ToHeart2 SS専用スレ 15

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273料理な不思議
 春うららかな日差しの、いつもの昼休み。
 いつものように屋上でレジャーシートと弁当を広げる今日この頃。
 タマ姉、時々このみ、プラス春夏さんの作るお弁当をみんなで一緒に「いただきます」。
 すっかりお馴染みになってしまったこの光景も、ずいぶんと心地いい。
 なんといっても勝手知ったる幼馴染との宴席は悪いもんじゃない。

「えへー、今日はお母さんのお弁当だよー」

 好みが大きめのランチボックスを自慢げに見せびらかす。
 その数ちょうど4人分。
 以前はタマ姉が俺と雄二とで3人分、このみは母手作りの弁当だったが、そのうち
 『明日がこのみがお弁当作ってくるね』と言い出し、『それならあたしがこのみの分も
 作ってあげるわ』と割り込み、『面白そうなことやってるわね』と春夏さんまで入ってきた次第。
 結果、なにやら話し合いがもたれローテーションが敷かれるようになったらしい。
 で、今日はこのみの母である春夏さんのお弁当というわけだ。
 さて、中身は何だろ。

「今日はね、サンドイッチセットだよ。ポットにはホットコーヒー♪」

 このみが大きめランチボックスを渡す。
 あけてみるとこれがまた、んー、いい見た目。
 ハムサンドに照り焼きチキンサンド、あ、レタスサンドにこれはタマゴサンドか。
 彩り鮮やか、ボリューム満点、しかも栄養バランスに偏りなく。
274料理な不思議:2006/09/03(日) 11:01:11 ID:Bjka6noU0
「ん〜、さすが春夏さんね。しっかり手の込んだお弁当」
「チビ助がこのレベルに達するのはいつの日かね〜」

 タマ姉はなぜか「主婦のお弁当」に興味があるらしく、春夏さんのときはいつも楽しみにしている。
 確かに美味いしね。
 で、雄二はいつもどおりこのみを茶化してランチボックスを取り上げられそうになる。
 まあ、いつもの光景。
 それじゃあみんな一緒に、
    「いただきます」
 と声がして、いつの間にか俺の手の中からタマゴサンドが消えていて、軽い既視感。
 あれ、なんか声は後ろのほうから聞こえた気がするなーと振り返ると、

「ん〜、美味いんよ〜、このタマゴサンド美味なりよ〜」
「笹森さーーん!」

 そこにはいつもの黄色い彼女がいた。
 誰あろう、ミステリ研究会初代会長、笹森花梨。無類のタマゴサンド好き。
 うかつだった、このパターンを予測していなかったとわ!

「何やってるの! てか、俺のタマゴサンド!」
「タカちゃん。目、悪くなった? タマゴサンド食べてるんだよ」
「そうじゃなくて、なんで勝手に俺のタマゴサンド食べるの!」
「部員のものは会長のものだよー?」

 うわぁ、出たよいつもの暴論。
275料理な不思議:2006/09/03(日) 11:02:05 ID:Bjka6noU0
 強制的に彼女の作ったミステリ研に加入させられて以来、こんな関係が続いている。
 購買でミックスサンドを買ってはタマゴサンドのみを奪われる日々、果たしていつまでこんなのが
 続くの「もひとつ」だろうわあああ最後のタマゴサンドがぁぁ!

「たかちゃん、修行が足りんよ?」
「笹森さん勘弁してくれよ! ああ俺のタマゴサンドが・・・」
「こらタカ坊、食事中に騒がしいわよ。静かにしなさい。
 それとそこの女の子、立って食べるんじゃないわよ。そこに座りなさい」
「はーい♪」

 ちょこんと笹森さんが俺と雄二の間に座る。
 まったく嬉しそうにタマゴサンドをもぐもぐと。

「タカ坊、そちらはお知り合い?」
「ああ、うん、俺が入ってる部活の会長」
「はじめまして、ミステリ研究会の初代会長にして名誉総裁、笹森花梨でっす」

 いつの間にか肩書き増えてるし。

「で、こっちがヒラのたかちゃん」
「おれはそのままかよ!」
「たかちゃん、格上げしたいんだったらUMAの研究実績くらい上げないと誰も認めてくれないよ?」
「・・・いや、よく考えたら別に格上げしたいわけでもないし認めてもらいたくもなかったよ」

 あぶないあぶない。
276料理な不思議:2006/09/03(日) 11:02:53 ID:Bjka6noU0
 いつものごとく笹森会長のペースに飲まれるところだった。

「ところでたかちゃんたちっていつもここでお昼食べてるよね」
「へ、なんで?」
「わたしいつも屋上にいるから見えるんよ。四人でおいしそーなの食べてるの」
「ヘ、笹森さん屋上にいた?」

 覚えがないな・・・?
 屋上も広いとはいえ障害物はないんだし何より笹森さんは目立つし、
 いれば見逃すことはないと思うんだけど。

「あ、屋上って言っても私がいたんはあそこだよ」

 そういって笹森さんが指差した先は・・・給水塔の上っ!?

「あそこはラジオの電波が良く入るんよー。誰も上ってこないから邪魔も入んないし」

 そりゃー誰も行かないだろ。
 一昔前の不良ドラマじゃあるまいし。 
 てかわざわざ屋上まで来てラジオ聞いてるのか。持ってるようには見えないけど。

「たかちゃん、もしかしたら昼間でも宇宙からの電波が来るかも知らんでしょ?
 ミステリは気を抜いてちゃあダメなんよ」

 さいですか。
277料理な不思議:2006/09/03(日) 11:03:44 ID:Bjka6noU0
 弁当に関してはとりあえず説明する。

「ほへー、お弁当の作りあいねー。たかちゃんは作んないの?」
「いや、俺は料理できないし。タマ姉とか春夏さんの食べてるほうがいいし」
「むぅー、タカくんこのみのお弁当はー?」
「あー、もちろんこのみの弁当もうまいぞ。こないだのコロッケはよかったな」
「えへー」

 単純な娘よ。
 あー、この照り焼きチキンサンドはいい味だな。ピリッとマスタードがきいてて美味しい。
 次はレタスサンド、と。
 タマゴサンド以外は奪われる心配がないから安心して食べられる。
 心安らぐひと時。
 突然、笹森さんがこんなことを言い出した。

「ね、ね、たかちゃん。わたしも仲間に入れてくれない?」
「はい?」
「なんか面白そうなんよ。みんなでおんなじお弁当食べるって」

 静かなひと時を叩き割られるような気がした。

「や、笹森さんって料理できたっけ?」
「む、疑ってるね? たかちゃん食べたら腰を抜かすよー? ダメ?」
「いやそれは・・・タマ姉、どうする?」
「私は別にかまわないからタカ坊が決めればいいわ。私もちょっと興味あるし」
278料理な不思議:2006/09/03(日) 11:04:22 ID:Bjka6noU0
 うわぁ、あの目は面白いものを見る目だ。
 しかも俺が決めればいいと言っておきながら断るという退路をふさいだ!
 もう、認める以外に道はない。

「まあ、タマ姉がそういうんならいいよ」
「じゃあ明日は私がみんなのお弁当持ってくるよ。リクエストある?」
「ちゃんと食べられるものを」
「あたし今たかちゃんを訴えたら勝てるかな?」

 ごめんなさい。

 結局こう決まったわけだけども。
 正直ちょっと心配だった。
 なんといっても毎日毎日ミステリを追い求めてる笹森さんの作る料理だ。
 ツチノコの煮物とかグレイのカツとかチュパカブラサンドとか・・・
 まさかね。
 まさかそれはないよね。
 あともう一つの心配は、ランチボックスいっぱいに広がる黄色と白の世界。
 まさかね。
 タマゴサンドのみってこともないよね。

279料理な不思議:2006/09/03(日) 11:06:56 ID:Bjka6noU0
 そしてお待ちかねの昼休み。
 このみたちと屋上へあがると、すでに彼女は来ていた。

「あ、たかちゃんやっほー」

 大きめのレジャーシートを広げて、その上でどっかり胡坐をかいて菜ばしを持って、
 ちょっとまて菜ばし?
 よく見ると後ろには馬鹿でかいショルダーバック。
 さらになんだあれ? スプレー缶みたいなのに器具がついててそれがコンロにつながってて、
 コンロ? よく見るとすでに火がついていて鍋までしっかり乗っている。

「さ、笹森さん、それ何?」
「サバイバル用の携帯コンロ。火力が強くて結構便利なんよ」
「いや、そうじゃなくてなにしてるの」
「? お湯を沸かしてるんだよ。もうちょっと待ってね、すぐできるから」

 あああ話が通じてない!
 学校の屋上でコンロ使ってお湯を沸かしてるこの光景の異常さが伝わってない!
 タマ姉もこのみも目の前のこの光景に空いた口がふさがらない。

「あー、なんつーか学校で火を使ってるのはやばくねーか?」
「雄二、それはわかるんだがたぶん言っても無駄だ。いろんな意味で」
「ささ、みんな座りんさい。もうすぐいいもんできるから」

280料理な不思議:2006/09/03(日) 11:07:39 ID:Bjka6noU0
 するとぽかんとしていたタマ姉が急にあわてて、

「お、女の子が胡坐かいちゃダメ! 見えちゃうでしょ!」
「大丈夫よ、今日はスパッツはいてきてますから」

 ぴらぴらと見せびらかすスカートの端には確かに黒いスパッツが。
 このためにわざわざ着てきたのか。
 正直それでも・・・ちょっと意識しちゃうんだけどな・・・。
 ぐつぐつとお湯が沸いたところで、バッグから小さな発泡スチロールの箱を取る。
 たしかトロ箱って言うんだっけ。高速のSAで漬物のお土産が入ってそうなあれ。
 その中からは小さなタッパーに入った小さな野菜が。

「冷凍のミックスベジタブルを入れてー、もうちょっとお湯があったまったらコンソメを入れて出来上がりだよ」
「コンソメスープなんだ。それならわざわざコンロで作らなくても」
「まったくたかちゃんはダメダメだね。こうやって作るから美味しいんよ」

 どうやら持論があるらしい。

「本当はこのスープにインスタントのラーメンとか入れても美味しいんよ。きょうはやんないけど」
「ああそれいいな。俺も食いたいぜ」
「えへへ、外で食べるスープものは本当においしいんよー」
「わかるわかる、俺も姉貴に家追い出されたときに庭でインスタントラーメン食ったことが」
「あんた庭でそんなことしてたの」
「い、や、姉貴、昔の話だよ昔の」
281料理な不思議:2006/09/03(日) 11:09:40 ID:Bjka6noU0
「はい、お弁当。弁当箱5つとか大きいお重がなかったんで普通のタッパーだけど」

 バッグから続々と出てくるタッパーの中身は、心配していたものとは違った。
 おにぎり、鳥のチューリップ揚げに卵巻きインゲン、玉ねぎのマリネサラダ、
 後はポテトサラダなどメニューがいくつかがメニューごとに分かれて入っていた。
 かなり本格的なお弁当だ。

「おお、すげー」
「タマゴサンドいっぱいとかじゃなくて本当によかった」
「たかちゃんはそっちのほうがよかった?」

 いやいやいや、そうじゃなくて。
 笹森さんはにやりと笑ってバッグから普通の弁当箱を一個取り出した。
 それをずい、と俺の前に。

「はい。たかちゃんは特別にこれだよ」
「え、俺だけ?」
「そうだよー。特製なんよー」

 笹森さんの思いっきりの笑みと、ちょっとだけいやな予感。
 受け取って、もしものときのための覚悟を決めて、かぱっと開封!
 ・・・・・・。
 ・・・えっと。

「笹森さん・・・なにこれ?」
「グレイ弁当♪」

 そこには白飯の上に鎮座したグレイ様がおりましたとさ。
 うう、目の桜デンブがなんか嫌だよう・・・。
282料理な不思議:2006/09/03(日) 11:10:43 ID:Bjka6noU0
「はいはい、遠慮なく食べてね」

 紙コップに出来上がったコンソメスープ、この温かさがなんかいい。
 一口、ずず、はー。
 うまい。
 何でだろ、普通のコンソメなのにものすごくうまい。

「わぁー、すっごくおいしい!」
「うん、いけるいける」

 雄二はすでにおかずに手を伸ばしてがっついてたりする。
 じゃ俺もグレイ様に失礼して・・・

「笹森さん」
「なにかな、たかちゃん」
「何でウィンナーがツチノコになってるのさ」
「お、気づいたね。花梨特製のミステリおかずだよー、たくさん食べてね」

 ・・・・・・。
 や、もう何も言うまい。
 芋にビッグフットの足跡がついてたり卵焼きがアダムスキー円盤型になってたり、
 あ、リンゴの皮がウサギじゃなくてネッシーになってる。
 細工包丁?

283名無しさんだよもん:2006/09/03(日) 11:18:19 ID:y2nR8JM2O
支援など
284名無しさんだよもん:2006/09/03(日) 11:21:13 ID:vfm8LUrX0
<CM>
285名無しさんだよもん:2006/09/03(日) 11:48:31 ID:vfm8LUrX0
<支援>
286料理な不思議:2006/09/03(日) 12:02:29 ID:Bjka6noU0
「これはちょっと味が変わってるわね。これどうやって味付けしてるの?」
「ドレッシングで一夜漬けにして揚げるんよ。下味がついていいんだけどつけすぎると
 味が濃くなるからその辺の見極めがポイントなんよ。
 ちょっと洋風になって美味しいっしょ?」
「うん、いいわね。こっちのお漬物は?」
「自家製の三五八漬けだけど、ちょっと塩と米と麹の配合いじってお好みの味に変えてあるんよ。
 あんまり塩味が濃いのは好きじゃないから」

 タマ姉はすっかり料理談義を繰り広げている。
 うん、確かにから揚げの味が洋風だったけどそうやってたんだ。
 雄二とこのみなんかもうすごい勢いで食べてるし。

「わ、わ、これおいしい!」
「あ、チビ助俺のおかずを取るな! こっちの玉ねぎでも食ってろ!」
「ユウ君ずるいよ! 私もその卵焼き食べたいんだもん!」
「ケンカしない! おかずはたくさんあるでしょ」
「タマお姉ちゃん、おにぎりの具に味噌が入ってるよ!」
「あ、それはネギ肉味噌。ちょっとの量でご飯がいっぱい食べられるから好きなんよ」

 ん、いつもの風景。
 コンソメをずずっと。
 はー、うめ。
287料理な不思議:2006/09/03(日) 12:03:00 ID:Bjka6noU0

 ごちそうさまでした。
 紙コップはコンソメじゃなくて温かい緑茶、これはポットに入れて持ってきたものだ。
 お茶までコンロで沸かすのは燃料がもったいない、らしい。

「今日のお弁当は美味しかったでありますよー」
「ああ、花見かなんかみたいで面白いな」
「うん、面白い話も聞けたしね。笹森さん、帰ったら試してみるわ」

 タマ姉や食いしん坊ズにもおおむね好評の様子。
 笹森さんのミステリ満載弁当が自分だけでなんとなく良かったような、損したような。

「ね、ね、たかちゃんの感想は?」
「え、感想」
「おいしかった?」

 一瞬答え方をためらったが、特に考えることはない。
 正直な気持ちで、

「うん、おいしかった。笹森さん料理上手だね」
「えっへへ」

 にやりと笑ってVサイン。

「いやーほめられると照れるんよー」
「でも意外だったな。笹森さんが料理できるって」
「む、たかちゃんそれはちょっと聞き捨てならないよ。会長侮辱は万死に値するんよ?」
「うわ、ごめん、そういう意味じゃなくって!」
288料理な不思議:2006/09/03(日) 12:04:18 ID:Bjka6noU0

「たかちゃん、料理はミステリなんよ」

「はい?」
「ただのお湯に鶏がらを入れたらガラスープになる。
 お肉も焼く、茹でる、挽き肉にするので味が変わるし、お魚もそう。
 塩加減一つでおいしくもまずくもなるんよ。
 こんな身近にあるミステリ、極めたいと思わないかな?」

 ああ、なるほど。
 この料理も、彼女の好奇心の現われなんだ。
 不思議に思うことをとことん突き詰める、その点ならUFOも料理も一緒ってことか。
 笹森さんらしい、というか。
 不思議にも納得してしまった。
 
「じゃ、そのコンロとかはなに?」
「だってビッグフット探索とかで泊り込みになるのに自分でご飯作れないとつまんないでしょ?
 このコンロだってそんなに高くないし、持ってればいろいろ便利なんよ。
 あ、こんど一緒に星を見に行くときにまた持っていくから何か作ってあげるよ、たかちゃん」

 ・・・・・・また、行くのか・・・。
 まったく聞いてないぞ。しかも決定事項のように言ったな。
 ・・・違うな。
 もうすでに決定事項なんだ、きっと。
289料理な不思議:2006/09/03(日) 12:04:57 ID:Bjka6noU0
「あれ、タカくん達、お星さま見に行くの?」
「ああ、なんかそう決まったらしい」
「すごーい、天体観測するんだ」

 いやこのみ、あれは天体観測なんて生易しいもんじゃないぞ。
 夜間行軍にやってることはUFO観測だ。
 しかも宇宙人召還儀式というイベントおまけつき。

「へー、ミステリ研ってそんなことまでやんのか」
「ミステリなことならなんでもアリなんよ。スケジュールさえあえば一緒に行かない?」
「さ、笹森さん!?」

「タマ姉さんも一緒にどう? たまには面白いっすよ」
「んー、あたしはちょっと」
「(ひそひそ)人里はなれた山の中で星空を誰かさんと一緒に見上げるイベントなんてそうそうないっスよー」
「前向きに考えるわ!」

 わ、罠だーーーっ!
 ひょっとしてここまでの流れ全部、笹森さんの罠なのか?
 タマ姉を抱きこんで、このみと雄二をついでに巻き込もうとしている罠なのか?
 このままミステリ研へ誘導する自然な流れを作る罠なのか!?
 そ、阻止せねば!

「や、タマ姉、そんなに楽しいものじゃ」
「タカ坊、楽しみね〜」

 ああああああああああ。
 笹森会長のにやりと笑った顔が、今だけは悪魔の笑みに見えた。
290料理な不思議・完:2006/09/03(日) 12:23:54 ID:Bjka6noU0
というわけでどうも、267です。
実に久しぶりの二次創作SS、東鳩2では初書きです。
長々とつーか長すぎるものでどうもスイマセンした。

ぶっちゃけ内容的には花梨会長が料理したってだけの話なんですが。
「料理はミステリ」は十分彼女にとって動機になると思うんですわ
なんかいらない子扱いされて久しいけど、キャラ立ちがすばらしいんで好きです。
続きとかも考えちゃあいるんですが、それは要望しだいってことで。機会があれば

>>283>>284>>285の方々、支援ありがとうございました。
291名無しさんだよもん:2006/09/03(日) 12:30:43 ID:vfm8LUrX0
乙。確かにゲーム内での行動が偏りまくっていた分、二次創作で世界が広がりそうなのが花梨の特徴だね。
292名無しさんだよもん:2006/09/03(日) 13:20:55 ID:jYDBMGHi0
乙〜
要望しだいって一言がなければ満点だった
293名無しさんだよもん:2006/09/03(日) 13:42:06 ID:MijSCzHQO
>>290
乙です。期待を裏切らないグレイ弁当わろす
続編じゃなくてもいいから次回作希望
土曜日。雄二はとっても気味が悪かった。
いや、雄二が気色悪い男という意味では、とりあえず今はなくて、この場合雄二は主語。
述語は、
「おーい、姉貴、時間ねーぞ、今日は先行ってるからな」
「え? あ、あら、もうこんな時間。今行くから少し待ちなさい」
なにやら洗面所に籠もって出てこない雄二の姉である。

昨日の放課後、環は少し遅く家に戻ってきた。
遅く、といっても戻った時間は普段の誤差の範囲内に収まる程度、
どうにも普段の範囲を飛び出していたのは彼女の態度の方で、
先に帰っていた雄二に気づかずにぼうっと廊下を通り過ぎたかと思うと、
「おかえり」の声を掛けられてビクついたり、急に声掛けるなと怒ったり、
夕食の支度中も一人で思い出し笑うわ首振って溜息くわ鍋焦がすわ、
姉の喜怒哀楽は見慣れている(身に染みている)雄二にも、
これだけ不安定な環の姿はちょっと記憶にない。

明けて今朝。環は普段にも増して早起きで、
雄二が寝惚け眼を擦りながら茶の間に降りたときにはびしっと身支度を整えていた。
なのに、出掛けに玄関前の鏡を見ていたと思ったら、洗面所に引っ込んで出てこない。
「待たせたわね。さあ、行きましょう」
しかもやっと出てきた姉は、妙に気合いの入った表情をしている。
なんだかな。雄二は首を捻った。

ともあれ、いつものように貴明&このみと合流した雄二達だが、
「タマおねえちゃんおはよう!」
「おはよう、このみ」
「あ、……おはよう、タマ姉……」
「……おはよ。」
今度は貴明と環がいまひとつぎこちない。
おかしいのは、環だけではないようだ。
「わ、タマお姉ちゃん、今日はなんだかカッコイイね」
このみといえども、女の子はこういう所に敏感なのか。
「そ、そうかしら、普段どおりだけど」
「なにが普段どおりだよ。俺が声欠けなかったら今頃ちこkwぇぅえEEEEE!」
このみの態度と、雄二の被害は、いつもどおりだったが、
「……」
やはり貴明は曖昧に笑ったまま、いささか居心地が悪そうだ。
「おはようございますお姉様!」
さらにちょっとした異常。
いつも3本がハモる朝の横槍が、今日は1本だった。
「おはよう。あら、薫子とカスミはどうしたの?」
「実は、カスミが体調を崩しまして」
あの無敵っぽい娘でも、風邪は引くらしい。
「それは大変ね。あなた達、まだ九条院の寮にいるのでしょう?」
「はい。同室の薫子は看病についています」
あまり寮に世話はかけられませんから、と今日は一人ぼっちの玲於奈は付け加えた。
新年度からの計画的犯行だった環と違い、急な転校だったため、
という理由が本当かどうかは不明だが、彼女らは引き続き九条院の寮に入る事を許されていた。
ちなみに基本的に二人一部屋で、薫子とカスミはルームメイト、
玲於奈は「偶然」相手がいないために一人で部屋を使っている、と、環は話していた。
こちらも理由が本当かどうかは、雄二の関知する所ではない。
「明日は大丈夫ですので、予定通りに」
「そ、そう? 無理しなくていいのよ?」
「いいえ! 私たちの都合でお姉様にお手数をおかけすることはありません!」
雄二には良くわからない会話が続く。
「それに……」
玲於奈は貴明の方に視線を向ける。
「あの男に余分な時間を与えたくはありませんから」
「……なにがあったんだ?」
「……頼むから聞かないで」
聞かないで、と言われては貴明を深く追及しなかった雄二だが、事情は気になった。
といっても環が教えてくれる筈もなし。
駄目もとで、休み時間の環詣で帰りの玲於奈を捕まえる。
「おい」
「なんですの?」
「朝、姉貴に言ってた明日の予定って……」
「貴方には関係ありませんわ」
駄目だった。
玲於奈は雄二に追撃の時間も与えずに教室に戻る。
雄二は、もう慣れっことはいえ失礼な態度にムッとした顔をしたが、すぐに表情を戻した。
自分のクラスに戻った玲於奈は、誰にも声を掛けず、誰も彼女に声を掛けない。
いつも三人でつるんでいて、しかもあの性格では当然なのだろうが、
なんとなく、彼女の周囲には隙間が空いているような、そんな錯覚を雄二は覚えた。

釈然としないまま放課後、貴明はいつもの図書館の仕事らしく、雄二と環とこのみ、三人での帰宅となった。
玲於奈はというと、途中までは着いてきたもののバス停で別れた。こちらも用事があるのだとか。

そして、家に戻っても環は変だった。
「姉貴ー、ちょっといいか?」
「え、ちょ、ちょっと待ちなさい」
どったんばったん。
「い、いいわよ」
雄二が部屋の扉を開けると、環が洋服屋さんを開店している。
「……なにやってんの?」
「あ、ちょっと、ねっ、夏物を出そうかと思って」
「冬物も出てるじゃん」
「そ、それは寮でしまいっぱなしだったから虫干ししようかと」
「ふーん。俺買い物行くけど、お使いあるか?」
「えっ、あっ、そうね、夕食の……あ、今メモを渡すからちょっと待ってね……あぁ、冷蔵庫のものでいいかしら……」
「……行ってくる。外で食ってくるから俺は晩飯いいや」
全く落ち着かない姉を家に残して、雄二は街に出た。
「ったく、春も終わりだってのに、おかしな連中の相手はしたくねえってな」
唐突な姉の攪乱に、車中でぼやいた雄二はしかし、
「さて、どっから回るか……っとっ!?」
「きゃ!? ごめんなさい前を見ていなくて、って貴方は!」
「悪ぃ悪ぃ、って、おろ? 玲於奈?」
バスを降りてさっそくの駅前で、おかしな連中の筆頭に出会ってしまった。

「メモなんか持って、買い物か?」
私服姿で駅前にいた玲於奈に、別に興味があったわけでもないが、半分社交辞令。
「あ、貴方には関係っ!」
「ありませんってか。はいよ。ぶつかって悪かった。前見て歩けよ。じゃあな」
定番の反応にげんなりして背中を向ける。
が、その背中に、今度は玲於奈が声を掛けた。
「あ、ご、ごめんなさい、ちょっと待ってくださる?」
呼び止めるくらいならつっけんどんにする必要もあるまいに、
雄二は呆れたが、玲於奈としては一種の条件反射なのかも知れない。
「なんだよ、また電車賃がないとか? それとも道に迷った?」
「そ、そのような不覚を繰り返す私ではございません!」
ちなみに先週雄二が貸した電車代に関しては、
律儀に転入初日に返却されている事を、彼女の名誉のために申し添える。

「……ただ、場所を教えていただきたくて」
道に迷ったのと似たようなもんじゃねーか、と混ぜっ返しても仕方ない。
「はあ……どこ?」
「いえ、実は何処と特定しているわけではないのですけど」
「はあ?」
怪訝な雄二に、言いにくそうに口ごもる玲於奈。
「その……この付近で……」
やや顔を赤らめながら、玲於奈の依頼は、
「年頃の男女が、デートするような場所を教えてくださいません?」
これまた、奇妙なものだった。
「なんだそりゃ。どういう風の吹き回しだ」
「わ、私の事情は貴方には関係ありません!」
関係ありません本日3回目。
これが人にものを頼む態度だろうか、等と言っても無駄な事は理解している。
「姉貴をデートにでも誘うのか?」
今までの状況から推測してカマを掛けてみる。
「ち、違います! ああっ、それだったらどんなに喜ばしいことか!」
的中ではなかったようだが、反応はあった。
「楽しくねえ事なのか?」
「勿論ですわ。まったく、お姉様があの男などと……ええい忌々しいっ!」
「なに? デートすんのは姉貴と貴明?」
「! 何故それを!」
「……それはギャグで言ってるのか? しかし、そういや二人ともおかしかったな」
「そうですわ、お姉様の弟君である貴方ならご存じですわよね?」
「なにを?」
「お姉様とあの男は、付き合っているのですか?」
「ぶっ」
玲於奈の発言に、吹き出す雄二。
「汚い……しかし、やはり、嘘なのですね。そうですわ、そんな事、天地が逆さになっても有り得る筈がございませんわ」
「こらこら、一人で納得するな」
「でも、違うのでしょう? お姉様の想い人が、あんなみすぼらしい凡庶なわけが……」
「そっちは知らねーよ」
間にこのみが挟まっている事情もあって、環の態度は判然とはしていないが、
雄二の目から見ても、姉が貴明を好いている事は疑いない。
「しかしなんでそんな話になってるんだ?」
「えっ、そ、それは貴方には……」
「関係、あるだろう。ここまで喋ったら」
苦笑して切り返す。
「う。確かに……仕方ありませんわね」
自分から話を振った自覚はあるのか、玲於奈は観念して雄二に事情を説明した。
玲於奈の話は概ね以下のとおり。但し、評価は彼女の主観である。
金曜日の放課後、雄二の忠告を容れた三人娘は、貴明に果たし状を出した。
そして、神社裏で貴明に環と縁を切るよう説得したが応じず、押し問答となったところ、
環が現れ、三人の直情的な言動を批判した上で、
何故に自分と貴明に干渉するのか問うたので、三人は思い切って環に積年の想いを告げた。
すると環は、やや動揺した様子で、
自分は貴明と付き合っているから三人の気持ちには応えられない、と言い訳した。
「私たちの気持ちを無下に断れないお姉様が気を遣われて嘘をつかれたのだと思いますが」
「とにかく、事の真偽を確かめなければなりません」
「そこで、明日お姉様とあの男が一緒に出かけるのを、私たちが観察させて頂く事になったのです」
以上、説明終了。

「それはまた……ご苦労なこった」
溜息をつく雄二。
「でも、なんでお前がデートの場所探してんの?」
「今回の事は、あの男がお姉様の想い人としてふさわしいかどうかの試験を兼ねています」
「ですから、こちらの指示通りに行動していただこうと思いまして」
「試験に指示、ねぇ……」
傲慢な物言いに反感は覚えるが、被害者が貴明な限りは文句を言う気もない。
「しかし、俺がそんなの手伝う義理はねえぞ」
「それは、そうですけれど。」
率直な発言。玲於奈は顔をしかめる。
「薫子がいれば、なにも貴方に頼む必要はありませんでしたのに……」
あくまで自分の都合から入る玲於奈に苦笑しながら、
雄二の脳裏には、昼間見た玲於奈の孤独な姿が浮かんだ。
「わかりました。話をしただけ時間の無駄でしたわね。失礼します」
玲於奈は言い放って目をメモに戻し、身を翻して歩き出す。
(一人で出歩いたら、また迷子になるのがオチじゃねーのか?)
怒っているのにどこか頼りない背中に、そんなことを思った瞬間。
「待てよ」
雄二は思わず、玲於奈を呼び止めていた。

「そのメモは、薫子のか? 見せてみろ」
「なんですの? 関係ないんでしょう?」
「拗ねるなっての。姉貴絡みなら無関係ってわけでもないし、付き合ってやるよ。どれ……」
彼女の手からメモを取り上げて目を通す。

1.“遊園地”等の大きなテーマパーク
2.デパート等、お姉様に相応しい店でショッピング
3.オシャレな喫茶店で軽い食事

「……けっこう、適当なメモだな」
「薫子は、自分で調べて回るつもりだったようなのですけれど」
今までの接触で薄々わかってはいたことだが、
三人娘の実質的なリーダーは玲於奈ではなく薫子のようだ。
「この辺でテーマパークってえと、遊園地と水族館くらいだな」
頭の中でざっと所要時間を計算してみる。
「離れてるけど、中を見る必要はないなら両方行ける。遊園地から回るか」
「おまかせします」
強気な態度は崩さないが、ほっとした様子の玲於奈に、雄二は少し満足感を覚えた。
遊園地には電車を使う必要がある。二人は駅に向かった。
待合い室で時刻表をチェックする玲於奈。
「家に戻ってからルートを考えますから、参考に」
「別にいいけど、明日日曜日だぞ」
「う゜、わ、わかってましたわ」
じゃあ、なんでメモを取り直しているのか、とは聞かぬが花で改札をくぐる。
「定期は使えないからな?」
「わかってますっ!」
がたん、ごとん、
で、動き出した電車の中で、雄二は玲於奈にメモ用紙サイズの冊子を渡す。
「なんですの、これ?」
「時刻表」
「〜〜〜〜〜〜っ!」

遊園地は街中からかなり離れているかわりに、規模の方もかなりのものだ。
「へえ……」
近くまで来て広さと施設に驚いたか、赤髪の少女が感心したような声を漏らす。
「ここは初めてだろうけど、金持ちなんだからT○Lとか、行ってねえの?」
「小さい頃は、親戚に連れて行って貰ったことがありますけど」
やや意外な反応を雄二問うと、玲於奈の目つきがキッと元に戻る。
「このような子供だましな所、大きくなって行く所ではありませんわ」
「さよか。ま、場所と時間は大体わかっただろ。戻るか」
「あ、え? ええ」
頷いた玲於奈だが、明らかに後ろ髪を引かれている。
「……あまりのんびりもできねーけど、中も覗いてくか?」
ここは1日券などもあるが、基本はアトラクション別料金なので入場料自体は高くない。
「べ、別に興味は……」
「ぐるっと回るだけだ。ほれ、通行の邪魔」
土曜の午後、それなりに人はいる。
言葉と表情が真逆の玲於奈を、雄二は多少強引に入口に引っ張った。

「うわぁ…」
園内に入ると、間近に見るアトラクションの迫力に驚く玲於奈。
「あれは、なんですの?」
「何と言われても、普通のジェットコースター」
「あちらは?」
「急流すべり。ボートで流れを滑る」
「危険なのでは?」
「ロープで支えてるから大丈夫だろ」
「ふーん。あっ、箱が落ちてますわっ!事故!?」
「いや、フリーフォールだから、元からああいうもんだ」
子供だましにきっちり騙されている少女に、
意外と律儀に相手をする、今日の雄二であった。
302名無しさんだよもん:2006/09/03(日) 20:34:27 ID:i1OPkqTS0
第3話は長くなったのでA,Bに分けました。Bパートは、後で投下します。
>290
乙です。個人的にはこれくらいの文字量だと読みやすくていいですね
なにげに芸が細かくて料理上手な花梨に萌え〜
「そろそろ戻らないと時間なくなるな」
「あ、そ、そうですわね」
アトラクションに入ったわけではないが、敷地を1周するだけで結構な時間が過ぎた。
若干名残惜しそうな玲於奈を連れて駅に戻る。
「っ、歩きづらいったら」
デートのつもりなら帰るには早い時間、人の流れは逆になる。
「っ!」
正面から着た女性にぶつかって、玲於奈がよろけた。
「おっと」
手を伸ばして体を支える。
「あっ! だ、大丈夫ですっ!」
玲於奈はいささか過剰反応気味に雄二から飛び退く、
と、また別な相手にぶつかって押し戻されてくる。
「まわり見ろって」
「見てますわ!」
言い返してから、きょろきょろ左右を見渡すと、
周囲の視線に気づいてまた頬を赤くする。
「あ、貴方が急に手を出すからっ!」
どうみても自分の言動が目立っただけだろう。
お礼を言え、と言うつもりもないが、つくづく性質が悪い。

(黙っていれば美人なんだがなぁ)
今更ながら疲労感を覚えた雄二だったが、
「(あの娘美人だねー)」
「(赤くなっちゃって、可愛いねー)」
通りすがりのカップルの会話が聞こえて、気を取り直した。
(逆に考えるか。性格悪くても美人は美人、連れて歩く機会は貴重だ)
「なにをぶつぶつ言ってるんですの、次に行くのでしょう?」
「へいへい。一度駅まで戻るぞ」
「あ、お待ちになって」
足を速めた雄二の後ろを、玲於奈は慌てて付いていった。
水族館は、遊園地に比べるとだいぶ街寄りにある。
「バスで行くけど、電車で行くんなら……」
雄二は、ちょっと意地悪な目をする。
「お前が先週間違えた、あっちの駅から乗る」
「終わった事を蒸し返さないでくれませんこと!」
そっぽを向く玲於奈。会って一週間で、この横顔を何度見たことやら。
「学校の方からも同じ路線だけど乗るバス停違うから気を付けろな」
「どこから乗るんですの?」
懐からA4版の小冊子を取り出してきた。
「ふっ、時刻表ですわ」
バス停でなにか取ってたと思ったら。しかし、携帯版もあるだろうに。

玲於奈に路線を教えているうち、すぐに目的地に到着する。
「ふーん」
水族館の外観は、玲於奈にそれほど感銘を与えなかった模様。
「遊園地の方が大きいですわね」
「当たり前だ」
こいつ、実はかなりの天然だな。雄二が呆れる要素が、またひとつ増えた。
水族館は入場料が高いので中に入ることはせず、入口までで引き返す。
「こんな所もデートスポットですの?」
「……だからさ、少しは周りを見ろって」
直接の回答がなかったせいか、不満げにあたりを見回した玲於奈は、
水族館周辺で歩いている、もしくはいちゃついているカップルの数に驚く。
「ま、まったく。世の中には暇人が多いのですね」
「傍目から見たら俺達だって似たようなもんだと思うがな」
「えっ」
再度、今度は周囲と自分達を見比べた玲於奈の頬が、見る見るうちに紅潮した。
自分達がカップルに見られている蓋然性に、今更気がついたらしい。
「も、もう戻りますわよっ」
「おい、走るなって」
今度は、雄二が玲於奈の背中を追う羽目になった。
「ショッピング、ったってなあ」
小さくもないが特に大きくもないこの街では、一軒のデパートで事足りる。
「車があればバイパス沿いにショッピングモールなんかもあるけど」
学生には無理な話だ。
仕方がないので一応、デパートの中を巡る雄二と玲於奈。
「……俺は何も買わないぞ」
「私も別に用はありません」
「出るか」
「ええ」
特にイベントも発生せず、デパートを出たところで、二人に唐突な声が掛かった。
「ちょっとお時間よろしいですかぁ〜?」
女性二人に、なにやら機材を担いだ男性一人。TV局では、ないようだが。
「なんだぁ?」
「○○って雑誌の者なんですけど」
雄二も玲於奈もその系統には詳しくないが、若者向けのファッション雑誌だった筈だ。
「街で見かけた美男美女って企画の取材をしてるんで、よろしければ5分くらいお話いいですか?」
「いや、時間ねーから」
「あ、着てるものとか聞きたいだけですから」
面倒は避けたい雄二は断ったが、相手に頑張られてしまった。
「そっちのお嬢さん、そのトレーナー×××のですよね?」
「え? まあ、そうですけれど」
女性記者(?)が言ったのは結構な高級メーカーだが、玲於奈はあっさり肯定する。
「下も高そうな……靴って、これ……」
「○×△ですわ」
「げ、本物?」
「失礼ですわね。偽物など買いません」
すっかり巻き込まれて質問に応えている玲於奈。
彼女の自尊心が満足するような会話であれば波風は立つまいと雄二は傍観。
実際、順調に問答は進んだが、終盤の質問。
「隣の彼とは、いつから付き合ってるの?」
波風立った。
「うーん」
15分後、薫子メモその3の「オシャレな喫茶店」らしき場所。
なんってことはないオープンカフェだが、まずこの辺りでは上出来だろう。
本来は店先に並んでいる石のテーブルが良さげだが、
二人としては目立つのも嫌なので、店内に席を取っている。

で、頼んだパスタを待ちながら、
やや不機嫌な表情で唸っているのは、実は雄二の方だったりするのが世の不思議。
「まだ気にしてるんですの?」
逆に呆れた口調で、半ば面白がってるのが玲於奈。

先程の路上、件の質問に対して、
「ななななな、なにをおっしゃるのですっ!」
「あら? 照れた? 実は最近とか? もしかして初デートとか?」
「私とこのおと……この人は、恋人などではございません!」
案の定、烈火の勢いで否定する玲於奈。
勘違いされるかもしれないことは、さっき認識した筈なのだが、
この質問をされるまで、そういう意識は全くなかったようだ。
「え? そ、そうなの?」
「ああ。別にデートでもねえよ」
雄二もフォローに入る。
「なんだあ……じゃあ、きょうだい?」
「「ぶっ」」
これは雄二にも予想外で、二人揃って吹き出す。
「そうなんだー、言われてみれば少し似てるもんねー」
玲於奈は向坂の分家筋だというから、遠縁の親戚には、当たるのかも知れないが。
「そ、そのようなっ」
「あー、そうっス。兄妹なんです。今日はちょっと買い物に」
これも猛烈に否定しかかった玲於奈を押さえて、雄二は話を合わせる。
(な、なにを……)
(いいから、ごちゃごちゃしたくねーだろ)
玲於奈は不満そうだが、とりあえず取材をやり過ごす方を優先させたのか黙る。
「そんなわけなんで、もう行ってもいいか?」
「あ、う、うん。ごめんねー勘違いして」
女性はちょっと残念そうだったが、素直に引き下がる。
「美人のお姉ちゃんがいていいね、大事にしなよ、じゃ、ありがとうねー」
そういって、去っていった。
「はぁ……驚きましたわ、気を付けなくてはなりませんね」
「……」
「? どうかなさいまして?」
「……俺って、お前より年下に見えんのかよ」
そして今に至る。

冷静に考えれば、雄二の発言は玲於奈の方に失礼なのだが、
呟いた雄二の顔があまりにも憮然としていたせいか、反論はなかった。
「ほら、来ましたわよ」
むしろ上機嫌だったりする。
この辺の感情は、同世代の男女が持つ対抗意識、みたいなものなのかも知れない。
と、店先の方でわっという歓声があがった。
「なんだろ?」
見ると、ウェイトレスの一人が、ティーポットを持ってなにやら芸をしている。
「うわ、頭の上からお茶注いでるよ」
「すごいですわね」
「髪の色も凄いけどな」
「綺麗なピンク色、異人でしょうか?」
「かもな」
そんな会話で、とりあえずその場は和んだ。

無難に食事を終えて、会計時、
「ここは、私が持ちますわ」
玲於奈が、そんな事を言いだした。
「へ? いいよワリカンで」
「いえ、迷惑をかけているのは事実ですから」
「じゃあ……でも意外だな」
「どうしてですの?」
「いや、お前は『男が奢れ』って言いそうなタイプじゃないかと」
「デートなら、それが当然ですわね」
支払いを終えて財布をしまいながら玲於奈。
「でも今日はデートではありませんし」
ちょっと拘ってるのかも知れない。
「それに、私の方が雄二様より年上ですしね」
実は、食事中に確認したところ、
同学年ながら玲於奈の方が誕生日が早い事が判明していた。
なんとも些細なことだが、雄二はさらに不機嫌になり、玲於奈は面白がった。
蒸し返されて唇を曲げた雄二に、
玲於奈は、いつもの優越を誇示する笑みよりは素直に、クスクスと笑った。
何か言いかけた雄二も、釣られて苦笑した。

喫茶店を出ると、外は暗くなりつつあり、街灯も点きはじめていた。
「一応、メモは辿れましたから、この辺で」
「駅まで送るぞ?」
「いくらなんでも、もう迷子にはなりませんから」
「そうか」
玲於奈は電車、雄二はバスなので、確かにここで別れた方が都合は良い。
「では、今日はありがとうございました」
先週よりは、大分はっきりとした感謝の言葉を述べて、
駅に向かって歩き出そうとした玲於奈の前を、大学生くらいのカップルが横切った。
「じゃあ、『キャロル』でいい?車なら10分くらいだろ」
「別にどこでもいいけどさ」
「おし、んじゃ車出すからパーキングの前で待ってて」
男の方が、妙にはりきって走っていく。
雄二達の耳にも届いた会話に、玲於奈は興味を示す。
「『キャロル』ってなんですの?」
ついでとばかりに質問、された雄二は、ちょっと口ごもる。
「あー、まあ、デートスポットといえばデートスポットだけどな…」
「ふうん。タクシーなら往復できそうですわね。ちょっと寄って帰ります」
「え、あ、ちょっと待て!」
「大丈夫です。道には迷いませんから」
慌てて止める雄二の話を聞かず、タクシーを拾う玲於奈。
こういう時に限って、都合良く車が来るものだ。
「あちゃー」
頭を抱える雄二。
まったく、妙な所だけ行動力がある。迷子になるのもそのせいか。
ともかく、放置はマズいと判断した雄二、自分のタクシーを探した。

15分後。

「まったく、信じられませんわ!」
「だから、止めただろうが」
「はっきり言ってくださらないから!」
『キャロル』から徒歩で駅に戻りつつ、雄二は怒る玲於奈を宥めている。
どう考えても人の話を聞かずに突っ走った玲於奈が悪いのだが、
雄二の方も一応質問にきちんと答えなかった後ろめたさがある。

もっとも、それはアダルトDVD屋で硬直するような玲於奈に、
ラブホテルの内容を説明するのが一瞬悩ましかったという事なのだが。

とはいえ、いかにもピンクのネオンが眩いラボホの駐車場で、
入館するカップルに奇異の視線を向けられて泣きそうだった少女の姿を思うと、
自業自得とも突き放せずに多少後悔の念を持つ雄二である。
一方玲於奈も、自分の暴走という自覚はあるだろう、間もなく鉾を収めて押し黙る。

ホテルの近くでタクシーを拾う勇気もない二人、
駅まで結構な道のりを、肩を並べて歩いた。
駅前に着くと、もはや夜。
「あー、なんというか、悪かったな」
「いいえ、ともかく、目的は果たしましたから」
少し疲れた様子だが、意外と殊勝な玲於奈。
「家で時刻表を見ながら明日の行程を考えますわ」
「頑張れ。じゃあ、俺はバスだから……あれ?」
「どうなさいました?」
「玲於奈、その時刻表、いつのだ?」
「……? 2月25日版、と書いてありますが?」
「……そこ」
雄二が指さしたのはバスターミナルの案内所。
でかでかと貼ってあるポスターには、

『☆4月25日ダイヤ全面改訂☆ご注意ください☆』

「……」
硬直する玲於奈。
新しい時刻を確認しようにも、案内所は既に閉じている。
ネットで調べるとか、電話で問い合わせてFAXで貰うとか、
いくつか手段も思いついたが、しばし考えて雄二は、
「まー、あれだ」
「?」
玲於奈はぎぎっと無表情に振り向く。無表情も表情豊かな娘である。
「デートの経路も試験のうちってことで、貴明に任せたらいいぜ?」
雄二の忠告は、またも実行された。参考まで。

「そ、それでは、改めまして雄二様、今日はありがとうございました」
何度目か立ち直って、別れの挨拶をする玲於奈に、雄二、
「う、改まったとこ悪い、さっきも言おうと思ったんだが」
「な、なんですの?」

「次からその、雄二『様』ってのは、やめてくれな、頼む」
311302:2006/09/03(日) 21:57:53 ID:ejiIiQjQ0
>304は2/8です。雄二と玲於奈だと、殆どオリキャラみたいなものですな
るーこは4月24日だと本人シナリオでお別れ前夜、他だと多分帰ってますが、よしなに
あと、雄二と玲於奈の誕生日設定は出てないと思ったんですが、あったら失礼
312名無しさんだよもん:2006/09/04(月) 05:53:46 ID:rRcOx5Gd0
悪いが話がまったく見えん FDって何ですか?
超常識なんでしょうけど良かったら教えてください。
313名無しさんだよもん:2006/09/04(月) 06:16:00 ID:J8uQuaO60
誤爆にしても、普通はFD=ファンディスクとしたものだろうな。RX-7だったら悪いがw
314名無しさんだよもん:2006/09/04(月) 13:54:13 ID:8359CxG6O
>>312
フォルトレスディフェンス
315名無しさんだよもん:2006/09/04(月) 15:23:38 ID:h2Vgom//O
フロッピーディスク
316名無しさんだよもん:2006/09/04(月) 18:50:32 ID:67wfPJsE0
ふで
317名無しさんだよもん:2006/09/04(月) 20:24:06 ID:hXFasNjjO
フェータル・ダメージ
318河野家にようこそ 第71話(1/9):2006/09/04(月) 20:54:52 ID:0oqW766n0
 タマ姉に拒絶され、泣き崩れる玲於奈さんの姿はあまりに痛々しくて、覗き見なんてするんじゃ
なかったと思わずにはいられなかった俺だが後悔先に立たず。その場を後にするもタマ姉にあっさり
バレて、おまけにタマ姉ときたら、玲於奈さんたちに「タカ坊が好き」と言ったことを曖昧にはぐら
かすし。……まぁその点は俺も人のこと言えないけどさ。
 夕方。タマ姉のおつかいで商店街に行った俺とこのみは、ふらふらと金物店に入る玲於奈さんを
見かける。様子が気になって店を覗くと、包丁をしげしげ眺めている玲於奈さん。朝の出来事から
最悪の予感が頭をよぎった俺は思わず玲於奈さんに駆け寄るが、玲於奈さん曰く、前の包丁が折れた
から代わりを買いに来ただけとのこと。取り越し苦労でよかったと安心する俺だったが、このみが
「その包丁でタカくんを刺したりしない?」などと怖い質問をした途端、その手があったとばかりに
玲於奈さん、夕食に招待するからと言って俺を家に連行しようとする! 俺は何とかその手を振り
きり、このみを連れて金物屋から逃げ出すのだった。

