「いたた……」
わたしは思わず眉をしかめる。
今夜、何人もの人と再会して、刃とわたしの罪とを突きつけられてきた。
体にも心にも雪のように痛みが積もっていて、正直なところもう限界に近い。
(だけど、まだ――だよね)
背後に誰かの存在を感じる。リサさんや楓さんじゃない、生きている人とは根本的に違う気配。
(たぶん、わたしがちゃんと相手できるのはこの人が最後……)
縮地を乱用したせいで全身に疲労が溜まっている。傷口からの出血で血も足りてないし、気力も尽きかけている。
いつ意識を失ってもおかしくない状態だったけど、わたしは木刀を杖代わりに体を支えて、必死の思いで振り向いた。
(誰だろう。登臼来藩の武将さんかな。それとも綾香さんかな)
わたしのそんな予想は、実際まるで見当はずれだった。
振り向いた先に立っていたのは――
「あ……あああ……!!」
「よ、久しぶりやな。観鈴。ちょっと背ぇ伸びたか?」
「おかあ……さん……」
「なんや、幽霊でも見るような顔して……って、ホンマにそうやったな。晴子さんうっかりや」
ああ――何を言ったらいいんだろう。
わたしを育ててくれたひと。わたしに一番、たくさんのものをくれたひと。
わたしのせいで、死んでしまったひと。
「お母さん……お母さん……」
いつの間にか、わたしの目には涙が溜まっていた。
だめ。お母さんの前だと、わたしは「人斬り観鈴」でも、リサさんのパートナーでもいられない。
ただの茶屋の娘だった頃の、泣き虫であほちんのわたしに戻ってしまう。
「お母さん……ごめんなさい……ごめんなさい……!」
これが楓さんに与えられた試練だということも忘れて、わたしは泣きじゃくりながらお母さんに謝るばかりだった。
お母さんは、そんなわたしを――
A. 抱きしめた
B. 平手でぶった
C. 「許さない」と言った
厳しめにB
B
いや、妥当でしょ
ぱん、と乾いた音が鳴った。
少し遅れて頬がじわじわと熱を持ってきたことで、お母さんに平手でぶたれたんだって理解できた。
今夜受けた傷の中でいちばん軽くて、いちばん絶望的だった。
「観鈴……あほなことしたな、あんた」
ああ。やっぱりお母さん、わたしのこと怒ってるんだ。
当然だよ。元を正せば、わたしなんかを娘に持ったせいで、お母さんは……
「なんで、人斬りなんか稼業にしたんや……!」
……え?
「人様の命を銭と引き換えにして、人の首に値札つけるような真似してっ……
そないな仕事、あんたみたいな馬鹿がつくお人好しに堪えられるわけないやないかっ!!
今頃になってツケ回ってきて、観鈴、こないボロボロになってるやないか……!!」
お母さんは痛いくらい力を込めて、ぎゅっとわたしの手を握る。
「あないヤワやった手ぇが、刀の振りすぎでこないマメだらけになって……」
「……どう、して?」
気付けば、わたしは胸の中の疑問をそのまま口に出していた。
「どうしてそのことを怒るの? お母さんが巻き込まれて死んじゃったことを、どうして怒らないの?」
「そないなこと怒ってない……!」
そんなこと、って。
「観鈴のこと、だぁれも信じへんかったんが悪いんやないか。
藩主殺しやなんて、あんたにそんな大それたことできるわけない言うのはうちが一番わかってる。
登臼来藩の役人連中に捕まったときも、うち、鼻で笑うてやったわ。
『うちの観鈴はあほやけど、あんなお人好しの藩主はんを殺すほど馬鹿やない』って」
「でも……でも! 最初にわたしが白皇さんに着いていくなんてわがまま言わなければ、こんなことにならなかったのに……!」
「あのなぁ、うち、観鈴が白皇はんに着いていきたい言うたとき、嬉しかったんやで?
うちの観鈴ちんときたら、いつまでも母親にべったりで、男どころか友達の一人も連れて来うへん。
それが初めて自分から広い世の中見てみたいって言うたんやで?
そらまあ、少しは寂しい気持ちもなかった言うたら嘘になるけど……」
優しい声、ちょっとからかうような言い回し、噛んで含めるような口調。
わたしは目の前の人がどんなにあったかかったのかを思い知る。
わたしはすっかり変わってしまったのに、お母さんの私に対する接し方は昔とぜんぜん変わっていなくて。
本当はわたしは昔から何も変わらずにいられたのだと、信じそうになってしまう。
だけど。
(―――忘れるな。俺はお前を赦さない)
「お母さん……わたし……」
どれだけお母さんが優しくても、忘れるわけにはいかない。
わたしだけに都合のいい解釈を、続けるわけにはいかない。
「わたし、自分が助かるために他の人を傷つけて……!!」
「観鈴……」
「人を斬ってお金をもらうようになって、恨みもない人を何人も殺して……ごめんなさい、ごめんなさい!!」
わたしは自分の罪を言葉にして噛み締める。
「生きるために仕方なかった」なんて言い訳をするつもりはなかった。
リサさんが言うように、人は生きている限り変われる可能性があるのなら。
身を守るために人を傷つけたことも、人斬りになったことも、わたし自身が選択したことなんだから。
「……うちも、観鈴はあかんことしたと思う。せやから叩いたし、怒鳴った。せやけどな……」
さっき打たれたわたしの頬を、いたわるように撫でるお母さんの手。
「せやけど、それでも、そんなあかんことしてでも……
観鈴が今日まで、こうして生き延びてきてくれたことが、うちはどうしようもなく嬉しいんや」
「お母さん……」
「他の誰が許さんでも……うちは許す。
生きててくれておおきにな、観鈴。
ごめんな。あんたが一番しんどいときに、傍にいてやれんかった。
今まで一人でよう頑張ったなぁ……」
――わたしはどうして、あんなに頑なに他人を拒み続けていたんだろう。
「う……」
こんなにも暖かい目で、草葉の陰からずっと見守ってくれていたのに。
「うわぁぁぁぁ――……ん!!」
わたしはお母さんにすがりついて大声で泣き出した。癇癪を起こしたように、ただの小さな子供になって。
「やっぱり泣き虫やなぁ……観鈴ちんは」
わたしは最後に暖かい涙と、それよりあったかいものを取り戻すことができた。
少しずつその存在感を失っていきながら、お母さんは最後までわたしの頭を撫でてくれていた。
A. そして夜が明けた。
B. そのころ、庵では(視点変更)
A
「……鈴さん、観鈴さん」
夜が明けた。
山を登ったリサと楓は、3人が別れた場所。
まさにその場所で静かに寝息を立てている観鈴を発見した。
さすがに傷とボロボロになった服こそそのままなものの、顔や手足の汚れは全て拭いてあり、非常に綺麗な顔だ。
「なんだか……晴れ晴れとした顔ね」
「こういう時は”憑きものが落ちたような”と言うのです」
「……勉強になるわ」
数度、観鈴の体を揺さぶる。
だがよほど疲れているのか、目を覚ます素振りは見せない。
「……これは、無理に起こすのも可哀相ですね」
「いいわ。私が背負っていく」
そう言うと、リサは観鈴の両腕を自分の肩にかけ、背負い上げた。
……軽い。あまりに、軽い。
その重みは、京の都で蝶よ花よと可愛がられ、毎日を笑いながら過ごしている娘たちとまるで変わりがない。
だが、彼女の両手に染み込んだ血はもう二度と拭われることはない。
そして、これからもまた晴れることのない血煙の中を生きていくことを強要している。
「―――ごめんなさい」
ポツリと、呟いた。
「…………行きましょう。傷の手当もしなければなりません」
「そうね……」
そして2人は、山道を下りだした。
「遅かったわねぇ。お先にやらしてもらってるわよ」
「……!!」
たっぷり時間をかけ、観鈴が目を覚まさないようにゆっくりと下山した一行。
庵までたどり着いた彼女らを迎えたのは、1人の少女だった。
「あなたは……」
勝手に庵の戸をぶち壊し、中の食べ物を貪りながら仕舞ってあった刀を物色している。
「そっちの異人さんも初めまして。一応あたしは見てたんだけど、あなたはそれどころじゃなかったでしょうしね。
背中の化け物が起きてれば紹介もしてくれたんでしょうけど、今はおねむの時間みたいだから自己紹介させてもらうわ」
トントンと肩に刀を当てながら、胸を張って名乗る少女は―――
「あたしは長州藩藩士十本刀が1人、通称刀狩の”七瀬”よ。以後よろしく異人さん?」
「Shut-up!!」
即座にリサは腰の拳銃を抜き放ち、一発を見舞わんとするが―――
「よっと」
おもむろに七瀬は持っていた短刀をリサに向けると、柄の部分を強く押し込む。
と、なんと刀身の部分が勢いよく発射され、リサの右手を浅く切り裂いた。
「Shit...!」
はずみで拳銃を取りこぼすリサ。一方、七瀬はつまらなそうに。
「うーん、便利なことは便利なんだけどやっぱ精度が問題ね。一発こっきりだし、ここは直させなくっちゃ」
柄だけになった短刀を手の中で弄びながら呟く。
「あなた……それは!?」
「武器商人はあなただけじゃないのよリサ・ヴィクセン。金が動けばどうとでも動くのが商人(あきんど)
それには東の国も北の国も無い。あたしたちにだって色々仕入れる得意先はあるのよ?」
「……………………」
リサの攻撃手段が無くなったのを確認して、七瀬は続ける。
「それにしてもツイてるわね……刀匠柏木楓に用事があって来てみれば。
釣り上げたのはなんとまぁ逃亡中の裏切り者『人斬り観鈴』。これはあたしにも運が回ってきたってものかしら?」
小首をかしげなが心底嬉しそうに呟く。
「……裏切ったのはどちらかしら?」
気圧されせず、リサも負けじと言い返す。
「そっちよ。何があろうと、誰であろうと、裏切ったのはそっち。悪いのはそっち。正しいのはこっち。世の中そういうものじゃないの?」
「反吐が出るわね」
「ならその反吐が世の中の常なのよ」
にやけた笑みを浮かべながら、巨怪な剣をスラリと抜き放つ。
「まあお喋りはいいわ。とりあえず柏木楓意外に用事はないんだし、そっちのお2人には死んでいただきましょう。
……者ども、来なさい!」
「!」
七瀬が呼ぶ。と同時にどこに隠れていたのか、数人の武装した武士が現れた。
私用だったせいか七瀬直属の手の者しかいないようだが、今のリサらを切り刻むには充分すぎる戦力。
(……リサさん)
そんなリサに、楓が囁く。
(ここは私が何とか食い止めます。観鈴さんを連れて、この場を離れてください。
彼女は私に用があるようですし、殺されることはないでしょう)
(そんな……あいつにまともな理屈が通ると思うの? 第一あなたを置いていけるわけがないじゃない!?)
(そんなことを言っている場合では……っ!)
「チェストォォ――――――ッ!!」
そんなことを話す間にも時間は流れる。
リサの後ろにいた1人の武士が、斬りかかってきた。
A 楓が攻撃を止め、その隙にリサが逃げる。
B 楓を置いてはいけない。リサの金的一閃。
C 「………ふぁぁ、よく寝た」
主役の目覚めにはまだ早い。
Bだ!
長州派なのに「チェストォー」ですか
さすが商人、七瀬は人脈が広そうだな
きっと彼は薩摩出身なんですよ。
(訳:気にするな)
リサが足を後ろに蹴り上げる。
そこにあったのは……名も無き武士の男としての急所。
ぐぎょっ……と嫌な音がし、武士の一人がその場にのた打ち回る。
これは痛い。琉球空手でもやってなければ耐えることは出来ないだろう。
直ぐにリサは取りこぼした拳銃を拾う。
「Shit……! 壊れてるわ」
「リサさん?」
「私に……尻尾巻いて逃げろと? 冗談がきついわね、楓さん。
伊達に京都で武器商人はやってないわ。ある程度武術の心得はあるつもりよ?」
フフッと笑うリサ。
そんなリサに楓はふぅ……とため息をついた。
「仕方ない人ですね。あなたも……」
「あら? それはあなたも同じでしょう?」
「かもしれません」
楓は一振り、日本刀を取り出す。
正眼に構え、七瀬のほうを向く。
「あら? あなたも剣の心得が? 大人しく刀だけ作っていれば良いのにね」
「……一つ聞いておきましょう。どうしてあなたは私の刀を求めるのですか?」
「天下に聞こえた刀匠柏木楓の刀が欲しい。武士としては当然の望みじゃない?
それに……風の噂で聞いたのよ。あんたが刀匠を辞めようとしてるとか、呪いでもう長くは無いとか……」
「答えになっていません。私が聞きたいのは、あなたが何の為に私の刀を振るうのかです」
「人を殺す為に決まってるじゃない。刀なんて所詮は殺戮の道具、それ以外に用途があるとでも?」
「…………よく分かりました」
楓がぽつりと言う。
そして、少しずつ……静かに、楓の中から怒りが沸きあがってくる。
人の命を軽く見る発言、それは楓が最も嫌うもの。それを七瀬は軽々と言ってのけたのだ。
「あなたには意地でも刀を打ちません。そして……命の重さ、味わってもらいます!」
「ふぅん……ま、いいわ。そこのお二人さんを斬り捨てれば考えが変わるかもしれないし」
七瀬が再び刀を構える。
楓は冷静にこちらの戦力を分析した。
リサは……格闘術の心得はあるみたいだが、所詮は丸腰。刀相手にはどうしても不利。
観鈴は深い眠りについている。起こそうとしても起きそうにも無い。それに怪我をしている。
そして自分……。
(全力で戦えるのはどれぐらいでしょう。二分か、それとも一分か……)
呪いで蝕まれている刀傷がちくりと痛む。
それでも……やるだけ、やるしかない。
次の瞬間、七瀬の私兵が襲い掛かる。
リサは距離を取りつつ隙をつく作戦に出て、楓は刀は応戦する作戦に出る。
「Hu!」
抜刀直後の隙を突き、一気に距離を詰めて拳を当てるリサ。
それで武士の一人が倒れる。
相手が自分の間合いに入るのを待ち、一気に居合いの構えから峰で胴を打つ楓。
それで、また一人倒れる。
そんな二人の様子を見て……七瀬がくすりと笑った。
「へえ、結構強いじゃない二人とも。ちょっとだけ見くびってたわ」
「私は死んでもあなたに刀は打ちません。ですから……大人しく帰ったらどうですか?」
「悪いけど出来ない相談ね。そこの裏切り者は見つけ次第斬るように言われてるし。
それに……そんな台詞は絶体絶命のあんた達がいう台詞じゃないわ」
にやりと七瀬が笑みを浮かべた。
周りは七瀬の私兵で完全に包囲。人数の差がありすぎる。
加えてこちらは一人は丸腰、一人は呪い持ち。
状況は楓たちが圧倒的に不利なのには違いなかった。
(リサさん……)
(What?)
(一か八か……頭を狙いましょう。助かるには……それしかないです)
(OK。私もそう思っていたところ……それで、どちらが戦う?)
(それは……)
A リサさんは観鈴さんをお願いします。その間に私が何とかしますから
B 私が雑魚を食い止めます。ですからリサさんは七瀬さんを倒してください
C 「わたしがやる」といつの間にか観鈴が目を覚ましていた
B
a
(私が雑魚を引き受けます。ですからリサさんは七瀬さんを倒してください)
(OK。わかったわ)
楓の言葉にリサが小さく首肯する。
(すいません…私では“断頸乙女(たちくびのおとめ)”を相手にできませんので…)
(タチクビノオトメ?)
(…人にあらざる者を斬る事に特化した刀です。昔、私が)
「おしゃべりはそれぐらいにしたら!?こないんならこっちから行くわよ!」
怒号一閃。
七瀬の叫びが辺りに響き渡ると同時に、側近の武士達が一斉に切り込んできた。
数は四。
(…後はこの場を生き延びれたらお話しします!)
最後に楓がそう呟き、二人は即座に敵のいない方向である真右に跳んだ。
そして刹那、楓が反復横跳びでもするように再度左に跳び、
最も反応が遅かった武士の喉を刀の峰で叩く。
「げはっ!……」
すぐにその武士は崩れ落ちた。
「おのれっ、小娘が…!」
残りの三人の刀の切っ先全てが楓に向けられた。
(観鈴。しばらくここでじっとしててね…)
七瀬の側近達の殺気が全て楓に向けられたのを認めると、
リサは手近な大木の幹に観鈴を寄りかからせそう囁いた。
もちろん返事はない。
(私が、護るから)
リサは観鈴の懐で佇んでいた短刀──聖のものだ──を拝借すると、
庵の前でこちらを愉悦の表情を浮かべて見ながら、
巨剣・断頸乙女をまるで棒きれのように弄んでいた七瀬に視線を向けた。
「私の相手は貴女?リサさん」
「Yes ご不満かしら?」
「いいえ、楽しめそうね」
フッ、と二人が同時に笑い──
A リサが先に仕掛けた。
B 七瀬が先に仕掛けた。
C 二人同時に仕掛けた。
C
Bでやってみよう
「Ha!」「破ッ!」
リサと七瀬。仕掛けたのは二人同時。
お互いの相手目掛けて跳躍し、接触寸前で得物を振るう。
──チッ
接触と同時に、双方今度は元居た場所まで跳び退く。
微かな深紅の筋が一本、宙空に舞った。
「くっ!」
七瀬が舌打ちをしながら、遠ざかるリサを見据える。
その瞳の近くを、紅い雫が伝っていた。
(powerはあちらに分があるけど、speedは僅かにこっちが上ね…)
一方、大木の手前に着地し体勢を整えたリサの身体には傷は見当たらない。
七瀬の断頸乙女の初撃はリサを完全に捉えるには至らず、
リサの被害は、僅かに服の右腕部分が裂けただけにとどまった。
「想像以上ね。正直、貴女を見くびっていたわ」
ペロリ…と口元まで滴ってきた己の血を舐め、七瀬が再び愉悦の表情を浮かべる。
「Hu…そのまま油断し続けてくれれば助かったのに」
「それはお生憎様。私はそんな緩い人間じゃないわよ」
(…とは言え、この短刀じゃ余程巧くやらないと彼女は倒せないわね…。
さて、どうしたものか……)
リサが短刀を握る手に力を込め、腰を落とす。
自分より格上の相手を倒す術を考える。
狙うは──
A 塵も積もれば山となる。スピードを活かして小技の連打。
B 一撃必殺。相手の隙を見つけて一撃に賭ける。
C 敵の攻撃力低下を謀り、四肢──特に利き腕を集中攻撃。
B
(おそらくこの短刀は本来投擲用。幾度とは使えない。なら――――)
リサは短刀を逆手に持ち帰ると重心を落とす。
攻撃力防御力共に圧倒的な差がある以上、スピードで勝る己が狙えるのは急所への一撃必殺。
一撃で死亡、ないし戦闘不能状態まで追い込まねばいずれ叩き斬られるのみ。
「……………………」
「ほらほらボーッとしてる暇ァないわよ! せぇぇ…………りゃ――――ッ!!」
叫び声と共に、七瀬は巨怪肉厚、もはや剣か剣以外の何物かもわからないような
その断頸乙女を大上段に振りかざし、遠心力と重力の加速を乗せて叩き込んでくる。
「ッ!」
瞬間的に横に飛ぶリサ。大地を震わす衝撃と砂埃の後、現れたのは刀身を半分以上地面に減り込ませた大刀。
(CHANCE――!)
短刀を持ち替え、その隙を狙わんとするが―――
「甘―――イィッ!!!!」
七瀬は地面に減り込んだ切っ先などまるで気にしないかのように、地面ごと断頸乙女を横に薙ぎ払った。
(なんてPOWER……)
空気を撫で斬る音と共に鉄塊が頭上スレスレを通りすぎる。
しかしまだ七瀬の攻撃は終わらない。振りぬいた勢いそのままに一回転+捻りを加え、再び大上段から振り下ろしてきた。
「さァどうしたのかしら異人さん! ちょっと本気を出したら防戦一方!? あんまりあたしを失望させないでねェッ!!!」
「……楽しみは後にとっておくものよ」
口は軽いが心は重い。小さな短刀での一撃を狙う以上、攻撃はわずかなズレも許されない。
しかし七瀬は初太刀とまるで変わらぬ勢いで大刀を振り続けている。
あれの動きを止め、接触し、なおかつ寸分違わず急所への一撃を成功させなければならない―――
(SCHOOLでもこんなにHARDな格闘戦の攻略は教えてくれなかったわね……)
烈風の如く断頸乙女を振り回す七瀬に一歩、リサは近づいた。
(さて、まずは動きを止めなきゃならないんだけど……)
A 目潰しを狙う
B 脚部への攻撃
C 単純そうだし挑発してみる
D その時、楓の方から悲鳴が
d
これって本当に七瀬か?
