葉鍵鬼ごっこ 第三回

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324リスト製作者だよもん
全参加者一覧及び直前の行動(>>323まで)
【】でくくられたキャラは現在鬼、中の数字は鬼としての戦績、戦績横の()は戦績中換金済みの数
『』でくくられたキャラはショップ屋担当、取材担当、捜索対象担当
レス番は直前行動、無いキャラは前回(>>268-273)から変動無しです
fils:ティリア・フレイ、【サラ・フリート】、【エリア・ノース:1】
雫:長瀬祐介、月島瑠璃子、藍原瑞穂、【新城沙織】、【太田香奈子:2】>>275、【月島拓也:1】
痕:柏木耕一、柏木梓、柏木楓、柳川祐也>>314-318、日吉かおり、相田響子、小出由美子、ダリエリ>>308-313
  【柏木千鶴:10】>>283、【柏木初音】>>274、【阿部貴之】
TH:藤田浩之、神岸あかり>>321-323、長岡志保、マルチ、来栖川芹香、松原葵、姫川琴音、来栖川綾香、
  佐藤雅史>>304-307、岡田メグミ>>304-307、松本リカ>>304-307、吉井ユカリ>>304-307、神岸ひかり、田沢圭子、
  【保科智子】>>274、【宮内レミィ】>>280-282、【雛山理緒:2】、【セリオ:2】、
  【坂下好恵】>>274、【矢島】、【垣本】>>309-312、【しんじょうさおり】
325リスト製作者だよもん:03/04/02 00:30 ID:DvcT+/ry
WA:篠塚弥生、観月マナ、七瀬彰、緒方英二、
  【藤井冬弥】、【森川由綺:2】、【緒方理奈:3】、【河島はるか】、【澤倉美咲】
こみパ:千堂和樹、高瀬瑞希、牧村南、猪名川由宇、大庭詠美、長谷部彩、
  御影すばる、立川郁美、九品仏大志、澤田真紀子、風見鈴香、
  【芳賀玲子】、【桜井あさひ】、【塚本千紗:2】、【立川雄蔵】、【縦王子鶴彦】、【横蔵院蔕麿】
NW:城戸芳晴、ユンナ>>276-279、【コリン】>>276-279、『ルミラ』>>300-302、『アレイ』>>300-302
  『イビル』、『エビル』、『メイフィア』、『たま』、『フランソワーズ』、『ショップ屋ねーちゃん』
まじアン:江藤結花、高倉みどり、【宮田健太郎:1】、【スフィー】、【リアン】、【牧部なつみ】
誰彼:砧夕霧>>308-313、桑島高子、杜若きよみ(白)、岩切花枝、杜若きよみ(黒)>>276-279
   【坂神蝉丸:5(4)】、【三井寺月代】、【御堂:5】>>292、【光岡悟:1】、【石原麗子】>>308-313
ABYSS:【ビル・オークランド】>>304-307、『ジョン・オークランド』
うたわれ:ハクオロ>>300-302、アルルゥ、ユズハ、ベナウィ>>284-291
  クロウ、カルラ>>300-302、カミュ、クーヤ、サクヤ、デリホウライ>>292
  【エルルゥ】、【オボロ:1】、【ドリィ】、【グラァ】、【ウルトリィ】、【トウカ】、【ゲンジマル】、【ヌワンギ】>>304-307
  【ニウェ:1】、【ハウエンクア】、【ディー:4】>>280-282、『チキナロ』
326リスト製作者だよもん:03/04/02 00:30 ID:DvcT+/ry
Routes:湯浅皐月、リサ・ヴィクセン、梶原夕菜、
  【那須宗一:1】、【伏見ゆかり】、【立田七海】、【エディ】>>295-299、【醍醐】、【伊藤:1】
同棲:【山田まさき:1】、【皆瀬まなみ:2】
MOON.:巳間晴香、名倉友里、A棟巡回員、
  【天沢郁未:3】>>274、【名倉由依】>>274、【鹿沼葉子:1】>>295-299、【少年】、
  【巳間良祐:1】>>314-318、【高槻:1】>>314-318
ONE:里村茜、上月澪、柚木詩子、深山雪見、氷上シュン>>321-323、清水なつき、
  【折原浩平:4(3)】、【長森瑞佳】、【七瀬留美:1】、【川名みさき】>>274
  【椎名繭】>>314-318、【住井護】>>283、【広瀬真希:1】
Kanon:沢渡真琴、天野美汐、
  【相沢祐一】>>274、【水瀬名雪:3】、【月宮あゆ:4】、【美坂栞】>>274、【川澄舞】、
  【美坂香里:8(1)】>>274、【倉田佐祐理:1(1)】>>280-282、【北川潤】>>283、【久瀬:4】>>274
327リスト製作者だよもん:03/04/02 00:31 ID:DvcT+/ry
AIR:神尾観鈴>>280-282、霧島佳乃、遠野美凪>>300-302、神尾晴子>>284-291
  霧島聖、みちる>>300-302、柳也、裏葉、しのさいか>>300-302
  【国崎往人:1】、【橘敬介】>>295-299、【神奈:1】>>295-299、【しのまいか】>>280-282


管理:長瀬源一郎(雫)、長瀬源三郎、足立(痕)、長瀬源四郎、長瀬源五郎(TH)、フランク長瀬(WA)、
  長瀬源之助(まじアン)、長瀬源次郎(Routes)、水瀬秋子(Kanon)
支援:アレックス・グロリア、篁(Routes)

毎回微妙にマイナーチェンジをしてるので読んでほしいこと&連絡事項↓

島内の鶴来屋については管理人室に関して議論が続いています。
その辺の話を書こうとしている方がいたら出来れば議論板にて確認をお願いします。

このリレーは余程の反則(電波で他の参加者を操る、魔法で自分を触れなくする)が無い限り能力使用はOKです。
但し原作外のオリジナル設定は基本的に抜きで。ていうか基本ギャグで済ませましょう。
細かいところに拘るより鬼ごっことしての状況を進める方向で
致命的なミスがない限りは脳内保管しましょう。
NGはできるだけ避けるよう書く話のキャラの前話くらいは読みましょう。
前スレも健在なのでリストをたどれば最終行動はわかる筈なので。
また他のスレのネタは知ってる人はニヤリ、あ、このネタ上手いなーくらいにしておきましょう。
能力に関してグレーゾーンな話を書く際には
『葉鍵鬼ごっこ議論・感想板』 へどうぞ
ttp://jbbs.shitaraba.com/game/5200/

後記
鬼の増加が加速してるようで。鍵サイドが葉サイドに比べると鬼ばっかりになってますね。
328名無しさんだよもん:03/04/02 00:40 ID:VvKmsdos
お呼び出しを申し上げます。
>>283の作者様。
ただいま貴方の作品について以前の話との矛盾点が見受けられましたので、
リライトを要望する声が上がっております。

問題になっているのは
「鶴来屋本社にあったはずの管理者室が島内の鶴来屋リゾートホテル内にある」
という点です。
この書き込みを見られましたら、至急 感想板・議論スレにお越し下さい。

なお、何らかの理由により外部の感想板にお越しになれない場合は、
その旨をここ 本スレにお書き下さい。
329曇天 1:03/04/02 00:46 ID:EYLXWgjJ
 鬼に見つかることなく迎えた、まだ日も明けて間もない早朝。
 昨日はいっぱい眠れたし、たくさん食べられた。
 いきなりの神奈の追跡以来、(ユズハは襲われたことに気が付いてはいないので)それほどの危機にも出会わずに済んでいる幸せに、カミュは気持ちよく伸びをした。
「今何人くらい鬼がいるのかなあ。もしかしてほんとに優勝できちゃったりして♪」
 そんな気持ちと相反して、目に映る天気はどんより曇り空。そう、薄暗いのは明け方だからだけではない。
 ただでさえ鬱蒼とした森の中、薄暗いのは気分も滅入るところだが、年頃(?)の娘が三人も集まればそれだけで華やいでたりする。
「アルちゃ〜ん、ユズっち〜、なんか降ってきそうだし、ちょっと移動して雨宿りの準備した方がいいかも〜」
「んっ」
「はい」
 昨日さんざん散らかしたままの食いカスやら荷物やらをまとめる。
「あーもう、武器なんて買うんじゃなかったかなー」
 早くも後悔しはじめているカミュである。
「かさばるんだもん。よく考えてみれば、打ち上げ花火は武器って感じしないし……
 この『強化兵から認知されなくなる装置』ってなんだかわかんないし」
 自分で選んでおいて首を傾げている。
「強化兵から認知されなくなるんじゃないでしょうか」
「そりゃまぁ……そうだろうけど。強化兵って何?」
「なんでしょう?」
「?」
「試しに使ってみよっか」
 カミュが言ったときに、後ろの茂みがガサァッと音を立てた。びっくりしたはずみに、スイッチを押してしまう。
 途端に、茂みからひとりの男が飛び出してきた。襷を付けているその男は、言うまでもなく光岡悟・強化兵。現在ユズハのストーカー。
 ムックルはすぐに臨戦態勢に入り、アルルゥはそれに飛び乗る。続けてカミュがユズハを乗せるのを手伝い、
「ムックル!」
「ヴォフッ」
 アルルゥの声に従い、ムックルは走りだした。あっという間の出来事だ。
「あ〜ん、食べ物ちょっと置いて来ちゃったよ〜」
330曇天 2:03/04/02 00:47 ID:EYLXWgjJ
 しばらく走り、あの男(光岡)が追ってこないのを確認し、ようやくアルルゥはムックルを止めた。
「なんだったんだろ、あの人。びっくりしたねー。……あれ、ユズっちどうしたの?」
「あ……いえ」
 先ほど飛び出してきた男の気配に何か覚えがあるような気がしたのだが、確かではなかったのでユズハは「なんでもないです」と首を振った。
 辺りはさっきよりもなお、暗くなっている。
 カミュが見上げると同時に、ぽつり……頬に雫を感じた。
「うわ、降ってきちゃったよ……」
 なんとなく、嫌な予感がした。


 ──同時刻。

(ユズハ──!!!)
 茂みから飛び出してきた白虎の上に、探し続けた妹の姿を見つけてオボロの心臓が跳ね上がった。
 だが──
『もしかしたら妹さんは逃げるかもしれない』
 久瀬に再三言われた言葉が脳裏をよぎった。
『その可能性は低くはない──いいか、よく覚えておくんだ』
(ああ、覚えてる……)
 内心で呟く。だからこそ、今にも飛び出したい心境を押さえることができたのだ。
 いくら奇襲をかけたとて、通常時のムックルが全速力で走ったなら、さすがのオボロも追いつける自信はない。
 セリオが今日の天気を言っていた。──雨。ならば、今日を逃すわけにはいかない。
「タイミングよく降り出したな……」
 頬に当たる水滴に双眸を細める。これほど雨を望んだのは久しぶりだ──。
「機は熟した。行くぞっ」
「──はい」

【アルルゥ・カミュ・ユズハ(+ムックル・ガチャタラ):光岡から逃亡】
【光岡:ユズハたちを見失う】
【オボロ・セリオ:アルルゥ達を捕獲開始】
【三日目早朝、森。食べ物を少し落としてしまった】
331苦難の前兆:03/04/02 02:06 ID:DvcT+/ry
 長々と続いた御堂とデリホウライの追いかけっこもようやく終焉を迎えた。
「ゲーック、手間取らせやがって。まぁその分楽しめたがな、けっけっけっ」
 聞く側にとっては嫌味でしかない台詞をどこか楽しげに吐く御堂。

 しかし対するデリホウライはそれどころでは無かった。
「捕まってしまった……ギリヤギナの男でありカルラゥアツゥレイの皇(オゥルオ)たるこの俺が……
 姉上がこの事を知ったらどう思われるのか……やはり縦回転は避けられんか……」
 多少成長したとはいえプライドとシスコンで構成されたこの男には鬼になったという事は凹む現実でしかないし
気持ちの切り替えも流石に既に噛ませ犬と化したどこぞの小悪党程単純に出来もしない。

 暫くの間ブツブツ言っていたが、このままこの場に止まっていてもしょうがない事を悟ったか
顔を両手で擦った後にその場から移動を始めた。


 その間休憩をとりつつもデリホウライを眺めていた御堂は何かに違和感を覚えていた。
(なんだ、この違和感は……俺は何を見落としてる?)
 元々軍人であるがゆえ些細な違和感こそ重視する。
332明日への希望:03/04/02 02:07 ID:lZp2zk2g
やがて、謎の人影が駅の中に入ってきたのが足音でわかった。
静寂の支配する駅の中に、カツンカツンと足音だけが響き渡る。
どうやら、聞こえる足音は1人分らしい。
だが、その足音は、駅の中のトイレや駅長室には目もくれず、真っ直ぐにホームへと向かってくる。
「ど、どうしよう…」
小声であかりがシュンに呼びかける。
「…おかしいね、鬼にしろ参加者にしろ、普通は駅の中を最初に探すものだと思うんだけど」
だが、その足音の主は迷うことなくホームに降り立った。
「もしかして、見つけられてるのかな私達」
「…ありえるね。…ねぇ神岸さん。僕が合図したら全速力で線路に沿って逃げ出すんだ。
 ここは僕が食い止めるから」
シュンは微笑みながらあかりに言った。
それは、『もしものときは君だけでも逃げろ』という意味であった。
「そ、そんな!できないよそんなこと」
人一倍他人に優しいあかりには、もちろんそんな申し出を受けられるはずも無い。
だが、シュンは静かに首を横に振った。
「ここで2人くっついていたって、連鎖式に鬼になるだけなんだよ。
 神岸さん、君にはまだ探すべき人もいる。それに、僕は君を優勝させてあげたいと思っているんだ。
 だから、君だけでも逃げるんだ。この鬼ごっこ、どうせ最後は1人しか勝てないんだよ?
 …僕のことは、気にしないで」
「でもっ…」
そんなこと出来ない。
あかりは、他人を犠牲にして生き残るくらいなら自分が身代わりになるタイプの人間だ。
シュンの気持ちも理解できるが、自分の気持ちがそれを許さない。
「いいから。…君と一緒になれて、楽しかったよ」
「そんな…」
333苦難の前兆:03/04/02 02:07 ID:DvcT+/ry
 常人なら見落とすようなその些細な違和感こそが戦場での生死を分けるモノなのだ。
(この感覚、ヤツの行動に起因する事は間違いねぇが……
 発言……じゃねぇな、姉上だの縦回転だのは引っかかる事じゃねぇ。
 見た目はそりゃ耳にしろ尻尾にしろ特徴的だったが追いかけてる最中にゃ何も感じなかった。
 てことは行動か? しかしそれにしたって精々顔を擦ったくらい……ん!?)

 そこで御堂は気づき空を見上げた。
 草木も眠る丑三つ時、だがその空には時期柄満ちている筈の月すら見えない。

 それは酷く馬鹿馬鹿しい迷信でしかない。
 だが迷信の背景には経験があり、それこそが最後にモノを言う。
 まして今回の話は強化兵火戦試挑体である御堂にすれば軽々しくは扱えない話だ。
 実際空模様がそれを示している。


(猫が顔を洗うと雨が降るってか)


【御堂 デリホウライをタッチ】
【御堂 天候の変化に気づく】
334明日への希望:03/04/02 02:10 ID:lZp2zk2g
すぐ頭上に気配がする。
もうあれこれ言っている暇はない。
シュンは、とにかくあかりを突き飛ばしてでも逃がそうと覚悟を決めていた。
…が、次に上から降ってきた声は、2人にとってまったく予想外の内容だった。

「氷上シュン様。ご心配なく。私は大会運営側の者です」
「…その声は―――」
その正体は、有事に即座に行動できるよう島中に配備された、HMシリーズの一体であった。

「氷上様を含む、ナースコール保持者へ本部からの警告がございます」
その声に、シュンとあかりはホームの下から出てくる。
「警告って、僕はまだ元気だよ?ほら、ナースコールもちゃんと持ってるし、押した覚えも無い」
「いいえ、そのことではありません。まずは、メッセージをお聞きください」
そう言うと、HMー12があらかじめ設定されたメッセージを再生しだす。

『明日の朝以降、雨の降る確率が90%を越えております。
 雨雲が通り過ぎるのにかかると思われる時間は分析中です。
 早急に屋根のある場所を探すことをお勧めいたします。

<ナースコール・システムの再確認>
・ナースコールは病弱者の方に至急されます。
・身体の異常を感じられた場合にはご使用ください。
 近辺に待機しているHM-12及びHM-13が緊急出動いたします
・ナースコールから身体がある一定以上離れ、一定時間が過ぎた場合、
 紛失の可能性が高い為、近辺に待機しているHM-12及びHM-13が出動いたします。
・紛失を確認された場合は、最寄りの屋台に報告するか、その場にて待機ください。

 では、引き続き<鬼ごっこ>をお楽しみ下さい』
335明日への希望:03/04/02 02:12 ID:lZp2zk2g
それは、ユズハに伝えられたメッセージと全く同じものであった。
「──以上です」

「分かった。ありがとう。つまり、明日は雨が降るんだね?」
「はい。幸い氷上様はすでに屋根のある場所を見つけているようなので問題は無いと思われますが、移動の際はお気をつけて」
「分かったよ」
「それでは、また何かありましたら」
そう言うと、HM−12は一礼をして去っていった。

「………」
「………」
「別れが延びちゃったね」
「そうだね」
「ふふ…」
「あはは…」
思わず2人が顔を見合わせて笑ってしまう。
シリアスな別れのはずが何事も無く終わってしまい、拍子抜けしてしまったのだろう。
「またよろしくお願いします」
「こちらこそ」
336明日への希望:03/04/02 02:13 ID:lZp2zk2g
「でも、大丈夫なの氷上君?」
「何が?」
「雨なんて…体を濡らしたりしたら、絶対によくないよ。明日はムリはしないようにしよう?」
「そうだね。でも、ここにずっといても何も進展しないよ」
「そ、そうだけど…でも、雨なら他の参加者の人たちがここに雨宿りに来るかもしれないし」
「かもね。でも、それが神岸さんの探している人たちじゃなくて、鬼だったらどうする?」
「…うー」
氷上を気づかうあかり。
しかし、シュンの方はあくまで鬼ごっこを続ける気のようだ。
「でも、もちろん僕だって雨の中をむやみに歩き回るような無謀なマネはしないさ。
 明日はこの駅でしばらく様子を見て、雨が止むか鬼が来たらここを離れる。
 それまでは少しここで待機していてもいいかもしれないね。それならどうかな?」
「…うん、それならいいと思う」
シュンの提案に特に文句は無かったので、あかりも素直に賛同する。
しかし、それでもあかりは1つだけ譲れない意見があった。
「でも、鬼が来たときに逃げるにしても、傘も差さないで雨の中を歩くのは駄目だよ。
 何か傘の替わりになるものがないか探してみない?」
「うん、それはもっともだね。ちょっとこの駅を探索してみよう」
シュンも素直に賛同し、2人は駅を探索し始めた。

よく見ると分かったのだが、この駅には自分達より前に誰かが訪れたことがあると2人は分かった。
あちこちに、荒らされた後がある。
ロッカーやトイレのドアは開け放しになっていたし、ベンチの配置もずれていた。
誰がいたのか。
そして、その人(達?)はどうしたのか。
考えては見たものの、結局分からなかった。
しかし、駅を荒らした犯人―――エルルゥの目的がハクオロたち人間であり、
駅の物資には何も手をつけていなかったことが2人に幸福をもたらした。
もちろん、そんなことシュンとあかりには知る由もないが。
337明日への希望:03/04/02 02:16 ID:lZp2zk2g
探索の結果、駅長室のロッカーから、ビニール傘10本と水、バランス栄養食、カップラーメンなどが見つかった。
傘はおそらく置き傘用として置いてあったものだろう。
この貴重な物資の収穫に、2人は心が躍った。
2人は傘を2本とある程度の食糧だけを確保すると、残りをロッカーに戻しておいた。
お湯がなかったためカップラーメンは食べられなかったが、あらかじめ屋台で買っておいた食糧と合わせて
十分な食事を取ることが出来た。

「傘が手に入ったのなら、雨の中でも行動できるね」
「そうだね。でも、やっぱりムリはいけないよ」
「分かっているよ、でも、一日中ここにいるのも退屈だしね。昼をすぎても雨が止まなかったら、やっぱりここを出ようよ」
「……駄目だ、って言っても聞いてくれないかな?」
「うーん、そうだね…ごめん、やっぱりそれくらいは僕にも冒険させて欲しいな」
「…氷上君って、意外と頑固なんだね」
「失礼な、芯が強いと言って欲しいな」

そう言うと、また2人は笑った。
結局、折れたのはあかりの方だった。

その後2人は、やがてやってきた睡魔に負けて、ベンチで就寝することにした。
シュンはしばらくは起きて見張っているつもりだったが、さすがに2日連続で歩きどおしだった体はそうさせてくれなかった。
こうして、2人の2日目は終わりを告げた―――。

【シュンとあかり、明日の天気を知る。明日は雨が止むか鬼に見つかる、もしくは正午を過ぎるまでは駅で待機することに】
【2人とも、各々傘を一本と食糧をいくらか装備】
【2人とも疲れのせいで早々に寝付く。2日目夜】
3日目の天気とナースコールの説明に関しては、勝手ながら>>162-163さんの文章を引用させてもらいました。
338明日への希望:03/04/02 02:17 ID:lZp2zk2g
>>『苦難の前兆』作者さん
割り込み申し訳ありません。
339名無しさんだよもん:03/04/02 02:18 ID:DvcT+/ry
>>338
いえいえ寧ろ割り込みが起こるくらい活気があるほうがよいかと
「ぐぬっふっふっふっふ………」
 気持ち悪い含み笑いを漏らしながら、コリンは一歩一歩獲物への距離を縮めていく。
 鬼を尻目に、きよみ(黒)はユンナに囁く。「いい、打ち合わせ通りよ?」
「う〜。コリンにやるの、やだなぁ…」珍しくユンナがきよみ(黒)に不服を述べる。
「いいのよ、これは鬼ごっこなんだから。
 やるからには一生懸命やらないと、あなたのお友達にも失礼になるわよ?」
 ぐずるユンナを小声で説得するきよみ(黒)。
「……うん。
 ごめんねコリン、わたし一生懸命いくね?」
 申し訳なさそうな顔をしながらも、友に真剣勝負を誓うユンナ。
「二人で何をゴチャゴチャっ!」
 そんな彼女の言葉をゴング代わりに、コリンの掌から光の奔流が迸った。

 スタートダッシュが遅れたユンナの手を引っぱり、きよみ(黒)は駆ける。
 一瞬遅れて、彼女たちのいた地面が、バシッという音と共に弾けた。
「ちょっと、ルール違反よ!?あなたにはプライドがないの?」
 走りながら、直接攻撃に思わず抗議の声が出る。
「ばれなきゃオッケーオッケー。ほらほらもっと真剣に逃げなさい?
 これ当たると痛ったいわよぉ〜?」
 心底嬉しそうに言いつつ、コリンは光の翼を背負い、宙に浮かぶ。
 そのまま木々を縫うように、逃げる二人を猛追する。
 そして、ひた走る二人目掛けて矢継ぎ早に光弾を発射していく。
 彼女らの通り道が次々と弾ける。
「ふふふ、もっと逃げなさいユンナ!そして最後には土下座して謝んなさい!
 もっとも謝ったって許してやんないけどね」
 先程、コリンは『いつぞやの恨み』(>>278参照)と言った。これは以前、
 ユンナがある目的のためにコリンを騙して利用し、あげく不慮ととはいえ、
 彼女のパートナーである城戸芳晴を殺しかけた…という、なかなかにシビアな一件に
 拠るものである。(詳細はナイトライターをプレイして頂きたい)
 だが
「あの何かってたびに人をいちいち小バカにしてくれたムカつきユンナが、いまや
 はややチックな6/17状態で何も出来ずにあたしに追われる身!
 謝るときもきっとびーびー泣いて鼻水とよだれも垂らして『ごべんなはひィ〜』とか言って
 永久保存物の醜態見せてくれるんだわ!あー想像しただけでもう!もう!
 ざまみろヒャッホーイ!ぬははははーー!!」
 その辺のディープなあれこれは、とっくに日常レベルのしょうもないそれと摩り替わっていた。

