1 :
名無しさんだよもん:
2
料理以外は現世の女神! 伏
>>3ゆかりが
>>3ゲットです。
;∵.';: ウワァァァァン!
たか
>>6ら Λ/| :*∵.';: =⊃_________
ヽ(´Α`(;;;)ノ > ,.-',.'´ ヾ、 //'
(""~~丿 VV どん,..-''" ! ヨソハヾ)),. (((宗ノノノ// "^、ヽ. ____
∪ ∪ __,..,.-;_'" ルvリ゚ ー゚ノリ. (´∀` ) _|| __ヽ \="zュ、 ̄\ 〜⌒);;
,...:,''"´"  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /_  ̄ ̄`ヽ ̄ └‐┘ ヽ~,,  ̄`ヽ/ 〜⌒);;⌒⌒)
∠..../__ミル
>>10__∠ /__r'^ヽ V´  ̄`i " r'^y' 〜⌒);;⌒⌒) ;;⌒)
〔巨I ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄巨五I 。i゙⌒ヽ / ̄ __! / )| ⌒);;⌒⌒) ;;⌒)
〉同〉――――――――j同ヲ ̄:; ̄ ̄| | ‐:::;;;;;;//、 ノ 〜⌒);;⌒⌒) ;;⌒)
∠二_________二二__フ_| 丿-ー''''"" ̄ー`―'ズギャギャギャギャー
 ̄ ̄  ̄ ̄ ⌒);;⌒⌒) ;;⌒)
宗
>>1くん ・・・素敵な贈り物を、たくさんありがとう
さ
>>2きちゃんのドレスは私の時計の何%かな〜♪
>>4もかわ社長……高コスト体質……
醍
>>5さん 私素敵な奥さんになりますね
>>7海ちゃんって何歳なの?まさか宗
>>1君にこんな趣味が・・・
大
>>8郎さんは究極的に早いそうですね(汗
>>398さんへ 天然っぽさといい変な歌といい私に通じるとこがありますね
リサ=ヴィク
>>1000さん 宗
>>1君は渡しませんよ!
旅団長乙ー。
ところでくほちゃんに刺されたの誰だ?
>>4 >この男の気配に気づいてしまわねば、このようなことにはならなかったのに。
とあるから、目標外の人物――多分一般の兵士かと。
ついでに前スレ603
http://www6.plala.or.jp/brigade/support/ss05/657-660.htm ただ、トヨハラからは“魔女飛行隊”を逢魔ヶ辻へ移動させると通告が届いていた。
何しろ700mの滑走路があれば作戦可能な非常識な部隊である。すでにTYPE-MOONが実効支配している、
逢魔ヶ辻北方のエロ同人国領の廃空港――あの因縁の旧補給基地の施設を押さえているとのことだった。
とあるので、595ではなく600が正当になります。
6 :
AF書き手:03/03/12 22:42 ID:Skup/hW1
……おお、どこで見たのか探し回ってる間に(笑
新スレ乙です〜♪
そいやスレ即死判定、どうなってるんですかね?
5kbじゃなかった?
相変わらず、24レス以下かつ24時間以上放置で即死です。
9 :
595:03/03/12 22:50 ID:FmJhZbd5
>>4 一般人のつもりです。
>>5 その時点ではまだ移動してないわけで。
一応封鎖されてる状況下なら移動してなくても
おかしくないと思って書いたんですけどいかがでしょうか?
10 :
595:03/03/12 22:52 ID:FmJhZbd5
訂正
一般人ってのは一般兵の誤りです。
11 :
名無しさんだよもん:03/03/12 22:56 ID:YUbdaK44
13 :
AF書き手:03/03/12 23:00 ID:Skup/hW1
おうあ……
なら早く書かなくちゃ。
書かなくちゃならないけど、Routesに走って何も書いていない罠……
吊ってきます。
即死回避
そういやRoutes買った人どれくらいいる?
まず俺
コンプしますた。
17 :
595:03/03/12 23:14 ID:FmJhZbd5
>>12 移動途中もしくは移動した後で引き返したとも考えられます。
WINTERSは小さな軍閥でしょうから、まともな指揮官なら
自分の領地がやばいって時にあれだけの戦力を手放すとは思えません。
WINTERSの指揮官はまともじゃないようですが、まともな判断をしてはいけないという道理はありません。
電波お花畑の例もありますし。
18 :
AF書き手:03/03/12 23:22 ID:Skup/hW1
今我らが女神……(笑>Routes
>>595氏
んー。
Winters師団の現況が危うくないってのはその前のりょだんちょのSSで示されてるわけで。
そこらへんはどうかなと。
>>14 自分も。
>>17 3月29日22時以前のトヨハラは、
>自分の領地がやばい
と感じさせる状況にはまったくありませんでした。
よって、本領の危機を理由とする移動中止は蓋然性がありません。
また移動後の引き返しも前スレ578
>そのうえ彼らと違い後方支援能力『だけ』は文句なく優秀なAF、WINTERSの両師団は積極的に
>軍を陽動させて憲兵隊の消耗を誘い、同方面では検問を有名無実化させていた。
とあり、稼働率低下につけ込んで憲兵隊を無力化させています。
よって、本領の危機を理由として航空隊を至急呼び戻すほどの状況とは言えません。
20 :
595:03/03/13 00:23 ID:U4dAoEOS
では、少しばかり修正を。
>「それに、我々の航空戦力は未だ実用に耐えない。JRレギオンについてくる予定だった魔女飛行隊は
>WINTERSから動けない状況です。ここで優秀な航空戦力を持つ
>鍵との関係を決定的に悪化させるなど愚の骨頂というもの」
「それに、我々の航空戦力は未だ実用に耐えない。WINTERSに頼るのも不可能です。
今でこそ封鎖は有名無実化していますが、エロゲ国保守派とてすぐに次の手を打ってくるでしょう。
そうなれば魔女飛行隊は撤退せざるを得ません。
ここで優秀な航空戦力を持つ鍵との関係を決定的に悪化させるなど愚の骨頂というもの」
このような感じでいかがでしょうか?
問題ないと思います。
それでは、収録時に修正いたします。
とりあえずほしゅ。
ただの保守、ってのも味気ないね。
なんで一つ質問。
AIR空の航空機保有数って描写あったっけ?
というか、AIR空=鍵の全部空軍なんだろうか?
あと、狗法使いのその後って出てましたか?
ボコボコにされるところでその後の顛末が無かったような気がするんですが・・・
26 :
スーツ部隊:03/03/14 02:37 ID:omanSQKx
3月31日 新大陸標準時 15:20
鍵自治州立AIRシティ綜合病院
AIRシティ綜合病院は、名前に反してAIRシティには建っていない。将来
の郊外化を睨んで、区画整理も始まっていない畑だらけの所に作られた。
当時はその無計画さに非難が集中したのだが、皮肉な事に立地条件が幸
いして戦火を逃れることが出来た。
1F廊下を黙々と突き進むスーツ姿の人間が3人。いずれもサングラスを着
用しており、目線がどこに向かっているのか判らない。どの部屋の、誰に用
があるのか。これも不明だ。背格好から判断するに入院中の政府高官の
秘書かボディガード、と当たりをつけた。先頭の男のアタッシュケースには
重要な書類が入っていて、現場に残る部下では仕事上の不手際を処理し
切れなくなり仕方無しに上司の判断を仰ぎにやってきた、とか。
待合室の青年の想像は半分当たっていた。彼らは政府関係のボディ
ガード(シークレットサービスの名で知られている)で、入院中の同じく政府
関係者に用事がある。現場の不手際というのも、言い様によっては間違っ
てはいないだろう。それならば青年の予想の何が反しているのかと言うと、
彼らが用事のある人間は政府高官などではない。正確には公務員ですら
ない。所謂ホームレスも同然の生活をしている人間だ。しかし彼は一部の
人種にとって英雄的な存在であり、それ故丁重に扱わざるを得ない。ある
政府首脳はその行為に難色を示したが。
スーツ部隊は一斉に廊下を折れ、階段を登った。エレベーターは彼らの
好むところでは無いらしく、わざわざ遠回りして非常階段を上がっていっ
た。彼らは3Fと書かれたドアを開け、果てしなく続く廊下をひたすらに進行
した。相部屋の区画を通り過ぎると個室の区画に入った。そこには財界の
大物や政治家といったおなじみの面々が入院している。彼らスーツ部隊
もあまり目立たない日常の風景として自動的に認識される。ここはそうい
う世界なのだ。
27 :
スーツ部隊:03/03/14 02:38 ID:omanSQKx
やがて、つきあたりの部屋に辿り着いた。面会謝絶の札が掲げてあった
が、彼らは当然の如くそれを無視してドアを開ける。スーツ部隊の隊長は
一瞬立ち止まって部屋を見渡した。12畳ほどの洋室で、壁一面の窓ガラス
にはカーテンがかかっていた。その隣には大仰にベッドが置かれ、その上
に一人の人間があった。全身を包帯で巻かれ、幾重にも張り巡らされた
チューブが彼の内部と直結している。脇の機械類が彼の鼓動に合わせて
電子音を慣らしている。5日前に運ばれてきた時と全く同じ光景だ。
スーツ部隊は先ほどと変わらぬ歩調で男に近づく。愉しみも憎しみも無
い、かといって退屈しているかと言えばそうでもない。そんな表情を彼らは
している。彼らは横たわる男から何の感慨も受けなかった。そういう人種な
のだ。
部隊長は椅子を持ってきて、かけた。脇のテーブルにケースを置いて患
者の容態をじっくりと窺う。相変わらず重態の男は寝たきりだった。説明が
無いと生きているのかすら判らない。
やがてスーツ部隊長は満足したのか、目線をケースへと走らせた。後ろ
