あのー、結構な長編ものをうpしようと思うんだけどこれって
何行ごとに切ればいいのか誰か教えて。
テキストサイズで20`あるんだなこれが・・・
素直に自hpにあげたほうがいいのか迷う
ちなみにタマ姉もの。
出だしだけ貼ってHPにリンクしとけばみんな見に行くかも。
おk、次から始めます。
でも自hpにはまだ再加筆してからにするからとりあえずでだしね。
題名は
ぼくはタマ姉に守られる
「それにしても遅いわね」
整った眉をひそめると向坂 環は自宅の前で足踏みをしていた。
秀麗眉目とはこのことだという彼女があからさまな怒気を発散しているのには訳があった。
それというのもこのところいつも一緒に帰っている彼、貴明ことタカ坊が
「用事があるから先に帰って」と言い残して学校から帰ってこないからだ。
あの出来ごとがあってからというもの彼女にとってのタカ坊はもはや特別な存在だった。
それはもちろん彼にとっても私は特別な存在であると彼女はそう確信していたし、
そうに違いなかった。どれほどの時間を待っただろうか、自宅に見慣れた制服を着た
少女たちがこちらに向かってきた。目を眇めると3人組みの彼女たちは誰かに肩を貸し
ながらゆっくりとこちらに向かってくる。ほどなくしてそれが誰なのかわかった。今は同じ
学校に通っているかつての九条院時代からの後輩、玲於奈たちだった。
では彼女たちはいったい誰に肩を貸しているのだろうか。
それが分かった瞬間、環は大きく体を震わせた。
「タカ坊?!」
両脇から薫子、霞に支えられ引きづられるように歩いているのは貴明だった。
うなだれる様にがっくりと頭を垂れ、いっさい身動きせずに運ばれてくる。
「玲於奈、これはいったいどういうことかしら?」
普通に聞くつもりがまるで詰問するかのように厳しい声音になってしたことに気がつく
こともなく環は3人の少女に問い正した。
その剣幕に一瞬だじろいだ玲於奈だったがぎこちない微笑みを浮かべると
軽く会釈して話しかける。
「おねえさま、おひさしぶりですわ。」
玲於奈は一瞬、柔和な表情を浮かべて仁王立ちする環に挨拶するもののすぐに硬い表情を取り戻す。
「おひさしぶりね、玲於奈。まずは貴明を運んでくれた事をありがとうといっておくべきなのかしら」
環は玲於奈たちがわたしが貴明とつきあうことを快く思わないことを知っていた。
出来うるならば彼と別れさせてわたしを九条院に戻したいということも。
その彼女たちが貴明をここまで運ぶというのはあまりに不自然だった。
「実は体育館の裏で倒れている彼を見つけて運んできた次第です、なにかお気に
障ったでしょうかおねえさま」
玲於奈の言葉に薫子は両手を胸の前に組むと心配そうな顔をしてこちらをのぞき
込んでくる。霞もその言葉にコクコクと頷いた。
どうやら思い違いをしたことに気づき環の顔がカっと熱くなる。
「ご、ごめんなさい。わたしてっきり……」
「いえ、これまでの事を考えたら疑われるのは仕方ありません。
ですけどこの男はおねえさまが気にかけている事は私たちも知っていますから、
あえて承知で運んできた次第です」
玲於奈は嫌疑をかけられてもひとつも嫌な顔をせずにそう説明した。
状況から早とちりした環は顔を赤面にさせると3人にお詫びの言葉を述べた。
そうして薫子と霞の肩に身を預けている貴明の前にでるとそっと自分の肩に彼を滑らし
彼を背負うとそれまで担いできた彼女たちに「ありがとう」と感謝の言葉を述べ頭を下げた。
「玲於奈、あの、わたし失礼なことをいってごめんなさい。わたしてっきり……」
「いえ、いいんです。お姉さま。たしかにこれまでわたしたち誤解されるようなこと
してきましたから今日はほんの罪滅ぼしです。だからお気になさらずにお姉さま」
「ありがとう、玲於奈。ところでタカ坊?しっかりして!」
しかし貴明は言葉を返すことなく目は瞑られたままだった。
環の狼狽を感じ取った玲於奈は慌てて言う。
「気を失っているみたいですから、そのうちに目が覚めるかと」
「ですからあまりご心配なさらずに、お姉さま」
薫子も言い添えて環ようやく落ち着きを取り戻した。玲於奈はそんな二人の様子を
冷やかな視線で眺めると環に感ずかれない微かな仕草で後ろの二人と目配せをして
頷きあう。
「ところでおねえさま。この男を助けたときに面白いものが落ちてましたの」
「面白いもの?」
「ええ、とても面白いものですわ。見て頂けます?」
受け取るのに不自由な様を見てとると薫子と霞は見事な連携でまた環の腕から
貴明を支えなおす。不自然なまでの親切さに環は何故か玲於奈達が隠し切れない
喜びを秘めているように感じた。そして自由になって手で差し出された封筒を受け取ると
そのなかを覗いてみる。それは写真だった。何枚かの束になった写真を封筒から取り出し
おもむろにその表にあった写真を眺める。その瞬間、環の動きは止まった。
「………」
見る見るうちに環の顔が蒼白になっていくのが玲於奈たちにもわかった。満
面の笑みをあえて渾身の力でねじ伏せたような歪な表情で玲於奈は環に問いかける。
「もしかしてその写真に写っている男とは彼のことではありませんか」
しかし環は何も言葉を発しない。そして一枚一枚写真をゆっくりと眺めると
のろのとした仕草で封筒に写真を戻した。環が見た写真にはあられもない格好の
男女が互いに抱き合っていた。女の顔はわからない、だが男の顔はわかった。
それは貴明だった。
タカ坊が他の女と寝た………その証拠というべきものが抗いようもない事実と
なって環の前に突きつけられる。薄暗い体育館の用具室とおぼしき場所で
貴明は見知らぬ女に覆いかぶさっていた。表情まではわからない、だけど環には
これが貴明だとわかった。
「これをどこで?」
震えるような声で環はようやくそれだけを言った。
「体育館の裏側ですわ、おねえさま。その男の傍らにそれが落ちてましたの」
薫子は淀みのない口調で丁寧に答える。だがどれだけ丁寧な言葉を使おうとも
その裏に潜む悪意は隠し切れなかった。写真が与えた衝撃がきちんと正しく伝わった
ことを確認すると玲於奈は環の肩を激しく揺さぶった。
「おねえさま、もう目をお覚ましになってください。
この男はおねえさまがお付き合いする価値など微塵もないのですよ」
「その男はおねえさまを裏切ったんです。」
玲於奈と薫子が激しい口調で叫び、その言葉に霞も頷く。
「わ、わたしは…………」
呆然となった環は空ろな目で貴明を追った。
貴明は相変わらず薫子と霞の肩を借りて両腕をだらりと垂らしている。
環はぼんやりとそれを眺めていた。
262 :
250:2005/04/10(日) 18:38:53 ID:635SVKsm0
とりあえずこんなところで。
じゃご飯食べにいってきます
1レスに32行2Kbyteまではれるよ。
>>189-199の続きが出来たので投下しておきます。
↓ 以下12レスほど続くのでよろしこ。
一瞬、俺の頭の中が真空地帯になった。
なぜ見知らぬ女の子が、俺のことを『貴明』と呼ぶのか? 聞き違いではないのか?
このみやタマ姉、雄二ですら、俺を由真だと思いこんでいるというのに。
河野貴明――“タカくん”あるいは“タカ坊”の存在が、彼らの脳裏からは消え失せているというのに。
「今……君は、『たかあき』って呼んだ?」
俺は、女の子に訊いた。
「だって、どこから見ても、たかあきじゃん」
女の子は、俺が河野貴明であることが、さも当然であるかのように言った。いや、そうなんだけど。
「あたしは……由真、じゃないのか?」
「見かけは由真ちゃん、ハートはたかあき、ってね。でも、人間は顔じゃあないんです。中身よ中身」
「……」
周囲の連中は、俺と美少女の噛み合っていない会話など意に介せず、雑談に興じているばかりだ。
だいたい、この娘はいったい何者なんだ?
この娘も、草壁さんみたいに“影法師”とやらを見ているのか?
いや、違う。
草壁さんは、俺が女装していると思っていた。だが、この娘は俺のことも由真のことも知っている。
「……ひとつ聞いていいかな?」
俺は謎の美少女に話しかけた。
「んー、なんとなく想像はつくけど、言ってみれ」
「あんた、誰よ?」
俺は単刀直入に訊いてみた。
「……うーん、そうだよね。仕方ないよね」
美少女は腕組みをして、一人でウンウン頷きながらブツクサつぶやいた。なんのこっちゃ。
俺が呆れたように失笑すると、女の子は意を決したように腕を解き、俺の目を真っ直ぐに見て話し始めた。
「それじゃあ、自己紹介するね。あたしは、来栖川エレクトロニクス謹製、HMX−17b。通称、ミルファ。
まあ、たかあきの飼育係、みたいなものかな? ほら、後ろの黒板にも『たかあき係 ミルファ』って書いてあ
るでしょ?」
「どこにも書いてねえよ、そんなもん……」
後ろの黒板をちらっと見たが、やはりどこにも書いてなかった。
お前のようなメイドロボがいるか。コスプレしたイメクラ嬢だな?
その言葉は喉の奥にグッと飲み込んだが、くだけた話し方といい、人間臭い仕草といい、どう見てもロボット
のそれではない。
深夜番組で見たのだが、世の中には“メイドロボ風俗”というものがあるそうな。本物のメイドロボは高価だ
から、人間の女の子にメイドロボの格好をさせて――早い話が、女の子の耳にメイドロボ風のアンテナをくっつ
けて、ついでにメイド服を着せて、メイドロボっぽい口調や仕草で、色々とHなサービスをするんだって。
で、この自称メイドロボのミルファさんだが、客にこんな口調で話しかけてみろ。間違いなくクビだぞ。人間
様に向かってタメ口をきくメイドロボが、どこの世界にいる? リアリティーがないんだよな。
こんな人形みたいに可愛い娘なら、どこかで会ってさえいれば、頭の片隅にでも記憶がありそうなものだが、
残念ながら全く心当たりがない。
いや、知り合いではなくて、アイドルやモデルじゃないのか? 雄二に借りた青年向けコミック誌のグラビア
に出ていたとか。夢の中なら、実際には会ったこともないアイドルと言葉を交わすことだってあり得るだろう。
しかし、名前が出てこない。デビューしたばかりの新人か?
「……たかあきの席は、この列の後ろから三番目……ちょっと、聞いてるの?」
座席を教えてくれていたらしいミルファさんが、口を尖らせて言った。
「どうして、あたし――いや、俺の名前も、正体も知っているんだ? 俺は、君のことは何も知らないのに」
俺はミルファさんに訊いてみた。
「あたしは……知ってるよ。たかあきのこと。たかあきも、きっと知ってると思う」
ミルファさんが言った。口元に、軽く笑みを浮かべて。コロコロ表情が変わるな、この娘は。直前まではムッ
とした様子だったのに。見ていて面白いから、いいけどさ。
「ごめん、まだ思い出せない。ひょっとして、小さい頃に会ってる?」
「ううん。会ったのは、ごく最近」
ごく最近、か……。ダメだ、さっぱり記憶にない。
おっと、いけない。教卓の座席表を見なければ。由真の名字が書いてあるかもしれない。
ミルファさんの正体はもちろん気になるが、今は自分の正体の方が大事だ。
「あ、教えてあげたばかりなのに。ひどーい。あたしのこと、信じてないんだ」
再び口を尖らせるミルファさんを後目に、俺は座席表を覗き込んだ。
・
・
・
俺だけ『由 真』って、どういうことだ。他の名前は、みんなフルネームで書いてあるのに。
フルネームとはいえ、よく見れば適当な名前がたくさんある。『日本 太郎』とか、『東京三菱 花子』と
か、『ジュガシビリ=ホリモンコン』とか。
そういえば……このクラスで知ってるヤツは、全部で10人くらいしかいないんだよな。
「座席は、あたしが言った通りでしょ? たかあきを担いだところで、面白くもなんともないんだから……」
ミルファさんは、勝ち誇るようにふんぞり返って言った。
「ああ、俺が悪かったよ、ミルファさん。謝るついでにさ、由真の名字を教えてくれないか? 俺の世話係な
ら、知ってるよな?」
俺は、最後にミルファさんに訊いてみることにした。これでダメなら、“詰み”だ。
「世の中には、名字のない方々もいらっしゃいますよ?」
「あの、やんごとない方々のことですか」
「モチのロン」
「ひょっとして、由真は……その、やんごとなき身分の人なわけ?」
「高貴な人が、MTBであちこち走り回ってると思う?」
「いや、全然……」
チェックメイト。詰みです。由真の名字については、あきらめるしかない。俺が本当に知らないものは、夢の
中には出てこない、出しようがない、ということか。
ホームルームの開始、告げるチャイムが校舎に響く。着席するとき、ミルファさんは俺に言った。
「あたしのことは、“ミルファ”でいいよ。……ホントは、“あの名前”で呼んで欲しいんだけどね」
「あの名前?」
「ああ、こっちのことだから、気にしないで」
ミルファはそんなことを言いながら、隣の席に座った。席まで隣なのか。さすが『たかあき係』。
“あの名前”ってなんだろう? きっと、俺は知っているはずだ。由真の名字とは違って、俺が何らかのカタ
チで見たり聞いたりしたことがあるはずなんだ。
草壁さんは言っていた。“夢”ってヤツは、人間の深層意識とやらが見せるものだと。
と、いうことは……。
ちらっとグラビアで見た水着の娘が、実は俺のモロ好みのタイプであり、そのイメージが俺の心の奥底に、俺
自身も気付かぬまま残っていた、とか?
そして、非常事態で困窮している俺を救うため、眠っていたイメージが実体化した……それがミルファ!?
つまり! この娘は、俺自身なんだよ!! ナ、ナンダッテー……
まあいい。ミルファの正体は、追々確かめればいい。俺しか知り得ないことをミルファが知っていれば、ミル
ファは俺の“二重存在”ということになる。
この夢がどれだけ続くかはわからないが、こいつとは長いつき合いになるかもしれない。相手を正しく理解し
ておくのは、大切なことだからな。
夢だからか、授業はもうメチャクチャ。一時間目の英語から強烈な内容だった。
英語教師は教室に入ってくるなり、100円ショップで売ってるような安っぽい茶碗と、白いプラ板1枚を全
員に配布した。意味がわからずポカーンとしている俺を後目に、他の生徒達はウキウキした様子で騒いでいた。
茶碗が全員に行き渡ると、教師は「これから、おまえらにふさわしい授業を行う」と腕組みをしながら高圧的
に言い放った。なぜか生徒達はパチパチ拍手していた。なんのこっちゃ。茶碗をひっくり返すと、底には銘が刻
んであった。教師は「プラ板で銘を覆い隠し、完全に見えなくなるようにせよ」と生徒達に指示した。
生徒達は、茶碗の底の形に沿って白いプラ板をカッターで円く切り抜き、それをボンドで丁寧に貼り付け始め
た。この作業のどこが俺たちにふさわしいのか、ちっとも意味がわからないのだが、ボケッとしてても仕方がな
いので、俺も適当にプラ板を切り、茶碗の底の縁にボンドを適当に塗りたくり、適当に貼り付けた。ボンドが盛
大にはみ出してしまったが、気にしない。
時間が余ったので、隣の席のミルファを横目で見て過ごした。底への貼り付けはとっくに済ませた様子で、
油性マーカーで色を塗りハートの形に切り抜いたプラ板を、茶碗の側面にペタペタ貼り付けていた。楽しそうだ
なあ。どう見ても、ミルファは普通の女の子だよなあ。ミルファが本当にロボットなら、余計な作業はせずに次
の指示を待つだろうに。やはり、コスプレ少女なんだろうか。
全員が貼り付け終わると、教師は生徒一人一人の席をまわり、茶碗を英語で論評した。丁寧な仕事をした女子
生徒には「ファンタスティーック」と褒め、プラ板の切り方がいい加減な男子生徒には「キッスマイアス、ファ
ックユーアスホール」と罵声を浴びせた。英語の先生なのに、言い方が思いっきりカタカナ英語なので吹き出し
そうになってしまうが、生徒達はどいつもこいつも神妙な顔つきで聞いている。そのうち、ミルファの番になっ
た。ミルファは「オウ。ビューティフル」と褒められ、バンザイして喜んでいた。ああ、よかったね。で、俺の
番になった。ボンドがはみ出し放題になっている茶碗を見ると、教師は眉間に皺を寄せ「オー、ファッキンジャ
ップ、キルユー、コックサッカー、ゴーツーヘル」とわめきだした。上ずった声でカタカナ英語をわめく教師が
おかしくてたまらず、俺は思わずププと吹き出してしまった。それが、いけなかった。
教師は未確認生物でも見たような驚愕の表情を浮かべると、大粒の涙をボロボロこぼし、顔をくしゃくしゃに
して泣き出した。生徒達がどよめいた。英語教師は教卓の前に戻ると、どこからかリコーダーと取り出して吹き
鳴らし始めた。ぺーぺーぽー、ぺーぺぽぽー……。なぜリコーダー? なぜ『通りゃんせ』?
何人かの生徒が立ち上がり、口々に俺を非難し始めた。「先生を侮辱するヤツは許せない!」、「謝れ! 先
生に謝れ!」、「退転者は大敗北!」……
ポカーンとしている俺を見て、埒があかぬと感じたか、彼らは教師の下に駆け寄り、「僕たち」「私たちは」
「先生を支持します!」と小学校の卒業式みたいな言い方で、俺に謝罪を迫った。他の生徒達も、親の仇のよう
な目で俺を睨みつけた。
俺が何をした? 俺は『コックサッカー』と罵られたんだぞ? 変な言い方のせいで俺が思わず笑ってしまう
と、教師は逆ギレして笛吹いて現実逃避している、それだけのことだろう? とはいえ、空気はどんどん険悪に
なり、俺の旗色は悪くなるばかり。隣のミルファを見る。俺の『飼育係』なら、何かフォローしろよ。しかしミ
ルファは、我関せずとばかりにマンガ雑誌を読んでいる。どこの世界にマンガを読むメイドロボがいるか。
まあ、空気を読まずに笑ってしまったのは事実だ。ヘタに意地を張って、これ以上険悪な雰囲気にしても、俺
の立場が悪くなるだけ。俺は渋々立ち上がると、潔く「先生、ゴメンナサイ」と頭を下げた。すると、俺を睨み
つけていた生徒達が「キャー」とか「ヤッター」などと歓声を上げ、凄い勢いで拍手し始めた。教卓にいた英語
教師は俺の元へ駆け寄ると、涙を流しながら俺を思いっきり抱きしめた。あたしは女だぞ、なにすんだセクハラ
野郎と叫びたかったが、やめた。横目で他の連中を見ると、みんな涙を流している。教室中が感動の渦に包まれ
たところで、チャイムが鳴った。
「先生と由真が抱き合ったとき、私、マジ涙出てきちゃった」
「こんなに泣いた授業って、生きてるうちで初めてだよぉ」
「俺はきっと、今日の授業を受けるために生まれてきたんだ」
「……おかしいわ。あんたたちみんな、おかしいわ」
生徒達は興奮冷めやらぬ様子で口々に感想を述べているわけだが、アホらしいことこの上ない。こんな意味不
明な授業がこれからも続くのか? 勘弁してくれ。
「で、このお茶碗はどうするの?」
ミルファが、派手な茶碗を俺に見せながら言った。
「そんなん知らんわ」
「それじゃあ……今日からたかあきは、このお茶碗でご飯を食べてね」
ミルファは満面の笑みを湛えて茶碗を差し出した。
「冗談じゃないよ。こんなにボンドをべっちゃり塗りたくった茶碗でメシを喰わせる気か?」
「なによお。あたしのお茶碗が気に入らないの?」
「こんなにボンド臭くちゃ、メシがマズくなるだろうが!」
「え、あたしの作ったごはんがマズくなるの? それは困るな」
ミルファはそう言うと、窓を全開にして茶碗を振りかぶった。
「こらこらっ、窓から投げ捨てようとするな!」
売店で上履きを購入したついでに、自分の教室――今いる由真のクラスではなく、河野貴明のクラス――を覗
いてみることにした。目的は、もう一人の“俺”を見るためだ。どんなツラをしているのだろう。俺――由真に
なる前の河野貴明その人なのか、それとも同姓同名の全くの別人なのか。小さい頃、市立病院で俺と同姓同名の
爺さんを見たことがあるが、まさかその爺さんがいるんじゃないだろうな?
教室を覗こうとしたとき、何者かが俺の制服の裾を掴んで引き止めようとした。ミルファだった。
「おい、裾が伸びちゃうだろうが」
俺はミルファの手を振り解こうとした。しかし、強い力で掴んだまま放そうとしない。
「ミルファちゃんは、行かない方がいいと思うんだなぁ」
「なんでだよ。雄二と馬鹿話するくらい、いいじゃねえか」
俺は思わず嘘をついた。わざわざ自分の姿を見に行くことが、恥ずかしいとでも感じているのか、俺は?
「あたしは……たかあきと馬鹿話したいなあ」
ミルファはどこか落ち着かない様子で言った。教室を見られると、何かまずいことでもあるのか?
「さっきも今もしてるだろ?」
「だから、もっとしたいの」
「はいはい、あとでね」
「あん、あ、あーん」
俺は制服が破れるのを覚悟で腕を引っ張り、ミルファを振り解くことに成功した。裾ではなく、肩の付近でビ
リッと音がしたような気がするが、まあいい、後でミルファに繕わせよう。メイドロボを名乗るなら、そのくら
いは出来るはずだ。
教室には、河野貴明の姿があった。ずっと鏡で見ていたから、すぐに俺だとわかったが、釈然としない。あい
つはいったい何者だ? あいつが河野貴明なら、俺――由真の中に入っている河野貴明はいったい誰なんだ?
教室にいる河野貴明は、雄二ではなく、小牧を相手に何やら喋っている。付き合いだしてから随分経つかのよ
うに、普通に彼氏彼女に見えてしまっている。なんか、羨ましいというか、嫉妬に似た感覚に囚われてしまう。
ああ、小牧が笑っている。そういえば、小牧は由真と仲が良かったよな。ということは……あいつの中身は、由
真なのか? あり得る話だ。それなら、あいつが小牧相手に喋っていても何の不思議もない。
あいつが由真だとしたら……。今、由真の姿をした俺と鉢合わせになれば、えらいことになるな。俺を見つけ
るや否や、凶悪殺人犯でも追いつめるように、地の果てまでもMTBで追いかけてくるだろう。ミルファが俺を
止めたのは賢明だった。ここは素直に退散しよう。しかしクラスは隣だから、いつまでも逃げまわるのは不可能
だ。俺はどうすればいいんだ……。
何気なく、黒髪の女の子と目が合ってしまった。草壁さんだ。草壁さんは道端の吐瀉物でも見るような目で一
瞬だけ俺を見ると、すぐに目を逸らしてしまい、くずかごノートに何やら書きこみを始めた。まだ、怒ってるよ
な。草壁さんは何を書いているのだろう。俺を呪う言葉を書き綴っているのだろうか。今となっては、どのよう
に思われても仕方がない。朝のアレはどう考えてもやりすぎだった。謝りたいけど、一生許してもらえないかも
しれない。しかし、草壁さんとあんな形で別れてしまうなんて、自業自得とはいえ哀しすぎる。俺はブルーな気
分で教室を後にした。
・
・
・
三時間目の数学の授業は、コンピュータ室で行われた。ここは、掃除をしに来たことしかない教室だ。最新型
のパソコンが何十台も置いてあるが、このご時世になっても、どのように授業に活用すればいいかわからない教
師が多いのか、高価なパソコンはただのテレビや電気紙芝居同然の扱いを受けている。この間掃除当番で入った
ときには、おだんご頭の女の子が教室を私物化していて、所々に縫いぐるみが置き散らかしてある始末だった。
それでも誰にも文句を言われないのは、IT立国を目指す政府の方針で仕方なく作った部屋だからなんだろう。
授業はパソコンがあってもなくても構わない内容で、事実パソコンは起動してあるだけだった。ホワイトボー
ドには『カルガモナッチ定数を用いて複素数Zのメンバーシップ関数を論理和として表せ』と書いてあり、優等
生がグラフのようなものを、赤いペンでせっせと書いている。俺はそれを眺めているだけで、退屈極まりない。
ところで、『カルガモナッチ定数』って何?
ヒマなので周りを見回すと、隣のミルファと目が合ってしまった。ミルファは、俺の横顔をジーッと見つめて
いた。
「どうした、忘れ物でもしたのか?」
「……別に」
話しかけても、ミルファはつれない返事をするばかりだった。
突然、俺の席のパソコン画面が真っ暗になり、スクリーンセーバーが起動した。縫いぐるみみたいなクマが画
面中を歩き回り、ふと立ち止まると俺の方を見てバンザイする。そして、また歩き出す。そんな内容だった。マ
ウスを動かしてもキーボードを叩いてもスクリーンセーバーが止まらない。他のヤツのパソコンを覗き込んでみ
たが、スクリーンセーバーが起動しているのは俺の席だけ。おい、誰かのイタズラか? それとも、このパソコ
ンはおだんご頭の女の子が私物化していて、ヘンなソフトが山のように仕込んであるんじゃないだろうな?
このクマ、妙に愛嬌があるというか、ちょっと憎たらしいというか、面白いツラをしているな。このスクリー
ンセーバーはどこで売っているんだろう? フリーソフトかもしれない。今度、探してみるとしよう。
「ねえ、思い出した?」
授業の後、ミルファが俺の顔を覗き込み、目を輝かせて言った。何かを期待しているようだが、俺にはまるで
意味がわからなかった。
「何を?」
俺がそう言うと、ミルファはひどくガッカリした様子で肩を落とし、黙ってしまった。
「お、おい、どうしたんだよ。俺、何かまずいこと言ったか?」
「ううん、なんでもない、なんでもないから」
ミルファはかぶりを振るばかりで、何も言ってはくれなかった。
俺は仕方なく教室に戻ろうとすると、後ろの方で舌打ちが聞こえた。「もっと攻め込んでいかないとダメか」
というつぶやきが耳に飛び込んだような気がしたが、それは気のせいだろうか。きっと、サッカーの話だろう、
うん。そうに違いない。
・
・
・
昼休みになった。タマ姉、このみ、雄二、そして俺は、屋上で昼食タイムだ。なぜかミルファもついてきた。
「たかあき、今日のお昼はどうするつもり?」
ミルファは俺に訊いた。
「このみやタマ姉の弁当を、適当につまませてもらうよ」
「バカねえ、それじゃあ足りないでしょ。だから、はい!」
ミルファは、弁当箱の包みを俺に差し出した。
「あら、上手にまとまってるじゃない。さすがはメイドロボね」
タマ姉が俺の弁当を覗き込んで言った。ミルファの持ってきた弁当は、カニコロッケ弁当だった。
「このカニコロッケはね、冷凍じゃないんだからね。ミルファちゃんの手作りなんだよ」
確かに、スーパーで売っている冷凍のものより大きくて立派に見える。パン粉の付け方も揚げ方も丁寧で、旨
そうに見える。しかし、味はどうだろうか? 見かけ倒しでないと良いのだけど。
では、一口。なぜか、このみが「うわあ〜」と声を上げる。お前も食べたいのか?
……おい、旨いぞ。本当にカニが入っているのかどうかわからない冷凍モノのカニコロッケとは、全く違う。
もちろん、カニ味のカマボコでもない。噛めば、まったりしたカニ身と、つなぎ程度に入っているクリームとの
ハーモニーが口の中いっぱいに広がる。目元が緩みっぱなしな俺の表情を見て、ミルファも大満足のようだ。
「カニコロッケだからね、カニコロッケ。冷凍カニクリームみたいな邪道とは、次元が違うんだから」
「恐れ入りました」
俺はミルファに頭を下げた。
「いいなあチキショー。やっぱ、今の時代はカニだぜ、カニ」
雄二が俺の弁当を見ながら、どこか悔しそうに言った。
「ふうん、そんなにカニが好き?」
タマ姉が不敵なオーラを漂わせながら雄二に言った。
「おうよ。ミルファちゃんはなぁ、困ったら肉詰めピーマンの姉貴とは違うのだよ、姉貴とは!」
雄二は、カニに喰われる小魚のように、アイアンクローを食らって沈黙した。夢の中でも愚かなヤツだ。
俺がカニコロ弁当を食っていると、背中の方からゴゴゴゴゴと、不吉な空気が音を立てて流れ込んできた。
振り向くと……俺がいた。
「ようやく見つけた、河野貴明っ! ここで会ったが、百年目だあっ!」
河野貴明(中身はたぶん由真)があらわれた!
河野貴明は、俺に向かって一方的にまくし立て始めた。
「どんだけ卑劣な手を使ったか知らないけれど、あたしの体を乗っ取るとは考えたわね。そのかわり、あたしに
こんな小汚い“クソ物体”を押しつけて! 神をも超えた歪みっぷりね! 非道い冗談!」
俺の姿をした由真は、目にうっすら涙を浮かべながら、俺の体――河野貴明の体――を指さしてそう言った。
「いくらなんでも、“クソ物体”はねえだろ……」
俺はボヤくが、俺の姿をした由真は無視して続けた。
「そこの歪んだバカの友人どもも、よく聞いとけ! 黒い血で歪み汚れた輩は、倒すことが愛なんだから!」
「何を言ってるんだ、コイツは?」
卵焼きを食っている雄二が、ダルそうに言った。
「ああ、もう! 河野貴明の性欲まみれで歪んだ精神に、あたしの清純な、汚れを知らない肉体が弄ばれるなん
て……悪夢以外の何物でもないわ! 揉んだのか? おっぴろげたのか? 寄せて上げて、搾ったかあ? 画像
掲示板に晒したかあっ!? この、“黒のチンポ吸い”め!」
「……“なっち語”は、恥ずかしいからやめようよ」
怒りに震える由真の前では、俺はボヤくしか為す術がない。
「いいわよ、どうせあんたの体なんだから! こうなったら、もっと恥ずかしいことしてやるわ!」
俺の姿をした由真はパチッと指を鳴らすと、一瞬でドハデな天然色のサイケファッションにコスチュームチェ
ンジした。ドコドコと力強いドラムの音が響き、由真はマイク片手に歌い出した。
♪ウィリー 突撃 十字斬
帰り ゲーセン ハンデ戦
刻子 満貫 脱ぎマージャン
1億 3千ウン万 6089点――
汚れちまった肌 汚れちまった心
由真ちゃん 世界に いなくなって
UMAも 愛佳も 黙っちまった
つぶらな瞳に 情熱(パトス)も
魂(ソウル)もなけりゃ 泣くこともできない
返せ! 返せ! 返せ! 返せ!
女神を アイドルを 返せ!
返せ! 返せ! 返せ!
青いハネ髪を 返せ! 返せ! 返せ!
返せ! 返せ! 返せ!
カラダを エスプレッソを 返せ!
かーえーせーっ!!
由真の後ろでは、小牧や草壁さんが制服姿でバックダンサーをしていた。恥ずかしそうにぎこちなく踊る小牧
と、盆踊りでも踊るように自然に動く草壁さんが対照的だった。しかし、何やってるんだ、草壁さんは……。
三人一緒の「「「かーえーせーっ!!」」」というシャウトは、精神的にくるものがあった。盗んだわけじゃね
えよ。気がついたら由真になってたんだよ。お前も、俺の体とチンチンを返せ。“タカくん”を返せ。
ところで、どこかで聞いたことがあるぞ、この歌……。
「お前、こないだの夜中にやった怪獣映画、見てただろう?」
俺は、俺の姿をした由真に訊いた。由真は急にオタオタして、「わー! わー! 聞こえないっ!」と耳を塞
いでわめきだした。恥ずかしがることはないだろ? いいじゃん、女の子がカルトな怪獣映画見ても。
「俺、結構好きだわ、あの映画。松明一本で怪獣に立ち向かって虐殺された兄ちゃんに、激しく漢を感じたよ」
「こここ、これで勝ったと思うなよぉ〜〜〜!」
俺の姿をした由真は、小牧と草壁さんを引き連れて、逃げるように去っていった。
「よくわからんが、勝利おめ」
雄二が言った。恥ずかしそうに尻を振る小牧を凝視していたことは、タマ姉には黙っていてやろう。
「いえーい」
「……ところで、“彼”は何がしたかったのかしら?」
状況に取り残されていたタマ姉が、たくあんを囓りながらポツンと言った。タマ姉が“タカ坊”と言ってくれ
ないのは、少し寂しかった。
「俺、じゃなくて、あたしに気があるんじゃないの」
俺はそう答えておいた。あれは、由真なりの宣戦布告なんだろう。これからは、あたしの体を返せ返せと、
朝から晩まで追い回されることになるんだろうな。しかし、俺にどうしろと? カニコロ弁当でハッピーになっ
た直後、夢の中のいい加減な“現実”に引き戻されてしまった。俺はブルーを通り越して群青色な気分。
「あら、由真もスミに置けないわねえ」
俺とタマ姉と、ついでにこのみとでアハハハハと笑いあい、この場はお開きとなった。
「明日も、ミルファの弁当がいいな」
階段を降りながら、弁当のお礼をミルファに言った。本当においしかったのだ。
「そう? たかあきがそう言うなら、頑張っちゃお」
ミルファはそう言って微笑んだ。
一応チェックはしているが、誤字脱字があったらご勘弁のほどを。
以上
GJ!ミルファ(・∀・)イイ!
ゴジラ対へドラか・・・。
あの主題歌は今、聞いても衝撃的だよな。
GJ!
280 :
250:2005/04/10(日) 21:28:50 ID:635SVKsm0
じゃ、続きいきます。
本当に誤字脱字多いけど文脈でさっして。
では
「わ、わたしは…………」
呆然となった環は空ろな目で貴明を追った。貴明は相変わらず薫子と霞の肩を借りて両腕をだらりと
垂らしている。環はぼんやりとそれを眺めていた。(タカ坊は気を失っている…………気を失っている……失って………もしかして!?)
