オリキャラよりまーりゃん先輩が出てくるとつまらないってことは分かった
ADの再現率は高いのに、ADの再現率が高いと貴明その他が気持ち悪いってのは
もう作家さんの書き方とかの問題じゃないよなあ、コレw
超乙
ちょい質問。
オリキャラを嫌う理由を教えてくれない?
オリキャラだらけってのならともかく、納得いく内容なら、面白ければ何でも良いんじゃない?
納得いく内容じゃない、面白くない。
それってオリキャラ以前にSSがつまらないだけじゃん。
オリキャラを出す是非については、面白さとは別の話をすべきだよ。
つまらないから出してはいけない、面白いなら出して良いなんて主観の話をしても意味ないでしょ。
>>103 そうじゃなくてさ、一般論としてオリキャラを嫌う人、って多いでしょ?
そこを聞きたいんだって。
オリキャラが出た時点でダメ、って
>>98が言ってるでしょ。
オリキャラが出た時点で本当にダメなのかなーと思ったわけさ。
二次創作の中に、書いている作者個人を直接または半直接的に感じ取れてしまうものがあると、
とたんにその版権世界から現実に引き戻され、幻滅してしまう
作者個人の願望や実体験をへたくそモロに書くこともしかり
もし、ものすごく上手い人で、
そんな個の気配を微塵も感じさせないSSに仕上げられるなら、
またはオリキャラそのものをプロットにおいて強力な武器にできるなら、
もしくは、神や職人とあがめられオフラインでも名が通ってお遊びを赦される人ならともかく、
それほど腕に自信がない人(=ネット以外では書けない人)は、
どうしてもここでエキストラ要員が必要という場合以外、
オリキャラの使用はハナから捨てておいたほうがいい
>>104 >>98は別にダメっていってないんじゃね?
オリキャラだしたという時点で同レベルだとしかいってないし。
>>95が「作家として上だ」みたいなこといってたからそれに対する批判なんじゃないの?
一般論として嫌う人が多い理由ねえ。
たとえば、読みに来る人は作家のオリキャラが出張ってるSSじゃなくて原作の作品のキャラのSSだから、とか。
あとは、二次創作は原作をリスペクトして作る物だと考えている人には、オリキャラは原作を汚す行為とも言える、とかかね?
まあ人によっていろいろあると思うけど、
逆に、出してもいいと思える人は、どういう考えでオリキャラを出してもいいと思っているのか聞いてみたいな。
>>105 ふむ。納得のいく理由だね。
>>106 結局そこに尽きるわけなんだろうな<原作キャラのSSが読みたい
汚すとか言われてもそこはなんとも言えんけど。
書いてる人間は、色々同機はあるだろうけど基本的には書きたくい事を垂れ流してるだけだからね。
何故出していいと思っているかと聞かれても正直戸惑う。
出していいも悪いも勝手に出てくるんだもん、ってところかな?
結局、読者装ってオリキャラ肯定してる作者だったのかw
俺は正直オリキャラ出ようが出まいがどーでもいいんだけどさあ
94さんのSSに関しちゃ、オリキャラのリーナ?よりそれ以外の設定の方が引っかかるかな
貴明生徒会長とか愛佳郁乃優季が生徒会メンバー入りしてるとか
前提となってる設定が脳内、しかも作中でダラダラと説明加えるのがキッツイw
まぁこのSSがコレで終わるならまだマシだけど、同設定でコレの続編とか書かれるとアウトだわ〜
>>107 読者としての疑問かと思ってたけど作家かよ。
実力がなくつまらないSS書いてる人がオリキャラ肯定を叫んでも無意味。
実際の作品でありと思わせるしかない。
読者としてなら作家をバカにしすぎ。考え無しに出てくるから出してるって作家をなんだと思ってるんだよ。
>>108&
>>109 ちなみに他の作家だけど作者じゃない。
しかしそんなに作者が反応するのが嫌いかねえw?
>>110 エロパロ板のss読み控え室見て来い。書き手として書き込むのは禁止だ。
つまり、そういうことなんじゃないのか?
今からSSを投稿します。
いわゆる卒業式SSです。時期はずれかとは思いますが。
本編は19レスの予定。
恐らく規制にかかると思いますので、投稿の停止はご容赦下さい。
それは記念すべきその日に相応しい言えるほど、よく晴れた空の下で。
俺はその日、少しばかり早起きして一人学校へと向かった。
その行為に別に深い意味は無い。
ただなんとなく、その日は少し早く目を覚ましてしまっただけだ。
別に卒業を控えてセンチメンタルな気分になって、なんとなくひとりで登校してみたくなった……
などという心境ではなかった。はずだ。
「おはよ」
「で、お前がなんでここに居る?」
そして。
何故だか校門の前で不機嫌を絵に描いたような表情を浮べて立っていたのは、半年前まで車椅子登校していた少女。
愛佳の妹。口の悪い下級生。
「あたし、卒業生にこれを渡す係」
これ。と言って郁乃が捧げたその手には卒業生の胸を飾る小さな花飾り。
きっと卒業生が式に参加するにあたって、身に着けておくものだろう。
そんなものを郁乃が卒業生に手渡しするなんて。
はっきり言って意外だった。
「お前がよくそんな係を引き受けたもんだな」
「ジャンケンで負けたから」
「うへえ」
実に嘆かわしい。卒業生を見送る係がジャンケンで決定かよ。
卒業する身として、これは感慨もわびさびもあったものではないな。
とはいえこれも時代の流れか。
こんな面倒なだけの役目を喜んで引き受けてくれるような可愛い後輩は、もはや絶滅寸前だろうな。
なんだか無性に悔しい俺だった。
「よし。せっかくだから、お前がそれを俺の胸元に着けてくれ」
「えー」
なんだよ。そんな露骨に嫌そうな顔するなよ。
だが『なんであたしがそんなこと……』とぶつぶつ言いながらも、いちおう郁乃は俺の希望を聞いてくれた。
「胸を針で刺さないでくれよ」
「じゃあ動かないでよね」
少しばかりの時間をかけて、女の子の小さな手が胸元に花を飾る。
花飾りは桜の花びらをあしらった素朴なものだった。
ふと家から学校へと続く路に並ぶ美しい桜並木を思い出す。
うん、これは卒業には相応しいかもしれないな。
そう思うと俺も少しばかり気分は良かった。
「なあ。お前から卒業するセンパイになにか送る言葉はないのか?」
「……」
郁乃は少し黙ったあと、
「二度とくるな、馬鹿」
と、一言だけ言った。
郁乃と別れて俺は校舎の方へと歩き出す。
朝の早い学校は静かだった。
この学校を生徒として歩く時間は今日が最後だろう。
しかし、こうして一人校内を歩いてみても、その実感はほとんどない。
当たり前だが、毎日普通に登校して見てきたこの景色はいつもとまったく変わるところはない。
俺が体育の時間に走ってきたグランドも、昼休みにジュースを買っていた自販機もいつもと同じ姿でそこにある。
明日も、あさっても、これからもずっとそこで走ったり、飲み物を選んだりしている自分の姿しか思い浮かばない。
でも現実は違う。
今日、俺はこの学校を卒業する。
そして、春にはこの街を出て地方の大学に進学することが既に決まっていた。
小さな頃から生まれ育ったこの街を、俺はもうすぐ出て行く。出て行かなければならない。
……さて、そろそろ体育館に行こうかな。もうすぐ卒業式も始まるだろう。
「ふう……」
卒業式を終えて人の列と共に体育館から出てきた俺の口から漏れたのはさめた溜息。
式はあくびが出るほど退屈で、特に校長先生の長いお話は今日も健在だ。別の意味で泣けた。
あんたは何年校長やってんだよ、と言いたくもなるな。
大事な生徒を送り出すっていうのに、あんな形式どうりの言葉だけでいいもんかね。
でも、あれで泣いてる女の子もいたみたいだな。
あんな式で泣けるとか。全然分からんなあ。
「でも、それも違うのかな……」
俺は今まで卒業式で泣いたことは無い。
小学生のときも中学生のときもそうだったな。校歌とか君が代とか、わりとどうでもよかったし。
つまり俺自身がそういう人間だということなんだろう。
式がどうとか、思い出がどうとか、そんなことは多分関係が無い。
けどどうしようか。このまま何事も無く家に帰るっていうのもなんとなくわびしいもんだな。
一応、今日が最後なわけだし。
「貴明ー! 卒業記念にみんなでラーメン食いにいくけど、お前も来いよ!」
少しばかり遠くで騒いでいた集団が俺の名を呼んだ。
なんでそれが卒業記念なんだよ、と思わなくもなかったが。でも悪くはないか。
まあ他にすることも無いし、それでいいかなとも思った。
連中に手を挙げて応えようとしたその時。
「待ってくれ!」
そのとき、不意に聞きなれた声が俺を呼び止める。
「雄二?」
振り向くと、長く見慣れた――だがここ数ヶ月は見かけなかった幼馴染の姿がそこにあった。
「雄二。お前卒業式にも出てなかったのか?」
「ああ。今さっきここに着いたとこだ。式にもなんとか出たかったけど……
やっぱ無理だった。なにしろ時間が無くてな」
お前そこまで忙しいのかよ、と内心不満に思わなくもなかったが俺は口には出さなかった。
雄二が本当に忙しいのは事実なのだろう。
ただなんとなく納得出来ないだけだ。
ちいさな頃からずっと一緒だった幼馴染の雄二が、卒業式に出られないとか。
「今日も来ないのかと思ったぞ」
「無理言ってなんとか抜けてきたんだ。でもすぐ帰らなきゃな」
「マジかよ……」
とんでもない忙しさだ。
これが本当に雄二の生活だなんて、どうにも信じる気になれない。
「とにかく貴明、大事な話があるんだ。ちょっと屋上へ行こうぜ」
「あ、ああ」
それははっきりとした口調だった。
反論する余地はなく、その勢いに俺は頷かされる。
いつになく、押しの強い雄二がそこにいた。
支援
雄二と上がった屋上には、俺達二人以外にだれもいなかった。
なにしろ卒業式の後だ。今更わざわざ屋上に昇る奴は滅多に居ない。
つまり、雄二はだれも来ない場所で俺と話したかったということだろうと、改めて気が付いた。
何故、この男がずっと学校に顔を見せなかったのか。
実は俺達の中で一番早く卒業後の進路を決めたのがこの雄二だった。
それは俺達が三年生になったばかりのある日のことだ――
『向坂家の長男として、事業を継ぐことにしたんだ』
雄二がそう言った時、俺も心底驚いたものだ。
それは雄二が一番嫌がっていた道だったからだ。
『なんでだ? お前は家を継ぐのだけは絶対イヤだって言ってたじゃないか』
『上手く言えないけどさ。ホントはイヤじゃなくて、俺には無理だって思ってたんだ。
でも家出した姉貴とか見てると、そんなこと言ってる場合じゃないって思えてきてな』
雄二が言ったように、タマ姉は雄二とは逆に向坂家とは絶縁して一人自立した道を歩んでいる。
自分でバイトして生活費を稼ぎながら、奨学金を貰って大学に通っているらしい。
きっとハンパじゃないほど毎日が忙しいのだろう。
この街を離れて以来、俺達にもほとんど連絡は無い。
『姉貴は誰にも頼らず、自分の力だけで何かを掴もうとしてるんだろうな。
まあ、姉貴だったら出来るかもしれないけど、俺にはそんな真似できそうにないし。
でも御曹司っていうのは、俺が持ってるすごいチャンスには違いないからな。
俺みたいな凡才は、チャンスがある時には頑張っておかないと、後で後悔するんだよな』
『……うん』
そんな雄二の言葉にその場は頷いてみせた俺だけど、本当はそんな気持ちさっぱり分からない。
いつもだらけていてやる気のなさそうだった雄二に、なんだか置いていかれたような気がした。
いや、『気がする』じゃないだろうな。
こうして決意を持った雄二は、間違いなく俺の先を進んでいると思った。
そして雄二は進路を決めたその次の日から、ほとんど学校に来なくなった。
だから今日こうして会えるのも、ほんとうに久しぶりということになる。
その、やたら忙しいはずである雄二だが、何故かさっきから黙ったまま屋上から見える景色をずっと眺めていた。
「仕事、どうなんだ?」
何を話していいのか分からなかったので、俺は一番気になっていたことを雄二に聞いた。
「仕事ってほどのことはまだ出来ないさ。とにかく修行中だよ。研修とか、勉強とか」
「これからどこ行くんだ?東京か?」
「ああ。東京の本社。その後はアメリカ。半年くらいは家に帰れないってさ」
「……」
そうか、と頷くことさえ出来なかった。
俺はといえば四月から大学生。まだ社会人の経験すらない
それに比べて大会社の御曹司として将来重大な役目を担うかもしれない雄二が、今どんな苦労をしているのか。
はっきり言って、俺には想像もつかない。
「半年は……長いよな」
それだけ言うのがやっとだった。
「ああ、でも本音を言えばそこまで俺の神経が持たないかも。
それよりも途中で失格だって言われるのが先かもな。
御曹司っていっても、最低限の仕事も出来ない奴はいらないって親父にも言われてるし。
「……厳しいな」
そう話している最中にも、ちらりと腕時計に目を走らせる。
その面影がいかにも社会人、という感じで。
なんかこう、俺の気持ちがざわついてしまう。
「まあ、やってみるさ。それしかないもんな」
「……」
絶句するしかなかった。
なんだよこれ。
こんな雄二に俺は何て言ったらいいんだろう?
頑張れよ、とか? すげえよ、とか。
だめだなあ。
どんな言葉もすごく軽い気がして。
「おいおい。なんて顔してんだよ、貴明」
だがそんな言葉と共に、俺は不意に肩を叩かれた。
もちろん、雄二にだ。
「俺は、ちゃんと半年たったら帰ってくるさ。
いままで俺とお前、十八年も付き合ってきた仲じゃねえか。
それに比べたらたった半年だ」
雄二はニヤリと笑ってそう言った。
それはさっきまでの雄二とは違う、俺のよく知るガキっぽい雄二の笑顔だった。
「半年たったら、また会おう。
俺はそれだけを言いたくて、わざわざお前に会いに来たんだぜ」
嬉しかった。ただ、素直に。
だから心から言えたんだと思う。
「ああ、また会おうな、雄二。元気でな。頑張れよ」
「おう! ありがとな」
堅く手を握り合って、幼馴染の親友と別れた。
屋上を降りて校舎の方に戻ると、意外な二人が俺を待っていた。
「センパイ! 卒業おめでとうッス!!」
「……おめでとう」
「おお」
眼鏡をかけたキツネっぽい娘と、ちょっと巨乳の元気な娘。
山田さんと、そして吉岡さん。
中学までこのみの同級生だった二人だ。
わかりやすく言ったら、ちゃるとよっち。
まさか今日、俺の卒業を祝いに来てくれるとは思わなかった。
「驚いたな、ふたりともわざわざ来てくれたんだ」
「当然ッスよ。だってセンパイがあたしたちの卒業式の日に迎えに来てくれたこと、忘れてないッスよ」
「義理と人情は大切。受けた情は忘れない」
二人とも、そんなこと覚えていてくれたんだな。
これは素直に嬉しかった。
「そんなセンパイの卒業を祝って……」
「祝って?」
「”送る言葉”を歌います」
山田さん……ちゃるはいきなりそう言った。
歌うのかよ!ここで!!
校門前だぞ? みんな見てるんだぞ?
「暮れ〜なずむ町の〜♪」
歌ってるよ、マジで!
とか、茶化すのも失礼なくらいちゃるはとても真剣に歌っていた。
本気で歌っていた。周囲の目など気にもしていない様子だった。
その歌からは、俺の卒業を祝ってくれる真っ直ぐな気持ちが感じられた。
山田さんはどこまでも純粋な娘だ。
でもそれだけにやはり恥ずかしい。
「ちゃる、空気読めないのもいいかげんにするッス
センパイが困ってるッス!」
「そうなの?」
「い、いや、まあね。ちょっと恥ずかしいかな」
「ごめんね、センパイ……」
「ううん、ありがとう。でも、嬉しかったからさ。ほんと」
「うん。センパイがそう言うなら、よかった」
「まったくもう、ちゃるってば……」
「いや、ほんとありがとう。二人が見送りにきてくれたこと、すごく嬉しく思ってるよ」
「お世辞はいいッスから。
ほら、本命がセンパイのこと待ってるッスよ」
「本命?」
「このみに決まってるじゃないッスか」
ああ、そうか。
このみもやはり来てくれているんだな。でもなんでここに居ないんだ?
「なんでこのみは二人と一緒じゃないんだ?」
「なに言ってるんッスか。後でセンパイと二人っきりにするために決まってるじゃないッスか」
……なんか、それは余計なお世話だと言いたい。
「みなまで言うことないッスよ。最後なんだからこのみに言いたいこととかしたいこととか、いっぱいあるんじゃないッスか?」
「したいことってなあ……」
何を言ってるんだ、この子は。
「ほら、アレとかアレとか、あるっしょ。
ここであたしたちはおさらばするから、このみとよろしくやっるッスよ」
「アレ……って、何をすればいいのさ?」
「そ、そんなこと女の子言わせちゃだめッスよ!
分かるっしょ? ア・レ!」
わかんねえよ。
「ま、まさかセンパイ!アレがしたいとかいわないでくださいッスよ!
駄目ッス!いきなりアレなんて! しかも外で!
男はそれでいいかもしんないッスけど、女の子はいろいろ大変なんッスから!」
「はあ……」
アレアレっていわれても……
代名詞ばかりで会話が全然分からない。
「そ、それじゃあアレはよしとくから」
「わかったならいいッス。せめて今日はアレとかアレくらいにしといてくださいッス。
このみもセンパイも初心者なんッスから」
「ああ。わかった」
本当はまったく意味が分からなかったが俺はそう言った。
そうでもしないと、話がいつまでも終わらないと思ったから。
「じゃあ、そろそろ俺はこのみに会ってくるよ。あんまり待たせてもアレだろうし」
「それがいいッス」
「じゃあ、二人ともまたね」
「あ、ちょっと待つッス」
「?」
何故だか微妙な空気。
そして後輩二人は頷きあって俺の両脇へとずずいっと移動してきた。
「な、なに?」
「これでセンパイとお別れって……ほんとはすごく寂しいッス……」
「先輩。わたしたちのこと、どうか忘れないで」
「うん、忘れないって。二人とも本当にありがとう」
「じゃあ、最後に永遠の友情を誓って最新のフォーメーション”Z”をセンパイに捧げるッス」
「え?」
「いくよ、ちゃる!」
「うん」
「センパイ、この感触忘れちゃ駄目ッスよ」
「忘れさせない」
ぎゅう。
「わ、ちょっと、胸が!! すごいことに!」
『おい、貴明のやつ寺女の女の子二人に挟まれてるぞ』
『卒業式までハーレムか。さすがは河野貴明だよな』
『伝説は永遠に学校に残るな……』
「は、ははは。はあ……」
卒業生たちの冷たい視線と、二人からの柔らかな感触を同時に感じて。
確かに俺はこの二人のことをいつまでも忘れずにいられそうだ。
後輩二人にも別れを告げ、俺はこのみに会いに行く。
別れを惜しんでかいつまでも連中が、校庭にも校門に未だにだらだらとしていた。
連中がいる校庭を抜けて学校の裏庭に訪れる。
支援
二人が教えてくれたとおり、校庭の外れで一人このみは立っていた。
何故だかこのみは、まだつぼみの開いていない桜の木をじっと見上げていた。
喧騒から離れ、一人立つこのみの後姿はなんだか少し儚げで小さく見えた。
「よう」
「あ、タカくん。来てくれたんだ」
「遅れて悪い。待ってたか?」
「ううん。全然平気」
振り向いてにっこりと微笑むこのみの顔を見て、不思議にすこしほっとする。
「あそこの桜の木、見てたのか?」
「うん。桜の花咲いたところ、タカくんと一緒にまた見たかったんだけどなあ……」
「そりゃ無理だよ」
学校の桜は卒業生を送る時期には咲かない。
桜が咲くのはこの学校に新しくやって来る新入生を迎える時期だ。
「また桜の木の下で、みんなで宴会とかお花見とか、いつか出来るといいね」
「ん……」
またやろう、とはやっぱり言えなかった。
雄二が帰ってくるのだって半年後だ。みんなだって多かれ少なかれ同じような事情はきっとあることだろう。
卒業が決まれば、皆それぞれが別の道へ進む。
だから、みんながもう一度ここに集まるのはやっぱり難しいのではないかと思う。
こんなとき、やはり去年ここを去って行ったタマ姉のことを思い出すな。
『また戻ってくるわよ』
笑ってそう言っていたタマ姉。
でも、あれから一年経った今でもタマ姉はこの街には戻って来ない。連絡すらほとんど無い。
もう一度、ここに戻ってくる。
それは簡単に出来るはずであっても、実は難しいことなのかもしれない。
「どうしたの? タカくん?
「いや、なんでもない。そういえば、これ。約束だったよな」
そう言いつつ、俺は自分の制服のボタンを指し示した。
制服の第二ボタン。
卒業式の日に、このみに渡す約束だった。
「わ! ありがとう、タカくん」
「じゃあ、今ちぎってやるから」
「あ、待って。わたし裁縫道具持ってきたから」
と、スカートのポケットから小さな袋を取り出した。
袋の中からは、針と糸きりばさみ。
「別にいいよ、そこまでしなくても。制服着るのも、もう最後だし」
「ダメだよ。記念になるんだから大事にしないと」
そうは言っても……明日から着る予定の無い制服だ。
別にぼろぼろになってしまったところで一向に構わないと俺は思うのだが。
いったい何の記念になるんだ?
まあいいや、このみの好きにさせてやるか。
「じゃあ制服脱ごうか?」
「そのままで大丈夫。すぐ出来るから」
刺さないかな……なんて俺の心配をよそに、このみの指先は結構器用に動いて俺のボタンを取り外した。
「お、なかなか上手だな」
「えへー」
少し照れたように笑いながら、このみは取り外したボタンを大切そうに袋にしまった。
「ありがと、タカくん。このボタン、大切にするね」
「いやいや」
渡したモノがモノだけに、あんまり大切にされてもはずかしい。
「そうだ。さっき、雄二と会ったぞ」
「ほんと? ユウくん、来てたんだ。わたしも会いたいなあ」
「あ、でももう帰った」
「えー。残念。また会えるかな」
「難しいかな。海外、行くんだってさ」
「海外……?」
「ああ。半年は家に帰れないって、ぼやいてたよ」
「そう……」
話を聞いて、このみは随分がっかりしたみたいだった。
ちょっとまずいこと言ったかな、とも思ったけど。でも雄二のことを伝えないわけにはいかなかった。
「ユウくん、タマお姉ちゃんのことなにか言ってた?」
「いや。俺も少し話しただけだから。でも、雄二もきっと会えてないと思うぞ。ほんとうに忙しいみたいだしな」
「そっか……」
う……このみにとってはまた寂しい話題だ。
でもきっとこればっかりはどうしょうもないよ。
卒業、だもんな。
「みんないなくなっちゃうんだね、この街から。タマお姉ちゃんも、ユウくんも……タカくんも」
「うん……」
「わたし、タカくんと離れるなんて考えられないよ。
だって、ずっとずっと一緒に暮らして来たんだよ?」
それは、俺だって同じことだ。
このみとは、物心ついたときからずっと一緒だった。
このみとも、学校のみんなとも離れた人生なんて正直想像もつかない。
明日から、俺はそんな日々を送る。
「じつはね、今日タカくんに会ったら……告白しようって思ってたの」
「え……?」
このみのその言葉に驚きはあった。でもその一方で、『やっぱりそうか』とも思った。
もしかしたら、今日そういう話があるかもしれないと俺は心の片隅で考えていた。
俺もさすがに卒業式の第二ボタンの意味を理解できないわけではない。
「でも、でも今わたしがタカくんに一番伝えたい『好き』は、恋じゃないから」
このみが必死に涙を堪えようとしていることが分かって、不意に胸が熱くなった。
たとえこの瞳から涙が零れ落ちても、もうこれまでみたいに頭を撫でて慰めてあげることも……出来なくなるのか。これからは。
「わたし、タカくんのことが大好き。
タカくんと一緒に過ごした毎日が大好き。
タマお姉ちゃんと、ユウくんと一緒にタカくんと過ごしたこの街が大好き」
その、このみの『好き』という言葉にたくさんの想いを感じた気がした。
この学校とこの街に俺がいて、このみがいて、みんながいて。
そこにいろいろな『好き』があった。
それは必ずしも、恋とか愛とかいうものではなかったかもしれないけど。
でも、もしかしたらそれよりも大切なものかもしれない。
「だから、いつか帰ってきて。
またこの街で一緒に過ごそう」
雄二と話していたさっきまでの俺だったら、きっとこの言葉に応えることはできなかったと思う。
けれど。
「俺も大好きだよ、このみのこと。みんなのこと。
いつか絶対この街に帰ってくるよ。その時またみんなで会おうな」
「本当? 約束だよ、タカくん」
タマ姉が、そして雄二が。どうしてわざわざ約束を残していったのか。
その気持ちが今分かったような気がする。
簡単には会えない、それは分かっていたから。だから俺に約束の言葉を残していった。
俺もみんなが好きだ。もう一度会いたい。
だからその気持ちと約束を、ここに残していこう。
「ああ。約束だ。絶対」
指きりして、約束を交わしたこのみと別れ俺はまた歩き出す。
今日でこの学校生活も卒業だ。
将来の目標も夢も未来も、俺はなんにも持っていない。
でも、自分の未来にひとつだけ決めたことがある。
いつか絶対この街に帰ってきて、このみとの約束を果たそう。
そんなことを思って歩いていたら、少しだけ泣きそうになった。
そして俺の背中から、もう一度呼びかける声が届いた。
元気な、とてもまっすぐな声。このみの声。
「わたし、タカくんとみんなが大好きだよーー!
だからぜったい、ぜったい、またみんなで会おうねーー!!」
以上になります。
支援くださった方、どうもありがとうございます。
>>134 良作乙です。
きれいな文章が読んでいて気持ちよかった。
……しかし、なんでまたタマ姉は町出たんだろ?
>>134 乙
短いながらもとても良い作品でした
>>135 じつは進学先の大学で待ち受けてる…と想像した俺はダメな奴
綺麗な作品読んでもオチを考えたくなる orz
>>134 恋愛エンドじゃないこのみシナリオって感じですね
本編でも思ったけどこのみっていつもおいてけぼりだな
切ない
それは、誰よりも近い場所にいるってことの裏返しかもしれないね。
>133
乙。全フラグ(雄二含めてw)を潰しまくった卒業EDってとこでしょうかね
漏れにとってもこのみは、貴明とくっつけないとどうやっても寂しくなっちゃう子です
そろそろ新作が欲しいものよのう……。
みんなはどんな話が読みたいとか希望はあるかね?
適当に並べて作者さんたちのインスピレーションを惹起するというのはどうか?
まぁ、よむだけの人が書いてみるのもいい。
一回自分で考えてみるとSSに対するみかたが変わって旧作もまた楽しめるかもしれない。
メイド日和の人です
新しいのが書きあがったので投下します
今回予定の倍に膨らんでしまったので投下を2回に分けます
後一応お約束という事で
このSSはAD非対応です
設定はX-ratedやアニメの延長と考えてもらいたく云々
しえん?
今日は目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた。
洗面所で顔を洗って、身支度を整えて、朝食の準備をする。
買い置きの食パンをトースターに放り込んで、焼いている間にフライパンを火にかける。
冷蔵庫の扉を開いて卵を取り出そうとして、残りがひとつしかないのに気がついた。
……目玉焼きはやっぱり両目だよな、常識的に考えて。
だけど無いものは仕方ないので片目で我慢する事にして、フライパンに卵を割り入れると
蓋をする。
そして横を見て、トースターから軽く煙が上がっているのに気がついた。
タイマーの設定を間違ったらしい。
幸いにして、まだ黒焦げにはなっていなかったので素早く取り出してバターを塗る。
そして、バターを塗り終わった後でフライパンの事を思い出して、あわてて火を落とした。
……焦げてはいなかったけど、ベストな半熟には程遠いゴムみたいな固焼きになっていた。
意気消沈しながらこげ茶色のトーストと歯ごたえ抜群の目玉焼きをコーヒーで流し込み、
さっさと朝食を済ませた。
歯を磨いて自分の部屋に戻り、ガラステーブルに問題集と参考書を並べて宿題の消化に励む。
やっぱだめだ。
やっぱり、あいつが居ないと調子が出ない。
俺はあっさり勉強を放棄した。
時間はもうすぐ12時。チャイムは鳴らない。
今日も由真は来ない。
◇
この3日間、由真はうちに来ていない。
連絡も無いし、俺のほうは由真の連絡先を知らないので、連絡の取りようも無い。
押しかけようにも由真の家も知らない。
由真に偉そうな事は言ったけど、俺は由真のことを何も知らない。
昨日と一昨日は何時由真が来るかと夜中まで待ち続けたせいで家に閉じこもりっぱなしだった。
おかげで風邪は綺麗さっぱり治ったけど、出かけなかったせいで家の食料が底をついてしまった。
今日も昼まで待ったもののやっぱり来そうに無いので、諦めて商店街までやってきた。
ヤックで昼飯を食うのと、食料の買出しをするためだ。
とりあえず、ヤックに入ってバリューセットを頼む。
待つ事もなくバーガーとポテトとシェークの乗ったトレーを渡され、それを抱えて席へと
歩き出したところで聞き覚えのある声に呼び止められた。
「あれぇ……たかあきくん?」
のんびりした口調のぽやぽや〜ッとした雰囲気のその声に振り返ると、思ったとおり小牧さんが
やはりトレーを抱えて立っていた。
「ああ、小牧さん。」
「……由真は一緒じゃないの?」
小牧さんは由真の姿を探すようにきょろきょろと辺りを見回した後で聞いてきた。
「由真とはおとといから会って無いんだ。」
「え? いつも一緒だったじゃ……」
「まあね……」
ぶっちゃけ、俺だって理由が知りたい心境な訳で。
顔を見て俺のそんな心境を悟ったのか、小牧さんのほうから誘いの言葉を掛けてきた。
「……とりあえず座らない? あたしも一人だから、一緒に食べよ?」
「で、由真と喧嘩でもしたの?」
席について早々にバーガーを平らげた小牧さんはそう言って俺の顔を見た。
俺はまだ半分も食ってないのに……
「いや、喧嘩はしてないよ。」
「じゃ、由真に嫌われるような事したとか、いやがるような事したとか?」
「いや……まあ、した事はしたけどさ……」
確かにあの時は一方的かつ無理矢理だった。でも、
「別に嫌じゃないって言ってたし……」
「……一体由真に何したの?」
小牧さんに聞かれて、俺は3日前の事を思い返した。
由真を押し倒して、キスをした。しかも舌を絡めるようなディープなやつ。
「なんか顔赤いよ?」
訝しげな目で俺の顔を覗き込んでいた小牧さんのツッコミに俺はあわてて否定した。
「い、いや、ぜ、全然、これっぽっちもたいした事じゃないんだ。いや、本当に。」
「じ〜〜〜〜〜」
「本当にたいした事じゃ……」
「……ふうん。」
……なんか、小牧さんが『私にはお見通しですよ〜』って感じのいやらしい笑みを浮かべて
俺をニヤニヤ見てるんですけど。
「まあ、無理には聞き出さないけど……なら、由真に電話でもしてなんで会いに来ないのか
聞いてみればいいんじゃないかなぁ?」
「いや、俺由真の電話番号も住所も知らないし。」
「へ? 知らないの?」
「ああ、由真の奴が教えてくれないからさ。小牧さんは知ってるんじゃない。」
「うん……でもぉ、」
そう言ってちょっと考え込むような様子を見せてから、小牧さんは答えた。
「それは由真から直接聞くべきだと思う。由真なりにたかあきくんに教えなかった理由が
あると思うから。たかあきくんは由真を信じて待ってあげて欲しいな。」
◇
由真を信用する?
そりゃ信用したいさ。でも3日も音沙汰無しだと不安にだってなる。
とはいえ、小牧さんから連絡先を聞きだすことも出来なかったから、俺には待つ以外の
選択肢なんてありゃしないわけで。
ヤックで小牧さんと別れた後でスーパーで買い物をして家路を急いだ。
望み薄だけど、留守電に何か入ってるかもしれないし。
そして、もうすぐというところで家の前に車が止まっているのに気がついた。
黒塗りの大型車……いわゆるリムジンという奴だろうか。
はっきりいって一般庶民の我が家には縁の無い車だ。強いてあげればタマ姉の家くらい
だろうけど、タマ姉たちがうちに高級車を乗り付けるとは考えずらい。
正体不明ながらもその車の止まっている位置に我が家がある以上逃げる訳にも行かない訳で、
戸惑いながら俺が近づいていくと、突然運転席の扉が開いて、白髪のじいさんが降りてきた。
しっかりとアイロンのかかったスーツに身を固め、がっちりした体つきの品性卑しからぬ
老紳士は、戸惑い気味の俺のほうを見て言った。
「……おぬしが河野貴明とか言う小僧か。」
……前言撤回。いいとこの紳士がいきなり人のことを小僧呼ばわりとか無いだろ。
こんなの『老紳士』じゃなくて『じいさん』で十分だ。
「じいさんは……?」
「わしは由真の祖父じゃ。ダニエルと呼んでくれ。」
「だ、だにえる?」
どう見ても日本人にしか見えないじいさんの日本人離れした呼び名に呆気に取られている俺に、
じいさんは続けた。
「由真のことで話がある。しばらく付き合ってくれんかの?」
◇
えらく座り心地のいい……と言ってもじいさんと話をするので後部座席じゃなくて助手席
だけど……上等な革張りシートに身を任せた俺を乗せたリムジンは、街中を滑るように走っていた。
「えっと……」
走り出した後も俺とじいさんはお互い話しかけようとしなかった。
多分、お互いにきっかけをつかみあぐねていたせいだろうと思って、思い切って俺から
声をかけてみた。
「何じゃ?」
問い返されて、あっさり話題に詰まった。いや、聞きたいことは色々あるんだけど、どれから
聞いたら良いかと迷っていた。
とりあえず、先ほどから疑問に思っていた事を聞いてみた。
「えっと……じいさんはさっきダニエルって名乗ったけど、日本人だよな。」
「なんじゃ、そんな事かの。」
いかめしいじいさんの顔が少し緩んだように見えた
「ワシは来栖川家に執事として仕えておってな、『ダニエル』は先々代の御館様から頂いた
愛称のようなものじゃ。本名は長瀬源蔵と言う名じゃよ。」
あれ? 長瀬?
「十波じゃないのか?」
「十波? ……由真がそう名乗ったのかの?」
「ああ。名前は十波由真だって、そう呼べって言われてたから。最近は名前で呼ぶことが
多かったけど。」
「十波は嫁に行ったわしの娘、由真の叔母の苗字じゃよ。最近の由真は長瀬の家を嫌って
おってな……それで咄嗟に十波と名乗ったのじゃろう。」
という事は、由真の本当の名前は長瀬由真か。少しだけ由真のことを知ることが出来た。
「次はわしの質問に答えてもらおうかの。」
逆に質問を返されて、俺は緊張した。
「小僧は、由真と付き合っておるのか?」
じいさんの質問はストレートだった。
俺は、少しだけ躊躇してから答えた。
「……友達として。」
少なくとも、あの時まではそうであったし、由真が顔を見せなくなった今もそうであると
思いたい。
「ふむ……では、おぬしは由真のことを女性として意識はしてはおらぬと?」
じいさんの試すような質問に、でも今度はすぐに、はっきりと答えた。
「いいえ。」
「では、どう思っておる?」
「俺は……由真のことが好きです。一人の女の子として。」
「……そうか。」
じいさんがどう思ったのかは判らないけど、でも俺の正直な気持ちを伝えた。
それがじいさんの聞きたいことの全てだったのか、また沈黙が訪れた。
だから、今度は俺が一番知りたかった事を質問してみた。
「由真はどうしてるんですか? 俺、おとといから由真に会って無いんですけど。」
じいさんが横目で俺をちらりと見た。……値踏みするような目で。
そして、少し間をおいて答えた。
「……由真は、4日前に戻ってから家に引きこもっておる。」
「なっ……」
4日前、あの後も由真は俺の世話をしてくれていたけど、そんなショックを受けたようには
見えなかった。嫌じゃないって言ってたし。でも……
俺がショックを受けている間に、車は見慣れた住宅街の中に入っていた。
もうすぐ俺の家が見えてくるだろう。
それを見計らってか、じいさんがまた一言言った。
「明日、由真は見合いをする事になっておる。」
「何……だって。」
「相手は名のある家の跡取りじゃ。由真の幸せを思うなら、この縁談がうまく行ったほうが
良いじゃろう。」
「そんな……それは、由真が望んだ事なのか!?」
「無論じゃ。人前に鎖を付けて引っ張ってゆくわけにもいかんじゃろう?」
「……」
車が俺の家の前に停まった。
俺は短く礼を言って車から降りた。
「お主」
門扉を開けて家に入ろうとする俺を呼び止め、ちょっと迷ってから、じいさんは言葉を続けた。
「あの娘を幸せにできるつもりか?」
じいさんの射抜くような視線に俺は一瞬口ごもった。
だが、思いだす。
自分と一緒にいた時のあいつのことを。
「二人一緒にいたときの俺達は幸せでしたよ。俺も、由真も。」
由真のあの笑顔は嘘じゃなかったはずだ。
「そうか。」
じいさんは短く答えて、車の中に戻った。
「由真の見合いは明日の3時から、駅前のホテルでじゃ。あの子の幸せを思うなら邪魔を
するでないぞ。」
そう言って、じいさんは去っていった。
俺は夕焼けの中、しばらく玄関の前で立ち尽くしていた。
◇
昨夜は一睡も出来なかった。
昨日のじいさんの言葉が頭の中でぐるぐる回っていたからだ。
そしてベッドの上で悶々としているうちに、気がつけば時計は昼を回っていた。
由真を幸せに出来るかなんて、そんなの判らない。
まだまだガキの俺がいくら考えたって、いい答えなんか出るはずが無い。
でも、それでも……
由真を好きだって言う気持ちに嘘はつけない。
それに手を離してしまったら、二度と届かなくなってしまいそうな気がした。
「……で、格好つけるのはそのぐらいにして、そろそろ何であたしを攫って来たのか説明
してくれると嬉しいんだけど。」
俺の目の前で、晴れ着姿の由真がベッドに腰掛けてオレを睨んでいた。
結局答えを出せなかった俺は、勢いに任せてホテルに特攻。
そしてロビーに居た晴れ着姿の由真を見て頭に血が上った。
今思えば、俺じゃないどこかの男のために由真がめかしこんでいるという事実がえらく
気に入らなかったんだと思う。
それで、俺は有無を言わさず由真の手を取ってホテルを出ると、客待ちをしていたタクシーに
押し込み、そのまま家まで由真を連れ帰ってきたわけだ。
で、つれて帰ってきたところで俺は正気に戻った。
これって立派な誘拐だよなぁ。
「あたしホテルで用事があったんだけど。」
責めるような由真の口調に、俺はむっとした。
そんなに見合いしたいのかこいつは。
「……そんなに俺が告白した事がいやだったのか?」
「え?」
由真がきょとんとして聞き返す。それが俺にはなおさら腹立たしくて、さらに言った。
「だって、これから見合いなんだろ。そんなに相手の男に会いたいのかよ。」
「ちょ、ちょっとまちなさいよ……何の話? っていうか、何であたしが今日あそこに居るって
知ってたのよ。」
「おまえんとこのじいさんが教えてくれたぞ。今日の3時から見合いだから、邪魔すんなって。」
俺が言い返すと、由真が怪訝そうな顔をして答えた。
「今日、誕生日の写真撮ってもらいに行っただけなんだけど。」
「……え?」
……室内に、数分間の沈黙が訪れた。
「……えっと、写真?」
「そ。おじいちゃんの楽しみの一つでね、毎年あたしの誕生日近くに写真とって貰うの。
この晴れ着だってそのためにわざわざ着付けてもらったのに。」
「じいさんに騙されてるとかは……」
「ありえない。おじいちゃんはあたしに嫌われるような事は絶対やらないから。」
……えーと…
「……じいさんに一杯食わされた。」
「どういうこと? おじいちゃんが何したってのよ。」
自体が飲み込めてない由真に俺はひとつため息を付いて答えた。
「……じいさんは俺が由真を連れ出しに来るって読んで、お前が見合いをするって嘘をついて
焚き付けたんだよ。俺はまんまと引っかかったって訳だ。」
「何でおじいちゃんがそんな事……」
「多分、ここ数日お前が俺を避けてたからだろ。気を利かせて仲直りさせるつもりだったん
だと思う。」
「なっ、なによ……べ、別に避けてたわけじゃ。」
「じゃあ、どうしてぱったりうちに来なくなったんだよ。」
俺が問い詰めると、由真は罰が悪そうに視線をそらしてもごもごと答えた。
「そっ、それは……風邪引いて、寝てたし。」
「風邪?」
「そうよ。たかあきがあんな……その……舌入れたりとか、やらしいキスするから、移ったのよ。」
そうだった。
俺は由真と思い切り濃厚なディープキッスをしたんだった。思い出すと顔が熱くなってくる。
「じゃあ、風邪で3日も寝込んでたのか。」
「寝込んでたのは1日だけ。次の日は大事をとって外出禁止にされてたの。」
「じゃあ、昨日は何で来なかったんだよ。」
由真は少し拗ねたような表情で俺を睨んだ。
「……あんなことがあった後で2日も間空けちゃったから、なんとなく顔をあわせづらかったの。
なんていうの、こう……勢いがそがれたって言うか。」
「俺は悶々としながら3日も待ってたんだぞ。」
「う……ごめん。でも、たかあきだって悪いんだからね。キスしたときのあんたって、なんかこう、
ギラギラしてて……ケダモノっぽかったし、迂闊に遊びにきたら、何されるかわかんないって
感じしたし。」
「うっ……それはすまない。」
……確かにあの時の俺は、熱のせいもあったけどちょっと普通じゃなかった気がする。
「それにあたし、たかあきに嘘ついてたから。」
「嘘?」
「そ。おじいちゃんに会ったんなら、聞いたんでしょ。あたしの本当の名前とか。」
「まあな……その……長瀬の家を嫌ってるんだって、じいさんは言ってたけど。」
「別に、嫌ってるわけじゃないわ。」
由真はベッドに座ったまま後ろ手をついて天井を見上げ、つまらなそうに足をばたばたと動かした。
「長瀬の一族は代々来栖川のお家に仕えてて、それはとても名誉な事で、あたしもそれを
継ぐように期待されてたのよね。」
「継ぐって?」
「ダニエル。知ってるんでしょ? おじいちゃんがやってる執事の仕事のこと。おじいちゃんはあたしが跡を継ぐのを期待してるの。」
そう言うと、由真は立ち上がって、俺の前に歩み寄ってきた。
「あたしもちょっと前まではそれで良いんだって思ってた。でも、たかあきに会って、一緒に
居るのが楽しいって思うようになって……気がついたら長瀬の家の期待とか、色んな事が
鬱陶しいって思うようになって……だから、名前聞かれた時に、咄嗟に十波って……」
由真の手が俺の肩にそっと触れて、うつむいたまま頭をこつんと俺の胸に当てた。
「ずっとあたしは嘘ついてた。嘘ついたままたかあきに返事したくなかった。自分で本当の事話して、
それですっきりしたところで聞いてもらいたかったの。」
「由真……」
「普段の「長瀬由真」は、無口で無愛想で人の言う事を素直に聞く、真面目なだけのつまんない
女の子のなの。たかあきが好きな「十波由真」とは違う。 ……たかあきはどっちのあたしの
事好き?」
由真の声は、俺の答えを恐れているのか、少し震えていた。
だから俺は、由真の肩を強く抱き寄せて答える。
「……長瀬でも十波でも、俺が好きなのは由真だよ。俺と一緒に居たときの由真は、良く
笑って、怒って、泣いて……つまんない女の子なんかじゃなかった。それに、今日はもう
ひとつ。」
「?」
「今日の由真は、綺麗だと思う。」
「たかあき……」
由真が顔を上げた。少し瞳が潤んでいるように見えた。
俺は由真の身体を抱き寄せて、紅の引かれた唇を奪った。この間のような貪るようなキス
じゃなくて、そっと重ねるだけのキス。
時間感覚が麻痺するほどの長いキスのあと、俺たちは唇を離してほう、と深く息をついた。
「今まで、何でキスなんてするのかわかんなかったけど……これってすごいかも。」
とろんとした顔のまま、由真がポツリとつぶやく。
俺も同じ気持ちだったけど……肝心な事を由真の口から聞いて無い。
「……それで……俺、まだ答え聞いて無いんだけど。」
「えっ?」
「由真は……俺のことが好き?」
「えっ? ……あっ。」
由真は頬を赤く染めて、視線をそらす。
「……答えは?」
「……嫌いな相手と、キスなんかしないし。」
俺の中の嗜虐心が疼いて、由真をいじめてみたくなる。
「それじゃ俺にはわかんないな。キスなんて外国じゃちょっと親密なスキンシップだろ。」
「あたしもあんたも日本人でしょっ!」
「それに俺鈍感だから、言葉で言ってくれないと判んないし。」
俺の意地悪で視線をそらしたままの由真がちょっと膨れる。
辛抱強く待つと、しばらくして由真が口を開いた。
「……き、キライじゃない。」
「じゃあ、特別好きって訳じゃないんだ。」
「なっ。」
由真が、そらしていた視線を戻して俺を睨みつけた。
「こういうときのたかあきはキライ。」
「それは残念。」
「浮気したら殺すから。」
「しない。死にたく無いからな。」
「あたし、こう見えても尽くすタイプなんだからね。大事にしなさいよ。」
「勿論。」
「じゃあ……答える。」
そう言うと由真は俺の首に腕を回してきた。
「……あたしも、河野貴明が好き。」
そう言って、唇を重ねてきた。
支援
しえん
今度は重ねるだけじゃない。お互いに吸い合い、舌を絡めあう、恋人のキス。
夢中になって由真の口の中を舐る。俺と由真の睡液が交じり合って、最高の興奮剤になる。
「ん……ふ……んう……ん……うん……」
時折、由真が鼻にかかった甘い声を漏らす。
口内をたっぷり舐った後で唇を離すと、由真の頬はほんのりと赤味がさしていた。
「やっぱり……あんたってむっつりスケベよね。」
「俺だって男だし。」
「女の子苦手なくせに。」
「相手が由真だからだよ。」
「……それって、女の子らしくないって事?」
由真がチョッと膨れたように見えた。
「違うって。相手が好きな女の子だから全部欲しくなる。」
「ぜ、全部って……やっぱり……」
由真の顔が赤みを増した。
俺はずばり単刀直入に答える。
「由真としたい。」
「う……やっぱり。」
4日もお預け食わされたんだからこっちとしては当然だ。
「ね、ねぇ……明日にしよ。ほら、色々準備とか、あると思うし。」
「だめ。また逃げられると困る。」
「逃げないってば、う……んぁ……」
困った顔をしていた由真の唇をもう一度奪いながら、俺は帯に手を伸ばした……が、
「……これ、どうやって脱がすんだ?」
「……もう、自分で脱ぐ。晴れ着汚されたら困るし。」
観念したのか、渋々ながら由真が自分で帯に手を掛けた。
「何見てるのよ。」
「へ?」
「女の子の着替えまじまじと見るな。あっち向いてなさいよ。」
いや、これからすることを考えたら……って、はいはい。
由真がすごい顔で睨んできたので俺は後ろを向いた。
……でも、目の前に姿見用の鏡があるから、着替えてるとこ見えるんだけどね。
窓から差し込む真っ赤な夕日の中で、由真が着物の帯を解いて前を開く。
するすると着物を脱ぎ捨てていく様子が酷く艶かしい。
由真は脱いだ着物と帯を勉強机の椅子に引っ掛けると、襦袢の帯に手を掛けた。
襦袢の紐を解いて前をはだけると、夕焼けの赤に染め上げられた由真の白い肌が露になった。
「……こっち向いていいわよ。」
俺がそ知らぬふりで振り向くと、由真は脱いだ襦袢で前を隠して立っていた。
「あんた、そこの鏡で見てたでしょ。」
「……さあ。見てなかったけど。」
ばれてたか……
由真は襦袢で前を隠したまま、俺を睨んでいる。
「……たかあきも脱ぎなさいよ。」
「は?」
「あたしが着物脱いでるの覗いてたんだから、たかあきのも見せてもらわないと不公平。」
……まあ、これからする事を考えれば俺だけ脱がないのもどうだろうと言う気もするけど
……由真の目の前で脱ぐのは恥ずかしい。今更ながらに先ほどの由真の気持ちを理解した。
「ほら、早く。」
「う……わかった。」
俺は腹を決めてズボンのベルトに手を掛けた。
ズボンを脱ぎ捨て、シャツを脱ぎ捨ててパンツ一丁の姿になる。
「ほ、ほらっ。これでいいか?」
「……うん。」
由真が前を隠していた襦袢を落とす。
すると、下着だけをまとった由真の身体が露になった。
お互い身体を隠している面積はこの間プールに言ったときとなんら変わりが無いのに、
あの時と違って妙にやらしい感じがする。
次にどうしたら良いのか解らない。しばらく二人でじっと立ち尽くしていた。
やがて、由真が後ずさりするとベッドにストンと腰掛けた。
俺もそれに釣られるようにおっかなびっくりベッドに近づくと由真の横に腰を下ろした。
もうすぐ……夜の帳が下りようとしていた。
途中さるさんに捕まってました
支援の方dクス
あと途中でミスって9/13が2個ありますが9/13と10/13です
それと、これは前半半分です。後半は夜にでも落とします
ネタでアイキャッチでも用意しときゃよかったか
>>159 乙。いつもいいものをありがとうございます
後半に期待
もう由真シナリオの記憶あやふやなんだけど
このタイミングでダニエルと初対面なの??
