、ひどい……」
あからさまな除け者扱いに、さすがに傷付くメルルだった。
「これ、できたらロロナがたべるから」
「あ、ロロナちゃん自分で食べるんだ……それはつまり、危険なものじゃないってことでいんだよね……?」
「……」
メルルの問いには答えず、ロロナは調合を続ける。
と、その時。
「あ! やっぱりここにいた!」
「マスター、大人しく捕まってください」
「このアトリエは完全に包囲されています」
突然アトリエのドアを開けて乱入してきた、トトリとホム達の計三人。
「せ、先生? ホムちゃん達まで。どうしたんですか血相を変えて」
「メルルちゃん、ロロナ先生を捕まえて!」
「ええ? 捕まえるってなんで――」
「いーやーっ!」
メルルが戸惑っている間に、ロロナは全速力でアトリエのロフトに駆け上がり、上方からやたらめったにウニを投げつけてきた。
「いたたたた!? ちょっとロロナちゃん痛い痛い! どうしたの急に!?」
「はいしゃさんやだーっ!!」
「は、歯医者さん?」
「実はロロナ先生、右の奥歯が虫歯になってたの。それで歯医者さんに連れて行こうとしたんだけど……」
「ホムが油断した隙をつかれて、逃亡を許してしまいました」
「で、今に至ると……」
ようやく事情が飲み込めたメルル。ロロナがずっと頬を膨らませていたのは実際に腫れていたからで、ろくに会話してくれなかったのは歯が痛かったからということだ。
ちなみに後で判明したことだが、ロロナが作ろうとした「痛くないパイ」の効果は、一定時間全身の痛覚を副作用無しで完全に遮断するというとんでもない代物だった。虫歯の痛みを誤魔化そうとしたらしいが、間違いなくもっと有用な使い道があると思われる。
ロロナはロフトの上に陣取って、警戒心を露わにしている。
「えーと、どうしましょう?」
「可哀想だけど、放っておくわけにもいかないから。無理矢理にでも歯医者さんに連れて行かないと」
「そうですね……じゃあ、私が行きます」
「気をつけてね、メルルちゃん」
いかに優れた錬金術士といえど、今のロロナは肉体的には八歳児に過ぎない。投げつけられるうににさえ気をつければ、あとは力ずくでどうにでもなる。
「いやーっ!」
「甘い!」
ロロナの投げつけてくる複数のうにを、メルルは危なげなく回避する。小さい頃からうに投げ遊びに親しんでいたメルルにとって、この程度は朝飯前だ。
避けると同時に一気に階段を駆け上り、ロフト上のロロナを追いつめる。
「さあ、ロロナちゃん、大人し、く――っ!?」
その時、ロロナが手にしているものを見て、メルルが驚愕する。
「リバーストルク!? ちょっ、まっ」
装備した人間の知力と体力を変換するアクセサリ。大部分の記憶を封印されているとはいえ、超一流錬金術士としての経験と知識を蓄えたロロナが装備すれば、その効果は凄まじく――
「えーいっ!!」
力任せの押し出しで、メルルの体はいとも容易く吹き飛ばされた。
「痛つつ……」
「メルルちゃん、大丈夫?」
「はい、何とか……そういえば、上にはコンテナが置いてあったんですよね……」
「でてってー!」
「うわわ! ちょっ、ロロナちゃんやめてやめて!」
興奮したロロナが、次々とうにを投げつけてくる。メルル達は堪らず這々の体でアトリエの外に逃げ出した。
「どうしましょう……ロロナちゃん、完全に籠城の構えに入っちゃいましたよ」
アトリエに閉じこもったロロナは、コンテナ内のアイテムを武器に、抵抗の意思を見せている。
「ごめんねメルルちゃん……まさかここまで事態がこじれるなんて」
「いえいえ、トトリ先生のせいじゃありませんから! それよりも対策を練りましょう。ロロナちゃんの歯も心配ですけど、このままアトリエが占拠されたままじゃ仕事ができません」
というわけで緊急の作戦会議が開かれる。
まず強行突破はどうかと考えられたが……。
「却下、ですよね。うに以外の爆弾とか持ち出されたら危険ですし、万が一でもロロナちゃんに怪我させるわけにはいきませんし」
「やはりここは、マスターを説得するしか方法はないとホムは考えます」
「説得かぁ……でも、トトリ先生やホムちゃんが言い聞かせてもダメだったんだよね」
「その通りです。我々以外でマスターを説得できる、強力なネゴシエイターを見つけなければいけません」
「ネゴシエイター……トトリ先生以上にロロナちゃんを説得できそうな人というと……」
「……」
メルルとトトリが顔を合わせ、どうにも微妙な表情になる。
「グランドマスターなら可能かもしれませんが、おそらく面倒くさそうな気配を感じて既に雲隠れしていると思われます」
「ああ、うん……ストレートに言っちゃってくれてありがとうホム君」
一応念のためアストリッドのアトリエを見に行ってはみたが、本当にもぬけの殻だった。
「さて、アストリッドさんがダメとなると……」
「ステルクさんに頼んでみようか」
「そうですね。何だかんだでアストリッドさんの次に付き合いが長いわけですし」
そういうわけで城門前のステルクの所に行き、事情を説明する。
「歯医者を嫌がってアトリエに籠城、か……」
「はい。それで、ステルクさんから説得してみてもらえませんか? お願いします!」
「私が行ってどうにかなるとも思えませんが……分かりました。やってみましょう」
――五分後。
「ダメだ。完全に警戒されている」
「あの……ステルクさん。頭にうにが刺さりすぎて凄いことになってますよ」
状況を聞くと、アトリエに踏み込んだステルクの顔を見た途端、ロロナは猫に追いつめられた鼠のような状態になって、『死ぬがよい』と言わんばかりの勢いでうにの弾幕を降らせてきたという。
「興奮してパニック状態に陥っているようだ。話をする暇すら与えてくれない」
(……さっきはそれほどでもなかったから、多分、ステルクさんの顔が原因なんだろうなぁ)
もちろんそんなことは口に出さず、胸の内にとどめておくメルルである。
「トトリ先生もホムちゃん達もアストリッドさんもステルクさんもダメとなると……アールズにいてロロナちゃんを説得出来そうな人って、もういなんじゃ……あ。エスティさんはどうでしょう?」
「うーん、顔が怖くない分ステルクさんより可能性はあるかもだけど、やっぱり難しいと思う」
「ちょっ……先生……!」
ついさっきメルルが気を遣って言わずにおいた一言を、メチャクチャあっさり口に出したトトリである。幸いステルクは気にした様子もなかったが。
