葉鍵キャラが殺しあう葉鍵ロワイアルの作品投稿専用スレです。
・書き手ルール
・このリレー小説の大きな特徴は、書き手は「どの話の続きを書いてもいい」ことです。
納得できない作品があったらNGを出すのではなく、自分が納得できる展開を書いてください。
あなたの書いた作品のほうが面白ければあなたの書いた作品の続きを誰かが書いてくれます。
そうでなければ、放置されっぱなしです。適者生存。
・上記のルールのため、自分が投稿する作品にはどの作品の続きなのかを明記してください。
その際には自分が書いたキャラの直前の作品ではなく、 自分が投稿したいルートに投稿された最後の作品を書くこと。
これは新たに物語を分岐させない場合でも同様です。(もし、複数のルートが同時に成立した場合、読み手の方々にわかりやすくするため)
・上記のルールのため、自分が投稿する作品には必ず題名を明記してください。
・NGはありませんが、意図的にルートを分ける時以外は極力、前後の状況と矛盾しないようにしてください。
・書き手さんは投稿した作品の最後に出演したキャラの状況を明記してください。
書く内容は時間、場所、持ち物、肉体的・精神的状況。
例 古河渚
【時間:午後2時ごろ】
【場所:ホテル跡(E-04)】
【持ち物:デリンジャー(銃弾装填済み)、予備弾丸×9、水・食料一日分】
【状況:ひざに擦り傷(血は止まってる)、極度の疲労】
2 :
参加者名簿&会場:2006/10/15(日) 21:48:29 ID:/nJk5kMe0
1相沢祐一 2藍原瑞穂 3朝霧麻亜子 4天沢郁未 5天野美汐 6一ノ瀬ことみ
7伊吹公子 8伊吹風子 9イルファ 10エディ 11太田香奈子 12岡崎朋也
13岡崎直幸 14緒方英二 15緒方理奈 16折原浩平 17柏木梓 18柏木楓
19柏木耕一 20柏木千鶴 21柏木初音 22梶原夕菜 23鹿沼葉子 24神尾晴子
25神尾観鈴 26神岸あかり 27河島はるか 28川澄舞 29川名みさき 30北川潤
31霧島佳乃 32霧島聖 33草壁優季 34久寿川ささら 35国崎往人 36倉田佐祐理
37来栖川綾香 38来栖川芹香 39向坂環 40向坂雄二 41上月澪 42河野貴明
43幸村俊夫 44小牧郁乃 45小牧愛佳 46坂上智代 47相良美佐枝 48笹森花梨
49佐藤雅史 50里村茜 51澤倉美咲 52沢渡真琴 53椎名繭 54篠塚弥生
55少年 56新城沙織 57春原芽衣 58春原陽平 59住井護 60セリオ
61醍醐 62高槻 63篁 64橘敬介 65立田七海 66月島拓也
67月島瑠璃子 68月宮あゆ 69遠野美凪 70十波由真 71長岡志保 72長瀬源蔵
73長瀬祐介 74長森瑞佳 75名倉由依 76名倉友里 77那須宗一 78七瀬彰
79七瀬留美 80仁科りえ 81柊勝平 82氷上シュン 83雛山理緒 84姫川琴音
85姫百合珊瑚 86姫百合瑠璃87広瀬真希 88藤井冬弥 89藤田浩之 90藤林杏
91藤林椋 92伏見ゆかり 93古河秋生 94古河早苗95古河渚 96保科智子
97松原葵 98マルチ 99美坂香里 100美坂栞 101みちる 102観月マナ
103水瀬秋子 104水瀬名雪 105巳間晴香 106巳間良祐 107宮内レミィ 108宮沢有紀寧
109深山雪見 110森川由綺 111柳川祐也 112山田ミチル 113湯浅皐月 114柚木詩子
115柚原このみ 116柚原春夏 117吉岡チエ 118芳野祐介 119リサ=ヴィクセン 120ルーシー・マリア・ミソラ
会場:沖木島(原作バトルロワイアルの舞台)
http://www.geocities.jp/hr2_routes/map3.jpg
3 :
ゲームルール:2006/10/15(日) 21:49:17 ID:/nJk5kMe0
【基本ルール】
・全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
・生き残った一人だけが、帰ることができる。
・プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
【スタート時の持ち物】
・プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収される。
ただし義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。また、衣服は持ち込みを許される。
・ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給される。以下の物は「デイパック」に詰められ支給される。
中身は「地図」「コンパス」「懐中電灯」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「ランダムアイテム」
【首輪について】
・ゲーム開始前からプレイヤーは全員、首輪を填められている。
・開催者側は、いつでも自由に首輪を爆発させることができる。
・この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
・24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。
・「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい(無理やり取り去ろうとすると、首輪が自動的に爆発する)。
・会場である孤島から脱出すると爆発する。
・プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
【能力制限】
・特殊な能力を持つキャラはその力を制限される。
>>1 _,...=.-、
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Tー、! ´ ,. ; 、 l_
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./:::::::::::::;ri'ヲ--、 `く _, '!:::::::::::::::::::::::
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l::::::::::::::::l 7´ト、. __〃!:::::::::::::::::::::::
.〉:::::::::::::;! /:::::i `  ̄ l::::::::::::::::::::::::
スレータ=テオッツ [Srata Teotts]
(1947〜 ブルガリア)
7 :
引き摺られた想い:2006/10/15(日) 22:02:37 ID:9eTjIWJi0
>>1 乙。助かったよ
んじゃ、続き投下します
またまた回避お願いします
8 :
引き摺られた想い:2006/10/15(日) 22:03:25 ID:9eTjIWJi0
「ん〜? それはゆっきーがやったことだろぅ? あたしは悪くないじゃんよ」
「ぬけ、ぬけと……っ。雪見になにを、したの?」
「ふぅ……チミも鈍感さんだな。見ての通りじゃないか。単純にけしかけただけさ、あたしにね。
キミ等は言わば……にゃは。謀らずとも火の粉で身を焦がす可哀想な参加者AとBってところでどうかな?」
悔しさと怒りをない交ぜにした感情を、この惨状に満足そうな笑みを浮かべる麻亜子に向ける。
警戒はしていたはずだ。
逃げているわりには何故か余裕があった態度や、人を困惑させるような言動。
全てが全て怪しさを体で表していたというのに、何故対処できなかったのか。
恐らくは晴香と綾香、二人の人格を正確に読み取られたせいだ。
今一歩の所で甘さを抜けきれない単純な綾香と、冷静なようで他人をつい思い遣ってしまう晴香。
だからこそ、漬け込まれたのか。
始めから余裕も猶予もあった麻亜子には、既に遭遇した時点で負けていたのだろう。
ならば、精一杯の強がりをこの憎き少女に浴びせ掛けてやる。
9 :
引き摺られた想い:2006/10/15(日) 22:04:20 ID:9eTjIWJi0
「―――ぅ、はっ、ぁ……。ふん、アンタ絶対……碌な死に方しないわよ。誰からも、省みることなく……寂しく無残に死んでいくといいわ……」
「まあねぇ。あたしみたいな人間だからこそ、最後は呆気なく死んでいくもんだよ。
いやしかし、最後に大きな花火を上げるのも乙ってもんだよなー」
「―――地獄に落ちろ……クソ餓鬼が」
「隠れざる真相発覚! 実はチミよりお姉さんなんだなこれが―――」
バシッと扇状に広げた鉄扇で、晴香の喉を一閃する。
切り裂かれた喉から冗談のように噴出する血液が、麻亜子の顔を汚していく。
麻亜子の勝ち誇ったような表情をボンヤリと眺めながら、晴香は重力に従って上体を仰向けにして倒れ伏す。
(―――こんな、奴に殺されるなんてね……。結局、郁未や由依にも会えず仕舞いか……)
もう痛みも感じない。
だんたんと視界が曖昧に霞んでいく。
気になることは沢山あった。
過酷な施設での仲間、危なっかしい梓のことや、今も奮闘しているであろう綾香のこと。
そして、義兄良祐のこと。
気になることは沢山あったが、それも果たせそうにない。
彼女は小さく息を付いて、目を閉じた。
****
「ちっ! この……っ」
「―――っ!?」
何度も揉み合いになりながらも、五体満足である綾香が有利なのは目に見えていた。
完全に主導権を握った綾香は、馬乗りに雪見の背へと圧し掛かり身体を押さえつける。
雪見の拳銃もすぐ傍に転がっているが、身動きが出来なければ回収にも当然行けない。
無茶苦茶に暴れまわる雪見を押さえつけるのも一苦労だ。
(どうにかして……どうにかして止めないと……!)
綾香は彼女を止めるための策を考える。
話し合いによる解決は既に不可能だろう。
雪見は何故か言葉を発せずに、獣の呻き声のような声しか口から出てこない。
まして、眼光が綾香へとまったく注がれていないのだ。
綾香の背後、晴香達がいる筈の場所を延々と睨みつけている。
完全に綾香は眼中にないのだ。
狙いは始めから晴香、もしくは麻亜子ということになる。
深山雪見の情報は晴香から聞いていた。
浩之達と一緒に行動していた者であるが、晴香との確執があったとは思えない。
ならば、麻亜子を追ってきたということになる。
結局は厄介ごとに巻き込まれ、そして、晴香の忠告を聞いておけばよかったと今更ながらに悔やまれる。
ともかくだ。
まずは彼女を何とかしないことには始まらない。
今のこの状態で無力化する方法は何か。
格闘技を嗜む綾香からしたら、考えてみると意外と多彩であった。
暴れる雪見の首へと腕を通して、がっちりとロックする。
前腕で頚動脈を圧迫して、雪見の意識を落とそうと試みるが、両の手を自由にさせたことが失敗だった。
雪見は絞まる首を何とかしようと目を走らせたとき、都合よく落ちていた手頃な木の枝を拾う。
綾香は首を絞めることに気を配られていたために、雪見が枝を折った音にも気がつかない。
一度技が入ってしまえば、それで試合終了なのだ。未だに殺し合いを履き違えていた綾香はまたも油断する。
そして、先端が鋭くなった枝を、おもむろに綾香の腕へと突き刺した。
「―――っぁ!? しま―――っ」
綾香の拘束が緩んだ隙に、雪見は振り切るようにして転がり、落ちた拳銃を手にする。
照準を綾香の肩越し、つまり晴香達がいる場所へと銃口を向けた。
雪見の切羽詰った瞳を見た瞬間、綾香は唐突に理解した。
彼女は全てを賭して、殺害の道を走ろうとしていることに。
無力化などという生半可な覚悟しか抱いていなかった自分とは、覚悟の程度が違う。
それでも綾香は立ち上がる。
「―――だからって……引いてやるわけにはいかないのよっ―――!!」
綾香とて決して譲ることはできないのだ。
ここで引いてしまうと、今も激痛で苦しんでいる晴香をも見捨てることになる。
そんなことは有り得る筈もなく、ましてそれを容認してしまうとゲームに乗った奴とどう違うというのか。
それだけは許せないし、それだけは納得できない。
自分が守るべきものは、何を持ってしても守り抜く。
新たな決意を今一度立て直し、綾香は拳銃を抜いて雪見へと反射的に発砲する。
ほい
回避
―――乾いた銃声は一発。
「―――ぅ」
「―――み、さき……ごめ―――」
胸を打ち抜かれた雪見はドサリと、俯つ伏せに倒れ伏す。
茫然と手に持つ拳銃を眺めていた綾香は、腰の力が抜けたようにペタンと座り込んだ。
たった引鉄を引くだけの行為に、フルマラソンをしたような疲れが吹き出してくる。
そして、のろのろと雪見の姿を目にしたとき、綾香の背中からぶわっと冷や汗が漏れ出した。
自分が行った現状を認識すると、体に震えが走り、それを押さえようと腕で体を抱く。
決意なんか立て直しちゃいなかった。その場の勢いで撃ってしまった事実は否めない。
人を一人殺した。人を殴るような感覚とはかけ離れ過ぎていた。
爽快感もない。残ったのは後味の悪い思いだけである。
「はっぁ、は、はぁ、……そ、そうだ、晴香は―――」
重傷を負った筈の晴香のことを急に思い立ち、震える膝に力を入れて立ち上がる。
雪見の対処で気が回っていなかったために、晴香とそれを任せた麻亜子の存在を確認しようと目を向けるも―――
「―――ねぇ、晴香はどう―――え?」
振り返った綾香の視界に飛び込んだものは、小さな血の池に沈む晴香の姿。
―――硬直する綾香。
口許がワナワナと震え、伝染したように体全体もブルリと震える。
気がつけば、一もなく飛び出していた。
「―――晴香っ!? ウソ、なんで!? 何この血……どいうこと、どういうことよっ!!」
転びそうになりながら駆け寄って、横たわる晴香の傍にへたり込む。
衣類や両手足に血がべっとりと付着するのも構わないで、晴香の身体を揺さぶった。
雪見を撃った時以上に顔を青褪めて、綾香は唖然と動きを止める。
理解に苦しんだ。
自分達は一体どういう経緯で、狂ってしまったのか。
晴香が撃たれたから、自分が雪見を撃ったのに。
晴香を撃った雪見は、確かに自分が殺してしまったのに。
「……どうして、あなた、が死んでるの……」
誰の目から見ても明らかだ。
ここまで血液を失った人間が、生きているはずもない。
ありえない。腹部を撃たれただけなのに、こんな短時間で人は死ぬものなのか。
おかしい。何かおかしい。
いや、何かではない。始めからおかしかったのだ。
島に連れてこられたことか。関西弁の女と環に会ったことか。晴香に接触したことか。小さな少女が来た時か。
ピクリと、綾香の口許が引き攣った。
「……え? あの子は……何処?」
何か忘れていると思っていたら、あの少女がいないではないか。
晴香を頼んだはずなのに、姿を消すとは無責任にも程がある。
怖くなって逃げたのかもしれないが、少しぐらい根性見せて晴香の傍に付いてくれたっていいのに。
それに晴香の支給品であるボウガンまで持っていくなんて、好奇心旺盛だ。
自分が必死になって雪見を抑えてたのに、あんまりではないか。
これだから、小さな子供は―――
「はは……そっか。そういうことか。―――アイツかぁ!!!!」
小さな子供が―――なんだ?
あれが子供? 皮被った畜生の間違いだろう。
腹部を撃たれただけであった晴香。なら喉にある傷は何だ。
無残に横にパックリと裂けた傷跡は何なのだ。
そもそもだ。雪見は誰を追っていたのだ。雪見の背の傷跡は何だ。
全部、全部全部―――
「……アイツの仕業か……。くっ、くく……あははははは―――っ!!」
周囲を憚らずに綾香は心底可笑しそうに笑う。
目元に涙を浮かべて、腹を抱えて尚も笑う。
完全に踊らされていたという訳だ。
綾香も晴香も雪見も。全員が麻亜子の傀儡となって掌でダンスをしていたのか。
もう笑うしかないだろう。
自分が万感の思いで決心したことも、それに伴って雪見を殺したことも、全てが全て無駄だったのだから。
「っく、はぁ、はぁ……ふふ。―――ああああぁぁ!!」
愉悦が収まると、今度は腸が煮えたぎってきた。
血が滲み出るほど握りこんだ拳を大地へと叩きつける。
何だこの屈辱感と留まることを知らない怨嗟の感情は。
―――許せない。
―――絶対に許せない。
ここまでコケにされたのも初めてだ。
もう我慢しない。躊躇しない。加減もしない。
麻亜子は殺す。四股は引き千切り、脳髄を引き摺り出して島中にぶちまけてやる。
それだけでは飽き足らない。麻亜子に知り合いがいたら、そいつ等も例外なく無残に殺す。
可能ならば、麻亜子の前で嬲り殺しにしてくれる。
脱出? 主催者への対抗手段? 全て知ったことか。
綾香には今、最優先事項で至高目的で最上級目標が存在している。
今この瞬間だけならば、主催者に感謝してやってもいい。
自分に復讐をする機会を与えてくれるのだから。
願わくば、勝手にゲームを終わらせてくれるなよ。
そして、自分に断りなく麻亜子を殺してくれるなよ。
「―――待ってなさいクソチビが……。絶対に生きていることを後悔させて殺してやるから……っ!!」
般若の形相で綾香は、麻亜子が逃げたであろう街道を進む。
どす黒く染まった彼女の思考が数時間前の情景と、ある女性との一つの約束を思い浮かべていた。
「ごめん環……。私もう止まれそうにない。止まるつもりもないから―――」
それは決別の言葉。
他は望まず、望ませず。自分の欲求に従うことを躊躇わない獣の姿。
彼女が嫌悪していた輩と、それは同じ穴の狢。
こうして、修羅の道へとまた一人足を踏み入れた。
****
綾香が姿を消して数分、二人の死体が転がるその場に、再び少女が現れた。
「灯台下暗しとはまさにこのことだねぇ。あんなに怒っちゃって、怖い怖い」
麻亜子は遠くになど離れておらず、晴香に止めを刺して直に近くの物陰に潜んでいたのだ。
不意打ちで綾香を仕留めても良かったのだが、何かと放し飼いにしたほうが面白そうだと思ったからである。
しかし、それも控え目にしなくてはならない。
逃がした獣にささらと貴明を万一にも噛ませる訳にはいかないのだ。
麻亜子の目的は、とにかく参加者の人数を減らし、二人を元いた街へと返すこと。それだけに尽きる。
間接的な雪見を含めれば、既に三人が麻亜子の手に掛かっていた。
マーダーとしては、今のところ優秀な殺害数なのではないか。
これからも、人を躊躇なく殺していくつもりだ。
人が死ねば、それだけで二人の生存率も向上するのだから、決して後戻りは出来ない。
こんなことしても、貴明やささらは満足なんかはしないだろう。逆に激怒するはずだ。
だが、それでもいい。
結局はこれも、二人に生きていて欲しいという自己満足な考えでしかないのだから。
ともかく、今回は危険な賭けでもあった。
三人を巻き込み、混乱に乗じて殺していくといった算段であったが、上手くいくかどうか悩んだものだ。
危険なリスクを背負ったのは他でもない、より強力な武器の入手がそもそもの目的である。
そして、それは果たされたといっていいだろう。
「むふふ。あやりゃんの奴め、怒りで我を忘れおってからに。殺した相手の武器ぐらい回収しておけばいいものを」
回避
終わりはまだか〜
麻亜子はご機嫌な様子で雪見の傍に転がった拳銃を拾う。
残弾数が残り僅かであったものの、使えるものは最大限活用すべきだ。
拳銃にボウガン。戦果は上々といえるだろう。
(豊作豊作。銃も手に入ったことだしぃ、あきりゃん達にお礼をしに行ってもいいけどなぁー)
数時間前、水瀬秋子(103)と上月澪(041)に煮え湯を飲まされたことは、未だに麻亜子は納得が出来ていない。
親切に送り出してくれた二人には勿論感謝をしているが、それとこれとは話が別だ。
襲撃という名の感謝の証を行動で示そうと思ってはいたが、それは止めることにする。
「な〜んか、あきりゃんは得体が知れないんだよなぁ……。華麗にスルーするほうが賢い生き方ってもんだよね」
どちらにしろ、平瀬村付近から離れようと思っていたのだ。
よっぽどのことが無い限り、再び巡り合うことはないだろう。
簡単に身支度をした麻亜子は、ふと無念の表情で朽ち果てた雪見を見詰めた。
「―――ゆっきー。キミの幼馴染はちゃんと生きているぞ。でもな、みさりゃんに出会ったらあたしは殺すからな。
恨みたければ存分に恨め。死んだら幾らでも復讐させてやるから、今は許せよ」
雪見の瞼をそっと閉じさせて、麻亜子は綾香とは正反対の方向へと悠々と歩き出す。
彼女を死なせたことに、微塵の後悔もないし、未練もない。
それが麻亜子の生き様で、この島での在り方だ。
貴明とささらを死んでも生かす。
それが、唯一無二の彼女の誓いだ。
『朝霧麻亜子(003)』
【時間:1日目午後6時30分頃】
【場所:G−03】
【所持品:SIG(P232)残弾数(4/7)・ボウガン・バタフライナイフ・投げナイフ・仕込み鉄扇・制服・支給品一式】
【状態:普通。着物を着衣(防弾性能あり)。貴明とささら以外の参加者の排除】
『来栖川綾香(037)』
【時間:1日目午後6時30分頃】
【場所:G−03】
【所持品:S&W M1076 残弾数(5/6)予備弾丸30・支給品一式】
【状態:興奮気味。腕を軽症。麻亜子と、それに関連する人物の殺害。次点で芹香を探す】
105 巳間晴香 【死亡】
109 深山雪見 【死亡】
長いこと失礼しました。
連投回避、感謝感謝です。
おつ〜
じゃあこれからじっくりみる〜
虐殺厨Bの最後連投回避
すでに終わってるしorz
鉈を構え、いつでも切り掛れるように体勢を低くし、鹿沼葉子は相棒を促す。
「挟み撃ちにしましょう。二対一なら、確実に勝てます」
天沢郁未も薙刀を構えつつコクリと頷き、二人が左右に分かれる。
「ちっ…テメェらも必死だな、まあ仕方ねぇか。生きるためだもんな」
古河秋生は銃を鉈を構えた少女の方へ向け、一瞬だけ視線を
横たわる愛妻へと向けると、再び「ちっ」と舌打ちして、向き直る。
娘と共に生き延びるためとは言え、コロシアイなんぞしたくねぇもんだ。
これがゾリオンだったりしたなら飛び上がるほど喜べるってもんだがなぁ。
まあ、愚痴ってたところで状況が良くなるわけじゃねぇ。
残弾は…残り3発。それぞれに1発ずつ当てたとして、遊べる弾は1発のみ。
しかも相手は女とはいえ2人がかりか…っち、とことん不利だな。
「はぁぁぁぁっ!!」
気合の声と共に、葉子が切り掛ってくる!
「あめぇぇぇぇっ!」
横っ飛びして葉子の袈裟切りを交わすと、すぐさま郁未の間隙が襲うっ…。
「ちっ」
ガキィィィィンッ!
与えられた愛銃の長い銃身で薙刀の一撃をいなすと、そのまま踏み込み…
ドゥッッ!
郁未の脇腹に膝を強く入れる!!
「ぐ…」
呻きながら倒れる郁未の死角から葉子が再び切り掛る!
「!?」
さすがに反応が遅れ、
ザシュウッ!!
左肩に鉈の一撃が掠る!!
「あいってえええぇぇっ!」
一瞬気を失いそうになるほどの激痛が秋生を襲うが、キッと持ち直し、
激痛で捩った身体をさらに反転させつつ、
バクンッ!!
渾身の回し蹴りを葉子に見舞う。
よろけた体勢のまま部屋の隅、元いた場所の方へと周回し、再び2人との距離を取り直す。
やりにくいな…手加減してやりてぇとこだが、こいつら中途半端に
連携とってきやがる。いっそ完全に手錬か初心者の方が動き易いんだが。
まあ、うまくはまってくれよな…。
激痛の走る左肩を上げてポリポリと頭を掻きつつ、銃を構えなおす。
…くっ、不可視の力さえ使えれば…。
先の芳野とか言ったヤツといい、この父親といい、わたし達が能力を制限されて
大の大人が自由自在に動けるなんて理不尽な話だわ。
しかもこいつ、銃を持っている上に動きが素人じゃない。
だけど、今は部屋の隅にいる。やれるならこれがチャンスか…!?
郁未はヨロヨロと立ち上がり、葉子に合図を送る。
「一気にいくわよ」 「はい」
2人は構えを取ると、
「やあああああぁぁっ!!」
一斉に打ち込んできたっ!
かかった…!!
秋生は内心ほくそ笑んだ。
おそらく、移動のしにくい隅に移動した事をチャンスだと思ったのだろう。
それこそが秋生の罠だったのだ…!!
「おおおおおおおおお」
ブンッッッッ!
手元にあった椅子を左腕の痛みも構わず、思い切り郁未に投げつけるっ!
急に力を入れたために、ブシュウッと左肩から出血する…。
「え!?」
秋生に意識が集中しすぎて予想出来なかったのであろう郁未に避ける術は無かった。
ガツン!頭に直撃し、その場に昏倒する。
「郁未さんっ!」
一瞬、葉子の目が郁未に逸れる。それが葉子の失敗だった。
これがいつもの遊びなら、「お前に、レインボー」とか咥えタバコで
決めセリフを吐いているところだ。
「―――わりぃな、オレの女の仇は取らせてもらうぜ…」
ガオォォン!!
銃弾は葉子の太ももを撃ち抜く…!
「あぁぁぁぁぁっ」
悲鳴を上げて葉子は吹っ飛び、身に襲う激痛に意識を失う。
「こんな事になってアレだが…できりゃ、オマエらも生きてくれ」
捨てセリフを残し、2人から武器を取り上げ、早苗の遺体を右肩に抱えて診察室を後にする。
診療所を出てしばらく歩くと、渚が待ち構えていた。連れの女も起きたらしい。
「バカか、テメェはぁっ!逃げてないでどうすんだよっ!」
「お父さんを…お父さんを置いていけるはずがありませんっ」
涙を流しながら、それでも毅然としている渚を、それ以上責められるわけがなかった。
「……ちっ。今は逃げるぞ!いつアイツらが目を覚ますとも限らねぇ」
「おい、渚とそこのオマエ、これ持っておけ」
ガシャン、左手に持っていた鉈と薙刀を落とす。
渚が薙刀を、佳乃が鉈をそれぞれ持つ。
「ふぅ…気の休まる時がねぇな…」
血は引いたが、痛みの治まらない左腕でタバコを咥え、火をつける。
……と、激戦の疲れで身体がフラっとし、早苗を危うく落としそうになる。
一見余裕に見えた戦いも、実際は年齢とタバコのために体力が低下し、
しかも左肩に裂傷を負った秋生には短期勝負を臨んだ結果だったのだ。
―――早苗、間に合わなくてすまねぇ。オマエの分まで渚を守る。
―――だから、今は安心して眠ってくれ……。
肩で眠る愛妻の髪に、そっと顔を寄せる。
険しい表情で眠る早苗に笑顔が戻った……気がした―――
********************************************
【時間: 18:30】
【場所:I-7 診療所外】
古河 秋生
【持ち物:S&W M29(残弾数2/6)、ほか支給品一式】
【状態:左肩裂傷、逃亡、右肩に早苗の遺体を抱えている】
古河 渚
【持ち物:薙刀】
【状態:父の帰還で若干の落ち着きを取り戻す。父と共に逃亡】
霧島 佳乃
【持ち物:鉈】
【状態:渚から説明を受け、現状を把握。上記2人と共に逃亡】
【場所:I-7 診療所内】
天沢 郁未
【持ち物:支給品一式(水半分)】
【状態:右腕軽症(手当て済み、ほぼ影響なし)、頭に軽症と軽い出血、気絶中。ゲームに乗っている】
鹿沼葉子
【所持品:支給品一式】
【状態:肩をケガ(行動には概ね支障なし)、右大腿部銃弾貫通(出血、痛み共に大)、気絶中。ゲームに乗っている】
B系およびJルート、276の続き。「この島にいる全ての人に」とは矛盾しているので競合になります。
31 :
鬼姉妹:2006/10/15(日) 23:34:16 ID:yHXS+B2v0
千鶴はイルファと対峙していた。
その距離は約15メートル程であった。
イルファの手には、Pfeifer Zeliska。
必殺の威力を秘めた大型拳銃だ。
(さて、どうしようかしらね……。)
先程までは目の前のロボット――イルファは二人の少女を気にしながら戦っていた。
――だから動きが読めた。だから銃撃も造作なくかわせた。
しかし今は二人の少女は逃げ、イルファの意識は自分に集中している。
今このまま距離を詰めれば、銃撃を凌ぐのは困難だろう。
しかし自分は素手である。近付かなければどうにもならない。
そこまで考えて、千鶴はある作戦を思いついた。
「!?」
突如、千鶴は前方のイルファにはまるで見向きもせずにに横に向かって走り出した。
「ど…、何処に行くのです!」
千鶴の予想外の行動に焦るイルファ。しかしすぐに、千鶴の意図は判明した。
彼女はそのまま大きく迂回するように曲がり、イルファの後方、瑠璃達が逃げた方向へと向かっていったのである。
――――この敵は自分を避け、瑠璃様達を狙おうとしている!
「待ちなさいっ!!」
ダンッ!
ダンッ!
ガチャリ!
イルファはすぐさま千鶴の進路へ向け、弾切れするまで銃を放っていた。
千鶴がそのまま直進していれば、直撃していた筈である。
万一直撃しなかったとしても、これだけの大きさの銃の一撃なら、掠るだけでも相手を無力化させれるだろう。
しかし、イルファが射撃した先には、千鶴の姿は無かった。
彼女はイルファが銃を撃つ寸前に反転していたのである。
「な……っ!」
32 :
鬼姉妹:2006/10/15(日) 23:35:26 ID:yHXS+B2v0
「やはり、あの二人があなたのネックのようですね……。」
千鶴は、イルファの方へと振り返り、そう言っていた。
イルファを相手にせずに、逃げた瑠璃達を追う振りをすれば、必ずイルファの意識はそちらに逸れる。
イルファは確実に自分の進路を阻むように銃を撃ってくるはずである。
ならば、それを利用して弾切れを起こさせてやれば良いのではないか。
それが、千鶴の作戦だった。
そしてその作戦は成功していた。
「しまった…!!」
イルファはようやく千鶴の狙いに気付いて、慌てて銃に装弾しようとしたが、もう手遅れであった。
イルファに向かって一気に踏み込んでくる千鶴。
その勢いのまま蹴撃を放ち、イルファの銃を弾き飛ばしていた。
銃は近くの茂みの奥へと弾き飛ばされていた。
後は、一方的な戦いだった。
普通の人間なら、千鶴相手の肉弾戦では長時間は保たない。
戦闘を生業としているような者以外では、すぐに殺されていたであろう。
しかしイルファはロボットであり、普通の人間よりは運動能力に優れていた。
イルファは戦闘技術こそ持っていなかったが、
なまじ高い運動能力を持っていた分、長時間痛めつけられ続ける事になった。
蹴られて、殴られて、嬲られ続けても、彼女は立ち続けた。
「あ…、う……」
イルファの視界にはノイズが大量に走り、彼女の体の至る所にヒビが入っている。
左腕は肘から先が無くなり、使い物にならない。
勝てない。肉弾戦ではこの敵には、勝てない。
それが判っていても、引く訳にはいかなかった。
自分が逃げればこの敵は一目散に、瑠璃様達を追いかけるだろう。
33 :
鬼姉妹:2006/10/15(日) 23:36:51 ID:yHXS+B2v0
そう考え立ち向かい続けた結果が、今の状態だ。
彼女は実に30分もの間、千鶴の猛攻を耐え凌いで来たが、
遂に限界が訪れた。
「中々粘りましたが、これまでのようですね」
「あなたを…、殺します」
千鶴は何の感情も籠めずにそう言うと、イルファの頭部を鷲づかみにし、
そのまま凄まじい勢いで傍にあった木に叩きつけていた。
ドゴォッ!!
大きな音と共に、木の幹にヒビが入った。
同時にイルファの頭部にも大きくヒビが入り、イルファの視界の半分以上にノイズが走っていた。
それでもかろうじて視聴覚機能は生きていたが、もう体は動かない。
イルファはそのまま地面に倒れた。
「ロボットといえど、頭部を破壊されれば終わりでしょう…」
横たわっているイルファを見据えながら、冷たく言い放つ千鶴。
しかし千鶴は妙な事に気付いた。
イルファの口元が笑っているのである。
「……?一体何が可笑しいのですか?」
「わた…、しは…、十分時間を…、稼げました…。
これで、瑠璃、様達…、は…、あなたから……、逃げ切れ…る……」
「…それはそうですが。これから先は、彼女達は誰が守るんでしょうか?
あなたは、この結末に満足しているのですか?」
口にしてから、千鶴は自分は何を言ってるんだと、皮肉の笑みを浮かべた。
この事態を引き起こした張本人は自分自身なのに。
守りたいものがある。守りたいものの為に戦う―――
イルファも千鶴もこの一点においては同じである。
だからこそ、千鶴は聞いてみたくなったのだ。
34 :
鬼姉妹:2006/10/15(日) 23:38:10 ID:yHXS+B2v0
「満足…は、して、いま…せんが…、きっとわたし…、が、いなく…なっても、瑠璃様…達は…、
強く…、生きてくれる…」
何を言っているのだろうか。イルファの言ってる事がよく理解出来なかった。
正確に言えば、意味は理解出来たのだが、言っている事が無茶苦茶であると思った。
イルファは逃げた少女達の力を信用している、という旨の事を言っている。
だがそれならば何故、先程まで必死になって少女達を庇っていたのだろうか。
実際彼女達はイルファの足を引っ張っていたではないか。
ともかく、これ以上考えても仕方ないので完全に破壊する事にした。
千鶴がイルファの頭部を完全に破壊しようとした、その時、一つの叫び声が聞こえた。
「千鶴姉!! 何やってるんだっ!?」
(……この声、まさか――!?)
千鶴が振り向いた先には千鶴の妹、千鶴の守るべき存在の一人―――柏木梓が、
驚愕の表情を浮かべ、立っていた。
「くっ!」
千鶴は即座にウォプタルに飛び乗り、逃亡した。
愛しい妹が目の前にいた。
本当ならすぐにでも抱いてあげたかった。一緒にいてあげたかった。
しかし、自分はまだまだ他の参加者達を狩らなければならない。
このゲームでは身内以外の者は信用出来ない。即ち彼女にとって、妹達と耕一以外は、倒すべき敵であった。
出来るだけ他の参加者の数を減らし、それから脱出方法を模索する。
それが千鶴が考えた、自分の身内達の生存確率を最も高める方法であった。
容赦ない狩猟者としての行動を共にするのは、梓には耐えられないし、理解もしてもらえないだろう。
今は一緒にいられない。
「待ってよ、千鶴姉ぇーーっ!!」
梓の制止の声も聞かず、千鶴はそのままウォプタルを駆り、走り去っていた。
しかし、千鶴の目尻には、一筋の涙が流れていた。
35 :
鬼姉妹:2006/10/15(日) 23:39:48 ID:yHXS+B2v0
「千鶴姉、どうして……」
呆然と立ち尽くしていると、
「すいま、せん……、そこの、あなた……」
倒れている少女、いや、ロボットに声をかけられた。
「アンタ、大丈夫か!!」
慌ててイルファへと駆け寄る梓。
「う……、これは…………」
イルファの全身は既にボロボロであり、特に頭部の損傷が酷かった。
これはもう、助からない。
いくらロボットとはいえ、ここまで徹底的に破壊されていてはもう活動停止は免れないだろう。
「とつぜんで、わるい……、のですが、あなたに、ひとつ……、おねがいが……、あります」
イルファは途切れ途切れに言葉を続ける。言葉の合間合間に雑音が混じっている。
恐らくもう、長くないのであろう。
「…………なに?」
それをすぐに理解した梓は、停止しつつあるロボットの最後の願いを聞き届ける事にした。
「るり…………さま……と、さん……ごさま、……という……おんなのこ、たちと……であったら、
……まもって、あげて…………、くださ……い……。」
それだけ言い、もうイルファは動かなくなった。
瑠璃様、珊瑚様、申し訳ありません。
私はどうやらここまでのようです。
私の死を知ればショックをお受けになるでしょうが、
どうか自分を見失わないでください。
お二人ならきっと強く生き続けてくれると信じています。
お二人なら、ゲームに乗っていない参加者の方々とも上手くやっていけます。
最後まで私の手でお守りしたかったけれど、それはもう叶わぬ願い。
願わくば、貴明さん、そして目の前の女の方、まだ見ぬ参加者の方々。
どうか瑠璃様達を、お守りください…。
36 :
鬼姉妹:2006/10/15(日) 23:42:51 ID:yHXS+B2v0
そうしてイルファの機能は、停止した。
彼女は最後まで、瑠璃と珊瑚の事を想い続けていた…。
梓は暫しの間、呆然としていた。
すぐ近くには、血まみれの少女――神岸あかりが倒れていた。
梓はこの場で何が起こったのか、まだ理解しきれていない。
理解しきれていないが、千鶴が自分を見て逃げたのを見て、
姉が恐らくこのゲームに乗っている。そしてこの惨劇は姉が引き起こしたものだ、と。
それだけは、理解出来た。
それから自分が何をすべきか考え、梓は行動に移っていた。
血まみれの少女も心配だった。
傷は背中に引っ掻いたような細長い傷と、全身に打撲や擦り傷等の無数の軽い傷。
しかし今は血はもうほぼ止まっていた。
治療をしなくても命に別状は無さそうだったので、神社の建物の中に置いてきた。
千鶴姉も心配だが、あの姉なら誰かに遅れを取るような事はないだろう。
それに姉は妙な生き物に乗っていた、今から追いかけても追いつけるとは思えない。
姉が罪の無い者達を殺している…。
そう考えると強い脱力感と、深い悲しみを覚えるが、
今はどうしようもない。
イルファが言った者達の事も、
「悪いね……。柳川を殺したら初音を探すつもりだから、その時にアンタの言ってた子達も探してあげるよ」
イルファの残骸に向かってそう言い、後回しにする事にした。
37 :
鬼姉妹:2006/10/15(日) 23:44:56 ID:yHXS+B2v0
結局梓は、最初の目的。
楓の仇を討つ事を最優先する事にした。
彼女は千鶴のように家族以外の存在を全て敵、全て他人だと割り切る事が出来る性格ではない。
それでも彼女にとって一番大事な存在は、家族だから。その家族を奪った男……、柳川。決して許せない。
誰にも全てを救う事など出来はしない。ならば今自分が最もすべき事をするしかないんだ。
そう自分に言い聞かせ、梓は再び柳川を探しに走り出していた。
そうしなければ、溢れ出す様々な感情に、心が押し潰されそうだったから。
―――――今はただ、あの男が憎い。
そう思い込むしか、無かった。
共通
【時間:一日目午後7時50分頃】
【場所:鷹野神社(F-6)】
柏木梓
【持ち物:不明(次の方任せ)、支給品一式】
【状態:動揺、柳川への憎悪。第1目標:柳川の殺害 第2目標:瑠璃姉妹、初音の捜索、保護 第3目標:千鶴のマーダー化を止める】
イルファ
【持ち物:デイパック、フェイファー ツェリスカ(Pfeifer Zeliska)60口径6kgの大型拳銃 0/5 +予備弾薬15発】
【状態:死亡、デイパックは遺体傍に、銃は近くの茂みの中に放置】
柏木千鶴
【持ち物:支給品一式・ウォプタル】
【状況:やや動揺、軽い疲労。マーダー】
神岸あかり
【所持品:支給品一式】
【状態:血まみれ、気絶。全身に無数の軽い擦り傷、打撲、背中に長い引っ掻いたような傷。現在は神社の中で倒れている】
B系共通ルート、関連は245、258
38 :
微妙な変化:2006/10/16(月) 00:16:38 ID:JHz4HGBZ0
「ハァ…ハァ…うーへい、大丈夫か」
平瀬村のとある建物の一角で、るーこと春原は周囲の安全を確認しつつ二人は一時の休息を取っていた。
がむしゃらに走ってきたため、途中で何かが聞こえたような気もするが結局聞き取る事が出来なかった。
息も絶え絶えなるーこに対して春原の方はまだ若干余裕がある。自分が元サッカー部の経験があるとは言え、やはり男と女だ。春原は改めてその事実を確認せざるを得なかった。
「僕はまだいけるけど…そっちの方こそどうなのさ」
「…うーへいが羨ましい。るーは…少し、疲れた」
苦笑いをしてるーこが建物に寄りかかり座りこむ。春原はるーこを気遣って着ていた制服の上着をそっとかけてやった。
「ふふ…『うー』に情けをかけられるとはるーも落ちたものだ。戦士として情けない」
「バカ、何言ってるのさ。つらい時は互いに助け合っていくもんなの。誰かが誰かを一方的に守るとか、戦うとか、そんなもんはないから」
ニッと笑って語りかける春原に、るーこも少しだけほぐれた表情を見せた。
「さっき、るーが『かえで』とかいううーを抱えたうーに銃を向けたときもうーへいは止めてくれたな」
――やめなよ。
――……うーへい?
――こいつ…泣いてるよ。 そんなやつが殺すわけ無いよ。……少なくとも、こっちの女の子は。
るーこの頭の中で柳川の出来事が反芻される。
「…だから、るーはうーへいが羨ましい。るーが持ってないものをうーへいはたくさん持っている」
それまで一度も見せなかったるーこの側面に、春原はある種の困惑さえ覚えた。
これまでの連続した緊張から解放されて、気が滅入ったのかもしれない。どんなに気丈でも、るーこは女の子なのだから。
39 :
微妙な変化:2006/10/16(月) 00:17:10 ID:JHz4HGBZ0
しかし、困惑ばかりしても仕方がなかった。
「だったら、これから手に入れてけばいいじゃん。僕だって同じさ、僕にはないものをるーこはたくさん持っているからね。るーこくらい度胸があれば岡崎にも杏にも…って、どうでもいいや。
ともかくさ、ここでじっとしててもしょうがないだろ? 他のみんな、探しにいこうぜ」
るーこに手を差し出す。彼女は少しだけ間を置いてから「ああ」と言って手を取った。
「うーへい…これ、返すぞ」
るーこが春原の上着を返そうとする。しかし春原は首を振って拒否する。
「いいよ、るーこ汗でびっしょりだろ? 風邪引いちゃいけないからさ、着とけよ」
「しかし、それはうーへいも同じだろう」
「僕はこういうのには慣れ…いやいや、風邪を引かない鋼鉄の肉体なのさっ! バカは風邪を引かないってね…って、僕はバカじゃねぇよっ」
一人でボケたりツッコんだりする春原に思わずクスリと笑ってしまうるーこ。
「ああもうとにかく! しばらく着てていいから! ほら行くよ! こうなったら、まず着替えから探すぞっ」
「…ありがとう」
小声で言ったその言葉は、春原には聞こえていなかった。
春原は気付いていない。無意識に、「るーこちゃん」から「るーこ」へ呼び名が変わっていたことに。
より強く、彼女を支えてやりたい、と思っていたことに。
それは春原の心のどこかにあった男としての責任感がそうさせたのかもしれない。妹を守っていた、昔のように。
るーこは気付いていない。無意識に、春原を一人の人間として信頼していることに。
それはるーこの心のどこかにあった彼女の寂しさがそうさせたのかもしれない。
二人がその事に気付くのは、まだもう少し後。
40 :
微妙な変化:2006/10/16(月) 00:18:31 ID:JHz4HGBZ0
『春原陽平(058)』
【時間:1日目午後6時過ぎ(放送は聞き逃した)】
【場所:F−02】
【所持品:スタンガン・支給品一式】
【状態:少しだけ疲労。着替えを探す。次に仲間の探索】
『ルーシー・マリア・ミソラ(120)』
【時間:1日目午後6時過ぎ(放送は聞き逃した)】
【場所:F−02】
【所持品:IMI マイクロUZI 残弾数(30/30)・予備カートリッジ(30発入×5)・支給品一式】
【状態:やや疲れ気味。着替えを探す。次に仲間の探索】
【備考:B−2、B−7、B−9、B−10ルートで】
41 :
10:2006/10/16(月) 00:57:16 ID:8PGtF72O0
→258
⇔285
B系共通で
(この方は……人間?)
明らかに通常の人間の運動性能ではない。
銃相手に真っ向から戦って引かないだけでなく、至近に撃たれても顔色一つ変えない。
(いえ……関係ない……瑠璃様と珊瑚様を殺そうと言うのならば……)
「死んでもらいます……」
ぽつりと、そう呟いて、銃弾の交換をした。
……一つの策を弄して。
(この娘は……人間?)
明らかに通常の人間の耐久性能ではない。
あの蹴りを後頭部に喰って倒れないだけでなく、あそこまで至近に銃弾を打ってきた。
(いえ……関係ない……あの子達の生存率を僅かでも上げられるならば……)
「貴女を、殺します……」
ぽつりと、そう呟いて、体勢を落とした。
……一つの策を弄して。
ダッ!
千鶴が大きく斜め横に踏み出した。
ドガンッ!
耳を劈く大音が響く。
その熊殺しの銃弾は既の所で当たらず、近くの茂みをすっ飛ばした。
(やはりまともに喰らったら危ない……)
イルファは照準を変更しつつも自分も下がり、再び
ドガンッ!
その一瞬前に地を蹴り、千鶴は再びかわす。
(この距離なら……何とかかわせる……)
相手が下がった分の距離を詰める。
ドガンッ!
かわす。
(掠るだけでも吹っ飛びかねない……)
何でこんなものを配給するのか。
舌打ちしたくなるが、そんなことに割く余力が勿体無い。
カチンッ
遠くまで響くその音。
真横に避けたが銃弾は飛んでこなかった。
(……次っ!)
その目は、勝機を見つけて輝いた。
イルファは下がりながらポケットから銃弾を取り出し、交換する。
その顔は凍て付いて、宛ら修羅の様であった。
(私も、同じ顔をしているのかしら……)
考え事はここまで。
イルファが銃弾を変え終わる。
後は殺すだけ。
ドガンッ!
(一っ!)
斜め後ろに飛び退く。
イルファは僅かに前方に来て、第二射をした。
ドガンッ!
(二っ!)
既の所で真横にかわす。
直撃した細い木が音を立てて折れる。
関係ない。
ドガンッ!
(三っ!)
斜め前に飛び出し、一気にイルファに迫った。
彼我の距離は目測で約15メートル。
カチンッ!
四は、無い。
イルファは飛び退りながらポケットに手を伸ばす。
ビッ
千鶴の右腕がイルファのポケットを裂く。
「あっ!」
イルファが声を上げる。
もう、遅い。
千鶴の左腕が大きく上がり、振り下ろされる。
イルファが左腕で受ける。
ガッ!
ギンッ!
金属質のものが立てる独特の音を上げ、イルファの左腕が動かなくなる。
それでも、残る右腕で震えながら銃を千鶴の胴体に向ける。
「……弾の無い銃はただの鉄塊です。諦めて死んでください」
「そうですね……」
イルファは引き金を引いた。
ドガンッ!
「ガッ!?」
悲鳴ではない。
ただ空気が漏れただけ。
吹き飛ばされた上半身が内臓を撒き散らしながら血の跡を引く。
(何故!?)
下半身も飛ばされていた。
上半身とは別の所に。
血溜まりが異常な速さで広がっていき、それでも未だ千鶴は生きていた。
肺が消え、心の臓が半分飛ばされても、それでも未だ千鶴は生きていた。
イルファが大きな石を右腕だけで持って近付いてくるのが濁った目に見えた。
連回
「貴女の死因は三つです……」
自分の掠れた血流の音と、その声以外に聞こえるものは無かった。
「一つは、この銃を知らなかったこと」
その石をどうするのだろう、と考える思考も最早無かった。
「二つは、刺せる止めを一瞬で刺さなかったこと」
ただ、ただ痛くて、その痛みも段々薄らいで、同時に視界が暗くなりボーっとした音だけが聞こえるようになって来た。
「そして、三つ……」
視界が、閉じ―――――
「瑠璃様と珊瑚様を、殺そうとしたこと」
グシャッ!
イルファは、その石を千鶴の頭に思い切り振り下ろした。
一度大きく身体が跳ね、そして動かなくなった。
「瑠璃様……珊瑚様……今、行きます……」
動かない左腕を抱えて、イルファは立ち上がる。
「絶対に……守りますから……」
イルファ
【持ち物:デイパック*2、フェイファー ツェリスカ(Pfeifer Zeliska)60口径6kgの大型拳銃 5/5 +予備弾薬5発(回収)】
【状態:左腕が動かない、珊瑚瑠璃との合流を目指す】
柏木千鶴
【状態:死亡】
ウォプタルは逃走
49 :
国崎往人の受難:2006/10/16(月) 03:16:12 ID:/FopK6mV0
あれは誰?
その人は突然風のような速度で現れた。
黒い長い髪の美しい女の人がこっちを見ていた。
その人は緑色のトカゲみたいな生き物に跨っていた。
あの生き物ちょっと可愛いかも………
そんな事を考えながらトカゲを見ていると、その人は乗り物から降りてこちらを見た。
初めてその人の目をみた。その瞬間背筋がゾクリとした。
冷たい、何の感情も通っていない目。
その目を見た瞬間、私は迷わずに逃げ出していた。
「ぁっつ!」
背中に鋭い痛みが走り私はもんどりうって地面に倒れていた。
次の瞬間、私はお腹を蹴られて何メートルも地面を滑っていた。
怖い怖い怖い。殺される。
痛い痛い痛い。体中のあちこちが痛い。
熱い熱い熱い。背中が熱い。手を背中に当てて見ると、手は真っ赤になっていた。
真っ赤な手を見た瞬間、私の意識は薄くなっていった…。
倒れたまま見上げた景色には、冷たい濁った殺意の目が移っている――――
そこで神岸あかりは目を覚ましていた。
今はもう出血は止まっていたが、血を流しすぎたのかまだ意識は朦朧としている。
自分が神社の建物の中にいるらしき事だけは、何とか把握出来た。
「あぐっ!?」
意識が朦朧としたまま立ち上がろうとし背中に激痛が走る。
堪らずあかりは床に座り込んだ。当分は動けそうになかった。
状況を整理しようとするが、上手く頭が働かない。
仕方が無いのであかりはまた眠る事にした。
今は何も考えられない…。
国崎往人は観月マナと別れてから歩き続けていた。
―――しかし一つ、大きな問題があった。
「腹減った……」
往人は今にも倒れそうな顔色をしていた。
彼の燃費は非常に悪い。それに今は背中に男を背負っている。
もはや体力が尽きるのは時間の問題だ。
しかし今の彼は旅芸人をしていた時とは状況が違う。
「今こそコイツの出番だな」
そう言って往人は自分のバックの中身に目をやる。
そこには二人分の食料がたっぷりと詰まっていた。
往人の目がキュピーンと、音を立てそうなくらいの勢いで光る。
そう、今の彼には十分な食料がある。これだけあれば当分食料には困るまい。
「後は食う場所だが……」
今は山の中である。ここでも食えなくはないが、出来ればもう少し落ち着ける場所で食べたい。
そう考えながら歩いていると前方に神社が見えてきた。
ようやく往人は落ち着いて食べれそうな場所を見つけた。
自然と歩くペースも早くなる。参道を通り神社の中を進んでいく。
しかしそこで彼が見たものは血で赤く染まった制服姿のまま眠っている少女の姿だった。
「な……、お前大丈夫かっ!?」
荷物と月島拓也を地面に置き、慌てて駆け寄る。
少女はすやすやと寝息を立てていた。とにかく生命の危機には瀕していないようである。
しかし血まみれの外見から考えるに、傷が浅いはずはない。
出来る限り早い処置が必要だろう。
「………本当に今日はロクな事がないな」
往人はそう呟いていた。彼はまだ当分飯にはありつけなさそうだった。
51 :
国崎往人の受難:2006/10/16(月) 03:18:07 ID:/FopK6mV0
国崎往人
【時間:一日目午後8時20分頃】
【場所:鷹野神社(F-6)】
【所持品1:トカレフ TT30の弾倉(×2)ラーメンセット(レトルト)】
【所持品1:化粧品ポーチ 支給品一式(食料のみ二人分)】
【状態:空腹、少し落ち込んでいる】
月島拓也
【時間:一日目午後8時20分頃】
【場所:鷹野神社(F-6)】
【所持品:支給品一式(往人持ち)】
【状態:気絶中】
神岸あかり
【時間:一日目午後8時20分頃】
【場所:鷹野神社(F-6)】
【所持品:支給品一式】
【状態:血まみれ、睡眠中。全身に無数の軽い擦り傷、打撲、背中に長い引っ掻いたような傷】
※往人は参道を通って正面から神社へと入った為、神社裏手のイルファの死体にはまだ気付いていません
※関連250、285、B系共通
52 :
10:2006/10/16(月) 03:40:48 ID:8PGtF72O0
>>47 忘れてた
【時間:一日目午後7時10分頃】
【場所:鷹野神社(F-6)】
新作投下します。
281の改訂版、というか全面的に書き直しました。もう、全然別の話です。
ルートはB系。お暇な方は連投回避をお願いします。
「銃声」
郁未と葉子は二手に分かれると秋生を挟んで真向かいに立ち、ジリジリと間をつめた。二人が持っている武器は鉈と薙刀。間合いが近づくほどに二人は有利になり、相対的に秋生は不利になっていく。
だが、秋生に恐れた様子は全く見えない。二人を交互ににらみつけじっと黙っている。その表情は、冷たい。突如その口が開いた。
「ひとつ聞いておきてぇんだが、早苗を殺したのはどっちだ」
「………」
「………」
二人は秋生の問いに答えなかった。答えれば、答えたほうに容赦なく銃弾が向かう。
「そうか、黙秘かい」
と、言いつつも秋生には概ね見当が付いていた。早苗の体に出来ていたのは刺し傷。鉈でできる傷ではない。鉈は叩き割るものだからだ。すなわち、
「ま、多分お前だろうけどな」
右手に持った銃を薙刀を持った郁未に向けた。
「っ!」
「!」
次の瞬間、二人は動いた。郁未は転がるようにベッドの陰に飛び込み、葉子は銃口を郁未に向かってむけていた秋生に襲い掛かる。
(とった!)
秋生は体こそ郁未に完全に向いてないものの、銃口は完全に葉子と反対、いまから銃口をこちらに向けても到底間に合わない。葉子は無言で鉈を振り上げた。
そう、確かに秋生は銃口を振り向ける暇はない。
だが、葉子は秋生の銃に気を取られすぎた。いや、いくら常人とは違う生活が長かった彼女でも銃を目にすればそれに集中してしまうのは当然だろう。責めるのは酷というものだ。
結論から述べる。葉子の鉈は秋生に届かず、彼女の体はその場に崩れ落ちた。原因は、秋生の拳。葉子の下からうなるようにして飛び上がった秋生のアッパーは葉子の顎を正確に打ち抜いた。
秋生には一切の容赦がなかった。相手が年下だとか、女性だからとか、そんな考慮は一切ない。葉子の脳みそが揺れて、彼女がひざから崩れ落ちるのには一瞬を待たなかった。ガラン、と音を立てて鉈が転がる。
郁未がベッドの陰から様子をのぞいたとき、すでに葉子の体は床に転がっていた。反射的に声を上げる。
「葉子さん!!」
だが、顔を上げたとたん銃弾が郁未のいた場所を通過する。憎たらしいことに秋生の銃口はなおも郁未のほうを向いていたのだ。
後ろのガラス戸が割れて、あたりにガラスがとびちる。中に入っていた薬品のいくつかがゴトゴトと音を立てて下に落ちた。
「邪魔すんじゃねぇよ」
秋生はそうとだけ言って、足元に落ちていた鉈を蹴飛ばし、部屋の隅へと追いやる。
「もう一度、聞くぜ」
秋生は不機嫌そうにベッドの上(郁未が隠れているベッドの隣のベッドだ)に座ると片足を葉子の頭上に乗せた。無論、銃口は郁未に向けたまま。うっと葉子が少しだけうめく。
「早苗を殺したのはどっちだ?」
「……それを聞いてどうするつもりよ」
「あ? いちいち言わなきゃ分かんねぇのか、てめぇは」
「………」
殺してないほうは助けるつもりだとでも言うのだろうか。目の前の男がそんな温厚な性格をしているとはとても思えない。ちらりと秋生の顔を見る。電気がついてないので薄暗い室内では表情は全く読めない。
「ごめんね、できが悪くって。わからないわ」
精一杯強がってそう言ったが知らず知らずのうちに声が震えていた。
「殺したほうを先に殺すために決まってんだろ」
(……やっぱりか)
ならば、どうする? 葉子さん、と答えれば葉子さんは確実に殺される。だが、自分はその隙に逃げることができるかもしれない。
一方、自分と答えればどうなるか。銃と薙刀では明らかに分が悪い。葉子の支援も望めない。確実に自分は死ぬ。
冷静に考えれば葉子が殺したということにしたほうがいい。ああなった以上、自分がどちらを答えても葉子は死ぬからだ。彼女だってきっと許してくれるはずだ。仕方がない。だが、
(んなこと、できるわけないでしょっ!)
葉子は大切な友人だった。その葉子を見殺しになどできようはずもない。
(どうする? どうする? どうするっ!?)
そのとき、郁未の指先に触れるものがあった。
「とっとと答えろや。渚のことが心配なんでな、あんまし時間かけたくねぇ。まあ、別に話してくれなくてもかまわないがな」
秋生の言葉を無視してそれをたぐりよせた。薄暗い室内でわずかな明かりを手がかりにラベルを読む。それは消毒液だった。さきほどの秋生の銃撃で上の戸棚から落ちてきたらしい。
(そうだっ!)
郁未は急いでボトルのキャップをはずすと薙刀をつかむ。
「わかった。答えるわ」
「………」
「知らずに死んでしまえぇぇっ!!!」
郁未はキャップの開いた消毒液を投げつけた。狙いは正確に秋生の顔にあたり、消毒液をぶちまける。
「うぐおっ!」
秋生のうめき声が郁未の耳に届いた。郁未はそれを確認してから、ベッドの横から走り出る。だが、
ダン!
「っあっ!」
「ちっ!」
舌打ちをする音と脚からの激痛を同時に知覚する。そして次の瞬間、バランス失った彼女は前方に身を投げ出すようにして
(嘘でしょ!?)
この暗がりの中、消毒液をぶちまけられた目でこれだけ正確に狙撃してくるなんて化け物か!?
「いろいろ考えたようだが無駄だったな」
暗い室内で秋生が立ち上がる。左手に持っている……あれは何だ? ……枕? をこちらに投げ捨てる。
枕は自分の顔のすぐ近くに落ちてプンとアルコールのにおいをさせた。どうやらこれで自分の投げた消毒液を防いだらしい。とすると、その後のうめき声は芝居だったのか。完全にやられた。
「じゃあな、一足先に地獄へ行ってろ」
秋生の銃口が自分に向けられた。
「ん、大体こんなもんでいいだろ」
宗一は民家の台所でそう呟いた。目の前にはカップラーメンの山。新しく着たあの連中や変なオッサンの分もあるはずだ。夜も朝もカップラーメンとは少々味気ないがこのさい贅沢は言ってられない。まあ、暖かい食料と言うのは悪くないはずだ。
「皐月がいればな……」
あいつのことだ。こんな状況でもいつもどおりうまい飯でも作ってくれるに違いないのに。
「さて、みんないい加減はら空かせているだろうし、戻るか」
そして、その瞬間、
「――みなさん聞こえているでしょうか。今から僕は一つの放送をします……」
放送が鳴った。
「……61 醍醐、63 篁」
え? きょとんとして天井を見上げる。あの二人が? そして、
「……97 伏見ゆかり、110 森川由綺、――以上です」
それは宗一にとって醍醐や篁の死以上に衝撃的なメッセージ。実力から考えればゆかりのほうが死ぬ確率が高いのにな、と冷静な自分が自嘲した。
「……くそっ!」
テーブルの上に拳を叩きつける。ゆかりが死んだ。あいつが死んだ。誰よりも優しかったあいつが死んでしまった。怒りのままにいすを蹴り上げる。派手な音を立てていすがダイニングを転がった。
「待て、落ち着けよ、俺」
今、名前を呼ばれた連中は本当に死んだのか? 醍醐や篁が? まだ開始数時間で? 俄かには信じがたい話だ。ならば、他の人に関してもそれがいえるのではないか?
それは希望的観測に過ぎなかった。だがあきらめるのはまだ早い。情報にはいつも真偽が付きまとう。
「確認もなしに放送一つで死んだことにしちゃあ、エディに怒鳴られちまうわな」
落ち着くために深呼吸をする。一つ……二つ。よし。
「とりあえず、診療所に戻るか」
これ以上、死者を増やすものか。とりあえず自分から目の届く人たちだけでも守らなければいけない。
それに今のいすの音で人が集まってくるかもしれない。何やってるんだ自分らしくもない。急いで脱出しよう。
宗一は窓から外をのぞいて誰もいないのを確認すると、一気に飛び出し走り去った。そして住宅街を走り抜ける。
明かりの少ないこの集落ではいちいち立ち止まって敵の確認をするよりも動き回っていたほうが攻撃を受ける可能性は少ないと判断したのだ。
回避は手伝うけど、対立候補も出てるんだし何だかなって感じ。
「!!」
だが途中で足を止め、反射的に物陰に隠れる。
(今の……銃声か?)
遠かったのでいまいちはっきりしない。だが、聞き違いでなければ、音が聞こえた方向は診療所。嫌な予感がした。
とりあえず、今の自分が危機的な状況にあるわけではない。物陰から抜け出し、さらに急いだ。面倒だから食料品やかさばる荷物は物陰に置いて行く。
何が起こったんだ?
天沢郁未に怪我をさせた人物が追ってきたのだろうか。それとも他の誰かが診療所に攻撃をしかけたのか。単なる自分の聞き違いか。あるいは方向が一緒なだけで診療所自体には何の問題もないのか。
「無事でいてくれよ」
真偽はまだ分からない。だがゆかりの名前は放送で呼ばれた。なぜゆかりだったのだろうか。自分と近しい存在だから篁になにかされたのか? もしくは本当に死……
その考えを振り払って走る。真偽はどうであれ、これ以上あの放送で名前が呼ばれる人間が増えるのはごめんだった。あれは心をかき乱す。
診療所が見えてきた。まだ、貴明たちやオッサンはまだついてないのだろうか。
そのとき、もう一度銃声が響き渡った。間違いない。音の発信源は診療所だ。
「クソ! みんな無事でいてくれよ!」
診療所のドアが見えた。見張りを交代で立てていたはずのそこには誰も立っていない。ちくしょう! ちくしょう! 心の中でがなりたてながら銃を構えた。五感が細く絞られてゆく。
宗一は熱くなりそうな頭を懸命に抑えながら、診療所の中に飛び込む。 またさらに銃声がした。今度は人の倒れる音まで。もはや一刻の猶予もない。銃声がしたほうに走る。
一人でも多く無事でいてくれれば!! だが、どうする。何をすればいい!? まだ中で何が起こっているのか彼にはさっぱりわからない。だからといって悠長に外から様子を伺っているひまもない!
「全員、とまれぇぇぇぇぇっっっ!!!」
薄いドアを蹴破る。
……銃声が、響いた。
共通
【時間:六時二十分ごろ】
【場所:I-07】
天沢郁未
【持ち物:薙刀】
【状態:呆然。左のふくらはぎに被弾】
鹿沼葉子
【持ち物:なし】
【状態:気絶、脳震盪ぎみ】
那須宗一
【所持品:FN Five-SeveN(残弾数20/20)、ロープ(少し太め)、包丁、ほか水・食料以外の支給品一式】
【状態:異常なし】
古河秋生
【持ち物:S&W M29(残弾数1/6)、ほか支給品一式】】
【状態:異常なし】
備考
【早苗の支給武器のハリセン、及び全員の支給品が入ったデイバックは部屋の隅にまとめられている。】
【郁未、葉子の支給品一式と鉈は部屋のあちこちに散乱】
【状態・所持品は最後の銃声発射前の状況です。銃声がどちらが何に対して撃ったものかは不明。次の書き手さん任せです】
【宗一の持っていた救急箱、ツールセット、食料は村内の物陰に放置】
>>58 ありがとうございました
自分でも書かないほうがいいかどうか結構迷ったのですが、ね。とりあえずってことで。
276の続き。284、271とは矛盾。
62 :
復讐と保護と:2006/10/16(月) 23:03:30 ID:6FA7Pxlu0
「ふぅ……。」
水瀬秋子は民家の一室で、大きな溜め息をついていた。
あの後名雪は気絶してしまったが、逆にそれが幸いして落ち着いて治療を行なう事が出来た。
もし錯乱した状態のままだったならば、治療を行なう事も容易ではなかっただろう。
肩の傷は深くゲーム中の完治は望めないが、後遺症が残るほどではなかった。
このゲームから生きて帰れさえすれば、体の傷は治る。
問題は心の方だ。
今はベッドで寝息をたてているが、うなされている。
酷い悪夢を見ているのかもしれない。
「よっぽど怖い目にあったのね……。」
名雪の頭を撫でながら見守る。
起きた後名雪は正気に戻ってくれているだろうか?
