「甘い! 実に甘いですの! あたしの奥義は……これだけじゃないんですの!!」
「えっ!?」
それまで防御に徹していた金華が急に前に出る。
いきなりタイミングをずらされ、リズムを狂わされた観鈴は、一瞬躊躇した。
時間にして僅かコンマ一秒にも満たない時間だったが、金華にはそれで十分だった。
まず金華は小太刀で観鈴の心臓を狙った。
だが観鈴も素直にその太刀を浴びるほどアホちんではない。空の腹でそれを切り払う。
切り払われた反動でか、金華は体勢を大きく崩した。
観鈴はその隙を見逃さずに金華を打ち払いにかかる。
……ここで、不用意に次の攻撃に移ったのが不味かった。
普段の観鈴ならここで不用意な攻撃は打たなかっただろう。
だが観鈴は急にリズムを狂わされたためか、違和感に気づけなかったのだ。
金華がにっと笑ったかと思うと、急に観鈴の視界から消える。
「奥義! 流牙旋風斬り!!」
「が、がおっ!?」
次の瞬間、観鈴の体が宙に飛ぶ。
錐もみ状態で上に数メートル飛び、地面に思い切り叩きつけられる。
そんな観鈴を見て、金華は残念そうに呟いた。
「……十五尺。思ったより飛びませんの。
咄嗟に勢いを緩められたのが失敗ですの……」
「い、今のは……」
「あたしは今まで様々な人の手を渡ってきましたの。
それはそれは様々な技をこの刀身で覚えてきましたの。
その中でも……あたしが独自に作り出した奥義をお見舞いしてあげましたの。
あなたの力を利用してあなたの体を上空に跳ね飛ばし、その瞬間にあなたの体を切り刻んであげましたの」
観鈴が立ち上がろうとする。
……その瞬間、まるで今斬られたかのように体中に大小様々の切り傷が裂けだした。
「ああぅぅっっっ!!!」
「……あたしがとどめも刺さずにのほほんと技の解説をするわけありませんの。
流牙旋風斬りは回避不能の一撃必殺奥義ですの。この技を受けた時点で勝負は決まりましたの」
国崎「往人と」
そら『そらの』
国崎・そら「『面白幕末講座!』」
国崎「よい大人の皆、元気にしてたか? 司会の往人お兄さんだ」
そら『助手のそらだよ! それにしても、みすずが大ピンチだねっ!』
国崎「ああ、大ピンチだな。とにかく第九回は伝説の流派大影流について解説するぞ」
そら『大影流って何?』
国崎「幕末の頃にはいろいろ剣にも流派があったんだ。北辰一刀流とか、聞いたことあるだろう?
大影流はその流派の一つだといわれている」
そら『言われているって……』
国崎「それがこの流派、歴史の表に全く表れてこない。
大影流の道場も名の通った師範もな〜んにもないんだ」
そら『それって……ただの作り話ってことじゃないの?』
国崎「ああ、大体の歴史家はそういう見解だ。
だがな……この時代にある犯罪者の資料で面白いことが分かっている」
そら『面白いことって?』
国崎「この時代の犯罪者の内、まるで憑かれたような剣を振るうような連中がいたらしい。
更にその犯罪者のうちまた幾人かが同じような剣捌きを見せていたらしいんだ。
しかも滅茶苦茶強かった上にどの流派にも属さないような太刀筋だったんだ。
一説には相手の力を利用して天高く相手を弾き飛ばすことも出来たと言われている」
そら『へえ……そういうのがあるんだ……』
国崎「歴史の表には決して出ずどの流派にも属さない謎の一派。
後世の人は歴史の影に居続けた流派として、彼らを『大影』流と呼んだ。
つまりこの流派が本来どういう名前だったかもよく分かってないんだな」
そら『でも……作り話なんだよね?』
国崎「確かにこの話は信憑性に薄れる。だがそれを全て昔の人の作り話だ、で片付けるのは寂しいだろう?
確実じゃない話は全部嘘っぱちだ。なんて考えじゃ歴史は進まないんだよ。
もしかしたら今後研究を進めていくうちに新たな事実が分かるかもしれないしな。
だからいくら信じられなくてもこういう謎の一派が存在する、
なんてことがあってもいいんじゃないかと俺は思うな」
そら『うん……そうだねっ!』
「うぅっ……く……!!」
全体の細かい切り傷を抑えながら観鈴が呻く。
それを金華は驚いたような呆れたような表情で呟いた。
「……驚きましたの。この技を受けて生きてることももとより、全部急所を外してますの。
上空に飛ばす瞬間に体勢も崩す技だから回避は不可能のはずだったのに……。
……まだまだ改良の余地がありますの」
金華は再び刀を構える。
対する観鈴も刀を構える。傷自体は大したことない。
急所は外している、直血も止まるだろう。
だが、問題は体に受けた傷ではない。
(……すごい。やっぱり、この人(?)強い……)
今まで拮抗状態だった戦況が金華に傾きだした。
ただでさえ決め手に欠ける状態だったのだ。
戦闘が長引くとすれば……これは大きな不利になる。
観鈴の次の一手は……
A 奥義には奥義で! 瞬天殺
B いや、相手の奥義にも隙はあるはず。そこを突く……
C みさきの様子が気になる
D 透子を守るトウカ&リサはどうなっている?
B
(あの奥義……きっと、小金華を倒すにはあの奥義を破るしかないよ)
観鈴はなんとなくそんなことを考えていた。
このまま相手の返し技を警戒しつつ戦っても埒が明かない。
ならばいっそ相手の返し技を破ることからはじめたらどうだろうか。
相手も奥義に絶対の自信があるのなら、その奥義が破られるとは思いもしないだろう。
(えっと……確かあの技は……)
先ほど受けた攻撃を冷静に思い出す。
自分が不用意な攻撃を仕掛けた時が技の始まり。
そのまま自分の勢いを利用しつつ下から上に攻撃。
その勢いでこちらの体勢を崩してから自分を上空に跳ね飛ばし、
隙だらけとなった自分を切り刻む。
一見隙がないように見える。そう、一見。
だが、完璧に見えるこの技にも隙があった。たった一つの隙が。
それは……
A 小金華の本体で自分を上空に跳ね上げるので同時に反撃が可能
B 技の出がほんの少しだけ遅い
C 技をかけ終わった後にわずかの時間使い手の体が硬直している
D 技をかける瞬間……使い手の左手がほんの少し下がる
C
観鈴はわずかに距離を取り、ひざまずいて息を整えた。その間も小金華から目はそらさない。
「あら、せっかく近づいたのにまた離れちゃいますの?」
「……」
答えず観鈴は臍下丹田に気を送り、呼吸を整えつづける。
「しょうがないですの、じゃあまたこれで……地龍走破っ!!」
その瞬間、観鈴は脇差を小金華に向かって投げた。それは人を殺せる速度を持ち、小金華を襲う。
観鈴は地龍走破をよけながら劣らないほどの神速で別角度から近づいた。
「あたったら死んじゃいますの。いいですの?」
小金華は避けようとしない。観鈴の表情にわずかに焦りが見えると、満足そうに
「観鈴さんも嫌がってますし、この身体は気に入ってますからもったいないですの」
そういって小太刀で脇差をはじいたところに、観鈴が襲った。
「ふっ!」
「残念、あとちょっとでしたの…… 流牙旋風斬り!!」
空の一刀を余裕を持って避け、小金華が沈み込むと同時に観鈴の身体が浮き上がった。
その時、観鈴の目は小金華を見続けていた。
技をかけ終わった後にわずかの時間体が硬直している。
その瞬間だけにできること。
「なんですのっ!」
小金華──刀のほう──をみさきの手槍が受け止めていた。
さきほど距離を取ったときに観鈴が背に隠したものである。
そして、小金華には脇差もなく、防ぐすべもない観鈴を今度こそ十分に切り裂こうと強く踏み込んでいた。
空中で手槍と噛み合うその一瞬、超越的な身体バランスで観鈴は空をおもいきり小金華にたたきつけた。
A 小金華はまっぷたつに折れた。
B 小金華はその手から弾き飛ばされた。
え、もう…仕方ないからB
パシィィィーーーーーン
観鈴の空の一太刀が、小金華をその手から弾き飛ばす。
「し、しまったですの、手から離れてしまったですの」
小金華は地面に落下し、無念そうにその刀身を横たえる。
寄り代の方は、意識を失っているのかその場に崩れ落ちて倒れる。
「……はぁ……はぁ……ど、どうにか寄り代さん無事みたい」
ある種賭けだった。
もし小金華が寄り代の体を気にせず脇差を受けたら……あるいは別の結果になっていたかも知れない。
「……だけど、あちこち痛い、ちょっと動けないかな、にははっ」
観鈴もその場にガクリと膝を付く。
「みさきさん、大丈夫かな………」
「あ………嫌……駄目………もう無理……壊れる………」
『永遠無海』によるみさきの心への陵辱は続けられていた。
自分ですら無理矢理封印した過去を、容赦なく暴き立てられ突きつけられたみさき。
その一方的な憎悪と恐怖の強奪に、なすすべもなかった。
「あれ……金華お姉ちゃんやられちゃったの……仕方ないなぁ」
極上の食事を邪魔された気分の『永遠無海』が、みさきから離れその刃を向ける。
「惜しいですけど、ここでお別れです、みさきさん」
目の前の妖刀に構えられても、涎と涙を流しながら茫然自失とするみさき。
「まぁ聞こえていないと思いますけどね、後の予定が詰まっているもので」
そう言って、無造作に振り下ろされる『永遠無海』
A みさきが………避けた?
B …………ゴトリと、みさきの首が床に転がった
b
首のない自分の身体。それを地面に転がされたみさきの首は覗き込んでいた。
(わたし……やられちゃったの……?)
自分の首無し死体。その余りにもシュールな光景が乱れていたみさきの精神を
幾ばくか平常へと戻していた。
(っ!?)
不意に髪の毛を掴まれる。髪を引っ張り上げてにたにたと微笑むのは
黒髪の少女。『永遠無海』の依り代である。
「気分はどうですか?みさきのお姉さん」
そう冷酷に微笑む。そのまま続ける。
「お姉さんはもう死んじゃったんですよ」
長い黒髪を掴んだその手にずっしり重みがかかってくる。
腕の力だけで首とそれから下も引っ張り上げているのだからそれも当然と言えるのだが。
(ふふふふふ)
クスクスとほくそ笑む。あの瞬間『永遠無海』の斬撃はみさきの首を絶った。
みさきにはそう感じられたのだろう。あとはみさき自身が死を受け入れれば
彼女の心は直ぐにでも死にいたる。直ぐにでも。
(もう勝負有りですね。あっけないですけど)
髪をつかまれ引っ張り上げられたみさきの顔を覗きながら『無海』は悦に浸る。
本当にあのまま首を絶つこともできた。だがそれを選ばなかったのには訳があった。
(金華お姉ちゃんの代わりをしなきゃいけませんし)
先ほど感じた波動。金華が観鈴によって倒されたのだろう。まだ破壊はされていないが。
すぐにでも向かうべきところだがあの観鈴と相対するには自分の力は足りない。
相手の精神の脆い箇所につけこむ『永遠無海』にとっては人斬りの過去を克服し
乗り越えた観鈴は天敵ともいえる。
(このお姉さんみたいに組みしやすければ楽だったんですけどね)
自分が死んだことを告げられ呆然とするみさきを蔑みのこもった目で見る。
哀れな娘で。かくも惨めで脆い。それゆえに愛おしさを感じる。
人の恐怖、絶望を糧とする自分にとって。
(観鈴のお姉さんと戦う前にもう少し力を補充させてもらいますよ)
A 自分が死んだと思っているみさきを嬲り力を得る
B このままみさきの身体を支配する
b
みさきは50年後も死なないはずだろ?