 玲於奈さんは追いかけてこなかったのか、それとも俺の脚の方が速かったのか、後ろなど気にする
余裕もなく、とにかく走って走って走り抜いた俺(とこのみ)は、無事、家にたどり着いた。
 だがまだ安心は出来ない。ドアは鍵を閉めてチェーンも掛け、次に居間へ。
「あれ、たかあき早いね。アイスは?」
 のんきな由真には構わず、ベランダに玲於奈さんがいないか確認。窓もしっかりロックを確認。
だがまだ安心は出来ない。次は二階へ。
「ちょっと、アイスはー?」
「タカ坊、パン粉は?」
 しつこい由真と、タマ姉の言葉にも応えてはいられない。
 二階の部屋を全て回り、全ての窓がしっかりロックされていることを確認。――よし、大丈夫だ。
 とりあえず現状は大丈夫そうだ。ひとまず居間に戻るか。
 安堵のためか、腰から下が脱力感に襲われつつも、階段を下りて居間に入ると、
319河野家にようこそ 第71話(2/9):2006/09/04(月) 20:56:06 ID:0oqW766n0
「ええっ、それホントなの!?」
 花梨の大声。見るとどうやら、このみから事情を聞いた模様。
「た、貴明さん本当なんですか、玲於奈さんに刺されそうになったって!?」
 慌てて俺に駆け寄る優季。いきなり俺の胸や腹や背中を触り始める。
「ちょ、ちょっと優季、大丈夫だってば」
「本当ですか? 刺されてませんか? 怪我とかありませんか?」
 心配してくれるのは嬉しいんだけど、こう触られるとくすぐったくて仕方がないよ。
「あの女、ついに実力行使ってワケね! だったらこっちも応じるまでよ!
 花梨、スタンガンあったよね。ううん、ありったけの防犯グッズ全部持ってきて!」
「わ、解ったよ由真ちゃん!」
 居間を飛び出す花梨。
「うーが殺されそうになったとあっては黙ってはいられないぞ。
 安心しろ、うー。るーは戦士だ、うーのことは必ずるーが守ってやるぞ」
 るーこもそう言って居間から出ていく。
「た、貴明、大丈夫なん?」
 瑠璃ちゃんまで心配そうに俺を見る。
「だ、大丈夫だってば。刺されてないし、何とか逃げ帰ってこられたし」
「う、うん……あ!」
 何かに気づいた瑠璃ちゃんは、電話へとダッシュし、素早くプッシュボタンを押す。
「……あ、もしもしイルファ!? そっちは、さんちゃんは大丈夫なん!?
 ……あ、ああ、えっとな、さっき貴明が――」
 そうか、珊瑚ちゃんのことが心配になったのか。玲於奈さんが狙ったのは俺なのだが、珊瑚ちゃん
まで狙われるのではと考えたのだろう。まぁ玲於奈さんが珊瑚ちゃんを狙うとは思えないし、万が一
の場合もイルファさんがいるから大丈夫。腕を折られそうになった俺が言うのだから間違いない。
320河野家にようこそ 第71話(3/9):2006/09/04(月) 20:56:53 ID:0oqW766n0
「お、おい、大丈夫かなイルファさん? ヤバイよ、もしイルファさんが刺されでもしたら……」
 そんなイルファさんの強さを未だ知らぬ雄二。って言うか少しは珊瑚ちゃんの心配もしろ。
「……」
 唯一、沈黙を守っているタマ姉。と、エプロンを脱ぎだしたぞ。
「タマ姉?」
「とりあえずパン粉を買ってくるわね。このままじゃコロッケ揚げられないから」
「だ、ダメだよタマ姉! 今外に出たら危険だよ、どこに玲於奈さんがいるか解らないんだから!」
 俺の警告に、しかしタマ姉はケロッとした顔で、
「このみの話だと狙われてるのはタカ坊だけでしょ。心配ないわよ。
 それにもし玲於奈に会ったら、きつく叱っておくわ」
「叱るなんてレベルじゃないですよ環さん! 立派な殺人未遂じゃないですか!
 もうこの際だから警察呼んじゃいましょうよ警察! 花梨、スタンガンまだー!?」
 警察の目の前でスタンガンちらつかせるつもりなのだろうか? 由真も相当パニクってる様子。
 するとタマ姉は済まなさそうな顔で、
「由真、警察は呼ばないで」
「ど、どうしてですか環さん!? いくら何でも環さんの後輩だからって――」
「本当にご免ね由真。私が何とかするから」
 由真に頭を下げるタマ姉。
「た、環さん!?
 あ、いや、そ、その、環さんが頭を下げなくても……」
 そこへ、スタンガンや各種凶悪アイテムを抱えた花梨が戻ってきたが、タマ姉はそんな花梨も含め、
「みんなも、とりあえず落ち着いて。
 玲於奈がこんなことしちゃったのは、私のせいなの。だから、私が何とかしなけりゃいけないこと
なのよ。だからお願い、私に任せて」
321河野家にようこそ 第71話(4/9):2006/09/04(月) 20:57:57 ID:0oqW766n0
「タマ姉……」
 俺が『タマ姉のせいじゃない』と言っても、多分タマ姉はその言葉を受け入れないと思う。だから
俺は、他に言えることもなく、また頭を下げるタマ姉を見てるしかない。
 他のみんなも、そんなタマ姉に何も言えず――
 ガチャ。
「――ん、頭など下げてどうしたのだ、うータマ?」
 るーこが戻ってきた。
「ああ、るーこにもお願いしないとね。あのねるーこ、玲於奈の件は――」
 ガインッ!! ガシャーーーン!!
 な、何だ!? 今、外から凄い音がしたぞ!
「かかった」
 るーるると言いながら廊下に出るるーこ。今の音、まさかるーこが何かしたのか?
 るーこが玄関のドアを開け、俺も外を覗いてみると――
「きゅう……」
 そこには、ぐったり仰向けに倒れている春夏さんと、無惨にぶちまけられた肉じゃがと鍋、そして、
何故か巨大な金ダライが。まさか、るーこ……
「しまった、うーはるだったか。これは想定外だったぞ」
「るーーーこぉぉぉぉぉ!!」

「す、済みませんでした春夏さん!!」
「る、るぅ〜」
 居間のソファーにぐったりと横たわっている春夏さんに、るーこ共々ひたすら土下座。
「あ〜、いいのよいいのよ。
 事情はさっきタマちゃんから聞いたし、るーこちゃんも悪気があってしたことじゃないんだから」
322名無しさんだよもん:2006/09/04(月) 20:58:08 ID:8YGDLNL/0
支援
323河野家にようこそ 第71話(5/9):2006/09/04(月) 20:58:44 ID:0oqW766n0
 そうは言ってくれるものの、金ダライの直撃を受けた頭頂部はまだ痛むらしく、タマ姉が手渡した
氷嚢をあてがっている春夏さん。
「それにしても、このままだとタカくん危険かもね。
 思い詰めた女の子は何をするか解ったものじゃないし、最悪の場合、学校でいきなりグサッ! 
なんてことになるかもよ」
 ううっ、リアルに想像出来ますよそれ。どうしよう、俺しばらく学校休もうかな……
「そんなこと、私がさせません。タカ坊は私が守ります」
 キッパリと言い切るタマ姉。この上なく頼もしいです、お姉様。
「こ、このみだってタカくんのこと守るもん!」
「あんな女の好き勝手、許すもんですか! 花梨、しばらくこのスタンガン借りるからね」
「合点承知だよ由真ちゃん! じゃあ花梨ちゃんはこの催涙スプレーでたかちゃんをがっちりガード
しちゃうからね!」
「先程は失敗したが、うーを守る決意に揺らぎなどないぞ。うーのことはるーが必ず守る」
「わ、私、喧嘩とか全然したことないけど、貴明さんは絶対守って見せます!」
「う、う、ウチかてあんなヤツ、怖ないもーん!」
 み、みんなが俺のために……。うう、目に熱いものが……
「あ、ありがとうみんな! 俺、俺……」
「ちょ、ちょっと何泣いてるのよたかあき!?」
「そ、そんなに感激されると照れちゃうんよ〜。か、会員を守るのは会長の務めなんだから!」
「怖かったんですね貴明さん。でももう安心ですよ。私たちが必ず貴明さんを守りますから」
「あらあら、タカくんには頼もしい騎士がこんなにいるのね。なら安心ね。
 あ、でも女の子なんだから……、そうね、戦乙女って言った方が格好いいかしら」
「戦乙女っつーか、姉貴はアマゾネスの方が」
 その言葉を言い終える前にタマ姉のアイアンクローが雄二を襲い、悲鳴を上げて悶え苦しむ雄二。
324河野家にようこそ 第71話(6/9):2006/09/04(月) 20:59:42 ID:0oqW766n0
「ふふっ。何にせよ頼もしいのは確かよね、タカくん」
「あ、はい。とっても」
「うん、春夏さんも安心」
 そう言ってよいしょと立ち上がる春夏さん。
「だ、大丈夫ですか春夏さん!? もう少し寝てた方が――」
「頭のコブは痛いけど、それだけだからもう平気よ。それにそろそろ主人も帰って来るだろうし。
 あ、このみ、晩ご飯は今日もタカくんの家でいいのよね?」
「うんお母さん。今日はコロッケ――」
 このみとタマ姉はそこでハッと気がつき、二人ハモって、
「「パン粉、忘れてた……」」

 結局パン粉はタマ姉が速攻で買いに行き(春夏さんが分けてくれると言ってくれたが、やはり断る
タマ姉だった)、夕食は普段よりも遅い時間になってしまった。とは言え、タマ姉特製コロッケは
時間に関わらず美味かった。
 夕食の後は由真が率先して作戦会議を開き、明日、いかにして俺を玲於奈さんから守るかをみんな
で話し合っていた。ちなみに庇護対象である俺は蚊帳の外で、仕方が無く二階で雄二と格ゲーなど
して時間を潰した。
 そんな感じで一日も終わりを告げる時間となり、俺はいつものように居間のソファーに寝ている
のだが……
「……うーん」
 金物屋での一件のせいか、何故か眠れない俺。
 いや、ね。別に玲於奈さんがこの真夜中に襲ってくるんじゃないかとか、そんなホラー映画チック
なことを想像してワケじゃないよ。仮に来たとしても、玄関のドアは勿論のこと、家中全ての窓は
しっかりロックしてあるし、それを外から開けるだなんてこと、お嬢様の玲於奈さんに出来るとは
325河野家にようこそ 第71話(7/9):2006/09/04(月) 21:00:25 ID:0oqW766n0
到底思えないよね。
 窓を割ったらその音で俺もみんなも気づくし、後は、そうだな……
 プルルルルルルッ!!
「ひぃっ!」
 突然の電子音。心臓が止まったかのようなショックに思わず悲鳴が漏れる。
 プルルルルルルッ!! プルルルルルルッ!!
 だがそれは、聞き慣れたはずの電話の着信音。いきなりでビックリしたじゃないか! ……いや
まぁ、電話ってのはいきなり鳴るものだけどさ。
 こんな夜中に一体誰だよ? 起きあがって電話の前まで行くが、受話器を取ろうとして俺は、
「まさか……」
 ためらう。――だってこの電話、玲於奈さんからかもしれないじゃないか。
 プルルルルルルッ!! プルルルルルルッ!!
 新たな恐怖。受話器を掴もうとする左手が震える。
 別に電話で話したからと言って、それで殺されるワケじゃない。玲於奈さんがどんな恐ろしい言葉
を吐こうとも、そんなの聞き流してしまえばいい。いや、玲於奈さんだと解ったらさっさと電話を
切ってしまえばいいんだ。その後もかけてくるようなら電話線を外してしまおう。
 うん、大丈夫大丈夫。よし、大丈夫だな俺。
 プルルルルルルッ!! プルルルルルルッ!!
 はいはい、そんなにせかすなよ。覚悟を決めた俺は、受話器を上げた。
「はい、もしもし?」
「……」
 相手は、無言。……いや、耳を澄ますと、何やら泣き声のようなものが聞こえる?
「あの……、もしもし?」
「……ぐすっ、ひっく」
326河野家にようこそ 第71話(8/9):2006/09/04(月) 21:01:15 ID:0oqW766n0
 間違いない、電話の相手は泣いている。しかもこれは女性の泣き声だ。まさか――
「れ、玲於奈さん!?」
 さっきまで玲於奈さんからの電話を恐れていたけど、そんなの泣き声を聞いたら一発で吹き飛んだ。
どうしたんだろう、何故泣いているんだろう? 一体――
「レオナって誰よぅ?」
「は?」
「レオナって誰かって聞いてんのよぅ! また新しい女なの? そうなんでしょぉ、マサヒコぉ!」
 え、マサヒコって、誰? ……もしかして、間違い電話?
「あ、あの、済みませんけど番号をお間違えじゃ……」
「そーゆーウソ言ったってダメなんだからねぇ! マサヒコの電話番号、ちゃぁ〜んと覚えてるん
だからぁ!」
「いや、だから俺はマサヒコじゃなくて河野貴明って名前で」
「ウソの名前言ったってダメなんだからねぇ! それにさっきから声まで変えちゃってさ、マサヒコ
はそんなにあたしのこと騙したいんだ! ねぇマサヒコぉ!?」
 ……ダメだ。こっちの話を全然信じてくれない。それに口調で気づいたけどこの女の人、多分相当
酔っぱらってるな。
 酔っぱらいと話をしても不毛なだけだ。もういいや、切っちゃおう。
「とにかく、番号間違ってますから! 俺は河野貴明! マサヒコさんじゃありません!」
 がちゃん。
 言うだけ言って受話器を置いた。ったく、人を脅かした挙げ句に間違い電話かよ。迷惑この上ない
っての! しかも謝るどころか全っ然人の話聞かないし。俺はマサヒコじゃなくて貴明だよ貴明!
 またかけてこられるのも迷惑なので、俺は電話線を外した。まあこんな真夜中だ。他にかけてくる
相手なんて……、それこそ、思いつくのは玲於奈さんくらいだ。
 何となく安堵感を覚えた俺。ソファーに横になると、程なく眠りについた。
327河野家にようこそ 第71話(9/9):2006/09/04(月) 21:01:58 ID:0oqW766n0

 朝。朝食を食べて家を出るまではいつもと同じ。だが、
「あ、あのさ……」
 家を出た途端、由真たちは俺とタマ姉を横に並ばせ、俺たちの前に由真と花梨、左にるーこ、右に
瑠璃ちゃん、後ろにはこのみと優季がつく。そして学校へと歩き出すのだが、由真たちは俺とタマ姉
からつかず離れずの距離を保ち、周囲を警戒しつつ歩く。
「いいたかあき、それに環さんも、絶対にあたしたちの外に出ないで」
 警戒しつつ、そう告げる由真。見ると鞄に右手を突っ込んだままにしている。多分、鞄の中には
スタンガンでも入っているのだろう。
「後方左、異状なしであります!」
「お、同じく後方右、異状なしです」
「右方、異状なしやで」
「左方、異状なしだぞ」
「前方右、異状なしだよ」
 このみ、優季、瑠璃ちゃん、るーこ、花梨が由真に報告。
「了解。前方左も異状なしよ。引き続き警戒を」
 答える由真も真剣そのもの。なんだけど……
「そ、その、守ってくれるのは嬉しいんだけどさ、もうちょっとこう、目立たないようにしてくれ
ないかな? ほ、ホラ、周りも見てるし……」
 警戒心むき出しの女子学生数人(+男一人)がフォーメーション組んで歩いているのだ。登校途中
の他の生徒は勿論、愛犬と散歩中のおばさんや、通勤途中のサラリーマンといった方々の視線を集め
てしまうのも無理はないワケで。……正直、かなり恥ずかしいです。

 つづく。
328河野家にようこそ の作者:2006/09/04(月) 21:03:05 ID:0oqW766n0
どうもです。第71話です。
>>322さん、支援ありがとうございました。m( __ __ )m

以前SSの同人誌が気になっていると書きましたが、この間とらのあなに行ってみました。
で、同人誌フロアのTH2のコーナーを見つけたのですが……中身が読めないからどれがいいやら
さっぱり解らず、と言うか漫画ばかりでSSが見つからず、結局何も買えませんでした。
(帰り際、ふと見かけた男塾っぽい顔の涼宮ハルヒの同人誌に心が揺らぐも結局買わず)
329名無しさんだよもん:2006/09/04(月) 22:44:12 ID:/xLrLPiY0

あと、ドリフ。
330名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 01:45:54 ID:7rSZAGfN0
乙、乙乙。
331名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 06:04:29 ID:Mq+WzwDG0
>328
タカ坊警備隊乙。タマ姉にも信用されない玲於奈さんカワイソスw

ところでマサヒコって誰?
332名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 06:19:26 ID:FCcupXDd0
乙。

スレが過疎ってるから流れがぜんぜん読めんな
雄二×脇ヒロインが今のトレンドなのか?
333名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 06:32:22 ID:TxGKZ9Dv0
雄二は姉の中の人には好評だからな
334名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 07:38:17 ID:nLCInW8h0
お疲れ様。
春夏さんに萌えたw
335おすすめ。:2006/09/05(火) 11:05:05 ID:R2k3ywSg0
>>328

涼宮ハルヒのギギギ
336名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 12:19:34 ID:KUZV1YIZ0
>>328
虎は店舗によっては小説本ほとんど扱ってないよ。
(虎が全力支援中のジャンルを除いて)
秋葉とかなら小説コーナーみたいな形で
まとめられてたりするけどねー。
337名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 15:17:37 ID:+bszDALM0
>>333
kwsk
338名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 18:21:58 ID:Gp59w+KX0
>>333
潮騒
339名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 18:27:35 ID:TxGKZ9Dv0
>>337-338
伊藤静は貴明と雄二なら雄二を選んだ
(RadioToHeart2より 第何回かは忘れた バックナンバーはアニメイトTVでも漁っとけ)
340名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 18:44:05 ID:SSZnfZtaO
まあ普通はそうだろなw
341名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 18:54:27 ID:qxmEid/p0
雄二はやろうと思えば何でも出来る男
貴明は背中を押して叱咤しても出来ない男
342名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 19:21:52 ID:mQRSoOVAO
一番出番が多い双子シナリオの雄二は、かなり嫌な奴だがなぁ
自分勝手なデートとか、変態っぽいビデオ撮影とか、
珊瑚にスルーされてる(と思う)のも自業自得だろうて
343名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 19:24:45 ID:wCcXDdLf0
雄二はどことなく浩之的なイメージがある。
あそこまでナンパじゃないけど普段はのらりくらりとしててやる事はやるってのが。
FDで雄二視点とかあったら面白そうなのになぁ。
344名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 19:35:42 ID:Bw5H7jjC0
つーか、プレイヤーが自己投影できるよう極限まで個性を削られたタカ坊と
キャラの一人として性格設定されてる雄二じゃ比べようがないだろw

それに、貴明と浩之じゃ主人公としてのタイプも違うしね
個性をある程度前面に押し出すか、そうじゃないかという差がある
TH2はライターの数が多かったから、個性が強いとマズかったんじゃないか?
何にせよディレクションが上手くいってなかったと思う
二次創作の余地がバカみたいに広くなったから、これはこれでありがたいけどw
345名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 20:43:47 ID:uqkyhdjS0
貴明で定番のライター分類。正直、三宅雄二以外は分析材料もないんだが

三宅雄二:ライバル的存在(るーこは最初から諦め)。ちょっと嫌味あり
菅雄二:家族的存在(環の弟で、このみの兄)。面倒見が良い
枕雄二:友人的存在(そのまんま)。傍観者
まるい雄二:出番なし
346名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 21:23:54 ID:TxGKZ9Dv0
お〜い、誰かまるい雄二の行方を知らんか?
347名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 21:43:56 ID:uqkyhdjS0
探してきた。

まるい雄二:学園の七不思議に挑み行方不明

終盤にボヤ騒ぎ報告するけど。草壁さんでも、最後に退院祝うだけ
348名無しさんだよもん:2006/09/05(火) 22:18:41 ID:6S2xdvY40
枕シナリオのゲームの主人公の友人ってやけに存在感ある奴ってイメージがあるけど
雄二の場合は他のライターとの兼ね合いがあったのか印象薄かったな。
主人公と妙にとぼけた会話をする辺りに枕テイストは感じたが。
349名無しさんだよもん:2006/09/07(木) 06:42:02 ID:jvAvXbjW0
由真シナリオでは良くでてくるけど、愛佳シナリオだと出番1回くらいだな<枕雄二

個人的にこのみを「女の子っぽくなった」と評するこのみ・環シナリオ雄二が印象良いので
これをベースに由真シナリオのおとぼけと双子・ささらシナリオの積極性を足して…
とか思ってるが個性を出すのが難しい。ま、そもそも雄二はどうでもって人も多そうだけど
350コイは心の外(1/8):2006/09/07(木) 13:33:02 ID:jrjuwLYx0
 いつもの通学路、いつもの朝。
 目の前の坂道を歩く二人はいつもどおりにいちゃいちゃ腕を組みやがったり。
 まったく目障りったらありゃしない。

「ねえねえユウくん」

 隣には同じく幼馴染の小動物、このみがいる。
 ここ最近は貴明と姉貴、俺とこのみが隣り合っているのが常だった。

「タカくんとタマお姉ちゃん、仲がいいよね」
「まったくだ。初恋は実らないってーのに、わが姉と腐れ縁ながら良くやるよ」
「ふーん、タカくんとタマお姉ちゃんって初恋なんだ」
「当たり前だ、俺が言うんだから間違いねえ」

 何よりわかりやすいしな、あいつらは。
 姉貴はあの通りだし、貴明のやつもちゃんと女の子を意識したってのは姉貴が始めてのはずだ。
 ・・・ま、そのあといい思い出ってのもろくにないはずなんだが。

「ユウくんの初恋っていつなの?」
「・・・んなガキの頃のこたぁ忘れたよ」
「あ、確かあれ、公園のワンピースの・・・」
「んなっ、チビ助、何でお前がそれを知ってやがる!」
「タマお姉ちゃんから聞いたよ?」
「余計なことを・・・ありゃ初恋なんてのじゃねえよ。ちょっと気になってたってな程度のもんだ。忘れろ忘れろ」
「ふぅ〜ん、じゃあ初恋はいつ? いつ?」

 無垢な笑顔がわずかにダブる。

「秘密だバカ」
351コイは心の外(2/8):2006/09/07(木) 13:33:35 ID:jrjuwLYx0
 小学生のときからずっと好きだった。

 古い記憶にあるのは、いつもニコニコと笑っていたあの顔だ。
 いつも優しくしてくれて、それでも悪さをするとものすごく怒って怖かった。
 母さんよりも、家政婦の山田さんよりも、ずっと料理がおいしかった。
 いつか作ってくれたあのグラタンが何よりも大好きだった。
 俺やみんなの好きなものを全部知っていた。
 誕生日にはプレゼントもくれた。
 ずっと、優しく笑ってくれた。
 馬鹿馬鹿しいけど、だから、好きになったんだと思う。

 柚原はるかさん。

 隣にいるチビ助の、柚原このみの、「母親」だ。
 初恋が人妻とは、なかなかイケてるぜ、小学生の俺。
 だけど同時にバカでもあったな。
 悲しいのは、俺が飛びぬけたバカだったって事だ。
 ガキの初恋でおさめとけばいいものを。

 なにをトチ狂ったのか、俺は、はるかさんに告白をした。

 バカだったから、普通はこういうことは小学生のうちに済ましとくもんだと思ってた。
 だから、思い切って卒業式までに告白すると決心した。
 だが、無理だった。
 隣にこのみや貴明がいると恥ずかしくて声が出なくなった。
 このみの家まで行っても、はるかさんの顔を見ると何も言えなくなっちまった。
 ・・・忘れようと心に決めて、半年以上。
 チャンスは急にめぐってきた。
352コイは心の外(3/8):2006/09/07(木) 13:34:48 ID:jrjuwLYx0
 その日、このみは朝からぶーたれていた。

「どうしたこのみ、今日は機嫌が悪いな」
「聞いてよタカくん! お父さんったら明日のパーティーお仕事で出れないって言うんだよ!」
「あ〜、おじさん何か都合悪いのか。じゃあパーティーどうするんだ?」

 中一の冬、いつものように俺と貴明とこのみでの登校。
 もうすぐ2学期も終わり、マフラーをつけてても寒くてたまんねえ。
 雪が降るかもってな寒い気温のくせに、このみのやつはいつもはしゃぎまわっている。
 あいつはイベントものが大好きだからなあ・・・。
 あ、パーティーってのはもちろん、世界で一番有名な神格者の生誕前夜祭のことだ。

「じゃあうちに来るか? 今年は父さんや母さんもいるし、このみや雄二だったらオッケーだと思うけど」
「タカくんホント!? やったー! 帰ったら早速お母さんに聞いてみる!」

 あー、このみが貴明の家にねえ。
 じゃあ俺もついでに冷やかしに行って、おばさんの料理でも食べさせてもらって、ついでに――
 おじさんはいない、好みは貴明の家にいる。おまけにかなりの時間は帰ってこない。
 その間、はるかさんはずっと一人・・・。

「や、俺は遠慮しとくわ。今年はお袋が家にいるらしいし、親父が帰ってくるかもとかいってたからな」

 自然とすらすらとそんな言葉が出た。そんな予定は一切ないのに。

「そっか、そりゃ残念だ。じゃあ来れるなら来いよ」
「そうするわ」

 心臓がドキドキと鳴った。
 学生服の中から飛び出しそうなほど血液が沸騰しはじめていた。
353コイは心の外(4/8):2006/09/07(木) 13:35:29 ID:jrjuwLYx0
 12月24日。その日は来た。
 昨日、家に帰ってからドキドキしっぱなしだった。
 ずっと貯めてた貯金箱を壊して、自分にできるありったけの金を持って街へ出て、散々歩き回った。
 今、手の中にはそのときの包みだけを持って、俺はここにいる。
 あと必要なのは、勇気と、覚悟。
 よし・・・!  
 ピンポーン・・・・・・カチャ

「あら、ユウくんどうしたの? このみならタカくんの家よ」
「あ、いや、このみじゃなくて・・・」
「ん? どうしたの?」

 懐から、プレゼントの包みを取り出して差し出した。
 やべ、恥ずかしくて顔が上げられねえ・・・。

「あの、これ、はるかさんに」
「え、もしかしてクリスマスのプレゼントって事でいいのかな、これ?」

 ドク、ドク、ドク、心臓の音が頭の奥まで響いている。
 きっついなあ、治まってくれよ、頼むから今だけはさ。
 よし、行け、俺。

「あ、あの俺、はるかさんに言いたいことがあって・・・」
「ん、なに?」

 はるかさんの顔を見ると、やっぱ声が出ない。
 くそ、ここまで来てなにをためらってやがんだ。勇気を出せ、俺!
 ぐっと息を飲み込んで、吐き出す。
354コイは心の外(5/8):2006/09/07(木) 13:36:11 ID:jrjuwLYx0


「俺っ、はるかさんのことが好きです! 子供の頃からずっと好きでした!」

 それだけ言えればよかったんだ。
 返事なんか期待してもいない。
 『私もユウくんの事好きよ』と子ども扱いして返事をくれるだけでいいと、本気で思っていた。
 その覚悟もしてた。
 長い沈黙があった。
 まともに顔が上げられなかったし、目を開けることも難しかった。
 今の俺の顔を、姿を、姉貴や貴明が見たらどう思うかなんて、まったく関係ないことを考えたりしていた。
 きっと笑われるかな。
 だから、はるかさんに、ぎゅっと抱きしめられて言葉が出なかった。

「あのね、ユウくんがまじめに言ってくれたから、私もまじめに答えるわ」

 あ、はるかさんの胸が、顔に当たってる。

「ユウくん、私ね、ユウくんが好きだって言ってくれてとっても嬉しい」

 嫌な予感がした。
 嫌だ。思わず頭が拒絶した。
 その先の言葉を聞きたくない、言わないでくれ、お願いだ、はるかさん・・・。
 覚悟が、揺らいだ。


「でも、たぶんその気持ちにこたえることはできないわ」

355コイは心の外(6/8):2006/09/07(木) 13:39:40 ID:jrjuwLYx0

 違う。俺は覚悟してたんじゃない。
 子ども扱いされて、誤魔化してほしかったんだ。
 真面目に話してもらわずに、ずっとぼやかしたままでいてほしかったんだ。
 自分の思いがはっきり否定されないように。

「私にはこのみがいるし、お父さんもいる。家族が大切で、大事にしたいから、その気持ちを裏切れないの」

 気がつくと泣いていた。
 声も出さずに、ボロボロと涙がこぼれていた。
 ああ、ダメだ、男が女の前で泣くんじゃねえよ、バカ、止まれ。

「ごめんなさい。それと、ありがとう」

 チュッ、額に、一瞬だけ何かが触れた。
 ああダメだ、俺は一生この人にかなわない。
 いいやもう。泣いちまえ。
 そのあと自分が何を言ったか、なにを言われたかも、詳しくは覚えていない。
 ただ、ぼうっとした頭に声が響いていた。 



「ユウくんはこれから先、たくさんの女の子に出会うわ。いろんな子と出会って、いろんな子とお話して」

「いろんな子と恋をしなさい」

「きっと素敵な子が、人生をかけて守りたいと思う子がいるわ。その気持ちを大事に取っておきなさい」


356コイは心の外(7/8):2006/09/07(木) 13:41:46 ID:jrjuwLYx0
 相変わらずいちゃつく姉と幼馴染を前に、とぼとぼと通学路を歩く。
 姉貴は貴明と腕を組んで、お、あれは珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんじゃねーか。
 珊瑚ちゃんが貴明に飛びついて、ついでに瑠璃ちゃんに蹴られて、あー、姉貴に頬抓られてら。
 ありゃ珊瑚ちゃんを止めたり振りほどかないあいつにも責任あるんだがな。

「相変わらず良くやるね」
「本当だね〜」

 相変わらずこのみと俺はその後ろを並んでついていく。
 お、今度は委員長だよ。あーもー赤くなっちまって。
 貴明のやつもなんだかんだで委員長相手にはデレデレ話してやがるから・・・ああ、抓られた。
 俺にはアイアンクローで来るのに貴明相手には頬か耳なんだよな。
 ・・・相手のレベルの差かね。

「で、どーよこのみ。お前は貴明に飛びつかなくていいのか?」
「えー、だってタカくんのお隣はもうタマお姉ちゃんの場所だもん。邪魔しちゃ悪いよ」

 にぱっとした笑顔でそう答える。
 このチミッコはどうして無邪気にそういう事が言えるかね。
 前までは傍から見てもどうみても兄妹以上の付き合いだったくせによ。

「いいのか、おい? 大好きなタカお兄ちゃんなのに」
「うん、だってタカくんもタマお姉ちゃんも大好きなんだもん。
 すぐ隣にいれないのはちょっと寂しいけど、あの二人が恋人になるのって私もすごく嬉しいんだよ」

 ・・・・・・まったく。
 いつのまにか、俺は追い抜かれてたかも知れねえな。
 いつまでもガキだガキだと思ってたのに、な。
357コイは心の外(8/8):2006/09/07(木) 13:49:13 ID:jrjuwLYx0
「・・・俺も彼女ってやつがほしいね」
「ユウくんかっこいいんだから彼女さんだってすぐにできるよ」
「すぐにできてりゃ今頃こんな苦悩はしてないんだよチビスケ」

 くしゃくしゃくしゃ。

「あうう〜、やめて〜髪が乱れる〜」

 そういやこいつも、結構かわいい女の子なんだよな。
 最近成長したのか、ちょっと女の子っぽくなってきたりもしたし。
 まーそれでも、妹扱いのガキに違いはないんだけど。
 あ、そうだ。

「そうだな、このみがはるかさんくらいまで育てば俺の彼女にしてやるぜ?」

 先に言っとくぞ。軽い冗談のつもりだったんだ。
 このみのやつ、一瞬目をぱちくりさせて、それからにやっと笑って、

「じゃあもうちょっと待ってね。すぐにユウくんの好きなお母さんみたいになるから♪」

 と言いやがった。

「ンな・・・! おま、このチビスケ・・・!」
「えへへ〜、先に行くねー!」

 好みはだだだっと走っていって、貴明の左腕に飛びついた。
 ・・・だめだ。どうやら俺の遺伝子にはあの親子に勝てないプログラミングがされているらしい。
 このみの笑顔を、かわいいと思っちまったぜ、クソ。

 ・・・ま、気長に待ってやるとするかね。 
358コイは心の外(おわり:2006/09/07(木) 13:56:27 ID:jrjuwLYx0
ども、>>290っす
なんか雄二モノが流行っているようなので、一つ飛び道具を撃ってみました。
・・・雄二っぽくねー。
どうもいまいち雄二に定まった印象がないので、こんなんなりました。

ともすれば雄二×このみに転がりかねない作品に・・・
それもアリか?

とりあえず、過疎ってたところに失礼しましった
またよろしくお願いします
359名無しさんだよもん:2006/09/07(木) 20:14:50 ID:ZXL5oPnw0
>358
GJ。なるほど。雄二の好みはタマ姉というネタがこのみシナリオにあったけど、
春夏さんでも良さそうだね。そして子は親に似ると……このみは父親似だったりしてw

漏れが雄二×このみを考えると、別な女とくっついた貴明に離れられて
ふらふらするチビスケをガードしてるうちに…みたいなのしか思いつかなかったけど、
未来の姿は春夏さんというのは、ちょっと変化球っぽくて面白いと思った

個人的には、ゲーム現在のこのみがここまでグッドルーザーかという疑問はあるかな
360名無しさんだよもん:2006/09/07(木) 20:35:17 ID:O4OL6hiv0
>358
おお、結構渋い内容のSSだね。
飛び道具ってだけじゃなくて、純粋に面白かった。

一応、誤字報告。
最後の方で、『このみ』が『好み』になってるみたい。
361名無しさんだよもん:2006/09/07(木) 23:47:33 ID:in1LU/lLO
>>358
GJ!
春夏さんでくるとは思わなかったwww
362名無しさんだよもん:2006/09/08(金) 02:19:09 ID:mXTbtwHp0
>358
久々に上手いと思えるSSだった。
GJ!
363名無しさんだよもん:2006/09/08(金) 23:30:41 ID:uLf/68GoO
環月記ってSSどこにあるかしりませんか?
364名無しさんだよもん:2006/09/08(金) 23:31:35 ID:bUjDcQzf0
>>363
サイトさんが閉鎖
365名無しさんだよもん:2006/09/08(金) 23:56:14 ID:LoPAN0yn0
あれって完結したの?
366名無しさんだよもん:2006/09/09(土) 00:11:22 ID:bUN4An2uO
もう見れないですか?
367名無しさんだよもん:2006/09/09(土) 16:56:14 ID:mE3bBXtO0
サイトが閉鎖してすぐの時はGoogleにキャッシュが残ってた
368名無しさんだよもん:2006/09/09(土) 18:46:34 ID:aSIXL6UG0
そいや、突然閉鎖したな
かなりの長編で好きだったんだが
369名無しさんだよもん:2006/09/09(土) 18:51:02 ID:gMGYgJJc0
1章は面白かったと思う。2章はちょっと……。
370名無しさんだよもん:2006/09/10(日) 03:11:19 ID:pbuiNIYC0
新着SSチェックしたらオリジナル主人公のSSだった
色んな意味できついもんだな
371名無しさんだよもん:2006/09/10(日) 11:38:34 ID:+8ja4n2/0
オリキャラでもいいと思うんだがな
嫌なら見なけりゃいいんだし
372名無しさんだよもん:2006/09/10(日) 14:06:12 ID:ASwudfmJ0
二次創作にオリキャラ使うなってルールはないしね。
内容はどうあれ、読む読まないは読者が決めるんだから。
373名無しさんだよもん:2006/09/10(日) 15:31:57 ID:y/YpJIks0
ToHeart2SSの書庫 に乗ってて、続きが見たいSSってある?
374名無しさんだよもん:2006/09/10(日) 16:15:10 ID:SgaWJWnb0
>>373
素直になれない女の子との日々
375名無しさんだよもん:2006/09/10(日) 18:47:00 ID:tqvJLlSY0
>>374
禿同b


376名無しさんだよもん:2006/09/10(日) 18:48:32 ID:qnVhe1yn0
書きたいネタはいろいろたまってるんだけど、
今は他のものにかかりっきりでこっちまで手が出せない。
落ち着いたらまた再開したいのだがいつになるやら……。
377名無しさんだよもん:2006/09/10(日) 21:39:03 ID:nXxRcbO80
>>375
霜に同じく
378名無しさんだよもん:2006/09/10(日) 23:24:17 ID:nP8zeU1a0
メイドロボ三姉妹ネタがあるにはあるのだが、
FDの絡みで躊躇してるのとオチが思いつかないのとでなかなか書き出せない
379名無しさんだよもん:2006/09/10(日) 23:35:19 ID:iAt6OHcL0
FD出るまでみるしるのSSはどこのSSサイトもお預けっぽいな。
380名無しさんだよもん:2006/09/10(日) 23:40:09 ID:olRBqAAu0
そういえばどこも更新が止まってるな
381名無しさんだよもん:2006/09/11(月) 02:41:30 ID:Hz2BZlMt0
今日は河野家
382素直になれない女の子との日々4話8−1:2006/09/11(月) 02:47:14 ID:XhONm5JZ0
昼食時も散々郁乃ちゃんとのことを聞かれたが、俺の必死の弁解により
どうにか誤解は解けたようだ。それはいいことなのだが、
朝から郁乃ちゃんの機嫌が悪いのが気になる。
昼飯の時も、俺が必死に言い訳するのを恨めしそうに睨んでいた。
……言い訳してるときは、朝よりもっと機嫌が悪かったかもしれない。
「……俺、何かしたっけ?」
「お前の言ってることが本当なら、郁乃ちゃんを怒らせるようなことは
してないと思うぞ。ま、お前の言ったことが本当ならな」
まだ疑ってるのか雄二よ。何故そんなに俺と郁乃ちゃんをくっつけたがる。
「本当だよ。嘘ついてたらとっくにタマ姉にばれてるっての」
「それもそうか。しかし、郁乃ちゃんはお前に対してだけ機嫌悪いみたいだな。
昼飯のときもお前にはつんけんしてるのに、このみや委員長には普通だったし」
「だよなぁ。しっかし原因が分からんことにはどうにもできん」
「本人に聞いてみれば?『俺何かしたか?』って」
「それが出来りゃ苦労しねえっての」
383素直になれない女の子との日々4話8−2:2006/09/11(月) 02:47:46 ID:XhONm5JZ0
雄二とそんな話をした後、いつものように放課後になった。
郁乃ちゃんを向かえに行こうと思う……のだが。
少しだけ、いやかなり気まずい。またツンツンされたら、と思うと自然と足が重くなる。
……ええい、何を迷う河野貴明。相手は年下じゃないか。
それに、俺が行かなきゃ郁乃ちゃんは帰れないんだぞ。
と、自分を奮い立たせて郁乃ちゃんの教室に向かう。
すると、階段を上がる途中で郁乃ちゃんを背負うこのみと車椅子を運ぶ数名の女子に出会った。
「タカくん、どうしたの?」
「いや、郁乃ちゃんを迎えに行こうと思ったんだけど…」
「見ての通り、このみにお世話になってるからいらないわよ」
「そ、そうみたいだな」
「これからはこのみたちに手伝ってもらうから、あんたは手伝わなくて良いわ」
「え……」
「タカくん、今日はいくのんを送っていくから先に帰っててね」
「あ、ああ」
わいわい騒ぎながら行く郁乃ちゃんたちを、ぼけっとしながら見送った。
郁乃ちゃんから手伝わなくてもいい、と言い渡され、俺は一人で家路に着いた。
普通なら喜ぶべきことだ。別に人の手伝いが大好き、ってほどお人よしじゃない。
恥ずかしい思いをすることもなくなるし、郁乃ちゃんに嫌味を言われることも無い。
何も気にせずに喜ぶべきことなのだ。だが……胸に引っかかった感じがあるのは何故だろう。
そのひっかかりは、家に帰っても消えることは無く、そのせいであまり眠れなかった。
384素直になれない女の子との日々4話8−3:2006/09/11(月) 02:48:27 ID:XhONm5JZ0
翌日になってこのみを迎えに行くと、
「このみなら、新しく出来た友達と一緒に登校するって言ってたわよ?」
と言われてしまった。予想通りといえば予想通りなのだが、何故かショックを受ける。
ショックを受ける理由も分からないので、余計に性質が悪い。
俺は一体何にショックを受けて、何が胸にひっかかっているのだろうか。
「おい貴明、どこ行くんだよ」
雄二に声をかけられて我に返ると、いつのまにか雄二とタマ姉に合流する場所に来ていた。
どうやら、雄二たちに気づかずに通り過ぎてしまったらしい。
「タカ坊。考え事をするのは悪いことじゃないけど、歩いてるときはやめなさい。
事故にでもあったりしたらどうするの」
「う……ごめん」
「うん、これからは気をつけなさい。それに、悩みがあるなら相談に乗るわよ?」
「……いや、いいよ」
自分の中で纏まっていないことを話しても余計に訳が分からなくなるだけだ。
年下に手伝いを断られて悩んでる、なんて言うのも格好悪いし。
「そういや、チビ助はどうしたんだ?」
……雄二め、人が一番聞かれたくないことを。
「このみは、郁乃ちゃんの登校を手伝う、って言って早く出たよ」
「お前は行かなくて良いのか?」
「……手伝いを断られたんだよ」
「郁乃ちゃんがタカ坊に手伝わなくても良い、って言ったの?」
「そ、そうだよ」
なんだってこの姉弟は人が聞かれたくないことを的確についてくるんだろう。
登校中、果ては朝のホームルームまで二人に質問攻めにあってしまった。
385素直になれない女の子との日々4話8−4:2006/09/11(月) 02:49:08 ID:XhONm5JZ0
「河野くん、郁乃と喧嘩でもしたんですか?」
昼休み、小牧さんは開口一番そう切り出した。ブルータス、お前もか。
「……何にも無いよ。ただ郁乃ちゃんに手伝いを断られただけだって」
「郁乃が?」
「そう。クラスメイトに手伝ってもらうから良いってさ」
「……河野くんが何かしたんじゃなくて?」
「してないってば。郁乃ちゃんだって男で先輩の俺に手伝ってもらうより、
同級生の女の子に手伝ってもらうほうが気楽で良いんじゃないの?」
俺がそういうと、小牧さんはうーんとうなりながら考え込んでしまう。
……なんで皆俺を悪者に仕立てあげようとするんだろう。
さっき雄二とタマ姉に詰められたときも、
二人は俺が何かしたんじゃないか、としつこく聞いてきた。
俺、そんなに女の子に意地悪とかするタイプに見えるんだろうか。
「あんなに楽しそうに河野くんとのこと話してたのに……」
小牧さんは何かつぶやいているが俺には聞こえない。
こうしている間にも、胸のもやもやはどんどん大きくなるばかりだった。
386素直になれない女の子との日々4話8−5:2006/09/11(月) 02:50:08 ID:XhONm5JZ0
「よし、聞きに行こう」
別に郁乃ちゃんと仲が良いわけでもないし、俺の手助けがいらなくなるなら
良いことだ。それに、郁乃ちゃんの機嫌が悪かった理由も聞いておかないと気持ち悪い。
「雄二、今日は先に帰ってくれ。俺はちょっと用事が出来た」
「郁乃ちゃんのところに行くのか?」
「ああ。機嫌が悪かった理由とか聞いておかないと気持ち悪いからな」
「分かった。頑張れよ」
雄二の声援を受けて3階に上がると、郁乃ちゃんが
このみに背負われようとしているところだった。
「あっ、タカくん。どうしたの?」
「郁乃ちゃんに少し話があるんだ。少し借りて良いか?」
「ちょっと、人を物みたいに言わないでくれる?
それに、私には河野先輩と話すことなんてありません」
「郁乃ちゃんに無くても俺にはあるの。とにかく、ちょっと借りるぞ」
「う、うん。分かった。行ってらっしゃい」
「こら、私は行くなんて一言も……」
「すぐ終わるから。ほら、行くぞ」
暴れる郁乃ちゃんを宥めながら、普段使われない空き教室に郁乃ちゃんを連れて行った。
387素直になれない女の子との日々4話8−6:2006/09/11(月) 02:54:23 ID:XhONm5JZ0
「で、話って何?」
郁乃ちゃんは相当不機嫌そうだったが、諦めたのか話は聞いてくれるみたいだ。
……ここまで来たんだ。もう後には引けない。
「郁乃ちゃん、昨日の朝からずっと俺にツンツンしてたけど、
俺何か悪いことしたかな?俺は鈍いから気づかないうちに郁乃ちゃんの
気に障るようなことを言ったかもしれない。それならそれで謝るし、
もし俺のことが気に入らないんなら、はっきり言って欲しい」
「……」
よし、言えた。俺にしては珍しくはっきり言えた。
俺が、女の子が苦手なの少しは克服できたな、とか少しは
男らしい行動が出来たな、などとちょっとした感動に浸っていると、
ずっと黙っていた郁乃ちゃんが口を開いた。
「あんたが男らしくないからよ」
「……は?」
郁乃ちゃんの口から出た言葉は、俺の想像を遥かに超える……
というか、全く予期していないものだった。
確かに俺はあまり男らしく無いし、うじうじしてるところもあるけど。
郁乃ちゃんの前でそんな態度を取った覚えは無いし、それで怒らせるような
ことをした覚えも無い。じゃあ何で?
388素直になれない女の子との日々4話8−7:2006/09/11(月) 02:55:36 ID:XhONm5JZ0
あんた、姉のこと好きなんでしょ?」
「……はぁ!?」
次の言葉は、先ほどの言葉のさらに斜め上をいくものだった。
「ちょ、ちょっと待って。どっからそんな話が出てきたの?」
「あんた、姉と一緒に居たいから私のこと手伝ってるんでしょ?」
次々に飛び出す予想外の言葉に、俺の頭は完全にパニックに陥った。
あまりのことに俺が黙っている間にも、郁乃ちゃんの言葉は続く。
「姉のことが好きなら、私のことをだしにしないで正々堂々と誘えば良いじゃない。
姉もまんざらでも無いみたいだし、お人好し気が合うんじゃない?
とにかく、姉と会うためのだしに使われるのはまっぴらごめんなの」
と、とりあえず一つだけ訂正させてもらおう。
「ちょっと待ってくれ。いつ俺が小牧さんのことを好きだって言った?」
「態度を見ててそう思ったの。お似合いだと思うわよ?」
「それは完全に郁乃ちゃんの勘違いだって。俺は小牧さんのことを良い友達だと
思ってるし、小牧さんもそれは俺と同じ考えだと思うよ」
「なに、まだ言い訳するの?男らしく無いわね」
……あまりの見解の相違に頭痛がしてきた。これは、小牧さんを交えて
誤解を解くしかないな。
389素直になれない女の子との日々4話8−8:2006/09/11(月) 02:56:34 ID:XhONm5JZ0
「お姉ちゃん。こいつがお姉ちゃんのこと好きなんだって」
「ええ!河野くん私のこと好きなの!?」
小牧さんのところに行くと、郁乃ちゃんがいきなり爆弾を落とした。
「違う違う!だからそれは郁乃ちゃんの勘違いだって。
俺と小牧さんは、良い友達だってことを郁乃ちゃんに説明して欲しいんだよ」
「……河野くんにとって、私はただの友達なんだね」
何、その微妙に残念そうな表情。一体俺に何を期待してるっていうんだ。
「と、とにかく誤解を解いて欲しいんだって。俺が郁乃ちゃんを手伝ってたのは、
小牧さんと会いたいなんて下心からじゃない。純粋に助けたかっただけなんだし」
「……微妙に納得いかないけど、分かりました」
その後20分、俺と小牧さんによる郁乃ちゃんへの説得は続いた。
その甲斐あって、何とか誤解は解けたようだ。
「……で、何で俺はまた手伝ってるのかな?」
「純粋に私を手伝いたかったんでしょ?じゃあいいじゃない」
「いや、別に良いんだけどさ。郁乃ちゃんに迷惑じゃないかなって。
先輩の俺が毎回こんな風に運んでたら、変な噂立たないとも限らないし」
「……もう立ってるわよ」
「え、何?」
「何でもないわよ!」
理不尽に怒鳴られた。でも胸のつかえは取れたし、手伝うことが嫌じゃない
どころか、少し楽しみになっている自分がいるのは否定できないところであった。
390素直になれない女の子との日々 作者:2006/09/11(月) 02:59:21 ID:XhONm5JZ0
4話です。いかがだったでしょうか。
正直、このスレの中でもいくつもあったように途中でやめてしようかと思ったんですが、
更新しなくなってから半年以上経つのに読みたい、と言ってくださる方がいたので書いてみました。
結構時間が経ってしまったので、設定でおかしいところなどあると思います。
そういった点や気づいた点、悪い点などありましたらぜひぜひご指摘ください。
391名無しさんだよもん:2006/09/11(月) 03:14:51 ID:qPJchDNl0
GJ&乙
392名無しさんだよもん:2006/09/11(月) 04:55:00 ID:q60O//9s0
すばらしく乙
いい感じにストーリーが進んでますね
正直にこの先が楽しみであります

393名無しさんだよもん:2006/09/11(月) 08:09:05 ID:L3elPiG2O
GJ!長い間待ってましたよ!
394名無しさんだよもん:2006/09/11(月) 10:16:06 ID:E8UKyL450
イヤッホーー! GJです!