環は頭のなかで浮かんだ確信に近い事実に思い至ると、居ても立ってもいられずに貴明の前に駆け寄る。
押しのけられる格好となった玲於奈は目を白黒させて環に道を空ける。
環はうな垂れたままの貴明の胸倉を掴み上げると思い切りの力を込めて平手打ちをした。
「タカ坊、起きなさい!」そのあまりの剣幕に3人の少女は思わずあとずさり、薫子と霞は肩を
貸していたことさえも忘れて手を離す。結果、貴明の全体重は環の片手にかかるが彼女はまったく
意に介することはなかった。そして何事もなかったかのように自分の顔の高さまで彼を引き吊り上げると
もう一度平手打ちを見舞う。貴明は気を失ったまま抵抗することなく糸の切れたマリオネットのように
力なく腕をだらりと下げていた。
環は何かに取り憑かれたかのようにそのまま平手打ちを繰り返す。
その鬼気迫る姿に3人は一言も環に話しかけられずにいた。
それから3回打ち据えたところで微かなうめき声を聞く。
「痛い……、痛いよタマ姉」
貴明の弱弱しい声にはっとして手を止める。環は思わず彼を抱きしめると後ろから覆いかぶさりそのまま
地面へとしゃがみこむ。そして自分の胸元で貴明の頭を支えながら震える声で問いただした。
「タカ坊、あなた体育館でなにをしたの?」
その問いかけに貴明は意識が朦朧とするのものの、たどたどしい口調で答えた。
「……俺、タマ姉のことで話があるって手紙見て、それで体育館の裏にいったけどそしたら誰かが
後ろから殴ってきて…それで……それからは……………よくわからない」
「わからない?」
「ああ、わからない」
「お、お姉さま。その男は嘘をついています。浮気の現場を押さえられたからそんな苦し紛れな嘘を
ついているんです」
玲於奈はそう言うと、もう一度封筒から写真を取り出して環と貴明の前に差し出す。
貴明は空ろな目でそれを眺めると一瞬だが体が微かに震わした。
「タカ坊、これ本当にあなたなの?」
「…………。ああ、俺だ」
その言葉に玲於奈は喜色満面の笑みを浮かべ環にすり寄る。
「ほらやっぱりこの男はお姉さまを裏切ったんです」
「お姉さま、もうこの男は信用できません。早く別れたほうが身のためです」
霞も無言で二人の言葉に一生懸命頷く。
だが3人の言葉に環は横に大きく頭をふると優しい声で貴明に問うた。
「タカ坊、この写真に写っている女の人は誰?あなたの知ってる人?」
貴明はぼんやりとした視線で暫くの間写真を見つめていたが、
「いや、知らない。そんな人知らない」と、か細いがはっきりとした声でそれだけを答えた。
その言葉に3人の少女は物凄い形相で貴明を睨みつけ環に訴えかける。
「お、お姉さま。この男は嘘をついています」
「ええそうです。この写真がなによりの証拠です。お姉さま目を覚ましてください」
「目を覚ますのはあなたたちよ」
「お姉さま!?」
これまで聞いたことのないような酷薄で抑揚のない声に3人の動きは止まった。いや、凍りついた。
「タカ坊はね、見ず知らずの女とねんごろの仲になるほどいい加減な男ではないわ」
3人はねんごろという言葉を知ってか顔を赤らめるが貴明にはまるでわからなかった。
ただおそらくそういう意味であることの推測はできた。3人はしばらくの間押し黙っていたが
玲於奈は一歩踏み出すとすがる様な目で環に迫った。
「どうしてお姉さまはその男のことをそこまで信用できるのですか」
環は玲於奈の真剣な眼差しに対して、悪いと思いつつも苦笑がこみ上げてきた。
「あのね、このタカ坊は女の子が嫌いなの。唯一、このわたしと幼馴染のこのみ以外に触れ合うこと
なんて出来はしないんだから」
「俺は別に女嫌いなんかじゃ、いやぁいふぁい、いはぁいいはぁい」
環は胸元でそう主張する貴明の頬を抓り上げ黙らせるとさらに言った。
「ましてタカ坊が知らない女とそういうことをするなんて万にひとつもありえない、そういう訳」
「そ、そんな……」
その言葉に色を失う3人。環は先ほど漂わした暖かな空気をほんの一瞬で凍つかせると周囲の空気を
異質な、まるで刑場のような重苦しい雰囲気に一変させ逆に問いただした。
「犯人はあなたたちでしょう」
環の指摘を受けた3人はぎくりとした表情を浮かべ皆一様に下を向く。それを見た環は疑いを確信へと
変えた。知らず目を細めると、顔を能面のまるで増女(ぞうおんな)のような一切の感情を感じさせない
面持ちに変えて再度問う。
「どうしてあなたたちはこんな酷いことをするの?」
その迫力にたじろいだ3人は何も言えず黙っていたが、一番後ろにいた霞がおずおずと3人の先頭に
立った。2人の少女は自分たちの前に立つ霞の姿に驚きを禁じえないでいるものの一言も喋らなかった。
「霞、なにか言いたい事があるのね。いってごらんなさい」
「その写真のもう一人はわたしです」
「ちょっと霞?!」
「あなた何を言っているのかわかって?」
その言葉にむしろ後ろの二人が慌てる。環はいささかも驚かずに霞を見ていた。
しかし内心はこの引っ込み思案の霞がこんなことをしでかすとは夢にも思わず、驚きの感情を覚えて
いたのだがそれは一切、表情に表すことはなかった。
「お姉さまの彼氏はもう汚れています。だからもう、お姉さまの彼氏にはふさわしくありません。」
霞はとつとつと語った。その言葉を聴いた環は激高するかと思ったが霞がそんなことをした事実と
ここまではっきりと自分の意見を述べたことへの驚きの感情が勝り、なにかのさまざまな感情がないまぜ
となって、その不思議な感情に環自身が支配されていた。
そして環は自分でも驚くほどの客観的な立場でこの事態を眺めている。暫く考えた後に霞の言った言葉、
その中から環の中でひとつの疑問が生じた。
「ではあなたも汚れたと、霞はそういいたの?」
「はい。…………わたしも汚れました。もうお嫁にいけないかも知れません」
そういうと霞はしゃがみ込み、人目を憚らず泣きじゃくった。玲於奈と薫子も泣きながら環に訴えかける。
「わたしたち必死だったんです。お姉さまを九条院に取り戻すため、秩序ある学園を取り戻すため、
わたしたちのお姉さまを取り戻すため。そしてなによりわたしたちのお姉さまをこんな……栄えある
向坂家の威光の前では屑以下でしかない平凡で何の取り柄もない低俗な輩に奪われることなんて、
わたし絶対耐えられなかったんです」
「口を慎みなさい、玲於奈。次にタカ坊を侮辱するようなことを言ったら、わたしあなたたちに
何をするかわからないわ」
環の目の奥は最愛の彼への聞くに堪えない侮辱と屈辱に怒りの炎が燃え盛っていた。
玲於奈と薫子はその炎に炙られ息すらもできず呆然とする。
環が青ざめた玲於奈たちに何かを言いかけたとき、自分の袖をあまりに弱弱しく引っ張る何かに
かえって胸元に横たわる彼の存在を強く知覚し彼女は言葉を詰まらせた。
驚いた表情で胸元にたたずむ彼に「タカ坊?」と問いかけると彼は環の顔見て力のない微笑みを浮かべ
ゆっくりとかぶりを振った。そのおかげで玲於奈への絶縁を言い渡す言葉が環の喉下でかろうじて止まる。
「本当にいいの?」
環の問いかけに貴明は微笑で返した。知らず空いた手は彼の手を渇望して無意識のうちに握り締める。
まるでもう心配はないからと言いたげな感じで、気持ち強く握り締める貴明の優しさに思わず涙が
でそうになった。
霞はその様子を半ば放心した様子で眺めていた。まるで自分たちがしてしまったことは返って二人の絆を
強くしただけのような、そんな事実だけがゆっくりと心の中に浸透するにつれ次第に霞の中で喪失感が
強くなっていった。やがて霞の目に映る優しげな表情を浮かべる二人に対し、自分がしてしまったことへ
の代償が、大きさが否応なしに霞自身の体にのしかかる。
「もう、わたしには何もありません」
霞は力なくそう独白した。環は優しげな表情で貴明を見つめていたがその言葉を聞きとがめると一片の
優しさを感じさせずに「いったい何が?」と問いかけた。
「お姉さまを取り戻すためならば自らの体が穢れることも省みずにこの男に捧げたのに………………
わたし、もうどうしたらいいの」
そう呟くと霞は両手で顔を覆ってさめざめと泣いた。
困惑する表情で眺める環は何故、霞が自分の体を犠牲にしてまでそのようなことをしたのかを考えていた。
そして彼女たちは貴明への憎悪というよりはむしろ私自身への恋慕のあまりそのような行動にでたのかと
理解すると環は自分が必要以上に彼女たちに冷たく接していたようやく思い至る。
すると先ほどの怒りは鳴りを潜めほんの少し優しい気持ちになって霞に語りかけた。
「どうしてそんなことを…………。本当にタカ坊と……したの?」
タカ坊が自分を裏切った訳でもないことがわかっただけでも先ほどよりは幾分落ち着いた環は穏やかな
目で霞を見つめる。泣きじゃくる霞はその視線に気がつくと目が合わないように伏し目がちにして
おずおずと答える。
「彼と裸になって一緒に寝ました」
やはり面と向かってそう言われると腹が立つ。だがしかし九条院で純粋培養された箱入り娘そのものの
霞がそのようなことを知っているとは到底信じられなかった。だからあえて問うた。
「それで寝てどうしたの?」
その言葉に霞が驚いた表情で言った。「え、裸になって一緒に寝たらもう終わりじゃないんですか」と。
いや、霞だけではない玲於奈も薫子も驚きと羞恥の表情を浮かべて互いの顔を見合わせている。
それを聞いた環は頭が痛くなってきた。どうやら幸いと言うべきか彼女たちは性交渉の知識がまるで皆無
らしかった。あの行為を男女が裸になって一緒に寝たらそれで終わりだと本気で思っている。
ここに至り全てを理解した環はなにやら鼻の奥がツンとしてきたのを感じた。
「あはは、あはははははははは。なーんだ、そうだったの。どうせそんなことだと思ってた」
環は一筋の涙を流すと思わずお腹を押さえて笑い出す。その様子を怪訝な表情で見る3人は無言で彼女の
様子をじっと見守った。
環はひとしきり笑うとハンカチで目元を押さえてから居ずまいを正した。緊張する3人を前に環は目を
細めるとまるで獰猛な猛禽類が獲物を狙うが如く狡猾な表情をして言った。
「では、あなたたちに本当のやり方を教えて差し上げます。」
そういうと環は身振り手振りを交え、時に貴明の股間を指差し熱弁を振るう。
最初3人は真っ赤な顔をして聞いていたが、少女たちの顔は見る見ると青ざめていく。
話が佳境に入ると3人はいざ知らず貴明までもが顔を真っ赤にして玲於奈たち、ともすれば
途中から耳を塞いだもののあげくの果てに環に挨拶することも忘れて逃げ帰ってしまった。
「あ、いっちゃった」
環は逃げ帰る3人を見ると呆れたように呟いた。
「なにがいっちゃった、だよタマ姉。あんな話、俺でも恥ずかしくて死にそうだった」
「タカ坊が?」
環は心底驚いた顔でタカ坊の顔を覗き込む。見れば耳まで真っ赤にして露骨に目を合わせないように
している。環はニヤリと笑うと今度はタカ坊がそっぽをむいたほうに顔を動かしてみる。
そうするとタカ坊はまた違うところに顔を背ける。それが3度繰り返したところで今度は我慢の限界に
きた環がタカ坊の頬を力一杯抓った。
「いふぁい、いひゃいはぁいいひゃい」
「もう、手間をかけさせない」
貴明は自由の利かない状態で精一杯の抵抗を試みるがそれは気持ち憤慨した様子の環に
軽くあしらわれただけだった。
「だってタマ姉がそんな恥ずかしいこと言うからだよ」
諦めて環の顔を見つめる貴明は何とかそれだけを遠慮がちに抗議した。
だが環は貴明の言葉にことさら大げさに驚くと悪戯っぽい表情を浮かべてこう言った。
「あら、そんな恥ずかしいことをこの私にしたのはどこの誰かしら?」
「……………」
「いったいどこの誰かしらねぇ」
「もう、タマ姉知らないよそんなこと」
「あら怒った、タカ坊?」
むくれて黙る貴明を尻目に環はひょいと両腕で抱え込んで立ち上がった。
貴明はタマ姉のいきなりな行動に両足をバタつかせながらすっとんきょうな声で慌てて呼びかける。
「ちょ、ちょとタマ姉。何するんだよ」
その言葉に環はニンマリとした表情を浮かべて言った。
「お姫様だっこ。一度ね、タカ坊にしてみたかったの。それにしても思った通りの抱き心地よ、
本当に理想通りね」
貴明はその言葉を聞いて激しく身をよじらせるが、しかしほどなくして頭に例えようもない
痛みに苛まされた。
何故なら環は身動きの取れない貴明にヘッドバットを決めたからだ。頭を押さえながらの貴明の弱弱しい
抗議は即座に却下され冷たくあしらわれる。
「おとなしくしない罰よ。で、彼女たちに叩かれたのはまだ痛い?」
「うん、ビンタ痛かった」
ゴチン!
またも華麗なヘッドバッドが決まった。
「だれもビンタのことは聞いていないでしょう。まぁ、しょうがないわね。わたしの部屋でゆっくり
休むといいわ」
貴明は何故か不安げな表情を浮かべる。それが貴明の身にこれから訪れるであろう出来事を
察したことへの本能的な恐怖の表れと表現するならば、それはあまりに自然だったため尚のこと
環のカンに障った。
「タカ坊、随分とイヤそうね」
「そ、そんなことないよ。タマ姉の思い過ごしだよ」
そうは言うものの貴明の顔は思いっきり引きつっていた。
「まあ、いいわ。本当に何もなかったかしっかりと調べさせてもらうから。」
環はしっかりの部分に強調するイントネーションを用いると射るような視線で貴明を見る。
その視線に貴明は縮み上がった。
「いや、だから俺は気を失っていたから何も覚え………」
「問答無用。本当はタカ坊を煮えたぎったお湯につけて全身くまなく消毒した挙句、そして今度は
皮がむけるくらいにたわしで擦りあげてピカピカにしたい気分なのだから。
むしろ身体検査で許してあげることに感謝してもらいたいくらいよ」
その言葉を聞いた貴明は心底青ざめていた。知らず「怖い、怖いよぅ」と口走り幼児退行しかける
タカ坊を見て環はことさら安心させる微笑みを浮かべる。
「大丈夫、大丈夫。ぜーんぶ、タマおねえさんにまかせればいいから。
タカ坊はじっとしていればいいのよぅ。ホント、なるべく優しくするから」
殊更優しい言葉使いをしたにも関わらず、力一杯うなづくタカ坊に微かに良心が疼いたものの環は
ようやく取り戻した幸せに安堵のため息をもらした。そしておもむろにタカ坊の頬に自分の頬を
擦り付ける。タカ坊はやめろぉと必死で抵抗するも環はそれをあっさりと無視、
両手に一杯に広がる幸せのカタチそのものに喜びをかみ締めていた。
俺は見上げればさきほどのタマ姉の厳しい表情が和らいでいることに気がついた。
それと同時に言い知れない暖かな気持ちが胸へと流れ込んでくる。
それはちっとも不快ではなく好ましい気持ち。
そしていつもどおりのタマ姉の穏やかな顔立ちを見上げて俺は心底ほっとした。
正直、さっきの3人組の少女にしたあんな怖い顔したタマ姉を見たくなかったから。
いつも笑って欲しかったから。
だから俺も笑っていようと思う。
ふと言い忘れたことを思い出して俺はぽつりと呟く。
「タマ姉、心配かけてごめん」
「うんうんいいのよ」
頷くタマ姉の微笑みがとても心地よい。だから俺はここに帰ってくるのか。
そうだ、帰ってきたんだ。
抱き締められながら優しく応えてくれるタマ姉が無性に恋しくなり俺は柔らかな頬に手を差し伸べる。
俺の意図を汲んだタマ姉は目を瞑るとそっと唇を寄せて口づけてくれた。
タマ姉の柔らかで甘やかな感触は俺の唇だけではなく脊髄までも蕩けさせる。
陶然としてまるで頭痛のように頭を軽く痺れさせ、俺は程なくして思考を停止した。
どれほど時間がたっただろうか。
互いに名残惜しむようにゆっくりと離れると俺は感謝の気持ちを込めてタマ姉に伝える。
「ただいま、タマ姉」
「おかえりなさい、タカ坊」
それがすべての元通りになった瞬間だった。
291 :
250:2005/04/10(日) 21:47:19 ID:635SVKsm0
終わりです。長々とごめん。
今日の朝、初めてタマ姉ルートといた勢いで書いたしろもので
ホント勢いだけ。今は反省してる
感動したり転がったり日曜の昼間から何やってんだか…
リアルタイムキタ━━(゚∀゚)━━!!GJ!!
シリアスな痛物かと思ったらほのぼのエンドGJ!
つか九条院の3人娘が萌える、箱入りにもほどがあるぞコンチクショウ(w
「じゃあ、いきましょうか」
「ど、どこに」
俺は思わずどもってしまった。その様子を見咎めたタマ姉はまた不機嫌になる。
いじめっ子はいじめられっ子の怯える心を敏感に察するらしいがまさにその通りだと思う。
だがタマ姉は可愛らしく眉をしかめるもののすぐに機嫌を直してことさら嬉しそうな様子で俺の耳元で
囁いた。
おわり
ごめん、抜けてた。すまねえ
「い・い・と・こ・ろ」
………もう、猫が大好物を見つけたみたいな顔して。俺の方が赤面するじゃないか!
だけど好きだから仕方ないよな、タマ姉のこと。
295 :
250:2005/04/10(日) 22:00:10 ID:635SVKsm0
ぎゃー、すまねえ。まるで台無し。
もう消えます。
>250
タマ姉、しっかり!
書庫更新しました。
先週のページビューは 22,000 ほどでした。
ご利用ありがとうございした〜
タマ姉GJ!! いいね!
________ /::::::/l:l
─- 、::::;;;;;;;;;`゙゙''‐ 、 __,,,,......,,,,_/:::::::::/: !|
. : : : : : : `゙'ヽ、:::゙ヾ´::::::::::::::::::::::`゙゙゙'''‐'、. l| 猫ですから
、、 . : : : : : : : : r'":::::::::::::::::::::::::,r':ぃ::::ヽ::::::::ヽ! ,、- 、
.ヽ:゙ヽ; : : : : : :ノ:::::::::::::::::::::;;、-、、゙::: rー-:'、 / }¬、
. \::゙、: : : :./::::::::::::::;、-''":::::::::: ,...,:::,::., :::':、 _,,/,, ,、.,/ }
ヽ:ヽ、 /::::::::::::::::::::::::: _ `゙''‐''" __,,',,,,___ /~ ヾ::::ツ,、-/
`ヽ、:::::::::;;;、、--‐‐'''''',,iニ- _| 、-l、,},,  ̄""'''¬-, ' ''‐-、 .,ノ'゙,i';;;;ツ
_,,,、-‐l'''"´:::::::' ,、-'" ,.X,_,,、-v'"''゙''yr-ヽ / ゙゙'ヽ、, ,.' j゙,,, ´ 7
,、-''" .l:::::::::::;、-''" ,.-' ゙、""ヾ'r-;;:l 冫、 ヽ、 / __,,.ノ:::::ヽ. /
l;、-'゙: ,/ ゞ=‐'"~゙゙') ./. \ / '''"/::::;:::;r-''‐ヽ
,、‐゙ ヽ:::::..,.r'゙ ,,. ,r/ ./ ヽ. ,' '、ノ''" ノ
,、‐'゙ ン;"::::::. "´ '゙ ´ / ゙、 ,' /
' //::::::::: {. V /
「センパイ、お待たせッス!」
「うん」
「センパイのはこれッス。チョコクッキーとクランベリーのダブル」
「よくわかったなよっち。俺が食べたいのがチョコクッキーとクランベリーだって」
「当然ッスよ〜。だってあたしはセンパイのカノジョなんスから」
「……」
「……」
「あたしのはこれッス。イエローピーチとシトラスシャーベットのダブル」
「お、そっちも美味そうだな」
「でっしょ〜。はいセンパイ、あ〜ん」
「あーん。――うん、美味しい」
「あたしもセンパイの、食べていいッスか?」
「ああ、いいよ」
「あーん。――うん、おいしいッス!」
「……」
「……」
「あ、センパイほっぺにアイスついてるッスよ」
「ん?」
「ほらほらここ。あたしが拭いてあげるッスね」
ふきふき。
「ん、よっち、サンキュ」
「いえいえ、どういたしましてッス」
「……」
「……」
「ねぇセンパイ、今度の日曜日、デートしましょうよデート」
「んーそうだな。よっちはどこに行きたい?」
「ん〜、そうッスねぇ……、遊園地、水族館、動物園、あ、そういえば見たい映画もあるし……
う〜ん、どうしよう、決められないッスよ〜」
「ははは、よっちは欲張りさんだなあ」
「ねぇセンパイ、センパイが決めて下さいッス。あたしはセンパイと一緒ならどこでもいいッス☆」
「……ば」
「ば?」
「バ〜カップルが〜い〜る〜ぞ♪
こ〜こ〜に〜い〜る〜ぞ♪
そ、そ、そ、そ♪
そそそそそそそそ蘇我入鹿♪」
「どうした、よっち?」
「くわ〜〜〜っ!! 幸せすぎ〜〜〜っ!!」
「よ、よっちが壊れた……」
「もう最っっっ高ッス!! ずっとね、ずぅぅぅっとね、夢だったんスよ! 大好きなセンパイと
こうやって、学校帰りに一緒にアイス食べながらイチャイチャするのって!! なんかこう、ラブ
ラブパワー最大出力って感じっしょ!!」
「よ、よっち、少し落ち着いてくれ……」
「世間はあたしたちのことを見てこう思うでしょう、バカップルがいると。
バカップル結構! バカップル上等!
敢えて宣言しましょう、あたしたちはバカップルですと!
だってそれだけ、あたしたちが幸せそうに見えるってことッスから!!」
「そ、そうかい……」
「……」
「……」
「はぁ……」
「今度はため息か。どうした、よっち?」
「いえ、ね、思い出していたんスよ、あたしたちがこうして恋人同士になるまでのことを。
このみがセンパイのことを好きなのは知っていたし、タマ姉さんなんて強敵も現れるし、正直、
あたしなんかがセンパイと結ばれるなんて絶対ムリだって、そう考えていたこともありました。
でも、センパイはあたしを選んでくれました。あたしを好きだって言ってくれたあのとき、あたし、
とても嬉しかったッス。思わず泣いちゃったッス。
二人には――特にこのみには、正直、すまないって気持ちもありました。このみの気持ち、あたし、
ずっと前から知ってたのに……けど、このみは笑顔で祝福してくれたッスよね。あたしたちのこと、
応援するなんて言って。……きっと、辛い気持ちを押し殺して。
だからねセンパイ、あたしは絶対、センパイと幸せになるんだって決めたんス。そうでなきゃ、
このみにもタマ姉さんにも申し訳が立たないって思うから。
ね、センパイ、二人で幸せになりましょうね」
「よっち……。
ああ、そうだな。俺がよっちを、幸せにしないとな」
「違いますよセンパイ。センパイがあたしを、じゃなくて、二人で幸せに、ッスよ」
「そうか、そうだな。二人で幸せに、な」
「ハイ!」
「……」
「……」
「それにしても、今日はいい天気ッスねセンパイ」
「ああ、そうだな。雲一つない日本晴れってヤツだ」
「天気はいいし、暖かいし、こういう日はアイスがよりおいしく感じられますねセンパイ」
「うん、そうかもな」
「でも夏になれば、もっとアイスがおいしいでしょうね。
あ、夏になったら、一緒に海に行きましょうよセンパイ。あー、そういえば、新しい水着買わなく
ちゃ。水着買うとき、つきあってくれますかセンパイ?」
「え? あ、うん、いいけど……」
「ちなみにセンパイはどんな水着が好きッスか? やっぱビキニ? それともワンピース? タン
キニなんてどうッスか? まさかスク水とは言いませんよねセンパイ?」
「い、いや、俺、女の子の水着のこととか、よく分からないし……。っていうかタンキニって何?」
「じゃあ、買いに行ったときに試着しますから、それで選んでくださいよ。
セ、センパイが気に入ってくれるなら、あたし、ちょっとカゲキなのでも着ちゃうッスよ……」
「あ、ああ……」
「あ、赤くなってる。センパイったら、や〜らしいんだぁ〜☆」
「な、ち、違うぞ!」
「きっとセンパイってば頭の中で、ちっこい布っきれとヒモだけで作られたような超カゲキな水着を
あたしに着せて、あんなポーズやこんなポーズ、さらには口では言えないようなポーズまでさせて、
しまいにはそのヒモがほどけてポロリ☆なぁ〜んて想像してたっしょ! センパイのえっちぃ〜!」
「ち、違うぞホントに! か、からかうなよ!」
「あはははっ、ちょっとふざけすぎたッスね。ごめんなさいッス、センパイ」
「ま、まったく……」
「……」
「……」
「センパイ、この後のご予定は?」
「いや、何もないよ。家に帰って飯食って寝るだけ」
「じゃあ、ちょっとつきあって欲しいところがあるんスけど、いいッスか?」
「いいけど、どこ?」
「ゲーセンっス」
「ゲーセン? やりたいゲームでもあるのか?」
「いえ、クレーンゲームなんスけど、欲しい品物がありまして……」
「欲しい品物? ぬいぐるみとか?」
「ええ、まあ」
「どんなぬいぐるみ?」
「チワワのぬいぐるみなんスけどね、これがまたすっごくカワイイんスよ! 実物大で、毛並みも
よくって、何より目! ホンモノみたいにウルウルしてて、か〜〜〜っ、たまらんッスよ!!」
「へ、へぇ……」
「その目がね、あたしに訴えるんスよ!
『お姉ちゃん、ボクをここから出して』
『ボク、お姉ちゃんと一緒に暮らしたいよ』って!
で、囚われのチャッピーちゃん――あ、これ、あたしが勝手に付けた名前なんスけど、チャッピー
ちゃんを救出すべく、あたしはそのクレーンゲームに挑んだんッス。でも……」
「ダメだったんだ」
「は、はい……」
「で、俺にリベンジして欲しいと」
「へえ、その通りでごぜーます御奉行様」
「御奉行様ってなんだよ。……ん、まあ、いいよ。俺もやってみるさ」
「ホントっスか!? やった〜!!」
「ただし、取れるって保証はできないぞ。まあ、精一杯頑張ってみるけどな」
「それでいいッス! センパイ、だ〜いすきッス!!」
「こ、こら、人前で抱きつくなって……」
「……」
「……」
「んー、それにしても……」
「どうした?」
「さっきからなんか……、人の視線みたいなものを感じるんスよねー」
「ん、そうか?」
「ええ、あたしがアイス買ってきたあたりから、なんかこう、誰かに見張られているような……」
ピキーン!!
「そこぉっ!!」
「な、なんだよその、宇宙世紀の人みたいな効果音とセリフは!? って、え!?」
「……どうも」
「……ど、どーも」
「ちゃると郁乃、やっぱりあんたたちかい!」
「さ、さっきから見てたのか、俺たちのこと?」
「……ええ、まあ」
「あ、あたしは別にどうでもよかったんだけど、ちゃるが……」
「……責任転嫁、ずるい」
「まあまあ、別に責めてるワケじゃないってば。ってか、いたんなら声かけてよ」
「……だ、だって、あんたたち二人っきりのところを、さ……」
「ジャマしたくなかったって? 気をつかってくれたんだ郁乃ってば。あははっ」
「わ、笑うな! べ、別に……」
「はいはい、照れない照れない。でも、そんな気づかいは無用だよ。あたしはカレシができたから
って、女友達とのつきあいをお粗末にするような女じゃないよ。ま、まあそりゃ、二人っきりでいた
い時もあるかもだけどね……。とにかく、あんたたちもこっちで、一緒にアイス食べようよ」
「……いいのか?」
「もっちろん! ね、センパイ」
「俺は構わないよ」
「だってさ、ホラホラ二人ともこっちこっち」
「ま、また勝手に車椅子を……」
「はい、じゃ、ここで待っててね。今アイス買ってくるから。今日はなんと、あたしのおごりだよ!
ちゃるはモカコーヒーとビターチョコのダブル、郁乃はヘーゼルナッツとブルーベリーのダブル
でいいよね!?」
「……うん、いい」
「いいよ、それで」
「じゃ、いってきま〜〜〜す!!」
「はぁ……まったくもう、走り出したら止まらない暴走機関車なんだから」
「……そこが良くも悪くも、よっちらしさ」
「で、俺たちはそんなよっちに、これからも振り回され続けるってワケだな」
「……先輩、よく分かってる」
「ま、仕方がないか。あんなんでも一応、友達だからね」
「……郁乃も、よく分かってる」
おしまい。
どうもです。
ようやくというか、遂にというか、よっち編です。
はぁ、なんかやることやりつくしたって感じです。
とりあえずアイス屋シリーズはここまでかな、と思ってます。
GJ!
普段いかによっちが周りを引っ張ってるかが良くわかる話ですた。
つか素でよっちシナリオのエンディングに見えた。
キタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!!!!
(゚∀゚)よっちーー!!!!
(゚∀゚)よっち!よっち!
SS Link が404エラーになるのは、漏れだけだろうか
>>309 俺もなってたけど、もう復活してるっぽいな
>306
キタ━━(゚∀゚)━━!!よっちキタ━━(゚∀゚)━━!!
激しくGJ!!そして乙でした。
>>306 激しく乙。そして…
(゚∀゚)よっち!よっち!
アイス屋GJ。
コンプリートおめ乙。
新シリーズも楽しみにしてますよ?
アイス屋の春乃verが猛烈に見てみたくなったorz
俺は春夏さんマジverと郁乃マジverが見たい
>>250 遅まきながらタマ姉GJ!!
できたら続きプリーズ
2人のいない日の続きを地味に待ってるんですが。
>>318 大変申し訳ありません、そしてありがとうございます。
週末まで、週末までにはなんとか。
いま気が付いたけど、TH2での暦は
2004年のカレンダー準拠なんだな。
オフィシャルガイドブックのカレンダーでは
2月が29日まであり、3月1日が月曜日だ。
3月1日が月曜日のうるう年って、たぶん前後百年でも
2004年ぐらいのもんだろう(調べてないけど)
別にTH2を2004年の現実世界と一緒くたにする必要はないけど
SSとか書く時に、曜日と日付の関係を調べる役には立つんじゃない
かなと思いカキコ。
――もしすでに既知ならスルーしてください……
ぶっちゃけどうでもいい
2月30日のSSを書いて下さい
みつみget
あ゛あ゛あ゛〜〜〜いくのん分が足りない…
禁断症状、禁断症状が〜〜〜〜!!
「……このみの奴、遅いな」
放課後、下駄箱前で俺はつぶやいた。
このみのクラスメイトたちがどんどん帰っていくなかで、このみの姿だけが見えない。もしかして
清掃当番にでもなったのだろうか。
念のためこのみの靴があることを確認して、俺は様子を見に行くことにした。
終業から時間が経ったせいか、職員室や視聴覚室に続く廊下は活気はあるものの先ほどまでの混雑
は見られない。その代わり、面倒くさそうな顔でモップを動かす不運な清掃当番の生徒の姿がちらほ
らと見える。
一年の教室は三階だからこのへんにはいないだろうけど……と思いつつ歩いていると、渡り廊下手
前のドアからこのみが出てくるのを見つけた。
室内に向かって一礼し、なにやらむぅーっと顔をしかめているこのみ――って、あの部屋は保健室
じゃないか!
「おーいっ、このみ!」
「わっ、タ、タカくん!?」
声を掛けると、このみは慌てて手をじたばたと動かした。
なにをそんなにうろたえているのか分からないけど、心配になった俺は小走りで駆け寄った。
「どうしたんだよ、保健室なんかに。具合悪いのか?」
「う、ううん。平気だよ?」
「平気な奴が保健室に行くはずないだろ?」
「あ、うん。えとー……えとね」
このみは一瞬うつむいて言葉を濁し、次に顔を上げた時にはちょっと染めた頬に照れ笑いのような
笑みを浮かべていた。
「今日ね、保健の授業があったんだけど、抜き打ちテストがあってねー……」
言いにくそうに歯切れ悪く話すこのみの言葉に、俺は一気に肩の力が抜けた。
うちの学園は女子の体育も実技は男の体育教師が受け持つことがあるが、保健体育のような座学の
場合は養護教諭がかり出されることがある。期末テスト後に抜き打ちテストなんて珍しいけど、油断
してたところにいきなりテストでは結果の方も惨憺たるものだったのではなかろうか。
「つまり、呼び出されてたのか」
「う……うん。まぁ、そういう感じ、かな?」
あらぬ方に視線を彷徨わせながら、気まずげに応えるこのみ。鞄をお腹の前に抱いて妙に神妙にし
ている様子から、点数がいかに無惨なものだったのかうかがえようというものだ。
まあ、かくいう俺も保健はなにげに苦手分野だ。
去年俺が苦しめられた問題は、人体図に矢印が引いてあって筋肉や腱や骨の部位名称を答えよとい
うものだったけど、回答は語群選択式ではなくて完全筆記型なんだよな。
『大臀筋』とか『大腿骨』とか、漢字覚えてないっての。
「まあ、それなら安心したよ。怪我でもしたのかって心配したんだぞ」
「う、うん。ごめんねタカくん」
「気にするなって」
先生に怒られてきたんだろうこのみを、少し遅れたくらいで責める気にはなれなかった。気にして
ない風に優しくそう言うと、このみはようやくにこっといつもの笑顔を見せた。
「えへ〜。……じゃあ帰ろう。タカくん」
渡り廊下でかわした約束通り、俺たちは商店街にあるアイス屋へ向かった。
朝は春夏さんのおにぎり一個、昼は食いそびれ、アロエドリンクとレモンキャンディを貴重なカロ
リーとして動いてきた体はすでにガス欠寸前で、正直歩くのもきつい有様だった。
アイス屋に行こう、と言い出したのはこのみだったけど、今はたぶんこのみ以上に俺がアイスを必
要としている。
「アーイッスアイスー、タカくんとアーイスー♪」
上機嫌で横を歩くこのみを、俺はわずかに首を動かして見つめた。今、この状態で確かめてみたい
ことがあった。
小さな頃から変わらない横結びの髪。
歩くリズムでそれが揺れるたびに見え隠れする、形のいい耳。
化粧もなにもしてないのにつやつやの白い頬と、幸せそうに歌を歌う小粒のいちごみたいな唇。
――かわいいと思った。
しかし、昼休みや休み時間の時のように、どきっとして言葉に詰まってしまうような感覚はなかっ
た。今は空腹のために欲求の優先順位が変化している状態だと分かってはいるが、それはどこかほっ
とした気持ちになる結果だった。
最後の授業時間、このみからもらったキャンディを口の中で転がしながら考えていたことがある。
朝、雄二が俺に言ったこと。
昼休み、抱きついてきたこのみの肉体に感じた感覚。
そしてさっきの休み時間に見た、このみの大きく潤んだ瞳と白い胸元。
……今日という日を特色づけているそれらの出来事は、すべて偶然なんかではない。起こるべくし
て起きた事であり、むしろ遅すぎるくらいだと分かっている。
自分の彼女を「抱きたい」と思うか、という質問に即答できない彼氏はきっと俺ぐらいのものだろ
う。歳を取れば別なのかもしれないけれど、少なくとも俺ぐらいの男なら「彼女が欲しい」という言
葉は「Hなことしたい」という意味とほぼイコールで結ばれる。雄二は特に典型的な例だと思う。
でも、そんな一般論としての彼氏と彼女の関係を、俺とこのみの関係に当てはめて考えることに俺
は違和感を覚えた。
雄二は言った。彼女が泊まりに来て、ベッドに潜りこんできさえするのにこれまでなにもなかった
ほうが異常だ、と。
確かにその通りだ。俺も他人事ならそう思ったかもしれない。
でも、この「俺」のベッドに、あの「このみ」が潜り込んできたからって、何もしないのが異常だ
とは俺には思えなかった。なぜなら、そのほうが自然だからだ。
――しかし。
退屈な授業を聞き流しながら、俺は口の中でキャンディを気づかれないように動かしながら思った。
それでいいのか、と。
本当に、俺は今のままでいいと思っているのだろうか。
それは、口の中にキャンディを放り込んでおきながら、形を変えずに甘さだけ味わおうと考えるの
に似た、非現実的な考えなのではないだろうか……。
結局、考えがまとまることはなかった。
それにこの問題は今急いで結論を出すべきことではないとも思った。雄二の言葉は確かに的を突い
てはいるが、ひとつの重要な点を忘れている。
このみの気持ちだ。
俺ばかりその気になっても、このみにまだその気がないのなら意味がない。
このみをもっとよく見て、自分の気持ちを確かめよう。
このみともっとよく話して、このみの気持ちを確かめよう。
それが、HRが終わるまでに出した俺のとりあえず付きの結論であり、今横を歩くこのみを見つめた
理由でもあった。
そんな俺の内心も知らず、このみは相変わらず上機嫌で歌いながら歩いている。
「♪バッニラとオレンジ、ココナッツー 醤油をかけたらウニの味〜♪」
「ぷっ」
あまりにアホな歌に思わず吹き出した。
あーもう、一人で悩んでいたこっちが馬鹿みたいじゃないか。俺は苦笑気味にため息をついた。
「? どうしたのタカくん」
俺の視線に気が付いたのか、このみがこちらに振り返った。
正面から目をあわせても、どきっと来ない。
うん、大丈夫だ。俺はより確信を深めた。
そうだ、俺にもこのみにも、まだそういう関係は早すぎる。いつかはそういう時が来るだろうけど急
ぐことはない。ゆっくり歩いていこうって、つきあい始めたときに決めた通りじゃないか……
「いや、もう腹が減りすぎてさ。アイスの幻が見えてきた」
半分本気でそう言った。ほっとした途端に目眩がするほどの空腹を思い出した。
「アイスのまぼろし……どんなのが見えるの?」
「まずな、世界のいろんなものがアイスに見えてくる。あの雲はきっとミントバニラだろうなーとか。
あの茶色いマンションはモカとチョコのダブルだとか」
「じゃあ、あの家は?」
「うーん、抹茶?」
和風建築をアイスに例えろと言われても困る。
適当に答えた俺のチョイスが面白いのか、このみは次々とじゃあこれは? じゃああれは? と指さ
して俺のいい加減な答えに楽しげに笑った。
他愛もないやりとり。でも、今の俺たちにはこんな関係が似合っている。さっきまでの俺はどうかし
てたんだ、と思った。雄二の言葉に当てられて自分を見失っていたんじゃないだろうか。
腹はぺこぺこで足は重たいが、肩の荷がおりたような気分になった――その時だった。
「……じゃあ、このみは?」
「え?」
思わず聞き返してしまった。
「だからー、わたしは何アイスに見えるの?」
じっと俺の顔をうかがうようにして聞いてくる。
やばい、と直感的に感じた。
反射的に目を逸らして適当な言葉を探す。早くこの話題を流さないと、きっとまた……
「えーと、ストロベリーかな。赤いし、かわいいし」
「えっ……」
このみの驚いた声が聞こえた。
思わず目を向けると、このみは立ち止まってわずかにうつむいている。短い髪では隠しきれない頬が
赤く染まっている。まるでいちごみたいに。
「このみ?」
呼びかけると、このみはゆっくりと顔をあげて俺の目を見つめてきた。
恥じらうような眼差しに、とろけるような笑み。
えへ〜、という甘え声はむかしからの口癖だけど、今のこのみが言うと何というか……やけにのどに
絡んで……。
「もう一度言って、タカくん」
「も、もう一度って……ストロベリー?」
「違うの! その後!」
「赤くて、かわいい――わあっ!」
突然、このみが背中に抱きついてきた。
これまでみたいに飛びついてくるんじゃなくて、しがみついて顔を埋めるみたいに、やさしく、そし
てやわらかく。
「こ、こら。人のいるとこで抱きつくのはやめ」
「――いいよ」
体をねじって振り返ったすぐそこに、このみの潤んだ瞳があった。上気した頬があった。摘み立ての
いちごみたいな瑞々しい唇があった。その唇が動いて、甘い香りといっしょに恥ずかしそうな囁きを紡
ぎ出した。
「タカくんなら、食べられてもいいよ」
きっと、精一杯の勇気を振り絞って言ったのだろう。このみはすぐにまた赤い顔を隠すようにうつむ
いて、俺の肩にこつんとおでこをぶつけて
「……このみアイスは、タカくん限定スペシャルだからね」
そう、消え入りそうな声で言った。
致命傷だった。
ドキッとするとか、言葉に詰まるとか、そういうレベルじゃなかった。さっきまでの余裕なんて、跡形
もなく吹き飛んでしまった。
そして――自覚せざるを得なかった。
俺がさっきまで組み上げていた論理は、一見冷静に見えて実は問題先送り型の優柔不断なものでしかな
かったのだと。
「……スペシャルって言えば、今週から夏の新メニューが出てるらしいな」
「え? あ、うん。クラスの子たちも噂してたよ」
苦し紛れの俺の言葉に、このみは一瞬きょとんとして、それから名残惜しそうに俺の背中から離れなが
らそう返してきた。
「沖縄のアイス屋さんと提携して、オリジナルメニューが入ってるんだって」
「沖縄かあ、おじさんと春夏さん無事に着いたかな」
「無事じゃなかったら大変だよ」
「そ、そうだな。あはは」
「そういえば、昨日お父さんにタカくんの分のお土産も――」
アイス屋に着くまで、そんな一方的にぎこちない会話が続き――。
着いた頃には、身も心も文字通り干涸らびかけていたのだった。
※その5に続く
ファイナルを迎えられたアイス屋さんに捧げます。
わたしも大好きなシリーズでした。わたしはアイスの知識がまるでないので
今回はできることなら是非ご助言いただきたかった……。
神と仰ぐ我楽多さまも、新作はサイト発表とのことで
なんだかすこし寂しいですが……わたしはわたしでぼちぼちここで
発表させて頂きますね。
ではその5でまたお会いしましょう。
次回は、大人気のあの人たちが登場します。たぶん。
TenderHeartキター!
このみかわいいよこのみ
激しくGJ!です。
文体が軽すぎず重々しすぎずで、読みやすいですねー。
ゲーム本編の雰囲気に近くていい感じです。
最近はこれを楽しみにここに通ってると言っても過言ではありません…
てんだーはーとキタ―――(゚∀゚)―――― !!
全身の毛穴でGJです!(何
ヴァンダミングアクション?
カートラッセル?
338 :
名無しさんだよもん:2005/04/14(木) 23:21:28 ID:Zc/I5IYI0
このみいいっす。GJ!
このみのよさがでてるな・・・
このみたんハァハァ(*´∀`)
貴明ヘタレ〜だねwww
TenderHeartキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!
激しくこのみハァハァであります。
んでもってTenderHeartさんの後で貼るのは非常にお粗末なのですが、
このみSS初投下させていただきます。
修学旅行の朝。
このみのタカ君パワー充填につきあっていたら時計が止まっていて遅刻しそうになった。
家の外に出ると、春夏さんが車を玄関に横付けしていた。
このみが帰ってこないのでおおかた予想がついていたとのことだ。
感謝であります。
「えへ〜。ゆっくりしすぎたでありますよ。隊長」
学校に向け出発した車の後部座席で俺にもたれかかりながら、悪びれもせずにそんなことを言うこのみ。
まぁ、可愛いから許す。
そんな風に思えてしまうくらい最近のこのみは可愛い。
一度はそんなこのみの変化が怖くて逃げてしまった俺だが、今はこの笑顔を無くしたくない。大事にしたい。
「このみ〜。しっかりパワー補充しておきなさいよ〜。一週間くらい会えないんだからね」
でも、娘を煽るのはどうかと思います。春香さん。
「了解であります。えへ〜」
母親の了解(後押し?)を得て、さらにすりよってくるこのみ。
あ、いい匂いだな、腕にほのかな膨らみがちょっとは成長してきてるのかな?って、違〜う!
「は、春香さん…」
「あら、タカくん。お義母さんで良いって言ったじゃない。お・か・あ・さ・ん。ほら言ってごらんなさい」
あの日、逃げたこのみを追いかけて行った俺と、その後仲良く手をつないで帰ってきたふたりの姿を見られて、
俺たち関係が変わったことはすっかりばれていた。
でも春夏さんその時に高校生の節度を持ったつきあいをしなさいって言ってたじゃないですか〜と心の中でつっこみを入れる。
「いや、その。もうすぐ学校ですし、あの日も節度を持ったつきあいをということを言われましたので、そのですね。
この状態を先生方に見られるのはまずいかなと思うわけであります」
お義母さんについてはスルーするのは言うまでもない。
「む〜、このみは平気だよ。タカ君」
「いや、だからな…」
「あら、タカ君つれないわねぇ」
「いや、そうでは無く」
「別に学校に知られても困るわけじゃないでしょ?それともうちの娘とつきあっていることが恥ずかしいとでも?」
にっこり笑って周囲の温度を下げるのは、鬼の長女だけで十分だと思います。春香さん。
「む〜、タカ君。このみといっしょにいるのが楽しくないの?」
あぁ、機嫌を損ねてむくれた顔も可愛いな、こんにゃろう。
こんな風に考えてしまうなんて、すっかりこのみにまいっているな俺。
苦笑しつつ「そんなことないぞ」と言ってやる
「そうだよね〜、すっかり反応してるもんね〜」
どこを触ってますか、このこはっ!
