AD無視&1週間ぐらい待ってくれるなら書くけど
ADは積みゲーになっててやってないんで、アニメ設定ぐらいで
個人的にSSを書くor読むって、特定の作品好きが極まった状態だと思うから
AD積んでる人がまだここにいるってのがちょっと驚きだ
XRATEDでそれなりに満足したのと、
発売日に買ってインスコまではしたけどなかなかやる気が起きなかった
&悪評続出でますますやる気ナス、な状態になったから
今後もやる可能性はかなり薄いっす
AD買うタイミングをつかみ損ねたまんまの俺も通りますよ
ささらSSもっとщ(゚Д゚щ)カモォォォン
“久寿川ささら、生徒会長辞任を表明―― !”
「あなたとは違うんです」
この体勢は無理がありすぎるだろう。
なにを考えているんだここの主は。
いや、眠かったのであんまり覚えていないが、確か姉の提案だったか。
ついでにここのメイドロボも賛成していたか。
まぁいい。それよりも…
「でかい…」
男性による愛玩を目的とした…その…あれだ…
サイズは姉と同程度…つまりでかい。
-ふにょ。
やわらかさも申し分ない。
-びょんびょん
おぉ…こいつ…跳ねるぞ…
って、こんなことしてたら、なんかログ残るんじゃないのだろうか。適当なところでやめておいたほうがよさげだ。
そこで彼女は、後頭部とわき腹の感触に気を向けてみた。
頭のはお姉ちゃんの胸か。わき腹のは…
「どこに突っ込んでるんだこいつは。」
貴明の手。まぁ、スペース的にこっちに向けなければ姉の下腹部に入るから仕方がないか。
この狭いベッドで何か始められたら圧迫死する。
-ゴソゴソ
-さわさわ
寝返りをうって手に触れてみると、冷たくなっていた。…まぁ、仕方がないのだろう。理由については言及しまい。
目の前には姉の胸がある。
-ふにょふにょふにょ。
うん。こちらのやわらかさも申し分ない。
うーん。質量的には姉のほうが大きいのか。
アンダーも大きいからカップ数は同程度だろうk
-ギュ
「うえ」
お、起きてるのか?いや、そもそも私は声に出して何も言っていない。
なぜこのジャストタイミングな締め付けが可能なのだろうか。
何かの能力者だったのか。
いや、まぁそんなことはどうでもいい。
息が苦しい…
-姉の腹は細い姉の腹は細い姉の腹は細い姉の腹は細い
念じてみると拘束が解除された。
…わからない。どういう仕組みなのだろうか…。
そうして彼女は、再度の眠りについた。
-チュンチュン
「ん…ぁ…」
「ふ…ふぅ…」
カーテンが開かれていた。
ジャムになっていたベッドは私だけになっていて、下の階からはなにやら音が聞こえる。
起きるか。
下の階に着くと貴明は3人の女性に囲まれていた。
一人は姉、一人はシルファ。そしてもう一人は…あぁ、愛人か。
少し時間を戻って。
ふおoooおooooooooo……
「ううぅ…」
うでがぁ…腕がぁ。。
「まなか、まなか…」
壁に預けていた右腕で愛佳を掴んで揺する。
-もぅ…食べられないよ…
たべなくていい!
「たべなくていい!食べなくていいから体重かk」
さらに体重がかかる。あー。感覚がなくなった。
とりあえず苦痛からはかすかに開放されたが、根本的な解決になっていない。
「体重は…体重は重くないよ?ただね、力が少ない面積に集中してるだけだからね?ね?だから少し体を動かしていただきたいなぁと。」
動かない。仕方がない。
貴明は愛佳に覆いかぶさるように体を移動させ、抱きかかえ、立ち上がる。
-ふっ
愛佳が重いわけではない。重いわけではないのだが、この体勢で立つのはかなり変な所に力が必要だった。
何とか立ち上がったところで、愛佳が目を覚ました。
「ふぁ…あれ…何で立ってるの…立って寝てたの…。」
「お…はよう」
「あ、うん。おはよう。」
-うぅ…
立ち上がってみたところで、シルファが既にいないことに気がついた。
「えっあれっ何で腕押さえてるの?痛いの?大丈夫?」
気がついたはいいが、そんなことより邪気眼発動しそうな左腕を押さえるのが必死な貴明。
「ふ…ふっ」
郁乃を踏まないように、とりあえずベットから降りてから悶えることにした貴明。
「ふ…ぉ…」
必死に腕からの感覚と戦う貴明。
-なでなで
「ふあっ…」
ついて降りてきた愛佳に左腕を摩られ、その感覚で衝天する貴明。
「えっ。貴明くん?大丈夫?えっえっ。たかあきくぅぅうううん」
返事がない。ただの屍のような貴明。
「ふぅ。」
とりあえず回復し、愛佳と共に居間に下りてくるとシルファが既に朝ごはんの支度を終えており、顔を洗ってからとりあえず麦茶でいっぷくする二人。
「今日も暑いねー。」「暑いなぁ。」
夏は暑い暑い言いながらだらーっとするのに限る。 とは、貴明は思わなかった。
「クーラー付けよっか。」
「何ろにしますか。」
「28度くらいで。電気代かさむのいやだしね。」
「ろーかいれす。」
-ピピッ。ピッピッ ピーンポーン
シルファがエアコンを操作し終えるとチャイムが鳴った。
こんな朝早くになんだろう。
っていっても、もう9時過ぎてるから、起床時間としては遅いんだけどね。
「はーい。」
このみかな。
「私がれます。食べててくらさい。」
「あ、うん。
じゃ、食べよっか。」
「おいしそーだねー。」
『いただきます。』
「朝から栄養考えて作ってくれるから、シルファちゃんが来てから体の調子がいいんだよ。」
-モシャモシャ
「いいなぁ。私のうちにも来てくれないかなぁ。」
-ガチャ
「ろなたれすかー。」
そこには、長髪の、人形のような女性が立っていた。シルファの姿を見て少し驚いた様子で尋ねてくる。
「こちらは河野貴明さんのお宅でしょうか。」
「はい。そうれすけろ。」
「えっと、河野さんとおなじ学校に通っている久寿川ささらといいます。
河野さんにご相談があって伺ったのですが。」
「そうれすか。少々お待ちくらさい。」
しえん
シルファちゃんが戻ってきた。
「ご主人様ー。久寿川さんという方がいらっしゃってますけど。ご相談があるそうれす。」
「久寿川先輩?なんだろう。」
-久寿川さん…って生徒会長?書庫のことかな。でもなんで河野くんの家にいることがわかったんだろ。
玄関に行ってみると、確かに久寿川先輩がそこにいた。
「おはようございます河野さん。朝早くにすみません。」「いえいえ、おはようございます。」
パジャマなのが少し恥ずかしい。
「昨日電話だけでも入れようかと思ったんだけど、夜遅かったから。」
「そっか。とりあえずあがってよ。」
あ、そういや愛佳もパジャマだった…まぁ女同士だし大丈夫だろう。多分。
-カチャ
居間のドアを開いた瞬間、時が止まった気がした。いや、時が止まっていれば時が止まったとは感じないだろう。
いや、そんなことはどうでもいい。
-え?河野さんって姉妹いらっしゃったんですね。
久寿川先輩は何か思案顔。愛佳の表情からは特に何も読み取れない。
「あ、朝ごはんの途中だったんですね。ごめんなさい。」「えっ、あ、いえいえいえ。おかまいなく。」
-日常に生徒会長!日常に生徒会長!にちじょうにせいt
訂正する。愛佳は妙に緊張している。
「座ってよ。 どうしたの?相談って。」
「それなんですが…」
先輩が話し始めると、郁乃ちゃんが起きて部屋に入ってきた。
「あ、おはよーいくのー。」「おはよう。」「おはようございます。」「おはようございます。」
「おはよ。で、なに?修羅場?大家族の子供会議?」
-修羅場…?この人たちは家族じゃないのかしら。でも家族会議?ん?…んー…
郁乃ちゃんが登場すると、先ほどよりさらに思案顔になる先輩。
「あー。そうだね。紹介しないとね。
こっちは同級生の小牧愛佳。で、今入ってきたのはその妹の郁乃ちゃん。で、こっちが栗栖川のメイドロボ実験機のシルファちゃん。
こっちは生徒会長の久寿川先輩。
小牧姉妹は昨日天体観測を一緒にしてたので家に泊まっていて、久寿川先輩は俺に相談があって家に来ました。
はい。話を進めよう。何のご相談でしょうか。」
さっさと説明してみる。
-朝ごはんれきてますよ。
久寿川先輩はなにか少し戸惑っている。
-ありがと。
-高級なお茶れす。
-ありがとうございます。高級なお茶。
先輩はお茶を受け取る。
「あんまり人に聞かれると困る話?」
「え、あ、いえ、その、生徒会長を辞めようと思うんです。」
-もぐもぐ
エー
「辞めちゃうんですか?」
俺が聞き返す前に愛佳が尋ねる。
-ごくごく
「私もなんだかんだでみんなにクラス委員にされちゃって…
辞め方を伝授してください!」
真に迫っている。それほどまでに嫌だったのか。愛佳。
「そうなの。
でも、あなたとは違うんです。
私は学校に居場所がほしかっただけなの。」
-はむはむはむ
「まーりゃん先輩つながりだね。」
「えぇ。もともと人徳があって選ばれたわけじゃなくて、選ばれるように振舞っていただけよ。
だから本当に生徒会で何かやりたいと思っている人の思いを、私が踏みにじるのはよくないと思うの。
事情はよく知らないけど、小牧さんはみんなの意思を反映して、選ばれるべくして選ばれたのなら、
私があなたの辞任をお手伝いすることはできないわ。私にとやかく言う資格はないけれど。」
ただ押し付けられただけなのだが。
-ごっくん。
「はぁ。なにうだうだ言ってるんですか。私は入りたてで、しかも休んでたからよく知りませんが、
実際にあなたは努力して今の居場所を手に入れた。それでいいじゃないですか。
姉は偉大な思想があってその上で選ばれたわけじゃなくて、ただ雑用を押し付けられて断れないだけ。
そもそも生徒会なんて雑用を押し付けられた連中の溜まり場か、お遊びサークルみたいなものでしょ。」
食べながら聞いていた郁乃ちゃんは食べ終えると、相変わらずの冷めた意見を口にする。
「それは…そういう側面もあるかもしれないけど…」
単純な話で、意見は出尽くしたようだ。相談された俺は何も意見してないけど。
「嘘をついたわけでもないしみんなの求めていたものは提供してるんでしょ?
じゃあ何かしたかったかもしれない人は、自分の力が足りなかっただけ。
民主主義は正義に行われてると思うよ。」
言ったのがまーりゃん先輩についてだけというのはなんかあれなので、観想をとりあえず言ってみる。
「そう…
ところで河野さん。女友達と一つ屋根の下で一晩というのは…その…たとえ布団が違ったとしても不純だわ。」
同じベッドなんだけど…
「ん。んー…うん。俺もそう思う。」
突然ふられたので、素直に答えてみた。
「らいじょうぶれすよ。ご主人様はへたれなのれなにも起きません。」
もうへたれでもいいや。イルファさんその他研究所の方とかには、もう訂正しようがないみたいだし。
でも、そもそもへたれってなんなんだろう。
事の進行が終わって言葉の定義に迷い始めた貴明と、
持ちかけた相談の判断を得て、あとは自分で決めるだけとなったささら。
奇妙な5人の朝食会を終え、なぜかゲーム大会がはじまった。郁乃とささらは見学中だ。
っていうか書いといてあれだけど、郁乃食べ終わるのはやっ。
「さっき、休んでたって言ってたけれど、聞いていいかしら。」
突然ふるのね。
「別に面白い話でもないですよ。
ただ糖尿病で入院してて、最近症状がよくなってきたから通うようになったっていう。それだけです。
入院中どうでもいいのに、私の居場所を確保するとかどうとかで書庫に立てこもってたり、
生徒何人か巻き込んでスカーフかなんか切り刻んでばら撒かせたり。
私の入院中、学校でいろいろ問題つくってたみたいでなんか気が重いんですよ。学校に居るとき。
歓迎してくれてるみたいですけどね。」
-ワーニンワーニン。
「そう…あれは小牧さんだったんですね。」
「その節はご迷惑をおかけしました。」
-エンゲージ
深くお詫びをする。本当に申し訳ない。
「いえ、迷惑だなんて。まーりゃん先輩に比べたら…。」
「面白い人ですね。」
「面白いというかはた迷惑というか…」
-チェックシックス
はた迷惑…?まーりゃん先輩とやらのことだろうか。
「違いますよ。久寿川先輩のことです。なんかメイドロボより人形みたいで、思考は漫画のキャラクターみたいだし。」
って、なんかこの言い方だと悪口言ってるみたいだな。
-カミングミッソー
「え、そうかしら。
私が…面白い…?」
-どこが面白いんだろう…
本気で悩み始めた。何打これは。妙にかわいい。先輩なのにかわいいとかなに。
-ドーン
「かわいいですね。」
-あー命中したね。愛佳どっかでやったことあるの?
-え?はじめてだよ?
「えっ。えっ?」
-うぅ…また負けたれす…なんれすかなんなんれすか…
「郁乃ちゃんと先輩もやろうよ。」
「私の見立てたところ、いくいくも玄人れすよ。」
そんなゲーム大会の様子をお伝えいたしました。
--おしまい。
え?なにがしたかったの? そんな野暮なことは聞かないでください。ちなみに私は
>>313ですよ。
書き終わってからまた気づいた。シルファが来たときは既に会長は辞めて海外行っちゃってるよね。
昨日の夜構想してささらの持ちかける問題設定してなかったんだけど、
>>327のおかげで考えずにすんだ。ありがとう。
338 :
1/5:2008/11/20(木) 19:25:32 ID:jnnhx6rh0
>>298に引き続き、ちょっとだけ進む話。
>>337ささらの持ちかける問題ではなくて、問題を持ちかけるささらだったね。
--
戻ってきたら居間で雄二が伸びていた。
な… 何を言ってるのk
-ピーンポーン
「はいはーい。」
私出るねーといって、
「おっす。」
雄二を連れてきたミルファ。
「あれ、貴明いないの?」
「おはよー。
うん。いま研究所で実験に協力してもらってるんや。」
「へー。昨日の今日で大変だな。貴明も。」
珊瑚と会話しながらも、とあるブツから目が離れない雄二。
「メイド…ロボ?」
上を向いている。人間なら首を痛めかねない姿勢で。
「外部インターフェースや。メイドロボ型ラジコンやな。」
「へー。これ操縦できるの?」
「それは今専用の装置じゃないと操作できひんで。」
「そうなのか。」
-それにしても…すごいかっこだな…
どうしても格好が気になる雄二。
というか常識的に考えると、普通寝かせるのではないだろうか。
「というかなんでそんなのがここにあるの?」
「それはなー。
人生に幸福をもたらそうと思ったんや。」
「珊瑚様の言葉では意味がわからないと思いますので私がご説明いたします。
昨日雄二様がおっしゃっていた、正体不明の知り合いの方を見つけたんです。
事情があって外に出ることができないのですが、栗栖川の実験機をご利用いただく予定になっていた方で、
その話をすると、雄二様と会っていただけることになりました。
もちろん雄二様の希望しだいなのですが。」
339 :
2/5:2008/11/20(木) 19:27:32 ID:jnnhx6rh0
「あう!あう!あう!あぅ…」
日本語を忘れてしまったかのように同じ言葉を繰り返す雄二。
昨日の今日ということには違和感を抱かない。
「会う…会う…」
「人生に幸福をもたらすんや。るー。」
「会う…会う…」
「人生に幸福をもたらすんや。るー。」
「会う…会う…」
「じんせ
「そろそろ動きらしそうれすよ。」
メイド3人は連絡を受け、シルファがそれを伝える。
「会う…あ。あ。え?くるの?あぁ。これを操作するんだな。あぁ。なるほど。うん。わかった。」
話の意図するところを理解せずに、会える事にのみ執着しており、ミルファの言葉で我に返ると同時に状況を理解した。
「来る…来る…」
今の雄二たちの耳にはまったく聞こえない起動音が鳴り始た。
-来る…来るっ
そして、シルファが運ぶときにかけたロックをコントローラーが解除すると、
筐体が萎え、前衛オブジェから、ソファーに腰掛ける人形へと変わった。
-来るっ…来るっ!
目を閉じたまま首を振る人形、いや、雄二の初恋の人。
-来るッ…来るッ!!
目を開ける瞬間。
-来るッ!!来
「ただいま。」
雄二は卒倒した。
340 :
3/5:2008/11/20(木) 19:29:32 ID:jnnhx6rh0
「おかえりやー。」皆が挨拶を交える。
-緊張しすぎたんでしょうか。
「なにがあったの?」
-呼吸あります。舌の乾き無し。虹彩の運動、確認できました。眼球は固視微動中。
「雄二がきて、初恋の人と会えるっていうことを聞いて卒倒した。
いまそのメイドロボ操ってるんは、事情があって外に出られへんその子っていうことになってるみたいやで。」
-体温36.02 温度分布は特に異常なし。汗の量は正常だね。震え無し。
「えっとー。それはつまるところ、雄二にとって、俺は俺じゃなくてその子なんだね。」
-脈拍 83 145れす。体性反射確認れきました。
「そうみたいやな。」
-脳内出血等の恐れがありますが、病院に運びましょうか。
「へー。うーん。。なんか流れ的にここまで来ちゃったけどいいのかな…」
-まぁ、このままおいといたらいいんじゃない?
「人生あたってくだけろや!」
-欝SSれはないのれ、そんな深刻なことは起きないと思います。
「ところで、雄二は大丈夫なの?」
「はい。今、大丈夫ということになりました。」
「よかった。じゃあそこのソファーにでも寝かせておいてあげよう。」
「りょーかい。」
12分43秒後。
「おーい。大丈夫かー。」
ゲームを再開していた面々であるが、雄二がなにやら動き出したので中断して観察しはじめた。
「ん…う…あ…う…あー。あっ。あー。」
某、顔が有るくせにそれと相反する名前を持つキャラクターのような呻き声を出している。
「カオナシやな。」
-とんとん
「おーい」
覗き込みながら肩をたたいてみる貴明。すると。
「あうううううううううううううぅうっぅぅぅ ってええええええええあ、えええええええ。」
341 :
4/5:2008/11/20(木) 19:31:32 ID:jnnhx6rh0
なんでこんなかわいい娘が目の前に。
いや、さっきから居たな。さっきは…あれ?かわいい娘だったはずなんだけどなんか違うな。
さっきまで芸術家が創ったようなげいz…あ、そうか。動いてなかったんだ。
動き出したんだ。つまりこの先にあのこが…
そんな思考を一瞬で巡らせ、奇声を上げた雄二。
また卒倒するのかと、周囲を不安にしたが、今回は意識を保っている。でないと話が進まない。
「えっと、は、はじめましてじゃねぇな。ひさしぶり!覚えてる?」
「え、あぁ。しっかり覚えてる。あの記憶は多分死ぬまで忘れない。」
「俺…俺、ずっと会いたかったんだ。あのときから。
そんで、そんで、断られてもいい。でも、言いたいことがあったんだ。
ずっとずっと言いたかったんだ。」
「うん。」
「君が好きだ!」
-流石、へたれてませんね。
「ああ、ありがとう。でも受け取れないんだ。お前に、いろんな隠し事をしてる。」
-中の人に、ご主人様より好まれる人れすから。
「隠し事?」
-BLなのかな。BLなのかな。
「うん。それはまだ何かはいえない。時間は有る。…あるよね?珊瑚ちゃん。どれくらいある?」
「あるでー。SS中に時間切れになることは無いで。」
「よかった。 だから、状況によってその秘密を教えていこうと思うんだ。」
「そっか。」
342 :
5/5:2008/11/20(木) 19:33:49 ID:jnnhx6rh0
間。
「おれが、その秘密を知った後でも、受け取ってもらえないのか?」
「あぁ。だめだ。」
「なら友達に、友達になってくれないか。」
「うん。」
「いつまで一緒に居られる?」
「お前が一緒に居てくれるなら死ぬまで一緒だぞ。
秘密を知った後でも、一緒にいたいと思い続けられればな。」
「わかった。いろいろ聞きたいけど時間が有るなら、あせらない。10年くらい待ったんだからな。」
「ありがとう。」
--
おしまい。
やっと楽しくなってきた。男同士の空間は快適だね。あぁ。別に腐の人じゃないので安心してね。
あと、毎回短くなって申し訳ないのだけど、長いのは投下規制対処が面倒なので(連続して長時間待つのがいや。)ご了承を。
今日もまた読まないでスクロールする作業がはじまるお(^ω^)
タマ姉が身長1600メートルのSSだれか書いてくださいおながいします
345 :
名無しさんだよもん:2008/11/21(金) 15:23:20 ID:szLpz3oL0
「全員は無理でも何人かなら・・・」この貴明の言葉によって
ヒロインたちが複数のハーレムチームを結成し、三国志ばりの陰謀や策略を
張り巡らせ貴明の奪い合いを始める
みたいなコンセプトがみたい
そんなことより老後は誰が書いてくれるんだい?
347 :
変態詩人1/3:2008/11/21(金) 19:52:34 ID:/doFmDR70
ある夕暮れ、一人の男が病院から家に帰っている。
ふぅ・・・大変な事になってしまった。
実は、10日ほど前に悪友に誘われて風俗に行ってきました。タマ姉に内緒で。
で、先日から亀頭&尿道に違和感を感じるので病院に行ってきたら性病に感染してた。
しかも、クラミ○アとヘ○ペス。最悪だ! 勢いに任せてNSでするんじゃなかった。
俺は凹みながら、街をプラプラ歩いてたら背後からいきなり抱きつかれた。
振り向くとタマ姉だった。
タマ姉「○坊!・・ん?・・どうしたの?暗い顔して。何かあった?」
俺「・・・いや、何でもないよ・・・はは」
タマ姉「ふ〜ん。それより、今から家に来ない?今日、雄二いないから・・・ウフフ♪」
俺「!!!え?、そ、それって」
タマ姉「うん。今夜は寝かせないから。うふふ♪」
ヤ、ヤバイ!! 今、タマ姉とHしたら病気を遷してしまう。ど、どうする?
俺「いや、今日はちょっと・・・先約があるんだ。」
タマ姉「・・・(何か変ね。私に何か隠してる?)」
タマ姉「そう。残念だわ。私より、その人との約束を優先するんだ」
俺「いや、そういう訳では・・・本当はタマ姉と一緒に居たいよ。」
タマ姉「じゃぁ、決まりね。私と行きましょう!(何があったか知らないけど私が元気にしてあげないと)」
家に着くと、俺はタマ姉の手料理を食べ、今、タマ姉と二人っきりで部屋にいる。
・・・・・静かだ・・・・何か言わないと
俺「じゃ、じゃぁ、俺、風呂に入ってくるよ。」
そう言って、立ち上がろうとすると、タマ姉に腕を引っ張られベットに押し倒された。
タマ姉「ううん。このままでいいよ。○坊の汗の匂い大好き♪」
俺「(ヤバイ!何とかしないと!)」
しかし、アッという間に服を脱がされ、俺の股間は立派にそそり立っていた。
タマ姉は何の戸惑いもなく、俺のイチモツの匂いを嗅いでいる。
タマ姉「(クンクン)!!(え?いつもよりクチャイ!・・・でも、○坊が元気になってくれるなら)」
タマ姉は口を開け、俺のアレを咥え込もうとした。俺は覚悟を決め
俺「待って!!タマ姉・・・・実はタマ姉に大事な話があるんだ」
俺は、タマ姉に振られる覚悟で全てを話した。
俺が話終えると、タマ姉の顔は見たこともないような表情をして手が上がるのが見えた。
俺は叩かれると思い目を瞑った。
・・・・しかし、何も起こらない。俺は恐る恐る目を開けるとタマ姉は泣いていた。
俺「・・・タマ・・姉・・・・・ゴメン。謝っても許されるとは思ってないけど。」
タマ姉「ぅぅ・・・ウソ・・・こんなの嘘よ。うわぁぁん」
俺「ゴメン。・・・ゴメン。」俺は全裸のまま深く土下座をして謝った。
・・・・タマ姉は何か覚悟を決めた様子で俺に言った。
タマ姉「○坊のしたことは私に対する裏切り行為よ。わかってる?本当なら別れるのよ。」
俺「うん。わかってる。ゴメ・・・え? 」
タマ姉「私は○坊と別れたくない。ただし、許すには2つ条件があるわ。」
俺「何でも言ってよ。俺、何でもするよ。俺だってタマ姉と別れたくない!(ヤッター♪)」
タマ姉「一つ目は、これからはタマお姉ちゃんだけを見なさい。他の女としては絶対にダメ!!」
俺「もちろんだよ!俺もタマ姉以外とはしたくないよ。もうタマ姉しか見えないよ!」
タマ姉「うん、宜しい。では、二つ目は・・・」
そう言うと、タマ姉は激しいキスをしてきた。俺「ムグ・・・・チュパ・・・ムゥ」
そして、俺の臭いアレに即尺をしてきた。
俺「!!待って! そんな事したら遷しちゃうよ。特にヘ○ペスは完治しないんだよ!」
タマ姉「いいわよ。遷しなさい。○坊一人が苦しむ姿なんて見たくないわ」
俺「でも、でも、」
タマ姉「これから2人で、病気と闘いましょう。それに、2人とも病気なら気にせず生でできるでしょ?」
そういうと、タマ姉は上に跨り激しく腰を振ってきた。
2人は獣のように互いの体を貪りあい俺はタマ姉の中で果てた。
END
読まないでスクロール
俺も読まないでスクロールだな
「無題〜」の人はとりあえず日本語学んできてくれ
会話文で括弧の前に名前つけるのも論外だろ
まぁ、文章力が無いせいで誰の発言か分からなくなるなら仕方無いかもな
文章まとめる力が無いならキャラを多く使っても無駄。ややこしくなるだけ
一人のキャラに絞ったほうがまともなもの書けるよ
おはよう。
>>352 意見ありがとう。
やっぱり人が感じるのは、「日本語でおk」なんだね。
自分で書いたものは、どんな省略があろうが誤字があろうがおかしな表現があろうが、
なにを意味しているのか理解できるからそのまま出しちゃって、SSじゃなくても「日本語でおk」といわれることが多い。
誤字はかなり慎重にやれば減るだろうけどね。
まともなものというのがどういうものかわからないけど、まともでないものよりも支持を受けるのは当たり前だと思う。
そして、読まないでスクロールする人にとっては”多分”まともでないものなのだろうと思う。
まともでないものを長々と書いて完全に誰の支持も受けない、つまり独りよがりになってしまったら荒らしと同じだから、
この続きを今の状態で読みたい人が居ないのなら、私はすぐにこのスレに書くのを止めて日本語のお勉強をしてくる。
そうでないのなら雄二のSSだけ終わらせてから、ちゃんと勉強しようと思う。
日本語を学ぶといっても
小学校や中学校や高校でのように国語の授業を受けることはもうできないから、
なにをすればいいのかわからないけど、無償でここで人に教えてもらうというのは悪いので、
一人でだらだらとやろうと思います。
いい休日を。
>>353 gdgd言ってないで、自分が書きたきゃ勝手に書いて
黙ってここに投下すればいいだろ。読みたい人がいれば
続きを書くとか何様のつもりだ?