ま、いいか……
「きゃあああああっっっ!!!」
楓の悲鳴、振り返ると三人の武士に押さえつけられ、首筋に刃を当てられた楓がいた。
「……形勢逆転ね、次にわたしが言いたいこと、あなたなら分かるでしょ?」
「shit…………」
「リサさん、私に構わずに七瀬さんを抑えてください。七瀬さんはわたしの殺害が目的じゃありません」
「駄目よ、確かにあなたの刀は欲しいけど。今はそれより厄介な問題が転がっているもの………『人斬り観鈴』そいつの始末の方が先よ」
「…………」
カラン、リサの手から短刀がこぼれ、七瀬によって部屋の隅に弾かれる。
「そうね…………大人しくその観鈴を引き渡して貰えないかしら?
あなたにも相応の事情があると思うけどそいつを命を懸けて庇う必要なんてあなたにはないでしょ?」
「何だったら、貴女と楓さんの命は保障するわ、この七瀬留美の名に賭けても私にあなたたちを殺す理由なんてないもの」
だが、リサの首は横に振られた。
「……………あなたには分からないのよ、彼女がどれだけ苦しんだのか」
リサの返答に、やれやれという顔を七瀬はする。
「私にも分からないわ、商売人のあなたがこの取引に全く不合理な結論を出している理由が」
そして、動けないリサ・楓をよそに観鈴の足元に近づいた七瀬の大刀が振り下ろされる…
A 「ミスズッ!」振り下ろされた刀が観鈴を庇ったリサの腹を深々とえぐった。
B 「観鈴さんっ!」兵の制止を振り払った楓が観鈴を庇い、七瀬の凶刃に命の火を消した
C ………無常にも七瀬の一振りは観鈴の首と胴を切り離した。
D 七瀬の一太刀が空を切る、間一髪で観鈴復活
D
c
もう観鈴復活させるのか・・・
──ズズゥ…………ン
大きく、重く、鈍い音が響く。
七瀬の渾身の力が込められた断頸乙女の一撃が観鈴を一刀両断に……しなかった。
いや、正確に言えばできなかった。
もっと正確に言えば、斬るべき対象であるはずの観鈴がいなかった。
その代わりに、断頸乙女は先程よりも深々と大地を裂いている。
「えっ!?」
七瀬は慌てて断頸乙女を引き抜き辺りをぐるりと見回す。
だが、そこにいるのは楓とリサと己の部下達だけ。観鈴の姿は無い。
「観鈴ッ!何処に消えたの!?」
「にはは、ここだよ」
「なっ…!」
狼狽える七瀬の頭上に、観鈴のなんとも暢気な声が降ってきた。
気を失っている七瀬の部下数名を除く、その場にいた者全てが声のした場所に目を向けた。
果たして、観鈴はそこにいた。
つい先刻まで自分が寄りかかって眠っていた大木の、一番太い枝の上で微笑んでいた。
その手には、淡い金色の光を放つ木刀が握られている。
「「観鈴(さん)!!」」
「にはは。リサさん、楓さん。お待たせ」
笑顔のまま観鈴はそう二人に語り掛ける。
と、
「ぐわっ!!」
「ぬおぅっ!!」
「ぎゃあぁっ!!」
「なッ……えぇっ!?」
次の瞬間にはもう観鈴はそこにはいなかった。
そしてすぐに、七瀬の背後から部下達の悲鳴。
七瀬が振り向いた時には既に部下は全員地に伏しており、
その中心で楓に手を貸す観鈴の姿があった。
「見え……なかった。全く……跳ぶ瞬間すら……」
歴戦の猛者である七瀬も、味方であるリサ達も、ただただ呆然とするばかり。
「七瀬さん、ひさしぶり。にははっ」
──違う。と、七瀬は感じていた。
同じ“十本刀”として刀をの向きを揃えていたべていた頃と、
その笑顔も、その速さも、同じ様に見え、しかし、まるで異質なものだと感じた。
「手加減なしでいくね。七瀬さん」
観鈴が木刀を正眼に構える。
ピシ、という音と共に木刀は皹が入り、金色の光が輝きを増した。
それを見て楓は気付いた。
観鈴の新たな力、それの目覚めが近い事を。
神尾観鈴、対、七瀬留美。
その戦いの初手は──
A 観鈴が縮地で速攻をかけた。
B 七瀬が断頸乙女を振りかざした。
B
Bでいってみよー
本日の教訓。
修正はきちんとしましょうorz
>同じ“十本刀”として刀をの向きを揃えていたべていた頃と、
何を食べてたのww
この前は「弓矢が刺さった」ってのもあったな。
弓が刺さったら恐いっすよ。
おもしろいからいいんだけど
「な……なッ!」
わなわなと、腕を震わすのは七瀬。
「なんだかしらないけど……ねッ!」
震えを押さえこむように断頸乙女を振りかぶる。
「裏切り者”人斬り”観鈴ッ! あんたは……あたしが、殺す!」
そのまま地を蹴り、一直線に観鈴へと迫る。
相当の重量にも関わらず、その動きは存外速い。
「おおおおおおおおおおッ!!!!」
「リサさん、楓さん、下がってて」
その勢いを見た観鈴は、油断できないと悟り2人を下がらせる。
「行くよ……!」
こちらも輝く木刀を握りなおし、構えを取る。
「せぇぇぇ…………りゃあッ!!!!」
大上段から力任せの一撃。防御すらまるで意味をなさない一閃が観鈴の脳天へと迫る。
ズズゥゥ…………ン…………
地響きを伴う強烈な一撃。しかし直前観鈴は飛びのき、一撃は地面を抉るに終わった。
しかし……
「ワンパターン……なのよッ!!」
わかっているかのように、七瀬はそのまま再度力任せに振り向きざまの一撃。
しかし予想通り、己の背後に立っていた観鈴に向け横薙ぎを繰り出した。
「っ!」
観鈴はあえてこれをかわさず、木刀を縦に、両手を沿え受け止める。
「馬鹿めッ! そんな木っ端で!」
「観鈴ッ!」
ガキィィィィィィィィィィィィン!!!
「なッ!?」
強烈な衝撃と音。響き渡ったが果たして木っ端は鉄塊には負けず、その形を保ったままだった。
防御の姿勢のまま観鈴がおおよそ数メートル地面を後ろに跳ね飛ばされたが、変わらぬ笑顔。
「にははは……けど、ちょっと腕がジンジンする……」
「なっ、馬鹿な……これは一体……」
理解を超えた現象に驚愕する七瀬。しかしすぐに構えを整えると。
「”人斬り”観鈴……どういうつもり!?」
「には?」
構えは崩さぬまま、観鈴を怒鳴りつけた。
「今更そんな木刀を持ち出して……本気で来なさい! 本気で!」
「観鈴ちん、本気だよ? さっきから、ずっと本気」
「なら”人斬り”があたしの部下も殺さず、真剣も持ち出さずあたしと戦う! 馬鹿にするのも大概にしなさい!」
「馬鹿になんかしてないよ。これがわたしの新しい武器。わたしは、これからこれで戦う!」
「阿呆らしいッ! 人斬りが……なにを戯言をッ!」
「……もう、わたし、人斬りはやめる。もう、人は殺さない」
「…………チッ!」
半ば予想していた答え。だがそれを実際耳にして、七瀬は唾を吐き捨てる。
「なにを今更なことを! まさか伝説の人斬りが改心したとでも吐(ぬ)かすの!? 罪を償うことにしたとでも吐かすの!?」
「……………………」
「馬鹿な。阿呆な! 修羅の道に生きるものは、戦いの果てに死ぬのが宿命なのよ! それを今更日の当たる場所に帰ろうだなんて、虫がいいにも程があるわッ!」
「それでも! それでも……わたしは、わたしはもう人は殺さない。罪は赦されない。過去は変わらない。
けど、けどそれでもわたしはこれから生きる。罪を償うなんていわない。けど、1人でも多くの人を助けたい!」
「それが偽善臭いっつってんのよ! あんたは悪だ! 確実な悪だ! あたしたちなんかよりよっぽどドス黒い悪だ!
あたしたちは大儀のために殺してきた! それでなくとも自分のために殺してきた!
あんたはなんだ!? 自分のためですらない! 金のために殺してきた!
志もなく殺してきた! なんの意味もなく殺してきた! 何も残さない殺しをしてきた!
そんな人斬りが今更人を救う!? 寝言は寝てか死んでから言いなさい!」
「……………………」
A 言い返す
B もう何も言わない
C 脇から楓やリサが口を挟んできた
B
B
B
>>708 最初「並べて」って、後から「揃えて」に変え…損ねた結果ですorz
717 :
sage:2005/11/03(木) 23:57:04 ID:7AYcLC1g0
観鈴は何も言わずに剣を構える。
「言い返せないか…観鈴」
私は少しずつ軸をずらす。向かうは一点。
「(人を助ける…?あんたは誰も救えやしない。それを今証明してあげる!)」
一歩、一歩…着いた…
「いくわ…貴方が人を救えるというなら救ってみなさい!」
気合と共に私は断頸乙女を観鈴目掛けて投げつける。
…ここは観鈴とリサが直線状に並ぶ所、回避すればリサに直撃する。
うなりをあげ飛ぶ断頸乙女、
「…っ!」
だが、敵もさるもの、剣を振り上げ、断頸乙女を真上に弾き飛ばす。
「(さすがね、観鈴…でも私の武器は…)剣だけじゃない!」
一点を目掛けて突進。観鈴は体勢を崩している!
「おおおぉぉぉっ!」
一撃!…そして振りぬく!私の拳は観鈴の頬を捉える。
「あぅ!」
数メートルは吹き飛ばされる観鈴。断頸乙女は落下を始めている
「もう一度言うわ、観鈴。あんたは誰も救えない。」
跳躍!空中で断頸乙女を受け止める。
「神尾観鈴…あんたの全てを否定してやる!」
狙いはリサ。はるか上空から…
「チェストーーーーー!!!」
絶望の一撃が降り注ぐ!観鈴は倒れて動けない!
A 一撃!リサに渾身の一撃が
B 楓がリサを突き飛ばした
C リサの回避!…間に合うか…?
「…………」
観鈴はもう何も言い返さなかった。
なぜなら、七瀬の言うことはすべて正しかったから。
罪は事実。過去も真実。それでもなお生きていたい、殺さずに生きていたいというのは身勝手以外のなにものでもない。
それは、まったく、その通りだったから。
「どうしたの!? 何も言い返さない!? なら……死になさい! 今のアンタは、見るに耐えない!」
激情に任せ、七瀬は断頸乙女を振りかざして再度観鈴に襲い掛かる。
しかし大降りの一撃が今の観鈴を捉えられるはずもなく、地面を切り裂くのみ。
そしてその間に、パーンと綺麗な音と共に脳天への強烈な衝撃。
「が……っ……」
のけぞる七瀬。その背後には木刀を振りぬいたままの観鈴の姿。
「はは……は……」
割れた額からツッ―――と鮮血が流れ落ちる。
「さすがね人斬り観鈴……あなたが本気なら、今のであたしは死んでいた」
「……………………」
「ああそうだったかしら? あなたは今のが本気だったのかしら? まあどうでも……いいけどねッ!」
少々血が流れたぐらいでは七瀬にとってダメージではない。
変わらぬ膂力で、断頸乙女を振り回す。
「死になさい……この、人斬りがッ!!」
しかしやはり刃は空を切るのみ。大振りの隙に、今度は鳩尾に観鈴の突きが刺さる。
「おぶ……ッ……」
強烈な嘔吐感に顔をしかめ、その場に蹲る。
耐え切れず、ゴホッ、ゴホッと咳き込みながら胃の中身を吐き出す。
観鈴は、黙ってそれを見ていた。
「ははは……は……」
収まった激痛。膝を突きながら、七瀬は立ち上がる。
「いい気分でしょうねェ人斬り観鈴? 新しい力を得た。祝福してくれる友を得た。
新しい、素晴らしい目標も得た。そして、その敵であるあたしをこうして見下している!
いい気分でしょうねぇ! 殺さずに相手が屈服している姿を眺めるのは! 『殺していない』だけで気分はいいでしょうねぇ!」
気合新たに、断頸乙女を構える。
うぁ…すみません…みなさん…
遅れ
よけろナッパ
C
>>717 ちなみに七瀬の原作での一人称は「あたし」な。
ていうか直前でもそうだったし。
「死ね!」
上空から七瀬の一撃が降り注ぐ。
狙いは真下のリサ。狙いは過たず。このタイミングなら逃げられない。
多少動いたところで、断頸乙女の長さを持ってすれば充分致命傷を与えられる。
が―――
「!?」
いきなり七瀬の、その視界の右半分が闇に覆われた。
そしてその上、なんとリサが左へ、つまり七瀬から見て右側へと一歩、移動してしまった。
(な……え!? こんな……時にッ!!)
しかし今は空中でしかも落下中。何が起きたのか確かめる術もなければ、攻撃を止めることもできない。
「くそ……くそぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」
全精力を込めた最大の一撃。渾身の力を込め、七瀬は暗闇の中へ一刀を振り下ろした。
ズズゥゥゥ…………ン…………
隕石でも落下したような強烈な地響き、否、地震と言ってもいいぐらいの衝撃があたりを震わす。
七瀬が抉ったのは……地面。
はらりはらりと、リサの金髪が舞い落ちてくる。
「……危なかったわ」
遅れてやってくる激痛。
七瀬は自分の顔に手を当て、右目から何かが生えていることに気づいた。
「これは……キサマッ!」
右目を押しつぶし、眼窟にそびえているのは、短刀。
先ほどリサが観鈴から借り受けた、聖の短刀だ。
「この……おぉオォーーーーーーーーッ!!!」
大刀を抜き、再びリサに襲い掛かるがもう遅い。
振り上げたところを後ろから観鈴の木刀一閃。断頸乙女の刀身は木っ端微塵に砕け散った。
さらにそのまま、下から抉りこむような切り上げ。過たず、七瀬の鳩尾を抉った。
「ゴボ……ッ……!」
見事に空中に跳ね上げられ、数メートル空を飛んで背中から落ちる七瀬。
口から泡を吹いているが、まだ気は失っていない。
土を掻きながら、再度起き上がる。
「七瀬さん、もう帰って」
構えは解かぬまま、観鈴が言う。
「もう勝負はついた。わたしは、七瀬さんであっても殺したくない。もう、帰って。
そして、長州の人たちにもうわたしに関わらないと」
「人を馬鹿にするのも大概にすることね人斬り観鈴!」
観鈴の言葉を遮り、怒鳴りつける。
「こんな目に遭わされて……はいそうですかとあたしが帰られるわけないでしょう!」
「っ…………」
その気迫には微塵の衰えもない。七瀬は、本気だ。
――――その時。
「あの……お姉、ちゃん?」
「!」
七瀬の後ろから声。
振り返ってみれば、金髪針金ヘッドの1人の町娘。
「初音! どうしてここに!?」
楓が叫ぶ。
「あ、えと……お仕事大変かなって、体の調子大丈夫かなって、様子見に来たんだけど……」
目の前の凄惨な光景についていけないのか、ぽつりぽつりと言葉をつむぐ初音。
七瀬の目が、光った。
「! だめ七瀬さん!」
「五月蝿い!」
縮地。七瀬に一撃を見舞わんと一刀を繰り出した観鈴だが、七瀬の執念が上回ったのか僅かに間に合わなかった。
七瀬は右目の短刀を抜くと動けない初音を羽交い絞めにし、その首に突きつける。
「動くな!」
そして一喝。
「…人斬り観鈴以外、動くな」
今度は静かな慟哭。
「な、七瀬さん……」
「さあ人斬り観鈴! この娘を助けたい!? その血にまみれた剣で、人を助けたい!?」
湧き上がる情動を押さえ込みながら、口ぶりは冷静に続ける。
「ならあたしを殺しなさい! 後ろに転がってる剣を手に取り、あたしを殺しなさい! 一撃で首を刎ねてみなさい!
あなたなら簡単なことでしょう!」
言いながらさらにグッと短刀を押し込む。
「お、お姉ちゃん……」
「さあどうしたの!? 早くしないとこの子は死ぬわよ。助けられず、目の前で死ぬわよ!? あたしに、無残にも殺されてしまうわよ!?
あたしを殺さないと、この子は死ぬのよ!」
「あ……うっ……」
手の中には、一振りの木刀。
これでは、一撃の元、完全に気絶させねば、確実に初音は首を裂かれる。
「……………」
観鈴の選択は……
A 不殺の誓は破らない。木刀で一撃気絶を狙う。
B 初音の命を救うため。刀を手に取り首を刎ねる。
C 短刀をつかみ取る。
D 逡巡した。
おつかれー。初音登場きたー!
しかしリサはなにやってもいいんかい(笑
選択は
A
で。
A
hayasugi
七瀬元気だなぁ
逡巡する間も危険だ。
観鈴は瞬間的に判断すると、背後の刀は無視して縮地。
初音の命を守るため。そして、七瀬の命も守るため。
かつてないほどの速度を引き出し、一直線に七瀬へと迫った。
「馬鹿めッ! そうそういいトコ取りなんて――――」
神速の一撃が七瀬への眉間へ迫る。
直撃すれば、脳は踊り間違いなく一瞬で意識は空へ飛ぶだろう。
だが……
「――――できやしないのよッ! この『人斬り』がッ!」
七瀬はグッと短刀に力を込め、初音の首を……
A 切り裂いた
B 観鈴の一撃が間に合った
Aとか
観鈴の姿が消える。当然、彼女がこういう選択をするであろうことはわかっていた
「(観鈴、いい事を教えてあげる。人斬りとして強いこと。
それはね、ただ強いだけじゃ得られない)」
自分を一撃で気絶させる。となれば狙いも狭まる。
「(人斬りととして強いということはね、
周りの全てを利用できるということ)…こういうふうにねぇ!!」
初音を抑えていた手を持ちあげる。そう、刃が丁度七瀬の眉間に来るように。
「っ!!」
一瞬、故に軌道修正は出来ない。
観鈴の木刀は七瀬の拳ごと。刃の柄を打ち抜いた。
「…あ…」
地面に倒れる二人…初音の首には短刀が深く刺さっていた。
そう、七瀬の眉間を貫くほどに。
「あたしの…かちね…」
七瀬から、そして初音からも力が抜ける
「あ…ああ…」
A 「み、観鈴」リサさんがなにか言っている…
B 「初音、初音」楓さんが初音さんに駆け寄った
C 笑い声が聞こえる…私は…
Aで
「み、観鈴…」
眼前で起きた──自分が起こした出来事のあまりの結果に、
ぺたんと力無く大地に膝をつく観鈴に、リサが声をかける。
「リサさ……」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
錆び付いたからくり人形のようにゆっくりと首を回し、
その呼び掛けに答えようとしていた観鈴を、
凄まじいばかりの楓の叫びが封じ込めた。
「初音!初音!初音ぇっ!!!」
おぼつかない足取りで駆け寄った楓は初音の上体を抱きかかえると、ひたすらその名を呼び続けた。
初音の口からカヒュ…、カヒュ…というか細すぎる吐息と、
それを全て塗り潰さんが程の血液の奔流が吐き出される。
初音の胸に微かな鼓動はある。
だが、それは今にも消えてしまいそうな程に弱く、儚い。
「観鈴………」
「わ、わたし、助けようと思って……でも殺しちゃ駄目だって……」
「みす……?観鈴!?」
不意に、リサが何かに気付いた。
「観鈴、見て!あなたの木刀!」
「え…?」
言われて、観鈴は握りしめたままの、しかし力無く大地に突いた木刀を見遣る。
すると、木刀はさながら今にも孵化せんとする雛鳥の卵の様にピシピシと皹が入り、
その隙間から金色の光が更に激しく漏れ出し───
──パキィィィィィン!
それは、生まれた。
観鈴の今の心の有り様を写した、光り輝く逆刃刀。
鍔には小さな鳥の翼の装飾が、柄には鈴の絵の紋があしらわれ、
金とも金剛石とも判らぬ材質で出来た刀身は、観鈴達の見守る中で更に強く光り輝き───
或る奇跡を起こした。
A 観鈴の背中に黄金色の双翼が現れた。
B 金色の光が辺りに広がり、その場にいる者全ての傷を癒した。
C 刀が晴子(or白皇)の声で語り掛けてきた(要選択
C で白皇
七瀬はこのままライバルって欲しいのでB
はっきり言って選択覆ってるな
c晴子
C で早漏。何とか言え
A
cハクオロ
ウィツの力よ
C
支援板の顔色見て選択肢だけあとから書き直すのって正直どうよ?
コピペが連投規制に引っ掛かっても3分もかかるものかねぇ
みんなはえーな
Cなら悔いはない
>>745 いやいや!当方携帯なんで支援板自体見れませんから!
選択肢が遅れたのは全く別の理由です。
>>748 あらかじめメモ帳とかに書いて貼ったなら普通は
誤字見つけて修正しても1分もあればレス出来るだろ?