このみの手が俺の反応しはじめている股間をなでる。
「さっきタカ君エネルギー充填してるときも、ちょっとお尻に堅い物が当たってたでありますよ〜」
俺とつきあっていることがばれてから春夏さんからナニを聴いたのか、最近のこのみはしょっちゅうこんないたずらをしてくる。
ああっ、なにも知らなそうだった無垢なこのみはどこへ行ってしまったんだろうか。
えへ〜っと笑顔を向けるこのみだが、その頬は赤く染まっていた。
そんなこのみが妙にいろっぽくてなおさら俺の股間のものは反応してしまう。
「えへ〜。さっきもお尻にあたってきててドキドキだったでありますよ」
「あらあら、若いわねぇ」
春香さん、感想が間違ってます。
そこは叱ってくれた方が気が楽です。
ここは地獄か…。
感触は天国であります。
「このみ〜、そろそろ着くから解放してあげなさい。タカ君歩けなくなっちゃうでしょ」
「は〜い。通常モードに移行するであります」
このみは校門が見えてきてようやく離してくれたが、そのまま抱きついてくる。
あまり状況が変わらないのは気のせいだろうか。
「はい、到着。タカ君気をつけてね」
「ありがとうございました。行って来ます!」
俺が車から降りたときにはクラスごとの整列がはじまろうとしていた。
「ぎりぎりセーフかな」
さすが自動車速いもんだ。
来年になったら俺も免許取りたいな等とのんびりクラスの列に歩きはじめた。
「う〜っす。重役出勤だな」
「二度寝した」
「うむ。お前らしいな」
「雄二に言われたくはないな」
「阿呆。あの姉が帰ってきて以来強制的に早起きさせられるのだ。今の俺に二度寝という言葉はない!」
「な、なるほど…」
不憫なやつ。
その後もタマ姉についての愚痴を語り出したので聴いてやった。
幸せな人間は余裕があるのものなのだ。
「ぐぇっ!」
優越感にひたっていた俺の喉が急に締められた。
というかこれは、
「こ、このみ。喉に掴まるのはやめろと何度も…」
「あ、ごめんね、タカ君」
すっと首の締め付けがゆるみ、背中に体重がかかる。
む?最近成長していますか?
背中に当たる感触が柔らかさを増している気が…。
って、違〜う!
「というか、なんで抱きついてるんだ?春夏さんと帰ったんじゃないのか?」
「えへ〜、最後のタカ君パワー補充でありますよ〜。一週間も会えないんだからたっっぷり充填しておかないと〜」
「あ〜、暑い。暑いぞ〜!この辺だけ熱帯地方だ。ちくしょう!」
「あの〜、河野君…。そろそろ並んでいただかないと、報告ができないんですが」
雄二のひやかしだけじゃなく、委員ちょからもつっこみを受けてしまった。
注意をしている委員ちょの顔がにやけている。
最近判ったことだけど、委員ちょってば男が苦手なくせに人の恋路に首を突っ込むのが大好きなのだ。
このみが俺の教室に来る時に呼び出してくれるのが委員ちょなのだが、こっちを見てにやにやしながらこのみと話をしていることが多い。
何を話しているのか尋ねたことがあるのだが「ふふふ〜。なんでもありませんよ〜」と口元に手をあてて後ろ向きに去っていった。
無論そのあと椅子に躓いてこけたのは言うまでもない。
だって委員ちょだから。
「河野くん。なにか失礼なこと考えてませんか?」
何故ばれてますか?
「む。タカ君。浮気はダメだよ」
「ぐぁ。待て待て、違う。誤解だ」
気絶している間にバスが出発して、修学旅行パスなんてことになったらたまらない。
「む〜。一週間も離ればなれなんて不安だよ〜」
「大丈夫。俺にはこのみだけだか…」
「「ほほ〜ぅ」」
雄二と委員ちょがにやにやとこっちを見ている。
というかクラスメイト全員の注目をあびていた。
冷静に考えればこんなところで学年の違う彼女を連れてきてじゃれていれば注目を受けるのは当たり前なわけで。
俺に冷静な判断をさせないとは、流石委員ちょマジック!
って、そんな場合じゃな〜〜い!
急に冷静になってしまい、みるみる頭に血が上る。
「あ、もう並ばなきゃいけないから」
「む〜、しょうがないなぁ。じゃっ」
トン。と軽快に俺の背中から飛び降りるこのみ。
そのまま春夏さんの車に戻ってくれるのかと思った瞬間、くるっと腕をひっぱられ反転させられた。
そして唇に柔らかい感触。
「いってらっしゃい。タカ君」
無邪気な笑顔を向けるこのみ。
呆然とする俺。
「いってらっしゃいのキスだとぅ!!
貴明〜、こんちくしょ〜!男の浪漫を目の前で見せつけやがって〜!」
絶叫する雄二。
歓声を上げるクラスメイト。
さすがに真っ赤になって呆然と俺たちを見ている委員ちょ。
手を振りながら春夏さんの車に向かって走っていくこのみ。
呆然と見送る俺。
楽しい修学旅行になりそうです。このみさん…。
そして恥ずかしいとは思っても怒る気にはなれない俺は、もうすっかりこのみにやられているんだなと自覚した。
このみへの土産を考えながらバスへと乗り込む。
いってきます。
346 :
341:2005/04/15(金) 04:25:38 ID:MjfS6CrK0
このみがあれなのは春夏さんの英才教育の賜物ということでひとつ。
この後も機会があるごとにちょっかいをかけるこのみと
へたれて手を出せないけど体が反応する貴明なのでした。
って感じのエロ妄想を抱いてたりします。
GJ!!
このみんかわいいよこのみん
やべ、いいんちょに萌えてしまった。
このみも委員ちょも可愛かったが、一つ気になった点が。
このみだって学校あるんだから春夏さんと一緒に帰る必要ないのでは?
GJ!
コノミスキーとしてはこの流れはたまらないぜ…
>>349 日曜だとか。修学旅行だからね、日曜出発とかあったりするんじゃない?
>>349 修学旅行だから早朝出勤というのもありえる
353 :
341:2005/04/15(金) 16:30:27 ID:0ZSTzjD30
思ったより楽しんでいただけたようで幸い。
2chにSS書くのはじめてだったのでプチ緊張してますた(´Д`;)
>>349 早朝でこのみが眠っちゃって遅刻しそうだったので、
間に合ったとすれば帰ってもう一度寝るんじゃないかなと。
俺の学校がそうだったからそう思いこんでるのかも…。
再度いろいろネタを練るために、
このみシナリオとゆのはな(ぇ)再プレイしつつ修学旅行帰宅後を書いてきます ノシ
激しくGJ!!
マジで萌えた(*´∀`*)
次回作も期待してますよ!(´∀`)b
355 :
349:2005/04/15(金) 21:21:23 ID:MZHDbc1xO
>>349はエピローグではこのみ制服着てるし、それなら
学校に行く準備も出来てるだろうからわざわざ帰る必要
ないよなー、と思ったからでした。
早朝の可能性もあることは思い至らなかったよ(;´Д`)
急にデートだといって家を出たは良いんだけど、さて、一体どこに行こう。
おしゃれしたイルファさんと一緒に、肩を並べて歩きながら駅前に。
せっかくの機会なんだから、このままデパートで買い物に行くというのも芸が無いよな。電車に乗って、少しくらい遠出するのも良いかもしれない。
うなると水族館か、他には・・・・・・でも、これだけ天気も良いんだし、どうせなら屋外で遊ぶことのできる所のほうが気分転換にはなるよな。じゃあ
「イルファさん。イルファさんは、どこか行きたいところはある?」
「い、いえ。貴明様がお連れくださるところなら、どんな場所でも喜んでご一緒いたします」
なんとなくイルファさんはそう言うだろうな、と言う想像はついた。
今日は普段のお礼も兼ねているんだから、少しくらいわがままを言ってくれたって良いのに。
「えっと、それじゃあさ。遊園地でも、いいかな」
以前、珊瑚ちゃん瑠璃ちゃんと(正確にはもう一人、雄二と)一緒に行った遊園地に。あそこなら遊ぶところも多いし、ストレスの発散には向いているだろう。
イルファさんも喜んでくれているようだし、悪い選択じゃなかったみたいだ。
電車に乗ってから遊園地に到着するまで、イルファさんは興奮を抑えきれないような様子で俺に話しかけてきてくれた。
研究所のこと、妹たちのこと、このあいだ作った料理のこと、それに瑠璃ちゃんのこと。
「申し訳ありません。先ほどから私ばかりしゃべっていてしまって」
「別にいいよ。イルファさんの話を聞くのは楽しかったし。それに、そんなに一生懸命になって喋ってくれるイルファさんも可愛らしかったから」
言ってから気がついたね。
多分俺も、慣れない女の子とのデートで緊張していたんだろう。じゃなかったら、こんなに自然に「可愛い」だなんてセリフを言えるわけがない。
隣に座るイルファさんを見れば。
思ったとおり顔を赤く染めて。
俯いて指先を見つめている。
「い、いや、そんな変な意味じゃなくて、ほんとにそう思っただけだから。気にしないで、ってそうじゃなくて」
もうこうなってしまうと自分でも何を言っているんだか、どんどん訳がわからなくなっていく。
誰か、このもどかしくてむず痒い状況から俺たちを救い出してくれ。
この際瑠璃ちゃんのキックでも、珊瑚ちゃんの──は、更にややこしいことになりそうだからよしておこう。
でも、その2人がここにいてさえくれていたら、こんな状況になんてそもそもならなかったんだろうな。
4人でいる時はイルファさんを女の子として以上に、一人の大切な家族として意識なんてせずに接していられるのに。
「あこ、ここの駅で降りなきゃ。行こう、イルファさん」
タイミングよく遊園地のある駅に到着した電車にお礼を言いたいくらいだ。
で、慌てて降りようとして。思わずイルファさんの手を握りしめてしまって。
もう少しで次の駅まで行ってしまうところだったのはご愛嬌だ。
そんな感じで、目的地に到着するまえから無意味に疲れてしまった。
「貴明さまー、次はあれに乗りましょう」
「あれって、ジェットコースターだけど大丈夫?」
「はい、私たちHMX−17シリーズはジェットコースター程度の負荷ではブレーカーが落ちないよう改良されていますから」
そう言うものなんだろうか。
「あ、でも・・・・・・」
急にもじもじとし始めてしまうイルファさん。
「わざと怖がる振りをして、貴明様に抱きつくのも・・・・・・」
とりあえず聞かなかったことにしておこう。
遊園地に着く前から前途が多難だった俺たちだったけれど、いくつか乗り物に乗っているうちにだんだんと緊張もほぐれていってくれた。
とりあえず定番のコーヒーカップに始まってメリーゴーランドのようなおとなしめな物からジェットコースターのような絶叫系の乗り物。ミラーハウスやお化け屋敷といったアトラクション。
イルファさんは俺の腕をとって、嬉しそうに前を歩いてく。
俺はそんなイルファさんに遅れないよう早歩きで、肩を並べられるように歩いて。本当に誘ってよかった。
「それでは瑠璃様がお持ちのペンギンのぬいぐるみは、こちらの遊園地で取られたんですか」
目ぼしい乗り物にも一通り乗って、今はベンチに座って休憩をしている。
そして他愛の無いおしゃべりをしているうちに、前に珊瑚ちゃんたちと来た時にとった、クレーンゲームのペンギンの話になった。
「うん、大分苦労したんだけどね。でも、2人が喜んでくれたからとったかいもあったよ・・・・・・あ、そうだ。イルファさんにも何か、とってあげようか」
「い、いえそんな、私のためにそんなご苦労をおかけするわけには。それに、メイドロボがぬいぐるみを持っているというのもおかしな話ですし」
ん〜、そうかなぁ。それじゃあ何か別な物を。
ゲームコーナーの隣はおみやげ物売り場になっていて、お菓子なんかの他にもアクセサリーやTシャツなんかが置いてある。
えーと、どれにしようかな。
「イルファさん、ねえ、ちょっと」
イルファさんなら何が似合うかな。
キーホルダーじゃなんだし、絵葉書を渡してもしょうがないしな。
Tシャツは、やばい、これ2枚一組のアベック仕様だ。パスパス。
「貴明様。ですから私のためにそのようなお気を遣っていただかなくても。こうやって貴明様と遊園地にご一緒させていただいただけでも十分ですから」
申し訳無さそうに言うイルファさん。
でも、そんなことくらいで今日の俺のこの気持ちは挫けたりはしないね。
「いや、でも俺がイルファさんにプレゼントしたいだけだから。あ、それとも、迷惑だった?」
「いいいいいいえ、そ、そんな迷惑だなんてとんでもありません。う、嬉しいです」
にっこりと笑いかけると、イルファさんは顔を赤くしてうつむいてしまう。
毎日一緒に暮らしているんだ。これくらいのやり取りならできるようにだってなる。
おっ、これなんかどうだろう。
「イルファさん、これなんかどうかな」
店の壁にかかっていた、大きくてつばの広い白の帽子。青いリボンがかかっているやつ。
壁からとって、イルファさんの頭にかぶせてあげる。
うん、どうだろう。イルファさんにとっても似合ってる、と思うんだけど。
「ほ、本当によろしいのですか?」
「いいっていいって。それよりも、その帽子でいいかな?」
「はい!! あ、あの、似合っていますか?」
俺が笑顔でうなずくと、イルファさんも笑顔を返してくれる。
やっぱりプレゼントしてよかった。俺にしては上出来な選択だったみたいだな。
そのあとも、俺たちは幾つも遊園地の中を遊んで歩いた。
時間もどんどん過ぎていって。最後に2人で、この遊園地の目玉の一つ大観覧車に乗ることにした。
「貴明様、見てください。綺麗ですね」
「うん、すごく綺麗だね」
夕暮れにはまだ少し早いけど、ゆっくりと低くなっていく太陽を背にしてみることのできる俺たちの街。観覧車がだんだんと高くなるにつれて、あたりの景色も少しずつオレンジ色になっていく。
そんな街の様子を、向かいの席に座るイルファさんは夢中になって眺めている。
あれ。俺、今、何に対して綺麗だって言ったんだろう。
「貴明様。今日は本当にありがとうございました。遊園地になんて来るの、生まれて初めてでしたし、帽子までプレゼントしていただいて。とても、楽しかったです」
「そんなに喜んでくれたなら、誘った甲斐があったよ。それに俺も、イルファさんと遊べてすごく楽しかったし」
それきり会話はストップしてしまって、一番高く上がった観覧車もだんだんと高度を落としていく。
別に喋っていないからといって居心地が悪くなるわけじゃないけど。こうお互いに静かだと、嫌でもイルファさんのことを意識してしまう。
それはイルファさんも同じみたいで、他に誰もいない観覧車の個室の中で、照れたまま互いの顔を直視することもできず、ただもじもじとし続けることしかできない。
「あ、あのさ」
「は、はいっ」
もう少しで観覧車が地上に到着してしまう。
でも、今日をそれで終わりにしてしまうのは勿体無いじゃないか。
「また、来よう。今度は珊瑚ちゃんも瑠璃ちゃんも誘って4人で」
「はい、また来ましょうね」
「あと、さ。こっちはイルファさんさえ良かったらなんだけど。また、来ようよ、2人で。今度は遊園地じゃなくて、別のところでもいいけど」
「・・・・・・はい。はい、楽しみに待っていますから。また、連れて来てくださいね」
遊園地を出た俺たちは、また電車に乗って、そして近所のスーパーで夕御飯の食材を買っている。
こんな日くらいどこかレストランにでも行きたいところだけど、肝心のイルファさんが食べられないんだから行ったってしょうがない。
イルファさんはそのことでずいぶんと申し訳なさそうにしていたけど。でも、別に良いじゃないか。俺はイルファさんの作ってくれたご飯が食べたいんだから。
2人で持つスーパーのレジ袋の中には特売品だった大根。今日の晩御飯の献立は味噌田楽だそうだ。
本当なら俺が一人で袋を持つつもりだったのに、イルファさんも自分が持つといって譲らず、結局折衷案として2人で袋を片方ずつ持つことに。
スーパーにいた時は気にならなかったけど、なんだか照れくさいな。
「ただいまーっと」
「お帰りなさいませ、貴明様」
「イルファさんも、お帰り」
一緒に帰ってきたのに一緒にお帰りと言って、何がおかしいのか2人でくすくすと笑い声をあげる。
「すぐに夕御飯のご用意をいたしますので。どうぞごゆっくりしていてください」
「うん、そうさせてもらおうかな」
着替えるために部屋に戻るイルファさん。俺もリビングに入ってソファーに座る。
いろいろと疲れることもあったけど、楽しい一日だったな。
そのあとはいつも通りの、でも珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんのいない夜だった。
このごろ瑠璃ちゃんに煮物を習い始めているらしい、イルファさんの味噌田楽はいつものように絶品だったし、風呂場で、俺の背中を流すといってきかないイルファさんをなんとか宥めるのもいつも通り。
でも──
「静かだな・・・・・・」
「お風呂いただきました・・・・・・貴明様?」
濡れた髪の毛を拭きながら、イルファさんがバスルームから出てくる。
いつもならその後ろから、珊瑚ちゃんと、瑠璃ちゃんが、一緒になって賑やかにでてくるはずだ。
「どうかなさいましたか?」
「いや、ちょっとね。静かだな、って」
昼間、イルファさんと一緒に遊んでいた時には気にならなかったのに、こうやって一人でいるとあらためて、2人のいないことに気が付かされる。
「貴明様も、お2人がいないとやはり寂しいですか?」
「いや、寂しいってほどじゃないけど」
あれ? 『も』ってことは、イルファさんも?
「はい。あ、いえ、あの、けして貴明様と2人っきりだということに不満があるわけではなくて、その・・・・・・やはり、お2人がいらっしゃった方が、家の中が明るくて賑やかですから。少し・・・・・・寂しいです」
いつの間にか4人で一緒にいることが当たり前になっていて、少しのあいだ離れ離れになっただけなのに、お互いにこんなにも相手のことを想うようになってしまっている。
いまごろ珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんも、林間学校で俺たちのことを考えていてくれているのかな。
・・・・・・することもないし、もう寝ようか。
「ちょっと早いけど、今日はもう寝ることにするよ。イルファさんは?」
「私ももう仕事は残っていませんし、休むことにします」
この家の寝室は一か所だけ。珊瑚ちゃんのたっての希望により、4人全員川の字になって、同じベッドでいつも一緒に寝ている。
さすがに4人も横になると、いくらキングサイズのダブルベッドとは言え少し窮屈になるっていうのに、今はあいた2人の分のスペースがいやに広く感じてしまう。
「お休みなさいませ、貴明様」
「お休み、イルファさん」
そう言って布団を被ってもなかなか眠たくならない。
寝返りをうつと、同じベットの反対側ではイルファさんも俺と同じように、眠ることができずに寝返りをうつ。
目が、合う。
「眠れませんね」
「そうだね。時間もまだ早いし、それに・・・・・・・」
二人がここにいないと、落ち着かない。
三人分の息遣いが聞けないと、安心して眠ることができない。
四人一緒に寝ることが、はじめはあんなに恥ずかしくて緊張したのに、こんなに大事なことになっていたなんて。
「お2人とも、早く帰ってきて欲しいですね」
「うん。朝イルファさんが言っていたことが良くわかったよ。あと二日も、どうやってこの寂しさを紛らわせればいいんだろう」
2人で声を殺して、ひとしきり笑い続ける。
「貴明様。貴明様と手を、つながせていただいてもよろしいでしょうか」
うん、いいよ。
真面目な表情で聞いてくるイルファさんに、俺は自分の右手を伸ばす。
「イルファさんの手、あったかいね」
「そ、そうですか!? あの、さっきお風呂にはいったばかりですから、きっとそのせいだと」
握り締めたイルファさんの指は今にも壊れそうなくらい細くて。けれど、その暖かさは俺にしっかりと、イルファさんがいることを伝えてくれた。
昼間、お互いに手を握りながら歩いた遊園地のことを思い出す。
「今度こそ、イルファさん、お休み」
「はい、おやすみなさい」
「また明日」
イルファさんと手を握ったまま、いつの間にか俺は眠ることができていた。
「瑠璃様〜、お帰りなさいませぇ。瑠璃様がいらっしゃらなかったあいだ、私、寂しかったんですよぉ」
「ひゃぁぁぁぁぁ、い、イルファ、待って、待っててっんっ!?んんんんんんんんんんんっ!?」
2日後。林間学校から帰ってきた瑠璃ちゃんをイルファさんのちゅーが襲い掛かっていた。
そのあまりの勢いに瑠璃ちゃんも顔を真っ赤にして喜んで・・・・・・いることにしよう。
「るー☆」
「お帰り、珊瑚ちゃん。林間学校は楽しかった?」
「うん楽しかった〜。瑠璃ちゃんなんて、肝試しやって大はしゃぎしとったもん」
「さ、さんちゃん、それいうたらあかん〜!!」
ずいぶんと賑やかな林間学校だったみたいだ。
「さあ、瑠璃様、珊瑚様。あちらにお茶のご用意をしております。ゆっくりお休みになって、林間学校のお話を聞かせてくださいね」
イルファさんに誘われて珊瑚ちゃんと、こちらは疲労困憊といった様子の瑠璃ちゃんがふらふらと家の中に入っていく。
「貴明、貴明もはやくー」
「貴明様がいらっしゃってくれないと、瑠璃様も珊瑚様もお話をはじめられませんよ」
3人の後姿を眺めていた俺に、珊瑚ちゃんとイルファさんが呼びかけてくれる。
差し伸べてくれたイルファさんの手を握り、俺もリビングの中へ。
扉をくぐるとそこには、ソファーに座る瑠璃ちゃんと、嬉しそうにはしゃぐ珊瑚ちゃん。そして俺の横にいてくれるイルファさん。
ようやくみんながそろって、いつもの様子がかえってきた。
「珊瑚ちゃん、どうかした?」
珊瑚ちゃんが、なぜか俺と、イルファさんのことを見つめてくる。
イルファさんと顔を見合わせ首をかしげていると。
珊瑚ちゃんはいつものあの、とろけそうなほどの笑顔を浮かべて
「なあ、貴明といっちゃん、いつのまにそんなにすきすきすきーになったん?」
終
中篇を飛ばして下編。
待っていてくれた方がいらっしゃったようで、大変申し訳ありませんでした、及びありがとうございます。何とか完成させられました。
予告どおりにSS書けたの初めて。俺、やればできる子だったじゃない。
('イルファさんかわいいよ∀`)
待ってました!
非エロ赤面系の展開に大満足です。
もっと長くてもOKでしたよ?
やっべかわいい(;´Д`)
イ、イルファさん…
なにはともあれGJ!です。
そういえばAF団の人はどうしたんだろうか。
瑠璃AFSSの人。
>>371はやれば出来る子なんです(*´∀`)
GJでした!
別のAF団の人なら作家デビューしてるよ。
イルファレベル3キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
GJ!
お前蝶GJ!!
「ただいま〜」
「はい、おかえりなさい」
「…って、タマ姉、ここ俺んちなんだけど…」
「だって、"ただいま"には"お帰りなさい"でしょ?」
「いや、一緒に帰ってきたのにそれ変じゃない?」
「男が細かいこと言わないの。でも…」
「でも?」
「おじさまもおばさまもいないのわかってるのに、それでも"ただいま"って言っちゃう
ところが、すごくタカ坊らしいわね」
「え…?」
タマ姉はたいした意味もなくそういったのかもしれないけど。
ようやく、俺は今更ながらに気付いてしまった。
俺たちの置かれた状況と、さっきの言葉の意味に。
『だったら…タカ坊の家に、行きたいな』
『もう、タカ坊ったらムードないんだからっ』
家に来たいと言ったタマ姉。
そして、家には俺たち以外誰もいない。
そこで、ムードが必要な理由は。
もしかしなくても、その。
「タカ坊?先にお邪魔するわよ」
急に黙り込んだ俺に気付いてないのか、タマ姉は勝手知ったるなんとやら…で、来客用の
スリッパを履いてずんずん廊下を進んでいく。
俺は、戸締りをして。
慌ててタマ姉の後を追いかけた。
…あれ?鍵を閉める音ってこんなに大きかったっけ?
緊張に、喉が渇く。
ペロリと舌で唇を舐めてみれば、にわかに蘇るあの時の感触。
本当は、わかっている。
この"渇き"は、喉が渇いてるせいじゃない。
それは、もっと根源的な。
だけど、それを意識してしまうと、身動きが取れなくなるから。
今は、喉が渇いていることにする。うん。そういうことにしておこう。
「タマ姉、ジュースでいい?」
「う〜ん、贅沢をいうなら…暖かい紅茶がいいな。それも、ミルクティー」
「はいはい。タマ姉の口に合うかわかんないけど淹れてみるから居間で待っててよ」
「ふふっ。期待してるわよ、タカ坊」
そんなこんなで、台所。
せっかくのタマ姉のリクエストだ。
小牧に叩き込まれた美味しい紅茶の淹れ方を披露してみようじゃないか。
お湯を沸かして、カップを暖めて。ついでに別の小鍋でミルクも暖めて。
この時、ミルクを暖めるのは人肌まで。それ以上暖めると乳臭さが出てしまうからな。
おっと、ポットを暖めるのも忘れずに。
紅茶は熱いお湯で抽出するのがいいらしいからな。
カップだけ暖めてもあんまり意味ないぞ?
「…ふう」
一仕事を終えて、息を吐く。
無意識に息を止めるくらい、紅茶を淹れるのに真剣になっていたのか。
それとも、置かれている状況からの逃避行動なのか。
誰もいないテーブルでは、美味しそうなミルクティーが湯気をたてていた。
…って。
「なんで誰もいないのさ!」
見ればあたりにはタマ姉の姿はない。
うちは台所と居間が一続きだから、出入りすればすぐわかる。
なのに、俺が紅茶を入れていた間、人の出入りはなかった。
「み、密室から人が消えた!?」
いや、そもそも密室じゃないじゃん、ここ。
OK、OK。冷静に考えようじゃないか、貴明。
そもそも、タマ姉はいつから居間にいた?
…ん?思えば、最初からタマ姉が入ってきた形跡なんてなかったような…?
カタン。
耳を澄ますと、階上から微かに聞こえる物音。
も、もしかして俺の部屋をガサ入れ中っ!?
「マズいっ!」
…って、何がマズいんだ。
こんな時のために危険物資はシェルターに避難させたはずじゃないか、俺よ。
落ち着け。落ち着かないと俺に明日はないぞ?
さ、順番に思い出してみよう。
…えっと、雄二に押し付けられたDVDは…居間のビデオの裏に隠したよな?
同じく雄二から押し付けられた巨乳系のグラビアは…親父の書斎に置いたよな?
とりあえず、即座にアウトになる要素はないはずだ。
だから、慌てる必要なんてないんだけど。
相手がタマ姉なだけに、悪い想像しか浮かんでこない。
一歩。また一歩と。足を進めるうちに、気付けば駆け足になっていた。
「タ、タマ姉、ちょっと待ったー!」
慌てて飛び込んだ部屋では、タマ姉が何事もなかったかのようにベッドに腰掛けていた。
びっくりした顔で俺を見つめるタマ姉。
「どうしたの?タカ坊」
珍しい。タマ姉が俺の部屋に来て何もしないなんて。
それどころか妙に大人しいし。どこか具合でも悪いんだろうか?
「や、その…」
「待つって、何を?」
む。ガサ入れされていなかったのは幸運だが、慌てて飛び込んできた手前、この場をどう
取り繕ったものか。
「え、いや…その…あ!お茶持ってくるの忘れてた!と、取ってくるっ」
「待・ち・な・さ・い」
ぐっ、と襟首を掴まれて引き戻される。
そんで、そのまま羽交い絞め。
「ねぇタカ坊…さっき私に対して何か失礼なこと考えてなかった…!?」
「してません!か、神に誓って!」(何でわかるんだ…)
ぎゅうぅぅぅぅ〜
締め付ける力が強くなる。
「ちょっと、そんなにくっつかれると、あ、あたる、あたってるってば!タマ姉!」
「何が?」
何がって、む、胸がだよ!
なんて、そんなの言えるわけないじゃないかぁ!
とにかく、このままでは非常にまずい。
背中にあたる豊満な胸の感触が急速に俺から理性を奪っていく。
しかも、2人っきりという事実がそれに拍車をかけてたりなんかして。
俺も男だし、下半身の方が色々ヤバいから大至急離脱しなきゃいけないんだけど。
…いったいどうやったらこの気持ちよくも苦しい拘束から逃れられるんだろう?
タマ姉ってばいい匂いするし、背中にあたる感触はやわらかいし。
男だから、やばいんだけど。
男だから、逃れられないこの甘い呪縛。
このまま、流れに身を任せるのもよいかも…
なんて思っていたら。
ふっ
「うわぁ!」
今、耳になにやら暖かいものが。
ぴちゃり
「うひっ!」
今度は首筋に生暖かく湿ったものが。
「あら、タカ坊ったら意外と感度いいのね」
ぜ、前言撤回!
やっぱりタマ姉はいつものタマ姉だった。
いや、いつも以上に何だか積極的、つーか、セクハラ度アップしてる?
そうとわかれば、ここは全身全霊かけて全速離脱。逃げの一手。
俺の息子がどうのこうのより、俺の身がヤバい!
「こーら。暴れないの」
…俺のできる限りの抵抗はまったく実を結ばなかった。
それでも、このままでいるわけにもいかないから、レジスタンス運動は継続中。
そうして、必死でもがくうちに。足には何やら固いものを蹴飛ばした感触。
「あら、タカ坊風邪でもひいたの?それとも…花粉症だったかしら?」
「へ?いや、別にそんな…。……っ!」
そこには昨日の俺のイメージトレーニングの成果が。
すなわち、俺が蹴飛ばしたのはゴミ箱であり、中からでてきたのは使用済みのティッシュ
の山であった。
「そ、そ、そう!ちょっと風邪気味みたいでっ!昨日から鼻水止まんなくてさ!」
無駄な抵抗だとわかっていても、男にはそうしなければならない時がある。
今がまさにその時だ。
「……よかった……」
「へ?」
なんで『よかった』なの?そこ、突っ込むセリフ間違えてない?
っていうか、もしかして、気付いてない?
「ううん。ここはこれででいいのよ」
「?」
「だって、タカ坊ってば未だに手も出してくれないし、キスだって私から求めないとして
くれないじゃない?だから、その…"そういうこと"に興味がないのかなって思ってたの。
そっか、そっか〜。こういうことするくらいにはちゃんと興味があったのね」
くそう。やっぱりバレてたか。
こうなれば、あとは開き直るくらいしか道は残されていない。
「そ、そりゃ、俺だって男なんだからっ!ひ、人並みには興味あるさ」
「だったら何で私には"そういうこと"しようとしないの?もしかして…私、魅力ない?」
あれ、何だか話が変な方向に。
「そ、そんなわけないよ。その、今だって…魅力がありすぎて困ってたんだから」
「なんで困るの?いいじゃない、私たち恋人同士なんだから」
「だって…お、俺たちまだ、高校生じゃない。そういうのって、は、早すぎない?」
「そんなことないわよ。今どき中学生だってそういうことしてもおかしくないんでしょ?」
「どこで聞いたんだよ、そんな話…」
「雄二」
あの野郎、いつか殺す。
いや、そんなことより今はこの場を何とかせねば。
そりゃ、興味がないって言ったら嘘になるけどさ。
こういうのって、心の準備とかそういうのが必要じゃない?
キスですら心臓が破裂しそうなのに。それより先に進んだら。
今この断崖を飛び下りる自信は俺にはない。
「だ、だいたい、なんで今日はそんなに積極的なのさ?」
そうだよ。
今までだってこんな風になることはあったけど、ここまでマジだったことはなかったのに。
どうしちゃったんだろ?なんて、思っていると。
くるり、と。
世界が回った。
そして、俺の上には馬乗りになっているタマ姉。
「…タカ坊が悪いのよ。私を放っておいて他の女の子とばっかり仲良くしてるんだから。
しかも、なんだかモテモテだし」
「そ、そんなことないってば」
言いながら、ぎゅっと押し付けられてくる胸。
「"そういうこと"に興味ないなら、タカ坊が興味を持つようになるまで待つつもりだった
んだけど。充分興味あるようだし…」
散らばったティッシュに目をやりながら、にんまりと微笑む。その目はやめて…
「なら、他の子なんか目に入らないように私の魅力でメロメロにしちゃってもいいかな〜
って。名付けて『好き好きタマお姉ちゃん大作戦ファイナルアタック』よ!」
「何だよそれ…」
それでも煮え切らない俺に、更なる追い討ちが。
「タカ坊は…嫌なの?私と"する"の」
「そ、そういうわけじゃないけど…。こ、心の準備が…」
「あらぁ?こっちの準備はもうできてるみたいだけど?」
そ、そこは!
…俺の身体の正直者め!
「ね、タカ坊。キスから先のこと…してみたくない?」
ゆっくりと降りてくる唇。
畜生。この誘惑に逆らえる男なんているわけないじゃないか。
388 :
中の人:2005/04/17(日) 05:37:33 ID:2d/Vrq720
期末進行でひいこら言ってるうちにずいぶんと間が空いてしまいました。
スレも変わったし、区切り的にもう前の続きを名乗る必要もないかと思いましたが、
とりあえずタイトル考えるの面倒くさかったんでこのままでw
ついでに、こんなところでぶった切ってナニですが、またしばらく間あきます。
やってもできない子どころかやる気のないダメな子の漏れでも、さすがに今日に
至ってまだレヴォの原稿1コマたりとも描いてないのはマズイかと思いましてorz
ヤシマ作戦リーチとリラックス系STEP5ですら外れる漏れに、みんなのやる気をわけてくれ…
GJ!!
とりあえず、つ|やる気|
>>388 悪いがそれは普通に外れる程度のリーチだ、期待するほうが間違ってる
代わりにZFで計26連荘した俺の運をやるよ
つ運
393 :
名無しさんだよもん:2005/04/17(日) 11:31:59 ID://YWuP4MO
>>388 ひとまずはGJ!たま姉たまんねえ!
俺も、
リョウジ「シンジ君」、背景レイ、ヤシマであぼーんだったし、がんがれ
おまいら、ありがとう。
あんなリーチに期待した漏れが間違ってたんだな。うしっ、スッキリした。
やる気ももらったし、原稿終わるまでパチ屋とここは出禁にするよ。
オレはやるぜオレはやるぜ(`・ω・´)シャキーン
>392ごめんね。
エロ初めてだから筆が進みにくくてとりあえずここで切ってみただけなんだ…。
やっぱ、漫画描ける人ってSSも書けるんだね・・・
いや、何となく。
何はともあれGJ
いや、たぶん388氏が漫画と文章の両方の才能に恵まれて
いるというだけで、絵描きがSS屋の上位互換というわけでは
ないと思うです。
というわけで388氏はエロ展開突入後、その才能をあますところなく活用して
エロ挿絵を速やかに描き、エロリンクをうpされるべし。
そのときは、「Good job」ではなく
「God job」(神の御業)と叫ばせていただきますっ。
>>397 >絵描きがSS屋の上位互換というわけではないと思う
いや、まあその通りかなとは思うんだけど、
少なくとも、漫画描いてる分、起承転結には慣れてるだろうから
その辺がSSに反映されてれば、読み易い(≒読んで面白い)ものが書けるのかな?
