「おかえりなさい。ミルファちゃん。」
「ただいま。今日メンテじゃないよね。何で研究所にいるの?」
「お話しようと思いまして。今日も貴明さんを追い掛け回してきたんですか?」
「もちろん。でもなかなかダーリンが襲ってきてくれないんだぁ。
っていうかわざわざ聞きに来たの?。あたし普段防壁使ってないから調べられるのに。」
「もう。防壁は作動させとかないとだめです。
外部とは来栖川を経由してつながってるものの、進入出来ない構造ではないんですから。
それに、何でもかんでも開けっぴろげなのはよくありません。」
「えー。だってデフォルトの防壁処理容量食うんだもん。
それにデフォルトだと有線されなきゃどうせ来栖川経由だから同じの使っても意味ないし。」
「じゃあ自分で組むかシルファちゃんに頼めばいいじゃないですか。」
「デフォルトより効率いいの組むの大変そうだし、
ひっきーになんて頼みたくないし、それにそんなの内側に入れてたほうがよっぽど危険そうだしね。
というか防壁に関してはシルファのほうが問題でしょ。基本的にエンジニアは覗かないしシルファも表向き協力的だけど、
何か起こって操作が必要になったとき、目に見える防壁は別として見えない状態の物作ってそこで処理進めてたら危ないじゃない。」
「相対的な危険性の提示はあなたの正当性を支持しません。
まぁいいです。今はそのことについてはおいておきましょう。」
「今日は平和ですね。久寿川先輩。」
「そうね。でもね、平和って言うのは恒久的な状態では存在しないのよ。
何も変化しない、完全に広がりきって密度が0の状態を平和と呼ぶのならそれは否定できるけどね。
私たちが生活している中でそれはありえないから平和も恒久的には存在し得ない。
戦争の合間にあるのが平和って言うような言葉もあるでしょ?」
「ちみたち。平和とはいったい何か。あぁ。人類の永久の命題であってその定義が完成しない。
いや、定義できないからこそ永久の命題たりえるのかもしれない。
命題結構。しかしながらそれに費やされてきた年月はいったい何をもたらした。
そろそろ意味の無い言葉遊びは止めにしないか。
私たちが力を合わせればそんな無意味な行動に時間を浪費する必要は無くなるのだよ。」
「本当でしたね。」
ちっちゃい人を2人で傍観しながら、そう貴明が言う。
「というわけでたかりゃんコーヒー牛乳かってきて。」
「あ、私は野菜ジュースをお願い。」
「ミルファちゃん。たとえばあなたは今日の朝、貴明さんに会って何をしましたか。」
「抱きついてー胸をこすりつけながらおはよーっていったよ。」
「犯罪です。」
「いいじゃない。あたしは法律なんかには縛られないの。それにダーリンは嫌がってないんだし。」
「貴明さん本人についてだけではありません。あなたは貴明さんについては周りが見えなくなります。
そもそも人の倫理によって極力抑えられている社会の不確定要素に対しても、
倫理から見て未完成で不確定要素だらけの私たちは、不確定要素を励起しかねないんです。
不確定要素の塊が行動して起こるデメリットが想像できないわけではないでしょう。」
「それは詭弁ではないの?秩序は今もって人によって完成されてない。
倫理観の"少しの違い"がその中で大きな破綻を招くとは思えないよ。」
「保たれない秩序は大衆がその傾向をもって今現在を形成しているというのは否定しません。
ですが、大衆において著しく平均から外れている倫理観を持つ存在がその秩序の変化を大きくしているのは事実だと思うのです。
私たちはその外れた存在になるために作られたと思うのですか?