先に序盤だけ書いて、様子見ながら続き書いていいんだったら
これからはそうやって時間稼いで先手取る作戦もOKになるよな
あとこのスレいつから合議制になったのさ
>>749 早打ちかっこいい
自分にもあれぐらいの技があれば…
>>749 携帯なら遅れていいのか
これから他人を押さえて書くには友好な戦術だね
とりあえず餅搗け。
疑うだけなら簡単だが荒れを立て直すのは大変だ。
愚痴・文句は支援板で
携帯であれパソであれ、3分なら充分待てるのでキニスルナ!
支援板は最近圧力団体みたいな様相呈してるから
>>750 言ってることは間違ってないがこの場合は言い掛かりに近いな
>>737の選択はIDをみるに携帯からの書き込みだが、携帯のテキストメモはウィンドウズのそれほど便利ではないのも多いんだ
ちなみに俺の機種だと、改行そのものができなかったりする上に文字数に限りもある
第一、3分くらいじゃ支援板のレスもたいした数は期待できまいて
>>759 見られてること前提でファッキンとか言ってるよりは
圧力かけられてるってのを前提に、的外れの煽りかまして詫びもせずに
外部の非難しているあんたほどひどいのもそうそういないと思うが
>>762 相手するのやめとけ。これ以上はお互い泥沼だ。
うい。
選択スレの次回作にご期待ください
刀身から現れた人物。
それはとても懐かしい人物。
あの旅籠で死んでしまった人。
わたしが旅に出たきっかけの人。
そう……白皇さんだ。
「ゲームオーバーだ、観鈴」
その白皇さんに告げられる。
その時、わたしは仮想世界から現実世界に引き戻された。
プシュー
「が、がお、せっかくいいところまで進んだのに」
わたしはゲーム用ポッドから起きて伸びをした。
「なんや、今度はどこら辺で死んだんや」
側のベンチで座っていたお母さんに話しかけられる。
「今回は死ななかったんだよ、だけどね、不殺シナリオで人を殺しちゃった、が、がお」
ここは『うたわれランド』という遊園地。
わたしは大人気のバーチャルリアルマシン『大江戸大冒険〜葉鍵の野望〜』をプレイしていたんだ。
もうすっごくリアルでさっきまで本当に人殺しをしていたみたいだよ。
「それは残念やなぁ、ところでウチの出番はどうやった?お殿様に色っぽく迫ってうっはうはやったか?」
「え、えーと、………ないしょ、にははっ」
また遊びたいな。
今度は不殺シナリオで全面クリアしたいな………
わたしはそんな未練を残しつつ、おかあさんと一緒にうたわれランドを後にした。
Fin
A 終了、次の話へ
B こんなエンド認めるか!この話はリコールだ
B
B
いきなりそりゃねーぜw
その場が光に包まれる。
いや、本当はそんなことなかったのかもしれない。
けれども、観鈴にはそう思えた。
(あれ……どうしたんだろう?)
観鈴の疑問に答えるものは誰もいない。
ただ、どこまでも白く、夢とも現実ともつかない世界が観鈴の前に広がっていた。
やがて、向こうから一人、歩いてくる影がある。
暫くして、その影が見覚えのある人物であることに気付いた。
(白皇さん……)
一年前に出会った登臼来藩藩主。
そして、全ての始まりとなった人。
「観鈴」
白皇の声がはっきりと、観鈴に聞こえる。
「どうした、浮かぬ顔をして」
「わたし……また、またやっちゃったんだよ」
「また、とは?」
「もう誰も殺さないって、リサさんと約束したのに」
「償えばいいではないか」
「無理だよ……。わたしは人を殺しすぎたの、誰にも許してもらえないよ」
観鈴の言葉に、白皇がふぅっと息をつきながら、答えた。
「私も人を沢山殺した」
「…………」
「別におかしな話ではないだろう? 私とて藩主である以前に武士だ」
「でも、わたしの場合は……」
「変わらんよ。私は民のために人を斬り、君は生活のために人を斬った。
同じ人斬り。やっていることに何の違いがある?」
「でも……」
「…………観鈴」
白皇がもう一度観鈴の名を呼ぶ。
今度は先ほどよりもはっきりとした口調で。
「私は民のために人を斬った。そのことに対し後悔はしていない。
だから私は他人に怨まれようが憎まれようが全て受け入れられる。
だが観鈴。君は違うといいたいのだろう?
悪いと思っているのなら、償え。自分の考えられる限りの償いをしろ。
後悔しているなら己の生き方を変えて見せろ。
赦されないなどといった心配は死んでからでも間に合う。いや、赦されるなどと思うな。
罪として全てを受け入れろ。自分のしてしまった行為を全てだ」
「で、でも!!」
「それが出来なければ……君の居場所はどこにもない。
この世に居ても、あの世に居ても、永遠に後悔し続けることになるだろう……恨みの声を聞きながら」
その言葉が、白皇の最後の言葉となった。
その瞬間に世界が割れる。急速に音と色彩を取り戻していく。
(待って、白皇さん! 待ってよ……!!)
観鈴の声にならない叫びとは裏腹に、白皇の姿はどんどん小さくなっていく。
そして……今度は逆に、その場が黒く黒く変わっていった。
「……ず! 観鈴!!」
「え……」
観鈴が目覚めた先に居たのはリサだった。
どうやら気絶してしまっていたらしい。
辺りを良く見回す。
そこには、眉間を貫かれて物言わぬ骸となった七瀬、
喉を貫かれた初音、そして……その亡骸を抱きしめている初音の姿。
自分の手に握られた、先が粉々に割れている木刀。
だんだん、何が起こったのか思い出せてくる。
そう、自分は初音と七瀬を……結果的に斬ったことになるのだ。
「あ、あぁ……!!」
頭を抱えて蹲る。
落ち着いた頭にどっと降ってくるのは、拭いようの無い後悔。
「落ち着いて観鈴。とにかく、落ち着くのよ」
「リサ……さん……わたし……」
「いいから、今は何も考えないで。心を落ち着かせて……OK?」
「うぅ……」
リサの優しい言葉が却って辛い。
何を言われようが自分は楓の妹である初音を、殺した。
もう人を斬らないと約束した矢先に。
(覚えておけ神尾観鈴! あんただって人殺しなんだ!)
しのぶの言葉が頭に響く。
所詮人斬りは人斬り。十字架のようにそんな言葉が観鈴にのしかかる。
楓の方をまともに見ることが出来ない。
自分はどんな顔して楓に顔を合わせればいいというのだろう。
「わたしは……初音ちゃんを……」
「……落ち着きなさい観鈴。あれは事故、あなたに非はない……」
「違う! あれも間違いなくわたしの所為なの!!
駄目、なんだよ……。罪は償えない、白皇さんの言うとおりになんて出来ないよ。
人斬りは……やっぱり所詮人斬りなんだよ。わたしのやることなんて、所詮は偽善なんだよ……」
観鈴の瞳から、涙が零れ落ちる。
目の前のどうしようもない現実に対する、悔し涙だった。
そして……
A 観鈴はその場で暫く泣き続けた
B リサが口を開いた
C 気付くと、楓が観鈴の前に立っていた
C
あ、ミスってました。
> 喉を貫かれた初音、そして……その亡骸を抱きしめている初音の姿。
喉を貫かれた初音、そして……その亡骸を抱きしめている楓の姿。
で。
一体どういう状態よそれって。
「……観鈴さん」
「楓ちゃん……」
気がつくと、観鈴の目の前に楓が立っていた。
その胸に初音の亡骸を抱き、流れ出た血で2人とも真っ赤に染まっている。
「あの、楓ちゃ」
何と声をかけたらいいのかわからないが、無視することもできない。
観鈴は、ひとまず名前を……
ドゴッ!
呼びかけた観鈴の顔面を、楓が蹴りつけた。
「ちょ!」
「黙っていてください!」
リサの非難の声も封殺する。
「ごめん……ごめん楓ちゃん……」
観鈴は倒れたまま必死になって楓への謝罪の言葉を漏らしている。
楓はその場にしゃがみこむと、そんな観鈴の髪の毛を掴み、起き上がらせる。
「観鈴さん……あなた、今なにを考えていたんですか?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
「答えてください! 答えろ神尾観鈴ッ!!」
かつてないほどの大声で、楓が怒鳴る。
ビクッと一瞬、観鈴はもちろんリサすら体を強ばらせる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい楓ちゃん初音ちゃん……
もう、もう二度と剣は持たないから、もう二度と誰も傷つけないから……
もう誰も傷つけないように、もうわたし、死んで詫び……」
『死』
その言葉を聴いた瞬間、楓の瞳に激怒の炎が宿った。
「ふざ……けるな! この人斬りッ!」
全力の膝蹴りを観鈴の腹に叩き込む。
「ぶぇ、げぉ…! ご、ごめんなさい、ごめんなさい……許してなんていえないけど……」
「あのですね観鈴さん」
楓は観鈴の胸倉を掴みながら続ける
「あなたは、私があなたが初音を殺したことを責めてるとお思いですか? だったらそれは大きな間違いですよ」
内に秘める激情を押さえ込んでいるような、震えた声で楓は続ける。
「そもそも私は初音はあなたに殺されたなんて思っていません。
あれは事故。いえ、譲っても七瀬さんの所為。根本的には、私が招いたことです」
「え……?」
「私が怒ったのはですね、あなたがまた人斬りになろうとしたからですよ?」
「わたしにはわからないよ……わたしは元から人斬り。今だって人斬り……」
「違うッ! あなたは今、本当に人斬りになろうとしたッ! なろうとしているッ!!」
秘めた激情を吐き出すように怒鳴りつける。
「いいですか! いいか神尾観鈴! 今あなたが死んだら、あなたは本当に人斬りのまま死ぬことになる!
そうしたら、初音は、本当に、野良犬のような、狂犬のような、理想も信念も志も持たない『人斬り観鈴』に殺されたことになる!
意味もなく! なにもなく! ただ殺された! ただ死んだ!」
観鈴の顔を掴む。爪を立てる。その瞳を覗き込む。
「いいですか……? 私は初音が大好きだったんですよ。私のすぐ下の妹。可愛い妹。
誰にでも優しくて、私にもひどく懐いていて、こういう性格でどちらかというと人と話しをすることは苦手な私にも
ちっとも気にすることもなく他の誰ともまったく同じように擦り寄ってくる。すごく可愛かったんですよ。
わかりますか! ねェッ!!? あなたにわかりますか? 神尾観鈴!!」
「はい……はい……」
「黙れ! 巫山戯るな人斬りが! 人斬りが私の気持ちがわかるだと!? 戯言を抜かすのも大概にしろ!」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「そんな私の妹を意味もなく死なせたいんですか……? 初音はいったい何のために産まれてきたんですか……?」
「……………………」
「いいですか。あなたが死ぬのは許しません。あなたが死ぬというのなら、その前に私が殺します。
いや……駄目ですね。これではいけません。そうですね……じゃあこんなのはどうでしょう。
”あなたが死ぬなら、私も死にましょう”」
「!」
「だってそうでしょう? 自分の所為で妹を殺しておいて、その後どんな面下げて生きろっていうんですか?
ねえ、観鈴さん?」
「……………………」
「観鈴さん、わかりませんか? あなたが、何をすべきか」
「けど……けど……!」
わかりたくないよ! もうわかりたくないよ!
「そんなの、偽善だよ! そんなの、屁理屈だよ! わたしだけ生きていていい理由になんてならないよ!」
「あなたはッ!」
再度絶叫する。
「まだ善行を為す気でいたんですか!? それこそ傲慢だ! 巫山戯るな!
いいですか? あなたは罪人なんです。罪もない人々を何人も、ただ金のために殺し続けた人斬り。
それがあなたなんですよ。わかってるんですか?」
「はい……はい……」
「そうだ! もうあなたの罪は赦されるものではない! あなたの過去は変わらない! あなたは一生十字架を背負い続ける!」
「はい! はい!」
「あなたのすることは全て偽善だ! 偽りの善だ! ただの自己満足だ! 誰からも感謝されることはない! 感謝されてはならない!」
「はい! はい!」
「ならばその偽善を貫き通せ! 助けた相手に唾を吐きかけられ、助ける相手に過去をなじられ、
助けた相手に刃を向けられ、そして助ける相手に傷つけられようとも! 殺されようとも!
たった一人でも! 闇の中をさ迷い歩くことになろうとも! 底なしの絶望に打ちひしがれようとも!
誰から裏切られようとも、騙されようとも!
その偽善を貫け! 最期の時まで! 最期の1人まで!
騙されるのがお前の罰だ! 裏切られるのがお前の罰だ! 傷つけられるのがお前の罰だ!
一生魂の平穏など訪れない! 一生赦されることなどない!
それでも、生き続けて、苦しみ続けて、血を吐き続けて、偽善を通すのがあなたの使命だ!」
「でも……わたしは……」
「死ぬことなんて許さない。諦めることなんて許さない。剣を捨てることなんて許さない。
あなたはこれから一生人々のために、偽りの善のために剣を振るい続ける。その心と体と命と引き換えに」
「……………………」
A 「しばらく考えさせてほしい……」
B 「埋葬、わたしにも手伝わせて……」
C 「でも、やっぱりわたしは……」
D もう一度だけ、剣を握ってみる。
D
「わたし、もう一度だけ剣を握ってみます……」
長い長い沈黙の後で、ようやく観鈴はその言葉を搾り出した。
それは擦り切れそうなほど小さい声だったけど、明確な決意の色を伴って二人の心にはっきりと伝わった。
楓は胸倉を掴んでいた手を離して立ち上がり、そのまま己の目尻に残っていた涙を拭う。
「他人を守るということは、自分だけが生き残ることより遥かに大変です」
「はい」
「殺さずに人を制するということは、殺してでも止めることとは比較にならないほど困難だ」
「はい」
「失敗は絶対に許されない。だけどあなたは確実に今日のような失敗を積み重ねていくことになる」
「はい……でも、それでもやっぱりわたしは」
「あなたは弱い。あらゆる意味でもっと強くなる必要があるし、それでもきっと全てを守るだけの力に届くことはない。
けど、それでもこの偽善の道を歩み貫き通すというのなら私は……ごほッ、ごほッ!」
そこで激しく咳き込む楓。口元を覆った左手には、べっとりと赤黒い血が付着している。
「見ての通り、私はもう長くありません」
発作がひとしきり落ち着いた後で、淡々と言葉が紡ぎなおされる。
うっすらとした笑みを浮かべて、ただ眼光だけには烈火の如き激しさと、氷刃のような鋭さを同居させて。
その独白に相槌を打つものはいなかったが、楓は気にした風でもなく、
数歩先にある、手から滑り落ち地に突き刺さっていた観鈴の刀を右手で引き抜いた。
「これはあなたの心に呼応して生まれた、あなたが握るべき剣の雛形。
この心打つ眩さは、あなたが犯して来た罪からは冗談にしか思えない。
けれど私はこの輝きを信じます。この刀を鍛えます。全てを賭して、全てを込めて。
全てを護る力のための、最初の一糧となるように。先の無い私が、死の先で願いを叶えるために」
「これから工房に篭ります。明朝取りにきてください」
そう言い残して楓はこの場から歩き去った。
「わたし、頑張ります」
A.リサとの会話
B.お墓、作ってあげないと
C.そして次の朝、槌を打つ音が消えた
B
さく…さく…
太陽の光が二人を照らす。空は雲ひとつ無い青空だった。
ざく…ざく…
ただ無言で二人で穴を掘る。少し、間を空けて二つ。
ザク…ザク…
ほどなくできあがる、ただ、大きい深い穴。
「観鈴、これでいい?」
「うん……」
観鈴は歩く、木の根元で横たわる初音のもとへ。
「んっ…」
軽い、そしてどこまでも、冷たかった。
初音の身体を穴の底へゆっくりと下ろす。
「初音さん…」
初音の顔は今にも泣き出しそうな悲しみの顔のまま。
最後に救いを求めようとした手は広げられたまま。
「……」
今まで使っていた刀、その刀身を引き抜く。
「?…観鈴、なにを!」
剣を逆手に、自分の髪へあて、一気に引く。
かつてそうしたように長い髪はバサリと音を立て観鈴の手に収まった。
「初音さん…私は逃げない、戦うよ、わたしの身体が、心がある限り」
そのまま髪を初音の傍に…
…初音の顔は悲しみの表情のまま、それは自分を拒絶しているようで…
「…ごめんね」
ゆっくりと、置いた。
土を被せ、手を合わす。
安らかに、等と言えるわけが無い。ただ、自分の誓いを伝えるために。
……
もう一つの穴の中、観鈴はゆっくりと七瀬を地面に下ろす
七瀬の顔は凄絶な笑顔を浮かべたまま、まさに勝利者として笑っていた。
「七瀬さん…」
十本刀として一緒に戦ったことは無いけれど、それでもかつての仲間…
不殺をどこまでも否定した彼女。たとえ、それが自分の命を奪うとしても。
「……」
今まで使っていた無名の愛刀、「人斬り観鈴」としての愛刀、それを七瀬の傍に置く。
「(七瀬さん、わたし、戦うよ。人斬りとしての過去も、何もかもを受け入れて。
だから、これを渡すね。それは、わたしの一部だったから。七瀬さんもこれからは一緒。
憑いて。私にしがみついて。私の過去として。
わたしの傍で、私の生をみていてほしい…)」
七瀬の顔は凄絶な笑みを浮かべたまま。
心折れず、戦い抜くなど不可能だと嘲笑の笑みを浮かべているようで…
「それでも、やるよ。わたしは、わたしの闘いを。」
土を被せ、ただ誓いを伝える。
二つの墓の前、
二人を抱いた時に付いた血が、
すっ、と観鈴の左目から頬へ流れた。
A リサと会話
B 次の朝、全ての音が止まった。
A
「ねえ……リサさん」
「What?」
「今日まで私……多くの人を殺めてきたけど……今まで一度も、亡くなった人を
葬ったことは無かった」
観鈴は墓の方を向いたまま、淡々と語り始めた。
「私が殺した人は、生きてる間は倒すべき『標的』で、死んだ後は単なる『結果記録』
としか思っていなかった。……それって、自分以外の他の人を人間だと思ってなかった
ってことだよね……」
「観鈴……」
「他人をモノとしか見られない私が、人間であるわけがないよね。
昨夜、山の中で亡霊さんたちとお話しして、自分の愛する人が殺される悲しみや
怒りを解ったつもりだったけど……結局は、どこかで他人事だった……それを経験
したのが私自身じゃなかったから……」
観鈴の視線の先は、観鈴が必死に救おうとして、叶わなかった、二人の少女の
安らかに眠る処。
「二人を弔うことで、決意を固めるつもりだった。許されない過去と一緒に、心の
中に仕舞い込んで、振り返らずに進むつもりだった。でも……でも……」
観鈴の声に涙が混じる。
「二人とも、もう会えないと思うと……もう、この世にいないんだと思うと……。
胸がポカンとして……体がもぎ取られたような気分になって……取り返しの
つかないような気分になって……無性に素手で土を掘り返したいと……でも無駄だと
……こんな痛み、感じたことはなかった……」
「観鈴……」
リサは観鈴を抱き寄せる。観鈴は顔をくちゃくちゃの皺だらけにして、咽び泣いた。
「人が死ぬのって……こんなに悲しいんだよね……胸が破れそうになるくらい……
悲しいことなんだよね……あぁああ……うぅああぁあぁああ……あぁあぁああ……
おぉをおおわぅあああああああ……」
「観鈴……倒れちゃ駄目……持ちこたえて……」
生まれて初めて、人の死のために流した涙と嗚咽。
このとき初めて、観鈴は、人間になった。
A.翌朝。遂に刀が出来た。しかし楓は――
B.視点変更。長州藩の動静。
Aで。
Bにするとなんか余計な設定だけが先行しそうな気がする。
往人「往人と」
そら『そらの』
「『おもしろ幕末講座!』」
SE「いやっほーぅ!幕末最高ー!」
往人「おとなのよい子のみんなこんにちは。司会の往人お兄さんだ」
そら『助手のそらだよ』
往人「さて、第六回は幻の刀工、柏木楓についてお話しよう」
往人「江戸中期の太平の世になると、武士道の廃頽につれて刀工の技量は大きく低下した。
特に、元禄頃から華美柔弱の風調に合わせて、装飾品としての豪壮で煌びやかな刀が流行する」
そら『この頃の刀は、あまり実用的じゃなかったんだね』
往人「ところが、幕末の文政頃になると、尊皇攘夷の声が高く、世上は物情騒然となってくる。
そんな武家思想の変動とともに鍛刀界にも大転換が行われた」
そら『ダイテンカン?』
往人「そう、言うなれば、温故知新。正宗など、昔の刀の鍛法を復活させたんだ」
そら『マサムネならぼくも聞いたことあるよ』
往人「そんな幕末期の刀工に柏木派の初代、柏木耕平がいた。
彼の作る刀は、無骨ながらも『曲がらず、折れず、よく切れる』とされ、
多くの幕末志士たちに愛用された」
そら『まさに戦闘用の刀なんだね』
往人「その柏木派の中でも稀代の刀工と言われるのが、三代目の柏木楓だ」
そら『え、なんで?』
往人「現存数こそ、さほど多くは無いが、とにかく『よく斬れた』らしい。
その斬れ味は鬼神のごとし。
刃先に止まった蜻蛉が真っ二つに裂けて落ちたという伝説もあるくらいだ」
そら『へぇーー、そんなにすごい腕なのに、どうして数が少ないのかな?』
往人「どうやら、早くに亡くなったたらしい。
死因については諸説様々で、依頼人に斬り殺されたとか、世を儚んで自刃したとか言われている。
中には、剣の斬れを追求するあまり禁忌の外法に手を染め、その呪いで死んだなんて話もある」
そら『うわぁ、それは怖いね』
往人「まぁ、それだけスゴイ腕だったんだろうな。
あと、とても気位の高い人で、自分が気に入った相手じゃないと刀を打たなかったらしい」
そら『とっても気難しい人だったんだね』
往人「さぁ、どうだろうな。
これは俺の想像だが、彼女は自分の創る刀が殺戮の道具であることに罪を感じていたのかもしれないな。
晩年は、一人山奥の庵に住み、人々を生かす刀を打とうとしていたと伝えられている。
ちなみに柏木派の特徴は、茎に『鬼』の銘を入れる事。
これは、初代柏木耕平が自らを鬼の子孫だと自称していたからだと伝えられている。
また、それを受けて柏木派特有の刃文を『鬼神楽』と呼ぶ。