「ロロナ先生を説得できる人……」
「ふむ。アールズにいないとなると、だ……」
考え込んでいたトトリとステルクの二人は、ふと目を見合わせ、頷き合った。
「もうあの人にお願いするしか……」
「そうだな……多忙なところを申し訳ないが、彼女のためなら動いてくれるはずだ」
「え? え? あの、先生もステルクさんも、誰のことを話してるんですか?」
「メルルちゃん、わたしちょっとアーランドに行ってくるね」
「ええっ? わざわざアーランドまで行くんですか?」
「トラベルゲートを使えばすぐだから。それじゃ」
言うが否や、トトリは早速出発していった。
「仕事中だってのに、わざわざ呼び出すから何事かと思ったら……」
完全うに武装のロロナが絶賛籠城中なアトリエを眺めながら、クーデリアは大きなため息をついた。
「歯医者嫌がって本気で籠城されたって、何やってるのよあんた達は」
「すみません……」
「面目ないです……」
歩けば数ヶ月、馬車では数十日、トラベルゲートなら一秒の距離をはるばる訪れてくれたクーデリアは、事情を聞いて大層呆れた様子だった。
ちなみにアーランドからクーデリアを引っ張り出す際、トトリは一切詳しいことを言わず「ロロナ先生が大変なんです!」の一点張りで通した策士っぷりである。
「こういうのは保護者の役割でしょうが……って、これは本来アストリッドに言うべき台詞だったわね」
「アストリッドさんは――」
「ああ、言わなくていいわ。あのぐうたら錬金術士が、こんな面倒くさい状況でどういう行動に出るかなんて、考えるまでもないから」
アストリッドに関しては全てを察して、それ以上は何も言わないクーデリアだった。
「とにかく、ロロナをアトリエから引っ張り出せばいいわけね」
「はい、お願いします」
何だかんだ言いながら説得を引き受けてくれそうなクーデリアに、メルルはホッと胸をなで下ろした。幼馴染みで一番の親友であるクーデリアの言葉なら、きっとロロナも聞き入れてくれるだろう。
「確認するけど、ロロナが投げてくるのはうにだけね?」
「はい。一応加減っていうか、理性はあるみたいで、他の危ないものとかは投げてこないです」
「テラフラムとかN/Aとか、広範囲・高威力の爆弾はコンテナに入ってる? それと暗黒水とか時空の卵とか、直接攻撃力がなくても強力なアイテムは?」
「え……!? い、今は入ってませんけど?」
物騒な質問に面食らうメルルだが、クーデリアはあくまで淡々とした表情だ。
「となると、とりあえずの問題は向こうの手数だけね」
呟き、クーデリアは懐から二丁の拳銃を取り出した。
長年愛用している二連装のデリンジャー。護身用として手頃な大きさが、クーデリアのサイズにマッチしている(サイズとはつまり手の大きさであって、その他の部分のサイズは一切関係ない。関係ないったらないのだ)。
「クーデリアさん、弾は色々使いますけど、銃の方はずっとそれですよね」
「手に馴染む道具が一番だからね。ライフルとかリボルバーも悪くないけど、あたしはやっぱりこれがしっくり来るわ」
「いやいやいやいや先生もクーデリアさんも何で普通に会話してるんですか!? ていうか何で銃を取り出してるんですかクーデリアさん!?」
「そりゃロロナをどうにかするために決まってるでしょうが」
「どうにかって、説得するんですよね!? 銃は必要ないですよね!?」
「あなた、それでも一国を背負う立場の人間なの? 外交を行う上で、相互の武力っていうのは極めて重要なファクターなのよ。常識じゃない」
「国同士の交渉と八歳児への説得を同レベルにしないで下さいよ! そもそもクーデリアさんはロロナちゃんの親友でしょう!?」
「本気でロロナ狙って撃つわけないでしょうが。あくまで護身だから。一応、減装したゴム弾を使うけど、壁とか備品に傷が付くぐらいは勘弁しなさいよ」
「それはまあいいですけど……あの、ちょっと……」
まだ何か言おうとするメルルを尻目に、クーデリアはアトリエのドアを堂々と開けて中に入っていく。危険は承知の上で、メルルとトトリもその後に付いていく。
「ロロナ」
アトリエに踏み込んだクーデリアが声をかけると、ロロナはすぐにロフト上から顔を覗かせた。
「くーちゃん? なんで?」
「トトリ達に頼まれたのよ。ロロナがワガママ言ってみんなを困らせてるから、何とかしてくれってね」
窘めるようなクーデリアの口調に、ロロナは敵愾心を露わにする。
「ロロナ、はいしゃさんはぜったいにいかないからね!」
「行かないと困るのはあんたの方よ。まあ、今さら口で言っても分からないでしょうし……」
「う〜……こないでー!」
ロロナは大量のうにをロフト上から雨あられと降らしてきた。一つや二つならともかく、二桁を超す数のうにが、バラバラと降り注ぐ。これではとても避けることは叶わない。
――と、通常なら判断するだろう。しかし、
「遅い」
クーデリアは足捌きだけの最小限の動きで、うにの弾幕の間隙を見事にすり抜ける。
「す、すごい……!」
うに投げに関してはセミプロクラスのメルルをして驚嘆たらしめるその回避力。元ベテラン冒険者の面目躍如といったところか。
「なるほど……並はずれた動体視力だけじゃなくて、当たり判定がすごく小さいから回避率がだんちがいえ何でもないです何も言ってないですごめんなさいすみません!」
一瞬ものすごい目でクーデリアに睨まれたメルルは、平謝りに謝って口をつぐんだ。
「甘いわねロロナ。この程度であたしを止めることはできないわよ」
「む〜……さすがくーちゃん……でも! ロロナまけないんだからね!」
バトル物みたいな雰囲気で、結構ノリノリな二人である。
「あのぅ……トトリ先生? クーデリアさんに説得を頼んだはずなのに、何でこんなガチンコ勝負みたいになっちゃってるんでしょうか?」
「大丈夫。ロロナ先生に関することでクーデリアさんがこうしたってことは、間違ってないよ。きっと」
「何というぶん投げ理論……」
ロロナとクーデリアは、さながらガンマン同士の決闘のように、静かにお互いをにらみ合っている。
「……」
「……」
先に動いたのは――
「えーいっ!」
ロロナだ。無数のうにをばらまいてくるが、先ほどより照準が甘く、密度も低い。
当然の如くクーデリアは容易く避け、一気に階段を駆け上がる。
しかし、弾幕をすり抜けたところへワンテンポ遅らせて、真っ直ぐにクーデリアを狙ったうにが複数、高速で襲ってきた。
(あのタイミングは避けられない……!)