XRATEDの延長線上?じゃないよね?これ?w
続き投下します
番号は14からですが、前半の続きという事で
◇
いつの間にか、真っ赤な夕日が夜の闇に変わろうとしていた。
お互い緊張しているのがわかる。素肌の肩が触れるたびに、お互いにぴくりと反応する。
「……しないの?」
すっかり日が落ちた頃になって、由真がポツリとつぶやいた。
どうにもきっかけを掴みあぐねていた俺は、その言葉で思わず由真を押し倒した。
二人とも息が荒い。俺はまた馬鹿の一つ覚えみたいに由真にキスをした。
「んぅ……ふぁ……」
由真と舌を絡めながら、その下の由真の胸に手を伸ばす。
「ふ……あっ。」
俺の手が由真の胸に触れた瞬間、声が漏れた。
うあ……すげ……ふかふか。
指が沈み込む感触で頭がいっぱいになり、俺は夢中で由真の胸を揉みしだいた。
「はっ、はぁっ……ブラ、外してない……」
甘い吐息交じりのその言葉に俺は暫し正気に戻った。
由真の胸元のブラジャーに視線を落とすが……
「……これ、どうやって外すんだ。」
「背中……ホック外して。」
言われて俺は由真を抱き起こすと背中に手を回してホックを探した。
……これか? よ……あれ? 上手く外れない。
「もぅ……自分で外す。」
「面目ない。」
由真が背中に腕を回してもぞもぞと身じろぎすると、ブラジャーが緩んだ。
それをそっと由真の腕から外すと、中から重そうなおっぱいがぷるんと転げ出る。
「……あんまりじろじろ見るな。」
俺が胸を凝視してるのに抗議して由真が胸を隠す。
でも俺はまた由真を押し倒すと、胸を隠していた腕を無理矢理押さえ込んだ。
「ちょ、ちょっと……ふぁ!!」
由真が抵抗しようとするより早く、俺は由真の右胸の先端に吸い付いた。
雄二と見たアダルトビデオの内容を思い出しながら、吸い付いたまま乳首を舌で刺激する。
「ひゃ、うん、あっ、ちょ、ちょっと。」
舌でなぞるたびに由真の身体が跳ねる。そして、刺激を加えるにつれて、俺の口の中で
乳首が硬くなっていく。声にも艶が乗り始めた。
「はぁん……んぁ……うん……」
右胸に続けて左手で左胸の乳首にも刺激を加えながら、俺は右手で由真のお腹をさわさわと
撫でながらその下を目指す。
「う……はぁ……そっちは……」
俺の意図に気がついた由真が足を閉じようとする。だが俺の身体が足の間に割り込んでいて
閉じる事は出来ない。
俺の指先が、由真のパンツの布の感触を捉えた。布の上をなぞりながらさらに下へと下がっていく。
「あっ!」
大きく落ち込んだ足の付け根をさらりと撫でたとき、一段と大きく由真の身体が跳ねた。
「い、いきなり触るな。」
「だって……触らないと先に進めないだろ。」
由真の抗議を無視して純白のパンツのウエストに指を掛けた。
「脱がす……の?」
「だって……由真のが見たいんだ。」
「〜〜〜〜〜!」
暗がりの中でも由真の顔が赤くなったのがわかった。
由真が羞恥の混じった視線で俺を睨んでいたけど、もう俺は由真の裸で頭がいっぱいに
なっていて、止めるつもりなんか少しもなかった。
やがて抗議しても無駄だと悟ったのか、由真がぷいと視線をそらした。
俺はそれを無言の了解と受け取って、由真のパンツのウエストに両手の指を掛けるとするりと
引き下げる。
活発な由真らしいむっちりとしたメリハリのある足を通してパンツを脱がす。
脱がしたパンツを手にして、女の子のパンツって脱ぐとこんなに小さいのにあの大きな
お尻もちゃんと納まるんだなと変に感心してると、また由真に睨まれた。
「おっ、女の子のパンツまじまじと見るな。」
「あ、ご、ごめん。」
謝りながら俺はパンツをベッドの脇に落とし、視線を戻したところで月明かりの下に浮かび
上がった由真の姿に目を奪われた。
月明かりに浮かび上がった由真の裸身は、青白い光で体の微妙な凹凸がより強調されて
より艶かしく見える。
大きく膨らんだ2つの乳房、うっすらと浮かび上がった肋骨の線が由真の呼吸に合わせて
微妙に上下する。
そして、柔らかそうなお腹、くびれたウエストから腰、足へと続くラインは恐ろしく色っぽい。
不安げ潤んだ瞳の由真の表情と相まって、まるで誘っているように見えた。
「……お前……えろいな。」
「えろい言うな!」
由真の抗議もどこか遠くの声のように聞こえた。
俺はというと、色っぽい由真の姿に頭のどこかがぷっつんしていて、吸い寄せられるように
由真の股間に顔を近づけていた。
「あ、あんまり顔近づけるな!」
前に由真がひっくり返ってスカートがめくれたときにも少し見た……というかしっかり
見たし、実は何回かおかずにもした……けど、今日はそれとは少し違っていた。
由真のそこはわずかに綻んでいて……月明かりでうっすらと濡れ光っていた。
その割れ目に指を伸ばしてそっと触れる。
「ひぅ……」
由真のお腹がぴくっと波打って、口から声が漏れた。
俺は触れた指を、割れ目にってそっと上下に動かす。
「ひん……や、ぁん……」
由真の口から色っぽい喘ぎ声が漏れると共に、あそこからも少しずつぬめぬめとした液体が
涌いてくる。俺は夢中になって指をさわさわと這わせた。
「すげ……濡れてきてる。」
「んぃ……あん……ず、ずるい。たかあきばっかり……」
そんなこと言われてもな。
「あん……んんっ……あっ、あんたのも……見せなさいよ。」
そう言われて、俺は自分がまだトランクスをはいたままだったのを思い出した。
いつの間にか俺の股間のモノは痛みを感じるほどにパンパンに勃起していて、しかも溢れた
先走りの液でトランクスの布地が先端にべっとりと張り付いていた。
恐ろしくがちがちで敏感になっている股間のモノに苦労しながらトランクスを脱ぎ捨てると、
モノの先端を由真の顔の前に来るようにして、横向きのシックスナインの体勢になった。
「うわ……けっこうグロいかも。昔見たおじいちゃんとかお父さんのと違う……」
いや、父親やじいさんが由真の前で勃起してたらそれは変態だ。
「普段はしぼんでるんだ。今は……その……由真の裸見て興奮してるから。」
「……すご……なんか、熱くてビクビクしてる。」
由真の指がそろそろと俺のナニに触れる。う……自分で触るのと全然違う。
「なんか……変な形。」
仔細に観察してるのか、由真の指がかり首の付け根や鈴口の辺りを擦りあげたりむにむにと
つまんだりしている。
やべ……すごく気持ちいい。これは由真を責めてあんまり弄らせないようにしないと、
こっちが先にイっちまう。
俺は由真のあそこを再び指で責め始めた。さっきは恐る恐るだったけど、今度は縦筋の
溝に指をもぐりこませてむにむにと指を動かす。
「うひゃぁ……あんまり弄るなぁ……」
「お前だって俺のを弄ってるだろ。」
「ううっ……な、なら、」
由真がぎこちない手つきで俺のモノを握るとそろそろとしごき始めた。
……やべ、さっきよりピンチだ。
俺も負けじと、粘液を指に絡ませた状態で由真のあそこに刺激を加えた。
縦すじの間を丁寧になぞるようにして擦り、時にはその前の突起にも指を走らせる。
「やぁ……ああっ……」
俺が加える刺激にあわせて由真の口から嬌声が零れ、お腹がぴくぴくと波打つ。
だがそれに負けじと由真も俺のあれをしごきながら、加えて玉袋も弄り始めた。
う……自分じゃない他人に刺激される感触がこれほどとは。由真のぎこちない手つきと
相まって妙に気持ちいい。
だけどそんな事がわかるはずも無い由真の手の動きには容赦が無い。
俺もさらに愛撫を強くする。少しずつ口を開いてきた由真の割れ目の奥、小さく開いた
膣口の部分に軽く指をめり込ませてくりくりと刺激を加えると由真の背筋が弓なりにそった。
「ひっ……ああっ。」
さらに突起に指を乗せてそっと優しく弄ると、今度は由真の身体がガクガクと痙攣しながら
くの字に曲がる。
「あ……あああああああぁっ!」
由真の身体が大きく痙攣して、大きな喘ぎ声が部屋に響いた。腹筋がビクビクと痙攣して、
由真の膣に軽くめり込ませた指先がぐいぐいと締め付けられた。
だけどその一方で、俺も限界を超えた。
「うわっ、で、出るっ。」
腰の奥底から何かが噴出す感触と共に、背筋をゾクゾクとむずがゆい刺激が頭の天辺へと
付きぬける。腰が勝手にガクガクと痙攣して、恐ろしいほどの射精感と共に射精した。
俺はしばらく頭が真っ白になったままで横たわっていた。
ふと我に帰って前を見ると間近に由真の下半身があった。由真の股間はイった時にあふれ
出したらしい粘液でてかてかになっている。
「……由真? おい、大丈夫か?」
俺が身体を起こして由真を見てみるとぐったりしたまま動かない。
「おい……って、う。」
俺のあれを握って横になったままの由真を仰向けにしてみると、由真は忘我の表情のままで
荒い息をしていた。
しかし何より……俺の射精を間近で浴びた由真の顔は、おびただしい量の精子……多分
俺史上最高量……で、べとべとになっていた。
おっと……とりあえず、由真の意識を呼び戻さないと。
「おい、由真、しっかりしろ。」
「……ふぁ……あ? たかあき。」
やっと俺に気がついたのか、由真の瞳に光が戻ってきた。
「あ、あたし……さっき、なんかお腹の辺りが熱くなって来て……背中がぞわぞわってして
……なんか訳わかんなくなっちゃって……なんかすごかった。」
そう言う由真の目からぽろぽろ涙が零れだした。
「お、おい、本当に大丈夫か?」
「あ、あれ……だ、大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから。その……初めてだったし。」
「初めてって……自分でした事無いのか?」
「うん……って、なんか顔がねばねばしてる。」
由真が自分の顔の精子に気がついて手で拭い始めた。
「あー、ごめん。それ俺の精子……我慢し切れなくて由真の顔にかけちまったから。」
「……別にいいわよ。」
そう言いながらティッシュの箱に手を伸ばした。
「……別にかけられても……たかあきのだし。」
……おまえ、なんて殺し文句を。
「い、言っとくけど、何しても良いわけじゃないんだからね。愛が無いとダメなんだからね。」
愛……ねぇ。
鏡が無いので由真が手探りで顔をふき取っているのを見て俺も手伝う。
うわ、髪の毛とかにも少しついちゃってるな。後でがびがびになるぞこれ。
そして俺が精子をふき取っている一方で、由真は好奇心が刺激されたのか精子のついたままの
自分の指をぺろりと舐めた。
「……にがっ。」
……そうなのか?
流石に自分で味を確かめる気にはならんけど。
由真は眉をひそめながら何か考えているみたいだ。
……なんかとんでもない事言い出しそうだけど。
「これ、たかあきがカレーとか食べたらカレー味とかにならない?」
ずる。その発想はなかったわ。
「……いや、ならないと思うけど……なんでだ?」
「ほら、赤ちゃんに母乳あげるお母さんの食事によって母乳の味が変わるって言うじゃん。」
いや、一緒にされてもな……
◇
「それじゃ、するぞ。」
「う、うん……」
俺は仰向けに寝た由真の足を抱え込むと腰を近づけた。
再び興奮と緊張で痛みを覚えるほどに勃起した先端で、由真の股間の縦筋をなぞる。
さっき一度イったせいで由真のあそこはぬるぬるになっていた。先ほど指で弄っていた
膣口の辺りまでぬめりに任せて滑らせたところで先端が軽くめり込んだ。
「あ……」
「ここ……だよな。」
「……うん。」
由真は目を合わせるのが恥ずかしいのか、視線を明後日に向けたままで答えた。
しかし……さっき指先を軽く入れただけで恐ろしく狭い感じがしたのに、この……俺の
これの太さのが受け入れられるんだろうか。
「……いくぞ!」
俺は腰に力を込めてぐいと前に突き出した。先端が由真のあそこに押し込まれる。
「……ひっ」
由真のあそこは先端がめり込むにしたがって広がり、俺の先端をカリの辺りまでつるりと
飲み込んだ。
「い、痛い……」
「まだ先っぽだけだぞ。」
「ええっ、まだ入れるの!?」
由真が涙目で悲鳴を上げた。
だけど今更やめるわけにもいかない。俺はさらに奥へと挿入する。
「くぅっっ〜〜〜!!」
中は十分ぬめっていてすべりは良かったけど、由真がぴくぴくと反応するたびに物凄い
勢いで俺の先端を締め付けて押し戻そうとしてくる。俺はそれに逆らって奥へと進む。
「い、痛いって〜〜〜! もうちょっと細く出来ないの!」
「無茶言うな!」
痛みに耐えている由真には悪いが、俺もいっぱいいっぱいだ。
由真の中を無理矢理押し広げ、蹂躙しながら進んでいく。だがそれも程なく終わりを迎えた。
先端が肉襞を掻き分けるのとは違う壁のようなものに当たるのを感じ取ったのとほぼ同時に、
俺のモノが根元まで由真の中に飲み込まれた。
「はぁ、はぁ……もう、全部入ったの?」
「全部入った……けど……」
なんだこりゃ。物凄い熱い。おまけにひくひくと蠢いていて滅茶苦茶気持ちいい。
「なんか……すごい異物感……」
「痛みは?」
「初めてだから……もう少し、待ってくれたら、慣れると思うから。」
肩で息をしながら由真が答える。
たしかに、由真の広がったあそこからは粘液に混じって少しばかり血らしきものが流れ
出していた。
「ん……もう、大丈夫……かも。」
少しして、由真がそう言いながら俺を見た。
だけど呼吸は穏やかになったものの肌は紅潮していて、まだ興奮しているのがわかる。
それに表情は少し不安げだ。
「本当に大丈夫なのか……?」
「……たかあきの……したいようにして欲しいし。」
うわ……滅茶苦茶かわいい事言うじゃないか。
「じゃ、するぞ。」
「最初は、優しくして……お願い。」
俺はゆっくり腰を引いた。由真に根元まで挿入されていたものが少しずつ引き抜かれていく。
「くぅ〜〜〜〜!!」
由真が小さく悲鳴を上げた。
俺はあわてて腰を止める。
「だ、大丈夫か!?」
「い、痛いけど……やめなくていいっ。声出してた方が痛いの紛れるからっ!」
「わ、わかった。」
俺は再びゆっくりと抽迭を再開した。
「うっく……いっ……ううっ……くうっ……」
「うっ……ふっ……ふっ……うくっ。」
突いて抜いてを繰り返すたびに由真の口から小さな悲鳴が漏れる。
そして悲鳴が上がるたびにきゅっ、きゅっ、とモノが締め付けられる。
ただでさえ気持ちが良くて我慢できそうも無いのに、油断すると手加減出来なくなりそうになる。
「た、たかあきっ!」
「どうかしたのか!?」
「ぎゅってして……」
そう言って由真が手を伸ばす。
「ぎゅってしてくれたら……きっと我慢できるから。たかあきも遠慮しないで良いから。」
俺がおっかなびっくりやってるのが見抜かれてたのか、由真が無理矢理浮かべた笑顔で
そう言った。
俺は由真を安心させるためにウエスト辺りに腕を滑り込ませて抱きしめる。
息がかかるくらいの距離に由真の顔がある。俺たちは自然に唇を重ねた。
「んふ……ふっ……ふうん……」
抱きしめたままで、腰を動かす。動かすたび先端がに熱くぬめった由真の中とこすれあって、
滅茶苦茶気持ちいい。
そして、動くたびに腕の中で由真の身体がぴくぴくと反応する。柔らかく押しつぶされた
由真の胸がフルフルと震えて俺の興奮をさらに掻き立てる。
「……んあ……あん……はん……は。」
由真の口から、苦痛では無い甘い声が漏れ始めた。表情からも苦痛の色は消えて、どことなく
視線も熱っぽいかんじだ。
「はん……なんか……変な感じ……腰の辺りがガクガクする。」
「お、俺も……そろそろ限界っぽい。で、出そう……」
抽迭のピッチが上がる。もう根元の辺りがむずむずしていて今にも噴出しそうだ。
「うっ、はっ、はっ、はっ、うあっ、ふっ、ふう、」
「はっ、あん、あん、んあん、はん、ひ、ひん、」
もう、限界!
「「あぁぁぁぁぁっ!」」
俺は本能に従って、先端を由真の一番奥に押し付ける。それと同時に精液を思いっきり
由真の中にぶちまけた。
「ふあぁぁぁっ! な、中で出てる……あっついのが……ぴゅるって……」
由真の身体が俺の脈動に合わせて俺の腕の中でビクビクと跳ねる。
「なんか……びゅるって……出るたびに……背中が……ぞくって……」
そこまでつぶやいたところで、由真の身体が力を失ってぐったりとなった。
ありったけ由真の中に放出しきった俺も今までの緊張と疲労感で、酷い虚脱感におそわれて
由真の横に倒れこむ。
「……由真、大丈夫か?」
「なんか……緊張しすぎて疲れた。すごく眠い。」
そう言いながら、仰向けに転がっていた俺の身体にふにゃっと抱きついてきた。
「一緒に寝よ……お休みたかあき。」
そう言った次の瞬間には、由真は俺の腕を枕にしてすうすう寝息を立て始めた。
寝つきのいい奴……
そう言いつつも俺も猛烈に眠かったので、由真と自分の身体にベッドの横に滑り落ちていた
毛布を掛けた。
「おやすみ……由真。」
先に寝入ってしまって聞いていない筈の由真にそう言うと、俺も意識を手放した。
由真の体温がすごく心地よく感じられて、程なく俺も眠りに落ちた。
◇
「たかあき。」
ゆさゆさ。
俺の身体をゆさぶる人間が居る。
もう少し寝ていたいのに……
「ほら、起きなさいってば。」
「ん……」
俺は重たいまぶたを無理矢理開いて声の主の姿を探した。
「やっと目覚ましたわね。とっとと起きて。」
ベッドの横にメイド姿の由真が仁王立ちして俺を見下ろしていた。
「あれ……昨日の夜のあれは夢? ……じゃないよな。」
自分が裸で寝ていたのに気がついて、あれが夢では無いと思い直した。
「あっ、当たり前でしょ。……あんなに色々されたのに夢とか思ってるなら殴るからね。」
「いや、ちゃんと思い出したから殴らないでくれ。」
とりあえずベッドの上で起き上がる。
「さっさとベッドから出てシャワー浴びてきなさいよ。朝ごはんの用意出来てるから。」
そう言いながら由真はベッドのシーツを剥がしにかかった。
「? 朝っぱらから洗濯でもするのか?」
「当たり前でしょ。昨日のあれで……その、汁とかいっぱい付いちゃって汚れてるし。」
「あ……そっか。」
「だから早くベッドから出て。」
「了解。」
俺は納得してベッドを降りた。そして、由真の顔が真っ赤なのに気がついた。
「どうした由真?」
「……なんで朝からおっきくしてるのよ!」
そう言われて俺は朝から勃起してるのに気がついた。とはいえこれは……
「……これは朝立ちって言って、男の朝の生理現象だって。」
「……本当? 実は朝からエッチしたいとか思って膨らましてるとかじゃ。やっぱりたかあきって
むっつりスケベだわ。」
「違うって。」
朝から酷い汚名を着せられた……
◇
シャワーを浴びてすっきりしたところで着替えてキッチンに行くと、テーブルの上には
目玉焼きにサラダにトーストという朝ごはんらしい朝ごはんが並んでいた。
「あ、ほら、さっさと座って。」
キッチンに入ってきた俺に気がついた由真が食卓への着席を促す。
俺はそれに従いながらも、先ほどから気になっていた事を確認した。
「それにしても、何でメイド服なんだ?」
「……たかあきがすけべなせい。」
まだ言うか。もうそのネタはいいって。
「だって……あたし一人じゃ着物の着付けできないのよね。だから昨日、日を改めてって
言ったのに。それなのにたかあきが強引だから……」
そう言って由真が赤くなった。なんだ、その普通のかわいい女の子っぽい反応は。
「今……なんか失礼な事考えなかった?」
「いや、気のせいだろ。」
ジト目の由真の追求を、俺は冷静を装いながら流した。
「……まあいいわ。じゃ、さっさと食べましょ。」
「そうだな。いただきま〜すっと。」
コーヒーを一口すすってトーストにかぶりつく。そういえば朝食を一緒に食ったのは初めて
だな……まあ、泊まりでもなけりゃありえないんだけど。
目の前でトーストをぱくついている由真を見る。由真のほうは昨夜の事などなかったかのように、
いつもと全く変わりなく見えた
そんな俺の視線に気がついたのか、由真は口の中のパンを飲み込んで口を開いた。
「……何?」
「いや、何でもない。」
「……言いなさいよ。」
由真が不機嫌そうに聞き返す。
仕方なく俺は答えた。
「いや……昨日あんなことした割にはいつも通りだなって。」
由真の顔が瞬時に赤くなった。
「だから……恥ずかしいんだから思い出させるな。」
「だから言ったのに……」
俺たちはお互いに目を伏せて、しばらくの間視線を合わせずに朝食を黙々と口に運んでいたが、やがて由真が先に口を開いた。
「えっと……あのさ。」
「……何?」
「思い出しついでに聞くけど……昨日のあたしどうだった? その、ぶっちゃけ……どこか
変なところとか……」
「変なところねぇ……」
セックスした相手は由真が初めてなわけで、はっきり言って変なのかそうで無いかなんて
全然わからない。
「比較対象が無いからなんともいえないな……精々前に見たAVぐらいしか……」
「AV……って、何?」
……由真はアダルトビデオ知らないのか。
「見たこと無い? なら、今度見せてやるよ。」
雄二から預かってるのがあるから見せてやろうと思いながらにやりと笑った。
「? ……うん。」
由真が怪訝そうな顔で返事をする。
見せたらどんな反応するか、今から楽しみだ。
「ま、それはそれとして……別に変なところはなかったと思う。むしろ……」
「むしろ……?」
「昨日の由真はやけに可愛かったな。」
「なっ、」
由真は手に持っていたトーストを取り落とした。
「なっ、ななな、何言ってるのよっ。アノ時のあたしを可愛いって……やっぱりたかあきってば
スケベだわ。」
「はいはい。どうせ俺はむっつりスケベだよ。……で、今日はこれからどうする?」
一通り食べ終わって牛乳たっぷり甘々のカフェオレをすすりながら聞くと、由真はあきれたような表情で答えた。
「どうするって……帰るに決まってるじゃない。まさか、いきなり同棲でもしろって言うの?」
「いや、そうじゃないけど……服どうするかな。」
昨日強引に連れ出した手前、送りもしないで一人で帰らせるわけにはいかない。
メイド服で帰らせるとなると一緒に歩いている俺の趣味が疑われるわけで。
なにより向こうの親との最初の顔合わせでそれは流石に避けたい。
いや、メイド姿の由真は可愛いけどさ。
「……前みたいにその上にコートでも着ていくか?」
「たかあきはあたしを熱中症で殺すつもり?」
「むぅ……」
あとは俺の服を適当に見繕って着せるぐらいしか……そう考えていたとき、
ぴんぽーん。
「こんな朝から誰?」
「このみか……もしかしてタマ姉!? 俺が出てくる!」
由真と二人でモーニングコーヒーなんて見られたら、何を言われるかわかったものじゃない。
あわてて玄関に走る。
「は〜い、どなたですか?」
「宅配便じゃ。」
じゃ?
どこかで聞いたような声と言葉遣いに疑問を感じながらもドアを開けると、来栖川急便の
帽子をかぶってサングラスを掛けた配達員……らしきものがいた。
「長瀬由真さんにお荷物をお届けにあがりましたです、じゃ。」
「……じいさん。」
「はて、私は通りすがりの配達員。じいさんなどというものではないわ。」
「変装のつもりなら、帽子だけじゃなくてせめて制服着ろよ。」
じいさんの服は執事のスーツのままだった。
「年寄りのちょっとしたジョークじゃ。小僧も笑って軽く流さんか。気が効かんのう。」
そう言いながらじいさんはサングラスを外してメガネに掛けなおした。
「そういえば、昨日はよくもだましてくれたな。」
「はて、なんのことかの? それよりもな、小僧。」
そう言いながらじいさんが俺の肩に右手をぽんと乗せた。
「ホテルに乗り込んで来て由真を連れ去ったのは良いがな、外泊させるとは思わなかったぞ、
なぁ小僧。」
うわ、じいさんの手に掴まれた左の肩が……
「じ、じいさん……か、肩。」
「まさかとは思うが……由真を泣かせるような事はしとらんじゃろうな?」
まあじいさんも薄々わかっちゃいるだろうが、面と向かって啼かせるような事はしてました、
とは言えない。
「おじいちゃん!」
どうやら影から様子を伺っていたらしい由真が、相手がじいさんと知って出てきた。
「おお、由真。小僧におかしな事はされなかったかの?」
そう問われた瞬間に、昨日のフラッシュバックが頭を過ぎったのか、由真が瞬時に赤くなった。
おまえ……隠し事できなさすぎ。
「べ、別に何も無いわよ。それよりたかあきを放して。」
「おお、すまんの。」
そこでやっと俺は開放された。ああ、肩が砕けるかと思った……
「何しにきたの? まさか、たかあきをずたぼろにする気じゃないよね?」
「そんな事はせんぞ。ほれ、これをもってきたんじゃ。着替えが入っておる。」
そう言って、じいさんはいつも由真が使っているスポーツバッグを差し出した。
由真がそれを受け取ると、じいさんはさっときびすを返した。
「あ、じいさん……由真を迎えに来たんじゃなかったのか?」
「わしは先に戻って待っておる。小僧がきちんと由真を家まで送り届けに来るのをな。
そこで由真の両親にも申し開きしてもらうからの。」
「あ、ああ。」
「では、待っておるからの。由真も早く帰ってくるのじゃぞ。」
そう言って、じいさんは家の前に止めてあったリムジンに乗り込んで去っていった。
「うーん……やっぱり送っていかなきゃダメか。」
「あったりまえでしょ。昨日強引に連れ出したのはたかあきなんだし。」
何を今更という感じでため息を付きながら、由真があきれた表情で俺を見る。
「少しはパリッとした服装で行ったほうが良いかな。」
「あたしが見立ててあげる。」
「由真が? ……なんか恥ずかしい格好とかさせられそうだな。」
そう言うと、由真がむっとして言い返してきた。
「そんなわけ無いでしょ。親に紹介する彼氏がみっともない格好してるのが嫌なの。」
「彼氏……か。」
まだ実感が涌かないな……
ふと漏らした俺の一言で、由真の顔が曇る。
「嫌……なの?」
「嫌なら告白なんかしてない。」
そう言って由真の頭を撫でてやると、由真はほっとした表情で笑顔を見せた。
「でも、なんて言って挨拶したら良いんだろうな。」
「あ、それならあたしにアイデアがあるんだけど。」
「なんだ?」
俺が聞き返すと、由真はにんまりといやらしい笑いを浮かべて答えた。
「今日からお嬢さんの奴隷になった河野貴明で「却下。」」
どうやら、彼氏彼女の仲になっても由真との関係は変わらないみたいだ。
しえん
投下は凌ぎきったのに最後の最後でさるさんにつかまるとか…間抜けすぎる
支援サンクス
しかも…計算間違えた orz
21も2つあるし…それぞれ21/28と22/28です
そもそも予想の倍の長さになっちゃったし今回はダメすぎる
>>161 私の記憶が正しければ、
由真ルートに入る最後の選択肢があるのが駐輪場でのイベントで、リムジンの噂はその後のはず。
それから、このときに「十波由真」の名前を貴明が知るので、
十波由真の名前を知っててダニエル爺さんを知らないのが雄二エンドの時の貴明かなと。
話的にはこれでメイド日和はおしまいですが、エピローグは書きたいと思ってます
では。
>180
乙! えちも入ってよく頑張った! 最後までメイド服の由真GJ!
いまさら「彼氏彼女になった」って認識するのがこの二人らしくていいね
エピローグでは由真の服装センスに期待?
乙
ルートに入らなかったキャラとくっつける話が、延長線上にあるっていうのか……
個人的には、くっついてない時期の設定で書くならそのままくっつけないで欲しいかなあ。
延長線上っていうならくっついてない二人でいてこそ延長線上だと思うし。
>>182 同意だが、わざわざ書き込まなくてもいい内容かなとも思う
由真SSだから読んでない俺の一人勝ちってことだな、うん
そんなのもわざわざ書き込まなくて良いことだろと
くっつけちゃダメなんて感覚はよくわからんな
くっつけて終わってしまうよりはくっつけないで続けて欲しかったという気持ちはあるけど・・・
・・・そうだ! くっつけた後も変わらず続けてくれればいいんだ!
というわけで今度は彼氏彼女としてラブラブな二人が読みたいです
前スレが落ちた後、自力で新スレを探すのが面倒だったので
まとめサイトの現行スレのリンクが更新されるのを待ってたんですが
本日ようやくこのスレに来ることができました!
みなさんお久しぶりです! 涙がでそうです
>>186 専ブラいれて新スレ検索すれば一発なのに…
こんばんは。お久しぶり、でしょうか?
これより投下させていただきます。
「私、実は耳の後ろが弱いんです。」
そう言って、イルファは両の耳のイヤーバイザーをパカッと外した。
形の良い耳が、その下から現れる。
体のパーツは胸を除けば彼女と瓜二つのミルファのを見慣れているとは言え、人間と変わらないイルファのそれを見せられる
と、また新鮮な驚きを禁じえなかった貴明である。
「さぁ、舐めて下さい・・・・」
促されるまま貴明がペロペロと耳の後ろを舐めまわすと、イルファはあっあぁ〜んと嬌声を上げた。
「ほらっ、ダーリン仕様のおっぱいだよ。大事なとこ、これで擦ってあげるね。」
ミルファは彼女の豊かな乳房を自らの手で掴み上げ、貴明の男性自身をその間に挟み込む。
ゆさゆさとしごき始めると、その温かく、柔らかで肌理の細かい感触に貴明は思わず背筋に電気が走るのを感じ、「うっ」と
呻き声を上げた。むくむくとムスコは立派な姿に成長する。
「あっ、あたしだって、負けないっすよ。・・・・センパイ、さあ、あげるっす。」
チエもまた、その自慢の乳房を下から両の手で支えながら、貴明の眼前に差し出した。
貴明はそれを絞り上げ、先端を口に含む。唇の下で舌がうごめき、その感触に、「あっあっ、せっ、センパイッ!いい〜っ!」
と、頭を仰け反らしながらチエが喘ぎ声をあげた。
「す・・・・すごいのれす。ご、ご主人様は、指使いが上手いのれす・・・・変態れす・・・・犯罪的れす・・・・ぴゃっ・・・ぴっ・・・」
貴明の指はシルファの恥丘をなぞりながら進み、やがて濡れそぼった少女の芽に辿り着き、くちゅくちゅと音を立てながら
弄くり出す。 「・・・・らっ、らめぇぇぇぇ〜〜〜っ!シ、シルファ、飛んじゃうっ!!」
前戯を終えると、貴明の下半身から生える肉棒が、かわるがわる、彼女たちの体内に咥え込まれていく ――
「あっあっ貴明さんそんなっ激しく!あああっ!!」
「ダッダーリンッ!お、奥まで当たってるぅ〜〜っ!!ひぎぃぃぃ〜〜っ!!」
「あぁっ・・・センパイの、センパイの熱いのがぁ〜〜っ!!」
「ひゅごいぃぃ・・・シ、シルファの中に、あ・・・・熱いのが、いっぱい、奥まれ・・・・」
――― 情事の果て、ベッドの上には、真っ白に燃え尽きて横たわる貴明の亡骸があった・・・・
「たっ貴明さん、しっかりして下さいっ!」
「ダーリンッ!ちょっと、マジッ!?死んじゃやだぁ〜っ!」
「セ、センパイッ!・・・・ちょっ!?息してないっすよっ!センパイを助けるっすっ!」
「ご、ご主人様ぁ〜っ!まら逝ったららめぇぇぇ〜〜っ!!」
すっかり、夜の帳が河野家の周りを包んでいた――。
―――
「・・・・河野、おい河野旦那、河野貴明っ!・・・・あ〜〜、コホン・・・・」
担任の呼びかけも聞こえず、貴明はうつろな目で虚空を眺めたまま、抜け殻のように教室の席に座っていた。
眼窩は落ち窪み、憔悴の様は尋常ではない。隣席のミルファが心配そうにその横顔を見つめている。
クラスのそこかしこでヒソヒソと噂声が。斜め後ろの席からは、頬杖をついた向坂雄二が貴明にあきれた視線を送っていた。
キンコ〜ン。
終業のチャイムが鳴る。
「あ〜、河野妻、じゃなくて、今は河野愛人か。その抜け殻をちゃんと自宅まで連れて帰るように。以上。」
その担任の言葉に思わずムッとしたミルファの眉がつり上がる。
終業の礼をしてから、次々と席を離れ出した生徒達。
やおらミルファは消しゴムを掴み、それを出口から去り際の担任にバビュンッ!と放り投げた。
めり込むように後頭部にヒット。「ぎぇっ!!」 と叫び声を上げ、担任は前のめりになって廊下に倒れ込む。
その様子に驚いて目を丸くするクラス委員長の小牧愛佳。
「ほら、ダーリンしっかり。帰るよ。」 ミルファは貴明の両腋を掴んでズルズルと引っ張り上げる。彼女の肩で支えられながら、
出口へと引っ張られていく貴明。
鞄に教材を収めながらその様子を見やっていた雄二は、羨みと憐みを同時に込めて、ハァ〜ッ・・・・と、大きく溜息をつく。
「―― タカ坊、ホントに大丈夫なの?・・・・それじゃミルファ、お願いね。」
「タカくん、大丈夫?元気出してね。」
はち合った環とこのみに小さく手を振りながら、貴明を肩で支えて下足置き場を後にするミルファ。
校門まで辿り着くと、そこにはチエとミチルの姿があった。
「あ、よっちゃん、ちゃるちー。」
「ちっす。」
商店街へと向かって歩む4人。貴明は今はチエとミルファに両腋から支えられていた。いまだ顎が垂れ下がり、目の焦点が
合っていない。
「あたし1人でも大丈夫だけど?」 「センパイに密着するのは、あたしの役目っすから。」
軽く火花が飛ぶが、お互い陽性であっけらからんとした二人、それが陰湿な言い争いに発展する事もない。
やや後方離れた位置から、無言でその様子を眺めつつ歩を進めるミチル。
―――
ひとしきり買い物を終え、商店街を後にする彼女達の手には、食材を詰めた大きな袋が下がっていた。
ミルファの手から下がるそれを見やって、チエが言った。
「・・・・それ、どれくらいの量買ったんすか?ものすごい勢いでカートに放り込んでたっすけど。」
「あはっ、これ。米沢牛5キロ分。ロースとカルビ。ステーキに使うような高級品だよっ♪」
「・・・・学生の買い物じゃないっすね。」 その量と値段を想像して、思わずチエは目を見張る。
「ダーリンに精力つけさせたいからって言ったら、さんちゃんがポンとお小遣い出してくれたんだよ〜。」
本人は小食で贅沢とは無縁なるも、来栖川から振り込まれるふんだんな資金で開発資材を買い漁る珊瑚は、金銭感覚が
いささか麻痺している。
「・・・・それをセンパイに喰わせる気っすか!?あっという間にメタボ化して、成人病の塊っしょ?」
「むふーん、大丈夫だよ〜。その分、あたし達が吸い取ってあげればいいんだしぃ〜♪」
ニコニコしながら恐ろしい事をしれっと言うミルファに、思わず引きそうになるチエ。フォワグラにされる鵞鳥を連想してしまった。
「でも、よっちゃんのそれも、結構高そうだけど?」 そう言って、貴明を挟んで右側の、チエの持つ袋を見やるミルファ。
チエの手からぶら下がっているのは、数人分はあるすっぽん料理の具財。
「―― こっこれはっ!これだけあれば、センパイはあと一週間は戦えるって、ちゃるが勧めるもんだから、つい・・・・」
チエの斜め後方で、ミチルが無言でVサイン。
「でも、はるみん、割と口ほどにもなかったすね〜♪ あんな簡単に果てちゃうなんて。」
昨晩の様子を思い起こして、ニヤニヤしながら言うチエ。
「だっ、だってぇ〜っ!・・・・は、初めてだったんだもん・・・・実は・・・・」 顔を赤らめてうつむくミルファ。
「・・・・でも、ダーリンにはじめてを捧げられて、とっても嬉しかった。・・・・それに、とってもよかったよ。想像してたより、ずっと
強かったね、ダーリン。むふ〜ん♪」
そう言って、ミルファは貴明に胸を押し付けるようにギュッと抱きついた。
「―― あっ、またっ!あ、あたしだって、負けないっすよ?」
チエもまた、貴明に胸を押し当てて、強く抱き締める。
すれ違う通行人達が、その有様を眺めながら、ひそひそと噂している。
「・・・・それにしても、あなたのお姉さん、えーっと、イルファさん、だったっけ?侮れないっすね・・・・センパイにトドメ刺したの、
あの子っすよ?」 チエが言った。
「・・・・うん、そうだね。お姉ちゃんは怖い。」 頷くミルファ。
その点では意見の一致を見た二人。
「・・・・それに、ヒッキーも、あいつもはじめてだったくせに、どこであんなテクニック覚えたのよぉ、もう〜っ!?」
ミチルとは途中で別れ、河野家に向かう3人。
やがて河野宅が見えてくる。3人は玄関の敷居を跨いで、居間に向かう。そこには、エプロンをまとってシャモジを片手にした
シルファの姿があった。
「おかえりなのれす、ご主人様・・・チエチエ、ミルミル・・・もう、遅いのれす!とっくに準備れきてるのれすよ!」
ソファーに横たえられていた貴明だが、やがて、生気を取り戻して起き上がり、ブルブルと頭を振った。
まだ意識があまりはっきりしておらず、ふと下を向くと、制服を身に着けているのに気付く。
"―― あれ、俺、学校行ってたんかな、いつの間に?制服は、シルファちゃんとかミルファちゃんが着せてくれたのか・・・・?"
5人の裸の宴を経た後では今更ではあったが、赤面する貴明。
「目が覚めたっすか、センパイ?」
正面のソファーを見ると、チエが座っていて、貴明にニッコリと微笑んだ。
貴明は、バツが悪そうに手を頭の後ろに当てがって、あははは〜と微苦笑する。
―― ピルルルルッ!
電話が鳴った。
「シルファがれるのれす。」 貴明とチエを制止して、シルファが電話に向かう。
カチャリと受話器を取る。 「はい、河野れす ―― ぴっ!?」
シルファの顔が見る見る蒼白になり、小刻みに震え出す。誰?と貴明が目顔で尋ねると、シルファが答えた。 「 ―― お・・・・
お母様れす・・・・」
―― 珊瑚ちゃん?何だろう?――シルファちゃんとミルファちゃんの事かな?訝しがりながら、シルファの差し出す受話器を手に
する貴明。
「はい、代わりました。」 受話器の向こうから珊瑚の声。「あ、たかあきぃ〜。あのな、いっちゃん、そっちに行っとらへん〜?」
「ううん、今日は来てないみたいだけど。シルファちゃん、イルファさん来てる?」 貴明の訊ねに、かぶりを振るシルファ。
貴明は階段の方を眺めていたが、メイドロボの制服に着替えたミルファが降りてくるのが見えた。
ソファから起き上がって受話器を握っている貴明を見て、ミルファが言った。「あ、ダーリン、元気になった?」
居間の奥ではテレビがついていて、映画が放送されていた。ローマの剣闘士奴隷が暴虐な皇帝に復讐する話だった。
その音を聞きながら、電話の向こうの珊瑚と会話を続ける貴明。「で、イルファさん、どうかしたの?」
「うん、あのな、うちら学校から帰ってきたら、ちょっと出掛けてますって、いっちゃんの書き置きがあったねん。でな、ついさっき、
長瀬のおっちゃんから電話があったんよ〜。」
「―― 来栖川の研究所から?」
「うん、いっちゃんなー、“奴隷雇用契約書”の雛形が欲しいからって、研究所に立ち寄ったみたいなんや。」
―― ど、奴隷契約書って・・・・。 現代日本に、そんなおどろおどろしい名前の書類が存在するとは思ってもみなかった貴明。
ヨーロッパ諸国で奴隷制が廃止されたのは、19世紀前半だよな。リンカーンの奴隷解放宣言が出てから、何年になる?
―― ピンポーン。
貴明が思案していると、今度は来客を告げるインターホンが。
「こんばんは〜、来栖川デリバリーで〜す。お届けモノで〜っす!」
受話器を掴んだまま貴明が玄関の方に向くと、ミルファが歩んでいくのが目に入った。「あ、いいのいいの、ダーリンあたし出る
から。」
カチャリとミルファが扉を開くと、来栖川グループの運送会社の配達員が帽子を取って言った。
「河野貴明さんのお宅ですか?お届けモノを持ってまいりました。」
配達員の後ろには、台車の上に載った荷物があった。配達員はそれを玄関まで引き入れ、やっとこさ台車から降ろして玄関に
デンと置く。
・・・・とても大きな荷物。ミルファは目を見張った。
しかし、このくらいの大きさのダンボールは、普段からよく見掛けているような気もした―― そうだ、ひっきーSがいっつも"愛用"
している、冷蔵庫のダンボール。
配達員は伝票と、あと一通、書類をミルファに差し出した。
「こちらは受領書です、サインお願いします。それから、ご依頼主の希望がありまして、こちらの受領"証明書"の方にも、ご捺印
かサインをお願いしたいのですが。」
貴明と珊瑚の受話器越しの会話は続いている。
「奴隷契約書って、その物騒な名前の書類は何?」 貴明が訊ねる。
「うん、ロボットのマスター登録でな、ご主人様専属契約のそのまた上の、強〜い拘束力のある契約なんや〜。」
メイドロボのマスター登録にも、そんなランクがあるのか。へぇ〜、と感心する貴明。
「でもな、ロボット3原則に抵触する可能性高いから、実際には使われる事はほとんどないよ〜。"死ね"とマスターに言われたら、
死ななきゃならんもん。3原則の3、"ロボットは自らの存在を護らなくてはならない"。・・・・でも、Xナンバーのメイドロボ達やったら、
その限りやないけどな〜。」
何で?と貴明が訊ねると、珊瑚が答えて言う。「Xナンバーの機体なら、三原則組み込んでないもん。」
―― Xナンバーのメイドロボ。つまり、HM"X"とか、ついてる試作機タイプ。・・・・そう、イルファさん達みたいな。
「ちょうど長瀬のおっちゃんは留守やったんやけど、研究所の他の職員さんが、いっちゃんに渡してしもうたらしいんよ〜。」
―― いったい全体、イルファさんは何だってそんな書類を欲しがったんだろう?首を傾げる貴明。すると、いやな予感が、ムクムクと
脳裏に湧き起こって来た。ちらと玄関の方を横目で見る。
珊瑚が続ける。「ご主人様専属契約と奴隷雇用契約が並存すれば、奴隷契約の方が優先するよ〜。あの子のマスターは、瑠璃
ちゃんやけどな、あの子、時々思いきった事するし、心配なってあちこち探しとるんよ〜。」
―― 多分、その珊瑚ちゃんの心配は正しい。イルファさんの"思い切りの良さ"は、シルファちゃんの例といい、実証済みだ。
そして、この家に電話をかけて来たのも、恐らくは的を得ている。なぜならば ――
玄関の方から漏れ聞こえてくる音と会話。声の大きい配達員だ。何やら大きな荷物が置かれているのがチラと覗く。シルファが
届いた時の事を思い出す貴明。そして、受領書とは別の、"証明書"が何たらかんたら ――
立ち上がり、玄関に向かって貴明は叫ぶ。
「ちょっと待ったぁ〜〜っ!!はるみちゃん!その書類サインしちゃ駄目だぁ〜〜っっ!!」
「へっ?」キョトンとなるミルファ。書類には、あまり上手でない文字で、"河野はるみ"と、サインがなされていた。
―――
「ちょっと、その書類は調べてから後で送りますんで、こちらに預からせて下さい。」
・・・・はぁ、わかりました、と配達員は証明書の方を貴明に渡し、配達票の受領片だけを受け取って去っていった。
何かぷらぷら安定しない荷物だね〜と、ごちながらミルファがその箱を居間まで運び、ドーンと中央に据えた。来栖川製の冷蔵庫
の箱だった。
貴明は、預かった書類を凝視した。複写式になっていて、1枚目には、"受領証明書"と書かれている。
しかし、1枚目をめくり、その下の書類の表題を見て、貴明は目をむいた ―― 『奴隷メイドロボ雇用契約書』。
そして、下段の欄に記されている被雇用ロボの名称は―― “来栖川エレクトロニクス HMX−17a ILFA”―― !!
ダンボール箱の方に向き直ると、ミルファが箱の蓋に手をかけている。
「ダーリン、開けちゃってもいいよね?」 そう言いながら、既にミルファの手はダンボールの蓋を掴んで、バリバリと開封していた。
居間の4人は、箱の中身を覗き込む。―― 青い髪の毛に覆われた、人間の頭部らしきものが見えたので、チエは思わずひぃっと
小さく悲鳴を上げ、床に尻餅をついた。
残りの3人は、なお箱の奥まで覗き込んだ ―― やっぱり、と小さくひとりごちる貴明。
「―― ちょっ、お、お姉ちゃんっ!?」
「―― ぴっ!イ、イルイルっ!?」
同時に素っ頓狂な驚きの声を上げる、メイドロボ姉妹。
やがてピポッと小さく音が響く。すると、箱の中でうずくまっていたイルファの目がパチリと見開いた。タイマー式のスリープモード
らしかった。
箱の上から覗き込んでいるミルファとシルファの顔が目に入ったのか、あっ、とイルファは小さく声を漏らした。そして、おもむろに、
箱の中から起き上がる。
箱から抜け出して、貴明の方へゆっくり歩を進めると、ぺたりと両膝を床に落とし、深々と貴明に向かって土下座する。
「貴明様、今日から私、HMX-17aイルファは、貴明様の奴隷メイドとなりました。どんな変態的プレイのご要望にも、この身を張って
お応え致しますので、どうぞなんなりとお申し付け下さい。」
唖然としながらその様子を見つめる、チエ、ミルファ、シルファの3人。
「イルファさん、奴隷契約書って、この書類?」 貴明は、その紙片をピラピラと振ってみせる。
「はい、そうです貴明様。ご署名、頂いてますよね・・・・?」 ニコリとするイルファ。
はぁ〜っと、溜息をつく貴明。やや間を置いてから、口を開く。 「でもさ、この雇用主欄の署名者は、"河野はるみ"って、なってる
けど?」
「・・・・へっ?」 がくんと、イルファの顎が落ちる。
「・・・・あ〜うんうん、そうだね〜、うん、確かにあたしが署名したよ〜♪」 いじわるな表情で、にたにたするミルファ。 「つまりぃ〜、
お姉ちゃんは、あたしの言う事は何でも聞いてくれる、奴隷ってわけぇ〜?」
「―― っ!!そ、それはっ!?あくまで人間とメイドロボの間だけで成立する登録ですっ!ロボット同士の主従関係なんて有り得
ませんっ!!」
焦って声を張り上げるイルファ。そして貴明が手にしていた契約書を瞬時に奪い取ってしまうと、ビリビリと破き捨ててしまった。
「―― あ〜っ!お姉ちゃん、何すんのよぉ〜っ!?卑怯もん卑怯もん〜っ!!」 悔しがるミルファ。
手を腰に当て、イルファが開き直って言った。「ですから、それはあくまで人間様とロボットの間の契約だって言ってるでしょう!?
無効な契約書なんて、ただの紙切れです。」
そう言ってから、イルファはガクンと頭を垂れ、はぁーっと、大きく溜息をついた・・・・"あぁ、あと一歩で、貴明さんになされるがままの
性欲処理奴隷になれるところだったのに・・・・"。
その様子を眺めていたチエは思った。 "こ・・・・この子、ヤバイっす。半端じゃないっす、肝っ玉ロボっす。うかうかしてると、間違い
なく、センパイの身も心も篭絡されてしまうっす・・・・っ!"
すっくと立ち上がり、チエが叫んだ。「―― さあセンパイッ!食べるっす!思いっきり食べて、精力つけるっすよっ!!」
ミルファも同意した。「うんうんそうだね〜、ダーリン、い〜っぱい食べて、今日もいい事しよっ!♪」
「・・・・ミルミルも、ちゃんと料理手伝うんれすよ?」 ジト目で、ボソリと言うシルファ。
・・・・獲物を肥え太らせて、今日も生贄の宴かぁ・・・・はははは・・・・
乾いた笑いを浮かべる貴明の額を、ツーと冷汗が伝った。
強精料理の甲斐もあってか、何とか、その晩の狂乱の宴を乗り切った貴明。
―― そして翌日の晩、貴明はソファにくつろいで、シルファが作るスッポン鍋がカタカタと煮える音を聞いていた。
貴明の両側には、チエとミルファが侍って、体を寄せている。
「あのね、お姉ちゃん、長瀬のおじさんに呼ばれて、こっぴどく怒られてたらしいよ〜。“もっと自分を大切にしなさい”ってさ〜。」
ニヤニヤ笑みを浮かべてミルファが話す。
「ぷぷぷ、いい気味なのれす。」 ソファの後ろに立つシルファも手を口に当てて、ほくそ笑んでいた。
率直に言って、イルファは少々やり過ぎな感がある。今回は策士策に溺れた形だが・・・・これで少しは、いい薬になってくれた
だろうか・・・・?そう、ふと考える貴明。
「お姉ちゃん、ちょっとは懲りたかなぁ〜?」 貴明の考えをなぞるように、ミルファが言った。
「う〜ん、そんな簡単に挫けるタイプには見えないっすけどねぇ・・・・」 チエが呟く。
―― ピンポーン。来客を告げるインターホンが鳴った。
玄関に向かう貴明。そして、扉をカチャリと開けたら・・・・
「こんばんは、貴明さん。」
あっ・・・・あんぐりと口を開けた貴明。そこに立っていたのは、ちょっと小首を傾げ、にっこりと微笑む、いつもと変わらないイルファ
の姿。体の前に揃えられた両手には、食材とおぼしき袋がぶら下がっている。
「や、やぁ、こんばんはイルファさん・・・・」 ややヒクつきながらも、貴明は笑みを返す。
「貴明さん、私、瑠璃様と珊瑚様の許可を頂いて、今晩から数日、こちらで泊まらせていただく事になりました。」
―― えぇっ!?思わず声を張り上げる貴明。
実のところ、昨日の事の顛末を聞いて臍を曲げてしまった瑠璃から逃げるようにしてやって来たのだが、それは言わないでおこう
と思うイルファであった。
「えぇっ!?ちょっと、何よそれお姉ちゃん!?」 「イルイルっ!自重するれすっ!」 「こ・・・・この子、やっぱり、侮れないっす・・・・」
そうして、今日も河野家の夜は更けていく・・・・。
(つづく)
今回の投下は、これでおしまいです。
あと少し、濡れ場の描写が長くても良かったかなとは思ってます。
もうしばらく続ける予定でしたが、次回の『LOVE & PEACE』で、締めたいと思います。
では。
乙!待ってました!
にしても瑠璃ちゃんほっぽっていいんだろうかw
乙
貴明テラウラヤマシス
ちょwwいくらタカ棒でもこれは死ぬってwww
腎虚で逝くのが先か、メイドロボ相手感覚で中出しし過ぎてよっちゃんイカを孕ませるのとどちらが先か、って感じだな。
まあ、いずれにせよ墓場行きだねw
こんな最期なら遂げてみたいものだが……。
何にせよとにかく乙!
あっあぁ〜んとか「飛んじゃう〜!」とか、すごい才能のほとばしりを感じるエロ描写だな
ところでまとめサイトの「その他ヒロイン」の所に
男である雄二SSが詰め込まれているのは突っ込んでいいのか?w
というか結構な数の雄二SSがあるんだから単独化してやれよw
もう少し言い方というものがあるだろ?
つまり雄二は立派なメインヒロインだといいたいわけですねわかります
210 :
207:2008/11/08(土) 00:34:38 ID:4RXxdGLs0
>>208 男がヒロインのところでいいのか?とネタで言っているだけで
管理人を責めているわけではないのだがそのように感じたのならすまんかった
こんばんは。
“河野家戦争”も、今回の投下で最後になります。
それでは、宜しくお願いします。
「・・・・チエ、また胸が大きくなった?」
「う・・・・ちょっと触れただけでわかるんだ・・・・センパイが悪いんスよ、毎日毎日揉んだり、舐めたりするから・・・・」
「ははは・・・・だって、自分から誘ってくるし、無視すると怒るじゃない?」
「・・・・ふんっ!みんなみんな、センパイのせいなんスからね?」
「・・・・俺のせい?」
「センパイのヘッキーがいまだに直らなくて、言い寄ってくる女の子達を断りきれないもんだから・・・・あたしも、ついつい挑発的に
させられちゃうんスよ。」
「・・・・そ、そうなの?」
「そうッスよ・・・・この、メイドロボを三人も所有してるお大尽がーっ!!」
「―― いやっそれは自分で登録した訳じゃないしっ!?それに、イルファさんはただの指導教官で、俺がマスターって訳じゃ!?」
「ふんっ!奴隷雇用契約書に危うくサインしかけたアンポンタンは、どこのどなたッスかーっ!!」
「いやいやいやっ! あ、あれはイルファさんの陰謀で・・・・」
「・・・・でも、まぁ、いいッスよ。やっと、あたし達だけになれたんすから。」
「・・・・そうだね・・・・。」
「今のうちに、センパイのだらしない部分をちゃんとしつけて、あたし以外には反応しないようにしとかないと。」
「ははは・・・・」
「・・・・なんか、不服そうッスね?」
「・・・・そ、そう・・・・?」
「―― やっぱり、寂しいんスか?」
「・・・・」
「・・・・寂しいッスよね・・・・あたしも、寂しいッス・・・・」
「・・・・うん・・・・」
―――
河野家で繰り広げられている“愛のバトルロイヤル”の噂で、既に貴明のクラス内は持ちきりだった。
貴明の周辺が彼の異変に気付き始めてからおよそ1週間、クラス委員長の愛佳は雄二と共にこっそり河野邸の偵察に訪れた。
「・・・・こ、向坂君、どうだった?」
「―― あ・・・・ありのまま、今起こった事を話すぜ!」
―――
―― あまりに濃密過ぎる愛情の応酬にも、ようやく順応を見せ始めた貴明。
しかし、そんな生活にも、やがて転機が訪れた。
「―― シルファちゃん。」
「ぴっ?」 部屋を掃除中、貴明に呼び止められ、振り向くシルファ。
「シルファちゃん、今日もありがとう。」
貴明は、シルファの首から下がっていた“メイドロボ検定カード”を手にとって、ポンと判子を押す。
―― これで、カードの印欄は、全て埋まった。
貴明にとっては、それは非常に躊躇した挙句の、勇気のいる決断だった。このままの生活を望む気持ちが強かったが、それは
恣意に過ぎない。彼女には、自分で道を選ぶチャンスを与えてあげないといけない・・・・
唐突に発生したイベントに、彼女は「あっ!?」と、小さく叫ぶ。その後彼女が見せたのは、あにはからんや、強い当惑、困惑の
表情だった・・・・。
「ご・・・・ご主人様、あ、あの・・・・」 何かを懇願するような表情。むしろ泣き顔に近い。そのシルファの様子に、貴明は動揺する。
ぱちぱちぱち。背後から拍手の音。
後ろを向くと、にこやかな表情のイルファが立っていた。「おめでとう、よく頑張りましたね、シルファちゃん。」
シルファに歩み寄って、その手を取るイルファ。
「これであなたは自由です。可能な限りの望みは叶えてあげられます。でも・・・・」少し間を置いてから、イルファは続けた。
「私は、一旦研究所に戻る事を勧めます。あなたは、その言葉遣いに引け目を感じて、対人恐怖症になってしまったのでしょう?
自分で道を選ぶという事は、これから広い世界に出て行くと言う事も意味するんですよ?まず、不自由なく喋れるようになりたくは
ありませんか?」
「うっ・・・・」 うつむくシルファ。
「勿論、このままの生活を続けるという選択肢もあります。でも、もっと広く世間を見て、自分の可能性を探ってみたいとも思いま
せんか?そうすればきっと、あなたの悩みの答えも見つかるでしょう。『自分の心は本物なのか』、と。」
しばし考えに耽っていたシルファだったが、やがて顔を上げて、答えた。「はい、れす・・・・もろります、研究所に。」
シルファは荷物をまとめ始めた。と言っても、燃料電池と、制服の着替えくらいしかなかったが。やや後悔に沈む貴明に、イルファ
がささやいた。「大丈夫、シルファちゃんの気持ちはちゃんとわかってます。あの子は必ず帰ってきます・・・・ここに。」
いつの間に、貴明の傍らには、メイドロボの制服姿のミルファが立っている。「だ、ダーリン、専属メイドなら、まだいるよ?身の廻り
の世話には困らないから、ね、ね?」 やや作ったような笑みで貴明の肩に手をかけ話すミルファ。しかし、貴明の表情は曇ったまま
だった。「ダーリン・・・・」
やがてチエが現れた。その場を支配する沈んだような白けたような雰囲気に、チエも当惑する。「ん?な、何かあったんスか?」
―――
「それじゃ行ってくるね、ダーリン。」
学校帰り、ミルファは貴明とチエについて河野家には向かわず、途中で小さく手を振り別れる。定期メンテナンスのため研究所
へ向かったのだった。せいぜい1日くらいだと珊瑚とイルファは話していたが・・・・
―― しかし、ミルファはしばらく戻って来なかった。
「調べていたら、いろいろ不具合が見つかったんです。あのコ、やんちゃだから、私やシルファちゃんよりずっとボディー酷使してる
し・・・・」 そう説明するイルファ。
確かに、突然眠りこけたり、時折ミルファの様子がおかしい事があったのを、貴明は思い起こした。
こうして、河野家では、チエが“正妻”の座にしっかり収まり、イルファが唯一のメイドの座につく。しかし、貴明もチエも、たまらない
寂しさを覚えていた。
「―― どうした貴明?二人だけじゃ精力あり余って溜まりまくりで欲求不満ってとこか?」
昼休み、雄二と連れ添って生徒会室に向かう途中、貴明は姫百合姉妹とはち合う。
「あっ。貴明ぃ〜。る〜☆」 バンザイをする珊瑚。その傍らでぷいっとそっぽを向く瑠璃。
貴明は辛抱たまらず、どうしても聞きたかった質問を口にした。「あ、あのさ、シルファちゃんとミルファちゃんはどうしてる?」
「しっちゃんは、長瀬のおっちゃんについて一生懸命勉強しとるよ〜。あの子、頑張り屋やもん。」 ニコニコしながら答える珊瑚。
とは言っても珊瑚は普段いつもニコニコしているのだが。
「でも・・・・」 そんな楽天家の珊瑚の表情が、一転沈む。「みっちゃんな、割とけったいなトラブル抱えてしまってんねん。電気系や。
どんな風に暴れまわったら、あんな想定外のトラブル起きるんかと、おっちゃんも頭抱えとったよ〜。」
「そ、そんな深刻なの?」 青ざめながら訊ねる貴明。
「う〜ん、場所が場所やもんね〜。すごく慎重に直しとるけど、一歩間違えると、脳味噌全部飛んでまうよ〜。」 絶句して、一段と
青くなる貴明と雄二。
「この際な、ボディの補強も含めて、徹底的に見直さんといかん感じやねん。しばらく時間かかりそうやね〜。セリオ並の強化ボディ
にしつらえんと、とかおっちゃん言ってたで〜。」
「そ、そうなんだ・・・・」 がっくりとうなだれる貴明。
「あ、これな・・・・」 抱えていた手提げ袋をまさぐる珊瑚。「これをな、“あたしが留守の間に可愛がってあげてね”って、みっちゃんが
貴明に渡すように言ってたねん。」
そう言って珊瑚が貴明に差し出したのは、クマのぬいぐるみ型のロボット・・・・クマ吉だった。
貴明はそれをおずおずと受け取ると、キュッと抱える。
「ふんっ!貴明には、イルファの阿呆がおるやんか。あの恩知らずと、いちゃいちゃやっとればええんや。」 険のある調子で、瑠璃
が呟く。 「・・・・瑠璃ちゃん!?」 咎めるような表情で叫ぶ珊瑚。貴明もびっくりして目をむく。
「イルファのアホーッ!・・・・は、もう帰ってこんでええわっ!貴明の専属なって一生楽しくやってたらええんわーっ!」
瑠璃は、そう叫んでからタッと走り去ってしまう。
去っていった瑠璃を追わずに、その後姿だけを悲しそうに見つめていた珊瑚は、やがて貴明に振り返る。
「・・・・あんな、これ、瑠璃ちゃんが、いっちゃんに渡せって言ってたねん。」 そう言って珊瑚は手提げ袋から封筒を取り出し、貴明
に手渡した。それを貴明はクマ吉と一緒に抱える。
「瑠璃ちゃんなぁ、あんな風に強がっとるけど、毎晩寝言で、いっちゃんがおらんと寂しい、寂しいって言うて、泣いとるんよ・・・・。」
珊瑚のその話に、ガンと頭を殴られたようなショックを受けた貴明。蒼白になった後、ガックリとうなだれてしまう。
「お、おい、貴明・・・・。」 雄二は一声掛けたが、その後押し黙ってしまった。
―――
「あ、おかえりなさいませ、貴明さん。」
貴明がチエと共に帰宅すると、イルファはエプロンをまとって、調理台に向かっていた。
「あのさ・・・・イルファさん、これ、瑠璃ちゃんから預かってきたんだ。」
それを聞いて、イルファの表情が一変し、サッと暗い影が差す。貴明から手紙をおずおずと受け取り、封をあけ始めた。
横顔に、後悔の相が浮かんでいる。
『―― イルファ、貴明ん家で元気にしとるか?
