後ろを振り向いてもオボロの姿は見えない。
「……ガチャタラ、うまくやってくれたみたいだね」
「お兄様はいないのですか?」
「うん、見あたらないよ」
「……それでは、すみませんが一度ムックルちゃんを止めていただけませんか?
今のうちにユズハを下ろしてほしいのです」
「ダメ!」
アルルゥが怒ったように言ったが、ユズハは「お願いします」と繰り返した。
「多分──お兄様はユズハがいるかぎり追いかけてくると思います。ですから、ユズハは一旦お兄様とお話ししてみます」
「でも……」
「大丈夫。お兄様はユズハを傷つけたりはしませんから……」
「そりゃまぁ、そうだろうけど……」
なら三人で待とうというアルルゥとカミュの意見を頑なに拒否し、懇願するユズハに、アルルゥとカミュも、もしかしたらオボロはユズハを鬼にするために追いかけていたわけではないのかもしれないという気持ちになってきた。
遠くからだんだん近づいてくるオボロの「ユズハーーーーーっ」という必死な叫びが決め手になって、ユズハは一人で地に降りた。
「二人とも、がんばって……ムックルちゃんも」
「ん。ユズっちも」
「無理しちゃダメだよ」
「ヴォフっ」
雨よけにと二人は上着をユズハに被せ、そしてムックルに乗り遠ざかっていった。
にこりと手を振って見送ったあと、ユズハは安堵の吐息をついた。
ユズハが降りたのは、兄のこともあったが、──アルルゥも気づいていただろう、ムックルのことだった。
鬼ごっこが始まって以来、満足いくまで食事を採っておらず、ほとんど三人を乗せて移動していたムックル。ユズハ一人が降りれば、幾分は楽になる。
兄の真意は、本当はわからない。自分を鬼にしようとしているのか、そうでないのか。
どちらにせよ……ゲームを終わりにする覚悟もできていた。
「ユズハ!」
追いついたオボロが、若干息を切らせながら笑った。背後ですべるように走ってきたセリオが音もなく止まる。
「もう安心だ。今すぐユズハを鬼にしてやるからな!」
一歩、踏み出したその瞬間。
「待て!」
ジャーン、という効果音を背負って登場したのは──
「光岡様……?」
例の装置を使われそうになり、思わず焦って飛び出してしまったのが失敗だった。
そのせいで警戒されて逃げられ、見失ったユズハたちの気配。
焦ってはいけない。シンと心を研ぎ澄まし──待つ。
なんのはずみか、神のはからいか、装置の効果は唐突にとぎれた。
同時に、光岡は駆けた──ッ!
その勢い、まさに疾風怒濤。邪魔な木を避け、裂き、雨をはじき飛ばし、光岡は一筋の風となり一直線に彼女の元へ──。
さすがに息が切れている。体内の生命樹が、降る雨に怖じ気づいているのがわかる。
だが──そんなことは無に等しいことだ。長い前髪が汗で額に張り付いた不快感もどこか遠い。
(間に合った……)
「ユズハさん、この俺が来たからにはもう安心だ!」
あと少し遅ければ、そこにいる得たいの知れぬ男が彼女に襲いかかっていただろう。
間に合ったのだ。それだけが実感としてある。
しかも彼女は、一度会話を交わしただけの自分の名を呼んでくれた。
久々の充足感。口元の笑みを押さえられない。
(ここで助けられなければ男ではない……な)
「貴様何者だ!」
オボロがこめかみに血管を浮かべて光岡に向き合う。
「ユズハさんを守る者……とだけ言っておこう」
「なんだとぉ!? 貴様も鬼の分際でぬけぬけと……。
貴様のようなヤツがいるから、ユズハはいち早く鬼になるべきなんだッ!
ユズハの身の安全を考えたとき、鬼になってしまうのが一番だとわからないのか!」
久瀬論をまるで自分が考えたことのように言うオボロに、光岡は一笑した。
「本当にユズハさんを思うなら、彼女の意志を尊重し、それを助けてやる……
それが粋というものではないのかっ!
俺はユズハさんの身の安全だけではなく──それと同時に、彼女の努力を、意志を、心を守りたいのだ!
──それが今の俺の存在価値だ!!!!」
「な……」
「それよりもなんだ。お前こそ呼び捨てとはユズハさんに馴れ馴れしいな」
光岡は剣をかまえた。
「見たところユズハさんにつきまとうチンピラ……といった風情だが」
「それは貴様の方だ! 俺はユズハの……」
「聞くまでもない。ユズハさんを鬼にしようとする者は成敗してくれる」
先手を取ったのは光岡だ。目にもとまらぬスピードで一瞬の間にオボロの目の前に跳躍し、剣を振るった。が、ぎりぎりで見極めたオボロは両手の剣でそれを受ける。
「く……」
双方いったん後ろに飛び退き、無言のまま睨み合う。だがそれも刹那だ。
「殺(シャ)────ッ」
が。
飛び出しかけたオボロがつんのめって倒れ、光岡が見事な空振りをした。
オボロの上着を、セリオがしっかりと掴んでいる。
「オボロ様、お待ち下さい。──二度目はゲームから追放との通告を受けられたはずです」
「離せぇっ! ゲームなんざどうでもいいっ。ユズハをっユズハを守らないと……っ」
じたばたと無様にもがくオボロ。上着がミシミシと音を立てている。
光岡はその隙にユズハを振り返った。
「逃げよう」
「え……」
「雨はじき、ひどくなるだろう。身体に悪い」
「あ……はい」
気圧されるように頷くユズハ。
とはいえ、ユズハはとても走れる身体ではない。
口惜しいが、鬼の我が身では、抱えて走ることはおろか手を引くことすらできないのが現状だ。
一瞬考えたあと、光岡は剣を構え、
「斬ッ!!!」
手近の木々を次々に切り倒し、オボロとの間に些少ではあるが壁を作る。そしてその中の手頃な一本を二メートルほどの大きさに断ち切った。
「ユズハさん、そのまま真っ直ぐ進んだ先に木が倒れている。それに座るんだ。そしてしっかりと身体を固定してくれ」
光岡の真剣な口調に、ユズハは慌てて言うとおりにした。それを確認すると、光岡はおもむろにユズハが座った丸太の逆端を持ち──
「ぬぉりゃあああ!」
──上げた。
どうだ、これで触れずとも連れて逃げることができる!!
「み……光岡様?」
状況を察し、ユズハが不安な声を上げた。「大丈夫ですか……?」
「案ずるな。強化兵はダテじゃない!!!」
ユズハが乗った丸太を抱えて、光岡は猛スピードで走りだした。
【アルルゥ・カミュ(+ムックル):ユズハと別れて逃走】
【光岡:ユズハを乗せた丸太を抱えて逃走。屋根のある場所を目指す】
【ユズハ:混乱しつつも光岡に連れられ、オボロから逃走】
「待て、くそぉおおお! ユズハぁああああ! セリオ! いいかげん離せーーーーーっ!!」
「申し訳ありません──。
どうも──オボロ様に斬りかかられたときの後遺症か、腕の回路が不安定のようです」
「くっっそぉおおおおおおおおっ」
ビリッ!
ようやく上着が破け、オボロが駆け出したときには光岡とユズハの姿はなかった。
「あああぁぁあぁぁ、ユズハが連れていかれた!
テメーはオレを怒らせたっ!!」
「──申し訳ございません」
とりあえず、この怒りをおさめないことにはオボロが単独行動に出てしまう危険がある。
謝罪の言葉を言いながら、セリオは綾香の言葉を思い出していた。
『私はそういうのあんまり好きじゃないんだけどね。
男をコントロールするのに、女の涙は武器になるのよ。
セバスチャンなんか、姉さんの目がちょっと潤んだだけで動揺しちゃって──』
(私はヒトではなく単なる女性型ですが──、一応試してみましょう)
じわり。
セリオの目が潤む。僅かではあるが、オボロがひるんだ。
が、次の瞬間。
「誰〜も知らない、知られちゃいけ〜ない♪」
今まで誰にも気付かれずに街中の建物の中に隠れていた放置コンビのひとり、
御影すばるは桑島高子に頼まれ、屋台に買い物に出かけていた。
………しかし、
「ば、ばきゅ〜、道に迷ったですの…」
──無理もない。
今まではすばる以上に影が薄かった高子が買い物兼偵察係で、
すばるはロクに外に出なかったのだから…
「このままでは大影流の奥義を見せるどころか、なにも出来ずにリタイアですの…」
最初の意気込みはどこへやら、すばるは寂しさに押しつぶされそうになっていた。
それでもなんとかしてお使いを果たそうとするすばるは、いつのまにか街を抜けて森に入っていた。
落ち葉をざくざくと踏み越えしばらく歩いたのち、待望の屋台の明かりが見えてきた。
「ばきゅう、やっと見つけたですの☆
でも……何か騒がしいみたいですの──」
すばるは喜んで屋台に駆け出そうとしたのもつかの間、屋台がざわざわと騒がしいことに気が付いた。
その森の屋台では、ハクオロが絶体絶命のピンチを迎えていた。
「お客さん、まさかタダ食いしようってワケじゃないですよね?」
普段は気弱なタイプのアレイだが、ルミナの前で客に舐められるワケにはいかないのか、食い逃げ予備軍のハクオロ達をつぶらな瞳を細めながら睨んでいる。
「待ってくれ、確かに懐に金子が…金子が……」
何故か財布が見つからず、必死になって探すハクオロ。
「ねえ、美凪はお金もってないの?」
「…私のお米券は…換金不可ですから…
でも…たしか私のお財布は…服の中に…」
ハクオロはついに自分の財布をあきらめ、
美凪の服のポケットを叩いて財布を探しだしたとき、
ハクオロの匂いでも嗅ぎつけてたのか、どこからともなくエルルゥがやって来た。
ジャーーーーー!
