クラナドSS専用スレッド その2

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574智代after22:04/07/06 20:22 ID:Pk5cd5f7
目の前が真っ暗になった。
俺の怒声に泣き出した汐を、智代から取り上げてあやす。
智代に向かって、静かに言う。
「智代…、別れよう…」
「え…? どうして、どうしてそんなこと言うの?」
「だって…、お前がこいつのこと傷つけるから。だったら、離れて暮らすしかねえだろ?」
「い…や…。返して! 私の娘だぞ」
「俺たちの子だっ!」
「ウソつき!」
「なにがウソだ」
「お義父さんと仲直りしたって言ったくせに! 二人して私のことを見張ってたくせに!」
それはお前の負担を軽くするために、親父と二人で出来るだけ汐の世話をしていたんじゃないか。
それを分かってくれないのなら、俺たちの家族ごっこは終わらせるしかない。
ガラッと障子が開かれた。
いつの間にか帰っていた親父が、智代の前に立つ。
「ダメだ…。ダメだよ、智代さん。このままじゃ…、私と朋也くんのようになってしまうよ?」
朋也くん、か。
家族とはとても呼べないような親子。
それでも親父は、俺たちのために無理をしてくれていたのが分かってしまった。
「私たちがどんなに醜い親子だったか…、ずっと朋也くんの側にいたあなたなら分かるでしょう。
「そんな風になってもいいのかい!?」
「……」
智代と汐をそんな親子にするわけにはいかない。
「イヤ、そんなのイヤだ」
智代はゆっくと立ち上がり、俺の手から汐を受け取った。
「ごめんね! ごめんね、汐。ママを…、許して!」
泣きくずれながら娘に詫びた。
575智代after23:04/07/06 20:23 ID:Pk5cd5f7
「これで、良かったかな?」
親父が、俺に問う。
さっきの、朋也くんて呼ばれたことにはもうこだわらない。
「ああ。ありがとう、父さん」
「朋也…」
俺の肩を、ポンと叩いて部屋を出てゆく。
俺たちは、今度こそ、本当の家族に戻れる。
汐のおかげだ。
汐が、自分と母の関係を犠牲にしてまで、父と祖父の絆を守ってくれたのだ。
そう思えた。
だから、父親である俺は、汐と智代の絆を守らなければならない。
智代の隣に座って、その肩を抱く。
彼女が泣き止むまで。

膝が触れ合う距離で、智代と向かい合って座る。
「本当に、ごめんなさい」
「もういいよ」
自ら過ちを認めた智代が、再び同じ事を繰り返すとは思えなかったから。
「でも、どうしても苦しいときは俺に言えよ?」
「うん、大丈夫だ。もう勉強はしないって決めたから」
「は? ずいぶんと極端だな、おい。口述試験てのが残ってんだろ。この間の発表だってまだだし」
「やるべき事はやった。今は汐のために時間を使いたい」
「その代わり、もし合格したら、一年半の研修に行かなければならない。その間、汐のことお願いする」
「おう。まかせろ」
「うん…。あ、汐と離れなければならないんだって思ったら、また悲しくなってきたぞ…」
智代の目が、潤んでくる。
「大丈夫。きっと汐だって分かってくれるさ」
「うん…。」
576智代after24/24:04/07/06 20:26 ID:Pk5cd5f7
「もう一つ。そしてその後、私は弁護士になりたい」
「ああ、いいんじゃないか」
「私には、朋也やお父さんがいてくれた。幸いなことだ。
「でも、世の中には、不幸にも、我が子を傷つけ罪に問われる母親たちがいるんだろう。
「そんな母親たちの助けになりたい」
その決意に衝撃を受ける。
自らの行いを反省するだけでなく、あっと言う間に成長してしまった。それでこそ…、智代だ。
「それで、そんな人たちからは、あまりお金を取れないと思う」
「ま、しょうがないわな」
「だから、大きな家を買うなんてのは諦めてくれ」
はあ? ああ、そう言えば、昔そんなことを話したっけ。
「いいよ。お前と汐がいれば。親父もいるしな」
借家だからいつか出ることはあるだろうけど。
「なー、汐。ぶちゅっ」
汐の右頬にキスした。
「うわっ。いやらしい」
汐を取り上げられてしまった。
「どこがいやらしいんだよ」
「パパ、いやらしかったよねー。チュッ」
智代が汐の左頬にキスした。いやらしくはない、いや、かわいいぞ。
「じゃ、いやらしいちゅーはママにだな」
「汐の前で…」
「わはは、よいではないか」
ガラッと障子が開かれた。
「お風呂、先に頂いたよ……あ、スマン。失礼」
そう言うや、親父は障子をピシャと閉めた。
「バカッ」
と、蹴り飛ばされる。
でも、すぐに汐を挟んで笑い合う。
大丈夫。確かな目標がある今のお前なら、迷うことはなく進んでいける。
少しくらい離れたって、俺たち家族の絆は壊れない。疲れたときには、俺が支えてやる。
577 ◆Y3iyltz542 :04/07/06 20:29 ID:Pk5cd5f7
以上です。
智代はンな事しないと言われるかもしれないが、バッドエンドとか見るとわりと脆いかなと思えるんで、このくらいはアリかと。
一応智代にはプレッシャーかけたつもりだし。