端で見ていたメルルもトトリも、瞬時にそう判断する。避けられない以上、急所をガードしてダメージを軽減する他はない。
だが、
「ふん」
クーデリアの口端に笑みが浮いた。次の瞬間、両手に構えたデリンジャーが轟然と火を吹き、迫るうにを残らず吹き飛ばしていた。複数の銃声が途切れなく一繋ぎに聞こえるほどの早業だった。
「い、一瞬で全部撃ち落とした!? デリンジャーであんな芸当出来るもんなんですか!?」
「ううん。わたしの知る限り、クーデリアさん以外に無理だよあんなの」
デリンジャーの早撃ちで見事にうにを撃ち落としたクーデリアは、間髪入れずに階段を上りきり、ロロナを取っ組み合いの間合いに捉える。
「気をつけて下さい! 今のロロナちゃんは錬金術の力で、すごくパワフルになってます!」
メルルが慌ててアドバイスを送る。
ロロナはHP/MP入替のリバーストルクに加え、魔の覇気を宿した聖魔の指輪まで装備している。何の備えもなければ、熟練の冒険者でも手に余る状態だ。
「う〜……!」
ロロナは路地の隅に追いつめられた猫のように、クーデリアを睨み付ける。
じりじりと、クーデリアが間合いを詰める。
やがて――
「やーっ!」
ロロナはクーデリアに向けて、両手を前に突き出す。いつものロロナの腕力なら、ちょっと足を踏ん張ればぴくりともせず耐えられるだろう。しかし繰り返すが、今のロロナは大変パワフルである。体重の軽いクーデリアは、当たれば木の葉のように吹き飛ばされかねない。
だが、
「ふっ」
鋭く呼気を漏らしたクーデリアは、左に身を捌き、ロロナの押し出しを見事にスカす。
だけでなく、そのままロロナの右腕を取り、その状態から一気に脇固め――ではなく、
「よっこいしょっ、と」
クーデリアはそのままロロナを軽々と抱え、お姫様抱っこにしてしまった。
「や……いやーっ、くーちゃんなにするのーっ」
「決まってるでしょ。お仕置きよ。こら、暴れるな。ホントに馬鹿力ね」
言いながら、クーデリアはベッドに腰掛け、膝の上にロロナを腹這いにさせる。ついでに、ロロナが身に着けている物騒なアクセサリをササッと外してしまう。
「さぁーて、覚悟はいいかしら? ロロナ」
「や、やーっ! やめてーっ! やだーっ!」
これから何をされるのか、ロロナは気付いたようだ。トトリもメルルも理解するが、小さい子供へのお仕置きとしては定番というか順当なところなので、あえて止めはしない。
「とりあえず迷惑かけた人数分いっときましょうか。トトリとメルルとホム二人とあたしで、計五発ね」
頭にうにをブッ刺されまくった四十代自称騎士も入れたら六発なのだが、さすがにロロナが可哀想と思い、黙っておくメルルだった。
……お仕置き完了後。
「ほら、ロロナ。ちゃんと謝りなさい」
「トトリちゃん、メルルちゃん、ごめんなさいでした……」
まだヒリヒリしているらしいお尻を押さえながら、すっかりしょげたロロナがメルル達に頭を下げる。
「それじゃあ、ロロナはあたしが歯医者に連れて行ってくるからね」
「はい。よろしくお願いします、クーデリアさん」
「ううう〜……」
「ほらロロナ。もう愚図らないの。終わったら好きなもの奢ってあげるから」
「ホント!? わーい、くーちゃんだいすき!」
「抱きつくな。歩きにくいでしょうが」
一瞬で機嫌を直したロロナは、クーデリアに手を引かれてスキップしながら歩いていった。ロロナが単純なのか、クーデリアが流石というべきなのか。ともかく歯医者の件については問題なさそうだ。
「どうにか収まって良かったね」
「いやはや……いきなりバトルが始まった時は、どうなるかと思いましたよ」
メルルは大きく安堵の息をつく。
「トトリ先生は落ち着いてましたよね。ひょっとしてあの二人、いつもあんな感じだから慣れてるとか?」
「ううん、そうじゃないよ。さっきも同じようなこと言ったけど、ロロナ先生のことに関してなら、クーデリアさん以上に任せられる人はいないからね」
「はあ……信頼されてるんですね、クーデリアさんのこと」
「クーデリアさんを、というより、ロロナ先生とクーデリアさんの関係を、かな。あれだけ思いっきりぶつかり合えるっていうのも、それだけの信頼と絆があってこそだよ。ロロナ先生にとって、記憶が封印されていても、クーデリアさんはやっぱり特別だから」
「なるほど……」
メルルは納得がいったのか、しきりに頷く。
「先生の判断は完璧に正しかったわけですね。わたし達でクーデリアさんと同じ方法を取っても、多分、余計な加減が入って、あそこまでスムーズにはいかなかったでしょうし」
「そうだね。おかげで被害は最小限で済んだから」
「……被害?」
「それじゃあメルルちゃん。後片付けを始めようか」
「……あ」
気付く。
目の前に広がるのは、大量にばらまかれたうに弾幕によって、散らかっているを通り越してカオスな状態になっているアトリエの光景……。
メルルが半べそかきながらケイナに助けを求めたのは言うまでもない。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
ゲーム本編は完結したけど、アーランドも何か新しい展開をしてくれないかと思う今日このごろ。
ナナカもロロナもGJ
アーランド今週か来週にメルルコミックが出るんじゃない?
メルルコミック読んだ
ミミちゃんのピュアトリフとペンダントイベントがまとめて一話分になってた
ケイナもそこそこ出てくるけどライアスくん回もちゃんとあるし
よくも悪くも定番的なゲームコミカライズ版って感じ
ちなみに二巻に続く
そういやメルルコミックの作画担当の人、ロロナとトトリの同人描いてたんだよな
前者は読んでないから内容は知らないけど、後者はぬしによる触手責め→ミミ×トトリのレズという内容だった
アーシャのアトリエやっと1週目終了、ベルちゃん以外の女の子のED見れた
印象としては百合にしろNLにしろCPを感じさせる要素自体がアーランドに比べて控えめな感じ
百合的には
マリオン×リンカ×アーシャ
アーシャ×ニオ
が良かった
この2組(3組)は次回作に出てくれれば期待出来そう
あと個人的にはアーニーが若干鬱陶しかったかな
最初はそうでも無かったんだけど最後の送り羊(だっけ?)のイベントが…
せめて回避可能だったら良かったんだけど…
アーシャ未プレイだけど控えめなのかー
アーランドが強すぎたね
一作目で関係も浅いから仕方がない
それでもニオが帰ってからはニヨニヨできた
アーシャが丁寧で呼び捨てにしないで
どこか余所余所しいのが残念かな
アーランドというかトトミミやロロクーは2作またがっての関係だから
まだ1作目の黄昏で抑え目に感じるのは仕方ないかも…
まあ今までと違って次回作出せる前提で作ってるらしいから
アーシャたちが引き続き登場してくれるなら印象変わるんじゃない
ロロクーはロロナのアトリエの段階でかなりのもんだったけどね
マリオンとリンカさんはなかなかいいカプだったけどな
アーシャとニオもかなり良かったよ
ウィルベルちゃんアーシャニオの3人のいちゃいちゃがたまらん
ミミちゃんはトトリエだとそこまでって感じだったけどクーちゃんはロロリエの時点でレベル高かったぞ
ロロリエはりおちゃんも良かったし全体的にレベル高かったよね
そういえばアーシャはもうアンケが始まってるのね
百合分増やして欲しいってのを遠回しに伝える良い書き方は無いものだろうか
一応一般ゲーな訳だしあまり百合百合書きまくるのも気が引けるんだよね
ぷにぷにいなかったのが一番のショックだったわ
百合的にはそんな悪くなかった気するけどね
た〜るも無かったから(一応言うけど)新シリーズで心機一転させたかたんかね
コーエーに吸収されたのが心配だったが問題は無さそうで良かった
「た〜る」はニオ救出後に復活じゃなかったっけ?