「うわっ、冷てっ!! なにすんだ!!」
端から見ればまるで怪光線のごとく、目から水流が迸ってしまった。
「重ね重ね申し訳ありません。水流調整を間違えたようです。
──ご安心ください。綺麗な、ただの水ですから」
幸いオボロに『水流調整』の言葉は聞こえなかったようだ。
文字通り頭を冷やされて、オボロはようやく怒鳴るのをやめた。結果オーライ。
「オボロ様。ユズハ様の去った先なら追跡できます。
ほんの微小の足跡でも、私なら判別することが可能ですから。幸い本日は雨ですし。
──追いかけましょう」
「くっ、わかった! 急ぐぞ!!」
【オボロ:やっぱりセリオに振り回されつつユズハを追う】
【セリオ:オボロを制御しつつ、ユズハを追う】
「助かった。エルルゥ、財布をもっていないか?」
とりあえずの窮地から逃れられると思い、安堵のため息をつくハクオロ。
──だが。
「………ハクオロさん、何をやっているのですか?」
エルルゥは出来る限り穏やかで、それでいて嫉妬いっぱいの声で尋ねた。
「何をって───でぇ!!」
そのときのハクオロは丁度、美凪の腰のポケットに手を当てているところだった。
「…身体検査…私の体の隅々まで……」
美凪が顔を赤らめながら答える。
「ハクオロさーん!私がいない所でよくもよくも!!」
我を忘れたエルルゥがハクオロに飛び掛ってくる。
「にょわわ〜!美凪、屋台は安全なんじゃなかったのか?」
「みちる、私達三人には安全な所なんてないの…」
「にょわ。じゃあ、逃げるぞ!美凪、ハクオロ」
逃走する美凪とみちる。
「金は払うっ、金は必ず払うから〜〜!!」
ハクオロはなんだかんだ言いながら、しっかりエルルゥから美凪達と一緒に逃げ出した。
「わたくしとルミナ様の屋台で食い逃げとは許しませんわ〜」
怪力のアレイは屋台を引っ張ったまま、ハクオロ達を猛ダッシュで追いかけ始めた。
土煙をあげた屋台は優に軽自動車なみのスピードを出して、不埒な食い逃げ犯三人組ににどんどん迫ってゆく。
「待って、落ち着きなさいアレイ!」
ルミナも慌ててアレイと屋台を追いかける。
そんな事情などつゆ知らぬすばるは、暴走する屋台が哀れな三人組に迫っているところを見過すわけにはいかなかった。
「知らなかったこととはいえ、御免なさいですの…」
半壊した屋台の前で、すばるがルミナに土に付くほど頭を下げて謝った。
「気にしなくていいのよ、悪いのは全部アレイのせいだから」
「そ、そんなあ…ルミナさま〜」
屋台の破片を拾い集めていたアレイがルミナに涙声をあげたとき、エルルゥが『進呈』と書かれた包み紙をもってルミナの前に戻ってきた。
「ハクオロさんの逃げた後に置いてありました。
中に入っている宝玉は皆さんの迷惑料として受け取って下さい。
今回、ハクオロさんが支払えなかったお金は必ず明日までに用意するそうです。
それでは、私、ハクオロさんを追いかけますので失礼します」
エルルゥはルミナに宝玉の入った包み紙を渡すと、急いで来た道をUターンしていった。
「ばきゅう☆とっても綺麗な宝石ですの」
すばるが宝石に目を奪われる。
「ルミナ様、この宝玉なら充分壊れた屋台の修理代になりますね」
「まあ、それはそれ、これはこれだから……
──彼らが明日までに3万5千円用意出来なかった場合、どうしようかしらねえ」
ルミナは目を細めながら苦笑した。
【御影すばる 屋台1号を半壊させ、お使いが出来なくなる。高子のところへ戻ろうとする】
【ハクオロ 四日目夜までに屋台に借金3万5千円を返そうとする。エルルゥからは逃げる】
【遠野美凪 ハクオロのお茶目な部分をみて惚れ直す】
【みちる 段々この状況を面白がってきている】
【エルルゥ とにかくハクオロを追いかける。お金は持っていないのか、意地でもハクオロに貸さないのかは不明】
【ルミナ ハクオロに宝玉を貰って、屋台を壊されたことはそれほど気にしていない様子】
【アレイ 食い逃げ犯のハクオロ達をブラックリストに追加する】
【屋台1号 半壊、直せるかどうかは不明】
二日目、夜遅くです。
指摘
ルミナ → ルミラ
愛と正義の大影流>>
割り込み&紛らわしいことしてスマン。
405 :
:03/04/03 00:36 ID:DC5e01bV
光岡推参!>392-396 >396 >399
愛と正義の大影流 >397 >398 >400-402
こちらも申し訳ありません。
これからは割り込みしないように気をつけます。
しかもきれてるし…
「助かった。エルルゥ、財布をもっていないか?」
とりあえずの窮地から逃れられると思い、安堵のため息をつくハクオロ。
──だが。
「………ハクオロさん、何をやっているのですか?」
エルルゥは出来る限り穏やかで、それでいて嫉妬いっぱいの声で尋ねた。
「何をって───でぇ!!」
そのときのハクオロは丁度、美凪の腰のポケットに手を当てているところだった。
「…身体検査…私の体の隅々まで……」
美凪が顔を赤らめながら答える。
「ハクオロさーん!私がいない所でよくもよくも!!」
我を忘れたエルルゥがハクオロに飛び掛ってくる。
「にょわわ〜!美凪、屋台は安全なんじゃなかったのか?」
「みちる、私達三人には安全な所なんてないの…」
「にょわ。じゃあ、逃げるぞ!美凪、ハクオロ」
逃走する美凪とみちる。
「金は払うっ、金は必ず払うから〜〜!!」
ハクオロはなんだかんだ言いながら、しっかりエルルゥから美凪達と一緒に逃げ出した。
「わたくしとルミナ様の屋台で食い逃げとは許しませんわ〜」
怪力のアレイは屋台を引っ張ったまま、ハクオロ達を猛ダッシュで追いかけ始めた。
土煙をあげた屋台は優に軽自動車なみのスピードを出して、不埒な食い逃げ犯三人組ににどんどん迫ってゆく。
「待って、落ち着きなさいアレイ!」
ルミナも慌ててアレイと屋台を追いかける。
そんな事情などつゆ知らぬすばるは、暴走する屋台が哀れな三人組に迫っているところを見過すわけにはいかなかった。
愛と正義の大影流、修正版は議論、感想板に載せておきます。
ルミラさん御免なさい。
もちつけ >DC5e01bV
「ぱぎゅ〜……。しかし困りましたですの。これでは高子さんに頼まれたお買い物が出来ないんですの」
心底残念そうな声をあげ、すばるはその場にへたり込んだ。
「え? お買い物? お客?」
それに反応を示したのは、すっかり商売人気質が染み付いたルミラだ。
「はい……。連れの方に頼まれてお買い物に来たんですの……」
しゅんとしてしまうすばる。だが、ルミラは微笑みながら。
「ん〜……。確かに料理はできないけど……材料なら、用意できるわよ?」
「材料?」
「ええ。だからラーメンとかハンバーグ、おでんみたいなものはダメだけど、にんじんとかお米とかお肉とか。そういうものなら販売できるわ。どう?」
「え? ホントですの!?」
「ええ。アレイ、冷蔵庫は無事?」
「は、はいっ! ちょっと待っててください……」
アレイに視線を送ったすばるが見たのは、瓦礫の中から彼女が巨大な冷蔵庫を掘り出す姿。
どこに隠してあったのかは、気にしてはいけないのだろう。
「……それじゃあ、カレーのルーと、お肉とニンジン、たまねぎとお米をくださいな」
「はいはいちょっと待ってね……」
掘り出した冷蔵庫に歩み寄り、注文の品を取り出すルミラ。
「はい、2千円に……って、え?」
食材を袋に詰め、振り返る。
しかしそこにいたのは……
「Thanks,ハイ、これお代ネ」
すばる……ではなく、微笑みながら代金を渡してくる金髪碧眼少女。
「まいか、D,他に何かほしいものはある?」
「湿布をくれ」
両頬を痛々しく腫らした男と、
「はなび。はなびやりたい。はなびちょうだい」
その男におぶわれた幼女が言う。
「OK,OK,それじゃあ……シップを一箱と、花火をワンセットくださいな」
「え……ええ、いいわよ。はいどうぞ」
瓦礫の中から注文の品を探し出し、手渡すルミラ。
「アリガトウ。それじゃ皆さんオヤスミナサイ。Good night♪」
ウィンク一つ残し、少女と男、それに幼女は連れ立って去っていった。
「……なんか」
「独特の雰囲気を持ったというか」
「マイペースなご家族ですの☆」
後に残されたルミラ、アレイ、すばるであった。
【D一家 壊れた壱号屋台からカレーの材料を購入。これからHouseへ帰る】
【湿布と花火も購入】
【壱号屋台 料理の材料などなら購入可能】
【時間・場所 変わらず】
7割方書き上げたところで屋台が破壊されていました(w
全参加者一覧及び直前の行動(
>>411まで)
【】でくくられたキャラは現在鬼、中の数字は鬼としての戦績、戦績横の()は戦績中換金済みの数
『』でくくられたキャラはショップ屋担当、取材担当、捜索対象担当
レス番は直前行動、無いキャラは前回(
>>324-327)から変動無しです
fils:ティリア・フレイ、【サラ・フリート】、【エリア・ノース:1】
雫:長瀬祐介、月島瑠璃子、藍原瑞穂、【新城沙織】、【太田香奈子:2】、【月島拓也:1】
>>375-380 痕:柏木耕一、柏木梓、柏木楓、柳川祐也、日吉かおり、相田響子、小出由美子、ダリエリ、
【柏木千鶴:10】、【柏木初音】、【阿部貴之】
TH:藤田浩之、神岸あかり
>>332-337、長岡志保、マルチ
>>356-358、来栖川芹香、松原葵
>>375-380、姫川琴音、
来栖川綾香、佐藤雅史、岡田メグミ、松本リカ、吉井ユカリ、神岸ひかり、
【保科智子】、【宮内レミィ】
>>410-411、【雛山理緒:2】、【セリオ:2】
>>392-399、
【坂下好恵】、【田沢圭子】
>>347-351、【矢島】、【垣本】、【しんじょうさおり】
WA:篠塚弥生、観月マナ、七瀬彰、緒方英二
>>365-369、
【藤井冬弥】
>>374、【森川由綺:2】
>>374、【緒方理奈:3】
>>365-369、【河島はるか】
>>385-389、【澤倉美咲】
Kanon:沢渡真琴、天野美汐、
【相沢祐一】、【水瀬名雪:3】、【月宮あゆ:4】、【美坂栞】、【川澄舞】、
【美坂香里:8(1)】、【倉田佐祐理:1(1)】
>>370-373、【北川潤】、【久瀬:4】
AIR:神尾観鈴、霧島佳乃、遠野美凪
>>397-406、神尾晴子、霧島聖、みちる
>>397-406、柳也、裏葉、しのさいか、
【国崎往人:1】、【橘敬介】、【神奈:1】、【しのまいか】
>>410-411 管理:長瀬源一郎(雫)、長瀬源三郎、足立(痕)、長瀬源四郎、長瀬源五郎(TH)、フランク長瀬(WA)、