前にも変なのが居たけど、そういう俺様ちゃんが湧くと
スレが荒れんだよ。
う〜ん、なんか、ちょっと気が引ける流れなんですけれど、落とします。
「天使の〜」の、続きです。今回で終りです。
ちょっとレス数増えちゃったので、もしご支援いただけたら助かるかも。
では。
―――
ささらから渡された券を見やる貴明。水棲動物の好きな久寿川先輩だから、こんな券を複数枚持ってても不思議はないか・・・・と、
彼は勝手に想像した。
とりあえず、これはありがたく使わせて貰おう・・・・動物園と言っても、これは最近来栖川が作った動物園の付属するテーマパーク
のフリーパスで、普通に入ったらそこそこお金はかかる。水族館も、入館料は高めだしな。
しかし、贈り物が人様からの貰い物というのは、いかにも気が引ける―― たとえ、思い出は自分でこしらえるにしても。
―― 決めた。贈り物はやはり買おう。先日、タマ姉達と廻って、気にはなったけど高くて手を出さなかったブツがある。やっぱり、
あの辺を ――
書き置きをテーブルに残して、そそくさと出掛ける貴明。 “ミルファちゃん、シルファちゃん、ちょっと1人で出掛けてきます。ホント
に『1人』だから大丈夫”―― って、何で“1人”をこんな強調しなくちゃならんのだ?
―――
そして、イブ当日。
「デート!デート!ダーリンとデ〜トぉ♪ キャッキャッ☆」
玄関を出てミルファはスキップ気味に貴明の周りをぐるりと巡ると、いつものように彼の腕を取ってそれをギュッと胸の谷間に包み
込むように抱き、頭を傾げて貴明の肩にストンと寄せた。
こんなに喜んで貰えるなんて ―― 思わず貴明の頬も緩む。もともと感情表現のオーバーなミルファではあるが、貴明にデートに
連れ出して貰えるという事実そのものに心底喜んでいる様がありありと窺えるので、余計彼女が愛しく感じられた。
―― ありがとうございます久寿川先輩。お礼はそのうち、必ず・・・・いつまで、日本にいるのだろう?
とりあえず、動物園に先に行く事にした。水族館はその後、時間がなければ後日にでも―― 。
バスで移動の合間にも、ミルファはビトッと貴明に身を預けている。とりまく周囲からの生暖かい視線をひしひしと感じる貴明。
―― しかし、気恥ずかしさを覚えつつも、かわいい彼女にべたべたひっ付かれている様子をむしろひけらかしたい気持ちの方が
勝って、その表情は終始にこにこと緩みっぱなしである。
―― 先日タマ姉とこのみに密着された時には引いてしまったのに、これはどういう事か?二人とて周囲が羨む美少女で、決して
嫌いではないのに?
恐らくは突然の事で狼狽してしまったのと、後ろめたさも手伝ったのだろう、と貴明は自己分析した。
―― それとも、人間の女性は苦手でも、ミルファなら気にならない?彼女がロボットだから? ―― いやいや、そんな事はないと
かぶりを振る貴明。彼女の“心”は人間と何ら変わりはない。そこに惚れちゃったんだろ?―― と、疑念を振り払った。
「どうしたの、ダーリン?」 貴明のその様子をきょとんと眺めた後、訊いて来たミルファ。 「あっ、いや、何でもない何でもないよ。」
それにしても・・・・と、貴明は、学校での男子達の反応を思い出した。
“河野はるみ”が学校に姿を現し、貴明に強引にあたっくをかけてきた当初、彼らは彼女を敬遠がちにやや距離を置いて周囲から
見守っていたものだが、メイドロボとしての正体がバレた後に再び学校に通うようになってからは、明らかに目の色が違う。
ねっとりとした視線というか、羨望の色というか―― 雄二みたいだ。―― お前ら、そんなにメイドロボが好きなのかよっ!・・・・と、
思わず突っ込みたくもなるというものだ。
―― もしかして、俺も雄二達と大差ない?―― いやいやいや〜、そんな筈はそんな筈はそんな筈はっ!
またかぶりを振る貴明。 「―― ?」 きょとん、とミルファが見つめていた。
現地到着。はしゃぐミルファ。「わ〜いっ!ダーリン早く入ろ入ろ入ろっ!」
先に遊園地で何か乗り物でもどう?と貴明は振ってみたが、「動物がいい動物がいい動物がいい〜っ!」とミルファが強くおねだり
したので、先に動物園の門をくぐった。
“―― わーダーリンッ!あれキリン!?首折れないかなっ!? わーゾウさんだよダーリンッ!蓄膿症になったら治すの大変だねー
きっと。わーライオンだよー。円形脱毛症になったら見つけるの大変かもね〜。” ―― あのー、着眼ポイントが面白いねミルファさん。
苦笑する貴明。
『動物ふれあい広場』の看板の出ている一角にやってきた貴明達。
「ミルファちゃん、動物に触れるみたいだよ?」と教えると、わーっ!と、中に駆け出していってしまった。
灰色の丸っこい愛嬌のある動物が木にひっついている。「ねぇねぇダーリン、これコアラ?―― えっ、抱っこしていいのっ?わ〜い!
かわいいねっ!かわいいねっ!あったかいねっ!あったかいね〜っ!」
無邪気にはしゃぐ様子に思わず貴明の頬も緩む。
リスやウサギやアヒルなど、ひとしきり触れ合った後、子ヤギが戯れている一角にやってきた貴明達。
「わーヤギさんだーヤギさんヤギさん」 ぴゅーと、柵の中に入っていくミルファ。子供たちが子ヤギに餌を与えているのを真似して、
彼女も餌付けを始めた。
ああ、やっぱり来てよかったなぁ・・・・と、静かに目を伏せる貴明。すると、「いやぁああ〜んっ!?」と悲鳴。 ―― えっと、これは、
ミルファちゃんの声!?
「ミルファちゃん!どうしたの?」 貴明が駆けつける。 「あ〜う〜ダーリン、この子ヤギ達、えっちだよぉ〜。あたしのスカートの中に
顔突っ込んでくるよう〜!」 半ベソ顔のミルファ。
見ると、確かにミルファの背後についていた子ヤギが、彼女のデニムスカートの下から顔を突っ込んでもぞもぞしている。
「きゃうううんっ!パ、パンツ下ろしちゃだめぇぇぇ〜〜〜っっ!!あ〜んダーリン眺めてないで助けてぇ〜〜〜っっ!!」
真っ赤になって叫ぶミルファ。冷汗を垂らして呆然としながらも、これは眼福としっかり見ている周囲の子連れのおじさん客達。
一瞬、貴明も呆気に取られていたが、すぐにハッと気を取り戻すと子ヤギを引き離しにかかった。「こっこら、それは食べ物じゃない
んだよっ、離れようねっ!」
「ううう〜、ひどい目にあったよ〜ダーリン。」
ベソをかいてベンチに腰掛けるミルファの傍らから、彼女の肩に手を掛けその頭を撫でて慰める貴明。
・・・・しかし、ヤギがこんなにも恐ろしい生物だったとは・・・・。
“―― んっ?そういえば―― ”と、思い起こした貴明。あんなヤギを見たことがあったな。菜々子ちゃんにせがまれて、別の遊園地
に行ったとき、中にあった動物コーナーで。
“あの人”は、『ひつじさん』とか言ってましたが ―― あーいやいや、こんな楽しい日にあの人の事を思い出すのはよろしくない。
ぶんぶんと頭を振る貴明。「・・・・ダーリン、どうしたのぉ?」
―――
―― ここは、貴明達がいる休憩ゾーンからほど近いところにある一角。
“たかなし動物プロダクション”と荷台に横文字の入ったトラックが園内への搬入口にやって来た。荷台にも窓がついていて、動物の
運搬車である事がわかる。
トラックの助手席には、サングラスを掛けた小柄な人物が腕を組んで座していた。どう見ても、少女に見える。ピンク色の髪 ――
顔を斜め後ろに向けて荷台を見やりながら、つぶやく。
“百獣に君臨する力を持ちながら、二足歩行の姦計に長けた動物の策略に嵌り、惨め檻の中で見世物の愛玩ペットに成り下がった
哀れな獣よ・・・・
―― 虎だ。虎だ。お前は虎になるのだっ!”
“グゴォォォ・・・・” 荷台の中、低く唸るその獣の影の眼が、赤く光った―― 。
―――
爬虫・両生類のコーナーを巡って建屋から出てきた貴明達。「ミルファちゃん、どう?」
「うんうんサイコーだよぉダーリン!みんなかわいいよぉ〜。」 キャッキャッと、大袈裟に両手を広げ体をくねらしながら喜ぶ様を見せる
ミルファ。
支援
「それじゃ、そろそろ遊園地の方廻る?それとも出て水族館に行こうか?」 ミルファに訊ねる貴明。
「う〜ん、もうちょっと動物見て行こうかなぁ。」
―――
“ワァアアアアアアアアアア〜〜〜〜ッッッ!!!”
屋外動物のスペースに向かって歩いていたら、大勢の入場客の声と思われる大音響が。
「な、何だろ。何があったのかな?」 顔を見合わせる貴明とミルファ。
ややすると、入場客達がドドドッと押し寄せてきて、貴明とミルファにぶつかってもそのまま駆け去っていく。「うわっ!」「きゃっ!」
そして、突然響き渡る場内アナウンス。
“場内の皆様にお知らせします。虎が檻の外へ逃げ出しました。大変危険ですので、係員の指示に従い、速やかに安全な場所へ
避難して下さい。繰り返します。虎が檻の外へ逃げ出しました―― ”
―― ええええっっっ!!!それはえらいこっちゃっ!!
蒼白になり、狼狽の相を見せる貴明に怪訝な顔で訊ねるミルファ。「虎って、さっき見たあのトラさんだよね?そんなにすごいの?
確かに体はおっきかったけど―― 。」
「そ、そりゃ、ライオンと百獣の王を争うくらいだもん、凄いに決まってるよっ!いくらメイドロボが強いったって―― ミルファちゃん、
早く逃げようっ!!」 ガッとミルファの手を取り、引っ張る貴明。
“―― くっくっく、たかりゃん、さだめじゃ―― 。はーりゃん、たかりゃんの盾となるべきその力、とくと見せて貰おうぞ―― 。”
ミルファを引きながら、園内の端に位置する大きな石のオブジェに差し掛かかり、その向こう側に曲がった貴明。その時 ――
―― ぬっと、姿を現したのは、縞模様に彩られた、大きな動物の顔―― 。
「―― ヒッ――ッッッ !?」 唐突に止まり、ペタリと尻餅をつく貴明。
「―― あっ!?―― ダ、ダーリンッ!」
2.5メートルはあろうという見事な体躯のアムールトラが、貴明とミルファの眼前に、いた。
「はっ・・・・はっははは・・・・」
ガクガクと震えて、いよいよ貴明は腰を抜かしてしまい立ち上がる事が出来ない。ダラダラと額を垂れ落ちる脂汗。
「ダーリン、つかまってっ!」 ミルファは貴明の手を取って肩に担ぎ上げ、えいっ―― !っと、大きくジャンプ。数メートル先の建屋の
脇に降り立った。更に何メートルか走ったところで、従業員とおぼしき人々が彼女達の脇を駆け抜けて行く。
「危険ですから、早く避難場所へ逃げて下さいっ!」 そう声を掛けた従業員達の手には、ライフル銃とおぼしきものが。
彼らは虎とは10数メートル程隔たった位置から遠巻きにするようにして囲み、手にしていた銃を虎にさっと向ける。
「―― だっ、ダメだよぉ〜〜っ!この子何もしてないのに、乱暴しちゃっ!」
従業員達が虎に麻酔銃を向けていたのを見て、射殺するのだと思い込んだミルファはいても立ってもいられなくなり、その脚力で虎
と従業員達の間にあっと言う間に割って入った。虎に相対し、従業員達に背を向けたまま両腕を水平にパッと広げる。
仰天した従業員が叫ぶ。「こっこらっそこの女の子っ!危険だ離れなさいっ!!」
「大丈夫、あたし、人間じゃないもん。それにこの子―― ホラッ、こんなに大人しいよ?」
ミルファの言う通り、グゴォォォ・・・・と、低い唸り声を上げているが、襲いかかってくるような気配はおよそ見られない。
「あはっ、目がかわいいよぉ・・・・ほらほら、おいで。」 手招きするミルファ。
「あっ、きっ君もっ!危険です近付かないで下さいっ!!」
従業員の制止を無視するように、その脇を通り過ぎて虎に歩んでいくシックなスーツ姿の女性がいる。タイトスカートからスラリと
伸びる、黒いストッキングに包まれた脚が印象的。大人びてはいるが、少女の顔立ち。背まで伸びる茶色っぽいストレートヘア。
違和感の基は、顔の側面、頬まで覆うようにして角のように頭上まで伸びるバイザー状の突起。それを仔細に観察した従業員は
ハッと気付いた―― こ、この女性は、来栖川のメイドロボだ―― 。
彼女がピタリと右横についたのに、ミルファも気付く。チラリ横目で一瞥すると、すぐにそのイヤーバイザーが目に入った。
―― あっ・・・・ええっと、この人もメイドロボだ・・・・確かこのタイプは・・・・う〜ん、覚えてないや・・・・――
型番までは思い出せなかったが、現行主力機のHM−15よりは古いタイプなのは理解したミルファ。
彼女が話しかけて来た。「ここは危険です。今すぐ離れなさい。動かないのなら強制的に退去措置をとらせていただきます。」
ミルファが応える。「お姉さん、大丈夫。あたしもロボだから。」
それを聞くと、ほとんど表情を変えないまま、彼女の視線がミルファの横顔を舐めるように眺め回す。
「イヤーバイザーは付けてませんが、あなたもメイドロボなんですね?」
その茶髪のメイドロボが訊ねた。
「うん。あたしは17番目のヒューマン・メイデン、Xナンバー・タイプB,ミルファ。」
―― HMX−17b・・・・そう。このコが、イルファの直近の妹・・・・――
彼女が内蔵するデータリンクシステムは来栖川のデータサーバーに瞬時に繋がり、HMX−17bの外見特徴と、横のメイドロボを
名乗る少女の人相が一致する事を確認した。
「わかりました。では、目前の虎を捕獲又はその生命を絶ち、人命に危険が及ばないようにする事に協力しなさい。」
ええっ!?とミルファ。「“生命を絶ち”って、そんなの、ダメぇっ!」 そう言ってかぶりを振る。
「人命保護が最優先です。三原則の縛りがなくても、あなたもメイドロボならそれは理解している筈。安全に捕縛する事が不可能
なら、その選択肢もあるという事です。」 にべもなく言い放つ彼女。
「・・・・わかったよ。おとなしく、懐かせればいいんでしょ、この子を。」 キッと、虎に向き直ったミルファ。にこりと表情を和らげると、
再び虎に手招きした。「・・・・ほらほら〜、おいで〜・・・・。怖くないよ〜。」
しばらく、ミルファ達をじっと眺めるようにして佇んでいた虎だったが、やがて、ゆっくりと、ミルファ達の方へ近寄って来る。そして、
とうとうその大きな顔が、彼女達のすぐ目前にまで迫って来た。
固唾を呑んで見守る従業員達。―― すると、どうだろう。虎はストンと、後ろ足を屈めた。前二本足だけで立つと、その頭をスッと
ミルファの前で落とした。“ゴォォォ・・・・”と、小さく唸り声。尻尾を立てて、ゆっくりと左右に振っている。
「―― あはぁーっ!」 ミルファの表情がぱっと輝く。そして、その顔にすがりつき、彼女の頬を虎の顔にすり寄せた。「あははー。
いい子だね、いい子だねお前。」
その有様を見て、唖然とし互いに顔を見合わせる従業員達。
―― ヒュッと、ミルファの脇を何かが瞬時に通り過ぎて、虎の背後側についていた。ミルファの隣にいたメイドロボだった。彼女は
ストッ、と虎の後頭部に指先を当てた―― ズズッと、地面に崩れ落ちるアムールトラ。
「あっ?―― 」 と、一瞬呆気に取られたミルファだったが、すぐその顔を眼前のメイドロボに向け、キッと睨んだ―― 。
「な、何すんのよーっ!」 叫ぶミルファ。 「ツボを突いて眠らせただけです。そのうち目覚めます。」 冷ややかに答える彼女。
―――
従業員達が虎に網を被せていた。やがて移送用の車がやって来る。その様子を眺めやるミルファ。
ふと背後を見ると、先程のメイドロボが踵を返して歩み去るところであった。
「あっ、ちょっと待って!?」 手を差し出すミルファ。
「HMX−17b、また会いましょう。」 チラリと横目でミルファを一瞥した後、また歩いて行く。彼女が歩む先には、数人の黒服の男
達と、典雅な趣きの、背の高い執事風の白髪に髭の老人の姿。彼女と合流すると、一斉に歩き去って行った―― 。
“へぇ・・・・もしかして大きなお屋敷のメイドかなぁ・・・・無愛想でちょっぴり憎たらしいけど、カッコ良かったな・・・・あのおじいさん、
長瀬おじさんにちょっと似てるな・・・・。” 去って行く彼女達を眼で追いながら、ひとりごちるミルファ。
「・・・・あっ、いけないっ!ダーリンッ!?」
貴明を放置していた事をすっかり忘れていた。慌てて建物の陰に駆けていくミルファ。
「あはっ、はははっ、ミルファちゃん、無事だった?」 地面にへたり込んだまま、苦笑する貴明。
「あぁ〜んダーリンごめんね〜、あたしったらつい・・・・」 貴明に手を差し出すが、座り込んだまま立とうとしない。
「ははは、ごめん・・・・腰抜かしちゃったみたい・・・・」
「・・・・んもうー、ダーリン、カッコ悪い。」 ふうっと手を腰に当てて、溜息をつくミルファ。その言葉にしゅんとなる貴明。
「ほらっ、ダーリン、つかまって。」 背を向けて腰をかがめ、貴明の手を肩に廻させると、そのまま彼を背に載せ持ち上げた。
大の男が小柄な少女におんぶされて運ばれていく様は、確かにあまり体裁のよいものではない。
遊園地の門を後にする二人。 「ミルファちゃんごめんね、とんだデートになっちゃって・・・・」 ミルファの背におぶさったまま、貴明が
意気消沈した声で語りかける。
「え〜、なんでダーリンがあやまるのぉ〜?」 と、ミルファ。そして続ける。「それにダーリン、とーっても楽しかったよーっ!ドキドキ
もあったしね〜っ!!」 心底楽しんだ様子が窺えたので、貴明はややほっとした。
ミルファちゃん、もう大丈夫だよと貴明が言ったので、ミルファは彼をストンと背から降ろした。ふらふらと立ち、ありがとうと礼を言う
貴明。
もう水族館に行くには遅い気がするし、どうしようかな・・・・と貴明が思案していると、「ねぇねぇ、あそこに行こうっ!」とミルファが
遠方を指差した。その先には、西に傾き始めた陽を受けたツインタワーのシルエットが―― 。
―――
「―― こりゃっ!あちしのかわいいターりゃんを驚かして逃がした上に、何てことするんだよっ!大体だな〜、このコは曲芸用、借り
てきた猫よりもおとなしいってぇーのによ〜っ!!」
すんませんすんません、と、動物園の従業員達が頭を下げているのは、逃げ出した虎の持ち主である“たかなし動物プロダクション
代表取り締まられ役 小鳥遊万里耶”氏。・・・・その風貌は、どう見ても“永遠の14歳”を自称する、某元生徒会長であるが。
彼女は窓外に眼を向けて、呟いた。
「―― はーりゃん、その愛と勇気と優しさ、しかと見せて貰ったぞ。たかりゃんと幸せになるんだぞい―― 。」
―――
「るー☆」 バンザイポーズの珊瑚。
「おうミルファおかえり。貴明よう来たな。」 エプロンの紐を締めている瑠璃。
夕刻、姫百合邸。おそろいの白いワンピース姿の姫百合姉妹が貴明とミルファを出迎えた。
居間中央のテーブルには、大きなクリスマスケーキが置かれていて、イルファとシルファが飾り付けにいそしんでいる。
「シルファちゃん、あんまり強く差すと、ケーキが崩れてしまいますよ。」
「う・・・・意外と、難しいのれす。」
彼女達の脇に立つ、大きなクリスマスツリー。電飾がキラキラと輝く。
「ダーリン、ツインタワーで見た夕日、すっごいキレイだったねー。」 テーブルに頬杖をついて、にこにこしながら言うミルファ。
「うん。」 と、貴明。確かに、タワーの展望台で眺めた落日は言い様のない程の美しさだった。最高の思い出ではなかろうか。
TVでは夕方のニュースが流れている。“―― 動物園で、曲芸用に連れ込まれたアムールトラが逃げ出し、丁度現場に居合わせた
ロボットの協力で取り押さえられ―― ”
「なぁ貴明、ミルファ。これ、今日貴明達がおった動物園やないか?」 瑠璃が言った。
「う、うん。実はそうなんだ・・・・」 そう言って、苦笑しつつミルファと顔を見合わせる貴明。
「なーなー、ネットの掲示板に画像うpされとるよー。」 ノートパソコンをいじっていた珊瑚が言った。
珊瑚の背後に廻り、パソコンの画面に見入るイルファ。
10 :名無しメロン:XXXX8/12/24(水) 18:10:31 ID:TIVRHR112
あ・・・ありのまま さっき起こった事を話すぜ!
あれは天使だ。天使に違いない。猛り狂う巨大な猛獣を、天使の微笑で手馴ずけちまったんだよっ!
信じられるかい?まさに美女と野獣だよ!
―― そんな調子で数行書き連ねられていて、現地に居合わせた誰かが写したらしいデジカメ画像のリンクが貼られていた。
珊瑚がクリックしてリンクを踏むと、ページがジャンプして、画面全体に画像がスーっと現れた。
しばらく見入ってから、珊瑚がつぶやく。 「なー、これ、みっちゃんやあらへん〜?」
膝に手を乗せて中腰になっていたイルファも、あっ、と声を漏らした。そして、ミルファの方を向いて睨む。 「・・・・ミルファちゃん?」
膝に手を乗せて中腰になっていたイルファも、あっ、と声を漏らした。そして、ミルファの方を向いて睨む。 「・・・・ミルファちゃん?」
・・・・あは、あはははー・・・・引き攣った笑みを浮かべるミルファ。貴明も同様である。
「ミルファちゃんっ!何て無茶をっ!いくら私達が強い力を与えられているからと言って、虎と闘うようには出来ていないんですよ!」
あーうーごめんなさーい、と両手で頭を抱えてうずくまるミルファ。
「それに・・・・」と続けるイルファ。「あなたに何かあったら、多分、一番悲しむのは貴明さん・・・・ううん、私達みんな。もうこれ以上、
私達を悲しませないで・・・・。」
「お姉ちゃん・・・・」
引き続き画面に見入っていた珊瑚がつぶやく。「なぁなぁ、いっちゃん、これ・・・・」
珊瑚の声に、再び画面を覗くイルファ。そして、あっと小さく声を上げる。
「・・・・ミルファちゃん、現場には、他にもメイドロボがいたの?」
「う、うん・・・・」 イルファの問いに答えるミルファ。
「ミルファちゃん・・・・この方が、HMX−13、セリオお姉さまです。」
―― ええええぇぇっっ!? 素っ頓狂に驚きの声を上げるミルファ。
―― ピンポーン。呼び鈴が鳴る。
シルファが玄関に向かう。扉を開くと、現れたのはこのみ、環、雄二。
「こんばんは。」 「来たでありますよ〜。」 「よぉ、こんばんは。」
パーンッ!とこのみがクラッカーを引いた。
「メリークリスマスッ!!」 一同が唱和する。
裕福な姫百合姉妹が振舞う七面鳥焼きやら様々な料理がテーブルに並べられている。
各自思い思いに歓談に耽る中、貴明はケーキを切り分けているミルファに声を掛けた。 「ねぇ、ミルファちゃん。」
「ん?」 振り向くミルファ。
「あのさ・・・・これ、クリスマスプレゼント。」
差し出されたギフトの包みを見て、ミルファの表情がぱぁっと輝いた。
「―― ダーリンッ!ありがとうっ!うれしいぃ〜〜っっ!!」 ガバッと貴明に抱きつくミルファ。
あははは、と頭を掻く貴明。
支援
「ねぇねぇ、開けちゃってもいい?」 とミルファが訊ねるので、こくりと貴明はうなずく。がさごそと封を開けると・・・・
現れたのは、 シルバーリング。
「わぁ・・・・」 見とれるミルファ。「きれい・・・・」 中央のストーンの色は、青。
ミルファの瞳の色に近い、青いトパーズ。くりくりと感情豊かで魅力的に輝く彼女の瞳を想起しながら選んだものだった。
環はそれが、自分が貴明に勧めたものであったのを確認すると、目を細めて独りにっこりした。
ミルファは早速それを指に通し、手をかざしてキャッキャッとはしゃいだ。―― しかし急に落ち着くと、貴明の顔にじーっと視線を
向ける。
「ど、どうしたのミルファちゃん?」 当惑して貴明が訊ねた。
「ダーリン、きっとこのプレゼント探してくれてたんだよね、この間は・・・・怒っちゃったりして、ごめんなさい。」
「いや、いいんだよそんなこと、誤解されるような事した俺も・・・・」と、貴明が言いかけたところで、ミルファが唇を接近させてきた。
貴明はそのまま受け入れた。彼もミルファの背に手を廻し、抱きかかえる。ゆっくりと、唇を交わす二人。
周囲はその様子をにこにこと見守っていた。
貴明から唇を離すと、ミルファは傍らの袋に目を落とし、がさごそと中をまさぐった。
「むふ〜ん、ダーリン、実はぁ、あたしもぉ〜・・・・」 やや勿体ぶって、間をあけた後・・・・
ぱっと、貴明の前に包みを差し出した。「すーぱーうるとらでりしゃすなんとか・・・・クリスマスプレゼントーっ!!」
わりと大きな包みだった。「あ、開けちゃっていいかな?」と貴明が訊ねると、「もっちろ〜ん☆」と、コクコク頷くミルファ。
封を開け現れたモノを見て、貴明は喜びとも困惑とも形容し難い表情を浮かべ、「あ・・・・」と、小さく声を発する。
出てきたのは・・・・クマのぬいぐるみ。
「ダーリン、クマのぬいぐるみ好きだもんね〜。あたしがクマ吉だった時も、お股覗いたりしてたもんね♪」
―― い、いやあの時は・・・・と、苦笑し冷汗をたらす貴明。
「これ、クマ吉2号だよ。お股、のぞいても、いいんだよ・・・・むふ〜ん、えっちぃ〜・・・・♪」
そう言って頬を赤らめ、股間に両手を挟むようにして、くねくねと奇妙に身をくねらせるミルファ。
「いや、その、まいったなぁ、はははは・・・・」と、手を頭の後ろに当てて困惑した笑みを浮かべる貴明。冷汗が光る。
彼らを見守る周囲の視線が、生暖かいものに変わった。
―― ピンポーン。
再び呼び鈴が鳴った。
またも出迎えるシルファ。玄関には小牧姉妹と草壁優季の姿が。
「こ、こんばんは。」 「おす。」 「こんばんは、皆さん。」
イブの夜は、こうして楽しく流れていく ――
(おしまい)
投下終了です〜。ご支援ありがとうございました。
大失敗やらかいちゃいました。10/12と11/12の中間で、一文、重複
してます。“膝に手を乗せて中腰になっていた―― ”の、一文です。
もし保管庫掲載いただけるようなら、ここは片方削っていただけますと、大変
ありがたく。
最後も文章長くなりすぎてレス追加です。お恥ずかしい。計算間違えて、ミス
連発しちゃったんです・・・・。他にもいろいろ問題箇所あり。
それでは、ありがとうございました。
乙乙乙
>>371 おもしろかった。クリスマスにはちょっと早いけどこの季節にぴったりだね。読ませてくれてありがとう。
IDみればわかるけど私353ね。
>>354の気持ちで書き始めたの忘れてた。
自分で決めるよ。学校じゃないしね。っていっても、叩かれるから学校以上に、書く人にとっては親切かもね。w
スレが荒れる前に書いてくれてありがとう。
>>354
>>371って保管庫には載せない主義じゃなかったのか
あれは別の人だったっけ
いよいよ過疎ってきたな
残ってる投稿者もメイドロボの人と日本語が不自由な人だけか?