での部下が鍵を手渡す。それを受け取って、ケースの鍵穴に通した。耳障
りの良い音と共にケースは開いた。
そこには青年の想像とは似ても似つかないものが収められていた。小瓶
と、注射器。それは医療機関で良く目にするものだった。
スーツの男はそれを慎重に取り出す。手垢ひとつない注射器が蛍光灯を
反射した。小瓶の中に針を入れ、液体を満たしていく。液体は僅かながら
色がついている。すごく不吉な色。
これからスーツの男がやることといえば、やはり一つしか無いだろう。わ
ざわざこんな所で自身に投薬するなどというオチをつけていたらこの国は敗
北してしまう。男は患者の右腕の動脈を探しだして、針の先端を突き刺した。
28 :
スーツ部隊:03/03/14 02:38 ID:omanSQKx
ガラス管の中の液体が、徐々に患者の体内へと侵入してゆく。同時に
全くの寝たきりだったその患者に変化が起こった。まず心拍数が上昇し、
常人のそれに近い値で安定した。全身の血管が心なしか浮かび上がっ
た。肌は見る見るうちに色を取り戻し、頬は紅潮している。
スーツの男が針を抜いた時、患者はもう患者と呼べる程衰弱していな
かった。まるで彼が健康であるかのように――いや、実際彼は健康な状態
に変換させられたといっていい。唯一常人と違うところと言えば、不必要に
隆起する筋肉くらいなものだろう。その様を見て、後ろに控えるスーツ部隊
の面々は初めて表情を持った。驚愕という表情を。
やがて、ありえない事が起こった。患者のまぶたが開いたのだ。彼は自
分の身体に起こった変化を理解するのに随分と時間を要した。
「おはよう、狗法使い。気分はどうかね? 突然で申し訳ないが君には特
別な処置を施した。特効薬みたいなものかな。そちらの方に詳しい去るお
方から戴いたものだよ。これで君も健康そのものだ」
スーツの男は彼の意識の復活を確認すると同時に堰を切ったようにたた
み掛ける。多分彼は相手に理解されようなどとは思ってもいないだろう。当
然狗法使いと呼ばれた男も状況がよく飲み込めていないようだ。
「君が寝ていた間にちょっとしたことがあった。後日詳しく説明するが、まあ
差し当たって問題はない」
男は掌を広げてみせる。オーバーな態度だ。
「それで、そのお礼と言っては随分と厚かましいだろうが――私達のお願
いを聞いてくれるかな?」
あくまでも淡々と、男は言った。掌の写真はとある将校の姿を映し出して
いた。
「この男を、殺してくれたまえ」
独立反対派の凶行か 政権首脳に衝撃走る【ソフリン 四日】
現地からの報道によると現地時間の三日深夜、葉鍵国北部の都市ものみの丘の路上で反政府勢力『鍵第三帝国』の雲龍寺魁将軍が何者かに刃物で刺された。
将軍は命は取り留めたものの一ヶ月の重傷を負い、護衛の反撃を受けた犯人グループはそのまま逃走した模様だ。
この情報について、同将軍の本来の所属であるエロゲ国Bombee!師団は事実関係を確認したが、鍵第三帝国の当局者はコメントを避けている。
葉鍵国は約二ヶ月前から内戦状態に陥り、政府中央と民族系統が異なる鍵第三帝国側は先月末に同国からの一方的独立を宣言したばかり。
現場は28日の政府軍による弾道ミサイル攻撃で大きな被害を受けた地域で、治安の急速な悪化が危惧されていた。(まさと)
(解説)政権首脳が首都の公道で襲撃されるという事態を受けて、鍵第三帝国の麻枝政権は公式見解を出せないほどに衝撃を受けている。
政敵の久弥将軍派を一掃した今、国民からの支持は常に90%を超え、旧葉鍵国時代から政権を悩ませていた国内の少数民族・月姫民族も圧倒的な軍事力で抑圧に成功し、治安を完全に掌握したという自信を打ち砕かれたからだ。
しかも戦争突入以降の厳戒態勢の中、犯人グループは逃亡を続け、その背景すらもわからない。軍警察の威信は地に落ちたといってよい。
鍵勢力の民間マスコミは政府軍の暗殺作戦と非難し、対峙する政府系メディアはエロゲ国VA財閥系の軍事顧問である雲龍寺氏がエロゲ主義傾向を強く持つことを指摘し、大気論を奉じる鍵首脳部と理論的な食い違いがあったと伝えるなど、内ゲバ説を示唆している。
だがいずれの報道も憶測や伝聞をそのまま紙面に並べるばかりで、証拠と呼べる材料はなにもないのが実際のところだ。
政権首脳が軒並み沈黙する中、参謀総長である涼元大将のみはインタビューに応じ、
「犯罪グループは南に逃げた。我々は地の底までも追いかけて、必ず彼らに懲罰を与える」
として政府軍の支援の下、鍵第三帝国支配地域南部に自治区を設立した月姫系過激派の犯行との見解を示した。
もしこれが事実ならば、系統を異にするものの同じく月姫系過激派の力を借りるもう一つの反政府勢力、正統リーフとの関係が現在よりも更に微妙なものになることは必至だ。
鍵第三帝国が国内月姫民族の大規模な弾圧に乗り出した場合、正統リーフが国内世論に押されて鍵と袂を分かつなど内戦構造の変化をもたらす可能性すらある。
内戦当事者には国連決議の履行、その円滑な実施のために政府軍が発議した停戦の協議と難問が山積している。
度重なる不安定要因の増加に、内戦当事者がとりあえずの目標である国連決議の履行を果たすことができるかどうか、国際社会は注視している。
4月2日2100時
空き地の町
「どうすればいいんだ……などといっている場合ではないな」
普段ならそこそこの苦笑を誘うであろう青紫の言葉に、しかし誰も反応を返さなかった。
呆れていたからではない。誰もが同感だったからだ。
空き地の町暫定自治政府の緊急閣議は、いつになく重苦しい雰囲気に包まれていた。
議題は――数時間前に彼らの隣町で発生した変事についてだった。
結局のところ、正葉・鍵・空き地の町三者によるロディマス首脳会談は、最終的な合意には至らなかった。
それでも、3月29日夜までは、紆余曲折を経ながらも何とか交渉は進んでいたのだ。
しかし、鍵の独立宣言でそれも全てご破算になってしまった。
特に、鍵側の全権大使だった裏葉の立場は『悲惨』の一言に尽きた。何しろ麻枝から何の相談もなく、
いきなり『我々は鍵第三帝国として独立した。ついては正葉側に承認を求めよ』などと
常識を弁えない訓電を受けたのだから。正葉の正当性を真っ向から否定する命令を、
事前の根回しもなく達成できるはずがないのに――命令を受けた裏葉こそいい面の皮だった。
いや――裏葉ほどの腕があれば、事前に知らされてさえいれば何とかなったかも知れない。
少なくとも交渉自体を継続させるくらいは可能だったはずだ。だが、何の相談もなく命令されて
『はいそうですか』と実行できるはずもないのだ。裏葉はその点をちゃんと承知していたが
――ものみの丘はまったく理解していなかった。それでも、
『ロディマスに留まり正葉側との交渉再開を求め続ける』という妥協点にまでたどり着けたのは、
裏葉の努力の賜だった。
さて、メインの正葉―鍵交渉がこうして決裂してしまった以上、両者の仲介をとることによって
自らの地位を確立せんとしていた空き地の町の企みも、当然にして頓挫してしまった。
とはいえ、こちらはさほど心配する程のことはなかった。電波花畑の追放により
空き地の町がVA財団の影響下に入ったことが、状況をプラスに転換させていたのだ。
同じくVAの援助を受ける正葉にとって見ても、空き地の町をそれなりに優遇する必要性が発生していた。
さらに、鍵の動向に睨みを利かせるためにも、混乱なしに空き地の町を押さえておく必要が軍事的にも生じていた。
ここで空き地の町と対立し、逢魔ヶ辻の東方派遣軍に付け入らせる隙を与えるわけにもいかないのだ。
それに空き地の町が求めているのは『正葉の下での独立自治権』であり、
一方的な独立を通告してきた非常識な鍵とはレベルが違う。
正式な交渉はさすがに後日に延期されたものの、『基本的に空き地の町の要望を尊重する』
という高橋総帥の言質を取ることができたし――何よりも、御堂を平和裡に引き渡してもらえた。
さすがにそこまでは期待していなかった青紫だったが、実のところこれは原田准将の動きを警戒し始めた高橋総帥が、
彼の手札を封じようと動いた結果のことだった。
原田の動きがなければ、ここまでの結果を引き出せたかどうかわからない。もっともこれも、
鍵の独立宣言という状況激変があったればこそ、なのかもしれないが。
こうして、裏葉をロディマスに残して帰途についた『空き地の町』『里村茜』が空き地の町へと
入港したのが4月2日の昼過ぎ――逢魔ヶ辻での変事発生の6時間前のことだった。
「とにかく、状況を整理します」
緊張した面もちで、館山総理は出席者を見回しつつ言葉を紡いだ。
「本日午後7時過ぎ、逢魔ヶ辻の鍵第三帝国東方派遣軍司令官・みらくる☆みきぽん中将が
突如として声明を発表しました。声明を要約すると、
1 鍵第三帝国政権の歴史的正統性の喪失を宣言
2 統一された葉鍵国体制の下での統治機構『鍵自治州正統政府』の創設
3 関係各機関に、逢魔ヶ辻政権を『鍵自治州における唯一の合法的政権』と承認するよう要請
4 現ものみの丘政権による月姫弾圧政策の否定と下葉月姫民族自治区の承認
となります。彼らはこの声明を下葉、正葉、東葉に送付した模様です。我々には送付がありませんでしたが、
これは我々の自治政府がまだ正式に発足していない点を考慮したものと思われます」
なお、東葉に向けた要請に関しては、『承認要請』ではなく『下葉に対して承認を働きかけるよう要請』
とされている。
「現在のところ、下葉、正葉、東葉ともにこの声明に対する反応は見られません。
また現在の逢魔ヶ辻周辺の状況ですが、それは米村少将から」
館山に促されて、米村がやや緊張した面もちで発言する。
「現在、下葉軍も正葉軍も、目立った軍の動きは示していません。ただ、前線の警戒度上昇は先ほど確認されました。