長瀬源之助(まじアン)、長瀬源次郎(Routes)、水瀬秋子(Kanon)
支援:アレックス・グロリア、篁(Routes)
毎回微妙にマイナーチェンジをしてるので読んでほしいこと&連絡事項↓
現在スレが436kbです、そろそろ次スレ移行も考えていきましょう。
このリレーは余程の反則(電波で他の参加者を操る、魔法で自分を触れなくする)が無い限り能力使用はOKです。
但し原作外のオリジナル設定は基本的に抜きで。ていうか基本ギャグで済ませましょう。
細かいところに拘るより鬼ごっことしての状況を進める方向で
致命的なミスがない限りは脳内保管しましょう。
NGはできるだけ避けるよう書く話のキャラの前話くらいは読みましょう。
前スレも健在なのでリストをたどれば最終行動はわかる筈なので。
また他のスレのネタは知ってる人はニヤリ、あ、このネタ上手いなーくらいにしておきましょう。
能力に関してグレーゾーンな話を書く際には
『葉鍵鬼ごっこ議論・感想板』 へどうぞ
>
ttp://jbbs.shitaraba.com/game/5200/ 後記
鬼がちょうど半分くらいいですかね。
417 :
補色:03/04/03 01:43 ID:hfkx1E63
「疲れたわっ!」
異様に爽やかな、それでいて妙に強制力のあるスマイルを浮かべながら
七瀬留美は唐突にそんなことを口走った。
「…一体に何に疲れたのか詳細を説明してほしいんだけど」
矢島が困った風に聞き返す。いくらバスケットを習得していようがそんな
事を一瞬で悟れるほど人間うまく出来てはいない。『疲れたわっ!』が先ほ
ど繰り広げられた一戦を差しているのか、幕末のアームストロング砲よろし
くバンブーブレード(竹刀)を正確無比に繰り出していた事(本人はあくまで
も『ツッコミ』と形容しているが)を差しているのか、わずかに島内に配置さ
れた食料を探すのにも疲れたのか――
はたまた乙女という擬態を装うのに疲れたのか。
「擬態いうな!」
ぐべしっ。
「いだっ」
と、矢島の一人称回想とも三人称文体ともとれぬ文章すら見分けがつか
ないほど七瀬(漢)は疲弊していたらしい。
418 :
補色:03/04/03 01:43 ID:hfkx1E63
当座の目標を獲物ニンゲンから食料及び休息所に変更しつつ、七瀬留美
と矢島のサムライ・奴僕(『まだいうか』『俺何も言ってないぞ!?』)もとい
凸凹コンビが突き進む。七瀬嬢、キャラクターが若干清(略)化しつつある
のは多分単純にテンパっているせいだろうか。若しくは相方の矢島のコ
ミュニケーション能力がパワー不足かもしれない。
「(なんか俺も疲れたよ……垣本…藤田…神岸さん……会いたい)」
「どしたの?」
「ああいやいやなんでもないですじょ!?」
勿論、所詮脇役でしかない(名前すら与えられていない!)矢島に折原
並のストレンジさを強要するのがそもそもも間違いというもの。そこらへんは
流石に七瀬も承知しているのだが、承知したうえでボケの応酬を期待しつ
つ矢島に振ってしまうところが何とも脱漢化を衰退させていると言えよう。と
いうかそのロジックは乙女というよりも芸人のそれに近いものがある。
419 :
補色:03/04/03 01:44 ID:hfkx1E63
「……七瀬さん」
「矢島君、言わずとも分かってるわ。――海よ!!」
そろそろ二人の空腹が冗談では済まされないレヴェルに達そうかという
時分、なんか唐突に海に辿り着いてしまった。大海原に沈む太陽は矢島す
らも思わず感嘆の声を上げずにはいられないほど綺麗だった。乙女みたい
な生物・七瀬に至ってはもうどうしようもない。彼女は思いつくおよそ全ての
『乙女っぽい』シチュエーションを描いては消し、描いては消して次に行動
すべき内容を策定している。その思考が既に乙女たらしめていないと誰が
ツッコむべきであろうか。それは誰にも分からない。
一方矢島とは言うと、
「(海→海水魚→焼く→食べる→(゚д゚)ウマー)」
などとサルバトール・ダリも裸足で逃げ出す超現実的思考に捕らわれて
いたりした。この二人による強烈な対比の思想が後の現代アート界に大き
な影響を残すわけも無く、とにかく腹をふくらませないことにはあと4時間ほ
どで両名は行動できなくなるだろう。
彼らは何を選択し、何を捨ててゆくのだろうか。
【七瀬(漢)・矢島 海】
【両名の空腹臨界点 あと4時間】
【時間→夕暮れ】
「ささ、まずは一杯」
「おうおうおうすまぬな北川殿」
住井の手にしたグラスに清酒・禍日神がなみなみと注がれた。某国皇帝
によって開発・製造されたそれは、同国傭兵によって初年度製造分の殆ど
が飲み尽くされそのバケモノじみた呑みっぷりを湛えて名づけられたという
由緒ある清酒である。むろん彼ら二人はそんなこと知る由も無いのだが。
「んでは」
「鶴来屋旅館、巨大ビックリハウス化計画成功を祈って」
「乾杯っ」
グラスに入っていた液体が万有引力に従って住井護の体内へと消えて
行く。所要時間わずか10秒。完飲の証に住井は超特大のげっぷを一発吹
き出した。北川が屁を以ってこれに応じる。
「ははは、護者も存外汚らしい性癖をお持ちじゃのう」
「潤者こそ何を申される。不浄の穴たるアヌスから気体を噴出するなぞ宇宙空間にあってはまさに命取り。貴様もしやオールドタイプだな?」
「馬鹿な。この私に時が見えぬと申すか護者は。よせよ、兵が見ている」
「おうおう、あれほどの量で潤者は召されてしもうたか。貴殿もアルコールが弱くなり申したなぁ――っと、思わず敵製用語を用いてしまったわい」
「かくいう貴殿こそ肝臓に到達したアルコールをアセドアルデヒドに変換しきれず血液循環で脳内に達したアルコールたちによって神経細胞が麻痺すなわち酩酊状態になっているではないか」
「またまたぁ〜一体何を言っているんだい潤たんは? っていうかカンニングペーパー片手に読み上げてもダメだぞ。せめてテレプロンプターを使い給え」
「んなもんあるかっ! 今ココにあるものといえば清酒・禍日神に大吟醸・来栖川の怒りにその他各種アルコール類スピリタスもあるなーんでそれからいろんなつまみと米四合ト味噌ト少シノ野菜だけだね。東に病気の人あれば行って看病してやりたい気分だNEEE!!!!!!!!」
「ふう、またお前こと北川潤はそうやってみーやじゃーわけーんずぃーを引用するんだからやってられんわ。そんなに花巻が好きですか? 好きですか、花巻。Do you Love HANAMAKI? んふん?」
「馬鹿な! 俺が好むところの土地はうつくしまふくしまと風の谷だけじゃ! 遥か天空を目指してイカロスの如き挑戦を午後の日差しの中で夢想しつづけるパズー・住井にだけは言われたかねぇっすよもー」
あーやってられんわーとかのたまいながら大吟醸に手を付ける北川。
と、住井も同じ事を考えていたらしく――偶然、手が触れあった。
「や、潤君…」
「護。……呑むのか?」
「でも、潤君が先に手を付けたんだから、潤君から先に呑んでよ…」
「そんなわけにはいかないだろ。ほら、コップ貸せよ」
潤は護のコップに酒を注ぐ。
手渡す時に再度手が触れ合う。
「潤君…」
「護…」
こうして二人は禁断の園へ一歩足を踏み込む事に――
「なるかぼけがぁああああ」
「んんだこらあぁやんのこああああ」
ならなかった。
それぞれがそれぞれに向かって死の咆哮を叫ぶ。
これから文化大革命さながらの大殺戮劇が始まろうとしているのだ。
「かかってこんかいこのどげどーがー」
「ぬがああやんのかこるぁー」
狂気と正気の狭間で二人はグラスを突き立てる。
「ぬがあああああああきえーーーあーまずは一杯」
「はいはい」
そんな時空を越えた言葉遣いの応酬で宴会は続いてゆく。
【北川・住井 一心不乱の大宴会】
【時間→午前7時ごろかと】
相田響子 篠塚弥生 朝起きて、由綺捜索開始。日の出直後。
ハウエンクア まなみ 落とし穴の中。夜明け直後。
ゲンジマル 混戦の末、郁未に捕まる。一人で森の奧へ。朝。
ニウェ ゲンジマルとの追いかけっこ終了。一人で森の奧へ。朝。
エリア リアン 朝八時。リアンは魔法で芹香を捜索中。
瑠璃子 美汐 森の中の教会。鐘楼に隠れながら、仲間二人の帰りを待つ。朝十時前後。
皐月 夕菜 どこかの家の中で、チキナロ発見。らっきー。時間不明。
霧島姉妹 海岸沿いを散歩中、巳間を睡眠薬メスで撃沈。散歩続行。ルールに違反してないのかな? 時間は不明。
クロウ 郁美 海岸沿いを、ウォプタルにのって何かの建物に向かっている。昼近く。
少年 郁未たちとの戦闘→鬼になる。雪見を追うか? 昼。
雪見 森の中で、不自然な食料に困惑中。昼。
岩切 森の中、適当に昼食を取る。翌日の雨を感知、やる気が出る。昼。
和樹 晴香 祐一一行を撃退し、屋台を探し始める。森。昼。
梓 結花 森の中、小屋を発見。中に。昼。
かおり 森の中の小屋に入っていく梓と結花を発見。暴走。襲撃決意。昼。
反転ユンナ 黒きよみ 小山から、水を探しに出発。秘密兵器所持。昼。
コリン 反転ジュースにより反転中。小山にいる。反転している時間は不明。昼
名雪 理緒 美咲 さおり 猫騒動。名雪が二人ゲット。どこかの小屋の中。昼。
彰 冬弥に恨まれる。場所不明。昼。もう、彼に帰る場所は無い。
マナ 醍醐 森の中で鉢合わせ。マナ、ピンチ。昼。
ドリィ グラァ かなりヤバイ姿。玲子に追いかけられている。昼。
玲子 腐女子満開。双子を追って、背中に矢をくっつけて、どこまでも。昼。
425 :
昼〜午後:03/04/03 02:49 ID:oR9F2eQM
沙織 だだっ広い平原。可塑性粘液の打撃から回復。祐介の追跡再開。昼頃。
真紀子 屋台零号車でジャージ購入。閃光手榴弾×二購入。昼頃。
芳晴 由美子 壱号屋台で食事中。由美子、ルミラの正体を聞いてびっくり。昼頃。
柳也 裏葉 海岸へ向かう。対神奈用の秘策があるようだが? 昼すぎ。
芹香 綾香 ダウジングで食料探索。示した方角に進んでいく。昼過ぎ。
友里 巡回員 森と平野部の境目→どこかへ移動中。昼過ぎ。
ベナウィ 晴子 森の中。御堂をやり過ごして、海岸へ向かう。昼過ぎ。
あさひ 白きよみ 彩 草原。緒方兄妹に置いてけぼりにされる。昼過ぎ? きよみと彩は、激しく空腹。
英二 理奈から逃走中。草原から丘へ。素晴らしい逃げ足。空腹。昼過ぎ?
理奈 英二を激しく追撃中。草原から丘へ。怒りのため人を超えている。多分空腹。昼過ぎ?