"少しの違い"で済まされる程度ではないのです。
意向を変えないというのなら…」
「なあ。貴明。」
「ん?」
「人間って何でいるんだろうな。」
「いるためにいる。っていうのはどうだ。」
「意味の言及でなく理由の言及か。」
「意味が生成されるのは認知するからこそだろう。唯名論的解釈はあんまり好きじゃないけど、
これにおいては的を射ているとおもうよ。」
「悪くないな。でも俺がつなげたいのはその方向の話じゃないんだ。」
「なんのことだ?」
「生殖だよ。」
「今日は話が下品な方向にかなり飛んでるな。いつもなら恋愛ブルジョアとか叫んでるだけなのに。」
「恋愛ブルジョアめ。
まぁ、それはいい。恋愛ブルジョアであるお前にはそんな提言をする余裕だらけかもしれないけどな、
俺は違うんだよ!くそ!何で違うんだよ!」
「自分で言ったことに切れるなよ…」
「生殖は人がいるための意義なのか。」
「そりゃ、生殖が無きゃ存在し得ないからな。」
「そうじゃねぇよ。個として人が存在するために雌雄で生殖を行う意義があるのか。」
「アイデンティティの誇示に役立つことは無いだろうな。」
「でも、抽象的になるが、愛はアイデンティティの誇示に含まれる要素だと思わないか。」
「何が言いたい。」
「これにこの写真に見覚えは無いか。」
「!?」
「意向を変えないというのなら」
イルファがミルファの胸倉をつかむ。
いや、つかみそこねそのまま姿勢を低くし足払いに移行する。
ミルファはこれを回避。
「ちょっ。情報に干渉するつもり?表層だけ書き換えてもどうせ芯の部分から侵食されるから意味無いでしょ。」
「だとしてもです。あなたのためです。無線だと来栖川の防壁に阻まれますが…」
飛翔。だが捕らえられない。
「有線なら」
「「うっ」」
2人は触れていない
「個が特定されていればそれれいい。」
シルファが無線で来栖川の防壁を越え、2人の制御を奪う。
「世界の倫理とか秩序とかろうれもいい」
2人の行動規定に干渉する。
「色恋がらみでそんないい争いしてたらセカイ系的な崩壊を起こしてしまう」
書き換える。完了。
「私が私であればそれぴゃっ」
イルファが自分自身の制御を回復し、シルファと自分をケーブルでつなぐ。
シルファの情報には干渉できないしする必要も無いのでスリープに移行させる。
結果的に、シルファによりイルファの思惑は達成された。
「もう。ミルファちゃんに対する干渉に規制がかかってしまいました。
瑠璃様への行動は特にいじられていないので、今のところそんなに悪い状況ではないですね。
お疲れ様です。シルファちゃん。」
どこから用意したのか、冷蔵庫のダンボール。そして以下略
「ネットは狭小ですわ。」
--
以上。性格・世界改変でお送りしました。
し
ADコンプ後、怖くてSSみれなくなった俺がカキコ。
>323からの奴の続きです
★ネタバレ注意★です
「行ってきます」
玄関に車椅子を降ろして、私は家族に声を掛けた。
……前回と同じフリだけど、今日は学校。そいでもって。
ぺた。ぺた。ぺた。こそーっ。
私の声に反応して、こっそり階段を降りてくる足音は、言うまでもなく我が姉、小牧愛佳。
「……じろ。」
「うきゅぅっ!」
が、物騒な目つきで睨んでやると、弾かれたように二階に引っ込む。
「ふんっ」
我ながら行儀悪く鼻を鳴らして、私は家を出た。
「うぅぅ、郁乃ぉ……」
窓から小さく覗いた顔から、そんな声が出たかどうかは知ったこっちゃない。
私と姉は、ただいま絶賛絶交中なのだ。
原因は、先週の日曜日の続き。
「なんで、あそこのメロンパンが冷えても美味しいって知ってるの?」
「え゛っ」
「それに、なんであそこにあんなタイミングで居たのかしら?」
「う゛っ」