通信量増大も顕著で、特に山麓方面に陣取っている下葉軍部隊――おそらく“キズアト”師団からの
通信はひっきりなしです。おそらくシェンムーズガーデンと回線を開きっぱなしにしているものと思われます。
一方鍵――ものみの丘の帝国軍の方ですが、これも目立った動きがありません。
もっともこれは、逢魔ヶ辻近辺の部隊が全てみきぽん中将の指揮下にあったこと、
その部隊が目立った抵抗を示さずにみきぽん中将の命に従うか、もしくは武装解除に応じたこと、
そしてものみの丘が幹ぽん中将を全く警戒していなかったことが影響しています。
以上の状況から、ものみの丘が迅速に反乱鎮圧部隊を派遣できる見通しは立っていないと思われます。
何しろ、その任務に最適と思われる第1降下猟兵大隊をみきぽん中将に握られてしまったのですから」
「逢魔ヶ辻の方は?」
青紫が腕組みしながら尋ねた。
「こちらも、警戒の兵士は増加していますが、目立った動きはありません。
ただ、旧補給基地からJAS39“グリペン”がひっきりなしに飛び立っています。
先刻も2機、我々の上空をかすめ飛んでいました」
「基本的には、各陣営とも警戒を強めただけか……今のところは」
「はい。おそらく両者とも逢魔ヶ辻に侵攻した場合の影響を読み切れていないせいでしょう。
少なくとも数時間のうちに軍事的に状況が激変するとは思えません」
米村の言葉に肯いて、館山が話を引き取った。
「となると、問題は政治的な話になります――青紫参謀、ロディマスに動きはありますか?」
「それがな――まったく沈黙したままなのだ」
ほとほと困り果てた表情になって、青紫はため息をついた。
「まさかとは思うが、連中、このまま事態を放置するつもりかもしれん」
「まさか……」
吐き捨てるように呟く館山。
「高橋総帥ともあろう方が……いま逢魔ヶ辻を放置することがどれほど危険か、
それくらいわかっておられようにっ!」
今回、みきぽんははっきりと「葉鍵国体制の下での鍵自治州」と宣言している。
つまりは、統一された葉鍵国体制を支持するといっているのと同じだ。そして下葉や正葉は
『自らが葉鍵国の唯一正当な統治者』と主張している。つまり、彼らが主張に忠実であろうとするならば、
みきぽんを無視するわけにはいかない。自らの麾下に加えるにしろ、
政権としての態を成していないと否定するにしろ、『統一葉鍵国勢権』として責任を持って
コメントする責務があるのだ。もしそれを放棄し、状況が流れるままに放置したとあっては
――それは自ら『統一葉鍵国』のスローガンに泥を塗ることになる。ことに下葉と正葉の場合、
相手のコメント――承認か否定かは知らないが――に先を越されてしまっては面目丸つぶれとなってしまう。
更に国際社会は『コメントを出さないということはは、葉鍵国統一のスローガンを自ら否定したを諦めた』
と受け取るだろう。
「“キズアト”が回線を開きっぱなしにしているということは、
シェンムーズガーデンが現地情報の収集に全力を挙げているということです」
米村がやや緊張した面もちで出席者を見回す。
「つまり下葉は、逢魔ヶ辻に対し何らかの意思表示をしようと積極的に動いていると見るべきです。
下手をすると、日付が変わる頃に何らかの宣言を発するかもしれません」
強力な独裁体制であるが故に――下葉の国家的決断は全般的に迅速だ。4月3日の声を聞かないうちに
対逢魔ヶ辻政策を公表することは十分にあり得る。そしてその動きに対し――
正葉の動きはあまりに緩慢だ。このままでは先を越されるのはまず間違いない。
出っ歯を微かに震わせて、青紫が呻く。
「下川国家元帥が承認するにしろ否定するにしろ、これは下葉が逢魔ヶ辻を押さえる絶好のチャンスだ。
承認をしたなら『逢魔ヶ辻防衛』を名目に堂々と軍を逢魔ヶ辻へ進駐させられる。
否定したならば、これまた『反乱鎮圧』を名目に侵攻できる。国連査察を目前にして、
どちらにしても下葉は軍を動かす大義名分が出来る」
「問題は、みきぽん中将が『下葉月姫自治区』を承認している点です」
書類を指で叩きながら、館山は自らを落ち着かせようと静かに話し始めた。
「逢魔ヶ辻政権としては、従来の鍵の月姫弾圧政策を糾弾することは大きなプラスです。
ものみの丘政権との際をはっきり印象づけられますし、国際社会の受け持ちがいます。しかし
――何故月姫擁護政策を主張するのに、下葉支配下にある月姫民族自治区の承認を打ち出したのか?
何故TYPE-MOONとの連携強化を打ち出さなかったのか?」
「――つまり、逢魔ヶ辻は下葉に擦り寄りたがっている?」
今まで黙っていた蝉丸が、おもむろに口を開いた。
「ええ。おそらくみきぽん中将は現実的な判断をしたのだと思います。兵力比を見ても
下葉陣営の優位は明らかです。それに、公称兵力18万の鍵第三帝国と渡り合うためにも、
下葉の強大な軍事力のバックアップを受けたいのは当然でしょう。おそらく正葉への承認要請は、
下葉に迅速な決断を促すためのフェイクでしょう。
ただ――この判断は、我々にとっては非常に危険な代物です」
館山の言葉に、全員が肯く。
3月末の弾道ミサイルの応酬以来、下葉と空き地の町の対立は決定的となった。
国連安保理決議によって何とか破局は免れたが、それでも通常戦力による激突の危険まで去ったわけではない。
“アビスボート”の一時凍結を早急に安保理に通告し、米海軍による査察を受け入れると表明した後、
空き地の町は通常戦力による防衛に政策を切り替えた。
もっとも、空き地の町を防衛するだけならば地形防御を活用して少ない戦力でも何とかなるし、
何よりも流入が始まったVAからの援助量は豊富の一言に尽きる。防衛体制を確立すること自体は
さほど難しくはない。
ただ――それも、逢魔ヶ辻が下葉に押さえられるとなると話は違ってくる。
もしこれが現実となった場合、空き地の町は南方に加え西方にも防衛戦力を割かねばならないのだ。
VAからの援助をフル活用すれば不可能ではないが――それでも苦しいことに変わりはない。
いや、それどころか逢魔ヶ辻に進駐した下葉軍が仮に北方へ進撃しそこから正葉領に突入した場合
――空き地に町は三方を下葉に取り囲まれ完全に孤立してしまう。
「逢魔ヶ辻が下葉に傾きかけていようが、正葉に承認する意志が無かろうが
――我々が採るべき道はただひとつです」
ひとつ大きく息を吐いて、館山は結論じみたものを口にした。
「いまここで逢魔ヶ辻を、下葉の隷下にやるわけにはいきません。逢魔ヶ辻を正葉陣営に引き込む
――あるいは、どんなに最悪でも下葉寄り中立の立場にとどめさせるべきです」
「しかし総理、逢魔ヶ辻政権を承認すれば、それは必然的にものみの丘政権と断交することになりますが」
米村が、一応念のためといった表情で反論してみる。
「ええ、確かに――しかし、我々に前にある現実はひとつです。ここからものみの丘までの距離は
千数百キロです。しかし逢魔ヶ辻との境界までは10キロもない――どちらを敵に回す方がより危機的か、
議論するまでもありませんよ」
「……確かに」
「それに――ものみの丘は、少々おいたが過ぎます。これ以上彼らにつき合っていては、
彼ら自身の破滅に巻き込まれる危険があります。それを避けるためにも、ものみの丘と手を切ったほうが
得策です」
館山の意見の裏には、「ここで鍵との同盟を解消してしまえば、下葉の注意がそちらに逸れる」
との思惑がある。確かに鍵を見捨てれば強力な同盟相手を失い、鍵は下葉に併呑されるだろう。
何しろアクアプラスシティから見た場合、正葉よりも鍵の方がはるかに近いのだ。
『柔らかな下腹部』を解消するためにも、下葉が鍵へと軍を動かすのはほぼ間違いない。
もちろんこれらの動きは、査察停戦が終わった後の話だろうが。
だがその過程で下葉も多大な戦力を集中する必要があるし、犠牲も少なからず出るだろう。
そして併呑した後も、治安維持や北部国境防衛のために戦力を数万単位で割かねばならない。
それは結果として、正葉方面への軍事圧力低下としてこちらを利することとなる。
もちろん1〜2年のスパンに限っての話だが、それだけの時間があればVAからの援助を用いて
軍備を強化することも十分可能だ。数年の猶予――特に空き地の町の首脳陣にとって、
これほど貴重に思えるものはなかった。
「とにかく、正葉に逢魔ヶ辻政権承認を早急かつ強力に求めていきます。青紫参謀、やってくれますね?」
「承知した。が……きついな、まったく」
思わず苦笑して、青紫は天を仰いだ。
「正葉が放置を決め込んでいる理由のひとつは――おそらくものみの丘への遠慮だ。
高橋総帥は、いまだに麻枝元帥に期待しておられる。それを覆せるかどうか」
「その期待こそ希望的観測というものです――それを的確に指摘し、正葉の政策を急転換させなければ、
我々の未来はより厳しいものになるでしょう」
「……わかった」
視線を戻して館山をジッと見つめ、青紫は地顔のにやついた表情を精一杯引き締めた。
「やれるだけやってみよう――今から高橋総帥へのホットラインを申し込む。
なんとか総帥を電話口に引き出してみるから……総理、その後はあんたの仕事だ」
>>36に推敲の漏れありました。
>更に国際社会は『コメントを出さないということはは、葉鍵国統一のスローガンを自ら否定したを諦めた』
>と受け取るだろう。
↓
更に国際社会は『コメントを出さないということは、葉鍵国統一のスローガンを自ら否定した』
と受け取るだろう。
です。
旅団長、おつ〜
……内戦構造、改編のヨカソw
つか、旅団長のSSって鍵への私怨が透けて見えるんだよな。
そういうのってちょっと萎えるぞ。
書き手みんながみんな、どっかに肩入れしてる状況で一人難詰するのはナンセンスでね?