バッドルートも考えたが、書くと鬱になりそうなので止めとく。
・智代、育児ノイローゼで自殺
・朋也、子育て放棄
・鷹文(あるいは有紀寧と)汐を引き取る
・立ち直って和解?
578名無しさんだよもん:04/07/06 21:15 ID:EUwGsz3N
GOOD
…迫真のSSであった。元が鍵の作品であるのを忘れるくらいに。
579名無しさんだよもん:04/07/06 21:17 ID:qfgSyPoX
キツイっすねー、でも面白かったです。マジで智代がやってる展開にするとは・・・
ちょっと意外でした。グッジョブ
580名無しさんだよもん:04/07/06 21:42 ID:bp+id+iy
智代と汐はそんな簡単に割り切れるものなのか?
そこだけ疑問。汐の心情が描写されてないし。
581名無しさんだよもん:04/07/06 21:47 ID:SFdkAZV9
良SSだが、
あれくらいで虐待はなくなるものか?
カウンセリング受けないとだめだと思うが。
582名無しさんだよもん:04/07/06 22:05 ID:YkATHNOp
>>577
GJです。
欲を言えば、もうすこーし痛さを増やしても良かったかなとは思います。
まあ読んでるうちに耐えられなくなるかもですが…。
583名無しさんだよもん:04/07/06 22:11 ID:ueBHvqsU
うん。
それと虐待しといてそんな母親の弁護うんぬんが成長で片付けて良い
問題だろうか?
俺はこれで一件落着のハッピーエンドとはとても思えない。
584名無しさんだよもん:04/07/06 23:16 ID:62/VAJCI
         ,へ、,.-‐ー/´\- 、
         ./,r^ヽ -―‐'⌒'ミヽ ヽ
        ,.'/ 〃,    ヽ ヽ\. `、
     .,.'〃/ / i ! ! l l i lヽヽ. i l .'、
      〃!l. ! !_l,⊥| l. | { l⊥L._i } !.l. i.
     ´ l.| | Nヽ」_NVヽレ」L_レ | | l !
        !|ヽN.ハ「';i]   ´|l';;il〉_|_! l l.     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       | l |i.ゞ┘ '__ └-'.|>>|. | l.     | 
        | l| !ゝ.  ヽノ  ノ |彡|.i l |  <  虐待通報するわよ
       .| l| l | |` ;_-_.'┘、.|三|. l_l l   | 
       | |.l | レ'7ミ≡彡ノ〈,ハ「| | |. /) ,、 \_______________
      .| レ、'´ {丶ニ ノ ムム| U l//レ'ノ
      | i |ミ丶、 .l  /  ノハヽ、 , ,ハ
       ! l l  ```ミ.レ´彡´//┌`――ー-iヽ
     / //      `i'´  /// |三三三三|ヽヽ

585名無しさんだよもん:04/07/07 01:00 ID:UoYDL14x
(゜皿゜;) やめてくれっ、虐待通報するzhuihiaodasmea
586名無しさんだよもん:04/07/07 03:46 ID:ct8MVZMw
智代の口調がゲームと違う、また一貫性がない。
虐待から仲直りにかけての智代の気持ちがわかりにくい。
こういう題材なら智代視点にしたほうが良い。
原作における登場人物の良い点がごっそり抜けてる為、読むのが苦痛。
最後に魅力を感じれるようなフォローが欲しかった。
情緒不安定さを出す為の言動の不一致と、智代の内面描写の少なさが相まって、
最後の弁護士になると決心する、という綺麗なシメが、口からでまかせのような薄っぺらいものに感じる。