>>375 え、この状態で過疎ってるては言わねーべ。
確かに偏ってはいるけどさ。どんだけ贅沢なんだと。
自分が好きなキャラのss上げられないから、叩きたいだけじゃねーの?
馬鹿はほっとけよ
そもそも片方を日本語が不自由ってあげつらうほど文章力に差はないよ
まぁ素人なんだから当たり前だけどさ
だいたい、台詞の前に喋ってるキャラの名前を入れるのも
台詞の後ろに「〜〜した貴明。」「〜〜したミルファ。」ってト書きみたいな説明が連続するのも
ぶっちゃけ変わらん
くだらんことに拘る前に、作品の中身を見て楽しもうぜ
>くだらんことに拘る前に、作品の中身を見て楽しもうぜ
大抵、そういう配慮が出来ない香具師が書いた物は
中身もお粗末で、読むに耐えない物が多いんだがな。
言わんとしてることはわかるし、俺もそれは同意見だが
じゃあなんで379はまだスレにいて、それを書き込んだんだ? ってことに。
ま、おとなしく良作が出るの待ってようぜ。
投下します。
「―― なぁイルファ。あとで話があるんや。片付けてからでええよ。」
夕食を終えた後の食器をとりまとめ、流し台に向かっているイルファの背に、姫百合瑠璃が呼びかけた。
「は、はい。」 居間の方に去ってゆく瑠璃の背を、思案顔で眺めるイルファ。
すぐに手元に向き直ると、食器を洗いに落として、ジャーと水道を流しスポンジで擦り始めた。
居間に入った瑠璃は、中央のテーブルに向かい、背を見せているミルファの桃色の頭が、妙な具合に小刻みに上下動を繰り返し
ているのに気がついた。
「ミルファ、何やっとんや?」
怪訝そうに顔の方を覗き込む。すると ――
“はむはむ・・・・くちゅくちゅ・・・・れろれろ・・・・” と、太いウィンナーを口に出し入れしたり、舌でなめずり回している―― !
瑠璃は思わずブーッ!!と噴いてしまった。目が点になる。
「ミ、ミルファッ!なにアホなことやっとるんやっ!?」
「え?ダーリンのウインナーの料理法の研究中。どうすれば気持ちよくなって貰えるかなー、って。」
瑠璃は頬を赤らめつつ呆れた表情で体を仰け反らせ、腕を組む。そして流し台のイルファの背に呼びかけた。
「イルファーッ!なんか言ったれやー!ホンマにこの子はもう・・・・」
はーい、とタオルで濡れた手を拭いながらイルファが居間に小走りでやって来る。そしてまた熱心にウインナーを舌で弄んでいる
ミルファの顔を覗き込んで、言った。
「ミルファちゃん、違うでしょう?ここはこうやるのよ。」
そうして、フェ○チオの技術的講釈を始めるイルファ。瑠璃は仰天し、再びブーッ!と噴いてしまった。
「アッ、アホッ!二人して何やっとんやーっ!ミルファッ!お前また小テスト0点やったんやろっ?くだらん事やっとらんでちゃんと
宿題やっとらんとあかんやろがーっ!」
「え〜っ?これもご主人様を癒すための立派なメイドのお勉強なのにぃ〜っ!・・・・ちぇーっ。・・・・はーい・・・・」
瑠璃の真っ赤な怒気を目にして、ミルファは途中で不平を引っ込める。おもむろに立ち上がり、唇を尖らせて不満を顔一杯に見せ
つつ、頭をぽりぽりと掻きながら自部屋にとぼとぼと向かって行った。
瑠璃が赤面しているのは怒気のためと言うよりも気恥ずかしさが大半ではあったが。
「あの・・・・瑠璃様、お話って何でしょう?」
ミルファの姿が部屋に消えていくのを見つめていた瑠璃だったが、イルファの声に「あ、ああ・・・・」と、向き直った。
両手を脚の前で合わせて、立ち尽くしているイルファ。まぁ座るんや、と瑠璃に指し示されるままに、それまでミルファの座っていた
場所にペタリと腰を下ろし、正座になる。瑠璃はイルファの正面側について、テーブルに肘をついて手を組み、その上に顎を載せた。
「話ちゅうんはな・・・・今のミルファの様子と、関係する事や。」
はい?とキョトンとなり、目を丸くするイルファ。
居間の奥のソファーには珊瑚のお団子頭が見えていて、大画面のワイドTVに映し出されている教養番組に見入っていた。
「あんなぁ・・・・ただでさえ無邪気で好奇心の塊みたいなあの子に、お前がえっちな講釈ばっかり垂れとるもんやから、もうすっかり
耳年増のすけべぇ〜、な子になってしもうたやないか。」
そ、そんな・・・・と身悶えして頬を赤らめ、俯くイルファ。
「学校でもなぁ、あんな調子で貴明に迫っとるっちゅうから、うちら他人のふりはしとるけど、もう立つ瀬がないわ。恥ずかしゅうて。」
眉をひそめて瞳を閉じ、一回、二回と首を振る瑠璃。
「そぅお〜〜?一途にらぶらぶ〜って、可愛いもんやないのぉ〜?」 ふいにソファーの背もたれの上からその顔を斜めに向け、語り
掛けてきた珊瑚。
「んもぅお〜〜っ、さんちゃんは黙っといてっ!イルファやミルファに甘過ぎやっ!」 ぴしゃりとそれをはねつける瑠璃。
そして、閉じていた目を見開き、ジロリとイルファを睨んだ。
「あの子のすけべぇ〜、な姿は、お前のすけべぇ〜、な心の鏡やで。一体全体、何で妙なことばっかり吹き込むんや?先に教える
事はいっぱいあるっちゅうのに。おぽんち呼ばわりされて、可哀想やと思わんか?」
そっ、そんな・・・・と、焦慮の色を見せて頬を紅潮させ、手を口元まで持ってきて俯くイルファ。消え入りそうな声で話し始める。
「だ、だって、あの子が一途に貴明さんの事を求めているのを見たら、どうしても力になってあげたかったんです・・・・普通、あんな風
に直球で迫られたら、まず陥ちますよね?・・・・貴明さんが奥手過ぎるものだから、つい私もムキになっちゃって、あの子にいろいろと
手解きを・・・・」
途中までイルファの言い訳を聞いていた瑠璃だったが、突然、バンッ!!とテーブルに両手を叩き付けた。「ヒッ!?」とすくみ上がる
イルファ。
「アホーッ!恋のカタチは人それぞれやーっ!!人間を甘く見るんやないっ!色仕掛けが通じん相手やっておるわい。貴明がヘタレ
なんは、お前もよう知っとるやろ?・・・・それともイルファ、お前は貴明が乳擦り合わせてスカート捲り上げたれば、簡単にズボン下ろ
すような下品な輩やと思ったんか?・・・・雄二とは違うんやぞ!?」
そ、それは・・・・と、口をパクパクさせるイルファ。眉を落として、目尻が朱に染まった。
それに・・・・と途中まで言いかけて口をつぐみ、目を閉じて眉をしかめて俯いた瑠璃。しばらく間を置いた後、顔を上げキッとイルファ
を恐い目で見つめた。
「もう一つ・・・・シルファのことや。」
ハッとして、イルファの形相が一段とこわばった。
「箱詰めにして貴明んとこに送りつけるような乱暴な真似したんは、いまだによう理解出来んわ。しかも、よりによって素っ裸やった
って・・・・シルファに聞いたわ。」
「そっ、それはっ!?剥いたのは私じゃなくてミルファちゃん・・・・」と、眉をキッと吊り上げ抗弁の気色を見せたが、途中尻すぼみと
なってしまう。イルファも何を責められているのかは理解した。素っ裸だったとか枝葉の事象より、シルファの自由を奪って対人恐怖症
の彼女を面識のない人間の下へ送りつけたというその事実自体を。
支援
「い・・・・意固地になっちゃってるシルファちゃんには、ある程度のショック療法が必要だと思ったんです。それに優しい貴明さんなら
きっとあの子も包み込んでくれて、安心して心を許せるようになる筈だと・・・・」
ジロリと、猜疑の目でイルファを見つめた瑠璃。その視線を受け再びビクリとし、イルファは眉をひそめて口元をこわばらせる。
「ふーん・・・・ま、意図した事はわからんでもないけどな。研究所でも困っとったようやし、“ヘタレ力”がなんたらとか、おかしな宗教
みたいなんにすがりとうなる気持ちも。」
うーんと眉間に縦皺を寄せて腕を組み、考え込む瑠璃。やおら目を開くと、ぼそりと呟いた。
「素っ裸のシルファ見て、貴明が劣情もよおすん期待したりせへえんかったか?」
こわばった表情のままイルファはぷるぷると首を振る。・・・・想定外のハプニングではあったが、多少は図星を含んでいた。
「おまけに、シルファにまですけべぇな事吹き込んどるそうやないか?うち、こないだシルファと電話で話して耳疑うたわ。何と言うた
と思う?『“くんずほぐれつ”って、何れすか?』って・・・・何ちゅうえろいことを・・・・」
話しながら瑠璃の顔も赤く染まっている。そっ、それは・・・・と、引きつりながらイルファは声を絞り出した。「はい、言いました・・・・。」
はぁ〜・・・・と、大きく溜息をついて、瑠璃は頭を抱えた。俯くイルファ。
「まだまだ言いたい事はあるでぇ、イルファ。」
テーブルに手を載せて、ずいっと身を乗り出し、たたみ掛けて来る瑠璃。
「な・・・・何でしょう瑠璃様?」
「うちの寝姿とかお風呂入ってる時とか着替えとる時とか、隠し撮りしとるやろ・・・・ちゃ〜んと、わかっとるんやで?」
「えっ・・・・」
「ほれ、撮ったブツ、寄こすんや・・・・何のつもりや、ったく・・・・」 手を差し出す瑠璃。
イルファは狼狽の色を見せた。両手を胸の前で合わせ、小刻みに震えだす。口元を歪ませ、眉を垂れていやいやと首を振った。
“ごめんなさい瑠璃様。それだけは、それだけは勘弁して下さい。宝物なんです、それは・・・・”
とどめの一言。「最近、調子こいとるんやないか?ちっとは自重せえよ?」
支援
イルファのDIAがズキリと疼いた。とうとう頬に両手を当てて、よよよと泣き崩れてしまう。その機能がないので涙こそ流さないが。
「私、そんなつもりじゃ・・・・ごめんなさい、申し訳ありません瑠璃様。うっ、ううう・・・・」
―― あっ・・・・しもた、言い過ぎたわ・・・・と、瑠璃の表情がさっと困惑と後悔の色に染まる。
「瑠璃ちゃん、もうその片にしといてぇな。いっちゃんいじめたらあかんよ〜。」 ソファに座したまま振り向き、珍しくも非難を含んだ
調子で珊瑚が諭す。
瑠璃は立ち上がってイルファの前まで歩み寄り、腰を落とすと肩にやさしく手を掛け、言った。
「ごめんなイルファ。うち、言い過ぎた。堪忍してや。」
「瑠璃様・・・・」 くしゃっと歪ませた顔を上げて、瑠璃を見つめるイルファ。
「けどな、うちの言いたい事、わかってくれるやろ?妹二人に気ぃ遣うとんのはわかる。けどな、なんか方向性ズレとる気ぃするし、
無理し過ぎとる気がするわ。ほどほどがええんよ、ほどほどにな〜。」
「はい・・・・」 ぐすっと、嗚咽を押さえ込みながらうなずいたイルファ。
「瑠璃ちゃん・・・・」
瑠璃が気付くと、いつの間に傍らには珊瑚がいて、つんつんと瑠璃のワンピースの肩を摘んで引っ張っていた。
「イルファ、うちらお風呂行ってるわ。自分らで流すから気ぃ遣うてくれへんでもええよ。」
珊瑚と手をつないで、立ち去る瑠璃。
「いっちゃん、気にせんでええんよ〜。」 珊瑚が振り向いてイルファに声を掛ける。二人はバスルームへと消えていった。
テーブルの前でうずくまっているイルファ。何かが歩んで来る気配に気付き、ふと顔を上げる・・・・
―― 傍らに立っていたのは、ミルファ。
「お姉ちゃん、瑠璃ちゃんの癇癪なんて毎度の事じゃない。気にしなくていいと思うよ。」
「え、ええ・・・・。」
「あたしもさんちゃん達の後にお風呂入って寝ちゃうから。お姉ちゃんも早く寝ちゃった方がいいよ。」
こくりと頷いたイルファ。「ありがとうミルファちゃん。でも、すぐに寝たりしないでお勉強しないとダメですよ?」
―― んべっ!と舌を出して、ミルファはまた部屋に引っ込んでしまった。
一人ぽつねんと、居間に残されたイルファ。ぺたりと太腿の内側を床につけて座り込んでいる。
やがて、手を口元まで持ってくると、カチカチと爪を噛み始めた。
“ここまで来て、もう今更引っ込みなんかつく筈がない・・・・。”
イルファの中で、むくむくと妄想が膨らみ始めた。
“私は瑠璃様の専属メイド。もちろん瑠璃様は大好き。・・・・でも、貴明さんも好き。しかし、今のままでは、2号にもなれはしない。
・・・・もし、ミルファちゃんかシルファちゃんが、貴明さんの心を射止めて河野家に恒久的に常駐するようになれば、瑠璃様珊瑚様
が貴明さんのところを訪問する機会も増える。そうして、いずれかが貴明さんと結ばれれば、私も晴れて河野家のメイドロボに・・・・”
―― にやりと、独り笑みを浮かべるイルファ。
“貴明さんがあんなに奥手だったのは計算外。ミルファちゃんのラブラブアタックも、ことごとく空振りに終わってしまった。
シルファちゃんは比較的うまく貴明さんと良好な関係を築き始めているようには見える・・・・でも、あの子も貴明さんに負けず劣らず
奥手。おまけにあの子の専属契約は仮契約で、期限付き。ミルファちゃんのは正式でも、貴明さんが受け入れてくれなければ意味を
為さないし・・・・”
再び、爪を噛み始める。
“瑠璃様の手前、もうあまり露骨に色仕掛けの手解きも出来ない。貴明さんにはあまり効き目がない事もはっきりしたし、ここは一つ、
切り口を変えていかないと・・・・。
貴明さんに群がる女の人は沢山いる。特に強敵は、環さんとこのみさん。私達には、あまり時間がない。そう、急がないと・・・・。”
「ふ・・・・ふふっ、ふふふふ・・・・」 独り笑みを漏らすイルファ。・・・・やがて、すっくと立ち上がった。
「諦めません勝つまではっ!・・・・必ず、必ずこの手に最後の勝利をっ!」
―― メイドロボ、イルファの逆襲が始まろうとしていた・・・・・
(つづく・・・・かも)
投下終了です。ご支援ありがとうございました。
最後ミスりました。すいません。
次回『勝利のメイドロボ』につづく・・・かも?
それでは。
392 :
391:2008/11/25(火) 05:16:42 ID:G6jmpiqo0
(5/6)、『その片』って、何でしょう?
『その辺』の間違いですね。恥ずかしい。
乙
続き楽しみ
乙
読んでないけど続き楽しみ
>>344でせっかくリクエストしたんだから
こういうのだれか書いてくださいよ
>>391 瑠璃が、受け入れた後のイルファを「お前」呼ばわりしたのが
個人的には、ちょい引っかかったかなぁ。
(「アンタ」辺りが適当かと思うけど)
読んだ
続き楽しみは撤回する
ぶっちゃけこれSSっつーより作者が瑠璃の物真似しながらADのメイドロボ関係の演出にダメ出ししてるだけじゃね?
ダメだししてるとかはともかく、面白くはないなぁ。
言い方悪くて申し訳ないけど、特に何も考えずにただ書いただけのSSに見える。
中身のスカスカのSSを乱発してくれるよりも、その分時間をかけてもっと充実したSSを一つ投下してくれるほうが個人的には嬉しい。
批判がダメとは言わないが、元書き手としてはするなら具体的に批判してほしいと思う
中身スカスカだと思ったならその理由をあげてほしいし、ただなんとなく面白くないと
思っただけならわざわざ書き込む必要もないというか、そう言われてもどうすればいい
のかわからなくて困る
>>391 とりあえず乙。特に瑠璃とか、このキャラこんなこと言うっけ?みたいな違和感は感じ
るが、続きを期待してる
前スレの、コロッケ屋のメイドロボのSS辺りから落としてる人だろ?
一貫して感じるのは、第三者視点の淡々とした描写にこだわり過ぎて、登場人物達
の喜怒哀楽がいまいち伝わってこないんだよな。
今回のはせっかく登場人物数絞ってるんだから、もう少し各人の内面まで掘り下げ
て欲しい。
今からSSを投稿させていただきます。
内容は東鳩2のキャラで『人魚姫』の物語を描いたものです。
文章はギャグっぽいテイストですけど、ストーリーはほぼ童話の人魚姫のままで書いたつもりです。
本編は20スレになる予定です。
恐らく規制による投稿の停止がありますので、ご容赦ください。
これはずっとずっと遠い世界。そしてずっとずっと遠いむかしの物語です。
世界で一番美しい海の底に、人魚たちの住むちいさな王国がありました。
澄んだコバルトブルーの海の底に、珊瑚礁の森が広がる平和で優しい国。
そこに住む人魚たちは、まるで磨かれた真珠のように美しく。そして笑顔は愛らしく。
それはもう男ならめっちゃ萌えざるを得ない可愛い人魚たちばかりでした。
その中でもひときわ可愛らしくて、けれども可愛い容姿に似合わずとても口がわるくて小柄な人魚が一人おりました。
彼女の名前は『いくのん』といいます。
みんなが大人しく心優しい人魚の王国では、彼女のように口が悪い女の子は珍しかったのです。
なんとなく偉そうに見えるいくのんのことを、やがて仲間たちは「人魚姫」と呼ぶようになりました。
「なんかわたし、すっごくくだらない理由でお姫様って呼ばれてるね……」
まあ、ここはそれだけ平和な王国だったのです。
人魚姫はすこしばかり病弱でしたが、優しい姉と暖かい家族に包まれて、それなりに楽しい日々を過ごしておりました。
しかしそんなある日のことです。人魚たちの住む海が激しい嵐に襲われました。
その嵐の中でいくのんの姉が仲間の群れからはぐれてしまったのです。
「しょうがない姉だなあ。ちょっと探しに行こう」
ひとりで大丈夫なんですか? 病弱なくせに。
「ちょっとそこまで探してくるだけだから。それくらい平気」
そう言って人魚姫は嵐の中を泳いで行ってしまいました。
しかしはぐれてしまった姉を探しているうちに、逆に人魚姫が遭難してしまいます。
言わんこっちゃない。しかも海の中で人魚がおぼれるなんて。
「う、うっさい。笑ったら殺す」
いえいえ。笑ったりなんてしてません。
大嵐の日の海の中は、地上の人間には想像できないほど激しく気まぐれに吹き荒れるものなのです。
たとえ泳ぎが得意な人魚でも、その流れに逆らうことは出来ません。
波に揉まれ、海の水を飲んでしまったいくのんは不覚にも気を失ってしまいました。
目が覚めた時、いくのんは見知らぬ浜辺のど真ん中に打ち上げられていたのです。
「ど、ど真ん中?」
はい、そうです。よりにもよって真ん中です。海まではここから200メートルくらいあります。
「やばい……」
そうです。これはやばいのです。
なにしろいくのんは人魚です。身体の半分はサカナなんです。
陸に打ち上げられたサカナの命運は、みなさんご存知の通りです。
いくのんもその手の哀れなサカナの例に漏れず、尾びれ背びれを必死にぴちぴちはためかせて海へと逃れようとしますがまるで届きません。
正にまな板の上の鯉。しかしさすがは人魚姫。並のサカナとは根性が違います。
「し、死んでたまるか……」
ずりずり。
おお。なんと人魚姫はあきらめ悪くほふく全身で海へとにじり寄っていきます。
歯を食いしばり地べたを這いずりまわる人魚姫は、童話のヒロインとは思えないほどの必死の形相です。
でもそんなこと言っていられませんよね。なにしろ生きるか死ぬかの瀬戸際ですから。
そうこうしている間にも、照りつける太陽の光がいくのんの身体に容赦なく降り注ぎます。
その熱と光によって、サカナの身体からはどんどん水分が奪われてしまうのです。
「ひ、干からびる……もうだめ……」
くっ! ガッツが足りない!
いくのんの体力と細腕では、これ以上進むのは無理なようです。
このままで数時間もすれば、人魚の干物が一丁あがりですね。
あやうし、いくのん!!
しかしそこは昔話のお約束。
ヒロインのピンチに、偶然にも一人の若者が通りがかります。都合のいい偶然です。
この彼こそが、いわゆる『運命の王子様』です。
間違いありません。だって頭に王冠だって乗ってますし。
その彼ですが、優しそうだけどなんだか優柔不断で冴えない感じの若者でした。
きっと女の子が苦手で純情な性格なのでしょう。
そんな性格のわりには女の子にはやたらもてて、しかもエッチの時には性格が変わったりするかもしれません。
どっかで見たような主人公です。
「わ、わ?! こ、こんなところに女の子が?! しかもこの姿……」
彼はピチピチもがいているいくのんのことをとても驚いた目でみつめています。
きっと、これまでに人魚を見たことが無いのでしょう。まあ普通の人はそうでしょうが。
「なんで裸で?!」
あれ。驚いてる理由が全然違いました。
彼はいくのんが裸だから驚いていたようです。
確かにそうでしたねえ。
童話の絵本やアニメなんかでは子供の教育に配慮して人魚も貝殻のブラとかつけてますが、人魚の国にはそんなもの売ってません。
本当は人魚たちは真っ裸なのです。
上も下もなんにもつけてないのです。ぶっちゃけエロいのです。まあ下はサカナですけど。
でもこの姿は、若い男の子にはちょっと刺激が強すぎますね。
その若い男であるところの彼が、いくのんに近づいてきますよ。
これは人魚姫、別の意味でピンチですか?
「じょ、冗談じゃないわよ!」
しかし幸いなことに、この男の子は紳士だったようです。
どうやら、裸を見ないように目をつむったまま人魚姫を抱きかかえようとしているようです。
でもさすがにそれは難しいようです。
目を閉じたまま、手探りでいくのんを抱きかかえようと彷徨う王子様の手がいくのんのハダカの身体を……
「きゃっ、ど、どこ触ってんのよ!!」
さまよう王子様の手が、いくのんのお胸をぷにぷに、お尻をさわさわ。
仕方ないですよね。だって見えないものですから。
ああうらやましい。
「へ、へんなとこ触んないで!!」
「ち、ちが……ごめん! えっと……」
「ほっといてよ! っていうかあたしに触るなーー!!!」
「で、でもこのままじゃ。なんだか君、死にそうだし……」
「うるさいうるさい! あんたには関係ないでしょーーー!!」
「で、でもほっとけないよ。やっぱり助けるから」
「きゃぁ!! はなせはなせエロスケベ痴漢ーー!!!」
少年は目をつぶったままでいくのんを抱きかかえて、その身体を海のほうへと運びます。
「ご、ごめん。絶対見ないから、ほんとに……」
などと一生懸命いくのんをなだめながら。
「だめだめ離せ離せこのヘンタイーー!!!」
最低! スケベ! エロ、チカン!
ロリコン! ヘンタイ! ペドフィリア!!
その他、思いつく限りのありとあらゆる罵声を浴びせかけ、頬にビンタし、腕に噛み付き。
人魚姫はそれはもう無我夢中で男の子に抵抗しました。
しかし少年は勇敢にもそれらの仕打ちになんとか耐え切って、いくのんの身体を無事に海へと届けることに成功しました。
王子様、意外と根性がありますね。
「ご、ごめん。ほんとにごめんね……」
ぺこぺこ謝る少年にあかんべえすると、いくのんは海の底へとその身を躍らせました。
それにして命の恩人にあそこまで言うなんてひどいものです。
「だ、だって恥ずかしかったもん……
男の子に会うの、初めてだったし。しかも裸で……」
そうでした。
人魚は全て女として生まれてくるのです。
だから海の底から出たことの無い箱入り娘のいくのんは、これまで男の子に出会ったことはなかったのです。
……あれ? でも男の人がいないのなら、人魚ってどうやって生まれてくるんでしょう?
「人魚は、澄んだ海の綺麗な泡から生まれてくるのよ」
なるほど、それは知りませんでした。なんだかロマンチックな設定ですねえ。
「そうかなあ」
ともあれ男の子を今まで一度も見たことのなかったいくのんは、初めて出会った男の子に一目ぼれしてしまったのです。
「か、か、勝手にそんなこと決めないでよ! 恋なんかしてない!!」
……まあとにかく。
その男の子は最後の最後まで堅く目を閉じて、人魚姫の裸を見ないようにしていました。
そしてどんなにひどいことを言われて暴力を受けても、めげずに人魚姫を海へと運んでくれました。
人魚姫はそんな男の子のことが気になっていたのです。
無事人魚の国に戻ったいくのんは、ぼんやりと王子様のことを考えていました。
「やっぱり、お礼くらいは言っておくべきだったかなあ……」
人魚姫は、なんとかもう一度王子様に会いに行きたいと考えました。
しかし陸のことなどまったく知らない人魚姫は、王子様がどこの誰なのかも分かりません。
でも意外な人物が王子様の素性を教えてくれました。
嵐の中で迷子になっていたいくのんの姉です。
「その男の人は、きっと西の都のタカーキ王子だよ」
「タカーキ?」
「うん、とっても優しい王子様なんだよ。困っている女の子を見ると、放っておけないの」
「あー。そうやって誰にでも優しい男なわけね」
「そ、そうなのかなあ……」
あの王子様は困っていたのが自分じゃなくても同じように助けてあげたのでしょうか。
そう思うと、人魚姫は何故かもやもやとした気持ちになってしまうのです。
「で、お姉ちゃんはどうしてそんなこと知ってるの?」
「え? や、ちょっと、話に聞いただけでして、その……」
「……ふーん」
姉にもなにやら隠し事があるようです。
まあ、それはお互い様だし。いくのんもむやみに突っ込まないことにしました。
さて。
王子様の居場所は分かりましたが、どうやって会いに行けばいいのでしょうか。
なにしろ王子様は陸の人です。
人魚姫のお魚の身体ではお城のそばまで辿り着けません。
「まいったなあ。こうなったら王子様を海の中に引きずり込んでやろうか」
無茶を言わないで下さい。
そんなことしたら、王子様が溺死してしまいます。
「でも陸にあがったらこっちが乾燥死しちゃうし」
そうですね。それに下半身がサカナのままじゃ、王子様と恋もできません。
「だから違うって。はあ……まったく、めんどくさい」
困りましたね。どうしたものでしょうか。
「あー。そういえば、困ったときには東の海に住んでいる魔女に相談するといいって聞いたことがある」
人魚たちの間では困ったことがある東の海に住む魔女に相談する、というのが定番になっているのです。
もっとも人魚の国はとっても平和なので、相談ごとなんて滅多に無いのですが。
まあ、とにかく行ってみましょうか。
「はいはい」
そんなわけで、さっそく人魚姫は東の海にやって来ました。
果たしてそこには噂の魔女が確かに居ました。
魔女と呼ばれるだけあって、なんとなく普通の人とは違う雰囲気です。
「よくきたな。うー」
「うー?」
”うー”ってなんだろう? いくのんの知らない言葉です。
さすがに魔女ですね。良く分からない言葉を使います。
まるで宇宙人みたいです。
まあとにかく事情を話してみましょう。
「えっと、これこれこういう理由で、わたしはちょっと陸の人に会いに行きたいんだけど」
「ふむ、そうか」
「なんとかならない?」
「なんとかなるぞ。万能なる”るー”のちからを持ってすれば出来ないことは無い」
さすがは魔女です。あっさりOKが出ました。
しかし「るー」とか「うー」とかはよく分かりませんが。
なにかの掛け声でしょうか??
