葉鍵鬼ごっこ第六回

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412終焉のノクターン:03/07/09 01:16 ID:TKhgSXDj

 …ネットに捕らわれていた響子は弥生に助け起こされていた。
「大丈夫ですか?」
「はは…、どうにか」
 どこか自嘲するかの様な苦笑を浮かべながら、響子は乱れてしまった髪を手櫛で整える。
「…柄にもない事するから、酷い目に遭っちゃったわ」
「有難う御座います。助かりました」
「ちょ、ちょっと…、よして下さい。結局、私は何の役にも…」
「いえ……、助かりました。是非、礼を…――有難う」
 生真面目に礼を述べられ、響子は却って照れ臭かった。
 その照れ臭さを肩を竦めて誤魔化し、響子は視線を転じた。――壁際でトリモチを顔にへばり付かせて呻く和樹に。
「………で、彼の事、どうする気です?」
 弥生はそれに答えぬまま、軽く挫いた片足を庇いながら、和樹に近寄った。
「……無事ですか?」
「ぐはっ……な、なん…とか…」
 トリモチを弥生の手でベリベリと剥がして貰い、和樹は酸欠地獄から生還した。が、その先で待っていたのは、
また新たな地獄であったと言うべきか。
「…あう………、こ、コロさないで下さい…」
「そんな事はしません。……取引をしましょう」
「と、取引…?」
「性描写を用いない、森川を題材にした“萌える本”とやらを制作して下さい。それを、件の本よりも多く売るのです」
「お、お咎め無しの、条件ですか…?」
 弥生は、黙したまま頷く。
「で、でも……18禁本と較べたら、萌え本の売れ行きはそんなに…」
「私は、出来るか出来ないかを尋ねているのではなく、やるかやらないかを訊いているのです」
「……やります」
 …どうやら、和樹はシを免れた様であった。
413終焉のノクターン:03/07/09 01:18 ID:TKhgSXDj
「…いいんですか? 法的手段に訴えて吊るし上げる事も出来たのに」
 傍でやり取りを見ていた響子が、弥生に尋ねる。――弥生は、晴香を介抱しながら、怒れる志保にドヤされている
和樹を見やりつつ、静かに首を振って見せた。
「…同人誌という物の雑多性、或いは多様性は、ある程度は知っています。恐らく、森川を題材にした件の本と類似
する物は、他にも数多存在するでしょう。彼一人を叩いた所で焼け石に水……実際、本格的に対処するとなれば、
それを決定するのは私ではありません。それに――」
「それに?」
「――悪意を以て作られたのではないと確認しましたし、件の本について法的制裁を与えた場合、それが逆に森川への
マイナスイメージに大きく繋がってしまう可能性もあります。ですので、これで充分です。…今は、まだ。
 それと、相田さんには、彼と私の約束の第三者的後見人となって貰いますので」
「………なる程」
 響子、感服。キレていた様に見えて、頭の奥は冷静なままであったらしい。…いや、『至極冷静なまま、キレていた』
とでも言うべきか。この弥生という女性、敵に回すべき人物ではないと、響子は改めて思い知った。
「……所で…今日はここで休む事にしますか、相田さん?」
「え…? 本当?」
 弥生の口からその様な提案が出て来るとは。響子は思わず目を見開いてしまっていた。
「私は足を挫いてしまいましたし…、相田さんも相当お疲れでしょう?」
「…そう……ですね」
 弥生が休みを摂ると聞いて、緊張が解けたか、響子の体にどっと疲れが圧し掛かって来る。
 弥生は、離れた所からこちらの様子を窺っていた岡田に目をやり、その視線だけで問い掛けた。
「――いいわよ、別に。私達にタッチしてこなければね」
「そのつもりは全くありません。ご安心を」
「そ。ならいいけど。――シャワー使う? タオルとか、管理側が用意してくれた下着とかも置いてあるわよ」
 シャワールームの方を親指で指し示し、岡田は、ニッと笑って見せた。