 走り出してそれほどせずに、きよみ(黒)の息が上がりだす。
 元々体を動かすことは不得手だ。
 多分相手は本気で狙ってない。こちらをいたぶり、狩りを楽しんでいるのだ。
 でなければ、自分の運動能力ではとっくにあれの餌食になっていてもおかしくないだろう。
 彼女の後ろを走るユンナが、心配そうにこちらを見ている。こちらはまだ余裕がありそうだ。
 せかされ、つい焦りかける心を抑えこむ。今やっても、成功はまず望めない。
 へばって本当に捕まる前に、早く作戦決行に適したポジションを見つけなくては…。
 数分後。唐突に道を途切っている大木を背にした二人は、
 眼前に仁王立つコリンを見つめていた。
 行き止まり。獲物は追い詰めた。さあ、ディナータイムの始まりだ。
「うっひっひっひ。ユンナちゃんってば、いよいよ年貢の納め時ねぇ。
 豚のような悲鳴をあげなさ〜い?」
 自称大親友に対し、イイ笑顔で死刑宣告するコリン。
 一方。ぜいぜいと息を吐きながら、きよみ(黒)は追い詰められた顔をしながらも
 内心ニヤリと笑っていた。
 これを待っていた。案の定、勝利を目前にすっかり油断してくれている。
 ここまでは予想通り。ここからだ。これからが、正念場。

 隣のユンナは目の前の親友の烈気に押されながら、
 さっきから目で自分に訴えかけている。
 わかってるわ。あなたこそ、しくじったらひどいわよ。
 呼吸を整え、集中力を研ぎ澄まし、きよみ(黒)はずっと手にしていた茶入り袋を
 ゆっくりと握り直すと、
 「えいっ!」
 コリンめがけて思い切り放り投げた。
 彼女の手から放たれた茶袋はコリンの頭に……
 ……命中することはなく、そのかなり上方に逸れた。
「んのーっほっほ、はーずれーっだ!」
 避けようともせずに、勝ち誇るコリン。
 彼女は気づいていたろうか。その時きよみ(黒)は、悔しい顔も見せずに
 自分の左耳を触った。
 合図!
「コリン、ごめんねっ!」
 ユンナはコリンがしたのと同じように、光弾を撃つ。
 それは狙い違わずに、コリンの頭上に飛んだ茶袋を撃ち割った。
 たちまち中の茶が飛び散り、頭からコリンに降り注ぐ。
「ぶわーっ!ぬわによこれっ!?
 なんかヌルヌルするぅ!うわ、飲んじゃった!?
 やだやだやだ、えんがち……………」
 唐突にお茶まみれになって喚いていたコリンが、ふと、沈黙する。
 思わず息を呑んで見守るふたり。

 ………………………………………………………………………………

 沈黙を打ち破ったのは今回もユンナだった。
「……コリン、だいじょうぶ?」




「……ええ、大丈夫です。
 ありがとう、ユンナ。鬼である私のことを気にかけてくれて…」
 ああ、神よ。それは信じ難く恐るべくも確かに目の前のコリンが発したセリフであり、
(やったわ!実験は大成功よ!)
 それを見届けたきよみ(黒)は心で快哉を叫んだ。

【黒きよみ、反転ユンナ 鬼にされかけるも窮地を脱出】
【コリン 反転する】
344微笑む天使たち:03/04/02 02:37 ID:m34S5jHM
 きよみ(黒)には、ユンナを仲間にしてから、気になっていたことがあった。
 セイカクハンテンタケによる鬼の無効化を行うためには、対象にキノコを食べてもらう必要がある。
 が、その辺に仕掛けておいたキノコを無用心に拾って食べるような迂闊者はそういまい。
 (実は参加者の中にその該当人物は結構いるのだが、彼女はそこまで知る由がない)
 結局、ユンナの時のように至近距離で対象の口に放り込む必要があり、
 現実問題として、相手に触れての鬼化はまず避けられない。
 折角強力な兵器を手に入れたのというのに、これではリスク以前の問題ではないか。
 困っていた時、ユンナが屋台で買ってきた紅茶入りペットボトル(1gサイズ)を見て
 一計が浮かんだ。
 茶の中に細くひさいだハンテンタケを入れて振り、そのエキスを液中に染み出させる。
 そしてキノコと同等の効果を持ったそれを、相手に遠間から浴びせるなり飲ませるなりして
 反転させることが出来れば、格段に安全である。
 無論、キノコそのものを食べるわけではないから反転する時間はそう長くないだろうし
 そもそも本当に効果があるかどうかもわからない。
 だが、時間に関しては逃げるだけの間、相手を無力化できればいい。
 また、これなら水分を補給すれば、キノコが出涸らしにならない限り
 本来あと2回きりだった実弾数を劇的に増やすことが出来る。
 あとは、効果がありさえすれば。

 かくしてきよみ(黒)はユンナが寝ている間に秘密兵器の作成を行い、
 昼近くなって彼女を文字通り叩き起こした後、朝昼を兼ねたチョコレートパンを摂りつつ
 鬼に直面した際の打ち合わせを行った。
(全く関係ないが、このパンは随分とお徳用サイズであり、疲労と空腹に悩まされた
 昨日ならともかく、その時のきよみ(黒)には少々きつかった――残った分は
 反転して食欲も増進したユンナがきれいに平らげたのだが)
 そして、出発前にもう少しハンテンタケはないものかときよみ(黒)が
 小山を探索しようとした時、ユンナと遭遇し――
 はたして、秘密兵器・反転紅茶キノコは見事作り手の期待に応えてくれたのである。
345微笑む天使たち:03/04/02 02:38 ID:m34S5jHM
「…そうですか。あちらのきよみさんと、もうそんなに仲良く…」
 鮮やかな橙色のワンピースを着、派手なサングラスを頭に乗せた少女が
 品の良い笑みをほころばせる。
「うん!きよみのこと、今じゃコリンと同んなじくらい好きだなぁ」
 肌もあらわな白いノースリーブに、ミニのジーンズを身に纏った細身の女性が、
 眩しい笑顔を浮かべる。
「まあ…何だか恥ずかしいわ、ユンナ」
 コリンは頬を赤らめ、下を向く。
「あ〜、コリンったら照れてる照れてる〜♪」
 タッチしないように近寄りつつ、うつむく彼女の顔を覗き込むユンナ。
「からかわないで下さい、もう…ふふふ」
「えへへ〜」

 中に反転紅茶キノコを入れたペットボトルと、それを詰めるパンの空き袋を手に、
 きよみ(黒)は仲睦まじい二人の語らいをぼーっと見ていた。
 理知的で慎ましやかで、春風のようにたおやかなコリン。
 無邪気でお人好しで、向日葵のようにまっすぐなユンナ。
 共に心から相手のことを思いやり、今日の出会いを喜びあう。
「美しき友情、ね……」
 お互いにお互い、性格が裏っ返しになった結果の産物だけど。
(でも。両方とも性格が反転した結果、それでも仲がいいってことは。
 本当は、この二人案外素でも仲が良かったりするのかしら)
 短い時間ながらに本来の二人の姿を見ている彼女は、想像してまさかと失笑する。
(……まあ、わたしにはどうでもいいことだけど)
346微笑む天使たち:03/04/02 02:38 ID:m34S5jHM
「きよみさん」
「え?」気が付いたらいきなりコリンが目の前にいた。
「ユンナと仲良くなっていただいて、本当に有難うございます。
 これからもどうか、彼女のことを宜しくお願いいたします」
 先程まで自分たちをさんざ追い詰めてくれた相手は、暖かな微笑で深々と頭を下げた。
「え?あ、ああ、そうね。わかっているわ。わたしに任せて」
 うろたえて、つい答えてしまう。何を任せてと言ったのかわかっているのか。
「ではお気をつけて。あなたとユンナが無事、勝ち残れるように祈っています」
「うんっ!コリンも鬼さん、頑張ってね!行こっ、きよみ!」
 そうだ、早く行こう。彼女が元に戻ってまた追いかけてくるといけないから。
 何だか照れくさいからでは決してない。


 かくしてコリンと別れた二人は、出会いの地である小山を後にした。
 目指すは川かどこかの水辺、屋台でもかまわない。秘密兵器には水分が必要だ。

 
【きよみ(黒)、反転ユンナ 小山を下りる】
【コリン 現在反転中。あまり長持ちはしないと思われる。現在は小山に】
【時間は二日目昼過ぎ。二人はこれから川や水辺、あるいは屋台に向かう予定】
【所持品:反転紅茶キノコ入りペットボトル(現在、回数にして
 あと3、4回は使用可能)、セイカクハンテンタケ×1、パンの空袋×3。
 現在食料はなし】
347D・ブースト:03/04/02 02:54 ID:7wBk1XWy
 日もすっかり暮れ、空には満天の星が瞬いている。
 幸いにも今夜はあまり温度も下がらず、たとえ裸で寝ていてもそうそうのことでは風邪を引くまい。
 まぁ、そうは言っても……。

「うーん、うーん、すまないウルト……。違うんだ……。私はただ、カミュの知的好奇心を満たしてやろうと……」
「……ンン……。今日の下着は……七色……パンティー……」
「……そろそろ寝言のネタが切れてきたよぉ、脇役は辛いよぉ……」

 ……いい加減彼らには起きてもらいたいわけであるが。

 しかし耳元で模擬とはいえ手榴弾の爆発を喰らっても起きない彼ら。目覚めさせるのは容易でない。
 何か、何か強烈な、強いショックを与えなければ……

「「じゃんけんほい……!」」
「「あっち向いてホイッ……!」」(ビシュッ)
「「じゃんけんほい……!」」
「「あっち向いてホイッ……!」」(ビシュッ)

 ……歩いてきた。向こう側から。
 これ以上ないってくらい、強烈なヤツが。

348D・ブースト:03/04/02 02:54 ID:7wBk1XWy
「ん……? なぁに……?」
 最初に目を覚ましたのはまいかだ。遠くから漂ってくる異様な声と気配に気づき、目をこすりこすり起き上がる。
「……………?」

「「じゃんけんほい!」」
「「あっち向いてホイッ!」」(ビシュッ)

「………ひっ……!」
 徐々に合ってきた焦点。そこに移るものは、全裸と半裸の少女が凄まじき闘気(オーラ)をまとい、壮絶なあっち向いてホイを繰り広げる姿。
「いや……いやぁっ!」
 慌てた、いや、恐慌に近いものを起こしたまいかは、急いで両親を起こす。
「おっ、おきてでぃー! でぃー! れみぃおねぇちゃん! こわいのが、こわいのがくるよぅ!」
「ん……? なんだ、どうした……?」
「ンン……? あ、オハヨウ……まいか……」
「それどころじゃないよぅ! おばけがでたよぅ! こわいのがきたんだよぅ!」



 慌てて起き上がり、迫る化け物を見据える一家。
「こっ、こいつらは……? 新手の禍日神(ヌグィソムカミ)か……?」
「こわいよぅこわいよぅれみぃおねぃちゃん!」
「だ、大丈夫だから……。泣かないで。ネ? まいかちゃん……」
 実際涙は流していないのだが、今にも泣きそうな表情でまいかはレミィにしがみついている。

「「じゃんけんほい!」」
「「あっち向いてホイッ!」」(ビシュッ)
「「じゃんけんほい!」」
「「あっち向いてホイッ!」」(ビシュッ)

 自分たちが姿だけで子供を泣かすような状態にあることも気づかず、ひたすら2人は死闘を繰り広げる。
 そのあまりにもといえばあまりな姿は、大神であるDすら薄ら寒いものを感じるほどであった。
349D・ブースト:03/04/02 02:55 ID:7wBk1XWy

「いやっ……! いやっ……!」
 とうとうポロポロと涙をこぼし始めたまいか。何とかあやそうとするレミィだが、彼女自身だいぶ不安げだ。
「ど、どうしようD……?」
「クッ……」
 悔しそうに歯噛みするD.本来ならばあの程度の禍日神、自分の敵ではない。
 だが、今の自分はょぅι゛ょと互角に渡り合い、連携プレーで情けない男を一人倒せる程度だ。

 出来るのか……? 今の私に……コイツを……倒せるのか……?

 自分に問うD.こんなに緊張したのは、初めてであった。だが……!

 ポンッ。
 不意に、彼の肩に乗せられる手があった。
 後ろを振り返る。……レミィだ。
「……ディー」
 ……普段とは違う発音で、彼を呼ぶ。
「ワタシは……ディーを、信じるよ。だから、ディーも……自分の力を、信じて。きっと、大丈夫だよ。ディーは今まで、頑張ってきたんだから……」
「う……うん。でぃーなら……だいじょうぶ。きっと、あいつらにだってかてるよ!」
 妻と娘(※違います)の暖かい励まし。
 それは、世界中の何よりも……ディーに、強い力を与えた。

「わかった……。このディー、ウィツァルネミテアのプライドに賭けて……。あの禍日神を、倒して……みせるっ!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっっっっ!!!!!!!!!」
 咆哮高らかに、一直線に2人へ特攻を試みるディー。
 その時に彼の脳裏に浮かんだのは……かつて……彼に立ち向かってきた、空蝉……ハクオロの姿だった。
350D・ブースト:03/04/02 02:56 ID:7wBk1XWy

(ああ……我が空蝉よ。今なら……今ならお前が我らが運命を拒んだ理由、わかる気がするぞ……)

 地を蹴り、空気を切り裂き、禍々しきオーラを発する2人へ向かう。

(……言葉には出来ないが、なんとなく……お前の気持ちを、理解できた気がする……)

 そしてチラリと後ろのレミィとまいかを見やった。

 何となくキャラクターを間違えております。

「うおおおおおおおおおおおおおおっっ! 喰らえ禍日神(ヌグィソムカミ)よ! これが……うたわれるものの一撃だッ!」

 高々と飛び上がり両の拳に全ての想いを込め、いざ行かん!


「ウィツァルネミテア……クラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッシュ!!!!!」


「「ゴチャゴチャうるさいッ! 邪魔ッ!」」

 ボッゴォ!

「へぶし!?」

 ……が、ディーの一撃が決まる直前、清(略 と圭子の放った裏拳が彼の両頬にジャストミートし、そのままディーはふっ飛ばされた。

「あ」
「あ」

 ディーは唖然とするレミィとまいかの横を通り過ぎ、そのままの勢いで後ろの木に叩きつけられる。
351D・ブースト:03/04/02 02:57 ID:7wBk1XWy

「け……結局……こうなる、のか」

 そしてカクッと首を折り、またもや夢の世界へレッツゴー。

「「じゃんけんほい!」」
「「あっち向いてホイッ!」」(ビシュッ)

 2人は変わらずあっち向いてホイを続けている。てゆーか、Dの存在にも気づかなかったようだ。

「……ねぇ、まいか、おもったんだけど……」
 ずっと様子を伺っていたまいかが、突然ぽつりと漏らした。

「ン? どうしたの?」
「あのふたり……たすき、つけてないよね? おばけでも……さんかしゃに、なるのかなぁ?」

【清(略&田沢圭子 鬼になる。D一家には気づいていない】
【D ダブル裏拳をもらいK.O.一応ポイント+2】
【まいか&レミィ 2人が逃げ手であったことに気づく(人か禍日神かは微妙だが)】
【時間:夜 場所:海岸(砂浜)】
352犬は最良の友:03/04/02 03:34 ID:SQvg1jmS
「さて鬼になったからには罠仕掛けようかと思ったけどいまさらやったところで鍵友人脇役組の二番煎じでしかないわけで主人公たる俺としてはやはりパイオニアとしてありたいわけで
 パイオニアってパイを持った鬼というわけではなくそういや由綺もテレビでパイぶつけられてたな英二さんも仕事選べよな所属アイドルに刺されるぞ」
 やや壊れ気味の冬弥。
 由綺が壊れるのはリレーSSの伝統ではあるが、毎回毎回その壊れたヒロインの相手をする冬弥としては壊れ気味にもなるのも当然かもしれない。
「……ちょっとやりすぎちゃったかな?」
 キッパリとやりすぎです。
 今回浮気の「う」の字も出ていないのに、あれだけのお仕置きをするなんてね。
 しかし、そこは醍醐に鍛えられ多少成長した冬弥。
 一通り壊れた後、調子を取り戻した。
「…で由綺、これからどうする?」
「うん、冬弥君が浮気しないように見張ってる」
「……」
 冬弥は捕まったからには、鬼として全力を尽くそうと思っていた。
 嫉妬心の暴走により恐ろしい能力を発揮する由綺ではあるが、普段の彼女ははっきりいって足手纏いである。
 かといって、放っておくのも後が怖い。
(せめて武器でもあればな)
「あれ? 冬弥君、あっちになんかあるよ?」

353犬は最良の友:03/04/02 03:35 ID:SQvg1jmS
「……というわけね」
「成る程」
 ショップ屋ねーちゃんに一通りの説明を受けた後、屋台の中をぐるっと見渡す。
 銃、手榴弾、火炎放射器などいかにもな武器が並ぶ。
 バイトで小金もちな冬弥。
 結構なものが買えそうだ。
「何かアイドル向きの捕獲武器ってありませんか?」
「うーんそうね。これなんかどう?」
 取り出したるはしっとマ…
「それはダメ!」
「冗談よ、本当はこっち」
 それはマイクと一匹のシェパードだった。
「あ、かわいい♪」
 どうやら由綺のお気には召したようだ。
「この犬は、このマイクで言われたことを実行するよう訓練されてるの。『人を噛め』とかは聞かないけどね」
「なるほど、アイドルにはマイクか…」
「どう? 今ならドッグフードもつけて15万にしとくわよ?」
 ギリギリだ。
 さすがに迷う冬弥。
「うーんどうするかなあ…」
 由綺はシェパードを撫でている。
「…買います」
「毎度あり、名前はつけてあげてね」

【冬弥 オケラ】
【由綺 訓練されたシェパード(名無し)とその犬に命令するためのマイクを手に入れる】

ドキドキしながらの投稿。こういうのはアリかなあ?
354名無しさんだよもん:03/04/02 04:00 ID:s5hi/k/n
>>353
アリアリ、問題は由綺がどんな名前を付けるかだなw
355名無しさんだよもん:03/04/02 09:14 ID:ksMfqWQ6
人死にが出ない長編は激しく(・∀・)イイ
これが長く長く続いてくれますように・・・
356マルちゃんとクーちゃんの大冒険:03/04/02 13:48 ID:gCjykphc
「はわわわわー、まだ追ってきます〜!」
「むう、やっぱりアグ・カムゥを屋台に置いてきたのはまずかったか」
「ダメですよ〜。あれは反則になりかねなかったんですから」
「そこの2人、大人しく捕まってください!」

舞台は森の中。
半ば忘れ去られていたクーヤ・マルチ組は、エルルゥとデッドヒートを繰り広げていた。

組み分けをした後、岩陰で一夜を明かし、屋台でクーヤが買っておいた食糧で食事を取っていた2人。
島を探検していたところ、ハクオロたちを見失ってさらに殺気立っていたエルルゥに運悪く遭遇してしまったのだった。

元々足の遅い2人組ではあったが、エルルゥがハクオロたちとの追跡劇でかなり疲労していたために
なんとか追いつかれずに済んでいた。

「で、でも、あのエルルゥさん、いつもあんなに怖いんですか?」
「いや、普段は誰よりも優しいのだが…怒ると、特にハクオロが絡むと誰よりも怖くなるのだ」
「そこ、聞こえてますよ!」
エルルゥの怒りゲージがさらに増加した。
このままだと怒りゲージが満タンになるのもそう遠いことではないだろう。

「エルルゥ、余は本当にハクオロのことは知らぬと言っているであろう!」
「それは分かってます!でも、鬼ごっこなんですから私はあなた達を捕まえなくてはいけません!」
357マルちゃんとクーちゃんの大冒険:03/04/02 13:50 ID:gCjykphc
鬼ごっこは続く。
と、森の先に開けた岩場が見えてきた。
木々の姿が少なくなると同時に、ごつごつした石や岩がその姿を現し始めた。
そして、目の前には大きな崖。実質の行き止まりであった。
「ど、どうしましょう〜」
マルチが慌てた声で叫ぶ。
「うろたえるなマルチ。あの崖の右か左、どちらかに行けばよいのだ。
 お主の力で、どっちに行ったらいいか分からぬか?」
走りながらもクーヤが尋ねる。
既に、崖は目前であった。
「ご、ごめんなさい。さっぱり分かりません〜」
涙目になりながらマルチが答える。
「…ええい、左に曲がるぞ!」
「は、はい!」
崖の目前で左に曲がり、崖沿いに走る二人。
その後方30メートルのあたりをエルルゥが必死に追ってきていた。

…と、右側に続く崖の前方に、横穴が見えた。
このまま真っ直ぐ進んでも、前方には何もない。
また、横穴がどれほどの大きさかは分からない。
二者択一。このまま行くか横穴に入るか。
「ど、どうしますか?」
「…横穴に入るぞ」
「で、でももし行き止まりだったら私たち危険です〜」
「つべこべ言うでない!余に1人であんな不気味なところへ入れと言うのか」
半ば強引にマルチを引っ張って横穴に向かう。
結局、クーヤも1人では怖かったと言うことか。
入り口近くに置いてあった懐中電灯を急いで掴むと、2人は奥へと足を踏み入れていった。
懐中電灯が置いてあることから、ここも主催者側が用意した「何か」が用意されているはずであるが、
今の2人にとってそんなことは知る由もなかった。
358マルちゃんとクーちゃんの大冒険:03/04/02 13:52 ID:gCjykphc
中は暗く、懐中電灯無しでは何も見えない。
天井を照らしてみると、鍾乳石が何本も天井から突き出ている。
どうやら、ここは鍾乳洞のようだ。

「はわわっ、何かいますよ。声が聞こえます〜」
「…あれはおそらくコウモリの鳴き声だ。いちいち騒ぐな。余だって怖いものは怖いのだ」
ビクビクしながらも2人は鍾乳洞の奥へと進む。
果たして大丈夫なのだろうか、この2人で…。

一方、エルルゥも2人が洞窟に入るのを見逃さなかった。
確かに洞窟の中に2人は入っていった。
入り口にはまだ懐中電灯が一本残されている。
しかし、入っていってもいいものか。
自分の目的はあくまでハクオロたちのはずだ。
こんなところで油を売っていないで、ハクオロたちを探した方がいいかもしれない。
でも、これが鬼ごっこである以上、あの2人をほっておいていいものなのだろうか―――?
エルルゥは悩んでいた。

【クーヤ&マルチ、鍾乳洞探検開始。懐中電灯2本装備】
【エルルゥ、鍾乳洞に入って2人を追いかけるかハクオロたちを探すかで迷っている】
【2日目夕方】
359名無しさんだよもん:03/04/02 14:36 ID:q60G8QJg
>>346
筆者です。すみません。【】内のアイテム欄に
空のペットボトル×1
を追加してください。
360全国強い者巡り紀行 :03/04/02 17:02 ID:9xkQf/xB
「……」
 これからどう動くか。御堂は結構悩んでいた。
 自らの勘(確信に変わりつつある)を信ずるなら明日は雨が降る。風に湿
り気が混じってきたし、腕の皮膚はチリチリと悲鳴をあげている。水が苦手
という御堂の体質が、皮肉にも降雨を察知するのに役立っていた。
「順当に行けばどっかの建物だろうな」
 彼の場合冗談抜きで命取りになりかねない。なるべく早期のうちに避難
(若しくは先回り)する必要があるのだが――ふと彼は気付いた。
 この島で行動している同種の人間。蝉丸や光岡なんかがそうだが……
奴等も薄々と感づいてるだろう。この天候を。そして雨風の凌げるような場
所に移動を開始しているはずだ。いくらバケモノとはいえ闇雲に身体を濡ら
してしまうのは避けたいところである。
「――ということは。だ」
 御堂がにたりと笑う。
 ただでさえ月の無い夜、森の中は一条の光すら届いていない。
 そんな中を悠々と闊歩する人間――既に人を超越しつつある者かもしれ
ないが、彼らは自身の能力に少なからず自信を持った連中なのではない
だろうか。ちょうど御堂のように。
「つまり、だ」
 この時間は比較的戦闘能力の高い人間が行動している。
 そう仮定出来るのではないか?
「となれば、話は早いな」
 とりもち銃を片手に、御堂は移動を開始した。
「――雨が降ってくるまでが勝負ってとこか」