「しかし、出来るかどうかはお前の気持ち次第だぞ」
「あたしの気持ち?」
「そうだ。お前の想いの力が願いを叶える」
魔女はおごそかな声でそう告げます。
そして人魚姫に小さな薬ビンを差し出しました。
ビンの中の薬は、差し込む光をうけてきらきらと七色に輝いています。
見てると引き込まれるような、不思議な輝きの液体です。
「この薬を飲めば、うーは人間になることが出来るのだ」
「ほんと?」
「しかし、この薬はただの薬ではない」
「ただじゃないの? お金いくら?」
「……そういう意味ではない。金など不要だ。しかし、この薬には副作用がある」
ふくさよう?
人魚姫には言葉の意味がよく分かりませんでしたが、やっぱりタダではないみたいです。
お金なんて持ってたかなあ、といくのんは考えこみます。
なにしろ人魚の国ではお金なんて必要ありませんでしたから。
「いいか。この薬は、乙女の恋する力を根源としてその生命の形を組み替える効果を持つのだ」
「???」
「”るー”の力は想いの力だ。お前の想う力が失われてしまった時は、組み替えた生命の形も一緒に失われてしまうのだ」
「……ごめん、わかんない」
魔女はなんだかむずかしいことを言いました。
しかし人魚姫にはさっぱり意味が分かりません。
人魚はあんまり難しい言葉は知らないのです。海の底には本も新聞もインターネットもありませんし。
もっと分かりやすく説明してあげてください。
「分かりやすく言うと”恋の力で変身"してしまうわけだ。新しい命に」
「あっそ」
「しかしその新しい命はお前の恋そのものだ。
だからお前の恋が終わったとき、その命は尽きてしまう。そして元には戻れない」
「はあ」
「つまり、この薬で変身しても”うー”の恋が叶わなかった場合、”うー”は死んでしまうのだ」
「……」
「異種族で恋がしたいと望むなら、それは命がけの恋だ。覚悟が無いならやめておくがいいぞ。うー」
魔女の言葉に、人魚姫はあきれたような溜息をつきます。
「なんでみんなして、恋とかそういうことにしたがるんだろうなあ……」
いくのんは魔女の説明を聞いて、しばし考え込みました。
そんな、死ぬとかいきなり言われても。
平和に生きてきた箱入り娘の人魚姫にはまったく実感がありません。
それに今自分が感じているこの気持ちが、本当に恋のなのかどうかも分かりません。これまで恋なんてしたことなかったし。
しかも王子様は、たとえ会いに行っても自分のことなんか忘れているのかもしれません。
「はあ……」
でも。
なぜか気になるのです。王子様のことが。
彼のことを考えると、なんだか胸の奥がじんじんと痛むのでした。
どうしても、もう一度彼に会いたい。やはりそう思います。
「話は分かったから。その薬、ちょうだい」
「いいのか? ”うー”。死ぬかもしれないぞ」
「いいの。どうせあたしサカナだから、寿命短いし」
そう言うと、人魚姫はまるで迷いを振り切るように薬のビンを一気に飲み干しました。
するとどうでしょうか。
いくのんの全裸のシルエットが光の中に瞬いたかと思うと、くるくると淡い魔法の輝きに包まれて人魚姫の身体が人魚から人間へと変わっていきます。
まるで、どっかの魔法少女の変身シーンのようです。
それにしても、この手の変身シーンってどうしてこんなにエロいんでしょうか?
「エロいのは、あんたの頭だ」
その通りですね。すいません。
支援
その淡い光の輝きが消え去ると、そこには上から下まですっかり人間の姿になった人魚姫が……いえ、郁乃ちゃんが立っていました。
足もサカナじゃありませんし、ちょっと残念ですが服もちゃんと着てますよ。
かわいらしい花柄のパジャマです。
「……なんでパジャマ?」
お約束です。
さあ、とにかく王子様に会いに陸に向かいましょうか。
と、立ち上がろうとした郁乃ちゃんでしたが、何故かふらふらと倒れこんでしまいました。
どうしました? 大丈夫ですか?
「う、うん。もう一度……あ、あれ? 足がちゃんと立てない……」
「むう。薬に体質が合わなかったか。まあこういうこともある」
「……”るー”は万能の神様じゃなかったの?」
「む」
すると魔女は両手を空に掲げて、
「るー!」
と一言。
魔法の呪文を唱えたようです。多分。
すると周囲にピンクの煙が立ち込め、その煙のむこうからぴかぴかの車椅子が現れました。
「これに乗ってお城まで行けばいい」
「なんだか変なところで気前がいいね」
「偉大なる”るー”の力はアフターサービスも完璧なのだ」
「はいはい」
そして郁乃ちゃんは魔女に抱きかかえられて車椅子に乗せてもらいました。
やっぱり郁乃ちゃんには車椅子とパジャマが似合いますね。
「納得いかない……」
でもこれで準備は万全ですね。
王子さまに会いに行きましょう。
早速郁乃ちゃんは陸に上がって西の都に向かいます。
魔女にもらった電気車椅子は、来栖川製のハイパワー仕様です。坂道もすいすい登っていきます。
はい。あっというまに西の都に着きました。
「これ、いったいいつの時代なのよ?」
気にしないでください。考えたら負けです。
さて、人魚姫の目の前には今まで見たことも無いほど大きな町が広がっています。これが西の都です。
人魚姫が初めて見る西の都は大変賑わっていました。
人は溢れ帰り、レンガ造りの建物が立ち並び、店先には様々な商品が並んでいました。
海の底とはまるで違うきらびやかな世界です。
「へえ……これが人間たちの町なんだ……」
郁乃ちゃんは感心したように町の様子を眺めています。
初めて目にする都会の光景に心奪われてしまったようです。
「王子様、この町のどこにいるんだろう」
おのぼりさんの郁乃ちゃんでも、都の場所くらいは知っていましたが、さすがに何処に行けば王子様に会えるかまでは分かりません。
仕方ないので、とりあえずその辺の人に尋ねてみることにしました。
「あの、タカーキ王子ってどこに行けば会えますか?」
「ああ。王子さまだったら、ちょうどあっちの広場にお姿をみせて下さいましたよ
それにしても、ほんとうにめでたいことですね」
「めでたい?」
なにがめでたいんだろう? と郁乃ちゃんは不思議に想いました。
が、まあどうでもいいことです。
とにかくあっちの通りに行けば、王子様に会えるのです。
そう思うとなんだか緊張してきました。
人間の姿になった自分の姿を見て、王子様はどう思ってくれるのでしょうか。
もしかしたら『可愛い』って褒めてもらえるかもしれません。
なんて考えて、クールな郁乃ちゃんもちょっと胸がどきどきと高鳴ります。
いそいそと王子様がみえる広場へと向かいます。
「え……」
しかし運命は残酷でした。
王子様は確かにそこにいました。
でも、一人ではなかったのです。
「王子様ーー! ご結婚おめでとうございます!」
「お幸せに!」
王子様の傍らには清楚なウエディングドレスに身を包んだ女性が立っていました。
なんと、今日は王子様の結婚式だったのです。
「っていうか、なぜか花嫁があたしの姉だし……」
そうなのです。
王子様のとなりに立ち、花嫁衣装に身を包んだその女性は、あろうことか確かに郁乃ちゃんのお姉さんでした。
気丈な郁乃ちゃんもいささか呆然として二人の姿を見つめていました。
こんな展開、ありなの?! とか。
まさか奥手の姉に自分が先を越されるとは! とか。
いつのまに結婚までいったんだよ! とか。
よりにもよってあたしの姉に手を出すことはないだろうが! とか。
ぶっちゃけ様々な思いがいくのんの心を駆け巡っていました。
でも、何よりも人魚姫の心の中に突き刺さったのは、二人の本当に幸せそうな心からの笑顔でした。
その笑顔の眩しさに、郁乃ちゃんは既に自分の居場所を失ってしまったことを思い知らされたのです。
やがて王子様が合図して、周囲の人々になにか呼びかけました。
するとみんな大喜びして、手に手に紙がいっぱい詰まった箱や袋を持って集まります。
みんなが持ってあつまった箱の中には、今日のためにあらかじめ作っておいた桜色の紙吹雪がいっぱい詰まっています。
この国では祝いごとのある日には桜色の紙吹雪を撒き散らすという風習があるのです。
みんな楽しそうに桜の紙吹雪を撒き散らして、王子様とお姫様の結婚式を祝います。
通りを歩いていた人々、立ち並ぶ建物の二階の窓からも桜色の紙吹雪が空へ舞いあがって行きます。
みんな紙吹雪は風に乗って青い空へと舞い上がっていきます。
おめでとう、という言葉と共に。
それはやがて青い空を覆い尽くすほど一杯に広がっていく桜色のお祝いの証でした。
きっと、この国の人々みんなが二人の結婚を祝福していたのです。
その中で、郁乃ちゃんだけが一人、違う気持ちでそこに立っていました。
「戻りたいな……」
桜吹雪の舞う空の下、彼女はぽつりとそう呟きました。
でも。
一度恋を知ってしまった女の子は、もう少女へと戻ることは出来ないのです。
郁乃ちゃんは車椅子に乗って、西の都を離れました。
もう、あれ以上あの場所には居たくなかったのです。
都を離れ、海岸にやってくると、郁乃ちゃんは着ているパジャマを脱ぎ捨て、裸になって海の中に飛び込みました。
彼女は人魚姫の姿に戻ると、深い海の底へ潜っていきます。
しおさいをくぐりりぬけて、長く続く鍾乳洞のトンネルを通過すると、美しい珊瑚礁の森が見えてきます。
それは人魚姫の大好きな故郷。人魚の王国です。
世界で一番美しい国。世界で一番優しい国。
この国に住んでいる人魚たちは、みんな口を揃えてこの国のことをそう言います。
『みんな、この国から出たことないくせに
この国よりいい場所なんて、いくらでもありそうなのに』
人魚姫はこれまでずっとそんなことを思って生きてきました。
でも人魚姫は今、人魚の国のこの景色が、世界で一番美しいと心から思えました。
今日生まれて初めて見てきた豪華で賑やかな西の都よりもずっと。
人魚姫は海のずっと深いところまで潜っていきます。
そして海の底の岩肌に背中を預けて、光の差し込んでくる海面を見上げました。
「きれい……」
海の水を通って海底にまで差し込む太陽の光は、珊瑚礁に反射して海面を淡いコバルトブルーに輝かせるのです。
人魚姫は、その美しいブルーの光を、海の底から見上げた景色がずっと昔から好きでした。
波と一緒に揺れる海面の青い光をみつめていると、なんだかゆったりと優しい気持ちになれる気がするのです。
揺れる光の輝きを見つめながら、人魚姫は様々なことを思い出していました。
病弱だった自分のことをみんなが心配して見守ってくれていた子供時代の頃のこと。
こんな国退屈だと不満を漏らしていた自分のために、人魚たちは変わった形の貝殻や、変な声で鳴くサカナを持ってきてくれました。
口の悪い自分にも、みんな優しく接してくれていました。
姉と家族とずっと暮らしてきた王国。
辛いことも悲しいこともなにも無かった、平和で美しい国です。
ちいさな頃から泳いでいたこの海の水の中で、人魚姫はとても心安らかな気持ちでした。
柔らかな潮の流れの中で、人魚姫は自分の身体が水の中にだんだん溶けていくのを感じていました。
深い深い海の底で。
海の泡から生まれた人魚姫は、泡になって静かに消えていきました。
人魚姫は自分が消える瞬間に二つの願いを残しました。
一つはもし生まれ変わった時、もう一度姉の妹に。
そしてもう一つ。その時には自分にも素敵な恋人ができますように。
二つの願いを偉大なる”るー”は聞き届けました。
彼女の願いは叶ったのです。はるか遠い未来の世界で――
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「お、郁乃。今やっと目が覚めたのか」
二階の寝室からのっそりと郁乃が降りてきたのは、もう時計の針が正午を廻ってからだった。
しかし遅い。
郁乃が朝には弱いってことは分かってたつもりだけど、ここまでとは。
「朝飯、作ったんだけど……」
一応郁乃のぶんも作っておいたんだが。
リビングのテーブルにまだ並べてある皿には、トーストとベーコンエッグ。
でも、もうすっかり冷めてしまっている。
「これ、暖めなおすか? それとも……」
他になにか作り直そうかって聞くつもりだった。
しかし郁乃は俺の言葉なんてまるで聞こえてないみたいに、ずんずんこっちに向かってくる。
そして、ぎゅっと俺に正面からしがみつくように抱きついてきた。
「お、おい、郁乃……」
「……」
しかし、郁乃は何も答えない。
細い腕を俺の背中に廻し、俺の胸に顔を埋めるようにしっかりとしがみついて離れない。
シャツの布地を通して、郁乃の熱い吐息を胸に感じる。
……もしかして、泣いてるのか?
「あ、あのさ、郁乃……どうしたの?」
「うるさい」
一言。ただそれだけ言ったきり。
その後、俺がいくら話しかけても郁乃は一言も口をきかず。
ずっと彼女の温もりを俺は腕の中に感じていた。
ニュース、朝のバラエティ、生活情報。そしてまたニュース。
郁乃はチャンネルでいくつかのテレビ番組を切り替えて、結局気に入ったものが無かったらしい。
チャンネルを俺に投げて寄こし、自分は経済新聞を手に取った。
むー、やっぱりいつもどおりの郁乃だな。
まるで自分の家みたいに堂々としてるぞ。
さっきの郁乃はいったいなんだったんだ??
郁乃がこの家に来るのは、もう珍しいことでもなんでもない。
……泊まったのは、昨日が初めてだけどな。
それがさっきのことに何か影響してるのかもしれない、なんて思ったけど……
というかそれぐらいしか思いつかない。
あんな風に郁乃を抱きしめたのは、初めてのことだった。
少し嬉しくもあったけれど、それよりもどうして郁乃がそんなことをしたのかが心配になってしまう。
そんな郁乃だが、車椅子を寄せて居間のソファに腰を降ろそうとしているようだった。
「手伝おうか?」
「平気」
よいしょっと。
掛け声とともに、まるで体操の平均台みたいに両腕だけで器用に自分の身体をソファに運ぶ。
そんな郁乃を見ると、ときどき妙に関心させられてしまう。
あんなに細い腕なのにな……
「なによ?」
「い、いや……」
ぼんやり顔を見ていたら睨み返されてしまった。
うう、弱いな俺……
「あたし、別になんでもないから」
「え?」
「ちょっとヘンな夢見たから、落ち着かなかっただけ」
あ、さっき抱きついたときのことか。
いきなりだからわかんなかったぞ。
「ヘンな夢って? どんな?」
「ヘンな夢だから、言いたくない」
ぶっきらぼうにそれだけ言うと、郁乃は俺を睨んでそっぽを向いた。
これ以上、聞くなってか?
どうしたもんかなあ。
俺はおれなりに知恵をめぐらせて考えてみるが、いくら考えても分からない。
郁乃のご機嫌とりはいつも難しい。
まあ、女の子なんてそんなものかもしれないけど
支援?
それでも今の郁乃の心境について俺が無駄に頭を捻らせていたその時。
「あのね、貴明」
不意に郁乃が俺によびかけた。経済新聞に、目を落としたままで。
「なんだ?」
「一度しか言わないから」
「はあ? だからなんだよ」
「大好きだよ」
は、はあ??!!
「おまえ、今なんて言……わあっ熱っ?!!」
その言葉に驚いて、思わず手にしたコーヒーのカップを傾けてしまった。
今いれたばかりの熱いコーヒーがキッチンテーブルと俺の膝を熱く濡らす。
「あっちゃっっちゃ!」
「ちょっと。なにしてるの?」
「い、いや、だってなあ……」
だって、お前がいきなりあんなこと言うからだろ? まったく。なんだっていうんだよ。 さっきのことと合わせてどうにも気になって仕方ない。
一体なにを考えているんだろ、この娘は。
そんな郁乃は零れた床のコーヒーを慌てて拭いている俺を眺めながら、ぽつりと一言。
「冴えない王子……か」
「な、なに??」
「別に」
やっぱりわけわらん……
そんなこんなで、今日も郁乃の機嫌に振り回されそうな俺であった。
きっとこれからも、ずっとそうであろう。
以上になります。
支援くださった方、お手数おかけしました。
どうもありがとうございます。
『訂正』
通しナンバーの,12が121になってしまいました。
誠に申し訳ありませんでした。
この場を借りてお詫びいたします。
GJ
面白かった、良作でした
おかげで今書いてるやつ出しずらくなった orz
その前に完成して無いしな…
こう言う語り方って結構書くの難しいのにえらく綺麗に書いてるなあ
すげえ
やはりいくのんは良いですね
姫百合家のメイドロボ、イルファは焦っていた。
彼女は、姫百合家と河野家の縁組を推し進める事で、姫百合瑠璃と河野貴明双方の専属メイドとなり、ハーレム生活を実現する
事に執念を燃やしていた。
・・・・しかし、妹二人を尖兵とし河野家に橋頭堡を築かんとする彼女の策は、遅々として進展しない。
女性関係に極度に奥手な貴明の“ヘタレの壁“に阻まれ、イルファの情事指南を受けた次女、河野はるみことミルファのラブアタック
はことごとく空振りに終わり、河野家内部に直接送り込まれた三女シルファも、貴明との関係は極めて牧歌的に終始してしまっている
始末。
更には、妹たちに対する彼女の“恋の指南”の行き過ぎを瑠璃に指摘され、色仕掛け攻勢による貴明篭絡も、効果の薄さも手伝い
手詰まり感が漂い始め、方向転換を迫られる状況となっていた。
どうする!?策士イルファ!
彼女の灰色の謀略コンピューターに、一発逆転の秘策はあるのか!?
――――
「はぁ〜・・・・」
「どうしたんですか貴明さん?あんまり溜息ばかりつきますと幸せが逃げますよ?」
「ほっとけイルファ。四六時中女子に囲まれて、それくらい幸せ逃げた方が貴明には丁度いいガス抜きやぁ〜!」
瑠璃の出迎えを装って、下校中の貴明に接触したイルファ。彼女は貴明が浮かない顔で溜息を漏らすのを見逃さなかった。
「うん。なんかさ、最近シルファちゃんが冷たいんだよ・・・・また変な食事出てくるようになっちゃってさ・・・・」
「まぁ。なんかあの子怒らせるような事したんですか?」
「う〜ん・・・・ひょっとすると、このみの家でつい誘いに乗って、夕食摂っちゃったのがマズかったのかなぁ・・・・」
ははぁ〜ん、シルファちゃんはやきもちを焼いてるんだわ・・・・イルファはそう察した。
ここでもう一押しすれば、彼女達の仲は一気に進展する可能性がある。しかし何も手を打たなければ、むしろ一層冷え切ってしまう
可能性も。
動こう。イルファはそう判断した。・・・・しかし、どうやって?
彼女達が校門から離れ貴明とほぼ分かれたところで、ピンク色の物体が貴明にそろりそろりと接近していた。
「―― ダぁ〜〜リンッ☆」
「おわっ!?」
電信柱の陰からそれを見守るイルファ。何かが閃いたのか、彼女の目がキラリと光った。
「お姉ちゃん、ダーリン何か元気ないんだよぉ。心配だよぉ〜。」
姫百合宅。ソファに下向きに寝転がって両足を上方にぶらぶらさせながらミルファがぼやく。
「うふふ。多分、最近シルファちゃんと仲良しだったから、このみさんの家にお呼ばれしたのがバレちゃって冷たくされてションボリ
さんみたいですよ。やきもち焼かれちゃってるんでしょう。」
「―― えぇーっ!?なになにっ?それどういう事ぉ〜!?」
捻くれ者のヒッキーの性格だから、貴明とうまくいく筈もなく、そのうちほうほうの体で追い出されることだろう・・・・程度に軽く見て
いたミルファには、かなりのショックだったようだ。
“・・・・どうしよう。このままじゃ分が悪いよぉ。あたしはダーリンの1クラスメート。学校でくっつける時間にも限界がある。でもあいつ
は、ダーリンと朝も夜も一緒。それこそ寝床を一緒にすることも・・・・もしかして、もうえっちとか・・・・嫌ぁーっ、そんなのっ!”
焦慮して親指をくわえるミルファの様子を、何食わぬ顔で窺うイルファ。
・・・・ごめんね、ミルファちゃん。もうちょっと駒として動いて頂戴ね。思い通りに動いてくれるかしら・・・・“人間”としての自分を捨て
てまで。
―― そして数日後。
「―― ダぁーリンッ!」
「おわぁっ!」
突如、河野家に出現したピンクの台風娘、河野はるみ。
「あのね!あたしの本当の名前はミルファ!さんちゃんのクマのぬいぐるみだったクマ吉なんだよ!!・・・・というわけで、今日からは
ダーリンのメイドロボ、ミルファになりました。よろしくぅーっ☆」
大きく盤面上の駒が動いた。とうとう人間の仮面をかなぐり捨ててまで、メイドロボの“特権”を生かす事を選んだミルファ。おぽんちな
彼女の出した解答に、イルファは満点の評価を出した。
そして早速始まる、妹シルファとの衝突・・・・イルファは仲裁と称して、河野家に乗り込んでいく。
トントンと思惑通りに進展していく事態。こうして、イルファは河野家に勃発した“内紛?”に、直接介入する口実を得たのであった。
妹達のライバル意識を煽ることで、一層貴明との仲を進展させる狙いもあった。―― ニヤリ、とほくそ笑むイルファ。
「イルファ、貴明んとこばっか日参しとるけど、ちゃんとこっちの家事も忘れへんようにな。」
「はい。申し訳ありません瑠璃様。でもミルファちゃんとシルファちゃんが貴明さんにご迷惑掛けてないか見てませんと。」
サッカーロボとしての彼女の本能は、センターハーフとして妹達の動きに目を光らせる事に怠りなかった。跳ね返ってくるボールに、
いかに的確な対応をとらせるか―― 目下の状況は、シルファに突破口を開かせる役割を負わせた方が良さそうだ。
ごめんね、ミルファちゃん―― またしても、直近の妹に心中謝る事になったイルファ。
―― しかし、思わぬ伏兵の出現が、彼女のゲームプランを大きく狂わせる事になる。
雄二にせがまれて、見合いデートの代役として映画館にやって来た貴明。
「・・・・あうあうあうぅ〜・・・・」
今、股間を蹴り上げられ、うずくまっている。
「セ・・・センパイ!?」
貴明が見合い相手の顔を仰ぎ見れば・・・・先方もダミー、このみの友人である後輩、よっちこと吉岡チエ。
―― この強烈な出来事が、二人を急接近させる事になった。
――――
「ご主人様、最近帰りが遅いのれす。」
「あたし、ダーリンが別の学校の女の子達とべたべたひっついてるの見たよ。ダーリンの浮気もの〜っ!!」
イルファも、よっちをノーマークという訳ではなかったが、このみの友人でもあり自重するだろうという事で、貴明に群がる少女達
の中では危険度低めのランクだった。それが今、スルスルと頭一つ抜け出して本命候補に浮上してくる。
“・・・・マズイわね・・・・やっぱり、貴明さんは睨んだ通り巨乳フェチだったわ・・・・”
ミルファがちょっかいを出すが、こういう場合、彼女の行動は概ね裏目に出る。しかも、サッカーロボとしてはフェアプレー精神に
富んだ(時折ラフプレーあり)彼女であるから、、敵に塩まで送る始末。
・・・・そうして、ついに、ゴールポストに決勝点のボールを叩き込んだのは、吉岡チエとなった。
それを伝え聞いたイルファは、独り姫百合家で爪を噛んでいた。
イルファの最終目標は、瑠璃と貴明を結ばせて、双方の専属メイドの位置を得る事だったから、その前提が崩れてしまった事に
なる。
・・・・しかし、イルファにはまだ秘策があった。
それは、乱戦に持ち込んで、貴明周辺を総ハレム化してしまう事。
ここで、イルファは体面をかなぐり捨てる事を決意した。自身を貴明争奪戦の渦の中に身を投じることにしたのである。
―― もう瑠璃様専属とかどうでもいい。とにかく、貴明さんが欲しい ――
遂に、黒幕が直接参戦という局面となった。
“HMX−17三連星の単縦陣で横から突っ込んで、敵陣を崩し肉弾戦に持ち込むのよ・・・・”
これまで以上に、河野家に足繁く通うイルファの姿が見られるようになった。
「イ、イルファさん、最近ミルファちゃんとシルファちゃんも結構仲良くなってきたみたいだし、そんな心配しなくていいよ。」
「いいえ貴明さん。指導教官としては、あの子達が粗相をしでかさないように、監督を続ける義務があります。」
――――
「センパイ、いっつもあたしの家とか青姦ばっかりっスよ。そろそろセンパイの家にお邪魔してもいいっスか?」
「え、えぇぇぇっ・・・・!?」
“ま、参ったなぁ・・・・うちには、メイドロボが3人もいるって事、チエには話してないし・・・・”
――――
「さあ、正しいメイドロボの心構えです。二人とも、私に続いて斉唱なさい。」
『―― くんずほぐれつ ずっこんばっこん!!』
メイドロボ、イルファの戦いはまだ終わらない。
(おしまい)
イルファさんが黒くてごめんなさい orz
本当は、昨日の誕生日に合わせるつもりだったのが、忙しくて間に合いませんでした。
・・・・これで終りでいいんでしょうか?
では。
>>432 乙〜
ちと純粋な疑問っつーか、けして批判じゃないんで勘違いしないで頂きたいんだけども
一連のメイドロボSSを読んで感じるんだが、実はADの共通ルートとかミルファルート嫌ってる?
今回もミルファのメイドロボだって告白のあたり、原作にあるシーンをわざわざアレンジして
自分の色を出してるよねえ
『原作になかったことをSSとして書く』んじゃなく、『原作にあったことをSSとして書く』ってのは
まぁ悪いとは言わないんだけど、毎回それだと原作アンチと受け取られるかもしれねーですよ
>実はADの共通ルートとかミルファルート嫌ってる?