柏木派の刀剣は現代でも高値で取引されるので、心当たりのある人は要チェックだ!」
翌朝、観鈴とリサは再び楓の庵を訪ねた。
その刀は、床の間の八幡大菩薩と書かれた軸の前に供えてあった。
刃長はおよそ二尺四寸(約72.8cm)、反りが華表反りでおよそ六分(約1.8cm)。
小杢目肌はあくまでも良く詰み、緩みや疵気が一切ない。
優美な『鬼神楽』の刃文が観る者の視線を魅了する。
そして、何より特徴的なのが、本来刃があるべきところが峰になっている事である。
−−−逆刃刀
それはリサが依頼したものではあるが、
『力こそ全ての時代に、全てを守る力を』という楓の願いであったのかもしれない。
これほどの業物を一日で打ち上げるのだから、さすがは霊匠柏木楓である。
しかし、その楓は
A 疲れて死んだように眠っていた。刀に手紙が添えてある。
B 血溜りの中で倒れていた。まだ、息はあるようだ。
C 自分の胸を刺して死んでいた。刀に遺書が添えられている。
C
楓は自分の胸を刺して死んでいた。刀に遺書が添えられていた。
観鈴は、遺書を手に取り、恐る恐る中をのぞいた。
『観鈴さんへ。
恐らく、邪刀が刀を完成させまいと、邪魔をして来ているのでしょう。
私に刻まれた呪を通じて、私を乗っ取り、刀を破壊しようとしてきました。
何度となく、危うい状況になりかけましたが、何とか刀を完成させることは出来ました。
ですが、貴方に生きて会えることは出来ないでしょう。朝まで持ちそうにありません。
私が私であるうちに全ての後始末を着けようと思います。
貴方が悔いる事はありません。 これは、私のけじめなのだから。
最後にお願いがあります。この刀に、貴方が相応しい銘を付けてあげて下さい』
「楓さん…あなたも戦ったんだね…」
その文章は呪いの影響か、簡潔かつ短い文章にもかかわらず、非常に乱れていた。
刻一刻と己の意識が乗っ取られていく中、呪いと戦いながら最後の意志を紙に刻み込んでゆく楓の姿が
映るかのようだった。
「うん…分かった…付けてあげる。 この刀の銘は──」
A 楓
B 鬼切丸
C 空
D 全然駄目、俺が付ける ※銘を付けて下さい
C
「……『空(そら)』」
「空……?」
「うん。楓さんが……空の向こうで、ずっと見ていてくれそうな気がするから」
観鈴はそう言って、空を腰に提げる。
それからぐっと涙を拭いて、リサに笑顔を向けた。
「ね、リサさん。楓さんは……初音さんのお隣にいさせてあげよう」
「……そうね。きっと楓もそうすれば喜ぶかもね」
「うん……」
雨月山に、墓標がまた一つ増える。
観鈴もリサも、墓を作る間はただ無言だった。
だが最後に楓の墓前に花を添えた後、リサがそれまでの沈黙を破るかのように話し出す。
「……楓は、自分を責め続けてたのね」
「うん?」
「観鈴が山に篭っている間に、少しだけ楓と話したの。
楓は昔、斬れる刀だけを追及し……それを悔いていたみたいだったわ」
「…………」
「そして禁忌の外法に手を出した、そう言っていたわ。
鬼の怨念を篭めた刀を打った。そう言ってたのを覚えてる。
ここからは私の推測だけど……きっと楓は、やってしまったのね。
刀工の柏木派は鬼の子孫を名乗っていた。そして、楓は鬼の怨念を篭める為に……」
「まさか、楓さんは……!?」
「確証は無いけど、多分そういうことなんじゃないかしら。
そう考えれば、楓が命の大切さを説いてたのもなんとなく分かる。
あなたに刀を打ったのも、どこか自分とあなたを重ねていたのかもね……」
観鈴が楓の墓標を見る。
もちろん、答えを返してくれるわけはない。
ただただ、墓は朝日を浴びて黙り続けるだけだった。
A リサとまだ話を続ける
B そろそろ帰ろう……
B
「……帰りましょう。観鈴」
2人で墓標に手を合わせていると、やがてリサが口を開いた。
「今夜、京都へ再び侵入するわ。御所にいる栗原透子を迎えに行く」
「……………………」
観鈴は黙祷・合掌したまま黙ってそれを聞いている。
「彼女は訳あって各方面から命を狙われている。
御所にいる間は大丈夫でしょうけど……一歩外に出たら間違いなく命を狙われる。
私たちの手で彼女を守りきらなければならない。
それには観鈴、あなたの力が必要」
「……………………」
「あなたがこれからどうするかはあなた次第。
ただ、これがその一歩目となる。私にも、あなたにも、彼女を守りきらねば未来はない」
静かに、語りかける。
「…………リサさん」
やがて、観鈴も目を閉じたまま、口を開いた。
「……なに?」
「その人を……どこまで連れていけばいいの?」
「それは……」
A 長崎までよ
B 江戸までよ
C 堺までよ
D ひとまず京都の外まで。そこから先はまた指令が来る
D
「ひとまず京都の外まで。……できれば、私の秘密倉庫まで連れ出すわ。
そうすればまた次の目的地が告げられる手はずになっている」
「そう……どちらにしろ、京都の中を往復するんだね」
「そうね。今回の第一ハードルはそこよ。
武装した志士が山ほどいる京都の町からいかにして生還するか。
私とあなたと、そしてもちろん件のお姫さまを連れて、ね」
「……………………」
「街中や志士に関してはあなたの方が詳しいでしょう。
時間も方法もあなたに任せるわ。観鈴、どうする?」
「……………………」
A このまま日が高いうちに京都に入る
B いったん倉庫に戻り、夜を待って侵入する
A
「明るいうちに京都に入ってそのお姫さまと合流しよう。
とりあえず、明るいうちに街中で襲い掛かってくる人はいないと思うし」
「まあ……妥当なところね。ただ……今から向かうと着くころにちょうど日没になるわね。
帰りが少し危険ではあるけれど……」
「大丈夫だよ。闇に紛れてならそれはそれで脱出もしやすいと思うし。
もし襲われても、その時のためにわたしがいるんだから」
自信満々に観鈴は言った。
「……あなたがそう言うなら私が拒否する理由はないわ。
わかった。明るいうちに入京しましょう」
「うん」
頷きあった後、軽く準備を整え、庵を後にする2人。
後に残されたのは寄り添った墓標が2つ。少し離れた場所に1つ。
観鈴は庵から少し離れた場所で、もう一度振り向くと、3つの墓標に向かい
「……行ってきます。見ていてください」
合掌し、一礼。
そしてもう二度と、振り向くことはなかった。
かくして京都への道を歩き出した2人だったが……
A 何事もなく市内に入れた
B 道中、十本刀と遭遇した(※要指名)
C 道中、長州ではない者に襲撃された(※指名可能)
Aで
「……なんとか無事に入れたわね」
「うん」
日が大分傾いたころ、リサと観鈴は無事京都市内にたどり着いた。
家路に着く人も多いが、まだまだ京の町は賑やかだ。
「さあ、それじゃあ急ぎましょう。ここから先は私が……」
「にはは。ちょっと待ってリサさん」
案内をしようと先にたって歩き出したリサ。その服の裾を引っ張り、観鈴はリサを止めた。
「……どうしたの?」
「お客さん」
「え?」
リサは気づいた。
表面的にはいつもの笑顔。だが、観鈴の内部から闘気が立ち上っていることを。
”スイッチ”が入れば、即座に戦闘に移れる体勢になってることを。
「ど、どうし…」
「あれ」
疑問の声を観鈴が指をさして遮る。
人差し指の向こうにいるのは……
「……久しぶりね、観鈴」
「にはは。杏さんお久しぶり」
十本刀筆頭、藤林杏。
道の真ん中に仁王立ち。観鈴を睨みつけている。
「………………」
抜きこそしないもののリサも右手を下げ、いつでも拳銃を手に取れる体勢に移る。
観鈴は一歩、抜刀できる体勢を保ったまま、前に進み出た。
「どうしたの杏さん、何かご用?」
「そうね……」
僅かに俯くと、杏は……
A 「死んでもらう!」と叫び、日中の街中にも関わらず襲ってきた。
B 「話があるわ。その辺の店に入りましょう」観鈴に店を選ぶよう言ってきた。
C 「一言忠告しておくわ……」と観鈴らに一言告げていった。
B
「話があるわ。その辺の店でお話しましょう」
まるで再会した旧友に話しかけるかのように、気軽に話しかけてきた。
「こっちが連れてくって行っても不安でしょうし、あなたで適当に店は選んでいいわよ。
お題は私が払ったげる」
「………どういうつもり?」
まったく警戒は解かずに、リサが言う。
「いやねえ、元仲間に出会ったんだもの。旧交を温めるくらいしてもよくない?」
「ふざけないで!」
「別にふざけてないし、あなたには話してない。観鈴、あなたはどうなの」
「……わかった」
抜刀の体勢を解きながら、観鈴は答えた。
「いいの? 観鈴。この子は……」
「大丈夫。もう大丈夫だから。リサさん、お仕事は時間は大丈夫?」
「え、ええ。極端に長くならなければ……」
「決まりね」
やり取りを見ていた杏がわずかに笑みを漏らす。
「じゃ、店を選びなさい。あんまり高いところはやめてね」
「……注文は? しないの」
「する気にもならないわね」
「わたし、お腹空いてない」
「奢るって言ってるのに……もったいないわね。じゃあ勝手に頼ませてもらうわよ……」
結局一行は近くの小料理屋の座敷に席を取った。
入る時、もちろん中の様子を伺ったが藩士が潜んでいる様子はない。
何人か客の入りはあるが、いずれも一般人だ。
「そんなことより、話があるならさっさとしなさい」
「そんなに慌てないでよ異人さん」
「こちらはこちらでやることがあるの。慌てさせてもらうわよ小娘さん」
「せっかちねぇ」
剣呑としたやり取りを続けるリサと杏。
その脇で、観鈴はにははと笑っている。
「けど杏さん、戦いに来たわけじゃないみたいだけど……本当に何のようなの?」
「…………」
A 結局杏はのらりくらりと時間を稼ぎ続けた
B 「今すぐ京都を出て行きなさい」
C 「人斬りをやめたってのは本当なの?」
B
「今すぐ京都を出て行きなさい」
「……には?」
出てきた料理をつまみながら、杏は言った。
「どういうこと?」
「今あなたにここにいられるとすごく困るの。
何の用事があってかは知らないけど、さっさと出てってほしいの」
「それは無理ね」
リサが即答する。
「どうして?」
「さっきから言ってるけど、私たちもここに用事があるの。
で、それは今日って決められててね。私もいい大人だから、約束を破るわけにはいかない」
「その用事って何なの? 誰か殺したり盗み出したりなら私たちが代わりにやってあげていいわよ」
「……随分と優しいのね。一度は自分の仲間を粛清しようとしたのに」
「……………………」
そこで少し箸を少し休めて。
「今私たちはね、あなたたちなんてどうでもいいぐらいすごい大きな仕事を抱えてるの。
あなたたちに京都に入られて、迂闊に邪魔でもされるとすごく面倒くさいの。
追い出すためなら今までのことは水に流していい。殺した仲間のこともまあ大目にみるわ。
だから、京都を出て行って。お願い」
「……………………」
「にはは、杏さん。仲直りしてくれるのはありがたいんだけど……」
その時……
『火事だー!』
「!?」
突如、外から悲鳴が聞こえてきた。
「火事……?」
「あらあら。大変ねぇ」
驚くリサと観鈴。にわかにざわめく店内。尻目に、杏は平然と食事を続ける。
「今日はだいぶ風も出てるし……これは下手をすると大火になるわねぇ」
外を眺めながら、他人事のように呟く。
「まさか……あなたが!?」
「さあ、それはどうかしら? とにかく、話は考えてもらえる?
出て行けって言っても一生近づくなってわけじゃないわ。二、三日も離れててもらえば……」
『御所だ! 御所から火が出たぞー!』
外の喧騒はどんどん大きくなっていく。
そして、聞こえてきた『御所』の言葉。
「あらあらあら……これは全くもって大変ねぇ。よりにもよって御所から火が出るとは」
「…………観鈴」
「うん」
相変わらずの態度を崩さない杏を尻目に、リサと観鈴は頷きあう。
「……どうしたの? 呑んでもらえる?」
「そのまえに杏さん。一個教えてあげる」
「なに?」
「私たちの仕事よ」
「ああ、そうだったわね。さっきも言ったけど、私たちに出来ることなら、代わりにやってあげても……」
シュン―――と一筋の閃光が走る。
「!」
瞬間杏は身を翻した。一瞬前まで杏が座っていた座布団に観鈴の逆刃刀が食い込んでる。
「Sorry ミス・杏!」
「わたしたち、御所に用事があるの!」
呆然としている杏を尻目に、2人は店の外へと駆け出していった。
店の外。町の向こう側は既に赤く染まり、逃げ惑う人々でごったがえしている。
「チッ! よりにもよって! つくづくツイてないわね最近の私は!」
御所の方向に向かい、駆け出そうとしたところで後ろから杏の叫び声が聞こえてくる。
「交渉決裂! 殺しなさい!」
「!」
命令と同時に道の両脇からぞろぞろと出てくる武装した武士たち。
その先頭に立っているのは……
A 十本刀を1人指名。
盲剣のみさき
これって…A 皐月でいいの?
えっとB以降の選択肢はないのという意味です。
あれ、じゃあもしかしてAって入れてない自分の選択は無効?
なんかABCって選択肢ないから単に指名だけしたんだけど
何となくテンプレートとして頭にアルファベット割り振っただけなんで別に
※(人物指定)
だけと同義に捉えてもらって結構です。
というわけでこの場合>812の選択結果に従って十本刀はみさきちになります。
生き残り確定しているみさきが来たか。
「こんばんは。じゃないや、初めまして、だね」
にこ、と微笑む黒髪の少女は、色めき立つ武士達を、片手で制する。
この緊迫した空気に似合わぬ、自然体。赤い炎に煽られて長い髪が翻った。
「わたしは川名みさき。ちょっと恥ずかしいけど、十本刀・盲剣のみさき、なんて呼ばれることもあるよ」
「盲剣?」
言われてリサが気づく。この少女の瞳は、どこにも焦点があっていない。
「猛犬?」
観鈴は辺りを見回す。どこにもそれらしき猛犬は見当たらない。
「違う違う。犬なんかいないよ。わたし、目が見えないんだよ。でも剣は結構使えるの。それで、盲剣」
くすくすと笑うみさき。だがその一言で、目が見えなくともこちらの様子を把握していることが分かる。
反射的に、リサが拳銃に手を伸ばしかける。と、みさきは半歩引いて、身体を斜めにした。
――やはり、見えているに等しい。常人と同じか、あるいはそれ以上に。
「hu……あいにくと、急いでいるの。ここを通してもらえるかしら?」
「それは困るよ。あれから……一年前の、あの事件からずっとずっと探しつづけて、やっと探し当てたんだから」
一年前。といわれても、観鈴には心当たりが多すぎる。誰だろう、どれだろう、そう心を探るだけでも、胸が痛む。
過去に振るった斬撃が、全て観鈴の胸に返って斬りつけてくる。
だけどこんなもの、本当の痛みにはほど遠いはずだ。観鈴ちんは強い子だから、頑張って受け止めなきゃ。
「誰の……恨みなのかな」
みさきは少し、驚いたような顔をした。
「ああ、そうだね。わたしはずっとあなたのことを聞いて、知ったつもりになって追いかけていたけど、
あなたは全然わたしのことを知らないんだね。――あなたが殺したわたしの友達のことも」
淡々とした口調の中に、ほんの少し、怒りが揺らめく。
「わたしね。目が見えなかったから、普通に生きていくだけでも大変だった。
ううん。生きられないはずだった。ろくに働けもしない無駄飯ぐらい、家においとけないもんね。
本当だったら捨てられて、のたれ死んでいても、全然おかしくなかったよ。こんな時代だし。
そんなわたしを、雪ちゃんは救ってくれたんだよ。同じ年に生まれた、近所の子ってだけの理由で。
お金持ちの道楽よ、ってうそぶいていたけど、でもね、暖かい寝床と、綺麗な着物と、
なによりもお腹一杯になるほどのご飯を、雪ちゃんはわたしにくれた。
わたしが十二杯目のおかわりをそっと差し出すと、
『バカね、遠慮すること……いや、ちょっとはしなさいよね』って、笑いながらよそってくれた。
時々意地悪で、ちょっと汚い商売もして、世間では極悪人だなんてひどい噂も流れていたけど……
うん、それはちょっと本当だけど、でもわたしには、優しかった。
さっきも言ったけど、わたし目が見えないから、外に出られなくって、
あの雪ちゃんのお屋敷だけが、世界の全てだった。
狭いけど、暖かな世界。それだけで、十分だったんだよ」
みさきは、小さなため息を吐いた。
「もう、わかったよね。あなたが殺したのは『わたしの世界の全てだった、深山雪見』。
……まさか、名前も知らないとか?」
観鈴は首を振った。
「よかった。雪ちゃんの仇って言っても、誰のことだか分からないんじゃ、仇の打ちがいがないもんね。
うん。あなたにも言いたいことはあるよね。事情も少し聞いてるよ。
でもね、わたしにも言いたいこと、やりたいこと、そしてなによりも、理由があるんだ」
みさきはゆっくりと背中に背負った巨大な大判焼き――の形をした、盾を手に取った。
その裏に仕込まれた、短い槍を抜く。槍なのに、リーチがさほどないという、あまり見ない獲物。
「あなたを殺す、理由がね」
彼女を彩る笑顔は、今、ようやく本懐を果たせるという、憎悪から湧き出る至福の色。
とても、寂しい色。
その色は、ほんの少し前の観鈴に、悲しいほどよく似ていた。
それが耐えきれず、リサは無駄だと知りつつ、問いかける。
「その雪見さんは、あなたにこんなことをして欲しいと、願うような人だったのかしら」
「聞いてみて」
「え――?」
「雪ちゃんがどう思うか、聞いてみて。聞ける? 聞けないよね。だって雪ちゃんは死んじゃったんだもの。
声は聞けない。心も分からない。どんな顔をするかも。だから意味なんてないよ。そんな質問」
「意味がないというなら、あなたの行動も同じでしょう。仇を討ったって、誰も生き返りはしないわ」
「やだなぁ、当たり前だよ。だから人は、憎むしかないんだよ。
生き返るんなら、大切な人が殺されても憎む必要なんて、ないもんね。
でもそんなことは出来ないから……憎しみをぶつけるしかない。そうだよね?」
さすがのリサも、押し黙る。
所詮、彼女は誰を殺されたわけでもない。
自分の言っていることは、偽善的なごまかしであることを、よく知っている。
だからもう、なにも言えない。
「リサさん」
観鈴がリサの前に出る。
「観鈴……」
「御所へ、急いで。あの人が用があるの、わたしだけだから」
「でも、敵は彼女だけじゃないわ。あなた一人じゃ――」
「お願い」
「……分かったわ。でも、楓との約束……ちゃんと果たしなさいよ」
「うん。わかってる。にはは」
上手く笑えたかどうか自信はない、が、リサはともかく、身を翻した。
そして――。
A 「どうすれば、いいかな」と、問いかけた。
B 「……」無言で逆刃刀・『空』を抜いた。
C そのリサの背中に向けて、槍が飛んだ。
D 杏が率いる別働隊が、いつの間にか回り込んで、退路を断った。
A
リサが走り去る。一瞬、杏が迷いを見せたのをみさきは察し、
「杏さん、ここは任せてくれていいよ」
「でも、彼女は手練れよ。それもとんでもなくね」
「……そうかなぁ? そんな感じはしないよ。だいぶ、聞いてた印象と違うね。弱いよ、この人」
「姫百合さん達も、七瀬さんも、返り討ちにあったのよ。甘く見ないで」
「見ないでって言われても」
「あー、もうっ。じゃあ油断しないでっ」
「大丈夫。御所の方も、邪魔されちゃ困るんでしょ? でもこの人は別に、今すぐ殺さなくてもいいんだし」
「……わかったわ。お願い」
杏が駆け出し、武士達のうちの何人かが後に続く。
「余った人達は、逃げないように、囲んでおいてね」
武士達は言われて慌てて、遠巻きに観鈴を取り囲む。
人数が減ったから、逃げようと思えば、切り抜けられそうだ。
だけどそれは、答えを出したことにはならない。
炎が燻る音が聞こえる中、観鈴はぽつりと呟いた。
「どうすれば、いいかな」
「さぁ?」
相も変わらずの、人を食ったような返し。
「別にあなたがどうしたいかとか関係なしに、わたしはあなたを殺すけど」
「が、がお……」
とりつく島もない。
みさきは盾を前に、槍を脇に構える。独得の、前傾姿勢。
「抜かないの? 別にいいけど」
観鈴は――覚悟を決めた。
柄に手をかけ、鯉口を切り、ゆっくりと引き抜いた。
露わになった刀身は、燦然と光をはねかえした。だがその光も、盲目のみさきには届かない。
「……? 鞘に擦れる音が変だね。普通の刀じゃないの?」
「この刀はね、ある人が、命をかけて打ってくれた、わたしが偽善を貫き通すための、贖罪の刀。
刃が峰につけられた、逆刃刀――」
「ああ、なるほど」
みさきは笑った。
「偽善なんだ。ぴったりだね」
ぐ、とみさきの体重が、前にかかる。
「そして――今さらだねっ!」
縮地、とは違う。だがそれに匹敵する速度で、みさきが迫る。
見えないからこその思い切りの良さに、盾の重さすら加速度に加えて、一気に観鈴との間合いを詰める。
くわえて繰り出される槍の速度は、短く、軽いが故に、まさに神速。
あまりの早さに空気を破裂させるような音が、金属の擦れるいやな音が、観鈴の耳元で弾ける。
ギリギリの所で、逆刃刀が間に合った。
軌道を反らされた槍の穂先は、観鈴の側頭部を掠め、髪を何本か巻き込んでいた。
「さすが」
と言うが早いか、逆手の盾が、叩きつけられる。
受け止めてもさして意味のない、質量と硬度の塊が、観鈴の胸を打って吹き飛ばした。
一瞬息が詰まるところを、また槍が襲ってくる。ついで舌鋒が、
「なんでよけるの? やっぱり死にたくないの? そうだよね、誰だって、死にたくなんかないよね。
なのにあなたは奪ったんだ、たくさんの命を。ううん、一つでも十分……、
かけがえのない、たった一つの!」
かわしきれず、肩口が裂けた。血飛沫が舞い、よろめいて倒れた。
素早く反転して立ち上がったが、みさきはそれ以上追撃をしようとはしない。
血に濡れた穂先は、炎よりもなお赤く染まっている。
「なにそれ? この程度? 雪ちゃんも、こんなあっさり殺したの?