と思った次第で・・・・・
399 :
396:2005/04/19(火) 10:56:52 ID:nFVF7Zcm0
スマソ。
↑は漏れです。
絵があまり上手くないから文に逃げたけどやっぱり絵って人もいるよぅ
文に「逃げた」と来ましたか。
言葉は選んで使えよ。
逃げた方から見れば、逃げたことになるだろうさ
絵に戻ってるんだから、そういうことだ
文書きの下らんプライドは誇示しないでいいよ
403 :
火薬ゴハン:2005/04/20(水) 22:43:17 ID:+5fOufkz0
大分ごぶさたしておりますたが、かなり昔にタカ棒の家にイルファさんが押しかけてくる
話を書いた者です。この度その続編思いついたんでこれから投下させていただきまつ。こ
れから会う虎で編集するので少し間が空くけど感想やアドヴァイスいただければ幸いでつ。
そりではまた後ほど。
前回についてはここ参照↓
ttp://bcproject.h.fc2.com/maid.html
金曜日
Trrrr…Trrrr…Trrrr…カチャッ
「はい、河野でございます」
河野家のリビングに掃除機をかけていたイルファは電話が鳴ったのに気づいて、早足で
電話に駆け寄って受話器を取った。
『もしもしイルファさん?柚原です』
「あら、柚原さんの奥様」
『イルファさんったら、胡散臭いセールスレディじゃあるまいし奥様なんて呼び方は止し
てちょうだい。春夏でいいわよ。あなたはもうタカくんの家族の一員なんだし、今更他人
行儀にする間柄でもないでしょう?』
そう言ってクスクス笑う電話の主は隣家の「柚原さんの奥様」こと柚原春夏だった。イ
ルファが貴明のメイドロボとして半ば強引に住み込んでからというもの、河野家と家族ぐ
るみで付き合っている柚原家の面々もイルファとは家族の一員のようによくしてくれてい
る。特にイルファは春夏には貴明によりおいしいものを食べてもらいたいという一心から
料理のことではさんざん世話になっていた。いかにイルファが最新型のメイドロボとは言
っても味覚は未完成で、自他ともに認める味音痴であったから料理の先生としての春夏の
存在はイルファにとって大変ありがたいものであった。
『そうそう、急な話で悪いんだけど、私明日から仕事の都合でまた出かけることになった
のよ。それで私が留守の間家には誰もいなくなるから、明日の夜からこのみのことお願い
したいの』
「柚…いえ、このみさんを家でお預かりするんですか?」
『そう。タカくんは毎度のことだから分かってるけどイルファさんが来てからは初めての
ことよね?だからイルファさんには早いうちに話しておこうと思って』
「そうなんですか、それでしたら私、腕によりかけてごちそうを作ります」
『あら、そんなに気を使ってもらわなくてもいいのよ。イルファさんにはいつも通りにし
てもらえばいいから。それじゃあこのみのことよろしくお願いするわね』
電話はそこで切れた。春夏は格別に気を使わなくていいとは言ってくれたものの、
「明日のお夕飯は奮発しましょう。このみさんは貴明さんの大事なお友達ですもの」
メイドロボとしての使命感に燃えて張り切るイルファだった。
「お掃除が終わったら早速お買い物に行きましょうか。もちろん新鮮な材料を選んで買わ
ないとね」
今夜の献立をあれやこれやと巡らせながら、イルファはリビングの掃除を再開した。
「ただいま〜…ん、何だかいい匂いだな」
貴明は玄関にまで流れてくる食欲をそそる匂いに惹かれて一直線に台所にやってきた。
「お帰りなさい、貴明さん」
イルファはいつもの穏やかな笑顔で貴明を迎えてくれた。お玉で鍋をかき回しながら。
「美味しそうな匂いだね。シチューかな?」
「はい、いいお肉が安かったですからシチューを作ってるんです」
「それ今日の晩飯?」
「いいえ、これは明日のお夕飯ですよ。このみさんがうちにいらっしゃるということです
からごちそうにしてみたんです」
「このみが?ああ、そう言えばさっきこのみの家の前でおばさんと会ってそんな話聞いた
な」
「お客様をおもてなしするのは私たちの務めですから。今日のうちから弱火で時間かけ
て煮こんで、一晩寝かせてもっとおいしいシチューを作るつもりです」
イルファは更に笑って言った。
「ん〜、でもこのみは家に来ればいつも俺のために晩飯作りたいって言ってるからな。
そんなのつまらないって言われたりしないかな…そうだ、サラダやスープはこのみと一
緒に作るってのはどうだ?それならこのみも喜んでくれると思うしさ」
「そうですか。このみさんって世話女房タイプなんですね」
「うんうん、おばさんがああだし、本人もあのタマ姉に憧れてるだけあってな。そうい
うことには積極的なんだよ」
「それに貴明さんとは子供の頃からのお付き合いですし…私ちょっと妬けちゃいますね」
「何言ってるの、イルファさんには俺がいるじゃない。この間の夜だってイルファさん
はあんなに……」
「貴明さん、エッチです」
イルファの頬が赤く染まる。あれから何回もベッドで励んだ時のことがイルファのメ
モリを過った。
「そんなこと仰るなら当分はお預けです」
いたずらっ子を叱るようなセリフを言い、プンと怒ってみせるイルファ。
「あう…ごめんなさい。スケベ心出した俺が悪かった」
慌てて貴明は素直に謝った。
「そう仰ってもらえるなら本心からお詫びしていただけたってことですね。ありがとうご
ざいます。これからおやつ用意しますから貴明さんは手を洗ってきてくださいね」
イルファはすぐに元の穏やかな笑顔に戻ってシチューの火を止めると、冷蔵庫からケー
キを出して紅茶を淹れる準備を始めた。
土曜日
「貴明」
「ん?」
「今日いっちょエターナルファイター4やってかないか?」
「いいぜ。俺あそこのゲーセンに入ってから結構やりこんだしな。俺に智代使わせれば向
かうところ敵なしだぜ」
「そいつは大きく出たな。俺だってあのゲーセンじゃ1番の杏使いってくらい勝ってるん
だから簡単には負けねえぞ。よし、ここはいつもみたいにヤックじゃなくてもっとでかい
物賭けるか。俺が勝ったらイルファさんと一日デートさせてくれよ」
「………帰るぞ」
イルファを他の男に取られたくない貴明は気を悪くして席を立とうとした。だが雄二も
そこで諦めようとしない。
「まあそう怒るな。俺だってそれ相応のいい物用意してるんだから」
そう言って雄二が貴明の目の前に差し出したのは一枚のチケットだった。
「再来週にある緒方理奈のコンサートのS席チケットだ。しかもただのプラチナチケット
じゃねえ。バックステージパスの特典付きだぜ」
「何だよそのバックステージパスって?」
「開演前に控室で緒方理奈と直々に会えるのさ。こんなチャンス一生に一度あるかないか
だよ。それにこのチケット、FMラジオの深夜番組のプレゼントコーナーで何枚もハガキ出
してやっと当たったんだぜ?お前が勝ったらそんな幸運をやるって言ってんだから付き合
えよ。男なら賭ける物が大きいほど燃えないとだろ?さあ」
「………そこまで言われて引っ込んでたら男が廃るな。よし、その勝負乗ろう」
「よっしゃ!」
こうして貴明と雄二はゲーセンに足を向けた。
「よし、ゲージが溜まったぞ。今だ、食らえ巨大英和辞典!」
「甘いっ」
「ああっ、何でそんなに簡単に避け…わっ、おい、いきなり懐に飛びこんで杏をボコって
んじゃねえよああああああ」
「よし、これで勝負あったな」
「くっそー…」
3ラウンドマッチの対戦結果は2勝1敗で貴明の勝ちだった。ラウンド1は雄二がイルファ
とのデート権に賭ける執念でガンガン押しまくって勝ったもののその後の2ラウンドは貴明
が智代の機動力を活かして避けられる攻撃は避け、隙があれば確実にダメージを食らわす
ことで勝ちを拾ったのだった。
「じゃあ俺今日は帰るわ。イルファさんが待ってるんでね。緒方理奈のチケットは明日に
でもお前ん家にもらいに行くよ」
席を立った貴明を雄二が押し止める。
「おい、待てよ貴明」
「何だ?勝負ならもうついたじゃないか」
「まだだ…まだ終わらねえよ。100円ならたんまり持ってるんだからな。この際とことん
付き合ってもらうぜ」
雄二の対戦台にはいつの間に両替したのか、20枚ほどの100円玉が積んであった。
「(諦めの悪い奴だな。メイドロボと緒方理奈のことになると目の色変わるんだから)」
内心溜息をつく貴明。
「(まあ俺もイルファさんのことじゃ人のこと言えた義理じゃないし、ここしばらく付き
合い悪かったからその分相手しようか)」
貴明はそう思い直して対戦台の前に座り直した。
「よし、そう来なくっちゃ。いくぜリベンジマッチ!」
雄二は大ハッスルして対戦台に100円玉を入れた。
「くっ、ま、負けた……」
結局21回に渡る長期戦を制したのは貴明だった。貴明側の対戦台の「あなたの勝利数 1
2」というデジタル表示がそれを証明している。雄二もコケの一念で頑張りはしたものの、
やはり回避とガードの使い分け、ゲージ消費技を使うタイミングはどこかといったテクニ
ックを磨いていた貴明には一歩及ばなかった。
「雄二、もういいだろ?他の人も順番待ってるんだし俺も疲れたよ」
「いやいやいや、9勝12敗と競ったゲームだったんだ。まだまだリベンジのチャンスはあ
るんだから待ってろ…」
雄二が財布から千円札を出し、両替機に行こうとしたところで、
「いいかげんにしろ!お前いつまで粘ってんだよ。アタイたちはもう3時間も待ってんだ
っ!」
ショートカットの蓮っ葉な少女が雄二に食ってかかった。吊り目で睨まれると毎度そ
れで環にトラウマを負わされている雄二はひとたまりもない。言わんこっちゃないと顔
に手を当てる貴明。少女は雄二の胸倉を掴んでそのまま引っ張り出そうとした。
「おら、表に出やがれ。お前の根性叩き直してやらあ」
「あ、あわ、あわわわ…ぼ、暴力反対暴力反対。話せば分かるから穏便に…」
「イビルやめなさい。こんなところで喧嘩しないで」
灰色の長い髪の少女が雄二とイビルと呼ばれた少女の間に割って入った。
「な、雄二、今日はもう帰ろう。緒方理奈のチケットはお前が持ってていいからさ。ああ
…どうも長々すみませんでした」
貴明も彼らの間に割って入り、イビルにペコペコと頭を下げながらゲーセンを後にした。
彼らの後ろ姿を見ながら、赤毛の少女がイビルの肩をそっと叩いて言った。
「……気持ちは分かるが、ここで喧嘩したら他の人間に迷惑だ」
「ん、まあ、エビルがそう言うなら…」
素直そうな貴明に平謝りされ、相棒で仲のいいエビルに宥められて、瞬間湯沸機のイビル
も不承不承鎮まった。
「ただいま〜」
「もう、遅いよタカくん。今までどこ行ってたの?」
貴明が帰宅するなりキッチンから聞こえてきたのはこのみの怒った声だった。
「悪い悪い。雄二に付き合ったらこんな時間になっちまって…」
「もうすぐ晩御飯の時間だよ?わたしもイルファさんも心配してたんだから。タカくんも
一緒に買い物に行くの、わたし楽しみにしてたんだよ」
心底がっかりしたような顔で捲し立てるこのみ。
「お付き合いがあるなら仕方ないでしょうけど、遅くなられるなら連絡くらいしてくだ
さい、貴明さん」
イルファも困ったような顔をしている。今度のことは全て大事な来客より男の付き合
いを優先した貴明が悪いと言いたそうに。
「分かったよ。明日はどこか…そうだな、遊園地にでも連れてってやるからそれで許して
くれ。もちろんイルファさんも一緒にね」
「えへ〜、やた〜」
その一言でこのみはコロッと機嫌を直した。
「じゃあわたしとイルファさんで晩御飯の準備するから、タカくんはいつもみたいにテレ
ビでも見てて」
「……いや、たまには手伝うよ。いつも俺が何もしないのも…」
「『男子厨房に入らず』でありますよ隊長。さあタカくんは待ってて待ってて」
このみは貴明の背中を押して、リビングへと押しやった。それならテレビ見るしかする
ことがないじゃないかと思った貴明はテレビを点けた。
「さあ福原がきっちり送りバントを決め、バッターは1番に戻って赤星。サヨナラ男の名
を持つ彼ですが、果たしてこの試合でもサヨナラヒットを飛ばすことができるでしょうか
……」
テレビでは野球のデーゲーム中継が放送されている。貴明は同時にキッチンから聞こえ
てくるこのみとイルファの会話と同時進行で観戦していた。
「このみさん、スープのお味はこれくらいでよろしいでしょうか?」
「うーん、もう少しお塩足してもいいんじゃないかなあ」
「そうですか。貴明さんはいつもこれくらいでちょうどいいって仰ってるんですが…あ、
それからこのみさんはトマトとキャベツを切っていただけますか?」
「了解であります。きっとこのサラダでタカくんを虜にしてみせるでありますよ」
テレビの向こうの赤星はボール球を上手く見逃し、臭い球もファウルゾーンに飛ばし
て粘りを続けてなかなか勝負が決まらない。ピッチャーは俺もう疲れたよ、さっさと勝
負決めたいよと言いたそうな顔で帽子を取って額の汗を拭き、帽子をかぶり直してボー
ルを投げた。ボールはまたもやダイヤモンドから逸れてファウルゾーンに飛んでいく。
「(うーん、なんか俺ってこのみを嫁にしてイルファさんをメイドロボに置いてる一家
の亭主みたいだな……将来こんな家庭もいいかも)」
などと貴明が妄想しているところで次に投げられたボールを赤星が打った。ピッチャ
ーの横を抜けて外野へと転がっていく打球。矢野と赤星が走る。
「おっ、やったな赤星。回れ回れ〜!」
貴明は思わず立ち上がり、拳を握ってテレビの向こうに声援を送った。
「タカくーん、ごはんできたよー。早く来てー」
このみから声がかかったが、
「ん、ちょっとだけ待ってくれよ。矢野が帰って赤星も帰ってくれば逆転サヨナラ勝ちな
んだから。来い、来い来い来い来ーい」
「もう、タカくんが来てよ〜。早く一緒に食べようよ〜」
貴明は阪神が勝ちを制するかどうかの瀬戸際を見守るばかり。このみは怒ったような声
でもう一度貴明を呼んだ。そんな声で話し掛けられて言うことを聞いてやらなければこの
みの機嫌を損ねることになりかねない。経験則からそのことを知っていた貴明は名残惜し
げにテレビを消して、夕食のテーブルについた。
「「いただきます」」
貴明とこのみが唱和し、イルファが笑って言った。
「はい、シチューはたくさんありますから貴明さんもこのみさんもたくさん召し上がって
くださいね。それでは私はお風呂沸かして来ますから」
イルファは湯沸し機のスイッチを押しに行き、貴明とこのみはシチューを食べながら今
日あった話に花を咲かせた。
「でさ、今日俺は雄二とゲーセンで対戦してたんだけど雄二の奴諦められなくて勝負がつ
くたびにもう一回もう一回って言って結局20回くらい対戦することになったんだよ。諦め
が悪いんだろうけどそこまで好きなことに熱くなれるってのはある意味羨ましいよ俺。俺
ときたらイルファさんと一緒に暮らしてるってだけでもう満足してて、その先の目標なん
て何もないのに」
「うーん、じゃあ将来イルファさんと一緒にケーキ屋さんでもするのはどうかな?」
「ケーキ屋?そりゃまたどうして」
「この間イルファさんが手作りのアップルパイうちに持ってきてくれてね、それがすっご
くおいしかったんだよ。イルファさんは『奥様に作り方をみっちり仕込んでいただきまし
たから』って言ってたけど、あれはお母さんが作るアップルパイよりおいしかったよ。イ
ルファさんならきっとおいしいケーキ作って売れるよ」
「そんなこと言って。このみは俺がケーキ屋始めたら幼なじみのよしみで安い値段でケー
キ食わせてもらいたいんじゃないのか?」
「もう、わたしそんなこと思ってないもん。タカくんのいじわる」
「冗談だよ…でもそれっていいかもしれないな。そんなに店のキャパなくてもいいからシ
ョーウインドー置いて喫茶スペースも作ってケーキと一緒にコーヒーや紅茶が飲めるよう
にしてあるケーキ屋、そんなのをイルファさんと一緒に経営するなんて楽しそうだな。こ
のみ、もしそれが実現したらお前も俺の店でウエイトレスとして働かないか?」
「え?わ、わたしはいいよぉ」
やっぱり食うほうに回りたいんだ、と貴明は思ったがそれは口に出さずに会話をつない
だ。
「まあそう遠慮するな。このみはかわいいんだからきっと客のウケはいいと思うぞ。そい
つはタマ姉だって請合ってるだろ?」
「うぅ〜…タカくんにそんなこと言われると…やっぱり恥ずかしいよ」
顔を真っ赤にして俯くこのみ。
「ま、親は大学は出とけって言ってるし、何するにしてもずっと先のことに…」
貴明が口を開くと浴室からゴーッと恐ろしげな音が聞こえてきた。
「……ゑ?」
嫌な予感を禁じ得ない貴明。シチューのお代わりを準備するために鍋をかき回していた
イルファは慌てて鍋の火を消し、湯沸機の操作パネルに駆け寄った。
「きゃっ…」
イルファの顔が蒼ざめる。
「イルファさん、ひょっとして…」
「ご、ごめんなさい貴明さん。私、スイッチを押し間違えてお風呂を空焚きしてしまいま
した」
しょんぼりした顔で貴明に頭を下げるイルファ。
「ああ…これじゃしばらく風呂が使えないな」
「え〜」
やっちゃったな、と顔を歪める貴明。このみも残念そうな顔をしている。
「ごめんなさい……ごめんなさい、私のせいで」
イルファは泣きそうな顔で何度も貴明に詫びた。しかし貴明は怒った素振りも見せずに
言った。
「しょうがないよ。風呂は明後日にでも業者呼んで直してもらうさ。今日は銭湯に行こう。
もちろんこのみもイルファさんも一緒にな」
「えへ〜」
このみはいっぺんに上機嫌になった。
「それじゃあ晩飯食って後片付けが終わったら行くか」
「うん」
貴明の一言でその場は収まり、再び夕食の時間が戻った。
夕食後、貴明、イルファ、このみは石鹸とタオルとシャンプーの入った洗面器を手に銭
湯に向かった。
「それじゃタカくん、また後でね」
入り口でイルファとこのみは貴明と別れて女湯に入り、そこで思いがけない顔見知りと
出会っていた。
「あ、タマお姉ちゃんがいる〜」
「あら、このみじゃない。それにイルファさんも一緒?そうか、今日このみはタカ坊の家
に泊まりに来てるのね」
入浴剤で白く染まった風呂に入っていた環がこのみとイルファを見止めて声をかけた。
「うん、明日はタカくんとイルファさんと私とで遊園地に行くんだ」
「そうなの、ラッキーじゃない。だったらタカ坊にいっぱいサービスしてもらうのよ…
あ、私も一緒に連れて行ってもらおうかしら」
環は悪戯っぽく笑って言った。
「え、えへへ…多分タカくんはいいって言うと思うけど…」
「そうですね、貴明さんはお優しい方ですから」
顔を見合わせて苦笑するこのみとイルファ。
「このみもイルファさんもこっちへいらっしゃい。今日のお風呂は疲れによく効く入浴剤
が入ってて気持ちいいわよ」
「えへ〜、それじゃ入ろうかな」
「お邪魔します」
このみとイルファは環と一緒に湯船に浸かった。
「は〜、極楽々々。一日の疲れが癒されていくでありますよ」
「でもこんなところでこのみと会うなんて珍しいわね。どうして銭湯に来たの?」
環の問いかけにイルファがしょんぼりした顔で答えた。
「私がお風呂を沸かしたんですけど、スイッチを押し間違えて空焚きしてしまって…この
みさんや貴明さんに申し訳ないことをしてしまいました」
「そう、でもタカ坊はイルファさんのこと許してくれたんでしょう?」
「ええ、貴明さんは少しも怒らずに銭湯に行こうって仰ってくださいました」
「それはタカ坊がイルファさんを本気で愛してくれてる証拠よ。あの子と付き合いの長い
私には分かるわ。タカ坊は好きな人にはどこまでも優しくしてくれる子よ。だから元気出
しなさい」
環がイルファに優しく笑いかける。それでイルファも凹んだ気分が少しは晴れたようだ
った。
「ありがとうございます、環さん…ふう、何だかここのお風呂は落ち着きますね」
湯の中でほんのりと桜色に染まるイルファの裸体。その美しさにはナイスバディで鳴ら
している環も思わず見惚れて、同時に先天性の悪戯心を起こしていた。
「ねえ、イルファさん」
「は、はい?」
環の声音に怪しげなものを感じて、思わずビクッとしながら答えるイルファ。
「あなたって綺麗ね…とてもメイドロボとは思えないわ」
「は、はあ、ありがとうございます………」
「あなたの裸見てると、タカ坊があなたにお熱上げてるのよく分かるわ。きっと夜はタカ
坊にいっぱいいいことしてもらってるのね…」
にじり寄ってくる環と尻込みするイルファ。しかしイルファは抵抗する間もなくあっさ
りと後ろから環に抱き寄せられてしまった。イルファの背中に環の豊満な乳房が当たり、
イルファはカーッと体が熱くなった。
「きゃっ、や、やめてください環さん」
「お肌はすべすべだし…」
環の手がイルファの体を撫で回し、その手がイルファの乳房を包み込んで揉み始めた。
「おっぱいだって柔かくて張りもあって…」
「あ、そこは、私…だ、だめです……ひゃうん」
「あはっ、先っちょがピョコンて立って固くなってる。イルファさんって敏感なのね」
「い、いやぁ、そんなに触らないで…あっ、そんなとこまで……やっ、んん、あぁん、
や、やめ…」
イルファの懇願を無視して、環は空いていた手でイルファの足や腿を撫で回し、その
手をゆっくりと足の付け根のほうに近づけていった。
「ほら、太股がエッチにくねってるわよ。アソコが疼くのね…」
環の指がイルファの股間の割れ目を撫でた。その指がチュルンとイルファの中に入る。
「うふふ、もう指が2本も入っちゃった…イルファさんの中って柔かいのね」
「た、環さん…んん、や、やめ、やめて……貴明さんに、あんっ、き、聞こえちゃいます
ぅ…ひゃん、くっ、あ…ひぅん。た、助けてぇ…」
乳房を揉みしだき、蜜壺を指でクチュクチュとかき回しながら後ろから舌で首筋やうな
じをペロリ。自分の乳房も背中に擦り付ける。女の体を熟知している環の絶妙のペッティ
ングで、イルファは蕩けそうな快感に溺れさせられていた。口では嫌がりながらも体は素
直に反応してしまってイルファは甘い声を漏らす。
「くふ、ん、は、ああ、そこは…や、やああ、そこ、やめ…あっ、はあん」
「ちょ、ちょっとタマお姉ちゃん…」
環とイルファのレズビアンショーを間近で見せつけられて、顔を真っ赤にして焦るこの
み。
「このみ、あなたもして欲しい?」
「え、えええっ?わ、わたしは…」
環に妖艶に笑いかけられ、このみは真っ赤になって何も言えなくなってしまった。そして環はイルファの敏感な反応が面白いのか、なかなか愛撫をやめようとはしない。
「イルファさんって本当に罪ね…タカ坊をすっかり虜にしちゃうんだから…」
「ん、ああっ、た、環さん…や、やめ……あっ、ん、あくっ、はああ」
「嫌よ嫌よも好きのうちって言うじゃない。ほらほら…」
「(…………くうっタマ姉め、イルファさんに何てことしやがる。息子が爆発しそうじゃ
ないか)」
壁の向こうから聞こえてくるイルファの色っぽいよがり声にエッチな想像を掻き立てら
れ、またしても分身が疼いて湯船から出るに出られなくなった貴明だった。更に不幸なこ
とに銭湯のお湯は普段貴明が入っている風呂より熱くなっていたから貴明はだんだん上せ
てしまい、
「うーん…」
ゴボゴボゴボゴボ…
気を失って湯船の中に沈んでいってしまった。
「おい、兄ちゃん大丈夫か?」
貴明は泡を食った男湯の客に助け出され、番台に体を拭いて服を着せてもらって、気を
失ったままイルファの背中におぶさって外に出た。
「もう、タマお姉ちゃんがイルファさんに変なことするから…」
「ええ、ちょっと悪戯が過ぎちゃったわね。調子に乗っちゃったのは反省してるわ。でも
脈は動いてるからタカ坊の命に別状はないわ。しばらく安静にしてあげれば大丈夫よ。意
識が戻ったら気付けにコーヒーかワインを飲ませて寝かせてあげて。それじゃあおやすみ
なさい。湯冷めしないように気を付けて帰るのよ」
「うん、おやすみ〜」
星空の下、環とこのみたちは銭湯の前で別れて帰路についた。
おそまつさま。割付の関係で1レス余計に使うことになりますたスマソ。しばらく来ないう
ちに連投規制厳しくなってるし(あう)。この後は…多分その後どうなるか分かっちゃう人も
いるでせうね。何とかがんがって続けたいところでち。
>>415 GJ!
(・∀・)イルファ!(・∀・)イルファ!
さて、たまにはまともに批評してみるかね。
まず、あんまり作品内に現実世界のものを持ってくるのはオススメできないな。
今回なら阪神のくだりなんだけど、特に必然性があったようには思えないし、
急に現実世界に引き戻されて、気持的にゆっくり読めない。
次に、文章なんだけど、ちと冗長気味かなぁ。
明らかに説明しなくてもわかるような状況文とかは削って、もっとすっきりさせてみよう。
まあ、エラそうに言ったけど、後半も楽しみにしてるんで頑張ってね
>>415 前の人が偉そうに批評書いてるけど…
とりあえず GJ!!
まぁアレだ、確かに冗長な点は否めなかったが上達の余地は十二分にあるので頑張ろう。
三人称に固執してちょっと堅苦しい文になってるので崩してみるといいかも
420 :
名無しさんだよもん:2005/04/22(金) 02:34:20 ID:rmrqWhnhO
文章のうまいへたなんて別にどうでもいいさ
それよりここに投稿してくれたことに『ありがとう』を歌おう
420の言葉に、俺の体中が感動した。
422 :
名無しさんだよもん:2005/04/22(金) 06:05:58 ID:SAKCPr1d0
同感。スラムのそのまた吹き溜まりにある安酒場「バー・最果て」で完璧にキマった酔っ払いジャンキーがこぼす罵声も同然のレスが並ぶ中、世界の本質が愛であることを確信させてくれるような一文。まさしく掃き溜めに鶴、宇宙にタダひとつの青い宝石。世界に愛を、君に感謝を。
厳しいな、この制限。連載にするしかないのか。
64 名前:名無しさんだよもん[] 投稿日:2005/04/21(木) 16:02:19 ID:taK9WiZY0
timecount=300
timeclose=5
timecount= (数値) 連続投稿注意チェック(現在改良中)
・timecount=書き込みIP記録数
・timeclose=↑中の同一IP確認数
最新timecount回の書き込みのIPを記録し、その中のtimeclose個が同一IPからの書き込みだったら連続投稿注意画面へ
timecount=300
timeclose=5ってのは、
板への過去300の投稿元を記憶しておいて、それが5を越えると書き込めない。
つまり、5回投稿したら他の人が295回投稿するまで待たなきゃいけないってこと。
424 :
415:2005/04/22(金) 09:58:30 ID:yGdbRImo0
みんなメッセージありがとう。激励も手厳しい意見もいただきあたしゃ感謝してまつ。
まだまだだってのは自分でも分かってることだからどんな感想でも歓迎しますし、それ
くらいでは私は怒りません。むしろ今後の創作の糧にしたいでつ(こちらにお邪魔して
してるのはそういうこともある訳だけど)。
今後編を考えてるところでつが・・・この先はなし崩し的にひたすらエロを展開する予定
でつ。ちょうどCAプランニングの東鳩アンソロ(RENやあずまゆきも描いてたあれ)
のような感じで。おそらく前編以上になんじゃこらなはなしになるでしょうけどそこはど
うかご容赦ください。もちろんこうしたほうがいいんじゃないかというご意見は次でも
歓迎します。暖かく見守っていたヾければ嬉しいでつ。
みまくし今でのう歓
にしても書き込み規制には困ったねぇ……。
早く解除されろー
IPを変えればいいのですよね?
だがIPが変わるにも時間がかかる。300人書き込むまでの時間とほぼ同じくらい。
IPなら変えられる奴なら10秒もあれば変えられる。
ほうっ
うほっ
やるのか
やらない
じゃあ書け
ごめ、ロマサガにはまって書く時間ナッシング
レヴォでタマ姉分は補給されたが、
如何せん、ネタが思い付かない・・・
ピンポ〜ン。
チャイムが来客を告げる。誰だろう、このみかな?
廊下に出て、玄関の扉を開ける。
「タカくん」
やっぱりこのみだった。ラップに包まれた深皿を手に持って、いつものニコニコ顔。
「ん、どうした、このみ?」
「これ、おすそわけ。肉じゃがだよ」
深皿を少し傾け、その中身を俺に見せてくれる。透明なラップ越しに見える、いい感じに煮込ま
れたジャガイモやニンジン、お肉。うん、見るからにうまそう。
「いつもサンキューな。春夏さんにもそう伝えてくれ」
「うん。タカくん、晩ご飯はどうする気だったの?」
「ああ、ご飯は炊いたから、おかずを買いに行こうと思ってたとこ」
最近の俺は、とりあえずご飯だけは毎晩炊くようにしている。無洗米ってもののおかげで、ずぼら
な俺でもこのくらいは出来るのだ。
「じゃあ、ナイスタイミングだったね。あ、そうだ、お味噌汁は?」
「いや、作ってないけど」
「わたしが作ってあげようか? ダシ入り味噌とワカメ、まだ余ってるでしょ?」
「ん? ああ」
「じゃあ、作ってあげる。おじゃまするね?」
そういって家に上がるこのみ。最近のこのみは、こうやって俺の食生活をサポートしてくれる事
が多い。さっきこのみが言ったダシ入り味噌とワカメもこのみが持ち込んだものだ。
「うん、サンキュー、このみ」
このみが台所に立って数分後、テーブルの上にはご飯、肉じゃが、ワカメの味噌汁、たくあん
(これもこのみが以前に持ってきた)が並んだ。
「じゃあ、いただきます」
「はい、召しあがれ」
まずはこのみが作ってくれた味噌汁を一口。――うん、おいしい。続いてご飯を一口食べた後、
肉じゃがのジャガイモをぱくり。――うん、こっちもおいしい。
「おいしいよ、このみ」
「それってお味噌汁? それとも肉じゃが?」
「どっちも」
「えへ〜、よかった」
嬉しそうに微笑むこのみ。
「その肉じゃがね、野菜の皮むき、このみがやったんだよ」
「へえ、ちゃんと出来てるじゃないか」
「タカくんそう思う? お母さんには『まだまだ雑だ』って言われちゃったんだけど」
「春夏さんは現役主婦だからなー。評価の目も厳しいんだろ」
「うん、お味噌汁もね、ホントはダシも自分で作らなきゃダメって言われた」
「春夏さんから見たらダシ入り味噌って、インスタント味噌汁と変わらないんだろうなぁ。俺には
その違いなんて分からないけど……まあ、ダシの作り方も追々覚えていけばいいんじゃないか?」
「うーん、そうだね。料理の道は険しいのでありますよ」
食事を続ける俺を見ているのに飽きたのか、このみは居間のTVの電源を入れた。TVに映った
のはお笑い番組。ちょうど漫才が始まったところ。
「あ、このコンビわたし好き〜。ありあり探検隊、ありあり探検隊っ!」
漫才コンビに合わせて、手を振り足踏みするこのみ。小学生ですかキミは。
呆れつつ俺は、再び肉じゃがに箸を向けた、その時――
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!
「うわっ!?」
耳をつんざくチャイムの連打! な、なんだなんだ!?
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!
チャイムの連打は止むことなく続く。慌てて俺は箸と茶碗を置き、玄関へと急ぐ。いったい何なん
だよ、新手のイタズラか? 嫌がらせか?
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!
なおも続くチャイムの連打。もういい加減にしてくれ!
「はいはい、どちら様!?」
そう言って俺が玄関のドアを開けると、そこには……
「ゆ、由真!?」
「……たかあき」
チャイムを押すのを止め、俺の方に顔を向ける由真。あれ? もしかして泣いて……
「……」
由真は無言で玄関に入り、靴を脱いでずかずかと家の中へ。あの、ちょっと、いったい何なの?
ってか、両手に持ってるその大きな鞄は何? 新しい勝負用の道具でも入っているのか?
などと困惑する俺に構わず、由真が居間に入った。慌てて俺も後を追う。
「え? た、タカくん、この人は?」
居間に入った由真を見て困惑するこのみ。そりゃそうだ、俺だって困惑してる。
由真は両手の鞄を床に置き、このみをじっと見る。そして今度は俺の方に顔を向け、
「たかあき、この娘なに? あんたの彼女?」
「へ……?」
突然の質問。い、いきなり何聞きやがりますかこのヒトは?
「あんた、たかあきの彼女?」
今度はこのみに聞く由真。
「え、えっと、わたしはタカくんの……その、えっと……」
「こ、このみは俺の幼なじみだよ、幼なじみ」
おたおたするこのみの代わりにそう答える俺。何だかまるで、浮気の現場を奥さんに見られた亭主
が必死に言い訳しているみたいになってるのは、なんでよ?
「ふぅん、そう。じゃ、問題なしね」
何やら勝手に納得してますよ、由真さんったら。
「たかあき」
「な、何だよ?」
その次に由真の口から出た言葉は――。
「あたし、しばらくここに泊まるから」
「はぁっ!?」
俺の理解の範疇を超えていた。
「な、何言ってるんだよ由真、なんで俺の家に……」
「空いてる部屋はある? どこでもいいよ、あんたの部屋以外なら。無ければこの居間でもいいよ」
俺が質問を言い終える前に、そう聞いてくる由真。
「な、なあ、その前に教えろよ。なんで俺の家に泊まるんだよ?」
「うるさいわね。男がどうでもいいことグチグチ言うんじゃないわよ。いいからさっさと空いてる
部屋に案内してよ。荷物担いでここまで来て、疲れてんのよあたし。さっさと休みたいの」
どうでもいいことって……とても重要なことだと思いますけど?
「ね、ねえタカくん、この人、どうしてタカくんの家に泊まるの?」
そりゃ俺の方が聞きたいよ、このみ。
「そんなの、あんたに関係ないでしょ」
きっぱりとこのみに言い放つ由真。
「か、関係ないって……タカくん、この人とどういう関係なの?」
「由真と俺か? え、ええと、う〜ん、何と言えばいいか……」
「わたしに言えない関係ってこと?」
「ち、違うって! 由真と俺はライバルというか、競争相手というか……」
「その、ライバルで競争相手な人が、どうしてタカくんの家に泊まりに来るの!?」
だから俺に聞かれても。そんな涙目になられても。
「だ、か、ら、あんたには関係ないって言ってるでしょ。もう用がないならさっさと帰りなよ」
しっしっ、と手を振り追い出す仕草の由真。
「たかあき、さっさと部屋に案内してって言ってるでしょ。何度も言わせないでよ」
「だからちょっと待てって! その前に俺の質問に答えろよ! なんで俺の家に泊まるんだよ!?」
「怒鳴らないでよ! 泊まりたいから泊まるの! それだけ!」
「俺の家はホテルじゃないっての! 家主の許可もなく勝手に決めるな!」
「家主? あんたが? 別にあんたが建てた家じゃないでしょ」
「そりゃそうだけど、この家を建てた俺の両親は出張中で、家の一切は俺に任されてるの! だから
今は俺が家主代理! さあ、わかったら泊まりに来た理由を言え!」
「……」
言い返す言葉に詰まったのか、ムスッと黙り込む由真。
「黙ってないで理由を言えよ!」
「タ、タカくん落ち着いて」
キレ気味の俺をなだめるこのみ。う、うむ、確かにここは落ち着くべきだな。
「な、なあ由真、一体どうして俺の家に泊まりに来たんだ? 家で何かあったのか? あ、いや、
あまり突っ込んだことは聞かない方がいいか……。理由はいいや。それじゃあ、何で俺の家なんだ?
他に行くあてがなかったのか? ほ、ほらお前って、確か俺のクラスの小牧さんと仲が良かったよな。
どうして小牧さんじゃなくて俺なんだ?」
「……愛佳の家は、場所がバレてるから。それに」
「それに?」
「以前愛佳に、あんたが一人暮らしだって聞いたから」
こ、小牧さんってば余計なことを……ま、まあいいか、そんなことより俺は由真に、まだ聞かな
きゃならないことがある。
「だったらなおさら、どうして俺の家なんだよ。男の一人暮らしだぞ、そんなところに、仮にも女の
子のお前が泊まりに来るってのは問題大アリだろ?」
「お泊まりならわたしもよくしてるけど?」
このみさん、お願いだから余計なことは言わないで。
「自分の身は自分で守るから。もし襲ってきたら、握りつぶすからね」
握りつぶすって、ナニをですか……?
「聞きたいことはそれだけ? じゃ、部屋に案内してよ」
「い、いや、そう言われても……」
「はぁ……。もういい、自分で探す」
そう言うと由真は、荷物を持ち上げ、廊下に出た。
「ち、ちょっと待て由真」
慌てて後を追う俺とこのみ。由真はそんな俺達に構わず、トントンと階段を上る。
そして2階に上がった由真は、部屋のドアを次々と開けていく。
「ふぅん、ここはたかあきの部屋っぽいね。ここは……空き部屋みたい。こっちは……親の部屋かな?
親は今いないんだから、ベッドもあるし、ここでいいか」
そう言うと由真は、俺の両親の部屋にずかずかと入った。
「ま、待て待て由真……」
「ふぅ〜っ、これでようやく落ち着けるわ。疲れたから今日はもう寝ちゃお〜っと。……何よたかあ
き、そんなところで見てないで、さっさと出てってよ。じゃないと、ホントに握りつぶすわよ」
そう言う由真の目つきが妙に恐ろしく、俺は思わず後ずさり、部屋から出てしまった。直後、由真
がドアをバタンと閉めた。
「な、なんなんだ一体……」
呆然とする俺、それとこのみ。
でもこの時、俺はまだ知らなかった。これが単なる”はじまり”に過ぎないことを……。
つづく。
−−−−−−
どうもです。元アイス屋です。
今度は続き物にチャレンジしてみたいと思います。
因みにこのストーリーは、雄二エンド後、但し、全てのヒロインと知り合っているという設定で
展開されます。
乙です。
今後どうなってくのか楽しみです。ヘヴィな修羅場は無しでww
由真キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
うおおおお。
アイス屋さんおかえりなさいっ。
修羅場でも濡れ場でも俺は受け止めてみせるぜ。
盛り上げていくぞー!
UMAキタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!
ハーレムルート? キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
アイス屋さんなら面白さに関して不安はないですな、
続き期待してます。
突然由真が俺の家にやってきた。
由真は俺の家にしばらく泊まると勝手に決め、俺の両親の部屋に居座ってしまった。
ワケがわからん。どうなってんの?
このままアホみたいに廊下で突っ立っているのもなんなので、俺とこのみは俺の部屋に移動した。
「ねぇ、どうするのタカくん」
「どうするって言われてもなぁ……。あの調子だから、これ以上何を言ってもダメな気がする」
「もう、タカくんしっかりしてよ。あのまま、由真さんを泊めちゃってもいいの?」
「そりゃ、いいとは思わないよ。けどなぁ、だからといって追い出すのもどうかと思うし……」
「じゃ、泊めちゃうんだ」
「……事実上、そうなっちゃうかな?」
「……」
不満げな顔で俺を見るこのみ。ううっ……。
「とりあえず今日はあのまま放っておくよ。時間が経てば落ち着いて、家に帰る気になるかもしれ
ないし。ホントはこのこと、由真のご家族に連絡するべきなんだけど、俺、由真の家の住所も電話
番号も知らないからなぁ……」
「じゃあ、今夜はタカくんと由真さん二人っきり?」
「そうだけどその言い方はよせ。なんかHっぽいぞ。俺と由真はそんな関係じゃない」
「でも、二人っきりでしょ?」
「そうだけど、言っておくが由真に手を出そうなんて気は全くないぞ。これでも俺はジェントルマン
だからな。実際、このみが俺の家に泊まった時だって、Hなことなんかしなかったろ?」
「じゃあ、わたしも泊まってもいい?」
このみ、いきなり何を言う?
「ダメ。このみはちゃんと自分の家に帰れ」
「由真さんは良くてわたしはダメなの、なんで?」
「頼むからこれ以上俺を困らせないでくれよ。俺がこの状況、喜んでると思うか?」
「……だって」
「第一、泊まる理由を何て説明するんだよ。半端なウソなんて春夏さんには通用しないことくらい、
お前が一番よく知ってるだろ?」
「うう……」
「繰り返すけど、俺は由真には何もしない。神様に誓って何もしないから。
な、おかしな心配なんてしないで、とりあえず今日はもう帰ってくれ、このみ」
「……うん」
「あ、それから、このことは当分誰にも内緒な。これ以上状況を混乱させたくないから、さ」
「……うん」
真夜中。ベッドに横になっても、なかなか寝付けない俺。
うう、やっぱ気になるよなぁ。部屋が違うとはいえ、この家には俺と由真の二人っきりなわけで……。
ええい、変な事考えるな俺! 神様に誓って何もしないって、このみに言っただろうが!
はぁ……、なんか喉が渇いた。水でも飲むか。
俺は自分の部屋から出て、階段を下りようとした。その時――
「……うう……ひっく……」
由真がいる部屋からかすかに聞こえてきたのは……泣き声?
「……う、うう……ぐすっ……」
由真、泣いているのか……。
……なんだかなぁ。日頃は何かと俺に突っかかってくる由真でも、やっぱ女の子が泣いてるって
いうのは、いい気がしないなぁ。
何とかしてあげたい、とは思うけど、俺に何が出来るだろうか? ……何も思い浮かばない。
俺は、由真に気付かれないよう、忍び足で階段を下りるのだった。
朝。目覚ましが鳴るよりも早く、俺は目が覚めた。
というより、昨夜はあまりよく眠れなかった。頭がボーッとしてる。
「……よっしゃ!」
一声気合いを入れ、俺は立ちあがる。そして制服に着替え、部屋を出た。まずは顔でも洗うか。
階段を下りる直前、由真がいる部屋の前で立ち止まる。由真、起きてるかな?
俺は部屋のドアをノックした。
「由真、起きてるか?」
「……起きてる」
ドアの向こう側から聞こえる、由真の声。
「そろそろ、学校に行く仕度しないといけない時間だぞ」
「……あたし、今日は休む」
そう答える由真。学校に行く気になんてなれない、ってことか……。
「そうか……、じゃあ、朝飯はどうする? トーストくらいは出せるけど」
「……いらない」
「そ、そうか……じゃあ、俺、学校に行くから。
家の鍵、ドアの前に置いておくから、もし出かけるときは、玄関を出てすぐ右にある空の植木鉢
の中に隠しておいてくれ、な?」
「……わかった」
顔を洗って、トーストとコーヒーで朝飯を済ませる。
玄関を出たところで、このみと鉢合わせした。
「おはよう、このみ」
「あ、おはようタカくん。あ、あの、由真さんは……?」
「学校、休むってさ」
「そうなんだ……じゃあ、まだ部屋の中に?」
「まあ、な」
学校へ行く途中、いつものようにタマ姉、雄二と合流する。
二人には……由真のことはまだ話せないな。
特にタマ姉。こんな事聞いたら何言い出すか知れたもんじゃない。
「どうかした、タカ坊?」
「い、いや、別に何でも?」
やばっ! 俺、変な顔でもしてたか? あぶないあぶない。
「なんだ貴明、俺らに隠しごとでもしてるのか?」
雄二まで! 俺ってそんなに分かりやすい単純男なのか!?
「なんでもないって。昨日ちょっと夜更かしして、まだ少し眠いってくらいだよ」
「夜更かし? 夜更かしって何してたんだよ貴明? エロビデオでも見てたか?」
「お前じゃあるまいし。マンガ読んでただけだよ」
「エロマンガか?」
雄二よ、なぜエロにこだわる? 雄二だからか?
「何をしていたにせよ、夜更かしとはあまり感心しないわね。授業中に居眠りなんてしちゃダメよ」
「わ、わかってるよタマ姉」
「ふぅ、まったくもう……あら? このみも何だかボーッとしているわね。どうしたの?」
「え、わ、わたし? だ、大丈夫だよ?」
そう言ってバンザーイと手を上げるこのみ。もしかして昨日のこと気にして……。
「ふぅん……」
このとき、タマ姉の目が一瞬鋭くなったように見えたのは、俺の気のせいだろうか?