 …こうして、戦慄の刻は静かに終焉を迎えたのである。
414終焉のノクターン:03/07/09 01:19 ID:TKhgSXDj


 後日談として…
 本来日の目を見るはずであった“アイドル萌え本”の原稿を詠美ちゃんさまから力ずくで奪回した和樹は、それを
加筆修正し、弥生との約束通りに制作完成させた。
 その本は、和樹の不安と予想に反して、件の本…『…2大アイドルが監禁、陵辱で奴隷化〜』に迫る売れ行きと好評
を博した。――その所為であるかは解らないが、森川・緒方の両アイドルの人気は更にヒートアップ。
 …加えて、そのアイドル本に加筆された『美人マネージャー』の話に食いついた人々が、熱烈な“美人マネージャー
萌え”として濃ゆく萌え上がったとか。
 それはまた、別のお話――

【【和樹】【晴香】 襲撃失敗。ミイラ取りがミイラに。岡田のフライパンアタックで晴香は気絶】
【【和樹】 同人誌について弥生と約束。取り敢えず一命を取り留める。戦意消失】
【【弥生】 同人誌について和樹と約束。取り敢えずその件については終了。軽く足を挫く】
【【響子】 ようやくちゃんとした休みが摂れるとあって、一安心】
【三日目。日没後〜夜にかけた辺り。場所は別荘】

登場逃げ手:岡田メグミ 松本リカ
登場鬼:【篠塚弥生】 【相田響子】 【巳間晴香】 【千堂和樹】
     【藤田浩之】 【長岡志保】 【吉井ユカリ】
415Fly High!:03/07/09 17:15 ID:QhtIBuVG
 彼らは、雨を凌ぐ屋根を求めている。欲を言えば、風を防ぐ壁も欲しい。
 そしてそれは幸運にも視界の中にある。
 大きなホテルだ。
 雨宿りの場所として、最適と言える。もしかしたら食事やシャワーもあるかもしれない。
 ただ、困ったことに――
「…遠いな」
「ああ」
 ホテルは山の麓。というか海岸線の近く。他に建物は見当たらない。
 彼らはたった今山頂まで上り詰めたと言うのに、今度は下山しないといけない。
「到着する前に、雨が止むかもな……」
 良祐はそう苦笑して、ふっと空を見上げた。
「……ん?」
「? どうした?」
「―――なぁ、山田。あれ、何に見える?」
「何って―――」

 ひゅ〜〜〜〜〜〜〜〜。

 遥か上方から何か茶色いものが降ってくる。
 下から見たことが無かったからだろう。2人がそれを屋台だと認識するまで、かなりの時間がかかった。


 とさっ、とその屋台は着地する。
「む? 運がいいにゃ。早速客だにゃ」
「――いらっしゃいませ」

416Fly High!:03/07/09 17:15 ID:QhtIBuVG

「…転移魔法ねぇ……いまいちピンとこないな」
 キムチラーメンをずるずるとすすりながら、まさきがそんな風にぼやく。
 一般人である彼にとって、どうにもこういった非現実的な――たとえ、目の前で起こったことであっても――ことは受け入れにくいのだろう。
「魔法か、興味があるな。不可視の力とは原理が根本から違いそうだ」
 一方の良祐は興味津々だ。
「――空間転移は、この"魔法瓶"に"シュイン"の魔法を詰め込むことで行っています」
 フランソワーズは律儀にも良祐の独り言に付き合っている。
 彼女は注文の受け付けと2人分の料理をこなし、おまけに接客と忙しい。
 ちなみにこの屋台のリーダー格であるメイフィアは絵の中に入って眠っている。交代で睡眠をとっているのだろう。
「魔法瓶って、いつ聞いてもダサい名前だにゃ。そのまんま過ぎるにゃー」
 たまは言わずもがな。その辺でごろごろしている。
 屋台の中では幾分窮屈そうだが。
「…まあ、詳しいことはこの鬼ごっこが終わってからでいいかな」
 話に付き合わせては悪いと思ったのだろう。良祐は早足で食事を終え、席を立った。
「ごちそうさま。あと、傘も貰えるかな」
 まさきも後に続き、ついでに傘を購入する。
「ありがとうございました」
「またくるにゃー」