あはは。つまらないね。納得、できないよ。こんな、こんな、こんな……っ、
一年間、気が狂いそうになりながら、見えない目で放り出されて、乞食のまねごとをして、
そこらの人に身体を弄ばれながらっ、見える人よりも動けるように、雪ちゃんの仇を討てるように、
強くなりたい、強くならなくちゃと、ただそれだけを念じて、必死に生きてきた!
この一年間が、バカみたいだよっ! 神尾観鈴っ!」
慟哭の叫びが、観鈴の胸を貫いた。
見えない目から溢れる涙が、心を締め付けてきた。
だけど、なんだろう。不意に、観鈴はこう思った。
「あなたは……わたしに似てるかも知れない」
「……似てる?」
「うん……わたしは、白皇さんをしのぶさんに殺されて、その罪を被せられて、裏切られて、恨まれて、
殴られて、追われて、殺されそうになった! 散々ひどい目にあわされて、もうどうしようもなくなって、
あとは、あとは……もう殺すしかなかった! 殺さなきゃ、殺されるって所まで、私は追いつめられた!
そう、だから……わたしは殺したんだ。一番の、原因の、深山雪見さんを……」
みさきはかぶりを振った。
「……わたしとは、全然違う」
「同じだよ。恨みの気持ちで人を殺そうって考えてるのが、おんなじ。だから、その気持ちは、凄く分かるよ」
「それならわたしも、あなたに復讐の権利があるってことだよね?」
「うん。でも、雪見さんは、わたしを殺そうとした」
「……?」
「だから、わたしも自分を守る」
「……自分がっ! かわいいだけじゃないっ!」
「違う!」
「違わないよっ!」
みさきが再び、槍を繰り出す。次いで盾との複合攻撃が襲ってくる。
観鈴はギリギリでそれをかわしながらも、叫ぶのをやめない。
「お母さんも殺された! わたしの罪の、とばっちりを受けて! 初音さんも楓さんも、巻き添えを喰った!
悲しいけど、寂しいけど、それは全部、わたしの罪なんだ。
例え最初の罪が、誰かから被せられたにしても、わたしはそれに耐え切れなかった」
「なら、死になよっ!」
みさきの回し蹴りが、観鈴の脚を払った。
だが、観鈴はそのまま後方に回転し、遅いかかってくる穂先をかわし、体勢を立て直す。
叩きつけられる盾を、今度は剣の腹でがっしりと受け止めた。
「できないっ! わたしの中には、殺した人の命が全部入っている!
その人達の、思いも、無念も、全部背負って、この命が力尽きるまで、生きて生きて生き抜いて――」
霊刀が、光を放つ。
「今度は誰かを幸せにしてみせる!」
A 逆刃刀は、みさきの盾を真っ二つにたち割った。
B 逆刃刀は、みさきの服を真っ二つにたち割った。
C 不意に銃声が、響いた。
D リサの悲鳴が、聞こえた。
A
ズゥン……と重い響きを立てて、真っ二つになった盾が、地面にめり込んだ。
逆刃刀は地面すれすれまで下ろされている。
そのまま一歩踏み込んで切り上げれば、峰に着いた刃は、容易くみさきを切り裂くだろう。
そしてみさきの手にした穂先は、観鈴の肩に突き立っている。
あと少し力を込めれば、ひびの入った鎖骨を抜けて、心の蔵にまで達する。
吹きだした血が、みさきの顔の半分を、赤く染めていた。
「どうしたの?」
みさきが問うた。
「多分、すぐに振り上げれば、鎖骨に引っかかっている分、わたしの攻撃の方が遅いと思うよ?」
「知ってる。でも、やらない」
「生きて償うんじゃなかったの?」
「人を殺したら、意味がないから。せめて少しずつでも、憎しみを断ち切っていかないと」
「……バカみたい」
みさきが手首を返した。
「うぁっ……!」
肉がえぐれ、激痛が観鈴を襲う。腹が足の裏で押され、地面に倒される。
「ホント……バカになったせいで、弱いんだね。信じられない」
みさきは槍を、逆手に持ち替えた。
「ちょっと、試させてね」
不意に膨れあがる殺意。観鈴はみさきの脚を払って、落ちてきた穂先をかろうじてかわす。
二回、三回と続けざまに繰り出される攻撃は、地面に転がってさけた。
回転の勢いを利して跳ね起き、僅かに距離を取る。
みさきはそれ以上追撃を加えず、首をひねっていた。
「……まぁいいかな。これくらいなら、多分」
観鈴は、わけがわからない。
「あ、あの……?」
「あのね、わたし、一年間苦しんだの」
わけがわからないが、観鈴はこくこく頷く。
「このくらいなら、弱くなってても、なんとか生き延びるくらいは出来そうだし。
だから、苦しんで。一年間。今日みたいに、傷ついて、責められて、悔やんで、泣いて叫んで。
そうしないと、とても気が済まないよ」
ぽかん、と間の抜けた顔になる観鈴。
「今日死ぬ方がいい? わたしはそれでもいいよ」
観鈴、慌てて首を振る。
「忘れないで。一年後、殺すから。ちゃんと連絡してね。しなかったら、殺すよ」
「……にはは。観鈴ちん、一年後に連絡するけど、殺されない」
「だめ、死んで。苦しんで、殺されて」
「……ごめんね。ダメだよ。でも、ありがとう」
「黙って。消えて。今すぐ殺したくなるから。目障り……じゃないや。えぇと、邪魔」
みさきが追い払うように手を振った。
観鈴が言われたとおりに消えようとして……刀を抜いた武士達に遮られる。
と、みさきは苛立ったように、
「はやくそれ、どかして。あのね、殺したいの。すっごく殺したいの。でも我慢してるの。邪魔しないで」
そうみさきに言われると、道を開けるしかない。
「絶対、絶対、連絡するからっ!」
そんな叫びを残して、観鈴は街路へと消えていった。
「……変な人」
あんたも大概だと思う。とは口に出せず、武士達はみさきに詰め寄った。
「みさき様、いいのですか!?」
「ああ、うん。殺すよ。でもさっきも言ったよね。今すぐ殺さなくちゃダメってわけじゃないって」
「ですが……」
「盾もなくなっちゃったし。新しいの、作ってもらわないと。あ、そこの人。割れたの持ってきてね。重いよ」
「しかしっ、あいつのために、幾人者同士がっ!」
「ああ、うん。あなた達が彼女を襲うのを止めないよ。そうすれば、彼女も苦しむだろうし。
頑張って、苦しめてきてね。殺されない程度に」
あまりにも淡々とした口調のせいで、彼女がなにを考えているのか分からない。
本当に殺す気があるのかないのか。苛立って、試したくなる。
「深山様の、仇ではなかったのですか?」
瞬間、空気が変わった。
「わたしは、彼女みたいに、殺さない誓いなんて立ててないよ?」
深い闇を湛えた瞳が、静かに、男を見る。飲み込まれそうな恐怖が、男の心胆を凍り付かせた。
「しっ、失礼しましたっ!」
「余計な御世話さんだよ」
すねたような口調は、いつものみさきと同じ調子に戻っていた。
不意にぽんと、いいことを思いついたと手を合わせて、
「それより、おなかすいちゃったよ。お兄さんのおごりでなにか食べに行こう」
「せ、拙者の、ですか!?」
ある意味、先ほどのよりもよほど恐ろしい提案だった。
「牛鍋屋さん、まだ空いてるかなぁ」
「いえ、この火事ですし、ああ、それにそうだ、杏様の手伝いに行かなくてはっ! よし、行くぞみんなっ!」
「おおっ!」
被害を食っては敵わぬと、慌てて皆駆け出す。
みさきは街路に取り残され、「……逃げられちゃったよ」と、呟いた。
しょうがないなぁ、と、一人で歩き出す。
――仇は討てなかった。いや、討たなかった。自分の選択が間違っていたかどうか、まだ分からない。
もしかしたら、観鈴は今日にでも討ち取られるかも知れない。そうなったら、自分は後悔するだろうか?
いや、観鈴はきっと一年後、自分に連絡を取ってくる。なぜだか、そう、確信できた。
その時にこそ、雪見の仇をとることが出来るだろうか。
「……さぁ、どうだろうね?」
空を見上げた。もうだいぶ暗くなった空は、炎の照り返しで、星も霞んでいる。――はずだ。
多分、黒と赤が入り混じって、地獄のような光景。
それを背景に、雪見が腕を組んで立っている姿が浮かんだ。不思議とよく似合っている。
「怒ってるかなぁ……雪ちゃん」
決まってる。絶対に怒ってる。そしてみさきを「なにやってるのっ」といじめるのだ。
だけどどんなに怒ってても、雪見はすぐに、みさきを許してくれた。
だから、今日もきっと――。
「あれ……? 変なの。死んだ人がなにを言うかなんて、分からないって言ったくせにね」
みさきは、たった一人でくすくすと、おかしそうに笑い続けた。
A そのころ、リサは――、
B 駆けだした、観鈴は――、
C 援軍をひきつれた杏は――、
D 透子「メガネ、メガネ」。
D
何やってんのトン子――!ww
1、しーちゃんがいなくなったので何かと大変
2、時紀にいたずらされているので何かと大変
3、実は死を呼ぶ花嫁継続中なので何かと大変
何となく書いてみたくなった
今は反省しているのでもちろんスルーで
「メガネ、メガネ」
「かわしまきょうじゅ」
時間は少々戻ってここは京都御所。
登臼来藩主、故白皇の側室にして、現・慶喜公の側室である栗原透子が諸大夫の間にある。
不可思議な銀色の鉄版を二つに開いて、それに向かって言葉をかけていた。
「ふえぇぇぇ……脳年齢が45歳からあがらないよ」
「透子、それは任○堂から献上された品か?
もうやめろといったはずだ」
「う、うん、智代さん、わかってるよ、ちょっとだけ」
「まったく、いくら御所にいるといっても、いつまでもそんなわけのわからないものを
触っているな。いつ敵か、迎えがやってくるかもしれないんだぞ」
その透子に侍するのは、坂上智代。女中兼、警護役である。
危険な状態に置かれている透子を守るため、緊張状態に置かれ続けていた。
「それで、いつになったらくるんだその異人は。いつまでも御所にいるわけにもいかない。
ただでさえ最近きなくさくなっているんだ」
「うん、だから少しでも頭の回転を良くしておこうかと」
そういってまた銀色の鉄板を開こうとする透子の頭をコツンとこづく。
「ふえぇぇ、痛いよ、智代さん」
「……わかっているのか、おまえは狙われているんだ。しゃっきっとしていろ。
なぜ狙われているのか、ちゃんと認識してくれ」
「い、一応してるよ。ええと」
A 妊娠しており、慶喜か白皇の子か誤解されているから
B 長州等が慶喜への切り札として狙っているから
C 長州のトップが透子に懸想しているから(懸想している人物を指定)
D 朝廷の密書を握っているから
A
「あ、あたしの赤ちゃんが白皇さまのか慶喜さまのかわからないから、狙われてるんだよね?
…………って、智代さん?」
透子の台詞を聞き終わらぬうちに、智代は頭を抱えてその場にへたり込んでしまった。
「…………透子」
「は、はいっ?」
俯いたまま、低い声で。
「……子どもが生まれるにはどのくらいの日数がかかる?」
「そ、それくらい、あたしだって」
知ってるよ、と続ける。
「え、えっと、十月十日……だよね」
「……………………」
正確に答えたはずなのに、なぜか智代はさらに沈んでしまう。
「どうして……こんな女が……ぶつぶつ……」
「ど、どうしちゃったの、かな?」
「……………………まあいい」
悩むことひとしきり。やがて顔をパンパンとはたいて気を取り直す。
「とにかくお前は他の連中に殺されたり捕らわれたりしなければそれでいい。これくらいはわかるな?」
「う、うん」
「ではもう一度言ってみろ」
「え、えっと、あたしは殺されたり捕らわれたりするな……」
「よし」
と智代が智代が頷いたところで
『禁門が……破られる!』
「!?」
ドーンという強烈な炸裂音。一拍遅れ、巨大な爆発音。
メキメキと木が崩れる音。とうとう門が、破られた。
「くっ! 状況は!?」
近くを走り回っていた武士を捕まえ智代が問いただす
「禁門が破られました! 中立売も押されています! 桑名兵は敗走! 現在会津及び新撰組が後退しながら防戦中!」
「薩摩はどうした!?」
「こちらに向かっているようですが、炎で進路が阻まれている模様! 到着には今しばらくの時間が!」
「っ……! 迎えは! 迎えはまだか! 迎えの異人とやらは!!」
「ふ、ふぇぇぇ……」
激昂する智代。その後ろでは透子が小さくなっておびえている。
「だ、大丈夫……かなぁ」
「お前は心配しているな。いざとなれば私が守る。それよりも早く準備をしておけ」
「じゅ、準備って……もう、だいたい終わってるよ。持ってくものなんてほとんどないし」
「ならば覚悟をしておけ」
一方迎えのリサは……
A 蛤御門(禁門)前で戦闘に巻き込まれていた。
B 回り込んで何とか御所内に侵入できた。
C 十本刀の1人(要指名)に追い詰められていた。
C 飛翔のユンナ
何年ぶりだよ>ユンナ
ユンナって誰だ?
NightWriterに登場する天使。
コリンを騙して雀鬼メンバーを捕まえさせて、それでポイントを横取りしてウィル釈放を目論んだが失敗した。
3時間じゃ停滞とは呼べません。
選択スレは1週間は我慢するのがノルマです。
「SHIT!」
家々の軒下から軒下へリサが飛び移る。と、一瞬前まで隠れていた家の屋根が吹き飛ぶ。
「つくづく巫山戯てるわねこの国は……」
リサのぼやき。まあ、わからないでもない。
「よりにもよって……空を飛ぶ人間に出くわすとはねッ!」
再度軒下から飛び出し、地面を転がりながら引き金を引く。
「……甘いわね」
しかし直前対象は純白の両翼を広げると大きく飛翔。難なく銃弾を眼下に眺めた。
「……ッ!」
そして当然のように空から降り注ぐ幾つもの爆弾。
慌てて身を翻すも、爆風は避けきれない。
巻き込まれ、受身を取りつつも数メートル、そのまま吹き飛ばされた
「ゲホッ……!」
背中への衝撃と吸い込んだ煙で思わず咽るリサ。
その眼前に、フワリと彼女は降り立った。
「情けないわね異人さん」
両翼を体に巻きつけながら、嘲るような笑みを漏らす。
「……そういうあなたはどちらのANGELさん?」
「私は長州藩十本刀が1人、『飛翔』の幽名。『ゆうな』って読んでね」
クスリクスリと笑いながらショートカットの女性はそう名乗る。
「……結構な大道芸ね。まさか生きてる間に人が空を飛ぶ姿を見れるとは思わなかったわ」
「あら、その大道芸にボロボロにされているのはどちらかしら?」
「……………………」
「本来なら御所に空から先行侵入、援護爆撃をするのが私の仕事なんだけど……」
呟きながら、足元に何個もの爆弾をバラ撒く。そして、跳躍。
「あなたや人斬りの処分も命令されてるし、そっちを優先するべきかしら!!?」
すかさずリサも発砲するが、間に合わない。
数秒置いて、爆弾は爆発。あたりに強烈な爆風を撒き散らした。
「人間にとって、頭上は絶対の死角!」
その爆風を両翼に受け、幽名はさらに高く舞い上がる。
「私の飛空発破の前には、所詮剣も銃も無力!!」
「まったくもう……Marco Poloの気持ちがわかるわね」
調子付く幽名。ぼやきながら物陰に隠れるリサ。
「吹き飛べ! 異人!」
そしてさらに、爆弾を投げ散らかす。
「さっさと御所に行かなきゃならないのに……さて、どうしたものかしら」
A とりあえず無視。なんとか爆撃を避けつつ道を進む。
B どうにかして撃ち落とす。
C しばらく様子を見る。
あー選べるかな
選べたな
まあ別にいいか
A
C
こんな処で雑魚に関わっている暇は無い。御所が襲撃を受けているのだ!
「Ready……Go!!」
リサは一瞬で決断を下し、街路に飛び出し、駆け出した。
「あっはははは! 無視する気?」
幽名は嘲け笑い、リサの頭上に何発もの爆弾を投下する。
「ハァ……ムンッ!」
リサは走りながら、息を大きく吸いこみ、路地に向かって疾駆する。そして、
背後で爆弾が着地し、爆発するのに合わせて跳躍した!
ドカッ……ドカドカドカドカドカッ!
背後から迫る爆風を路地に飛びこんで回避し、そして、目をつぶって煙のもうもうと
立ち込める大通りへと再び飛びこむ!
熱を帯びた煙と砂埃を潜り抜けたことを肌で感じ取ると、目を開いて溜め込んだ息を
大きく吐いて、再び対岸の障害物へと狙いを定め、疾駆する!
「なるほどね、こちらの爆弾の煙を煙幕として有効利用しながら逃げるって訳だ。
やるじゃない!」
幽名はリサを追って飛び、再び爆弾を構えた。
全力で地面を蹴りながら、リサの脳裏には勝算があった。
幽名の爆弾の投下量だ。
何度も爆弾を投下するうちに、少しずつ一度の投下量が減りつつある。
ドカドカドカァン!
地面に強い揺れを感じつつも、背後の爆風の威力は以前ほどではない。爆音も短く
なっている。何より、立ち込める煙の密度が目に見えて薄らいでいる。
これはつまり。
(爆弾がemptyに近づきつつある……面白半分で無駄遣いした報いね……)
幽名は愚かにも、リサ一人を葬るために、折角の御所爆撃のための爆弾を無駄遣い
しているのだ。おまけにこれだけ投下していても、未だに致命傷すら与えていない!