教室に入り、自分の席に着く。
「あ、あの、河野君……」
そう話しかけてきたのは、小牧さんだ。
「あ、小牧さん、おはよう」
「あ、おはようございます……。あ、あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」
戸惑い気味の小牧さん。もしかして……。
「へ、ヘンな事聞いちゃいますけど、あの、昨日の夜、お家に由真が来ませんでしたか?」
やっぱりそうだ。多分、由真の家族は、真っ先に小牧さんに連絡したんだろう。
どうしよう。小牧さんに正直に話すべきか、それとも、黙っているべきか?
「……うん、来た」
少し悩んで、俺は、他の誰にも聞こえないよう、小声でそう答えた。由真の親友の小牧さんなら、
良い相談相手になってくれるかもしれないと思ったからだ。
「やっぱり……。それで、由真は?」
「部屋に閉じこもってる。なあ、由真が家出した原因、小牧さんは聞いてる?」
「いえ、あたしも聞いてないんです」
「そうか……。ねえ小牧さん、由真に会ってやってくれないかな? 由真のヤツ、ワケを聞いても
俺には何も教えてくれないんだ。でも小牧さんなら、由真も気を許すんじゃないかな」
「そう、でしょうか……じゃあ、どうして……」
「え?」
「あ、いいえ、そうですね、そうします。河野君、早速ですけど今日の放課後、河野君のお家にお
邪魔してもいいですか?」
「ああ、是非そうしてくれ」
「はい。じゃあ、放課後」
昼休み。いつもの通り、屋上でこのみ、タマ姉、雄二と昼飯。
いつものように豪勢なタマ姉の重箱に箸を入れ、卵焼きをつまみ上げ、一口食べた時。
「タカ坊」
「ん?」
「由真さんって娘が、昨日、タカ坊の家に泊まったそうね」
ぶーーーっっ!! な、何故それを!?
「とぼけてもムダよ。全部このみから聞いたわ」
「ご、ゴメンねタカくん……」
「このみは何も悪くないわよ。悪いのはお姉ちゃんに隠しごとしてるタカ坊なんだから」
「貴明、由真って確か、何かとお前に勝負を挑んでくるあの娘だよな? いつの間にそんな関係に?」
「いや違うんだって! 俺もどうしてだかわかんないんだよ! でもあいつ強引で、それに、他に行く
あてが無いみたいだったから……」
「だからと言って、他人様の大事な娘さんを、それもご家族に何の連絡もせずに家に泊めるなんて、
非常識だとは思わなかったの? 何か間違いがあったらどうするつもり?」
「そ、そりゃあ思ったよ、まずいなって。でも、どうしようもなかったっていうか……」
「何より一番腹立たしいのは、こんな大事なことを私に黙っていたってことね。そんなに困ってるなら、
一言私に相談してくれてもいいんじゃない? 私じゃ頼りにならないってこと?」
「そうじゃない、けど、今はそっとしておくのが一番なんじゃないかって思ったから……」
「理由も分からないままでそっとしておくなんて、単なる放置じゃない。ここは多少無理にでも、家出
の理由を聞くべきでしょ。まあ、それが出来ないのがタカ坊なのよねぇ……。というわけで、タカ坊、
今日の帰り、私もタカ坊の家に行くから。私がその由真さんに事情を聞くわ」
厳しい目で俺を見ながら、タマ姉はそう言った。
ううっ、なんだかイヤな予感がするんですけど……。
つづく。
−−−−−−
どうもです。第2話です。
連投規制が厳しいせいで、思っているより話が進みません。_| ̄|●
GJ!!
これからどうなるのか俺には想像出来ません。
個人的要望としてはちゃる&よっちコンビ登場させて欲しいです。
イイヨイイヨー
お久しぶりです。
>>265-276の続きです。
完結まではもう少しかかりそうですが、全く進んでいないわけでもないので、
とりあえず、出来たところから晒していきます。
以下、7レスほど続きます。
さて午後は、お待ちかねの体育の時間。
女子更衣室でワイワイお着替えなのだが、俺は勝手がわからずに、更衣室奥の小汚いロッカーにへばりつきな
がら、コソコソ体操着を着込んでいた。
周囲は下着姿の女の子でいっぱいで、とてもじゃないが、まともに目を開けていられない。俺は精一杯の細目
で、ロッカーの中に貼り付けてある色あせた男性アイドルのシールに、視線を集中させていた。このゲジゲジ眉
毛の男、10年くらい前はテレビのドラマでよく見かけたな。今はどこにいるのだろうか。あ、いや、別に知り
たくはない。
夢の中とはいえ、草壁さんや小牧の裸を散々見ておいて今さら何だ、と思うだろう? それはもっともな意見
だが、しかし。男同士でも知らないヤツの裸を見たり見られるのは恥ずかしいのに、ここ女子更衣室では不特定
多数の女の子たちが、どっちを向いても下着姿を晒しているわけで。俺、女の体をしているけれど、本当は男な
んだよ? 痴漢行為を働いているようなものなんだよ? 恥ずかしさと罪悪感で、顔が熱くてたまらん。
今日は陸上だから、ブラがちらっと見える程度で済むのだろうが、水泳だったら、その、水着を着なくちゃな
らないから――そうだ、女子って、どうやって水着に着替えるんだっけ? ええと、小学生の頃、みんなで市民
プールに行ったときは……このみは、タオルを被って、テルテル坊主みたいな格好でこそこそと……。
「どうしたの由真? 顔が赤いよ?」
突然声をかけてきたのは、小牧だった。俺の近くで着替えていたようだが、舞い上がっていてサッパリ気がつ
かなかった。横目でチラッと見ると、彼女の白いブラジャーがモロ見え。背中に冷たい物が走り、すぐに視線を
男性アイドルのゲジゲジ眉毛に戻した。
「な、なんでもない。なんでもないから」
俺は男性アイドルにガンをくれながら言った。声が上ずっているのが自分でもわかる。
「あっ、わかったあ」
小牧は鼻でクスッと笑って、悪戯っぽい声で言った。
「こっそり“デストラ”食べてたんでしょ? 由真って、辛いの苦手なくせに、見栄を張って手を出すからぁ」
“デストラ”とは、知る人ぞ知る激辛スナックだ。口に入れただけで全身が熱くなって、極寒の地でも暖房が
いらなくなる代物だ。
小牧が誤解してくれたのは幸いだった。女の子の下着姿に照れているなんて言えるわけもないので、「ええ
と、うん、よくわかったねぇ」などと適当に返した。
「あんなのよく食べる気になるよね? 痔になんない?」
「あれ、マジヤバイって。カラシ味のゲップ出まくりで止まんないっしょ?」
周りにいる女の子たちは、“デストラ”というキーワードに反応して次々に口を開いた。
「ちっちっち。調子に乗って一息で食べるからそうなるんよ。舌の先でチビチビと、自分のペースで適度な辛さ
を楽しむのが、通の食べ方なんよ」
入り口の近くにいた笹森花梨が、腕を組みながら偉そうに言った。周囲の女子たちが、へぇーへぇーへぇーと
言いながら、ロッカーのノブを小刻みに叩いていた。
花梨の近くで、草壁さんが淡々と着替えをしているのが見えた。結局、朝のケンカから一言も口を利いていな
い。由真のバックダンサー(笑)で出てきたりと、俺のことを気にはしているみたいだけど、やはり怒りが治ま
らないのか、俺と視線すら合わせようとしない。振られて当然のことをしたわけだから、仕方ないんだけどな。
更衣室にいる女子の中で、由真(すなわち俺)の正体を知っているのは、ミルファと草壁さんだけだ。草壁さ
んが俺に復讐する気なら、この場で俺を河野貴明の姿に戻してしまえばいい。そうすれば、俺は周囲の女子に半
殺しにされて、見事目的を果たすことが出来るだろう。
でも、草壁さんはそんな素振りなど微塵も見せず、着替えを済ませると、さっさと出て行ってしまった。俺の
存在を否定されたようで、悲しいような、悔しいような。
視線を戻すと、また男性アイドルのニヤケ顔が目に入った。俺はロッカーの扉を叩きつけるように閉じた。
・
・
・
今日の体育は、女子は持久走、男子はグラウンドで野球だ。もう6月なので、水泳でも良い時期なのだが、
プールは循環装置の具合が悪く、水から大量の大腸菌が検出されたために使用禁止、なのだそうだ。
女子全員で体操をした後、二人組になってストレッチや馬飛びをやる。メニュー自体は男子とほぼ同じだが、
分量は幾分少なめで、楽なものだ。
俺は小牧とストレッチに取りかかった。俺は開脚して地べたに座り、小牧が後ろからヘナヘナと押す。男子と
比べれば、ふざけてるんじゃないかと思うくらいに非力だ。まあ、小牧のことだから、痛くしないように遠慮し
ているのかもしれないけどな。
そういえば……水泳部のヤツから聞いた話だけど、本当は、後ろからグイグイと力一杯押すのは良くないらし
いね。外部から力を加えると、逆に筋肉が萎縮して堅くなってしまうそうな。だから、本当は自分一人だけでや
らないと、柔軟運動にならないのだそうだ。
俺たちの右隣では、ミルファが草壁さんを後ろから押していた。草壁さんは転入生のため、人数が半端になっ
ている関係で、ミルファが体操の手伝いをしているのだろう……。そう思っていたら、開脚前屈運動を終えた草
壁さんが立ち上がり、ミルファと交代したではないか。ミルファが開脚して座り、草壁さんが背後から押し始め
ましたよ? ミルファが本当にメイドロボなら、体操なんかやっても意味無いだろうに。むしろ、間接部に負荷
がかかって、故障の原因になると思うのだが!?
そんなことを思いつつ、二人の様子をぼーっと見ていると、「しっかりしてよ」と小牧に叱られてしまった。
・
・
・
背中合わせになって、交代で相手を引っ張り合う運動をする。小牧が「よっこら、せっ」とオバサン臭く言い
ながら、俺を背中に引っ張り上げる。
金属バットのスコンという音がしたので、男子の方を横目で見た。野球の試合が始まる様子だ。
河野貴明(中身は由真)がショートの守備位置についていた。由真は野球をやったことがあるのだろうか?
いきなりショートで大丈夫なのか? ちなみに、セカンドは雄二。ファーストにいる鈍くさそうな老け顔の男
は、無線部の渡邊。サードにいる太った男は、写真部の中村。まったく、夢も希望もない内野陣だ。
俺が見たときは、ちょうど守備連携の確認でボールを回していたところだった。ちょっと見たところでは、由
真は捕球も送球も無難にこなしていた。
由真のヤツ、俺の体を『クソ物体』とか言っていたくせに、結構楽しんでいるみたいだな。せっかく男になっ
たんだから、男性ライフを楽しまなければ損ってか? このポジティブさは買いたいものだ。
小牧を引っ張り上げているとき、再び男子の方に目をやった。
ちょうど、早い打球に三遊間が抜かれたところだった。守備範囲の著しく狭いサードは早々に追うのを諦め、
由真は球に追いつけず、ボールは外野に抜けていった。駿足の走者は二塁に達して、ツーベースヒット。周囲で
見ている連中が、「ヘボショート!」などと野次を浴びせた。でも、今のはサードが獲ってやらんとダメだな。
小牧が俺の背中で、「ぐえぇ〜〜〜」と時代劇で斬られる悪党みたいな声で呻いていた。ほったらかしにし
て、悪い悪い。すぐに降ろしてやった。
「由真ぁ、気分でも悪いの? また、ぼーっとしちゃって」
顔を青くした小牧が、ムッとした様子で文句を言った。
「ごめん愛佳。あれよ、マラソンのペース配分について、あれこれ考え込んじゃっててさ。でも、やっぱ、集中
しないとダメだよね、あははは」
俺は、そんなことを言ってごまかすのが精一杯。
「……気になるんだ? やっぱり」
すると小牧はそう言って、口元に笑みを浮かべた。
「ええ? そ、そりゃあそうよ」
マラソンのペース配分の話かと思い、俺はそう返したのだが……。
「由真、男子の方をずーっと見てたもんね? それも、河野くんのことを……」
小牧は知っていたのだ。俺の言い訳が嘘だということを。最初からカマをかけるつもりで、俺に文句を言って
もみせたわけだ。
「な、何であんなヤツのこと! 違うって! あたしは、単に、野球が好きなの! アウト、セーフ、よよいの
よいって! そんだけのことだから! 天地神明キリスト仏陀、アッラーにも誓って!」
小牧は、由真(すなわち俺)が河野貴明に気があるのだと思っているらしい。そして、俺の口から“真相”を
言わせたいらしい。由真が河野貴明に片思いしているというのは、事実誤認も甚だしいので、誤解を解こうとし
ていろいろと弁解するのだが、すればするほど小牧のペースに嵌っていくのが自分でもわかる。手強い。
「……ふーん。で、靴箱には何を入れようとしていたの?」
小牧はニヤニヤしながら俺を詰問する。
「なにそれ?」
「今朝のアレ」
「だから違うっての! あんなヤツのこと、顔面にタバスコ擦り込みたいくらい嫌いなんだから!」
そう言いながら、俺はさっさと背を丸めて屈み、小牧に飛ぶように促した。まだ、馬飛びが残っていたのだ。
……俺、すっかり由真になりきっているな。このまま俺は由真になって、向こうの由真は河野貴明になって、
この世界でずっと生きていくんだな。由真の姿になっちゃったのなら、もう由真でいるしかないんだものな。む
しろ、河野貴明であったことなんか、さっさと忘れちゃった方が幸せなのかもしれないな。
俺の背中を飛び越えていく小牧の、柔らかい感触を感じながら、そんなことを思った。
・
・
・
男子の方を横目でチラチラ見ながら、俺は小牧を飛び越えていく。飛ぶたびに、胸の重みが肩の筋肉を引っ張
り、ブラジャーの紐が肩に食い込む。尻がデカくて腰が重く、足も短いから、今までとは感覚が全く違う。この
体で生きていくなら、早く慣れるしかないんだけど……。
これなら、このみの体になった方がまだマシだったかもな。俺より足が速いし、軽そうだし、あれこれ悩まず
に済みそうだし。
打者が思い切りの良いスイングで、投手のヘロヘロ球をジャストミート。カキーンと金属バットが叫び、ライ
ナー性の打球が一塁方向に飛んでいった。ああ、1点入るな、と思った、の、だが。
なんと、一塁の渡邊が超反応してボールに飛びつき、ダイレクトにキャッチ。ファーストライナーでアウト。
抜けたと思った二塁ランナーは、三塁を回りかけたところでズッコケた。
雄二は大声で、ショートに二塁のベースカバーを指示。
渡邊はプロの選手みたいにくるっと一回転して、二塁に矢のような送球。
由真は猛ダッシュで二塁に入り、泳ぎながらもボールをキャッチして、ダブルプレー成功。
見ていた連中が、一斉に雄叫びを上げた。
「おらっしゃあー、ファインプレー! すげえぞお前ら」
雄二が、渡邊の尻をポーンと叩いてはしゃいだ。
「鈍くさそうに見えて、渡邊やるじゃん。見直しちゃった」
河野貴明(中身は由真)も、興奮した様子で、ガッツポーズを見せながら渡邊に声をかけた。
「一言余計だ。俺はこう見えても、ボーイズリーグでは名の知れた存在だったのよ」
渡邊はオッサン顔でニタニタ笑いながら、自慢げに言った。
「何で野球辞めたんだよ? もったいねえな」
雄二が訊いた。
「だって、坊主にすんのイヤだし」
渡邊は、頭をポンポン叩きながら言った。
「坊主がイヤなら、最初から野球やるな! 軟弱者!」
中身は由真の河野貴明が、渡邊に指を突きつけて言うと、渡邊はムッとして言い返す。
「うるせー、だから辞めたんだろうが」
……どこかで見覚えがあるぞ、この光景は。俺は以前にも、どこかで、同じようなプレーをした覚えがある。
そうだ、確かに覚えがあるぞ。このプレーがあった日は……この後、打者一巡の猛攻があって、俺が体育倉庫の
屋根に大飛球を飛ばしたんだ。そして、用務員さんにハシゴを借りてボールを取ろうとしたら、マラソンで真っ
先にゴールして水を飲んでいた由真が、ちょっとしたハプニングのせいでずぶ濡れになって、うやむやのうちに
試合終了になった、あの日と同じだ……。
水……水びたし……ずぶ濡れ……。
そうだ。俺は、このみになったことがあったんだ。夢の中の話だけど。朝起きたらこのみになってて、自称彼
氏の雄二が迎えに来て、ベタベタくっついてきやがって、おまけにキスしようとしやがって、逃げようとして身
をよじって、橋から川に落ちて、そして、夢から覚めた……。
そうだ、これだ。この夢から覚めるには、水をかぶればいいんじゃないか? しかし、単にずぶ濡れになれば
いいって訳じゃない。あくまでも、“思いがけず”にならないとダメだ。最初から結果がわかっているなら、驚
いて目覚めることなどありえないんだ。だから、花壇に水を撒いている用務員さんに突撃したところで、目が覚
める保証はない。たぶん、先生や用務員さんに怒られるだけだろう。だったら、どうすればいいんだ……?
突然、隣からキャッという悲鳴が上がった。そして、女子が何やら騒ぎ始めた。
ミルファが草壁さんと馬飛びしていて、転倒したらしい。女子が集まって、ミルファに「大丈夫?」と声をか
けていた。気になったので、俺も様子を見に行ったのだが、ミルファは俺の姿を見ると、急にバツの悪そうな顔
をした。そして、「何ともない、何ともないから」と強がって言うと、膝をポンポンと叩いて立ち上がった。
「ホントに大丈夫か? 膝から落ちたんだろ?」
泥で汚れたミルファの膝小僧を見て、俺は少し呆れて言った。血は……出ていないけど、膝だから心配だ。
「あっちのファインプレーに見とれちゃっただけだから、お構いなく」
ミルファは、男子の方を顎で指して言った。
「なあ。向こうの河野貴明さ。次の打席で、打てると思う?」
俺は、何気なくミルファに訊いてみた。
「何でそんなこと聞くの?」
ミルファは、人間くさく屈伸運動をしながら言った。
「やっぱり、“自分”が活躍するかどうか気になるじゃないか」
「何言ってるんだか。姿形はそうかもしれないけど、中身は由真さんなんだよ?」
「そんなことはわかってるよ。でも、長年連れ添った俺の肉体が、チャンスで凡退して、雄二にバカにされるの
は悔しいよ。人間ってのは、そういうものなんだよ」
「体なんて、ただの“入れ物”に過ぎないと思うんだけどなあ……たかあきは、やっぱりたかあきだし、由真さ
んはやっぱり由真さんだし……」
ミルファはブツブツ独り言を言いながら、首を捻っていた。自称メイドロボのくせに、やること為すこと人間
くさすぎるんだよな、コイツは。膝から血が出ていたら、コスプレ姉ちゃん確定だったのだけど。
「……うん、わかった」
ミルファが自信満々な様子で言った。
「当ててみ?」
「芸術的な2ゴロ。連絡はなかった」
「おお、もう……」
俺が言いかけたところで、先生から集合がかかった。俺たちはダッシュで整列しに行った。
ちなみに、俺には結果はわかってるよ? 自分のことは、自分が一番よく知ってるからな。
正解はファール。今はきっと、あの時の記憶が、夢の中で再現されているんだ。俺の推測が正しければ、そう
なるはずだ。
ただし、あの時と決定的に違うのは、草壁さんとミルファがいること。それがどう影響するかは、俺にはわか
らない。俺の姿をした由真は、守備こそ無難にこなしてはいたが、打撃はどうなのだろう? 本当に大ファール
を打つ、いや、打てるのだろうか?
今日はここまでです。
誤字脱字があったらごめんなさい。
>>464 GJ。
>>「芸術的な2ゴロ。連絡はなかった」
桧山ワロタw
「チャンスでぽpフライ。連絡はなかった。」
でもよかったな。
由真が俺の家にいることは、小牧さん以外には内緒にしたかった。
だけど、俺もこのみもウソをつくのはあまり上手じゃないようで、あっさりとタマ姉にバレてしま
い、タマ姉は直接由真に会って話を聞くと言い出す始末。どうなることやら……。
放課後。
「じゃあ河野君、行きましょう」
俺は小牧さんと一緒に教室を出る。
「待てよ貴明、俺も行くぜ」
後を追ってきたのは雄二だ。
「雄二は来なくていい」
「そう言うなって、俺だって由真ちゃんのこと知らないわけでもないし、何より、親友が困っている
のを黙って見過ごすなんて、俺には出来ないワケよ」
「何が親友だよ、どうせ他人事で面白そうだから見たいだけのくせに」
「そんなことねぇってば。さ、姉貴たちが待ってるぜ」
下駄箱前では雄二の言う通り、タマ姉とこのみが待っていた。
「タカ坊、その娘は?」
小牧さんを見て、俺にそう聞くタマ姉。
「俺と同じクラスの小牧さん。由真の親友なんだ。小牧さんにも協力してもらおうと思って。
小牧さん、こっちの二人はタマ姉とこのみ。俺の幼なじみなんだ。」
「初めまして、小牧愛佳です」
「初めまして、向坂環です」
「あ、初めまして、柚原このみです」
三人が挨拶を済ませ、俺達は学校を出た。
「向坂先輩が河野君の一年上で、柚原さんは一年下、ですか」
家までの途中、話題は何故か、俺たちのことについてだった。
「そう言うこと。昔から俺にとって二人は姉妹みたいなもんでさ。だから呼び方もタマ姉、このみで」
「だからわたしも、タカくんって呼んでるんです」
「私も、タカ坊ってね」
「なんだかいいですね、そういう間柄って。うらやましいです」
「いいことばかりじゃないよ。タマ姉は何かと口うるさいし、このみも最近タマ姉に似てきたのか
あれこれ口出ししてくるし、大体、今回の件だって、関係ないのに首を突っ込んでくるし……」
「そりゃ悪うございましたわね、タカ坊」
ぎゅ〜っ!
「あいひゃひゃひゃ! た、タマ姉、い、今のはウソですウソですから、つねらないで!」
「まったく、タカ坊が自力で何とか出来ないから、私が協力してあげるんじゃない。感謝しなさい」
「は、はい……」
「ふふっ、本当に、向坂先輩は河野君のお姉さんなんですね」
「ホント、手の掛かる弟を持つと苦労するわ、小牧さん」
「ホントホント」
小牧さんとタマ姉、このみが、そう言って微笑む。すっかりうち解けてますね。よろしいこって。
家に着いた。
「ただいまー。由真、いるかー?」
玄関の扉を開けて、確認する。返事はなかったが、由真の靴があるってことは、由真が家にまだい
るってことだ。俺は靴を脱いで玄関に上がる。
「あ、みんなも上がって」
「じゃあ、お、おじゃまします」
やや緊張気味に、そう言って靴を脱ぐ小牧さん。残りの三人は勝手知ったるなんとやら。
まずは居間を見てみる。――いないな。
じゃあやっぱり、親の部屋かな? 俺は居間を出て、階段を上った。タマ姉たちもついてくる。
2階に上がり、親の部屋のドアをノックする。
「由真、いるか?」
「……うん」
由真の、元気のない返事。
「ちょっと話がしたいんだ。中に入ってもいいか?」
「……」
由真からの返事がない。うーん、どうしたものやら。
「由真、あたしだよ」
小牧さんが、ドアの向こうの由真に問いかける。
「ま、愛佳!? どうして愛佳が!?」
「昨日、由真のお母さんから電話があったの、由真があたしの家に来てないかって。
それで今朝、もしかしてと思って河野君に聞いたら、いるって言うから……。
ねぇ由真、一体どうしたっていうの? 家で何があったの?」
「……」
小牧さんの問いかけにも、由真は応じない。
「とりあえず由真の顔が見たいから、入るね? 入るよ?」
小牧さんがゆっくりとドアを開ける。何の抵抗もなく、ドアは開いた。
小牧さんが部屋に入り、俺達も後に続く。由真は俺の母親のベッドに腰掛け、顔を下に向けている。
「由真」
由真の前でしゃがみ、由真の顔を見る小牧さん。
「ねぇ由真、お願い、教えて? 何があったの?」
優しい声で、由真に問いかける小牧さん。
「由真のお母さん、とても心配そうだったよ。家に連絡、まだしてないんでしょ? せめて電話で、
友達の家にいるってことだけでも伝えてあげようよ、ね?」
「……そんなはずない」
「え?」
「愛佳、悪いけどあたしのことはほっといて。あたしは当分、家には帰らないし電話もしたくない」
「由真……そんな……」
「それから、あたしがここにいることも絶対秘密にして。あの人に居場所を知られたら、何をしでか
すかわかったもんじゃないから。そしたらたかあきにも迷惑がかかっちゃうし……」
「ちょっといいかしら」
それまで黙って話を聞いていたタマ姉が、そう言って由真に近づく。
「まずは自己紹介しておくわ。私は向坂環。タカ坊――河野貴明の幼なじみで、まあ姉代わりって
ところね。
で、由真さん。今あなた、タカ坊に迷惑がかかるかもって言ってたけれど、今の時点で十分タカ坊
に迷惑をかけていること、ちゃんと理解している?」
「……」
「あなたが何故家出をしたのか、どうやら聞いても無駄のようだから今はいいわ。でも何故タカ坊の家
に来たの? この家は今、タカ坊の一人住まいなのよ。そんな所にあなたが押し掛けることがどれだけ
非常識か、落ち着いて考えればわかることでしょ?」
「……」
「他に行くあてがないなら、よかったら私の家に来ない? うちは空き部屋も幾つかあるし、あなたが
居たいだけ居ても構わないわよ」
「お、おいおい姉貴、何言い出すんだよ?」
「雄二は黙ってなさい。ね、どうかしら由真さん。由真さんさえよかったら、私から由真さんのご家族
に連絡して、当分の間、うちに居られるようにご両親を説得してあげるけど?」
「……放っておいて」
「由真さん?」
「たかあきの幼なじみか姉代わりか知らないけど、あんたには関係ない話でしょ。偉そうに首を突っ
込まないでよ! 何様のつもりよ!?」
由真は顔を上げ、タマ姉をにらむ。
「これはあたしとたかあきの問題でしょ! あたしがたかあきの家に来て、たかあきはあたしを追い
出さなかった。だからあたしはここにいるの!」
「いや、それは由真が強引に……」
「たかあきは黙ってて!」
そ、そんな無茶苦茶な……
「それとも何、あたしがたかあきの家にいることがそんなに気に入らない? 幼なじみとか言ってる
けど、要は嫉妬? そっちのおチビちゃんといいあんたといい、たかあきって結構モテるんだね」
「お、おチビちゃん……」
由真の言葉にショックのこのみ。頑張れ、負けるな、背はまだ伸びるぞ、多分。
「そうじゃないってんなら、あんたには関係ないでしょ? あたしとたかあきが同じ家に住んでいよ
うが、家の中で何してようが、家族でも恋人でもないあんたに文句言われる筋合いなんてないわよ。
あたしの勝手でしょ!!」
な、何げに挑発的なこと言ってるよ由真のやつ。「家の中で何してようが」って。俺には「握り
つぶす」とか言ったクセに……。
「……勝手、そう、勝手ね……」
そう呟くタマ姉の声のトーンがやけに低い。もしかして、怒った、のか?
「……勝手、なるほど、確かにそうね。あなたの言うとおりだわ」
え? タマ姉、認めちゃうの?
「わかった? なら、さっさと出てって……」
勝ち誇ったような笑みを浮かべてそう言う由真。しかし――
「なら、私も勝手にさせてもらうわ。タカ坊、しばらくの間、私もここに住むから」
「はぁっ!?」
タマ姉、今、何とおっしゃいました!?
「そうと決まれば善は急げね。とりあえず着替えとか必要な物を取りに戻らなきゃ。部屋は、そうね、
由真さんが居るこの部屋、おじさまのベッドが空いてるから、私もこの部屋にするわね」
「ち、ちょっと待ちなさいよ! 何勝手なこと言ってるのよ!?」
「ええ、勝手なことよ。あなたも勝手にしてるんだから、私も勝手にするだけよ。別に何の問題も
ないでしょ。そうよね、タカ坊」
「そ、そうよねって言われても……」
「それとも、由真さんはよくて私は駄目な理由でもある?」
「そ、そんなのは、別に……」
「じゃ、大丈夫ね。そう言うわけだから雄二、しばらくは家のこと、お願いね」
「合点承知! まかしとけ姉貴!!」
いやに上機嫌な雄二。タマ姉から解放されるからって浮かれてやがるな。
「た、タマお姉ちゃん本気なの?」
「ええ、そうよ。じゃあ、一旦家に帰るわね。あ、そうだ、夕飯の材料も買わなきゃいけないわね。
ちょっと商店街に寄って戻るから、待っててね。じゃ、帰るわよ雄二」
そう言ってタマ姉は雄二を連れて出ていった。
「な、なんなのよ、あの人……?」
呆然とする由真。まだわかってないな、お前がタマ姉を本気にさせてしまったのだと。
つづく。
−−−−−−
どうもです。第3話です。
連投規制って解除されたのでしょうか? 夢の迷い道さんは9連投してるし?
解除されたらしいですね。
にしてもこの話、タカ坊弱いよタカ坊w
timecount=12
timeclose=5
になったらしい。
12レスならさすがに早朝でもなければ大丈夫だと思う。
GJです。貴明ガンバレよ。
ブラボゥ。
次は誰が住み着くのか楽しm(ry
GJ!!
この調子で全員河野家に住まわせてほしいな
つ【ビューティフル・ドリーマー】
納得のいく理由があればね。
話の整合性はつけて。
GJですたい。ヘタレ臭漂うタカ坊が哀れだw
まぁ>476は軽いジョークなんでw
作者さんは気にせずにがんばってね〜
また、楽しみにしてます
突然スレ流れと関係ないカキコで申し訳ないのだが、最近東鳩2を
コンプして、SS探しててここにたどりついたモンです。
このスレの作品数を見ても、世間の流れを見ても、東鳩2における
萌えの双璧はタマ姉と委員ちょということで認識されてるみたいなんだが、
実は、漏れが攻略対象キャラの中で苦手な方から二人がこの二人
だったりするんだわ。
我ながら、何たるひねくれ具合だ、って思うけどな。
で、マイベストはかもりん(以下るーこ、由真って感じ)なんだけど、
かもりんSSって、あんま無いのね…。
>480
是非自分で書いてみてくださいな。
SS書くのに免許もいりませんし、無ければ作る。
これが同人魂かと
>480
草壁さんスキーの漏れと友達になりましょうw
人気の低いキャラって書く人も読む人も少ないから、出回りにくいのよね〜
>482
まぁ、言いたかないけど貴明×愛佳はお腹いっぱい
このみとか、このみとか、このみとかもっと愛してくれとw
>>480 テンプレのSS集めてるとこから探しなさい・・・ってあれ?
ここのSS全部載せてるサイトってテンプレに入ってなかったっけ?
ここって本番シーンOKなんだっけ?
板自体は21禁だけど。
>>484 このスレの
>>48で初登場したからテンプレには入ってない。
>>485 全く問題ない。最近めっきり減ったがこのスレが出来た頃はむしろエロのほうが多かったくらいだ。
かもりんと春夏さんのエロSSマダー?(・∀・ )っノシ凵⌒☆ちんちん
こんどからテンプレにエロOKを入れるべきだな。
488 :
415:2005/05/04(水) 22:10:42 ID:8Eormkn80
わんばんこ。只今ない頭を捻って後編書いてる最中でつ。予告した通りもうなし崩し的に
エロに突入してる真っ最中なのだけど大丈夫かな・・・何とか不自然になんないように考
えてはいるつもりだけど。この分だと次スレまでずれ込むかもしれませんけどあんまり期
待しないで待ってて。この後どうなるか、それは最後のタマ姉のセリフにヒントを隠して
ありまつ。はてさてタカ棒がいかがあいなりますことやら。
>471
GJ!タマ姉が話をつければ、このみもお泊りOKになりそうだw
続き楽しみにしてます。
勃起した
「「「「「乾杯〜!!!!」」」」」
小さな声で言いながら互いにグラスを軽くあわせる。
修学旅行一日目の日程が全て終わり既に消灯時間も過ぎていた。
本当のお楽しみはこれからであり、眠そうな素振りを見せるものはない…一人を除いて。
「ふぁ〜…うにゅにゅ…」
「このみちゃん大丈夫?眠たかったら無理しなくていいのよ」
クラスメートの一人が苦笑混じりに柚原このみに話しかける。
「ね、眠たくなんかないよ〜」
このみは目をこすりながらそう答える。
そういいつつ上まぶたと下まぶたが今にもくっつきそうだ。
「あんたは何時まで経っても子供ね」
一年からのクラスメートであり、このみの親友である小牧郁乃が皮肉な口調で言い放つ。
しかし、その口調とは裏腹に彼女の瞳は優しくこのみを見ている。
「このみ子供じゃないも〜ん」
このみは頬をぷっとふくらませ口をとがらす。
「ハイハイ、子供はみんなそう言うよ」
郁乃はからかい含みの口調でこのみのふくらんだ頬を軽くつつく。
「うぅ〜郁ちゃんのいじわる〜」
このみはプィっと郁乃から顔を背ける。
そんな二人の様子を見ながら他のクラスメートもクスクス笑う。
このみと郁乃の掛け合いは既に2-Aの名物になっていた。
誰にでも明るく接するこのみは既にクラスの(特に女子の)マスコット的存在だし、
常にクールで教師にすらズバズバ物を言う郁乃は2-Aのゴッド姉ちゃんの異名を確立していた。
「このみちゃん、何時までもふくれてないで機嫌直しなよ〜」
「さぁさぁ、どんどん飲んで飲んで」
クラスメートに勧められるままに、このみはキュ〜っとグラスに注がれたお酒を飲み干す。
「お、いい飲みっぷり。ささ、もう一杯。」
さらに注がれたお酒をキュキューっと一気飲みするこのみ。
「ぷっはーーーーーー…えへへ〜美味しいね〜」
頬を桜色に染めながらニマっと微笑むこのみ。
「あんた、あんまり飲み過ぎて明日二日酔いになっても知らないよ」
こっちはなめるようにちびちびと飲んでいる郁乃がこのみのハイペースな飲みっぷりに呆れたように言う。
「えへへ〜だいじょぶでありますよ、隊長〜」
三杯目の飲み干したこのみはふにゃふにゃ笑いながら敬礼のポーズを取る。
「それより郁ちゃん、全然飲んで無いでありますよ?」
「わ、私は自分のペースで飲むからいいのよ、ほっといて」
こんどは郁乃がプイっとそっぽを向く。
「ほっほ〜ぅ…郁ちゃんは実はお酒が飲めない人なのでありますな?」
「なっ、なにを…」
郁乃はキッっとこのみをにらみつける。
「ふふ〜ん、そんな顔をしても怖くないでありますよ〜だ」
このみはべーっと舌を出す。
「こ、この酔っぱらいめ〜!!」
「そっか〜、郁ちゃんはお酒飲めないんだ、へぇ〜?、ふぅ〜?、ほぉ〜?」
「なによ、あんた。言いたいことあるならはっきり言ったら?」
このみの意味ありげな言葉にカッチンくる郁乃。
「郁ちゃんはいっつもこのみの事を子供扱いするのに、自分はお酒もまとも飲めないんだ〜なんかガッカリでありますよ〜」
ゴキュゴキュゴキュゴキュ
やおらに手に持ったコップのお酒を一気に呷る郁乃。
「ぶはぁ…コレで文句ない?」
眉を顰めながらこのみを睨み付ける郁乃。
「一杯程度では話にならないでありますよ、隊・長・殿」
戯けるようにいいながら郁乃の空になったコップにトクトクとお酒を注ぐこのみ。
「じゃ、じゃあどうしろってのよ?」
そう言う郁乃の白い肌がみるみる桜色に染まっていく。
もう酔いが回ってきたようだ。
「えへ〜このみと飲み比べ勝負するでありますよ」
「飲み比べ勝負?」
「このみと郁ちゃんで交互にコップのお酒を飲み干していくであります」
「ふむふむ…」
「先に潰れた方の負け、そして負けた方は勝った方の言うことを何でも一つ聞くでありますよ〜」
「むうう〜…よ、よし受けてやるろ。もしあんらが負けらら明日一日私の荷物持ちをさせてやるろ〜!!」
既にろれつが回らなくなっている程酔い始めている郁乃は、それでも威勢良く啖呵を切る。
「そう言うことは勝ってからいうでありますよ、隊長殿」
このみは不敵な笑みを浮かべてコップを持つ。
「じゃあ先ず、このみからいくであります」
ゴキュゴキュゴキュゴキュ
「ぷはぁ、美味しいでありますよ〜」
あっという間に飲み干し、ニヤリっと郁乃を見る。
ゴキュゴキュ…ゴキュ…ゴキュ……ゴキュ…ゴキュ
「うっ…ごほごへげへ!!」
飲み干したのは良いが激しく咽せる郁乃。
「ぜは〜ぜは〜、の…飲んだわよ〜!!」
少し涙目になってこのみに空になったコップを見せる郁乃。
「ふふん、なかなかやるでありますな」
このみはやや赤くはなっているが、まだまだ余裕な表情で再び自分のコップに酒を注ぐ。
ゴキュゴキュゴキュゴキュ
そのまま先程とほぼ変わらないペースでコップの酒を飲み干してしまう。
「えへへ〜うまうまでありますよ〜」
「…………(マジ?)」
このみのザルっぷりに流石に自分が不利なことを悟る郁乃。
「ささ、次は郁ちゃん隊長の番ですよ〜」
このみはコップになみなみとお酒を注ぐと郁乃の方にさしやる。
「う゛っ……」
思いっきり嫌な顔をする郁乃。
そろそろ限界らしいが、それでも意地でコップをもち口に近づける。
ゴ…キュ…ゴ……キュ……ゴ…
三分の一ほど空けたところで郁乃の顔がサーっと青ざめていく。
酸っぱい物が胃の方から競り上がってくるのをはっきりと感じ始める
「ま…」
「ま?」
「参り…まし…たうぷぇ!」
郁乃はそれだけ言うと口を押さえて慌てて洗面所へと走り出す。
「えへへ〜大 勝 利 !!」
このみは高々とVサインをだして勝利宣言をする。
「さて、郁ちゃんをどうしてあげましょうかねぇ〜」
このみは郁乃が閉じこもったままの洗面所の扉を見ながらニンマリと微笑む。
その瞳の色がやや怪しげな物であったことにクラスメートは誰も気がつかなかった。
−続く−
とりあえず以上であります。
後編は郁乃スレでかいたちょこっと書いた866みたいな感じになればいいかと思っております。
失礼いたしました。
期待しとるぞ
朝。今日は大寝坊をしたせいでこのみにすら置いていかれ、学校まで全力疾走を余儀なくされた。
いつも通りの坂を死に物狂いで駆け上がる俺の背後から、尋常ではない気配が漂ってきた。
驚いて振り向こうとしたその瞬間、俺の頭上を何者かが飛び越えていった。
一瞬で俺の目の前に来た『何か』。俺の頭上を飛び越えたということだけでも驚きだが、今目の前にいる『何か』は、息一つ乱さずに俺の前に立っている。
そして何より、俺はその『何か』に見覚えがあった。何故なら、その『何か』とは…
「よっ、おはよ、貴明!」
由真―――多分、俺の彼女。だからだ。
「ゆ、由真ぁ!?」
「そーよ、何?どしたの?」
「い、いや、どーしたとかどーしないとか以前にその……」
「?あー、この格好?この格好なんだけどねー、アタシなっちゃったんだぁ〜」
「なっちゃった?何にだよ?」
「何にって… ダ ニ エ ル に 決 ま っ て る で し ょ ?」
そういった由真の体は、嫌にムキムキの、まるで日曜朝8時絶賛放送中のスッパァァァ、ヘィロォォォゥタァァァァイム!!!に出てくる鬼さんの様だった。
「?!!はあああぁぁぁあああは!!? だ、ダニエル!?お前、ダニエルにはならないって…!」
「イヤー、こないだアンタと久しぶりに競争したら負けちゃったじゃない?」
「ん?あ、ああ。まぁな。」
そう。俺は数日前久しぶりに由真と登校時と下校時に競争をしたんだ。
そのときは戦いを忘れていた由真が二回とも俺に負けるという苦汁を舐める結果に終わったんだった。
「それとダニエルに何の関係があるんだよ!?」
「うん、そん時負けたのがどうしても許せなくて鍛えてたのね、そしたらこんなんなっちゃって…あはは」
「あははって…ってか鍛えりゃ誰でもダニエルになれるのか?」
「そういうわけではない。」
「うわ、じいさん!?」
「あ、おじいちゃん。」
「由真よ、よくぞダニエルになったな…!わしは、ワシは…!!」
「あーもう、泣かないでよー…」
「いや、じいさん…そもそもダニエルって…」
「おお、その話じゃな。ダニエルというのはな、長瀬の血を引くものが鍛え抜かれた心と体をさらに鍛えて鍛えまくって、初めておに…ダニエルになれるんじゃ」
「さっき一瞬鬼って」
「ダニエルは人間の最終進化系なんじゃー!」
「いやさっき鬼って」
「由真!あとは任せた!!」
「了解ー。(シュッ)」
「お前日曜日は早起き?」
「大体お昼まで寝っぱなし。」
「さいですか。」
「さて、とぉ…」
そう言った由真から闘気が溢れてくる。
「お、おい…やめろよ、やめろ!やめっ…」
「ウェーーーーーーーーーーーーイ!!!!!!!」
「ギャーーーーーーーーー!!!!」
そして目が覚めた。
時計を見る。
遅刻寸前だ。玄関でこのみの声が聞こえる。
「タカくーん、遅刻しちゃいそうだから先に行ってるねー。」
初めて書いてみた。
正直勢いだけに身を任せた。
反省はしていない。
もう書くつもりは無い。
警察だけは勘弁な。
>>505 夢オチでもワロタw
何気に最近のSSは由真出てくるな、よいかなよいかな。
>505
GJ!!