色々ケチつけちゃいましたが、ダークなネタをひっぱってくる発想、これだけの文章を完結させた実力は素晴らしいと思う。
次の投下も楽しみにしてます
587名無しさんだよもん:04/07/07 04:43 ID:LRR/5OKl
>>586
的確な評論だな。どこで勉強したんだ?
588名無しさんだよもん:04/07/07 08:04 ID:nSSNzyTF
>>577
親父いいね。ジーンときた。
GJ!
589名無しさんだよもん:04/07/07 11:43 ID:Q9LR8k4O
>>587
鼻毛
590名無しさんだよもん:04/07/07 13:52 ID:hvQnziHZ
>>586
敬意を表しておまえにレインボー
591名無しさんだよもん:04/07/07 19:31 ID:Ipmouhua
てす
592名無しさんだよもん:04/07/07 22:28 ID:MlspUBz1
       . .       _                   
      . .      /   ⌒ヽ    ベンピニナッチャウヨー!!
             '  ノノ)ノレノノ
      .      イ イ > < .|'  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
             'ヘレゝ" ' /  < う〜、菊門が塞がれてウンコができないよ〜(泣)
            /       \ \__________________
            | |       | |
            | |       | |   
          |⌒\|       |/⌒|    
          |   |    |   |   |  
          | \ (      ) /.|   
          |  |\___人___/|   |
          |  |   /"lヽ  .|  |
         (__)  ( ,人) (__)
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          _∨__/Z |  |    
    ..     /     .\|  |
   .     /  ノ|ノレハ ||  |
       .. | c| |  <|ヽノ|  |
        \.|). l7/ ..|  |  <お望みどおり君の菊門に栓したよ!
            /´  \..|  |
           (  ) ゚  ゚.|  | 
           \ \__, |  ⊂lll シュッ
            \_つ ⊂llll シュッ
            .(  ノ  ノ  
             | (__人_) \ 
             |   |   \ ヽ  
             |  )    |   ) 
            /  /    /  /  
            /  /    (___) 
           (___)
593名無しさんだよもん:04/07/07 22:34 ID:CyS6Qc5p
CLANNAM1968
594名無しさんだよもん:04/07/07 23:30 ID:alUlFE67
だからこういう話をCLANNADキャラでやる意味は?
595名無しさんだよもん:04/07/07 23:41 ID:AiEKnYXz
智代の言動が絶対的な武力によって裏付けられていた事を立証するためかな。
特に>>548後半〜>>549前半
596名無しさんだよもん:04/07/08 00:15 ID:z+fWb3Mx
535 名前:コテとトリップ 投稿日:04/07/08 00:08 ID:BZqaJleJ New!!
何人もの男達が、私の体の上をただ通り過ぎていきました・・・
私の体だけに価値を見い出すだけのつまらない男達
そんな男達のなかでも、ケードロをドロケイと呼ぶ人達
100発100中で田舎もんだったにゃりよ

536 名前:コテとトリップ 投稿日:04/07/08 00:09 ID:BZqaJleJ New!!
二行目異常だな。ぶっちゃけありえねえ。駄文の極み。ありえねえ
頭わりいなあこれ。どうしようもねえや
597名無しさんだよもん:04/07/08 04:12 ID:+Nkp1gya
淡々としてるのも作風なのかも知れんが、ただ単に行間を埋める術を知らないように見える。
智代が虐待を行うまでの動機が省かれに省かれまくってて超わかりづらい。
その点がありとあらゆる点をブチ壊しにしてると感じてしまったので100点中20点で。
598名無しさんだよもん:04/07/08 10:04 ID:jM1m8i1T
となりの赤ちゃんアザ多い♪
「この子そそっかしいの」とお母さん♪
・゚・(ノД`)・゚・
599名無しさんだよもん:04/07/08 13:01 ID:gH37CD27
>>598
見て見ぬ振りも虐待になるので通報しましょう。
600600 ◆600KBYxYHU :04/07/08 15:51 ID:YmTWY+86
600はおれのもの
601男子寮のハートマン:04/07/08 20:28 ID:xe1MDef4
うつむいていると、髪が顔にかかって邪魔だった。
近くにあった輪ゴムを手にとると、髪をひとつにまとめて、くくりつける。
一息ついて、作業を再開した。
五分後、最後のタマネギの皮を剥きおえた。
数えてみると、大小あわせて、二十三個もあった。
タマネギの皮の色素が付着して茶色くなった両手を洗うと、ひたいに浮いた汗をぬぐった。
時刻は、午後の四時になろうとしている。
タイムリミットは七時。
テーブルの上には、食料品店から運ばれてきたままの食材が山のようにつまれている。
あとどれぐらい時間がかかるのか見当もつかなかった。
「ふぅ・・・」
すこし意識が薄らいでいくような気がして、坂上智代は、ため息をついた。
602男子寮のハートマン:04/07/08 20:29 ID:xe1MDef4