「Ok! いける!」
リサは飛びこんだ家屋から飛び出し、猛然と御所の方向にダッシュした。
爆弾投下ごとに、最早爆弾の量は目に見えて減っている。当初の爆音と比べると、
今のそれはせいぜい爆竹を鳴らした程度だ。幽名の顔にも焦りの色が出ていた。
「くっそお……ちょこまかと!」
「Air-Bombing を overvalue した報いね! せいぜい御所上空を鳩と一緒に仲良く
飛んでなさい! Angel にはそちらの方が似合ってるわよ!」
「言うわね……でもこっちにもまだ手があるわ……いくよっ!」
幽名は突如、身軽になった分だけ、一気に加速した。
「What!?」
「爆弾の量が減ってることぐらい、こっちも計算積みだよ! 重量が減った分、
速度と運動性は向上するんだ! 当然爆撃の精度も! いくぞ異人っ!」
幽名は一気にリサの頭上を飛び越して廻りこみ、そして――
A.リサに目もくれず、一気に御所へと直行した。
B.上空高くから、急降下爆撃へと戦術を変更した。
C.地面すれすれを滑空し、リサに襲いかかった。
C
「発破だけが武器と思ったのがあなたの間違い!」
幽名は突如として急降下。眼前からリサへと迫った。
「死になさい!」
「!」
寸前でリサは僅かに身を屈める。その瞬間、肩口から背中にかけて灼熱が通り過ぎた。
「ツッ――――!」
ピッ、と背中に線が刻まれ、それに沿って服がと肌が裂ける。
「よくかわせたものね」
などと言う間も幽名は再度飛翔。旋回しながらリサに狙いを定めている。
「けど、次はないわよ」
羽の下から覗く両の手には双剣が括りつけられている。
「死角からの攻撃! さあ、どう防ぐ!?」
「敵! 増援! 堺町御門に集結中!」
同じころ。紫宸殿前に怒号が響く。
「智代様! ここは危険です!」
「そんなことを言ってる場合ではないだろう、どちらにしろ建礼門が落ちればここも終わる」
多くの―――いや、相対的に見れば小数の兵が右往左往する中、智代は透子を連れて現れた。
「ふぇぇぇ……」
既に透子は着替えも終え、旅支度は整えてある。
「馬を。誰か馬を引け」
「馬……ですか? ですが、今となっては脱出も難しいかと」
智代の命を受け、手近にいた護衛の武士が頭を垂れながら答える。
「構うな。とにかく透子だけは脱出させる」
「ですが、さしもの智代様と言えど、透子様を連れては……」
「誰が私が連れ出すと言った。手筈はついている。件の異人はまだ現れないか?」
「まだ……です」
「…………どちらにしろ今となってはその者を信じるしかない。時間が惜しい、馬を」
「はッ!」
「け、けど智代さん、あたし馬なんて……」
「誰もお前に馬を繰らせようなどと思っていない。いいからお前は大人しくしていろ」
「う、うん……」
(さあ………………)
表面的には冷静を装ったまま、智代はひそかに爪を噛む。
(まだか? ”リサ・ヴィクセン”)
「鳩か隼か。まあ、どちらでも変わらないわね……」
心底うんざりしたように、リサはぼやく。
背中の痛みを堪ながら、起き上がり、拳銃に弾丸を装填していく。
「さあ、そろそろ覚悟を決めなさい!」
上空の幽名。リサの周りを旋回しながら急降下。狙いをつけさせないようにその双剣を煌かせる。
「……観鈴でもいれば簡単に叩き落としてくれたんでしょうけど……」
無いものねだりをしても仕方が無い。リサは諦め、両手を添えて拳銃を構える。
「そんな豆鉄砲で私を捉えられるとでも思ってるの?」
「やってみなきゃわからないでしょう?」
冷静に、あくまで冷静にリサは銃口を旋回する幽名に合わせる。
だが、まだ遠い。まだ相手の動きの方が速い。
「接触する瞬間を狙うつもり? けど……無駄よ!」
射程距離に入ろうかという直前、幽名は両翼を広げ、一瞬停止。
その間に残った爆弾をリサの周囲にバラ撒いた。
数こそ少ないものの――――
ドォン! ドォン! ドォォォォォン!!!
轟音を轟かせると共に爆煙を撒き散らした。瞬間リサの視界は塞がれる。
「これでそんなものはもう役に立たない! さあ……死になさい異人!」
そして再度急降下。土煙の中のリサに迫るが……
A リサは見当違いの方向に銃を構えたままだった。
B いつの間にか、リサは刀を構えていた。
C 気がついたら、目の前にリサのカカトがあった。
C
「―――え?」
土煙を抜けた幽名の目の前に現れたのは、リサの踵。
眼前数センチのところで、重力と脚力を伴った一撃が
「…………ふう」
体についた土ぼこりを払いながら息を整える。。
背中の傷にも触れてみるが、傷は大したことはない。動くのに支障はない。
幽名は隣でうつぶせにブッ倒れて気絶している。まあ当分起きることはないだろう。
「この靴、気に入ってたんだけどね……ま、仕方がないか」
踵のヘシ折れた靴を手に取り、ため息。
「私の武器がGUNだけだと思ったのが間違いよ」
手早く幽名の身ぐるみ剥いで、縛り付けて。
「それより急がないと……」
一路リサは御所へと掛けていった。
「リサさん!」
駆け出してしばらくしたところで後ろから声をかけられる。
「観鈴!」
観鈴だ。上手い具合に時間取られた分で追いつけたらしい。
「ど、どうしたのその姿?」
砂と血にまみれた姿を見て、思わず訪ねてしまう。
「ちょっと蚊に喰われたのよ。それよりあなたは?」
「あ、うん。これくらい平気だよ。みさきさんも、猶予をくれた」
「――そう」
微笑を浮かべ、頷く。
「なら、今は――」
2人で、物陰に隠れたまま蛤御門を覗き込む。
既にここでの戦闘は終結しつつある。
守護隊はほぼ撤退。現在は長州勢が隊形を再編し、突撃準備を整えているようだ。
「ここを突破しなきゃいけないんだけど……どうする?」
「うーん……」
A 観鈴が斬り込む
B 幽名から奪った爆弾を放り込む
B
B
Bomb
「どうする? わたしが蹴散らしてこようか?」
『空』の鯉口を切りながら観鈴が訪ねる。
「いえ」
しかしリサは首を振ってそれを拒否した。
「あなた1人が切り込んでもそう混乱は引き起こせないでしょう。
ここは……」
と言いながらリサは懐から、数本の筒を取り出す。
「なにそれ?」
「爆弾」
「うわ……」
「さっきの蚊トンボからもらいうけたんだけどね。ちょっとこれを改造させてもらいましょう」
「リサさん……そんなことまでできるの?」
「観鈴。私の商売は覚えてる?」
「銃火器店……」
「まあ、任せておきなさい」
数分後。
「状況は?」
蛤御門前の長州兵。その真ん中で杏が兵に尋ねる。
「蛤御門は制圧完了。中立売もほどなく。堺町御門は現在交戦中です」
「内部は?」
「会津兵が新撰組と合流、御所警備の兵とあわせて現在防戦中です」
「薩摩の動きは?」
「炎で完全に動きを止められております。まだ合流には時間がかかるかと」
「……よろしい」
報告を聞き、杏は満足そうな微笑を浮かべる。
「突入した後は早急に一橋と松平方を処理。御門と三種の神器を確保する。わかってるわね?」
「無論です」
「では、そろそろ突入するわよ。大砲の準備は?」
「万端でございま…………って、え?」
大砲に目をやる兵士。
そこには、場違いな、あまりにも場違いな人物が、笑っていた。
「にはは。みんな〜、こっち見てほしいな」
「……え?」
暢気な声を上げる観鈴である。
「み、すず!」
すかさず杏はもちろん、他の藩士らも抜刀、または銃を構える。
「ちっ、どいつもこいつも役に立たないわね! みすみすここまで通すとは!
けど観鈴、ここがあんたの年貢の納め時よ! いくらあなたでもこの人数差……」
しかし、観鈴はにははと笑みを崩さずに。
「その前に杏さん、これ、なんだかわかる?」
と言いながら右手を高々と掲げる。
「何って…………い゙!?」
杏の目の色が変わる。当たり前である。観鈴が持ってるのは、幽名の爆弾。
そして、立ってるのは大砲の前。
「ここで観鈴ちんの一手! こんなことをしてみます!」
しかもあろうことか、導火線に火をつけ、砲口に放り込んでしまったのだ。
「……………………」
一瞬、時間が止まる。
「にはは、逃げた方がいいんじゃない?」
「伏せ…………!」
観鈴に促されるまでもなく、杏が叫ぶが……
「何の音だ!?」
場面は移って御所内。
不意に聞こえてきた壮絶な爆音と閃光。兵の剣を振るう手も一時止まる。
「わかりません! ただ、蛤門の方で爆発が起きたと……」
「待て、あれは!」
智代が指さしたのは一組の女性。
煙が立ち上る蛤門の方から、長州藩士を蹴散らしながら一直線に建礼門向けて走ってくる。
「金髪の異人……まさか!」
「遅れて申し訳ありません! 私はリサ・ヴィクセン! 守護代の智代様はどちらに!?」
走りながら大声で智代の名を叫ぶ。
「待て撃つな味方だ! 私だ! 智代は私だ!」
すぐさま馬にまたがると、透子を担ぎ上げてリサの元へ走る。
「ふ、ふぇぇぇ……」
「間に合ったぞ透子。これで何とかなる」
「遅れました。リサ・ヴィクセンです。守護代坂上智代様でいらっしゃいますか?」
「そうだ。時間が惜しい。護衛対象はこの女、栗原透子だ」
「よ、よろしくお願いします」
相対した四人。手短に用件を交換する。
「では確かに預かりました。これより栗原様の身柄は私が預かります」
「ああ、頼む。こちらは私に任せろ」
「では、時間が惜しいです。行かせていただきます」
智代の代わりに馬にまたがり、手綱を取るリサ。
「さあ、行くわよ」
「うん」
観鈴を促し、駆け出そうとするが……
「待て」
後ろから、智代の制止の声が聞こえた。
「……なんですか?」
「その剣士は誰だ?」
観鈴を見ながら言う。
「私が雇った護衛です。身分も腕も保証します」
即答するリサ。
「……………………顔を見せろ」
「え?」
「顔を良く見せろと言っている。どこかで見た顔だ」
「……………………」
A 顔を見せる
B 拒否する
A
A逃げない
A
これは迷う…A
四分たってるのに五秒内でジェットストリームアタックしてしまったw
すごい確率ですなw
「智代様、今はそれどころではありません。事態は一刻を争」
「黙っていろ。私はこの剣士に聞いている。さあ、顔を見せろ」
リサの抗議の声もまるで無視。智代はただ観鈴にのみ命令する。
「……………………」
背を向けたまま、しばし固まる観鈴。
「リサさん……」
消え入りそうな声で、リサの名を呼ぶ。
「……あなたが選ぶことよ。逃げるか、向かうか」
「……十秒やろう。その間に決めろ」
己の剣を抜きながら、冷静に通告する智代だが
「いえ。いりません」
観鈴は首を振ると、一秒も待たずに振り向いた。
「には、は……。えと、はじめまし、て?」
そして、がんばって笑顔を作り、智代と真正面を向き合う。
「……………………」
沈黙する智代。
「……一応名を名乗ってもらおうか」
剣を返しながら、さらに命令する。
「…………観鈴です。神尾観鈴」
『観鈴!!?』
一瞬で周囲の空気が凍りつく。同時に、全ての切っ先と銃口が観鈴に向けられる。
「待て撃つな。私に任せろ」
しかしそれは智代が制する。
そして、己が剣の切っ先を観鈴の喉笛にゆっくりと突きつける。
「…………”人斬り”観鈴だな?」
「はい」
「どういう料簡だ? 長州に飼われる狂犬が今更こんな真似をするなど」
「……………………」
「答えろ。答えねばこの場で叩ッ斬る」
さらにスッ、と剣を進める。
切っ先が埋まった観鈴の喉から、血が一滴流れ落ちる。
「…………わたしは」
やがて、おずおずと観鈴は口を開く。
「わたしは、もう、人を殺しません。わたしは、もう、人斬りをやめます」
「巫山戯るな貴様!」
「黙っていろと言っている!」
激昂した近くの武士が刀を振り上げるが、智代の一喝。
「……さあ、続きを言ってみろ」
そして、さらに促す。
「……………………」
観鈴は、一度、大きく深呼吸してから。
「……………………」
「わたしは、これから、この剣で、1人でも多くの人を助けたい。
たくさんの人を、守りたい。たくさんの人を、救いたい」
「そんなことが、できると思うのか?」
「やります」
「偽善以外のなにものでもないが?」
「なら、それを通します」
「そんなことをしても、お前の罪は晴れない」
「はい」
「なにをしようとも、お前の過去は変わらない」
「はい」
「ならば、お前は何をしたい」
「……………………」
「……………………」
「…………未来を」
「……ほう」
「誰かの未来を、創りたい」
ヒュッ!
観鈴が最後の台詞を呟いた瞬間、智代の刀が空を切った。
同時に観鈴の喉笛に、ツッ―――と赤い線が刻まれる。
剣を振りぬいた姿のまま、智代が誰にともなく呟いた。
「私は人斬り観鈴に幾人もの友を殺された」
「……………………」
「ここにいる者たちも同じだ。人斬りによって数多くの同志を失った。
おそらくこの場にいる者で、お前に怨みがない者などいないだろう」
「……………………」
「だから、斬った」
「え?」
後ろを振り向き、智代は叫ぶ。
「朝敵長州が先兵、人斬り観鈴はこの坂上智代が討ち取った! 誰か異議のある者はいるか!?」
いないだろう。いないよなと言わんばかりの怒号一喝。無論、異議をさしはさむものなどいなかった。
「……………………」
しばし呆然と固まる観鈴。
「行け。さっさと行け。我らがお前への殺意を抑えていられるうちにな」
目線を合わせぬまま智代は言い放つ。
「は……はい!」
リサと頷きあい、門の方向に向かって駆け出す観鈴。
「ありがとうございます!」
「感謝の言葉ならその滑稽な剣を打った者に言え。その剣の輝きを見せられては信じんわけにもいかんさ」
「はい!」
「みす……ずゥ!!」
蛤御門へ向かうリサと観鈴。あと透子。
そんな三人の目の前に、煤で真っ黒い顔をした杏が立ちはだかった。
「いつも! いつもいつも! いつもいつもいつも! あんたは私たちの邪魔をしてくれるわねェ!」
憤怒に彩られた顔で、刀を抜く。
「いいわ観鈴! ここで決着をつけましょう! あんたと私の因縁の!」
「……観鈴」
心配そうに囁くリサ。
「大丈夫。大丈夫だからリサさん。リサさんはお姫さま連れて先に行ってて」
「……ええ、わかったわ」
「が、がんばってください」
「にはは」
馬に鞭を入れるリサ。難なく蛤御門を通過する。
杏以下長州勢の残兵はリサのことはまるで無視。その目は観鈴にのみ向けられている。
「にはは」
「死ィ―――――ねェ!!」
A この場で長州勢と決着をつける
B 「さっさと行けと言っただろう」智代の蹴りが杏に入った。
a
B
いいね
「雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄ッ!!!!」
キィ―――――――ーン!!!
杏が振るった渾身の一撃を観鈴が空で受け止める。
すかさず杏は鍔迫り合いの形に持ち込み、一瞬で突き飛ばすと返す刃で横薙ぎ。
観鈴の胴を狙うが先んじて一歩下がり、観鈴はこれをかわした。
「杏はん! 援護……」
「いらないッ!」
2人の間合いが離れたところで、智子が、一度は観鈴を追い詰めた弓衆に号令をかけようとするが、杏は一喝してそれを止めた。
「この女は! こいつだけは私がこの手で殺すッ! 智子! あなたは残兵をまとめて御所へ突撃しなさい!」
「け、けど……」
「私の命令が聞けないの!?」
「わ、わかっ……」
「そうはさせんさ」
「なッ!?」
指揮系統を変更しようとしたところで智代の乱入。
智子の部隊の只中に飛び込み、手近な1人を遥か彼方へ蹴り飛ばす。
「しゅ、守護代坂上智代!?」
「御門に弓引くとは大それたことをしてくれたな長州共が。この落とし前は高くつくぞ」
「ひ……1人で粋がるのも大概にせえや! こっちにはまだまだ」
「新撰組!」
パチン! と智代が指を弾く。同時に蛤門に斬り込んでくるのは『誠』の文字を背負った男共。
「敵の陣形は崩れている! この隙に頭を押さえるぞ! 壬生狼の意地、見せてもらう!」
「オオッ!!」
「御所守護隊は後退し守りを固めろ! 薩摩藩の合流を待って攻勢に移る!」
「はいッ!」
智代の指示により一時は統制を失いかけた警備の兵らが陣形を立て直していく。
「あ、杏はん! 拙いで、ちっとばかし向こうが体勢整えて……」
「黙れ!」
杏の一喝。
「『百識』の意地があるなら何とかしなさい! この場さえ凌ぎきれば南の友軍が御所を叩く! そうすれば敵も退かざるを得ない!
私は……こいつをッ! 雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄ッ!!!!」
跳躍しながらの再度渾身の一撃。観鈴は受けるのは危険と判断し、逆刃刀を斜めにさばき落とす。
「杏さんッ! これでッ!」
返す刃で脇腹を狙うが
「なめるな人斬りが! ガアアアアアアアアッ!!!」
「きゃっ!!」
杏はそのまま肩から観鈴に突っ込むと体当たり。敷地の奥まで引きずっていった。
「許さない! 許さない観鈴! あんただけはッ!」
「オオオオオオオオオオオッ!!!」
観鈴を突き飛ばすと同時に一撃。しかし観鈴は寸前でこれをかわす。
「ここは……?」
間合いを取ったところで観鈴は気づく。
杏が連れてきたのは京都御苑の桃園。季節が違うにも関わらず、狂った戦を彩るように桃の華も狂い咲いている。
「懐かしいわね観鈴! あなたと私が出会ったのもこんな夜だった!」
桃の華を白く照らしているのは中天に輝く満月。漆黒の闇の中、孤独に輝いている。
「雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄ッ!!!」
「くッ!!」
舞散る花びらの中、杏の斬撃も舞踊る。
剣線は大振りだが、鬼気迫る気迫がそれを上回り、観鈴といえど簡単には手を出せない。
風が吹く。
さらに桃の花びらが2人の間を駆け抜ける。
「そう……一年前。私とあなたはこの街で出会った」
狂気に侵されながら、しかし僅かな平静を取り戻した杏は、切っ先を観鈴に向けながら言葉を続ける。
「縁は異なものとはよく言ったものね、あの時はまさかこうしてあなたと命を削り合う日が来るとは思いもしなかった」
「あの時……」
その言葉を受けて、観鈴の脳裏に杏との出会いが蘇る。
そう、2人は―――
A 観鈴が野垂れ死に寸前のところを杏が拾った
B 観鈴が追っ手に追い詰められていたところを杏が助けた
C 観鈴が杏から金を奪い取ろうとした
D 偶然杏を狙っていた刺客を観鈴が斬った
べただけどAかな
京都四条河原。
多くの茶屋や旅籠、芝居小屋をかかえた、南北朝から続く繁華街である。
あやしげな見世物小屋や、芸能を行うものたちも多く、傀儡子人形の観客からは
「いやっほーう、国崎最高!」
と言った声が上がる。
それら雑多な町並も火が消えたように閑となり、水面を通る風も涼しい寅の刻。
藤林杏は仕事を終え、川筋を歩いていた。満月の中、足元には影さえ映っている。
それに目をとめたのは、どんな気働きからか、今では杏も覚えていない。
何かに誘われたように、橋の下にあったその影に近づいた。
近づくと、それはぼろくずのように汚れた少女であることがわかった。
元は美しい艶を出していたであろう髪は見る影もなく荒れ、
腕や足は元の白さが見えぬくらいに汚れ、あちこちに傷跡が残っている。
刀の影になっている顔も、少女の愛らしさはとどめず、頬はこけ、
髪が張り付き、痛々しさを見せている。
他に何も持っていないその少女は、胎児のように体を丸め、
それでも刀だけは絶対に離さぬように抱き続けていた。
薄雲が月を遮る。それで視界がわずかに遮られなければ、この後のことは
起きなかったと杏は思う。
その直前に刀の拵えに目を留めた杏は、わずかに顔を近づけたのだ。
別に奪う気はなかった。少々興味をそそられただけだった。
前触れもなく、女の目が開いた。焦点は正しく合っていない。
杏は動けなかった。引くことも、前に出ることもできない。
それはぞっとするほどの平板さだった。こんなものは見たことがなかった。
「あなたは誰?」
少女が聞く。
「わ、たしは杏。藤林杏」
「そうだね、そして杏さんは動けなくなっていたわたしを連れ帰り、介抱してくれた」
「そして、私の感じたとおり、あなたの剣技はおそろしいものだった」
剣戟が響く。狂騒を呈していた杏の顔にはかすかな笑みさえ浮かんでいる。
「たつきの道もなかったわたしに、場所を与えてくれた」
「共同戦線がとれないあなたには苦労させられた」
空からの光を、観鈴の空は反射する。
「まわりの人と違って、杏さんはわたしを見る目は変えなかった」
「それは違う。私は最初からあなたの恐ろしさをきっと知っていたから」
内に籠もった気迫を吐くような杏の剛剣をいなす。
「孤立するわたしをぎりぎりまでかばってくれていた」
「死地にいくら送っても、あなたは変わらなかった」
刀に張り付いた花びらはまた離れ、舞い散る。
「わたしは、杏さんに助けてもらってよかった」
「私は、あなたを助けた覚えはない」
距離を取り、二人は互いに剣を構えなおす。
「杏さん、今、わたしはどんな目をしているかな」
それには答えず、前に出た二つの影が交差した。離れ、直前まで相手がいた地点に立った。
A 杏の刀が根元から折れ飛んでいた。
B 観鈴の左腕を切り裂いていた。
C 杏は懐から出した銃を手に取っていた。
D 「行きなさい、今なら邪魔は入らない」杏は刀を引いてそう言った。
Aを
――――――!