娘の心はまだ壊れてはいないのだろうか?
今は、ただ祈るしかない。
その横では澪も眠っている。名雪とは対照的に、安らかに眠っている。
娘はゲームに乗るような子ではない。それは母親である自分が一番よく知っている。
名雪は誰かに襲われたのだ。何もしていないのに一方的に、襲われたのだ。
傷付けられ、泣き叫びながら逃げ惑う我が子の姿を思い浮かべた。
63 :
復讐と保護と:2006/10/16(月) 23:04:49 ID:6FA7Pxlu0
(ゆるせない……………)
強く握り締めた拳から、自身の血が滴り落ちる。
名雪を傷付けた者が誰かは分からない。しかし、ゲームに乗った誰かである事は間違いない。
ゲームに乗った者達を狩り続ければ、いつかは名雪の仇に辿り着く筈である。
今はゲーム開始時とは状況が違う。今の自分には銃も刃物もある。
ならばマーダー達と遭遇した時の結論は一つ。
(ゲームに乗った奴ら……、死をも上回る恐怖と苦痛を、味あわせてあげるわ………!!)
復讐の瞬間を想像すると、何故か口元に笑みが浮かび上がってくる。
激しい怒りの感情が沸きあがっているはずなのに、笑みが浮かび上がってくる。
だが今は感情に任せて動き回るわけにはいかなかった。
本当なら今すぐにでも狩りに赴きたい。ゲームに乗った者達を殺してまわりたい。
だが、今自分がいなくなれば目の前で眠る娘達を誰が守るのか。
娘達の命、それは復讐よりも優先すべき事だ。
娘を傷付けたマーダーは絶対に許せないが、
娘や未来ある子供達を助ける事より優先すべき事など、存在しない。
だから、今はこうして娘の苦しそうな寝顔をただ見守るしか、無かった。
トッ…
トッ…
「!」
秋子はすぐさまその音に気付いた。
外から微かだが足音が聞こえてきた。
秋子はすぐに武器を手に取り、外へと向かった。
愛する娘達を守る為に。
そして足音の主がマーダーなら、想像を絶する苦痛を与える為に―――
64 :
復讐と保護と:2006/10/16(月) 23:06:04 ID:6FA7Pxlu0
【時間:午後9時頃】
【場所:F−02】
水瀬秋子
【所持品:IMI ジェリコ941(残弾14/14)、包丁、殺虫剤、ほか支給品一式】
【状態・状況:健康。主催者を倒す。ゲームに参加させられている子供たちを1人でも多く助けて守る。
ゲームに乗った者を苦痛を味あわせた上で殺す】
上月澪
【所持品:フライパン、スケッチブック、ほか支給品一式】
【状態・状況:浩平やみさきたちを探す。今は睡眠中】
水瀬名雪
【持ち物:GPSレーダー、MP3再生機能付携帯電話(時限爆弾入り)
赤いルージュ型拳銃 弾1発入り、青酸カリ入り青いマニキュア】
【状態:肩に刺し傷(治療済み)、睡眠中。起きた後の精神状態は次の書き手次第】
・192の続き、B系共通ルート
65 :
狂人の目覚め:2006/10/17(火) 00:01:39 ID:wVOkAgPX0
気絶していた月島拓也はついに目を覚ました。
「あのじじい、次にあったら必ず殺してやる。ん?」
彼は頭を振って起き上がると、電波が使えるようになっていることに気が付いた。
「ああ、瑠璃子の電波を感じるよ……向こうの方角だ。
初めて見るけどよく知っている、くっけっけっけ!!!
ぐぎゃぎゃぎゃぎゃ!ひゃああああああああッ!!!
すぐに迎えにいってあげるよおおおおおおおおッツ!! 」
彼は一度強力な電波を周囲に放つと、瑠璃子の方角に向けて歩き出した。
チリチリチリチリ
激しく流れる電気の粒は、近くにいた往人たちを直撃する。
そのとき、宙吊りになっている往人の前に古ぼけた人形が現れた。
人形は往人を守るように淡い光を放っている。
「これは俺の人形……どうしてここに?」
「「ぎゃー!」」
「ぴこー!」
傍で高槻、香里、そしてポテトの悲鳴が上がる。
66 :
狂人の目覚め:2006/10/17(火) 00:02:27 ID:wVOkAgPX0
「せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、
せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、
せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、
せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、せっくす、
せっくす、せっくす、せっくす、せっくす……もっとセックスする!」
香里は卑猥な言葉を吐きながら、ふらふらと歩いていってしまった。
下ではポテトが奇怪な踊りを踊っているようだ。
「一体どうしたんだ?」
往人が考える間もなく、続いて隣から声が上がる。
「参ったぁーー! 俺は参ったぁーーー!!」
高槻はそう叫びながら、左足で右足のロープを切り裂いた。
そして地面に降り立つと、往人を下に一気に引っ張った。
右足のロープはその力で引きちぎられ、往人は高槻に組み伏せられる。
「何をするんだお前は!」
そこに、放送を聴いてショックを受けていたマナが帰ってきた。
「……アンタら何やってんの……」
「逃げろ! 今のこいつは正気じゃない!」
高槻の濁った瞳がマナを捉えた。
67 :
狂人の目覚め:2006/10/17(火) 00:03:16 ID:wVOkAgPX0
美坂香里
【時間:午後8時15分ごろ】
【場所:F−7】
【持ち物:アーミーナイフ・Remington Model 700Police装着数4 残弾数51、支給品一式】
【状態:電波直撃】
国崎往人
【時間:午後8時15分ごろ】
【場所:F−7】
【所持品:人形】
【状態:貞操の危機?】
高槻
【時間:午後8時15分ごろ】
【場所:F−7】
【所持品:なし】
【状態:電波直撃】
68 :
狂人の目覚め:2006/10/17(火) 00:03:56 ID:wVOkAgPX0
月島拓也
【時間:午後8時15分ごろ】
【場所:F−7】
【所持品:トカレフTT30の弾倉(×2)、支給品一式】
【状態:瑠璃子に会いに行く】
観月マナ
【時間:午後8時15分ごろ】
【場所:F-07】
【所持品:ワルサー P38・支給品一式】
【状態:意気消沈】
【備考:往人の所持品と高槻の所持品は木の根元に散在、詳細は下記に。
ラーメンセット(レトルト)化粧品ポーチ 支給品一式(×3=往人と名雪と拓也と高槻のバッグ)】
→034, →282, ルートD
ちょっと長いの投下します。
よろしければ回避お手伝いいただけるとありがたいです;
「それで、この子が娘の渚です」
「鹿沼葉子です」
「・・・天沢郁未です」
ぺこりとお辞儀されたので、それに返すよう二人も自己紹介をした。
眠りについていた古河渚が目を覚ましたのを気に、四人は食事を摂ることになった。
食事と言っても、特別何かを用意するわけではない。
食料はこの診療所に存在しなかった、それぞれ支給品のパンを食べるだけである。
「おいしいですね、お母さん」
「そうですね。でも、うちのパンの方がもっとおいしいです」
時刻は九時過ぎ、夕食にしては少々遅い。
それは眠りについていた渚に対する配慮でもあり、放送という媒体で得た使者の発表も関連していた。
午後六時前、それは放送直前のこと。
負傷した郁未の手当ても終わり、ムードは和やかな物であった。
ただし、それは表面的でしかなかったが。
「郁未さん」
「・・・何?」
治療を後ろで見守っていた葉子が声をかける。
早苗は使用した医薬品を並べている所、声を潜めれば彼女には聞こえないだろう。
「長居は無用です、行動を起こすなら今では?」
「・・・そうね。全くもってその通りだわ」
どこか投げやりな返答、葉子は思わず眉を潜める。
一方郁未はというと、頬杖をつきぼーっと虚空を見つめているような様で。
「・・・はぁ。私はあなたのことを過大評価しすぎていたのでしょうか」
「何よ」
「こちらで同行するようになってからのあなたと、今のあなたはあまりにも違います。
・・・同じクラスAとして、少々見損ないました」
「悪かったわね。確かに私は、甘いわよ」
非情な面も強ければ、その裏も確かに郁未は持っていた。
だからこそ、FARGOの訓練という名の洗脳にも染まりきらなかったのであり。
彼女は彼女のスタンスがあったからこそ、今の彼女に成り得ていたのだから。
つまり。
「・・・?どうしました、郁未さん。私に何かついていますか」
あやすような言葉、それは優しさに包まれていて。
「何でも、ないです。気にしないでください」
思い出すのは母との記憶。その、温かさ。
早苗の無償の優しさは、郁未の心を締め付けていく一方で。
・・・それは葉子の苛立ちを、一層募らせる結果になる。
その時だった。どこに取り付けられているかも分からないスピーカーからノイズが鳴り響いたのは。
そして、放送は始まる。
・・・・・・・・・放送終了後、部屋には重い空気が漂った。
失礼、と背中を向けたまま部屋を出た早苗を目で追う二人。
バタンとドアが閉まると、郁未と葉子は改めて顔を見合わせお互い話出す。
「思ったよりも多いですね」
「そうね。晴香達の名前がなかったのは何よりだわ」
「・・・郁未さん、結局は彼女達も手にかけることになるかもしれないのですよ。
いい加減にしてください・・・ですが、少々状況は変わりました」
「どういうこと?」
「今はあなたの弱さを攻める時じゃないと言うことです」
「・・・」
「わずか数時間でこれだけの死者が出たということ、はっきり言って脅威です。
私達のような存在が主流になっている可能性もあります・・・それに対して」
葉子の視線が部屋の隅、まとめあげられた荷物の方へ移る。
「私達の手元にあるものは接近戦でしか使えないものばかり。
・・・銃器が普通に配られているのです、それを入手するチャンスを上手く作らないと私達自身が犠牲になるだけです。
待ちましょう、チャンスを。幸いここは診療所、きっと人も集まりやすいでしょう」
「・・・そう。葉子さんが、そう言うなら」
「結果としてあなたの望む展開になった気もしますがね。それだけが不満です」
ここで真っ先に早苗を殺した場合のリスクとして、診療所に現れた人物がまず自分達を信用してくれるかどうか。
その点、早苗のような害のない雰囲気を持つ人物はありがたい存在となる。
狙うなら騙まし討ちだ、いかに危険度のない状態で新しい武器を手にできるかがポイントになる。
場に流れるのは気まずい雰囲気、葉子がピリピリしているのは郁未にもよく分かった。
申し訳ない気持ちがない訳ではないが、郁未にはどうすることもできなかった。
重たい空気、それを破ったのは・・・話題にも上っていた古河早苗。
「何をしに行かれたのですか?」
葉子が声をかける、郁未は彼女達に目を合わせられないでいた。
「ああ・・・、すみません。言ってませんでしたね。ここには娘もいるんです、今は疲れて眠っていて。
放送を・・・その、聞いていたかどうか、確かめたかったんです」
早苗の表情が曇る、体も少し震えているようだった。
「良かったです、まだ眠っていて・・・聞いては、いなかったようです」
「そうですか。誰か、知人でも亡くなったのでしょうか。」
「・・・」
早苗は答えなかった。その代わり。
「すみません、あの子が起きてもこの放送のことは言わないでください。お願いします」
それだけ言い、また部屋から出て行ったのだった。
あれだけの人数の死者に対する驚愕か、知人の死による悲しみか。
真相は、二人に伝わることなく流されるのだった。
そして時間は過ぎ、眠り続けていた彼女が起きる。
早苗の容姿が若く見えたものでてっきり幼い少女だと思っていたが、古河渚は郁未とほぼ同年代のようだった。
可愛らしい和やかな雰囲気、容姿も早苗によく似ていた。
そんな、自分と正反対な少女。郁未の心が暗くなる。
「・・・そういえば、渚さんの支給品は何だったんですか?」
「あ、はい。まだよく見てないです・・・えっと・・・あっ」
葉子に尋ねられ、傍らの荷物を漁りだす渚。だが、その顔は一瞬で怯えたものに変貌する。
「渚さん?」
「す、すみません、来ないでくださいっ!!」
回避
郁未の呼びかけに反射的に立ち上がり、渚は三人から遠ざかるように駆け出した。
「・・・渚、どうしたんです?」
早苗も訝しげに見やる。外に通じるドア付近まで下がりきると、渚は泣きそうな声で呟いた。
「私、私・・・」
そして、荷物から取り出したもの。それは。
「!!」
「拳銃、ですか。いえ、でもそれにしては大きすぎる・・・」
渚の小さな手には余りにも大きすぎるそれ、重さもかなりありそうだった。
----ツェリザカ、一丁二百万円という最強の拳銃。
威力が強すぎるゆえの反動の大きさなど、当たり武器とは言いがたい代物である。
だが、ここにいる四人にはそのような知識などあるはずない。
真っ先にそれに目をつけたのは・・・葉子だった。
「渚さん、ちょっと貸していただいてもいいでしょうか」
「よ、葉子さんっ」
「郁未さんは黙っててください。・・・さあ、少しでいいんです」
竦む渚、葉子は追い詰めるように彼女に近づく。
その時だった。
ガチャ、ガチャ。
「え?!」
渚の背後、ドアノブを回そうとする音。
ガキュンッ!!・・・カチャ。
鍵がかかっているのだからドアが開かないのは当たり前、そのはずだった。
だが銃声と分かる破壊音にて、それは無意味な抵抗となる。
「・・・邪魔よ、どきなさい」
バキュンッ!!!
続いて、また一発の銃声音。
一瞬のできごとで、誰も反応できなかった。
・・・何が起こったのか。
鍵がかかっているはずのドアが、何故開いたのか。
それは鍵が壊されたから。
どうして、銃声はまた起きたのか。
それは、銃を撃った者がいたから。
・・・どうして、ドア付近に立っていた渚が倒れたのか。
「いやあああああっ!」
それは、彼女が来訪者の放った銃弾を、眉間に打ち込まれたから。
早苗の叫びではっとなる、駆け寄ろうとする彼女を郁未は必死に抑えた。
「さ、早苗さん、落ち着いてっ」
「いや、いやあ!渚、なぎさっ」
「黙りなさい。・・・ここにこのみはいないようね。あなた達、悪いけど犠牲になって貰うわ」
・・・防弾アーマーを身に着けた完全武装の女性、柚原春夏。
彼女の座った目に対し、思わず郁未の背中に寒気が走る。
嫌な予感だ。・・・彼女は、危険だ!
※
「このみ・・・さんですか?柚原このみさんでしたら、先ほどの放送にて名前が出ていましたが」
郁未とは正反対の様子で、葉子は春夏に声をかけた。
「何ですって?」
「いえ、ですから。柚原このみさんでしたら、先ほどの放送に名前が出ていらっしゃいました。
もうお亡くなりになっています」
「あなた、何を言ってるの?このみが死ぬはずないじゃない、でたらめな事言わないで」
※
「・・・正気では、ないようですね」
足元、今はもう絶命しているであろう渚の手にあったツェリザカは、葉子の近くまで転がってきた。
冷静にそれを拾い上げ、葉子は春夏に向かい対峙するような形をとる。
「郁未さん、早苗さんを連れ逃げてください」
「!葉子さん?!」
「待ちなさい、逃がさないわよ」
「この距離でしたら、その防弾アーマーは役に立ちませんよ?
私はあなたの頭を狙います」
渚に詰め寄ろうとしていたのだから、葉子自身春夏との距離は決して遠くない。
今、彼女は逃げることはできない位置にいる。そうなれば。
回避
「生き残れるあなたを生かすのが、私の役目。
早くしてください、無事でいられたらすぐ追います」
・・・郁未に、選択肢はない。
荷物は部屋の隅、取りに行くこともできないだろう。
郁未は今だ顔面蒼白でブツブツと呟き続ける早苗の手を引き、奥の部屋へと駆けて行った。
「・・・ごめんなさい、葉子さん」
「あなたのために有意義に命を使うことができるのは光栄です。
失望もしましたが・・・やはり、あなたは私の大切な友人ですから」
バタン。外への出口とは反対側の扉が閉じ、部屋には春夏と葉子の二人が取り残される。
「大事な獲物を逃がした罪は重いわよ?」
「そちらこそ、こちらの計画を早くも破綻してくださった代償を支払っていただきたいものです」
それぞれの武器は、お互いの急所に向けて構えられていた。
それ故にできた頓着は、人を逃がすにはうってつけのもの。
目の前に向けられたお互いの銃器を、見詰め合うようにして時間は流れる。
----------手袋もせずマグナムを二発も撃った春夏か。
----------ツェリザカという扱えるはずもない銃を手にした葉子か。
どちらが場を収める事になるかは、まだ、分からない。
80 :
補足:2006/10/17(火) 00:19:06 ID:9nbagvxD0
古河早苗
【時間:午後9時30分】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:なし】
【状態:郁未と逃走】
天沢郁未
【時間:午後9時30分】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:なし】
【状態:早苗と逃走】
鹿沼葉子
【時間:午後9時30分】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:フェイファー ツェリザカ】
【状態:春夏と対峙】
柚原春夏
【時間:午後9時30分】
【場所:GH-09交差点の出口を抜けたところ】
【所持品:要塞開錠用IDカード/武器庫用鍵/要塞見取り図/支給品一式】
【武器(装備):500S&Wマグナム(3/5)/防弾アーマー】
【武器(バッグ内):おたま/デザートイーグル/34徳ナイフ(スイス製)】
【残り時間/殺害数:15時間49分/1人】
古河渚 死亡
(関連・140・247)(Aルート・B−4ルート)
(B−4ルートは※で括った部分を抜いてください)
82 :
約束:2006/10/17(火) 02:44:21 ID:t0VYm/Vo0
貴明と雄二達の問答は長い間続いていた。
「お前は何を言ってるんだ!?このゲームで一度別れたら、また再会するのがどれだけ難しいか、分かってんのか!?」
雄二はまた苛立っていた。
少し前に精神を強く維持する事を決心したばかりだが、
今はそれどころではない。
今回ばかりは落ち着いてられない、今貴明の申し出を認めてしまったら、
もう二度と彼とは会えない予感がしていた。
だから絶対に行かせない。
行かせるわけにはいかない。
「……すまん雄二。俺はどうしても行かなくちゃならないんだ」
「貴くん、どうしてっ!?折角仲間になれたのに…!」
沙織も悲痛な表情で叫んでいる。
「さっきも言ったとおり、放送で呼ばれた中に知り合いがいたんだ」
「だからなんで、それが俺達と離れる理由になるんだよっ!?」
「貴明さぁ〜ん……」
少しして、雄二はある考えに至った。
「お前もしかして…、俺達の事が信用出来ないのか?」
「…………」
その一言に一瞬場が、静まり返る。
「そんな事思ってるわけないだろ…俺はみんなを信用してるし、一緒にいたほうが俺が生き延びれる確率は上がると思う」
「だったら一緒に行動すればいいじゃねえか!!」
貴明の胸ぐらを掴み、怒鳴りつける雄二。
だが、次の一言で彼は何も言えなくなった。
83 :
約束:2006/10/17(火) 02:45:24 ID:t0VYm/Vo0
「俺は、このみやタマ姉達を守りに行く。」
「!!」
「もう大事な人が死んで悲しむのはたくさんだ。なんて言われても俺は行くからな」
はっきりと雄二の目を見て、強い決意を籠めてそう言っていた。
雄二は貴明を掴む手を離し、視線を下に落としていた。
「何だよ水臭えぞ…、俺達も一緒に……」
「駄目だ!」
貴明は今回の問答の中で、初めて叫んでいた。
「危険過ぎる。お前達を巻き込むわけにはいかないよ…」
そう言い、彼は歩き出していた。
おそらくもう何を言っても無駄だろう。
彼の決心は固かった。
雄二達はもう、彼を見送るしかなかった。
「おいっ、貴明!死んだら承知しねーからな!」
「貴明さ〜ん…どうかお元気で…」
「貴くん、また会おうね……」
貴明は一度だけ振り返り、
「ああ、また会おうな。次はこのみやタマ姉も一緒にな。約束するぜ」
微笑みながらそう言うと再び歩き出し、そのまま姿を消した。
雄二達は貴明の姿が見えなくなってからも、しばらくの間その場に立ち尽くしていた。
84 :
約束:2006/10/17(火) 02:46:45 ID:t0VYm/Vo0
―――完全に無防備だな……。
全く、このゲームには馬鹿しか参加していないのか?
どいつもこいつも群れる事しか能が無いではないか。
こいつらも反主催者を掲げ、群れているクチか?
数さえ揃えばゲームから脱出出来るとでも思っているだろうか。
考えが浅すぎる連中だ。
弱者がいくら群れようと弱者は弱者なんだよ。
それを今から教えてやる。
「貴くん…、無事にことみさんやタマねえさんって人と会えると良いね…」
「ああ…そうだな…とにかく俺達は俺達で今出来る事をしよう」
「そうですね…、私達も貴明さんに負けないように頑張りましょう!」
雄二が皆を促し、歩き出したその時。
彼らの近くに何か缶のようなものが飛んできた。
周囲はもう暗くなり始めており、何が飛んできているかよく見えない。
「え?」
雄二達が飛んできた物体の正体を確かめようとしたその瞬間、
辺りは強烈な閃光に包まれ、巨大な音が響き渡った。
それは殺戮者―――巳間良祐の放ったスタングレネードによるものだった。
85 :
約束:2006/10/17(火) 02:48:28 ID:t0VYm/Vo0
河野貴明
【場所:I−6】
【時間:午後7時30分】
【所持品:Remington M870(残弾数4/4)、予備弾×24、ほか支給品一式】
【状態:健康】
向坂雄二
【場所:I−7】
【時間:午後7時30分】
【所持品:死神のノート(ただし雄二たちは普通のノートと思いこんでいる)、ほか支給品一式】
【状態:次の書き手任せ】
新城沙織
【場所:I−7】
【時間:午後7時30分】
【所持品:フライパン、ほか支給品一式】
【状態:次の書き手任せ】
86 :
約束:2006/10/17(火) 02:49:00 ID:t0VYm/Vo0
マルチ
【場所:I−7】
【時間:午後7時30分】
【所持品:モップ、ほか支給品一式】
【状態:次の書き手任せ】
月島瑠璃子
【場所:I−7】
【時間:午後7時30分】
【所持品:ベレッタ トムキャット(残弾数7/7)、ほか支給品一式】
【状態:次の書き手任せ】
巳間良祐
【場所:I−7】
【時間:午後7時30分】
【所持品1:89式小銃 弾数数(22/22)と予備弾(30×2)折りたたみ式自転車・予備弾(30×2)・支給品一式・草壁優季の支給品】
【所持品2:スタングレネード(1/3)・ドラグノフ(残弾10/10)・H&K SMG U(6/30)、予備カートリッジ(30発入り)×5】
【状態:近くの民家の影からスタングレネ−ドを投嚇】
※関連229・275 ルートB-4以外のB系共通
87 :
欠片紡ぎ:2006/10/17(火) 03:54:34 ID:aUPy/Qim0
少年はずっと考え続けていた。
自分に与えられた使命、そしてそれを成す為の手段。
黒幕である篁は死んだ。
だがこのゲームが止まっていない以上、その遺志だけは財閥のバックアップのもと動いているのだろう。
自分の持つ、今ここにいる自分では無い自分自身の記憶。
ここではないどこか別の場所で、同じような殺人ゲームを繰り返している自分の姿。
何故覚えているのかはわからない。
言えるのは、どこで与えられる役目もいつも同じだと言うことだった。
思い出せないだけで、もしかしたら全く違うことをしている自分がいたのかもしれない。
だとしても今自分の成すべき事はなんら変わらない。
――姫君の復活とその力の制御。
幾度となく失敗を重ねた。
場所を変え
参加者を変え
進行者を変え
それでも何も変わることは無かった。
必ず何らかのイレギュラーが起こり、失敗に終わる。
今回もすでに進行役の暴走で方向性が変わってきている欠片もある。
自分の一挙一動がそれらを修正するに至れるのか。
いつまで自分はこの魂の牢獄とも言えるような時間を繰り返すのか。
答えは、姫君が復活し、その制御に成功した時に出るのだろう。
それまで永遠に少年は欠片を紡ぎ続ける。
88 :
欠片紡ぎ:2006/10/17(火) 03:55:07 ID:aUPy/Qim0
「とりあえず、ここから行ってみようかな」
少年は広げた地図を仕舞い、ゆっくりと山を下っていった。
その選択もまた、幾多もの欠片のまた一つ。
少年
【場所:神塚山山頂(F-05)】
【時間:18:15】
【持ち物:レーション3つ】
【状況:目的は参加者の皆殺し。行き先はお任せ】
【全ルート共通(篁の生きているルートは上から3行目4行目を削って下さい)】
89 :
欠片紡ぎ:2006/10/17(火) 03:57:57 ID:aUPy/Qim0
訂正、全ルートで3行目4行目削ってくださいorz
90 :
彰、再び…:2006/10/17(火) 09:03:59 ID:w0+pI81yO
(美咲さん…美咲さんっ!)
七瀬彰は放送を聞いた直後、家を飛び出して村を走り続けていた。
放送に美咲の名がなかったことには安心したが、今こうしている間にも美咲の身に危険が迫っているかもしれないのだ。
(折原、黙って勝手に家を飛び出してすまない。
………でも。それでも僕は美咲さんを探さないといけないんだ)
――しかし、今の彼には肝心の武器がなかった。
仮に美咲に出会えても、今の自分で彼女を守りきれるかどうか――それが唯一の問題だった。
(何か武器になりそうなものが見つかればいいけど……ん?)
その時、彰はふと足を止めた。
彼の視界にまだ建設途中の民家が映ったからだ。
(こんな建物まであるのか?
―――まてよ。なにか使えそうなものがあるかもしれない)
そう思った彰は早速その民家の中に足を踏み入れた。
91 :
彰、再び…:2006/10/17(火) 09:05:24 ID:w0+pI81yO
「………こんなものか?」
民家の中を一通り探索した彰は使えそうだと判断してバッグの中に入れてきた品々を確認した。
鋸とトンカチ、カッターナイフ。そして電動釘打ち機と数十本の五寸釘。
(まさか、こんなに武器に使える物が見つかるなんて……
もしかして、主催者はゲームをスムーズに進めるために密かにこのような物を島のあちこちに用意しているのか?)
彰のその予想は確かに当たっていた。
現に、先程自分と浩平がいた家にも包丁など武器になりそうな品々があったのだ。当の彰はその時はそのことに気付いていなかったが………
(とにかく。これで武器はそろったな。
――折原。これでまた暫くの間は敵同士になるかもしれない。できれば、おまえやおまえの知り合いには会いたくないな……)
ゲーム開始当初の彰の目的は美咲たち以外の参加者全員の殺害だ。
しかし、今の彰の目的はそれとは少し違った。
――美咲に牙を向ける者のみの完全排除。
それが浩平との出会いでめぐり着いた彰の結論だった。
(美咲さんを殺そうとする奴らは僕がみんな抹殺する……!)
彰はポケットにカッターナイフを、それ以外の道具はいつでも取り出せる状態にしてバッグにしまうと、家を後にした。
……そして。彰が家を出た瞬間、その男は現れた。
92 :
彰、再び…:2006/10/17(火) 09:10:54 ID:w0+pI81yO
「少年。気合いが入っているな。これから人を殺しに行くのか?」
「!」
ふいに男の声。
彰はすぐさまバッグから電動釘打ち機を取り出すと、声がした方へ構えた。
「誰だ!?」
彰が振り向いた先には――不気味な笑みを浮かべる岸田洋一の姿があった。
夕方と夜の境界と化している空の下、彰は殺人鬼と遭遇した。
【時間:午後6時45分】
【場所:C−04】
七瀬彰
【所持品:鋸、トンカチ、カッターナイフ、電動釘打ち機(残弾不明)五寸釘(数十本)、支給品一式】
【状態:右腕負傷、ややマーダー(美咲の敵のみ排除)】
岸田洋一
【所持品:カッターナイフ】
【状態:マーダー(やる気満々)】
【備考】
・234の続き。B−2、B−4以外のB系とJ系用。
・電動釘打ち機の装填数と釘の本数は後続の書き手さんに
282「選択の時」執筆者です
「狂人の目覚め」で続けてもらえたんですが、辻褄合わなくなってましたので282を以下のように変更していただければと思います。
×
「レトルトのラーメンに化粧品一式・・・大外れね」
「残念だったな、もう少し早く来てれば銃が手に入ったっていうのに」
「!」
「ただし弾倉だけ」
↓
○
「レトルトのラーメンに化粧品一式・・・大外れね」
「何を言う。ラーメンセットなんて当たりにも程があるだろ」
「・・・」
「まぁ、食せる状況を作らなくちゃいけないんだけどな。第一に。」
に。
また、補足事項も以下にしてください。
月島拓也
【所持品:なし】
【状態:気絶中】
【備考:往人の所持品と高槻の所持品は木の根元に散在、詳細は下記に。
トレカフ TT30の弾倉(×2)ラーメンセット(レトルト)化粧品ポーチ 支給品一式(×4=往人と名雪と拓也と高槻のバッグ)】
(Bルートと違い栞の服装は私服)
よろしくお願いします。
>>93 移動済みの意味を、気絶したままマナに移動させられたと勘違いしてました。
あわせて
>>68 もトカレフTT30の弾倉(×2)を
月島拓也の所持品から備考に変更でお願いします。
これは今から1時間以上前の話である。
美佐枝達が食料を探しに行った後、来栖川芹香は小屋の中に何か使える物は無いか探していた。
武器等があれば今後このゲームで生き抜くのに有利になる、と考えての行動だ。
「………」
そして、寝室の机の上に黒い板状の物体――――ノートパソコンを発見していた。
調べてみると、少し型は古いが普通に動きそうだ。
動作確認してみようと立ち上げてみる事にした。
やはりちゃんと動く。パソコンは問題なく立ち上がっていた。
デスクトップに『参加者の方へ』と書かれたフォルダが置かれてある。
これは恐らくこのゲーム用に用意されたパソコンだな、と理解しすぐにマウスを持ちそのフォルダを開いた。
そして中に入っていたchannel.exeをクリックした。
――画面に映ったそれは「ロワちゃんねる」の文字。
そして立っているスレッドは三件。
『管理人より』
『死亡者報告スレッド』
『自分の安否を報告するスレッド』
まずは『自分の安否を報告するスレッド』から見ようとマウスを操作しようとしたその時、別の部屋から窓の割れる音が聞こえた。
「………!」
敵だ。間違いない。美佐枝達なら窓を割って侵入するような事をするはずがない。
芹香は火炎放射器を構え、音のした部屋へと向かって歩き出した。
小屋は大きく無い、音のした部屋の見当は容易についていた。
音のしたと思われる部屋のドアは閉まっている。
敵が出てくるのならここから出てくるはずである。芹香は緊張した面持ちで、火炎放射器をドアに向かって構えていた。
背中を冷や汗が伝う。
重い重い緊張感。精神が疲弊していく。
しかし、襲撃者がきているのは間違いないのだ。今集中力を切らすわけにはいかない。
「よう、勇ましいお嬢さん、ご機嫌いかがかな?」
「!?」
突然後ろから声をかけられ、慌てて火炎放射器をそちらに向けようとする芹香。
しかし、次の瞬間には大きな衝撃が走り、火炎放射器は手の中から弾き飛ばされていた。
「そんな危ない物は持ち歩いたら駄目だぞ、ククク……」
長身の男―――岸田洋介の振り回した鉈によって、火炎放射器は弾き飛ばされていたのだ。
続けて腹に衝撃。
「うっ……」
うめき声を上げながら、背後の壁の所まで吹き飛ばされる。
状況がよく飲み込めない。恐怖よりも混乱の方が勝っていた。
何故敵が後ろから現れたのだ?一体自分は何をされたのだ?
――虚を突くために窓ガラスに石を投げつけて窓ガラスを叩き割った。
そちらに女の注意が向いてる隙に、自分は悠々と玄関から侵入した。
そして今、芹香を蹴り飛ばした岸田は、舌なめずりをしながら、口元の端を吊り上げつつ、彼女の所へと近付いていっていた。
すぐに殺す事も出来たが、このような美しい女を前にしてそれは余りにも無粋ではないか。
「さぁ、パーティをはじめようか」
岸田は鉈を投げ捨て、立ち上がろうとしていた芹香の腹へもう一度蹴りをいれ、そのまま彼女にのしかかり、
マウントポジションのような体勢を取った。
「………!」
表情にはあまり出さないでいたが、今度こそ芹香に最大級の恐怖の感情が訪れていた。
「お嬢さん……、抵抗しない方が良いぞ。あんまり時間が無いんだ。抵抗すると……」
芹香は目を見開いた。
岸田はポケットからカッターナイフを取り出して見せたのだ。
「屍姦しないといけなくなるからなぁ」
そう言い、空いてる方の手で力任せに芹香の制服の上半分を引きちぎる。
かろうじてまだ下着に守られてはいるが、芹香の胸が露わになっていた。
「やはり肉付きが良い…、素晴らしいぞ!」
そう言い、最高の愉悦を感じながら芹香の下着を剥ぎ取ろうとした瞬間、後ろから物音がした。
「何!?」
振り向くとそこには、火炎放射器を構えた少女、小牧愛佳が立っていた。
「う…、動かないでください!動くと撃ちますよ!」
だが、台詞とは裏腹に彼女の膝は恐怖に揺れていた。
それでも芹香を守る為に、愛佳は勇気を振り絞っていた。
「ほう…、この女ごと、焼くつもりか?」
岸田は芹香の両腕を掴み、自身の盾にするような形で立ち上がっていた。
「そ、そんな…。卑怯です!芹香さんを放してください!」
一瞬で計算を巡らす。
この火炎放射器を構えている女は怯えている。今は虚勢を張っているだけだ。
岸田はすぐにそれを見抜いていた。
人質を上手く使えば殺すのは容易いだろう。
だが、この女が戻ってきたという事はすぐにもう一人の女も戻ってくるかもしれない。
あの女は銃を持っていたし、気も強そうだった。
ここは長居すべきではない。
「よし、交渉開始といこうじゃないか。俺を見逃してくれればこのお嬢さんは解放してやるよ」
岸田はそれだけ言い、芹香を盾にしながら玄関へと向かって歩き出していた。
愛佳はただそれを見守るしか無かった。男は芹香を盾にしている、男の言い分を信じる他、無かった。
岸田は玄関まで辿り着き、そのドアを開けていた。
「約束です…、芹香さんを解放してください!」
「ククク…、分かってるさ…、そら!」
そういって岸田は芹香の背中にナイフを突き刺し、すぐにナイフを引き抜き逃げ出していた。
「や…、やぁぁぁぁ!!!芹香さん!!」
何の収穫も無く引き下がるなど耐えられるか。せめて置き土産くらい残していかないとな。
彼は至福の表情を浮かべたまま、走り去っていた。
そして現在彼は、電動釘打ち機をその手に持っている少年、七瀬彰と対峙している。
(―――さて、どうやってあの武器を奪うか…)
彼は思考を張り巡らせていた。
岸田洋一
【時間:午後6時45分】
【場所:C−04】
【所持品:カッターナイフ(血は拭き取ってある)】
【状態:マーダー(やる気満々)】
七瀬彰
【時間:午後6時45分】
【場所:C−04】
【所持品:鋸、トンカチ、カッターナイフ、電動釘打ち機12/12、五寸釘(24本)、支給品一式】
【状態:右腕負傷、ややマーダー(美咲の敵のみ排除)】
来栖川芹香
【時間:午後5時50分】
【場所:B−03】
【持ち物:愛佳・美佐枝のデイパック】
【状態:背中を刺されている、傷の程度は後続の書き手さん任せ】
小牧愛佳
【時間:午後5時50分】
【場所:B−03】
【持ち物:バックパック式火炎放射器、包丁】
【状態:錯乱気味、芹香に駆け寄っている】
【備考】
・B−10用。260の続き。関連は260と
>>90-92の『彰、再び…』
・血まみれの鉈、ノートパソコンは芹香達がいた小屋に放置
観月マナは固まっていた。
そこには、彼女の知らない得体の知らない光景が広がっていた。
言うならば。
「ウホッ!いい男」
「アッ!!」
18禁、薔薇色の世界。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「萌え〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
観月マナは腐女子に進化した!!
「岡崎×春原、相沢×北川、藤田×佐藤、月島×長瀬・・・・・緒方×藤井!」
「緒方×藤井!藤井さん受け!!」
観月マナは新たなホモを求めて旅立った!!!
観月マナ
【時間:午後8時20分ごろ】
【場所:F-07】
【所持品:ワルサー P38・支給品一式】
【状態:腐女子】
Dルート「狂人の目覚め」続き
「…ところで、皐月さんとか言ったかの」
ホテル跡へと続く山中で、幸村は皐月を呼び止めた。
「ん? 私? 何かな幸村さん。あ、ついでに私の事はさつきち、って呼んでもいいよー」
「ではさつきち」
「…ホントに言いますか」
「もちろん冗談に決まっておるだろう」
しれっと言ってのける幸村に、むむむと唸る皐月。
「こやつ、意外とやりおるわ。流石はこの世の酸いも甘いも知り尽くしたお人でありますなあ」
「うむ、お褒めのお言葉を頂きありがたく奉り候」
「良きかな良きかな。それでは褒美をつかわそうぞ。これこのみ丸、例のものを俊夫衛門に差し上げよ」
「ははーっ、それでは俊夫衛門殿、こちらをどうぞでありますよ〜」
恭しく礼をしながら、幸村にヌンチャクを渡すこのみ。
「ありがとうござる。某、殿に生涯忠義を奉げる所存にござる」
幸村も恭しくヌンチャクを受け取る。
「…では、話を本題に戻していいかの」
受け取るなりしれっと口調を元に戻す幸村。
「むむむ、やはり手強い…」
皐月はこの老人のセンスに並々ならぬものを感じていた。一方のこのみ丸はまだ時代劇から帰還していないらしくちょこんと皐月の側で正座していた。
「このみ丸もうよいぞ、ノーマルモードに戻れっ」
ビシッと皐月が指差すとこのみは軽くジャンプして足についた砂を払った。
「えへ〜、結構楽しかったぁ」
「…続けて、いいかの」
立ちあがったこのみにヌンチャクを返しつつ幸村が言う。皐月も今度は真剣な表情で頷く。
「ホテルを探索した後の事でいいのだが、ここの海岸のあたりに一度戻ってもらえんか」
幸村が地図を取り出し、ある一点を指差す。
「D−1の海岸だね…ここがどうかしたの?」
「誰かと待ち合わせ?」
幸村は首を振って、街道近くの林を指でなぞる。
「…ここに、あるものが置いてあっての。わしでは重くて長時間運べそうにないから置いてきたのだが、あるかどうか確認に行って欲しいのだが」
「何が置いてあるのでありますか?」
「…突撃銃だ」
「ア、アサルトライフル!? まあよくもそんな物騒なもんまで…それで? 見つからないように隠してあるの?」
「うむ、一応はの。しかし掘って隠したわけではないから誰かに取られる恐れもある。特に、殺人者に渡ると危険だ」
二人が頷く。アサルトライフルは恐らくこの島でも特に強力な武器の一つだろう。味方が持つなら頼りになるが、敵に回せば厄介になる。
「だ、だったら急いだ方がいいんじゃないかな…」
不安そうにこのみが言う。
「…私が行こうか? 私なら、体力にはそこそこ自信あるし」
「いや、わしが突撃銃を置いてきてから随分間がたっとる…それに日暮れも近い。夜は下手に動くと動きを察知されやすかろう。わしがここへ行ってくれというのは回収するというよりも、取られていないかどうか、という確認のためかの…」
「つまり取られている事が前提、ってこと?」
「そういうこと、かの。まあ行くのは夜が明けてからでも構わんよ」
「大丈夫、かな…」
「なに、わしだってそう簡単には見つからんように目立たないところに置いてある」
ぽんぽんとこのみの肩を叩いてやり落ち着かせる。そしていつのまにかバッグから顔を覗かせていたぴろもにゃあ〜、とこのみを慰めるように鳴き声を出した。
「あ…猫さん」
「おおすまん、すっかり忘れておった。ほれ、出て来い」
幸村はぴろをデイパックから出し、このみに抱かせてやった。ぴろは特に暴れる事も無くこのみの胸の中でじっとしている。
「あはは、かわいい〜」
「あーっ、いいなぁこのみちゃん。私にも後で抱かせてっ」
皐月も興味深々な様子でぴろを見ている。
幸村は心中で安堵する。自分の発言のせいでこのみを不安にさせてしまったと思っていたので、ぴろの存在が有難かった。
そのまま皐月とこのみがぴろを交換しつつ山道を行く事数十分。ようやくホテル前に辿りついた。
「うっわ…ボロっ! ホテルって言うからもうちっと豪勢なモノかと思ったのに…」
ぶつくさ言う皐月とは対照的に、このみは少し不安な顔つきだ。
「何だか、ユーレイでも出そう…ちょっと怖いなぁ」
「おー? このみ隊員は幽霊が怖いのかね? これから我々はここの探索をするのですぞ?」
頭にぴろを乗せた皐月が挑発的に言う。このみはムッとしつつ、
「こ、怖くなんてないでありますよ〜! さつきち隊長の方こそ、怖いのではないですか」
「にゃ〜にをー? この百戦錬磨のサツキーチ=ユアーサ隊長に向かってそのような発言、言語道断なり! よろしい、では我々が先陣を切って進軍しようではないかね」
そう言うとこのみをずるずると引っ張ってホテル内に侵入する皐月。
「皐月さん、くれぐれも気をつけてな。中に誰かおるかもしれんからの」
「ありゃ? 幸村さんは?」
「わしは、もう少しこの周囲を調べてから行こう。一通り調べてきてくれたらフロントで落ち合おう」
「りょーかい。では改めて行くぞ、このみ隊員」
「あ、アイアイサーであります」
皐月とこのみが入っていったのを確認すると、幸村はホテルの外観を調べ始めた。
ちょうどその時。雑音に混じって若い男の声が聞こえてきた。――死亡者の放送である。
幸村はその内容を聞くや呆然とした。伊吹公子が、亡くなっていたのである。常に笑顔で、優しさを絵に描いたような性格の人間だった。恐らくこの島の毒気にかかった人間の手によって殺められたに違いない、と幸村は思った。
(公子さんの無念、無駄にはせんぞ)
握り拳を作りながら、元々深い皺をさらに深くして幸村は歩き出した。
――幸村は知らない。公子でさえも、この島の狂気に取り付かれてしまったことを。そして、それは徐々に他の参加者にも伝わっていることに。
【場所:E−04】
【時間:午後6時10分】
幸村俊夫
【所持品:支給品一式】
【状態:健康。ホテルの周りを調べる】
湯浅皐月
【所持品:38口径ダブルアクション式拳銃(残弾8/10)、予備弾薬80発ホローポイント弾11発使用、セイカクハンテンダケ(×2)、支給品一式】
【状態:健康。ホテル内の捜索開始】
柚原このみ
【所持品:ヌンチャク(金属性)、支給品一式】
【状態:健康。ホテル内の捜索開始】
ぴろ
【状態:健康。皐月の頭でのんびり】
【備考:B系統のルートで】
夜道を人が3人歩いている。
二人の少女と、一人の少年が歩いている。
全員が割烹着を着て頭には頭巾を被っており、その存在感は一際異彩を放っていた。
北川は親友と合流出来たにもかかわらず、別行動を取った。
それは何故か。
・このゲームでは仲間が多ければ多いほど安全なわけではない。
人数が増えると裏切りの可能性も高くなるはずだ。
・仮に多人数の仲間を作り、その仲間達が全員裏切らなかったとしても
首輪を何とかしなければどうしようもない。
・島内を探索するには小数の方が身軽で動きやすい
以上の理由から北川は祐一達と別行動を取り、首輪を解除出来る技術力を持った人間を探していた。
そして今彼らは平瀬村からそう遠くない位置へとあるホテル跡へと向かっていた。
本当はすぐに平瀬村へと向かいたかったが、夜中は見通しが悪く危険だ。
下手に夜に動き回るより、ホテル跡に泊まって明朝動いた方が良いだろうと考えての結果だ。
広瀬真希と遠野美凪は最初は北川の導き出した今後の行動方針に感心していた。
確かに北川の言うとおり、首輪を解除しなければどうしようもない。
彼女達は北川を見直し、尊敬もした。しかしそれは長く続かなかった。
「なんで俺達、ずっとこんな格好してるんだろうな…」
「一応防弾性があるらしいんだから、文句言わないのっ!」
「実はそう見せかけて、単に主催者の趣味なだけかもしれないぞ」
「…………ぽっ」
「んなわけないでしょっ!アンタも信じないのっ!」
今ではこんな調子で、すっかり元の凸凹□トリオに戻っていた。
「とにかくもうちょっとでホテルに着くはずだ。そろそろ荷物を任せても良いか?」
これでも一応男だからな、と言ってこれまで3人分のデイバックを持っていた北川だったが、
目的地が近付いたのでバックを遠野と広瀬に返していた。
「うん、ご苦労さま」
そう言いつつバックを受け取る広瀬。
「ご苦労様で賞……進呈」
そう言いつつポケットを探り出す遠野。
「いや、お米券はもういらないぞ……」
「…………残念」
遠野は本当に残念そうに、取り出したお米券を閉まった。
そんな事をしながら歩いていると、ようやくホテル跡が見えた。見えたのだが。
「……これはあんまりじゃないか?」
眼前に見える建物は、まるで幽霊屋敷。ボロボロであった。
ホテル跡は夜な事も合わさって、いかにも”出そう”な雰囲気を有していた。
「それでも今から他の場所に行くのは危険だし、体力的にも厳しいわよ」
北川は少し顎に手を当て考え込み、目の前のホテル跡と地図を交互に見やった後結論を出した。
「ホテル跡に泊まる…………そう考えていた時期が俺にもありました」
遠い目をしつつそう言って踵を返そうとする北川。
「ちょっとアンタ、どうする気なの?」
ジト目で尋ねる広瀬。
「ここからなら山が近いしそこで野宿する。山でキャンプ……最高じゃないか!」
身振り手振りを交えて力説し、颯爽と山へと向かおうとした北川であったが、
ガシッ!
「そんな所にレディーを泊まらせないのっ!」
彼は首根っこを広瀬に掴まれて、ホテル跡に向かって引きずられていった。
「………勇敢で賞、進呈」
当然後ろでは遠野がお米券を渡すチャンスを伺っていた。
こうして彼らは沖木島・肝試しツアーを開催する事となった。
【時間:1日目午後8時半ごろ】
【場所:E−4、ホテル跡】
北川潤
【持ち物:SPAS12ショットガン 防弾性割烹着&頭巾、他支給品一式、お米券】
【状態:疲労、首輪を外せる技術者を探す】
広瀬真希
【持ち物防弾性割烹着&頭巾、他支給品一式、携帯電話、お米券】
【状況:疲労、北川に同行】
遠野美凪
【持ち物:消防署にあった包丁、防弾性割烹着&頭巾 水・食料、他支給品一式、お米券数十枚】
【状況:疲労、北川に同行】
B-10ルート、244の続き
B,及びB-2ルート投下します。もしお暇な方がいたら連投回避ください。
「はぁ…当たり役、ね。確かに当たりだわ」
昨日までの平和だった日常と反転してしまった現状。
柚原春夏から溜息が途絶なく続く事を、誰も責められまい。
再び溜息を吐きつつ歩く道すがら、先ほどの会話を今一度思い返す。
―――20時間以内に10人殺害出来れば、このみをこのゲームから解放する。
この手のパターンにおいて、相手の言う条件など、ほとんど守られるはずはないだろう事、
かと言って、相手に乗らなければ私はもちろん、このみまで即座に殺されてしまうだろう事は
容易に想像出来た。つまり、どちらにせよ、春夏にはこの恐ろしい殺人ゲームに参加するより
他は無くなってしまったのだ。
両手を血で染めた私を、このみは受け入れてはくれないだろうな。
でも、それでも構わない。例えわずかでも、このみが生き残れる可能性があるのなら!
両手の袖をまくり、頬をパンパンと叩き、自分自身に決意を促す。
震える手足、バクバクと蠢く心臓を誤魔化すように、
「さて、そうと決めたら、チャチャっとやっちゃおうかしら」
と、軽い口調での独り言。だが、そんなノリでいないと、この狂った世界に押し潰されそうで
たまらなかったのだ。
地図を広げ、この島の様子を再確認する。
人の集まりそうなポイントは…鎌石村、氷川村、平瀬村の3つの村。
しかし、人が集まりすぎていても、逆に私が殺されてしまう可能性の方が高い。
そうなると、治療の出来る診療所がある氷川村と、役場や郵便局など大き目の建物の多い
鎌石村は分が悪い。とりあえずはポイントを平瀬村に絞る事にする。
島をほぼ横断する事になるため、時間を考慮し、疲労はしているが足を動かすペースは緩めない。
幸い、道一本で辿り着けるので道に迷う事を考えなくて済む分、気楽ではあった。
ひたすら心を無にして歩き続ける。殺人を犯す事にためらいを持たないようにするために。
足が棒のように重くなり、もはや時間の間隔も無くなってきた頃…
はぁっはぁっはぁっ…
複数の甲高い息遣いが風に運ばれてくる。静かな島だし山間の道でもあるから、
音の通りが良いのであろう。おそらくこのみと同じくらいの少女のものだろう。
―――緊張しつつも、右手はグッと支給された銃を握り締める。
前から歩いてきた2人は、どうやら双子の少女のようだ。見た目にはかなり幼い。
しかし、見てハッキリとわかった事がある。…このみと同じ制服を着ているのだ。
もしかしたら、このみの知り合いだろうか?だが、例えそうでも躊躇はできない。
こんな子達も、こんな場所へと駆り出されてしまったのね。かわいそうに…。
でも…、ごめんなさいね。私も、このみのために仕方が無いの。
*****
「はぁ…はぁ…さんちゃん、さんちゃん、ここまで来れば、たぶん大丈夫やで」
もうどれだけ走っただろうか?姫百合瑠璃は力尽きるように立ち止まる。
瑠璃の頭では理解出来ない範疇の出来事があまりにも多すぎた。
動物とも取りづらい生物、横たわる少女、冷酷な目の輝きを見せた女性…。
すでに体力、精神共に限界に来ていた。もし珊瑚がそばにいなければ、
とっくに泣き喚いて錯乱していただろう。
しかし、珊瑚さえそばにいてくれれば、瑠璃は強くいられる。
大好きな珊瑚を守るべく、しっかりと地に足をつけていられるのだ。
「うん…そうかもなぁ。あぁ……いっちゃん、大丈夫やろか…」
珊瑚は憔悴しつつも、イルファの身を案じていた。
自分は瑠璃さえいてくれれば大丈夫。
しかし、イルファをあの現実とは思えない世界に置き去りにしてしまったのだ。
いくらイルファはロボットとは言え、戦闘用に作られたものではない。
運動神経にしたってせいぜい人よりも多少ましに動ける程度だし、
格闘プログラムなんて教え込んでもいない。
確かにあの場に居続けたところで、単なる邪魔者なのだが、それでも
自分達がいなくなったとしても、イルファが無事に自分達の元に戻ってこれるという
確証は何も無かった。
「さんちゃん、イルファの事が心配なのはわかるで?わたしもや!でもな?
わたしたちが生き延びられへんかったら、イルファは何のために、あの場に
残ってくれたん?今はその事は考えたらあかん」
「せやな……瑠璃ちゃん、堪忍な。もう言わへん。今はがんばって逃げ延びよう、な」
珊瑚は瑠璃を優しく抱きしめ、再び歩き出す。
すると、薄暗がりの中から、うっすらと人を象ったシルエットが見える。
「瑠璃ちゃん、人やあ〜。誰かおるで」
「あかん、さんちゃん。こんな場所じゃ、誰が信用できるかなんて、わからへん。気ぃつけよ」
2人は頷きあい、向かいから歩いてくる人へ警戒の眼差しを向ける。
*****
回避〜
「あら…、どうしたの?ずいぶんと疲れ切ってるみたいだけど。何かあったのかしら」
目の前の女性は心配そうに語りかけてくる。
普段着にエプロン。見た目は若いが、母親なのだろう。
ふと会わなくなり久しい両親を思い出し、心細さに泣きそうになったが、グッとこらえる。
「……」 「……」
「私を怪しんでいるのね、無理もないわ。よほど危険な目にあってきたのね。
でも、安心してちょうだい? 私は、その制服をよく知ってるの。私の娘、柚原このみと同じ制服だから」
「柚原…このみ…。このみ…って、貴明の幼馴染のあの子やんか〜!」
珊瑚は歓喜の声を上げる。捨てる神あれば何とやら。この悲惨な状況で、知り合いと呼べる人間と
再び出会える事が出来たのだから、当然だろう。
「そう、貴くんと…このみを知っている子なのね。私は柚原春夏。このみの母親です。
2人が今、どこにいるか知ってる?」
黙って首を振る2人。それまでの警戒は一気に消えうせ、安堵の思いでその場に倒れこみそうになる。
「そう…。でも、同じ島にいるのは間違いないでしょうね。こうして貴方たちにも出会えたのだから…
あなたたちも大変だったでしょう?怖かったでしょう。これからは、一緒に皆を探しましょう」
今の2人にとって、その言葉は今までのどんな言葉よりも心強く、優しかった。
今までに溜め込んできた恐怖、怯え、そういった負の感情が全て押し寄せてきて、限界に達した。
「うわあああぁぁぁん」
春夏に駆け寄り、倒れこんで泣きじゃくる2人。それを優しく抱き寄せ、見守る春夏。
しかし、それは彼女らにとって、最後の安らぎだった…
バンッ!!
「え…!?」
こめかみを撃ち抜かれ、何が起こったかもわからないまま卒倒する珊瑚。
それを呆然と眺める瑠璃…。
衝撃で吹き飛ばされながらも、再び瑠璃に駆け寄り…
バンッ!!
何も言えないままに眉間を撃ち抜かれ、ゲームの終了を告げられた瑠璃。
―――こうして、珊瑚と瑠璃にとっての理不尽なゲームは幕を閉じた…
*****
ごめんね…ごめんなさいね…。
こうしないと、このみは生き延びられないの…。
例えあなたたちが、このみや貴くんの友達でも、
今のわたしには、こうするしかなかったの……。
手足が再び震えだし、溢れる涙を抑えられない。
硝煙の悲しき薫りに包まれて、2人の亡骸を背に、春夏は立ち尽くす…。
―――このみ、私の手は血に染まっちゃった…こんなお母さんを許してね…
/*/*/* DATA */*/*/
【時間:一日目午後7時半】
【場所:G−06】
◎柚原 春夏
【状態:疲弊、深い悲しみ。ゲームに乗る決意】
【所持品:要塞開錠用IDカード/武器庫用鍵/要塞見取り図/支給品一式】
【武器(装備):500S&Wマグナム/防弾アーマー】
【武器(バッグ内):おたま/デザートイーグル/34徳ナイフ(スイス製)】
【残り時間/殺害数:17時間49分/2人】
◎姫百合 珊瑚
◎姫百合 瑠璃
【状態:死亡】
ルートB及びB-2、247・287の続きです。
>>114 助かりました。ありがとうございました〜。
119 :
10:2006/10/18(水) 04:03:31 ID:iSjpE5ot0
→245
→258
→287
←261
⇔300
B系共通で
「銃声……!」
それもとんでもなく大きい。
柳川か。
そうでないのか。
柳川かもしれない以上、行かないと言う選択肢は無かった。
そこで待っているものも知らずに。
レーダーの反応が一つ消えた。
それは、イルファの存在を示す光点ではなかった。
あの、瑠璃を襲った、人ならぬ人の光点だった。
「さんちゃん! イルファが勝った!」
「うん……でも、いっちゃん、殺したんやね……」
「あ……うん……。……でも、それでも、ウチはイルファが生きてくれてる方がずっと嬉しい」
「うん……そやね……ウチもそう思う。いっちゃんが生きててくれて、よかった」
「じゃ、早く行こう。イルファ、きっとウチらのこと探してる」
「うん。そやね。……あ! まって! また、他の人がいっちゃんのところいっとる!」
その時、レーダーの光点が一つ大きく動いているのが目に入った。
「ええっ!? ああっ、どないしょー……」
「助けにいかな!」
珊瑚が立ち上がって叫ぶ。
「さんちゃん! あかん!」
「なんで!? なんであかんの!? いっちゃんが危ないのに!!」
「さんちゃん、ウチらは足手まといや! さっき、イルファがウチらのこと狙ってきた人から守るためにけがしてる!
またウチらが行ったらイルファが余計に危ない!」
「でも!でも……」
「イルファなら大丈夫や! きっと、きっと帰ってきてくれる!」
「……分かった……」
珊瑚は、目に涙を浮かべながら再び座り込む。
そうして、二人で再び帰りを待った。
(さんちゃんだけは危ない目に合わせられへん……)
(いっちゃん……無事で帰ってきてな……)
それぞれの思惑を抱えながら。
(早く……瑠璃様達の所に……行かないと……)
イルファは弾丸を回収し、デイパックを持って歩き出した。
「千鶴姉ッ!」
後ろから声が聞こえてきた。
私を誰かと勘違いしているのでしょうか。
それとも……やはり……
「待てっ!!」
私が殺したあの女性の知り合い、でしたか。
「お前が千鶴姉を殺したのか?」
押し殺すような声。
「千鶴姉、とはその女性のことですか?」
「そうだっ!」
「……全てを、聴きたいですか?」
「なんだと……!」
「貴女が全てを聴きたいと言うのなら、私は全てを話します。但し、最後まで聴く事を約束してください」
「巫山戯るなっ!」
「……巫山戯てなどいません。貴女が最後まで聴くと誓えば、私は全てを話します。そうしないのなら、私は何も話しません」
「このっ……! ……畜生……分かった……約束する。さぁ、話せっ!」
「まず、貴女はそこから動かないで下さい。私も話し終わるまでは動きませんし、貴女が約束を反故にしない限り銃口も向けません」
「分かったから! 早く話せっ!」
「……分かりました。貴女は、柏木梓さんですか?それとも……」
「! 何で知ってる!」
「貴女が千鶴姉、と言ったからです。千鶴は柏木。柏木性の女性名はもう梓と初音しか在りませんでしたから」
「くっ……」
「貴女は、その女性を殺した人をどうしたいと思っていますか?」
「決まってる! 八つ裂きにしても飽き足らない!」
「貴女にとって、その女性はとても大事な人だったのですね」
「それがどうした! 早く話せ!」
「貴女は、自分の大事な人が唐突に理不尽に殺されそうになったらどうしますか?」
「さっきからなんなんだ!?話す気が無いのなら……」
「答えてください。……必要な事なんです」
「ちっ……分かったよ……そんな奴、あたしが殺してやる。誰も殺させない」
「もう一つ。貴女はその女性を殺した人と同じ位に八つ裂きにしたい人はいますか?」
「っ……! おまえ……何のつもりで……!」
「いるんですね。……その人は、柏木楓を殺した人ですか?」
「!! おまえ! 何でそんなことを知ってる!?」
「先程の放送で柏木楓という名が出てきました。ですから、もしかしたらと」
「やかましい! 早く答えろ!」
「多分、これで最後です。柏木楓という人が殺される前は貴女はどうしようと思っていました?」
「そんなこともう忘れた!」
「ちゃんと、答えてください」
「くそっ……皆を探してたよっ! さあもういいだろう! 早く答えろ!」
10氏の贔屓キャラが殺されたら毎回毎回すぐに対抗項投下ってやり方には反吐が出るが、
同じ書き手である以上連投回避しないわけにはいかないな
……頼むから贔屓ルートはアンタ用ルートのIでやってくれよ。
お前一人で何個分岐作る気なんだよ
「……分かりました。その女性、柏木千鶴を殺したのは……私です」
「っ……!! きっさまぁぁーーーーーー!!!!!!」
「最後まで!!!」
「未だ何か在るってのか!? ふざけんな!」
「聴くとあなたは誓った!!! 聴きなさい!!! 貴女にはその義務がある!!!」
「くっ……そぉぉーーーー!!!!」
梓は近くの木を殴りつける。
「聴き終わったら……殺してやる……絶対に……」
「……話を続けます。先程、私は貴女に動くなと言いました。ですが、少々動いてもらいます」
「……何処にだ?」
「あちらの茂みに。その間、私は銃口を貴女には向けません。その代わり、貴女は私に近付かないように移動してください」
「……分かった」
梓は円を描くように近くの茂みへ行った。
そこには、一人の血塗れの少女がいた。
未だ微かに息は在る。
しかし、このままでは危ないのが見て取れた。
「!! これは……! おまえ、千鶴姉だけじゃなく……」
「違います。それは、貴女のお姉さんがしたことです」
「嘘だっ!! 千鶴姉はこんなこと……」
「傷痕をよく見てください。私の武器はこれです」
そういって、銃を示す。
「っ……! だからって、おまえがやってないとは限らないだろう……」
「貴女のお姉さんは人間とは思えないような力がありますね」
「!!」
「知っているようですね。貴女も、同じ力を持っているのですか?」
「……おまえに、関係あるか……」
「そうですね。確かに貴女の質問とは関係ありませんでした。戻します。仮に私が人を殺そうとするなら、素手の打撃は選びません」
そして、左腕を掲げる。
「まして、貴女のお姉さんにやられて今はこうですし」
「……いいから……早く話せ……」
「はい。貴女のお姉さんがその女性を殺そうとしている時に、み……私の大切な人がその場面を見てしまいました」
「……」
「そして、貴女のお姉さんは私の大切な人に襲い掛かって来ました」
「千鶴姉が……そんなこと……」
「私は千鶴と言う人の普段の精神状態を知りませんし、その女性がどうして殺されそうになっていたのかも知りません。
また、み……私の大切な人にどうして襲い掛かってきたのかも今となっては分かりません。
見境無しに殺そうとしていたのか、見られてしまったから殺そうとしたのか、それとも……」
実は殺す気は無かったのか。
多分、これは無いのだろう、とイルファは思う。
「もしかしたらあの放送がきっかけになったのかもしれませんが、今となっては藪の中です。
そして、私は私の大切な人を逃がし、大切な人を守るためにその女性と殺し合いを始めました。
その結果が……これでした」
「そうだ! あんたは千鶴姉を殺した! それだけで……」
「私を殺すには十分、ですか?」
「そうだ!」
「私が殺人者だから?」
「違う! 千鶴姉を殺したからだ!」
「他の条件を一切排除して、ただ私が殺した、と言う結果のみを見て私を悪とするのですか?」
「ぐ……」
「貴女のお姉さんは私の大切な人を殺そうとし、それを止めた私も殺そうとしました。
殺意が無かったと言うことは無い筈です。
この腕を潰された時、『諦めて死んでください』と彼女が言ったのを確かに聴きました。
私が負けていたら確実に殺され、私の大切な人ももしかしたら……
貴女はそれでも私を悪とするのですか?」
「うるさい! あんたは千鶴姉を殺した! それで十分だ!」
「そうですか……」
一呼吸溜めて、イルファはそれを言い放った。
「でも、貴女も私と同じですよ?」
「!!! ど……どういう意味だ……あたしは誰も殺してなんか」
「私は最初に貴女に『自分の大事な人が唐突に理不尽に殺されそうになったらどうしますか?』と尋ねました。
それに対して貴女は、『あたしが殺してやる。誰も殺させない』と答えました。
私と貴女、何処か、違いますか?」
「う……」
「私は貴女とは闘いたくはありません。
ですが、貴女がもしその千鶴と言う方と同じ力を持っているのなら、私は逃げられないでしょう。
私だけなら問題無いのですが、私には守らなければならない人がいます。
ですから、貴女が私を追うというのなら、私は逃げません」
しかし、そういってイルファは悲しそうな顔をした。
「重ねて言いますが、私は貴女とは闘いたくありません。
貴女と戦って負けて殺された時、み……私の大切な人がこの島に放り出されます。
私はそれが恐ろしい。
貴女は私以外にも八つ裂きにしたい方がいるのですよね。
それがもし私の大切な人でなければ、私は貴女に何もしません。
その方の名前をお伺いして宜しいでしょうか」
「……柳川……祐也だ」
「その方は私の大切な人ではありません。
貴女が私の大切な人か私に何もしないのであれば私は貴女に何もいたしません。
許してくれ、とは言いません。
ですが、見逃していただけないでしょうか。
貴女が柳川と言う方を八つ裂きにしようが私は関与いたしません。
その代わり、私の大切な人には手は出させません」
「っ……勝手な……ことを……」
「……貴女は、恐らく優しい人なのですね。私は、このままここを去ります。
そこに倒れている人は貴女に任せます。私は私の大切な人を守ります。
……私には、そこまでの余裕はありません。あなたがここに来たのは、その人にとって幸運だったのでしょうか。
願わくは、不幸でなかったとあって欲しいですが。私がそれを願うのは傲慢ですね。
あなたがそこの人を見捨てても、その人を殺したのは貴女ではなくあくまで千鶴と言う方です。
見捨てたと言うことであれば、私も貴女と同罪です。気に病む事はありません。
私も貴女も千鶴という方もこの島に毒された被害者ですから」
「ふざけるなっ! 人の命はそんなに軽いものじゃない!」
「それでも、貴女は殺すと言いました。軽くない筈の命を、です」
「っく……」
「その方を助けたいのなら是非そうしてください。私は去ります」
「待てっ!」
「なんでしょうか」
「……あんたの……名前は……」
「すみません。申し上げることは出来ません」
「……何故だ」
「私が倒れた時、私の大切な人が貴女に助けを求めた時、その方が私の名前を口にしたら貴女はどう思いますか?