>>43 間違いではないが、少し違う。
私怨を透かしてるんじゃない、鍵への怨念こそがこの大戦記スレに参加し続ける原動力になっている。
その怨念がSSの質に悪影響を与えたり、またはリレー進行上の妨げになっているなら、
その点は反省しなければならないし、改めなければならない。
ただ、そうでないなら、それは書き手の裁量の範囲内ということで勘弁してもらいたい。
書き手による怨念などはむしろ歓迎
捕手?
期待保守
っつーかリアルに戦争。
全く以ってその通りだな。
4月2日 2251
ロディマス市庁第3会議室
空き地の街、館山総理からのホットライン。
情勢が緊迫感を増す中での直接会談。
緊迫感を増す情勢の中で行われたソレは、余人を交えぬ、そして誤解の余地の無い本音での会談と成り、
それが正葉の動向を決定付けた。
様々な判断は在った。
琥珀大佐提案の暗殺計画も、具体的立案すらも検討された。
だが既に世界に対して彼等が上げた声を打ち消す事は出来ない。
政治的には可能。
だがそれがもたらす正葉への打撃は、国家の基盤すらも破壊し得るものと成る。
国際世論を誘導し、自らの正当性を訴える事で各種支援を得てきた正葉は、それゆえに自らそれを放棄
する訳にはいかないのだ。
「結局、我々に引くべき道は残され居ない。そう云う事だな」
総帥室から戻った高橋の言葉。
それが、全てを言い表していた。
会議室の誰もが高橋を見ていた。
承認の是非を巡り喧々諤々の議論を繰り広げていた水無月大将と武内【TYPE-MOON】副総裁も着席し、
居住まいを正した。
誰もが、正葉の最高司令官が一つの決断を下した事を皮膚感覚で理解していたのだ。
「結論は、総帥?」
鋭利な刃物の様な口調で尋ねるのは柏木千鶴大佐。
対する高橋は直接的に返さず、正葉国参謀長である琥珀大佐に問う。
「【Playm】のフェイズUbは即時、発動可能かね?」
高橋の求めるフェイズUb、それは即ち"C"とも呼称されている【クリュンパーシステム】の最大規模での
実働であった。
今の教育大隊に属している人員を基幹要員とし、これを一挙に師団へと大幅増員を実施。
又、此れに伴い旧来の2個旅団も師団へと改編し、6個師団12万人体制へと持ち込む。
それが【Playm】のフェイズUであった。
但しこれは、総人口が700万に届かぬ正葉国にとって極めて重大な影響をもたらしかねないものであり、
それ故に高橋は無論、立案した琥珀も又、恐らくは使われる確率は低いと判断していた。
それを高橋は求めたのだった。
尚、余談ではあるがフェイズUaの場合、連隊規模への拡張であり、琥珀等参謀団は此方を本命視していた。
「難しいですね。各教育大隊の練成自体は順調です。実働からまだ一週間も経ていませんが、戦力化の
目処は見えて来ました。ですが流石に・・・・・・・・・」
人員自体の目処は立っていた。
流入してくる旧国防軍軍人の状態も、表向きグリーンカード(国民登録/労働カード)として配布した
召集登録カードによって把握されており、各々の人員の兵科その他の情報から短期間での組織化は可能で
あった。
装備も事実上の輸入規制を受ける前に発注済であり、M60戦車やM109自走砲、或いはM113装甲車等を満載
したLO-LO船の第一陣は、既に新大陸近海まで到達していた。
妨害工作対策として、遠野財閥系の海運会社ではなく日本やアメリカ国籍の船舶をチャーターしている
(そして日米海軍の非公式護衛を受けている)為、装備が到着しない筈は無かった。
にも関わらず琥珀は言葉を濁していた。
事実上の博打と成るからである。
正葉国の経済は日米等の列強諸国や、VA財閥系企業の投資によって活性化の兆しが在るが、それでも
短期間で10万を超える軍事力を養えるだけの規模に成ると見るのは余りにも楽観視が過ぎていた。
であればどうなるのか。
戦わねばならぬのである。
全てを賭けて、下葉と。
築き上げる軍事力が、その力を発揮出来るうちに。
「困難だろうが不可能だろうが実施せねばならん。でなければ我々は自らが立つべき基盤を喪う」
断固たる口調。
瞳に揺らぎは無い。
「………………決断されたのですね」
溜息と共に言葉を押し出す琥珀。
高橋の判断自体に異を唱えるつもりは無かった。
国力に適正な規模の軍事力整備を選択した場合、ある程度の期間は正葉と云う国家は維持出来るだろう。
だが、最終的には鍵を併合した下葉によって押し潰される可能性が高いのだ。
進むも地獄ならば退くも地獄。
それは正葉と云う国家を興し、下川体勢の打倒を誓った判っていた事なのだ。
「であるならば是非も無しですね。参謀団のお尻を叩くと致しましょう」
「任せる。素晴らしい献策を期待する」
「はい」
その後を受け柏木耕一少将は、一瞬、遠野志貴准将と視線を合わせて無形の譲意を受けると、実戦部隊
を代表する形で宣誓をする。
「総帥。我々も、その総力をもって戦い抜きましょう」
「期待する。君達が中核となるのだ」
「はっ」
揃って立ち上がり、色気のある敬礼を捧げる耕一と志貴。
高橋も又、ゆっくりとした動作で答礼していた。
「大きな話となりましたな」
緊張感の無い口調で呟く那須きのこ【TYPE-MOON】総裁。
対する高橋も又、冗談の様な口調で返した。
「後悔されますかな?」
「まさか。我々は月姫の、否、それのみならず民族を理由とした差別の無い国家を、世界を構築する為の
戦いに何ら躊躇するものではありませんよ」
偽善。
或いは御題目。
大上段にそれを述べれば胡散臭いと言う向きもある。
だが今、正葉と云う国家は自らの行った宣伝戦の結果、それを先ず第一にせねば成らぬ状況に在った。
道義。
正葉は、人の踏み行うべき道を真っ向から踏破せねばならぬのだ。
「であるならば月姫民族は我々の戦友であり、大切な同胞です」
どちらかとも無く、差し出される手。
高橋と奈須は、強い力で握手を交わした。
気が付けば政治的意味合いが極めて増した会議-宣誓。
その最後に残ったのは海兵隊司令官原田うだる准将であった。
「………高橋総帥。貴方が下川打倒を目指すのであれば、私も揺るぐ事無く付き従いましょう」
単純に部下とは呼ばれ得ぬ微妙な立場。
そして原田の心に突き刺さった棘。
その全てを包み込む様に敬礼を捧げた原田。
果たして、その口調のくすみに気付いた者は居なかった。
額に伸ばされた指先が、顔色を隠していた。
「有難う」
スイス・チューリッヒ。
昔より、外交の舞台として利用されてきた都市にて、正葉国全権大使の肩書きも持つ久我峰斗波は本国
からの指示があるや否や即座に動いていた。
時間の速さこそが勝利の鍵。
指示された事の意図と理由を知った久我峰は、そう判断するや大馬力で諸マスコミ-列強諸国はもとより
新旧エロゲ大陸の報道各社を呼び寄せた大記者会見を設けていた。
それは正葉からの指示が出されてから1時間と云う正に早業であった。
その努力は正しく報われたか否か。
それは判らない。
言える事は久我峰の、正葉の声明発表が下葉、正葉、東葉の中で一番早かった。
只それだけであった。
そして正葉国の声明。
それは正葉国は葉鍵国の正当な後継者として、葉鍵国からの分離独立主義を容認しないと云う事。
そして、葉鍵国と云う統一した国家に属する友邦の民としてであれば鍵の自治権は認めるとの事。
逢魔ヶ辻政権に関しては、此れがロディマス政権を支持する限りに於いては此れを容認する用意が在る
と云う事。
尚、逢魔ヶ辻政権が月姫難民問題に対し容認すべしとの態度を表明した事に関しては、人種差別主義への
決別として、歓迎する旨を発表していた。
衝撃的な内容。
だがそれは、正葉が世界に与えた衝撃としては最初の一撃であった。
ども、名無し月姫参謀です。
【声明発表への過程】うp完了です。
相変わらずなヘッポコss。
どーなるのやら(笑
後、レギオン殿、新スレ立てご苦労様でした。
ではでは。
58 :
名無しさんだよもん:03/03/21 16:51 ID:XDJLpVem
59 :
名無しさんだよもん:03/03/21 19:15 ID:B76M4w9G
フライトシム板主催の祭りです、皆様御協力を!