明らかな矛盾だからリコールしる。みさきは保護しないと。
1 みさきが日記帳か何かをつけていてそれが50年後公開される
2 実は雪見と友達だった澤倉美咲さんが「川名」姓の人と結婚し、真相を知って50年後発表する
3 エピローグとならず、人斬り観鈴編に入ったのであの50年後は気にすることはない
愚痴スレにあった対処方法
何とかみさきが死んでも矛盾は生じさせずに済むみたい
584が許せないらしいしリコールは必至でしょ
割れ鍋に閉じ蓋
「みさきさん……」
体中に傷を負った観鈴。『空』を杖に壁を背に。息も絶え絶えだが立っていた。
「行かないと……」
少し呼吸を整えたところで歩き出す。
かつては被害者でありそして敵となり今は友―――
そう、観鈴の感覚でいえば、友となった彼女を助けるために。
(嫌な予感がするッ―――!)
先ほどからゾクリゾクリと薄ら寒いものが背筋に感じられる。
妖刀の瘴気だけではけしてない。
観鈴も修羅の中に生きてきたのだから、常人以上に第六勘とでも呼ぶようなものは発達している。
先ほどからそれがみさきの危険を叫んでいた。
「みさきさん……」
「呼んだ神尾さん?」
「ッ!?」
もう一度みさきの名を呟いた観鈴。
その目の前に、当のみさき本人が現れた。
「みさき……さん?」
一瞬、呆けた顔になる観鈴。
「どうしたのそんな変な顔しちゃって。『永遠無海』の方は倒したよ。そっちはどうなった?」
にこにこと、いつもの笑顔でいつものように言う。
「うん……倒した、よ。大丈夫」
「ふうん、そう。それじゃ早く透子さんのところに戻ろうよ」
「そう……だね」
促されるまま、その場でくるりと半回転。旅籠の出入り口へと向き直る観鈴。
「あなたを殺した後に…………ね」
その背後では、みさきが『永遠無海』を高々と掲げていた。
キィィィ――――――ンッ!
果たしてしかし、みさきの手を伝わってきた手ごたえは観鈴の首を両断するものではなかった。
観鈴は全てわかっていたかのように空を背負うと、永遠無海の一撃を受け止めていた。
「わっ」
「永遠無海……!」
一瞬で縮地で距離を取り直すと、改めて空を構えなおす観鈴。
「これはびっくりです」
剣を振りぬいた姿のまま固まるみさきの背後から、ひょこっと現れたのは幼い少女の姿、永遠無海。
「永遠無海……みさきさんになにをしたのッ!?」
その少女をそれだけで視殺できそうなほどの目で睨みつける観鈴。
「見てわかりませんか?」
「………………」
わからないかと言われればわかるとしか答えようがない。
妖刀の能力はわかっている。つまり―――それは―――
「まあ、多くを語る必要はないでしょう」
無海に促され、みさきは再度刀を両の手で構える。
「あなたを殺す分には構わないんですし―――このままやってしまいましょう」
色もなければ輝きも、そしてとうとう感情もなくなったみさきの瞳。
「みさきさん……!」
仇であり友でもある少女に向け、その漆黒の刃を振り下ろした。
A 呼びかけを続ける
B ひとまず応戦する
C その頃透子たちは……
おいおい、リコールかどうかが話し合われてるのに続きを書くのはいかがかと思うぞ
荒らしはスルーで
A
このまま続けちゃおうということでA
「みさきさん!みさきさん!みさきさんっ!」
呼びかける観鈴、だが、みさきに変化はみられない。
「無駄ですよ、みさきさんは今もわたしの中で陵辱され続けてますから」
手槍と盾を構え、『永遠無海』が得意気に語る。
「もうみさきさんは死んだのですよ……少なくとも心は」
「そんな事無い!みさきさんはわたしと殺しあうって約束したんだからっ!」
呆れるように『永遠無海』は溜息を付く。
「徒労に終わるのですけどね、ところで何か気がつきませんか?」
「何も気がつかないよっ、みさきさんを返してっ」
「私はさっきまでみさきさんと戦っていたのですよ、寄り代を使って」
その時、観鈴の背後から叫び声が聞こえた。
「ぱぎゅ〜☆『小金華』ぱわーあっぷして復活ですの」
振り返ると、先ほど弾き飛ばした『小金華』が『永遠無海』の元より代の手に握られていた。
その刀身は、さっきまでの戦闘だけでは到底説明できない鮮血で濡れている。
「まさかっ」
今度は先ほど戦っていた『小金華』の寄り代を振り返る。
少女の胸は貫かれ、ドクドクを血液を流し、小刻みに痙攣していた。
「さっきとどめを刺さなかったあなたの甘さ故ですの」
「あ………あ………」
油断していた、刀だけなら無力と思っていた観鈴の油断が少女を死なせた。
「今度はさっきのようにはいきませんの、2対1ですけど卑怯とは言わせませんの」
A 「お姉ちゃんは千鶴お姉さんの手伝いにいってください」『永遠無海』がそう言った。
B みさきと舞のダブル攻撃に、観鈴は追い詰められていく
C その頃『偽善千鶴』は……
B
「ああ……くうっ!」
「行きますよお姉ちゃん!」
「はいですの☆」
また自分のせいで、自分の甘さで人を死なせてしまった。
悔恨の情が観鈴の頭を焼くが、戦いはそれすら許してくれず姉妹が揃って襲い掛かってくる。
「みさきさん! みさきさんッ!!」
しかしそれでも観鈴はみさきの名を呼び続ける。
信じたから。約束したから。一年後の尾根の里……!
「なにやってんですか観鈴さん?」
「拍子抜けですの」
二重の斬撃が殺気と化し、観鈴の眼前で陽炎を作る。
果たしてその直前、観鈴は一つは縦に構えた『空』で受け止め、一つは首を捻ってかわす。
「みさきさんッ!」
反撃しようと思えばできるタイミング。しかし観鈴は牽制の切り返しを金華に放っただけに終わる。
そのまま間合いを取り直し、みさきの名を呼ぶ。
「なにを寝ぼけたことしてるんですか。今みさきさんはあなたの敵なんですよ? 戦わなきゃあなたが殺されちゃいますよ」
「まあそれならそれで楽チンだからいいですの☆」
さらにみさきと少女のが追撃の地を蹴る。
重量のある盾から解放されたその速度。既に死者と化しつつある限界を超えた筋力。
直線的ながら、存外速い。
「ッ!」
永遠無海の横薙ぎが喉笛を狙う。小金華の逆袈裟が胴を狙う。
寸前で半歩後退し、紙一枚分の薄さでそれをかわす。
「みさきさん目を覚ましてッ!」
「……なにやってるんですかあなた。さっきから」
「無海ちゃん、これはあれですの」
尚もみさきの名を呼び続ける観鈴を見て不思議な顔をする無海。
一方お姉さんぶったしぐさで、金華が解説を入れた。
「『説得』してるんですの、観鈴さんは」
「ああ……」
合点がいった、という様子の無海。
「みさきさん!」
ツッ――と頬に一筋の赤い線。呼びかけへの返事は、斬撃によってもたらされる。
「なるほど。そういうことですか」
「まああたしたちとしては構いませんの。そうやっててくださればお仕事も楽ですの☆」
「そうですね」
一心不乱に回避し続ける観鈴と、それを追い続けるみさき、少女。
見ようによっては高速のダンスを踊っているようにも見える三人を眺めながら無海は呟く。
「……無駄ですよ。みさきさんの心は完璧に『堕とし』ました」
空を切る永遠無海が毛先を、小金華が服の裾を持っていく。
観鈴はゾクゾクと、膜一枚向こう側に迫る死の気配を濃厚に感じ取っていた。
「今は彼女の体は完璧に私が操っています。潜在能力まで含めて100%。
余計なお世話かもしれませんが観鈴さん、手加減してとか傷つけないように、とかそんな考えて勝てるほど甘い相手じゃないですよ?
まあ一番分かってるのはご本人でしょうが」
「無海ちゃん、つまらないのはわかりますけどそういう言い方はよくないですの」
(確かにッ―――!)
無海らに言われるまでもなく、そんなことは観鈴はよくわかっていた。
(けど、だからって……!)
みさきを傷つけることなど、できはしない。
ましてや今は約束の時ではなく、みさきはただただ剣の傀儡となっている状態だ。
自分達の決着はこんな形でついてよいものではない。こんな形で終わってよいものではない。
こんな形で―――
「あ、わっ!!?」
悩んでいる時間。わずかな逡巡。みさきの剣のみに気を取られていた隙。
高々と永遠無海が掲げられた次の瞬間、一手は上からではなく足元からもたらされた。
「はい、王手ですの☆」
背後へ下がる直前、少女から踵への軽い足払い。しかし上ばかりに気を取られていた観鈴にはそれで充分。
そのまま自らの勢いと合間って、仰向けにみっともなくひっくり返った。
「じゃ、とどめは無海ちゃんにお譲りしますの」
「……正直拍子抜けでした」
改めて一歩進み出て、永遠無海を構えなおすみさき。逆手に持ったまま、その切っ先は―――
「伝説の人斬りが―――こんな程度なんて。つまんないです。すっごくつまんないです」
珍しく無海が、彼女にしては明確な不快さをその声に滲ませている。
「もういいです。死んでください」
観鈴へと、吸い込まれていった。
「みさきさんッ! ……みさきッ!!」
「!」
『永遠無海』が貫いたのは
A 観鈴
B みさきの体
C 『小金華』の少女
b
「……え?」
それは信じられないことだった。
過たず、観鈴の急所へむけて振り下ろされた永遠無海。
これで終わるはずだった。
終わる、はずだった。
すべてが終わる……はず……だった……のに……
「なッ…………なんなんですか!? なんなんですかこれはッ!?」
「む、無海ちゃん!!?」
姉妹が揃って驚愕する。
みさきが持った逆手の『永遠無海』。それはそのまま真下に振り降ろされ、観鈴の胸を貫くはずだった。
なのに……なのに!?
「みさきさん! みさきさんッ!!」
観鈴の悲痛な声が響き渡る。
永遠無海は……みさきの胸を、貫いていた。
「馬鹿な……そんな馬鹿な……! なんで、なんで私の術を……!」
目の前の事態が信じられないのか、無海は頭を抱えて身をよじっている。
「けほっ……!」
一方、そのままカランと『永遠無海』を取りこぼし、膝から崩れ落ちるのはみさき。
「みさきさん! みさきさんっ!」
慌ててその体を抱きとめる。
ああ――――同じだ。
おんなじだ。
観鈴の脳裏に浮かぶのは、京都御苑の光景。
杏さんの時と……おんなじだ……!!
「みさきさん……みさきさん、どうして! どうしてあなたまでッ……!」
「あはは……あはは……わた、私も大概……馬鹿、おおばか……だよね……」
血を吐きながら、笑って答える。
ああ……こんなところまで、同じだ……!
「な、なんで雪ちゃんの仇であるあなたじゃなくて……自分を、ゲホッ!