生きてるナワも材料の関係(ぷにぷに玉)なのかリストラされたね
初代のマリーからデアヒメル(ナタリア)を緊縛したり活躍してたのに…
>>491 そうなのか
イベントでニオが言ったのしか聞いてないわ
今日誕生日だから若返り薬で幼女化したメルルとケイナお姉ちゃんの話書いてくれよお願いします
ネタを思いついた者はそれをかく責務がですね
>>493 「失礼します。メルル――」
「けいな〜!」
「きゃっ! え? メル、ル……? どうして子供の姿に?」
「ケイナちゃん」
「あ、トトリ様! これは一体?」
「話せば長くなるんだけど、短くもできるけどどうする?」
「短くお願いします」
「アストリッドさんの仕業」
「把握しました」
「けいな、けいな」
「あ、ちょっとメルル。裾を引っ張らないでください」
「う〜……」
「ああ泣かないでください。怒ってるわけじゃありませんから。……トトリ様、今のメルルは幾つぐらいなのですか?」
「五〜六歳で、記憶と精神年齢も退行してるみたい。ロロナ先生の場合と違って、一日か二日ぐらいで戻るらしいんだけど」
「そうですか……では、元に戻るまでは私が面倒を見た方がいいですね」
「うん、お願い。さっきまでケイナちゃんに会いたい会いたいって言い続けてたし」
「ねえねえけいな。けいな、なんだかおっきくなってない?」
「そうですね。ちょっとの間だけ、私の方がお姉さんですよ」
「そうなんだー。じゃあ、けいなおねえちゃんだね」
「はい、メルル。それじゃあ、お城に帰りましょうか」
「うん! けいなおねえちゃん、だっこして」
「いいですよ。はいっ」
「わっ! けいなおねえちゃんちからもちだ〜」
「メルルのためなら百人力です」←レベル99
「ん〜……ねえねえ」
「なんですか?」
「けいなおねえちゃん、おっぱいもおっきい」
「やっ、ちょっ、どこ触ってるんですか!?」
「む〜、けいなおねえちゃんばっかりおっきくなってずるい」
「め、メルルもすぐに大きくなりますから! 既に確定してますから!」
「ケイナちゃん。わたしの中の何かが暴れ出さないうちに――じゃなくて、日が暮れないうちにお城に戻った方がいいんじゃないかな?」
「あっ、はい! すみませんトトリ様! ほら、いきますよメルル」
「ぷるぷるしてる〜」
「だから触らないで下さいってば!」
こうですか!?わかりません!
わかってるじゃないですか!!続けてください!
私の中の何かが暴れ出さないうちにワラタwww
>>479 俺も買ってきた
百合スレ的には第5話(トトミミ)と第6話(メルケイ)が見どころか
フィリーさんも出てきてはいるが、腐ってなかった
自分も買ったよ
あとがきに折り返し地点ってあったから、2巻で終わっちゃうのかねえ
もったいない
>>495続き
〜並木通り〜
「あらケイナちゃん、こんにちは」
「こんにちは、フアナさん」
「こんにちは〜」
「んん? その子、メルちゃんそっくりだけど、ひょっとしてメルちゃんとケイナちゃんの間に出来た子?」
「フィリーさんみたいなこと言わないで下さい。実はかくかくしかじかで」
「はぁ、なるほど。眼鏡の先生もずいぶんムチャするね」
「時間が経てば戻るそうなので、大事にならなかっただけ良かったですよ」
「そうなんだ。うーん、でもちょっともったいないなぁ。ちびっこなメルちゃん、こんなに可愛いのに」
「じー……」
「ん? どうしたのメルちゃん? ひょっとして、私のこと分かんない?」
「記憶が退行しているので曖昧な部分もありますが、身近な人のことは覚えているようですよ」
「え、そうなの? それで忘れられてたら、おねえさんショックだなー。ねえメルちゃん、分かるでしょ? メルちゃんの頼れる友達、フアナさんだよー」
「うん! ふあなおねえちゃん!」
「おお! 良かった、覚えてくれてた」
「……えいっ」
「ひゃっ!?」
「ちょっ、メルル! またどこを触ってるんですか!?」
「ん〜……ふあなおねえちゃん、けいなおねえちゃんよりおっぱいおっきいね」
「メルルってば……すみませんフアナさん」
「あー、いいよいいよ。ちょっと驚いたけど、子供のすることだし、メルちゃんなら別に嫌じゃないしね」
「ふあなおねえちゃん、ぷにぷに〜」
「やんもう、メルちゃんくすぐったいってば」
「えへへ……ぷにぷに〜」
「…………メルル、そろそろ行きますよ」
「おやおやケイナちゃん、ひょっとしてジェラシー?」
「違います!」
〜城門前〜
「うわああああん! こわいよ〜!」
「ああ、泣かないで下さいメルル。大丈夫ですから。すみませんステルク様! 事情は後で説明しますから、城門から見えないところに行って下さい!」
「……ただ座っていただけで幼子に泣かれた上、追い払われるとはな……」
スケさん哀れや、でもいつものスケさんだ
〜城内〜
「……あれ、本気で凹んでたぞ」
「ステルク様には後で私から謝っておきます……」
「らいあすくん、なにしてるのー?」
「兄貴に色々と報告しに来たんだよ。ところで、何でメルルは縮んでるんだ?」
「実はかくかくしかじかで」
「ふーん。明日か明後日には戻るわけか。それまでケイナは子守してないといけないんだな?」
「そうですね。今のメルルから目を離すのは危なっかしいので」
「分かった。兄貴には俺が事情を伝えておくから、メルルのことは頼んだぜ」
「助かります」
「ねーねーらいあすくん」
「ん? 何だ?」
「らいあすくんは、おっぱいおっきいのとちっちゃいの、どっちがすき?」
「……おい。昔のメルルって、こんなセクハラキャラしてたか?」