私が貴女に最悪に近い印象を持たれているであろうことは想像に容易です。
その時、貴女は積極的に助けようと思うでしょうか。私の幸せは、私の大切な人が幸せになることです。
……例えこの身が朽ち果てようとも。ですから、貴女には出来るだけこの島の弱者を救ってもらいたいと思います。
……これも、傲慢な考えですが」
「じゃあ……あんたの大切な人は名前か苗字が『み』から始まるのか?」
「!! ……なんのことでしょうか」
イルファは一瞬驚いた顔になり、すぐさま平静を取り戻したかのようになった。
「私は去ります。さようなら……」
そういって、イルファは後ろ向きのまま茂みに姿を消した。
後には梓と傷ついた少女、彼女の姉の死骸が残った。
「……くそっ! くそっ!! くそぉおおおおおおおおおおっっ!!!!!!」
そして、彼女は傍の木を何度も殴る。
手の皮が裂け、血が吹き出るまで殴った。
「くそ……畜生……」
それは、一体何の呟きだったのか。
梓はゆっくりと血塗れで倒れ臥す少女の元に向かった。
こんな長々と……虚しくならないのかね
誰も続き書くはずないし一人リレー用ルートなんてそれこそまとめさんに負担かけるだけだろ
ま、連投回避付き合う俺も馬鹿だが。
もう異常な贔屓っぷり抑えて普通の話書こうよ、やる気はあるみたいだし勿体無い。
ハカロワなんて大体のキャラは死ぬ舞台なんだからさ
一応回避
ありゃ、備考忘れてますよ
イルファは梓が見えなくなったことを確認すると、横に移動し始めた。
(ミスリード、撹乱、煽動……)
やれることは全てやったつもりだった。
この上梓と言う少女がこちらを追ってきても、珊瑚達には出会えない筈だ。
それでも追ってくるならもう片腕くらいくれてやる。
その代わり、確実に仕留める。
そんな気構えで逃げてきたが、追ってくる事は無かった様だ。
(瑠璃様……珊瑚様……)
早く……早く会いたい……
イルファは周囲の木々を揺らさぬよう、極力急いで瑠璃たちが逃げていった方に向かった。
「すまない……もう、止まれないんだよ」
あの時、あの女がいなくなってから暫く考えてしまっていたが、結局結論は変えられなかった。
梓は軽く手当てだけをしたあかりを神社に横たわらせて、神社を飛び出した。
その背にデイパックと何かの悔恨を背負って。
「取り敢えず……柳川だ……」
あの女の事は後で考えよう。
「止まれ……ないんだ……」
誰に対して呟いたのか。
その声を聴くものは、そこにはおらず、その一瞬後には彼女もそこからいなくなっていた。
「!! さんちゃん、誰か、もう行ったよ!」
「ほんまや! あれ……? なんでいっちゃんこっちいっとるんやろ……」
「ウチらがおるとこ分からんのとちゃうの? 早くイルファ迎えにいかな! さんちゃん、はよいこ!」
「あ、うん!」
そうして彼女達は立ち上がり、自分達を守ってくれた騎士の元へと駆け出していった。
イルファ
【持ち物:デイパック*2、フェイファー ツェリスカ(Pfeifer Zeliska)60口径6kgの大型拳銃 5/5 +予備弾薬5発(回収)】
【状態:左腕が動かない、珊瑚瑠璃との合流を目指す】
姫百合瑠璃
【持ち物:デイパック、水を消費。携帯型レーザー式誘導装置 弾数3】
【状態:軽い精神的疲労、安堵、イルファとの合流を目指す】
姫百合珊瑚
【持ち物:デイパック、水を消費。レーダー】
【状態:軽い精神的疲労、安堵、イルファとの合流を目指す】
柏木梓
【持ち物:デイパック、不明(次の方任せ)】
【状態:右手甲に裂傷、柳川を探す】
神岸あかり
【所持品:デイパック】
【状態:血塗れ(軽い手当て済み)】
共通
【時間:一日目午後七時三十分頃】
【場所:F-06】
135 :
10:2006/10/18(水) 04:42:58 ID:iSjpE5ot0
陽が落ち、あたりが茜色に染まる夕暮れ時、島内の各所に設置されたスピーカーから
奇妙に甲高いウサギの声が響き渡る……
「――諸君、聞こえるか? これより死亡者の報告を行う。
2番 藍原瑞穂
12番 岡崎直幸
15番 緒方理奈
18番 柏木楓
33番 草壁優季
52番 沢渡真琴
53番 椎名繭
61番 醍醐
63番 篁
68番 月宮あゆ
92番 伏見ゆかり
93番 古河秋生
110番 森川由綺
――以上の13名だ。
諸君にはこの調子で頑張ってもらいたい」
「なお、この放送は午前六時と午後六時の計二回行われる。
二回続けて誰の名前も挙がらないときは全員の首輪を爆破するので
そうならないよう頑張って殺し合ってくれたまえ――」
【第一回定時放送】
【時間:一日目18:00】
パンッ!!
その銃声はあまりに突然で、銃弾が彼女に当たらなかったのはただの偶然にすぎなかった。
彼女、松原葵は自分が狙われていると悟るととっさに木の陰に身を隠した。
銃弾の飛翔した方向から一人の女性が姿を現した。
姫百合姉妹の為にこのゲームに乗ることを決めたイルファである。
「貴女に恨みはありませんが、瑠璃様達の為に死んで頂きます!」
そう言い放ち、銃を構えてじわりじわりと間合いを詰めていくイルファ。
葵は逃げ出そうにも、迂闊に動けばただ撃たれるのみである。容易には動けない。
葵の得物は鎖鎌。熟練者ならともかく、素人が容易に扱えるものではなかった。
もっとも、武器が何であれゲームに乗ることなどまったく考えて無かったのだが。
(銃さえ無力化すれば話し合う余地があるかもしれない……)
(徒手でなら遅れをとることもないはず……)
(だけど、ただ出たのでは撃たれるだけ……)
(ギリギリの間合いと、あと一点何か決め手が欲しい……)
(……さっき、なんて言った?)
(恨みはないけど誰々の為に死んで欲しい…だったっけ……なら!)
「守るものがあるのなら!どうしてこのゲームを壊そうと思わないんですか!!」
葵が叫ぶとわずかにイルファの動きが鈍る。その一瞬の隙を突いて葵は討って出た。
狙うは、銃。
がし!
手ごたえは、あった。
だが。
葵の突きは銃を持った右手ではなく左腕を捉えていた。
左腕の影から銃口が見える。
パンッ!パンッ!
銃声二発。
どさり、と音を立て葵は崩れ落ちた。
葵の誤算は二つ。
イルファの運動能力が普通の人よりは優れていたことと、
イルファがメイドロボだったこと。
もしイルファが普通の人間だったら激痛で動けなかっただろうに違いない。
動かぬ塊になった葵を見てイルファは思う。
(ゲームを壊す…その響きは甘美かもしれません……)
(ですがそれは…あまりにも儚い夢まぼろしです……)
葵の荷物を詰め替えて、イルファはその場を立ち去った。
愛しい者達を守るために……
【97 松原葵 死亡】
【9 イルファ】
【時間:午後3時】
【場所:D-02】
【支給品:マカロフ(装弾数5予備弾16)・鎖鎌・デイバック(二人前)】
【状態:左腕にダメージ】
目的:瑠璃・珊瑚・貴明以外の全員の排除
陽が落ち、あたりが茜色に染まる夕暮れ時、島内の各所に設置されたスピーカーから
奇妙に甲高いウサギの声が響き渡る……
「――諸君、聞こえるか? これより死亡者の報告を行う。
2番 藍原瑞穂
12番 岡崎直幸
15番 緒方理奈
18番 柏木楓
33番 草壁優季
52番 沢渡真琴
53番 椎名繭
61番 醍醐
63番 篁
68番 月宮あゆ
92番 伏見ゆかり
93番 古河秋生
97番 松原葵
110番 森川由綺
――以上の14名だ。
諸君にはこの調子で頑張ってもらいたい」
「なお、この放送は午前六時と午後六時の計二回行われる。
二回続けて誰の名前も挙がらないときは全員の首輪を爆破するので
そうならないよう頑張って殺し合ってくれたまえ――」
【第一回定時放送】
【時間:一日目18:00】
まとめさんへ
B−4ルートをもう少しとっつきやすいルートに改変したく思い、
既存で投下されている話を改変し採用させていただきたいと思いました。
お手数ですが292「診療所の争い」をNGとし、
それに変わり281「この島にいる全ての人に」に繋がるようルート調整をこちらでさせていただきたいと思います。
さしあたって、162「母の面影」をB−4でも採用させていただきたく、
B−4の場合以下のように改変していただければと思います
本当にお手数をおかけして、申し訳ありません;
休める時は休む、体力は無限ではないのだから。
天沢郁未は診療所のベッドに横になり、瞼を閉じている。
交代の見張り制にし、順々に疲労が溜まっているであろうメンバーに小休止を与えることになったのだ。
ふと、隣のベッドを見ると眠り続けていて今だ挨拶していない古河渚の横顔が見えた。
外の見張りは鹿沼葉子と古河早苗が担当していた。
年小組みから休憩ということ、葉子が起きているなら、と郁未も特に反対はしなかった。
「ゆっくり休んでくださいね、郁未さん。外は私達に任せてください」
思い出すのは早苗の微笑み。
少し、感傷的な思いが生まれるが、郁未はそれを取り払おうとした。
・・・キィ。
その時、足元の方・・・部屋の扉が開く音がした。
気を張る、コツコツという足音は、渚のベッドの隣にて止まった。
(・・・誰?)
薄く目を開ける。・・・暗くてよく見えないが、背格好で分かった。
「渚・・・まだ起きないのですね」
声。
渚の顔を覗き込むようにし、早苗が彼女の頬を撫でているのが見えた。
心配そうな顔。・・・母の、表情。
しばらくそうした後、渚の布団をかけ直し、足元はこちらに向けられた。
「まだ眠っていてくれていいですよ。私達がいますから、安心してくださいね」
気がついたら、じっと彼女を見つめていた。
早苗は何も言わず自分を見つめる少女にむかい柔らかい笑みを浮かべながら、枕元までやってきた。
そして。
ふわり。
頬に感じた優しい体温、さすりさすりと撫でられる。
「もうすぐご飯になりますからね、後ちょっとだけ待ちましょう」
それは、さっき見た光景の再現。
暖かい、その感触に酔いしれる。懐かしい感覚が郁未の心を締め付けた。
手が離れ早苗自身も扉の方へ、郁未はその姿から目が離せないでいた。
「お母さん・・・」
そして、気がついたら漏れていた声。
早苗には届かない本当に小さな呟き、郁未は言葉を噛み締めた。
・・・早苗の姿が部屋から消えると、郁未はのそっと起き上がり、隣の少女に近づいた。
古河渚、母の庇護を受ける幸せな少女。
彼女の抱えるものを郁未は知らない、郁未にとって渚はそのような印象でしかなかった。
実際、目の前の少女の安らかな寝顔は、正直郁未をいらだせる原因にもなる。
このような非常識な時でもこうしていられるのは、正に母親が近くにいるからであろう。
「・・・あなたが私と同じ立場になった時、一体あなたはどうするのかしらね」
ふと思う。そう、彼女は。
古河渚は、今一番天沢郁未に近い少女だった。
大切な母を目の前で失ったら、彼女はどうするだろうか。
郁未は知らず知らずに、口の端を引き上げた意地の悪い笑みを浮かべていた。
それは期待、その裏に隠れているのは嫉妬。
郁未は面白くなってきた、とさらに歪んだ表情を浮かべるのであった。
---------------その時、スピーカー特有のザーザーというノイズが辺りを走った。
時刻は午後6時。第1回目の放送が始まる・・・
「―――武器を捨てろ」
感情を押し殺したような、低い声が響く。
古河秋生は地面に座り込んだまま動けずにいる妻と娘を庇うようにして
天沢郁未の前に立ちはだかっている。
その銃口は油断なく郁未に向けられていた。
郁未は秋生を、銃口を憎々しげに睨んで動かない。
薙刀を構えたまま、ちらりとすぐ目の前に斃れた葉子の躯を窺う。
その様子を見た秋生が、苛立ったように口を開く。
「武器を捨てろって言ってんだ……!」
その声音を聞いて、郁未は次の一手を定める。
武装を解除して投降したところで助命されるとは考えにくい。
文字通りの命懸け、起死回生を狙うよりほか、道は無かった。
死という現実、殺人というリスクに対する回答は眼前に転がっていた。
さしあたっては今、この瞬間を生き延びる。
それだけを至上命題として動く。
そんなことを考えている、ひどく冷静な自分を郁未は感じていた。
どうにも順風より逆風の方が、自分には合っているらしい。
してみるとFARGOでの経験もあながち無駄ではなかったということか。
内心で苦笑すると、それきり郁未は雑念を振り払い状況に集中する。
「そうかよ……そんなに落とし前つけてほしいってんなら、望み通りにしてやるぜ……!」
秋生の苛立ちが最高潮に達する、その瞬間を見計らって郁未は口を開く。
「―――わかったわ」
一瞬だけ虚を突かれたように身を震わせた秋生だったが、すぐに油断なく郁未を睨む。
そんな視線を受けながら、郁未は諦めたように構えを解くと、ゆっくりと身を屈めて
薙刀を地面に置こうとする。
倒れ伏した葉子の、驚愕に固まった貌が郁未の眼に映った。
(さよならは言えなそうだけど……勘弁してね)
郁未の視線を隠すように長い髪が垂れ、薙刀がごとりと音を立ててその手から離れる。
と、その姿勢のまま、溜息と共に郁未が呟く。
「……身の安全は保障されるのかしら」
「そいつは手前ぇ次第だ。黙って武器を置きやがれ」
「それはそれは……丁重な扱いに感謝するわ……ねッ!」
一瞬の出来事だった。
低い姿勢のまま、郁未が何かを投擲した。
(なっ……!?)
薙刀ではなかった。
葉子の持っていた鉈。
転がったままだったそれを、下手から投げつけたのだ。
だが当たらない、と咄嗟に判断を下す秋生。
無駄な抵抗だ、この引き金を引けば終わる―――。
が、その思考を断ち切る悲鳴が、秋生の背後から響いた。
背後には、家族がいた。
何にも代えて守らねばならないその大切な家族、その悲鳴に、
秋生は思わず振り向いてしまっていた。
その動きは、郁未に向けて放たれた銃弾の軌道を、逸らしていた。
(勝った……!)
瞬間、天沢郁未は走り出していた。
もとより、鉈は当てるつもりなどない。
一瞬、ほんの一瞬だけ秋生の気を逸らせればそれで良かった。
状況を凝視していた小娘が悲鳴をあげてくれたのは僥倖だった。
疾る。
頭から茂みに飛び込み、薄暮の林へと紛れ込む。
むき出しの膝に、木枝が細かい傷をつける。
それでも郁未は疾走を緩めない。
頬を掠めた銃弾の熱さすら、郁未には祝福と感じられていた。
腸は煮えくり返るようだった。
誤算だった。
自分たちの悠長な態度が、この敗戦を招いた。
狩れる獲物を取り逃がした。
相棒を失った。
あの男……古河秋生はいつか殺してやる。
渚も早苗も血祭りに上げてやろう。
だがそれらはすべて、今を生き抜いたからこそ感じられる痛みだ。
後悔も、憤怒も、生の落とし子だ。
勝ったと、賭けに勝ったと。
それだけが暗がりの木々の間を走り抜ける天沢郁未を支配する悦びだった。
天沢郁未
【所持品:なし】
【状態:右腕軽症(手当て済み)、左頬に重度の擦過傷、ほか軽度の擦過傷多数】
古河秋生
【所持品:S&W M29(残弾数3/6)、ほか支給品一式】
【状態:激怒】
古河渚
【所持品:なし】
【状態:疲労】
古河早苗
【所持品:なし】
【状態:疲労】
備考
【時間:午後6時過ぎ】
【場所:沖木島診療所そば(I−07)】
【早苗・渚・佳乃の武器と支給品一式、郁未と葉子の支給品一式、宗一の水と食料は診療所内。
鉈と薙刀は放置】
→278 ルートJ-2専用
148 :
性欲の果てに:2006/10/18(水) 15:03:30 ID:RafcpMJx0
椋とことみの性戦(ジハード)の火蓋が切って落とされた。
「さあ行きなさい、キョウ!」
「杏ちゃん?」
椋の背中から極太の触手が現れことみに向かってゆく。
「この子を見つけたのは忘れもしない、
イケメンを求めて魔界に旅立った十年前の誕生日のことだった」
キョウと呼ばれた触手はことみの目の前で無数に分裂し、
そのうち最も太い一本がことみの女性器に突き刺さる。
「あぁーーー!!」
ことみは思わず絶叫を上げる。触手はさらにことみの口、菊門、両耳、二つの鼻孔、
さらには毛穴に至るまで、全身の穴という穴に潜り込んでゆく。
「ふふふ、ことみちゃんは鼻でセックスをしたことがあるかしら?
イケメンのペニスが鼻腔の粘膜をこすり、そこに精液をぶちまけるときの快感といったらないわ。
光速を超える激しい摂動で鼓膜を突き破られるのもたまらないわね」
ことみの全身に突き立てられた触手は凄まじい勢いで動き始め、もはや目で追うことなど不可能だ。
「そう、私は皮膚の下に千のイケメン触手を飼う女、藤林椋!
貴方はこの快楽に耐えることが出来て?」
「……っ」
149 :
性欲の果てに:2006/10/18(水) 15:05:11 ID:RafcpMJx0
声にならない声を上げることみに、止めの一撃が加えられた。
ひとつの触手が頭蓋を破り、脳に大量の白濁液を注ぎ込む。
「勝平さんも脳をかき混ぜる程度で満足しているとはまだまだね、調教が足りないみたい」
完全に動かなくなったことみを、椋は飽きた玩具を捨てるかのように投げ捨てた。
「もう少しぐらい楽しませてくれると思ったんだけど……期待はずれだったわね」
後ろを向いて立ち去ろうとする椋の背中に、思いがけない声がかけられた。
「……しょ、……勝負はまだ終わっていないの……」
ヒドラ並みの再生力により、ことみの肉体が徐々にもとの姿に戻っていく。
全身を血と白濁で染め抜かれながらも、
椋を見据えるその瞳はまだヤれると語っていた。
「嬉しいわ、ことみちゃん。私とのセックスに耐えられる体になってくれたのね。
特別に私の秘技を見せてア・ゲ・ル!」
その瞬間、周りの桃色の景色が一変した。そこは無数の素粒子が生滅を繰り返す無の世界。
「ここは……どこなの?」
「それは貴方の得意分野なのではないかしら?」
悪魔の如き笑みを湛える椋を見て、ことみははっと息を呑む。
「ま、まさかっ!」
「その通り、ここは宇宙の始まりの場所。数多のイケメン宇宙を創ってきたのはこの私の処女膜!
イケメンセックスなくしてこの世界は存在しえないのよ!
さあことみちゃん、一緒にビッグバンを起こしましょう」
結ばれた二人のヴァギナから、淡白い光が放たれる。
インフレーションを起こして急激に膨張を始める秘所から、愛液がたらたらと零れ落ちる。
そして二人の姿は掻き消えた。
150 :
性欲の果てに:2006/10/18(水) 15:06:07 ID:RafcpMJx0
「どうだったかしら?」
「気持ちよかったの……」
「ここまで私についてきたのは貴方がはじめてよ……」
椋はゆっくりとことみに手を差し向ける。
「椋ちゃん……」
ことみもその手をそっと握る。
「「貴女はまさしく性敵(とも)だった」」
椋とことみの全身が光に包まれた。ヤリマンスレで共に過ごした日々の思い出が甦る。
5万Pした日のこと、まんこにTNT火薬をつめた日のこと、銀河系を挿入した日のこと……
「さあ、イケメンセックスの旅に出かけましょう」
「わかったの」
二人が合体した日のこと、そんな日のこと。
151 :
性欲の果てに:2006/10/18(水) 15:07:08 ID:RafcpMJx0
一ノ瀬ことみ・藤林椋 融合体
【時間:実時間が始まる前の虚数時間】
【場所:宇宙の始まりの場所】
【持ち物:書き手薬×3、性なる剣、性なる鎧、ベレッタM92、イケメン触手キョウ、支給品一式×2】
【状況:性神(The God of Sex)】
→173, ルートD
感想スレでも書きました、B−4用の辻褄合わせのための物を投下させていただきたいと思います。
少し長いので、回避入れていただけるとありがたいです。
(時間が時間なので、連投規制にはまってしまったらまた後で上げます)
また、これは193・226の内容をコピペ→貼り付けし、宗一が診療所に行ってる描写抜きの改変になります。
不快感を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
申し訳ありませんと、先に謝っておきます。
PM5:00過ぎ。
向坂雄二一行、氷川村到着。
静かな場所である、立ち並ぶ民家に人気は感じられない。
「なぁ、何でこんな時間かかったんだ?」
「さぁ・・・」
「まぁ、目と鼻の先のはずだったんだけどね」
「はわわ・・・すみません〜〜」
顔を覆うマルチ、道中こんなことがあったんだ。
「はぅ?!」
「どうした、マルチ」
いきなり大声を出したマルチ、貴明が聞いてみたところ。
「わ、私の耳がぁ〜〜」
「あれ、本当だ。アンテナみたいなの、かたっぽなくなっちゃってるね」
「うお、マジだ。なくても動けるもんなのか?!」
興味深そうにジロジロ見られる、マルチは頬を染めて俯いてしまった。
「はう〜〜ダメなんです〜、わ、わたし、わたしはメイドロボとして、あ、あれがないとぉ・・・な、ないとぉぉ!!」
「お、落ち着いてマルチ。多分そこら辺に落としただけかもしれないからさ」
「そうそう。さっきからよく転んでたし、その弾みなんじゃね?」
・・・が、これに意外と手間取った。
「・・・え、えっと。ここでも・・・あれ、あっちでも転んでなかった?」
「いや、新城。ここもあそこもみーんなだ」
「はわぁ、すみません〜〜〜」
結局茂みの奥から見つかるまで、ゆうに一時間弱。
本来ならば日が暮れる前に、到着できたというのに・・・
「す、すみません〜・・・」
「いいから、気にしないの。見つかって良かったね」
「は、はいっ!ありがとうございます、沙織さんっ」
ここまで他の敵対者に会うこともなく順調に来れたからか、彼らはのん気なものであった。
緊張感の欠片もない。
だが、それはここまで。
「・・・!雄二、あっち誰かいる」
貴明が雄二の手を引く、沙織とマルチも向かいの民家の影に逃げ込んだ。
「・・・おい、誰も来ないぞ」
「しっ!静かに。」
貴明の真剣な表情に、思わず雄二も押し黙る。
あれから十分以上が経過した。しかし、場は膠着状態であった。互いに相手の出方を伺っているためだ。
「おい貴明。どうすんだ?」
雄二が貴明に尋ねる。
「まだ相手が何者か、武器がなんなのかもわからない。もう少し様子を見たほうがいい」
「そ…それなら私が試しに外に出て………」
「だ…だめだよマルチちゃん! 危ないよ!」
貴明たちの向かいの物陰に隠れていたマルチが顔を出そうとしたのを一緒にいた沙織が制止する。
「――ならこうしよう。雄二、これ持っててくれ」
そう言うと貴明は自分の持っていたショットガンを雄二に手渡した。
「え!? 貴明おまえ何する気だ!?」
「俺が試しに外に出て相手に話しかけてみる。それで、もし相手が敵だったらそいつを敵に向かって射ってくれ」
「ば…馬鹿。おまえ死ぬ気か!?」
「そ…そうだよ貴くん! それ凄く危ないと思う!」
「やめてください貴明さん。そういうことはやはり私が……」
「みんながそう言ってくれる気もわかるよ。でもさ。いつまでもこうしていられないでしょ?
こうしているうちに別の敵が来て全滅なんてことになったら洒落にならない」
「そ…それもそうだがよ」
「大丈夫だ。俺だってそう簡単に死ぬつもりはないよ」
そう言って貴明は雄二たちにニッと笑った顔を見せる。
「――わーったよ。でも、間違えておまえを射っちまうかもしれねーからな?」
「サンキュー」
貴明同様、覚悟を決めた雄二はショットガンを握った。
その時……
「待てぇい!」
「ん?」
「え?」
貴明たちの耳に聞き覚えのない男の叫び声が聞こえた。
「だ…誰だ?」
「どこから聞こえた?」
「はわわ…わかりません」
「――!? 見て。あそこ!!」
「!?」
沙織が指差す方へ貴明たちが目を向ける。
そこには沈みかけている夕日をバックに一人の男が立っていた。
――それも、わざわざ民家の屋根の上に……
「……なんだあれは?」
「さあ…」
「このクソゲームのルールに縛られてしまっている愚かなガキ共よ、この俺を見るがいい。
ゲームに乗ることなどなく、ただ愛する妻と娘を守るために自分の信念を貫き通し一直線に前に突き進む男……………
人それを『父親』と言うッ!」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「わ〜。かっこ良いですね〜」
なんとかと煙は高いところが好きとは言うが、まさか本当だったとは、貴明たち(マルチ以外)は思った。
「………おい! そこのガキ共、なにぼけーっとしてんだよ! ここは『だ…誰だおまえは!?』って聞いてくるのがお約束だろうが!?」
「知るか」
「くっ…最近のガキはマ●ン●ボも知らねえのかよ……
せっかく村を見つけたからダッシュで駆けてきたっていうのによ………」
などといいながら今度は肩で息をする男。
しばらくすると、調子が戻ったのか再び顔を上げて貴明たちにこう言った。
回
「あー…本題に入るが、おまえら古河渚と古河早苗っていう奴らを見かけなかったか? 妻子なんだが……」
「ええっと、俺達ここにいるメンバー以外に会ったのってあなたが初めてなんです」
「ふむ、そうか・・・仕方ない。それは、もう俺の勘に任せて突っ走れと言う意味として受け取っていいのだな?」
「は?」
「よおし。待ってろ早苗ぇぇぇぇぇぇ!む、あっちから早苗の匂いがする気がするぅぅぅぅぅぅ!」
「……………」
そう言うと男――古河秋生(093)は診療所へと駆けていった。
もちろん民家の屋根から下りて。(しかも、やや飛び降り気味に)
「……なんだったんだ? あのおっさん?」
「さあ……」
取り残された貴明たちはなにがなんだかわからず、ただ途方に暮れるだけしかできなかった。
「あの…」
「ん?」
宗一たちが話していると、背後から女の子の声がした。
振り替えるとそこには物静かな感じのする自分たちと同年代の少女がいた。
「あっ。るりるり!」
「え? この子が?」
そう。今沙織が言ったとおり、彼女こそ沙織が探していた人の1人、月島瑠璃子(067)だった。
「でも、よかった〜。るりるりが無事で」
「うん……あとは長瀬ちゃんたちだね……」
その後、自己紹介などを一通り済ませたあと、瑠璃子を加えた貴明、雄二、沙織、マルチはそろって診療所へ向かっていた。
「こっちは5人。これでまた少し安全になったな」
「うん。そうだね…」
「あのおっさんを追いかけるっていうのも心配だけど・・・」
「でも、面白い人だったじゃない。できれば力になって欲しいね!」
「そうですね。それに診療所に浩之さんたちもいるかもしれませんし」
ゲーム脱出への希望が見えてきた貴明たちは診療所へ向かう足が自然と早くなっていた。
男は、その様子をずっと観察していた。
自分の気配を読み取り即座に対応しようとしていた貴明の姿勢は、素晴らしいと褒めてやりたいくらいだった。
だが。
「あの男が現れなければ、お前は今頃放送に名前を呼ばれていたかもしれない。・・・甘いな」
姿を隠したままやり過ごしたのは、那須宗一-------エージェント、NASTYBOYだった。
彼は知人を探すことを第一に、この氷川村にて身を潜めていた。
いくらか人の出入りはあったようだが、彼の求める人物は現れていない。
「診療所ねぇ。あそこには何人か女が入ってったた気がするけど・・・どうしたもんかな」
正直、今彼は自分の立ち位置に悩んでいる所があり。
何故ならば。
「こんな当たり武器、俺にゲームに参加しろと言ってるようなもんじゃないか・・・」
彼の右手でひかるのは、自動拳銃FN Five-SeveN。
まさに、当たり武器。宗一のために用意されたかもしれないと言っても過言ではない舞台。
まだ彼の行動は決まっていない・・・どうするかは、時間の問題かもしれないが。
160 :
補足:2006/10/18(水) 16:37:37 ID:aQ5dCUZI0
河野貴明
【所持品:Remington M870(残弾数4/4)、予備弾×24、ほか支給品一式】
【状態:健康。診療所へ行く】
向坂雄二
【所持品:死神のノート(ただし雄二たちは普通のノートと思いこんでいる)、ほか支給品一式】
【状態:健康。診療所へ行く】
新城沙織
【所持品:フライパン、ほか支給品一式】
【状態:健康。診療所へ行く】
マルチ
【所持品:モップ、ほか支給品一式】
【状態:健康。診療所へ行く】
月島瑠璃子
【所持品:支給品一式】
【状態:健康。診療所へ行く。隙をついてマーダー化するつもり】
古河秋生
【所持品:S&W M29(残弾数5/6)、ほか支給品一式】
【状態:健康。ダッシュで診療所へ】
161 :
補足:2006/10/18(水) 16:38:14 ID:aQ5dCUZI0
那須宗一
【所持品:FN Five-SeveN(残弾20/20)、ほか支給品一式】
【状態:普通】
【時間:午後5時50分】
【場所:I−07】
(関連・136・190・196)(B−4ルート)
この後270・275・276・281・293へ続けてください。
270・276・281に関しては佳乃描写抜きの改変を改めて上げさせて下さい
まとめの人、大変お手数ですが、
◎姫百合 瑠璃
【持ち物:デイパック、水を少々消費。携帯型レーザー式誘導装置 弾数3】
◎姫百合 珊瑚
【持ち物:デイパック、水を少々消費。レーダー】
を、それぞれの項に追加お願いします。
これは今回の話では、春夏が死体から持ち物を取っていない事を意味させて頂きます。
072の続き投下します。B-2とB-10以外のB関連ルート。
連投回避よろしくです
165 :
没落した感情:2006/10/18(水) 20:42:27 ID:NR8C1XJU0
「―――ん……ぅ、ん」
固い地面の感触に、浅い眠りから意識を覚ます。
寝惚け眼で辺りを見渡す湯浅皐月(113)の視界に、一人の少女の姿が映った。
「どうしよどうしよ……。もう寝てから何時間経ったんだろ。早くタカくんとお母さんを探さなきゃいけないのに。
でもでも、このお姉さんを見捨てるわけには……。いやいや! わたしはこの人を撃とうとした訳で―――」
少女―――柚原このみ(115)が何やら試行錯誤をしてうろたえる様子を、冷静に眺めて現状の把握に努める皐月。
意識を失う前に記憶していたのは、隙を狙って襲撃しようとしていた女を追い払った場面までだ。
そこから記憶が途切れていたために、理由は分からぬが気絶したのだろう。
ともかく、未だ皐月が目覚めたことに気付いていないこのみが、自分の眼前をうろついているのは目障りだったため、静かに声を掛ける。
「―――だからといって、見捨てるわけには……一応助けてくれた訳でもあるし―――」
「ねえ」
「ひゃうぁっ!!」
突然の声に、このみは飛び跳ねた。
慌てて振り向いたこのみは、何時の間にか目を覚ました皐月の姿を見て凝縮する。
確かに皐月への対処に行動を決めかねていたこのみだが、興奮していたとはいえ彼女を拳銃で殺そうとした身。
冷徹そうに静観する皐月の様子に、このみは今更ながらに罪悪感が湧き出てきた。
呆れられるのか、怒られるのだろうか。もしくは殺されてしまうのだろうか。
そういった心配を、脳内で反芻させて怯えた子犬のような視線を皐月へと寄せるこのみ。
その反応に、皐月は小さく嘆息する。
166 :
没落した感情:2006/10/18(水) 20:43:11 ID:NR8C1XJU0
「……そんなに怯えないでもらえる? 獲って食べたりはしないから」
「い、いや、でも……」
「……なに? あんたから見たらあたしは極悪人に見える訳?」
「とんでもない! 感謝の思いでいっぱいであります!」
「……そう。ならいいわ」
狼狽するこのみを尻目に、皐月は自分の水を口に含みながら思考する。
どうやら空に赤みががっているのを見ると、現在は夕刻時なのだろう。
ゲームは日中に開始されて、一時間も経たぬうちにこのみと遭遇して直に気絶。
かなりの時間、意識を失っていたことになる。
我ながら無防備なほど迂闊であった。
こんな状況下で、よく無事に目覚めたものだと思える。
気まずそうに俯いているこのみとて、決して信用できる相手ではないのだ。
彼女は今でこそ大人しくしているが、元はゲームに乗っていたはずではないのか。
場の勢いか、錯乱していたのか、開き直っていたのかは解らぬが、確かに殺意は存在していた。
本当によく生きていたと思える。
このみが意外と義理固く、そして心を入れ替えてくれたのならば、皐月にとっても幸運であった。
申し訳なさそうに頭を垂れている彼女を見ていると、今のところ命の危機はあまり心配しなくてもよいだろう。
とりあえず、このみに関しては一時置いといて問題ない。
今は、それよりも気になる兆候があった。
自分の状態に関してだ。
(―――そもそも、あたしはこんな状況で冷静に思考できるような性格だっただろうか……)
167 :
没落した感情:2006/10/18(水) 20:44:11 ID:NR8C1XJU0
何故か不安や焦燥を感じることができない。
この殺し合いを、平然と客観的に見詰める度胸が自分にはあっただろうか。
泣いて震えるような真似は流石にありえないが、それでも幾らかは混乱し、そして主催者への怒りを表すはずである。
しかし、そういった感情が浮んでくる予兆は見られない。
何かが欠落してしまったのだろうか。
原因に探りを入れてみると、一つだけ心当たりがあった。
皐月はおもむろに自分のバックを漁り、あるモノを取り出す。
唐突な行動にこのみはびくりと身構えるが、好奇心が勝った為に声を掛ける。
「―――えっと、それはキノコだよね……」
「……そのようね」
皐月が取り出しのものは、何の変哲もない茸。
島に来て最初に行ったことが茸を食したことなので、思い当たることといえばこれぐらいだ。
他に何かないかもう一度探ってみたところ、一枚の羊皮紙がはらりと落ちる。
拾って適当に流し読みしてみたところ、どうやら茸―――セイカクハンテンダケの説明書のようだ。
内容は―――
『あなたの支給品は世にも珍しい茸―――セイカクハンテンダケ! 使用するとその名の通り性格が反転してしまいます。
継続時間はおよそ二十四時間。さあ! これで自分の新たな可能性を垣間見ましょう!!』
これは完全に毒茸の一種じゃなかろうか。
ある意味美食家であった皐月が、躊躇なく興味本位で手を付けてしまったというのも無理からぬこと。
だが、何の警戒心も浮んでこない反転前の自身の行動にも愕然としてしまう。
説明書をよくも読まずに食したものだ。
自分のことなのに、まったくの他人が行動したような不思議な感覚に囚われる。
恐らく気絶したことは、反転の作用による弊害だろうか。
可笑しな考えだが、数時間前の自分にはもう少し落ち着きを払って欲しいものだ。
しかし、反転してしまったものはどうしようもないが、意外と得策であったかもしれない。
物事を無心に、且つ冷静に行動できる今の自分なら、少しは長生きが出来そうだ。
無表情で説明書を破り捨てて皐月は立ち上がる。
168 :
没落した感情:2006/10/18(水) 20:45:15 ID:NR8C1XJU0
「あ、あぁ! わたしにも読ませてくれたって……」
「あたしの行動にケチをつけるの? いい度胸ね」
「め、滅相もない! えとえと……当方はタカくん達を探す用事があるので失礼をさせていただきたいのですけれど―――」
「駄目よ」
「な、ナゼに?」
「あんたのその拳銃……あたし気に入ったのよ」
「えぇぇ!? だ、駄目だよ……これはこのみのだもん!」
必死に自分の支給品を胸で抱きしめるこのみに、冷たい目線が突き刺さる。
無機物を見るかのような絶対零度の視線に、このみは既に涙目だ。
小動物を連想させる姿を見ても、皐月の表情は一向に変わらない。
スッと伸ばされた掌が、このみの眼前に出される。
友好の証に握手をしようという意味ではない、いいから早く出せという催促だ。
「ダメダメ絶対にダメっ! これがないとタカくんもタマお姉ちゃんも守れないよ! これがないと……」
「……それはつまり、あたしの意向には従えぬと?」
「ぅぅ……」
駄々っ子のように拳銃を離そうとしないこのみを、鋭い眼光で睨みつける皐月。
竦み上がるこのみに、皐月は面倒臭さそうに肩を竦ませた。
傍から見れば、恐喝以外の何ものでもない。
「……どうしても手放す気はないのね?」
「う、うぅ……。これは渡せないよ……」
「……じゃ、仕方ないわね」
回避回避
170 :
没落した感情:2006/10/18(水) 20:47:37 ID:NR8C1XJU0
皐月が差し出した手を引っ込めると、ビクリとこのみは震え上がった。
―――殺されるのだろうか。
腰が引けながら身構えるも、このみの脳裏に不安が過ぎった。
始めに銃口を向けたのがそもそもの間違いだったのだろうか。
彼女の眼光に晒されると何処か逆らえない雰囲気に駆られてしまいそうになるが、それでも尚、気丈に睨みつけた。
これを手放してしまうと、このみには何も出来なくなる。
常日頃守られてきた貴明や環、雄二を手助けすることが出来なくなる。
日常でも助力を買い、さらにはこんな状況下でも助けてもらおうだなんて、虫がよすぎる話だ。
自分のことで精一杯のはずなのに、それでは居た堪れない。
だからこそ、このみは決して足を引っ張らないように、そして幼馴染達に本当の意味で信頼してほしい。
命を預けても、安心して任せられるような真柄にだ。
「こ、今度はわたしが、このみが皆を守るんだもん……」
「…………」
「―――だから、だからっ。これは渡せないよ……!」
このみが唇を噛み締めながら言葉を吐く様子に、皐月は無表情に見つめること一時。
そして、皐月は至極あっさりと視線を外して、自身のバックから地図を取り出した。
固まるこのみを放置して、地図を指で辿り始める。
「……え? い、いや……何もしないの……?」
「何かして欲しかった?」
ぶんぶんと髪を振り乱して首を振ることで否定する。
何故かは分からぬが、どうやらこのみに危害を加える気はないようだ。
一先ず安堵の息を洩らして、今度は皐月の行動に目を寄せた。
171 :
没落した感情:2006/10/18(水) 20:48:53 ID:NR8C1XJU0
「えと、それじゃ何を……?」
「……とりあえず目的地を決めるわよ」
「はぁ……。そうなんだ」
「他人事のように聞いているけれど、当然あんたも同行するのよ」
「―――え゛。そ、そんなこと聞いてないよ〜」
「今言ったもの」
何を可笑しなことを、そう言わんばかりのぞんざいな反応。
てっきり諦めて見逃してくれると信じ込んでいたこのみだが、結局は手綱を放しはしないということか。
「でも! わたしはタカくん達やお母さんを探さなきゃ……」
「闇雲に歩き回って見つかると思っているの? それとも、あたしにしたように威嚇して聞き出す?」
「い、いや……あれは何と言うか……」
「……周囲の警戒が疎かになっていたんだから。そのタカくんとやらと会う前に死にたいの?」
「うっ……」
「そして、このあたしが計画的、且つ安全に人探しを手伝ってあげるといっているのよ。他に言うことはないのかしら?」
「あ、ありがとうございます……。いや、なんか違うような……」
「―――村が一番近場だけど……避けた方が無難ね」
「うぅ……。既に同行は前提でありますか……」
皐月の傍若無人な振る舞いに、このみの意見は既に通りそうにない。
あまり関わりたくないと思っていたこのみにとって、彼女の意向は嬉しいものでもあるが、同時に息苦しくも思ってしまう。
そもそも、このみが皐月へと銃を向けたのが発端であるからして、自身は捕虜同然の身。
強く反論できる筈もなく、気軽に意見を口出せるような真柄でもない。
拳銃は手の内にあるというのに、何故か逆らえる雰囲気ではなかった。
悪い人柄だとは思えぬが、相性というものもある。
皐月にどんな言葉を投げ掛けても、能面の様な表情は変わらないのだ。
基本的に人当たりが良かったこのみでも、目覚しい反応を返さない皐月は取っ組みづらい。
項垂れたこのみを無視しつつ、勝手に考えを巡らせる。
172 :
没落した感情:2006/10/18(水) 20:51:02 ID:NR8C1XJU0
「……あたし達のスタート地点は恐らく分校跡。そうよね?」
「えっ? う、うん。わたしもそこからここまで来たから……」
「遠目から確認できる集落は平瀬村。現在位置はこの辺りよ」
地図に指を添えて、このみへと目を向ける。
ようやく会話に参加できる許しを得たようなものなので、彼女は少し居直った。
そんなことしたとしても、既にこのみの意向を挟みこむ余地がない程に方針は決まってはいたが。
「……平瀬村が近いね。ここに行くの?」
「あんたは野宿とかしたことある?」
このみの質問に応じず、質問で返す皐月。
この返し方は意外と気分のいいものではない。
だが、このみの発言が潰されるのは今に始まってことではないので、彼女は諦めて小さく首を横に振る。
「そうね。参加者の大半がそうよ。ちなみにあんた……仮に一人だったとしたら今日の夜は何処で過ごす?」
「それは……せっかく村があるんだからそこで……あ、そっか」
思い至ったこのみは成る程と頷いた。
このみのように野宿に慣れれていない参加者達が、屋根を求めて集落に集まるのは至極当然のこと。
皐月のようにその行動を読んでいるものからすれば、普通に考えたら村には近づかない。
そして、ゲームに積極的に乗ったものは、必ず人が多く集まる場所を襲撃するはずだ。
時間帯で言うと、決まって緊張が緩んだ深夜だろう。
そんな場所へは到底近づきたくはないし、自身がマーダーだったら必ずそこで一網打尽にする。
村への捜索は早朝から日中の内が一番安全だ。
だが、そんな考えも理解できるが、このみには納得がいかない。
173 :
没落した感情:2006/10/18(水) 20:51:50 ID:NR8C1XJU0
「でも……」
「でも、なによ?」
言いにくそうに口を噤むが、それでも意を決して口を開く。
「わたしは少しでも早くタカくん達と合流したい……。もしかしたら、村にいるかもしれないんだよ。だったら―――」
「ダメね。もうすぐ日が暮れる。街灯もない暗闇の中でどう探すの?
まさかとは思うけど、支給された電灯で馬鹿みたいに照らしながら村を闊歩するの?」
「…………」
「問題外よ。再会できる確立より、あんたがマーダーと遭遇して殺される確立の方が高いのよ。村には行かない、いいわね?」
皐月の相変わらず遠慮のない物言いに、反論できない悔しさからか涙が滲み出る。
少しでも早く母親や幼馴染達と合流したい。勢いに任せて探し回りたい。
だが、今のこのみの理性は皐月がしっかりと握っている。
このみにとって自制を利かす皐月の存在は非常に重要な位置を示していた。
それでも、内心疎ましく思ってしまう感情を抑えながら、皐月の言葉に渋々と頷く。
「村へは早朝の時間帯に向かうわ。それまでは村近辺、一先ず菅原神社を目指すから」
「……うん」
このみの弱弱しい返事を横目に、皐月は身支度を整えて歩き出す。
皐月に逆らって逃走を図ろうと考えもしたが、確かに皐月の方針のほうが合理的だ。
貴明達の手助けをしたいと思う前に、まずは自身の安否に気をつけるべきである
このみは不満の表情を表に出しつつ、とぼとぼと皐月の後を追った。
当たり障りのない会話をしながら彼女達が菅原神社へと向かう道中に、島中に男の声が響き渡る。
現在時刻六時。最初の放送だ。
『―――これから発表するのは……今までに死んだ人の名前です―――』
174 :
没落した感情:2006/10/18(水) 20:54:50 ID:NR8C1XJU0
始めは響き始めた男の声に困惑としていたこのみだが、その一言に表情を硬くする。
二人は立ち止まって聞き入った。
このみは皐月へと視線を寄せるが、何を考えているのか解らないほどの無表情だ。
着々と読み綴られる死人の名前。
全ての名前が読み終えた頃、このみは大きく息を付いた。
「よかった……。タカくん達も無事だ……」
幼馴染や母親、親友達が無事であった安堵もあるが、本当に殺し合いが敢行されていると実感する。
今のところ死体や殺し合いを目撃してはいないものの、物騒なものが支給されている以上、争いは避けられないのだろう。
ともかく、このみの関係者は全員無事である。
ならば皐月はどうなのだろうか。気になったこのみは問い掛けようとするも、彼女は何事もなく歩き出してしまった。
「あ、あの。どうだったの……?」
皐月とて知り合いの一人や二人はいる筈だ。
特に反応がないということは、皆無事だったのかと考えるのが普通である。
皐月は完結に一言、結果だけを伝えた。
「親友が一人いたぐらいね」
「……え?」
余りにも口調が普通だったものだから、危うく流してしまいそうになった。
事実を理解すると、驚いて皐月の顔を見詰める。
依然と歩き続ける皐月へと話しかけるのは憚れたが、それでも口を開いた。
その時は、悲しみを押さえ込んで涙を堪えている、そう推測していたこのみだが―――
175 :
没落した感情:2006/10/18(水) 20:57:05 ID:NR8C1XJU0
「あ、ごめんなさい……このみだけが喜んじゃって」
「……何故謝るの? 別に構わないけど」
「でもそれじゃ……。お友達が、その……死んじゃったのに……」
「そうね。残念なことだわ」
「……? あの、仲悪かったの?」
「ゆかりとは本当に心を許しあえる真柄だったけど? それがどうかした?」
「…………」
ここでようやく会話に齟齬が生じていることに気付く。
いや、温度差が明確に二人の間にあるといったほうが正しい。
悲しみを堪えているというよりは、悲しみを感じていないように思えてしまう。
皐月の親友発言が言葉通りだとすれば、その反応はおかしいのではないか。
「……ねぇ、悲しくないの?」
「悲しい? 別に」
「っ! わたしはちゃるとよっちがいなくなったら悲しいよ……。親友じゃなかったの? そんなのって、あんまりだよ……」
「泣けばいいの? ごめんね。そんな暇も余地も、ついでに気分でもないの。ゆかりは死んだ、それ以上何を想うの?」
このみが何を言っているのか解らないと言わんばかりに、首を傾げてみせる皐月。
友への思いやりや労わりは、一欠けらも今の皐月の内心には存在しない。
主催者やマーダーへの怒りもない、死んだ者に憐憫の感情もない。
ゲームの果てに、呆気なく友が死んだ。抱く感想といえばそれぐらいだ。
数時間前の皐月ならともかく、今は感情の突起が酷く少ない彼女には理解できなかった。
何故そうも死に拘るこのみのことも、至極当然のように死を受け入れている自分もだ。
「酷い……。死んじゃったゆかりさんが可哀想だよっ」
「ふぅ……煩わしいわね。そんなことどうだっていいのよ」
「そんなことって……」
「そもそもよ。あんたが人の生死をあたしに諭そうと思っている時点で間違っているんじゃないの?
あたしの命を軽んじといて、何を今更……」
「そ、それは……っ」
「言葉を濁すくらいなら始めから発言なんかしないでもらえる? あんたは黙ってあたしに着いて来ればいいのよ」
回避まだいる?
177 :
没落した感情:2006/10/18(水) 20:59:08 ID:NR8C1XJU0
有無を言わさぬ眼光でこのみを黙らせると、気にすることなく歩き出す。
皐月にとってもこのみは疎ましい存在だ。
今の能書きもそうだし、殺し合いに関しても先の邂逅で注意力散漫であることは解りきっている。
皐月がこのみに同行を許している理由はただ一つ。彼女の支給品を皐月が気に入ったからだ。
このみが拳銃を所持していなかったらさっさと追い払っている。
殺して奪おうとは思っていない。ゲームに乗るつもりはないし、何よりも後先を考えると上策ではない。
だが、勝手に自分を殺し合いの環境に巻き込んだことに対してだけは、主催者側は気に食わなかった。
顕著であった感情はそれくらいだ。後は全ての喜怒哀楽が希薄となっている。
事実、放送でゆかりの名を聞いても心に動揺は見られなかった。
反転前の自分なら泣いて怒り狂うのだろうなと、漠然した思いもあったが、くだらないと切って捨てる。
今はただの冷徹な湯浅皐月。外面は同じでも、内面がまったくの真逆。
取るに足らない感傷に浸り、無駄に時間を浪費する理由がまったく理解できない。
このみに訴えかけられても、迷惑でしかないのだ。
彼女には期待など寄せていないのだから、せめて余計な口出しはせずに黙って欲しい思ってすらいる。
戦闘になったら、このみが持つ銃を拝借して戦えばすむこと。
このみの存在価値など、皐月にとっては有って無いようなものだ。
「……日が落ちる前までには着くわね。さ、モタモタとしてないでさっさと行くわよ」
「―――おかしい、絶対におかしいよ……」
性格が反転したことなど知るよしもないこのみにとって、皐月の冷血ぶりはとてもじゃないが受け入れ難い。
確かにこのみとて他者を蔑ろにしようとしたが、名目上自分の大切な人を守りたいという一心であった。
しかし、皐月に至っては自身に関係する人物すら省みない態度なのだ。逆に気味が悪くて不気味に思える。
178 :
没落した感情:2006/10/18(水) 21:01:22 ID:NR8C1XJU0
このみは唇を噛みながら皐月の背へと不信感の視線を寄せた。
それを受けて尚、皐月の凍った表情に変わりは無い。
お互いがお互いを、まったく信用していない協力関係。自己紹介すらしていない曖昧な関係。
それを共に自覚しながら、二人はそれでも同行する。
いつ崩れ去るとも知れない関係は、酷く不安定に傾いていた。
『湯浅皐月(113)』
【時間:1日目午後6時過ぎ】
【場所:F−02】
【所持品:セイカクハンテンダケ(2/3)・支給品一式】
【状態:普通。反転中につき、クールで冷酷無常な性格に(効力:残り十八時間程度)。菅原神社を目指す】
『柚原このみ(015)』
【時間:1日目午後6時過ぎ】
【場所:F−02】
【所持品:38口径ダブルアクション式拳銃 残弾数(8/10)予備弾薬80発・金属製ヌンチャク・支給品一式】
【状態:普通。皐月に不信感を抱きつつ同行。貴明達を探す】
>>TF3wf3pcO
サンクス
まとめさんへ
270・突きつけられた選択をB−4の場合以下のように改変していただければと思います。
(5行目〜)
×
そして最大の問題はNASTYBOY……那須宗一の存在だった。
伏見ゆかりと言う彼女の探し人の名前は呼ばれていた。
彼の様子から想像しても、ゲームに乗ってはいないだろう。
同じような考えの人間を集め、なんとか脱出の方法を探そうと考えているに違いない。
そして乗った人間には容赦はしないだろうことも。
ゆかりの死によって間違いなく状況は大きく変わる。
それが自分たちに取ってプラスになるかマイナスになるかわからない以上、ここに長居をするのは危険だと考えた。
↓
○
ここにいても事態は変わらない以上、ここに長居をする意味はないだろう
(約57行目)
×
「中にいる三人はどうしますか?」
↓
○
「中にいる二人はどうしますか?」
(約70行目)
×
「那須宗一がいるからです」
葉子は考えをまとめながらゆっくりと言葉を続ける。
「放送に彼の探し人の名前がありました。どう動くかは完全にまだわかりませんが、おそらく彼にためらいはなくなるでしょう。
正直、彼を相手にするのは今の私達には不利と判断しなければなりません。
誰かを殺して私達が消えていれば、間違いなく矛先は私達に一直線に向かってくるでしょう。
その時彼のそばに誰かがいたら?この中の生き残りがいたら彼は必死にその子を守ろうとするのではないでしょうか?
勝機は、そこだと思うのです」
↓
○
「もし新手が現れた場合、私達が犯人だと早々に知られてしまうのはまずいでしょう
一人、犯人役を仕立てる必要があります」
(約91行目)
×
中には今起きたばかりでまだ少し寝ぼけ眼の渚とその横に座る早苗、そして未だに眠っている佳乃の姿があった。
↓
○
中には今起きたばかりでまだ少し寝ぼけ眼の渚とその横に座る早苗の姿があった
あと、補足事項から佳乃の記述を抜いてください
まとめさんへ
276・忌むべき訪問者をB−4の場合以下のように改変していただければと思います。
(約27行目)
×
「…お別れの時間を与えてあげただけよ。どっちにしろ、那須宗一を片付けたらこの子も殺すから」
↓
○
「…お別れの時間を与えてあげただけよ。どっちにしろ、このまま誰も現れないようであればこの子も殺すから」
(約80行目)
×
冷たく突き放した父の言い方に体を強張らせながらも、渚は佳乃を抱えて逃げる。
↓
○
冷たく突き放した父の言い方に体を強張らせながらも、逃げ出す渚。
(約92行目)
×
「この男、那須宗一と同等かそれ以上の脅威です。二人で、しかも本気でかからないと命取りになります」
↓
○
「この男脅威です。二人で、しかも本気でかからないと命取りになります」
あと、補足事項から佳乃の記述を抜いてください
(約72行目)
×
駆け寄ろうとした渚を制して秋生は言う。そしてちらりと部屋の隅で動いた佳乃を見てから、
「そいつも連れてな。いいか、何かしようなんて考えるな。突っ走って逃げろ」
↓
文面カット
補足事項を以下に変更してください
古河 渚
【所持品:なし】
【状態:逃走】
回避しとく。今じゃ意味ない?