……あは、あはははは……馬鹿だね。私もすごいあほちんだね」
「みさきさん、お願い……もう、喋らないで……」
「な、なんでなんだろうね……よりにもよって、どうしてあなた……なんだろう、ね」
しかし観鈴の言葉など届いていないかのように、息も絶え絶えに続ける。
「笑える話……だよ、ね。よりにもよって……正気への橋頭堡が……不倶戴天の仇である……
あなた、だなんて……ゲホッ! ガッ!」
「みさき……みさきさん……!」
命が、消えていく。
「なんでだろうね……あなたのことはすごい憎かったのに……
それでも、私の手で……ううん、あの妖刀の手で殺されるとなったら……
私、手が勝手に……あは、あはは……私、なにやってんだろ…………ゲホッ!」
「おねがい……もう、もういいから……!」
「ああもう……くやしい……なあ……。椋ちゃんの言う……とおり、かも……しれない、よ……
あなたは……空洞、底なしの奈落、深遠…………なの、かもしれないね。
結局私もこう……して、あなたに嵌っ……て……魅せられ……て、雪ちゃんの仇なの……に……!」
「みさきさん…………」
「なんであなたはそんなに強い…………んだろう。私と同じくらい、あなただって……傷ついてきたのに……
なのに、私は少し心を覗かれただけで……もう、ダメ。なのにあなたは……
抉られても、暴かれても、詰られても…………挫けない。
どうしてだろう…………どうしてあなたはそんなに強いんだろう…………」
「もう、もういいから……! みさきさん……!」
「……結局、私、約束守れなかったよ……あの子も死なせちゃったし……」
物を映さぬ視線の先には、永遠無海に操られてしまった少女の姿。
「……本当、私、ダメな子だよね……」
「違う……違うよみさきさん! あなたは、あなたは……!」
「ねえ……最後に一個だけ、お願いがあるんだ」
「…………?」
「私……雪ちゃんの隣に埋めて……ほしいな。体持ってけってのも無理だろうし…………
…………雪ちゃんが褒めてくれた髪……私の髪だけで、いいや。
できれば旅が終わったら……尾根の里、雪ちゃんの隣に埋めてくれると……嬉しいな。
それで、できれば神尾さん……一束でいいから、あなたの旅路に連れてってくれると…………うれしい。
私、あなたの行く先を見てみた…………ガッ!」
「みさきさん…………!」
「……私の荷物、あげるよ。こう見えてもわたし、マメな方でね…………
ずっと昔から、日記だけはつけてるんだ……たぶん、あなたにとっても悪くない内容が……ケホッ!」
「もう! もうそんなことはいいから! だからみさきさん、お願い…………!」
「ごめんね。もう……私の幕は……下りるみたいだね…………」
みさきの顔が、白くなっていく。
「…………ごめんね雪ちゃん、結局、仇を討てなくて。
ごめんな神尾さん…………約束、守れそうになくって……
ごめんね雪ちゃん…………結局、私もそっちに行くよ……
…………でも、許してくれるよね。
雪ちゃん、怒ったあとはちょっとだけ私をいじめて、それで……その後は…………
…………いつも…………笑って…………
私に、笑ってくれ…………」
「…………………………………………」
そして、終わった。
「………………」
観鈴は静かにみさきの目を閉じさせると、無言のまま空を構え、立ち上がった。
背後には無海と金華、二刀を構える……すでに死せる少女の姿。
「ひ……っ!」
「ああ……っ!」
体を操る金華が、無海が、生まれて初めてであろう悲鳴を上げる。
観鈴と目が合った瞬間、理屈ではない。
本能で知った。
己は今、初めて狩られる立場に回ったのだ。
姉妹は…………
A 一目散に逃げた
B 観鈴に立ち向かった
B
A
舞が踏みとどまる。
右手には無海、左手には金華と断頸の小太刀を持って。
金華と無海が人間であれば、ここで退くことを前提に時間を稼ごうとしたかもしれない。
だが、金華も無海も良くも悪くも刀であった。
目の前の強者を斬るという刀としての欲望の前に、そんな考えは浮かんでこなかったのだ。
「無海……逃げたいのならお一人でどーぞ」
「お姉ちゃん、それはあんまりですよ。
ちょっと怖いけど、観鈴さんの中からとっても強い憎悪があふれ出てきてる。
こんな強い憎悪の塊を目の前にして、さようならって絶対に出来ないですよ」
「やはりあなたは『後悔』と『憎悪』の念が込められた鬼神楽の幼刀ですの。
ですがあたしも『苦痛』と『殺意』の念が込められた鬼神楽の技刀として……退くことはできませんの!
この方のあたしたちに対する殺意、心地よくて惚れ惚れしそうですの!」
舞が金華を口にくわえる。
いわゆる……三刀流の構えだ。どこかの某海賊漫画のような。
対する観鈴はぽつりと呟く。
「……ごめんね、みさきさん。わたしのせいでこんな目に遭っちゃって」
「今更懺悔? やっぱり人間って分からないですの」
「違うよ。これは決意……。全力を持ってあなた達を壊す、ね。
わたしの誓ったのは不殺。決して「不壊」じゃないの。人であらざるものに……手加減は要らないよね?」
「したら観鈴お姉さんの負けですよっ」
無海がまたくすりと笑う。
観鈴はふぅっと落ち着いて刀を構える。
感情が欠落したわけではない。だが、この状況で非常によく落ち着いていた。
観鈴は地を蹴る。
そして次の瞬間……観鈴と舞による打ち合いが始まった。
その頃―――
「どうも、今晩は」
「…………」
部屋の中に緊迫した雰囲気が漂う。
布団の中で恐怖を感じる透子、その透子を守るように立つトウカとリサ。
そして……戸口の前で微笑んでいる刀傷の生々しい女性。
「初めまして、偽善千鶴と申します。
口の悪い人は鬼神楽の年増刀なんて名前で呼ぶんですがね。そう呼ぶ人はなます斬りにして差し上げますが。
不肖の妹たちが随分お世話になりました。まず、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「……某には刀風情に名乗る名前などない」
「挨拶なんて無意味よ。何しに来たの……って、分かりきったことを一応聞いておくわ」
それぞれ獲物を構え距離を保ちながら聞き返す。
千鶴はそれを困ったように、だが日常会話のようにふぅっとため息をついた。
「嫌われてしまいましたか。どうもいけませんね、人間と仲良くなれそうになくて。
目的は分かっていらっしゃるでしょう? その刀……私たちに譲っていただけないでしょうか。
そうすればちょっともったいないですけど、あなた達を斬るのは我慢してここからまっすぐ帰ってもいいです」
「無茶な注文ね」
「やっぱりそうお思いですか?」
千鶴が笑みを浮かべる。
まるで作ったような笑み。人のそれと比べて実に不自然な。
鞘から自らの体である偽善千鶴を抜き放つ。刃の輝きが、美しくもあり妖しくもあった。
「なら死ぬしかないですね? ……二人いれば勝てる、なんて思わないことですね」
その瞬間に殺気が膨れ上がる。
何の訓練も受けていないものはそれだけで立ってもいられないであろう。
「ふ、ふぇぇ……!!」
「透子殿、部屋の隅へ!」
トウカが振り返らずに指示をする。
透子はびくびくしながらも、這って部屋の隅に向かう。
千鶴はそんな三人を見て微笑みを崩さない。
「人を守る、ですか。偽善ですね。殺し合いというのは自分のためにするもの。
人を守るだの……弱者を生かすだの、聞いてて反吐がでます」
「そういう感情をもてるのが……また人間なのよ」
「それなら、やっぱり人間って分からないですね」
「貴様には永遠に理解できぬであろうな!」
リサとトウカの戦法は?
A リサが透子を守り、トウカが打って出る
B トウカが透子を守り、リサが打って出る
C 一か八か二人同時に出て相手の刀を狙う
D 二人とも守りに徹し、観鈴たちの応援を待つ
A
D
c
「某が討って出る、リサ殿は透子殿を頼む」
「OK!」
トウカとリサは役割分担を決め、瞬時にトウカが動く。
スラリと抜刀し、跳躍して一足飛びに斬りかかる。
「あら、なかなかの腕前ですね、さすが妹が寄り代にしただけの事はあります」
「くっ、このっ」
一太刀目を防がれ、次々と斬撃を繰り返すトウカ。
だが、偽善千鶴はやすやすとそれらを捌き、はじき返す。
「『人を守る、弱者を生かす』ですか………とんだお笑い話ですね」
トウカの渾身の連撃を避け、捌き、打ち払いながら愉快そうに偽善千鶴が語りだす。
「白穂の体で調べた事で面白い話を一つ……あなたは幕府に『売られた』のですよ、栗原透子さん」
「ふええええぇぇぇ?」
リサと共に部屋の隅にいた透子が、突然自分の名前を挙げられ驚く。
「あなたはその妖刀を運ぶために外国へ送られる、ですけど不思議だと思いませんか?
将軍の側室、それも妊婦を『運び手』にするなんて」
「えーと、確かに……」
「幕府がその気になれば妖刀に興味が無い、戦意の無い人間などいくらでも見つけられるはず。
普通将軍の側室がその様な危険な真似をする必要など無い。それをわざわざあなたに任せた
いえ、『押し付けた』のは……あなたが『邪魔』になったからですよ」
偽善千鶴の言葉に動揺してしまう透子。
「そんな………」
「何処の世界にもある話ですよ、正室の跡継ぎがいるなら側室の子など争いの種。
ていのいいお払い箱です。幕府はアメリカと密約を交わしたのですよ
『妖刀処分の代金の一部として栗原透子を"売る"と』
「…………嘘」
「嘘じゃありません、何でも先方に性的嗜好が『妊婦』に傾倒している変態がいて、その人に引き取られて世話されるのですよ、あなた」
「…………そんなの……嫌だよ」
「ま、幕府にしてみれば国内を騒乱に巻き込む刀の処分をバツイチの邪魔な側室より優先させるのは至極当然でしょうね」
「リサさん………嘘だよね、嘘って言ってよ、リサさん!!!」
「…………私も、知らされていなかった……そんな………まさか………」
だがリサは薄々怪しいと思っていた、何ゆえこの様な高貴な少女に危険な役が与えられたのか。
A 「ええい、戦いの最中に戯言を!」トウカが抜刀術を偽善千鶴に放った
B 「…………この刀を渡せば、私たちを見逃してくれるのですか?」その時、透子が立ち上がった
C その頃観鈴と妖刀との戦闘は……
C
「はぁぁっっっ!!」
「えぇぇぃぃぃっっっ!!」
観鈴と舞が幾度も交差する。
観鈴の太刀筋を小太刀で受け流し、更に左からは無海、上からは金華が一撃を狙う。
服の裾を斬られ、髪の先を斬られ、体にかすり傷が付く。
一度観鈴は間合いを大きく離した。
自分の息が上がってきているのに対し、向こうはペースはちっとも乱れていない。
「はぁっ……はぁっ……」
「それが人間の限界ですの。本当人間は脆くて可哀想になってきますの」
その物言いで気づく。
相手は刀が人の体を操っているだけなのだ、刀に疲れは伝わりはしない。
やはりあの二本は……使い手である舞の体を気遣っていないのだ。
「ねえ観鈴お姉さん。そろそろ不殺の誓いなんてゴミ箱にポイしちゃったらどうですか?
私たち二人を同時に相手するのに……この人のこと気遣ってたら勝てないですよ」
「悪いけどそれは聞けないかな。決めたの、偽善を貫くって」
「誰もそんなこと望んでないかもしれないのに? ただの自己満足ですよね。
振り回される周りの人たちはいい迷惑ですよ、今更あなたの改心なんて誰も必要としてないのに。
あなたに殺された人達もさぞかし未練でしょうね、己の信念をあっさり曲げるような人に殺されちゃったんですから」
「…………。
何を言われても、わたしは前だけを見るよ。それが誓いだから。
あなたの言うとおり、それはわたしの自己満足かもしれないけど……それでもわたしは、人を救いたい」
「……つまんない。全然つまんないです。
あなたが後悔してくれないと全然気持ちよくないんですっ」
残念そうに無海が呟く。
そして舞がまた刀を三本構えなおした。
「無海。思い知らせてやるのがいいんですの。
たっぷりと苦痛と後悔に溺れさせてから殺し、そして残った刀を叩き折る。
それであたし達の役目はおしまい。明日から他の人についてまた人を一杯斬れるんですの」
「はい、お姉ちゃん」
舞が一気に地を蹴った。
勝負をかける気だ、観鈴にもそれが分かる。
二人はお互いに距離を保ちつつも牽制をかける。
だが観鈴には距離を離しすぎることは許されない。
相手には遠距離からの地龍走破がある。遠くからの間合いで攻められれば少し不利だ。
だが近距離も決して楽だというわけではない。
三つの剣戟が自由自在に観鈴に襲い掛かってくる。弾くだけでも精一杯だ。
そんなとき……
「が、がおっ!?」
観鈴が一瞬体勢を崩した。
そこを見逃さず舞が一気に距離を詰める。
「勝機!」
相手の小太刀と無海が観鈴の左右の逃げ道をなくし、更に上への逃げ道も金華が封じる。
「鬼斬りぃっ!! なます斬りになるがいいですの!!」
観鈴は……
A 縮地からの抜刀術で相手の攻撃よりも先に自分の攻撃を当てる
B 藤林一刀流の捌きで太刀筋をそらし反撃
C その瞬間、舞を上空に跳ね飛ばした
D 後ろに跳んで一度下がった
C
一瞬無海と金華は何をされたのか分からなかった。
自分達が必殺の間合いを持って突っ込んだというのに、気づけば宙を舞っている。
だが……金華には見覚えのある技だ。この技は……
「龍牙旋風斬り……まさか!?」
「にはは。うまく出来るか自信なかったけど……よかった、うまくいって」
「そんな……人間ごときが、あたしの技を!?」
「見よう見まね。これ、みすずちんの得意技」
観鈴が笑った。
次の瞬間……小太刀がバラバラに壊れ、舞の体は地面に叩きつけられる。
ぐしゃっという音がし、舞は起き上がる気配を見せない。
そして、舞を操っていた金華と無海は……
「……痛い! 痛い痛い痛い痛い痛い! ものすごーく痛いですの!!」
「ヒビが……体にヒビが! 痛い……痛いよ!!