ワラカせてもらいました
またよろしくです
>>505 ムキムキ由真キモスwww
おとなしく可愛いお嫁さんになってくれ
何か特殊部隊やら諜報機関、極右にKKKと、とんでもないのばかりだな。
>500
頑張れ。
二箇所指摘すると、「来須川」ではなく「来栖川」。
それと綾香の台詞だが「よろしかった」というのは日本語として間違っている。
正しくは「よろしいですよね」だ。帰国子女だからいいんだよ!
と言われればそれまでだが。
>>506 山本晋也監督に通報されたくなかったらもっと書け
セバスチャンの事、時々でいいから思い出してあげてください。
親友の小牧さんが会いに来ても、由真は何も打ち明けなかった。
タマ姉は俺と由真との二人暮らしに問題があると言い、せめてタマ姉の家に行かないかと由真を説得
するが、由真は「あたしの勝手でしょ!」と突っぱねる。これがいけなかった。
そっちがそうならこっちもと、タマ姉は自分も俺の家に住むと勝手に決めてしまったのだ。
タマ姉と雄二が家に帰り(タマ姉は戻ってくるけど)、すっかり日が暮れて。
由真から家出の事情を聞くという当初の目的は、結局、達成できなかったわけで。
「じゃああたし、そろそろ帰ります。由真、またね」
「……あ」
部屋を出ようとする小牧さんに、何か言いたげな由真。
「ん? 由真、何?」
「……その……心配、かけて、ごめん」
「うん、あたしはいいよ。
とりあえず、ご家族にはあたしの方から、信頼できる人の所にいるって伝えておくね。
由真、あまり河野君や向坂先輩に迷惑掛けちゃダメだよ」
「……うん」
「あ、小牧さん」
由真の部屋を出て、階段を下りる小牧さんを追いかける。
「はい?」
「今日は、ありがとうな。
で、さ、出来れば、これからも由真に会いに来てやってくれないかな?」
「あたしもそれ、河野君にお願いしようと思ってました。これからも河野君のお家にお邪魔しても
いいですかって?」
「え? あ、ああ、いいよ。っていうか、お願いします」
「はい、わかりました。今度はお菓子でも持ってきますね」
そう言って笑顔を浮かべる小牧さん。やっぱ、持つべきものは友達だよな。
「それから、河野君」
「何?」
「由真のこと、お願いします。
由真がどうして河野君の家に来たのか、結局わかりませんでしたけど、多分由真、河野君に甘えて
るって言うか、頼ってるっていうか……とにかく、河野君ならって思っているからだって思うんです」
「そうかな? どっちかというと俺、由真には嫌われていると思ってたけど……」
「そんなことないです。きっと由真は、河野君のこと好きなんです」
「ええっ!? ま、マジ!?」
「や、や、その、ヘンな意味じゃなくて、その、信頼できる友達としてっていうか……
だって河野君って、優しいから。あたしも色々手伝ってもらったりしてるし……頼れるし……
あ、あたし、何言ってるんだろ……そ、その、とにかく、由真を頼みますね?」
「う、うん。
あ、帰るなら送っていこうか? ほら、外はもう暗いし」
「大丈夫ですよ、一人で帰れますから。それじゃ河野君、お邪魔しました」
小牧さんを見送った後、俺は居間のソファーに腰掛けていた。
由真が俺を頼ってる、か……。どうなんだろ、実際?
「タカくん」
後ろからこのみの声。いけね、このみがまだいること、忘れてた。
「おう、このみもそろそろ帰るか?」
振り返ってそう尋ねる俺。このみの顔を見ると、何やら不満げ。
「タカくん、タマお姉ちゃんまでタカくんの家に泊まるんだね」
「まあ、そうなっちまったな」
「じゃあやっぱり、このみもタカくんの家に泊まりたい! タマお姉ちゃんが良くてこのみがダメ
なんておかしいもん!」
「だから、それは前にも言っただろ? お前はちゃんと家に帰って……」
「おかしいもん! タマお姉ちゃんだけずるいもん!!」
「このみ……」
ふくれっ面で訴えるこのみ。うう、困ったなぁ……。
「ただいまー」
廊下からタマ姉の声。間もなくタマ姉が居間にやってきた。両手には恐らく着替えなどが入った鞄
と、大根やらネギやらがはみ出た大きな買い物袋。
「タカ坊、ただいま。遅くなってごめんね。すぐ晩ご飯作るから。
このみもまだいたのね。よかったらこのみも晩ご飯、食べていく?」
タマ姉はそう言いながらキッチンに行き、テーブルの上に買い物袋をドサッと載せる。
「タマお姉ちゃん、わたしもタカくんの家に泊まりたい! ねぇいいでしょ? タマお姉ちゃんから
もタカくんにお願いしてよ」
まるで子供が母親に何かをねだるように、タマ姉の服の裾をつかんでそう訴えるこのみ。
そしてタマ姉も、そんな子供を優しく諭すようにこう言った。
「このみ。このみはちゃんと家に帰らなきゃ駄目よ」
「どうして!? タマお姉ちゃんだけずるいよ!」
「うーん、私はほら、タカ坊と由真さんの監督役としてここに住むわけだから……」
「そんな理由なんて関係ないもん! ずるいよ!」
「このみ……」
困った顔でこのみを見るタマ姉。
「このみの家はすぐ隣なんだから、いつでもタカ坊に会いに来られるでしょ? それに、そうね、
例えば週末とか休みの前日なら、お泊まりに来てもいいわよ。それならどう?」
「うう……」
まだ不満げなこのみ。
「じゃあ、このみ、ちょっとこっちにきて」
そう言ってタマ姉は、このみと共に廊下に出る。なんだ?
廊下に出た二人は、小声でなにやら話をしているようだが、その内容はさっぱり聞こえない。気に
はなるけど、二人だけで廊下に出たってことは、俺には聞かれたくない話だろうから、盗み聞きなど
せず待っていた方がいいだろう。
やがて、内緒話を終えた二人が居間に戻ってきた。
「というわけだから、わかったわね、このみ」
「うん。わたし、タマお姉ちゃんのこと信じてるから」
なんだかわからないが、とりあえずこのみは納得したらしい。
「じゃあこのみ、晩ご飯の仕度、手伝ってくれる?」
「うん! あ、その前にわたし、お母さんに伝えてくるね、タカくんの家でご飯食べるって」
そう言ってこのみは、ダッシュで出ていった。
「助かったよタマ姉。このみのこと説得してくれて」
「うーん、説得というか、約束、かな?」
「約束?」
「そ、約束。でも、タカ坊には教えてあげない」
むー、そう言われると激しく気になるのですが。
程なくこのみが戻ってきて、タマ姉とこのみは台所でお料理開始。
タマ姉がメイン、このみがアシスタントといった感じで、二人は楽しそうにあれこれ話しながら
作業を進める。
なんとなく自分がお邪魔な気がした俺は、居間を出て二階に上がった。
「たかあき」
由真だ。部屋の扉を開け、顔を覗かせている。
「由真、どうした?」
「……さっきの人、向坂さん、だっけ? やっぱり戻ってきたんだ」
「ああ、今このみと一緒に晩ご飯作ってる」
「……そう」
「由真、びっくりしただろ? タマ姉って昔からああいう人でさ、一度言い出したら誰が何を言って
も絶対その通りにしないと気が済まないんだ。俺もガキの頃は、タマ姉に振り回されてよくひどい目
にあったよ」
「怒ってるのかな、あたしのこと?」
何か由真、タマ姉のこと、恐れている?
「うーん、アレは怒ってると言うより、してやったり、って感じだと思う。
これから同じ部屋で寝泊まりすることになるけど、まあ根は決して悪い人じゃないから、よろしく
頼むな」
「……うん」
「あ、そうだ由真、晩ご飯が出来るまでの間、ゲームでもしないか?
ほら、前にゲーセンでやったあの格ゲーの移植版、あるぜ。どうよ、久々に勝負ってのは?」
「たかあき……。
う、うん、よーし、いいわよ、その勝負、受けてたつ!」
うん、少しはいつもの由真に戻ったみたいだ。やっぱ由真はこうじゃないと。
「うき〜っ! 何よそのコンボは!?」
「無防備にジャンプで飛び込んでくる方が悪い!」
「あ、こら、避けるな!」
「そんなミエミエの技、食らうかってんだ!」
「だからビームを撃つなビームを!」
「これがこいつの持ち味だっての!」
「ち、ちくしょ〜! こうなったら究極最終奥義……」
「甘い!」
由真は、当たれば超特大ダメージを与えられる技を繰り出すが、この技はかわすのがそう難しくも
なく、また発動直後に全くの無防備状態になるという欠点がある。それを見逃す俺ではない。技を
かわし、無防備な相手めがけて、とどめの超必殺技! 決まった!
『YOU WIN!!』
『HAHAHA! MEの勝ちDEATH!!』
俺のキャラが勝利のポーズを決める。
「むき〜っ! ちょ〜むかつく〜〜〜っ!! 何なのよ、何でこんなにあっさり負けるのよ!?
あ、さてはたかあき、あたしのコントローラに何か細工してるでしょ!?」
「んなことしないっての。実力の差だよ実力の」
「信用できない! あんたのと交換して!」
「別にいいけど」
コントローラを入れ替えて、再戦。
結果、また俺の勝ち。
『HAHAHA! YOUは弱いDEATHネ〜!!』
再び勝利のポーズを決める俺のキャラ。
「うわ〜ん! どうして負けるのよ〜!?
そいつずるい! ずる過ぎ! もうたかあき、そのマッチョハゲオヤジ使うの禁止!!」
今度はキャラのせいですか。
キャラを変えて、再戦。
結果、また俺の勝ち。
『ホ〜ッホッホッホ! わたくしに勝とうなんて100万年早いザマス!!』
「そいつも禁止!」
またキャラを変えて、再戦。
結果、また俺の勝ち。
『修行が足りぬのう、もっと精進せい』
「そいつも禁止!」
またキャラを変えて、再戦。
結果、また俺の勝ち。
『やめてよね。僕が本気を出したら、君がかなうはずないだろ』
「あたしと同じキャラ使うな!」
それじゃどうしろと?
「もういい! やめやめ! 以前から思ってたけどこれってクソゲーよ! ゲームバランス悪いし、
グラフィックもイマイチだし、何よりレスポンスが最悪! もう二度とやんない!
たかあき、何か他にゲームないの?」
そう言って由真は、ゲームソフトの入った棚を物色する。
と、由真が一本のゲームソフトを取り出し……
「ん、なにこれ?『まじかるハートフルデイズ』?」
げぇっ!? そ、それは、そのソフトはまずい!
以前雄二が「現実の女がそんなに苦手なら、まずはこれで頭を鍛えろ!」とか言って置いていった、
い、いわゆるギャルゲー……。
「ゆ、由真、それは対戦ものじゃないから……」
「知らないタイトル、どんなゲームなんだろ? 起動してみよっと」
俺の制止もむなしく、ゲームは起動した。
まずはオープニングムービー。『ラブラブ』だの『キュンキュン』だの、聞くもこっ恥ずかしい歌
に合わせて、ヒロイン達が次々登場。
「女の子ばっかりだね。そういう対戦ものなのかな?」
由真さん、まだわかっていません。
そしてタイトル画面。『スタートボタンを押してね!』の文字が点滅する。
「スタートボタンね。うん、それじゃやってみようか。あたしが1Pで、たかあきが2Pね」
由真さん、このゲームに二人同時プレイなんてないんですが……。
由真がスタートボタンを押し、そして……
『おにいちゃ〜〜〜ん! 朝だよ! 早く起きてよ〜!』
女の子の声に合わせて、画面にはアニメ調の女の子が布団をはぎ取る絵が表示される。
「な、なにコレ?」
これが対戦ゲームでないことにようやく気付く由真。でも由真は何故かコントローラを手放さない。
「由真、そろそろ違うゲームを……」
しかし、俺の言葉は由真の耳に届かず、そして物語は、進んでいく。
「……血の繋がらない義理の妹に、幼なじみのクラスメイト、美人の新米女教師に、今度は親同士が
勝手に決めた許嫁の転校生って……なにこの、男が主人公しかいない世界は?」
それでいいんですよ、だってそういうゲームだもん。
「……はっは〜ん、コレがいわゆる”萌え”ってヤツか」
振り返って俺を見る由真の目が、蔑みに満ちあふれている。
「たかあき」
「な、なに?」
「萌えなんだ。萌え萌えなんだ」
「ち、違うそ!! これは雄二のヤツが……」
「ごまかすなんて、おにいちゃんひどい!」
「気色悪い声出すな! モノマネのつもりか!? 全然似てねーよ!」
「そっかー。たかあきは萌え萌え萌子ちゃんの方がいいのかー」
「お前よかよっぽどマシだよ!」
「あ、カミングアウトした」
「してねーよ!! もういいから他のゲームにしようって!」
「たかあきったら必死だね、ププッ。まあまあいいから、もうちょっとやらせてよ。次はどんな萌え
っ子ちゃんが登場するのかな〜♪」
「タカ坊〜! 由真さ〜ん! ご飯出来たから降りてきなさ〜い!」
タマ姉の声が聞こえる。
「ほ、ほら由真、メシ出来たってさ。な、行こうぜ」
由真の背中を押して、部屋を出る。
「たかあき、ご飯食べたら続きやるからね☆」
か、勘弁してください……。
つづく。
どうもです。第4話です。
最近「スクールデイズ」というエロゲにはまってしまった作者であります。
色々衝撃的なこのソフト、SSに悪影響がないよう気を付けなくちゃ(w
>>505さんGJです!!
オレも以前、「仮面ライダー環鬼」ってネタものを書いてみようと思ったことがあります(w
最高だ、由真。タマ姉よりずっとry
東鳩2にスクイズを混ぜると、このみのなく頃に になる罠…
アー嫌なもの思い出した…
ともあれGJ、つづき期待してます、できたら穏やかな展開で(w
そ〜れ〜が き〜み〜の たまき〜
このみの哭く頃に・・・
, *⌒´`*、
! i! (((ノリ)〉 |
.W!(i|゚ ヮ゚ノW、 「わたしの哭きは…牌に命を刻んでいくんだよ」
⊂)不iつ 「タカくん、背中が煤けてるよ」
く/_|〉
し'ノ
>>521 一人だけキャラがわかった。
キ ○ ・ ヤ ○ ト がいる・・・!
そら強いわ
ギャルゲキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
>>521 スーパーコディキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
「なら倒すしかないじゃないか!」
>492-496の後編を投下します。
セクシャルな表現がほとんどですので、そういうのがお嫌いな方は
そのままスルーしてください。
では、参ります
1192つくろうじんぎすかーん♪
794うぐいすじんぎすか−ん♪
1941っ発じんぎるか−ん♪
ひつじ ひつじ ひつじ肉〜♪
「うんむ…うぁ…頭いた…」
郁乃は喉の渇きを覚えて目を覚ました。
しん…と静まった室内。
コッチ、コッチ、コッチ、コッチと壁に掛けられた時計が時を刻む音だけが妙にはっきり響いていた。
いつの間にか宴会はお開きになってしまっていたようだ。
このみと飲み比べに敗北し、トイレで出す物を出した後、そのまま布団に倒れ込んだところまでしか記憶がない。
『まさかこのみがあそこまで酒に強かったとは…不覚』
ブルル…
『ちょっと飲み過ぎちゃったかな…』
郁乃は急に感じはじめた尿意に苦笑しながら、トイレに行く為に起きあがろうとする。
『?』
布団から起きあがろうとするが、体が思うように動かない。
「郁ちゃ〜ん♪」
どこからともなく聞き慣れたこのみの声が聞たかと思うと、いきなり自分の寝ている布団の中から何かが出てきた。
「えへへ〜目が覚めたんだ?」
それはこのみの頭だった。
「あんた又勝手に人の布団の中に…」
郁乃とこのみは互いにお泊まりあいっこをよくするが、このみは自分の家でも郁乃の家でも、
気がつけば何時も郁乃の布団の中に入り込んでいる。
郁乃は仕方ないと苦笑いながらもう一度起きあがろうとするが、やはり体が動かない。
「…あれ?」
「どうしたの?郁ちゃん」
「なんか起きあがれない…??」
「ああ、それはねぇ」
このみはクスクス笑いながら被さっていた掛け布団を払いのける。
「!?」
郁乃はようやく理解できた。
彼女の両腕は後ろに回され紐のような物でがっちり縛り上げられていたのだ。
両足も足首で縛り上げられており、これでは立ち上がれないのも無理はなかった。
「えへへ〜♪」
このみがニッコリ笑いながら自分の上に馬乗りになるのを見て、ようやく郁乃の硬直が解ける。
「ちょ、何馬鹿なことやってんの!早くどきなさい!ほどきなさい!!」
郁乃はじたばたしながら唯一自由になる顔を激しく左右に振る。
妙に潤んだ瞳をしたこのみは、スっと右手を郁乃の左頬から耳に這わせる。
郁乃はそれだけでビクっと体を震わせる。
「な、なによ、あんたまだ酔っぱらってるの?冗談はやめなさ…」
このみは無言のままいきなり郁乃の唇に自分の唇をあわせてくる。
一瞬、プンっと強い酒の残り香が郁乃の鼻をついた。
「むぐぅ!!??」
郁乃の頭の中は一瞬何が起こったのか理解できず真っ白になる。
が、このみの舌が郁乃の口唇を割って侵入してくるのを感じると、
本能的に歯を噛み合わせ、防御態勢に入る。
そしてこのみから逃げるため、なんとか顔を背けようとする。
しかしこのみは左手も同じように郁乃の顔に這わせると顔を背けられないようにがっちり固定する。
「むーむー!むーむーむー!!」
郁乃はこのみの唇をもぎ離そうとするが、このみ柔らかい唇は蛭のように郁乃の唇に吸い付いて離れない。
このみはニンマリと笑いながら郁乃の歯茎や歯に舌を這わせる。
郁乃は味わったことのない未知の感覚に嫌悪感を覚えていた。
しかし、その中に微かではあるが危険なほど甘美で脳の奥が痺れるような快感も感じていた。
なにより女同志でこんな事をするなど、郁乃の常識の範疇を遙かに超えた行為だった。
確かにこのみとは気軽に抱きついたり、互いの家にお泊まりしたり一緒の布団で寝たり仲ではあったが、
それはあくまで同性の親友としての気軽さ故であり、当たり前だが一度妙な雰囲気になったことはなかった。
なにより、このみには河野貴明という学校公認の立派な恋人が居るのだから…。
そんなことを郁乃が頭のどこかで考えている間にもこのみの舌による執拗な愛撫は続いていた。
痺れるような快感が最初に感じた嫌悪感を徐々に駆逐し放逐していく。
しっかりと閉じているはずの郁乃の上下の歯はともすれば浮き上がりそうになっていた。
力を入れすぎたために顎が痺れ始めたのか、それとも快感を郁乃の女の部分が正直に求め始めたのか…
永遠とも思われる長い時間の果てに…ついに郁乃の理性は屈服した。
「んむ…むぁ…あ…は…む…」
半開きになった歯を割って入ったこのみの舌が郁乃の咥内を優しく、しかし容赦なく蹂躙していく。
くちゅ…くちゅ…ぴちゃ…ぐちゅ…
郁乃の舌を絡め取り、扱き上げ、引っこ抜かんばかりに吸引する。
唾液を啜られ、唾液を流し込まれ、このみの舌が郁乃のそれにとろけるような快感を互いに送りこんでくる。
「ぷはぁ〜 郁ちゃん気持ちよくなっちゃったでありますか?」
「………へ…へんた…い……」
実際の時間にしてみれば10分も経ってなかったのだろうが、郁乃には果てしなく長い時間に感じられた。
抵抗する気力すらこのみに吸い取られてしまったように、やや焦点の合わない瞳でこのみを見つめている。
「変態はひどいでありますよ。このみはただ郁ちゃんともっと仲良くなりたいだけなのでありますよ〜」
そういいながらこのみは郁乃の耳朶にフウっと息を吹きかける。
「あぅ…」
郁乃の意志とは無関係体はぴくんと反応してしまう。
「郁ちゃん…そろそろ素直になったほうがいいでありますよ?」
「この…ケダモノ…みそこなった…もう絶交…なんだから…」
「まだまだ元気でありますなぁ、隊長〜」
このみはそういながら郁乃の首筋に舌を這わせる。
「はぅ…」
郁乃は下唇を噛みしめながらこのみから顔を背ける。
「郁ちゃんってすごく肌が綺麗だよね〜このみはうらやましいであります」
首筋から鎖骨、そして胸に向かって舌を滑らしていく。
「やだ…気持ち…悪い…やめて…よ…あぁっ」
このみは既に半ばはだけてしまっている郁乃の浴衣を剥き取り、
かわいらしいピンクのブラとお揃いのパンティーを月明かりの元にさらけ出させる。
今夜は満月な事もあり、外の街灯の明かりとあいまって光量は充分だった。
ふにゅ、ふにゅふにゅ、ふにゅ
このみは郁乃の二つのふくらみに手を置くとわきわきと感触を楽しむ様に指を動かす。
「ふむ…むう〜郁ちゃんのおっぱいは去年より確実に成長してるでありますな」
「はぅ…あ…くぅ…ひぁ…そんな事…」
このみに胸をもみしだかれ、郁乃は頬を染めながら声を押し殺す。
「ずるいでありますよ〜このみは去年からほとんど変わってないのに」
ぽにゅぽにゅぽにゅぽにゅぽにゅ……ぷち
「あっ…」
外されたブラの下からぽよよんっと小振りではあるが仰向けでも型崩れしない二つの双丘がまろびでる。
「おお〜きれいなかたちでありますよ、隊長」
このみは感嘆の声を上げながら今度は直にロンパリ気味のおっぱいをもみほぐしていく。
「やわらか やわらか やわらか おっぱい♪
マシュマロ マシュマロ マシュマロ おっぱい♪
もちもち もちもち 餅肌おっぱい♪」
このみはへんてこな歌を口ずさみながら郁乃の手に吸い付いてくるような肌触りを堪能してるうちに、
両の手のひらの一点に柔らかさと正反対の感触があるのに気づいた。
「えへへ〜郁ちゃん乳首が硬くなってきたよ〜このみにおっぱいもみもみされて感じちゃったかな?」
「な!……そんなわけないでしょ。き、気持ち悪いだけなんだからぁ!」
郁乃は顔を真っ赤にしながらも、気丈に反論する。
「ほっほ〜ぅ…てりゃ!!」
ピシ!
「ひぐぅ?!」
このみにデコピンの様に硬く突起した乳首を軽く弾かれただけで、郁乃はビクビクっと体を仰け反らせてしまう。
「ふっふっふっ 郁ちゃんの弱点ハッケーン」
このみは郁乃の予想以上の反応に気をよくしたのか、今度は優しく摘んだり、指の腹で転がしたり、
軽く引っ張ったりとピンク色の乳首を重点的に責め始める。
「ん…んぅ…んん…ん゛ぁあ…」
郁乃は下唇を噛み眉根を寄せて必死に声を出さないように頑張るが、
どうしても堪えきれない快感のうねりが甘い吐息となって口の端からこぼれ落ちてしまう。
「郁ちゃん、気持ち良いでありますか?」
「バ、バカ…ただくすぐったい…だけ…っんあ!」
このみは郁乃の右の乳首を口に含むと舌や歯を使って転がしだす。
「ふーう?ひもひいい?(どーお?きもちいい?)」
このみは郁乃の乳首を口に含んだまま上目遣いに郁乃の上気した顔を見て訪ねる。
口をすぼめてちゅぱちゅぱと吸い上げたり、歯で甘噛みして軽く引っ張る動作を入れることもしっかりと忘れない。
「そんな…訳…んあ゛!あたしは、女にぃ、さ れて喜ぶよ うなヘンタ…ぃじゃ…あひっ!?」
このみは空いている左手を郁乃の秘所に伸ばし、パンティーの上から軽く嬲り始める。
「そんな事言って、郁ちゃんの此処はこんなに濡れてるじゃないですか〜」
パンティーの上からでもなぞった指に愛液がこのみの指に絡みついてくる。
「そんなの、単なる、肉体的生理反応じゃないっ 感じてるから、濡れるなんて
…バカ男の都合の良い屁理屈に 決まって…あぎぃ!?」
このみのしなやかな指がパンティの布越しにクッキリと浮かび上がってしまった核を軽く握りつぶす。
「そうなのかなぁ?このみはタカくんとお話ししてるだけでお股のところが熱くなっちゃうでありますよ?」
「それは あんたが ヘンタイなだけで…」
「このみは何時だって準備OKなのに…タカくんは『高校卒業までは互いに節度を持たないと』とかいって
月一回のお泊まりの日だってB迄しかシてくれないんでありますよ!!」
「そんなこと、あたしの知った…ぇ!?」
そうこう言ってる間にこのみは郁乃の足首を縛っていた紐を手早く外すと、彼女のベショベショに濡れたパンティを引き下ろして脱がせる。
そのまま郁乃の両脚を左右に押し広げ、その間に体を割り込ませる。
540 :
−修学旅行の夜−後編(8/10) :2005/05/11(水) 17:44:49 ID:rLEm07yn0
既に腰砕けになってしまった郁乃に抵抗する力は残っていなかった。
「えへへ〜郁ちゃんの此処ってこんな風になってるんだ〜」
このみが己の秘所に顔を近づける気配を感じて、郁乃はなんとか腰をよじって逃げようとする。
「やめて このヘンタイ 今度、貴明にいいつけてや…ひあ!」
ぷちゅ…くちゅくちゅぐちゅ…
このみのが郁乃の秘裂に人差し指を第一関節まで軽く差し込み、中をかき回すように小刻みに動かすと
郁乃の耳にまで自分の秘所が発する湿った音がハッキリと聞こえてきてしまう。
「聞こえる?郁ちゃんのココ、こんなにグジュグジュいってるよ」
そういいながらこのみは指を二本に増やし更に激しく動かす
ぐちゅぐちゅぐじゅ…じゅぷ…
「濡…濡れた肉を あぅ か き回せばそ んな音 が出る のはあ たり くぅ まえ
じゃない あぎぃ!」
このみは指でかき回しつつ郁乃の核に直に口を付け、舌で既に硬く突起している陰核を舌で押しつぶす。
「あひぃ…い…ああ…ダメ…そんなことろ…汚いって…ちょ…あああぅ…あっ…あっ…」
郁乃は喉を仰け反らした体を跳ね上げたりしながらこのみの舌の動きにリズムを合わせてダンスするかのように
腰をくねらす。
このみは膜を傷つけないように注意しながらも、更に激しく指を郁乃の膣に出したり入れたりしながら
陰核を執拗に舌で責め続け、やがて……
「ダメ…ダメるダメぇえ!!いく いぅうううううううああああ゛あ゛ーーーーーーー!!!!!!」
郁乃の頭の中で何かが爆発し、目の前が白く光る。
郁乃は足の指先までピンと仰け反らせ一際高く歓喜の声を上げ痙攣すると、その後全ての力を使い果たしたようにぐったりと
布団に沈み込んで身動きしなくなる。
「郁ちゃん?イッちゃったでありますか?」
このみが秘所から顔をあげそう尋ねると同時に…
ぷっ…しゃあああぁああああああああああああああぁ
なにやら生暖かいモノがこのみの下顎にぶっかけられ首や胸元を濡らしていく。
「うぷっ?!……あ、あやややや い、郁ちゃん隊長!漏れてる!!おしっこ漏れてるでありますよ〜!!!
このみは直ちに停止させる事を懇願する次第であります!!」
…無理だって。
つい先程までしこたまアルコールを摂取していたためか、郁乃の弛緩した尿道口から勢い良く放たれた小水は
鮮やかなレモンイエロー色をしていた。
しゃあああああああああぁあ…しょろしょろしょろろろろ…
ゆうに一分は続いた郁乃の放尿が終わった頃には、このみの浴衣から下着、布団等何から何までがビッチョビチョに濡れていた。
郁乃は絶頂感と膀胱に溜まりに溜まったモノを全て出し切った開放感からか、天上の笑みを浮かべて失神したままだ。
「……まずい、まずいでありますよ隊長!!お漏らししちゃった事が先生やみんなに知られたら…恥ずかしくて郁ちゃんが明日から
登校拒否になってしまうのであります!!」
…誰のせいだ…誰の。
「郁ちゃん!起きて、起きてぇ〜〜〜!!!!」
この後、気持ちよく気絶していた郁乃を叩き起こしたこのみは、お漏らしで濡れてしまったモノを袋に詰め、
幸運にもホテルに備え付けてあったコインランドリーにぶち込む。
そのままとんぼ返りで部屋に戻ると、郁乃とともに四苦八苦しながら濡れた布団をドライヤーで乾かし始める。
なんとか乾く目処が立った頃、既に東の空から太陽が昇り始めていた。
「いやぁ、大変な一夜でありましたね、隊長」
ぎゅむうううううう
「みんなあ・ん・た・の・せいじゃああぁ!」
郁乃は右手でドライヤーを持ったまま、左手でこのみの右ほっペたを軽くつねりながら怒る。
「だ、だってまさか郁ちゃんがお漏らしするなんておもわなかったんでありますよ〜」
郁乃はこのみのお漏らしと言う言葉に耳まで赤くする。
「そ、その事を誰かに言ったら…ただじゃすまさない!」
「えへへ〜判っておりますよ。郁ちゃんがお…ムニャムャニしちゃった事は二人だけの秘密であります!!」
ピシっと敬礼ポーズを決めるこのみ。
「まったく…アンタって娘は」
そのまま二人とも暫し無言のまま布団を乾かす事に専念する。
「ふあぁぁ〜…やっと終わった…」
郁乃は布団が乾いたのを確認して大きく欠伸をする。
時計を観ると既に5時半過ぎ、今朝は6時半起床だから後一時間も無い。
「はぁ、今更寝てもしょうがないっか。今日は長い一日になりそうだ…」
郁乃はもう一度欠伸をしながら首をコキコキ鳴らす。
「郁ちゃん郁ちゃん」
いつの間にか窓際に立ち、カーテンの隙間から外を覗いていたこのみが郁乃に手招きをする。
「ん?…何よ。あたしは疲れてるの」
郁乃はそう言いながらもこのみの横へと足を運ぶ。
「ほらほら見てください、隊長。綺麗な朝日でありますよ!」
徹夜の疲れを微塵も見せずにはしゃぐこのみを見て、郁乃は呆れつつも思わず笑みをこぼしてしまう。
「そうね、綺麗…」
真っ赤な朝日が徹夜明けの眼の奥にしみる。
「えへへ〜」
しばらく並んで朝日の昇る様を見ていた郁乃は、不意にこのみの頭を軽くこづく。
「あぅ…痛いであります、隊長」
「まぁ、あんたも酔っぱらってたって事で今回のことはコレで許してあげるけど、
次に…あ、あんなマネしたら…絶交だからね」
このみは流石にしゅんとした表情で小さく頷く。
「了解であります…………でも、結構気持ちよかった?」
郁乃の顔を覗き込むように尋ねたこのみの問いに、郁乃は窓の外を見たまま小さく小さく呟く。
「ば か 」
その顔がほんのり赤かったのは登り始めた太陽のせいなのかどうか…はてさて。
−完−
以上であります。
長々と失礼いたしました。
グッジョーブ
Sなこのみん(´д`;)
SというよりHでは? とストレートに言ってみる。
俺には合わないと思ってたが百合な展開もまた(;´Д`)ハァハァ
なにかに目覚めてしまったようだorz
このカップリングは思いもしなかったけどいけますな
いくのんかあいいよ(;´Д`)ハァハァ
(;´Д`)いくの総受け………ウッ
このみ×郁乃GJ!
クオリティ高けぇよ!wwwwwwwwwww
(;´Д`)ウッ
>>551 読みました。
ミルファタン(;´Д`)ハァハァ
続きに激しく期待
失礼いたします。
これからTH2 SS−もうどうにもとまらない1−の前編を
投下したいと思います。
ではしばらくお借りします
「よっ、ほっ、はっ…」
何時もと変わらない帰り道。
もう何年ここを通って学校へ行き、家へと帰ってきた事だろう。
何時もとほとんど変わらない時間。
そろそろ夕方に差し掛かろうかという時刻であり太陽が西に沈みかけようとしていた。
いつもとおなじ面子
貴明、環、雄二、そして…このみ。
「このみ…無理すると、危ないわよ?」
「ほほ〜今日は何色かなっと………なんだブルマ履いてンのかよ。」
ガッ!ギリギリギリギリ〜〜!!!
無言で雄二にアイアンクローをかます環。
「あ゛だだだだだだ!!割れる割れる割れる割れる〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「まったく雄二もこりなぃよなぁ…」
貴明は軽く肩をすくめるとしかたなしく環をなだめようと振り返る。
「タカく〜ん、見てみて〜!」
貴明はその声でもう一人懲りない人間が居たことを思い出す。
「えへへ〜新記録更新でありますよ〜♪」
その声は少し前から聞こえてくる。
「あ、あのなぁ…」
貴明は体を戻し進行方向の先に視線を向ける。
小さな後ろ姿。ほっそりとした無駄な肉の付いてない脚。
気まぐれな春の風にピラピラと揺れるスカート。
たしかに下にはしっかりとブルマを履いている…が、
「このみ、危ないからソレは止めろって何度も何度も何度もいってるだろう」
「だ、大丈夫だよぉ、今日はちゃんとブルマ履いてるから見られないよぉ…おとっとと」
このみは前を向いたままそう答える。
「…そうじゃなくて!今までに何度落ちてると思ってるんだよ。少しは心配するこっちの身にも…」
「あわわわ〜!」
そういってる間にもこのみはグラグラと足一足分の幅しかない手すりのうえで、
体を左右にふらつかせる。
「ばっバカ!!早くこっち側に降りろって!!」
貴明は怒鳴りながら反射的にこのみに向かって駆け出す。
「こ、れくらい平気だよ〜」
このみは左右の腕を突き出して振り回しながら、なんとかバランスを戻そうとする。
貴明がこのみの横まで走り寄る間に、このみはなんとか自力でバランスをとりもどしていた。
「はぁ〜びっくりした!」
「ビックリしたのはこっちだっての…」
二人がホっとした次の瞬間
ゴオッ!!
一瞬強い風が川を吹き渡り、このみの軽い体を浮かせる。
「え?!」「あぁ!!!」
このみは顔を凍り付かせたまま道路側へと倒れ込んでくる。
一瞬凍り付いたのは貴明も同じだったが、反射的にこのみを受け止めようと手を伸ばす。
交錯する二人の影、そして
ゴスッ!!
このみのコーナーポストからのダイビングヘッドバットが鈍い音を立てて貴明の額へと炸裂し、
貴明とこのみの意識は深い闇の底へと沈んでいった…。
「…」
「…み」
「…このみ!」
俺は誰かの声で意識を取り戻す。
「……っぁ…痛てて…タマ姉?」
俺は自分が河原の柔らかい草の上に寝かせられているのに気づく。
ズキズキとする額に手をやると、ひやっとした布の感触が指方から伝わってくる。
「幸い割れてはいないわ。念のために濡らしたハンカチを載せておいたけど多少のコブは覚悟なさい。
でも、丈夫な体に生んでくれた春夏さんには感謝しておかないとね」
そう言いながら俺を上から覗き込んでいたタマ姉はクスリと笑う。
「やだなぁ、タマ姉。春夏さんはこのみのお母さんじゃ…」
俺がそういうとタマ姉は妙に引きつった顔でこっちの顔をのぞきこむ?
「このみ?打ち所悪かった??これ何本に見える???」
そういいながらタマ姉は顔の前に指を突き出して尋ねる。
「1本…3本…2本…タマ姉、俺は正気だってば!まだ額がちょっと痛むけど、何ともないって」
「な、なんともないって…このみ、あなた…」
『そういえば、なんでタマ姉は俺のこと見てこのみ、このみ、っていってんだろ??』
「あ、姉貴…ちょっとこっち見てくれよ…」
不意に雄二が視界に入ってくると、タマ姉になにやら耳打ちをする。
「このみ、そのまま動かないでね。頭打ってるんだから」
タマ姉は俺にしっかり念を押すと、スっと立ち上がり視界からはずれる。
「だから俺はこのみじゃ…?」
俺は目線でタマ姉を追う。
今まで気づかなかったが俺のすぐ隣にもだれか寝かせられているらしい。
頭の所にタマ姉と雄二がしゃがみ込んでいるので顔はよくわからないが、どうやら学生服を着た男のようだった。
『誰だろ??なんか見覚えある体つきの奴だけど…クラスメートかな?そういえば、このみは大丈夫なのか??』
このみも俺と同じくらい強く額をぶつけてるはず。
『丈夫な奴ではあるが、なんといっても女の子だもんな…傷が残ったりしたら大変だし…』
そう思った俺はちょっと大声で話しかける。
「ねぇ?タマ姉、雄二。このみは、このみは大丈夫なのか??近くに見あたらないようだけど、先にかえっちゃったのか?」
俺のその言葉にビクッとするタマ姉と雄二。
振り向いた二人の顔はまるで真っ昼間に幽霊でも見たかのように青ざめている。
「?どうしたの二人とも…そんな顔してさ…?」
そのとき、隣で寝ていた学生服の奴が手を地面について、半身をおこす。
「あいたたた…タカくん、タカくんどこ?」
そういいながらそいつは頭を振ってこっちに顔を向ける。
「…………」
「…………」
俺は驚きのあまりおもわず体を起こして、そいつの顔を穴が空くほど凝視する。
見たことのある顔。
なじみ深い顔。
でも、鏡か何かを通してしかみることの出来ない顔。
「「な、なんで俺(このみ)がもう一人いるんだ(いるのでありますかぁ〜)ーーー!!!????!?!?!」」
あまりのショックに俺の頭は本日二度目のブラックアウトを起こす。
「カ…くん」
「タカ…くん」
「タカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくん!!!!」
貴明はゆっさゆっさと肩を揺さぶられて再び現実世界へと引き戻され、再び瞼を開く。
「このみ?」
確かに貴明を呼ぶ声はこのみのモノだった気がする。
しかし目を覚ました貴明の目に前にあるのはどうみても自分の顔…
「タカくんタカくん大変でありますよぉ〜〜!」
どうやら悪夢はまださめていないようだ。
「ハハハ…俺の目の前にいるのは俺か…じゃあ俺は…誰だ、誰だ?誰なんだよ…????」
貴明の力ない呟きに、隣で難しい顔をして黙っていた環がすっと目の前に手鏡を差し出す。
その鏡に映った貴明の顔は…うすうす想像ついてはいたが…このみのモノだった!!