まとめさんへ
281・この島にいる全ての人にをB−4の場合以下のように改変していただければと思います。
>>183助かった、ありがとうございます
(約31行目)
×
「ぐずぐずすれば那須宗一が戻ってくる可能性もあります。時間はかけられません。それにね、正直やっぱりあなたと戦うのは嫌です。ですから郁未さん。あなたは、生き残ってください」
↓
○
「ぐずぐずしている暇はありません、時間もかけられません。それにね、正直やっぱりあなたと戦うのは嫌です。ですから郁未さん。あなたは、生き残ってください」
(大きな空欄後・約46行目)
×
しかし、改めて問うほどの興味ではないその光景を最後に郁未はくるりと後ろを向く。だが、そこにはもう一人の客がいた。
「なんでこんなことをしたの? 早苗さんは……早苗さんはあなたの腕を直してくれた人だったんだよ」
そして部屋の入り口には霧島佳乃がいた。手に持っているのは葉子が持っていた鉈。
「それを返しなさい。それからそこからどきなさい。殺されたくなければね」
すると意外にも佳乃は素直に鉈の柄を差し出してドアを開けた。これには郁未のほうがびっくりした。
「いいの?」
バカだな、と自嘲しながらも思わずそう聞き返してしまう。
「……わたしのお姉ちゃんね、お医者さんなの。お姉ちゃん言ってた。たとえどんな悪人でもけが人や病人ならならその患者の無事を祈って最善を尽くすべきだって。わたしはおねえちゃんの妹だから。だから早苗さんの患者だったあなたの無事をわたしは祈るよ」
「そう、ありがとう」
正直言ってFARGOの一件以来『祈る』なんて言葉は聞きたくもなかったが、郁未はそう素直に頷いた。鉈を取り、戸口へ向かう。
「でもね」
パン! と乾いた音がした。佳乃の平手が郁未の頬を叩いたのだ。
「でも、許せない! なんでこんなひどいことができるの! 早苗さん、すごくいい人だったのに! あなたを助けてくれたんだよ! なのに、なのにっ!」
何か返答をすべきだろうかと郁未は考えた。だがうまい理由が思いつかず、それを口にしていた。
「それが私の正義だから」
佳乃はその返答を聞いて、ポカンとしていた。その隙に郁未は鉈と薙刀を持って部屋を出ていった。長居しすぎた。早めにここから離れなければ。
「おとうさん!」
今まで渚が黙っていたわけではないだろう。だが、佳乃の意識に渚の声が届いたのはこの部屋に入ってからそれが初めてだった。
↓
○
しかし、改めて問うほどの興味ではないその光景を最後に郁未はくるりと後ろを向いた。
途中葉子の使っていたらしき鉈が目に止まり、それをそっと拾い上げようとする。
「おとうさん!」
後ろから渚の叫びが聞こえてくる、それはちょうど鉈に向かって身を傾けていた時で。
・・・興味はない、そのはずだったのに。
ずっしりと、持ち上げた鉈は随分と重く感じた。
「それが私の正義だから」
ぽそりと、誰に聞かせると言うわけでもない呟き。
郁未の信念は曲がらない、それは葉子の残してくれた道でもあったから。
誰に見送られるわけでもなく、郁未はこの場から離脱した。
(間隔二行開けて、次のシーンに行ってください)
(大きな空欄後・約74行目)
×
互いに引かないふたりの間に佳乃が割って入った。
「渚ちゃん、おとうさんの話、聞いてあげなよ。治療は私がするから」
「……わかりました。佳乃さん、お願いします。おとうさん、話してください」
佳乃は秋生の服をめくると、消毒液をたらして、そこに包帯を巻きつける。といっても見よう見まねだったが。
「ああ、渚。俺な人を殺したんだ」
「え……あの、そこで倒れてる郁未さんといた方のことでしょうか」
「確かにそいつを殺したのもおれだ。でもな、俺はここに来る前に一人、既に殺してるんだ。しかも別に襲われたわけでもなんでもないのに、だ」
「え!?」
これには佳乃もすくなからず驚いた。
↓
○
互いに引かないふたり。はぁ・・・と溜息をつくと、秋生は渚を無視して話し始めた。
「なあ、渚。俺な人を殺したんだ」
「え……あの、そこで倒れてる郁未さんといた方のことでしょうか」
「確かにそいつを殺したのもおれだ。でもな、俺はここに来る前に一人、既に殺してるんだ。しかも別に襲われたわけでもなんでもないのに、だ」
「え!?」
戸惑う渚の声、秋生の顔にも苦笑いが浮かぶ。
(一番下の方)
×
冷たい室内に二人の少女の嗚咽がしばらく反響していた。
↓
○
冷たい室内に一人の少女の嗚咽がしばらく反響していた。
B-4にて、以下の整理をお願いします。
採用項目
270・275・276・281・293
不採用項目
292b
一応、もう一度回避。
まとめさんへ
293・約束をB−4の場合以下のように改変していただければと思います。
>>188 もうどれだけの感謝をすればいいか分からない。激しくありがとう。
(一番下)
×
それは殺戮者―――巳間良祐の放ったスタングレネードによるものだった。
↓
○
それは殺戮者―――巳間良祐の放ったスタングレネードによるものだった。
藤田浩之等を取り逃した後、彼等の支給品を得た巳間良祐はこの村にて獲物を探していたのだ。
「早速これが役に立つとはな、俺も余程運がいいらしい・・・」
川名みさきの支給品、拾った早々役に立つとは良祐自身思ってもみなかったことだった。
「さて。これはどれだけの効力を見せてくれるか・・・」
良祐の浮かべる残忍な笑み。
果たして、放たれた手榴弾は良祐の期待に答えてくれたかどうか。
・・・それは今舞い上がっている煙が落ち着くまで、分からないことである。
巳間の補足事項を以下に変更してください
巳間良祐
【時間:1日目午後6時30分過ぎ】
【場所:I-06】
【所持品1:89式小銃 弾数数(22/22)と予備弾(30×2)折りたたみ式自転車・予備弾(30×2)・支給品一式・草壁優季の支給品】
【所持品2:スタングレネード(1/3)ベネリM3 残弾数(2/7)】
【状態:近くの民家の影からスタングレネ−ドを投嚇】
これで訂正系は終わりです、スレ使っちゃってすみませんでした。
191 :
星空・2:2006/10/19(木) 01:52:32 ID:LJQ0PDdy0
外に自分で食料調達にいくのは、リサとかいう女に怪我を理由に止められた。
まあ今日は少々派手に動き回りすぎた。
休憩して体力を回復する事は必要かもしれないな。
そして今俺は倉田に誘われ、栞という女と3人で海の家の入り口で星空を見ている。
確かにこの島の星空は綺麗だとは思うが、1日に何度も見るもんじゃないと思うんだがな。
「凄いです…、ドラマに出てくるような綺麗な星空ですね…」
「あははーっ、そうですよねー」
星空を眺めながら、はしゃぐ栞と佐祐理。
「ふん、くだらん。綺麗なのは認めるが、ずっと眺めるようなものではないだろう」
対照的に不機嫌そうな柳川はぶっきらぼうにそう言ったが、
「ふぇ〜、でも佐祐理は綺麗なものはずっと見ても飽きませんよー?」
「もう…、折角ロマンチックだったのに、そんな事言う人嫌いです」
食料の時同様またも女性陣二人から反論され、彼は黙るしかなかった。
しばらく星空を堪能した後、佐祐理は一つ、疑問に思っていることを聞く事にした。
「……柳川さん、ちょっと聞いても良いですか?」
「構わんが、なんだ?」
「柳川さんはもしこのゲームを無事終わらせる事が出来たら、その後何をしようと思ってるんですか?」
「!」
言葉に詰まる。全く予想外の質問だった。
「…分からない。考えた事も無かったな」
柳川はメガネを指で押さえ、考え込んだ。
ゲームに参加する前の彼は、鬼に完全に取り込まれていた。
そこに本来の彼の意思など無かった。
それにゲームが始まり、制限によって鬼の意思が抑えられてからも、彼が考えた事はゲームの破壊の事のみ。
その後の事など、まるで考えていなかった。
192 :
星空・2:2006/10/19(木) 01:53:42 ID:LJQ0PDdy0
「佐祐理は、一杯やりたい事あるんですよーっ」
「舞や祐一さんと一緒にまた学校に行きたいし、お弁当も食べたいです」
「二人と一緒にまたダンスパーティーに出るのも良いですねーっ」
「ずっと一緒に、たくさん思い出を作りたいです」
佐祐理は―――とても楽しそうに、話を続けている。
栞も微笑みながら、話に聞き入っていた。
「…そうか。その二人、よっぽど良い友人なんだろうな」
それが、柳川が抱いた素直な感想だった。
彼女のしたい事はどれも、舞と祐一と一緒に、というものばかりだった。
「祐一さんは私も知ってますけど、本当に良い人ですよ」
ちょっと意地悪ですけどね、と唇に人差し指を当てながら、栞は付け加えた。
「あははーっ、二人とも佐祐理の自慢の親友なんですよー」
「舞は無口だけど凄い優しい子なんです。無愛想だから誤解されやすいんですけどね」
「祐一さんは変な冗談をよく言うけど、面白いし頼りになる人なんですよーっ」
笑顔を浮かべたまま、言葉を続ける佐祐理。
話を聞いてるだけで、彼女にとってその二人がどれだけ大事な存在かが伝わってくる。
しばらくすると佐祐理は突然話を止め、真剣な表情になった。
「どうした?」
「……柳川さんには、友達の方や、帰りを待っている方はいないんですか?」
真っ直ぐな瞳で柳川を見つめながら、そう口にしていた。
濁りの一切ない、綺麗な瞳で。
だから柳川も、素直に答えるしかなかった。
「残念ながら、いないな。人付き合いは苦手なんでな」
唯一の親友も、今ではもう廃人状態になってしまっている。
隆山署の連中も、ただの同僚に過ぎない。
彼に友人と呼べる者は、誰もいなかった。
「……………」
佐祐理は黙って続きを待っている。
193 :
星空・2:2006/10/19(木) 01:55:11 ID:LJQ0PDdy0
「こんな馬鹿げたゲームの主催者は許せん。俺は必ず主催者側の人間を殺す。
そして、それを成し遂げた後なら死んでも構わないと思っている」
俺には元の生活でしたい事など、特に無かった。
それに元の生活に戻っても、きっとまた鬼に鬼に取り込まれ、殺戮を繰り返してしまうだろう。
だからこのゲームさえ終わらせれれば、刑事としての正義さえ貫けば、もう自分の命に未練など、無かった。
柳川は視線を落とし、自分の手を見つめた。
血で汚れた手。幾人もの命を奪ってきた手。
(俺は、償わなければならない……。)
自分よりも、他の罪の無い参加者達を生かして帰したい。
目の前の少女達を、生かして帰したい。
「そうですか…」
佐祐理はとても悲しそうな表情で、そう答えた。
佐祐理も、栞も、何も言えない。
佐祐理はこの話題を振った時、幾分期待していた。柳川も帰ってやりたい事があると言ってくれる事を。
帰りを待っている人がいるからここで死ぬ訳にはいかないと言ってくれる事を。
だが返ってきた返事は、ある意味最も彼らしいものだった……。
「………………………」
「………」
「……」
沈黙が続く。
「………でも」
佐祐理は意を決したように―――ちょっと息を吸い込み、何かを言おうとした。
194 :
星空・2:2006/10/19(木) 01:56:05 ID:LJQ0PDdy0
「待て、どうやらお喋りの時間は終わりらしい」
「え?」
佐祐理と栞は柳川の言わんとする事がまだよく理解出来ていない。
「来客のようだ。それも、とびっきりタチの悪い、な。」
そう言い、森の方を指差す。
その方向を見た途端、佐祐理と栞は表情を強張らせた。
そこから歩いてくる人物は、異常な殺気を放っていた。
その人物が放つ殺気は、戦闘時の柳川のそれと同様のものだった。
即ち、人間とは似て異なる者。鬼が放つ殺気。
復讐鬼と化した女―――柏木梓が放つ殺気だった。
その表情は恐ろしく無表情で、
その瞳からは、憎悪の感情しか読み取れなかった。
柳川はまだ梓が思い違いをしている事を知らない。
それでも、梓が自分に対して強烈な殺意を抱いている事だけは、容易に理解出来た。
その手には、特殊警防。普通の人間が持っている分にはさしたる脅威では無いが、
制限されているとは言え鬼の血を引いた梓が持てば、それはまさしく凶器と化す。
ゲームを止めようとする者と、ゲームに乗っていない者。
本来なら戦わずに済む筈の両者だったが、このゲームでは一つの誤解が、
一つの疑心が、生死を懸けた戦いにまで発展する。
結局柳川に許された休息の時間は、ごく僅かに過ぎなかった。
195 :
星空・2:2006/10/19(木) 01:56:53 ID:LJQ0PDdy0
【時間:1日目午後10時半ごろ】
【場所:G−9、海の家】
柏木梓
【持ち物:特殊警棒、支給品一式】
【状態:柳川への憎悪。第1目標:柳川の殺害 第2目標:瑠璃姉妹、初音の捜索、保護 第3目標:千鶴のマーダー化を止める】
倉田佐祐理
【所持品:自分と楓の支給品一式、 吹き矢セット(青×5:麻酔薬、赤×3:効能不明、黄×3:効能不明)】
【状態:恐怖、ゲームの破壊が目的。】
柳川祐也
【所持品@:出刃包丁、ハンガー、鉄芯入りウッドトンファー、M4カービン(残弾30、予備マガジン×4)】
【所持品A、自分の支給品一式】
【状態:警戒、治療は完了したが、直りきってはいない】
美坂栞
【所持品:リサと自分の支給品一式、二連式デリンジャー(残弾2発)】
【状態:恐怖、香里の捜索が第一目的】
・関連は265・285、ルートB-9、B-10、B-11、B-12
「マナよ、ついに目覚めたか」
「!だ、誰っ?!」
森を疾走する観月マナの耳が、どこから発せられたか分からない呼びかけを捉える。
立ち止まり、周囲を見回すものの・・・周りに人は見当たらない。
「私の名前は霧島聖。またの名を、BL研究家キリシマ博士だ」
その時だった。気配なく横の茂みから白衣の女性が現れたのは。
思わず手にしたワルサーを構えるマナ。
だが、聖は飄々としていて。
「何、わたしに何の用なの」
マナの問いかけ、聖はいたって普通に答える。
「君に一つ、使命を与えたいと思う」
「何ですって・・・」
「怖い顔をしないでくれ。君は言わば・・・そう私達にとって希望の光なんだ」
まぁ、座りたまえと地べたに腰をつく聖。
警戒しながらも、マナは聖の出方をうかがう。
「話は長くなるぞ、疲れたら遠慮なく座ってくれ。
・・・さて、まず君に知ってもらいたいことがある。
この孤島に閉じ込められた我等だが、その目的とはいかようにも存在している」
「殺し合いをしろってことでしょ?」
「それ以外にもある、ということだ。まぁ、表面的にはそれが一番強い。
その目的の中の一つ、非情な計画を打ち滅ぼすために私は働きかけることになった」
「計画?何よ、一体・・・」
聖の表情が引き締まる。
厳しい彼女の様子に、マナも怯んだ。
「葉鍵GL計画。世にも恐ろしい人権を侵害する作戦を決行するためのプロジェクトだ」
GL、計画・・・マナにとって、その言葉の指し示す意味は計り知れない。
「そもそも事の次第に、葉鍵の百合具合があったのだ。
倉田×川澄、美坂×水瀬など・・・流行ったかと言われたら微妙かもしれないが、
そこには確かに絶対の支持者がいた」
「随分とKANONまみれですね」
「支持者にとっては、この萌え要素を主流に持っていきたいと望む輩がいた。
それは・・・葉鍵キャラの中にも存在し、奴等は一つの組織を作り上げた。
その組織が立てたのが、ガールズラブ計画、通称GL計画。
終末作戦『レズビアンナイト』を勃発させるための布石なんだ」
ざわ・・・ざわ。風が二人の間を通り抜ける。
マナのツインテールが揺れる、聖の長い髪も舞う。
風が止み、それと同時に起きていた沈黙を破るべく・・・聖は、マナに一冊の書物を差し出した。
「観月マナよ、私はその計画を打破すべく派遣・・・もとい、このバトルロワイアルに参加した。
GL計画に対抗すべく設立された組織からな。
そして、このBL図鑑を清らかな乙女に託すのが私の目的だ。受け取ってくれ」
サイズにしたらB5くらいの薄い冊子。手に取ると、それはキラキラと輝きながらマナの手に馴染んだ。
「何よ、これ・・・」
「選ばれし腐女子でないと扱えない私達の希望、BL図鑑だ。
ばれないよう持ち込むのに苦労したぞ。
これにボーイズパワーを注入することにより、GL計画の集めるガールズパワーを相殺するのが目的だ」
パラパラとめくるが、ほとんど中は白紙だった。
・・・いや、よく見ると、最初の一ページにだけ、一列文字が・・・。
『高槻(MOON.)×国崎往人(AIR) --- クラスB』
「こ、これは・・・」
「この図鑑は君を選んだということだ。それが、君の回収したBLパワーということになる。
・・・ふむ、早々とクラスBの力を入手したとはさすがだな」
「え、クラスって・・・?」
「BLパワーにも力が存在し、それはクラスによって三段階に分けられているんだ。
行為の内容が濃いというよりは、そのカップリングの希少性の方が問われている。
君の入手したクラスBというのは、葉同士・鍵同士のキャラで起こるクロスオーバーカップリングのことを指している。
対してクラスCは同作品同士のもの、クラスAは葉キャラと鍵キャラで起こる最強のクロスオーバーカップリングとなる」
まさか、本当に?
マナの中で、混乱が起こる。
聖は・・・いや、キリシマ博士はそんな彼女の迷いを打ち崩すべく、叫んだ。
「GL側も同じ形でガールズパワーを集めている、私達は奴等よりも多くのパワーを得なければいけないのだ!
観月マナよ、力を貸してくれたまえ。葉鍵世界を百合から守る力を・・・!!」
キリシマ博士の差し出す手、マナは「フ・・・」と笑ってそれを固く握り締めた。
「だが断る」
199 :
補足:2006/10/19(木) 11:53:56 ID:ihWtEDns0
観月マナ
【時間:午後9時】
【場所:E−7】
【所持品:BL図鑑・ワルサー P38・支給品一式】
【状態:だが断った】
霧島聖
【時間:午後9時】
【場所:E−7】
【持ち物:デイパック、ベアークロー(ランダムアイテム)】
【状態:だが断られた】
(関連・62・291)(Dルート)
なんで忘れてしまっていたのか―――
なぜ思い出そうとしなかったのか。
――――わからない。
なんで俺は彼女のことを忘れて、そして思い出そうとしなかったのだろうか………
「都合が悪かったからじゃないかな?」
「!?」
突然、瑠璃子が貴明にずいっと顔を近付けて言った。
「人は誰も自分の都合に悪いものからは目を背けたくなるんだよ。
河野くんがその人のことを忘れてしまっていたのも、きっとその人の存在が河野くんにとって都合が悪かったから………」
瑠璃子の虚ろな瞳が至近距離で貴明を覗き込む。
それは貴明にはとても不気味なものだった。
「ど…どういうことだよ?」
声が震える。
冷や汗が出る。
(―――恐い。
俺は……彼女が……月島瑠璃子が…………恐い。
彼女の目はまるですべてを見通すと同時に、見るものをどこかへと引きずり込もうとしているかのようで………)
「このみって子のほうが大事だったから………だから河野くんはその人を忘れたんじゃないかな?」
「!?」
そうなのか?
俺は………このみや雄二やタマ姉と一緒に過ごすあの日常が知らずに愛しかったから――――だから彼女を忘れたのか?
俺の日常には彼女の存在は都合が悪かったから――――――?
だから彼女を俺の記憶から抹消したのか?
「人はね、本当はみんな臆病なんだ。だから無意識のうちに目を背けたがる、逃げたがる……
今の河野くんもそう。無理な口実をつくって私たちから逃げようとしてる」
「え……?」
逃げる? 誰が?
――俺が? 誰から?
『――もうわかっているじゃないか』
――!?
振り替える。
そこには扉があった。
扉のまわりは所々にひびが入っていた。
声は扉のむこうから聞こえているようだ。
『他者を守るなんて自分から死ぬ確立をあげるなんて馬鹿げている』
『生き残れるのは1人だ。雑魚が群れたところで何になる?
くだらない夢想を抱いて苦しむくらいならすべて捨てて楽になっちまえよ』
あんた…誰だ? 何を言ってる?
『俺は俺だよ貴明。人はみんな俺のように常に狂気と共に生きているのさ』
またひびが入る。
『人の隠れた弱さだったり欲望だったり……俺はそんな存在』
『あんたは密かにゲームに乗って勝ち残りたいと思ってんだよ貴明』
『草壁さんの死はそれを伝えるスイッチになったわけだ』
――違う…………
『何が違うんだ? ほら。聞いてみろよ』
え………?
「そうだよね。私たちがいつ裏切るかわからないもんね。信頼されてないんだね私たち。
……だったら、1人でいるほうがよっぽど安全だもんね?」
月島さん?
「貴くん……そうなの?」
新城さん?
「た…貴明さん……そうなんですか? 私たちを信頼していないんですか?」
マルチちゃんまで………
違う……違うんだ………俺はそんなつもりで言ったわけじゃない。
――さらにひびが入る。
ひびが広がる。
扉が無理矢理ぶち破られようとしている。
『武器もある。俺ならできるんだぜ貴明? このゲームを勝ち残ることなんて。
手始めに周りのうるさい禍芽を摘み取っちまおうじゃないか。こういうのは後に禍々しい花を咲かせる前に潰しておくべきなんだ』
やめろ。出てくるな!
扉が開いたら……おまえが出てきてしまったら俺は………
「いい加減にしろよおまえら!」
!?
はっ、と貴明は我に返った。
そこには瑠璃子と沙織とマルチと怒りの表情を浮かべる雄二がいた。
「おまえら……なんでそう人を信じようとしない。なんで協力して…助け合おうとしない。
少しぐらいのミスや問題なんてみんなで埋めればいいじゃないか…そりゃあ、こんな島だ。少しのミスでも死ぬ可能性があるのはわかってるよ。
でも…そんなことで疑心暗鬼に囚われてばっかりじゃ、このクソゲームの主催者の思うツボじゃねーか」
雄二はそう言うと今度は貴明の方を見た。
「貴明。本当は……俺だっておまえには行ってほしくはない。だけどな……俺はおまえが逃げるような奴だなんて思えない。
確かに女が苦手なおまえだけど、こういうときは頼れる奴だってのはわかっている。
だからよ……さっさとチビ助や姉貴、あといいんちょたちを助けてきな!」
「うわっ!?」
ドンと背中を押される。
ああ――これはいつもの雄二だ。
「――わかった。雄二たちも気をつけてな」
「おう!」
俺は駆け出す。
ひびはもう広がっていない。
今なら大丈夫だ。俺は狂気に堕ちなくても充分戦える。
そして――守りたい人たちを助けられる。
かいひ
『――今回はおとなしく引き下がってやる。
だけど忘れるなよ貴明。俺は常におまえと共にあることを。そしていつでも『俺』は『俺』になれるということをな』
あいつのそんな声が聞こえた気がした。
わかったよ。肝に銘じておく。
でも、俺は絶対に絶望はしない。必ずみんなでこのクソゲームから脱出してみせる。
―――俺を信じてくれている人たちが――俺を待っている人たちがいるかぎり。俺はどこまでもいける気がするから…
【場所:I−7】
【時間:午後6時20分】
河野貴明
【所持品:Remington M870(残弾数4/4)、予備弾×24、ほか支給品一式】
【状態:健康。このみたちを探すため別行動。狂気の存在を知る】
向坂雄二
【所持品:死神のノート(ただし雄二たちは普通のノートと思いこんでいる)、ほか支給品一式】
【状態:健康】
新城沙織
【所持品:フライパン、ほか支給品一式】
【状態:健康。やや精神衰弱】
マルチ
【所持品:モップ、ほか支給品一式】
【状態:健康。困惑】
月島瑠璃子
【所持品:ベレッタ トムキャット(残弾数7/7)、ほか支給品一式】
【状態:健康。診療所へ行く。隙をついてマーダー化するつもり。貴明を狂化させマーダー化を謀ったが失敗】
柚原春夏は戸惑っていた。
「武器って言ったって……ねえ?」
答えるものは無い。
眼前に聳え立つのは鉄の城。
いかん歳がバレる、と思いながら春夏は改めてそれを観察する。
全体に優美な曲線を描くフォルム。
黒をベースに濃紺とシルバーで構成されたカラーリング。
人型をしているが、背中にあたる部分からは翼のようなパーツが
大きくせり出している。
綺麗だ、と直感的に思う。
何しろ巨大ロボットなど見るのは初めてだが、この機体は綺麗だ。
(こういうのって普通、戦争なんかの為に作られるんだろうけど。
……でも、この子からはそんな感じがしない……)
この子。
そう、この黒い機体の顔面にあたる部分は、まるで人間の顔を
そのまま象ったかのように優美な形状で、美しい銀色に煌いている。
どこかあどけなさすら感じさせるその表情からは、とても殺戮を
目的として製造されたものとは思えなかった。
どうやら今は膝を抱えて丸まっているような状態にあるらしい。
直立すれば16、7メートルにはなるだろうか。
「……どうやって使うのかしら」
とりあえずその場に座り込んで説明書を読み耽ることにする。
諸元やら詳細やらはすっ飛ばすことにして、目次から見つけたのは
「はじめてのアヴ・カミュ」という項目。
「ふむふむ……アヴ・カミュはシャクコポル社の開発した最新鋭機です。
従来型のアベル・カムルと比較して操縦性が格段に向上しており(当社比120%)、
初心者に最適な機体となっております。
この項では皆様がアヴ・カミュを楽しく使いこなしていただくための
お手伝いをさせていただきます。番号の順に操作を進めてください。
1.まずはハッチを開けてください、と……」
ハッチハッチ、ハッチって何だ。
巻末の索引から逆引きして「ハッチ」を調べる。
「……要するに出入り口みたいなものか。初心者向きって書いてあるのに
どっか不親切よねえ、家電の説明書って」
ぶつぶつと文句を言いながら説明書を手繰る主婦。
一項目読むのに他の項目を幾つも参照しなければならず、時間ばかりかかる。
「首の後ろの……ってあんなところにあるの!?
もう、全然バリアフリーを理解してないメーカーねえ……」
一応梯子はついているようだった。
説明書をエプロンのポケットに突っ込んでえっさほいさと登る春夏。
悪戦苦闘しながら片手で開放スイッチを捻ると、空気の抜ける小さな音と共に
ようやくハッチが開いた。
えいやと飛び乗る春夏。
この頃にはちょっと童心に返った気分で楽しくなってきている。
シートは硬すぎず柔らかすぎず、ちょうど低反発クッションを挟んだかのような、
不思議な感触だった。
「で、次は……予備電源スイッチを入れて、認証を……」
図解と大きな字で示された通りに手順をこなす春夏。
パネルのような台に右の掌を押し当てる。
すると、少し大きめのスイッチに小さな明かりがついた。
「これが主電源スイッチか……明かりがグリーンになったらON、ね」
ぴ、と電子音がしてスイッチライトがグリーンへと変わる。
「ちょっとドキドキするわね……えい」
ベテラン主婦の度胸でスイッチを押す春夏。
と。
コクピットの様子が一変した。
計器の類に灯が点る。
驚く間もなく、今まで壁だと思っていた周囲のパネルが一斉に明るくなった。
「これ……周りの景色が見えるんだ……ホントにアニメみたいね……」
人っ子一人いない要塞の内部を映し出す全方位モニターにしばらくの間
見入っていた春夏だったが、その耳に、ふと微かな音が聴こえたような気がした。
(……ょ……のよ……)
それは人の声のように、春夏には感じられた。
「だ、誰!? 誰かいるの……!?」
きょろきょろと辺りを見回す春夏。
しかしモニターに映る影はない。
勿論狭いコクピットの中に人影などあろうはずもない。
それでも、声は響いている。
(……ものよ……とめるものよ……)
声は段々と大きくなってきていた。
空耳などではない。
春夏は身を硬くする。
掌にじっとりと汗が浮かんでくる。
『答えよ、我が力を求める者よ……』
今度ははっきりと響いた。
女性的な声。
それは少女のようにも、老婆のようにも聞こえた。
思わず問い返す春夏。
「誰!? どこから喋ってるの!?」
『我が力を求める者よ……我は汝が求めたる力なり』
「力……?」
『我は力なり。汝の操らんとする力なり』
「操るって……まさか、この子自身が喋ってるの……?」
自分を囲む計器やパネルを見渡す春夏。
少しだけ身体の力を抜く。
『我が力を求める者よ……答えよ』
「何を? あなたは何を訊きたいの……?」
『我が力を求める者よ……我が求める答えは一つ』
「それは……?」
『―――汝、何故に我が力を求めるか』
それは、まさに核心を突く問いかけだった。
春夏は、自分の中から高揚や緊張が抜けていくのを感じていた。
この島に連れてこられたこと。
この島に娘がいること。
この島に娘の大切な存在がいること。
この島で行われていること。
そういったもののすべてが、春夏を包む現実だった。
だから、柚原春夏は迷わずに口を開いた。
「護るため」
凛と前を見据え、
「大切なものを護るためよ。そのために、あなたの力を貸して頂戴。」
言葉を放った。
『―――契約は紡がれた』
声が響く。
と、コクピットに鈍い振動が走る。
モニターに映る景色が変わっていく。
視点が高くなっているようだった。
「この子……動くの!?」
ほい
驚く春夏。
まだ自分は何も操作をしていない。
慌てて説明書を繰ろうとする春夏の耳に、またしても声が響いた。
『大丈夫よ、おば様』
先程とは違う声。
高い、甘やかな少女の声だった。
「あなた……あなたなの?」
これじゃ自分でも何を言ってるのかわからないな、と感じながら春夏が問いかける。
それでも答えは返ってきた。
『そうよ、おば様。カミュはおば様の力。
おば様が求めた力』
「カミュ……それが、あなたの名前なのね」
『うん、そうだよ。よろしくね、おば様!』
それを聞くと、眼を閉じて少し黙り込む春夏。
『……? どうしたの、おば様?』
やがて眼を見開いた春夏は、口元に笑みを浮かべてこう言った。
「―――私のことは、春夏さんって呼びなさい、カミュ?」
【柚原春夏】
【アヴ・カミュ】【おたま】
【状態:健康】
【要塞内のため第一回定時放送は聞いておらず】
【18時過ぎ】
【位置:要塞(F6‐F7交差地点/神塚山中腹。ルール上ではこのトンネル内はA10として見る)】
500S&Wマグナム、デザートイーグル、防弾アーマー、34徳ナイフ(スイス製)、ナタは要塞内に。
ルートD →108 ⇔247
先程の藍原瑞穂の無残な死体を見てから十数分、ようやく呼吸が整った環はどこか人の集まっている場所を探して鎌石村を練り歩いていた。
情報交換に会話する相手が多いに越した事はない。人の数だけ情報は集まる。これまで交戦した相手、信用できそうな人物、そういったものを知っておくだけで行動ははるかに楽になる。
環は日の沈みかけた空を見上げる。そろそろ夕暮れ。寝泊りするところを探す人間も多くなるはずだ。
そして同時に、夜は人をより狂わせる時間となる。闇夜に紛れての奇襲、寝首をかく…様々な悲劇を起こす要因が夜にはある。そんなことが起こらないように、と環は祈る。
「――みなさん聞こえているでしょうか。今から僕は一つの放送をします」
その時突如、聞こえてきた男の声。環はその声に警戒しつつも放送に神経を集中させた。
「これから発表するのは……今までに死んだ人の名前です」
(…な、何ですって!?)
環の思考が一瞬停止する。しかし聞かないわけにはいかない。考えたくもないことだが、知人や家族の名前があるのかもしれないのだから。
「――それでは発表します。………」
次々と名前が読み上げられていく。こんなにも多くの人間が命を落としていたのか。きっとさっき見た死体の人の名前もあるに違いない。
だが、環にとって僥倖だったのはこのみや雄二、貴明の名前が無かったことであった。
…けれども、亡くなった人達のことを思いつつも、心のどこかでホッとしている自分がいる。それが環には嫌で仕方がなかった。
ともかく、大切な人たちはまだ生きている。それが確認できただけでもいいだろう…
パチンと自分に平手をして気を奮い立たせる。そして環はまた村の中を歩き始める。
そうしてさらに十数分歩いていたところ、異様な、草木の焼けたような、焦げ臭い匂いが鼻につく。
(まさか、また戦闘が!?)
急いでそちらの方へ向かう。次第に、人の声と思しき声が聞こえてくる。内容は上手く聞き取れないが、そんなことを気にしている時間は無い。自分の目の前で、死者を出してたまるか。
やがて見える一軒の消防署。その窓から、もうもうと煙が立ちこめているのが見える。
(室内で火炎放射器でも使ったって言うの!?)
躊躇は出来ない。環は馬鹿な争いを止めるべく消防署内に侵入し、煙の出ていた一室の扉を蹴り開けてコルト・ガバメントを構えた。
「動かないで! 馬鹿なことは止めなさい!」
「…は?」
環の目の前にいたのは。
火炎放射器を持っている殺人者でもなく。
銃を構えた殺人鬼でもなく。
この島とはおよそ不釣り合いな、エプロンをつけた三人の男女だった。
環が来る少し前の事。
「取り敢えず飯でも食べて、英気を養わないか?」
消防署内のある一室。そこらへんの民家から食材とエプロン、包丁などを拝借してきた英二と芽衣が部屋で休んでいた面々に向かって告げた。
「飯?」
疑問の声を上げたのは相沢祐一。
「そうだ。腹が減っては何とやらと言うからな。ここらへんで体力の回復を図ろうと思う」
「そりゃいいけど…ここ、キッチンとかあるのか?」
「それなら大丈夫です。ちゃんと見つけておきましたから」
芽衣が言うと、祐一はならいいが、と言って続きを促した。
「これから簡単に飯を作るんだが…誰か他に来る奴はいないか?」
「俺は飯なんて作れないし、腕もこれだからな…神尾は?」
泣き疲れて眠りについている杏の様子を見ていた観鈴が、うーん、と首を捻る。
「わたしはできるけど…この人は…」
「ああ、そいつなら俺が見ておいてやるよ。どうせ今は安静にしてないといけないからな」
祐一が申し出ると、観鈴は少しだけ悩んでから、じゃあ、わたしも行きますと申し出た。
結局、別室に杏と祐一を残し英二と芽衣と観鈴で料理を作ることになった。エプロンを着けながら芽衣が英二に問う。
「英二さん、お料理とか出来るんですか?」
「うん? いや、全然」
しれっと言う英二にガクっと膝を落とす芽衣。
「出来ないって…どうするんですか」
「いや、野菜を切るくらいはできるだろうと思ってね。大の大人が何もしないわけにはいかないだろう?」
「はあ…」
芽衣は内心大丈夫だろうかと思ったが、英二の好意を無駄にするわけにもいかず野菜を切る役を任せることにした。
「それで結局何を作るの芽衣ちゃん?」
エプロンをつけた観鈴が尋ねる。
「えーっと、炒飯と、味噌汁ですよね、英二さん」
ああ、と英二が頷くと観鈴はじゃあわたしは味噌汁作るね、と言って野菜を切り始めた。手際がかなり良かったことから、料理は上手いらしかった。
「それじゃわたしたちも作りましょうか。英二さん、ニンジンとピーマン、切ってくださいね。わたしは玉ねぎをやりますから」
調理を始める。英二は料理は全然とか言っていたくせに意外と手際良く材料を切っている。器用なんだな、と芽衣は思った。
やがて野菜も切り終わり炒める段階に入る。観鈴もすでに煮込む段階に入っていた。英二はと言えば出来る事がなくなったので皿を出したりしている。
炒飯を炒めながら、芽衣は思う。
――この殺し合いは、終わるんだろうか。英二さんは必ず見つけ出すと言ったけれど…正直、どうすればいいのか分からない。何ができるかも分からない。
自分達は、この永遠とも言える悪夢の中に居座り続けるだけなんじゃないだろうか。
必死に脱出方法を考えてみるが、糸口すら見えない。それどころか不安感はいや増すばかりだった。
「――さん、芽衣さんっ!」
誰かが自分を呼ぶ声がした。ハッとなって顔をあげると、そこには焦げかかっている…というか、モウモウと煙を上げて今まさに焦げちゃってますな炒飯があった。
「わっ、わわわっ!」
驚いてフライパンをひっくり返してしまう。その拍子に跳ねあがった炒飯がコンロの火へとダイブする。
「わーっ、みんなのチャーハンがっ!」
観鈴があたふたと右往左往する。その騒ぎを聞きつけて他の場所へ水はないかと探していた英二が戻ってくる。
「どうしたんだ…って、うをっ、炒飯がっ!」
「とんでもないことに!」
ヘンに息が合う英二と観鈴。芽衣もいきなりのことであたふたしていた。
「あわわ、ど、どうしよう…」
「取り敢えず、火だっ、火を消せっ!」
「あ、は、はいっ」
英二の指示でコンロの火を消す。取り敢えず火災の危機は去った。…が、次の瞬間、派手な音がしてドアが誰かに蹴り開けられた。
「動かないで! 馬鹿なことは止めなさい!」
「は?」
振り返ると、そこには何を勘違いしたか拳銃を手にもって戦闘態勢に入っている女がいた。
「って…あら?」
エプロン姿の三人と、無残な姿になった炒飯を見て拍子抜けする女。英二は頭を掻きつつ冷静に言った。
「あー…何を勘違いしてるか知らないが、銃を下ろしてくれないか」
「…ごめんなさいね。早とちりしたみたいで」
一連のドタバタの後、芽衣と英二と共に祐一と杏のいる部屋まで案内された環は、ひたすら平伏して謝っていた。観鈴は何とか無事だった味噌汁をついでここに持ってくる途中だ。
「まったく…何かと思って武器を探しちまったじゃないか」
やれやれと言った調子で嘆息する祐一。
「すみません。わたしがぼーっとしてなければ…」
「まあまあ。芽衣ちゃんも疲れていたんだろう? 仕方ないさ、むしろ味噌汁が無事だっただけありがたい」
はい…と返事するがしょぼくれたままの芽衣。英二はその様子を何となくおかしいとは思いつつもここでは追求しないことにした。
「それはともかく、これだけの人に会えたのは幸運だわ。どう? 情報交換しないかしら?」
「情報交換か…僕は構わない。皆はどうだ」
芽衣と祐一が頷く。英二はそれを確認すると環に一礼する。
「とのことだ。よろしく、僕は緒方英二という。こっちの女の子が春原芽衣ちゃんで、こっちが相沢祐一少年だ。後一人いるが…まあそれはまた後で」
「緒方…いえ、こちらこそよろしくお願いします、私は向坂環です」
環も一礼して、互いに情報交換が始まった。
「…ふむ、河野貴明、向坂雄二、柚原このみか…悪いけど僕達はそんな人には会っていない」
英二の返答にそうですか、と言って肩を落とす環。
「僕達はここいらは結構歩き回ってきた。ひょっとすると、北の方面にはいないのかもしれないな」
「でしょうか…はぁ、私のカンも鈍ったかしらね。昔はどんな遠くでもタカ坊の匂いを嗅ぎつけて…」
環がぶつくさ言っている横から、今度は芽衣が尋ねる。
「あの…春原陽平、って言う人と会ったりしなかったですか? 金髪で、お調子者だからすぐに分かると思うんですが…」
「ごめんなさい、知らないわ。…あなたのご兄弟?」
「はい、わたしの兄なんです。バカなんですけど、でも、イザってときには頼りになるんです」
「そっか、いいお兄さんで羨ましいわ。ウチの弟なんか、イザってときでも頼りにならないから」
肩をすくめながら苦笑いする環。それにつられて、芽衣も少しだけ笑った。
「大丈夫よ、イザってときには頼りになるんでしょう? だったら、そう簡単に死んだりしないはずよ。いつか、きっと会えるわ」
芽衣の頭を優しく撫でる環。その言葉に、芽衣もコクリと頷いた。
「ところで、俺からもいいか?」
次に祐一が質問をする。
「今まで会った人間の中で、ゲームに乗ったような奴はいなかったか? そういう情報があればこっちも楽になるんだが…」
「ええ、一人いるわ。一度交戦したけど、攻撃的な人だった」
「みなさーん、味噌汁ができたよ。新しい人もどうぞっ」
観鈴がキッチンから戻ってくる。手には人数分のお椀があった。
環に味噌汁が手渡される。ちょうど小腹が空いていただけにありがたい。
「ありがとう。助かるわ、温かいものがあって。あなた、名前は何て言うの? 私は向坂環」
「あ、はい。神尾観鈴って言います」
互いに一礼した後、観鈴は他の人にも配り始める。杏と自分の分は、机の上に置いておいた。
「その人は寝てるようだけど…何かあったの? ひどい顔をしてるけど」
「あ…それは…」
「…ちょっとゴタゴタがあってね、今はそっとしておいてやってくれ」
言いたくなさそうだったので、環はそうですか、と言って聞くのを止める。
「…おっ、美味い。で、なんだっけ? ああそうだ、向坂が交戦した相手の情報だ。名前は分からないか?」
配られた味噌汁をすすりつつ、再度会話を始める祐一。
「ごめんなさい、名前は分からないわ。でも特徴なら分かりやすいのがあったから」
芽衣も味噌汁を受け取る。残すは英二の分のみ。
「…関西弁を使う女よ。スーツ姿で、髪を後ろで結っていたわ」
「え…っ?」
英二に味噌汁を配ろうとしていた観鈴が、絶句して取り落とした。
「うおっ! 僕の味噌汁がっ!」
目の前の惨状に悲鳴をあげる英二。そんなことにはお構いなく、観鈴は青ざめた顔で呟く。
「…それ、わたしのお母さんかも、しれない」
場の空気が凍り付く。祐一も。芽衣も。環も、英二でさえもその場から一歩も動けなかった。
【時間:19:00過ぎ】
【場所:鎌石村消防署(C-05)】
相沢祐一
【持ち物:支給品一式】
【状態:体のあちこちに痛み】
神尾観鈴
【持ち物:フラッシュメモリ、支給品一式】
【状態:疲労はあるものの外傷等はなし】
緒方英二
【持ち物:支給拳銃、予備の弾丸、荷物一式、支給品の中にはラグビーボール状のボタンと少し消費した食料と水とその他】
【状態:疲労はあるものの外傷等はなし】
【その他:英二の炒飯と味噌汁、死亡】
春原芽衣
【持ち物:英二の支給拳銃、荷物一式、支給品の中には少し消費した食料と水とその他】
【状態:疲労はあるものの外傷等はなし】
藤林杏
【持ち物:なし】
【状態:泣き疲れ睡眠、精神状態不安定】
向坂環
【所持品:コルトガバメント(残弾数:残り20)・支給品一式】
【状態:健康】
【備考:B、B'以外のB系ルート】
224 :
偽りの微笑み:2006/10/19(木) 21:47:07 ID:n9TU6nq90
梶原夕菜はホテル跡へと向かっていた。
先程の澤倉美咲の錯乱で受けた攻撃によって足を打撲しており、
その足取りは重かった。
(困ったわね………)
夕菜は焦っていた。
この足では思うように動き回る事が出来ない。
このような状態で敵に狙われたらまず逃げ切れないし、
何より動き回れないと宗一を探す事が出来ない。
早く足を治す事が必要だ。早く足を治して、宗一を探す。
探す過程でゲームの脱出に役立ちそうに無い人間や、
いつ裏切るか分からない単独行動者は、この薬を使って錯乱させる。
そうやって障害を排除しながら宗一と合流出来れば、きっと何とかなる。
きっと宗一ならゲームを破壊してくれる。彼女はそう信じていた。
宗一の為なら自分の手が汚れても良い。自分が死んでも良い。
それでも宗一には、生き延びて欲しかった。
(そうちゃん……待っててね)
地図によると、もうすぐホテル跡に着くはずである。
まずはそこで一晩休んで足を癒そう。
怪我は重くない。一晩休めばきっと治る。後一頑張りだ。
そう考えていた時、突然背後から声がかけられた。
「君、大丈夫かい?」
「っ!」
驚いて振り向いた先には――黒を基調とした服の男。少年が立っていた。
「あ、ごめんごめん。驚かせる気はなかったんだ」
少年は笑顔で謝罪している。
「肩を貸すよ、ほら」
そう言ってから、少年は彼女に肩を貸そうとしていた。
225 :
偽りの微笑み:2006/10/19(木) 21:47:40 ID:n9TU6nq90
「え……、なんであなた、私の事を警戒しないんですか?」
それは、本心から出た言葉だった。
参加者の数を減らすつもりの彼女が言うのもなんだが、
少年の無警戒さは度が過ぎる。
この少年は何故こんな状況で素直に人が信用出来るのだろうか。
少年は夕菜の盾を指差し、微笑んでいた。
「盾じゃ、人は殺せないだろ?」
そう言っていた。
(な―――それだけの理由で?)
呆然とする夕奈の前に、再び少年の肩が差し出されている。
今度は素直に夕奈も肩を借り、少年に支えられながら歩き始めた。
「あの……ありがとうございます」
「構わないよ。こんな時こそ助け合わないとね」
少年は見た目に似合わず力強く、夕奈を支えながら歩いていても息一つ切らさなかった。
この少年はゲームを破壊する時に戦力になる。
それにこの少年は、見ず知らずの自分を怪しみもせずに助けてくれた。
無防備な所はあるが、彼はとても親切で、心優しい。
この少年とは協力したい。仲間として一緒に脱出したい。
夕奈はそう考えていた。少年への警戒心は、もう消えていた。
(良かった、これでそうちゃんを助けにいける―――)
彼女は安心して、微笑んでいた。
少年も後ろを振り返り、微笑みを返してくれる。
226 :
偽りの微笑み:2006/10/19(木) 21:48:31 ID:n9TU6nq90
だが、
ごきりっ、という音が聞こえたかと思うと、
彼女の視界が90度回転し、次の瞬間には彼女の意識は暗闇へと沈んでいった。
彼女は痛みを感じる暇も、敵の存在を認識する暇も、
宗一の無事を祈る暇もなく、ゲームから退場する事となった。
結局彼女はこのゲームで残るには甘すぎたのだ。
少年は相変わらず笑顔を絶やさないまま彼女のバッグと盾を拾っていた。
「さて、次はどこに行こうかな」
少年は彼女の首が折れた死体には一瞥もくれずに地図を取り出し、
次の行き先を考えていた。
人の心を持ったままではこの任務は辛すぎる、人を殺し続ける事には耐えられない。
だから少年は、自分の心を凍りつかせ、一切の感情を捨てる事に努めていた。
自分に与えられた使命を果たす為に―――――そして、感情の無い殺人マシーンと化す為に。
227 :
偽りの微笑み:2006/10/19(木) 21:49:07 ID:n9TU6nq90
【時間:1日目19:30頃】
【場所:E−04とF−04の間くらい】
少年
【持ち物1:強化プラスチックの大盾(機動隊仕様)、注射器(H173)×19】
【持ち物2:支給品一式、レーション3つ】
【状況:目的は参加者の皆殺し、行き先はお任せ】
梶原夕菜
【状態:死亡】
・関連は171,230,(294採用ルートの場合は294も関連)、ルートB系共通
民家の塀を遮蔽物として身を潜めながら、宗一は状況を分析し始める。
まず相手は今単独行動を取っている、それも素人だ。
仲間がいるならば、せっかく不意打ちに成功しているのだ、そのまま
マシンガンを持った少女の張った弾幕で、こちらを仲間の射線まで
誘導すればいい。
そんな発想の無い素人だとすれば、火器を持っている者が全員で
めくら撃ちをしてくる可能性が非常に高い。
いずれにせよ、こちらに視認された少女がその場に突っ立っている間中ずっと
伏兵がこちらの様子を窺っている意味など、どこにもない。
それでは囮にすらならない。ただの的だ。
それに先刻、少女はまずこちらに対して先制攻撃を成功させたにもかかわらず
いったん射撃を止めた。
何かを迷っていたのか、状況の把握に時間がかかったのか、それは判らないが
次弾の斉射までに空いた間がとにかく不自然だ。
撃つなら撃つ、撃たないなら撃たない。
そういった割り切りのよさ、行動の抑制といったものがまるで感じられない。
素人相手であるならば、その道のプロである自分に敗北の要素は無い。
そう確信できるだけの経験が、宗一にはあった。
(さて……弾切れを待つか、それとも……)
素人であるならば、残弾の確認をせずに撃っている可能性は高い。
マガジンの交換といっても時間がかかるだろう。
適当に応射しているだけで、無駄弾をばら撒いて自滅すると判断。
(さっさと片付けて戻りますか……)
結論を出した宗一の行動は早い。
塀の影から銃口だけを覗かせて、まず一発。
数瞬を置いて、パラパラと応射が来る。
(さて、お次は……)
おもむろに学生服の上着を脱ぐ宗一。
脱いだ制服を、そのまま塀の陰から投げ出す。
先程のエサで敏感になっているのか、今度は反応が早い。
軽い連射音が響き、見る間に制服が蜂の巣にされていく。
(ま、安いもんか……)
程なくして、弾の雨がやむ。
「……!?」
予期していない事態に戸惑うような気配が伝わってくる。
間髪いれず、塀の陰から飛び出す宗一。
案の定、弾切れに対処できずに困惑している少女。
突然現れた宗一の影に驚く間も与えず接近すると、今やただの
鈍器と化したH&Kを蹴りつける。
「……ッ!」
少女の手からマシンガンが放物線を描いて飛んでいく。
苦痛に表情をゆがめてしゃがみ込む少女。
その姿に内心で一つ謝りながら、宗一は手にしたFive-SeveNの銃口を
少女に突きつける。
「……はい、チェックメイトだ」
見上げる少女の表情は、怒りとも落胆ともつかない。
どうしたものかと迷う宗一はそのまま、
「―――動かないでくれ」
戦慄した。
背中側からかけられた声は、明らかに自分に対して向けられていた。
(馬鹿な、この状況で新手だって……!?)
想定外。
何で今このタイミングなんだ。
今まで指をくわえて見ていたとでもいうのか。
幾つもの疑問が宗一の脳裏をよぎる。
「ひ、氷上くん……」
少女が、どうやら背後にいるらしい誰かの名を呼ぶ。
(くそ、マジで仲間なのかよ……)
油断以外の何者でもなかった。
素人は何をするかわからないから怖い。
そんな金言が、今更ながらに宗一の頭の中を支配していた。
【場所:I−06、07境界付近】
【時間:午後6時20分】
那須宗一
【所持品:FN Five-SeveN(残弾数19/20)包丁、ロープ(少し太め)、ツールセット、救急箱、ほか水・食料以外の支給品一式、食料(数人分の量。缶詰・レトルト中心)】
【状態:自己嫌悪】
太田香奈子
【所持品:H&K SMG U(0/30)、予備カートリッジ(30発入り)×5、フライパン、懐中電灯、ロウソク(×4)、イボつき軍手、他支給品一式】
【状態:困惑】
氷上シュン
【所持品:ドラグノフ(残弾10/10)、100円ライター、折り畳み傘、他支給品一式】
【状態:健康】
→271 ルートJ
「うぅ、観鈴……俺はこんな変態にキズモノにされてしまったよ……
しかもガキに見られたし……orz」
高槻の精液を全身に塗りたくられ、国崎往人は激しく項垂れていた。
傍に落ちている人形も白い涙を流している。
「あぁ……代々受け継いできた大切な人形までこんなに汚れてしまった……
これはもう捨てるしかないのか……」
往人がそう呟いたとき、人形は不意に浮かび上がり眩い光を放って穢れを吹き飛ばした。
『我が子よ…
よくお聞きなさい。
こんなことにめげて人形を捨ててはなりません。
こうなったのも貴方が翼の少女を探すのをサボってこんな島で遊んでいるからです』
「いや、無理矢理連れてこられた上に遊んでいるわけじゃないんだが……」
『口答えするのではありません。
いいですか、さっさと翼の少女を探すのですよ……』
言いたいことだけいうと、人形はポトリと地面に落ちた。
スッキリして電波の影響が抜けた高槻が、呆けている往人に声をかける。
「その……なんだ、すまなかった」
「謝れば済むと思ってんのかっ!」
往人は思わず高槻の胸倉につかみかかった。高槻の顔はうっすらと赤みがかっている。
往人の背筋に悪寒が走った。
「いや、しかし……その……なかなかよかったぞ……」
───ぞーっ───
やばい。ここにいてはやばい。
往人は落ちているものを急いでかき集めると、バッグの一つを高槻に投げつけて逃げ出した。
「逃げるぞポテト!」
「ぴこー!」
「待て! 俺を置いて行くなー!」
かくして往人、ポテトと高槻の追いかけっこの幕が開けた。
「まだ追いかけてくる気か!」
「頼むから止まってくれ!」
延々1時間ほど走ったところで、往人は木の根につまずいてしまった。
「しまった!」
「つかまえたぞ!」
もう終わった、そう思ったとき、往人は背中をつかまれ体が宙に浮かび上がるのを感じた。
高槻の驚愕の声が響く。
「なっ、なんだこいつはーーー!!」
そいつは犬らしき胴体に巨大な翼を持ち、
尻の辺りから黄色い目と鋭い牙を持った大蛇を生やしている。
そして口には巨大な杖を銜えていた。
「ありがとう、助かった」
「全く世話のかかる奴だぴこ」
往人は助けてくれた人物を確かめるべく、首を後ろに回した。
「って、何者だお前ー!」
「常連客を憶えていないとは酷い奴だぴこ」
「……ポテトなのか?」
「さっきの電波で封印が解けたぴこ」
「……」
────────────────────────────────────
(人形に御魂をこめて早千年……よもやこんな辱めを受ける日が来ようとは……
往人さまにはああ言ったものの、わたくしの心はずたずたでございます……)
(俺もだ裏葉……もうゴールしてもいいだろうか?)
────────────────────────────────────
国崎往人
【時間:午後9時半ごろ】
【場所:F−06上空】
【所持品:人形、トカレフTT30の弾倉×2、ラーメンセット(レトルト)、化粧品ポーチ、支給品一式×2】
【状態:呆然としている】
高槻
【時間:午後9時半ごろ】
【場所:F−06】
【所持品:支給品一式】
【状態:セックスは女とするもの、そんな風に考えていた時期が俺にもありました】
ポテト
【時間:午後9時半ごろ】
【場所:F−06上空】
【所持品:なんかでかい杖】
【状態:魔犬モード(毛の色は白銀。目の色はコバルトブルー。物凄く毛並みがいい。背中に巨大な翼。尻尾は大蛇)】
柳也・裏葉
【場所:往人の人形の中】
【状態:orz】
→291, ルートD
235 :
叶わぬ願い:2006/10/20(金) 07:08:11 ID:vvNjnjeR0
二人の少女が、目に涙を溜めながら走っていた。
止まるわけにはいかなかった。
あの襲撃者は恐ろしい強さだった。恐ろしい迫力だった。
人とは思えない動き――――そして何より、あの冷たい、無機質な目。
いくらイルファがロボットであるとはいえ、自分達を守りながらでは絶対に勝てない。
だから今は、走り続けるしかなかった。
(イルファ、勝たなくてもええから、どうか無事でいて――)
(いっちゃん、勝たなくてもええから、どうか無事でいて――)
ただ、イルファの無事を祈りながら。
「もうすっかり暗くなったな」
「そうなんだ…もう夕焼けは見えない?」
「当たり前だ」
「う〜ん、残念…」
浩之は一人では歩く事さえ出来ないし、みさきは目が見えない。
その状態で動き回るのは、無謀過ぎる。
結局浩之とみさきは長い距離を移動する事は諦め、山で野宿する事にしていた。
下手に動き回るよりは敵に見つかり辛い筈である。
「しかし……腹減ったな……」
「うん……」
二人の腹の虫の音が山中に鳴り響く。
仕方なかったとは言え、支給品を全て捨ててきたのは痛手だった。
このゲームでは体力の消耗はそのまま生存率の低下に繋がる。
空腹は重大な問題なのだ。
とは言え、今二人は動ける状況では無い。どうしようもなかった。
二人がハァ、と溜息をついていたその時である。
236 :
叶わぬ願い:2006/10/20(金) 07:08:53 ID:vvNjnjeR0
山の上の方から何かが近付いてくる音が聞こえてきた。
走っているのか、その速度はそれなりに速かった。
「くそ!」
浩之は舌打ちした。
もし近付いてくるのが敵だったとしたら、今の自分達では逃げ切れないだろう。
それは分かっていたが、それでもみさきを庇うように彼女の前に移動した。
「浩之君……」
後ろではみさきが不安そうに浩之の袖を掴んでいた。
(何としてでも、川名だけは守らねーと……!)
浩之が覚悟を決めていたその時彼の目の前に現れたのは、
今にも泣きそうな表情をしている二人の少女だった。
浩之は呆気にとられていた。
二人の少女は両方とも覚悟を決めたような表情で、
お互いがお互いを庇うように立ち位置を変えようとしている。
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる………
そのまま眺めていても良かったが、どうみても殺人者では無いし、
キリが無さそうだったので一応止めてやる事にした。
「……遊んでる所悪いが、止まってくれ。俺達はゲームに乗る気はねぇよ」
二人はピタリを動きを止めて、ようやく話が出来る状態になったようだった。
浩之達と珊瑚達は地面に座り込みながら情報交換をしていた。
「つまり、姫百合――だとどっちか区別つかねえな、瑠璃と珊瑚は敵から逃げてきたんだな?」
「うん……。いっちゃん無事やとええんやけど……」
「さんちゃん!イルファを探しにいこうよ!」
瑠璃は立ち上がり、そう叫んでいた。
237 :
叶わぬ願い:2006/10/20(金) 07:09:41 ID:vvNjnjeR0
「……そいつは止めといた方が良いと思うぞ」
今にも駆け出そうとしている瑠璃を制する浩之。
「なんでやの!?イルファはウチらを助けてくれたんやから、次はウチらの番やんか!」
「駄目だよ瑠璃ちゃん、浩之君の言う通りだよ……」
「いっちゃんは心配やけど、落ちついて………」
浩之は真剣な目で、瑠璃を見据えていた。
「イルファってロボットはお前達を庇ってその場に残ったんだろ?そこにお前達が戻ったら……」
「いっちゃんの行動の意味が無くなっちゃう……」
「………分かった」
感情を押し殺しながらそれだけ言って、瑠璃は再び腰を下ろしていた。
「イルファ、無事だとええな………」
心配そうな顔で呟く瑠璃。珊瑚も同様に、沈んだ表情をしている。
「瑠璃ちゃん、珊瑚ちゃん、きっと大丈夫だよ」
「え……」
みさきは瑠璃と珊瑚の手を握っていた。
「イルファさんは、強いんでしょ?きっと大丈夫」
「みさきさん………」
「私もいきなり襲われて親友の雪ちゃんとはぐれちゃったけど、
雪ちゃんは頼りになる子だからきっと大丈夫。イルファさんも雪ちゃんも、きっと大丈夫」
みさきは笑顔で、そう言い切っていた。
「そうだよな……、諦めちゃそこで試合終了だもんな。」
「そうやね……ウチらももっと、いっちゃんの事を信じてあげへんとね」
歯を食いしばって、何とか笑顔を作って、珊瑚がそう口にしていた。
「とにかく今日はもう休憩して、明日に備えようぜ。体力が無きゃ、明日みんなを探せないだろ?」
「うん、そうやね!」
瑠璃が笑顔で頷く。
238 :
叶わぬ願い:2006/10/20(金) 07:10:26 ID:vvNjnjeR0
「ところで一つ、寝る前に相談があるんだが……」
「ええけど、何なん?」
そこで、浩之とみさきの腹の虫が同時に鳴った。
瑠璃も珊瑚も苦笑しつつ、バッグから食料を取り出していた。
彼女達は知らない。このゲームの非情な現実を。
死は平等に、どんな者にもやってくる可能性がある。
彼女達は知らない。イルファも深山雪見も、既にこの世にいない事を――――
「しょ……食料が………ほとんど無くなってもうた……」
「みさきさん………どんな体の構造してるん?」
ついでにみさきが超人級の大食いだという事も。
239 :
叶わぬ願い:2006/10/20(金) 07:12:03 ID:vvNjnjeR0
共通
【時間:一日目午後九時頃】
【場所:G-5】
藤田浩之
【所持品:なし】
【状態:食事後、交代でレーダーで見張りをしつつ睡眠。足を重度の打撲】
川名みさき
【所持品:なし】
【状態:食事後、交代でレーダーで見張りをしつつ睡眠。】
姫百合瑠璃
【持ち物:デイパック、水(半分)、食料(3分の1)携帯型レーザー式誘導装置 弾数3】
【状態:食事後、交代でレーダーで見張りをしつつ睡眠】
姫百合珊瑚
【持ち物:デイパック、水(半分)食料(3分の1)。レーダー】
【状態:食事後、交代でレーダーで見張りをしつつ睡眠】
備考【食料の減りが異常なのはお察しください。】
【ルートB9-12 関連241・258・283・285】
みさきが見張り?
ああ、みさきは無理だな……
>川名みさき
> 【所持品:なし】
> 【状態:食事後、交代でレーダーで見張りをしつつ睡眠。】
を
川名みさき
【所持品:なし】
【状態:食事後、睡眠】
に修正でお願いします
ONE知らないのが一目でわかるな
逆に考えるんだ
コピペミスと考えるんだ(AA略)
微笑を浮かべる聖。
不敵な笑みで応えるマナ。
その握手は固かった。というか固すぎた。
「断るっていやそんな」
「嫌ったら嫌よ、そんな電波な使命」
握り合ったその手の間から、ぎりぎりと名状しがたい音がしている。
それはまさに、この生涯忘れえぬ出会いを己が胸に刻み付けようとする、
その槌音であるかのようだった。
「君しかいないんだよいやホントに」
「冗談は歳だけにしてよねいやホントに」
「いやいやいや」
「いやいやいや」
だがその時、そんな二人の友好的なムードを打ち砕くが如き、冷厳な声が響いた。
「……いいえ観月マナ、あなたはその図鑑を使って戦わねばならない……。
それは運命なのです」
夜闇に沈む木々の間から姿を現したのは、一人の少女だった。
美しいながらも、どこか陰のある雰囲気を醸し出す少女。
長い髪を両のおさげにして垂らすその少女の手には、一冊の本が握られていた。
「あ、あなたは……?」
「貴様……その図鑑、GLの手の者かッ!」
叫ぶや、聖は懐から電光石火で抜き放ったベアクローを装着すると、
地面を蹴って超高速回転のまま少女に突っ込んでいく。
だがそれを見る少女はどこまでも冷静に、手にした本をかざした。
がいん。
重い音が響く。
吹っ飛ばされたのは、聖の方だった。
少女に向かっていった、その勢いのまま近くの大木に叩きつけられる。
「ぐわあああっ!」
「……無粋ですね。このGL図鑑の力はあなたもよくご存知のはずですが、
キリシマ博士……いえ、元・魔法の腐女子はなまる☆ひじりん、とお呼びした方が
よろしいでしょうか」
その言葉に、苦しげに顔を歪めたまま聖が身を起こす。
「き、貴様……何故その名を……」
「それとも”コジロー☆大好きっ子”の方が」
「やめてくれえええ」
「……あなたの時代は終わったのですよ。そしてBLの時代もね」
言い放つと、少女はマナに向き直り、一礼する。
「里村、茜と申します」
「ああ、ここまで全然出番のなかった人ね」
「さーとーむーらー、あー、かー、ねー、と、申します」
「はいはいはいはい茜さんね」
ひらひらと手を振ってみせるマナ。
また変なのが出てきたなあ、と顔に書いてある。
「じゃ、そういうことで」
「待ってください」
「嫌です」
「それは私の専売特許です」
「知らんし」
「博士がどうなってもいいのですか」
「好きにすれば」
「おい待て」
「とにかく待ってください観月さん」
ああもうめんどくさいなあ、という感じでしぶしぶ立ち止まるマナ。
こんなの相手にしてないで、はやく次のカップリングを見に行きたいのに。
その思考が既にこの連中の世界にどっぷりハマっているのだとは気づかないまま、
マナは茜と名乗る少女を見据える。
「これは運命なのです、観月さん……私が選ばれたように。
あなたもすぐにそれを知ることになる……今日はそれだけを伝えに来ました」
「いやだから何の話」
「……また会う日を楽しみにしています、観月さん。
すべてはレズビアンナイトのために」
「人の話聞いてくれる?」
言うだけ言うと、茜と名乗る少女は夜の闇へと消えていった。
「あのちょっと、わたしすごい置き去り感あるんですけど……。
ねぇ博士、運命ってどういう……うわ、もういねえ!?」
振り返ったマナの視界には、『たのんだぞ』と書いたメモ。
「どうすんのよコレ……」
暗い森の中で、ぼんやりと光を放つ図鑑の重みだけがマナに残されていた。
【時間:午後9時すぎ】
【場所:E−7】
観月マナ
【所持品:BL図鑑・ワルサー P38・支給品一式】
【状態:腐女子Lv1】
霧島聖
【所持品:デイパック、ベアークロー(ランダムアイテム)】
里村茜
【所持品:GL図鑑・支給品一式】
「そうですか、親類の方も参加させられてしまったんですか・・・。
つらいですよね、早く見つけてあげたいですよねっ!!」
平瀬村に向かう道、二人は話しながら進んでいた。
どちらかというと最初は気まずい雰囲気であった、緊張感が満ちていることは橘敬介にとってありがたかったことである。
だが、これに耐えられなかったのは・・・雛山理緒の方であった。
『うち貧乏で、私もアルバイトで手伝ってるんですけど大変なんですよ〜。
弟たちはいつもお腹すかしてるし、もうてんやわんやで』
身の上話を持ちかけられ、それに話を合わせるように自分のことを話したら・・・これである。
「それに、実の娘さんとの数年ぶりの再会がこんな形なんて・・・悲しすぎますっ。
わ、私の力なんて大したことないですけど、やっぱりお手伝いさせて欲しいですっ!!」
「はは、気持ちだけ受け取っておくよ・・・」
正直、理緒のテンションに敬介はついていけていない。
この状況で、彼女は何故こんなにも朗らかでいられるのか。
敬介には理解できなかった、だから。問いかけた。
「君には目的はないのかい?友人を探そう、とか。同じ学校の子がいるんだろう?」
・・・ポカン。その言葉を受け、目の前の少女は硬直した。
目的。自分の目的とは。
浩之に会いたい、あかりに会いたい。
勿論、知り合いに合えたら充分それで嬉しい。
けれど。それ以上の思いが、理緒にはあった。
「私は、一人の女の子の犠牲の上で生きているんです。」
それは、出会った時の怯えたような様子も、先ほどの明るく和やかな気配すら感じさせない響き。
凛と前を見据える少女の表情には、甘さの欠片も存在していなく。
歩きながら話しているのにも関わらず、敬介は周りの景色よりも彼女の輪郭から目が離せないでいた。
「だから、彼女のためにも生き続けたい。頑張りたい」
頑張ること、それが私の取り柄だから。
----------理緒に何があったか、問い詰めようとは思わなかった。
だが、彼女にも抱えているものがある。
・・・敬介の中で、理緒の見方が変わった瞬間であった。
「あ、もう着くんじゃないですか?あそこですよ、平瀬村っ!」
途中何故か何もない所で転びまくる理緒のおかげで遅くはなったが、何とかここまで辿り着くことができた。
歩き続けたこと、精神的なこと。それらで二人の疲労もピークを迎える。
「とりあえず、そこら辺の民家で休もうか」
正直、予定とは全く違うが。
(今日はもう、彼女の元には戻れないかな)
天野美汐と名乗った少女、彼女もだがそこに残してきた荷物も気がかりだ。
そんなことは露知らず、理緒ははい!と元気に答える。
・・・その声が響くと同時に、ガサガサっと茂みが揺れる音が響いた。
「え?!」
歩道を歩いていた自分達とは違う進路、驚いて振り向いた二人の前にいきなり人影が飛び出してくる。
「ちっ、こんな時にタイミング合わせんでもええやんかっ・・・!」
関西風のイントネーション。目の前の人物のそれに、敬介は聞き覚えがあった。
「晴子、晴子じゃないか!」
「え・・・敬介?」
神尾晴子。探していた人物の一人。
彼女も疲労が溜まっているような雰囲気が強かった、だがそれ以上に無事でいてくれたことの方が敬介にとって喜ばしいことであり。
探していた人物がこうも早く見つかるなんて・・・喜びが胸に広がっていく。
・・・だが、駆け寄ろうとした敬介に向けられたのは、彼女の手にするVP70であった。
「・・・晴子?」
「ほおー、うちが観鈴のために身を粉にして働いてた時に、あんたは女子高生とイチャイチャかいな。
ほんま、気楽で羨ましいわ」
「そんなんじゃない、僕は君と観鈴を助けるために・・・」
「黙らんかい!!」
バン!晴子は容赦なくトリガーを引いた。
敬介を直接狙った訳ではなく威嚇であろう、弾は彼の足元に埋まる。
「・・・・・・晴、子・・・」
「うちは観鈴のため、それだけのために人にむかって撃ってきたんや。
今更、そのポリシー変える訳にはいかへん。
・・・敬介、選ばせたる。うちに協力するか、みぐるみ置いてどこかへ消えるか。
選択肢は二個だけやで?・・・それ以外は」
死、あるのみ。
今度は確実に敬介に当たるよう、VP70の照準が合わせられる。
敬介の額を冷や汗が流れる、理緒はその後ろでオタオタするしかなかった。
(ど、どうしようどうしよう・・・もしかして、私がついて来ちゃったせい?!)