361全国強い者巡り紀行 :03/04/02 17:03 ID:9xkQf/xB
 御堂の推測はあたっていた。天候の変化を察知し草木も眠る丑三つ時に
身を動かす人間。リサ=ヴィクセンもその一人である。彼女はポケットから
腕時計を取り出して(付ける癖は無いらしい)、ぽちぽちと操作する。
「989hPA……か」
 気圧が低くなっている。雨の降る前兆だ。腕時計を再びポケットにしま
い、思案する。一流のエージェントとは言えども一個の人間。雨に身を晒し
て気分が良い筈が無い。びしょ濡れの人間が作業効率が低下する事は科
学的にも証明されている。指先を僅かに切っただけでも敏捷能力は80%に
低下してしまう。人はとてもデリケートな動物なのだ。
「風も出てきたし、早いところ宿を見つけないと」
 無駄に会敵しないよう細心の注意を払いつつ、リサは森を抜けていった。
「(――ただ。二つ問題がある)」
 一つ。鬼が先回りして既に潜伏しているという可能性。
 少し勘の鋭い人間や知識を持った人ならばもう予測できているだろうか
ら、これは十分考えられるだろう。屋内戦は得意だが、必要以上に交戦す
ることもない。
 二つ目はそもそもそういった建物を発見し損ねた時。この場合ちょっとシャ
レにならないだろうが、まあそんな心配は恐らく無用だとは思うが。
 しかし、どっちにしろ降り出してからでは遅い。
 とにかく海岸沿いに灯かりが見えるほうに

「(……………SHIT)」
362全国強い者巡り紀行 :03/04/02 17:03 ID:9xkQf/xB

 前方に飛び道具を持った人間。
 ――鬼だ。
 まったく、今日は厄日なのだろうか? 
 苦笑せずにはいられなかった。


「(……)」
 無論御堂もリサの存在に気付いていた。
 目線は変えない。気付いたと悟らせないためだ。
 何気なく銃に目をやる。弾数、のこり3発。
 ちょうど良い。
「(――やるか)」
 御堂は銃口だけそちらに向けて、発砲した。


【舞台→林】
【リサ 御堂に遭遇】
【御堂 リサをとりもち銃で攻撃。獲物を捕まえ次第どこかの建物に避難する予定】
【時間→午前3時ごろ】
363策士茜の計略:03/04/02 17:23 ID:Z6vtMo3/
「さて…これからどうしましょうか」

茜は独りつぶやいた。詩子は屋台の方へ偵察に行っている。
屋台を見つけたものの、一食分の食料を持っていた茜達は近くの藪の中で適当に鬼をやり過ごし、
昼食をとったまま隠れていたのだが、いつの間にか夕方近くになっていた。
食料も底をつき、鬼に対してあまり有効な手段を持っていない三人には隠れているしかない。
もちろん、追いかけっここそが鬼ごっこの醍醐味ではあるのだが、ここまできてむざむざ捕まりたくもない。
茜は迷っていた。鬼になって好成績を収めるか、それともこのまま逃げ続けるのか。

「茜、ちょっと見てきたんだけど、あの屋台って食べ物以外も売ってるみたいだよ」
「そうですか…例えば?」
「とりもち銃とか唐辛子銃とかいうの売ってたよ。でもあそこボッタクリみたいよ?」

澪はこれまでの疲れがでたのか、すやすやと眠っていた。
茜は澪を優しく起こした。腹は決まった。

「それでは、あの屋台へ行きましょう。二人ともすぐ出立できるよう準備をしてください」
「了解〜」
『わかったの』

それから数分で準備が整った。
「でも茜、あんなところ行ってなに買うの?」
「あの屋台は何でも売っているみたいです。私の勘が当たれば間違いなく…」
『間違いなく…何なの?』
「それは着いてからのお楽しみです。ついでに夕食も済ましてしまいましょう」

【茜 澪 詩子 屋台へ移動】
【時間 日没直前】
364名無しさんだよもん:03/04/02 17:59 ID:W5LCaAKq
a
365兄妹の絆を分かつ閃光:03/04/02 20:50 ID:EuBJNRdM
「いや本当だって。君たちならそのまま芸能界にコンビで売り出しても、立派に通用するぜ」
 AV業界に引き込む極悪プロデューサーのようなことを平気でのたまうのは、本物のやり手プロデューサーである緒方英二。
「なんだったら俺がさ……え? だってほら、俺、緒方英二って名乗ったよな。聞いたことない?」
 ふるふると、並べて首を振る杜若きよみ(白)と長谷部彩。
「知らない? いやー、結構お兄さんも有名だと思ってたんだけど、まだまだだなぁ」
 軽く流しているが、結構ショックな緒方英二。から笑いが空しく草原を吹き抜ける。
 だが、無口系美少女を2人もひきつれ、一体何の不満があろうというものか。
 さらに、きよみがいかにも純朴そうに、
「緒方さんは、芸能界の人なんですか?」
 などと聞くものだから、英二も即、調子を取り戻して、
「ああ。はい、これが名刺。彩ちゃんもどうぞ」
『緒方プロダクション 代表取締役社長』と刷られた名刺を見て、彩は軽く目を見張り、きよみは「まぁ……」と、口に手を当てた。
 一見冴えないおっさんだが、そう言われると貫禄があるように思えるから不思議だ。
 老けて見える、とも言う。
「緒方……理奈?」
 名前と名字。この2つが一致して、初めて彩もぴんときたようだ。
 英二が言っていた妹の理奈というのは、あの『緒方理奈』であると。
「あ、彩ちゃん、知ってる? そうそう。あの緒方理奈ちゃんのお兄様。似てないけどね」
 似てたら困る。
 それはさておき。そんな軽い冗談が飛び出すほどに、緒方英二は上機嫌であった。
 二人して無口なため、自然、英二が喋り続けることになるが、そこは海千山千の芸能界を生き抜いてきた男。話題には事欠かない。
 聞いてる2人も反応は少ないが、まるで授業中の生徒の如く、真面目に英二の言葉に耳を傾ける。
 特にきよみの方は、あまり接触のない分野とあって、時折質問を挟んできたりと、興味津々な態度が窺える。
 かるくジョークを挟んでみると、あっさり引っかかってくれたりして、自らフォローも入れねばならない。だが。
 虚偽の海にまみれて生きてきた英二にとって、素直すぎるこの2人の反応は新鮮であった。
 もはや鬼ごっこをしていることなどすっかり忘れ、大声で話しながらのんきに歩く。
366兄妹の絆を分かつ閃光:03/04/02 20:51 ID:EuBJNRdM
 実はこの一行、未だに朝食にありつけていない。
 そんなわけで、なにかがあるかも知れないと開けた場所に来たはいいが、見つかる危険も伴う諸刃の刃。
 しかし、お嬢様方のお腹の鳴る音を聞かないふりをするのにも、そろそろ限度があるわけで。
 緒方英二が必要以上に大声で会話するのにも、そんな意味合いが含まれていたのかも知れない。
「ちょうど2人はカラーイメージが正反対だからさ、黒と白の鮮やかな対比になって、人目を引きつける構成ができると思う。
 ――うん。本当に悪くないな。どう? その気があるなら俺も本気でプロデュースするけど?」
「いえ、流石にそれは……」
 苦笑混じりにきよみは断り、彩もこくこくと頷いて同意する。
「そうか、残念だなぁ」
 どこまで本気だったかは分からないが、英二は大げさにため息をついて残念がる。
「いや、本当に。上手くすればうちの理奈ちゃんに匹敵、あるいは凌駕するくらいのユニットになったかも知れないのに」
「森川由綺よりも?」
「うーん、由綺ちゃんは俺が全力を傾けて育てたアイドルだし、今、のりにのってるからなぁ。
 まてよ、由綺ちゃんとは逆に落ち着いた魅力を中心に打ち出していけば、静と動という感じで上手く共存できるかも……」
「じゃあ桜井あさひちゃんが相手ならどうかしら」
「あさひちゃんかぁ……うん、あの子もいいものを持っているけれど、カルト的人気が高いからなぁ。
 あれを全国レベルまで引っ張るなら、もっと違った戦略でせめていくね、俺は」
「ですって、参考になったかしら?」
「は、はい……あのその、緒方……あ、あ、この場合は英二さんのことで……、
 だから、その……緒方英二さんにも認められるように、もうちょっと頑張って……ごにょごにょ……」
 はて?
 毎日のように聞く声と、仕事上しょっちゅう耳にする声。
 きよみと彩とに目をやるが、2人とも無言で首を振り、後ろを指す。
 振り向いてはいけない。
 神話のオルフェウス同様、そう言われると、振り向いてしまうのが人情と言うもの。
 かくして緒方英二は平穏な地上に別れを告げ、黄泉の国への扉を開ける。
 ギリギリと、軋む音を立てそうな程に、ゆっくりと首を捻って。
 そこには国民一億人中、多分七千万人くらいは顔を知っているアイドルが立っていた。
367兄妹の絆を分かつ閃光:03/04/02 20:51 ID:EuBJNRdM
「鬼ごっこの最中に両手に花で談笑なんて、ずいぶんと楽しそうね?」
「い、いやぁ理奈ちゃん、お久しぶり。我が最愛のまいしすたぁよ」
「私に兄さんなんていないわ……」
 パクリゼリフをパクリで返され、冷や汗を背筋に伝わらせる緒方英二。
 あさひの体がびくりと震えた。
 彼女の横には、先ほどまで無邪気に鬼ごっこを楽しんでいた緒方理奈はもういない。
 演じることにかけては天才的な緒方理奈が、全身全霊をかけてその役を演じていた。
 すなわち、『鬼』と。

 理奈は淡々と語り出す。
「私ね、最初は兄さんに小さい頃いじめられたことを思いだして、復讐さえ考えていたわ。
 極道な緒方英二を締めてやるっ! ってな具合で。
 でもね、今朝あさひさんと一緒に追いかけっこして……ただそれだけなのに、それが凄く楽しかったのよ。
 こんな風に童心に返って遊ぶのも悪くないなって思ったわ。
 思い返してみれば、兄さんにも、いじめられたりからかわれたり、かくれんぼで置き去りにされたり、
 缶蹴りで缶の中に石詰められたり、泥刑で一対十を強いられたりと……あ、ちょっとむかついてきたわね」
 急速に非難の視線が緒方英二に集中した。
「まぁ……許し難いような思い出もあったけど、でもそれ以上に楽しかったのよね。
 だって私、毎日のようにレッスンレッスンで、子供の時くらいしか、満足に遊べた時間ってないんですもの。
 子供の頃ってついついやり過ぎちゃう時ってあるじゃない? だから、許してもいいかなって思ってたわ」
 そして理奈は笑った。 
「ほんの、一分前まで」
 百万ドルの笑顔が、非の打ち所のないはずの笑顔が、なぜか周囲の人間を凍り付かせる。
 理奈が軽く右手を振った。
 掲げられた腕には、爪はない、武器もない。込められたのは、ただ殺気のみ。
 その殺気が渦巻くオーラとなって立ち上るのを、そこにいた人は確かに見た。
 理奈がゆっくりと歩を進める。その先に待つのは死の運命なのに、緒方英二は一歩も動けない。
 代わりに左右に控えていたきよみと彩が、押されるように後ずさる。
368兄妹の絆を分かつ閃光:03/04/02 20:52 ID:EuBJNRdM
「ま、待った、理奈ちゃん。暴力反対。これはゲームだぜ。楽しくやろう、楽しく。な?」
 震える声を走らせる隙に、理奈は間合いに英二を捕らえる。
「やぁね、ただの鬼ごっこじゃない。タッチするだけよ、タ・ッ・チ」
 緒方理奈が言うとどことなく淫靡な雰囲気があるが、英二はそれどころではない。
 あの右腕は、対緒方英二限定、今この瞬間だけ、エルクゥに匹敵する凶器となっている。
 それに薙がれた者の末路はすなわち、死、あるのみ。
「じゃあね、兄さん。結構楽しいイベントだったわ」
 まるで永遠の別れのように言い放ち、弓の如く引き絞られた右腕が、振り下ろされたその瞬間――!

「太陽拳っ!」

「なっ!」
 閃光が理奈の目を直撃した。
 だが勢いは止まらず、平手は暴圧を纏ったまま空を薙ぐ。その風圧のみで、地面の草が、千切れて宙に舞った。
 これをくらったら、あの時、森川由綺は死んでいただろう、と思えるほどの威力だが、標的はすでにそこにはいない。
「くっ、あの男……」
 理奈は目を擦っていた。
 眼鏡だ。
 とっさに英二は眼鏡の角度を調整し、太陽の光を反射させ、理奈の視界を奪ったのだ。
 その僅かな隙に、緒方英二の影は丘の向こうへと消えている。まさに鼠を見たときの猫型ロボット並の神速だ。
 蹴散らした土煙と葉切れだけがその逃走経路を示している。
「逃がすものですかぁっ!」
 理奈も即座に、弾かれたように走りだした。
 2人の姿は瞬く間に草原の彼方へと消え、後には呆然とした、きよみと彩とが残される。
369兄妹の絆を分かつ閃光:03/04/02 20:53 ID:EuBJNRdM
 いや。
「あ、あの、ごめんなさい。タッチ、です」
 その背中を申し訳なさそうに触る桜井あさひ。
 ひょっとしたら、緒方英二に拾われてなければ、穴の中で最後まで残ったかも知れない影の薄い2人は、
あえなく桜井あさひによってとっつかまったのであった。

 一方そのころ。
「まーちーなーさーーーーーーーーいっ!」
「いやほんと、愛しているってばぁ理奈ちゃん。だから勘弁してくれないかなぁ?」
「この期に及んでなにをーーーっ!」
「やっぱダメかぁ……とほほ」
 ――結構余裕あるし。


【緒方英二 逃走中】
【緒方理奈 猛追中】
【杜若きよみ(白)と長谷部彩 鬼化】
【桜井あさひ 2ポイント追加】
【困ったことに、朝食にはまだありつけていないもよう】
【昼前ぐらい?】
370佐祐理の決意:03/04/02 21:32 ID:Y+fUZoPy
さてさて、D一家が禍日神に襲われている間、その近くで悶絶していたはずの佐祐理さんは何所行っているのかというと。
「ふぇえ〜…まだ眼が痛いです〜…絶対逃がしませんよー!」
奇襲に失敗した観鈴ちんを、今度は実力で捕まえようと追いかけていたのでありました。
しかし思った以上に唐辛子手榴弾の威力は大きく、まだ佐祐理の眼も喉もヒリヒリしていたため、その声は涸れていた。
制服は赤系だからあまり目立たない…というわけでもなく、リボンがところどころ紅く染みている。
靴下も然り。
もちろん髪の毛も、リボンも。
その上さっきばたばた暴れた上に砂浜を急いで走ってきたので足が少しだるくてふらついてる。
――なんつーか、痛々しいというか。
この鬼ごっこが始まった時、あの佐祐理さんがこんな姿になるなんて誰が予想しただろうか。
ビーチなんだからシャワー室があるかもしれないのに――そして、普段の賢い佐祐理さんならそう判断したはず――そんなこと考えもせず、ひたすら観鈴ちんを追う事しか頭に無かったらしい。
一体どうしてこんなことになっているのか。
「佐祐理をこんな惨めな目にあわせたあの子…いくら声が同じだからといって絶対許しませんからねーあははー!」
案外負けず嫌いらしい。
そして、
「これを機に、佐祐理も一気にこの鬼ごっこで目立つんですよー!!!」
やっぱり、ちょっと気にしていたらしい。
371佐祐理の決意:03/04/02 21:32 ID:Y+fUZoPy
「でも、ちょっとどこに行ったのか分かりませんね…あははー…どうしましょう…」
ちょっと歩いて少し冷静になった佐祐理さん。
「屋台に寄って探知機でも買いますか…?」
しかし、屋台はぼったくりなので財布に痛手を喰う事になる。
佐祐理の家は富豪には違いないが――そして来栖川姉妹とは違い、自身も現金を所持しているとはいえ――やはりあまり金を浪費するのは賢くないであろう。
ひょっとすると電池が別売り(しかもぼったくり)とかそういうオチかもしれない。
確証があるわけではないが、十分ありうる気がした。
「やめておいたほうがいいですね。ただ一人を捕まえるためだけに」
賢明な判断を下す佐祐理さん。しかも観鈴ちん一人だけを追う行為があまり得にはならない、ということも分かっている。
「でも、これはけじめです。この佐祐理が鬼として優勝するための!」
そういうことらしい。
でも…
「…どうしましょう…」
困った。
372佐祐理の決意:03/04/02 21:33 ID:Y+fUZoPy
「あ、そうです」
ぽん、と何かを閃く佐祐理さん。
「あの手を試して見ましょう」
そこで取り出したるは、携帯電話。
――ではない、特殊なトランシーバー。
ここは、やはり金持ちとしての特殊能力をいかんなく発揮するに限る。
特殊能力・黒服。
日本全国何所に居ようと何をしていようと、困ったときに電話すれば黒い服の男達が現れ佐祐理のサポートをしてくれる、という金持ちならではの能力である。
「あ、もしもし佐祐理です」
早速通信を試みる佐祐理さん。

――が、繋がったのは。
「倉田さん?」
「ふぇ、秋子さん?」
管理室だった。
「ごめんなさいね、ちょっと電波を妨害させてもらったわ」
「しかし、佐祐理の能力(?)は人を傷つけませんし、サテライトなどを使う訳でもありませんから、ルール上問題ないのでは?」
「あのね倉田さん、確かに貴女の能力は人も傷つけないしサテライトも使わないからルール上問題ないような気もするわね。でも、これ以上余計な人を管理側としては登場させたくないのよ」
現に、いとっぷを妨害した詠美ちゃん様親衛隊が既に千鶴さんによってどこかに飛ばされている。
「ふぇー…」
「だから、ちょっと妨害させてもらったわ。ごめんなさいね」
それだけ言って、電話は切れた。
そして佐祐理は一人ごちた。
「やっぱりダメでした…」
つまりダメ元だったらしい。
「仕方ありません、こうなったら佐祐理自身で捕まえるしかないようですね」
佐祐理の瞳に力がみなぎる。
「なんとしても! 佐祐理は! あの佐祐理と同じ声の女の子を捕まえて見せます!」
そう決意した。
そして、くぅー、とおなかが鳴った。
「ふぇ〜…まずは夕御飯ですね…」
373佐祐理の決意:03/04/02 21:34 ID:Y+fUZoPy
そして、そうこうしているうちに舞が居るはずの灯台を通り過ぎてしまっていたのだが、佐祐理は気付かなかった。

【佐祐理さん 黒服使用不可能】
【観鈴ちんをなんとしても捕まえようと決意する】
【佐祐理さん 手持ちの食料から夕食をとる】
【舞(&あゆ)が灯台でどうなっているのかは不明】
【時間 夜】
374ごめんね七海ちゃん:03/04/02 21:40 ID:FR47M68N
「ごめんね、七海ちゃん。遅くなっちゃった」
 なんと由綺は、追いかけっこのあまりの激しさのため、七海と別れた場所を正確に覚えていなかったのだ。
 決して書き手が忘れていたわけではない。
 その後、屋台で(冬弥の金で)シェパードを買った由綺は、真っ先に別れた七海を探させた。
 幸いにも七海の匂いが由綺に移っていたため、どうにか探し出すことができたのである。
「あっ、由綺さんお帰りなさい」
 結構待たされたはずであるのに、まったく気にしていない様子だ。
 いい子やのう。(大統領風味)
「七海ちゃん。始めまして」
「あ、始めまして。冬弥さん」
 
 まあそんなこんなで3人は合流したわけである。

【冬弥 金無し】
【由綺 七海と合流 シェパードマイク所持】
【七海 由綺と合流】
375ストームトルーパー・葵:03/04/02 22:03 ID:nm+2fGM8
「随分遅くなってしまいました…」
 自嘲するかの様に、葵は呟いた。森の中。陽も沈み、辺りは既に暗闇の衣に覆われている。
 月が出ているはずだが――と、葵は木々の切れ間から覗く空を見上げた。
 …雲が多い。どうやら、天候が崩れ始めて来ているらしい。
「…明日は雨かな…? ――急がなきゃ」
 葵の背には、ナップザックがあった。その中には、見つけてきた食料が詰め込まれている。
 …美汐、瑠璃子、真琴、そして自分の四人で分けても、二・三日分にはなるだろう。大収穫だ。
 ――更には、瑠璃子の捻挫の為の湿布薬までも発見出来、これもザックの中に詰め込まれていた。
「私は運がいいです♪」
 内心で呟き、葵は微笑んだ。

 ……が、その微笑みを踏み潰すかの様な災厄が降り掛かるとは、葵自身、予想だにしていなかったのである…。

376ストームトルーパー・葵:03/04/02 22:05 ID:nm+2fGM8
 進む先にある大木の影から葵の前へと、一人の青年が姿を現した。その体には、鬼の襷が掛けられている。
 油断していた――葵は、自分の迂闊さを呪った。早く教会へ戻らなければという、はやる気持ちに押されて、
周囲の気配を窺う事を怠っていたのだ。
 …教会で待つ瑠璃子は、鬼になってもいいから必ず戻ってきて欲しいと言ってくれた。だが、だからといって、
おめおめ鬼になる気は更々無い。
 葵は、何時でも逃げ出せる様に身構え、緊張に強張った鋭い面差で、青年を見やった。
 ――だが、葵の目の前に現れた青年は、面白くもなさそうな眼差で葵を一瞥し、すぐに逸らして周囲へ目線を
泳がせる。葵には、全く興味を抱いてはいない様だ。
 それならそれでいいと、葵はゆっくりと身を退いて行き、青年との距離を取り始めていた…
「…瑠璃子を知らないか、君?」
 ルリコ――その名に、葵の胸は弾かれた様に一瞬大きく動揺した。そして、その一瞬で察する。
(……この人が…!)
「聞こえなかったかい? 瑠璃子を見なかったかな? 僕の妹なんだ。見かけは――」
 こちらをじっと見つめて来ながら、その青年が尋ねて来る。――彼が、瑠璃子の言っていた兄、拓也だろう。
 彼女の語っていた姿形と、容貌が一致する。何よりも――
「瑠璃子…瑠璃子……早く見つけないと…。…僕が捕まえないと…………瑠璃子…」
 彼女の名前を連呼する。…間違いない。
「――その、瑠璃子さんという人を探しているのですか?」
「知っているのか!? 瑠璃子が何処にいるのか――!」
「…知りません。――只、私には興味は無いのですね?」
 少しずつ後ろへと下がってゆく葵の言葉に、拓也は眉根を寄せ、不機嫌そうな光を目の中で蠢かせた。
「…無い。知らないのなら、あっちへ行ってくれ。僕は瑠璃子を探しているんだ」
「そうですか。…では、さようなら」
 追って来る気が無いのなら、結構な事だ。葵は拓也から離れて行き、迂回する様に進もうとした。
「…………――瑠璃子は、病気なんだ」
 拓也の、呻くような声。
「早く薬を渡してやらないと、発作が起きてしまう…」
「っ…! 本当ですかっ!?――」
 顔色を変えて振り返った葵の目に、邪悪――と評しても過言では無い、拓也の歪んだ笑みが映った。
377ストームトルーパー・葵:03/04/02 22:06 ID:nm+2fGM8