嫌ってるというか、納得がいってない人は多いんじゃないかな
いや別に他の人がどうこうってのは興味ないし、どーでもいいよw
こういう形のSSを書くときの原動力を聞きたいなーと思ったので、本人以外から答えを頂いても
しょうがないんだ
ごめんね
436 :
432:2008/11/27(木) 23:38:29 ID:iaBfMdhX0
>>433 ううむ、そう見えますか。
原作の印象的な出来事の裏面とか前後を埋めてみたいって願望がまずあって、
ついつい引用してしまってますが、やはりやりすぎ感は否めないかも。
原作アンチって事はないです。なにせ投稿物はAD準拠のものばっかりですし。
どうもイルミルに偏る傾向がありますが、動かしやすいせいかも。
次はシルファかな、とも思うんですが、シルファ語間違えずに通せるかいまいち
自信がありません(汗
ご指摘ありがとう。では。
おつ
HM開発課長は報告書に目を通すとパサリとそれを机上に投げ、手を組んで背もたれにぐっと身を預けた。
「結構な開発費をかけたんだよな、HMX−17c型には。それを取り壊さなくちゃならんのは残念だよ。」
「壊す?」 HM開発主任はジロリと課長を睨み、大いに異議を含んだ声で訊ねた。
「当然だよ長瀬君。彼女をこれ以上維持する事が一体何になる?大体だね、この世に無益なものがあるとしたら、まともに話せない、
人とも接する事が出来ないロボットじゃないか?折角女性型なのにセクサロイドにもなりゃしない。それにだ、三原則もインストールされ
ないで、人を引っ叩く可能性のあるロボットがいる事が世間に知れたら、どうなるんだろうね?」
「ええ、問題があるのは認めます。」
「なら、どうするね?」
長瀬は譲らなかった。 「これからも彼女の観察は続行します。」
「何のために?」 と課長は言いかけたが、長瀬の目に頑として譲らない決意があるのを認めると、ふぅと溜息をついて、肩をすくめた。
「わかったよ。君に任せる。」
長年HMの開発に携わり、人間よりもロボットの娘達を愛するような長瀬である。彼と言い争うのは、およそ無駄な事であるのは課長
もよくわかっていた。HMに関する限り、このベテラン開発者の意向は絶対だった。
「HMX−17cに新たな兆候が見えたら教えてくれ。」
「わかりました。」 と、長瀬は小さく頭を下げた。
自分のデスクに戻ると、長瀬は荒っぽく椅子に腰を落とした。そしてトントンと指で机上をせわしなく叩く。やがて叩くのを終えると、ふと
思い出したように電話の受話器を取り、すばやくダイヤルを押した。ほとんど指が覚えている番号だった。
「・・・・あぁ、珊瑚君。悪いんだけどね、ちょっと研究所に来てくれないか。イルファも連れてね・・・・ミルファ?いやあの子はいい。」
シルファのために特別に用意された個室の中は、女性のパーソナリティを持たされているというのに、実に無味乾燥としたものだった。
当初はもっと人間の少女向けの調度に飾られていたものだが ―― 彼女が叩き落したりして、順次その数を減らしていった。
しかも、カーテンは閉められ、照明も点灯されず真っ暗で ―― 彼女が驚かないよう、イルファは暗がりの中をそろりそろりと進まざるを
得なかった。
扉が開いた時に差し込んだ光に気付いて、シルファは腕と膝の間に顔をうずめたまま、扉側をちらりと一瞥する。
彼女は部屋の奥隅にぺたりと座り込み、脚を両手で抱え込んでうずくまっていた。
イルファの立ち姿を認めると、彼女は小さな声で呟いた 「・・・・放っておくのれす、シルファの事は。」
かすかにイルファは眉をひそめて、腰に手を当てると、苛立ちを押さえ込みながら言った。「シルファちゃん、ちょっと話を聞いて頂戴。」
―― しかし、シルファ、無言。
イルファはふぅっ、と溜息をついた。そして目を一旦閉じ、再び見開いた時、彼女の瞳には何かを決意したような光が宿っていた。
「わかりました。もう今のあなたには、何を言っても無駄みたいですね。」
―― シュッと、イルファの立ち位置からその姿が消え失せる。次の瞬間には、彼女はシルファの肩を掴んでいた。
「―― ッ!」 背後のイルファに向くシルファ。抵抗の気色を見せる。
「イ、イルイルッ!なっ、何するんれすかっ!?」
「外に出ましょう、シルファちゃん。研究所の外へ。」
「―― ッ!いっ、嫌れすっ!」
シルファは肩を掴んだイルファの手を払い除けようとする。イルファはその間を与えずに、シルファの脇腹を指先でズボッと突いた。
「な―― っ!何を・・・・するん・・・・れすか・・・・」
そのすぐ後には、シルファは頭をガクリと下げ、両手はダラリと床に垂れ落ちていた。
扉の外から 「イルファ?」 と呼びかける声がした。
イルファはスリープモードに入ってグッタリしているシルファを肩で担ぎながら部屋から現れる。
扉の外に立っていたHM開発主任と姫百合珊瑚はその姿を見て目をむいた。
「イルファ、一体これは?」
「ら、乱暴はあかんよ〜、いっちゃん?」
口を真一文字に結び、真剣な眼差しで長瀬をキッと仰ぎ見たイルファ。彼女が言った。
「おじさま、この子のこれからは、私に任せてもらえませんか?」
長瀬は当惑げに肩をすくめながら、溜息をついた。そして、言った。
「わかったよ、イルファ。任せたよ。」
顎に手を当てて思案していた珊瑚が口を開く。 「でも、これからどうするんや〜、いっちゃん?」
「家に連れて行きましょう。その次はそれから考えます。」
カチカチと、席でライターを鳴らして煙草に火をともしながらHM開発課長が長瀬に訊ねた。
「連れ出す?外に?彼女を?」
コクリと頷く長瀬。「はい。」
う〜ん・・・・と、課長は手を額に当てながら考え込む。
「大丈夫なのか?」
大丈夫です、と自信に満ちた声で答える長瀬。
「彼女はDIA設計者の姫百合君のところに委ねます。実質的な面倒はイルファが見る事になります。彼女には、もっと暖かみのある
環境が必要なんです。」
そう言って、長瀬は窓外に目をやった。そろそろ夏から秋に切り替わろうとする空だった―― 。
(つづく)
これは短いレス数で、気長に落としていくつもりです。
特にミルシル生誕週間に合わせた訳ではありませんが。
それでは〜。
んー、しばらく間あけるのをお勧めするー
アンタって投下間隔が狭まると悪いクセが出るのなw
こう言っちゃなんだが、前に叩かれて去ったときと似たようなSSばかりになっちまってるぜ
っつーか、もうTHのメイドロボに関しちゃ俺設定はカンベンだわ
あんなファンタジーアンドロイドに、それっぽい設定をゴテゴテ装飾しても鬱陶しいだけ
シリアスぶった話を書きたいなら、「感情を持ったロボット作るなんて不可能」ってとこをスタートラインにしてくれ
俺価値観のメイドロボSS(笑)が書きたいんじゃねーの?
TH2に準じるつもりがないならTH2以外で書いてくれって感じだが
うむむ、どなたの事を想起されてるのかは存じませんが(汗
第七研究開発室HM開発課というのは公式設定であったと思いますし、課があるなら課長もいるだろうと。
せいぜいその程度ですよ〜。
貴明宅に送られるまで、研究所員が困りきってたってのもイルファが語ってたと思います。
仰る通り不必要にシリアスにしちゃった反省はありますが、導入暗いのは私のクセなんで〜。
この先はシルファ視点で割とほのぼの行こうと思ってます。不快な向きはNGワード設定推奨で。
これは先にも述べました通り投下間隔は長めにやりますので。
442と443は昔いた作者を叩きたいだけだからスルーでいいよ
今回のSSは俺設定を批判するような内容でもないし
第七研究開発室HM開発課でぐぐったらToHeart非公式設定集ってのが出てきて笑ってしまったw
>>445 まー、作者叩きしたいだけって見えるならそれでもいいけど
あなたもSS読んだなら感想つけてあげると喜ぶと思うよ?
>>444 了解した
「・・・・」これをNGしとくわ
9割があぼーんされて流石の俺も参った
これからも是非使い続けてくれ
最近は叩きムードで荒れても勢い無いのな
「タカ君早く早く〜! タマお姉ちゃんたち待ってるよ。」
「はぁっ、はぁっ、このみが寝坊するからだろ、全く!」
朝の通学路を全力疾走する。
最近すっかり朝夕が冷え込んできて冬がもうすぐそこまでやってきていることを実感する。
このみが駆けていく後を追って走る自分の息も真っ白だ。
「あっ、タマお姉ちゃんもユウ君ももう来てるよ!」
たったかと階段を駆け上がっていくこのみの視線の先を見ると、タマ姉と雄二と、そして
最近加わったもう一人の姿が見えた。
「おはよう!草壁さん。」
「おはようございます、貴明さん。」
大声で挨拶をすると、俺の彼女……草壁優季はにっこりと笑って答えた。
◇
「それにしても今日は一段と寒いね。」
前を行くタマ姉、このみ、雄二の3人の後について歩きながら、肩を並べて歩く草壁さんに
話しかけた。
「そうですね。今日はちょっと寒いです。」
そう言う彼女の姿はというと、ふかふかのマフラーに学校指定のカーディガン姿だ。
彼女のチャームポイントの一つである綺麗な足も今日は黒いストッキングに包まれていた。
「もっと厚着して来れば良いんじゃないの?」
「いえ、上半身は温かいんですけど……スカートがちょっと。」
「え? でも、ストッキングはいてるとけっこうあったかいって前に言ってたんじゃ……」
「えっと……」
彼女はちょっとだけ困ったような顔をした後で自分のスカートの横の布地をつまむと、
俺に向かってちらりとめくって見せた。
「こういうことなんです。」
「え……?」
……パンティストッキングだと思っていたら、スカートの下には絶対領域が隠れていました。
「ここ連日寒かったので毎日のようにパンティストッキング穿いてたんですけど、そのせいで
洗濯中だったりほつれが出来てたりで、今日は穿けるのがなかったんです。
運悪く新品のストックも切らしちゃってましたし……それで仕方なく、ガーターストッキングを
穿いてきたんですけど……寒くって。」
「あ、そ、そうなんだ。」
草壁さんが説明している間も、俺の目は白い肌と黒のコントラストに彩られた際どいラインに
釘付けだった。
だってしょうがないじゃないか、男の子なんだもん。
「ガーターストッキングね。朝からタカ坊を悩殺するなんてなかなかやるじゃない。」
「あ、い、いえ、そんなわけじゃ……」
いつの間にかタマ姉が俺たちの方を見ていてニヤニヤ笑っていた。
「わぁ……大人っぽいでありますよ。いいなぁ……」
このみもいつの間にかタマ姉と一緒に草壁さんの絶対領域に視線を注いでいた。
「ほぉ、どれどれ俺も一目……(みしっ)グホァ……」
草壁さんの足を覗こうとした雄二はタマ姉の裏拳を顔面に食らって沈没した……南無……
「私のでサイズが合うならあげるわ。」
地面に倒れた雄二に目もくれずにタマ姉はそう言うと、学生カバンの中から新品のストッキングを
取り出した。
「あっ、このサイズなら大丈夫です。ありがとうございます、環さん。」
「さすがタマ姉。予備持ち歩いてるんだ。」
「あら、女の子ならストッキングの予備は一つぐらいは持ち歩いているものよ。」
「そうですよ。私はたまたま切らしてましたけど、すぐほつれたりするので予備は持って
いるものなんです。」
「ええっ、そうなの優季さん? このみは持って無いでありますよ。」
そう言うこのみはこの寒空の下で元気に素足にソックスだけだ。
「はははっ、ちびっ子は風の子だから(どすっ)げふぅ……」
雄二はタマ姉の肘鉄にレバーを打ち抜かれて再び轟沈した……馬鹿な奴。
「じゃあ、今度の日曜日、4人で買いに行きましょう。パンストとガーターストッキング。」
「え? 4人で?」
「あ、私は良いですけど……」
「何で俺も入ってるの?」
俺と草壁さんが頭に?を浮かべていると、タマ姉がにやりと笑った。
あ……タマ姉がああいう顔をするときは何か企んでる時なんだよな……
「勿論、私達に似合うガーターストッキングをタカ坊が選ぶのよ。」
「やっぱり……」
春休みの悪夢がよみがえる。あれか……あれが繰り返されるのか……
「あの……貴明さんが嫌がってるみたいですし、私達3人だけということでは……」
俺の様子を見た草壁さんが助け舟を出してくれた。さすが我がスイートラバー(ハート)
「あら、優季はタカ坊がどんなのが好みか知りたくない?」
「えっ……そっ、それは……」
くっ、さすがタマ姉。草壁さんの弱点を上手く突いてきた。
そしてさらに追い討ちをかける。
「引き出しに隠してあったえっちな本に、セクシー下着系統のもあったわよね。」
がしっ。
気がつくと、草壁さんが俺の手をがっちりと両手で握り締めていた。
「貴明さん!」
「は、はいっ。」
な、何だろう……エロ本の事を咎められるんだろうか。
「貴明さんの好みのストッキング……いえ、下着を選んでください。そうすればエッチな
本も捨ててくれますよね?」
「え、あ、いや、別に草壁さんが嫌なら下着なんて買わなくてもすぐに処分するけど……」
「わかって無いわねタカ坊。自分の彼氏が写真とはいえ他の女の子の裸を見て喜んでたら
やきもちの一つも焼きたくなるでしょ。」
「いや、別にそう言うつもりはないんだけど……」
「いいえ、これは私の女の子としてのプライドの問題なんです。というわけで……日曜日は
みんなで下着屋さんにGOです!」
「ええっ!?」
またあの羞恥プレイをやらされるのか!?
「じゃあ、タマお姉ちゃんの下着もタカ坊に選んでもらおうかしら。このみも選んでもらい
ましょうね。」
「えっ、う、うん……このみ、恥ずかしいけどタカ君のためにがんばるよ。」
「日曜日が楽しみですね。」
「俺の意志はどうなるんだ〜!」
どうやら「3人の女の子の下着を選んでやる」という羞恥プレイは決定らしい。
日曜日は地獄だ……
俺は肩を落としながらとぼとぼと校門をくぐった。
そういえば、何か忘れているような……
◇
「ぶえくしっ……地面冷てぇなぁ……」
美脚の草壁さんにはパンストよりもガーターストッキング穿いて欲しいと思う今日この頃
しかし実際はダッフルとニーソで完全装備したJKが寒そうに歩いてるのを見てネタを思いついたというのは内緒だw
ちなみに劇中ではガーターストッキングと言ってますが、
正確には吊りバンドのいらないノンガーターストッキング(ニーソのようなもの)を想定しています。
話の上ではあまり大差ないですが一応。
おつおつ
草壁さんかわええのう
草壁さんはのほほんとした日常の話がいい。GJ。
>>453 GJ!!こういう何気ない日常の会話っていいですね。それにしても、日曜日はタカ坊にとって地獄になりそうですね。
黒髪姫カット+パンストは最強の組み合わせです!!
いつも思うんだが……草壁さんにタカ棒さらわれたらこのみもタマ姉も口惜しいじゃろのう。
真性幼なじみ的に、「帰ってきた幼なじみ」に出し抜かれるのは新人に負けるより辛い希ガス。
458 :
名無しさんだよもん:2008/12/02(火) 18:22:01 ID:EVdRFiCG0
姫百合ハーレムに対抗して
このたま+草壁さんの「幼馴染ハーレム」を作れないのか?
それどんなぱらいそw
まあ、草壁さんはこのみとタマ姉からみれば一番負けて納得できそうな立場な気がする
思いの長さ強さは自分たちと引けを取らないし、それでいて他人だから
このみかタマ姉のどちらかが選ばれた場合はお互い結構気まずいわけで
タマ姉+ささら+草壁さん 巨乳お嬢様系ハーレムとか
>>457 タマ姉<真性幼なじみ的に、「帰ってきた幼なじみ」に出し抜かれるのは新人に負けるより辛いわね
このみ<え?
>>460 年下ハーレムって何気に人数多いな
このみ・よっち・ちゃる・いくのん・姫百合姉妹+メイドロボ・奈々子
「姫百合ハーレム」
姫百合姉妹+メイドロボシスターズ *DUAL姉妹丼
「幼馴染ハーレム」
このたま+草壁 *総合点はかなり高い
「ツンデレ+姉妹丼ハーレム」
愛桂+いくのん+由真 *ツンデレの2巨頭完備
「タヌキツネ+電波・不思議連合ハーレム」
ちゃる+よっち+るー+花梨 *マニアックなブランドです
「まーりゃんと愉快な下僕たちハーレム」
まーりゃん+ささら+奈々子 *プレイの幅は広そうです
>>461 「しすプリハーレム」
このみ・よっち・ちゃる・いくのん・姫百合姉妹+シルファ・奈々子、奈々子の友達
*せまりくる「妹」達の恐怖
巨乳軍団vs貧乳軍団のドロドロの戦いも見たい
>462
「ウホッ! いい男 くそみそハーレム」
雄二+ダニエル+真委員長+図書委員長+ロク+ゲンジ丸
「九条院お嬢様ハーレム」
タマ姉(>462に出てるけど)+玲於奈+薫子+カスミ
「流石に無理があるか 熟女ハーレム」
春夏+ささらママン+ハナ
このたま+草壁さんの「幼馴染ハーレム」は結構実現率高いと思う
姫百合ハーレムに取り込まれつつあるタカ坊を取り戻すため
タマ姉が高明と同学年でクラスメートである草壁さんをスカウト。
草壁さんの主な役割は対ミルファ用
>>466 タマ姉が瑠璃・イルファ
このみがシルファと対峙するとして
珊瑚は誰で対処するん?
後珊瑚経由で長瀬のおっちゃん→由真が漁夫の利を狙いそうな気もする
>>467 珊瑚<みんなでぇらぶらぶ〜したらええんとちゃうの?
彼女、向坂環は悩んでいた・・・
彼女の想い人である「タカ坊」こと河野貴明が
最近、1年生の双子の美少女宅に入りびたる様になり
自分にかまってくれないことに。
しかも、その双子…姫百合姉妹の長女の姫百合珊瑚は
ロボット工学のソフト開発の第一人者であり、
その技術で「自立思考型ロボット」つまり心を持ったメイドロボを
開発した。
そしてあろうことか、その試作型である3体の
メイドロボまでもが貴明に好意を抱いている。
このメイドロボが曲者でただの市販品ではなく、珊瑚が
開発したDIAにより、人間以上に人間の女の子らしく振舞う
美少女であるから始末が悪い。
このままでは、ハーレムと化した姫百合家に貴明が取られて
しまうのは時間の問題である。
そして彼女はついに決心する。
もうひとつのハーレムを自分で作って貴明を取り戻すことを。
「戦力分析」
古今、戦闘に関して敵のスペックを知り、それを研究し作戦を練ることは重要である。
環は自室の机の前で、現在最大の敵勢力である「姫百合チーム」の戦力を分析していた。
「超天然系癒しキャラ」
「ツンデレ系甘えたがりキャラ」
「小悪魔的 優しいお姉さんキャラ」
「デレ系 直情素直型 巨乳キャラ」
「天邪鬼系 甘えん坊ロリ系キャラ」
…こうして思い浮かべてみると、改めて敵側の戦力が豊富な選手(?)層
に支えられているのかがわかる。
環はこれに対抗する「仲間」を選び出し、説得し、味方にしなければならない。
敵が豊富な戦力とパターンの組み合わせでくるならこちらのコンセプトは
ずばり「少数精鋭」。
最初、彼女は幼馴染の一人で環の妹分でもある「このみ」だけに
この計画を打ち明け、味方とするつもりであった。
しかし、それでは貴明の同年代が仲間にいない。
学校に通学している間、同学年で同じクラスの「ミルファ」を
けん制できる仲間が後一人ぜひほしい。
しかし、貴明と同年代なら誰でも言い訳ではない。
自分やこのみに負けないくらいにタカ坊にことを思っていて...
自分達に負けないくらい魅力的な女の子で...
タカ坊を自分ひとりの物にしたい嫉妬欲を制御できる理性があって...
そしてタカ坊がその女の子を抱いたとしても環自身がなんとか許せる女性...
環は明日「草壁 優季」に会うことを決めていた。
・・・こんな感じかな?
下手でスマソ
471 :
名無しさんだよもん:2008/12/04(木) 17:59:10 ID:Clq0bN9tO
「う〜〜〜 トイレトイレ」
今、トイレを求めて全力疾走している僕は、高校に通うごく一般的な男の子。
強いて違うところをあげるとすれば、老成した男性に興味があるってとこかナ ―― 。
名前は河野貴明。
……そんなわけで、帰り道にある公園のトイレにやってきたのだ。
―― おや?
ふと見ると、ベンチに品のいいタキシード姿の老人が座っていた。
―― ウホッ!いいダニエル……
そう思っていると、突然その老人は、僕の見ている前でタキシードのズボンのホックをはずしはじめたのだ……!
……ジジ〜〜……
そして、彼は僕に呼びかけた。
「やらないか」
……そそり立つ、彼の逞しい陽根。僕は思わず呆然と立ち尽くし、彼の見事な男性自身に目は釘付けとなった。
そういえば、この公園はハッテン場のトイレがあることで有名なところだった。
いい老齢の男性に弱い僕は、誘われるままホイホイとトイレについて行っちゃったのだ☆
彼 ―― ちょっとワルっぽい来栖川家の執事で、長瀬源蔵と名乗った。
ホモ・セックスもやりなれてるらしく、トイレに入るなり僕は素裸にむかれてしまった。
「よかったのかね、ホイホイついてきて?儂はノンケだってかまわないで食っちまう人間なんじゃよ。」
「こんな事はじめてだけど、いいんです……僕、長瀬さんみたいな人、好きですから……」
「うれしいこと言ってくれるのう。それじゃあ、とことん悦ばせてやるからの。」
言葉どおりに、彼は素晴らしいテクニシャンだった。
僕はというと、性器に与えられる快感の波に身を震わせて悶えていた。
―― しかし、その時、予期せぬ出来事が……
「うっ……!で、出そう……」
「ん?もうかね?意外に早いんじゃな」
ブルブルと震え苦悶の表情を浮かべる僕を見て、彼は早漏の気があると思ったのだろうか。
「ち、ちがう……実はさっきから小便がしたかったんです。公園に来たのもそのためで……」
「そうか……」 と言うと、彼は突拍子もない提案をした。
「いいこと思いついたわ。お主、儂のケツの中でションベンしろ。」
「えーっ!?」 と、思わず僕は叫んでしまった。 「おしりの中へですかァ?」
しかし、彼は本気らしい。
「男は度胸!何でもためしてみるんじゃ。きっといい気持ちじゃぞ。」
彼はそう言うと、素肌にまとったタキシードを脱ぎ捨て、老人とは思えない逞しい尻を僕の前に突き出した。
「ホレ、遠慮せんで入れてみるんじゃ。」
自分の肛門の中に小便をさせるなんて、なんて人なんだろう……
しかし、彼の堅く引き締まったヒップを見てるうちに、そんな変態じみたことを試してみたい欲望が……
僕はおずおずと、彼の肛門に向けてそそり立った陰茎を突き出す。
「それじゃ……やります……」
―― クン…ズ! …ズズ……
彼の肛門の中にズブズブと吸い込まれていく、僕のペニス。
「は……はいりました……」
「ああ……つぎはションベンじゃ」
彼の肛門の中の熱い圧迫感を感じながら、辛抱たまらず僕は尿道の栓を緩めた。
「それじゃ、出します……」
シャ〜〜
チュチュ〜〜
「いいぞぉ。腹の中にどんどん入ってきてるのがわかるぞ……しっかりケツの穴を締めておかんとの。」
「くぅっ!気持ちいい……!」
この初めての体験は、オナニーでは知ることのなかった絶頂感を僕にもたらした。
あまりに激しい快感に、小便を出しきると同時に僕のペニスは肛門の尿の海の中であっけなく果ててしまった。
「あぁーーっ!!」
ドピュッ!
――――
「―― ご主人様?……ご主人様っ!ほら起きるのれすっ!」
気持ちよさそうにベッドの中で横たわる貴明。起こしに来たシルファがその顔を覗き込む。
「う〜ん……むにゃむにゃ……ああ……気持ちいい……」
ろうしたんれすか、まら寝言なんか言って―― と、シルファは貴明の布団を引っぺがしかかったが――
貴明の下腹部付近から漂う異臭と、生暖かい布団の湿り気に気づく彼女。
「―― ぴぎゃっ!?なっ、何れすかこれはっ!?……こっ、これは―― おもらしれすっ!」
「―― うう……しくしくしく……もうお婿に行けない……」
シルファに引っ張られて、ベソかき顔の貴明が階段を下ってくる。
「ぷぷぷ……ほら、さっさと風呂場に行くのれす。ばっちいかららをさっさと洗い流すのれす!」
丁度現れたミルファにその様子を見られ、貴明は一段とブルーな気分になってしまう。
「―― んもう、ひっきーは思いやりがないんだからぁ。大丈夫だよダーリン。おもらし癖あっても、ちゃんと下の世話は妻のあたし
が見てあ・げ・る。……ほら、ダーリン一緒にお風呂入ろお風呂☆」
「わわっ!ちょっとちょっとミルファちゃん!?」
「ミ、ミルミルッ!何しやがるんれすかっ!?」
シルファの手から貴明を強引に奪い取って、ミルファは彼を浴室へと誘った。
脱衣所で、ミルファにポンポンとパジャマを剥かれる貴明。
続いて、彼女自らも着ている私服をスルスルと脱ぎ捨て、最後に残っていた縞のショーツがストンと床に落ちた。
ほらほらぁ〜と、貴明の手を取り浴室へ引っ張り込む。
シャー、と尿で汚れた貴明の下半身をシャワーをかけて洗い流すと、ミルファは「むふ〜ん」と頬を赤らめて笑みを浮かべ、彼の
ペニスを大事に掴みあげて口に含み、レロレロと舐めたり口に含んだりした。
「……あれぇ?ダーリン勃たないんだね。よぉ〜し、それじゃぁ……」
今度は彼女の両の乳房に挟みこんで、ゆさゆさとしごき始める ―― しかし、いまだに萎れたまま。
「あぁ〜ん、ダーリンどうしちゃったのぁ?」
萎れた彼の竿を眺めて不満顔のミルファ。
俯いたまま、貴明がぼそりと漏らした――。
「ごめん、ミルファちゃん…… 僕、女の子の裸見ても、何故か勃たなくなっちゃって……」
「えぇっ!」
ミルファは頭を抱えた。萎えたままの彼の男性自身を凝視した後、浴室の外に向かって叫ぶ。
「こらぁっ!ひっきーっ!ダーリンに何かしたのっ!」
「知るかっ!れす!きっとミルミルが毎日搾り取るから枯れてしまったんれすっ―― !」
……あれ、おかしいよ「僕」。なんで女の子の裸見たり触られたりしても反応しないんだろう――
貴明も頭を抱え込んでしまった。そして、ふと、先程の夢の中の光景が頭をよぎる。
ダニエルの逞しい尻――
すると、ムクムクと彼の息子が頭をもたげた。
「―― あれぇっ?ダーリン急にどうしたのぉ!?」
貴明はようやく理解した。今、自分に何が起こっているのかを。
「―― うわぁあああああぁんっ!!」
(つづかない)
今までにない領域にチャレンジしてみました。
……ごめんなさい。もうしません orz
俺のHPは回復不可能なダメージを受けたorz
なんで三点リーダーの使い方変えてるんだよ…w
アッー!!