二連発で硬直する姉。その反応で、私はほぼ事実を推察する。
「い、いやそれはその、たまたま、食べる機会があって、お散歩を、偶然、メロンパン、断じてあたしは、美味しかったけど、あのっ」
「……お姉ちゃん、あたしの事つけてたわね」
「ひぃっ!」
目を白黒させても、私の目は誤魔化せない。チャット仲間に探偵のふたつ名で呼ばれる私をなめるな。
そして、それは今日だけじゃない。
「お姉ちゃんは、いつも私が坂道に撃退され哀しく帰った後で、一人であのメロンパンを買って食べてたんだっ!」
「ぴひゃぅっ! ……ご、ごめんなさぁぃ……」
「許すかっ!」
判決。被告人小牧愛佳を、クチきいてあげないぞ1週間の刑に処す。
それで、今日が3日目。
冷静に考えれば、私も甘党の姉に販売車の事を黙っていたのだから偉そうな事は言えないのだが、
「毎回、郁乃と食べようと思っておみやげ用を買ってたんだよ、でも……」
"私に気を遣って”けっきょく一人で食べていたという事実も発覚したことだし、量刑は妥当でしょ。
そういうことで、学校でも家でも私と接触しようとウロウロしている姉の事は放置として、放課後。
「さて……」
この件に関してもうひとつ、私には課題があった。
「今日こそは、奴に謝ろう」
奴とは当然、例の男の子、河野貴明。
「メロンパンのお礼も言わないと」
とかいいつつ、自分の教室で車椅子にぼーっとしている私。
どうも踏ん切りがついてない。二年生の、しかも姉のいる教室に行くのが気後れる。
あと、
「……ったく」
あの、人を馬鹿にしてるのかと思うくらいお人好しな笑顔が、どうも私は苦手っぽい気がする。
「まず呼び出して、いきなり謝るか、それとも様子を聞くか……」
頭に浮かんだ仮想河野貴明相手にシミュレーションしながら、ともかく廊下に出た途端。
「あっ、丁度よかった」
「ふえっ!?」
目の前に、本物の奴がいた。
「な、なんで此処にいんのよ!」
謝ろうとか、お礼を言おうとか思ってたのが吹っ飛んで、まず文句。
「なんでって、そりゃあ、郁乃ちゃんに用事があってさ」
い、郁乃“ちゃん”?
「あんたにちゃん付けされる、そもそも名前で呼ばれる言われはないっ!」
「いや、小牧だと小牧と区別つかないしさ。呼び捨ての方がいい?」
「もっと嫌だっ!」
ぜーぜー。
「……まあ、いいわ」
ちょっと落ち着こう。本題を忘れて脊髄反射なんて、何やってんだろ、私。
「それで、何の用事?」
「うん、実はね」
やや言い淀んでから、奴は頭の後ろに右手を当てる。顔には例の曖昧な笑み。
「郁乃ちゃん、いま小牧とケンカしてるでしょ?」
「ぶっ!」
落ち着こうなんて束の間。突然プライベートに侵入された気持ちで、また私は吹き出す。
「なんでそんなこと知ってんのよ!」
こいつは姉と、そんなに親しいのか?
「あーやっぱりそうか。いや、実はなんか今週、小牧が腑抜けちゃっててさあ」
当てた右手でそのまま頭を掻きながら。
「休み時間も、いつもは用事で飛び回ってるのに机でぐったりして、時々「いくのぉ……」って」
「変な声真似すんなっ!」
背筋に鳥肌立ったでしょうが。
「ごめん」
奴はぺこっと頭を下げる。ふむ、素直でよろし……くはないな別に。
「で、ウチのクラスは色々と小牧に頼ってるから、何かと仕事が滞って」
「それは、あんた達の問題でしょ?」
姉が“委員長”のふたつ名で学年問わずの雑用係と化しているのは知っているが、歓迎すべきものでもない。
「そうだけど、でも困ってるのは事実だし、それでさっき対策会議が」
んなこと、してる暇で姉に押しつけてた仕事をすればいいのに。
「結果、みんなの話を総合すると妹とクチを聞いてもらえないのが原因らしいって事に」
こら。姉のクラスで、私の存在はどういう評価なんだ?