「…高かったな」
「仕方ないよ」
 食事で体を温めた2人は傘を差し、ホテル――鶴来屋別館へと向かう。
 雨具はあるが、やはり建物の方が体が休まるからだ。


 数分程度、歩いただろうか。

417Fly High!:03/07/09 17:16 ID:QhtIBuVG
「にゃーっ!」
「「!?」」
 後方から、たまの叫び声。
 慌てて振り返ると…。
「なっ!?」
「にゃーっ!? 止めてくれにゃーっ!」
 さっきの屋台が後ろ向きに坂を滑ってくる。
「巳間っ…」
「…止めるぞ!」
 見れば、フランソワーズが引き棒を掴んで綱引きの要領で屋台を止めようとしている。
 2人は傘を投げ捨てて屋台へ走り、すれ違いざま、フランソワーズに倣って引き棒を掴んだ。
 がしっ!
「ぐっ…」
 それで一瞬スピードが落ちる。だが、止まりはしない。
 ずるずると引きずられながら、なんとか良祐がフランソワーズに声をかける。
「おい、何があった!?」
「――引っ張っているうちにバランスを崩しました」
 全体重をかけてふんばるが、まだ止まらない。
「いくら車輪がついてるからって、滑りすぎじゃないか? こんなぬかるんだ道で…」
「私のような非力な者でも引くことができるよう、簡単な魔法をかけてあるので――」
「なるほどな…そこの猫っ! なんとかならないのかっ!?」
「ならないにゃーっ!」
 魔法の効果のためか、引く力が足りないのか、斜面が急すぎるのか、それとも積荷が重すぎるのか…
 とにかく、屋台は止まらない。むしろ少しずつ加速している。

 どうすることもできないまま加速を続け、
数時間前に、この道を駆け抜けた少女たちくらいのスピードになってしまった頃。
「巳間! 前を見ろ…まずいぞ!」
 まさきが叫んだ。
「「!?」」
418Fly High!:03/07/09 17:16 ID:QhtIBuVG
「にゃーっ!? ホテルにぶつかるにゃーっ!」
 屋台はまっすぐ、鶴来屋別館へと向かっている。
「くそっ…止まらない!」
「どうする? いっそあの猫に飛び降りさせて、この屋台は見捨ててしまうか?」
「飛び降りさせるって…このスピードだぞ! あいつはどうなる!?」
「猫だし、何とかなるんじゃないかっ!? 少なくとも、このまま俺達ごとホテルにぶつかるよりはましだ!」
「――ですが、衝突の衝撃で屋台の破片が飛び散るかもしれません。もし近くに人がいたら――」
「最悪、その辺を歩いてる奴を轢いてしまうかもしれないしな…」
「じゃあ、屋台の方向を変えるとか…!?」

 ガコンッ!

「「「「!!??」」」」
 車輪が大きな石に足を取られ、急に屋台がバウンドする。
「まずいっ…」
 同時に後ろの3人の体が宙に浮き…ブレーキとしての意味を為さなくなった。
 屋台は余計に加速する。足が地につかないのでは、進路の変更も難しい。
「――進路の変更もできなくなりました。屋台を見捨てるにしても、今度は私たちの体が地面に叩きつけられてしまいます」
「どうすりゃいいんだ、俺はっ!」
「こうやって猿ように、屋台にしがみ付くしかないだろうっ!」
「――しかし、このままではホテルに―」
「にゃーっ! もう駄目だにゃーっ!」
 もはや打つ手なし。あと数十秒もすれば、ホテルに激突してしまう。

