「引き返すのは無理だな、今からUターンすれば路地に入る前に蜂の巣だ」
マスターが冷や汗をかきながら答えます。
「バックで逃げ込んだとしてもバズーカを避けられない」
『マスターが降りて戦うというのはいかがでしょう、芳賀さんにマスターの活躍を見せられますよ』
「悪くはない、だけど俺は生憎小指からでも再生できるような人間じゃないんで却下だ」
『と、すれば』
残る選択肢は一つになります。
「悪い玲子さん、ちょっとの間黙っててくれ、舌噛むと痛いだろうし」
「ほえ?」
「ミルト悪いな、また無茶して」
『この一件が終わりましたらオーバーホールとメンテナンスをお願いします』
「生きてたらな」
相手が対応する前に急加速で強行突破。
マスターらしいといえばマスターらしい手段です。
「行くぜ!」
マスターがアクセルを踏み込み、私は包囲を強引に突破すべく急発進しました。
A 何発か銃弾がかすめたものの、幸運にも私は包囲を突破することが出来ました。
B 包囲は突破できましたが、何発もの銃弾やバズーカの至近弾で私のボディはひどく傷ついてしまいました。
C バズーカの直撃! 私の左前輪部とボディに……申し訳ありません……マスター……
C
キキキュィィィィィ!!!
派手にアスファルトを削る音を発しながら私は強行突破を試みます。
狙うのは包囲の中の僅かな隙間。無論、敵も予測済みでしょう。
一斉に取り囲みないしは銃撃の準備をしています。
完全に突破口を塞がれ、集中砲火を浴びるのが先か、突破するのが先か。
勝負の分かれ目はギリギリです。
カチュン!カチュン!カカカカン!
小口径のタイヤを狙った銃弾がボディに当たります。
包囲の隙間が埋まるまで数瞬。一気にそこを飛びぬけようと。
ガスン プスプス
「なっ!」
『これはっ!』
ここにきてブーストの連続使用のツケがエンジンにきてしまいました。
十分な加速を得られず、私は突破口を完全に塞がれて。
ド ゴォォォォォン
「ぐぉぉおっ!」
『マスターっ!』
発射されたバズーカーの砲弾が左前輪部とボディを吹き飛ばします。
幸いエアバッグが正常に作動したので中に乗っているマスター達に負傷はありません。
しかし、車体の四分の一弱を損傷し完全に機動力を奪われました。
取り囲む敵はここぞとばかりに集中砲火を浴びせかけようとします。絶体絶命のピンチです。
A ここでミルトに搭載されていた逆転の緊急避難装置が発動する。
B どこぞの映画のようにタイミングよく救世主があらわる。
C 宗一もろともミルトは粉々に吹き飛ばされる。現実は非情である。
A
「よう、NASTYBOY」
「お前は……」
その時、取り囲む敵の中から現れたのは……
「住井じゃないか。そんなに俺の命が欲しいのか?」
「商売敵は減らしとくに限るからな。悪いが死んでもらうぜ?」
そう、今回の首謀者である……住井護。
直接マスターの前に出たのは余裕でしょうか、それとも油断でしょうか。
……おそらくは前者でしょう。完全に相手のペースですから。
住井は悪びれた風もなく、拳銃の照準をマスターに合わせます。
「甘いんじゃないか? お前が堂々と俺の前に現れるなんてな。
人を雇ったんなら、温かい寝床でママのおっぱいでも吸いながら成功を祈ってるべきだろ?」
「絶体絶命な状況でよく言うな。それに俺はこの手でお前を片付けないと気が済まないんだ」
「……だから甘いって言ってんだよ。誰が絶体絶命だって?」
マスターがニヤリ、と笑いました。
その瞬間、マスターのやりたいことを私は理解。
車遣いの荒いマスターで困ります。
「ミルトォッッ!」
『了解しました。マスター』
私はその瞬間、緊急避難装置を発動させます。
先に断っておきますが、他の五台のクルップにはそのような機能は搭載されておりません。
あくまでマスターが私だけに施した改造ですから。……女性の身体を弄るのは、やめてほしいのですけれどね。
その場に沸き立つのは……煙。
マスターが私に仕込んでいた、煙幕。
普段は混戦の時に使用し、相手の目をくらませるものなのですが、
今回のように私の走行が不可能な場合には全くの無意味。
一体、どのような意味が……。
そう私が考えていた、その時でした。
場に響く、数発の銃声。
やがて……煙が晴れ、そこに立っていたのは、マスター。
頬に銃弾を掠めたと思われる傷跡。手には愛銃であるファイブ・セブン。
住井は眉間を撃ち抜かれ……即死、でしょうね。
「……住井。お前は三つのミスを犯したよ。
まず一つ、確実性よりも私情を優先した。エージェント失格だ。
次に一つ、俺の通学の邪魔をした。
それから一つ、人の愛車をスクラップ寸前までにぶっ壊しやがった!
どうしてくれるんだ、この!? 世界に六台しかないんだぞ、もったいねー……」
マスターが大きくため息をつきました。
それから、周りを囲っていた武装されたギャングに一喝します。
「さあ、お前らのクライアントは死んだ!
どうする? このまま俺とやってもタダ働きだぜ?
俺だってテメェらごときにやられてやるつもりはないからな、それよりも命の危険を考えたほうがいいかもな!」
場に流れるのは、数秒の沈黙。
そして、その後……ギャング達は撤退を開始しました。
それを確認して、マスターがへたへたと座り込みます。
「……やったぜ。どうせ金だけが繋がりの集団だ、頭さえやればなんとかなると思ってはいたけどよ」
『お見事なハッタリでした、マスター』
「茶化すなよ。そりゃ、あの人数と武装を相手にしてたら俺も少しばかりキツかったけどさ」
それにしても、今回もまた危ない橋でした。
敵が矢面に立たなければ、私情よりも確実性を優先していれば、今頃マスターは……。
この強運と、無鉄砲振りがマスターがNASTYBOYと言われる所以なのですけれど、
流石に毎回このようなミッションばかりでは、先にこちらのほうが参ってしまいます。
『マスター。申し訳ありませんが、私の修理はお願いできないのですか?』
「あ、ああ。だけど、ここまでぶっ壊れちまって直るかな……?」
マスターが私の車体をちらりと確認します。
吹き飛ばされた左前輪、オーバーヒートを起こしているエンジン。
……被害甚大です。新しく買いなおしたほうが早いですね。
修理費だけでも億は飛ぶでしょう。心苦しいですが。
でも、だからといってスクラップにはしないで下さい。お願いですから。
私は暗闇から目が覚めました。
……いえ、機械の私に睡眠という概念は存在しませんから、
正確には『再起動した』と申し上げるべきなのですが。
「よう、ミルト。気分はどうだ?」
『……マスター』
前回のミッションで大破した私は、そのまま修理に出されることになりました。
始めに確認したのはマスターの姿。どうやら健在なようで何よりです。
「と、とりあえず……完全に直ったぜ」
『とりあえず、とは?』
マスターが何やら狼狽して答えたので、私は聞き返して見ました。
すると、マスターは更に動揺を広げます。
「な、なんでもない。なんでもないさ、ははは……」
『マスター……正直に申し上げてください。何か問題でもあったのですか?』
あまりにも怪しいので、私はさらに問い詰めました。
まさかエンジンの性能が著しく低下していたり、
非常に劣悪な外見にカスタマイズされていたりしているのでしょうか?
「まあ、隠しても直ぐにばれるしな。正直に言うと……」
A 館長に修理を任せたら変な武器一杯仕込まれちまって……
B 新しく変形機能が追加されたわけなんだ……
C ……すまん。修理不能でお前のボディは完全に廃棄したんだ
C
ここで美少女ロボ化w
「……すまん。あれほど派手にぶっ壊れちまってると、手の施しようがないって言われてさ。
言いにくいんだが……お前のボディ、完全に廃棄した」
『……今、何と?』
「だから、ね……ミルトさん。
クルップ901RS2 Ver.2008-0002-Sという車はもうこの世になくて、
代わりにあるのは……その……」
そこでマスターは言葉を一旦切って、手鏡を私の前に差し出します。
そこに映っていたのは……フロントガラスでもヘッドライトでもなく、完全な人の形。
年頃はマスターと同じほどの女性でしょうか。これが……私?
『それで、マスターは私の人格データのみをこのロボットへ移した、というわけですか』
「いや、マジで悪かったって!! お前ごとスクラップにするわけにもいかないだろ!?」
確かにマスターの言う事も尤も。
私の人格ごとスクラップにされるよりは幾分か良いのかもしれませんが……。
『どうして人形のタイプなんです? マスターの力なら、新しい車のボディを用意することも出来たでしょう?』
「ボディの手配を館長に頼んだら、何故かこうなっちゃってさ。
何でも館長の甥っ子が来栖川エレクトロニクスに務めてるから、そっち方向で工面してもらったらしいんだけど」
なるほど、あの人の趣味ですか。
マスターが言うには、この体は来栖川のHMシリーズの最新型の別モデルだそうで。
「それに新調するなら前みたいな超高性能な車でないと、お前に失礼だろ?
今まで軽々と追い抜いてきた他の車たちに追い越されちゃあ、お前のプライドにも傷を付けちまうしな」
『そういうことで、納得しておきましょうか』
「安心してくれよ。ちゃんと車のボディの方もそのうち取り寄せるからさ。
ただ……前みたいな性能の高い車は、いくら俺でも手に入れるのが大変なんだが」
ええ、それは理解してます。
マスターが私を手に入れるだけでも相当骨を折ってましたし。
私と同程度の性能の車体を求めるなどということは酷というものです。
期待しないで、待つとしましょうか。
『その間私の処遇は如何いたしますか? もしや適合する車体が見つかるまでデータを凍結して……』
「いや、そんなことはしないから! 俺のせいでお前の体がなくなったわけだし!
そうだな、とりあえず……」
A ウチのアパートの管理人なんてやってたらどうだ?
B 俺の身の回りの世話でもしてもらおうかな。ちょうどメイドロボの体だし
C いっそのこと俺の学校の転校生として生活してもらうか
Aだな
めぞん一刻キタコレ!?
宗一の暮らしているアパートの管理人か、
それとも、宗一の所有物であり、七海のいる魔(物なジジイ達)の巣窟マンションの管理人と間違えたのか。どっちだ?
もしマンションの方なら周りが名も無いジジババばかりという事態に陥ることになる。
適当に誰か住まわせればいいじゃん
あ、いいねそれ。
葉鍵学園ならぬ葉鍵マンション(アパート)か。
「俺のアパートの管理人、それやっててくれないか?」
『管理人……ですか?
お言葉ですがマスター、本邸の管理人職には七海様がいらっしゃいますが』
「それは本邸の方。俺が頼みたいのは普段俺がいるアパートのほうだ。
実はあのアパートも俺が所有しててさ、管理人がいないままなんだ。
出来ることなら学校までお前を連れてって面倒見てやりたいんだけど、そうもいかないしな……」
『……それで、その本心は?』
「そこまでしたら皐月やゆかりが何を言うか分かったもんじゃない。……って、しまったぁっ!!」
なるほど、よく分かりました。
マスターは古い女よりも今の女のほうが大切なようです。
『分かりました。では命令どおり邪魔な女は管理職に勤しむことにします』
「拗ねるなよミルト! ちょっと待て……!!」
私が踵を返そうとしたその時……
べちっ。
鈍い音がして、私の体は地面に投げ出されました。
しかも痛みまで感じる始末。痛覚機能などという無意味な機能まで、この体は搭載しているんでしょうか。
『……歩行というものは難しいものですね』
「車の体とは勝手が違うだろ。だから待てって言ったのに……」
前途多難です。
こんな調子で、本当に私がアパートの管理人など出来るのでしょうか?
そういうわけで、私はマスターのアパートの管理を任されることになりました。
私は複雑な気持ちでこの体を確認します。
流石はHMシリーズ、人間に非常に近い形に作られています。
別モデルで、しかも今回は私のために用意されたものですから、メイドロボの特徴とも言える耳も普通に人間のものと同じです。
そう、今の私は人間と殆ど全然変わりません。黙っていれば人間と言っても通るぐらいに。
それと、私の正体。つまり私が機械であることについてですが……
A 住人の方たちには隠すことになりました
B 予め住人の方たちには知ってもらうことになりました
B
HMシリーズならいいだろ
あえて隠すことでもありません。あらかじめ住人の方には話を通しておくことにしましょう。
「よし、じゃあ早速行くか。歩きの練習がてら電車とバスでいくぞ」
何もないところで転ぶなどのいくつかのトラブルを経て、マスターのアパートに着きました。
あまり目立たないつくりですが、いろいろと防御機構などは整えてあります。
近くに私のガレージもあります。今は空っぽの。くすん。
「ところで、私はどこに住めばよろしいのでしょうか、マスター。
マスターの部屋ですか?」
「管理人が一住人の部屋にいていいわけないだろ。管理人室だ、管理人室。
だいたい皐月やゆかりに知られたらどうなることか」
後者が主目的ですね。マスターの部屋の入出はよくチェックするようにしましょう。
「じゃあ、俺はいったん部屋に戻るわ。何かあったら顔を出してくれ」
そういってマスターは自室に戻られました。
さて、挨拶にいきましょう。まずは最初の部屋ですね。
表札には、このように書いてあります。
A 柏木耕一・楓
B 伊吹公子・風子
C 椎名繭
D 葉月真帆
E キャラ指定(Routesを除く)
E
由宇
「誰や? 初めて見る顔やな〜」
『……初めまして。今日よりこのアパートの管理人を務めさせていただくことになった、ミルトと申します』
「あ〜あ〜、そう言えば宗一が言うとったな、何でもメイドロボの管理人が来るとか……」
ドアを開けて出てきたのは、関西弁が特徴的な女性でした。
マスターは私のことをそう説明なさったのですね。……まあ、元車だといっても話がややこしくなるだけでしょうが。
……そうそう、言い忘れておりましたが、どうやらマスターはここでは普通の高校生として通っているらしいです。
確かに隣近所に正体が知れ渡っているエージェントなどカッコよすぎます。
その上クラス全員に正体を見破られて、写真付きファンサイトまで存在していたら言う事がないぐらいに。
マスターに限ってはそのようなことはないと思いますが。おそらくは、ええきっと。
「ウチは猪名川由宇。よろしゅう頼むわ!」
『よろしくお願いします、由宇さん』
私は頭を深々と下げます。
「なんや、見る限り人と全然かわらへんやんけ」
『私は従来のHMシリーズとは別モデルですから』
「結構話題になるかもしれへんな〜。”メイドロボが管理するアパート”これはネタになるで〜!」
ネタ? なんのことでしょうか?
私が疑問に思ったのを見抜いたのか、由宇さんが説明を続けます。
「ウチはな、こみパでサークル活動やっとるんや。
こみパに来ることがあったら、ウチの出した本を贔屓にしてや〜!」
『ええ。機会があれば』
私は曖昧な返事を返し、二、三言由宇さんと話して別れました。
それから私は管理人室へと戻ってきました。
由宇さんの話によると、このアパートに住んでいる人は殆どが学生だそうで、
今の時間は学校で授業を受けているのだそうです。
ですから、これ以上の挨拶は夕方に行うことにしましょう。
部屋の中で、私はゆっくり腰を下ろしました。
……どうも、この体は落ち着かないです。以前のボディとはあまりにも違いすぎます。
まず二足歩行。そこが大問題です。
以前まで私は安定性の高い、車高の低い四輪車でした。
それが今日になって突然二つの足で歩けと言われましても……戸惑います。
重心の取り方、足の動かし方など、今までの私に経験のないことばかり。
ここまでの道のりで、なんとか普通に歩行することは出来るようになったものの、
急に走ろうとすれば、まず間違いなく盛大に転ぶことでしょう。……慣れるしかありませんね、そこは。
一応この体には学習機能があるので、経験を積めばどうにかなるでしょうが。
この体たらくで、住人の皆様に迷惑をかけなければ良いのですが。
さて、夕方まで思わぬ時間が空いてしまったわけですが、何をするべきでしょうか。
A 表の掃き掃除をする
B 料理というものを経験してみる
C 部屋を綺麗に整頓する
D その時、私の様子を見に人が訪れました(人物指定)
A
マスターが私に教えてくださった管理人の仕事というのを思い出します。
まずこのアパートを綺麗にすること。……それ以外に何も教えられていません。
いえ、それ以外に仕事はないと言うべきでしょうか。
家賃徴収も振込みで一括ですし、アパートに不具合が出て修理や改装を頼む場合も、
私からではなくマスターから依頼するのが道理というもの。
あと仕事らしい仕事といえば、強いて言うなら……留守番と言ったところでしょうか。
本当に掃除以外何もすることがありません。
逆に言えば、マスターは走れない車など役に立たないと言いたいのでしょうか。
……いえ、確かにそれは事実なのですが。とにかく、最低限命令された職務はこなすことにしましょう。
外に散らかっているゴミなどを、箒で一箇所にまとめます。
最初のほうこそ戸惑いましたが、慣れてしまえば運転より簡単なものです。
確かに、この程度が日課であるというのなら、車である私にもこなすことができましょう。
風を切るスピード感こそ得られませんが、たまにはこのようなゆったりとした空気もいいものです。
「よっ、やってるな」
『……マスター』
掃除も終わる頃に、マスターが私の様子を見に来て下さいました。
マスターはそんな私を見て、困ったようにため息をつきました。
「その呼び方、問題だよなあ……」
『問題、ですか?』
「いや、俺ってここでは普通の高校生として生活してるワケだし、
ここの管理人がいち住人を『マスター』って呼んでたらヤバイって話だよ。二人だけのときはともかくとして」
『では如何いたしましょう?』
「普通に呼んでくれればいいさ」
マスターが曖昧な答えを返しました。そのような返答をされると、私としては非常に困るのですが。
マスターのことをどう呼んだら良いのでしょう?
A 普通に『宗一さん』と呼ぶ
B 少し心苦しいですが皐月様やリサ様のように呼び捨てで
C ゆかり様のように『宗一君』と呼ぶのが無難でしょうか
D 夕菜様のように『そうちゃん』と呼ぶのは如何でしょうか
E 七海様のように『そーいちさん』と呼んでみましょうか
あえて「マスター」と呼び続ける選択肢が無い事を惜しみつつDで。
『ここは親しみを込めて「そうちゃん」呼ぶのはどうでしょうか』
「う゛っ、そ、それは……」
私の提案にマスターが少し気まずそうな顔をしました。
ここ数年、マスターは夕菜様に会われていないご様子。徒に心の傷に触れてしまったのかも知れません。
『お気に召さなければ別の名前にしますが』
「いや、“普通に”なんて曖昧な事言っちまったからな、とりあえずそう呼んでくれ」
マスター……そうちゃんの許可も得ることができ、一安心です。
『本日の清掃作業はこれぐらいでいいでしょう』
掃除を終え、私は一度管理人室に戻り、改めて自分のボディを確認しました。
鏡の前にはHMシリーズの筐体に生まれ変わった私の姿が映っています。
開発中の最新型だそうですが、色々とバリエーションがあったらしくカスタマイズされたもので
具体的に言いますと――
A 背は
1 マスターより少し高いくらいの女性としては長身の部類
2 マスターより少し低いくらいの女性としてはごく標準的な部類
3 マスターよりかなり低く女性としても小さな女の子という部類
で
B 胸は
1 伏見様もかくやといわんばかりの豊かな双丘の盛り上がり
2 皐月様と同じぐらいのほどほどに育った乳房
3 七海様もかくやといわんばかりのわずかなふくらみ
で
C 髪型は
1 綺麗で艶のあるロングのストレート
2 ボーイッシュなショートカット
3 二つに整えられたツインテール
4 その他自由に髪型を指定
で
ちなみに髪の色は○○です(髪の色を指定)
A2
B2
C4 ポニテ
金髪
A1
B1
C1
身長、胸囲共に女性としては標準。
醒めるような金髪。それを後ろで縛った、いわゆるポニーテールと呼ばれる髪型。
バランスの取れた、端正な顔立ち。……完璧ですね。
世の中の美の基準から考えて、美しい部類に入る体だと思います。
よもや中身がハイウェイを暴れ回るスポーツカーであるなどと、誰も夢にも思わないことでしょう。
このようなものを、俗に技術の無駄遣いというのでしょうね。
この体は限りなく人間に近いように作られている模様です。
馬力は日本の女子高生の平均ほど。走行可能距離もそれぐらいでしょう。
……失礼、つい車と同じように考えてしまいました。
とにかく、今の私は車ではなく、普通の女の子であるというわけです。
しかも活動に必要なエネルギー源は人と同じように食事で賄えるのだとか。
いわゆる未来の世界のネコ型ロボットと同じような動力ということです。いえ、流石に原子炉までは搭載してませんが。
防水処理もほぼ完璧ですし、睡眠まで取れるとのこと。
製作者が『人間に出来ることは全て出来るようにする』ということをコンセプトに作った結果らしいのですが、
率直に申し上げますと、それは無意味だと感じます。
ピンポーン
その時、玄関のベルが鳴りました。
私を訪ねる人などほぼいないと思われるのですが、どなたでしょうか。
ドアを開けると、そこにいたのは……
A マスターでした。部屋の整理を手伝ってくれるとのことで
B エディ様でした。冷やかし……いえ、様子を見に来たようで
C 長瀬様でした。どうやら私の姿を見に来たようです
D 由宇さんでした。何でも、今日は私の歓迎がしたいとのことです
E 私の隣の部屋に住んでいる人でした。わざわざ挨拶に来てくださったそうです(人物指定)
B
「よお、こんちは、ミルト」
「あ、エディ様。お久しぶりです。よく私とわかりましたね」
「ナビゲーターをナメちゃいけねえゼ。まぁ、ソーイチから話を聞いてただけなんだけどナ」
こちらはエディ様。マスター……いえ、そうちゃんのサポート役、ナビゲーターをされている方です。
そうちゃんが世界一のエージェントである理由のかなりの部分を占めているといわれています。
伏見様などからは陽気なおじさんとだけ思われているようですが。
「今日はどうされたのですか?」
「イヤ、ミルトが戻ってきたっていうから、冷やかしにナ。しかしまあ、よく化けたもんだナア」
「そうですか?」
「あぁ、たいしたべっぴんさんだ。オレッチのハートにもズキューンとくるゼ」
胸元に手をやって笑顔を向けられます。エディ様はいつも笑っている方ですが。
そういえば、私も今なら、笑顔を浮かべられるということに気がつきました。
さっそく試してみます。
「オオッ、こりゃ笑顔も最高だ。道を歩いたら男が振り向きすぎて大変なことになるゼ、コリャ」
「ありがとうございます」
仮のボディとはいっても、褒められるのはうれしいものです。
「さて、ボディのさわり心地はどうかナ?」
エディ様が近づくと、さわりとお尻を撫で上げられました。
あくまでやわらかく、ジョークととれるレベルというものでしょうか。熟練のテクニックなのでしょう。
きっと湯浅様や伏見様やリサ様にためしてきたのだと思います。
さて、私はどのような対応をとればよいでしょう。車だった時であれば無作法な人が近づいてきたときは
空ぶかしして人がいるように見せたものですが。
A 大きな声でこのおじさん痴漢ですーっと叫んでみましょう。
B ぽっと顔を染めて恥ずかしげにいやいやをしてみましょう。
C 「Arschloch!」 思いっきりビンタをかましてみましょう。
D 泣きまねしてそうちゃんへ緊急コールをいれてみましょう。
C
C
「Arschloch!」
ばっちーーん!
ドイツ語で罵倒して思いっきり猛ビンタをかましました。
「エディ様、人の女に手をだすなんて良くない趣味ですよ」
「イテテテテ…… ひでえなミルト。長い付き合いダロ」
「親しき仲にも礼儀あり、です」
「マッタク、ソーイチすきすきーは、ボディが変わっても変わらないんダナ」
「当然です」
「ヤレヤレ、来栖川の最新式ボディとやらの中身を確認させてもらおうと
思ってたんだが、その様子じゃ許してくれなさそうダ」
「駄目です。エディ様なら他の方法ででも手に入れられるでしょう。
変なことしたらもう一発いきますよ」
「わかったわかった。もうしないヨ。でも、怒った顔も魅力的ダゼ」
ぐっと親指をたてて私を見ます。顔には見事な右手の跡が残っていますが。
A エディ様は少しして帰られました。
B 「エディ、ここにいたのか。ちょうど良かった」 そうちゃんが管理人室に入ってきました。
C 「ところで、このアパートに一人変な奴がいるんダ。さりげなく見張ってくれねえカ?」 (人物指定)
D 「詫びのしるしに、ソーイチすきすきーなミルトにサービスダ。
ソーイチの部屋の隠しカメラとマイクを置いといてやるヨ」
E 私が眠っていた間、そうちゃんに変わったところはなかったか聞いてみました。
F コンコン、とドアがノックされました。今度はどなたでしょうか。 (人物指定)
a
F 草壁優季
「そこまで可愛けりゃ元の車に戻すのも勿体ねえなあ、オイ?
いっそ車を辞めてここの管理人として余生を送ってみたらどうダイ?
ソーイチの乗り物についてはオレッチのアパッチがあるから、問題ねえゼ?」
『褒めて頂けるのは嬉しいですが、私は元々車ですので。
いずれ私に合うボディが見つかり次第、元の鞘に収まることでしょう。
それに……やはり、この体はどことなく落ち着かないものです』
エディ様の冗談を流します。
それに、車とヘリでは用途が全く違うと思うのですが。
「マア確かにロボットの体は車とは全然違わあナァ。
最初は苦労もするだろうが、困ったらオレッチやソーイチに相談するといいゼ」
『心遣いに感謝いたします』
「なあに、イイってことよ。最近は大したミッションも入ってなくてヒマだしナ」
エディ様が白い歯を見せて笑いました。
これで、先ほどのような過ぎた冗談がなければ良い人なのですが。
「んじゃ、そろそろオレッチは戻るとすっか」
『お送りいたしましょうか?』
「イーヤ、レディにそこまでさせちまうワケにはいかねえサ」
エディ様がいつもの軽口を言って立ち上がりました。
もう日も西に傾いてきてますし、皆さんも帰宅される時間でしょう。
「……そうそう、ミルト。隣に住んでる奴には気をつけたほうがいいゼ?」
『それは、どのような意味でしょうか?』
「悪い奴じゃねぇんだけどヨ。ソイツはな……」
エディ様は最後に一言私に忠告を残して、帰宅なさりました。
その言葉を聞いて、私も少々不安を覚えます。
エディ様の言っていた隣人というのは……
A メイドロボを見ると見境がないそうです
B 無類の女好きで有名らしいです
C 極度の車マニアだそうです
D エディ様は深く語りませんでした。それが私にとって非常に不安なのです
BかDか…
Dで行こう
「……マ。オレッチの口から語るのも失礼かナ」
エディ様はそれ以上深くは語りませんでした。
その時に一瞬だけ見せた悲しそうな顔が、妙に印象に残りました。
しかし、私とて今は管理人。
住人からお金をもらう事でなりたっている職業としては、コミュニケーションを取らなければいけません。
例え機械であろうと、車であろうと、人間であろうと、そこに違いは無いはずです。
決意を持って、隣の部屋のドアをノックします。
そこから出てきたのは
A 片桐恵
B 天野美汐
C 太田香奈子
D 香月ちはや
B
「……どなたでしょう?」
そこから出てきたのは、一人の女性でした。
年齢はマスター……そうちゃんより、幾分か下でしょうか。
『初めまして。新たにこのアパートの管理を任されることとなった、ミルトと申します』
「那須さんがそのようなことを言ってましたが、あなたがそうですか。
私は天野美汐。以後お見知りおきを」
美汐さんがぺこりと頭を下げました。
その様子に、私は少しだけ拍子抜けします。
エディ様があれほど仰っていたのだから、どんな人が住んでいるのかと思いきや、
いざ会ってみれば普通の女性ではありませんか。
『もう聞いているかもしれませんが、私は……』
「ええ、知っています。メイドロボなのでしょう?
このアパートのオーナーがどのような方かは知りませんが、随分物好きなようで」
やれやれ、と言わんばかりに美汐さんが頭を振りました。
そのことについては私も同感です。
そうちゃんを物好きと言わずに何と言いましょうか。
車にアパートの管理を任せるなど、前代未聞ですよ。
美汐さんは挨拶を済ませると、学校で出された課題があるからと部屋に戻っていきました。
……やはり、話してみても普通の女性です。彼女の何に気をつけろというのでしょう?
この時の私にはエディ様の言葉が全く信じられませんでした。
ですが、後になって私は美汐さんが要注意人物であることを知ることになります。
何故なら彼女は……
A そうちゃんの正体に気付いているみたいです
B あの年齢で同棲しているようです(人物指定)
C 姑も裸足で逃げ出すほど掃除にうるさい方なのです
D 同性愛者と専らの噂だそうで
D
B 岸田洋一
「あれ? ミルト、そんなところで何してるんや?」
私が他の人に挨拶をしに行こうとしたその時、由宇さんが私のことを呼び止めました。
『これから挨拶に回る予定ですが?』
「挨拶……って、みっしーにも会うたんか?」
『はい』
みっしーというのはおそらく美汐さんの愛称でしょう。
ですが、心なしか由宇さんの声がどもっているように聞こえます。
「その……まあ、気いつけや」
『気をつけろと言われましても、何のことだかさっぱり分からないのですが』
「これはな、あくまでも噂ということになっとるんやけど……。
みっしーはな、いわゆる同性愛者なんや。せやからあまり二人きりにはならへんほうがええかもな」
由宇さんが言葉を濁しながらそう言いました。
そんな事を言われても困るのですが。仕事だってあるのですし。
それに……
『とてもそうには見えないのですが』
「アホッ! それがみっしーの手なんや!!
最初のうちはその気がないように振舞ってアンタを油断させとるだけなんやで!
みっしーもその癖がなかったら、普通のええ子なんやけどなぁ……」
由宇さんが大きくため息をつきました。
……でも、その噂は真実なのでしょうか?
私が見る限りとてもそうは思えませんが、まあ用心するに越したことはないんでしょう。
それから私は帰宅したアパートの住人の皆様に一人一人挨拶して回りました。
既に私が機械の体であることはそうちゃんが前もって住人全員に話していてくれたらしく、
さしたる問題もなく顔合わせを終えることが出来ました。
私の印象はおおむね悪くないようで、とりあえずホッとします。
顔合わせも終えたことですし、空いた時間は何をするべきでしょうか。
A 部屋でテレビを見てみましょうか
B 食事を作ってみましょうか
C そうちゃんの部屋に行って見ましょうか
D 美汐さんと直に会って話してみましょうか
A
カタカタカタカタ……
8 名前:公共放送名無しさん[] 投稿日:2006/06/20(火) 23:47:28.59 ID:MiLdGerM
クローゼすげえええええ!
ちょっと今からへなぎのために爪の垢もらってくる。
車つかえないから徒歩で。
っと。
さて、我がドイツはグループリーグをトップで通過したということで文句はありません。
日本はまあ頑張ってくれることを期待しましょう。
ワールドカップを見ていたら深夜になってしまいました。
今日はもう休むとしましょうか。
A 何事もなく朝になりました。
B そういえば食事をとるのを忘れていました。何もないのでコンビニという所に買いに行きましょう。
C こんな真夜中にノックの音が聞こえます。応援の声がうるさかったでしょうか?
D はじめて睡眠というものを経験しましたが、変な光景が広がっています。これが夢?
B
そう言えば食事をとるのを忘れていました。何もないのでコンビニと言う所に買いに行きましょう。
どうもこのボディーは燃費もよろしくありません。可能なら自炊した方が良いのでしょうが、
私はまだそのスキルを得ていないので、残念ながら今回は見送るしかないでしょう。
「いらっしゃいませー!」
10分程の時間をかけて、私は近くのコンビニに到着しました。
元気の良い店員さんが明るく声をかけてくださいましたが、時間が深夜という事もあってか、あまり他にお客様はいらっしゃいません。
まあ、それはそれで事が早く済むので好都合ですが、少々物寂しい印象を受けます。
取り敢えず今は買い物を手早く済ませましょう。
幸い所持金に関しては、そうちゃんからかなりの額をお預かりしているので、欲した物が買えないなどといった事態は有り得ませんが──
──このボディーにはどの様な食品を摂取させるのが良いのでしょうか?
A ここは適当に出来合いのお弁当を購入しましょう。
B 食品添加物の少ない、梅干し入りのおにぎりを幾つか購入しましょう。
C 迂闊な自己判断は危険です。店員さんにお勧めの商品を尋ねてみましょう。
D 迂闊な自己判断は危険です。ここはあの方に電話して尋ねてみましょう(宗一or長瀬主任or珊瑚から指定)
C
234 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 07:03
338の意味が最初解らなくて困惑したが、あれはアレか?
ミルトがサッカー見ながら実況chでカキコしてたって事かw
しかもあんな俗な喋り方してwよござんしょをある意味超えたぞ
235 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 08:15
ミルトはその場の空気が読める女なんだよw
236 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 08:36
すげええええとかへなぎなんて言うミルトさん
もはやマルチやセリオやミルファもぶっちぎりで越えたな
237 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 09:17
>>236 おもしろいネタだとは思うがちとはしゃぎすぎ
238 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 11:07
>>236 それは言い過ぎ
239 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 14:18
ネタにマジレスかよ
つーか正直言うとよござんしょ並みに違和感あった
240 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 14:20
ネタをネタとry
241 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 14:23
なんでもネタで済まされるなら警察はいらない
242 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 14:25
>>239 いつもの「……」の句読点無しの人かもしれんね。あの唐突なキャラ壊しネタは。
243 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 14:27
誉めても叩かれ叩いたらやっぱり叩かれる
なら直で言った方がいいか?
244 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 14:31
よござんしょの時も思ったが
少しキャラに合わない事言ったり壊れたぐらいでいちいち騒ぎすぎじゃないか?
その話1回限りなんだから目くじら立てるほどでもないべ。
タリエシンの話に出てきたシュトロハイムみたいなのだと思って気にせずいこう。
245 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 14:34
うんうん。またAA荒らしが来る前にこの話はここまでにしましょ。
246 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 14:41
>>242 いつもの餌やり当番君乙。
247 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 14:47
>>246 君は少し上の文章も見れないのか?
248 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 14:50
>>246 >>244-245 249 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 14:51
>>246 これ以上煽ったら表に張り付けるからな
250 名前を選択して下さい 2006/06/21(Wed) 16:19
というか
>>247-249 までも余計。スルーよろしく。
>>344 あなたが貼りたいから貼ったのでしょう?
人のせいになさらないでください
>>345 支援スレであの後なにかあったらどうせあなたが貼っていたでしょ
いつもあなたがやっている泥を代わりにかぶってやったんだから逆にこっちに感謝すべきでは?
これでもあなたが不快な気になるんであればもう今後はやめようね
迂闊な自己判断は危険だと思います。私は食品のことなどさっぱり分かりません。
ガソリンとは全然違うので、どう選んでよいのかも悩んでしまいます。
人の口に入れるものを販売しているわけですから、食べて危険というものはないでしょうが……。
ですがこのような商品の中には、食品添加物が大量に含まれているものも存在します。
いえ、多分そのようなものを摂取しても大丈夫だとは思うのですが。
やはり……店員に何を買うべきか尋ねてみるのがベターでしょう。
『あの、少し宜しいでしょうか?』
「はいなんでしょう?」
『お勧めの食品というものはないでしょうか……?』
「オススメ?」
私の言葉に、店員さんが目を丸くしました。
……もしかして、普通の人はこのような質問をしないものなのでしょうか?
少し気をつけないといけないですね。私が不審な行動を取れば、それはそうちゃんの恥にも繋がりますし。
「もちろんありますよ、とっておきのが!」
店員さんがそう言って、勧めてくださったのが……
A おにぎりでした。定番なんでしょうか
B お弁当でした。これも普通……ですよね?
C パンでした。妥当なところでしょうか
D 鍋でした。コンビニとはこのようなものも売ってるんですね……
せっかくだからD
鍋でした。
コンビニにこのようなものが売っているというのは初耳ですが、
店員さんが勧めて下さるのですから、悪いものではないでしょう。
『では、それでお願いします』
「はいまいど! これからもコンビニ『グッド・ピープルズ』をどうぞご贔屓にー!!」
私は店員さんにお金を渡し、鍋を受け取りました。
さて、私はコンビニで鍋を買って帰ってきたわけなのですが……。
ここで問題がありました。
前にも説明したとおり、元々私は車です。
今日の今日まで両手というものは私に存在しなく、食事と言うものも今回が初めてです。
ですから、最も身近で切実な問題に今まで気付くことが出来ませんでした。
…………箸が、うまく使えません。
それから数十分後、私はスプーンで妥協することにしてなんとか食事を終えました。
この体には味覚機能もしっかり搭載されているようで、私は初めて味と言うものを感じることになりましたが、
なんというか、その……不思議な感覚です。
そうちゃんにガソリンを入れてもらったときにはない、何とも言えない気分になりました。
……ロボットの体と言うのも、案外良いものなのかもしれません。
【一日目 終了】
翌日、私は雀の鳴き声で目を覚ましました。
今度は本当に『目を覚ました』のです。一応この体には睡眠機能もついているようなので、
昨夜はあれから急に強烈な眠気を感じて、気付いたらこの有様でした。
……早く、この体に慣れないといけませんね。
さて、本日はどうしましょうか。
A とにかく管理人の職務を済ませる
B そうちゃんにお弁当を作る
C この体に慣れるべく、運動をしてみる
A
とにかく管理人の職務を済ませましょう
とは言ったものの管理人としての仕事は掃除だけでしょうか?
一応、マニュアルを読み込みます
・・・・・・・・・
なるほど、大きく分ければ少ないですが、結構細々した雑務が多いですね
概ね把握はしましたが、後は実際やってみなければわかりませんか・・・
まず、手始めに何から始めましょう?