一度直してもらわないと……このままだと壊れちゃう、壊れちゃうよ!!」
「……わ、まだ動いてる」
地面に突き刺さったままの状態で苦しみの声を上げた。
無海の刀身は元近くに大きなヒビが入っており、
このままの状態で刀を振ればどうなるかは想像に難くない。
一方金華のほうは距離的に観鈴に遠かったせいか、
はたまた自分の技だから無意識的に直撃を避けたのか、
無海ほどの手痛いヒビではない。
観鈴はチラリと舞の方を見た。
地面に思い切り叩きつけられたとはいっても、直接的な斬撃は与えていない。
二本の傀儡が解ければ直に目を覚ますだろう。
「勝負、あったよね」
観鈴がゆっくり、警戒しながら二本に近づく。
「まさか……あたしの龍牙旋風斬りが……」
「うん、とっても強いよその技。奥義って言っても全然恥ずかしくない。
あなたが使ってれば、ヒビだけじゃなくてそのまま刀を叩き壊すことも出来たんじゃないかな」
空を上に掲げる。
無海が、恐る恐る観鈴に問いかけた。
「……やっぱり壊すんですか? 私達を……」
「そうだね。あなた達は理由もなく人を斬るみたいだから。
だから……壊させてもらっても、いいよね?」
観鈴が一息つく。そして……
A そのまま無言で二本を叩き折った
B 二本がその言葉を受け入れた。怪しい……
C 金華が無海の命乞いをした
D 今一度抵抗してきた(刀指定 金華or無海or両方)
A
「………………」
観鈴は無言のまま、二本の刀を片手に持つと、ひょいっ、と軽く上空に放り投げた。
くるくると回る刀身が一定間隔ごとに月明かりをキラキラと反射する。
場違いなこと甚だしいが、観鈴はそれを見てなんとなく、綺麗だな、と思った。
「ああ……ああっ!」
「そ、そんな……!」
二人……否。二本の悲痛な声。しかし、もはや観鈴には届かない。
「……さようなら」
回る二本が眼前まで落ちてきた瞬間、『空』の横一線。
ぱぱぁぁぁぁぁ――――――んっ!!
甲高く、鋭い音と共に……
幾千もの血を吸ってきた柏木楓の過ちは、木っ端微塵に打ち砕かれた。
残るは、1本……
「―――!」
その瞬間、観鈴の耳に届いたのは自分等の部屋から聞こえてきた金属音。
「透子さん!」
悲鳴を上げる体は無視。両脚を無理矢理鼓舞し、観鈴は再び走り出した。
「……!?」
場面は移って、その透子らの部屋。
微笑を浮かべながらトウカの連続抜刀術を受け流していた千鶴の表情が、はたと固くなる。
「金華……無海……?」
同族の勘。千鶴は、妹達が壊(ころ)されたことを何となく感じ取った……
「戦いの最中に……余所見をするなッ! 破ッ!!」
トウカが激昂しながら再度斬りかかる。
「小煩い蝿ですね……」
やはり易々と受け流すと、今度は反撃に転じる。
「少し力を入れますよ……」
「なッ!?」
流した体勢のまま、刀は振るわず片手の拳を握り固め、そのままボディーブロー。
「が………ッ!!」
しかしそれだけでトウカの内臓は派手に掻き混ぜられ、反吐を撒き散らしながら反対側の壁へと叩きつけられた。
「トウカさんッ!」
慌てて駆け寄る透子とリサ。
「だいじょ……これくら、ゲホッ! ガホッ!」
無理をしているのは一目瞭然だ。元々半病人で長くは闘えない体なのだ。
「………………」
しかし千鶴は、そんな光景を見ても追撃は行わず、虚ろな視線を外に向けていた。
「……どういう、つもり……だ!?」
再度刀を構えながらトウカが立ち上がる。
「…………どうやら、私の妹達が壊(ころ)されたようです」
「……Ha!」
それを聞いたリサが笑みを浮かべる。
「ウチの子たちをなめた報いね! さあ、あなたも命が惜しければさっさと消えなさい!」
しかし千鶴はリサの挑発には答えず……
「そうですか……壊(し)にましたか……」
独り言を呟くように……
A 「役立たずですね……所詮欠陥品ですか」
B 「一応……仇は討たねばなりませんか」
A
「役立たずですね……所詮欠陥品ですか」
つまらなそうに、ただ一言そう吐き捨てる。
その物言いに、三人はぞくりとしたものを感じた。
「自分の妹が壊されたってのに……なんて刀なの」
「『よくも妹を! 殺してやる、殺してやるわ!!』
……とでも言えば良かったんですか? そんなのただの偽善ね。
妹として可愛がってはいましたが……所詮欠陥品は欠陥品。
『後悔』と『憎悪』の怨念を篭めた無海、『苦痛』と『殺意』の怨念を篭めた金華。
そして『略奪』と『破壊』の怨念を篭めた断頸。そのどれもが神尾観鈴に壊された。
やはり……人間の感情を怨念として込めることがそもそもの間違いなんですよ」
振り向きもせずびゅっと刀を振るう。
反撃を試みようとしていたトウカがドガッという音とともに壁に叩きつけられた。
「私の目的はただ一つ。そこの刀を手に入れ、私が最高の刀となること。
偽善に溺れ、人を生かす刀など打った柏木楓に教えてあげます。それが過ちであると。
刀は殺戮道具。人を殺すために生まれ、人を殺すために使われます。
わかりますか? 刀はそれだけのためにあり、それが全てです。
金華も無海もそれは分かっていたみたいですが……甘いんです。
あの子達は戦いそのものを楽しみ過ぎた。強い者との勝負を求めすぎた。
そんな必要は全くないんです。人を斬る、ただそれだけで十分。
あの二本は強者と戦いたいだの……変なところで人間味がありました。刀として欠陥品ですね。
そして偽善的な刀”もどき”に負けるほどの役立たず……。恥ですよ、恥。
人を守るだの弱者のためになど……本当に見苦しい。
人間は斬ることに下らない理由をつけすぎです。所詮は全て偽善に過ぎないんですよ!」
そのままトウカを追い、自らの体である偽善千鶴を振りかぶる。
「死になさい! 偽善者達が!!」
「くっ……!!」
トウカがふらつきながらも刀を構える。トウカのとった作戦は……
A 相手の攻撃を受け流し一撃を見舞う
B 特攻覚悟で突っ込み、無理やり千鶴を白穂から引き離す
C 守りに徹し、観鈴たちの応援を待つ
D その時リサが千鶴に向かって発砲した
C
「…………ふう」
トウカは覚悟を決めた。
死ぬ覚悟を。
元より主・白皇のためと捧げた命、その仇を討つためと捧げた命。
しかし今、己の背後にはその白皇の妻だった透子がいる。
エヴェンクルガは義に生き、そして義に死す。
守るべきものを、守るためならば……
「…………来るがいい」
トウカは片手に刀、片手にその鞘を持つ。
徹底的に、防御に拘るつもりだ。
「……勝つ気を棄てたのですか? 臆病なことですね……」
偽善千鶴の一撃を両手で受け止めるトウカに、千鶴が心底侮蔑したように吐き捨てる。
「誉れ高きエヴェンクルガの名も地に落ちたものです」
「好きに言え」
しかしトウカは静かに答える。
「守るべきものを守るためなら、誇りすら捨て去ろう。それもまた、エヴェンクルガの誇り」
「くだらない……要するに自分に甘いだけではないですか。どこまで行っても人間とは……偽善、極まりない!」
膝蹴りと同時に振り下ろし。膝は肘で止められたが、千鶴の刃はトウカの防御を弾いてその肩口に食い込んだ。
「……フ」
ニヤリと笑う千鶴だが、トウカは眉一つ動かさない。
「…………!!」
「な!?」
トウカは無言のまま、己の肩口に喰らい付いた偽善千鶴の刀身を鞘と刀で挟み込み、梃子の原理を応用してギリギリと締め上げた。
もちろんさらに己の肩深くに刃が食い込む形になるが、力を緩める気配はない。
「ッ……!」
一瞬身を引き裂く激痛に捕われ、一歩間合いを広げる千鶴。
「あなたは……!」
トウカは、肩から血を流しながらも怯まず再度立ち上がる。
「さあ、来るがいい呪われし妖刀よ。エヴェンクルガが末子トウカ、たとえこの身が砕けるとも」
そして再度、構えを整える。
「一歩たりともここは通さん」
「透子さん! みんなっ!」
そして少しの時間が経った。
階段を登るのもまどろっこしいと、窓から直接己等の部屋に飛び込んだ観鈴。
そんな観鈴の目の前に広がる光景は…………
A たった今、千鶴に貫かれたトウカの姿。
B 赤い水たまりの中に倒れ、今すぐにでもとどめを刺されそうなトウカの姿。
C 血まみれで千鶴と壮絶な鍔迫り合いを演じているトウカの姿。
C
ついにうっかり選択肢が消えたーッ!?