慌てて書庫に再読に行ってきたのですが、そう言えばお怪我の方は大丈夫ですか?
ノートPCなんかだと知らない間に首に負担が来ますからお気を付けてください。
395名無しさんだよもん:2006/09/11(月) 18:41:11 ID:+J3KMJa1O
GJ!
ツンデレは別に好きじゃないが
いくのんのツンデレはなんか好きだ
396名無しさんだよもん:2006/09/11(月) 20:33:09 ID:CKxx34XD0
そろそろですか。
397河野家にようこそ 第72話(1/9):2006/09/11(月) 20:56:29 ID:Akh2kkmJ0
 殺意剥きだしの玲於奈さんから何とか逃げ帰った俺とこのみ。話を聞いた我が家の娘さんたちは
非常事態とばかりに各々動き出すが、タマ姉はこの件も含め、玲於奈のことは自分に任せて欲しいと
頭を下げる。だが時既に遅し。早々にるーこが仕掛けた金ダライトラップは、関係のない春夏さんの
頭を直撃してしまうのだった。
 幸い大した怪我ではなかったものの、るーこ共々春夏さんに頭を下げる俺。優しい春夏さんは怒り
もせず、逆に俺の身を気遣ってくれる。そんな春夏さんの前で俺を守ると宣言してくれるタマ姉と
このみたち。ううっ、頼もしいなぁ。
 夜中。何となく寝付けないところへいきなり電話が。玲於奈さんからかと思ってビクビクしながら
受話器を取ると、酔っぱらった女の人からの間違い電話だった。お酒は適量を守りましょうね。
 翌朝。俺とタマ姉を中心に、周囲を警戒しつつ歩く由真たち。一生懸命なのは嬉しいんだけど、
周囲の視線を集めまくりで……。

 警戒しながらの移動のために必然と歩く速度は遅くなり、俺たちが学校に到着したのは予鈴ギリ
ギリの時間。校門の前にはいつもの通り、小牧姉妹と珊瑚ちゃんと雄二、と、あれ?
「イルファさん?」
「おはようございます、貴明さん」
 どうしてイルファさんがここに? ――ああ、きっと珊瑚ちゃんの護衛だ。
「す、済みませんイルファさん。なんか面倒なことになっちゃって……」
「貴明さんのせいじゃありませんよ。それにこれは、私がわがままを言ってついてきただけですし」
「ウチ大丈夫や言うたのに、いっちゃん心配性なんやから」
 珊瑚ちゃんの言葉に苦笑するイルファさん。
「俺的には、珊瑚ちゃんのことは俺に任せて欲しかったのだが、まぁここまでイルファさんと一緒に
いられたので結果オーライと言ったとこだな」
 お前の心境など聞いてないぞ雄二。
398河野家にようこそ 第72話(2/9):2006/09/11(月) 20:57:33 ID:Akh2kkmJ0
「しっかし、それにしてもお前ら、チト大げさ過ぎじゃねーの? さっきから注目の的だぜ」
 由真たちの鉄壁の守りを、からかうような目で見る雄二。正直、俺もそれは家からここまでずっと
思っていたことなのだが、あまりに真剣な由真たちに言えるもんじゃない。
「あのさ雄二、これはあんたのお姉さんを守るためでもあるのよ。どこから玲於奈が襲ってくるか
解ったもんじゃないんだから!」
 真面目にやっているのを馬鹿にされ、怒る由真。しかし雄二は平然と、
「大丈夫じゃねーの? 姉貴なら包丁を手づかみでへし折ったり、あるいは鋼の筋肉で包丁なんぞ
じゃ傷一つ――」
 ガシッ! ギリギリギリ……
「雄二は自分のお姉ちゃんを、そんな化け物みたいに思っていたのね。とっても悲しいわ」
 はぁ、と悲しげにため息をもらすタマ姉。しかしその手が緩むことはない。
「あだだだだ! ご免なさいお姉様! 化け物呼ばわりして本当にご免なさい!!
 すんごく反省してますから放してください割れる割れる中身が飛び出しちゃうぅぅ!!」
 タマ姉のアイアンクローに悶絶する雄二は放って置いて、愛佳と郁乃の方を見ると、
「あの、たかあきくん……」
 憔悴気味の愛佳。そ、そんなに心配してくれてるのか?
「ご、ご覧の通り由真たちががっちり守ってくれてるから、大丈夫だよ」
「でも、授業中とかに襲われたら……」
「ははっ、いくら何でもそんな――」
 笑い飛ばそうとした瞬間、授業中に包丁持って乱入してくる玲於奈さんの姿が頭をよぎり、背筋が
凍り付きそうになった。……ま、まさか、ねぇ。
「それで、あの、これ」
 愛佳は持っていた紙袋の中に手を入れ、
「たかあきくん、……着てくれる?」
399河野家にようこそ 第72話(3/9):2006/09/11(月) 20:58:30 ID:Akh2kkmJ0
 取り出したそれは一着のベストのようなのだが、体中に大きなポケットがいくつもあり、その中は
何か四角いものが入れられている。見た目にも凄く重そうだ。
「愛佳、これって?」
「昨日由真から話を聞いて、あたしにも何か出来ないかなって考えて、そしたらこれが思い浮かんだ
んです。ポケットの中は、ホラ」
 愛佳がポケットの一つを開けて中身を取り出す。それは、ハードカバーの本。
「これなら、その……、包丁で刺されても、大丈夫かなぁ、って」
 成る程、愛佳お手製の防刃ベストか! 確かにこれなら包丁の刃も通さないかも。
「ありがとう愛佳。うん、喜んで着させてもらうよ」
「お姉ちゃん徹夜して作ったんだから、大事に着なさいよ」
「い、郁乃、余計なこと言わないでよぉ!」
 そうか、愛佳が疲れた感じなのはそのせいか。……俺なんかのために、嬉しいなぁ。よし、早速
着てみよう。
 上着を脱いで、愛佳のベストを着る。――う、やっぱ重いな。けど愛佳が一生懸命作ってくれた
ものだし、それに生命の危機って時に贅沢など言っていられない。
 そして上着を着ようとしたのだが……、ベストがごつくて上着のボタンが留められない。これでは
上着が着られないので俺は、一旦ベストを脱いで、上着の上からベストを着てみることに。……うん、
これなら大丈夫だな。
「貴明」
「ん、何だ郁乃?」
 俺に近寄ってきた郁乃はベストの一点――ちょうど俺の心臓がある辺りを指さす。
「そこは刺されないようにしてね。その本、まだ読んでないから」
「い、郁乃!!」
 どうやらお姉ちゃん、妹の本まで使ったらしい。
400河野家にようこそ 第72話(4/9):2006/09/11(月) 20:59:16 ID:Akh2kkmJ0
「あ、ああ……」
 確かにここは俺にとっても大切な箇所だ。刺されないよう努力したい、と思う。
「それにしても、連中、現れないわね」
 由真がそう言い、俺も周囲を見回してみる。――確かに、玲於奈さんたちの姿はない。
 うーん、玲於奈さんたちにとっても色々あったし、もしかして三人とも今日は休みかな?
「油断しないでよたかあき! 敵はどこから来るか解らないんだから!」
 油断が顔に出ていたようで、由真に叱られてしまった。ごめんなさい。
 だが結局、朝は玲於奈さんたちには会わずじまいだった。

 授業中。
「河野ー、お前それ何着てるんだー?」
「はい、風邪を引いたみたいなんで、ベストなぞ」
「ベストは中に着るものだぞー。それに何だそのベスト、えらくゴテゴテしてるじゃないか」
「羽毛100%です。あったかいです」
「嘘つけー。羽毛がそんな四角くゴツいワケないだろー。
 校則違反だ。脱げー」
「これ脱いだら寒くて死にます。って言うか殺されます。死にたくないから脱げません」
「何ワケの解らんこと言ってんだー。いいから脱げー」
「イヤです。脱いだら死にます。助けてください」
「脱げー。脱がないと内申書に凄いこと書いちゃうぞー」
「先生」
「ん、何だ木田?」
「河野君のそのベスト、お願いですから見逃してあげてください。
 だってそれ、委員ちょの手作りなんです」
401河野家にようこそ 第72話(5/9):2006/09/11(月) 21:00:01 ID:Akh2kkmJ0

「「「「「「「「「「「「「「「「な、なんだってー!?」」」」」」」」」」」」」」」」

「あたし見ちゃったんです。今朝、委員ちょが河野君にそのベストをプレゼントするのを。
 ついでに聞いちゃったんです。委員ちょ、河野君のために徹夜して作ったって」
「あ、あああ、あの木田さん、あたしそういうつもりじゃ……」
「委員ちょスッゲー!! 手作りベストかよ!?」
「ライバル多いもんね、手作りアイテムでポイント稼いでおかないと!」
「うんうん、私も委員ちょ応援しちゃう! 先生、私からもお願い、見逃してあげて」
「ちっ……、河野は正直ムカつくけど、委員ちょのためなら仕方ねぇな。
 俺からも頼むぜ先生。認めてやってくれよ」
「俺も俺も」
「私も私も」
「そうかー。みんな小牧のことを応援してるのかー。
 不純異性交遊は校則違反だが、先生その辺は理解あるつもりだぞー。
 よし河野、特例で認めよう。他の先生にも俺から言っておくから、安心しろ」
「あ、ありがとうございます……」
「やったね委員ちょ!」
「よかったね委員ちょ!」
「う、うん……」
「るーっ!」
「うわっ、ちょ、るーこ、お前何いきなり抱きついてんだよ!?」
「うーは風邪を引いている。だからるーが暖めてやるぞ」
「おおっ、るーこちゃんも動いたぞ!」
402名無しさんだよもん:2006/09/11(月) 21:00:47 ID:3V7189YP0
支援
403河野家にようこそ 第72話(6/9):2006/09/11(月) 21:01:03 ID:Akh2kkmJ0
「るーこちゃん大胆! さすがは外国人だね!」
「いいぞるーこちゃん! 委員ちょも負けずに抱きつけー!」
「え、え、えええっ!? そ、そそそんな抱きつくなんて……」
「そうかー。るーこも河野が好きなのかー。
 不純異性交遊は校則違反だが、先生その辺は理解あるつもりだぞー。
 よしるーこ、特例で認めよう。他の先生にも俺から」
「認めちゃダメでしょ先生!!」

 いつもの通り屋上で昼食なのだが、やはり警戒態勢中なのである。
 俺とタマ姉、それと戦力外の郁乃はシートの中央に座らされ、そこを中心に円状に座る由真たち。
何より異様なのは、由真たちは俺たちに背を向け、外側を向いて座っていること。そして由真たちは
周囲を警戒しつつ昼食――警戒しながら食べられると言う理由から、おにぎりのみを口にしているの
である。その真剣さには頭が下がる思いなのだが、異様な光景に周囲の視線が集中しているのも事実。
 ちなみにこの場に雄二はいない。「恥ずかしくてつきあってらんね」とか言って、一人学食へと
トンズラこきやがったのだ。薄情なヤツめ、いっそ雄二が刺されてしまえ。
「ご、ごめんな愛佳、それに珊瑚ちゃんも」
 円陣に加えられてしまった二人に頭を下げる。
「や、や、そんな気にしないで、たかあきくん」
「ウチも貴明のこと、バッチリ守ったるで〜」
 振り返ってそう答えてくれる二人も、手にしているのはやはりおにぎり。恐らく前の晩に由真から
おにぎりにするよう指示されたのだろう。
「こらっ! 二人とも警戒警戒!」
「あ、うん、ごめんね由真」
「ゴメンな〜」
404河野家にようこそ 第72話(7/9):2006/09/11(月) 21:02:03 ID:Akh2kkmJ0
 由真に注意され、慌てて向き直る愛佳と珊瑚ちゃん。厳しいなぁ。
「でも全然現れないね、玲於奈さんたち」
 一個目のおにぎりを食べ終え、このみが言う。
「油断したらアカンでこのみ。ホラー映画でもな、何もないって安心したところでいきなりわっ! 
って来るんやから」
 今まで散々それで怖い目に遭ってきたのだろう。瑠璃ちゃんの言葉には妙な重みを感じる。
 と、その時だった。
「――んぐっ!?」
 突然、喉元を押さえて苦しみだす優季。
「ど、どうした優季!?」
 優季に近寄ると、彼女の足下には食べかけのおにぎりが。――のどを詰まらせたのか。
「タカ坊、これ」
 お茶の入ったカップをタマ姉から受け取り、優季に飲ませる。ゴクゴクと一気に飲み干す優季。
やがて、のどの詰まりが収まったのか、ホッと一息。
 ははは、優季ってば慌てんぼさんだなぁ、とからかおうとした俺だが、その前に優季は慌てて、
「あ、あっちです!」
 優季が指差した方向を見ると……、そこには二人の女の子。それは、
「薫子さんと、カスミさんだ」
 でも、玲於奈さんの姿がないのは何故だろう? それに何となく、二人とも不安そうな顔で――
「とうとう現れたわね! 総員戦闘配置! オールウェポンズフリー!」
「これは演習ではないのであります! 繰り返す、これは演習ではないのであります!」
 由真とこのみの号令により、一斉に武器を構える河野家メンバーズ。由真はスタンガン、花梨は
催涙スプレー、このみは伸縮式の警棒、るーこはアメリカの警察が使ってるような妙に長い懐中電灯
(これらは全て花梨の私物と思われる)、瑠璃ちゃんはいつぞやの電動ガン。ここまではいいのだが、
405河野家にようこそ 第72話(8/9):2006/09/11(月) 21:02:52 ID:Akh2kkmJ0
優季はすりこぎ棒、珊瑚ちゃんはピコピコハンマー、そして愛佳はコショウの瓶と、若干武器とは
言えないものも……、あ、いや、本人たちは真剣なのだから、批判などしてはいけない。
 だけど、薫子さんもカスミさんも敵意など微塵も感じられず、ここは少し落ち着いて様子を見る
べきじゃないかと思った俺なのだが、
「そこの二人! こっちに近づいたら痛い目に遭わせるからね!!」
 由真の恫喝に薫子さんとカスミさんはビクッと身体を震わせ、怯えたように身を寄せ合う。
「ちょ、ちょっと待て由真。何か様子がおかしいぞ。玲於奈さんがいない――」
「聞こえてるんでしょあんたたち! 今すぐ消えないと本当にやっちゃうわよ!!」
 俺の声などまるっきり無視の由真。そして薫子さんとカスミさんはその言葉通り、逃げるように
屋上から姿を消してしまった。
「やったね由真ちゃん、撃退成功だよ!」
「安心するのはまだ早いわよ花梨。総員、このまま警戒態勢を維持!」
 由真の指示に従い、引き続き周囲を警戒するメンバーズ。
 だが俺が気になるのはやはり薫子さんたちの様子。……もしかして薫子さんたち、俺たちに何か
言いたいことがあったのでは?

 その後も警戒態勢を維持し続けた由真たちだったが、そこに思わぬ敵が現れた。
「屋上で数人の女子生徒が武器を出して喧嘩しようとしてる」と言う通報を受け、教師が数人、屋上
に駆け込んできたのだ。
 俺たちは教師たちからたっぶり説教をくらい、武器も全て没収された。――まぁ、停学処分などに
ならなかったのは不幸中の幸いである。
 ちなみに、例の先生は本当に根回しをしてくれたらしく、俺の防刃ベストだけは没収を免れた。

 その後は薫子さんたちにも会うことはなく、学校が終わり、俺たちは無事帰宅した。
406河野家にようこそ 第72話(9/9):2006/09/11(月) 21:03:43 ID:Akh2kkmJ0
「うえ〜ん! 防犯グッズ、高かったのに〜!」
 没収の被害が一番大きかったのは言うまでもなく花梨だ。とりあえずよしよしと頭をなでる。
「まいったわね。武器が無いのに、もし玲於奈たちが来たりしたら――」
 ピンポーン。
「ま、まさかホントに!?」
 絶妙のタイミングで呼び鈴が鳴り、びびる由真。――おい、俺の背に隠れるとはどういうことだ?
 正直少し怖いが、俺は玄関のドアの前まで行き、ガラスの向こうの人影を見る。――女の子っぽい
けど、誰かまでは解らないな。
「どなたですかー!?」
 やや大きな声で尋ねてみる。すると、
「……あ、あの、薫子、です」
「か、薫子さん!?」
 俺のその声を聞き、タマ姉たちも廊下に出てくる。とりあえずはドアを開け――
「たかあき!?」
 止めろとばかりに由真が叫ぶが、声の様子からはやはり敵意は感じられなかったし、それに防刃
ベストだってまだ着てたりするから大丈夫。俺は構わず、ドアを開ける。
 そこには、怯えた顔の薫子さんとカスミさんがいた。
「あんたたち、また性懲りもなく!」
 怒鳴る由真を手で制し、タマ姉は、
「あなたたち、どうしたの?」
 優しい口調でそう尋ねる。すると、薫子さんは声を震わせ、こう言った。
「わ、私たち……、追い出されてしまいました」

 つづく。
407河野家にようこそ の作者:2006/09/11(月) 21:05:00 ID:Akh2kkmJ0
どうもです。第72話です。
>>402さん、支援ありがとうございました。m( __ __ )m

>>336
ありがとうございます。今度ヒマなときにでも秋葉に足を運んでみますね。

>>335
ぐぐって吹いた。
買う、絶対買う!w
408名無しさんだよもん:2006/09/11(月) 21:45:23 ID:CHpMPx9v0
恵美梨ガイル
409河野家にようこそ の作者:2006/09/12(火) 12:39:43 ID:ypPcq85l0
どうもです。作者です。

ええと、一応お断りしておきますと、今回登場した木田さんは「天使のいない12月」の木田妹さんとは
別人です。
テキトーに名前考えて思いついただけです。(^^;
(頭のどこかで覚えていたのかなぁ……)
410名無しさんだよもん:2006/09/14(木) 01:35:20 ID:wQW/+G910
>「天使のいない12月」の木田妹さんとは別人です。

…orz
411名無しさんだよもん:2006/09/14(木) 01:54:57 ID:vZgE+Wm50
天いなと鳩2のクロスオーバーってのはなかなか嫌な感じで良さげだな
貴明と雪緒あたりなら可愛いカップルになりそうだが、時紀と愛佳とかドロドロになれそ
412名無しさんだよもん:2006/09/14(木) 01:58:09 ID:fodQrIxE0
貴明と雪緒だと肉体関係にすらならず雪緒ソロで屋上から飛び落りて終わるんじゃないか
413名無しさんだよもん:2006/09/14(木) 12:20:50 ID:oNmAD4ok0
今週はいやに河野家乙の書き込みが無いな。
というわけで河野家乙。
このままだとあの3人も家に巻き込みそうな感じですが、ぜひ巻き込んであげてください。
あの子達個人的には結構好きなので。貴明がソファで寝てたら、玲於奈が包丁を持ってみてた……
なんてネタが欲しいです、はい。
414桜の群像 第4話「第三の女」1/21:2006/09/14(木) 22:12:23 ID:Z2RoVBI+0

「もしお二人が恋人同士というなら、ここでキスして証明してくださいッ!」

環と貴明のデートは、なかなか微妙な結果に終わった。
水族館→デパート→○クドナルドと定番のパターンを踏んだ貴明の選択は、
三人娘のお気には召さなかったようだが、二人の様子はというと、
貴明と腕を組んで歩く環は至って楽しそう、貴明も照れ照れながら環に応え、
雄二から二人が付き合ってはいないらしい主旨の情報を得ていた玲於奈でも、
それを明確に判断する事はできなかった程であった。

が、結局のところ、デート自体がどうだろうと三人の評価はお決まりなわけで。
「したがって、その男の評価は0点。お姉様には大変失礼ですが、ソレをお姉様の想い人と認めるわけにはまいりません」
当然、こんな結論。
対する環、
「あなたたち自身がタカ坊をそう評価するなら、それはそれで構わないわ。
でも、それが私のタカ坊に対する評価だとしたら、大間違い。
大切なのはあなたたちのつけた点数ではなく、私がつけた点数ではなくて?」
もっともだ。
そして、環は貴明に「満点以上」を付けて、三人娘の気持ちを断った。
環としては当然、ある意味予定の行動であっただろう。
もっとも、断られた方が納得するかどうかは、断られた方の問題なわけで。

「……です」
「……え?」
「まだです! まだ認められないです!」
「カ……カスミが……」
「こ、声を……」
玲於奈と薫子ですら驚くほど珍しく声を上げ、環の主張を否定したカスミは、
続けて、恋人同士ならキスしている筈だ、との持論を展開した。
こうして、冒頭の台詞に話が繋がる。
415桜の群像 第4話「第三の女」2/21:2006/09/14(木) 22:13:04 ID:Z2RoVBI+0
「キ、キスぅ!?」
「本当に恋人同士なら、できるはずです」
「で、でも、それって人前でするもんじゃないし……」
「最近は……人前だろうと構わずしてます!」
「だって、ほら、あのね……?」
「やっぱり、ウソだったんですね」
「ウソじゃないわよ、私とタカ坊は、正真正銘……」
「では、どうしてできないんですか?」
「で、で、できるわよ、キスの一つや二つくらい! そこまで言うなら、そこでよく見てなさ……タカ坊、どこ行くつもり!?」
環は(逃げようとした)貴明の腕を掴んで引き寄せる。
「い、いや、話が長引きそうだし……」
「大丈夫よ、すぐに終わるから」
環にしても、このような追い込まれ方は予想外であったが、
いざとなっては度胸が据わる。既に覚悟を決めていた。
(ごめん、このみ、ちょっとだけ抜け駆けさせてね)
心の中で、彼女がこれまで態度を明確にしなかった理由に謝る。

ただ、この場合、もうひとつ要素があった。

「ちょ、ちょっと……タマ姉」
「タカ坊……」
環は貴明を掴んだ腕に力を込めて、顔を寄せていく。
ふたつの唇は、一気に距離をつめて行き……
「や、やめてよタマ姉!」
「タカ坊……」
「ご、ごめんっ!」
環を振りほどいた貴明は、身を翻して走り出す。
「タカ坊っ!」
環もまた、後を追って走り出した。
残された三人、呆然と見送る。突然の出来事に、自分達の希望的観測が的中した事も忘れていた。
416桜の群像 第4話「第三の女」3/21:2006/09/14(木) 22:14:04 ID:Z2RoVBI+0
「はぁ……ぁ……ま、まって、待ちなさいタカ坊っ」
「はぁ、はぁ……っ!」
神社から坂道を駆け下りた林の中で、環は貴明の腕を捕まえた。
運動神経抜群の環とはいえ、男の足に追いついたのは、貴明が足を緩めたためだろう。
その証拠に、追いつかれた貴明は素直に足を止める。
息を整える二人。口を開いたのは、貴明。
「……ごめん、タマ姉、話を壊しちゃって」
「ううん、そんなこと……」
「でも、嫌だったんだ。嘘や方便で、そういう事、するの……」
「タカ坊……」
「いまどき真面目すぎかもしんないけどさ」
環は首を振る。
「あ、えーと、それに」
貴明は、ちょっと恥ずかしそうに言い訳を続ける。
「実は俺、まだキスとかしたことなくって」
ははっと照れ隠しに笑う。
「こういうの慣れてれば、上手くやれたかも知れないんだけど……情けないな」
「タカ坊……」

そんなことない。貴明は情けなくなんかない。
情けないのは、自分。
キスしようとしたのは、嘘でも方便でもない。
デートだって、三人の追及を免れるためなんかじゃない。
貴明の事が、本当に好きだから、一緒の時間を過ごしたかったから……

想いは、だが、環の外には放たれなかった。
「ううん、私の方こそごめんなさい」
再び、穏やかに首を振る。
「タカ坊をダシにしようとしたのが間違いだったわね。自力でちゃんとするから、今日の事は、忘れてちょうだい」
「う、うん。……ホントごめんね、タマ姉」
三度目謝りながら、ホッとした表情で緊張を緩める貴明。
もったいない事、したかなぁ。なんて、環の心も知らずに笑った。
417桜の群像 第4話「第三の女」4/21:2006/09/14(木) 22:15:12 ID:Z2RoVBI+0
それから一週間。
環と貴明は、内心気まずい部分はあるだろうが、表面上は今までどおり、
このみや雄二を交えて、何事もなかったような学園生活を続けている。
三人娘も、引き続き環のおっかけであり、仕切直しの引き分け再試合といったところ。

転機が訪れたのは、またも土曜日。

「それじゃ向坂さん、また申し訳ないけどお願いしま……するわね」
「了解。連休前には作っておくから。じゃ、さようなら」
「さようなら」
生徒会の仕事をひとつ引き受けて帰路に就こうとした環は、
−転校生にも関わらず、彼女は4月早々に副会長に就任している−
昇降口に向かう途中で、教室……確か書庫だ……から出てくる貴明を見かけた。

「あ、タカ……」
声を掛けようとした環は、慌てて口をつぐむ。

貴明のすぐ後に続けて、一人の少女が廊下に出てきた。
2年の小牧愛佳。貴明のクラスの委員長であるだけでなく、
部活動やクラス割り活動など、学年を越えて生徒達の世話役的な存在であり、
環とも生徒会の仕事で多少は面識がある。
なので、それだけでは環が口をつぐむ理由にはならないのだけれど。

扉に鍵を掛けた二人は、なんとなく顔を見合わせて照れ笑うと、
並べた肩が触れあいそうな距離で歩き始める。
その様子が、あまりにも初々しい。

趣味が悪いと知りつつ、声を掛けずに後を付けた。
「……」
「……」
廊下の喧噪に、微妙に身を寄せたり離したりしながら、昇降口に向かう貴明と愛佳。
二人の背中が緊張しているのが、遠目にも判った。
418桜の群像 第4話「第三の女」5/21:2006/09/14(木) 22:16:29 ID:Z2RoVBI+0

校舎を出て、坂道を降りても、二人は並んで歩いている。
周囲に人がまばらになって、心なしか距離が縮んだようだ。

「タマ……お姉ちゃん?」
「ひゃっ!?」
貴明達の後方約30メートル、趣味が悪いと思いながら目を離せないでいた環は、
突然掛けられた馴染みの声に飛び上がった。
振り返ると、このみがキョトンと首を傾げている。
「やっぱりタマお姉ちゃんだ。どうしてそんなに道のはじっこを歩いてるの?」
「な、なんでもないわ。このみ、今帰り?」
「うん……」
当然の事を聞いた環に頷いたこのみは、前方を見やって目を輝かせた。

「あ、タカ君発見!」
そのまま貴明に向かって駆け出しそうになる彼女を、環が首根っこ掴んで止める。
「ちょ、ちょっと待ちなさい」
「ふぐぇ」
「あ、ごめん」
蛙が潰れた声に手を放す。このみの頬がぷくっと膨れる。
「タマお姉ちゃんひどいよ。どうしたの?」
「ほら、良く見なさい」
環は前方の貴明の左隣を指さす。
「あれ? 誰だろう? 隣のひと」
新入生であるこのみは、愛佳と面識はないだろう。
「確か、タカ坊のクラスメートよ。」
「ほえ〜」
しばし首を捻ったこのみ。

「デート?」
いきなり核心。
419桜の群像 第4話「第三の女」6/21:2006/09/14(木) 22:17:13 ID:Z2RoVBI+0
「わ、わからないけど、でも……気になる?」
このみに聞くのは、卑怯というものだろう。
「えーっと……うん……」
「じゃあ、邪魔しないようにこっそりね」
「わあ、探偵さんみたいだね」
はしゃぐ元気っ子。
ただ、ほんの一瞬、自分の感情が判らなくなったような表情があった。

こうして結成されたタカ坊尾行部隊の、さらに後方数十メートル。
「ねえ、やはり声をかけませんこと?」
「お姉様の邪魔をするわけには参りませんわ」
コクコク……。
「でも、せっかくお会いできましたのに」
「まったく、これというのもあの男のせいですわね」
コクコク……。
「本当に許せませんわ、あのような締まりのない顔でデレデレと」
「先週お姉様と共に外出するという栄光を与えられたばかりで、他の女と下校など言語道断」
コクッコクッ……。

一方、三人娘から約100メートル前方では、
「何の映画なんです?」
「戦争物なんだけどさ、ちょっと笑えてちょっと哀しい話」
「あ、それ知ってます。ちょうどあたしも見たかったんですよ」
周囲の視線を気にする必要もなくなって、大分くだけてきた貴明と愛佳。
坂を下りても、そのまま並んで歩いて行く。

「バス停の方に向かってるみたいでありますよ隊長!」
「やっぱり、街に出るのかしらね」

後ろで会話する二人には、全く気づいていない。
その二人に気づかれずに、さらに後ろをついていく三人。
不思議な編隊飛行が、街に向かっていった。
420桜の群像 第4話「第三の女」7/21:2006/09/14(木) 22:18:18 ID:Z2RoVBI+0
「うわぁ、すごい人だよぉ」
映画館の前は、チケット売り場から幾重にも人の波が取り巻き、
通りがさほど広くない事も手伝って、ちょっとした障害物競走状態。
目を丸くするこのみの視線の先で、貴明は人混みに消えていく。
ぽつんと愛佳が取り残されたが、此処が目的地のようだ。

「映画を見に来たのね」
環は、自分でも声が沈むのを認識する。
「やっぱりデートだったんだ」
このみの感情はそこまで明確ではないが、やはり戸惑いの色がある。

立ち止まっていたのは、ほんの数十秒だろうか。
「謎は解けたことだし……」
「タマお姉ちゃん」
環が帰りましょうか、と言いかけるのと、このみが声を出したのがほぼ同時。
「なあに?」
「このみも映画観たい」
看板に掲げられたタイトルを見て、そんなことを言い出す。
「ねえねえ、せっかく来たんだから、観て行こうよ〜」
戦争映画が好きなのか、心が落ち着かない部分があるのか、やたらとねだるこのみ。
環はしばし考えて、
「そうね。ここまで来たんですものね。チケット買ってくるわ」
「あははっ、やた〜♪」
「大人しく待っていなさいよ」
このみをその場に置いて窓口に歩き出す。
列に貴明の姿は見えなかったが、並びながらふと振り返ると、
キョロキョロとこちらを伺うこのみと、そわそわ所在なさげに貴明を待つ愛佳が視界に映った。

「……はぁ」
溜息ひとつ。
このみの要望に応えた動機が純粋なものだったかどうか、環自身にはわからなかった。
421桜の群像 第4話「第三の女」8/21:2006/09/14(木) 22:19:07 ID:Z2RoVBI+0
現場には、三人娘も到着している。
「二人で映画など、まるでデートではありませんか!」
激昂したのが玲於奈。
「お姉様も映画をごらんになるようですわね」
比較的冷静に指摘したのが薫子。
テクテク……。
無言で映画館に向かうカスミ。
「あ、ちょっと。見つかりますわよ」
「その時はその時、まずは入場券を買いましょう」
三人でチケット売り場に向かう。
途中、愛佳とすれ違ったが、当然相手は気づかず、
三人も彼女自身に興味はない。声も掛けずに通り過ぎた。

「混んでますわね」
「チケットありますでしょうか」
……。
列に並んだ玲於奈達のすぐ後ろ、
「すみません! どいてください!」
忘れたいが忘れられない声がした。
玲於奈と薫子が視線を向けると、チケットを入手したらしい貴明が、慌てて人垣をかき分けている。
と、その体が人波に沈んだように見え、次の瞬間、貴明は、いつのまにかやってきた少女と手を繋いでいた。
にこっと笑って、映画館前を脱出していく男女。
「なんですのデレデレと……」
さらに憤慨した玲於奈をよそに。
……クイックイッ。
貴明達には興味を示さなかったカスミが、薫子の裾を引いた。
「カスミ? どうしたんです?」
人混みの端を指さす。
そこにいたのは環。どうやらチケットを買い終えた模様。
二枚の紙切れを握った腕に、駆け寄ってきたこのみがじゃれている。
422桜の群像 第4話「第三の女」9/21:2006/09/14(木) 22:20:26 ID:Z2RoVBI+0
「ちょ、ちょっと、お待ちになってカスミ」
カスミは待たない。
「仕方ありませんわね。玲於奈、チケットを購入して待っていてくださいな」
「か、薫子は?」
「カスミを連れてきます。お金、持ってますわね?」
「ええ……」
既に列からはだいぶ離れたカスミを追って小走りに去る薫子。
玲於奈は頼みの相棒と離れて、急に心細くなる。
思わず数歩、薫子を追いかけた。

当然、列は埋まる。
「あっ」
慌てて振り向いても、もう遅い。
数秒前まで玲於奈達が確保していた空間は、既になかった事にされていた。
そこで、大人しく並び直せば良いのだが。

「私が並んでいたんですのよ!」
そこは他人の都合というものを気にかけない玲於奈である。
自分の後ろに並んでいた男性二人組に食ってかかった。
「あんた抜けただろうが、並び直せよ」
「ちょっと離れただけです!」
「それを抜けたっていうの」
この場合、相手も意地っぱりなのか、それとも並んでる時の三人の態度が悪かったのか。
「とにかく、私は列を抜けてはいません!」
「イテっ」
無理に列に割り込もうとして、別な人間にぶつかる。
「なにするんですの!?」
「こっちの台詞だよ、ぶつかったのはそっちだろ」
「知りませんわ!」
騒ぎが大きくなりかかった刹那。
ぐいっ。
玲於奈は、強く腕を引かれて人混みから引きずり出された。
423桜の群像 第4話「第三の女」10/21:2006/09/14(木) 22:21:27 ID:Z2RoVBI+0
「な、なにを……」
予想外の力に驚いて暴れることもできなかった玲於奈に、
「何やってんだはこっちの台詞だよ」
聞き覚えのある声が応えた。

「あっ、雄二……さ……ん?」
呼び捨てにしかかって、環の弟であるので「様」をつけかけて、
先週「様はやめてくれ」と言われた事を思い出してさん呼びになる。
「なにって、映画のチケットを買っていたのです!」
「一人で?」
「いいえっ、薫子とカスミと一緒です」
「いねえじゃん?」
「っ。カスミがお姉様を追っていなくなってしまったのでっ、薫子が付いていって」
「またそれかよ」
三人組の内部で、玲於奈は不遇なのだろうか。
「って、なに? 姉貴も来てんの?」
「お姉様が例のおチビさんと映画をごらんになるようですので私たちも」
「そっか……、ところで、並ばなくていいのかお前」
「!」
雄二の指摘に、玲於奈は慌てて列に並び直す。
「お姉様と同じ時間で入れますでしょうか……」
不安そうな玲於奈に、雄二は、
「さあな」
他人事なので、他人事のように答える。睨む玲於奈。
「せっかく並んでましたのに、あの男どもは」
「こんな混んでる時に列から離れたら駄目だろ」
「ほんの少し離れただけですわ」
自分のミスは自覚してか、拗ねたような表情で横を向いた。
「買えなかったら薫子とカスミに恨まれますのに」
少し沈んだ顔。なんだか悪い事をした気分の雄二。
「ここは映画館でかい割に道路狭いから混むけどさ、流れは速いから大丈夫だぜきっと」
言葉は半分気休めだったが、少女の表情は、少し和らいだ。
424桜の群像 第4話「第三の女」11/21:2006/09/14(木) 22:23:15 ID:Z2RoVBI+0
実際、列は意外な早さで進み、玲於奈も無事次回の入場券を購入することができた。
「そういえば、お姉様も早かったですものね」
流石にホッとした玲於奈の独り言。

実は環の場合、列を間違えて途中に割り込んだのに、
あまりに態度が堂々としていたため周囲が割り込みと思わず、
そのせいで本人も割り込んだ自覚がなかったという事情もあったのだが、特に本筋とは関係ない。

「はい、貴方の分も一緒に買いましたから」
玲於奈は少し上機嫌で雄二にもチケットを渡そうとする。
「へ?」
だが、雄二は間抜けた顔をする。
「いや、俺はたまたま通りかかっただけで、別に映画見に来たわけじゃねーぞ」
「なっ……だったら何故並んでいたんですの!」
「あ、あれ? あー、なんでだろ?」
「〜っ! また人を馬鹿にしてっ!」
あっという間に沸点。
とはいえ、この件に関しては客観的に見ても彼女に正当性があろう。
「いや、確かに俺が悪い。金は払うから」
「いりませんっ!」

(しかし……なんで並んでたんだろ、俺)
雄二はふと考える。
そもそも街をブラついていて、映画館前の人混みを通り抜けようとした所で、
玲於奈が揉め事を起こしているのを見かけたのだったか。
(止めただけで良かったんだろうけどな……)
どうやら玲於奈が心配でチケット購入に付き合ってしまったようだ。
そう結論づけたが、そんな事伝えたら火に油だろう。黙って受け流す。

「まったく今日は厄日ですわ……それというのもあの男がっ!」
425桜の群像 第4話「第三の女」12/21:2006/09/14(木) 22:24:17 ID:Z2RoVBI+0
「お? あの男? もしかして貴明も映画?」
「ええ! それもどこの馬の骨とも知れぬ女とデートです!」
お姉様という人がありながらまったく恥知らずな、と付け加える玲於奈。
「やっぱり、さっき見かけたのは、貴明と委員ちょか」
ちなみに雄二も声は掛けなかったのは、やはりそんな雰囲気だったから。
「なんだか面白そうだな。俺も映画見てみっか」
「ふん、また貴方は興味本位でそのようなことを……」
「いいから、チケット売れよ」
こうして、映画鑑賞者は都合8名となった。

「上映までは、まだ少しあるな」
「じきに薫子とカスミが戻ってくると思いますから、私はここで……」
言葉の途中で、ふら、と玲於奈がよろめく。
「大丈夫か」
「へ、平気ですっ。ちょっと立ちくらみを起こしただけで」
「今日は日が強いからな」
先週は夜まで連れ回したが、玲於奈が人混み慣れしているとも思えない。
「俺はそこの……」
ヤックで時間潰すけど一緒に来るか、では、恐らくついてこないだろう。
「いいや、ヤック入ろうぜ」
「な、なにが“いいや”なのです? 私は別に、あ、ちょっと」
「いいからいいから」
雄二は半ば強引に、玲於奈を休ませる事にした。

「ところで、注文の仕方わかるか?」
前に一緒に入った時(※第1話参照)は、玲於奈はそれどころではなかったろう。念のため聞いてみる。
「馬鹿にしないでくださいな。この間も三人で入りましたわ」
自信満々に答えて玲於奈はカウンターへ。

「こ、こほん。ウーロン茶3つくださいな」
「二人しかいねーって」
426桜の群像 第4話「第三の女」13/21:2006/09/14(木) 22:25:41 ID:Z2RoVBI+0
映画館のすぐ近くにある○クドナルドの中は、映画待ちのカップルだらけだった。
遊園地や水族館でも経験した状況にちょっと赤面しつつ、空いていた二人掛けテーブルに就く。

デート、という単語が脳裏に浮かんでいたせいだろうか、
「あたし、デートって初めてだから……」
隣の席から、その言葉だけやたらと近くに聞こえた。

「げっ!」
「どうしまし……!」
雄二に続いて、玲於奈も気づいた。
事もあろうに隣のテーブルで、貴明と愛佳が時間待ちをしている。
仕切りは腰壁とプランターケース。椅子に座った玲於奈の肩くらい。

慌ててテーブルに身を伏せる二人。
「ど、どうしましょう?」
「いや、どうって言われても……あ。」
身をすくめながら周囲を見渡した雄二の目の端に、今度は環とこのみの姿が映った。

「お姉様がいらっしゃるのでしたら、おそらくカスミ達も店内に」
「そうか、席が空いてれば合流できるかもな。探してみる。お前は動くなよ」
玲於奈には静かに行動しろといっても無理な話。
雄二は、テーブルに突っ伏したままの赤髪を置いてそっと席を離れる。
いったん貴明達の席と反対側に移動した後、顔を見せないようにぐるっと回り込み……

「あ、ユウ君どうしたの?」
このみに見つかった。
「いや、ちょっと、な」
長話できる状況でもないし、
玲於奈と一緒と知られると少し面倒くさいと雄二は誤魔化す。
「お前の方こそ……」
「シーッ。ダメだよユウ君」
427桜の群像 第4話「第三の女」14/21:2006/09/14(木) 22:28:29 ID:Z2RoVBI+0
「あっちでタカ君がデートしてるの。おっきな声出したら気づかれちゃうよ」
自分から声をかけておきながら、このみは顔の前に人差し指を立てて雄二を遮った。
「ああ、知ってるよ。だからこそこそしてんだろうが」
小声で雄二が答える。
「しかし覗き見たあ、姉貴も趣味が悪くなったな」
同席の環に笑みを向ける。
むろん、この場ではアイアンクローも飛ばないであろう事は予測しての行動。
「そうね……」
環の反応は予想以上に素直、というよりしおらしい。
相当重症な雰囲気だが、二人の感情を概ね把握していたつもりの雄二から見れば、
このみの方が予想外に元気とも思える。

「もう、ユウ君目立つよ。こっちに座って」
その、元気なこのみは雄二を自分の隣りに座らせる。
テーブルは三人掛けだった。壁側に座ると、店内が見渡せる。

「あ、薫子」
壁側の一角に、最近急激に見慣れた茶色と黒のコンビネーション。
「え? あ、あの子達も来てるの?」
ちょっと慌てた様子の環。
踏んだり蹴ったり、といっては薫子達に失礼というものだが、
環はさらに落ち着かない様子。なんとも似合わない。

「あっ、タカ君が動いたよ」
このみが環をつっつく。
上映開始にはまだ時間があったが、先程から話題が途切れ、
お互い意識しまくりな様子の貴明と愛佳は、耐えきれなくなったように席を立った。
「行こう、タマお姉ちゃん」
「そうね、少し早いけど、どうせならいい席取りたいし」
「ユウ君は? 映画見に来たの」
「あ、あ〜、もう少ししてから出るわ」
まさか玲於奈を置いていくわけにもいかない。
428桜の群像 第4話「第三の女」15/21:2006/09/14(木) 22:29:16 ID:Z2RoVBI+0
「ふ〜ん、じゃあね〜」
「ああ、貴明ばっか見てないで映画見ろよ」
「そんなことしないよお。見たかった映画だもん」
チビッコは大丈夫か、雄二は心の中で呟く。
出口に向かう二人を追う二人を見送りつつ、薫子とカスミの席に向かう。
「よお」
「あら、雄二様」
「えーっと、できれば様はやめてくれ」
ガタッ……。
話をする暇もなく、カスミが席を立つ。
「すみません、急いでいるので、失礼します」
「あ、ちょっと待て、玲於奈が……」
言いかけた時、
「きゃっ」
可愛い悲鳴があがる。
三人揃って視線を向けると、店の出口付近でなにやら視線を集めているのは貴明と愛佳。
どうやら愛佳がなにかに蹴躓いて、貴明が支えたようなのだが、
またも二人は顔を見合わせ照れまくり。周囲は微笑ましい見守る目。
微笑ましくない人、約2名。
このみは目を丸くしているだけだが、環の方はさらに目線が落ちる。
そんな環を見つめていた黒髪の少女。
スッ……。
カスミが動き出す。環ではなく、貴明に向かって。

「あっ、待ちなさいカスミ」
薫子が顔色を変えて引き留める。
理由は、彼女が掴んだカスミの腕の先。
どこから出したのか、なぜ持ち歩いているのか、
カスミの左手には、カッターナイフが握られていた。
429桜の群像 第4話「第三の女」16/21:2006/09/14(木) 22:30:34 ID:Z2RoVBI+0
「雄二様、ちょっと」
言われるまでもない。雄二もカスミの手を掴む。
意外なほどの力で二人をふりほどこうとするカスミだが、
いくらなんでも男の雄二にはかなわない。
そのまま薫子と二人で店の外に連れ出す。
環らに気づかれなかったのは、ひとえにカスミが声を上げないおかげであった。

「カスミ、落ち着きなさい」
外に出てもナントカに刃物で貴明を追いかけようとするカスミを薫子が諭す。
雄二が後ろから抑えているのを利用して、正面から肩を抱いて視線を合わせた。
「あの男は確かに不届き千万ですけれど」
薫子も貴明のデートに好意的ではないようだ。
「そんなことをして、お姉様を悲しませるつもり?」
シュン……。
カスミは俯いた。
「今、私たちにできるのは、お姉様を見守ることだけですわ」
コクコク……。
「さ、お姉様達も行ってしまわれました。追いかけましょう」
コクコク……。
それも余計なお世話だろう。
雄二は思うが、といって二人の真剣さを否定する気もない。
とりあえず、騒ぎにならなかった事にホッとした。

「映画館で、玲於奈が待っている筈ですから」
「あ。」

雄二は別に、彼女を忘れていたわけではない。
忘れていたわけではないのだけど……

慌てて戻った店内で、律儀にテーブルに身を伏せながら、
好奇と同情(落ち込んでるように見えたらしい)の視線を浴びていた玲於奈にする、
うまい言い訳は、ちょっと見つからなかった。
430桜の群像 第4話「第三の女」17/21:2006/09/14(木) 22:32:19 ID:Z2RoVBI+0
当たり前だが、映画館は混んでいた。
「これは、お姉様を捜すのも難しいかも知れませんわね」
ぼやいた薫子だったが、
スタスタスタスタ……。
ものともしないカスミに引っ張られて、周囲の客にだいぶん迷惑を掛けながら
クイッ……。
「あっ、お姉様!」
「さすがはカスミですわね」
環とこのみを発見した。
「近くに空いている席は……二つしかありませんね」
まだ後続の客が入っている。あまり迷ってもいられない。
というか、カスミが一人で席に向かっている。

「分かれましょう。私はカスミについてますから、雄二様は玲於奈を」
「お、お願いされる言われはございませんわよ! 私は一人でっ」
「迷子になりますよ」
ぶっ。雄二が吹き出した。
玲於奈が頼りないのは、薫子にとっても既定事項らしい。
しかしいくらなんでも、建物の中で迷子はないだろうに。

「ぷっ、ぷぷっ」
空席を探して、結局並んで座っても、雄二はまだ腹を抱えていた。
「い、いつまで笑ってるんですかっ!」
「いや、わりぃわりぃ」
「だいたい貴方が余計な事を言い出すから、入場が遅れたのですよ。わかっているのですか!?」
「あー、だから悪かったって」
結果的に玲於奈を恥ずかしい目に遭わせている事には、罪悪感を覚える雄二である。
「しかしなあ……」
「なんですか?」
「お前ちょっと素直すぎるぞ」
「え?」
431桜の群像 第4話「第三の女」18/20:2006/09/14(木) 22:34:32 ID:Z2RoVBI+0
「先週といい今週といい、馬鹿正直に俺についてきてるじゃねえか。少しは考えろ」
「そう、ですか?」
玲於奈はきょとんとした表情。
「おいおい、自覚ねーのか。そんなんじゃそのうち誘拐されるぞ」
「っ!」
迷子の次は誘拐ときた。
「私は別に、誰にでもついていっているわけではございません!」
薫子に続けて雄二にも子供扱いされて、顔をリンゴにしての反論。
馬鹿にしないで欲しい、と続けた玲於奈の言葉が、ふと止まる。
「……どうしましたの?」
「……いや、別に」
今の玲於奈の台詞は、裏をかえせば雄二の事は信用している、とも読める。
そのことに気がついた瞬間、雄二は心に立ったさざ波を、自分自身でも掴み切れなかった。
「ほら、映画、始まるぜ」
「ふん、下賤な戦争映画など、特に見たくもありません」
「まあそう言うなって、評判はいいんだし、案外ボロ泣きだったりしてな」
雄二の方こそ映画を見に来るつもりなどなかった筈なのだが、
言ってスクリーンに顔を向ける表情は、なんとなく楽しそうだった。