決行日時
4/1
目標
家庭用ゲーム板
http://game4.2ch.net/famicom/ スレ立て内容
スレタイトル
シム板を荒らす家ゲ板住人へ報復を!
名前欄
空白(家ゲの名無しで)
書き込み内容
エアダン公式のもめ事を2chへ持ち込んだ家ゲ住人(瀬川)へ講議します。
全板へコピペお願いします。
講義じゃなくて抗議だろ。
62 :
AF書き手:03/03/22 15:00 ID:JtWxGU6m
>>61 いつもながら、事実は仮想の先を進みますよな(w
4月2日2310時
逢魔ヶ辻町役場
葉鍵国鍵自治州正統政府――この段階では、諸勢力やマスコミからは『逢魔ヶ辻政権』
の通称を与えられていた――としての最初の閣議は、4月2日20時過ぎから始まった。
討議内容は、当然にして正統政府に対する諸勢力の承認と、鍵第三帝国――
これも、この段階では『ものみの丘政権』――の反撃予測に関してだった。
出席者は、みらくる☆みきぽん中将と川口茂美少佐、そしてみきぽんの護衛である皆瀬まなみ中尉の他は、
居酒屋の秘密アジトから連行されてそのまま会議室に押し込まれたJRレギオン少将、清水なつき少尉、
金森弥太郎、そして制圧された市庁舎からこれも半ば連行されてきた逢魔ヶ辻町長と町議会議長。
もっとも、町長と町議会議長は事態のあまりの急変についてこれず、会議冒頭で失神してしまった。
そのため会議は、軍人と過激派だけで展開されるという、かなりアレな展開となっている。
とはいえ――未だ下葉、正葉、東葉からの回答はなく、ものみの丘も反応を返していない状況では、
会議もさしたる進展はなかった。国外のマスコミはそれこそ蜂の巣をつついたような大騒ぎに陥っていたが、
これも逢魔ヶ辻からの中継が出来ないため特に目を見張るような報道はない。
マスコミの特派員は空き地の町に集結しており、今まで特に目立った動きの無かった逢魔ヶ辻には
一人の特派員もいなかったのだ。このため彼らは両町の境界付近に陣取ってライブ映像を送り続ける一方、
逢魔ヶ辻にあるふたつの報道機関――逢魔ヶ辻日報新聞と逢魔ヶ辻CATVに接触し、情報収集に躍起になっていた。
みきぽんが会議の小休止を告げたのは、そうした状態の時である。
「ふぅ……」
会議室前の廊下。そこに据え付けられた長椅子に腰を下ろすと、茂美は大きく息を吐いた。
軍服に包まれた肩が激しく上下している。
「なんだ……まだ本調子でないなら無理することもあるまいに」
横合いの頭上から声が振ってくる。茂美が顔を上げたその先には、
同じくらいに疲労の色を浮かべた旅団長が立っていた。
「失礼させてもらう」
ただしこれは、あくまで書類上のことである。いたるは麻枝の妻となった後公務からは
身を引いた事になっているので、元勲としての尊崇対象からは外れている。
また中央情報局長官としての職務を重視するしのり〜も、情報工作面での悪影響を懸念して
自身の神格化工作を極端に嫌っていた。みきぽんはそれほど強くは言っていなかったが、
それでも祭り上げられることに積極的ではなかった。
もっとも、それで一向に構わなかったとも言える。元々『始祖三元勲』とは、
久弥の造反により瓦解の危機に瀕した元勲統治体制――
『偉大で慈愛に満ちた我らの指導者麻枝元帥と、元帥に心酔する元勲たちによる友愛に満ちた統治体制』
というイメージ――を補強するために考え出された、比較的新しい宣伝手法だったからだ。
要は久弥造反という事実に国民が動揺することを防ぐための『目くらまし』であって、
スローガン以上の効果を期待するものではなかった。
ただ――多くのスローガンがそうであるように、やがてこの『始祖三元勲』という言葉は
次第にそれ自体で意味を持つようになっていった。繰り返し流される宣伝に、
国民はおろか一部の政府関係者ですら影響され始めたのだ。特に忠誠心の強い元勲恩顧組に
その傾向が強く、茂美のその中の一人だった。
しかしみきぽんと茂美の場合は、まぁ仕方ない要素は存在している。敵中に切り込む役割を果たす
第1降下猟兵大隊は、他部隊よりも強力な兵装を必要としており、それに必要な兵器や物資を
鋭意開発してきたのが、みきぽん率いる技術開発本部だったからだ。当然そこには、
検討会や実地試験を通じて形成された個人的な信頼関係が存在しており、
だからこそ茂美もみきぽんを深く敬愛するようになっていた。
そのため――みきぽんから謀叛の本心を告げられ、麻枝への造反を強要された時、
彼女はそれを拒むことが出来なかった。麻枝への忠誠心厚い彼女ではあったが、
それでも過去何度も世話になった目の前のみきぽんか、それともさほど親しくつきあっているわけではない
千数百キロ彼方の偉大なる指導者のどちらを選べと言われれば――やはりみきぽんに従わざるを得ない。
ただしこれは、あくまで書類上のことである。いたるは麻枝の妻となった後公務からは
身を引いた事になっているので、元勲としての尊崇対象からは外れている。
また中央情報局長官としての職務を重視するしのり〜も、情報工作面での悪影響を懸念して
自身の神格化工作を極端に嫌っていた。みきぽんはそれほど強くは言っていなかったが、
それでも祭り上げられることに積極的ではなかった。
もっとも、それで一向に構わなかったとも言える。元々『始祖三元勲』とは、
久弥の造反により瓦解の危機に瀕した元勲統治体制――
『偉大で慈愛に満ちた我らの指導者麻枝元帥と、元帥に心酔する元勲たちによる友愛に満ちた統治体制』
というイメージ――を補強するために考え出された、比較的新しい宣伝手法だったからだ。
要は久弥造反という事実に国民が動揺することを防ぐための『目くらまし』であって、
スローガン以上の効果を期待するものではなかった。
ただ――多くのスローガンがそうであるように、やがてこの『始祖三元勲』という言葉は
次第にそれ自体で意味を持つようになっていった。繰り返し流される宣伝に、
国民はおろか一部の政府関係者ですら影響され始めたのだ。特に忠誠心の強い元勲恩顧組に
その傾向が強く、茂美のその中の一人だった。
しかしみきぽんと茂美の場合は、まぁ仕方ない要素は存在している。敵中に切り込む役割を果たす
第1降下猟兵大隊は、他部隊よりも強力な兵装を必要としており、それに必要な兵器や物資を
鋭意開発してきたのが、みきぽん率いる技術開発本部だったからだ。当然そこには、
検討会や実地試験を通じて形成された個人的な信頼関係が存在しており、
だからこそ茂美もみきぽんを深く敬愛するようになっていた。
そのため――みきぽんから謀叛の本心を告げられ、麻枝への造反を強要された時、
彼女はそれを拒むことが出来なかった。麻枝への忠誠心厚い彼女ではあったが、
それでも過去何度も世話になった目の前のみきぽんか、それともさほど親しくつきあっているわけではない
千数百キロ彼方の偉大なる指導者のどちらを選べと言われれば――やはりみきぽんに従わざるを得ない。
こうして自身ですら十分納得していなかったものの、茂美は部隊を指揮してみきぽんの意を体した。
茂美などよりもよほど深くものみの丘と結びつき、容易にみきぽんに従わないと予想された
逢魔ヶ辻独立駐留連隊長の美坂香里中佐を連隊本部に急襲して逮捕し、
抵抗の気配を示した北川潤大尉の顎を銃底で殴りつけて重傷を負わせた。
またものみの丘になびきそうな警察署や自治体庁舎も同時に制圧し――そして最後に制圧したのが、
旅団長が密談していたあの居酒屋だった。この間、小1時間もかかっていない。
この辺りの手際の良さは、さすが精鋭部隊といわれるだけのことはあった。
その精強さが、自身の体制を転覆させる方向に働いたのは皮肉としか言いようがないが。
――そんな葛藤を演じてきた茂美だからこその悲痛な叫びを、旅団長は表情を消して聞いていた。
残りのコーヒーを一気に呷り、紙コップをくずかごに放り込んでから、ぼそっと呟く。
「ま、悩む気持ちもわからなくはないが……もう諦めろ。俺たちはみきぽんに無理矢理、
ルビコン川を渡らされてしまったんだ。今更後戻りは出来ないぞ」
「……」
無言で睨み付ける茂美の視線を敢えて無視して、言葉を続けた。
「今更みきぽんを裏切ってものみの丘に帰るなんて芸当は、もうできまい? 事情はともあれ、
貴様はもうみきぽんの尖兵として動いてしまったんだからな。麻枝とみきぽんの間で引き裂かれた
貴様の心情なんて、ものみの丘は絶対に考慮しないだろう……なら、残された道はふたつしかない。