252 :
補足:2006/10/20(金) 17:26:49 ID:1rikHSz90
神尾晴子
【時間:1日目午後10時30分】
【場所:G−3】
【所持品:H&K VP70(残弾、残り15)、支給品一式】
【状態:敬介を脅す】
雛山理緒
【時間:1日目午後10時30分】
【場所:G−3】
【持ち物:鋏、アヒル隊長(13時間半後に爆発)、支給品一式】
【状態:困惑(アヒル隊長の爆弾については知らない)】
橘敬介
【時間:1日目午後10時30分】
【場所:G−3】
【持ち物:トンカチ、繭の支給品一式(中身は開けていない、少し重い)】
【状況:困惑(自分の支給品一式(花火セットはこの中)は美汐のところへ放置)】
(関連・229・251)(B系ルート)
(関連・190・251)(B−4ルート)
B−4の場合、晴子の補足事項を以下にしてください。
神尾晴子
【時間:1日目午後8時30分】
【場所:G−3】
【所持品:支給品一式、H&K VP70(残弾、残り17)】
【状態:敬介を脅す】
来栖川綾香は考え込んでいる。
先刻の、まーりゃんと名乗った少女の話。
久瀬の話。
この島の状況。
何もかもが混沌としていた。
セリオの話では、定時放送は久瀬ではなく榊が行っていたらしい。
あの目立ちたがり屋の久瀬がそんな絶好の機会を逃すはずがなかった。
出てこなかったのではなく、出てこられなかったと考えた方がいいだろう。
しかし、ティーセットを持ってこさせるために連絡した時には既に18時を
過ぎていたはずだ。
それはつまり、あの時点では司令職はともかくとして、自分たちの
バックアップの任まで解かれたわけではないということだろうか。
そう考えて本部に連絡を取ろうとしたが、先程から通信が繋がらない。
妨害電波の類ではないようだったが、こちらの呼びかけに応答がない。
だがセリオに確認させたところによれば、サテライトとの情報通信は
途絶していないようだった。
どういうことだ。
自分たちは完全に見捨てられたわけではないというのか。
しかしこれ以上の援助は望むなと、そういう意図か。
どうなっている。
本部の状況、本土の状況、来栖川本社の状況、永田町の状況は一体どうなっている。
情報がない。連絡がない。優位性がない。
それがこれほどに厄介なことだと、失われてから初めて思い知る。
どうすればいい、どう動けばいい、わからない、わからない、わからない―――
綾香の思考が底なしの迷宮に陥りそうになった、その瞬間。
「ぎにゃあ!」
内臓を内側から針で突かれたような、乳房の中を羽で擦られたような、
奇妙な感覚が綾香の全身を駆け巡った。
「な、なに!? 何なの!?」
「―――綾香様」
セリオが、綾香の背後に音もなく立っていた。
「セ、セリオ……いったい何が起こったの!? また誰かの攻撃!?
今度は何、超能力!?」
「落ち着いてください、綾香様。
OS、及び関連パーツの移植作業が完了いたしました」
言われて初めて、セリオの奇妙な姿に眼をやる綾香。
「……それ、なに?」
セリオの腹部メンテナンスハッチが取り払われている。
どうやらその周辺の構造も大きく改装されているらしく、空いたスペースに
組み込まれていたのは、
「こんなのひどいですー、ボディ返してくださいー」
イルファの頭部だった。
涙声で訴えている。
民生品は芸が細かい。
「HMX-17aの頭部には非常に高度な演算ユニットが組み込まれています。
残念ながら完全に一体化されているため、人格AIのみの除去は不可能でした」
「残念ながらってなんですか……」
腹からの声は無視。
「ふぅん……それでそんなド根性スタイルになってるのね……。
どのくらいパワーアップしたの?」
「HMX-17aのみでも、私に従来組み込まれている演算装置の能力を大きく上回ります。
並列処理させることで、機能を飛躍的に向上させることができます」
「じゃ、あんた要らないじゃん?」
「 並 列 処 理 さ せ る こ と で 、機能を飛躍的に向上させることができます」
「わーった、わーったから!」
「言ってみれば、13×17でHMX-221といったところです」
「……お前ホントに理系か?」
呆れ顔で新生セリオ(&イルファ)を見る綾香。
ふと、先刻の体験を思い出した。
「んじゃ、さっきの変な感じは……」
「NBSの解除命令が出ていませんでしたので……」
「は?」
「おそらく、ダイナミックリンクを通してOSの上書きインストール時の感覚が
逆流したものかと推測されます」
「え〜っと……つまりさっきのは……」
「言ってみれば、我々の……生まれ変わる瞬間、とでもいった情報を、人間の
感覚に置き換えて伝えてしまったものかと」
「へぇ、そんなもんなんだ……ん、でも……あれ?」
何か引っかかりを憶える綾香。
「さっきの感覚、前にもどっかで……?」
懸命に記憶をひっくり返す。
「ん〜、あの、何か流れ込んでくるような感じ……。
ん〜〜〜〜〜〜〜〜……、あ!」
閃いた。
「そうだ、姉さんが姫百合珊瑚の霊を憑依させた時……!」
「珊瑚様ですか?」
少し黙ってろ、とイルファを小突いて、綾香は思考を巡らせる。
涙目のイルファ(頭部のみ)は完全に無視。
この感覚の共通点は何か重大なヒントを自分に与えてくれている、
そんな予感があった。
格闘家として、また経営者として成功を収めてきた綾香には、
その予感を蔑ろにすることの愚かさがよく判っていた。
(考えろ、考えろ来栖川綾香……!)
憑依。インストール。能力。上書き。異能。
それらの単語が綾香の脳裏をぐるぐると回る。
ぼんやりと、新しい「何か」の輪郭が見えてきた気がしていた。
それはきっと、未知の扉を開いてくれる。
この五里霧中の状況を打破する力になる。
だが、
(……あと一歩、あとほんの一歩が足りない……!)
ほい
固まりかけていたイメージが雲散霧消していく。
それを繋ぎとめるのに精一杯で、新たに何かを組み上げることなど
できそうになかった。
これが現状での限界と、綾香はそう結論付ける。
「ダメ、か……」
セリオとの下らないやり取りで忘れかけていた疲労感が、どっと
押し寄せてくる。
肩にのしかかるような重圧に、思わず座り込んでしまう。
なまじ希望とも思えるものが見えかけていただけに、落胆は大きかった。
「……はぁ、もうやめちゃおうかな、こんな面倒くさいこと」
大きく溜息をつく綾香。
その丸まった背中に、かけられる声があった。
「……若い者がそんなことじゃいかんな。
溜息をつくと幸せが逃げていくというからの」
「え……!?」
慌てて振り返る。
そこに立っていたのは、
「姉、さん……だよね?」
確かに来栖川芹香の背格好をしていた。
しかし、纏っている空気が違う、表情が違う。
それはどこか老成した人物を思わせるようで、綾香を戸惑わせる。
そんな困惑をよそに、芹香の姿をした人物は続ける。
「お前さんのやりたいようにやったらいい。
それとも、自分が撃ち殺した爺の言うことなんぞ聞けんかね……?」
「え、あんた、もしかして……」
ようやく合点がいった。
これは昼間、KPS−U1の試運転を兼ねて射殺した……たしか、名を
幸村俊夫といったか。
それを、芹香が憑依させているのだと、綾香は内心で頷く。
「確かにわしはお前さんのやってきたことを許せんが、それもこれも、
この国が子供たちに教えてきた価値観ゆえのことだからの……。
そもそも間違っとるのはわしら大人、わしら教師だということはわかっとる。
だからの、若い者のそんな姿を黙って見ておるのは耐えられんのだよ」
それは、軍国主義をひた走ってきた国家に対する、教師としての苦悩が
滲み出した言葉だった。
「今更、お前さんに道徳の授業をしようとは思わんよ。
だがの、……来栖川さんといったか、お前さんのような若い者が
自分で自分の道を閉ざしてはいかん」
「爺さん……」
「お前さんには力がある。ついてきとる者たちがおる。
両手で抱えきれんほどのものを持っておる。
その内の一つだけが零れ落ちたからといって、それがどうしたというのかの」
それは事実だった。
この島に来る前も、ここで戦っている間も、綾香は恵まれすぎるほどに恵まれていた。
財力、胆力、腕力、知力、美貌。
およそ凡人が望みそうなものをあらかた兼ね備えていた。
努力で得たものもあった。天賦の才でもたらされたものもあった。
だがそのすべてが、来栖川綾香を形づくるものだった。
それらをもって、立ち塞がる障害を撥ね退けてきたのが来栖川綾香だった。
「……そうだね」
ひとつ頷く綾香。
「うん、そうだ。まだ、溜息つくような場面じゃない……!」
その目に力が戻っていく。
「……ほ、その目だよ。その目を忘れるな、若いの。
わしはいつも、お前さんたちのすぐ側で見守っとるからの」
その言葉を最後に、芹香の全身から老人の気配が消えていく。
「……ありがと、爺さん……だか、姉さんだか」
くたりと力を抜いて倒れこむ姉を支えながら、綾香は口を開く。
その顔には、いつもの不敵な表情が戻ってきていた。
「ぃよっし! くよくよ考えてても仕方ない!」
勢いよくセリオのほうに向き直ると、
「セリオ!
さっきの感覚でヒントが掴みたいんだ、もっかいインストールできる?」
「いえ、綾香様、それが……」
相棒の返答に眉をひそめる綾香。
せっかくの勢いを削がれたくなかった。
「何よ? 不具合とか出るの?」
「いえ……」
「だから、何よ?」
「HMX-17aにはセキュリティ機能がついていました」
「で?」
「非常に強固、かつ後先考えない設計なもので、製造者にも解除できません」
「だから、何!」
「頭部の演算ユニットと胴体の駆動部が切り離されますと、緊急セキュリティシステムが
発動する仕組みになっています。おそらく盗難による情報漏洩防止の用途かと」
「それはいいから!」
嫌な予感が膨らんでいく。
「結論から申し上げますと……」
「なんか昼間もこういうことあった気がするよね?」
「自爆します」
「だからもっと早く言えよそういうことは! 撤収ー!!」
二度目だけに手際がいい。
閃光と熱風、轟音が周囲を駆け抜けていく。
「あー、私のボディ……」
イルファ(頭部のみ)が恨めしそうに綾香を見ているが、やはり無視。
「あー……くっそ、どうするかな……もう少しで何か掴める気がするのに」
悩む綾香の呟きに、セリオが答える。
「綾香様、差し出がましいようですが申し上げます。
この島にはまだ、HMX系列の機体が存在しています。……少々旧式ですが」
その言葉に、はっと顔を上げる綾香。
どうだ
「そっか……そうだった!
すっかり忘れてた、まだいるじゃんバラせそうなの!」
こうして、綾香一行の次の標的が決まったのだった。
「……そういえば姉さん、全身憑依させたりしたら危ないんじゃなかったの?
え? あれはいい霊だから大丈夫。
……ってことは悪い霊もいるんだよね、たとえばどんなの……?」
あぅー 貧乏はいやああ…
うぐぅー 由綺さぁん……
「……あー、もう大体わかったからいいわ……」
【21:00頃】
【神塚山の山頂付近 F−05】
【37 来栖川綾香】
【持ち物:パワードスーツKPS−U1改、各種重火器、こんなこともあろうかとバッグ】
【状態:復活】
【60 セリオ】【持ち物:なし】【状態:グリーン】
【9 イルファ】【状態:どっこい生きてるド根性】
【38 来栖川芹香】
【持ち物:水晶玉、都合のいい支給品、うぐぅ、狐(首だけ)】
【状態:若干疲労】
【持ち霊:うぐぅ、あうー、珊瑚&瑠璃、まーりゃん、みゅー、智代、理緒、澪、幸村、弥生】
→213 ルートD−2
264 :
10:2006/10/21(土) 02:01:24 ID:n8kMVBOm0
→198
⇔はるか死亡秋生生存
Iルートで
後Iルート選んだら014が入っていたので修正願いますまとめの人。
いつも御苦労様です
血って結構かぴかぴになるんだな。
そんなことを考えながらボーっと河島はるかは歩いていた。
あれ?かぴかぴなんて日本語あったっけ?
徒然と考え、最終的な結論は。
まぁいいか。どっちでも。めんどくさい。
そこに行き着く。
はるかはあの後目的も定めずに歩き詰めていた。
剣を手から離さず、返り血もそのままに。
偶然か、姿を見て逃げられたか、誰とも会わずにここまで来た。
仮に見付けても追う気などさらさらなかったが。
そして。
「あ……」
海へと辿り着く。
そういえば……
「前……」
冬弥と話したっけ……
南の海とかに潜ってみたいなって。
期せずして連れて来られてしまった皮肉な運命に、ぼんやりとした笑いを返す。
(でも、はるかの場合、何かにつないどかないとどこまでだって流されていきそうなんだよな)
流されるまでもなくついちゃったよ……
「一日中……」
空と雲眺めて。
お腹空いたら椰子の実が流れてきて。
好きな時に好きなだけ眠って。
目が覚めても見えるのは空だけ。
太陽と、月と、星と。
「いいかも……な……」
冬弥と一緒ならもっとよかったかもしれないけど。
ここには椰子の実なんて流れて来ないかもしれないけど。
それでも、それもいいかもしれない。
人を殺しても彰が話してくれる本の中の様な感動なんてなかった。
それより、きっと散歩でもしていたほうが楽しいだろう。
ここで眠って。
起きたら海に潜ったり。
お腹が空いたら……空いた時に考えよう。
死ぬまでにお腹が空くかもわからないし。
何より、今はただ、めんどくさい。
考えるのも、起きてるのも、生きてるのも。
「ねよ……」
はるかは呟いて、砂浜に寝そべった。
剣を手から離さず、返り血もそのままに。
河島はるか
【時間:一日目午後五時頃】
【場所:D-08の海岸線】
【持ち物:デイパック、水の消費、ニンジャソード】
【状態:寝る。ニンジャソードは持ったまま。返り血浴びてます】
268 :
男の純情:2006/10/21(土) 13:25:45 ID:6re/h2B20
島の東側、海岸沿いにある納屋。
どうにか雨風はしのげるといった風情の廃屋に、佐藤雅史と藤林椋はいた。
南側の集落を目指して歩いていた二人だったが、この環境で疲弊していた
椋の様子を見かねて、雅史が休憩を提案したのだった。
詩子たちと別れてから、まだ一、ニ時間ほどしか歩いていないはずだったが、
椋の疲労は限界に達しているように、雅史には見えた。
体力にはそれなりに自信のある自分ですら、全身にまとわりつくような
重い疲労を感じているのだ。
見るからに線の細い少女である椋にはひどく辛い道中だろう。
緊張と不安、そして何より絶望感。
メンタル面の不調がどれだけ身体を蝕むか、雅史にはよく判っていた。
それで、まだ大丈夫だと言い張る椋を少々強引に説き伏せて、この廃屋で
休むことにしたのだったが、
(……よく考えたらこれって、女の子を人気のないところに連れ込んだ、
ってことになるのかな……)
意識してしまうと、もういけない。
少し乱れている椋の呼吸も、あまり広くない納屋ゆえの距離の近さも、
建材の隙間から射す夕陽によって演出される適度な暗さも、何もかもが
雅史の男としての部分を刺激する。
スカートの裾から覗く太ももの白さを目に焼き付けてしまう自分に嫌悪感を
憶えながら、雅史は己の妙な緊張をどうにか誤魔化そうと声を出す。
「あ、あのさ……藤林さん、藤林さんの探してる人って……」
「椋、で」
「え?」
「椋でいいですよ、佐藤さん」
「え……あ……うん……」
269 :
男の純情:2006/10/21(土) 13:26:22 ID:6re/h2B20
(どうして、ここでそういうことを言うかな……)
物理的にも精神的にも、これ以上距離の近さを意識してしまうのはマズい。
つい、なら僕も雅史でいいよ椋ちゃん、などと言いそうになる自分を
敵陣に向けて全力でクリアしつつ、雅史は必死に話題を振る。
「じゃ、じゃあ椋さん……椋さんの捜してる人って……」
「お姉ちゃんと、同じクラスの人……それから、その……つきあってる男の人、です」
「―――へ?」
人生でもベスト3に入る間抜けな声だ、と雅史は思う。
つきあってる。彼氏。彼氏持ち。
コブつき。意識してない。範疇外。
アウトオブ眼中。
収まれ混乱、と必死に自分をなだめる雅史。
ものすごく恥ずかしい一人相撲をしていたんじゃないか、などということを考えると
衝動的に死にたくなるので、あえてその記憶は封印しようと誓う。
心の中で二度、三度と咳払いをして、できるかぎり平静な声を出そうと努めた。
「そ、そうなんだお姉ちゃんとクラスの人とかかカレシね」
どもった。
しかもひどく早口で、どこから見ても挙動不審だった。
だが椋はそんな雅史の様子を気にするでもなく、手にしていたファイルを開く。
「この人がお姉ちゃんで、この人がクラスの人、それでこの人が……」
「かかカレシね」
いい加減にしろ自分。
恥ずかしさで死にたいならあとで存分に死ね。
ここはちゃんと格好つけろ。
雅史の中の八方美人回路がそんな声を上げる。
270 :
男の純情:2006/10/21(土) 13:27:33 ID:6re/h2B20
見れば、写真の中の少年は悪戯っぽく笑っている。
少し線の細いイメージはあるが、どこか穏やかで優しそうな男だった。
(……お似合いじゃないか)
素直にそう思う。
よし、そういう風に思えるなら動揺は収まってきたぞと自己判断する雅史。
「そっか……早く会えるといいね」
「はい……」
弱々しげに笑うその表情を見て、雅史は先程までの自分を心底恥じる。
この人たちに会わせるまでは、自分がしっかりと少女を護らねばならないのだと
認識を新たにするのだった。
「――みなさん聞こえているでしょうか。」
残酷な事実を告げる声が響いたのは、そんな時だった。
【時間:18:00】
【場所:F-09】
佐藤雅史
【持ち物:金属バット、支給品一式】
【状態:若干疲労】
藤林椋
【持ち物:参加者の写真つきデータファイル(何が書かれているかは次の書き手さんまかせ)、支給品一式】
【状態:相当疲労】
→215 ルートB,J共通
271 :
はじめの一歩:2006/10/21(土) 15:26:49 ID:6re/h2B20
ぽたり、と。
立田七海は、頬に何かが垂れたような感触で目を覚ました。
うっすらと目を開けると、暗い本堂の中、
「―――ッ!」
自分にのしかかって銃を構えている女性の姿が、視界を満たしていた。
声にならなかった。
何も考えられない。
驚愕。恐怖。混乱。恐慌。
圧倒的なノイズが七海の脳を侵食していた。
死ぬ。
死ぬ。
死ぬ。
それだけが、七海に理解できるすべてだった。
目を一杯に見開いて、口を裂けんばかりに大きく開けて、
それでも、声も涙も零れない。
感情がついてこない。
身体が状況を理解していない。
頭痛に似た感覚。
嘔吐感。
そんなものが腹の底からせり上がってくる。
そして実際、吐いた。
272 :
はじめの一歩:2006/10/21(土) 15:27:54 ID:6re/h2B20
「け……けぷっ……ぇぇぇ……」
仰向けのまま吐いたため、あっという間に咥内が吐瀉物で満たされた。
一部が鼻腔へと逆流してくる。
胃酸による粘膜への刺激痛と、呼吸のできない苦しさを感じてから初めて、
七海の眼に涙が浮いた。
痛い。苦しい。
そんな感覚が、七海の身体を急速に覚醒させる。
引きずられるように、思考が少しづつ形を成してきた。
状況が断片的ながら頭に入ってくる。
自分たちは、眠り込んでしまっていたらしい。
そして殺されかけている。
自分たち。
私。そして誰か。郁乃ちゃん。
(―――そうだ、郁乃ちゃんは!?)
助けて、よりも先にそう考えるのが、あるいは考えてしまうのが、
立田七海という少女だった。
涙で歪む七海の視界の端で、動くものがあった。
小牧郁乃だった。
(―――良かった……!)
状況は何一つ好転していない。
それでも、郁乃が生きているという事実が七海の心を和らげる。
273 :
はじめの一歩:2006/10/21(土) 15:29:07 ID:6re/h2B20
極限の緊張がほんの少し揺らいだ、その瞬間に身体からの緊急信号が
七海という存在の主導権を握る。
全力で咳き込んだ。
口の中のものを唾液と一緒に吐き出す。
呼吸器の急激な稼動で弓なりにしなろうとする身体はしかし、のしかかっている
女性の重量にがっちりと押さえ込まれていて動かない。
息が吸えない。
咳による苦痛と吐瀉物の刺激に加えて、酸素不足が七海を襲う。
意識が急速に白く染まっていく。
ぼやけていく視界に映ったのは、自分を殺そうとしている女性の姿。
(あれ……)
立田七海が薄れゆく意識の中で最後に見た女性は、
(この人……)
その瞳から、大粒の涙を流していた。
小牧郁乃が遅まきながら目を覚ましたのは、その時だった。
「……な……、なにしてるの、あんた……!」
それは異様な光景だった。
一緒に寝ていたはずの七海に、見知らぬ女性が馬乗りになっている。
その手には黒光りする大きな銃。
七海はぐったりとして動かない。
その周辺には大量の吐瀉物が撒き散らされ、異臭を放っている。
274 :
はじめの一歩:2006/10/21(土) 15:29:53 ID:6re/h2B20
反射的に跳ね起きようとするが、身体に力が入らない。
病弱に生まれついた自分の身体を恨めしく思ったことは数限りないが、
この時ほど強く切実に呪ったのは初めてだったかもしれない。
代わりとばかりに口を開く。
「七海に何をしたの! 離れなさい! 七海から離れなさいよっ……!」
女は答えない。
ただじっと七海を見つめている。
「何とか言いなさいよ……この……っ!」
ようやく身を起こすことに成功した。
この島での疲労は、予想以上に自分の少ない体力を削り取っている。
そんな郁乃を、女は一顧だにしない。
相手にするまでもないということか。
その態度が、郁乃の感情に火をつける。
「……七海を離せっ!」
傍らに置いてあった自分の荷物を持ち上げると、女へ向かって投げつける。
デイバックは女の肩に当たり、転がった。
女は微動にしない。
己の非力に歯噛みする郁乃。
しかし、そんな郁乃の行動に何を感じたか。
「……どうして……」
女の口から、初めて言葉が漏れた。
どうだ
276 :
はじめの一歩:2006/10/21(土) 15:31:25 ID:6re/h2B20
それは、この狂ったゲームに乗って殺人を犯そうとする人間から発せられたとは
思えない、悲痛に満ち満ちた声だった。
心中から湧き上がる何かを必死で噛み殺そうとして、それでも堪えきれずに
声に出してしまったかのような、そんな言葉だった。
「どうして……あなたたちみたいな子供なの……」
女は、泣いていた。
その姿にたじろぎながらも、郁乃は口を開く。
「な、何言ってるのよ、あんた……?」
女の表情は、言葉は、その行動とあまりにかけ離れていた。
郁乃にはその理由は判らない。
「殺さなきゃ……いけないのに……!
このみのために……このみの為なのに……」
「こ、このみって誰よ……さっきから何言ってるのよ……?」
女は答えない。
ただ、意識を失った七海を見つめながら意味のわからないことを呟いている。
「10人……たった、10人だけなのに……。
それがどうして、あなたたちみたいな子供なの……っ!」
それはまるで、郁乃などそこにいないものとして振舞っているようで、
「いい加減にしなさいよ、あんた……っ!」
郁乃の怒声と、開け放された本堂の扉に人影が射すのは、殆ど同時だった。
風子さりげなく回避します
【時間:21時頃】
【場所:F-8 無学寺】
小牧郁乃
【持ち物:写真集二冊、車椅子、他基本セット一式】
【状況:激怒】
立田七海
【持ち物:フラッシュメモリ、他基本セット一式】
【状況:意識不明】
柚原春夏
【所持品:要塞開錠用IDカード/武器庫用鍵/要塞見取り図/支給品一式】
【武器(装備):500S&Wマグナム/防弾アーマー】
【武器(バッグ内):おたま/デザートイーグル/34徳ナイフ(スイス製)】
【状況:あと10人】
(誰が来たかは次の方にお任せ)
→247 →254 ルートB,J共通
消防署の日は暮れていた。
・・・七瀬が気がつくと、12名のネ申が、消防署の前にいた。
敵だろうかと警戒する七瀬。
そのうちの一人の男が、消防署に近づき、大声で話し始めた。
あまり聞いた事のない声。だが聞いた事はある声。
/ i | ',
i i | / ハ! / i
|! i | | ! j/ }j/イ / / |
N、 !≧x{! /k=≦二 j/イrく /
ヽハ,r''"'∨ ´''""'ヽ レ⌒}'
`i ! fj / はははははは
、 く /rク 助けに来てやったぞ藤井冬弥君!
\ 、;:==ヲ' / !′ ともにこの困難を乗り切ろうではないか!
\` ‐ '゜. く ノi
i了 j/ \
__r┴辷ァ弋7 /\
鳴海孝之。彼だけでなく、歴代のエロゲ界の名作の主人公が、その前に立っていたのだ。
エロゲ板では伝説となっている彼等。
そして彼等の伝説の初代に君臨していたのがこの藤井冬弥。
初代の王を助けるために今ここに藤井の魂を受け継ぐ後輩たちが全て集結したのである。
確かに面子だけは凄まじい。
これを見てそばにいた七瀬は鳴海に向かって一言だけ。
「帰れ」
すぐドアを閉めて消防署の鍵を全部閉めた。
§§§§藤井冬弥くんのために板を越えて助けにきたらしいすばらしい主人公たちの一覧§§§§
鳴海孝之さん(皇帝)
伊藤誠さん 衛宮士郎くん※1 黒崎崇くん 宮本浩くん 白銀武くん
鳩羽一樹くん 柊空也さん 朝霧達哉くん 人見広介くん 来栖秋人くん 鍋島志朗くん
以上。各自所持品無し。食料・水・なし。
※1能力制限のため他キャラ召還不可。の他のキャラも能力制限はあったりなかったり
七瀬留美
【時間:1日目午後6時】
【場所:C−05・鎌石村消防署】
【所持品:P−90(残弾50)、支給品一式】
藤井冬弥
【時間:1日目午後7時15分程】
【場所:C−06】
【持ち物:H&K PSG−1(残り4発。6倍スコープ付き)、他基本セット一式
鳴海孝之さん 伊藤誠さん 衛宮士郎くん 黒崎崇くん 宮本浩くん 白銀武くん
鳩羽一樹くん 柊空也さん 朝霧達哉くん 人見広介くん 来栖秋人くん 鍋島志朗くん】
※備考 どっから湧きでたかは謎
282 :
屍の階梯:2006/10/21(土) 20:18:38 ID:6re/h2B20
「……よろしいのですか?」
濃紺のスーツに身を固めた女性、榊しのぶはモニターから眼を離すと、
背後に立つ白衣の男に尋ねた。
「……何がかね?」
「―――神尾観鈴の件です。
彼女は肉体的には明らかに死亡しています」
「何故、放送で死亡リストから外したのか、と?」
「はい。差し出がましいとは存じますが」
「そうだね。本来、君が知る必要のないことだ」
「……申し訳ございません。以後、慎みます」
「なに、構わないよ。今日は気分がいいからね。
君の権限上、問題のない範囲で説明してあげよう」
「……ありがとうございます」
そう聞いても、榊の表情は晴れない。
素性の知れない男の物言いが、榊にはいちいち不気味に感じられていた。
「ははは、そう固くならないでくれ。
私も君も軍属じゃあないんだからね」
「……」
「いやなに、簡単な話だよ。
我々が神尾観鈴と呼称している少女は、『殻』にすぎないんだ」
「殻、ですか」
「そうだ。本来、神尾観鈴という少女の生死など我々にはどうでもいい」
「……」
ならば何故、という問いを差し挟むことは赦されない。
プログラムは絶対だった。
283 :
屍の階梯:2006/10/21(土) 20:19:18 ID:6re/h2B20
「必要なのは、その中身―――これ以上は言えないがね。
知れば君は死ぬことになる……はっははは、冗談だよ、冗談」
笑えない。
男の言葉が冗談などではないと、榊は身に沁みて理解していた。
「ま、そういうことだよ。
本当に死なねばならないのは、『今』の神尾観鈴なのさ。
だから、発表はしないし我々もアレを死んだとは考えない。
それだけのことさ」
片目を瞑って、にやりと笑う男。
榊は目を伏せて、嫌悪感が表情に滲み出すのをかろうじて避けた。
モニターを見つめ続ける男は、独り言のように続ける。
「……殺しあえ、殺しあえ化け物ども。
お前たちの屍が、我が国を高みへと導くんだ……」
そんな言葉などまるで耳にしていない、という風に一礼すると、
榊は退出する。
そう振舞わざるを得なかった。
ここは、そういう国だ。
モニターの中では、箱庭の地獄が続いている。
【時間:18時過ぎ】
>>281 誰一人として知らない私は逝ってヨシでつか?
「あーん、もう! どうして何もないかなぁ!」
ホテル跡5階の一室にて、笹森花梨は一人タンスやらクローゼットやらを漁っていた。
「幽霊は出てこないし、面白そうなのも何も無いし、宇宙人の解剖跡もないし!」
幽霊はともかく、宇宙人などを期待するのはさすがにお門違いというものであろう。しかし花梨はめげずにゴミ箱の中身を漁り始める。
かりん は コ゛ミは゛この なかを しらへ゛た!
なんと! しようす゛みティッシュ をてにいれた!
「いるかぁーーっ!」
肩で息をしつつ次の部屋へと向かう花梨。すでに探索した部屋は十を超えていた。エディや智子が見たらさぞかしあきれ果てるだろう。
隣の部屋、511室のドアノブを回す。今までもそうだったのだが、どの部屋もロックがかかっていない。いや無理矢理こじ開けられたというべきで、鍵が壊された部屋が少なからずあった。
もちろん鍵が壊れてない部屋も数多くあるのだがそれにしても鍵が壊されている部屋のほうが多過ぎる。
おまけにキーピックなどで開けられたなんて可愛いものではなく、鍵の部分に拳銃弾と思われる銃痕がついていたり、斧などでドアそのものを半壊させられた部屋もあった。
(誰かが、強盗にでも入ったのかな?)
そうに違いない。でなければ、ここまで何もないというのはおかしすぎる。しかしここであきらめないのがスクープハンター、いやミステリハンター花梨の使命だった。
がちゃ、とドアを開け、中を見渡す。相変わらずの殺風景な部屋だった。だが花梨はそこで妙な違和感を覚えた。
「何だか、妙に綺麗なんだよね〜。まるで掃除されたみたいな…」
普通、こういう放置された部屋は埃などが積もっているのが当たり前だ。花梨がこれまでに調べた他の部屋もそうだった。が、ここは他に比べて埃の量が少ない。
「ふっふっふ、パンピーの目は誤魔化せても私の目は誤魔化せないんよ。きっと、ここに何かあるはずっ!」
喜び勇んで部屋の中を捜索し始めた。
まずは机から探す。すると、引出しの一つに鍵がかかっていた。
「およ? 鍵なんて今までかかっていなかったのに」
ますます怪しい。…となれば、実力行使しかないっ!
部屋にアレがないかと探す。アレさえあれば問題なくこんな鍵開けられる。
「あっ、あったぁ〜!」
花梨が見つけたのは一本の針金。そう、花梨はピッキングをしようとしていた。
普段からミステリ研活動のためと称してこっそり備品やら何やらを持ち出していた花梨には鍵開けなど朝飯前になっていた。
器用に針金を曲げて鍵穴に指し込む。5分くらいの格闘の後、カチリ、と鍵が開く音がした。
ビンゴっ! さっすが花梨ちゃん、これくらい当然!
机を勢い良く開ける。すると、あるものが出てきた。
「…なんだろ、これ? 日記…? それに、宝石…」
花梨が取り出したものは血に染まった手帳と青い宝石だった。宝石はともかくとして、どうして手帳が?
「ま、何でもいいや。なんだかバイオハザードみたいなんよ」
状況は全然違うが。花梨は宝石をポケットに仕舞い、手帳を読み始めた。ひょっとしたら『かゆ、うま』とかそういうことが書かれているかもしれない。
最初の数ページをパラパラとめくってみる。
三日目
このくそったれたゲームももう三日目や。最初何人もおった参加者の連中ももう半分以下、いやもうひょっとしたら3分の1を切ってるかもしれへん。
和樹も、瑞希っちゃんも、牧やんも彩ちゃんも千紗ちぃも、あの大バカ詠美も、みんな死んでもうた…多分こみパの面子で生き残ってるのはウチだけやろうな。
今ウチに出来るんはこうやってまた後に来るはずの、次の参加者達に向けてメッセージを残してやるだけや…
「何なの、これ…」
手帳に書かれていたのは花梨が期待していたようなものではなく、悲壮な思いを綴ったひとりの人間の日記だった。しかも文面を見る限り、この島では以前にも殺し合いがあったと推測できる。
…それも、今回と同規模の。
花梨は日記のページを読み進めていく。しばらくは状況のメモや死亡者のリストが書かれていたが、あるページから妙に切羽詰った文体になっていた。
くそっ、いよい よウチも年貢の納め時かもしれへんな
今はなんとかここにみをかくしてるけど見つかるんも時間の問題かもな…
けどだまって死 ぬわけにはいかへん、なんとしてもあの悪魔と宝石のことを
知らせとかんといけ ん。きっとあの悪魔は次の殺し合いにも参加しとるはずやからな
ここから先は血痕の付着が激しく、ほとんど読み取れる文字はなかったがかろうじて意味の分かる文面を読み取る。
の 少年 悪魔や ろし合いは主催者の思うつ
少年にはきぃつけや、 れは のジョーカ や
宝石は をひらくも んや、これが鍵になっとる
ホントかど わからへんけどためしてみる価値はある
ウチは何 できなか けど、
少年から ウチ 最後まで守り抜 もんや
主催者をぶっ潰してく
ごめんな、詠美
その文字を最後に、手帳から読み取れることはなかった。花梨は改めてポケットに仕舞ってあった青い宝石を見る。
「鍵、って書いてあったよね…何の鍵だろ?」
肝心な部分が読み取れなかったせいで何を「開く」のか分からないが、よほど重要なものに違いない。…推測にしか過ぎないが、この宝石は文中にあった「少年」、つまり敵から奪い取ったものなのだろう。
「少年」がどんな名前か知らないが、文面から今回のゲームにもいると仄めかしている。
――少年。
その名前には覚えがあった。名簿に、その名前がはっきりと刻まれていたのだから。
…無論、「少年」と今回の「少年」は違う人物の可能性もある。しかし一人だけ本名ではなく「少年」と書かれていたのは何かしらの意図を感じる。
「…気をつけておいたほうが、いいよね」
かりんは今の出来事をふかくこころにきざみこんだ。
「さて、そろそろ戻ろうかな。…きっと怒ってるよね、二人とも…」
こっぴどく叱られる自分の姿を脳裏に浮かべながら、花梨は二人の元へ戻ることにした。
『笹森花梨(048)』
【時間:1日目午後6時ごろ(放送は室内のため聞き逃した)】
【場所:E−4、ホテル跡、5階】
【持ち物:特殊警棒、海岸で拾ったピンクの貝殻(綺麗)、青い宝石、手帳】
【状態:少年に警戒を抱く。エディと智子の元に戻る】
【その他:青い宝石が何を開けるのかは不明】
【備考:B−2、B−10ルート】
「……
081 柊勝平
092 伏見ゆかり
097 松原葵
110 森川由綺
――以上です」
放送が終わった。
「そんな………」
放送が終わった後、佐藤雅史は固まっていた。
――――081 柊勝平
先程椋に見せて貰った写真の中の少年。
綺麗な女顔をした、優しそうな少年。
椋の恋人。その少年が、死んだ。唐突にその事実を突き付けられたのだ。
「勝平…さ……ん…」
横を見ると、椋は目に涙を溜めながら震えていた。
その顔からは血の気が引いている。
「佐藤……さん、すいま…せん」
「……え?」
唐突に体に衝撃が走る。
「ぅ…うわぁぁぁぁぁんっ!」
椋は泣いていた。
雅史の胸を借りながら泣いていた。
「あぁぁぁぁぁぁん!うわあぁぁぁああああん!」
「椋さん………」
分からない。どんな声をかけたらいいのか分からない。
今まさに恋人を失ったばかりの少女に対してどんな言葉をかければ良いと言うのだ。
「ぅ…ぅえ…あっ…ひっく……」
止まらない少女の嗚咽。雅史はただそれを黙ってみている事しか出来なかった。
―――放送から2時間。
「ひっく…ひっく…」
椋はまだ泣いていた。涙を流しすぎたのかその目は赤くなっている。
その時、椋の頭の上に何か温かい感触があった。
「………?」
少しは落ち着いてきたのか、涙を止めて上を見上げる椋。
見ると、雅史の手が自分の頭の上に乗せられた。
「椋さん………、ちょっと良いかな?」
「は…い、なんで…しょう?」
「君のお姉さんや、同じクラスの岡崎君は、まだ生きてるんだよね?」
「はい、そう…です」
「だったら、辛いだろうけど……」
そこまで言って、躊躇した様子で言葉を止める。
椋は泣き腫らした目で、佐藤雅史を見つめている。
「辛いだろうけど、もう少ししたら氷川村へ出発しよう。君の大切な人達を探しに行こう」
「………でも、勝平さんが、しんじゃ、って、わたしもう………」
そう言ってまた椋は泣き始めた。
「ひっく…ひっく…うぁぁ」
「椋さん!」
雅史は普段の彼ならまずありえないくらい、大声を出していた。
突然大声を出され、ビクっとする椋。
「……まだ君には大切な人達がいる。だから、辛いだろうけど頑張ろうよ。」
「…………」
「勝平さんって人もきっと、君に頑張って欲しいって思ってるはずだよ」
「勝平さんが……?」
「うん…、僕は勝平さんって人の事は全然知らないけど、君は彼の事が好きだったんだろ?」
「はい……、大好き…でした」
椋は辛そうに、でもはっきりとそう口にしていた。
「なら君の大好きな勝平さんなら、君の幸せを願わないわけがないよ…
逆の立場だったら、君だってそうだろ?」
「………」
「だから、頑張ろう?まだ僕達は生きてるんだからさ、死んでしまった人の分も頑張ろうよ」
(勝平さん………)
目を閉じて大好きだった人の顔を思い浮かべる。想像の中の彼は笑っていた。
「…………分かりました。」
それは、決意の言葉。声は小さかったけれど、強い決意が籠められた言葉。
「うん!」
笑顔で返事した後、佐藤は一つ深呼吸をした。
「き、君がお姉さん達に会えるまで、僕が絶対に君を守るからさ」
彼は顔を赤くさせながらも、そう口にしていた。
一瞬キョトンとした表情になる椋。
「……ありがとう、ございます」
本当なら笑顔で返すべき場面だったけれど、私はまだ笑えなかった。
勝平さんが死んだ事でできた心の傷はまだ癒えていない。癒えるはずが無い。
一生かけても癒えるかどうか分からない。
でも佐藤さんのおかげで少し、ほんの少しだけ心が軽くなった気がした。
【時間:20:30】
【場所:F-09】
佐藤雅史
【持ち物:金属バット、支給品一式】
【状態:若干疲労、目的は椋を守る事と彼女を杏、朋也に会わせる事】
藤林椋
【持ち物:参加者の写真つきデータファイル(何が書かれているかは次の書き手さんまかせ)、支給品一式】
【状態:決意】
関連216b2・321、B−2、B−10ルート
「これで閉幕としよう、超先生」
書物を模していた宝具・滅神正典(ゴッドイズデッド)が徐々に形を剣へと変えていく。
祐一はその剣をゆっくりと手に取った。
「相沢流剣術【天の裁き】」
「ぐおーっ!」
目にも留まらぬ鋭い斬撃が超先生を駆け抜ける!
後に17の残像を残して、超先生の体は崩れ落ちた。
「この技は貴様の存在そのものを斬る。勝負あったな」
「超先生っ!」
滝沢諒助は倒れた超先生に駆け寄った。
「超先生、しっかりしてください!」
「無駄だ。超先生はすでに存在自体がない」
「いや、無駄だったのは君の技の方だよ」
なんと超先生は、何事もなかったかのように立ち上がった!
「馬鹿なっ! 何故この技を受けて無事でいられる!」
「存在そのものを斬ると言ったな。
簡単なことだ。私の存在は既に3年前の事故で失われている。
存在などを斬られても痛くも痒くもない」
存在そのものがない、ならばここにいる超先生は何だというのか。
真唯一者である祐一をもってしても、それを窺い知ることは出来なかった。
「だが私をここまで追い詰めたことは賞賛に値する。
冥途の土産にいいことを教えてやろう。
13の至宝のうち12個はすでに我が手中にある!」
「なんだと!」
「最後の一つはこの殺し合いの末に姿を見せるであろう。
そのときこそ私の悲願、真のRRが完成するときなのだ。
それまで存分に殺し合いを続けてくれ給え。
また会おう、相沢祐一よ」
「超先生、それでは冥途の土産になっていません」
滝沢の下らないツッコミを無視し、超先生は封印の呪文の詠唱を開始する。
「ワルヤテシンイフウカンナエマオワルヤテシンイフウカンナエマオ」
(またそれですか……というか、自分で使えるならなんで大先生呼んだんだよ……)
「―――はろーあげいん―――」
いつの間にか、祐一は沖木島の浜辺に飛ばされていた。時間も何故か夜になっている。
「明日……決着をつける」
決意を新たにする祐一の前に、一人の少女が駆け寄ってくるのが見えた。
「祐一、やっと見つけたよ〜」
「名雪か……」
「祐一はやっぱりかっこいいな、惚れ直しちゃうよ。ぽっ」
── 一方その頃 ──
「超先生が相沢祐一にやられたとの報告が入っています」
_,,....-――、
/ヽー^ ̄ ` ー-、
/ \ |
/ , _ ,.、 、 、ヽ|
,'/,/ , ,, i ,i_`i/_'i |.| `、ヽヽヽヽヽ |
. i! |./ //.| ||,| ̄ | 从ヽ|ヽ .| i ヽヽ|
,! {‖ ノ//| , |、|. | |.| jlヾヽ|| .| ヽ|
||.|. i .l ノ /、|‖ .| /,|.|=、ヾ、、ヾ l i、 |
||ヽ川┌,.=キ.テ、,,,,/'~-て~)`~)、i|`< } |
_,`'/`iヽ`ー‐,ノ ` 、___,,.ノ `'ノノ | ./ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
i' i'~_ノ`'ヾ゙゙~ ι /`'// |
|/ ./,/,.-、`_、 -ー一 ノ .| ./ o 0| 兄上が死んだだとーっ!?
|| '^,.-‐-、-' ヽ、 / ,.!i`' |
ヽi ,4 ,,| _,.,i 、__,,/-‐'''~ .|~`、 \___________
ヽ |`'゙-一~/~ ) , | T.、
,-, -=| )) / /`ー---_-,.''~/ | `-、
. / / `ヽ、 /、 / | - 一' ./ .| ` - 、
/ / `'-、,`), |、 /. |
/ ノ / | ` 、,-- / |
久瀬の兄である竹林明秀は、生まれてすぐに分家筋の竹林家に養子に出された。
その原因は彼の持つ異能力にあった。例えばこんなエピソードがある。
彼が産声を上げた瞬間、周囲にいたものは身動きが取れなくなったというのだ。
久瀬家は古来より異種族・異能力者を忌み嫌っており、その根絶に勤めてきた。
明秀はその能力を恐れられ、久瀬の父により久瀬家を追放されたのである。
彼は成長するに伴って、その力を自在に操ることが出来るようになっていった。
そしてその力は、彼自身によってこう名付けられた。
RR(リアル・リアリティ)
その出生ゆえに二人の間の確執は大きかったが、互いにその能力だけは認め合っていた。
超先生の称号をもつ兄がそう簡単に死ぬわけがない、この報告はフェイクだと、
久瀬は確信していた。思えばこの国最大の異能力者ともいえる超先生が主催者側にいることは、
今回の計画の目的から考えれば皮肉としか言いようがなかった。
たとえ我が子であろうと、これほどの異能力者と成り果てた超先生を始末することを
躊躇するような父ではない。何かがおかしい。
(兄上は一体何を企んでいるのだ)
悩む久瀬の前に一通の手紙が差し出される。
「これは?」
「私が死んだときはこれを久瀬に渡せと、超先生からの命を受けていました」
手紙にはこう書かれていた。
『日本一の弟だと思っています』
相沢祐一
【時間:午後10時ごろ】
【場所:A−02】
【持ち物:世界そのもの。また彼自身も一つの世界である。宝具・滅神正典(ゴッドイズデッド)】
【状態:真唯一者モード(髪の色は銀。目の色は紫。物凄い美少年。背中に六枚の銀色の羽。何か良く解らないけど凄い鎧装着)】
水瀬名雪
【時間:午後10時ごろ】
【場所:A−02】
【持ち物:GPSレーダー、MP3再生機能付携帯電話(時限爆弾入り)、赤いルージュ型拳銃(弾1発)、青酸カリ入り青いマニキュア】
【状態:祐一に惚れ直した、所持品の効果に気付いていない】
久瀬
【状態:日本一の弟】
超先生
【状態:不明】
十波由真 死亡
(死体も支給品も粉々)
→013, →170, →220, ルートD
298 :
悪魔:2006/10/22(日) 09:45:57 ID:gQuw7zJe0
「……まだいるの?」
「ええ、敵は前方の茂みに潜んでいます。」
辺りはすっかり暗くなっていたが、詩子達はまだ睨み合いを続けていた。
「もう、しつこい敵ね!」
「ですが、持久戦なら私達の方が有利です。こちらは常に敵の位置が確認出来ますから」
お任せください、と言わんばかりに空いてる側の手で詩子を制止するセリオ。
セリオは足を損傷している。
上手く隙をついて逃げ出せたとしても、いずれ追いつかれてしまうだろう。
しかしセリオは赤外線センサーで相手が物陰に隠れていようと察知出来る。
暗闇に乗じての奇襲を警戒しないで良い分、そしてロボットであるセリオは疲労しない分、
持久戦に限ってはセリオ達の方が有利であった。
だが突然、セリオがバッと顔を上げた。
「!!」
「セリオ……どうしたの?」
「何かが……凄いスピードで迫っています!」
(ああもう、まだ動かないっての!?)
山田ミチルは焦っていた。結局彼女は交戦を続ける事を決意したが、どうにも決め手が無い。
最初は焦る事は無いと思っていた。完全に暗くなってしまえば、いくらでもやりようはあると。
そうして待つ事1時間。辺りは完全に暗くなった。
だが、問題はここからである。
先程一度暗闇にまぎれて一気に間合いを詰めようとしたが、
動き始めた途端に何故かすぐに察知されて進路のすぐ先に銃撃が飛んできた。
タイミング、位置の正確さから考えて偶然とは思えない。
理由は分からないが奇襲は通用しない。こちらからは木の影から動けない。
根競べだと思った。しかしセリオと違い、彼女は人間である。
既に彼女の疲労は限界に近付いており、集中力は低下していた。
299 :
悪魔:2006/10/22(日) 09:48:17 ID:gQuw7zJe0
「……?」
何かが気になり、ふと後ろを見てみた。
そこには黒い服装の少年が立っていた。
先程までは何もいなかった空間に、突然それは現れていた。
彼女がMG3を向けるよりも早く、腹に衝撃が走った。
「あうっ!」
何が起きたか分からないまま、3−4メートル程吹き飛ばされる。
腹に激痛が走る。
「ごほっ、ごほっ…!」
腹を押さえ、咳き込みながらも何とか顔上げ現状把握に努める。
顔を上げた先には、少年。
暗くて表情までは読み取れないが、自分を見下ろしているようだった。
その手には先程まで自分が持っていたMG3。
銃口は―――こちらに向いている!
ミチルの目が見開かれる。
「ひっ!た…たすけ―――」
ミチルは恐怖と狼狽に支配され、我を忘れて命乞いをしようとしていた。
ダダダダ……!
しかし、彼女の言葉が終わるのを待たずにMG3の音が鳴り響く。
ミチルの顔から首にかけて、4つの穴が開いていた。
首が引き千切れかけ、一瞬体がびくんびくんと痙攣したが、すぐにそれは止まった。
支給品に恵まれた山田ミチルであったが、武器だけではこのゲームは生き残れない。
結局彼女は自分自身の武器によって、絶命したのだった。
300 :
悪魔:2006/10/22(日) 09:49:47 ID:gQuw7zJe0
当然その銃声は詩子達の元にも届いていた。
「セリオ、今の銃声は!?」
「どうやら新手が現れたようですね……」
セリオは急いで乱入者のデータを調べ始めた。
そのデータを認知した瞬間、セリオの目が見開かれた。
>55少年
>身体能力:人間の限界を超過と推測
>装備:マシンガンの類と推測
>警戒レベル―――測定不能。即座に撤退を推奨
次の瞬間にはセリオは叫んでいた。
普段決して動揺しない筈の彼女が叫んでいた。
「詩子さん、裏口から逃げてください!ここは私が食い止めます!」
「ちょ……、セリオ何を!?」
「この敵は危険過ぎます、速やかに撤退すべきです」
「何言ってんのよ……、アンタも一緒に来なさいよっ!」
「この足では私が逃げ切る事は不可能です。
私は人の役に立つ為に作られました。お願いですから、早く行ってください」
そこまで言って、セリオは詩子の背中を強く押した。
「さあ、早く!」
「〜〜〜っ……、分かったわよ!セリオ!あんたも何とかして生き延びなさいよ!」
「努力します」
詩子はそのまま民家の裏門を抜け、走り去っていった。
(どうしましょうか……)
敵はマシンガン系統の武器を持っており、身体能力も自分より遥かに高い。
このまま戦えば勝ち目は全く無い。セリオは賭けに出る事にした。
301 :
悪魔:2006/10/22(日) 09:50:28 ID:gQuw7zJe0
民家の窓に向かって体当たりをし、窓をブチ破りそのまま中に転がり込む。
すぐに起き上り、自分が向かってきた窓の方へと銃を構える。
(これでここからは侵入出来ない筈――!)
すぐに玄関が乱暴に蹴破られる音がし、
敵らしき足音が聞こえてきた。
今自分がいる部屋への侵入経路は3つ。
自分が入ってきた窓、右方向と左方向に一つずつある扉。
さあ、どちらから来る―――?
セリオは右方向に向けて銃を構えた。
ドゴッ!!
恐らく椅子か何かを投げつけたのであろう、右方向の扉が大きな音と共に破られた。
そして、そこから何かが飛んできた。コロコロと地面を転がる。
それは、血塗れであった。
それは、山田ミチルの首だった。
その顔は血に塗れ、目は見開かれたままだった。
ドゴンッ!!
直後にそれとは別方向、左方向の扉が破壊され、何かが飛び込んできた。
それこそが本命、少年自身であった。少年の取った作戦は、陽動作戦。
囮で気を引いてる隙に別の方向から侵入し、敵を殺害する。
誰でもあのようなモノが飛んでくれば動揺し、隙を見せるだろう。
―――相手が人間だったのならば。
「作戦、通りです」
少年が飛び込んできた瞬間には、セリオはまだ顔は右の扉の方を向いたままだったが、
銃だけは既に少年の方向に向けていた。
302 :
悪魔:2006/10/22(日) 09:51:38 ID:gQuw7zJe0
――部屋に篭ればあの敵は確実に侵入してくるだろう。しかし侵入する側は次の動作が1手遅れる。
正面から侵入しても態勢を整える前に撃ち殺されるだけである。
この敵はその程度の事は読んでいるだろう。そして必ず、何らかの方法でこちらに隙を作ろうとするだろう。
しかし、こちらは赤外線センサーで敵の動きが分かる。陽動作戦など通じない。裏の裏をかけるはずである。
それでもこれは賭けだった。相手が手榴弾やダイナマイトの類を持っていれば終わりの、危険な賭けだった。
だがともかく、セリオはその賭けに勝利したのだ。
ダアァァンッ!!
間髪入れずに銃弾を放つ。
「私の作戦勝ちですね」
勝利を確信しながら撃った先を見たセリオは―――敗北したのは自分だったと悟った。
視界に映るのは、大きな盾。
盾を構えた少年には、傷一つ付いていなかったのだ。
「なかなか頑張ってたけど……残念だったね」
その台詞の直後少年の手元が光り、またMG3の音が鳴り響く。
ダダダダ……!!
……走馬灯というモノはロボットにも存在するのだろうか。
メモリーの奥から長瀬主任や研究所の面々、藤田浩之、マルチの顔から浮かび上がってきた。
彼らの顔を見て、セリオは心が安らぐのを感じ、そのビジョンを眺めたまま彼女の機能は停止した。
少年はゆっくりと歩を進め、セリオの銃を回収した。
「バッグはいらないよね、どうせこれからたくさん手に入るだろうしね」
そして少年――――黒い悪魔は地図を取り出し、次の獲物を求めて動き出した。
303 :
悪魔:2006/10/22(日) 09:52:45 ID:gQuw7zJe0
共通
【時間:1日目、21時半頃】
【場所:c-03】
柚木詩子
【持ち物:ニューナンブM60(5発装填)&予備弾丸2セット(10発)・支給品一式】
【状態:逃亡中、疲労】
少年
【持ち物1:強化プラスチックの大盾(機動隊仕様)、注射器(H173)×19、MG3(残り17発)】
【持ち物2:支給品一式、レーション3つ、グロック19(15/15)・予備弾丸12発。】
【状況:健康。目的は参加者の皆殺し、行き先はお任せ】
山田ミチル
【所持品:支給品一式は死体傍に放置】
【状態:死亡】
セリオ
【持ち物:支給品一式は死体傍に放置】
【状態:死亡】
・関連267・313、B系共通
*B-2、B-10にこの話を採用する時は、少年のMG3の弾数を(残り22発)にしてください。
殺す、殺す、殺す・・・目に入った人物は皆殺してやる。
名倉友里にとって、周りは全て敵であった。
自分の引き当てた武器は軽量自動小銃、ハーネルStG44突撃銃。
旧式だろうが何だろうが、当たりには間違いない。
そして、この沸き上がってくる力。
・・・クラスCの自分なんかが不可視の力を扱える訳はない、だが友里の五感は通常よりも遙かに研ぎ澄まされていた。
それに、いくら駆けても疲れない、この不思議な感覚。
友里は夢中だった。
ゲーム開始直後は、何故かいきなり体調不良に見舞われ思うように行動がとれなかったりもしたけれど。
・・・今思えば、それはこの力の解放の前触れだったのかもしれない。
「・・・す、せ・・・・・・くす、・・・」
森を疾走している時だった、その呟きを耳にしたのは。
(人の声?・・・ふふ、最初の見せしめとして、派手にやってあげるわ)
方向転換、声の元へ向け速度を上げる。右手には勿論アサルトライフル。
「せっくす、せっくす、せっくす・・・」
ぶつぶつと君の悪い台詞を繰り返す制服姿の少女が目に入る、友里はその背中を狙い構えていたライフルから弾を乱射した。
パンパンパンパンッ!!
「・・・え?」
連続して放たれたそれは、確かに彼女を狙ったはずなのに。
なのに・・・目の前の少女は、倒れていない。
(は、初めて撃つものだし、そりゃ最初から当たってもおかしいわよね)
そういって、自分に言い聞かせる友里。
少女の動きは決して速くない、友里は一度深呼吸すると落ち着いてもう一度身構えた。
そして連射。
連射。
連・・・
「・・・・・・・・・・・・・・嘘でしょ?」
カチ、カチ。トリガーを引くものの、ハーネルは反応してくれない。
何故か。それは弾がつきたから。
全てを叩き込んでやった・・・そのはず、なのに。
「ひっ」
急に少女が振り向いてきた、やはりどこにも命中していないらしい。
すた、すた、すた。こちらに向かって歩いてくる。
「こ、来ないでよっ」
友里の叫び、だが少女は気にせず前進してくる。
・・・友里の五感は冴えていた、つまりそれは動体視力も上がっているということで。
友里には分かっていた、何故あれだけ撃ったはずなのに彼女が無事であったのか。
当たらなかったから、確かに言葉にすればそう。
では、何故当たらなかったのか。
友里の射撃の能力が低かったから・・・否。
それは。
「・・・!」
ぎゅっと、背中から抱きしめられる感触。
いつの間にか、少女は友里の背後にまわっていた。
動けない。固まる友里の手からライフルが落ちる。
・・・少女の動きは、友里の想像を遙かに上回る速さであった。
どうしてこんなことが、何故こんなことに。
友里の中を、恐怖という名の感情が支配し始める。
そして、あの呟き。
「せっくす、せっくす、せっくす・・・」
ぎゅっと、一層強い力で抱きつかれる。
困惑、何が起きているのか理解できない。
「せっくす、せっくす・・・・もっとセックスする!」
「え?!きゃ、きゃあああああああっ!!!!」
「え、何・・・?」
「や、うそっ、そんなところ・・・はぁん!」
「いや、だめ・・・だめぇ、そ、そこはっ・・・ぁ、ぁあ・・・」
-------------------暗転。
「確保、回収完了」
場に響いたのは、冷静に満ちた確認事項。
いつからか覗いていたのか、里村茜は二人の行為が落ち着いたのを確認すると手にするGL図鑑を開いた。
『美坂香里(Kanon)×名倉友里(MOON.) --- クラスB』
たった今目の前で繰り広げられていた激しい行為の記録。証拠。
思わず流れ出る鼻血がつかないよう、大切に図鑑をバッグに戻すと茜はそのままこの場を離脱した。
「全てはレズビアンナイトのために・・・ごちそうさまです」
「・・・ん」
ポツ、ポツと。空から降ってくる疎らな雫で、美坂香里は目を覚ます。
一帯は闇、歩道に近いと思うがあくまでここは森林帯。先の様子は分からない。
・・・自分は何故こんな所で眠っていたのだろう、起き上がろうとするが妙に体がだるかった。
特に下半身。
「ぇ?」
そして、気づく。
自分が全裸で寝そべっていたこと。
それでも寒くはなかったこと。
何故ならば。
「お、お姉さま・・・」
「ええ?!ちょ、ちょっと、あなたの方がどう見ても年上でしょ?!」
しがみつくように体を絡ませてくる女性の柔らかい体・・・香里は、そのまま気を失いそうになった・・・。
美坂香里
【時間:二日目午前0時頃】
【場所:D−5】
【持ち物:アーミーナイフ・Remington Model 700Police装着数4 残弾数51、支給品一式】
【状態:電波の影響は抜けた】
名倉友里
【時間:二日目午前0時頃】
【場所:D−5】
【持ち物:ハーネル StG44突撃銃(0/30)、弾層×5、支給品一式】
【状態:セックスは男とするもの、そんな風に考えていた時期が私にもありました】
里村茜
【場所:D−5(移動済み)】
【持ち物:GL図鑑(B×1)、支給品一式】
【状態:MOON.キャラは変態ばかりですね】
(関連・291・317)(Dルート)
309 :
高槻ネオ:2006/10/22(日) 16:44:21 ID:wQWqF4hU0
「ぴこっ、ぴこっ」
変な兄ちゃんとクソジャリと別れてから、俺様はとりあえず目的もなく歩いていた。
「ぴっこっ、ぴっこっ」
地図を広げてみたんだが今の場所がまず分からん。
「ぴぃーーーっこっ」
大体の予想で一番近そうなところは氷川村だと思ったんだが、極力人がいそうなところには行きたくなかった。
「ぴこぴこぉ?」
今日の運勢は最悪だしな、間違いない。
「ぴこぉぉぉ!」
「……うぜぇぇぇぇっ!」
一時は生涯の友(?)とまで上機嫌にポテトの相手をしてた俺様だが限界というものはある。
食料は全部取られるし歩きづくめで足はいてぇ。
そんな俺の気持ちも知らずぴこぴこ足元をはしゃぎまわりやがってこのクソ畜生。
他人の気持ちがわからない奴は最低だぞ?
あぁ?人のこと言えるのかって?俺はいいんだよ。
なんせ俺様は生まれ変わったんだ。
310 :
高槻ネオ:2006/10/22(日) 16:44:59 ID:wQWqF4hU0
そう、この島は神様が俺様に与えてくれた新たなフィールド。
今までの俺様とは違う、新生高槻としてまったく違う境地を開拓しろってことだ。
言わばネオ高槻、いや高槻ネオ。
そうだよ、だいたいなんで下の名前が無いんだ。
差別だ。
人権侵害だ。
よって俺様は今日この時をもってネオと名乗る。文句あっか!あんならいい名前目下募集中だこの野郎!
……まぁ話はそれたが、今までの自分から一皮向けたって事だ。
ゲームに乗る気もしないし、だからって乗って無い奴と手を取り合って仲良しこよしなんてしたくもねぇ。
そこで俺様は考えた。
名簿を見る限り参加者の名前見ても女だらけじゃねぇか。
さっきも思っただろ、方向性を変える時だって。
これは啓示なんだよ。
悟った。まさに無我の境地。
『女を助けて美味しく頂いて去っていく』
あのクソジャリのせいでいきなり失敗に終わってへこみかけたが
まさか出会う女がみんなあんなのばかりじゃねぇはずだ。
うまくやればこれを機にゲーム化して主人公だって夢じゃない、そう思うだろ?
311 :
高槻ネオ:2006/10/22(日) 16:45:45 ID:wQWqF4hU0
「ぴこぴこっっっ!!」
あぁもうさっきから本当にうっせぇな。
なんだっつーんだよ。
ポテトは全身の毛を逆立てて一直線に向かって吼えている。
なんかあるっつーのか?
俺様が訝しげな顔して尋ねると、一目散に走っていっちまった。
しめた!これで厄介払いできるぜとか思って、反対側にくるりと背を向ける。
だが三歩進んだところで、どっからワープしてきたのか俺様の前に立ちはだかるポテト。
お前本当に犬か?
あぁズボンひっぱんじゃねぇ。わかったよ、行きゃいいんだろ。
言いながら上をチラリと見上げる。バカでかい門が目の前にそびえ、俺様を頭上から見降ろしていた。
寺か……仏とか興味あるわけじゃないんだが、一応神様に礼でもしておくかと思って中に進んでいったんだ。
それがそもそもの間違いだったんだけどな。
勢い良く扉を開けた俺様の目の前には、昼間に会った郁乃だかってクソガキが変な女に首を絞められてる現場だった。
……なにこの展開?
312 :
高槻ネオ:2006/10/22(日) 16:46:20 ID:wQWqF4hU0
【時間:21時頃】
【場所:F-8 無学寺】
高槻ネオ
【所持品:ポテト、食料以外の支給品一式】
【状況:半ベソで神様を恨んでる】
小牧郁乃
【持ち物:写真集二冊、車椅子、他基本セット一式】
【状況:激怒】
立田七海
【持ち物:フラッシュメモリ、他基本セット一式】
【状況:意識不明】
柚原春夏
【所持品:要塞開錠用IDカード/武器庫用鍵/要塞見取り図/支給品一式】
【武器(装備):500S&Wマグナム/防弾アーマー】
【武器(バッグ内):おたま/デザートイーグル/34徳ナイフ(スイス製)】
【状況:あと10人】
→250 →322 ルートB,J共通
鎌石村に点在する民家の一つ。
そのリビングにある食卓で、二人の少女が声を潜めながら話をしている。
「い、いいのかな?