映画は、評判通りに良質だった。
どちらかといえば無感動な性質である雄二でも、終盤は目頭に熱いものを感じたくらい。
映画館のあちこちで、女性客を中心に感動のすすり泣きが聞こえている。

玲於奈はというと、これが案外けっこう、涙もろかったりした。
「へぐっ、ぐしゅっ、すんっ」
「ほら、泣けたじゃねーか」
「すっ、泣いて、などっ、ひっく」
「ハンカチ2枚目、いるか?」
顔に当てている玲於奈のは既にぐしょぐしょで、傍目に気持ち悪そうだ。
雄二が差し出したハンカチを素直に受け取って目に押し当てる。
なお、ハンカチは青くない。
432桜の群像 第4話「第三の女」19/20:2006/09/14(木) 22:35:10 ID:Z2RoVBI+0
5分後。
「まったく……ぐす……不覚でしたわ」
出口に向かう人の流れを見送っているうちに、ようやく落ち着いてきた玲於奈。
「私としたことが、このような場で取り乱してしまうとは」
公共の場だろうがなかろうが、しょっちゅう取り乱している気もするのだが。
玲於奈は涙を拭いていたハンカチを離し、そこで奇妙な顔をする。
「あら? これは?」
「いや、さっき俺が貸しただろ」
「そうでしたっけ?」
意識なかったのか、とか、天然だな、とか頭には思い浮かべた雄二。
「……お前って、やっぱり素直だな」
選んだ言葉は、そんな台詞だった。
期待どおりに水面下から浮上する玲於奈の視線。
その時、タイミング良くか悪くか、雄二達のすぐ近くを貴明と愛佳が通った。
「へぐっ、うぐぅっ、えう〜」
「だ、大丈夫?」
お取り込み中の二人は雄二達に気づくどころではなさそうだが、玲於奈に声を上げられるのはまずい。
「貴方ねぇ! 人を馬鹿にするのもムグッ」
言葉を遮る一番単純な方法。雄二は玲於奈の口を右手で押さえた。左手で頭を支える。
「〜! 〜! 〜!」
むぐむぐと暴れる玲於奈。
両手が塞がっている雄二は、視線で今回の元凶を指し示す。
玲於奈が気づくまで数秒、雄二の手の中で、柔らかい唇が動き回った。

「よかったよぉ〜」
薫子達と合流して映画館を出ると、貴明と愛佳はまだ建物の前にいた。
「特にラスト……あれが、あれがもう〜〜〜」
人目も憚らずにぐしゅぐしゅいっている愛佳にハンカチを差し出す貴明。
ふと、二人は正面から向かい合い、改まってなにやら頭を下げ合い、また笑い合う。

そして、少年がプレゼントらしき包みを渡すと、また少女が泣いた。
433桜の群像 第4話「第三の女」20/20:2006/09/14(木) 22:36:59 ID:Z2RoVBI+0

既に暗くなったとはいえ、通りには映画帰りの人も多い。
道の真ん中で堂々と告白タイムをやらかしている二人は注目の的。
当人達は気づいていないが、二人の周囲に人だかりができているようにすら思える。

その人だかりに混じっていた環とこのみ。三人娘と雄二。
「……行きましょう、このみ」
「あ、うん……」
最初に動いたのは環。このみを連れて、人混みを去る。
二人の表情が見えるほど、雄二は近くにいなかった。
クイッ……。
「そうね、せっかくですから、お姉様に挨拶して帰りましょう」
「あっ、私も」
続いて三人娘。
玲於奈は駅方向だが、一度環に追いつくつもりらしい。
薫子達の方に数歩足を踏み出してから、体ごと振り返った。
「それでは」
「ああ、迷子になんなよ」
「ふんっ」
これは予想されていたのか、軽く流された。

雄二も、当然行き先は同方向なのだが、彼女らに追いつきたくないので暫し留まる。
貴明と愛佳は、まだやりとりを続けていたが、やがて、並んで街に消えていった。
よく飽きないなと思うくらい、何度も笑顔を向け合っていた。

「しかし、貴明と委員ちょ、ねぇ……」
愛佳に含む所はない。似合いだとも思う。そういう目で記憶を辿れば伏線もあったかも知れない。
ただ、やはり意表をつかれた感は否めない。
そして、

「姉貴とこのみ、どうすんだろ」
他人事とは言い難い問題の発生に、雄二は仏頂面で帰路についた。
434名無しさんだよもん:2006/09/14(木) 22:38:12 ID:Z2RoVBI+0
以上です。合計レス数を数え間違えてました。さるさん解除されたのかな?
435名無しさんだよもん:2006/09/14(木) 23:40:29 ID:A2Pq966XO
GJ!
これは修羅場の予感www
436名無しさんだよもん:2006/09/15(金) 02:55:21 ID:ztGKxfPx0

        ∩
  ( ゚∀゚)彡  修羅場!修羅場!
    ⊂彡

「わたし、タカ棒のアナルに下仁田ネギ突っ込んだの」
パーン!
「どうして、私が貴明くんともっとセックスするのにどうして!?」


         
437名無しさんだよもん:2006/09/15(金) 12:42:14 ID:/rRHZ3/c0

さあータカくんがこの修羅場をどう乗り切るか楽しみでござぁますわねー

・・・ところでこのブラックカスミは・・・w
438『夢』:2006/09/15(金) 12:51:04 ID:USB2eTBC0
「じゃあね。たかあき、また明日。」
「ああ、またな。」
幾度となく通った帰り道、幾度となく交わした挨拶。
此処に幾度となく繰り返すであろう二人の日常があった。

「──っと。そういえば」
しかし、この日は違った。
不意に彼女は向き直り、呟いた。
「まだやり残したことがあったわね。」
「やり残したこと?」
「ん…ま、ヤボ用なんだけど…ね。」
彼はその真意に気付くと微笑み、
「…あぁ、あったな。確かに些細なことだ…でも、あれが始まりでもあったな。」
「ワケなんてどうでもいいじゃない。あたしはただスッキリしたいだけ。」
「そうだな。白黒はっきりしないと気にかかるしな。」
そして、二人の声が重なる。
「「そう思うだろ!?アンタ(お前)も!!」」

──嗚呼、もはや何も言うまい。
 語るべき言葉、ここにあらず。
 話すべき相手、ここにおらず。
 ふたり、ただ前を向き、ただ上を目指す。
 ただ、前を向き、ただ上を目指す。

「たかあきィィィ───!!アンタに勝つ!」
「負けるわけにはいかん、ユマァァァァ!!」

「うー達は限界を越えたようだな…ならば進め…徹底的に。」

互いの視線の中にあるものは、相対する者のみ。繰り出すものは、拳のみ。
439名無しさんだよもん:2006/09/15(金) 14:45:24 ID:SYx83VG+0
わかもと噴いた。
440名無しさんだよもん:2006/09/16(土) 06:50:58 ID:UCFoMAfK0
スクライドktkr
441名無しさんだよもん:2006/09/16(土) 11:31:48 ID:qSMlKVc50
本日9月16日より、「最萌トーナメント煉獄スレ」と「小牧愛佳」とは戦争状態にあることを宣言する。

http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1158312506/29-34
442宣戦布告・補足:2006/09/16(土) 12:57:30 ID:w0AGooJd0
なお、我々「最萌トーナメント煉獄スレ」が望むのは、あくまでフェアな戦いである。
我々のみが多重投票の方法を知り、「小牧愛佳」陣営がそれを知らないとしたら、
それはフェアな戦いとは言えないであろう。
そこで、貴様等にも多重投票の方法を教えておく。

◆多重投票の方法(パソコン)

簡単に言えば、
 「コード発行所で投票コードを取得」
 ↓
 「モデムのつなぎ変え」+「Cookie(クッキー)の削除」
を繰り返すだけだ。これで投票コードをたくさん取得できる。

モデムをつなぎ変えてもIPアドレスが変わらない人は、残念だが多重投票はできない。
IPアドレスが変わったかどうかは、2chのIDが変わったかどうかで判断できる。
2chのIDが変わっていれば、IPアドレスも変わったということだ。

【モデムつなぎ変えの方法】
 これは各人の環境によって異なるだろうが、よくわからない人は、
 モデムの電源アダプタを一度抜いて再度入れればよい。

【Cookie(クッキー)削除の方法】
 Microsoft Internet Explorer(IE、マイクロソフト・インターネットエクスプローラ)を使ってる人なら、
 ツールバーから『ツール』→『インターネットオプション』→『Cookieの削除』をすればOK。
 あるいは、コード発行所のCookieだけを個別に削除したい人は、最後の『Cookieの削除』の代わりに、
 『設定』→『ファイルの表示』→名前が「LK2/」というCookieファイルを見つけて手動で削除すればOK。

なお、 決勝トーナメントに入ってから、コード発行所のルールが改正され、
同一プロバイダからの投票コード取得の上限が厳しくなった。
たくさんコードを取得したいと思ったら、取れるときに貪欲に取っておくことだ。
また、パソコンと携帯を併用した多重投票も可能であるが、
同じ携帯からの複数コード取得は不可能である(携帯を複数用意するしかない)こともつけ加えておく。
443名無しさんだよもん:2006/09/16(土) 13:55:52 ID:yvoECYcj0
最萌厨死ね
444真・必殺カレー:2006/09/17(日) 17:25:14 ID:EGVHiOu90
朝起きて、準備して、朝食食べて、戸締りして……ここまではいつも通り順調。
遅刻という問題とはほぼ無縁なのだが、それを良縁にしてる問題はこれからだった。

「ごめんなさい、まだ寝てるみたいなのよ」

今日もいつも通りに迎えに来て、春夏さんに出迎えて貰っていつも通りに謝られる。
日常の不動とも言えるパターンだった。

「またか……仕方ない、待ちます」
「前から相談してた時間制限つけた方がいいかしら?」
「タマ姉が黙ってませんよ」
「これは私の教育方針なんだから、他者にケチつける権限は無い。じゃあ、ちょっと待っててね」

呆れた態度でこのみの部屋へ直行する、柚原家を支えるパワフル主婦春夏さん。
ちょっとの間、鳥のさえずりが聞こえそうな程の静寂の後……

「このみ、いい加減起きなさい! タカ君が来てくれたわよ!」

家全体を揺るがしかねない怒声が響き渡る。

「あ〜! どうして起こしてくれなかったの〜!」
「起こしたわよ! いいかげんにしないと、タカ君を出入り禁止にするわよ!!」
「そっそんな〜!!」

ドタバタと、さっきとはうって変わって賑やかになる柚原家。
そう……眠り姫が目覚めた証拠。
445真・必殺カレー:2006/09/17(日) 17:27:17 ID:EGVHiOu90
「たっタカ君おはよう、すぐに準備するからね」
「……はいはい、さっさと着替えろよ、置いてくぞ」
「ダメだよ、先に行っちゃヤだからね!」
「ヤだからねじゃありません! 今日から時間制限つけるから、後10分でやりなさい!!」
「え〜!!」
「わかりました。春夏さんの決定事項なら」
「ええ〜! タカ君横暴だよ〜、お世話してあげてるのに」
「お世話? 一度必殺カレー作ってもらっただけしか覚えはないぞ」
「必殺カレーはそこらのカレーとは違うよ。必殺なんだから、こっちのお世話の重要性の方が圧倒的に高いに決まってるであります」

何この子は朝っぱらからトンデモ理論ぶっこいてんのかね。
大半、何かしらの失敗ばっかりで危なっかしい事この上なかったのに。
……まいっか、悪い子には天罰が下るみたいだし。

「だからタカ君はあいた!」
「何バカな事言ってるの!」
「酷いよお母さん!」
「料理を語るのは一万年早い。増してや、たかが必殺カレーもどきなんかで今までタカ君に掛けた迷惑を帳消しだなんて、九千兆年早いわ!」
「もどきじゃないよ〜!」
「生意気言うんじゃないの! このみの腕じゃ精々『一万分の一殺カレー』でしかないんだから」
「お母さんは食べた事無いからだよ」
「自惚れないの! レシピがあれば誰だって真似位は出来ます!」

どうでも良いけど、今の時間判ってるのかな……。
446真・必殺カレー:2006/09/17(日) 17:29:10 ID:EGVHiOu90
「……あの、時間」
「あ、そうね、じゃあタカ君、先に行ってなさい」
「あ〜!! 待って! 待ってってば!!」
「いい加減にしなさい! このみの我侭でどれだけタカ君に迷惑かけてるか判ってるの!?」
「だからそれなら必殺カレーでお釣りがあいた!」

……今の内に抜け出そう。

・・・

「あら、このみは?」
「今日から春夏さんの決定事項で、時間制限つける事になったから」
「それで置いてきた訳? タカ坊、あなた男でしょ? 5分や10分待つ器量は無いの?」
「30分は待ったんだけど……第一、春夏さんの教育方針を否定する権限は無いよ。俺もタマ姉もね」
「それはそうだけど。でも、このみがかわいそうじゃない」
「タマ姉は、春夏さんの方針よりこのみの我侭を優先する気?」

珍しく俺の押せ押せムードになるかもしれない。
……けど、どうもそれは許されないらしく、このみが猛ダッシュでご到着。
頬を膨らませ、真っ先に俺に飛び込んできた。

「タカ君のひとでなし! おんしらず! あっきらせつ!」
「お前が寝坊するのが悪いんだろうが。時間のロスも、お前がふざけた屁理屈言うからだ」
「ふざけた屁理屈?」
「言うのは良いけど、ちゃんと公正に判断してよ。偏った判決じゃ、春夏さんの無駄な苦労が増えるだけだから」
「わかってるわ」

さっきの出来事を一字一句逃さずに報告。
……でもタマ姉の裁判じゃ、あんまり期待も出来ないだろうけど。
447真・必殺カレー:2006/09/17(日) 17:32:14 ID:EGVHiOu90
「なる程ね……」
「ね、タカ君って酷いでしょ?」
「どこが? チビ助の言い分は、我侭で身勝手この上ない屁理屈じゃねーか」
「正論だよ」
「大体それレシピ元に作った模造品なんだから、それで寝坊し放題とかの我侭をチャラだなんて、ヤミ金よりタチが悪い上にその必殺カレーとかの著作権侵害以外の何者でもねーよ」
「酷いよユウ君!」
「よって俺はチビ助の有罪を宣告する」

雄二は俺の弁護に回ってくれるようだ。
まあ、それが普通だよな実際。

「タマお姉ちゃ〜ん、ユウ君がいじめる〜!」
「ごめんねこのみ、私も雄二の意見に賛成よ。春夏さんはタカ坊に美味しい料理を食べさせてあげたいって理由で教えた料理なのに、作った事をそんな事に利用するなんて」
「でも美味しく出来たんだよ。タカ君だって美味しいって言ってくれたのに」
「それとこれとは話は別よ。どんな理由があろうとも、教えて貰った事を捻じ曲がった方向に使うなんて許されないの」

意外中の意外だった。
まさかタマ姉が……

「タマ姉がこっちに回るなんて、変な気分だな」
「ああ、万引きしても庇いそうな感じなのに」
「私だって、このみ相手でも許して良い事と悪い事の分別はつけてるつもりよ。このみの為にも、ここは叱らなきゃいけない時には叱るわ」
「このみは悪くないよ」
「このみ、聞き分けのないのは感心しないわ」
「でも、食べても無いのに私の必殺カレーを侮辱するんだもん」
「そんなに文句言うんだったら、春夏さんの必殺カレー食ってみればいいじゃないか」

グダグダ口論するより、自分のレベルをわかった方が良いだろう。
それに、俺自身もオリジナルは興味があるし。
448真・必殺カレー:2006/09/17(日) 17:41:22 ID:IhDF0WEw0
「確かにな。元はその必殺カレーとやらの価値についての論争なんだから」
「そうね、このみにも勉強になるし」
「どうするこのみ?」
「……うん、わかった」

渋々とだけど、このみも納得した。

・・・

このみはよっちとちゃるの2人とあるらしかったので、俺が代わりに頼みに行く事になった。
まあ、このみが言うより俺が言った方が良いのも含めて、これでよかったかもしれないと思いながら。

「なる程ね……わかったわ、じゃあ早速仕込みしなきゃ」
「すみません」
「いいのよ、聞き分けの無いバカ娘への教育だから」
「じゃあ、お願いします。それで、俺も春夏さんのカレーに興味があるんで、来ても良いですか?」
「子供のくせして遠慮なんかするんじゃないの」

思ったより簡単に話はついてしまい、後は夕食を待つばかりになった。

・・・

「あれ、タマ姉に雄二も?」

約束の時間になり、いざ晩餐会へと赴くとバッタリ向坂姉弟に出くわした。

449真・必殺カレー:2006/09/17(日) 17:43:05 ID:IhDF0WEw0
「ええ、招待して貰ったのよ。私も女性として、料理の研究もしたいし」
「俺は折角の美味い物食える機会なんだから、見逃せない」
「あら、雄二は私の料理がお気に召さない?」
「違えよ、姉貴の料理は薄味の和食ばっかだから、味が濃い料理が恋しくなるんだよ」
「はいはい、なら明日はコロッケにしてあげるから」
「そういえば、この家で春夏さんの料理をこのメンバーで食べるなんて何年ぶりかな?」
「そう言えばそうだな」
「そうね。いつも…………さ、行きましょ」

今の間はなんなのか聞こうとしたが、本能がそれを拒絶した。

・・・

俺達がつくと、既に用意はされていて後は席につくだけの様子。
テーブルの上に人数分並べられた皿には、湯気をたててるカレーが盛られていた。

「はい、これが私手製のそうね……名付けて真・必殺カレーよ」

本家の必殺カレーだけに、真の名を冠したのか。

「やっぱり本家は違うな……香りといい見栄えといい、このみの模造品とは全然違う。見栄えじゃ真・必殺カレーの勝ちだな」
「む〜! タカ君、ひいきはダメだよ」
「綺麗に切られた野菜に、ルーの程よい煮え具合……春夏さんに弟子入りをお願いしたい位よ」
「ああ、見るだけで美味いとわかるぜ」

真・必殺カレーの評判は上々のようだ。
450真・必殺カレー:2006/09/17(日) 17:44:13 ID:IhDF0WEw0
「早く食おうぜ、流石にこれをお預けなんて殺生だ」
「そうね、それでは春夏さん」
「ええ、たくさん食べて」
「はい、それじゃいただきます」

一斉にスプーンを取り、皿とぶつかる音が響く。
そして、先ずは一口。

「……美味い!」

あの時食べた必殺カレーも美味しかったけど、この真・必殺カレーは格どころか次元が違う。

「ええ、こんなに味の調ったカレー初めてよ」
「ああ、最高だぜ」
「っ! ……」

皆が思い思いの感想を口に出す間、このみはずっと固まっていた。
……その雰囲気から察するとすれば、それは……『完全敗北』

「わかった? 自分が井の中の蛙だって事。確かに、このみの必殺カレーは食べた事はないけど、大体今のこのみならこのレベルって言う位わかるわ」

春夏さんの言葉で、このみは正気に戻った。

「何で!? どうして同じ材料使ってるのに……なのに、どうしてこんなに違うの!?」
「経験の差よ」
「経験の……差?」
「私は必殺カレーを完成させる為にあらゆる食材を調べて、あらゆる調理法を試して、何度も練習して漸く完成させた料理なんだから」

背景があるとしたら、間違いなく稲妻だろう。
という位に、春夏さんは熱を入れて力説をしていた。
451真・必殺カレー:2006/09/17(日) 17:44:58 ID:IhDF0WEw0
「だから、料理の経験が絶対的に不足してるこのみが真似しても、この味を再現どころか上回る事は不可能なの」

打ちのめされた……この表現が、今のこのみには似合っていた。
それはそうだろう、簡単じゃない事位は察しがついてる。
この料理を完成させる為に毎日努力して……この真・必殺カレーを作れる様になったんだ。

「わかった? 自分がどれ程バカな事を言ってたか」
「うん……ごめんなさい」
「わかれば良し」
「……お母さん、私、こんなのを作れるようになれるかな?」
「ええ、頑張ればね。でも、遠いわよ?」
「頑張る! 絶対に美味しい物を作れるようになりたいよ」

あの必殺カレーを作ってるときの、あの真っすぐな瞳で意気ごむこのみ
……いや、あの時と違って、頼もしく見えるほどに。

「タカ君待っててね。今度は文句なしにお世話ポイントを上回るあいた!」
「タカ君、明日からしばらく午前限定で柚原家の敷居をまたぐ事は許しません」
「え〜!!」
「料理の前にまず性根を鍛えます!!」
「そっそんな〜!!」

前言撤回……やっぱり、このみはこのみだ。
452真・必殺カレーの作者:2006/09/17(日) 17:54:16 ID:d5XAchUl0
 始めまして、ゲーム自体二ヶ月前に始めた新参者ですがよろしくです。
 ちょっといじめ過ぎって感じではありますが、決してこのみが嫌いなわけじゃないんです
 ただ、やっててありそうだなって思っただけなんで……気に触った人が居たらすみません 
453名無しさんだよもん:2006/09/17(日) 18:05:50 ID:JcE24Y1s0
このみはもうちょっと聞き分けが良い気もしますが
可愛らしい感じは伝わってきます。
十分OKでありますよ、隊長♪
454名無しさんだよもん:2006/09/17(日) 19:30:35 ID:XtFDKcgy0
GJ 乙
455名無しさんだよもん:2006/09/17(日) 19:38:22 ID:eqEnOAsF0
GJ!カレー食いたくなったw
ちょっとCoCo壱行ってくる。
456名無しさんだよもん:2006/09/17(日) 20:05:38 ID:PQAjYtNF0
いい春夏さんSSでした
457名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 04:54:55 ID:c0+vNFtO0
GJ!続編を期待する
明日はおいらもカレー食べにいこうかな
458名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 13:00:20 ID:HJJveu8tO
カレー食ってきた。でもやっぱり必殺カレー食いてえ
459名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 15:24:05 ID:f3Cpi4m4O
春夏食ってきた。でもやっぱり春夏さん食いてえ

460名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 15:34:14 ID:bPk2Q2rU0
                   ,'⌒,ー、           _ ,,..  X
                 〈∨⌒ /\__,,..  -‐ '' " _,,. ‐''´
          〈\   _,,r'" 〉 // //     . ‐''"
           ,ゝ `</ /  〉 /  ∧_,. r ''"
- - - -_,,.. ‐''" _,.〉 / /  . {'⌒) ∠二二> -  - - - - - -
  _,.. ‐''"  _,,,.. -{(⌒)、  r'`ー''‐‐^‐'ヾ{} +
 '-‐ '' "  _,,. ‐''"`ー‐ヘj^‐'   ;;    ‐ -‐   _- ちょっくらココイチでカレー喰って来るわ
 - ‐_+      ;'"  ,;'' ,''   ,;゙ ‐-  ー_- ‐
______,''___,;;"_;;__,,___________
///////////////////////
461名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 19:45:54 ID:EAzIplGK0
PC整理してたら、昔書いてた書きかけSS見つけた
懐かしいんでちょいと手直しして仕上げてみたんだが、今UPしていいか?
しばらくTH2離れてたんで、ちょっとおかしなとこもあるかもしれんが…

愛佳モノと言いたいが、図書委員長モノ…そこが最大の問題点か
462名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 19:48:49 ID:c18LCybg0
図書いいんちょキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
463名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 19:54:58 ID:EAzIplGK0
ひさびさにTH2に触れたんで、思い違いによる矛盾とかあるかもしれんがスルー頼む
あと…これUPするの初めてだったよなぁ…フォルダの隅にあったの引っ張り出したんだけど

耐えられない人、以下スルーで頼む
464委員長&委員長 1:2006/09/18(月) 19:56:26 ID:EAzIplGK0
季節はずれの桜が舞っていた。
一人の少女から生まれた人の輪が作り出した桜吹雪。
「まったく、小牧君には困ったものだよ」
本来なら桜吹雪が見えるはずのない図書室から眺め、呟いた。
自分のやることは、決まっていた。
465委員長&委員長 2:2006/09/18(月) 19:57:13 ID:EAzIplGK0
CDを図書館に導入しようというのは、あの人の発案だった。
生徒に愛される図書館を目指そう。
学校司書もいないこの学校で、先生相手に渡り合った。
言うまでもなく、先生方は保守的な層が多い。
その先生方を説得したあの先輩の手腕は驚くべきものだった。
その先輩にあって私にはなかったもの。
それは、人に愛される「人望」というものではなかっただろうか。
先輩や小牧君にあって、私にはなかったもの……

CDの導入が決まったときには、もう先輩は卒業間近だった。
「これからは、君がこの図書館を守るんだよ」
先輩の後任に指名された私に、先輩は言った。
「でも、これからって時じゃないですか。先輩のお陰でCDの導入が決まって……」
「私はたいしたことしてないよ。みんなが頑張ってくれたから」
そうではない事はその場にいた図書委員みんなが分かっていた。
図書館へのCD導入は、今までの先輩方が挑み、敗れていったものだった。
数年越しの快挙というべきもの、でもそれを成し遂げた先輩は謙虚だった。
「私一人じゃこんなことはできなかった。協力してくれたみんなと、CDを入れて欲しいっていう利用者のみんなの声のおかげ」

「だから、私がいなくなっても、君がみんなに愛される図書館を守ってね」
466委員長&委員長 3:2006/09/18(月) 19:57:59 ID:EAzIplGK0
それは、恋だったのかもしれない。
結局、その先輩とは携帯電話の番号すら聞かず別れてしまった。
どこかの大学で、司書を目指して勉強中という噂は聞いていた。
私は先輩の残してくれた図書館へのCD導入を達成するため、先生方と掛け合うことになった。
ただ、一つだけ問題が発生していた。
CDを置く棚のスペースの不足。
学校図書館では本の拡充ばかりに目を奪われ、他の設備がおろそかになることも往々にしてある。
整理期間ですべての本が返ってきたら、棚に入りきらなかったという笑い話もある。
ただでさえスペースがない図書館に、CDを置くスペースはない。
ラック代を出してくれるよう生徒会に掛け合ってみたが、なしのつぶて。あの守銭奴めが。
その後の先生方のとの話し合いで、唯一空けられそうなスペースが分かった。
それが、書庫。
ほとんど読まれていない本ばかりで、その本を捨てるのであればCDを導入するという。
はっきり言って、迷った。
私だって、本は好きだ。嫌いならば図書委員長になるわけがない。
書庫にある本は貴重な書籍が多い。
中にはすごい掘り出し物もあり、自由に書庫に入って本を見るために図書委員になる人もいるぐらいだった。
私は悩んだ末……本を廃棄することを決めた。
書庫を覗く人はごく一部。それに対してCDを求める声は全校中にある。
「みんなに愛される図書館」、そのために、私は好きな本を捨てることを決意した。
467委員長&委員長 4:2006/09/18(月) 19:58:58 ID:EAzIplGK0
扉の前で緊張する。
いまさら、どの面下げて挨拶するべきだろうか。
紆余曲折あって残されることになった書庫。
その扉をノックする。
盛大な音、「あわわわわ」と慌てている声は小牧君のものだろう。
まったく、私が気づいていないと思ったのかね。
「失礼するよ」
慌ててお茶とお菓子を片付けようとする小牧君とその彼氏……河野君と言っただろうか。
「と、図書委員長、これは別にお茶してたわけではなくてええと……」
この状況でどうしてそんな言い訳が出るのかね。
河野君の隣に座らせてもらう。
「私も一杯頂けないかね」
きょとんとした小牧君の顔。
「は、はいいっ」と言ってキッチンに走る。
そんなに急ぐ必要もないのだが……
河野君の隣に二人きりで座る状態。
非常に息苦しい。というか、河野君がものすごい形相でこっちを睨んでいるのは気のせいだろうか。
非常に帰りたいのだが、小牧君にお茶を頼んでしまった手前、帰るわけにはいかない。
「あ、あのっ、粗茶になります」
上品なティーカップ、いい香りの漂う。
一口含む。適温で入れられた茶葉の香り。
コーヒー党の私でも、思わず感嘆の息を漏らしたくなる香りだ。
しかし……視線が非常につらい。
小牧君は何を言われるのかと非常に怯えた視線でこちらを見るし、
対して河野君は泣かせたら承知しないぞとばかりにこっちを睨む。
「それで、ここに来た訳なんだが……」
小牧君は泣きそうな顔になり、河野君はさらにこちらを睨む。
言い出したはいいが、その次の句が続けられない。
「……また来るよ」
それだけ言って、部屋を出るのが限界だった。
468委員長&委員長 5:2006/09/18(月) 19:59:48 ID:EAzIplGK0
「はぁ〜」
らしくない……と思う。ため息をつくなど。
まして、利用者の目につく図書館のカウンターでため息をつくなど、図書館の雰囲気を悪くするだけと分かっているのに。
CDを導入しないことはすでに決定したことだ。
あの日、私は職員室に向かい、書庫を存続させること、CDの導入を諦めることを先生に告げた。
「小牧君はみんなに愛されています。小牧君が守ろうとしている書庫をなくすことなど、誰が納得するでしょうか」
図書館の担当になっている先生はしばらく考えて、呟いた。
「君は、本当にそれでいいのかね」
言われるまでもない。書庫をなくしてまでCDを入れても、きっと誰も納得してくれないだろう。
あの日の桜吹雪を見て、私は決意した。
結局、もともと反対派だった先生も多かったためにCD導入は大幅削減となった。
要望の大きかったクラッシックなどの音楽CDの導入は取りやめ、英語自習教材CDが中心となった。
皆の要望していたものとはかけ離れているのは分かっていた。
だが、ぎりぎりになって書庫の存続させることにしたというわがままを、先生方に受け入れてもらうためには仕方なかった。
寄贈された貴重書のあった棚に並べられた英語自習教材CD。
しかたない、分かっていると納得しようとしても、利用者の、先輩の求めていたものとは違うものだという事実は変えようがなかった。
書庫は存続されることになり、小牧君の妹も入学して書庫に通うようになった。
小牧君の妹も初めは人見知りが激しかったが、図書館に通うようになり図書委員と仲良くなった……私を除いては。
「あの、スミマセン……」
はっと顔を上げる。
「あ、何かご用でしょうか?」
「カードの切り替えを……って、今忙しいでしょうか」
いけない、考え込んでいたから利用者の方を不安にさせてしまったではないか。
「いいえ、大丈夫です。ではこちらの紙に名前と所属クラスを……」
469委員長&委員長 6:2006/09/18(月) 20:01:41 ID:EAzIplGK0
また書庫の扉をノックする。
聞こえた声は……小牧君か? それにしては少し幼いような……
「失礼するよ」
部屋の中にいたのは、小牧君に似た小さな少女。
いつもの姉の定位置に座り、もくもくと本を読んでいる。
「君はたしか小牧君の妹の……」
「私も小牧なんだけれどね。小牧郁乃。よろしく、『図書委員長』さん」
姉に比べて棘のある性格のようだ。
小牧君はいないのだろうか。部屋を見回す。
「姉はいないよ。出来損ないの彼氏とくっつけるようにデートを用意しといてあげたから」
そうか、小牧君がいないのならここに用はない。
私は、ここの本を捨てようとしたのだから……
「待って、茶ぐらい飲んでいけば」
「あ、しかし君は体が……」
「これぐらいだったらなんともない。それとも、私が淹れた茶は飲めないって言うの?」
読んでいた本をテーブルに置き、郁乃君は立ち上がった。
なんとなくてもちぶさになり、郁乃君が置いていった本の表紙を眺める。
ずいぶん昔に発行された恋愛小説。
とっくにブームも過ぎ去り、読む人がなくなり書庫に押し込められた本。
「お待たせ……って、何で人の本読んでるのよ」
郁乃君は私から本を取り、慌てて隠す。
その慌てた可愛らしい仕草に思わず笑ってしまう。
「何よ、こんな本読んでておかしい?」
「いや、大分前にその本は読んだ。なかなか面白い話だったよ」
きょとん、とした顔でこっちを見つめる。
「あんた、ここの本読んでたんだ」
「一年のときから図書委員をやっていたから面白そうな本は大体読んでみたのだが……おかしいかね」
むぅ〜、と考え込んでいる。
顔を上げて、恐る恐る尋ねてきた。
「あんたって……ここの書庫をなくそうとしてた人だよね」
470委員長&委員長 7:2006/09/18(月) 20:02:27 ID:EAzIplGK0
そうだった、小牧君は妹のために書庫を残そうとしていたんだった。
目の前にいるこの少女は姉のことが大好きで、姉も妹のことが大好きで。
姉はただ妹のために書庫を残そうと頑張っていたのに。
「……そうだが」
この少女にどんな罵声を浴びせられるのだろう。
噂には聞いていた。あまり見せないけれど、この郁乃という少女は姉をすごく大事にしている。
その姉の頑張りを邪魔していた男に、どんな言葉を言うのだろうか。
「CDって、どうなったの?」
少女の口から出たのは、意外な言葉だった。
「CDって……そこにある……」
「だから、あんたがここの書庫を潰して入れようとしていたCD、これだけじゃなかったんでしょ」
「要望のあった音楽CDは……結局入れないことになった」
紅茶を啜る。姉には劣るものの、この子もなかなか紅茶を入れるのが上手い。
ここでの安らぎも、本も、みんななくしてしまおうと私はしていたのだ。
こんな大切なものを捨ててまで、CDを入れて何の意味があるのだろう。
「あんたはそれでいいわけ?」
「えっ」
どこかで聞いたそのセリフが、胸で跳ねる。
「あの姉が粘った計画を一時はダメにしちゃったぐらいでしょ。あんた、その計画に思い入れとかないの?」
「しかし、この書庫をなくすということを誰も望んで……」
はぁ〜、とやけに大人びた様子でため息をつく郁乃君。
「姉がこの書庫を守ろうとしたとき、姉に何の正義があったわけ?」
一瞬、彼女の言っていることが分からなかった。
「言ってみれば、この書庫は姉のわがままで守られたようなものなんでしょ?
 みんなが後になって納得してくれたからそれは『正義』になったけれど、それじゃあ、それまでは?
 あなたが書庫を潰そうとしていて、彼女が図書委員でもないのにここに居座ったとき、彼女になんの『正義』があったわけ?」
471委員長&委員長 8:2006/09/18(月) 20:03:21 ID:EAzIplGK0
自分よりも二つも年下のはずの彼女のセリフに、心打たれた。
小牧君の行動は、最初は私もわがままにしか聞こえなかった。
みんなの望むCDの導入を邪魔し、自分達だけの書庫を守ろうとする。
そんな彼女のやり方に納得できなかった。
だから、あの時は半分ぐらい意地になっていたかもしれない。
でも、だから……
「しかし、私は彼女に酷いことを言ってしまった」
書庫が空くことが決定したとき、私は「勝った」と思ってしまった。
やっと、図書館に居座るものを排除できたのだ。やっとみんなが望んだCDが入れられる。
しかも、書庫にあった本は捨てられずに済む。
ここからなくなっても、ちゃんとした大学に寄贈され、ちゃんと必要とされる人に読んでもらえるのだ。
そんな浮かれきった気分があったためだろう。一生懸命頑張っていた愛佳くんの前でバーコードを剥がすよう言ってしまった。
彼女の目に涙が浮かんだのを見て、私はすぐに言ったことを後悔した。
これだから、私は人をまとめるような仕事に向かない。
駆け出した彼女を追いかけることはできなかった。彼女を慰めるのは河野君の役目だ。
あの後、作業はさっぱり進まなかった。
本の運び出しなどすぐ終わる予定だったのに、皆が本を手に取るのを躊躇い、バーコードを剥がすのを拒んだ。
結局、このままやっても埒が明かないということで、適当に片付けてその日は終わった。
それが良かったのかもしれない。書庫の復活をすぐに進めるためには。
「そんなこと、私に言われてもね」
簡単に彼女は切り捨てる。
「そーゆーことは姉さんに言ってくれない? あと……」
郁乃くんはにやりと笑う。姉には到底できそうもない表情で。
「あんた、自分がなにをやりたいのか、本当は分かっているんじゃないの?」
472委員長&委員長 9:2006/09/18(月) 20:04:15 ID:EAzIplGK0
あれからすぐに夏休みに入ってしまった。
結局、小牧君とは顔を合わせないまま、夏休み。
とはいっても、三年には夏休みというものが存在しない。
受験のための一番重要な時期だからだ。
問題を解いている間は、図書館のことを忘れることもできた。
だが、一番重要な進路がまだ決まっていなかった。
いや、前は決まっていたのに……

夏休み明けて、最初の委員会会議。
その中に見慣れた顔が二つあった。
小牧愛佳君と、郁乃君。
どうして、と一瞬思った疑問はすぐに氷解した。
後期になり役職を変えるときに委員長に指名される前に自ら立候補したのだろう。
多分、大切な妹が図書委員になりたがっているから……
「それでは図書委員長の引継ぎだが……私の後任は小牧愛佳君に任せようと思うのだがいかがかね?」
図書委員全員の拍手。突然指名されて愛佳君は戸惑っている。
だが、彼女以上に適任はいないだろう。
何よりも、私に足りなかったものが、彼女にはある。
「それでは三年生はこれで引退させていただく。一、二年で足りないところがあれば補っていくが、
 これからは君達が図書委員会を動かしていくことになる。それでは小牧君。あとは任せる。」
それだけ言って、図書室を出る。
これで、図書室に来ることはもうあるまい。
小牧君なら、図書館を任せることができる。
「先輩、すみませんでした。でも、みんなに愛される図書館になりましたよ」
それだけが、私が唯一誇れることだった。
473委員長&委員長 10:2006/09/18(月) 20:05:19 ID:EAzIplGK0
二学期、塾が忙しくなり、図書室に顔を出すこともなくなった。
成績は伸びない。それもそうだろう。目標が決まっていないのに。
「それで、まだ志望校は決まらないのか?」
「すみません」
「いや、まだ出願には時間がある。君の成績だったら大概は受かると思うのだが……」
それまでちゃんと埋まっていた志望調査は、あの日から空欄のままだ。
「やはりあのときの志望校でいいんじゃないのか? このままで充分合格できるぞ」
「いえ、あの大学は私にあいませんから」
いや、大学が、ではないだろう。
あの職業は、きっと私にあうものではないのだから……
474委員長&委員長 11:2006/09/18(月) 20:06:15 ID:EAzIplGK0
「つ、付き合ってください!!」
そう言って愛佳くんが渡したのは、女の子らしい封筒。
「いや、彼氏がいるのにそれは少しまずいと思うのだが……」
「あ、ごめんなさい、そうじゃなくて、私一番大事なところを忘れて……」
慌てて謝りだすのは、やはり変わっていない。
それでも、今までよりずっと人気の高い図書室を守っている『図書委員長』だ。
「実は、クリスマス前に先輩達のお別れ会をやろうと思って……」
年が明けてセンターが終われば三年は自由登校となり、学校に来ない人も多い。
部活をやっていない人はなおさらだ。
その前に、図書委員で頑張ってくれた三年生を労おうという企画らしい。
去年まではなかった、新しい企画だ。
「それで、もし用事がなかったら参加して欲しいのですが……」
自分の生徒手帳を開く。紙を継ぎ足し、大分厚くなった手帳。
大部分はもう開かないだろう図書委員関係だが。
その日は用事はなかった、けれども……
「しかし、私などが参加して迷惑ではないだろうか」
そうだ、私は愛佳君の書庫をなくそうとしたのだ。
未だ恨みを抱いている図書委員も少なくないだろう。
「いえ、そんなんじゃなくて、逆に図書委員長のほうが大変なときに、ええっと……」
慌てて説明をする愛佳君はどこか小動物めいて可愛らしい。
こんなに頑張っているのに、断るのは悪い気がする。
「分かった、参加させてもらうよ」
「あ、ありがとうございます〜」
本当は誘ってもらえたこっちが感謝するべきなのに、愛佳君は何度も頭を下げていた。
475名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 20:08:00 ID:vYk9x3Fr0
支援
476委員長&委員長 12:2006/09/18(月) 20:08:33 ID:EAzIplGK0
「メリークリスマス!!」
パーンというクラッカーの音。
今日は図書館は閉館。飲食禁止なんて硬いことはなしに、図書室でクリスマスパーティーだった。
本棚から遠いところにテーブルを集め、パーティ会場を作るのは大変だっただろう。
本棚にも万が一被害が及ばないように、シートがかけられている。
ひさびさに見回す図書室はクリスマスの雰囲気。
小さなツリーやリースの飾り付けがされていて、利用者が楽しめるようになっていた。
これも、愛佳君のお陰だろう。
私は輪から少し離れてパーティを見守っていた。
私はこの輪の中に入る資格はない。そう思っていた。
「それでは、現図書委員長より、元図書委員長に特別のプレゼントがあります」
パーティもたけなわ、愛佳君が私の前に来てぺこりと頭を下げた。
「ぜひ図書委員長に見てもらいたいものがあるんです」
愛佳君が案内したのは本棚の前。
愛佳君がコホンと咳払い。
「それでは、お願いしますっ」
バサッ、とシートが取り除かれる。
そこにあったのは新しいラックと、音楽CDだった。
「どうして……これは……」
「あの高価な本を寄贈した大学からお礼ということで、ラックを頂いたんです。
 音楽CDの予算は宙に浮いてましたし、これでやっとCDコーナーの完成です」
並んだCDに手を触れる。並ぶタイトルはどれも見覚えのあるものばかり。
そうだろう。私が先輩とアンケートの中から選んだものたち……
「どうですか、図書委員長……」
愛佳君の言葉が止まる。
目から沸きあがる涙を、堪えることができなかった。
ようやく、叶った。
一度はダメになったと思ったのに、先輩の計画をダメにしてしまったと思ったのに、
銀色のラックに収まったCD達は、貸し出されるのを今か今かと待ちわびている。
「ど、どうしたんですか!! 私、間違ったことでも……」
「いや……」
学生服の袖で涙を拭う。先輩、あなたの夢は叶いましたよ。
477委員長&委員長 13:2006/09/18(月) 20:09:53 ID:EAzIplGK0
「……ありがとう」
478委員長&委員長 14:2006/09/18(月) 20:11:42 ID:EAzIplGK0

なんとか志望校にも合格し、私は晴れて大学一年生となっていた。
今、私は学校司書になるための勉強をしている。
一定数以上の高校には学校司書をつけることが義務付けられているが、実際には半分にも満たない。
これでは活字離れが進むわけだ。若い人たちにもっと本の面白さを知ってもらうために、私は勉強している。
最近では読むばかりではなく、少しは小説ともいえないような駄文を書く趣味もでてきた。
それを同じゼミの友人に話したとたん、『ぜひ入ってくれ』と言われて引きずられてきたのがここだ。
「センパ〜イ。有望そうなの、一人捕まえてきましたよ」
本を読んでいた女の人が顔を上げる。
その人は……

「久しぶり、○○くん」
479委員長&委員長 あとがき:2006/09/18(月) 20:13:48 ID:EAzIplGK0
以上、でした。

愛佳シナリオの図書委員長が、憎みたくても憎めなくて
自分も図書委員長だったしなぁ〜
ということで、叩きは立ち直れる程度で頼む
480名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 20:20:49 ID:vYk9x3Fr0


つっこみどころは多々あるけど、それを補うだけのパワーもあると思うよ
481名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 20:30:19 ID:W2KDJEdk0
うん、私もよい作品だと思いました。
主要人物でない視点というのが特に。
乙であります。
482河野家にようこそ 第73話(1/9):2006/09/18(月) 21:01:17 ID:0klrlJI90
 河野家メンバーズは現在警戒態勢中。珊瑚ちゃんはイルファさんと一緒に登校し、愛佳は俺のため
に徹夜で防刃ベストを作ってきてくれた。だけど朝は玲於奈さんたちの姿を見ることはなかった。
 授業中。防刃ベストはイヤでも先生の目に入り、没収されそうになるが、クラスのみんながそれは
愛佳の手作りだから没収しないでと先生に嘆願し、先生も理解を示してくれて何とか没収は免れた。
かなり恥ずかしいけど助かりました。あとるーこは抱きつかないでください。
 昼休み。やはり警戒態勢のままおにぎりを食べていると、薫子さんとカスミさんが。何やら様子が
おかしい薫子さんたちだったが、武器を構えた由真が「こっちに来たら痛い目に遭わせるわよ!」と
怒鳴ったせいで、怯えて逃げてしまった。撃退成功と喜ぶのもつかの間、騒ぎを聞きつけた先生たち
によって由真たちの武器は全没収となった。持ち主の花梨、哀れ。
 学校が終わって家に帰り、武器無しでどう対処するかと検討する間もなく、家のチャイムが鳴る。
玄関のドアを開けてみると、何とそこには薫子さんとカスミさんが!
 震える声で「家を追い出されてしまった」と言う薫子さん。一体何があったんだ?