「いえ、その……何だか小さくなってから、妙にその部分にこだわってしまって……」
「ねーどっちー?」
「特にこだわりはねえよ。メルルぐらいの大きさで十分じゃないか」
「へー……らいあすくん、ろりこんなんだ」
「ばっ、違っ……今のメルルじゃなくて元の……おいケイナ! お前までドン引きするな! そういう意味じゃねえから!」
〜メルルの部屋〜
「んー……ねむい……」
「小さくなった分、体力の消耗も早いようですね。すぐにベッドの用意をします」
「やだ! けいなおねえちゃんがひざまくらして」
「ひざまくら、ですか? 構いませんけど……はい、どうぞ」
「わーい、ふかふかー」
「やっ、だから変なとこ触らないで下さいってば」
「くー……zzz」
「……もうお休みでしたか。静かにしないといけませんね」
「すー……zzz」
「……」
「むにゃ……けいなおねえちゃん……zzz」
「……」
「……わたしも……はやくおっきくなりたい……zzz」
「……大丈夫ですよ。すぐに私より大きくなれますから」
「……もくひょうえふかっぷ……zzz」
「ああ、そっちの大きさでしたか」
「くー……zzz」
「……」
「……けいな……zzz」
「……」
「……だいすき……zzz」
「……私もですよ、メルル」
・おまけ
〜アトリエ〜
「お邪魔するわよ」
「あ、ミミちゃんいらっしゃい。ちょうどお茶にしようと思ってたんだ。良かったら一緒にどう?」
「そう。それじゃあ、いただくことにするわ」
「はい、どうぞ。冷めないうちにね」
「ありがとう。……ところでメルルだけど、何だか厄介なことになってるみたいね」
「うん。効果は一時的だから良かったけど、最初にちっちゃいメルルちゃんを見たときは、ヒヤっとしたよ」
「ロロナさん一人でも大変なことなのに、メルルまでお子様になったりしたら一大事よね」
「そうだね」
「それにしても、錬金術士ってのも苦労が多いわね。あんな冗談みたいな失敗が、現実に起こっちゃうんだから」
「うん。でも、失敗を怖がってたら、前に進むこともできないから。冒険者だってそれは同じでしょ」
「そうね…………トトリも……」
「なぁに? ミミちゃん」
「えっと、その……トトリも、若返りの実験とかするの?」
「んー……どうかな。ロロナ先生を元に戻すのはアストリッドさんに任せてるけど、そのうちわたしも協力するかも」
「そう……そのうち、ね」
「……ミミちゃん、もしかして期待してる?」
「なっ!? い、いきなり何のことよ!?」
「わたしが若返りの実験でちっちゃくなること、期待してない?」
「きっ……期待なんてそんな、してるに決まってるでしょ!
ただでさえ可愛いトトリが、都合良く一時的に幼くなっちゃうだなんて、想像しただけで大興奮よ! ちっちゃ可愛くなったトトリと一緒にお風呂に入ったり添い寝したり、あわよくば『ミミおねえちゃん』って呼んでもらったり――ってぎゃあああ!?」
「こんなこともあろうかと、紅茶にピュアトリフのエキスを入れてみたよ」
「ななな何てことするのよ!」
「だってミミちゃん、普通に聞いても答えてくれないだろうし」
「だからって――」
「ちなみにわたしの紅茶には、メルルちゃんが飲んだのと同じ若返りの薬を入れたの。もう少し臨床試験のデータが欲しいんだって」
「え……?」
「よろしくね。ミミおねえちゃん♪」
ごめん。
幼女メルルとケイナってリクエストだったから、トトミミはあくまでおまけでこれだけなんだ。
トトミミの続きが気になってPCから離れられない
>>504 GJGJ!!
何が「こんなこともあろうかと」なんだよトトリ先生!!www
確信犯なキミが大好きだちくしょう!!www
ミミちゃんと幸せになりやがれ!!www
でもメルルが飲んだのと同じ薬なら、ちびっ子トトリにはミミちゃんの記憶は恐らくないわけで……
いや、幼児のクセに未来のパートナーは本能で嗅ぎ分けるんだな、きっと。
で、ミミちゃんは来るべきトトリ先生とのお子さんの予行演習を奥さんでするんですね?
食事の世話と、お風呂イベントと、いやらしくない添い寝をミミちゃんががんばるんですよね?
もうアストリッドはこの夏、今回の臨床試験をまとめた薄い本を出すといいよ。
買いに行くよ。
5歳くらいのトトリになってミミおねえちゃんいっしょにねようよーってせがまれるんだけど
トトリはミミに抱きついていすぐに寝ちゃって悶々として一晩あまり眠れずに過ごした朝、
気づくと下半身全体に違和感が…慌てて布団をめくると震えながら泣くトトリとおねしょの世界地図、
怒ろうとするも泣き顔の余りの可愛さに全くもうと言いながら二人で朝風呂に入る展開キボンヌ!!!
>>509 俺の今夜の夢は君に決めた!!www
オヤスミなさい良い夢を!カモン!朝風呂!!www
新作が出てもアーランドシリーズが現役なのがすげぇとおもう
まだ新作の方のキャラが浸透してないからってのもあるんでしょ
アーシャでss書きたいけどまだクリアしてねぇ
アーシャ待ってるよアーシャ
俺もまだ1年目
マリオンリンカとかいい感じだと思うんだけどどうなんだろう
ネタバレになるから細かくは書かないけど
かなり良い感じだよ
一般プレイヤーとの共存なんか気にしなくていいような百合キャラしか出ないアトリエがやりたい
強制ノンケイベントと聞いてやる気が起きぬ…
ノンケのうちに百合を見出してこそ真の百合道
優男とダメ男が結構ウザいね
>>520 アーランドシリーズ的には、トトリ、ミミ、ジーノのパーティみたいなもんだろうか?