A 掃除
B 回覧をまわす(回覧の内容を指定)
C アパートの住人による小さな集まりの準備
D 家賃滞納者への取立て(人物指定)
E 雑用品の買出し
C 理緒
D 理緒の間違いだろうけど…
選択はCってことで
355 :
名無しさんだよもん:2006/06/22(木) 08:26:49 ID:FZHbXhrX0
357 :
名無しさんだよもん:2006/06/22(木) 08:46:04 ID:FZHbXhrX0
>>356 君が帰ってください
貴方が一度書き込む度に一度ageます
何度でもね
ポカーン
359 :
名無しさんだよもん:2006/06/22(木) 13:06:02 ID:KGzDCTXQ0
カポーン
249=ID:FZHbXhrX0でFAですかね、これ
低脳野郎には少々腹立ったがとりあえず
>>345には謝っとく
ピンポーン――
思索を巡らせていると、来客を告げるチャイムが鳴り響きました。
「ごめんください、雛山です。新しい管理人さんが来たと伺って挨拶に来ました」
ドアを開けると、制服姿の少女が立っていました。
事前に記録しておいたデータに該当、確かにアパートの住人の一人です。
「あの、その、実は……このアパートでは、定期的に闇鍋パーティを開いているんです」
簡単に互いの自己紹介を済ませた後で、理緒さんがおずおずと切り出しました。
「それは把握しています」
そうちゃんは参加するときに、私に乗ってあれこれと食材を買出しに行ってましたからね。
味覚センサーのないスポーツカーに向かって「何か珍しくて美味しい食材がないか検索してくれ」
などと、かなり無茶なリクエストを何度もしてくださったものです。
「それで、ガスとか使いますし、誰かが変な食材を持ち込んだら
アパートにとんでもない臭いが充満しちゃうかもしれないので、
一応管理人さんに一声かけておいたほうが良いかと思ったんです」
「そうですか……理緒さんが準備を担当しているのですか?」
「はい、その、わたしはあまり食材とか用意出来ないですから」
手元のデータによれば、雛山理緒さんの家庭は片親の上に入院していてかなり貧しく
連日彼女のスケジュールは各種バイトで埋まっており、本来このような雑務を行う余裕はないはずです。
たしか闇鍋パーティ自体、そうちゃんが理緒さんを密かに気遣って
他のアパートの住人たちにそれとなく提案したのが始まりだったと記録にはあります。
やはりここは出来る女として、その心意気を汲み取るべきでしょう。
「住人の活動を助けるのも管理人の仕事です、よろしければ何か手伝いましょう」
「えっ!?そ、そんなの恐縮です、どうぞお構いなく」
うろたえる理緒さんを何とか説得し、私が肩代わりする事となった仕事は――
A 携帯用ガスコンロのカートリッジを買っておいて欲しい
B 闇鍋を行う部屋を掃除して欲しい
C なるべく多くの住人に声を掛けて欲しい
D フォアグラより美味いアンコウの肝を手に入れて欲しい
無難にB
363 :
名無しさんだよもん:2006/06/22(木) 22:29:32 ID:/mEFD9bz0
>>360 早く死ねよ低脳野郎wwwwwwwwwwwwwww
『では私は先に使用する部屋を掃除しておくことにしましょう』
「そ、そんな、わたし達が勝手に計画してるだけなんですし、管理人さんにそんなご迷惑は……」
『……なら、そのパーティーに私も参加することにしましょう。それなら問題ありませんね?』
「え、あ、はい……!!」
私は困惑する理緒さんを説得し、仕事を手伝うこととなりました。
成り行きで私も参加することになりましたが、ただの会食ですし何とかなるでしょう。
部屋を掃除している合間、私は闇鍋パーティーについて考えました。
確かルールは、参加者が持ち寄った食材を鍋で煮込み、
部屋を暗くして順番に食べるといったものだと記憶しています。
その際に一度箸をつけたものは絶対に食べなければならない。
確かそんなところでしたね。……私が用意する食材はどうしましょう。
自分が美味しいと感じたものを選ぶといっても……昨日まで私は車でしたし。
オイルは人間に毒ですから却下です。昨晩食べた鍋も具にはならないので却下です。
実のところ、私は鍋に入れるべき食材と言うものもよく分かってません。
本当に、何を用意するべきでしょうか?
A 葱やキャベツや白菜などの野菜類を入れるものでしょう
B 少し豪華に肉類を買い揃えましょう
C ……部屋に置いてあった菓子類辺りが良いでしょうか
D そうちゃんが食べていたフレンチトーストというのが美味しそうでした
E 青とうがらし……スパイスに最適だと思います
F その他具体的に食材を指定
B
肉ってもしや某おでん種…?
あらへんあらへん。
あれは「買い揃える」ものでは無く「狩り捕る」ものだw
そんなもの持っていったらお隣さんの同性愛者に全部食べられちゃうよ
むしろ推奨?
やはり肉類が良いでしょう。
というのも、以前そうちゃんが『肉の入ってない鍋なんか鍋じゃない』というような言葉を、
運転中に力説していたのを思い出したのです。
それほどまでに肉類が重要な位置を占めるのなら、買っておくべきなのでしょう。
そういうわけで、私は近くのスーパーで買い物をしました。
牛肉、豚肉などいろいろあったのですが……よく分からないので、全部買うことにしましょう。
様々な種類の肉が入っていたほうが、参加者も喜ばれることでしょうし、多分問題はないはずです。
それから……飲料物も用意しないといけませんね。
幸い飲み物についてなら多少知識があります。そうちゃんが運転中に飲んでもいましたし。
ジュースもいくつか購入しておきましょう。学生が多いというのでアルコールはご法度ですが。
「ミルト。その荷物どうしたんだ? 今日から自炊始めるつもりか?」
アパートの入り口で、わたしはそうちゃんに呼び止められました。
『いえ、闇鍋パーティーを開くという事なので、その材料にと』
「……お前も参加するのか?」
『はい。何か問題が?』
それを聞いて、何故だかそうちゃんが固まりました。
それから数秒の沈黙の後、我に返ったのか急にため息をつき、
「……初めてだと刺激が強すぎるかもなあ」
そんな意味深なセリフを残しました。
『それはどのような意味ですか?』
「いや、大したことじゃない。大したことじゃないんだが……ただ、アイツには気をつけろよ」
そうちゃんがチラッと目配せをします。
その先にいたのは……
A 由宇さんでした。大量の酒瓶を抱えています
B 美汐さんでした。目が合ったとき、何故か悪寒が……。
C 理緒さんでした。手には食材とはお世辞にも言えないような代物が……。
D それ以外で人物指定
D ゆかり
王道すぎて逆に吹いたw
しまった。
>>310と矛盾している。本当にすまん。
誰か何とかしてください。
ばれたらやばいのは『宗一が謎のメイドロボと同棲中』ってことだから、
ミルトが正体かくして謎の管理人として鍋パーティに参加する分には問題ないはず。
『あれはゆかりさんではないですか』
そうちゃんが目配せした先には、ゆかりさんがいました。
彼女はこのアパートの住人というわけではないのですが、
そうちゃんの友人ですし、特別に招かれたのでしょう。
『彼女に何か問題でも?』
「問題どころじゃないぜ。ゆかりと食べ物だぞ? 爆弾と空気並みに相性の悪い組み合わせだ。
ゆかりが前回の闇鍋に何を入れたか分かるか?」
『…………』
「ジャム・たくあん・にぼし・大福その他諸々……」
どこのジャイアンシチューですか。あじのもとのもとが必要になりますよ。
「いや、俺も最初は出来心だったんだよ。
闇鍋には一人ぐらい変な物を悪気なく入れる奴がいれば面白いかなーって誘ったんだけどさ、
甘かった。ゆかりは人類如きが手を出して良い相手じゃなかったんだ……」
ガクッとそうちゃんが芝居がかって肩を落とします。
いえ、普段から味音痴であるゆかりさんが参加すればそうなるのは目に見えてるでしょう。
それでも誘ってしまうのは、やはりNASTYBOYだからでしょうか。
何でもゆかりさんが参加するとのことで、皐月さんは逃げているのだとか。
賢明な判断だと思います。皐月さんはつくづくエージェント向きですね。
かくいう私も約束さえなければ参加を遠慮していたところでした。
「ミルト、お前の体って味覚センサーは……」
『搭載されています』
「つくづくご愁傷様だな。俺からのアドバイスといえば、なるべくゆかりが仕込んだ具は取らないように……」
「私がどうかしたの、宗一君?」
「どわぁっっ!?」
そうちゃんが、急に後ろからかけられた声に驚きの声を上げました。
……いつの間にか、ゆかりさんがこっちに来ていたようです。
「な、なんでもない。なんでもないんだゆかり。それよりも早いな、ははは……」
「本当はマナー違反なんだけどね、時間が余っちゃったから。それより……」
ゆかりさんはそこで私の方に視線を向けました。
「この人は?」
「え、あ、ああ。ここに新しく来た管理人さんだよ? な?」
さて、ここで私はどう答えるべきでしょう。
ゆかりさんとは初めて会うわけではありません。何度か乗せて走ったこともあります。
そうちゃんの正体を知っている数少ない人間の一人ですし、私のことを正直に話して何も差し支えありません。
ですがマスターであるそうちゃんの意向としては、私のことは極力伏せたいことでしょう。
先日まで車風情であった私に大破したからとはいえ人と同じようなボディまで与えてくれて、
かつ同じアパートに住まわせてくれるという破格の待遇。彼女(と皐月さん)が良い顔するはずがありません。
ですがヘタに正体を隠すとあらぬ誤解を受けてしまう可能性もありますし……いえ、それはそれで良いと思いますけど。
どうするべきでしょうか? 隠すべきでしょうか、それとも話すべきでしょうか。
A 隠すべき
B 話すべき
C ……黙ってそうちゃんの腕に抱きついてみましょうか
C
ここで一つ、先に断っておきましょう。
私は車である以前に女です。人並みには嫉妬心や悪戯心も持ちます。
それに目の前の女にそうちゃんが鼻の下を伸ばしてるというのなら尚更です。
小娘に負けるわけには行きません。
……まあ、ゆかりさんの年齢と私の製造年月日比較すれば私のほうが圧倒的に若いんですが。
ですから私の場合実年齢ではなく私に想定されている精神年齢を尺度に考えてもらうと有難いです。
そういうわけで、少し強気に出てみましょうか。私はギュッとそうちゃんの腕に抱きついてみました。
「え、ちょ、ちょっと……!!」
そうちゃんが何やら動揺していますが、そこは気にするところじゃありません。
よくよく考えてみれば、いくら私が機械の体であるとはいえ、そうちゃんと同じアパートに住むことになったのです。
それはゆかりさんや皐月さんよりも優位に立てている、ということじゃないでしょうか。
もしかすると、チャンスがあるかもしれません。
「……ふ〜ん。なるほど、宗一君はもう管理人さんにホレられちゃったんだ」
「ちょ、ちょっと待て、ゆかり! 俺たちは別にそんなんじゃ……」
言葉の上では余裕を装うゆかりさんですが、若干の体温の上昇と発汗により、微妙に焦っているのが分かります。
これぐらいで平静を失うとは……若いですね。
「それじゃあつまり、五代さんと音無さんみたいな関係なんだ」
「オイッ!」
「とすると、二階堂さんが理緒さんで四谷さんが美汐さん、六本木さんが由宇さんってわけだね」
「配役に無理があるだろ!? んじゃ一ノ瀬さんは誰だよ!」
私に分からない話を二人で続けます。
……二人とも、私の理解できる内容の話をして頂きたいのですが。
A いい加減本当のことを話す
B そうちゃんの意向を汲んで正体は伏せる
C もうちょっとからかう
Bで程よく誤解を残してみよう
止まると分かってても無難な日常展開をしたがるのは選択スレ住人のサガか……
>>379 言ってる事は分からんでもないがそれは支援板に書きなされ
その書き込みは誘導の圧力になりかねんから
『すみません、ゆかりさん。少し冗談が過ぎました』
「えっ? あ、こちらこそ……ええと……」
『ミルトです。昨日からこのアパートの管理を任されています』
そこまで言ってから、私は気付きました。
あっさり私の名前を言ってしまいましたが、大丈夫なのでしょうか。
頭の良いゆかりさんが、車である私と何か関連性を疑いだす可能性は高いです。
そうちゃんの意向に沿って、正体は伏せようと考えていたのですが、無駄になるかもしれません。
しかし他の住人に挨拶を済ませてしまった以上、今さら偽名を名乗ることが不可能であったのも事実。
やはりなるようにしかならないのでは……
「ふ〜ん、偶然ですね。実は私に同じ名前の知り合いがいるんですよ?」
と思っていましたが、全然そんなことなく通ってしまいました。
いえ、確かに同姓同名の人間は稀にいたりしますが、ここまで疑われないのは予想外です。
素直なのはいいことだと思いますが……その、何か釈然としません。
それからメンバーも集まり、闇鍋パーティーが開始されることになりました。
メンバーは私のほかにはそうちゃん、由宇さん、美汐さん、ゆかりさん、そして理緒さんの計六人。
他の住人の方たちは都合がつかなかったとのことですが、
そうちゃんに言わせるなら、ゆかりさんの参加により怖気づいてしまったのだとか。
「よし、それじゃ始めるぞ」
そうちゃんがそう言って部屋の明かりを消し、それから各々が持ってきた具を入れます。
それから暫く具を煮込みました。
しかし、いかにも怪しげな臭いが立ち込めているのは気のせいでしょうか。
食べ物の臭いをよく知らない私でさえも、何か危険を感じてしまいます。
最初に箸をつけるのは……
A 私です
B そうちゃんです
C 由宇さんです
D 美汐さんです
E ゆかりさんです
F 理緒さんです
A
あそこまで期待されたら暗黒期に突入するしかない
(中略)
「さあ、行こうかミルト」
「はい、そうちゃん」
「「明日に向かってレッツらゴー!!!」」
ミルト主役の話〜完〜
………………………………………………………………
「お〜い。ミルト?」
はっ!私としたことが闇鍋の最中に白昼夢を見てしまいました。
これはいけません。せめて区切りのよいところまでは進めませんと。
「何ブツブツ言ってるんだ?」
「気にしないでください。どうぞご心配なく」
さて、気を取り直して闇鍋です。何の因果かこの私が一番手をつとめることになりました。
鍋の中をはしでさぐります。一度はしをつけたものは口に入れなければいけないルールです。
極端なハズレを引かなければよいのですが。とりあえずあたりをつけて具を拾います。
はたして………
(ミルトが拾った具とそれを入れた人間を指定してください)
昆布 美汐
はじめぐらいは無難に
(…はぁ……はぁ……)
ミルトが鍋に箸をいれる傍らで一人、心の中で息を荒らげる少女がいた。
(……(*´Д`)ハァハァ……管理人さん……)
少女の名前は天野美汐。通称みっしーこと同性愛者である。
住人の親睦を深める闇鍋大会において彼女には秘策があった。
それは彼女が鍋に混入した昆布にある。
魔王エキス配合。必殺フェロモン昆布。昆布に含まれるグルタミン酸Ωが
精力増強、発情を促します。用量は控えめに。
by 選択通販
一度鍋に溶け出せば凶悪な媚薬と化す代物である。これを使って一気に
自分のためのレズハーレムを作り出そうという魂胆であった。
邪魔な野郎が一匹いるのは気にしない。後でつまみ出せばいいだけだから。
トップバッターは新顔の管理人。なんでもメイドロボだそうだが関係ない。
美汐の理想のレズハーレム建設にはむしろ格好の素材であろう。
そうこう(*´Д`)ハァハァしているうちにミルトが鍋の具を口へと運ぶ。
それもよりによってエキスの塊たる昆布にである。
(キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━ッ!!)
アンタ明らかにキャラ違うよ。そんな突っ込みもどこ吹く風。
パクンとミルトは昆布を口にいれる。結果は……
A もぐもぐゴクン。ふつうにケロリと食べてしまった。そりゃロボだからね。
B 「?これは……」 一口食べただけでミルトの味覚センサーは鍋の異常を察した。
A
「もぐもぐ。ゴクン。別段どうということもないようです」
私が口にしたのはどうということもないただの昆布でした。
グルタミン酸の旨味の塊です。まあほとんど出し殻ですけど。
ハズレではなく何よりです。
(( ´・ω・`)ショボーン)
なにやら美汐さんがションボリした様子でしたがまあ気にしないことにしましょう。
私たちはつつがなく鍋をつつきあいそして……
A 平穏無事に闇鍋大会は終了した
B やはり哀れな犠牲者が出てしまった。(ミルト以外の闇鍋参加者から指定)
D 美汐
>>389はB 美汐の間違い
何やってるんだ…orz
それは平穏無事に終わるはずでした。
皆様方も常識というものをある程度はわきまえていました。
味の美味い、不味いの程度の差はあれどとても食すに値しない
代物は鍋に入れる真似はしなかったようです。
まあ、自分が拾う可能性を考えれば当然ですけど。
ですが、空気の読めない方はいつでもいらっしゃるものです。
そう約一名。
「ゆかり。何をいれた?」
「え?私!?」
そうちゃんに訪ねられゆかりさんは何で私が?という顔をしていますが
容疑者は他に考えられません。
「えっと、来る途中のパン屋さんでチョコパン買ったんだけどオマケでなんか綺麗な色したパンもついてきて
みんなで食べたら美味しいかなって……」
間違いなく原因はそれです。っていうか鍋にパンは普通は入れません。なんかドロドロした塊になるだけです。
「それよりこれ……どないする?」
そう由宇さんが指差す先にはまんまと大当たりを引当ててしまいヒクヒク痙攣を起している美汐さんの姿がありました。
顔色が七色に変色してなんというか『おまえにレインボー!』って感じです。
「救急車よぼうか?」
そう理緒さんは提案しますが住人勢ぞろいの闇鍋大会で中毒者を出したとあってはなんかいろいろ管理責任問われかねません。
オーナーのそうちゃんも勘弁してくれという顔をしています。
さて、どうしましょう?
A 人命には代えられない。救急車をよぼう。
B ひとまずこちらで介抱しよう。美汐の部屋までつれていく。
C いっそのこと埋めてしまおう。
C
ザックザック ザックザック
そうちゃんと私は埋葬用に穴を掘ります。当然届出などなく明らかな死体遺棄です。
「堪忍な。みっしー。こないなことになってもうて」
「うっ…うっ…ごめんね……ごめんね……」
「うぅ…私が…私があんなパン入れたから……」
物言わぬ美汐さんの亡骸の前で皆さん涙します。
全ては手遅れでした。致死量を過ぎていました。鍋の様々な具合と交じり合って
化学反応を引き起こしたパンらしき物体は美汐さんの命を介抱する間も、
救急車を呼ぶ間もなく奪っていったのです。
そして私たちは話し合った末にこの出来事を隠蔽することにしました。
このままでは私たちは全員過失致死の共犯です。皆様方いろいろと抱えた事情もあるので
大人しくお縄につくこともできないのです。
美汐さんには既にこのアパートから一週間前から退去したことになってもらいました。
幸い美汐さんにはこれといった身よりもなかったのでそうちゃんの伝手を頼れば容易いものでした。
「ほんま堪忍な。こんなことで実家に迷惑をかけるわけにはいかへんのや」
「うぅ、わたしが捕まったら良太が…ひよこが…」
「うっ……うっ…私のせいで…みんなが捕まったら…うっ…もう生きていけない……」
とまあ皆さん結構自分勝手です。まあ真っ先に隠蔽を提案した私と1秒で了承したそうちゃんは人のことは言えませんが。
「ふう、こんなもんでいいか」
「人一人埋めるには十分と思います」
そうこうしてい内に墓穴は掘れました。中に美汐さんの亡骸を納め上に決して掘り起こされない用に
厚さ30センチの鉄板で蓋をしてその上に土を被せます。
「それではおやすみなさい美汐さん。貴女の魂に祝福のあらんことを」
そう胸元で十字を切って見送ります。皆様方も仏式や神道式に拝んだり念仏を唱えたりしています。
かくして悲劇の闇鍋事件はこのようにして闇に葬り去られたのでした。
A そして時は流れ(エピローグ)
B もう少しだけ続くんじゃよ
A
あれから数ヶ月。時は流れました。あの悲しい出来事も今は昔。
アパートの住人一同、美汐さんのことはなかったことにしてそれぞれの生活をしています。
これでよかったのでしょう。そうあれは不幸な事故なのですから。
ブロロロロロ
ふと、アパートの前に車が一台止まりました。そういえば私の新しいボディの目処はまだたたないのでしょうか。
今晩、そうちゃんにでも問い詰めることにして車から降りてきたのは男が二人。
中年男性とそれよりは若い眼鏡をかけた男性でした。
「どうも。警察のものですが少しいいでしょうか?」
「はい。何か?」
すました顔で応対しますが内心ギクッと来るものがありました。
あの事件の隠蔽は完璧のはずです。よもや警察に付け入る隙があろうはずが。
「実はですね、最近、古河ベーカリーというパン屋で毒性のある劇物が売買されていたという事件がありましてね」
「それが何か?」
タラリ。心の中で冷や汗が流れるのを感じます。これはよくない兆候です。全身のセンサーが告げてきます。
「それで、このたび強制捜査で件のパン屋を押さえましてね顧客リストから劇物を販売したらしき相手をしらみつぶしに
当たっているのです。すると一人おかしなことをおっしゃる人がいましてね」
危険感知のアラームが最大を示しています。電脳によぎる氏名。案の定それを馬面の刑事は告げます。
「伏見ゆかりさんというのですがここのオーナーさんとは親しいそうで」
図星でした。そして身構える間すらなく若い刑事が私の行く手を遮るようにして立ちはだかります。
「伏見ゆかりは何もかもを自供した。最初は何をとち狂ったことを言っているのかと思っていたのだが」
「まさか、こんなところで別件が発生していたとは私どもも目から鱗です。まあそういうわけで
貴女とここのオーナーさんには二、三伺いたいことが……」
因果応報。やはり隠し通せるものではなかったようです。これが報いというものでしょう。
そうちゃんや他の住人のみなさんもしょっぴかれることでしょう。
そして私は刑事二人に連れられて覆面パトカーへと乗せられるのでした。
fin
んじゃま、次回作選択
A ナイトライター(with 雀鬼's)
B Planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜
C 誰彼
D MOON.
E Routes
F 天使のいない12月
G 雫
H CLANNAD
I こみっくパーティー
J Kanon
K うたわれるもの
L To Heart
M White Album
N ToHeart2
O 鎖
P Filsnown
Q まじかる☆アンティーク
R AIR
S テネレッツァ
T Tears to Tiara
U ONE
V 痕
N
L
主役選択。
A イルファ
B 向坂環
C 柚原春夏
D 吉岡チエ
E ルーシー・マリア・ミソラ
F 姫百合珊瑚
G 朝霧麻亜子
H 薫子
I 長瀬源蔵(ダニエル)
J 小牧愛佳
K 向坂雄二
L 河野貴明
M 小牧郁乃
N 柚原このみ
O 草壁優季
P 山田ミチル
Q 十波由真
R 玲於奈
S 笹森花梨
T カスミ
U 久寿川ささら
V 姫百合瑠璃
O
ごめん、間違えた。
無効だ
O
B
あれ?ID変わってら…選択して書き込んじまった。
今度は開幕からこんなかよ('A`)
エロゲと全然関係ないところに誤爆して、更にここに誤爆してしまった。
完全に無視してくれ…昔誤爆で上げてしまったことあるけど今回のは特級でアフォだ。
orz
ID:FOXUinco0が何をミスったか知らんが
A 新たに作品テンプレを貼って選択をやりなおす
B 草壁優季主役ではじめる
どっちか選択を
B
>>408 なにが誤爆なのかわかんねぇぇっ!
テンプレ自体このスレ以外に使ってるとろあんのか??
使いやすい作品とキャラ?は揃った
後はちゃんとした設定だな
はじめまして、選択スレの皆さん。私はToHeart2の隠れヒロインこと草壁優季です。
一昔前に放映されたドラマと同じ「時をかける少女」、と言った感じです。
最近はアニメの劇場版もされるそうですね。私の原作のアニメは出来がアレな上に出番がないですが…
さて、最近の私ですが…
A 今度は未来に飛んでしまった
B 更に過去に飛んでしまった
C なんと、異世界に飛んでしまった
D 今の世界と似たような平行世界に飛んでしまった
B
「こ、ここは?」
目を開けると、川原に一人横たわっていました
「どこでしょう?」
A 誰か来る?……あれ?これって昔の日本の兵隊さんの服装?
B どこかで見たことがあるような小さい子供達が遊んでいます
C よくわかりません……もっと別の場所に行ったほうがいいのかな?
B
ここは…辺りを見渡すと見た事のある風景でした。
家の近所の河原のようです。そこではどこかで見たことあるような子供達が遊んでいました。
確かに見たことはあるのですが…こう、答えが喉まで出かかっているのに分からないもどかしさです。
すると、その中の一人が私に話しかけてきました。それは──
A 大きなリボンが特徴の猫みたいな子。
B 怪しげな髪飾りを着けた黄色い子
C 桜色の髪をした女の子。突然、「異時間同位体のうーか、お前は」と話しかけてきました
C
それは桜色の髪をした女の子でした。その顔立ちは幼いながらもきりっとした強い意志を感じさせます。
女の子は子供達の遊びの輪から抜け出し、私のところへ一直線に向かうとおもむろに口を開き
「異時間同位体のうーか、お前は」
と訳の分からない事を喋りだしました。その単語の意味を理解しかねて一瞬、呆けてしまいました。
私の周りには漫画ならばクエスチョンマークが乱舞している事でしょう。
「ふむ…分からぬか。 うーのレベルで話すなら異なる時間から来た者と言う事だ。
服装から察するに、そう遠くはない未来か過去から来た者なのだろう。 違うか?」
どうやらこの子の言っている事が正しいとするなら私はまた時空跳躍をしてしまったようです。
過去なのか未来なのかは分かりませんが、この子に日付と年号を確認すれば分かるでしょう。
「事情を聞かせてもらおう。 もしかしたらるーの任務に関わる事やもしれん」
「いくぞ、うー。 うーたまたちよ、るーはこの女に用が出来た。 さらばだ」
「ちょ、ちょっと待ってください」
大きなリボンを付けた猫みたいな女の子に別れを告げると、女の子は私の手を引っ張りって河原を後にしました。
その強引な様に子供達はただ、呆けた顔で手を振るくらいしか出来なかったようです。
私が連れられて来たのは近所の児童公園でした。既に日も暮れつつあるので子供達の姿はありません。
話を始める前に何か飲み物を買おうとして自動販売機のラインナップを見ると、妙に古臭いものばかりでした。
「ピー○ネクター…こんなものまで…」
味覚を破壊しかねなないその強烈な甘さから子供の頃は出来るだけ避けていた、あの懐かしの清涼飲料水です。
よく見ると値段が現代のものより僅かだけ安くなっています。
「と、言う事は私が来たのは過去の東鳩町?」
この時代なら使えるであろう100円玉を二枚入れて女の子の分も買って、私たちはベンチに腰掛けました。
「さて、うーよ。何から話そうか?」
A 何はともあれ、まずは名前からでしょう
B 正確な年月が知りたい
C 何で私が違う時間から来たのか知っているのか?
C
「何で私が違う時間から来たのか知っているのですか? 」
この子名前とか今の日付とか色々聞きたい事はありますけど、まず一番重要なことから聞く事にしました。
「偉大なる"るー"からの命だ。『19XX年○月△日□時×分、東鳩の河川敷にやって来る
異時間同位体と接触し、行動を共にせよ』と言う命を受けた。 それだけだ」
聞く限りではやはり過去の東鳩市のようです。まだ私が”高城優季”だった頃の。しかし──
「何で日付の所に伏字になっているのでしょうか…」
「大人の事情だ。 PS2版で年齢が明記されている以上、今更隠しても無駄とか言う突っ込みも受け付けない。
あまり突っ込みすぎると世界からの修正を受けるぞ」
なんだか知らないけど触れてはいけない話題みたいです。
「それだけですか?」
「そうだ。 それ以上は知らないし、知っていても話す事は出来ない」
「じゃぁ、私がこの時代に来た原因も…」
女の子は首を横に振って否定の意を示しました。
「だが、意味も無く時空跳躍現象などが起こるはずは無い。
るーがお前と行動を共にせよと言うことは、その意味を調べろと言う事なのだろう」
確かにそうです。以前、私が過去へ飛んだのは貴明さんを救う為でした。
私が望んだ事とは言え、あれ以来、タイムリープは起こせませんでした。
それならば超常現象なのか、誰かが呼んだのか分かりませんが、今回も何らかの理由があるはずです。
「では決まりだな。 ”るー”の意思がお前の行動をサポートするのならばるーもそれに従う。
ではこれからどうする? 」
そうですね…
A 忘れていました。自己紹介をしましょう
B その時、お腹の虫が盛大に鳴りました。「…食事にしましょう」
C 早速、原因究明に乗り出しましょう
A
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私の名前は草壁優季です。」
「”うーき”か。いい名だ。気に入ったぞ。」
「ありがとうございます」
名前を褒められたたので私はお辞儀で返します。
なんか妙な呼びかたをされた気もしますがまあ細かいことはいいでしょう。
「それで貴女のお名前は何ですか?」
「るーはるーこ・きれいなそら。大熊座47番星第3惑星"るー"からやって来た。
うーでいうところのエイリアンだ。」
「宇宙人さんでしたか。それは遠いとこからどうも」
「うむ、光より速いるーの船でも随分時間のかかるところだ」
どうやらこの方、るーこさんは遠くの宇宙からはるばるとやってきた宇宙人さんみたいです。
普通ならビックリするところでしょうけど私も未来人?みたいなものですしお互い様でしょう。
「さて、うーきよ。ここで立ち話ばかりしていても不毛だ。とりあえずどうするか決めろ」
短刀直入にるーこさんは聞いてきます。そうですね、私がどうして過去に来てしまったのかよくわからないんですけど
とりあえずは……
A とりあえず貴明さんの周囲を伺いましょう
B 子供の頃の私のところに顔を出してみようかな
C とりあえず寝床を確保しましょう。それからです。
D 「もしもし、そこの君達」 すると、誰かが私たちに話しかけてきました。
「あの……とりあえず自己紹介をしませんか」
とにかく、お互いの名前すら知らないというのは良くないと思います。
「私は草壁優季って言います」
「るーは…『るーこ・きれいなそら』だ、るーこと呼べ、くさうー」
「は、はい、るーこさん」
小さな女の子ですが、言葉遣いが子供っぽくないのでさん付けで呼んじゃいました。
何となく私の呼び名がイマイチな気がしますけど、気にしないほうがよさそうです。
「えっと、これからどうしましょう」
自己紹介も終わり、私たちはジュースを片手に今後について話し合います。
私が再び時間を遡った原因を突き止めなければいけません。
「そうだな、とりあえずは――
A 街に出て情報収集だ
B お腹も空いたし、食事にしよう
C 寝床がなければ困るだろう、るーの家に案内してやろう
止まってるからと選択しといて書き込んだら被るとは……神様は見ているもんだなorz
こういう時は
>>425から選んでいいんだよね?
SF考証なんぞ気にせずBを選ぶぞ。
「それじゃあこの時代の私に会ってみましょうか」
るーこさんに尋ねられて私はそう答えました。
とくに考えがあるわけでもないですけど、まあ好奇心というやつです。
ジタバタしてもしょうがなさそうなのでとりあえずはタイムスリップを満喫してみようかなと。
小さかった頃の自分を見てみるのもなにか面白そうですし。
「ちびうーきか。いいだろう。いくとしよう」
私のサポートで来てくれただけあってるーこさんもあっさり承諾してくれました。
なんだかちょっと楽しみですね。
SF小説なんかだと過去の自分と会うと消滅を起すなんて物騒な話もありますけど
ド○えもんもの○太くんも過去の自分に散々会いまくってますから多分大丈夫でしょう。
私は藤子・F・不二夫先生を信じます。
「それじゃあいきましょうか。るーこさん」
「るー」
こうして私とるーこさんはまず、昔の私の家まで行くことにしました。
『高城』
家の表札にはそう書いてありました。懐かしい苗字です。
あれから家庭の事情とか色々あって貴明さんとも離ればなれになったこともありましたが
今、思えばそれも私と貴明さんの運命的な結びつきのはじまりだったのですから
人の人生とはよく分からないものです。
「さて、どうしましょうか」
家の前に来て首を傾げます。まさかこのなりで入っていっても怪しい人扱いされるだけですよね。
のび○くんはしょっちゅうやらかしていますけど。そう家の前で私が思案していると
「待て、うーき。誰か来たようだ」
「え?」
るーこさんに言われて私は振り向きます。昔の私の家の前。そこに現れたのは。
A 小さい頃の私です。うん。我ながら可愛いです。
B 女の子みたいな可愛い男の子です。多分貴明さん?
C さっき見かけた大きなリボンをつけた女の子とそれに引きずられるように連れてかれている赤髪の男の子です。
A
前作終了から丸一日たったことだし恒例のタイトル決めということで
A【鉄板の下には死体が埋まっている】
B【みると一刻】
C【管理人は見た】
D【メゾン・ド・ミルト】
E【住めばミルトのメイド仕様】
F センス無い。俺が自分で決める。
どうぞ
C
ホントに見ただけで話終わっちゃったしねw
私が振り向いたその先にいたのは、長い黒髪の小さな女の子。
間違いありません、幼い頃の私です。
「すいません、ちょっと隠れましょう、るーこさん」
「るー」
私達は幼い私に気づかれる前に物陰に隠れました。
別に会っても大丈夫だとは思いますが、
家の前をうろうろしている私達を見て、大人達を呼ばれても困ります。
「あれがちびうーきか、うーき」
「ええ、可愛いでしょう」
二人でまだ子供の私が帰宅する様子を眺めます。
A 子供の私は、そのまま家の中に入りました
B 突然、家の前に停めてあった車から何者かが現れて、子供の私をさらいました!
C ? とことこと、子供の私が私達に近づいてきます
Cとか
とことこ とことこ
可愛らしい足取りで小さい私は歩いていきます。
ああ、なんて愛らしいんでしょう。思わずさらっちゃいたくなります。
「うーき。それは犯罪だ。るーの星では幼女誘拐は三族首チョンパだぞ」
「大丈夫ですよ。こうして見ているだけですから」
るーこさんに釘を刺されちゃいましたがやっぱり誘拐したくなるほど可愛いです。
あやしいお兄さん方の気持ちも分からなくはありません。
そう私が自分に惚気ながらいると。
「……?」
突然、子供の私は私たちの隠れている物陰に気づいたのか振り返ります。
そしてそのままとことここちらに近づいてきます。
何かを察したのでしょうか。流石、私。勘がいいです。
「どうするうーき?気づかれたぞ」
と、るーこさんに尋ねられます。私は……
A 別にこそこそする必要もないので姿を現します。
B ガチャリ 家の中から誰かでてきました。
C ここはすたこらさっさです。退散します。
Aでタイムパラドックスでも起こして話を加速させよう
「別にこそこそする必要もないです。姿を現しちゃいましょう」
「なっ! 会っても良いと言ったが姿を見せても良いとは言ってな――」
るーこさんが私を制止しようとしますが遅いです。
私は物陰から飛び出し……
「えっ?」
違和感、微動だにしない目の前の幼い私の姿。
いや、幼い私だけではありません。
通りを歩く人、車、空を飛ぶ鳥。
私とるーこさんを除く全ての存在が
時が凍りついたかのようにぴくりとも動かなくなってしまったのです。
「タイムパラドックスだ……」
「パラドックス……?」
「異時間同位体は存在そのものが『世界』に対するイレギュラーだ
この場合、うーきは過去のうーきと出会うと言う矛盾を犯してしまった」
その途端、浮遊感と共に周りの景色がモノクロに染まって行きます。
「な…何が起きるんですか……」
「世界は矛盾を正すためイレギュラーをこの時間軸から強制的に排除するだろう」
「私はどうなっちゃうんです!」
「良くて別の時代に飛ばされる……最悪の場合、時間と空間の狭間を永久に彷徨うことになる」
るーこさんは私の手を握りしめます。
「絶対にるーの手を放すな。放れたら二度ともとの時間軸に戻れない」
「はっはい!」
「うぅ……気持ち悪い……」
今私たちはまるでド○えもんのタイムマシンで移動する時のような空間を
浮遊しています。上も下の感覚もなく、落ちているのか上昇しているかもわからない状態が
数十分続いています。
「時空間の歪みが安定を取り戻してきている。もうすぐどこかの時代に繋がるゲートが開くだろう」
そうこうしてるうちに目の前が真っ白に輝きだします。
「ゲートが開くぞ」
「どの時代に出るんですか!」
「うーきのいた時代を起点とすると――」
私とるーこさんの体は真っ白い光の中に吸い込まれて行きました。
私達が辿りついた世界は……
A 平安時代
B 戦国時代
C 明治時代
D 太平洋戦争中
E 遥か未来の世界
葉鍵キャラが固定されないBかCか…
C!
「――ここは?」
気がつくと、私達は街の中に立っていました。
街の中ですが…どうも現代ではないようです。
道路は舗装されていませんし、木造や煉瓦造りの建物が並んでいます。
歩いている人の服装も和服の人が多く、時折お金持ちそうな人が洋服を着てました。
よく分かりませんが、歴史の授業で習った知識を当てはめると、ここは――
「どうやら、うーき達でいう明治時代に着いたようだな」
そうです、多分ここは明治時代の日本です。
「そんな、どうしましょう……」
見慣れない服装の私達を街の人たちがじろじろと見ています。
何てことでしょう、今度は100年も前にタイムスリップしてしまいました。
一体私が何をしたと言うのでしょうか。
――迂闊な判断でタイムパラドックスは起こしてしまいましたけど。
「落ち込んでいても仕方がないぞ、うーき、しっかりしろ」
凹んでしまう私をるーこさんが元気付けてくれます。
るーこさんの言うとおりです、何とかして現代に戻る方法を探さないといけません。
さしあたって私達は――
A お腹が空いたので手近なお食事所に入る
B とりあえず人目につかないところに移動する
C 「おい、そこの怪しい奴ら!」次の行動を考えていると、警官さんに呼び止められました。
B
街の人達が私達に向ける視線がいよいよ厳しくなってきました。
このままだと不審人物見なされて、お巡りさんを連れてこられるかもしれません。
「るーこさん、とりあえず場所を移動しましょう」
「るー」
私達は人目を避けるように裏路地に入り、街から離れました。
「これからどうするつもりだ、うーき?」
「はぁ……どうしましょう」
街外れの川原に私達は腰を下ろしました。
十年前の次は百年前にタイムスリップです。
今度はお金も通じなければ知っている人もいません。
お腹が空いてもおにぎり一つ買うこともできないのです。
それどころか、現代の服装をしているだけで奇異の目で見られました。
困ります、本当に困ってしまいます。
現代に戻る手がかりも無いですし、お腹も空いてきました。
A 「君達、そんなところで何をしてるんだい?」土手の上から、何者かに声をかけられました(人物指定)
B もはや犯罪に手を染めるのも止む終えません、通行人から追い剥ぎをします
C 何も思いつかない、仕方が無いから空腹を紛らわす為に橋の下で寝ます
C
「寝ましょう」
「? 言ってる意味が分からないぞ、うーきよ」
「いえ、何もできることが無いですし……ひとまず疲れを取るために一眠りしませんか。
ほら、『果報は寝て待て』って言うじゃないですか」
「そのことわざは聞いたことがあるが、今はそれどころでは無いだろう」
「じゃあるーこさんには何か名案がありますか?」
「それは……」
「もしかしたら、目が覚めたら現代に戻ってるかもしれませんよ」
「その可能性は限りなく低いと思うが、仕方が無い、うーきの言うとおりにしよう」
私もるーこさんも何も思いつません。
とりあえず、少しでも体力を保つ為に寝ることにします。
余計な事をしなければ、お腹の減り具合もそれほど酷くはならないでしょう。
橋の下に適当に枯れ草などを敷き、即席の寝床を作ります。
石枕なんてそれ専用の石を研磨したり加工しなければ寝づらくて仕方がありませんが我慢しましょう。
「それではるーこさん、おやすみなさい」
「るー」
夕焼けが沈みかけた頃、私達は早すぎる睡眠を取る事にしました。
A 早く寝すぎたせいで、目を覚ますとまだ深夜でした。
B よほど疲れが溜まっていたせいか、目を覚ますと翌日の早朝でした。
C 「おい、おきろよ!」目を覚ますと…私達はいやらしい目つきをした男の人達に取り囲まれていました
D 目を覚ますと…本当に現代に戻っていました。
C
「おい、おきろよ、ねーちゃんたち!」
目を覚ますと…私達はいやらしい目つきをした男の人達に取り囲まれていました。
その見た目はこの時代風に言うなら”悪漢”という感じの、いかにもカタギっぽくない人達でした。
「そんなところで寝てると風邪を引くぜ。 良かったら俺達の寝床に来ねーか? 色々と楽しませてやるぜ」
どうやら私たちを誘っているようです。言葉の端々には親切心のと言うより下心が見え見えです。
100年後でも100人いたら99人は断りそうなベタな誘い文句でした。
私は生娘ではないので流石に彼らの考えている事は分かります。彼らの下卑な笑いに私は思わず後ずさりました。
「そのようなやり方でつがいを得ようとは、笑止な。 銀河の果にでもそのような口説き文句で心を傾かせるものは居らぬぞ。
やはりうーは粛清されるべきだな」
彼らの口説きになんら反応を示さなかったるーこちゃんが突如、小学校高学年程度のお子様の口から出る思えない物騒な言葉を口にしだします。
無表情で淡々と挑発と呼ぶべき言動をするるーこちゃんに、彼らは怒りをを露にしました。
「んだとコラ。 調子に乗るなよ、クソガキが。やっちまうか?俺様のはでかいから入らねーぞ」
彼らの一人が露骨に卑猥な台詞を吐き出しました。100年後ならこれだけでお縄に付きそうですね。
「ガキとやる趣味はねぇが…高く買ってくれお大尽がいるだろうさ」
こんな時代からょぅι゛ょ趣味はあったんですね。そんなどうでもいい事に関心を向けている私と、るーこちゃんは
この場でやる気満々になった悪漢たちに囲まれてピンチです。このまま18歳未満禁止の展開になってしまうんでしょうか?