「おおおおおぉぉぉっっっっっ!!!」
「せやぁぁぁぁっっっっっっ!!!」
千鶴とトウカの声が重なる。
はじめに観鈴が見たものは、血塗れになって戦っているトウカの姿。
守りに徹しているとはいえ、千鶴の攻撃はトウカといえども捌ききるのは難しいものがあった。
一振り、また一振りと偽善千鶴が振られるたびに、トウカの体に刀傷が増える。
「トウカさんっ!」
観鈴の声にその場の全員が観鈴のほうを振り向く。
トウカは観鈴の姿を見るなり、一気に千鶴と距離を離した。
観鈴の横まで来て、トウカはふっと笑う。
「……遅いぞ、観鈴殿」
「ごめんね……本当に、ごめんね……」
「彼奴の相手は……観鈴殿に任せてもよろしいか?」
「うん。いいよ……」
答えの分かりきっている問答。
その問答が終わり……トウカが安心しきった表情で床に倒れる。
もうトウカは……限界だったのだ。
観鈴一人でここに現れたことに、リサが聞く。
「観鈴、みさきはどうしたの?」
「……ここまでは来れなかった。妖刀に……」
「…………そう」
リサもそれ以上聞かずに、パチンと爪を噛んだ。
その様子を見て、くすくすと笑うのは……偽善千鶴一本のみ。
「……なんだ、一応敵の戦力を削ぐことは出来てたのね。
無海、金華……役立たずは言いすぎだったわね、ほんの少しだけ役に立ったわ」
そう独り言のように呟いた後、
急に表情を鬼のように変え観鈴を睨み付ける。
「……初めまして。あなたが楓の刀を持つ神尾観鈴さんですか」
「うん、わたしがみすずちん。あなたが……最後の鬼神楽の一本なんだね?」
「そうですね。断頸も、金華も、無海もあなたに叩き折られた。
三本とも……私についてくることはできなかった。もう残ったのは私だけですね。
この場であなた達全員を血祭りにできるのは……私だけです」
自信たっぷりの表情で千鶴が観鈴のことを見下ろした。
今の観鈴は……致命傷ではないとはいえ、あまりにも傷つきすぎていた。
金華と無海から受けた傷がかなりのハンデとなって観鈴にのしかかっている。
「あなたは、わたしがこの手で壊すよ。
きっと……あなたをそのままにしていたら、たくさんの人が殺されちゃうから」
「下らない偽善ですね」
「うん。わたしのは偽善。
でも……偽善でも、偽善でもいいから人の役に立ちたい」
「そう、ですか……」
ふぅっと千鶴がため息をつく。
また厄介なものをみるような、呆れた目で観鈴のことを睨み付ける。
「どうして私が『偽善』千鶴なんて名前がついてるか、知ってますか?」
「…………」
「あなた達のような『偽善』を斬るための刀だから、なんですよ!」
千鶴がその言葉と同時に地を蹴る。
千鶴は……
A 観鈴に斬りかかった
B 怪我をし倒れているトウカを斬り付けた
C 方向を変え、透子の持つ刀を直接狙いに行った
A
偽善千鶴が観鈴を捉える。
観鈴は千鶴の一撃を刀の腹で受け流しつつも、反撃を試みる。
が、それも千鶴は自分の体である偽善千鶴で受け止める。
永遠無海と小金華を完膚なきまでに叩き壊した空の一撃だが……
偽善千鶴には刃こぼれ一つ、起こすことは出来なかった。
観鈴はそのまま鍔迫り合いの形になり、数秒の硬直の後一歩引く。
間合いが離れたとき……千鶴がにやりと笑った。
「強いですね、あなたは。そこのうっかり侍よりよっぽど厄介です。
ですが……やはり人間。息が上がってますよ、連戦は辛いですか?」
「強い……みすずちん、ぴんちっ!」
「私を何だと思ってるんです? 鬼神楽の四姉妹刀の長女ですよ。
篭められた怨念は妹達とは格が違います。斬ってきた人間も桁が違います。
使い手に頼りすぎる断頸、技に溺れすぎの金華、小細工ばかり弄する無海。
私はそんな不甲斐ない妹達とは違う。
達人級の使い手も、一撃必殺の奥義も、相手を壊す精神干渉も、
そんなものは刀に必要ありません。私はそんなものは使う必要ないのです。
刀に必要なのは絶対的な強度と切れ味のみ。ただそれだけを鍛えればいいんです。
幾千人の血と怨念で研ぎ澄まされた私の刃は姉妹の誰よりも強く、そして鋭い……」
ギラリ……と偽善千鶴の波紋が光った。
己の強さと鋭さを誇るかのように、白穂の指で剣先についた血をそっとぬぐう。
「あなたの偽善臭いその剣で、私を折れるなどと思わないでください。
ましてやあなたは無海、金華と戦い手負い……。
それで私を折ろうなどとは、おかしくて鍔で茶を沸かしてしまいます」
「が、がお。それを言うならおへそっ……!?」
観鈴のツッコミは千鶴の太刀で阻まれた。
再び千鶴が観鈴に斬りかかってくる。千鶴の攻撃は純粋に脅威だった。
一撃一撃が無海や金華よりも早く、そして重い。
小細工のない敵が最も恐ろしい。
金華相手のように奥義の隙を付くことも、
無海相手のように心を強く持って己を保つことも出来ない。
一言で言い表すなら……隙がないのだ。完全に。
観鈴は空で千鶴に一撃を見舞う。
ガキッ……という音がしたが、やはり叩き折ることはおろかヒビも入れることが出来ない。
(どうしよう……)
観鈴は攻撃を受けつつも頭を悩ませる。
千鶴の刀としての硬度は他の姉妹に比べてかなり優れている。
生半可な攻撃じゃ千鶴には傷一つ与えることは出来なさそうだ。
それに……こちらの体力の問題もある。
こっちは連戦で体力は限界に近づいていた。
ただ打ち合うだけでも千鶴ほどの相手となると非常に体力を消耗する。
「だから言ったでしょう! あなたのような偽善の剣では私には勝てないと!
他人を守ろうなんて反吐が出ます! 刀の真髄は……斬ること! それ以外にありません!!」
刀を振りながら千鶴が吼える。
「確かにわたしの剣は偽善だよ!
けど……斬るだけが刀じゃない、人を守る事だって出来るんだよ!!」
「いいえ刀は殺戮道具! 殺し合いのために生まれ殺し合いのために使われる!
違うといいたいのなら……私を折って見せればどうですか! その守る刀とやらで!!」
お互いに叫びあった後バッと間合いを離す。
千鶴はふぅっと一息ついてから刀を構えなおした。
「あなたを殺します。偽善者を見るのは非常に不愉快です。
……手負いのあなたに次の一撃、果たして耐え切れるでしょうか?」
(がお……体力ももう少ないし、相手の剣が速い。みすずちん、だぶるぴんちっ!)
観鈴も内心焦りながら刀を構えなおす。
この状況で千鶴を倒すにはどうしたらいいか冷静に考える。
観鈴のとる方法は……
A 最後の体力を瞬天殺につぎ込む
B いちかばちか、千鶴の刀を白穂から弾き飛ばす
C 考えている間にもう千鶴の攻撃が迫ってきた
D 急に千鶴の操る白穂の体が吹っ飛ばされた
E その時、透子の持つ刀から強烈な瘴気が……
E
「わ、わっ!?」
「!?」
その時、不意に背後から聞こえてきた透子の叫び声。
冷静になって考えてみれば愚かなこと極まりない行為だったが、観鈴は反射的に振り向いた。
幸いだったのは、偽善千鶴もまた、同時に透子に気を取られたことだろう。
「あ、あつっ! 熱っ!」
慌てて透子が懐の中から何かを取り出そうとしている。
だが、観鈴と、そして千鶴にはわかった。
それは、熱などではない。
透子の懐から、猛烈な濃度の瘴気が噴き出している。
「お祖父様……」
千鶴の呟き。観鈴はそれを聞きとめたが、今は気にしている場合ではない。
「ふっ、ふえぇぇぇぇっ!!」
ようやく透子が取り出した古の短刀。
既にそれからは肉眼ではっきり見て取れるほどのドス黒い瘴気が陽炎のように立ち昇っている。
「……紛れもなく、それこそ始祖の剣!」
「!」
認めた瞬間弾かれたように千鶴が跳躍。『それ』に手を伸ばす。
「寄越しなさい!」
「ふえっ!!?」
「駄目ぇッ!」
しかしこれには観鈴が背後から追いすがる。
千鶴へタックルをかまし、寸前で押し倒した。伸びた指が短刀を弾き、部屋の隅へと飛ぶ。
「くっ!」
「あ、ああっ!」
慌てて取りに行こうとする透子だが、その顔の寸前をひゅっ、と偽善千鶴の刃が撫でる。
「命が惜しければ動かないことです!」
「駄目! 駄目ッ!!」
「ええい、邪魔ですっ!!」
己に取りすがる観鈴に向かい、逆手に持った偽善千鶴を突き刺す千鶴。
しかしギリギリのところでそれをかわし、逆に腕を取ってお互いに取っ組み合いの体勢になる。
「渡さない……絶対に、わたさない……!」
「小娘が……人間にあれを扱いきれるとも思っているのですか……!?」
「観鈴、あれを守ればいいのね!」
そこまで見ていたリサ。2人が膠着状態に陥ったと見て、短刀に手を伸ばすが……
「だめリサさんっ!」
「!?」
観鈴の声がそれを静止する。
「リサさんがそれを持ったら大変なことになる! リサさん触っちゃだめ!」
「くっ……無駄に勘のいい! さすがは”母”が認めた女だということですか!?」
余所見をした瞬間、千鶴は観鈴の胴体を思い切り部屋の反対側に蹴り飛ばした。
「……!」
受身を取り、すぐさま起き上がるが距離が足りない。
「どきなさい異人!」
「ッ!」
追いすがりながら横薙ぎの一撃。寸前で一歩下がりリサはそれをかわす。
「もらった! これで私が……!」
千鶴の指が、短刀にかかる――――!
A 千鶴は短刀を手に入れた
B リサが拳銃で担当を弾き飛ばした
A
Bを選んだ場合
突然出てきた現SS書き担当のID:kbcOrLGl0が弾き飛ばされる展開だったら吹いてた
「SHIT!!!」
パンパンパン、とリサが拳銃を数発発砲するが、一歩及ばず。
「ふふ……ふふふふふふふふ……!」
銃弾は千鶴の手の甲、肩、そして頭に阻まれるに終わり、短刀は見事右手の中に収まることとなった。
「………」
千鶴の目が、光る。
「………!」
本能的に気圧され、一歩下がったリサ。それが僥倖だった。
今までリサが立っていた位置の真横の壁が、すっぱりと、豆腐に包丁を入れたかのように綺麗に抉られていた。
「……Unbelievable」
「下がって! 下がってリサさん! お願いだからっ!」
「……!」
「ふ、ふぇっ!?」
信じられない光景に思わず一瞬呆然としたが、観鈴の呼びかけで我に返り、すぐに透子を抱いて観鈴の後ろへと下がる。
千鶴なら充分追撃可能なタイミングだったが、彼女はそうはしなかった。
新たに手に入れた短刀の感触を確かめるように、ゆっくりと観鈴たちに向き直った。
「……ふふ、ふふははは………」
おかしくてたまらない、といった様子で笑う。
「……………」
無言のまま、『空』を構えなおす観鈴。
「……手に入れました。ついに手に入れましたよ、”鬼神楽の始祖”」
千鶴は高々と短刀を掲げる。
「始祖……?」
そしてゆっくりと、短刀の鞘を抜きながら説明を始める。
「そうですよ……この持つ短刀は柏木耕平を遥かに遡る柏木一族の始祖『次郎衛門』が打った究極の一刀、その残滓です。
数百年も前の話……自身も屈強な武士であった彼とその妻は、憎い仇を討つために己の総てを賭して雨月山に篭もり、ある刀を打った。
そして彼は完成したその剣を存分に振るい、見事仇の一族を一人残らず殺しつくし……一時は剣を雨月山へ封印……いえ、奉納した……」
少しずつその短い刀身が姿を現すたび、観鈴の心臓を直接捕まれるような寒気が走る。
「しかし、長い年月の中、剣はいつの間にか持ち出され……人から人の手へと渡り歩き……
その度に血を吸いながら、いつしか壮絶な怨念と憎悪とを宿す究極の妖刀となった。
戦の中で砕けても。その度に心ある……いや、心無い、でしょうか?
とにかくその力を求めた、血に飢える者共に自身を打ち直させ続けて。
現世へと残った最後の刃が……これです」
その刀身が露になる。
普通だ。全く普通の短刀に過ぎない…………が、あまりに禍々しい『それ以外の何か』を観鈴はひしひしと感じ取っていた。
「………その力、鬼神楽の末裔である私が使うのが相応しいと言えましょう………
さあ、我が始祖、お祖父様! 私に……その力を! 数百年にわたる……全ての力を私に!」
そして千鶴は……
A 短刀と『偽善千鶴』を融合させた
B 己の胸に短刀を突き立てた
A
「さあ……お祖父様! 今こそ、その全てを私に!」
「!」
千鶴が、逆手に持った短刀を『偽善千鶴』の柄に。
いや、その下にある茎の『鬼』の銘へと突き立てる。
その瞬間、弾けたような光が広がり、思わず観鈴たちは目を覆った。
「……?」
光はすぐに収束する。
ゆっくりと目を開く観鈴。目の前には、変わらぬ姿で佇む千鶴の姿。
そして、その片手に握られた…………
A おぞましさを覚える程の巨怪な太刀
B スラリと細く美しく伸びた刀
C ……逆刃刀?
C
「馬鹿…………な…………!?」
千鶴の目が驚愕に見開かれる。
その手に握られていたのは、観鈴の『空』と同じ……
本来刃があるところが峰になっている……
…………逆刃刀、だった。
「そんな……そんな馬鹿な!? これは、これは一体……!?」
激しく狼狽える千鶴。目の前の事実が信じられない。
自分自身が……刀の真髄は斬ること、殺すこと、血を吸うことと信じ、それのみを追求してきた『偽善千鶴』自身が……
『偽善』の象徴である、逆刃刀なんぞに!?
「なんだ……お祖父様! 始祖様! これはなんですか!? なんなんですか始祖様!?」
必死になって、『偽善千鶴だったもの』の中に眠る、鬼神楽の始祖に呼びかける。
「なんですか!? いったいこれはどういうことですか!? 答えてください! 答えて! 答えろ次郎衛門!