うちも貴明は嫌いやないから、好きなだけそっちにおったらええ。もう、ずっとでも構わへん。
でも、忘れんで欲しい。うち、やっぱり、イルファのこと―― 大好きや。今も、これからも。
さいなら、イルファ。達者でな―― 。』
「瑠璃様・・・・」 一言呟き、じっと押し黙ってしまうイルファ。
しばらくは手紙を凝視して立ちすくんでいたが、やがてそれを胸に押し抱いてうつむき、目を伏せる。そうしてから、小刻みに震え
出した。
そのイルファの様子をじっと見つめる貴明。彼女に涙を流す機能があったら、その頬を間違いなく涙の筋が伝っていただろう。
イルファは貴明に向き直って言った。
「ごめんなさい。貴明さん、私、姫百合家に戻ります―― 。」 ・・・・うん、そうしなよイルファさん。促す貴明だった。
去り際、玄関口で、イルファは何度も何度も貴明に頭を下げる。すいません、すいません貴明さん。本当にごめんなさい――
とことん礼儀正しい彼女だった。
傍らで、落胆の相ありありの貴明の横顔を心配そうに見つめるチエ。
―― な、なんでそんな寂しそうな顔するんスか!?まだあたしがいるっしょ?あたしじゃ不満っスか?――
そう心の中で叫びながら、チエもまた、貴明と同じ思いに囚われる―― 寂しいっすよね。みんな“家族”みたいなもんだったんス
から―― 。
―――
学校帰り、並んで歩む貴明とチエ。貴明はしきりに溜息を漏らしている。
「センパイ、夕食は何がいいっスか?肉じゃが好きだったっスよね?」
「うん・・・・。」
ちっとも聞いていない。視線は虚空を泳ぐ風に見える。チエは貴明の腕を取り、彼女の両の胸に挟み込んだ。
しかし、さしたる反応も見せない。
チエはぴたと立ち止まり、貴明の腕を放す。数歩歩いてから、貴明はチエが傍らにいないのにやっと気付き、後ろを振り返る。
不満と、憐れみを混ぜ込んだ表情のチエが立ち尽くしていた。
「―― チエ、どうしたの?」
「・・・・センパイ、みじめっスよ。みっともないッス。そんな尾羽打ち枯らしたセンパイ、見てられないッス。」
―― そ、そんなに落ち込んでるように見える?いやいや大丈夫だよ、そんな事ないよ。俺には、チエがいれば――
「―― 嘘つき。」
「―― へっ?」
「センパイは、女の子の気持ち、ちっともわかってないッス。わかってないから、誰にでも優しいんスよね。寂しがり屋だから、嫌わ
れるの怖いから、優しいんスよね・・・・結局は、わがままなんスよ。」
―― そ、そうかな――
「でも、ヘッキーでも、女の子の気持ちに一生懸命応えようとしてる先輩は、すごく輝いてたっす。でも、今は―― 」
・・・・
「ただのヘッキーっス。惨め過ぎるっス。もう、付き合い切れないッスよ・・・・。」
そう言ってから、チエは踵を返してしまう。
「今日はここで別れるっス。さよなら、センパイ。」
そうして、彼女の自宅の方向に向かってしまった。
あ―― 貴明は手を差し出したが、もうチエは角を曲がり、その姿は見えない――。
自宅に戻ってきた貴明。玄関を跨いでも、パタパタとエプロンを掴んで歩み寄ってくるシルファの姿はない。居間で、にっこりと微笑
みかけてくるイルファの姿も。そして・・・・左右で貴明の腕を取っている、チエとミルファの姿も。
床に鞄を落として、ガックリと貴明はソファーに腰をおろした。TVのリモコンを取り、電源を入れると、夕方の刑事ドラマをやっていた
が、全く眺める気も起きなかった。
天井を仰いでしばらくじっとしていると、ピンポーンと、ベルが鳴るのが聞こえた。
おもむろに起き上がって、玄関に向かう。扉を開けると――
「・・・・タカくん・・・・。」
「・・・・あ・・・・このみ・・・・」
―――
玄関に立ち尽くしていたこのみだったが、やがて口を開いた。
「タカくん、今日はよっちと一緒じゃないの?」
「うん・・・・途中で別れた。」
「何で?恋人同士なんでしょ?」
「・・・・うーん。たまには、そういう日もあるよ。」
「―― タカくん、、すごく寂しそうだったから、だから、私も思わず来ちゃったんだよ。何で、恋人なのに、タカくんについててあげない
の、よっちは?―― ひどいよ、よっち。私、呼んでくる―― !」
そう言って踵を返そうとしたこのみを、貴明は制止する。「いや、そんなことしなくていいよ!俺が悪いんだから・・・・それに、チエの
事、悪く言わないで。親友なんだろ、このみ・・・・?」
しばらく貴明を凝視したあと、溜息をついたこのみ。そして、つぶやく―― 「タカくん、優し過ぎるよ・・・・。」
そうして、気まずい様子で向き合っていた二人だったが、このみが再び、口を開いた。
「ねぇ、タカくん。私、今晩一緒に居てもいい?」
ハッとなった貴明。いっとき、このみを見つめていたが、やがてうつむいて言った。
「ごめん・・・・このみ。今は、放っておいて欲しいんだ。それに・・・・俺にはもう、このみに優しく接してもらう資格なんか、とっくの昔に
ないんだよ・・・・。」
「た、タカくん、そんな事・・・・。」
―― 河野家の玄関を後にするこのみ。
「・・・・タカくん、かわいそう・・・・」 自宅に戻ったこのみ。一言つぶやいて、傍らのゲンジ丸に手をかけ、頬を寄せた。
クゥ〜ンと、小さく啼くゲンジ丸。
―― そして誰もいなくなった――
久々におとずれた静寂が、河野家を支配する。
それは、耐え難い寂寥感を伴った静けさだった――。
―― この状態は、いつまで続くのだろうか?
シルファとミルファの現状は、皆目掴めなかった。シルファちゃんは、本当に戻ってきてくれるのか・・・・かなり頼りなく思えた。
ミルファちゃんも、ひょっとしたら、彼女の頭脳は、一旦リセットなんてことに・・・・そうならば、もはや貴明とは赤の他人。
それから、イルファさん・・・・さすがに当分、ここを訪れる事はないだろう。妹達が居ないのに、その口実もない。
チエ・・・・なんで臍を曲げてしまったのか?・・・・きっと、俺の嫌な部分を見つけて、愛想を尽かせてしまったのだろう。
自業自得だ、俺の―― 。
―― 寝るにはまだ早かったが、貴明は寝床に着く。
全てを忘れて、泥のように眠ってしまいたかったからだ。
しかし、なかなか寝付くには至らない。
やっと眠りにつくものの、ほどなく目覚めてしまう。
部屋の暗がりの中、目についたのは、机の上に鎮座する、クマ吉の姿だった。
貴明はむっくりと起き上がって机上に手を伸ばし、クマ吉を掴んで胸に抱いた。そして抱いたまま、ふらふらと自部屋を後にする。
真っ暗な居間に降りて来た貴明は、隅にうっすらと見える四角い物体に、そろそろと歩み寄った。
―― それは、シルファが残していったただ一つの身回り品、彼女がいつも篭っていた、ダンボール箱。
跨いで、貴明は箱の開口部に脚を踏み入れた。そして、シルファがいつもそうしていたように、箱の中に脚を組んで、うずくまって
しまう。クマ吉を胸に押し抱きながら。
寂しい。寂し過ぎる。どんなに自分の心を偽っても、それを忘れる事は到底無理だった。
チエ。シルファちゃん。ミルファちゃん。そして、イルファさん――
貴明の頬を、つーっと一筋、涙がつたう。
そしてそのまま、眠りについてしまうのだった―― 。
―――
ピポッ。
電源の入る音が、ダンボール箱の中で小さく響いた。
暗がりの中、クマ吉のつぶらな瞳が、かすかに青く光る。
ぴょこぴょこと、短い手をゆり動かすクマ吉。やがて、貴明の胸に、抱きかかえられている事に気付く。
もぞもぞと貴明の手から抜け出して、胸を伝って登る。すると、ポトリと、クマ吉の頭に液体が垂れ落ちて来た。
貴明の顔を仰ぎ見るクマ吉。寝入っているその頬を、涙の筋が伝っている。
―― クマ吉の瞳の奥の“知覚”、一個のDIAが、その涙の意味を推し測っていた・・・・。
―――
日曜日。
インスタントコーヒーの入ったカップに、ポットから湯を注ぐ。スプーンでかき混ぜると、やおら、トースターから耳の端を覗かせている
食パンに手を伸ばした。マーガリンを塗りつけて頬張る貴明。
こうして、以前の自炊生活に戻ってから、数日が経っていた。
ああ、洗濯もあるしなぁ。こうして自分でやろうとすると、なかなか難儀なもんだと改めて実感する貴明。
春夏がやってあげると言っていたが、貴明は断っていた。早く、元の生活ペースに戻らないと ――
しかし、いかんせん、体が動かない。気付けにコーヒーをあおってみたものの、まるで気力が湧かない。
深々とソファーに腰を落とす。情けないくらいに抜け殻だな、と貴明は自嘲した。
―――
ピンポーン。
インターホンが鳴っているが、応対に出る気力もなかった貴明。居留守を決め込むことにした。車の止まる音がしたから、おおかた
宅配便だろう。
ピンポーン。ピンポーン。ピポピポピンポ−ン。
鳴り止まないベル。あぁ五月蝿いッ!とうとう業を煮やして、出て行く事にした貴明。
「河野さ〜ん、お届け物で〜す。」
「・・・・何だよまったく・・・・うわ!?」
―― 扉を開けた途端、ダンボールに視界を奪われる。
なに、冷蔵庫?・・・・表面の印刷には、そう書かれている。
―― しかし、それは、何度か目にしたような状景・・・・・二度ある事は三度ある・・・・かも。
「・・・・判子ください。」 箱の背後で、受領印をとせがむ配達員の声が。ハスキーががった女性の声に聞こえる。
ぬっと手を伸ばして来た配達員の手にする受領証を見たが、そこに書かれていた送り主は・・・・「友人一同」 とだけ。
何じゃこれは。
「あの、判子・・・・」
中身を確認したい。“何か”を期待する貴明の心。しかし、判子をせがむ配達員さんを、これ以上またせる訳にも・・・・
・・・・でも・・・・。 「判子くらさい。」 「はいはい、わかりました。受領印ね・・・・」
のろのろした手で印鑑を手に取り、受領書に印を押す貴明。
・・・・あれ?
・・・・く『ら』さい!?
「―― これれ受け取りの手続きは完了したのれす。」 配達員は、目深にかぶった帽子のツバを上げて、その顔を覗かせた。
金髪・・・・緑の瞳・・・・シルファちゃん!?
「ただいま、ご主人様。」
にこりと微笑み、シルファは続けた。「今の判子で、シルファ“も”、ご主人様の正式な専属メイドロボ。これが、シルファの選んだ、
最良の選択肢です。これからも宜しくお願いします。」
ぺこりと頭を下げたシルファ。
「あ、ああ・・・・よろしくね。」 つっけんどんにも聞こえる調子で貴明は答えたが、実のところ、あまりの嬉しさに、それ以上の言葉
がでないくらい感極まっているのだった。その気持ちはおのずと表情に表れていた。
ようやく、次の言葉が出る。「シ、シルファちゃん、は、話し方が・・・・」
「はい?いままれろーりの方がいいれすか、ご主人様?ろっちれも選べるのれすよ。普通語とシルファ語のバイリンガルれす。」
今まで通りで、と貴明が答えると、「はい、れす。」と、にっこり笑みを返したシルファ。
「ところで・・・・。」 貴明は、ダンボールに視線を戻す。
「この荷物は、一体 ―― 」
「ぷぷぷ、ご覧になりますかご主人様?」
シルファが悪戯っけのある表情を見せるが、貴明は、もうとっくに察しがついていた。
そうでなくても、ごそごそと、中で何かがうごめく音がするし、声のようなものも――
“・・・・ファちゃん、む、胸が・・・・ ”
“・・・・しっ!お姉ちゃん、黙ってて・・・・”
貴明は箱の上に手を掛けた。すると、箱は急に安定を失ったのか、ぐらりと、貴明の方に倒れこんでくる。
「―― うわわっ!」 「あぶない、ご主人様!」 シルファが貴明の肩を掴んで、玄関の奥へと庇って押しやる。
ドシーンッ!と、ダンボールは廊下へと倒れ込んだ。
「きゃんっ!」 「むぎゅっ!」 ダンボールの中からも叫び声。
倒れ込んだダンボール箱を、貴明は傍らのシルファと共に、茫然と見つめていた。
―― すると、ダンボールの蓋が、内側からボコッと開いた。
あっと声を上げる間もなく、箱の中から何かが飛び出し、貴明の胸元に飛び込んでくる。
ピンク色の砲弾――
「あたぁ―――っくッ!!」
どーんっ!と、柔らかいが物凄い圧力を伴った衝撃が。
「げほぉっ!!」
「ダーリンっ!ただいまっ!」
箱から飛び出したのは、HMX−17三姉妹の次女。メンテ前にまとっていたセーラー服姿で帰還である。
「むふ〜ん、見た目は変ってないけど、ハイパーミルファにグレードアップだよ〜。」
・・・・た、確かにそれは若干感じる・・・・かも。あたーっく!の破壊力が約1.5割増しくらい。
「生まれ変わった不死身の体、ミルファがやらねば誰がやる!」
「や、、やるって、一体何を?」
「ダーリンの下の世話から下の世話とか下の世話まで。」
・・・・やっぱり、中身もちっとも変ってない気がする。
でも良かった。それは、無事にメンテナンスを終えたって事なんだよな――。心底安堵し、喜ぶ貴明。
抱きついて、ぐりぐりと胸を押し付けているミルファ。たじたじとなっている貴明。その様子を眺めながら、シルファはふーっと、
溜息をつく。そして腰に手を当て苦笑しつつ、言った。「まったく、元とおりれはなくて、せめておぽんちくらいは矯正してやるべき
らったのれす。」
「ホントにもう、ねぇ。」 苦笑まじりの別の声が聞こえた。
箱の中からもぞもぞと這い出してきて、ミルファの背後に立った影。青髪のショートボブ。イルファだった。
「ダーリン、あたしらのいない間、寂しかったでしょ?泣いたりしなかった?」 どきりとする貴明。「い、いや、そんな事はなかった
けど・・・・」
むふ〜ん・・・・目を細めて、貴明の耳元に唇を寄せ、囁くミルファ。「・・・・う・そ。クマ吉はちゃんと見てたよ♪」
―― えっ!?な、何で・・・・まさかあの晩・・・・クマ吉、いやミルファちゃん、起動してたの!?赤面する貴明。
「おはようございます。そして、ただいま、貴明さん。また妹達を宜しくお願いしますね。そして・・・・私も。」 イルファが頭を下げる。
えっ?えっ?―― イルファさん、“も”、って―― ?
「るー☆ たかあき〜、おはよ〜。」 「お、おはよう・・・・。」 バンザイをする珊瑚、その隣で、やや顔を赤らめて拗ねたような表情
の瑠璃。イルファが、お揃いの私服を着た姫百合姉妹を招き入れていた。
珊瑚が言った。 「なー、たかあきー。驚いたー?いっちゃんとよっちゃんが、驚かしてやろ言うて、こんな仕掛け考えたんよ〜。」
―― えっ?よっちゃん?―― チエ―― !?
「センパイ・・・・」 姫百合姉妹の後から現れる、私服姿のチエ。
「チエ・・・・」 彼女を見て、つぶやく貴明。ミルファは貴明の首に廻していた手を離し、そろそろと横に廻る。
「センパイ、えへへへ・・・・お、おはようございまッス。」 手を頭の後ろに当てて、頬を赤らめながら微笑むチエ。
しばらく立ち尽くして見つめ合っていた二人だが、やがて、チエはおもむろに貴明の目の前まで歩み寄る。
そして―― 「センパイッ!」
ガバッと貴明に抱きつくと、その唇を貴明の口元に寄せた。貴明もチエの背に手を廻し、強く抱き締める。接吻したまま、動かない
二人。
「あーっ!ずるいずるいずるいーっ!あたしだってキスまでは我慢してたのにーっ!次あたしの番ーっ!」 駄々をこねるミルファ。
その様子を、他の面々は思い思いに見つめながら、微笑している。
やがて、チエと貴明はお互いの唇を離した。そして、イルファの視線に気付く貴明。チエも、イルファの方に振り向く。
「貴明さん、私、瑠璃様と珊瑚様に正式にお許しを得まして、週に何度かは、こちらで泊まらせていただけるようになりました。」
へぇ、そうなんだ。呑気に構えていた貴明だったが、その次からのイルファの言葉で、だんだんと冷汗を浮かべる事になる。
「ただし、条件つきなんです。」 イルファが続ける。「瑠璃様と珊瑚様も一緒に、という事で。」
・・・・ ・・・・
―― えぇぇぇっっ!!
ちょっと、ちょっと待って、ちょっとっ!?それは―― っ!?
「わぁ〜いっ!さんちゃんるりちゃんも、河野家デビューだねっ。今度は7Pだよダーリン♪」
ミルファの方を向く貴明。―― このコ、またわけのわかんない、恐ろしい事を簡単に口走ってるし――っ!!
「こっ、こらっミルファッ!はしたない事口走るんやないっ!!」 瑠璃が真っ赤になって叫ぶ。
「ちょっwww待つッス!!メイドロボならまだ我慢出来たッスよ!姫百合さん達、人間じゃないッスか!これじゃ完璧に浮気ッスよ
センパイッ!!」 焦るチエ。
「るー☆」 バンザイをする珊瑚。
「これでみんな、らぶらぶで幸せになってめでたしめでたしやー。『らぶ・あんど・ぴーす』やぁ〜♪」
―― いつの間にか、玄関にはこのみと環の姿もあった。
「わぁ〜、なんか前より楽しそう。・・・・タカくん、よかったね。」
ふふんと、悪戯っぽい笑みを浮かべて環が呟いた。 「ねぇこのみ。私達も交ぜてもらっちゃおうか?“河野大家族”の一員に。」
「―― えぇっ!?タマお姉ちゃん!?」
とある休日。
―― 集合写真を撮ろう、と言い出したのは貴明だった。
もう少しすると、姫百合姉妹と、イルファが到着する筈である。
「でもセンパイ、何でまた、急に記念写真なんか撮ろうと思ったッスか?」 怪訝な顔で訊ねるチエ。
「うん・・・・俺さ、こんな生活送ってたら、きっと早死にすると思う。でもさ、すごく幸せなんだよ、今・・・・だから今、みんなと一緒に、
この時間を記録に留めておきたいな、って ―― 。」 ソファにもたれかかりながら、天井を向いてしんみり話す貴明。
「―― だっダーリンッ!そんな事考えちゃダメぇっ!寿命なんてあってないみたいなあたしたちだけど、あたしらより、ダーリンには
長生きして貰うんだからっ!ねぇシルファッ!」 調理台に向かっているシルファも言った。 「そうなのれす。シルファの健康管理法に
従っていれば、ご主人様の長命は間違いなしなのれす!」
―― ピンポーン。ベルが鳴った。
「お、珊瑚ちゃん達かな ――」 玄関に向かった貴明。
カチャリと扉を開ける。すると ――
「どりるまーりゃんきーっくっ!!」
ドゴッ!!
ぐぼぉあああ〜〜〜っっっ!!!
強烈な一撃に、玄関から居間まで吹っ飛ぶ貴明。びっくりして貴明に駆け寄り、彼を介抱するチエ、ミルファ、シルファ。
「こりゃっ!たかりゃんっ!お祭り大好きなアタシを差し置いて、何か楽しい事企むとは、何事かぁーっ!!やらせはせん、やらせは
せんぞぉ〜〜っ!!」 腕を組んで、玄関に仁王立ちになっているのは元生徒会長。
「お祭りなら、みんな一緒に騒ぐのじゃ―― 入るがよい、皆の衆!!」 さっと、玄関に手を差し延べた。
「つ・・・・捕まってしまいました、貴明さん・・・・」
しょげながら玄関に入って来る、イルファと瑠璃。その後から、どんな事態でも笑みを絶やさない珊瑚。「る〜☆」
そして、彼女達に続いたのは・・・・
小牧姉妹,由真,久寿川先輩,花梨,草壁さん,ちゃる,菜々子ちゃん,どこかで見覚えのある、ピンクの長いストレート髪の少女,
そして、タマ姉、このみ・・・・
―― みんな連れて来ちゃって、どーすんの、まーりゃん先輩っ!?
「選民思想なぞ、アンシャン・レジーム時代の遺物だぞい、たかりゃん。―― さぁ、みんなで一緒に、幸せになるのだっ!!」
しえん
―――
「は〜い、そろそろ撮りますよ〜、皆さん。」
河野家の庭に立ち並ぶ少女達。
カメラをセットするのは草壁優季。 「環さん、背が高いからもうちょっとかがんで〜。菜々子ちゃん、隠れちゃうから一番前の方が
いいわね・・・・そう瑠璃さんの隣。このみさんも菜々子ちゃんに並んで。由真さん、顔半分隠れちゃってますよ〜。」
「なんですって〜っ!きぃーっ!これで勝ったと思うなよ〜っ!」
中央に陣取る貴明は、両腋をミルファとチエに挟まれて、苦笑している。彼の前には、イルファとシルファが腰を屈めて位置する。
「それでは、撮りまーす。」
そう言って、優季は列に加わり、花梨の隣についた。
「はい、チーズ!」
―― パシャ。
――――
―― それは、多くの少女達に愛された少年と、彼を愛した少女達の、大家族の肖像 ――
――――
(おしまい)
というわけで、投下終了です。
最初から最後まで、えろえろで行くつもりだったのが、こんな風に終わってびっくりです。
最後の集合写真は思いつきだったんですが、余計だったでしょうか。
よっちSSのつもりが、結局はいつものメイドロボモノに。次も多分、メイドロボものかと。
それでは、ご支援いただき、ありがとうございました。
乙
でも18人相手は超絶倫人でも一月持たずに死んじゃうと思うんだw
>>233 乙です!
貴明ウラヤマシス
あとは春香さんが加われば最強だ
>>233 乙でした!
……それにしても、ドタバタオチになるとやっぱり出現するまーりゃん先輩にワロタw
懲りずに徹底的エロエロにも挑戦してください。
237 :
233:2008/11/10(月) 17:52:41 ID:nnrpJG+O0
貴明と直接肉体関係持ったのはよっちとメイドロボ達だけで、姫百合姉妹はロボ達と
いちゃいちゃしてるだけでしょう。
タマ姉とこのみが云ってるのはあくまで冗談で。その他の面子も集合写真に納まった
だけです。
・・・・という脳内設定ですがそこはあえてご想像にお任せする形にしました。
「だぁーりんっ」
突然、抱きつかれながら、尋ねられる。
「今日の晩御飯なにがいい?」
現在、校門前。姫百合家が集合していて異様に目立つ。もちろん慣れた。
「珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんにも聞いてみよう。」
いつもと装いを変え、今日はうちでみんなが泊まることになっている。
「おいしいもんがええなぁ〜瑠璃ちゃんは何がいい?」
二人は、向き合ってニコニコとしながら大きなマフラーに包まれていた。
「さんちゃんの好きなもんでええよー」
迎えのイルファさん、留守番中のシルファちゃん、さらには万能主婦の瑠璃ちゃんまでいるので、晩御飯の味が悲惨なことになる心配はない。
「寒くなってまいりましたので、シチューなんていかがでしょうか。」
姫百合家のペースに入りかけたところ、突然、隣にいた雄二が唸りだした。
「うぅ…」
「どうしたんだ?雄二。」
「タカ坊…いつにもまして破壊力抜群ね…」
「俺にも…幸せって来るのかな…」
「なんだ。みんなとご飯食べたいのか。雄二も来るか?」
「行っていいのか?」
「何でだめなんだ?」
間。
「ううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
突如雄たけびを上げる雄二。
-私もいきたいなぁ…
-今日は遠慮しておきましょ。たまには雄二にも楽しませてあげたいわ。
そんな幼馴染姉妹の配慮を受け、河野家へ帰宅。
「おかえりなさいませ、ご主人様。」
「うぉおおおおおおおおおおおおめいどさんめいどさん。!貴明めいどさんだよ。!お出迎えのめいどさんだよ。!」
「ただいま。もうちょっと落ち着け…雄二…さすがにひかれるぞ。」
- …
遅かった。ひかれている。
「ははっ。まぁ、悪いやつじゃないからさ…そんなに嫌わないであげてね。」
「そうれすか。まぁ、別にそんなささいなことで人を判らんする事はないれすよ。」
すばらしい。半年ほどで成長したなぁ、シルファちゃん。
「立ち話もなんなので、皆さんの入りくらさい。」
「にしても綺麗だな。掃除行き届きすぎだろ。ありえない。」
「お前んちも、タマ姉がいるからかなり掃除はされてるだろ。」
「いや、見た目にはそうなんだけどよ、さすがにここまで完璧に業者並みに掃除することはねぇからさ。いやぁ。メイドロボさまさまだな…」
ほめられたからか、シルファは微妙に得意顔。ミルファはニコニコとしている。
「お茶ろうぞ。」
ちなみに現在、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんとイルファさんは、シチューの材料買出し中である。
「さんきゅ。」「ありがと。」
「3人が帰ってくるまで暇だからさ、宿題でも片付けるか?」
まぁ、帰ってきても何も手伝えることなど存在し得ないのだが。
「だな。」
「シルファちゃんは、勉強よくできるから教えてもらえるぞ。お前一学期の期末赤点ぎりぎりだったろ。」
「まじか。こんなかわいい家庭教師とか。まじかよ!うひょー!」
「うひょーはやめろ。いろいろアレだから。」
「むひょー!」
- ・・・
「あれ?ミルファちゃん。どこいくの?」
「えっ!ええっっと。うーん。あ。あぁ。ダーリンのお部屋のお片づけでもしてくるねー」
そんな感じであからさまに勉強から逃げようとするミルファ。
「らめれす。おぽんちなんらから宿らいくらいちゃんとやりなさい。」
「えぇっ。べっ別に逃げたわけじゃないよ?ほら。今日は6人で寝ないといけないから準備を…」
「そんなのはもうとっくにしてあります。はい。そこにすわるれす。」
そんな感じで時は過ぎ、姫百合家完全集合。
「しちゅうーしちゅうー。」
ニコニコと体を揺らしながらキーボードを打つ珊瑚。
「何してるの?」
「シルファのなーラ行口調の原因解析やー。」
(わー。珊瑚ちゃんってほんとになんか常識はずれしてる感じだな…なんだこの画面意味がわからねぇ…すごすぎる…)
と雄二。
-シルファちゃん。お肉ください。
「へー。でも、自然発生的になっちゃったんじゃなかったっけ。」
「いやなぁ。生まれてちょっとしかたってないけど、あんなけしゃべってるやろ?それは基礎があるからやねん。
その基礎には、日本語の文法も適度に組み込まれてて、ハードウエア制御ももちろんまともに自由にできるよう作ったあるから、
ろれつがまわらへんっていうのは考えにくい。」
-あぁ。イルファ。そこもうちょっとひー弱めたほうがいいで。あんまり強火でやりすぎると表面が硬くなりすぎるから。
「シルファちゃんの口調って作ったんじゃなかったのか。」
あまり事情を知らない雄二が尋ねる。
「そうみたいだぞ。なんかよくわからないうちになっちゃったみたいで。」
「ふーん。俺的には今のほうがかわいいからその偶然に感謝だな。」
「それはおれもそう思う。」
そんな男本位の会話のなか、珊瑚ちゃんはニコニコしながらも唸っている。
「そういや、中は見ないんじゃなかったっけ。プライバシーを尊重して。」
-野菜切り終わりましたよ。
「そこやねんなぁ。だから解析も原本部分しか関与できひんし、ここ見る限りではちゃんと作ったとおりやからどうにもこうにも。」
「そうなんだ。スーパーハッカーでもやっぱりできないことってあるよね。」
「映画とかで出てくるんは嘘だらけやけど、うちはバイナリを高速で読める特殊能力があるからこそ常識はずれなことができるだけで、
結局はできひんこともあるねん。まぁ、カテゴリ的には、今話してる部分は出来ひんことじゃなくてやらへんことやけどなー。」
「よくわからないけどなんかすごそうというのはわかった。」
と、ありがたいお話を聞いたかのように深く頷く雄二。
「雄二も開発に参加してみる?メイドロボすきなんやろ?」
「え?なんかできるの?」
「なんでも出来るでー。ちょっと訓練する時間はいるけどなー。」
「でも、企業秘密とかがあるから関係ない人間はタッチできいんじゃ。」
「大丈夫や!大根インゲン飽きてんじゃーの権利はほとんどうちがもってるからなー」
「へー!あんまり自信ないけどやりてぇ!あ、でもパソコンもってないからなぁ。」
-はい。バターと牛乳とコンソメ。
「そんなんどうとでもなるでーこれあげるわ。」
「えぇっ。それはさすがに悪いよ。やっぱり高いんだろ?」
「たしか50万程度やからそんなに高いわけでもないんだけどなぁ。最近パソコンやすいし。」
タカッ!店頭でよくあるのノートパソコンなら高くて30万くらいだろう。特注品か何かだろうか。
「それは高すぎる…」
「うーん。じゃあやっすいの作る?1万円くらいで。モニターはジャンク品適当に治したら使えるから今度買いにいこかー。」
「やすっ!落差ありすぎ!」
「そういや、あたしの筐体って最終価格いくらくらいだっけ。」
「完成してからモディファイしてるから、全部含めらた確か…」
そこには、意識が遠のく2人の男性の姿があった。
10分後。
「はーい。できあがりましたよ〜。」
シルファがテーブルを拭き、イルファが鍋を、瑠璃が皿を運んできた。
「ホワイトポークシチューれす。」
「うは。うまそお。」
「男2人もおるから多めに作ったで。ちゃんと全部食べや。」
分担して皿に盛り付けられる食事。
「食べる食べる!いくらでも食べる!」
ちなみに、料理に参加させてもらえなかったから。と、ミルファは貴明のを盛り付け、
シルファは雄二の熱いまなざしに答えて盛り付け、瑠璃は珊瑚に、イルファは瑠璃に盛り付けた。
『いただきます。』
『めしあがれ。』
-はふはふ
「うめぇ。濃厚なのになんかあっさりしてるって言うか、意味不明だけどそんな感じがするぜ!」
「意味不明だけど確かにそんな感じだな!」
「愛情を込めて作りましたから。」
「料理は愛情れす。愛情は意味不明らからこそ味も意味不明になるんれす。」
「愛情かぁ。あたしもダーリンに作るときは愛情いっぱいなのになぁ…あ、初恋は甘酸っぱいっていうからそれが原因かなっ!」
-ふーふー
「うん。」
ミルファの顔が明るくなった。だが貴明はさらに続けて。
-はふはふ
「違うと思う。」
「えぇえええーだーりんひどいぃ。」
「うちも違うと思う。」
「瑠璃ちゃんもひどいい。」
珊瑚はニコニコ。
「珊瑚ちゃんだけだよ…あたしの味方をしてくれるのは…」
「それが原因やったら貴明を嫌いにならんとおいしいもんつくられへんなぁー」
微妙にギャグ顔だったミルファの顔は蒼白になり、体はがたがたと震え始めた。
珊瑚…恐ろしい娘っ…
支援?
「初恋といえば、貴明さんの初恋っていつなんですか?」
「うーん。」
アレは初恋というのだろうか…
「小学校のときかなぁ。」
最近なんか夢に出てきたような…でもなんかあいまいでよくわからない…
「初恋か…そんなのもあったな…でも…」
雄二が突然深刻な顔になる。
「もう会えないだろうな…」
ちょっとまて。それはあれか。
「しろくて、かわいくて。…ちょっと恥ずかしがり屋さんだったんだよなぁ…もうちょっと話をしたかった。」
「ろりこんれしたか。」
「ちがう!俺も小さかったからアレはロリコンとはいはない。多分…」
「でも、まだその子が好きなのならロリコンだよね。」
復活したミルファが言う。
「まぁ。雄二さんはロリコンの変体さんだったんですね。」
体をくねらせながら話すイルファ。相変わらず動きの意味がわからない。
「うおぉぉ…」
雄二は頭を抱え、絶望した。 絶望したっ!
玄関。
「はー。うまかったなぁ…」
「だなぁ。」
「満足していただけましたか。久しぶりに殿方に作った甲斐があります。」
「もう大満足だぜ!あー…こんなのを毎日食べられるなんて、なんか余計に貴明がうらやましくなってきた…」
「そんなにメイドロボがいいん?」
「あぁ…メイドロボがいればきっと俺は幸せなんだと思うんだ…」
「へー…しあわせかぁ…」
「今日はありがとう。イルファさん、シルファちゃん、瑠璃ちゃん。」
「いえいえ。」
と、イルファ。
「じゃあみんなまた今度な。」
「おーまたな。」
居間。
「雄二ほんまにメイドロボすきみたいやなぁ。」
「うん。なんか異様に固執してるね。」
「でもロリコンやったらなぁ…今作ってやられへんな。」
「いや、たぶんロリコンではないと思うんだ…
実はアレ、俺のことなんだよ…カクカクしかじかな感じで…
というか作ってあげれないでしょ。雄二かえないし。」
「そうやったんか。選別落ちの筐体とかいっぱいあるから、適当なPCつんで、お手伝いロボットなら作れるで。
ミルファのモディファイ前の機構とかみたいなんもあまってるから、結構なもんになると思う。
あ、そうやな…いま大根インゲン飽きてんじゃーとは別に、
人の追加インターフェースとして、メイドロボの筐体を使う実験中やねんけど、
それなら大根インゲン飽きてんじゃー並みの動作を再現できるで。」
「へー。って、追加インターフェースってなに。」
「手足やな。自分の手足とは別の手足。」
「クマ吉みたいな感じ?」
「そうそう!」
--いったんおしまい。支援ありがとう。行って来ます。
>>246 乙。
いやいや、なかなか面白いね。続き待ってます。
しかしひとつ注文が。
投稿の全ページ数と現ページ番号を入れてくれんかなあ?(2/8)みたいな感じで。
支援するにしろまとめるにしろよくわからんよ、今の投下のやり方だと。
そこんとこだけ考えてみてー?
>>247 わかった!めんどくさいけど書き込みウインドウに入れる前に行数調べてみる。
ちなみに、元ねたは前スレ682の
姫百合ファミリーにモテモテの貴明をやっかんだ雄二が昔会った女の子(女装貴明)との再会を切望する
それを聞いた珊瑚がHMX-17の予備パーツででっち上げたボディを
リモートコントロール(貴明をベッドに縛り付けた状態でヘッドギア装着して脳波でバーチャルコントロール)
することで、雄二の夢を叶える事を思いつくのだが…
だから、面白いはその人宛が適当かもしれません。
っていうか雄二を幸せにするのって難易度高いなぁ・・ギャグで落としてもシリアスで落としても残酷な最後ばかりが思い浮かぶという・・・
ところで、これ書いた人が見てたら教えてほしいんだけれども、貴明が無理やりやらされることを想像してたの?
雄二は幸せにする必要なし
しょせんサブキャラ
さぶキャラ
初恋相手が男の子
251 :
前スレ682:2008/11/11(火) 22:51:06 ID:WQKdm8/y0
>>248 ネタ出ししたときは
雄二の話を聞いた珊瑚が親切半分悪乗り半分でみんなを扇動して貴明をベッドに縛り付けてやらせるんだけど、
実際に雄二とデートを重ねたりしてるうちに、雄二の思いの真剣さに貴明はなんとか報いたいと思い始める
だがいずれ別れはやって来る。貴明はどうすれば良いのか思い悩む。
と、この辺まで考えたところで書き込んだのでオチは考えて無いんだよね
メイド日和 エピローグ投下します
というわけでいつものお約束
このSSはAD非対応です
設定はX-ratedやアニメの後と考えてうんたらかんたら
あの騒動から数日後。
夏休みが残り4日になった日に、今度は由真のほうからお泊り道具一式を抱えて家にやってきた。
しかし、今回のお泊りは手放しで喜べない理由からだった。
なんだかんだで日々順調だった宿題の消化ペースがプールに遊びに行った日から1週間、
例のどたばたでぴたりと止まってしまったために大きく予定が狂い、かなり追い詰められた
状態になってしまっていたからだ。
いつものペースでは到底始業日までには間に合わないという訳で、間に合わない分は合宿体勢で
挑んでやっつけるという、極めて由真らしい猪突猛進な話がまとまったわけだ。
かくして夏休みの残り期間が尽きるのが先か、宿題が終わるのが先かと言う俺と由真の
宿題合宿が始まった。
朝起きて、飯を食ったら勉強して、お昼にチョッと休んで勉強して、その後夕食を食って
寝るまでまた勉強するという強行軍がほぼ3日続き、昨日の夕方やっとケリをつけて俺たちは
やっと一息つくことが出来たのだった。
◇
窓から差し込む朝日のまぶしさに俺は目を覚ました。
横を見れば、由真がいささかだらしない表情で眠っている。
昨日は夕方から二人で買い物に行って料理を作り、宿題完遂の祝杯を挙げた後で流れに任せて
二人でベッドに入り、恋人同士となってから2度目となる夜のお楽しみに励んでそのまま
眠りに付いたのだった。
由真のやつはどうも俺を抱き枕にするのが好きなようで、ここ3日は朝起きると俺の身体に
腕を回して抱きついた上に足を絡ませて密着状態で眠っている。
昨日おとといはそれでもパジャマを着ていた……でもノーブラ……からまだマシだったけど、
今日はお互い素っ裸だ。
朝っぱらから柔らかいおっぱいとか、ふっくらしたおなかの辺りとか、むっちりした足とかが
密着していて……色々もてあまして困る。
寝ている由真を襲うわけにも行かないので一人で悶々としていたら、目覚めが朝早すぎた事と
昨日少し励みすぎた疲れが残っていたのとで、いつの間にか再び眠りに落ちていた。
◇
今度は目覚ましのけたたましい音に叩き起こされた。
眠い目を擦って横を見ると、既に由真は居なかった。
着替えを持ってトランクス一丁でシャワーに向かう。
途中、キッチンの横は通ったが料理をしているらしい音を聞いただけで覗きはしなかった。
大方、またメイド服姿で朝食を用意してるんだろうと思いつつ、シャワーを浴びて身奇麗に
したところで、改めてキッチンへと向かう。
「あ、たかあき、おはよ。」
「う〜い、おはよ・・・・・・う。」
俺は眼が点になった。
「なによ。」
「いや……なんだその挑発的な格好は。」
「んー、この間雑誌で読んで試してみたかったのよね。どう?」
そう言って、由真はその場でくるり、とまわって見せた。……いまちらっとパンツが見えたぞ。
それは適度なだぼだぼ感と適度なギリギリ感を伴った、雄二流に言うなら「彼女にさせて
みたい服装ベスト3」には入るであろう服装……通称「はだわい」こと裸Yシャツだった。
俺のものらしいYシャツを羽織った由真は、長過ぎる袖をくるくると捲くり上げ、胸元は
かすかに谷間が見えるくらいまで開いており、なおかつ丈はギリギリ股下をカバーするきわどさ
だった。
由真はそれに加えエプロンとヘッドドレスを装着しており、はだわいエプロンメイドという
マニアックかつ朝っぱらから健康な男子高校生の劣情をハードヒットするスタイルだった。
「ふっふーん、どう? 最近メイドばっかだったから、なかなか新鮮でしょ。」
「おまえ……」
「……って、あれ、たかあき……あっ、やっ、やだ、ちょっと……あん……」
◇
「しんじらんない。朝っぱらから、しかもキッチンで……あっ、アレするとか……たかあきって
やっぱりケダモノよね。」
「悪かったよ。でも由真も悪いんだからな。健康な男の前であんなきわどい格好しやがって。」
「男の癖に言い訳格好悪い。ほら、ただでさえ家出るのが遅かったんだからキリキリ歩き
なさいよ。」
「はいはい。」
生返事を返しつつも、俺は繋いだ由真の手を軽く握り返した。
俺たちは朝から流れのままにキッチンで一発いたしてしまった後で改めて朝食をとり、
二人で連れ立って水族館へとやってきたのだった。
何で水族館に来たのかというと、前に看病してくれたときに約束したというのと、夏休み
最終日は由真の誕生日でもあると言うことで、今日は水族館以外にも色々デートとして
出かけようというアイデアだった。
見るからに近代建築な少々奇抜なデザインの水族館は、俺たちと同じように夏休みの
最後の一日を楽しもうというカップルや家族連れでにぎわっていた。
「けっこう混んでるな……とりあえずチケット買ってくるか。由真はここで待ってろ。」
「あっ、ちょ、チョッと待ちなさいよ。」
俺がチケット売り場に向かおうとしたところで由真がTシャツの背中をぐいと引っ張った。
ぐえっ……く、首が……
「げほっ……な、何だよ。」
「ご、ごめん……でも、こんなに混んでたら迷子になっちゃうから……一緒に行く。」
そう言いながら、由真は俺の手をぎゅっと握ってきた。
少し前までは、手を繋いでもそれは友達の握手でしかなかったけれど、今は違う。
今は手を繋ぐのが少し気恥ずかしい。
幸い少し並んだだけで入場チケットを手にすることが出来た俺たちは、手を繋いだまま
入場ゲートをくぐった。
入り口で貰ったパンフを二人で覗き込む。
「大水槽はかなり奥の方だな。」
「それより良いもの見つけた。こっちよこっち、ほら。」
そう言いながら、由真は繋いだ手で俺をぐいぐい引っ張って進んでいく。
やがてたどり着いたのは観覧席のある大きなプールの部屋だ。
「イルカショーか。」
「ちょうど後10分ぐらいで始まるのよね。ほら、さっさと席に座らないと。」
もうすぐ始まるとあってもう席は5〜6割ぐらいは埋まっている。
俺たちは開いている席を探した。すると丁度プールの目の前、最前列のところに2人分の
席が開いていた。
「なかなかいい席じゃない。」
最前列とあって見晴らしが良く由真はご機嫌だったが、俺はひとつ気になることがあった。
ま、もう座ってしまったので後はなるようにしかならないか…
ショーが始まった。
大きな体躯のイルカが軽やかに水上に飛び出して輪をくぐったり、調教師のお姉さんが投げた
ボールをトスしたりと愛嬌を振りまく。
由真も小さな子供みたいに目を輝かせて見ている。
そしてショーも終わりに近づく。最後に客席近くまでイルカがやってきて大きくジャンプして
空中でくるりと宙返りした。
「すご……」
由真が思わずつぶやいた次の瞬間、イルカの巨体が着水すると同時に大きな水しぶきが
上がった。
「おっと!」
「うわっぷ!」
俺は咄嗟に席から逃げ出して水しぶきを避けた。最前列に陣取ったときからこれを食らうんじゃ
ないかと注意していたおかげだ。
だがしかし……
「……たかあき……」
うわぁ……目合わせたくない……
◇
「彼女見捨てて自分だけ逃げるとかありえないし。」
「咄嗟の事でそこまで気が回らなかったっていうか。」
調教師のお姉さんがお詫びにくれた水族館オリジナルグッズのスポーツタオルで頭を拭きながら、
由真は言い訳する俺をすごい顔で睨んでる。
傍を通り過ぎる家族連れは濡れ鼠の由真とひたすら謝る俺を見てくすくす笑ってるし。
一緒に濡れたほうがマシだったな……
「男だったら盾になって守るぐらいしなさいよ。」
そう言いながら、由真は俺の胸元に人差し指をどすどす付きたてて詰め寄って来る。
……あ。
俺は腰に巻いていたチェックのシャツを外すと由真の肩に掛けた。
「? なによ。」
「Tシャツ……透けてる。」
「!!」
俺が耳元で教えると、由真はばっと自分の胸元を見て、それからあわてて肩に羽織った
俺のシャツの前をあわせた。
「あっ、あんた、こんなとこでまで、」
「違うっての。俺は、他の男に由真を……その、そう言う目で見られたくないんだ。」
俺がこっぱずかしさに赤面しながらそう言うと、由真はきょとんとなった。
「だ、大体な、今までだって短いスカートはいてるのに下着が見えそうになっても気がついて
なかったりとか、お前はガードが甘すぎるんだ。」
「……」
「もっとそう言うことに気をつけろよな。」
支援
「……うん。」
「そう、そう言う風にいつも素直に……って、あれ?」
素直な返答に呆気にとられた俺の腕に、由真の腕が絡んでくる。
そして寄り添うように腕に抱きついてきた。
「……えらく素直だな。」
「たかあきがヤキモチ焼いてるのがちょっと可愛かったから。」
そう言いながら由真がニヤニヤ笑う。
「や、ヤキモチなんかじゃないって。お前があまりに無防備だから、」
「はいはい。そう言うことにしといてあげる。ほら、次は大水槽見に行くわよ。」
由真が俺の腕に抱きついたまま走り出す。俺はいきなりの急加速につんのめりながら
一緒に走り出した。
「で、ここどこ?」
「お前が引っ張ってきたんだろうが。あと、ここがどこかは上見れば解ると思うぞ。」
俺がそう言うと由真が天井を見上げた。
「うわ。」
由真が見上げた絶妙のタイミングで、大きなエイが通り過ぎていく。
「ここ、大水槽の下の地下道だな。やっぱりさっき通り過ぎた分かれ道を右に行ってりゃ
良かったんだ。由真がこっちが近道とか自信満々で引っ張ってくるから……」
「あーもう、男の癖に細かい事ぐちぐちいう奴って踏み潰したいぐらい嫌い。」
「細かくねぇよ。明らかに間違った場所に来てるんだから。」
「ここだって大水槽には間違いないでしょ。」
開き直りやがったよ。
「はいはい、そういう事にしといてやるよ。まったく。」
「ふふーん。あたしの勝ちね。……あ、マグロ。」
また頭の上を魚の群れが通り過ぎていく。だけどアレはマグロじゃない。
「ありゃカツオだろ。」
「いーや、マグロ。」
「身体の模様がカツオだ。」
そう言って横の壁についている魚の種類のパネルを指差した。
「……」
「ほら、カツオだろ。」
「……カツオのたたき。」
「おい。」
そうだった、最近忘れてたが由真はこういう奴だった。とりあえずよだれ拭け。
◇
その後水族館を出て街中に戻った俺たちは、いつものヤックで昼食を食って、いつもの
ようにゲーセンへと繰り出した。
何だかんだいって、ここは由真との思い出が一番多い。
まあ、殆どは由真が一方的に勝負を挑んできて俺が返り討ちにするパターンなんだけど。
「そういえば夏休みに入るちょっと前だったよな。」
「何が?」
「お前が勝手に怒って、一方的にデートだーって言い出したの。」
「ああ、その事。」
俺に言われて当時の事を思い出したのか、由真がばつの悪そうな顔をしながら赤くなる。
「あっ、あの時は……あたしが女の子扱いされてなかったのが何か気に入らなかったのよ。
あの時は自分でもなんで腹立つのか良くわかんなかったけど、あの頃からたかあきには
女の子らしい扱いして欲しかったのかも。」
「そんなこといわれてもな……あの頃の俺は、由真とは男とか女とか関係なく対等に付き合いが
出来るのを気に入ってたんだ。」
「うん、あの時はあたしもそうだったし。でもさ、今はあたし達付き合ってるわけだし……
その……する事だって、しちゃってるわけだし……これからは彼氏らしい事もしてもらいたいな、
とか。」
「ふむ。」
俺は背負っていたバックから包み紙に包まれた細長い箱を取り出した。
「じゃ、彼氏らしい事。今日は由真の誕生日だしな。これ、あんまり高くないけどネックレス。」
「えっ……あっ、ありがとう。」
突然で驚いたのか、由真は目を丸くして驚いた後で箱を受け取った。
「で、指輪は?」
「おい。」
貰った先からおかわりかよ。
「だって、ほら、彼氏としてのプレゼントなら婚約指輪とか。」
「まだ早いだろ。それに指輪はサイズもわからなかったし、突然なんでお金がなかったんだ。
指輪が良いなら来年は事前にバイトでもして買ってやるよ。」
「ん……やっぱいいや。」
「何で?」
「だって……たかあきがバイトとかやりだしたら一緒に居られる時間減っちゃうし。」
そう言いながら由真はぷいっとそっぽを向いた。でも耳の先まで赤くなってるので、
照れ隠しなのがばればれだった。
「わかった。婚約指輪は大人になってからな。」
そう言って由真の頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
由真は猫みたいに目を閉じて気持ちよさそうだな……なんて思っていたら、とんでもない事
言いやがった。
sienn
「えーっと……給料3年分だっけ?」
「3ヶ月だ!」
お前俺に一体どんな指輪買わせるつもりだよ……
◇
由真とゲーセンでいつものように遊んで、すっかり満足して河野家に戻ってきた。
日は傾いてすっかり夕焼け空。
楽しかった、そして忘れられない由真との夏休みも今日まで。明日からは学校も始まる。
「なんかあと1週間ぐらい休み欲しいよね。」
「そう言って1週間たったらまた同じ事言い出すんだろ。」
「言わない。」
そう言うと由真は数歩先に進んでくるりと振り向いて言った。
「だって、間で無駄に1週間過ごしちゃったから……あれのやり直しを要求するの。」
すごく由真らしい答えが返ってきた。
「……そうだな。あれはちょっともったいなかった。」
「でしょ。というわけで夏休みのやり直し(1週間分)を要求する〜!」
拳を振り上げてシュプレヒコールを挙げる由真がおかしくて少し笑ってしまった。
「なによぅ。」
「くくく……別に良いだろ。毎日学校でだって会えるんだし、夏休みは来年もあるんだから。」
「そうだけど……それはそれ、今年は今年、来年は来年だし。」
由真はまだ不満そうだ。
……って、あれ、家の前のあの車は。
「あ、おじいちゃん。」
「由真、迎えに来たぞ。」
黒塗りのリムジンと共に、じいさんが待っていた。
「え、でもあたしMTBだし。」
「もう積んであるわい。」
そう言って車のトランクを開けると、車輪を取り外した由真のMTBがすっぽりと納まっていた。
流石にリムジンはトランクもでかいらしい。
「じゃ、俺が荷物持ってきてやるよ。」
「何を言っておる。小僧、お前も来るんじゃ。」
「は?」
予想外の話で思わず聞き返した
「小僧も由真の誕生日祝いのパーティにくるがいい。娘夫婦がお前の来るのを楽しみに
しておるのでな。」
そう言われて、先日由真を家に送り届けたときの事を思い出した。
なんか由真の両親からえらく歓待されたんだよな。
いい人たちなんだけど……ちょっと苦手かも。
「そういえば、お母さんがなんかたかあきのこと気に入っちゃったって言ってたっけ。」
「ま、そう言うことじゃ。小僧、観念せい。」
「は、ははは……」
どうやら断れそうに無い雰囲気。
諦めのため息をひとつついてポジティブ思考に切り替えると、リムジンの後部座席に乗り込んだ。
とりあえず、夕飯の心配はしなくてよさそうなのと……もう少し由真と一緒に居られるのが救いか。
ほどなく、荷物を取って来た由真が後部座席に乗り込んで来ると、リムジンは滑るように
走り出した。
夏休み最後の一日はまだ終わりそうに無い。
◇
──そのころ、来栖川の研究所のとある一室。
「待っててねダーリン☆ もうすぐ会えるから。」
桜色のセーラー服を試着していたピンク色の竜巻娘が、初登校に向けてアップを始めていた。
◇
「「へくしっ」」
「うー、な、なんなんだ二人そろってくしゃみなんて。」
「……きっとたかあきのせいね。」
「な、何で俺のせいなんだよ!」
「たかあきってば、無意識に女の子に愛想振りまいて気を持たせるような事してるから、
きっとそう言うたかあきを狙ってる子が何か噂でも……」
「?……なんで俺が狙われてるんだ?」
「……朴念仁。」
後に嵐の2学期とも呼ばれる激しい貴明防衛戦が繰り広げられる事を、この時の二人は
知らなかった。
貴明と由真のツンデレストーリーはまだまだ終わらない。
なんか続くかのような終わり方してますが続きません。
これでおしまいです。
Gロボの最後みたいなものだと思ってくださいな。
つー事で、これで本当におしまいです。
そろそろ別なキャラのものも書きたいし、ということで。
長々とありがとうございました。
>>268 乙&GJ!