A るーこちゃんは本当に粛清しちゃいました。死屍累々です、殺してませんが
B 「あれれ?先客かな?」金髪のポニーテールのお侍さんがこちらを覗いています。
C 「その先を続けると言うのなら、私たちは大手柄ですねぇ」 馬面の警察官とその部下が悪漢たちを包囲していました
B
「あれ? 先客かな?」
その時私達全員の後ろからそんな声が聞こえました。
反射的に振り向いたそこにいたのは、金髪の……そう。私達が言うところの金髪のポニーテール。
いくらか粗末な着物を着た、しかし腰には確かな輝きを秘める刀を差した一人の女性。
「あン? なんだてめぇは? 何の用だ?」
「わたし? わたしは観鈴。今夜の寝床を探してたんだけど……お邪魔しちゃったかな?」
「ああ。邪魔も邪魔だね。さっさと失せな!」
悪漢のなかで一際大きな、おそらくこのグループのリーダーと思しき方がしっしっとお侍さんを追いやります。
「そう。ごめんね、邪魔しちゃったみたいで」
そのままくるりと、聞き分けのいいことにお侍さんは踵を返してしまいますが……
「待ってください」
私はその背中に声をかけました。とりあえず現状を打破しなければいけません。
おそらくその鍵はこのお侍さんが握っている気がするのです。
「私たちは今襲われているのですが、助けていただけませんか」
「んだとこのア!」
私の言葉に激昂する悪漢。しかし、その言葉は止まります。私の思考も止まります。
「……ふぅん。そうだったんだ」
次の瞬間、お侍さんの姿は私の背後に。
「え?」
「そういうことなら、放っておくわけにはいかないよね。にはは」
無邪気に笑った次の瞬間、お侍さんは腰の刀の鯉口を切
「逃げるよっ!」
……らずに、私を抱きあげ、るーこちゃんを背負い、言われなくてもすたこらっさな勢いで走り出しました。
「ま、待てっ! 待ちやが……!」
反応が遅れた男の人たちが後ろから聞こえてきますが、それもたちまち掻き消えます。
私達はまさに疾風のごとく、その場を後にしました。
「ごめんねいきなり手荒い真似しちゃって。大丈夫だった?」
川原を離れ、静かな町外れ。そこでようやく私たちは下ろされました。
「はい……ありがとうございます。助かりました」
あの扱いに不平を言う理由はありません。
「うむ、助かったぞ」
「そう。よかった」
にははと、おそらく私達よりだいぶ年上なのに観鈴さんは無邪気に笑います。
A 「女の子が夜出歩くのは気をつけたほうがいいよ」と注意の言葉をいただき、私たちは別れました。
B ここで別れては同じことの繰り返しです。助けていただいた上迷惑をかけるのは心苦しいですが観鈴さんに少し相談してみることにしました。
B
a
「でも、あなた達もちょっとはよくないよ。こんな時間に女の子だけでうろつくなんて」
窘めるように観鈴さんは言います。確かにそれはそうなんですが……
「すみません……ですが、私達帰るところがないんです」
「うむ。少なくともここにはないな」
反射的に出てしまった言葉ですが、言った後ずいぶん同情を引く言い方になってしまったことに気づきました。
はっと顔を上げますが、観鈴さんは心底真面目な顔で
「なにか……事情があるみたいだね」
観鈴さんが促すまま、私は私達の事情についてできるだけ話してみました。
助けていただいた上こんなことに巻き込むのは心苦しいものがありますが、正直他に手立てはありません。
「そうなんだ……遠くから飛ばされてきて」
「はい……」
「けど、それならどこから来たの?」
「そ、それは……」
……弱りました。説明したいのは山々ですが、言って理解や納得できるものではないでしょうし、仮にわかってもらったとしても
また異なる時間の人間として迂闊なことをしてはタイムパラドックスに巻き込まれて今度こそ帰ってこられなくなるかもしれません。
仕方なく、私は
「すいません……それについてはお答えできません。ですが、遠くから来てしまい、帰れないことは確かなんです」
我ながら随分と失礼な、そして怪しい答えだとは思います。
「……うそは、ついてないんだよね?」
澄んだ瞳で覗き込まれます。まるで、心の奥底にスッと触れられるような。
「うむ。うーきはうそをつくようなうーではない。それはるーが保障しよう」
あんまりフォローになってませんけどるーこさんもフォローしてくださいます。
「うん、わかった。信じるよ。人間誰しも言えないことのひとつやふたつ、あるしね」
納得してくださったようです。笑顔を見せてくださいますが、それが私には少し痛いです。
「けど……そうなると困ったな。わたしも今はそんなに余裕あるわけじゃないし……」
かなり困ってる様子です。自分のせいで迷惑をかけているのに、何もできない自分が情けないです。
観鈴さんは…
A 「とりあえず、3人でも一晩くらいなら宿に泊まれるかな……?」財布を覗き込みながら呟きました。
B 「あんまりみんなに迷惑はかけたくないんだけど……仕方ないかな」何やら懐から紙を取り出し、「紹介状」と書き始めました。
C 「その前にみすうーに聞きたいことがある」何やらるーこさんが話があるようです。
D その時、私のお腹が鳴ってしまいました。
C
「その前にみすうーに聞きたいことがある」
「ん? 何かなお嬢ちゃん」
「お嬢ちゃんではない。るーはるーこ・きれいなそらだ。大熊むぐぐ」
「?」
とりあえず、るーこさんの口をふさぎます。
大丈夫だとは思いますが、未来と過去だけで手一杯の現状、あまり状況を難しくしたくありません。
「この子はるーこさん、私は草壁優季っていいます。よろしくお願いします」
「あ、うん。よろしく。わたしは観鈴」
代わってこちらで自己紹介を。
「何をするかうーき」
「さあ自己紹介は終わりました。何かききたいことがあるんですよねるーこさん」
「うむ……そうだったな」
どうにか誤魔化せたようです。
「改めてみすうー。ききたいことがある」
「何かなるーこさん?」
「るーこでいい。るーがききたいのは…………」
A 最近るーたちに似たようなうーを見たという話はないか
B 今るーたちのいる時間と場所を正確に教えてほしい
C みすうーからは特殊なうーを感じる。みすうーは何者か
C
「みすうーからは特殊なうーを感じる。みすうーは何者か」
「???」
突然の問い。観鈴さんは顔中に疑問符を浮かべています。
無理もないと思いますが。
「るーはいいうーは死んだうーだけだという話は間違いだったと認識を改めた。
いいうーもいれば悪いうーもいる。それがるーが見た真実だった。
みすうーはいいうーに属する。それは間違いない。
だがそれだけではないうーを感じる。みすうーは何者だ」
「観鈴さんはいい人だと思うけど、他の人とちょっと変わった感じがします。
観鈴さんはいったいどんなお方なんでしょう? ……と言いたいようです」
念のため対訳を入れておきます。
「なるほど」
「すいません初対面の、それも助けてくださった方にこんな」
「いいよいいよ。気にしないで」
「なぜ謝る、うーき」
「…………」
2人っきりならいいですけど、他の人を間に挟むとるーこさんは疲れます。
「それでみすうーは何者か」
「わたし? わたしはただの浪人崩れだよ」
「るー浪人?」
「その台詞は少し危ないよ」
「すまない」
「るーこさん、そのくらいでいいんじゃないですか。わたし達もほとんど素性を話していないのに、相手を追及するのはフェアじゃないですよ」
「むー…………」
さすがにこれ以上は失礼になりそうなので軽く窘めました。るーこさんも現状がわかっていないわけではないらしく、引き下がってくださいます。
そうです。それに今は……
「それより草壁さん」
「はい」
「いくところがないっていっても、これからどうするつもり?
この街はまだまだ無宿人には冷たいよ」
「そうですね……そこなんです」
今は観鈴さんが何者かということよりも私達がどうするかの方が問題です。
いきなり100年前に放り出され、まさしく路頭に迷う。
さすがにこれは私にとっても未曾有の経験です。
服や寝るところどころか目の前のご飯すら怪しい状況です。
「ちーなら持ってきている。これで大丈夫ではないか?」
「すいませんるーこさん、今はそれにはお付き合いできません」
「そうか……。しかし、ならどうするうーき?」
「そうですね……」
A 一刻も早く元の時代に戻る方法を探すべきです。
B すぐにいい方法が見つかるとも限りません。まずは衣食住の確保が先決でしょう。
A
「一刻も早く元の時代に戻る方法を探すべきです」
「るー」
「もとのじだい?」
「あ、いえ、すいません。何でもありません」
つい口が滑りました。
しかし、今はそれしかないはずです。いきなり100年前に放り出されて、うまく生きていける自信もありません。
時間の流れというのは一見強固に見えますが、先ほどの一件を挙げるまでもなく些細なきっかけで意外と簡単に歪みます。
現実として私達がここに来れた以上、また戻る方法もなにかがあるはずです。
「いいだろう。時空跳躍を調べるのはるーの務めでもある。るーはうーきに従う」
「ありがとうございます」
「話はまとまった?」
「あ、はい」
気を使ってくださったのでしょう。私達から少し離れた場所で観鈴さんは待っていてくださいました。
「とりあえず私たちは……元いた場所に戻る方法を探してみようかと思います」
「そう。わたしは手伝わなくて大丈夫かな?」
「……………………」
どうしましょうか。
確かに正直なところ、私達だけでは不安なところも多いです。
しかし、あまり関係の無い方と深く関わるのも問題があると思います。
最悪、またタイムパラドックスを起こしてしまったり、その時の時空跳躍に巻き込んでしまう可能性もありますから。
ここはどうするべきでしょうか……
A やはり基本的に私達だけで行動するべきでしょう。観鈴さんにお礼を言ってここで別れる。
B 右も左もわからぬこの状況では調査もままなりません。しばらく観鈴さんに行動を共にしてもらう。
この時代の手がかりがないと厳しいだろう。B
それでもやはり、この時代に詳しい人の助けは必要だと思います。
私には元の時代に戻る力はないですし、るーこさんにもそこまでの力があるかは疑問です。
いえ、あるとしたらとっくに元の時代に戻ってるハズですから、ないと考えたほうが妥当でしょうか。
とすると、やっぱりこの時代の人の力を借りるしかないです。
「あの、観鈴さん。お願いがあるんですけど……」
「にはは、いいよ。ついてってあげる」
「少しの間だけで良いですから、私達と一緒に……って、ええっ!?」
私がお願いを言う前に、観鈴さんが快諾しました。しかも私のお願いの内容を完全に予想したと言うオマケつきで。
「わたし、ヒマ人だし。それにやっぱり女の子二人じゃ危ないからね。
明治の世の中になって随分経つけど、まだまだ危ない人は一杯いるんだよ?」
自分も女性であることは棚に上げてる。
お侍さんなんだから、多分お強いんでしょうけど。
「礼を言うぞ、みすうー」
「気にしなくていいよ。困ったときはお互い様っ。にはは」
観鈴さんが独特の笑い方で微笑みました。
「それで、これからどうしましょう?」
今のところは、私達が未来から来たという事は伏せて話します。
多分それぐらいではパラドックスは起こらないと思うんですけど、一応念の為です。
また同じように別の時代に飛ばされちゃうかもしれませんし、そこでるーこさんと逸れたら目も当てられません。
協力を仰ぐ以上、何れは本当の事を話すときが来るかもしれませんけど……。
「とにかく、今夜はもう遅いから何処か寝るところを探そうよ」
「それにはるーも賛成だ」
私達は観鈴さんの意見を中心に話を進めていきます。この時代の人の意見は無視できないですしね。
現状では右も左も分からない以上、観鈴さんからいろいろと話も聞いておいたほうが良いでしょう。
「あの、観鈴さん……」
「なにかな?」
A 宿代……足りるんですか?
B 今年って、明治何年でしたっけ?
C 明治の世の中なのに、どうして刀なんて差してるんです?
D 失礼ですけど、お幾つなんですか?
d
「観鈴さんってお侍さんなんですよね?」
「そうだよ。今ではみすずちんも立派な士族、ぶいっ。幕末の頃は一生懸命頑張ってたんだよ」
「幕末って……失礼ですけど、お幾つなんですか?」
その言葉で、観鈴さんがぴしりと固まりました。
幕末の頃に活動してたっていうと……今の年齢はおそらく私より幾分も上のはずです。
傍から見ると私と殆ど変わらない、いえヘタすると私より若く見えますが、
「ご、ごめんなさい。でも気になっちゃったもので……イヤなら答えなくていいですから」
「よ、四十路には届いてないよ。多分柏木さん家の千鶴さんと同じ年」
そんなの見れば分かります。その外見で四十越えてたら詐欺です。
そんな人がいるとしたら、それはもう人間じゃないと思います。どこのソフ倫対策ですか。
というか三十二歳ですか。そうですか。
私の中の常識がちょっとだけピンチになってます。
「と、とにかく寝るところを探さないとね」
観鈴さんが露骨に話を逸らすと、私とるーこさんは顔を見合わせて苦笑しました。
年齢については聞かなかったことにしてあげましょう。
それから私達は、町外れの物置小屋で一晩明かすことになりました。
正直言って居心地は全然良くないですが、流石に贅沢いえないですしね。
翌朝、私が目を開けるとそこには見慣れない天井が広がっていました。
……目を覚ましたら全ては夢だった、なんてことはないようです。期待してたんですけど。
これからどうするべきでしょう。元の時代に戻る手がかりが欲しいところなんですが……。
A 人が集まる場所に行ってみる
B 私達と同じ境遇の人がいないか探してみる
C 観鈴さんに頼れる知り合いがいないか聞いてみる
D るーこさんに相談する
D
「るーこさん、どうやって元の時代に戻ったらいいと思う?」
私は目を覚ましたるーこさんにこれからのことを相談してみました。
子供に頼るのは年上として少し情けないですけれど、ヘタするとるーこさんの方が私よりしっかりしてますし。
そういえば、るーこさんみたいな人を学校で見かけたような気もします。本当は同い年なのかもしれないですね。
ちなみに観鈴さんは朝食を用意してくるとのことで、席を立っています。
「うーき、あのタイムパラドックス……少し気になる点がある」
「気になる点、ですか?」
るーこさんが難しい顔をして、腕を組んで考え込んでいます。
年不相応なその仕草が可愛らしくも見えますけど。
「最初にうーきはるーの時間軸へ跳躍してきた。
それから、うーきは自分自身と会ってしまったことでタイムパラドックスを起こしてしまった。そこまではいいか?」
「あ、はい」
「だが……世界の干渉があまりにも早すぎる」
「えっ?」
「本来世界の修正と言うものは、よほどの事態にならないかぎり行使されない。
うーきがるーの時間軸のうーきを殺すなどといった致命的な矛盾が起きさえしなければ問題はなかったはずだ。
例えばるーが未来へ時間移動し、そこでるーに出会ったとしてもその程度なら矛盾とは認識されない。
なのに、うーきの場合に限っては『うーきが過去のうーきと顔を合わせること』すら世界は否定した。
妙だと思わないか? それほど世界にとって過去のうーきとの邂逅は危険視されるものなのか?」
そんなこと言われても、さっぱりなんですけど。
私はミステリ研やオカルト研じゃないですから、超常現象に詳しくないですし。
「何故うーきに限って例外が起こった? ”るー”の命はそのことについて調べろと言うことなのか……?」
年に似合わず難しいことを喋ってます。
専門的な話は分からないのですが、とにかく大変だという事は分かりました。
それで、結局のところ元の時代に戻る方法についてはどうなんでしょう。
私がそれについて聞こうとしたところ……
「にはは、お待たせ」
外から観鈴さんの声が聞こえてきました。
一先ず、この話はまた後ですね。
観鈴さんは確か朝食を用意してくるとの事でしたが……
A おにぎりを持ってきてくれました
B 見事に手ぶらでした
C 何故か両手を挙げていてその後ろには警官隊の方たちが物置小屋を取り囲んでいました
Cで
戸を開けて、私は一瞬腰を抜かしそうになりました。
そこにいたのは観鈴さんだけじゃなく、警官隊の方たちがずらり。
しかも観鈴さんは困ったように笑いながら、両手を挙げていた。
「あ、あの……観鈴さん、これって……」
「に、にはは。警官隊の人に囲まれてわたし達、ぴんちっ」
いや、それは見れば分かります。
どうみても友好的に見えない警察の方たちが取り囲んでるんです、
ピンチ以外のなんだって言うんでしょうか。
「ど、どうしてこんなことになってるんです?」
「そ、それは……」
観鈴さんが私と警官隊の一番偉い人とをチラリチラリと見ながら、やがて困ったように言いました。
A わたし、廃刀令の違反者だから
B 実はね……わたし、明治政府にちょっとだけ反抗してるんだよ
C この人たち、わたしじゃなくて草壁さん達に用があるみたいだよ?
D ごめん、ちょっと言えない
A
「わたし、廃刀令の違反者だから」
そこで私は思い出しました。
確か明治九年に廃刀令が施行されて、
たとえお侍さんでもそれ以降は刀を持つことが出来なくなってしまったんでした。豆知識、豆知識。
ごく自然に刀を持っていたから、てっきり今はそれ以前の時代だと思ってたんですが、
そうじゃなくて単に観鈴さんが違反してるだけだったんですか……。
確かにお侍さんにとって、魂とも言えるとても大切な刀を手放すのは耐え難いことなのかもしれません。
「……ね、柳川さん。見逃してくれないかな」
観鈴さんはまるで困ったように、警察官の人に視線を向けました。
「再三警告はしたはずだ」
「うん、分かってる。だからみすずちん、注意された後は使ってない。持ってるだけ」
「使わなければいいという問題じゃない。帯刀禁止だ」
「昔のよしみで見逃して欲しいな」
「知らんな」
観鈴さんが警察官の人に懇願しても、
やはり職務に忠実らしく、警察官の人は観鈴さんの頼みをきっぱり断りました。
「観鈴さん、警察の人とお知り合いなんですか?」
「うん。柳川祐也さんって言って、幕末の頃にちょっとした縁があったの」
いわゆる戦友というものなんでしょうか。よく分かりませんけど。
「その二人は何だ? 奇妙な服装をしているが、洋服の一種か?」
「に、にはは。わたしの友達」
柳川さんがまるで怪しむように私達を睨みました。
や、やっぱり怪しい人に見えるんですね。服装も明治のものとはかけ離れすぎてますし。
「名前は?」
「……草壁優季です」
「るーこ・きれいなそら」
「何処から来た?」
「…………」
「沈黙か……」
私が黙っていると、柳川さんは困ったようにため息をつきました。
黙るしかないんです。『未来から来ました』なんて、言ったとしても信じてくれるわけないですから。
「怪しい奴だな。署で詳しい話を聞く必要がありそうだ」
びくっ。
私はその言葉に少し震えました。これって……任意同行ってことですか?
どうしたらいいんでしょう。
A 大人しく従ったほうが良いでしょう
B 疚しいことはしてないんです。きっちり反論すべきでしょう
C 観鈴さんに任せましょう
C
「ま、待って柳川さん、二人は悪い人じゃないから!」
「悪いが最近いろいろと良からぬ噂があるからな。どこから来たのかもよく分からん奴を見過ごしには出来ん」
「え、ええとね。草壁さんは東京郊外の松之郷って所から来て、
それで11歳の皐月と4歳の芽衣っていう妹さんがいてね、それでお父さんの名前がタツ……」
「一瞬で嘘と分かるような作り話をするんじゃない」
観鈴さんが言い終わる前に柳川さんがぴしゃりと言い放ちました。
……観鈴さん、作り話をするなら、もうちょっと練ってください。
「悪いことしてない人を捕まえるのが、警察のお仕事なの?」
「今は怪しい人間を見過ごすことは出来ん」
「それが小さな女の子相手でも?」
「場合によってはな」
今度は普通に説得を始めた観鈴さん。
だけど、柳川さんはまるで取り合ってくれません。意思が、固いんですね。
「そうなんだ。それなら……」
A 「力ずくかな」そう言って、観鈴さんが刀を抜きました
B 「三十六計なんとやらだよね」と、私とるーこさんの手を引きました
C 「しょうがないかな」えぇーっ!? 諦めちゃった!?
B
「三十六計何とやらだよね」
観鈴さんはそれだけ言ってから、くすっと笑って私とるーこさんの手を引きました。
それからの観鈴さんの行動は本当に迅速としか言いようのないものでした。
橋の下で襲われた時のように、るーこさんを背負い、私を抱き上げ、ダッと土を蹴って走ります。
……私はいわゆるお姫様抱っこの形なんですが、女の人に抱っこされてもあまり絵になりませんよね。
虚を突かれて、警官隊の一角に隙が出来ます。
そこを見過ごさず、観鈴さんは一瞬で駆け抜けようとし……不意に、誰かに腕を掴まれました。
「舐められたものだな。女二人を抱えてこの包囲から逃げようなどとはな」
「が、がお……」
観鈴さんの腕を掴んだのは、柳川さんでした。
「お前の行動など全てお見通しだ」
「やっぱり、柳川さんから逃げるのはムリなのかな。残念」
「お前一人なら十分逃げられただろう。……その二人を捨ててかないのか?」
「柳川さん。わたしが一番嫌いなこと、覚えてる?」
「……罪のない女子供が犠牲になること、だったな。
何も危害を加えようというわけじゃない。少し取調べを受けてもらうだけだ。
今俺が追っている事件と関わりのないことが分かれば直ぐに解放するさ」
「悪いけど、それってぜんぜん信用できないかな」
「だがどうする気だ? もはや逃れることはできんぞ」
柳川さんの言うとおりです。
囲まれているのですし、私たちを連れて逃げるなんて絶対に不可能です。
例え観鈴さんが正義のヒーローでも私たちを助け出すのはムリでしょう。
……私たち、お荷物になってるんですね。
A これ以上観鈴さんに迷惑をかけるわけには行かない
B 今度は観鈴さんが柳川さんに抵抗する態度を見せた
Aかなぁ
「……観鈴さん、どうもありがとうございました」
私は観鈴さんから降りると、一度ぺこりと頭を下げてお礼を言いました。
観鈴さんが私たちのために一生懸命になってくれているのは分かります。
だけど、もともと私たちが疑われてるんです。観鈴さんには何の関係もありません。
るーこちゃんも私の気持ちを理解したのか、一度観鈴さんから降りて頭を下げました。
本当に、よく出来た子ですよね。将来どんな大人になるんでしょうか。
「草壁さん……行っちゃうつもりなのかな?」
「大丈夫ですよ。元々私たちは疚しいことをしてないんですから、直ぐに誤解は解けます」
「それが賢明だ」
柳川さんはすっと右手をあげました。
周りを囲っていた警官の一人が、私とるーこさんをそっと観鈴さんから遠ざけます。
観鈴さんは何か言おうとしましたが、私が黙って首を振ると、何も言わずに柳川さんを睨み付けていました。
柳川さんはまるで気にした風でもなく、観鈴さんに淡々と話します。
「さて、俺はこれからお前もしょっ引かなくてはいけない。
廃刀令違反は立派な罪だからな。逃げようとはするなよ?」
「女の子や小さい子を見捨ててまで、逃げようとは思わないよ」
観鈴さんはそう言って、大人しく両手を挙げた。
……もしかして、柳川さんが私たちを取り調べようとしたのって、
そうしたほうが観鈴さんを捕まえやすくなるからだったんじゃ……。
意外と策士なのかもしれないですね。柳川さんは。
そういうわけで連れてこられた警察署の取調室。
密閉された空間に、私とるーこさんは、柳川さんと向き合う形で座らされています。
「まず聞くが……本当に、お前たちは何者だ?」
最初に聞かれたのがそれでした。
そう言われても、本当に困ります。正直に言ったとしても、信じてもらえるはずがないです。
でも、何か適当なことを話して誤魔化したとしても……。
『柳川さんのゴウモンは厳しいよ。隠し事はしないほうがいいかな』
別れる前に観鈴さんの言ったその言葉が頭にちらついちゃいます。
……八方塞だと思うんですけれど、どうしたらいいんでしょうか。
A 信じてくれないだろうけど、本当のことを話す
B 危険を覚悟で適当なことを話して誤魔化す
C 泣き落としに頼る
D 黙秘権を行使する
Bかな、かな
「その前にひとつ、お伝えしておきます」
「なんだ」
緊張しますができるだけ真っ直ぐ、柳川さんの両目を見据えお腹の中から声を絞り出します。
私達がどうなるにしても、これだけは言っておかなければなりません。
「観鈴さんは何も悪いことはしていません。悪い人達に絡まれた私達を助けてくれた上、その後もお世話してくださいました。
もちろん、その時も誰一人として傷つけてはいません」
これ以上観鈴さんに迷惑をかけるわけにはいきません。このことは伝えておかなければならないでしょう。
しかし柳川さんはほとんどこれといった反応は示さず
「わざわざ言わなくてもそんなことはわかっている。あいつの愚直さは一級品だからな。
そんなことよりも今はお前たちのことだ。もう一度訊こう。お前たちは何者だ」
「……………………」
一蹴されました。ですがひとまず私の言いたいことは既に認識しているようですしいいでしょう。
これ以上は言っても仕方のないことでしょうし。
それよりも…………
「名前は……さっき聞いたか。後は、もしあるのなら職業。出身地。何のためにこの街に来たか。
さしあたってはそのあたりを答えてもらおうか」
「…………」
この窮地をどうするか、です。
正直に答えるのは論外でしょう。信じてもらえるとは思えませんし、最悪精神病患者扱いされかねません。
となると嘘……というと聞こえが悪いですが、なんとかもっともらしい説明で辻褄を合わせなければなりません。
どう答えたものでしょうか………
A 簡単に嘘がつけるものでもない。私の本当の素性に沿わせた説明をしてみる。
B 家庭の事情で家を追い出され、路頭に迷ってここまで流れてきたと言ってみる。
C 中途半端はよくない。いっそのこと記憶喪失だと訴えてみる。
D 「るーは大熊座47番星第3惑星"るー"からやってきたるーこ・きれなそらだ」どう考えても危険な回答です本当にありがとうございました。
A
D
簡単に嘘がつけるものでもないと思います。私の本当の素性に沿わせた説明をしてみましょう。
まずは職業。それは学生ですけど、この時代に私くらいの年の女性が通える学校なんて
あったでしょうか。
うーんと、たしかはいからさんが通るでは女学校だったような……
そもそもあれは大正時代だった気がしますけど。
「あ、あの、私は女学校に通っています」
「ほう」
うう、なんだか視線が怖いです。
「住んでいるところは東鳩の町です。生まれも東鳩ですが、幼い頃に別の町に
移り住んで、最近また東鳩に戻ってきたんです。川のそばに家があります」
「この町に来た理由は……道に迷ったからです。最近戻ってきたもので、道がよく
分からなくなってしまって」
「この子はわたしの家の近くの子です。一緒に家に帰ろうとしていました」
「お金もなく、暗くなってしまったので一旦休もうとしたところを観鈴さんに
助けていただいたんです」
柳川さんは相槌を打ちながら聞いています。
るーこさんもここは私に任せてくれたのか、黙って聞いています。
話が終わると、柳川さんは私を見ていいました。
A 「ここもまだ東鳩だ。どのあたりに住んでいるんだ? 送っていこう」
B 「東鳩…… 聞いたことがない町だな」
C 「女学校というのはそんな服を着るものなのか?」
D 「なぜ今の話をさっき言えなかったんだ?」
E 「東鳩か。いったい何里歩いてここまで来たんだ」
C
「はて、どうもその格好は俺の目には女学校というよりも海軍の制服のように見えるのだが」
ギクッ!
そうでした。セーラー服が日本の女子学生の制服として採用されたのは大正になってからのことで
元々はセーラー(水兵)のなの通り海軍の制服なんですよね。そんなトリビアは置いといて
「女学校というのはそんな服を着るものなのか?」
「えっとうちの学校の創立者が海軍の関係者でして、試験的に女子の制服に採用しているんですよ」
「随分と物好きな創立者だな。で、名前は?」
「名前といいますと?」
「自分の学校の創立者の名前ぐらい知らんのか?」
うぅ、なんだかどつぼに嵌っているみたいです。これは失敗かな。
なんとか上手く切り抜けられないものでしょうか。
そう私が思いあぐねているうちに。
「警部補!大変です!」
「なんだ取調べ中に騒々しい」
すると部下の人が取調室に血相を変えて駆け込んできました。
切らした息を調えながらその巡査の人はこう言いました。
A「脱獄です。護送中の凶悪犯に逃げられました」
B「暴動です。不平士族によるものと思われます」
C「また例の通り魔です。今月でもう五件目ですよ」
D「大事件です。大久保卿が暗殺されました」
Cかね
どれ選んでもどうなるのかさっぱりわからん
「また例の通り魔が出ました!」
「……なに?」
その言葉を聞き、鬱陶しげな態度だった柳川さんの表情がにわかに変わります。
「間違いないか」
「はい、間違いありません。もう今月で五件目です」
「わかった。すぐに行く」
そこまで聞くとガタリと席を立ち、部下を押しのけて柳川さんはドアを開けます。
「この子らはどうしますか?」
と、思い出したように部下の人が私達を見ながら言いました。
「そうだな。また後で取調べを続ける。しばらくブチ込んでおけ。一応丁重にな」
「はい」
そして柳川さんは出て行きました。
「さあ、来るんだ。しばらく大人しくしててもらうぞ」
一拍おいて、部下の方が私達を立たせます。抵抗してもしかたないですし、ここは素直に従っておきましょう。
「るー」
るーこさんと二人で一緒に立ち上がり、ふと部下の方と眼が会いました。
「……!」
どうしたことでしょう。その瞬間部下の方の眼が驚愕に見開かれます。
「警部補!」
叫び声と、扉が勢いよく開かれたのは同時でした。
「……待て。少し待て」
そこには、同じような表情をした柳川さんが。
「観鈴を呼べ。今すぐにだ」
「……どういう、ことなんですか?」
部下の方を走らせ、改めて私達三人は取調室の中で向かい合います。
「そうだな……お前たち。最近このあたりで頻発している通り魔事件は知っているか?」
「…………」
ぽかんとした顔でるーこさんと顔を見合います。知るわけがありません。
「……知らんのか。まあいい」
と言いながら、取り出したのは数枚の書類。
「ここ一月のことだ。このあたりいったいで通り魔による殺人事件が多発している」
ぺらぺらと紙をめくって見せますが私には何のことだかわかりません。
「……それが、どうかしたんですか?」
「凶器、場所、時間、いずれにも共通項はなし。もちろん動機も不明。まさしく無差別殺人だ。許しがたい」
静かな表情ですが、内面に怒りが渦巻いているのはわかります。冷血な方ですけど、一応警察としての正義感は持ち合わせているようです。
しかし無差別殺人ですか……明治の世も物騒なんですね。
「ただ、ひとつ。被害者に共通していることがある」
と言いながら、書類をサッとずらしながら並べ、同じ欄を私に示します。
そこには……
「被害者はいずれも女性。それも子供だ。年の頃は15から20。黒の長髪。顔つきもどことなく似ている」
「…………!」
それっ、て。まさか。
「……うーき」
「そうだ。すべてお前にも当てはまることだ」
「草壁さんっ、よかった無事だったんだね」
柳川さんの言葉で場が凍りついたところで不意に扉を開く音。
「観鈴さん…………」
視線を向ければそこには先ほどの部下の方と一緒に観鈴さんが。
「心配してたんだよ……柳川さんのことだからまた足に五寸釘突き刺したり、蝋燭であぶったりしてるんじゃないかって」
「……お前は俺をなんだと思っているんだ。いくら俺だって怪しいだけの女子供にそんな真似をするわけがないだろう」
「柳川さんならわからないかもよ?」
不満そうな柳川さんに、観鈴さんがちくりと皮肉を言います。少しいい気味です。
「連れてきました、警部補」
「……ご苦労。下がっていろ」
「はっ」
部下の方が部屋を出ます。そして、観鈴さんは私の隣に。
「……さて観鈴。大方の事情は伝えてあるな?」
「…………うん」
暗い表情で、頷きます。
「先に草壁優季と小娘に関して俺の所見だ。……この上なく怪しい。
いくらなんでも珍妙な服。どことなくズレた受け答え。その上出身地も職業もここまで来た理由も嘘をつく」
(やっぱり見抜かれてましたか…………)
少しがっくりと来ますが、柳川さんはまだなにか続きがある言い方。私達は黙って先を待ちます。
「その上ここの所の通り魔事件の被害者と同じ特徴。ま、怪しまないほうがおかしいな、これは」
「…………」
「だがなにか聞き出すのもこの分には無理そうだ。かといって釈放するわけにもいかん。
少なくとも、寄る辺も金も無いのは確かなようだしな。保証人のあてもないだろう」
「…………」
言い返せません。
「さて話は変わるが観鈴。俺の話は受けてもらえるか?」
「嫌だよ」
とここで突然の話題転換。私達にはわからぬまま、観鈴さんは断ります。
「考え直せ。お前ももう三十路を過ぎた。くだらん自己満足の放蕩生活はもうやめろ。それよりその剣を生かせる職に就け」
「嫌だよ。これがわたしの生き方。わたしはもう組織の中で生きるのは嫌なんだ」
「……さて、と。まあこういう奴なわけだ。この神尾観鈴という女は」
そしてそこでまた急に、私に話が振られました。
「…………?」
「わけがわからんのは無理もない。ま、話は簡単だ。前々から俺は観鈴に警察に入るよう勧めてるんだがな。
この糞頑固な若作りは頑として聞こうとしない」
「若作りは余計だよ」
「だがここで話は少し変わる。観鈴。もしお前が警官になれば、お前の連れてきたこの小娘どもの保証人にも十分だ。
給料も出せる。住むところもあてがえる。お前も根無し草な生活はせずにすむ。……どうだ、悪くない話だろう」
「…………!」
……この人、悪魔です。また私達をダシに使おうとしています。
「卑怯ですねあなた」
思わず、本音が出てしまいました。
「卑怯? そうかな。俺としては誰にとっても悪くない話だと思うんだがな」
「どこがですか」
「まずお前たちに関してだ。嘘はついてるがとりあえずお前たちに行くあても無く、素性もわからんのは確か。
このままなら当分牢屋に入ってもらうことになる。よしんば釈放されたとしても街にはお前と同じ特徴を持つ女を狙う通り魔がうろついている状態。
さて、これは困ったな」
「…………」
「次に観鈴だ。まず金と住むところが手に入る。社会的地位もそれなりのものになる。……ま、こんなものは興味ないだろうがな。
だが何より、官職に就けば帯刀も許される。個人所有の刀も、まあ俺が申請すれば許可も下りるだろう。
つまりそのお前の命より大切な刀を手放さずにすむ。警察に追われる心配もなくなる」
「…………」
「そして俺にとって。俺にしてみれば草壁、お前は囮にぴったりだ。お前を放しておけば犯人が食いついてくる可能性は高い。
無論そのままでは殺されるだけだろう。が、観鈴を護衛につけておけばその場で犯人を叩きのめすことも可能。
事件解決への近道になる。お前に考える頭があるのなら、これくらいの理屈はわかるな?」
「…………」
悔しいですけど、言うとおりかもしれません。
牢屋に閉じ込められたり、私達だけで街に放り出されても……少なくとも、事態は好転しないでしょう。
「というわけだ。話はわかってもらえただろうな、観鈴」
「……わかったけど、それでもわたしは」
「さて、では答えてもらおうか『草壁』。この話、受けてもらえるか?」
「…………?!」
どういうことでしょう。選択肢を突きつけられたのは、私でした。
「観鈴の性格はわかっている。こいつはいかなる暴力権力財力にも屈しはしない。意志の強さだけが取り柄だからな。
俺なんぞの取引では首を縦には振らないだろう。が……こいつは頼みごとにはひどく弱い。
特に弱い連中の頼みごとを断ることは絶対にない。そいつは誰よりも俺が知っている。
さて、草壁。頼んでもらおうか、観鈴に。なに、誰も損はしない。俺だって部下の面倒見はいい方だと自負しているからな」
この人は……間違いありません。鬼です。
けど…………私は…………
A …………わかりました
B …………嫌です
A
「……分かりました」
そう答えるしか、ありませんでした。
私たちもこのまま牢屋に押し込められているよりははるかにマシですし、
そして何より……観鈴さんに、少しでも恩返しをしてあげたいです。
確かに柳川さんは完全な打算の元に話を持ちかけてきてはいます。
ですけれど、この話に乗れば観鈴さんも刀を持つことが許されます。
柳川さんの言うとおり、悪い話じゃないのです。
「話が早くて助かるな。……で、どうする観鈴。
草壁は事件解決に快く協力してくれるそうだ。だが、囮となっては彼女に危害が及ぶのは必至。
無論我々警察も全力を尽くすだろうが、万一ということもある。
それに警官が常に護衛のように張り付いていては、囮として何の意味も持たん。
……この意味、分かるな? お前はアホでもバカじゃなかったからな」
「柳川さん、本当に変わらないね」
まるで苦虫を噛み潰したような表情で、観鈴さんは柳川さんを睨み付けました。
柳川さんの言いたいことは私でも分かります。
私を囮として使うけれど、警察として私の身の安全までは保証できない。
守りたければ、観鈴さん自身が私の盾となれ……そういう意味です。
「草壁が首を縦に振った時点で決まったようなものだな。
お前は女や子供を見殺しには絶対に出来ない。……そうだろう?」
「先に断っておくよ。わたしは、柳川さんに協力するつもりなんてない。
わたしはあくまで草壁さんとるーこちゃんを守る。それだけなんだよ。
昔のよしみで『偶然』犯人を取り押さえることがあったら、引き渡してあげるかもしれないけどね」
「結果的に目的は同じだ。今はそれで十分だな」
「もうすっかり明治政府のお犬さんだね」
「何とでも言え。警官の方は返事は犯人を捕まえた後でいい。何度も言うが冗談で薦めてるわけじゃないからな」
「わたしも何度も言うけど、わたしは柳川さんみたく割り切って生きられないよ」
それだけ言って、観鈴さんが柳川さんに背を向けました。
確かに柳川さんは柳川さんなりに観鈴さんを気にかけてはいるのでしょう。
そうでなければ観鈴さんに仕事を薦めるようなことはしないはずです。ですが…………。
「さ、帰ろう二人とも」
観鈴さんは私たちに向き直ると、笑顔で私たちの手を引きました。
「こら、まだ話は終わってないぞ」
「もう大体用件は終わりでしょ? どうせ草壁さんを街に放して囮にして、寄ってきた犯人を私が取り押さえる。
後は物陰にでも隠れていた警官隊の人たちが犯人を捕まえてめでたしめでたし。段取りはそうだよね?」
「……確かにそうだが」
今度は柳川さんが渋い顔をしました。
どうやら、相手のことがお見通しというのはお互い様らしいですね。
柳川さんは煮え切らない表情のまま、観鈴さんに紙と刀を差し出しました。
「そこにこれまで通り魔の出没した場所を記してある。
刀についても一先ずは事件が解決するまで帯刀出来るように俺が話を通しておこう」
「うん。ごくろーさん、にはは」
「……寝床は俺の家を使え。公ではないしあくまで個人的にできる範囲だが、それぐらいは用意してやる」
とにかく、私達は牢に入らずに済むことになりました。
色々と先行きは不安なのですが……。
警察署を出て、私たちは街に出てきました。
これから私は囮として、犯人逮捕に協力するわけなんですが……。
A 襲われやすいように人通りの少ないほうに向かう
B 街の人に少し聞き込みしてみる
C 通り魔の出没場所をもう一度よく確認してみる
D 観鈴さんに柳川さんという人物について聞いてみる
D
「柳川さんって、信用できるんですか?」
「それは心配要らないよ。柳川さん、約束は守る人だから」
私の心配を観鈴さんはあっさり即答しました。
観鈴さんと柳川さん、仲が良くなさそうにも見えましたけど、信用はしているみたいです。
少しそれがおかしくも見えます。
「柳川さんって……どういった人なんですか?」
「見たとおりだよ。警察でそこそこ偉くて、目的のためには手段を選ばなくて、
ちょっとの違反にも厳しくて、頭も固くて、ぶっきらぼうで……うん、ロクな人じゃない」
少し聞いただけなのに、次々と愚痴みたいな言葉が出てきます。
これって、俗に言うくされ縁ってやつでしょうか?