あなたは、お前は! 幾千幾万の血を吸い、全ての憎悪と怨念をその身に宿した、究極の妖刀では……なかったのですか!?」
「鬼神楽の……始祖……」
その様子に観鈴も、リサも、透子も……一歩も動けない。
やがて………
「……出てくる?」
千鶴が、ぽつりと呟いた。
「出てくる……出てくるというのですか!?」
「出て……くる?」
叫ぶと同時に、『偽善千鶴だったもの』の周りにキラキラと光り輝く粒子が現れる。
「鬼神楽の……始祖!」
やがてその粒子はゆっくりと、つむじ風に翻弄される落ち葉のようにくるくると回りながら一つの形を作り上げていく。
そして……そこに現れたのは……
A 瞳の奥に悲しみを秘めた屈強な武士
B どことなく楓に似た古風な女性
C どことなく初音に似た古風な女性
b
「楓……さん……?」
姿を表した女性。その容姿に観鈴は驚かされていた。
背の丈や体つきなどは記憶の中にある彼女と比べ幾分大人びたものである。
しかしその顔つきや印象。それは観鈴の記憶する刀工、柏木楓と瓜二つのものであった。
楓と同じ顔をした女性。彼女が口を開く。
「人の……子よ……」
「……っ!?」
思わず身構える。『偽善千鶴』が融合した鬼神楽の始祖を前に。
「そなたは……答えを見出せし……ものか……」
「こ……答え……?」
不意に尋ねられ観鈴は面食らう。突如現れた女性。彼女の言葉の真意を測りかねて。
「我は鬼神楽の始祖が一振り……今……我とともにある我が姉の写し身らの……」
「えっと……それってご先祖様ってこと?『偽善千鶴』たちの……」
そう尋ねる観鈴に対し女性は首を縦に振る。そして彼女は言う。
「人の子よ……我が写し身を携える人の子よ……そなたに問う。その逆刃をもつ意味はいずこ……」
無表情な、それでもどこか真摯なその目線。それが問いかける。観鈴に対し。
「『空』の意味……」
問いは反芻される。自分が今、手にする逆刃の意味。それは何か?
答えなど分かりきっている。閃く答え。それを伝える。彼女に。
「『空』は……わたしの……わたしの誓い。わたしが今までに殺めた人たち。
その人たちの死を無意味なものにしてしまわないための……
わたしの誓い……それは身勝手な偽善……けれどもそれをわたしは貫き続ける!
『空』はそんなわたしの支え。弱くて泣き虫で……今でも簡単に折れてしまいそうなわたしを……
ほんの少しだけ手助けしてくれるわたしの支え!!」
『偽善千鶴』は言った。刀とはただ人を殺めるための道具である。それ以外の意味は不要だと。
それは確かにそうなのかもしれない。所詮、道具は道具でしかない。
だがその道具に人は意味を与える。ただの用途以外の意味を。
今、手の内にある逆刃。これを託した刀工は魂とともに逆刃に意味を吹き込んだ。
今も残る彼女の遺志。そして託された想いとともに見出した己が『空』を手に取る意味。
それは証でもあった。ただの人を殺す道具でしかなかった自分にそれ以外の意味が与えられた。
道具自体にはそれが持つ用途以上の意味は必要ないのかもしれない。
けれども道具に託される人の想い。それは決して無意味なものなんかではない。
「ただ人を殺傷するための道具……そんな道具にもそれ以上の意味はあると……?」
再度の問いかけ。それを観鈴は無言で頷く。そして彼女は囁く。
「ならば……汝の答え……それが真のものか……我に……みせてもらおう……」
刹那、光とともに彼女はその姿をかき消した。光が消えた後。また一つの姿が立っていた。
その姿は……
A 『偽善千鶴』を携えた。金の髪を白い布でくくった観鈴が誰よりもよく知っている少女。
B 白穂ではないその真の姿を表した『偽善千鶴』
A
「あ……あ……」
「ふぇ……そ、そんな……」
「……Doppelganger……観鈴の……」
目前に現れたのは、長い金の髪を白い布でくくった少女。
他ならぬ、観鈴自身が誰よりもよく知っている少女。
かつての観鈴が、毎朝鏡の中で出会っていた少女。
観鈴の心の奥の奥で、観鈴の決意を静かに静かに嘲り笑っていた少女。
そう。それは登臼来藩を壊滅へと追いやり、京で人斬りと恐れられた存在――。
「にはは、 観鈴ちんだよ。皆は『人斬り観鈴』って呼んでるけどね」
右手に『偽善千鶴』を携えて、『人斬り観鈴』は「にはは」と無邪気に笑った。
部屋の隅では、血塗られた時代の観鈴を初めて目の当たりにする透子が、がちがちと歯を鳴らせて怯えていた。
「にはははははははははははははははははは」
「…………」
観鈴は、これほどまで自分の笑顔が醜悪と思ったことは一度もなかった。
自分の笑顔のおぞましさに、観鈴は心底嫌悪感を覚えた。
かつての自分に殺された多くの人々も、この邪悪な笑顔を、今生の最期の光景としてきたのか。
自分の笑顔の無邪気さに、観鈴は心底怒りを覚えた。
殺されゆく人々の希望も可能性も、まるで子供が蟻を踏み潰すように、踏みにじってゆく、かつての自分に。
そして何よりも――その笑顔から染み出す自分の暗黒に、観鈴は心底怯えた。
関わった者全てを呑みこみ、食らって行く、底無しの奈落、虚無の深遠に。
「が……がお……そんなに怖い顔をしなくても……」
「…………これが……最後の試練……か……」
「えー、試練? 何の事?」
「……こっちの話。人を殺める事しか知らないあなたには――かつてのわたしには、関係のない話」
傍らのリサも透子も、これほどまで冷え冷えとした怒気を孕んだ、観鈴の声を聞いたことはなかった。
「観鈴ちんは、遊んでるだけなんだよ」
「…………遊ぶ、ですって」
「うん! みんなでいのちをかけて、ずっとずっと、あそんでるだけなんだよ!」
……同じ言葉を、かつて深山美雪と榊しのぶの生首を転がして、軍勢の前でのたまった……。
「でも、なぜかみんな、楽しんでくれなくて、観鈴ちんひとりぼっち!
にはは! 観鈴ちんは可哀相ですね! 観鈴ちんはやっぱりひとりぼっちです!
でもぜんぜんへいき! 観鈴ちんは強い子だから! ずっとずっとこうして生きてきたんだから!」
……自分の口が、これほど呪わしいと思ったことはなかった。
その口から、かつて自分が殺めた朧の言葉が染み出す。
「……言いたいことはそれだけか?」
「はい! それだけです!」
明るく答える『人斬り観鈴』。
「覚悟はよろしいですか?」
刀をすっと抜き放ち、かつて激闘を演じたベナウィと同じ表情で、観鈴は告げる。
「はい! よろしいです!」
元気よく応える『人斬り観鈴』。
「なら…………」
かつてクロウがしたように息を吸いながら、部屋の傍らのリサ達に逃げるよう、目で伝えた。ここは、これまでにない程の死闘の場となる。
『人斬り観鈴』は、隙さえあれば平気で怪我人や弱者を狙ってくる。悲しい程にわかる。自分が――そうだったから!
リサも透子も、その眼光の恐ろしさに頷かざるを得ず、重傷のトウカを引き摺り始めた。
そして、三人が部屋から出た後――静寂をおいて――。
「全軍、突撃ィィィィィィィィィィ!!!!!」
「にはははははははははははははははははははははははは!
あそぼう! あそぼう! みんなであそぼう! ずっと、ずっと、いのちをかけて!」 あそぼう! あそぼう! みんあであそぼう! さいごの、さいごの、しあわせなおもいで!」
二人の観鈴の、対決が始まった!
先制を加えたのは!
A.観鈴
B.『人斬り観鈴』
C.まったく同時! 力も技も互角
B
suimasenn,genndougamisuzutinnnimiemasen
ゴバッ―――!
「がはッ…………!」
「にはは! にはは! にはははは!」
旅籠の壁が吹き飛ばされる。
その中から瓦礫と一緒に蹴りだされてきたのは……『神尾観鈴』。その後を笑いながら『人斬り観鈴』が追いすがる。
「が……ッ!」
大して受身も取れないまま、二階から落ちる勢いそのままに地面に叩きつけられる。
一瞬息が詰まるが即座に横に一回転。地面に突きたてられた追撃の『偽善千鶴』から逃れた。
『それは……過去のお前は……すなわち”人の業”そのものだ』
「にはは! にははは! 早い早い!」
「―――!?」
そのまま転がりながら次々と繰り出される人斬りの追撃を逃れていく。
そんな中、不意にどこからか―――否。観鈴の頭の中に先ほどの声が聞こえてきた。
『”妖刀”などと呼ばれても……我も、我が子孫達も……本質的には”圧倒的な力を持つ”以外他の物と違うところは何もない』
「この……おッ!」
「にはっ!?」
一瞬の隙を突き、足払いを人斬りの軸足に仕掛ける。倒すまではいかないが、一瞬その動きが止まった。
即座に跳ね上がり、距離を取り直す。
「逃がさないよっ!」
「!?」
『……私はそもそも次郎衛門が、己が愛した女の仇を討つために造られた……次郎衛門は、その妻は……殺すために我を打った……』
距離を開けた観鈴に人斬りが追いすがる。その動きは、かなり早い―――!
(縮地……!?)
一瞬疑問が浮かぶが、すぐにそんな自分に自嘲する。
そうだ、当たり前ではないか。”之”は”己”なのだ。
ならば自分の得意技である、初歩から最高速の縮地を使えるのは自明の理―――!
「けどッ!」
「あれぇー?」
『だが……総ては終わった。我はその役目を終え、戦いに散っていった御魂を鎮めるため……雨月山に奉納された。それで総ては……終わるはずだった』
人斬りの一薙ぎは空を切った。
直前観鈴がさらに早い縮地でその場を飛びのいたからだ。
(確かに……早い。けど、反応しきれないほどじゃない……。そう、向こうの早さはまだ三歩手前ぐらい……)
スカッた『偽善千鶴』を手に、人斬りはキョトンとした顔をしている。
「ああ、そっかそっか。そうだよねー」
そして、なにやらふんふんと納得した様子。
「観鈴ちん、もうちょっとがんばんなきゃね。ぶいっ!」
「!?」
その姿が、掻き消えた。
『だが…………私を再び戦の中へ駆り出したのは、他ならぬ”人”自身だ……。名もなきただの一兵士、だが、あの者は確実に”人間”だった……。
雨月山の祠から我を持ち出し、手始め―――そう。ついでと言わんばかりに、静かに余生を送っていた次郎衛門を屠り……
血に飢えた”人間”は我を手に戦場(いくさば)の中へと飛び込んでいった…………』
(早い――! さっきよりも!?)
「にははっ! 観鈴ちんだってがんばれるんだよー! 観鈴ちんは強い子だから!」
さらに速度を増した人斬りの縮地。同じように縮地でかわす観鈴だが、今度は避けきれず着物の胸元がパックリと割れた。
幸い体にまでは達しなかったが……すでにその差は紙数枚分にまで狭まっている。
「あれー? まだこれでもだめー?」
(今の速度は縮地二歩手前……。『加速』している!?)
『そして、死んだ。持ち主が死ぬ度に私は新たな持ち主の手に渡り……そして次々と血を吸っていった。
総ては……人の意志だった。そこに私の意志は関係ない。人の手によって、人の命が刈り取られる……総ては、その繰り返しだった。
我を手にした人間が血に狂うのか……血に狂った人間が我を手に取るのか……長い年月の果てに、どちらが先だったのか、どちらが本質だったのか、それすらもわからなくなった――――
死―――壊(ころ)されることも赦されず、その度に新たに打ち直され、また戦場へ戻る日々――――』
「じゃあ……これでっ!」
「!」
再度の人斬りの縮地。今までで一番早い。
(かわせない―――!)
瞬間的に判断した観鈴は、空で一撃を受け止めるが……
「チョエエエエエエエエーーーーーーーッ!!」
「!?」
その瞬間、側頭部への衝撃。一瞬意識が遠くなる―――
(石!?)