なんか外はすごいことになってたみたいなんだけど……」
落ち着かない様子で雨戸に閉ざされた窓の方に目をやる少女、笹森花梨。
その方向からは先程まで、断続的に銃声や爆発音が響いていた。
「放っとき。アホどもがドンパチやっとっただけや。
ま、それもどうにか収まったみたいやし……日が出てる内はまだ大丈夫やろ」
冷静に答えたのは保科智子だった。
「ど、どういうこと?」
理解できない様子の花梨。
智子は答えない。
「それより座って、ちゃんと食っとき。
日ィ落ちてしばらくしたら、ここ出るで」
その声音に冷たさを感じながらも、花梨は支給品の糧食を口に運ぶ。
もそもそと咀嚼して、水で喉に流し込む。
「うぅ、マズいんよ……」
情けない顔をする花梨。
眉をしかめたのは智子だった。
「これしかあらへんねやから、仕方ないやろ。
黙って食べぇや」
二人の隠れたこの民家には、食料品の類が一切なかった。
水道も当然のように止まっている。
その他にも生活臭が無さすぎる、と智子は指摘していたが、花梨には
そんなものかとしか思えなかった。
沈黙が支配する食卓に、二人の少女の咀嚼音だけが響く。
が、突如としてその沈黙を破るものがあった。
「――みなさん聞こえているでしょうか。」
定時放送である。
死亡者の読み上げが始まる。
さすがに食事の手を止める花梨。
一方の智子は気にした風もなく、黙々と食べ続けている。
その表情には何の感情も浮かんでいないように、花梨には見えた。
「ちょ、ちょっと保科さん?」
「関係ないわ……」
そう、関係ない。
誰かが死ぬことと、自分が生きていることは関係ない。
煮えくり返る臓物からの声は、自分が生きていることと関係ない。
―――そんなに殺し合いがしたくてたまらんのか、アホタレどもが。
表情には出さない。
そんな感情は、生き延びるためには必要ない。
その代わりに声を出す。
冷静に。平静に。
「……さっきも言うたけど、夜になったら出るで」
「ど、どうしてか、聞いてもいいかな……?
私としては、ここに隠れてた方がいいと思うん……」
「―――ウチがやる気やったら、」
その声音と目線は、花梨を黙らせるのに充分な鋭さを有していた。
「……ウチがやる気やったら、夜中にはこの辺り一帯に火ぃつけてまわるな。
寝てる間抜けはそれでお陀仏やし、慌てて出てきた間抜けは端から蜂の巣や」
「こ、怖いこと考えるんだね……」
「いつまでもこんなところに篭ってるのは間抜けだけ、ちゅう話しや」
「そ、そういうものかな……」
「さっきの放送な。
まだ始まって六時間ちょっとやのに、もう十人以上死んどる」
「うん……」
「ようけ死んどるな。
このままやったら一晩でまた三十人、合わせてもう全体の三分の一が
明日のお日さん拝まずに死ぬちゅう計算や」
智子は淡々と続ける。
「三分の一の間抜けになりたかったら好きにしたらええ。ここに残りや。
……ま、出て行ったかて、別に安全なわけやあらへんからな」
「う、うぅ……」
言葉もない花梨。
正直なところ、自分ひとりでここに残されるなど考えたくもなかった。
だから花梨は、恐る恐るといった様子で一つだけ尋ねた。
「ここを出てどこに……行くん?」
その問いに対する、智子の答えは明確だった。
「南や。……森に紛れるで」
【時間:18時過ぎ】
【場所:C−03(鎌石村)】
笹森花梨
【所持品:特殊警棒、海岸で拾ったピンクの貝殻(綺麗)】
【状態:健康】
保科智子
【所持品:専用バズーカ砲&捕縛用ネット弾(残り2発)、支給品一式】
【状態:健康】
→178 →216 ルートB-9,J
317 :
10:2006/10/22(日) 19:41:12 ID:8eJjI3pR0
→160
→201
Iルートで
エディは沈んでいた。
あの後、ゆかりの死を確認して、せめても、とばかりに軽く土葬にしてきた。
自分の感傷ということは分かっていたが、蜂の巣になったゆかりを野晒しにしておくのは耐え難いことだった。
「アー、やっぱり乗っかった奴もいやがんだナァ……」
独り言ち、嘆息する。
足取りは、重かった。
放送が流れた。
ゆかりの死も発表されていた。
この放送を聴いた時の宗一と皐月の反応がありありと想像出来てしまった。
篁と醍醐の名前もあった。
この二人が死んだなどと信じられない。
放送にゆかりの名前があった以上まるきりの出鱈目ではないだろうがやはり篁が後ろで手を引いているのではないだろうかと思う。
しかし、篁がわざわざ死んだ振りをするとも思えなかった。
どう見たところで違和感は残った。
だから、今は保留にしておいた。
その放送では、他の探し人の名前は出てこなかった。
自分のも、あのイルファと言うメイドロボのものも。
こちらは殆ど誰とも出会っていなかったが、向こうはどうだっただろうか。
しかしここまで人と出会わないとどうしたものかと思う。
警戒されているのか、運が良いのか、悪いのか。
そこまで考えた辺りで、道の向こうから集団で人が来るのが分かった。
「あんだけいるってこたぁ……流石にゲームにゃのってねー……よなぁ……」
仮にそうであっても、もう一つ問題は在った。
「オレッチがゲームに乗ってねぇって……どうやって信じてもらうか……」
いきなり撃たれて蜂の巣ではたまらない。
「ハァ……」
それが、エディの急務だった。
放送が終わる。
「……春原。岡崎って……」
「ちょちょちょちょっと待って……もしかして朋也の……」
「あいつに兄弟はいたのか?」
「いや……僕は知らないけど……」
「……父親、か……」
はたまた親戚か。
もしかしたら偶々苗字が一致しただけかも知れない。
それでも看過するには二人には大きすぎる名前だった。
そのまま二人とも押し黙る。
しかし、そんな沈黙を春原はぽつりと打ち破った。
「でも……だとしたら、あいつ良かったと思ってるかもしれない」
「……どういうことだ」
「あ! いや……あいつ、父親と仲悪かったから……」
「だからって父親が死んで良かったなどと思うはずないだろう」
「……おまえにはわからないかもな」
「なんだと?」
「おまえにはわからないかもな、って言ったんだ」
「どういう意味だ」
「意味も何もそのまんまだよ。おまえにはわからないかもしれないってだけだ」
「何故だ。いがみ合っていようと家族なのだろう? 死んでよかったなどと思うはずないじゃないか」
「だから、おまえにはわからないかも、って言ったんだ。あいつだって……」
「そこまでだ、うーとも、うーへい。向こうから誰か近付いてくるぞ。構えろ」
「……分かった。春原。この話は後だ」
「僕はもうしたくないですけどねえ」
「二人とも黙ってください……来ます」
「チョイトそこゆくお嬢さん、尋ねたいことがあるんだが?」
笑顔で陽気に声を掛けてくる中年男性。
見るからに怪しかった。
「チョイトそこゆくお嬢さん、尋ねたいことがあるんだが?」
流石に怪しかったか、と思う。
「止まれ。後ろを向いて両手を挙げろ。許可するまでこちらを向くな。何用だ」
先頭にいたIMI マイクロUZIを構えた女の子が言ってくる。
素直に従って、エディは返す。
「だから、聴きたいことが、と」
(やっぱ、ゲームにゃのってねーか……)
ならば後は信用してもらえるかだ。
そこが一番難しいことは分かるが。
(つーかこの嬢ちゃん素人か……?)
言ってくることが的確すぎる。
「何だ」
「色々とアリマシテ」
「言ってみるがいい」
「んじゃ遠慮なく。お名前は?」
「断る」
「ちょ、るーこちゃん……名前くらいなら……」
スパーンッ!
快音が響く。
「阿呆かおまえはっ!! 名前を言ってはいけないと言っている傍から言う奴があるかっ!!」
「しまったーーーーーーっ!」
回避
「駄目だ。あのうーがこのゲームに乗っていない保証はない」
「るーこ……そんな名前は無かったよナ……ルーシー・マリア・ミソラって奴カイ?」
「ばれてるーーーーーーっ!」
スパーンッ!!
快音が響く。
「だから、阿呆かおまえはっ!! 見ろ! 完全にばれたじゃないかっ!!」
「しまったーーーーーーーっ!!」
「……もうあなた達は黙ったほうがいいと思いますが」
「ルーコちゃん? ンじゃ、次。どうしたらオレッチが乗ってないって信じてくれる?」
「ふむ……まず、名前は?」
「エディ」
「何を貰った?」
「毒」
「誰かを殺したか?」
「インや」
「毒以外に武器を持っているか?」
「インや」
「そのデイパックを置いて十歩、前に出ろ」
「潔白が証明されたら返してくれるカイ?」
「返す。るーは約束は守る。安心して歩け」
「そらよーござんした。ホイッと」
エディはデイパックを置いて十歩、そのままの体勢で歩く。
「うーへい。身体は丈夫か?」
「丈夫だ」
「なんであんたが答えるんですかねえ!」
「あのデイパックを調べてきてくれ」
「そりゃいーけど……なんで身体が丈夫か聞くの?」
「あのうーディが嘘をついて、中に爆弾などを仕掛けているかもしれないからだ」
「爆弾だったら僕死んじゃうんですけど!!」
「いや、おまえなら大丈夫だろう」
「死ぬよ!」
「うーへい、男の子ではなかったのか?」
「うっ……分かりましたよやりますよ……死んだら化けて出てやる」
「何故かおまえの幽霊だと思うと怖くなくなるのだが」
「あのねえ!!」
「早く行って来たらどうでしょうか」
「茜ちゃんまで……」
スパーンッ!!!
「だからおまえは何度いえばわかるんだっ!」
「はいっ! ごめんなさい!」
「もういい……早く行け……」
春原はとぼとぼと歩く。
そしてデイパックの中を検めて、いかにも毒のような瓶を見つける。
「ひいぃっ!!」
「どうした、うーへい」
「毒が……」
そういって瓶を掲げる。
「ウソは吐いていないと言う事か」
「分かってもらえて何よりダ」
「うーへい。それに口が開いた跡はあるか?」
「ん……無いと思う」
「分かった。うーへい、うーディの身体を調べろ」
「ええっ!? 大丈夫なの!?」
「わからない。だから調べるんだ」
「ハァ……分かりましたよ……」
春原は瓶を戻し、エディに近付いた。
「やさしくしてネ」
「何の話しだよっ!!」
「ケタケタケタ」
春原のボディチェックが終わり、何もない旨をるーこに告げた。
「そうか。ならばいい。うーへい、戻って来い。恐らくうーディは白だ」
そういってるーこは銃を下げる。
「へっ? もういいの?」
「るーはいい。近くに何か隠していたりするのでなければ大丈夫だろう。うーともとうーかねはいいか?」
「私は構わない。こんな状況だからこそ出来る事なら人は信じたい」
「……私は……信用はともかく、当座の安全ならるーこさんが保障してくれそうなので構いません」
「うーディ、銃は下げた。荷は返す。こっちに来ても構わないぞ」
「そりゃ良かった。銃向けられんのはやっぱ気持ちいーもんじゃないネ。ンじゃ、質問。オメエさんとオメエさん、名前は?」
「坂上智代だ」
「春原陽平」
「ンじゃ、次。お嬢さん方、今まで他に誰かと出会ったりしてないか?」
「人探しか」
「そーいうこった。那須宗一、湯浅皐月、リサ=ヴィクセン、梶原夕菜、それと姫百合珊瑚―――――」
そこまで言った所でるーこがぴくりと反応した。
「―――――ドーした。知ってんのカ?」
「るーのたこ焼き友だちだ。ここに来てからは未だ出会っていない。続けろ、うーディ」
「へいへいっと……お後、姫百合瑠璃と河野貴明だ」
再びるーこが反応する。
「うーディ、うーを探しているのか」
「うー?」
「ああ、彼女独特のネーミングセンスだから気にしないで」
「ホォ……さっきからのはそれカ。で、うーって誰ダ?」
「だから、うーだ」
「だから、うーって……ヤメ。うーってのは姫百合瑠璃か?」
「違うぞ、うーディ。うーはうーだ。なぜわからない」
「相互理解というもんは難しいネェ。じゃ、河野貴明でいいのか?」
「そうだ。うーだ」
「で、ルーコちゃんはそのうーを知ってんのカ?」
「知っている。いや、この島で何をしているかは知らないが」
「っちゃー……全滅か……」
「あのうーには世話になった。いつか恩返しする予定だ」
るーこは大きくるーをしながら言う。
「まぁそれは分かった。で、誰も知らない?」
「私と茜は初めてであったのが春原達だ。役には立てんな」
「僕達は……結構出会ったけど今言った人は多分いなかったと思う」
「全員挙げてもらえっか?」
「ええと……藤田浩之、川名みさき、深山雪見、柳川祐也、巳間晴香、柏木梓……それと、柏木楓、森川由綺」
後ろ二人は放送にあった。
これでまた放送の信憑性が上がったと見ていいのだろうか。
「るーこちゃん、それでよかったよね?」
「ああ。間違いはないはずだ」
「ってこたぁやっぱ駄目か。ンじゃ、そっち聞きたい奴はいっかい?」
「るーはうーが見つかればそれでよいぞ」
「僕は芽衣……春原芽衣と岡崎朋也を探してる。後は藤林杏と藤林椋」
「私も朋也だな。後は美佐枝さん」
「私は……まだ、あなたを信用し切れていないのでやめておきます」
「ソーデスカ。ま、それならそれで。オレッチが出会ったのは三人だけだな。
さっきの姫百合と河野を聞いてきたイルファって姉ちゃんと、七瀬彰、折原浩平」
茜が『折原浩平』の所で思わず身体を震わせる。
それに気付いたエディは、話を転換させる。
「ンで、折原浩平と七瀬彰は鎌石村に向かってた。けっこー前だから今は知らんがネ」
茜はそっぽを向きながら、それでも注意深く聴いていた。
エディはそれを見て取って、笑みを浮かべる。
「そしてイルファって姉ちゃんがこの道を逆回りしてる。オレッチと適当なところで落ち合うつもり」
「うーディ、この先の村に行くのはお勧めできない」
「ドーして?」
「この先にマーダーがいるかもしれない。るーたちはそれに襲われて散り散りになった」
「やっぱ参加者がいやがったのか……」
「それでも行くのか?」
「あーまー、いかにゃならんでショ」
「そうか。武運を祈る」
「エディさん」
「ん? なんだいトモヨちゃん」
「これは、いるか?」
そういって智代はエディに手斧を示す。
「……? いーのカ?」
「マーダーがいるかも知れないのに手ぶらという訳にもいかないだろう。なに、私は身軽な方がいい」
智代は笑って、自分の腕を叩いた。
「茜、すまないな。だが、どうにもならなかったら大人しく殺されてやるから安心してくれ」
「……いえ。私がそれを使っても碌な事にならないでしょうから構いません。
エディさんがマーダーを殺してくれるならそれに越したこともないですし」
茜は消極的な了承を出す。
何処までが本心か。
「ンじゃ、ありがたくいただきマス。そだ。因みに皆さんどちらまで?」
「ホテル跡だ」
「了解。ほんじゃ、お気をつけて」
「ああ。うーディも」
そういって、別れていく。
再び見える事はあるのか。
それは、神ならぬ身に分かることではなかった。
回避
「しっかし……ここまで一人も引っかからないたぁ……運のない……」
情報だけは増えていくが、それが探し人に一向に繋がらない。
しかもこの先の村には参加者がいるかもしれないという。
さらに、ゆかりの死を知った宗一と皐月の動向も気になる。
あんまり愉快な想像にはならない。
「前途多難……だネェ……」
嘆息と共に吐き出して、エディは歩き出した。
「さて。うーかね」
るーこはいきなり茜を呼んだ。
「なんですか?」
「どうするのだ? 鎌石村まで行くのか?」
「! ……何故ですか?」
「先程うーディがうーへいの名前を出していた時に反応していただろう」
「ええっ!? 僕!?」
「おまえじゃなくて浩平という奴だろう」
「何だ紛らわしい」
「……気付かれましたか」
「ああ。で、どうするのだ?」
「……いえ、構いません。ホテルに向かいましょう」
「いいの?」
「もう時間も遅いです。今から村に行くとなると夜の街道を歩くことになります。何より、今るーこさん達と別れるわけにもいきませんので」
武器の無い茜が夜中一人で街道を歩く。
この状況では自殺行為といっても過言ではなかった。
「そうか。ならばいい。行こう」
そうして、一向はホテル跡へと向かっていった。
エディ
【持ち物:瓶詰めの毒1リットル・手斧・デイパック】
【状態:意気消沈・人探し続行中】
春原陽平
【所持品:スタンガン・デイパック】
【状態:健康】
ルーシー・マリア・ミソラ(るーこ・きれいなそら)
【所持品:IMI マイクロUZI 残弾数(30/30)・予備カートリッジ(30発入×5)・デイパック】
【状態:健康】
坂上智代
【所持品:デイパック】
【状態:健康】
里村茜
【所持品:フォーク・デイパック】
【状態:健康】
共通
【時間:一日目午後六時半頃】
【場所:F-03】
>>322>>329 感謝
332 :
nobody:2006/10/23(月) 00:32:59 ID:CdWQnNvv0
おかしい。
この島はおかしい。
あの木の陰にも、あの岩の後ろにも武器を持った人がいる。
みんなみんな、私を狙っている。
そもそもこの島に連れてこられたのは何でだろう。かゆいな。
決まっている。
私を殺すためだ。
みんなして私を殺そうと狙っているのだ。がり。
そう考えれば合点がいく。
藤井君が助けに来ないのも。
七瀬君が来てくれないのも。がりがり。
みんな私が邪魔だから、殺そうとしてるんだ。
さっきの女も、あんな顔をして私を殺そうとしていたに違いない。
そうだ、あの注射。
解毒剤? 栄養剤? そんなわけがあるか。ばりばり。
あれは毒だ。
私を殺す毒だ。
だから蛆虫がわくんだ。
この身体はもう蛆虫でいっぱいなんだ。かゆい。
私は死ぬ。
私はもうすぐ死ぬ。
だけどただで死んでなんてやるものか。
私を狙うやつらを一人でも多く道連れにして死んでやる。がり。
武器はないけど、私にはまだこの手がある。この足がある。
この頭も、この歯も、この蛆虫の詰まった身体ぜんぶが私の武器だ。ぶち。
―――みなさん、聞こえているでしょうか―――
ほら、あそこにいる。うるさい。
私を狙う愚かな刺客が立っている。うるさいな。
私はアレを殺すんだ。
走って。近づいて。この手で。この手で。このてで。この
333 :
nobody:2006/10/23(月) 00:34:01 ID:CdWQnNvv0
その女性は、明らかに正常ではなかった。
響き渡る放送も聴こえないかのように、足取りも覚束ないまま歩いていた。
その手指は己の首を掻き毟るように蠢いており、そうして長瀬源蔵の目の前で
盛大に血を噴出して倒れた。
「ポン中の類、かの……これでは手の施しようもあるまい」
まだ微かに引き攣れを起こしているようだが、すぐにその息の根も絶えよう。
この境遇への恐怖ゆえにクスリに手を出してしまったのかもしれない。
これでも前の戦争を生き抜いた身だ。
惨たらしい死に方をする者などは見慣れているが、しかし。
「一体全体、最近の若者はどうしてしまったというんじゃ……!」
先刻の少年といい、この女性といい、これでは何を語ったところで
理解してもらえるものかどうか。
見れば、倒れた女性は既に動いていなかった。
余程の苦しみの中で息を引き取ったものか、その死に顔は苦悶に満ちていた。
死亡者の読み上げは続いている。
リストの中には来栖川の名前も、由真の名も無かった。
そのこと自体には安堵する源蔵。
(じゃが……)
眼前に倒れ伏す骸が、源蔵の心に影を落とす。
この女性の名は、次の放送で読み上げられることになるのだろう。
そしてそこには、由真の名が並んでいるかもしれない。
絶望と苦痛に歪んだ遺体の貌が、由真のそれと重なろうとする。
慌てて首を振り、不吉な想像を打ち払おうとする源蔵。
が。
334 :
nobody:2006/10/23(月) 00:35:09 ID:CdWQnNvv0
「―――ッ!」
背後に、息を呑むような気配。
(また……若者か)
ゆっくりと振り向こうとする源蔵の心中は、苦渋に満ちていた。
【時間:18時頃】
【G-5 神塚山麓、山道】
長瀬源蔵(072)
【所持品:防弾チョッキ・トカレフ(TT30)銃弾数(6/8)・支給品一式】
【状態:普通。由真を探す】
澤倉美咲(094)
【所持品:なし】
【状態:死亡】
→126 →171 →216 ルートB-10,J
しまった、これじゃB-10で手詰まりになりかねない。
>>333の、「>死亡者の読み上げは続いている。」以降を以下の文に、
また時刻を【19時前】、場所を【G-4】へと修正お願いいたします。
申し訳ありません。
―――――――――
死亡者の読み上げは、とうに終わっている。
その中には来栖川の名前も、由真の名も無かった。
ひとまずそのこと自体には安堵する源蔵。
(じゃが……)
源蔵は立ち尽くし、黙考を続ける。
眼前に倒れ伏す骸が、源蔵の心に影を落としていた。
この女性の名は、次の放送で読み上げられることになるのだろう。
そしてそこには、由真の名が並んでいるかもしれない。
絶望と苦痛に歪んだ遺体の貌が、由真のそれと重なろうとする。
慌てて首を振り、不吉な想像を打ち払う源蔵。
(この女とて、人並みの幸せもあったろうにな……)
女性の遺骸に合掌し、しばしの間その冥福を祈っていた源蔵が
歩き出そうとした、その刹那。
「―――ッ!」
背後に、息を呑むような気配。
(また……若者か)
ゆっくりと振り向こうとする源蔵の心中は、苦渋に満ちていた。
「とりあえず、ここから行ってみようかな」
少年は広げた地図を仕舞い、ゆっくり山を下りていこうとした。
姫君の復活という崇高な目的の為に、参加者達を殺す為に。
だが、結局それはかなわなかった。
少年の耳に鋭く風を切る音が聞こえたのとほぼ同時に少年の右足は何かに撃ち抜かれていた。
続いて腹部、左足、胸部、右腕、喉…体の様々な部位を何かが貫き、少年は大きくバランスを崩して後ろに倒れこんだ。
喉を潰された為に呼吸すらままならず、全身から伝わる激痛をおして左手でやっと右腕を持ち上げる。
するとそこにはわずかばかりの穴が広がっていた。
がさ…がさ…
草を掻き分けるような音がし、足音が少年に近づいてくる。
音がする方向を少年は見ようとするが、全身を打ち抜かれて思うように体が動かない。
そのうち少年の視界のほうに足音の主が姿を現した。
美しいブロンドの髪をポニーテールに纏める美人でスタイルのよい女性。
ただ、その女性の手には大きな石が抱えられていた。
「グッバイ、ボーイ」
女性はそう言い捨てると持っていた石を少年の頭上に振り下ろした。
(結局、今回もまた姫君の復活を成しえることは出来なかったのか……)
少年が最期にそう考えることと、少年の頭骨が砕かれるのはほぼ同時のことだった。
「ンー、戦利品はレーションかー。 上出来カナ?
出来ればガンが欲しかったけど、仕方がないネ」
ゲーム開始直後に遡る。
ブロンドの美しい女性、宮内レミィは早々にゲームに乗ることを決意し、デイバッグを開け……。
「ノォー……」
そして愕然としていた。
彼女の支給品はパチンコ… 石を飛ばす武器である。
武器といえば武器には違いないが、どちらかというとおもちゃのイメージのほうが強い。
ゲームに乗ることを決意していた彼女にとって殺傷能力の期待できないパチンコが支給品だったことを考えれば、
彼女の愕然ぶりも当然といえた。
だが、彼女の認識を覆すものがデイバッグの中に入っていたのだ。
それがサプリメントのケースに良く似たケースに入っていた6mmスチールボールだった。
いわゆる、BB弾とよばれるプラスチックの球。
それと同サイズのスチールボールは、高速で射出されると
コンクリートに穴を穿ち、ガラス瓶を砕く事無く貫通せしめる能力を有している。
これにより、一見はずれに見えたパチンコが実に殺傷能力の高い武器へと変貌を遂げていたのである。
得物を入手した彼女だったが、最初に目をつけたのが山頂の少年だった。
最初は、いつでも少年を撃てる様に構えていたが、少年はまるで動こうとしない。
彼女は自分の癖を既に把握していたから、動こうとしない相手を狙撃しようとは思わなかった。
構えをといて、少年が動くのをじっと待ち……結局6時間もの時間が経過する羽目になった。
途中、死亡者の報告があったがゲームに乗った彼女には関係のない話だった。
放送を機に少年が動き…そして冒頭へと繋がる。
さて、少年が呟いていた姫君という存在。
それが真実なのかどうかは既に知る由もない。
全てはただの妄言だったのかもしれないし、そうではなく本当に姫君という存在があるのかもしれない。
だが、少年の弁を借りるのであれば、過去に幾度となく失敗を重ねたという姫君の復活というものは、
結局のところ、世界の意思によって否定され続けているということなのだろう。
おそらくこれからも永遠に。
【55 少年 死亡】
【107 宮内レミィ】
【支給品:パチンコ、6oスチールボール*90(ケース付き)、レーション三日分、デイバッグ×2、大きな石は放置】
【状態:健康】
【目的:ゲームの優勝】
【時間:18:20】
【場所:F-05、神塚山山頂】
注:スチールボールは100発入り。レミィは試射で4発使用している。定価は2000円。
-
→294
⇔313
ルートH
午後六時の死者の放送を、岡崎直幸はボーっと聞き流していた。
息子の名前は上がらなかった。安心した。
(・・・私は、朋也君のために何かできることがあるのだろうか)
支給されたのは腕にはめる鉄の装甲、それに何故かドス。
よく分からない組み合わせだった。
開始後にすぐ鎌石郵便局を目指し、そして隠れ続けた直幸はずっとここで時間を食いつぶしていくつもりだった。
しかし、こんな自分にももしできることがあるのなら。
直幸は、無言で鉄の鎧を装着した。
瞬間、みなぎるパワーと熱意・・・・・・・・・・そして、愛。
「朋也君は私が守る!」
叫んだ。大声で、叫んだ。
「朋也君は私の姫だもん!!」
岡崎直幸、再出発。
岡崎直幸
【時間:1日目午後6時頃】
【場所:C−4(鎌石郵便局)】
【所持品:鉄拳、ドス、支給品一式】
【状態:朋也君を守る】
Dルート
340 :
ひでぶっ:2006/10/23(月) 21:05:40 ID:sy44NueF0
──日本家屋。
どどどどどどどどどどどど
がらっ!
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_,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
|i i| }! }} //|
|l、{ j} /,,ィ//| 『遠野の状態を確認しようと台所を見に行ったら
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ 絵柄からして全然別人だった』
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ |
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
/' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも何をされたのかわからなかった…
,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉
|/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ 頭がどうにかなりそうだった…
// 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
/'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐ \ いたる絵は同じ絵を二度と書けないとかデッサンが違うだとか
/ // 广¨´ /' /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
ノ ' / ノ:::::`ー-、___/:::::// ヽ }
_/`丶 /::::::::::::::::::::::::::::;;:::::::::: ̄`ー-{:::... イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
北川潤
---------------------------------------------------------------------------------------------
広瀬:「はぁ?」
北川:「いいから見てみろ!早く!」
341 :
ひでぶっ:2006/10/23(月) 21:06:41 ID:sy44NueF0
──台所。
彼は、広瀬をひっそりと台所を覗かせて、台所にいた女を指差した。
台所には美凪が後片付けをしている筈だった。
然し広瀬は、その姿を見てぎょっとした。
そこにいるのはドラ○もんクラスの3等身のバカでかい女だった。
「奴」は、その巨体をぴょこぴょこ動かしながら家事を続けている。
北川:「だろ?」
広瀬:「・・・・・・(沈黙)」
北川:「・・・・・・・・・・・・・」
広瀬:「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(さらに沈黙)・・・・・」
「誰あのデブ」
あのデブ↓
http://07th-expansion.net/Graphic/Pic/Cckey/Minagi.JPG
【場所:日本家屋(周りは砂利だらけ)】【B-5】
時間 放送終わったあたり
北川潤 (30番)
【持ち物:SPAS12ショットガン(8/8+予備12)防弾性割烹着&頭巾 九八式円匙(スコップ)水・食料、支給品一式、携帯電話、お米券×2 】
【状況:ポルナレフ化 】
広瀬真希 (87番)
【持ち物:消防斧、防弾性割烹着&頭巾、スリッパ、水・食料、支給品一式、携帯電話、お米券×2 和の食材セット4/10】
【状況:誰だよ】
遠野美凪 (69番)
持ち物:消防署の包丁、防弾性割烹着&頭巾 水・食料、支給品一式、特性バターロール×3 お米券数十枚 玉ねぎハンバーグ】
【状況:ひぐらし】
遠野美凪 特殊能力 「ひぐらし化」 腕の太さ×2 拳のデカさ×10 足の太さ×2
攻撃力30倍 3頭身
【その他】
北川のショットガンの弾数をさらに追加しました。
ちーっす、この島に来てからというもの、女(チビ限定)にはバカにされる、吊るされてリンチされる、犬に命を助けてもらっている、と人生の存在意義を疑りたくなってきた高槻でーす。
まぁよ、さっき俺様の生き方は『ハードボイルドな漢を演出しつつムチムチなおねーちゃんを美味しく頂く』という路線に変更したわけよ。
それがどうよ、何よこの状況。いつか会った郁乃だか七海だとか言うチビどもが血走った目をしているオバサンにやられているではないか。
俺様は正義のヒーローなんかじゃねえ。それは自負している。しかしこんな切羽詰った状況を一山百円のミカンみたいに扱う神様はどうよ?
本当の悪は神様なんじゃないかと思えてきた。だから俺様は神様を軽蔑する意味合いもかねてこう言ってやったさ。
「ぴっこり」
…違うぞ、今のは俺様のセリフじゃねぇぞ、おいそこ、何笑ってる! 言ったのはこの隣のこん畜生だっつーの!
ええいもう、結局何を言いたかったのか忘れてしまったがハードボイルド路線に変更した以上目の前のヒロインのピンチを見過ごすわけにはいかない。
俺はポテトを引っ掴むと女のドタマに向けて投擲した。
「うらぁっ! 必殺、ポテトカタパルト弾っ!」
「ぴこ〜〜〜〜…」
情けない声をあげながら女の側頭部に突進していくポテト。俺様の存在などまったく意に介してなった女はまともにその直撃を食らう。流石俺様、甲子園のハンカチ王子も真っ青だ。
「…!?」
バランスを崩した女がよろめく。そこに間髪いれず飛び蹴りをかます。おお、かっこいいぞ俺。いっぺんこーいうのやってみたかったんだよな。
飛び蹴りを食らった女は床に無様に転倒する。その衝撃でバッグからおたまやらナイフやら銃が出てくる…って、げっ、結構強力な武器が多いんじゃね? おたまはどうかと思うが。
それでようやくこちらに気付いた女が血走った目をこちらに向ける。
「邪魔を…しないで!」
転がっていたリボルバーを掴み銃口をこちらに向ける。長細いバレルが俺様の胴体を捉える。
「真剣やべっ!」
とっさに避けようとするが、既にトリガーに指はかかっている。間違いなく死ぬ。ああちくしょう、俺の死に際のセリフもこんなもんなのか…
「ぴこっ!」
しかしそんな俺様の窮地を救ったのはまたもやポテト。女の顔面に体当たりする。銃口が反れ、紙一重で俺様の横を弾丸がすり抜けていく。助かった!
「このっ…ナメんじゃねえぞコラァ!」
女の銃を蹴り上げ、銃をどっかにやる。流石俺様、セリエAもビックリだ。
だが怯まなかったのは女の方だ。すぐさま別の銃を拾って俺様に向ける。おいおいなんて執念だよ、このオバサン!
「お願い、死んで!」
お願いと言われても俺様だってまだ死にたかない。また銃を引っ掴んで投げてやろうとする。
その時、一発の銃弾が俺様と女の間を切り裂く。俺様はぎょっとして顔を反らす。女も同様だった。
音のする方を向いてみると、そこにはいくみんだったか七ミリだったか忘れたが、まあとにかくチビの片割れがリボルバーを構えていたとさ。
「…いいかげんにしなさいよ。あんた、おかしいわよ、どうかしてるわ」
おいおい、俺様は違うぞ。肩をすくめてみせるが車椅子のチビは低い声で続ける。
「七海がまだ生きてるから今回は見逃してあげる。…さっさとどこへでも行きなさいよ」
銃口が女のほうへと向けられる。どうやら俺様ではないみたいだな。
「ぴっこり」
うるせえ、てめえに言われなくても分かってたさ。これで俺様まで撃たれたらシャレんなんねーぞ。
一方の女は形勢不利と判断したか、自らのデイパックとナイフを掴んで外へと一目散に逃げていった。はっ、ざまぁねえな。
念のために扉の外へポテトを放って調べに行かせる。俺? んな危ねえことするかよ。
「ぴこぴこ、ぴこーっ」
どうやら本当に逃げたようだ。安全になったと分かると急に肩の力が抜けた。
「ふーっ、この高槻様がここまで大立ち回りを演じたのは久々だな…」
さてチビの方へ目を向けるとチビは大きな声で倒れているもう一人のチビのところへ行き、懸命に声をかけている。
「しっかりしてっ! どこもケガはないの!?」
しかし車椅子の上だからか安否を完全に確認できていないようだ。
ふふん、いよいよ俺様の見せ場のときだ。ここいらでカッチョよく介抱してやって俺様のファンの第一号の出来あがりってわけだ。
俺様はつかつかと歩いて行き、倒れているチビの状態を確認してやる。
「ちょっと、あんた七海に…」
「いいから黙っとけ。ギャーギャー喚くな」
「なっ…ふん、分かったわよ」
ご不満そうな声で言う車椅子のお姫様。そんなチビ慰めるようにポテトが膝の上に乗っかる。
「ぴこぴこぴーこ、ぴこっ」
あん? 口だけの男だから気にするな? …後でリフティング十回の刑な。
「ぴ、ぴこぴこぴこっ」
ぶんぶんぶんと激しく全身で違うと言い張るポテト。当の車椅子のチビは何が何だか分かっていないようだったが。
さて肝心のほうはと…まずは脈を調べてみようと手首を持ち上げる。うおっ、柔らかい…しかもすべすべだ。うむ、将来いい女になるな。
「ちょっと、真面目にやってるの?」
背後から野次が飛ぶ。…危うく本来の目的を忘れるところだった。
うむ、脈に異常はない。命に別状はないようだ。気を失ってはいるが、じきに気がつくだろう。
「大丈夫だ。死んじゃいない、気を失ってるだけだ」
「そ、そう…良かった。…ところで、どうしてあんたここにいるの? 前のことといい、タイミング良く現れすぎなんじゃないの?」
んなこと知るかよ…文句ならポテトに言ってくれ、と言いたいのを我慢して俺様はとっておきの決めセリフを言った。
「ふん、前にも言ったはずだ。俺様はハードボイルド小説の愛読者だってな」
決まった、これでファンが一人出来たぞっと。…お? 何だその目は。その疑いの目は。
「もしかして…あんたって…」
何かまた嫌な予感がする。大いなる誤解の予感が。
「…ロリコン?」
…グッバイ、ハードボイルド。
高槻ロリコン
【所持品:ポテト、食料以外の支給品一式】
【状況:(精神的に)死亡】
小牧郁乃
【持ち物:500S&Wマグナム(残弾13発、うち予備弾の10発は床に放置)、写真集二冊、車椅子、他基本セット一式】
【状況:高槻をロリコン認定】
立田七海
【持ち物:フラッシュメモリ、他基本セット一式】
【状況:意識不明】
柚原春夏
【所持品:要塞開錠用IDカード/武器庫用鍵/要塞見取り図/支給品一式】
【武器(装備):34徳ナイフ(スイス製)/デザートイーグル/防弾アーマー】
【状況:あと10人】
【その他:おたまは床に放置されたまま】
【備考:B系、Jルート】
ごめんなさい、春夏の欄をこのように変更してください
柚原春夏
【所持品:要塞開錠用IDカード/武器庫用鍵/要塞見取り図/支給品一式】
【武器(装備):34徳ナイフ(スイス製)/デザートイーグル/防弾アーマー】
【状況:あと10人、屋外に逃走】
「………岡崎さん、なんでそんな格好してるの?」
十波由真が尋ねてくる。
このゲーム内では明らかに場違いな三角帽子。
気にするなというのは無理な相談であろう。
「……これが俺の支給品だったんだよ」
「変人殺人鬼はね〜、体だけ大きくなったかわいそうな大人なんだよ」
「……………」
由真の目が疑惑の目つきに変わっていく。
「だから、これをつけてるだけで寄ってくる知り合いがいるってだけだからな。大体俺は変態でも殺人鬼でもねえよ!」
ボコッ!
「にょわっ!」
腹がたったので、みちるにゲンコツを浴びせておく。
「うぅー、やったなー!」
みちるの体が沈み込み、そして……
「みちるキーーーーーーックッ」
ガスッ!
朋也の鳩尾にみちるの蹴りが直撃する。
「ぐおぉっ!!」
子供の蹴りとは言え、当たり所が悪い。
朋也は腹を押さえながら崩れた。
「べーだっ!」
勝ち誇るみちる。長身の男が少女相手に悶絶している。
一般的には実に珍しい光景であった。
――丁度その時、島内に放送が響き渡り始めた。
「――みなさん聞こえているでしょうか。
今から僕は一つの放送をします。」
「えっ!?」
……
……
013 岡崎直幸
「え……、岡崎って……」
由真は放送で呼ばれたその名前に驚き、朋也の方を振り向いた。
「そんな……親父が…」
朋也は絶句していた。
……
……
…
…
――以上です」
立て続けに知り合いの名前が呼ばれた。
このゲームのルールは知っていたが、彼はまだ修羅場らしい修羅場に遭遇していない。
だから彼にはまだ実感が無かった。
このゲームでは容赦なく人が死んでいくという実感が。
だが、既に知人が数名死んだ。
特に父の死は彼に衝撃を与えていた。
(俺と親父は他人同然の関係だったんだ。同じ家で寝泊りしてはいるが、ロクに会話もしない。
親父にとって、俺は単なる話相手でしか無かったんだ。俺も親父を避けていたはずだ。
俺と親父は他人。他人なんだ。なのに――)
「なんで……涙が出るんだよ……」
視界が霞んで見える。朋也の頬を涙が伝う。
「岡崎朋也………」
「岡崎さん………」
心配そうに朋也を見ている由真とみちる。
彼女達の知り合いの名前は放送で呼ばれた中には無かった。
「くそっ……、くそっ…!」
涙を流しながら地面を蹴る朋也。
実の父親を失った者に、かける言葉など存在しなかった。
―――あれから1時間。
「はぁ……、はぁ……、すまん……取り乱しちまった…」
心配そうにしているみちると由真に声をかける。
「ううん……仕方ないよ……」
みちるも普段の明るさは影を潜め、俯いている。
ようやく朋也は落ち着きを取り戻しつつあった。
落ち着いた後に訪れる感情は、焦り。このゲームは着実に進行している。
渚などは自分が守ってやらなければすぐに殺されてしまうんじゃないのか?
「とにかく、いつまでも悲しんでられねぇ…早くみんなを探そう」
それからもう一つ、今一番言うべき台詞があった。
「後な、さっきは本当に悪かった……俺はもう大丈夫だから、出来るだけ明るくいこーぜ」
暗くなっても良い事ないしな、と苦笑いしながら付け加える。
「……もう、しょうがないな〜、変態殺人魔は」
「そうね…どうせなら楽しくいかないとね」
その一言が効いたのか、彼らの雰囲気は幾分マシになっていた。
父親の死は辛かったけど、まだ彼にとって一番大切な人は生きているから。
支えあってきた人はまだ生きてるから。
(渚―――無事でいてくれよな)
だから朋也は前を向いて歩き始めた。渚と一緒に、またあの坂を登る為に。
十波由真
【時間:19:10】
【場所:E−2の街道】
【持ち物:ただの双眼鏡(ランダムアイテム)】
【状況:朋也達と行動を共にする。まだ少しだけ空腹。デイパックはD−1に放置状態】
岡崎朋也
【時間:19:10】
【場所:E−2の街道】
【持ち物:お誕生日セット(クラッカー複数、蝋燭、マッチ、三角帽子)、支給品一式】
【状況:渚や友人達の捜索をする。パンを一つ消費】
みちる
【時間:19:10】
【場所:E−2の街道】
【持ち物:武器は不明、支給品一式】
【状況:美凪の捜索をする】
【備考:関連189・ルートB系共通】
「祐一〜」
抱きついてくる名雪を祐一はそっと引き剥がした。
「今はそんなことをしている場合ではない」
「その姿の祐一を見るのは久しぶりだね」
もう随分と昔のことだ。幼くして華音市一の魔法使いと讃えられた月宮あゆは、
7年前の戦いで木から転落、重傷を負い記憶を失った。
その場に居合わせた祐一は、そのショックにより唯一者として覚醒、
圧倒的な力で敵軍を壊滅させた。
祐一はそのときの出来事を深く語ろうとしないため、名雪はその重大さをわかっていない。
それだけではない。引っ越した後にも、唯一者としての想像を絶する戦いがあった。
ことの真相を知っているのは祐一本人と水瀬秋子のみである。
名雪は祐一について何も知らないと言っていい。
「でも私は、祐一には普通の学生に戻って欲しいな」
「それは出来ない。俺はすでに罪人だ」
「祐一は何も悪いことしてないよ」
「それでも罪人なんだよ……」
祐一はそれだけ言うとその場を去ろうとした。
「待ってよ祐一。私も連れて行って」
「これは俺の戦いだ。名雪を巻き込むわけにはいかない」
「待って!」
―――ぐ〜―――
その瞬間、名雪の腹の虫が鳴いた。
「あはは……バッグ投げちゃったから今日何も食べてないや。お腹空いちゃったよ」
「これでも食べておけ」
祐一は名雪の好物であるいちごサンデーを作り出し、彼女に手渡した。
世の中には魔法で和菓子を作るしか能のない馬鹿もいるが、祐一に出来ないことなど何もない。
「お前の持っている携帯電話には時限爆弾が入っている。
ルージュは拳銃、マニキュアは青酸カリ入りだ。使い方を誤るなよ」
「待てよ!」
注意を促し改めて去ろうとした祐一に、改めて声がかけられた。
「今度は春哉か……何の用だ」
振り向くと、戦闘機から一人の男が降りてくるところだった。
「偉そうなこと言っときながら二度も封印されて飛ばされてたのは誰だよ」
「覗き見とは趣味が悪いな」
「そう言うなよ。いい物持ってきてやったんだから」
そういうと、彼は一枚のお札を祐一に渡した。
そこには『破露揚握琴』と書かれている。
「封印対策の護符だ。これがあれば『はろーあげいん』は効かない」
「余計なことを……さっさと帰れ」
祐一は札をしまい、名雪と春哉に背を向けて歩き出した。
「おい、せっかく来たんだから俺にも手伝わせろよ」
「お前の出る幕ではない」
「……わかったよ……所詮SSランクの俺じゃ役立たずってわけか。頑張れよ、祐一」
春哉はそう言ってステルス機に乗り込み、颯爽と去っていった。
歩いていく祐一を見送りながら、名雪は涙を流していた。
「祐一……どうして私はいつも置いていかれるの……
私、祐一がいないともう笑えないよ……」
「それは名雪が未熟だからですよ……」
「お母さん!」
いつからそこにいたのか、名雪の後ろに母である秋子が立っていた。
「お母さん教えて! 祐一の罪って一体何なの!?
どうして私には何も教えてくれないの!?」
詰め寄る名雪に秋子はゆっくりと答える。
「祐一さんはこの世界そのもの。この世界の人々の命を削って生きているのです。
それは唯一者として生まれた彼に課せられた業。
これ以上は名雪には教えられません。いえ、名雪には知る資格などない」
秋子はそう言うと、名雪の足元に支給品のレイピアを投げた。
「お母さん……?」
名雪は事態が飲み込めていない。
「名雪を甘やかして育ててきたことは、私の犯した最大の過ちでした。
わたしと戦いなさい、名雪。どんな手を使ってもかまいません。
武器を使いたければ使いなさい。毒を使いたければ使いなさい。はめ技を使いたければ使いなさい。
わたしを倒すことが出来ないのであれば、あなたは今ここで死ぬことになるでしょう」
「お母さん……何を言ってるの?」
相沢祐一
【時間:午後11時ごろ】
【場所:B−02】
【持ち物:世界そのもの。また彼自身も一つの世界である。宝具・滅神正典(ゴッドイズデッド)、護符・破露揚握琴】
【状態:真唯一者モード(髪の色は銀。目の色は紫。物凄い美少年。背中に六枚の銀色の羽。何か良く解らないけど凄い鎧装着)】
水瀬名雪
【時間:午後11時ごろ】
【場所:A−02】
【持ち物:レイピア、GPSレーダー、MP3再生機能付携帯電話(時限爆弾入り)、
赤いルージュ型拳銃(弾1発)、青酸カリ入り青いマニキュア、いちごサンデー】
【状態:祐一がいないともう笑えないよ】
水瀬秋子
【時間:午後11時ごろ】
【場所:A−02】
【持ち物:支給品一式】
【状態:水瀬家当主】
秋浜春哉
【場所:残魔大先生のSSの中】
【状態:原作? 何それ】
【備考:祐一が生きている限りときどき脈絡もなく誰かが死にます】
→327, ルートD
【状態:原作? 何それ】
と言い切ってるコトにワラタw
いくらDルートはなんでもありでも他人のSSとわかるものをひっぱってくるなよ…
立ちつくしていた。
高い場所に位置するスピーカーから流れてくる残酷な知らせ、相良美佐枝は呆然と動けずにいた。
(・・・本当に、殺し合いを強要させられてたんだね)
そこには知人の名前も含まれていた、目の前が暗くなっていく。
それと同時に、護身として身につけていたウージーの重さも増した。
嫌になる、何故こんな目に合っているのかと。
小牧愛佳、来栖川芹香を残して食料を調達にきた美佐枝は、本来の目的をひとまず置いておき村の散策に時間をかけた。
状況としては子守のようなものだ、あの子等を守ってやらねばいけないのである。
そのためにまず必要なのは、情報。
・・・本当に、この村は安全なのか。ゲームに乗った輩がわんさかいたのでは話にならない。
疲労は勿論自分にも溜まっている、だがとにかく休ませている彼女等の体力を何とかせねば逃げることすら困難になってしまうのだ。
大丈夫、目立つ要素のない建物だからまず人目にはつかないだろう。
自分はあえて危険な道を行く。だが、これが美佐枝のやり方。
動ける者が動けばいい、それは「できるから」という理由があるから。
自分はできる、やることができる。だから先導する。
(現役は引退したつもりなんだけどね・・・)
ちょっとした呟き。でも、今はそんなことを考えている暇はない。
民家の密集した地帯をさ迷い歩き続け数時間経つが、本当に百人以上の人間が押し込まれたと思えない程、ここは静かであった。
・・・地図で確認したところ、村と名のつく場所は三つしかない。
その内一つがこれだとすると・・・他では余程賑わっている可能性もあるだろう。
そんなことを考えていた時だった。・・・放送が、行われたのは。
たった数時間。それだけで、こんなにも命を落とした人がいるという事実。
思わず顔も歪んでしまう。あまりにも・・・残酷な、現実であった。
(本当に、私らはこれを乗り切れるというの・・・?)
答えの出ない問い。
美佐枝は負の感情を取り除くべく、今度は民家の中の食料探しに精を出すことにした・・・。
が。
「おいおい、まさかこんなにも不発とは・・・」
民家は多い、確かに多い。
だが、そのほとんどが・・・施錠済み。
窓はある、割って入ることは可能だろう。
だが、それには大きなガラスの破壊音という副産物もついてくる。
今、それをやるのは危険だ。避けたい。
そんなことをしていたので、時間はまたまた過ぎてしまい。
何とか食料は確保できたが、缶詰四個に支給品と同じパン二つと戦果は時間と比例しない。
自分の受け持つ仕事は済んだ。だから、さっさと戻れば良かった。
・・・だが、美佐枝は、最後に寄り道をすることにした。
最も危険だと踏んでいた場所、役場付近。
確認しておきたかったのだ、最後の最後でここに留まっていても本当に平気かどうかを。
見た感じでは特に異常は感じられない。
・・・だが、イヤな臭いが鼻をつく。
(何かが焦げたような・・・)
瞬間、予想をしていなかった所から人の叫び声が響いた。
「た、助けて、お願い!」
「わっ、何だ一体」
無防備に駆け寄ってくるのは一人の少女・・・年頃は愛佳や芹香と同じくらいであろうか。
敵か味方かも分からない美佐枝に向かっていきなり駆けてくる・・・人を選んでいる暇はないということだろう。
「友達が、友達が私を逃がすためにあいつを、あいつを」
「分かったから落ち着け・・・」
その時、彼女達から少し離れた場所から、ドゴッ、ドゴンッ!という派手な音が鳴り響いた。
続いて銃弾の連射音、少女の体がふらつき美佐枝は慌てて肩を抱く。
「セ、セリ、オ・・・?」
「こりゃまずいね。一端ここから離れないと、私らも巻き添えを食うよ」
「いやよ!セリオの安否を確かめなくちゃ!!」
「馬鹿、あんたを逃がすためにその子は足止め役を買ってでたんだろ。
今あんたに何かあったらその子も報われないだろ・・・」
泣きそうな表情、でも歯を食いしばって堪えている少女。
美佐枝は一つ溜息をつき、彼女の手を取った。
「少し、ここらで時間を潰してから行けばいい。
・・・とにかく、事情を話してくれ」
363 :
補足:2006/10/24(火) 01:47:46 ID:3kqCCjAA0
相楽美佐枝
【時間:1日目午後9時30分】
【場所:C−3】
【持ち物:ウージー(残弾25)、予備マガジン×4】
【状態:食料確保完了、愛佳と芹香の元へ向かう途中】
柚木詩子
【時間:1日目午後9時30分】
【場所:C−3】
【持ち物:ニューナンブM60(5発装填)&予備弾丸2セット(10発)・支給品一式】
【状態:少年のもとから逃げてきた】
(関連・216・260・328)(B−2・B−10)
(関連・208・216・328)(B・B−4・B−9)
「…それ、わたしのお母さんかも、しれない」
観鈴の小さな呟きは、鎌石消防署に大きな静寂を落とした。
だが、その静寂も長くは続かなかった。
「……ちょっとみんな、裏に行ってもらえるかい?」
口を開いたのは緒方英二だった。
英二の言葉尻には、微かな緊張と、そして冷徹さが込められていた。
視線を落とした観鈴以外の環、祐一、芽衣が、英二の視線の先を辿る。
そこにいたのは……大きく肩で息をしながらレミントンを構える篠塚弥生だった。
「ちょっと、どういうことっすか?」
祐一は咄嗟に立ち上がり、身構えた。
「知り合いですか?」
コルトガバメントを構え、環も尋ねる。
「まぁ、ね……ちょっと二人っきりで話がしたいんだ」
英二はそれだけ答えると、首で『行け』と合図した。
並々ならぬ雰囲気を察した二人は仕方なく、芽衣と観鈴と共に、未だ目を覚まさない藤林杏を抱え裏へと姿を消した。
「……英二さん」
その間際、芽衣が名残惜しそうに英二の名前を囁いた。
「どういうつもり? そんな物騒なもん構えて」
外に出た英二は、弥生と3Mくらいの距離で立ち止まった。
レミントンの全長は約170CM。銃口は超至近距離で英二を捕らえていた。
「……」
英二の質問にしかし弥生は答えない。
『判っているくせに』
そう冷たい瞳が語っている気がした。
「……」
事実、英二には大体のことは察しがついていた。 たぶん、由綺の死。
それが彼女をこんな行動に駆り立てているんだろう。……彼女はもう、自分の知っている篠塚弥生ではないのだ。
今ここに英二がいなければ、芽衣や祐一は落命していたに違いない。
だからこそ、皆を裏手に非難させたのだ。
だが逆に言えば、まだ『知り合い』を殺すまでは吹っ切れてはいないということ。
交渉、改心の余地はあるはずだ。
「……由綺ちゃんのこと、だよね」
「……ええ」
「俺達を殺すの?」
「…………貴方なら、察しがつくのではありませんか?」
口紅に彩られた口唇が、ゆっくりと蠢く。
実に冷静に、実に無駄がなく、実に艶やかで。
そんないつもの彼女だからこそ、英二は恐ろしかった。
「復讐、ね……やめなよ、んなくだらんことはさ。スマートじゃないよ」
「くだらない……?」
「俺だって理奈死んでるんだよ。すごく悲しいし、辛い」
英二はメガネの奥の瞳を僅かに潤ませる。しかしそれにも弥生は動じなかった。
「……」
「犯人をこの手で殺してやりたい」
「…………でしたら――」
「――でもさ」
「…………」
「君にも話したことあったかな? ……ラブソングと感情の話」
「……恋人の死様を冷静にフォーカスに納める行為がそれ、という……?」
「そう、それ。 さすがに記憶力いいね」
「……私に由綺さんの死を諦めろと? 貴方はそれが出来ると?」
「別にそうはいってないさ。 それに、二人の死を甘受することなんて、多分一生無理だと思う」
「でしたら」
「――ただ、もう少し別のやり方があるんじゃない?」
英二は芽衣たちの消えた方をちらりと見やった。
「……」
「……とりあえず、ここにいる連中には手出しはさせない。 ……それに、ここにいる全員の無実は俺が証明する」
「――でしょうね」
小さく、本当に小さく、弥生が呟いた。
もしここに由綺や理奈を殺した人間がいるのなら、英二が黙っていないはずだ。
けれど……自分はもう、引けないのだ。
「――ですが、私にはあなたのいう『他のやり方』が、思いつきません」
「……考えなよ、あなた頭いいじゃない」
「私は……明晰ではありません。 こんな方法しか、思い浮かばないのですから」
「だから殺すわけ? 関係ない人間も……俺も……青年も」
『青年』。この名前がでたとき初めて、弥生は表情を僅かに歪ませた。
だがそれは、話、交渉の破綻を意味していた。
「――お話は以上です。 さようなら」
弥生は再び無表情な仮面を纏い、トリガーに手をかけた。
パンッ!
乾いた音が、夜空に響いた。
367 :
二度の銃声 ◆/EyftfKRBU :2006/10/24(火) 02:31:29 ID:9TJiAIoN0
*
突如響いた銃声に、消防署内の面々はハッと顔を上げた。
いち早く飛び出したのは芽衣だった。
「おいちょっと待てって、危ないだろーが!」
祐一もショットガンを手に彼女を追う。
*
――硝煙が、ゆらゆらと夜空に舞い上がる。火薬の臭いがあたりに広がる。
篠塚弥生は、銃を構えたそのままに、立ち竦んでいた。
そして……英二も同様に。
しかし一つだけ先刻とは異なること。
それは……英二の手に支給武器の拳銃――ベレッタM92――が握られていること。
銃弾を放ったのは、英二の方だった。
レミントンは重量4s。女性が構える続けるには重すぎた。その為、初動が遅れたのだった。
だが一方の英二が放った銃弾も、弥生を貫くことはなかった。
弾丸は弥生から大きく逸れ、闇へと吸い込まれていった。
しかし『外れた』わけではない。『外した』のだ。
「――どういうおつもりで?」
「失せろ」
M92を構えながら、英二が唸るように口を開いた。
メガネの奥には、明らかな怒気が見て取れた。
だが同時に、知り合いへの思慕も。
「君を殺したくはない……だが、彼女らを殺させることも出来ない」
「――」
「最終通告だ……失せろ」
もう一度。
英二はトリガーに手を掛け、重々しく呟く。
「嫌だと申しましたら?」
「……撃つよ。迷うことなく」
「…………わかりました」
弥生は小さく頷いた。
その刹那。
パンッ!
二度目の銃声が、夜空に響いた。
じこかいひ
*
ようやく外に出た二人が見たもの。
それは、仰向けに倒れた篠塚弥生と銃を構えた英二、二人の姿だった。
芽衣は時間が止まったかのような錯覚を受けた。
(どうして……どうして……)
「どうして……?」
震える芽衣の言葉。
「…………」
それに答える術を、英二は持ち合わせていなかった――。
ただ一言、
「……ごめん」
懺悔だけが、口をついた。
緒方英二
【持ち物:ベレッタM92(予備の弾丸や支給品一式は消防署内)】
【状態:疲労はあるものの外傷等はなし。弥生を撃つ】
春原芽衣
【持ち物:なし(持ち物は全て消防署内に)】
【状態:疲労はあるものの外傷等はなし/呆然】
相沢祐一
【持ち物:ショットガン】
【状態:体のあちこちに痛み】
篠塚弥生
【持ち物:レミントン(M700)装弾数(5/5)・予備弾丸(15/15)・ワルサーP5(8/8)・支給品一式】
【状態:重症(急所は外れている)】
※杏、ボタン、観鈴、環は消防署内に
※消防署内に救命道具ある……はず
補足
関連227、312あたり
B-10で
やべー久しぶりだから色々不備が。
【時間:7:30】
【場所:c−05】
で
……他は大丈夫……かな?(かなり不安)
373 :
永遠にブルー:2006/10/24(火) 03:57:05 ID:n2pUziSM0
「はぁっ……はぁっ……」
「くぅ……っ!」
夜闇に沈む森の中。
人目を避けるようにして濃厚な愛撫を交し合う二つの影があった。
弾む吐息が、行為の激しさを物語っている。
「はぁっ……ところで、何で僕たち縁もゆかりもないはずなのに
こんなんなっちゃってるんですかねえっ!?」
「いや、俺に聞かれても……くっ!」
全裸で絡み合っているのは、春原陽平と住井護だった。
主に下半身が色々と筆舌に尽くしがたいことになっている。
「……あえて言うなら……愛?」
「僕ら会って20秒くらいで服脱いでましたよねえっ!?」
「そんな気もするな……」
二人の出逢い……それはかれこれ数時間前に遡る。
「………浩之くん、陽平くん、わたし、聖闘士じゃないよ……」
立ち止まった少女、川名みさきが困ったような顔で呟く。
「ま、そりゃそうだろ……」
「うーん、でも誰かに尾けられてるってのは気分良くないわね」
「いっそこっちからアプローチしてみるってのはどうかな」
「そ、それはいくらなんでも危ないんじゃないかな?」
「るー」
374 :
永遠にブルー:2006/10/24(火) 03:58:02 ID:n2pUziSM0
しかしみさきは、口々に意見を言い合う同行者たちの方を向くと、
真剣な顔で口を開いた。
「聖闘士は君たちだよ、浩之くん、雪ちゃん、るーこちゃん……」
「……は?」
目を点にする一行。
みさきは気にした風もなく続ける。
「わたし、気づいちゃったんだよ……実はわたし、女神アテナの
生まれ変わりだったんだ」
「何ィ!?」
衝撃の告白に驚愕の色を隠せない浩之たち。
しかし、そう言われてみればそんな気もしてくる。
「後光が射してる……ような気がするな」
「昔っから、みさきは只者じゃないような気はしてたけど……」
「何だかわからないがすごいんだな、うーさきは」
「ちょ、ちょっと皆さん? 何で普通に受け止めてるの!?」
周りの人間のテンションについていけない春原。
そんな春原を置き去りにするように、会話は続く。
「そうか……俺って聖闘士だったんだな……」
「実は昔、ちょっと憧れてたんだ」
「それで聖闘士って何だ、うーへい」
「あー……えっと、聖闘士っていうのはね」
少年漫画の説明を始める春原。
当然のように彼を置いて話は進む。
375 :
永遠にブルー:2006/10/24(火) 04:01:57 ID:n2pUziSM0
「そういえば、アテナって○織さんじゃねえの?」
「それは先代だよ」
「え、じゃ沙○さんどうなっちゃったんだよ」
「それは秘密だよ」
「じゃ、じゃあ聖○とかは?」
「それも秘密だけど、みんなすごいことになっちゃってるね」
「き、気になるわね……」
「そうか、聖闘士というのはすごいんだな……るーも聖闘士なのか、うーさき」
「そうだよ、よろしくね」
「いやその、僕には何がなにやら……」
無視される春原。
「私、射手座なのよね……伝説の黄金聖闘士なんて、やっぱり私には
最強が似合うってことかしら?」
「雪ちゃんは顔がこわいから牡牛座」
「あんた私の顔見たことあったっけ!?」
「ほらこわい、やっぱり牡牛座だね」
「あんたねえっ!?」
「嫌なら蟹座」
「牡牛座でいいわよ、牡牛座でっ!!」
どうも蟹座は嫌らしい。
「お、おい、それで俺は何の聖闘士なんだ!?」
ちょっとわくわくしている浩之。
彼とていまだに少年の心を忘れてはいない。
グラビアもついていない週刊少年誌は、十年来の愛読書だった。
「浩之くんは鳳凰星座でいいよ」
「でいいよ!?」
376 :
永遠にブルー:2006/10/24(火) 04:03:32 ID:n2pUziSM0
「気に入らないかな?」
「い、いや……若干の引っかかりはあるが、オイシい役どころだしな……。
まあいいだろ、俺のことはフェニックスのヒロと呼んでくれ」
「嫌だよ、なんかかっこ悪いよ」
「お前、何気にひどいな……」
微妙に意気消沈している。
「るーはるーだぞ、うーさき」
「るーこちゃんは遠い星から来たんだよね……?」
「そうだ」
「じゃ、ペルセウス星座」
「何でペルセウス!?」
落ち込みながらも思わずツッコんでしまう浩之。
「響きが宇宙っぽいかな、って……だめかな?」
「ペルセウスは人名だぞ……」
「よく考えたら星座ってぜんぶ宇宙の星だからね。
なんでもいいかなあって」
「適当すぎるだろ……」
「るー」
「なんか気に入ってるみたいだし、別にいいけどな……」
るーこは手を空高く掲げている。
その横で、目を輝かせている少年がいた。
「ぼ、僕は……!?」
満を持して、といった様子で尋ねる春原。
結局状況に順応することにしたらしい。
が。
回避
378 :
永遠にブルー:2006/10/24(火) 04:06:12 ID:n2pUziSM0
「そんなの知らないよ」
「へ……?」
みさきのすげない一言に、春原は呆然とするほかなかった。
「陽平君は聖闘士じゃないからね。天敗星とかじゃない?」
「何で僕だけ冥闘士なんですかねぇっ!?」
無駄に詳しかった。
「そんなわけで、この世界に危機が迫っているんだよ……」
「そりゃ、アテナの聖闘士としては見過ごせない事態だな……」
「なんかやる気出てきたわ……牡牛座だけど、この際やってやるわよ!」
「るー」
春原のことなど忘れたかのように話に花を咲かせる一行。
見向きもせずに歩き出してしまう。
「ちょ、ちょっと、僕はどうなっちゃうんですかねえっ!?」
「知らねーよ、お前もいっぱしの冥闘士ならハーデスにでも助けてもらえ」
「いや僕そんなんじゃないですからっ!?」
無視。
「ほ、ほんとに行っちゃったよ……これから僕はどうすれば……」
とぼとぼと歩き出す春原。
379 :
永遠にブルー:2006/10/24(火) 04:18:41 ID:n2pUziSM0
どれほど歩いただろうか。
気づけばとっぷりと日が暮れていた。
辺りは鬱蒼とした木々に覆われている。
「ここは……どこなんだろう……」
力なく呟く春原。
孤独感がその全身を責め苛んでいた。
そしてそれが、彼の命運を分けることになる。
「な……!」
春原が行く手に立ち塞がる影の存在に気づいた時には、もう全てが遅すぎた。
その人物はニヤリと笑うと、手にした銃をゆっくりと春原に向けた―――。
「それこそが誰あろう、この住井護だったというわけだな……うっ」
「いやだから、どうして今の回想からこういうことになっちゃってるんですかねえっ!?