 虚偽だ――と気付いた時には、もう遅い。
「……瑠璃子が何処にいるのか、知っているんだね?」
 葵は――
 逃げなかった。
 本能的な部分はが、逃げろと告げている。拓也からは、何か得体の知れない威圧感めいた物を感じるのだ。
 だが、ここで走って逃げ出せば、瑠璃子の居場所を知っていますと声高に告げてしまう事と同じだ。
 既に彼の虚偽の罠に引っ掛かってしまっている。何とか――巧く逃げ出す機会を作らなければならない…
「――知りません」
「本当か…?」
「知りません」
「…………………………………嘘だな。素直に教えた方が身の為だぞ?」
 葵は肩を震わせはしなかったが、首筋から背中へと、冷たい汗が流れ落ちるのを感じていた。
「知りません…。そちらこそ、妹さんが病気で発作を起こしかねないと言うのなら、私に構っている場合では
ないでしょう? それに、運営管理の人達に連絡を取れば、すぐに見つけてくれるはずです」
「駄目だ。瑠璃子は僕の手で捕まえるんだ」
「そんな事に拘っている場合ですか? 本当に心配であるなら――」
「瑠璃子は何処だ?」
 葵の言葉に、拓也は取り合おうとはしない。夜闇に沈む森の中ででも、彼の双眸がギラギラと光っているのが解る。
「…知りません」
「嘘だ。君は知っている。瑠璃子の居場所を知っているはずだ…!」
「知りません…! 先程も言いましたが、切羽詰っているのなら、その事情を話せば運営サイドの人達が
教えてくれるはずです。私に構っている暇があるのなら――」
「居場所を知っているんだろう!? 何故言わないんだ! 何故隠す!? 何で僕の邪魔をする!?」
「ですからっ…」
 拓也の気を何とか自分から逸らせようと、辛抱強く言葉を返そうとした葵だったが――
378ストームトルーパー・葵:03/04/02 22:07 ID:nm+2fGM8

「っ…? あ………がっ…!? はっ……ああ゛っ………!?!」
 チリチリチリチリ…!
 侵食……汚染? 解らない。解らない何かが、葵の頭に流れ込んでくる。耳や目を介さず、直接、脳へと。
 痛い? 熱い? 押し潰される…!? これは―― …何!?
「………喋れ。君は、瑠璃子の居場所を知っている………そうだろう?」
「ぎっ……あっ…あぁあっ……っっ!?」
 薄れて、吹き飛びそうになる意識。脳が破裂するかの様な、“痛みを伴わない激痛”――葵は全身に汗を浮かべ、
頭を抱えて膝を地に落とした。――そして、乱打される意識の中で、瑠璃子の言っていた言葉を思い出す…
『―― …ルール違反を承知で直接電波を当ててくるかもしれないから…』
 デンパ…? 電波……!? これが――電波…! 脳を直接蹂躙する、無音の嵐――
「さあ、言うんだ。瑠璃子は何処に居る? 知っているんだろ? 素直に言えば、すぐに解放してあげよう。
 タッチもしない。――さあ。楽になりたいだろ?」
 生きながら四肢を?がれて行くかの如き感覚。音の無い嵐の中、拓也の声は、葵の耳に優しく響いた。
「っっっ…!! っ……、もっ……もっ…! ぎっ…! …っ、きょっ…きょきょっ……!!」
「んん?」
「っ…! ――っ、しら…ない……! ――しっ…知りませんっ!!!」
 葵の根性…精神力は、驚嘆に値した。――が、それは状況を好転させる事は一切無く、拓也の眉間に怒りの
皺を刻ませただけだった。
「……廃人になりたいのか。…そうか。なら、望み通りに――!」
379ストームトルーパー・葵:03/04/02 22:09 ID:nm+2fGM8

 ――と、眼光を閃かせた拓也の首筋に、どこからともなく飛来した吹き矢が突き刺さった。
「して―― ………お」
 拓也の目が、とろん…となり、更に一瞬後には、彼は地面に倒れて寝息を立てていた。
 縛り上げて来ていた電波の鎖から解放された葵は、両手を地に着け、悲鳴を上げるかの様に息を荒らげる。
「はぁっ…はぁっ…はぁっ……!!」
「――月島拓也様を確保致しました」
「はぁっ、はぁっ……―― …?」
 何時の間にやら現れた数体の警備スタッフの制服を着たメイドロボが、倒れた拓也を囲んでいた。
「大丈夫ですか、松原様?」
「…へ、平気です……。っ……マルチさん…?」
 肩で息をする葵の前にしゃがみ込んだのは、葵の良く知った顔――マルチだった。
 …が、知己のマルチではなかった。量産型のHM−12。
「い…一体、何が…?」
「月島様の能力による参加者への直接攻撃を確認致しましたので、反則行為への対処として介入させて頂きました」
「………」
 立ち上がらぬまま、葵は眠りこける拓也を見た。彼を囲むHM達の内、13型の一人が、吹き矢筒を持っていた。
 ――麻酔針であろう。
「…反則……で、退場――…ですか?」
「一時的に拘束するだけです」
「そうですか…」
「――松原様の方から強くお求めになられるのなら、月島様を失格・退場にさせる事も可能ですが」
「………いえ、流石にそこまでは…。その人……月島さん…も、思い余ってやってしまった事でしょうし…」
 まだ鈍痛の様な物が残っている頭を振り、葵は溜息を吐きながら苦笑した。
「私は、何も言いません」
「…承りました。その旨、お伝えしておきます」
380ストームトルーパー・葵:03/04/02 22:11 ID:nm+2fGM8

 …あの場所から少し離れた所にある気の影に隠れ、葵は乱れた呼吸を整え、消耗してしまった体力を回復
させるべく、休んでいた。
 その背後――あの現場の上空には、飛来してきたヘリがホバリングし、その爆音を辺りに響かせている。
あれで月島を連行するのだろう。

 ――数分後、走れるくらいにまで体調を整えた葵は、夜闇の森の中、瑠璃子達の待つ教会へと走り出した。


【葵  森で拓也と遭遇】
【拓也  思い余って葵に直接電波攻撃】
【拓也の反則行為により、警備HMが介入。麻酔針で拓也を眠らせ、捕獲】
【拓也は管理室へ連行。 ※恐らく、セリオやオボロ、祐介が連行された時間と重なっている】
【葵が被害を訴える気が無いので、拓也は恐らく厳しい説教程度で、ほぼお咎め無しとなりそう…?】
【葵  食料と湿布薬を確保。教会へ戻る途中】
【二日目 夕刻〜夜】
381茜の策とは? 1/2:03/04/02 22:46 ID:wlifk5FQ
「そろそろ夕飯時だねぇ…お?」

水平線の彼方へ消え行こうとしている夕日を見つつ、盛大に欠伸をかましていたショップ屋ねーちゃんは、
こちらへ向かってくる三人の人影を見つけると、すぐに営業スマイルに戻った。

「いらっしゃい。ここは食料から武器までなんでも揃ってるよ」
「では…ラーメンと輪布留を」
「私もラーメン。あ、ザッハトルテありますか〜?」
『お寿司』
「はいはい。ちょっと待っててね」

10分後、三人分の料理が出来上がった。とても常人とは思えないほどの手際の良さだった。

「この輪布留、とても美味しいです」
「ザッハトルテも最高だよ〜♪澪ちゃんは?」

満面の笑みでこくこくと頷く澪。が、それでも寿司を口へと運ぶ動作は怠っていない。
その後、30分程かけて完食した三人は、食後のお茶を飲んでまったりとしていた。
382茜の策とは? 2/2:03/04/02 22:46 ID:wlifk5FQ
と、おもむろに茜が立ち上がる。

「さて、そろそろ…」
「お、もうお勘定かい?」
「いえ、もう二つ欲しいものがあるんです」
「なんだい?」
「明日分の食料と…バイク用のガソリンは置いてありますか?」

横の二人は、合点がいったように手を叩いた。詩子から賞賛の声があがる。澪もそれに同調した。

「あるよ。何g必要だい?」
「50ccですから…20g程お願いします」
「まいどあり〜、じゃ、食費と燃料代で占めて9000円だね。今回はおまけで給油ポンプも付けとくわ。これで簡単で清潔に給油ができるわよ」
「ありがとうございました」

財布から新渡戸さん一人と夏目さん四人を出す茜。ねーちゃんは、それを相変わらずの営業スマイルで受け取った。
入念に枚数の確認をした後、急にねーちゃんは真剣な顔つきになった。

「そのガソリンだけど、あくまでも燃料用として使ってね。もしそれ以外――例えば鬼をまとめて吹き飛ばすとか、そういう行動に出たら即退場になるから気を付けて」
「わかりました、気を付けます」
「じゃ、せいぜい鬼にならないように頑張ってね」

ガソリンと食料を両腕に抱えた三人は、ぎこちないお辞儀をした後、屋台から去っていった。

「ふふっ…元気だねぇ。さて、整理の続きでも始めようか」

【茜 澪 詩子 屋台で夕食をとる】
【茜 バイク用ガソリンを購入】
【時間 夜の7時くらい】
383セリオの思惑 1:03/04/02 22:47 ID:u62UnZZj
 ムックルが嫌そうに鼻を鳴らす。
 それが雨のせいだけではないとすぐに理解したのはアルルゥだけだった。
「つかまって!」
 カミュとユズハに急いでそう言い、再度ムックルを走らせた。
 と、同時に後ろから叫び声が聞こえた。
「アルルゥ待て! オレだ!!」
 だがアルルゥはそれを一瞥しただけで、ムックルのスピードを落とそうとはしない。
「アルちゃん……?」
 不思議そうに訪ねるユズハに、アルルゥは短く答える。「たすき、つけてた」

 スタートダッシュで随分と引き離したものの、オボロとムックルの距離はみるみる縮んでいく。
 女子供とはいえ三人を乗せ、しかも苦手な雨の中だ。それも仕方がない。
 あまりにおそろしい形相で追いかけてくるオボロと、そのスピードにでついてこれる場違いに無表情な見知らぬ女性。
 ──はっきり言って怖い。
「ボロボロお兄様っ! 来ないでーーーっ」
 カミュは手当たり次第にものを投げてみたが、案の定オボロもセリオもなんなくそれをかわしていく。
 だがその中のひとつが──
 ガチャンッ……地面に落ちて鈍い音を立てた。その箱状の機械の側面には『Made by 日本一の弟』──と書かれていた。
384セリオの思惑 2:03/04/02 22:48 ID:u62UnZZj
 オボロとの距離は縮まる一方。
「ガチャタラっ」
 アルルゥが叫んだ。その声に応え、ようやく出番かよとばかりに物凄い勢いでガチャタラがオボロの顔周辺を飛び回った。
「うわっ。邪魔だっ」
 振り払おうとするがうまくいかない。
「くそっ、セリオ! なんとかしろ!!!」
「──────はい?」
「はい? じゃない!! 早く急げっ」
「──────はい。承知しました。申し訳ありません。
 なにぶん雨水のためか聴力感度の具合が芳しくない様で──」
 深々と頭を下げるセリオ。
「んがぁーーーーーーーっ。いいから早くしろっ!!!」
「承知しました──」

 今のセリオ彼女の目的は『香里の邪魔要素を遠ざける』ことである。
 いわば、ユズハはオボロを誘導するための鼻先にぶら下げる唯一のニンジン。
 あっさりそれを食われてしまっては、今後のコントロールに支障が生じる。
 疑われぬ程度に協力し、捕まえぬ程度に邪魔をする。
(それもこれも香里様の目的の為です──)

 ようやくセリオはガチャタラを捕まえると、そのまま思い切りぶんぶんと腕を振り回した。扇風機のごときスピードである。
 離したときにはガチャタラは見るも無惨なほどふらふらと方向感覚を失っていた。
「さて──参りましょう」
 言われるまでもなくオボロは走りだしている。セリオもそれに続いた。

【アルルゥ・カミュ・ユズハ(+ムックル):オボロから逃走中。強化兵から認知されなくなる装置を落とす】
【オボロ:セリオに振り回されつつ、ユズハを追跡】
【セリオ:香里に忠誠を誓いつつ、オボロに同行中】
【ガチャタラは目を回されてふらふら】
385Enumerated Words and thinkings.:03/04/02 22:49 ID:9xkQf/xB
 んっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっはいっ!!!!!!
 えらい久しぶりの登場になります那須宗一でございます。ついこの間ま
では割と頻繁に登場していた感じも否定できないですが、横に並ぶ坂神蝉
丸とかいうおっさんと関わりだしたのが運の尽き、ゲーム終了まで頑張って
逃げ切ろうと思ってたのに気付けばホモキャラ一歩寸前、あまつさえ不肖
の処女すら奪われるところでございました。本編ではけっこう世界なんか
救っちゃったりとスゴいことしてるのに酷い仕打ちであります。ところで葉鍵
ホモギャグといえば例の変態殺戮刑事(デカ)であるところの柳川祐也氏
が真っ先に思い当たりますが、彼は今ごろ何をやっているんでしょうか。久
しくご活躍を聞かないあたり祐也氏もまた不幸な身に置かれているのでは
ないかと余計な心配をしていたりしてます。――まあどうでもよかったりし
ますね現在の状況を顧みるに。

 ここらへんで、不肖の近況なぞちょいちょいとご報告しましょう。
 ひょんなことから世界一のエージェントである私那須宗一はあろうことか
残金124円の刑を処されまして、不本意ながら明らかに宵越しの金を持っ
てなさそうなセミマル・サカガミ、ハルカ・カワシマ、及びツクヨ・ミイデラと行
動を共にしている身であります。最初は蝉丸にぴったりくっつく事でコバン
ザメ戦法……いやいや蝉丸の撃墜ポイントを妨害しようと画策したわけな
のであります。事実、先ほども不肖の立てた作戦を横取りしようとしていた
蝉丸を辛くも阻止、痛み分けとは聞き捨てなりませんが結果的にポイントを
半々にすることで決着いたしました。となれば撃墜数に応じて金券を戴け
るシステムの恩恵に見事あずかれる事になるのですからこのおっさんとペ
アを組む理由の少なくとも半分は無くなった訳です。然らばもののふの末
裔な私、二言を挟まずにきっぱりとパーティから外れて単独行動を試みて
も文句は言われなさそうですが――やはりこの男の並々ならぬ能力を捨て
るのは非常に惜しい。百計を巡らして何とかこちらの好いように扱ってゆき
たいところではあります。約二名のおまけはどーにかしたいところだが。
386Enumerated Words and thinkings.:03/04/02 22:49 ID:9xkQf/xB
「んー、いいきもち」
「……」←宗一。
「蝉丸、疲れない?」
「いや」
「……」←宗一。
「んもぅ、我慢しないでもいいんだよ?」
「そうか?」
「こういう日はサイクリングに限るね。那須とかいう者」
「……」←宗一。
 ――はい。なんか知らん間に空気の壁が出来ております。それもどうしよ
うもないくらい巨大なのが。ちょうどラピュタに向かわんとするドーラ一家が
気圧の谷に突っ込む時もこんな気分だったでしょう。ママーエンジンが焼け
ちゃうよーってか。精がでるねぇ。


 そんなこんなでハイキングっぽい雰囲気でとことこと歩いていた我々四人
でしたが。
「――蝉丸、あれなに?」
「む」
「神社、だな。ありゃ」
「神社だね。ありゃ」
「真似すんなよ!」
随分と唐突に鄙びた――というにはあまりにもボロクソな社が目の前にど
どーんと姿を現します。うらぶれた鳥居は社名すら読み取れません。
387Enumerated Words and thinkings.:03/04/02 22:50 ID:9xkQf/xB
 神社。
 不肖も神社には少なからず因縁があるわけで、しかもほとんどネガティヴ
な思い出しかないですから何とも妙な気分に襲われます。対して蝉丸、神
社を発見する前後から何か得心したような面持ちで終始微笑が耐えず、ど
うも蝉丸は一計企んでいるとしか思えません。しかしカップラーメン一杯で
鬼捕まえるという労働をこなした後ですから冗談抜きでちょっと休みたい。
とか逡巡している間に河島なる女性は縁側に移動、完璧に腰を落ち着け
ております。こう既成事実が作られてしまってはどうしようもありません。な
し崩し的に我々はそこで小休止を入れる事になってしまいました。
「よっこいしょっと」
 なぜ完全に座った後で掛け声をかけるか、河島はるかよ。

「……」
「おい、おっさん」
「なんだ?」
「それを聞きたいのはこっちのほうだ。おみくじなんてアテにならないぞ?」
「なんとなくやってみだだけだ」
 ――アヤシイ。休憩開始からこっち、蝉丸さん全然落ち着きません。あっ
ちをふらふらこっちをふらふら、お前休憩する気ないだろうって、そういや
さっき断ってたなあいつ。……まあいっか。
388Enumerated Words and thinkings.:03/04/02 22:50 ID:9xkQf/xB

「………むぅ」
「――そんなに気になるなら引いてみりゃいいだろ?」
「そ、そうか、青年よ」
「? 何動揺してるんだ?」
「いや、なんでもないぞ別に」
「? ならいいんだけど」
「――いいのか?」
「だからいいって言ってんだろが」
 ポケットにしまってあったミネラルウォーター(さっき小川で汲んで来たや
つ。なかなか美味)を口に含みつつおっさんの挙動を監視中。万が一逃げ
だすようなマネしたら速攻で迎撃体勢に入れますよ。
「ならば……」
 そういっておっさんは小銭を投じます。こんなうらぶれた神社に金銭投じ
ても祟られるこたぁないだろうに、妙に律儀だなぁ蝉丸は――

「……え?」

 ――消えちゃいました。唐突に。
 坂神蝉丸が。なんの跡形も残さず。

「せ、蝉丸? どこいっちゃったの!?」
「消えてしまったね。坂神さん」
「せみまる〜〜?」
「こうして坂神蝉丸はエイエソの世界へ旅立ってしまったとさ。どんとはれ」
「ちょっと、どこいっちゃったの〜?」
 約一名ズレた発言をしたような気もしますが、目の前の事象にただただ
驚くばかりであります。
389Enumerated Words and thinkings.:03/04/02 22:51 ID:9xkQf/xB
「……ラストリゾート!!?」
 最初に浮かんだのはそれと篁のツラ。
 しかし、それはあり得ないはず。
 いくら篁が好き者だろうが今の立場は運営サイド、んな身勝手ないたずら
やるはずがないだろう。しかしあの現象は以前篁が消失したときのそれと
酷似しているし、どう考えても――

「うおおおい!?」
 こんどは月代とかいう少女まで消えやがりましたよ。
 おみくじの棚が空きっぱなし。
 そこを調べている間に消失してしまった。
 一体――なんなんだ。


「……どうすればいいんだ」
「そんなこといわれても」
 あとに残ったのは不肖・那須宗一と河島はるか両名。もはやお約束とな
りつつあるセリフを交互に交わしつつ、途方にくれるしかありませんでした。


【蝉丸 超先生ワープ(2回目)】
【月代 超先生ワープ(1回目)】
【宗一・はるか とりのこされる】
【時間→昼くらい】
【蝉丸と月代の行き先の一致は不明】
390セリオの思惑 修正です:03/04/02 22:54 ID:u62UnZZj
>>383-384 「セリオの思惑」修正

>「アルルゥ待て! オレだ!!」
のあとに、

 現れたのはアルルゥもカミュも顔見知りの、ユズハの兄オボロだった。

上の文章を追加でお願いします。これがないとすごいわかりにくい。
あ、「改訂版投下用スレッド」に投下した方がよかったのかな……。
391Enumerated Words and thinkings.:03/04/02 23:07 ID:9xkQf/xB
申し訳ない、訂正です。
>>385の二段落めを以下に置き換えてください。
これないと分かりづらいですよね……。

 ここらへんで、不肖の近況なぞちょいちょいとご報告しましょう。
 ひょんなことから世界一のエージェントである私那須宗一はあろうことか
残金124円の刑を処されまして、不本意ながら明らかに宵越しの金を持っ
てなさそうなセミマル・サカガミ(でも一番金持ってる)、ツクヨ・ミイデラ(ま
ああんなことあったからね)、ハルカ・カワシマ(なんでくっついてくるんだよ)
と行動を共にしている身であります。最初は蝉丸にぴったりくっつく事でコ
バンザメ戦法……いやいや蝉丸の撃墜ポイントを妨害しようと画策したわ
けなのであります。事実、先ほども不肖の立てた作戦を横取りしようとして
いた蝉丸を辛くも阻止、痛み分けとは聞き捨てなりませんが結果的にポイ
ントを半々にすることで決着いたしました。となれば撃墜数に応じて金券を
戴けるシステムの恩恵に見事あずかれる事になるのですからこのおっさん
とペアを組む理由の少なくとも半分は無くなった訳です。然らばもののふの
末裔な私、二言を挟まずにきっぱりとパーティから外れて単独行動を試み
ても文句は言われなさそうですが――やはりこの男の並々ならぬ能力を捨
てるのは非常に惜しい。百計を巡らして何とかこちらの好いように扱ってゆ
きたいところではあります。約二名のおまけはどーにかしたいところだが。
392光岡推参! 1:03/04/03 00:18 ID:R01DP80z

 後ろを振り向いてもオボロの姿は見えない。
「……ガチャタラ、うまくやってくれたみたいだね」
「お兄様はいないのですか?」
「うん、見あたらないよ」
「……それでは、すみませんが一度ムックルちゃんを止めていただけませんか?
 今のうちにユズハを下ろしてほしいのです」
「ダメ!」
 アルルゥが怒ったように言ったが、ユズハは「お願いします」と繰り返した。
「多分──お兄様はユズハがいるかぎり追いかけてくると思います。ですから、ユズハは一旦お兄様とお話ししてみます」
「でも……」
「大丈夫。お兄様はユズハを傷つけたりはしませんから……」
「そりゃまぁ、そうだろうけど……」
 なら三人で待とうというアルルゥとカミュの意見を頑なに拒否し、懇願するユズハに、アルルゥとカミュも、もしかしたらオボロはユズハを鬼にするために追いかけていたわけではないのかもしれないという気持ちになってきた。
 遠くからだんだん近づいてくるオボロの「ユズハーーーーーっ」という必死な叫びが決め手になって、ユズハは一人で地に降りた。
「二人とも、がんばって……ムックルちゃんも」
「ん。ユズっちも」
「無理しちゃダメだよ」
「ヴォフっ」
 雨よけにと二人は上着をユズハに被せ、そしてムックルに乗り遠ざかっていった。
 にこりと手を振って見送ったあと、ユズハは安堵の吐息をついた。
 ユズハが降りたのは、兄のこともあったが、──アルルゥも気づいていただろう、ムックルのことだった。
 鬼ごっこが始まって以来、満足いくまで食事を採っておらず、ほとんど三人を乗せて移動していたムックル。ユズハ一人が降りれば、幾分は楽になる。
 兄の真意は、本当はわからない。自分を鬼にしようとしているのか、そうでないのか。
 どちらにせよ……ゲームを終わりにする覚悟もできていた。
「ユズハ!」
 追いついたオボロが、若干息を切らせながら笑った。背後ですべるように走ってきたセリオが音もなく止まる。
「もう安心だ。今すぐユズハを鬼にしてやるからな!」
 一歩、踏み出したその瞬間。
393光岡推参! 2:03/04/03 00:19 ID:R01DP80z

「待て!」

 ジャーン、という効果音を背負って登場したのは──
「光岡様……?」

 例の装置を使われそうになり、思わず焦って飛び出してしまったのが失敗だった。
 そのせいで警戒されて逃げられ、見失ったユズハたちの気配。
 焦ってはいけない。シンと心を研ぎ澄まし──待つ。
 なんのはずみか、神のはからいか、装置の効果は唐突にとぎれた。
 同時に、光岡は駆けた──ッ!
 その勢い、まさに疾風怒濤。邪魔な木を避け、裂き、雨をはじき飛ばし、光岡は一筋の風となり一直線に彼女の元へ──。
 さすがに息が切れている。体内の生命樹が、降る雨に怖じ気づいているのがわかる。
 だが──そんなことは無に等しいことだ。長い前髪が汗で額に張り付いた不快感もどこか遠い。
(間に合った……)