……ちょwwついにやっちまったなwww
いや、ビミョーには面白かった。乙!
だがもうお腹いっぱいorz
481 :
名無しさんだよもん:2008/12/05(金) 22:57:47 ID:zgFz/jEJ0
そこは踏み込んではいけないところだぁぁぁぁぁあああ
人間、っていうか、生物って言うものは環境に適応する能力を持っている。
空気の薄い高地で生活していると自然と心肺機能が高まるし、寒い地方で暮らしている人は
暮らしているうちに自然と寒さに対する耐性がついたりする。
俺の場合はどうだったかって言うと……最大5人の美少女に囲まれて、毎夜毎夜枯れるまで
搾り取られる生活を半年も送っていると、自然とそっち方面の変化が現れるわけで。
まず、元々それほど太っているほうじゃなかったけど、贅肉がなくなって筋肉質になった。
毎日搾り取られるせいで余計な肉がつかないのと、乗っけたり乗っかったり抱えたりとまあ、
色々な体位を試みるせいで自然とボディビルディングに励んでいるような状態になるからだ。
特に腰の運動が多いせいで、わき腹背筋は勿論腹筋はすっかり割れている。
もう一つは、毎日のように搾り取られるせいで、その……いわゆる「精子の製造スピード」が
格段に高まった事だ。
生物のオスとしては誇って良いのかもしれないが、実生活では色々こまった事になった。
先週から1週間ほど、大型メンテナンスとかでミルファちゃんとシルファちゃんが家から
居なくなっている。
最初の2日ほどはすっかりくつろげたものの、3日目からはかなりヤバイ状態になった。
最初は女子の制服の胸元とか、スカートから覗く太ももがえらくまぶしく見えはじめ、
そのうち女子の体操着姿でえらくむらむら感じはじめ、タマ姉がふざけて抱きついてきたときには
その胸の感触で危うく暴走しかけた。
しかも、なぜかこういうときに限って珊瑚ちゃんも瑠璃ちゃんもどういうわけか姿を見せなかった。
だから、メンテナンス明けでミルファちゃんとシルファちゃんが帰ってきたときは情けなくも
涙目で出迎えたのだった。
◇
夜────
「はっ、あっあっ、あんんっ、あんっ、だ、ダーリン激しすぎるよぅ。」
「そ、んな、こと、言った、って、腰が、止まんない、んだ!」
バックの体勢から乱暴にミルファちゃんを突き上げる。
横では何度もイって先に潰れてしまったシルファちゃんがしどけない姿のままスリープに入っていた。
ミルファちゃんもさっきからの俺の攻めでもうふらふらになりつつある。
電池が残り少ないのかもしれない。
「あ、あ、あ、あ、あ、あたし、イっちゃう、イっちゃうよ〜〜〜」
「お、俺も……でっ、出そう。」
終わりが近くなった俺はミルファちゃんのすべすべした白い背中に覆い被さると、
その背中にキスをする。
そのまま後ろから、たわわなバストをわし掴みにして滅茶苦茶にもみしだく。
「あっ、ああっ、ダーリン、壊れちゃうよ。」
ミルファちゃんが悲鳴に近い喘ぎ声を上げる。
俺はお構い無しに腰を動かし、張りのあるミルファちゃんの尻肉に音を立てて叩きつけた。
ミルファちゃんの中は恐ろしく熱くうねって、俺のペニスを溶かそうとしているかのように
刺激し続ける。
「もう……でるっ。」
「いいよっ、だ、出して、いっぱい、出して。」
「うわぁぁぁぁっ!」
ペニスの根元から熱いものがこみ上げてくる感触に、俺は腰をミルファちゃんのお尻にぴたりと押し付け、
最奥までペニスの先端をねじ込んだ。
次の瞬間、恐ろしいほどの勢いでミルファちゃんの体内に精子を放った。
それも何度も、何度も、あふれ出すほどに。
ミルファちゃんとシルファちゃん、二人合わせて数え切れないほど交わったというのにペニスの付け根が
痛くなるほどの大量の射精をして、俺はぐったりとベッドに倒れこんだ。
「ふわぁ……ダーリン今日は凄過ぎるよ。」
俺の横にミルファも倒れこんできて、俺の腕を枕にして寄り添ってくる。
「ねぇ、今日のあたし良かった?」
「うん……すごく良かったよ。1週間ぶりだったし。」
「良かったぁ。メンテナンスのおかげだね。」
そう言いながら、ミルファちゃんは自分の下腹を大事そうに撫でた。
「メンテナンスのおかげって?」
「今回のメンテナンスでね、来栖川バイオで開発してた人間用の人工子宮の試作品に交換したんだよ。」
「そうだったのか……道理で妙にリアルな感触だったな。前も良かったけど。」
「それでね……人間と同等の機能があるから、ダーリンの子供も生めるんだよ。」
「え゛っ……えーと、それってどういうこと?」
「うーんとね、本当は私達ロボだから子宮があっても卵巣無いから本当は子供出来ないんだけど、
さんちゃんが卵子提供してくれたから……」
「いや、ちょっと待って、」
「ひっきー妹も瑠璃ちゃんの卵子貰ってたから二人でダーリンの子供生めるんだよ〜」
「えええええええ!」
「今日は溢れちゃうぐらいいっぱい貰っちゃったから、きっとばっちりだよ。(はぁと)」
◇
その頃の姫百合家では────
「瑠璃様っ! 今日は私の新装備のペニスで可愛がって差し上げます。あっ、精子は貴明さんの物ですから
ご安心ください。」
「イルファのアホ〜〜〜! そういうことやないわ! こっちくんなぁ!」
お口直しにだうぞw
ADやってないんでミルファの再現度がいまいちだったらゴメソ
「ファミレスチーム+α=同級生ハーレム」
愛桂+草壁+由真+花梨+るー
貴明を上級生、下級生、そしてメイドロボの魔の手から守るため
この5人が手を結んだ
「天然小動物系 家庭的ドジっ子キャラ」
「天然癒し系 和風才色兼備キャラ」
「ツンデレ系 元気っ子(隠れエロイン)キャラ」
「電波ゆんゆん系 お騒がせキャラ」
「クーデレ系 不思議っ子キャラ」
この五人が手をむすび「姫百合ハーレム」と「幼馴染コンビ」に宣戦布告
さーりゃんどこいった
愛桂って誰やねん
489 :
名無しさんだよもん:2008/12/08(月) 22:09:22 ID:1eIpTvqU0
kyかもしれぬが、ほのぼの系優季ものがよみたい今日この頃
草壁さんはもうちょいお待ち下さい……。
XRATEDやり直さないと駄目そうです。
村様キャラはハッキリ言って大好物なんですけど。
kyかも知れませんがいましばらくめいろろぼずでご勘弁を
両耳にイヤーバイザーを当てがいながら、ミルファは姿見に映る自分のセーラー服姿をまじまじと見つめていた。
「う〜ん……やっぱり、いけてない」
そんな風に思案しながら姿見の前から離れようとしないミルファを見咎めて、イルファが背後から声を掛ける。
「ミルファちゃん、そろそろ出ないと遅刻しますよ?」
「ええっと、ちょっと待ってて。」
渋るミルファが、イヤーバイザーを手にして見つめているのに気付いたイルファ。思い出したように語りかける。
「そうそう、何度も言うけど、ミルファちゃん。」
「え?なに?」
「イヤーバイザー。一応つけてた方がいいんじゃない?それね、単なる飾りじゃなくて、感応増幅アンテナでもあるから。」
「いらないよ〜、そんなの。貴明はあたしの目と耳と鼻でどこに居ようとしっかりキャッチ出来るも〜ん。」
「犬とか猫とかコウモリじゃあるまいし……って、そういう事じゃなくって!」
「ヘッ?」
キョトンとなるミルファ。イルファは手を腰に当てて眉を吊り上げる。
「それはデータリンクシステムに繋ぐ為なの!なくても一応繋げるけど、どんな所にいても繋がるようにね。言ってみれば、
安全装置。それに、この間みたいなことがあった時に、間違って人間の病院に運ばれないようにね。」
「うぅ〜、やな感じ〜。余計な心配だよぉ〜。」
そう言ってミルファは唇を尖らせる。
「だってぇ、似合わないんだも〜ん。せっかくカワイイ制服なのに〜。カッコ悪い〜。」
両拳を握り締めてぷるぷると頭を振ってから、ぼそりとつぶやく。
「それにぃ……貴明が、人間なのにロボットの子と付き合ってるなんて、後ろ指差されたらヤダもん。」
はぁ……とイルファは嘆息した。
「そんな事言う人いないでしょうに、あの学校。それに、貴明さんがそんな事気にする筈もないでしょ?」
「貴明が、ダーリンが気にしなくてもあたしはするのっ!」
ムキになって叫ぶミルファ。
「こらぁ〜っ、ミルファッ!もういかんと遅刻するでぇ〜っ!」
玄関から瑠璃が叫ぶ声。
「ほら、それじゃあこの話はまた後でね。いってらっしゃい。」
「うん。」 と頷いて、ミルファは鞄を手にし、玄関の瑠璃と珊瑚のもとへトコトコと駆け寄った。
「いっちゃん、それじゃ留守番頼んだよ〜。る〜☆」
珊瑚がバンザイをして扉の向こうにあとずさった後、バタンと扉が金属音を立てて閉じられた。
人気がなくなった居間に独りぽつねんと立つイルファ。手を腰に当てて、ふぅ〜っ、と大きく溜息をつく。
そしておもむろに、食器を片付けたり部屋を掃除するなど、家事にいそしみはじめた。
◇ ◇ ◇
河野家ではもう1体の“めいろろぼ”が、玄関で貴明の登校を見送っているところであった。
「それじゃ行ってくるね。」
「あっ、待つのれすご主人様。」
シルファは貴明を呼び止めるとトコトコ歩み寄り、貴明の開いていた制服の第一ボタンを締めた。
「ららしないご主人様とふしららなミルミルが一緒にいるところを笑われたら、身内の恥れす。」
そう言って貴明の制服の埃をパッパと払い、シルファは後ずさる。
「あ、ありがとう……」と、バツが悪そうに手を頭に当てて苦笑いする貴明。
「ところれ……」 と言いかけて、シルファが目顔で訊ねてくる。
「あっ、ああ……今日はバイト行かなきゃならないんだ。ちょっと遅くなるよ。」
訊かんとするところを察して、貴明が答えた。
それを聞き、シルファは微かに溜息を漏らすと、呟くように言った。
「……自転車の弁償れすか?おじさまかお母様に言えば、いくられもお金はれるのに?」
「ダメダメッ!」っと、キッと真剣な面差しになり、貴明はぶんぶんとかぶりを振った。
「こういうのは誠意の問題だからね。自分で工面しなきゃ駄目なんだ。」
はぁ……とシルファは呆れ顔になり、その眉が垂れ下がる。
「それじゃ行くよ。後よろしくね」 と貴明が扉を開けると、門の向こうから少女の声が聞こえてきた。
「あっ、タカくぅ〜〜んっ!早く早くぅ〜〜っ!」
―― このみと合流し、手を振りつつ貴明は門外へ去っていった。
玄関に立ち尽くしながら、シルファがつぶやく。
「……馬鹿れす……ご主人様は……」
◇ ◇ ◇
学校。キンコーン、と鳴り響く終業のチャイム。
教科書類をまとめて机上で鞄に収めている貴明に、クラス委員長の愛佳が歩み寄って来た。
「あ……あの、河野君?」
しかしちょうど傍らのミルファが貴明へにじり寄り、やおらその腕をとって胸に抱え込むと、頬を貴明の肩に寄せて目を閉じ、
「むふ〜ん。」 と甘ったるい声を上げた。
「―― ん?いいんちょ、どうしたの?」
貴明が愛佳に気付いて訊ねると、「う、ううん、何でもないの。」 と彼女は両手をかかげて振り、後ずさった。
「ダーリン、行こ。」 と、ミルファに引っ張られ教室を去る貴明の背中を見て、愛佳は大きく嘆息してしまう。
「はぁ……あたしって、本当に優柔不断……。」
―― 由真へ口添えして、返済期限延ばして貰おうか?と持ち掛けるつもりだったが、言いそびれてしまった。
下足置き場には姫百合姉妹と環、このみ、雄二がいて、貴明達がやって来るのを待ち構えていた。
「ダーリン、やっぱりバイト?」
うん、と頷く貴明。
「んもう……それじゃ、先にダーリンち行って、食事でも作って待ってるね。愚妹と面合わせるのシャクだけど。」
それを聞いて、貴明は引きつった笑みを浮かべる。
「な……なるたけさ、平穏無事に行こうよ、ね?」
「大丈夫、多分パワーじゃ勝ってるから、突っかかってきても返り討ちだもん。」
「いや、そういう問題じゃなくてね……」 貴明の額を冷汗が伝う。
姫百合姉妹も、顔を向け合って苦笑を漏らしている。
「じゃあダーリン、がんばってね!」
「タカくん、健闘を祈るであります。」
―― 手を振って一同から別れ去る貴明。
「ねぇねぇ、ミルファちゃん、ちょっとだけ、生徒会室で俺とお茶しない?」
雄二が自分の顔を指差しながら誘いかけるが、ミルファは「ダ〜メッ!」と言って、舌を出した。
がっくりとうなだれる雄二。環が空気の読めない弟を蔑んだ視線で見つめる。
「それじゃタマお姉ちゃん、みんなまた明日ねぇ〜!」 ミルファと連れ添って歩み去るこのみが振り返って手を振った。
環も小さく手を振って返したが、ふと傍らを見ると、雄二がふてくされた顔で、ぶつぶつとつぶやいている。
「畜生、なんで貴明ばっかり……俺ってなんて不幸なんだ……」
環の眉がキッと吊り上り、雄二の右腕を掴むとギリギリと捻り上げた。
「ギェェェェェ〜〜〜ッッ!!姉貴折れる折れる折れるぅぅぅぅ〜〜〜ッッッ!!!」
「あんたのその腐った性根が駄目なんでしょっ!?ホラッ、さっさと生徒会室行くわよっ!!」
環に廊下を引き摺られていく雄二。
「ゆーじ兄ちゃん、頑張ってやぁ〜。る〜☆」
情けない雄二を呆れ顔で見送る瑠璃の隣で、珊瑚がいつものバンザイポーズ。姫百合姉妹も下足置き場を後にした。
◇ ◇ ◇
姫百合家で、そそくさと夕食の下準備にかかろうとしているイルファ。
台所でふと立ち止まり、顎に手をやって思案に入った。
“いつも変わり映えしないメニューで、瑠璃様にマンネリって言われないかしら?ちょっと工夫してみようかな……”
そして、これまで彼女が学習してきたレシピの数々を思い浮かべるのだが、これといった妙案が浮かばない。
ひとりごちるイルファ。 「……ちょっと、データリンクに繋いでみようかしら……」
学習成長型のDIAの効用を測る観点から、あまりデータリンクシステムは使わないよう珊瑚から言われていたイルファで
あったが、ちょっと閲覧程度にはいいだろうと、この時はあえて繋いでみる事にした。
カチッとイヤーバイザーのアンテナが動く。そしてサーバーにログインして、そのキャビネット上に置いてある料理レシピの
サンプルデータを閲覧して廻った。
「うん、この辺がいいかな?」 と、彼女はログアウトして、ダウンロードしたレシピを、彼女なりに培った知識経験でアレンジ
しようと吟味をはじめた。
しかし、突然 ――
―― ビクンッ!
“ えっ!?” と、彼女は急に立ちすくんでしまい、やがて股間と乳房を押さえてがたがたと震え出し、その足元はおぼつか
なくなる。
頬を紅潮させ、その目はトロンと熱を帯び、焦点が合わなくなってくる。
“えっ?えっ?何?この感じ……アソコが、熱い……ヒクヒクしてる……”
はぁはぁと、喘ぎ声を漏らし始めるイルファ。
「わ……私、どうしちゃったの……!?」
――――
しばらくして、姫百合姉妹が帰宅してきた。
ガチャリと扉を開け、玄関の敷居をまたぐと、二人はその広い居間が殊更にがらんとした印象なのにやや当惑する。
「なんや、イルファ出掛けとるんか。」
「食材でも買いにいっとるんやないの〜?」
珊瑚は居間のテーブルの前にとことこと歩み寄り、脇に鞄を置いてぺたんと腿の内側を床につけるように座り込む。そして
机上のノートPCの液晶を持ち上げた。
おもむろに、PCに並べられるように置いてあったクマ吉の背に端子を埋め込んでから、電源を立ち上げる。
「―― ちょいとでも、みっちゃんが今の状況の因果を納得するん助けになれば―― 」
ひとりごちながら、目にもとまらぬ速さでキーボードを叩く珊瑚の指。大量のプログラム言語の羅列が、スーッとPCの画面
に綺麗な帳を降ろしていく。
一方、瑠璃は自室へと向かう。
扉を開け、しんとした室内に足を踏み入れたその直後 ――
「瑠璃様……」
きゃっ!?っと、傍らから囁く声に仰天し、手離した鞄がドサリと床に落ちる。
―― 振り向けば、イルファの姿。
「な、なんやイルファおったんか。驚かしよってからに」
はぁはぁと喘ぎながら、胸に手を当てる瑠璃。
イルファの佇まいを眺めれば、股間を押さえるように手を合わせ、カーテン越しの弱い光でもはっきりとわかるくらいにその
顔は紅潮している。目は焦点があっていないように見え、妖しい光を宿していた。
「ハァァァ……瑠璃様……お待ちしておりました……」
そして突如、ガバッと瑠璃に抱きつくイルファ。すかさず顔を接近させ、瑠璃と唇を合わす。
「うっ―― うむむむぅ〜……」 さっと顔面に朱が差し、目を剥く瑠璃。唇を引き剥がそうとするが、少女の力ではメイドロボ
のパワーには抗すべくもない。
イルファは唇を合わせたまま瑠璃をベッドの端まで押しやり、そのままの体勢で押し倒してしまった。
パタパタとベッドの上で足を動かしてもがく瑠璃。イルファの右手が、スカートが捲れ上がり露出してしまった瑠璃の白い
ショーツの上に伸び、薄布越しに秘部をツツーとなぞる。
「ひっ……ひぐっ……ぐぅ……」 唇で栓をされ、声を上げることもできない。やがてイルファの指はショーツの脇から直接
花弁に分け入り、くちゅくちゅと膣の入り口を弄くりはじめた。
「んっ!んうっ!んぅぅぅーーーっっ!!」
陰核をなぞり、左手が乳首をこねくりまわす。
ひとしきり弄ばれ、ようやく唇を離された時には、瑠璃はよがり声をあげるばかりであった ――。
「ハァハァ……る、瑠璃様……オ、オモチャがあるんです……た、試したから大丈夫……気持ちよくなりましょう……」
イルファもショーツをスルスルと下ろす。上着のボタンを外すと、ブラに包まれた乳房がポロンとこぼれた。
――――
珊瑚は周囲の雑音も一切聞こえず、一心不乱にPCのキーボードを叩いていた。
―― ピルルルルルッ!
しかし、突如けたたましくなる電話。珊瑚ははっとなり、テーブルの脇にあった電話の子機を探しあてて受話器を取った。
「はい姫百合です―― あ、おっちゃん。どないしてん急に―― ほぇっウイルス?―― え、メール見ろて?うんわかった
よ〜。」
そうして珊瑚はPCのメーラーを立ち上げる。
「―― へぇ〜、来栖川のサーバーに侵入するなんて。そのハッカーさんお目にかかりたいわ〜。―― 他にもそないな事
出来るプログラマー知っとるって?―― うち知らんうち知らんよ〜おっちゃんのいけず〜。」
メールの文面を一瞥する珊瑚。
「要は、データリンク繋がなきゃええんやね?うんわかった〜。いっちゃんとしっちゃんにも言っとく〜。―― みっちゃん?
あの子まず使わんし〜。―― でもけったいなウイルスやな〜。きっと変態さんや〜作ったんは〜……」
―― バタンッ!
寝室の扉が開く音がしたので、珊瑚は受話器を掴んだまま振り向いた。
入り口に立っていたのはイルファ。
「あっ!いっちゃんおったんか〜どないしてたん〜?」
熱病に浮かされたようにイルファは前方を見据えたまま立ち尽くして、ハァハァと喘ぎ声を上げている。ぶらりと垂れ下がる
両手の指が、濡れて光って見えた。
「いっちゃん……」
珊瑚はその様子を怪訝な顔で眺めていたが、やがてイルファはダッと駆け出して、玄関へと向かった。
「あっ!?いっちゃん待ってぇ〜な!」
珊瑚の制止を目に収めることもなく、イルファは室外へと飛び出していった。バタンと閉じられる扉の音が響き渡る。
「……いっちゃん……どないしたんやろ……?」
ハッと気付いて受話器を耳に当てたが、もうツーツーと切れた後だった。珊瑚は受話器を置いて立ち上がり、寝室の方へ
歩んでいく。
「―― あっ!!」
頭を抱えて驚愕の声を上げた珊瑚。
ベッドの上には、あられもない姿で横たわる瑠璃。セーラー服の上衣が開かれて胸を見せ、捲れ上がったスカートの下方
のあらわになった下腹部は、愛液と思われる液体が伝ってベッドを濡らしていた。
「瑠璃ちゃ〜〜んっ!どないしたんやぁ〜〜っ!?」
慌てて駆け寄り、瑠璃を抱きかかえて顔を覗き込む珊瑚。虚ろな目で、口元から涎を垂らしヒクヒクと痙攣している。
珊瑚はハッとして、駆け出していったイルファの様子を思い起こした。そして瑠璃のこの痴態。
メールの文面とこの状況を照らし合わせる。
「あかん……いっちゃん……」
やや間をあけてから、続く言葉が飛び出した。
「―― エロエロ、やぁ〜〜〜っ!!」
◇ ◇ ◇
来栖川エレクトロニクスの中央研究所。
いま、HM開発課ではひっきりなしに電話が鳴り響き、所員が対応に大わらわであった。
電話をとった事務の女性が声を張り上げる。「主任!ご指名でお電話です!」
珊瑚との電話を終えたばかりの開発主任はまたすぐ受話器を手にする羽目になった。
「はい、HM開発課の長瀬です。―― これはこれは!お嬢様、ご無沙汰しております。どうなさいました?」
「メイドロボの文句は倅に言え!ってセバスチャンが言ってたから直接電話しちゃったんだけどね。」 と、受話器の向こうから
若い女性の声。
「……ちょっと、うちのセリオ、一体どうなってんのよっ!?さっきからあたしにベタベタひっついてエッチなことを……うひゃっ!
きゃうぅぅぅんっ!いやんッ!ダメッ!バカァぁぁぁ〜〜〜っっ!!寄るなぁぁぁ〜〜〜っっ!!」
―― そうして、その電話はブツッと切れてしまう。
主任は受話器を置くと、髪をかきむしるように頭をガリガリと掻きだした。
◇ ◇ ◇
河野家ではシルファがソファーに腰掛けてゲーム機のコントローラーを握り、レースゲームに興じている真最中であった。
先般ミルファとそのゲームで競って惨敗したのがあまりに悔しく、リベンジを期して奮闘中なのだが、画面を眺めているうちに
既に車酔いの兆候が見え始めている。
「ほぇほぇ〜〜……もうらめぇぇぇ〜〜……」
目がうずまきになりかけたその時 ――
“……シルファちゃん……シルファちゃん?”
ダイレクトに響いてくるその声に驚愕し、シルファは握っていたコントローラーをコトンと床に落としてしまった。
「―― っ! イ、イルイルッ!?な、何れ『れんわ』れなくて『れーたリンクシステム』に繋いれくるんれすかっ!?」
イヤーバイザーの奥から、“声”が続いて発せられる。
“ハァハァ……ご、ごめんなさい携帯電話忘れちゃって……ハァハァ……シルファちゃん、貴明さん、帰ってる?”
「ご主人様はまらバイトれすよ。」 憮然としてシルファが答える。
“……そ、そう……ハァハァ……”
「―― 息が荒いれすね?もしかして発情期れすか?」
“ハァハァ……うふふ、大体そんなところかしら……ハァハァ……”
怪訝な顔で、シルファはデータリンクシステムの接続を切った。そして憤然としながら床に落ちたコントローラーを拾い、再び
ゲームに興じ始める。
――――
道端の電信柱に寄りかかり、イルファは胸と股間を押さえながらずっと喘ぎ声を上げていた。
イヤーバイザーのアンテナがパチンと下方に回転する。
「……ハァハァ……た、貴明さん……もう我慢できない……早く……くんずほぐれつずっこんばっこんしたいぃぃ……」
そうして、電柱に寄りかかったままズルズルとへたり込み、地面にペタンと座り込んでしまった。
◇ ◇ ◇
来栖川エレクトロニクスのWebサイトのトップページに、緊急警告のメッセージが貼られた。
『―― 弊社HMシリーズのオーナーの皆様へ。
ロボットに寄生する新種のウイルス、HM−DRS型、通称“エロウイルス”に、ご注意下さい。
このウイルスは、HMシリーズのデータリンクシステムに繋ぐことによって感染します。―― 』
◇ ◇ ◇
食料品スーパーの店内にて。
カートを転がすミルファと、先導するこのみ。
ミルファはこのみのアドバイスを受けながら、カレーに使う食材を買い集めているところであった。
「むふ〜ん。これでダーリンいちころカレーが出来るね〜。……ヒッキーSに目にモノ見せてやるんだからっ!」
(つづく)
502 :
491:2008/12/13(土) 08:36:20 ID:qFGc20KG0
そうして、発情したメイドロボ達は、大挙して河野家を目指す――
ことにはならないかも(ォ
朝から乙
エロウィルス良いなぁ
データリンクってHMX17の基本コンセプトと矛盾してるなw
キャラ別スレから飛んできました。
また貼らせて頂く事があるかも知れませんが、よろしくお願いします。
昼休み。
屋上で食事を済ませ、雄二と二人で教室に向かう。
自分達の教室の手前まで来た所で、廊下の向こう側で何やら話しこむ二人の生徒がいた。
一人は栗色の髪に水色の髪飾り。小動物をイメージさせる体の動き。
「委員長」こと、小牧愛佳だ。
もう一人は艶のある長い黒髪に、その髪が映える程白い肌を持つ女生徒。
「眠り姫」こと草壁さんだった。
「あれ。何だか珍しい組み合わせだな。
何であんな隅っこでコソコソと話し合ってるんだ?