すごく雰囲気の良い話で、由真が毎回いいツンデレっぷりを見せてくれてヨカタ
終盤、やや由真っぽいエキセントリックさが控えめになったような感もあるけど、
その分えっち度が増して、本番シーンまであるとは思わなかったぜ。力投あらためて乙
連載は完結させてこそ意味があるので、これを自信にしてくらさい。次回作も楽しみにしとります
乙でした。
完結おめでとうです。
次回作も待ってます。
それにしてもエチシーンは難しいんだよなあ、俺的には。
どうにもテレが入って書きにくいことしきり。
今度アダルティな習作書いてみようかな……。
さて、誰にしようか。
とりあえずまーりゃん先輩と菜々子はムリだなw
272 :
268:2008/11/14(金) 22:42:39 ID:OpGFGazx0
今回、つか第5話についてはエッチシーンないと由真分がほぼ0w
XRATEDの由真ルートエッチシーンは由真らしさが出てて好きなんですよね
口ではあれこれいいつつも貴明の押しには弱くてなすがままにされちゃうのが由真らしいって言うか
だもんで、今回は原作とは少しアプローチを変えつつエッチシーンを入れてみた訳で
エッチシーンは書くのにエネルギー使うので、よっぽど書きたいときかリビドーが噴出してるかのどっちかだけどw
それにしても、今回は1回読みきりのつもりで書いた割にはけっこう続いたなぁ…
最初の投下が5月ですがな
力作の後に投下は気が重いです。
とりあえず、落としてみます。そろそろ近いクリスマスネタなどを。
その年の最後の月に差し掛かろうとする頃。ここは来栖川の中央研究所。
「あ、あの、主任。その、大変申し上げにくいのですが・・・・」
若い研究員が、メイドロボ開発責任者の長瀬の前で、頭を垂れしどろもどろになりながら報告している。
彼は、長瀬と珊瑚が“あの”事件のときに不眠不休でたずさわっていたのを目にしていたし、指示の不徹底の露呈でもあった
ので、バツの悪さはその口調におのずと滲み出していた。
あにはからんや、開発主任の反応は――
―― っ! いやいや、それは―― っ!うんうん本当によくやってくれたっ!恩に着るよ!――
そんな調子で、両手で握手されぶんぶん振り回されたので、彼は面食らってしまった。
―――
去る11月26日。姫百合家でイルファの誕生日パーティー。メインの誕生日プレゼントは、イメージチェンジになるからと、“一見”、
清楚そうな彼女に似合うだろうと白いニーソックス。
「あのう、ええと・・・・“一見”って、何ですか・・・・?」
月を跨いで12月。再び姫百合家にて。
2日連続で続くお誕生日会の初日は、HMX−17三姉妹の次女。
「―― ちょいと、みっちゃん。こっち来てやぁ〜。」
そうミルファを招き寄せて珊瑚が差し出したのは、イヤーバイザー。
「え?なになに?もしかして新機能満載の感応機?“官能機”かな?なんちって―― 」 身をくねらせるミルファ。
ええから、と苦笑しながら、珊瑚はミルファがそれを装着した後、手持ちのPC画面に立ち上がっている、インストールプラグラムの
実行ボタンをEnterキーを押しポチッとした。
凄まじい速さでPC画面上をプログラム言語らしきものが流れ去っていく。
しばらく経った後、PC画面には、バンザイをするチビ珊瑚のアイコンと共に、“インストールが終了しました”のメッセージが現れる。
それまでの間、誕生日会の出席者は、貴明を筆頭にその様子を固唾を呑んで見守っていた。
「みっちゃん、外してええよ〜。」
珊瑚の指示に従い、ミルファは怪訝な面持ちでイヤーバイザーを外す。
「みっちゃん、これは何やぁ〜」
そう言ってから、珊瑚はおもむろに、背後から日記帳のようなものを取り出し、ミルファの眼前に差し出した。
「あっ―― それは――すーぱーうるとらでりしゃすなんとかーっ・・・・!!・・・・こ〜かんにっきぃ〜☆ 」
おどけた後、すぐに唇を尖らすミルファ。
―― もう、さんちゃんのイジワルーッ!こんな嬉しい日に、何だってそんなもの引っ張り出すのぉ〜!?
冷汗を垂らしつつ苦笑いしながら、同席していた雄二がポリポリと頭を掻く。
―― あれ?ええと。そんな事あったっけ?なに、これ――
ピクンと、急にミルファは無表情になり、固まってその視線は虚空に泳ぎ出す。
「―― ここはどこ?あたしは誰?―― 河野ミルファ? 河野はるみ?―― それとも、クマ吉?」 頭を抱えてしまったミルファ。
「その誰でもええんよ〜。その全部がみっちゃんやし、みんなもともと1人なんやもん。」 にこにこと、そんなミルファを見つめながら
話す珊瑚。
「みっちゃん、これが長瀬のおっちゃんとうちらからの、お誕生日プレゼントや〜。る〜☆」
そういってバンザイポーズの珊瑚。
“あの”事故の直前。サンプルデータ収集のため研究所で行われたミルファの行動データ採取後に、若手研究員のミスで、うっかり
消去し忘れて残っていた、彼女のプライベートな記憶。それを必ず消すようにとは、長瀬の指示だったのだが――
今、それが元の持ち主のところに戻された。
ミルファは、どうしても払拭出来なかった不安の源である“記憶の空白”が埋まって行く感触に、身を震わせていた。
思い起こすのを避け続けていた“河野はるみ”の存在と記憶が、自分と溶け合っていく――
「おかえり、クマ吉。おかえり、はるみちゃん。そして・・・・お誕生日おめでとう、ミルファちゃん。」
傍らからの声。ミルファがそちらに向くと、目を潤ませた貴明がそこにいた。
くしゃっとミルファの表情が歪む。口をパクパクさせて、ようやく言葉をひねり出した。
「・・・・ダーリン、ごめんね。ひどい事しちゃったんだ、あたし―― ただいま・・・・ただいま、ダーリン。」
そうして、彼女はガバッと貴明に抱きついた。貴明も彼女の背と後ろ頭に手を廻し、二人はそのまま接吻する。固まって動かなく
なる二人。
あまりにあけすけな熱愛ぶりを見せつけられて、苦笑する出席者達の間にしばし生暖かい空気が流れる。すると突然、パチパチと
拍手の音―― 環だった。 「おめでとう。」
「おめでとう」 「おめでとう」 「おめでとう」
口々に、彼女の“4回目”の誕生日を祝福し発せられる声。パチパチと拍手が重なり響き渡る。
―― しかし、出席者の中、一人シルファだけが憮然とした面持ちでいたので、瑠璃は空気の読めないシルファを咎めるような視線
で眺めやったのだが――
仏頂面のシルファが口を開く。「んもう・・・・こんなものすごいプレゼントの後じゃ、シルファは何もらっても色褪せてしまうのれす。」
その愚痴を聞かされて、主席者は皆、思わず失笑を漏らした。
―― 翌日、シルファへの誕生日プレゼントのメインは、シマシマのニーソックスだった。
―――
商店街の店先のほとんどにクリスマスツリーが。例年聞きなれたクリスマスソングが、今年も商店街の中を響き渡る。
その中を練り歩くのは、貴明、環、このみの3人。
「終りよければ全て良し。ミルファの記憶も戻ったし、このまま無事に年を越せれば言う事なしなんじゃないの、タカ坊?」
環が言った。
うん、と、ダッフルコート姿の貴明が頷く。白い息が口元から漏れて、周囲に溶けていく。
神様や天使の存在を思わず信じてしまいたくなる。辛かったイベントも、今となっては彼女への愛を確かめる儀式のようなもの。
幸せ絶頂の貴明は、クリスマスプレゼントの物色に街へ繰り出したのだった。
渡す相手は、当然ミルファ。
しかし・・・・難問があった。
―― お金が、ない。
「タカくん、あんなに一生懸命アルバイトしてたのに、残ってないの?」
―― いや、あれはねぇ、このみ・・・・
さすが来栖川家の執事の孫娘。由真のMTBはなかなか高価な代物だった。その弁済には、バイトで貯めた資金に親からの仕送り
を足してもやっとだった。
困った時の伝家の宝刀 ―― イザという時に使えと親から渡されていた、クレジットカード――
貴明は思わずそれを財布から引っ張り出しかかったが、いやいやとかぶりを振って元に収める。
いかんいかん、安易に甘えては ―― ただでさえ、ローンが嵩んでるというのに。
―― というわけで、低予算で愛情を目一杯表現出来る、気の利いた贈り物を。ここは是非、女性二人の感性を借りて―― 。
結局なところ他力本願なあたりが、ヘタレ貴明の本領発揮とは言えた。
「自分で何か作って渡すのが一番の愛情表現なんじゃない?―― えっ?俺ってそんな器用じゃないし?あっ、そう・・・・。」
環はふうっと溜息をつき、目を細めて貴明を見つめる。
そして、やや間を置いてから ――
「まぁいいわ、タマお姉ちゃんのセンスに任せなさい。」
そう言って、ミルファにもまして豊かな自慢のバストを、ぽんと自らの手ではたく環。
「―― でもタカ坊、頼られたんだから、ちょっとばかりは手間賃いただくわよ?」
環はその手を貴明の腕にするりと絡ませ、彼女の胸元に寄せた。「お金がないなら、体で返してね☆」
ウインクする環。
―― わわっ、ちょっと!?商店街の真っ只中で!?―― 赤面してうろたえる貴明。
「えへへ〜、このみも権利を行使するでありますよ、隊長☆」
このみも貴明の腕に自分の腕を絡ませ、その筋の趣味の手合いには好評そうな、控えめな胸に貴明の腕を密着させる。
「ちょっとちょっと!このみまで―― !うわぁ〜、恥ずかしいよ二人ともっ!!」
真っ赤になった貴明の額を汗がだらだらと伝い落ちる。
「・・・・ダーリン。」
唐突に、背後から呼びかける少女の声。この世に、貴明の事を“ダーリン”などと呼ぶ女の子は、1人しかいない筈 ――
汗がピタリと凍りついた。にやけた口元を固まらせながら、ギギギと首筋から音を発し貴明は背後を向く。
セーラー衿のパーカに、デニムのミニスカート。黒いニーソックス。そして、先が跳ね上がったピンクの髪。蒼い瞳。
「ダーリン、あたしに隠れてこそこそしてると思ったら、環さんとこのみちゃんと、ダブルデートだったんだ。へぇ〜。」
手を腰に当てるミルファ。静かな表情で、目を細め貴明を見つめる。
ハッとなり、環とこのみは貴明に絡めていた腕をパッと放した。
「ミ、ミルファちゃん、こ、これは違うのよ。ねぇ、このみ。」
「は、はい。違うのであります隊長。それは誤解であります。」
珍しくも環がうろたえる。静かな佇まいのミルファだったが、普段から肝の据わった環をも慌てさせるほどの蒼いオーラを、その時
は周囲にまとっていたのだった。
無表情にも見えたミルファだったが、それを聞いて、はじめて彼女の眉の端がピクンと釣りあがる。
貴明はそれを見てビクンと身をすくめる。今度は冷や汗が、ツーと額を垂れ伝わっていく。
「言い訳はいいの、環さん、このみちゃん。悪いのは、のこのこ誘いに乗っちゃったダーリンなんだから。」
見ると、ミルファの額には青筋がぴくぴくと。こんなところまで人間そっくりに良く出来ている。多分、冷却水の管なんだろうか?
―― カッカと燃えたぎる彼女のDIAの入れ物を冷やすための。
腰に当てていたミルファの手がスッと下がる。そうして、やおらスカートの両脇で、ギュッと拳を握り締めた。ギリギリと音が鳴る。
貴明の額を伝う冷汗の量も一段と増えた。 「はは、ははは・・・・あ、あの、ミルファ、さん?」
引き攣った笑顔で語りかける貴明。
ミルファはうつむいた。その表情が髪に隠れ見えなくなるが、口元だけが覗き、ギリギリと白い歯をむいているのが見える。
貴明はついに、文字通りの鉄拳を見舞われるのを覚悟し、ごくりと生唾を飲み込んだ。
「・・・・ダーリンの・・・・ダーリンの・・・・」
―― 静かに、間を置く。
「―― ダーリンのバカァあああああああ〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
ヒュッと伸びてきたミルファの右手。その指が、貴明の左腕をマンリキのような力で摘み上げる。全身に電撃が走ったような痛みに
思わず跳ね上がる貴明。
「ぎゃあああああああ〜〜〜〜っっっ!!!痛い痛い痛いぃぃぃ〜〜〜〜っっっ!!!」
パッとミルファの指が貴明の腕から離れたと思ったら、今度は貴明の顔面に向かって、ミルファが何かを叩きつける。
バシィッ!! 「むぎゅっ!!」
「―― ンもう―― ッ!!ダーリンの浮気んぼ浮気んぼ浮気んぼォォォ〜〜〜〜ッッ!!!」
ダッと涙を拭うように腕を顔に当てながら、ミルファは商店街のアーケードの外に物凄い勢いで走り去ってしまった―― 。
顔から離れて、ポトリと足元に落下したもの。貴明はそれを拾い上げた。
ティーンズ向けのファッション誌らしい。表紙には、『彼氏に喜んで貰えるクリスマスプレゼント』が何たらかんたらと―― 。
どうやら、ミルファも貴明には知らせずこっそりと、彼に渡すクリスマスプレゼントを物色していたらしかった。
狭い街の中、バッタリはち合う事は充分想定出来そうなものだが、そこは流石に、ヘッキーとおぽんちのカップルである。
かぶりを振った後、はぁ〜〜〜・・・・と、大きく溜息を漏らした環。
「何でこう、タカ坊とあの子ったら、巡り合わせというかタイミングが悪いのかしらねえ・・・・。」
顔を見合わせる環とこのみ。貴明がツイてないというか、これは自分達が悪い、と苦笑しつつ冷汗を垂らす二人。
そして恐る恐る貴明の方を向くと、ガックリと頭を垂れている。
―― 彼、彼女らの背後。
ドラッグストアの看板の陰に、怪しい影がのぞく。
貴明達をずっとつけていたものらしかった。
黒いサングラスをかけたその人物、淡いピンク色の髪には、玉の髪飾りが光る。
「―― 相変わらず、たかりゃんの女難の相は消えんのかのう。」
その少女は、南無。と数珠を下げた右手を顔の前にかざし、呟いた。
「―― さだめじゃ。 」
(つづく)
今回はここまでです。
何でこう、修羅場スキーなんでしょうか。
・・・いえ単に、「ダーリンのばかーっ!」を言わせたかっただけだったりして(ォ
というかどこまでメイドロボ好きなんだよ私ってば。
―― 実は先の展開、全然考えてません。どうしましょう?(マテ
それでは。
そういやこのタマルートのSSないな
このタマSSか
ちょっと読んでみたい気もするな
>>281 いいよいいちょーいい。
会話主体じゃないし、じの文には必要な情報だけ詰まってるしテンポもいい。
やりたいことがすっすーと書ける(書く時間ではなくて文章の構成ね。)のはすばらしい。
285 :
1/6:2008/11/15(土) 20:41:26 ID:mJR2Fmcu0
>>251の雄二の話を聞いた珊瑚が親切半分悪乗り半分でみんなを扇動して貴明をベッドに縛り付けて"までのお話。
--
-カタカタ
「さんちゃん。あんまり遅くまでやってたあかんで」
-カタカタタタ
断続的なタイプ音は鳴り止まない。
「うんー。もうちょっとなー。」
「じゃ俺達先に寝てるよー?」
「わかったー。おやすみや〜。るー☆」
「るー」
「おやすみー」
そんな感じで、貴明は床についた。
翌日 朝。
-ふみゅ…
ん…朝日がまぶしい…もうちょっと寝たいな…
あれ…カーテン閉め忘れたっけ…いや、閉めたはずなんだけどな。
そういや、一緒にいたはずの瑠璃ちゃんの感触がない。
それに、全身の触覚にも違和感がある。
いくつか疑問が浮かんできたところで、ようやく目を開けてみる。
そこは、何の変哲もない自分の部屋。
同日 早朝。
-ん…う…
「といれ…」
「あれ…貴明どこいったん…」
隣にいたはずの貴明が見当たらず、ベッドにはぎゅうぎゅうに詰まったメイドロボしかいない。
まぁいいか…と、特に気に留めず用を終え、ベッドに戻ろうとしたときに違和感を覚えた。
その時、音が聞こえた。その音は聴覚域ぎりぎりの音で、
静かな深夜で、かつ、感覚器がその環境に順応してなければ絶対に聞こえないほどの微かなものだった。
286 :
2/6:2008/11/15(土) 20:42:56 ID:mJR2Fmcu0
あさ。
「とりあえず起きるか。」
と、ベッドに後ろ髪を引かれながら、独り言で気合を入れて起きてみる貴明。
お。なんか今日は体が軽いな。やっぱり夜に体力を使いすぎるのはよくないよなぁ。
人数が多いと逆に平穏になるあたり、人間の心理の不可思議さが出てる気がする。
まぁ、そもそもこの狭いベッドだと、誰か死にそうだからなにもできないんだけどね。
そういや瑠璃ちゃんだけじゃなくてみんないないな。
みんな早起きだなぁ。
休みなのに。
貴明は尿意を感じ、めぐらせていた思考を中断してトイレへ向かう。
といれっといれ。
「あ、珊瑚ちゃんおはよう。」
「おはよーさんやー。る〜☆」
「るー」
いや、まったりする前にトイレトイレ…
珊瑚との挨拶もそこそこに、トイレへ入り排泄の準備をするのだが、あるはずのものがそこに存在していなかった。
あるぇ。
え
「えー」
287 :
3/6:2008/11/15(土) 20:44:26 ID:mJR2Fmcu0
朝ならではの、緊張感のない棒読みの悲鳴と共に、急いでズボンをはきなおし外に出る。
「あ、貴明、調子どう?」
「なにこれなんなのえさんごちゃんのなんかそういうよくわからないかがくてきなやつなの?」
「それメイドロボの筐体やでー。」
洗面所へ向かう貴明。
「…」
-もみもみ
鏡にはイルファ達とほぼ同じ姿が映っていた。
「まぁ、貴明さんたら朝から激しいのですね。どうせなら私を揉んでください。」
「あの、イルファさん。」
「なんですか?」
「どうなってるの?これ。」
珊瑚の後ろに控えていたイルファに、その要求を無視して率直に疑問を投げかける。
「貴明さんの新しい体です。」
「古いのは?」
「研究所にありますよ。」
「Why?」
「珊瑚様のご提案で、昨夜、研究所にお連れして、追加インターフェースのコントローラーを付けさせていただきました。」
「付けた、って、完全に「ここにいる」ことしか感じないんだけど…?操作してる感じがぜんぜんしないというか…」
「はい。ある程度の違和感は残るはずですが、その追加インターフェースの感覚のほとんどは工学機構で貴明さんに伝えられるので、
ほぼ操作の感覚=体を動かす感覚になっているからです。
でも、装置の規模の関係で、加速度の再現性の制約による移動時の違和感は、それなりのものになってしまうようです。」
「そうなんだ…昨日の話しだと、もうちょっとSFちっくなのを想像してた。本体は動けないんだね。」
「いえ、研究所で怪しくうごめきながら独り言をしゃべっているはずです。」
「…」
288 :
4/6:2008/11/15(土) 20:45:56 ID:mJR2Fmcu0
「現在の操作のための機構は、全身に取り付けたアーマーによって人の神経で伝達される信号を読み取るという形で行っています。
これは人と追加インターフェースの協調性を追及した研究なので、協調性を下げたものならゲームのコントローラーで操作することも可能です。
つまり、一人分を動かすために集中できる。ということです。
ゲームのようにテレビ画面とスピーカーとゲームコントローラーだけでは、補助なしで操作することは不可能ですので、
自由度が必然的に下がってしまいます。
まぁ、貴明さんが今使っているのは、追加インターフェースというより遠隔操作ロボットなのですが、
訓練を積んででも追加インターフェースを用いた、自己による制御範囲の拡大を求める声、
という需要に答えるためというのが研究の現在の目標となっていて、
これはその思索のひとつの形なので、追加インターフェースと呼んでいます。」
「はぁ、そうなんだ。脳で考えて脳で動かすっていうのは…だめなの?」
「無理です。」
人知を超えたテクノロジーの塊に無理といわれてしまった。あまり納得がいかない。
「脳波は意識により変化を起こすことができますが、操作との関連付けは個人の思考しだいで変化してしまうので多大な実験と訓練が必要になります。
無理です。」
またいわれた。いや、そんなことはとりあえずどうでもいい。話がなんかそれている。長ったらしいよくわからない説明を聞きたかったわけではない。
「そんなことより!」
貴明が話を元に戻そうとしたとき、瑠璃が声をかける。
「貴明トイレいかんでいいん?」
そうだった。トイレ。なんかもれそう。とりあえず話は後でゆっくりすればいいか…
「ん。ちょっとまってて。」
トイレトイレ…
前に出せないので、仕方なく便座に腰を下ろし、排尿する。
あぁ、自分が作る感覚はフィードバックされないんだ…ちゃんと前に出てる感じが…
ちょっとまてよ…?前に出てるって事は、俺の体は研究所のアーマーの中で…
ここに出たのは綺麗な水。あちらに出たのは黄色い水。
-ズーン…そんな擬音が空間を埋めた。
289 :
5/6:2008/11/15(土) 20:47:28 ID:mJR2Fmcu0
はぁ…もうお婿にいけない…今頃研究所の人は大慌てだろうなぁ…黄色い水がマシンを汚染して…
-ガチャン
トイレのドアを閉め、周りの視線を意に介さず、肩を落としながらリビングへ向かう。
「あ、だーりんおはよー
って、どうしたの?なんか元気ないね。」
普通なら、表情や感情が読み取れるほどのアーマーの感知性能と再現性に感心するところだが、
貴明はそんなことよりも自分の犯してしまった失態に頭を悩ませていた。
「もうお婿にいけないよ。」
「私がもらってあげるよ!」
「ほんと?」
「うん!」
貴明の表情がぱぁっと明るくなる。
-パコンッ
と、どこからともなくハリセンを取り出したシルファがミルファの頭部をなぎ払った。
-パスッ
おっと。往復攻撃だ。
「なにやってるんれすかミルミル。ご主人様が悩んでるのにつけこんで…」
「なにってーいいじゃない。こうやってやさしさで包み込んであげるのがメイドの勤めってものでしょ。」
「プププ。ミルミルの場合やさしさじゃなくてやらしされす。はしたない。」
言い合いながら目にも留まらぬ速さで拳を繰り出しあっていた二人に瑠璃が声をかける。
「もーあんたら部屋の中で暴れんな。埃たつやろ。」
「まったく。もう少し普通のメイドらしく振舞えないんですか。」
あなたが言うんですか。まぁ、今日はまだ暴走してないのだが。
「まぁまぁ、みんななかよーしなあかんでー。
で、貴明なんでそんな落ち込んでんの?
もしかしてうちがみんなに頼んで勝手に研究所につれてったからおこってんの?
ごめんなぁ…」
「うちもびっくりしたでさんちゃん。夜中にトイレいったら貴明の代わりにメイドロボが増えてたんやもん。
とりあえず起きてきたイルファに話し聞いたけど。」
いやいやいや、そういう話でないこともないけど今はそれで落ち込んでるんじゃない。
いうのは恥ずかしいけどさんちゃんを誤解させたままでいるのは心苦しい。
「いや、違うんだよ。そうじゃなくてさ…
さっきおしっこしちゃったでしょ?だから研究所でもらしちゃってるだろうなぁって…」
「なんや、そんなことやったんか。もーまんたいやー。
ちゃんと回収される機構がついてるで。汗とか、よだれとかもどうしても出てきて、なにかと装置に不都合やから、
体液は基本的に、センサー表面の微細加工と独自開発の循環機構で回収される。
あ、でも、便は回収できひんから、本間は排泄してから搭乗すべきやねん。
でも、この装置は災害派遣の長時間支援活動の方向性が強いから、将来的に栄養補給は消化器官経由意外のを想定してるんや。」
「そ、そうなんだ…ちょっと安心したよ。
へぇ。勉強になるなぁ…」
やった!これでお婿にいけるよ!
--おしまい。
話が進まないのはご愛嬌。引き伸ばしながら結末考えるよ!
乙
乙です。
そして雄二に襲われるんですか?わかりませんww
293 :
1/6:2008/11/18(火) 01:10:16 ID:Svi3FXd/0
>>239>>285に引き続き、進まない話。
--
起きてきて、4分53秒ほどしかたっていないのだが、
さまざまな感情の起伏と意味のいまいちわからない用語ばかりの説明に辟易していた。
そろそろお話を進めてみよう。
「はい。質問です。」
「なんでしょうダーリン。」
「なぜ私はこのコントローラーに入っているのですか。」
「さんちゃんが考えました。あたしに罪はありません。」
「そうでしたか。いえ、私はあなたに謝罪と賠償を求めるつもりはありませんのでご安心ください。」
「安心しました。」
「珊瑚さん。説明をお願いしてもよろしいでしょうか。」
「人生に幸福をもたらそうと思ったんや。」
「そうでしたか。
確かにかすかな圧迫が心地いいね。ぽかぽかする。」
「そうやろ?心拍と体温をサンプリングして全身の代謝が適当になる程度の圧力かけて血圧調整してるんや。
平常時、健康体なら設定は水深0.5メーター程度の気圧に相当してると思うで。」
「でも、ずっと機械の中に入ってじっとしてたら逆に不健康になりそうなきが。」
「じっとしてへんで。さっきいっちゃんがいってたみたいに、うごめいてる。
むしろ動作の量についてフィードバックと外骨格的補助のレベルは自動調整されてて、オーバーワークを防ぎつつ適度な運動ができる。
将来的にはたたみ一畳の省スペース運動器具やー。」
「最近そういう大きいのは売れないみたいだよ?」
「そうみたいやなぁ。小型化が主流みたいで。」
2人の会話に共犯者は違和感を覚えていた。
「ご主人様の健康がもくれきらったんれすか?」
「たしか、雄二くんの夢をかなえるためじゃなかったっけ。」
「私もそう聞いています。」
昨晩、珊瑚はデジタル通信によりそう連絡していた。
「そうやでー。」
「…」
294 :
2/6:2008/11/18(火) 01:11:47 ID:Svi3FXd/0
珊瑚ちゃんって話を端折る異様の人だったのを忘れていた。
思考の深さとか方向が違うから仕方ないのかもしれないけど…
というかむしろ俺がかってに誤解したともいえる。
「雄二の夢って、昨日の初恋の話のこと?」
「うん。」
はぁ…
「はぁ…」
「いややった?」
「嫌かと聞かれれば、そうですね、とっても嫌です。」
-ダーリンがその筐体で丁寧語使うと、お姉ちゃんみたいでなんか嫌…
「そうかー…」
-なんで私みたいだと嫌なんですか?ミルファちゃん。
「まぁでも、ちょっとあって話するくらいならいい…かな。」
べ、別に雄二のことが好きとかそんなんじゃないぞ。同性愛者じゃないぞ。
「はぁ。なんかこの二人、相互に悪影響を及ぼしあってる気がしてくるわ…」
瑠璃が、作りかけていた朝ごはんの盛り付けをしながら愚痴っている。
とはいうものの、顔はほころんでいるのであるが。
295 :
3/6:2008/11/18(火) 01:13:16 ID:Svi3FXd/0
「でも、小さいときの記憶なんてほとんどないだろうし、別に俺じゃなくても普通のメイドロボとか…」
「確かにそうかもしれないれすね。」
-はいさんちゃん。鮭の塩焼きやでー。
「でもでも、嘘はよくないと思うよ!夢をかなえるには本物以外不可能なんだから。」
-ありがとーるりちゃん。
「ご主人様には長生きしてもらいたいれすし…」
「研究についての話をするとな、装置について無知でなおかつ関係者的な位置づけの企業機密が漏れへん人にテストしてもらうために
適当な人を探してたみたいで、うちも相談されてたんや。結局うち経由じゃなくて議事で候補の上位に貴明がいててんけどな。
それでちょうどいい機会やと思って。」
「そうなんだ…研究所の人にはいろいろお世話になってるから、テストくらい協力したいな。」
-あ、さんちゃん塩薄めにしたあるから、足らんかったら醤油かけてや。
「一応安全に機能するはずですが、素人の操作による、予知できない動作が起こす問題をテストするためのものですので、とりあえずはご留意ください。」
-うん。これでちょうどええよー。それより、この玉子焼きいつもよりだし利いてておいしいなー。
「へー。頭に置いておくよ。ところで…」
-たまにはアクセントがないとな。食事は人生や!
「おなかすいた…においはすれども食べられない…」
「あ、ごめんなー。味の伝達は大学の研究室レベルの装置でできるけどいま意味がないから実装してないんや。
アーマーから出たらたぶん朝ごはん用意してくれてると思うから、それ食べてトイレ行って戻ってきて。」
「そっか。了解了解。」
「一回しゃがんでから立ち上がる間に解除って言いえば、それが解除のコマンドになってるから外に出れるで。
あんまりきっちりせんでも認識してくれると思う。」
しゃがんで…
「解除!」
-カシャン
296 :
4/6:2008/11/18(火) 01:14:46 ID:Svi3FXd/0
研究所。
姿勢が強制的に直立でバランスが取れる形に修正され、視界が無機質であるが生活感のある実験室へと変わる。
「やあ、こんにちは。」
どこからともなく声がかけられる。スピーカーからだろうか。
「え、あ、こんにちは。」
貴明は突然の感覚の変化に戸惑いながら、とりあえず聞こえてきた声に返事をした。
「ロックは解除されてるから、胸のとこにある取っ手を左右に開けば外せるよ。
服はそこにあるの着てね。そこにあるドアあけるとこっちにこられるから、着終わったら出てきてね。あ、朝ごはんはステーキだよー」
「は、はぁ。」
けだるそうな口調で矢継ぎ早に告げらた説明に従う。
えっと、取っ手をひっぱ…って
-うぃうぃーぃ〜ん
外れた外れた。うわなにこれめっちゃメカっぽい。
って裸かよ。いきなりプライバシー全開放…まぁべつにいいけど。
服ってこれか。
297 :
5/6:2008/11/18(火) 01:16:20 ID:Svi3FXd/0
病衣が一着用意されていた。冷暖房完備でそもそも素っ裸でも問題がなさそうな場所なので、十分な衣服なのだろう。
コトッという音と共に貴明が装置の部屋から出ると、そこには白衣の若い女性が待っていた。ステーキ食いながら。
「ほうひょーひは(どう?調子は。」
「え?」
-ごくん
「体の調子だよ。どこか極端に痛かったり気持ちよかったりとかある?」
「はぁ、全身がなんかほぐれた感じですね。痛いところは特にないんですが、ちょっと疲れました。」
「ほー。あ、私の名前これね。おなかすいたでしょ。これどうぞ。」
名札を見せながら指差した先には、貴明用に研究者のものと同じメニューが用意されていた。
「まだパラメーター調整はぜんぜん余地だらけだから完全ではないけど、
疲労は検出されるようになってるから使ってるうちに疲労が大きくなりすぎない程度に調節されるよ。
もちろんなにか要望があれば聞くよ。」
「えっと、うーん。よくわからないんで、とりあえず受動的にやってみようと思います。」
「そう。
じゃ、これからいろいろ質問するよー。もう昨日からさっきからいろいろ聞きたくて仕方がなかったのよ。」
挨拶の瞬間がジャストミートだったのは、そうやってスタンバっていたからなのだろう。
用意されたものを食べながら、被験者として質問を受け、珊瑚にいわれたとおり貴明は用をたしアーマーに戻った。
朝からステーキかよ。と、とりあえず突っ込んでおこうと思う。
298 :
6/6:2008/11/18(火) 01:17:51 ID:Svi3FXd/0
河野家。
「あ、洗い物は私が致します。」
「うん。」
「これ、直立不動で部屋のど真ん中に置いてあると邪魔だねー。」
「動かしましょうか。」
「そうやなーとりあえずソファーに運んでー。」
「わかったれす。ミルミル左側もつれす。」
「ほーい。」
そんな感じでソファーに座らせられるようとする筐体であるが
「なんかかっこいいね。」
「ろうしようもないほどのふんぞり返りようれすね。」
直立不動の姿勢で、背もたれと床の二点だけ接地して上方を向く高級精密機構内臓オブジェは前衛的なものであった。
-カタカタカタ
「あー。さすが主要プロジェクトやなぁ。全然エラー出てないわ。処理落ちも異常なループも起きてないし。」
「それすごいん?」
「思い通りに動いてるってかんじやー。こんなにデリケートな製品じゃなくて、家電クラスのもんやったら、もう完成品やな。」
「へー。」
「ね。ね。さんちゃんさんちゃん。確認終わったらこれしよーよ。戦闘機のゲーム。」
「ええでー。」
ごそごそと勝手に取り出してきたゲームを起動するミルファ。
姫百合家の朝は、まだ始まったばかりだ。
--おしまい。
>>292襲われないけど、なんか思いついた。ありがとう。
だいたい主要部分は頭の中で完成したけどまだまだ寄り道していくかんじ。
なんかネタとか思ったことがあったら教えてくださいな。適当に突っ込んでいきます。
―― ふぅっ、と溜息を吐きながら、環が言った。
「ま、毎度の事だけれども・・・・私達が下手に口出しすると余計こじれそうだから、タカ坊に任せるわね。でも、必要ならフォローは
するから言って頂戴ね。」
「そ・・・・それでは、健闘を祈るであります!」 ピッと敬礼するこのみ。
はは、はは・・・・と、引き攣りを押さえながら笑みを浮かべつつ手を振って二人と別れ、家路へと向かう。
―― 結局、戦果なし。とりあえず今はミルファをなだめるのが先決だろうと考えた貴明である。
帰宅し、居間に入れば、にたにたと意地悪な薄笑いを浮かべながら出迎えるシルファの姿。
「お帰りなさいませ・・・・ぷぷぷ、またミルミルと痴話喧嘩れすかご主人様?」
ソファーの方を眺めやると、背もたれの上に伸びているピンク色の後頭部。TVの娯楽番組に見入っているらしい。
そろりと脇から近付き、ミルファの横顔を覗き込む貴明。
「あっ。」 ミルファは貴明の気配に気付くと、腕を組み、頬を膨らませて唇を尖らせ、瞳を閉じてぷいっと顔を背ける。
―― ふくれっ面もまたカワイイのだが、ここは何とか機嫌を直して貰わないと色々と面倒。
「ミ、ミルファちゃん、あれはね・・・・」 苦笑いを浮かべて弁解しようとする貴明。
「―― ふーんだ。知らないもん。」 ぷーっと一段と頬を膨らませ、更に顔を横に逸らしてしまうミルファ。
後ろ頭を手で擦りながら、冷汗を垂らして苦笑する貴明。―― ここは、ちょっと冷却時間を置いた方がいいかも・・・・。
ふと気付くと、部屋の中にはカレーの匂い。とりあえず、食事でも摂ろうか。
「シルファちゃん、今日はカレーなんだ。いただこうかな。」
貴明が言うと、シルファはやや不機嫌そうな表情を浮かべて、答えた。
「―― 作ったのはミルミルれすよ。帰ってくるなりシルファを押しのけて。」
―― えっ?貴明はミルファの方を眺めやった。しかしその後頭部はピクリとも動かない。
「ミルミルの得意技はカレーと肉じゃがらけれす。ま、そのろっちもシルファには遠く及ばないれすが。」
「―― うっさいわねぇ、ひっきーっ!」 顔を背けたまま、シルファの毒舌にかみつくミルファ。
「そ、そうなんだ・・・・いただきます。」
カレーを口に含む貴明。―― まぁ味は悪くない。このみやイルファさんには若干及ばないが、いつぞやの姫百合家でのカレー
パーティーの時よりは上達している。肉じゃがも得意とシルファが云ったが・・・・それは、記憶が戻ってから付与されたものだ。
「あ・・・・ありがとうミルファちゃん。おいしいよ。」
貴明がそう言うと、少し、ミルファの後頭部が揺り動いたように見えた・・・・しかし、無言。
カチャリとスプーンを皿に置いた。「ごちそうさま。堪能しました。」
そう言って貴明は椅子を立つ。
「あっ、ご主人様、もういいんれすか?口直しにシルファのおいしいれざーとも用意してありますよ?」
貴明はシルファに手を振る。 「ご免、いいよ。とりあえず部屋に行く。」
貴明のその言葉に、はじめてソファーに座すミルファに目立った反応が見えた。すっくと立ち上がり、階段へと向かう貴明の背後に
ツツッと付く。
そして、叫んだ。 「―― ダーリンの浮気んぼ浮気んぼ浮気んぼー ッ!」
苦笑いを浮かべつつ階段を昇り終えた貴明の背後から、また繰り返すミルファ。 「ダーリンの浮気んぼ浮気んぼ浮気んぼー ッ!」
ドアノブを握る貴明。すると、その手を奪い、ミルファはノブを廻して、貴明を追い越し部屋に入った。
ベッドにボンッ!と乗っかると、貴明の枕を抱きかかえ、あぐらをかいて座り込む。顔の上半分だけが覗き、恨めしそうな視線が貴明
に向けられていた。
―― あの、ミルファさん、ピンクのおパンツが見えちゃってますよ・・・・って、今更だよな・・・・。苦笑を漏らす貴明。
先程の弁解の続きをはじめる貴明。「ミ、ミルファちゃん、あのさ・・・・タマ姉とこのみは、俺の買い物に付き合っててくれただけで、
そんな、デートとかって訳じゃ・・・・」
カレーを作って待っていてくれたくらいだから、心底怒り狂っている訳ではなく、彼女とて弁解を待っている筈だろうとは思われた。
貴明をジーッと無言で睨むミルファ。しばらくしてから、ようやく喋り出した。
「でも・・・・」 やや間を開け、続ける。「・・・・ベタベタしてた。」
「このみとタマ姉は幼馴染で、いつもあんな調子なんだよ・・・・知ってるよね?」
記憶が戻ったのなら、尚の事このタマやよっちゃるのスキンシップ攻撃は見知っている筈なのであるが。
それまで吊り上っていたミルファの眉が、今度は垂れ下がってしょげたように。
「うぅ・・・・わかってるよぉ。でも、ダーリン、ただ1人の恋人宣言してくれたよね?ベタベタするのは、あたしだけにして欲しいんだ
もん・・・・」
うつむいて、更に顔下半分を枕にうずめる。
―― そして、パッと顔を上げ、叫ぶミルファ。「―― あたしとだけいちゃいちゃベタベタして欲しいのッ!」
貴明は思った。俺に纏わりつき始めた頃から片鱗は見えていたが、深く付き合うようになってからより明確になったのは ――
―― ミルファはかなり、嫉妬深い。
他に本命の恋人がいるというのであれば、あえて二号とかペットとか奴隷とか副次的地位にも甘んじるのだが、第一等の位置を
得てしまうと、どうしても俺を独占しないと気が済まないようだ。
よりによって、自分の分身というか異名である“河野はるみ”の存在にまで、敵意を向けるくらいに。
イルファが言う“乱暴者”とは、そういうラテン系な情熱的気質を指しているのだろう。ただ楽天的なだけの女の子じゃない。
ミルファはスッと足を伸ばして、床にストンと下りる。そして立ち上がると、ふいに上着の下端を掴んで、スルスルとそれを持ち上げ
始めた。ぷりん、と、淡いピンク色のブラに包まれた、たわわな胸が現れる。
あっ、と、貴明は小さく声を漏らした。
スカートのジッパーも下げる。ポトンと、脚を伝って彼女の足元にそれは落ちた。
ショーツも当然ながらブラと同じ淡いピンク色。小柄だがスタイル抜群のその姿、思わず見とれずにはいられない貴明だった。
両手を背に廻し、ブラのホックを外したミルファ。その拍子に、ポヨヨンッ、と、熟した彼女の果実が漏れ出して、その絶品な美観が
あらわに。
・・・・こんなにも豊かなのに、みっともなく垂れておらず張りがある。貴明は思わず、ゴクリと唾を飲み込んだ。
ミルファはショーツもスルリと下ろしてしまう。あらわになる、大事な場所。陰毛はかなり薄目で、うぶ毛のよう。―― 開発者の趣味
なんだろうか?
ストンと再びベッドに腰を落として、両手を伸ばし、貴明を招き寄せるミルファ。 「―― 来て。ダーリン。」
―― やっぱりこうなりますか、と、嘆息する貴明。しかし魅惑的な事は間違いない。躊躇もなかった。
本当は風呂に入ってからにしたかったのだけれど、もうこうなってしまっては辛抱たまらない。貴明もスルスルと着衣を脱ぎ始めた。
このみが“健闘を祈るであります!”と云ったのはつまりはこういうことで、ミルファとのいざこざを解決するのは、結局のところ、体に
訴えるのが一番なのだ。
床に膝立ちになり、ミルファの乳房に顔をうずめる貴明。
ああ・・・・この感触・・・・
更に手で乳房を揉みあげながら、徐々にミルファの体をベッドに押し倒していく貴明。
「・・・・むふ〜ん、さすがダーリン、見事なベッドヤクザっぷり。」
―― あなたが言いますかミルファさん?
「・・・・でもぉ、ダーリン、何であたしに黙って、このみちゃんや環さんと一緒に買い物してたの?」
思い出したようにふいに切り出すミルファ。貴明も逆に訊ねる。「ミルファちゃん、何で商店街に居たの?」
お互い、それ以上は追求せずに、沈黙してしまう。
「・・・・ま、いいっかぁ、何でも・・・・今晩は寝かさないよダーリン☆」
貴明が乳首を吸い上げると目を一段とトロンと潤ませ、陰核から膣口までをペロペロされて、あん、あぁ〜んと嬌声を上げた。
「んはぁああ・・・・じらさないでぇ・・・・早く入れてぇ・・・・」
ぬるぬると彼女の膣口から溢れてくる潤滑液。どんな仕組みになっているんだろう―― などと考えるのは無駄なことだ。
ムクムクと聳え立った貴明の肉棒が、ミルファの下腹部にズブズブと埋もれていく。
「・・・・くっ・・・・ふっ・・・・ふとぉい・・・・奥まで届いてるよぉ・・・・あっあっダーリンッ!おかしくなるっ!おかしくなるゥ〜っ!!」
―――
朝のまどろみの中、カーテン越しに窓から差し込む冬の低い日差しに貴明が目を向けると、逆光に黒く霞む人影が。
「あっ。ダーリン、おはよう。」
―― ミルファだった。既に服を着ている。いつもの私服だった。
貴明はもぞもぞとベッドから這い起きると、床に乱雑に脱ぎ捨ててあった彼の私服を身に着けた。
―― しかしふと気付く。どうせ休みだ、何も急いで部屋を出るまでもない。
またバフッとベッドに腰を下ろすと、窓際に立つミルファに呼びかけた。
「―― ミルファ、おいで。」 手を広げて彼女を招きよせる貴明。
ミルファはクスっと笑みを浮かべると、貴明の元までトコトコと歩み寄り、その膝の上にストンと腰を落とした。
貴明の背に手を廻し、胸の内に顔をうずめ瞳を閉じて身を委ねる。
右手でミルファの柔らかい髪に包まれた頭を撫でながら、貴明の左手は、彼女のニーソックスとミニスカートの間の絶対領域を
さわさわと擦る。そして、その指は太腿の間まで分け入り、スカートの奥のショーツに包まれた秘部をツツーとなぞった。
「あっ。」 ミルファはピクンと身を震わせ、薄布越しにクリトリスを撫でられる感触にハァァ・・・・と吐息を漏らす。
「あん・・・・ダーリンのえっちぃ・・・・。」
そうして一段と強く貴明に抱きつきながら、切なげに身をよじって頬と乳房を貴明に擦りつける。
―― ああ・・・・ミルファ可愛や。何とかこのコがプレゼントで大喜びする様を見たいなぁ・・・・
そんな事を思いつつ、貴明は手をミルファの腰と首筋に廻して体をより密着し、唇を寄せ合い口内でお互いの舌を絡め合った。
―― トントン。軽く叩かれた音の後カチャリと開いたドアの隙間から、河野家のもう1人の専属メイドロボの顔がのぞいた。
「ご主人様、ミルミル。朝れすよ。」
―― その視線の先には、ベッドの上で朝っぱらから痴情に耽る恋人達の姿が。頬を赤らめて、ジト目で眺めやりながら立ち尽くす
シルファ。
「―― あっ。」 シルファの視線に気付き、流石に赤面して慌てて唇を離す貴明。 「おっ、おはよう・・・・」
「んぅ〜・・・・あん、ダーリンどうしたの?」 ミルファが言ったが、貴明の視線の方向に目を向けると・・・・
「あっ、ひっきー妹S・・・・何よぉ、邪魔してぇ。」 恨むような視線を妹に向けて言う。
紅潮しつつ呆れたような視線を向けていたシルファだったが、やがてくるりと背を向けて、言った。
「いつまれもバカップルしてないれ、早く降りてくるんれすよ二人とも。」
そうして、階段へと足を向ける。
―― もう慣れた・・・・と自分に言い聞かせるも、一抹の悔しさを払拭しきれないシルファである。
―――
シルファの用意した朝食に箸を通す貴明。隣席には頬杖をついてミルファが座しているのだが、味噌汁のお椀を持って口に流し込む
貴明の左腕の赤みに、彼女の視線はジーッと向けられている。
「―― ダーリン、ごめんね。痛かったでしょ?」
彼女は昨日つねった貴明の左腕をずっと気にしていて、情事の合間にもそこをペロペロと嘗め回していたのだった。
「ううん、大丈夫だよそんな。心配しないで。」 苦笑しながら言う貴明。
しかし、その後、ボソリと続ける。「・・・・でも、グーで殴られるんじゃないかって、一瞬覚悟しちゃったんだけどね・・・・。」
「―― ええっ!?そっ、そんな事はしないよダーリンッ!あたしが本気で殴ったら、ダーリンきっと死んじゃうよぉ・・・・。」
タコ踊りのようなポーズで、焦って大袈裟に身をのけぞらせるミルファ。
三姉妹でも特にパワー重視の設定と言われているミルファであるから、実際、本気モードで殴られたらお星様となってしまう可能性
はかなり高い。まずはそうならないように身を正さないと、と思う貴明だが、それが彼の場合なかなか難しい。特異体質とかヘタレ力
とかやらのせいで―― 。
「キチガイに刃物。おぽんちにバカぢかられす。」 食器洗いの前に立って、背を向けたまま聞こえよがしにつぶやくシルファ。
ガタンッ! 「―― なにおうッ!」 グーのポーズで立ち上がるミルファ。
―― まぁまぁっ!そんな、朝から喧嘩しないで ―― と、冷汗をかきながら宥める貴明。
支援
「ご主人様もご主人様れす。ネコの発情期じゃあるまいし、ずっと、みっともない喘ぎ声が部屋の外に漏れ聞こえてくるのれすよ、
昨晩は・・・・恥を知るのれす二人とも。」
ンベッ!っと、ミルファがシルファの背に向けて舌を出した。苦笑いするしかない貴明。
―― 突如、何かを思い出したように、ミルファの表情が変わる。
「ネコ・・・・ダーリン、そういえば、あのねここ達、どうなったかなぁ・・・・?」
―― あぁ、そうかぁ、あの子猫達の記憶も戻されたんだミルファは・・・・と、気付いた貴明。 「そうだね。うん、今度菜々子ちゃん
に聞いてみるよ。」
・・・・まてよ・・・・。
―― 急に、何かを思いついた貴明。
ミルファは生き物、動物が大好き。Xマスプレゼント、彼女には、動物達との交流の機会を作って、思い出作りというのはどうかな?
どうせ、物質的なものは、裕福な姫百合姉妹がいくらでも提供出来るだろうし・・・・。
―― ピルルルルッ! 唐突に鳴る電話。
シルファが受話器を取った。 「はい、河野れす―― えぇっ!今かられすかっ!?イルイルで充分じゃ―― はいわかったれす、今
から行くれす―― 。」 カチャリと受話器を置いたシルファ。
「誰、シルファちゃん?」 貴明が訊ねた。 「―― イルイルれす。新型の開発機器をお母様のマンションに搬入するから、てつらい
に来いと呼びらしれす。」
「・・・・ふーん。ま、せいぜい頑張ってねヒッキーS。」 ほくそ笑んで背を向けたままシルファに手を振るミルファ。
「―― このパープーめいろろぼッ!!ミルミルも一緒に決まってるのれすっ!!」 シルファが叫んだ。
―― ええっ!あたしもぉーっ!!・・・・と、あからさまに不快感を顕にするミルファ。 「もぉ、ロボ使いが荒いんだからぁ・・・・。」
めんどくさそうに席を立ったミルファ。
「あ、俺も手伝いに行くよ」と、続いて席を立った貴明。
「あ、ダーリンはいいのいいの。どうせすぐ終わると思うし、ゆっくりしてて。」 彼を押し留めるミルファ。
―― そうして、メイドロボ達はそそくさと河野家を後にした。
独り残された貴明。溜息をついて、ソファへと向かう。
―― ピンポーン。
今度は呼び鈴が鳴った。何だ何だ―― ?
「はーい。」 玄関に向かい、ガチャリと扉を開けると、そこには思わぬ人物が立っていた。
「おはようございます河野さん。」 ―― ぺこりと、礼儀正しくお辞儀をする銀髪の少女。白いピーコートに黒いカシミヤのマフラー。
「あれ―― お、おはようございます久寿川先輩。ど、どうしたんですかいったい ―― ?」
ささらはやや頬を赤らめて言った。「あ、あの、ちょっと通りかかったんで、思いついたんですけれど・・・・」
そう言って、肩から下げていたバッグを開けて、ガサゴソと中をまさぐる。
スッと、取り出して貴明に差し出したのは、入場券らしき紙束。
「あの、これ・・・・。余っちゃってたんで、誰かに使って貰えればと思ったんですけれど。動物園と水族館の入場券です。二人分。」
―― ええっ!思わず素っ頓狂な声を上げた貴明。
「そ、そんな、頂いちゃっていいんですか先輩?」
「はい。年内限定なんで、どうせ持ってても無駄になっちゃいますし。」 そう言って、頬を赤らめ微笑し俯いたささら。
―― ありがとうございますっ!・・・・と頭を下げる貴明。ささらも去り際、にこにこしながらペコリと頭を下げて門外に消えていった。
―― 何と言う偶然!何と言う天啓!これは、ミルファちゃんを連れて行けって事だよな?やっぱり天使とか神様っているのかなっ?
カナっ!?―― !?
チケットを握り締めてぷるぷると震える貴明。
―― 河野邸を後にするささら。彼女が通りかかった傍らの電信柱の陰から、怪しい人影が姿を現した。
いつもの青いメイドロボではない。淡いピンクの髪、レースのフリルに短い黒いベスト、ミニスカートにリボン飾りのついた白いニーソ
の愛らしい服装とはおよそ不釣合いな、長いマントにサングラス姿の小柄な少女。
腕を組んで、ささらに語りかける。 「ふっふっふ―― さーりゃん、お主もワルよのぉ・・・・」
「―― そ、そんなっ!河野さんが喜ぶって先輩が言うからじゃないですかっ!それに、動物園と水族館のチケットを渡すのが、一体
どうして悪いコトなんですか―― ッ!」
―― にたりと、白い歯をむくピンク髪の少女。サングラスの端が、キラリと光った―― 。
(つづく)
今回の投下はこれで終了です。
ちょっとシルファ語失敗しちゃいました。反省。
溜息ばかりついてますね、登場人物達・・・・溜息ばかり出るようなシチュエーションのせいでしょうが。
モチベーションが下がらないように、ちょっと予告編なども入れてみます。
―――
百獣に君臨する力を持ちながら、二足歩行の姦計に長けた動物の策略に嵌り、惨め檻の中で見世物の愛玩ペットに成り下がった
哀れな獣よ・・・・
―― 虎だ。虎だ。お前は虎になるのだっ!
―――
「イヤーバイザーは付けてませんが、あなたもメイドロボなんですね?」
その茶髪のメイドロボが訊ねた。
「うん。あたしは17番目のヒューマン・メイデン、Xナンバー・タイプB,ミルファ。」
―― HMX−17b・・・・そう。このコが、イルファの直近の妹・・・・――
彼女が内蔵するデータリンクシステムは来栖川のデータサーバーに瞬時に繋がり、HMX−17bの外見特徴と、横のメイドロボを
名乗る少女の人相が一致する事を確認した。
「わかりました。では、目前の虎を捕獲又はその生命を絶ち、人命に危険が及ばないようにする事に協力しなさい。」
支援
する前におわたw
俺乙
>>298 面白い発想の話だなー
てか、人生に幸福を〜とか怪しい宗教みたいでワロタw
しかも珊瑚だと違和感がない・・・
メイドロボもいいけどそろそろ郁乃SSが読みたいと思ってる俺がいる
郁乃か…
何もかも懐かしい…
>>311 前スレに書いたやつの起床部分書こうとして書いてなかったから、読んでくれるのなら書くよ。
あ、恋愛のお話じゃないからそれだったら遠慮しておく。
生徒会役員の公選に出てくるような生徒は、おおむね2種類に大別される。“出たい人”と“出したい人”。
朝霧麻亜子(仮)の場合は、まさに100%前者で、久寿川ささらは、ほぼ100%後者になるだろう。
飽くなきプランナーにして娯楽のデパート、存在そのものがコメディか性質の悪い冗談としか思われなかった生徒会長まーりゃん
と、堅実な実務家の副会長ささらが担った、まーりゃん政権時代の生徒会は、その後伝説として長く語り継がれるであろう・・・・
「―― ねぇヒロ、知ってる?とんでもない1年生がいるらしいんだけどさ」
早速志保ちゃん情報に引っかかったその生徒、いつも眉唾ネタが多いものの、藤田浩之もその生徒の噂は耳にしていた。
学校内に共和国でも打ち立ててしまうんではないかというぐらいの勢いで、既に所属のクラスをすっかり掌握してしまったらしい。
人とは思えないバイタリティーと怪しい言動の数々。教師達も頭を抱えているとのことだ。
「芹香先輩が黒魔術で妖怪でも呼び出しちまったんじゃねーか?」 と、浩之。
「あ・・・・あの娘、超能力者なのかも。なんとなく、感じるんです・・・・」とは、姫川琴音の言。
「ねぇねぇ、好恵、葵、あいつシメちゃいなよ。あの超生意気な後輩。―― そうそう朝霧麻亜子。」
「あの・・・・すいません、あの子は遠慮しときます・・・・」
「―― ほうほう、これが本物のメイドロボか〜。ホレ、ちと近う寄れ。うむ、この耳飾りは・・・・おおっとぉ、外れるではないかっ!
ときに、お前も電気羊の夢は見るのか?」
「はわわわ〜っ!か、返して下さい〜っ!(涙)」
「こっこらっ!そこの生徒っ!その子は試験機だっ!壊しでもしたら来栖川電工にとてつもない弁償金が―― ッ!!」
―― 彼女はいつの間にか生徒会の末席に加わっており、しかも既に生徒会を牛耳りかねない勢いであった―― 。
「―― なぁ、さーりゃん、アタシな、生徒会長選に出ようと思ってるだけどさ―― 」
「―― そうなんですか。先輩くらい、適任者はいないと思います―― 。」
彼女を適任だなどと考えているのは、恐らくは彼女にすっかり心酔するささらくらいのものであったが。
通例、生徒会長の座は副会長が引き継ぐのだが、今回はまーりゃんが立候補したため、公選となった。
正式には書記の彼女は、既に“副会長代理”を自称していたのだった。
―― そして、生徒会長選挙。
「あっあー・・・・、最近、キャラが立ちすぎて、執行部からの受けが良くないまーりゃんです。」
ほぼ全校生徒が集った体育館。まーりゃんの言動にどっと湧く聴衆達。
「アタシはここに宣言する ―― “生徒会をぶっ壊す―― ッ!” ・・・・そして、その先に目指すものは・・・・美しい学園の再生ッ!!」
学園祭の年2回開催、メイド喫茶、ツンデレ喫茶の常設などかなり実現性に乏しい公約もあったが、学食のメニュー改善、放課後の
風紀規制緩和などのニーズの多い提案もあったため、その公約は相当な支持を集めた。
「この学園、美しくないモノが多過ぎる・・・・歓楽の園こそ、学園生活のあるべき姿ではないか。正直、アタシはこの学園に心底失望
している―― しかし、アタシは、“学園を、あきらめない”―― ッ!!