ひとつは俺と同じように国外に亡命してトンズラこく。もうひとつは……地獄までみきぽんにつき合って
歴史にその名を刻み込む」
「そんな、簡単に……」
「簡単な話なんだよ……俺たちが他に選べる選択肢は、みきぽんに奪われてしまったんだからな。
それが貴様の置かれた立場だ」
「そんな……今までの麻枝元帥への忠誠は……」
茂美が更に言い募ろうとしたときだった。会議室から慌てて出てきたなつきが、小走りにふたりの元に歩み寄ってくる。
「旅団長! 衛星電話が入っています! すぐ会議室へ!」
「俺個人にか? 誰から?」
「はい! ネクストン軍SCORE任務部隊参謀・kagami少佐から……」
「kagami? またどうして……」
そう言いつつも、旅団長は足早に会議室に消えていった。そんな彼を無言で見送りつつ、なつきは小さくため息をつくと、
茂美の方に向き直った。心配そうな表情を浮かべて顔を覗き込む。
「あの、川口少佐……ずいぶん無理してらっしゃるんじゃないですか? 顔色があんまり……」
「……ふふ。上司も部下も、そろって同じことを言うんだな。いいコンビだよ」
思わず苦笑すると、茂美は吹っ切るように立ち上がった。ポンッとなつきの肩に手を置いて、
疲労の色を追い出しながら語りかける。
「確かにまだ傷は治ってないが……今休養するわけにもいくまい? 下葉、正葉――それにものみの丘。
これらがいつ攻め込んでくるか、いつ工作員を送り込んでみきぽん閣下に害を為そうとするか
わからないからな」
「でも……」
「心配するな。これでも第1降下猟兵大隊を率いているんだぞ、私は。この程度でくたばっているようでは、
降下猟兵の名が泣くよ」
「……はい」
こくりと肯くなつき。そんな彼女の肩をもう一度叩いて、茂美はニコリと微笑んだ。
「でも……心配してくれてありがとう、なつき」
会議室に残っているのはみきぽんと金森、そしてまなみだけだった。みきぽんと金森は
テレビの緊急特番を注視し、まなみはみきぽんの背後に立って周囲をさりげなく警戒している。
「? 何か動きがあったんですかな?」
受話器を取り上げながら何の気無しに尋ねると、みきぽんが画面を見つめたまま答えた。
「チューリヒの正葉利益代表部が記者会見すると関係機関に連絡したんでしゅ。
おそらく正葉が承認の是非を発表するんでしょうね」
「ふん……なら、発表直前にこちらにも連絡が来ますな」
軽く鼻を鳴らして答えてから、旅団長は保留解除のボタンを押した。
「東方派遣軍……いや、今は違うか……ああ、鍵自治州正統政府軍・JRレギオン少将」
『ネクストン軍SCORE任務部隊・kagami少佐。お久しぶり、旅団長』
「ああ。こっちも色々近況を聞きたいところだが、残念ながら今は状況が切迫している。手短に頼む」
『了解……あ、いや、ちょっと待ってくれ……ごめんねぇ葵ちゃん』
いきなり受話器から、普段からは想像も付かないようなkagamiの猫なで声が聞こえてくる。
背筋を言いようのない悪寒が走り抜けて、旅団長は思わず受話器を取り落としそうになってしまった。
そんな彼の耳に、微かに幼女らしきいたいけな声が聞こえてくる。
『でもね、でもねkagami参謀……葵、寂しいの……』
『うん、後でいっぱい可愛がってあげるから……5分だけ、5分だけ待っててね……待たせたな』
「kagami……貴様、そんないたいけな子供相手に……人間として終わってるという自覚はあるか?」
『何を言う旅団長! ロリこそ世界の真理っ! ロリこそ世界の全てっ!
全世界のあらゆる事象はしおり様さおり様を始祖とする……』
「すまんkagami、余計なこと聞いた……頼むから要件を手短に話してくれ……
そしたら葵ちゃんだったか? とにかくその子をいっぱい可愛がれるだろ?」
『ふむ……まぁ仕方ないな』
何が仕方ないのかはわからないが、kagamiは咳払いをしておもむろに要件を切り出してきた。
『ネクストン軍司令官・鈴木閣下からの伝言だ。ネクストン軍は、今回の鍵自治州正統政府の設立を
全面的に支援する方針を固めた。ただし、鍵第三帝国と名乗る分離主義者や正統リーフを僭称する
反乱勢力と完全に絶縁するならば、という条件付きでだ。それを実行し、下川リーフの一員として
葉鍵国体制と下葉―アリス同盟を強化する道を選ぶならば、
ネクストン軍はソフリン中央およびアリスに強力に働きかけ全面的な支援を流れ込ませる用意がある
――ああこれは、まだソフリン中央方面に通していないから、ネクストン軍の非公式見解だ。
この件も、私個人から旅団長への情報リークという形で扱ってくれ』
>>63-68「忠誠心の行方」投下完了です。
現実の情勢に、幾分か合わせてみました。
おつです。
2が抜けて3が重複してるんじゃ?
アメリカ中央空軍のリーフ少将だってさ。なんか笑ってしまった。
乙です〜
2を以下に差し替えてください。
---------
ただしこれは、あくまで書類上のことである。いたるは麻枝の妻となった後公務からは
身を引いた事になっているので、元勲としての尊崇対象からは外れている。
また中央情報局長官としての職務を重視するしのり〜も、情報工作面での悪影響を懸念して
自身の神格化工作を極端に嫌っていた。みきぽんはそれほど強くは言っていなかったが、
それでも祭り上げられることに積極的ではなかった。
もっとも、それで一向に構わなかったとも言える。元々『始祖三元勲』とは、
久弥の造反により瓦解の危機に瀕した元勲統治体制――
『偉大で慈愛に満ちた我らの指導者麻枝元帥と、元帥に心酔する元勲たちによる友愛に満ちた統治体制』
というイメージ――を補強するために考え出された、比較的新しい宣伝手法だったからだ。
要は久弥造反という事実に国民が動揺することを防ぐための『目くらまし』であって、
スローガン以上の効果を期待するものではなかった。
ただ――多くのスローガンがそうであるように、やがてこの『始祖三元勲』という言葉は
次第にそれ自体で意味を持つようになっていった。繰り返し流される宣伝に、
国民はおろか一部の政府関係者ですら影響され始めたのだ。特に忠誠心の強い元勲恩顧組に
その傾向が強く、茂美のその中の一人だった。
しかしみきぽんと茂美の場合は、まぁ仕方ない要素は存在している。敵中に切り込む役割を果たす
第1降下猟兵大隊は、他部隊よりも強力な兵装を必要としており、それに必要な兵器や物資を
鋭意開発してきたのが、みきぽん率いる技術開発本部だったからだ。当然そこには、
検討会や実地試験を通じて形成された個人的な信頼関係が存在しており、
だからこそ茂美もみきぽんを深く敬愛するようになっていた。
そのため――みきぽんから謀叛の本心を告げられ、麻枝への造反を強要された時、
彼女はそれを拒むことが出来なかった。麻枝への忠誠心厚い彼女ではあったが、
それでも過去何度も世話になった目の前のみきぽんか、それともさほど親しくつきあっているわけではない
千数百キロ彼方の偉大なる指導者のどちらを選べと言われれば――やはりみきぽんに従わざるを得ない。
旅団長、変わってませんが(w
ごめん、間違えた。
>>64を以下に訂正
-------------------
そう一言断って茂美の隣に座ると、彼は自販機で買ってきたばかりのコーヒーに口を付け、
おもむろに話し始めた。
「冗談抜きで休養を取ったらどうだ? 君は今や、この正統政府唯一の実戦指揮官だ。
ここで体を壊されちゃ、みきぽんだって困るだろう。休め」
「……で、その警戒が緩んだ隙に逃げるつもりでは? 少将閣下?」
「……やっぱだめ?」
「みきぽん閣下の命ですので。『何があっても、レギオンしゃんを逃がしてはなりましぇん』と」
「まったく……」
忌々しげにコーヒーに口に含んで、旅団長は小声で罵った。
「まぁみきぽんの思惑はわかるさ。ものみの丘と差を付けて、この政権をアピールする
もっとも手っ取り早い方法は、月姫の存在を容認することだ。ものみの丘には大きな打撃を与えられるし、
正葉にしろ下葉にしろ、それぞれの施策にそった方針だからな。そして俺は……
まあAirシティで発信した電文のおかげで、月姫の連中への受けはいい。みきぽんにとってすれば、
これ以上の政治的広告塔はあるまい」
「そこまでわかっているなら……大人しく従っていてください。そうしてくれれば、私の負担も減ります」
「なぁ……なんで貴様、みきぽんに従った? 貴様は元勲恩顧組だろう?