419Fly High!:03/07/09 17:17 ID:QhtIBuVG
 …と。
「ん…うるさいわね……」
 振動と叫び声で目を覚ましたのだろうか。メイフィアが額縁からにゅっと顔を出した。
「にゃっ!? うるさいじゃないにゃーっ! なんとかするにゃーっ!」
「……?」
 寝ぼけ眼で、辺りを見回すメイフィア。
 なんとなく状況がわかったのだろう。少しして彼女は
「シュインの魔法瓶使ったら?」
 それだけ言って、また額縁の中へ潜っていった。
「………にゃ?」
 一瞬、呆然とするたま。
「……にゃっ!? そうだにゃっ! それだにゃっ!」
 それからハッとして、屋台の荷物入れから1本の瓶を取り出し……
「どこでもいいにゃっ! 飛んでいくにゃーっ!」
 そう叫んで、蓋を開けた。


 次の瞬間。
 猛スピードでホテルに突進していた屋台は、遥か上空へと消えていった。






 彼らは、雨を凌ぐ屋根を求めている。欲を言えば、風を防ぐ壁も欲しい。
 そしてそれは幸運にも視界の中にある。
 大きなホテルだ。
 雨宿りの場所として、最適と言える。もしかしたら食事やシャワーもあるかもしれない。
 ただ、困ったことに――
420Fly High!:03/07/09 17:17 ID:QhtIBuVG
「…近すぎる」
「ああ」
「天井も、上に登ればただの床、と」
「切ない話だな…」
 ここは鶴来屋別館
 …の、屋上。
「どうせならもっと他の場所に飛んでほしかったんだが」
「私が魔法瓶を使ったらこんなところに来なかったかもしれないけど…悪いわね。睡魔には勝てなかったから」
「うにゃーっ! このドア、内側から鍵がかかってるにゃーっ!」
「――シュインの魔法瓶が見つかりません――先ほど使ったものが最後だったようです」
「…切ない話だな。女将、一杯くれ」

 彼らは屋上に締め出され、怠惰な時間を過ごしている。
「ぐびぐび……ぷはぁ。まなみ、何やってるかなぁ…」
 まさきがぼやく。まさか今ごろ、下のほうで想い人が女子高生に鳩尾を喰らってダウンしているとは夢にも思うまい。
「ごくごく……ぷはぁ。晴香も、何やってるのやら…」
 良祐もぼやく。
 まさか今ごろ、妹がどこぞの若い男と物騒な作戦を立ていて、
数時間後には女子高生のフライパンチョップでダウンするとは夢にも思うまい。
「――申し訳ありません。元はと言えば、私が一人で屋台を引こうとしたから―」
「あー、気にしない気にしない。お嬢ちゃんは悪くないって。女将、もう一杯」
「そうだな。全員無事だったんだから、良かったじゃないか。女将、もう一杯」
 男2人は雨音と波の音、それからいい女を肴に酒を呑み…。
 緊張の糸が切れたせいもあるのだろう。1時間も経つと、顔を突っ伏して眠ってしまった。
「あら、眠っちゃったわね」
「これからどうしますか?」
「どうするもこうするも、ここから出られないんじゃね…助けが来るのを待ちましょう」
「――そうですね」
「にゃーっ! 退屈だにゃーっ!」
 雨は当分、止みそうにない。
421Fly High!:03/07/09 17:21 ID:QhtIBuVG
【三日目昼頃】
【良祐 まさき メイフィア フランソワーズ たま 屋台ごと鶴来屋別館の屋上で孤立】
【良祐 まさき 飯食って酒飲んで眠った。雨具を購入】
【登場 【巳間良祐】【山田まさき】『メイフィア』『フランソワーズ』『たま』】
422名無しさんだよもん:03/07/09 21:04 ID:NHF+uSor
新作が投下されました…が、容量が478KBです。
投下を考えておられる書き手さんはご注意を!
423名無しさんだよもん:03/07/11 01:17 ID:gzr78hEY
424ライジングサン:03/07/11 19:09 ID:JhsSNeGR
「…………………………」
「…………………………」
 時刻はすでに朝である。
 即ち、4日目朝。
 この鬼ごっこもとうとう三度目の朝日を見るに至った。
 予想以下か、通りか、以上なのか。それは誰にもわからない。
 が、事実は事実として受け止める。4日目の朝日は昇った。またこの島は新たな戦場へと生まれ変わるのだろう。
「……………雨、上がりましたね」
「……………そうですね」
 木々の間から落ちる雫が光を反射し、森の景色をぼんやりと浮かび上がらせている。
 まだ朝と呼ぶにはいささか早い時間かもしれない。実際2人以外の同居人はまだ完璧に夢の中だ。
 2人とも偶然、ほぼ同じタイミングに目を覚ましてしまった。何か、波長のようなものでもあるのだろうか。
 