勉強を教えてる・・訳じゃないよな。あの二人、成績悪くないし。」
「ああ。なんだろ。」
赤点が日常の俺達とは違い、二人の成績はどちらかと言えば良い方だった。
雄二の言葉に同意しつつも、自分で言ってて空しくなってきそうだ。
しかし、確かに珍しい組み合わせだった。草壁さんと小牧。
熱心に話し込む二人の手に握られていたのは、生徒手帳だった。
「うん。そうそう、それでこれを・・。」
「はい。・・ああ、なるほど。これで・・」
二人の声が辛うじて聞こえてくるが、要所が聞こえない為に
何を話しているのかさっぱり分からない。
しばらく成り行きを見ていると、話が終わったのか
二人は手帳を閉じると、草壁さんが深々と一礼した。
「ありがとうございました。」と言っている様だ。
それに遅れて小牧も、「いえいえ、そんな・・」
と謙遜する様にお辞儀を返す。それも連続でペコペコと。
「・・何か、何処かで見たような光景だな。」
「俺も思った。つか、委員長はいつもあんな感じだろ。」
小牧の方が教えていた様なのに、まるで小牧が教わった様に恐縮している。
いつもの事ながら、せわしない動きはまさにハツカネズミを思わせる。
二人はそのまま笑い合うと、何か言葉を交わしながら教室へと戻っていった。
その後予鈴が鳴り、俺達も教室へと入って行った。
「そういや、もうすぐクリスマスなんだよな・・。」
「・・え?何かおっしゃいましたか?」
何の気なしに呟いた一言に一拍遅れて、草壁さんが俺の方を振り向く。
憂鬱な数学の授業で一日が終わり、今は放課後だ。
二人で教室を出て、共に坂道を下っていく。
「もうすぐクリスマスなんだな〜って思ってさ。
商店街とかでもクリスマスの飾りとかが目立つ様になってきたし。
ケーキとかのチラシも、良く見るしね。」
「そうですね・・。貴明さんは、クリスマスって何か思い出とかありますか?」
「う〜ん・・そうだなぁ。ウチは両親が忙しいからね。
あまり『クリスマス』っぽい事をした記憶がないかな・・。」
そう苦笑いを浮かべながら、頭を掻く。
実際両親は忙しく、今も海外で働いている。
記憶でもあまり両親とクリスマスを過ごした事はなく、成長するに
連れて、さらに家族で過ごすクリスマスというのはなかった気がする。
「そういう草壁さんは、クリスマスの思い出とかある?」
「思い出ですか?色々ありますよ?ジングルベルの歌とか、トナカイさんとか。
ケーキや七面鳥、それにサンタさん。ホワイトクリスマスなんか、ロマンチックですよね。」
「な、何か凄い豪勢だね。」
「そうですか?」
七面鳥がクリスマスに並ぶ家って、本当にあるんだ。
海外だけかと思ってた・・。草壁さんの家って裕福なんだろうか・・
まさか、クリスチャン?
そんな想像を膨らませていると、草壁さんが俺の手を握ってきた。
「くっ、草壁さん!?」
「でも・・。今年は、貴明さんと一緒に過ごしたいです。
そう・・出来たら、雪が降ってくれないかな。」
草壁さんの頬が少し赤らんでいたのは、寒さのせいだけじゃないだろう。
目を細めながら呟き、そして俯いた草壁さんは、握っていた指を絡めてくる。
その指の動きに合わせて、俺も指を絡める。
手のひらの中で、草壁さんの指が驚いたように反応する。
前を向いたまま顔を赤くしている俺の顔を見ると、草壁さんはクスリと笑った。
「雪か〜・・。なら、照る照る坊主・・はダメだな。『降れ降れ坊主』を作ろうか。」
「それは良い考えです。けど、『降れ降れ』だと不安ですから・・。
『雪降れ坊主』ではどうでしょう?」
「そうだね。うん、そっちの方が効き目ありそうだね。」
「ええ。きっと、今年のクリスマスは、ホワイトクリスマスですよ。」
他の女の子になら「幼稚」とか言われそうな俺の発想に
草壁さんは満面の笑みで応えてくれる。こういう無邪気さも、草壁さんの
魅力なんだろうな・・。ホワイトクリスマスか・・。
草壁さんと一緒ならきっと、良い思い出になりそうだな。
「・・(思い出・・)」そこでようやく気付く。
「クリスマス」+「彼女と二人きり」= の答えに。
「?どうしたんですか?貴明さん、顔が赤いですよ?」
「ん、うん。何でも、うん、何でもないんだ!ははっ、ははは・・」
草壁さんの問いかけに、明らかに同様した。
「熱でもあるんですか?」と顔を覗き込まれ、顔から変な汗まででる始末だ。
確かに草壁さんとは・・その、屋上で・・。
いやいや、違う。決してそういう事を期待している訳では・・!
いや、まぁ・・期待してない訳じゃないけど。
いや、そうじゃなくて!
自分への自問自答を繰り返す俺を見て、草壁さんの指が解かれる。
「貴明さん。」
「いや!違うんだ!俺は決してそんなやましい事を・・!」
自分の考えを打ち消す様に、草壁さんに両手の手のひらを向けて左右に振る。
俺も小牧の事は言えないな・・傍からみたら、まるっきり小動物だ。
そんな俺に向き直ると、草壁さんは一言だけ聞いた。
「あ、あの・・。貴明さん。今日、これから予定とか・・ありますか?」
「・・・・・・え?・・・・・」
「あ、あの・・。貴明さん。今日、これから予定とか・・ありますか?」
「・・・・・え?・・・・・」
「・・遅いなぁ、草壁さん。」
部屋の時計は、5時を指している。
草壁さんと別れて1時間程経っていた。
「けど、まさか草壁さんが夕食を作ってくれるなんてなぁ。」
独り言を呟き、自然と笑みがこぼれてくる。
帰り道、なかなか切り出せなかった草壁さんの問い。
それは、俺の夕食の事だった。
「あの、もし今晩の夕食が決まっていない様でしたら。
私が・・貴明さんの家に夕食を作りに行っても、構いませんか?」
遠慮がちな、しかし決意のこもった表情。
その表情から、一体何を切り出されるのかと緊張していた俺は
見事に肩透かしを食らった様だった。
勿論、断る理由などなく、草壁さんの好意に甘える事にした。
そこで、「せめて買い物に付き合う」と俺は申し出た訳だが・・
「だっ、ダメです!貴明さんは、お家で待っていて下さい。
買い物を済ませたら、お家にお伺いしますので・・。」
そう言って、草壁さんは丁寧なお辞儀をすると、商店街の方に駆けて行ってしまった。
そのあまりの素早さに呆気に取られていた俺は、草壁さんの言う通りに
家まで帰り、こうして待っている訳だ。
それにしても、そろそろ空腹が抑えられなくなってきたんだけど・・。
(ピンポーン)・・玄関のチャイムが鳴り響いた。
「お邪魔します・・。」
「いらっしゃい、草壁さん。とりあえず上がってよ。」
「あ、はい。」
草壁さんは控えめにドアを開けると、キョロキョロと中の様子を伺った。
といっても、家には俺一人しかいないんだけど。
制服は、草壁さんいわく「メイドさん」な服に着替えられている
手にはスーパーの袋とトートバッグ。
草壁さんは靴を揃え、玄関に上がる。・・いや、俺の靴まで揃えなくても。
「じゃあ、早速準備しますね。あ、貴明さんはリビングで
くつろいでいて下さい。」
「いいの?何か手伝おうか?」
「いえ、ゆっくりしてて下さい。キッチンも『絶対』覗かないこと、いいですね?」
「・・はい。」
「絶対」と語気を強めて、俺の提案は却下される。
草壁さんは両手に持っていたスーパーの袋と、トートバッグを床に降ろす。
スーパーの袋は買ってきた食材が入ってるんだろうけど・・
トートバッグには何が入ってるんだろ。
「よいしょっ・・と。」
「・・何で割烹着。」
それは白無地の飾り気のないエプロン・・ではなかった。
今ではあまり見かける事がなくなった、日本の台所の定番(?)割烹着。
それを身に着ける高校生の女の子。これもあまり見かけない光景だ。
「おかしいですか?『割烹着は大和撫子の嗜み』って、田舎のおばあちゃんも
言ってたんですけど・・。」
「いや、おかしくはないよ。最近見かけないからね、割烹着。
うん、でも・・似合ってるよ、草壁さん。」
長い黒髪と白い肌に割烹着は、確かに似合っていた。
草壁さんは少し頬を朱に染めると、いそいそとバッグから白い布を取り出す。
・・三角巾まで持ってきてたんだ。
髪を後ろで束ね、三角巾で頭を覆う草壁さんは、「お母さん」という言葉が似合いそうだった。
トントントン・・と、包丁の音が心地良く部屋に響く。
チラッと後ろに目を向けると、鼻歌混じりで料理をする草壁さんと目が合った。
草壁さんは「むむっ。」という顔をすると、顔の前で手で「×」印を作る。
いや、包丁持ったままだと危ないから。
「貴明さん。」
「ん?何?」
「ふふっ、呼んでみたかっただけです♪何かこうしてると、新婚さんみたいですね。」
そう言って笑った草壁さんの笑顔は、とても幸せそうだった。
俺はあまりの大胆発言に顔を覆って照れるが、指の隙間から草壁さんの
笑顔を見て、「そうだね。俺もそう思うよ。」と心の中で呟いた。
いいねー
514 :
名無しさんだよもん:2008/12/13(土) 22:20:34 ID:07lxou4lO
ここまで書いて、規制かかったorz
さげるの忘れました。申し訳ありません
メイドロボのSS多すぎワロタ
投稿者の人数が減ったせいだろ
「はい。出来ましたよ、貴明さん。」
そう言って草壁さんが、テーブルまで皿を運んでくる。
シチューなどを盛る様な皿に入っていたのは、ロールキャベツだった。
淡く緑をしたキャベツの葉が、薄い琥珀色のスープに浮かんでいる。
巻いたキャベツを押さえる為に使っているのも、赤や黄色の
カラフルな楊枝だった。まるで、子供のお弁当に入っていそうな
その楊枝の色彩が、温かみを増している。
「美味しそうだね、草壁さん。やっぱり
草壁さん、料理上手なんだね。」
「やっぱり、ですか?私、料理らしい料理は今日が初めてですよ?
色々と試してみて、それでも中々上手くいかなくて・・。」
「頑張ったんだね、草壁さん。」
「それはそうですよ。だって、貴明さんに食べてもらうんですから。
美味しくないと、貴明さんに申し訳ないですし・・。」
草壁さんは、ナイフやフォークを並べながら、照れ笑いを浮かべる。
恐らく、家で試行錯誤していたんだろう。料理本などのレシピは
「一般的に美味しい」作り方は紹介してるものの、それでも
草壁さんは納得いかなかったんだろう。
正直、嬉しかった。草壁さんが、自分の事を考えて料理の練習をしてくれていた。
それだけでも十分嬉しかったが、草壁さんは続けた。
「それで、小牧さんに料理の事を伺っていたんです。
調味料とか火加減とか、普段からなさっている方に聞くのが一番
だと思ったんです。」
「委員長・・小牧さんに?」
そういえば、今日の昼間に学校で・・。
あの時は何を話しているのか分からなかったけど、そういう事だったのか。
それじゃ、あの手帳には・・
「ええ、小牧さんが自分なりにレシピをメモしてきてくれて。
一緒に話し合って、普段貴明さんがどんな味付けの物を食べているんだろう、とか。
どうすれば美味しく作れるのか、とか聞いていたんです。
小牧さんは良く料理を作るらしくて、私が聞いたら快く教えて下さって。」
「そうなんだ。けど、小牧さんが料理好きだったなんて。初めて知ったよ。」
小牧はどっちかと言えば、食べている方が印象に残っている。
チョコレートだったりアメだったり、いつも何か口に入れている。
せわしない仕草はハツカネズミだが、時にリスでもある訳か。
「さ、頂きましょう。」
「そうだね。じゃ、いただきま〜す。」
二人で向かい合う様にテーブルにつくと、両手を前で合わせる。
ナイフでロールキャベツを切り分け、フォークを使って口まで運ぶ。
ほのかにスープの匂いと、肉汁の匂いが香ってくる。
「ん・・。」
「・・・どう、ですか?」
草壁さんがさっきまでの笑顔ではなく、緊張した面持ちで俺を見てくる。
手を膝に置き、じっと俺の口の動きを見ながら、ゴクッと喉を鳴らす音が聞こえる。
俺は口の中で柔らかなキャベツと挽肉を時間をかけて味わい、そして飲み込んだ。
草壁さんが心配するまでもなかった。
「うん、美味しいよ。スープもお肉もしっかり味がついてるし。
草壁さんが頑張っただけあるよ。」
「本当ですか?」
「本当だって。これなら、毎日でも食べたいくらいだしさ。」
実際、草壁さんのロールキャベツは美味しかった。
見た目も美味しそうだが、キャベツにも挽肉の下味がちゃんとついている。
挽肉にも玉葱やショウガ、ほんのりと醤油の香りもする。
「嬉しいです。貴明さんに喜んでもらえて・・。それじゃあ・・。」
「え??何?」
「はい、あ〜ん。・・貴明さん、はい。『あ〜ん』ですよ?」
草壁さんは自分の皿からロールキャベツをフォークですくうと、
俺の顔に近づけてくる。スープがしたたるのを、片手に持ったナプキンで
受け止めながら、草壁さんは笑顔で「こうです。」と口を開ける。
その仕草にドキッとしながらも、言われた通りに口を開けた。
フォークが口の中に入り、ロールキャベツを残し、去っていく。
「ふふっ、『あ〜ん』なんて初めてしました。
どうでしたか?貴明さん。『あ〜ん』された事あります?」
「んんっ、そ、そんなのある訳ないよ。」
「そうですか。それじゃ、もっとしてあげますね。」
そう言いながら草壁さんは再びフォークで切り分けたロールキャベツをすくい、
俺の方に持って来た。俺の口の中にはまだ、先程のロールキャベツが残ってるんだけど・・
「草壁さんも食べなよ、折角作ったんだしさ。
それに、俺まださっきの飲み込んでないし。」
「仕方ないですね。それじゃ・・はむっ・・。」
「(そういえばあのフォークって、俺の口に・・)」
草壁さんの口に入り、しばらく出てこないフォークを眺めながらふと思った。
「間接キス」だと。しかも草壁さんは知ってか知らずか、フォークを口に入れたままで
幸せそうに口を動かしている。何か分からないけど、その様子が妙に・・
「ん・・。?貴明さん、どうしました?何か顔が赤いですよ。」
「いや・・何ていうか、その。そのフォーク・・。」
「フォークがどうかしました?」
そう言って首を傾げると、草壁さんは何も差さってないフォークを口にくわえる。
未だにフォークの件を理解していない様子で、草壁さんは唇を動かす。
ほ、本当に気づいてないんだろうな・・。まだ「?」が頭に浮かんでそうな表情だ
草壁さんは分かってない様子だったが、何かに気づいたらしく
「ど、どうしたの?」
「貴明さん、頬に何かついてますよ?」
「え?何処?さっきのキャベツの欠片とかかな?」
そういわれて、慌てて頬を指でなぞってみる。
何かついてるのか確認するが、特に指には何もついてない。「何もないよ?」と言おうとした瞬間。
「っ!!」
草壁さんの顔が、俺の顔を覆う。黒髪がなびき、唇に温かみを感じる。
ロールキャベツの味に、草壁さんの髪からシャンプーのような匂いがする。
それがキスだと気づくのに、時間はかからなかった。
驚いて半目を開けると、少し潤んだ草壁さんの瞳がこちらを見ていた。
無邪気な瞳ではなく、どこか妖艶ささえ漂わせる瞳。
その瞳が細くなったかと思うと、唇がゆっくり離れていった。
「・・貴明さん。・・間接キスだけで、良かったんですか?」
523 :
名無しさんだよもん:2008/12/14(日) 11:12:39 ID:icKKMU0q0
ナイスっ!!!
こういうのが欲しかったんだぁっぁぁああ
草壁さんのSSは本当に甘いのばっかりで有難い
台詞内での改行に違和感を感じたけど面白かった
>改行
メモ帳に書いていまして、板上で横に伸びてしまうのではないか、と思い、変な改行になっていますね。
また勉強して、読み辛さを解消したいと思います
ぐはあっ
あめえええええwww
今日は草壁さん祭りという事で良いかな?
というわけでキャラ被りスマソ
今年ももう後一月を残すばかりとなった冬の休日。
草壁さんが朝から我が家にやってきた。今日は一日、夜まで一緒に過ごす約束をしていたから。
だらしない男の一人暮らしを見かねた草壁さんは、まず掃除に洗濯にと働いて家中をぴかぴかに
磨き上げた。
俺も庭掃除を申し渡されて、庭に積もった落ち葉を集めたりしたし。
そしてお昼は草壁さんが手料理をご馳走してくれる事になったので、二人でスーパーまで
買出しに出かけたのだった。
◇
「貴明さん、大丈夫ですか? 重くありません?」
「これくらい平気平気。それにこういう時は男が荷物を持つのが当然……ってタマ姉は
言うと思うから。」
「ふふふっ。環さんは向坂君だけじゃなくって貴明さんにとっても本当にお姉さんみたいな
物なんですね。」
「まあね。昔っから俺も雄二もタマ姉には頭が上がらないから。」
そう言いながら、俺は手に下げた荷物を持ち直した。
俺は両手に大きな荷物をぶら下げながら、草壁さんと二人で家路についていた。
辺りは冬の訪れを感じさせる雰囲気で、道端の木々もすっかり葉を落として冬篭りの
準備は万全といった感じだ。
草壁さんもさっきから手袋をしていない手に白い息を吹きかけていてちょっと寒そうだった。
ぴー……
「あれ、何の音だろう……」
「えっと……あれですね。」
そう言って、草壁さんは道の先を指差した。
道の先から軽トラが蒸気上げながらゆっくりとこちらに向かってきていた。
い〜しや〜きいも〜
おいも〜おいも〜おいもだよ〜
ほっかほかの〜おいもだよ〜
独特の節回しの売り声を流しながら、軽トラは俺たちの目の前まで近づいてきた。
「……」
「……食べたいの?」
ちょっとだけ物欲しそうな表情をしていたので聞いてみると、草壁さんはあわてて否定した。
「いっ、いいえ、そんな事ありませんよ。」
「別に遠慮しなくても良いよ焼き芋くらい。暖まるしね。」
「でも……お昼が食べられなくなっちゃいますし。」
そう言って草壁さんは俺が提げた袋に目を向けた。
中には草壁さんが作ってくれるお昼と晩御飯の材料が詰まっている。
そうこうしているうちに、軽トラは横を通り過ぎていってしまった。
「あ……行っちゃった……」
「いっ、いいんですっ。お芋は女の子の敵なんです!」
えらく力を入れて草壁さんが言い切る。
「太っちゃいますし……それに歩きながら大きな口あけて頬張ってるところとか知らない人に
見られちゃうと恥ずかしいじゃないですか。」
「うーん……俺は男だから、そう言うのいまいち解らないんだよな。」
「もっと女の子の気持ちを勉強してください。」
「はい……」
「じゃあ……私はさっきから貴明さんにして欲しい事があるんですけど、解りますか?」
「えっ?」
……草壁さんは俺の顔をじっと見上げている。
まさかこんな人通りの多いところで……キス……とかじゃないよな。たぶん。
散々頭を絞った後で、さっきから草壁さんが何で素手なのかに気がついた。
両手にぶら下げていた袋をまとめて右手に持ち帰ると、左手を差し出す。
「はい、正解です。」
そう言って草壁さんは右手を出して俺の左手を指を絡めるようにしてしっかりと握った。
そのまま二人で並んで歩き出す。
「♪〜」
草壁さんはとても楽しそうに歌を口ずさみながら並んで歩く。
自然と俺も楽しくなってくる。
草壁さんといるといつの間にか心があったかくなる。
それは草壁さんが俺のことをたくさん「勉強」して、俺が楽しくなるようにいつも考えている
からなんだろうと思う。
だから、俺も草壁さんをなにか喜ばせることは出来ないかと考えた。
……そうだ。
◇
美味しいお昼をご馳走になった後で俺は庭に出た。
庭の真ん中には午前中に集めた落ち葉の山がある。
「貴明さん、何やってるんですか?」
俺が庭に出たのに気がついた草壁さんも庭に出てきた。
「焚き火するんだよ。」
「焚き火ですか?」
「そ。これを入れてね。」
そう言って、アルミホイルで包んだ物を見せた。
「あ、」
「芋を焼くんだ。この間タマ姉の所からおすそ分けで貰ったのがいっぱいあるんだ。」
「で、でも……」
「さっきはああは言ってたけど、本当は食べたかったんでしょ?」
「たしかに魅力的でしたけど……」
草壁さんはまだちょっと躊躇しているので、ちょっと後押しする。
「一緒に食べようよ。それに家なら他の人の目も気にならないでしょ?」
「じゃ、じゃあ……ちょっとだけですよ?」
草壁さんは躊躇しながらも……焼き芋の魅力に篭絡されたようだった。
◇
ぶすぶすと燃える落ち葉の前、草壁さんと縁側に腰掛けて二人で芋が焼けるのを見守り
ながら過ごす。
北風は流石に冷たいけど、今日は天気も良いので日当たりの良い縁側では薄い上着を羽織る
程度でも十分過ごしやすい。
「なんだかこうしていると、お年寄りの夫婦みたいですね。」
「ああ、なんかそんな感じ。 ……ばあさんや、なんてね。」
「じゃあ私は、何ですかおじいさん、なんて。」
「二人で渋いお茶すすったりして。」
「いいですね。あっ……ちょっと待っててくださいね。」
そう言って草壁さんは家の中に引っ込んだ。
10分ほどして草壁さんがお鍋を持って戻ってきた。
「お待たせしました。」
「何してたの?」
「これを作ってました。」
そう言って抱えていたお鍋の蓋を開けて見せてくれた。
中にはクリーム色の液体がなみなみと入っていた。
「甘酒かぁ。」
「こういう寒い時はこれが一番です。」
「でも酒粕なんてあったっけ?」
「さっき夜の粕汁用に買ったのを使っちゃいました。」
草壁さんはそう言ってぺロッと舌を出した。
「じゃあ、夕食のときに困るんじゃないの?」
「また夕方にお買い物に行けば良いじゃないですか。夕方はタイムセールなんかもやって
ますから
丁度良いです。」
「まあ、それもそうか。夕方も買い物デートとしゃれ込みますか。」
「はい。約束ですよ。」
そう言って二人で指切りする。
他愛も無いことだけど、草壁さんは本当に嬉しそうだった。
芋が焼けるのを待つ間、カセットコンロで暖めている鍋から甘酒をカップに注ぎつつ、
二人でちびちび飲んで話をしながら芋が焼けるのを待つ。
特に草壁さんは猫舌なので話の合間にふうふうやりながらで、ほとんど舐めるようなペースだ。
「あとちょっとかなぁ……」
開始から1時間ほど経って、燃え尽きかかっている焚き火を見ながらなんと無しに呟く。
でも草壁さんからの返事がなかった。
「草壁さん……?」
ぽふ。
返事の代わりに軽い重みが俺の肩にかかる。
横を見ると草壁さんはカップを持ったまま俺の肩に頭を預けて眠っていた。
待ちくたびれたのか、はたまた甘酒の飲みすぎで酔いが回ったのか。
どちらにしても起こすのは忍びないので、草壁さんが手に持っていたカップを取り上げて
横に置くと、あとはなるべく身動きしないようにする。
すぐ傍には草壁さんの小さな頭がある。さらさらの黒髪はいつも通り綺麗に櫛が通っていて、
シャンプーのいい匂いがした。
良く見ればまつげも長い。頬っぺたは白くてすべすべ。
寝息を立てている口元は薄く開いていて、薄く化粧でもしているのかつやつやとした綺麗な桜色だった。
春先に再会してからそれなりの時間を一緒に過ごしてきたけど、こんなに近くで見ることは滅多に無い。
まじまじと観察していると、やがて眠りから覚めたのか草壁さんがもじもじと動き始めた。
「ん……あ。」
観察していた俺の目と、草壁さんの黒く澄んだ大きな瞳が合った。
「えっと……」
「あっ、す、すいません貴明さん。あっ、あのっ、私変な顔とかしてませんでした?