「追い出された? どういうこと、薫子、カスミ?」
 タマ姉が近づき、二人の肩に手をやる。すると二人は、
「う……ふえっ……、ひっく……、お、お姉様ぁ〜!!」
 ポロポロと涙を流し、タマ姉にひしと抱きつく薫子さん。カスミさんも同じくタマ姉に抱きつき、
タマ姉の胸に顔を埋めてふるふると震える。
「……とりあえず、中に入りましょうか」
 そんな二人を、両手で包み込むように優しく抱くタマ姉。
「え、ちょっと環さん!?」
「落ち着けって由真。薫子さんたちは何もしやしないよ」
 反対しそうな由真を諭す。それでも由真は疑わしげな目で薫子さんたちを見るが、それ以上は何も
言わなかった。
483河野家にようこそ 第73話(2/9):2006/09/18(月) 21:02:45 ID:0klrlJI90
「わ、私、とりあえずお茶、いれますね」
「ええ、お願い、優季」
 一足先に居間に入る優季。
 そして薫子さんとカスミさんは、タマ姉に抱きついたまま我が家に入った。

 居間のソファーにタマ姉ごと薫子さんたちを座らせる。
 二人はしばらくの間タマ姉にすがって泣いていたが、やがて薫子さんが泣きやみ、話し始めた。
「私たち、玲於奈が借りたマンションに三人で住んでいたんです」
 成る程、それで三人の弁当が同じだったのか。
「昨日の朝から玲於奈の様子がおかしくなって……。やっぱり、その、お姉様の……」
 言葉を濁らせ、タマ姉をチラッと見る薫子さん。
「学校から帰って、夕飯の支度も自分一人でやるからって玲於奈が言って、それからしばらくして
何か凄い音がしたと思ったら、玲於奈、何も言わずに家を出て……、台所を見たら、包丁が折れて
いてビックリしました。
 それからしばらくして玲於奈が帰ってきたんですけど、何故かとても悔しそうな顔だったんです。
『どうしたの?』って尋ねたら、その……『河野貴明を仕留め損なった』なんて言って……」
 ……やっぱ、マジだったのね。
「あ、あの! 勘違いしないでくださいね! 少なくとも私やカスミは、河野さんの命まで奪おう
だなんて決して思っていませんから!
 いえ、玲於奈のその言葉だって最初は冗談だって思っていたんです。いくら何でもそんなこと……。 でも玲於奈は……、今朝になったら『学校を休む』って部屋に籠もってしまって、仕方がないから
私とカスミだけで登校したんですけど、玲於奈の様子からして何かあったのは間違いないと思って、
それでお昼休み、皆さんのところに行ったんですけど……」
 武装した由真たちに脅されて逃げるしかなかった、んだよなぁ。
484河野家にようこそ 第73話(3/9):2006/09/18(月) 21:04:13 ID:0klrlJI90
「あー、その、ご、ゴメンね」
「謝ることないわよ! 玲於奈がたかあきを殺そうとしたのは事実なんだから!」
 あくまで自分の正当性を主張する由真。
「確かにそうだけど、薫子さんたちは何も悪くないだろ」
 これ以上は不毛な議論になりかねないので、話を進めることにする。
「まぁともかく、その後は?」
「あ、はい。
 皆さんがとても私たちを警戒しているのを知って、昨日の玲於奈の言葉が冗談なんかじゃなかった
って確信しました。それで家に帰ってから玲於奈にそのことを問いつめたんです。そうしたら……」
 言葉を途切れさせ、辛そうな顔になる薫子さん。膝の上の手のひらをぎゅっと堅く握り、カスミ
さんが心配そうに自分の手をそっと重ねる。そして、
「玲於奈は私たちが裏切ったって、自分を見捨てて河野さんたちに寝返ったんだろうって、酷い剣幕
で私たちのことをなじって、部屋中のものを手当たり次第に投げて壊して……
 そして泣きながら、私たちにこう言ったんです。『あなたたちなんかもう友達でもなんでもない。
今すぐ出ていって!!』って……」
「そう、そんなことがあったの……」
 タマ姉が薫子さんたちをより強く抱き寄せる。
「わ、私、玲於奈にあんなこと、今まで一度だって言われたことない!
 ずっと、ずっと、友達だったんです! 私も、カスミも、玲於奈と一緒に、ずっと一緒だったのに、
そ、それが、あんなこと言われて、拒絶されたって思ったらどうしようもなく怖くなって、い、家を
出ても、どこに行けばいいか全然解らなくて、それで、それで……」
「……(ふるふる)」
 薫子さんとカスミさんの、混乱と悲しみが俺にも伝わってくる。
 俺が想像している以上に、玲於奈さんたちの結びつきは強いものだったのかも知れない。九条院と
485河野家にようこそ 第73話(4/9):2006/09/18(月) 21:05:26 ID:0klrlJI90
言う、ある種の閉鎖社会の中で、幼稚園の頃からずっと一緒だった玲於奈さんたち。薫子さんが言う
”友達”とは、俺たちが考えている以上に身近で親密な、家族のようなものなのだろう。
「うっ……ううっ……、うああぁ……」
「……(ひっく……ひっく)」
 語る言葉すら失い、タマ姉にすがって泣く薫子さんとカスミさん。俺が出来ることなんて……何も
ありはしない。

 泣いて、泣いて、泣きまくって、泣く力さえ無くしてしまうほど泣いて。
 タマ姉の胸の中で、眠ってしまった薫子さんたち。このままにはしておけないので、タマ姉と俺と
で二人を抱え、タマ姉たちの部屋のベッドに寝かせた。
「タカ坊、二人のこと、頼めるかしら?」
 部屋を出てすぐ、俺にそう尋ねるタマ姉。
「頼める、って……、タマ姉、なんで?」
 薫子さんたちを面倒を見るならタマ姉以上の適任はいない。いや、今だからこそ薫子さんたちには
タマ姉が必要なんじゃないか。それなのに――
「私、玲於奈の所に行くわ」
「え!?」
「薫子たちのことも気になるけど、今はそれ以上に、玲於奈のことが心配だわ。
 あの子、今頃独りぼっちで……、もしかしたら……」
 玲於奈さんの心配をしているのか。確かに今の玲於奈さんは精神的に相当参ってるはずだ。支えと
なるはずの友達をも自ら遠ざけ、玲於奈さんは今や独りぼっち。だけど、
「でもタマ姉、それは危険だよ。玲於奈さん、俺のことは勿論だけど、もしかしたらタマ姉のことも
恨んでいるかもしれない。もしそうなら――」
「解ってる。私が玲於奈のことを傷つけたのだもの。恨まれたって当然よ。
486河野家にようこそ 第73話(5/9):2006/09/18(月) 21:06:21 ID:0klrlJI90
 だからこそ、ここは私が行かなきゃならないの。私が行って、玲於奈を何とかしてあげなくちゃ」
「タマ姉……」
 ……いつもと同じだ。タマ姉は、一度決めたことは決して譲らない。
「なら、俺も一緒に行くよ。タマ姉一人じゃ心配――」
「ダメ。タカ坊は、薫子たちのことをお願い」
 一緒に行くのもダメ、か。
 正直、凄く不安だ。とてもじゃないが賛成など出来ない。止められるものなら止めたい。
 そりゃタマ姉は強い。でも、昨日春夏さんも言っていたが、追いつめられた女の子は何をするか
解ったものではない。窮鼠猫を噛むということわざの通り、俺は玲於奈さんがタマ姉を――
 ぎゅっ。
 突然、タマ姉に抱きしめられた。
「た、タマ姉!?」
「大丈夫、大丈夫だから。明日にはちゃんと、タカ坊のところに帰ってくるから」
 俺の耳元に優しくささやくタマ姉。けれど、密着したタマ姉の左胸からは、心臓の鼓動がハッキリ
と俺に伝わってくる。その鼓動はとても早く、それは俺を抱きしめてるからなのか、あるいはタマ姉
だって本当は……
 と、タマ姉は俺から離れると、やけに爽やかな笑顔を浮かべ、
「じゃあ、行ってくるわね、タカ坊」
 そう言って、タマ姉は、玲於奈さんの所に行った。

 多分、俺とタマ姉の話を他の誰かが聞いていたのだろう。タマ姉が出ていった後、居間に戻った俺
に対して、誰もタマ姉のことを尋ねなかった。
 誰も口を開こうとせず、それからしばらく、やけに静かな時間が流れ、
「ああもう! こんなダンマリ決めてても仕方がないわ! 晩ご飯作るから、誰か手伝って!」
487名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 21:06:28 ID:8wsu6ZDn0
支援
488河野家にようこそ 第73話(6/9):2006/09/18(月) 21:07:13 ID:0klrlJI90
 この空気に耐えかねた由真が立ち上がる。
「ならば、るーが手伝おう。何を作るのだ、うーゆま?」
 るーこも立ち上がり、由真にそう尋ねるのだが、
「え? ……あ〜、うう〜」
 勢いで言ったものの、何を作るかまでは決めていなかったらしい。由真は腕を組んでうーんと考え
込み、かと思ったらいきなり俺をビシッと指差すと、
「リクエスト! たかあき、何食べたいか言いなさい!」
「え? お、俺かよ?」
 いきなり振られても、俺は俺で特に何も思い浮かばず、
「い、いや、何でもいいけど……」
「その答えが一番ダメ!! 何でもいいだなんて、どうでもいいのと同じじゃない!
 どうせなら満漢全席とでも言いなさいよ!」
「じゃあ、その満漢全席」
「出来るワケ無いじゃない!!」
「じゃあ言うなよ!」
 俺のツッコミに由真はうう〜っと頭を抱える。
「ああもう、この何とも言えないイライラ感……、どうしたものやら……
 よし、こうなったら、この感情を全部料理にぶつけてやるわ!
 いいわよたかあき、作ってあげるわよ、満漢全席! 期待して待ってなさい!!」
 イライラを料理にぶつけて満漢全席、ねぇ。……すっげえ不安だ。

 それから約一時間後。晩ご飯の支度が整い、由真に言われて花梨が二階の薫子さんたちを起こしに
行った。幸い薫子さんたちはもう起きていたようで、素直に花梨に連れられて居間にやって来た。
 思わぬゲストを迎えての夕食。さて、由真は満漢全席を作ると言っていたのだが……
489河野家にようこそ 第73話(7/9):2006/09/18(月) 21:08:09 ID:0klrlJI90
「なぁ由真。……これが、満漢全席なのか?」
 テーブルの上にあるのは、どう見てもラーメンとチャーハン。俗に言うチャーハンセットもしくは
ラーメンセット。満漢全席とは普通呼ばない。
「しょ、しょうがないでしょ! あたし、満漢全席知らないもん!」
 開き直りやがった。
「何よ、文句があるなら食べなくてもいいわよ!」
「いや、文句はない。ラーメンもチャーハンも美味そうだしさ」
 これはお世辞ではない。由真特製ラーメンは、肉野菜炒めがどかんと乗っている味噌ラーメン。
よく火の通ったモヤシとキャベツ、それに豚肉が味噌のスープと相性良さそう。一方チャーハンは
見た目にもご飯がパラパラしており、これまた食欲をそそる。しっかし由真のヤツ、ここに来て益々
料理の腕に磨きをかけてるなぁ。
 敢えて問題を上げるとすれば――もしこの場にタマ姉がいたら、栄養のバランス悪いだのカロリー
高すぎだのと苦言を呈するところだろうが、まぁ、たまにはこんな夕食もアリだろ。
「……」
「……」
 落ち込んだままの薫子さんとカスミさん。食欲なんか沸かないのか、あ、それとも――
「も、もしかして二人とも、ラーメンとチャーハン、食べたこと無いの?」
「え? い、いいえ! その……」
「……!(ふるふる)」
 二人は何故か赤面して、首を横に振る。否定ってことは食べたことがあるようだけれど、一体何が
そんなに恥ずかしいのだろう?
「じゃ、じゃあ、遠慮なく食べてよ」
 今日はこのみがいないので、俺が代わりに、
「それじゃあ、いただきます!」
490河野家にようこそ 第73話(8/9):2006/09/18(月) 21:09:07 ID:0klrlJI90
 俺に合わせてみんなも「いただきます」と言い、各々食べ始める。
 ラーメンもチャーハンも予想通り、いやそれ以上に美味いのだが、やはり気になってしまうのは
薫子さんとカスミさん。さっきは食べたことがあると答えていたが、正直、お嬢様にラーメンセット
は似合わないよなぁ。
 二人の方を見ると――やっぱり、全く手を付けていない。
「あ、あのさ――」
 俺は薫子さんたちに話しかけようと、
「薫子さん、由真さんの作ったラーメン、是非食べてみてください。温かくて美味しいですよ」
「カスミ、チャーハンも結構いけるで、食べてみて」
 二人にそう言う優季と瑠璃ちゃん。それを証明するかのように優季はラーメンを、瑠璃ちゃんは
チャーハンを口にする。それを見ていた薫子さんとカスミさんは、戸惑いつつも、まるで二人につら
れるかのようにおずおずと料理を口に入れ、
「――美味しい」
「……(コクコク)」
 そこから先は見守るのが失礼なくらい、よく食べる薫子さんとカスミさんだった。

「――じゃあ、二人はこのままこの部屋ってことで」
 薫子さんとカスミさんには、タマ姉たちの部屋を提供することにした。瑠璃ちゃんはるーこと花梨
の部屋で、布団を並べて三人で寝ることに。
「私、瑠璃ちゃんと一緒に寝るの初めてなんよね〜。楽しみ〜☆
 瑠璃ちゃん瑠璃ちゃん、面白いお話、い〜っぱい聞かせてあげるからね!」
 まるで親戚の子供と一緒に寝るかのような花梨の台詞。それに花梨のことだから、面白いお話って
言ってもどうせ、宇宙人とかUMAの話だろうな。
「こ、怖い話したら蹴るからなぁ!」
491河野家にようこそ 第73話(9/9):2006/09/18(月) 21:11:04 ID:0klrlJI90
 瑠璃ちゃんにはそのテの話も怪談と大差ないかも。けど宇宙人ならすぐ近くにいるんだけどね。
「あ、あの……」
「ん、何、薫子さん?」
「わ、私たち、玲於奈と一緒になってあなたのことを……
 な、なのに、こうやって家に泊めてくれるなんて……、何て言ったらいいか……」
「それはもう言わないでおこうよ。こっちだって昼間は悪いことしたんだし。
 とりあえずここで一晩ゆっくり休んで、その後のことはそれから考えようよ。タマ姉や玲於奈さん
とも一緒に、さ」
「河野さん……」
「そ、その、さ」
 由真が入ってくる。
「ひ、昼間は……、その、わ、悪かったわね。こっちもピリピリしてたから、つい、さ」
 ばつが悪そうに視線は逸らしつつも、薫子さんたちに詫びる由真。
「い、いえ、いいんです。私たちも、その……」
「……(コクコク)」
 恐縮する薫子さんとカスミさん。
「私たちはこっちのお部屋にいますから、何かあったら遠慮なく来てくださいね」
 それじゃあ、お休みなさいと言って部屋に入る優季。由真も続いて部屋に入ろうとする。その時、
「あ、あの、由真さん!」
 薫子さんは由真を呼び止め、
「あ、あの、さっきは言えなかったんですけど……、ラーメン、とっても美味しかったです」
「あ……、そ、そう。……うん、よかった」

 つづく。
492名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 21:11:19 ID:xjLQ3sTF0
GJ。
終盤は涙腺が崩壊寸前になったよw
サブキャラ視点というのも新鮮でいいな
493河野家にようこそ の作者:2006/09/18(月) 21:13:02 ID:0klrlJI90
どうもです。第73話です。
>>487さん、支援ありがとうございました。m( __ __ )m
いつもどなたかに支援してもらって、ホント、感謝してます。

九条院三人娘編は今回で終わりにするつもりだったのですが、また色々と思いつきで書いてるうちに
ページ切れ……
次回、九条院三人娘編、完結です。(多分……
494名無しさんだよもん:2006/09/18(月) 23:40:27 ID:m6x6v0+m0
>479
乙。恋愛話じゃないのに読んでてこそばゆいぜw
漏れも図書委員長は悪い人じゃないと思うんだ。ってか愛佳公共物私的独占
郁乃と彼は似合うんじゃないか。そういうふうに考えていた時期が、俺にはありました。
>482
河野家乙。
九条院チームこのままレギュラーに定着したりは……しないんでしょうな
しかし玲於奈(ry
そして由真の料理(ry
495名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 01:21:48 ID:pVZDQ6RK0
>479
図書委員長がめっさ可愛いく見えて来たw
もう図書委員長を憎めないぜ
河野家お疲れ様
タマ姉が死なない事を祈るw
496名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 06:45:34 ID:8M6czLkq0
貴明乙。
497名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 10:29:38 ID:/JH/rnWn0
>>479
図書委員長の設定変わってるけど面白かったよ
「桜が見たい」と少女が言ったから、5月14日は。

「たかあきくん……」
「どうしよう……みつからないよ……」
小牧愛佳が、泣きそうな顔をしている。
河野貴明は、何もしてやれない。
「あの、桜しりませんか?」
「桜……どこかにあるはずなんですけど」
「愛佳! よせ! ……すみません、何でもないですから」
できることは、通りすがりに声を掛けられた女子生徒をフォローするくらい。
それも、今の愛佳の姿には空しい。
「どうして? 誰か知ってるかもしれないよ、桜の咲いてる場所」
「ひとに聞くのは別に恥ずかしいことじゃないよ。たかあきくん、意外と人見知りするんだ」
「ありませんか! さくら! 誰か知りませんか!」
「さくら! 咲いてるところ!
 この近くで!」
「誰か、誰かーっ」

桜前線が本州最北端で今年の役割を終えようとするころ、
関東平野の一角で、桜を探す少女の声が響いていた。

その少し前。

「お疲れ様、良く頑張ったね」
「意外と早かったですね」
医師の言葉に淡々と返答する少女。
「3時間くらいで包帯が取れるから、病室で休んでいなさい」
「はい。ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる方向が、微妙に医師から逸れている。
理由は単純、少女の顔に、両目を覆うように包帯が巻かれていたからだ。
彼女の名は小牧郁乃。愛佳の(実)妹である。
小児期に難病を発症し、何度か命の危機を乗り越えながらここまで生きてきた。
現在は、適切な対症療法と節制を必要条件としてではあるが命に別状はなく、
いくつかの障害を乗り越えれば学校に通う事も可能な体力を備えつつある。

その障害のひとつが、薬の副作用による視力低下であり、
今回の手術は、低下した視力を日常生活に支障がない程度まで回復する事を目標としていた。
さほど難しいものではないとはいえ眼である以上それなりのリスクはあったものの、手術自体はひとまず成功。
効果が見込みどおりかどうかは、術後の経過を観察するほかないが、
とりあえず数時間後には、再び世界を見ることができるようだ。

「じゃ、いい?」
「お願いします」
郁乃の了解を得て、看護婦が車椅子を押す。
リハビリでは歩行訓練も行っている彼女だが、移動手段は車椅子に頼らざるを得ない。
「でも小牧さん、落ち着いてるわね〜。今更ながら感心しちゃうわ」
「子供じゃありませんから」
通院入院の絶えない郁乃である。看護婦とも顔馴染み。
気安く掛けられた声に反射的に言い放った少女は、やや間を置いて付け加える。
「……場合によって、まだまだ子供ですけど」
「あら、素直」
看護婦の声に悪意はない。
「最近、小牧さん機嫌がいいんじゃない?」
手術前後って普通はピリピリするものだけど、と付け加える。
「別に……」
「やっぱり、お兄ちゃんが出来たのが大きい?」
「兄じゃないですっ!」
「わかってるわよ。冗談」
声を大きくした患者を面白がる看護婦の図。
実の所、ここ2週間この話題でからかわれっぱなしなのだ。

「でもねえ、お姉ちゃんに彼氏が出来るなんてねぇ」
頭が良くてめっぽう口の悪い「小牧の郁乃ちゃん」は、至って優等生な病院生活にも関わらず、
看護婦の間で密かに可愛い要注意人物指定を受けているのだが、
通院の半分以上に同伴し、入院時には彼女らの両親よりも頻繁に病室を訪れる郁乃の姉、
小牧愛佳の過保護ぶりもまた、病院では有名である

その、「郁乃ちゃんのお姉ちゃん」が彼氏同伴で病院に現れたことは、
最近のナースステーションではちょっとしたお茶のおやつであった。
当初、貴明を目撃した看護婦の間では、
「あんな可愛い男の子じゃ、郁乃ちゃんにいびり出されるんじゃない?」
という意見が大勢だったが、
僅か数回の訪問で貴明が郁乃を手なずけてしまった今では、
「そのうち姉妹で彼氏を取り合うんじゃないかしら?」
という興味8割心配2割の予想が話題の中心となっている。

閑話休題。

「はい到着」
「ありがとうございました」
ベッドに腰掛けて、看護婦のいそうな廊下方向に頭を下げる。
外れ。
「天気が良いから、窓開けておくわ。カーテンは閉めておくから」
声は窓際から聞こえた。そのまま回り込んで遠ざかる。
「じゃあ、4時になったらまた来るわ」
「あの……」
「ん?」
「姉……と貴明は、帰りましたよね」
またからかわれるのを覚悟で問いかける。
「うーん、小牧さんが手術に入ってすぐに出ていくのを見かけたから」
返答は真面目だった。
「ここに来てないってことは戻ってないんだと思うけど」
「そうですか」
「そういえば、なんだか慌てて出ていったわね」
「桜がどうとか言っていたような……この時期に桜なわけないか」
「え?」
看護婦の言葉に、郁乃は未だ見えない目を向ける。
「ん?どうしたの?」
「……いえ……」
否定しながらも考え込む。看護婦は少し郁乃の反応を待った。
「ええっと……変な事聞きますけど」
「いいわよ。慣れてるから」
「それはどうも。……今日は、何日ですか?」
「なあに、病室に篭もってるから日付忘れた?14日よ」
「14日なら……あれ、もしかして、5月?」
「あらあら」
さすがに呆れた声を上げる。
「入院してればゴールデンウィークもないものねえ。そう、5月の14日の金曜日」
「そうですか。わかりました。もういいです。どうも」
言うだけ言って、ぼてっと横になる少女。
これは、不機嫌になった時のポーズだ。
看護婦は患者の突然の豹変にため息をついたが、そこは慣れたもの。
(こうなったら触らぬ神に祟りなしよね)
「じゃあ、またね」
一声かけて、病室を出て行った。

パタン、と扉が閉まって少し後。
枕に左頬をつけて寝っ転がった郁乃の口が小さく動いた。
「……バカ」
それは、自分自身と、自分の姉に向けられた言葉。

手術が始まる前に、何か欲しいものはあるかと聞いた愛佳。
「桜が見たい」
郁乃は、心に思い浮かんだ事を、ちょっと考えてから答えた。
(川沿いは、まだ残ってるわよね)
彼女は、今日が14日だと知っていた。医師に手術の日を教えられていたから。
今月が5月だという認識がなかった。

この地域、4月14日は満開を過ぎて散り際ではあるが、全滅はない筈だ。
なにかというと責任のない自己嫌悪に陥りがちな姉に頼むのに、
簡単にできて効能がありそうな願いを思いついて良かった。そう思っていた。
日付をひと月も間違えるというのは、どう考えても郁乃の非常識であるが、
彼女の方にもある程度背景となる事情がある。

ひとつは、彼女の視力が低下していたこと。
もうひとつは、部屋のカーテンを締め切っていたこと。

ここ数ヶ月でめっきりと弱視が進んだ郁乃は、
障害物を避ける事はできても、文字を読むのは難しい状態だった。
だから院内のカレンダーや張り紙も見ていないし、
光源であるテレビは一度もつけていない。
ラジオも聞かない……こちらは嗜好の問題だが……彼女は結果として、
普通に生活していれば入ってくる筈の情報を、殆ど遮断していた。

カーテンを閉ざしていた理由、これも大きくふたつ。
まずは、視力低下に伴い、強い光が目に刺さるようになっていたこと。
そしてもうひとつは、病室から学校が見えたこと。

郁乃の入院している病院は、姉が通っている学園の正面側に高台を降りた所にあり、
ぐるっと回り込む道のりの都合上、歩くと15分はかかるものの、
距離自体はすこぶる近く、最上階にある郁乃の病室からは、
駐車場と道路を挟んで目と鼻の先に校庭、その向こうに校舎が見える。
入院当初、郁乃はこの、姉が通い、
経過が順調であれば自分が通うかも知れない学園に興味を示し、
行き交う登下校の生徒達や、校庭で繰り広げられる体育の授業、
あるいは学校を終えて妹の病室に急ぐ姉の姿を、
病室の窓から楽しみ半分、暇つぶし半分で眺めていたものだったが、
予定よりも入院が長引き、また視力が衰えていくにつれて、
それらの光景は入院生活の慰めでなく、憂鬱の種となっていった。

そしてある日、窓から顔を覗かせた郁乃に手を振る愛佳の姿を、
自分が認識できなかった事を知った時、彼女は病室のカーテンを引いた。
以来、郁乃は窓の外で移り変わる景色から目を背け続けている。
だから、校庭の桜がほころび、満開になって、そして既に散っていることを、小牧郁乃は知らなかった。

だが、そんな事情は、もはや関係がない。
今日が4月だろうが5月だろうが天使のいない12月だろうが、
郁乃の願いがほんの思いつきだろうが、悩んだ末の重大事であろうが、
そんなことは、愛佳の行動にいささかの影響も与えないだろう。
妹が願えば、姉はそれを叶えようとする。
全力で。
失敗は、姉を傷つける。
郁乃はそれを知っていた。だから、簡単な筈の願いを伝えた。

包帯が取れる時間を、愛佳は知っている。
その時に、或いはもう少し後になってか、
おそらくは泣きながら戻ってくるであろう姉をどう慰めようか。

考えても、良い結論は出そうになくて、
「……バカ」
郁乃は、もう一度呟いた。

「愛佳!」
「……え?」
振り返った愛佳の目に、涙はなかった。
「どうしたの……?」
童女のようにあどけない表情。
「そんなに……自分を責めるなよ」
「……」
愛佳は、じっと貴明を見つめる。
貴明は、静かに愛佳を見返す。
やがて、愛佳の表情が震え始めた。
まん丸な目から、涙がこぼれ始める。

貴明の言葉が、主意に反してきっかけとなったか、
とつとつと自己否定を繰り返し出す愛佳。
自分は郁乃に何もしてやれないんだと。
自分がしてきたことは、何の意味もなかったと。
愛佳の自己否定は、桜探しに留まらず、
入学から今まで愛佳が行ってきた全てに及んでいく……

昨日、愛佳が1年近くに渡って蔵書整理を行っていた、学園の書庫が解体された。
蔵書は売却のために搬出され、書庫はCDコーナーに改装される。
貴明が3月来手伝っていたのはこの蔵書整理作業であり、
人気のない書庫での共同作業が二人を結びつけてきたという側面もある。
その成果の殆どが灰燼に帰す現実を、愛佳は目の前に突きつけられた。

開けて今日、妹の願いを、愛佳は叶えられない。
郁乃の気まぐれと勘違いから生じた事態は、姉になんの責任もない不可抗力だが、
愛佳の精神構造内には、郁乃にする言い訳が存在し得ない事を、貴明は既に知っていた。
「いいの……もういいんです」
「っく……最初から、そうだったんです、のよ。何もかも無駄だったんですよ……なの」
「どんなにがんばったって、あたしには、何もできないんです……ないの……。妹の望みも聞いてあげられませ……られない……。
肝心な時に役に立たないんです……
ないの…ね。
何もできない……何もありませ、ない……」
語尾がめちゃくちゃになる。
図書室、タメ口で喋ろうと二人で頑張った事が、今は遠い。
言葉を詰まらせ、その場にしゃがみ込んだ愛佳に、かける言葉がない。

キーンコーンカーンコーン……

5時間目が終わった。郁乃の包帯が取れるまで、あと1時間足らず。
校庭の方で聞こえていた体育の喧噪も消え、
チャイムが鳴りやむと、愛佳の泣き声だけがそこにある。
バサリ。
愛佳の制服から手帳が落ちた。
風にめくられて開いたそれを、貴明が拾い上げる。
「……」
手帳に視線を落とした貴明は、そこにある無数の名前に目を見開く。
数瞬の後、手帳から顔を上げた貴明は、何かを決意していた。
「……愛佳」
声を掛ける。愛佳は泣き続ける。
「泣いていていい。泣いてていいから、愛佳?」
しゃがみ込んで頬に触れると、ぼんやりと顔を上げる。指先に涙の感触。
「俺が戻るまで、ここで待っていて」
「……?」
呆けたままの愛佳。涙は止まらない。
「絶対、絶対待ってろよ!」
目を合わせてそう言い残すと、貴明は校舎に向かって駆けだした。

小牧愛佳は、入学早々クラスの副委員長に選ばれ、
1ヶ月後には本物の委員長を差し置いて「委員長」と呼ばれ、
2学期半ばには上級生にも普通にその名が知られるくらい、
学園の広い範囲で他の生徒達の手助けをしてきた。

愛佳の手帳に書かれた名前は、それらの用事のメモ書きのなかにあった。
いわば、手帳は彼女が助け、助けられた生徒達の人名録。少女の人間関係の履歴。
貴明は、それに賭けた。

「すみません、○○さん、いませんか」
手帳の一番上から辿ったクラスと名前で声を掛ける。
呼ばれて出てきた女子生徒とは、貴明は面識がない。
「すみません。俺、小牧愛佳の…友人なんですけど」
「あ、うん」
「愛佳、今、困ってて」
「はい?」
「助けて貰えませんか?」
「えーっと、な、何をして欲しいのかしら?」
「桜を、桜吹雪を、見せたいんです」
「あー、えーっと、ごめん、ちょっと用事があって」
「す、すみません、じゃあ、××さんいますか?」
「ちょ、ちょっと待ってねー」
困った顔をしながらも、クラスメートを呼んでくる女子。
こんな調子で、3人目まで話をしたところで、
「ちょっとあんた、愛佳の名前出して何やってんのよ?」
貴明は背中から声をかけられた。
「え?」
振り返ると、眼鏡を掛けた女子が睨んでいる。
その隙に、貴明の相手をしていた生徒達はこっそり離れていく。
貴明の方は、廊下に引き出される。
「え? じゃないわよ。誰だか知らないけど、自分が変態だと思われるのに人の友達巻き込まないでよ」
「君、愛佳の友達?」
「そうよ。それがどうかした?」
「愛佳を、助けてよ!」
腰に手を当てて苦言を呈した女子は、逆に勢い込まれてのけぞる。
「桜が、桜がいるんだ」
「さっきからそんな事言ってるけど、なんなの? ちゃんと説明しなさいよ」
愛佳と同学年らしい彼女は、今までの生徒と違って貴明と目を合わせる。
「ホントなら、助ける」
「あ……」
その言葉で、貴明は少し我に返る。
「郁乃が、愛佳の妹だけど、今日目の手術でさ、」
「それで、終わった後桜が見たいって言い出して、そんなのあるわけないんだけど、」
「愛佳は落ち込んじゃって、だから、桜を探さないと、ないけど、桜吹雪なら、一人じゃできないから、だから」
まだ大部分我に返っていないようで、説明は支離滅裂だった。
女の子は、まくしたてる貴明に目を白黒させていたが、やがて瞳の焦点が戻る。
「愛佳に妹なんて、いないわよ」
「いるよ」
即答。一時の沈黙。
「……あんた、名前は?」
「河野。河野貴明」
再び、暫し黙考する少女。
「……」
休み時間も終わりに近づき、貴明がじりじりし始めたころ。
「あんたは、自分のクラスに行きなさいよ」
唐突に、提案があった。
「え?」
「当たり前でしょ。いきなり赤の他人に桜〜で話が通じるわけないじゃない。バカじゃないの?」
「それは……」
「だから、こっちはあたしが話つけるから、自分のクラスをまとめなさいって言ってんのよ」
少女の頭のなかでどういう化学反応があったのかは不明だが、
やっと得た協力者でもあり、言われた内容ももっともだ。
「わかった。ありがとう」
「拡大HRだから先生来ないし」
拡大HR。
生徒の自主性を育てる場と称して、先生方が休憩……ではなく、会議や打ち合わせを行う時間。
「話まとめたら、ここ来て。んじゃ」
「あ、ちょっと」
「なに?」
「君、名前は?」
眼鏡の少女は一瞬「言ってなかったっけ?」という表情をしてから、こう答えた。
「長瀬。長瀬由真。愛佳の彼氏だったら、親友の名前くらい聞いときなさい」

貴明のクラスは、即ち愛佳のクラスでもある。
話は、意外な程簡単にまとまった。
「委員長が困ってるなら、助けないとね」
そういう意見もある。
「なんか面白そうじゃん」
そんな意見もあった。
「お前が女のために必死になるとはねぇ」
これは雄二。
貴明と愛佳がそういう関係にあるらしいことは、
雄二が先日二人のデートを目撃したほか誰も知らなかったが、
貴明の態度は、愛佳への好意を全く隠さない素直なものだったので、
アジテーションの手助けにこそなれ、マイナスにはならなかったようだ。

「でも、病院から見えるくらいの花吹雪やろうとしたら、うちだけじゃ人手足りないよな」
「あ、あたしF組に声掛けてみる。文芸部の知り合いいるし」
協力者は協力者を呼び、話は学年全体に広まっていく。
愛佳の1年間は、やはり皆の心に残っていた。
長瀬が自分のクラスを説得し終わった頃、2年生全クラスが桜吹雪実行委員会と化していた。

ヒトを確保しても、モノが要る。
「桜色の模造紙? 白でもいいのか?」
「ノートの切れっ端でも、なんとかなるかなぁ」
「あれだと重いから飛ばないよ」
「裁断機欲しいよな」
「ない人はハサミで。切ったのは段ボールにまとめて」
「箱もか」
「備品類だと、生徒会に了解取らないとな……」
「う、あたし今の会長苦手」
「久寿川先輩って、予算に厳しいんだっけ?」
「っていうか、なんか暗くて……」
「誰か生徒会にコネがある人はいませんかー」
回答は、言い出しっぺ本人から出た。
「あ、タマ姉って生徒会の副会長だよね、確か」
「ああ、4月早々に変な卒業生に遭って、無理矢理役員にさせられたとか言ってたな」
「タマ姉に無理矢理ができる先輩って、どんなんだろ」
二人の疑念はともかく、コネは辿ってこそ意味がある。

「姉貴、姉貴」
ツカツカツカツカ。
「ちょっと頼みが……グエエエエエエエッ」
「HRといっても授業中でしょ。なに出歩いてるの……ってあら、タカ坊までどうしたの?」
「うん。実はタマ姉に頼みがあってさ」
アイアンクローと優しい言葉。
不公平な取り扱いに抗議する雄二はさておいて、事情を話す。
貴明も落ち着いてきたのか、さっきよりは大分要領の良い説明だった。
「ふうん……」
環は頬に人差し指をあてて少し考慮した後、穏やかな表情で貴明に問いかけた。
「校舎から紙吹雪を撒くわけ?」
「そのつもり」
「近所迷惑よね」
「……うん」
「授業を潰して、みんな大変よね」
「……そうだね」
「自分の彼女を喜ばすのに、他の人達に助けを求めるの?」
「……そうなるね」
「ちょっと情けないんじゃない?」
姉貴、私情が入ってないか。雄二が助け船を出そうとだそうとしたが、
「そうだね。でも、仕方ないよ」
貴明は顔を上げて答えた。
「俺は愛佳を救いたい。けど、俺だけじゃ、不可能なんだ」
その目に曇りはない。
「今、愛佳を救えるのは、俺じゃなくて、愛佳が関わってきたみんな、なんだ」
「だったら、俺ができるのは、みんなにお願いすること」
「それで俺がどんなにカッコ悪く見えても、俺は構わないよ」
環は貴明を見つめる。
「立派になったものね」
その声は、感心したような、少し寂しいような、そんな響きだった。

「わかった。協力する」
「それで、小牧さんの妹さん、包帯が取れるのは何時なの?」
貴明は予定時刻を伝えた。
「そう。あまり時間がないわね」
ちょっと迷ったような環だが、すぐに決断する。
「とりあえず生徒会で管理してるモノは使っていいわ。会長に話をしてくる」
「おっし、じゃあ俺がみんなに伝えてくる。貴明は姉貴と一緒に行けよ」
雄二が2年のフロアに駆け出す。
「生徒会長、久寿川先輩って、ちょっと怖いイメージなんだけど、大丈夫かな?」
「あら、すごくいい子……いい人よ」
歩きながらの質問に、環は笑って答えた。
「タカ坊が会ってたら、面倒見たくなったかも知れないくらいのね」
校舎内はちょっとした、いや、かなりの大騒ぎになった。
生徒会の助力を得て、環が3年生にも協力を呼びかけたのだが、
「委員長さん」の知名度は3年生の間でもなかなか高く、
また、環は転入してひと月そこらで既に人気者−特に女子生徒に−であったし、
さらには一部の文芸部員が気を利かして、というか悪ノリして
「委員長を助けよう」なるビラを作って配布して回った結果、
1年生を含めて、話が全校に広まったのだ。

「あ、こっちにも模造紙ちょうだい」
「おい、なにやってんだお前」
「ダメ、あたしが使う」
「人が集まって騒ぐ所には、未知の存在が現れやすいんよ」
「わ、委員長切り方お上手ですね」
「あの、なんの騒ぎなんでしょうか? これ?」
「ふむ、こう見えても折り紙など得意でね」
「桜祭りだって」
「紙ないよー」
「5月にですか? 風流ですねえ」
「なんか白とかピンクとか、そんなもんならなんでもいいんだろ」
「まったくうーがすることは、変わっているな」
「あー、ええもんめっけー☆」
ジリジリジリジリジリ
「ああっ、さんちゃん服切っちゃだめぇ〜」
「むむっ、反応ありっ!? ああっ、こっちにも!?」
「あ、それ綺麗かも」
「うるせーっ!」

これだけ騒げば、PTAのTが出てくるのは時間の問題。
「君たち、何をやっているのかね?」
「ふぉふぉ。少々元気が良すぎるかのう」
「橘先生、幸村先生」
生徒会室に現れた二人の教師を、二人の生徒が出迎えた。
「まったく、学校をなんだと思っているのです!?」
「生徒達に聞いても生徒会の指示と一点張りでのう」
生徒会の指示と言うように、というのは、
多少なりとも時間を稼ごうという環の発案である。
職員室に出向くよりも説得する相手が少なくて済むだろう、
という目論見もあったが、結果としては話易いのと煩いの、両極二人が来た。

「突然ですみません。事情がありまして」
先陣を切ったのは生徒会長、久寿川ささら。
気弱な性格で、会長に指名された時は教師と生徒双方から心配されたが、
前生徒会長が健在の間は彼女が、4月からは環がフォローした甲斐あってか、
徐々に独自色を発揮しながら、まずは無難に生徒会を運営してきた。

「実は、生徒の一人の妹さんが、隣の病院で今日手術されましたの」
「おお、小牧君んとこ、今日じゃったか」
「それで、目の手術なんですけど、彼女が季節を勘違いして、成功したら桜が見たいと」
「ほほっ、5月に桜とな」
「だからどうしたというんです?」
「だから全校生徒で桜吹雪を作って、病院から見せてあげたいんです」
「君は何を言ってるんだ! そんな些細な事でHRを潰してバカ騒ぎなど……」
「些細でしょうか?」
受け継いだのは環。
「小牧さんは真剣に悩んでいます。そして、みんなは小牧さんを助けようとしています」
恐らく半分以上の生徒はお祭り騒ぎに乗っているだけだろうが、この際気にしない。
「一人の生徒の為に、全校でなにかができる事など、滅多にない経験だと思います」
「そう考えて、生徒会はこの事を提案しました」
「生徒達も、自発的に行動してくれています」
「多少なりとも秩序を乱す行為であると自覚はしておりますが、是非、ご容赦ください」
環が締めくくる。
「もちろん、撒いた紙吹雪は、即日全生徒で清掃致します」
久寿川が付け加えた。
「ふぉっふぉっふぉっ、みんなは一人の為に、とな」
楽しそうな幸村。
「小牧さんは、生徒会の仕事始め、色々な所で他の人の為に働いてくれてます」
「おや、一人はみんなの為に、もか」
「何を笑ってるんです幸村先生!」
楽しくなさそうな橘。
「こんな事をして、外部から苦情が来たら学園の評判ガタ落ちですよ!」
「いやまあ、若い者が勢い余ったくらい、周囲も大目に見てくれるじゃろ」
「見てくれませんよ!」
「そこを面倒見るのも、教師の仕事じゃろうて」
「ふんっ! あなたは講師でしょ! 生徒指導に口を出さないでください!」
「とにかく、このような集団非行を認めるわけには参りません。即刻やめさせなさい!」
「……お断りしますわ」
小さな声で、しかしはっきりと、生徒会長は告げた。その横に寄り添うように立つ環。
「〜っ! ハナシにならん! 警察を呼びます警察をっ!」
顔を真っ赤にして部屋を飛び出す橘。

ばがんっ!

無法な音がした。
慌てて生徒会室を出る会長と副会長。後をついて老講師。

廊下に出るとそこには、
「天呼ぶ地呼ぶ人が呼ぶ。無理解倒せとあたしを呼ぶ!」
木製バットを片手に担いだ、
「聞け! あたしは正義の卒業生! まーりゃん先輩仮面ストロンガー!」
の姿があった。
なお本名、朝霧麻亜子。環を生徒会に引き込んだ人物でもある。

足下に橘が転がってる。
「ま、まーりゃ……」
「まーりゃんではない! まーりゃん先輩仮面ストロンガーである!」
「なんて事を」
額に指二本で頭痛を抑える環。
「ふぉっふぉっふぉっ、命に別状はなさそうじゃの」
「その辺はもう、ぬかりなく。ちゃんと木製で」
生きてりゃいい、というものでもないと思うのだが、年の功か幸村は平気なものだ。
「では、ワシは若い衆に話をしてくる。手伝いはできんが、頑張れよ」
職員室の方に消えていく幸村。
「あたしも、さらばじゃっ!」
走り去ろうとする朝霧麻亜子の目の前に、間が悪く出現した影。
「むむっ、新手かあっ!」
「おーい、姉貴、こっちは大体準備うぐあぁっ!」

犠牲者、二人目。

「ゆ、雄二っ?」
「おお味方であったか。すまんすまんつい条件反射で。許せ、不慮の事故である。では、今度こそさらばじゃっ!」
出会い頭にぶん殴られて伸びた雄二を残して、朝霧麻亜子は消え去った。
呆然とする二人。
「まーりゃん先輩……仮面……すとろんがー……って、言ってま……たわね」
「ええ、そうね」
「仮面……被ってま……なかったわよね」
「ええ、そうね」
「弟さん……痛そうね」
「ええ、そうね」
「タオル、冷やしてくるわね」
「ええ、そうね」
雄二を介抱して生徒会室に戻る二人。
廊下には、橘だけが転がっていた。

「どんな感じだい? 痛みとかは?」
「いえ、ありません」
「じゃあ、包帯を取るよ、いいかね?」
「はい」
医師が、少女の包帯を取る。
「ゆっくりと、目を開けて」
「……」
「まぶしい? まだ良く見えないかな?」
「はあ」
ぼんやりと、郁乃の視界に光が戻ってくる。
辺りを見回す。病室には、彼女と医師と看護婦の三人。
「姉は……戻ってないんですね」
「見かけなかったわね。どうしたのかしら」
理由は想像がつく、ある筈のない桜を、探しているのだろう。
バカ、口の中でまた小さく呟く。その時、

ピルルルルルルルル ピルルルルルルルル

インターホンが鳴る。看護婦が出る。
「はい、え? 外線で? なに? なんなんですか?」
電話を受けた看護婦のおかしな様子に、医師と郁乃は怪訝な顔をする。
「いいからって、そんな。まあ、わかりましたよ。切るわね」
ガチャ。
「ナースステーションに外線が入ったそうなんですけど、良くわからなくって」
「誰から?」
「河野君って、ほら小牧さんのお姉さんの」
「彼氏君か、で、なんだって」
「それがね、婦長が、とにかく外を見ろって言うんですよ」
「うーん、あまり明るくするのも良くないんだけどな」
その時、カーテンが大きく内側に膨らんで、一陣の風が病室に舞い込んだ。

風というか、突風。
「うわっ、春一番……なわけないか。今は5月だ」
乱れた髪を撫でつけながら、医師がぼやく。
「!」
「小牧さんっ?」
ガタッ、突然、立ち上がりかけ、力及ばずベッドにへたり込む郁乃。
「どうしたの、急に動いちゃ……」
「桜……」
「えっ?」
郁乃の視線の先、病室の中央に、小さなピンク色の欠片が落ちている。
「まさか、そんなわけないだろう」
近くにいた医師が拾い上げる。
「なんだこりゃ、布の切れ端みたいだな」
「あら、あそこにも。やだ、結構落ちてる」
「外から吹き込んだのか?」
「っ! カーテン、カーテンを……開けてください」
滅多に聞けない郁乃の慌てた声。
病室のカーテンが、部屋の主がいる状態としては数ヶ月ぶりに開かれる。
光が射し込むと同時、看護婦の素っ頓狂な声。
「うわっ、なにやってんだろあれ!」
「どうしたんだい?」
「学校が……」
「っ。見せてくださいっ」
郁乃はベッドの窓側に回り込み、壁に手をついて中腰になる。
「あ、無理しないで」
看護婦が、慌てて横から体を支える。
その腕に体を預けながら、窓枠に手をついて外を見る郁乃。
「あっ、まだ明るい方を見ちゃあダメだよ」
医師の言葉も聞かず、目を細めた視線の向こう。

そこに桜があった。

祭が始まっていた。
校舎の3階から、屋上から、
学年もクラスもバラバラの生徒達が、思い思いに花を飛ばしている。
花は様々。
桜色の模造紙や、売店の色紙はすぐに底を尽き、
ノートの切れ端や使用済みのプリント、お約束のテストの答案、
色々なものが裁断されて、季節はずれの桜吹雪を構成している。
なかでも女子は、誰が始めたのか制服のタイを切り刻んで風に舞わせている子が多く、
親にどう説明するんだろう、とか、制服屋が儲かるだろうな、とかいう感想と共に、
胸元が若干開放的になった女子生徒達の姿に興奮気味の男子生徒達も少なからず存在した。

「うわあ、きれいだねー」
屋上の柵から下を覗き込んだこのみが感嘆する。
「落ちんなよチビ助」
「落ちないよお。ねえ、ユウ君もこっちきて見てみなよ!」
無数の花びらが日差しに煌めく光景は、確かに壮観と言って良かった。
「これもお姉様のお力あってこそですのよ!」
「まったくです。これだけの人を動かし、纏めあげる人望と実力、素晴らしいですわ」
コクコク……。
「ここまで統率取れたのは、姉貴と会長のおかげかも知れねえな」
三人娘の環礼賛に、仏頂面ながら雄二も頷く。
額に当てた濡れタオルが、ちょっと痛々しい。
「まだ痛む?」
心配そうに聞くのは久寿川生徒会長。
「いえ、大したことないっスよ」
強がる雄二。
「しかしこれだけ騒いで、委員長の妹が見てなかったら大笑いですよね」
「さっき河野君が病院に電話を入れたそうだから、きっと大丈夫だと思うわ」

わっ。
屋上を埋めていた生徒達の一角が、なにやら沸いた。
「あそこあそこ」
「えっ、どこどこ」
「あっ、いたっ」
「ちゅーするぞちゅー」
「やるのか、本当にやるのか!」
「やれー、やっちまえ河野」
生徒達が指さす方向を見ると、校門前で、今回の元凶たる約2名が寄り添っている。
屋上や窓から囃し立てる声や指笛が、耳に届いているのかいないのか。

やがて、二人は抱き合った。

おおおっ。どよめく屋上。段ボールに残っていた紙吹雪が、ここぞとばかりに一斉にバラ撒かれる。
「本当にやりやがった!」
「あっはは、最高だお前ら」
「カメラカメラ」
「ええいっ、ビデオはないのかっ!」
大騒ぎ。
その中で、一人の女子生徒が入口の方に戻ってくる。
「先に戻ってるから」
すれ違いざま、環は雄二にそれだけ言って、校舎内に消えていった。
「「お姉様っ!」」
パタパタ……。
後を追ってくる三人娘。
一人にしといてやれよ、と声を掛けても無駄だろう。雄二は黙って見送った。
そして、このみを探す。
このみは、屋上の端、少し生徒がとぎれた所で、柵にかじりついていた。
周囲の生徒達、同級生らしい、が残り少ない紙吹雪を舞い散らすなか、じっと校庭を見つめている。
「このみー、紙なくなっちゃったよー」
「もう戻ろう?」
「うん、もう少しいるー」
このみは動かない。返す声は、ごく普通。
だから、友人達も気づかない。
「もう、ナントカとこのみは高い所が好きってね」
「6時間目終わるまでには戻りなよー」
「そうそう、この後掃除すんだって」
「あー、やだなあ」
「自分で散らかしたんだから仕方ないわよ」
このみのクラスメートは、わいわい騒ぎながら教室に戻って行く。
他の生徒達も、空のダンボールを抱えて、或いは飛び散った欠片を掃きながら、屋上を去っていく。
祭は、終わったのだ。

だが、閑散とした屋上で、このみはまだ手摺りに寄りかかっている。
校庭を見下ろせば、既に貴明と愛佳の姿はなく、掃除に動員された生徒達が各所に散っていく。
「おいチビ助、もう行くぞ」
「え?あっ、みんな帰っちゃった?」
「後かたづけだ。暗くなるまで帰れねーぞたぶん」
「あぁあ〜、つまんないなー」
うーん、と伸びをしながら、このみが手摺りから離れて振り返る。
「でも、楽しかったねえ」
「こんなにいっぱいの花吹雪はじめてだよ。卒業式のより凄かったなあ」
「タカ君と……小牧先輩だっけ? あんな人前でキスしちゃって、びっくり」
「みんな切るもの無いからって、色々飛ばしてたねえ」
「ああっ、このみもリボン切っちゃったんだ。まずいよ。お母さんになんて言おう……」
「ねえねえ、ユウ君どうしよう……ユウ君?」
「? ユウ君、どうしたの?」

このみは不思議そうに雄二を見た。
雄二は、呆然とこのみを見ていた。
「いや……」
少し詰まる。
迷いの後、努めて平静な口調で告げた。
「お前、なに泣いてんだ?」

「ええっ?」
ぽかーんとしたこのみ。
だが、その頬は濡れていた。
瞳からも、ぽろぽろと雫が零れ、桜色の肌を伝っている。
「あ、あれ? ホントだ。なんだろ、ゴミでも入ったのかなあ?」
自分の頬に手を触れて驚く。
「でも痛くないし、桜吹雪が凄かったからびっくりしたのかも?」
目を閉じてごしごし。
だが、涙はとまらない。

「あれ、あれ、どうしようユウ君。このみおかしくなっちゃった」
「止まんないよ。泣いてないのに、ひくっ、涙が、ひくっ」
自分の涙を自覚したことが、逆に本泣きを誘発する。
理解できない現象に、軽いパニックを起こしかけている。
雄二は、自分の額に当てていた濡れタオルを外す。
「ふえっ、ユウく、ひくっユウく……ふぎゃ」
言い終わる前に、このみの感情が暴走する前に、
雄二は少女の顔面をタオルで覆った。
「む、むぐっ、ユウ君くるひぃぉ。うぎゅっ、ふぎゃっ、んぎょっ」
「うるせー、ちょっと大人しくしてろ」
そのまま顔中をタオルで拭き取る。
縦縦横横、マル書いてちょん。
まるで消しゴムでノートの書き損じでも消すように、ごしごしと擦った。
「ぷふゃあっ、う〜、なにするの〜っ!」
「ほれ、収まっただろ」
その通り、タオルを離してこのみが膨れたとき、頬から涙の跡は消えていた。
「はれ? ホントだ〜」
心の方も、鞘に収まったようだ。
「なんだったんだろうねー」
「んなもん、俺が知るか」
心当たりはあったが、本人に指摘するのは怖かった。
「まったく、桜なんてどうでも良かったんだから」
「はい」
「あたしの気まぐれ真に受けて全校生徒動員なんてやめてよね」
「はい」
「大体、包帯取る時間には病院にいろって言われてたんじゃないの」
「はい」
「親も来ないし姉にはすっぽかされるし、つくづく不幸な次女だわ」
「はい」
「二学期から転入するかもしれない学校だってのに、恥ずかしいったら
 …………そこ笑うなあ!」
「「ぷ、ぷふっ、ぷははははっ」」
並んで郁乃の説教を聞いていた愛佳と貴明は、堪えきれずに吹き出した。
吹き出された方は、顔を赤くして口を開きかけたが、すとん、と落ち着いて黙る。