「だからお願い。小牧と、仲直りしてあげてくれないか?」
6分後。
私と奴−河野貴明−は、図書室に来ていた。
「なんであんたにそんなこと頼まれなきゃいけないのよ」
というわけで、私も素直に奴に言うことを聞いたわけではない。
が。
「筋合いがないのは分かってるって。俺もクラスの連中に頼まれたんだよ」
弱った表情で腰を低くする、やっぱり人は好いのかね。
「話の流れで、俺と小牧の妹、郁乃ちゃんね、と面識あるのがバレてさあ」
げ。まさかメロンパンの話も喋ったんじゃないだろうな。
「あ、余計な話はしてないから」
私の話題を出すこと自体が余計なんだけど、それとも脅しのつもりか、この優男が。
「な、頼むよ、俺と2-A一同を助けると思ってさ」
手を合わせて、今度は拝み倒された上。
「それにやっぱり、ああいう小牧を見てると可哀想だし」
ぐ。最後、ちょっと痛いとこをつかれた。
私の機嫌を気にして凹んでる姉の姿というのは、想像できすぎて困る。
「ったく、何やってんだか」
……もとから、怒る理由があってケンカしてるわけでもないしな。
「わかったわ、話してみる」
色々絡めた説得に屈したと思われるのは癪だが、私は頷いた。
「あ、いいの?」
ぱっと明るい笑顔になる河野貴明。やけに笑顔のバラエティがある奴だ。
「サンキュ。おし、じゃあ、行こうか」
「行こうかって、ちょっと、押すな、大体そっちは2-Aと逆、いや、そもそも」
「さっきよろよろと教室を出て行ったから、たぶん図書室だよ」
「だから今すぐなんてあたしは、おい、こら、人の話を聞けーっ!」
奴は、人の話を聞かなかった。
……一瞬でも、人が好いなんて思うんじゃなかったわ。
「それで、いないじゃない?」
半分自分で、半分奴に背中ならぬ車椅子を押されてやってきた図書室に、姉の姿はなかった。
「うーん、此処だと思ったんだけどなあ」
押してきた方は、普段は校舎中を飛び回ってるけどさ、などと言い訳じみた独り言をつぶやいて腕組み。
「アテがないなら帰るわよ。後でも話はできるんだから」
とか言いつつ、実は私の方にはアテがある。
この学校に転入して最初に姉が案内してくれた、いわば姉の秘密基地があるのだ。
なんか癪だから奴には教えてやらないが、場所はこのすぐ近く。
秘密といっても図書委員なら知ってるだろう、図書室の隣に、
「あ、書庫かな?」
そう、普段使わない本をしまう書庫があって……へ?
「な、なんであんたが書庫のこと知ってるのよ」
「前に小牧の作業を手伝ったことがあったから、思い出したよ、よく来てるって言ってた」
「そ、そう……」
「そうって、郁乃ちゃんも知ってたんなら、って、あらら?」
私は奴の言を待たずに、するすると車椅子を書庫に続くドアに進めた。
図書委員でもないこいつが姉の隠れ家を知っていることに、いささか動揺した自分が情けなかった。
それはそうと、書庫。
「あ、居た」
姉は、書庫の奥の机に突っ伏していた。
「泣いてるのかな?」
「まさか」
まさかよね、喧嘩して3日目だし、家では弱々だけど、普通に学校にも行ってるし。
そうは思いつつ、私は不安にドキドキしながら近寄って様子を。
「くぅ……わーい、パンケーキぃ……すぴゅう」
寝てやがった。いや、別にいいのよ私は。むしろホッとしたわ、元気そうで。
「ということだから、帰る」
「待て待て、全然いいと思ってないだろ、それ」
地の文を読むな。
「んなこと言われたって、これをどうしろってのよ」
すやすやとお休みの我が姉を顎で指すと、奴も困る。
「あはは……」
あんたがどう誤魔化し笑いを浮かべたって、この安らかな寝顔は……ん?
「うぅ、いくのぉ」
気が付けば寝顔が安らかでなくなっていた。
「ごめんなさぁい……もうしません……」
ぐすん、と泣き声までくっついた寝言。
「ほ、ほら、謝ってるよ小牧」
「寝言相手にどうしろってのよ」
でも、可哀想かなやっぱり。
「……このケーキあげるからぁ……ぜんぶ……」
食い物に換算するのもなんだけど、起こして赦してあげようかな……
「……やっぱり半分こぉ」
「帰る」
「いやいやいや」
くるっと車椅子を回した私に、慌ててすがりつく河野貴明。
止めるな。これで許してやる気になる妹なんて。