なら、みきぽんにではなくて麻枝に従うのが筋……」
「出来ればそうしたいっ!」
思わず激して言葉を荒げた茂美だったが、すぐに思い直したように声のトーンを落とす。
「私だって……納得しているわけではない……今だって迷っている。しかし……」
膝の上でギュッと拳を握りしめ、言葉を続ける。
「みきぽん閣下が……始祖三元勲がものみの丘に弓引くなんて事態に、どうすれば冷静に対処できる!?
とりあえず目の前の状況に従う以外に、どういう行動を取ればいいと言うんだ!?
元勲恩顧組の私と、反逆者のあんたとでは衝撃の度合いが違うってことくらい察してくれっ!」
始祖三元勲――かつてタクティクス師団創設の際に加わっていた樋上いたる、みらくる☆みきぽん、
しのり〜の三将軍のことを、鍵ではこう呼び慣わしている。彼女たちは
『現在の鍵を形作ったパイオニアたち』と位置づけられ、麻枝に匹敵する権威を与えられていた。
ほしゅ
今は板設定がおかしい状態なんでスレが450超えても圧縮がおこってませんが
直ったらくるんで保守あげ
78 :
名無しさんだよもん:03/03/28 14:04 ID:rUG9xbwf
間違えた
79 :
名無しさんだよもん:03/03/28 14:39 ID:fC2k+66K
80 :
元帥杖:03/03/30 22:54 ID:Rtf7ijyM
それは、きわめてそっけのない声明文という形で発布された。
『葉鍵国政府は、売国奴の欺瞞から同胞を救わんとする愛国者の義挙を見捨てない。
下川直哉国家元帥の名において、鍵自治州首相兼自治州軍司令官として、みらくる☆みきぽん大将の就任を正式に承認する』
声明文はこうも続いていた。
『政府軍は、鍵自治州を不当に占拠する反乱軍から得た捕虜のうち、正統政府に対する忠誠心を示す者を数日中に解放する。
その数は一千名ほどになる予定である』
けろぴ〜シティ陥落に際し、Na-Ga中将戦死に伴い投降した自治州兵は、民兵を含めて約二千。
その半数を、表向きはなんの見返りも求めずに解放するという。
しかも、同市陥落の際鹵獲したレオパルドTやマルダーなど装甲車両二十両強、火砲十三門を引き渡すというプレゼント付きだ。
下葉による鍵正統政府承認は、正葉のそれに遅れること三時間。
逢魔ヶ辻という戦略要衝を無欠で影響下に収める絶好の機会を前にして、その遅れを埋め合わせるための報奨だ。
世にも珍しい下葉の低姿勢を前にして、人々は大きな驚きといくらかの侮蔑を篭めてそう囁き交わしたものだ。
81 :
元帥杖:03/03/30 22:56 ID:Rtf7ijyM
下川は、強大な軍事力を持ちながらも敵をあまりに増やしすぎた。
周囲を敵対勢力にすっかり包囲されて、鍵の分裂に望みを託さなくてはならないほど弱気になっているのだ。
彼は気分屋だ。図体ばかり大きく、気まぐれでひたすら暴力的な発言を重ねながら、その実は臆病かつ姑息で人を治める力など欠片も持ち合わせていない、おつむの弱いただの小太りのブタだ。
主体ではただひたすらに破壊的直線的な行動しかできず、客体として動くには常に時期とポイントがずれた反応しかできない、学のないちんぴらだ。
だから、停戦発議に加えて今度のみきぽんのご機嫌取り、これこそ所詮能無しの機会主義者に過ぎない彼の本質であり、驚くに値しない――
だが。
「……ま、博打みたいな作戦しかけんでも、目標が影響下におけるんは悪いことやない」
事実と人の噂は往々にして姿を違えるものだ。
衛兵が机上に差し出したカップを手に、おどけたように肩を竦めた下川の態度。
そこには疲労、困惑のいずれも窺うことはできない。
正葉の承認宣言は、すでに下川の耳にも入っている。
久瀬不在の中情報収集に混乱を来たし、未だ対応を協議中だったこの会議室に飛び込んだその知らせが、会議続きでただでさえ気短な国家元帥のさらに磨り減った神経回路にどんな影響をもたらしたかは……
まぁ、彼らの背後のエロゲ新大陸大地図、そのロディマスを示す位置にへし折れたサーベルの切っ先が突き刺さっていることから容易に窺い知れることだろう。
だが、それだけだ。
他にはなんの痕跡もない。
物理的な痕跡も、精神的な痕跡も、彼らの行動が下葉首脳に与えた動揺を示すものは、欠けた切っ先以外のなにもない。
憎むべきあの男に機先を制せられた、その事実がシェンムーズガーデンに与えた衝撃は一時の感情の爆発以上のものにはなりえなかったのだ。
82 :
元帥杖:03/03/30 22:57 ID:Rtf7ijyM
今の国家元帥には、正葉のスタンドプレーをせせら笑うだけの余裕がある。
その根源となるのは、独立宣言と前後してソフリンからもたらされた一通の電文。
とてもではないが、その余裕は絶対的といえるほどの確実なのではないかもしれない。
だが、絶対的でなくとも、敵失の積み重ねとしての相対的な優勢であるにしても。
彼の余裕を支える自信、それを裏打ちする地政学的要因の推移。
下葉の戦略の一部をふいにしたみきぽんの動きが、より多くの利益を彼らにもたらしつつあるのだから、怒り狂う必要などどこにもないのだ。
「せやな。一一、お前キズアトの師団司令部に飛んでくれや。
元帥杖寄越すから、逢魔ヶ辻にもってってきてんか」
「……元帥杖、やて? いやまて直哉、そりゃ……」
軽い口調で告げた下川に、一一大将は最初唖然とし、ついで呆然と口ごもった。
一一のみならず、周囲に小さな動揺のが走る。
理屈はわかる、鍵自治州の新しい指導者に、葉鍵国の正統な政府としてその支配権の象徴を授ける。
様式としては、正しい。正しいにしても、だ。
「……我々の手元には、その。
閣下がお持ちのものしかないはずでは?」
控えめに、おののくように尋ねた中上の上目遣いが捉えたのは、どこか悪戯っぽい色を宿してこちらを見返す下川の瞳。
嫌な予感が嫌な確信に変わったのを感じて、ぐらりと地面が傾いだようにも見えた。
この葉鍵国にただの二本しか存在しない、真鍮で造られた至高の権威。
温かい懐かしさを漂わせる鍵を象った一本は遠くものみの丘にあり、初々しい若葉を模したいま一本は、今この時この場所にある。
83 :
元帥杖:03/03/30 22:58 ID:Rtf7ijyM
絢爛と輝くその階級章は、国家元首や国会の権威を以ってしても奪われることはなく(だから、麻枝は反逆の容疑をもってしても未だ葉鍵国軍元帥の身分を保っていた)、国家から邸宅、高額の年金、二人の従兵などが生涯にわたって保証される。
英雄奸雄居並ぶ新エロゲ大陸、見渡せば元帥の位に達した将星も決してその数少なくない。
だが、それは一時かもしれない、独立から内戦に至るわずか一時かもしれないが、あまたの元帥杖を抜け出して、軍事を国の礎とする新エロゲ大陸の頂に間違いなく輝いたその二本。
かつて強大であり、分裂、内戦に進んだ今においてすら一定の敬意を受け続ける葉鍵国の栄光そのもの。
手元にあるのは一本、リーフの元帥杖のみのはず。
それ以外に元帥杖があるという話は聞かない……聞くはずもない。
ならば、なんだ。
元帥杖の持ち主である、下川直哉国家元帥。
彼が、逢魔ヶ辻の主に授けようとしているは、いったい何を授けようというのだ?