蝉丸 月代 超先生神社からどこかにワープ。行き場所不明。共通するかも不明。昼くらい。
宗一 はるか 超先生神社。いきなり二人が消えて、愕然。昼くらい。
冬弥 由綺 七海 平原と森の境目。シェパードのおかげで七海と合流できた。時間は不明だが、昼以降
真琴 森の中。山桃三十個ほか、食料たっぷりゲット。午後。
ひかり 真琴から山桃のお裾分けをもらう。午後。
あゆ 舞 灯台の中でがんじがらめにされている。ひでぇ。午後。
おた縦 おた横 灯台から投げ捨てられた詠美の生原稿を追ってどこかに消える。午後。
浩之 志保 琴音 由宇 詠美 サクヤ 灯台から脱出。午後。
牧村南 風見鈴香 高倉みどり ぴこ 灯台近辺で鬼を発見。逃走。午後。
伊藤 ジョン一行が潜伏していた建物の中。貴之を捕まえる。良く、北住の罠にかからなかったな。時間不明。
貴之 伊藤に捕まる。以上。時間は二日目、日暮れより前。ほか不明。
垣本 平原。川を見る。誰かの声に起こされ、行動再開。夕方。
マルチ クーヤ エルルゥから逃げるため、懐中電灯の置いてあった鍾乳洞へ。夕方。
往人 千紗 ウルト リサを取り逃がす。信頼関係成立? 夕方。
耕一 瑞穂 楓と別れる。祐介探しを再開。夕方、場所不明。
楓 耕一たちと別れる。初音探しを再開。夕方、場所不明。
葵 森の中。食料と湿布薬確保。教会へ戻る道中、月島兄と邂逅。電波攻撃を受けるが、管理者たちに助けられる夕刻。
月島兄 葵を電波で拷問にかけるが、HMシリーズに取り押さえられ、連行。夕刻。
岡田 吉井 松本 雅史 商店街から出る。行き先不明。日暮れ前。
ヌワンギ 商店街。雅史の策により、頭をぶつけ気絶。日暮れ前。
ビル 商店街。松本のパンツ目撃。眼福。つか、本当に背景だな、これ。日暮れ前。
エディ 敬介 夕暮れ時の海岸で、天女を発見。見事に彼女らの策にはまり、ほどよくボコにされる。
葉子 神奈 サンセットビーチに感動。覗きを発見。撃沈。
神尾観鈴 海岸そばの林→どこかへ。訳もわからないまま、とにかく逃げている。夕暮れ。
留美 矢島 空腹臨界点まで後四時間。海岸に到着。日暮れ中。
427 :
夜〜深夜:03/04/03 02:52 ID:oR9F2eQM
祐介 電波による直接攻撃のお叱りを受けに、管理人室へ。夜。
雄蔵 行方不明。郁美を見つけたか? 時間は二日目夜まで進んでいる。
佐祐理 灯台のそば。七味手榴弾の影響により、観鈴を取り逃がす。意地でも捕まえると決意。とりあえず夕食。夜。
清(略 田(略 死闘中、D一家と接触。禍日神? 夜。死闘も残り少しで終わる。鬼になったことには気付いていない。
ティリア サラ 山道→? 真希の追跡を逃れる。茸を落とす。睡眠不足。サラは、知らずのうちに鬼になっている。夜。
真希 まさき 山道。ティリアたちを逃がす。茸ゲット。空腹の真希、まさきに食べ物を無心。夜。
智子 みさき 初音 好恵 祐一 郁未 由依 久瀬 現在、チーム編成会議中。夜。
香里 鬼ごっこはお腹いっぱい。チーム編成会議に参加。夜。
香奈子 智子たちとの合流場所へ向かう。瑞穂に、祐介のことを教えてあげるのが目標の一。夜。
栞 香里に捕まり、辛いものセットと共に落とし穴の中へ。夜。
折原浩平 長森瑞佳 トウカ 伏見ゆかり スフィー 突如来襲のカルラに困惑。トウカ、クケー。夜。
シュン あかり 駅。明日の天気を知る。傘と食料ゲット。疲れたため早々に就寝。二日目夜。
茜 詩子 澪 零号屋台にて夕食&買い物。バイクのガソリン購入。重いよ。夜七時。
カルラ さいか 壱号屋台で夕食を取り、移動。夜遅い。
ハクオロ 美凪 みちる 壱号屋台で夕食、お代に困る。エルルゥ来襲。お題をつけにして逃走。夜遅い。
エルルゥ 破壊された屋台の弁償費として、宝玉を一個残して、ハクオロたちを追っていく。夜遅い。
すばる (高子) すばる、壱号屋台破壊w。カレーの材料を買おうとしたら、D一家と出会う。夜遅い。
D一家 破壊された壱号屋台にて、カレーの材料と湿布、花火購入。HOUSEへ戻っていく。夜遅い
デリホウライ 御堂に捕まった後、どこかへ。現在地不明。時間不明だが、恐らく夜。
巳間 海岸。高槻をタッチして、柳川追撃開始。深夜。
柳川 海岸。職務放棄して巳間から逃げる。天蓮華を食らう。疲労度高。深夜。
高槻 繭 海岸。高槻疲労困憊につき、爆睡中。繭は、おじさんと、いっしょ。深夜。
リサ 御堂 林。追いかけっこ始め。とりもち銃残弾三→二。雨が降ってきたら御堂は危険。三日目午前三時。
北川 住井 ダンジョンから脱出。管理人室を発見→退室。ホテルを罠だらけにする。三日目明け方。
アルルゥ カミュ ムックル ユズハを後に残して、去る。ガチャタラは? 三日目早朝。雨。
光岡 ユズハ 手に手を取って、オボロから逃げていく。屋根のある場所を探す。三日目早朝。雨。
オボロ セリオ セリオは面従腹背。ユズハを追っていく。ガチャタラ撃墜。三日目早朝。雨。
ダリエリ 麗子 鬼ごっこ始め。ダリエリは相変わらず仮面。時間不明。場所不明。
夕霧 いきなり消えた二人に驚いている。度の合ったメガネをもらう。時間場所不明。
健太郎 なつみ 時間場所共にまったく不明。とにかく同行中。
まとめ終了。
少しは見やすくなったでしょうか?
>>419 までの状況です。
めっちゃ乙!!
烈乙
なんと言うか凄まじいですな。
乙。
補足すると
ダリエリvs麗子と夕霧 は
>>122『純愛(PURE LOVE)』より後なので
時間は2日目夕方以降のようです。
すた すた すた
「ちょ、ちょっと〜〜」
時はもうすでに夕暮れ。ここは森の中。そこら中に枝や葉が落ち、根がうねうね露出してたりする。
(なのに……)
すた すた すた
「す、少し、待ってくれません?」
目の前を歩くハイヒールの女性は、
(朝から歩きっぱなし、その上ハイヒール!? しかも昨日寝てないのにっ)
すた すた すた すた すた
「ご休憩なら、お好きにどうぞ。プレスに付いて来てほしいなど、始めから言っておりません」
かけらもペースを乱す様子が無かった。
明け方から始動した弥生と響子は未だに由綺の情報をただの一つも掴めずにいた。
一応幾人かの人間には会った。
だが、その答えは、出会っていない見かけていない、
さらには森川由綺など知らない、ばかりであった。
(以外に知名度が低いのかしら……)
日本を代表するアイドルを知らないものが多いことは響子にとっても予想外。
だが、それ以上に篠塚弥生の由綺に懸ける執念は既知の外に位置する事柄。
当然予想なんか出来るはずもない。
(人を見かけると見境無く近付くし…相手が、鬼かどうかも判らないのに……)
今のところ出会った数名は皆鬼ではなかったが、少しは注意してほしい、とも思う。
(それだけ、森川由綺が大切ってことかしらね。それとも元々鬼ごっこなんかどうでもいいとか……)
そういうことなら判らなくは無い。スクープになりそうなネタと、鬼ごっこ。
どちらかと問われれば自分は迷わずネタを選ぶだろう。
(ま、まだ2日目だしね。鬼なんてそんなに多くないのかも)
彼女は知らない。実はこの時間帯、既に鬼は半数近くに達していたりする。
そして、
すぐ側にも襷をかけた男が隠れていた。
「し、篠塚さんっ鬼ですよっ」
木の陰からいきなり現れた鬼に、逃げ出そうとする響子。
しかし弥生は一言、
「それが、何か?」
そう告げるとそのまま鬼に向かって歩いていた。
「空からなんて……」
弥生を見捨てるかどうか、一瞬迷ったとき空から金髪の女性が頭上から降りてきて、
「たっち、です」
あっさり捕まってしまった。
とにかく疲れていたことが災いしてか、目の前の鳥人間が大スクープだとは思わないらしい。
座り込んで、呆然としていた。
一方で弥生は素早く襷を掛けると、早速森川由綺の情報収集にいそしんでいる。しかし、
「もりかわ、ゆき? 知らないな…」
「申し訳ありません、こちらの世事は……」
「ご存知、ありませんか……」
また不発。少しいらだちながら、由綺の容姿を伝えようとしたその時、相手側の少女が言った。
「にゃあ☆目付きの悪いお兄さんも、天使のお姉さんも知らないですか? 森川由綺。
うちにはテレビ無いですけど…千紗、この間お兄さんの同人誌刷ったから、よ〜く覚えてますですよ」
「……同人誌、ですか?」
急な言葉に驚き、ただオウム返しに単語を放つ弥生。
そして、
「はいです。表紙フルカラー、84Pの大作☆ 森川由綺と、緒方理奈2大アイドルが
『監禁、陵辱で奴隷化、しかもレズシーン有り』
というので冬コミ一番の話題になった大傑作です、はい☆
今度大増刷して下さるので千紗の所は万万歳です♥」
時が、 止まった。
【往人、ウルトリィ それぞれ、弥生、響子を捕まえる】
【弥生 とある情報を入手 和樹の未来は…。・゚・(ノД`)・゚・。】
○月×日△曜日 晴れ
昨日の分を書けなかったので、今日はたくさん書こうと思います。
まいかはさいかお姉ちゃんと一緒に観鈴お姉ちゃんに誘われて、夏休みの旅行で鶴来屋のリゾートアイランド予定地というこの島に来ました。
そうしたら突然すごいたくさんの人と鬼ごっこをすることになりました。
お姉ちゃんたちと一緒に逃げようとしたけど、あんまり人が多いので別れ別れになってしまいました。
お姉ちゃん、病み上がりなのに心配。
とりあえず捕まってはいけないと森に行ったけど、迷ってしまいました。
ずーっとうろうろしているうちにだんだん暗くなっていき、お腹も空いてきたけど、突然出てきたお姉さんに助けてもらいました。
『HM-13』っていう名前みたいで、耳に変わったでっぱりを付けたお姉さんです。その人の姉妹がたくさんこの島の中に隠れていて、困った時には助けてくれるらしいです。
お姉ちゃんのことを訊いたら、大丈夫だって。誰かと一緒だと思うし、どうしようもない時はお姉さんの妹の人が助けてくれるそうです。
お姉さんからもらったお菓子を食べて、歩いているとそのうちヘンなおじさんと会いました。
突然草の間からぬうっと顔を出し、まいかのことを見つけたらものすごい勢いで追いかけてきました。
初めての鬼との対決です。けど、まいかはか弱い女の子。永きに渡る凄まじきデッドヒートの末、木の根っこにつまづいたことが原因でとうとう捕まってしまいました。
なのにディーはまいかのことを手放そうとせず、ずーっとゴロゴロ転がっていきました。
そこから先はあんまり覚えていません。まいかとディーは寝ちゃってたらしいです。
(中略)
ぬぐぃそむかみとかいう怖いお化けを退治した後、まいかたちはお家に帰りました。
途中壊れた屋台を発見したのですが、機能に問題はないようなので万事オッケーです。レミィお姉ちゃんはカレーの材料、まいかは花火、ディーは湿布を買いました。
両頬の怪我が痛いようです。ちょっと心配です。ディーだから大丈夫だと思いますが。
お家ではレミィお姉ちゃんがカレーを作ってる間、まいかとディーでトランプしてました。
けど、ディーはゲームを何を知りません。いい歳して。仕方がないので、ババ抜きや大富豪を教えてあげました。けど、あんまり盛り上がりませんでした。
次はセブンブリッジやポーカー、ブラックジャックを教えてあげました。けど、あんまり盛り上がりませんでした。
仕方がないのでずっと神経衰弱やってました。けど、どういうわけかディーはすごく強いんです。まいかも観鈴お姉ちゃんとの戦いで鍛えられているので自信があったのですが、木っ端微塵に打ち砕かれました。
卑怯です。絶対何かイカサマしてます。証拠は無いけど、見つけたら叱ってやります。
レミィお姉ちゃんのカレーが完成したらゲームは終わりです。結果、1勝15敗。しかも最後のまいかが勝った一戦、ディーは絶対手加減してました。
しかもわからないようにやれば可愛げがあるものを、わざわざまいかにわかるように。舐められてます。絶対。許しません。もっとお姉ちゃんと修行してボコボコにしてやります。
再起不能なくらい。
夕ご飯はカレーです。とっても甘くっておいしかったです。ディーが甘すぎると文句を言ってましたが、あれでちょうどいいと思います。ディーはわがままです。
ご飯の最中はみんなの昔話を聞きました。レミィお姉ちゃんは半分アメリカ人で、今は日本の学校に通って日本語もぺらぺらですが、最初は苦労したらしいです。
なんでも、高校で偶然初恋の男の人に再会して、とってもお世話になったらしいです。恋人なのかなぁ? その人のことを喋るときのレミィお姉ちゃん、とっても楽しそうでした。
ちなみに、ディーがかなり不機嫌になってたのをまいかは見逃してません。嫉妬してます。しっと。情けないと思います。
ディーの昔話はよくわかりませんでした。
てつがくしゃ……というのを目指して、小さい頃からずーっとずーっと勉強してきたそうです。おんかみはむやいとか、うぃつあるねみちあとかよくわからないことを言います。
面白かったのはディーはお姫様の先生をしているというところ。
お姫様かぁ……。どういう人なのかなぁ?