何を言っても、枕元にポプリ用の小瓶に詰められた桜色の切れ端
−病室に吹き込んだものを、看護婦さんが拾い集めてくれた−
が鎮座ましましている状態では、言うだけ無駄というものであろう。
「疲れた、もう寝るから帰って」
「あ、もうこんな時間か」
「ゆっくり休んでねっ」
病室の出口に向かう二人に、郁乃。
「お姉ちゃん」
「ん?」
「あとそこのバカ」
「おい#」

「……ありがとう」
「「どういたしまして」」

この一件以来、(生徒会長の発案で)14日は学園あげての清掃ボランティアの日となった。
翌年からの新入生は、指揮を執る上級生と共に敷地内外のゴミ拾いなどをしながら、
5月なのに「桜掃き」と呼ばれる行事の由来を、誇張つきで聞かされる事になる。
522名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 21:02:21 ID:P/DNO1su0
投下乙
523名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 21:04:01 ID:JTdFQ/K/0
以上です。橘は天いな、幸村はCLANNADから拝借しました。
524名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 21:06:57 ID:vuDGtp6n0
色んな意味でうるっときました
乙であります
525名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 21:23:40 ID:z/wKegdE0
かなり良かった。乙
526名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 21:34:31 ID:ijayeyZp0
白詰草氏が来なくなってからすっかりレベル落ちたな…。
527名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 22:06:13 ID:QtTqtOBy0
>>526 奴のアンチではないが
奴のレベルがそんなに高かったとは思えんね
528名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 22:14:09 ID:rhJUpmNe0
非常に良い作品だと思いますが、半分ぐらいに区切ったほうがスレに投下する意味では良いかと思います。
529名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 22:44:20 ID:GHgFOmXk0
とりあえず>>526が白詰草を追い詰めたいのだということはよくわかった
とはいえマジでここんとこ来ないけどな、奴は
530名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 22:45:13 ID:JTdFQ/K/0
>528
実は第4話でも迷ったのですが、区切りが半端(今回だと8と9で区切れますかね)なのと、
なるべく話数を増やしたくないのでまとめて投下しました。
プロットから文章量を予測できない無能者なので、今後もレス数は乱高下すると思います

良いと言ってくれると有り難いし、それ以上に色々ゴメンナサイはあるんですが……
枕流は「書かないこと」の重要性を知ってるライターだと、改めて痛感した次第
531名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 23:02:15 ID:ijayeyZp0
>>527
あんた、文才ないよ
532名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 23:09:46 ID:kQWirnh60
そうだな。三宅流と化してしまったのは反省点かもね。
しかしGJ。
533名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 23:19:00 ID:JcRXkMod0
ID:ijayeyZp0は白詰草ストーキング花梨儲
はやい話が荒らしなのでスルーで。

526 名前:名無しさんだよもん[sage] 投稿日:2006/09/19(火) 21:34:31 ID:ijayeyZp0
白詰草氏が来なくなってからすっかりレベル落ちたな…。

531 名前:名無しさんだよもん[sage] 投稿日:2006/09/19(火) 23:02:15 ID:ijayeyZp0
>>527
あんた、文才ないよ

176 名前:名無しさんだよもん[sage] 投稿日:2006/09/19(火) 21:33:01 ID:ijayeyZp0
かもりん…

260 名前:名無しさんだよもん[sage] 投稿日:2006/09/19(火) 12:43:55 ID:ijayeyZp0
>>258-259
会長かわいいよ会長

893 名前:名無しさんだよもん[sage] 投稿日:2006/09/19(火) 11:04:07 ID:ijayeyZp0
アンチ撲滅も時間の問題なんよ
http://sakura02.bbspink.com/test/read.cgi/housekeeping/1158608454/
  _ _ _
 ,〈>' ,  `くノ
<^(゚w゚)ノハヾ^、  
´Wリ(i!゚ ヮ゚ノv'`
   ⊂)卵iつ
  〜く/_|〉 
    し'ノ

  ねこかりん 
534名無しさんだよもん:2006/09/19(火) 23:54:56 ID:ijayeyZp0
>>533
おいおい、ウチはべつに白詰草信者ちゃうで。
客観的な評価を述べたにすぎない。
535名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 00:00:39 ID:kRg+Be4K0
>>534
自分の書き込み見直してくるといいよ
536名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 00:01:10 ID:Ne21T5+8O
別に白詰草のアンチじゃないが彼の最近の自演は目に余るな
537名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 00:05:13 ID:h/i2PiZJ0
>>536
白はID変えてコテ外せば本人だとバレないと思ってますから
538名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 03:19:02 ID:lIAdOGrp0
てか、人格批判は止めようぜ。意味ねーし。

個人的には、白詰草氏の文章は、特別上手くもなければ下手でもないと思う。
よくも悪くもそこそこというか、コテハンじゃなければ注目されることもないんじゃないかな。
作品から「俺ってすげえだろ」みたいな臭いがぷんぷんするから微妙ってのはあるけどね。
語り手が誰なのかハッキリしないというか、いきなり作者が作品内に顔を出してくるような
気持ち悪い印象を持った覚えがある。
俺は一つだけ読んで、それ以外は読んでないのでなんとも言えない。
539名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 04:24:24 ID:IKAUsfPg0
縦?斜?
540名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 04:35:26 ID:lIAdOGrp0
異次元読みで「かりんさいこう」とでも読んでくれw
541名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 10:00:14 ID:OsvFHcha0
>>538は葉鍵板荒らし回ってるストーカーだから無視で。
はやい話が荒らしね。
白詰草を「気持ち悪い」なんて言う奴はこいつくらいだからすぐわかるw
542名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 11:20:52 ID:TFZilgHA0
本人なのかイメージ悪化を図る粘着なのか知らんが
とにかく分かりやすい自演だな
543名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 12:25:55 ID:1svnkna80
>>541
いや、俺も白詰草は気持ち悪いと思うよ。
ポエムみたいな文章ばっかじゃん。
544名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 12:28:49 ID:lIAdOGrp0
いや違うってw俺は自演とかじゃないよ。
別に作家を気持ち悪いって言ってるんじゃなくて、あくまでも作品の話な。
ポエミーすぎて俺の趣味に合わないってだけ。
面白い話書いてもらえるなら、どんだけ2chで暴れようが興味ねーよw
545名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 12:36:06 ID:jVrwjyXQ0
>>544
見習いたい寛大さだな。
俺はそこまでビッグな心はもてそうにない。
やっぱりどんないい話書いてくれても、作者が人間的にどうだろうなぁと思うなぁとか思ってしまうと自然とフィルターかかってしまう。

でもさ、ぶっちゃけ作者の人格ってある程度は作品に反映されると思うんだがどうだろう。
2chで大暴れするようなやつに読んだ人間が面白いって思えるようなものを書けるのか、それが疑問だ。
546名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 12:36:12 ID:OsvFHcha0
相変わらず分かりやすい自演だな
547名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 12:42:10 ID:PYGYgm1F0
結構性格悪い人でも面白いの書けたりするけどな
でも白はキモイ。作者も作品も
548名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 12:55:33 ID:TFZilgHA0
ID:OsvFHcha0
お前のことだが
549名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 13:01:05 ID:OsvFHcha0
>>548
いくともID使って工作乙
とりあえずお前は白詰草を追いつめたいらしいな
でも自演バレバレだからたまには口調変えたほうがいいよ
550名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 13:02:43 ID:tjVX2xA+0
・・・
551名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 14:14:04 ID:/xhCepp80
本スレに沸いてる携帯で自演までするアンチと信者を一人でこなしてる花梨荒らしの人じゃん
>>538とか釣られてm9(^Д^)
552名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 14:26:50 ID:OsvFHcha0
白に粘着ストーキングしてる奴と白を叩いてる奴は同一人物だからスルーで
とりあえず白を追いつめたいことは明らか

ID:lIAdOGrp0=ID:jVrwjyXQ0=ID:PYGYgm1F0=ID:/xhCepp80=ID:TFZilgHA0
553名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 14:36:31 ID:OsvFHcha0
というわけで。
荒らしの正体も判明したろころで、以後荒らしはスルーな。
奴はID複数使って自演するのが得意だから騙されないように。
ここはコテ叩きスレじゃないからね。白を叩いてる奴はわざと荒らそうとしてるんだろうけど。
554名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 14:37:40 ID:TFZilgHA0
NGあぼーんばっかで読めないからNGワード間違えたのかと思った
でも外してみて(´・ω・`)ショボーン
555名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 14:44:21 ID:OsvFHcha0
>>554
お前最近見ないと思ったらこんな所にいたのな。
黄色スレが過疎ってきたからターゲット変えたのか

いっつも文体同じだから例の荒らしと同一人物だとわかりやすすぎ
どうせ指摘されても直す知能は無いんだろうが。
556名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 14:46:38 ID:1svnkna80
俺、>>543なんだけど、俺は自演扱いじゃないの?
仲間にいれてくれよ。寂しいよ(´・ω・`)
557名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 14:50:46 ID:OsvFHcha0
何でもいいけど、とりあえず白を追いつめようとしてる奴は荒らし。
意味もなく白の話題出す奴は荒らし。
それに便乗して白叩き始める奴も荒らしってことでござい。
558名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 14:50:58 ID:lIAdOGrp0
って俺が発端扱いなのかよ。ていうか釣られたのかよ(´・ω・`)
559名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 14:57:12 ID:OsvFHcha0
>>558
唐突に白批判始めたのは、あなた。だからあなたが発端でしょ。
黄色スレが落ち着いたからこっちを荒らすことにしたんだね
560名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:11:58 ID:TFZilgHA0
白白って一番こだわってるのがID:OsvFHcha0な件について
561名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:17:26 ID:1svnkna80
>>560
誰もが思っていたことを言ってのける>>560!!
そこにしびれる、憧れるぅぅぅ!!!
562名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:20:54 ID:OsvFHcha0
>>560-561
お前の低レベルな自作自演には飽きた。
お前が一人で白白言ってるからたしなめてるだけだっての。
最初からお前が白の話振らなければ…、こうする必要なんて無かったんだから。
563名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:22:50 ID:Md3H/SzR0
俺はどっちかっていうとお前のマッチポンプに飽きてるがな
564名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:26:52 ID:OsvFHcha0
マッチポンプ君がまたID変えましたw
どうしても白の話を引っ張って白を追いつめたようです
565名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:28:47 ID:tjVX2xA+0
何だマッチポンプも分からん厨房だったか
もうNGあぼーん復活でいいや
566名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:30:25 ID:QvaDaiGP0
いいから白をNGワードにでもしとけよゴミクズども
お前ら全員まとめて等しくうぜーんだよ
消えろ
567名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:32:08 ID:OsvFHcha0
ID:ijayeyZp0=ID:kRg+Be4K0=ID:Ne21T5+8O=ID:h/i2PiZJ0
=ID:lIAdOGrp0=ID:jVrwjyXQ0=ID:PYGYgm1F0=ID:/xhCepp80
=ID:TFZilgHA0=ID:1svnkna80=D:Md3H/SzR0 か。

串使えば自演がばれないと思ってるとはとんだ厨房だw
文体全部同じじゃ意味ねーって。

みなさーん、こいつは白詰草をストーキングしてる基地外黄色信者です。
たまに気まぐれに白詰草アンチを演じてみたりもします。

はやい話が荒らしですので粛々とスルーしましょうぜ
568名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:35:17 ID:/xhCepp80
ワロヌw
569名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:36:32 ID:Md3H/SzR0
一番スルーできてない方が何か仰ってるよママン
570名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:37:51 ID:ks568Z9n0
ちょっと思ったんですが、SSの書庫にあるこのみSSってちょっとダーク系多い気がします
これって、何故?
571名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:38:17 ID:lIAdOGrp0
ttp://www004.upp.so-net.ne.jp/windbell/

もうどうでもいいから本人のページ行ってやってくれよ。
掲示板も閑散としてるし、嬉々として相手してくれるんじゃないか?
頑張れよOsvFHcha0。相手が振り向いてくれるといいな。
572名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:41:09 ID:OsvFHcha0
>>571
ついに本性を表したな、マッチポンプ君w
黄色スレ潰した後はここを潰す気かw
573名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:43:21 ID:Md3H/SzR0
>>570
このみの電波が本編中で陽方向にしか働かなかった反動
574名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:43:40 ID:kRg+Be4K0
何このおもしろい流れ
575名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 15:51:31 ID:Md3H/SzR0
ID:QvaDaiGP0 ← 無駄なレス消費に耐え切れずぶち切れ
ID:OsvFHcha0 ← 電波

ID:ijayeyZp0=ID:kRg+Be4K0=(以下略) ← 空回り
576名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 16:08:52 ID:PXdon7Mi0
おまいら、そんなに暇を持て余してるのなら、愛佳に投票でもしてあげてください
577名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 16:20:26 ID:IrD2aO0yO
やれやれ黄色の話が出た途端
この有様かよ。
578名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 16:39:38 ID:nfThvS2eO
働けよ、オマエら
579名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 16:49:56 ID:oihUDyxyO
今更だが桜の群像乙!!
このまったり感がイイ
なぜか河野家が殺伐としてきてるからいいタイミングだった
図書委員長SSも良かったよ。久々に愛佳ルート攻略したくなった

XRATEDでもやるか…
580名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 17:10:37 ID:SY00aUEm0
SSよりその書き手の話の方が盛り上がるという…。
581名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 18:52:31 ID:X8XBfzYb0
>>527 これだけの書き込みで、
俺の文章力を見破るとは、大した奴だ >>531 感心させられた。
582白詰草 ◆Pd9gE38GCU :2006/09/20(水) 21:53:01 ID:lUvk0MOp0
. .: : : : : : : : :: :::: :: :: : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
    . . : : : :: : : :: : ::: :: : :::: :: ::: ::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   . . .... ..: : :: :: ::: :::::: :::::::::::: : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
        Λ_Λ . . . .: : : ::: : :: …なんかもういろいろ疲れる
       /:彡ミ゛ヽ;)ー、 . . .: : : :::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::
      / :::/:: ヽ、ヽ、 ::i . .:: :.: ::: . :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
      / :::/;;:   ヽ ヽ ::l . :. :. .:: : :: :: :::::::: : ::::::::::::::::::
 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
583名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 21:55:19 ID:/T+MSofB0
>>582
そのレスにワロタw正直SSよりおもろいぞw

空気は読めてないと思うが
584名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 22:05:37 ID:Pb+31LfM0
>>583
空気読めたら白詰草じゃないし。
585名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 22:13:41 ID:Ne21T5+8O
白詰草って自分が話題になると必ず出てくるな。誰も呼んでないのに。
自演してたのがバレバレだからもう少し考えたほうがいいような…
586名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 22:38:37 ID:jVrwjyXQ0
>>585
時にはわかってても口を噤むことも必要だよ
そっとしといてあげよう

自演かどうかってのもこういう匿名掲示板の性格上言うだけ詮無いことだし
胸にしまっておくのが平和の秘訣だな
587名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 22:44:16 ID:cDZGN66a0
お前達、家を間違ってますよ
よそ様の家で騒ぐなバカモノ
とっとと巣に帰れ
588名無しさんだよもん:2006/09/20(水) 23:19:00 ID:5VqGPBbo0
桜の群像乙。
周りのキャラにウルっときた。
589名無しさんだよもん:2006/09/21(木) 10:30:59 ID:K5LJOIeX0
(玄関のドアを開ける)

貴明:「はい、どうぞ」
花梨:「!!!」
貴明:「笹森さん!!」
花梨:「ビックリした!!」
貴明:「うん…」
花梨:「か、会社の人には言わないでね…」
貴明:「うん…」

…… (沈黙) ……

花梨:「どうする?」
貴明:「…お、俺、別にしなくてもいいよ…」
花梨:「でも、一応、仕事だから…それとも私じゃイヤ?」
貴明:「そ、そんなことないよ…!!」
花梨:「じゃあ、シャ、シャワーいこっか?」
貴明:「…うん」
花梨:「でも、なんか、恥ずかしいんよ…」
貴明:「俺もだよw」

……

花梨:「じゃ、じゃあ服脱いだら行くから、先にどうぞ」
貴明:「うん…でも、ホントにいいの?」
花梨:「いいの…」

花梨の細い腰から、スカートが床に落ちる――
590名無しさんだよもん:2006/09/21(木) 10:31:56 ID:K5LJOIeX0
(シャワー室へ)

貴明:「笹森さんは、この仕事はいつからなの?(オッパイでかっ!)」
花梨:「うーん?」
貴明:「昼間の姿見てたら、全然、わかんないよ」
花梨:「そう?実はまだ、いっかげつ…アレ??」
貴明:「どうしたの…」
花梨:「…だって、たかちゃん、すごい…」
貴明:「えっ?」
花梨:「おっきいし…ビンビンw」
貴明:「だって、笹森さんのオッパイがこんな前に…」
花梨:「ダメ!触っちゃ!ちゃんと洗ってからね…、今日、外回りして汗かいたでしょ?」
貴明:「うん…」
花梨:「頑張ってるもんね、仕事…、どれ、ここも洗わないとねw」
貴明:「そんなとこ、汗かかないよw」
花梨:「……」
貴明:「どうしたの…?」
花梨:「ダメ…もう私…」

俺は花梨の手からシャワーコックを強引に奪い、無造作に床に投げる。
二人はほぼ同時にお互いの体をぶつけ合うように抱き合う。
俺はなんとも言えない胸の感触を受けながら、むしゃぶりつくようにキスをした――。
591名無しさんだよもん:2006/09/21(木) 10:32:51 ID:K5LJOIeX0
GJです。
592名無しさんだよもん:2006/09/21(木) 10:35:08 ID:y0Bjql6A0
GJです。
593名無しさんだよもん:2006/09/21(木) 13:41:30 ID:SCXQMG/LO
これはどういう設定なんだ?
594最萌決勝 愛佳潰しにご協力を! (1):2006/09/21(木) 14:21:13 ID:f2F9zGb00
第二回 最萌トーナメント・煉獄の隔離スレ 24
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1158659149/630

630 名無しさんだよもん sage 2006/09/21(木) 09:35:10 ID:hfl0cIdh0
    アンチ愛佳による今回の考察と決勝戦対策 1
    今回は見事に叩き潰されたが決勝戦前に何か出来ないかと投稿してみる。
    ○串多重編
    http://toheart2.run.buttobi.net/cgi-bin/img-box/img20060921004337.html
    を見ると末尾コードのC,E,J,N,Zで愛佳が圧倒している。
    また末尾コードDではあゆが唯一ダブルスコアであり携帯コードは愛佳軍は弱いと思われる。
    知人を頼ってでも携帯コード取り捲れ。
    取ったコードはPCで投稿できるぞ!

    次に末尾コードのうちCはyahoo、Zはその他のISPっぽいがこの二つについては以下のページで
    AnonymousのPROXYを使うことで結構な確率でコード取得が可能である。
    http://www.cybersyndrome.net/pla3.html
    このページのJPドメインの赤色のPROXYを刺してコードを奪取せよ!

    【取得可能な串一例】
    softbank219212189017.bbtec.net:8080
    catv-148-031.tees.ne.jp:8080
    125-14-96-175.rev.home.ne.jp:8080
    221x240x100x235.ap221.ftth.ucom.ne.jp:8080
    219-103-18-193.btvm.ne.jp:8080
    219x120x169x23.ap219.ftth.ucom.ne.jp:8080
    softbank221016172126.bbtec.net:8080

    なお串については他人と被っている事も多いのでコード発行所ではF5を連打し
    いち早く取得する事が肝要!
    速いときはコード取りに行って直ぐ取れたことも有る。
595最萌決勝 愛佳潰しにご協力を! (2):2006/09/21(木) 14:22:00 ID:f2F9zGb00
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1158659149/631

631 名無しさんだよもん sage 2006/09/21(木) 09:49:41 ID:hfl0cIdh0
    アンチ愛佳による今回の考察と決勝戦対策 2
    ○2重ブラウザ同時取得編
    当たり前の話であるがIEとFirefoxを同時に起動して片方に前述の串を刺し
    片方に串を刺さない又は別の串を刺す事で15分でコードが2個取れる。
    3重はやったことが無いのでわからないが恐らく可能であると思う。

    Firefoxを導入してない奴は直ぐに導入汁!
    23:30になったら直ぐに2重でコード取得を開始だ。

    最後になるが敵の多重に対して厭戦ムードになった陣営はその時点で負けである。
    愛佳のパターン化した萌え文が連発すると戦意を削がれるのも事実であるが
    ひたすらコードを奪取して一行投稿で対抗しよう!

    KANON陣営は比較的打たれ弱かったが観鈴陣営は頑張れそうなので期待している。
596最萌決勝 愛佳潰しにご協力を! (3):2006/09/21(木) 14:22:55 ID:f2F9zGb00
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1158659149/581
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1158659149/587
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1158659149/604

581 名無しさんだよもん sage 2006/09/21(木) 01:05:45 ID:oIBJIj3s0
    (略)
    一日10票が限界だったw
    一日50票なんてとてもじゃないけどムリポ…
    教授の一日30票だっけ?は本当にすごいと思う

587 名無しさんだよもん sage 2006/09/21(木) 01:17:05 ID:ksipUBCG0
    >>581
    それは信用できる数値だね
    今のシステムだとPC一台と携帯電話では1試合で一人が投票できるのはそれくらいが限界だよね
    俺もいろいろ頑張ったけど今のシステムじゃ一日20票ぐらいが限界
    (略)

604 名無しさんだよもん sage 2006/09/21(木) 03:26:31 ID:6nG629ab0
    (略)
    >>581
    >>587
    うむ、その通りである。
    私の投じる票数を実感していない者は>>551>>558みたいなことを言うこととなる。
    『一台のPC』『一つのプロバイダ』では貴様達の言う票数にしか届くことは無い。
    20票入れることが出来れば、称賛に値する。
    が、複数のPC・プロバイダでコードを取得すると、当然票数は倍となる。
    最萌えに掛ける情熱が深ければ、金を惜しみなく掛けるが良い。
   (略)
    宜しい。先程デジカメで私の通信環境を撮影しておいた。
    PC3台とモデム、無線LANカードを撮影してある。
    そして昼休みにでも漫喫に立ち寄りうpすることと致そう。
    金と根性と萌えがあれば誰でも多重エリートを目指せる。精進せよ!!!!
597名無しさんだよもん:2006/09/21(木) 14:27:39 ID:GOxvprBV0
>>593
つうか、オッパイでかっの部分以外、花梨である必要性がないw
598最萌決勝 愛佳潰しにご協力を! (4):2006/09/21(木) 14:28:59 ID:f2F9zGb00
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1158659149/520
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1158659149/535
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1158659149/603

520 紅 ◆FpnHARUKOQ sage 2006/09/20(水) 23:41:31 ID:Ha9LBnoW0
    >>516
    んー、晴子戦の時に40人ほどに声掛けて
    それ以後は葉鍵最萌の話ししとらんからなぁ
    そら何人かは継続して残っとるやろけど
    そんな多くないと思うで?
    殆どがネトゲ廃人で葉鍵板や最萌に興味薄い連中ばっかやしwww

535 紅 ◆FpnHARUKOQ sage 2006/09/20(水) 23:50:49 ID:Ha9LBnoW0
    >>527
    葉鍵最萌というイベント自体に興味は薄いが
    AIRは好きで神尾晴子というキャラに萌えとる人達に
    ほな晴子に投票したってくれ♪っと誘っただけやもん♪
    うち悪ないもん♪o(≧▽≦)o

603 名無しさんだよもん sage 2006/09/21(木) 03:22:05 ID:6nG629ab0
   (略)
    さて紅よ、そろそろ多重はNGなどと言っている場合かね?
    貴様はこのままでは負け犬となることは必定である。
    メールでも構わぬ。全軍に多重指令を発せよ。それしかいいん厨に対抗する手段は無い。
    決勝を虐殺で終わられては、我が理想に反する結果となる。
    決勝は葉鍵対決で、超接戦での華やかな終焉。これこそ我が理想、我が望み。
    紅よ、貴様は弱者の位置にある。弱者が強者に対抗するには?
    それを突き詰めて考えてみたまえ。
599名無しさんだよもん:2006/09/21(木) 16:56:14 ID:hgpW1ZfY0
>>591
これが巷で噂の自演ってやつか
ここまで堂々としたのを見るのは初めてだ
600名無しさんだよもん:2006/09/21(木) 19:24:06 ID:4Ytw5OIFO
まあええことよ。
601白詰草 ◆Pd9gE38GCU :2006/09/21(木) 20:35:37 ID:YVzkCXXY0
>>593
「デリヘル呼んだら○○がやってきた」
の、会社の同僚がやってきた編の改変だと思うけど
602名無しさんだよもん:2006/09/21(木) 22:02:03 ID:KAz4khE/0
また白詰草が粘着し始めたか…。最近は活動範囲広げててウザイことこの上ない。
角二荒らしに飽きたから今度はこっちか。

昨日唐突に白詰草の話を始めた奴がいたけど、やはり本人の自作自演だろうか。
どうも自分の登場するきっかけを作ろうとしていたように見える。

行動がワンパターンなんだよな、白詰草は。

まず最初に自分のアンチか信者を装って無理矢理白詰草の話題を出して粘着する。
そんでID変えてコテ付けて登場して、これをたしなめる。そしてそんな自分の良識人ぶりを住人にアピール。
まさにマッチポンプってやつ。自分でマッチで火をつけて、自分でポンプで消化するという。

火を消しに来るタイミングが都合良すぎて自作自演バレバレなのが欠点だけど。
603名無しさんだよもん:2006/09/21(木) 22:14:36 ID:zzJUXmF60
分かりやすくていい
604名無しさんだよもん:2006/09/21(木) 22:33:53 ID:8wLggczN0
長谷部やコテトリを見てもなんとも思わなかったけど、
白詰草だけは敵わん。
605名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 03:48:14 ID:4dQshFTN0
真面目にウザいなw
あれだけスレを無駄に消費する発端になったってのに、のこのこ顔を出せる神経が分からん
確かに本人は何もしてないかもしれねーけどよ・・・
すべてアンチの仕業って可能性もあるし、むしろ俺はそうだと思う。同情するよ

が、今もって現れるなら話は別
何故なら、それはここが荒れても構わないって考えてることに他ならないから
自身の潔白を示したいってのもあるかもしれないし
これで顔を出さなくなったらアンチの思うつぼだと考えているのかもしれない
それに反発しようって気持ちは分からないでもないよ

でもな、そういう事態に至ったのは2chでコテハンなんて使ってるからなんだぜ?
そのあたりをもう一度よく考えてくれよ。良識のあるオトナなんだからさ
606名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 07:38:17 ID:B4oGAwCN0
荒霜巣例野賑
607名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 07:56:38 ID:+gMpoNny0
>>605
荒れる前の気色悪い馴れ合い状態の方が受け付けない
毎日8レスとか非常に気持ち悪かった。
608名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 08:05:12 ID:pqliaSA4O
>>605
愚にもつかない良識を標榜する暇があったら少しはスルーする技術を覚えろ
正直お前みたいなやつが一番ウゼエ
>>602の方がまだ可愛げがあるわ
609名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 08:08:50 ID:SlHZAhDM0
602と605と608の差が分からない件
610名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 08:12:03 ID:p2ZojNX/0
中学生時代の愛佳と由真が初めて出会った時のSSとかない?
611名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 08:47:45 ID:WLs9acip0
>>609
どうせいつもの粘着ストーカー君だろwww
でも>>608の意見だけは採用
専ブラで快適2chライフな俺は至高の勝ち組wwwww
612名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 09:44:26 ID:V8yue3YA0
白詰草氏を叩いてる奴は全部荒らしだからスルー推奨
どうせいつもの粘着ストーカー
613名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 09:51:00 ID:+gMpoNny0
荒らしに煽られた状態で……

A.沈静化するまで書き込まずに待つ大人。

B.荒らしと戯れる悪い大人。

C.大した話題はなくても取り敢えず荒らしには触れずに書き込み、
  あから様に「無視してますよ?」をアピールする子供。

D.躍起になる子供。

朝鮮人、白(パク)詰草(読めない)はCタイプ。
ディスプレイの前で真っ赤になっているところだ。
614名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 10:21:26 ID:/eBso3Qy0
        =Q_
       /     ヽ
     <^(゚w゚)ノハヾ^i  脱糞 脱糞
      w リ(i!゚ ヮ゚ノv'`     
    _,<<<  \  / `ー、_  
   / ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ
   { 、  ノ、    |  _,,ム,_ ノl
   'い ヾ`ー〜'´ ̄__っ八 ノ
    ヽ、   ー / ー  〉
      `ヽ-‐'´ ̄`冖ー-
  / ̄ ̄ `ヽ   ‐'´  ̄ ̄`ヽ
  {  ヽー- .._災___.. -‐/  ノ
  ヽ  |    ノ|    ./ /
  | /    (;;;;)   ノ /
  ノ r     .(;;;;;;;)  ヽ \
 `〜'´    .(;;;;;;;;;;)  
615名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 11:09:35 ID:b90YvyGBO
おおおまいら少しもちけつ
616名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 11:46:49 ID:ulF1eCwJO
ぺったんぺったん(AA略
「こんにちはッス、先輩」
「こんにちは」
「……こんにちは」

さっき春夏さんから急な出張が入ったからこのみを預かる様に頼まれ、準備も終わった頃にチャイムがなった。
来たのかと思って開けてみれば……今に至る訳です。

「久し振りだね、よっち? とちゃる?」
「センパイ、なんで疑問系何っスか?」
「いや、あだ名で呼んで良い物かちょっと迷っちゃって」
「私達は構いません。それでも気兼ねするのなら、本名でも……」
「いや、俺……君たちの本名知らないんだよ。出会った時には、このみももうよっちちゃるって呼んでたし」
「そう言えばそうっスね。じゃあ改めてあたしは吉岡チエ、通称よっちっス」
「私は山田ミチルです、ちゃるって呼ばれてます」

吉岡チエ、山田ミチル……よし、覚えた

「じゃあチエちゃんにミチルちゃんって呼ばせてもらうよ」
「はい、改めてよろしくっスセンパイ♪」
「よろしくお願いします」

女の子は苦手だけど、女の子の笑顔を見るのは好きだったりする。
それに、つっかえが取れたし悪い気分じゃないな。
とまあ、それはそれとして……

「……で、何でここに?」
「あたし達このみの家位は知ってますよ。親友ですから」
「近所で河野という苗字はここだけです」
「いや、そう言う意味じゃなくて……何で2人してボストンバッグなんか持ってるウチに来てるの? しかも制服姿で」
「それが……」
話を纏めるとこう。
数日前、このみと会った時に今日お泊りをする事にしてたらしい。
しかし今日は、俺も知っての通り。
学校から直で来たこの二人と合流したこのみに、ちょうど連絡が行き渡ったと言う訳。
……つまり、来たのは良いがお泊り会IN柚原家は無理になったとの事。

「なる程……ん? あの、出来れば間違ってて欲しいんだけど……君達、このみと一緒にウチに泊まるつもりなんじゃ……」
「何で間違ってて欲しいのかは疑問ッスけど、正解ッス」

……何故平然とそう言える?
ミチルちゃんは元々ポーカーフェイスだからわからないけど、チエちゃんはいつも通りに平然としている。

「あのさ、俺男なんだけど」
「知ってますよ。女顔ですけど」
「そう言う事言わないで、本人気にしてんだから」
「良いじゃないッスか。十分顔は一般平均でも合格点を軽く越してるっしょ」
「ありがと……って、そうじゃないでしょ! 俺は男で、しかも両親は留守なんだよ」
「このみから聞いてますよ。羨ましいッスね、一国一城の主なんて」
「まあ、一人で気楽ではあるけど家事とかが大変……って違う!」

絶対わかっててわざとやってるよ、この子達。

「君達年頃の女の子なんだよ、一人暮らしの男の家に泊まるなんて」
「気にしないっスよ、あたしはセンパイを信じてますから」
「そっそう? それは嬉しいな」
「そうですよ。失礼ですが、河野先輩に私達を襲う度胸があるなんて思ってません」
「あ、そういう事? ……否定は出来ないけど、本当に失礼だね」
「あっあたしはそんなつもりじゃないっスよ。コラキツネ」

タヌキツ大戦が行われかけた所で、このみが到着した。
「えっと……ごめんねタカ君」
「それは良いよ、偶然に偶然が重なっただけだから」
「……ありがと」
「但し、今日は絶対に自重しろよ。今回は変な事になったら大問題なんだから」
「うん、わかった」
「後、外で余計な事も言うなよ。これが一番重要だからな!」
「うん、タカ君が犯罪者になるはヤだからね」
「怖い事言わないでくれ。まあそう思ってくれるんなら頼むぞ本当に」

信用するには危険だが、このみに念を押しておいた。
さすがこんな事、近所はおろかタマ姉の耳に入った日には、俺はどう転んでも破滅だろう。
……とりあえず、問題が起きないように気をつけよう。

「それじゃ、今日の晩飯何にすっかな? 今日位は……」
「あ、私達が作ります。今日の宿泊費代わりと言ってはなんですが、腕を振るいます」
「え、良いの?」
「はい、任せてくださいッス♪」
「ペーペー程度の腕に不釣合いなデカチチはるな、乳牛ダヌキ」
「合わないのはアンタも同じっしょ!」
「でもこっちは信用性がある」

再度勃発したタヌキツ大戦を尻目に、このみに今日の献立を相談する事にした。
「今日はどうする? 昨日レトルトカレー食ったから、カレーは勘弁なんだけど」
「む〜、タカ君ダメだよ。このみが居ないのにカレーなんて食べちゃ」
「おいおい、それじゃこのみが作れる料理は食うなってことだから、インスタント生活になるぞ」
「じゃあ、事前に何が作るのか察知して欲しいであります」
「却下だ。普通そっちが察知するもんだ……」

ドサッ!

2人がケンカしてた当たりから、何かが倒れる様な音がした。
何だと思ってみてみる。

「おいおい、大じょ……」

言葉を綴る事が出来なかった。
何せ、もつれ合う形で倒れており、2人の服とスカートがめくれ白いお腹……
そしてチエちゃんが白で、ミチルちゃんがピンクの布地が丸見えの状態なのだから。

「いたた……あ!」
「どうした、タヌ……!?」

2人が服とスカートを抑えた時点で硬直が解けて、すぐに目を反らした
「ごっごめん、えっと、あの……綺麗だった……じゃなくて、ああ、何て言えば!?」
「いっいえ、気にしないで下さい、私達が勝手にやったことですから」
「そっそうッスよ、べっ別に責めるつもりないっスよ。あっあたし達が、勝手に転んだだけっしょ」

ミチルちゃんが珍しく取り乱し、チエちゃんも顔を赤くしてる。
……あまりにも気まずい雰囲気だと言うのに、頭にはさっきの光景が焼き付いてしまって離れてくれない。
2人共、結構着痩せするタイプで、もうちょいで胸元が見えそうだった……。
じゃないだろ俺!!

「……タカ君のエッチ」

このみの呟きで、精神的に大ダメージを喰らってしまった

「……どこかに寝袋あったかな?」
「センパイ、気にしなくていいッス。事故なのはわかってますから」
「そうです。私達は忘れますから、気にしないで下さい。このみ、私達は気にしてないから追求するな」

……まだ一時間も経ってないのに、これからがすごく不安になった。
どうもこんばんは。
前回の投稿でちょっと自信がついたのでギャグ風味の連載やって見ます。
よっち&ちゃるは好きなキャラですので、書くのもすごく楽しかったりします。
ゲーム(PS2しかやってない)やってるとき、何でこの二人が脇役なんだと嘆く位に。

そういえばFDが出るらしいけど、よっちちゃるのストーリーは出るのかな?
個人的にはミルファとシルファも楽しみだったりします。
623名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 19:24:45 ID:+OUJv+L20
GJだwミルファシルファもキツネタヌキも大好きです
624名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 23:02:04 ID:QVa0Tg0oO
キツネに違和感がある
625名無しさんだよもん:2006/09/22(金) 23:23:31 ID:zDiyZ9YGO
漏れも。
ちゃるは気弱な声のせいか、結構大人しいイメージだな。喧嘩は瓢々としそう
でも可愛いからおk。やゆよトリオGJ!次も期待。
626名無しさんだよもん:2006/09/23(土) 18:08:29 ID:egyjWMFY0
少しキツネが喋りすぎなのかな
もっとタヌキにでしゃばらせるのがいいと思う
627名無しさんだよもん:2006/09/23(土) 21:11:27 ID:O2/dgoJT0
タヌキがでしゃばるって・・・
それのほうがアリエナス
628名無しさんだよもん:2006/09/23(土) 21:34:30 ID:EICePgp40
どっちがでしゃばってるかと聞かれたら、タヌキだとおもうんだが。

まぁ、でしゃばるっていう表現自体がそもそもあってない気もするがな
629名無しさんだよもん:2006/09/23(土) 22:59:58 ID:FUXV1fk80
確かにでしゃばるで表現するのは間違ってるな
押せ押せと言うかイケイケというかそんなニュアンスだから
630名無しさんだよもん:2006/09/24(日) 00:38:57 ID:v0Ylkjp80
いまだによっちとちゃるがどっちがどっちかわからん
そもそも何で、「山田ミチル=ちゃる」なんだ?
意味わからん
631名無しさんだよもん:2006/09/24(日) 00:42:16 ID:+SJ1O6Pk0
ささ りかりん
     ↑
     も

 まだみちる
      ↑
      や
632名無しさんだよもん:2006/09/24(日) 04:06:43 ID:Wp3amdyM0
>>630
乳がでかいほうが淫らなタヌキことよっちだ。
633名無しさんだよもん:2006/09/24(日) 07:44:34 ID:v0Ylkjp80
>>631-632
ありがと
つーかそんな複雑なあだ名付けんな
淫らなタヌキのほうが絶対覚えやすい
634名無しさんだよもん:2006/09/24(日) 13:28:16 ID:oSARtpvn0
エロいキツネと淫らなタヌキ
635名無しさんだよもん:2006/09/24(日) 13:36:27 ID:tJSIu08T0
>>634
お前は俺か
636名無しさんだよもん:2006/09/24(日) 19:02:12 ID:kyDyXtjP0
ワロスw
637名無しさんだよもん:2006/09/24(日) 20:16:05 ID:nglNdwsZ0
お前らそんなにエロいキツネと淫らなタヌキによるフォーメーションX(rated)が見たいのか。

俺は見たい。
638名無しさんだよもん:2006/09/24(日) 21:48:22 ID:SXeeWtDs0
ここには俺が何人もいるようだな。
639名無しさんだよもん:2006/09/24(日) 22:51:19 ID:Lb6Vu+yCO
お前も俺か
640名無しさんだよもん:2006/09/25(月) 00:10:35 ID:bdxa2MfO0
俺のドッペルゲンガーがいた
ちょっと結婚の約束して戦場行ってくるわ
641名無しさんだよもん:2006/09/25(月) 12:58:42 ID:ZCzYqjLk0
死亡フラグ乙
642名無しさんだよもん:2006/09/25(月) 20:53:54 ID:Ee/97qvv0
そろそろですか。
643河野家にようこそ 第74話(1/10):2006/09/25(月) 20:59:48 ID:ATp4itGR0
 玲於奈さんが俺の命を狙ったなんて、薫子さんやカスミさんにはとても信じられないことだろう。
けれど俺たちの態度でそれが事実と知った薫子さんたちは玲於奈さんを問いつめ、逆に玲於奈さん
から裏切り者となじられ、家から追い出されてしまった。他に行くあてなどなく、俺の家に来るしか
なかった薫子さんたち。タマ姉にすがって泣くそんな二人を、追い出すことなど出来やしない。
 タマ姉は自ら独りぼっちになった玲於奈さんを案じ、一人、玲於奈さんの元に行くと俺に言う。
確かに玲於奈さんは心配だけど、今の玲於奈さんがタマ姉に何をするか解ったものではない。俺は
反対するが、一度決めたことは絶対に曲げないのがタマ姉。薫子さんたちのことを俺に任せ、家を
出るのだった。
 タマ姉がいなくなった後、鬱屈とした空気を吹き飛ばそうと由真は、満漢全席を作るなどと言い
出す。けど出来上がったものは味噌ラーメンとチャーハン。お嬢様には不似合いな料理に戸惑い気味
の薫子さんたちだが、優季と瑠璃ちゃんの勧めで一口食べると、一気に食欲を取り戻した。
 薫子さんとカスミさんにはタマ姉たちの部屋に泊まってもらうことに。そこで由真はようやく昼の
ことを薫子さんたちに謝り、そして薫子さんは、さっきのラーメンがとても美味しかったと由真に
言う。何となくうち解けた感じ。あとは玲於奈さんだけれど……

 ソファーに横になって、だけど玲於奈さんの所に行ったタマ姉のことが気になってなかなか眠れ
なくて、悶々としていながらも俺はいつの間にか眠ってしまったようで。
 そして翌朝。
「あ、あの、河野さん、起きてくださいまし」
 ゆさゆさ。
 ……ん〜? 誰かの声と、身体が揺さぶられている。
 けど……、まだ寝ていたい……
「……あ、あの、由真さん、起きません」
「もうちょっと大きい声出せば起きるわよ。カスミはもう少し強く揺すって。
644河野家にようこそ 第74話(2/10):2006/09/25(月) 21:00:45 ID:ATp4itGR0
 はい、じゃあもう一度ね」
「え、お、大きな声ですか? はい。それでは……
 こ、河野さん! 起床時間です、起きてください!」
 ゆさゆさ。ゆさゆさ。
 ……んあ〜、解ったよ解りましたよ起きますよ。
 仕方がないので俺は目を開け――
「あ、起きられましたわ」
「……(じーっ)」
 ……え!? 薫子さんとカスミさん!?
「え! ちょ、何で二人が!?」
 慌てて上半身を起こした俺。薫子さんは驚きつつも、
「あ、あの、ゆ、由真さんが、河野さんを起こしてくれって、その……」
「……(コクコク)」
「ゆ、由真?」
「そうだよたかあき。おっはよ〜」
 よく見ると、薫子さんたちの後ろに由真が立っている。
「な、何で薫子さんたちにこんなこと?」
 俺が由真にそう尋ねると、何故か薫子さんが、
「ご、ご免なさい河野さん! ゆ、由真さんがさっき私たちのところにきて、『面白いものを見せる
から』っておっしゃるから、それで、つい……」
「あ、イヤその、起こしてくれたことは構わないって言うか、むしろどうもありがとうって言うか。
 ……え、面白いもの?」
 面白いものって何だ? それでどうして薫子さんが謝ってるんだ?
 ワケが解らず由真の方を見ると、
645河野家にようこそ 第74話(3/10):2006/09/25(月) 21:01:28 ID:ATp4itGR0
「寝顔。たかあきの」
 あっさり教えてくれた由真でした。っておい!
「お、俺の寝顔を薫子さんとカスミさんに見せていたと!?」
「そうだよ。たかあきの寝顔は反則級に可愛いからね〜。薫子さんたちにも見せてあげようと思って、
少し早起きしてもらって寝顔ウォッチングしてたワケ。
 どうだった、薫子さんカスミさん。たかあきの寝顔、あたしが言ってた通り可愛かったでしょ?」
 悪びれもせずに薫子さんたちに尋ねる由真。ったく、いつぞやもこんなことがあったけど、男の
寝顔なんて可愛くも何ともないだろうに――
「……あ、あの……、何て言ったらいいのでしょうか。
 わ、私、今まで男の人の寝顔なんて、お父様以外見たことなかったんですけど……
 な、何だか……、河野さんの寝顔は、まるで赤ちゃんみたいで……、その、ええと……」
「……(もじもじ)」
 顔を赤らめ、もじもじする二人。それを肯定と受け取ったらしく、由真は勝ち誇ったように、
「でしょ! たかあきの寝顔”だけ”は素直に可愛いって認められるのよね〜。
 今度写真撮って、一枚いくらかで学校の女子に売ってみようかな。結構商売になるかも」
「なるかっ!!」

 朝食は、優季と瑠璃ちゃんで作った、トーストとベーコンエッグとコーンスープとサラダ。薫子
さんもカスミさんもキチンと食べてくれた。
 その後、身支度を整えて学校へ行こうと玄関のドアを開けると――
「ただいま、タカ坊」
 穏やかに微笑むタマ姉と、
「……」
 その背中に隠れるようにして玲於奈さんがいた。
646河野家にようこそ 第74話(4/10):2006/09/25(月) 21:02:10 ID:ATp4itGR0
「れ、玲於奈!?」
 薫子さんとカスミさんは玲於奈さんを見て驚き、俺を押しのけて近づこうとする。だけどあと一歩
のところで立ち止まり、ためらってしまう。
 それを見たタマ姉は
「玲於奈、ホラ」
 背中の玲於奈さんを優しく前に押し出す。――その時俺は、タマ姉が左手に包帯を巻いていること
に気がついた。
「タマ姉、それ――」
 しかし無言で首を振るタマ姉。前に出た玲於奈さんは気まずそうに薫子さんとカスミさんを見て、
「……あ、あの、……か、薫子、カスミ。その、わ、私……」
 黙り込んでしまう玲於奈さん。薫子さんも何も言わない。沈黙のまま、時間だけが流れる。
 少ししてタマ姉は、頑張れとばかりに玲於奈さんの肩をポンと叩き、そして玲於奈さんは、
「か、薫子……、カスミ……、ご、ご免なさい。
 私、二人に酷いことを言ってしまって、本当に、本当に……」
「れ、玲於奈……」
 謝る玲於奈さんに薫子さんとカスミさんは驚き、だけどすぐにその顔は、安堵の笑顔に変わった。
 そして、二人は――
「玲於奈!」
「玲於奈ぁ!」
 玲於奈さんに抱きつく薫子さんとカスミさん。――この時、俺は初めてカスミさんの声を聞いたの
だが、それに気づいたのは少し後のこと。
「薫子、カスミ、わ、私……」
「玲於奈……、玲於奈、私たち、友達でいいのよね?
 これからも、ずっとこれからも、友達でいいのよね?」
647河野家にようこそ 第74話(5/10):2006/09/25(月) 21:03:32 ID:ATp4itGR0
「薫子……。え、ええ、ええ!
 ごめんね薫子、カスミ。こんな私を許してね。お願い、これからもずっと、友達でいてね!」
「……(コクコク)」
 よかった。玲於奈さんたちが仲直り出来て本当に良かった。
 これで全てが解決したワケじゃないけど、俺は心からそう思った。

 薫子さんとカスミさんは持ってきた荷物を玲於奈さんのマンションに戻してから学校に行くとの
ことで、玲於奈さんもそれに付き合い、マンションへと戻っていった。
 それを見届けた俺は、また寝坊しやがったこのみを春夏さんに叩き起こしてもらい学校へ。いつも
のように校門の前で待っていた愛佳たちと合流し、愛佳たちにも家での出来事を話した。
 俺は勿論だけど他のみんなも気にしたのは、タマ姉の左手の包帯。珍しく雄二まで心配して「姉貴、
その手、どうしたんだよ?」などと尋ねるが、やはりタマ姉は「何でもないわよ、大した怪我じゃ
ないんだから」と、その理由は話してくれなかった。
 怪我の原因なら容易に想像がつく。だけどタマ姉は話そうとしない。なら……今は追求するべき
ではないのかもしれない。俺も、そしてみんなも多分同じように思ったのだろう。それ以上、誰も
尋ねようとはしなかった。
 その後、昼休みも放課後も、玲於奈さんたちとは会わなかった。――今日は、玲於奈さんが俺に
告げた回答の期日であるにも関わらず、だ。

 そして、次の日の放課後。
 下駄箱を開けると、中に一通の手紙。今度は差出人の名前があった。玲於奈さんだ。
『裏山の神社にてお待ちしております。願わくば皆様でお越しくださいませ』
 皆様で、か。既に靴を履き替え、俺を待っている一同を見る。幸い雄二も含め、河野家メンバーズ
は全員揃っている。なら、この手紙の通り全員で行くべきだろう。
648名無しさんだよもん:2006/09/25(月) 21:04:07 ID:sz8FTmoQ0
支援
649河野家にようこそ 第74話(6/10):2006/09/25(月) 21:04:16 ID:ATp4itGR0
 俺はみんなに手紙を見せ、裏山の神社へと向かった。