……ひぃぃっ!」
住井の責めに喘ぐ春原。
と、そんな二人を熱く見つめる視線があった。
二人の愛し合う、そのすぐ近くの茂みの陰。
(うわ……あんな風にするんだ……すご……)
観月マナである。
その手に持った厚い本が、ぼんやりと青い光を放っている。
心なしか、その光はマナが初めて手にした時よりも強くなっているようだった。
380 :
永遠にブルー:2006/10/24(火) 04:19:44 ID:n2pUziSM0
(この図鑑……すごい)
先刻のことである。
あてどもなく森を歩いていたマナは、向かい合う二人の影を見た。
慌てて茂みへと隠れたマナだったが、一方の男に向けられた銃口を見た瞬間、
手にしたBL図鑑から不思議な声が響いたかと思うと、突如として青い光が
二人の男に向けて飛び出したのだった。
『―――カップリング成立』
声は、そう聞こえた。
青い光に包まれた男たちは、おもむろに服を脱ぎだすと、火照った身体を
重ね合うようにして森の褥へと横たわったのだった。
(あれが……BL図鑑の力……)
認識を新たにするマナ。
だが思考に耽溺するその間も、視線は二人の男から決して離れはしなかった。
【時間:午後11時すぎ】
【場所:F−7】
春原陽平
【所持品:スタンガン、他支給品一式(ただし、ここまで来る間に水を少し消費)】
【状態:生き地獄】
住井護
【所持品:コルトパイソン】
【状態:アッー】
観月マナ
【所持品:BL図鑑・ワルサー P38・支給品一式】
【状態:腐女子Lv1】
381 :
永遠にブルー:2006/10/24(火) 04:23:30 ID:n2pUziSM0
「……ところで、聖衣はどうしたんだよ?」
「さあ、どっかに封印されてるんじゃないかな?」
「あんた、ホントに女神……?」
「新人だからね」
「頑張れ、うーさき」
【時間:16時ごろ】
【場所:G−3】
川名みさき
【所持品:支給品一式】
【状態:女神に覚醒】
藤田浩之
【所持品:折りたたみ式自転車、他支給品一式(ただし、ここまで来る間に水を少し消費)】
【状態:鳳凰星座の青銅聖闘士】
深山雪見
【所持品:支給品一式】
【状態:牡牛座の黄金聖闘士】
ルーシー・マリア・ミソラ(るーこ・きれいなそら)
【所持品:支給品一式】
【状態:ペルセウス星座のるー】
※SIG P232(残り7発)、IMI マイクロUZI(残り30発)と予備カートリッジ(30発入り×5)、
スタングレネード(×3)はG−3付近に放棄。聖闘士は武器を使わない。
→002 →084 →317 ルートD−2
住井護と春原陽平の愛の交歓は終わる気配を見せずに続いている。
何だかんだでもう強制力は解かれているはずなのだが、この二人は
そういう星の下に生まれついたのかもしれない。
「うぅん……なんだか運命のいたずらを感じるぞ……ぬふぅ」
「ひぃぃっ! そんな不思議な運命の巡り合わせは心から否定したいッ!(;゚皿゚)」
二人が愛の営みを行っている、そのすぐ近くの茂みに潜む少女がいた。
観月マナである。
マナは目を皿のようにして、二人の行為を間近で見つめ続けている。
時折メモを取るような仕草をしているあたり、研究熱心である。
「くっ……いくぞ……っ!」
「はぁ……っ、ひぃぃーーー……!!」
最後の一発が終わる。
同時に絶頂へと達した二人は、そのまま気を失ってしまったようだった。
かれこれ数時間もまぐわい続けていたのだから、いかに青い性欲の全盛期といえど
体力の限界などとうに越しているに違いなかった。
と、マナの手にした図鑑がひときわ強い光を帯びる。
浮き出てきた文字は、
『住井護(ONE)×春原陽平(CLANNAD) --- クラスB』
同時に、ちゃららちゃ、ちゃっちゃっちゃーーーー! と、奇妙な音が図鑑から響いた。
みづきまな はレベルがあがった!
【時間:午後11時すぎ】
【場所:F−7】
春原陽平
【所持品:スタンガン、他支給品一式(ただし、ここまで来る間に水を少し消費)】
【状態:気絶(ひぃぃ)】
住井護
【所持品:コルトパイソン】
【状態:気絶(アッー)】
観月マナ
【所持品:BL図鑑・ワルサー P38・支給品一式】
【状態:腐女子Lv2】
→257 or「永遠にブルー」 ルートD共通
384 :
心の嵐:2006/10/24(火) 10:27:40 ID:SNsVoXc60
梓は柳川を睨みながら、一歩一歩歩み寄ってくる。
「や・な・が・わぁ………」
その声を聞いた柳川に戦慄が走る。
とてもとても重い、憎しみが篭った声。
梓は凍り付いた顔で柳川を直視している。今の梓の心は深い闇に捉われていた。
柳川の後ろには、震える少女が二人。
柳川は武器を選ぼうとしていた。
柳川はM4カービンを手にしようとし―――楓の顔が脳裏に浮かび、銃ではなく出刃包丁を選んだ。
それを逆向き、いわゆる峰打ちの状態に持ち替える。
「一人で十分だ……下がってろ」
そう言った柳川だったが、正確にはそれは少し違っていた。
この武器で二人を守りながらでは、目の前の異形には勝つ自信が無かった。
包丁を構える柳川を見て、梓も警棒を構える。怪力によって振るわれる警棒はまさに凶器。
まともに直撃すれば良くて骨折、当たり所によっては一撃で命を奪われる可能性すらある。
「かつて俺を止めようとしていた貴様がゲームに乗り、
殺人者になった貴様を俺が止めようとするとは……皮肉な事だな」
フン、とまるでリサのように肩をすくめながら口にする。
しかし、予想外の言葉が梓の口から飛び出した。
「何を勘違いしてるんだい?私は楓の仇を取りにだけだ」
彼女は憎悪の感情のみを含んだ声で、そう口にしていた。
「は―――――?」
呆気にとられている柳川。俺が楓を殺した……だと?
「俺は楓を殺してなど…」
「オマエガァァァァーッッ!!!」
柳川が喋り終わるのを待たずして、梓は一気に間合いを詰め殴りかかってくる―――!
385 :
心の嵐:2006/10/24(火) 10:28:42 ID:SNsVoXc60
ガキィッッ!!!
風を切り、お互いの武器が交差する。
「お前が!!お前が楓を!私の大事な妹を殺したんだっ!!」
間断無く、休む事なく繰り出される梓の猛攻。
周囲に轟音が鳴り響く。風を切る音だけでも相当のものだ。
「柏木の娘よ、それは勘違いというものだ、あれは俺がやったんじゃない!」
柳川はそれを凌ぎながらも、説得を試みている。
「嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だぁ!!アンタが今までやってきた事、忘れたとでも思ってるのか!」
だが梓の攻撃は止まらない。梓はただがむしゃらに己の武器を振るっている。
それはさながら嵐のようであった。激情の、憎しみの嵐のようだった。
彼女の心の嵐は収まらない。
「止めろっ!今の俺は鬼に支配などされていないっ!!」
「信じるもんか……、信じられるもんかぁっ!!」
今の彼女は柳川への憎しみと殺意以外、何も考えていなかった。
―――否、考えられなかった。
このゲームの異常な緊張感、妹の死、冷徹な狩猟者と化した姉の姿。
思考を全て憎しみに委ねなければ、私は狂ってしまう!
柳川がどう説得しようとも、梓は止まりそうになかった。
今の梓は憎しみの対象である柳川本人の言葉は一切信じない。
「…………っく……」
柳川が説得を諦めかけたその時。
「待ってください!!」
梓を止めたのは柳川ではない第3者――倉田佐祐理の声だった。
「!?」
「貴女は……、貴女は勘違いしています…………」
目の前の存在に恐怖しながらも、決して視線は外さなかった。
386 :
心の嵐:2006/10/24(火) 10:30:38 ID:SNsVoXc60
「アンタは誰だ………?」
「私は倉田佐祐理、柳川さんに救われた者です………」
佐祐理はそう言ってから、震えそうになる足を強引に押さえ込んで、梓の方へと歩み寄っていった。
佐祐理の方へと向き直り、話に聞き入る梓。
「柳川さんは自分の体が、そして心がどれだけ傷ついても必死にこのゲームを止めようとしていました。」
「………………………」
佐祐理は表情を歪めながらも、言葉を続ける。
「本当は人を傷付けたくないのに、ゲームに乗った人を止める為に必死に戦っていました。」
そして最後に、
「だから柳川さんは絶対に、こんなゲームには乗りません。佐祐理は、そう信じています。
―――佐祐理は、柳川さんに救われましたから」
今までで一番強い声で、そして最後には笑顔で、はっきりとそう言い切っていた。
佐祐理はあははーっ、と照れ笑いしている。
驚愕で梓の目が見開いていた。
「それは本当なのか……?」
「ああ、俺は楓と一緒にいたが、殺していないし、ゲームに乗ってなどいない。
俺の目的はこのゲームに乗った連中と主催者を殺す事だけだ」
「…………………………………」
柳川の目は真剣だった。以前の人を見下した目とは、明らかに違っていた。
これは私のよく知っている人―――千鶴姉と同じ、奥底に深い悲しみを宿した目だった。
私だって馬鹿じゃない、ここまでされたら分かる。コイツ達は嘘は言って無い。
柳川は楓を殺してなどいなかったのだ。
でも―――
「分かったよ………」
梓は俯きながら呟くようにそう口にしていた。
これで勘違いから始まったこの争いは終わるはずだ、この場にいる梓以外の全員がそう思った。
だが―――
387 :
心の嵐:2006/10/24(火) 10:31:44 ID:SNsVoXc60
「でも、じゃあ何でお前と一緒にいた楓は死んだんだ……?」
「――――!」
梓は、再び柳川に向かって駆け出していた。
「くっ!!」
ガキィッ!!
「何でなんだよ!」
大きな動作で警棒を振り上げ、渾身の力で振り下ろす。
「お前は狩猟者だったんだろ!?」
ガキィッ!!
「お前は強いんだろっ!?」
ガキィッ!!
一撃毎に梓は叫んでいる。
聞こえるのは包丁と棍棒がぶつかる音と―――泣き叫ぶような、梓の声。
「それがなんでっ!!」
ガキィッ!!
「なんで楓を守りきれなかったんだよぉぉぉぉぉ!!!」
ガキィィィッッ!!
彼女の頬には涙が流れていた。
「…………………」
柳川は答えられない。
梓は大きく振りかぶり、再び警棒を振るった。
それは迫力のある一撃だったが、いかんせんモーションが大きすぎる。
柳川はその一撃をバックステップで空振りさせ、
勢い余って前のめりになってしまった梓の手を狙って、包丁の背の部分で殴りつけていた。
ギィィン!!
388 :
心の嵐:2006/10/24(火) 10:33:07 ID:SNsVoXc60
「うあっ!」
梓の警棒が弾き飛ばされる。
「くそっ……」
――――勝てない。
梓は柳川に挑む前から知っていた。自分と柳川の力量差を。
自分では柳川に勝てない事を。柳川に一人で挑めば命は無いであろう事を。
「くそっ……、ちくしょぉぉぉぉぉ!!」
それでも、それでも彼女は引き下がれなかった。
諦められなかった。何かに気持ちをぶつけずにはいられなかったのだ。
梓は素手になろうとも、捨て身の覚悟で柳川に殴りかかっていた。
次の瞬間には、自分はやられているだろうという確信を抱きながらも。
ドゴォッ!!!
「――――え?」
「カ……ハ……」
―――しかし、結果は逆だった。
先程まであれほど見事に梓の猛攻を凌いでいた柳川の脇腹に、
あっさりと梓の拳がめり込んでいた。
柳川は包丁を取り落とし、腹を押さえながらその場に崩れんだ。
「お前……、なんで………?」
梓は動けない。状況が理解出来ない。
なんでこの男はわざと、攻撃をもらったのだ?
「あれ、は」
柳川はうずくまりながらも、顔を上げた。
「…………」
「あれは―――俺のせい、だ………すま、ない…」
苦痛に顔を歪めながらも、そう口にしていた。
回避
390 :
心の嵐:2006/10/24(火) 10:43:23 ID:sifNyrtY0
「柳川さんっ!!」
「大丈夫ですか!?」
佐祐理と、もう一人の少女、美坂栞が駆け寄ってくる。
「もう……、もう止めてくださいっ!!」
佐祐理は梓と柳川の間に割って入り、吹き矢を手に立ちはだかっていた。
その手は震えていた。いや、手だけではなく体全体が震えていた。
「お願いします……、もうこれ以上この人を傷付けないでください…」
それでも、やはり視線だけは真っ直ぐに、梓を見据えていた。
(この子……こんなに震えてるのに……)
佐祐理のその姿を見ていたら、梓はもう何も出来なくなってしまった。
吹き矢を脅威と感じたからではない。吹き矢など奇襲以外ではさしたる脅威にはならないだろう。
ただ、今までの佐祐理の行動を見ていて、どれだけ柳川が慕われているかがもう分かってしまったから。
自分の行為がただの八つ当たりに過ぎないと認めざるを得なくなってしまったから。
「……ちくしょうっ!!」
梓はどうしたら良いか分からなくなり、その場から逃げ出した。
梓は叫んでいた。
森の中を駆けながら、ただひたすらに叫んでいた。
それはこのゲームにおいては非常に危険な行為だったが、
ぶつけるところの無くなった思いを少しでも発散する為に、梓はひたすら叫ぶしかなかった。
391 :
心の嵐:2006/10/24(火) 10:44:46 ID:sifNyrtY0
【時間:1日目午後11時ごろ】
【場所:G−9、海の家】
柏木梓
【持ち物:特殊警棒、支給品一式】
【状態:咆哮。これからの行動目的は次の書き手さん任せ】
倉田佐祐理
【所持品:自分と楓の支給品一式、 吹き矢セット(青×5:麻酔薬、赤×3:効能不明、黄×3:効能不明)】
【状態:心配、ゲームの破壊が目的。】
柳川祐也
【所持品@:出刃包丁、ハンガー、鉄芯入りウッドトンファー、M4カービン(残弾30、予備マガジン×4)】
【所持品A、自分の支給品一式】
【状態:左肩の治療は完了したが、直りきってはいない。梓の一撃で脇腹の骨にヒビが入っている】
美坂栞
【所持品:リサと自分の支給品一式、二連式デリンジャー(残弾2発)】
【状態:健康、香里の捜索が第一目的】
→関連265・285、ルートB-9、B-10、B-11、B-12
>>389 回避多謝
何故かそれでも規制引っ掛かり続けたので、
繋ぎ直して投稿しました
「ない、ない、ない…」
部屋の中をひっくり返し、そこら中をごそごそとかき回して何かを探している様子の一人の少女。
一見無表情で慌てている様には見えないが、その身体の動きから察するにそう見えないだけで大事なものだろう。
真紅に染まった髪が目の前を覆い隠し、やぼったそうにそれをかき上げ汗を拭く。
「エビル、まだ見つからないの?」
紫色の長髪をたなびかせた女性が静かにエビルと呼ばれた少女に近づくと、懸念そうに尋ねる。
「ルミラ様…うん、どこ行ったんだろう」
「かれこれ半日近く探してて、それでも無いならどこかに忘れて来たのでは?」
「かも…」
動かす手を止め、シュンと項垂れる。
「ったく、ドジだな」
言いながら、今度は青いショートヘアの少女が毒づきながら現れた。
「お前後寿命どれくらいなんだよ?」
「ここ数十年使ってなかったからわからないけど…そんなに長くないと思う」
「まったく、自分の命に関ることぐらいちゃんと覚えとけよ」
「まぁまぁイビル」
イラついたように攻めたてるイビルだったが、言葉に棘は無く、彼女なりに心配してるようだった。
それをわかっているのだろう、たしなめながらも半笑いのままルミラが言った。
「心当たりは?」
「わからない…持ち出した事だって最近無かったと思う」
「困ったわね」
三者三様に首をかしげ、そして大きく溜め息をついた。
「あぁそうだ、あの子に頼んでみたらどう?」
ポンっと手を叩きながらルミラはからかう様に言う。
「あの子?」
「ほら、バイト先の…なんて言ったっけ、随分ラブコールされてるみたいじゃない」
どこか笑いを噛み殺しているその顔に、表情は変えなかったものの少し苛立ちを覚えながらぶっきらぼうに返す。
「別に…芳晴はそんなんじゃない」
いつもと同じ禅問答。
その決まった答えに、眼前の二人はニヤリと口元を緩め
「ニブイって…」
「罪だな…」
と呆れ返るように言うのだった。
「ノート?」
「…あぁ」
「大事なそれを無くしてしまったから探すのを手伝って欲しいってことですか?」
「そうだ」
両手を胸の前に合わせ、何か念じるように目を閉じ、そして項垂れながらエビルは言う。
「普段ならどこに在っても感知できるんだが、今はなにかに邪魔されてる感覚で一向に特定できないんだ」
「なるほど…」
「それで芳晴の都合さえ良ければこれから手伝ってもらいたいと思ったんだ」
「悪いわけが無いじゃないですか! 江美さんのためなら例え火の中水の中! 親の葬式の最中だって駆けつけます!」
かねてから休日はエビルと過ごしたいと願っていた芳晴に取って、まさに降って沸いたような嬉しい提案だった。
だが、後ろでずっとニヤニヤ笑いながら自分を見ている二人が気になってしょうがない。
「えーっと、…もしかして後ろのお二人もご一緒で?」
「当然だろ」
「当然でしょ」
芳晴の言葉を最後まで言わせず、ルミラとイビルの声が見事にハモる。
ガクッと肩を落としたものの、ここでへこんでいてもしょうがない、江美さんといられるだけでも良しとしようと思い直す。
「で、あのおチビちゃんはどこ?」
「へ?」
ルミラの問いに虚を付かれ、思いもよらぬ間の抜けた声を上げる芳晴。
「あなたに探し物ってできるの?」
「あー、えーと…もしかして俺の仕事ってコリンに頼むってことだったり…します?」
せっかく五月蝿いあいつを誤魔化して家出てきたって言うのに…。
三人が同時にうなずいたのを見て、肩どころが全身の力が抜け、芳晴はがっくり地面にひざまづく。
家に帰って事のあらましを説明するも、コリンの反応は当然のことながら淡白なものだった。
「"物"探しは管轄外だなぁ…」
ポリポリとポテチを頬張りながらめんどくさそうにコリンは答える。
「そのノートにエビルさんの魔力が篭ってるならある程度わかるけど、ジャミングかかってて自分でもわからないんでしょ?」
質問にコクリと頷いたエビルに対して、両手を挙げてお手上げポーズ。
「んじゃむりむーりー、他当たってちょー」
ゴロンと背を向けるとポテチの袋に再び手を伸ばした。
苛立ちを押さえながら芳晴はその袋を取り上げる。
「おーまーえーなー」
「だって別にやる理由とか無いじゃん! いっつもないがしろにしてる癖に都合良い時だけ、はいお願いします、じゃないよっ」
相当ご冠の様子で取り付く島も無いコリンに頭を抱え込む芳晴。
「私で良かったら手伝いましょうか?」
どこから現れたのか、いつの間にか芳晴の隣にユンナが立っていた。
「あーっ! 何いい子ぶってんの?」
「しょうがないでしょ! 私にだって引け目はあるんだから…」
煽り口調のコリンの言葉に叫び返すも、後半はゴニョゴニョと声は小さくなっていた。
「これから芳晴がなんでもするからって土下座して頼み込む予定だったのに、ぶち壊しジャン!」
「知らないわよそんなの!」
そして始まる睨み合い罵倒しあう二人の醜い争い。
こうなってしまうともう止まらない。
いつもながらの喧嘩に溜め息しか出てこない。
「んー、ゴホンッ」
唐突に起きた咳払いに、二人の抗争がピタリと時が止まったように収まる。
「で、どっちが?」
ギラリと歯を光らせながら笑みを浮かべているが、まったく不釣合いなドスの聞いた声でルミラが尋ねていた。
すでに頼んでいるじゃなくて脅しているよな…。
正直なところ二度と敵には回したくない。
芳晴とまったく同じことを考えたであろう二人が尻尾を丸めたのはその数秒後のことだった。
――同時刻、とある商店街のとある一角。
一般人の目には見ることさえも出来ない店が、そこには存在していた。
普段はほとんど訪れることの無い客を待ちながら、カウンターに座っている店主ことショップ屋ねーちゃん。
だが今日はいつもとまったく違っていた。
その手に持つ一枚の紙の内容を何度も見ては、溜め息を繰り返している。
始まりは、二週間ほど前に舞い降りた上物の依頼。
100人分をゆうに超える量の食料や雑貨、非合法な武器のたぐいから用途のわからない謎アイテムまで。
確かに裏の世界に関る人間なら、自分の店は人間の目には絶対映らないのだから絶好の隠れ蓑だろう。
特に疑問も持たず言われたとおりに準備をした。
そして今日がその代金の受取日だった…はずなのだが、送られてきたのは大きなボストンバック。
中には一枚の紙切れと怪しく黒光る数個の首輪。
なんだなんだと憤慨しながらその手紙の内容を見て愕然とする。
『今回は依頼した品の調達、真にありがとうございました。
本来であればこのバックの中には相応の代金を納めさせていただく予定でしたが
こちらの不手際で、此度我等が主催するゲームにあなた方もエントリーされていた事が発覚したのです。
かと言って極わずかでも事情を知ってしまったあなたを参加させるのは、他の参加者の手前差別化ともなり芳しくありません。
そこで、ゲームから除外する代わりに、お連れできなかった下記の方々を出来るだけ多くこちらに連れて来て欲しいのです。
本来であれば我々の手で行うべき点ですが、すでにゲームは始まっていてしまって手が回らない現状なのです。
手段は問いませんが、この件に関しての説明は一切他言しないようにご注意願います。
バックに同梱した首輪は各々に必ず着用させ、前回依頼したものと同じようなものをそれぞれに持たせてください。
これが終わり次第、前回とあわせた報酬をお勉強させていただいた上でお支払いさせていただきたく思います。
至らない面をお見せしまして申し訳ありません、よろしくお願いいたします』
そしてその内容に続く名前は以下の名前だった。
・城戸芳晴
・コリン
・ルミラ
・エビル
・イビル
・フランソワーズ
・メイフィア
・アレイ
・たま
・ユンナ
時間【沖ノ島島外】
備考【関連17、死神のノートがあるルート】
「…うーん、やっぱだめだね」
「…同じく」
言いながらコリンとユンナが目を開け、身体を覆う光が収束する。
「ちゃんとやってんのかよ?」
「やってるよ!」
イビルの顔はやっぱりなと言ったようにあきれ返っており、頬を膨らましながら必死に反論するコリン。
そしてその答えを聞いたエビルの表情は曇っていた。
「すまなかったな芳晴、無駄な時間をとらせた」
「ちょっ、無駄って言い方はないん…」
エビルに向かって言いかけながらも、隣のルミラの形相に開けた口がパクパクと動くだけのコリン。
「無駄なんてそんな、力になれなくて申し訳な…」
「本当だよ」
「本当ね」
またしても芳晴の言葉は二人の無慈悲な言葉によって遮られる。…グウの音も出ない。
「ちょっとちょっと、待ちなさいよ!」
当てが外れたわねと苦笑しながら、エビルの肩を抱いて部屋を出ようとするルミラを
コリンが小さな身体をバタつかせながら必死に呼び止める。
「まだまだこれからなんだから!」
「へーぇ」
言い切ったコリンの前にゆっくりと足を進ませるルミラ。
白く長い右腕をコリンの顎に伸ばしゆっくりなぞると、妖艶な笑みを浮かべる。
「後は何が出来るのかしら? お・ち・び・ちゃ・ん?」
流れるような淫靡なしぐさに、情け無いと思いながら鳥肌が抑えられず芳晴は思わず腰を抑える。
コリンも同性ながら同じ感情を抱いたのだろう。
だが負けん気のほうが勝ったようで、顎をくいっと振りルミラの手を跳ね除けながら言う。
「力がダメならここよ、ここ」
ふんぞり返りながら自身の頭を指差す。鼻息は荒く得意満々といった顔だ。
「何か詰まってたっけ?」
ズデン! と思いっきり背中からた俺込むコリン。
お約束というかなんというか、律儀な奴だ…狙って無いだろうけど。
「…ルミラさんルミラさん」
芳晴がルミラにそっと耳打ちをする。
「ん?」
「あいつ単純なんだからあんまり煽らないでください…」
「だっておもしろいじゃない?」
「後で泣くのは俺なんですから…」
「…聞こえてるんですけど?」
さすがだ。
自分の悪口は絶対聞き逃さない地獄耳。
芳晴は全てを諦めた。
とにかく自分に出来ることはたった一つしか無いと悟る。
考えた瞬間に身体はすでに動き、そして地面に両手をついてはいつくばっていた。
「頼む! なんでもするからっ!」
一同の時間がほんの一瞬だけ止まる。
「ホントに土下座したよ…」
ポツリとイビルが呟いた言葉をかわきりに巻き起こる爆笑の渦。
耐えろ、耐えるんだ俺。今俺が耐えれば全てが丸く収まる。
あぁ、江美さんまでそんな笑って、そんな笑顔出来る人だったんだ…ってちがう!
いやいかん、ここで顔を上げたら何も変わらないじゃないか。
俺は石だ、何も聞こえない、何もわからない、今起こってることは全て夢だ。
だが、じっと耐えるその姿に漢を感じるものは誰もおらず笑い声だけがこだましていた。
ひとしきり笑って満足したコリンは、またもふんぞり返りながら自論を語り始めていた。
「ま、困った時は考える。知恵が人類を進化させてきたんだから」
必死に目配せする芳晴に同情の視線を送りながらも、今度はルミラも何も言わず言葉の続きを待つ。
「人類の知恵って言えば、道具を使えると言うこと。はい、それじゃ道具と言えば? 3、2、1、はい」
ビシッと一直線に芳晴を指差す。
「へ?」
「はいブブー」
唯我独尊すぎて頭がついていけない。
「いつものあの店に決まってるじゃない。ほんっとばかね…。
とりあえずは行動ってことで行ってみましょ、なんか良い方法あるかもだし」
結局人任せかよ…。
喉元まで湧き上がってくる言葉を必死に飲み込んで耐える芳晴の姿はまさに天晴れと表現するしかなかった。
「――と言う訳なんです」
死神のノートを探したいと告げられたショップ屋ねーちゃんは胸を弾ませていた。
記憶が正しかったら、裏ルートで入手したそれらしきものを依頼の品に混ぜて送った記憶はある。
ノートから感じていた魔力と目の前の女性から発せられる魔力がまったく一緒なのだからほぼ間違いないだろうとも考える。
しかも自分達から探しに行きたいとまで言っている。
まさに鴨がネギをしょってきた状態の展開に、どうやって集めようか必死に悩んでいたわけだから文句のあるわけも無い。
多少人数が少ないが、出来るだけと手紙にはあったし六人もいれば十分であろう。
喜びを表面に出さないように、冷静に振舞う。
「場所の特定は出来ないけれど、それ自体の存在は感じることは出来る?」
「…ああ、おぼろげだが」
ショップ屋ねーちゃんの言葉にエビルは一度目を閉じ集中すると、頷いて返す。
「それなら良いものがあるよ」
そう言いながら取り出したのは、一枚の純白のシート。中央には青白く光りながら魔法陣が描かれていた。
「特定の魔力に反応して、物体を移動させる不思議アイテム、応用すれば探したいものの魔力のところへ飛んでいける優れもの」
「へぇ…」
ご都合主義な気もするが、この人はドラ○もんだと思えばたいした問題では無いだろう。芳晴はそう自分を納得させる。
「特定できて無いから周辺になるとは思うけど、大丈夫でしょ。あとこれ、首につけて」
手渡されたものは、これまた今度は魔法とは縁がなさそうな機械めかした首輪。
「魔方陣と同調させやすくするためのアイテムだから絶対外さないで、勿論移動してからも」
カチャカチャと無機質な音を立てながら首輪をはめる一行を尻目に、流れるような作業で奥からバックを取り出すと各々に手渡す。
「で、これは向こうに飛んでから必要そうなものを入れておいたんだけど。あ、これはサービスで」
妙に手際がいいのは気のせいだろうか?と不安を覚える芳晴。
実はこの魔方陣、初施行で実験台にされるんじゃないだろうな。
落ち着いて考える間も与えないまま着々と準備を進めるショップ屋ねーちゃんは
全員の手を握らせ、テキパキと指示を出す。
エビルは目を瞑って言われたとおりに意識を集中しだした。
するとどうか。魔法人の放つ光が天を指し、全員の身体が包まれボンヤリと青白く輝きだした。
それに合わせて目を瞑り精神を集中させるように、意識を落ち着かせる。
頭の中が真っ白になっていく感覚を覚え、全身から力が抜けていく。
突如脳天から全身が引っ張られ宙に浮くような錯覚にとらわれ、全身に強い衝撃と同時に芳晴の意識は闇へと落ちていった。
「ふぅ…」
転送は成功したようで、眼前から六人の姿は忽然と消えていた。
後は向こうに本当についているかの確認。
受話器を取ると、手紙に書かれていた番号をゆっくりと押す。
Prrrrr...Prrrrr...
短いコール音の後、男とも女とも取れない甲高い声で『もしもし』とだけ発せられた。
裏の世界の人間を相手に声がどうこうとかはさいたる問題ではなく、営業用口調で返した。
「もしもし、ご依頼の件のお伺いしたいのですが、頼まれた人間は送れたと思うのですが」
『あぁそのようだね。お礼を言うよ、ありがとう』
「で、報酬のほうはいかほどで?」
『…気が早いね』
「それだけが取り柄でして」
肩透かしなどはくらいたくも無いし、こう言う交渉は迅速に済ませて忘れるに限る。
『今すぐにお届けできると思うよ。多分生涯で二度と見れないほど綺麗な花火だ』
「花火?」
ちょうどその時、机の片隅にポツンと置かれたボストンバックが、小さくカチ…カチ…と音を立て始めた。
『ほら言ったよね? あなたはゲームから除外するって』
「え…それは一体どう言う意味……」
ドガァァァァァァァン!!
あたりはつんざくような爆音に包まれ、ショップ屋ねーちゃんの言葉は最後まで語られることは無くかき消された。
店の中はボロボロに焼け焦げ、弾け飛び、生きてるものはそこにはいなかった。
だが、誰もその店の存在がわからない現状、彼女の死を知るものもまたいなかった。
たった一人、主催者を除いては…。
―気が付くと芳晴は見知らぬ灯台の頂上に倒れていた。
全身が強く痛い。気絶でもしていたのだろうか。
辺りには誰の姿も無く、眼前に広がる月と星空と海だけが芳晴を見つめていた。
訝しげに思い、そしてある事実に気付く。
――エクソシストの力が働かない
「まぁ…良いか」
元々生活にその力を依存していなかった芳晴はさも気にして無い様子で起き上がり、とりあえずどうするか考える。
「とりあえずみんなを探すかな」
江美さんに会いたい、コリンはうるさそうだな、最初に出会うのがもしもルミラさん達だったら何を話そう。
いろいろな考えが頭の中を巡りながら、芳晴は灯台を降りていった。
城戸芳晴
【持ち物:支給武器不明、支給品一式】
【状況:エクソシストの力使用不可、他のメンバーとの合流、死神のノート探し】
コリン
【持ち物:支給武器不明、支給品一式】
【状況:天使の力使用不可、死神のノート探し】
ユンナ
【持ち物:支給武器不明、支給品一式】
【状況:天使の力使用不可、死神のノート探し】
エビル
【持ち物:支給武器不明、支給品一式】
【状況:死神の力使用不可、死神のノート探し】
ルミラ
【持ち物:支給武器不明、支給品一式】
【状況:吸血鬼の力使用不可、死神のノート探し、暇潰し探し】
イビル
【持ち物:支給武器不明、支給品一式】
【状況:悪魔の力使用不可、死神のノート探し、暇潰し探し】
ショップ屋ねーちゃん
【状況:死亡】
時間【二日目0:00頃】
備考【身体能力お任せ】
【特殊能力ほぼ制限で同上、特にルミラは治癒能力は多少あっても不死能力は無しのように、ちゃんと死ぬ設定で】
【芳晴・コリン・ユンナはノートがどのようなものかは知らず、エビル・ルミラ・イビルは知ってます】
【芳晴のスタート場所はI-10琴ヶ崎灯台、それ以外のキャラのスタート場所はお任せ】
【島へ飛んだ時間は1回放送後、到着時間は各自誤差あり。芳晴は気絶していたので上記の時間】
【前編同様17関連の死神のノートがあるルート全て】
来栖川綾香とその一行は高速移動を続けていた。
相変わらず本部との通信は回復しないままだった。
セリオがサテライト経由で入手する情報の精度も怪しいものではあったが、
それでも無いよりはよほどマシである。
藁をも掴む思いでHMX-12マルチの位置情報を検索し、得られた地点へと
急いでいる。
声が聞こえたのは、そんな時であった。
「……はて、そこを行かれるのは綾香お嬢様ではありませぬか」
その老人の声を聴いた瞬間、先行する綾香の挙動が一瞬だけ乱れたことを、
セリオは感知した。
「綾香様。お返事をなさらなくてよろしいのですか」
「……」
無言で地面を蹴り、速度を上げる綾香。
心なしか、その額に汗が浮いているように見える。
「綾香お嬢様、芹香お嬢様もご一緒ですかな。おお、セリオまで」
声が、離れたように感じられない。
既に時速にして40km/hは超過しているというのに、だ。
「綾香様、発汗と体温、心拍数の急激な上昇が検知できます。
身体的に異常があるのならば休憩を取られることをお奨めいたします」
答える代わりに、KPS−U1改に増設されたブーストを全開にする綾香。
空気の壁を切り裂き、綾香の姿が一気に加速する。
だが。
「綾香お嬢様、聞こえませぬかな」
声は、近くなったようにすら感じられる。
振り向けない綾香。
「……無視して振り切るわよ、セリオ……!」
「はい、綾香様」
あえて林道を外れ、木々の間に身を躍らせる綾香。
芹香を抱えたセリオがそれに続く。
「目がぐるぐるして気持ち悪いです……」
不平をこぼすのはセリオの腹についたイルファの首である。
時速80km/hを超す速度で夜の森に入りながら、木々の間を正確に抜けていく
綾香とセリオ。
セリオの暗視機能、レーダー波による測定と綾香の野性的な勘をNBSによって
組み合わせた、離れ業である。
「さすがにこれなら……!」
綾香が呟いた瞬間。
「―――綾香お嬢様」
すぐ目の前に、突如として人影が現れた。
綾香は速度を緩めることもせず、そのまま肩を前にして突っ込む。
乾燥重量180kgのショルダーアタックである。
影はひとたまりもなく吹き飛ばされる、かに思えた。
衝撃。
「……私でございます、綾香様」
人影は、ゆらりと前に出した右手一本で、平然と綾香の突撃を受け止めていた。
綾香の静止を見て、セリオもまたその疾走を止める。
抱えられた芹香が人影を見て、だにえる、と呟いたのが、間近にいる
イルファには聞こえた。
「だ……ダニエル……」
綾香の言葉は、それと判るほどに震えている。
果たしてそこに立っていたのは、来栖川家家令、長瀬源蔵その人であった。
「このダニエル、来栖川に仕える身として心より御身を案じておりました。
お怪我もないようで何よりでございますな、芹香お嬢様、綾香お嬢様」
言葉とは裏腹の厳しい視線。
その眼光に射竦められ、綾香は言葉もない。
黙り込む綾香をどう見たか、ダニエルは言葉を続ける。
「さて、ご遊興も充分に堪能なされましたな。
はや日も暮れておりますし、そろそろお戻りいただきますぞ」
その奇妙な言葉に、綾香は問いを返す。
「……戻る? 戻るって、どこへよ……?」
「これは異なことを仰る。芹香お嬢様、綾香お嬢様がお戻りになるのは
来栖川の家に決まっておりましょう」
「家、って……あんた、このプログラムのこと判ってんの……?
たしかに私らは特別扱いだけどさ、」
「この」
綾香の言葉を遮るように、源蔵が続ける。
「このダニエルめが、お戻りくださいと申し上げております。
……私めの言葉、お館様のそれとお考えいただいて結構」
「お、お爺様が……?」
「然様。この度の一件について、本家でお館様がお待ちです。
早々にお戻りいただくようにとの命にて、不肖ダニエルめが
まかりこしました」
背に冷や汗が流れるのを、綾香は感じる。
雲行きが非常に良くない。
「じゃ、じゃあ運営本部を通してそう言えば済む話じゃない……。
わざわざダニエルが参加者になる必要なんて、」
「来栖川の恥は来栖川で片付けよ、とのお言葉にて」
うわ本格的にヤバい、と綾香は思う。
恥、という表現を来栖川総帥である祖父が使ったのだとすれば、
これは非常にマズい状況だ。
ダニエルの言葉に従えば、本部と連絡がつかない現状でも、
本土に戻ることは難しくはないかもしれない。
しかし、このまま戻れば、待っているのは親族会議という名の
断罪裁判だ。
良くて一生、座敷牢。
悪ければ……考えたくもない。
生き延びるには、そして少なくとも現在の地位を守るためには、
何らかの成果が必要だ。
それもKPS−U1改の実戦データなどという些事ではない、
来栖川本家にとって価値をもつ成果が。
それはたとえば第零種の掃討であり、その旗印としての来栖川の名だ。
ちょっとした遊び心のつもりが随分と高くつくことになったものだ、と
内心で溜息をつきながら、綾香の思考はまとまっていく。
いずれにせよ、この場を切り抜けなければ自分に未来は無い。
回避
切り抜ける。
言葉通りの意味だ。
「ほう……その銃をどうされるおつもりかな」
己に向けられた銃口を目にしながらも、源蔵はこ揺るぎもしない。
NBSを通じてセリオもまた、源蔵を攻撃対象と認識している。
抱えていた芹香を降ろし、自身に搭載された火器を展開する。
「見た通りよ……私はまだ、帰らないわ」
「……お戯れを。我侭もいい加減になされませ」
言うや、源蔵の視線が変わった。
厳しく綾香たちを見据えていた眼光が、酷く怜悧な印象のそれへと変わったのである。
同時に、周囲の空気が源蔵を中心に渦巻きはじめる。
それを見るや、綾香が叫んだ。
「セリオ! オールバースト! 欠片も残すなっ!!」
自身もためらいなくトリガーを弾く。
無数の弾丸が、音速に等しい速度で源蔵へと放たれる。
その殺意の群れは、源蔵を肉片へと成すべく殺到し、
「哈」
一言の下、その悉くが地に落ちていた。
その非現実的な光景を前に口元を引き攣らせる綾香に、源蔵が言い放つ。
「このダニエルを、よもや飛び道具で仕留められるなどと、本気で
お考えではありますまいな……?」
「化け物め……!」
書き逃げ?
時間などの状況書かないと、続くの人が困るんだが…
悠然と立つ源蔵に、瞬きするよりも速く、綾香とセリオが飛び掛る。
乱れた襟などを直していた源蔵はそれを見やると、その鉄塊の如き拳を固める。
「樊ッ!」
綾香は戦慄していた。
四本の腕、四本の足に膝、二つの頭。
機械の力で強化された、変幻自在の同時攻撃が源蔵を襲っていた。
だが、そのすべてが源蔵に届かない。
その場に立ち尽くすように動かない源蔵の、その二つの拳が、
あらゆる打撃を受け、弾き、砕いていた。
数多の打撃と、正確に同数の防御。
攻防は一瞬だった。
必殺を狙った一打をあっさりといなされ、綾香は慌てて距離をとる。
(どうして……!
私の格闘術はセバスチャンの免許皆伝……世界だって獲ったのに!)
乱れた呼吸を整えようとしながら次の一手を見定めようとする綾香の
内心を読んだように、源蔵が口を開く。
「源四郎など、来栖川家令の中では一番の小物……。
今度はこちらから、参りますぞ―――!」
目の前に立つ源蔵の姿が、膨れ上がったように綾香には感じられた。
闘気。
そんなものが形を成すなど、漫画の中の出来事だと思っていた。
これまで一歩たりとも動かされることのなかった源蔵の足が、ゆっくりと
踏み出される。
源蔵の右の拳に、全身のバネが集中していくのがわかる。
わざわざそれを見せ付けているのだと認識はしても、身体がついてこない。
かわせない、殺られる、と確信した。
「―――! …………、え?」
源蔵の拳は、綾香の眼前、数センチで止まっていた。
押し退けられた風が、遅れて綾香の長い髪を激しくはためかせる。
「……呪い、でございますかな」
そう呟いた源蔵の左足に、うすぼんやりとした靄のようなものが、
絡み付いていた。
芹香の放った呪詛が、文字通りの間一髪で綾香を救っていた。
この機を逃す手はなかった。
「セリオ! 離脱する!」
なんだか逃げてばかりだな、などと益体も無い思考が綾香の脳裏によぎるが、
ともあれ今は源蔵から逃れるのが最優先事項だった。
全力で逃走を試みる綾香一行。
見る間に小さくなるその背を見やりながら、源蔵は静かに呟く。
「……あまり、おいたをなされますな」
溜息をつくや、気合一閃。
硬質な音が響き、足に纏わりついていたモノが砕け散った。
―――これも貧乏が悪いのかなぁぁぁ―――
余人には聞こえ得ぬ断末魔を残して消える何か。
それを気に留めることもなく、源蔵は歩き出す。
その足取りに、揺るぎはない。
【22:00頃】
【D−7】
【37 来栖川綾香】
【持ち物:パワードスーツKPS−U1改、各種重火器、こんなこともあろうかとバッグ】
【状態:焦燥】
【60 セリオ】【持ち物:なし】【状態:グリーン】
【9 イルファ】【状態:どっこい生きてるド根性】
【38 来栖川芹香】
【持ち物:水晶玉、都合のいい支給品、うぐぅ、狐(首だけ)】
【状態:若干疲労】
【持ち霊:うぐぅ、あうー、珊瑚&瑠璃、まーりゃん、みゅー、智代、澪、幸村、弥生】
【72 長瀬源蔵】
【所持品:防弾チョッキ・トカレフ(TT30)銃弾数(6/8)・支給品一式】
【状態:普通】
→126 →319 ルートD−2
>>409 あー、規制引っかかってたのよ。携帯の回避って意味ないのかね。
助かった、ありがとう。
スマン、10分も書き込みないからてっきり…って思ったっすw
「メッ!!おいたはメッ!!」
つかつかつか、ぱしん!
「痛いっ、な、何するんですか・・・」
「人にこんなモノむけちゃダメです!没収!!」
「返してよ〜、私はそれで冬弥君を守るんだから〜」
「メッ!!こんなもの、こうしてやる!」
ガンガン!!グシャ!
「ふう。これで使い物にならない、と」
「ガーン・・・私の銃が・・・」
柳川の勇士を、楓は見守り続けた。
「ほら、ここ座る!正座!!」
「すんすん・・・うえ〜ん、冬弥君助けて・・・」
「甘えない!」
柳川の説教は三時間弱続いた。
柳川の勇士を、楓は見守り続けた。
ちょっと、由綺が可哀想になってきた。
「フゥ・・・これくらいで許してやるか」
「うえ〜ん、うえ〜ん」
「泣かない!これしきのことで涙を無駄使いしない!!」
「・・・お疲れ様です」
泣き続ける由綺の背を、楓は優しく撫でた。
その時、辺りにノイズがかった人の声が響き渡る。
「・・・定時放送だと?」
緊張がかった柳川の声に、二人も押し黙る。
『2 藍原瑞穂
15 緒方理奈
27 河島はるか
・・・・・・・・・・』
「え?」
きょとんとした由綺の声。
楓が声をかけようとした時だった。
「何?!貴之だと?!!!」
表情が一気に険しくなる柳川。
「・・・いえ、貴明です。42番の河野・・・」
「ノン!貴之が死ぬはずない!!何かの間違いだ!!!」
「ですから」
「俺確かめる!俺行く!!」
柳川は全速力で走り去っていった。
楓の声を無視して突っ走る彼に、二人は二の句が告げなかった。
416 :
補足:2006/10/25(水) 23:19:03 ID:OXnA+EE90
柳川祐也
【時間:1日目午後6時】
【場所:平瀬村住宅街(G-02上部)】
【持ち物:出刃包丁・ハンガー・支給品一式】
【状況:貴之が死んだなんて嘘だ!】
柏木楓
【時間:1日目午後6時】
【場所:平瀬村住宅街(G-02上部)】
【持ち物:コルト・ディテクティブスペシャル(弾丸12・内6装填)・支給品一式】
【状況:貴明です】
森川由綺
【時間:1日目午後6時】
【場所:平瀬村住宅街(G-02上部)】
【持ち物:破壊された89式小銃・支給品一式】
【状況:誰?】
(関連・76)(Dルート)
状況意味不明すぎ
とりあえず上げてみる
ギャグ?
420 :
ここはだれ:2006/10/26(木) 01:26:55 ID:UufaOPD0O
沖ノ島(おきのしま)は、福岡県宗像市にある宗像大社の神領で、
玄界灘の真っ只中に浮かぶ周囲4kmの孤島である。
「……どこ、ここ」
「沖ノ島だろ。すぐ上の行も読めねーのか」
「ここに、ノートがあるの……?」
「全然そんな感じしないんだけど」
「きっと指定が曖昧だったんだよ……」
「で、どうすんの」
「船で帰るしかないんじゃ……」
「どこに船があるのよ」
「天使が餓死とか洒落になんないわ……」
「まぁいいじゃん、ウチら失うものなんかなんもねーよ。
そんな気がする」
「とりあえずこの島を探してみようか……」
「無駄に広いな」
クダを巻く枠外作品一行。
彼らの冒険は始まったばかりである。
「ちなみにここ、女人禁制らしいよ?」
「知るか、人じゃねーもん」
城戸芳晴・コリン・ユンナ・エビル・ルミラ・イビル
【持ち物:支給武器不明、支給品一式】
【状況:力使用不可、死神のノート探し】
時間【二日目0:00頃】
備考【ナイトライターご一行様の次回作にご期待ください!】
岸田洋介は由真と花梨を船室に押し込み、カッターナイフを二人に向けた。
「さあ、おとなしく犯されてもらおうか。
おっと、下手に動くとこのカッターナイフが火を吹くぜ!」
岸田の発言に由真と花梨が固まった。
(こ、この人ギャグセンスおかしいんよ!)
岸田は入り口を塞いでいるため二人に逃げ道はない。
彼が船室に入る隙を突こうと、二人が機をうかがっていたときのことだった。
花梨の全身が急に光を放ち、支給品もろとも粉々に砕け散ったのである。
「か、花梨っ!?」
「何だっ!?」
突然の事態に、由真も岸田も呆気にとられていた。
だが逃げ出すチャンスは今しかない。
花梨に何が起こったのか、それを考えるのは後にまわし、
由真は岸田を突き飛ばして船の外に向かって駆け出した。
「しまった、待ちやがれこの雌豚ッ!」
それを岸田は急いで追いかけた。
定時放送の都合上、とりあえず6時間ぐらい由真は岸田から逃げ続けられたらしい。
凄い体力だ。俺は参った。
紆余曲折の末に、由真はとうとう岸田に捕らえられてしまった。
なお、二人とも疲労のため定時放送はよく聴いていない。
「はぁ、はぁ、やっと捕まえたぜ。一体どういう体力してんだよテメェ」
「そ、それはこっちのセリフよ、この変態……ぜぃ、ぜぃ」
「まあいい。苦労したが、やっとお前をレイプできる。
覚悟しやがれこの雌豚」
「こ、これで勝ったと思うなよっ!」
由真はそう言って岸田の金的を蹴り上げようとしたが、
軽く岸田にいなされ、服を破り捨てられてしまった。
「くっ」
「お嬢ちゃん、処女か?」
どこぞの吸血鬼のようなことを言いつつ、岸田は自慢の男根を由真に突き立てた。
「い……」
由真が悲鳴をあげようとしたそのとき、花梨のときと同様に由真から光が溢れ出した。
「またか、一体何なんだ!」
岸田はその光に巻き込まれ、そして……
ガラクタ人形のなかにいる……
気が付いたとき、彼は殺風景な部屋の中にいた。
(何処だ、ここは?)
体の自由が利かなかった。どうやら今は椅子に座らされているらしい。
前方にはモニターが置かれており、幼稚園ぐらいの子供が一人それを観ているようだ。
モニターには、髪の色が銀で、目の色が紫で、背中に6枚の銀色の羽が生えていて、
何だかよく解らない凄い鎧を装備した物凄い美少年が戦っている映像が映っていた。
(わけがわからねえ)
岸田は何とか体を動かそうとした。
ぎぎぎ
ぎぎぎ
恐ろしいほどにぎぎぎ
びっくりするほどぎぎぎ
ただひたすらに奇怪な音だけが響く。
(お、おいおい。意味分かんねぇよ! 何だかよく分からないけど、行くぜっ!)
さらに頑張って体を動かそうとすると、かろうじて腕が動いた。
ぎぎぎ
ぎぎぎ
不気味な音が鳴り響く。
「……なんか変なのがきた」
モニターを観ていた幼女が異変に気付いて目の前にやってきた。
(なんだこのガキ……)
「えいっ!」
彼女は何を思ったか、ガラクタ人形の目に指を突き刺した。
(うおーっ! 目がっ! 目がーっ!)
彼女は満足したらしく、誇らしげにモニターの前に戻っていった。
【時間:すでに終わっている】
【場所:幻想世界】
岸田洋介
【持ち物:なし】
【状態:ぎぎぎ】
岡崎汐
【持ち物:不明】
【状態:ロワ観戦中】
→042, →048, →327, ルートD
(てっきり、お母さんがどこにいるのか分かってるんだと思ってたよ……)
既に1時間以上も島の上空を飛び続けながら、神奈は未だに晴子を見つけられなかった。
「ええい、目覚めたばかりで本調子ではないのだ! 建物や林の中に紛れておれば見逃しもするわ」
(でも、術とかそんなので探せないの?)
「余とて、なんでもできる訳ではない。この世でなんでもできるのは……“いふゐち”ぐらいのものだ」
(“いふゐち”ってなに?)
「余も詳しくは知らぬが、そういう何でもできる万能の存在として微かに翼人の記憶に残っておるのだ」
(それはいいけど……もうすぐ日が暮れちゃうよ)
「今しばらく待っておれ、すぐに見つけてやる!」
その時、地上から銃声が聞こえた。
見下ろすと、女が男と銃を突き付け合っている。男の近くには少女が一人。
(あ! お母さんだ)
「おお、あれがおぬしの母か。あの者共と戦っておるようだな……おうおう、派手に撃ちよるわ」
(早く助けてあげて!)
「うむ、任せよ」
撃ち合う両者の間に降り立った神奈は、晴子の敵―――英二と芽衣に向けて翼を広げた。
「人よ、己が罪を知れ。汝らが余に与えし千年の悪夢、その報いを―――受けよ!」
(にはは、そのセリフ、すごく必殺技っぽい)
「一々茶々を入れるでないと言っておる!」
ぶわっ。
「なんだっ!?」
「きゃあ!」
神奈の翼からどす黒い瘴気が溢れ、たちまち英二と芽衣を包んだ。
・
・
・
「はっ」
気が付くと芽衣は部屋の中に立っていた。
―――英二さんと一緒にお兄ぃちゃんを探して歩いてたら、いきなり女の人が撃ってきて……。
芽衣は急いで辺りを見回した。そこは、
「私の部屋……?」
―――そっか、夢だったんだ。そうだよね。あんな事本当にあるはずないもん。
「はぁ……」
芽衣は安堵の溜息を漏らした。
ガチャ。
その時、部屋のドアが開いた。
「だれっ!?」
まだ夢の恐怖が抜けきっていない芽衣は思わず怯えた声を出してしまう。
「やあ、芽衣」
「お兄ちゃん……? 無事だったの……じゃなくて学校は?」
遠くの町の高校に通っていて家にはいないはずの兄がドアから顔を出していた。
「ちょっと、芽衣に会わせたい人がいてさ……ああ、入ってよ」
陽平に続いて同じ年頃の背の高い男が入ってきた。
「紹介するよ。僕のスタディの岡崎さ」
「おいおい、春原、それを言うなら『ステディ』だろう」
「あ、いけね」
「こいつぅ」
「てへっ☆」
「『てへっ☆』じゃねーよ、可愛すぎるぞ春原、この野郎! 可愛すぎるからチューの刑だ!」
むちゅう。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
芽衣は知っている人が見れば兄そっくりだと思ったであろう表情で絶叫した。
2人はたっぷり5分は愛し合ってからようやく顔を離した。
唇と唇の間がキラキラと光る糸で結ばれていた。
「ごちそうさま」
「あふっ……上手すぎるよ岡崎……」
(ガクガクガクガク……)
その光景は兄の身に起きた事を理解するのに十分な物だった。
「芽衣、見ての通りだ。僕、高校で本当の自分を見つけたんだ。これからはこいつと一緒に生きていく。死ぬまでな……」
「嬉しいぜ、春原!」
2人は抱き合う。
「ああぁ……」
「じゃあ、僕はいくよ。元気でな」
絶句する妹を置いて陽平は朋也と手を繋いで部屋を出て行く。
「お兄ちゃん! 待ってっ! そっちの世界に行っちゃだめぇーーっ!」
芽衣は駆け出した。男の恋人と共に遠ざかる兄の背中を追って。
「芽衣ちゃん! 危ないっ! そっちは―――」
英二は叫んだ。だが、その声は届かず、
「おにいちゃーーーーーん……」
芽衣の姿は崖の向こう側に消えた。
「あ……ああぁ……」
崖の方へ2、3歩足を踏み出したところで英二の膝が崩れた。
「む……おぬし、何故余の悪夢を受けて狂い死なん……?」
地面に蹲って震えてはいるが、まだ正気を保っている英二に神奈が問い掛ける。
「悪夢……? ははは……理奈を失い……そして今、あの子まで見殺しにしてしまった……。
この現実が既に悪夢そのものだからじゃないかな……」
英二は自嘲的な笑みを浮かべながら言った。
「そうか、ならば物理的に死ぬがよい」
ポーーーーーーーーーーン…………………………グシャ。
神奈の一声で高々と空に打ち上げられた英二は数秒後に地面に激突して死んだ。
(にはは……障害は即排除。私たちすごく悪役っぽい)
「まあ、余は平行世界では“らすぼす”を演じたぐらいだからな」
(へいこうせかいって?)
翼人の記憶を覗けばすぐに分かることだったが、そこに気付かない観鈴は神奈に訊ねた。
「平行世界とは……そうだな、お主の場合で言えば、国崎往人が診療所の娘や天文部の娘と乳繰り合うような世界だ。
あるいは、動けなくなったお主が部屋の中で一人寂しく死んで腐り果てるような、そんな別の可能性を辿った世界のことだ」
(が、がお……そんなのいらない)
「うむ。余もこの世界では違った結末を迎えたいものよの」
(どうしてだろ……酷い結末のような気がするな……)
057 春原芽衣 【死亡】
014 緒方英二 【死亡】
神奈
【持ち物:ライフル銃】
【状況:晴子に会えて一安心】
024 神尾晴子
【持ち物:銃】
【状況:あまりの出来事に呆然】
【時間:18時過ぎ(第1回定時放送の少し後)】
【場所:海岸沿いの崖の近く。詳細は次の書き手にお任せ】
※Dルート。255「ずっと、幸せなばしょ…へ」の続きです。
タイトル忘れてた。
>>425-429「妹と兄の見た悪夢」でお願いします。
「うんうん、マナちゃん順調なようだね。
キリシマ博士もいい子見つけてくれて良かったわ〜」
「そうですね、開始一日目ですでにクラスBを二つなんて想像を絶するスピードです。」
主催者達とは別の部屋のモニターにて、島の様子を見守る男女がそこにいた。
貴族のような豪華な椅子に座り、片手ではワインをくゆらせながら女は問う。
「里村茜の方はどうかな?」
「現在、クラスBのガールズパワーを一つ回収した模様です。」
「そう・・・厄介だね〜、やっぱりっ」
溜息。まず、女としてはGL側の人間が主催の方に近いことすらやりずらい現状であった。
あちらは支給品に図鑑を混ぜられたのに対し、こちらは危険を省みず持ち込むことから考えなければいけない。
上手くいったからいいものの・・・失敗したら、まずキリシマ博士が無事でいられることはなかったであろう。
「ただ、図鑑はあくまでカップリングに対する保持者の萌えパワーがなければ成り立ちませんし。
里村茜自身が自分に萌えることもないでしょう、それだけが救いですよ」
「にゃはははは☆彼女が自ら葉鍵の女の子達を狩っちゃったら、もうこっちの不利にも程があるもんね!
ここら辺は図鑑の性能の限界に感謝感謝〜」
「これからどうします?キリシマ博士に連絡をとり、指示を仰ぎますか」
「今はいいわよ、進行に問題ないっしょ」
「・・・キリシマ博士、この子に全てを伝えなかったようですし、それが裏目に出なければいいのですが・・・」
男は今一度、モニターの中のマナに目をやった。
夢中で春原陽平と住井護の交尾シーンを見つめる姿は純粋そのもの、あどけない少女のものである。
「BL図鑑で集めたボーイズパワーは確かにガールズパワーを相殺するものの、
その代わり少しでもガールズパワーを上回った場合はこちらのプロジェクトが実行されるということ。
それが、真のBL計画の目的だということを」
「BL計画終末作戦『モーホーパラダイス(略してモーパラ)』、
全葉鍵キャラを柳川色に染める乙女の夢・・・う〜ん、ゾクゾクしちゃうね!!」
「統帥、落ち着いてください」
「ああんっ、ごめんごめ〜ん☆
・・・でも、あなたがこちら側についてくれるとは思わなかったわよ、みやたくん。
スフィ−ちゃんなら面白がって同調してくれるとは思ったけど〜」
統帥と呼ばれる女の不思議そうな眼差し・・・宮田健太郎は、苦虫を噛み潰したような表情でそれに答えた。
「俺、存在感ないですから・・・」
「にゃははははは☆そんなこと気にしてたら生き残れないぞ〜」
「で、でも・・・ぐす、まじアン自体『パンパン』としか言われないし、もう俺どうしようかと・・・。」
「や〜んもう、泣かないでっ」
「ゆ、結花は結花でリアン抱えてGL側いっちまうし、もう俺、ひっく、ほ、ホモでも何でもいい、で、出番が・・・欲し・・・」
涙する健太郎を、女は優しく胸に抱く。
その温かさに、彼の涙腺は緩む一方で。
「頑張れみやたくん、君ならきっといいへたれ攻めになれるよ!!」
「とうすい・・・」
女・・・BL計画司令部統帥、葉賀玲子は彼の背中を撫でながら、強い決意を口にする。
「全ては『モーホーパラダイス(略してモーパラ)』のために!
頑張ろうね、みやたくんっ!!」
「うーん、おっぱいおっぱい」
「にゃははははは☆みやたくん、裸エプロンの刑になりたいのかな?」
432 :
補足:2006/10/26(木) 14:49:43 ID:9RjuhHm50
葉賀玲子
【時間:2日目午後0時近く】
【場所:主催者達とは別の部屋】
【所持品:いおりゅん衣装、貴族椅子、ワイングラス、コルトガバメント】
【状態:やる気満々】
宮田健太郎
【時間:時間:2日目午後0時近く】
【場所:主催者達とは別の部屋】
【所持品:五月雨堂エプロン、コルトガバメント】
【状態:おっぱい】
(関連・329・342・343)(Dルート)
433 :
油断と誤算:2006/10/26(木) 17:13:56 ID:CKJp1NUXO
「なんだ、なんだよこれ!」
いきなりの焼きつくような熱と光に視界を奪われ、雄二たち一同は混乱していた。
同様に状況把握も出来ずに右往左往とうろたえる一同の隙を良祐は見逃さなかった。
にやりと頬を上げると、ドラグノフを抱えると身を隠していた木から身体をそっと乗り出す。
武器らしい武器が確認できるのは一人。
隠し持っているのかもしれないが、混乱しているこの状況ですぐさま取り出し自分に向けて攻撃など出来ないだろう。
当たりをつけたのはベレッタトムキャットを持つ月島瑠璃子―まっすぐに銃口を向け「あばよ」と呟いた。
「皆さん右です!」
だが、トリガーを引こうとしたその瞬間上がった思いもよらぬ声に銃口はぶれ、
銃弾は瑠璃子を討ち貫くことは無くその頭上を超えていった。
「銃!?」
目を押さえながらも発せられる雄二の叫びに、良祐はチッと舌打ちをする。
問題はそれよりも今の声だ。
その主のほうを睨みつけるように確認すると、そこにはモップという場違いな武器を抱えている一人の少女…マルチ。
ブルブルと震えてはいるものの、その目はキッと自分を睨みつけていて苛立ちを募らせた。
糞、何故あいつは平気なんだ!
ロボットであるマルチにスタングレネードが効かなかったことなど良祐は知る由も無く、
理由の是非はともかく自分を視認できているマルチを一番の障害と一瞬で認識し、銃口をマルチに向けた。
だが、マルチの行動が一瞬だけ早かった。
目の前は真っ暗になり、良祐の頭に割れんばかりの衝撃が響いた。
何が起きたかもわからずドラグノフを落とし、両手を当てながら悶絶する。
ドサッと良祐の足元に転がったのは、マルチにより顔面に投げつけられたモップだった。
当の本人は当たると思っていなかったのか困惑の表情を見せていたが、すぐ我に変えると再び叫んでいた。
「みなさん! いまのうちに!」
腰を抜かしたままへたりと座り込んでいる沙織の手を取り、マルチは叫ぶ。
その声を頼りに雄二も手探りにマルチの身体を掴み駆け出した。
そんな中、瑠璃子は視界を奪われた状況でも一人冷静に思案していた。
敵、銃を持っている、誰を狙っていた?
決まっている、私だ。
434 :
油断と誤算:2006/10/26(木) 17:15:18 ID:CKJp1NUXO
この中で狙うとしたら目に見えて武器を持っている自分を真っ先に狙うだろう。
どうする? 撃つ? 逃げる?