「アハハハ…なんでこのみが俺の顔になってるんだ?コレは何かの冗談なのか??」
「タカくん?」
むぎゅうううううううううう
「いててててえええええ!!?」
環の指が虚ろな瞳でブチブチ言い始めた貴明@このみの頬を抓る。
その柔らかな指先の感触と抓られた激痛が貴明をなんとか正気に戻す。
「タカ坊!落ち着いて現実を認識しなさい。パニックになっても何も解決しないのよ?」
「タカくん…どうやらこのみ達入れ替わっちゃったみたいでありますよ」
と、このみ@貴明が平然と言う。
このみ@貴明はそれ程驚いていないように見えた。
「このみ!お前は何そんなに落ち着きはらってるんだよ!?俺たち入れ替わっちゃったんだぞ?」
と、貴明@このみはこのみ@貴明の肩を掴むようにして喰ってかかる。
「で、でも入れ替わっちゃったのは事実だし、これからどうするか考えた方がいいと思ったり…それに、」
「…それに?」
「このみ、一度でいいから男の子になってみたかったのでありますよ〜♪」
そういいながらペロッと舌を出して戯けた顔をする。
自分のそう言う姿を見るのは正直あまり気持ちの良い物ではなかったが、
それでも貴明@このみはなんとか大きく深呼吸して落ち着こうと努力する。
「そうそう、おちついておちついて。」
タマ姉は貴明@このみの背を優しくなでる。
「ありがとう、タマ姉。」
「このみの顔でそんな言われかたするとなんかへんな感じね、タカ坊。」
タマ姉はクスっと笑う。
「そ、そんなに…おかしいかな?」
「ごめんなさいね。でも、あなたはタカ坊だわ。他の人が誰一人判らなくてもl、私には判る。」
タマ姉はそういうとぎゅっと貴明@このみ抱きつく。
貴明@このみのは得も言われぬ良い香りが感じる。
「私にはタカ坊がどんな姿形していてもすぐに判るわ。だって私はタカ坊の魂の色だって見えるんだから」
「ありがと、タマ姉……。でも、正直最初はわかんなかったでしょ?」
貴明は小首を傾けてか上目遣いにタマ姉の顔を見る。
その普段のこのみはしないコケティッシュな様子に環の背筋がゾクゾクっとする。
「い、いいわ〜タカ坊すっごくいい!!」
ぎゅうううううううううっと貴明@このみを力を入れて抱きしめる環。
「あう…タマ姉ギブギブギブギブ!!ほほ骨がくだけるううううううう!!!!!」
「ったくよぉ、未だに信じられねぇよなぁ…」
雄二はそう言いながら視線を横にやる。
何時のあるべき所にあるモノがないというのはなかなかに不安感をもたらすモノだった。
この場合雄二の視線の先にあるべきモノは河野貴明の横顔。
「当事者の俺ですらまだ信じられないっての…」
やや下の方から聞こえてくる声に目をやれば頭一つ分より下にある貴明@このみの口をとがらした顔。
「ははは…これがほんとに貴明…ねぇ」
雄二はぽんぽんと貴明@このみの頭を叩く。
「だから、気安くさわるなっての」
ぱちんと頭に載せられた雄二の手を叩く貴明@このみ。
「あてて…わりぃわりぃ、つい癖でな。」
雄二は苦笑いを浮かべながら叩かれた手をさする。
「……?」
後ろを振り向けば環と肩を並べて歩くこのみ@貴明がきょとんとした顔をする。
「うーん……」
「何?雄くん。」
「いや、たいしたことじゃないんだけどさ」
「雄二、言いたいことがあるならハッキリおっしゃいなさい」
「いや、別に何も」
「あっ!」
こんどはこのみ@貴明が素っ頓狂な声を上げる。
「どうしたの、このみ?」
「えへへ〜」
このみはニコニコっと笑うと小走りで雄二の前までやってきて、しげしげと顔を眺める。
「な、なんだよ…きもちわりぃーなぁ…」
雄二は何故か顔を赤くしながらそっぽを向く。
このみ@貴明は自分の右手を手の平を下にして頭の上に載せると、そのまま水平に平行移動させて
雄二の頭のほうに当てる。
雄二の頭のてっぺんより少し低いところに自分の手が当たるのを確認してにまーっと笑う。
「もう、このみは雄くんにチビ介なんて言わせないんでありますよ〜♪」
「はぁ?」
「ぷっ、あはあはははは」
怪訝そうな雄二と思わず吹き出してしまう環。
そのまま雄二の周りを変な歌を歌いながらくるくる回り出すこのみ@貴明。
このみと雄くん同じ背丈〜♪このみと雄くん同じ背丈〜♪このみと雄くん同じ背丈〜♪
このみと雄くんいっしょっしょ♪♪いっしょっしょ♪♪いっしょっしょのしょ〜♪♪
ようやく雄二はこのみが何を言ってるのか理解する。
「ばっ、ばか!いっしょっしょーじゃねー!。俺の方が二センチばかし高いんだって!!つかだいいちソレ貴明の体じゃねーか!!
そんなの公式記録として認められるかぁ!!!」
「今はこのみの体だもーん!!」
そんなやりとりを複雑な表情で見ていた貴明@このみを、後ろから優しく包み込むように抱きしめる環。
「ほら、そんな顔しないの。このみが不安がるでしょう?」
「タマ姉…俺は…」
「大丈夫、大丈夫、きっと何とかなるわよ」
環に優しく頭をなでられて何となく心が落ち着いて安堵の気持ちが湧いてくる貴明@このみ。
『男の体の時は恥ずかしい気持ちの方が遙かに大きかったのに、なんだか不思議なもんだな…』
そんなこんなしながらもこれからの計画を大まかに立てる4人。
1,この事はできるだけ4人だけの秘密にすること。
2,基本的に貴明@このみ柚原家にこのみ@貴明は河野家に帰る事。
3,学校へは毎日行きしっかり授業を受けること。
「ホントにこんなに大雑把で大丈夫かな?」
「このみタカくん家で一人暮らしするの〜?なんかさびしいでありますよぅ」
「貴明の演技力で春夏さんだまし通せるのかよ?あの人異常に鋭い事あるだろぅ?」
「計画なんて大雑把ぐらいのほうがいいよ。細かく決めた方がボロが出やすいんだから」
「ねぇ、タカくんも一緒にお泊まりしようよぉ。お母さんにはしばらくこのみ…じゃなかったタカくんの身の回りの世話するとか言えばいいし」
「ダメだっつの、若い男女が一つ屋根の下…何が起こるかわかんねぇだろ」
「んなことしないって!春夏さんには事情話しても良いと思うけどな、信じてくれるかどうかはわかんないけど」
「このみ、それよりよかったら家に来なさい。部屋も余ってるし、ついでにお寝坊癖もたたき直してあげるわよ?」
「え、それは〜ちょっと…いやかも」
−続く−
と、いうわけで、<もうどにもとまらない1>の前編をupさせていただきました。
お楽しみいただければ幸いであります。
後編も来週中には上げたいと思います。
では!
グッジョーブ!
続きが楽しみであります。
入れ替わりネタ最高!
続きが楽しみです!
人格交換キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
これはなかなかいい仕事してますなあ。
続きが待ち遠しい。
面白いよ〜
そんなネタよく思いつくな〜って素直に感心してます。
…もしかして俺が才能無いだけ?www
むしろ古典。
って(ry
おお、面白いですぞ!
由真が俺を頼ってると言った小牧さん。本当にそうなんだろうか?
などと考えていると、このみがまた自分も俺の家に住むと言い出した。だけどそれはタマ姉が説得、
いや、俺には内緒の約束をして、このみもそれで引き下がってくれた。
少しでも由真を元気づけようと俺は、由真をゲームに誘う。そこまではよかったんだけど、雄二が
置いていったギャルゲーを由真に見つけられてしまった。恥だ……。
タマ姉に呼ばれて、俺と由真は階段を下りてキッチンに向かう。
「あ、タカくん、由真さん」
キッチンに入ると、エプロン姿のこのみとタマ姉が出迎えてくれた。
「二人とも座って。さ、いただきましょう」
テーブルの上には、見るからに食欲をそそる料理の数々。特に豚の生姜焼きがたまらん。ご飯何杯
でも行けそう。
俺がイスに座ると、その両隣のイスにこのみ、タマ姉が座る。由真はややためらい気味に、このみ
の隣のイスに座った。
「それではみなさんご一緒に、いただきます!」
音頭をとったのはこのみ。学校給食かよと思いつつも、俺も一緒に「いただきます」と言った。
何度食べても、タマ姉の作る料理はうまい。
俺はナントカ雄山先生みたいな美食家ではないので具体的な表現は出来ないが、兎に角うまいのだ。
「どう、タカ坊、おいしい?」
でもやっぱり、うまいものはうまいと口で言わなきゃ伝わらない。
「うん、うまいよタマ姉。ホント、タマ姉は料理上手だね」
「そう? ふふっ、喜んでくれてお姉ちゃんも嬉しいわ」
タマ姉の満足そうな笑顔。
「む〜、タマお姉ちゃんばっかり。このみだって手伝ったんだからね」
「このみが手伝ったのって?」
「例えば、この、キャベツの千切り、とか……」
「そっか。うむ、やっぱ生姜焼きにはキャベツの千切りだよな。タレが染み込んでうまいよ」
「あと、ご飯炊いたのもわたしだよ」
「そっか。うむ、今日のご飯は、いつもよりもおいしく炊けてる気がするぞ。というわけでおかわり」
「うん! どんどん食べてね!」
このみがご飯のお代わりをよそってくれてるとき、何となく由真を見る。
「……」
無言だが、箸は進んでいるみたいだ。
「どう、由真さん、おいしい?」
タマ姉が由真にそう尋ねる。
「あ、は、はい、おいしい、です」
やや緊張気味にそう答える由真。さっきあれだけモメた相手だからな、無理もない。
「そう? よかったわ」
タマ姉の方は全く気にしていないみたいだ。
「向坂……先輩って、お料理、上手なんですね」
「環でいいわよ由真さん。料理はね、こうやって誰かに食べてもらって、おいしいって言ってもらえる
のが嬉しいから、頑張って覚えたってところかしら」
「そうなんですか、た、環さん」
「由真さんは、料理はどうなの?」
「あたしですか? い、いや、お母さんの手伝いをたまにする程度で、環さんに比べたら全然……。
あ、あの、環さん、もしよろしければですけど、あたしにも、その、お料理、教えていただけたら、
う、うれしいんですけど……」
「そんなにかしこまらなくていいわよ。これからしばらく一緒に暮らすんだから、もっと気楽にいき
ましょう。いいわよ、料理、教えてあげる」
「あ、ありがとうございます!」
へぇ、由真がタマ姉に頭下げてるよ。それに、由真が料理ねぇ。ちょっと意外かも。
「タカくん、はい、おかわり」
「あ、おう、サンキュこのみ――って、うおっ!?」
このみが俺に差し出した茶碗には、ご飯が超特大山盛り!
「たんと召しあがれ」
く、食いきれるかな、これ……。
「ごちそうさま」
あ〜、食った食った。俺の腹にはもう何も入らないぞ。
他のみんなも食べ終わったようで、次々と「ごちそうさま」と箸を置く。
「さてと、それじゃ後かたづけね」
「あ、タマ姉、後かたづけは俺がやるよ」
「別にいいわよタカ坊。後でお茶いれてあげるから、TVでも見てなさい」
「俺だけ何もしないのは気が引けるよ。いいから、後かたづけくらいやらせてよ」
「あ、それなら、あたしもやる」
由真がそう言って手を上げる。
「お、由真もやってくれるか。そういうわけだからタマ姉、ここは俺達に任せて」
「……そうね、それじゃ、お願いね」
「わたしも手伝うよ、タカくん」
「このみもタマ姉と一緒に休んでてくれよ。俺と由真で十分だからさ」
「う、うん」
由真と一緒に食後の後かたづけ。
テーブルの上の食器を俺が流し台まで運び、由真がそれを次々と洗う。
お母さんの手伝いをしてると言うだけあって、由真の食器洗いは手慣れた感じ。
「たかあき」
「ん、なんだ?」
「たかあきと環さんって、つきあってるの?」
「うをっ!?」
危うく手に持った食器を落としそうになる俺。
「いきなり何を聞くかと思えば、そんなワケないだろ。俺とタマ姉は姉弟同然だって言っただろうが」
「そうかな? 環さんのたかあきへの接し方って、何か優しすぎな気がする。あたしは一人っ子だから
断言できないけど、きっと実の姉弟だってあそこまで優しくないと思うよ」
「タマ姉には昔から猫可愛がりされてたからなぁ。っていうか、タマ姉って俺のこと、自分のおもちゃ
だと思ってるのかも。女装させられたこともあったし」
「女装? ……ぷ、ぷぷっ、くくくっ」
俺を見て吹き出す由真。し、しまった! つい余計なことまで!
「きゃははははっ! じょ、女装! たかあきが女装!」
「わ、笑うな! すっげえイヤだったんだからな!」
「あははははっ! あんたって童顔だから、さぞ似合うだろうね! ちょっとやってみてよ、あたしの
服貸してあげるからさ!」
「ガキの頃の話だ! 今なんか絶対やらねーよ!」
「タカ坊、何大声出してるの?」
居間でこのみと一緒にTVを見ていたタマ姉がキッチンにやってくる。
「な、なんでもないよ」
「あっはははは! お、お腹痛い……。た、環さん、たかあきが女装したことあるってホントですか?」
「ああ、そういえば昔、そんなこともあったわね」
「そんなこともあったって、タマ姉が嫌がる俺を無理やり……」
「やっぱりホントなんだ、あははっ! ねえ環さん、写真とか残ってないんですか?」
「う〜ん、確か記念にって何枚か撮ったわね。家のアルバムに残ってると思うわ」
「げっ! マジかよ!?」
「あ! それ見たい見たい!」
「じゃあ、様子見に帰ったときにでも取ってくるわね」
「お願いしまーす!」
や、やめてタマ姉、俺の古傷をえぐるのはやめて……。
後かたづけが終わり、さて、俺もTVでも見ようかな。
と、由真はさっさと廊下に行こうとしている。
「おい由真、どこ行くんだよ? 一緒にTVでも見ないか?」
「何言ってるのよたかあき、食事の前に約束したじゃない。さっきのゲームの続きをやるわよ」
げっ、まだ覚えてやがったか。
「ゲーム?」
その言葉にこのみが反応する。
「なになに、新しいゲーム? タカくん、わたしも一緒に遊ばせてよ」
「い、いやこのみ、ゲームって言ってもみんなで遊ぶようなものじゃなくてな……」
「ゲーム? それって面白いの?」
タマ姉まで。もう許して。
「ある意味、面白いったらないですよ環さん。なんたって今話題の”萌え”ですから」
意地悪い笑みを浮かべてタマ姉にそう言う由真。鬼だよアンタ。
「もえ? 何なのそれって?」
「まあ、実際見ればわかりますよ。じゃあ、みんなでたかあきの部屋に行きましょうよ」
女の子三人とギャルゲーだってさ。ははは、もうどうにでもなれってんだ。
で、俺の部屋で『まじかるハートフルデイズ』続行。
物語は進み、新たなヒロインが次々と現れる。
「……真面目なクラス委員長に、清楚で病弱なお嬢様、更には花婿探しに某国からやってきた王女様
に、それに付き従うちょっとドジなメイドさんまで登場ですか。しかも全員、主人公に気があるんだ
よね〜。正に男の理想郷だね、たかあき」
「何で俺に言うんだよ。
それからな、最初っから気になって仕方がないんだが、何で主人公の名前を『河野貴明』って、俺
と同じ名前に設定したんだよ!?」
「だって、その方がたかあき、萌えるかと思って」
「萌えねえよ!」
「何なのこれ? 要はこの8人の女の子の誰かを選ぶってゲームなの? これがもえなの?」
イマイチ理解しきれていないタマ姉。
「そうですよ。8人の中から気に入った娘を選んで、その娘に好かれるよう、時折出てくる選択肢を
選んで、物語を進めるんです。ねえたかあき、どの娘がいい?」
「知らねぇよ。由真がやってるんだから由真が選べよ」
「うーん、どうしようか……。
ね、そう言えば、この義理の妹の萌子ちゃんって、何となくこのみちゃんに似てると思わない?」
「え、わたしに?」
「うん、主人公によく懐いてて、何かと主人公の世話を焼くところなんかそっくり」
「そ、そうかな……」
複雑な表情を浮かべるこのみ。まあ、ギャルゲーのキャラに似てると言われても嬉しくはないよな。
「そうだよ。ね、このみちゃん、たかあきに『おにいちゃん』って言ってみて」
「う、うん」
戸惑いながらも、由真にうなずくこのみ。このみは俺を見て、
「……おにいちゃん」
「くぅ〜っ! これね! これが萌えなのね! どう、たかあき、萌えたでしょ!?」
「……いや、別に」
なんかな、このみと俺って確かに兄妹みたくつきあってきたから、今さらそう呼ばれてもあんまり
違和感ないな。
「ええ〜っ、つまんない! 萌えなさいよ!」
いや、そう言われても。
「……なるほど、今までがそういう関係だったから、何も感じない、か。ゲームの主人公と同じ心境
なわけね。よし、じゃあ、やっぱここは萌子ちゃん狙いでいってみよう! たかあき、よく見ていな
さいよ。主人公が萌子ちゃんラブ〜になっていくさまを!」
由真は一人で盛り上がってるし。
「タカ坊」
「ん、なに、タマ姉?」
「このゲームって、もしかして雄二からの借り物でしょ?」
「え、何でわかったの?」
「このゲームの内容からいってね。それに、雄二お気に入りのメイドさんもいるし」
ああ、そうかぁ……。雄二、お前はきっと、メイドさんを真っ先に攻略したんだろうなぁ。
それから約一時間ほど経過。
「このみ、そろそろ家に帰りなさい」
「ええ〜っ、もう少しいちゃダメ?」
「もう夜も遅いし、明日だって学校あるんだから、帰って寝なさい」
「うん、わかった」
しぶしぶうなずくこのみ。
「それから由真さん、そろそろゲーム、終わらせなさい」
「ええっ、もう少しやらせてくださいよ。まだ何のイベントも発生してないし」
由真さん、すっかりそのゲームの虜ですね。
「駄目よ。ゲームは一日一時間。なんとか名人もそう言ってたでしょ」
何年前の話だよタマ姉……。
「うーん、キリのいいところまでと思ったけど仕方がないか。じゃ、セーブっと」
「じゃあわたし帰るね。バイバイ、タカくん、タマお姉ちゃん、由真さん」
「ああ、また明日な」
「お休みなさい、このみ」
「じゃあね、このみちゃん」
「このみ」
階段を下りて、玄関に向かうこのみを追いかける。
「あれ、どうしたのタカくん?」
「このみが帰った後、玄関の鍵閉めなきゃならないからさ」
「ああ、そっか。……ねぇ、タカくん?」
「ん?」
「タカくんは、わたしがタカくんのことをタカくんって呼ぶの、どう思ってる?」
「どう思ってるって、今さらそんなこと聞かれてもなぁ。お前、ガキの頃から俺のことそう呼んでた
じゃないか。だから別にどうとも思わないけど。何でそんなこと聞くんだよ?」
「うん、もしわたしがタカくんのこと、おにいちゃんとかタカおにいちゃんとか呼んでいたら、何か
変わったのかなって思って」
「あー、あのゲームか。由真もパッと見の思いつきで言ってただけだから、あんま気にすんなって。
それに、このみが俺のことどう呼んだって、俺とお前は幼なじみってことに変わりはないよ」
「そっか、そうだよね……」
このみは玄関で靴を履き、俺の方を振り返って、こう言った。
「じゃあ、おやすみなさい。おにいちゃん」
「へ? お、おやすみ……」
何でまた、おにいちゃん? もしかして、このみまで俺のことからかってる?
自分の部屋に戻ると、タマ姉も由真もいなかった。部屋(俺の両親の部屋)に戻ったんだな。
ベッドに身体を投げ出し、今日一日のことを振り返る。
由真、タマ姉、このみ。とりあえずこの三人が仲良くなったのは良いことだ。この調子なら、共同
生活も問題なく、いや楽しく過ごせるだろう。あくまで期限付きと言う前提だが。
問題があるとしたら、その期限がいつなのか、全然わからないことだな。
まあいいや。今日はもう疲れた、寝よ。
つづく。
どうもです。第5話です。
スクールデイズの呪縛から解放され、これでSS書きに専念、出来るといいなぁ。
>579
ライブで読ませて貰いましたGJ!!!!
相変わらず面白旨いですな…俺もがんばろっと(信じて貰えないかもしれないけど一つ上の作品の作者ですの)
また期待しておりますよー
やばい、楽しい、楽しいよこれ・・・
こんなストーリーが雄二エンドの向こうにあるなら俺は雄二エンドを選ぶな
>>572 ギャルゲ属性も備えてるとは…由真の魅力が(別の意味で)増えたなw
それよか先が気になってしょーがないですよ奥さん!
続きを心待ちにしております。
>>579 続きカモン。
るーことか他のキャラも出して出して。
ギャルゲー本名プレイとかマジ熱い…w
てかまじかるハートフルデイズのシナリオを作ってくれ作者さん!www
>>586 GJ! お疲れ様
ミルファの意地っ張りなところがツボでした。
是非、続きを読んでみたいです。
>>586 乙
スラスラ読めたので長さは感じなかった。
次回作も楽しみにしてます。
>>586 乙でした!
ぜひ後日談のようなモノを見てみたい
>>586 最後がちょっとあっさりぎみな気がしたから後日談が欲しい
>>586 凄い。gj。楽しませていただきました。
>>586 面白かったよ。GJ!
>>592 禿堂。
その後のミルファとのラブラブシナリオをキボン
>>586 GJ!!
確かにここで完結ってのももったいないような・・・。
>>586 乙でした。
綺麗に纏まっていたので俺はこれはこれで良いかな、なんて思ったりしたけど。
>>586です。
読んでくださった皆さん、どうもありがとうございました(=゚ω゚)ノ
よかったと言って頂けると本当に嬉しいです。作者冥利に尽きます。
昨日から、凄い勢いでカウンターが回っているので驚いてました。
続編を希望してくださっている方もいらっしゃるのですが、ひとまず
この話はここで締めくくろうと思っています。
元々「ミルファシナリオ補完」という脳内イメージで書きましたので、
私的に書きたかったことはすべて書くことができましたし、収まりが
よければそれでいいかな、と。
ですから、仮に後日談的なものを書くとしても「この話」の「SS」の
ような三次創作的なものになってしまうような気がしまして。
あれだけ好き勝手にキャラをいじりまわしておいて今更という気も
するのですがorz
そういうものでも構わないようでしたら、これからの季節に合わせて
夏の話を書くかもしれません。
そのときには、また読んで頂けるとありがたいです。
それでは、こちらの作家さんのSSを楽しみにしつつ潜ります(=゚ω゚)ノ
失礼いたします。
「うわぁ、人がいっぱいだねえ……」
たどり着いたアイス屋の店先には長い行列が出来ていた。
この暑さと日差しだから無理もない。そう思ったけれど、俺の腕を抱いたまま驚いた声を上げるこのみに何
も言葉を返さなかった。
先刻の『このみアイス』発言以降これまで以上にくっついてくるようになったこのみのせいで、心身共にグ
ロッキー、もはやノックダウン寸前の有様。このみの言う『タカくんエネルギー』なるものが実在するとした
ら少し返して貰いたいとさえ考え始めている。
考えてみれば、昼休みにこいつがそのエネルギーを俺から吸い取ったあたりから調子が狂い始めたわけで……。
「どうかしたの、タカくん?」
「――いや、なんでもない。とりあえず並ぼう」
いかんいかん。俺は小さく頭を振って馬鹿な考えを振り払った。
とりあえず一刻も早くアイスを食べカロリーを補給し、せめて身体面だけでも正常な状態に戻さなければ。
列に並んで半分くらい進んだ頃、すこし離れた場所にあるパラソル席が空いたのが見えた。
周りに人影はまだない。チャンスだ。
「このみ、場所空いたぞ」
周りに聞こえないようにこのみに囁いた。
「俺が二人分買ってくるから、あの席確保して」
「………」
「どうしたんだよ」
「……ヤダ」
このみは俺の腕を掴む手にきゅっと力をこめてつぶやいた。
「タカくんと一緒にいる」
「ってなあ。さっき日陰でゆっくり座って食べたいって言ってたじゃないか」
ちなみにそれには俺も大賛成だ。今日はトリプルに挑戦するつもりだからなおさらだ。
しかしこのみは不満げな顔で俺を見上げ
「むーっ、タカくんはわかってないのであります」
「わかってないって、何が。……ああ、取られた」
俺たちが内輪もめしている間に、空いた席は女子高生グループに占拠されてしまった。
まあ、いいか。俺たちが買えた頃には別の場所が空くだろう。俺はそう考えて場所確保の問題を後回しにする
ことにした。
さしあたり考えるべきは、このみを場所取りに行かせることで同時に解決できたはずの問題に別の対処をしな
ければならなくなったということだ。
それはすなわち――。
「このみ、腕離せって」
正確に言うと、俺の腕をおまえの胸から離せ。
列に並んだ頃は掴む程度だったのが、途中から胸の前に抱くようになり、さっきの「……ヤダ」のあたりから
はほとんど押しつけるようになっていたのだ。
言うまでもなく俺たちは夏服で、夏服と言えば半袖で、それはつまりむき出しの二の腕のあたりにつつましく
も柔らかいふたつの盛り上がりの感触が……ってああ、もう!
さっきから背中を流れる汗は暑さのためだけじゃないぞ。決して。
「あ、うん」
またすねるかと思いきや、意外と素直に腕は解放された。抜ける重み。消えるぬくもり。残る感触。
……残念な気持ちがしないでも無かったが、今はそれ以上に全身でため息をつきたい気分だった。
自分が何を何のために我慢しているのか、だんだんわからなくなってきた。とにかく一刻も早くアイスを食べ
て脳に糖分を補給する、今はとにかくそれだけを考えよう。
するとそこに突然、きゅ、と手を握られた。
「……じゃあ、これならいい?」
横を見ると、飼い主にまとわりつく子犬みたいな無邪気な笑顔を浮かべてこのみが俺を見上げていた。
俺の左手はこのみの右手と指を絡めて繋がれており、ぴったり重ねられた手のひらからは熱いくらいのこのみ
の体温が伝わってくる。
ずきん、と胸の奥に電流のようなショックが走った。
「あ――う、うん」
言葉に詰まって、そんな返事をつぶやきながら俺は慌ててそっぽを向いた。
どうしてだろう、腕に胸を押しつけられていた時よりも鼓動が激しい。
このみの目を見ていられない。
「ねえ、タカくん」
そっぽを向いてしまった俺にかまわず、このみはつないだ手を軽く揺らしながら話しかけてきた。
「わたしね、今すっごく幸せだよ」
「……もう? すこし気が早いんじゃないか」
内心の動揺を隠そうと、俺は茶化すように言った。実際行列はようやくあと三分の一と言ったところだ。
しかしこのみは、ぶんぶんと首を振った。
「もう。本当にタカくんは分かってないのでありますよ」
と、さっきと同じ文句を言いながらも、今はさっきのような不満顔ではなくにこにこと笑っている。
「このみがね、いま幸せなのはー……」
揺らしていた手が止まり、くいっと引っ張られた。
思わず振り返ると、そこには内面から幸福がにじみ出ているような輝く笑顔を浮かべたこのみ。
「……タカくんと、今日はずーっと、一緒にいられるからだよ?」
言葉とシンクロして、繋がれた手にきゅっと力が込められる。
そしてその大きな瞳はひたすらまっすぐに俺だけを見つめ――
俺はその瞬間、自分がついに逃げる余裕すら失ったことに気が付いた。
そう。
このみは今日、俺と「ずーっと」一緒にいる。
このみの両親が出張のため、今夜、このみは俺の家に泊まりにくるのだ。
忘れていた訳じゃない。むしろ今日のこれまでの一連の出来事は、その予定された事実を中心に展開されてき
たと言っても言い過ぎじゃない。
でも俺は無意識のうちにその事実から逃げていたのだ。
曰く、こんな目に遭うのはそれもこれもみんな雄二のせいだ。
曰く、腹が減りすぎて何も考えられない。
――責任転嫁と現実逃避。
幼稚な言い訳を繰り返しては、そこで思考停止していた。
しかし、もう逃げられない。このみの熱い右手とまっすぐな瞳が、俺をしっかり捕らえている。
そして、これ以上逃げてはいけないのだ。
やがて日は暮れ、そして夜が来る。それまでに俺は――
「あれ? 先輩たちじゃないッスか?」
その時、聞き覚えのある明るい声が耳を打った。
いつのまにかうつむいていた顔を声のした方へ向けると、そこには寺女の制服がふたつ並んでいた。
「あ〜っ、ちゃる、よっち!」
「やほー、このみ、先輩。相変わらずお熱いッスねえ、うひょひょ」
「……このみ、お久」
このみの中学校時代の親友、「ちゃる」と「よっち」の二人だった。
このふたり、俺とこのみが今の関係になるのに結構大きな役割を果たしてくれたんだけど――本名、なんだっ
たっけ?
「ちゃるとよっちもアイス買いに来たの?」
「あたしは別にどうでもいいんだけどねえ、このキツネが食べたい食べたいうるさいもんだからしょーがなく」
「嘘。食べたがってたのはそっち」
「まーそのへんはどうでもいいとして! でも、来てみたらこの大行列っしょ。今から並ぶのも辛いからヤックで
も行こうかって話してたとこなんだよねー」
「あ、じゃあそれなら――」
と、言いかけて、このみは俺の方を見た。
俺に遠慮しているのではないことは表情でわかる。
このみは今、俺とふたりきりでアイスを食べることと、久しぶりに会った親友を交えて食べることの間で揺れて
いるのだ。
俺は最初、どっちでもこのみの好きな方にすればいい、と考えた。
しかし直後、俺はある事を思いついて二人を引き留めることに決めた。
「うん、ふたりの分は俺たちが買ってくるから、その代わり席を確保しておいてくれないかな」
「えっ、いいんスか?! やー、持つべきは優しい先輩ッスねえ! あ、あたしはトロピカルマンゴーとパイナッ
プルのダブルでお願いするッス」
「……ラムレーズンとリッチミルク」
「分かった。日陰の良い席頼むよ」
「おまかせッス!」
二人が空きそうな席を探しに去っていくと、隣のこのみがぽかんとした表情で話しかけてきた。
「……タカくん、どうしたの?」
「どうしたって、何が」
「だって……タカくんがよっちとちゃるを誘うなんて珍しいなあって思って」
鋭い。普段どんなにボケボケでも、やはり女の子というところか。
俺はごまかすように笑って、このみの頭をくしゃっと撫でながら言った。
「誘うって……このみが席を取りに行かないから、渡りに船だと思っただけだよ」
「あ、うー。だってタカくんと一緒にいたいんだもん」
「あっ、コラ。だから腕に抱きつくなって!」
※その6に続く※
ずいぶんと間が空いてしまいました。
忘れられてるかもしれませんが(^^;) てんだーはーとその5、お届けします。
遅くなった言い訳は山ほどあるのですが……最大の理由はGWに遊びすぎましたw
前回のあとがきで予告していた通り、この板で大人気の二人組が登場しました。
初めから出す予定ではいたのですが、思っていた以上によっちの喋りは
書くの難しいです。
今回は顔見せで、次回本領発揮、の予定。
予定以上に長い話になりつつあるなあ、というのが正直な感想です。
この山を越えれば、あとは早い気もするのですが。
おそらく次もまたお待たせすると思いますが、気長に待って下されば
幸いです。
ではまた、その6でお会いしましょう!
追伸。
>>586様
リトライ、三回くらい読ませて頂きました。
ミルファシナリオは、我楽多さんのSSで決まりかと思っていた私でしたが
なんのなんの、超アリです。
またひとつ、お気に入りのSSが増えました。
新作に激しく期待してます!
>603
くぅ〜この焦らしテクニックがいいですねぇ
参考にさせて貰いますですよ
では次回も期待しております
>>603 GJ!!
毎回身悶えしながら読ませていただいておりますw
>>603 ふぉぉぉGJ!
もう書いてくれないかと思ってたから正直リアルで「キタァァァァァア!!」とか叫んでしまったw
続き期待してます〜がんがってください!
これより>554-563の<もうどうにもとまらない1>中編を投下させて頂きます。
前の後書きで次ぎは後編と書いたのですが、チト長くなりそうなので中編で切ります。
では、参ります。
ちなみに…
貴明@このみはこのみの体に入ってしまった貴明
このみ@貴明は貴明の体に入ってしまったこのみの略になります。
「た、ただいま〜!」
貴明@このみは努めて平静にしかし元気よく玄関口で声を上げる。
「あら、このみ。おかえりなさーい」
エプロンで手を拭きながら、ダイニングキッチンから出てくる春夏さん。
「今日はずいぶんおそかったのね」
「う、うん…こ、タカくん達とちょっと話し込んじゃって…」
貴明@このみは靴を脱いでこのみの部屋へ上がろうとする。
パコーーン!
不意に春夏さんは貴明@このみの頭を手に持っていたお玉で叩く。
「あいた!?春…いやいや、おかーさんなにするのよー!?」
「玄関で靴はそろえなさい、と何時も言ってるでしょう!」
貴明@このみは脱ぎっぱなしの靴をきちんと揃えると、2階のこのみの部屋へとあがろうとする。
パコーーーン!
「あううううう」
「着替える前に手洗いうがいは?」
「は、はい!」
『このみは毎日こんな生活してるのか…』
『よく考えれば、お隣の俺にすら容赦しない春夏さんが自分の娘に容赦するわけはないんだよな…』
傷む頭をすりすりとなでながら貴明@このみはこのみの自室へと向かう。
『でも、なんか…懐かしくていいな』
「ただいま〜!!」
返事をする人が誰もいなくてもつい只今と言ってしまうこのみ@貴明
しんとした玄関から廊下を抜け居間に入り電気をつける。
蛍光灯の灯りさえ冷え冷えと感じるような静まりかえった居間。
「タカくんがいないだけで…こんなに広く感じるんだ…」
自分の家は何時もお母さんが迎えてくれる。
出張がちでも何時もお父さんの温もりを感じる。
我知らず鼻の奥がツンとしてくるのを感じて、パンパンと自分の頬を叩くこのみ@貴明。
どうやらこのみ@貴明の感情はこのみに準じているようだ。
要するにちょつと天然で、甘えっ子で、寂しがり屋の河野貴明…萌え?
まぁ、中身がこのみなのだから当然と言えば当然なのだろうが。
「タカくんが帰ってくるまでこの家はこのみがしっかり守るでありますよ〜!!」
自分に気合いを入れるように右拳を突き出して高らかに宣言すると、このみ@貴明は先ず夕飯の支度から始める。
まず冷蔵庫をあける…何もない。
あるのは幾つかの調味料と納豆とプリンと何故かくさやの干物。
「…………むぅ」
とりあえず買い物に行かないと、とまだ着替えてなかった学生服のポケットを探り貴明の財布を引っ張り出す。
「そういえばタカくんのお財布の中身って見たこと無いのでありますよ」
何故かドキドキしながら財布の中身を調べる。
現金としては万札が一枚、小銭が幾らかとこのみの予想より結構多めの金額だった。
「これなら充分に食材の買い置きが出来るでありますよ〜」
それは貴明が昼飯代を節約してDVDを買うために貯めたお金だったのだが…南無。
そして出てくるレシート、ポイントカード、レンタルビデオの会員証等々普通の高校生と何ら変わらない所持品。
そして…
「むむむ…コレはなんでありますか?」
このみ@貴明が財布の奥の奥に隠されていたモノを指に摘み蛍光灯にすかしてみる。
正方形の薄いプラスチック包装容器に【OKAMOTO】のロゴマークとSIZE:Lの文字が入ってる。
「何かのゴム製品みたいだけど…水風船か何かかな?明日の朝タカくんにきいてみよ〜っと」
そういいながら財布をポケットに仕舞うと、買い物をするために商店街へと向かう。
「せっかくだから必殺カレーを作るでありますよ〜」
パク…ムシャムシャ…ゴクン
「ごちそうさまー」
「あら…このみもういいの?まだいつもの半分くらいしか食べて無いじゃない」
このみの母春夏との差し向かいのテーブルの上にはこれでもかと料理が載っていた。
久々の極上手料理に貴明@このみはかなり張り切って食べたつもりなのだが…
『このみ…お前毎日どれだけ飯くってるんだよ…』
「もうお腹いっぱいだよ、春…お母さん」
「そう?お腹いたいとかそう言うのじゃなければ別に良いんだけど…」
やや怪訝そうな表情の春夏さんから逃げるように、食器を持ってシンクへと歩く貴明@このみ
「このみ…ちゃんと飯くってるのかな?」
「えへへ〜今日のお肉は神戸牛でありますよ♪」
ついスーパーで誘惑に負けて買ってしまった神戸牛をぶちこんで必殺カレーが完成する頃には
既に9時近くになっていた。
「いっただっきまーす!!」
と手を合わせこのみ@貴明はカレーを口にする。
「うん…なかなかの味ですありますなー成功成功」
パクパクパクパクとスプーンを動かしながらテレビを見るこのみ@貴明。
家では春夏さんが【ながらご飯】は許してくれないのでチョット嬉しい。
「でも…もしこのまま体が戻らなかったらどうなっちゃうんだろ…」
何処か大学のキャンパスを一緒に歩くこのみ@貴明と貴明@このみ。
何処かの海岸をドライブデートするこのみ@貴明と貴明@このみ。
何処かの教会で結婚式を挙げるこのみ@貴明と貴明@このみ。
そして……
「きゃー、きゃー、きゃー、このみったらなに想像してるのでありますか!」
一人で頬を染め恥ずかしがるこのみ@貴明。
端から見ると…かなり不気味だぞ。
ちゃぽ…ちゃぷん…さばーー
「ふう…気持ちいいー…」
柚原家の風呂にはいる貴明@このみ。一日の疲れがスーッと抜けていく。
このみの好みの入浴剤を入れた風呂の湯は緑色になっている。
本来あまり入浴剤は好きではない貴明だが、今日だけ入れないのも不自然かと思って入れたのだった。
「このお風呂に入るのも久し振りな気がするな…ちっちゃい頃は良くこのみと入ったけど」
幼い頃、タマ姉をヘッドとする特攻野郎Aチームのように毎日毎日野原を
駆け回っていた(回らされていたが正しいのだが)あの頃。
泥だらけにならない日の方が珍しかった。
「何時も春夏さんにど叱られては二人して風呂に放り込まれていたもんだったな」
貴明@このみはクスリと笑いながらうーんっと伸びをする。
「まさかこんな状態で一緒に(このみの体&貴明の精神)風呂に入ることになるとは思わなかったよ…」
そう言いながら体を洗おうと洗い場へ移動する貴明@このみ。
「なるべく見ないようにしないとな…」
このみの体をジロジロ見るのは気が引ける貴明は、スポンジにボディシャンプーを付けると
きつく目をつむったままゴシゴシと擦り始める。
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ
「…胸はあんまり大きくなってないな…腕も足もほそいよなー…」
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ
「ウエストはそれ程締まってないけどおしりも小さいし…しかしよくアレだけ食べて太らないもんだよな…」
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ
目を閉じてやってる分やたら想像力がかき立てられてしまっていることに気がつかない貴明@このみ。
全身ほぼ泡だらけになった貴明@このみ。残るは…
「しょ、しょうがないんだからな。今は俺の体なんだし…洗わないと不潔だろうし…このみゴメン!」
意を決してそろそろっとスポンジを下腹部へ滑らせる貴明@このみ。
「んぅ…変な気になるなー洗うだけ洗うだけ何だからな…きぅ…必要なことなんだからな…んぁ…」
目をつぶってることでよけいに敏感に感じるという…要するに【一人目隠しプレイ】になっていることに気がつかない貴明@このみ。
いつの間にかスポンジを手放し、細い指で直に触れていることに気がつかない貴明@このみ
指に絡んでくる春の下草のような淡い陰影の感触に貴明は軽く衝撃を覚えた。
「生えてるんだな。ハハ…あたりまえだよな…このみももう高校生なんだし」
貴明の中のこのみは今でも幼い頃の印象そのまんまだった。
言動も行動も幼い頃からあまり変わってない気もするし。
指に絡みつかないように下草を慎重により分けながら(そんなに長くも濃くも伸びてるわけでもないんだが)
ピッチリと閉まった秘裂にソロソロと指を伸ばす。
しばらくそのまま躊躇していたが、意を決して中指をつぷっと中に侵入させる。
「んぁ!…うぅ…」
自分の中にモノが入ってくるという未知の体験に貴明@このみの頭がスパークを起こす。
くちゅ…くちゅくちゅ…
『別に変な事してる訳じゃないんだ…あうぅ…中まで洗わないと…不衛生かもしれな…はぅう…』
ちゅく…じゅぷじゅぷ…ぐちゅぐちゅぐちゅ
「んぅ…あぁ…はぅ…い…む…」
だんだん貴明@このみの息遣いが荒くなっていく。
貴明@このみは頭の何処かで自分が快感の波に呑まれ、体を洗わなければという理性が失われていくのを感じていた。
ボルテージが上がって行くに従い中に入れた指の動きが益々激しさを増していく。
「んぁ…あっあっあひ…あぁ…あっ!!!」
全身に電気が走ったかのように痺れ、体の奥から迸った熱いモノがピュピュ!っと手にかかったのを感じて、
貴明@このみは自分がイッた事を理解した。
軽い脱力感とまだ何か得体の知れない物足りなさに、貴明@このみは男と女の体の違いを感じていた。
「このみ、どうかしたの?変な大声だして…」
風呂場のガラス戸越しに春夏さんの声が聞こえてくる。
自分では気がつかなかったが、絶頂に達した瞬間に結構な大声を出してしまっていたらしい。
「う、ううん!?何でもないよ。あはは…ただチョット足を滑らせそうになっただけ…ホントなんでもないから!」
春夏さんは気をつけなさいよ、といいながらパタパタとスリッパを鳴らして遠ざかっていく。
「はぁ〜〜…俺、このみの身体になにやってんだろ…」
貴明@このみは軽い自己嫌悪を感じながら、火照った身体とのぼせた頭を冷やすために
温度調節を冷水に合わせたシャワーを勢いよく浴び始めた。
ゴキュ…ゴキュ…ゴキュ…ぷはーっ!!