そうだ。役人を殺した、かつての己の得意武器のひとつ。
人斬りはいつの間にかその手に握りこんでいた拳大の石で、刀を受けた観鈴の頭を殴打したのだ。
『思えば我が娘たちも哀れなものだ…………。人の業の中に生まれ、人の業の中で踊り、そして人の業の中で消えていった――――
人の手より生まれしものが、人を支配できるはずもない―――。我が娘たちは、それぞれ考えは違えど……人に捕われていたという部分では同じだ。
無論―――私もだ―――』
観鈴が怯んだ一瞬の隙を突き、人斬りは逆手に持った偽善千鶴を振り下ろす。
しかし観鈴も歴戦の勇士。霞む目で、逆に間合いをさらに詰め、人斬りの鼻っ柱に頭突きを叩き込んだ。
「がお……痛いよ……」
さすがの人斬りも動きが止まる。その間に改めて距離を取り直す観鈴。
(今まではなんとかさばけた。けど……おそらく、次は……)
「にはは。さすがはわたし。『元』人斬りだね」
楽しげに笑う人斬り。
『我らは、”道具”。人に造られし、人の手によって使われるただの”道具”―――それ自身には、何の意味もない。
そんな我らに意味を与えるのは……他ならぬ、人間だ。造りし者の、そして何より使う者の意志―――
……我らを持った人間が血に狂うというのならば、それはその者が持つ邪な意志が、”業”が狂わせているのだ。
………わかったろう、人の子よ、娘よ、少女よ―――神尾観鈴よ。
罪と罰を身にまとう者よ。過去と未来を橋渡しする者よ。憎悪と愛をその身に宿す、”人間”よ―――
お前の答えを見せてみろ。お前の意志を見せてみろ。そして――――我を征したいというのならば――――』
「それじゃあ…………そろそろ、本気で行くよっ!」
人斬りが、抜刀術の構えを取る。
来る……来る。かつてない、否。かつての自分の、最高速の一撃が。
『己が業に、打ち勝ってみせるがいい』
(どうする―――? わたしが、わたしに勝つには…………)
A 生きるために編み出した『我流抜刀術』
B 杏から伝授された『藤林一刀流』
C 柳也との修行で見出した肉斬骨断の『見切り』
665 :
名無しさんだよもん:2005/11/21(月) 11:25:07 ID:ZDIgnKyo0
c
(わたしに勝つには柳也との修行で見出した肉斬骨断の『見切り』――)
A..見切れた
B.見切れなかった
b
さすがにそれは認められんだろ
この程度で立ち行かなくスレなら所詮そこまでということ
『空』を低く構え、全神経を両目に集中。『わたし』の動きを凝視する。
「にはは」
動き自体はわかっている。完全なる縮地からの超神速抜刀術。
「いっくよー」
表情を読むのは意味がない。殺気を見るのも無駄なこと。
見切るしかない。
それが『人斬り観鈴』だから。楽以外のすべての感情を失った、ただの肉斬り包丁。
だからこそ、最強でもあったのだ。
その刃が今、己に向けられる。
「縮地っ!」
人斬りが迫る。空気の震えが肌を刺す。
一瞬で間合いを詰められる。考えてみれば、わたしは縮地を使う人間と戦うのは初めてだ。
想像以上に―――これは―――!
「!」
わたしは構えを解き、みっともなく上体を逸らして一撃をやり過ごした。
鼻先を神速の一薙ぎが通り過ぎる。そのままバク転で飛びのき、改めて間合いを取り直した。
追撃は―――なかった。
人斬りはしげしげと自分の得物―――逆刃刀と化した、偽善千鶴を眺めている。
「うーん、やっぱりこれじゃあだめだめですね。抜刀にはちょっと不向き。にはは」
確かに、逆刃の不利はそこにある。
先ほど一撃をかわせたのも、最高速度がわずかにブレたからだろう。
「始祖様、ちょっと変えさせてもらうよ」
そしてヒュン、と二三度『偽善千鶴』で空を撫でる。
気が付くと――――
A 鬼神楽の始祖の姿を得ていた
B わたしが一年間使い続けた無銘刀の姿になっていた
C 元の偽善千鶴の姿に戻っていた
なんつうか。
・だけど、あんまり無茶苦茶なことになったら「リコール」されちゃうこともあるんだって。
で……
A 一行レス乱発を防ぐ意味で
>>666はなかったことにする。
B こんぐらいならそのまま続ける
ここはCだ。千鶴と決戦を
673 :
671:2005/11/21(月) 17:45:32 ID:5fVr5waK0
相談して決めればいいおwww
「ははは……あはははははははは!」
気が付いたら、『始祖』こと逆刃刀の姿は元の『偽善千鶴』の姿に戻っていた。
同時に、『わたし』からわたしの声ではなく、千鶴の笑い声が聞こえてくる。
「素晴らしい……これは素晴らしいですよ観鈴さん。最高です。私、あなたへの認識を改めました」
その声は、とても愉快そうで。
「始祖様の囀りなど最早どうでもいい……観鈴さん、できれば私、白穂などという中途半端な女ではなく
かつてびあなたに出会っていればよかった……あるいはあなたにさえ出会えていれば、始祖様の剣など求める必要もなかったかもしれま」
「煩いよ黙ってておばさん」
「………………」
……さすがはかつての『わたし』。
一切合財容赦がない。
「……少々前言を撤回させていただきます。最高というのは言いすぎでした」
「刀は刀らしく黙って人を斬ってればいいんだよ。それを使うのはわたし。余計なことは言わないで」
「まあ……そうですね。ただ斬ってさえいればいいというのには私も同意です。
あなたなら私が何を言うまでも干渉するまでもないでしょう」
「にはは」
「…………っ!」
偽善千鶴が黙った瞬間、『わたし』から迫る威圧感が一気に数倍に膨れ上がる。
……考えるまでもなく、ぴんちだよこれは。
ただでさえ『わたし』の相手だけでも手一杯だっていうのに、この上『偽善千鶴』にまでその力を発揮されちゃ……
「にはは、行くよ。『わたし』」
パチン、と『偽善千鶴』を鞘に納めた『わたし』がにこりと微笑む。
ああ……そうだ、これは。
「にははは……それじゃあ」
とどめの一撃…………
「死んじゃえ」
A 受け止める
B かわす
C その時、「飛んで!」と後ろから声が
A
自分のことだからわかる。最高速度の縮地からの抜刀術はかわしきれるものではない。
ましてや今は逆刃刀ではなく、真剣。しかも現代の妖刀では最強ともいえる偽善千鶴。
わたしは瞬間的に『空』右手に持ち、防御の体勢に移……った瞬間、右腕に強烈な衝撃が伝わってきた。
「にはは、もう、しつこいなぁ、あなた」
「くっ…………!」
ギリギリと右腕と『空』が悲鳴を上げる。
一撃は止められた。受け止められた、が……
「よ……い、しょっと!」
「ッ!」
さらに『わたし』が一歩を踏み込んだ瞬間、縮地の運動エネルギーが解放される。
さすがに『空』が折れ飛ぶことはなかったけど、わたしの腕の方が、耐え切れなかった。
ズシャッ!
嫌な音が聞こえた。耳と、顔の骨を伝わって。
「にはは。お化粧お化粧。真っ赤っか。似合ってるよ」
「ほんとうに、よく似合っていますね」
一人と一本の声が遠くに聞こえる。
顔が熱い。顔に斜めの熱い線が走っている。線から何かが流れ出す。
わたしは手のひらを、顔に当ててみた。
手には真っ赤な鮮血。
ああ、なるほど。わたしは顔を切り裂かれたんだ。
「にはは、さすが『わたし』だね。ここまでわたしの縮地に耐えるなんて」
「……………」
体の中から何かが抜けていく。わたしはその場にガクリと膝をついた。
意識が遠くなる。わたしの血が地面に染み込んでいく。
「……でももう、いいや。そろそろ飽きちゃった。死んで」
頭の上から聞こえる自分の声が薄い膜の向こうみたい。
地面に点々と印をつけていくわたしの血。その一滴一滴に何かの影が浮かんで消える。
ああ……これは、そうか。
岡崎さん。北川さん。聖さん。佳乃ちゃん。雪見さん。榊さん。柳也さん。神奈ちゃん。裏賀さん。
楓ちゃん。初音ちゃん。七瀬さん。杏さん。みさきさん。白皇さん……
……お母さん。
そこにいたんだね。みんな、みんなわたしの中に。
わたしは、みんなの命を奪った。
わたしが、みんなの命を奪った。
みんなの命を、わたしが、この手で、もぎとった……
そして、わたしの、中に…………
ああ……そうか。
そうだね…………
なら、わたしは…………
A 縮地の”一歩先”を見る
B 生きている人たちのことを思い出す
C かつての『わたし』を解き放つ
C
「死んで」
『わたし』が最後の抜刀を放つ。
空気を切り裂く音が聞こえる。
その瞬間、わたしの中で『わたし』が…………弾けた。
「……え?」
人斬りが呆けた声を漏らす。
間違いなく観鈴の首を斬り飛ばすはずだった最後の抜刀術。
しかし終わってみれば、弾き飛ばされていたのは己の『偽善千鶴』。そして、己の体にめり込んでいる『空』の刃。
「え、あぐっ!!?」
少し遅れて衝撃が内腑を揺さぶる。口の端から反吐を漏らしながら、人斬りは観鈴から距離を取った。
「……なに? どうしたの?」
感情を無くした身でも、疑問は浮かぶ。いつのまにか人斬りは、そう呟いていた。
「…………!」
真っ直ぐ見開かれた観鈴の視線が人斬りを射抜く。
それを見て、人斬りが思い出したのは…………
「…………鏡?」
毎朝見ている己の顔。己の表情。己の瞳。
瓜二つではなく、それは全く同じものだった。
「にはは……そう。そういうこと」
合点がいったように、人斬りが含み笑いを漏らす。
「結局あなたもわたしも人斬りなんだね。土台無理なんだよ、今更わたしが変わるなんて」
呟くと同時に縮地からの抜刀術。しかし、またしても弾き返されたのは人斬り。
「……ふふ。ふふふふ」
笑いながら起き上がる。
「にはは……わたしですら殺さないの? 『人斬り観鈴』。わたしはあなたが最も憎んでいた人間だよ?」
「…………そう」
観鈴は静かに答えた。
「わたしは二度と誰も殺さない……誰も傷つけない。そう信じて闘ってきた」
その口調は懺悔するようで
「けど……わたしはずっと殺してきた。一人の人間を。ずっと傷つけてきた。一人の人間を」
もう一度、人斬りを見据える。
「それは……あなた」
「…………?」
「わたしはあなたが憎かった。わたしはあなたを忘れたかった。だから封じた、あなたの力を。
けど……それは間違っていた。あなたは力。わたしの力。力そのものに意味も善悪も罪もない…………
問題なのは、それを使うわたしの心。わたしの意志。
邪悪だったのは、わたしの意志。
けど、わたしははじめて人斬りを、わたしの中の人斬りを赦す。
そう……わたしはわたしがずっと赦せなかった。幾人もの人の命を奪った人斬りを。
けど、それは間違いだった。
わたしはあなたを使う。わたしはあなたを超える。わたしはあなたを……打ち破る!
『人斬り観鈴』ッ!」
最後の力を振り絞り、空を構える。
「……へえっ! わたしを……赦す!? あなたの、わたし自身の忌まわしき過去を!」
「そう。あなたを乗り越え、わたしはあなたと一つになる!」
「わたしはあなたの大切な人を何人も奪った仇だよ! わたしを育ててくれたお母さんも!
わたしを愛してくれた杏さんも! 殺したのはわたしの力! それとひとつになる!? わたしが憎くないの!?」
「憎い! すごく憎い! だからわたしが…………あなたを救うッ!!」
目覚めた観鈴。
観鈴が最後に使うのは…………
A 我流抜刀術
B 藤林一刀流
C 見切り
A
「にはは……そう、そうだよね。そうじゃなくちゃ面白くないよね?
やれるものならやってみれば?
どろり濃厚よりも甘い今の「わたし」がこのわたしに勝てるの?
所詮この世は弱肉強食。その不文律すら捨てたあなたが……っ!?」
人斬りが偽善千鶴を構える。
そんな中、千鶴だけが冷静に状況を解析していた。
(あれは……正しく、この人斬りの観鈴と同じ! いえ……覚悟は人斬り以上!
神尾観鈴、最後の最後に……厄介なことを!!)
千鶴の出した結論、あれはもう今までの観鈴ではない。
これで相手はこの人斬りの観鈴と互角。
そして使い手が互角なのだから、勝敗を決するのは……
「……どちらの刀が優れているか。ですかね」
そう呟いた。
千鶴に思わず笑いがこみ上げる。
自らの手で、偽善の象徴に引導を渡し、
殺しのために作られた自分の方こそ刀として正しいことを証明できる。
奇しくもその絶好の機会が周ってきたのだ。
「楓! ここであなたに知らしめてあげます!