ご飯の後はおやすみの時間です。寝ちゃうまえに今、この日記を書いています。夏休みの宿題なので、頑張ろうと思います。
ディーとレミィお姉ちゃんはとっくの昔に寝ています。まいかの後ろで2人並んで寝ています。
なんだかディーの羽がピコピコ動いてます。本人と違って、可愛らしいです。
ぷちっ。
一本もらいました。本人と違って綺麗な白い羽です。けど、ディー、翼自体はほとんどボロボロです。なんでだろう。一回訊いてみたのですが、すごい不機嫌な顔になってしまいました。
ディーはよくわかりません。ちょっとしたことですごく喜ぶかと思うと、普通のことですぐ不機嫌になります。
見ててあきません。面白いです。レミィお姉ちゃんは優しいです。ちょっと変わったところがありますけど。
この旅行、鬼ごっこっていう感じはあんまりしませんが、楽しいです。いつまで続くんだろう? ずっと続いてほしいです。
さいかお姉ちゃんを見つけて、4人でずっと鬼ごっこができたら―――――――
………パタン。
そこまで読み上げると、ディーは静かに『まいかのにっき』と表紙に書かれた本を閉じた。
その表情は非常に複雑だ。笑っているようにも見えれば、泣いているようにも。あるいは怒っているようにも見える。
「……全く。人のことを好き勝手に書いて……。何がおじさんだ……。何がわがままだ……。何が卑怯だ……。何が嫉妬だ……。というか人の羽を盗んだのか……。
全く……まったく……。何という幼女だ……。まったく……」
いったんは寝付いたのだが、夜中に目が覚めてしまったディー。おそらく昼間の興奮が抜けきらなかったのだろう。
水でも一杯飲んで寝直そうと思ったが、その時、見つけてしまったのだ。まいかの枕元に置いてあった一冊の本を。
悪いとは思ったが、好奇心には勝てなかった。そーっと持ち出し、ページを開いてしまった――――。
「何という幼女だ……まったく、あの子供は将来が不安だ……。フフフッ」
何やかんやと言いながら、徐々に唇が綻んでいくディー。
「フフフフフ……やれやれ、全く、しょうがないな。ずっと続いてほしい、か……」
洞穴に戻ろうとする時、ディーは見つけた。今朝掘った看板の端っこに、三つのてるてるぼうずがかけられているのを。
それぞれ体の部分に『D』、『れみぃおねえちゃん』、『まいか』と書かれている。
……顔は全然似てないが。
「……そういえば、明日は花火の約束をしていたな……」
呟きながら、夜空を仰ぎ見る。
「……雲か」
……一抹の不安を覚えながらも、ディーは祈った。神である自分が祈るなどおかしいと思ったが、祈らずにはいられなかった。
―――明日が、晴れますように―――
【D一家 就寝】
【明日は花火の予定】
【晴れるといいなぁ】
【時間:深夜】
篠塚弥生はちょっとしたジレンマに陥っていた。
――――森川、由綺。
いうまでもなく、緒方英二プロデュ―スのアイドルである。
そして、自分はその担当マネージャー。
それだけといえばそれだけの、しかしその言葉だけでは到底尽くせない関係。
弥生にとって、由綺はただのアイドルではない。だが、それを他人が知る必要はない。
「弥生さん、こんなところにいたんですね」
彼女にしか出来ない微笑を浮かべて近づいてくる由綺。(と誰か知らない少女)
向かいでは、好機とばかりに目を輝かせている響子。
たしかに今、目の前に由綺がいる。
もとより彼女を探していたのだから、それはいい。
しかし由綺は鬼で、自分が逃げ手であるという、この状況。
そして彼女の隣にはあの男がいるという、この状況。
捕まえられればそばにいられるのだが、本意と不本意が入り混じった状況は弥生にある選択をさせた。
弥生の取った選択は―――、
「……藤井さん」
「はい?」
冬弥は第一声が由綺ではなく自分にかけられたことに驚いた。が、
「…私、あなたのこと…本当は愛していたのですよ……本気で…」
「「「「「………………え?」」」」」
弥生の唇から紡ぎだされる予想外の台詞に、四人が四人とも同じ反応を示した。
「ま、ま、待ってくださいっ! 俺、弥生さんシナリオに入った覚えはこれっぽっちも…」
修行の成果か、いつにない立ち直りをみせる冬弥だったが、
「……冬弥君?」
背後から聞こえるのは抑揚のない、由綺の声。
ざぁ、と血の気が滝のように引く音を彼は確かに聞いた。
脳裏には、あの『お仕置き』の情景が浮かんでいるに違いない。
「『…俺だって、同じくらい愛してましたよ…。弥生さんのこと…』といってくれたのは嘘だったんですか?」
台詞とは裏腹に、あくまで冷徹に、揺ぎ無く。しかし、確実に冬弥の『死刑執行文』を読み上げる、弥生。
冬弥の旗色はこの上なく悪かった。
「ふ、ふふふふっ……そうだよね。メインヒロインっていっても、私のシナリオでない限り結局、噛ませ犬。
恋人を裏切る葛藤とドロドロした人間関係を楽しむのがWAの醍醐味だし、製作者から元々浮気ゲーだったとかいってるくらいだし……ふふふっ」
やや壊れ気味の由綺。
震えている七海を横目に、由綺はシェパードの頭を撫でながら首輪を外した。そして、
「……GO」
―――――刑の執行が告げられた。
「あー、もしかしてアイドルとその彼、マネージャーの三角関係とかだったりします?」
あまりの光景に毒気を抜かれたのか、響子は記者らしくない直接的な質問を投げかける。
その質問には答えず、弥生は由綺に追いたてられる冬弥を一瞥すると
「…嘘…ですけどね…」
あの台詞を言った。
シェパードに追われながら、冬弥は思った。
なぜこの場面で、理奈シナリオよろしくビンタが飛ばないのか。
なぜ『契約』もしてないのにお楽しみなしでこんな目にあわなければならないのか。
――――――
【冬弥・由綺・七海 弥生・響子と接触、逃げられる】
【冬弥 金無し】
【由綺 シェパードマイク所持】
や、やっちまった……。・゚・(ノД`)・゚・。
>443
イ`
森を抜けたところで、海が見えた。
「海…か」
「本当にあれでよかったの?」
「…ああ。あまり、戦力にならない足手まといばかり増えてもデメリットにしかならないからな。
戦力ならば歓迎だが」
チーム編成会議では、結局俺達はメンバーを変えず前のままのメンバーだった。
つまり、天沢、由依、俺(祐一)。
「もう暗いですね。宿探しませんか? もう野宿は嫌ですよっ」
「…そうね、私もできれば雨宿りくらいしたいかしら?」
「雨宿り?」
天沢が、無言で空を指差す。
雨が降りそうだった。
「っと言っても、どこかできそうなところはあるのか?」
「あそこに、灯台があるけど?」
「じゃぁ、あそこに避難するか?」
【相沢祐一 強い人材なら歓迎。灯台発見。舞やあゆがいる灯台かは不明】
【天沢郁未&名倉由依 相沢祐一と共に灯台へ】
【時間帯 夜。雨が降りそうなことに気付く】
報告です。
>>440-442『誤解、再び』について、
>>433-435『はい、おっけーです☆』との間に
展開上明確な矛盾点がありましたので、改訂版を
>>1議論・感想板に投下しました。
つきましては、以降の話を書かれる書き手の方には、そちらを一覧の上投下
下さいますよう、お願い申し上げます。
ご迷惑おかけしました。
続けて報告します。
>>420-423 『ふぬぬぬぶふごっのテーマ(酒が呑めるぞVer.)』につきまして、
理解不能・支離滅裂・読める作品じゃない・無理して書いて汚物ができあがる良い例
などのご指摘を戴きましたので、思い切って全面改訂版を議論・感想板改訂スレに
投下いたしました。
……マジで申し訳ありませんでした。
しかし、あと約50KB…次スレの季節ですかな?