アーランドは初期メンバーに必ず男子がいたからね(イクセル、ジーノ、ライアス)
中盤くらいまで女子オンリーなアーシャはその点で百合的に評価できると思う
アーニーとラナンに関してはむしろこの二人同士でフラグ立ててるように見えたw
アーシャナナカは歳近くていい感じだね
アーシャのアトリエでは、ナナカとアーシャがトップで、マリオンとリンカが次点かな。
ナナカはアーシャのこと好き過ぎだろうw
とりあえず、夏以降にナナーシャ本とマリリン本が出ることを期待するわ。
ユーディくらい男をスルーできる百合アトリエもう一度来て欲しいなあ
あのニートはいらないとしてアーニーお母さんはいいキャラだと思うんだけどなー。
百合の邪魔っていったら邪魔なんだけど
強制イベントじゃなかったら…
アーニーのは別に虫除け草わたさないで放置とかしておけばおきないんじゃないの?
ナナアーのおっとりしたやりとり癒される……
アーシャは突出したカプが無い分全方位的に結構美味しい印象
個人的にはマリオン×リンカ(×アーシャ)が好きです、まったく男絡まないし
リンカさんの自分が恋してると気づいてない天然攻めとか良いと思います
マリオンさんDLCで来てくれないかのう
偽リンカ絡みもおいしいなーなんて
個人的には「大好きなアーシャを略」発言と
「どうせあたしはアーシャの妹じゃない略」なベルちゃんがいい
ニオもいっしょに三人で仲良くしてるのもいい
当たり前の展開かと思うけど、レジナさんにペニバン突っ込まれてアヘるアーシャたん、いいなぁ
ベタだけどアーニオがいいわ
今年のコミケはアトリエ百合が豊作でありますように
トトミミの合同誌が出る
勿論予約したお
ですよねー
届くのが非常に楽しみ
しかしあまり盛り上がらないな
前情報ではかなり期待してたしそれなりにおいしいものもあったんだが
前作のインパクトと強制イベントのせいでいまいちな感じがしちゃうんだよな
OPからやる気そがれて強制イベで折れてなんで強制にしたしっていうマイナスイメージが付きまとっちゃう
ゲームとしては面白いし百合的にも美味しい部分も沢山あるんだけどね
前作のインパクトが強すぎて無意識にハードル上がってたのかな
強制イベはな…これなら無視すれば回避出来るメインキャラの方がまだマシだったかもな
最初はPTキャラに男少ない、やった!って思ってたのにまさかこんな所に伏兵がいようとは…
というよりメルルが異常だったんじゃね
ロロナとかトトリとかの時はそれほどssでてなかったし
メルルやり直してるけどやっぱ面白いしね
h
メルルは国の設定がダメすぎるのとエンディングが酷いイメージが、
なんだかんだでロロナが一番楽しいかなぁ・・・百合的にも
>>541 多分乙女層に迎合したんじゃないかな?
アーランドの百合っぽさは一部乙女ユーザーに相当顰蹙買ったらしいし
最近うたプリとか薄桜鬼みたく乙女系が盛況なので
完全乙女仕様のエルクローネ出して今回のアーシャの内容で
アーランドで離れた乙女ユーザーを取り戻したかったんじゃないかと予想
余談だけどガストはグリムグリモアの時も乙女ユーザーから長らくバッシングされてたという
アトリエってもとは乙女ゲーの色合いが強かったんだっけか
でもだからって強制イベはないと思うんだがな
完全にADVゲームなら豊富なサブキャライベもありなんだろうが
RPGだとPTに入らんのに絡んでくるようなのは個人的にウザったく感じる
悪いキャラじゃないのは分かってるんだけどね
そんなことより百合の話しようぜ
レジナさんがアーシャを嫁にするって言ったときのアーシャの「わたし、まだ結婚とかは…」な反応はつまり
相手がレジナさんということは問題ない=相手が女性ということは問題ない
ということだよね
いやさらに
そもそも国がないんだからきちんとした法律もない=婚姻に関する規定もない=女性同士でもOK=むしろ姉妹同士とかでもOK=ニオはアーシャの嫁
ということだよね!
スレチにならん範囲で、強制イベントについて教えて欲しいかも
ワールドマップ上にいるキャラクターと接触するとイベントが起こる
回避は難しい、それ自体は退屈ではあるけどそれほど害はない
あとは3年目1月21日以降の白い鴉亭に入らないこと アーニーの依頼は無視すること
2週目からは×ボタンでイベント早送りできるようになる
一応依頼はこなさないと…
一部アーニーがマップにいないと進まないイベントもあるから(レジナ関連とか)
連打してほとんどスルーしたから全然問題ない
放浪してる音楽家みたいなやつは百合とかぬきで何で登場させたかさっぱりわからないきゃらだったなぁ
そらアーニーさんのお相手として…
白い鴉のあのイベントは場所的に仕方ないのかもしれないが
メリエッタさんとかマリリンコンビとかいるじゃんと思った
酔っ払ったレジナさんにチューされるスチルがあると思うんですよ
目が覚めたら三つ指ついたアーシャが居るわけですね
グリモアなんで乙女ユーザーからバッシングうけるん?
>>558 女の子が主人公で男キャラが何人かいたから、乙女ゲーマー的には
そいつらの誰かとくっつくだろうと思ったら百合エンドだったからじゃない?
しかもアトリエと違ってストーリーが一本道で選択の余地ないし
うちらとしてはありがたいけどもw
というかあれガストも関わってたのか
グリモアは良い百合でした、RTS初めてでめっちゃ苦戦したけど
次回作では乙女ゲーマーと百合ゲーマーが両方満足できるバランスになるといいなあ…
そっちの方が平和だし
個人的にはロロナぐらいの濃さでPTキャラの男女比を均一にしてくれれば良いかな
どうしても主人公中心で好感度関係してくるからバランスは難しそうね
百合担当組とノーマル組、単体萌をサブも含めてグループ化してはっきり分けたら平和なんだろうけど。
まぁ気にしてもしゃーない
>>557 こういう場合ニオは
普通に「おめでとうお姉ちゃん」ってお祝いするのか
「よくも私のお姉ちゃんを…」って幽鬼のような表情でヤンデレるのか
「ふつつか者ですが、姉ともどもよろしくお願いします」って姉妹揃って嫁入りしちゃうのか
どれだろう?
「遺跡にくると、マリオンが無理をしていないか気になってしまいます」
リンカのこの台詞にすごくグッと来た。
アーシャと冒険しているときも、心の隅ではずっとマリオンのことを考えてるんだな。
SSが不足しておるぞ!!!