「うわっ、なんで、おまえがここにいるんだよ!!」
智代を見た瞬間、春原はあとずさりした。
「・・・手伝ってほしい」
ぎりぎりまで絞りきったレモンの最後の一滴のように、智代は声を絞り出した。
「はっ?」
「料理だ。いま、カレーを作っているんだが、このままでは間に合いそうもない」
「あのー、まったく話がみえないんですけど」
お伺いを立てるように、春原が言った。
「正直、おまえの手は借りたくなかった」
「いきなり、ヒドイいいようっスね」
「だが、背に腹はかえられない。約束を破るわけにはいかない」
「だから、なんなんだよ。はっきり言えっての」
「わたしと一緒にカレーを作ってほしい」
「えっ・・・」
春原はなぜか顔を赤らめた。
「それってプロポーズ?」
ドガッ!!
思わず蹴りが入る。
「どうして、そうなる」
「いやー、みそ汁のカレーバージョンかと思って」
「時間がないんだ。手伝ってくれるのか、くれないのか、どっちだ」
「つーか、なんで僕に言うんだ? 勝手に作ればいいじゃん」
「自分の晩御飯なんだぞ、すこしぐらい手伝ってくれてもいいだろう」
「えっ、寮のメシ、作ってんの?」
「そうだ」
「美佐枝さんの手伝い?」
「いや、彼女は今いない。わたしが代わりだ」
「よくわかんないねぇ。美佐枝さんがいないからって、なんで生徒会長様が男子寮のメシ作ってんのさ」
「美佐枝さんには、いろいろアドバイスをもらったんだ。そのお礼だ」
春原の皮肉は無視した。
603男子寮のハートマン:04/07/08 20:29 ID:xe1MDef4

「ふぅん。律儀なやつだね」
「それで、手伝ってくれるのか?」
「いいけど、まー、それなりの見返りが欲しいね」
「なんだ」
どうせくだらないことだろうとは思うが、一応きいてみる。
「おっぱい、揉ませてくれ。片方だけでいい」
ブシッ!!
顔面にストレートをお見舞いする。
「岡崎には、さわらせたくせに・・・」
春原の断末魔は無視して、智代は春原の部屋をでた。
時間を無駄にしたようだ。
どうして春原に助けを求めたりしたのだろう。

智代は台所に戻って、タマネギを切りはじめた。
その途端に涙がにじむ。
視界がぼやけて、目が痛くなった。
それでも、かまわずに智代はタマネギを刻みつづけた。
すべて刻み終えると、サラダ油をいれた熱したフライパンに、タマネギを投入した。
きつね色になるまで、じっくりといためる。
ときどき、しゃもじでかき回してやりながら、そのあいだに、ニンジンやじゃがいもの
皮を剥き、別のコンロで牛肉をいためた。
確かに量は多かったが、思ったより早く終わりそうだった。