「その割には、観鈴さんは柳川さんを信用してるみたいですけど?」
「一応幕末の頃に背中を預けた仲だしね。
私も今では浪人なんてやってるけど、これでも昔は国を守るために燃えてた時期があったんだよ。
柳川さんはその頃私と同志だったんだ。今ではこんな調子だけど。
にはは、あの頃が懐かしいな。自分の剣が将来の日本の礎になるって信じて疑わなかったっけ。
あの頃はわたしも若かったから、一晩中柳川さんと正義について言い争ってたこともあったよ。
前柳川さんが遊郭に行ったとき冷やかしてあげたら『付き合いで行っただけだ』って顔を真っ赤にして怒っちゃって……」
なんだか話の方向がどんどん逸れていってます。
人間年をとると思い出話が長くなると言いますが……いえ、なんでもないです。
「あの頃の柳川さんは嫌いじゃなかったな。よくお酒を奢ってくれたし、確固たる信念があったし、強かったし。
だけど今はもう見る影もないよ。ずるい所ばかり変わってなくて、人の顔を見るごとに刀を捨てろってうるさいし……。
柳川さんの言ってることが正しいのは分かってるんだけどね。わたしが時代の波に乗れてないだけだって。
だけど納得できないな。いくらなんでも明治政府の為に剣を振るう気はないし」
観鈴さんの愚痴で、その行動に少し納得します。
……観鈴さん、幕軍だったんですね。だから柳川さんの切り替えの早さが納得できない、ということなんでしょう。
「それに思い出してみれば柳川さんは本当に極悪非道で、あんまりなことばかりやってたんだよ。
わたしがせっかく柳川さんの為に用意した飲み物を『不味い、こんなの飲み物じゃない』って捨てちゃうし、
セミっぽいご飯食べさせただけで怒るし、男色の噂を流しただけで本気でわたしに斬りかかるし……」
と、観鈴さんが熱弁しているところ、私は気づきました。
A 怪しい人がこちらの様子を伺っています
B るーこさんの姿がいつの間にか見えなくなっています
C ……おなかが空きました
Cトカ
「そういえば、私たちって朝から何も食べてないですよね」
私がそう言ったとき、ちょうどタイミングよくお腹が鳴りました。
恥ずかしさで顔を赤らめる私に、観鈴さんがクスクス笑いました。
「そうだね、それじゃそろそろお昼ごはん食べようか」
「るーもそうすべきだと思う。栄養の確保は最優先事項だ」
「……お金は大丈夫なんですか?」
「にはは。柳川さんにツケるから大丈夫」
なんだか柳川さんが可哀相になってきました。
……この調子じゃ、観鈴さんは他にもいろいろ柳川さんに迷惑かけてそうです。
それから私たちはお店で昼食をとることになりました。
結構周囲の視線が痛いんですが、そこは仕方がないですよね。
私たちの服装は完全に浮いてますし、観鈴さんは帯刀しちゃってますし。
でも、料理もおいしいですし気にしないことにしましょう。
それで、しばらくのんびり食事を楽しんでいた私たちですけど……
A 店の中での喧嘩に巻き込まれました
B 店の外から悲鳴が聞こえてきました
C 「食い逃げだぁーっ!」と店の人の声が上がりました
D 「この料理を作ったのは誰だぁっ!?」と物凄い剣幕で店の人に文句をつけてる人がいました(人物指定)
C
D 里村茜
「食い逃げだぁーっ!」、と店の人の声が上がりました。
そちらを振り向くとカチューシャを付けた私と同じ歳くらいの少女が、店員に押さえつけられています。
「うぐぅ、上手く行くと思ったのに…」
「メシ食い終わったのに勘定もせずに怪しい態度を取っているからミエミエだぞ、この野郎が!
警察に突き出してやる!」
和服にカチューシャなんて時代考証無視し気味ですが、キャラの識別が出来なくなるのでその辺はお約束という事で。
彼女は男女の力の差などお構いなしに、往生際悪く暴れて抵抗しています。周りのお客さんにもそれに加わりつつあるのでどうにもなりません。
「警察ですか…柳川さんに知らせた方が良いのでしょうか?」
「『んな瑣末な事件で俺を呼ぶな、阿呆が』って言われるだけだよ。 現行犯だし、普通の警察に──」
突然、言葉を止めると観鈴さんは私の顔に向かって手を伸ばしてきました。
その瞬間、彼女の手には小さい矢のようなものが掴まれていました。
「狙いは良いけど、殺気がみえみえだよ、そこの人」
観鈴さんが視線を向けた先にはどこにでもいそうな平凡な顔の少年がいました。
袖の奥には観鈴さんの手に握られた矢を発射すると思われる機械が見えます。
「抽箭か。 うーの漫画で見た記憶があるぞ」
物知りですね、るーこさんは。漫画がソースなのは戴けませんが。
「さて、早速網にかかったみたいだけど…君は何者なのかな?」
観鈴さんの問いに少年は──
A その少年は玉砕覚悟で私を狙ってきました
B 暗殺失敗と見るや煙球を使って逃亡しました
C 実は食い逃げ犯も共犯。少年に注意が向いた隙を狙ってきました
C たまには活躍しろあゆあゆ
「隙ありだよっ!」
突然後ろからそんな声が掛かってきました。
先ほど食い逃げ未遂をしていた女の子が、観鈴さんに後ろから踊りかかります。
「危ないっ……!!」
私がそう声を出したときと、ほぼ同時でしょうか。
観鈴さんが料理の乗っていた皿を後ろ手に投げつけ、それが女の子の顔にちょうど良くヒットしました。
「う、うぐぅっっ!!!」
「隙を狙っておきながら声をかけるお馬鹿さんがどこにいるのかな」
この台詞は古い知り合いの受け売りだけどね、と付け加えた後に、
観鈴さんは少年のほうを改めて向き直りました。
ですが、その表情には先ほどまで見られていた余裕がありません。何故なら……
「……るーこさん!!」
「すまないうーき、みすうー。油断してしまった……」
少年の片腕にはるーこさんが抱えられていました。
先ほどの女の子の乱入、それによって出来た観鈴さんの一瞬の隙、
観鈴さんも私も女の子のほうに注意が向いたその隙に、この人はるーこさんを人質に取ってしまったわけなのです。
「これで形勢逆転だな」
「ナイスだよっ、祐一君!!」
「やっぱりあゆ一人じゃ無理だったか。あゆあゆだししょうがないか」
「あゆあゆじゃないもん、あゆだもん……」
祐一と呼ばれたこの男の人が、にやっと不敵な笑みを見せました。
観鈴さんが腰の刀に手をかけようとしますが、
祐一さんはるーこさんを掴んでいる腕に力を入れることによって観鈴さんの動きを阻害します。
「動くなよ? 少しでも抵抗したらコイツの命はないぞ」
「……るー」
るーこさんは必死にもがいてますが、宇宙人といえども小さな女の子。
男の人の力にかなうはずはありません。
「るーこさんを、離してください!」
「お前が大人しくしてくれるんならな。一人でゆっくりこっちに来い」
祐一さんが私をくぃっと指で誘って挑発します。
この人達が件の通り魔、ならばそれの指す意味はただ一つ。
つまりは……私の命と、るーこさんの命を交換しよう、そういう意味です。
これはマズイです。落ち着いて、行動しないと……。
A 両手を挙げて、ゆっくり祐一さんに向かって歩く
B 話をして時間を稼ぐ
C 一か八か、従ったふりをして近づきつつ祐一さんに抵抗する
C
Bとか
私は両手を挙げて、ゆっくり彼の前に近づきました。
「祐一さん……っていったかな。わたしを怒らせたね?」
「言ってろ。そこで吼えるだけなら見逃してやるからさ」
「……もし一瞬でも草壁さんとるーこちゃんから意識を逸らしてごらん。
その瞬間、あなたは死んでるって思ったほうがいいよ」
刀に手をかけた姿勢のまま、観鈴さんが物騒なことを言って祐一さんを牽制しますが、
やはり人質がいる手前、滅多な行動に出れません。
やっぱり、ここは……私に掛かってるんですね。
チャンスは一度、人質の交換の時、祐一さんの意識がるーこさんから私に移るときです。
いくら彼らの目的が私の命とはいえ、人質もなしにここから、観鈴さんから逃げ切れはしないでしょう。
だから殺すターゲットである私はもちろん、人質役としてるーこさんを手放すことはまずあり得ないでしょうね。
ですから一瞬、そう一瞬だけでいいですから、彼に隙を作る必要があります。
そうすれば……後は観鈴さんがきっと何とかしてくれます。
私は慎重に歩を進め、相手から抵抗する機を伺いました。
そして、十分近づいたところで……
「えいっっ!!」
私は渾身の力を込めて祐一さんに突っ込みました。
「何っ!?」
私のようなただの女の子が歯向かうとは思っていなかったからでしょうか、
祐一さんは私の体当たりを身に受けてわずかによろめきます。……そこがチャンス!
私はるーこさんを抱えている腕に掴みかかりました。
それで一瞬、祐一さんの意識が完全にるーこさんから離れ、私に向きます。
「……このヤロウッッ!!」
ですが、ピンチです。祐一さん完全に逆上してます。
今度は……私の命の心配をしたほうがよさそうです。ど、どうしたらいいんでしょう?
A 祐一さんは思ったよりも足元がお留守でるーこさんの足払いが綺麗に決まりました
B その瞬間、観鈴さんが刀を抜きました
C 背後から柳川さんが唐突に奇襲に現れました
D 追い詰められた私は偶然にも祐一さんの矢を某映画のごとく上半身を後ろに逸らすことによって回避に成功しました
Dスーパーマトリクサーゆーき
食堂なんて人のいるところで矢をよければ後ろの誰かに当たるということで
人間追い詰められれば何でも出来ます。
祐一さんがもう一度矢を発射すべく、私に照準を合わせたところで、
私の中に潜む爆発力がとてつもない冒険を生みました。
この間貴明さんのところで一緒に見た映画、それを思い出し、
私は一か八か……体を思いっきり後ろにそらしました。
「な、何だコイツはぁっっ!?」
聞こえるのは祐一さんが驚愕する声。
私の数センチ上を弓矢がキュルキュルと音を立てて通り抜けていきます。
そのとき、私は間違いなく世界がスローモーションに見えましたよ。
……ああ、これってそういえば昔クラスの男の子が皆真似してましたよね。
私はまさか実践出来るときが来ようと全然思いませんでしたけど。
とにかく、奇跡のようですが私は攻撃の回避に成功しました。
それによって生まれる隙。その一瞬があれば十分です。
避けた後にバランスを崩して私は床に尻餅をつきました。
その瞬間、弾かれたように観鈴さんが攻勢に出ました。
そこで祐一さんは咄嗟に機械を観鈴さんのほうに向けますが……
「……遅いよ」
観鈴さんはそれだけ言って刀を抜き、切っ先を祐一さんの肩に突き刺しました。
「ぐっ!!」
祐一さんは痛みでるーこさんを離し、奥のテーブルに派手に吹き飛ばされました。
お皿や料理が飛び散り、もはや店の中はしっちゃかめっちゃかです。
店の中にいた他のお客さんは既に避難しているから、他にけが人もなくてよかったんですが……。
その、お店の人はご愁傷様です。柳川さんあたりが弁償するんでしょうか。
観鈴さんは腕の中にるーこさんを引き寄せ、くすっと笑いました。
祐一さんが憎々しげに観鈴さんをにらみつけます。
「……何の力もない女の子を狙っただけじゃなく、子どもを人質にとるなんてね」
「勝つためには手段は選ぶことはできないんだよ」
「その考え自体は私も反対じゃないよ。だけどあなたは子どもを危険な目に遭わせた。それは許せないね。
あなた、もう生きちゃいけないよ」
観鈴さんが刀を鳴らしました。
切っ先を祐一さんに向け、握りに力を込めます。
だけど、祐一さんはそれでもふっと笑いました。
「甘いな。こういうときの為に、俺は二人で行動してるんだぜ?」
私はその言葉にドキッとしました。
忘れていました。もう一人、あゆさんの存在を……!!
あゆさんは……
A 上から観鈴さんに飛び掛りました。そこで観鈴さんに一瞬隙が……!
B あゆさんが何かする前に、私があゆさんに食らい付く
C いつの間にか現れた柳川さんに、首筋に剣を突きつけられ両手を挙げていました
D あの……とっくに逃げたみたいなんですけど……
Dでw
515 :
名無しさんだよもん:2006/07/12(水) 12:02:26 ID:Z8X754BA0
C
「あゆ、今だ!」
祐一さんのその声で、あゆさんが観鈴さんに飛び掛る……ということはありませんでした。
いつの間にやらあゆさんの姿は店にはなく、祐一さんの掛け声が虚しくこだまするばかり。
なんだかDQでパルプンテが発動しなかったときの気分に近いです。
「…………」
「……逃げちゃったみたいですよ?」
「あ、あゆ〜〜〜っ!?」
店の中に祐一さんの絶叫が響きました。
なんというか……とりあえず合掌しておきましょう。
「にはは、ずいぶん良い友達だね」
「な、なんだよっ? そんな哀れんだ目を向けるなよ!!」
「ど、どうしましょう?」
私は困ってしまい、気がつくと二人に聞いていました。
確かに命を狙われはしましたけど、この人の情けない姿を見て何だか拍子抜けしてしまいました。
「斬る以外に何か選択肢はあるかな?」
「いけませんよ! それじゃいくら何でもあんまりです」
「忘れちゃ駄目だよ、この人は罪もない人達を何人も殺してる。
力のない女の人や子どもに危害を加えるような輩は、わたしの正義が許さない」
「でも、そんなことしないで柳川さんに引き渡した方が良いですよ」
「草壁さんは優しいね」
優しいと言われましても……。
誰だってそうですよ、目の前で人が死ぬところなんて見たくないです。
それが例え自分のことを殺そうとした相手であっても。
「だけど!」
観鈴さんが急に表情を変え、刀を一薙ぎしました。
その瞬間に祐一さんの着物は切り裂かれ、そこから小刀や針がばらばらと床に落ちます。
「暗器を使う人間には油断しないほうがいいよ。相手の虚を突くのが得意な人達だから」
「……チッ、見抜かれてたか」
祐一さんが諦めたように両手を挙げました。とにかく、観鈴さんも斬ることだけは思いとどまってくれたようです。
それから――――
「期待以上だな。まさか頼んだ矢先に犯人の一人を捕まえるとは」
「いえ、あれは運が良かっただけです」
警察署の一室で、柳川さんが驚いたように私たちに賞賛の言葉を贈ります。
あれから私たちは柳川さんに祐一さんを引き渡しました。
柳川さんもまさかこんな早くに犯人の一人を捕まえるとは思っていなかったらしく、
意外にも素直に私たちのことを褒めてくれます。ですが……
「流石みすずちん。なかなか犯人のシッポもつかめなかったどこかの誰かさんとは大違い」
「報告だと、お前が人質を取られて案山子のように立ち往生している間に、草壁が機転を利かせたとあるが?」
「犯人を捕まえたのはわたしだよ」
「もう一人のほうは取り逃がしてるようだがな」
「それは警察がアホちんだったからじゃないかな。取りこぼしも始末できないの?」
「くくくくくくくくくく」
「にははははははは」
オーラが、オーラが見えます。
どす黒いまでのオーラが柳川さんと観鈴さんを中心に当たりに渦巻いています。
や、やめましょうよそんなつまらないいがみ合いなんて……。
「そ、それよりも! どうして祐一さんが通り魔なんてやっていたんですか?」
「犯人の動機か……」
柳川さんが渋い顔をしています。
そうです。殺人を犯すには何か相当の理由があるはずです。
例えば私と同じような姿をした人に恨みを持っている、とか……。
「それがな……」
A よく分からん。時間移動能力者を殺すだのなんだのと、頭のおかしいことを言っていた
B どうやら奴はお前みたいな女を殺すことに快楽を感じる異常性癖の持ち主だったらしい
C これから吐かせるところだ。さて、俺の『取調べ』にどれだけ耐えられるかな
C、何をするんだろう?
C
そら〜
・・・ホモ疑惑あるし
「これから吐かせるところだ。さて、俺の『取調べ』にどれだけ耐えられるかな」
ぞくっっっ!!
何だか寒気を感じます。
柳川さんがとても嬉しそうに言うのが、ホント怖いです。というかその笑みはやめて下さい。
「だからあの時わたしが斬ってあげれば良かったんだよ。下手に苦しまずすぐ楽になれたんだから」
「人聞きの悪いことを言うな。俺は素直に吐けば手荒なことはしないつもりだ」
「柳川さん、犯人が素直に口を割るなんてあり得ないって分かって言ってる」
「俺ばかり悪く言うが観鈴、お前だって相当な責めをやったじゃないか」
「わたしなんて柳川さんに比べればカワイイものだよ」
なんだかすごく不穏な会話です。
一般人の私は絶対に入り込んではいけない。そんな予感がヒシヒシ伝わります。
「るー……」
るーこさんが私の袖をぎゅっと掴みます。
……怯えちゃってるじゃないですか。
「あの、二人とも……そういう話はやめましょうよ。小さい子もいるんですから」
「あ、ごめんごめん。わたしとした事がついうっかり」
「確かに、子どもの前でする話じゃなかったな」
二人とも反省の色なし。
というかこの人たち、根っからの悪人なんじゃないんですか?
帰りたい。早く現代に帰りたいです。
「とにかく、これ以後も頼むぞ。
無論複数で動いている以上、敵が残り一人とは限らんわけだから慎重にな。
相手の面が割れている以前に、こちらの面も割れていることを忘れるな」
「はいっ」
柳川さんに念を押されました。
そうです、まだ終わったわけじゃないんです。
あゆさんは捕まっていませんし、それに他に仲間がいないとは限らないんです。
これからが、これからが正念場ですよ。
「何か捜査する上で困ったことがあれば何でも言え。善処はしよう」
困ったことですか? それなら―――
A 私たちの目立つ服装はどうにかならないのか
B さっきの一件で、るーこさんが大分疲れているようなので休ませてほしい
C 私たちでも最低限自分の身を守れる方法はないのか
A
「私達の服装はどうにかならないでしょうか。確かに囮としてはいいんでしょうが、これでは悪目立ちが過ぎます」
「服? そういえば観鈴、お前、服は買い与えなかったのか?」
「お金ないから」
「……………………」
見た目には変わりがありませんが、ひそかに柳川さんの背負う空気が脱力しています。
というか無一文を即答する観鈴さんも大概だと思います。
「……お前をなめていたか。仕方がない、少し顔を貸せ」
と言いながら、柳川さんは署内に引っ込んでしまいました。
「?」
よくわかりませんが、とりあえず来いと言っているのですし、後を追います。
そして署内の応接室に案内され、待たされること十数分。
「……このあたりか」
綺麗に折り目で畳まれた服を持って柳川さんが部屋に入ってきました。
そのままばさりと私達に投げて寄越します。
「これは……」
「警察で保管している物だ。どうせもう持ち主が取りに来ることはないからな。やる」
やる……って。
なんというかアバウトです。仮にも警察の物品を。これが明治時代というものなのでしょうか。
「へえ、けっこうカッコいいね」
「るー」
と、少し呆れているとなにやら観鈴さんとるーこさんが口をそろえてそんなことを言いました。
「?」
視線の先には私が手の中で広げている地味めの小袖。
……いえ、確かに柄は地味ですが、これは地味というより品がいいと言うべきでしょうか。
落ち着いた雰囲気でいい感じだと思います。和服のことはよくわかりませんが、悪くないものだと思います。
そしてもうひとつは、胸高な帯の袴。こっちもものは悪くないと思います。
色合いが揃っているところから見て、おそらく元々1セットのものだったのでしょう。
なんだか文明開化な感じがします。これで本当に明治時代でなければ普通に嬉しいんですが……
「服のことはよくわかりませんけど……いいんでしょうか柳川さん。これ、安いものではないと思いますが」
「問題ない」
A 「遺失物で何年も前から保管されているものだからな」
B 「先日捕まえた窃盗犯が隠し持っていたものだからな」
C 「この前の殺人事件の被害者が着ていたものだからな」
A
「遺失物で何年も前から保管されているものだからな」
「そ、それって使っちゃっても良いんですか?」
「構わんだろう。いざとなればしらばっくれればいい」
そんなんで、いいんでしょうか。
落し物を勝手に使うのは気が引けますが、他に選択肢もありませんし使わせていただきましょう。
それから柳川さんはもう一着、子供用サイズの着物をるーこさんに投げ渡しました。
「こんなところだろう。これで問題はないな」
「ねえねえ柳川さん、わたしのはないかな?」
「……何故貴様の分を用意する必要がある」
「わたしも、新しい服欲しいな」
「知らん。自分で金を貯めて自分で買え」
物欲しげに柳川さんを見つめる観鈴さん。
ですが柳川さんは全然取り付く島もありませんでした。
「……わたしだって女の子だよ。お金はないけどお洒落したいよ……」
「女の子? お前が? ハッ……冗談は止せ」
その瞬間、観鈴さんと柳川さんが乱闘を始めましたが気にしません。ええ気にしませんとも。
それから、別室で早速着替えました。
るーこさんの分も着付けた後に、私は応接室へ戻ります。
まだ乱闘を続けていた二人でしたが、私たちが戻ってきたことに気づくとピタッと動きを止めました。
「わ、見違えたよ」
「そ、そうですか?」
「うん。すごく綺麗。私が男の人なら放っておかない。ね、柳川さん?」
「…………フン」
絶賛してくれる観鈴さんとは対照的に、柳川さんはぷぃっとそっぽを向いてしまいました。
ですが、そんな柳川さんを見て観鈴さんはクスクス笑ってます。
「素直じゃないね」
「……とにかく、これで服装の件はどうにかなったろう」
「何かなら何まで、ありがとうございます」
「気にするな。……別にお前のためにやったわけじゃない」
「これ、照れてるだけ」
「いちいち下らん茶々を入れるな」
柳川さんが観鈴さんを軽く小突きました。
さて、服装の件は解決しましたし、これからどうしましょうか。
A まだ日も高いしもう少し街をぶらつく
B 流石にもう囮も意味がないだろう。今日のところは休む
B
「……すまない、うーき。るーはそろそろ疲れた」
柳川さんが部屋から出て行き、一息ついたところでるーこさんがそう言いました。
「大丈夫ですかるーこさん」
「体調は大丈夫だ。少し疲労がたまっているだけだ」
「そうだね……今日は朝からいろいろあったし。もう帰って休もうか」
帰る…………
「……そういえば、寝床はどこだと仰ってましたか」
「柳川さんの家だよ。給料の割にぼろっちいし狭いし壁は薄いし寝心地は悪いけど、まあ4人くらいならなんとかなるんじゃないかな。
暮らすぶんには不自由はないと思うよ。あの人まめだから掃除もやってあるし」
「そうしていただけると助かります……」
少なくともどんなところでも物置小屋で雑魚寝するよりはよほどマシでしょう。
「それじゃいこっか」
ひょいと椅子から飛び降り、観鈴さんは扉へ向かいます。
私達もその後に続きますが、ドアノブに手をかけたところではたと観鈴さんは動きを止めました。
「あ、そうそう2人とも。耳ふさいどいて」
「?」
耳?
「こう。こう」
と言いながら観鈴さんは両掌で自分の両耳をふさぎます。
「こう、ですか?」
合点がいった私達も同じようにしますが……
「……なんでですか?」
当然の疑問です。
「あんまり気持ちいいもんじゃないからね。私がいいっていうまでそうしといた方がいいよ。
じゃ、ついて来て」
しかし観鈴さんの答えは答えになっていません。
そのままドアを開き、廊下へ出てしまいました。一応2人揃って言われたとおり耳をふさぎながら、それに続きます。
「…………」
しばらく3人縦に並び、無言で廊下を進みます。しかも後ろ2人は同じポーズで耳をふさぎながら。
いや聞こえないから本当に無言かはわからないのですが。なんだか奇妙な感じです。
「…………」
そうしてしばらく進んでいると、『取調室』の表札が見えました。私達が入っていたのとは別の部屋です。
扉の上部の小窓にはしっかりと鉄格子が打たれ、心なしかドア全体が薄汚れているようにも見えます。
……なんとなく耳をふさがせられた理由がわかった気がします。
どうしましょうか。
A このまま何も聞かずに署を出る。
B ちょっと両手の力を緩めてみる。
A
私は何も聞いてません。ええ何も聞いてません。
おそらくは取調室から「ぎゃぁーーっ!!」とか「ぎぇーーっ!!」とか、
そんな祐一さんの絶叫が響いてるんでしょう。ですが私は聞いてません。ええ聞こえてないですとも。
「……もういいよ」
警察署を出た直後、観鈴さんからお許しの言葉が出たので、
私は安堵して耳から手を離しました。
「柳川さんも仕事熱心なのはいいけど、空気を読んで欲しいよね。
ゴウモンの声なんて聞かせちゃ子どもの教育に悪いよ」
そう言って、観鈴さんはるーこさんの頭をぽんぽんと触ります。
ですが、その子どもの前で祐一さんをあっさり斬り捨てようとした観鈴さんも似たようなものだと思いますが。
「柳川さんの家は、ここから遠いんですか?」
「近いよ。職場まで遠いと面倒だって考えの人だから。
……正直言うと、わたしは柳川さんの家に寝泊りするの気が進まないけどね」
「やっぱり男の人と一つ屋根の下はイヤなんですか?」
「そんなわけじゃないけどね。柳川さん金剛石並みに堅物だから。
ただ……」
A ごきごきが出るんだよ。それも頻繁に
B 柳川さんね、お酒が入ると人が変わるから
C 隙間風が身に染みるんだよね
D 貴之さんって言うおかしな人が居候してるんだよ
E わたしが柳川さんの家に行くと、別居してる奥さんが何故か不機嫌になるんだよね
E誰だ奥さん!!
「わたしが柳川さんの家に行くと、別居してる奥さんが何故か不機嫌になるんだよね」
「そうですか……」
って、ちょっと待ってください。
今何か聞き捨てならない言葉を聞いた気がします。
「あの、つかぬ事お聞きしますけど、奥さんって誰の奥さんですか?」
「柳川さんに決まってるよ。ここで警察署の警官Aの奥さんの話が出るわけないんだし」
「え、え、ええと、柳川さんって……結婚してたんですか?」
「うん。しかも奥さん凄く可愛い」
これはびっくりです。
あの人が結婚してるってのが全く想像できません。
というか、今まで観鈴さんと夫婦漫才っぽいことしてたんですから、
普通に独身でそのうち観鈴さんとくっついたりするんじゃないかと思ってました。
「奥さんって、どんな人なんですか?」
「初音ちゃんって言ってね、性格良くて優しくて可愛くて細かいところによく気がつく柳川さんには勿体無いぐらいの子だよ。
ただ何年か前まで見た目が犯罪的に幼かったから、それで散々からかってあげたんだけど、
最近はもう年相応の体形になっちゃってそれも出来なくなっちゃったし、ホント非の打ち所がないの」
「どこの完璧超人ですか?」
「ただね、何だか初音ちゃんはわたしにはあんまりいい顔してくれないんだよ。
別に初音ちゃんには何もしてないはずなんだけど、みすずちん嫌われちゃってる……」
いえ、それはおそらくヤキモチという感情でしょう。
そりゃ先ほどのような光景を奥さんが見せ付けられれば、少し危機感も沸くというものです。
幕末を共に戦い抜いた仲間同士だから互いの信頼も厚いんでしょうし。
それで、私たちは柳川さんの家に着いたわけですが……
A 家に着くなり観鈴さんが戸棚の物色を始めました
B ……鍵、ないんですけど
C その柳川さんの奥さんと思われる人が偶然家にいました
D 家の前で不審な人が柳川さんの帰りを待っているようでした(人物指定)
A
家に着き、勝手に上がりこんだと思ったら躊躇する私を尻目に観鈴さんは戸棚を物色しはじめました。
「あーあったあった」
そして緑色の『なにか』を取り出します。はい、それは『なにか』としか言い表せません。
「これもずいぶんとひさしぶりだよね」
鼻歌を歌いながらコポコポと。お湯を沸かして『なにか』に注いでいきます。
やがて『なにか』は水分を得たことで粘性を生み出し、『なにか』は『どろどろのなにか』へと進化しました。
「はい完成。どろり濃厚緑茶」
まるでそうすることが当たり前であるかのように、3つの茶碗に分けて淹れると私達の前に置きました。
「……緑茶?」
「うん、わたしの好物なんだ」
「うーには珍しい飲み物だな」
そして当たり前のようにズズズと飲み干す観鈴さん。もの珍しそうに少しずつ咀嚼(ええ、咀嚼です)していくるーこさん。
改めて私は今私が異次元にいることを気づかされました。
「さて、それじゃ夕飯の準備でもしちゃおっか」
自分の分を飲み干したところでやおら観鈴さんが立ち上がります。
「あの人ぐらいなら吐かせるのわけないだろうし、もうすぐ柳川さん帰ってくるだろうからね。
一応居候なんだし夕飯ぐらい準備しとこうか」
観鈴さんが意外に空気読めたこと言います。
「るーはお風呂に入りたいぞ」
「あ、そだね。じゃあちょっと準備しとくよ」
「感謝する。るーも手伝おう」
そして連れ添って家の奥へといってしまいます。
「…………」
残されたのは、『湯気をあげるどろどろの緑色のなにか』と私だけ。
微妙な雰囲気です。
「…………」
残されたのは、『湯気をあげるどろどろの緑色のなにか』と私だけ。
微妙な雰囲気です。
やがて戻ってきた観鈴さんも『ゆっくりしててね』とだけいい、ご自分は台所で料理をはじめてしまいました。
私はどうしましょう。
A この場で観鈴さんと話をする
B お風呂にいってるーこさんと話をする
C とかなんとか悩んでたら柳川さんが帰ってきた
D 『湯気をあげるどろどろの緑色のなにか』に挑戦する。
C かなぁ
これは、飲み物といえるんでしょうか。
口をつけたら、私の中で何かが終わってしまいそうな気がします。
ですが出された飲み物を一口も飲まないというのも失礼ですし……。
しばらく私が悩んでいると、不意に目の前の茶碗が消えました。
「……こんなモノを作ったのは、あの阿呆だな」
「や、柳川さん……お帰りなさい」
私の後ろには、こめかみをひくひくさせながら、柳川さんが茶碗を摘み上げていました。
柳川さんが帰ってきたのに気づいたのか、観鈴さんが台所から顔を出します。
「あ、お帰り。ご飯にする? それともお風呂? なーんちゃって」
ぶちっ。
そんな音が確かに聞こえました。ええそりゃもう。
ビュッと投げられる茶碗、それを観鈴さんが手でぺしっと掴みました。
中身がこぼれていないのはどろっとしてるからでしょうか、それとも観鈴さんが達人だからでしょうか。
「が、がお……どうしてそういうことするかなあ」
「そんなモノを二度と作るなと言ったはずだ。十年以上前に。
せっかく買った茶が台無しだ、この阿呆」
「ちょ、ちょっと多めに入れただけだよ……」
「通常量の二十倍や三十倍がちょっとか?」
柳川さんの文句も尤もです。今回ばかりは私も柳川さんに味方しますよ。
ですが観鈴さんはそれを完全に無視すると、今度は別の話題を振ってきます。
「祐一さんはゲロッた?」
「そうでなければ俺がこんなに早く戻ってくるわけないだろ」
「にはは、それもそうだね。後で詳しく話聞きたいな」
「ガキが寝た後にでもな」
それだけ言ってから、柳川さんがお風呂場に向かいます。って……!!
「あ、あの柳川さん! 今、るーこさんが入って……!!」
止める間もありませんでした。
お風呂場からるーこさんの悲鳴が上がり、
それから柳川さんはめでたく痴漢とロリコンの名を欲しい侭にすることとなったのです。
「変態だ」
「変態だね」
「事故だ」
食卓で、三人の言葉が丁度重なりました。
私は何も言わずに苦笑するしかありません。柳川さんの頬の紅葉が痛々しすぎます。
「やっぱり柳川さんが幼女趣味だって噂は本当だったんだね。だから最近夫婦仲が冷めてるんだとか……」
「観鈴。お前はそこまで眉間に風穴を開けたいのか?」
もはや食卓は刺すか刺されるかの一触即発状態。
何でこんなピリピリしたふいんき(←何故か変換できない)で食事を取らなくちゃいけないんでしょう。
「やなうーには失望した。るーがもう少し成長していれば”るー”で首ちょんぱに出来たものを、口惜しいことだ」
「るーこさん、そろそろ機嫌を直して楽しくやりましょうよ」
るーこさんはさっきから頬を膨らまして柳川さんからそっぽを向いてます。
実は密かにちょっとカワイイと思っちゃったりしてますけど、本人は怒っているつもりなので言わないであげましょう。
「観鈴、酒は出してないのか?」
「現実逃避するの?」
「するか馬鹿。ただ飲みたいだけだ」
観鈴さん何気に言ってることが辛辣です。
ですがそれでもちゃんと予め準備している辺りは流石長い付き合いというべきでしょうか。
「わたしも飲むよ。他人のお金で飲むお酒ほど美味しいものはないし」
「少しは遠慮しろ」
「草壁さんは飲む?」
「えっ、私ですか? いえ、私は……」
「もうお酒も飲める年だよね? 一杯ぐらいやろうよ」
観鈴さんが杯にお酒を注いで私に手渡します。
い、いえ渡されても困るんですけど。確かに興味はないわけじゃないんですが。
私は……
A ……少し、飲んでみましょうか
B 流石に駄目ですよそれは
A
「そ、それじゃちょっとだけ……」
「ちょっとと言わずにいっぱい飲もうよ。わたしの奢りだから」
「……俺の酒だぞ」
私は勧められるままに、お酒を一杯飲んでみました。
……………………。
「な、何だか変な感じですね。体の中が熱いというか、なんというか……」
「そうでしょうそうでしょう。ささもう一杯」
観鈴さんがそう言って杯にまたお酒を満たしてくれます。
今度は一気に飲んでみました。すると、柳川さんが驚いたように私を見つめます。
「初めてにしては結構イケる口だな。一気に行くとは思わなかったぞ」
「そ、そうですか?」
「にはは、もっと飲もうもっと飲もう」
「そ、そうですね。もう一杯だけぐらいなら……」
「……もう空か」
「るーこちゃん、右の戸棚の一番奥にお酒が入ってるから持ってきてー」
「柳川さん、もう少しどうです?」
「そうだな……それじゃもう一瓶空けるか」
・
・
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そして――――
るーはるーこ・きれいなそら。大熊座47番星第3惑星"るー"からやって来た。
あの三人には呆れるばかりだ。何故なら……
「にはは。それでね、島原で三日三晩遊び倒したら柳川さん凄い怒られちゃって……」
「他人事のように言うな。お前も同罪だったろ」
「ふふふ、そうだったんですか……」
さっきから浴びるほどに酒を飲み続けている。
しかも、るーを小間使いのようにこきつかい、新しい酒をどんどん出させているのだ。
うーき、うーは飲酒は少しに控えると言っていなかったのか?
「……三人とも、飲みすぎだと思うぞ」
「えっるーこさんも飲みたいんですか? 駄目ですよ、子どもなんですから。おませさんですね……ふふふ」
酔っ払いに言葉を交わしたるーが愚かであった。
三人とも完全に出来上がってしまっている。本当、大人には呆れるばかりだ。
るーが大人になったときは、こんなバカな酒飲みだけはしないことにする。
しかもうーきは言動が何か危うい。深く関わらぬが吉というものだろう。
A ……子どもはもう寝る時間だ。先に寝てしまおう
B うーきもそろそろ寝床へ引っ張っていくべきだ
C 「恥ずかしい告白コーナー!!」とみすうーの言葉が響いた
C
「さあて次は本日のメインコーナー! 恥ずかしい告白のコーナー!」
やおら立ち上がると観鈴が底抜けに明るい声で叫ぶ。片手には底をついた一升瓶が。
「ふふふ……恥ずかしい告白ですか?」
「またかこいつは……」
ひしひしと。
亀でも感じられる嫌な予感が場を支配する。
一人冷静なるーこはただ一人その危険を察していた。
「……るー……」
だがるーからの来訪者とはいえ今は基本的に彼女はただの幼女。
抗うすべは我が手にはなかった。
「ルールは簡単! 柳川さんが恥ずかしい告白をして、草壁さんが飲む!」
「待てお前。昔よりルールの極悪度が上昇してないか?」
「人は変わるんだよ」
「それはお前の台詞じゃないだろう! ……いや、お前の台詞ではあるか」
「いいじゃないですか柳川さん。私柳川さんの恥ずかしい思い出を聞いてみたいです」
「お前もか草壁…………」
「ほらほら柳川さん、女の子からのリクエスト断っちゃっていいの?」
「だが断る」
しかし酒が入ってもイマイチ乱れが弱い柳川。割と冷静な態度できっぱりと断った。
「じゃあ仕方がありません!」
だが観鈴は気を悪くした様子もなく、パンと手を打つ。
「さらにルール変更! わたしが柳川さんの恥ずかしい過去を告白して、草壁さんが酒を飲む!」
「いいですねー観鈴さん」
「にははははは!」
「…………待て待てお前。余計にルールが極悪化してないか?」
「すべてはノリの悪い柳川さんがわるいのです! というわけで観鈴ちゃん情報!