「……………これからどうしましょうか」
「……………そうですね」
 東の空から浅い角度で朝日が差し込んでくる。
 森の中の小屋……
 そこのベランダで篠塚弥生と相田響子は2人並び、登りゆく太陽を眺めていた。
 雨の中を駆けずり回った昨日。
 だいぶ体力を消耗していると思われたが、一晩寝たらほぼ完璧に復活していた。
 さすがは売れっ子アイドルのマネージャーと夜討ち朝駆けが仕事の記者。基礎体力、疲労に対する抵抗力は一般人とは一線を画している。
425名無しさんだよもん:03/07/11 19:15 ID:JhsSNeGR
「……………篠塚さん?」
「…………………………」
「……………しのづかさん?」
「…………………………」
「……………しーのづかやーよいさーん?」
「……はっ!?」
 呼びかけること数回。ようやっとまともな反応が返ってきた。
「申し訳ございません。少々ぼうっとしておりました」
「それはいいんだけど……どうしたの?」
「……景色に、といいますか。この空間……この島を包む独特な雰囲気。言うなればここの空気。そんなものに酔っていました」
「……空気に酔う?」
 合点のいかない単語に困惑する響子。
「はい。なんと言いますか……森林浴のフィトンチッドとはまた違う……この島を包む空気は、吸っているとなぜか非常に……落ち着く……というより穏やかな気分になれます。
 なぜでしょうか。こんな開放的な、リラックスした気分になれたのは久しぶりです」
「…………?」
 言われて、改めてもう一度胸一杯に空気を吸い込んでみる。
 雨上がりの、しかも朝日に洗われた新鮮な空気。
 なるほど、確かに普段コンクリートジャングルに囲まれ、非人間的な生活をしてる自分の体が、一から洗い直されているようだ。
「……確かに、そうですね」
「この鬼ごっこ、最初はどうなることかと思いましたが……」
 稟とした横顔を上にあげる。
「意外と……」
 唇をほんの少し綻ばせて……
「意外と、悪くないものですね」
 優しく微笑んだ。
 
426名無しさんだよもん:03/07/11 19:15 ID:JhsSNeGR
「へぇ、弥生さんって笑うこともできたのね」
「……?」
 思わず本音を漏らしてしまう。一瞬遅れ、しまった! と口を押さえながら。
「す、すみません……失礼なことを」
「いえ、構いません。それより、笑うこともできた……とは?」
 意外に微笑みを崩さず、質問を返してきた弥生。そんな弥生の様子に響子も安心し、言葉を続けた。
「いや何というか……昨日の弥生さんって、氷の仮面というか……修羅というか……なんだかそういうような、近づきがたい雰囲気持ってたんだけど……
 やっと原因がわかったのよね。それは、昨日の弥生さんはほとんど笑ってなかったからなのよね。笑わない人間に、人間味は感じかったかな……って」
 冷静に考えればかなり失礼なことを平気で言ってのける。しかし、今の弥生は全てを受け止めてくれるような気がした。
「……そう、ですね」
 やはり、微笑みを崩さぬまま、
「確かに……そうですね。……私を、変えてくれたのは、きっと……」
 もう一度空を見上げ、
「この空気と」
 首を曲げて、響子を見据えて
「響子さん」
 平然と言ってのける。
「あなたのお陰かも……しれません」