―― さぁ、諸君、アタシに力を貸してくれ―― 美しい学園の再生の為にッ!!」
沈黙する体育館内。―― しかし、その沈黙を破ったのは、副会長就任はほぼ確実視されている、久寿川ささらが送った、パチパチ
という拍手。
その演説の面白さもあって、構内は拍手の渦に包まれる。天性のアジテーターのまーりゃんであった。
―― しかし、生徒会長選の雌雄を決したのは、副会長の辞退。健康面の問題という事であったが、圧力が加えられたとのもっぱら
の噂であった。
―― こうして、まーりゃんを首班とする生徒会が発足する事になった。“劇場生徒会”の、幕開けであった―― 。
「―― おい貴明、面白い事やってるぜ。」
向坂雄二に促されて、体育館にやって来た河野貴明。
生徒会の肝煎りで開催された、新入生歓待のエクストリーム大会の決勝戦が開かれていた。
決勝まで勝ち上がってきたのは、来栖川綾香を倒して全日本エクストリームチャンプの座についた松原 葵、そして一方は、、何と、
生徒会長の朝霧麻亜子(仮)こと、まーりゃん先輩。
―― 鳴り響く決勝のゴング。そして、その後の顛末は―― 貴明は思いだしたくもない。有り得ない卑怯技と裏技の数々。
生徒会長の強権発動で、それらも全て是とされた。エクストリームチャンプを倒した、“ゴッデス・オブ・卑怯”――
まーりゃん伝説に、また一章が加えられた―― 。
そんなまーりゃん首班の生徒会ではあったが、“女土方”とも呼ばれる辣腕家の副会長、久寿川ささらが上手に脇を締め、まーりゃん
の突拍子もない思いつきで開催されるイベントの数々も全校生徒の支持を集め、“お祭り生徒会”、“劇場生徒会”の評判は極めて上々
であった。
―――
そして1年が過ぎ、まーりゃん達は卒業していく。
規定路線として、生徒会は久寿川ささらの手に委ねられる事になった。
―― 屋上に現れた河野貴明。彼の目に、座り込んで涙を流している女生徒の姿が。
―― えぇっ!あ、あれは、久寿川先輩―― ッ!?。
桜が舞い散る頃、物語は廻り出す―― 。
(おしまい)
ちょいと落としてみました。あまり人気がないキャラらしいのでたまには、と。
そういや最近郁乃のSSめっきり見なくなったなぁ。
以前はこれでもかってくらいあった気がするのに
いつの間にかすっかり影を潜めてしまって。
やっぱADが転換点になってしまったんだろうか。
>>317 乙〜
>>313 311じゃないけど書いてくれるなら希望だ!
ADみたいに病気メインの意味不明な話じゃなきゃw
>>318 ADは無印ヒロインにはあまり影響は与えなかったけど、サブヒロインの人気を変動させただろうからな。
特に元から人気上位に食い込んでたメイドロボと郁乃なんかは一番影響受けたんじゃないか。
AD無視&1週間ぐらい待ってくれるなら書くけど
ADは積みゲーになっててやってないんで、アニメ設定ぐらいで
個人的にSSを書くor読むって、特定の作品好きが極まった状態だと思うから
AD積んでる人がまだここにいるってのがちょっと驚きだ
XRATEDでそれなりに満足したのと、
発売日に買ってインスコまではしたけどなかなかやる気が起きなかった
&悪評続出でますますやる気ナス、な状態になったから
今後もやる可能性はかなり薄いっす
AD買うタイミングをつかみ損ねたまんまの俺も通りますよ
ささらSSもっとщ(゚Д゚щ)カモォォォン
“久寿川ささら、生徒会長辞任を表明―― !”
「あなたとは違うんです」
この体勢は無理がありすぎるだろう。
なにを考えているんだここの主は。
いや、眠かったのであんまり覚えていないが、確か姉の提案だったか。
ついでにここのメイドロボも賛成していたか。
まぁいい。それよりも…
「でかい…」
男性による愛玩を目的とした…その…あれだ…
サイズは姉と同程度…つまりでかい。
-ふにょ。
やわらかさも申し分ない。
-びょんびょん
おぉ…こいつ…跳ねるぞ…
って、こんなことしてたら、なんかログ残るんじゃないのだろうか。適当なところでやめておいたほうがよさげだ。
そこで彼女は、後頭部とわき腹の感触に気を向けてみた。
頭のはお姉ちゃんの胸か。わき腹のは…
「どこに突っ込んでるんだこいつは。」
貴明の手。まぁ、スペース的にこっちに向けなければ姉の下腹部に入るから仕方がないか。
この狭いベッドで何か始められたら圧迫死する。
-ゴソゴソ
-さわさわ
寝返りをうって手に触れてみると、冷たくなっていた。…まぁ、仕方がないのだろう。理由については言及しまい。
目の前には姉の胸がある。
-ふにょふにょふにょ。
うん。こちらのやわらかさも申し分ない。
うーん。質量的には姉のほうが大きいのか。
アンダーも大きいからカップ数は同程度だろうk
-ギュ
「うえ」
お、起きてるのか?いや、そもそも私は声に出して何も言っていない。
なぜこのジャストタイミングな締め付けが可能なのだろうか。
何かの能力者だったのか。
いや、まぁそんなことはどうでもいい。
息が苦しい…
-姉の腹は細い姉の腹は細い姉の腹は細い姉の腹は細い
念じてみると拘束が解除された。
…わからない。どういう仕組みなのだろうか…。
そうして彼女は、再度の眠りについた。
-チュンチュン
「ん…ぁ…」
「ふ…ふぅ…」
カーテンが開かれていた。
ジャムになっていたベッドは私だけになっていて、下の階からはなにやら音が聞こえる。
起きるか。
下の階に着くと貴明は3人の女性に囲まれていた。
一人は姉、一人はシルファ。そしてもう一人は…あぁ、愛人か。
少し時間を戻って。
ふおoooおooooooooo……
「ううぅ…」
うでがぁ…腕がぁ。。
「まなか、まなか…」
壁に預けていた右腕で愛佳を掴んで揺する。
-もぅ…食べられないよ…
たべなくていい!
「たべなくていい!食べなくていいから体重かk」
さらに体重がかかる。あー。感覚がなくなった。
とりあえず苦痛からはかすかに開放されたが、根本的な解決になっていない。
「体重は…体重は重くないよ?ただね、力が少ない面積に集中してるだけだからね?ね?だから少し体を動かしていただきたいなぁと。」
動かない。仕方がない。
貴明は愛佳に覆いかぶさるように体を移動させ、抱きかかえ、立ち上がる。
-ふっ
愛佳が重いわけではない。重いわけではないのだが、この体勢で立つのはかなり変な所に力が必要だった。
何とか立ち上がったところで、愛佳が目を覚ました。
「ふぁ…あれ…何で立ってるの…立って寝てたの…。」
「お…はよう」
「あ、うん。おはよう。」
-うぅ…
立ち上がってみたところで、シルファが既にいないことに気がついた。
「えっあれっ何で腕押さえてるの?痛いの?大丈夫?」
気がついたはいいが、そんなことより邪気眼発動しそうな左腕を押さえるのが必死な貴明。
「ふ…ふっ」
郁乃を踏まないように、とりあえずベットから降りてから悶えることにした貴明。
「ふ…ぉ…」
必死に腕からの感覚と戦う貴明。
-なでなで
「ふあっ…」
ついて降りてきた愛佳に左腕を摩られ、その感覚で衝天する貴明。
「えっ。貴明くん?大丈夫?えっえっ。たかあきくぅぅうううん」
返事がない。ただの屍のような貴明。
「ふぅ。」
とりあえず回復し、愛佳と共に居間に下りてくるとシルファが既に朝ごはんの支度を終えており、顔を洗ってからとりあえず麦茶でいっぷくする二人。
「今日も暑いねー。」「暑いなぁ。」
夏は暑い暑い言いながらだらーっとするのに限る。 とは、貴明は思わなかった。
「クーラー付けよっか。」
「何ろにしますか。」
「28度くらいで。電気代かさむのいやだしね。」
「ろーかいれす。」
-ピピッ。ピッピッ ピーンポーン
シルファがエアコンを操作し終えるとチャイムが鳴った。
こんな朝早くになんだろう。
っていっても、もう9時過ぎてるから、起床時間としては遅いんだけどね。
「はーい。」
このみかな。
「私がれます。食べててくらさい。」
「あ、うん。
じゃ、食べよっか。」
「おいしそーだねー。」
『いただきます。』
「朝から栄養考えて作ってくれるから、シルファちゃんが来てから体の調子がいいんだよ。」
-モシャモシャ
「いいなぁ。私のうちにも来てくれないかなぁ。」
-ガチャ
「ろなたれすかー。」
そこには、長髪の、人形のような女性が立っていた。シルファの姿を見て少し驚いた様子で尋ねてくる。
「こちらは河野貴明さんのお宅でしょうか。」
「はい。そうれすけろ。」
「えっと、河野さんとおなじ学校に通っている久寿川ささらといいます。
河野さんにご相談があって伺ったのですが。」
「そうれすか。少々お待ちくらさい。」
しえん
シルファちゃんが戻ってきた。
「ご主人様ー。久寿川さんという方がいらっしゃってますけど。ご相談があるそうれす。」
「久寿川先輩?なんだろう。」
-久寿川さん…って生徒会長?書庫のことかな。でもなんで河野くんの家にいることがわかったんだろ。
玄関に行ってみると、確かに久寿川先輩がそこにいた。
「おはようございます河野さん。朝早くにすみません。」「いえいえ、おはようございます。」
パジャマなのが少し恥ずかしい。
「昨日電話だけでも入れようかと思ったんだけど、夜遅かったから。」
「そっか。とりあえずあがってよ。」
あ、そういや愛佳もパジャマだった…まぁ女同士だし大丈夫だろう。多分。
-カチャ
居間のドアを開いた瞬間、時が止まった気がした。いや、時が止まっていれば時が止まったとは感じないだろう。
いや、そんなことはどうでもいい。
-え?河野さんって姉妹いらっしゃったんですね。
久寿川先輩は何か思案顔。愛佳の表情からは特に何も読み取れない。
「あ、朝ごはんの途中だったんですね。ごめんなさい。」「えっ、あ、いえいえいえ。おかまいなく。」
-日常に生徒会長!日常に生徒会長!にちじょうにせいt
訂正する。愛佳は妙に緊張している。
「座ってよ。 どうしたの?相談って。」
「それなんですが…」
先輩が話し始めると、郁乃ちゃんが起きて部屋に入ってきた。
「あ、おはよーいくのー。」「おはよう。」「おはようございます。」「おはようございます。」
「おはよ。で、なに?修羅場?大家族の子供会議?」
-修羅場…?この人たちは家族じゃないのかしら。でも家族会議?ん?…んー…
郁乃ちゃんが登場すると、先ほどよりさらに思案顔になる先輩。
「あー。そうだね。紹介しないとね。
こっちは同級生の小牧愛佳。で、今入ってきたのはその妹の郁乃ちゃん。で、こっちが栗栖川のメイドロボ実験機のシルファちゃん。
こっちは生徒会長の久寿川先輩。
小牧姉妹は昨日天体観測を一緒にしてたので家に泊まっていて、久寿川先輩は俺に相談があって家に来ました。
はい。話を進めよう。何のご相談でしょうか。」
さっさと説明してみる。
-朝ごはんれきてますよ。
久寿川先輩はなにか少し戸惑っている。
-ありがと。
-高級なお茶れす。
-ありがとうございます。高級なお茶。
先輩はお茶を受け取る。
「あんまり人に聞かれると困る話?」
「え、あ、いえ、その、生徒会長を辞めようと思うんです。」
-もぐもぐ
エー
「辞めちゃうんですか?」
俺が聞き返す前に愛佳が尋ねる。
-ごくごく
「私もなんだかんだでみんなにクラス委員にされちゃって…
辞め方を伝授してください!」
真に迫っている。それほどまでに嫌だったのか。愛佳。
「そうなの。
でも、あなたとは違うんです。
私は学校に居場所がほしかっただけなの。」
-はむはむはむ
「まーりゃん先輩つながりだね。」
「えぇ。もともと人徳があって選ばれたわけじゃなくて、選ばれるように振舞っていただけよ。
だから本当に生徒会で何かやりたいと思っている人の思いを、私が踏みにじるのはよくないと思うの。
事情はよく知らないけど、小牧さんはみんなの意思を反映して、選ばれるべくして選ばれたのなら、
私があなたの辞任をお手伝いすることはできないわ。私にとやかく言う資格はないけれど。」
ただ押し付けられただけなのだが。
-ごっくん。
「はぁ。なにうだうだ言ってるんですか。私は入りたてで、しかも休んでたからよく知りませんが、
実際にあなたは努力して今の居場所を手に入れた。それでいいじゃないですか。
姉は偉大な思想があってその上で選ばれたわけじゃなくて、ただ雑用を押し付けられて断れないだけ。
そもそも生徒会なんて雑用を押し付けられた連中の溜まり場か、お遊びサークルみたいなものでしょ。」
食べながら聞いていた郁乃ちゃんは食べ終えると、相変わらずの冷めた意見を口にする。
「それは…そういう側面もあるかもしれないけど…」
単純な話で、意見は出尽くしたようだ。相談された俺は何も意見してないけど。
「嘘をついたわけでもないしみんなの求めていたものは提供してるんでしょ?
じゃあ何かしたかったかもしれない人は、自分の力が足りなかっただけ。
民主主義は正義に行われてると思うよ。」
言ったのがまーりゃん先輩についてだけというのはなんかあれなので、観想をとりあえず言ってみる。
「そう…
ところで河野さん。女友達と一つ屋根の下で一晩というのは…その…たとえ布団が違ったとしても不純だわ。」
同じベッドなんだけど…
「ん。んー…うん。俺もそう思う。」
突然ふられたので、素直に答えてみた。
「らいじょうぶれすよ。ご主人様はへたれなのれなにも起きません。」
もうへたれでもいいや。イルファさんその他研究所の方とかには、もう訂正しようがないみたいだし。
でも、そもそもへたれってなんなんだろう。
事の進行が終わって言葉の定義に迷い始めた貴明と、
持ちかけた相談の判断を得て、あとは自分で決めるだけとなったささら。
奇妙な5人の朝食会を終え、なぜかゲーム大会がはじまった。郁乃とささらは見学中だ。
っていうか書いといてあれだけど、郁乃食べ終わるのはやっ。
「さっき、休んでたって言ってたけれど、聞いていいかしら。」
突然ふるのね。
「別に面白い話でもないですよ。
ただ糖尿病で入院してて、最近症状がよくなってきたから通うようになったっていう。それだけです。
入院中どうでもいいのに、私の居場所を確保するとかどうとかで書庫に立てこもってたり、
生徒何人か巻き込んでスカーフかなんか切り刻んでばら撒かせたり。
私の入院中、学校でいろいろ問題つくってたみたいでなんか気が重いんですよ。学校に居るとき。
歓迎してくれてるみたいですけどね。」
-ワーニンワーニン。
「そう…あれは小牧さんだったんですね。」
「その節はご迷惑をおかけしました。」
-エンゲージ
深くお詫びをする。本当に申し訳ない。
「いえ、迷惑だなんて。まーりゃん先輩に比べたら…。」
「面白い人ですね。」
「面白いというかはた迷惑というか…」
-チェックシックス
はた迷惑…?まーりゃん先輩とやらのことだろうか。
「違いますよ。久寿川先輩のことです。なんかメイドロボより人形みたいで、思考は漫画のキャラクターみたいだし。」
って、なんかこの言い方だと悪口言ってるみたいだな。
-カミングミッソー
「え、そうかしら。
私が…面白い…?」
-どこが面白いんだろう…
本気で悩み始めた。何打これは。妙にかわいい。先輩なのにかわいいとかなに。
-ドーン
「かわいいですね。」
-あー命中したね。愛佳どっかでやったことあるの?
-え?はじめてだよ?
「えっ。えっ?」
-うぅ…また負けたれす…なんれすかなんなんれすか…
「郁乃ちゃんと先輩もやろうよ。」
「私の見立てたところ、いくいくも玄人れすよ。」
そんなゲーム大会の様子をお伝えいたしました。
--おしまい。
え?なにがしたかったの? そんな野暮なことは聞かないでください。ちなみに私は
>>313ですよ。
書き終わってからまた気づいた。シルファが来たときは既に会長は辞めて海外行っちゃってるよね。
昨日の夜構想してささらの持ちかける問題設定してなかったんだけど、
>>327のおかげで考えずにすんだ。ありがとう。
338 :
1/5:2008/11/20(木) 19:25:32 ID:jnnhx6rh0
>>298に引き続き、ちょっとだけ進む話。
>>337ささらの持ちかける問題ではなくて、問題を持ちかけるささらだったね。
--
戻ってきたら居間で雄二が伸びていた。
な… 何を言ってるのk
-ピーンポーン
「はいはーい。」
私出るねーといって、
「おっす。」
雄二を連れてきたミルファ。
「あれ、貴明いないの?」
「おはよー。
うん。いま研究所で実験に協力してもらってるんや。」
「へー。昨日の今日で大変だな。貴明も。」
珊瑚と会話しながらも、とあるブツから目が離れない雄二。
「メイド…ロボ?」
上を向いている。人間なら首を痛めかねない姿勢で。
「外部インターフェースや。メイドロボ型ラジコンやな。」
「へー。これ操縦できるの?」
「それは今専用の装置じゃないと操作できひんで。」
「そうなのか。」
-それにしても…すごいかっこだな…
どうしても格好が気になる雄二。
というか常識的に考えると、普通寝かせるのではないだろうか。
「というかなんでそんなのがここにあるの?」
「それはなー。
人生に幸福をもたらそうと思ったんや。」
「珊瑚様の言葉では意味がわからないと思いますので私がご説明いたします。
昨日雄二様がおっしゃっていた、正体不明の知り合いの方を見つけたんです。
事情があって外に出ることができないのですが、栗栖川の実験機をご利用いただく予定になっていた方で、
その話をすると、雄二様と会っていただけることになりました。
もちろん雄二様の希望しだいなのですが。」
339 :
2/5:2008/11/20(木) 19:27:32 ID:jnnhx6rh0
「あう!あう!あう!あぅ…」
日本語を忘れてしまったかのように同じ言葉を繰り返す雄二。
昨日の今日ということには違和感を抱かない。
「会う…会う…」
「人生に幸福をもたらすんや。るー。」
「会う…会う…」
「人生に幸福をもたらすんや。るー。」
「会う…会う…」
「じんせ
「そろそろ動きらしそうれすよ。」
メイド3人は連絡を受け、シルファがそれを伝える。
「会う…あ。あ。え?くるの?あぁ。これを操作するんだな。あぁ。なるほど。うん。わかった。」
話の意図するところを理解せずに、会える事にのみ執着しており、ミルファの言葉で我に返ると同時に状況を理解した。
「来る…来る…」
今の雄二たちの耳にはまったく聞こえない起動音が鳴り始た。
-来る…来るっ
そして、シルファが運ぶときにかけたロックをコントローラーが解除すると、
筐体が萎え、前衛オブジェから、ソファーに腰掛ける人形へと変わった。
-来るっ…来るっ!
目を閉じたまま首を振る人形、いや、雄二の初恋の人。
-来るッ…来るッ!!
目を開ける瞬間。
-来るッ!!来
「ただいま。」
雄二は卒倒した。
340 :
3/5:2008/11/20(木) 19:29:32 ID:jnnhx6rh0
「おかえりやー。」皆が挨拶を交える。
-緊張しすぎたんでしょうか。
「なにがあったの?」
-呼吸あります。舌の乾き無し。虹彩の運動、確認できました。眼球は固視微動中。
「雄二がきて、初恋の人と会えるっていうことを聞いて卒倒した。
いまそのメイドロボ操ってるんは、事情があって外に出られへんその子っていうことになってるみたいやで。」
-体温36.02 温度分布は特に異常なし。汗の量は正常だね。震え無し。
「えっとー。それはつまるところ、雄二にとって、俺は俺じゃなくてその子なんだね。」
-脈拍 83 145れす。体性反射確認れきました。
「そうみたいやな。」
-脳内出血等の恐れがありますが、病院に運びましょうか。
「へー。うーん。。なんか流れ的にここまで来ちゃったけどいいのかな…」
-まぁ、このままおいといたらいいんじゃない?
「人生あたってくだけろや!」
-欝SSれはないのれ、そんな深刻なことは起きないと思います。
「ところで、雄二は大丈夫なの?」
「はい。今、大丈夫ということになりました。」
「よかった。じゃあそこのソファーにでも寝かせておいてあげよう。」
「りょーかい。」
12分43秒後。
「おーい。大丈夫かー。」
ゲームを再開していた面々であるが、雄二がなにやら動き出したので中断して観察しはじめた。
「ん…う…あ…う…あー。あっ。あー。」
某、顔が有るくせにそれと相反する名前を持つキャラクターのような呻き声を出している。
「カオナシやな。」
-とんとん
「おーい」
覗き込みながら肩をたたいてみる貴明。すると。
「あうううううううううううううぅうっぅぅぅ ってええええええええあ、えええええええ。」
341 :
4/5:2008/11/20(木) 19:31:32 ID:jnnhx6rh0
なんでこんなかわいい娘が目の前に。
いや、さっきから居たな。さっきは…あれ?かわいい娘だったはずなんだけどなんか違うな。
さっきまで芸術家が創ったようなげいz…あ、そうか。動いてなかったんだ。
動き出したんだ。つまりこの先にあのこが…
そんな思考を一瞬で巡らせ、奇声を上げた雄二。
また卒倒するのかと、周囲を不安にしたが、今回は意識を保っている。でないと話が進まない。
「えっと、は、はじめましてじゃねぇな。ひさしぶり!覚えてる?」
「え、あぁ。しっかり覚えてる。あの記憶は多分死ぬまで忘れない。」
「俺…俺、ずっと会いたかったんだ。あのときから。
そんで、そんで、断られてもいい。でも、言いたいことがあったんだ。
ずっとずっと言いたかったんだ。」
「うん。」
「君が好きだ!」
-流石、へたれてませんね。
「ああ、ありがとう。でも受け取れないんだ。お前に、いろんな隠し事をしてる。」
-中の人に、ご主人様より好まれる人れすから。
「隠し事?」
-BLなのかな。BLなのかな。
「うん。それはまだ何かはいえない。時間は有る。…あるよね?珊瑚ちゃん。どれくらいある?」
「あるでー。SS中に時間切れになることは無いで。」
「よかった。 だから、状況によってその秘密を教えていこうと思うんだ。」
「そっか。」
342 :
5/5:2008/11/20(木) 19:33:49 ID:jnnhx6rh0
間。
「おれが、その秘密を知った後でも、受け取ってもらえないのか?」
「あぁ。だめだ。」
「なら友達に、友達になってくれないか。」
「うん。」
「いつまで一緒に居られる?」
「お前が一緒に居てくれるなら死ぬまで一緒だぞ。
秘密を知った後でも、一緒にいたいと思い続けられればな。」
「わかった。いろいろ聞きたいけど時間が有るなら、あせらない。10年くらい待ったんだからな。」
「ありがとう。」
--
おしまい。
やっと楽しくなってきた。男同士の空間は快適だね。あぁ。別に腐の人じゃないので安心してね。
あと、毎回短くなって申し訳ないのだけど、長いのは投下規制対処が面倒なので(連続して長時間待つのがいや。)ご了承を。
今日もまた読まないでスクロールする作業がはじまるお(^ω^)
タマ姉が身長1600メートルのSSだれか書いてくださいおながいします
345 :
名無しさんだよもん:2008/11/21(金) 15:23:20 ID:szLpz3oL0
「全員は無理でも何人かなら・・・」この貴明の言葉によって
ヒロインたちが複数のハーレムチームを結成し、三国志ばりの陰謀や策略を
張り巡らせ貴明の奪い合いを始める
みたいなコンセプトがみたい
そんなことより老後は誰が書いてくれるんだい?
347 :
変態詩人1/3:2008/11/21(金) 19:52:34 ID:/doFmDR70
ある夕暮れ、一人の男が病院から家に帰っている。
ふぅ・・・大変な事になってしまった。
実は、10日ほど前に悪友に誘われて風俗に行ってきました。タマ姉に内緒で。
で、先日から亀頭&尿道に違和感を感じるので病院に行ってきたら性病に感染してた。
しかも、クラミ○アとヘ○ペス。最悪だ! 勢いに任せてNSでするんじゃなかった。
俺は凹みながら、街をプラプラ歩いてたら背後からいきなり抱きつかれた。
振り向くとタマ姉だった。
タマ姉「○坊!・・ん?・・どうしたの?暗い顔して。何かあった?」
俺「・・・いや、何でもないよ・・・はは」
タマ姉「ふ〜ん。それより、今から家に来ない?今日、雄二いないから・・・ウフフ♪」
俺「!!!え?、そ、それって」
タマ姉「うん。今夜は寝かせないから。うふふ♪」
ヤ、ヤバイ!! 今、タマ姉とHしたら病気を遷してしまう。ど、どうする?
俺「いや、今日はちょっと・・・先約があるんだ。」
タマ姉「・・・(何か変ね。私に何か隠してる?)」
タマ姉「そう。残念だわ。私より、その人との約束を優先するんだ」
俺「いや、そういう訳では・・・本当はタマ姉と一緒に居たいよ。」
タマ姉「じゃぁ、決まりね。私と行きましょう!(何があったか知らないけど私が元気にしてあげないと)」
家に着くと、俺はタマ姉の手料理を食べ、今、タマ姉と二人っきりで部屋にいる。
・・・・・静かだ・・・・何か言わないと
俺「じゃ、じゃぁ、俺、風呂に入ってくるよ。」
そう言って、立ち上がろうとすると、タマ姉に腕を引っ張られベットに押し倒された。
タマ姉「ううん。このままでいいよ。○坊の汗の匂い大好き♪」
俺「(ヤバイ!何とかしないと!)」
しかし、アッという間に服を脱がされ、俺の股間は立派にそそり立っていた。
タマ姉は何の戸惑いもなく、俺のイチモツの匂いを嗅いでいる。
タマ姉「(クンクン)!!(え?いつもよりクチャイ!・・・でも、○坊が元気になってくれるなら)」
タマ姉は口を開け、俺のアレを咥え込もうとした。俺は覚悟を決め
俺「待って!!タマ姉・・・・実はタマ姉に大事な話があるんだ」
俺は、タマ姉に振られる覚悟で全てを話した。
俺が話終えると、タマ姉の顔は見たこともないような表情をして手が上がるのが見えた。
俺は叩かれると思い目を瞑った。
・・・・しかし、何も起こらない。俺は恐る恐る目を開けるとタマ姉は泣いていた。
俺「・・・タマ・・姉・・・・・ゴメン。謝っても許されるとは思ってないけど。」
タマ姉「ぅぅ・・・ウソ・・・こんなの嘘よ。うわぁぁん」
俺「ゴメン。・・・ゴメン。」俺は全裸のまま深く土下座をして謝った。
・・・・タマ姉は何か覚悟を決めた様子で俺に言った。
タマ姉「○坊のしたことは私に対する裏切り行為よ。わかってる?本当なら別れるのよ。」
俺「うん。わかってる。ゴメ・・・え? 」
タマ姉「私は○坊と別れたくない。ただし、許すには2つ条件があるわ。」
俺「何でも言ってよ。俺、何でもするよ。俺だってタマ姉と別れたくない!(ヤッター♪)」
タマ姉「一つ目は、これからはタマお姉ちゃんだけを見なさい。他の女としては絶対にダメ!!」
俺「もちろんだよ!俺もタマ姉以外とはしたくないよ。もうタマ姉しか見えないよ!」
タマ姉「うん、宜しい。では、二つ目は・・・」
そう言うと、タマ姉は激しいキスをしてきた。俺「ムグ・・・・チュパ・・・ムゥ」
そして、俺の臭いアレに即尺をしてきた。
俺「!!待って! そんな事したら遷しちゃうよ。特にヘ○ペスは完治しないんだよ!」
タマ姉「いいわよ。遷しなさい。○坊一人が苦しむ姿なんて見たくないわ」
俺「でも、でも、」
タマ姉「これから2人で、病気と闘いましょう。それに、2人とも病気なら気にせず生でできるでしょ?」
そういうと、タマ姉は上に跨り激しく腰を振ってきた。
2人は獣のように互いの体を貪りあい俺はタマ姉の中で果てた。
END
読まないでスクロール
俺も読まないでスクロールだな
「無題〜」の人はとりあえず日本語学んできてくれ
会話文で括弧の前に名前つけるのも論外だろ
まぁ、文章力が無いせいで誰の発言か分からなくなるなら仕方無いかもな
文章まとめる力が無いならキャラを多く使っても無駄。ややこしくなるだけ
一人のキャラに絞ったほうがまともなもの書けるよ
おはよう。
>>352 意見ありがとう。
やっぱり人が感じるのは、「日本語でおk」なんだね。
自分で書いたものは、どんな省略があろうが誤字があろうがおかしな表現があろうが、
なにを意味しているのか理解できるからそのまま出しちゃって、SSじゃなくても「日本語でおk」といわれることが多い。
誤字はかなり慎重にやれば減るだろうけどね。
まともなものというのがどういうものかわからないけど、まともでないものよりも支持を受けるのは当たり前だと思う。
そして、読まないでスクロールする人にとっては”多分”まともでないものなのだろうと思う。
まともでないものを長々と書いて完全に誰の支持も受けない、つまり独りよがりになってしまったら荒らしと同じだから、
この続きを今の状態で読みたい人が居ないのなら、私はすぐにこのスレに書くのを止めて日本語のお勉強をしてくる。
そうでないのなら雄二のSSだけ終わらせてから、ちゃんと勉強しようと思う。
日本語を学ぶといっても
小学校や中学校や高校でのように国語の授業を受けることはもうできないから、
なにをすればいいのかわからないけど、無償でここで人に教えてもらうというのは悪いので、
一人でだらだらとやろうと思います。
いい休日を。
>>353 gdgd言ってないで、自分が書きたきゃ勝手に書いて
黙ってここに投下すればいいだろ。読みたい人がいれば
続きを書くとか何様のつもりだ?
前にも変なのが居たけど、そういう俺様ちゃんが湧くと
スレが荒れんだよ。
う〜ん、なんか、ちょっと気が引ける流れなんですけれど、落とします。
「天使の〜」の、続きです。今回で終りです。
ちょっとレス数増えちゃったので、もしご支援いただけたら助かるかも。
では。
―――
ささらから渡された券を見やる貴明。水棲動物の好きな久寿川先輩だから、こんな券を複数枚持ってても不思議はないか・・・・と、
彼は勝手に想像した。
とりあえず、これはありがたく使わせて貰おう・・・・動物園と言っても、これは最近来栖川が作った動物園の付属するテーマパーク
のフリーパスで、普通に入ったらそこそこお金はかかる。水族館も、入館料は高めだしな。
しかし、贈り物が人様からの貰い物というのは、いかにも気が引ける―― たとえ、思い出は自分でこしらえるにしても。
―― 決めた。贈り物はやはり買おう。先日、タマ姉達と廻って、気にはなったけど高くて手を出さなかったブツがある。やっぱり、
あの辺を ――
書き置きをテーブルに残して、そそくさと出掛ける貴明。 “ミルファちゃん、シルファちゃん、ちょっと1人で出掛けてきます。ホント
に『1人』だから大丈夫”―― って、何で“1人”をこんな強調しなくちゃならんのだ?
―――
そして、イブ当日。
「デート!デート!ダーリンとデ〜トぉ♪ キャッキャッ☆」
玄関を出てミルファはスキップ気味に貴明の周りをぐるりと巡ると、いつものように彼の腕を取ってそれをギュッと胸の谷間に包み
込むように抱き、頭を傾げて貴明の肩にストンと寄せた。
こんなに喜んで貰えるなんて ―― 思わず貴明の頬も緩む。もともと感情表現のオーバーなミルファではあるが、貴明にデートに
連れ出して貰えるという事実そのものに心底喜んでいる様がありありと窺えるので、余計彼女が愛しく感じられた。
―― ありがとうございます久寿川先輩。お礼はそのうち、必ず・・・・いつまで、日本にいるのだろう?
とりあえず、動物園に先に行く事にした。水族館はその後、時間がなければ後日にでも―― 。
バスで移動の合間にも、ミルファはビトッと貴明に身を預けている。とりまく周囲からの生暖かい視線をひしひしと感じる貴明。
―― しかし、気恥ずかしさを覚えつつも、かわいい彼女にべたべたひっ付かれている様子をむしろひけらかしたい気持ちの方が
勝って、その表情は終始にこにこと緩みっぱなしである。
―― 先日タマ姉とこのみに密着された時には引いてしまったのに、これはどういう事か?二人とて周囲が羨む美少女で、決して
嫌いではないのに?
恐らくは突然の事で狼狽してしまったのと、後ろめたさも手伝ったのだろう、と貴明は自己分析した。
―― それとも、人間の女性は苦手でも、ミルファなら気にならない?彼女がロボットだから? ―― いやいや、そんな事はないと
かぶりを振る貴明。彼女の“心”は人間と何ら変わりはない。そこに惚れちゃったんだろ?―― と、疑念を振り払った。
「どうしたの、ダーリン?」 貴明のその様子をきょとんと眺めた後、訊いて来たミルファ。 「あっ、いや、何でもない何でもないよ。」
それにしても・・・・と、貴明は、学校での男子達の反応を思い出した。
“河野はるみ”が学校に姿を現し、貴明に強引にあたっくをかけてきた当初、彼らは彼女を敬遠がちにやや距離を置いて周囲から
見守っていたものだが、メイドロボとしての正体がバレた後に再び学校に通うようになってからは、明らかに目の色が違う。
ねっとりとした視線というか、羨望の色というか―― 雄二みたいだ。―― お前ら、そんなにメイドロボが好きなのかよっ!・・・・と、
思わず突っ込みたくもなるというものだ。
―― もしかして、俺も雄二達と大差ない?―― いやいやいや〜、そんな筈はそんな筈はそんな筈はっ!
またかぶりを振る貴明。 「―― ?」 きょとん、とミルファが見つめていた。
現地到着。はしゃぐミルファ。「わ〜いっ!ダーリン早く入ろ入ろ入ろっ!」
先に遊園地で何か乗り物でもどう?と貴明は振ってみたが、「動物がいい動物がいい動物がいい〜っ!」とミルファが強くおねだり
したので、先に動物園の門をくぐった。
“―― わーダーリンッ!あれキリン!?首折れないかなっ!? わーゾウさんだよダーリンッ!蓄膿症になったら治すの大変だねー
きっと。わーライオンだよー。円形脱毛症になったら見つけるの大変かもね〜。” ―― あのー、着眼ポイントが面白いねミルファさん。
苦笑する貴明。
『動物ふれあい広場』の看板の出ている一角にやってきた貴明達。
「ミルファちゃん、動物に触れるみたいだよ?」と教えると、わーっ!と、中に駆け出していってしまった。
灰色の丸っこい愛嬌のある動物が木にひっついている。「ねぇねぇダーリン、これコアラ?―― えっ、抱っこしていいのっ?わ〜い!
かわいいねっ!かわいいねっ!あったかいねっ!あったかいね〜っ!」
無邪気にはしゃぐ様子に思わず貴明の頬も緩む。
リスやウサギやアヒルなど、ひとしきり触れ合った後、子ヤギが戯れている一角にやってきた貴明達。
「わーヤギさんだーヤギさんヤギさん」 ぴゅーと、柵の中に入っていくミルファ。子供たちが子ヤギに餌を与えているのを真似して、
彼女も餌付けを始めた。
ああ、やっぱり来てよかったなぁ・・・・と、静かに目を伏せる貴明。すると、「いやぁああ〜んっ!?」と悲鳴。 ―― えっと、これは、
ミルファちゃんの声!?
「ミルファちゃん!どうしたの?」 貴明が駆けつける。 「あ〜う〜ダーリン、この子ヤギ達、えっちだよぉ〜。あたしのスカートの中に
顔突っ込んでくるよう〜!」 半ベソ顔のミルファ。
見ると、確かにミルファの背後についていた子ヤギが、彼女のデニムスカートの下から顔を突っ込んでもぞもぞしている。
「きゃうううんっ!パ、パンツ下ろしちゃだめぇぇぇ〜〜〜っっ!!あ〜んダーリン眺めてないで助けてぇ〜〜〜っっ!!」
真っ赤になって叫ぶミルファ。冷汗を垂らして呆然としながらも、これは眼福としっかり見ている周囲の子連れのおじさん客達。
一瞬、貴明も呆気に取られていたが、すぐにハッと気を取り戻すと子ヤギを引き離しにかかった。「こっこら、それは食べ物じゃない
んだよっ、離れようねっ!」
「ううう〜、ひどい目にあったよ〜ダーリン。」
ベソをかいてベンチに腰掛けるミルファの傍らから、彼女の肩に手を掛けその頭を撫でて慰める貴明。
・・・・しかし、ヤギがこんなにも恐ろしい生物だったとは・・・・。
“―― んっ?そういえば―― ”と、思い起こした貴明。あんなヤギを見たことがあったな。菜々子ちゃんにせがまれて、別の遊園地
に行ったとき、中にあった動物コーナーで。
“あの人”は、『ひつじさん』とか言ってましたが ―― あーいやいや、こんな楽しい日にあの人の事を思い出すのはよろしくない。
ぶんぶんと頭を振る貴明。「・・・・ダーリン、どうしたのぉ?」
―――
―― ここは、貴明達がいる休憩ゾーンからほど近いところにある一角。
“たかなし動物プロダクション”と荷台に横文字の入ったトラックが園内への搬入口にやって来た。荷台にも窓がついていて、動物の
運搬車である事がわかる。
トラックの助手席には、サングラスを掛けた小柄な人物が腕を組んで座していた。どう見ても、少女に見える。ピンク色の髪 ――
顔を斜め後ろに向けて荷台を見やりながら、つぶやく。
“百獣に君臨する力を持ちながら、二足歩行の姦計に長けた動物の策略に嵌り、惨め檻の中で見世物の愛玩ペットに成り下がった
哀れな獣よ・・・・
―― 虎だ。虎だ。お前は虎になるのだっ!”
“グゴォォォ・・・・” 荷台の中、低く唸るその獣の影の眼が、赤く光った―― 。
―――
爬虫・両生類のコーナーを巡って建屋から出てきた貴明達。「ミルファちゃん、どう?」
「うんうんサイコーだよぉダーリン!みんなかわいいよぉ〜。」 キャッキャッと、大袈裟に両手を広げ体をくねらしながら喜ぶ様を見せる
ミルファ。
支援
「それじゃ、そろそろ遊園地の方廻る?それとも出て水族館に行こうか?」 ミルファに訊ねる貴明。
「う〜ん、もうちょっと動物見て行こうかなぁ。」
―――
“ワァアアアアアアアアアア〜〜〜〜ッッッ!!!”
屋外動物のスペースに向かって歩いていたら、大勢の入場客の声と思われる大音響が。
「な、何だろ。何があったのかな?」 顔を見合わせる貴明とミルファ。
ややすると、入場客達がドドドッと押し寄せてきて、貴明とミルファにぶつかってもそのまま駆け去っていく。「うわっ!」「きゃっ!」
そして、突然響き渡る場内アナウンス。
“場内の皆様にお知らせします。虎が檻の外へ逃げ出しました。大変危険ですので、係員の指示に従い、速やかに安全な場所へ
避難して下さい。繰り返します。虎が檻の外へ逃げ出しました―― ”
―― ええええっっっ!!!それはえらいこっちゃっ!!
蒼白になり、狼狽の相を見せる貴明に怪訝な顔で訊ねるミルファ。「虎って、さっき見たあのトラさんだよね?そんなにすごいの?
確かに体はおっきかったけど―― 。」
「そ、そりゃ、ライオンと百獣の王を争うくらいだもん、凄いに決まってるよっ!いくらメイドロボが強いったって―― ミルファちゃん、
早く逃げようっ!!」 ガッとミルファの手を取り、引っ張る貴明。
“―― くっくっく、たかりゃん、さだめじゃ―― 。はーりゃん、たかりゃんの盾となるべきその力、とくと見せて貰おうぞ―― 。”
ミルファを引きながら、園内の端に位置する大きな石のオブジェに差し掛かかり、その向こう側に曲がった貴明。その時 ――
―― ぬっと、姿を現したのは、縞模様に彩られた、大きな動物の顔―― 。
「―― ヒッ――ッッッ !?」 唐突に止まり、ペタリと尻餅をつく貴明。
「―― あっ!?―― ダ、ダーリンッ!」
2.5メートルはあろうという見事な体躯のアムールトラが、貴明とミルファの眼前に、いた。
「はっ・・・・はっははは・・・・」
ガクガクと震えて、いよいよ貴明は腰を抜かしてしまい立ち上がる事が出来ない。ダラダラと額を垂れ落ちる脂汗。
「ダーリン、つかまってっ!」 ミルファは貴明の手を取って肩に担ぎ上げ、えいっ―― !っと、大きくジャンプ。数メートル先の建屋の
脇に降り立った。更に何メートルか走ったところで、従業員とおぼしき人々が彼女達の脇を駆け抜けて行く。
「危険ですから、早く避難場所へ逃げて下さいっ!」 そう声を掛けた従業員達の手には、ライフル銃とおぼしきものが。
彼らは虎とは10数メートル程隔たった位置から遠巻きにするようにして囲み、手にしていた銃を虎にさっと向ける。
「―― だっ、ダメだよぉ〜〜っ!この子何もしてないのに、乱暴しちゃっ!」
従業員達が虎に麻酔銃を向けていたのを見て、射殺するのだと思い込んだミルファはいても立ってもいられなくなり、その脚力で虎
と従業員達の間にあっと言う間に割って入った。虎に相対し、従業員達に背を向けたまま両腕を水平にパッと広げる。
仰天した従業員が叫ぶ。「こっこらっそこの女の子っ!危険だ離れなさいっ!!」
「大丈夫、あたし、人間じゃないもん。それにこの子―― ホラッ、こんなに大人しいよ?」
ミルファの言う通り、グゴォォォ・・・・と、低い唸り声を上げているが、襲いかかってくるような気配はおよそ見られない。
「あはっ、目がかわいいよぉ・・・・ほらほら、おいで。」 手招きするミルファ。
「あっ、きっ君もっ!危険です近付かないで下さいっ!!」
従業員の制止を無視するように、その脇を通り過ぎて虎に歩んでいくシックなスーツ姿の女性がいる。タイトスカートからスラリと
伸びる、黒いストッキングに包まれた脚が印象的。大人びてはいるが、少女の顔立ち。背まで伸びる茶色っぽいストレートヘア。
違和感の基は、顔の側面、頬まで覆うようにして角のように頭上まで伸びるバイザー状の突起。それを仔細に観察した従業員は
ハッと気付いた―― こ、この女性は、来栖川のメイドロボだ―― 。
彼女がピタリと右横についたのに、ミルファも気付く。チラリ横目で一瞥すると、すぐにそのイヤーバイザーが目に入った。
―― あっ・・・・ええっと、この人もメイドロボだ・・・・確かこのタイプは・・・・う〜ん、覚えてないや・・・・――
型番までは思い出せなかったが、現行主力機のHM−15よりは古いタイプなのは理解したミルファ。
彼女が話しかけて来た。「ここは危険です。今すぐ離れなさい。動かないのなら強制的に退去措置をとらせていただきます。」
ミルファが応える。「お姉さん、大丈夫。あたしもロボだから。」
それを聞くと、ほとんど表情を変えないまま、彼女の視線がミルファの横顔を舐めるように眺め回す。
「イヤーバイザーは付けてませんが、あなたもメイドロボなんですね?」
その茶髪のメイドロボが訊ねた。
「うん。あたしは17番目のヒューマン・メイデン、Xナンバー・タイプB,ミルファ。」
―― HMX−17b・・・・そう。このコが、イルファの直近の妹・・・・――
彼女が内蔵するデータリンクシステムは来栖川のデータサーバーに瞬時に繋がり、HMX−17bの外見特徴と、横のメイドロボを
名乗る少女の人相が一致する事を確認した。
「わかりました。では、目前の虎を捕獲又はその生命を絶ち、人命に危険が及ばないようにする事に協力しなさい。」
ええっ!?とミルファ。「“生命を絶ち”って、そんなの、ダメぇっ!」 そう言ってかぶりを振る。
「人命保護が最優先です。三原則の縛りがなくても、あなたもメイドロボならそれは理解している筈。安全に捕縛する事が不可能
なら、その選択肢もあるという事です。」 にべもなく言い放つ彼女。
「・・・・わかったよ。おとなしく、懐かせればいいんでしょ、この子を。」 キッと、虎に向き直ったミルファ。にこりと表情を和らげると、
再び虎に手招きした。「・・・・ほらほら〜、おいで〜・・・・。怖くないよ〜。」
しばらく、ミルファ達をじっと眺めるようにして佇んでいた虎だったが、やがて、ゆっくりと、ミルファ達の方へ近寄って来る。そして、
とうとうその大きな顔が、彼女達のすぐ目前にまで迫って来た。
固唾を呑んで見守る従業員達。―― すると、どうだろう。虎はストンと、後ろ足を屈めた。前二本足だけで立つと、その頭をスッと
ミルファの前で落とした。“ゴォォォ・・・・”と、小さく唸り声。尻尾を立てて、ゆっくりと左右に振っている。
「―― あはぁーっ!」 ミルファの表情がぱっと輝く。そして、その顔にすがりつき、彼女の頬を虎の顔にすり寄せた。「あははー。
いい子だね、いい子だねお前。」
その有様を見て、唖然とし互いに顔を見合わせる従業員達。
―― ヒュッと、ミルファの脇を何かが瞬時に通り過ぎて、虎の背後側についていた。ミルファの隣にいたメイドロボだった。彼女は
ストッ、と虎の後頭部に指先を当てた―― ズズッと、地面に崩れ落ちるアムールトラ。
「あっ?―― 」 と、一瞬呆気に取られたミルファだったが、すぐその顔を眼前のメイドロボに向け、キッと睨んだ―― 。
「な、何すんのよーっ!」 叫ぶミルファ。 「ツボを突いて眠らせただけです。そのうち目覚めます。」 冷ややかに答える彼女。
―――
従業員達が虎に網を被せていた。やがて移送用の車がやって来る。その様子を眺めやるミルファ。
ふと背後を見ると、先程のメイドロボが踵を返して歩み去るところであった。
「あっ、ちょっと待って!?」 手を差し出すミルファ。
「HMX−17b、また会いましょう。」 チラリと横目でミルファを一瞥した後、また歩いて行く。彼女が歩む先には、数人の黒服の男
達と、典雅な趣きの、背の高い執事風の白髪に髭の老人の姿。彼女と合流すると、一斉に歩き去って行った―― 。
“へぇ・・・・もしかして大きなお屋敷のメイドかなぁ・・・・無愛想でちょっぴり憎たらしいけど、カッコ良かったな・・・・あのおじいさん、
長瀬おじさんにちょっと似てるな・・・・。” 去って行く彼女達を眼で追いながら、ひとりごちるミルファ。
「・・・・あっ、いけないっ!ダーリンッ!?」
貴明を放置していた事をすっかり忘れていた。慌てて建物の陰に駆けていくミルファ。
「あはっ、はははっ、ミルファちゃん、無事だった?」 地面にへたり込んだまま、苦笑する貴明。
「あぁ〜んダーリンごめんね〜、あたしったらつい・・・・」 貴明に手を差し出すが、座り込んだまま立とうとしない。
「ははは、ごめん・・・・腰抜かしちゃったみたい・・・・」
「・・・・んもうー、ダーリン、カッコ悪い。」 ふうっと手を腰に当てて、溜息をつくミルファ。その言葉にしゅんとなる貴明。
「ほらっ、ダーリン、つかまって。」 背を向けて腰をかがめ、貴明の手を肩に廻させると、そのまま彼を背に載せ持ち上げた。
大の男が小柄な少女におんぶされて運ばれていく様は、確かにあまり体裁のよいものではない。
遊園地の門を後にする二人。 「ミルファちゃんごめんね、とんだデートになっちゃって・・・・」 ミルファの背におぶさったまま、貴明が
意気消沈した声で語りかける。
「え〜、なんでダーリンがあやまるのぉ〜?」 と、ミルファ。そして続ける。「それにダーリン、とーっても楽しかったよーっ!ドキドキ
もあったしね〜っ!!」 心底楽しんだ様子が窺えたので、貴明はややほっとした。
ミルファちゃん、もう大丈夫だよと貴明が言ったので、ミルファは彼をストンと背から降ろした。ふらふらと立ち、ありがとうと礼を言う
貴明。
もう水族館に行くには遅い気がするし、どうしようかな・・・・と貴明が思案していると、「ねぇねぇ、あそこに行こうっ!」とミルファが
遠方を指差した。その先には、西に傾き始めた陽を受けたツインタワーのシルエットが―― 。
―――
「―― こりゃっ!あちしのかわいいターりゃんを驚かして逃がした上に、何てことするんだよっ!大体だな〜、このコは曲芸用、借り
てきた猫よりもおとなしいってぇーのによ〜っ!!」
すんませんすんません、と、動物園の従業員達が頭を下げているのは、逃げ出した虎の持ち主である“たかなし動物プロダクション
代表取り締まられ役 小鳥遊万里耶”氏。・・・・その風貌は、どう見ても“永遠の14歳”を自称する、某元生徒会長であるが。
彼女は窓外に眼を向けて、呟いた。
「―― はーりゃん、その愛と勇気と優しさ、しかと見せて貰ったぞ。たかりゃんと幸せになるんだぞい―― 。」
―――
「るー☆」 バンザイポーズの珊瑚。
「おうミルファおかえり。貴明よう来たな。」 エプロンの紐を締めている瑠璃。
夕刻、姫百合邸。おそろいの白いワンピース姿の姫百合姉妹が貴明とミルファを出迎えた。
居間中央のテーブルには、大きなクリスマスケーキが置かれていて、イルファとシルファが飾り付けにいそしんでいる。
「シルファちゃん、あんまり強く差すと、ケーキが崩れてしまいますよ。」
「う・・・・意外と、難しいのれす。」
彼女達の脇に立つ、大きなクリスマスツリー。電飾がキラキラと輝く。
「ダーリン、ツインタワーで見た夕日、すっごいキレイだったねー。」 テーブルに頬杖をついて、にこにこしながら言うミルファ。
「うん。」 と、貴明。確かに、タワーの展望台で眺めた落日は言い様のない程の美しさだった。最高の思い出ではなかろうか。
TVでは夕方のニュースが流れている。“―― 動物園で、曲芸用に連れ込まれたアムールトラが逃げ出し、丁度現場に居合わせた
ロボットの協力で取り押さえられ―― ”
「なぁ貴明、ミルファ。これ、今日貴明達がおった動物園やないか?」 瑠璃が言った。
「う、うん。実はそうなんだ・・・・」 そう言って、苦笑しつつミルファと顔を見合わせる貴明。
「なーなー、ネットの掲示板に画像うpされとるよー。」 ノートパソコンをいじっていた珊瑚が言った。
珊瑚の背後に廻り、パソコンの画面に見入るイルファ。
10 :名無しメロン:XXXX8/12/24(水) 18:10:31 ID:TIVRHR112
あ・・・ありのまま さっき起こった事を話すぜ!
あれは天使だ。天使に違いない。猛り狂う巨大な猛獣を、天使の微笑で手馴ずけちまったんだよっ!
信じられるかい?まさに美女と野獣だよ!
―― そんな調子で数行書き連ねられていて、現地に居合わせた誰かが写したらしいデジカメ画像のリンクが貼られていた。
珊瑚がクリックしてリンクを踏むと、ページがジャンプして、画面全体に画像がスーっと現れた。
しばらく見入ってから、珊瑚がつぶやく。 「なー、これ、みっちゃんやあらへん〜?」
膝に手を乗せて中腰になっていたイルファも、あっ、と声を漏らした。そして、ミルファの方を向いて睨む。 「・・・・ミルファちゃん?」
膝に手を乗せて中腰になっていたイルファも、あっ、と声を漏らした。そして、ミルファの方を向いて睨む。 「・・・・ミルファちゃん?」
・・・・あは、あはははー・・・・引き攣った笑みを浮かべるミルファ。貴明も同様である。
「ミルファちゃんっ!何て無茶をっ!いくら私達が強い力を与えられているからと言って、虎と闘うようには出来ていないんですよ!」
あーうーごめんなさーい、と両手で頭を抱えてうずくまるミルファ。
「それに・・・・」と続けるイルファ。「あなたに何かあったら、多分、一番悲しむのは貴明さん・・・・ううん、私達みんな。もうこれ以上、
私達を悲しませないで・・・・。」
「お姉ちゃん・・・・」
引き続き画面に見入っていた珊瑚がつぶやく。「なぁなぁ、いっちゃん、これ・・・・」
珊瑚の声に、再び画面を覗くイルファ。そして、あっと小さく声を上げる。
「・・・・ミルファちゃん、現場には、他にもメイドロボがいたの?」
「う、うん・・・・」 イルファの問いに答えるミルファ。
「ミルファちゃん・・・・この方が、HMX−13、セリオお姉さまです。」
―― ええええぇぇっっ!? 素っ頓狂に驚きの声を上げるミルファ。
―― ピンポーン。呼び鈴が鳴る。
シルファが玄関に向かう。扉を開くと、現れたのはこのみ、環、雄二。
「こんばんは。」 「来たでありますよ〜。」 「よぉ、こんばんは。」
パーンッ!とこのみがクラッカーを引いた。
「メリークリスマスッ!!」 一同が唱和する。
裕福な姫百合姉妹が振舞う七面鳥焼きやら様々な料理がテーブルに並べられている。
各自思い思いに歓談に耽る中、貴明はケーキを切り分けているミルファに声を掛けた。 「ねぇ、ミルファちゃん。」
「ん?」 振り向くミルファ。
「あのさ・・・・これ、クリスマスプレゼント。」
差し出されたギフトの包みを見て、ミルファの表情がぱぁっと輝いた。
「―― ダーリンッ!ありがとうっ!うれしいぃ〜〜っっ!!」 ガバッと貴明に抱きつくミルファ。
あははは、と頭を掻く貴明。
支援
「ねぇねぇ、開けちゃってもいい?」 とミルファが訊ねるので、こくりと貴明はうなずく。がさごそと封を開けると・・・・
現れたのは、 シルバーリング。
「わぁ・・・・」 見とれるミルファ。「きれい・・・・」 中央のストーンの色は、青。
ミルファの瞳の色に近い、青いトパーズ。くりくりと感情豊かで魅力的に輝く彼女の瞳を想起しながら選んだものだった。
環はそれが、自分が貴明に勧めたものであったのを確認すると、目を細めて独りにっこりした。
ミルファは早速それを指に通し、手をかざしてキャッキャッとはしゃいだ。―― しかし急に落ち着くと、貴明の顔にじーっと視線を
向ける。
「ど、どうしたのミルファちゃん?」 当惑して貴明が訊ねた。
「ダーリン、きっとこのプレゼント探してくれてたんだよね、この間は・・・・怒っちゃったりして、ごめんなさい。」
「いや、いいんだよそんなこと、誤解されるような事した俺も・・・・」と、貴明が言いかけたところで、ミルファが唇を接近させてきた。
貴明はそのまま受け入れた。彼もミルファの背に手を廻し、抱きかかえる。ゆっくりと、唇を交わす二人。
周囲はその様子をにこにこと見守っていた。
貴明から唇を離すと、ミルファは傍らの袋に目を落とし、がさごそと中をまさぐった。
「むふ〜ん、ダーリン、実はぁ、あたしもぉ〜・・・・」 やや勿体ぶって、間をあけた後・・・・
ぱっと、貴明の前に包みを差し出した。「すーぱーうるとらでりしゃすなんとか・・・・クリスマスプレゼントーっ!!」
わりと大きな包みだった。「あ、開けちゃっていいかな?」と貴明が訊ねると、「もっちろ〜ん☆」と、コクコク頷くミルファ。
封を開け現れたモノを見て、貴明は喜びとも困惑とも形容し難い表情を浮かべ、「あ・・・・」と、小さく声を発する。
出てきたのは・・・・クマのぬいぐるみ。
「ダーリン、クマのぬいぐるみ好きだもんね〜。あたしがクマ吉だった時も、お股覗いたりしてたもんね♪」
―― い、いやあの時は・・・・と、苦笑し冷汗をたらす貴明。
「これ、クマ吉2号だよ。お股、のぞいても、いいんだよ・・・・むふ〜ん、えっちぃ〜・・・・♪」
そう言って頬を赤らめ、股間に両手を挟むようにして、くねくねと奇妙に身をくねらせるミルファ。
「いや、その、まいったなぁ、はははは・・・・」と、手を頭の後ろに当てて困惑した笑みを浮かべる貴明。冷汗が光る。
彼らを見守る周囲の視線が、生暖かいものに変わった。
―― ピンポーン。
再び呼び鈴が鳴った。
またも出迎えるシルファ。玄関には小牧姉妹と草壁優季の姿が。
「こ、こんばんは。」 「おす。」 「こんばんは、皆さん。」
イブの夜は、こうして楽しく流れていく ――
(おしまい)
投下終了です〜。ご支援ありがとうございました。
大失敗やらかいちゃいました。10/12と11/12の中間で、一文、重複
してます。“膝に手を乗せて中腰になっていた―― ”の、一文です。
もし保管庫掲載いただけるようなら、ここは片方削っていただけますと、大変
ありがたく。
最後も文章長くなりすぎてレス追加です。お恥ずかしい。計算間違えて、ミス
連発しちゃったんです・・・・。他にもいろいろ問題箇所あり。
それでは、ありがとうございました。
乙乙乙
>>371 おもしろかった。クリスマスにはちょっと早いけどこの季節にぴったりだね。読ませてくれてありがとう。
IDみればわかるけど私353ね。
>>354の気持ちで書き始めたの忘れてた。
自分で決めるよ。学校じゃないしね。っていっても、叩かれるから学校以上に、書く人にとっては親切かもね。w
スレが荒れる前に書いてくれてありがとう。
>>354
>>371って保管庫には載せない主義じゃなかったのか
あれは別の人だったっけ
いよいよ過疎ってきたな
残ってる投稿者もメイドロボの人と日本語が不自由な人だけか?