 神社では、玲於奈さんたちが俺たちを待っていた。
「ど、どうも」
 とりあえず挨拶。――昨日のことがあったとは言え、未だに玲於奈さんに話しかけるのは緊張して
しまうなぁ。
「お待ちしておりましたわ、河野さん、お姉様、それに皆さんも」
 玲於奈さんの言葉は穏やかで、敵意など全く感じられない。
「あ、あの皆さん、念のためお尋ねしますけど、私たち、皆さんに危害を加えるつもりは一切あり
ませんから、その、武器は……」
 おずおずと薫子さん。
「出したくても、あの後先生に没収されたから出せないわよ」
「そうなんよ! アレほとんど花梨ちゃんのものなんよ!
 なのに先生ったら『お前が卒業するまで預かっておく』なんて言って、返してくれないんよ〜」
 苦笑いの由真と、目がうるうるの花梨。
「そ、そうでしたか……」
「あのときはご免なさい薫子さん。あなたに敵意なんて無かったこと、私が気付くべきでした」
 安堵する薫子さんに優季が頭を下げ、それを薫子さんは「あ、いいえ、もういいんです」と自分も
ぺこぺこと頭を下げる。
「それで、今日はどうしたの?」
 タマ姉がそう尋ねると、玲於奈さんは、
「はい、お姉様。私たち、あの後三人で話し合って、決めたんです」
 そこで一旦言葉を切り、そして玲於奈さんは――
650河野家にようこそ 第74話(7/10):2006/09/25(月) 21:05:25 ID:ATp4itGR0
「お姉様、私たち、九条院に帰ります」

「ええっ!?」
 思わず声を上げてしまう。な、何で?
「――最初は、認めることなど出来ませんでした。お姉様が一人の男のために九条院を捨てたなんて。
 私たちの気持ちを考えもせず、他の女性と一緒になって河野さんのそばにいるお姉様を情けない、
憎らしいとさえ思いました。あの誇り高いお姉様はどこに行ってしまわれたのかと……。
 でも、違いました。お姉様はやはり、私の知っているお姉様でした。それに気付いたのが一昨日の
夜です。あのときは取り乱して、お姉様にあんなことをしてしまって、私……」
「玲於奈、それはもういいのよ」
 感情が揺らぎ始めた玲於奈さんにタマ姉が優しく微笑み、それで玲於奈さんは落ち着きを取り戻す。
「あ、はい、そうでした……。
 お姉様が九条院にいた頃と同じだと気付いて、そして私は解ってしまったんです。――私が大好き
なお姉様は、故郷から遠く離れた九条院での生活の中でも、河野さんのことを忘れることなく、想い
続けていたお姉様でもあったんだって。
 認めたくなんてありませんでした。いえ、正直に言うと今でも認めたくはありません。でも解って
しまったのだから、どうしようもありませんよね」
「玲於奈、あなた……」
 寂しげに笑う玲於奈さんを見て呟くタマ姉。
「もしかしたら、私たちがこのまま頑張ればお姉様を九条院に戻すことが出来たかもしれません。
 でもそうしたら、河野さんから再び離れてしまったら、お姉様は今までのお姉様ではなくなって
しまわれることでしょう。悲しみに暮れられるか、気力を無くしてしまわれるか……。いえ、気丈な
お姉様のことですから表向きは明るく振る舞われるかもしれません。でも、それでもどこかで陰りが
生まれると思います。
651河野家にようこそ 第74話(8/10):2006/09/25(月) 21:06:49 ID:ATp4itGR0
 それでは、意味がありませんもの。私たちが取り戻したかったお姉様は、今まで通りのお姉様。
優しくて、美しくて、聡明で、そして……、遠く離れても、何年経っても、一人の人を想い続けて
いられる、そんな強くて一途な心を持ったお姉様、ですから。
 私たちの手に入れたいものは、私たちが手を出してはいけないもの。――そう解った以上は諦める
しかないじゃないですか」
「私たち、明日にはこの町を出ます。既に退学手続きも済ませました。
 皆さんとお会いするのもこれが最後になります」
 玲於奈さんに続くように薫子さんがそう言うと、
「ちょ、ちょっと! いきなりそれってなんなのよ!?
 あんたたち、環さんのこと好きなんでしょ! だったらもっと頑張りなさいよ!
 もっと時間をかけて環さんを振り向かせなさいよ! なんでそんなあっさり諦めるのよ!?」
 大声で訴える由真。しかし玲於奈さんは何も言わず、ただ首を横に振る。
「玲於奈、あんた……」
「せっかく知り合ったばかりなのに……、これからもっと仲良くなれるかもしれないのに……。
 私、薫子さんや玲於奈さん、カスミさんに、もっとこの町にいて欲しい。もっとこの町のこと、
知って欲しいのに……」
 優季がそう言うと、薫子さんは嬉しそうに微笑んで、
「ありがとう、優季さん。
 でも、優季さんたちにとってこの町が大切な場所であるのと同じように、私たちにとっては九条院
が大切な場所なんです。
 この町に比べたら九条院なんて、不便で、窮屈で、退屈な場所です。嫌なことだって沢山あります。
それでも私たちにとっては、幼い頃から私たちを育んでくれた、大切な場所なんです。
 それに、生まれ故郷と違って九条院は、いられる時間が限られています。ならば私たちは、一日も
早く九条院に戻って、一日でも多く九条院で日々を過ごしたいのです。
652河野家にようこそ 第74話(9/10):2006/09/25(月) 21:07:40 ID:ATp4itGR0
 お姉様と離れるのは、お名残惜しいです。それに私も、優季さんや河野さんたちともっと……
 でも、やっぱり帰ります。九条院が、私たちを待っていますから」
「薫子さん……」
「優季さん、手芸店でのこと、ありがとうございました。
 私ももっと編み物の腕を磨きますから、優季さんも頑張ってくださいね」
 その言葉に優季は、目を潤ませながらも笑顔で肯いた。
「……(もじもじ)」
 カスミさんはもじもじしながらも瑠璃ちゃんの前に立ち、
「な、なんや、カスミ?」
 瑠璃ちゃんにそう尋ねられると、カスミさんは瑠璃ちゃんに顔を近づけ、その耳元に何か囁いた。
そしてすぐに離れ、恥じらうように玲於奈さんの後ろに引っ込むカスミさん。
「カスミ……、もう、困った子ね。
 それじゃあお姉様、河野さん、それに皆さん、今まで色々とご迷惑をお掛けして、本当に申し訳
ありませんでした。心からお詫びします。
 お姉様、私たちは影ながらお姉様を応援しておりますから。あと河野さん」
 そこで玲於奈さんはいきなりキッと俺を睨むと、
「河野さんにお姉様をお任せしますとは申しません。
 今のところ河野さんはどなたに好意を抱いておられるのか、ご自分でもお解りになっていないとの
ことですし。まぁせいぜいお悩みあそばせ。
 ですが、例えお姉様を選ばないにせよ、くれぐれも、お姉様の顔に泥を塗るようなことはしないで
くださいましね」
「か、顔に泥!? そ、それってどんな……?」
 意味が解らず尋ねると、玲於奈さんはより一層表情を険しくし、
「そ、そのくらいお解りにならないのですか!?
653河野家にようこそ 第74話(10/10):2006/09/25(月) 21:08:23 ID:ATp4itGR0
 つ、つまり、もしお姉様を、その、お、お振りになるのでしたら、お姉様が納得のいくような、
キチンとした振り方をなさいと言っているのです!
 いつまでも中途半端なままでいたり、そ、その、ふ、二股をかけたりなどしてお姉様を傷つけたり
してみなさい! その時は私があなたを、精神的、肉体的、ついでに社会的にも抹殺して差し上げ
ますことよ! 今度こそお解りになりましたか!? なりましたね!!」
「は、はい!」
 気迫に圧され、反射的に直立で頭を下げる俺。
「く、くれぐれもお忘れなきよう願いますわ! フン!」
 俺に背を向け、スタスタと歩いていく玲於奈さん。
「あ、待って玲於奈! あ、あの、それじゃあ皆様、お元気で!」
「……(コクコク)」
 慌てて俺たちに別れを告げ、玲於奈さんの後を追いかける薫子さんとカスミさん。
 ――これが、俺たちと玲於奈さんたちとの別れだった。

「……何となく寂しいね。わたしも玲於奈さんたちと仲良くなりたかったな」
「ウチも〜。あ、そや。なーなー環、くじょーいんって電話出来る?」
「電話は駄目だけど、手紙なら送れるわよ。そうだ、みんなで手紙書いて送ろうか」
 帰り際、このみと珊瑚ちゃんがタマ姉と話をしてるとき、ふと俺は瑠璃ちゃんにこう尋ねた。
「ねぇ瑠璃ちゃん。そう言えばさっきカスミさん、瑠璃ちゃんに何て言ったの?」
「『きかんしゃ いえもん』覚えてくれててありがとう、やて。
 ワケ解らんやろ? ホンマ、ワケ解らんわ。そんなん覚えていたからって、何やっての……」
 その瑠璃ちゃんの声で何となく、今は瑠璃ちゃんの顔を見ない方がいいと思った俺だった。

 つづく。
654河野家にようこそ の作者:2006/09/25(月) 21:09:16 ID:ATp4itGR0
どうもです。第74話です。
>>648さん、支援ありがとうございました。m( __ __ )m

九条院三人娘編のラストは久々の一ページ増量となりました。
玲於奈たちを河野家に住まわせる、あるいは河野家メンバーズの一員にすることは一時は考えたの
ですが、結局はこういうことになりました。
それから、ここ数話の展開に嫌気を感じていた人にはご免なさいです。

さて次回の河野家ですが、今後の展開で色々悩んでおりまして、もしかしたらそれを理由に一回
お休みするかもしれません。そのときはご免なさいです。
655名無しさんだよもん:2006/09/25(月) 21:40:23 ID:sz8FTmoQ0
GJ  乙
ストリップ騒動から一段落。
気を取り直して、今日の晩飯をなんにするかの相談。

「とりあえず、食べたい物挙げよう」
「勿論カレーであります」
「それ昨日食ったって言っただろ?」
「チャーハンはどうッスか?」
「少しは考えろタヌキ。一人暮らしの先輩の為に、栄養のある料理にするべきだ」
「いっいいよ、そんなに気を使わなくても」
「気を使いたくもなります。台所を見る限り、まともな食生活をしてるとは思えません」
「確かに、冷蔵庫がここまで空なの始めて見るッスよ」

……否定しようがなかった。
何とかしなきゃとは思うけど、やっぱり怠惰が邪魔してインスタント生活。
人間の七の情欲に怠惰がある理由、何となくわかる気がする。
情けないと思われたかな? ……ここは挽回せにゃいかんよな
「献立はもう考えましたので、食材の買い物に行きます」
「あ、それなら俺もいくよ。4人分なら、結構な量になるだろうし」
「いえ、構いません」
「今までが今までだし、たまには俺にも先輩らしいことさせてよ」
「……では、お言葉に甘えます」
「ちゃる、顔赤いよ?」
「へ〜、長い事一緒に居るけどあんな顔始めてっしょ♪」
「うっうるさい」

食材の他にもそれぞれは色々と買いたい物もそれぞれあるので、一旦買出しタイムに入る。
このみとチエちゃんは、コンビニのほうでお菓子とジュースを買いに行くとの事。

「このみ、今日の泊まりを誰にも言うなよ。皆で遊ぶ程度に留めてくれ」
「了解であります、隊長」
「チエちゃんもね」
「了解ッス。さすがにこれ以上分を悪くする気は無いッスから」
「分を悪くする?」
「いえ、何でもないッス。いこ、このみ」

そんなこんなで、買出しタイムスタート。
そう言えば、知り合ってから3年ミチルちゃんと二人きりなんてなかったな。

・・・

「えっと……」
「先輩、ここの目的は魚の特売です」
「そうなの?」
「今日の広告見ました? そう言うやりくりは必須」
「あはは、そうだね」
「ここは任せてください」
658名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 00:41:30 ID:KGIBTXmb0
「ん〜、美味いんよ〜、このタマゴサンド美味なりよ〜」
「笹森さーーん!」

 そこにはいつもの黄色い彼女がいた。
 誰あろう、ミステリ研究会初代会長、笹森花梨。無類のタマゴサンド好き。
 うかつだった、このパターンを予測していなかったとわ!

「何やってるの! てか、俺のタマゴサンド!」
「タカちゃん。目、悪くなった? タマゴサンド食べてるんだよ」
「そうじゃなくて、なんで勝手に俺のタマゴサンド食べるの!」
「部員のものは会長のものだよー?」

 うわぁ、出たよいつもの暴論。
659名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 00:42:06 ID:KGIBTXmb0
 強制的に彼女の作ったミステリ研に加入させられて以来、こんな関係が続いている。
 購買でミックスサンドを買ってはタマゴサンドのみを奪われる日々、果たしていつまでこんなのが
 続くの「もひとつ」だろうわあああ最後のタマゴサンドがぁぁ!

「たかちゃん、修行が足りんよ?」
「笹森さん勘弁してくれよ! ああ俺のタマゴサンドが・・・」
「こらタカ坊、食事中に騒がしいわよ。静かにしなさい。
 それとそこの女の子、立って食べるんじゃないわよ。そこに座りなさい」
「はーい♪」

 ちょこんと笹森さんが俺と雄二の間に座る。
 まったく嬉しそうにタマゴサンドをもぐもぐと。

「タカ坊、そちらはお知り合い?」
「ああ、うん、俺が入ってる部活の会長」
「はじめまして、ミステリ研究会の初代会長にして名誉総裁、笹森花梨でっす」

 いつの間にか肩書き増えてるし。
660名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 00:44:44 ID:KGIBTXmb0
(シャワー室へ)

貴明:「笹森さんは、この仕事はいつからなの?(オッパイでかっ!)」
花梨:「うーん?」
貴明:「昼間の姿見てたら、全然、わかんないよ」
花梨:「そう?実はまだ、いっかげつ…アレ??」
貴明:「どうしたの…」
花梨:「…だって、たかちゃん、すごい…」
貴明:「えっ?」
花梨:「おっきいし…ビンビンw」
貴明:「だって、笹森さんのオッパイがこんな前に…」
花梨:「ダメ!触っちゃ!ちゃんと洗ってからね…、今日、外回りして汗かいたでしょ?」
貴明:「うん…」
花梨:「頑張ってるもんね、仕事…、どれ、ここも洗わないとねw」
貴明:「そんなとこ、汗かかないよw」
花梨:「……」
貴明:「どうしたの…?」
花梨:「ダメ…もう私…」

俺は花梨の手からシャワーコックを強引に奪い、無造作に床に投げる。
二人はほぼ同時にお互いの体をぶつけ合うように抱き合う。
俺はなんとも言えない胸の感触を受けながら、むしゃぶりつくようにキスをした――。


        (゚w゚) Fin (゚w゚)
歩き回る事にはなったけど、肉、野菜、魚……全部今までより安く買う事が出来た。
全部ミチルちゃんの紹介してくれた店で買ったおかげで、今までの7、8割出費で済んだのは感謝。

「いつもより財布が重いな」
「何よりです。今度からの買い物の参考にしてください」
「うん、そうする」

・・・

財布も荷物も重いまま、帰路に着いた。
かなりの量だけど、ミチルちゃんにはまだもう一働きがある以上、手伝ってとは言え無い。
……つーか、タマ姉の影響だけど。

「買い物とか普段やってるの?」
「はい、あの商店街には良く行きます」
「そっか、家庭的なんだね」
「女性としての教養と言う事で、母から教わりました」
「そうなんだ」
「……今日は楽しかった」
「え?」
「いえ、何でもありません」

ミチルちゃんとこうして話すなんて、初めてだな。
考えてみれば、いつも女の子が苦手だからって避けてばっかで、ろくに知りもしないんだっけ。
……今までの自分に反省。
「今日は、来て良かったです」
「え?」
「今まで、避けられてばかりでしたから……こうして話せる事、嬉しいです」
「そっそう? ごめんね」
「いえ、良いです」

……この子、結構可愛く笑うんだな。
今まで見えなかった宝物を見られた事に感謝。

・・・

「私は夕食の買い物に行くと言った筈だ」
「だっだって、簡単に摘まめる物が欲しいっしょ」
「これは買いすぎだ。いつもよっちはバカみたいに極端すぎ」
「そこまで言う事ないっしょ!」

目の前でタヌキツ大戦が行われている片隅で、俺とこのみは大人しく避難先で傍観。
因みに原因は、チエちゃんがジャンクフードを袋2つ分も買ったため。

「……何か、さっきまでの出来事が思いっきり化かされたような感じ」
「何の話?」
「気にしなくて良い。俺風呂つくって来る」

……夜はまだ始まったばかり。
でも何となく不安は無く、寧ろ今までの何かが大きく変わるような予感があった。
663名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 01:07:45 ID:KGIBTXmb0
>>658-660
おつ〜。
パソコンの不備で間が開きました。
今回はや・ゆ・よトリオの山田ミチル事ちゃるメインのパートです。。

>>624
やはり来ましたね、この意見。
とりあえず、お泊りで浮かれてると言う事にして下さい。
なんと言うか、ちゃるは使いどころが難しいです。
今回違和感が拭えてたら良いんですが……

最後に、『河野家へようこそ』GJです
665名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 01:31:24 ID:KGIBTXmb0
笹森会長のSSが少ないのは悲しい限り…。
このみんや珊瑚ちゃんも好きだけど、ミステリ研幽霊部員としてあたしゃ悲しい。
666名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 01:35:44 ID:emAIkHS20
NGID:KGIBTXmb0
667名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 02:44:40 ID:A0Qe7qGTO
途中乱入と663・・・これはこれで斬新ですね。とりあえずお三方ともGJ!
668名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 06:30:51 ID:NJGTQXN00
>654
乙。河野家史上屈指の真面目な展開(?)でしたな
こういうのも良いと思いますよ。毎週連載は、無理せずに
>664
乙乙。いい雰囲気で展開してますね
ちゃるは、vsよっちで人が変わる/普段が猫かぶってるって感じですか
なお、タイトルの最後に全レス数を入れて貰えると有り難い(1/4とか4-1とか)
669名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 08:07:02 ID:y67y+DyF0
今TH2全キャラの3サイズ見てたんだけどさ、由真と優季と花梨って委員長より胸大きいのね。
イメージ的には愛佳のほうが大きい感じがするのは俺だけか?
670名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 08:37:11 ID:LTAMadAI0
絵師のせいじゃね?
671名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 09:53:28 ID:U2Gm3BVA0
いいんちょはプニプニなだけで大きいイメージは余りないな
672名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 14:36:23 ID:7FX4hY6s0
>>669
愛佳は胸より尻のキャラだからな〜w
673名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 14:41:05 ID:mrIlUELr0
草壁さんには敵うまい
674672:2006/09/26(火) 15:01:59 ID:7FX4hY6s0
あれ? 草壁さんより愛佳の方が尻が大きいんじゃなかったっけ?
まあ、尻は大きさだけが全てではない、と言われればそれまでだが。
って何で、マジレスしてんのよ、俺w
675名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 15:14:00 ID:8sI9yxnY0
尻のサイズは愛佳がトップですよ確か。
ウエストが一番細いのは草壁さんですが。
……というか、54ってこのみより細いのどうよ?

ふと、よっち、ちゃる等のスリーサイズって誰か知ってます?
676名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 15:44:45 ID:ppjaYldt0
CGを見た限りだと草壁さんの方が大きく見えてもしかたがないな

>>675
よっちはDカップってことぐらいしか…。
677名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 17:07:21 ID:y67y+DyF0
>>676
環見て負けた、って言ってた気がするから、85か6ってとこじゃないかな。
678名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 17:44:29 ID:mrIlUELr0
アンダーとの関係もあるが、タマ姉のバストから単純に逆算すれば84が妥当だろう。
679名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 17:51:49 ID:bOPI+RNs0
じゃあ花梨は?
680名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 17:57:09 ID:2kEehkCA0
花梨は公式設定あるんじゃない?
調べればわかるでしょ多分
681名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 18:02:44 ID:bOPI+RNs0
        /   ヽ,           }
       // l l  ハ. ヽ ヽ  ヽ  l  l 〉-、
       | l l l ,>ミ\ ゝ-、\ l /゚w゚ムァ        (゚w゚)(゚w゚)(゚w゚)
     __ ト、l V '´  、ヽ ヽrヽ「` lV `フ^ ^⌒>
     >  ヽト、l;,,_,,_   ,;r;=ャtL{7}    ^ へ
      ^フ  _, `ヘ ; ̄`; 、   fニ^  `ヽ、 ` ーー^
     ムr '´  i i.レト.、  rュ  ゙ イ^ー ィ'´ ^ヽニ ̄
    /^ /〈__,ィ^r'^゚ムr^ >r- ´,/   `へ/ ~ `ヽ、
   /  \_〉V宀 「   ト___,,/    /人    ヽ
  /    〉 ヽ ||   | ̄ /    //  入    ヽ
/    /   i ヾ    l  /   /   /  ヽ    l
682名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 20:55:04 ID:TnqVfkKX0
        =Q_
       /     ヽ
     <^(゚w゚)ノハヾ^i  脱糞 脱糞
      w リ(i!゚ ヮ゚ノv'`     
    _,<<<  \  / `ー、_  
   / ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ
   { 、  ノ、    |  _,,ム,_ ノl
   'い ヾ`ー〜'´ ̄__っ八 ノ
    ヽ、   ー / ー  〉
      `ヽ-‐'´ ̄`冖ー-
  / ̄ ̄ `ヽ   ‐'´  ̄ ̄`ヽ
  {  ヽー- .._災___.. -‐/  ノ
  ヽ  |    ノ|    ./ /
  | /    (;;;;)   ノ /
  ノ r     .(;;;;;;;)  ヽ \
 `〜'´    .(;;;;;;;;;;)  
683名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 21:01:07 ID:Hetr78HW0
白詰草乙
684名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 21:08:42 ID:yUg6E8UO0
白詰草氏を悪く言う奴はこのスレに来る資格無し
685名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 21:33:46 ID:mgSb8TTf0


  ま た 白 詰 草 か


686名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 21:35:24 ID:yUg6E8UO0
ウザ
687名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 21:42:04 ID:r4yvyYtD0
おまえらいい加減にしろよ。
白詰草さんの話題をここで出すなと何度言えばわかる。
688名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 21:47:37 ID:yUg6E8UO0
まぁ…、粛々とスルーするしかありませんな。
そのうち飽きるでしょ…。
689名無しさんだよもん:2006/09/26(火) 22:55:05 ID:TnqVfkKX0
        =Q_
       /     ヽ
     <^(゚w゚)ノハヾ^i  脱糞 脱糞
      w リ(i!゚ ヮ゚ノv'`     
    _,<<<  \  / `ー、_  
   / ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ
   { 、  ノ、    |  _,,ム,_ ノl
   'い ヾ`ー〜'´ ̄__っ八 ノ
    ヽ、   ー / ー  〉
      `ヽ-‐'´ ̄`冖ー-
  / ̄ ̄ `ヽ   ‐'´  ̄ ̄`ヽ
  {  ヽー- .._災___.. -‐/  ノ
  ヽ  |    ノ|    ./ /
  | /    (;;;;)   ノ /
  ノ r     .(;;;;;;;)  ヽ \
 `〜'´    .(;;;;;;;;;;)  
690名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 00:50:54 ID:yYJqXr+B0
花梨に対する冒涜は白詰草さんに対する冒涜と見なすぞ。
691名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 00:53:17 ID:/niFP5ts0
>>690
…仰る通りだと思う。
良質な職人さんを中傷する輩は…、淘汰されるべき。
692名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 01:30:37 ID:XsOBb6HGO
別にSS書きを擁護する必要なんてないじゃん。他所でやれ。
ところで由真って本当に書きにくいキャラだよな。まーりゃん先輩よりやりにくい
693名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 01:39:39 ID:0Lygy80j0
確かに難しいキャラだけど、白詰草さんは上手く書くよねえ
さすがだよな……
694名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 01:40:36 ID:yYJqXr+B0
>>693
うむ。白詰草さんの各キャラは活き活きしてるよ。
いまにもディスプレイから出てきそうだもの。
695名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 01:45:50 ID:/niFP5ts0
>>694
東鳩SSの第1人者だからね…。
みんなも白詰草氏をお手本に頑張って欲しい。
696名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 01:49:37 ID:hpTFQ3Zz0
>>690
そのりくつはおかしい
697名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 01:56:28 ID:/niFP5ts0
>>696
白詰草氏はご自身のブログでミステリ研部員を名乗っている。
花梨の同人誌はすべて所有している。
また、夏コミの際はスケッチブックを持参して同人描きの人たちのところを回り、に花梨の絵を描いてもらったりした。
(残念ながらほとんどの人に断られたらしいが。)

ま、氏にミステリ研の秘密基地に呼んでもらえなかった人たちは知らなくても仕方ないけど。
698名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 02:00:23 ID:yyA0vgGZ0
君たち邪魔。スレタイが読めないのかと。
白詰草氏を語るスレでも立てて存分に語ってください。
699名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 02:02:47 ID:VcClwXx7O
そんなことしたら白詰草の思う壺だろ
700名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 02:19:07 ID:9Z6mnbxQ0
ここのスレさえ平穏ならそれでいい。
701名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 02:22:04 ID:/niFP5ts0
白詰草氏の熱烈なアンチが携帯とPCから自作自演してるのか…、さすがに迷惑だな。
それに叩きかたに芸がなくてつまらない。自動販売機と会話してる気分かな…
702名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 02:52:47 ID:yYJqXr+B0
まったくだ。
どうせ叩くなら白詰草さんみたいな独創的な文章を書いてみろってんだ。
703名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 06:34:28 ID:UGtRa5L10
おおっ、白を支持してる人が圧倒的に多いようですな。
以前白を叩いてる人が沸いてたのは全て自演だったんだな…。
704名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 08:36:55 ID:hJ9nSJn/0
スレに投下しなくなった作者のことなんざどうでもいいよ
705名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 11:34:04 ID:l59bl0zW0
NG推奨ワード : 白詰草さん 白詰草氏
706名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 11:36:56 ID:XsOBb6HGO
>>704
ああ。
707名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 11:53:31 ID:uXy/B6sm0
昨夜もまた白詰草が自演してたのか
708名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 12:13:16 ID:/kRSOBt50
自分のHPがあるなら、ここに投下する意味も価値もないしな。
709名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 15:03:29 ID:uXy/B6sm0
売名だろ
極度の目立ちたがり屋だし
710名無しさんだよもん:2006/09/27(水) 16:52:44 ID:qkEW3TR60
⊂⌒ヽ <^(゚w゚)ノハヾ^ (⌒⊃
  \ \w リ(i!゚ ヮ゚ノv'`/、 /    
⊂二二二  ・) ・) ニ二⊃     いやっほ〜う かもりん最高〜
    \ \_ ..../ /      
     (   φ   )
      ヽ_,*、_ノ                
         ゙ミ;;;;;,_ 
           ミ;;;;;;;;、;:..,,.,,,,,
           i;i;i;i; '',',;^′..ヽ
            ゙ゞy、、;:..、)  }         
             .¨.、,_,,、_,,r_,ノ′     
           /;:;":;.:;";i; '',',;;;_~;;;′.ヽ
          ゙{y、、;:...:,:.:.、;:..:,:.:. ._  、}
           ".¨ー=v ''‐ .:v、,,、_,r_,ノ′
         /;i;i; '',',;;;_~⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′..ヽ 
         ゙{y、、;:...:,:.:.、;、;:.:,:.:. ._  .、)  、}
        ".¨ー=v ''‐ .:v、冫_._ .、,_,,、_,,r_,ノ′
        /i;i; '',',;;;_~υ⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′.ソ.ヽ
        ゙{y、、;:..ゞ.:,:.:.、;:.ミ.:,:.:. ._υ゚o,,'.、)、}
711向坂君の他愛ない朝の1コマ:2006/09/28(木) 00:27:45 ID:c8hbPKNS0
※ご注意
このSSには雄二萌えの方に対して、不快と思われる表現がございます。
従いまして、俺は自他共に認める雄二萌えだという方は
スルーしてくださいます様、お願いします。

前回までのあらすじ(某ピン芸人の紙芝居風に)
雄二君は幼馴染の貴明君と毎日せっせと下校し、好感度を上げ
女性発覚イベントを発生させました。
イベント後、貴明の文字を逆にし、名前を変えた明貴(アキ)さんと、
公園で二人きりになった雄二君は、色々あって明貴さんに告白しました。
ですが、明貴さんはこう返しました。

「……ごめん。私、雄二の想いに応えられない」
目を逸らし、俯いた明貴の口から零れた返事は、俺の期待とは反するものだった。
「な、なんで? 俺のこと嫌いなのか?」
思わず明貴の元に一歩近づく。だが明貴は、俺たちの距離を一定に保つかのように
同じだけ後ろに後ずさった。
「違うの、雄二のことは好き。……でも、でも私、雄二に愛される資格なんて無いの」
「資格?資格って何だよ。俺を好きになるのに資格なんて……」
「……私、初めてじゃないの」
俺の言葉を遮って出された、明貴の突然の告白に、一瞬頭の中が真っ白になった。
俺の前に彼氏がいた? いや、そんなのがいれば俺が知らないはずが無い。
「潮騒をkwsk、じゃない。……詳しく、教えてくれないか?」
本来こんなことを聞くなんてどうかしている。だが、さっきの告白に混乱した俺は、
その欲求を抑えることが出来なかった。
712向坂君の他愛ない朝の1コマ:2006/09/28(木) 00:28:56 ID:c8hbPKNS0
実際には一分もかかっていなかっただろう。だが俺たちの間には数時間にも思える
沈黙の後、明貴の口から言葉が漏れ始めた。
「昔、小さい頃ね、私が風邪を引いたとき、タマ姉がお見舞いに来てくれたの」
突然姉貴の名前が出てきて一瞬戸惑う。しかし、姉貴は生物学的には(一応)女だ。
さっきの話と何の関係があるのか? 疑問符を浮かべる俺を他所に、明貴の告白は続く。
「その時、風邪を引いたときには葱がいいって持ってきてくれて……」
確かに葱を首に巻くというのは、民間療法でよく聞く話だ。でもそれがどう繋がるんだ?
「でも、具体的に葱をどう使うのかまでは知らなかったみたいで…」
なんか、さっきまで晴天だった空が、超大型台風接近って位、話の雲行きが怪しくなってきた。
ま、まさか姉貴の奴……
「タマ姉が無理やり私を裸にして、葱を、わ、私の…」
「もういい、何も言うな!」
距離を縮め、過去のトラウマを掘り起こし、震える明貴を抱きしめる。
「わかったでしょ。私は雄二に愛される資格なんて……」
もう我慢できなかった。さらに古傷を抉ろうとする明貴の唇を、自分の唇で塞ぐ。
一瞬驚いた表情を浮かべた明貴だったが、力を抜き、俺を受け入れてくれた。

どのくらい経ったのか、顔を離した二人の間に繋がった糸が、夕日できらきらと光り
数瞬後消えていく。
「資格なんて関係ない。俺は明貴じゃないと駄目なんだ」
「……本当にいいの? 私、初めての相手が葱だなんて変わった女だよ?」
まだ震えの収まらない明貴を強く抱きしめながら、冷え切った心を暖めるべく言葉を紡ぐ。
「好きでそんなことした訳じゃないだろ。後、姉貴には俺がガツンと……」
「……ガツンと?」
「……と、とにかく、もう一度返事を聞かせてくれ」
俺は明貴を抱きしめたまま、彼女の返事を待つ。
713向坂君の他愛ない朝の1コマ:2006/09/28(木) 00:29:42 ID:c8hbPKNS0
「……ねえ、雄二。一つお願いしていいかな?」
「なんだ? 俺に出来ることなら何でも聞いてやるよ」
「さっきのキス、不意打ちだったから……もう一度してくれる?」
そう言って、今度は目を閉じた明貴の方から唇を寄せてきた。その愛らしい唇に自分の唇を重ね……
「……雄二、ありがとう。本当に嬉しい」
目を開けると、大粒の涙を零しながらも、満面の笑みを浮かべる明貴の顔がそこにあった。

その後、お互いの気持ちを確かめ合った俺たちは、明貴の部屋のベッドで一緒に横になっていた。
寄り添った明貴の体温が伝わってくる。俺はこの温もりを一生手放さないと心に誓った。
「あの、その、何だ。どうだった?」
行為の後、互いに気恥ずかしいのか無言で抱き合っていたのだが、沈黙を破ったのは俺からだった。
しかし、とっさにとはいえ、かなり恥ずかしいことを口走ってしまった気がする。
「えっ、そ、そんなこと言うの恥ずかしいよ」
案の定、顔を真っ赤にして、目を背ける明貴。
「い、いや、だってなんか気になるだろ?いいから正直に言えよ」
「……どうしても言わなきゃ駄目?」
逸らしていた目を戻し、上目遣いでこちらを見つめる明貴。
赤くなった表情も相まって非常に愛らしい。
「……ああ」
「うう、……じゃあ、一度しか言わないから耳貸して」
そう言って明貴は、恥ずかしそうに俺の耳元に囁いた。

「ごめん。正直言って葱の方が良かった」
714向坂君の他愛ない朝の1コマ:2006/09/28(木) 00:30:45 ID:c8hbPKNS0
「わあああああああああああああああああああああっ」
ガバッとベッドから跳ね起きる。目に飛び込んできたのは……見慣れた俺の部屋だ。
……ゆ、夢か。良かった。……しかし、これまでの人生の中でも最低の悪夢だった。
くそっ、俺の初恋の思い出を汚しやがって。あの娘が貴明だなんて訳ねーだろ!
……いや、ないだろう……ない、よな?
いいかげん先ほどの悪夢を頭から追い出すべく頭を振り、
……ふと、股間の辺りに違和感を感じて、恐る恐るパンツの中を確認する。
最悪だ。最悪すぎる。よりにもよって貴明で……俺、誰かに恨まれる事でもしたか?
「雄二、いつまで寝ているの。起きなさい。遅刻するわよ」
朝っぱらからの異常事態に頭を抱えていると、俺を起こしに来たのか、
姉貴が俺の部屋に入ってくる。つうか入る前にノック位しろと言いたいが、
当然ながら面と向かって口には出せない。
「あら、もう起きてたの? 珍しいこともあるのね。もう朝食できてるから起きてきなさい」
「あ、ああ、後で行くわ。ちなみに今日のメニューって何?」
内心の動揺を隠しつつ、適当に話をあわせる。
「お隣さんから葱をたくさん頂いちゃったんで、ねぎま丼と葱の焼きびたし、
後、わかめと葱の味噌汁にしたんだけど、雄二、別に葱はきらいじゃなかったわよね?
それでも使い切れないから、タカ坊や、春夏さんにもおすそ分けしないと」
「……悪りい、今日は朝飯パスするわ」
とてもじゃないが、暫く葱は口にしたくない。
「どうしたの? 普段、人一倍食べるあなたが朝食をいらないだなんて。
……ひょっとして熱でもあるの?」
怪訝な表情を浮かべた後、(珍しく)心配そうに近づいてくる姉貴。
普段ドメスティックバイオレンス上等なのに、何でこんな時だけ優しいんですか?
「な、何でもねえ、何でもねえから、姉貴は先に行っててくれ、な?」
そう言って、慌てて布団をかぶりなおす。
「……何か怪しいわね。……雄二、さては布団に何か隠してるの?」
その行動が逆に不審を買ったのか、姉貴が布団を引き剥がしにかかってくる。
ちょっ、洒落になってねえ!
「いやーっ!犯される!」
「い・い・か・ら、見せなさい!」
「あーっ!」
715向坂君の他愛ない朝の1コマ:2006/09/28(木) 00:31:52 ID:c8hbPKNS0

……
………
時が止まったかのように、微動だにしない二人。だが、目覚まし時計の秒針が
その事実を否定すべく、カチコチと音を響かせている。
「……さ、さて、私の方もそろそろ準備しないといけないわね」
ようやく硬直から立ち直った姉貴が、今見たものについて何も言及することなく、
というか見なかったことにして、そそくさと部屋を出て行こうとする。
が、その顔が真っ赤に染まっていたのは言うまでも無い。
パタン、とドアが閉まり、部屋に静寂が戻る。
「……ううっ…えぐっ、ひっく」
俺は泣いた。

その後、泣きながらパンツを洗っているうちに、普段出る時間から遅れてしまい、
待ち合わせ場所には、既に貴明たちが待っていた。
「タマお姉ちゃんたちが遅れるなんて珍しいね。何かあったの?」
「……誰かさんが、朝っぱらからパンツを洗ってたものだから、ね」
このみの質問に、顔を赤くしながらも馬鹿正直に答える姉貴。
って、身内の恥を晒すんじゃねえ!と怒鳴りかけたが、後が怖いもんで
口を噤んでしまう俺は、死ぬまで姉貴に頭が上がらないに違いない。
「ん?……ぷっ、くくく……そ、それは災難だったな、雄二」
「ねえねえ、どうしてユウくん朝からパンツなんて洗ったの? もしかしておねしょ?」
事態を察して、必死に笑いを堪えている貴明と、全く分かっていないちびっ子。
「で、雄二。夢にはどんな素敵なお姉さまが出てきたんだ?」
肩を震わせながら、ポンッ、と俺の肩に手を置く貴明。
その言動で、俺の怒りゲージはMAXに達した。
「けど、夢ってのは潜在的な願望が現れるって言うから案外……」
なおも続いていた貴明の話を無理やり遮り、両肩をガシッと掴んでこちらを向かせる。
716向坂君の他愛ない朝の1コマ:2006/09/28(木) 00:32:32 ID:c8hbPKNS0
「なあ、貴明。葱の方が良かったって言われて、俺がどれだけショックを受けたか分かるか?」
「……いや、話に脈略が無さ過ぎて、さっぱり意味が分からないんだが」
「つう訳で、黙って一発殴らせろ!」
「何が『つう訳』なんだ!? そもそも俺に何の関係が……って、おわ、何しやがる!」
「うるせー! これはというのも全部お前が悪い!」
「ねぇーっ、ユウくんおねしょしたの?」
逃げる貴明と、追う俺、そして、更にその後ろを追いかけるちびっ子。
つうかちびっ子、とんでもないことを大声で吹聴してるんじゃねえ!
「えっ、向坂君、おねしょなんてしたの?」
「うわ、先輩。この歳にもなって、おねしょはきついっすよ」
登校中のうちの生徒(と、一部他校の生徒)に、俺のおねしょ疑惑が連鎖的に広がっていく。
それは朝からの不幸続きで、満身創痍だった俺の心に止めを刺した。

貴明はおろか、後ろを走っていたちびっ子にも追い抜かれ、息も切れ切れになった
俺の目の前に校門が見えてくる。おぼつかない足取りで、校門に一歩一歩近づき、
「……俺、もう、ゴールしてもいいよね? そこまで辿り着いたら、もうゴールしてもいいよね?」
「あかん、まだあかん! まだ彼女もできてへん魔法使い候補生やんかっ!」
ちなみに相手は、偶然校門にいた所を、アイコンタクトでサインを送った珊瑚ちゃん。
なお、性格的に瑠璃ちゃんの方が、更に適任(何の?)かと思われるが、ノリが悪く、
呆れてこちらを見ているだけだった。しかし、結構きつい事言うな、珊瑚ちゃん。
「頭蓋骨が歪むほど、アイアンクローされた。強制労働もたくさんした」
「彼女作って、常時メイドさんの格好させる言うてたやんかっ! 後、向坂家をメイドロボ
だらけの理想郷にするんやろ? 今のままじゃ一歩も理想に近づけてへんやないか!」
「秘蔵のコレクションも捨てられた。羞恥プレイもたくさん我慢した」
「あかん、あかんゆーてるのに!」
「だから……もうゴールするね……」
「雄二……来たらあかん! これからや言うてるやろっ!」
「……ゴー」

ガシャン。
目の前で校門が閉じられた。
717向坂君の他愛ない朝の1コマ:2006/09/28(木) 00:33:15 ID:c8hbPKNS0
「ありゃ、もう時間か。ほなまたな雄二」
「さんちゃん。馬鹿の相手するのも大概にした方がええで」
校門の向こう側にいた二人が校舎に消えていくのを、呆然と眺める。
「はあー、わが弟ながら本当に馬鹿で涙が出てくるわね」
慌てて後ろを振り向くと、盛大な溜息を吐く、姉貴が立っていた。
「な、なんで姉貴がここにいるんだ? 姉貴の足だったら遅刻しないで済んだだろ」
実際、走ってきたのに息を切らしている様子も無いし。
「まあ、どうでもいいじゃない。……さあて、一緒に先生に怒られましょ」
……ひょってして、待っててくれたのか? 気まぐれとはいえ、姉貴が俺に
優しくしてくれるなんて……不運続きだった今日の運気も少しは上向いてきたのかな? 
「……ところで雄二。さっきの寸劇であなたの口から出てきたのが、
私に対する不平不満だらけのように聞こえたのは、私の気のせいかしら?」
……前言撤回。今日は厄日だ。そんな自分を憂いつつ、天を仰ぐと
吸い込まれそうなほど澄んだ青色が広がっていた。
頭上から降り注ぐ柔らかな春の日差しに目を細め、手をかざす。
……さあ、今日も一日頑張るとするか。
718向坂君の他愛ない朝の1コマ:2006/09/28(木) 00:34:20 ID:c8hbPKNS0
初めて書かせていただきました。
雄二に恨みがあるわけではないです。むしろ貴明より雄二の方が好きで
今度出るらしいFDでは、素敵な彼女を見つけて幸せになってくれ
とさえ思うのですが、なぜか出来たのはこんなものにw
719名無しさんだよもん:2006/09/28(木) 16:14:14 ID:lQZ1AFY/0
GJ
久々にワロタ
後半元ネタが判らんかったが
720名無しさんだよもん:2006/09/28(木) 17:03:56 ID:7wu2xyqV0
雄二SSGJです
雄二といえば、大半愛佳END後の郁乃ってSSが多いですよね。
雄二×郁乃もある意味お似合いですし、私も結構好きですよ。
FDでそれ系の出ないかな?
721名無しさんだよもん:2006/09/28(木) 19:39:15 ID:v98NDd3v0
GJ
面白かった。しかし雄二悲惨だなw

そいえばここ鍵板でもあったんだな…
722あるいは一風変わった押し饅頭 1/12:2006/09/29(金) 00:16:20 ID:ZBlU7tyy0
 テレビの中では、ようやく倒すことのできた蛇のボスが(なぜか)爆発しながら倒れ
ていく。
 苦しい戦いだった。
コンティニューを続けること幾十回。絶叫を上げて灰になっていくボスキャラに、俺は
安堵と満足感の混じった溜息をついて、画面を振り返った。

「珊瑚ちゃん、ようやくこいつ倒せたよ・・・・・・?」

 そう言ってリビングを見渡すけれど、声をかけた本人の姿はどこにもない。そして奥
の方から聞こえてくる、三人の声。
 ああ、そう言えばみんな、お風呂はいっているんだっけ。

 夕食を食べた後、ベッドに入るまでの穏やかな時間。耳に入ってくるのはテレビゲー
ムの音楽と、三人仲良くお風呂に入っている、珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん、イルファさん
の声。
 時計を見れば、ずいぶんと時間がたっていた。
 一緒にお風呂に入ろうと言う珊瑚ちゃんとイルファさんへの言い訳に始めたゲームだっ
たけど、けっこう集中してプレイしていたみたいだ。一緒にお風呂に入って拷問めいた
時間を味わうのに比べたら、これくらいゲームに集中することなんて訳無い、と感じる
のは喜ぶべきなのか悩むべきなのか。
723あるいは一風変わった押し饅頭 2/12:2006/09/29(金) 00:17:03 ID:ZBlU7tyy0
 そりゃ、別に、珊瑚ちゃんたちと一緒にお風呂に入るのが嫌だって訳じゃないけど。
でもそうしちゃうと、ゆっくり湯船に浸かって一日の疲れを取るというには程遠いこと
になってしまうわけで。
 気持ち良いのは確かだけど。

「だからベタベタ触るなー!」

「ですが瑠璃様のこの、お風呂上りの瑞々しいお肌を見ていると、つい」

「うちも触る〜」

 三人とも、あがったみたいだ。
 お風呂場の扉を開けて、三人の賑やかな声が聞こえてきた。今日も瑠璃ちゃんは、イ
ルファさんの愛情表現にさらされていたみたいだ。

「貴明、お風呂あいたでー」

「うん、ありがとう、後で入るよ。あ、そうそう、珊瑚ちゃん。さっきのボス、やっと
倒せたよ」
724あるいは一風変わった押し饅頭 3/12:2006/09/29(金) 00:18:29 ID:ZBlU7tyy0
「えっ、ほんまー」

 テレビの前から立ち上がって、タンスに自分用の下着やなんかを取りに行く。ずいぶ
んと、珊瑚ちゃんの家に置いてある俺の服も増えてきたと思う。
 もう持っている洋服の半分くらいはこっちにあるんじゃないだろうか?

「なあ貴明、見せて見せて〜」

 脱衣所から駆け込んでくる珊瑚ちゃんの足音。

「ちゃんとポーズしてあるから、そんなに急がなくても大じょう・・・・・・」

 そういえば春にもこんなことがあったななんて、目の前のことに付いて行くことので
きてない俺の頭は考える。まだ一緒に生活する前で、イルファさんとも出会う前のこと
で。
 でもあの時は、確かバスタオルを巻いていたはずだよなぁ。

「さ、さんちゃん前、前隠してー!?」

 慌てる瑠璃ちゃんとイルファさんを気にも留めないで、こちらに向かってくるさくら
んぼ二つ、もとえ珊瑚ちゃん。
725あるいは一風変わった押し饅頭 4/12:2006/09/29(金) 00:19:52 ID:ZBlU7tyy0
 パジャマを持ったまま硬直する俺の腕を掴むと、そのままテレビの前まで引きずって
いく。

「貴明早うみせてや。なあ、どうやって倒したん?」

 そうやって座り込んでしまうと、立っている俺からは可愛らしい胸とか、すべすべの
お尻だとか、いろいろいけないところが丸見えな訳で。

「さんちゃーん!」

 ようやく、こちらはバスタオルでちゃんと前を隠した珊瑚ちゃんが慌ててやってきた。

「見んな、あほー!!」

「ご、ゴメン」


 怒鳴られてようやく気が付く。わざわざ珊瑚ちゃんのことを見続ける必要はどこにも
無いんだ。
726あるいは一風変わった押し饅頭 5/12:2006/09/29(金) 00:20:49 ID:ZBlU7tyy0
「さんちゃん、あかんよ、ちゃんとパジャマ着んと。貴明に裸見られるで」

 いや、もうばっちり見ちゃったんだけどさ。
 でもそう言うと、また瑠璃ちゃんに蹴飛ばされるし、言わないけど。

「? 別に見られてもかまわんよ? いっつも、ベッドの上とかお風呂とかで見られて
るもん。貴明も毎晩うちの裸見とるのに、なんで恥ずかしがるん?」

 いやまぁそうなんだけどさ。でも、お風呂とかベッドとかで見るのとリビングで見る
のじゃ、同じ裸でも別の裸なわけで、落ち着かないというか。

「そ、そや、さんちゃん、裸でおると風邪引くで。湯冷めする前にパジャマ着て」

「え〜、でも〜」

 ど、どうしてそこで不満そうな声をあげるかな。

「どうせすぐ脱ぐんやし」

「女の子がそう言うこと言っちゃいけません!」
727あるいは一風変わった押し饅頭 6/12:2006/09/29(金) 00:21:58 ID:ZBlU7tyy0
 耳を塞ぎたくなってきた。
 それは一体どういう意味ですか珊瑚ちゃん。最近、恥じらいというものが少なくなっ
てしまっていないか? 俺か? 俺のせいなのか!? 元からという気もしないでもな
いけど。
 ううっ、昨日の夜のことを思い出して・・・・・・いけない想像を。

「あっ、そやー」

 嬉しそうな声をあげる珊瑚ちゃん。何か良いことを思いついたらしい。
 それが俺にとっても良いかどうかは、保障の限りではないけれど。
 むしろ今までの経験から言うと、珊瑚ちゃんが嬉しそうに声を上げると決まって何か
ひどい目にあうような。
 覚悟だけは、決めていたほうが良いかもしれない。

「なあ貴明」

 俺には何も聞こえないし何も見てないし触ってもいない。さあ、来るなら来い!