ってか改訂ならここにせめて要点だけでもまとめて欲しい。
書き手全員が全員支援板見てるわけではないし。
はっきりいってあそこに依存しすぎ。
依存するのは構わないが、それを他にまで強要するのは止めて欲しい。
そのうち依存が過ぎて、いつもリスト作ってくれてる人がたまたま
来れないと、誰もリスト作らないっていう状態になったり、あまつさえ
誰かが替わりにリスト投下したら「勝手なことするな」とか言い出しそう。
市街地から離れて、海岸からかなり近い道沿いにぽつんと立っている一軒家。
おそらくは海水浴に来た人に利用されるであろうこのペンションに、
今4人の訪問客が現れていた。
「Ok、罠はなさそうだね」
雅史の一言に、岡田、吉井、松本の三人はホッと胸をなでおろす。
「まったく、誰が罠なんか作ってるのかしら。腹立つわ〜」
「引っかかってるのは岡田だけだけどね〜」
「黙れ、この万年お花見女ぁ!」
「はいはい岡田、落ち着いて。でもわざわざ罠を探すのも手間がかかってしょうがないよね」
罠に痛い目にあった4人だけに(正確には岡田だけだが)、
一階、続いて二階とすべての部屋に罠がないかどうか調べたわけだが、確かに手間がかかる。
「まあ、こんな一軒家まで仕掛ける人もいないとは思ったけどね。
なんにせよ罠がなくてよかったよ」
「あ、ねぇねぇ。それじゃ今日はここにとまるの?」
「うん、食料も結構集まったしね。今晩はここでゆっくり休もうよ」
松本の問いに、雅史がそう答えた。
「ふぅ、よかった〜♪」
「よかった?」
胸をなでおろす松本に岡田が目を向ける。
「え、いや、えへへ、なんでもないよ〜?いや、ほらゆっくり休めるところが見つかってよかったなぁって」
「うん、本当ね。今日は疲れちゃったわ」
慌ててごまかす松本に、それに気づかずく吉井が同調する。
「うんうん、疲れちゃったね〜」
そういいながら、松本はさりげなく一階に下りようとする。
……一階にしかトイレがないので。
実は松本、かなり前から我慢していたわけだ。まあ、いわゆる生理現象を。
岡田と吉井は背に腹は変えられぬと、先ほどそこら辺の茂みでやってしまったのであるが、
(私、岡田や吉井と違って繊細なレディだも〜ん。雅史君の前じゃ……ちょっと……ね)
と、まあ一見何も考えてなさそうな松本であっても、
そのような(岡田と吉井にかなり失礼な)悩みを抱えていたわけだ。
(ふう、ちょっと危なかったよ)
そう思って、弾む足取りで階段を下りようとする彼女なわけだが。
「待って!」
雅史の静かな、しかし鋭い制止の声がかかる。
「うぇ?」
ふりかえるまもなく、雅史がグッと松本の腕を引っ張り抱きかかえる。
(う、うひゃぁ〜)
思わず叫び声げそうになるが、既にその口には雅史の手が当てられていた。
(ア、アフン……うう、まずいよぅ)
普段だったら願ったりかなったりのこの体勢なのだが、今はこのような刺激は禁物なわけで。
「雅史君?どうしたの」
その様子に察したのか小声で問う吉井に、雅史は視線で一階の玄関の方を見ろ、と答える。
吹き抜け構造のせいで二階から丸見えになっているその玄関には、
「ああ〜もう、お疲れたし、腹すいたぁ!!」
「まあまあ、ここでちょっと休んでいきましょうよ」
襷をかけた七瀬留美と矢島の姿が見えた。
「参ったわね、あいつら」
「うん……どうしよっか?」
「念のために調べている部屋以外の電気を消していたのは、正解だったね」
そう小声でつぶやきながら雅史は二階の手すりぞいから、
一階のリビングでくつろぐ鬼を注意深く観察していた。
今のところ鬼達が彼ら4人に気づいた様子はない。
「ベランダから下の庭に飛び降りればいいじゃん」
岡田の提案に、雅史は首を振る。
「できなくはないだろうけど、暗いし危ないよ。それは最終手段にしたい」
「じゃあ、どうすんのよ?」
「鬼がこのまま立ち去ればよし。
二階に上がって来るようならひとまずベランダのある部屋にかくれる。
その部屋にも入ってくるようなら、そのときはそこから飛び降りて庭に逃げる。これでどうかな」
「私もそれがいいと思う。下手に動いて怪我したら大変だもの」
「OK、持久戦になるけどしょうがないか」
(ええー!?嘘でしょ〜!?)
うんうん、とうなずく岡田と吉井であるが、その後ろで松本は顔色を変えていた。
愛する雅史のことと言えど、松本的にそれは困るわけである。
「ん?なによ?」
「どしたの、松本」
くいくいっと服のすそを引っ張られて、岡田と吉井は振り向く。
「え、えっとね・・・・・・ま、まあ、なんといいますか乙女の大ピンチといいますか」
「はぁ?なにいってんの?」
「えーと、ひ、ヒント!!ひ、人が生きていくうえで仕方ないこと!!」
「……ごめん松本、ちょっとわからないよ」
「つ、つまり・・・・・・おトイレ・・・・・・」
消え入りそうな松本の声に絶句する岡田と吉井。しばしの後。
「だからさっき行けって・・・・・・!」
思わず怒鳴ろうとする岡田に、雅史が振り返る。
「どうしたの?岡田さん。静かにしなきゃ」
「ご、ごめん。なんでもないよ雅史君、にゃはははは……」
慌てて手を振る松本と岡田の口に手を当てている吉井を見て、
雅史は首を傾げるが、そう、と答えると一階の監視に注意を戻す。
「我慢できないの?」
「うう、ちょっち……」
「じゃ、じゃあ、ごまかしてもしかたないじゃん。雅史君に相談しよ」
「だ、駄目だよ……!!」
吉井の提案に慌てる松本。
「わ、私だって女の子だよ・・・・・・雅史君にこんなこと言えないよぉっ……!!」
「そ、そんなこといったって・・・・・・」
真っ赤になって松本はうつむく。限界が近づいていた。
(う、うわぁん……どうしよ〜)
乙女のピンチであった。
【雅史、岡田、吉井、松本 海の近くの一軒家の二階】
【七瀬留美、矢島 一軒家の一階。二階の逃げ手には気づいていない】
【松本 生理現象により大ピンチ】
【時間は夜】
456 :
飯への扉:03/04/03 20:00 ID:lRW3GwY8
いよぉお待ちどう。俺様こそ水瀬ぴろ。
俺様のように歩道橋の上から落とされても生還できなければ、水瀬家の飼い猫の座は務まらん。でもおでん種にされるのは勘弁な。
しかしま、歩道橋の上からは助かっても、はたしてこのむやみやたらにだだっ広い島から生還できるかどうか。
ハイテンションで1人寂しく強がっていても、空腹をごまかせるわけでもない。
いやあるんだ。飯はあるんだ。俺様の鋭敏なヒゲは、とっくにその存在を掴んでいる。
だけど高い木の枝からぶら下げられたそのビニール袋は、いかに俺様の跳躍力を持ってしても届きゃしねぇ。
登ろうにも爪をとっかける枝もなく、幹にかじりついてみたが、ちーとばっか脚力が足りなかった。
家ネコ生活が長かったせいで、すっかりなまっちまったみたいだ。情けねぇ。
そんなわけで、俺は食料の下をぐるぐる回りつつ、途方に暮れていると言った寸法だ。
ここにはいつもなにかしらの食料を持っている真琴もいねーし、猫缶を開けてくれる名雪もいねー。
暖かい飯を作ってくれる秋子さんはどこへやら。
は? 祐一? この水瀬ぴろ、水瀬家ヒエラルキー的に最下層の居候を、当てにするほど落ちぶれちゃあいないぜ。
もっとも、当てにするにも周りには、猫の子一匹見あたらないが。
そこかしこになわばりを示すべく爪を立て、匂い付けをしてみたものの、国民のいない国の王様になっても空しいだけだ。
――とびっきり美人のメスネコとは言わねぇ。
二本足で立つ不完全な生き物でもいいから、俺を孤独と飢えから救ってくれねぇかな……。
秋刀魚の一匹でも恵んでくれたら、俺は喜んで道化になって、ごろごろと喉を鳴らしてみせるのに。
ああ、秋刀魚……たまんねーよなぁ。この前秋子さんが焼いてくれた、見事に脂ののったあの秋刀魚。
ちくしょう、思い出すだけで唾が出るぜ。秋刀魚、秋刀魚、秋刀魚ー、秋刀魚ーをたべーるとー♪
なんて秋刀魚の夢を見ていたら、どうやら注意力が欠如していたらしい。
ガササササ……と勢いよく草を蹴散らす音が俺に向かってつっこんできた。
「いまだーっ! 食料げーっとっ!」
Holy shit!
457 :
飯への扉:03/04/03 20:02 ID:lRW3GwY8
遠くから躍り込んできた影は、俺様をしっかりその手に捕らえ、渾身の力を込めて握ってきた。
ぐはぁっ。
バニラアイスの小娘のような無様な吐血音を立て(いや、血は吐いちゃいねぇが)、俺様は悶絶する。
「なんだ猫かぁ……」
雄にしては妙に頼りない、不健康な顔色の若僧は、俺様を見て露骨に失望しやがった。
なんだとはなんだ。猫は世が世なら神として崇められていた生物だぞ。
太陽の化身、お猫様を蔑むのか、ああ? お前の枕元で夜な夜な行灯の油舐めたろか。
「でも、どこかの国では食べているって、聞いたことがあるなぁ……」
ベイビー、お互い落ち着いて考えようぜ。
そりゃあ確かに魔女の使い魔として忌み嫌われた時代もあったが、ここしばらく、俺たちは仲良くやってきたじゃねえか。
俺たち猫族は気がいいから、そんな暗い過去などすっぱりと水に流してやる。
だからそんな剣呑なことは言わず、パートナーとして仲良くやっていこうぜ。
「でも美咲さんにそんなものを食べさせるわけにはいかないし」
俺の誠意が通じたかマイブラザー。
と、そうだ。お前にいいことを教えてやろう。
俺様は身体を精一杯上向かせ、天に向かって腕を振り回し、にゃあにゃあと主張する。
「ん? ……あ!」
そうそう、背筋を伸ばしてお天道様を見上げれば、素敵な物が発見できるってもんよ。
その人間は手を伸ばし、あっさりとビニール袋に入っていたそれをゲットした。
「食料だ……えらいぞ、猫っ!」
へっ、あたぼうよ。猫と呼び捨てにされたのは気にいらねえが、存分に俺様を称えるがいい。
ところでボーイ。発見したのは俺、取ったのはお前。
所有権を主張してもいいところだが、ここは公平に山分けといこうじゃないか。
458 :
飯への扉:03/04/03 20:03 ID:lRW3GwY8
さすがに猫缶は見あたらないが、この際贅沢は言わねぇ。
お、そのサラミなんか旨そうだな。早く俺様に……って、なんで走り出すんだよ、おい。
「これできっと、美咲さんも喜んでくれるぞっ!」
おいおい、早速雌に貢ぐのかよ。
まぁ若いうちはそういうのもいいけどよ、でもお前ちょっと抜けてそうだからな……悪い女に騙されてるんじゃなきゃいいが。
しょうがねぇ。ここであったのも何かの縁だ。この頼りないパートナーの面倒をしばらく見てやるとするか。
代わりにそこについたら、俺様の飯をちゃんと寄こせよ。な?
と、ネコ語で言ったが通じたかどうか。
そいつは腕の中に収まったままの俺を見て、
「なんだかやたら猫に縁があるなぁ……」
首をひねって呟いた。
やがて一軒の小屋が見えてきた。
こいつは走り詰めで息も絶え絶えだったが、最後の一踏ん張りと加速する。
俺もにゃあにゃあ声援を送る。
ああ、もうすぐだ。
後ほんの少し。あの小屋に辿り着けば俺様は待望の飯にありつける。
あと二十猫身、十猫身、五猫身……ゼロ!
「ただいま、美咲さんっ!」
そう、いつだって扉は飯へと通じているのだ。
【彰 ぴろと食料(ビニール袋一杯)ゲット】
【小屋内の状況はまったく把握していない】
ハインラインリスペクツ?