>>375 え、この状態で過疎ってるては言わねーべ。
確かに偏ってはいるけどさ。どんだけ贅沢なんだと。
自分が好きなキャラのss上げられないから、叩きたいだけじゃねーの?
馬鹿はほっとけよ
そもそも片方を日本語が不自由ってあげつらうほど文章力に差はないよ
まぁ素人なんだから当たり前だけどさ
だいたい、台詞の前に喋ってるキャラの名前を入れるのも
台詞の後ろに「〜〜した貴明。」「〜〜したミルファ。」ってト書きみたいな説明が連続するのも
ぶっちゃけ変わらん
くだらんことに拘る前に、作品の中身を見て楽しもうぜ
>くだらんことに拘る前に、作品の中身を見て楽しもうぜ
大抵、そういう配慮が出来ない香具師が書いた物は
中身もお粗末で、読むに耐えない物が多いんだがな。
言わんとしてることはわかるし、俺もそれは同意見だが
じゃあなんで379はまだスレにいて、それを書き込んだんだ? ってことに。
ま、おとなしく良作が出るの待ってようぜ。
投下します。
「―― なぁイルファ。あとで話があるんや。片付けてからでええよ。」
夕食を終えた後の食器をとりまとめ、流し台に向かっているイルファの背に、姫百合瑠璃が呼びかけた。
「は、はい。」 居間の方に去ってゆく瑠璃の背を、思案顔で眺めるイルファ。
すぐに手元に向き直ると、食器を洗いに落として、ジャーと水道を流しスポンジで擦り始めた。
居間に入った瑠璃は、中央のテーブルに向かい、背を見せているミルファの桃色の頭が、妙な具合に小刻みに上下動を繰り返し
ているのに気がついた。
「ミルファ、何やっとんや?」
怪訝そうに顔の方を覗き込む。すると ――
“はむはむ・・・・くちゅくちゅ・・・・れろれろ・・・・” と、太いウィンナーを口に出し入れしたり、舌でなめずり回している―― !
瑠璃は思わずブーッ!!と噴いてしまった。目が点になる。
「ミ、ミルファッ!なにアホなことやっとるんやっ!?」
「え?ダーリンのウインナーの料理法の研究中。どうすれば気持ちよくなって貰えるかなー、って。」
瑠璃は頬を赤らめつつ呆れた表情で体を仰け反らせ、腕を組む。そして流し台のイルファの背に呼びかけた。
「イルファーッ!なんか言ったれやー!ホンマにこの子はもう・・・・」
はーい、とタオルで濡れた手を拭いながらイルファが居間に小走りでやって来る。そしてまた熱心にウインナーを舌で弄んでいる
ミルファの顔を覗き込んで、言った。
「ミルファちゃん、違うでしょう?ここはこうやるのよ。」
そうして、フェ○チオの技術的講釈を始めるイルファ。瑠璃は仰天し、再びブーッ!と噴いてしまった。
「アッ、アホッ!二人して何やっとんやーっ!ミルファッ!お前また小テスト0点やったんやろっ?くだらん事やっとらんでちゃんと
宿題やっとらんとあかんやろがーっ!」
「え〜っ?これもご主人様を癒すための立派なメイドのお勉強なのにぃ〜っ!・・・・ちぇーっ。・・・・はーい・・・・」
瑠璃の真っ赤な怒気を目にして、ミルファは途中で不平を引っ込める。おもむろに立ち上がり、唇を尖らせて不満を顔一杯に見せ
つつ、頭をぽりぽりと掻きながら自部屋にとぼとぼと向かって行った。
瑠璃が赤面しているのは怒気のためと言うよりも気恥ずかしさが大半ではあったが。
「あの・・・・瑠璃様、お話って何でしょう?」
ミルファの姿が部屋に消えていくのを見つめていた瑠璃だったが、イルファの声に「あ、ああ・・・・」と、向き直った。
両手を脚の前で合わせて、立ち尽くしているイルファ。まぁ座るんや、と瑠璃に指し示されるままに、それまでミルファの座っていた
場所にペタリと腰を下ろし、正座になる。瑠璃はイルファの正面側について、テーブルに肘をついて手を組み、その上に顎を載せた。
「話ちゅうんはな・・・・今のミルファの様子と、関係する事や。」
はい?とキョトンとなり、目を丸くするイルファ。
居間の奥のソファーには珊瑚のお団子頭が見えていて、大画面のワイドTVに映し出されている教養番組に見入っていた。
「あんなぁ・・・・ただでさえ無邪気で好奇心の塊みたいなあの子に、お前がえっちな講釈ばっかり垂れとるもんやから、もうすっかり
耳年増のすけべぇ〜、な子になってしもうたやないか。」
そ、そんな・・・・と身悶えして頬を赤らめ、俯くイルファ。
「学校でもなぁ、あんな調子で貴明に迫っとるっちゅうから、うちら他人のふりはしとるけど、もう立つ瀬がないわ。恥ずかしゅうて。」
眉をひそめて瞳を閉じ、一回、二回と首を振る瑠璃。
「そぅお〜〜?一途にらぶらぶ〜って、可愛いもんやないのぉ〜?」 ふいにソファーの背もたれの上からその顔を斜めに向け、語り
掛けてきた珊瑚。
「んもぅお〜〜っ、さんちゃんは黙っといてっ!イルファやミルファに甘過ぎやっ!」 ぴしゃりとそれをはねつける瑠璃。
そして、閉じていた目を見開き、ジロリとイルファを睨んだ。
「あの子のすけべぇ〜、な姿は、お前のすけべぇ〜、な心の鏡やで。一体全体、何で妙なことばっかり吹き込むんや?先に教える
事はいっぱいあるっちゅうのに。おぽんち呼ばわりされて、可哀想やと思わんか?」
そっ、そんな・・・・と、焦慮の色を見せて頬を紅潮させ、手を口元まで持ってきて俯くイルファ。消え入りそうな声で話し始める。
「だ、だって、あの子が一途に貴明さんの事を求めているのを見たら、どうしても力になってあげたかったんです・・・・普通、あんな風
に直球で迫られたら、まず陥ちますよね?・・・・貴明さんが奥手過ぎるものだから、つい私もムキになっちゃって、あの子にいろいろと
手解きを・・・・」
途中までイルファの言い訳を聞いていた瑠璃だったが、突然、バンッ!!とテーブルに両手を叩き付けた。「ヒッ!?」とすくみ上がる
イルファ。
「アホーッ!恋のカタチは人それぞれやーっ!!人間を甘く見るんやないっ!色仕掛けが通じん相手やっておるわい。貴明がヘタレ
なんは、お前もよう知っとるやろ?・・・・それともイルファ、お前は貴明が乳擦り合わせてスカート捲り上げたれば、簡単にズボン下ろ
すような下品な輩やと思ったんか?・・・・雄二とは違うんやぞ!?」
そ、それは・・・・と、口をパクパクさせるイルファ。眉を落として、目尻が朱に染まった。
それに・・・・と途中まで言いかけて口をつぐみ、目を閉じて眉をしかめて俯いた瑠璃。しばらく間を置いた後、顔を上げキッとイルファ
を恐い目で見つめた。
「もう一つ・・・・シルファのことや。」
ハッとして、イルファの形相が一段とこわばった。
「箱詰めにして貴明んとこに送りつけるような乱暴な真似したんは、いまだによう理解出来んわ。しかも、よりによって素っ裸やった
って・・・・シルファに聞いたわ。」
「そっ、それはっ!?剥いたのは私じゃなくてミルファちゃん・・・・」と、眉をキッと吊り上げ抗弁の気色を見せたが、途中尻すぼみと
なってしまう。イルファも何を責められているのかは理解した。素っ裸だったとか枝葉の事象より、シルファの自由を奪って対人恐怖症
の彼女を面識のない人間の下へ送りつけたというその事実自体を。
支援
「い・・・・意固地になっちゃってるシルファちゃんには、ある程度のショック療法が必要だと思ったんです。それに優しい貴明さんなら
きっとあの子も包み込んでくれて、安心して心を許せるようになる筈だと・・・・」
ジロリと、猜疑の目でイルファを見つめた瑠璃。その視線を受け再びビクリとし、イルファは眉をひそめて口元をこわばらせる。
「ふーん・・・・ま、意図した事はわからんでもないけどな。研究所でも困っとったようやし、“ヘタレ力”がなんたらとか、おかしな宗教
みたいなんにすがりとうなる気持ちも。」
うーんと眉間に縦皺を寄せて腕を組み、考え込む瑠璃。やおら目を開くと、ぼそりと呟いた。
「素っ裸のシルファ見て、貴明が劣情もよおすん期待したりせへえんかったか?」
こわばった表情のままイルファはぷるぷると首を振る。・・・・想定外のハプニングではあったが、多少は図星を含んでいた。
「おまけに、シルファにまですけべぇな事吹き込んどるそうやないか?うち、こないだシルファと電話で話して耳疑うたわ。何と言うた
と思う?『“くんずほぐれつ”って、何れすか?』って・・・・何ちゅうえろいことを・・・・」
話しながら瑠璃の顔も赤く染まっている。そっ、それは・・・・と、引きつりながらイルファは声を絞り出した。「はい、言いました・・・・。」
はぁ〜・・・・と、大きく溜息をついて、瑠璃は頭を抱えた。俯くイルファ。
「まだまだ言いたい事はあるでぇ、イルファ。」
テーブルに手を載せて、ずいっと身を乗り出し、たたみ掛けて来る瑠璃。
「な・・・・何でしょう瑠璃様?」
「うちの寝姿とかお風呂入ってる時とか着替えとる時とか、隠し撮りしとるやろ・・・・ちゃ〜んと、わかっとるんやで?」
「えっ・・・・」
「ほれ、撮ったブツ、寄こすんや・・・・何のつもりや、ったく・・・・」 手を差し出す瑠璃。
イルファは狼狽の色を見せた。両手を胸の前で合わせ、小刻みに震えだす。口元を歪ませ、眉を垂れていやいやと首を振った。
“ごめんなさい瑠璃様。それだけは、それだけは勘弁して下さい。宝物なんです、それは・・・・”
とどめの一言。「最近、調子こいとるんやないか?ちっとは自重せえよ?」
支援
イルファのDIAがズキリと疼いた。とうとう頬に両手を当てて、よよよと泣き崩れてしまう。その機能がないので涙こそ流さないが。
「私、そんなつもりじゃ・・・・ごめんなさい、申し訳ありません瑠璃様。うっ、ううう・・・・」
―― あっ・・・・しもた、言い過ぎたわ・・・・と、瑠璃の表情がさっと困惑と後悔の色に染まる。
「瑠璃ちゃん、もうその片にしといてぇな。いっちゃんいじめたらあかんよ〜。」 ソファに座したまま振り向き、珍しくも非難を含んだ
調子で珊瑚が諭す。
瑠璃は立ち上がってイルファの前まで歩み寄り、腰を落とすと肩にやさしく手を掛け、言った。
「ごめんなイルファ。うち、言い過ぎた。堪忍してや。」
「瑠璃様・・・・」 くしゃっと歪ませた顔を上げて、瑠璃を見つめるイルファ。
「けどな、うちの言いたい事、わかってくれるやろ?妹二人に気ぃ遣うとんのはわかる。けどな、なんか方向性ズレとる気ぃするし、
無理し過ぎとる気がするわ。ほどほどがええんよ、ほどほどにな〜。」
「はい・・・・」 ぐすっと、嗚咽を押さえ込みながらうなずいたイルファ。
「瑠璃ちゃん・・・・」
瑠璃が気付くと、いつの間に傍らには珊瑚がいて、つんつんと瑠璃のワンピースの肩を摘んで引っ張っていた。
「イルファ、うちらお風呂行ってるわ。自分らで流すから気ぃ遣うてくれへんでもええよ。」
珊瑚と手をつないで、立ち去る瑠璃。
「いっちゃん、気にせんでええんよ〜。」 珊瑚が振り向いてイルファに声を掛ける。二人はバスルームへと消えていった。
テーブルの前でうずくまっているイルファ。何かが歩んで来る気配に気付き、ふと顔を上げる・・・・
―― 傍らに立っていたのは、ミルファ。
「お姉ちゃん、瑠璃ちゃんの癇癪なんて毎度の事じゃない。気にしなくていいと思うよ。」
「え、ええ・・・・。」
「あたしもさんちゃん達の後にお風呂入って寝ちゃうから。お姉ちゃんも早く寝ちゃった方がいいよ。」
こくりと頷いたイルファ。「ありがとうミルファちゃん。でも、すぐに寝たりしないでお勉強しないとダメですよ?」
―― んべっ!と舌を出して、ミルファはまた部屋に引っ込んでしまった。
一人ぽつねんと、居間に残されたイルファ。ぺたりと太腿の内側を床につけて座り込んでいる。
やがて、手を口元まで持ってくると、カチカチと爪を噛み始めた。
“ここまで来て、もう今更引っ込みなんかつく筈がない・・・・。”
イルファの中で、むくむくと妄想が膨らみ始めた。
“私は瑠璃様の専属メイド。もちろん瑠璃様は大好き。・・・・でも、貴明さんも好き。しかし、今のままでは、2号にもなれはしない。
・・・・もし、ミルファちゃんかシルファちゃんが、貴明さんの心を射止めて河野家に恒久的に常駐するようになれば、瑠璃様珊瑚様
が貴明さんのところを訪問する機会も増える。そうして、いずれかが貴明さんと結ばれれば、私も晴れて河野家のメイドロボに・・・・”
―― にやりと、独り笑みを浮かべるイルファ。
“貴明さんがあんなに奥手だったのは計算外。ミルファちゃんのラブラブアタックも、ことごとく空振りに終わってしまった。
シルファちゃんは比較的うまく貴明さんと良好な関係を築き始めているようには見える・・・・でも、あの子も貴明さんに負けず劣らず
奥手。おまけにあの子の専属契約は仮契約で、期限付き。ミルファちゃんのは正式でも、貴明さんが受け入れてくれなければ意味を
為さないし・・・・”
再び、爪を噛み始める。
“瑠璃様の手前、もうあまり露骨に色仕掛けの手解きも出来ない。貴明さんにはあまり効き目がない事もはっきりしたし、ここは一つ、
切り口を変えていかないと・・・・。
貴明さんに群がる女の人は沢山いる。特に強敵は、環さんとこのみさん。私達には、あまり時間がない。そう、急がないと・・・・。”
「ふ・・・・ふふっ、ふふふふ・・・・」 独り笑みを漏らすイルファ。・・・・やがて、すっくと立ち上がった。
「諦めません勝つまではっ!・・・・必ず、必ずこの手に最後の勝利をっ!」
―― メイドロボ、イルファの逆襲が始まろうとしていた・・・・・
(つづく・・・・かも)
投下終了です。ご支援ありがとうございました。
最後ミスりました。すいません。
次回『勝利のメイドロボ』につづく・・・かも?
それでは。
392 :
391:2008/11/25(火) 05:16:42 ID:G6jmpiqo0
(5/6)、『その片』って、何でしょう?
『その辺』の間違いですね。恥ずかしい。
乙
続き楽しみ
乙
読んでないけど続き楽しみ
>>344でせっかくリクエストしたんだから
こういうのだれか書いてくださいよ
>>391 瑠璃が、受け入れた後のイルファを「お前」呼ばわりしたのが
個人的には、ちょい引っかかったかなぁ。
(「アンタ」辺りが適当かと思うけど)
読んだ
続き楽しみは撤回する
ぶっちゃけこれSSっつーより作者が瑠璃の物真似しながらADのメイドロボ関係の演出にダメ出ししてるだけじゃね?
ダメだししてるとかはともかく、面白くはないなぁ。
言い方悪くて申し訳ないけど、特に何も考えずにただ書いただけのSSに見える。
中身のスカスカのSSを乱発してくれるよりも、その分時間をかけてもっと充実したSSを一つ投下してくれるほうが個人的には嬉しい。
批判がダメとは言わないが、元書き手としてはするなら具体的に批判してほしいと思う
中身スカスカだと思ったならその理由をあげてほしいし、ただなんとなく面白くないと
思っただけならわざわざ書き込む必要もないというか、そう言われてもどうすればいい
のかわからなくて困る
>>391 とりあえず乙。特に瑠璃とか、このキャラこんなこと言うっけ?みたいな違和感は感じ
るが、続きを期待してる
前スレの、コロッケ屋のメイドロボのSS辺りから落としてる人だろ?
一貫して感じるのは、第三者視点の淡々とした描写にこだわり過ぎて、登場人物達
の喜怒哀楽がいまいち伝わってこないんだよな。
今回のはせっかく登場人物数絞ってるんだから、もう少し各人の内面まで掘り下げ
て欲しい。
今からSSを投稿させていただきます。
内容は東鳩2のキャラで『人魚姫』の物語を描いたものです。
文章はギャグっぽいテイストですけど、ストーリーはほぼ童話の人魚姫のままで書いたつもりです。
本編は20スレになる予定です。
恐らく規制による投稿の停止がありますので、ご容赦ください。
これはずっとずっと遠い世界。そしてずっとずっと遠いむかしの物語です。
世界で一番美しい海の底に、人魚たちの住むちいさな王国がありました。
澄んだコバルトブルーの海の底に、珊瑚礁の森が広がる平和で優しい国。
そこに住む人魚たちは、まるで磨かれた真珠のように美しく。そして笑顔は愛らしく。
それはもう男ならめっちゃ萌えざるを得ない可愛い人魚たちばかりでした。
その中でもひときわ可愛らしくて、けれども可愛い容姿に似合わずとても口がわるくて小柄な人魚が一人おりました。
彼女の名前は『いくのん』といいます。
みんなが大人しく心優しい人魚の王国では、彼女のように口が悪い女の子は珍しかったのです。
なんとなく偉そうに見えるいくのんのことを、やがて仲間たちは「人魚姫」と呼ぶようになりました。
「なんかわたし、すっごくくだらない理由でお姫様って呼ばれてるね……」
まあ、ここはそれだけ平和な王国だったのです。
人魚姫はすこしばかり病弱でしたが、優しい姉と暖かい家族に包まれて、それなりに楽しい日々を過ごしておりました。
しかしそんなある日のことです。人魚たちの住む海が激しい嵐に襲われました。
その嵐の中でいくのんの姉が仲間の群れからはぐれてしまったのです。
「しょうがない姉だなあ。ちょっと探しに行こう」
ひとりで大丈夫なんですか? 病弱なくせに。
「ちょっとそこまで探してくるだけだから。それくらい平気」
そう言って人魚姫は嵐の中を泳いで行ってしまいました。
しかしはぐれてしまった姉を探しているうちに、逆に人魚姫が遭難してしまいます。
言わんこっちゃない。しかも海の中で人魚がおぼれるなんて。
「う、うっさい。笑ったら殺す」
いえいえ。笑ったりなんてしてません。
大嵐の日の海の中は、地上の人間には想像できないほど激しく気まぐれに吹き荒れるものなのです。
たとえ泳ぎが得意な人魚でも、その流れに逆らうことは出来ません。
波に揉まれ、海の水を飲んでしまったいくのんは不覚にも気を失ってしまいました。
目が覚めた時、いくのんは見知らぬ浜辺のど真ん中に打ち上げられていたのです。
「ど、ど真ん中?」
はい、そうです。よりにもよって真ん中です。海まではここから200メートルくらいあります。
「やばい……」
そうです。これはやばいのです。
なにしろいくのんは人魚です。身体の半分はサカナなんです。
陸に打ち上げられたサカナの命運は、みなさんご存知の通りです。
いくのんもその手の哀れなサカナの例に漏れず、尾びれ背びれを必死にぴちぴちはためかせて海へと逃れようとしますがまるで届きません。
正にまな板の上の鯉。しかしさすがは人魚姫。並のサカナとは根性が違います。
「し、死んでたまるか……」
ずりずり。
おお。なんと人魚姫はあきらめ悪くほふく全身で海へとにじり寄っていきます。
歯を食いしばり地べたを這いずりまわる人魚姫は、童話のヒロインとは思えないほどの必死の形相です。
でもそんなこと言っていられませんよね。なにしろ生きるか死ぬかの瀬戸際ですから。
そうこうしている間にも、照りつける太陽の光がいくのんの身体に容赦なく降り注ぎます。
その熱と光によって、サカナの身体からはどんどん水分が奪われてしまうのです。
「ひ、干からびる……もうだめ……」
くっ! ガッツが足りない!
いくのんの体力と細腕では、これ以上進むのは無理なようです。
このままで数時間もすれば、人魚の干物が一丁あがりですね。
あやうし、いくのん!!
しかしそこは昔話のお約束。
ヒロインのピンチに、偶然にも一人の若者が通りがかります。都合のいい偶然です。
この彼こそが、いわゆる『運命の王子様』です。
間違いありません。だって頭に王冠だって乗ってますし。
その彼ですが、優しそうだけどなんだか優柔不断で冴えない感じの若者でした。
きっと女の子が苦手で純情な性格なのでしょう。
そんな性格のわりには女の子にはやたらもてて、しかもエッチの時には性格が変わったりするかもしれません。
どっかで見たような主人公です。
「わ、わ?! こ、こんなところに女の子が?! しかもこの姿……」
彼はピチピチもがいているいくのんのことをとても驚いた目でみつめています。
きっと、これまでに人魚を見たことが無いのでしょう。まあ普通の人はそうでしょうが。
「なんで裸で?!」
あれ。驚いてる理由が全然違いました。
彼はいくのんが裸だから驚いていたようです。
確かにそうでしたねえ。
童話の絵本やアニメなんかでは子供の教育に配慮して人魚も貝殻のブラとかつけてますが、人魚の国にはそんなもの売ってません。
本当は人魚たちは真っ裸なのです。
上も下もなんにもつけてないのです。ぶっちゃけエロいのです。まあ下はサカナですけど。
でもこの姿は、若い男の子にはちょっと刺激が強すぎますね。
その若い男であるところの彼が、いくのんに近づいてきますよ。
これは人魚姫、別の意味でピンチですか?
「じょ、冗談じゃないわよ!」
しかし幸いなことに、この男の子は紳士だったようです。
どうやら、裸を見ないように目をつむったまま人魚姫を抱きかかえようとしているようです。
でもさすがにそれは難しいようです。
目を閉じたまま、手探りでいくのんを抱きかかえようと彷徨う王子様の手がいくのんのハダカの身体を……
「きゃっ、ど、どこ触ってんのよ!!」
さまよう王子様の手が、いくのんのお胸をぷにぷに、お尻をさわさわ。
仕方ないですよね。だって見えないものですから。
ああうらやましい。
「へ、へんなとこ触んないで!!」
「ち、ちが……ごめん! えっと……」
「ほっといてよ! っていうかあたしに触るなーー!!!」
「で、でもこのままじゃ。なんだか君、死にそうだし……」
「うるさいうるさい! あんたには関係ないでしょーーー!!」
「で、でもほっとけないよ。やっぱり助けるから」
「きゃぁ!! はなせはなせエロスケベ痴漢ーー!!!」
少年は目をつぶったままでいくのんを抱きかかえて、その身体を海のほうへと運びます。
「ご、ごめん。絶対見ないから、ほんとに……」
などと一生懸命いくのんをなだめながら。
「だめだめ離せ離せこのヘンタイーー!!!」
最低! スケベ! エロ、チカン!
ロリコン! ヘンタイ! ペドフィリア!!
その他、思いつく限りのありとあらゆる罵声を浴びせかけ、頬にビンタし、腕に噛み付き。
人魚姫はそれはもう無我夢中で男の子に抵抗しました。
しかし少年は勇敢にもそれらの仕打ちになんとか耐え切って、いくのんの身体を無事に海へと届けることに成功しました。
王子様、意外と根性がありますね。
「ご、ごめん。ほんとにごめんね……」
ぺこぺこ謝る少年にあかんべえすると、いくのんは海の底へとその身を躍らせました。
それにして命の恩人にあそこまで言うなんてひどいものです。
「だ、だって恥ずかしかったもん……
男の子に会うの、初めてだったし。しかも裸で……」
そうでした。
人魚は全て女として生まれてくるのです。
だから海の底から出たことの無い箱入り娘のいくのんは、これまで男の子に出会ったことはなかったのです。
……あれ? でも男の人がいないのなら、人魚ってどうやって生まれてくるんでしょう?
「人魚は、澄んだ海の綺麗な泡から生まれてくるのよ」
なるほど、それは知りませんでした。なんだかロマンチックな設定ですねえ。
「そうかなあ」
ともあれ男の子を今まで一度も見たことのなかったいくのんは、初めて出会った男の子に一目ぼれしてしまったのです。
「か、か、勝手にそんなこと決めないでよ! 恋なんかしてない!!」
……まあとにかく。
その男の子は最後の最後まで堅く目を閉じて、人魚姫の裸を見ないようにしていました。
そしてどんなにひどいことを言われて暴力を受けても、めげずに人魚姫を海へと運んでくれました。
人魚姫はそんな男の子のことが気になっていたのです。
無事人魚の国に戻ったいくのんは、ぼんやりと王子様のことを考えていました。
「やっぱり、お礼くらいは言っておくべきだったかなあ……」
人魚姫は、なんとかもう一度王子様に会いに行きたいと考えました。
しかし陸のことなどまったく知らない人魚姫は、王子様がどこの誰なのかも分かりません。
でも意外な人物が王子様の素性を教えてくれました。
嵐の中で迷子になっていたいくのんの姉です。
「その男の人は、きっと西の都のタカーキ王子だよ」
「タカーキ?」
「うん、とっても優しい王子様なんだよ。困っている女の子を見ると、放っておけないの」
「あー。そうやって誰にでも優しい男なわけね」
「そ、そうなのかなあ……」
あの王子様は困っていたのが自分じゃなくても同じように助けてあげたのでしょうか。
そう思うと、人魚姫は何故かもやもやとした気持ちになってしまうのです。
「で、お姉ちゃんはどうしてそんなこと知ってるの?」
「え? や、ちょっと、話に聞いただけでして、その……」
「……ふーん」
姉にもなにやら隠し事があるようです。
まあ、それはお互い様だし。いくのんもむやみに突っ込まないことにしました。
さて。
王子様の居場所は分かりましたが、どうやって会いに行けばいいのでしょうか。
なにしろ王子様は陸の人です。
人魚姫のお魚の身体ではお城のそばまで辿り着けません。
「まいったなあ。こうなったら王子様を海の中に引きずり込んでやろうか」
無茶を言わないで下さい。
そんなことしたら、王子様が溺死してしまいます。
「でも陸にあがったらこっちが乾燥死しちゃうし」
そうですね。それに下半身がサカナのままじゃ、王子様と恋もできません。
「だから違うって。はあ……まったく、めんどくさい」
困りましたね。どうしたものでしょうか。
「あー。そういえば、困ったときには東の海に住んでいる魔女に相談するといいって聞いたことがある」
人魚たちの間では困ったことがある東の海に住む魔女に相談する、というのが定番になっているのです。
もっとも人魚の国はとっても平和なので、相談ごとなんて滅多に無いのですが。
まあ、とにかく行ってみましょうか。
「はいはい」
そんなわけで、さっそく人魚姫は東の海にやって来ました。
果たしてそこには噂の魔女が確かに居ました。
魔女と呼ばれるだけあって、なんとなく普通の人とは違う雰囲気です。
「よくきたな。うー」
「うー?」
”うー”ってなんだろう? いくのんの知らない言葉です。
さすがに魔女ですね。良く分からない言葉を使います。
まるで宇宙人みたいです。
まあとにかく事情を話してみましょう。
「えっと、これこれこういう理由で、わたしはちょっと陸の人に会いに行きたいんだけど」
「ふむ、そうか」
「なんとかならない?」
「なんとかなるぞ。万能なる”るー”のちからを持ってすれば出来ないことは無い」
さすがは魔女です。あっさりOKが出ました。
しかし「るー」とか「うー」とかはよく分かりませんが。
なにかの掛け声でしょうか??
「しかし、出来るかどうかはお前の気持ち次第だぞ」
「あたしの気持ち?」
「そうだ。お前の想いの力が願いを叶える」
魔女はおごそかな声でそう告げます。
そして人魚姫に小さな薬ビンを差し出しました。
ビンの中の薬は、差し込む光をうけてきらきらと七色に輝いています。
見てると引き込まれるような、不思議な輝きの液体です。
「この薬を飲めば、うーは人間になることが出来るのだ」
「ほんと?」
「しかし、この薬はただの薬ではない」
「ただじゃないの? お金いくら?」
「……そういう意味ではない。金など不要だ。しかし、この薬には副作用がある」
ふくさよう?
人魚姫には言葉の意味がよく分かりませんでしたが、やっぱりタダではないみたいです。
お金なんて持ってたかなあ、といくのんは考えこみます。
なにしろ人魚の国ではお金なんて必要ありませんでしたから。
「いいか。この薬は、乙女の恋する力を根源としてその生命の形を組み替える効果を持つのだ」
「???」
「”るー”の力は想いの力だ。お前の想う力が失われてしまった時は、組み替えた生命の形も一緒に失われてしまうのだ」
「……ごめん、わかんない」
魔女はなんだかむずかしいことを言いました。
しかし人魚姫にはさっぱり意味が分かりません。
人魚はあんまり難しい言葉は知らないのです。海の底には本も新聞もインターネットもありませんし。
もっと分かりやすく説明してあげてください。
「分かりやすく言うと”恋の力で変身"してしまうわけだ。新しい命に」
「あっそ」
「しかしその新しい命はお前の恋そのものだ。
だからお前の恋が終わったとき、その命は尽きてしまう。そして元には戻れない」
「はあ」
「つまり、この薬で変身しても”うー”の恋が叶わなかった場合、”うー”は死んでしまうのだ」
「……」
「異種族で恋がしたいと望むなら、それは命がけの恋だ。覚悟が無いならやめておくがいいぞ。うー」
魔女の言葉に、人魚姫はあきれたような溜息をつきます。
「なんでみんなして、恋とかそういうことにしたがるんだろうなあ……」
いくのんは魔女の説明を聞いて、しばし考え込みました。
そんな、死ぬとかいきなり言われても。
平和に生きてきた箱入り娘の人魚姫にはまったく実感がありません。
それに今自分が感じているこの気持ちが、本当に恋のなのかどうかも分かりません。これまで恋なんてしたことなかったし。
しかも王子様は、たとえ会いに行っても自分のことなんか忘れているのかもしれません。
「はあ……」
でも。
なぜか気になるのです。王子様のことが。
彼のことを考えると、なんだか胸の奥がじんじんと痛むのでした。
どうしても、もう一度彼に会いたい。やはりそう思います。
「話は分かったから。その薬、ちょうだい」
「いいのか? ”うー”。死ぬかもしれないぞ」
「いいの。どうせあたしサカナだから、寿命短いし」
そう言うと、人魚姫はまるで迷いを振り切るように薬のビンを一気に飲み干しました。
するとどうでしょうか。
いくのんの全裸のシルエットが光の中に瞬いたかと思うと、くるくると淡い魔法の輝きに包まれて人魚姫の身体が人魚から人間へと変わっていきます。
まるで、どっかの魔法少女の変身シーンのようです。
それにしても、この手の変身シーンってどうしてこんなにエロいんでしょうか?
「エロいのは、あんたの頭だ」
その通りですね。すいません。
支援
その淡い光の輝きが消え去ると、そこには上から下まですっかり人間の姿になった人魚姫が……いえ、郁乃ちゃんが立っていました。
足もサカナじゃありませんし、ちょっと残念ですが服もちゃんと着てますよ。
かわいらしい花柄のパジャマです。
「……なんでパジャマ?」
お約束です。
さあ、とにかく王子様に会いに陸に向かいましょうか。
と、立ち上がろうとした郁乃ちゃんでしたが、何故かふらふらと倒れこんでしまいました。
どうしました? 大丈夫ですか?
「う、うん。もう一度……あ、あれ? 足がちゃんと立てない……」
「むう。薬に体質が合わなかったか。まあこういうこともある」
「……”るー”は万能の神様じゃなかったの?」
「む」
すると魔女は両手を空に掲げて、
「るー!」
と一言。
魔法の呪文を唱えたようです。多分。
すると周囲にピンクの煙が立ち込め、その煙のむこうからぴかぴかの車椅子が現れました。
「これに乗ってお城まで行けばいい」
「なんだか変なところで気前がいいね」
「偉大なる”るー”の力はアフターサービスも完璧なのだ」
「はいはい」
そして郁乃ちゃんは魔女に抱きかかえられて車椅子に乗せてもらいました。
やっぱり郁乃ちゃんには車椅子とパジャマが似合いますね。
「納得いかない……」
でもこれで準備は万全ですね。
王子さまに会いに行きましょう。
早速郁乃ちゃんは陸に上がって西の都に向かいます。
魔女にもらった電気車椅子は、来栖川製のハイパワー仕様です。坂道もすいすい登っていきます。
はい。あっというまに西の都に着きました。
「これ、いったいいつの時代なのよ?」
気にしないでください。考えたら負けです。
さて、人魚姫の目の前には今まで見たことも無いほど大きな町が広がっています。これが西の都です。
人魚姫が初めて見る西の都は大変賑わっていました。
人は溢れ帰り、レンガ造りの建物が立ち並び、店先には様々な商品が並んでいました。
海の底とはまるで違うきらびやかな世界です。
「へえ……これが人間たちの町なんだ……」
郁乃ちゃんは感心したように町の様子を眺めています。
初めて目にする都会の光景に心奪われてしまったようです。
「王子様、この町のどこにいるんだろう」
おのぼりさんの郁乃ちゃんでも、都の場所くらいは知っていましたが、さすがに何処に行けば王子様に会えるかまでは分かりません。
仕方ないので、とりあえずその辺の人に尋ねてみることにしました。
「あの、タカーキ王子ってどこに行けば会えますか?」
「ああ。王子さまだったら、ちょうどあっちの広場にお姿をみせて下さいましたよ
それにしても、ほんとうにめでたいことですね」
「めでたい?」
なにがめでたいんだろう? と郁乃ちゃんは不思議に想いました。
が、まあどうでもいいことです。
とにかくあっちの通りに行けば、王子様に会えるのです。
そう思うとなんだか緊張してきました。
人間の姿になった自分の姿を見て、王子様はどう思ってくれるのでしょうか。
もしかしたら『可愛い』って褒めてもらえるかもしれません。
なんて考えて、クールな郁乃ちゃんもちょっと胸がどきどきと高鳴ります。
いそいそと王子様がみえる広場へと向かいます。
「え……」
しかし運命は残酷でした。
王子様は確かにそこにいました。
でも、一人ではなかったのです。
「王子様ーー! ご結婚おめでとうございます!」
「お幸せに!」
王子様の傍らには清楚なウエディングドレスに身を包んだ女性が立っていました。
なんと、今日は王子様の結婚式だったのです。
「っていうか、なぜか花嫁があたしの姉だし……」
そうなのです。
王子様のとなりに立ち、花嫁衣装に身を包んだその女性は、あろうことか確かに郁乃ちゃんのお姉さんでした。
気丈な郁乃ちゃんもいささか呆然として二人の姿を見つめていました。
こんな展開、ありなの?! とか。
まさか奥手の姉に自分が先を越されるとは! とか。
いつのまに結婚までいったんだよ! とか。
よりにもよってあたしの姉に手を出すことはないだろうが! とか。
ぶっちゃけ様々な思いがいくのんの心を駆け巡っていました。
でも、何よりも人魚姫の心の中に突き刺さったのは、二人の本当に幸せそうな心からの笑顔でした。
その笑顔の眩しさに、郁乃ちゃんは既に自分の居場所を失ってしまったことを思い知らされたのです。
やがて王子様が合図して、周囲の人々になにか呼びかけました。
するとみんな大喜びして、手に手に紙がいっぱい詰まった箱や袋を持って集まります。
みんなが持ってあつまった箱の中には、今日のためにあらかじめ作っておいた桜色の紙吹雪がいっぱい詰まっています。
この国では祝いごとのある日には桜色の紙吹雪を撒き散らすという風習があるのです。
みんな楽しそうに桜の紙吹雪を撒き散らして、王子様とお姫様の結婚式を祝います。
通りを歩いていた人々、立ち並ぶ建物の二階の窓からも桜色の紙吹雪が空へ舞いあがって行きます。
みんな紙吹雪は風に乗って青い空へと舞い上がっていきます。
おめでとう、という言葉と共に。
それはやがて青い空を覆い尽くすほど一杯に広がっていく桜色のお祝いの証でした。
きっと、この国の人々みんなが二人の結婚を祝福していたのです。
その中で、郁乃ちゃんだけが一人、違う気持ちでそこに立っていました。
「戻りたいな……」
桜吹雪の舞う空の下、彼女はぽつりとそう呟きました。
でも。
一度恋を知ってしまった女の子は、もう少女へと戻ることは出来ないのです。
郁乃ちゃんは車椅子に乗って、西の都を離れました。
もう、あれ以上あの場所には居たくなかったのです。
都を離れ、海岸にやってくると、郁乃ちゃんは着ているパジャマを脱ぎ捨て、裸になって海の中に飛び込みました。
彼女は人魚姫の姿に戻ると、深い海の底へ潜っていきます。
しおさいをくぐりりぬけて、長く続く鍾乳洞のトンネルを通過すると、美しい珊瑚礁の森が見えてきます。
それは人魚姫の大好きな故郷。人魚の王国です。
世界で一番美しい国。世界で一番優しい国。
この国に住んでいる人魚たちは、みんな口を揃えてこの国のことをそう言います。
『みんな、この国から出たことないくせに
この国よりいい場所なんて、いくらでもありそうなのに』
人魚姫はこれまでずっとそんなことを思って生きてきました。
でも人魚姫は今、人魚の国のこの景色が、世界で一番美しいと心から思えました。
今日生まれて初めて見てきた豪華で賑やかな西の都よりもずっと。
人魚姫は海のずっと深いところまで潜っていきます。
そして海の底の岩肌に背中を預けて、光の差し込んでくる海面を見上げました。
「きれい……」
海の水を通って海底にまで差し込む太陽の光は、珊瑚礁に反射して海面を淡いコバルトブルーに輝かせるのです。
人魚姫は、その美しいブルーの光を、海の底から見上げた景色がずっと昔から好きでした。
波と一緒に揺れる海面の青い光をみつめていると、なんだかゆったりと優しい気持ちになれる気がするのです。
揺れる光の輝きを見つめながら、人魚姫は様々なことを思い出していました。
病弱だった自分のことをみんなが心配して見守ってくれていた子供時代の頃のこと。
こんな国退屈だと不満を漏らしていた自分のために、人魚たちは変わった形の貝殻や、変な声で鳴くサカナを持ってきてくれました。
口の悪い自分にも、みんな優しく接してくれていました。
姉と家族とずっと暮らしてきた王国。
辛いことも悲しいこともなにも無かった、平和で美しい国です。
ちいさな頃から泳いでいたこの海の水の中で、人魚姫はとても心安らかな気持ちでした。
柔らかな潮の流れの中で、人魚姫は自分の身体が水の中にだんだん溶けていくのを感じていました。
深い深い海の底で。
海の泡から生まれた人魚姫は、泡になって静かに消えていきました。
人魚姫は自分が消える瞬間に二つの願いを残しました。
一つはもし生まれ変わった時、もう一度姉の妹に。
そしてもう一つ。その時には自分にも素敵な恋人ができますように。
二つの願いを偉大なる”るー”は聞き届けました。
彼女の願いは叶ったのです。はるか遠い未来の世界で――
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「お、郁乃。今やっと目が覚めたのか」
二階の寝室からのっそりと郁乃が降りてきたのは、もう時計の針が正午を廻ってからだった。
しかし遅い。
郁乃が朝には弱いってことは分かってたつもりだけど、ここまでとは。
「朝飯、作ったんだけど……」
一応郁乃のぶんも作っておいたんだが。
リビングのテーブルにまだ並べてある皿には、トーストとベーコンエッグ。
でも、もうすっかり冷めてしまっている。
「これ、暖めなおすか? それとも……」
他になにか作り直そうかって聞くつもりだった。
しかし郁乃は俺の言葉なんてまるで聞こえてないみたいに、ずんずんこっちに向かってくる。
そして、ぎゅっと俺に正面からしがみつくように抱きついてきた。
「お、おい、郁乃……」
「……」
しかし、郁乃は何も答えない。
細い腕を俺の背中に廻し、俺の胸に顔を埋めるようにしっかりとしがみついて離れない。
シャツの布地を通して、郁乃の熱い吐息を胸に感じる。
……もしかして、泣いてるのか?
「あ、あのさ、郁乃……どうしたの?」
「うるさい」
一言。ただそれだけ言ったきり。
その後、俺がいくら話しかけても郁乃は一言も口をきかず。
ずっと彼女の温もりを俺は腕の中に感じていた。
ニュース、朝のバラエティ、生活情報。そしてまたニュース。
郁乃はチャンネルでいくつかのテレビ番組を切り替えて、結局気に入ったものが無かったらしい。
チャンネルを俺に投げて寄こし、自分は経済新聞を手に取った。
むー、やっぱりいつもどおりの郁乃だな。
まるで自分の家みたいに堂々としてるぞ。
さっきの郁乃はいったいなんだったんだ??
郁乃がこの家に来るのは、もう珍しいことでもなんでもない。
……泊まったのは、昨日が初めてだけどな。
それがさっきのことに何か影響してるのかもしれない、なんて思ったけど……
というかそれぐらいしか思いつかない。
あんな風に郁乃を抱きしめたのは、初めてのことだった。
少し嬉しくもあったけれど、それよりもどうして郁乃がそんなことをしたのかが心配になってしまう。
そんな郁乃だが、車椅子を寄せて居間のソファに腰を降ろそうとしているようだった。
「手伝おうか?」
「平気」
よいしょっと。
掛け声とともに、まるで体操の平均台みたいに両腕だけで器用に自分の身体をソファに運ぶ。
そんな郁乃を見ると、ときどき妙に関心させられてしまう。
あんなに細い腕なのにな……
「なによ?」
「い、いや……」
ぼんやり顔を見ていたら睨み返されてしまった。
うう、弱いな俺……
「あたし、別になんでもないから」
「え?」
「ちょっとヘンな夢見たから、落ち着かなかっただけ」
あ、さっき抱きついたときのことか。
いきなりだからわかんなかったぞ。
「ヘンな夢って? どんな?」
「ヘンな夢だから、言いたくない」
ぶっきらぼうにそれだけ言うと、郁乃は俺を睨んでそっぽを向いた。
これ以上、聞くなってか?
どうしたもんかなあ。
俺はおれなりに知恵をめぐらせて考えてみるが、いくら考えても分からない。
郁乃のご機嫌とりはいつも難しい。
まあ、女の子なんてそんなものかもしれないけど
支援?
それでも今の郁乃の心境について俺が無駄に頭を捻らせていたその時。
「あのね、貴明」
不意に郁乃が俺によびかけた。経済新聞に、目を落としたままで。
「なんだ?」
「一度しか言わないから」
「はあ? だからなんだよ」
「大好きだよ」
は、はあ??!!
「おまえ、今なんて言……わあっ熱っ?!!」
その言葉に驚いて、思わず手にしたコーヒーのカップを傾けてしまった。
今いれたばかりの熱いコーヒーがキッチンテーブルと俺の膝を熱く濡らす。
「あっちゃっっちゃ!」
「ちょっと。なにしてるの?」
「い、いや、だってなあ……」
だって、お前がいきなりあんなこと言うからだろ? まったく。なんだっていうんだよ。 さっきのことと合わせてどうにも気になって仕方ない。
一体なにを考えているんだろ、この娘は。
そんな郁乃は零れた床のコーヒーを慌てて拭いている俺を眺めながら、ぽつりと一言。
「冴えない王子……か」
「な、なに??」
「別に」
やっぱりわけわらん……
そんなこんなで、今日も郁乃の機嫌に振り回されそうな俺であった。
きっとこれからも、ずっとそうであろう。
以上になります。
支援くださった方、お手数おかけしました。
どうもありがとうございます。
『訂正』
通しナンバーの,12が121になってしまいました。
誠に申し訳ありませんでした。
この場を借りてお詫びいたします。
GJ
面白かった、良作でした
おかげで今書いてるやつ出しずらくなった orz
その前に完成して無いしな…
こう言う語り方って結構書くの難しいのにえらく綺麗に書いてるなあ
すげえ
やはりいくのんは良いですね
姫百合家のメイドロボ、イルファは焦っていた。
彼女は、姫百合家と河野家の縁組を推し進める事で、姫百合瑠璃と河野貴明双方の専属メイドとなり、ハーレム生活を実現する
事に執念を燃やしていた。
・・・・しかし、妹二人を尖兵とし河野家に橋頭堡を築かんとする彼女の策は、遅々として進展しない。
女性関係に極度に奥手な貴明の“ヘタレの壁“に阻まれ、イルファの情事指南を受けた次女、河野はるみことミルファのラブアタック
はことごとく空振りに終わり、河野家内部に直接送り込まれた三女シルファも、貴明との関係は極めて牧歌的に終始してしまっている
始末。
更には、妹たちに対する彼女の“恋の指南”の行き過ぎを瑠璃に指摘され、色仕掛け攻勢による貴明篭絡も、効果の薄さも手伝い
手詰まり感が漂い始め、方向転換を迫られる状況となっていた。
どうする!?策士イルファ!
彼女の灰色の謀略コンピューターに、一発逆転の秘策はあるのか!?
――――
「はぁ〜・・・・」
「どうしたんですか貴明さん?あんまり溜息ばかりつきますと幸せが逃げますよ?」
「ほっとけイルファ。四六時中女子に囲まれて、それくらい幸せ逃げた方が貴明には丁度いいガス抜きやぁ〜!」
瑠璃の出迎えを装って、下校中の貴明に接触したイルファ。彼女は貴明が浮かない顔で溜息を漏らすのを見逃さなかった。
「うん。なんかさ、最近シルファちゃんが冷たいんだよ・・・・また変な食事出てくるようになっちゃってさ・・・・」
「まぁ。なんかあの子怒らせるような事したんですか?」
「う〜ん・・・・ひょっとすると、このみの家でつい誘いに乗って、夕食摂っちゃったのがマズかったのかなぁ・・・・」
ははぁ〜ん、シルファちゃんはやきもちを焼いてるんだわ・・・・イルファはそう察した。
ここでもう一押しすれば、彼女達の仲は一気に進展する可能性がある。しかし何も手を打たなければ、むしろ一層冷え切ってしまう
可能性も。
動こう。イルファはそう判断した。・・・・しかし、どうやって?
彼女達が校門から離れ貴明とほぼ分かれたところで、ピンク色の物体が貴明にそろりそろりと接近していた。
「―― ダぁ〜〜リンッ☆」
「おわっ!?」
電信柱の陰からそれを見守るイルファ。何かが閃いたのか、彼女の目がキラリと光った。
「お姉ちゃん、ダーリン何か元気ないんだよぉ。心配だよぉ〜。」
姫百合宅。ソファに下向きに寝転がって両足を上方にぶらぶらさせながらミルファがぼやく。
「うふふ。多分、最近シルファちゃんと仲良しだったから、このみさんの家にお呼ばれしたのがバレちゃって冷たくされてションボリ
さんみたいですよ。やきもち焼かれちゃってるんでしょう。」
「―― えぇーっ!?なになにっ?それどういう事ぉ〜!?」
捻くれ者のヒッキーの性格だから、貴明とうまくいく筈もなく、そのうちほうほうの体で追い出されることだろう・・・・程度に軽く見て
いたミルファには、かなりのショックだったようだ。
“・・・・どうしよう。このままじゃ分が悪いよぉ。あたしはダーリンの1クラスメート。学校でくっつける時間にも限界がある。でもあいつ
は、ダーリンと朝も夜も一緒。それこそ寝床を一緒にすることも・・・・もしかして、もうえっちとか・・・・嫌ぁーっ、そんなのっ!”
焦慮して親指をくわえるミルファの様子を、何食わぬ顔で窺うイルファ。
・・・・ごめんね、ミルファちゃん。もうちょっと駒として動いて頂戴ね。思い通りに動いてくれるかしら・・・・“人間”としての自分を捨て
てまで。
―― そして数日後。
「―― ダぁーリンッ!」
「おわぁっ!」
突如、河野家に出現したピンクの台風娘、河野はるみ。
「あのね!あたしの本当の名前はミルファ!さんちゃんのクマのぬいぐるみだったクマ吉なんだよ!!・・・・というわけで、今日からは
ダーリンのメイドロボ、ミルファになりました。よろしくぅーっ☆」
大きく盤面上の駒が動いた。とうとう人間の仮面をかなぐり捨ててまで、メイドロボの“特権”を生かす事を選んだミルファ。おぽんちな
彼女の出した解答に、イルファは満点の評価を出した。
そして早速始まる、妹シルファとの衝突・・・・イルファは仲裁と称して、河野家に乗り込んでいく。
トントンと思惑通りに進展していく事態。こうして、イルファは河野家に勃発した“内紛?”に、直接介入する口実を得たのであった。
妹達のライバル意識を煽ることで、一層貴明との仲を進展させる狙いもあった。―― ニヤリ、とほくそ笑むイルファ。
「イルファ、貴明んとこばっか日参しとるけど、ちゃんとこっちの家事も忘れへんようにな。」
「はい。申し訳ありません瑠璃様。でもミルファちゃんとシルファちゃんが貴明さんにご迷惑掛けてないか見てませんと。」
サッカーロボとしての彼女の本能は、センターハーフとして妹達の動きに目を光らせる事に怠りなかった。跳ね返ってくるボールに、
いかに的確な対応をとらせるか―― 目下の状況は、シルファに突破口を開かせる役割を負わせた方が良さそうだ。
ごめんね、ミルファちゃん―― またしても、直近の妹に心中謝る事になったイルファ。
―― しかし、思わぬ伏兵の出現が、彼女のゲームプランを大きく狂わせる事になる。
雄二にせがまれて、見合いデートの代役として映画館にやって来た貴明。
「・・・・あうあうあうぅ〜・・・・」
今、股間を蹴り上げられ、うずくまっている。
「セ・・・センパイ!?」
貴明が見合い相手の顔を仰ぎ見れば・・・・先方もダミー、このみの友人である後輩、よっちこと吉岡チエ。
―― この強烈な出来事が、二人を急接近させる事になった。
――――
「ご主人様、最近帰りが遅いのれす。」
「あたし、ダーリンが別の学校の女の子達とべたべたひっついてるの見たよ。ダーリンの浮気もの〜っ!!」
イルファも、よっちをノーマークという訳ではなかったが、このみの友人でもあり自重するだろうという事で、貴明に群がる少女達
の中では危険度低めのランクだった。それが今、スルスルと頭一つ抜け出して本命候補に浮上してくる。
“・・・・マズイわね・・・・やっぱり、貴明さんは睨んだ通り巨乳フェチだったわ・・・・”
ミルファがちょっかいを出すが、こういう場合、彼女の行動は概ね裏目に出る。しかも、サッカーロボとしてはフェアプレー精神に
富んだ(時折ラフプレーあり)彼女であるから、、敵に塩まで送る始末。
・・・・そうして、ついに、ゴールポストに決勝点のボールを叩き込んだのは、吉岡チエとなった。
それを伝え聞いたイルファは、独り姫百合家で爪を噛んでいた。
イルファの最終目標は、瑠璃と貴明を結ばせて、双方の専属メイドの位置を得る事だったから、その前提が崩れてしまった事に
なる。
・・・・しかし、イルファにはまだ秘策があった。
それは、乱戦に持ち込んで、貴明周辺を総ハレム化してしまう事。
ここで、イルファは体面をかなぐり捨てる事を決意した。自身を貴明争奪戦の渦の中に身を投じることにしたのである。
―― もう瑠璃様専属とかどうでもいい。とにかく、貴明さんが欲しい ――
遂に、黒幕が直接参戦という局面となった。
“HMX−17三連星の単縦陣で横から突っ込んで、敵陣を崩し肉弾戦に持ち込むのよ・・・・”
これまで以上に、河野家に足繁く通うイルファの姿が見られるようになった。
「イ、イルファさん、最近ミルファちゃんとシルファちゃんも結構仲良くなってきたみたいだし、そんな心配しなくていいよ。」
「いいえ貴明さん。指導教官としては、あの子達が粗相をしでかさないように、監督を続ける義務があります。」
――――
「センパイ、いっつもあたしの家とか青姦ばっかりっスよ。そろそろセンパイの家にお邪魔してもいいっスか?」
「え、えぇぇぇっ・・・・!?」
“ま、参ったなぁ・・・・うちには、メイドロボが3人もいるって事、チエには話してないし・・・・”
――――
「さあ、正しいメイドロボの心構えです。二人とも、私に続いて斉唱なさい。」
『―― くんずほぐれつ ずっこんばっこん!!』
メイドロボ、イルファの戦いはまだ終わらない。
(おしまい)
イルファさんが黒くてごめんなさい orz
本当は、昨日の誕生日に合わせるつもりだったのが、忙しくて間に合いませんでした。
・・・・これで終りでいいんでしょうか?