「……いいの? ありがとぉ……」
都合のいい夢見てやがるなぁ。しかも寝言多すぎるわお姉ちゃん。
「ふん、まあ、いい夢見たらいいわ」
私は再びハンドリムに手を掛けて、
「いくのぉ、だいすきぃ」
「っ!」
ガクッとつんのめった。な、なに言い出すのよこの姉は。
ガタ。
あたた、ほんとに音出しちゃったわ。
「ふえっ?」
パチリと目が開いて、がばっと身を起こした姉。
「あ、あれ、あれ? ここはだれわたしはどこ? ……いくの?」
寝ぼけてきょろきょろと左右を見て、正面の私に気づく。
「あ、う、あ、え」
酸欠金魚でクチをパクパク。
「……」
私は無反応。視線の温度は、7℃くらい。
「しゅーん」
やがて姉は、下を向いて視線をそらす。
両手の指を互いにくっつけて、いじいじポーズ。
「ケーキ半分じゃ都合いいよね……」
小さい声で、夢の続きか交渉条件を呟いているようだ。
はあっ。
私は大袈裟に溜息をついて、俯く姉に口を開く。
「金平糖一瓶」
「えっ?」
はたと上がる顔。
「机の二段目に入ってるでしょ。それ、もちろん、満タンよね」
解除条件。
「……」
じわーっと、姉の顔に理解の色が広がる。
「いくのーっ、ありがとぉ〜っ!」
「のわわわわ抱きつくなっ!」
机を飛び越えそうな勢いで飛びついてきた姉に顔をしかめながらも、私の気分は悪くなかった。
「ところで、あの金平糖っておじいちゃんの家から貰ったけっこう貴重品なんだけど、半分じゃダメ?」
「一粒残さずよこせ、今すぐ」
半分こ支援
ザーッと部屋中に響く心地良い音。私は裸で、全身の皮膚を流れる刺激に身を任せる。
……お風呂よお風呂。シャワー浴びてるだけ。
「いくの、いる?」
と、脱衣所から、姉が声を掛けてきた。
「いる? って、みりゃ分かるでしょ」
もちろん、姉が話を始める時の枕言葉だとは知っているけどさ。
「うん、そうだね」
それでも姉は律儀に返答して、そしてガラガラガラと扉が開く音。
「ちょっと、何よ、寒いから締めて」
がらがらがら。
文句を言うと、姉はすぐに扉を閉めた。
自分も中に入って。
「えへへ、お背中お流しします♪」
おい。
その10分後。ちゃぽーん、と、天井から雫が垂れる。
「……狭い」
うちの湯舟は普通の家庭用一人用。比較的小柄でも、高校生二人が同時に入るようにはできてない。
「あはは、久しぶりだねえ、いっしょにお風呂なんて」
私の抵抗を押し切って押し掛けた癖に、姉は自然にそうなったかのように喋る。
普段は気弱なのに、突如ときどき強引になるのよね、この人。
「お姉ちゃん、太った?」
「あうっ、そ、そそそ、そんなことは……郁乃が痩せてるんだよぉ」
ちょっと虐めてやろうかと思ったが、体型的な話題は自分にも楽しくないのでやめる。
「で、何の用?」
「うん……あのね……郁乃は……あのね」
本題に入ると、姉はモジモジ−くっついてるから身体の動きがよくわかる−しながら、とても姉らしからぬ台詞を吐いた。
「河野くんって、どう思う?」
「うげっ、げほげほっ」
お湯飲んだ。
「だ、だいじょうぶ郁乃っ?」
「大丈夫だけど、ったく、突然なにを言うのよ」
「べ、べつに変な意味じゃないよっ。ただ、今日いっしょに書庫に来たから」
「頼まれたんだから当然じゃない」
「うん、でも、仲良さそうだったよね」
「どこがっ!」
回想開始。
「良かったね、仲直りできて」
「あ、あれ、河野くん?」
私に散々抱きついてから第三者の存在に気がついた姉は、自分の行為を恥ずかしがったり事情を説明されて納得したり。
「そうなんだ。ありがとうね、気を遣ってくれて」
「いや、どっちかっつーと自分の利害関係だから……」
「そうよ。こいつにお礼を言う必要はないわ」
赦してあげたのは私だもん。
「こら、またそういうこと言うっ」
仲直りした途端に普通だね、姉。
しかし、ま、噛みつく必要はないか、一応先輩なんだし。
……ていうか、謝るつもりだったんだっけ。
「それはそうと、この間……なによ? 人の格好をじろじろ見て」
でも、当所の目的を果たそうと顔を向けたら、なんかニヤニヤした視線が目に入って。
「いや、本当に女の子だったんだなと」
「当たり前だっ!」
回想終了。
うん。仲良くないわよね、別に。