弾数が限られている中、非力な自分が勝ち残るためにはこれは大事なところで使わなければならない。
普通に撃って当てれる自信も無いのにこんな目が見えない状況で当てれるはずも無い。
だからと言ってこの状況で逃げ切れる…?
「ふざけるな、餓鬼どもぉっ!」
顔面を押さえながらヨロヨロと立ち上がった良祐の怒号が飛ぶ。
思考はかき消され、その声に反応して瑠璃子は銃口を良祐に向けた。
勿論前など何も見えていない。
だがこうしていても圧倒的に自分達は不利だろう。
そう悟った瑠璃子は運にかけた。
ドンッと弾丸は飛び出されたものの、それは良祐の身体とは見当違いの方向へと飛んでいく。
「!?」
再び耳に響いた銃声に雄二は焦りながら走るスピードを速めた。
マルチも同様に後ろを振り返ると、ついて来ているとばかり思っていた瑠璃子が未だ先ほどの場所にいるでは無いか。
「瑠璃子さん、こっちへ! 雄二さん、このまままっすぐ走ってください、沙織さんをお願いします!」
沙織の手を雄二に握らせ雄二が頷いたのを確認すると、踵を返して瑠璃子の元へ駆け寄るマルチ。
その間も瑠璃子はゆっくりと下がりながらも銃弾を発射していた。
二発、三発、四発と撃ちだすも無情に空へと消えていく。
顔面が割れるように痛む中、憎悪に満ちた顔で瑠璃子を睨みつけながら良祐は零れ落ちたドラグノフを拾う。
一瞬で殺してほしかったと哀願するくらいの惨めな苦痛を与えてやる。
そう考える彼の怒りはもはや収まらなず、ゆっくりと銃口を瑠璃子に向けた。
トリガーに手をかけた彼の思惑は、思いもよらぬ出来事によって再び遮られた。
自信の周囲が青白く光っていることに気付く。
…なんだ!
435 :
油断と誤算:2006/10/26(木) 17:16:45 ID:CKJp1NUXO
足元にはどこかで見たことのあるような図形が広がり、良祐を包んでいる。
そして考える余裕も与えられず、それは良祐の身体に強い衝撃と共に舞い落ちた。
「ぐぉっ!!」
頭上から振ってきた人の姿に良祐は体制を崩す。
その声を瑠璃子は聞き逃さなかった。
ダンッ ダンッ ダンッ カチカチカチ...
「ぐあぁぁぁっ!!」
間発いれずに全弾を撃ち尽くす。
その中の一発が良祐の左太ももにめり込み、苦悶の表情を上げながら倒れ込んだ。
「瑠璃子さん、早く!」
良祐は瑠璃子の手を取り逃げていくマルチを、足を押さえながら必死に追った。
だが襲い来る激痛が自身の身体をうまく操ることが出来ず、苦渋に満ちながらも良祐は追跡をそこで諦めた。
瑠璃子だな、覚えたぞ! お前だけは絶対に俺の手で殺してやる、何があろうともだ!
足を引き釣りながら元いた場所に戻るとそこにで良祐が見たものは地面に横たわり、気絶している一人の女性だった。
気絶しているのか、死んでいるかのようにピクリとも動かない。
たった今起きた、思い出しただけでも腹にすえる出来事が良祐の癇に障った。
人の狩りを邪魔しやがって!
ドラグノフの銃口がまっすぐと女性に向けられる。
苛立ちを隠すことも無く、乱暴に発射された銃弾は心臓へと一直線に吸い込まれ
口から少量の血が吐き出されると共にそのまま女性は絶命した。
「…くそっ、とりあえずこの傷を何とかしないと…」
溢れ出る血を押さえ、転がるバックを手に取ると、良祐はゆっくりと立ち上がり引き釣りながらもその場を去っていくのだった。
残されたのは一人の女性…ユンナの死体。
何が起きたのかを理解することも無く、苦痛を感じることも無く、到着直後に彼女はゲームからリタイアすることになった…。
436 :
油断と誤算:2006/10/26(木) 17:20:11 ID:CKJp1NUXO
向坂雄二
【所持品:死神のノート(ただし雄二たちは普通のノートと思いこんでいる)、ほか支給品一式】
【状態:逃走】
新城沙織
【所持品:フライパン、ほか支給品一式】
【状態:逃走】
マルチ
【所持品:支給品一式】
【状態:逃走】
月島瑠璃子
【所持品:ベレッタ トムキャット(残弾数0/7)、ほか支給品一式】
【状態:逃走】
巳間良祐
【所持品1:89式小銃 弾数数(22/22)と予備弾(30×2)折りたたみ式自転車・予備弾(30×2)・支給品一式x3(自身・草壁優季・ユンナ)】
【所持品2:スタングレネード(1/3)・ドラグノフ(残弾8/10)・H&K SMG U(6/30)、予備カートリッジ(30発入り)×5】
【状態:右足を激痛、描かれて無い所持品はそのへんにおいてあるはず】
ユンナ
【状態:死亡】
共通
【場所:I−7】
【時間:午後7時40分】
【備考:雄二たちが合流できたかどうかや逃げた先、良祐の行き先などは不明】
【→293 →346 ⇔349のB-10関連】
437 :
タイミング:2006/10/26(木) 18:18:51 ID:JdYYp9kI0
「こいつは相当やばい感じがするナ……」
場所はホテル跡511室。
エディは血に染まった手帳を閉じながらそう言った。
「少年……何者やの……?」
「そいつはまだ分からなイ。手帳の少年が名簿の少年と同一人物なのかも分からなイ。
それでも警戒するに越した事はないナ」
花梨がエディ達の所に戻った後、彼女を待っていたのは叱責ではなかった。
二人とも手帳の内容の解明に追われ、それどころでは無くなっていたのだ。
しかしいかんせん読み取れない字が多すぎる。511室も隅から隅まで探したが、新しい発見は無かった。
「でも、鍵って何を開くもんなんやろうな?」
「もしかして脱出経路を開く鍵とか?それだったら助かるんよ!」
「いや、残念ながらそれはないだろウ……、主催者側はそんな物を用意する意味が無いだろウ」
「やっぱそんな美味しい話はあらへんか…」
溜息をつく智子と花梨。
「まあそんなに落ち込むナ、この宝石が何か重要な役割を持ってるのは間違いないだろうしナ」
「宝石が鍵になるって、ミステリの匂いがぷんぷんするんよー」
「まあとにかく今日は休憩だナ、今無理しても体力がもたなイ」
「それじゃ移動せえへんか?1階で泊まった方が万が一の時逃げやすいやろ」
「そうだナ」
エディを先頭に階段を降りる。
そして彼らが階段を一階まで降りた時、フロントの方から声がした。
「これは……サツキちゃんの声じゃねぇカ!」
エディが嬉々としてフロントへと飛び込む。
その時一発の銃声が鳴り響いた。
――――皐月達はホテル跡のフロントで立ち尽くしていた。
「―――今、なんて?」
「残念じゃが、放送で呼ばれた中におまえさんの探し人の一人―――伏見ゆかりさんの名前があったのじゃ……」
その言葉に皐月の頭の中が真っ白になる。
「ゆか…り……」
脳裏に親友の顔が浮かぶ。
目から涙が溢れる。震えが止まらない。何も考えれない。
「ゆかりぃぃぃ!!」
私はこんな状況でも絶望していなかった。
宗一がいるから。きっと宗一なら、何とかしてくれると思っていたから。
また宗一とゆかりと3人で元の生活に戻れると信じていた。
それが、その希望が早くも砕かれた。目の前の景色が歪む。
「!?」
そんな時、奥の廊下から誰かが飛び出してきた。
敵だ!
私は反射的にその影に向かって銃を引いた。
ダァァンッ……
「エ…?」
その場にいる全ての者が固まっていた。
目の前で起きた惨事が理解できずに。
皐月の銃の銃口から煙が上がっている。
――銃弾は、エディの腹を貫いていた。
エディが、腹部から血を迸らせスローモーションのように、
ゆっくりと倒れた。
「え……エディさ…ん?」
439 :
タイミング:2006/10/26(木) 18:20:48 ID:JdYYp9kI0
皐月は飛び出してきた相手が誰か、ようやく気付いた。
それは彼女もよく見知った男であった。
「そんな…私敵が来たと思って反射的に……」
後30分再会が早ければ、後30分再会が遅ければ、無事に再会を果たせたはずである。
だが、タイミングが悪すぎた。
極端に不安定な態精神状態になっていた今の皐月にとって、
何者かの急な乱入は引き金を引くのに十分過ぎる理由だった。
エディは倒れたまま動かない。
その腹からはとめどもなく血が溢れてきている。
「嘘……嘘でしょ……?」
皐月は現状がまだ理解出来ない。いや、理解出来ても認める事が出来ない。
自分がエディを撃ったという事実を。
「あんた…何やっとんのや!!」
ようやく智子が状況を飲み込み、専用バズーカ砲を皐月に向かって構えた。
「いや…いやぁぁぁぁぁっっ!!」
それを見た皐月は錯乱しながらホテルの外へと駆け出していた。
彼女は恐怖と自責の念に支配されていた。
「待たんかい…この…」
「ダメ!エディさんの治療が先なんよ!」
花梨は皐月を追おうとした智子を制した。
智子がエディの元へと駆け寄る。
「エディさん、大丈夫かいなっ!?」
「こいつ…は、まずい…かもナ…」
エディは吐血しながらも何とかそれだけを口にした。
「は、早くしないと…そこの二人も救急道具探すのを手伝ってよぉ!」
花梨に言葉で幸村もこのみもようやく硬直が解け、慌てて救急道具を探し始めた。
440 :
タイミング:2006/10/26(木) 18:23:05 ID:JdYYp9kI0
「あかん…あかん……止まらへん!」
血が止まらない。真っ赤な血が溢れ続ける。
仲間が放った弾による傷から血が吹き出し続けている。
エディの体からは急速に体温が失われていっていた。
【場所:E−04】
【時間:1日目18時30分】
幸村俊夫
【所持品:支給品一式】
【状態:動揺】
湯浅皐月
【所持品:38口径ダブルアクション式拳銃(残弾7/10)、予備弾薬80発ホローポイント弾11発使用、セイカクハンテンダケ(×2)、支給品一式】
【状態:混乱、逃亡】
柚原このみ
【所持品:ヌンチャク(金属性)、支給品一式】
【状態:動揺】
ぴろ
【状態:健康。フロントに置いていかれた】
441 :
タイミング:2006/10/26(木) 18:23:40 ID:JdYYp9kI0
笹森花梨
【持ち物:特殊警棒、海岸で拾ったピンクの貝殻(綺麗)、青い宝石、手帳】
【状態:動揺】
エディ
【所持品:支給品一式、大量の古河パン(約27個ほど)】
【状態:腹を撃たれ瀕死】
保科智子
【所持品:支給品一式、専用バズーカ砲&捕縛用ネット弾】
【状態:動揺】
【ルートB-10、関連202,298,325】
442 :
血の色の溝:2006/10/26(木) 18:25:16 ID:AU+rdMMT0
貴明を見送った雄二たちは、診療所への道を急いでいた。
「くそ、すっかり日が暮れちまった……!」
雄二が毒づく。
ほんの数百メートルが、ひどく遠い。
一度は収まった苛立ちが、再び鎌首をもたげている。
原因はといえば、はっきりしていた。
「雄二さん、沙織さんは少し休ませてあげないと……」
またか。
思わず舌打ちする雄二。
「さっきも休んだだろ」
「ですけど……」
見れば、沙織は瑠璃子に抱えられるようにして俯いている。
その足は止まっていた。
「何だよ。今度は何だ。疲れたのか。何か思い出したのか。
また藍原とかいう子のことか……!」
雄二の低い声に、沙織の肩が震える。
見る見るうちに、その眼に涙が溢れてくる。
「雄二さん……、あの、それは」
「死にたいのかよッ!!」
堪えきれず、雄二が大きな声を上げた。
びくり、と身を震わせて、沙織はその場にしゃがみ込んでしまう。
443 :
血の色の溝:2006/10/26(木) 18:26:56 ID:AU+rdMMT0
「新城さん、大丈夫だよ……」
すかさず瑠璃子がその肩を抱いて囁きかけている。
たまらずマルチが雄二に抗議の意を示した。
「そ、そんな声を上げないでください……。
沙織さんはちょっと疲れてるんです、だから……」
「判ってるよ、んなことは!」
雄二のトーンは収まらない。
「お前らこそ本当にわかってんのか、貴明がいなくなったってことは、
今の俺たちは殆ど丸腰なんだぞ!
こんなところでモタモタしてたら、誰かに見つかっちまうだろうが!」
「いえ、あの、まだ瑠璃子さんの銃もありますし……」
「はァ?」
マルチの指摘に、雄二は片眉だけを上げて答えた。
沙織の肩を抱く瑠璃子の方に向き直ると、トゲのある声で言い放つ。
「じゃ、それ、寄越せよ……。俺が持ってた方が安全だろ」
「嫌だよ」
「……」
「これは私が預かったものだからね……私が持ってる」
にべも無い返事にも、雄二の表情は変わらない。
もう何度も繰り返されてきた問答だった。
改めてマルチに向き直る雄二。
「な? 話にならねえ」
「……」
444 :
血の色の溝:2006/10/26(木) 18:27:35 ID:AU+rdMMT0
「もし誰かと会った時に月島が逃げたりしたら、俺らはただの的だぜ?
いや、もしかしたら隙を見て俺らに銃を向ける気かもな。おー怖え」
「瑠璃子さんはそんなことしませんよ、雄二さん……」
「どうだかな」
言葉を切ると、雄二は周囲を見渡す。
「誰かさんのせいでもう日も暮れちまったからな。
どっから狙われてるか知れたもんじゃねえ」
「雄二さん……」
困ったような顔のマルチ。
この人が苛立っているのは、本当はわたしたちにじゃない、とマルチは感じている。
きっと貴明さんがいない今、自分がわたしたちを守らなきゃいけないという思いが
強すぎて、それでイライラしているんだろう、と思う。
優しい人なのだ。だけど今はそれが、噛み合ってない。
わたしはこの人に何をしてあげられるんだろう、とマルチが考えた、その時。
何かが弾けるような、大きな音が響いた。
夜の闇に沈んで見通せないが、木々を隔てた一本向こうの道だろうか。
雄二が強張った顔で呟く。
「お、おい、今のって……」
「じゅ、銃の音ですよね……?」
答えるマルチ。
その返答に、雄二は眉をしかめる。
発砲したということは、銃器で武装した誰かが交戦しているということだ。
つまりそれは、人を殺す覚悟のある誰かが、すぐ側にいるということ。
銃声は、人を殺す音だ。
まずい、と思って振り向いた時には遅かった。
445 :
血の色の溝:2006/10/26(木) 18:28:24 ID:AU+rdMMT0
「いやああああああああああああああああああああっ!!」
沙織が絶叫していた。
半狂乱で瑠璃子の腕を振り解くと、立ち上がって走り出す。
向かう先は、目指す診療所の方向。
「お、おい待て、待てったら新城! ……畜生、こんな時に!」
舌打ちして後を追う雄二。
慌てるマルチと、遅れて瑠璃子が走り出す。
「……はぁ、はぁ……っ、……クソッ、どいつもこいつも!」
動かなければならない時には座り込み、状況を見定めなければならない時に限って
無闇に走り出す。
理不尽とすら思える行動に、雄二は苛立ちを通り越して怒りを覚えていた。
どうして誰も俺の話を理解しない。
どうして誰も俺の言う通りにしない。
どうして誰も、とそこまでを脳裏で吐き散らしたところで、
「チッ……おい、新城! 今度は何だ!」
新城沙織が、道の真ん中でへたり込んでいた。
その肩は震えている。
先程までと比べても、どうも様子がおかしい。
「何だってんだ……って、おい……ありゃあ……」
沙織の視線の先を追った雄二が見たのは、
「あれが、診療所……?」
回避いる?
kaihi
回避
449 :
血の色の溝:2006/10/26(木) 18:32:08 ID:AU+rdMMT0
小さな建物。
カーテンがはためいていた。
開いた窓が、きいきいと音を立てている。
奇妙に静まり返ったその屋内。
ひときわ強い風が吹き、はためいたカーテンの、その向こう。
割れた窓から、壁一面に飛び散った、赤黒いモノが見えた、気がした。
こみ上げる嘔吐感を、嫌な味の唾を吐き捨ててどうにか堪える。
状況が示す結論だけを考えようとする雄二。
それ以外のことは、想像してはいけない気がしていた。
答えは、すぐに出た。
「ここも……駄目だってのかよ!」
遅れてきたマルチと瑠璃子がすぐ後ろで息を呑むのを、雄二は感じる。
危険、の二文字が雄二の思考を覆い尽くす。
「立て、新城……! すぐここから離れるぞ……!」
雄二の張り詰めた口調にもまるで反応しない沙織。
それを見るや、雄二は沙織の肩を掴んで強引にその身を引き起こそうとする。
「……ひっ……ぃぁ……っ!」
怯えたように雄二の手を払いのける沙織。
雄二は思わず声を荒げる。
「いい加減にしろ! 立て、走れよ!」
「ぁ……ぁあ……」
そんな雄二の表情を見て、更に恐慌を深める沙織。
450 :
血の色の溝:2006/10/26(木) 18:33:08 ID:AU+rdMMT0
泥沼だった。
見かねてマルチが声を出す。
「瑠璃子さん、わたしと瑠璃子さんで沙織さんを……」
「うん」
すぐに頷く瑠璃子。
それを見て雄二は何かを言おうとしたが、結局口をついて出たのは、
状況への対処を優先させる言葉だった。
「……、じゃあ走るぞ……。とにかくここから離れるんだ」
宵闇が、一行の行く手に広がっていた。
【場所:I−7】
【時間:午後6時30分頃】
向坂雄二
【所持品:死神のノート(ただし雄二たちは普通のノートと思いこんでいる)、ほか支給品一式】
【状態:焦燥】
新城沙織
【所持品:フライパン、ほか支給品一式】
【状態:恐慌】
マルチ
【所持品:モップ、ほか支給品一式】
【状態:困惑】
月島瑠璃子
【所持品:ベレッタ トムキャット(残弾数7/7)、ほか支給品一式】
【状態:推移を見定める】
→281 or 304 →310 ルートJ系
>>446-448 サンクス。
顔面が割れるように痛む中、憎悪に満ちた顔で瑠璃子を睨みつけながら良祐は零れ落ちたドラグノフを拾う。
一瞬で殺してほしかったと哀願するくらいの惨めな苦痛を与えてやる。
そう考える彼の怒りはもはや収まらなず、ゆっくりと銃口を瑠璃子に向けた。
トリガーに手をかけた彼の思惑は、留璃子の放つ銃弾によって再び遮られた。
ダンッ ダンッ ダンッ カチカチカチ...
「ぐあぁぁぁっ!!」
間発いれずに全弾を撃ち尽くされたその中の一発が良祐の左太ももにめり込み、苦悶の表情を上げながら倒れ込んだ。
「瑠璃子さん、早く!」
良祐は瑠璃子の手を取り逃げていくマルチを、足を押さえながら必死に追った。
だが襲い来る激痛が自身の身体をうまく操ることが出来ず、苦渋に満ちながらも良祐は追跡をそこで諦めた。
瑠璃子だな、覚えたぞ! お前だけは絶対に俺の手で殺してやる、何があろうともだ!怒りは抑えきれるものではないにしろ、溢れ出る血を見て冷静さを取り戻そうと首を振る。
「…くそっ、とりあえずこの傷を何とかしないと…」
溢れ出る血を押さえ、転がるバックを手に取ると、良祐はゆっくりと立ち上がり引き釣りながらもその場を去っていくのだった。
向坂雄二
【所持品:死神のノート(ただし雄二たちは普通のノートと思いこんでいる)、ほか支給品一式】
【状態:逃走】
新城沙織
【所持品:フライパン、ほか支給品一式】
【状態:逃走】
マルチ
【所持品:支給品一式】
【状態:逃走】
月島瑠璃子
【所持品:ベレッタ トムキャット(残弾数0/7)、ほか支給品一式】
【状態:逃走】
巳間良祐
【所持品1:89式小銃 弾数数(22/22)と予備弾(30×2)折りたたみ式自転車・予備弾(30×2)・支給品一式x2(自身・草壁優季)】
【所持品2:スタングレネード(1/3)・ドラグノフ(残弾9/10)・H&K SMG U(6/30)、予備カートリッジ(30発入り)×5】
【状態:右足を激痛、描かれて無い所持品はそのへんにおいてあるはず】
共通
【場所:I−7】
【時間:午後7時40分】
【備考:雄二たちが合流できたかどうかや逃げた先、良祐の行き先などは不明】
【→293 B-10関連】
以下、「血の色の溝」ルートB系用の改訂箇所を列挙いたします。
・貴明を見送った雄二たちは、 〜 日が暮れちまった……!」
↓
どうにか追っ手を振り切った雄二たちは、診療所への道を急いでいた。
「くそ、まだ見えねえのか、診療所ってのは……!」
・「お前らこそ本当に 〜 「雄二さん……」
↓
「わかってんのか、俺たちはたった今、命を狙われたんだぞ!
こんなところでモタモタしてたら、さっきの奴が戻ってくるかもしれないだろうが!」
言うと雄二は、沙織の肩を抱く瑠璃子の方に向き直ると、トゲのある声で続ける。
「お前の銃も弾切れだしな……何も全部撃ちきることはなかっただろうによ」
「さっきは、ああするより他に仕方なかったんだよ」
「そうですよ雄二さん、瑠璃子さんは悪くないです……」
「今度は庇いあいかよ……話にならねえ」
「雄二さん……」
・【時間:午後6時30分頃】→【時間:午後8時前】
・所持品からマルチのモップを削除、瑠璃子のベレッタの残弾を0に
・→281 →353
※すみません、元の「血の色の溝」も一点、修正をお願いします。
・夜の闇に沈んで見通せないが、木々を隔てた一本向こうの道だろうか。
↓
夜の闇に沈む木々に反響して、方角は判然としない。
「はぁはぁ……」
左肩から帯びた熱に身体はふらつき、秋生の息は荒い。
右腕に抱える死体となってしまった愛妻の身体を支えるのも億劫なほどだ。
勿論気持ちのうえでは手放すことなど出来るわけも無いのだが、身体がついてはきてくれない。
そんな秋生を不安げに見つめる渚と佳乃。
「お父さん……どこかで少し休みませんか?」
「何を言ってんだ、俺は大丈夫だぞ」
だが自分でもどこかから回りしているのはわかった。
娘に心配をかけているのもわかったし、気合だけではすぐにどうにもなるものでも無いかもしれない。
「でも……」
そんな顔をされるのが耐えられなくなり、秋生は小さく深呼吸しながら言った。
「……そうだな、すまん。どこかで少し休むとするか」
辺りを見渡しても人影は無い。
だが先ほどの銃声を聞きつけて人が集まってくるかもしれないし、ここに座り込むわけにも行くまい。
目に付いた一軒の家をしばし眺めると、激痛に苛まれながらも佳乃にS&W M29手渡した。
「……あそこの家にしよう、もし変な奴がいたらすぐ逃げるんだ」
二人がコクリと頷くのを確認すると、ゆっくりとドアを開けた。
「またお客さんですか?」
暗くなった部屋から落ち着き払った声がかけられる。
佳乃は思わず銃口を向け、秋生も身構える。
「心配しないでください。私は別に何もする気はありません」
その声と共に部屋に明かりが灯り、パソコンの前に座る天野美汐がクルリと椅子を回しながら答えた。
秋生が抱えた早苗の死体に一瞬顔をこわばらせるものの、動揺を見せない口調で続けた。
「先ほどの銃声ですか……」
渚と佳乃の顔が悲痛に曇るが、秋生は気にせず語った。
「ああ、殺し合いに乗っちまった馬鹿がいたもんでな……こいつは俺の妻だ。助けられなかったよ」
「あなたも殺したんですか?」
「……いや、殺せなかった。ここで殺しちまったら理由はどうあれあいつらと何もかわんねーしな。
んま、不可抗力とは言えすでに一人殺してる俺が言える台詞じゃねーんだけどな。……で、だったらあんたはどうするんだ?」
「別にどうもしません、殺し合いに参加するつもりもありませんし、あなたが人を殺していようが、目的が何であろうが私には関係ないことです」
美汐のその言葉に秋生は警戒を少し緩めて聞き返した。
「つまり俺達がいても何も関係ないって事か?」
「ええ、何か目的があって来られたのでしたらどうぞご自由に」
少し考え秋生はゆっくり後ろで警戒している二人を見ると、小さく笑いながら言った。
「そうか、いやすまねぇ、驚かすつもりも戦うつもりも俺らには無い。ただ少し休ませて欲しいだけだ」
「はい、ちょうど暇をもてあましていたところなので私はかまいませんよ」
支給品の食料を開け頬張りながら、秋生は今までのことを美汐に話していた。
あまり興味がなさそうな顔をしながらも黙って頷きながら美汐は相槌を打っている。
さすがに早苗の話になると部屋の隅に横たえられたその死体にチラリと目をやると、静かに目を閉じていった。
「ご冥福をお祈りします……」
「どこかで眠らせてやりたいんだがさすがに余裕が無くてな……。
食うもん食って休んだら裏にでも埋めてやろうと思う、良かったら手伝ってもらえるか?」
「ええ、構いませんよ」
物静かに微笑む少女に秋生は先ほどからずっと疑問に思っていたことをぶつけてみた。
「何もする気は無いって言ってたが、んじゃ何をしていたんだ?」
言いながら先ほどまで美汐のいた場所に視線を移す。
そこには一台のパソコン。
「見てみますか?」
秋生が頷くのを見て、美汐はパソコンに向かい電源をつける。
「こりゃ……」
画面に映った『ロワちゃんねる』のページ。
ゆっくりとページがスクロ−ルされにつれて、秋生は驚きの声を上げる。
渚と佳乃も何事かと後ろに来て驚愕していた。
「何か変わったことがあれば……と思って暇潰しに見ている感じだったのですが」
「なるほどな……だが無事で何よりだったな」
それは『自分の安否を報告するスレッド』の美汐自身の書き込みを見て出た発言だった。
美汐の顔が一瞬だけ嬉しそうに変化するのだったが、それに気付くものは誰もおらず、沈痛なそれにすぐ変わり答えた。
「ええ、本当にびっくりしました……」
言いながらパソコンの電源を切る。
「おお、消しちまうのか?俺も何か書こうと思ったんだが……」
「あ、はい、構いませんよ」
電源を付け直し、椅子を秋生にゆずる。
「んー、なんて打つかな」
カタカタと慣れない手つきでキーボードを叩く。
3:レインボー:一日目 18:59:55 ID:H54erWwvc
岡崎の小僧、生きてるか?
放送で呼ばれなかったから生きてるんだろうな。
渚のことは心配するな、俺が見つけた。
だから安心して自分の身を守ることに集中しろ。
後真琴と相沢って奴も心配するな、美汐って嬢ちゃんも元気ピンピンだ。
お前らも死ぬんじゃねーぞ。
居場所や落ち合う場所も書きたかったのだがそれをすると殺し合いに参加した奴がやって来るかもしれない。
早苗の死も今は奴を混乱させるだけだと書くのは止めた。
何度も訂正しながらも秋生は送信ボタンを押した。
早苗の死体を家の裏手に埋め、四人は手を合わせて静かに冥福を祈る。
「こんなとこで味気ない墓ですまないな……渚も小僧も絶対守るからよ」
渚の瞳からはボロボロと涙が零れ落ち、秋生はゆっくりとその身体を抱きしめながら呟いた。
鞄と武器を持ちながら秋生は美汐に声をかける。
「本当に一緒に行かないのか?」
その質問に、少し困ったように考えながら美汐は自嘲するように返す。
「ええ……」
「そうか……心配するな、お前の知り合いにあったらここにいることを伝えてやる」
強制することも無く秋生は美汐を背に手を振り、渚と佳乃も頭を深々と下げるとそれに続いて去っていった。
古河 秋生
【持ち物:S&W M29(残弾数2/6)、ほか支給品一式】
【状態:左肩裂傷手当て済み】
古河 渚
【持ち物:薙刀】
【状態:正常、秋生に同行】
霧島 佳乃
【持ち物:鉈】
【状態:正常、秋生に同行】
天野 美汐
【持ち物:様々なボードゲーム・支給品一式】
【状態:正常、一人家に留まる】
共通
【時間:19:30頃】
【場所:I-07】
【備考:秋生生存ルート、224と284に関連 B-11ですが違いが診療所だけなのでB-10準拠に変更お願いします】
【 他の生存ルートに使いたい人がもしいたら早苗とか佳乃とか適当に改変しちゃってください】
鎌石村へ向かっていた名倉友里であったが、響き渡ったマシンガンの音を聞いて即座に踵を返していた。
今は平瀬村内部を走っている最中だった。
友里は最初、自分にも十分勝機があると考えていた。
能天気な生活を送っていた連中に、施設での過酷な生活を送っていた自分が負ける筈が無い。
強敵は少年や郁未、葉子といった同じ施設の者だけだと、そう考えていた。
だがこのゲームは友里の想像より遥かに過酷なゲームであった。
二人の少女に対しての襲撃は失敗し、手傷を負い、武器を失った。
それに先程聞いたマシンガンの音。素手で動くのは自殺行為だった。
武器があった時でさえ、ただの少女二人相手に遅れをとったのだ。
(早く…早くもっと強力な武器を探さないと…!)
自信を打ち砕かれ、彼女は焦っていた。
だから、
「あらあら、そんなに急いでどこに行くんです?」
すぐ近くまで寄っていてきた人物にすら気付かなかった。
「――え?」
振り向くと、そこには女――水瀬秋子が立っていた。
「そんなに走り回ると、かえって危ないですよ?」
秋子は微笑んでいたが、その右手には包丁、左手には銃が握られていた。
(――――まずい)
友里は心の中で舌打ちした。
今自分は素手だ。それに目の前の女からは何か、底知れぬモノを感じる。
今戦ったら殺される―――!
(ここは何とかやり過ごすしかないわね…)
「そうですね…ありがとうございます」
「いえいえ。肩を怪我してるようですが、一体どうしたんですか?」
「これは突然襲われて……銃で撃たれたんです」
友里は肩を抑えながら口にする。
「それは大変でしたね」
「ええ……もうどうしたらいいか分かりません…」
「でしたら、私と一緒に行動しますか?人数が多い方が心強いですし」
理想通りの展開だ。
この女は甘すぎる。隙を見て武器を奪って終わりだ。
「私は水瀬秋子です。よろしくお願いします」
秋子は笑顔で挨拶をしていた。こちらを疑っている様子は微塵も無い。
「名倉友里です。よろしく」
友里も笑顔で挨拶をしていた。
勿論作り笑いだったが、間抜けな獲物に対しての感謝の気持ちもあったのか、
思ったより自然に笑顔が作れていた。
「では一緒に来てください。」
そうして友里は秋子の後に続いて歩きだした。
後ろからでよく見えなかったが、武器を点検しているのか秋子は銃を弄っているようだった。
暫くして友里は違和感を覚えた。
どうもおかしい。村から離れていって、森の中を進んでいるではないか。
「あの……本当に道は合ってますか?」
「大丈夫ですよ。それより、友里さんは支給品は何だったんですか?」
「トンファーでしたが…襲われた際に落としてしまいました」
そう言って表情を曇らせる。その演技は実に見事なものであった。
「そうですか…ではこの銃をお持ちください」
「…え?」
「私一人が武器を全部持っていても仕方ありませんから。護身用にどうぞ」
秋子は足を止め、振り返ると銃を差し出してきた。
友里は笑いを堪えるのに必死だった。この女はお人好し過ぎる。
「ありがとうございます」
笑顔で受け取り、その銃を即座に秋子に向ける。
「あら……、どういう事です?」
「見ての通りよ…お馬鹿さん、ありがとうね。そしてさようなら!」
そして友里は迷わずに引き金を引いた。だが、銃口からは何も発射されなかった。
「え?」
おかしい。何度も引いてみたが、銃弾が発射される事は無かった。
「無駄ですよ?あなたを試す為に、弾丸を抜いておきましたから」
「な……」
その時、友里の右肩に衝撃が走った。
自分の右肩に、包丁が「生えて」いた。
「あああぁぁぁぁっ!!」
直後に走る激痛。
「友里さんはマーダーのようですね」
秋子は友里の右肩から乱暴に包丁を引き抜いた。
「な…んで…?」
「単にカマをかけただけですが……、強いて言えばあなたは落ち着き過ぎていましたね。
では、私の娘が受けた苦しみを何倍にもして与えてあげますね」
そう言って、秋子は笑顔を浮かべた。それは、日常で見せるような笑顔。
しかしその顔は返り血を浴びており、手には包丁。
そんな異常な状況にも関わらず、その笑顔は穏やかだった。
「う……あ……」
この女は狂っている。冷静に、狂っている――――
恐怖で何も考えれない。
友里はその場に座り込み、腰が抜けたまま動けなかった。
「本当なら長時間かけて苦しめたいのですが、家を長時間空けるのは危険ですので」
包丁が振るわれる。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっっ!!」
次の瞬間には友里の左手の人差し指が、地面に落ちていた。
「手っ取り早く、罰を与えますね……さて、何本目に死にますかね?」
夜の森に悲鳴がこだましていた。その悲鳴は数分間鳴り響いていたが、やがて何も聞こえなくなった。
もしかしたら名倉友里は、このゲームの参加者の中で最も不運だったと言えるかもしれない。
何しろ、彼女はこれまで死んだ者の誰とも比べ物にならない程の苦痛を伴う死を与えられたのだから。
名雪を襲った張本人は既にこの世にはいなかったが、秋子はその事実を知らない。
だから、秋子は戦い続ける。
――――マーダーに無慈悲に苦痛を与え続ける、マーダーキラーとして。
【時間:午後10時頃】
【場所:F−02】
水瀬秋子
【所持品:IMI ジェリコ941(残弾14/14)、木彫りのヒトデ、包丁、殺虫剤、支給品一式×2】
【状態・状況:健康。主催者を倒す。ゲームに参加させられている子供たちを1人でも多く助けて守る。
ゲームに乗った者を苦痛を味あわせた上で殺す】
名倉友里
【所持品:無し】
【状態:悶死】
【ルートB系共通、関連187・267・290】
※友里が聞いた銃声は、267話の山田ミチルのマシンガンの音
ようやく渚が少しだけ落ち着きを取り戻したころ、佳乃がそれを見計らって言った。
「お墓…作ってあげようか」
その言葉に渚ははい、と返事して父の体を持ち上げようとする。しかし、それはあまりにも重過ぎて引きずって行くことすら出来ない。佳乃と二人掛かりでようやく外へ引き摺っていくことが出来た。
「ふぅ〜、次は早苗さんの番だね…」
「…はい。急ぎましょう」
涙声ながらもしっかりと口に出す。佳乃はうん、と言い急いで早苗の体を持ち出す。秋生ほど体が重くなかったが、二人の心にはそれ以上のものがのしかかっていた。
秋生の隣に寝かせた後、佳乃は穴を掘る為のスコップを持ってこようとした。
「あの、ちょっと待ってもらえませんか?」
「え? 何? どうしたの」
「その…もう一人の方も一緒に埋めてあげようと思うんです」
渚の言葉に目を見開く佳乃。
「どうして!? だって、この人たちがキミのお母さんやお父さんを殺したんだよ!?」
「…確かにそうです。今でもこの人を許す事はできません…ですけど、亡くなってしまわれたのなら誰だって平等に弔ってもらう権利があります。…それはわたし一人の思いとは別な事だと思いますから」
渚はそこで一呼吸置き、
「それに、たぶんもうお父さんはその人と仲良くやっているころだと思いますから」
今出来る限りの精一杯の笑顔で渚は答える。
「分かったよ…キミがそう言うなら、私はそれに従うよ。…それじゃ、運んであげようか」
それから葉子を運び終えた後、二人は診療所にあったスコップを持ち出し穴を掘り始めた。二人とも非力なせいで作業は遅々として進まない。
気がつけば、既に夕日は沈み夜の世界になっていた。それにもかかわらず半分ほどしか作業は終わっていない。渚も佳乃も汗と涙、そして土で顔は汚れきっていた。
そんな時に、二人とも――いや正確には渚は知らないのだが――存在を忘れていた少年がようやく帰ってきた。
「…おい、何だよ、これは? 何があったって言うんだ?」
帰ってきた宗一の目の前にあったのは、つい先程まで共に過ごしていた仲間の遺体、そして食料調達の合間に出会った男の姿だった。
宗一の存在にようやく気がついた佳乃が、あ…と小さく声を漏らす。
「宗一くん…」
渚は眠っていたので宗一のことは知らなかったのだが、佳乃が名前を呼んだことからきっと敵ではないのだろう、と判断した。
宗一は呆然としながらも調達してきた食料を二人の前に置き、その中からおにぎりを取り出しながら二人に尋ねた。
「…これを食べながらでいいから、順を追って説明してくれ」
* * *
渚と佳乃から一部始終を説明され、宗一はまたしても自身の行動に後悔した。
どうして、あの時俺はあの視線の意図に気がつかなかった? あの二人は妙に俺を気にしていた。もし診療所に残っていたら、少なくとも、この二人は死ぬ事は無かった。
「クソッ!」
宗一が拳を地面に叩きつける。ゆかりだけに留まらず仲間を守れなかったことに対して。自らの無力さに激怒して。
「俺がっ、俺があんなことさえしなけりゃ! 何が世界一のエージェントだよ、そんな肩書き、何の役にだって立ちやしない…ちくしょう!」
「宗一くん…」
佳乃がかける言葉を見つけられずにいると、渚が横から声を出した。
「あの、そんなに自分を責めないで下さい」
地面に顔を向けていた宗一が渚に顔を向ける。
「わたしは、あなたのことはそんなに知りませんが…ですけど、わたしたちのためにこの食べ物を持ってきてくれたんですよね。でしたら、その行動はきっと無駄じゃないと思います。
もし食べ物を持ってきてくれなかったら、きっとわたしはお腹が空いてお父さんとお母さんのお墓を作ってあげられなかったと思います」
えへへ、とほんの少しだけ笑いながらおにぎりを口にする渚。
宗一は心が落ち着いていくのを感じた。
(両親を目の前で殺されたって言うのに…励まされてるのは俺のほうじゃないか。しっかりしろ、俺! そうだ、まだこの二人は生きてる。だったら、この二人を最後まで守り抜く!)
拳を作って思いきり自分を殴った。頭が揺れるほどの衝撃が宗一の気を元に戻した。
「…ありがとうな。目が覚めた。これからは絶対に何があっても後悔しない」
立ちあがって、側に置いてあったスコップを手に取る。
「まずは埋葬を済ませよう。俺にかかれば、こんなもんすぐに終わるぞ」
怒涛の勢いでざくざく穴を掘り始める宗一。渚と佳乃がおおー、と感心した面持ちで見ていた。
十分もしないうちに、三人分の墓が出来あがった。
「さて、後は埋めるだけだ。何かやり残したことは無いか」
「あ、少しだけ待って下さい」
渚が三人の死体に近づき、互いの手を握り合わせた。それから手を合わせる。
(お父さん、お母さん、行ってきます)
短く祈りをささげた後、渚が宗一に向き直る。
「もう大丈夫です。埋めてあげましょう」
渚の言葉に頷いて、三人がかりで墓に埋めてやった。
「…さて、これからどうするか。このまま診療所に残るか、それともどこかに移動するか」
宗一の言葉に、佳乃が手を上げる。
「あのね宗一くん。私はここに残った方がいいと思うな。お姉ちゃんのことは気になるけど、焦っても見つかるわけじゃないし…それに、すごく疲れたから」
渚も佳乃も、墓作りで疲労困憊だった。宗一はそれを汲んで今晩は診療所で休憩することにした。
「…そう言えば、まだお前には自己紹介してなかったな。俺は那須宗一」
「あっ、私もまだキミには自己紹介してなかったよね。霧島佳乃だよ。これからもよろしくね」
「わたしは…渚、古河渚です。よろしくお願いします、那須さん、霧島さん」
霧島佳乃
【時間:午後7時30分】
【場所:I-07】
【持ち物:なし】
【状態:疲労困憊】
古河渚
【時間:午後7時30分】
【場所:I-07】
【持ち物:なし】
【状態:疲労困憊】
那須宗一
【時間:午後7時30分】
【場所:I−07】
【所持品:FN Five-SeveN(残弾数20/20)包丁、ロープ(少し太め)、ツールセット、救急箱、ほか水・食料以外の支給品一式、おにぎりなど食料品】
【状態:健康。渚と佳乃を守る】
【その他:早苗の支給武器のハリセン、及び全員の支給品が入ったデイバックは部屋の隅にまとめられている。秋生の支給品も室内に放置】
【備考:B−10ルート。281話の続き】
素晴らしく簡単に取り乱すエージェントですね
468 :
加速する嘘:2006/10/27(金) 07:13:06 ID:/4Pwsh0dO
敬介は全く動くことが出来ずに固まっていた。
自身に突きつけられている拳銃が、動かせることを拒絶している。
晴子の性格だ、間違いなく下手なことを言えば撃たれるだろう。
唾をゴクリと飲み込みながら、なんと言えばいいものか頭を必死に巡らせる。
「…とりあえず銃を降ろして落ち着いてくれないか?
僕は君を殺そうとなんて思って無いし、この子もそうだ」
「選択肢は二個言うたよな?あんたの考えなんか知らんわ、それとも撃たれたいんか?」
聞く耳も持たず言い放つと晴子がトリガーに手をかける。「…だからって、人殺しをしてなんて観鈴が喜ぶとでも思ってるのか?」
敬介のその一言に晴子は顔を曇らせ、動揺したのがすぐわかった。
「それに全員殺したって生き残れるのはたった一人って言われてる。君と観鈴が一緒に生き残ることはできないんだ。
だったら、他の方法を探したほうが全員の為に良いに決まってるじゃないか」
「じゃかあしいわ!」
溜まりかねたように晴子が叫んだ。
「んなもん、言われなくてもわかっとるわい。
でもな、その他の方法ってなんやねん?それが見つからずに二十四時間立ったら全員お陀仏やで? だったら、うちが人を殺すたびに観鈴は二十四時間生き延びれる。
そして最後に二人残って、うちが死んだら観鈴は無事に帰れるやんか!」
――全員殺して、自分も死ぬ。
晴子の発言に敬介は戦慄を覚えた。
「正しいことだとか思ってない!合わせる顔だってホントは無いわっ!
…でもな観鈴に生きてもらうことだけがうちの願いなんやっ!」
そして震えながら涙を流しながら、再び銃を握る手に力を籠めた。
答えようの無い選択だった。
469 :
加速する嘘:2006/10/27(金) 07:14:31 ID:/4Pwsh0dO
協力してもこの場を去っても、どちらにしても最終的に自分は殺されるということ。
観鈴を守り、晴子も理緒も守りながら皆で生き延びる術を探す。
切実に発せられる義母の言葉の前には、自分の考えなどは甘ったるいものにしか聞こえないだろう。
同じ親でありながら、いや本当の親でありながらどこか楽観的な考えを持っていた自分の説得など通るわけも無い。
それほどまでに晴子の発言は的を得ていた。
だがそれを認めるわけにもいかなかった。
晴子のことが大好きな観鈴の為にもこれ以上は止めなくてはならない。
敬介は決意を込めた瞳で言う。
「―君の気持ちはわかった。だが手伝うと言った場合この子はどうする?助けてくれるのか?」
「アホか?殺すにきまっとるやろ」
晴子の発した『殺す』と言う単語に理緒は涙目に怯えながらも鋏を晴子に向ける。
だがそれを覆い隠すように敬介が理緒の前に立ち、言った。
「言うと思ったよ、だから僕はこうするんだ」
言うや否や、敬介は晴子に向かって駆け出した。
反射的に銃弾が飛び出し敬介の左肩にそれは命中した。
苦痛に顔を歪めるも足は止めずに晴子の眼前へと突き進み、銃を持つ右腕を掴むと後ろ手に抑えながら理緒に向かって叫びつけた。
「僕のことは気にせず今すぐ逃げるんだ!」
「っ…でもっ!」
暴れる晴子をなんとか組み伏せその手から銃がこぼれたのを見ると、すかさず地面に落ちたそれを足で思いっきり蹴飛ばす。
「いいからっ!!」
敬介の剣幕に、迷いながらも理緒が後ろを振り向いたまさにその瞬間、どこか能天気な声が頭上を通過した。
「また偉い所に出くわしたもんだ…」
声の主――古河秋生は頭をぼりぼりと掻きながらそう言うと、銃口を敬介と晴子のほうに向けたまま理緒に尋ねる。
だが理緒は涙目になりながらかぶりを振っていた。
470 :
加速する嘘:2006/10/27(金) 07:15:36 ID:/4Pwsh0dO
それも当然だろう。
いきなり現れたのは服は血に染まり銃を抱えた男に、薙刀や鉈を抱える少女。
至極まともになどまったく見えず足はすっかりすくんでいた。
「あああ、勘違いするな、別に俺達は殺し合いに参加したりしてねーぞ?」
怯え、警その二人の均衡を崩したのは、自身を組み敷いた敬介の股間を蹴り上げて抜け出した晴子の声だった。
晴子はすぐさま蹴られたH&K VP70の元に走りよりそれを手に取った。
秋生と理緒、そして渚と佳乃は敬介を庇うように晴子に対峙する。
またこんなくだらない殺し合いに乗っちまった奴か…と溜め息をつきながら渚から薙刀を受け取ると後ろに四人に向かってそっと呟いた。
「よくわからんが渚、そいつを連れて逃げろ」
「お父さん!?」
「ああ今度は戻ってくるなよ、平瀬村のどっかの家でじっと隠れてるんだ。なーに、大丈夫だ。さっきもそうだったろ?」
「でも…」
秋生の顔と、左肩から血を流しながら苦しそうに抑えている敬介の顔を何度も見直すと、小さくコクンと頷いた。
理緒も敬介も秋生達が敵ではないと理解し、同じように頷く。
「すいません…」
「気にすんな、ただ俺の娘のこと頼むぜ」
「…わかりました」
ゆっくりと距離をとる四人に対し晴子は銃口を向けながら言う。
「逃がすとおもっとるんかいな?」
「んじゃあんたは俺が追わせると思ってんのか?」
秋生はニヤリと笑うと晴子へと向けてS&W M29の照準をつけた。
471 :
加速する嘘:2006/10/27(金) 07:17:04 ID:/4Pwsh0dO
「ちっ…」
晴子の銃口が秋生へと切り替わった瞬間、「いけっ!!」と叫ぶと同時に晴子と四人の間に銃弾を打ち込んだ。
けたたましい銃声に晴子の動きが一瞬止まったのを見逃さず、四人は平瀬村へのほうへと走っていく。
「まちいやっ!」
だが秋生は再び銃口を向け、それに気付いた晴子も口惜しそうに舌打ちしながら秋生を睨みつけた。
(あと一発か…正直きついな)
そう思いながら左手に握る薙刀に力をこめた。
晴子は銃口を向けたままではあるものの、一向に攻めてくる気配はなかった。
秋生の目をじっと睨みつけながら何かを考え、そしてその口がそっと開いた。
「…あの子娘さんなんやろ?」
「ああ」
聞こえていたのか、と秋生は頷いた。銃を握る手に篭る力は変わらない。
「なんでほっとくん?守らなくていいんか?」
「守るさ、あんたの目覚まさせたらすぐだ」
「はぁ?覚ますってなんやねん、うちだって娘守るために動いてるっちゅうねん」
「は?それこそ意味がわかんねーな」
意味不明にしか捉えられなかった晴子の発言だったが、娘を守ると言う言葉が気になる。
「何もせず二十四時間立ったら全員ドカンっての聞いてなかったんかい。
同じこと何度も何度も言うのも馬鹿らしいねんけどなぁ…たった今も敬介のアホに説明したばっかやっちゅうのに…」
「ちょっと待て、今なんて言った?」
「あぁ?何度も言うのが馬鹿ら…」
「違う、その後だ!誰に説明だって?」
「敬介のアホのことか、あんたの娘と一緒に行った男や。ややこいけどな、うちの娘の父親や」
「そいつ…橘敬介か?」
472 :
加速する嘘:2006/10/27(金) 07:18:25 ID:/4Pwsh0dO
「なんや知り合いだったんか?」
初めてここで秋生の表情に焦りが見えた。
「橘敬介って奴もゲームに乗ってるって…まさか!?最悪じゃねーか!」
思わず平瀬村の方角に視線を飛ばす。だが四人の姿などすでに影も形も見えなくなっていた。
今すぐ向かえば追いつけるかもしれない、そう考えて駆け出そうとするも晴子の放つ銃弾が足元に突き刺さっていた。
「なんや敬介…考えとること一緒やったんか。そうならそうと言ってくれりゃええのに…」
勝ち誇ったように笑うその顔に秋生は背筋を凍らせる。
「待っててぇな…すぐうちもそっち向かうで。一緒に観鈴守ろうな…」
473 :
加速する嘘:2006/10/27(金) 07:38:17 ID:/4Pwsh0dO
神尾晴子
【所持品:H&K VP70(残弾数13)支給品一式】
【状態:秋生と対峙】
古河秋生
【持ち物:S&W M29(残弾数1/6)、薙刀、ほか支給品一式】
【状態:左肩裂傷手当て済み、晴子と対峙】
晴子秋生共通
【場所:G−3】
古河渚
【持ち物:敬介の持っていたトンカチと繭の支給品一式(支給品不明・中身少し重い)】
【状態:正常、平瀬村に向かって逃走】
霧島佳乃
【持ち物:鉈】
【状態:同上】
橘敬介
【所持品:なし】
【状況:左肩に銃弾による傷、同上(支給品一式+花火セットは美汐のところへ放置)】
雛山理緒
【持ち物:鋏、アヒル隊長(13時間20分後に爆発)、支給品一式】
【状態:正常、同上(アヒル隊長の爆弾については知らない)】
四人共通
【場所:G−3から平瀬村方面に逃走】
【時間:1日目22:40頃】
【備考:秋夫生存ルートで関連は318と356 今のルート配分だと多分B-11とJ-3】
「Oh!このノート、本物だったネッ!」
宮内レミィはそう言って、目の前で倒れ伏せた少女達の生死を確認した。
首筋に手首、どちらも脈拍は感じられない。
このノートに書いてある通り、ただ人の名前を書いただけ。
それだけで、この効果。
「どういうMagicなのカナ。全然分からないヨ」
「そうだな、俺もこの状況がさっぱり分からねえ・・・説明してくれるよな、レミィ」
レミィの背後から響いた声は、彼女も聞き馴染んだ少年のもの。
「ヒロユキ!ハァイ、元気してた?」
「おう、バリバリだぜ。・・・で、これは一体どいうことだ」
「Why?」
「彼女等は、レミィを襲ってきたのか?だから、反撃したのか」
「何のコト?」
「・・・これは、レミィがやったことだろ?」
彼女の近くには二人の少女が倒れていた。動く気配はない。
それは先ほどレミィ自身も確認したことだから、答えはすぐ出た。
「Yes、このデス・ノートに名前を書くだけで人をmurderできるかチェックしたんだヨ!」
「は?」
「だから、このノート!ハイ、面白いヨ、見て見て〜」
レミィが浩之に押し付けたのは、あのボロボロの大学ノートであった。
「何だ、これ」
「拾ったヨ。ここ、人の名前を書くだけで殺せちゃうの!Let's Murder☆」
ビリ。
レミィのはしゃぐ声とそれは、同時に起こった。
ビリイィィ。
レミィの表情が固まるとそれは、ますます大きな音を辺りに響かせた。
「・・・ヒロ、ユキ?」
ビリ、ビリ、ビリ。
浩之は、無言でそれを引き裂いた。
ビリ、ビリ、ビリ。
彼女の話が本当であれ、嘘であれ。もうこれで悲しむ人が出ないように。
ビリ、ビリ、ビリ。
レミィはただ、それをぼーっと見つめていた。
浩之の行動を、止めようとはしなかった。
「はぁ、はぁ・・・」
風が吹く。紙ふぶきとなり、ノートの断片は目の前から掻き消える。
そして、それは舞散る花びらのように、島全体に広がっていった。
「Oh・・・モッタイナイ。」
「ああ、そうだな。レミィが言うとおり、もしあのノートに書くだけで人を殺すことができたんなら、このゲームはお前で優勝間違いなかっただろうな」
はぁ、と一つ溜息。
浩之は、レミィの目を覗き込むようにして・・・言った。
「なぁ、お前さ、本当にいつものレミィか?」
「ン?当たり前ヨ」
「いやさ、ほら。お前、弓矢持つと豹変すんじゃん。それじゃないのか?」
「???」
「そっか、・・・そっか。まいったな」
ポリポリ、頭をかく。
どう対処すればいか・・・彼は、思いつかないでいた。
大声で叱咤すればいいか、真面目に説き伏せるべきか。
だが、どちらもする気にはなれず。
あまりにも、彼女は無垢で純粋な・・・いつものレミィだったから。
だから、浩之はこのような問いかけしかできなかった。
「レミィはそれで、いいと思ってるのか」
「ン?当然ヨ」
即答。あまりの清々しさに二の句が告げない。
そして、それに続いたのはまたもや予想だにしない言葉。
「だって、これは夢ダモノ」
「・・・は?」
浩之の声が間抜けに響く。
レミィはいつもの、あのニコニコとした懐っこい表情で話し続けた。
「明日起きたら、いつものようにオハヨーって皆と会えるから大丈夫ネ。
この子達もそう、今回はゴメンナサイ。でも、今度会ったら謝るヨ、ちゃんと!」
呆気に取られる。気がついたら、苦笑いしかできない自分がいた。
「・・・そうか。レミィがそう言うなら、俺は止められないな」
「そうヨ、ヒロユキ。今日のワタシは一味違うネッ」
痛感。自分の言葉は、レミィに届かない。送らずとも分かる。
そう。だって、こうやってやり取りしている間に、レミィはこちらに向けて弓を構えてきたのだから。
矢もセット済み、それはいつでも放てる状態で。
もう、浩之にできることはなかった。
・・・正気のようで正気ではない彼女をどう説得するか、思いつくことができない自分は惨めだった。
だから、彼は微笑んだ。
せめて、彼女の夢が悪い形で覚めないようにと、一抹の望みを含ませて。それは、情けであり、同情でもあった。
「じゃあな、レミィ」
「ウン!グッバイ、ヒロユキ」
「また、明日」
ヒュンッと矢が放たれる。それは、一瞬の出来事。
狙い通り、レミィの矢はしっかりと浩之の眉間を貫く。
外すつもりなど、毛頭ないことが窺える一撃だった。
「ウ〜ン、もう疲れたネ。そろそろ休もうカナ〜」
つかつかと動かなくなった浩之に近寄り、はじめに殺した少年よろしくレミィは躊躇なく矢を引き抜いた。
溢れる彼の血にも気を止めずそこから歩き出す彼女は、やはりいつも通りの明るさのままのレミィだった。
だが。ここにきて、ふと罪悪感という感情も出てくる。
『あたし皐月、この子繭。今さ、人を集めて脱出図ろうと思ってんのさ!
よかったら、手伝ってよん』
『みゅ〜〜♪』
『わ、イタタっ!髪、引っ張らないで〜』
それは、結局数分しか保たなかった仲間に成り得たかもしれない少女達の声。
そして。
『また、明日』
大切な、友人の声。
「ウン、また明日ネ、ヒロユキ」
大丈夫、目が覚めたらいつもの部屋で、いつもの毎日が待っているはずだから。
草むらにごろんと横になり、レミィは静かな眠りについた。
宮内レミィ
【時間:1日目午後9時過ぎ】
【場所:F−8】
【所持品:和弓、矢・残り5本(回収したので)、他支給品一式】
【状態:ゲームに乗っている】
藤田浩之 死亡
椎名繭 死亡
湯浅皐月 死亡
支給品は全て放置。
(関連・5・150)(Aルート)
まとめさんへ
失礼しました、352の時間を午前0時に訂正してください
指摘ありがとうございました
言っちゃ悪いがアホ臭いつまらん上にしらける話だな
つーか、紙屑にしてもデスノって使えるんだよな?w
ちょ、デスノ島全体に広がったwww
「あたしに今出来ること……うーん、特に思いつかないわ」
藤林杏は、相変わらずロワちゃんねるの閲覧を続けていた。
「椋は今頃何をしてるんだろう」
そう言って、妹の様子を思い浮かべる。
「あ、そこのイケメンお兄さん、私とセックスしましょう」
「……イケメン狩りしてるに決まってるわね……
少しでも心配したあたしが馬鹿だった……」
彼女は視線をパソコンに戻した。
「あ、レスが付いた」
死亡者報告スレッド
3:びろゆぎ@管理人:一日目 14:36:47 ID:haKarowa3
>2
訂正します。013岡崎直幸は誤報。
PM14:30:00時点の追加死亡者一覧
031霧島佳乃
033草壁優季
034久寿川ささら
041上月澪
042河野貴明
043幸村俊夫
045小牧愛佳
046坂上智代
048笹森花梨
052沢渡真琴
054篠塚弥生
061醍醐
068月宮あゆ
077那須宗一
080仁科りえ
083雛山理緒
092伏見ゆかり
115柚原このみ
「朋也のお父さんは誤報だったんだ、よかった……って何この人数っ!」
杏はその後に続く死亡者の数に驚愕した。
「ゲームに乗ってる人ってそんなに多いんだ……あ、新しいスレッドが立ってる」
厳選無修正画像満載!!
1:名無しさんロワもん:一日目 14:42:15 ID:erogeota1
女子○生に生出しほんとにいいのかこれ!
ttp://********.******.******.html 「業者かよ!」
杏は思わず大声でツッコミを入れてしまった。
「いや、でもこれはこの島でしか使えないはずだし……
もしかして主催者の罠? うーん」
これは見ない方がいいのではないか、そうは思いつつも、
彼女はそのスレッドを閉じることが出来なかった。
ごくりと生唾を飲み込む。
無修正の文字に、彼女の性的好奇心は著しく刺激されていたのだ。
「まさかいきなりパソコンが爆発なんてことはないわよね?
別に……見ても……大丈夫……よね? まあいいや、見ちゃえ」
彼女はリンクをクリックした。
「あ、あ、あ、あーん!」
途端に大音量で女性の喘ぎ声が再生された。
画面には若い男女が交わる様が映し出されている。モザイクは入っていない。
「ちょ、ちょっと、いきなりっ!? 人が来たらやばいって!」
そう言いながらも、杏は画面から目をそらすことが出来なかった。
「こ、これマジですごいわ……こんなの見せられたらあたしもう……」
彼女は自らの秘所に手をのばし、
画面の中の男女を自分と想い人の朋也に見立ててまさぐり始めた。
この間に誰もこの場所を訪れなかったことは、彼女にとって非常に幸運だったと言えるだろう。
「ああ、朋也! 朋也! もっと突いて!」
さらにもう片方の手を胸にあて、揉みしだく。
「あぁーー!」
・
・
・
「軽く10回ぐらいイっちゃったわね。まああと90回ぐらいはイけそうだけど。
オナニーってなんでこんなに気持ちいいのかしら。
なんかもう殺し合いとかどうでもよくなってきたわ。
ご飯食べてオナニーして寝るだけ。それでいいんじゃない?
だいたい椋はおかしいのよ。寝ても覚めても
イケメンとセックス、イケメンとセックス、それしか頭にないのかしら?
女は愛する者のために処女をとっておくものよ。
私の処女膜は何度でも再生するとか言って、セックスの神にでもなったつもりなの?」
その通りである。
「ああ! なんだかイきたりないわ。やっぱりあれがないと!」
彼女はそう言って愛用のバイブを取り出そうとしたが……
「ない! あたしの朋也2号と3号がない!」
例に漏れず、彼女の所持品は主催者により没収されていたのであった。
なお、1号は過度の使用に耐え切れず天に召された。
「なんてことなの……限定生産の特製品にオリジナルの改造を施した
あたしの朋也2号、3号が……」
彼女はがっくりと項垂れた。
興が冷めたらしく、再びロワちゃんねるの閲覧に戻る。
「あら、またスレッドが立ってるわね」
参加者支給品報告スレッド
1:びろゆぎ@管理人:一日目 18:05:22 ID:haKarowa3
このスレッドでは、現在までに判明した参加者の支給品を報告していきます。
彼女はこのスレッドを読み進め、ひとつの支給品に目を止めた。
057春原芽衣 猪(ボタン)
「ボタン!? ボタンがこの島にいるの!?」
そう、そこには杏が手塩にかけて数々の性技を仕込んできた性猪ボタンの名があったのである。
「そうとわかればこんなことしてられないわ!」
彼女に出来ること、それはボタンの捜索、あとオナニー。
藤林杏
【時間:午後6時過ぎ】
【場所C−06鎌石消防分署】
【持ち物:ノートパソコン(充電済み)、包丁、辞書×3(英和、和英、国語)、支給品一式】
【状態:オナニーマスター、ボタンを探す】
→089, ルートD
杏はそんなキャラじゃねえだろ
同人ネタにまみれたみたいなキャラばっかりの中で
今さらそれを言うかよ、しかもDで
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Kanon 月宮あゆ
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Kanon 月宮あゆ
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∧! !:/ 小.`辷:リ `フ7′/.:レ } ハ
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ハ ̄ ̄ ̄`ヽl>ュ.. _ イ:イイムハ{ _ノ{_
ノ ̄ ̄ ̄ ‐- 、 ヽ/} |/_j_.ゝ┴‐´三弐
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i ヽ ヽ ヽ ゝ' i' i i 'i i i-―-| l l i 'i
| i、 'i ヽ ヽ,. ゝ´ | | トi'、l l || | |. |_|,. | i i l
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::::::::::::::'i i `く ,/ ` 、 _l _,.'i__i弋i:::: j| |ト:::,.,!|i'/ !,r/_
:::::::::::::::::::::r‐,ス i ! | | ! ー ‐- "/`y'ノ `,
::::::::::::::::::::i' `l_ i^l.ノ ヽイ"/` 'ヽ l ̄ ̄| /`y' )- ., /
::::::::::::::::::::::`- t:::... ,`' / ,/ .:::/ `:..., !、__,ノ ,. イ`yK `,
::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::/ !‐7 .:::/ :,-:::´....::´/ .:/'i::::::`ヽ人
::::::::::::::::::::::::::/::::::::::|´_,., ,. -‐ ´ / .:::/ .i i::::::::/ .::/-‐'i::::::!,:::::. 'i
::::::::::::::::::::::::::::`Y ´ ヽ ,. -‐ '" / .:::/ .i'i / :/ 'i:::::!,:::::. ヽ
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. \ \ └―┐.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.>、|.l.:.',.l、\ r. ヒ__ク |=V/.: .:.: .:.:.:.:| ニ 二
\ \_、、-┴-‐ヘ_,へ<⌒\Nl小 、 ー' イ.:.:. .:.:.:.:ィ.:.i:l 三 ナルちゃんだあ〜! 三
i ̄\ \ \\ \. ヽ'rr-、'.、 `' = .//.:.:.:.:.:.:.ノソノリ =_ _ニ
r' ´i > \_ \ヽヽ...<ヽ____ , ィ升'.:.:.:.:.:_.:(ノ /〃/// l | | l ヽ\\ヽ
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