 ドキッ!
 響子の胸が強く鳴った。
(ちょ、ちょっと……何なのよ、私……)
 思わず顔をそむけてしまう。弥生の顔を直視できない。
(夢見る乙女な年頃じゃないんだから……なに同性相手にドキドキしてるのよ……私は……)
「……どうなさいました?」
 そんな響子の気持ちを知ってか知らずか、弥生はずいっと進み出て、響子の顔を覗き込む。
「お顔が赤いですね……風邪でしょうか……?」
 そのままぴとっと互いの額を合わせる。弥生の整った顔を目の前に押しつけられ、響子は軽くパニックだ。
「だっ、大丈夫ですからあっ!」
 慌てて後ろへ一歩飛び退き、弥生から離れる。
「……?」
「は、はいはい。私は大丈夫です大丈夫ですっ。そ、それより弥生さん、これから……どうしますか?」
427名無しさんだよもん:03/07/11 19:16 ID:JhsSNeGR
 最初の質問を改めてもう一度ぶつける。
「そうですね……」
 そして同じ返答。が、今は違う。今のは生返事ではなく、『考えている』という意味での返答だ。
「やっぱり……森川由綺さん、を探す?」
 弥生の立場を考えれば、そして由綺が参加していることを考えれば妥当な提案。だが……
「……………いえ」
 弥生は首を横に振った。
「昨日の様子を見るに、どうやら由綺さんは十分この鬼ごっこを楽しんでいらっしゃるようです。それならば下手に私が合流してしまうよりものびのびと過ごされた方がいいでしょう」
「…………………」
 思わず目を丸くする響子。やはり今日の弥生は違う。一皮剥けたというか、憑き物が落ちたというか。
「ですから……私は私で、この鬼ごっこを楽しもうと思います」
「鬼ごっこを……楽しむ?」
「はい。鬼になってしまったからには、逃げ手を探し、捕まえます。ゆっくりとこの島の雰囲気を味わいながら」
「け、けど……」
 響子は心配げに弥生の脚に視線を向ける。昨日挫いた脚が一晩で治るとはとても思えない。
「ああ、それなら心配いりません。飛んだり跳ねたりは無理ですが、歩くことくらいなら十分可能です……ほら」
 言うとやおらその場に立ち上がり、あたりを一回りしてみせる。
「確かに走り回っての追撃戦などは無理でしょうが、それはそれで構いません。散歩を楽しみながら、私でも捕まえられる逃げ手を探します」
「へぇ……楽しそうね。私もご一緒させてもらっていいかしら?」
「ええ、もちろんです。一緒に行きましょう」
 今度はお互いに微笑む。
 同じように、優しく微笑む。

428名無しさんだよもん:03/07/11 19:17 ID:JhsSNeGR
「……けど、よかったのかしら」
 場面は変わり、森の中の獣道。ここを響子と弥生の2人は足下に気を配りつつ、ゆっくりと歩いていた。
「善いこと……ではないかもしれませんが、悪いことでもないと思われます。あくまでもこれは勝負事なのですから」
「……ま、それもそうかしらね。麻雀でもポーカーでも嘘──ブラフ、ハッタリの類は立派な戦法の一つだし」
 気持ちよさそうに眠りこけていた岡田たちの姿を思い出す。罪悪感が無いといえば嘘になるが、それでもこれは『鬼ごっこ』という『ゲーム』であり、自分は『鬼』なのだ。
「彼女らは鬼と行動を共にするという作戦を取りました。確かに有効な作戦ではありますが、見返りの大きいものほどリスクは高いものです。
 そのリスクを回避する方法は──目。目利き。相手が信用に足る人間かどうかを見定める眼力。それが重要です。しかし、彼女は信じてしまった。
 私たちを。本来敵であるはずの私たちを安易に信用してしまった──それが、彼女の、失敗です。安易に他人を信用するというのは決して美徳ではありません」
 その言葉に微塵の同情はなかった。ただ無情しかない。
「けど、見つかったら怒られるでしょうねぇ……」
 はは、と苦笑を漏らしながら響子。
「その時はその時です。一緒に怒られましょう。私も付き合います」
 やはり冷静に弥生は言い切る。
「勘弁してよ……」
 頭を抱えながら、2人は進む。一緒に歩く。
 