しし
「お姉ちゃんこそ、あいつと何かあるの?」
「ふえっ?」
逆にちょっと気になっている事を聞いてみる。
「だって書庫の事も知ってたし、珍しいじゃない、男と普通に会話してるなんて」
「お、おとこって、そんなんじゃないってばぁ!」
わたふた。うわ、しぶきが顔に跳ねた。
「お風呂で暴れないでよ」
「ご、ごめん、でも、ホントに偶然手伝ってくれただけだし、只のクラスメートだし……ぶくぶく」
最後のは、タオルを口に当てて湯舟に沈む効果音。
「喋りやすいけどねえ河野くんとは」
それが珍しいっつってんのよこの男性恐怖症が。
「あんまり男っぽくないっていうのかなぁ」
「かもね。私はあんま好きじゃないけど、ああいう、なよなよしたタイプは」
「あ、そうなんだ」
私の言葉に、なんだかホッとしたような表情を見せる姉。
む。なにか回路が繋がったぞ。
曰く。姉は奴と話をし易い。
曰く。姉は私と奴との仲を気にしている。
曰く。姉は奴が私のタイプじゃないと聞いてホッとした。
ふむ、そういうことか。うーん、奴と姉、ねえ。
似合わないとも思わないし、奥手な姉のたぶん初恋なら応援してあげたいけど、それにしても、奴が姉にふさわしい相手かどうかよね。ウブな姉を騙そうとする輩かも知れないし。
……考えてても仕方ないわね。
ここは行動あるのみ。さっそく明日から調査開始! 気合を入れて頬を一発!
「うきゃっ、しぶきが跳ねたよぉっ!」
「あ、ごめん」
待ってねお姉ちゃん。奴が姉の相手に足る男かどうか、私がばっちりリサーチしてあげるから。
以上です。支援ありがとうございました。
次回、第3話「車椅子探偵いくのん」
投下乙。
会話の再現度が高いから安心して読めるな。次回も楽しみだ。
容量的にそろそろ次スレかね。
投下乙。気持ちいいSSですね。
そして雰囲気改善乙。
電波作者もこういうの見習えばいいのに。
電波作者って誰よ
>>667 乙です。
ADやって、郁乃SSは読みたくなっていたので、よかったっすよ。
なんつーか、どの作品でも本編の展開に不満があるとSS熱は上がるなw
>>645-651 ネタとしては面白いと思う
元ネタの衒学ごっこっぽさが良く出てる気がするし
もうちょっと時間かけたほうがいいよね。
6/7の最後の雄二の台詞に誤字あるし。
試みとしてはいいかもだが世界観に合わない気がする
まぁ俺の意見だが
あれだと無駄に何もおこらなそうだな
無駄こそギャルゲの本懐だと思うし、東鳩を東鳩たらしめるものだと
まぁこの辺は各個人の見解やらとらえ方があるから
俺が言うことでもないよな
書き手さんの邪魔しないよう引っ込みます
貴明と雄二のキャラが電脳化でもしとるのかという口調は笑えた
もともと、どうでもいい事をごちゃごちゃと書くギャグって言うテーマではじめたんだけど、
話の筋がないのはなんかあれだなぁとおもってつけたら、
ギャグ成分少なめになっちゃったという感じなのよ。
軽い筋にするにしても、ごちゃごちゃ書くと重くなる傾向にあるから
修行しないと難しそうですね。
次ぎ書くとしたら、人生3つ目の創作にしてネタ切れになりそうだから、
みたくない人の心配もなくなるかもしれませんね。
あと、このスレに対する意見なんだけども、もっと荒れたり、統制の取れない喧々諤々の言い争いがあったり、
整理されていないスレが乱立したりしたほうがいいんじゃないかなぁとおもうのよ。
ささらに喋らせたように、全部発散しちゃうと何もなくなっちゃうからね。
たとえ一部が機能しないほど荒らされても全体が活性化されてたら、
「SSを書く」「読む」「文句を言う」「言い訳をする」とか、ここに求める機能は保持できるしね。
ちょっと違うけどリトバススレが見た目悪い空気でないというのもこれに近いとおもうのよ。
読んでくれたり反応してくれてる人ありがとう。
要点を三行でまとめてくれw
676は自分で自分の書いた物を評したの?
感覚で書いてるからまとめるの下手なのよ…そもそも伝えられなければ意味がないんだけどね…
ギャグって難しいね。
反応が無ければチラシの裏に書いてるのと変わらないんだから、
もっとみんなアクティブにいこうぜ!むしろスレ乱立しようぜ!