「ユズハさん、この俺が来たからにはもう安心だ!」
 あと少し遅ければ、そこにいる得たいの知れぬ男が彼女に襲いかかっていただろう。
 間に合ったのだ。それだけが実感としてある。
 しかも彼女は、一度会話を交わしただけの自分の名を呼んでくれた。
 久々の充足感。口元の笑みを押さえられない。
(ここで助けられなければ男ではない……な)

「貴様何者だ!」
 オボロがこめかみに血管を浮かべて光岡に向き合う。
「ユズハさんを守る者……とだけ言っておこう」
「なんだとぉ!? 貴様も鬼の分際でぬけぬけと……。
 貴様のようなヤツがいるから、ユズハはいち早く鬼になるべきなんだッ!
 ユズハの身の安全を考えたとき、鬼になってしまうのが一番だとわからないのか!」
 久瀬論をまるで自分が考えたことのように言うオボロに、光岡は一笑した。
394光岡推参! 3:03/04/03 00:21 ID:R01DP80z

「本当にユズハさんを思うなら、彼女の意志を尊重し、それを助けてやる……
 それが粋というものではないのかっ!
 俺はユズハさんの身の安全だけではなく──それと同時に、彼女の努力を、意志を、心を守りたいのだ!
 ──それが今の俺の存在価値だ!!!!」
「な……」
「それよりもなんだ。お前こそ呼び捨てとはユズハさんに馴れ馴れしいな」
 光岡は剣をかまえた。
「見たところユズハさんにつきまとうチンピラ……といった風情だが」
「それは貴様の方だ! 俺はユズハの……」
「聞くまでもない。ユズハさんを鬼にしようとする者は成敗してくれる」
 先手を取ったのは光岡だ。目にもとまらぬスピードで一瞬の間にオボロの目の前に跳躍し、剣を振るった。が、ぎりぎりで見極めたオボロは両手の剣でそれを受ける。
「く……」
 双方いったん後ろに飛び退き、無言のまま睨み合う。だがそれも刹那だ。
「殺(シャ)────ッ」

 が。

 飛び出しかけたオボロがつんのめって倒れ、光岡が見事な空振りをした。
 オボロの上着を、セリオがしっかりと掴んでいる。
「オボロ様、お待ち下さい。──二度目はゲームから追放との通告を受けられたはずです」
「離せぇっ! ゲームなんざどうでもいいっ。ユズハをっユズハを守らないと……っ」
 じたばたと無様にもがくオボロ。上着がミシミシと音を立てている。
395光岡推参! 4:03/04/03 00:22 ID:R01DP80z

 光岡はその隙にユズハを振り返った。
「逃げよう」
「え……」
「雨はじき、ひどくなるだろう。身体に悪い」
「あ……はい」
 気圧されるように頷くユズハ。
 とはいえ、ユズハはとても走れる身体ではない。
 口惜しいが、鬼の我が身では、抱えて走ることはおろか手を引くことすらできないのが現状だ。
 一瞬考えたあと、光岡は剣を構え、

「斬ッ!!!」

 手近の木々を次々に切り倒し、オボロとの間に些少ではあるが壁を作る。そしてその中の手頃な一本を二メートルほどの大きさに断ち切った。
「ユズハさん、そのまま真っ直ぐ進んだ先に木が倒れている。それに座るんだ。そしてしっかりと身体を固定してくれ」
 光岡の真剣な口調に、ユズハは慌てて言うとおりにした。それを確認すると、光岡はおもむろにユズハが座った丸太の逆端を持ち──

「ぬぉりゃあああ!」

 ──上げた。
 どうだ、これで触れずとも連れて逃げることができる!!
「み……光岡様?」
 状況を察し、ユズハが不安な声を上げた。「大丈夫ですか……?」
「案ずるな。強化兵はダテじゃない!!!」
 ユズハが乗った丸太を抱えて、光岡は猛スピードで走りだした。

【アルルゥ・カミュ(+ムックル):ユズハと別れて逃走】
【光岡:ユズハを乗せた丸太を抱えて逃走。屋根のある場所を目指す】
【ユズハ:混乱しつつも光岡に連れられ、オボロから逃走】
396光岡推参! 5:03/04/03 00:23 ID:R01DP80z

「待て、くそぉおおお! ユズハぁああああ! セリオ! いいかげん離せーーーーーっ!!」
「申し訳ありません──。
 どうも──オボロ様に斬りかかられたときの後遺症か、腕の回路が不安定のようです」
「くっっそぉおおおおおおおおっ」
 ビリッ!
 ようやく上着が破け、オボロが駆け出したときには光岡とユズハの姿はなかった。
「あああぁぁあぁぁ、ユズハが連れていかれた!
 テメーはオレを怒らせたっ!!」
「──申し訳ございません」

 とりあえず、この怒りをおさめないことにはオボロが単独行動に出てしまう危険がある。
 謝罪の言葉を言いながら、セリオは綾香の言葉を思い出していた。

『私はそういうのあんまり好きじゃないんだけどね。
 男をコントロールするのに、女の涙は武器になるのよ。
 セバスチャンなんか、姉さんの目がちょっと潤んだだけで動揺しちゃって──』

(私はヒトではなく単なる女性型ですが──、一応試してみましょう)
 じわり。
 セリオの目が潤む。僅かではあるが、オボロがひるんだ。
 が、次の瞬間。
397愛と正義の大影流 :03/04/03 00:23 ID:DC5e01bV
「誰〜も知らない、知られちゃいけ〜ない♪」
今まで誰にも気付かれずに街中の建物の中に隠れていた放置コンビのひとり、
御影すばるは桑島高子に頼まれ、屋台に買い物に出かけていた。
………しかし、
「ば、ばきゅ〜、道に迷ったですの…」
──無理もない。
今まではすばる以上に影が薄かった高子が買い物兼偵察係で、
すばるはロクに外に出なかったのだから…
「このままでは大影流の奥義を見せるどころか、なにも出来ずにリタイアですの…」
最初の意気込みはどこへやら、すばるは寂しさに押しつぶされそうになっていた。

 それでもなんとかしてお使いを果たそうとするすばるは、いつのまにか街を抜けて森に入っていた。
落ち葉をざくざくと踏み越えしばらく歩いたのち、待望の屋台の明かりが見えてきた。
「ばきゅう、やっと見つけたですの☆
でも……何か騒がしいみたいですの──」
すばるは喜んで屋台に駆け出そうとしたのもつかの間、屋台がざわざわと騒がしいことに気が付いた。
398愛と正義の大影流 :03/04/03 00:24 ID:DC5e01bV
 その森の屋台では、ハクオロが絶体絶命のピンチを迎えていた。
「お客さん、まさかタダ食いしようってワケじゃないですよね?」
普段は気弱なタイプのアレイだが、ルミナの前で客に舐められるワケにはいかないのか、食い逃げ予備軍のハクオロ達をつぶらな瞳を細めながら睨んでいる。
「待ってくれ、確かに懐に金子が…金子が……」
何故か財布が見つからず、必死になって探すハクオロ。
「ねえ、美凪はお金もってないの?」
「…私のお米券は…換金不可ですから…
でも…たしか私のお財布は…服の中に…」
ハクオロはついに自分の財布をあきらめ、
美凪の服のポケットを叩いて財布を探しだしたとき、
ハクオロの匂いでも嗅ぎつけてたのか、どこからともなくエルルゥがやって来た。
399光岡推参! 6:03/04/03 00:24 ID:R01DP80z

 ジャーーーーー!

「うわっ、冷てっ!! なにすんだ!!」
 端から見ればまるで怪光線のごとく、目から水流が迸ってしまった。
「重ね重ね申し訳ありません。水流調整を間違えたようです。
 ──ご安心ください。綺麗な、ただの水ですから」
 幸いオボロに『水流調整』の言葉は聞こえなかったようだ。
 文字通り頭を冷やされて、オボロはようやく怒鳴るのをやめた。結果オーライ。

「オボロ様。ユズハ様の去った先なら追跡できます。
 ほんの微小の足跡でも、私なら判別することが可能ですから。幸い本日は雨ですし。
 ──追いかけましょう」
「くっ、わかった! 急ぐぞ!!」

【オボロ:やっぱりセリオに振り回されつつユズハを追う】
【セリオ:オボロを制御しつつ、ユズハを追う】
400愛と正義の大影流 :03/04/03 00:25 ID:DC5e01bV
「助かった。エルルゥ、財布をもっていないか?」
とりあえずの窮地から逃れられると思い、安堵のため息をつくハクオロ。
──だが。
「………ハクオロさん、何をやっているのですか?」
エルルゥは出来る限り穏やかで、それでいて嫉妬いっぱいの声で尋ねた。
「何をって───でぇ!!」
そのときのハクオロは丁度、美凪の腰のポケットに手を当てているところだった。
「…身体検査…私の体の隅々まで……」
美凪が顔を赤らめながら答える。
「ハクオロさーん!私がいない所でよくもよくも!!」
我を忘れたエルルゥがハクオロに飛び掛ってくる。
「にょわわ〜!美凪、屋台は安全なんじゃなかったのか?」
「みちる、私達三人には安全な所なんてないの…」
「にょわ。じゃあ、逃げるぞ!美凪、ハクオロ」
逃走する美凪とみちる。
「金は払うっ、金は必ず払うから〜〜!!」
ハクオロはなんだかんだ言いながら、しっかりエルルゥから美凪達と一緒に逃げ出した。

「わたくしとルミナ様の屋台で食い逃げとは許しませんわ〜」
怪力のアレイは屋台を引っ張ったまま、ハクオロ達を猛ダッシュで追いかけ始めた。
土煙をあげた屋台は優に軽自動車なみのスピードを出して、不埒な食い逃げ犯三人組ににどんどん迫ってゆく。
「待って、落ち着きなさいアレイ!」
ルミナも慌ててアレイと屋台を追いかける。

 そんな事情などつゆ知らぬすばるは、暴走する屋台が哀れな三人組に迫っているところを見過すわけにはいかなかった。
401愛と正義の大影流 :03/04/03 00:25 ID:DC5e01bV
「知らなかったこととはいえ、御免なさいですの…」
半壊した屋台の前で、すばるがルミナに土に付くほど頭を下げて謝った。
「気にしなくていいのよ、悪いのは全部アレイのせいだから」
「そ、そんなあ…ルミナさま〜」
屋台の破片を拾い集めていたアレイがルミナに涙声をあげたとき、エルルゥが『進呈』と書かれた包み紙をもってルミナの前に戻ってきた。
「ハクオロさんの逃げた後に置いてありました。
中に入っている宝玉は皆さんの迷惑料として受け取って下さい。
今回、ハクオロさんが支払えなかったお金は必ず明日までに用意するそうです。
それでは、私、ハクオロさんを追いかけますので失礼します」
エルルゥはルミナに宝玉の入った包み紙を渡すと、急いで来た道をUターンしていった。

「ばきゅう☆とっても綺麗な宝石ですの」
すばるが宝石に目を奪われる。
「ルミナ様、この宝玉なら充分壊れた屋台の修理代になりますね」
「まあ、それはそれ、これはこれだから……
──彼らが明日までに3万5千円用意出来なかった場合、どうしようかしらねえ」
ルミナは目を細めながら苦笑した。
402愛と正義の大影流 :03/04/03 00:26 ID:DC5e01bV
【御影すばる 屋台1号を半壊させ、お使いが出来なくなる。高子のところへ戻ろうとする】
【ハクオロ 四日目夜までに屋台に借金3万5千円を返そうとする。エルルゥからは逃げる】
【遠野美凪 ハクオロのお茶目な部分をみて惚れ直す】
【みちる 段々この状況を面白がってきている】
【エルルゥ とにかくハクオロを追いかける。お金は持っていないのか、意地でもハクオロに貸さないのかは不明】
【ルミナ ハクオロに宝玉を貰って、屋台を壊されたことはそれほど気にしていない様子】
【アレイ 食い逃げ犯のハクオロ達をブラックリストに追加する】
【屋台1号 半壊、直せるかどうかは不明】
二日目、夜遅くです。
403名無しさんだよもん:03/04/03 00:27 ID:8LTrTWeX
指摘

ルミナ → ルミラ
404名無しさんだよもん:03/04/03 00:32 ID:R01DP80z
愛と正義の大影流>>
割り込み&紛らわしいことしてスマン。
405 :03/04/03 00:36 ID:DC5e01bV
光岡推参!>392-396 >396 >399
愛と正義の大影流 >397 >398 >400-402

こちらも申し訳ありません。
これからは割り込みしないように気をつけます。
406愛と正義の大影流 3:03/04/03 00:39 ID:DC5e01bV
しかもきれてるし…
「助かった。エルルゥ、財布をもっていないか?」
とりあえずの窮地から逃れられると思い、安堵のため息をつくハクオロ。
──だが。
「………ハクオロさん、何をやっているのですか?」
エルルゥは出来る限り穏やかで、それでいて嫉妬いっぱいの声で尋ねた。
「何をって───でぇ!!」
そのときのハクオロは丁度、美凪の腰のポケットに手を当てているところだった。
「…身体検査…私の体の隅々まで……」
美凪が顔を赤らめながら答える。
「ハクオロさーん!私がいない所でよくもよくも!!」
我を忘れたエルルゥがハクオロに飛び掛ってくる。
「にょわわ〜!美凪、屋台は安全なんじゃなかったのか?」
「みちる、私達三人には安全な所なんてないの…」
「にょわ。じゃあ、逃げるぞ!美凪、ハクオロ」
逃走する美凪とみちる。
「金は払うっ、金は必ず払うから〜〜!!」
ハクオロはなんだかんだ言いながら、しっかりエルルゥから美凪達と一緒に逃げ出した。

「わたくしとルミナ様の屋台で食い逃げとは許しませんわ〜」
怪力のアレイは屋台を引っ張ったまま、ハクオロ達を猛ダッシュで追いかけ始めた。
土煙をあげた屋台は優に軽自動車なみのスピードを出して、不埒な食い逃げ犯三人組ににどんどん迫ってゆく。
「待って、落ち着きなさいアレイ!」
ルミナも慌ててアレイと屋台を追いかける。

 そんな事情などつゆ知らぬすばるは、暴走する屋台が哀れな三人組に迫っているところを見過すわけにはいかなかった。
407名無しさんだよもん:03/04/03 00:42 ID:rma+ivgq
>>406
まだルミナいうか(w
408名無しさんだよもん:03/04/03 00:43 ID:DC5e01bV
愛と正義の大影流、修正版は議論、感想板に載せておきます。
ルミラさん御免なさい。
409名無しさんだよもん:03/04/03 00:44 ID:bh4TZD/r
もちつけ >DC5e01bV
410ショッピング・D:03/04/03 00:58 ID:QX4Ip7pH
「ぱぎゅ〜……。しかし困りましたですの。これでは高子さんに頼まれたお買い物が出来ないんですの」
 心底残念そうな声をあげ、すばるはその場にへたり込んだ。
「え? お買い物? お客?」
 それに反応を示したのは、すっかり商売人気質が染み付いたルミラだ。
「はい……。連れの方に頼まれてお買い物に来たんですの……」
 しゅんとしてしまうすばる。だが、ルミラは微笑みながら。
「ん〜……。確かに料理はできないけど……材料なら、用意できるわよ?」
「材料?」
「ええ。だからラーメンとかハンバーグ、おでんみたいなものはダメだけど、にんじんとかお米とかお肉とか。そういうものなら販売できるわ。どう?」
「え? ホントですの!?」
「ええ。アレイ、冷蔵庫は無事?」
「は、はいっ! ちょっと待っててください……」
 アレイに視線を送ったすばるが見たのは、瓦礫の中から彼女が巨大な冷蔵庫を掘り出す姿。
 どこに隠してあったのかは、気にしてはいけないのだろう。

「……それじゃあ、カレーのルーと、お肉とニンジン、たまねぎとお米をくださいな」
「はいはいちょっと待ってね……」
 掘り出した冷蔵庫に歩み寄り、注文の品を取り出すルミラ。
「はい、2千円に……って、え?」
 食材を袋に詰め、振り返る。
 しかしそこにいたのは……
411ショッピング・D:03/04/03 00:58 ID:QX4Ip7pH

「Thanks,ハイ、これお代ネ」
 すばる……ではなく、微笑みながら代金を渡してくる金髪碧眼少女。
「まいか、D,他に何かほしいものはある?」
「湿布をくれ」
 両頬を痛々しく腫らした男と、
「はなび。はなびやりたい。はなびちょうだい」
 その男におぶわれた幼女が言う。
「OK,OK,それじゃあ……シップを一箱と、花火をワンセットくださいな」
「え……ええ、いいわよ。はいどうぞ」
 瓦礫の中から注文の品を探し出し、手渡すルミラ。
「アリガトウ。それじゃ皆さんオヤスミナサイ。Good night♪」
 ウィンク一つ残し、少女と男、それに幼女は連れ立って去っていった。

「……なんか」
「独特の雰囲気を持ったというか」
「マイペースなご家族ですの☆」

 後に残されたルミラ、アレイ、すばるであった。

【D一家 壊れた壱号屋台からカレーの材料を購入。これからHouseへ帰る】
【湿布と花火も購入】
【壱号屋台 料理の材料などなら購入可能】
【時間・場所 変わらず】
412名無しさんだよもん:03/04/03 00:59 ID:QX4Ip7pH
7割方書き上げたところで屋台が破壊されていました(w
413リスト製作者だよもん:03/04/03 01:14 ID:kXdNNx47
全参加者一覧及び直前の行動(>>411まで)
【】でくくられたキャラは現在鬼、中の数字は鬼としての戦績、戦績横の()は戦績中換金済みの数
『』でくくられたキャラはショップ屋担当、取材担当、捜索対象担当
レス番は直前行動、無いキャラは前回(>>324-327)から変動無しです
fils:ティリア・フレイ、【サラ・フリート】、【エリア・ノース:1】
雫:長瀬祐介、月島瑠璃子、藍原瑞穂、【新城沙織】、【太田香奈子:2】、【月島拓也:1】>>375-380
痕:柏木耕一、柏木梓、柏木楓、柳川祐也、日吉かおり、相田響子、小出由美子、ダリエリ、
  【柏木千鶴:10】、【柏木初音】、【阿部貴之】
TH:藤田浩之、神岸あかり>>332-337、長岡志保、マルチ>>356-358、来栖川芹香、松原葵>>375-380、姫川琴音、
  来栖川綾香、佐藤雅史、岡田メグミ、松本リカ、吉井ユカリ、神岸ひかり、
  【保科智子】、【宮内レミィ】>>410-411、【雛山理緒:2】、【セリオ:2】>>392-399
  【坂下好恵】、【田沢圭子】>>347-351、【矢島】、【垣本】、【しんじょうさおり】
WA:篠塚弥生、観月マナ、七瀬彰、緒方英二>>365-369
  【藤井冬弥】>>374、【森川由綺:2】>>374、【緒方理奈:3】>>365-369、【河島はるか】>>385-389、【澤倉美咲】
414リスト製作者だよもん:03/04/03 01:16 ID:kXdNNx47
こみパ:千堂和樹、高瀬瑞希、牧村南、猪名川由宇、大庭詠美、
  御影すばる>>410-411、立川郁美、九品仏大志、澤田真紀子、風見鈴香、
  【長谷部彩】>>365-369、【芳賀玲子】、【桜井あさひ:2】>>365-369
  【塚本千紗:2】、【立川雄蔵】、【縦王子鶴彦】、【横蔵院蔕麿】
NW:城戸芳晴、ユンナ>>344-346、【コリン】>>344-346、『ルミラ』>>410-411、『アレイ』>>410-411
  『イビル』、『エビル』、『メイフィア』、『たま』、『フランソワーズ』、『ショップ屋ねーちゃん』>>352-353
まじアン:江藤結花、高倉みどり、【宮田健太郎:1】、【スフィー】、【リアン】、【牧部なつみ】
誰彼:砧夕霧、桑島高子>>397-406、岩切花枝、杜若きよみ(黒)>>344-346
   【坂神蝉丸:5(4)】>>385-389、【三井寺月代】>>385-389、【杜若きよみ(白)】>>365-369
  【御堂:6】>>360-362、【光岡悟:1】>>392-399、【石原麗子】
ABYSS:【ビル・オークランド】、『ジョン・オークランド』
415リスト製作者だよもん:03/04/03 01:16 ID:kXdNNx47
うたわれ:ハクオロ>>397-406、アルルゥ>>392-399、ユズハ>>392-399
  ベナウィ、クロウ、カルラ、カミュ>>392-399、クーヤ>>356-358、サクヤ、
  【エルルゥ】>>397-406、【オボロ:1】>>392-399、【ドリィ】、【グラァ】、【ウルトリィ】、【トウカ】、【デリホウライ】>>331-333
  【ゲンジマル】、【ヌワンギ】、【ニウェ:1】、【ハウエンクア】、【ディー:6】>>410-411、『チキナロ』
Routes:湯浅皐月、リサ・ヴィクセン>>360-362、梶原夕菜、
  【那須宗一:1】>>385-389、【伏見ゆかり】、【立田七海】>>374、【エディ】、【醍醐】、【伊藤:1】
同棲:【山田まさき:1】、【皆瀬まなみ:2】
MOON.:巳間晴香、名倉友里、A棟巡回員、
  【天沢郁未:3】、【名倉由依】、【鹿沼葉子:1】、【少年】、【巳間良祐:1】、【高槻:1】
ONE:里村茜>>381-382、上月澪>>381-382、柚木詩子>>381-382、深山雪見、氷上シュン>>332-337
  【折原浩平:4(3)】、【長森瑞佳】、【七瀬留美:1】、【川名みさき】、
  【椎名繭】、【住井護】、【広瀬真希:1】、【清水なつき】>>347-351
416リスト製作者だよもん:03/04/03 01:17 ID:kXdNNx47
Kanon:沢渡真琴、天野美汐、
  【相沢祐一】、【水瀬名雪:3】、【月宮あゆ:4】、【美坂栞】、【川澄舞】、
  【美坂香里:8(1)】、【倉田佐祐理:1(1)】>>370-373、【北川潤】、【久瀬:4】
AIR:神尾観鈴、霧島佳乃、遠野美凪>>397-406、神尾晴子、霧島聖、みちる>>397-406、柳也、裏葉、しのさいか、
  【国崎往人:1】、【橘敬介】、【神奈:1】、【しのまいか】>>410-411


管理:長瀬源一郎(雫)、長瀬源三郎、足立(痕)、長瀬源四郎、長瀬源五郎(TH)、フランク長瀬(WA)、
  長瀬源之助(まじアン)、長瀬源次郎(Routes)、水瀬秋子(Kanon)
支援:アレックス・グロリア、篁(Routes)

毎回微妙にマイナーチェンジをしてるので読んでほしいこと&連絡事項↓

現在スレが436kbです、そろそろ次スレ移行も考えていきましょう。

このリレーは余程の反則(電波で他の参加者を操る、魔法で自分を触れなくする)が無い限り能力使用はOKです。
但し原作外のオリジナル設定は基本的に抜きで。ていうか基本ギャグで済ませましょう。
細かいところに拘るより鬼ごっことしての状況を進める方向で
致命的なミスがない限りは脳内保管しましょう。
NGはできるだけ避けるよう書く話のキャラの前話くらいは読みましょう。
前スレも健在なのでリストをたどれば最終行動はわかる筈なので。
また他のスレのネタは知ってる人はニヤリ、あ、このネタ上手いなーくらいにしておきましょう。
能力に関してグレーゾーンな話を書く際には
『葉鍵鬼ごっこ議論・感想板』 へどうぞ
ttp://jbbs.shitaraba.com/game/5200/

後記
鬼がちょうど半分くらいいですかね。
417補色:03/04/03 01:43 ID:hfkx1E63
「疲れたわっ!」
 異様に爽やかな、それでいて妙に強制力のあるスマイルを浮かべながら
七瀬留美は唐突にそんなことを口走った。
「…一体に何に疲れたのか詳細を説明してほしいんだけど」
 矢島が困った風に聞き返す。いくらバスケットを習得していようがそんな
事を一瞬で悟れるほど人間うまく出来てはいない。『疲れたわっ!』が先ほ
ど繰り広げられた一戦を差しているのか、幕末のアームストロング砲よろし
くバンブーブレード(竹刀)を正確無比に繰り出していた事(本人はあくまで
も『ツッコミ』と形容しているが)を差しているのか、わずかに島内に配置さ
れた食料を探すのにも疲れたのか――
 はたまた乙女という擬態を装うのに疲れたのか。
「擬態いうな!」
 ぐべしっ。
「いだっ」
 と、矢島の一人称回想とも三人称文体ともとれぬ文章すら見分けがつか
ないほど七瀬(漢)は疲弊していたらしい。