切れ味のみを追求し、己の姉をその手にかけてまで怨念を封じ込めた刀が上か、
それとも下らない偽善と懺悔に囚われ作り出した逆刃の刀が上か!
全ては……全てはこの一太刀で決着がつくのです!!」
千鶴が吼える。
対する観鈴は……先ほどとは恐ろしいほどに静かだった。
人斬りの方ももう何も言わない。二人には千鶴の声は届いていなかった。
目の前にあるのは……自らの決着のみ。
すっと、同時に二人の姿が消える。
いや、消えたのではない。高速で移動し消えたように見えただけだ。
観鈴の我流抜刀術は本来路地や室内など閉鎖された空間で真価を発揮した。
そしてこの旅籠の中は……その条件に適する、おあつらえの舞台。
お互いが高速で壁や天井を蹴り移動する。
その光景はまるで空襲のようでもあった。
「にははは! さ、わたしを赦してみたら!?」
「…………!」
縮地の三歩手前。まだお互いに刀を振り合わない。
「その偽善を木っ端微塵に砕いてあげます! 偽善を斬る私の刃で!!」
「…………!」
縮地の二歩手前。相手との距離は段々縮まってきている。
次の最後の一刀を振り合うために。
縮地の一歩手前。
お互いがまるで示しをあわせたかのように部屋の対極に位置する。
もう言葉を発するものは誰もいない。
そして……
最高速の縮地。
二人はお互いに突進する。
最後の奥義を使うために……
「いくよ、甘っちょろいわたし! あなたじゃ絶対わたしには勝てない!!」
「ううん、きっとあなたを打ち破る! 想いの差で……絶対に負けない!!」
そして……
「「瞬天殺!!」」
二人の声が、重なった。
バアァァァン!!
と、斬るという表現には似つかわしくない音が辺りに響く。
そう。斬った音ではない……打った音だ。
そして、それが意味するものは……唯一つ。
「え。嘘……」
地面に背中を預ける『人斬り』
観鈴の一太刀を受けた結果が……これだ。
当の観鈴は人斬りに背中を向け、抜刀した体勢のままだった。
そして、次の瞬間……
A 観鈴は空を鞘に収めた
B 観鈴の体から鮮血が吹き出た
A
b
C
A
3(695)
空をチン、と鞘に納めると同時にゴロリと人斬りの手から『偽善千鶴』がこぼれ落ちた。
「にはは………はははは………」
そして、倒れたまま、虚ろな笑い声が聞こえてくる。
「………………」
ゆっくりと。ゆっくりと過去の……否。もう一人の己自身に歩み寄る観鈴。
そう、総ての意味で彼女は今『人斬り観鈴』へと歩み寄っていた。
「やあ……『わたし』」
倒れたままの人斬りが、まるで懐かしい旧友に声をかけるような気楽さで観鈴を呼ぶ。
「……やあ、『わたし』」
観鈴も、やや強ばった声ながらそれに答える。
「……結局、わたしは何だったのかな?」
虚ろな目をして、人斬りは呟いた。
「過去のわたしとは決別し、未来のあなたからは疎んじられ…………
わたしの思い出はただ、騙され、裏切られ、追っ手から逃げ、死に掛けて。
京都で杏さんに拾われ、後は言うがままに人を斬り続けたことだけ…………
過去のわたしのように、お母さんとの楽しい思い出や白皇さんから優しくされたこともなく
未来のあなたのように、リサさんや透子さんと一緒に旅をして、いろんな人から怨まれ詰られ、そして認められ…………
そんなこともない。
ただただ、京都の闇で刃を振るい、来る日も来る日も血煙の中を生きてきた…………
本当、感情でも無くさなきゃやってらんないよね」
「………………」
「羨ましい……あなたが本当に羨ましいよ。わたしはいったい何のために……生まれてきたんだろう。生きてきたんだろう。
ねえ……答えてよ、もう一人の『わたし』。わたしは何のために……何のために一人で闇の中生きてきたんだろう…………
過去の思い出も、未来の希望もなく……ただ、わたしは殺し続けた。
わたしたちが生きるために…………にはは、とんだ貧乏クジ…………だよね」
「………………」
「ねえ……最後なんだし、何か言ってよ『わたし』。
それともこんな人斬りとは…………口も利きたくないかな?」
「………………」
観鈴は…………
A 無言で『観鈴』を抱きしめた
B 「さようなら」と言った。
C 「ごめんなさい」と言った。
D 「………………」結局、何も言うことはできなかった。
A
A
a
でかいのきそうだからB
このスレ観鈴話のみで埋まっちゃったな
だから時空旅行より短いから問題ないんだってば
時空旅行は、バトルが終ってからが長かった。
みさき「時空旅行は宴会とか麻雀とか横道に逸れすぎだったんだよ、今から思い返せば」
綾香「私を出す出さないで揉めたりもしたしね」
楓「……ドリンク飲みます?」
次からエピだから、まだ続くのか系の発言はなくなりそうだ。
しかし、今回はレス数自体よりも、1レス辺りの分量が多かったんだな。
思ったより長く感じるのもその辺りが関係してたのかも。
千鶴「不覚……あんな偽善者に敗れるなんて」
七海「お姉さま、それより!」
すばる「酷いですの! 役立たずだの欠陥品だのボロクソに言われちゃってますの!!」
千鶴「え、そ、それは……言葉の綾よ」
七海「憎まれるのは大好きだけど、悪口言われるのは嫌なんですよ!
酷いです酷いですあんまりですっっ!!」
すばる「おまけにどっちかというとあたしや無海のほうが強かったんですの!
刀の強度と切れ味だけが己の武器なんて正直流行らないんですの!」
千鶴「なっ……それは書いた人に言いなさい! 書いた人に!!」
七海「それに……誰もツッコミ入れなかったかのが不思議だったんですけど……」
すばる「『偽善者を見るのは不愉快』って、
それはお姉さまにだけは言われたくないセリフナンバー1ですの!」
千鶴「どこがですか! どこが!!」
断頸「それよかあたしの中の人を決めてくれよ。せっかく復活キター!!と思ったら
リコールされたし。」
>>706 柏木家は四女の方が(ry
ま、それはそれとして梓しか思い浮かばないなぁ。丁度良く出てきてないし。
次点として七瀬が使ってたんだから広瀬。他のキャラは大穴ってところかな。
千鶴「まぁ七海には敢闘賞をあげても良いかしら、盲剣と二度戦って勝っていますし」
すばる「一度目は負けてますの、良くて引き分けですの」
七海「お姉ちゃんは一度目に適当に体を選びすぎです、わたしも正直勝てるとは思いませんでした」
千鶴「盲剣の過去が悲惨だったのが幸いね、正直あの偽善者と戦っていたら瞬殺だったでしょ」
すばる「元の寄り代を殺したのはわたしですの」
七海「気絶した相手にとどめを刺しても自慢になりませんよ」
すばる「ぱぎゅ〜」
白皇「杏が真っ白に燃え尽きているな」
綾香「あれだけいいとこどりしといて贅沢ね」
瑠璃「『わたしを愛してくれた杏さんも!』のところでは大喜びやったのになぁ」
佳乃「結局椋さんのところにもいかなかったしねぇ」
裏葉「リサさん>みさきさん>杏さん と最後に逆転されてしまったようですし」
柳也「黒頭巾かぶらされたうっかりよりはましと思うぞ」
杏 「ねえねえみさき」
みさき「ん? どしたの杏ちゃん」
杏 「あそこ見てあそこ」
みさき「見てって言われても見えないんだけど……長崎?」
杏 「あなたと戦った長髪の娘が、悪役顔の男と連れ添って歩いてるわよ」
みさき「…………」
みさき「いやあぁぁぁああああぁぁぁぁああぁぁぁあ!!!」
楓 「……初音、思ったより慌ててませんね」
初音 「もう慣れたから」
杏に関しては筋金入りどころか凍りついたツンデレにツンデレで接したのが根本的な間違いだと思う。
磁石に同極で近づいたみたいなもん。
杏「ごきげんよう 紅薔薇(ロサ・キネンシス)」
彩「……ごきげんよう 黄薔薇(ロサ・フェティダ)」
瑞佳「ごきげんよう、えーと、白薔薇のつぼみ(ロサ・ギガンティア・アン・ブゥトン)見習い」
留美「くっ、打ち切りでなければ…ごきげんよう黄薔薇のつぼみ(ロサ・フェティダ・アン・ブゥトン)」
さわやかな朝の挨拶が、澄みきった塾内にこだまする。
吉田松陰様のお庭に集う乙女たちが、今日も天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない心身を包むのは、江戸時代の着物。
御所の門襲撃は失敗しないように、断頚乙女は木刀に破壊されないように、
ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
もちろん、猫に従って道案内をした挙句迷ってしまうなどといった、はしたない塾生など存在していようはずもない。
私立ハカギアン松下村塾。
葉鍵(天保)13年創立のこの学園は、もとは支援板の雑談スレででてきたという、
伝統ないネタ系お嬢さま私塾である。
長州藩。杉屋の物置小屋の面影を未だに残している緑の多いこの地区で、尊皇攘夷の理想に見守られ、
薬師から邪術までの一貫教育が受けられる乙女の園。
時代は移り変わり、江戸から明治に改まりそうな今日でさえ、
三年通い続ければ温室育ちの純粋培養維新志士が箱入りで出荷される、
という仕組みが未だ残っている貴重な私塾である。
誰もやらないなら俺が一つ
断頸の中の人は?
A 天沢郁未
B 柏木梓
C 高瀬瑞希
D モルガン
E それ以外(人物指定)
bで
透子の子供の名前、性別も良ければ決めてくれ。
ネタとして考えてたんだが、書き負けたりして、書くタイミングを失ったorz。
別に決めなくても…いいんじゃないか?
登場してないも同然なんだし。
正直、評価は間違いなく5なんだろうが、一部のこういう空気には最後まで馴染めなかった……
明らかに本編と関係ない設定まで語られるのもあれだが
そんな枝葉が出せなかった事で真剣にorzされるのがきついよ。
このスレは選択肢から生まれた続きを書くスレで
過去の書き込みから生まれた妄想もちゃんと選択にかけてくれ。
流石に透子jrに関しては行き過ぎだろう。 断頸はまだしも。
まあ717よそう気にすんな。次は多分いつも通りの選択スレになるだろうから。
>>717 俺もなじめなかった
最近ちょっと熱暴走しすぎてる気がするんだよね
反動でどうにかならなきゃいいけど
ところで>717の言う「こういう空気」って支援板主導で進んでいったような雰囲気と、それに反発したような雰囲気のどっちだ?
いや、後半部が「そんな枝葉が出せなかった事で」とか「妄想もちゃんと選択にかけてくれ」とかどちらに向けて言ってるのかよくわからんのでな。
721 :
717@携帯:2005/11/22(火) 15:17:43 ID:mURyt166O
選ばれた選択肢よりも、支援板で盛り上がったような
“今回はこんな作品”って空気が優先される雰囲気全般。
生まれてもいない透子の子どもの名前とか性別なんて
本編に関係ないのも甚だしいじゃない?
それが本編にもりこめなかった事を真剣に悔やまれても
はっきり言って妄想キツいとしか思えないのよ。
なんのための本文で、なんのための選択肢なんだと言いたい。
透子の子どもがどうとか言いたいなら、一年後にエピソード繋いで、視点を透子絡みにしてから
改めて書くべきで、その過程をすっ飛ばしていきなり名前がどうだなんて
ある意味悪質な選択無視じゃないか!?
前半はまあ同意する面もあるが後半はいくらなんでも過敏すぎると思うぞ
観鈴話の途中七瀬が出てきたあたりでも思ってたんだが
今主に長めの話を書いてくれてる人ってひょっとしてONE以前の鍵を二次創作か何かでしか知らないんじゃ……
書いてくれるのはありがたいし選択スレで細かいことにあまりけちつけるようなことを言うのもあれだとは思うけどさ…
気にしすぎかな…
そんな言い方じゃあ無駄にビクビクさせる人を増やすだけだぞ
すまん、ただの愚痴なんで忘れてくれ。