澄んだ音と共に、杏の刀が根元から折れ飛んだ。
反発で吹き飛んだ刀身は、回転しながら近間の桃の幹に突き刺さる。
一陣の風が吹く。
再び桃の花びらが2人の体を洗っていった。
「―――はは」
やがて、僅かに杏の唇が綻ぶ。
「あはは―――ははははははははは」
やがて、笑いは徐々に大きくなっていき……
「あははははははははは―――はーはははははははははは!!!」
やがて、上天を仰いだ大爆笑へと。
「杏さん……」
剣を下ろし、振り向いた観鈴。
花びらの向こうの杏へ、一歩近づく。
「はははははははは―――はーははははははあははははははははは!!!」
杏の爆笑が止むことはない。
観鈴はおずおずと、さらに一歩を踏み出―――
「甘いわね! 観鈴!」
刹那、振り向く杏。
その手には、いつの間に取り出したのか短刀が握られていた。
「杏さん!」
「世の中にはね……どうしようもない奴ってのがいるのよ!!」
逆手に持った短刀が振り下ろされ―――
バシャッ!!
「―――!」
勢いよく振り下ろされた短刀は、過たず胸を貫いた。
「きょ……う……さ……ん……」
観鈴の顔が、真っ赤に染まる。
短刀は胸のド真ん中を貫き、切っ先が背中へと飛び出ていた。
間違いなく、これ以上ないというくらいの、完璧な致命傷。
「杏さんッ!」
観鈴は、そのまま崩れゆく杏の体を抱きとめた。
そう、短刀は、杏自らの胸を貫いたのだ。
「どうして……どうして……」
肩を震わせて慟哭する観鈴。だが、杏はくだらないと言わんばかりの態度で
「どうして……かって? そんなの……当たり前じゃない」
「どうして!? どうしてこんな…………!?」
「…………誰もをあんたと一緒にしないでよ」
「え?」
息も絶え絶えに、しかし不満たっぷりに杏は呟いた
「……あんたみたいにね、ズ太く生きれる人間なんて……ほとんどいないのよ。
生きるとなれば自分以外の全てを殺し……逃げるためなら仲間すら容赦なく切り刻み……
…………改心するとなったら、山に篭もって、逆刃刀を携えて現れる…………
……本当、馬鹿みたいね。……あんたみたいな真っ直ぐすぎる生き方……誰ができ、ゲホッ! ガホッ!」
「杏さんッ!」
一言一言を発するたびに杏の命が消えていくのがわかる。杏の体が冷たくなっていくのがわかる。
「だからって……だからってなにも死ななくたって……」
「……あのね、考えてみなさい。あた……し達は……御所に……突っ込んだのよ?
御門に弓を……引いたのよ。そうなれば……もう道は二つに一つ。
勝って……生きるか…………負けて、死ぬか。負けて……なお生き残る道など残されてはいない……」
「そんな……そんな決め付けなくったって……」
「……わかるのよ、何となく……ね。上の方から戦を眺めてると……
そう、それでも、あんたが現れるまではいけるような気が……してた。
あんたの、あの大砲発破―――あれで、もう完全に……流れが……変わったわね。
間違い……ないわ。もう、すぐにでも……」
その時。
静寂に包まれていた桃園にまで響き渡る甲高い鬨の声が、そしてそれに続いて鉄砲の一斉発射の音が聞こえてきた。
「これは……」
「ふふ……ふ。来たわね……敗北、が……。残念、よ……攘夷……なら、ず……」
「杏さんっ!」
さらに大きく血を吐く杏。
……そんな2人の元に、背後から一つの足音が。
「智代さん……」
智代だ。既に刀は納め、戦闘態勢は解いている。
「薩摩藩が来たぞ。ぎりぎり間に合った」
「まあ……そんなとこだろうと、思った……」
さも当然のことのような杏の態度。
「既に体勢は決した。お前の仲間達も組織的抵抗は諦めつつある。堺町御門も同じだ。各所で敗走を始めている」
「でしょうね……あんた達に逆襲され、この上薩摩に合流されちゃ勝ち目は無い……」
「馬鹿なことをしたな」
「馬鹿なこと……フフッ、馬鹿なこと、ね……果たして馬鹿はどっちかしら?」
「なんのことだ」
「もう……今の幕府は限界よ。力も権威も地に落ち……世界の、列強の中で日本を守っていくことなど……できはしない。
今……この国には……新しい秩序が求められて……いるのよ」
「だからどうした」
「……え?」
「私は私の勤めを全うするのみ。私の勤めは御門の住まうこの地を守ること。貴様らのような逆賊の徒からな。
その前には官も賊も関係ない。ただ私は私の地を守るのみだ」
「…………はは」
杏があきれた様な笑みを漏らす。
「いいわね単純で……アンタたちは」
「杏さん……」
「褒め言葉と受け取っておこう。おい、観鈴」
「え?」
観鈴の名を呼ぶと智代はパチンと指を鳴らす。同時に、道の向こうから歩いてくる白馬が一匹。
「お前はさっさと行け。他の者に見咎められると面倒だ。私の立場も考えろ」
「えあ……はい……」
杏と馬を見比べ、逡巡するが。
「いいわ……あんたは、さっさと行きなさい……」
「杏さん……」
「……そのまま死なせてやれ。私も武士の端くれだ。覚悟の死を汚そうとは思わんさ」
「……うん。はい」
観鈴は杏を桃の木に寄りかからせると、軽い動きで智代の馬に跨った。
「……杏さん」
そして、最後に杏を見る。
「行きなさい。さっさと……行きなさい。そしてその真っ直ぐすぎる……生き方を、貫いてみなさい……
私は、一足先に地獄から……見させてもら……ゲハッ! ガッ!」
「杏さん!」
「逡巡してる間はないぞ。さあ、行けッ!」
智代が馬の尻を叩く。反射的に飛び上がり、馬は門のほうへ駆け出した。
「杏さん! 杏さんッ!」
「さよなら……どうしようもなく馬鹿で、真っ直ぐで、融通の利かない…………私の…………みす…………ず…………」
「……………………死んだか」
桃の花の下。すべての血を吐き出して杏は動かなくなった。
「新しい秩序か……そうだな」
智代は空を見上げた。満月に薄く雲がかかり始めている。
「凶雲―――。確かに、この度は我らの勝利に終わった。だが、この戦の行く末は、まだ見えない……」
「……………………」
「いずれにせよ、お前達長州は御門に弓引いたのだ。今日この戦のみで終わるということはないだろう」
「……………………」
「まだまだ荒れるな…………この国は」
そして、観鈴が消えた方向、遠くを眺める。
「この戦が続く世界で―――貴様はなにを為す。見せてもらうぞ、神尾観鈴」
「うう……あぐっ!」
既に人気もまばらになった京都の街中。
単身馬で疾駆しながら、観鈴は泣いていた。
杏。杏。長州で仲間だった杏。自分の上司だった杏。自分を裏切った杏。
だが、観鈴は思い出していた。人間となった観鈴は、思い出していた。
杏が、どれだけ自分のことを気にしていたか。杏が、どれだけ自分のために手を尽くしていてくれたか。
本能のまま剣を振るっていた観鈴に、真っ当な剣術を教えてくれた。
お洒落の欠片もしたことがなかった自分のために、呉服屋に連れて行ってくれようとした。
他の藩士と打ち解けれるように、何度も作戦に編入してくれた。
仲間と認めてもらえるように、八方手を尽くしてくれていた。
既に血にまみれていた観鈴に友だちを作らせようと、自分の妹と引き合わせてくれた。
それらすべての手を払いのけていたのは、他ならぬ自分自身だったのだ。
人斬りに身を落としていたのは、他ならぬ自分の選択だったのだ。
人が生きることは変わること。人生は選択の連続。
それが人の可能性だというのなら、杏は観鈴にいくつもの可能性を示していてくれたのだ。
どこかで、本当の仲間になれていたのかもしれない。
どこかで、大義に燃える志士になれていたのかもしれない。
あるいはどこかで、普通の町娘として生きる道もあったのかもしれない。
だが、それらを全て切り捨て、自分をただの肉斬り包丁となさしめていたのは他ならぬ自分で選んだ道だったのだ。
「ごめんなさい……ごめんなさい杏さん……あんなに優しくしてくれたのに……あんなに気にかけてくれたのに……」
感情が無かった頃にはまったく気づかなかった。
杏の誘いを断るたび、杏の手を払いのけるたび、杏の見せていた寂しげな笑顔に。
杏は自分を認めていてくれたのだ。杏は自分を友として扱ってくれていたのだ。
こんな、血と罪にまみれた、神尾観鈴を。
「……………………」
咽びながら馬を走らせること数刻。観鈴はリサの倉庫前にたどり着いた。
ふらつく足取りで下馬すると、そのまま隠された入口に近づいていく。
地下室への扉を開き、土がむき出しの階段を一歩一歩下りていく。
「観鈴!」
そんな音を聞きつけたのか、目の前にリサの姿が現れた。
もう、我慢できなかった。
観鈴は両目から涙を溢れさせると、リサの胸の中に飛び込み――――
A そのまま深い眠りに落ちた
B 杏への思いを吐露した
B
ちょっと話を切って悪いけど、次スレはどのぐらいに立てる?
A 早めに
>>930ぐらい
B いつものように
>>950ぐらいで
C どうせ落ちないし
>>970ぐらいでも大丈夫
A
容量きついし
そんじゃ今の内に次スレの
>>1も決めておこう。
A 『タリエシンの奇妙な冒険〜』から選出
B 現行の観鈴話から選出
B
キャラ選択。
かなりいるなぁ…。
A 神尾観鈴
B 『人斬り』観鈴
C 神尾晴子
D ハクオロ
E 霧島聖
F リサ・ヴィクセン
G 榊しのぶ
H 深山雪見
I 藤林杏
J 柏木楓
K 坂上智代
L その他(要指定
B
選ばれてしまったものはしょうがないが
往人お兄さんとそらのコンビで
まるで他人事のように楽しくやってほしかったな
「あぁああ……うぅああぁあぁああ…!…あぁあぁああ!!! 」
泣く。ただ、泣く。
悲しみの理由もなにもかも相手に伝えないまま。
何も知らない人が見れば気が狂ったかのように見えたかもしれない。
…だがリサにはわかる。観鈴の『ぱぁとなぁ』であるリサには。
「…観鈴…!」
抱きしめる。観鈴の悲しみを、苦しみを、全て受け止めるように。
「ごめんなさい…ごめんなさい杏さん…!ごめんなさい…!!」
言いたいことはたくさんあった。伝えたいこともたくさんあった。
でもそれらは言葉にはならない。出てくるのはただ、謝罪の言葉だけ。
「あぁああ……うぅああぁあぁああ…!…あぁあぁああ!!! 」
泣く。神尾観鈴はただ、泣く。
永遠に失われてしまった、自分を認めてくれていた彼女を想って。
その隣の部屋で。
「…どういうことなんだろう…」
側室として日々を過ごしてきた透子には経験したことも無い、全力での馬の速度を味あわされて。
頭がかき回されたような酔いにグロッキーになり、半ば意識を失いながらも、透子は必死に考える。
ただ、一つのことを。
「…どういうことなんだろう…」
自分の護衛には、身分のしっかりした者を頼んであると智代からは聞いた。
だが、彼女は、神尾観鈴は。
私達の前で『人斬り観鈴』であることを告白したのだ。
『人斬り観鈴』
透子とて、その名前は知っている。
人斬り観鈴に同志を殺されて、押し殺した声で泣く声を。みんなの悲しみを。
障子越しに聞いてしまったこともある。
京都に住む大勢の者の恨みを一身に背負った犯罪者、神尾観鈴。
それが、今は私の護衛…?
…思い出す。
あの時、あの場所で。
『わたしは人斬りをやめます』
彼女は確かにそう言った。
…信じられるか?いや、信じなければならない。
信じたからこそ智代もあの二人に全てを任せ、送り出してくれたはずなのだ。
それでも。
「(…怖いよ、怖いよ…)…智代さん…」
万が一の時の為に智代から手渡された、自分が持っていてもなんの役に立つとも思われない
『鬼』の銘が入れられた懐刀を服越しに「ぎゅっ」と握り締める。
「…?」
…なにか黒い、いや、よくわからないけど気持ち悪い「もの」が逆流するような…そんな気がした…
…
泣き疲れたであろう、眠ってしまった観鈴をベットに横にする。
「…杏さん…」
また一筋、頬に流れる涙。それをそっと拭き取って。
ベットの近くの椅子に座り、観鈴の寝顔を眺めながら。リサは考える。今後の、これからの行動を。
様々な障害はあったが…全ては順調に進んでいる。
少なくとも、栗原透子の身柄を確保する、という段階までは。
後は、なんとか京都の外へ。そこで指令を受けて、それさえこなせば、この国にいる必要は無い。
観鈴と新たな土地で生活することも、できるのだ。
それを思うと思わず顔がにやけてしまい…いけない、いけない…
…
…少し気にかかることがある。私は…いや、私達は幕府からではなく本国からの指令で栗原透子を護衛している。
この尊皇攘夷の時代に何故、異人である私が護衛の対象として選ばれた?
何故、坂上智代は私に護衛を頼む事を受け入れた?自分が同行することもなく。
私達の目的はこの国の情報収集だ。
その最終的な目的に栗原透子の安全は含まれない。
ならば…指令次第では最悪、透子から情報を引き出したのち、賊がやったと見せかけて始末する、という可能性も存在するのに。
A …上は上の都合、というものがあるのだろう。私達が気にすることじゃない。
B 智代に視点変更
C 「…うぇぇ…」嫌な予感がする…まさか、まさか!「けろけろけろっぴ」か、栗原透子!
C
ちょっと一息入れてC
なんにせよ余りいい気はしないわね。
「…うぇぇ…」
そうね。場合によってはそんな風に吐き気も催しそうになるほどに…って!?
「う…ぅぅ…気持ち…悪い……」
なんといつの間にやら隣の部屋に居た透子がそこにいた。その顔色は悪い。まさに今にも吐きそう。
「す…すみません…わたし…つわりがひどくて……」
そういえば妊娠中って情報あったかしら。妊婦連れともなるとこれからが大変ね。
「すみませんが…厠まで連れていってもらえませんか……」
「ええ、分かったわ。」
私は彼女の頼みを承諾して彼女を厠まで連れて行った。
「どうもありがとうございました。」
厠で用を足しおえ少しはすっきりした表情で透子はそう礼を言った。
「いいのよ。貴女も色々と大変でしょうし。」
そう返事する。実際妊娠中だというのにこんな風に誰かに付けねらわれ
見知らぬ者たちに護衛されて連れまわされる彼女の身の上には同情を禁じえない。
「すみません。私…なんだが色々不安で…あの…」
すると透子は不安げな表情で私に尋ねてきた。
A 私たちこれからどこへ行くんでしょうか?
B 私、これからどうなっちゃうんでしょうか?
C あの、観鈴さんって本当に信用していいのでしょうか?