 
 意外な友情の誕生だった。


【岡田、松本 鬼化】
【響子 +2】
【響子、弥生 小屋を離れる】
【その他のメンバー まだ寝てる】
【4日目朝 雨は上がった】
【登場 岡田メグミ、松本リカ、【吉井ユカリ】、【藤田浩之】、【長岡志保】、【篠塚弥生】、【相田響子】】
429名無しさんだよもん:03/07/12 06:42 ID:R44AOImR
430名無しさんだよもん:03/07/13 11:44 ID:7DeepEGo
新スレッド立てました。

葉鍵鬼ごっこ 第七回
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1058064126
431名無しさんだよもん:03/07/17 20:46 ID:shiH8Kqv
432名無しさんだよもん:03/07/19 05:32 ID:JPbxLdPo
43332417:03/07/19 05:34 ID:p/2/2c4l
434名無しさんだよもん:03/07/20 00:03 ID:J1vq+lzv
435名無しさんだよもん:03/07/20 23:52 ID:sxxaD0/D
436名無しさんだよもん:03/07/21 03:07 ID:PYS/u3Sv
437名無しさんだよもん:03/07/21 09:38 ID:zVCSocO4

女子小学生のつるつるタテスジ
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禁断ガゾー(^^;)

438名無しさんだよもん:03/07/21 09:54 ID:vb7B6aky
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439名無しさんだよもん:03/07/27 00:37 ID:l7NsUWuV
まだあったのか…。
440名無しさんだよもん:03/07/28 13:45 ID:HnUkFlZJ
って言うか一ネタぐらい書けそうだ・・・
441名無しさんだよもん:03/08/01 23:06 ID:o9z3+TAa
(`・ω・´)
442名無しさんだよもん:03/08/02 23:24 ID:VoLud7hS
ネタ
443名無しさんだよもん:03/08/03 03:11 ID:EMuTtElQ
444名無しさんだよもん:03/08/03 22:09 ID:JehavvCr
444
445名無しさんだよもん:03/08/04 05:00 ID:0nmC3fE2
446名無しさんだよもん:03/08/05 23:07 ID:io1LJ49E
447名無しさんだよもん:03/08/06 07:16 ID:pF8E7peT
448名無しさんだよもん:03/08/06 16:28 ID:jrIuvPz4
449名無しさんだよもん:03/08/07 03:15 ID:e1lHPylI
450名無しさんだよもん:03/08/08 04:09 ID:fPrQJ8sW
451名無しさんだよもん:03/08/08 21:18 ID:8A0NVF1Q
452名無しさんだよもん:03/08/08 21:31 ID:nYxS9p1T
453名無しさんだよもん:03/08/09 00:02 ID:a19uBsGw
454名無しさんだよもん:03/08/09 08:01 ID:vniDW24G
455名無しさんだよもん:03/08/09 08:02 ID:vniDW24G
456名無しさんだよもん:03/08/09 08:02 ID:vniDW24G
457名無しさんだよもん:03/08/09 08:02 ID:vniDW24G
458名無しさんだよもん:03/08/09 08:02 ID:vniDW24G
459名無しさんだよもん:03/08/09 08:03 ID:vniDW24G
460名無しさんだよもん:03/08/09 08:08 ID:vniDW24G
461名無しさんだよもん