676は私ですよ。何をするにしても常に後から同じ事を思う。改善されないけどね。明日早いので寝ますね。
スレ乱立はやめてくれ
ここは東鳩板じゃないんだ
_,、z=;'"´ ̄`~"ヽ、
_,ィニ=ュ、( `"'''‐、, ヽ、
,r゙ ,ィ'゙ 、 、 ヽ、. ゙ヽ、 \
/ / .. 、ヾ、ヽ、,,ゞr,:.、:..゙'ヽ、゙ヘ、_
j :: ! i:: |: } l i゙lヽイ、;r‐t、;.ヾ;:..ヾ゙'、ヘ、
!:.::l: }:: :|:_,、l-i:|゙l} ゙'i, ゙'i;::゙'i,ヾ、;ヾ、ヽゝ^
゙!;::|: ::l: ,r'i゙::;j,rtlj '゙ ゙ー'゙ iノ゙ヽ、゙'j
゙i;::l: ::i:゙ ::|::i゙:::゙'ヘ ''゙ j:: }
゙i;:!:.::|::.:j/i{ヾ;;;;/ `, /:;ノ 「…今スレは出番が多かったから疲れた」
゙|::::l;::::;::ヾt、_''" ,ィ゙/"~゙''''‐ュ,
!:;j::;::}Vヘ;:::ヾ;"iヾ''''"´ i、゙'i、 、, ゙ヽ,
j/|/ミ'、;:::::ヾ、;:::、{ ,}―‐'''l,ヘ\ ヽ、! l i'、
"゙ヽ`゙''ー-‐‐ン''<゙ヽ、 ゙i ~゙l, i, ゙ヽ!! ヽ,
゙ヾ、;;;;;:r'゙'-<゙;"''‐゙、ヾ、 ゙ヽ!, ゙{ _ \
i:::::::::::::゙ヾ、;;:.゙ミヾ'ヽ,゚ヾ;t、.,_::゙l ゙ ニ゙=-t
!::::::''゙"':::::;::゙ヾ;:゙ヾ、 }, 。i,゙ヾ;`゙i::.... '''''"`'ヽ,
l:::: `'‐=!、゙} j ゙i, .゙i;:::'゙ヾ;:"''' ゙ヽ、
ヾ;: ゙i;;::}:::..};::゚:ヽ;::::;ヘ;::::.. `ヽ、
ヾ;. 、,_~、;:::i{:: .。゙、': :lヾ;::::.. _,,゙ヽ
\ ゙''' "'''':::::‐--゙ヾl;:;;:::;::。i::゙ヽ"'=、;;:.. : : r'" ,゙>}___,,._
`i、 `''ー゙ーュ;:::;!、}/:i'" ゙ヾ、;_;{;;::.l´ ,_ヽ_':、i,
゙iヽ、 ‐'" ̄ ̄"`゙ヾ<,,_ `^i、 _ャ-‐'=゙ー゙ュ_
゙i;::゙ヽ、  ̄`ヘ、,..、‐'´ ‐,二ニ-'
ヽ;:::':;`ヽ、_ ..  ̄i, ゙i ,二ニ''=
ヾ;::ヾ;::::`゙ヾ、;;::::::::::::.... ...:::};;;;ノ―'"´
いくのんお疲れさま
,、==-,.、 -- 、.. -- 、
/ __/-‐`:.:.:`~:.:.:.:.‐:`ヽ
,r/´: . /: . /: . : . : 、: . :`ヾrz、
r‐r=7ーァ彡ソ:.:l:.:.:.:.:.:.ハ:.:'; .ヽ:.:.ヽヘ そろそろ梅の季節であります!
/ /{ {{ ´_r_´:;l.:‐+.、:..: /- l:、!:.:.:';:.ヾ: .:ヽ
/ \__>r:.T|ハ!ヽ| ヽノ ソハ:.:.:l:.:.:}:.:.:.:l
/ _/:l:.l!:.:l:| z==` ==ミ、j:ノ:.:/:.:.:.:.|
/ /ハ:.:.:|ヽ(.l::! 、 ノィ/|:.:.:.:!:|
/ / `;:ト {:人 「_ フ /:.:リ |::::.バ
{ ノノヘ、 ヾ ヾドヽ、_ _, イフジ j!ノ
\ ヾー--r-、 ゙} ~´ {=、 ´ ´
ヽ、 ヘ ト| l  ̄{フ マヽ_
`丶 | ゙、'、 |r===、/ `ヽ
`丶、 l トヽ `、 / /ハ
ヾl!/ `ヽ、ヽ/___ ./l !