>>564 君が描くのだ、妄想を箇条書きにするだけでも大歓迎だ
ごく短いけどSS投下します。
アーシャのアトリエで、ナナカ×アーシャ。だけどアーシャは出なくて、登場するのはナナカとユーリス(&牛さん達)。
日差しが柔らかく降り注ぐ山間の草原。
「ブモ〜」
「バモッ」
時折楽しげに声を上げながら、大小何頭もの牛達がのんびりまったりと草をはんでいる。
「いい天気だねー」
「モ」
高く晴れ上がった空を見上げながらナナカが呟くと、傍らにいた仔牛のポロが同意するかのように声を上げた。
「ポロ。次はどこに行きたい?」
「モ?」
「ふふ……そうだね。まだ決めるのは早いね」
牛達の気分に任せるままな遊牧の旅は、行く先の予定などあってないようなものだ。ナナカは苦笑まじりの吐息をついて、遙か彼方、山の稜線のその向こうへと目をやった。
(……次はいつ会えるかなぁ)
ふと、ナナカはそんなことを思う。
まぶたを閉じて浮かぶのは、花をあしらった杖を手にする、一人の少女。旅暮らしのナナカにとっては、数少ない人間の友達。
(今頃、どこにいるのかな……?)
自分と同じように野山や草原を歩き回っているのか、はたまたアトリエの中で大きな釜を前に頭をひねっているのか……ナナカはその面影とともに想像を巡らせる。
彼女と初めて会った時は、少なからず驚いた。自分と同じ年代で、旅暮らしをしている女の子というのは、とても珍しいものだったから。
牛達と一緒にあちこちを巡り歩くうち、偶然か必然か、何度も顔を合わせ、そのたびに、彼女に会うことが楽しみになっていった。
「会えたらいいなぁ……」
「モ」
つい口をついて出たナナカの呟きに、ポロが意味が分かっているかのように相づちを打つ。
日はまだ高い。少し前に近場へ狩りに出た兄のユーリスが戻ってくるまでは、まだしばらくあるだろう。
「……」
ナナカはふと、すぐ傍の地面に生えていた花を一輪、手折った。
黄色い花びらをしげしげと眺めて、その一枚に指をかける。
「……会える……会えない……会える……」
小さく呟きながら、一枚、また一枚と、花びらを一つ一つ、指先でちぎっていく。
やがて、残りの枚数が目で見て分かるほどになった。が、極力それを意識しないように、ナナカは花びらの一枚一枚に、何やら念を込めるようにゆっくり指をかける。
「ナナカ」
「きゃっ!?」
不意に後ろからかけられた声に、ナナカはつい悲鳴を上げた。そしてすぐに、声の主が兄のユーリスだと気付く。
「お、お兄ちゃん、驚かさないでよ!」
「驚かすつもりはなかったんだがな。普通に声をかけただけだぞ」
片手に本日の獲物――既に血抜きを済ませた野鳥を提げたユーリスは、普段と変わらず愛想の無い声で答える。
「むー……」
ユーリスが戻ってきた気配に気付かず、勝手に驚いたのはナナカである。が、消化不良な憤りが残ってしまう。残り数枚の花びら……次はどっちだったのか、分からなくなってしまったからだ。
「花占いか。懐かしいな」
「え、あ……!」
慌てて持っていた花を後ろ手に隠すナナカだが、もう遅い。
「そういえば、ナナカはもうそういうことを考えてもおかしくない年頃だったな」
「……? お兄ちゃん、そういうことって、何?」
「何って……誰か懸想する相手がいて、花占いをしていたんじゃないのか?」
「なっ……!」
途端、ナナカの頬が赤く染まる。確かに、花占いといえば「好き」「嫌い」のどちらかを占うのが定番だ。しかしさっきナナカがしていたのは「会える」「会えない」である。
「い、今のはアーシャちゃんのことを占ってたの!」
「アーシャの?」
それを聞いたユーリスは、しばしうつむき、何事かを考え込む。
「そうか……うむ。そういうこともあるのだろうな」
「……? お兄ちゃん、そういうことって、何?」
さっきと同じ問いをするナナカに、ユーリスは淡々と答える。
「何って、つまりナナカはアーシャに懸想しているのだろう。まあ、牛にだって雄同士雌同士でそういうことはあるからな」
「ちっ――」
真顔でとんでもないことを言うユーリスに、ナナカは「違う」と返そうとした。が、その言葉が喉まで出かかったところで、何故か詰まってしまう。
「お……お兄ちゃんの馬鹿ーっ!!」
行き場を失った感情のままに叫んだナナカは、顔を真っ赤にしてその場を走り去ってしまった。
「……何故、怒るのだ?」
一人疑問符を浮かべるユーリスに、年配の黒牛が「バモ……」と半ば呆れたような声を上げていた。
おわり
以上。読んでくれた人、ありがとう。
アーシャもアーランドも書きたいネタは色々あるのに体が追いつかねえ……orz
ていうかアーシャまだプラチナ取ってないよ。
乙!
ナナアー良いねえ
花占いするナナカさん乙女可愛いです
自分もまだプラチナ取ってないからいっそDLC出揃ってからやろうかと思ってるよ
乙なのです、2chだとみんなプレイ早いよね…
俺なんかまだやっと二年目だよ
>>568 おつ!
ナナアーはやわらかい感じのキャッキャウフフ感がいいな
自由研究で媚薬作ってアーシャで実験したら逆に襲われちゃうベルちゃんマダー?