実は柳川さんは…………!」
A 両刀使いです!
B こう見えて子持ちです!
C 奥さんいるのに浮気してます!
D わたしの処女を奪いやがりました!
D
Ω ΩΩ<な、なんだってー!?
BACDの順にやばくなっていって
一番やばいの選んでら
「わたしの処女を奪いやがりました!」
「ぶっ!!」
それまで余裕の表情で、何を言われようとも一人で酒を飲んでいた柳川だったが、
この観鈴の突然の告白に飲んでいた酒を噴出す。
「ゴホッゴホッ……み、みす……」
「そうだったんですか?」
「ちょ、ちょっと待て、俺はそんな覚えなど……!!」
「この男最低です! 無理やり押し倒した挙句にしらばっくれてます!!
こんな男のために、わたしの純潔が奪われてしまいました! みすずちんは被害者なのです! にははは!!」
「覚えがないものは覚えがない!!」
顔を真っ赤にして柳川が否定する。
だが、既に優季とるーこは柳川から距離を取り、
まるで汚物を見るかのような視線でじとーっと睨んでいた。
だが、観鈴は先ほどまでの大笑いをピタッとやめると、今度はモジモジと顔を赤らめて囁くように話し始めた。
「……あれは、幕末の頃だったよ。わたしと柳川さんが街で飲んでて、ちょっと羽目を外しすぎちゃって。
それでね、三軒ほどお店を梯子した後だったかな、柳川さんが急にわたしの肩をぐぃって抱いたの。
柳川さんがわたしにボソッと『……お前が欲しい』って呟いて、それで酔いもさめてないわたしを宿に連れ込んじゃって。
嫌がるわたしを無視して、柳川さんはわたしの中に無理矢理その熱い想いを……」
「先に断っておこう。お前などに欲情するぐらいなら切腹したほうがマシだ。
例え俺がどんなに酔ってようが絶対にあり得ん。下らん作り話をするな!!」
「本当にそう言いきれる? 昔から酒と女に見境がないって有名だったのに?」
「酒に目がないのはお前だ! 女好きとは聞き捨てならんが、俺はお前のようなヤツを女だとは認めん!」
「そんな……あの日の気持ちはウソだったって言うの!?」
「今まで散々俺のことをボロクソに貶した口でそれを言うのか? 少しは酔いを醒ませこの酔っ払い!!」
柳川としてはそんなこと絶対に信じるわけには行かない。
『コレ』と一夜を共にしたなど、柳川にとっては屈辱の極み。
いくら女に飢えていてもそこまでは堕ちたくない。そんなこと絶対に認めるわけにはいかないのだ。
「草壁、るーこ! お前らからも何とか言ってやれ!!」
「ねえ草壁さん、るーこちゃん。わたしと柳川さん、どっちが信じられるかな?」
急に話を振られる二人。
二人は顔を見合わせて……
A 観鈴の側に回った
B 柳川の側に回った
C ほうっておくことにした
Aで混沌と
Bで情けをかけてやるか・・・柳川( ´Д⊂ヽ
空気読めてないですか、そうですか
イキロ・・・柳川・・・
支援版が修羅場と化してる悪寒……ちょっと見てこよ。
まだまだ待ち状態よ。
確定の情報如何でこれから先どうなるかわからないけど。
「まぁ、今更言い逃れをするなんて男らしくないですね、柳川さん」
私の口から紡がれた台詞は寒々しいまでの棒読みでした。
アカデミー賞に大根役者賞があれば、その栄冠は私のものだったでしょう。
冷静な柳川さんの慌てふためく姿が見れると思うと、真偽の程はこの際無視です。
今までの意趣返しの意味も含めて、私は観鈴さんの側に回る事にしました。
「待て、どう考えてもみすうーの言には信憑性がか──んぐっ!」
顔を見合わせて付き合いきれないと言った顔で呟いたるーこさんの口を塞ぎ、腹話術の人形の様に
後ろから彼女の頭を上下に動かし首肯の意を示させます。なにやら言いたげですが、この面白展開の為に黙殺します。
「うんうん、持つべき者は信頼できる友だよねぇ。 柳川さんは友達あんまりいないもんねぇ」
観鈴さんは勝ち誇った顔でにやついた笑いを浮かばせています。やっぱり嘘っぽいですね、これ。
私の勘ですが、彼女がいきなりこんな嘘を吐くには何か理由があると思うんですよ。
「くっ、有象無象の知人などいてもいなくても一緒だ。 その友達以前の知人にたかるのしか能が無い時代の遺物の浪人に言われたくないわッ!」
「そんな知人に酒に酔った勢いで手を出すなんて…この人は鬼だわっ! 私の純潔を返して!」
空々しい態度でおよよと泣き真似をする観鈴さん。なんだか暖を取りたくなるくらいの寒さです。
「貴様…黙っていたらあること無いこと言い出しやがって…我慢ならん、表に出ろ!!」
柳川さんはいきり立ち、観鈴さんと決闘をするつもりのようです。外に出ようとして、扉を壊さん勢いで開くとそこには──
A 背の低い針金のようなくせ毛がチャームポイントの女性が怒りを露に立っています「は、初音?なんでお前が?」
B 「むふふ、ヤナちゃんが浮気?これは特報よ!」「長岡、貴様ッ!」どうやら新聞記者らしき人が聞き耳を立てていたようです
C 「ん?奥さんがいるのに浮気とは感心しないなぁ」「長瀬警部!?」どうやら上司っぽい馬面のおじさんが立っています
a
そこには、やや背が低く、針金のようなくせ毛が特徴的な女性が、
まるで静かに流れる川の流水のごとく、怒りを露にしていました。
柳川さんがその女性を見るなり、まるであってはならないものを見たかのように狼狽しました。
「は、初音……!!」
「……あなた、何なのこれ?」
って、この人が件の柳川さんの奥さんですか!? 話のとおり凄くカワイイですね!
何ていうか、木村先生の奥さん初登場のときと同じ気分です。
「にはは。どうしたの、柳川さん。お外でしようなんて……大胆、だよね?」
「いや、違うこれは……!!」
「せっかく久しぶりに一緒にすごそうと思ったのに、なのに……バカーーーッ!!!」
「ま、待て、待ってくれ!!」
わざわざ誤解を招くような単語を使って観鈴さんが火に油を注ぎ、
初音さんは泣きながら走って行ってしまいました。
……観鈴さんが来ると不機嫌になる初音さんの理由が、分かった気がします。
普段から観鈴さんってこんなことばかりして、夫婦仲を脅かしてるんでしょうね。
「柳川さん、気にすることないよ。いつものことだし、あと一ヶ月もすれば仲直りできるよ。
この程度で立ち行かなくなる夫婦なら所詮それまでのこと、ね?」
「…………」
観鈴さんがフォローにならないフォローを入れてます。
肩をがっくりと落とした柳川さんが、物凄く悲しげに見えました。
ですが柳川さんはゆらりと立ち上がると、今度は噴火直前の火山のような顔をして、観鈴さんのことを睨みつけました。
「……言いたいことはそれだけか?」
そのまま腰の刀に手をかけ、すらりと抜き放ちます。
「はい! それだけです!」
観鈴さんはニコニコしたまま、場違いとも取れるほど元気良く答えました。
「覚悟はいいか?」
切っ先を観鈴さんに向け、最後通告。
「はい! よろしいです!」
笑いながら表に出る観鈴さん。
「なら……………………死ねぇぇっっっっ!!!」
怒号と共に、柳川さんが観鈴さんに突っ込んで行きました。
柳川さんが突進するように繰り出した突きを、観鈴さんが刀で逸らしフワリと跳んで距離を取ります。
……あれって、どう見ても本気ですよね? 柳川さん、本気で観鈴さんを殺しに掛かってるんじゃ……。
「軽い冗談なのに、そこまで怒らないで欲しいな。だから刀を納めて、ね?
喧嘩はご法度だよ。私の闘争を不許、なんてね」
「そんな昔の決まりごとなど忘れたわ!!
今日こそは貴様の息の根を止めてくれる、神妙にそこになおれ!!」
「にははははは、出来るものならやってみれば?」
感情に任せて刀を振り回す柳川さん。
それを、避けたり受けたりして観鈴さんが袖にしてます。
……あ、今度は観鈴さんから打って出ました。
柳川さんが剣筋を見切り刀で受け止め、観鈴さんを蹴り飛ばし更に攻勢に出ます。
観鈴さんもそれを予想していたようで、自ら後ろに跳んで衝撃を減らしつつ距離を取り……。
何だかケンカがどんどんエスカレートしていきます。
A そろそろ止めましょう
B ほっといて寝ましょう……
B
「るーこさん、もう寝ましょう」
「るー」
私も飲み慣れない、というより初めて飲んだお酒が回ってきています。
意識を保っていられません、限界です、これ以上は起きていられません。
「にはははははは!」
「この駄目浪人! 今日という今日は勘弁ならん!」
柳川さんと観鈴さんは相変わらず剣を振るい続けています。
しこたまお酒を二人とも飲んだせいか、少し手つきが怪しいです。
でも多分大丈夫でしょう、二人とも長年の戦友という感じがします。
酔っていても加減が出来るのでしょう。
あ、今柳川さんの一振りが観鈴さんの首筋を掠めました。
もう後一センチでも内側なら観鈴さんの頸動脈はズンバラリでしたでしょう。
……大丈夫、大丈夫ですよ。
多分、おそらく。
私はるーこさんを連れて家に戻り、布団を敷きます。
「おやすみなさい、るーこさん」
「おやすみだぞ、うーき」
布団に潜ると、酔いも手伝ってすぐさま私の意識は闇に落ちていきました。
「んっ……朝ですか……」
少し頭が痛いです、これが二日酔いという物でしょうか。
「……るーも大きくなって……はやく“るー”が使いたいぞ」
隣では寝言を呟いているるーこさんがまだ寝ていました。
私は身体を起こし頭を振って、部屋を見渡します。
次第に意識を取り戻し、輪郭がはっきりとしてくる部屋の様子。それは――
A 二人で一緒の布団に入っている柳川さんと観鈴さん。
B 部屋の両端に分かれて寝ている柳川さんと観鈴さん。
C 血まみれで倒れている柳川さんと観鈴さん。
D ……誰も、いません?
B
丁度部屋の端と端とに分かれて寝ている柳川さんと観鈴さんの姿でした。
……何があったんでしょう。とにかく、二人とも生きてはいるようですけど。
「目が覚めたか?」
「柳川さん……起きてらしたんですか」
柳川さんがムクリと体を起こし、軽く伸びをしました。
体のところどころに切り傷の痕が出来ているのが気になりますけど。
「ったく、あの阿呆が……いつか俺がこの手で冥土に送ってやる」
「……にはは、つがい〜つがい〜」
布団をきちんと畳んでから、柳川さんは観鈴さんにそう毒づきました。
観鈴さんは全然気づかずに夢の中です。
「私、朝食の準備をしてきますね?」
「いや、まだいい。明け方まで斬り合ってたからな、コイツはもう少し寝てるだろう。
昔からそうだったからな、酒が入ると中々起きんのだ」
ガスッと観鈴さんに蹴りを入れながら、柳川さんはそう言いました。
とても恨みが篭っているようで。そんなことされても観鈴さんは全然起きないですし。
「朝餉は後にするとして、それよりも、だ」
と、そこで柳川さんは今度は私に目を合わせました。
「お前と二人で話が出来る機会を待っていた」
「私と……ですか? 告白じゃないですよね?」
「観鈴のような阿呆なことを言うな。真面目な話だ」
そう言われて、私も軽口は慎みます。
柳川さんが……とても真面目な表情をしていたから。
今の柳川さんからは、昨日のお酒の席なんてとても想像できないぐらいです。
柳川さんは――――
A ……お前は何者だ? と私に問いかけました
B お前の正体……知ってしまった。と私を睨みました
C 勝手ですまないが、今後命の保障は出来ん。と忠告してきました
D 無言で、私の首筋に刀を当てていました
Bで
A
「お前の正体……知ってしまった」
「えっ?」
柳川さんはそう言って、私を睨みました。
その瞬間、言いようもない恐怖が私に押し寄せます。
まるで全てを殺さんとするばかりの、柳川さんの殺気が私のことを押しつぶすようで……。
「怪しんだのは服を換えてからだ。あのような服など世界中のどこを探してもない。
身元を探る手がかりになると思いその時に少し服を調べさせてもらった。そうしたら……」
「…………」
柳川さんがわたしに一冊の手帳を見せ付けました。
……私の、生徒手帳。
「中々興味深いことが書いてある。
学校の歴史、明治三十年中学校として開校、昭和二十六年高等学校となり現在に至る……か。
昭和というのは次の元号か? 与太話にしては手が込みすぎている。
それにこの品、明らかに今の技術で作れる代物ではない。伊達や酔狂でも、このようなものまでは用意できないだろうな」
「それは……」
……柳川さんは、もう察してしまっている。
迂闊でした。柳川さんが私の持ち物を検めない筈がないのに。
「隠していたことは問わん。このような話をされたところで、物証でもなければ俺も信じはしなかったろう。
この時代に来たのは何が目的だ? 何のために時空を越えて我々に干渉する? 歴史の改竄でも画策しているのか?」
「隠していたことは謝ります。確かに私達は未来から来ました。
ですが……目的なんてないんです。ここに来てしまったのは、事故なんですから」
もう、隠すことは出来ません。
ここまで知られてしまった以上、ウソをつくのは得策とも言えませんから。
それに、今の柳川さんにはウソは通用しないでしょう。適当なことで誤魔化した瞬間……斬られます。
「その言葉に偽りはないか? 先に忠告するが、俺は観鈴とは違う。
お前が日本の未来を害する存在だと分かれば容赦はせん。その時はお前の命はないものと覚悟しろ」
「そんな、私はそんなことしないです!」
「その言葉、信じて良いのか?」
柳川さんの射抜くような視線に気圧されながらも、私は首をコクンと縦に振りました。
その瞬間、柳川さんから発せられていた殺気が消えます。
「今はお前をどうこうしようという気はない。だが、これだけは言っておく」
A お前は狙われている
B 余計な行動は慎んだほうがいい
C 観鈴にはお前の正体を隠しておけ
B
「余計な行動は慎んだほうがいい」
「余計な行動……とは?」
「例えば、政治や要人への介入などだ。
お前は未来を知っている。それは……脅威だ。
世の最新情報を遥かにぶっちぎった、未来の情報を得ているんだ。
お前がそれを利用すれば、お前が国を動かすことも可能となろう。
だが、俺はそれを善しとせん。その先に待っているのは破滅のみだ。
信念を捨て保身に動く者、運命を変えるために歪んだ行動を取ろうとする者などが急増するだろう。
『未来を知ることが出来る』という甘言は、間違いなく日本を腐らせる。
そうしてお前のいた未来とは歴史が歪められ、お前のもたらす情報に価値はなくなり……やがてお前は捨てられるだろうな。
お前のためにも、そのような行動は控えるべきだ」
「……私は、そんなことするつもりはありません」
「分かっている。念のために釘を刺しただけだ。
もしお前が下らん野心を持つ者の甘美な罠に落ちることがあれば、俺はお前を悪とみなす。それを忘れるな」
柳川さんは、本当に良く考えています。
私は柳川さんの言うような行動をとるつもりはありませんけれど、そこまで考えてはいませんでした。
柳川さんはそれだけ言って、部屋を出て行きました。
私はその瞬間、へたへたと床に座り込みます。……寿命が、三年は縮みました。
柳川さんは、本当に恐ろしい人です。私の敵に回れば、躊躇いもなく私を斬ることでしょう。
この時代で一番注意すべきなのは、通り魔のほうではなくて……柳川さんなのかもしれません。
それから観鈴さんやるーこさんも目を覚まし、皆で朝食を取ったのですが……
「……コラ、観鈴。それは俺のおかずだろ」
「何のことかな。みすずちんにはさっぱり」
「少しは遠慮しろと言ってるんだこの阿呆!」
「るー」
皆さんにぎやかです。
私の作った朝食のおかずを観鈴さんと柳川さんで取り合い、
その隙にるーこさんが目ぼしいものを摘んでいく……。
柳川さんには先ほどのような威圧感が消えており、
さっきまでのことは私が寝ぼけていただけではないのかと錯覚してしまいます。
柳川さんと目が合っても、昨日までと全く同じ態度です。
これは、暗に『あの話はあれっきりだ』と言いたいのでしょうか。
「草壁、るーこ。今日は囮は良い、家で大人しくしていろ」
「はい?」
「るー?」
柳川さんの突然の言葉に、私とるーこさんは聞き返しました。
「昨日相沢がもう一人の隠れ家を白状した。
今日は俺たち警官隊がそこに突入し、月宮を逮捕する手はずになっている」
「あ、そうなんですか。確かにそれなら囮は要らないですし、私達は足手まといですよね……」
「ああ。そこでだ、観鈴。お前も同行して欲しい」
「え、わたし?」
「ああ。恐らくは俺だけでも十分とは思うが、用心に越したことはない。
無理にとは言わん。来てくれるのなら有難いが」
「う〜ん……」
観鈴さんは……
A 承諾した
B 拒否した
A
これでうーきの護衛が手薄になったな
「……わたしも行くよ。一宿一飯の恩義ってのは一応わきまえてるし、
あんな悪い人たちは放っておくわけにはいかない。悪即斬だね」
「無論だ」
観鈴さんと柳川さんが立ち上がりました。
……って、犯人をその場で斬っちゃうんですか? それでいいの明治時代!?
「草壁さん、はいこれ」
「えっ?」
観鈴さんが、私に脇差を手渡しました。
「昨日の今日だし、ここにずっといれば滅多なことはないと思うけど、念のため渡しておくね」
「でも、こんなの渡されても、刀なんて扱ったことないんですけど……」
「それならもしものとき、辱めを受ける前にそれで自決すると良いよ」
ぶっ!!
さらっとおっそろしいことを言っちゃってます、観鈴さん。
そんなのイヤです、イヤ過ぎます!!
確かにお侍さん的には生き恥を晒すよりは……かもしれませんけど、私は死ぬ覚悟なんて出来てないです!
「観鈴、馬鹿なことを言ってないでさっさと行くぞ」
「分かったよ。それじゃ二人とも、いい子で留守番しててね?」
二人はそう言って、家を出て行きました。
私とるーこさんだけが、この場に取り残されます。
昨日の人たちみたいなのが来ないことを願いましょう。切に願いましょう。
二人が出て行った後、私達は暇をもてあましていました。
時間をつぶすためにお掃除したり、お庭の草木にお水をあげたりしましたけれど、
一向に観鈴さんも柳川さんも帰ってくる気配はありません。
……私たち、ひょんなことから犯人逮捕の囮役なんてやってしまいましたけど、
こんなことばかりしていて、本当に現代に帰れるのでしょうか。
A るーこさんと現代に帰る相談をする
B ……あゆさんが、いつの間にかお庭に立っていました
C 警察の人が尋ねてきたようです。柳川さんは留守ですけど……
D 柳川&観鈴の様子が気になる
B
その時でした。縁側で日光浴をしていた私とるーこさんですが、
不意に枝を踏み折る音が聞こえます。
私はびくっとして、音のしたほうに目を向けると、そこには……。
「あ、見つかっちゃったね」
「……あゆさんっ!?」
昨日、私たちの命を狙った祐一さんの相方、あゆさんがそこにいました。
「ど、どうして!? 今頃隠れ家で柳川さんたちの攻撃を受けているはず……」
「祐一君が口を割るのは分かっていた。祐一君に本当のことを教えておくほどボクはおろかじゃない」
「なぁっっ!?」
「それに祐一君のおかげで神尾観鈴の剣を見切ることが出来た!
祐一君は心置きなく牢屋に入っていて良いよっ! ……と言っても、観鈴さんいないみたいだけどね。嬉しい誤算だよ」
こ、この人は……仲間を捨て駒にした!?
いえ、一人でさっさと逃げたことから分かりきってたことですけど。
「ゆ、祐一さんを利用して!? 相棒の祐一さんまで裏切っていたんですか!!」
「裏切りじゃない! これは知略だよ!!」
臆面もなしにそう言い切ります。
それのどこが知略だと言いたくもなりますが、とにかく落ち着きましょう。
ピンチです。昨日と違って観鈴さんはここにはいないです。
相手は一見丸腰ですが、祐一さんの例もあるし何を隠してるか分かったもんじゃないです。
ここは……どうするべきでしょうか。
A 脇差を構え、徹底抗戦
B るーこさんの手を引いて言われなくてもスタコラサッサ
C 会話をしつつ、時間を稼ぐ
Cでちょっくら話でも聞いてみるか
「なぜ……」
じりじりと近づいてくるあゆさん。私はるーこさんを体の後ろに隠しながら、言葉をぶつけます。
体格的には私より小さいあゆさん。最悪取っ組み合いになっても脇差を持っている分私の方がやや有利かとも思いますが
またあの人達のこと。厄介なものを持ってたら大ピンチです。
「なぜあなた達は、私を狙うんですか」
時間が。今は時間を稼ぐことが必要です。
少しでも……。少しでも。観鈴さんたちさえ戻ってきてくだされば……
「ふふふ。なぜって聞かれて答える殺し屋さんもいないと思うけど……いいよ。冥土の土産に教えてあげるよ」
やりました。あゆさんが敗北フラグを立ててくださいました。……じゃなかった。
話に乗ってきてくれました。
「まあ直接的な理由はお金だね」
「金……」
単純明快な、そしてわかりやすい理由。まさに殺し屋さんですね。
「君を……正確には君とおんなじ特徴を持った人を殺してくればそれだけで100円になるんだ。
こりゃあ話に乗らないほうが馬鹿ってものだよ。そうは思わない?」
「…………」
100円といわれても私にはピンと来ませんが、時代を考えると相当高額なのでしょう。
しかし、それではあゆさんはよくても私は納得できません。
「なぜ……それは、なぜですか。なぜ私と同じような人が狙われなければ……」
「知らないし知らされてないよ。どうでもいいことだしね。
けどラッキーだったよ。話に乗れたのかなり遅れてだったから、めぼしい人達はみんな他の人達に殺されちゃってた。
そんなところできみのことを見つけられたんだからね。まあ確かに慌てて行動しちゃって失敗しちゃって祐一くんには悪いことしたけど。
けどその分ボクが賞金独占できるから、やっぱりラッキーだったかな」
わりとかわいい顔してるのに、柳川さんより冷たいですねこの人は。
「……るー……」
私の後ろ。おびえた声でるーこさんが呟きます。背中は、壁。
まずいです。追い込まれました。
「けど本当にどんな人なんだろうね……。いわれてみればちょっと気になってきたよ。
わざわざボクたちに武器を支給してまで同じ特徴を持っただけの人達を殺すだなんて。
まあ末端働き蟻にすぎないボクが考えることでもなかった…………かなっ!」
叫びながらあゆさんは、懐からなにかを取り出します。
A 短刀? これぐらいならなんとか……
B またしても抽箭です。まずいです。
C 拳銃! そこまでやりますか!
D その瞬間あゆさんの首がゴロリと落ちた
C
あゆさんが取り出したのは……拳銃。
恐怖に肩が震えます。拳銃相手じゃ、絶対に勝てるわけがありません。
「ビビっちゃったかな? まあ、しょうがないね」
あゆさんがニコニコと、拳銃の照準を私に合わせます。
絶体絶命、大ピンチです。ここは、うまく策を練らないと……。
とにかく、時間を稼ぐべきです。
異変に気づいた観鈴さんや柳川さんが引き返してきて、助けてくれるかもしれないですから。
「あの……一つ聞きます。狙いは私だけですよね?」
「そうだよ。そっちの女の子には賞金かかってないんだ、残念だけど」
「だったら、るーこさんは見逃してくれませんか?」
「そうだね、それはそっちの心がけ次第かな」
私の言葉で、るーこさんがビクッと震えて、私の袖をぎゅっと掴みました。
首をフルフルと振って、私の提案を否定しようとします。
ですが、私はニコリと微笑んでからそっとるーこさんの頭を撫でました。
「いい子ですから、離れててくださいね。流れ弾に当たったら痛いですよ?」
「だめだ、うーき。るーは小さくとも偉大なるるーの戦士、退くことはない」
「お願いですから、私の言うことを聞いてください。ね?」
「だめだ」
るーこさんは頑として聞き入れようとはしませんでした。
……この子だけは、この子だけは絶対に守らないと!
「お別れは済んだ? こう見えてもボクは忙しいんだよ。
早いところ仕事を済ませて、そのお金でタイヤキをいっぱい食べたいんだ」
あゆさんが引き金に力を入れました。何か……何か策はないんですか!?
A とにかくるーこさんを守る
B その時、るーこさんが私の前に庇うように立ちました
C 間一髪! 異変に気づいた柳川さんたちが引き返して奇跡の大逆転劇を!
D 追い詰められた私は偶然にもあゆさんの弾を某映画のごとく上半身を後ろに逸らすことによって以下略
E 「うぐぅ……弾が入ってない」アホですかあなたは!?
F 「双方それまで!!」と急に新たな乱入者が現れました(人物指定)
D
あゆさんが引き金に力を引く直前、私はるーこさんに被害が及ばないよう、
渾身の力を込めてるーこさんを突き飛ばしました。
それが合図となって、あゆさんが銃弾を四発ほど発射。
その瞬間、追い詰められた私は……奇跡としか言いようのない行動を取りました。
祐一さんのときのように、上半身を逸らすことにより回避を試みたのです。
私の数センチ上を弾丸がキュルキュルと音を立てて通り抜けていきます。
そのとき、私は間違いなく世界がスローモーションに見えましたよ。
……ああ、弾丸って発射されたら回転してるんですね。
そう、これは間違いなく奇跡でした。
何の訓練もしていない、ごく普通の人間である私が、銃弾を掻い潜ることに成功してしまったのです。
「う、うぐぅっ……!?」
あゆさんが驚愕のうめき声を上げます。
チャンスです。ここは一気に畳み掛けましょう。
「無駄です。あなたの弾道は既に見切りました」
「う、嘘だよっ!? ただの女の子にそんなことできるわけがないよ!!」
ええ嘘です。
ですが動揺しているあゆさんになら効果覿面でしょう。
「ならもう一度やってみましょうか? 次に外したらあなたの命を貰いますけど」
多分無理です。もう二度と出来ません。
ですから逃げるなりなんなりして下さい。本当にお願いします。
あゆさんは……
A 「これで勝ったと思うなよーっ!」とどこかで聞いたような捨て台詞を残して一目散に逃げ出しました
B 落ち着きを取り戻しちゃいました。マズイです!!
C 敵に負ける直前のヤケになったベジータが撃つ連続エネルギー波のように無駄撃ちを続けて弾切れを起こしました。反撃のチャンス!?
B
あゆさんは意外な行動をとりました。
それはおかしな捨て台詞を残して逃げるわけでも無く、自暴自棄になるでもありません。
極めて冷静に懐から銃弾を取り出し、弾込めをしたのです。
「すごい自信だと思うな、そこまで言うならもう一度やってもらうよ」
手慣れた手つきで弾丸を補充し、再び油断無く構えます。
参りました、これほど落ち着いた対応をとられるとは。
先ほどのような奇跡をもう一度期待するほど、私は夢見る少女ではありません。
「さっきはちょっと狙いが上半身によっていたみたいだね」
銃口は私の身体のほぼ中心を向いています、ヨガの修行僧でも身体をそらしたぐらいでは避けられません。
「じゃあね、今度こそ迷わずあの世に送ってあげるよ」
引き金にかけられた指に力が入り、鉛の凶弾が襲いかかってきます。
どうすれば、どうすればいいんでしょう!
A 「るー!」その時、るーこさんが銃弾の軌道に飛び込んだ
B 「せあっ!」間一髪、戻ってきたあの人があゆさんの拳銃を弾き落とした(柳川か観鈴を指定)
C 「がっ……」正確に三発、あゆさんの弾丸は私の胸に撃ち込まれた
D 「きゃぁっ!」残忍にも、致命傷を避けてあゆさんは私の両手両足を撃ち抜いた
E 「そうだ、そのまえに邪魔そうなそこの子から始末しようかな」あゆさんの銃口がるーこさんに向けられた
C
C
「がっ……」正確に三発、あゆさんの弾丸は私の胸に撃ち込まれた。
胸があっと言う間に真っ赤に染まっていきます。
「うーき!! うーき!!」
るーこさんが泣きながら私を抱きしめます。
ですが、悲しいながら助からない事が私自身が一番良くわかっていました。
でも、るーこさんは助けたいんです。
でも、るーこさんを悲しませたくないんです。
その涙を手でそっと拭おうとした時、声が聞こえてきました。
「大丈夫、“君自身”は死なないよ」
「でも、今度目が覚めたらある意味、死ぬより悲しい事になっているけどね」
「だから、さよならだね」
その後は、ただ、ただるーこさんの鳴き声が聞こえてくるだけでした。
今度目が覚めた時私は。
A 花になっていました。
B 刀になっていました。
C 猫になっていました。
D 指輪になっていました。
B妖刀再び
B
殺すための存在。それは悲しいとしか言い様が無く。
全くこの先が読めねぇ…!
593 :
名無しさんだよもん:2006/07/15(土) 02:11:55 ID:lAdaU9tQ0
今回の話のタイトルは観鈴の空外伝○○○○で決定!
○○○○は適当に
誰も異存はないよな!
A ageんな馬鹿
B そんなの今決めたりするか
C いいから早く寝なさい
ageたことは悪かった
確かに寝たほうが良さそうだ
だがタイトルは観鈴の空外伝でいいと思うがな
これまでの書き手の話の展開、そして選択者の選択した思惑を見れば
皆それを待ち望んでいるのは明らかだろ
・・・・・・だめだ、寝るわ
>>595 細かいことを言うつもりは無いが
とにかく何をやってしまうと荒れるかは察しよう。な?
以下 ID:lAdaU9tQ0のレスはスルーして続きをどうぞ
刀になって、るーこさんの腕に抱かれていました。
『これは……どういう事でしょうか?』
私はるーこさんに訊ねてみます。
言葉にはなりませんが、念のようなものが伝わるみたいで
るーこさんはこちらを見ると、こう答えました。
「恐らく、うーきが時空を超えて現れた不自然な存在なせいだろう。
本来この時代にいない人間が、この時代で死ぬことは絶対にあり得ない。
この二重の矛盾が生む因果律の歪みに比べれば、人が刀になるほうが
まだ自然な出来事なのだろう。だからうーきは死ぬかわりに刀になった」
『はあ……どうして刀なんです?』
「偶然が生む選択だ、恐らく深い意味は無いぞ」
『不条理ですね』
「既にうーきが時を飛んでいる不条理に比べれば、大した不条理ではない」
なんだか良く分かりませんし、深い意味がある選択な気もしますが
るーこさんをして不条理と言われてしまっては何も言えません。
仕方がないので、刀になった事を受け入れた上で方針を決めましょう。
A 激動の近代日本史を武器として駆け抜ける(エピローグへ)
B 骨董品として本来生きていた時代までのんびり過ごす(エピローグへ)
C 道具の悲しい性で、行く末の選択権を第三者に奪われてしまいました(柳川、観鈴、あゆから持ち手選択)
B
あ〜そのなんだ。
・もしもあまりに無理な展開になれば……『リコール』も有り得ます……
を適用できると思うんだ。それで…
A
>>599 をリコールして
>>589のBからやり直す
B このままエピローグにいく
で選んで欲しい
A
A
展開としては順調な部類に入るのにいきなり終わらせる選択肢もないもんだ
『んっ……私は?』
目が覚めた、というのは正しくありません。
もう私には目などついていません、それは分かります。
ただ、不思議なことに周囲の様子は知覚できます。
ここは……どこでしょうか?
少なくとも柳川さんの家ではありません。
薄暗い部屋に、部屋の隅から溶鉱炉のようなものがあります。
るーこさんも、柳川さんも、観鈴さんもいません。
どうも、ここは鍛冶屋か何かのようです。
『私は確かあゆさんに胸を銃で撃たれて、血をいっぱい流して
るーこさんが泣く中で意識が薄れて……その後は?』
思い出せません、自分がどうなったのか。
普通に考えれば私は死んだのでしょう。
ですが、何故か私は意識を持ってここに存在しています。
ただし人間としてではなく……刀として。
意識があるおかげで、目で見るわけでもなく自分が『刀』だと自覚できます。
そう、私は――
A 日本刀になっていた
B メスになっていた
C 包丁になっていた
D 忍者刀になっていた
A
『日本……刀』
すらりとして、寒気がするほど鋭く研がれた刀身。
そうです、柳川さんや観鈴さんが振るっていたモノと同じ、日本刀です。
『どうして……私がこんな姿に?』
すらりとした体型は女性として求めてやまない理想ですがこれは細すぎます。
原因不明のタイムスリップ、その謎を解く間もなくあゆさんの凶弾に倒れた私。
ですが、無念ながらも安息の眠りにつけるとはいかないようです。
「あら? お目覚めかしら」
誰かが部屋に入ってきました。
声から察するに、どうやら女性のようです。
『あ、あなたは何者なんですか? どうして私は刀になってるんですか?』
声を荒げます、いえ、刀なので声は出せません。
怒りと混乱が混ざった思考を走らせることしかできないです。
「そう興奮しないの、折角の美人が台無しよ」
クスクスと笑いながらその女性は答えました。
言ってくれます、今の私は台無しになるような表情など出せません。
『あれ? この人私の考えてる事を――』
そうです――どうやらこの女性は私の思考を聞き取れるようです。
「そうよ、なにせ貴女を作ったのですもの。当然でしょ」
そう言いながら、つーっと私の身体を人差し指でなぞります。
「まだ名乗っていなかったわね、私の名前は――」
A 榊しのぶ
B 柏木楓
C 牧部なつみ
D リアンノン
D
「初めまして、私リアンノンと申します。
場合が場合なので、このような出会い方になるのを許してくださいね」
この人はリアンノンさんと名乗りました。
少し間延びした口調は、見るからに人畜無害だと言いたげですが油断は出来ません。
……元より、どんなに注意してもこの体では抵抗の仕様がないのですけど。
「そんなに身構えないでください。少しお話しするだけですから」
『…………』
「先に言いますね。実はあなた……まだ生きてるんですよ」
『えっ?』
そのリアンノンさんの言葉に、私は軽く驚きます。
今、ここでこうしているだけの私が、生きてる?
「あの銃弾、確かにあなたの胸は撃ちぬきましたけれど、幸いにも臓器を貫かなかったのですよ。
その時ショックで仮死状態にはなったのかもしれませんけどね。ですから、今頃病院に運ばれているんじゃないですか?」
『なら、どうして私はこのような姿でここにいるんです?』
「私が呼んだんです。少しあなたとお話がしたかったんですよ」
『私なんかに何の用ですか。私はただ未来からきただけのただの人間ですよ?』
思考を読まれているせいで、嘘すらつけません。
……もしかしたら、彼女はそれを狙ってこのようなことをしたのかもしれませんが。
「それだけで十分凄いですよ。単刀直入に言うと、私はあなたのその時間移動能力が欲しいんです」
『えっ……?』
「私は預言者でした。……結婚してからあまり見えなくなっちゃったんですけど。
預言者として先を知ることが出来る、と言われてもやっぱり限界があるんです。百聞は一見にしかずですしね。
それに、いくら預言者でも出来ないことがあるんですよ。
過ぎ去った過去に干渉することと、未だ来ぬ未来をこの目で確かめること。
あなたはそれが出来るんです。それってとても素敵なことだと思いませんか?」
『そんなこと、私には出来ません』
「いいえ出来ますよ。この時代に流れてきているのが何よりの証拠じゃないですか。
今はその力をうまく使えないのかもしれない。ですが、いずれ使いこなせるようになりますよ。そうしないとあなた帰れないですし」
『…………』
「その時にで良いです。一緒に未来に連れてってもらえると、私は凄く幸せです。
どうです? 約束していただけますか? 一緒に連れてって下さると」
リアンノンさんがそんなことを言う。私は……
A とりあえず約束だけはしておく
B そんな約束できるわけがない
B
『そんな約束、出来ないです』
「やっぱりそうですか……」
私の答えを予想していたように、リアンノンさんがしょぼんとうな垂れました。
「でも私は諦めないですよ。いつか絶対に良い返事を聞かせてもらいます!」
『そんな強引に言われても困りますよ』
「無理が通れば道理は引っ込むんです。
私はこうやって旦那さんも手に入れたんですから!」
それはまた凄いことで。
まだ見ぬリアンノンさんの旦那さんに軽く合掌しておきましょう。今は手なんてないですけど。
その時、辺りが急にぼやけてきました。
「あ、残念ですけどもう時間みたいですね。やっぱり突貫作業で作った刀じゃ依り代にするのに無理がありました」
残念そうに呟くリアンノンさんの声だけが聞こえます。
『私はどうなるんですか?』
「あなたはあなたのいるべき場所に帰るんですよ。そのうち是非良い返事を聞かせてくださいねっ」
『その前に一つ聞きますよ』
「はい。なんでしょう?」
『あゆさん達をけしかけたのって……あなたなんですか?』
「……さあ、どうでしょう」
その言葉が印象的でした。
肯定するでもなく、否定するでもなく、ただそう言っただけ。
やはり……一連の事件の黒幕は、リアンノンさんなんでしょうか?
「……うーき! うーき!!」
るーこさんの、私を呼ぶ声が聞こえます。
段々意識がはっきりしてきました。ここは……
A 病院の一室みたいです
B 柳川さんの部屋、でしょうか
C お庭です。まだ、そんなに時間が経ってないようですね
C
早起きしたら入れ食いだな、こりゃ。
結局今、刀?生身?
まぁ、刀でもガンガン連載中のソウルイーターぽげなら物語は進めれるか?
目が覚めたそこは、元の柳川さんの家のお庭でした。
「……るーこさん?」
「うーき、気がついたか!」
途端、体に激痛が走ります。
胸にはいつの間にか包帯が巻かれており、とりあえずの応急処置は済ませてあるみたいです。
「死んだものかと思ったぞ。あまり、るーを心配させるな」
「ごめんなさい……」
と、そこで私は思い出しました。
「……そうだ、あゆさんは!?」
「…………」
るーこさんが黙って指を差した先には、口論をしている観鈴さんと柳川さんの姿が。
何があったのかは想像に難くないです。これ以上聞くのは止しましょう。
「どういうことかな? 柳川さん、家にいれば絶対襲われる心配なんてないって言ってたよね?」
「絶対とは言っとらん」
「おかしいよね。昨日わたし達がここに来るまで尾けられてた気配はなかった。
だったら何で丁度良くあゆちゃんが、リベンジとでも言いたげにおしかけてくるかな?」
「確かに下手を打った俺に責がある。だが、家まで押し入られたことについては俺も解しがたい」
「深く考えずに柳川さんを信用したわたしにも責任はあるよ。
だけど柳川さんらしくないよね、あんな偽情報にあっさり引っかかるなんて。
まるで最初から草壁さんを守る気がなかったみたい、ううん草壁さんが狙われて欲しいと言いたいみたいで」
「俺が奴らに情報を流したとでも言いたいのか?