では。
>>432 乙〜
ちと純粋な疑問っつーか、けして批判じゃないんで勘違いしないで頂きたいんだけども
一連のメイドロボSSを読んで感じるんだが、実はADの共通ルートとかミルファルート嫌ってる?
今回もミルファのメイドロボだって告白のあたり、原作にあるシーンをわざわざアレンジして
自分の色を出してるよねえ
『原作になかったことをSSとして書く』んじゃなく、『原作にあったことをSSとして書く』ってのは
まぁ悪いとは言わないんだけど、毎回それだと原作アンチと受け取られるかもしれねーですよ
>実はADの共通ルートとかミルファルート嫌ってる?
嫌ってるというか、納得がいってない人は多いんじゃないかな
いや別に他の人がどうこうってのは興味ないし、どーでもいいよw
こういう形のSSを書くときの原動力を聞きたいなーと思ったので、本人以外から答えを頂いても
しょうがないんだ
ごめんね
436 :
432:2008/11/27(木) 23:38:29 ID:iaBfMdhX0
>>433 ううむ、そう見えますか。
原作の印象的な出来事の裏面とか前後を埋めてみたいって願望がまずあって、
ついつい引用してしまってますが、やはりやりすぎ感は否めないかも。
原作アンチって事はないです。なにせ投稿物はAD準拠のものばっかりですし。
どうもイルミルに偏る傾向がありますが、動かしやすいせいかも。
次はシルファかな、とも思うんですが、シルファ語間違えずに通せるかいまいち
自信がありません(汗
ご指摘ありがとう。では。
おつ
HM開発課長は報告書に目を通すとパサリとそれを机上に投げ、手を組んで背もたれにぐっと身を預けた。
「結構な開発費をかけたんだよな、HMX−17c型には。それを取り壊さなくちゃならんのは残念だよ。」
「壊す?」 HM開発主任はジロリと課長を睨み、大いに異議を含んだ声で訊ねた。
「当然だよ長瀬君。彼女をこれ以上維持する事が一体何になる?大体だね、この世に無益なものがあるとしたら、まともに話せない、
人とも接する事が出来ないロボットじゃないか?折角女性型なのにセクサロイドにもなりゃしない。それにだ、三原則もインストールされ
ないで、人を引っ叩く可能性のあるロボットがいる事が世間に知れたら、どうなるんだろうね?」
「ええ、問題があるのは認めます。」
「なら、どうするね?」
長瀬は譲らなかった。 「これからも彼女の観察は続行します。」
「何のために?」 と課長は言いかけたが、長瀬の目に頑として譲らない決意があるのを認めると、ふぅと溜息をついて、肩をすくめた。
「わかったよ。君に任せる。」
長年HMの開発に携わり、人間よりもロボットの娘達を愛するような長瀬である。彼と言い争うのは、およそ無駄な事であるのは課長
もよくわかっていた。HMに関する限り、このベテラン開発者の意向は絶対だった。
「HMX−17cに新たな兆候が見えたら教えてくれ。」
「わかりました。」 と、長瀬は小さく頭を下げた。
自分のデスクに戻ると、長瀬は荒っぽく椅子に腰を落とした。そしてトントンと指で机上をせわしなく叩く。やがて叩くのを終えると、ふと
思い出したように電話の受話器を取り、すばやくダイヤルを押した。ほとんど指が覚えている番号だった。
「・・・・あぁ、珊瑚君。悪いんだけどね、ちょっと研究所に来てくれないか。イルファも連れてね・・・・ミルファ?いやあの子はいい。」
シルファのために特別に用意された個室の中は、女性のパーソナリティを持たされているというのに、実に無味乾燥としたものだった。
当初はもっと人間の少女向けの調度に飾られていたものだが ―― 彼女が叩き落したりして、順次その数を減らしていった。
しかも、カーテンは閉められ、照明も点灯されず真っ暗で ―― 彼女が驚かないよう、イルファは暗がりの中をそろりそろりと進まざるを
得なかった。
扉が開いた時に差し込んだ光に気付いて、シルファは腕と膝の間に顔をうずめたまま、扉側をちらりと一瞥する。
彼女は部屋の奥隅にぺたりと座り込み、脚を両手で抱え込んでうずくまっていた。
イルファの立ち姿を認めると、彼女は小さな声で呟いた 「・・・・放っておくのれす、シルファの事は。」
かすかにイルファは眉をひそめて、腰に手を当てると、苛立ちを押さえ込みながら言った。「シルファちゃん、ちょっと話を聞いて頂戴。」
―― しかし、シルファ、無言。
イルファはふぅっ、と溜息をついた。そして目を一旦閉じ、再び見開いた時、彼女の瞳には何かを決意したような光が宿っていた。
「わかりました。もう今のあなたには、何を言っても無駄みたいですね。」
―― シュッと、イルファの立ち位置からその姿が消え失せる。次の瞬間には、彼女はシルファの肩を掴んでいた。
「―― ッ!」 背後のイルファに向くシルファ。抵抗の気色を見せる。
「イ、イルイルッ!なっ、何するんれすかっ!?」
「外に出ましょう、シルファちゃん。研究所の外へ。」
「―― ッ!いっ、嫌れすっ!」
シルファは肩を掴んだイルファの手を払い除けようとする。イルファはその間を与えずに、シルファの脇腹を指先でズボッと突いた。
「な―― っ!何を・・・・するん・・・・れすか・・・・」
そのすぐ後には、シルファは頭をガクリと下げ、両手はダラリと床に垂れ落ちていた。
扉の外から 「イルファ?」 と呼びかける声がした。
イルファはスリープモードに入ってグッタリしているシルファを肩で担ぎながら部屋から現れる。
扉の外に立っていたHM開発主任と姫百合珊瑚はその姿を見て目をむいた。
「イルファ、一体これは?」
「ら、乱暴はあかんよ〜、いっちゃん?」
口を真一文字に結び、真剣な眼差しで長瀬をキッと仰ぎ見たイルファ。彼女が言った。
「おじさま、この子のこれからは、私に任せてもらえませんか?」
長瀬は当惑げに肩をすくめながら、溜息をついた。そして、言った。
「わかったよ、イルファ。任せたよ。」
顎に手を当てて思案していた珊瑚が口を開く。 「でも、これからどうするんや〜、いっちゃん?」
「家に連れて行きましょう。その次はそれから考えます。」
カチカチと、席でライターを鳴らして煙草に火をともしながらHM開発課長が長瀬に訊ねた。
「連れ出す?外に?彼女を?」
コクリと頷く長瀬。「はい。」
う〜ん・・・・と、課長は手を額に当てながら考え込む。
「大丈夫なのか?」
大丈夫です、と自信に満ちた声で答える長瀬。
「彼女はDIA設計者の姫百合君のところに委ねます。実質的な面倒はイルファが見る事になります。彼女には、もっと暖かみのある
環境が必要なんです。」
そう言って、長瀬は窓外に目をやった。そろそろ夏から秋に切り替わろうとする空だった―― 。
(つづく)
これは短いレス数で、気長に落としていくつもりです。
特にミルシル生誕週間に合わせた訳ではありませんが。
それでは〜。
んー、しばらく間あけるのをお勧めするー
アンタって投下間隔が狭まると悪いクセが出るのなw
こう言っちゃなんだが、前に叩かれて去ったときと似たようなSSばかりになっちまってるぜ
っつーか、もうTHのメイドロボに関しちゃ俺設定はカンベンだわ
あんなファンタジーアンドロイドに、それっぽい設定をゴテゴテ装飾しても鬱陶しいだけ
シリアスぶった話を書きたいなら、「感情を持ったロボット作るなんて不可能」ってとこをスタートラインにしてくれ
俺価値観のメイドロボSS(笑)が書きたいんじゃねーの?
TH2に準じるつもりがないならTH2以外で書いてくれって感じだが
うむむ、どなたの事を想起されてるのかは存じませんが(汗
第七研究開発室HM開発課というのは公式設定であったと思いますし、課があるなら課長もいるだろうと。
せいぜいその程度ですよ〜。
貴明宅に送られるまで、研究所員が困りきってたってのもイルファが語ってたと思います。
仰る通り不必要にシリアスにしちゃった反省はありますが、導入暗いのは私のクセなんで〜。
この先はシルファ視点で割とほのぼの行こうと思ってます。不快な向きはNGワード設定推奨で。
これは先にも述べました通り投下間隔は長めにやりますので。
442と443は昔いた作者を叩きたいだけだからスルーでいいよ
今回のSSは俺設定を批判するような内容でもないし
第七研究開発室HM開発課でぐぐったらToHeart非公式設定集ってのが出てきて笑ってしまったw
>>445 まー、作者叩きしたいだけって見えるならそれでもいいけど
あなたもSS読んだなら感想つけてあげると喜ぶと思うよ?
>>444 了解した
「・・・・」これをNGしとくわ
9割があぼーんされて流石の俺も参った
これからも是非使い続けてくれ
最近は叩きムードで荒れても勢い無いのな
「タカ君早く早く〜! タマお姉ちゃんたち待ってるよ。」
「はぁっ、はぁっ、このみが寝坊するからだろ、全く!」
朝の通学路を全力疾走する。
最近すっかり朝夕が冷え込んできて冬がもうすぐそこまでやってきていることを実感する。
このみが駆けていく後を追って走る自分の息も真っ白だ。
「あっ、タマお姉ちゃんもユウ君ももう来てるよ!」
たったかと階段を駆け上がっていくこのみの視線の先を見ると、タマ姉と雄二と、そして
最近加わったもう一人の姿が見えた。
「おはよう!草壁さん。」
「おはようございます、貴明さん。」
大声で挨拶をすると、俺の彼女……草壁優季はにっこりと笑って答えた。
◇
「それにしても今日は一段と寒いね。」
前を行くタマ姉、このみ、雄二の3人の後について歩きながら、肩を並べて歩く草壁さんに
話しかけた。
「そうですね。今日はちょっと寒いです。」
そう言う彼女の姿はというと、ふかふかのマフラーに学校指定のカーディガン姿だ。
彼女のチャームポイントの一つである綺麗な足も今日は黒いストッキングに包まれていた。
「もっと厚着して来れば良いんじゃないの?」
「いえ、上半身は温かいんですけど……スカートがちょっと。」
「え? でも、ストッキングはいてるとけっこうあったかいって前に言ってたんじゃ……」
「えっと……」
彼女はちょっとだけ困ったような顔をした後で自分のスカートの横の布地をつまむと、
俺に向かってちらりとめくって見せた。
「こういうことなんです。」
「え……?」
……パンティストッキングだと思っていたら、スカートの下には絶対領域が隠れていました。
「ここ連日寒かったので毎日のようにパンティストッキング穿いてたんですけど、そのせいで
洗濯中だったりほつれが出来てたりで、今日は穿けるのがなかったんです。
運悪く新品のストックも切らしちゃってましたし……それで仕方なく、ガーターストッキングを
穿いてきたんですけど……寒くって。」
「あ、そ、そうなんだ。」
草壁さんが説明している間も、俺の目は白い肌と黒のコントラストに彩られた際どいラインに
釘付けだった。
だってしょうがないじゃないか、男の子なんだもん。
「ガーターストッキングね。朝からタカ坊を悩殺するなんてなかなかやるじゃない。」
「あ、い、いえ、そんなわけじゃ……」
いつの間にかタマ姉が俺たちの方を見ていてニヤニヤ笑っていた。
「わぁ……大人っぽいでありますよ。いいなぁ……」
このみもいつの間にかタマ姉と一緒に草壁さんの絶対領域に視線を注いでいた。
「ほぉ、どれどれ俺も一目……(みしっ)グホァ……」
草壁さんの足を覗こうとした雄二はタマ姉の裏拳を顔面に食らって沈没した……南無……
「私のでサイズが合うならあげるわ。」
地面に倒れた雄二に目もくれずにタマ姉はそう言うと、学生カバンの中から新品のストッキングを
取り出した。
「あっ、このサイズなら大丈夫です。ありがとうございます、環さん。」
「さすがタマ姉。予備持ち歩いてるんだ。」
「あら、女の子ならストッキングの予備は一つぐらいは持ち歩いているものよ。」
「そうですよ。私はたまたま切らしてましたけど、すぐほつれたりするので予備は持って
いるものなんです。」
「ええっ、そうなの優季さん? このみは持って無いでありますよ。」
そう言うこのみはこの寒空の下で元気に素足にソックスだけだ。
「はははっ、ちびっ子は風の子だから(どすっ)げふぅ……」
雄二はタマ姉の肘鉄にレバーを打ち抜かれて再び轟沈した……馬鹿な奴。
「じゃあ、今度の日曜日、4人で買いに行きましょう。パンストとガーターストッキング。」
「え? 4人で?」
「あ、私は良いですけど……」
「何で俺も入ってるの?」
俺と草壁さんが頭に?を浮かべていると、タマ姉がにやりと笑った。
あ……タマ姉がああいう顔をするときは何か企んでる時なんだよな……
「勿論、私達に似合うガーターストッキングをタカ坊が選ぶのよ。」
「やっぱり……」
春休みの悪夢がよみがえる。あれか……あれが繰り返されるのか……
「あの……貴明さんが嫌がってるみたいですし、私達3人だけということでは……」
俺の様子を見た草壁さんが助け舟を出してくれた。さすが我がスイートラバー(ハート)
「あら、優季はタカ坊がどんなのが好みか知りたくない?」
「えっ……そっ、それは……」
くっ、さすがタマ姉。草壁さんの弱点を上手く突いてきた。
そしてさらに追い討ちをかける。
「引き出しに隠してあったえっちな本に、セクシー下着系統のもあったわよね。」
がしっ。
気がつくと、草壁さんが俺の手をがっちりと両手で握り締めていた。
「貴明さん!」
「は、はいっ。」
な、何だろう……エロ本の事を咎められるんだろうか。
「貴明さんの好みのストッキング……いえ、下着を選んでください。そうすればエッチな
本も捨ててくれますよね?」
「え、あ、いや、別に草壁さんが嫌なら下着なんて買わなくてもすぐに処分するけど……」
「わかって無いわねタカ坊。自分の彼氏が写真とはいえ他の女の子の裸を見て喜んでたら
やきもちの一つも焼きたくなるでしょ。」
「いや、別にそう言うつもりはないんだけど……」
「いいえ、これは私の女の子としてのプライドの問題なんです。というわけで……日曜日は
みんなで下着屋さんにGOです!」
「ええっ!?」
またあの羞恥プレイをやらされるのか!?
「じゃあ、タマお姉ちゃんの下着もタカ坊に選んでもらおうかしら。このみも選んでもらい
ましょうね。」
「えっ、う、うん……このみ、恥ずかしいけどタカ君のためにがんばるよ。」
「日曜日が楽しみですね。」
「俺の意志はどうなるんだ〜!」
どうやら「3人の女の子の下着を選んでやる」という羞恥プレイは決定らしい。
日曜日は地獄だ……
俺は肩を落としながらとぼとぼと校門をくぐった。
そういえば、何か忘れているような……
◇
「ぶえくしっ……地面冷てぇなぁ……」
美脚の草壁さんにはパンストよりもガーターストッキング穿いて欲しいと思う今日この頃
しかし実際はダッフルとニーソで完全装備したJKが寒そうに歩いてるのを見てネタを思いついたというのは内緒だw
ちなみに劇中ではガーターストッキングと言ってますが、
正確には吊りバンドのいらないノンガーターストッキング(ニーソのようなもの)を想定しています。
話の上ではあまり大差ないですが一応。
おつおつ
草壁さんかわええのう
草壁さんはのほほんとした日常の話がいい。GJ。
>>453 GJ!!こういう何気ない日常の会話っていいですね。それにしても、日曜日はタカ坊にとって地獄になりそうですね。
黒髪姫カット+パンストは最強の組み合わせです!!
いつも思うんだが……草壁さんにタカ棒さらわれたらこのみもタマ姉も口惜しいじゃろのう。
真性幼なじみ的に、「帰ってきた幼なじみ」に出し抜かれるのは新人に負けるより辛い希ガス。
458 :
名無しさんだよもん:2008/12/02(火) 18:22:01 ID:EVdRFiCG0
姫百合ハーレムに対抗して
このたま+草壁さんの「幼馴染ハーレム」を作れないのか?
それどんなぱらいそw
まあ、草壁さんはこのみとタマ姉からみれば一番負けて納得できそうな立場な気がする
思いの長さ強さは自分たちと引けを取らないし、それでいて他人だから
このみかタマ姉のどちらかが選ばれた場合はお互い結構気まずいわけで
タマ姉+ささら+草壁さん 巨乳お嬢様系ハーレムとか
>>457 タマ姉<真性幼なじみ的に、「帰ってきた幼なじみ」に出し抜かれるのは新人に負けるより辛いわね
このみ<え?
>>460 年下ハーレムって何気に人数多いな
このみ・よっち・ちゃる・いくのん・姫百合姉妹+メイドロボ・奈々子
「姫百合ハーレム」
姫百合姉妹+メイドロボシスターズ *DUAL姉妹丼
「幼馴染ハーレム」
このたま+草壁 *総合点はかなり高い
「ツンデレ+姉妹丼ハーレム」
愛桂+いくのん+由真 *ツンデレの2巨頭完備
「タヌキツネ+電波・不思議連合ハーレム」
ちゃる+よっち+るー+花梨 *マニアックなブランドです
「まーりゃんと愉快な下僕たちハーレム」
まーりゃん+ささら+奈々子 *プレイの幅は広そうです
>>461 「しすプリハーレム」
このみ・よっち・ちゃる・いくのん・姫百合姉妹+シルファ・奈々子、奈々子の友達
*せまりくる「妹」達の恐怖
巨乳軍団vs貧乳軍団のドロドロの戦いも見たい
>462
「ウホッ! いい男 くそみそハーレム」
雄二+ダニエル+真委員長+図書委員長+ロク+ゲンジ丸
「九条院お嬢様ハーレム」
タマ姉(>462に出てるけど)+玲於奈+薫子+カスミ
「流石に無理があるか 熟女ハーレム」
春夏+ささらママン+ハナ
このたま+草壁さんの「幼馴染ハーレム」は結構実現率高いと思う
姫百合ハーレムに取り込まれつつあるタカ坊を取り戻すため
タマ姉が高明と同学年でクラスメートである草壁さんをスカウト。
草壁さんの主な役割は対ミルファ用
>>466 タマ姉が瑠璃・イルファ
このみがシルファと対峙するとして
珊瑚は誰で対処するん?
後珊瑚経由で長瀬のおっちゃん→由真が漁夫の利を狙いそうな気もする
>>467 珊瑚<みんなでぇらぶらぶ〜したらええんとちゃうの?
彼女、向坂環は悩んでいた・・・
彼女の想い人である「タカ坊」こと河野貴明が
最近、1年生の双子の美少女宅に入りびたる様になり
自分にかまってくれないことに。
しかも、その双子…姫百合姉妹の長女の姫百合珊瑚は
ロボット工学のソフト開発の第一人者であり、
その技術で「自立思考型ロボット」つまり心を持ったメイドロボを
開発した。
そしてあろうことか、その試作型である3体の
メイドロボまでもが貴明に好意を抱いている。
このメイドロボが曲者でただの市販品ではなく、珊瑚が
開発したDIAにより、人間以上に人間の女の子らしく振舞う
美少女であるから始末が悪い。
このままでは、ハーレムと化した姫百合家に貴明が取られて
しまうのは時間の問題である。
そして彼女はついに決心する。
もうひとつのハーレムを自分で作って貴明を取り戻すことを。
「戦力分析」
古今、戦闘に関して敵のスペックを知り、それを研究し作戦を練ることは重要である。
環は自室の机の前で、現在最大の敵勢力である「姫百合チーム」の戦力を分析していた。
「超天然系癒しキャラ」
「ツンデレ系甘えたがりキャラ」
「小悪魔的 優しいお姉さんキャラ」
「デレ系 直情素直型 巨乳キャラ」
「天邪鬼系 甘えん坊ロリ系キャラ」
…こうして思い浮かべてみると、改めて敵側の戦力が豊富な選手(?)層
に支えられているのかがわかる。
環はこれに対抗する「仲間」を選び出し、説得し、味方にしなければならない。
敵が豊富な戦力とパターンの組み合わせでくるならこちらのコンセプトは
ずばり「少数精鋭」。
最初、彼女は幼馴染の一人で環の妹分でもある「このみ」だけに
この計画を打ち明け、味方とするつもりであった。
しかし、それでは貴明の同年代が仲間にいない。
学校に通学している間、同学年で同じクラスの「ミルファ」を
けん制できる仲間が後一人ぜひほしい。
しかし、貴明と同年代なら誰でも言い訳ではない。
自分やこのみに負けないくらいにタカ坊にことを思っていて...
自分達に負けないくらい魅力的な女の子で...
タカ坊を自分ひとりの物にしたい嫉妬欲を制御できる理性があって...
そしてタカ坊がその女の子を抱いたとしても環自身がなんとか許せる女性...
環は明日「草壁 優季」に会うことを決めていた。
・・・こんな感じかな?
下手でスマソ
471 :
名無しさんだよもん:2008/12/04(木) 17:59:10 ID:Clq0bN9tO
「う〜〜〜 トイレトイレ」
今、トイレを求めて全力疾走している僕は、高校に通うごく一般的な男の子。
強いて違うところをあげるとすれば、老成した男性に興味があるってとこかナ ―― 。
名前は河野貴明。
……そんなわけで、帰り道にある公園のトイレにやってきたのだ。
―― おや?
ふと見ると、ベンチに品のいいタキシード姿の老人が座っていた。
―― ウホッ!いいダニエル……
そう思っていると、突然その老人は、僕の見ている前でタキシードのズボンのホックをはずしはじめたのだ……!
……ジジ〜〜……
そして、彼は僕に呼びかけた。
「やらないか」
……そそり立つ、彼の逞しい陽根。僕は思わず呆然と立ち尽くし、彼の見事な男性自身に目は釘付けとなった。
そういえば、この公園はハッテン場のトイレがあることで有名なところだった。
いい老齢の男性に弱い僕は、誘われるままホイホイとトイレについて行っちゃったのだ☆
彼 ―― ちょっとワルっぽい来栖川家の執事で、長瀬源蔵と名乗った。
ホモ・セックスもやりなれてるらしく、トイレに入るなり僕は素裸にむかれてしまった。
「よかったのかね、ホイホイついてきて?儂はノンケだってかまわないで食っちまう人間なんじゃよ。」
「こんな事はじめてだけど、いいんです……僕、長瀬さんみたいな人、好きですから……」
「うれしいこと言ってくれるのう。それじゃあ、とことん悦ばせてやるからの。」
言葉どおりに、彼は素晴らしいテクニシャンだった。
僕はというと、性器に与えられる快感の波に身を震わせて悶えていた。
―― しかし、その時、予期せぬ出来事が……
「うっ……!で、出そう……」
「ん?もうかね?意外に早いんじゃな」
ブルブルと震え苦悶の表情を浮かべる僕を見て、彼は早漏の気があると思ったのだろうか。
「ち、ちがう……実はさっきから小便がしたかったんです。公園に来たのもそのためで……」
「そうか……」 と言うと、彼は突拍子もない提案をした。
「いいこと思いついたわ。お主、儂のケツの中でションベンしろ。」
「えーっ!?」 と、思わず僕は叫んでしまった。 「おしりの中へですかァ?」
しかし、彼は本気らしい。
「男は度胸!何でもためしてみるんじゃ。きっといい気持ちじゃぞ。」
彼はそう言うと、素肌にまとったタキシードを脱ぎ捨て、老人とは思えない逞しい尻を僕の前に突き出した。
「ホレ、遠慮せんで入れてみるんじゃ。」
自分の肛門の中に小便をさせるなんて、なんて人なんだろう……
しかし、彼の堅く引き締まったヒップを見てるうちに、そんな変態じみたことを試してみたい欲望が……
僕はおずおずと、彼の肛門に向けてそそり立った陰茎を突き出す。
「それじゃ……やります……」
―― クン…ズ! …ズズ……
彼の肛門の中にズブズブと吸い込まれていく、僕のペニス。
「は……はいりました……」
「ああ……つぎはションベンじゃ」
彼の肛門の中の熱い圧迫感を感じながら、辛抱たまらず僕は尿道の栓を緩めた。
「それじゃ、出します……」
シャ〜〜
チュチュ〜〜
「いいぞぉ。腹の中にどんどん入ってきてるのがわかるぞ……しっかりケツの穴を締めておかんとの。」
「くぅっ!気持ちいい……!」
この初めての体験は、オナニーでは知ることのなかった絶頂感を僕にもたらした。
あまりに激しい快感に、小便を出しきると同時に僕のペニスは肛門の尿の海の中であっけなく果ててしまった。
「あぁーーっ!!」
ドピュッ!
――――
「―― ご主人様?……ご主人様っ!ほら起きるのれすっ!」
気持ちよさそうにベッドの中で横たわる貴明。起こしに来たシルファがその顔を覗き込む。
「う〜ん……むにゃむにゃ……ああ……気持ちいい……」
ろうしたんれすか、まら寝言なんか言って―― と、シルファは貴明の布団を引っぺがしかかったが――
貴明の下腹部付近から漂う異臭と、生暖かい布団の湿り気に気づく彼女。
「―― ぴぎゃっ!?なっ、何れすかこれはっ!?……こっ、これは―― おもらしれすっ!」
「―― うう……しくしくしく……もうお婿に行けない……」
シルファに引っ張られて、ベソかき顔の貴明が階段を下ってくる。
「ぷぷぷ……ほら、さっさと風呂場に行くのれす。ばっちいかららをさっさと洗い流すのれす!」
丁度現れたミルファにその様子を見られ、貴明は一段とブルーな気分になってしまう。
「―― んもう、ひっきーは思いやりがないんだからぁ。大丈夫だよダーリン。おもらし癖あっても、ちゃんと下の世話は妻のあたし
が見てあ・げ・る。……ほら、ダーリン一緒にお風呂入ろお風呂☆」
「わわっ!ちょっとちょっとミルファちゃん!?」
「ミ、ミルミルッ!何しやがるんれすかっ!?」
シルファの手から貴明を強引に奪い取って、ミルファは彼を浴室へと誘った。
脱衣所で、ミルファにポンポンとパジャマを剥かれる貴明。
続いて、彼女自らも着ている私服をスルスルと脱ぎ捨て、最後に残っていた縞のショーツがストンと床に落ちた。
ほらほらぁ〜と、貴明の手を取り浴室へ引っ張り込む。
シャー、と尿で汚れた貴明の下半身をシャワーをかけて洗い流すと、ミルファは「むふ〜ん」と頬を赤らめて笑みを浮かべ、彼の
ペニスを大事に掴みあげて口に含み、レロレロと舐めたり口に含んだりした。
「……あれぇ?ダーリン勃たないんだね。よぉ〜し、それじゃぁ……」
今度は彼女の両の乳房に挟みこんで、ゆさゆさとしごき始める ―― しかし、いまだに萎れたまま。
「あぁ〜ん、ダーリンどうしちゃったのぁ?」
萎れた彼の竿を眺めて不満顔のミルファ。
俯いたまま、貴明がぼそりと漏らした――。
「ごめん、ミルファちゃん…… 僕、女の子の裸見ても、何故か勃たなくなっちゃって……」
「えぇっ!」
ミルファは頭を抱えた。萎えたままの彼の男性自身を凝視した後、浴室の外に向かって叫ぶ。
「こらぁっ!ひっきーっ!ダーリンに何かしたのっ!」
「知るかっ!れす!きっとミルミルが毎日搾り取るから枯れてしまったんれすっ―― !」
……あれ、おかしいよ「僕」。なんで女の子の裸見たり触られたりしても反応しないんだろう――
貴明も頭を抱え込んでしまった。そして、ふと、先程の夢の中の光景が頭をよぎる。
ダニエルの逞しい尻――
すると、ムクムクと彼の息子が頭をもたげた。
「―― あれぇっ?ダーリン急にどうしたのぉ!?」
貴明はようやく理解した。今、自分に何が起こっているのかを。
「―― うわぁあああああぁんっ!!」
(つづかない)
今までにない領域にチャレンジしてみました。
……ごめんなさい。もうしません orz
俺のHPは回復不可能なダメージを受けたorz
なんで三点リーダーの使い方変えてるんだよ…w
アッー!!
……ちょwwついにやっちまったなwww
いや、ビミョーには面白かった。乙!
だがもうお腹いっぱいorz
481 :
名無しさんだよもん:2008/12/05(金) 22:57:47 ID:zgFz/jEJ0
そこは踏み込んではいけないところだぁぁぁぁぁあああ
人間、っていうか、生物って言うものは環境に適応する能力を持っている。
空気の薄い高地で生活していると自然と心肺機能が高まるし、寒い地方で暮らしている人は
暮らしているうちに自然と寒さに対する耐性がついたりする。
俺の場合はどうだったかって言うと……最大5人の美少女に囲まれて、毎夜毎夜枯れるまで
搾り取られる生活を半年も送っていると、自然とそっち方面の変化が現れるわけで。
まず、元々それほど太っているほうじゃなかったけど、贅肉がなくなって筋肉質になった。
毎日搾り取られるせいで余計な肉がつかないのと、乗っけたり乗っかったり抱えたりとまあ、
色々な体位を試みるせいで自然とボディビルディングに励んでいるような状態になるからだ。
特に腰の運動が多いせいで、わき腹背筋は勿論腹筋はすっかり割れている。
もう一つは、毎日のように搾り取られるせいで、その……いわゆる「精子の製造スピード」が
格段に高まった事だ。
生物のオスとしては誇って良いのかもしれないが、実生活では色々こまった事になった。
先週から1週間ほど、大型メンテナンスとかでミルファちゃんとシルファちゃんが家から
居なくなっている。
最初の2日ほどはすっかりくつろげたものの、3日目からはかなりヤバイ状態になった。
最初は女子の制服の胸元とか、スカートから覗く太ももがえらくまぶしく見えはじめ、
そのうち女子の体操着姿でえらくむらむら感じはじめ、タマ姉がふざけて抱きついてきたときには
その胸の感触で危うく暴走しかけた。
しかも、なぜかこういうときに限って珊瑚ちゃんも瑠璃ちゃんもどういうわけか姿を見せなかった。
だから、メンテナンス明けでミルファちゃんとシルファちゃんが帰ってきたときは情けなくも
涙目で出迎えたのだった。
◇
夜────
「はっ、あっあっ、あんんっ、あんっ、だ、ダーリン激しすぎるよぅ。」
「そ、んな、こと、言った、って、腰が、止まんない、んだ!」
バックの体勢から乱暴にミルファちゃんを突き上げる。
横では何度もイって先に潰れてしまったシルファちゃんがしどけない姿のままスリープに入っていた。
ミルファちゃんもさっきからの俺の攻めでもうふらふらになりつつある。
電池が残り少ないのかもしれない。
「あ、あ、あ、あ、あ、あたし、イっちゃう、イっちゃうよ〜〜〜」
「お、俺も……でっ、出そう。」
終わりが近くなった俺はミルファちゃんのすべすべした白い背中に覆い被さると、
その背中にキスをする。
そのまま後ろから、たわわなバストをわし掴みにして滅茶苦茶にもみしだく。
「あっ、ああっ、ダーリン、壊れちゃうよ。」
ミルファちゃんが悲鳴に近い喘ぎ声を上げる。
俺はお構い無しに腰を動かし、張りのあるミルファちゃんの尻肉に音を立てて叩きつけた。
ミルファちゃんの中は恐ろしく熱くうねって、俺のペニスを溶かそうとしているかのように
刺激し続ける。
「もう……でるっ。」
「いいよっ、だ、出して、いっぱい、出して。」
「うわぁぁぁぁっ!」
ペニスの根元から熱いものがこみ上げてくる感触に、俺は腰をミルファちゃんのお尻にぴたりと押し付け、
最奥までペニスの先端をねじ込んだ。
次の瞬間、恐ろしいほどの勢いでミルファちゃんの体内に精子を放った。
それも何度も、何度も、あふれ出すほどに。
ミルファちゃんとシルファちゃん、二人合わせて数え切れないほど交わったというのにペニスの付け根が
痛くなるほどの大量の射精をして、俺はぐったりとベッドに倒れこんだ。
「ふわぁ……ダーリン今日は凄過ぎるよ。」
俺の横にミルファも倒れこんできて、俺の腕を枕にして寄り添ってくる。
「ねぇ、今日のあたし良かった?」
「うん……すごく良かったよ。1週間ぶりだったし。」
「良かったぁ。メンテナンスのおかげだね。」
そう言いながら、ミルファちゃんは自分の下腹を大事そうに撫でた。
「メンテナンスのおかげって?」
「今回のメンテナンスでね、来栖川バイオで開発してた人間用の人工子宮の試作品に交換したんだよ。」
「そうだったのか……道理で妙にリアルな感触だったな。前も良かったけど。」
「それでね……人間と同等の機能があるから、ダーリンの子供も生めるんだよ。」
「え゛っ……えーと、それってどういうこと?」
「うーんとね、本当は私達ロボだから子宮があっても卵巣無いから本当は子供出来ないんだけど、
さんちゃんが卵子提供してくれたから……」
「いや、ちょっと待って、」
「ひっきー妹も瑠璃ちゃんの卵子貰ってたから二人でダーリンの子供生めるんだよ〜」
「えええええええ!」
「今日は溢れちゃうぐらいいっぱい貰っちゃったから、きっとばっちりだよ。(はぁと)」
◇
その頃の姫百合家では────
「瑠璃様っ! 今日は私の新装備のペニスで可愛がって差し上げます。あっ、精子は貴明さんの物ですから
ご安心ください。」
「イルファのアホ〜〜〜! そういうことやないわ! こっちくんなぁ!」
お口直しにだうぞw
ADやってないんでミルファの再現度がいまいちだったらゴメソ
「ファミレスチーム+α=同級生ハーレム」
愛桂+草壁+由真+花梨+るー
貴明を上級生、下級生、そしてメイドロボの魔の手から守るため
この5人が手を結んだ
「天然小動物系 家庭的ドジっ子キャラ」
「天然癒し系 和風才色兼備キャラ」
「ツンデレ系 元気っ子(隠れエロイン)キャラ」
「電波ゆんゆん系 お騒がせキャラ」
「クーデレ系 不思議っ子キャラ」
この五人が手をむすび「姫百合ハーレム」と「幼馴染コンビ」に宣戦布告
さーりゃんどこいった
愛桂って誰やねん
489 :
名無しさんだよもん:2008/12/08(月) 22:09:22 ID:1eIpTvqU0
kyかもしれぬが、ほのぼの系優季ものがよみたい今日この頃
草壁さんはもうちょいお待ち下さい……。
XRATEDやり直さないと駄目そうです。
村様キャラはハッキリ言って大好物なんですけど。
kyかも知れませんがいましばらくめいろろぼずでご勘弁を
両耳にイヤーバイザーを当てがいながら、ミルファは姿見に映る自分のセーラー服姿をまじまじと見つめていた。
「う〜ん……やっぱり、いけてない」
そんな風に思案しながら姿見の前から離れようとしないミルファを見咎めて、イルファが背後から声を掛ける。
「ミルファちゃん、そろそろ出ないと遅刻しますよ?」
「ええっと、ちょっと待ってて。」
渋るミルファが、イヤーバイザーを手にして見つめているのに気付いたイルファ。思い出したように語りかける。
「そうそう、何度も言うけど、ミルファちゃん。」
「え?なに?」
「イヤーバイザー。一応つけてた方がいいんじゃない?それね、単なる飾りじゃなくて、感応増幅アンテナでもあるから。」
「いらないよ〜、そんなの。貴明はあたしの目と耳と鼻でどこに居ようとしっかりキャッチ出来るも〜ん。」
「犬とか猫とかコウモリじゃあるまいし……って、そういう事じゃなくって!」
「ヘッ?」
キョトンとなるミルファ。イルファは手を腰に当てて眉を吊り上げる。
「それはデータリンクシステムに繋ぐ為なの!なくても一応繋げるけど、どんな所にいても繋がるようにね。言ってみれば、
安全装置。それに、この間みたいなことがあった時に、間違って人間の病院に運ばれないようにね。」
「うぅ〜、やな感じ〜。余計な心配だよぉ〜。」
そう言ってミルファは唇を尖らせる。
「だってぇ、似合わないんだも〜ん。せっかくカワイイ制服なのに〜。カッコ悪い〜。」
両拳を握り締めてぷるぷると頭を振ってから、ぼそりとつぶやく。
「それにぃ……貴明が、人間なのにロボットの子と付き合ってるなんて、後ろ指差されたらヤダもん。」
はぁ……とイルファは嘆息した。
「そんな事言う人いないでしょうに、あの学校。それに、貴明さんがそんな事気にする筈もないでしょ?」
「貴明が、ダーリンが気にしなくてもあたしはするのっ!」
ムキになって叫ぶミルファ。
「こらぁ〜っ、ミルファッ!もういかんと遅刻するでぇ〜っ!」
玄関から瑠璃が叫ぶ声。
「ほら、それじゃあこの話はまた後でね。いってらっしゃい。」
「うん。」 と頷いて、ミルファは鞄を手にし、玄関の瑠璃と珊瑚のもとへトコトコと駆け寄った。
「いっちゃん、それじゃ留守番頼んだよ〜。る〜☆」
珊瑚がバンザイをして扉の向こうにあとずさった後、バタンと扉が金属音を立てて閉じられた。
人気がなくなった居間に独りぽつねんと立つイルファ。手を腰に当てて、ふぅ〜っ、と大きく溜息をつく。
そしておもむろに、食器を片付けたり部屋を掃除するなど、家事にいそしみはじめた。
◇ ◇ ◇
河野家ではもう1体の“めいろろぼ”が、玄関で貴明の登校を見送っているところであった。
「それじゃ行ってくるね。」
「あっ、待つのれすご主人様。」
シルファは貴明を呼び止めるとトコトコ歩み寄り、貴明の開いていた制服の第一ボタンを締めた。
「ららしないご主人様とふしららなミルミルが一緒にいるところを笑われたら、身内の恥れす。」
そう言って貴明の制服の埃をパッパと払い、シルファは後ずさる。
「あ、ありがとう……」と、バツが悪そうに手を頭に当てて苦笑いする貴明。
「ところれ……」 と言いかけて、シルファが目顔で訊ねてくる。
「あっ、ああ……今日はバイト行かなきゃならないんだ。ちょっと遅くなるよ。」
訊かんとするところを察して、貴明が答えた。
それを聞き、シルファは微かに溜息を漏らすと、呟くように言った。
「……自転車の弁償れすか?おじさまかお母様に言えば、いくられもお金はれるのに?」
「ダメダメッ!」っと、キッと真剣な面差しになり、貴明はぶんぶんとかぶりを振った。
「こういうのは誠意の問題だからね。自分で工面しなきゃ駄目なんだ。」
はぁ……とシルファは呆れ顔になり、その眉が垂れ下がる。
「それじゃ行くよ。後よろしくね」 と貴明が扉を開けると、門の向こうから少女の声が聞こえてきた。
「あっ、タカくぅ〜〜んっ!早く早くぅ〜〜っ!」
―― このみと合流し、手を振りつつ貴明は門外へ去っていった。
玄関に立ち尽くしながら、シルファがつぶやく。
「……馬鹿れす……ご主人様は……」
◇ ◇ ◇
学校。キンコーン、と鳴り響く終業のチャイム。
教科書類をまとめて机上で鞄に収めている貴明に、クラス委員長の愛佳が歩み寄って来た。
「あ……あの、河野君?」
しかしちょうど傍らのミルファが貴明へにじり寄り、やおらその腕をとって胸に抱え込むと、頬を貴明の肩に寄せて目を閉じ、
「むふ〜ん。」 と甘ったるい声を上げた。
「―― ん?いいんちょ、どうしたの?」
貴明が愛佳に気付いて訊ねると、「う、ううん、何でもないの。」 と彼女は両手をかかげて振り、後ずさった。
「ダーリン、行こ。」 と、ミルファに引っ張られ教室を去る貴明の背中を見て、愛佳は大きく嘆息してしまう。
「はぁ……あたしって、本当に優柔不断……。」
―― 由真へ口添えして、返済期限延ばして貰おうか?と持ち掛けるつもりだったが、言いそびれてしまった。
下足置き場には姫百合姉妹と環、このみ、雄二がいて、貴明達がやって来るのを待ち構えていた。
「ダーリン、やっぱりバイト?」
うん、と頷く貴明。
「んもう……それじゃ、先にダーリンち行って、食事でも作って待ってるね。愚妹と面合わせるのシャクだけど。」
それを聞いて、貴明は引きつった笑みを浮かべる。
「な……なるたけさ、平穏無事に行こうよ、ね?」
「大丈夫、多分パワーじゃ勝ってるから、突っかかってきても返り討ちだもん。」
「いや、そういう問題じゃなくてね……」 貴明の額を冷汗が伝う。
姫百合姉妹も、顔を向け合って苦笑を漏らしている。
「じゃあダーリン、がんばってね!」
「タカくん、健闘を祈るであります。」
―― 手を振って一同から別れ去る貴明。
「ねぇねぇ、ミルファちゃん、ちょっとだけ、生徒会室で俺とお茶しない?」
雄二が自分の顔を指差しながら誘いかけるが、ミルファは「ダ〜メッ!」と言って、舌を出した。
がっくりとうなだれる雄二。環が空気の読めない弟を蔑んだ視線で見つめる。
「それじゃタマお姉ちゃん、みんなまた明日ねぇ〜!」 ミルファと連れ添って歩み去るこのみが振り返って手を振った。
環も小さく手を振って返したが、ふと傍らを見ると、雄二がふてくされた顔で、ぶつぶつとつぶやいている。
「畜生、なんで貴明ばっかり……俺ってなんて不幸なんだ……」
環の眉がキッと吊り上り、雄二の右腕を掴むとギリギリと捻り上げた。
「ギェェェェェ〜〜〜ッッ!!姉貴折れる折れる折れるぅぅぅぅ〜〜〜ッッッ!!!」
「あんたのその腐った性根が駄目なんでしょっ!?ホラッ、さっさと生徒会室行くわよっ!!」
環に廊下を引き摺られていく雄二。
「ゆーじ兄ちゃん、頑張ってやぁ〜。る〜☆」
情けない雄二を呆れ顔で見送る瑠璃の隣で、珊瑚がいつものバンザイポーズ。姫百合姉妹も下足置き場を後にした。
◇ ◇ ◇
姫百合家で、そそくさと夕食の下準備にかかろうとしているイルファ。
台所でふと立ち止まり、顎に手をやって思案に入った。
“いつも変わり映えしないメニューで、瑠璃様にマンネリって言われないかしら?ちょっと工夫してみようかな……”
そして、これまで彼女が学習してきたレシピの数々を思い浮かべるのだが、これといった妙案が浮かばない。
ひとりごちるイルファ。 「……ちょっと、データリンクに繋いでみようかしら……」
学習成長型のDIAの効用を測る観点から、あまりデータリンクシステムは使わないよう珊瑚から言われていたイルファで
あったが、ちょっと閲覧程度にはいいだろうと、この時はあえて繋いでみる事にした。
カチッとイヤーバイザーのアンテナが動く。そしてサーバーにログインして、そのキャビネット上に置いてある料理レシピの
サンプルデータを閲覧して廻った。
「うん、この辺がいいかな?」 と、彼女はログアウトして、ダウンロードしたレシピを、彼女なりに培った知識経験でアレンジ
しようと吟味をはじめた。
しかし、突然 ――
―― ビクンッ!
“ えっ!?” と、彼女は急に立ちすくんでしまい、やがて股間と乳房を押さえてがたがたと震え出し、その足元はおぼつか
なくなる。
頬を紅潮させ、その目はトロンと熱を帯び、焦点が合わなくなってくる。
“えっ?えっ?何?この感じ……アソコが、熱い……ヒクヒクしてる……”
はぁはぁと、喘ぎ声を漏らし始めるイルファ。
「わ……私、どうしちゃったの……!?」
――――
しばらくして、姫百合姉妹が帰宅してきた。
ガチャリと扉を開け、玄関の敷居をまたぐと、二人はその広い居間が殊更にがらんとした印象なのにやや当惑する。
「なんや、イルファ出掛けとるんか。」
「食材でも買いにいっとるんやないの〜?」
珊瑚は居間のテーブルの前にとことこと歩み寄り、脇に鞄を置いてぺたんと腿の内側を床につけるように座り込む。そして
机上のノートPCの液晶を持ち上げた。
おもむろに、PCに並べられるように置いてあったクマ吉の背に端子を埋め込んでから、電源を立ち上げる。
「―― ちょいとでも、みっちゃんが今の状況の因果を納得するん助けになれば―― 」
ひとりごちながら、目にもとまらぬ速さでキーボードを叩く珊瑚の指。大量のプログラム言語の羅列が、スーッとPCの画面
に綺麗な帳を降ろしていく。
一方、瑠璃は自室へと向かう。
扉を開け、しんとした室内に足を踏み入れたその直後 ――
「瑠璃様……」
きゃっ!?っと、傍らから囁く声に仰天し、手離した鞄がドサリと床に落ちる。
―― 振り向けば、イルファの姿。
「な、なんやイルファおったんか。驚かしよってからに」
はぁはぁと喘ぎながら、胸に手を当てる瑠璃。
イルファの佇まいを眺めれば、股間を押さえるように手を合わせ、カーテン越しの弱い光でもはっきりとわかるくらいにその
顔は紅潮している。目は焦点があっていないように見え、妖しい光を宿していた。
「ハァァァ……瑠璃様……お待ちしておりました……」
そして突如、ガバッと瑠璃に抱きつくイルファ。すかさず顔を接近させ、瑠璃と唇を合わす。
「うっ―― うむむむぅ〜……」 さっと顔面に朱が差し、目を剥く瑠璃。唇を引き剥がそうとするが、少女の力ではメイドロボ
のパワーには抗すべくもない。
イルファは唇を合わせたまま瑠璃をベッドの端まで押しやり、そのままの体勢で押し倒してしまった。
パタパタとベッドの上で足を動かしてもがく瑠璃。イルファの右手が、スカートが捲れ上がり露出してしまった瑠璃の白い
ショーツの上に伸び、薄布越しに秘部をツツーとなぞる。
「ひっ……ひぐっ……ぐぅ……」 唇で栓をされ、声を上げることもできない。やがてイルファの指はショーツの脇から直接
花弁に分け入り、くちゅくちゅと膣の入り口を弄くりはじめた。
「んっ!んうっ!んぅぅぅーーーっっ!!」
陰核をなぞり、左手が乳首をこねくりまわす。
ひとしきり弄ばれ、ようやく唇を離された時には、瑠璃はよがり声をあげるばかりであった ――。
「ハァハァ……る、瑠璃様……オ、オモチャがあるんです……た、試したから大丈夫……気持ちよくなりましょう……」
イルファもショーツをスルスルと下ろす。上着のボタンを外すと、ブラに包まれた乳房がポロンとこぼれた。
――――
珊瑚は周囲の雑音も一切聞こえず、一心不乱にPCのキーボードを叩いていた。
―― ピルルルルルッ!
しかし、突如けたたましくなる電話。珊瑚ははっとなり、テーブルの脇にあった電話の子機を探しあてて受話器を取った。
「はい姫百合です―― あ、おっちゃん。どないしてん急に―― ほぇっウイルス?―― え、メール見ろて?うんわかった
よ〜。」
そうして珊瑚はPCのメーラーを立ち上げる。
「―― へぇ〜、来栖川のサーバーに侵入するなんて。そのハッカーさんお目にかかりたいわ〜。―― 他にもそないな事
出来るプログラマー知っとるって?―― うち知らんうち知らんよ〜おっちゃんのいけず〜。」
メールの文面を一瞥する珊瑚。
「要は、データリンク繋がなきゃええんやね?うんわかった〜。いっちゃんとしっちゃんにも言っとく〜。―― みっちゃん?
あの子まず使わんし〜。―― でもけったいなウイルスやな〜。きっと変態さんや〜作ったんは〜……」
―― バタンッ!
寝室の扉が開く音がしたので、珊瑚は受話器を掴んだまま振り向いた。
入り口に立っていたのはイルファ。
「あっ!いっちゃんおったんか〜どないしてたん〜?」
熱病に浮かされたようにイルファは前方を見据えたまま立ち尽くして、ハァハァと喘ぎ声を上げている。ぶらりと垂れ下がる
両手の指が、濡れて光って見えた。
「いっちゃん……」
珊瑚はその様子を怪訝な顔で眺めていたが、やがてイルファはダッと駆け出して、玄関へと向かった。
「あっ!?いっちゃん待ってぇ〜な!」
珊瑚の制止を目に収めることもなく、イルファは室外へと飛び出していった。バタンと閉じられる扉の音が響き渡る。
「……いっちゃん……どないしたんやろ……?」
ハッと気付いて受話器を耳に当てたが、もうツーツーと切れた後だった。珊瑚は受話器を置いて立ち上がり、寝室の方へ
歩んでいく。
「―― あっ!!」
頭を抱えて驚愕の声を上げた珊瑚。
ベッドの上には、あられもない姿で横たわる瑠璃。セーラー服の上衣が開かれて胸を見せ、捲れ上がったスカートの下方
のあらわになった下腹部は、愛液と思われる液体が伝ってベッドを濡らしていた。
「瑠璃ちゃ〜〜んっ!どないしたんやぁ〜〜っ!?」
慌てて駆け寄り、瑠璃を抱きかかえて顔を覗き込む珊瑚。虚ろな目で、口元から涎を垂らしヒクヒクと痙攣している。
珊瑚はハッとして、駆け出していったイルファの様子を思い起こした。そして瑠璃のこの痴態。
メールの文面とこの状況を照らし合わせる。
「あかん……いっちゃん……」
やや間をあけてから、続く言葉が飛び出した。
「―― エロエロ、やぁ〜〜〜っ!!」
◇ ◇ ◇
来栖川エレクトロニクスの中央研究所。
いま、HM開発課ではひっきりなしに電話が鳴り響き、所員が対応に大わらわであった。
電話をとった事務の女性が声を張り上げる。「主任!ご指名でお電話です!」
珊瑚との電話を終えたばかりの開発主任はまたすぐ受話器を手にする羽目になった。
「はい、HM開発課の長瀬です。―― これはこれは!お嬢様、ご無沙汰しております。どうなさいました?」
「メイドロボの文句は倅に言え!ってセバスチャンが言ってたから直接電話しちゃったんだけどね。」 と、受話器の向こうから
若い女性の声。
「……ちょっと、うちのセリオ、一体どうなってんのよっ!?さっきからあたしにベタベタひっついてエッチなことを……うひゃっ!
きゃうぅぅぅんっ!いやんッ!ダメッ!バカァぁぁぁ〜〜〜っっ!!寄るなぁぁぁ〜〜〜っっ!!」
―― そうして、その電話はブツッと切れてしまう。
主任は受話器を置くと、髪をかきむしるように頭をガリガリと掻きだした。
◇ ◇ ◇
河野家ではシルファがソファーに腰掛けてゲーム機のコントローラーを握り、レースゲームに興じている真最中であった。
先般ミルファとそのゲームで競って惨敗したのがあまりに悔しく、リベンジを期して奮闘中なのだが、画面を眺めているうちに
既に車酔いの兆候が見え始めている。
「ほぇほぇ〜〜……もうらめぇぇぇ〜〜……」
目がうずまきになりかけたその時 ――
“……シルファちゃん……シルファちゃん?”
ダイレクトに響いてくるその声に驚愕し、シルファは握っていたコントローラーをコトンと床に落としてしまった。
「―― っ! イ、イルイルッ!?な、何れ『れんわ』れなくて『れーたリンクシステム』に繋いれくるんれすかっ!?」
イヤーバイザーの奥から、“声”が続いて発せられる。
“ハァハァ……ご、ごめんなさい携帯電話忘れちゃって……ハァハァ……シルファちゃん、貴明さん、帰ってる?”
「ご主人様はまらバイトれすよ。」 憮然としてシルファが答える。
“……そ、そう……ハァハァ……”
「―― 息が荒いれすね?もしかして発情期れすか?」
“ハァハァ……うふふ、大体そんなところかしら……ハァハァ……”
怪訝な顔で、シルファはデータリンクシステムの接続を切った。そして憤然としながら床に落ちたコントローラーを拾い、再び
ゲームに興じ始める。
――――
道端の電信柱に寄りかかり、イルファは胸と股間を押さえながらずっと喘ぎ声を上げていた。
イヤーバイザーのアンテナがパチンと下方に回転する。
「……ハァハァ……た、貴明さん……もう我慢できない……早く……くんずほぐれつずっこんばっこんしたいぃぃ……」
そうして、電柱に寄りかかったままズルズルとへたり込み、地面にペタンと座り込んでしまった。
◇ ◇ ◇
来栖川エレクトロニクスのWebサイトのトップページに、緊急警告のメッセージが貼られた。
『―― 弊社HMシリーズのオーナーの皆様へ。
ロボットに寄生する新種のウイルス、HM−DRS型、通称“エロウイルス”に、ご注意下さい。
このウイルスは、HMシリーズのデータリンクシステムに繋ぐことによって感染します。―― 』
◇ ◇ ◇
食料品スーパーの店内にて。
カートを転がすミルファと、先導するこのみ。
ミルファはこのみのアドバイスを受けながら、カレーに使う食材を買い集めているところであった。
「むふ〜ん。これでダーリンいちころカレーが出来るね〜。……ヒッキーSに目にモノ見せてやるんだからっ!」
(つづく)
502 :
491:2008/12/13(土) 08:36:20 ID:qFGc20KG0
そうして、発情したメイドロボ達は、大挙して河野家を目指す――
ことにはならないかも(ォ
朝から乙
エロウィルス良いなぁ
データリンクってHMX17の基本コンセプトと矛盾してるなw
キャラ別スレから飛んできました。
また貼らせて頂く事があるかも知れませんが、よろしくお願いします。
昼休み。
屋上で食事を済ませ、雄二と二人で教室に向かう。
自分達の教室の手前まで来た所で、廊下の向こう側で何やら話しこむ二人の生徒がいた。
一人は栗色の髪に水色の髪飾り。小動物をイメージさせる体の動き。
「委員長」こと、小牧愛佳だ。
もう一人は艶のある長い黒髪に、その髪が映える程白い肌を持つ女生徒。
「眠り姫」こと草壁さんだった。
「あれ。何だか珍しい組み合わせだな。
何であんな隅っこでコソコソと話し合ってるんだ?