「うちが風邪引かんようあっためてやー」
728あるいは一風変わった押し饅頭 7/12:2006/09/29(金) 00:23:06 ID:ZBlU7tyy0
 襲い掛かってくる柔らかい感触。目を瞑っていたことがかえって仇になった。
 胸に当たるツンっとした感触や、太ももに触れるムニっとした心地が、目を明けてい
るよりも余計に感じられて。
 ぷちんぷちんとシャツのボタンが外されていく音まで聞こえてきそう。

「って、なんで俺のシャツ、ボタンはずしてるの!?」

「だって、シャツごしより直接貴明と抱き合ったほうがあったかいやん。雪山で遭難し
た人だって、裸になって抱き合うんやで」

 それは合ってるかもしれないけど、どこか間違ってるよ珊瑚ちゃん。
 俺が何の抵抗もできないまま硬直しているうちに、どんどんボタンははずされて行く。
 珊瑚ちゃんは猫のように、俺にほお擦りしたりして甘えてくるんだけど。でもボタン
をはずす手には全くよどみが無い。
 イルファさんの薫陶は、珊瑚ちゃんの中でしっかり生きているようだ。
 ああ、もうボタンは全部はずされて、残るのは最終防衛ライン、ズボンのベルトのみ。
しかもそれも陥落寸前であります隊長。

「た、助けて」
729あるいは一風変わった押し饅頭 8/12:2006/09/29(金) 00:24:45 ID:ZBlU7tyy0
 思わず瑠璃ちゃんに助けを求めるけど、だめだ。瑠璃ちゃん、顔を真っ赤にしてうつ
むいてしまってる。とても俺から珊瑚ちゃんを引き剥がせそうには無い。
 藁にもすがる思いで、反対側に振り向く。そこには姫百合家最後の良心、イルファさ
んが。

「い、イルファさん?」

 しかし床に押し倒される俺の目に映るのは、救いの女神の姿ではなく。はらりと、ま
るで羽毛のように床に落ちるバスタオル。
 苦労して上げた視線の先には、ああ。

「貴明さん。どうも私も、湯冷めしてしまったようなんです」

 そこから先は、言わなくてもおわかりですよね? とその目が言っていた。わかりた
くないんだけど、わかってしまった。

「いや、やめて、堪忍して、お婿にいけなくなっちゃうぅぅぅ」

 新たな敵の出現に、必死の抵抗を続けていた最終防衛ラインもあっさりと破られた。
あとはパンツを巡って、絶望的な抵抗を続けるだけ。無条件降伏を受け入れるのも時間
の問題だろう。
730あるいは一風変わった押し饅頭 9/12:2006/09/29(金) 00:26:01 ID:ZBlU7tyy0
「貴明、安心してや」

「な、何を?」

「貴明お婿さんに行けんでも、ウチが貰ったるからな」

「珊瑚様いけません。貴明さんは、私が旦那様として

「あ、あかんー!!」

 それまでこちらを眺めるだけだった瑠璃ちゃんが、突然大声をだした。
 その声に唖然として、珊瑚ちゃんとイルファさん、二人の動きが止まった。今の隙に
途中まで下げられたパンツを上げようともがくんだけど、しっかりとパンツを握り締め
たイルファさんの指がなかなかそうさせてくれない。

「わかっとるよ瑠璃ちゃん。瑠璃ちゃんも貴明のこと欲しいもんな」

「ちゃ、ちゃうもん。ウチそんなこと、ぜんぜんこれっぽっちも思っとらへんもん!」

「それでは、瑠璃様は貴明さんのことをいらないとおっしゃいますし、私と珊瑚様の二
人だけで貴明様のことは分けてしまいましょうか」
731あるいは一風変わった押し饅頭 10/12:2006/09/29(金) 00:27:48 ID:ZBlU7tyy0
 既に俺個人の意思とか人権とかは考慮してもらえないらしい。
 俺の胸板に、珊瑚ちゃんの柔らかいほっぺたとかイルファさんの柔らかい胸とか、太
ももとか腕とかお腹とか。
 お風呂で体を洗いっこするのとはまた違う、こ、この世にこんな凄まじい押しくらま
んじゅうがあったのか!?

「押しくらまんじゅうと違うよ。これは貴明にウチの体あっためてもらっとるだけやも
ん」

 全身から抵抗する元気がどんどん失せていってしまう感じだ。パンツを必死になって
ホールドする腕からも、徐々に力が抜けていって。

「うううぅ〜・・・・・・」

 そんな腑抜けた俺を現実に戻してくれたのは、今にも泣き出しそうな顔でこちらを睨
みつけてくる瑠璃ちゃんだった。
 そうだ、俺には瑠璃ちゃんがいた。

「う、う、ううううぅぅぅ・・・・・・っ」
732あるいは一風変わった押し饅頭 11/12:2006/09/29(金) 00:29:11 ID:ZBlU7tyy0
 そうだ、瑠璃ちゃん、その調子だ。もっと怒って! それで、いつものように俺のこ
とを蹴飛ばして、意識を刈り取ってくれ!!
 そしてついに、瑠璃ちゃんは体に巻いていたバスタオルを掴むと、まるでマントを脱
ぐように勢い良くそれを投げ捨てる。
 わー、瑠璃ちゃん男らしー。

「瑠璃ちゃん、大胆やなぁ」

 全身くまなく、見せ付けるように晒した瑠璃ちゃんは、うなり声を上げながら俺たち
の方へ向かってくる。なんだかこう、怪獣映画で使用されるような効果音が聞こえたよ
うな。

「えーっと、瑠璃ちゃん?」

「さ、寒いから仕方なくやってるだけやもん」

 流石に自分でもその言い訳には無理があると考えているみたいで。
 俺の体に覆いかぶさったまま、こっちの顔を睨みつけてくる。

「もう、瑠璃様ったらそんなことを言いながら、一番よい場所をお取りになってしまう
んですから。ですが、例え瑠璃様といえどこちらは譲れませんよ」
733あるいは一風変わった押し饅頭 12/12:2006/09/29(金) 00:30:17 ID:ZBlU7tyy0
 イルファさんの、パンツを握る手に力が篭る。る、瑠璃ちゃんのお陰で、有耶無耶に
できたと思ってたのに。

「貴明ー、無駄な抵抗続けるのは男らしくないでー」

 珊瑚ちゃんのほお擦り攻撃も再開された。今度のターゲットは俺の腕らしい。
 瑠璃ちゃんは瑠璃ちゃんで俺のことを締め付ける腕に力が入る。地味なようでこれが
一番強力だ。なんと言っても、胸や腕どころか、瑠璃ちゃんの全身が俺の体に密着する
んだから。
 いつの間にポーズが解除されたのか。テレビの中では、さっき中断したゲームが再開
されていた。
 誰にもコントロールされないまま、モンスターの餌食になるキャラクター。複数のゾ
ンビに圧し掛かられてやられていく様に、妙な共感を覚えてしまう俺だった。
 ああ、とうとうパンツが。



   終
734あるいは一風変わった押し饅頭 あとがき:2006/09/29(金) 00:32:37 ID:ZBlU7tyy0
書いてる最中は楽しいんだよ。自分の思うがまま書いてる訳だから。
こう、むにむにと。
ああっ!
735名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 00:53:24 ID:695wTyfMO
あれ?なんで続きがないの?ねぇなんで?なんで…?
今日は特に念入りに掃除し、綺麗になった浴槽と浴室。
これなら、入れても恥かしくないと言う位になった。
でも……

 「……疲れたな」

普段いい加減なだけに、念入りはすごく疲れる。
……ホントはこれを毎日しなきゃいけないのはわかってるけど、やっぱめんどくさい。
とは思っても、ミチルちゃんのやりくり上手を見てると、このままじゃ情けない。
今のままじゃ、絶対タマ姉に強制送還と言うか連行されて、一生飼い犬にされかねない。

「……よし、頑張ろう!」

そう考えると、急にやる気が出てきた。
……後半はバレたら、命ないけど。
リビングに入ると、いい匂いが鼻をくすぐった。
それと同時に、忙しそうに物音と声が響き合っているのが聞こえる。

「ダシはこれ位だな。これで……」
「ちゃる、塩焼きの準備できたよ」
「このみ、塩が多すぎ。よっち、肩肘張るな、包丁は押すんじゃなくて引いて使う」
「うぅ……むっ難しいっしょ」

いかにも料理しなれてない二人と、手際良く作業しながら周りにも気を配るキツネっ子。
このみ一人じゃ危なっかしい台所も、今日は思いっきり安心する事が出来る。

「……お泊り了承して良かったかも、これだけは」

いつもと違って精神的に楽な環境に、そう思った。
……勿論台所の中の環境であって、他はきついのは変わらない。
でも、いつまでも窮屈だと言うのはあの子達に悪いよな……
そうだ、荒療治と考えよう! うん、その方が良い。
「風呂掃除終わったよ。ご飯食べ終わる頃には入れるから」
「了解ッス」
「よそ見するなよっち。わかりました、先輩はテレビでも見てて下さい」
「わかった、頼むよ」
「む〜、タカ君このみのときと全然態度違う」
「このみ、火から目を離すな」

まるで娘2人に料理を教える母って感じだな、これ。
……それじゃ、お言葉に甘えてのんびりさせて貰いますか。

・・・

程無く、テーブルに料理が並べられた。
綺麗に焼き目のついた鮭に、大根のサラダ。
そして野菜スープにキンピラゴボウと、見事に野菜中心だ。
ご飯だって、俺が炊いたのよりもつやつやで美味そう。
「へぇ、野菜ばかりなのにすごく美味しそうだ」
「野菜の栄養は大切です。栄養配分はしっかりしないと、倒れますよ」
「そっそうだね、気をつけるよ」

一番精神年齢高いだけに、言う事は十分筋が通ってたりする。
ホント、どっちが先輩かわからないな。

「ちゃるすごいね」
「勉強と修行をすれば身に付く物。ただやらないから出来ないだけ」
「うんうん、そうだよね」
「よっちが一番危なっかしかった。大根を血のドレッシングを掛けるつもりの様に」
「そっそれはちょっとヤだな、このみ吸血鬼じゃないから」
「う……むっ胸で手元が良く見えなかったから」
「言い訳にも嫌味にもならない」

なる程、チエちゃんが作ってたのは大根のサラダか。
しかし血のドレッシングって、そんなに危なっかしかったのかよ。
でも胸で手元がって……すごい大胆な言い訳だな。
「それじゃ、食べよっか」

動揺を誤魔化すように、さっさと食卓につくよう促す。
早速、ミチルちゃんがさっき作った鍋の中身と思われる野菜スープを一口。

「うん、美味い」
「本当においしい、ちゃるすごーい!」
「……ありがとうございます」

今日は何というか、ミチルちゃんの可愛い一面をよく目の当りにする日だな。
……元々あまり話さないから、この中で一番理解に苦しむ子だったけど

「おかわりはたくさんありますから、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
「タカ君の家がこんなに賑やかなの、久し振りだね」
「ん? ああ、そうだな。一人暮らしだから、どうしても静かになっちまうし」
「それじゃ今日は、あたしたちも家族感覚で過ごすっしょ」
「そうだな」
そう言えばそうだよな。
家族が出てまだ1ヶ月ちょいだけど、2人以上での夕食なんて久し振りだ。
主にミチルちゃんが作った料理も美味しいし、このみとチエちゃんで雰囲気にも困らない。
確かに。家族の団欒って表現が当て嵌まってもおかしくない。
俺もすっかり馴染んじゃってるし、この際ちょっと調子に乗ってみるか。

「それじゃそうしよっか。それで、どういう家族構成?」
「やっぱあたしが長女でちゃるが次女、このみが三女っしょ」
「タヌキは体だけ大人で、内面はガキだ。だから私が長女でよっちが次女の方がずっと納得できる」
「何〜!」
「2人とも、せめて食事中にケンカはしないで」

仲裁に入ったら大人しくなってくれて、無事第何次かのタヌキツ大戦は事前停戦となった。
その傍らでむくれてるこのみ
「む〜、何でこのみは三女決定なの?」
「すまんこのみ、それは仕方ないと思う」
「このみの場合、末っ子ってイメージがどうしても根強いっしょ」
「以下同文」
「……皆の意地悪」

益々むくれてしまったこのみ。
そう言うお子ちゃまっぽい所が目立つから、否定できないんだよな。
……それなら、俺はどうなんだろ?

「俺はどうなるのかな?」
「決まってるじゃないッスか。センパイは、一番上の頼り無いけど優しいお兄さんッスよ」
「それには賛成だ。先輩なら十分似合う」
「だよね」

頼り無いが余計だけど、優しいお兄さんか……
皆してそう思ってくれるなんて、嬉しいな。
……と思ってたら、ミチルちゃんがキンピラを摘まんだ箸を俺に差し出した。
「……あの、これは?」
「あーんの意味です」
「……………………何故?」
「お兄さんにやる事と言えば、これだと友人から聞きました。日課だそうです」
「いや、それ絶対特殊な例だから」

世の中って狭い様で広く、広い様で狭いんだな。
と言うよりこの子って、大人しそうなのに時々結構大胆な事するよな。
……頭が別方向に逝ってる間に、膝の上に重量感。
目の前には桜の髪留めのついた、見慣れまくったミディアムカット。

「えへ〜、お兄ちゃん♪」
「このみ、一体なんの真似だ?」
「何って、タカ君椅子。末っ子はお兄ちゃんに甘える物だよ」
「おいおい、さっき嫌がってなかったか? それに、自重するって約束忘れたのかよ」
「ちゃる良くてこのみはダメなの?」
人がやってるからって言うのは、このみの中じゃ十分理由になってるらしい。
あんまり期待はしてなかったけどね……。

ムニュッ

…………ん?

「ひっひっひ〜、セ〜ンパイ♪ ……じゃなかった、お兄ちゃん♪」
「ちょっちっチエちゃんまで!?」
「良いじゃないッスか、お兄ちゃん」

背中に柔らかな物を押し付けながら、引っ付いてくるチエちゃん。
元々過剰なスキンシップを好む彼女だから、この状況で大人しくするなんて思えなかったけどしかし……
すごく柔らかい……このみと同い年とは思えん位だ。
こんな妹に甘えられたら……って、今ですけど理性壊れてしまいそうです。
「兄さん、あーん」
「お兄ちゃん」
「えへ〜♪」

三人の(一人はあまりそう見えない)和んでる顔を見てると、とても断れはしなかった。
……頼り無いって部分、納得せざるをえん様な気がする

「……外で、特にタマ姉には絶対に言わないでね」
「オッケーッス」
「わかりました」
「うん」

こういう所では素直なんだね。
妹達って言うのも、悪くないかも……って、思いっきり馴染んでますね自分。
というわけで、趣味丸出しのSSだしました。
序章、買い物、そして今回の夕食パート。
そしてこれからの風呂、深夜、終章をもってお泊り編は終了です。
簡単な予告ですが、風呂パートはよっちメインです。
と言っても、今の段階では精々15禁入れるかどうかですが。

>>734 姫百合姉妹&イルファGJ
 
 では
747名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 02:11:49 ID:j7xJlGH40
中学の頃、教師からの評価を良くしたかったのと、ケミカルな雰囲気が格好いいと思い込んで
理科室の手伝いを良くしていた。(といってもゴム栓に穴をあけたり、ビーカーを掃除したりする程度)
でも当時の私は、自分がだんだん子供ながら天才的なミステリの知識を持つすごい奴だと勘違いし始め、
ある日友人を無理やり誘って理科室に忍び込んだ。
そこで適当な物質(っつっても多分ふっとう石とか)を指で触りながら
「へえ…○○先生もなかなか良い物を仕入れて来るんだね。」
とか言ってたり、 適当な薬品の入った瓶を傾けて
「ははっ。ちょっと調合の具合がおかしいかな。ま、授業用には十分か。」
とかほざいてた。
友人は当然ハァ?って感じ。
それでも私はおかまいなしに「ふん。」とか「ははっ!」とかやってた。
そんで一番奥の戸棚を開けて急に表情を変え、
「!!これは!○○先生!いったい…!なんて物を!何をしようとしてるの!」
って言ってみせた。友人も驚いて「それそんなヤバイの?」って聞いてきた。
私は「こんなの黒の教科書の挿絵でしかみたことないんよ…!それなら、もしかしてこっちの瓶は!?」
って別の瓶を手に取って嗅いだ。そしたら、それはなんか刺激臭を発する化学物質だったらしく、
(手であおいで嗅がなきゃいけない奴)直嗅ぎした私は
「エンッ!!!」って叫んで鼻血を勢いよく噴出しながら倒れ、友人に保健室に運ばれた。
私は助かったが、どうやら私の友人が変な勘違いをしたらしく、
「笹森さんは黒の教科書に乗ってる毒物に感染したんです!!」ってふれまわっていた。
それ以来花梨のあだ名は毒物くんになった。当然もう理科室に行く事は無くなった。


748名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 02:13:27 ID:j7xJlGH40
>>747

         /: : : : : : : : : : ;, : : : : : : : : : : : : :\
       //: : : : : : : : ハ : ;;;; : : : ;; : : : : : : :';; : ゙、
       //;/: : /: : : /;;;ヘ:.\;;;: : :';;;; : : ';; : :';;;;;;;;',
       / /;;,' : :/: : : /;/  ゙、: ',\: : ';;;; : :.';;; : i;;;;;;;;i
        //!: ;;i: : :/:/--‐‐ ゙、:'; ゙、: ト.;;; ; :';;; l;;;;;;;;;;!__
   _. \レ‐-l: ;;;l;;;;/  ___  ヽ  ヽ! \;; :ト;;l;;;;;;/oo.}-‐7 ._ 
 __\  ̄`ヽ: :レl/l;/ ァ===、`    ,二 _ヾ!. i;;;乂W/ ̄ ̄/   
 \  ̄ ̄; : : : : : :!f 、゙、 ///,   {  ´ ̄~゙''' ./-イ ̄: : :  ̄¨¨ニ─
 ̄ ̄ ̄/: : : /: : :へ、',    、_    ///, / _」: : : : : : : : : :\  
  /: : : /: ://: : :/;;;;;;、       ̄   /‐''";;\: :\; : :\‐-ヽ     
/-‐  ̄/ /;;/: :/;;;;;;/l/ニ\     ,. イ、ィ;;;;;;;;;;;;;;;;\: : ト、: :\      
    ////;;;;;;;/l.. -'1 レ' ! ` - ' ./\!l\l\;;;;l\;ヽ: l  \:ヽ       
    //  //-‐''":::::::::::l __     _ /:::::::::::\;l  \:l    \
       ,i''":::::::::::::::::::::::::l-、....ヽ__'__./::::::::::::::::::::::\       
     / ',ヘ ';:::::::::::::::::::::::l¨''…──…/::::::::::::::::::::::::::/ />    
     /  ';:ヘ ';::::::::::::::::::::::l      ../:::::::::::::::::::::::::/ // |      
749名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 02:18:17 ID:2fw2vR0z0
>>747
…やっぱり、笹森会長のSSが一番楽しめる。
このみんや珊瑚ちゃんも好きだけど(笑
750名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 02:27:03 ID:Nfa4bTpO0
⊂⌒ヽ <^(゚w゚)ノハヾ^ (⌒⊃
  \ \w リ(i!゚ ヮ゚ノv'`/、 /    
⊂二二二  ・) ・) ニ二⊃     いやっほ〜う かもりん信者の工作最高〜
    \ \_ ..../ /      
     (   φ   )
      ヽ_,*、_ノ                
         ゙ミ;;;;;,_ 
           ミ;;;;;;;;、;:..,,.,,,,,
           i;i;i;i; '',',;^′..ヽ
            ゙ゞy、、;:..、)  }         
             .¨.、,_,,、_,,r_,ノ′     
           /;:;":;.:;";i; '',',;;;_~;;;′.ヽ
          ゙{y、、;:...:,:.:.、;:..:,:.:. ._  、}
           ".¨ー=v ''‐ .:v、,,、_,r_,ノ′
         /;i;i; '',',;;;_~⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′..ヽ 
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751名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 10:10:25 ID:MSzhsiY40
せっかくSSが投下されて雰囲気よくなってたのに・・・
752名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 10:39:28 ID:hNgn85hMO
>>747-749
スレ荒らして楽しんでるだけだから
気にするな。
753名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 10:50:52 ID:N3cZfZCx0
最近投下されてるSSはなかなか面白いよ。
気にせず頑張ってくれ。
『あるいは一風変わった押し饅頭』が特に良かったかな。
雄二のSSも笑えた。
754名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 17:53:15 ID:95fvt00N0
俺はこのみのやつにきゅんきゅんしたぜッ!
755名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 20:42:50 ID:1Z+LHxkd0
>718
おもろかった。タマ姉が付き合ってくれなかったら坂の下で
「この学校は好きですか?」とかやる羽目になったのだろうか…
>734
GJ。シチュのわりにエロさは控えめだったが、なんだか幸せな気分になった
>746
こっちも4Pでつかぁ。いたく続き期待。
少し気になったところというと、「元々あまり話さない」キツネ評はともかく
タヌキが「元々過剰なスキンシップを好む」とまで知ってる貴明は一体!?と
756名無しさんだよもん:2006/09/30(土) 06:50:53 ID:itS0Hqkp0
ToHeart2 SideStory Linksは荒らされてるのか?
連投してる馬鹿がいるんだが、ああいうの見ると萎えるな
757名無しさんだよもん:2006/09/30(土) 09:33:16 ID:3APTlkx70
俺はいつもミステリ研勧誘が来たらまず服を脱ぐ(靴下以外)。
そしてドアを大きく開ける。
たいていの勧誘人は1分以内に帰る。

一度だけ、フルチンの俺を無視して勧誘を続けるミステリ研勧誘がいたが、
俺が勃起してきたのを見て帰っていった。
楽勝。
758名無しさんだよもん:2006/09/30(土) 11:49:14 ID:1tZktz6m0
>>756
連投は連投だがちゃんと作品は書いてるし、短いながらも設定がそれなりに面白いぞ。
まあ萎えるってのには同意。で、この内容はスレ違いですね。すいません。
759名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 17:42:07 ID:bQfbC+ix0
ttp://omoitukijin.web.fc2.com/natu/review.html 講評(笑)

自分の書いたやつまで誉めててワロタんだが 最高だな思いつき
白詰草さんこいつに一言いってやってくださいよ…
760名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 20:28:47 ID:moSieRgZ0
白詰草も似た様なもんだ
761名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 20:41:47 ID:U+thFjcd0
>>760
マジレスすると、聞かれたことについて
「こういう意図で書いた」とレスしてるのは見たことあるが
自画自賛的なことを書いてるのは見たことないぞ。
あとさ、来て欲しくないんなら話題に出すのやめたら?
それともこのスレはツンデレの集団なのか?
762名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 20:42:49 ID:q1UihWG70
何度もいわせないでよ。
白詰草スレでも立てて続きはやって。
763名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 20:53:17 ID:g7KfcF4+0
久しぶりに来てみたが、いつからここはサイトと作者叩きの
巣窟になったんだよ…('A`)
764名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 20:54:56 ID:9/J383F10
>>763
ま、便所の落書き板だからしょうがない……('A`)
765名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 21:10:57 ID:keTnMPKt0
白を叩いてる人はただの荒らしだから無視して…。
まともなTH2ファンが白を叩くはずがないんだから…。
766名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 21:11:58 ID:keTnMPKt0
>>765
了解。あんな荒らしは早くいなくなるといいのだが。
767名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 21:16:42 ID:r3Fxcl8Q0
・・・何やってんだ? ('A`)
768名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 21:16:43 ID:tnEAeGCH0
>>765-766
酷い自演乙
769名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 21:18:08 ID:U+thFjcd0
>>765-766
主旨はわかった。だから消えろ、お前が。
お前さえいなくなれば、作者も読者も平和に暮らしていけるんだよ。
770名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 21:19:25 ID:U+thFjcd0
>>763
まれに思い出したように「作者イジメは百害あって一利なし」
という内容のレスがあって、それで数日は沈静化する。
またしばらく経ってスレがにぎやかになると、無意味な作者叩きに走る奴が現れて、
なぜか全員それに引っ張られてスレが荒れて作者がいなくなる。その繰り返し。
771名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 21:26:05 ID:KTdkNPJe0
作者を追い出そうとする奴は誰であろうと荒らし。
白詰草氏のように対象が良質な作者であればなおさら。
俺達SSスレ住人は誰一人として白詰草氏を嫌ってはいない。
772名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 21:31:32 ID:U+thFjcd0
>>771
煽りなんだろうが、あえて書く。
無意味なマンセーもやめろボケが。
全員に好かれる作者なんているわけないだろうが。
誰が誰を嫌ってようとどうでもいいんだよ。
要は、
「自分が好きな奴を嫌っている他人がいるかもしれない」
「自分が嫌いな奴を好きな他人がいるかもしれない」
ってのを肝に銘じておけってこと。
ほんとに、ここ数日のレスの流れは自己中すぎて萎える。
773名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 21:34:55 ID:KTdkNPJe0
>>772
何が何でも白詰草氏を嫌っている人間がいるかのような事実を捏造したいんだね。
煽りはどっちやら。
774名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 21:40:08 ID:U+thFjcd0
>>773
荒らすにしても人の文章読めや。
作者が好きだとか嫌いだとか、そんなのは ど う で も い い っつってんだよ。
そもそも個々の作者についての問題でもねえだろが。

SSが投下される

読者が読む

読んだ感想だのを書く

書かれた感想を作者が読んで自作に活かす

この流れ以外のものはスレに必要ないんだよ。
775名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 21:41:03 ID:9/J383F10
>>771
狂信者っぷりみてて萎えるwwwwwww
俺がこれ好きだからこれ嫌いなお前らバカだろって言ってるわけでしょwwwwwww
どれだけ頭使ってないのか自己中なのかwwwwww

誰が好きで誰が嫌いでもいいじゃんwww
もう少し頭使いましょうwwwwwwwww
776名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 21:44:39 ID:U+thFjcd0
>>775
もうひとつマジレスすると、
そいつは奴の作品なんか一作たりとも読んだことないだろうよ。
内容について触れているところを、一度として見たことがない。
777名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:00:29 ID:KTdkNPJe0
ID:U+thFjcd0はいつも無理矢理白詰草氏の話題を出して荒らそうとしてる基地外だからスルー。
その証拠に煽りしか書いてない。他スレ荒らしてることも確認されている。

良質な作者がいなくなって困るのはここの住人自身。
白詰草氏を追い出したら、損するのはここの住人じゃん。
自分の首を締めるようなことをあえてする奴はいない。
778名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:02:11 ID:0R1a0gvrO
また白詰草が自演してるのか
779名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:03:19 ID:KTdkNPJe0
>>778
馬鹿じゃないの?早く氏ね。
780名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:05:22 ID:9/J383F10
自演だろうがなんだろうがどーでもいいwww
ここSS専用スレじゃんwwwww

だまってSS投下まってよーぜー
781名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:08:43 ID:KTdkNPJe0
>>780
白詰草氏を叩いてる奴は荒らしだから何言っても無駄。
スルーするのが一番。
782名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:09:54 ID:U+thFjcd0
>>778
よく言われてるけどな、それ。本気でそんなことがあると思うか?
KTdkNPJe0みたいな自演をやったとして、当人にまるで利益がないじゃん。
とてもじゃないが、そんなことをするとは思えん。
俺はSSっていうか、何かを創作する奴をそこまで低く見れない。
こういうことを書くとまた自演とか言い出す奴がいそうで鬱になるが
俺は白詰草の作品に高い評価を下している方だ。少なくとも嫌いな作風じゃない。
奴のみならず、例えば思いつきの管理人だってそうだ。
前スレの「恋に盲目」にしたって、作品自体はなかなかのものを書いてる。
どっちにしたって、そんな低脳には見えないんだよ、俺には。

というわけで、スルーあるいはNGワードはKTdkNPJe0でFA?
783名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:13:05 ID:0R1a0gvrO
白詰草の自演はいつも見苦しい
コテ付けなければバレないと思ってるなら馬鹿すぎ
784名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:15:20 ID:KTdkNPJe0
>>782
白詰草氏のファンから見てもさすがに不自然すぎる褒め殺し。荒らし確定。

>KTdkNPJe0みたいな自演をやったとして、当人にまるで利益がないじゃん。
>とてもじゃないが、そんなことをするとは思えん。

理論が黄色ネタで葉鍵板荒らしてる狂信者とまったく同じ。
「○○がそんなことするわけないじゃん!」の一点張り。黄色スレ荒らしてる例の子と同一人物か。
785名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:18:34 ID:U+thFjcd0
>>783-784
どの辺りが褒め殺しなのか理解に苦しむ。ただの一般論だろうが。
それとやっぱりきたか、自演説。予想通りの反応すぎて笑える。
まあ言いたいことは言ったから、そろそろ首吊って帰るわ。
あとスレの容量が残り少ないから、誰かスレ立ての準備しときな。
786名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:18:45 ID:KTdkNPJe0
というわけで、白詰草氏を追いつめようとしてる馬鹿は無視してくれ。
彼は最近は…、ペンネーム使い分けてspiderというオリジナル小説を書いている。
興味があればご本人のサイトを参照してくれ。こちらもかなり期待できそうだ。
787名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:20:26 ID:cnX0o1Er0
 
788名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:20:48 ID:r3Fxcl8Q0
なんだ、
只の宣伝か・・・ ('A`)
789名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:20:49 ID:KTdkNPJe0
>>785
お前の書き込みの一字一句が黄色スレ荒らしてる奴の言ってることとまったく同じなんだよ。
黄色スレ荒らしに飽きたからこっちに来たのか。

「俺はSSっていうか、何かを創作する奴をそこまで低く見れない。」って言う気持ち悪い一文もあかさらますぎる。
790名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:22:35 ID:0R1a0gvrO
喧嘩してるように見える二人はどっちも白詰草の自演臭い
791名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:23:17 ID:cnX0o1Er0
 
792名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:23:21 ID:9/J383F10
>>783
どれを自演って見てるのかな?

おいらは
U+thFjcd0 より KTdkNPJe0 
のほうが自演(某S氏)に見えるんだけど
もしほんとに自演してるならね
793名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:29:23 ID:tYmk3rXIO
>792
それだと某S氏は自分をせっかく擁護してくれてる人物を
荒らし扱いしてるということになるからおかしくないか?
794名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:29:36 ID:HelPB0HY0
その話題でこれだけ盛り上がるのなら、もう別スレ立てるけど。
『To heart2の同人作者について語るスレ』でいいの?
795名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:32:25 ID:KTdkNPJe0
>>793
馬鹿は…、ほっとけ。
こんな芸の無い叩きに付き合うほうがアホらしい。
796名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:32:36 ID:g7KfcF4+0
>>794
もうそれでいいんじゃないか。この流れ読むだけで疲れる…


で、このスレ正確には16?次スレは17でいいわけ?
いいなら俺が次立ててくる。
797名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:36:47 ID:KTdkNPJe0
>>796
おおっ、やってくれるか。…頼む。
もう不毛な流れは嫌だから、テンプレにコテ叩きは絶対禁止だと明示しておいてくれ。
798名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:42:39 ID:g7KfcF4+0
立てたよ。
こんな感じで良かったかね。

ToHeart2 SS専用スレ 17
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1159710063/l50
799名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:43:45 ID:hBuVK28T0
賛成賛成、ここは健全にToHeart2の素晴らしさを伝え合う場所であるべき。
正直、荒らしをするような人に来てほしくない。
800名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:45:40 ID:KTdkNPJe0
>>798
乙です〜。
これからもみんなでTH2のSSに萌えていこ。
だって、ここはSS職人あってのスレなんだから。
801名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 23:17:06 ID:HelPB0HY0
こっちも立てた。

To heart2の同人作者について語るスレ
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1159711716/l50

以降、白詰草とか思いつきとかもこっちで。

802名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 23:31:04 ID:5NgZYUsk0
>>801
とりあえず・・・To「H」eart2だから。
803名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 00:59:49 ID:owwS+6TU0
 
804名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 11:28:44 ID:ZvlQ5m510
白とかどうでもいい!

その取り巻き連中がうざくて嫌いなんだ>俺は
805名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 23:09:59 ID:kN2yQkVK0
うめ
806名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 23:10:47 ID:kN2yQkVK0
うめうめ
807名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 23:11:19 ID:kN2yQkVK0
うめうめうめ
808名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 00:05:05 ID:2r/EnDlh0
state
809名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 00:25:53 ID:AoQLgR1C0
ウメ
810名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 09:36:18 ID:XEgvxHjm0
う(ry
811トリーズナー由真:2006/10/03(火) 17:47:22 ID:vMmNxoVZ0
うめ代わりに軽く

ダニエル「(略)…というわけでダニエルは誇りある執事なのだ 分かったか」
由真「分かんねぇ!!」
ダニエル「だったら分かれ!!」
812トリーズナー由真:2006/10/03(火) 17:50:06 ID:vMmNxoVZ0
ダニエル「ワシはダニエル。この星を…いや時系列を超越して全宇宙を支配する来栖川の執事だ!!」
由真「意味が分かんないわよ!」
ダニエル「ハハッ…おバカなお子様にはお難しいお話をしたようだな…
     ならば、イエスかノーかで答えてもらおう。」
    「ワシのあとを継げ!!」
由真「ノゥ!!」
ダニエル「イエスと言え!!」
由真「絶対にノゥ!!!」
  「ちょっとおじいちゃん分かってんの?あたしは反抗期なのよ?」
  「ノーとしか言わないんだから!」
ダニエル「ならば心変わりを誘発しよう…」
由真「!!」
 改造メイドロボ集団!!!!
ダニエル「この1000体のメイドロボにおぬしは勝てるかな?」
由真「 イ エ ス 」
ダニエル「…!ノーとしか言わないハズ…!?」
由真「激動のハイブリット×1000!!!!」
813トリーズナー由真:2006/10/03(火) 17:52:34 ID:vMmNxoVZ0
貴明「このバカがッ 周りを見ろォ!!貴様のせいでツインビルに来てしまったではないか!」
由真「…で?ツインビルってなんだ?食えるのか?」
貴明「食えね────よッ!!」

814名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 11:37:21 ID:p/+98q/W0
           ∧_∧
         < `ш´>
       _φ___⊂)_     以上、このスレッドは私が執筆した。
     /旦/三/ /|    新しい新スレにも期待してくれたまえ。
      l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l  |
      | 超1000res |/
815名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 11:38:31 ID:p/+98q/W0
           ∧_∧
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       _φ___⊂)_     以上、このスレッドは私が執筆した。
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      l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l  |
      | 超1000res |/
816名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 11:40:05 ID:p/+98q/W0
           ∧_∧
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817名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 22:14:34 ID:D7YTJ4jZ0
埋め
818名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 22:19:40 ID:hOnLGGO50
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819名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 23:54:31 ID:UyxvQ7iX0
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820名無しさんだよもん:2006/10/06(金) 11:52:59 ID:yEklu3A10
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      | 超1000res |/
821名無しさんだよもん:2006/10/06(金) 11:56:44 ID:2eQpTZXT0
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         ヽ:.'ト:`.、.  \ ノ ,.イ:..レl:./ こーしどの!
         `ト;.:|:.:|:.:.ト - イ:./:.l:.:/リ
        _,、-‐ヘ:「Y´   `y'y'l./‐-、
       ,> 、\ V .',    / .レ  />、
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  {二二二ニ|    /::::::::/:::|::l:::ヽ::ヽ   |二二二}
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822名無しさんだよもん:2006/10/07(土) 12:58:44 ID:BhPALlgw0
           ∧_∧
         < `ш´>
       _φ___⊂)_     以上、このスレッドは私が執筆した。
     /旦/三/ /|    新しい新スレにも期待してくれたまえ。
      l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l  |
      | 超1000res |/
823名無しさんだよもん:2006/10/07(土) 12:59:25 ID:BhPALlgw0
           ∧_∧
         < `ш´>
       _φ___⊂)_     以上、このスレッドは私が執筆した。
     /旦/三/ /|    新しい新スレにも期待してくれたまえ。
      l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l  |
      | 超1000res |/
824名無しさんだよもん:2006/10/07(土) 13:00:37 ID:BhPALlgw0
           ∧_∧
         < `ш´>
       _φ___⊂)_     以上、このスレッドは私が執筆した。
     /旦/三/ /|    新しい新スレにも期待してくれたまえ。
      l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l  |
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825名無しさんだよもん:2006/10/07(土) 13:01:38 ID:BhPALlgw0
次スレ。

ToHeart2 SS専用スレ 17
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1159710063/l50
826名無しさんだよもん:2006/10/08(日) 08:28:12 ID:hFBX7PDS0
                 __
               ,. - '"´   `丶、   うまれーぃ!うまれーぃ!
     O  。 /          :.:.\   この紋所が目に……うまれぃー!
.      ゚   /    | ! l    、  ヽ:.:ヽ / ,.ィ ,ィ   皆の者〜、うまれっ!
   。      l :   ! ハ ! l: ヽ  ヽ:.:.:.l:.:.:l//:.///   うまれーぃ!
         o l.: ヽL_l_l_,', ヽ 、_、__...>l、:.:|..:/..:/ィ   このお方をどなたと……
      O    .|:  |:.!l:.|___ヽヽ\ヽ、、:.:.:.:.:.:>ヽ'/⌒ヽ   うまれーぃ!
        。   |: : !:|,イ:::::|. ヽ\「:::::l∨丁/r┤:|   ええぃ!うまれっ!うまれーぃ!
    ___ l: :.:N c-'    c-ノ'/ :.|' / !/l   先の副将軍、
   f":::::::::::::::::::`i: :.:.|ヘ "" f ̄ ! ""/イ :.|ヽ、' /   水戸の御老……うまれーぃ!
.  _!  ::::::::::::::::ハ:.:l:ト`丶、ー' ,.ィ/: | :/!:.//\   うまれーぃ!皆の者、うまれーぃ!
  (.__`>===ヽ |:.:N: : : l._ ̄_/: :.!/ノ//  _l   水戸の……うまれーぃ!うまれーぃ!
  (.__`>ヘ/77:::::l/ヽ'、ヽ: :ヽ   /: : /:/イ /´ \
  l(_`>'V./::::::::|  ! `ヾミ=_∨=三ィ  l //    ヽ   みんなっうまれ〜〜ってばぁ〜〜!!!
.  V__>::::::::::::::::| /  ,. - ¬|: :ト`:丶、 |'/      lヽ、
    |,. -――- 、l /: : : : :/TT、: : : : :>\        \__
    ゙ ー--− '"ト、 ヽ、: :./: :! !:.\: :/ .|  ヽ、          ` ヽ__,. 、_
          /  /:ヽ/: : :| |: : : :`\!    \        ハ  ´,ィフ
            〈  く: : : : : : |. !: : : :/ }     `ヾ丶    // ー'二フ
            ,.\  `−- "l l  ̄    /!       ゙ー一' ^ー '´


827名無しさんだよもん:2006/10/09(月) 02:07:46 ID:zV/CsOSs0
     ゞ    /ノ
    _
   (ノ           , -,
                ⌒゙    ゞ    〈〉     ちょっと泣き虫だけど
o      ()

       , - ー  、      ,'ヽ
    /         ` 、    ´
   /   ハ          :.
  . f  :,/|ヾ ヽ ヾ   :.\ ;;;;j  /      (゙j           たぶん、世界一の「埋め」です    {ノ
   f f:.f,_|  \\__ヾ、 :.:.:.:.:;;j ///`、
  { l |:.lff;;;p:   ヽf;; p\\f/^`
   | l |:.l゙l_;;j    |、;;j ;j,l:.|゙ミff
   | l |:.l'''   '    ''''/ノl:.|jノ      C
  f t.| |:.l\ ( )  //, l:.|\
. f  t |:.l:.:.:f ` ー ´ /:.:.: ,l:.|:.:.: 〉
f   || tt:.:.:l "''''"/::.:.:.,,jノ:// ヾ
j   lヾ:.t:.:.l ./:.:.:.:.:.:.:.;;/ ,  ヾ
    t. ヾ:.l./__ :.:.:.;,,/\/   }
.  <´´ ̄`「」 ´ ` ヽ  , ヾ
   ヽ,_ 〃ハヽ 、 /' "  i     j
    r /=j _;j__ヽゞ_ , ;...." t
   「/:.:./:.:.l:.:.:.l:.:.:.:.t:.:.:.:.:.:.:.ヽ    > っ
   《:.:.:/:.:.l:.:.:.:f:.:.:.:.:.jj:.:.:.ヾ:.:.:.ヽ/_つ
    4===L___l , = 、_l, = 、ヽ ^
828名無しさんだよもん:2006/10/09(月) 14:22:05 ID:/ConIICL0
      _,、z=;'"´ ̄`~"ヽ、
    _,ィニ=ュ、(  `"'''‐、,  ヽ、
   ,r゙ ,ィ'゙   、 、 ヽ、.  ゙ヽ、 \
  / / ..    、ヾ、ヽ、,,ゞr,:.、:..゙'ヽ、゙ヘ、_
 j :: ! i:: |:  } l i゙lヽイ、;r‐t、;.ヾ;:..ヾ゙'、ヘ、
 !:.::l: }:: :|:_,、l-i:|゙l} ゙'i, ゙'i;::゙'i,ヾ、;ヾ、ヽゝ^
 ゙!;::|: ::l: ,r'i゙::;j,rtlj '゙   ゙ー'゙ iノ゙ヽ、゙'j
  ゙i;::l: ::i:゙ ::|::i゙:::゙'ヘ      ''゙ j:: }
  ゙i;:!:.::|::.:j/i{ヾ;;;;/    `,   /:;ノ   「あんたで何人目の埋めか教えてあげようか?」
    ゙|::::l;::::;::ヾt、_''"    ,ィ゙/"~゙''''‐ュ,
    !:;j::;::}Vヘ;:::ヾ;"iヾ''''"´ i、゙'i、  、,  ゙ヽ,
   j/|/ミ'、;:::::ヾ、;:::、{ ,}―‐'''l,ヘ\  ヽ、! l i'、
    "゙ヽ`゙''ー-‐‐ン''<゙ヽ、  ゙i ~゙l, i,   ゙ヽ!! ヽ,
      ゙ヾ、;;;;;:r'゙'-<゙;"''‐゙、ヾ、 ゙ヽ!,    ゙{ _ \
         i:::::::::::::゙ヾ、;;:.゙ミヾ'ヽ,゚ヾ;t、.,_::゙l ゙ ニ゙=-t
         !::::::''゙"':::::;::゙ヾ;:゙ヾ、 }, 。i,゙ヾ;`゙i::.... '''''"`'ヽ,
         l::::     `'‐=!、゙} j ゙i, .゙i;:::'゙ヾ;:"'''     ゙ヽ、
         ヾ;:        ゙i;;::}:::..};::゚:ヽ;::::;ヘ;::::..      `ヽ、
          ヾ;.       、,_~、;:::i{:: .。゙、': :lヾ;::::..      _,,゙ヽ
             \ ゙''' "'''':::::‐--゙ヾl;:;;:::;::。i::゙ヽ"'=、;;:.. : : r'" ,゙>}___,,._
             `i、       `''ー゙ーュ;:::;!、}/:i'"  ゙ヾ、;_;{;;::.l´  ,_ヽ_':、i,
              ゙iヽ、     ‐'" ̄ ̄"`゙ヾ<,,_      `^i、 _ャ-‐'=゙ー゙ュ_
               ゙i;::゙ヽ、              ̄`ヘ、,..、‐'´  ‐,二ニ-'
               ヽ;:::':;`ヽ、_ ..                ̄i, ゙i    ,二ニ''=
                 ヾ;::ヾ;::::`゙ヾ、;;::::::::::::....     ...:::};;;;ノ―'"´
829名無しさんだよもん:2006/10/10(火) 02:01:03 ID:Pg2FIJCv0
             ,. -ィ~ ̄``ー-、
            ,イミ  { i  ァ'"´ ≦、
            |ミ/´`ヾ./ `ヾ  三ミ、
            lミ'i,、__ , ; __,、Nーィ"~´
            }ヘ' -ェニ゙ 'ニェ- レ^{
           〈 {¨ー‐;^ー‐'¨} /
            ゝ!` '辷=゙、 i7    「埋め」を継いでくれんか 
             ト/ィ"¨ヾ\.l
             イ'"`ヾili/'~゙`ヾ、
          _,.ィ |\__]∨[__./| ゝ、
        ,.-‐ " /  |  〈._ソヾ_.〉 | ヽ ` ー- 、
    /     /  |     l l   | ヽ     \
  _,ノ´      /   |     l: l   |  ヽ      ヽ._
. }ヽ      〈   |    l: l    |   〉      /{
 !       「``ヽ'´|    l: l    |ヽ-'´ .!        !
. !   ヽ    !   |    l: l     |    !    ,   !
.,!    ゙i     !     |     l: l.   |   .!    i'    !
,!     i    !   |     l:.l.   |   !    i     !
830名無しさんだよもん:2006/10/10(火) 10:31:39 ID:bSxqWBfp0
    __
  。i´-‐=- ヽ。
 ん!jji!tリ!lt!l i〉
  !i!!i ^ -^ノ|  
   i'○Y○   「埋め」ちゃうね〜♪
   んiL+!j,、
    ヒ7ヒ7

831名無しさんだよもん:2006/10/10(火) 15:11:40 ID:1G5r/YcA0

   | ii i il |  |   | ! ! ,'      ', i i l  |     | i i |│
   | ii i !| ヒ.二!    H | '       ', i i l  |     | i i |│  i
 i i | ii i !レ≦三三≧トl、|i         vレ≦三三≧<! ! ノノ│  i
 i i | li i,イレ7云三三三rvi{         Y´/云三三三少くノi │  i
 i i | |i く!7 ハ(__)三三三|             |(__)o三三三}ハ ゝ !   i
 i ii| ||   { {{二二二三|             l E三三三ヲ//´ } j   /
 i i i iハ    、ヾニニニヲフj            |弋三三三//  / /  / /
  V! V ハ    `っ=-‐ ~´              `   ‐-=≠/  / /  / / ,'
, ヘ   ∨{ ヘ   :::::::::::                   :::::::::::    / /  / / /
 人 ヽ. ヽ、ヽ   ' ' '            |           ' ' '   / /  / / /  ,'
/// \ヽ、 ヘ\                         , '/  / / /  , / ̄ ̄ ̄ ̄
//   トへ.ヽ、ヘ ` ー-      `ー-‐‐-‐'       、_ /´/ / / /  / |
/  / i  i \ ` ヽ                           イ/ //  , <  タカ坊っ、埋めよっ!
  ,'| i  i i  ` ‐-\                         ∠少/,.イj  /   |
' /│ i  i i  i l\ > 、                  ∠三/, イ!川  |   \____
//,'| i  i i  i |  \/ > 、             イ三ヲ゚,イ川jノi |   |  | i
//│ i  i i  i lヽ /二三ヘ `  、_ ,.  ´   ト=彳///< ノ |   |  | i
/,'/| i  i i  i l/`ー==三ハ              |三 ///三三トj  |  | i

832名無しさんだよもん
            ,、==-,.、 -- 、.. -- 、
            / __/-‐`:.:.:`~:.:.:.:.‐:`ヽ
           ,r/´: . /: . /: . : . : 、: . :`ヾrz、
        r‐r=7ーァ彡ソ:.:l:.:.:.:.:.:.ハ:.:'; .ヽ:.:.ヽヘ
       / /{  {{ ´_r_´:;l.:‐+.、:..: /- l:、!:.:.:';:.ヾ: .:ヽ
     /   \__>r:.T|ハ!ヽ| ヽノ  ソハ:.:.:l:.:.:}:.:.:.:l
   /    _/:l:.l!:.:l:| z==`  ==ミ、j:ノ:.:/:.:.:.:.|
  /      /ハ:.:.:|ヽ(.l::!    、    ノィ/|:.:.:.:!:|  次スレもよろしくであります!
  /     /  `;:ト  {:人   「_ フ   /:.:リ |::::.バ
  {    ノノヘ、  ヾ  ヾドヽ、_  _, イフジ  j!ノ
  \      ヾー--r-、  ゙} ~´ {=、 ´   ´
    ヽ、    ヘ  ト| l  ̄{フ     マヽ_
      `丶    | ゙、'、  |r===、/   `ヽ
         `丶、 l  トヽ `、   /   /ハ
            ヾl!/ `ヽ、ヽ/___ ./l   !
                {__/ ̄テ{]≦-、  Y'´ |