灰汁取りも終わり、あとは弱火でぐつぐつと煮た。
食堂のテーブルをフキンで拭き、お皿の用意をする。
時間は六時を過ぎたあたり。
               
604男子寮のハートマン:04/07/08 20:30 ID:xe1MDef4

夕食までには、まだ時間があった。
何をしようかと考えて、先ほど見た春原の部屋の汚さに思いあたる。
あんなところで過ごす岡崎が、不憫だった。
智代は再び、春原の部屋をノックした。
「あっ、智代ちゃん。メシできた?」
能天気に訊いてくる春原の言葉に、智代の眉がぴくんとあがった。
「ああ、できた」
本当は、おまえに食べさせるものなどない、と言いたかったが、
春原も食費は払ってるはずだから、口に出さなかった。
「よし、じゃあ、食いに行こう」
「待て、食事は七時からだ」
「そんなの関係ないじゃん。さっ、メシ、メシ」
智代の脇をすり抜けて廊下に出ようとする春原の首根っこをつかむと、部屋に引きずり戻した。
「ぐえっ、なにすんだよ」
「わたしは美佐枝さんの代わりにここを任されている。勝手な真似は許さない」
「わかったよ。チッ」
舌打ちをすると、春原はベットに横たわって雑誌を読みだした。
智代は部屋を見まわした。
「すこしは、片づけたらどうだ?」
「あん、なに?」
春原は雑誌から、智代のほうに視線を移した。
「部屋を掃除しろ。汚いぞ」
「そう? こんなもんだろ」
「岡崎も、ここにはよく来るんだろう? 客人を迎えるのには散らかりすぎていると思うぞ」
「あいつは客じゃない。勝手に来てるだけだよ」
そう言って春原は、思い出したように続けた。
                       
605男子寮のハートマン:04/07/08 20:31 ID:xe1MDef4

「そういや、岡崎、今日来てないな」
「なんだ、知らないのか?」
「なんだよ」
「岡崎なら、美佐枝さんと遊びにいったぞ」
「なんじゃそりゃ、僕、聞いてねぇよ。どこ行ったんだ?」
「さあ、それは、わたしも知らない」
「岡崎め、うまいことやりやがって。くーっ、今頃、おっぱい、もみもみしてんのかなぁ」
「なに下品なことを言っているんだ」
「だって、うらやましいじゃないか。もみもみだぞ。もみもみ」
「岡崎が美佐枝さんを連れ出したのは、日ごろお世話になっている感謝のためだぞ。
おまえと一緒にするな」
「ふん、岡崎がそう言ったのか?」
馬鹿にするように春原は言った。
「そうだ。だから、わたしも協力したんだ。とてもいいことだと思わないのか」
「たしかに、ほとんど休みもなく、むさい男どもの相手をしている美佐枝さんは
 大変だろうさ。僕だって感謝してる。でも、岡崎は部外者だ。なんであいつが
 美佐枝さんと出かけるんだ? おかしいじゃないか」
智代はすこし言葉に詰まった。
「ここに、よく出入りしているからだろう」
「あいつが迷惑をかけているのは、僕で、美佐枝さんじゃない」
「だとしても・・・働きづめの女性を気遣ってあげているのはいいことだ」
「だから、そんなんじゃないっての。おっぱいのために決まってるだろ」
「・・・そうなのか?」
あまりに断定的にいわれるので智代は、つい尋ねていた。
春原は力強くうなずいた。
「間違いないね。美佐枝さんのおっぱいでスリーポイントシュート決める気だよ。あいつは」

智代はうつむいて自分の胸をみた。
あきらかに負けていた。
606男子寮のハートマン:04/07/08 20:31 ID:xe1MDef4
七時前になって、ぞろぞろと寮生たちが食堂に集まってきた。
「いい匂いさせてんじゃん」
「今日は、カレーか」
仲のいいもの同士が、適当な席に腰をかける。
大して広くない食堂が、ガタイのいい男たちに占拠されると、よりいっそう狭く感じられた。
「おまえたち、まだ手をつけるなよ」
智代が言った。
寮生たちは、不思議そうな顔で智代をみた。
(なんだ、あいつ)
(生徒会長が、なんでここにいんの?)
そのうちのひとりが、智代に言った。
「なんで、おまえが仕切ってんだ? 美佐枝さんは?」
「わたしが、美佐枝さんの代理だ」
それで、その男子は納得したようにはみえなかったが、これ以上詮索する気はないようだった。
「みんな、揃ったか」
智代は食堂を見渡しながら、言った。
「ラグビー部のやつらは、まだ部活やってるけど」
「わかった。そいつら以外はもう揃ったか」
「んー、山辺と藤本がまだきてないな」