勉強を教えてる・・訳じゃないよな。あの二人、成績悪くないし。」
「ああ。なんだろ。」
赤点が日常の俺達とは違い、二人の成績はどちらかと言えば良い方だった。
雄二の言葉に同意しつつも、自分で言ってて空しくなってきそうだ。
しかし、確かに珍しい組み合わせだった。草壁さんと小牧。
熱心に話し込む二人の手に握られていたのは、生徒手帳だった。
「うん。そうそう、それでこれを・・。」
「はい。・・ああ、なるほど。これで・・」
二人の声が辛うじて聞こえてくるが、要所が聞こえない為に
何を話しているのかさっぱり分からない。
しばらく成り行きを見ていると、話が終わったのか
二人は手帳を閉じると、草壁さんが深々と一礼した。
「ありがとうございました。」と言っている様だ。
それに遅れて小牧も、「いえいえ、そんな・・」
と謙遜する様にお辞儀を返す。それも連続でペコペコと。
「・・何か、何処かで見たような光景だな。」
「俺も思った。つか、委員長はいつもあんな感じだろ。」
小牧の方が教えていた様なのに、まるで小牧が教わった様に恐縮している。
いつもの事ながら、せわしない動きはまさにハツカネズミを思わせる。
二人はそのまま笑い合うと、何か言葉を交わしながら教室へと戻っていった。
その後予鈴が鳴り、俺達も教室へと入って行った。
「そういや、もうすぐクリスマスなんだよな・・。」
「・・え?何かおっしゃいましたか?」
何の気なしに呟いた一言に一拍遅れて、草壁さんが俺の方を振り向く。
憂鬱な数学の授業で一日が終わり、今は放課後だ。
二人で教室を出て、共に坂道を下っていく。
「もうすぐクリスマスなんだな〜って思ってさ。
商店街とかでもクリスマスの飾りとかが目立つ様になってきたし。
ケーキとかのチラシも、良く見るしね。」
「そうですね・・。貴明さんは、クリスマスって何か思い出とかありますか?」
「う〜ん・・そうだなぁ。ウチは両親が忙しいからね。
あまり『クリスマス』っぽい事をした記憶がないかな・・。」
そう苦笑いを浮かべながら、頭を掻く。
実際両親は忙しく、今も海外で働いている。
記憶でもあまり両親とクリスマスを過ごした事はなく、成長するに
連れて、さらに家族で過ごすクリスマスというのはなかった気がする。
「そういう草壁さんは、クリスマスの思い出とかある?」
「思い出ですか?色々ありますよ?ジングルベルの歌とか、トナカイさんとか。
ケーキや七面鳥、それにサンタさん。ホワイトクリスマスなんか、ロマンチックですよね。」
「な、何か凄い豪勢だね。」
「そうですか?」
七面鳥がクリスマスに並ぶ家って、本当にあるんだ。
海外だけかと思ってた・・。草壁さんの家って裕福なんだろうか・・
まさか、クリスチャン?
そんな想像を膨らませていると、草壁さんが俺の手を握ってきた。
「くっ、草壁さん!?」
「でも・・。今年は、貴明さんと一緒に過ごしたいです。
そう・・出来たら、雪が降ってくれないかな。」
草壁さんの頬が少し赤らんでいたのは、寒さのせいだけじゃないだろう。
目を細めながら呟き、そして俯いた草壁さんは、握っていた指を絡めてくる。
その指の動きに合わせて、俺も指を絡める。
手のひらの中で、草壁さんの指が驚いたように反応する。
前を向いたまま顔を赤くしている俺の顔を見ると、草壁さんはクスリと笑った。
「雪か〜・・。なら、照る照る坊主・・はダメだな。『降れ降れ坊主』を作ろうか。」
「それは良い考えです。けど、『降れ降れ』だと不安ですから・・。
『雪降れ坊主』ではどうでしょう?」
「そうだね。うん、そっちの方が効き目ありそうだね。」
「ええ。きっと、今年のクリスマスは、ホワイトクリスマスですよ。」
他の女の子になら「幼稚」とか言われそうな俺の発想に
草壁さんは満面の笑みで応えてくれる。こういう無邪気さも、草壁さんの
魅力なんだろうな・・。ホワイトクリスマスか・・。
草壁さんと一緒ならきっと、良い思い出になりそうだな。
「・・(思い出・・)」そこでようやく気付く。
「クリスマス」+「彼女と二人きり」= の答えに。
「?どうしたんですか?貴明さん、顔が赤いですよ?」
「ん、うん。何でも、うん、何でもないんだ!ははっ、ははは・・」
草壁さんの問いかけに、明らかに同様した。
「熱でもあるんですか?」と顔を覗き込まれ、顔から変な汗まででる始末だ。
確かに草壁さんとは・・その、屋上で・・。
いやいや、違う。決してそういう事を期待している訳では・・!
いや、まぁ・・期待してない訳じゃないけど。
いや、そうじゃなくて!
自分への自問自答を繰り返す俺を見て、草壁さんの指が解かれる。
「貴明さん。」
「いや!違うんだ!俺は決してそんなやましい事を・・!」
自分の考えを打ち消す様に、草壁さんに両手の手のひらを向けて左右に振る。
俺も小牧の事は言えないな・・傍からみたら、まるっきり小動物だ。
そんな俺に向き直ると、草壁さんは一言だけ聞いた。
「あ、あの・・。貴明さん。今日、これから予定とか・・ありますか?」
「・・・・・・え?・・・・・」
「あ、あの・・。貴明さん。今日、これから予定とか・・ありますか?」
「・・・・・え?・・・・・」
「・・遅いなぁ、草壁さん。」
部屋の時計は、5時を指している。
草壁さんと別れて1時間程経っていた。
「けど、まさか草壁さんが夕食を作ってくれるなんてなぁ。」
独り言を呟き、自然と笑みがこぼれてくる。
帰り道、なかなか切り出せなかった草壁さんの問い。
それは、俺の夕食の事だった。
「あの、もし今晩の夕食が決まっていない様でしたら。
私が・・貴明さんの家に夕食を作りに行っても、構いませんか?」
遠慮がちな、しかし決意のこもった表情。
その表情から、一体何を切り出されるのかと緊張していた俺は
見事に肩透かしを食らった様だった。
勿論、断る理由などなく、草壁さんの好意に甘える事にした。
そこで、「せめて買い物に付き合う」と俺は申し出た訳だが・・
「だっ、ダメです!貴明さんは、お家で待っていて下さい。
買い物を済ませたら、お家にお伺いしますので・・。」
そう言って、草壁さんは丁寧なお辞儀をすると、商店街の方に駆けて行ってしまった。
そのあまりの素早さに呆気に取られていた俺は、草壁さんの言う通りに
家まで帰り、こうして待っている訳だ。
それにしても、そろそろ空腹が抑えられなくなってきたんだけど・・。
(ピンポーン)・・玄関のチャイムが鳴り響いた。
「お邪魔します・・。」
「いらっしゃい、草壁さん。とりあえず上がってよ。」
「あ、はい。」
草壁さんは控えめにドアを開けると、キョロキョロと中の様子を伺った。
といっても、家には俺一人しかいないんだけど。
制服は、草壁さんいわく「メイドさん」な服に着替えられている
手にはスーパーの袋とトートバッグ。
草壁さんは靴を揃え、玄関に上がる。・・いや、俺の靴まで揃えなくても。
「じゃあ、早速準備しますね。あ、貴明さんはリビングで
くつろいでいて下さい。」
「いいの?何か手伝おうか?」
「いえ、ゆっくりしてて下さい。キッチンも『絶対』覗かないこと、いいですね?」
「・・はい。」
「絶対」と語気を強めて、俺の提案は却下される。
草壁さんは両手に持っていたスーパーの袋と、トートバッグを床に降ろす。
スーパーの袋は買ってきた食材が入ってるんだろうけど・・
トートバッグには何が入ってるんだろ。
「よいしょっ・・と。」
「・・何で割烹着。」
それは白無地の飾り気のないエプロン・・ではなかった。
今ではあまり見かける事がなくなった、日本の台所の定番(?)割烹着。
それを身に着ける高校生の女の子。これもあまり見かけない光景だ。
「おかしいですか?『割烹着は大和撫子の嗜み』って、田舎のおばあちゃんも
言ってたんですけど・・。」
「いや、おかしくはないよ。最近見かけないからね、割烹着。
うん、でも・・似合ってるよ、草壁さん。」
長い黒髪と白い肌に割烹着は、確かに似合っていた。
草壁さんは少し頬を朱に染めると、いそいそとバッグから白い布を取り出す。
・・三角巾まで持ってきてたんだ。
髪を後ろで束ね、三角巾で頭を覆う草壁さんは、「お母さん」という言葉が似合いそうだった。
トントントン・・と、包丁の音が心地良く部屋に響く。
チラッと後ろに目を向けると、鼻歌混じりで料理をする草壁さんと目が合った。
草壁さんは「むむっ。」という顔をすると、顔の前で手で「×」印を作る。
いや、包丁持ったままだと危ないから。
「貴明さん。」
「ん?何?」
「ふふっ、呼んでみたかっただけです♪何かこうしてると、新婚さんみたいですね。」
そう言って笑った草壁さんの笑顔は、とても幸せそうだった。
俺はあまりの大胆発言に顔を覆って照れるが、指の隙間から草壁さんの
笑顔を見て、「そうだね。俺もそう思うよ。」と心の中で呟いた。
いいねー
514 :
名無しさんだよもん:2008/12/13(土) 22:20:34 ID:07lxou4lO
ここまで書いて、規制かかったorz
さげるの忘れました。申し訳ありません
メイドロボのSS多すぎワロタ
投稿者の人数が減ったせいだろ
「はい。出来ましたよ、貴明さん。」
そう言って草壁さんが、テーブルまで皿を運んでくる。
シチューなどを盛る様な皿に入っていたのは、ロールキャベツだった。
淡く緑をしたキャベツの葉が、薄い琥珀色のスープに浮かんでいる。
巻いたキャベツを押さえる為に使っているのも、赤や黄色の
カラフルな楊枝だった。まるで、子供のお弁当に入っていそうな
その楊枝の色彩が、温かみを増している。
「美味しそうだね、草壁さん。やっぱり
草壁さん、料理上手なんだね。」
「やっぱり、ですか?私、料理らしい料理は今日が初めてですよ?
色々と試してみて、それでも中々上手くいかなくて・・。」
「頑張ったんだね、草壁さん。」
「それはそうですよ。だって、貴明さんに食べてもらうんですから。
美味しくないと、貴明さんに申し訳ないですし・・。」
草壁さんは、ナイフやフォークを並べながら、照れ笑いを浮かべる。
恐らく、家で試行錯誤していたんだろう。料理本などのレシピは
「一般的に美味しい」作り方は紹介してるものの、それでも
草壁さんは納得いかなかったんだろう。
正直、嬉しかった。草壁さんが、自分の事を考えて料理の練習をしてくれていた。
それだけでも十分嬉しかったが、草壁さんは続けた。
「それで、小牧さんに料理の事を伺っていたんです。
調味料とか火加減とか、普段からなさっている方に聞くのが一番
だと思ったんです。」
「委員長・・小牧さんに?」
そういえば、今日の昼間に学校で・・。
あの時は何を話しているのか分からなかったけど、そういう事だったのか。
それじゃ、あの手帳には・・
「ええ、小牧さんが自分なりにレシピをメモしてきてくれて。
一緒に話し合って、普段貴明さんがどんな味付けの物を食べているんだろう、とか。
どうすれば美味しく作れるのか、とか聞いていたんです。
小牧さんは良く料理を作るらしくて、私が聞いたら快く教えて下さって。」
「そうなんだ。けど、小牧さんが料理好きだったなんて。初めて知ったよ。」
小牧はどっちかと言えば、食べている方が印象に残っている。
チョコレートだったりアメだったり、いつも何か口に入れている。
せわしない仕草はハツカネズミだが、時にリスでもある訳か。
「さ、頂きましょう。」
「そうだね。じゃ、いただきま〜す。」
二人で向かい合う様にテーブルにつくと、両手を前で合わせる。
ナイフでロールキャベツを切り分け、フォークを使って口まで運ぶ。
ほのかにスープの匂いと、肉汁の匂いが香ってくる。
「ん・・。」
「・・・どう、ですか?」
草壁さんがさっきまでの笑顔ではなく、緊張した面持ちで俺を見てくる。
手を膝に置き、じっと俺の口の動きを見ながら、ゴクッと喉を鳴らす音が聞こえる。
俺は口の中で柔らかなキャベツと挽肉を時間をかけて味わい、そして飲み込んだ。
草壁さんが心配するまでもなかった。
「うん、美味しいよ。スープもお肉もしっかり味がついてるし。
草壁さんが頑張っただけあるよ。」
「本当ですか?」
「本当だって。これなら、毎日でも食べたいくらいだしさ。」
実際、草壁さんのロールキャベツは美味しかった。
見た目も美味しそうだが、キャベツにも挽肉の下味がちゃんとついている。
挽肉にも玉葱やショウガ、ほんのりと醤油の香りもする。
「嬉しいです。貴明さんに喜んでもらえて・・。それじゃあ・・。」
「え??何?」
「はい、あ〜ん。・・貴明さん、はい。『あ〜ん』ですよ?」
草壁さんは自分の皿からロールキャベツをフォークですくうと、
俺の顔に近づけてくる。スープがしたたるのを、片手に持ったナプキンで
受け止めながら、草壁さんは笑顔で「こうです。」と口を開ける。
その仕草にドキッとしながらも、言われた通りに口を開けた。
フォークが口の中に入り、ロールキャベツを残し、去っていく。
「ふふっ、『あ〜ん』なんて初めてしました。
どうでしたか?貴明さん。『あ〜ん』された事あります?」
「んんっ、そ、そんなのある訳ないよ。」
「そうですか。それじゃ、もっとしてあげますね。」
そう言いながら草壁さんは再びフォークで切り分けたロールキャベツをすくい、
俺の方に持って来た。俺の口の中にはまだ、先程のロールキャベツが残ってるんだけど・・
「草壁さんも食べなよ、折角作ったんだしさ。
それに、俺まださっきの飲み込んでないし。」
「仕方ないですね。それじゃ・・はむっ・・。」
「(そういえばあのフォークって、俺の口に・・)」
草壁さんの口に入り、しばらく出てこないフォークを眺めながらふと思った。
「間接キス」だと。しかも草壁さんは知ってか知らずか、フォークを口に入れたままで
幸せそうに口を動かしている。何か分からないけど、その様子が妙に・・
「ん・・。?貴明さん、どうしました?何か顔が赤いですよ。」
「いや・・何ていうか、その。そのフォーク・・。」
「フォークがどうかしました?」
そう言って首を傾げると、草壁さんは何も差さってないフォークを口にくわえる。
未だにフォークの件を理解していない様子で、草壁さんは唇を動かす。
ほ、本当に気づいてないんだろうな・・。まだ「?」が頭に浮かんでそうな表情だ
草壁さんは分かってない様子だったが、何かに気づいたらしく
「ど、どうしたの?」
「貴明さん、頬に何かついてますよ?」
「え?何処?さっきのキャベツの欠片とかかな?」
そういわれて、慌てて頬を指でなぞってみる。
何かついてるのか確認するが、特に指には何もついてない。「何もないよ?」と言おうとした瞬間。
「っ!!」
草壁さんの顔が、俺の顔を覆う。黒髪がなびき、唇に温かみを感じる。
ロールキャベツの味に、草壁さんの髪からシャンプーのような匂いがする。
それがキスだと気づくのに、時間はかからなかった。
驚いて半目を開けると、少し潤んだ草壁さんの瞳がこちらを見ていた。
無邪気な瞳ではなく、どこか妖艶ささえ漂わせる瞳。
その瞳が細くなったかと思うと、唇がゆっくり離れていった。
「・・貴明さん。・・間接キスだけで、良かったんですか?」
523 :
名無しさんだよもん:2008/12/14(日) 11:12:39 ID:icKKMU0q0
ナイスっ!!!
こういうのが欲しかったんだぁっぁぁああ
草壁さんのSSは本当に甘いのばっかりで有難い
台詞内での改行に違和感を感じたけど面白かった
>改行
メモ帳に書いていまして、板上で横に伸びてしまうのではないか、と思い、変な改行になっていますね。
また勉強して、読み辛さを解消したいと思います
ぐはあっ
あめえええええwww
今日は草壁さん祭りという事で良いかな?
というわけでキャラ被りスマソ
今年ももう後一月を残すばかりとなった冬の休日。
草壁さんが朝から我が家にやってきた。今日は一日、夜まで一緒に過ごす約束をしていたから。
だらしない男の一人暮らしを見かねた草壁さんは、まず掃除に洗濯にと働いて家中をぴかぴかに
磨き上げた。
俺も庭掃除を申し渡されて、庭に積もった落ち葉を集めたりしたし。
そしてお昼は草壁さんが手料理をご馳走してくれる事になったので、二人でスーパーまで
買出しに出かけたのだった。
◇
「貴明さん、大丈夫ですか? 重くありません?」
「これくらい平気平気。それにこういう時は男が荷物を持つのが当然……ってタマ姉は
言うと思うから。」
「ふふふっ。環さんは向坂君だけじゃなくって貴明さんにとっても本当にお姉さんみたいな
物なんですね。」
「まあね。昔っから俺も雄二もタマ姉には頭が上がらないから。」
そう言いながら、俺は手に下げた荷物を持ち直した。
俺は両手に大きな荷物をぶら下げながら、草壁さんと二人で家路についていた。
辺りは冬の訪れを感じさせる雰囲気で、道端の木々もすっかり葉を落として冬篭りの
準備は万全といった感じだ。
草壁さんもさっきから手袋をしていない手に白い息を吹きかけていてちょっと寒そうだった。
ぴー……
「あれ、何の音だろう……」
「えっと……あれですね。」
そう言って、草壁さんは道の先を指差した。
道の先から軽トラが蒸気上げながらゆっくりとこちらに向かってきていた。
い〜しや〜きいも〜
おいも〜おいも〜おいもだよ〜
ほっかほかの〜おいもだよ〜
独特の節回しの売り声を流しながら、軽トラは俺たちの目の前まで近づいてきた。
「……」
「……食べたいの?」
ちょっとだけ物欲しそうな表情をしていたので聞いてみると、草壁さんはあわてて否定した。
「いっ、いいえ、そんな事ありませんよ。」
「別に遠慮しなくても良いよ焼き芋くらい。暖まるしね。」
「でも……お昼が食べられなくなっちゃいますし。」
そう言って草壁さんは俺が提げた袋に目を向けた。
中には草壁さんが作ってくれるお昼と晩御飯の材料が詰まっている。
そうこうしているうちに、軽トラは横を通り過ぎていってしまった。
「あ……行っちゃった……」
「いっ、いいんですっ。お芋は女の子の敵なんです!」
えらく力を入れて草壁さんが言い切る。
「太っちゃいますし……それに歩きながら大きな口あけて頬張ってるところとか知らない人に
見られちゃうと恥ずかしいじゃないですか。」
「うーん……俺は男だから、そう言うのいまいち解らないんだよな。」
「もっと女の子の気持ちを勉強してください。」
「はい……」
「じゃあ……私はさっきから貴明さんにして欲しい事があるんですけど、解りますか?」
「えっ?」
……草壁さんは俺の顔をじっと見上げている。
まさかこんな人通りの多いところで……キス……とかじゃないよな。たぶん。
散々頭を絞った後で、さっきから草壁さんが何で素手なのかに気がついた。
両手にぶら下げていた袋をまとめて右手に持ち帰ると、左手を差し出す。
「はい、正解です。」
そう言って草壁さんは右手を出して俺の左手を指を絡めるようにしてしっかりと握った。
そのまま二人で並んで歩き出す。
「♪〜」
草壁さんはとても楽しそうに歌を口ずさみながら並んで歩く。
自然と俺も楽しくなってくる。
草壁さんといるといつの間にか心があったかくなる。
それは草壁さんが俺のことをたくさん「勉強」して、俺が楽しくなるようにいつも考えている
からなんだろうと思う。
だから、俺も草壁さんをなにか喜ばせることは出来ないかと考えた。
……そうだ。
◇
美味しいお昼をご馳走になった後で俺は庭に出た。
庭の真ん中には午前中に集めた落ち葉の山がある。
「貴明さん、何やってるんですか?」
俺が庭に出たのに気がついた草壁さんも庭に出てきた。
「焚き火するんだよ。」
「焚き火ですか?」
「そ。これを入れてね。」
そう言って、アルミホイルで包んだ物を見せた。
「あ、」
「芋を焼くんだ。この間タマ姉の所からおすそ分けで貰ったのがいっぱいあるんだ。」
「で、でも……」
「さっきはああは言ってたけど、本当は食べたかったんでしょ?」
「たしかに魅力的でしたけど……」
草壁さんはまだちょっと躊躇しているので、ちょっと後押しする。
「一緒に食べようよ。それに家なら他の人の目も気にならないでしょ?」
「じゃ、じゃあ……ちょっとだけですよ?」
草壁さんは躊躇しながらも……焼き芋の魅力に篭絡されたようだった。
◇
ぶすぶすと燃える落ち葉の前、草壁さんと縁側に腰掛けて二人で芋が焼けるのを見守り
ながら過ごす。
北風は流石に冷たいけど、今日は天気も良いので日当たりの良い縁側では薄い上着を羽織る
程度でも十分過ごしやすい。
「なんだかこうしていると、お年寄りの夫婦みたいですね。」
「ああ、なんかそんな感じ。 ……ばあさんや、なんてね。」
「じゃあ私は、何ですかおじいさん、なんて。」
「二人で渋いお茶すすったりして。」
「いいですね。あっ……ちょっと待っててくださいね。」
そう言って草壁さんは家の中に引っ込んだ。
10分ほどして草壁さんがお鍋を持って戻ってきた。
「お待たせしました。」
「何してたの?」
「これを作ってました。」
そう言って抱えていたお鍋の蓋を開けて見せてくれた。
中にはクリーム色の液体がなみなみと入っていた。
「甘酒かぁ。」
「こういう寒い時はこれが一番です。」
「でも酒粕なんてあったっけ?」
「さっき夜の粕汁用に買ったのを使っちゃいました。」
草壁さんはそう言ってぺロッと舌を出した。
「じゃあ、夕食のときに困るんじゃないの?」
「また夕方にお買い物に行けば良いじゃないですか。夕方はタイムセールなんかもやって
ますから
丁度良いです。」
「まあ、それもそうか。夕方も買い物デートとしゃれ込みますか。」
「はい。約束ですよ。」
そう言って二人で指切りする。
他愛も無いことだけど、草壁さんは本当に嬉しそうだった。
芋が焼けるのを待つ間、カセットコンロで暖めている鍋から甘酒をカップに注ぎつつ、
二人でちびちび飲んで話をしながら芋が焼けるのを待つ。
特に草壁さんは猫舌なので話の合間にふうふうやりながらで、ほとんど舐めるようなペースだ。
「あとちょっとかなぁ……」
開始から1時間ほど経って、燃え尽きかかっている焚き火を見ながらなんと無しに呟く。
でも草壁さんからの返事がなかった。
「草壁さん……?」
ぽふ。
返事の代わりに軽い重みが俺の肩にかかる。
横を見ると草壁さんはカップを持ったまま俺の肩に頭を預けて眠っていた。
待ちくたびれたのか、はたまた甘酒の飲みすぎで酔いが回ったのか。
どちらにしても起こすのは忍びないので、草壁さんが手に持っていたカップを取り上げて
横に置くと、あとはなるべく身動きしないようにする。
すぐ傍には草壁さんの小さな頭がある。さらさらの黒髪はいつも通り綺麗に櫛が通っていて、
シャンプーのいい匂いがした。
良く見ればまつげも長い。頬っぺたは白くてすべすべ。
寝息を立てている口元は薄く開いていて、薄く化粧でもしているのかつやつやとした綺麗な桜色だった。
春先に再会してからそれなりの時間を一緒に過ごしてきたけど、こんなに近くで見ることは滅多に無い。
まじまじと観察していると、やがて眠りから覚めたのか草壁さんがもじもじと動き始めた。
「ん……あ。」
観察していた俺の目と、草壁さんの黒く澄んだ大きな瞳が合った。
「えっと……」
「あっ、す、すいません貴明さん。あっ、あのっ、私変な顔とかしてませんでした?
変な寝言とか……」
そう言いながら草壁さんは顔を撫で回してあたふたしていた。
それがあまりに滑稽だったので俺は思わず笑ってしまった
「笑うなんて酷いです。」
「あっはッはっ、ごめんごめん。別に変な顔はしてなかったよ。寝言もいってなかったしね。
それに……」
ふくれっ面の草壁さんのご機嫌を取る意味も込めて、俺はさっき見た寝顔の素直な観想を答えた。
「寝顔がすごく綺麗だった……」
「そ、そんなお世辞いってもダメです。女の子の寝顔を観察するなんてルール違反ですよ。」
「別にお世辞じゃないんだけどな……それはそうと、ほら、焼き芋も焼けたんじゃないかな?」
そう言いながら俺は焚き火を指差す。
残り火がまだくすぶっているけど、枯葉の殆どは燃えて尽きて埋めてあった芋のアルミホイルの
鈍い輝きが覗いていた。
◇
軍手を穿いて、枝で燃えカスの中から芋を掘り出して手に取る。
やけどに気をつけながらアルミホイルを剥がすと、少し焦げ目のついたさつまいもが姿を現した。
次々に掘り出して縁側に並べて少し冷ます。
「ちょっと多すぎじゃないですか?」
かれこれ6本ほど並んだ芋は二人で食べるには確かに多い。でも……
「いや、なんかね……予感が……」
「ああっ、タカ君やきいも焼いてる。このみも食べたいよ。」
「あら、大丈夫なんじゃないかしら。まさか二人で全部食べるとか言わないわよねぇ、タカ坊?」
「あ、環さんにこのみちゃん。」
柚原家の庭から顔を見せたのはタマ姉とこのみだった。
「ほら、やっぱりね。こういう事には鼻が利くんだ……いっ、いたたたたた!」
予想通りの展開にそう言うといきなりタマ姉に頬っぺたをつねり上げられた。
「あら、まるで私達がいやしいような言い方ねぇ。私はそんな風にタカ坊を教育したつもりは
無いんだけど。」
そんな俺をあわてて草壁さんがフォローしてくれた。
「ま、まあまあ、環さん。ほら、焼き芋が冷めちゃいますし。」
「……そうね。タカ坊を問い詰めるのは後でも出来るし、ご相伴に預かりましょうか。」
タマ姉とこのみは雄二と春夏さんの分も入れて4本の焼き芋を渡すと、
「二人のお邪魔しちゃ悪いわ。」と言って、このみを連れて柚原家の方へと戻っていった。
残った俺たちは芋を1本ずつ分けて食べ始めた。
火傷に用心しながら芋を折ると、黄金色の身が顔を覗かせて湯気が立ち上がる。
ぱりぱりの皮をむきながらかぶりつくと芋の風味と甘みが口いっぱいに広がった。
「良く焼けてるよ。」
「はい、じゃあ……あっ、熱っ!」
熱々の焼き芋は猫舌の草壁さんにとっては熱すぎたみたいで、かぶりついたとたんに小さい
悲鳴が上がった。
「大丈夫?」
「舌をちょっと……」
草壁さんの舌を見るとちょっとだけ赤みが増していた。
「ちょっと赤くなってるけど……」
草壁さんはなぜかじっと俺のほうを見ている。
「えっと……何?」
「あの……舌を火傷しちゃいましたので……」
……正直、草壁さんが何をしてほしがっているのか見当がつかなかった。
「降参……どうすれば良いのかな。」
「……貴明さんが……冷やしてくだされば直るかも……キス、とか……」
……草壁さんの顔がほんのり赤くなった。目線もちょっぴり泳いでたりするし。
「えっと……じゃ、じゃあ……頂きます。」
思わぬ提案に俺は変な台詞を口走りながら、そっと草壁さんと唇を重ねた。
少しだけ舌を入れて触れ合わせる。
「ん……」
「えっと……こんなもんでどうかな。」
「はい……もう大丈夫です。貴明さんのキス……甘かったですよ。」
そう言ってくすっと笑った。
「それは……焼き芋の味じゃないかな。」
「そうですね。貴明さんが焼いてくださった焼き芋の味です。」
草壁さんはそう言って、今度はふうふうと良く冷ましてから焼き芋にかぶりついた。
「美味しいです。焼き芋屋さんのお芋より。」
「特別な事はして無いけど……」
でも草壁さんは頭を振って、そしてにっこり笑って言った。
「いいえ、貴明さんの愛情の分、焼き芋屋さんのお芋より甘くて美味しいんですよ♪」
〜おまけ〜
草壁優季のお料理教室「ご家庭で出来る美味しい焼き芋の作り方」
ちゃんちゃかちゃかちゃかちゃんちゃんちゃーん♪
ちゃかちゃかちゃんちゃん、ちゃん、ちゃん♪
「こんにちは皆さん、草壁優季です。」
「アシスタントの河野貴明です。」
「今日はご家庭で出来る美味しい焼き芋の作り方を伝授しちゃいます。
コツは忍耐ですよ。ではまずお芋を用意しましょう。貴明さんお願いします。」
「はい。これですね。」
「はい、今日は紅あずまを用意しました。焼き芋といえば金時が有名ですが、紅あずまなど
多少安めのお芋でも美味しく出来ます。」
「で、このお芋はどうすれば良いのかな?」
「お芋を用意したら、オーブンレンジを準備します。オーブンモードで温度を200度に
設定したら、天板にお芋を載せて入れます。
この時に直にお芋を置いてしまうと、お芋から出た糖分で焦げて天板にくっついてしまう事が
あるので、アルミホイルを敷いておくと良いですよ。」
「よっと……入れたよ。次は?」
「そうしたらタイマーを20〜30分に設定します。時間はお芋の大きさなどにもよりますので、
何度か焼いて感覚を掴んでください。」
〜30分後〜
ちーん。
「30分経ったよ。もう焼き上がり?」
「いいえ、ここでお芋をひっくり返して、あと20分ほど焼きます。」
「まだ食べられないんだね……」
「はい。美味しいお芋を食べるために今はひたすら我慢です。」
〜20分後〜
ちーん。
「今度こそ焼き上がりかな?」
「はい。取り出して確かめてみてください。」
「よっと……二つに折ってみると……おお、見事な黄金色。」
「じっくり火を通す事でお芋のデンプンが糖化して甘くて透き通った黄金色になるんです。
皆さんも試してみてくださいね。とっても美味しいですよ。ではまた。」
ちゃんちゃかちゃかちゃかちゃんちゃんちゃーん♪
ちゃかちゃかちゃんちゃん、ちゃん、ちゃん♪
味覚の秋には遅いですが、寒くなると美味しい女性に人気の焼き芋ネタで。
焼き芋をはふはふしながら食べる草壁さんは可愛いと思うんだ。
ちなみにタイトルは芋とフレンチキスから。
フレンチポテトでてこないぞと怒らないでねw
あめぇぇぇぇぇ
だがいいw乙
ぐはあっ
草壁さんとお芋食いてえぇ
俺はよっちと食いてえぇ
なんか書いてる内に長編になってきた・・もうSSじゃないよ、これorz
>>543 案ずるな。『河野家にようこそ』は全91話でもSSだ。『桜の群像』も文庫一冊分くらいあるな
書庫さん乙ですm(__)m
この物語はHMX−17三姉妹と愉快な仲間達の平凡な日常を淡々と描くものです。過度な期待はしないでください。
◇ ◇ ◇
「―― ふぅむ、なるほど。わかり申した。由真めに伝えてみましょう。」
チン―― と、来栖川家の執事、ダニエルこと長瀬源蔵は、話し終えるとその古風な電話の受話器を置いた。
直後、パタン、と玄関の扉が開く。「ただいま〜。」 と入って来たセーラー服の少女は、彼の孫娘、由真。
「おお、おかえり。」 源蔵はにっこりと口髭をたたえた口元を緩ませた。
広壮な居間を通って自分の部屋へと向かう由真。
その後姿を目で追い、おもむろに、コホン、と咳払いをしてから話を切り出す源蔵。 「……あー、由真のぉ……」
ピタと由真の足取りが止まる。源蔵の方へ振り向いた。「……ん?何、おじいちゃん?」
「いくつか話があっての。まず、マウンテンバイクの件じゃが」
「あ〜その話はもういいの。じゃ着替えるから」 と言って、また部屋へ歩み出す由真。
「まぁそう言わんでの、聞いてくれんか。」 苦笑しながらなだめる源蔵。
「ん〜もう。」 と、眼鏡に挟まれた眉間に縦皺を寄せ口をヘの字にし、腕を組んで源蔵に向き直った。
「のう由真。もう小僧を許してやってはやれんかの?来栖川電工の方からも補償の話が出とるし、まぁその辺で手打ち
にしてやってはどうじゃの?」
キッと眉を吊り上げる由真。「そういう問題じゃないの。あの、にやけたあいつに誠意を見せて欲しいの。」
肩をすくめる源蔵。「ふむ……小僧、別段にやけてはおらんかったがの。いまいち頼りない気もするが、割と好印象じゃ
ないか。聞けば無理からぬ事情と思うし……ワシもな、若い頃は随分と無茶をやったもんじゃ。」
「なんであいつらの痴話喧嘩にあたしが巻き込まれなきゃなんないのよ!?あいつ、言うに事欠いて、“そういう運命
なんじゃないか”、とか言ってっ!」
「ふ〜む……まぁ、確かにそういう運命じゃたんじゃろう。間違ってはおらんな。」
「―― ちょっとっ!?おじいちゃん!何よそれっ!?」
「いやまぁな……由真、なんでそこまでムキになるんじゃ?……さてはおぬし、実は小僧に惚れとるんじゃな?」
―― ムッキーッ!額の青筋をピクピクさせ、掲げた両手をわなわなと開いたり閉じたりしながら、由真は激昂した。
「ふざけないでよおじいちゃんっ!なんであんなやつ―― もう知らないっ!」
そうして踵を返し、さっさと自部屋に向かおうとする。
「まぁまぁまぁ!ちと待てい。それはさておいての、話は他にもあるんじゃ。」
ム〜……、と、再び不機嫌MAXの表情で、向き直る由真。
「実はの、やはり来栖川家の執事をしとる親戚の源四郎さんから電話があっての。……知っとるじゃろ?」
「……セバスチャン?」
「そうそう。なら来栖川の綾香お嬢も知っとるな?お付きのメイドロボの調子がおかしいとかで、短期間、代わりのメイ
ドを探しておるんだそうじゃ。」
「ふ〜ん。」 さして興味がないといった風に、受け流す由真。
「そこでじゃ……由真、おぬし……メイドをやってみんか?きっと、ダニエルを目指すよい勉強になると思うぞ。」
―― イッ!?と、思わず冷汗をたらしてのけぞった由真。
「長瀬の一族はの、結局皆、来栖川との関わりの中で生きていくしかないんじゃ。それも執事やメイドのような形での。
源四郎さんのご子息もな、執事は継がなかったが、結局来栖川電工でメイドロボなんぞ作っとるようだしのぉ。」
「―― もう、おじいちゃんっ!あたしはダニエルにはならないって言ってるでしょっ!?」
由真はそういってプイッとそっぽを向き、今度こそ本当に居間を後にし、階段をトコトコと登り始めてしまった。
「まぁ、メイドの話はちと考えてくれ。」
由真の後姿に語りかけると、やおら源蔵は胸に手を当て、妄想に耽り始めた。
「さぞかしメイド衣装は似合うじゃろう……おお……小さい頃の、可愛かった由真めの姿が思い浮かぶ……『ダニエル
になる〜。なる〜。なるぅ〜!』 」
◇ ◇ ◇
姫百合宅。
「うわぁあああ〜〜んっ!ウチ、犯されたぁあああ〜〜っ!イルファのアホォおおお〜〜っ!!」
自分の胸に顔を寄せて泣きじゃくる瑠璃の頭を、よしよしと撫でながら慰める珊瑚。
「犯されたって……瑠璃ちゃん、処女奪われたん?」
心配顔で訊ねる珊瑚。しかし、瑠璃はぷるぷると頭を振る。
「う、ううん……大丈夫みたい……前は。……でも、でも……後ろの穴、奪われてもうた……グスッ……」
「う……後ろ……」
珊瑚は絶句し、両手で口を覆って真っ赤な顔になった。 「い……いっちゃん、マニアックやぁ……」
―― ピルルルルッ!
再び鳴った電話が、唐突に場の雰囲気を一変させた。のんびり屋の珊瑚らしからぬ機敏な動作で、受話器を取る。
「はい、姫百合です。―― あっ、おっちゃん。ごめんな〜さっきは途中で忘れてもうて」
―― 予期していた通り、電話の主は、長瀬のおっちゃん。
電話越しに聞こえてくる喧騒は、HM開発課が相変わらずてんやわんやの大騒ぎである事を示していた。
珊瑚は、つい先刻までのイルファの様子を長瀬に話した。くだんのウイルスに感染してしまったのは、どうやら動かぬ
事実と言えそうだった。
“う〜ん、滅多にデータリンクなんて繋がないイルファが、よりによってこんな時に……色んな意味で宜しくない状況だ
な、それは……” と、長瀬の弱りきった声が。
「どんな風にあかんの〜?」 訊ねる珊瑚。
……ざっと受けた説明は、こうだった。
それは市販機の……つまりは、長瀬が作ったAIを載せた機体を主対象として放たれたウイルスで、その症状を惹起
する要因は、主に感覚器への刺激。そしてAIに働きかける幻覚作用もあるらしい。
しかし市販機ならば、当座の対処なら可能 ―― それは、オーナーなら誰でも出来る――
―― 動かないよう命令してしまえばいい。ロボット三原則まで侵食する内容ではないからだ。
三原則を載せてない試作機の娘達も、完成間近の駆除プログラムで対処出来る目処は立っているようだ。
……HMX−17達を除けば……
社外品の、実験段階のAIに及ぼす作用までは把握出来ないのは、さすがに無理からぬことだった。
身体構造は若干のカスタマイズはあってもリオンとほぼ同一なので、感覚器への影響は想定出来るが、繊細なDIA
がどんな反応を見せるのかは、全くもって未知数……
三原則が組み込まれてない事も、リスクを大きくしていた。
「えぇぇ〜〜?おっちゃん、そらあかんやないの〜。」
珊瑚が困惑の声をあげる。もとより、それは長瀬に指摘されるまでもなく懸念していた要素だったが。
兎にも角にも、イルファの居場所の把握と、あと、ミルファとシルファの感染の有無の確認を急ぐよう促がした長瀬。
「うんわかったわ〜。」 と珊瑚。
珊瑚はもう一つの依頼も受けた―― これは少々骨の折れる話で、データリンクシステムに介入し、感染したメイドロボ
達をリモート下に置いて欲しい、というもの。
そうやって押さえておいて、駆除プログラムを一斉ダウンロードしようという目論みだった。HM開発課でもそれは行っ
ているが、いかんせん人手が足りなかった。珊瑚なら10人分は補って余りある。
「うん、任せてや〜。」 と、胸を叩く珊瑚。―― そうして、当該の機体のIDのリストが次々に送られて来た。
瑠璃は珊瑚の隣で目をパチクリさせながら聞き入っていた。やがて珊瑚が電話を終えると、口を開く。
「なぁ……イルファ、ビョーキなんか?」
「うん……」 と、珊瑚。「はようつかまえんと、あかんみたい。」
瑠璃は押し黙り、すこしの間思案していた。それからまた話し出す。
「イルファ、きっと、貴明んとこやわ。」
それを聞き、コクリと頷いた珊瑚。
瑠璃は受話器を握り、プッシュダイヤルを叩いた。番号は―― 河野家 。
プルルルル……プルルルル……20回以上鳴らしたが、まったく応答がない。
「ダメや。誰も取らへん。」
「……変やね〜。しっちゃんそんな横着するような子やあらへんのに〜……みっちゃんも、着いてる頃やと思うし……」
顔を見合わせる双子。不安の渦が広がっていく。
「貴明に直接連絡取ればええんちゃう〜?」 と珊瑚が言ったので、瑠璃はこのみから聞いていた貴明の携帯にかけて
みる。
―― しかしこれも、すぐに留守電になってしまう。 「あかんわ。バイト中なんやろか。」
データリンクに繋いで、イルファ達と連絡は取れへんの?と瑠璃は訊ねたが、珊瑚はかぶりを振った。
「ダメや。いっちゃんはもう繋がらんし、まだ感染したかわからんみっちゃんやしっちゃんに、そんなリスク侵せん。まだ
サーバーにビョーキの元残ってるかも知れへんのに。」
―― すると、瑠璃はスックと立ち上がった。そしてセーラー服の上にコートを羽織る。
「瑠璃ちゃん?出掛けんの〜?」 見上げて珊瑚が訊ねた。
「ウチ……貴明んとこ行ってみる!」
「そらあかんよ〜。またいっちゃんに手篭めにされてまうかも知れへんよ〜?」
て、手籠めって……瑠璃はうつむいて、赤面してしまう。
やおら珊瑚は受話器を取って、プッシュダイヤルを押した。
「―― さんちゃん、どこへ?」
「うん。困った時の環さんや〜。」
◇ ◇ ◇
ようやくバイトを終え、貴明は自宅へと向かい始めた。
もうすっかり、辺りは夜の帳が下りてしまっている。吐く息も白くなり始めた。
「う〜寒い寒い……もう冬になっちまうんだよなぁ……」
コートくらいは準備しとけば良かったと後悔しながら、貴明はバイト先でのサプライズを思い起こした。
―― なんだって、春夏さんがウェイトレスなんかやってんだよ―― っ!!?
ウェイトレスの衣装が似合いすぎ。スカート短すぎ。……はっきり言って、若過ぎ。20代と言っても、多分、誰も疑わ
ないだろう。
ああやって、自分の若さを誇示したいんだろうか……このみも大人になれば、あんな感じになるのかな……などと
思う貴明。
春夏さんがバイトしてるから、このみは今日自炊するためカレーの材料買いに行ったんだな、とふと思い当たる。
……カレー ……そうそう、今日はミルファがカレーを作ると言って、張り切ってたっけ。またシルファと衝突してなきゃ
いいけど……
漂うカレーの香りを想像しながら、貴明は家路を急いだ。
◇ ◇ ◇
「……ン……」
霞のかかった意識の中、ミルファが目覚めると、周囲は漆黒の闇。
あるいは、まだ夢の中にいるのではないかと思われた。
「……フンムゥゥ……っ!?」
口元に違和感を感じる。やや意識が晴れ始めると、それは、『さるぐつわ』だと判明した。
「―― ンム〜〜〜ッッ!!」
声が出せない。体の方はというと ―― 屈められ、尻餅をつかせ足を組まされている状態で、無理矢理狭いスペース
の中に押し込まれているのだった。
手足を動かそうとする。しかし……紐で後ろ手に縛られており、足首も同様だった。
力ずくで、紐を引きちぎってしまおうと力を込めるが―― まるっきり、力が入らない。
“あ〜う〜最小電力モードだよ〜。自分で動けないよ〜。”
目に映る光景は真っ暗だが、ぼやけた頭の中は真っ白になってしまう。
なんで、こんな状況になってしまったのか ――
ミルファは、意識を失う前の出来事を、なんとか思い出そうとした―― 。
――――
数刻前。
バタンッ!と扉を開き、ミルファは買い物袋を抱えて河野家の玄関の敷居を跨いだ。
「じゃんっ!河野ミルファ参上〜〜っ!!ヒッキー!今日の夕食はあたしの出番だかんね。ダーリン必殺カレー!……
いやホントに死んじゃったらやだけど……邪魔するんなら、勝負っ!指先一つでダウンよっ!」
―― 威勢良く駆け込んだものの、シーンと静まり返る部屋の中の様子に、思わず拍子抜け。
「あれ?……ヒッキー、いないの?」
居間に入ると、TV画面にはレ−スゲームが映っており、ゲームオーバーの表示が出たまま放置されていた。
「ふふ〜ん、ヒッキーめ〜、この間負けたのが悔しくて練習してたら、また目を回してバタンキューってわけねぇ〜……
ぷぷぷ、逃げ足だけは早いくせに、運痴なんだから〜。」
ほくそ笑み、その辺にシルファが転がってはいまいかとキョロキョロ周囲を見回すが、その姿はどこにもない。
「―― う〜ん……まっ、いっかぁ。」
ドサリと食材の袋を食卓の上に置き、学校鞄をかかえて貴明の部屋へと向かった。トントンと階段を登っていく。
貴明の部屋のノブを握り、カチリと回してそ〜っと開け、隙間から顔だけ伸ばして部屋の中を一瞥する。
すると……
“ふぅん……んぁぁん……んふぅ……んはぁぁぁ……”
呻き声とも喘ぎ声とも聞こえる、奇妙な音。
ミルファは視界を音のする方向にずらしていく。
……見てはいけないものを見てしまった気がした。
ベッドの上に横たわっているのは、紺色と白の上着に、紫のプリーツスカートの背中。そこから伸びる黒いニーソの
足。
―― そして、金髪のお下げ。
彼女は、貴明の枕を胸元に抱えていた。そしてその手は―― スカートの中の、そのまた白いショーツの中の秘部を
まさぐりながら、くちゅくちゅと淫らな音をさせ、卑猥な言葉を喘ぎ声に混ぜて発しているのだった……。
“んぁ!んぁ!んぅ!ご、ご主人様の、逞しいのれす。んぅ!こっ、壊れちゃうっ!シルファのおまんこ、壊れちゃう!
んぅ!んはぁっ!いっ、いっぱい、らして欲しいのぉっ!んはぁっ!んはぁぁぁっ!”
ミルファは思わず目をかっと見開いた―― ヒッキーが、貴明とのえっちを想像して、オナニーしてる――ッ!?
「……シルファ、あんた……」
突然の声にギョッとして、シルファは寝そべった体勢で顔を入り口の方に向けた。 ―― その視線の先には、呆然と
立ちすくむ桜色のセーラー服に桃色の髪。
「―― ぴぎゃっ!ミ、ミルミルッ!―― ぴぃぃぃぃぃっっ!!みっ、見ちゃらめぇぇぇぇええええっっっ!!」
シルファは羞恥に顔を激しく紅潮させながら、バネが弾かれたようにベッドの上で上体を起き上がらせた。
「……シルファ、あんた、なんなの……?貴明をおかずにして、えっちな事口走ってオナニーなんかして……一体
……」
信じられないという表情で、ミルファは問い詰めた。
シルファはぶるぶるとかぶりを振る。そして、切なく身をよじり、瞳をうるませ、哀願するような眼差しで答えた。
「が……我慢れきないのれす……止まらないのれす……手が勝手に、動くのれす……ご、ご主人様と、え、えっちな
事したいのれす……ご、ご主人様の、太いの、シルファのここに、入れて欲しいのれす……い、いっぱい、突いて欲しい
のれす。いっぱい、いっぱい、熱いの、中にらして欲しいのれす……ミ、ミルミル、シ、シルファも、えっちに交ぜて欲し
いのれす―― ッ!」
それを聞くと、ミルファの表情は和らぎ、そして「ふっ。」と口元を緩ませる。腰に手を当てながら、言った。
「なぁ〜んだ。ヒッキーもやっぱり、貴明が好きなんじゃな〜い。ホぉ〜ント、素直じゃないんだからぁ。」
―― しかしそう言った後、急に表情はキッと険しいものになる。
「……でもダメ。貴明は、あたしにプロポーズしたんだから。命懸けで、あたしを追ってくれたんだから。あたしだけを
好きって、言ってくれたんだから……貴明は、あたしだけのダーリンなのっ!!」
しゅんとなり、恨むような表情でミルファを見据えるシルファ。
「……そう。ミルファちゃんはわがままな子。いけない子ね。折角シルファちゃんがみんなで幸せになりたいって言って
るのに。お仕置きが必要みたいね。」
―― 突然の背後からの声に、ギョッとなり振り向くミルファ。
しかし、その瞬間には、既に彼女の背の急所には指がめり込んでいた。「あうっ!?」と呻いた後、急激に視界が暗く
なっていく。
消え去る視界の中に、最後におぼろげに映ったのは、青い髪――
―― お、お姉ちゃん―― 。
ズルッと崩れ落ち、床に横たわってしまう。
「……はぁ、はぁ……イ……イルイル……ッ!?」
絶え間なく襲い来る欲情に喘ぎ声をあげながら、シルファはその様子を唖然として見つめていた。
「……はぁ……はぁ……うふふ。これで邪魔者はいなくなったわ……さぁ、貴明さんを、快楽のエデンへとお連れする
のよシルファちゃん……はぁ……はぁ……」
イルファの瞳は、妖しい光をたたえていた。
――――
そして今、暗所に拘束されて、うずくまっているミルファ。
彼女はようやく、事ここに至った顛末を思い出した。
窮屈な暗がりの中、頭では必死にもがこうとするが、手足はまったくいう事を聞かない。
“……うぇ〜ん、ひどいよ〜お姉ちゃん……なんであたしがこんな目にぃ〜?”
真っ暗な閉塞感が、彼女の不安を更に煽るのであった。
“うわぁ〜〜んっ!暗いよぉ〜狭いよぉ〜恐いよぉ〜〜っっ!!助けてっ!助けてダ〜リ〜ンッ!!!”
(つづく)
投下終了です。
乙乙
由真参戦フラグかこれは
源四郎の息子って言われて源六朗?こと長瀬のおっちゃんが出てくるのにちょっと時間がかかった
559 :
名無しさんだよもん:2008/12/17(水) 00:22:13 ID:6PAXPmu30
優季ssを書いてくれた方に最大限の感謝を!!!
長瀬のおっちゃんは源五郎だよ。
たしか源一郎とか源三郎とか祐介の父親もセバスの息子じゃなかったかな。
フランクと源之助と源次郎は知らん。
俺はダニエルとセバスチャンの違いがよくわからん。
セバスチャンは芹香が源四郎を呼ぶ時の渾名、ダニエルは来栖川家の執事の役名みたいなの。
最初同一人かとは思ったけど、よく見ると顔も違うね。2年経って髭とか伸びたのかも知れないけど。
長瀬一族は面長な容姿に特徴がある。多分モデルとかいるんじゃ。
してみると由真は母親似なのかも知れんねw
正直面白くない
この人いっつも、後半に一応見せ場は作るけど前半中盤が必要以上に暗かったり退屈だったり
何編かに分けられるとつまらない話ばっかり続くから、次を読む気が失せちゃう
コンパクトにまとめて、一気に落とした方がいいんじゃない?
それはそうと、容量見ると、もう次スレ移行の時期かと思うが
そういやそうだね
とっくに目安容量過ぎてるな
被ると嫌なので一応予告
0時までスレ立て報告がなければスレ立てするわ
自分は、自分が思いつかない、書けない話を書ける人は尊敬します。
そしてクリスマス頃に合わせてSS書いてたら、PC壊れてデータあぼんしましたとさ・・
>>562 セバスチャン=長瀬源四郎
ダニエル=長瀬源蔵じゃなかったっけ?
ちなみに、長瀬源蔵の名前は愛佳シナリオの4月21日のイベントで出てくる
(古い図書カードのイベントね)
>>562 由真は母親の方が長瀬。たしか駆け落ち後和解で父親は婿養子じゃないかねえ。
だから普通に父親似。
「―― うめぇ。これはうめぇと思うよ、由真。」
ハヤシライスを一口スプーンで放り込んで、貴明は率直な感想を述べた。
「ふふ〜ん、当ったり前でしょ♪」
頭にはカチューシャ。胸が強調された黒と白の、丈短めのスカートのエプロンドレスに黒いガーターストッキングが目に
眩しい、メイド衣装の由真が腕を組み得意顔でふんぞり返った。
ム〜……と、不機嫌顔でその様子を食卓の脇の椅子から窺うミルファ。
「ご主人様、シルファのお食事と、ろっちがおいしいれすか?」 これまた憮然としながら、貴明を問い詰めるシルファ。
「いや、その……どっちがと言われても……ははは……(汗)」
答えに窮し、困惑して手を後ろ頭に廻す貴明。
「愚問ね。こちとら執事の家系に生まれて、1×年間、だてに人間やってきたわけじゃないんだから。経験値とか機微
とか、所詮付け焼き刃のメイドロボさん達と比較されるのは不本意よね〜。」
そう言って、由真はニヤリと白い歯を剥き、それがキラ〜ンと光る。
「ムッカ〜ッ!」
「むきゅううううううっ!」
「……しかし由真さ、こんだけ作れるんなら、何も俺んちでメイドの練習なんかする必要ないじゃん?」
貴明が怪訝な顔で訊ねた。
「ひっ……必要あんのよ!相手は来栖川のお嬢様。おじいちゃんに恥をかかせるわけにはいかないの!」
焦ってムキになりながら由真が返す。
「でもさ、そんだけ大きなお屋敷なら、専属のコックくらいはいるよね?調理の心配までする必要ないじゃん?」
―― イッ!?と、貴明の指摘に大袈裟に後ずさる由真。
「それにさ〜、もうセリオお姉ちゃん直ってるって言うし、時間短いバイトでそんなやる事ないんじゃない?」
「そもそもご主人様の舌と、お金持ちの舌じゃ、基準が違うのれす。ま、シルファは優秀なめいろろぼれすから、ろっち
にも対応可能れすが。」
「―― うっさいわねっ!どんな突発事態にも対応出来るよう準備しておくってのが執事の家の常識ってもんなのっ!」
くわっ!と一喝する由真。
「……で、河野貴明。これも食べてみて。」
おもむろに、鍋からスープをよそり、貴明の前にそれをコトリと置いた由真。
それをまじまじと見つめる貴明。
―― どこか漂う、独特の刺激臭。
記憶を失う前のミルファが持参してきた弁当ほどではないが、あれと同種の、危険な雰囲気が感じられる―― 。
「おい由真、これ何だ?」
「何って―― 普通にメキシコ風のスープ。結構練習して、自信あるんだから ―― 四の五の言わずに、さっさと口に
しなさいよっ!」 手を腰にして、顔を突き出す由真。
はいはい……と、不承不承を極力顔に表さないよう気を遣いながら、貴明はスープをスプーンで一さじすくい、口に
含んでみた。
…………
…………
「クワァ〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
ややインターバルを置いてから、だらだらと顔中から汗が垂れ、赤くなった後に青くなり、やがて白目を剥いて悶絶
し、椅子ごとバタンッ!と後ろに倒れ込んだ貴明。
「ダッ、ダーリンッ!?」
「ごっ、ご主人様ぁ〜〜っ!?」
ミルファとシルファが慌てて駆け寄る。ぶくぶくと泡を噴いて倒れている貴明。唇が数倍に腫れ上がっていた。
「あちゃーっ……。綾香さん、辛い四川ラーメン好きだって聞いたから、どのくらいが丁度いいか貴明で実験してみた
んだけど……ちょっと、ハバネロ入れ過ぎたかしら。」
そう呟いて、横たわる貴明を一瞥する由真。
「―― まっ、いいっかぁ。骨は埋めてあげるかんね〜河野貴明♪」
(おしまい)
とりあえず埋め
はいはいおしまいおしまい