418補色:03/04/03 01:43 ID:hfkx1E63

 当座の目標を獲物ニンゲンから食料及び休息所に変更しつつ、七瀬留美
と矢島のサムライ・奴僕(『まだいうか』『俺何も言ってないぞ!?』)もとい
凸凹コンビが突き進む。七瀬嬢、キャラクターが若干清(略)化しつつある
のは多分単純にテンパっているせいだろうか。若しくは相方の矢島のコ
ミュニケーション能力がパワー不足かもしれない。
「(なんか俺も疲れたよ……垣本…藤田…神岸さん……会いたい)」
「どしたの?」
「ああいやいやなんでもないですじょ!?」
 勿論、所詮脇役でしかない(名前すら与えられていない!)矢島に折原
並のストレンジさを強要するのがそもそもも間違いというもの。そこらへんは
流石に七瀬も承知しているのだが、承知したうえでボケの応酬を期待しつ
つ矢島に振ってしまうところが何とも脱漢化を衰退させていると言えよう。と
いうかそのロジックは乙女というよりも芸人のそれに近いものがある。
419補色:03/04/03 01:44 ID:hfkx1E63

「……七瀬さん」
「矢島君、言わずとも分かってるわ。――海よ!!」
 そろそろ二人の空腹が冗談では済まされないレヴェルに達そうかという
時分、なんか唐突に海に辿り着いてしまった。大海原に沈む太陽は矢島す
らも思わず感嘆の声を上げずにはいられないほど綺麗だった。乙女みたい
な生物・七瀬に至ってはもうどうしようもない。彼女は思いつくおよそ全ての
『乙女っぽい』シチュエーションを描いては消し、描いては消して次に行動
すべき内容を策定している。その思考が既に乙女たらしめていないと誰が
ツッコむべきであろうか。それは誰にも分からない。
 一方矢島とは言うと、
「(海→海水魚→焼く→食べる→(゚д゚)ウマー)」
 などとサルバトール・ダリも裸足で逃げ出す超現実的思考に捕らわれて
いたりした。この二人による強烈な対比の思想が後の現代アート界に大き
な影響を残すわけも無く、とにかく腹をふくらませないことにはあと4時間ほ
どで両名は行動できなくなるだろう。
 彼らは何を選択し、何を捨ててゆくのだろうか。


【七瀬(漢)・矢島 海】
【両名の空腹臨界点 あと4時間】
【時間→夕暮れ】
「ささ、まずは一杯」
「おうおうおうすまぬな北川殿」
 住井の手にしたグラスに清酒・禍日神がなみなみと注がれた。某国皇帝
によって開発・製造されたそれは、同国傭兵によって初年度製造分の殆ど
が飲み尽くされそのバケモノじみた呑みっぷりを湛えて名づけられたという
由緒ある清酒である。むろん彼ら二人はそんなこと知る由も無いのだが。

「んでは」
「鶴来屋旅館、巨大ビックリハウス化計画成功を祈って」
「乾杯っ」

 グラスに入っていた液体が万有引力に従って住井護の体内へと消えて
行く。所要時間わずか10秒。完飲の証に住井は超特大のげっぷを一発吹
き出した。北川が屁を以ってこれに応じる。
「ははは、護者も存外汚らしい性癖をお持ちじゃのう」
「潤者こそ何を申される。不浄の穴たるアヌスから気体を噴出するなぞ宇宙空間にあってはまさに命取り。貴様もしやオールドタイプだな?」
「馬鹿な。この私に時が見えぬと申すか護者は。よせよ、兵が見ている」
「おうおう、あれほどの量で潤者は召されてしもうたか。貴殿もアルコールが弱くなり申したなぁ――っと、思わず敵製用語を用いてしまったわい」
「かくいう貴殿こそ肝臓に到達したアルコールをアセドアルデヒドに変換しきれず血液循環で脳内に達したアルコールたちによって神経細胞が麻痺すなわち酩酊状態になっているではないか」
「またまたぁ〜一体何を言っているんだい潤たんは? っていうかカンニングペーパー片手に読み上げてもダメだぞ。せめてテレプロンプターを使い給え」
「んなもんあるかっ! 今ココにあるものといえば清酒・禍日神に大吟醸・来栖川の怒りにその他各種アルコール類スピリタスもあるなーんでそれからいろんなつまみと米四合ト味噌ト少シノ野菜だけだね。東に病気の人あれば行って看病してやりたい気分だNEEE!!!!!!!!」
「ふう、またお前こと北川潤はそうやってみーやじゃーわけーんずぃーを引用するんだからやってられんわ。そんなに花巻が好きですか? 好きですか、花巻。Do you Love HANAMAKI? んふん?」
「馬鹿な! 俺が好むところの土地はうつくしまふくしまと風の谷だけじゃ! 遥か天空を目指してイカロスの如き挑戦を午後の日差しの中で夢想しつづけるパズー・住井にだけは言われたかねぇっすよもー」

 あーやってられんわーとかのたまいながら大吟醸に手を付ける北川。
 と、住井も同じ事を考えていたらしく――偶然、手が触れあった。

「や、潤君…」
「護。……呑むのか?」
「でも、潤君が先に手を付けたんだから、潤君から先に呑んでよ…」
「そんなわけにはいかないだろ。ほら、コップ貸せよ」
 潤は護のコップに酒を注ぐ。
 手渡す時に再度手が触れ合う。
「潤君…」
「護…」
 こうして二人は禁断の園へ一歩足を踏み込む事に――


「なるかぼけがぁああああ」
「んんだこらあぁやんのこああああ」

 ならなかった。
 それぞれがそれぞれに向かって死の咆哮を叫ぶ。
 これから文化大革命さながらの大殺戮劇が始まろうとしているのだ。

「かかってこんかいこのどげどーがー」
「ぬがああやんのかこるぁー」
 狂気と正気の狭間で二人はグラスを突き立てる。
「ぬがあああああああきえーーーあーまずは一杯」
「はいはい」
 
 そんな時空を越えた言葉遣いの応酬で宴会は続いてゆく。


【北川・住井 一心不乱の大宴会】
【時間→午前7時ごろかと】
424日の出〜昼:03/04/03 02:48 ID:oR9F2eQM
相田響子 篠塚弥生  朝起きて、由綺捜索開始。日の出直後。
ハウエンクア まなみ 落とし穴の中。夜明け直後。

ゲンジマル 混戦の末、郁未に捕まる。一人で森の奧へ。朝。
ニウェ   ゲンジマルとの追いかけっこ終了。一人で森の奧へ。朝。
エリア リアン 朝八時。リアンは魔法で芹香を捜索中。
瑠璃子 美汐 森の中の教会。鐘楼に隠れながら、仲間二人の帰りを待つ。朝十時前後。

皐月 夕菜 どこかの家の中で、チキナロ発見。らっきー。時間不明。
霧島姉妹 海岸沿いを散歩中、巳間を睡眠薬メスで撃沈。散歩続行。ルールに違反してないのかな? 時間は不明。

クロウ 郁美 海岸沿いを、ウォプタルにのって何かの建物に向かっている。昼近く。

少年 郁未たちとの戦闘→鬼になる。雪見を追うか? 昼。
雪見 森の中で、不自然な食料に困惑中。昼。
岩切 森の中、適当に昼食を取る。翌日の雨を感知、やる気が出る。昼。
和樹 晴香 祐一一行を撃退し、屋台を探し始める。森。昼。

梓 結花 森の中、小屋を発見。中に。昼。
かおり 森の中の小屋に入っていく梓と結花を発見。暴走。襲撃決意。昼。

反転ユンナ 黒きよみ 小山から、水を探しに出発。秘密兵器所持。昼。
コリン 反転ジュースにより反転中。小山にいる。反転している時間は不明。昼

名雪 理緒 美咲 さおり 猫騒動。名雪が二人ゲット。どこかの小屋の中。昼。
彰 冬弥に恨まれる。場所不明。昼。もう、彼に帰る場所は無い。

マナ 醍醐 森の中で鉢合わせ。マナ、ピンチ。昼。

ドリィ グラァ かなりヤバイ姿。玲子に追いかけられている。昼。
玲子 腐女子満開。双子を追って、背中に矢をくっつけて、どこまでも。昼。
425昼〜午後:03/04/03 02:49 ID:oR9F2eQM
沙織  だだっ広い平原。可塑性粘液の打撃から回復。祐介の追跡再開。昼頃。
真紀子 屋台零号車でジャージ購入。閃光手榴弾×二購入。昼頃。
芳晴 由美子 壱号屋台で食事中。由美子、ルミラの正体を聞いてびっくり。昼頃。

柳也 裏葉 海岸へ向かう。対神奈用の秘策があるようだが? 昼すぎ。
芹香 綾香 ダウジングで食料探索。示した方角に進んでいく。昼過ぎ。
友里 巡回員 森と平野部の境目→どこかへ移動中。昼過ぎ。
ベナウィ 晴子 森の中。御堂をやり過ごして、海岸へ向かう。昼過ぎ。

あさひ 白きよみ 彩 草原。緒方兄妹に置いてけぼりにされる。昼過ぎ? きよみと彩は、激しく空腹。
英二 理奈から逃走中。草原から丘へ。素晴らしい逃げ足。空腹。昼過ぎ?
理奈 英二を激しく追撃中。草原から丘へ。怒りのため人を超えている。多分空腹。昼過ぎ?

蝉丸 月代 超先生神社からどこかにワープ。行き場所不明。共通するかも不明。昼くらい。
宗一 はるか 超先生神社。いきなり二人が消えて、愕然。昼くらい。

冬弥 由綺 七海 平原と森の境目。シェパードのおかげで七海と合流できた。時間は不明だが、昼以降

真琴 森の中。山桃三十個ほか、食料たっぷりゲット。午後。
ひかり 真琴から山桃のお裾分けをもらう。午後。

あゆ 舞 灯台の中でがんじがらめにされている。ひでぇ。午後。
おた縦 おた横 灯台から投げ捨てられた詠美の生原稿を追ってどこかに消える。午後。
浩之 志保 琴音 由宇 詠美 サクヤ 灯台から脱出。午後。
牧村南 風見鈴香 高倉みどり ぴこ 灯台近辺で鬼を発見。逃走。午後。

伊藤 ジョン一行が潜伏していた建物の中。貴之を捕まえる。良く、北住の罠にかからなかったな。時間不明。
貴之 伊藤に捕まる。以上。時間は二日目、日暮れより前。ほか不明。
426夕方〜日暮れ:03/04/03 02:51 ID:oR9F2eQM
垣本 平原。川を見る。誰かの声に起こされ、行動再開。夕方。
マルチ クーヤ エルルゥから逃げるため、懐中電灯の置いてあった鍾乳洞へ。夕方。
往人 千紗 ウルト リサを取り逃がす。信頼関係成立? 夕方。

耕一 瑞穂 楓と別れる。祐介探しを再開。夕方、場所不明。
楓 耕一たちと別れる。初音探しを再開。夕方、場所不明。

葵 森の中。食料と湿布薬確保。教会へ戻る道中、月島兄と邂逅。電波攻撃を受けるが、管理者たちに助けられる夕刻。
月島兄 葵を電波で拷問にかけるが、HMシリーズに取り押さえられ、連行。夕刻。

岡田 吉井 松本 雅史 商店街から出る。行き先不明。日暮れ前。
ヌワンギ 商店街。雅史の策により、頭をぶつけ気絶。日暮れ前。
ビル 商店街。松本のパンツ目撃。眼福。つか、本当に背景だな、これ。日暮れ前。

エディ 敬介 夕暮れ時の海岸で、天女を発見。見事に彼女らの策にはまり、ほどよくボコにされる。
葉子 神奈 サンセットビーチに感動。覗きを発見。撃沈。

神尾観鈴 海岸そばの林→どこかへ。訳もわからないまま、とにかく逃げている。夕暮れ。

留美 矢島 空腹臨界点まで後四時間。海岸に到着。日暮れ中。
427夜〜深夜:03/04/03 02:52 ID:oR9F2eQM
祐介 電波による直接攻撃のお叱りを受けに、管理人室へ。夜。
雄蔵 行方不明。郁美を見つけたか? 時間は二日目夜まで進んでいる。
佐祐理 灯台のそば。七味手榴弾の影響により、観鈴を取り逃がす。意地でも捕まえると決意。とりあえず夕食。夜。
清(略 田(略 死闘中、D一家と接触。禍日神? 夜。死闘も残り少しで終わる。鬼になったことには気付いていない。

ティリア サラ 山道→? 真希の追跡を逃れる。茸を落とす。睡眠不足。サラは、知らずのうちに鬼になっている。夜。
真希 まさき 山道。ティリアたちを逃がす。茸ゲット。空腹の真希、まさきに食べ物を無心。夜。

智子 みさき 初音 好恵 祐一 郁未 由依 久瀬 現在、チーム編成会議中。夜。
香里 鬼ごっこはお腹いっぱい。チーム編成会議に参加。夜。
香奈子 智子たちとの合流場所へ向かう。瑞穂に、祐介のことを教えてあげるのが目標の一。夜。
栞 香里に捕まり、辛いものセットと共に落とし穴の中へ。夜。

折原浩平 長森瑞佳 トウカ 伏見ゆかり スフィー 突如来襲のカルラに困惑。トウカ、クケー。夜。

シュン あかり 駅。明日の天気を知る。傘と食料ゲット。疲れたため早々に就寝。二日目夜。

茜 詩子 澪 零号屋台にて夕食&買い物。バイクのガソリン購入。重いよ。夜七時。

カルラ さいか 壱号屋台で夕食を取り、移動。夜遅い。

ハクオロ 美凪 みちる 壱号屋台で夕食、お代に困る。エルルゥ来襲。お題をつけにして逃走。夜遅い。
エルルゥ 破壊された屋台の弁償費として、宝玉を一個残して、ハクオロたちを追っていく。夜遅い。

すばる (高子) すばる、壱号屋台破壊w。カレーの材料を買おうとしたら、D一家と出会う。夜遅い。
D一家 破壊された壱号屋台にて、カレーの材料と湿布、花火購入。HOUSEへ戻っていく。夜遅い

デリホウライ 御堂に捕まった後、どこかへ。現在地不明。時間不明だが、恐らく夜。
428深夜〜三日目 および時間不明:03/04/03 02:53 ID:oR9F2eQM
巳間 海岸。高槻をタッチして、柳川追撃開始。深夜。
柳川 海岸。職務放棄して巳間から逃げる。天蓮華を食らう。疲労度高。深夜。
高槻 繭 海岸。高槻疲労困憊につき、爆睡中。繭は、おじさんと、いっしょ。深夜。

リサ 御堂 林。追いかけっこ始め。とりもち銃残弾三→二。雨が降ってきたら御堂は危険。三日目午前三時。

北川 住井 ダンジョンから脱出。管理人室を発見→退室。ホテルを罠だらけにする。三日目明け方。

アルルゥ カミュ ムックル ユズハを後に残して、去る。ガチャタラは? 三日目早朝。雨。
光岡 ユズハ 手に手を取って、オボロから逃げていく。屋根のある場所を探す。三日目早朝。雨。
オボロ セリオ セリオは面従腹背。ユズハを追っていく。ガチャタラ撃墜。三日目早朝。雨。

ダリエリ 麗子 鬼ごっこ始め。ダリエリは相変わらず仮面。時間不明。場所不明。
夕霧 いきなり消えた二人に驚いている。度の合ったメガネをもらう。時間場所不明。
健太郎 なつみ 時間場所共にまったく不明。とにかく同行中。
429書き手さんだよもん:03/04/03 02:54 ID:oR9F2eQM
まとめ終了。
少しは見やすくなったでしょうか?
>>419
までの状況です。
430名無しさんだよもん:03/04/03 03:06 ID:7QpmvqlL
めっちゃ乙!!
431名無しさんだよもん:03/04/03 03:11 ID:0SEsFMPq
烈乙
なんと言うか凄まじいですな。
432名無しさんだよもん:03/04/03 03:40 ID:NrPkegQM
乙。
補足すると
ダリエリvs麗子と夕霧 は>>122『純愛(PURE LOVE)』より後なので
時間は2日目夕方以降のようです。
433はい、おっけーです☆:03/04/03 04:02 ID:p0NDCT4p
すた すた すた
「ちょ、ちょっと〜〜」

時はもうすでに夕暮れ。ここは森の中。そこら中に枝や葉が落ち、根がうねうね露出してたりする。
(なのに……)

すた すた すた
「す、少し、待ってくれません?」

目の前を歩くハイヒールの女性は、
(朝から歩きっぱなし、その上ハイヒール!? しかも昨日寝てないのにっ)

すた すた すた すた すた
「ご休憩なら、お好きにどうぞ。プレスに付いて来てほしいなど、始めから言っておりません」
かけらもペースを乱す様子が無かった。

434はい、おっけーです☆:03/04/03 04:02 ID:p0NDCT4p

明け方から始動した弥生と響子は未だに由綺の情報をただの一つも掴めずにいた。
一応幾人かの人間には会った。
だが、その答えは、出会っていない見かけていない、
さらには森川由綺など知らない、ばかりであった。
(以外に知名度が低いのかしら……)

日本を代表するアイドルを知らないものが多いことは響子にとっても予想外。
だが、それ以上に篠塚弥生の由綺に懸ける執念は既知の外に位置する事柄。
当然予想なんか出来るはずもない。

(人を見かけると見境無く近付くし…相手が、鬼かどうかも判らないのに……)
今のところ出会った数名は皆鬼ではなかったが、少しは注意してほしい、とも思う。
(それだけ、森川由綺が大切ってことかしらね。それとも元々鬼ごっこなんかどうでもいいとか……)
そういうことなら判らなくは無い。スクープになりそうなネタと、鬼ごっこ。
どちらかと問われれば自分は迷わずネタを選ぶだろう。

(ま、まだ2日目だしね。鬼なんてそんなに多くないのかも)
彼女は知らない。実はこの時間帯、既に鬼は半数近くに達していたりする。
そして、

すぐ側にも襷をかけた男が隠れていた。

「し、篠塚さんっ鬼ですよっ」
木の陰からいきなり現れた鬼に、逃げ出そうとする響子。
しかし弥生は一言、


「それが、何か?」

そう告げるとそのまま鬼に向かって歩いていた。
435はい、おっけーです☆:03/04/03 04:03 ID:p0NDCT4p
「空からなんて……」
弥生を見捨てるかどうか、一瞬迷ったとき空から金髪の女性が頭上から降りてきて、
「たっち、です」
あっさり捕まってしまった。
とにかく疲れていたことが災いしてか、目の前の鳥人間が大スクープだとは思わないらしい。
座り込んで、呆然としていた。

一方で弥生は素早く襷を掛けると、早速森川由綺の情報収集にいそしんでいる。しかし、
「もりかわ、ゆき? 知らないな…」
「申し訳ありません、こちらの世事は……」
「ご存知、ありませんか……」
また不発。少しいらだちながら、由綺の容姿を伝えようとしたその時、相手側の少女が言った。

「にゃあ☆目付きの悪いお兄さんも、天使のお姉さんも知らないですか? 森川由綺。
うちにはテレビ無いですけど…千紗、この間お兄さんの同人誌刷ったから、よ〜く覚えてますですよ」
「……同人誌、ですか?」
急な言葉に驚き、ただオウム返しに単語を放つ弥生。
そして、
「はいです。表紙フルカラー、84Pの大作☆ 森川由綺と、緒方理奈2大アイドルが

『監禁、陵辱で奴隷化、しかもレズシーン有り』

というので冬コミ一番の話題になった大傑作です、はい☆
今度大増刷して下さるので千紗の所は万万歳です♥」



時が、  止まった。
【往人、ウルトリィ それぞれ、弥生、響子を捕まえる】
【弥生 とある情報を入手 和樹の未来は…。・゚・(ノД`)・゚・。】
436まいかのにっき:03/04/03 04:10 ID:I36NfTbX
○月×日△曜日 晴れ

 昨日の分を書けなかったので、今日はたくさん書こうと思います。

 まいかはさいかお姉ちゃんと一緒に観鈴お姉ちゃんに誘われて、夏休みの旅行で鶴来屋のリゾートアイランド予定地というこの島に来ました。
 そうしたら突然すごいたくさんの人と鬼ごっこをすることになりました。
 お姉ちゃんたちと一緒に逃げようとしたけど、あんまり人が多いので別れ別れになってしまいました。
 お姉ちゃん、病み上がりなのに心配。

 とりあえず捕まってはいけないと森に行ったけど、迷ってしまいました。
 ずーっとうろうろしているうちにだんだん暗くなっていき、お腹も空いてきたけど、突然出てきたお姉さんに助けてもらいました。
『HM-13』っていう名前みたいで、耳に変わったでっぱりを付けたお姉さんです。その人の姉妹がたくさんこの島の中に隠れていて、困った時には助けてくれるらしいです。
 お姉ちゃんのことを訊いたら、大丈夫だって。誰かと一緒だと思うし、どうしようもない時はお姉さんの妹の人が助けてくれるそうです。
 
 お姉さんからもらったお菓子を食べて、歩いているとそのうちヘンなおじさんと会いました。
 突然草の間からぬうっと顔を出し、まいかのことを見つけたらものすごい勢いで追いかけてきました。
 初めての鬼との対決です。けど、まいかはか弱い女の子。永きに渡る凄まじきデッドヒートの末、木の根っこにつまづいたことが原因でとうとう捕まってしまいました。
 なのにディーはまいかのことを手放そうとせず、ずーっとゴロゴロ転がっていきました。
 そこから先はあんまり覚えていません。まいかとディーは寝ちゃってたらしいです。


(中略)

437まいかのにっき:03/04/03 04:11 ID:I36NfTbX
 ぬぐぃそむかみとかいう怖いお化けを退治した後、まいかたちはお家に帰りました。
 途中壊れた屋台を発見したのですが、機能に問題はないようなので万事オッケーです。レミィお姉ちゃんはカレーの材料、まいかは花火、ディーは湿布を買いました。
 両頬の怪我が痛いようです。ちょっと心配です。ディーだから大丈夫だと思いますが。

 お家ではレミィお姉ちゃんがカレーを作ってる間、まいかとディーでトランプしてました。
 けど、ディーはゲームを何を知りません。いい歳して。仕方がないので、ババ抜きや大富豪を教えてあげました。けど、あんまり盛り上がりませんでした。
 次はセブンブリッジやポーカー、ブラックジャックを教えてあげました。けど、あんまり盛り上がりませんでした。
 仕方がないのでずっと神経衰弱やってました。けど、どういうわけかディーはすごく強いんです。まいかも観鈴お姉ちゃんとの戦いで鍛えられているので自信があったのですが、木っ端微塵に打ち砕かれました。
 卑怯です。絶対何かイカサマしてます。証拠は無いけど、見つけたら叱ってやります。

 レミィお姉ちゃんのカレーが完成したらゲームは終わりです。結果、1勝15敗。しかも最後のまいかが勝った一戦、ディーは絶対手加減してました。
 しかもわからないようにやれば可愛げがあるものを、わざわざまいかにわかるように。舐められてます。絶対。許しません。もっとお姉ちゃんと修行してボコボコにしてやります。
 再起不能なくらい。

 夕ご飯はカレーです。とっても甘くっておいしかったです。ディーが甘すぎると文句を言ってましたが、あれでちょうどいいと思います。ディーはわがままです。
 ご飯の最中はみんなの昔話を聞きました。レミィお姉ちゃんは半分アメリカ人で、今は日本の学校に通って日本語もぺらぺらですが、最初は苦労したらしいです。
 なんでも、高校で偶然初恋の男の人に再会して、とってもお世話になったらしいです。恋人なのかなぁ? その人のことを喋るときのレミィお姉ちゃん、とっても楽しそうでした。
 ちなみに、ディーがかなり不機嫌になってたのをまいかは見逃してません。嫉妬してます。しっと。情けないと思います。
438まいかのにっき:03/04/03 04:11 ID:I36NfTbX

 ディーの昔話はよくわかりませんでした。
 てつがくしゃ……というのを目指して、小さい頃からずーっとずーっと勉強してきたそうです。おんかみはむやいとか、うぃつあるねみちあとかよくわからないことを言います。
 面白かったのはディーはお姫様の先生をしているというところ。
 お姫様かぁ……。どういう人なのかなぁ?