「はっ、いちいち待ってられっかよ」
そう言って春原がスプーンを持って、食べようとした。
「勝手な真似をするなといっただろ!」
智代は春原を椅子ごと蹴り上げた。
ドゴッ!!
吹っ飛ぶ春原。
天井に頭をぶつけてから元の場所に落ちてくると、そのままテーブルに突っ伏した。
607男子寮のハートマン:04/07/08 20:32 ID:xe1MDef4
いままでうるさかった食堂が、一瞬で静けさにつつまれる。
それは、まるで家族連れで賑わっている夏休みのプールで、いきなり水にもぐったときのような
劇的な変化だった。
(おい、なんじゃ、ありゃ)
(人間技じゃねぇぞ)
(蹴りで人が空中に浮くか?)
(美佐枝さんとはレベルが違う・・・)

そこに、いま食堂に来た二人組みが、なぜこんなに静かなのかと訝しがりながらも席に着いた。
「ん、これで揃ったか?」
誰も返事をしなかった。
「ところで、おまえたち、食事の前に手を洗ったのか?」
寮生たちは黙って顔を見合わせた。
ひとりが立ち上がると、つられるように全員(春原以外)立ち上がった。
ドタドタと水辺に向かって移動する水牛のように走り出した。
「おい、廊下を走るな」
智代の声に、寮生たちは一斉に足を止めた。
それから競歩のように早足で、洗面スペースにつらなって歩いていった。
しばらくして食堂に戻ってくると、みんな姿勢よく席に座った。
喋っているものは誰もいない。
「よし、おまえたち、手を合わせろ」
智代の掛け声に、全員が手を合わせた。
「いただきます」
「いただきます」
寮生が復唱する。
それからしばらくは会話もなく、スプーンが食器にあたったときのカチャカチャという音だけがした。
608男子寮のハートマン:04/07/08 20:37 ID:xe1MDef4
「おい、なんでこんなに静かなんだ? すこしは喋ったらどうだ。食事は楽しいほうがいいだろう」
「そうだよな、はは」
智代の前の席に座った男が同調したが、声は乾いていた。
「ぐはっ、あ、みんなもう食ってんじゃん」
気がついた春原は、さっそく食べはじめた。
一心不乱に、がつがつとカレーを掻きこんでいる。
「春原」
智代は呼びかけた。
「なぜ、ニンジンだけよけてるんだ?」
「僕、ニンジン嫌いなんだよね」
「まったく、子供みたいなやつだな。好き嫌いはよくないぞ」
「べつに食わなくても、死なねぇじゃん」
「だからといって、食べ物を粗末にするな」
「へっ、ニンジンは食いもんじゃないから、いいんだよ」
「仕方がないな」
智代は左手を春原のあごにそえると、無理やり口を開かせた。
「もごごっ」
必死に閉じようとして、春原は釣られたばかりの魚のように口をパクパク動かしている。
智代はニンジンを素手でつかむと、春原の口に入れた。
春原は、なんとか吐き出そうとするが、智代はそうはさせまいと、右手で春原の頭頂部
あたりを掴むと、強引に咀嚼させた。
「ウゲェ、ゴヴァ」
ガチガチと歯が噛み合わされる。
(恐ろしい)
(あご、くだけるんじゃねぇ)
(なんか、血、吐いてねぇか)
寮生たちは固唾を呑んで見守っていた。
609男子寮のハートマン:04/07/08 20:37 ID:xe1MDef4
「どうだ? 食べてみたら結構おいしいだろう?」
智代は微笑みながら、たずねた。
「ウン、ボク、ニンジン、ダイスキ」
まるでロボットのような片言で、春原は言った。
心なし、目がうつろだった。
「ダカラ、ジブンデ、タベル」
それからはいっそう、寮生たちの食べるスピードが速くなった。
「ごちそうさま」
流し込むように平らげたひとりが、そう言って立ち上がった。
「すまないが、食べ終わったお皿は、流しに持っていてくれないか」
智代が、その男子に言った。
「わかりました」
妙に礼儀正しく言うと、その男子はそそくさと食堂をあとにした。
そのあとは、堰を切ったように食べ終わったものから、逃げるようにしていなくなった。
(あー、怖かった)
(いつから、ここは軍隊になったんだ)
(ほんとだよな)
春原もゴチソウサマと言うと、ぎこちない動きで部屋に戻っていった。