忘れてるようだが、俺にとっては犯人逮捕が第一だ。
はっきり言うが草壁の安全など二の次、協力してくれるのならそのぐらい覚悟しているはずだ。
わざわざ草壁に護衛をつける必要はないと判断し、そしてそれが裏目に出た。ただそれだけの話だ」
二人の言い争う声が響きます。
昨日散々喧嘩をしていた二人でしたが、今は少し態度が違います。
観鈴さんは本気で怒っており、まるで柳川さんを仇敵として殺さんばかりです。
私のために争っていることが堪らず、私は立ち上がりました。ですが……
「……っっっ!!!」
「う、うーき! 大人しくしていろ!!」
胸に刺すような激痛。傷は思ったより浅くはないです。
ですが、私が意識を取り戻したのに気づいた二人が私に駆け寄りました。
「草壁さん、大丈夫!?」
「は、はい。なんとか生きてます」
「……悪かったな。今回は完全に俺の失策だ」
「柳川さんの責任じゃないですよ。運が悪かっただけですから……」
私がニコリと微笑むと、二人も幾分か安心したようでした。
とにかく、私以外に死人も怪我人も出なくて良かったです。
草壁さんは全治何ヶ月?
A 実はさほど大したことなく一週間
B 普通に一ヶ月
C 少し長めに二ヶ月
D 思いのほか重症で三ヶ月
B
A
「私の見立てだと普通に一ヶ月くらいかな?」
「一ヶ月ですか…」
早い所、現代に戻りたいのですがここは我慢です。
自己診断でもそう沢山血を失ったわけではないので安静にしていれば大丈夫だと思います。
「けど、よく分かりますね」
「経験上、刀傷や銃傷は見慣れているからね。 傷を見誤るとまず死んじゃうから、必死になって覚えたんだよ」
「鳥羽伏見や奥州じゃ何人も死んでいったからな…」
生々しい話です。幕末の動乱を駆け抜けた、と言うのは伊達ではないようです。
「それよりこれからどうするのだ、みすうーにやなうーよ。 罠だったとは言え即、ヤサが割れてしまった上に
今はうーきは動けない。 敵の正体も掴めないとなってはどうにもならんぞ」
るーこさんは現状を整理して、これからの事を切り出して来ました。
小さいのに随分聡明です。将来は良い大人になってくれるでしょう。
「どこかに預けるしかないが…生半可な場所では二次被害を広げるだけだからな。
何せ拳銃でまで持ち出したり、100円もの大金を用意する連中だ。 警察病院でも守りきれるか怪しい所だ」
「ちゃんとした医者にも見て貰わないとね。 とりあえず応急処置はしたけど、油断はならないよ」
そうです、下手な医者にかかって傷が残ったら乙女の一大事です。抗生物質も無い時代なので感染症も心配です。
現代の医術だったらそんな心配も無いのですが…
「腕の立つ医者がいて…」
「私たち以外で情報が漏れていようが安全が確保されていて…」
「怪我人の治療が長期で可能な場所…」
二人とも私を預ける場所の条件を交互に呟いていきます。すると、どこか心当たりがあるのか同時に顔をハッとさせますが、
すぐにその顔は苦々しいものへと変わっていきます。
「あそこに預けるのか? まだ橋の下で野宿したほうがマシな気が…」
「私たちならね。 まさか怪我人に変なことはしない…と思いたいけど」
何か二人から不穏な言葉が漏れてるようです。会話に『俺達だったら御免被る』って雰囲気が透けて見えます。
「えっと、それはどこなんでしょうか?」
言い知れぬ不安を感じつつも柳川さんに尋ねてみました。
「それはだな──」
A 霧島診療所だ。霧島聖と言う性格に難があるが腕は立つ医者がいる
B 須磨寺教会だ。須磨寺雪緒と言う怪しげな術で治療するシスターがいる
C 柏木邸だ。 あの人がいるから、こと安全に関してはここら辺一帯では最強だ
B
「……須磨寺に頼るしかないか」
「やっぱり……」
何故か気の進まない表情で大きなため息をつく二人。
少し不安になってきました。
「その、須磨寺さんって……何か問題のある人なんですか?」
「今は教会でシスターやってるんだけど、元々お医者さんでね。ちょっとした心霊治療みたいなことも出来るの。
腕もいいし私たちも何度もお世話になったんだけど……ちょっとヘンな人なんだ」
観鈴さんがそう言うのだから、相当なんでしょう。
一体どんな人なんでしょうか。激しく不安です。
「観鈴、草壁を須磨寺のところまで送ってやれ。俺はこの事件をもう少し調べてみる」
「や、やだよ。わたしあの人苦手で……」
「……俺だって嫌だ」
あの観鈴さんと柳川さんがビビってます。
私の頭の中で、須磨寺さんが相当恐ろしい人としてイメージが固まってきました。
「ど、どんな人なんです。その須磨寺さんというのは……」
「それは……」
気が進まないように、観鈴さんが話し始めました。
須磨寺さんというのは……。
A 終末思想にどっぷり嵌っているそうです
B 毎週一回は自殺を図るそうです
C 霊能力があるそうです
A
「終末思想にどっぷり嵌っているの。 いや、正確には終末思想に関して物凄く詳しいの。カトリックだけじゃなくって東西問わず。
それを他人に色々脚色して話して右往左往するのを見たりするのを何よりの娯楽とするエセシスター」
なるほど…人々の不安を取り除くのではなく、植えつけるシスターなんですか。逆でしょう、普通は。
「あの手の話をする時は凄まじく真に迫っているが、多分自分でも信じてないだろうな。同じ話を聞いた事が無いし。
アイツの表情の変化は少ないがその時だけは輝いているからな。 並の人なら1時間で染めれるとか自負していたからな。
そう言えば、ただの水を聖水とか言って売ったとかとも聞いた事があるな。
本来なら即逮捕したい所だが、色々借りがあるし、抉られたくも無い心の傷を抉ってくるからこっちも避けているんだ」
二人からはその須磨寺さんの評価が口々に零れていきます。とても褒めているようには思えませんが…
つーか霊感商法って100年前からあったんですね。
「なんか散々に貶していますけど、大丈夫でなのしょうか、その人。 柳川さんたちの知人なんでしょう?」
「ああ、出来れば知り合いたくなかったの部類に属するがな」
「世間の評価は真面目で聖務を完璧にこなす信心深いシスターで通っているんだけど…実情はさっき言ったとおり。
優季ちゃんも騙されないようにね」
「いえ、それもなんですけど…また襲われたりしたら…」
医者としての腕は二人があれほど嫌がりながらも太鼓判押すほどですから、大丈夫なのでしょう。
その性格とか趣味とかには激しく不安を覚えますが…それはこの際置いておいて、気になるのはその教会での安全です。
「俺には劣るが腕はそれなりに立つ。 多少武装した敵程度ならば問題はあるまい」
「手が空いている時は時は私も守ってあげるからね…うん」
最後の肯きが意気消沈気味なのが気にかかりますが、どうやら今はそこを当てにするしかないようです。
私たちは柳川さんと別れ、彼から貰ったお金で人力車を雇い、街の丘の上にある教会へと向かいました。
歩いても行ける距離でしたが、怪我をした私に配慮した上での措置でした。
そして、再度の襲撃も無く、私たちは無事に教会に着きました。教会の扉を開け、観鈴さんが中に呼びかけます。
「あのー、雪緒さんいますか? み、観鈴ですけど、怪我人が…」
観鈴さんは入り口から動かずに躊躇いがちに中へと呼びかけます。
「どうした、みすうー。 教会の中の者に用があるのなら何故、中に入って呼びかけぬのだ?」
「えーっと、出来ればいなかったり、気付いてくれなかったりした方がいいかなーとか…なんちゃって」
「ふざけるでないぞ。 うーきの命に関わる問題なんだぞ」
「分かっているけど…がお…やっぱり苦手…」
柳川さんすら恐れずに嬉々としてからかう観鈴さんがこんなにも恐れる相手なんて…どんな方なんでしょうか?
「どちら様でしょうか? あら、観鈴さん お久しぶりです」
中から出て来たのは修道服に身を包んだ清楚な、そしてどこか儚げな感じの女性でした。
歳は…観鈴さんと言う前例があるので安易な憶測は出来ませんが、私より上と言うのは確かでしょう。
「雪緒さん、この人の治療と治るまでここで預かって欲しいの」
「随分と単刀直入ね。 貴女が私を頼ると言う事は…この方は色々と訳ありなのでしょう?」
「うん、ついさっき襲われちゃって。 柳川さんや私も手が離せないから、こうして雪緒さんを頼りに…」
「柳川さん…となると、ここ最近、街を騒がしている通り魔事件絡みかしら?」
「うん。 監視されているみたいだし敵もよく分からないから、ここなら安心して治療が出来るから」
須磨寺さんは観鈴さんの説明に一言ずつ肯き、暫く考え込んだ後で口を開きました。
「分かりました。 傷付き、困り果てた者に手を差し伸べるのが主の僕たる私の務め。
彼女は暫くここで預かりましょう」
「ありがとう、雪緒さん」
「ふふ、貴女は私が断るはずが無いと知っていてここを尋ねたのでしょう? まぁ、これは”貸し”にさせてもらうわ」
須磨寺さんは私たちにも聞こえるようにわざとらしく『貸し』の部分だけ強調してきました。
その台詞の部分で観鈴さんが一瞬だけ体を震わせていた様に見えました。そんなに危険な相手からの貸しなのでしょうか…
「さて、まずはそこの方の治療からしないといけませんね。 こちらに…えっと、貴女方のお名前は…」
「優季です。草壁優季と申します」
「るーこ・きれいなそらだ。るーこと呼ぶがいい」
「草壁さん、るーこさん。 はい、分かりました。では、奥のベッドに来てください」
須磨寺さんに促がされ、私は観鈴さんに肩を貸されつつ奥の部屋へと向かいました。
そこでふと、私の脳裏にある疑問が浮かびました。私はその疑問を氷解させるべく、須磨寺さんに質問をする事にしました。
A やっぱり気になる。年齢を聞く
B どこで観鈴たちと知り合ったか聞く
C 心霊手術について聞く
A
「須磨寺さん、つかぬ事を聞いてもいいですか?」
奥の部屋に向かう途中、私は須磨寺さんに質問しようとしました。
「つかぬ事でしたら、別に聞く必要は無いと思いますが」
特に表情を変えず、須磨寺さんは意地の悪い返答をします。
「……す、すみません」
私は次の言葉に詰まってしまいました。
「ゆ、雪緒さん」
観鈴さんもあんまりな須磨寺さんの答えに困惑します。
ですが、須磨寺さんは慌てる観鈴さんに気をよくしたようです。
本当に意地が悪いシスターさんです、柳川さんや観鈴さんが敬遠したいのも分かります。
「ふふ、こちらこそすいません。いいですよ、何か聞きたい事があるのでしょう?」
改めて須磨寺さんが私に尋ねてきました。
どうも余計な事を言うと揚げ足をとられそうです、単刀直入に聞きましょう。
「あの……須磨寺さんのお年って幾つなんですか?」
見た目は私と同じくらいですが、この世界ではあまり当てにならないです。
観鈴さんで三十二、その観鈴さんと旧知の仲とは須磨寺さんはいったい何歳なのでしょうか。
「年齢ですか……今年で二十九になりますよ」
「にはは、雪緒さんも来年で観鈴と同じ三十代だね」
やはり、人の外見は摩訶不思議です。
「では、治療をしますので皆さんは部屋から出てください」
須磨寺さんに促され、るーこさんと観鈴さんが退室します。
部屋に残されたのは、ベッドで寝かされた私と須磨寺さんだけでした。
これから治療というのが始まるのでしょう、ドキドキします。
私は緊張を和らげるべく、再び須磨寺さんに質問をしました。
「そうだ、須磨寺さんはどこで観鈴さん達と知り合ったのですか?」
その問い掛けに、治療の準備をしていた須磨寺さんの手が止まります。
「……どうして、そんな事を聞くのですか?」
「え、えっと、ただ何となく気になったからですけど」
何かまずかったのでしょうか? 聞かれたくなかった事とか。
「いいわ、これから身体を預ける人間の事は少しでも知りたいものなのでしょうね。
私が観鈴さん達と知り合ったのは、まだ私がシスターになる前――」
A 瀕死だった観鈴さんを、気まぐれに助けた事があるの
B 敵同士でね、戦場が出会いだったの
C 男の人達の慰み者にされていたのを、観鈴さん達に助けられたの
C
「男の人に襲われていたのを、観鈴さん達に助けられたの」
「え゛っ!?」
さらりと、とんでもないことを口にします。
「あの……そんな重い話なのでしたら、言わなくても宜しかったんですけど」
「何故? 事実は事実、ウソで塗り固めたとしても何も変わらないわ」
確かにこんなタイプの人は誰だって苦手と感じますよ。
観鈴さんや柳川さんが会うことすら嫌がった理由がよく分かりました。
「つまり、観鈴さんたちは須磨寺さんにとって恩人と言うわけですね」
「そうなるかしら。観鈴さんは市中見廻りが仕事だから当然だなんて言ってたけれどね。
思えばあのときから、私は観鈴さん達に惹かれていたのかも知れないわね」
須磨寺さんが、懐かしいものを見るかのように話し始めます。
「私も医術の腕にはそれなりに自信があったから、医者として観鈴さん達に恩を返すことしたの。
大分良くしてもらったわ。観鈴さんや柳川さんには剣術も教えてもらったし。
あの時偶然男の人たちに襲われなければ、今の私はなかったでしょうね。
ほんの少しの偶然が、私の人生を分けたの。運命的よね」
須磨寺さんが微笑みました。
運命的、ですか。今の私の境遇も、本当に運命を感じずにはいられないですけど。
偶然って、本当に素晴らしいですよね。私も思わず微笑み返しました。
「本当、運命的ですね」
「ええ」
なんだ、実はかなり優しい人じゃないですか。
少し変わってますが、言うほどおかしい人でもないと思いますよ。
と、私はこの時そう思ってました。ですが、この認識が甘かったことを思い知ることとなります。
「……そういうわけで、最後の日になるとこの世の全てのものは破壊されるわ。
人や動物たちはもちろん、海や山といったこの世のありとあらゆるもの全てが。
そして、最後の審判によって一部の人間だけが救われ、残りは永遠の火に焼かれて死ぬの。
でも私は全てが滅ぶと思うわ。神は差別をしないもの。
人間ばかり生き残って自然が生き残らないなんてのもおかしな話よね。
だから皆滅んだほうが平等だと思わない?」
「あ、あの〜須磨寺さん」
「あら、少し難しかったかしら?」
「いえ……そうではないのですが、もっと楽しい話題はないんですか?」
「十分楽しいと思うわよ」
これで何度目か分からないですが、私はその言葉に盛大なため息をつきました。
包帯などを換えてもらった後に、退屈しのぎになるからと須磨寺さんがお話をしてくださったのですが、
その……内容があまりに救われない話ばかりです。
明治政府の中には世界滅亡を目論む宇宙人が紛れているだとか、
終末の日に救われる人間など存在しないとか、廃藩置県が実は日本破滅への序曲なのだとか、
ずっとそんな話ばかり聞かされてます。
しかもこれを三日三晩ずっとぶっ通しです。はっきり言ってノイローゼになりそうです。
こういう時、お医者さんなら患者を不安にさせないような話をするんじゃないんですか?
……やはり、この人はおかしいです。全てにおいて。
「でも、こういう話がイヤならどうしようかしら。世界破滅の話ならレパートリーは1000を超えてるんだけど……」
「そういう話なら寧ろ止めてくださいお願いします」
「あら、残念」
須磨寺さんがクスクスと笑いました。
……柳川さん、観鈴さん。あなたたちが正しかったです。
A 「迷える子羊が来たみたい」と、須磨寺さんが本来のお仕事? に戻りました
B 「うーき、調子はどうだ?」と、るーこさんが私を訪ねてくれました
C 「それなら、こんな話はどうかしら?」と須磨寺さんが別の話題を振ってきました(話題指定)
D 観鈴さんと柳川さんはちゃんと事件解決の調査をしてるんでしょうか?
「私が男の人達の慰み者にされていたのを、観鈴さんに助けられた事があるの」
止めていた治療の準備を再開しながら、あくまで淡々と語ります。
それだけに、余計に衝撃的でした。
「なっ!・・・・・・痛っ!……」
「あまり大きな声を出さない方がいいわ、傷に響くから」
思わず驚き起き上がろうとした私は、裂傷の痛みで再びベッドに寝てしまいます。
「それって……何かの冗談ですか」
須磨寺さんはこちらを振り向き、首を横に振ります。
「いいえ、仮にも神に仕える身として嘘など言いませんよ。本当の事です」
「…………」
男の人達の――慰み者――
同じ女性として、その言葉が重くのし掛かってきました。
「そんなに珍しい事じゃないわ、あの時代は特にね」
あの時代――幕末の動乱の事でしょう。
「たまたま戦渦に巻き込まれて家も家族も失って、身よりが無くなった女の子。
あの時代そんな女性は幾らでもいたし、行く末なんて誰も大して変わらないのですよ。
ただ……私の場合はその中でも酷く運が悪かったのでしょうね」
世間話、と言うよりは教師が歴史上の事件を話すような口調で続けられます。
「維新志士って名乗っていましたが、実際は野盗と変わらない人達でした。
行く当てもなかった私を攫って、彼らの寝床……街外れの廃屋に連れ込んだのです。
そこで私は監禁され、彼らの慰み者になって、毎日犯され続けました」
「一ヶ月ぐらいは泣いたり抵抗しました」
「二ヶ月目ぐらいからは、ただ黙って行為を受け入れました」
「三ヶ月もすると――
A 「や、やめてください!」私は痛みを堪えて叫びました
B 須磨寺さんの話は止まりません
C その時、外の観鈴とるーこは?
柳川さんと観鈴さんの事件の調査は進んでいるのでしょうか。
そう考えたとき、玄関の扉が開く音がしました。
「にはは、須磨寺さんと優季さんいる?」
「鍵がかかっていない以上、いると考えるのが自然だろう」
柳川さんと観鈴さんのようです。
そのまま、私が寝かされている部屋までやってきました。
「こんにちは柳川さん、観鈴さん。お見舞いですか」
須磨寺さんを見て苦手そうな顔をお二人は浮かべます。
ですが、すぐに私の方を向き直りました。
「そんなところだが……それだけじゃ無い」
「事件の調査についてなんだ」
驚きました、さすが柳川さんと観鈴さんです。
「何か分かったのか、みすうー、やなうー」
「ああ、実は――」
A 警察の上の方から、この事件についてこれ以上調査するなと命じられたんだ
B 通り魔の実行犯、月宮あゆを捕まえたんだ
C 実は通り魔事件の黒幕を捕まえたんだ
Aだ。おそらくあゆは逮捕か斬られてるだろうし
「警察の上の方から、この事件についてこれ以上調査するなと命じられたんだ」
「それって…圧力ってやつですか?」
柳川さんは沈黙を以って肯定とも取れる態度を示しました。そして、少し間を置いた後、その件のあらましを呟きだしました。
「…昨日、近くの河原である変死体が見つかった。死体は女性。年齢は二十歳前後で死後一日程度、身体的特徴は大きめの目と
肩まで掛かる髪形に頭にはカチューシャが──」
書類の内容を諳んじるように語る柳川さん。
その身体的特徴を持った人物とごく最近、私は会った事あります。そして、柳川さんの独白は続きます。
「──以上の点から東京郊外在住の無職、月宮あゆと断定。
遺体からは連日の通り魔事件で使用されたと思しき凶器が何点か発見されており、当局はこの人物を被疑者と認定。
そして、連続通り魔事件は被疑者死亡で書類送検。共犯の相沢祐一もゲロって晴れて事件は解決と言う事になった。
そう、通り魔事件はな。だが、肝心な月宮あゆ殺害事件に関しては俺は担当を外された。 無論、直談判に行ったが体よくあしらわれた」
つまり、手掛かりである私を狙った実行犯はトカゲの尻尾切りにあい、私たちはこの事件の手掛かりを失ってしまったようです。
そして、敵は警察上層部に圧力を掛けられるほどの大物であると言う事。
「つまり、完全に袋小路に陥ったという事?」
「いくつか物証があるが…手掛かりになるか怪しいものだな。
担当を外されたから刑事、柳川祐也として出来ることはない。 だから、今からは──」
「明治政府の狗の密偵、柳川祐也として動くんだね?」
観鈴さんが皮肉を込めた台詞を投げ掛けます。
「何とでも言え。 昔と大して変わらん。 法の通用しない相手なら、こちらもそれ相応の対応をすると言うだけだ。
面倒な逮捕状も手錠も不要。 悪即斬以外の結末は有りえない」
冷徹ながらも真面目な刑事らしかった柳川さんから、その仮面が剥ぎ取られていく様です。
その裏には飢狼の如き本性が現れ、その殺気は私を震えさせます。
しかし、手詰まりなのは確かです。これからどうすればいいのでしょうか?
A もしかしたらまた襲撃されるかもしれない。捕まえてそこから辿る
B 夢であったリアンノンと言う人物について尋ねてみる
C あゆたちが残した遺留品から辿れないか聞いてみる
A
「もしかしたらまた襲撃されるかもしれません。 捕まえてそこから辿るのはどうでしょうか?」
どうせ私が襲われるのは分かっています。ならばここは大胆に行くべきでしょう。
ところが、私の提案を聞いた皆さんは誰もが呆れ顔です。何か失言でもあったのでしょうか?
「二度も襲われておきながらその発言か…勇気があるのか馬鹿なのか分からんな…」
「がお…優季さん…いくら私でも死にたがりの人は守りきれないよ」
「ふぅ、自ら望んで死地に行きたがる患者では治療のし甲斐が無いわね」
「うーきが死んだら全てが終わりなのだぞ。 もっと自分の身を案じろ」
あ…確かに軽率な発言でした。手詰まり感があったのでどんな手でも構わないと思ったら、つい口に出してしまいました。
これは流石に守られている人間から口にすべき言葉ではなかったでしょう。皆さんが私の身を案じて怒るのも分かります。
「だが、これくらいしか手が無いのも事実だ。 止むを得んな」
しかし、柳川さんはその危険な策にあっさりと賛同の意を示します。
やっぱり彼に関しては前言を撤回させてもらいます。彼は合理的判断が第一のようです。
「柳川さん!」
いつもと変わらないその態度に観鈴さんは怒りを露にします。
「案ずるな。 最早、草壁が最後の手掛かりだ。 むざむざ殺されるような真似はしないさ。
元新撰組が3人も揃って女一人守れないようでは、あの世にいる仲間に顔向けできんぞ」
あ…やっぱり柳川さんたちは元新撰組だったんですね。それらしい発言がちらほら聞かれましたが。
「それより問題はお前だ。 昔から加減の利かない奴だったからな。下手すれば情報源を皆殺しにしかねない」
「がお…けど、捕まえるの苦手。 手加減するの難しいよ?」
「即死じゃなきゃ構わん。 頭と心臓が残っていれば須磨寺が奴らの正体を吐くくらいの時間は生かせるだろう」
さり気に外道な発言です。
確かに須磨寺さんの心霊手術はまるでRPGの回復魔法のようで効果は抜群でしたしたが、苦しませるだけに使うなんて酷い人です。
「神の御技をそんな悪行に使うなんて…地獄に落ちるわよ、柳川さん」
「はっ、心にもない事を。
ここにいる面々で一番、神も地獄の存在も信じていないお前の口からそんな台詞が出るとはな」
全く以って同意です。三日三晩の終末論の中に神への畏怖や敬意が込められた話は一つもありませんでしたから。
白々しいとしか言いようがありません。
「前の襲撃から3日。 街に着いたその日に狙うくらい忙しい人たちだから、今晩辺りにそろそろかもね」
確かに悠長に構えている暇はありません。早速、柳川さんは敵を捕らえる為の策を練りました。それは──
A 優季の護衛が優先。シンプルに教会で待ち構える
B 敢えて優季の周りを手薄にして襲撃を仕掛けた敵を包囲し、一網打尽にする
C 一部を残して撃退する。それを追跡して尻尾を掴む
C
3人とも新撰組な平行世界ですか
「捕まえるのは一部で十分だ。残りは撃退」
「単純な策ね。悪くはないけど」
「にはは、分かりやすくてラクチン」
三人意見が完全に一致してます。流石は元同志といったところでしょうか。
実を言うと、私ちょっとドキドキしてます。だって、ホラ、新撰組ですよ? あの有名な。
今まで確証がなかったから聞けませんでしたけど、柳川さんたちってそんなにすごかったんですね。
といっても、私は有名どころしか知らないですが。知ってたら名前を聞いた瞬間にピンときたでしょうし。
でも有名人とお近づきになれて得した気分です。肝心の三人ともヘンな人ですけど。
「病み上がりのお前を酷使するようで悪いが、草壁。囮役をしっかり頼む」
「はい! 柳川さんも観鈴さんも腕は立ちますし、それに須磨寺さんもご一緒してくださるんですから安心です」
私は胸を張って答えました。
ここからが私たちの反撃ですよ!
私たち『三人』は夜の街、しかも人通りの少ないところを歩きます。
私はこの状況に、大きなため息をつきました。
「……で、どうして須磨寺さんだけなんですか?」
「仕方がないじゃない。作戦上必要だったから」
私たちが勇んで街へ繰り出す直前のことでした。
急に柳川さんが、自分と観鈴さんは離れて見張ると言い出したのです。
いえ、確かにそれは頭で考えれば当然なんです。
観鈴さんは先の活躍で犯人に顔を知られている可能性もありますし、
柳川さんに至っては警察に手が入っているんですから尚更顔を知られている可能性が高いです。
相手が用心して近づいて来なくなっては何の意味もありませんから。
だから私の周りで護衛してくださるのは、犯人に顔も割れていなく、
かつ傍目には人畜無害で敬虔なシスターにしか見えない須磨寺さんが適任なのは分かります。
ですが……
「……と、いうわけで世は常に滅びの危険を孕んでいるものよ。
死というものは実はとても尊く身近なもので、法王庁の偉い大司教様も仰ってたわ。
死んだプロテスタントだけがいいプロテスタントだってね」
「なるほど、勉強になったぞ」
「……って須磨寺さん、子どもに何吹き込んでるんですか」
「退屈だったから。子どもはお話が好きでしょう?」
「それでも話は選んでください!」
期待は裏切り、予想は裏切りません。
先ほどから須磨寺さんの終末論を聞かされ続け、私はもう精神的に参ってしまってます。
ですがるーこさんと須磨寺さんは逆に元気になっているから不思議と言うもので。
須磨寺さんはこうやって信者を増やしているんでしょうか。
るーこさんもあんな話を平気な顔で聞いていられるなんて、将来が本当に不安です。
「ところで……」
今度は須磨寺さんが私に話を振ってきました。
思わず身構えてしまいます。一体なんだと言うのでしょう。
A 「気づいているかしら? 前に十人……殺気をみなぎらせてるわよ?」
B 「あなたの正体が気になるわ。訳有りのようだけど、一体何者かしら?」
C 「もしかして、あなたって……柳川さんの不倫相手?」ぶっ!!
A
「気づいているかしら? 前に十人……殺気をみなぎらせてるわよ?」
須磨寺さんの声に促され前を見ると、
あからさまに堅気の衆じゃない男の人達が立っていました。
その数は十、ちょっと予想外です。須磨寺さんだけで相手ができる数とは思えません。
それでも彼女は臆することなく彼らの方へ歩いて行き、
「おはようございます、月が綺麗な朝ですね」
と、全くトンチンカンな挨拶を交わしました。
「私になにか御用ですか? 迷える子羊さん方?」
「いや何、俺達が用があるのはそちらの嬢ちゃんだ」
やはり彼らは私の命が狙いのようです。
「まったくよぉ〜こんなガキ殺るだけで百円たぁボロイ商売だぜ」
リーダー格と思われる男の笑い声に呼応して
仲間の男達が下卑た笑い声が通りに木霊します。
その笑い声が癇に障ったのか須磨寺さんは
「……いちいち五月蝿い豚ね、少しは黙りなさい」
静かに、しかしそれは誰よりも大きな声でした。
「あぁん? 今何か言ったか」
「どうやら家畜に人間の言葉は聞こえなかったようね」
「ちょっ…須磨寺さん、冷静に冷静に」
「キレてないわ」
嘘です。絶対キレてます。
「なかなか威勢の良い尼さんだな。俺はそんな女嫌いじゃないぜ」
リーダ格の男は冷静に装うもその言葉には怒気を孕んでいます。
まあ当然ですね。
「そう? じゃあお返しに私は神の国への片道切符を差し上げるわ
料金は焼死、凍死、轢死、刺殺……好きなものを選びなさい」
「どうやらお前は俺を怒らしちまったようだな……まずはお前からだ」
男は刀を抜き凄みます。
その時、
「あんたの手を煩わせるまでもねえ、俺一人でこんなガキ共殺ってやるよ」
いかにもにザコっぽい男が一人で須磨寺さんに挑みました。
「天にまします我らが父よ……」
「へっ自分で自分の念仏を唱えてやがるぜ」
男を無視して聖書の一節を暗唱する須磨寺さん
「……父と子と聖霊の御名において……」
ゆらりと須磨寺さんの身体が動きます。
「AMEN!」
ドンッと音がしました。しかしそれが何の音かはわかりません。
男は平気で立っています。
「何だこけおどしかよ」
「あら? まだ気がついていないの?」
「何がだよ……ッ」
「これ、何かしら?」
須磨寺さんは手を空にかざします。
月光に照らされる赤黒く脈打つ肉塊。
「お、おれの……」
「そうよあなたの心臓。自分のを見るのは初めてかしら」
「ばっ……ばかな……」
男は口を金魚のようにパクパクさせながら倒れ、動かなくなりました。
きっとあれはメスを使わず患部を摘出する心霊医術の応用なのでしょう
男の身体に傷一つつけず心臓を抉り出す。
聖職者が使う技には到底思えません。
「さあどうするの?」
男の心臓を無造作に地面に投げ捨てた須磨寺さん。
A「やっ…やっちまえ!」一斉に男達が襲いかかりました。
B 須磨寺さんは動揺する男達の隙をついてリーダー格の男を取り押さえました。
C「すまない……うーき」なんとるーこさんが人質に取られてしまいました。
C
なにこの既視感
「ひ、ひぃっ!!」
須磨寺さんの強烈なパフォーマンスが功を奏したのか、
男たちの何人かが腰を抜かしました。……かくいう私だってビビッちゃってます。
いきなり心臓を掴み取るシスターなんて聞いたことがありません。
心臓を掴みだされた男の人は勿論外傷など全くなく、まるで心臓発作か何かでポックリ逝ったみたいです。
……恐ろしい。私は素直にそう思えました。
「こんなキレイな体で死ねたらいいのにね。そう思わない?」
「こ、この化け物がぁぁっっっ!!」
恐怖に負けた人たちから順に須磨寺さんに襲い掛かります。
須磨寺さんはクスッと笑うと、服の中に忍ばせていた刀を抜きました。
闇雲に攻めてきた男の人を斬りつけ、血が夜空に飛沫を上げて散りました。
「それなら、こうやって常世に向かうほうがお好みかしら? 平隊士だと思って舐めないことね」
「こ、こいつ……!!」
「さ、どんどん来るといいわ。いくら私がただのシスターでも、名無しの斬られ役にあげるような安い命は持ってないわよ?」
流石、観鈴さんたちに剣を教わったというだけあります。
素人の私が見れば、実力も観鈴さんたちと全然変わりないようにしか見えません。
柳川さんが言うには、自分たちほどじゃないとのことなんですが。
須磨寺さん……はっきり言って強いと言うか怖いです。
今の須磨寺さんより、終末論を意気揚々と語っていたときの須磨寺さんの方が可愛く見えるほどに。
戦いは数の不利もあると言うのに、こちら側が圧倒的に優勢でした。
というか、このまま須磨寺さん一人でも十分何じゃないでしょうか。
「へっ……油断したなシスターもどきが!」
途端、別の方向からそんな声が聞こえました。
あくまで無表情に、須磨寺さんが声の下方向を振り向きます。
そこには……
「すまない……うーき」
人質にされて、首筋に刀を当てられているるーこさんの姿がありました。
ってまたですか!? 幼女キャラだから仕方がないですが、るーこさん人質役が板についてきましたね!
「さあ剣を捨てな! 敬虔なシスター様だ、罪のないガキの命を見捨てられないだろ!?」
「見捨てられるわ」
「そうそう言われたとおりに……って何ぃぃっっ!!」
須磨寺さんの爆弾発言。
これには人質を取った男の人も、私も、そしてるーこさんも止まります。
「事件に首を突っ込む覚悟があるのなら敵に屈したりしないはずだわ。
るーこちゃんはきっと『るーはどうなってもいいから敵を倒せ』と思ってるに違いない。そうでしょう?
この尊い自己犠牲の心は私達は一生忘れません。ああなんて素晴らしいんでしょう……」
感動してるフリをしてます。恐ろしく手前勝手な論理です。
というか、須磨寺さんは本当にシスターなんですか!?
「お、俺は本気だぞ!!」
「あら奇遇ね、私も本気よ?
先に断っておくけど……人質作戦というのは相手を選んで行うものだわ。
そんな姑息な作戦は女子どもを見捨てられないお人よしと、市民を守ることが義務のふにゃちん野郎にしか通じないわ。
私はそのどちらでもないもの。はっきり言って作戦ミスね。
そして人質を取ると言うことは、自分の実力不足を相手に露呈しているようなものよ?
人質を取ると言うのは追い詰めているようで、実は追い詰められてるだけ。
その子を殺すなり傷つけるなりすれば、きっとあなたは殺されるでしょうね。
死んででも目的を果たす? それだと報酬のお金は紙銭で十分になるわね。
どうするのかしら? 今その子を離せば『私個人としては』見逃してもいいけど」
冷酷。恐ろしいほどに冷酷です。
須磨寺さん……絶対に敵には回したくない。正直に言うと味方にもまわしたくないですけど。
男の人は……
A るーこさんを置いて一目散に逃げ出した
B 土下座して謝った
C 不意打ちをしかけた観鈴さんたちにあっさりと倒された
B
辺りに仲間の人はもういません、生き残った人は皆逃げたようです。
男の人はるーこさんを手放して刀を投げ捨てました。
更にその場に正座をします、そして……
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい! わ、悪気はなかったんです!
ゆ、許してください! お願いします! ごめんなさい!」
その場で土下座をし始めました。何度も何度も頭を地面に叩きつけます。
何とも見苦しい限りです。
人質を取っておいて悪気が無かったなんて無茶苦茶だと思いますけど。
「お、俺には妻と三人の子供が家で腹を空かして待っているんです。
今日の襲撃だって知り合いに無理矢理連れられてきてやむなく参加したんです。
本当にごめんなさい、許してください、信じてください!」
土下座を続ける男の人に須磨寺さんが近寄ります。
「残念です、折角の機会でしたのに」
「へ?」
「るーこさんを置いて逃げれば助かったかもしれませんのに」
須磨寺さんの刀が男の人の胸を突きます。
「Amen」
「大丈夫ですか、るーこさん」
「怖かったぞ、うーき、すまうー」
「御免なさいね、でもあの場合はああするのが一番だったの」
男の人達は死亡、あるいは逃げだしました。
「柳川さんと観鈴さんは、上手くあの人達を追えてるでしょうか」
「心配無いと思うわ、二人とも強いですし」
今頃柳川さんか観鈴さんが逃げた人達を追っているでしょう。
何とかして敵の正体を掴まなければなりません。
A 私達の役割は終わりました。このまま、一度教会に帰りましょう。
B 「どうやら無事のようだな(ね)」柳川か観鈴が現れた(どちらか指定)
C 「お前達が当てにしてるのはコイツらか?」その時、柳川さんと観鈴さんの生首を手にぶら下げた男が現れた(人物指定)
D 「お前達! そこで何をしている?!」 運悪く、通りすがりの警官に見つかった
C 岸田洋一
D
「お前達! そこで何をしている!!」
急に声が掛かって振り返ると、そこには悪人顔した警察官が。
柳川さんと言い、警察の人は悪人っぽい顔をしてる法則でもあるんでしょうか。
「岸田さん、お元気ですか?」
「……須磨寺雪緒!」
岸田さんと言う名前の警察官が、須磨寺さんに話しかけられギョッとします。
いろいろ悪名高いみたいですね、須磨寺さんは。
「コレは一体どういう……」
「正当防衛です」
「いや、それだけじゃ分から……」
「ですから正当防衛です」
「だから……」
「何でも言いますけれど正当防衛です」
岸田さんが何かを言う前に正当防衛の一点張り。
実はマトモに話し合う気ないですね、須磨寺さん……。
私達は―――――
A このまま警察署に行って事情聴取を受けることになりました
B なんとか誤魔化して教会に戻ることが出来ました
C 追跡中の柳川さんたちの様子が気になります(視点変更する)
ちょっと待て。それは選択無視だろ。
何のことか思って見直したら見間違えてることに気づいた。ゴメンね。
「お前達が当てにしてるのはコイツらか?」
私達の後ろから、声がしました。
おかしいです、もう私達を襲ってきた人達は皆さんいなくなったはずです。
「えっ……」
「そんなっ……」
振り返り、私達の目に飛び込んできた光景。
それは、全く少しも100パーセント信じられないものでした。
長髪で片目が隠れた男の人が一人、目の前に立っています。
いえ、それはいいです――――まだ問題ありません。
問題は、その手に握られているモノ。
理解できません、と言うより理解したくありません。
だって、だって男の人の手に握られているソレは、紛れもなく――
「やなうー!!! みすうー!!!」
そう、ヤナガワサントミスズサンノナマクビナノデスカラ。
「そんな……柳川さん…観鈴さん」
何事にも動じず、余裕を崩さなかった須磨寺さんも動揺します。
「ああ、物陰でコソコソしてたから始末させてもらったのさ」
事も無げに言います、この二人を…この人は一人で?