 ご飯の後はおやすみの時間です。寝ちゃうまえに今、この日記を書いています。夏休みの宿題なので、頑張ろうと思います。
 ディーとレミィお姉ちゃんはとっくの昔に寝ています。まいかの後ろで2人並んで寝ています。
 なんだかディーの羽がピコピコ動いてます。本人と違って、可愛らしいです。

 ぷちっ。

 一本もらいました。本人と違って綺麗な白い羽です。けど、ディー、翼自体はほとんどボロボロです。なんでだろう。一回訊いてみたのですが、すごい不機嫌な顔になってしまいました。
 ディーはよくわかりません。ちょっとしたことですごく喜ぶかと思うと、普通のことですぐ不機嫌になります。
 見ててあきません。面白いです。レミィお姉ちゃんは優しいです。ちょっと変わったところがありますけど。

 この旅行、鬼ごっこっていう感じはあんまりしませんが、楽しいです。いつまで続くんだろう? ずっと続いてほしいです。
 さいかお姉ちゃんを見つけて、4人でずっと鬼ごっこができたら―――――――


 ………パタン。

 そこまで読み上げると、ディーは静かに『まいかのにっき』と表紙に書かれた本を閉じた。
 その表情は非常に複雑だ。笑っているようにも見えれば、泣いているようにも。あるいは怒っているようにも見える。

「……全く。人のことを好き勝手に書いて……。何がおじさんだ……。何がわがままだ……。何が卑怯だ……。何が嫉妬だ……。というか人の羽を盗んだのか……。
 全く……まったく……。何という幼女だ……。まったく……」
439まいかのにっき:03/04/03 04:12 ID:I36NfTbX

 いったんは寝付いたのだが、夜中に目が覚めてしまったディー。おそらく昼間の興奮が抜けきらなかったのだろう。
 水でも一杯飲んで寝直そうと思ったが、その時、見つけてしまったのだ。まいかの枕元に置いてあった一冊の本を。

 悪いとは思ったが、好奇心には勝てなかった。そーっと持ち出し、ページを開いてしまった――――。

「何という幼女だ……まったく、あの子供は将来が不安だ……。フフフッ」

 何やかんやと言いながら、徐々に唇が綻んでいくディー。

「フフフフフ……やれやれ、全く、しょうがないな。ずっと続いてほしい、か……」

 洞穴に戻ろうとする時、ディーは見つけた。今朝掘った看板の端っこに、三つのてるてるぼうずがかけられているのを。
 それぞれ体の部分に『D』、『れみぃおねえちゃん』、『まいか』と書かれている。
 ……顔は全然似てないが。

「……そういえば、明日は花火の約束をしていたな……」

 呟きながら、夜空を仰ぎ見る。

「……雲か」

 ……一抹の不安を覚えながらも、ディーは祈った。神である自分が祈るなどおかしいと思ったが、祈らずにはいられなかった。


 ―――明日が、晴れますように―――


【D一家 就寝】
【明日は花火の予定】
【晴れるといいなぁ】
【時間:深夜】
440誤解、再び:03/04/03 04:29 ID:bh4TZD/r
 篠塚弥生はちょっとしたジレンマに陥っていた。
 ――――森川、由綺。
 いうまでもなく、緒方英二プロデュ―スのアイドルである。
 そして、自分はその担当マネージャー。
 それだけといえばそれだけの、しかしその言葉だけでは到底尽くせない関係。
 弥生にとって、由綺はただのアイドルではない。だが、それを他人が知る必要はない。
「弥生さん、こんなところにいたんですね」
 彼女にしか出来ない微笑を浮かべて近づいてくる由綺。(と誰か知らない少女)
 向かいでは、好機とばかりに目を輝かせている響子。
 たしかに今、目の前に由綺がいる。
 もとより彼女を探していたのだから、それはいい。
 しかし由綺は鬼で、自分が逃げ手であるという、この状況。
 そして彼女の隣にはあの男がいるという、この状況。
 捕まえられればそばにいられるのだが、本意と不本意が入り混じった状況は弥生にある選択をさせた。
 弥生の取った選択は―――、
441名無しさんだよもん:03/04/03 04:30 ID:bh4TZD/r

「……藤井さん」
「はい?」
 冬弥は第一声が由綺ではなく自分にかけられたことに驚いた。が、

「…私、あなたのこと…本当は愛していたのですよ……本気で…」

「「「「「………………え?」」」」」

 弥生の唇から紡ぎだされる予想外の台詞に、四人が四人とも同じ反応を示した。 
「ま、ま、待ってくださいっ! 俺、弥生さんシナリオに入った覚えはこれっぽっちも…」
 修行の成果か、いつにない立ち直りをみせる冬弥だったが、
「……冬弥君?」
 背後から聞こえるのは抑揚のない、由綺の声。
 ざぁ、と血の気が滝のように引く音を彼は確かに聞いた。
 脳裏には、あの『お仕置き』の情景が浮かんでいるに違いない。
「『…俺だって、同じくらい愛してましたよ…。弥生さんのこと…』といってくれたのは嘘だったんですか?」
 台詞とは裏腹に、あくまで冷徹に、揺ぎ無く。しかし、確実に冬弥の『死刑執行文』を読み上げる、弥生。
 冬弥の旗色はこの上なく悪かった。 
「ふ、ふふふふっ……そうだよね。メインヒロインっていっても、私のシナリオでない限り結局、噛ませ犬。
恋人を裏切る葛藤とドロドロした人間関係を楽しむのがWAの醍醐味だし、製作者から元々浮気ゲーだったとかいってるくらいだし……ふふふっ」
 やや壊れ気味の由綺。
 震えている七海を横目に、由綺はシェパードの頭を撫でながら首輪を外した。そして、
「……GO」
 ―――――刑の執行が告げられた。
442誤解、再び:03/04/03 04:30 ID:bh4TZD/r
「あー、もしかしてアイドルとその彼、マネージャーの三角関係とかだったりします?」
 あまりの光景に毒気を抜かれたのか、響子は記者らしくない直接的な質問を投げかける。
 その質問には答えず、弥生は由綺に追いたてられる冬弥を一瞥すると
「…嘘…ですけどね…」
 あの台詞を言った。


 シェパードに追われながら、冬弥は思った。
 なぜこの場面で、理奈シナリオよろしくビンタが飛ばないのか。
 なぜ『契約』もしてないのにお楽しみなしでこんな目にあわなければならないのか。

 ――――――


【冬弥・由綺・七海 弥生・響子と接触、逃げられる】
【冬弥 金無し】
【由綺 シェパードマイク所持】
443名無しさんだよもん:03/04/03 04:35 ID:bh4TZD/r
や、やっちまった……。・゚・(ノД`)・゚・。
444名無しさんだよもん:03/04/03 04:37 ID:z17AND1S
>443
イ`
445名無しさんだよもん:03/04/03 10:15 ID:R/o3Af3B
森を抜けたところで、海が見えた。
「海…か」
「本当にあれでよかったの?」
「…ああ。あまり、戦力にならない足手まといばかり増えてもデメリットにしかならないからな。
 戦力ならば歓迎だが」
チーム編成会議では、結局俺達はメンバーを変えず前のままのメンバーだった。
つまり、天沢、由依、俺(祐一)。
「もう暗いですね。宿探しませんか? もう野宿は嫌ですよっ」
「…そうね、私もできれば雨宿りくらいしたいかしら?」
「雨宿り?」
天沢が、無言で空を指差す。
雨が降りそうだった。
「っと言っても、どこかできそうなところはあるのか?」
「あそこに、灯台があるけど?」
「じゃぁ、あそこに避難するか?」

【相沢祐一 強い人材なら歓迎。灯台発見。舞やあゆがいる灯台かは不明】
【天沢郁未&名倉由依 相沢祐一と共に灯台へ】
【時間帯 夜。雨が降りそうなことに気付く】
446誤解、再び作者:03/04/03 15:57 ID:bh4TZD/r
報告です。

>>440-442『誤解、再び』について、>>433-435『はい、おっけーです☆』との間に
展開上明確な矛盾点がありましたので、改訂版を>>1議論・感想板に投下しました。
つきましては、以降の話を書かれる書き手の方には、そちらを一覧の上投下
下さいますよう、お願い申し上げます。

ご迷惑おかけしました。
続けて報告します。

>>420-423
『ふぬぬぬぶふごっのテーマ(酒が呑めるぞVer.)』につきまして、
理解不能・支離滅裂・読める作品じゃない・無理して書いて汚物ができあがる良い例
などのご指摘を戴きましたので、思い切って全面改訂版を議論・感想板改訂スレに
投下いたしました。


……マジで申し訳ありませんでした。
448名無しさんだよもん:03/04/03 16:58 ID:bvxG+PiG
>>447
メタクソな指摘にワロタ
449名無しさんだよもん:03/04/03 17:05 ID:jZ0q7Unq
しかし、あと約50KB…次スレの季節ですかな?
450名無しさんだよもん:03/04/03 19:25 ID:bncKXJQ5
ってか改訂ならここにせめて要点だけでもまとめて欲しい。
書き手全員が全員支援板見てるわけではないし。
はっきりいってあそこに依存しすぎ。
依存するのは構わないが、それを他にまで強要するのは止めて欲しい。

そのうち依存が過ぎて、いつもリスト作ってくれてる人がたまたま
来れないと、誰もリスト作らないっていう状態になったり、あまつさえ
誰かが替わりにリスト投下したら「勝手なことするな」とか言い出しそう。
451乙女のピンチ(1):03/04/03 19:40 ID:jqd6cjtx
 市街地から離れて、海岸からかなり近い道沿いにぽつんと立っている一軒家。
おそらくは海水浴に来た人に利用されるであろうこのペンションに、
今4人の訪問客が現れていた。
「Ok、罠はなさそうだね」
雅史の一言に、岡田、吉井、松本の三人はホッと胸をなでおろす。
「まったく、誰が罠なんか作ってるのかしら。腹立つわ〜」
「引っかかってるのは岡田だけだけどね〜」
「黙れ、この万年お花見女ぁ!」
「はいはい岡田、落ち着いて。でもわざわざ罠を探すのも手間がかかってしょうがないよね」
 罠に痛い目にあった4人だけに(正確には岡田だけだが)、
一階、続いて二階とすべての部屋に罠がないかどうか調べたわけだが、確かに手間がかかる。
「まあ、こんな一軒家まで仕掛ける人もいないとは思ったけどね。
なんにせよ罠がなくてよかったよ」
「あ、ねぇねぇ。それじゃ今日はここにとまるの?」
「うん、食料も結構集まったしね。今晩はここでゆっくり休もうよ」
 松本の問いに、雅史がそう答えた。
「ふぅ、よかった〜♪」
「よかった?」
 胸をなでおろす松本に岡田が目を向ける。
「え、いや、えへへ、なんでもないよ〜?いや、ほらゆっくり休めるところが見つかってよかったなぁって」
「うん、本当ね。今日は疲れちゃったわ」
 慌ててごまかす松本に、それに気づかずく吉井が同調する。
「うんうん、疲れちゃったね〜」
 そういいながら、松本はさりげなく一階に下りようとする。
 ……一階にしかトイレがないので。
452乙女のピンチ(2):03/04/03 19:40 ID:jqd6cjtx
 実は松本、かなり前から我慢していたわけだ。まあ、いわゆる生理現象を。
 岡田と吉井は背に腹は変えられぬと、先ほどそこら辺の茂みでやってしまったのであるが、
 (私、岡田や吉井と違って繊細なレディだも〜ん。雅史君の前じゃ……ちょっと……ね)
 と、まあ一見何も考えてなさそうな松本であっても、
そのような(岡田と吉井にかなり失礼な)悩みを抱えていたわけだ。
 (ふう、ちょっと危なかったよ)
 そう思って、弾む足取りで階段を下りようとする彼女なわけだが。
「待って!」
 雅史の静かな、しかし鋭い制止の声がかかる。
「うぇ?」
 ふりかえるまもなく、雅史がグッと松本の腕を引っ張り抱きかかえる。
 (う、うひゃぁ〜)
 思わず叫び声げそうになるが、既にその口には雅史の手が当てられていた。
 (ア、アフン……うう、まずいよぅ)
 普段だったら願ったりかなったりのこの体勢なのだが、今はこのような刺激は禁物なわけで。
「雅史君?どうしたの」
 その様子に察したのか小声で問う吉井に、雅史は視線で一階の玄関の方を見ろ、と答える。
 吹き抜け構造のせいで二階から丸見えになっているその玄関には、
「ああ〜もう、お疲れたし、腹すいたぁ!!」
「まあまあ、ここでちょっと休んでいきましょうよ」
 襷をかけた七瀬留美と矢島の姿が見えた。
453乙女のピンチ(3):03/04/03 19:41 ID:jqd6cjtx
「参ったわね、あいつら」
「うん……どうしよっか?」
「念のために調べている部屋以外の電気を消していたのは、正解だったね」
 そう小声でつぶやきながら雅史は二階の手すりぞいから、
一階のリビングでくつろぐ鬼を注意深く観察していた。
 今のところ鬼達が彼ら4人に気づいた様子はない。
「ベランダから下の庭に飛び降りればいいじゃん」
 岡田の提案に、雅史は首を振る。
「できなくはないだろうけど、暗いし危ないよ。それは最終手段にしたい」
「じゃあ、どうすんのよ?」
「鬼がこのまま立ち去ればよし。
二階に上がって来るようならひとまずベランダのある部屋にかくれる。
その部屋にも入ってくるようなら、そのときはそこから飛び降りて庭に逃げる。これでどうかな」
「私もそれがいいと思う。下手に動いて怪我したら大変だもの」
「OK、持久戦になるけどしょうがないか」
(ええー!?嘘でしょ〜!?) 
 うんうん、とうなずく岡田と吉井であるが、その後ろで松本は顔色を変えていた。
 愛する雅史のことと言えど、松本的にそれは困るわけである。
454乙女のピンチ (4):03/04/03 19:42 ID:jqd6cjtx
「ん?なによ?」
「どしたの、松本」
 くいくいっと服のすそを引っ張られて、岡田と吉井は振り向く。
「え、えっとね・・・・・・ま、まあ、なんといいますか乙女の大ピンチといいますか」
「はぁ?なにいってんの?」
「えーと、ひ、ヒント!!ひ、人が生きていくうえで仕方ないこと!!」
「……ごめん松本、ちょっとわからないよ」
「つ、つまり・・・・・・おトイレ・・・・・・」
 消え入りそうな松本の声に絶句する岡田と吉井。しばしの後。
「だからさっき行けって・・・・・・!」
 思わず怒鳴ろうとする岡田に、雅史が振り返る。
「どうしたの?岡田さん。静かにしなきゃ」
「ご、ごめん。なんでもないよ雅史君、にゃはははは……」
 慌てて手を振る松本と岡田の口に手を当てている吉井を見て、
雅史は首を傾げるが、そう、と答えると一階の監視に注意を戻す。
455乙女のピンチ (5/5):03/04/03 19:43 ID:jqd6cjtx
「我慢できないの?」
「うう、ちょっち……」
「じゃ、じゃあ、ごまかしてもしかたないじゃん。雅史君に相談しよ」
「だ、駄目だよ……!!」
 吉井の提案に慌てる松本。
「わ、私だって女の子だよ・・・・・・雅史君にこんなこと言えないよぉっ……!!」
「そ、そんなこといったって・・・・・・」
 真っ赤になって松本はうつむく。限界が近づいていた。

(う、うわぁん……どうしよ〜)

 乙女のピンチであった。

【雅史、岡田、吉井、松本 海の近くの一軒家の二階】
【七瀬留美、矢島 一軒家の一階。二階の逃げ手には気づいていない】
【松本 生理現象により大ピンチ】
【時間は夜】
456飯への扉:03/04/03 20:00 ID:lRW3GwY8
 いよぉお待ちどう。俺様こそ水瀬ぴろ。
 俺様のように歩道橋の上から落とされても生還できなければ、水瀬家の飼い猫の座は務まらん。でもおでん種にされるのは勘弁な。
 しかしま、歩道橋の上からは助かっても、はたしてこのむやみやたらにだだっ広い島から生還できるかどうか。
 ハイテンションで1人寂しく強がっていても、空腹をごまかせるわけでもない。
 いやあるんだ。飯はあるんだ。俺様の鋭敏なヒゲは、とっくにその存在を掴んでいる。
 だけど高い木の枝からぶら下げられたそのビニール袋は、いかに俺様の跳躍力を持ってしても届きゃしねぇ。
 登ろうにも爪をとっかける枝もなく、幹にかじりついてみたが、ちーとばっか脚力が足りなかった。
 家ネコ生活が長かったせいで、すっかりなまっちまったみたいだ。情けねぇ。
 そんなわけで、俺は食料の下をぐるぐる回りつつ、途方に暮れていると言った寸法だ。
 ここにはいつもなにかしらの食料を持っている真琴もいねーし、猫缶を開けてくれる名雪もいねー。
 暖かい飯を作ってくれる秋子さんはどこへやら。
 は? 祐一? この水瀬ぴろ、水瀬家ヒエラルキー的に最下層の居候を、当てにするほど落ちぶれちゃあいないぜ。
 もっとも、当てにするにも周りには、猫の子一匹見あたらないが。
 そこかしこになわばりを示すべく爪を立て、匂い付けをしてみたものの、国民のいない国の王様になっても空しいだけだ。
 ――とびっきり美人のメスネコとは言わねぇ。
 二本足で立つ不完全な生き物でもいいから、俺を孤独と飢えから救ってくれねぇかな……。
 秋刀魚の一匹でも恵んでくれたら、俺は喜んで道化になって、ごろごろと喉を鳴らしてみせるのに。
 ああ、秋刀魚……たまんねーよなぁ。この前秋子さんが焼いてくれた、見事に脂ののったあの秋刀魚。
 ちくしょう、思い出すだけで唾が出るぜ。秋刀魚、秋刀魚、秋刀魚ー、秋刀魚ーをたべーるとー♪
 なんて秋刀魚の夢を見ていたら、どうやら注意力が欠如していたらしい。
 ガササササ……と勢いよく草を蹴散らす音が俺に向かってつっこんできた。
「いまだーっ! 食料げーっとっ!」
 Holy shit!
457飯への扉:03/04/03 20:02 ID:lRW3GwY8
 遠くから躍り込んできた影は、俺様をしっかりその手に捕らえ、渾身の力を込めて握ってきた。
 ぐはぁっ。
 バニラアイスの小娘のような無様な吐血音を立て(いや、血は吐いちゃいねぇが)、俺様は悶絶する。
「なんだ猫かぁ……」
 雄にしては妙に頼りない、不健康な顔色の若僧は、俺様を見て露骨に失望しやがった。
 なんだとはなんだ。猫は世が世なら神として崇められていた生物だぞ。
 太陽の化身、お猫様を蔑むのか、ああ? お前の枕元で夜な夜な行灯の油舐めたろか。
「でも、どこかの国では食べているって、聞いたことがあるなぁ……」
 ベイビー、お互い落ち着いて考えようぜ。
 そりゃあ確かに魔女の使い魔として忌み嫌われた時代もあったが、ここしばらく、俺たちは仲良くやってきたじゃねえか。
 俺たち猫族は気がいいから、そんな暗い過去などすっぱりと水に流してやる。
 だからそんな剣呑なことは言わず、パートナーとして仲良くやっていこうぜ。
「でも美咲さんにそんなものを食べさせるわけにはいかないし」
 俺の誠意が通じたかマイブラザー。
 と、そうだ。お前にいいことを教えてやろう。
 俺様は身体を精一杯上向かせ、天に向かって腕を振り回し、にゃあにゃあと主張する。
「ん? ……あ!」
 そうそう、背筋を伸ばしてお天道様を見上げれば、素敵な物が発見できるってもんよ。
 その人間は手を伸ばし、あっさりとビニール袋に入っていたそれをゲットした。
「食料だ……えらいぞ、猫っ!」
 へっ、あたぼうよ。猫と呼び捨てにされたのは気にいらねえが、存分に俺様を称えるがいい。
 ところでボーイ。発見したのは俺、取ったのはお前。
 所有権を主張してもいいところだが、ここは公平に山分けといこうじゃないか。
458飯への扉:03/04/03 20:03 ID:lRW3GwY8
 さすがに猫缶は見あたらないが、この際贅沢は言わねぇ。
 お、そのサラミなんか旨そうだな。早く俺様に……って、なんで走り出すんだよ、おい。
「これできっと、美咲さんも喜んでくれるぞっ!」
 おいおい、早速雌に貢ぐのかよ。
 まぁ若いうちはそういうのもいいけどよ、でもお前ちょっと抜けてそうだからな……悪い女に騙されてるんじゃなきゃいいが。
 しょうがねぇ。ここであったのも何かの縁だ。この頼りないパートナーの面倒をしばらく見てやるとするか。
 代わりにそこについたら、俺様の飯をちゃんと寄こせよ。な?
 と、ネコ語で言ったが通じたかどうか。
 そいつは腕の中に収まったままの俺を見て、
「なんだかやたら猫に縁があるなぁ……」
 首をひねって呟いた。

 やがて一軒の小屋が見えてきた。
 こいつは走り詰めで息も絶え絶えだったが、最後の一踏ん張りと加速する。
 俺もにゃあにゃあ声援を送る。
 ああ、もうすぐだ。
 後ほんの少し。あの小屋に辿り着けば俺様は待望の飯にありつける。
 あと二十猫身、十猫身、五猫身……ゼロ!
「ただいま、美咲さんっ!」
 そう、いつだって扉は飯へと通じているのだ。


【彰 ぴろと食料(ビニール袋一杯)ゲット】
【小屋内の状況はまったく把握していない】
459名無しさんだよもん:03/04/03 20:37 ID:o6bZGY/y
ハインラインリスペクツ?
460穴の中のトワイライトゾーン:03/04/03 21:17 ID:EmHUAPbA
「………あれから何時間経ったのかしら…。誰も来ないわねー」
「………」
「来たのは野生の兎ちゃんとか、そういうのだけだし」
「………」
「物凄まじく暇だわ…。ね、ハウ君もそう思わない?」
「…変な呼び方しながら指差さないでくれるかな」
 落とし穴の中に、二人の女性がいる。まなみとハウエンクアだ。
 ――当初、この落とし穴(しかもトリモチ付き)に落ちたのは、鬼であるまなみ(+名雪 ※名雪は寝惚けつつ脱出)
だけであったのだが、穴の上を通り掛った、ハウ君ことハウエンクアに助けを求め…る振りをして、彼を穴の中へと
引きずり込んだのだ。
 穴に落ちた際にハウエンクアは気を失ってしまい――先程目を醒ましたのだが、自分の体にしっかりと鬼襷が掛け
られているのを見て、暫し呆然としてしまっていた。
「…………激しく鬱だ…」
 頭を抱えるハウエンクア。いくら騒がしかったからといって、助け上げてもタッチしないからと言われたからといって、
何で、何で、何で………僕はアホだ。嗚呼。
「他人を信じた僕がバカだったよ…」
「運が悪かっただけよ、ハウ君。ここにち偶々通り掛った時点で、貴方の運命は決まっていたのね、きっと」
「ハウ君言うな。…フン、絶対にタッチしないって言ったじゃないか。ウソ吐き女」
「はい。そうです。神サマ、私の罪をお許し下さい。ん、どうしたのかねまなみタン、ちょっち神サマであるワタシに
 話してみれ。はい神サマ謹んで、私は嘘を吐きました、どうかお許し下さい。ん、許す、気にすんなよまなみタン。
 ありがとう神サマ…――――よし。これにて一件落着。終了」
「終了――じゃないよっ! このバカ女っ!」
 まなみの奇行(?)に目を点にさせていたハウエンクアが激昂する。
「そんなんで免罪されるのなら、何やったっていいって事じゃないか!」
「うーん。でも、流石に人殺しとかはアウトだと思う」
「…僕は今すぐにでも君を殺してやりたいけどね…!」
 声に凄みを効かせるハウエンクアだったが、先程から何度か脅しっぽく揺さ振りを掛けてイニシアチブを取り返そう
と試みているものの、この女――まなみには、ちっとも効果が無いのであった…
461穴の中のトワイライトゾーン:03/04/03 21:18 ID:EmHUAPbA