「………あれから何時間経ったのかしら…。誰も来ないわねー」
「………」
「来たのは野生の兎ちゃんとか、そういうのだけだし」
「………」
「物凄まじく暇だわ…。ね、ハウ君もそう思わない?」
「…変な呼び方しながら指差さないでくれるかな」
落とし穴の中に、二人の女性がいる。まなみとハウエンクアだ。
――当初、この落とし穴(しかもトリモチ付き)に落ちたのは、鬼であるまなみ(+名雪 ※名雪は寝惚けつつ脱出)
だけであったのだが、穴の上を通り掛った、ハウ君ことハウエンクアに助けを求め…る振りをして、彼を穴の中へと
引きずり込んだのだ。
穴に落ちた際にハウエンクアは気を失ってしまい――先程目を醒ましたのだが、自分の体にしっかりと鬼襷が掛け
られているのを見て、暫し呆然としてしまっていた。
「…………激しく鬱だ…」
頭を抱えるハウエンクア。いくら騒がしかったからといって、助け上げてもタッチしないからと言われたからといって、
何で、何で、何で………僕はアホだ。嗚呼。
「他人を信じた僕がバカだったよ…」
「運が悪かっただけよ、ハウ君。ここにち偶々通り掛った時点で、貴方の運命は決まっていたのね、きっと」
「ハウ君言うな。…フン、絶対にタッチしないって言ったじゃないか。ウソ吐き女」
「はい。そうです。神サマ、私の罪をお許し下さい。ん、どうしたのかねまなみタン、ちょっち神サマであるワタシに
話してみれ。はい神サマ謹んで、私は嘘を吐きました、どうかお許し下さい。ん、許す、気にすんなよまなみタン。
ありがとう神サマ…――――よし。これにて一件落着。終了」
「終了――じゃないよっ! このバカ女っ!」
まなみの奇行(?)に目を点にさせていたハウエンクアが激昂する。
「そんなんで免罪されるのなら、何やったっていいって事じゃないか!」
「うーん。でも、流石に人殺しとかはアウトだと思う」
「…僕は今すぐにでも君を殺してやりたいけどね…!」
声に凄みを効かせるハウエンクアだったが、先程から何度か脅しっぽく揺さ振りを掛けてイニシアチブを取り返そう
と試みているものの、この女――まなみには、ちっとも効果が無いのであった…
まなみは、凄むハウエンクアをのほほ〜んと見やり、また穴の上を見上げる。
「静かねー…」
「っ……!!」
激昂する分こちらが疲れるだけだと解ってはいても、どうにも抑え切れない彼であった。
「…………………………こういう穴ってさ……」
―― 一転して、静かな、神妙な声を紡ぎだすまなみを横目に見、ハウエンクアは、フンと鼻を鳴らした。
「この穴がどうかした? 只の落とし穴じゃないか。鬱陶しいトリモチ付きの」
「…地面より低いから、ガスとかが溜まり易いのよね」
「………ガス?」
「ま、言っちゃえば、二酸化炭素とかの重い気体とか…最悪の場合、火山性のガスとかの――呼吸に障害を齎す様な」
「………」
「――でも、火山とかは無いみたいだから、今の問題は二酸化炭素の方よね」
目を細め、顎に指を当てながら、まなみ。
「穴の中……一人だけならまだしも、二人も人がいる。――このままではそう遅くない内に、二酸化炭素濃度が危険な
域にまで高くなって…」
「…な、何が言いたいのさ……?」
まなみの放つ只ならぬ雰囲気に、既に怖気づいた様子のハウエンクアが、声を震わせていた。
そんな彼に向かって、まなみは薄く微笑み――
「ね、ハウ君。――“カルネアデスの舟板”って話、知ってる?」
………
「誰かーーーっ!! 誰か助けてーーーっっ!! ここから出してくれよーーーーーっっっ!!!」
何やら怖い話(今の様な状況においては特に)を聞かされたハウエンクアの、悲鳴混じりの声が響いたが、
森はやはり静かであった。
「あははははっ♪ 冗談よ、冗談。そんなに早く二酸化炭素溜まったりしないってば。穴自体も大きいし」
「ほっ、ほほほ本当だろうねっ!? すぐに溜まったりしないだろうねっ!!?」
問い詰めて来る様な彼の眼差から、まなみは、ふいっ…と顔を逸らす。
「…しないと思う。……しないんじゃないかな。………まぁ、覚悟はしておけ」
「誰かーーーーーーーっ!!!? 誰か来てくれよぉぉぉぉぉおおおおおーーーーーーーっっっ!!!!」
今やハウエンクアは、もう半泣き状態を通り越していた。
「ハヒィー…ハヒィィ………! な、何で誰も来ないんだよぉ〜っ…」
「気長に待ちましょ。――っていうか、そんなに荒く呼吸したりすると、本気で二酸化炭素、すぐに溜まっちゃうかもよ?」
「っ………!」
青い顔で押し黙るハウエンクア。テンパった眼差をまなみに向けるものの、彼女は相変わらずだ。
「…静かな森ね」
「…。……憶えていなよ。キミ……このゲームが…終ったら…」
「――殺したい程、私が憎い?」
ニタリ…――といった、梅図風味のアレな笑みを浮かべるまなみに、ハウエンクアが息を飲む。
「そりゃそーよね。罠に掛けたんだもの。でもね…――私を殺したりしたら、毎晩貴方の枕元に立つ事にするわ…」
「なっ……なななっ…!?」
「…毎晩毎晩、貴方の枕元に立って、ぢぃ〜〜〜…っと見下ろして…あ・げ・る・♪(ひひひひひひ…」
「いやだぁぁぁあああああああっっっ!!! ぼぼぼ僕の事は忘れて下さいぃぃぃぃぃぃいいっ!!!!!」
再び、森の中に木霊する悲鳴。笑い声。
そして――
………
「本当に静かねー…」
「………うぐっ…うぐっ……うぐぅっ…(まぢ泣き」
「…ところで、ハウ君。――“ブレアの森の魔女伝説”って話、知ってる?(うぅふふふふふふぅ…」
「やだァァァァああああアアアアァァあっ!! 聞きたくないぃぃぃぃぃぃいいっ!!!」
………
「――お前も蝋人形にしてやろうかっ!!(くわっ! ※何故かバックに轟く雷鳴と雷光」
「ヒィィィィィィィィィィィィィィッッッ!!?」
………
「……第十三話…“きょうふのみそしる”…!(ケケケケケケ…!」
「っきゃあああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!?!?」
…やがて、そろそろ陽も沈むという頃になって――
「………暇だわ。半日待っても誰も来ないし、お腹もいー加減空いてきたし…」
「(゚∀゚)アヒャ…アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ…」
「――ハウ君は暫くアレみたいだし…」
――森は、やはり静かだった。
【まなみ ハウエンクア 半日経っても穴の中(笑)】
【まなみ ハウエンクアを暇潰しのオモチャに】
【ハウエンクア 暫くの間、アヒャ状態】
【二日目 もう夕暮れ時】【放置プレイ ケイゾク中】
「…………………………………………」
「…うぐぅ、舞さん…なんか喋って…」
「…………はちみつくまさん…………」
「…………………………………………」
「………………うぐぅ…………………」
思いも寄らぬ反撃で雁字搦めにされてしまった、現在鬼の鍵ヒロイン二人組み、舞&あゆ。
現在の二人の状況。
服はインクまみれでもう最悪。顔面にもかかっており、更にその上に濃い目トーンを張られているのでもう誰だかわからない。
更にインクが乾いてしまったので肌がぱりぱりひきつれて仕方が無い。
しかも縛っている物が自在定規なので肌がこすれて痛いことこの上なし。
――鯛焼き亡者あゆが呟く。
「……うぐぅ…修羅場の漫画家は恐ろしいんだね…」
――そしてうさみみ剣士舞の返答は、
「…………はちみつくまさん…………」
――鯛焼き亡者が鳴く。
「……鯛焼き食べたい……」
――うさみみ剣士は、
「…………ぽんぽこたぬきさん…………」
こんな問答を延々と飽きもせず繰り返し続ける鯛焼き亡者とうさみみ剣士。
エンドレス。
いいかげん抜け出す方法でも考えんかい。
しかも灯台中に反響しているから、外からだと、
「なんか、無気味な声が聞こえませんか…?」
そんな感じだった。
相沢祐一と天沢郁末、そして名倉由依の鬼三人組は、雨宿りのために灯台に向かっていた。
前述の声は名倉由依の物である。
「そう? 気のせいじゃないの?」
いつでも冷静、天沢郁末は信じない。
…――ぅ―…―――…――ん―
「あ、聞こえました! また!」
由依が主張する。
「今時幽霊がいるわけでもないでしょ? 気のせいよ、気のせい。それか風の音」
郁末は冷たく一蹴する。
そして祐一は、
「何やってんだ? 早く行こうぜ」
先先行ってしまっていた。
そして灯台内。
――鯛焼き亡者呟く。
「……うぐぅ…修羅場の漫画家は恐ろしいんだね…」
――そしてうさみみ剣士返答。
「…………はちみつくまさん…………」
――鯛焼き亡者が鳴く。
「……鯛焼き食べたい……」
――うさみみ剣士返答。
「…………ぽんぽこたぬきさん…………」
まだ続いていたこんな問答。
だが、それは唐突に途切れる事になる
「………うぐぁぁー!!! やってられんわー!!!」
鯛焼き亡者がついに切れた。口調がどこかの漢、または禍日神二人の如くになっている。
が、
「…………はちみつくまさん…………」
うさみみ剣士はいつも通りだったので、空回りとなる。
「川澄ィ!! なんでもいいからこれ抜け出すぞ!! うぐがぁあああ!!」
どこかが切れた鯛焼き亡者、呼称まで変えて自在定規を外そうとする。が、その気合の入った掛け声がうぐぅテイストなのでやっぱ少々マヌケだった。
「………ぽんぽこたぬきさん。変に力任せにすると抜け出せない…」
「…なら策があるんかぃ川澄!」
「………ぽんぽこたぬきさん………」
「うぐぁぁぁあー! この役立たずー!!!」
それでもうさみみ剣士は冷静だった。なので、
「! 待って…祐一の気配…」
そんなものを探り当てていた。
「え!? 祐一君!?」
鯛焼き亡者は一瞬にして静まり、いつもの無邪気モードに戻っていた。が、表情はトーンのせいで分からない。
「こっちに来ている…」
「やった! これで助かるよ!」
そして、
(祐一君をとっ捕まえて、鯛焼きを増やすよ!)
そんなことを考えていた。
もし祐一が逃げ手だったら、鬼であるあゆを助けるはずがなかろうに。そこんとこ抜けてるウグゥ月宮。
まあ祐一は既に鬼だから構わないのだが。
そして、あゆは、
「うぐぅ、これでたくさんとっ捕まえて鯛焼きー♪」
叫んだ。
そんなわけで、祐一と郁末、由依は灯台の入り口に辿り着いていた。
既に3人とも灯台内に誰かいる、ということは分かっており、その事について話し合うことにした。
「どんな奴がいると思う?」
郁末が祐一と由依に聞く。
「そうですね、窓ガラスが木端微塵になっていますから凄い人がいるんじゃないでしょうか?」
「でも、そんな奴がずっとここに留まってるとは思えないわね…」
「祐一さんはどう思いますか……祐一さん?」
祐一は固まっている。その理由は中から聞こえてくる声にある。
詳しい事は分からないし、反響しているので誰の声かもいまいちぴんとしない。
だが祐一には分かってしまった。
『うぐぅ』『はちみつくまさん』
これを口癖として使う奴が自分の知り合い以外に果たしているだろうか?