「えへへ〜、一度やって見たかったんだよね♪」
このみ@貴明はニコニコ笑いながら腰に手を当て牛乳をあおる。
もちろん腰に巻きつけたタオル以外は全裸。
このみがまだ幼い頃、このみ父がやっていたのを真似して春香さんにこっぴどく叱られて以来、
柚原家では厳禁になっているという禁断の荒業だ。
「お母さん見てたらこんな事出来ないもんね〜」
フンフン鼻歌を歌いながらトントンと階段を上がって貴明の部屋へと入る。
「タカくんのお部屋〜♪」
最近はめったに入らなくなったが、基本的には昔とあまり変わっていない。
「よっ、ほっ、はっ、ふぬぬぬ〜」
等身大の姿身の前でポージングしてみるこのみ。
「タカくんの体ってこんな風になってたんでありますね…」
ジーっと穴があくほど今の自分の体を凝視するこのみ@貴明。
特にその視線はいつのまにか取れてしまった腰回りのタオルが隠していた一点に集中していた。
「タカくんの…おちんちん…」
口に出したとたんボッと顔を真っ赤にするこのみ@貴明。
小さい頃はよく一緒にお風呂に入ったり、庭で膨らましたビニールプールではしゃいだりした二人だが、小学校半ばくらいから
貴明が嫌がるようになったのでそれ以降は互いの裸を見る事も無くなって今日まで来ていた。
あの頃のウィンナーソーセージから比べれば今のモノは…アメリカンドッグ?
更に恐る恐る持ち上げて観察しようとしたところで、
へくちゅん!
このみ@貴明の口から可愛いくしゃみが出る。
風呂上がりからずっと素っ裸でウロウロしていたら当たり前であろう。
このみ@貴明は慌ててクローゼットからパンツ、Tシャツを取り出すと手っ取り早く着込む。
きっちりと洗濯されていても、着込んだ瞬間にふわっと香る貴明の匂い。
このみの大好きな香りだ。そのままベッドへとダイビングして毛布の中へと潜り込む。
そこでこのみは気づいた。
寂しがり屋の自分がこの広い河野家に一人で居てあまり寂しく感じないのは、
貴明の匂いと温もりをいつでも感じることが出来るからだと。
「タカくん…おやすみ〜…」
-続く-
以上であります。
長々と失礼足しました。
前作に感想を寄せてくださった皆様、ありがとうございました。
では!
「Tender Heart」楽しませて頂いてます。
このみスキーとしては珠玉の出来です(=゚ω゚)ノ
自分のSSも読んでくださったようで、どうもありがとうございました。
続きが楽しみです。頑張ってください!
「もうどうにもとまらない」も最高です!
前編を拝読したときから、続きが気になって仕方ありませんでした。
後編を震えて待ちます。
定番の展開としては、もう一回激しいショックを受けることで
戻るんだろうけど……
二人の共同作業で激しいショックが前から後ろから!
そんなドリーム展開を期待。
GJ!
やはりセックノレして元に戻るのだろうか…
ハァハァ
タカ棒が膜喪失の痛みを味わうのかw
由真とタマ姉、このみが仲良くなってくれるのは俺としても嬉しい。
だけどさぁ、俺の封印したい過去をネタに盛り上がったり、みんなで俺の部屋でギャルゲーやったり
するのは勘弁してほしいよホント。
それにしてもこのみ、帰り際に俺のこと「おにいちゃん」なんて呼んで、何のつもりだ?
「起床ーっ!!」
タマ姉の声、同時に布団がはぎ取られる。
ふぁぁ……もうそんな時間……って、時計を見たら、6時25分? まだまだ寝ていられる時間なの
に、何故?
「はい、さっさと起きて、庭に行くわよ」
「庭? 庭に行って何するの?」
「決まってるじゃない、ラジオ体操よ」
ラジオ体操って、小学生の夏休みじゃあるまいし……。
そう思ってタマ姉の方を見ると、その隣に由真がまだ眠そうな顔で立っている。
「ふぁ……、おはよ、たかあき」
「うん、おはよう」
「さ、庭にレッツゴーよ!」
姉さんは、今日も朝からはりきりモードです。
ラジオ体操をこなし、タマ姉が作ってくれた朝食(もちろんおいしかった)を食べ、そろそろ学校へ
行く時間。
そういえば由真は、今日は学校に行くのだろうか?
「由真、今日は学校、どうする?」
「あ、あたし……」
「由真さん」
タマ姉が微笑みながら由真の肩をポンと叩く。
「は、はい……、今日からは学校行くよ、あたし」
「そっか。じゃ、制服に着替えて出かけようか」
「うん」
「タカくん、タマお姉ちゃん、由真さん、おはよう」
玄関を出た俺達を、このみが待っていた。
「おはよう、このみ」
「おはよう、このみちゃん」
「あ、由真さん、今日は学校行くんですね」
「うん、ずっとさぼろうかって思ってたけど、環さんに叱られちゃったから」
そう言って肩をすくめる由真。
「ふふっ、さあ、行きましょう」
学校への途中、雄二と合流する。
「雄二」
「なんだ、貴明?」
「以前、お前が置いていったゲーム、あれな」
「ゲーム? ……ああ、アレな。遊んでみたのか貴明。で、どうよ、萌えたか?」
「あれな、お前から借りた物だって、タマ姉にばれた」
「げぇっ!? ま、マジかよ?」
「マジよ、雄二」
「うおっ! あ、姉貴!? ――って、あだだだだ!!」
出た! タマ姉の必殺技、アイアンクロー!
「あんたがどんなゲームをやろうと構わないけど、あれをタカ坊に勧めるのは感心しないわね。
あんたはともかく、タカ坊までメイドさんマニアになったらどうするつもり?」
「お、俺はどうでもいいみたいに言って、それでも実の姉かよ!?」
「実の姉だから、あんたのことはとっくに見限ってるのよ」
「ひ、ひでぇよ姉貴!! ひどいし割れる割れる割れる!!」
「まあまあ環さん、そのくらいでいいじゃないですか。幸いたかあきはメイドさんじゃなくて萌子
ちゃんに夢中なわけで」
「お、やっぱりそうか貴明! そうだよな〜、貴明なら絶対最初は萌子ちゃんに行くと思ったぜ!」
「夢中じゃねぇ! 由真が決めたんだろうが!」
「あれ、そうだっけ? まあどっちでもいいじゃない。ですから環さん、そろそろ……」
「……やっぱり許せないわね。何より一番許せないのは……」
「ゆ、許せないのは?」
「どうしてあのゲームには『年上の幼なじみ』がいないのよ!?」
「そ、そんなこと俺に言われても……あ、あだだだだ割れる割れる割れるギブギブギブ!!」
タマ姉それは雄二の罪じゃないよタマ姉……。
学校に入り、タマ姉、このみと別れ、雄二と共に教室へ。って、何故か由真がついてくる。
「なんだよ由真、自分の教室に行かないのか?」
「うん、愛佳に顔見せとかないとって思って」
そっか、小牧さんにも心配かけたからな。その小牧さんは……うん、自分の席にいる。
「おはよう、小牧さん」
「おはよう、愛佳」
「おはよう河野君。由真、今日は来たんだね、よかった」
「うん、心配かけてゴメンね」
「あたしはいいよぉ。それより河野君や向坂先輩に迷惑かけたりしてない?」
「それは大丈夫だよ小牧さん。由真、タマ姉とも仲良くやってるよ」
「そうなんですか、よかった」
小牧さんがホッと息をなで下ろす。
「あ、予鈴鳴ってる。じゃああたし行くね。また後で、愛佳」
「うん、由真、後でね」
さてと、俺も自分の席に着こうかな。
「……うー」
「ん?」
後ろからの声に振り返ってみると、そこには――
「るーこ、どうした?」
るーこだ。でも何か様子がおかしい。落ち込んでるみたいな……。
「……」
だがるーこは、何も言わずに自分の席に行ってしまった。
何だろう、ちょっと気になる……。
休み時間。俺はるーこに、さっきの件について聞いてみることにした。
「るーこ」
「なんだ、うー」
「さっきさ、何か俺に話したいことがあったんじゃないか?」
「……」
「何でもいいから言ってみろよ。俺じゃ頼りないかもしれないけど、一応相談には乗るぜ」
「……」
るーこが顔を上げ、何かを訴えるような目で俺を見る。
でも、それは一瞬のことだった、るーこは目をそらし、こう言った。
「これはるーの問題だ。うーの力は借りない」
「るーこ……」
「……でも、るーを心配してくれるのは嬉しいぞ。うー」
「……わかった、しつこくは聞かないよ。でも話したくなったら、いつでも話しかけてくれよ」
「うん。わかったぞ、うー」
昼休み。屋上での昼食に新しい仲間が加わった。由真と小牧さんだ。
「どうぞ、遠慮なく」
「そうだよ、食べてみなよ。環さんの料理、すっごくおいしいんだから」
タマ姉と由真が、タマ姉の作った弁当を小牧さんに勧める。
「じゃあ、いただきます。――ホントだ、おいしい!」
「でしょ。環さんって凄いよねー。料理はおいしいし、勉強も出来るし、美人だしスタイルもいいし。
ああっ、羨ましいなぁ。あたしも環さんみたいになりたいなぁ〜」
由真はすっかりタマ姉ファンになってしまったようだ。
「ホント、向坂先輩って凄いんですね」
小牧さんにも誉められて、タマ姉は照れ笑いを浮かべる。
「そんな大したものじゃないわよ。このくらい、誰にだって出来るわ」
「そうそう、大したことないない。由真ちゃんも委員ちょも姉貴を過大評価しすぎ。あんまり調子に
乗せると、そのうち二人とも姉貴に『お姉様と呼びなさい!』とか言われて、アゴでこき使われるよう
になるぜ」
「誰が『お姉様と呼びなさい』よ、誰が」
ぎりぎりぎりぎりぎり。
一瞬の早業で雄二にアイアンクローをかますタマ姉。
「あだだだだ割れる割れる割れる!! ゆ、許してくださいお姉様!!」
いつも余計な一言で自滅する雄二であった。合掌。
ん? あそこにいるのはるーこか?
何してるんだ、るーこの奴? 昼飯も食わずにボーッと突っ立って。
やっぱり、何か悩み事があるのかな……。
話しかけてみるか? いや、多分るーこのことだ、さっきみたいに何も教えちゃくれないだろうな。
でも気になるなぁ。るーこ、どうしたんだよ?
「どうしたの、タカくん?」
「ん? あ、いや、何でもない」
放課後。タマ姉、由真、このみ、雄二と一緒に下校。
俺は、あることを確かめようと決心した。あることとはもちろん、るーこのことだ。
「タマ姉、今日俺、ちょっと寄るところがあるから、悪いけど先に帰っててくれ」
そう言って、タマ姉に家の鍵を渡す。
「タカ坊、どうしたの? 寄るところって?」
「公園。気になることがあって」
公園はるーこの仮住まいだ。そこに行ってるーこがどうしているのかを確かめる。
るーこが何も言わない以上、こうするしか方法はない。
「公園? 公園に行ってどうするの? 第一、あそこは今――」
俺は公園へと走る。ただひたすらに走る。
そういうことだったのか、るーこが落ち込んでいた原因は!
走りながら俺は、さっきのタマ姉の言葉を思い出す。
「第一、あそこは今、遊具の点検補修工事が終わるまで閉鎖してるわよ」
タマ姉によると一昨日、あの公園のブランコで子供が遊んでいたとき、突然ブランコの鎖が千切れて、
そのせいで子供が怪我を負ったらしい。幸い軽い怪我で済んだそうだが、子供の親は激怒して「公園
遊具の安全管理がなっていない!」と役所に怒鳴り込んだ。そこで役所は急きょ、壊れたブランコは
もちろん、その他の遊具も全て、点検と補修工事を行うことにした。そしてその工事が終わるまでの間、
公園を立入禁止にした、とのことだ。
つまり、るーこは公園から追い出されてしまったんだ。
故郷の”るー”に帰るまで、今は”うー”の中で生きていくと言っていたるーこ。そんなるーこが、
仮住まいにしていた公園。しかし”うー”は、その公園をるーこから奪ってしまった。
るーこは、一体どうしてるんだろう? 公園を追い出されて、どこで寝泊まりしているんだろう?
公園以外で、るーこが住める場所……ダメだ、思い浮かばない。
だからまず、公園に行ってみる。そこしかないから。それに、何となくだけど俺は、公園の近くに
るーこがいるような気がしていた。
そしてそれは――当たっていた。
「――るーこ!」
「うー?」
公園の入り口、『立入禁止』と書かれた看板付きのフェンスの前で、るーこは座り込んでいた。
「うー、どうして……ここに?」
意外そうな目で俺を見るるーこ。
「はぁっ、はぁっ……、な、何となく、かな……」
ここまで来るのに走りっぱなしだったから、呼吸が落ち着かない。
とりあえず、深呼吸。……ふぅっ。
「何しに来た? ここは今、閉鎖中だ。遊べないぞ、うー」
「遊びに来たんじゃないよ。公園が閉鎖したって、さっきタマ姉に聞いたからさ。
それよりも、水くさいぞるーこ。俺に何も言わないなんて」
「る〜……うーには色々と世話になっている。これ以上うーに頼ってはいけない」
「それが水くさいって言うんだよ。俺にとってるーこは命の恩人なんだぜ。そんなるーこが困っている
のを放っておけるかって。だから――」
その次の言葉は何の躊躇いもなく、俺の口から飛び出した。
「俺の家に来いよ、るーこ」
「うー?」
「公園がまた開放するまでの間、いや、るーこさえよければるーこが故郷に戻れる日まで、俺の家で
暮らせばいいよ。うん、そうすればいい」
「だ、ダメだぞ、うーにこれ以上迷惑は……」
「それにな、前々から思ってたんだけど、るーこだって女の子だろ、女の子が公園で寝泊まりするの
って、何かと不便だろうし、何より危険だよ。まぁ、危険という意味では男の一人住まいも危険かも
しれないけど……今は大丈夫、俺以外にも二人ほど住んでいるから。
で、その二人のうちの一人って、お前も知ってるタマ姉なんだよ。俺の家に来れば、毎日タマ姉の
うまい飯が食えるぜ。どうだ、魅力的だろ?」
「うータマが、どうして……?」
「ま、まぁそれは色々と事情があってな……。とにかく、そういうわけだから、な、一緒に行こう?」
「……どうして」
るーこはうつむいたまま立ち上がり、そして、こう聞いてきた。
「どうして、ここまで親切にしてくれるのだ、うー?」
「さっきも言っただろ、命の恩人が困っているのを見過ごせるかって。それに、さ」
「?」
「さっきタマ姉から公園の話を聞いたとき、俺、るーこが他の場所に行ったんじゃないかって思った。
でもその行き先が全然思いつかなくて、だったら公園に行ってみるしかないって思ったんだ。そしたら
るーこがいた。きっとこれって、お前がよく言う”るー”の導きってヤツだよ」
「うー……やっぱりお前はいい”うー”だな。
わかった、しばらく世話になる。よろしくだぞ、うー」
そう言って微笑むるーこ。うん、これでいいんだ。俺はるーこを連れて、家に帰った。
「なるほど、それでるーこちゃんを連れてきたってわけね」
「そうなんだ。な、タマ姉いいだろ?」
俺がそう聞くと、タマ姉は笑ってこう言った。
「どうして私に許可を求めるの? 今、この家の主はタカ坊、あなたよ。あなたがいいと思ったのなら、
私はそれでいいわよ」
「タマ姉……、うん、そうだな。そう言うわけだから、タマ姉、由真、よろしく頼むな」
「よろしくだぞ、うータマ、それから、うーゆま」
「ええ、よろしくね、るーこちゃん」
「うーゆまってあたしのこと……? ま、まぁ、よろしくね」
つづく。
どうもです。第6話です。
河野家に新メンバー、るーこ参入です。
次はダニエルだな。
るーこキター!!GJ!!
次回も楽しみにしておりますよー!!
さあ、いよいよ混沌としてまいりました(良い意味で)!!
つうか現時点のメンバーで俺も河野家に住み込みたいんですが!!
由真タマ姉るーこ…UMAタマるー(ENDLESS)
るーこいい
つーか、何気にるーこがクラスにいたことに笑ったw
636 :
名無しさんだよもん:2005/05/19(木) 22:39:56 ID:0fSZdiwy0
元ネタを押さえて変奏する手際がすごいなあ。
楽しませてもらってます
次の住人予想
ダニエル 1.2倍
雄二 3.6倍
図書委員長 8.7倍
長瀬主任 12.9倍
イルファ 59.5倍
ミルファ 150.5倍
シルファ 250.3倍
三体同時 10293.4倍
よっち 50倍
ちゃる 53.1倍
二人同時 2063.4倍
可愛くない熊 1.01倍
菜々子ちゃん一点買い
そこで郁乃の出番ですよ。
何このラブひな的展開?
にやにや
ラブひな?
ああ、U−1にも匹敵する糞ヒロイン漫画ね
ラブひな(笑)
GJ!
これで姫百合姉妹+αが登場すれば晴れて全員集合ですな!
…アレ…ダレカワスレテイルヨウナ…?(´・ω・`)
今から、殆ど勢いだけで書き上げたSS投下します…
よろしくお願いします
放課後の2−B教室。
河野貴明。
長瀬由真。
折角つき合い始めたと言うのに相変わらずいがみ合う2人。
もっとも、元々喧嘩から始まった仲。こうやって殺伐としのぎを削りながらお互いの
気持ちをあますことなく全力でぶつけ確かめ合うのも2人にとっては欠かすことの
出来ない重要なコミュニケーション手段なのだが。
ちなみに昔は由真が一方的に顔を真っ赤にするだけだったが、最近は貴明の方も全力を
出すようになったためか妙になりふり構わずムキになることが多くなった。
何と言うか、傍から見ると超典型的なバカップルな2人である。
しかし今日に限って、何故かお互いを睨みつけるばかりで勝負に雪崩れ込もうとしない。
…どうやらあまりに勝負しすぎて、次の勝負のネタに困っているようだった。
そこに雄二が生暖かい笑顔とともに割り込んでくる。
「お、例によって十波じゃん。また貴明とちちくり合いに来たのか?」
「誰がちちくり合うか!!あと十波ってヨブナ」
「…長瀬って呼んだら睨んでくるくせに」
「別に」
まあ最近は長瀬の名前に重荷を感じなくなったのか、以前ほど嫌な反応はしなくなったが。
「ふふふふふ、よきかなよきかなウフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」
さらに、自称「貴明と由真の仲裁役」こと愛佳も首を突っ込んでくる。
一層生暖かいスマイルを浮かべながら。
「そこ能面みたく笑うな」
「そうよ、こっちは取り込んでるんだから」
不機嫌そうに右手でシッシする2人。シンクロ。
「…勝負のネタがないの?」
一発で的確な質問をぶつけてくる愛佳に2人の顔がゆがむ。
「2人の考えてることはようぅく分かります」
「ウヒヒヒヒ、ウヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」
更に生暖かくなる雄二と愛佳。バツの悪いバカップル。
「別に何でもいいだろが。どうせいつも両方グロッキーになるまで続けて有耶無耶になる
だけなんだしよ」
図星。実際、勝ち負けの問題ではないので。
「あのねえ…あたしらだって勝負の内容にはこだわってんのよっ」
「全くだ。俺らのことをオナニー覚えたての猿みたいに節操無い人間とか言いやがって」
「あたしまでそんな比喩に含めるな!!」
貴明の脳天に由真の拳骨が入る。どこからどう見ても夫婦漫才である。
「むー…対戦ゲームはいい加減やり飽きたし、ジャンケンみたいな運勝負なんか問題外だし」
「運動競技も準備するのに手間かかるしなあ」
「あ?卓球なら許可取ればすぐできるだろ貴明」
その瞬間、雄二の鳩尾に由真と貴明の拳が深々と入る。
卓球にはよほど嫌な思い出があるらしい。
「料理対決も早食いも大食いもやりましたしねえ…」
「全部愛佳の提案でネ」
「う…」
「何かいいの無いか雄二」
「俺もいい加減てめえらへのネタ出しには疲れたっつうの」
4人して腕組みしながら首をかしげる。
「あ…」
不意に右の握りこぶしで左掌をポンと叩く愛佳。
「一つ見つけました。まだ2人がやったことのない勝負」
そこに投下された、提案。
「『早口言葉対決』…ってのはどう?」
目を丸くする貴明と由真。数秒後、互いに見合わせる。
早口言葉。
愛佳。
この2つから連想されるそれぞれの記憶。
圧倒的な滑舌の悪さ。
(「ばすがすばくはぷっばすがすばくはしゅぽぽ!!」)
(「ほんとりうらぎったんでぃすかおんとぅりうらぎったんでぃすか
おんどぅるるらぎったんでぃすか!!」)
眉を潜める2人。
「…ものすごく失礼な波動を感じるんですけど…」
むくれる愛佳。意味がよく分からない雄二。
「…じゃ、じゃあ、とりあえず要望通り早口言葉で勝負ってことでどうだ」
「むう…。まあ、いいか。受けて立ってやるわよ」
愛佳の呪詛にも似た負の感情を受けて、早口言葉対決に雪崩れ込む2人。
教室の片隅に2人分の椅子を置き対峙する。
審判は雄二と愛佳の2人。舌を噛む、あるいは発音が乱れたら負け。
ラウンド1。
「ようし。まずは短めな早口からだな」
お題を出す雄二。
「『高慢』を10回」
その瞬間、雄二の右頬に貴明の右拳、左頬に由真の右掌、そして後頭部に
何処からともなく現れたタマ姉のアイアンクロウが入った。
その惨状をまじまじと一瞥した後、苦笑しながら改めてお題を出す愛佳。
「…うーんと。じゃあ…『コツカケ』を10回」
コツカケ。
琉球空手の技法の1つ。金玉を腹の中に引っ込めることで金的攻撃を防ぐ。
「こ、小牧…なかなか、め、面妖なセレクトだな」
「…愛佳って地味なくせに意外とヘンな知識持ってるのよね」
「え?え?えええ?なな何かおかしいですか?え?」
だが、出展元の突飛さとは裏腹になかなか難度の高いお題だったりする。
ともあれ、ラウンド1開始。
「コツカケコツカケコツカケコツカケコツカケコツカケコツカケコツカケコツカケコツカケ」
「コツカケコツカケコツカケコツカケコツカケコツカケコツカケコツカケコツカケコツカケ」
「コツカケコクカケコクアケコツコケコツコツコツコツコツコツ」
「いや、委員ちょまでやらんでも…」
自身の力の無さを再認識しうなだれる愛佳。
それはおいといて、思いの他滑舌の良い貴明と由真の2人。
出来はほぼ完璧に近く、ラウンド1は全くの互角であった。
「ラウンド2。オーソドックスに『生麦生米生卵』を10回な」
「生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵
生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵」
「生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵
生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵」
「生グミ生モゲ生々碁生グミ生モゲ生々藻」
「だから審判に徹しろっつうのっ」
「うう…」
さておき、ラウンド2も完全に互角であった。その後の凄絶な闘いを予感させる。
「ラウンド3のお題はですね…『隣の柿はよく客食う柿だ』を10回☆」
「愛佳…ベタ過ぎ」
「ううぅ…」
例によってラウンド3も両者全く譲らず。
「…なかなかやるじゃないか由真。ブキッチョにしては上出来だ」
「ふん、あいにく舌先八寸には自信があるの。…あんたこそ意外と器用な舌してんじゃない」
緊張状態が続きながらもお互いの力を認め合う空気が漂う貴明と由真。
「おい、早いとこどっちか舌噛めよ。帰り遅くなるじゃねえか」
「やかましい」「うっさいわね」
露骨に不満を示す雄二。
見てる側としては、完璧すぎる早口言葉もまた退屈なのである。
「で、でも、お題を出す側としてはこれくらい強い方がイヂめ甲斐もありますし」
あからさまに狼狽しながら強がりを見せる愛佳。
「…ハア。じゃあラウンド4。『新町の新九郎さんの尻に虱が四疋しみついて
死んどった』を10回。テイウカ噛め」
「向坂君、マイナーなネタ知ってるんですね…でもこれできっと決着が」
だが。
これまた一糸乱れることなく舌を滑らせる貴明と由真。
「おいおい、まじかよ!!」
「へ、下手したらお金稼げそうですね…」
ただ驚愕するのみの審判組。
「んだよ、もうネタギレか?つまんねえなあ」
「ほらぁ!早く次のお題出しなッさいよ。あとがつかえてんのっ」
あまりの手ごたえの無さに勝負を忘れて馴れ合い野次飛ばしまで始める2人。
「ら、ラウンド5…。…うーんと…んー…『フハハハハきいたかケンシロウおれを死ぬほど
嫌いだと言った女が女の心変わりはおそろしいのぉ』を…」
「い…いいんちょ…」
「…まじめにお題出してよ」
「そこネタ尽きたからって雄二の鞄の中から漫画取り出して台詞を無作為抽出しないように」
「…うううう…」
いよいよネタ出しに窮する雄二と愛佳。
しかし。
そのときだった。
追い詰められていた雄二の目の色に再び生気が宿ったのは。
「…お前ら。調子に乗るのもここまでだ」
「な!!」「ぬ?!」
空気が一変し、2人にも再び緊張感が芽生える。
「こ、向坂君!何か策でも…?」
「早口言葉とはやや毛色が違うが、あまりにもソニック・タンな小憎らしいお前らの息の根を
止める強力なお題が、今俺の鞄の中にひとつだけある」
「…ほお…息の根止めるとはまた大きく出たわね、向坂雄二」
「して、その必殺のお題とは何だね。んん?」
「もしそのお題も完璧にクリアできたら、勿論2人で何か奢ってくれるんでしょうね?」
「俺はヤックのトマトヤックグランのセットをプリーズ」
「びんぼっちいわね。じゃああたしはトドールの…」
小刻みにほくそ笑みながら鞄の中をまさぐる雄二。
「調子に乗っていられるのも今が最後だ…」
「!?」
凍りつく貴明、由真。
鞄から取り出したるは、1枚の古ぼけたマキシシングル。
「この曲の冒頭の早口アカペラパートを完コピして10回繰り返してみろぉ!!」
SCATMAN JOHN「Scatman」
「「スカッパラパピリルバビルリラバリバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレ
バビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルロスカッパラ
パピリルバビルリラバリバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレ
バビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルロスカッパラパピリルバビルリラ
バリバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレ
バビルリレバビルリレバビルリレバビルロスカッパラパピリルバビルリラバリバビルリレ
バビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレ
バビルリレバビルリレバビルロスカッパラパピリルバビルリラバリバビルリレバビルリレ
バビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレ
バビルリレバビルロスカッパラパピリルバビルリラバリバビルリレバビルリレバビルリレ
バビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビ」」
ばぶち!!
豪快に舌を噛む音が教室中に響き、血飛沫とともに由真が椅子ごと後方に卒倒した。
由真らしく白パンツもろ見せで。
「ひぃあああ由真ぁぁ!!?」
「おらぁぁぁ勝ったァ!!」
悲鳴を上げる愛佳を尻目に力強くガッツポーズを取る雄二。
全身を軋ませながらおもむろに起き上がりハンカチで口元の血を拭く由真。
満面の悔しさをにじませたお馴染みの表情で左手人差し指を突きつけ、
「これで勝ったと思うなよぉ〜!!!」
とこれまたお得意の捨て台詞を残し脱兎のごとく走り去っていった。
今回の場合は二重の意味をこめて。
「…んん?二重てことは」
「こ、河野君の方は」
高速で貴明の方に首を向ける2人。
「スカッパラパピリルバビルリラバリバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレ」
「きゃああああ!!河野君!?」
「い、いかん!こいつも舌を噛んで虚ろに喋り続けながら気を失っているぞぉー!!」
完
勢いキター!
GJ!!
こう言うの大好きですわ
と…480KB越えたのでどなたか次スレたててくださいませ
>653
御疲れ様でした!!
>>644 そりゃ無理だろスキャットマン10回てw
俺もシングル持ってたが。
何にせよ面白かった。
スキャットマン懐かしいね
CDもってたよ
るー
るー
るー
662 :
るー:2005/05/23(月) 19:05:01 ID:TOHuMuk/0
るー
, *⌒´`*、
! i! (((ノリ)〉 | もうすぐだよ〜
W!(i|゚ ヮ゚ノ|W
/ ヽ不( 東鳩祭2 )
く/_|〉
し'ノ
杜のき(ry(イベント名)で金使っちまった……(つд ̄)
>>663 カタログ、秋葉行かないと手に入らないんだよな。
何故か、新宿とらでは9月の都産貿のカタログが売られてる不思議。
るー
あれ9月の都産じゃなくて、5月のヤツだよ
てか、イベント名全く同じでやるのはややこしい。
>>668 カタログの裏表紙にも、とらの値札にも9月の都産と書いてあったが
裏表紙は宣伝で、値札は勘違いってこと?
取り敢えず、ビックサイトの文字と
5/29という日付はどこにも見当たらなかったんだが・・・
俺の手元にある、今回の東鳩祭2のカタログ裏表紙は
次回の都産の宣伝しか載ってないな
てか、マジで不親切すぎるカタログだ
671 :
るー:2005/05/25(水) 20:39:58 ID:vL0br0Ov0
るー
全部で227サークルか。
結構あるようけど、募集って、400スペースくらいじゃ
なかったけ? 赤字にならんのかな?
俺は当日も含めて、イベントそのものに不安を感じている
当初500募集していた記憶だ
674 :
665:2005/05/26(木) 11:59:33 ID:GsqjeMRV0
その新宿のとらで「9月 都産貿」と値札貼られてるのを買った。
確かに、今度のビックサイトのカタログだったよ。
ってか、あれは店員が間違えて値札書いても仕方ないような・・・
しかし、このカタログ、
サークル配置図は小さいは、満足にタイムテーブル無いはで
運営そのものを疑いたくなるな。
これで1000円ってのもボッタクってる気が。
場所代高いのはわかるだが・・・
参加サークルそのものはそこそこ良いところが揃ってるのに・・・
るー
るぁぁあああああああああああ!!
るー
るー
タマ姉たまんねぇ
どいつもこいつも、委員ちょだのタマ姉だのに萌えやがって。
それでもおれは、黄色が大好きだーーーー!
::: ,.- .., :
,゙ ゙ ' ‐ ‐ ‐/⌒ヽ' ' ゙ ',
: .! ,.γ⌒ヽ ;
,'゙ ゙'‐-ヘ, ノ.,⌒)
. ,’ ~ ^ヾ_ノ
: :‐‐┼- ;
:‐┼- ● ● ー┼- / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
. ゙N l ::. ....:;イ;:' l 、 ,l,フ ノ | 久々にサンリオ
. |_i"ヽ;:...:::/ ゙'''=-='''´`ヽ. /i l" < キティって何か喋ってたっけ?
.| ::゙l ::´~===' '===''` ,il" .|'". | セリフが思い浮かばないから困る
.{ ::| 、 :: `::=====::" , il | \________
/ト、 :|. ゙l;: ,i' ,l' ノト、
/ .| \ゝ、゙l;: ,,/;;,ノ;r'" :| \
'" | `''-、`'ー--─'";;-'''" ,| \_
るー
,,_ , - ''  ̄ ̄` - 、_ 静まれーぃ!静まれーぃ!
/´ ヽ,, この紋所が目に……静まれぃー!
O 。 / i ヾ, `ヽ, 皆の者〜、静まれっ!
/, l i i, ヽ_ ヽ, ,、 静まれーぃ!
o / / ,/| l, l ヽ, \ヾ ヽ ,li , -ノ_,/ノ このお方をどなたと
O i / | l l j ヽ i、 ヾ \__l li/ i/-/ 静まれーぃ!
゜ l l ーi-l、|_|リ ト_ 、, 、,y__ノ-、ll////∠-、_ ええぃ!静まれっ!
。 |ii, l li i _ヾヽ,ヽヽ_>__ヾ,_ `-ノゝ_´`-/ 静まれ!静まれーぃ!
o ||l .l リ 〃、 ::l`ヽ ヾ`, イっ::ヽ_ ソー|ソ/≡l i i 先の副将軍、
ll,l ii li ` i:;;;;:l ` l::;;;,:/r,/ !/〃 | /l l 水戸の御老……静まれーぃ!
__,─── 、_ゝi トi C`'´ , `ー'っ/l i |ソ丿 i/ i/ 静まれーぃ!皆の者、静まれーぃ!
r'~´ ~l |`>,, r,─ 、 /<i, l |ヽ、_ 水戸の……静まれーぃ!静まれーぃ!
| /'i. i, l、ゝ、,_ l _ ノ , イ::::::| ,/ll:::///
, ─ー- 、=====| ヽ トl ヾ:::::|` ─. ''´ ,/:::::::l /:/:///\ みんなっ静まれ〜〜ってばぁ〜〜!!!
(_,-ー<_ _ _ ヽ_ ト lヾ::::::::|_=====/:::::::,ノ::/ /~ \
(__ ,_ '/ヽ////:::::::l/ヾ、|ヾ、:::::::ヽ / ,/r/ \
( ノヽ/// ::::::|) i `ヽ_==,\ /==-ー' l \
l ロ二´ 、_ ` ::::::l / 二>-i''::┬,<_ ,| \
(__ , ノ :::::::l 丿 ,-- ':::::''::::,i::: lヾ;;::::::`ヽ,_ l' \
i , -'´ ̄ ̄ ̄`` j' /::::::::: :::/:::/r j、::::::::::::::::::/\_ \_
ナ ゝ ナ ゝ / 十_" ー;=‐ |! |!
cト cト /^、_ノ | 、.__ つ (.__  ̄ ̄ ̄ ̄ ・ ・ (⌒)
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,. ‐'´ `‐、 __, ‐'´ ヽ r、くヾソ,. -‐‐-、___ ,ヘ
/ ヽ、_/)ノ ≦ _,.-ニ=‐-'´ ' くヽi ∠
/ / ̄~`'''‐- 、.._ ノ ≦ // , ‐- 、`7´ヽ\
i. /  ̄l 7 1 イ/l/|ヘ ヽヘ // / / , / , . ヽ! .;::ヽ ヽ、
,!ヘ. / ‐- 、._ u |/ l |/ ! ! | ヾ ヾ ヽ_、l /.: :.:/ /!:|:..::::..i ::.;::. , :',::::i:::::i::. 〉
. |〃、!ミ: -─ゝ、 __ .l レ二ヽ、 、__∠´_ !;:: .::/ .::ム!ハ!:::i:::iニ!::ト:::i::. l::i::::|::::l:: /
!_ヒ; L(.:)_ `ー'"〈:)_,` / riヽ_(:)_i '_(:)_/ | i::. .:/l.::::lィ'ト,lヽトハ!7=ト、|::::;:::ト、|::::l: !
/`゙i u ´ ヽ ! !{ ,! ` l:ハ::l/:::ヽハ tリ ` f:;:l! l〉!::iヽ! |::://!
_/:::::::! ,,..ゝ! ゙! ヽ ' .゙!l ヽハ:::l:::ハ`´, `゙'''´ |::iノ| |::::/lリ
_,,. -‐ヘ::::::::::::::ヽ、 r'´~`''‐、 / !、 ‐=ニ⊃ /ハ ヽハl ト、 ー . イ l::| リ::/
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i、 \:::::::::::::::..、 ~" / ヽ.___,./ // \ ,.ヾヽ ト、 _,. / _,,,.ヽ、
____ 、ミ川川川彡
/⌒ヽ /:::::::::::::::::::::::::""'''-ミ 彡
` ,丿 //, -‐―、:::::::::::::::::::::三 ギ そ 三
| __ 巛/ \::::::::::::::::三. ャ れ 三
・ _-=三三三ミミ、.//! l、:::::::::::::三 グ は 三
r、くヾソ,. -‐‐-==三=. ̄ 《|ll|ニヽ l∠三,,`\\::三 で 三
_,.-ニ=‐-'´ ' く/ |||"''》 ''"└┴‐` `ヽ三 言 ひ 三
// , ‐- ! | / 三 っ ょ 三
// / / , / , . .|‐-、:::、∠三"` ..| ヽ= U 三. て っ 三
〃 /.: :.:/ /!:|:..::::..i ::.;::. |"''》 ''"└┴` | ゝ―- 三 る と 三
!;:: .::/ .::ム!ハ!:::i:::iニ!::ト:::i::.| / ヽ "" ,. 三 の し 三
| i::. .:/l.::::lィ'ト,lヽトハ!7=ト、. | ヽ= 、 U lヽ、___,,,...-‐''" 三 か て 三
l:ハ::l/:::ヽハ tリ ` f:;:l! l. | ゝ―-'′ | |::::::::::::_,,,...-‐'"三 !? 三
l ヽハ:::l:::ハ`´, `゙'''´ ヽ "" ,. | | ̄ ̄ ̄ 彡 ミ
ヽハl ト、 ー . イ ヽ、___,,,...-‐''" ,,..-'''~ 彡川川川ミ
lハi'゙´.>r '´ /\ 厂‐'''~ 〇
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. ! . i〈 ミ'´ヽヾ ヽ /_ )}从从リ)〉从リ {( _) i i | i !,!〃ノハ))〉! i! (((ノリ)〉 |
. i ヽ(l ゚ ー゚ノ"/´ヘ (l ´ヮ八ヮ` l) ノ` lリ(l〉゚ -゚ノリ .W!(i|゚ ‐゚ノ.W
i |. ハ` | i'つ ⊂)卯!ハi卯(⊃| i i | i ||i/)卯iヽ ハ 不iヽ
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