「あ、貴方は何者なんですか?!」
須磨寺さんが刀を構えます、先ほどの余裕なんて砂一粒ほどもありません。
「お前達が誘っていた襲撃者だろ、もっと歓迎してほしいものだが。
それとも名前が聞きたいのか、別に知られて困るものでもないしな。
俺の名は岸田洋一だ、ま、すぐに忘れるだろうがな」
男の人――岸田さんは手に持っていた柳川さんと観鈴さんの首を投げ捨て、二本の刀を構えます。
「さぁ、『ぱーてぃー』を始めようか。なに、まだ夜は始まったばかりだよお嬢さん方」
A 逃げる、とにかくここは逃げます
B 「……私が囮になりますから、貴女達は逃げて下さい」須磨寺さんが前に出ました
C 「お前達! そこで何をしている!」騒ぎを聞きつけた警察の人達がやってきました
B
Bで哀れ雪雄もキッシーの餌食に
「……私が囮になりますから、貴女達は逃げて下さい」
「えっ…そんな……」
「足手まといは要りません」
そう言われ優季はるーこを連れて駆け出す。
場に残されるは雪緒と岸田の二人。
雪緒は冷めた目で岸田を見据える。
「ふむ、仲間を逃がすために身を挺すか。ありがちだがこれも一興」
余裕ありげに含む岸田。その岸田を。
「…はっ……」
「何がおかしい?」
雪緒は鼻先で笑いつけた。
「いえ、まあそれこそありがちな手をと思いまして」
「な…なんのことだ」
取り繕う岸田だがその表情が僅かに変化するのを雪緒は見逃さなかった。
「いえ。本当によくあったことなので。生首をそれらしく拵えるなんてことは」
「!!」
「ああ、そうそう。あの人たちを逃がしたことについて一つだけ勘違いしてるわね」
「な、何を……」
「流石にあの二人には堪える光景だと思うから」
「減らず口をっ!」
刹那、二つの影は交錯する。
そして残されるのは。
A ぶちまけられた岸田の残骸だった
B 刎ねられた雪緒の首だった
C 両者相打ち
A
C
A
びしゃびしゃと血と臓物の雨が降る。
その中、雪緒は平然と岸田だったモノを見下ろす。
「何故、何故動揺すらしないのだ…お前は…」
瀕死、と言うより死の世界に半分以上突っ込んだ岸田が呟く。
「当然でしょ、だってあの二人がそう簡単に死ぬわけが無いんだから」
「ち、違…あれは……」
言いかけながら、絶命する岸田。雪緒は一瞥もなかった。
だが、岸田の最期に雪緒は違和感を覚える。
(? どういう事かしら)
駆け寄り、岸田が投げ捨てた生首の作り物を検分し……その手が震えた。
「こ、これは?……」
岸田が投げ捨てた生首、それは作り物ではなかい。
念入りに調べる、目を、顔を、切断面すらもよく見て手で触る。
その結果は、この首が本物であるという悪寒を確信させただけだった。
「岸田が驚いたのは、本物なのに私が動揺しなかったから……そんな」
雪緒が生首と看破し、死に際になっても明確に「あれは作り物だ」とは言わなかった。
(だけどあの男の剣は二人を殺せるものではない、他に二人を殺した人がいた?!)
そう考えて雪緒は気づく、今優季とるーこは無防備だ。
「いけない!」
A 雪緒は優季を追いかける
B 逃げる優季に視点を変更する
C 「なかなかいい判断だな」その時、雪緒の後ろから何者かが現れた(人物指定)
C高槻
ID:GwoeGxLo0はどう見ても荒らし
A
>>663のBからはじめてみる
B
>>660のBからはじめてみる
C
>>654のCからはじめてみる
D
>>654の選択肢からやり直す
E このまま続ける。
もうD 生き死にグダグダは勘弁
ちょっと待て、リコールは分からんでも無いけど
今やるのは早すぎだろ
A
>>669のリコールは1時間後から有効にする
B
>>669のリコールは3時間後から有効にする
C
>>669のリコールは5時間後から有効にする
一応せめてこれぐらいは理由をつけるべきだと思うが
Bぐらいかな
いや、自分としては
>>672の何時間後かってつもりなのだが
じゃないとAならすでに一時間経っちゃってるし
>>674 多分それでOK。
>>657は無効だが、3時間後に全く同じ話が投入された場合は問題ない。
書き負けで無効になった話を改変して投入はありだから。
別にリコール自体必要ないだろう
Aって本人がいってるじゃん
>>677 続きが書ければな。もっとも、GwoeGxLo0はそんな気はなさそうだが。
「なかなかいい判断だなぁ!」
背後から声がする。優季はとっさに飛び退き振り返った。
「だがあの女達は放っておけぇ! 馬鹿を見るのはお前だぞぉ!」
「貴方は…何者?」
優季の背後に立っていたのは、ソバージュっぽい髪の男である。
刀を握りしめる優季を見て、男は慌てながら苦笑を浮かべる。
「おいおい、俺は別に敵じゃないぞぉ! まぁ味方とも言えんがなぁ!」
「それは…私が判断します」
見たところ何か武術を心得てるわけでもなく、武器もない。
もっともだからといって雪緒は微塵も戦闘態勢を解かなかった。
「お前もその二人が殺された理由を知りたいだろぉ! それに何故あの女が狙われてるかもなぁ!」
「…………」
「だが聞けばお前の命も危うくなるんだぁ! ぐはぁ! 参ったぁ! 俺は参ったぁ!
俺なら話など聞かずに家に帰って寝るんだがなぁ!」
「……聞かせなさい、それとも話したくなるようにしましょうか」
雪緒は男に話を促させる。
「良いだろぅ! 俺は高槻だぁ!」
(優季さん達を追わないといけないのに、どうしてもこの男の話を聞かないといけない気がする)
高槻と名乗る男に、雪緒も形だけは一応挨拶した。
「……須磨寺雪緒よ」
「まず、そこの二人が殺された理由だがなぁ、二人はお前が殺した男に殺されたんじゃなぃ。
いや、実際に首を切り落としたのはソイツだがなぁ、ソイツに力を貸したヤツがいるんだぁ!」
「誰、それは?」
雪緒には信じられなかった、誰かが力を貸したとしても、岸田とか言う男にあの二人が殺されたなど。
だが、高槻は信じられない言葉を口にした。
「それは――『世界』だぁ! お前みたいな人間には神とでも言った方がわかりやすそうだなぁ!」
「『世界』? 『神』? 何を言ってるの、貴方は」
困惑する雪緒、仕事柄その手の単語には聡いが理解できない、高槻は続ける。
「やはり聞かされていないようだなぁ! あの女、草壁優季は未来から来た人間なんだぁ!」
「未来?」
「そおだぁ! 何か思い当たる事はないのかぁ!」
「…………」
雪緒は思い返す、草壁優季という少女を。
柳川や観鈴には何も聞かされていなかったが、一つ不審と感じた点があった。
(……優季さんの、歯)
治療の際、念のため一度口の中を見た時、優季には虫歯の治療跡があったのを思い出す。
それは、明治の時代では到底不可能そうな治療痕だった。
もし、彼女が未来の人間で未知の技術で治療されたのなら――
「……信じられないわ」
「だが事実だぁ! あの女はこの世界では異質な未来人なんだぁ! だから消されようとしているんだぁ!
例え草壁自身が歴史の改変を望まなくてもぉ! 何気ない行為で未来が変わる可能性は十分にあるぅ!
それを防ぐためにぃ! 『世界』に影響された人間達があの女を狙っているんだぁ!」
いちいち叫ぶように話す高槻、嫌な顔を露骨に浮かべながら雪緒は質問をする。
「だとして、どうして柳川さんや観鈴さんが殺されるの?
その話が仮に本当としても、二人が殺されやすくなる理由にはならないわ」
「そうだなぁ、例え話をするかぁ! お前はパンにカビが生えたとき、
カビの生えた部分だけを上手く千切れるかぁ?! 周りのパンの部分を全く切らずにカビだけを取り除けるかぁ?!」
「……無理ね、どうやっても周囲の部分ごと切り取るしかないでしょう」
「それと同じだぁ! 『世界』は異質な存在と交わった存在も消そうとするんだぁ!
未来を知る人間との接触、その知識を得たなら無論だが、しかしぃ!
単に一緒にいるだけでも、それは本来のこの世界とは異質なものだぁ!
本来なら知る事も触れる事も無い人間との接触はぁ! 本人の意思とは無関係に元の世界とズレを生み出すぅ!
一連の黒い長髪の女が殺された通り魔事件についても同じだぁ!
本当はただの来栖川の令嬢暗殺未遂事件のはずだったんだが、『世界』の介入で通り魔殺人になったのだぁ!
巻き添えを喰らった草壁似の女達は気の毒だぞぉ! 参ったぁ! 皆美人だったのに参ったぁ!」
「……それでも、柳川さんや観鈴さんが死んでしまったらそれはそれで未来が変わるんじゃないの?」
「良いところに気がついたなぁ! 確かにその通りだぁ! だがなぁ! 『世界』が自ら介入するなら
本来死なない人間を死なせても辻褄を合わせられるぅ! しかしぃ! 『世界』以外による改竄が進んでしまえば
やがて『世界』も修正しきれなくなってしまうんだぁ!」
「それなら、柳川さんや観鈴さん、私が優季さんを守っていたのは……」
「はっきり言ってしまえば無駄だぁ! 『世界』の修正を邪魔しているんだからなぁ!
お前達には悪いがぁ! あの女が狙われて殺されるのは“運命”だと思って諦めていればよかったんだぁ!
幸いお前はまだ草壁との関わりが薄いせいかぁ! 殺されていないんだぁ!
俺の話を聞いてどうなるかは知らんがぁ! 大人しく家に帰っるのが最善の判断だぞぉ!」
「……優季さんが未来に帰れば問題は無くなるはずよ」
「確かにそれが一番の方法だろぉ! だが草壁本人はその力をコントロール出来ていないぃ!
それにヤツは一度過去に戻って死ぬはずだった人間を助けているようだぁ!
どの道『世界』から目をつけられるのは時間の問題だったと思うがなぁ!」
「……………………」
雪緒は黙ってしまう、古今の終末思想を読みふけり、幾人もの死に直面してきた自分。
だが、それでもこの男――高槻の言う事はあまりに突拍子過ぎる。
自分の事は棚に上げて、どこかで頭を打った狂人だと思うほどだ。
「大体お前が聞きたそうな話はしてやったがぁ! まだ聞く事はあるかぁ!」
A 高槻が何者かを聞く
B もう聞く事など無い、優季を追いかける
C 草壁と一緒にいるるーこについて聞く
D その頃、優季は(視点を優季に変更)
Aいったい何者だよ高槻最低
カビ→一連の荒れた展開
周囲の部分→この話そのもの
上手い事暗喩したもんだ
ひねたやっちゃなあ
お前友達少ないだろ
おまけに書いた文章も寒いと来てる
まぁわざとなんだろうな
さて定時を過ぎたわけだが。
A リコール成立。>654のDから続きを開始。
B 続いたわけだし>684のAから続きを開始。
普通にBだろ
「あなた、一体何者なの?」
「俺か?俺はそうして滅んだ『世界』の生き残りだぁ!」
当然の疑問に、自信満々に更なる狂気を発する高槻。
「俺は元いた『世界』で『不可視の力』という特殊な能力を研究していた!
ところが、どうやらその『不可視の力』は人が触れてはいけないものだったらしくてな、
『神』の怒りに触れたバベルの塔のように『世界』そのものが崩壊してしまったのだぁ!
お陰で俺のいた『世界』の住人は、幾多もの世界を転々と移りながら、
原住民に頭ごなしに「『神』に逆らったMOON.厨乙」と罵られる運命を背負っているぅ!
参ったぁ!この差別待遇は実に参ったぁ!
だから、他の『世界』で同じ境遇に遭いそうな奴には、この事実を教えてやるのだぁ!」
「さまよえるユダヤ人……」
雪緒は終末論に彩を添える、ひとつの説話を思い出した。
神の御子を侮辱したため、最後の審判まで死ぬ事を許されずに世界をさまよう男。
その哀れな男の姿が目の前の高槻に重なる。
「……でも、にわかには信じられないわ」
A 「俺と性交すれば分かるようになるぞぉ!」
B 「そんな事より、どちらにしろお前としては草壁を放置しておくのはまずいんじゃないかぁ?」
C そのとき目の前の高槻の首が突然刎ね飛んた……これが『神』の介入!?
B
B
>>672の時間待ち自体無効だと思うんだがどうよ?
A YES >654のDから続きを開始。
B NO >691のBから続きを開始。
A
A
A
A
んじゃ、続き書く。
──────────────────────────
「お前達! そこで何をしている?!」
運悪く、通りすがりの警官に見つかってしまいました。
考えてみたら通り魔事件が解決したといっても昨日の今日。
しかも柳川さんが担当を外されたからと言っても、月宮あゆ殺人事件は未解決です。
治安維持のために警察官が周辺を警戒していてもおかしくありません。
「困ったわね…口を封じてしまおうかしら」
「それは止めて下さい…」
周囲にはついさっき須磨寺さんに殺された二人が転がっています。
しかも、須磨寺さんは返り血で血まみれ。言い逃れのしようがありません。
「これは? ちょっと、事情を聞かせてもらうか。 そこの二人は?」
「そこの二人は無関係よ」
「そうか。 しかし、だからと言って事情を聞かない訳にはいかない。 署までご同行願う」
そう言って警官は彼女の手を引こうと近づくが間合いに入った刹那、須磨寺さんは彼に刀を振るいます。
私が声を上げるまもなく、その刃が彼の首を切り落とさんと迫りますが、彼は大きく後ろに飛び退き間合いを広げます。
彼のその両手にはいつのまにか二本の実用性を重視した厚手の小太刀が握られていました。
深々と被っていてよく見えなかった彼の顔はまさに悪人顔そのものでした。
「よく分かったな、シスター」
須磨寺さんの判断が遅かったらやられていたのは彼女…と言うことなのでしょうか?
「…血の匂いのする警官なんて聞いた事無いから。 後、人斬り特有の腐臭も。
知っていた? 死体の臭いって湯浴みをした程度じゃ抜けないの」
須磨寺さんは臭いから敵と判断したのでしょう。
しかし、考えてみれば警察上層部に圧力を掛けるほどの敵が、警察内部にスパイの類を潜入させてない筈がありません。
「あなたが本命…なのかしら?」
「足元に転がっているグズが外れだとしたら…そうなるのかもな。 まぁ、当たりが一つとは限らないがな」
「まさか…」
つまり、柳川さんたちも同じように襲撃を受けていると言う事なのでしょうか?
この人先ほどの身のこなしといい、今まで襲い掛かってきたチンピラとは訳が違う様です。
「折角、当たりを引いたのだ。もっと喜んでもらわないと、わざわざ出向いた意味が無いな。
それとも名前が聞きたいのか? 別に知られて困るものでもないしな。
俺の名は岸田洋一だ。 さぁ、お嬢さん方、宴の始まりだ!!」
地を這う蛇のような動きで須磨寺さんにせまる岸田。 私たちはどうなるのでしょうか?
A 「私の前に出ないで、身を隠していて」 須磨寺さんは隠れているように私たちに指示を出しました
B 「全速力で教会まで逃げて。そうしたら、地下室に逃げ込んで」須磨寺さんは逃げるように私たちに指示を出しました
C 襲われた柳川視点へ
いったんc
A
C
「えぇーーーい!!」
迫り来る雑魚を観鈴が一刀の元に切り捨てる。
「……詰まらんな。もっと美しい命の炎を見せるヤツはいないのか?」
「柳川さん、わたし達の目的は殲滅じゃなくて追跡」
「お前に言われなくても分かってる」
雪緒が意図的に討ち漏らした敵を追っていた二人だったが、
途中で思わぬ足止めに遭った。武装した男たちが二人の行く手を阻むように襲ってきたからだ。
「だが思わぬ足止めを食ったな。……こちらの行動は読まれている、ということか」
「あのね柳川さん、今から『俺、今度結婚するんだ』って写真を眺めてから私に言って欲しいな」
「……お前は俺に死んで欲しいのか? そんな死亡フラグ誰が立てるか、というか俺は既婚者だ」
観鈴が場を和ませようとジョークを言うが、それが逆に寒い。
二人とも気づいていた。足止めは今までの連中だけではないことに。
いや、寧ろこれから来る敵の方が本命。二人の勘がそう告げていた。
ゆらりと闇から現れる影。敵は……一人。
だが柳川にも観鈴にも油断はない。ここで油断しているような人間なら生き残ってはいない。
敵が刀を構える。その時、丁度雲の切れ目から月が覗いた。
月明かりがその影を照らし、正体を露にする。
その影の正体は……
A トウカ
B 川澄舞
C 光岡悟
D アルサル
C
「良い月だな、御二方。そう、果たし合うには絶好の舞台…」
現れたのは五尺にも及ぶ抜き身の長刀を携える白髪の青年剣士であった。
その身からは殺気は感じられず、月と町並みの風景と一体と思えるほどの自然体であった。
「貴様──」
その姿を見て、二人は剣を構える。
「俺の名は島神県士族、 光岡悟。 お立会い、お相手願えるかな?」
月を背にした男は、彼らからの殺気を涼風の様に受け流している。
「お前は…この一連の事件の関係者か?」
探りを入れる為に柳川は男に問いかける。無論、優季の事は隠しておいて。
「さぁな。 雇い主は柳川と言う眼鏡の剣士と戦えと命じただけ。
『そこにお前の望む戦いがある』、と言われれば行かぬ道理はなかろう。
それが俺の望みなのだからな」
つまり、特に事情や情報を知らない、目的からすると相手にするに値しない相手となる。
だが、この男から発される気配は幕末の京都でもそうはお目にかけなかった一級の武芸者のもの。
戦いとなればまず、死闘が待ち受けているだろう。
(こちらもこの様な大物に襲われたとなると、雪緒たちの方も…マズイな)
「観鈴、いけるか?」
「3人までは距離的には数十秒だよ。 何もなければね」
観鈴は最後の言葉に含みを込めて漏らす。
こうやって新たな襲撃者が現れたとなれば、雪緒たちを助ける為に観鈴が駆けて行っても足止めを喰う可能性は高いと言う事だろう。
「簡単に行くとは思えんが…頼むぞ」
「うん、分かった。 そっちも死なないでね。柳川さんが死んだら多分、初音ちゃん、私を恨むだろうから」
「お前に命の心配をされるとはな…世も末だな」
柳川たちに背を向けると、観鈴は一目散に優季たちの下へ駆け出した。
あっと言う間に闇夜に消えると、柳川は光岡の方へと構える。
「さて、心配事のなくなったようだな。 存分に果たしあおうか、柳川とやら。
京の街を震撼させたと言うその剣技、しかと見せてもらおうか──」
互いの白刃が煌き、夜の街を僅かに彩る。月光の下で二人の剣士は戦いの口火を切った
A 先手を取ったのは光岡
B 先手を取ったのは柳川
C 双方、隙を見出す為ににらみ合い
B
大地が鳴動した。
「珂ァッ!!」
相手が誰であろうと、死合うとなれば戸惑いも躊躇もしない。
考えるより前に柳川の中に燻る壬生の狼の血がその体を突き動かした。
裂帛の気合を伴った叫びと踏み込みと共に、柳川の体重と膂力を渾て叩き込んだ片手一本突きが光岡へと襲い掛かった。
「ふむ、心地よい」
しかしそれを受ける光岡はス……と流水のように一歩その場を離れた。
一見、ただ動いただけ。だが気配の刹那、その間隙を突くかの如き半歩は致命を遮るには十分だった。
ピッ―――――
一筋の、しかし分厚い紅の線。
光岡の頬に刻まれたが、それだけだった。
「新選組はひとつの技を徹底的に昇華し使いこなしたという。なるほどお前のそれは平突きの発展形か」
「そうだ!」
さらにそのまま。柳川は腕が伸びきった状態からの横薙ぎを繰り出すが、寸前光岡の刀の横腹で受け止められた。
「重量は充分。膂力も上々。なるほど、いい剣圧だ」
まるで値踏みするような光岡の目線。不快に感じた柳川は前蹴りを繰り出し、その反発を利用し間合いを取った。
「……気に食わんな、すべてを見通した、いや見通したつもりのようなその目。お前は何者だ?」
「言っただろう? 俺は光岡悟。今の俺にはそれが総てだ……さて」
チャキリと、刀を鳴らして光岡。上段に構えをとる。
「次はこちらの番だな……お前のそれに比べるとやや見劣りするが、それでも俺なりに自慢の剣だ。」
風が凪ぐ。気温が下がる。そして二人の間には死線が舞い降りる。
「四百年。江戸城を死守し我が剣、受けてみるがいい…………
いくぞ。影花藤幻流、弐の構え――――」
そして光岡の姿が…………
「!」
消えた。
「参っちゃうよね」
場面は移って観鈴。予想通りというべきかなんというべきか。
草壁らの下へ向かう途中。眼前、道の真ん中に立ちはだかる人影を彼女はみつけた。
「文明開化華やかな明治の世だっていうのに、どーして今更京都の夜みたいな戦いしなきゃいけないのかなぁ。
ねえあなたもそうは思わない?」
構えは整えながら、しかし口調は軽く目の前の人影に話しかける。
その人影は…………
A 「……悪く思うな」光岡と同じような剣を使う長身の男。
B 「ほほっ、悪いがこれが私達の生きる世界だ」頭から黒頭巾を被った目つきの鋭い女。
C 「いいからさっさと死ねよテメェは」問答無用で拳銃をぶっ放す猫背の中年。
C
A
暗がりの中現れたのは猫背の中年。手にはしっかり拳銃が握られている。
「『銃は剣よりも強し』ンッン〜名言だなこれは」
「あ? あ〜何かな君は」
「御堂。俺の名前だぜ……。
あんたらを始末して来いと頼まれたわけさ」
「別にあなたの自己紹介は必要ないよ。この事件の黒幕を知ってるのかな?」
「けけけ……」
「……何がおかしいのかな?」
「ケケ、観鈴のヤツは直情馬鹿だから俺なら簡単に倒せるってな。
そのとおりなんで思わず笑っちまったぜ。
俺の武器は『ハジキ』だ! ハジキに剣では勝てねえ!」
「なに? オハジキだ〜〜〜〜? にはははははははは〜〜」
「イヒヒヒヒ〜〜〜! てめーぶっ殺す!」
次の瞬間観鈴は塀の後ろに身を隠す。
そのコンマ一秒後には観鈴のいた場所に、正確に銃弾が撃ち込まれていた。
「が、がお……近づけない」
一応御堂の言うことは的を射ていた。
確かに距離がある中では刀は銃より圧倒的に不利である。
観鈴の打った手は……
A 避け続けて相手の弾切れを待つ
B 何とかスキをついて一撃を見舞う
C 神尾家には伝統的な戦いの発想法があってな……
D 追い詰められた観鈴は御堂の銃弾を某映画のように上半身を後ろに逸らして回避に成功した
A
結局救う神はなし、最早葉鍵板でネタスレが生きていける時代は終わったと。
次はどうします?復活しかけてる行政書士スレのタマでも取りにいきやすか?
観鈴は冷静だった。
正面から向かっても銃相手じゃ分が悪い。
銃弾を刀で切り払うことが出来たら凄くカッコイイんだろうけど、
生憎とそんな超人的なことは出来そうもなかった。
出来ることと言えば……
「……そらっ、チョロチョロ逃げるんじゃねぇっ!!」
物陰などを利用して、銃撃から逃げるのみである。
「が、がおっ。だって、拳銃の弾に当たったら痛いし……」
「だったら死ねばいいだろうがっ!」
軽口を叩きながら観鈴は銃弾を避ける。
もちろん正確には避けているのではなく、弾道を予想して着弾点から逃げているだけだが。
距離が十分にあるのでそれで何とかなっているが、これでは攻められない。
それでも観鈴は反撃を考えていないわけではなかった。
御堂が撃った回数は頭に入れ、タイミングを計る。
そして、全て撃ち尽した瞬間に跳躍。
相手に弾をこめ直す暇を与えない。速攻で……斬る。
御堂は……
A 「こんな物使うまでもない」と銃を投げ捨て、格闘術で応戦に入った
B 実は御堂の銃は何十発撃っても弾が切れないMUSASHI仕様の銃だった。そんなのアリですか!?
C 優季と雪緒の運命的コンビの様子が気になる
D 柳川VS光岡の決着はどうなった?
いいBだな、少し選ぶぞ
B
MUSASHI仕様??
分けわからん?
>>719 MUSASHI -GUN道でぐくると絶望できるよ。
内容は冒険活劇だが、見た者にとっては悲劇。つーか喜劇。
>>719 現在放映中のアニメでそれなりに話題になったから調べる手段は豊富にあるし
意味もすぐ分かるからまずはぐぐってみるといい
【MUSASHI -GUN道】でググッて見たものの出てこねぇな・・・
要はネタ?それも失笑モンの?
パン、パンと乾いた音が響き、観鈴の頬が薄く切れる。
銃弾を掠めたその頬から、一筋赤い雫が流れ落ちた。
「え!? うそ、ちゃんと全部撃つまで数えてたのに……!!」
「生憎だったな。俺の銃は『あの』ベナウィ……じゃなくてミヤモトムサシが使っていた拳銃だ。
この拳銃に弾切れなんて言葉は有りえねえぜ? お望みとあればおんみょう弾も撃ってやらあ」
「が、がお……そんなのアリなの?」
「けーっけっけ! 種割れよりマシだぜ!!」
御堂は高笑いをし、勝ち誇りながら引き金を引く。
その瞬間、観鈴は反射的に月に刀を掲げた。
月の光を反射して鈍く光るその刀は、御堂の顔を容赦なく照らす。
何故後ろに月が丁度良く出ているかは気にしてはいけない。
「うおっ、まぶしっ!」
一瞬出来たスキを利用して、今度は本当に御堂の銃弾を避ける。
「にはは、思ったより大したことない銃だね」
「チッ……喋りすぎは命に関わるぞ」
「この先どうなるか、みすずちんも少し興味が出てきたよ!」
観鈴が刀を振るう。勿論赤く光ってたりはしないが。
御堂は一度距離を取り、更に銃弾を乱射した。
だが今度は観鈴も刀で受け止める。
「なんだ、思ってたより弾丸のスピード遅いや」
「くそーっ! MUSASHI仕様が拙かったか!」
拙いとかそれ以前の気もするがツッコんだら負けである。
というか弾丸の動きが余裕で目視できるレベルなのが終わっている。
御堂の武器選択失敗で沸いたチャンス。観鈴にも勝機が見えていた。
A ここは一気に畳み掛ける
B 慎重に相手の出方を伺う
C 主役は一体何をやってるんだ?
C
>>725 あ〜、あのAAの元ネタか〜初めて知った・・・BS無いし
正直元ネタ知らんまま、よくわからんままフ〜ンと流してたな
ヤシガニ以下の出来きという時点で存在自体が失笑モンのネタだな
>>721 ぐぐらないとわからんネタってのは、味付け程度にはいいだろうけど、
主流の流れに使うにはいかがなもんかと思うけどな。
スフィーの七鍵守護神や久瀬のFAアヴカムゥと同列に考えてくれい
>>728 あくまで個人的意見だが、「わかりづらい小ネタ」は「出てきたそのレス」で終わる限りは好き放題やっていいと思うんよ。
「次の選択肢に影響するネタ」は葉鍵ネタに限るべきだろう。まあ単なる個人的意見ではあるが。
長続きする感じじゃないし別にいいんでないの?
草壁優季です。
周りの人に守られっぱなしですが、一応これでも主人公です。
私への襲撃者をわざと逃して、一連の通り魔事件の黒幕を探る作戦。
ですが、どうやら情報は筒抜けで待ち伏せに遭ったようです。
警察官に見せかけて突如襲いかかってきた、岸田洋一さん。
さっきまでのチンピラさん達とは、実力は桁違いのようです。
しかも、どうやら柳川さん、観鈴さんも敵の攻撃を受けている様子。
当分救援は見込めません、特に私達の中で戦えるのは雪緒さんだけです。
何とかしなければいけません、いけないのですが――
A 雪緒さんと岸田さんの戦闘は続いています、今のところ五分と五分です。
B 雪緒さんと岸田さんの戦闘は続いていますが、○○さんの方が押しています(雪緒か岸田を指定)
C あろう事か私は捕らえられ――お二人の目の前で岸田さんに辱めを受けています……
D あろう事か雪緒さんが捕らえられ――私達の目の前で岸田さんに辱めを受けています……
C
あろう事か私は捕らえられ――お二人の目の前で岸田さんに辱めを受けています。
雪緒さんが私から僅かに離れた隙を、彼は見逃さず、一直線に私へと向かい、あっという間に捕まってしまいました。
そして、服を破かれ、前戯もなくいきなり挿入されました。まるで焼けた鉄棒を突っ込まれたような感じです。
「フハハ! さぁ、腰を振れ、雌豚が。 精々俺を気持ちよくさせろ」
私は彼の声を無視して、その腰の動きに抵抗するような動きをとります。
「ヘタ…クソ…です。 貴明さん…と…比べるにも…」
「はっ、いいぞ。 そうやって気丈に歯向かってくるやつをの心をヘシ折るのは男だろうが女だろうが、極上の娯楽だ」
私の抵抗は、岸田さんのかえってやる気を増してしまいました。行為に及んでいるとは言え、
岸田さんは周囲の警戒を怠りません。片手には武器を持ったままです。このままでは犯されて、惨殺されるのは目に見えています。
私が…足手まといだったばっかりに…
『それはそうでしょう。 草壁優季は戦いに向かない。 だからこれは当然の結果なんです』
岸田に貫かれ、痛みで意識が朦朧とする中、聞き覚えのある声が頭の中に響いてきました。
(リ…リアンノン…さん?)
その声が聞こえた途端、まるで時間が止まったような感覚になりました。
『戦いとなれば、草壁さんの出る幕はありません。 こうしたただ蹂躙されるのがオチです』
(なら…どうすれば…)
確かに私は足手まといです。こうしてあっさり捕まって、雪緒さんもるーこさんも手が出せなくなっています。
『戦うからいけないんです。 草壁優季に出来ること。それは──』
A 時間を跳躍することだけです
B 時間を操ることだけです
C 過去に干渉する事だけです
とりあえずB
『時間を操ることだけです』
止まった時間に手を伸ばす。
草壁は時空の力をつかんだ感触を感じた。
「これが? ……」
『そうですあなたの力です。
闘うことはできないけれど、何よりも強い力』
この力は――
『時間を操る力です。その力を使えば
A 過去の出来事を無かった事に出来ます』
B 時間の流れる速さを変える事が出来ます
C 未来を見る事が出来るようになります』
B
『時間の流れる速さを変える事が出来ます』
この言葉を聞いた瞬間、辺りの景色――真正面で喜々として私を蹂躙する岸田の動きが変貌ました。
僅かに動いてはいますが、全てが”遅く”なりました。それも止まってるかと思うほどに。
「これが…」
『そう、時の流れを変えた…という事です。
この場合は周り全てに対し草壁さんの速度を向上させた、という形になります』
「なるほど、クロック○ップみたいなものですか」
『?』
「いや、何でもありません」
脱出の手段はできました。この能力もいつまで持つか分かりませんし、
使えなくなったときにまた岸田の傍にいてしまってはチャンスを逃すことになります。
言われたとおり戦闘手段の無い人間にはこの能力の活用には限界があるでしょう。
…この速度差で頭をぶっ叩けばそれなりに痛そうではありますが。
とにかく陵辱は勘弁です。
A 戦術の基本。とっとと逃げる
B 逃げ際に岸田の玉袋に一発蹴りをぶち込んでおく
C ――と。私の頭上を雪緒さんの手が通過していきます。ここで追い付いたのでしょう。
D …岸田が突然離れて逃げる動作を始めました
B
D
エンターティナーは引き際もわきまえるのだ
時の流れが加速した私は、急いで岸田さんの戒めから逃れようとします。
「んっ……くぅっ……」
私を捕らえる腕を振りほどき、密着させられた身体から離れました。
深々と突き込まれた肉塊が抜けると、私の大切な場所から白濁の子種汁が零れ落ちます。
(こんな――こんな男の人に――私の体が汚された――)
岸田さんに注ぎ込まれた陵辱の証、粘質の液体がドロリと太股を伝います。
その感覚に私に悲しみと怒りが込み上げてきました。
(悔しい――許せない――)
本当ならすぐに雪緒さんの元に駆け込めば良いのでしょう、ですが私はそれだけでは納得がいきません。
「喰らいなさいっ! このっ!」
逃げ際、私は自分の貞操を蹂躙した肉棒、その根本目掛けて蹴りを放ちました。
生まれて初めて他人に振るう暴力、全く非力な私ですがせめてもの抵抗です。
A 「ゴキーン」という効果音の元、岸田さんは股間を押さえてうずくまりました
B ガシッと、岸田さんが普通の早さで私の蹴りを掴みました
C ツルリと、私は足を滑らして転んでしまいました
A
おいおい、岸田さんのちんこは女性との蹴りごときでダメージが与えられるほどやわじゃないぞw
ゴキーン
何だか物凄くベタな効果音と共に私の蹴りは岸田さんの股間に直撃しました。
もしかしたらこの人はレイプ慣れしていてこの手の攻撃への対応はできたのかもしれません。
しかし現在の私は加速状態。
非力な蹴りでも向こうから見ればとんでもない速度で放たれた蹴りになっている筈です。
急所に当たれば悶絶するほかありません。
ぐにゃりと岸田さんの下卑た顔が更に歪んでいきます。
この後悲鳴か悶絶して黙り込むかのどちらかになるでしょう。
ここまで確認して、後は全力で逃げます!
(加速解除…!)
景色が元の速度に戻ります。
上手く須磨寺さんとるーこさんの元に戻る事ができました。
二人が呆然と私を見ています…当然といえば当然ですが。
「〜〜〜〜〜〜〜ぶえlcfねうぃ。cんw4う!!!」
同時に岸田さんの言葉にならない悲鳴が上がります。
…多分潰れてはいないでしょう。素人の靴の上からの蹴りなので保障はできかねますが。
A 須磨寺さんが好奇心満々な喜々とした表情で「…これはどうした事でしょうか?」と聞いてきました。
B 「あら、あなた方はこの前の…」柳川さんの奥さんがその場に現れました。
C さて他の二人はどうしたんでしょうか。(観鈴or柳川選択)
Cで柳川
能力継続中なら効果はあると思われ。ものすごいスピードで蹴りあげる訳だし
岸田さん、イクの、早すぎ
だがそれでいい
正直岸田は勘弁して
観鈴がGUN道、優季がサプライズパーティーを相手にしているその時、
柳川は……
「……チッ、思ったよりやる」
「それはこちらの台詞だ。だがそうでなくては面白くない」
一人だけシリアスバトルを展開していた!
観鈴がギャグに走り、優季もトンデモネタに入門した以上、
もはやシリアスな剣劇はこの二人にしか期待できない。
「もう一度聞く。貴様らの黒幕は誰だ? 何故通り魔殺人など企てた?」
「クックック……それは俺を倒してから言え」
光岡が跳んだ。
柳川が一歩後ろに退き、光岡の繰り出す剣戟を受ける。
正面から打ち下ろされた光岡の剣を、自分の剣で受け止め、
そのまま鍔迫り合いの体勢に持って行ったかと思えば即座に相手を蹴って今度はこちらが突きに入る。
光岡がそれを外したかと思えばそのまま横に薙いで首を狙う。
息もつかせぬ連続技であったが、光岡もそのことごとくを刀で受け、退くことで凌いでいた。
「……流石は元新選組副長助勤といったところか? 武者震いが止まらん」
「お前は剣ではなく口で戦うつもりなのか?」
「言うじゃないか。なら、これはどうか……な!」
光岡の刀が柳川を襲う。
流れるように袈裟、切り上げ、打ち下ろしと連続で攻撃を仕掛ける。
この勝負、柳川がやや不利であった。
光岡の正宗……いやいや長い刀は柳川の刀と間合いが比較にならない。
まるで刀ではなく、槍を相手にしているような感覚にさえなりそうである。
そしてあの長い刀を軽々と振り回せる腕力、それもまた脅威であった。
自分の間合いで戦わせなくてはいけないのだが、光岡も中々それを許してはくれない。
(なら、かくなる上は……)
柳川が刀を構えなおす。
正眼より右上に腕を向けた、突きの後に首を狙うことの出来る構え方を。
「勝負を賭ける気か?」
「俺も貴様との戦いに心踊らないわけではないが、生憎今は忙しいんでな。
悪いが……一撃で決めさせてもらう」
柳川が怒号を上げて突進する。
その気迫に光岡はやや気圧された。本当に次の一撃で勝負を決めるつもりだ。ならば……。
光岡も刀を正眼に構え、迎撃の態勢を整える。
間合いの上では光岡のほうが圧倒的に有利。
柳川の刀が三尺にも満たないのに対し、光岡の刀は五尺に届く。
正面からのぶつかり合いでは勝負など目に見えていた。
だが、それでも柳川は退くことはなかった。
「行くぞっっ!!」
「……させんっっ!!」
光岡の刀が柳川の攻撃よりも先に、柳川を捉える。
柳川はそれを……
A 刀で払って次の一撃にすべてを賭けた
B 跳んでかわした!?
C 右腕を犠牲にして攻撃を封じた
A
光岡の刃が柳川の心臓に向かう。
柳川は腕を引いて剣線を下げ、剣の腹で光岡の剣を払う。
これは計算してやったことではなかった。柳川は相打ち覚悟で攻撃に臨んだのだ。
だが、光岡は突きで迎撃してきた。
突きならば、自分達の最も得意とする突きならば返し方も外し方もよく知っている。
だから咄嗟の判断で、柳川は光岡の突きを払ったのだ。
やっと生まれた絶好のチャンス。光岡の間合いの内に入り、やっと自分の間合いまで近づいた。
そのチャンスを逃す柳川では……ない。
「はあああっっっ!!!」
「チィィッッ!!」
お互いの刀が、お互いの体を貫く。
そして……倒れたのは、光岡だった。
光岡の刀は間合いの上では圧倒的に有利だった。
だが、それも一度間合いの中に入られてしまうと話は変わってくる。
その刀の長さゆえに、小回りの効いた行動は取れない。
それに初動も柳川と比べてどうしても遅くなってしまう。それが勝敗を分けたのだ。
咄嗟に切り上げに入った光岡の刀だが、柳川の脇腹に浅く入っただけで致命には至らなかった。
柳川が倒れた光岡から刀を抜く。
「急所は外してある。死ぬことはないだろう」
「……何故生かした?」
「貴様には黒幕の正体を吐いてもらわねばならん。
それに、貴様はただ俺との戦いを求めただけで悪ではない。悪でないものを殺す理由などない」
「流石だな……俺の完敗だ」
光岡が満足げにふっと笑った。
途端柳川の体に激痛が走り、思わず片膝をつく。
戦えないと言うほどではないだろうが、それほど浅い傷ではない。
自分の腕が落ちたのか、それとも光岡がそれほどの強者だったのか。……おそらくは後者であろう。
「……さあ、言え。貴様は誰の差し金で動いている? 何の為に罪のない女の命を狙うんだ?
貴様の死合に付き合ったんだ、今度はこちらの質問に答えてくれてもいいだろう? さもなければ……少し手荒になるがな」
「理由は俺も知らん。娘を殺す企てに参加もしていなければ、詳しく知らされてもいないからな。
そして、俺の雇い主についてだが……」
光岡が口を開く。
次に出た言葉は……
A お前も名前ぐらいは知っているだろう。政府高官の……(人物指定)
B お前も良く知っている人間だ。それ以上はお前で調べるんだな
C 悪いが、お前に話す事は出来ない
D ぐっ!! ……何か言う前に、光岡が倒れた。口封じ……!?