そして聞こえた
『うぐぅ、これでたくさんとっ捕まえて鯛焼きー♪』
反響していたはずなのに、やけにくっきり聞こえたのは長い付き合いの賜物だったのだろうか。
確信した。ここにいるのはアイツで、しかも殺る気マンマン(※殺しはルール違反)の鬼だと。
「相沢、どうしたの?」
二人にはどうも聞こえなかったらしい。
「なんでもない、とりあえず入るか」
そして、邂逅のとき。
「…………………………………………」<郁末
「…………………………………………」<由依
「……………………………………ハァ」<祐一(溜め息)
「……うぐぅ、祐一くーん……………」
「……………祐一、私を助けて………」
もの凄い格好になって雁字搦めになっている二人を見つけ、3人は一瞬固まった。
「………相沢、あんたの知り合い…?」
郁末がやっとという感じで問い掛ける。
「……さ、行こうか。二人とも」
俺は何も見ていない、聞いていないという風に二人を連れて逃げ出そうとする祐一。
「質問に答えなさい」
「このまま放置するのはかわいそうだと思います…」
「うぐぅ、祐一君! ひどいよー!」
「祐一…また私を置いてどこかにいっちゃうの…?」
郁末に襟を捕まれ集中砲火を喰らう。
「冗談だ……何やってんだ、あゆ…舞…」
「…うぐぅ、実は…」
かくかくしかじか。
これこれうまうま。
説明完了。
その間に戒めも解いてやらない祐一一行。
郁末が言うには、役に立つ奴かどうか確かめてから、ということらしい。
ていうか祐一も戒めを解く気はなかったりする。
しかしここで見捨てたら、終わったあとで何をされるかわからない、という危機感もあったわけだが(舞と佐祐理さんに)
「なるほど。葉対鍵の対立構造にしようとして負けた、ということか」
「情けないわねー…それも漫画家に…」
「うぐぅー! 余計なお世話だよ!」
「…修羅場中の漫画家の集中力は半端じゃない…」
ぼそり、と呟く舞。そりゃあれだけやられれば認めざるを得ないというか。
「ふーん…」
半信半疑の郁末。
「そ、そんなことはいいから…うぐぅー…せめて顔のトーンだけでもはがしてぇー…見えない…」
「仕方ないわねー…」
郁末、そういうとあゆのトーンに手をかけて、
べりぃっ!
容赦なく引っぺがした。
うぐぅー! というあゆの悲鳴(?)が響いた。
お肌に悪い。
ちなみに、舞のトーンは祐一がゆっくり剥がしたので問題なし。
「さて、こいつらどうする?」
あゆの悲鳴も一段落して郁末が祐一に尋ねる。
祐一は少し考え込んだ。あゆの束縛を解く気はあまり無い。しかして舞を放置する勇気は無い。どうすべきか。どうやってこの場を取繕うか。
そこまで考えて、ある矛盾点に気がついた。
「そういえば…お前等目が見えなかったはずなのに、どうして俺だとわかったんだ?」
「あ、そういえば…」
すでに忘れ去られそうな由依、なんとかここで一言稼ぐ。
「うぐぅ、それは当然愛の力だよ☆」
などというあゆは軽く無視され、
「祐一の気配がしたから…」
と答えた舞に視線が集中した。
「うぐぅー…」<黙殺
「俺の気配?」
「なんとなく、だったけど。その後登ってきた時、足音で確信した」
「ふーん…」
郁末が少しだけ感心したように呟く。
「ま、たいした物よね。あなた剣士なの?」
郁末が舞の足下に転がる剣に目をやる。
「私は魔物を討つものだから」
その瞳は強い光を放っている。
「舞は強いぞ。まあ今はこんな風だから信じられないかもしれないが。一緒に来れば戦力になる」
祐一がフォローを入れる。これでとりあえず舞は助けるという方向に持っていく。
郁末は特に何も言わない。
「よし、決定だ。一緒に行くか、舞?」
「はちみつくまさん」
即決。秋子さんの了承に近い速度で。
こんな状況にずっといれば、いかな舞といえど流石にきついだろう。
そして、三人は戒めを解いた。
――舞の分だけ。
「祐一君、ボクは?」
「ん? 何がだ?」
「ひっ、酷いよ! ボクも一緒に連れて行ってくれるんでしょ!?」
「ダメだ」
今度は晴子さんの却下に近い速度で。
「どうして…?」
「そうよ相沢、解いて上げるくらいのことはしてあげたら?」
「祐一さん?」
責める口調の同行者二人と泣きそうな顔をするあゆ。ていうかあゆの方は実は演技だったりするのだが。
祐一なら絶対外すと信じていたのに、予想外の展開になったので、あゆも必死なのだ。
しかし祐一、栞という実例を見ているので、その手には引っ掛からない。
それに、天沢さっき役に立つかどうか決めてから解く言うたやんけ、と心の中でなぜか関西弁でつっこむ。
「お前は逃げ足こそ速いが、鬼としてあまり役に立つとは思えない。それにお前はヤル気満々のはずだ。獲物を追い詰めて抜け駆けされちゃたまらないからな」
びしぃ! と突きつける。
「そっ、そんな…ボクがヤル気満々だなんて証拠がどこにあるの!?」
「お前さっき、『うぐぅ、これでたくさんとっ捕まえて鯛焼きー♪』とか叫んでただろ? どうせ屋台で買おうとしたら余りに高くて、食い逃げを敢行しようとしたら失敗して、ポイント稼いで換金しようと思ってたんだろ?」
祐一、『犯人はお前だ!』といわんばかりに事実を突きつける。
が、
「へっ? 屋台なんてあったの? ボク知らなかったよ…」
素で知らない風に返されて、祐一は絶句した。
「それに、『ぽいんとかせいでかんきん』…って何?」
更にボケるあゆ。
「と、とぼけても無駄だ…お前は食い逃げの常習犯だからそんなこと…」
「相沢ー?」「祐一さんー?」
まるで某名探偵の孫の幼馴染の某七瀬嬢が、ゲームで推理を外した時のようなジト目でみる二人。
「そ、そうだ舞! 捕まえられたお前なら分かってるだろ! コイツがヤル気満々だってこと!」
コクリ、と舞は頷く。だが、とても小さかった。
「…ただの鬼ごっこなのにムキになっては月宮さんが可哀想…」
郁末も由依もそれに同意のようだった。が、あゆが少しにやり、と笑ったような気がした…ので。
「そ、それでもダメだ! やっぱりダメだ!」
と最後の悪あがきをしたが、
「うぐぅ…それなら…祐一君、願いはまだ一つだけ残ってるんだよね?」
あゆがいきなり俯いて呟く。
「はぃ?」
「祐一君のくれた天使の人形…願いは三つ…もう二つかなえてもらったから、あと一つだけ…」
「お、おいまてあゆ…」
「祐一君、ボクの最後のお願いです!」
縛られているので敬礼は出来ないが、びしっ、と背筋を正してあゆはそれを行使しようとする。
「だぁぁ! 分かったぁ! 分かったから本編屈指の名ゼリフをここで使うな! 外してやる! 外してやるから!」
ついに折れた。
結局あゆの戒めは解かれる事となった。
(くそぅ、こんどはこんなヘマはしない! ジッチャンの名にかけて!)
ジッチャンって誰や。
(――うっぐっぐ(※笑い声)、これでまた哀れな鯛焼き共を捕まえられる!)
戒めが解かれた瞬間、おさまっていたあゆの思考は再び暴走し始めたらしい。
【祐一 郁末 由依 灯台で舞とあゆを解放】
【舞とあゆはまだインク塗れです】
【舞は同行が確定しています】【あゆはまだ不明】
【祐一 ヘコむ】【郁末&由依 祐一をちょっとだけ軽蔑】
【舞 あゆの現状を知っている】【あゆ 再び暴走開始 屋台の存在を知る】
【時間 夜 まだ雨は降っていません】
「ふっふっふっ…順調だな」
MOON.脇役コンビ、名倉友里とA棟巡回員が割かし元気そうに歩いている。
「出番がない、の間違いじゃないの?」
「…言うな」
郁未をカタパルトで撃退して以降、2人は屋台での食事を交えつつひっそりと移動してきた。
「それにしてもあなた、案外役に立つじゃない。小さな物音にも気がつくし、罠もすぐ見つけるし」
「見回りで飯を食ってきたからな…。半ば職業病だ」
鬼に見つかることもなく、罠にかかることもないまま時は深夜。場所は海岸近くの防砂林。
「………ん?」
今まで何度もしてきたように、巡回員が異常を発見する。
「なに? どうしたの?」
「…なぁ、あれ、何に見える」
何かが――いや、誰かが倒れている。
「…人間?」
「そうらしいな…。駄目だ、襷をかけてやがる」
それは、先ほど葉子に粛清されたエディと敬介。
流石に気絶はしていないが、ボコられて動けないようだ。呻き声を出している。…何故か、微妙に嬉しそうだが。
とりあえずは無視だ。わざわざ鬼に近づく必要はない。
物音をたてないよう、慎重に――
――しかし、運が悪かった。もう少し時間がずれていれば、あるいは出会わなかったかもしれないのだが。
「獲物だの、葉子殿」
「そのようですね。気配を消していて正解でした」
「「げっ…」」
ボコられている人間がいるということは、ボコった人間がいるというわけで。
ボコられた人間が襷をかけているということは、ボコった人間は鬼だったわけで。
人をボコれるということは、人数にもよるだろうがそれなりに強い人間なわけで。
もっと言うと、ボコられたのは2人でボコったのは1人だったりする。
「――お久しぶりですね、名無しさん」
そのボコり犯、鹿沼葉子が巡回員をジッと見つめた。会話の対象ははなから彼のみ。
「まったくだ、A‐9…いや、今は鹿沼葉子と呼んだ方がいいんだろうな」
巡回員もそれに応える。友里と神奈は蚊帳の外。
「――ところで、名無しさん」
「頼むからその呼び方は勘弁してくれ」
「――そこで倒れている2人に、気づきましたか?」
「(無視かよ)…ああ」
「――彼らは、悪事を働きました」
「ほう。見たところ善良そうな人間だが、何をやらかした?」
「覗きです」
静寂。
「名無しさん」
「…は、はぃ」
「前々から、聞きたいことがあったのですが――よろしいですか?」
「……よろしくないです」
「却下します」
「………」
「郁未さんの話によると貴方は……昔、私の着替えを覗いたことがあるそうですね」
再び、静寂。
「何か、反論は?」
「……そりゃあいつの嘘だr」
「却下します」
「………」
「名無しさん」
「…はい」
「とりあえず、鬼としてタッチさせていただきます。――話は、その後です」
容量限界です。
新規書きこみをいったんストップしてください。
ぐは。本当だ…。らじゃーです。
だんだんスレの移行速度が速くなってきてるな。
どうでもいいが、まなみに「騙したんじゃない! これは知略よ!」と言っもらいたかったなぁ
479 :
名無しさんだよもん:03/04/05 10:49 ID:tvpfinxI
480 :
名無しさんだよもん:03/04/05 11:17 ID:UCqC7Mc7
保守。
ほす
もう少し保守っとくか…
ho
umeru
うめ
このスレに限っては最近のナプキンみたいだな。
493 :
名無しさんだよもん:03/04/17 00:21 ID:OrgPswDl