 まなみは、凄むハウエンクアをのほほ〜んと見やり、また穴の上を見上げる。
「静かねー…」
「っ……!!」
 激昂する分こちらが疲れるだけだと解ってはいても、どうにも抑え切れない彼であった。
「…………………………こういう穴ってさ……」
 ―― 一転して、静かな、神妙な声を紡ぎだすまなみを横目に見、ハウエンクアは、フンと鼻を鳴らした。
「この穴がどうかした? 只の落とし穴じゃないか。鬱陶しいトリモチ付きの」
「…地面より低いから、ガスとかが溜まり易いのよね」
「………ガス?」
「ま、言っちゃえば、二酸化炭素とかの重い気体とか…最悪の場合、火山性のガスとかの――呼吸に障害を齎す様な」
「………」
「――でも、火山とかは無いみたいだから、今の問題は二酸化炭素の方よね」
 目を細め、顎に指を当てながら、まなみ。
「穴の中……一人だけならまだしも、二人も人がいる。――このままではそう遅くない内に、二酸化炭素濃度が危険な
 域にまで高くなって…」
「…な、何が言いたいのさ……?」
 まなみの放つ只ならぬ雰囲気に、既に怖気づいた様子のハウエンクアが、声を震わせていた。
 そんな彼に向かって、まなみは薄く微笑み――
「ね、ハウ君。――“カルネアデスの舟板”って話、知ってる?」
462穴の中のトワイライトゾーン:03/04/03 21:21 ID:EmHUAPbA
 ………
「誰かーーーっ!! 誰か助けてーーーっっ!! ここから出してくれよーーーーーっっっ!!!」
 何やら怖い話(今の様な状況においては特に)を聞かされたハウエンクアの、悲鳴混じりの声が響いたが、
森はやはり静かであった。
「あははははっ♪ 冗談よ、冗談。そんなに早く二酸化炭素溜まったりしないってば。穴自体も大きいし」
「ほっ、ほほほ本当だろうねっ!? すぐに溜まったりしないだろうねっ!!?」
 問い詰めて来る様な彼の眼差から、まなみは、ふいっ…と顔を逸らす。
「…しないと思う。……しないんじゃないかな。………まぁ、覚悟はしておけ」
「誰かーーーーーーーっ!!!? 誰か来てくれよぉぉぉぉぉおおおおおーーーーーーーっっっ!!!!」
 今やハウエンクアは、もう半泣き状態を通り越していた。
「ハヒィー…ハヒィィ………! な、何で誰も来ないんだよぉ〜っ…」
「気長に待ちましょ。――っていうか、そんなに荒く呼吸したりすると、本気で二酸化炭素、すぐに溜まっちゃうかもよ?」
「っ………!」
 青い顔で押し黙るハウエンクア。テンパった眼差をまなみに向けるものの、彼女は相変わらずだ。
「…静かな森ね」
「…。……憶えていなよ。キミ……このゲームが…終ったら…」
「――殺したい程、私が憎い?」
 ニタリ…――といった、梅図風味のアレな笑みを浮かべるまなみに、ハウエンクアが息を飲む。
「そりゃそーよね。罠に掛けたんだもの。でもね…――私を殺したりしたら、毎晩貴方の枕元に立つ事にするわ…」
「なっ……なななっ…!?」
「…毎晩毎晩、貴方の枕元に立って、ぢぃ〜〜〜…っと見下ろして…あ・げ・る・♪(ひひひひひひ…」
「いやだぁぁぁあああああああっっっ!!! ぼぼぼ僕の事は忘れて下さいぃぃぃぃぃぃいいっ!!!!!」
 再び、森の中に木霊する悲鳴。笑い声。
 そして――
463穴の中のトワイライトゾーン:03/04/03 21:22 ID:EmHUAPbA

 ………
「本当に静かねー…」
「………うぐっ…うぐっ……うぐぅっ…(まぢ泣き」
「…ところで、ハウ君。――“ブレアの森の魔女伝説”って話、知ってる?(うぅふふふふふふぅ…」
「やだァァァァああああアアアアァァあっ!! 聞きたくないぃぃぃぃぃぃいいっ!!!」
 ………
「――お前も蝋人形にしてやろうかっ!!(くわっ! ※何故かバックに轟く雷鳴と雷光」
「ヒィィィィィィィィィィィィィィッッッ!!?」
 ………
「……第十三話…“きょうふのみそしる”…!(ケケケケケケ…!」
「っきゃあああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!?!?」


 …やがて、そろそろ陽も沈むという頃になって――
「………暇だわ。半日待っても誰も来ないし、お腹もいー加減空いてきたし…」
「(゚∀゚)アヒャ…アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ…」
「――ハウ君は暫くアレみたいだし…」
 ――森は、やはり静かだった。




【まなみ ハウエンクア  半日経っても穴の中(笑)】
【まなみ  ハウエンクアを暇潰しのオモチャに】
【ハウエンクア  暫くの間、アヒャ状態】
【二日目 もう夕暮れ時】【放置プレイ ケイゾク中】
464相沢少年の事件簿:03/04/03 22:23 ID:lr+26MVL
「…………………………………………」
「…うぐぅ、舞さん…なんか喋って…」
「…………はちみつくまさん…………」
「…………………………………………」
「………………うぐぅ…………………」

思いも寄らぬ反撃で雁字搦めにされてしまった、現在鬼の鍵ヒロイン二人組み、舞&あゆ。
現在の二人の状況。
服はインクまみれでもう最悪。顔面にもかかっており、更にその上に濃い目トーンを張られているのでもう誰だかわからない。
更にインクが乾いてしまったので肌がぱりぱりひきつれて仕方が無い。
しかも縛っている物が自在定規なので肌がこすれて痛いことこの上なし。
――鯛焼き亡者あゆが呟く。
「……うぐぅ…修羅場の漫画家は恐ろしいんだね…」
――そしてうさみみ剣士舞の返答は、
「…………はちみつくまさん…………」
――鯛焼き亡者が鳴く。
「……鯛焼き食べたい……」
――うさみみ剣士は、
「…………ぽんぽこたぬきさん…………」
こんな問答を延々と飽きもせず繰り返し続ける鯛焼き亡者とうさみみ剣士。
エンドレス。
いいかげん抜け出す方法でも考えんかい。
しかも灯台中に反響しているから、外からだと、
「なんか、無気味な声が聞こえませんか…?」
そんな感じだった。
465相沢少年の事件簿:03/04/03 22:23 ID:lr+26MVL
相沢祐一と天沢郁末、そして名倉由依の鬼三人組は、雨宿りのために灯台に向かっていた。
前述の声は名倉由依の物である。
「そう? 気のせいじゃないの?」
いつでも冷静、天沢郁末は信じない。
…――ぅ―…―――…――ん―
「あ、聞こえました! また!」
由依が主張する。
「今時幽霊がいるわけでもないでしょ? 気のせいよ、気のせい。それか風の音」
郁末は冷たく一蹴する。
そして祐一は、
「何やってんだ? 早く行こうぜ」
先先行ってしまっていた。

そして灯台内。
――鯛焼き亡者呟く。
「……うぐぅ…修羅場の漫画家は恐ろしいんだね…」
――そしてうさみみ剣士返答。
「…………はちみつくまさん…………」
――鯛焼き亡者が鳴く。
「……鯛焼き食べたい……」
――うさみみ剣士返答。
「…………ぽんぽこたぬきさん…………」
まだ続いていたこんな問答。
だが、それは唐突に途切れる事になる
466相沢少年の事件簿:03/04/03 22:24 ID:lr+26MVL
「………うぐぁぁー!!! やってられんわー!!!」
鯛焼き亡者がついに切れた。口調がどこかの漢、または禍日神二人の如くになっている。
が、
「…………はちみつくまさん…………」
うさみみ剣士はいつも通りだったので、空回りとなる。
「川澄ィ!! なんでもいいからこれ抜け出すぞ!! うぐがぁあああ!!」
どこかが切れた鯛焼き亡者、呼称まで変えて自在定規を外そうとする。が、その気合の入った掛け声がうぐぅテイストなのでやっぱ少々マヌケだった。
「………ぽんぽこたぬきさん。変に力任せにすると抜け出せない…」
「…なら策があるんかぃ川澄!」
「………ぽんぽこたぬきさん………」
「うぐぁぁぁあー! この役立たずー!!!」
それでもうさみみ剣士は冷静だった。なので、
「! 待って…祐一の気配…」
そんなものを探り当てていた。
「え!? 祐一君!?」
鯛焼き亡者は一瞬にして静まり、いつもの無邪気モードに戻っていた。が、表情はトーンのせいで分からない。
「こっちに来ている…」
「やった! これで助かるよ!」
そして、
(祐一君をとっ捕まえて、鯛焼きを増やすよ!)
そんなことを考えていた。
もし祐一が逃げ手だったら、鬼であるあゆを助けるはずがなかろうに。そこんとこ抜けてるウグゥ月宮。
まあ祐一は既に鬼だから構わないのだが。
そして、あゆは、
「うぐぅ、これでたくさんとっ捕まえて鯛焼きー♪」
叫んだ。
467相沢少年の事件簿:03/04/03 22:25 ID:lr+26MVL
そんなわけで、祐一と郁末、由依は灯台の入り口に辿り着いていた。
既に3人とも灯台内に誰かいる、ということは分かっており、その事について話し合うことにした。
「どんな奴がいると思う?」
郁末が祐一と由依に聞く。
「そうですね、窓ガラスが木端微塵になっていますから凄い人がいるんじゃないでしょうか?」
「でも、そんな奴がずっとここに留まってるとは思えないわね…」
「祐一さんはどう思いますか……祐一さん?」
祐一は固まっている。その理由は中から聞こえてくる声にある。
詳しい事は分からないし、反響しているので誰の声かもいまいちぴんとしない。
だが祐一には分かってしまった。
『うぐぅ』『はちみつくまさん』
これを口癖として使う奴が自分の知り合い以外に果たしているだろうか?
そして聞こえた
『うぐぅ、これでたくさんとっ捕まえて鯛焼きー♪』
反響していたはずなのに、やけにくっきり聞こえたのは長い付き合いの賜物だったのだろうか。
確信した。ここにいるのはアイツで、しかも殺る気マンマン(※殺しはルール違反)の鬼だと。
「相沢、どうしたの?」
二人にはどうも聞こえなかったらしい。
「なんでもない、とりあえず入るか」
468相沢少年の事件簿:03/04/03 22:27 ID:lr+26MVL
そして、邂逅のとき。
「…………………………………………」<郁末
「…………………………………………」<由依
「……………………………………ハァ」<祐一(溜め息)
「……うぐぅ、祐一くーん……………」
「……………祐一、私を助けて………」
もの凄い格好になって雁字搦めになっている二人を見つけ、3人は一瞬固まった。
「………相沢、あんたの知り合い…?」
郁末がやっとという感じで問い掛ける。
「……さ、行こうか。二人とも」
俺は何も見ていない、聞いていないという風に二人を連れて逃げ出そうとする祐一。
「質問に答えなさい」
「このまま放置するのはかわいそうだと思います…」
「うぐぅ、祐一君! ひどいよー!」
「祐一…また私を置いてどこかにいっちゃうの…?」
郁末に襟を捕まれ集中砲火を喰らう。
「冗談だ……何やってんだ、あゆ…舞…」
「…うぐぅ、実は…」
かくかくしかじか。
これこれうまうま。
説明完了。
469相沢少年の事件簿:03/04/03 22:27 ID:lr+26MVL
その間に戒めも解いてやらない祐一一行。
郁末が言うには、役に立つ奴かどうか確かめてから、ということらしい。
ていうか祐一も戒めを解く気はなかったりする。
しかしここで見捨てたら、終わったあとで何をされるかわからない、という危機感もあったわけだが(舞と佐祐理さんに)
「なるほど。葉対鍵の対立構造にしようとして負けた、ということか」
「情けないわねー…それも漫画家に…」
「うぐぅー! 余計なお世話だよ!」
「…修羅場中の漫画家の集中力は半端じゃない…」
ぼそり、と呟く舞。そりゃあれだけやられれば認めざるを得ないというか。
「ふーん…」
半信半疑の郁末。
「そ、そんなことはいいから…うぐぅー…せめて顔のトーンだけでもはがしてぇー…見えない…」
「仕方ないわねー…」
郁末、そういうとあゆのトーンに手をかけて、
べりぃっ!
容赦なく引っぺがした。
うぐぅー! というあゆの悲鳴(?)が響いた。
お肌に悪い。
ちなみに、舞のトーンは祐一がゆっくり剥がしたので問題なし。

「さて、こいつらどうする?」
あゆの悲鳴も一段落して郁末が祐一に尋ねる。
祐一は少し考え込んだ。あゆの束縛を解く気はあまり無い。しかして舞を放置する勇気は無い。どうすべきか。どうやってこの場を取繕うか。
そこまで考えて、ある矛盾点に気がついた。
「そういえば…お前等目が見えなかったはずなのに、どうして俺だとわかったんだ?」
「あ、そういえば…」
すでに忘れ去られそうな由依、なんとかここで一言稼ぐ。
「うぐぅ、それは当然愛の力だよ☆」
などというあゆは軽く無視され、
「祐一の気配がしたから…」
と答えた舞に視線が集中した。
470相沢少年の事件簿:03/04/03 22:28 ID:lr+26MVL
「うぐぅー…」<黙殺
「俺の気配?」
「なんとなく、だったけど。その後登ってきた時、足音で確信した」
「ふーん…」
郁末が少しだけ感心したように呟く。
「ま、たいした物よね。あなた剣士なの?」
郁末が舞の足下に転がる剣に目をやる。
「私は魔物を討つものだから」
その瞳は強い光を放っている。
「舞は強いぞ。まあ今はこんな風だから信じられないかもしれないが。一緒に来れば戦力になる」
祐一がフォローを入れる。これでとりあえず舞は助けるという方向に持っていく。
郁末は特に何も言わない。
「よし、決定だ。一緒に行くか、舞?」
「はちみつくまさん」
即決。秋子さんの了承に近い速度で。
こんな状況にずっといれば、いかな舞といえど流石にきついだろう。
そして、三人は戒めを解いた。

――舞の分だけ。
「祐一君、ボクは?」
「ん? 何がだ?」
「ひっ、酷いよ! ボクも一緒に連れて行ってくれるんでしょ!?」
「ダメだ」
今度は晴子さんの却下に近い速度で。
「どうして…?」
「そうよ相沢、解いて上げるくらいのことはしてあげたら?」
「祐一さん?」
責める口調の同行者二人と泣きそうな顔をするあゆ。ていうかあゆの方は実は演技だったりするのだが。
祐一なら絶対外すと信じていたのに、予想外の展開になったので、あゆも必死なのだ。
しかし祐一、栞という実例を見ているので、その手には引っ掛からない。
それに、天沢さっき役に立つかどうか決めてから解く言うたやんけ、と心の中でなぜか関西弁でつっこむ。
「お前は逃げ足こそ速いが、鬼としてあまり役に立つとは思えない。それにお前はヤル気満々のはずだ。獲物を追い詰めて抜け駆けされちゃたまらないからな」
471相沢少年の事件簿:03/04/03 22:29 ID:lr+26MVL
びしぃ! と突きつける。
「そっ、そんな…ボクがヤル気満々だなんて証拠がどこにあるの!?」
「お前さっき、『うぐぅ、これでたくさんとっ捕まえて鯛焼きー♪』とか叫んでただろ? どうせ屋台で買おうとしたら余りに高くて、食い逃げを敢行しようとしたら失敗して、ポイント稼いで換金しようと思ってたんだろ?」
祐一、『犯人はお前だ!』といわんばかりに事実を突きつける。
が、
「へっ? 屋台なんてあったの? ボク知らなかったよ…」
素で知らない風に返されて、祐一は絶句した。
「それに、『ぽいんとかせいでかんきん』…って何?」
更にボケるあゆ。
「と、とぼけても無駄だ…お前は食い逃げの常習犯だからそんなこと…」
「相沢ー?」「祐一さんー?」
まるで某名探偵の孫の幼馴染の某七瀬嬢が、ゲームで推理を外した時のようなジト目でみる二人。
「そ、そうだ舞! 捕まえられたお前なら分かってるだろ! コイツがヤル気満々だってこと!」
コクリ、と舞は頷く。だが、とても小さかった。
「…ただの鬼ごっこなのにムキになっては月宮さんが可哀想…」
郁末も由依もそれに同意のようだった。が、あゆが少しにやり、と笑ったような気がした…ので。
「そ、それでもダメだ! やっぱりダメだ!」
と最後の悪あがきをしたが、
「うぐぅ…それなら…祐一君、願いはまだ一つだけ残ってるんだよね?」
あゆがいきなり俯いて呟く。
「はぃ?」
「祐一君のくれた天使の人形…願いは三つ…もう二つかなえてもらったから、あと一つだけ…」
「お、おいまてあゆ…」
「祐一君、ボクの最後のお願いです!」
縛られているので敬礼は出来ないが、びしっ、と背筋を正してあゆはそれを行使しようとする。
「だぁぁ! 分かったぁ! 分かったから本編屈指の名ゼリフをここで使うな! 外してやる! 外してやるから!」
ついに折れた。
結局あゆの戒めは解かれる事となった。
(くそぅ、こんどはこんなヘマはしない! ジッチャンの名にかけて!)
ジッチャンって誰や。
472相沢少年の事件簿:03/04/03 22:30 ID:lr+26MVL
(――うっぐっぐ(※笑い声)、これでまた哀れな鯛焼き共を捕まえられる!)
戒めが解かれた瞬間、おさまっていたあゆの思考は再び暴走し始めたらしい。


【祐一 郁末 由依 灯台で舞とあゆを解放】
【舞とあゆはまだインク塗れです】
【舞は同行が確定しています】【あゆはまだ不明】
【祐一 ヘコむ】【郁末&由依 祐一をちょっとだけ軽蔑】
【舞 あゆの現状を知っている】【あゆ 再び暴走開始 屋台の存在を知る】
【時間 夜 まだ雨は降っていません】
473唯一にして最悪の前科(1/3):03/04/03 22:41 ID:z17AND1S
「ふっふっふっ…順調だな」
 MOON.脇役コンビ、名倉友里とA棟巡回員が割かし元気そうに歩いている。
「出番がない、の間違いじゃないの?」
「…言うな」
 郁未をカタパルトで撃退して以降、2人は屋台での食事を交えつつひっそりと移動してきた。
「それにしてもあなた、案外役に立つじゃない。小さな物音にも気がつくし、罠もすぐ見つけるし」
「見回りで飯を食ってきたからな…。半ば職業病だ」
 鬼に見つかることもなく、罠にかかることもないまま時は深夜。場所は海岸近くの防砂林。
「………ん?」
 今まで何度もしてきたように、巡回員が異常を発見する。
「なに? どうしたの?」
「…なぁ、あれ、何に見える」
 何かが――いや、誰かが倒れている。
「…人間?」
「そうらしいな…。駄目だ、襷をかけてやがる」
 それは、先ほど葉子に粛清されたエディと敬介。
 流石に気絶はしていないが、ボコられて動けないようだ。呻き声を出している。…何故か、微妙に嬉しそうだが。
 とりあえずは無視だ。わざわざ鬼に近づく必要はない。
 物音をたてないよう、慎重に――

 ――しかし、運が悪かった。もう少し時間がずれていれば、あるいは出会わなかったかもしれないのだが。

「獲物だの、葉子殿」
「そのようですね。気配を消していて正解でした」
「「げっ…」」
 ボコられている人間がいるということは、ボコった人間がいるというわけで。
 ボコられた人間が襷をかけているということは、ボコった人間は鬼だったわけで。
 人をボコれるということは、人数にもよるだろうがそれなりに強い人間なわけで。
 もっと言うと、ボコられたのは2人でボコったのは1人だったりする。

474唯一にして最悪の前科(2/3):03/04/03 22:42 ID:z17AND1S
「――お久しぶりですね、名無しさん」
 そのボコり犯、鹿沼葉子が巡回員をジッと見つめた。会話の対象ははなから彼のみ。
「まったくだ、A‐9…いや、今は鹿沼葉子と呼んだ方がいいんだろうな」
 巡回員もそれに応える。友里と神奈は蚊帳の外。
「――ところで、名無しさん」
「頼むからその呼び方は勘弁してくれ」
「――そこで倒れている2人に、気づきましたか?」
「(無視かよ)…ああ」
「――彼らは、悪事を働きました」
「ほう。見たところ善良そうな人間だが、何をやらかした?」
「覗きです」

 静寂。

「名無しさん」
「…は、はぃ」
「前々から、聞きたいことがあったのですが――よろしいですか?」
「……よろしくないです」
「却下します」
「………」
「郁未さんの話によると貴方は……昔、私の着替えを覗いたことがあるそうですね」

 再び、静寂。

「何か、反論は?」
「……そりゃあいつの嘘だr」
「却下します」
「………」
「名無しさん」
「…はい」
「とりあえず、鬼としてタッチさせていただきます。――話は、その後です」
475名無しさんだよもん:03/04/03 22:42 ID:oR9F2eQM
容量限界です。
新規書きこみをいったんストップしてください。
476名無しさんだよもん:03/04/03 22:43 ID:z17AND1S
ぐは。本当だ…。らじゃーです。
477名無しさんだよもん:03/04/03 23:20 ID:hfkx1E63
葉鍵鬼ごっこ 第四回
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1049379351/l50


新スレ立ちますた。
478名無しさんだよもん:03/04/04 00:15 ID:WWTVsUpZ
だんだんスレの移行速度が速くなってきてるな。
どうでもいいが、まなみに「騙したんじゃない! これは知略よ!」と言っもらいたかったなぁ
479名無しさんだよもん:03/04/05 10:49 ID:tvpfinxI
480名無しさんだよもん:03/04/05 11:17 ID:UCqC7Mc7
481名無しさんだよもん:03/04/06 21:36 ID:DbIs7u2K
保守。
482名無しさんだよもん:03/04/07 18:59 ID:BzkDfH16
ほす
483名無しさんだよもん:03/04/10 05:41 ID:XuwPLAzm
もう少し保守っとくか…
484名無しさんだよもん:03/04/10 22:02 ID:fo7j/ZB4
ho
485名無しさんだよもん:03/04/11 00:03 ID:HjMzhTuK
umeru
486名無しさんだよもん:03/04/13 21:09 ID:BOmBb4mb
487名無しさんだよもん:03/04/14 23:01 ID:rwwn7Ixm
488名無しさんだよもん:03/04/15 03:19 ID:2O3G6EUv
489名無しさんだよもん:03/04/15 07:52 ID:DhcWg1BH
490名無しさんだよもん:03/04/15 18:06 ID:URcSvY7K
うめ
491名無しさんだよもん:03/04/16 15:01 ID:BsarIv2K
このスレに限っては最近のナプキンみたいだな。
492名無しさんだよもん:03/04/16 22:57 ID:pJWrZ55c
493名無しさんだよもん:03/04/17 00:21 ID:OrgPswDl
494名無しさんだよもん:03/04/17 00:24 ID:enC/29v0
495名無しさんだよもん:03/04/17 07:30 ID:62dx7oDp
496名無しさんだよもん
葉鍵鬼ごっこ 第五回
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1050336619/

との事で。