Bで
A 久瀬
「お前も良く知っている人間だ。それ以上はお前で調べるんだな」
「馬鹿か貴様。俺がそのような曖昧な答えを許すと思っているのか……?」
と、柳川がそう言いかけたときだ。
光岡が突如脇差を抜いて起き上がる。
抵抗するつもりか。なら止むを得ない。柳川はそう考え、刀を光岡の方に向け……
光岡は、自分自身の腹に脇差を突き刺した。
「……どういうつもりだ?」
「グフッ……俺も武士の誇りは忘れていない。
影花藤幻流に、敗北など許されんのだ……ましてやお前たちのような寄せ集めの新選組などにはな」
「武士の時代は終わったのだ。死に急ぐな。
それぐらいの傷ならまだ助かる、止血して俺の知人の医者に診せれば……」
光岡が柳川の言葉を遮り、静かに首を振った。
必要ない。そう言いたげに、柳川のことを見ていた。
「柳川、お前のように時代の波に乗れるものなど少ない。
もはや武士の誇りだけでは食って行けぬ時代になったことなど、とうの昔に分かっていた……」
「…………」
「仲間には慣れぬ商売に手を出して財を失い、元町人や農民にすら嘲られ自害した者もいる。
誇りだけは捨てなかった俺だが、政府は俺達から最後の誇りである刀すら捨てろとまで通達してきた。
もう、この明治には俺のような武士が生きていける場所などない……」
「……そうか」
柳川は何も言わなかった。
たかだか十数年で時代の遺物となったこの男に、かける言葉が見つからなかった。
「元より生を望んだ勝負ではなかった。満足のいく戦いが出来て、散ることが出来ればそれで良かった……」
「俺のような元寄せ集めの集団相手でもか?」
「まあな。お前は俺が今まで戦ってきた相手の中で、最高の強敵だった……」
光岡は薄く笑ってから、先ほどは失言だった。と非礼を詫びた。
それから光岡が後ろを向く。
割腹しようとしている男が背を向けたのだ。それの示す意味は……柳川もよく分かっている。
手には自分の刀が握られたままだ。
柳川は光岡の意に……
A 応えた
B 反した
A
「……分かった」
柳川はそう言ってから自嘲した。
大して吐かずに逝こうとしている男を見逃すなど、自分らしくもない。
だが光岡の行動の潔さには、合理主義者とも言われている柳川の心にも訴えるものがあった。
同情とはまた違った、共感めいたものがそこにはあったのだ。
皮肉な話である。一昔前は立場は違えど共に将軍守護を目的として奮闘していたはずだ。
それが時代が変わればこの通り、剣を交えることとなってしまう。
柳川が刀を鳴らした。
「句は詠まんのか?」
「……いらんよ。俺は句が苦手でな、要らぬ恥はかきたくない」
「そうか……」
もうこれ以上かける言葉はない。
柳川は大きく刀を振り上げ、そして……
光岡の意思に、応えた
A 落ちながら戦ってる二人の決着は?
B 運命的コンビはどうしてる?
A
闇夜に銃弾が飛ぶ。
その間を縫って駆ける影が一つ。
「にはははは!」
観鈴が御堂に向かって駆ける。
対して御堂は距離を取りつつも銃で応戦していた。
絶対に相手の間合いまで近づけさせてはいけない。奇しくも、柳川と光岡の戦いと同じような状況であった。
「テメェ、化け物か!? 弾を避けるなんて人間じゃねえ!!」
「止してよ。みすずちんは人間だよ。卑怯で弱い……ただの人間だからね」
「……そういう事を言う人間が一番危険だぜ。俺は決して手を休めねえぞ……」
御堂が再び銃弾を撃つ。
だが、そこにもう観鈴の姿はない。
「銃弾が当たらないって言っても、銃弾より早く動けるわけじゃないよ。
予め拳銃の向きから撃たれる場所を予想して、引き金を引かれる前にそこから逃げてるだけ」
「……十分化け物だぜ」
なお、別の場所では『本当に銃弾より早く動いて避けられる』一般人がいるが、
そこは気にしてはいけないところである。
「あなたと戦ったのがわたしでよかったよ。足の遅い柳川さんじゃ絶対こういう戦い方は無理だから。
……逆に、わたしがあの光岡さんって人と戦っても危なかっただろうけどね。
こう見えてもみすずちん、逃げ足だけは自信があるんだよ。それで今まで生き残って来れたんだし」
「謙遜は止せよ。知ってるぜ、一説ではテメェが新選組最強だとか……」
「にはは。そんなわけないそんなわけない。散っていった同志たちのほうが百倍強い」
観鈴が跳ぶ。
御堂が下がるが……背中に突然衝撃を受けた。
振り返ってみると、後ろには壁。
「地の利はこっちにあるよ!」
「チィッッ!!」
御堂の拳銃が火を吹く。
その銃弾は観鈴の肩口を掠め、夜の闇に吸い込まれていった。
次に御堂が見たものは、観鈴の凶刃。
観鈴は跳躍した勢いを利用したまま、一気に御堂を切り裂く。
「つ、つよい! こんな相手とたたかっていたのか!!」
観鈴の斬撃をその身に受け、御堂はそう言って倒れた。
最後までお約束を貫き通した男である。
「早く草壁さんの所へ戻らないと。……もしかしたら、手遅れかもしれないし」
観鈴が不安に駆られながらそう呟く。
実際その草壁さんが岸田相手に奮闘していることは想像できるはずもなかった。
観鈴は三人のいる場所へ走り……
A 岸田の金的を蹴り上げる優季を目撃した
B 「まだだ、まだ勝負はついてねえ!!」と後ろから御堂が立ち上がった
C 「中々やるな。だが御堂は我らの中で一番の小物!!」と合羽を着た女性が観鈴の前に立ち塞がった
A
「〜〜〜〜〜あdりんvぶfざqzヴぁpwdt!!!」
声にならない叫びで岸田さんは悶絶しています。
加速状態で急所に叩き込まれれば非力な私の一撃でも一応効果はあったようです。
「……優季さん?」
「うーき?」
須磨寺さんとるーこさんの二人は何が起こったのかも分からずきょとんとしています。
無理もありません。さっきまで岸田さんに組み伏せられて犯されていた私が
いつの間にか側に戻ってきて、私をレイプしていた岸田さんが悶絶しているのですから。
理解しろという方が無理です。
「……貴様ァ……やってくれたな……」
低く呻きながら岸田さんは立ち上がります。痛々しい表情ですが決定打とまではいかなかったようです。
丸出しの下半身を晒して武器を手に取りこちらを見据えてきます。
煮えたぎるような眼差し。先ほどまで私を貫いていた男根。恐ろしいまでの男根をいからせながら。
そうです。忘れていましたがこの人は須磨寺さんの一瞬の隙をついて私を襲い、瞬く間に犯したほどの手練なのです。
こんな人に、こんな男に……私は……
ふらっ
あれ?どうしたことでしょうか。急に眩暈が。身体のほうも何か金縛りにあったように重くて。
ひょっとするとこれが力を使った…反作用……?
「うーき!うーき!」
しきりにるーこさんが私にゆすり掛けますが駄目です。身体に力が入りません。
視線だけ泳がすと私たちを庇うように岸田さんと対峙する須磨寺さんの姿がありました。
岸田さんにも金的蹴りのダメージはあります。ですが私たち二人の足手まといを抱えているとなると
須磨寺さんも決して楽観はできないはずです。重い空気が張り詰めます。
その均衡を破ったのは――
ザシュ! ズバッ!
「…っ!?ぐぅぅぅぉぉっ!」
吹き出る鮮血とともに岸田さんの腕が飛びます。突如背後から浴びせられた斬撃に咄嗟に反応したようですが
腕ごともってかれます。あまりるーこさんのようなお子様には見せてくない光景です。
「にはは。首を狙ったんだけど、思ったよりいい反応するんだね」
「くっ……ぅぅ……」
身を引き距離をとりながら岸田さんは自分の片腕を切り落とした相手を苦々しく見据えます。
金色の髪を白い布で結ったその姿は――
「観鈴……さん」
「遅くなっちゃってごめんね草壁さん。もっと早くに来れていたら……」
朦朧と呟く私に観鈴さんは答えます。私の姿を見てどこか少し哀しげな表情を浮かべながら。
そして今度は岸田さんの方に向き直り冷徹な顔を見せていいます。
「いけないよね。欲望のままに女の子を襲ったりしちゃ。生きてちゃいけないよね。そういう人」
静かな口調ですが怒りが滲みだしているのがよく分かります。刀の切っ先を片腕の岸田さんに向けます。
「すぐに楽にしては駄目よ観鈴さん。楽にするのは何もかもを吐かせてから、そしてちゃんと報いを」
須磨寺さんもじわりと岸田さんに近づきます。表には出していませんが、内心で怒り心頭なのは分かります。
「うー……むぐっ!?」
私はなんとか腕を動かしてるーこさんの頭を私の胸の中に抱き寄せ、そのまま自分も目を瞑ります。
これから目の前で繰り広げられるであろう光景を見せたくありませんし。見たくもありません。
そして私が目を閉じてからしばらくして――
A 岸田さんの絶叫が延々と響き続けました。
B 「ガフッ!」何者かが観鈴さんたちより先に岸田さんを絶命させました
C 「その男はこちらに引き渡して貰おうか」 そんなことを言って誰かが現れました
C
岸田さん有利になる選択がひとつもないわけだが
敵さんの正体も明らかになってないうちから長々と続いても困るぜ
Cで現れるのが岸田の味方なら岸田に有利になるぞ
話は進まなくなるからgdgdになる危険性が高いがな
「ほ、本当に斬りやがった!!」
「腕の一本で済んでよかったね。それぐらい雪緒さんならくっ付けられるよ、させないししないだろうけど」
「変装を一瞬で見破られて、金的を蹴られて、
性欲しか頭になくて、更に後ろからの不意打ちに引っかかって……見事なまでのザコキャラフラグね。
もう少し登場の仕方と行動に気を配れば、あなたもライバルキャラとして生き残れたかもしれなかったのに」
身も蓋もない発言を須磨寺さんがしていますが、聞かなかったことにしましょう。
「ち、畜生! 悪に人権はねえのか!?」
「ないよ。特撮モノでもヒーローモノでも悪は滅びる、これ常識」
「何か言いたいことはあるかしら?」
「……サプライズパーティー!!」
岸田さんは精一杯の抵抗と言わんばかりにそう叫びました。
……もうちょっと言葉を選びましょうよ。捨て台詞がそれなんてカッコ悪すぎです。
観鈴さんが岸田さんから情報を得るべく近づいた時でした。
「その男はこちらに引き渡して貰おうか」
突如投げかけられた声。
途端辺りに緊張感が漂い、観鈴さんと須磨寺さんが声のしたほうを向きます。
無論、警戒は厳重です。このタイミングで来るのなら……新たな敵、でしょうか。
現れた人は……
A 警察の偉い人と思われる馬面の男性
B 浅葱色をした段だら模様の羽織を纏った仮面の男
C 晴れているのに雨合羽を着込んだ若い女性
B
ザッ
小石をかき分ける音を立てながらその人は現れました。
浅葱色をした段だら模様の羽織に顔の大部分を覆う仮面。
手には鉄製の扇を携えて、その男の人はこちらに語りかけてきます。
「悪いがその男も今は一応、同士なのでね。見殺しにするわけにはいかない」
やっぱりこの人も岸田さんの仲間でした。そしてこの人が身にまとう威圧感。
私のような素人目から見ても只者でないことはわかります。
その人の言葉に観鈴さんたちは――
「……嘘……どうして……」
どうしたことでしょう。固まっていました。信じられないものを見るような目つきで。
仮面の人を見つめながら観鈴さん達は困惑したかのように顔をひくひく震わせます。
そしてぽつりと呟きがもれます。
「局長!」
えっ!?その単語に私も戸惑います。局長。元新撰組の観鈴さんたちが局長と呼ぶ人物といえば。
「そんなはず……そんなはずないよ。だって局長は……」
「……生きて…いらしゃったのですか?」
二人が混乱するのも無理はありません。そこにいるのはかつての上司。それも死んだはずの人なのですから。
私はこの時代の歴史にはあまり詳しくはありませんが聞いた事はあります。
確か新撰組の局長は戊辰戦争の際に新政府軍に捕らえられて処刑されたのだと。
「知らんな。私はただのハクオロ。それ以上でもそれ以下でもない」
そして局長さん。ハクオロさんという名前だそうですが、そのハクオロさんはにべも無く切捨て
囲まれた岸田さんの方へと近づき――
ガキンッ
「随分とご挨拶だな」
「……だ…黙ってよ…この……局長の偽者ぉっ!!」
いつになく激昂した観鈴さんの一撃をハクオロさんは扇で受け止めます。
目にも止まらない高速の斬撃。その一つ一つが鉄扇で軽く受け流されていきます。
観鈴さんの額に汗が滲むのが見てとれます。
「岸田っ!」
そして攻撃をいなしながら岸田さんに声をかけます。即座に反応し猛烈なダッシュで離脱しようとする岸田さん。
それを逃がすまいと須磨寺さんも追いすがりますが。
パンッ パスッ パスッ
「っ!?」
須磨寺さんの行く手を遮るように足元に打ち込まれたのは銃弾でした。弾幕に遮られ追手がゆるみます。
その隙に岸田さんは安全圏へと逃れました。
「ゲーック!前金分は働いとくぜ」
打ち合いを続ける観鈴さんたちの後方、100mぐらいでしょうか。拳銃を構えた中年男性がそんな距離からの
精密射撃で岸田さんの離脱をアシストしたのです。
「さっきの人……っく……」
「余所見をしている場合かな」
カンッ カラカラ
ほんの一瞬でした。観鈴さんの意識が僅かに他にそれた隙に。ハクオロさんの扇は観鈴さんの刀を弾き飛ばして
刀は地面に転がりました。
「さて、これ以上は無意味だ。サラバだ」
岸田さんたちが逃げおせたのを見計らい、ハクオロさんも距離をとり、そのまま立ち去ろうとして
「待って!」
立ち去ろうとするハクオロさんに観鈴さんは声をかけます。
「局長。局長なんでしょ。どうして、こんなこと……」
それはいつもの観鈴さんからはあまり考えられない顔でした。泣き崩れそうに震えた顔。
まるで少女のように。剣を交えて観鈴さんも確信したのでしょう。
あのハクオロさんがまぎれもなく自分達の局長だということに。
「さっきも言ったが知らん。私はとうに過去を捨てた身だ。お前達に答えることなど何もない」
そしてそのままハクオロさんの姿は遠ざかっていきます。謎に包まれた一連の事件の黒幕。
突如、姿を現した死んだはずの局長のハクオロさん。
私たちの二回目のおとり作戦は糸口どころか新たな謎を生み出す結果に終わったのです。
A 遅れてきた柳川さんと合流しました。
B 緊張の糸の切れた私はそのまま倒れ眠ってしまいました。
B
Bでリアンノンにも出番を
イラネ…普通に寝かせてやれ
それからどれぐらい経ったのでしょう。
気づくと私は教会のベッドに寝かされていました。
「目が覚めた?」
「須磨寺さん……」
私が体を起こすと、そこには私を心配げに見つめるるーこさんと須磨寺さんの姿がありました。
「うーきは丸一日寝ていたのだぞ。あまりるーに心配をかけるな」
「す、すいません」
どうやら、あれから緊張の糸が切れた私は、泥のように眠ってしまったらしいです。
この状況で敵を追跡するのも不可能なので、須磨寺さんがここまで運んでくれたのだとか。
……また、迷惑をかけちゃったんでしょうか。
「気がついたようだな」
柳川さんが部屋に入ってきました。
ですが顔色はそれほど良くは見えません。……理由は、分かっています。
「柳川さん……あれは一体何だと思います?」
「局長のことか?」
その言葉に須磨寺さんがビクッと体を震わせました。
私が黙って頷くと、柳川さんは少し沈んだような表情で続けました。
「話は聞いている。にわかには信じがたい話だが、目の前に局長が現れた以上事実として認めねばなるまい。
……光岡の言っていた『俺の良く知った人間』とは、そういう意味だったか」
「私は信じられないわ。局長は……あんなことをする人じゃなかったのに」
「甘いな須磨寺。例え相手が局長だろうが悪は斬る、それが俺たちの信じた正義だったはずだ。
生憎俺は隊士の粛清も幾つかやってきた身でな、今更局長を斬るのに躊躇いはない」
「それは、分かっているけど……」
柳川さんの言葉に、迷ったように須磨寺さんが言いました。
恐ろしいまでの合理主義。本当に冷たい人です、柳川さんは。
……と、以前までの私ならそう思っていたでしょうが、柳川さん……声が上ずってますよ。
「局長と言うのは、それほど大きな人物だったんですか」
「当たり前だ。俺たち新選組の頭だぞ。……実務は副長が殆どやってたんだがな。
だが、局長がいたからこそ俺たちは着いてきた。皆、局長の人柄に惚れ込んでいたんだ」
「私のような平隊士にまで気さくに話してくれる、とても温かい人だった」
それがどうして……? とは聞いても無駄でしょう。
おそらく柳川さんも須磨寺さんも同じ気持ちでしょうから。
「俺たちはまだいい。一番ショックが大きいのは観鈴だろう。
何せ、一番局長と親しかったのだからな……滅多なことをしなければいいが」
柳川さんが観鈴さんを案じました。
観鈴さんは席を外しているみたいですが……やはり、相当ショックだったんでしょう。
「これからどうするのだ、やなうー?」
「注意はすべきだろう。連中は明らかに草壁を標的にしている」
「これまでの無差別な通り魔に比べて、明らかに私達を想定した戦法を取っていたことからもそれは事実」
二人が淡々とただそれだけを告げます。
……私が、一体何をしたと言うんでしょう。
私はどこにでもいるごく普通の高校生ですよ。ただ、ちょっと過去に飛ばされてるだけで。
「それに、局長さんが……」
「…………」
「局長さんは、亡くなったのではないんですか?」
「ああ。確実に死んだはずだ」
「なら、どうして……」
私はそう呟きました。
死んだはずの人が生きているなんて、普通ありえないはずです。
A 「……死なずに生きていた、そういうことではないか?」柳川さんがそれだけ言いました。
B 「影武者、の可能性もあるわね」須磨寺さんが希望的観測を述べました。
C 「一つ、心当たりがある」そう言って柳川さんが私を見ました。……まさか!?
D 「……世の中には、死者を蘇らせる術があると聞くわ」須磨寺さんが苦々しげにそう言いました。
うーん……C
「一つ、心当たりがある」
柳川さんがまるで睨むように、私を見ました。
……まさか。
一瞬頭によぎった仮説を否定するように、私はブンブンと首を振りました。
「二人とも、何か知っているのかしら?」
「……これはあくまでも仮説だ。
須磨寺達の前に現れたと言う局長が紛れもなく本物なのだとしたら、考えられる場合が、一つだけある」
また、柳川さんが私に確認を取るように視線を合わせてきました。
……やむをえません。
私が黙って頷くと、柳川さんも話を続けます。
「もしもあの局長が『生きていた時代から流れてきた』のだとしたら?」
「どういうことかしら?」
「つまりは、あの局長は過去の時代の人間ではないか、そういうことだ。
……もう少し分かりやすく説明してやる。丁度目の前に分かりやすい例もいることだしな」
「そこから先は私が説明します」
柳川さんの言葉を遮って、私が代わりに説明します。
るーこさんが驚いたように私を見ましたが、もう柳川さんにはバレてるんです。
今さら須磨寺さんに話したところで、大して変わりはしません。
私は最初から説明しました。
私が不慮の事故でこの時代に流れてきてしまったこと、そして元の時代に帰る方法を模索していること。
最初は須磨寺さんも怪訝な顔をしていましたが、最後には黙って頷いてくれました。
「もしも、局長が私の前に現れていなければ、私は柳川さん達に医者を紹介するところよ」
「医者はお前だろ」
「私は今は医者と言うよりも敬虔なシスターだから」
「……俺は最近耳が遠くなったようだ」
この時須磨寺さんが意味ありげな笑みを浮かべましたが私は見ていません。何も見ていません。
「つまりはあの局長は過去からこの時代に来たということなの?」
「まだそうと決まったわけではない。一つの可能性であるだけだ。
ただ我々の精神的動揺を誘うために局長を騙っただけ、という場合もあり得る」
柳川さんは冷静でした。
確かに可能性としてはあまりにも突飛過ぎます。
まだ影武者を用意されたとか、私達の見間違いだったとか、そういうケースのほうが考えられるでしょう。
ですけれど、この事件は私が深く関係しているということだから……だから、そういう連想に至ったのでしょうか。
私のようなただの小娘を狙う理由なんて、それ以外には考えられないですから。
「何にせよ、これで俺は尚更後に退けなくなった。
相手が局長ならば俺たちの手で粛清せねばならんし、偽物だとしても局長を騙る不逞の輩を生かしておくわけにはいかん」
柳川さんから怒りの炎が燃えているのが分かります。
やはり局長と言うのはそれほど、柳川さんたちにとって大切な人だったんでしょう。
……出来ることなら、普通にお会いしたかったですね。
「さて、これからどうするかだが……」
柳川さんがそう呟きます。
既に部下に新選組の羽織を身に纏った怪しい男がいないか探らせているようですが、
上の人たちからの目が厳しく、中々思うようにいかないのが現状と言うことらしいです。
私は……
A リアンノンという人について訊ねてみる
B ふとしたきっかけで目覚めた『時間を操る術』について打ち明ける
C 局長さんについてもっとよく考える
D というか、お腹が空きました
A
「リアンノン……という人を、知っていますか?」
「!!」
私がリアンノンさんの名前を出したら、
見る見るうちに柳川さんと須磨寺さんの顔が驚愕に染まりました。
「どこでその名を知った? いや……未来ではリアンノンはそれほど有名だと考えるべきか?」
「いえ、そうではないんです。ただ……」
私は一から語りました。
最初にリアンノンさんと話したのは銃弾をこの胸に受けた後。
それから未来へ連れて行って欲しいと頼まれたり、
絶体絶命のピンチに唐突に声が聞こえて、それのおかげで窮地を脱したことなど全てを。
「そう。あの人は未来へ行きたがってるの……なんとなく、らしいわね」
「その、リアンノンさんというのはどんな人なんです?」
「元預言者よ。昔は百発百中の腕で、大名すらお忍びで彼女に未来を訊きに来るほどだったんだけど、
今じゃ明日の天気を聞くのにも下駄に聞いた方がマシってぐらいに当たらなくなっちゃった人。
確かに未来を見て来たあの人なら、その未来に憧れるのも頷けるわ」
そんな凄い人だったんですか。
いえ、念話ができる辺り只者じゃないとは思ってましたけど。
「リアンノンさんが黒幕というのは、あり得る話でしょうか?」
「少し疑問だな。無差別に女を狙ったのはお前を特定するまでに至らなかったという解釈も出来るが、
話を聞く限りそれなら女を殺す理由が何処にも見当たらん」
「わざと草壁さんを窮地に追いやって、それで力を目覚めさせようとしたというのは?」
「だが無関係の女を殺すような奴ではない。それに局長についてはどうなる?」
リアンノンさんが今回の件の黒幕なのか、
それはまだ今の状態では決定できそうにもありませんでした。
「私……リアンノンさんと、直接会おうと思います」
「……本気か?」
「ええ。リアンノンさんに私を殺す意思なんてなさそうですし、
何より事件の真相を知っていそうな、そんな気がするんです」
「そうか……」
私の言葉を聞くと、柳川さんは何も言わずに頷いてくれました。
リアンノンさんは、確実に何か知っています。
もしかしたら……私が現代へ帰る鍵となってくれるかもしれませんし。
「うーき。そのうーとどうやって接触を図るつもりだ?」
「……考えてませんでした。というか何処にいるか知らないですし」
ずるっとそこで柳川さんがコケそうになりましたが、見なかったことにしましょう。
A 「俺が会えるように計らってやろう」と、柳川さんが助け舟を出してくれました
B 「お兄さんがここの教会にいつもお祈りに来てくれるから、頼んでみるわ」と須磨寺さんがフォローしてくれました
C 「話は全て聞かせてもらったよ!」と観鈴さんがガラリと扉を開けて入ってきました。何するつもりなんでしょう?
A
「……仕方ない。俺が会えるように計らってやろう」
「すいません、お願いします……」
結局、そこら辺のことは柳川さんに頼ることになりました。
何だかんだいって、柳川さんって結構世話好きですよね。本当に感謝してます。
柳川さんの談では遅くても明日には会えるとの事らしいですけど。
「……それで、観鈴さんの姿が見えないようですけど?」
「ああ。やはり相当ショックだったらしくてな……落ち込んでるよ」
やはり、まだ立ち直っていないんですね。
あの時の観鈴さんの取り乱しぶりは異常なほどでした。
後にまで尾を引かなければいいんですけど。
「まったくあの阿呆が。気持ちの切り替えも出来んのか」
「そういうことを言うものじゃないわ。つらい時に塞ぎ込むのは人として当然の防衛行動よ」
そう須磨寺さんが医者として発言しますけど、やはり少し元気付けてあげるべきでしょう。
さて、誰が観鈴さんのことを慰めればいいでしょうか……
A もちろん傷ついた仲間を救う役は主人公の私しかいないです
B 子どもの純真さが心を打つかも。るーこさんが適任
C 一番付き合い長いんでしょう? 柳川さんがいいですね
D 須磨寺さん。こういうときにこそ終末論の出番です
E いっそ全員で行って騒いで勢いで押し切っちゃいましょう
たまにはA
E
「私、ちょっと行ってきます」
「そう、お願い。私は柳川さんがついていかないよう引き止めておくから」
「行くわけないだろう。草壁が行くのは別に止めやしないが」
「うーき、優しくしてやれ」
るーこさんの声援に背を押されて、部屋を出ます。
そんなに広い教会というわけでもありません。
観鈴さんはすぐに見つかるとおもったのですが、影も形もありません。
「どこにいっちゃたんでしょう……」
あの観鈴さんがあれほど取り乱したり、姿を消すくらいなのですから
きっと局長という人と観鈴さんには強い絆があったんでしょう。
何もない私達に親切にしてくれた観鈴さん。こんな時くらいは私が
少しでも癒してあげるお手伝いができればいいんですが。
あっ、音が聞こえました。こっちかな?
A 剣の型をひたすら繰り返す観鈴さんがいました。
B 膝をかかえてちぢこまる観鈴さんがいました。
C 「局長、局長ぉ……」 自慰をしてました。
A
教会の庭で一人、剣を振っている観鈴さんがそこにいました。
動きは流れる水のように。静かですが毅然とした形で、
まるで何かの舞踊のように動きを重ねています。
おそらく稽古の一種なのだと思いますが、綺麗だとも思えるほどでした。
しばらく声をかけることも出来ずに見入っていた私でしたけれど、
私が声をかけるよりも先に観鈴さんが私に気づいたようでした。
「……草壁さん、そんなところでどうしたの?」
「あ、いえ! ただちょっと……綺麗だなって思って」
「にはは、ありがと」
「稽古ですか?」
「うん。これはね、形って言うの。
……実戦的じゃないから、わたし達はあまりやらなかったんだけどね。気持ちを落ち着けるのにはいいかなって思って」
さほど落ち込んでいるようには見えないですね。心配でしたけれど、これなら安心でしょうか。
「あれって、やっぱり本物の局長なんだよね?」
「……そう思いますか?」
「うん。なんとなくね」
観鈴さんが気持ちを振り払うかのように刀を振りました。
「柳川さんは何て言ってた?」
「……たとえ相手が局長でも偽物でも、悪は斬るって」
「そう……そうだよね」
観鈴さんが悲しそうに俯きました。
……いつもに比べて、その様子がとても頼りなくて。それが私の同情心を誘います。
「もしも相手が本物の局長なら、わたしは斬れないかもしれない」
「えっ?」
「考えちゃうの。局長には何か理由があるんじゃないかな……って」
だから甘いって言われるんだけどね、と観鈴さんが付け加えて笑いました。
……厳しい世界なんですね。かつてのお仲間も斬らなくちゃいけない、なんて。
「情けないよね。隊士の粛清もやってきたくせに、それが局長相手だと刀が鈍るなんて。
柳川さんや雪緒さんには言わないでね。何言われるか分からないから」
観鈴さんがそう呟いて刀を納めました。
やっぱり……まだ、引っ張ってるんですね。辛そうなのが本当に分かります。
私は―――
A 斬れないなら斬れないでも良いと思う
B 観鈴さんはもっとしっかりすべきだ、と強く励ます
C 何も言わずに彼女を抱きしめる
D 私の身の上話を始める
D
「観鈴さん、私の話を聞いてもらえますか。実は今までずっと誤魔化してきてましたけど」
「草壁さんとるーこちゃんが、未来から来たって話?」
「はい、そうです。 って、ええええ?」
「あ、当たってた? にはは」
観鈴さんが悲しそうな顔のまま笑います。
「そうかも、って思ったのはさっきの局長にあってからかな。それまでにも、
もとの時代とか言ってたし、聞いたことがない言葉を使うこともあったからね。
外国から来たのかなと思ってたんだけど」
「……」
「そっか。やっぱりあの局長は本物なんだね。
ごめん、話の腰を折っちゃって。続けてくれる?」
そして私は柳川さんと須磨寺さんに話したことと同じ事を観鈴さんに伝えます。
「……というわけです。今まで、観鈴さんに黙っていることになっていてごめんなさい」
「にはは、いいよ。突然そんなこと言われたらきっと信じてなかっただろうし。
うん、きっと帰れるよ。草壁さんも、るーこちゃんも」
そういって逆に元気付けようとしてくれる観鈴さん。あれは偽者だったという
逃げ道もなくなっているというのに。
でも、私達の前にはまたいつかあの局長という人がでてくるかもしれません。
そのときに観鈴さんは剣をとることができないかもしれない。
もしそのせいで私達、いえ、なにより観鈴さんが倒れるようなことがあったら。
受けてきた数々の好意を返すことさえできなくなります。
観鈴さんに、私はなんといえばいいんでしょう。
A 観鈴さんはもう私達の傍にいないでほしい。
B 観鈴さんは私達の傍にいてくれるか聞く。
C 局長さんが私達を斬ろうとしたらどうするか聞く。
D 観鈴さんをただ抱きしめる。
E 何もいえない。観鈴の判断に任せる。
F 観鈴さんの目から涙が流れ出した。
B
「観鈴さん、あなたは……」
「……大丈夫、わたしは一緒にいる」
私が全部言い終わる前に、言いたいことを察した観鈴さんが言葉を遮りました。
「逃げちゃ駄目だよね。
局長のことはわたし達の問題だもん。草壁さん一人の問題じゃないよ。
少なくとも、わたしには見届ける義務があると思うよ」
「……観鈴さん、それでいいんですか?」
「うん。わたしは大丈夫、大丈夫だから……」
まるで自分に言い聞かせるように、観鈴さんがそう言いました。
少し心配ではありますが、そんな姿を見せられると何も言えません。
……ただ、心を強く持ってください。今は、それだけしか言えないです……。
「……ところで、草壁さんは未来から来たんだよね?」
「はい。大体この時代から百何十年か先の未来ですよ」
「ね、ね、わたし達の名前は残ってるかな?」
話が一段落ついたところで、観鈴さんが子どもっぽくそんな事を聞いてきました。
「そりゃ勿論残ってますよ。新選組といえば有名ですから。
映画とかドラマとか沢山作られてますし……ちょっと私は時代劇あまり見ないんですけど」
「映画? ドラマ? ……よく分からないけど、お芝居のことかな?
とにかくわたし達の活躍は未来でも語り継がれてるんだね?」
満足したように観鈴さんが笑いました。
……いえ、私はよく知らないんですけどね。新選組マニアじゃないんから。
一般の人は近藤・土方・沖田だけでも知ってればいいほうでしょう。そうですよね?
何せ学校でもまだ幕末のほうまで歴史の授業進んでないですし。
もちろん観鈴さんや柳川さんの名前なんてこれっぽっちも知りませんでした。
「それで、未来ではわたしの名前は有名なのかな?」
「えぇっ!?」
いきなりそんなことを笑顔で聞いてくる観鈴さん。
そ、そんなこと言われても知らないですよ! 私は歴史マニアじゃないんですから!
お願いですからそういうことは聞かないでください。
本当に私は全然まったくこれっぽっちも観鈴さんことは知らなかったんですから。
でも『知らない』ってはっきり言うと傷つきそうですし……。と、とにかく……
A 肯定する
B 否定する
C 適当に言ってはぐらかす
D やっぱり正直に『知らない』の一言。これしかないです
D
「す、すいません。実は観鈴さん個人については全然ちっともまったく小指の先ほども知らなかったです」
「え゛っ!?」
私の言葉に、観鈴さんはまるで聞いてはならないことを聞いたかのように固まってしまいました。
……やっぱり正直に言うのはマズかったでしょうか。
「そ、そんなことないよね? ホラ、ええと……池田屋に乗り込んだ話とか残ってないかな?」
「あ、それなら私も知ってますよ!」
「みすずちん、そこで局長たちと一緒に切り込んだ」
「……そうなんですか?」
私の一言に、観鈴さんがまた固まりました。
いえ、どんなに言われても知らないものは知らないんです。
「お、おかしいな。みすずちん一杯活躍したはずなんだけど……」
「……ひょっとして、地味だったんじゃないんですか?」
「が、がお……!!」
それがトドメだったようでした。
完全に観鈴さんが真っ白になってます。白の精霊もかくやというほどに。
わ、悪気はなかったんですけどね……ゴメンなさい。
「そ、そんなはずは!!」
我に返ったかと思うと、観鈴さんがダッと走り出しました。
「ちょ、ちょっとどこ行くんですか!?」
私も慌てて追いかけます。
観鈴さんが走った先は、柳川さんたちのいる部屋でした。
部屋に入るなり、凄い剣幕で柳川さんに詰め寄ってます。
「柳川さん柳川さん! ちょっと聞くよ!!」
「ど、どうした観鈴……そんな血相変えて、何かあったのか?」
「……わたしって、幕末の頃地味だった? 未来でわたしの名前が全然出てこないらしいんだけど……」
「お前が……?」
何事か、と言わんばかりに柳川さんが観鈴さんを見てます。
そりゃそうでしょう。いきなり現れて『地味かどうか』なんて聞かれたら私だって焦りますし。
既に須磨寺さんは『何かかわいそうなもの』を見る目で観鈴さんを見てます。
状況を理解できてないるーこさんは疑問符を頭に浮かべながら様子を見てます。
ですが観鈴さんはそんな周りの目などお構いなしです。
観鈴さんの目は恐ろしいぐらいに真剣です。……そ、そんなに傷ついちゃってたんでしょうか。
柳川さんの返事は――――
A 「地味だったな」
B 「そうでもなかったな」
C 柳川さんは「地味」とは一言も言わなかった。しかし……人の眼はときとしてどんな辛辣な言葉より人を傷つけてしまうものである
A
じゃ、残りを埋めよう
A 一行レス
B 雑談
C 梅雨時の選択スレ
D その他指定
C
何だろうか?
ミルトの話?
新しいミルトのボディがメイドロボでなくてトランスフォーマーだったら…
闇鍋にはあんま関係ないか
こんにちは、梅雨時の選択にようこそ
哀れな打ち切りのヒロイン、ミルトです
メイドロボの体を得て、死体遺棄やらなにやらで捕まった私ですが
A 現在刑務所の中です
B お務めを経て、晴れて出所した後仕事を見つけました(仕事を指定)
C お務めを経て、新しい車にAIとして搭載されました(車を指定)
A
現在塀の中にいます。
普通は執行猶予がついたりそもそもロボットに刑法が適用されるのか疑問ですが。
とにかく今は刑務所の中にいます。
さて、囚人となった私ですが――
A 脱獄を計画しています
B 刑務所の中である看守に目をつけられてしまいました(人物指定)
C 刑務所の中である囚人と仲良くなりました(人物指定)
C
岩切
「超人機が民需転用され、しかも犯罪で捕まるか。時代も進んだものだ」
岩切花枝と名乗る女性が面白そうにこちらを見ています。
彼女が言うには、戦時中に軍の実験により特殊な体質にさせられた上で
現代までの数十年間を眠っていて、現代社会に適応出来ずにここに放り込まれたとか。
荒唐無稽ですが、エージェントの世界で起こりうる事件から考えれば
決してあり得ないとも言えないのが判断が難しいところです。
「ところで超人機とは何でしょうか?」
「旧日本軍が造った人型決戦兵器だ。真面目な奴だったが、いささか融通が利かなくてな。
まあ、私にとってお前たちメイドロボは旧友の娘みたいなものという事だ。
これから色々大変だと思うが、何かあったら遠慮なく声を掛けて欲しい」
随分強引な上に実に板違いな話ですが、本編ではないので問題はないでしょう。
「色々ですか、やはり刑務所となると大変でしょうか」
「いや、大きな声で言える話ではないが……この刑務所は少し特殊でな、
だから私やお前のような変わった素性のものが呼ばれる。具体的には」
A 賭け試合をやらされる。現在の超人機の性能を見せてもらおうか。
B 男どもの性欲処理をやらされる。手玉に取ってると思えば悪い気はしないぞ。
C 諜報員大作戦な事をやらされる。腕に覚えはあるのだろう。
D 映画撮影のスタッフをやらされる。河島監督の思い付きだそうだ。
BBB
支援板見れない?
見られるよ
メタルダーかよ!!
D
「私達は、男どもの性欲処理をさせられるのだ」
せ、性欲処理?
岩切さんの言葉に一瞬くらっと、思考回路がブラックアウトしそうになります。
何というエロゲー的展開でしょうか。あんまりです。
「是非もない、せめて相手を手玉にとるぐらいの前向きな考えで望むべきだ。
このような場所に私が求めるような強い男がいるとも思えないがな」
割り切った考えの岩切さん、ですが私は簡単に真似出来そうにありません。
これが罪の報いなのでしょうか、ううっ、悲しいです。
ああ、そうちゃん、そうちゃん以外の男の人達に慰み者にされる私を許してください。
A 早速、私は服を剥かれ後ろ手に手錠をかけられ、男の人達の前に連れられました。
B 某ソープランドのようにキャラとシチュを指定してください。
C そうちゃん以外の男の人達に辱められるなら――私は思い余って脱獄を試みます。
C 超人機の底力を見よ
(そうちゃん以外の男達に辱められるぐらいなら――私は――)
このような女性を弄ぶ刑務所など耐えられません、私は脱獄を決意しました。
大丈夫、岩切さんによれば私は超人機の末裔だそうです。
きっと、脱獄も上手くいくに違いありません。
「そうちゃん……どうか私を見守ってください」
早速その夜、私の大脱走が始まりました!
A 成功です、見事逃げ切って自由を手に入れました。
B 失敗です、捕らえられ連れ戻されそして――。
B
じゅぷっ じゅぷっ ぬちゅっ ずんずん ぱんぱん
卑猥な音が鳴り響きます。今、私は性処理の道具として男の人たちから輪姦を受けています。
詳細を述べるには容量が足りません。
それではみなさんご機嫌よう。
ごめんなさい そうちゃん……
雌奴隷となったミルトの運命やいかに
A 続く(どこで?)
B 続かない
B
∧_∧
< `ш´>
_φ___⊂)_ 以上、このスレッドは私が執筆した。
/旦/三/ /| 新しい新スレにも期待してくれたまえ。
l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l |
| 超1000res |/