変な寝言とか……」
そう言いながら草壁さんは顔を撫で回してあたふたしていた。
それがあまりに滑稽だったので俺は思わず笑ってしまった
「笑うなんて酷いです。」
「あっはッはっ、ごめんごめん。別に変な顔はしてなかったよ。寝言もいってなかったしね。
それに……」
ふくれっ面の草壁さんのご機嫌を取る意味も込めて、俺はさっき見た寝顔の素直な観想を答えた。
「寝顔がすごく綺麗だった……」
「そ、そんなお世辞いってもダメです。女の子の寝顔を観察するなんてルール違反ですよ。」
「別にお世辞じゃないんだけどな……それはそうと、ほら、焼き芋も焼けたんじゃないかな?」
そう言いながら俺は焚き火を指差す。
残り火がまだくすぶっているけど、枯葉の殆どは燃えて尽きて埋めてあった芋のアルミホイルの
鈍い輝きが覗いていた。
◇
軍手を穿いて、枝で燃えカスの中から芋を掘り出して手に取る。
やけどに気をつけながらアルミホイルを剥がすと、少し焦げ目のついたさつまいもが姿を現した。
次々に掘り出して縁側に並べて少し冷ます。
「ちょっと多すぎじゃないですか?」
かれこれ6本ほど並んだ芋は二人で食べるには確かに多い。でも……
「いや、なんかね……予感が……」
「ああっ、タカ君やきいも焼いてる。このみも食べたいよ。」
「あら、大丈夫なんじゃないかしら。まさか二人で全部食べるとか言わないわよねぇ、タカ坊?」
「あ、環さんにこのみちゃん。」
柚原家の庭から顔を見せたのはタマ姉とこのみだった。
「ほら、やっぱりね。こういう事には鼻が利くんだ……いっ、いたたたたた!」
予想通りの展開にそう言うといきなりタマ姉に頬っぺたをつねり上げられた。
「あら、まるで私達がいやしいような言い方ねぇ。私はそんな風にタカ坊を教育したつもりは
無いんだけど。」
そんな俺をあわてて草壁さんがフォローしてくれた。
「ま、まあまあ、環さん。ほら、焼き芋が冷めちゃいますし。」
「……そうね。タカ坊を問い詰めるのは後でも出来るし、ご相伴に預かりましょうか。」
タマ姉とこのみは雄二と春夏さんの分も入れて4本の焼き芋を渡すと、
「二人のお邪魔しちゃ悪いわ。」と言って、このみを連れて柚原家の方へと戻っていった。
残った俺たちは芋を1本ずつ分けて食べ始めた。
火傷に用心しながら芋を折ると、黄金色の身が顔を覗かせて湯気が立ち上がる。
ぱりぱりの皮をむきながらかぶりつくと芋の風味と甘みが口いっぱいに広がった。
「良く焼けてるよ。」
「はい、じゃあ……あっ、熱っ!」
熱々の焼き芋は猫舌の草壁さんにとっては熱すぎたみたいで、かぶりついたとたんに小さい
悲鳴が上がった。
「大丈夫?」
「舌をちょっと……」
草壁さんの舌を見るとちょっとだけ赤みが増していた。
「ちょっと赤くなってるけど……」
草壁さんはなぜかじっと俺のほうを見ている。
「えっと……何?」
「あの……舌を火傷しちゃいましたので……」
……正直、草壁さんが何をしてほしがっているのか見当がつかなかった。
「降参……どうすれば良いのかな。」
「……貴明さんが……冷やしてくだされば直るかも……キス、とか……」
……草壁さんの顔がほんのり赤くなった。目線もちょっぴり泳いでたりするし。
「えっと……じゃ、じゃあ……頂きます。」
思わぬ提案に俺は変な台詞を口走りながら、そっと草壁さんと唇を重ねた。
少しだけ舌を入れて触れ合わせる。
「ん……」
「えっと……こんなもんでどうかな。」
「はい……もう大丈夫です。貴明さんのキス……甘かったですよ。」
そう言ってくすっと笑った。
「それは……焼き芋の味じゃないかな。」
「そうですね。貴明さんが焼いてくださった焼き芋の味です。」
草壁さんはそう言って、今度はふうふうと良く冷ましてから焼き芋にかぶりついた。
「美味しいです。焼き芋屋さんのお芋より。」
「特別な事はして無いけど……」
でも草壁さんは頭を振って、そしてにっこり笑って言った。
「いいえ、貴明さんの愛情の分、焼き芋屋さんのお芋より甘くて美味しいんですよ♪」
〜おまけ〜
草壁優季のお料理教室「ご家庭で出来る美味しい焼き芋の作り方」
ちゃんちゃかちゃかちゃかちゃんちゃんちゃーん♪
ちゃかちゃかちゃんちゃん、ちゃん、ちゃん♪
「こんにちは皆さん、草壁優季です。」
「アシスタントの河野貴明です。」
「今日はご家庭で出来る美味しい焼き芋の作り方を伝授しちゃいます。
コツは忍耐ですよ。ではまずお芋を用意しましょう。貴明さんお願いします。」
「はい。これですね。」
「はい、今日は紅あずまを用意しました。焼き芋といえば金時が有名ですが、紅あずまなど
多少安めのお芋でも美味しく出来ます。」
「で、このお芋はどうすれば良いのかな?」
「お芋を用意したら、オーブンレンジを準備します。オーブンモードで温度を200度に
設定したら、天板にお芋を載せて入れます。
この時に直にお芋を置いてしまうと、お芋から出た糖分で焦げて天板にくっついてしまう事が
あるので、アルミホイルを敷いておくと良いですよ。」
「よっと……入れたよ。次は?」
「そうしたらタイマーを20〜30分に設定します。時間はお芋の大きさなどにもよりますので、
何度か焼いて感覚を掴んでください。」
〜30分後〜
ちーん。
「30分経ったよ。もう焼き上がり?」
「いいえ、ここでお芋をひっくり返して、あと20分ほど焼きます。」
「まだ食べられないんだね……」
「はい。美味しいお芋を食べるために今はひたすら我慢です。」
〜20分後〜
ちーん。
「今度こそ焼き上がりかな?」
「はい。取り出して確かめてみてください。」
「よっと……二つに折ってみると……おお、見事な黄金色。」
「じっくり火を通す事でお芋のデンプンが糖化して甘くて透き通った黄金色になるんです。
皆さんも試してみてくださいね。とっても美味しいですよ。ではまた。」
ちゃんちゃかちゃかちゃかちゃんちゃんちゃーん♪
ちゃかちゃかちゃんちゃん、ちゃん、ちゃん♪
味覚の秋には遅いですが、寒くなると美味しい女性に人気の焼き芋ネタで。
焼き芋をはふはふしながら食べる草壁さんは可愛いと思うんだ。
ちなみにタイトルは芋とフレンチキスから。
フレンチポテトでてこないぞと怒らないでねw
あめぇぇぇぇぇ
だがいいw乙
ぐはあっ
草壁さんとお芋食いてえぇ
俺はよっちと食いてえぇ
なんか書いてる内に長編になってきた・・もうSSじゃないよ、これorz
>>543 案ずるな。『河野家にようこそ』は全91話でもSSだ。『桜の群像』も文庫一冊分くらいあるな
書庫さん乙ですm(__)m
この物語はHMX−17三姉妹と愉快な仲間達の平凡な日常を淡々と描くものです。過度な期待はしないでください。
◇ ◇ ◇
「―― ふぅむ、なるほど。わかり申した。由真めに伝えてみましょう。」
チン―― と、来栖川家の執事、ダニエルこと長瀬源蔵は、話し終えるとその古風な電話の受話器を置いた。
直後、パタン、と玄関の扉が開く。「ただいま〜。」 と入って来たセーラー服の少女は、彼の孫娘、由真。
「おお、おかえり。」 源蔵はにっこりと口髭をたたえた口元を緩ませた。
広壮な居間を通って自分の部屋へと向かう由真。
その後姿を目で追い、おもむろに、コホン、と咳払いをしてから話を切り出す源蔵。 「……あー、由真のぉ……」
ピタと由真の足取りが止まる。源蔵の方へ振り向いた。「……ん?何、おじいちゃん?」
「いくつか話があっての。まず、マウンテンバイクの件じゃが」
「あ〜その話はもういいの。じゃ着替えるから」 と言って、また部屋へ歩み出す由真。
「まぁそう言わんでの、聞いてくれんか。」 苦笑しながらなだめる源蔵。
「ん〜もう。」 と、眼鏡に挟まれた眉間に縦皺を寄せ口をヘの字にし、腕を組んで源蔵に向き直った。
「のう由真。もう小僧を許してやってはやれんかの?来栖川電工の方からも補償の話が出とるし、まぁその辺で手打ち
にしてやってはどうじゃの?」
キッと眉を吊り上げる由真。「そういう問題じゃないの。あの、にやけたあいつに誠意を見せて欲しいの。」
肩をすくめる源蔵。「ふむ……小僧、別段にやけてはおらんかったがの。いまいち頼りない気もするが、割と好印象じゃ
ないか。聞けば無理からぬ事情と思うし……ワシもな、若い頃は随分と無茶をやったもんじゃ。」
「なんであいつらの痴話喧嘩にあたしが巻き込まれなきゃなんないのよ!?あいつ、言うに事欠いて、“そういう運命
なんじゃないか”、とか言ってっ!」
「ふ〜む……まぁ、確かにそういう運命じゃたんじゃろう。間違ってはおらんな。」
「―― ちょっとっ!?おじいちゃん!何よそれっ!?」
「いやまぁな……由真、なんでそこまでムキになるんじゃ?……さてはおぬし、実は小僧に惚れとるんじゃな?」
―― ムッキーッ!額の青筋をピクピクさせ、掲げた両手をわなわなと開いたり閉じたりしながら、由真は激昂した。
「ふざけないでよおじいちゃんっ!なんであんなやつ―― もう知らないっ!」
そうして踵を返し、さっさと自部屋に向かおうとする。
「まぁまぁまぁ!ちと待てい。それはさておいての、話は他にもあるんじゃ。」
ム〜……、と、再び不機嫌MAXの表情で、向き直る由真。
「実はの、やはり来栖川家の執事をしとる親戚の源四郎さんから電話があっての。……知っとるじゃろ?」
「……セバスチャン?」
「そうそう。なら来栖川の綾香お嬢も知っとるな?お付きのメイドロボの調子がおかしいとかで、短期間、代わりのメイ
ドを探しておるんだそうじゃ。」
「ふ〜ん。」 さして興味がないといった風に、受け流す由真。
「そこでじゃ……由真、おぬし……メイドをやってみんか?きっと、ダニエルを目指すよい勉強になると思うぞ。」
―― イッ!?と、思わず冷汗をたらしてのけぞった由真。
「長瀬の一族はの、結局皆、来栖川との関わりの中で生きていくしかないんじゃ。それも執事やメイドのような形での。
源四郎さんのご子息もな、執事は継がなかったが、結局来栖川電工でメイドロボなんぞ作っとるようだしのぉ。」
「―― もう、おじいちゃんっ!あたしはダニエルにはならないって言ってるでしょっ!?」
由真はそういってプイッとそっぽを向き、今度こそ本当に居間を後にし、階段をトコトコと登り始めてしまった。
「まぁ、メイドの話はちと考えてくれ。」
由真の後姿に語りかけると、やおら源蔵は胸に手を当て、妄想に耽り始めた。
「さぞかしメイド衣装は似合うじゃろう……おお……小さい頃の、可愛かった由真めの姿が思い浮かぶ……『ダニエル
になる〜。なる〜。なるぅ〜!』 」
◇ ◇ ◇
姫百合宅。
「うわぁあああ〜〜んっ!ウチ、犯されたぁあああ〜〜っ!イルファのアホォおおお〜〜っ!!」
自分の胸に顔を寄せて泣きじゃくる瑠璃の頭を、よしよしと撫でながら慰める珊瑚。
「犯されたって……瑠璃ちゃん、処女奪われたん?」
心配顔で訊ねる珊瑚。しかし、瑠璃はぷるぷると頭を振る。
「う、ううん……大丈夫みたい……前は。……でも、でも……後ろの穴、奪われてもうた……グスッ……」
「う……後ろ……」
珊瑚は絶句し、両手で口を覆って真っ赤な顔になった。 「い……いっちゃん、マニアックやぁ……」
―― ピルルルルッ!
再び鳴った電話が、唐突に場の雰囲気を一変させた。のんびり屋の珊瑚らしからぬ機敏な動作で、受話器を取る。
「はい、姫百合です。―― あっ、おっちゃん。ごめんな〜さっきは途中で忘れてもうて」
―― 予期していた通り、電話の主は、長瀬のおっちゃん。
電話越しに聞こえてくる喧騒は、HM開発課が相変わらずてんやわんやの大騒ぎである事を示していた。
珊瑚は、つい先刻までのイルファの様子を長瀬に話した。くだんのウイルスに感染してしまったのは、どうやら動かぬ
事実と言えそうだった。
“う〜ん、滅多にデータリンクなんて繋がないイルファが、よりによってこんな時に……色んな意味で宜しくない状況だ
な、それは……” と、長瀬の弱りきった声が。
「どんな風にあかんの〜?」 訊ねる珊瑚。
……ざっと受けた説明は、こうだった。
それは市販機の……つまりは、長瀬が作ったAIを載せた機体を主対象として放たれたウイルスで、その症状を惹起
する要因は、主に感覚器への刺激。そしてAIに働きかける幻覚作用もあるらしい。
しかし市販機ならば、当座の対処なら可能 ―― それは、オーナーなら誰でも出来る――
―― 動かないよう命令してしまえばいい。ロボット三原則まで侵食する内容ではないからだ。
三原則を載せてない試作機の娘達も、完成間近の駆除プログラムで対処出来る目処は立っているようだ。
……HMX−17達を除けば……
社外品の、実験段階のAIに及ぼす作用までは把握出来ないのは、さすがに無理からぬことだった。
身体構造は若干のカスタマイズはあってもリオンとほぼ同一なので、感覚器への影響は想定出来るが、繊細なDIA
がどんな反応を見せるのかは、全くもって未知数……
三原則が組み込まれてない事も、リスクを大きくしていた。
「えぇぇ〜〜?おっちゃん、そらあかんやないの〜。」
珊瑚が困惑の声をあげる。もとより、それは長瀬に指摘されるまでもなく懸念していた要素だったが。
兎にも角にも、イルファの居場所の把握と、あと、ミルファとシルファの感染の有無の確認を急ぐよう促がした長瀬。
「うんわかったわ〜。」 と珊瑚。
珊瑚はもう一つの依頼も受けた―― これは少々骨の折れる話で、データリンクシステムに介入し、感染したメイドロボ
達をリモート下に置いて欲しい、というもの。
そうやって押さえておいて、駆除プログラムを一斉ダウンロードしようという目論みだった。HM開発課でもそれは行っ
ているが、いかんせん人手が足りなかった。珊瑚なら10人分は補って余りある。
「うん、任せてや〜。」 と、胸を叩く珊瑚。―― そうして、当該の機体のIDのリストが次々に送られて来た。
瑠璃は珊瑚の隣で目をパチクリさせながら聞き入っていた。やがて珊瑚が電話を終えると、口を開く。
「なぁ……イルファ、ビョーキなんか?」
「うん……」 と、珊瑚。「はようつかまえんと、あかんみたい。」
瑠璃は押し黙り、すこしの間思案していた。それからまた話し出す。
「イルファ、きっと、貴明んとこやわ。」
それを聞き、コクリと頷いた珊瑚。
瑠璃は受話器を握り、プッシュダイヤルを叩いた。番号は―― 河野家 。
プルルルル……プルルルル……20回以上鳴らしたが、まったく応答がない。
「ダメや。誰も取らへん。」
「……変やね〜。しっちゃんそんな横着するような子やあらへんのに〜……みっちゃんも、着いてる頃やと思うし……」
顔を見合わせる双子。不安の渦が広がっていく。
「貴明に直接連絡取ればええんちゃう〜?」 と珊瑚が言ったので、瑠璃はこのみから聞いていた貴明の携帯にかけて
みる。
―― しかしこれも、すぐに留守電になってしまう。 「あかんわ。バイト中なんやろか。」
データリンクに繋いで、イルファ達と連絡は取れへんの?と瑠璃は訊ねたが、珊瑚はかぶりを振った。
「ダメや。いっちゃんはもう繋がらんし、まだ感染したかわからんみっちゃんやしっちゃんに、そんなリスク侵せん。まだ
サーバーにビョーキの元残ってるかも知れへんのに。」
―― すると、瑠璃はスックと立ち上がった。そしてセーラー服の上にコートを羽織る。
「瑠璃ちゃん?出掛けんの〜?」 見上げて珊瑚が訊ねた。
「ウチ……貴明んとこ行ってみる!」
「そらあかんよ〜。またいっちゃんに手篭めにされてまうかも知れへんよ〜?」
て、手籠めって……瑠璃はうつむいて、赤面してしまう。
やおら珊瑚は受話器を取って、プッシュダイヤルを押した。
「―― さんちゃん、どこへ?」
「うん。困った時の環さんや〜。」
◇ ◇ ◇
ようやくバイトを終え、貴明は自宅へと向かい始めた。
もうすっかり、辺りは夜の帳が下りてしまっている。吐く息も白くなり始めた。
「う〜寒い寒い……もう冬になっちまうんだよなぁ……」
コートくらいは準備しとけば良かったと後悔しながら、貴明はバイト先でのサプライズを思い起こした。
―― なんだって、春夏さんがウェイトレスなんかやってんだよ―― っ!!?
ウェイトレスの衣装が似合いすぎ。スカート短すぎ。……はっきり言って、若過ぎ。20代と言っても、多分、誰も疑わ
ないだろう。
ああやって、自分の若さを誇示したいんだろうか……このみも大人になれば、あんな感じになるのかな……などと
思う貴明。
春夏さんがバイトしてるから、このみは今日自炊するためカレーの材料買いに行ったんだな、とふと思い当たる。
……カレー ……そうそう、今日はミルファがカレーを作ると言って、張り切ってたっけ。またシルファと衝突してなきゃ
いいけど……
漂うカレーの香りを想像しながら、貴明は家路を急いだ。
◇ ◇ ◇
「……ン……」
霞のかかった意識の中、ミルファが目覚めると、周囲は漆黒の闇。
あるいは、まだ夢の中にいるのではないかと思われた。
「……フンムゥゥ……っ!?」
口元に違和感を感じる。やや意識が晴れ始めると、それは、『さるぐつわ』だと判明した。
「―― ンム〜〜〜ッッ!!」
声が出せない。体の方はというと ―― 屈められ、尻餅をつかせ足を組まされている状態で、無理矢理狭いスペース
の中に押し込まれているのだった。
手足を動かそうとする。しかし……紐で後ろ手に縛られており、足首も同様だった。
力ずくで、紐を引きちぎってしまおうと力を込めるが―― まるっきり、力が入らない。
“あ〜う〜最小電力モードだよ〜。自分で動けないよ〜。”
目に映る光景は真っ暗だが、ぼやけた頭の中は真っ白になってしまう。
なんで、こんな状況になってしまったのか ――
ミルファは、意識を失う前の出来事を、なんとか思い出そうとした―― 。
――――
数刻前。
バタンッ!と扉を開き、ミルファは買い物袋を抱えて河野家の玄関の敷居を跨いだ。
「じゃんっ!河野ミルファ参上〜〜っ!!ヒッキー!今日の夕食はあたしの出番だかんね。ダーリン必殺カレー!……
いやホントに死んじゃったらやだけど……邪魔するんなら、勝負っ!指先一つでダウンよっ!」
―― 威勢良く駆け込んだものの、シーンと静まり返る部屋の中の様子に、思わず拍子抜け。
「あれ?……ヒッキー、いないの?」
居間に入ると、TV画面にはレ−スゲームが映っており、ゲームオーバーの表示が出たまま放置されていた。
「ふふ〜ん、ヒッキーめ〜、この間負けたのが悔しくて練習してたら、また目を回してバタンキューってわけねぇ〜……
ぷぷぷ、逃げ足だけは早いくせに、運痴なんだから〜。」
ほくそ笑み、その辺にシルファが転がってはいまいかとキョロキョロ周囲を見回すが、その姿はどこにもない。
「―― う〜ん……まっ、いっかぁ。」
ドサリと食材の袋を食卓の上に置き、学校鞄をかかえて貴明の部屋へと向かった。トントンと階段を登っていく。
貴明の部屋のノブを握り、カチリと回してそ〜っと開け、隙間から顔だけ伸ばして部屋の中を一瞥する。
すると……
“ふぅん……んぁぁん……んふぅ……んはぁぁぁ……”
呻き声とも喘ぎ声とも聞こえる、奇妙な音。
ミルファは視界を音のする方向にずらしていく。
……見てはいけないものを見てしまった気がした。
ベッドの上に横たわっているのは、紺色と白の上着に、紫のプリーツスカートの背中。そこから伸びる黒いニーソの
足。
―― そして、金髪のお下げ。
彼女は、貴明の枕を胸元に抱えていた。そしてその手は―― スカートの中の、そのまた白いショーツの中の秘部を
まさぐりながら、くちゅくちゅと淫らな音をさせ、卑猥な言葉を喘ぎ声に混ぜて発しているのだった……。
“んぁ!んぁ!んぅ!ご、ご主人様の、逞しいのれす。んぅ!こっ、壊れちゃうっ!シルファのおまんこ、壊れちゃう!
んぅ!んはぁっ!いっ、いっぱい、らして欲しいのぉっ!んはぁっ!んはぁぁぁっ!”
ミルファは思わず目をかっと見開いた―― ヒッキーが、貴明とのえっちを想像して、オナニーしてる――ッ!?
「……シルファ、あんた……」
突然の声にギョッとして、シルファは寝そべった体勢で顔を入り口の方に向けた。 ―― その視線の先には、呆然と
立ちすくむ桜色のセーラー服に桃色の髪。
「―― ぴぎゃっ!ミ、ミルミルッ!―― ぴぃぃぃぃぃっっ!!みっ、見ちゃらめぇぇぇぇええええっっっ!!」
シルファは羞恥に顔を激しく紅潮させながら、バネが弾かれたようにベッドの上で上体を起き上がらせた。
「……シルファ、あんた、なんなの……?貴明をおかずにして、えっちな事口走ってオナニーなんかして……一体
……」
信じられないという表情で、ミルファは問い詰めた。
シルファはぶるぶるとかぶりを振る。そして、切なく身をよじり、瞳をうるませ、哀願するような眼差しで答えた。
「が……我慢れきないのれす……止まらないのれす……手が勝手に、動くのれす……ご、ご主人様と、え、えっちな
事したいのれす……ご、ご主人様の、太いの、シルファのここに、入れて欲しいのれす……い、いっぱい、突いて欲しい
のれす。いっぱい、いっぱい、熱いの、中にらして欲しいのれす……ミ、ミルミル、シ、シルファも、えっちに交ぜて欲し
いのれす―― ッ!」
それを聞くと、ミルファの表情は和らぎ、そして「ふっ。」と口元を緩ませる。腰に手を当てながら、言った。
「なぁ〜んだ。ヒッキーもやっぱり、貴明が好きなんじゃな〜い。ホぉ〜ント、素直じゃないんだからぁ。」
―― しかしそう言った後、急に表情はキッと険しいものになる。
「……でもダメ。貴明は、あたしにプロポーズしたんだから。命懸けで、あたしを追ってくれたんだから。あたしだけを
好きって、言ってくれたんだから……貴明は、あたしだけのダーリンなのっ!!」
しゅんとなり、恨むような表情でミルファを見据えるシルファ。
「……そう。ミルファちゃんはわがままな子。いけない子ね。折角シルファちゃんがみんなで幸せになりたいって言って
るのに。お仕置きが必要みたいね。」
―― 突然の背後からの声に、ギョッとなり振り向くミルファ。
しかし、その瞬間には、既に彼女の背の急所には指がめり込んでいた。「あうっ!?」と呻いた後、急激に視界が暗く
なっていく。
消え去る視界の中に、最後におぼろげに映ったのは、青い髪――
―― お、お姉ちゃん―― 。
ズルッと崩れ落ち、床に横たわってしまう。
「……はぁ、はぁ……イ……イルイル……ッ!?」
絶え間なく襲い来る欲情に喘ぎ声をあげながら、シルファはその様子を唖然として見つめていた。
「……はぁ……はぁ……うふふ。これで邪魔者はいなくなったわ……さぁ、貴明さんを、快楽のエデンへとお連れする
のよシルファちゃん……はぁ……はぁ……」
イルファの瞳は、妖しい光をたたえていた。
――――
そして今、暗所に拘束されて、うずくまっているミルファ。
彼女はようやく、事ここに至った顛末を思い出した。
窮屈な暗がりの中、頭では必死にもがこうとするが、手足はまったくいう事を聞かない。
“……うぇ〜ん、ひどいよ〜お姉ちゃん……なんであたしがこんな目にぃ〜?”
真っ暗な閉塞感が、彼女の不安を更に煽るのであった。
“うわぁ〜〜んっ!暗いよぉ〜狭いよぉ〜恐いよぉ〜〜っっ!!助けてっ!助けてダ〜リ〜ンッ!!!”
(つづく)
投下終了です。
乙乙
由真参戦フラグかこれは
源四郎の息子って言われて源六朗?こと長瀬のおっちゃんが出てくるのにちょっと時間がかかった
559 :
名無しさんだよもん:2008/12/17(水) 00:22:13 ID:6PAXPmu30
優季ssを書いてくれた方に最大限の感謝を!!!
長瀬のおっちゃんは源五郎だよ。
たしか源一郎とか源三郎とか祐介の父親もセバスの息子じゃなかったかな。
フランクと源之助と源次郎は知らん。
俺はダニエルとセバスチャンの違いがよくわからん。
セバスチャンは芹香が源四郎を呼ぶ時の渾名、ダニエルは来栖川家の執事の役名みたいなの。
最初同一人かとは思ったけど、よく見ると顔も違うね。2年経って髭とか伸びたのかも知れないけど。
長瀬一族は面長な容姿に特徴がある。多分モデルとかいるんじゃ。
してみると由真は母親似なのかも知れんねw
正直面白くない
この人いっつも、後半に一応見せ場は作るけど前半中盤が必要以上に暗かったり退屈だったり
何編かに分けられるとつまらない話ばっかり続くから、次を読む気が失せちゃう
コンパクトにまとめて、一気に落とした方がいいんじゃない?
それはそうと、容量見ると、もう次スレ移行の時期かと思うが
そういやそうだね
とっくに目安容量過ぎてるな
被ると嫌なので一応予告
0時までスレ立て報告がなければスレ立てするわ
自分は、自分が思いつかない、書けない話を書ける人は尊敬します。
そしてクリスマス頃に合わせてSS書いてたら、PC壊れてデータあぼんしましたとさ・・
>>562 セバスチャン=長瀬源四郎
ダニエル=長瀬源蔵じゃなかったっけ?
ちなみに、長瀬源蔵の名前は愛佳シナリオの4月21日のイベントで出てくる
(古い図書カードのイベントね)
>>562 由真は母親の方が長瀬。たしか駆け落ち後和解で父親は婿養子じゃないかねえ。
だから普通に父親似。
「―― うめぇ。これはうめぇと思うよ、由真。」
ハヤシライスを一口スプーンで放り込んで、貴明は率直な感想を述べた。
「ふふ〜ん、当ったり前でしょ♪」
頭にはカチューシャ。胸が強調された黒と白の、丈短めのスカートのエプロンドレスに黒いガーターストッキングが目に
眩しい、メイド衣装の由真が腕を組み得意顔でふんぞり返った。
ム〜……と、不機嫌顔でその様子を食卓の脇の椅子から窺うミルファ。
「ご主人様、シルファのお食事と、ろっちがおいしいれすか?」 これまた憮然としながら、貴明を問い詰めるシルファ。
「いや、その……どっちがと言われても……ははは……(汗)」
答えに窮し、困惑して手を後ろ頭に廻す貴明。
「愚問ね。こちとら執事の家系に生まれて、1×年間、だてに人間やってきたわけじゃないんだから。経験値とか機微
とか、所詮付け焼き刃のメイドロボさん達と比較されるのは不本意よね〜。」
そう言って、由真はニヤリと白い歯を剥き、それがキラ〜ンと光る。
「ムッカ〜ッ!」
「むきゅううううううっ!」
「……しかし由真さ、こんだけ作れるんなら、何も俺んちでメイドの練習なんかする必要ないじゃん?」
貴明が怪訝な顔で訊ねた。
「ひっ……必要あんのよ!相手は来栖川のお嬢様。おじいちゃんに恥をかかせるわけにはいかないの!」
焦ってムキになりながら由真が返す。
「でもさ、そんだけ大きなお屋敷なら、専属のコックくらいはいるよね?調理の心配までする必要ないじゃん?」
―― イッ!?と、貴明の指摘に大袈裟に後ずさる由真。
「それにさ〜、もうセリオお姉ちゃん直ってるって言うし、時間短いバイトでそんなやる事ないんじゃない?」
「そもそもご主人様の舌と、お金持ちの舌じゃ、基準が違うのれす。ま、シルファは優秀なめいろろぼれすから、ろっち
にも対応可能れすが。」
「―― うっさいわねっ!どんな突発事態にも対応出来るよう準備しておくってのが執事の家の常識ってもんなのっ!」
くわっ!と一喝する由真。
「……で、河野貴明。これも食べてみて。」
おもむろに、鍋からスープをよそり、貴明の前にそれをコトリと置いた由真。
それをまじまじと見つめる貴明。
―― どこか漂う、独特の刺激臭。
記憶を失う前のミルファが持参してきた弁当ほどではないが、あれと同種の、危険な雰囲気が感じられる―― 。
「おい由真、これ何だ?」
「何って―― 普通にメキシコ風のスープ。結構練習して、自信あるんだから ―― 四の五の言わずに、さっさと口に
しなさいよっ!」 手を腰にして、顔を突き出す由真。
はいはい……と、不承不承を極力顔に表さないよう気を遣いながら、貴明はスープをスプーンで一さじすくい、口に
含んでみた。
…………
…………
「クワァ〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
ややインターバルを置いてから、だらだらと顔中から汗が垂れ、赤くなった後に青くなり、やがて白目を剥いて悶絶
し、椅子ごとバタンッ!と後ろに倒れ込んだ貴明。
「ダッ、ダーリンッ!?」
「ごっ、ご主人様ぁ〜〜っ!?」
ミルファとシルファが慌てて駆け寄る。ぶくぶくと泡を噴いて倒れている貴明。唇が数倍に腫れ上がっていた。
「あちゃーっ……。綾香さん、辛い四川ラーメン好きだって聞いたから、どのくらいが丁度いいか貴明で実験してみた
んだけど……ちょっと、ハバネロ入れ過ぎたかしら。」
そう呟いて、横たわる貴明を一瞥する由真。
「―― まっ、いいっかぁ。骨は埋めてあげるかんね〜河野貴明♪」
(おしまい)
とりあえず埋め
はいはいおしまいおしまい