C
「あの……観鈴さんって、本当に信用して……大丈夫なんでしょうか?」
「え?」
リサがコーヒーを淹れようとしたところ、透子は不意にそんなことを口にした。
「大丈夫……って」
「その、正直……あたし、人斬りの人と一緒に行くのは……」
「……………………」
言葉に詰まる透子を見て、リサはコンと茶碗をテーブル代わりの木箱の上に置く。
「人斬りと一緒に行動するのは、いつ斬り殺されるかわからなくて、不安?」
「……………………」
沈黙は肯定の証。
「そうね……まあ、気持ちもわからなくもないわ」
「それに、あの、”みすず”って……」
観鈴の名前を呼び、再度言葉に詰まる。
「……………………」
数秒要したが、リサは透子の言わんとするところを察した。
「白皇様殺害の”みすず”……そうよ。彼女が白皇様殺しの下手人」
「それっ、て!」
思わず、透子が彼女にしては珍しく身を乗り出すが、
「けど、それは冤罪。それに関しては彼女は無罪よ。
そして、それこそが彼女の運命が狂い始めたきっかけでもある」
「……………………」
ズズ……とコーヒーを啜りながらリサは続ける。
「……彼女の過去、聞きたい?」
「……………………」
今度の沈黙は、迷いの証。
A 「聞かせて……ください」
B 「いえ、いいです……」
Aで。
A
私は語った。透子に観鈴のこれまでの一部始終を。あの娘の受けた裏切り。あの娘が犯した過ち。その全てを。
「あの娘は確かに人として道を誤ったわ。でもね。それでも人は変われる。私はそう信じているの。
でも貴女が観鈴を信用できないのも当たり前だと思うの。だから貴女にもあの娘を信じてとまでは私は言わないわ。
けれどしばらくは今のあの娘の姿を見ていて欲しいの。それでいい?」
そう同意を求めるが返事はない。目を伏せる。これはまだまだ時間がかかりそうだろう。
時間で解決するというわけでもないけれども。
「……でも…やっぱり……」
泣きそうな顔で透子は震えている。そして恐る恐る言葉を紡ぐ。
「私と同じ側室にユズハさんって人いたんです。その人のお兄さんも人斬り観鈴に斬りころされたって…」
神妙な面持ちで透子はポツポツと語る。
「そのユズハさんて人は病弱だったらしく白皇様やお兄さんが死んだと聞かされてそのまま……」
そうひくひくしゃくり上げながら透子は続けていた。
「あれから登臼来藩も取り潰されて私と同じ側室だった人たちも散り散りになったそうです。藩士の人たちも…」
登臼来藩のその後。それは耳に余るものがあった。藩主の不意の死とその下手人を取り逃がした士道不覚後から
藩は取り潰しの憂き目にあった。亡き藩主に対し殉死するもの。喰うに困り路頭に迷うもの様々だったらしい。
「私は運よく慶喜様に目をかけていただいたんですけど…他の人たちは…」
白皇の側室達のその後も芳しくはない。商家の妾程度に納まればまだ救われた方。
白皇にとくに寵愛を受けていたといわれる娘は妹ともども山賊に囲われ妾にされたなどという話も伝え聞く。
他にも娼婦に身を堕とすものもいる。未来に絶望し自ら命を絶ったものも。
「こないだ殺された公家の人のお姉さん。自殺未遂したって……
どこかの大名行列も襲われて…お殿様を守れなかった護衛の人たちみんな切腹になったって…」
来栖川卿の殺害。江阿藩の行列への切り込み。そのどれもが日が浅い。
「やっぱり駄目です。私、信じられません。とても……」
そう小さく肩を透子は振るわせた。
A この場は説得を諦めて引き下がる
B それでも理解してもらうべく説得する
C なんと観鈴が立ち聞きしていた
B
「……………………」
リサは静かにため息をつくと、
「こういう手法は好きじゃないんだけど……」
少し肩を竦めながら、立ち上がり、眠っている観鈴の横に立った。
「?」
「まずは栗原さん、これを見て」
言いながら布団をめくり、観鈴の寝着をまくり上げ、観鈴の背中を空気に晒した。
「…………っ!」
絶句する透子。
「…………こんな言い方は好きじゃないけど」
服と布団を元通りにし、リサは元の位置に戻る。
「彼女もこの一年、苦しみ続けた。肉体の苦しみはもちろん、心はあれ以上に傷ついてる。
もちろん、『あなたも苦しんだけど彼女も苦しんだから、イーブンです』なんて言わないけど……そこはわかってほしい」
「…………けど、有名です。人斬り観鈴は、眉一つ動かさないどころか、笑いながら無抵抗の人間を殺すって……」
「それは、彼女は笑うしかなかったからよ。彼女は元々はただの街道の茶屋の娘。
あなたとほとんど変わらない、人のいい、ただの、そう。小娘。
ただ、彼女が事件に巻き込まれ、騙され、裏切られ、殺されかけ、
そして、もう自分が生き残るためには殺さなければならなくなった時点で彼女が選んだのは、心を凍りつかせること。
それ以上傷つくことに耐えられなかった彼女は、心を硬く閉ざすことでしか、感情を抹殺することでしか精神の安定を図れなかった。
でなくば、とうの昔に彼女は狂い死んでいたでしょう」
「……………………」
「だから、同じ理由で彼女は殺すことができた。彼女にとっては、『殺すこと』はただの生きる手段、仕事でしかなかったから。
大工が釘を打つように、漁師が魚を釣るように、傘張りが糊を付けるように、神尾観鈴にとって命を奪うことは、『それ』だけのことでしかなかった」
「けど……けど、それは彼女が人を苦しめていい理由にはなりません」
「そうね。彼女に非が無いとはとてもいえない。彼女の罪はとても重い。
だけど、忘れないで。そんな彼女を利用した存在があったことを。
彼女は、真っ白い紙のようなものだったのよ。良くも悪くも純粋な、ね。
出会った人が、そこに何を描くかで彼女は変わる。彼女が出会ったのは、長州藩。維新の思いを胸に、呼吸するように敵対勢力を殺し続ける組織。
そこに、心が凍った彼女が、類まれなる剣の腕を持つ彼女が出会ったら、どうなるかは、もう考えるまでもないでしょう」
「……………………」
「だけど、今は変わった。彼女は『無』だった心を取り戻した。彼女は『人間:神尾観鈴』に戻った。
そして、罪は晴れない、過去は変わらないけど、それでもこれからは誰かの未来を創りたいと言った。
逆に訪ねるわ栗原さん。あなたは彼女を許せない。なら、あなたは彼女をどうしたいの?」
「えっ…………? そ、それは……」
「それが『殺し』なら忘れないで。それでは彼女と同じことを。彼女もまた、最初は復讐のために剣を手にした。
答えが『殺し』では、あなたも彼女と同じなのよ。逆を言えば、彼女もあなたと同じだったのよ」
「……………………」
「すぐに納得しろというのも無理でしょう。あなたにはあなたの感情もある。
けどね、忘れないで。酷なようだけど、あなたの気持ちはどうあれ、彼女から離れるわけにはいかない。
この旅には、彼女の剣が必要不可欠なのよ」
「……………………」
「だから、どうせ彼女と一緒に行動せざるを得ないのなら、見ててほしい。
彼女の行動を。彼女の言葉を。彼女の生き様を。それでも許せないというのなら…………」
「……………………」
「……どうしましょう?」
と言いながらクスリと微笑む。
「リサさん……それはちょっと無責任……」
「そうね。ごめんなさい」
透子も、僅かに笑みを漏らす。
「わかり……ました。あたし、まだ観鈴さん怖いです。けど……
……どうせ一緒にいるしかないなら…………」
「ええ、お願いするわ。見て、そして考えてほしい」
「…………はい…………」
納得はしてないようだが、理解はしたようだ。
それを確認するとリサもはあと大きく息を吐き、茶碗を片付ける。
「さあ、そろそろ寝ましょう。御所の豪華な寝台とはいかないけど、できるだけのもてなしはするわ」
「大丈夫です。白皇さんのところにいたときは、とても王様の側室とは思えない生活でしたから」
「それは頼もしいわ。さあ、寝ましょう」
そして透子は昨夜リサが寝たベッドに入り、しばらくすると寝息を立て始めた。
観鈴は昨日と同じベッドで寝ている。
「……………………」
なんとなくその光景を見ながら、リサは考えた。
A 観鈴と一緒に寝たいなーとか
B いや、やっぱここは床にむしろを引いて1人で眠ましょ
シリアスだね
A
B
(……ま、土の上に寝るのも体が痛くなるしね)
リサは呟くと、そっと観鈴の体を跨ぎ、向かい合うように横になった。
(……こんな子どもが、ね)
改めて観鈴の寝顔を覗き込む。
とても、信じられない。
こんな少女1人に京都中が震撼し、長州と佐幕の戦いと、そして多少なりとも維新の行方に影響を与えたことを。
「……………………」
リサの心に、僅かな悪戯心が芽生えた。
ソッと人差し指を差し出すと、観鈴の頬をぷにとする。
「うう……んん……」
少し眉をしかめる。
「……………………」
クスクスと笑いながらしばらくそれを繰り返す。
そのたびに、柔らかくもちもちとした感触とともに小さな寝息を立てている。
「…………」
しばらく続けているとかわいそうになってきた。
「Sorry, 観鈴」
リサはそっと観鈴の頭を抱きかかえると、そのまま深い眠りに落ちていった。
「リサ……さん……」
もぞもぞと、観鈴が己の胸に頭を埋めてくる感触を確かめながら。
「…………プハァ――――」
「…………?」
「いやしかし……よく眠っておりますねぇこれは、ハイ。
少々困りました、ハイ。ハァ―――」
「……? ゲホッ! ゴホッ!」
朝。不意にリサは、喉に嫌な感触を覚えた。思わず数度、咳き込む。
「ハァ―――これでも起きてくださいませんか、ハイ。これは本格的に困りましたねぇ、ハイ」
「……ゲホッ! ガハッ! ……ゴホッ!」
「私にもこの後の予定というものがあるのですが……いやはや、困りました、ハイ」
「ゲホガホッ! ガハッ! ゴホッ!」
煙だ。煙が喉に差し込まれている。
「ゴホッ……いったい、何なの……?」
睡眠の快感とは真逆の、最悪の不快感と共に目を覚ましたリサ。
そんな彼女の目の前には……
「お目覚めになりましたか? ハイ」
「…………っ!!」
思わず叫び声を上げかける、が、それはプライドその他の感情でなんとか押し込める。
なんとリサの目に飛び込んできたのは、観鈴の顔ではなく、煙管を咥えた猫背糸目の痩せぎすの男だった。
「―――Who!?」
瞬間枕元の銃を抜き、銃口を定める。が、男は大して慌てる様子もなく。
「いやはや……小娘を抱いて熟睡、侵入者の気配も感知できないとは……
ヘル・ヴィクセンも噂ほどではないんでしょうかねぇ、ハイ」
「ヘル……私の名前を知ってるってことは……」
「ハイ。あなた様に言伝を預かってまいりました。チキナロと申しますです、ハイ」
「…………随分と悪趣味なのね。Ladyの寝室に無断で侵入するなんて」
観鈴と透子を起こさないようにソッと起き上がり、リサはチキナロと名乗った男と卓を挟んで向かい合う。
「一応ご挨拶はしたのですが……よほどお疲れになってたのでしょうか、ハイ。ちっとも答えがなくて」
「……まあいいわ。それより、本題に入ってもらえる?」
「ハイ、それですが、栗原透子様を国外にお連れせよ。具体的には港まで連れて来いとのことです」
「港……どこの?」
「ハイ、長崎です」
長崎―――旧登臼来領を通ることになるな、とリサは何となく考えた。
「で、続いて『敵』に関する情報ですが、『彼等』は―――」
A 昨夜の事件で失脚した十本刀残党を雇い入れたようです
B 旧登臼来藩の武将たちを束ねているようです
a
恐らく、次の投稿が容量限界と思われます。
930まで持ちそうにないので、至急、新スレを立てる事をお勧めします。
と、言うわけで──
A 次の選択者が立てる
B すぐに立てる
んじゃB
>>922 オーケイ。いい仕事だ。
んじゃま、このスレはどうする?
A 次スレに移行。埋め立てする
B 後、一回話を投入する
A
うめちゃえ
容量的にどうだろ
せっかくだから使い切ります?
B
ついでに、ココまでの流れのまとめとか、感想とか、未回収の伏線とかについての雑談に1票。
つー訳で埋め立てに決まった訳だが…埋め立ての議題を決めてみるか。
A 観鈴にヌッ殺された人の座談会
B ココまでの流れのまとめとか、感想とか、未回収の伏線とかについての雑談
C
>>306のリコール騒ぎについて考察
A
側室の数が合わない…やるな聖上
綾香「復活怪人としての出番もなかったわねぇ…まぁ、あの子にとっては私は標的に過ぎなかったからでしょうが」
雪見「無残に斬り刻まれた割にはあっさりしているわね。 こっちは首チョンパよ、再登場しても」
綾香「武人として敗れたからね。 武人の敗北には常に死が付き纏うもの。
無念だったけど、覚悟がなかった訳じゃないわ」
瑠璃「うちらも出番なかったわ… やっぱし、新作キャラはあかんのかな…」
珊瑚「るりちゃん、スプラッタやー『臓物(はらわた)ブチまけろ!』な感じやでー」
瑠璃「うあわっ! さんちゃん、やめてえな」
朧「贅沢言うな! 俺なんか設定だけで殺されているぞ! うう、ユズハ…俺は…駄目な兄だ…
ど素人に殺された挙句、お前を守ってやれなくて…orz」
北川「なんつーか、レオパルドン並だよなぁ…」
朧「言うなぁぁぁぁぁぁぁぁッ! あいつの古傷の大半は尾根の里で出来たもの!
つまり、俺が付けた奴……のはずだ」
渚「あの…邊那初さんの可能性も充分あるんじゃ…」
朧「………………………orz」
聖「…あの世に来てから何かと躁鬱が激しいな、朧殿」
佳乃「お、お姉ちゃん、ちょっと診てあげたら?」
聖「生憎、精神病は専門外だ。 まぁ、本編で出番がなかったから、ここで喋らせておけば多少は落ち着くだろう」
しのぶ「慰める訳じゃないけど、その後の素質の開花を見る限り、負けたのは恥じゃないと思うわよ」
朋也「さて、あいつがこの後、どう成長してゆくか見ものだな。 剣士として、人として」
七瀬「偽善よ、偽善。あの子が改心してからまだ誰も救っていないじゃん。 まぁ、この先、次々積まれてく
死体の山を見て自分の無力さに気付くでしょうね」
神奈「それどころか、次々と己の業の深さ明らかになってゆくのう…」
綾香「姉さん…」
朧「ユズハ…」
汐「わたしたちが死んだとわかったのも後からだし…これからまだいっぱい出てくるのかなぁ」
裏葉「観鈴さん、大丈夫でしょうか…杏さんが死んでかなり精神的に参っているようですし」
柳也「それを乗り越えない限り、再び人斬りに戻るか…再起不能になるかのどちらかだな。
どのみち、不殺と言うのは生半可な心意気で出来るものではない」
北川「しかし、こんなハードでシリアスな展開になるなんて誰が想像しただろうか(反語)」
しのぶ「話の上での分岐点はやっぱり
>>300辺りかしら。
>>306で夢オチみたいなギャグ路線を、
リコール出してまで拒絶しているから」
雪見「種割れフラグを立てたのは聖さんなのは間違いないけど」
聖「…耳が痛いな」
珊瑚「そこから書き手のみんなが一斉にシリアス路線に変っておるからなぁ」
瑠璃「4連被りとか3連被りとか出とるしな」
綾香「当分はシリアス路線まっしぐらでしょうね。 透子さんを届けて終わりか…邪剣の正体が明らかになるか…」
朋也「全ては選択次第。 未回収複線なんてざらだからな」
柳也「さて、そろそろ容量限界だと思うが…どうする?」
A ここの住人に任せる
B 観鈴関係なしに死んだ人が喋る
B?
B
白皇「どうして私が殺されたのだろうか…水戸黄門のように活躍したかったのに」
邪剣ってなんだっけ?
初音「原作に復活フラグがあるからだと思う。 あたしだって首ちょんぱされた事があるし、
鬼の設定とか、強化兵とか、そーいうフラグがある人は微妙に扱いがぞんざい…」
晴子「こんな事やったら観鈴には大人しゅう茶屋でどろリ濃厚でも出させておけばよかった、今は反省している」
智代「瞬殺された…出番が望み薄なのは確かだが。 支援板にあったように、
今回は”死が薄い”な。 時代背景がそうだとは言え」
珊瑚「なあ……杏ちゃん。死にたてほやほやの所悪いんやけど」
杏「……ん、ああ、何よ」
瑠璃「妹の椋ちゃんって、何してはる人なん? うちら姉妹とも仲良かったってことになってるし、
みす……まずいかな、まあええや。観鈴とも引きあわせようとしてたらしいやん」
杏「――ああ、そういえばそんなこともあったか」
珊瑚「十本刀の一人でもないわけやし」
杏「……何とか、幸せに……少なくとも、こっちに来るようなことが無いように祈るしかないわね」
瑠璃「何か、こういういい方まずいかもしれんけど。うちらはまだ幸せやったかもしれへんな……」
杏「どうして?」
珊瑚「二人ほとんど一緒に生まれて、一緒に育って、……一緒に死ねたんやからな……」
杏「…………」
>>936 楓「私が
>>617あたりで打った、ただ切れ味のみを追及した妖刀です。
観鈴さんの霊刀に呼応して反応する……とはなってますけど、
選択スレですし、別にその刀が必ずしも出る必要はないと思います」
七瀬「まぁあたし達、後はすることもないし、とりあえず観鈴にやられ組で恨み千万な人は、
ここから残りの十本刀の応援でもしましょ」
雪見「大丈夫、みさきならきっとやってくれる! あたしの仇を討ちなさい、みさきっ!」
朧「……なんかのんきに、茶店で一服してるようだが」
佳乃「うわぁ、お皿がひいふう……たくさん重なってる。大食い選手権優勝者一号さんに任命するよぉ」
珊瑚「せっかくやから、ここのスレの住人にウチらの二つ名を決めてもらおや。
今更な感じやけど、ないとそれはそれで格好がつかんからなぁ」
瑠璃「せやなぁ…じゃぁ、バッチリ格好いいやつを頼むで!」
※二人の十本刀としての二つ名を決めてください
首薙甲の珊瑚
首薙乙の瑠璃
薙刀使っていたので。
珊瑚「と、いうわけで」
瑠璃「めでたくウチらの二つ名が決まったで!」
杏「正直、それで? って言いたくなるほどどうだっていいけどね」
晴子「しっかし、ウチもよう死ぬなぁ。さゆりんに続いて二回目やで」
朋也「俺も死ぬのは二回目だ。ついてないな」
渚「私もです」
楓「私もですね」
白皇「私もだ。……と言っても、一回は中の人が橘敬介だったが」
神奈「甘い……甘すぎる」
柳也「どうした、神奈?」
神奈「余は……選択スレで死ぬのは三回目だっっ!!」
裏葉「あらあら、まぁまぁ……」
杏「智代を討つなんてよくやってくれたわ、私達の敵をとってくれて、ありがとう……………えーと、はせ、はせ…………長谷川さん?」
聖 「それにしても羨ましいのは国崎君の立ち位置だな」
柳也「ああ、選択しだいだから100%ではないが、死はまずありえない。
いつでも登場可能でシリアスもネタもなんでもOK」
佳乃「最近どこに出現していいか悩んでるみたいだけどねぇ」
杏「なんだってこの一年私が何度誘い出そうとしても断ったクセに、あの異人は会った瞬間自分から晩飯に連れ出そうとするのよあの子は」
白皇「我が藩は呪われているのだろうか。皆すまない。」
ドリィ「ガーン、トウカさんのうっかりな一言で、僕たちまで死亡確認!」
グラァ「でも座談会には間に合ったね、ドリィ」
ドリィ「そうだね、グラァ。若様もこっちにいるから、いいか」
朧「おまえら、死人のくせにポジティブだな」
ユズハ「私も透子さんの一言で……あ、そういえば私、まだ一言も喋っていませんでした」
朧「うおおおおっ、ユズハっ! ふがいない兄を許してくれっ!」
白皇「いや、それを言うならそもそも私が……」
雪見「辛気くさいわねぇ、あそこ。名前も漢字とカタカナが混じって鬱陶しいったら」
神奈「お国崩壊か……我が藩もどうなったであろか。もしかして、お家取りつぶしとか……」
七瀬「十分あり得るわね。参勤交代のど真ん中で、藩主と側近斬り殺されましたなんて、
大恥もいいところだし、藩としても立ち行かないわ」
神奈「な、なんと……」
七瀬「死んでもへらへらしていたあんたらには、いい薬だわ。はっ」
珊瑚「気楽に出てきて気楽に死んだうちらは、気にかけることがなくって助かるわー」
瑠璃「せやなー。他に東鳩2のキャラでてきてひんし」
しのぶ「ちょっと! そんなことより、なんで私が透子のそばについてあげられないのよっ!
キャスティングミスもいいところだわっ!」
綾香「どうどう。やっぱり死んでるせいか、情緒不安定な人が多いわねぇ」
しのぶ「これは素よっ!」
綾香「あ……そう」
>>949 うお、前半ほとんど同じ内容の書いてたw
うたわれ組は下手するとあと一人、自殺した側室ってのが確定しかけてるんだよな…
トウカも死亡フラグびんびん立ってるし。
トウカは騙されやすいから、るろ剣の鎌足(捕縛後)みたいになんか詭弁を弄すれば、
ころっと違う方向性で生きていきそうな気もするw
っていうか大名行列の人たち切腹になったんだよね。
許すべきではなかったぞ。神奈殿。
まさに知らぬが仏なりw
智代「ギャグキャラにあっさり殺された私の立場は…」
実はまだ絶対死んだとは思ってない俺がいる。
長谷部があのキャラで得物は毒で本人が殺した殺した言ってるだけだし。
まあもっかい京都にスポットが当たることがなければこのまま死んだものとしてフェードアウトだろうが。
それぐらいで私の立場は…とかいっちゃうようじゃこのスレの住人をやるのは難しい
なんかいや〜んな感じにギャグ路線になっていたから少しは真面目な方向に書いた自分からすると。
そういう風に今さら復活されるとしょんぼりしてしまう。
いや、こっちで座談会に参加してしまった以上、智代は死んだキャラw
次回作はどうなるだろう。殺伐ものの次だからやっぱりほのぼのとした話がいいかな?
晴子「うちら」
珊瑚「世にも珍しい」
瑠璃「関西弁とりおやで〜」
珊瑚「智子さんもうちらの仲間になれば」
瑠璃「『かるてっと』になれるのになぁ〜」
大丈夫だ。
間違いなく死罪だから>智子
るろ剣みたいに取引を持ちかけられて、ドライな智子ならそれを受け入れるかもよ
いやいや、百識の方治みたいに幕府に参謀として迎えられるかも
今度は自害しそう
埋め。
――某日 長州藩詰め所
杏 「――はい、ご苦労さま観鈴。これが今日の分よ」
観鈴「にはは。ありがと杏さん」
杏 「相変わらず仕事が速いわね」
観鈴「にはは。これしか取り得がないからね。
あ、そうだ杏さん。今日どこかに晩御飯食べにいかない?」
杏 「え? ……ええっ!?」
観鈴「今日は天麩羅食べに行こうと思うんだ。わたしの好物だから。
杏さん一緒に行かない? 奢ったげるよ」
杏 「そ、そうねえ。い、行ってあげてもいいけどわ、私も何かと忙しい身だだから。
ささ、最近新撰組の動きが活発になってきたし、ま、まあそうね。み、観鈴がどうしてもって言うなら」
観鈴「じゃあいいや。リサさんと行くから。それじゃまた明日ね。ばいばい」
(バタン)
杏 「……………………」
俺も埋めてみる
――また某日 長州藩詰め所
智子「はぁ…………」
杏「どうしたのよ智子」
智子「予算がな、足りへんねん」
杏「どうしてよ、この間藩から資金が出たばかりじゃない」
智子「………あれ」
みさき「う〜ん、京料理って上品な味付けで何杯でも入っちゃう」
杏「………あ〜何とか上に掛け合ってみるわ」
いまさらながら、杏カワイソス
>>966 春原「僕の旅行券を強奪した報いさっ!」
るーこ「それとこれとは関係ないぞ、すのうー」
――某日 長州藩詰め所
杏 「というわけで、本日の伝達事項は以上……誰か報告することはある?」
観鈴 「あ、はーい。ねえねえみんな、ちょっといい?」
智子 「なんや。あんたが意見なんて珍しなぁ」
観鈴 「みんなにお願いあるんだけど、いいかなぁ?」
七瀬 「別に。あたしたちで出来ることなら構わないわよ」
観鈴 「にはは、じゃあこれ」(ドサッ)
瑠璃 「な。なんやこれ」
珊瑚 「どろどろや〜」
観鈴 「久々に作ってみたの。観鈴ちん特性どろり濃厚緑茶」
なつみ「……お茶?」
みさき「にはとても見えないね。元々見えないけど」
幽名 「……で、それをどうするの?」
観鈴 「みんなで飲んで味見してほし」
智子 「おーっとアカン! 本国との打ち合わせがあったんや!」
七瀬 「そろそろ柏木楓に預けておいた刀、打ち終わるころね!」
姫百合「ウチらは薙刀のお稽古や〜!」
みさき「お茶菓子がないんならいいや」
なつみ「……さよなら」
幽名 「飛空発破は逃げにも有効!」
杏 「……」
観鈴 「がお…」
杏 「……ああもう! 飲めばいいんでしょ飲めば! どいつもこいつも薄情ね!」
観鈴 「にはは。ありがと杏さん」
杏 「ほら長谷川! あんたも手伝いなさい!」
彩 「え? ちょ、なんでこういう時ばかり私に白羽の矢がっていうか名前違いますし」