573 :
513:2012/07/26(木) 21:22:07.73 ID:ccnS5P9i
書く書く言いながら二週間もたっちゃったひとです。
>>572に触発されたのでアーシャ×ウィルベル投下します
「ふふん、ウィルベル様の大勝利ね」
満面の笑みを浮かべたウィルベルの手には桃色の液体が詰められた
小瓶が握られている。ひょんなことから”媚薬”の作り方を見つけた
ウィルベルはもちまえの茶目っ気から、素材の採取、調合など錬金術じみた
行為に身をやつすことをいとわず、ついぞ完成させてしまったのである。
「さあて、だれに使ってあげようかしら」
なにか企んでいるときいつもする、独特の笑みを浮かべながらウィルベルは
いたずらのターゲットを選定していた。とはいうものの、このところウィルベルが
懇意にしている相手など一人しかいない。
例の小瓶をしっかりとしまい、ウィルベルはアーシャのもとへ向かったのである。
「アーシャ、邪魔するわよ」
「ああ、ベルちゃん。いらっしゃい」
「いい茶葉が手に入ったのよ、お茶にしない?」
「うわぁ、ありがとう。さっそく準備してくるね。」
そう、ウィルベルがこの時刻にアーシャのもとに訪れたのは偶然ではない。
普段バザーでも扱ってる品を用いることで違和感を持たせることなく媚薬を
飲ませられると計算してのことである。しかし計算に誤りがあったとすれば
それはアーシャが薬士であったということである。
「よし、できた。ベルちゃん、運ぶの手伝って。」
「まかせときなさい」
こうして媚薬を混入させる絶好の機会を得たウィルベルはこれを生かした。
アーシャのカップの中に媚薬を流し込みテーブルへとカップを置いた。
これでウィルベルの目的は達成されたのである。もとよりウィルベルは媚薬の効果
を見るのが目的でありその先はさして重要ではなかったのである。
しかしこれもまた計算が甘かったところだといえるだろう。
一方アーシャはというと薬師の勘で、つまり匂いか何かを察したのかウィルベルが
一服盛ったとは気が付いていた。そしてアーシャもまたちょっとしたいたずら心から
ウィルベルにやり返しをすることにしたのであった。
「ベルちゃん、そこの棚のマフィンとってきて」
こうしてできた隙にカップを入れ替えるのは実にたやすい作業であった。
かくして各々の思惑を秘め、アーシャとウィルベルのお茶会ははじまった。
たわいのない話をし、紅茶と菓子に舌鼓をうっていたウィルベルは、自らの身体が
ほてり始めるのを感じていた。初めは風邪でもひいたのか、よりによってこんなときに、
と思っていたのだがそのほてりには思い当るところがあると気が付いてしまった。
何の手違いで自分が媚薬を飲まされることとなったのか、それ以上にこの場を
どう切り抜けるのかと思案を巡らせていた時のことである。
「ねえ、ベルちゃん。顔赤いしダルそうだけど大丈夫?」
「あはは、風邪でも引いちゃったかな」
「うん、でもね」
そういってアーシャはウィルベルのスカートに手を入れ秘裂をなぞるとくぐもった水音がした。
「それじゃこんなにはならないとおもうなあ?ねえ、ベルちゃん、どうしたのかな?」
嗜虐的な表情をうかべ詰問してくるアーシャ、自らの秘裂をなぞられた恥ずかしさ、
身体をわきあがる未知の感覚、すべてがウィルベルに敗北を認識させるに十分であった。
「ここをこんなにしちゃって。この年でおもらししちゃったのかな?」
「ち、違う…」
「そうだよね、これを飲んだらこうなっちゃうもんね」
そういってアーシャは例の小瓶を取り出した。
「ベルちゃん、これは何かな?」
「うう、ごめんなさい…」
「謝らなくてもいいんだよ、だってベルちゃんとこんなことができるんだから」
ベッドに連れて行かれたウィルベルは後ろからアーシャに抱きかかえられながら
座らされている。すでにアーシャもウィルベルも下着をまとうのみである。
末っ子であるため耳年増であったウィルベルだが、こういった行為は
知識としてしか知らず身体をなでまわされる未知の感覚に戸惑っていた。
しかしアーシャは肝心なところには触れてくれず欲求がつのるばかりである。
一方のアーシャはといえばすでに理性を失っている。しかしそれもウィルベルのような
美少女が乱れる姿を前にした少女としては当然の様なのかもしれない。
「ベルちゃん、気持ちいい?」
「うぅ…」
「だまってちゃわかんないな」
ウィルベルを急き立てようと未発達な胸に手を伸ばし、桃色の突起を弄ぶ。
「んんっ…」
「まだこれじゃ足りないかな?」
左手を胸に残しつつ右手を秘裂へと差し向ける。
「ああっ、そこはっ」
敏感な反応に満足したアーシャは、ついにウィルベルのかぼちゃパンツを
脱がせにかかった。快楽で緩みきった身体ではさして抵抗もできず、ウィルベルは
なすがままにされてしまった。他人に全裸を見せる恥ずかしさからウィルベルは
顔をうつむけてしまう。アーシャは直にそこを激しく責め立てた。
「ああっ、アーシャっ…ダメっ、なにかきちゃう」
ごわごわなパンツ越しの刺激もさることながらやはり直に触られると感じぎる。
快感はいやがおうにも高まっていく。
「ベルちゃん、気持ちいい?」
幾度となく繰り返された質問ではあるが羞恥心から答えることができない。
するとウィルベルがまさに達しようとしたその時アーシャは手の動きを止めてしまった。
「えっ…」
期待を裏切られさらに欲求がつのる。しばらくは休める、そう思うや否や再びアーシャ
の責めが始まった。
「いやっ、またっきちゃう」
すぐにまた達しそうになるもののやはりアーシャは手を止めてしまう。
「アーシャぁ、止めないで」
「ベルちゃんがちゃんと答えてくれたらね」
「ううっ、気持ちいです…」
もうこれ以上耐えられない。羞恥心を越えウィルベルは涙目になりながら答えるのだった。
「よくできましたっ」
そういうとアーシャは激しく責め立てた。そしていまだ触れてこなかった肉芽を指でつまんだ。
「ああっ、アーシャ、気持ちいい、あああああああぁ」
果てたそのまま眠ってしまったウィルベルをひざまくらし、アーシャは優しくその頭をなでている。
「ちょっとやりすぎちゃったなぁ。あとで謝らなきゃ」
そうは思いつつもその安らかな寝顔を見るとたまにはこんなこともいいのかなあ
と思うアーシャであった。
二人が自らの気持ちに気づくのはまた先の話である。
以上お粗末さまでした。あれです、私まだ二年目7月までしかやってないんで矛盾とかあったらすまんのです。
最後に一言、ウィルベルちゃんはノーブラだと思います!!
GJ!
やはり、アーベルもいいものだ
ベルちゃん!!グッジョブ!!
アーシャちゃんが淫乱なんて><;
ニオちゃんが居なくなる前は毎夜毎晩
アーシャは日記で確か「おどおどしてるベルちゃんが可愛かったです」とか書いてたね
基本的にぽえーんとしてる(ベルちゃん談)けどややSっ気あるかもw
おしとやかな子が実はSってのは鉄板だな!!
アーシャさんとニオさんの天然姉妹がベルちゃんにあんなことやこんなことをする
そんな妄想が最近、唸って仕方がない
ナナカさん、スタインフェーダーのイベントでアーシャにプロポーズスレスレなこと言うし、
アーシャはアーシャで日記に「普段の優しいナナカさんも好きだけれど、たまに見せる奥深いナナカさんも好きです」とか書くし、
相思相愛すぎるだろこの二人。
ナナカは仲間にできないのもったいないよね
各地を放牧で回ってるんだからアトリエに
何度か来たことがあってアーシャと以前から
面識があるとかって設定にすればシアとかラステルみたいな
枠になれると思うんだけど
今更ながら日記読んだが中々良いじゃない…見逃していたとは
>おばあ様にズルを見抜かれた時のベルちゃんは、普段と違っておどおどしていて、ちょっと可愛かったです。
とか
>秘法を探して探検している時、暗がりが怖いベルちゃんと手を繋ぎました。そうすれば暗くても怖くないです。
とか!
あと
>ターニャちゃんの将来が、とても楽しみになりました。
って、そういうことですよね!(曲解)