智代は、ひとりきりになった。

誰もいない静かな食堂で、智代は食事を終える。
台所へ向かうと、シンクには食器で溢れかえっていた。
まるで天を目指して伸びる植物の芽のように、白い食器が積み重なっていた。
智代はため息をついた。
そのため息は、ここで毎日洗い物をしている人のため息によく似ていた。
610男子寮のハートマン:04/07/08 20:38 ID:xe1MDef4
事前に休憩するときはここを使っていいと言われていたので、智代は後片付けを終えると、
美佐枝さんの部屋にお邪魔した。
あまり物に触れないようにして、座布団にちょこんと座った。
クッションだけ拝借すると、おなかに抱え込むようにして三角座りをした。

智代は気分が沈んでいた。
さきほどの男子寮生の態度が、昔、荒れていたころの自分を思い出させた。
まるで猛獣でも見るような目をして、一歩引いたところから、智代を遠巻きに見ていた。
それがとてもショックだった。
すこしは変わったと思っていたのに。
もう自分でも、どこにでもいる普通の女の子と思っていたのに。
智代はクッションに顔をうずめた。

その格好のまま、智代は、ほっぺたに手をやった。
ちかごろ気分が落ち込んだとときに智代は、よくほっぺたをさわる。
そこは以前、岡崎朋也がつねったところだった。
その時のことを思い出すと、春の穏やかな日差しのなかで、縁側に寝転んでいる猫のお腹を
さわっているような暖かさが智代の胸に染みこんでいった。
自然と笑みがこぼれる。
春原への蹴りを見た後でも、彼だけが普段と同じように智代と接してきた。
たったそれだけのことが、智代にはとても嬉しかった。
そして、いつからか岡崎ことを考えると、自分の心臓が、生まれたばかりのウサギの心臓と
入れ替わったかのように苦しくなった。
611男子寮のハートマン:04/07/08 20:40 ID:xe1MDef4
気がつけば、九時半をすぎていた。
九時までには戻ると、岡崎は言っていた。
智代は急に不安になった。
遅くなるのなら、連絡ぐらいしてくるはずだ。
ひょっとしたら、事故にでもあったのだろうか。
それとも・・・

岡崎と美佐枝さんは、いったいどういう関係なんだろう。
また胸が苦しくなる。
しかし、この苦しさはさっきのとは違っていた。
そして、自分ではコントロールできない感情が、むくむくと膨れ上がる夏の日の入道雲のように
智代の胸の内をおおいつくした。
それは湿り気を帯びていて、陽射しをさえぎるほど分厚かった。


窓の外も曇り空。
もうすぐ、雨が降ろうとしている。
                 
612名無しさんだよもん:04/07/08 22:14 ID:YmTWY+86
つ、続きを…
613名無しさんだよもん:04/07/08 22:46 ID:+Nkp1gya
おお、なかなかいい出来だ。
続きに期待が持てる、やる気があるなら是非とも次を書いて欲しいもんだな

ただタイトルと内容がちょっとすれ違い気味かも
思いっきりギャグ主体かと思ってしまった
614名無しさんだよもん:04/07/08 23:51 ID:xgtSdCsC
イイヨイイヨー
615名無しさんだよもん:04/07/09 00:28 ID:4v6zz24U
面白いっす、春原風味がよく利いてる。
616原点回帰:04/07/09 02:26 ID:RISeadTF
男子寮の奴らなさけねえw
というか肝心のラグビー部がいなかったのがちょっと残念
美佐枝さんの飯じゃねえのかよとか言って智代に睨まれて欲しかったかもw
617名無しさんだよもん:04/07/09 10:46 ID:8PZsxmdy
Good!
タイトルは伏線なのか?続き楽しみにしてます。
618名無しさんだよもん:04/07/09 10:47 ID:8PZsxmdy
あ、ハートマン軍曹ね・・・
619■誘導■:04/07/11 18:44 ID:xWN8Zxtm
http://info.2ch.net/guide/adv.html#saku_guide
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620■誘導■:04/07/11 18:44 ID:jUmT0/nb
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621名無しさん@そうだ選挙に行こう:04/07/11 19:26 ID:HNc0j2n5
どうやら誘導厨は2匹いるようだな
622名無しさん@そうだ選挙に行こう:04/07/11 19:31 ID:IBX3CsEP
コピペしている内容と誘導の判断基準が矛盾している次点でアレだが、一応参考資料を。
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