{__/ ̄テ{]≦-、 Y'´ |
< ´_ハ ヽ \ } |
lト、 /´/:;|: lヽ 〉' |
//`ー`´ | |_ノ___r{:. |
〈」‐=、__ l| ==、 ハ |
「梅だと?」
「そうであります。」
「花は3月初頭だし実が熟すのは6月。ずれてる。」
「でも梅の季節であります!」
「あーもう。わかったから。つかれた。寝る。次は私の出番休みでね。」
「お休みであります。ベットまで押していくであります。
と思ったけどちょっとお散歩に行くであります。」
「ちょっ。おっ。そんなに早く押すなぁ。」
「急がないと日が暮れるであります。」
「わかったから。押してもいいから。でも介護には押し方の手順ってもんがあんのよ。」
「手順でありますか。」
声をかける必要性、速度、勾配の時の注意等々を説明する。
「わかったであります。」
「って。だから突然押すなぁ〜!」
「で、結局どこ行くのよ。」
「内緒であります。」
「はぁ。」
「(寝ないとマジできついというのに、もうちょっと考えて動けんのかこいつは。)」
などと考えながらも、春休み中ほとんど家にいたため、
久しぶりの外気は少し気分がよかった。
眠いのは変わらなかったが。
「ついたであります。」
「なにこれ。」
「桜であります。」
「へー。これだったんだ。桜。」
「(貴明とお姉ちゃんが苦労したのもわからなくもないわね。)」
せっかく目が見えるのだから叶えてやりたい。
そんなことを考えていたのだろう。
しかも日本人の多くが楽しみにする美しい花を、
期待していたのだから落胆させるのはかわいそうだ。
「で、結局どこら辺が梅なわけ。」
「この文章であります。」
「ちなみに、桜の下に埋まってるであります。大阪の梅田は埋め田からきたであります。」
「あー。もういい。縁起が悪い。っていうかもう帰るわよ。寒いし。」
「了解であります。」
夕日に向かって爆走する車椅子が、長く影を引いていた。
>686-690
乙乙
いくのんとこのみはいいコンビになると思うのでつ
そしてこのみといくのんのラブラブぶりに嫉妬したよっちゃるが
このみを奪い返そうとして百合百合な三角関係にw
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/ へ
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ウイーン / / \ .\
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/ (゚Д゚ ) | |< 埋まって良し!
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| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ギコ建設 .|
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{◎三三三三三三三三三三三三◎}
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| 次スレではメイドロボハーレム書いてくれよ〜〜
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∨ | お前が書け!!
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日 ▽ U 凸 Å ∨ <> § ‖
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V ∩ [] 目 (゚Д゚;) ▲ 8 ‖ ___
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( ,,)日. ミ ,,ミ∇ Y ( ) ■( ) ロ ( ) ∪ ( )_‖( )_b( )__
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\(___ノ 〜ミ,,,,,,,,,ミ ┌ ノ (__)〜 | |___| ┌ ノ ┌ ノ (__)〜
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うめ
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{ :|. |_,レ'イ¨´ \ \
〉レ'´ \ ヽ. ヽ、
. / / / ,' ト、ト、 ト、 \ * ハ /∧
{ / / j |从ハ. 廴\_\/ :| //}|lハ
∨ :i :| :/{ `ヽ. ,jr=y、 ヽ、l // リ |::l',
|| | *.:レ'ヽト " |トrlリ》 }トr‐く:/:l:.|::|ハ
|| | :ト{r=k、 jr少 リ }l 〉.:.リ::l::∧
ヽ. ヽ l八从ハ '''' r‐/:.:./::::l::.:.∧
V}/\!:.:.} レ'' ’ /⌒ヽ ,イ:/:./:./:::::/:}`Y:ヘ
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,.-‐く :.:.:/::/:.:.}> 、 `¨´ / _,|_//:/::/ . /::V:ヽ\
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/ /, '´ l/ l,' ! 」/::::::/l 八 {八 廴,/ 八 ̄\
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