「へっへっへ、これや……」
「……っ! おい、そりゃ……レプリカか?」
もったいぶって取り出した代物を呆れたような一言で片付けられて、国家元帥は憮然と表情をゆがめた。
どうやら、おのれの妙案に賛辞が向けられるとでも思っていたらしい。
すっかり覚めてしまったカップを口元に寄せ、優雅さの欠片もなく残った珈琲を一息に呷る。
叩きつけるようにカップをテーブルに置くと、ギロリと視線が一一と中上の上を嘗める。
「アホか。正統な政権がもっとるもんだけが本物や。
レプリカもくそもあるかい」
尊大に言い放ち、カップの傍らにごとりと音を立てて杖を置く。そして大地図に向き直った。
84 :
元帥杖:03/03/30 22:59 ID:Rtf7ijyM
1/50000縮尺の葉鍵国大地図に、今は鍵自治州という行政単位はない。
代わってそこに存在するのは、鍵総督府という領域だった。
ひょいと身をかがめ、下川が手に取ったのは赤のマジックペン。太り獅子の体躯をぐいと伸ばし、学校の教師の採点よろしく総督府を消し込んだ。
きゅっきゅっきゅ、とペンが踊り、消しこまれた地名の下に新たな文字が書き込まれていく。
「よっこらせぇ……っと」
背伸びだけでも腰が痛い。年だろうか、いやまさか。
大儀そうに腰をさすり、背後を振り返った国家元帥閣下は小さく息を吐いた。
見渡せば、苦笑を浮かべている一一、呆然と杖とこちらを見交わしている中上、そしてやれやれと肩をすくめている後ろの将校連中が目に入る。
彼らを見渡し、にやりと笑って下川は言う。
「VA叩きやったら望むところや。鈴木の提案に乗ったろうやないか。
……やっぱ、鍵自治州の正統な元首は元帥閣下であらへんとなぁ?」
<糸冬>
いじょ、元帥杖投稿です。
誤字脱字相違点等ご指摘お願いいたします。
85 :
名無しさんだよもん:03/03/30 23:41 ID:nD3c2/2I
最近、俺の中で某大隊指揮官殿としぇんむーが被っている
戦後かなり経ってから
ロックブーケ中央放送局第102スタジオ
「ドキュメント葉鍵内戦・第四回 内戦戦局のターニングポイント」収録風景
「――教授、何故みきぽん中将は、最終的にこの4月2日を叛乱決行日に選んだのでしょうか?」
「ええ。実はみきぽん中将は、国連安保理決議を知ったときから、休戦発効直前での行動開始を目論んでいました。
一旦休戦が発効してしまえば、各勢力とも露骨な武力衝突を起こすことが出来なくなり、
ものみの丘が実力でみきぽん中将を潰せる機会を失う――と考えていたのです。
ただ、みきぽん中将が最終的に4月2日叛乱決行を決断した理由は、
実は鍵の情報機関が画策した狗法使いのJRレギオン少将襲撃にありました」
「といいますと?」
「ええ。ものみの丘の中央情報局は、狗法使いがレギオン少将を暗殺する際に適切にサポートするように、
4月2日早朝に極秘裏にみきぽん中将に依頼してきたのですが、中将はこれを奇貨としたのです」
「奇貨、ですか?」
「ええ。狗法使い襲撃の直前にものみの丘に反旗を翻し、その際にレギオン少将の身柄を押さえて
自分の傍に置いておけば、ちょうど下葉に承認を求めているときの絶好のタイミングで
彼が襲ってくる――そう計算したのです」
「つまり、ものみの丘が暗殺という後ろ暗い手段でみきぽん中将を抹殺しようとした――
そういうイメージが出来上がると踏んだのですね?」
「そうです。みきぽん中将がレギオン少将とともにいる限り、狗法使いはみきぽん中将をも
襲撃せざるを得ません。中将にとっては、
『ものみの丘が狗法使いという無頼の者を使ってまでしてみきぽん中将を抹殺しようとした』
というわかりやすいマスコミ向けのニュースソースが手に入るわけです。これがあれば、
大衆向けにものみの丘を『非道な連中』と宣伝することが出来ます。ですので、
狗法使いが襲ってくる直前の4月2日夕刻に行動を起こすことを決意したわけです。
つまり、政治的にもっともおいしい獲物が転がり込んでくる時期を選んだのですね」
「しかし教授。狗法使いといえば歴戦の戦士として名高い傭兵ですが、そんな相手に襲撃させたのでは
自分自身が殺されてしまう危険があったのではないですか?」
「ええ。それについてもみきぽん中将は計算していました。実は中央情報局が狗法使いの行動予測を
かなり詳しくみきぽん中将に流していましたし、それに中将を護衛していたのは精鋭の第1降下猟兵大隊でした。
つまり狗法使いの手の内をすっかり握っていた上に、一対一の決闘であっても
決して彼に引けを取らない兵士が大勢揃っていたのです。最終的にみきぽん中将は、
第1降下猟兵大隊を完全に掌握した時点で、狗法使いとものみの丘を罠にはめる決断をしました」
「つまり、万に一つも狗法使いに殺される恐れはなかったわけですね?」
「ええ。みきぽん中将はそう確信していました。そして、実際そのとおりになったのです――」
4月3日0256時
逢魔ヶ辻町役場・中庭駐車場
「……」
せっかく治ったばかりの肉体。しかしそれも、無数の銃弾を浴びたことにより、
また瀕死の重体へと逆戻りしてしまった。しかも今度は――はっきり言って助かる見込みもない。
無理もなかった。『狗法使いがレギオンしゃんを襲おうとしてましゅ。万全の迎撃をおねがいしましゅ』
とみきぽんに頼まれた茂美が、第1降下猟兵大隊でも最精鋭の兵士達を選抜して作り上げた
濃密な迎撃態勢の中に、まともに突っ込んでしまったのだ。
『レギオンしゃんはしばらく私と会議してましゅ。私の安全のためにも、狗法しゃんを確実に殺してくだしゃい』
と言われては、茂美も本気を出さざるを得ない。それにまぁ――バ鍵っ子の狗法使いを切り刻むことに関しては、
茂美もほとんど良心の呵責を感じていなかった。容赦する理由などどこにもない。
「……」
銃声醒めやらぬ中庭に横たわった狗法使いの躰からは、止めどなく血が流れている。
放っておいても死ぬことはまず確実な彼の元に、一人の男がゆっくりと歩み寄ってきた。
「……なんとも貧乏くじを引いたものだな、狗法使い」
心の底から哀れみを表した声に、彼はゆっくりと――最期の力を振り絞って顔を動かした。
もう失われかけた視力に、薄ぼんやりと人影を認める。
「下手な復讐なんて考えず、真琴とどこかに隠れ住んでいればよかったのにな……残念だよ」
「き……きさ……ま……」
ようやく声の主が、彼が襲撃の目標と思い定めていた人物だと気づいた狗法使いだったが――
全ては遅すぎた。もう彼には、武器を持つ体力すら残されていない。
「きさ……ま……よく……も……はめや……がったな……」
「よせやい」
旅団長は薄く笑うと、ホルスターから拳銃を抜き取った。弾倉を確認してから安全装置を解除する。
「この迎撃に、俺はほとんど関与していない。みんなみきぽんが手配したことだ。
恨むんなら、あのずれたAAみたいな面相の女に言ってくれ」
引き金に指をかけて、銃口を頭部に……かろうじて致命傷を負っていない狗法使いの頭部に向ける。
「最後に聞いておく――降伏する気はないな? 恭順するなら、治療だけは受けさせてやるが」
「……」
ゆっくりと時間をかけて、狗法使いは首を振った。
「上出来だ……なら、立派な鍵っ子として死ね」
何の躊躇もなく引き金を引く旅団長。銃声が轟き――鮮血と脳漿が辺りに撒き散らかされる。
「……そんな恨めしい顔をするな。いずれ俺も逝く場所だ。決着はそこで付けよう」
あっけない死に方をした伝説の傭兵を一瞥すると、旅団長はきびすを返して庁舎の方へ戻っていった。
廊下に上がり、無言で足早に歩く。そしてそのまま会議室に戻ってから、みきぽんの前に立ち敬礼した。
「報告します。ものみの丘から『みきぽん中将閣下暗殺を目的に』潜入してきた暗殺者・狗法使いは、
川口少佐以下第1降下猟兵大隊によって撃退され、当方は『降伏を勧めました』が、本人が
『抵抗の意志を示したため』射殺しました」
「……ご苦労様でしゅ。それで、狗法使いは最期に何か言っていましゅたか?」
「ええ……『裏切り者みきぽんに死を』とね」
「……ふふ。我ながら陳腐な筋書きでしゅね。ま、その程度でも全然構わないんでしゅけど」
クスクスと笑うと、みきぽんはぎっと深く椅子に腰掛けた。背もたれがギッと悲鳴を上げる。
「マスコミにはそう発表しましゅ。どうせ本人が死んだ以上、証拠はないでしゅしね」
「そりゃま、下手に証拠なんかない方がいいが……しかし中将。このタイミングで反旗を翻したのは、
こういう訳だったんですか」
「当然でしゅ。独立直後にものみの丘が暗殺者を送り込んだ……マスコミや大衆向けには、
無茶苦茶わかりやすい図式でしゅしね。この正統政府が鍵以外の国の民衆から同情されるのに、
これほどおいしいニュースはないでしゅよ」
「単純でわかりやすい図式ほど、マスコミや大衆は情緒的に流される。こっちはさして労せず、
『暴虐に耐える逢魔ヶ辻と、卑怯千万なものみの丘』という世論を作ることが出来る――
おいしいですな」
手近な椅子を引き寄せると、旅団長も勢いよく倒れ込むように座った。安普請の椅子がこれまた悲鳴を上げる。
「しかしまぁ……それなら、私を『巻き込まれた』ことにして殺してもよかったんじゃないですか?
殉教者がいれば、世論はさらに逢魔ヶ辻に同情的になるし」
「それも魅力的だったんでしゅけどね」
あっさりそう言いのけると、みきぽんは下級悪魔じみた笑いを浮かべた。
「でもレギオンしゃんには、まだやってもらうことがあるんでしゅ。ここで使い潰しては大損でしゅから」
「月姫向けの広告塔――そんなところですか?」
「正解でしゅ。レギオンしゃんはTYPE-MOONにしろ月姫自治区にしろ、受けが良さそうなお人でしゅからね。
この内戦、結局は月姫を見方に引き込んだ方が内戦に勝ちましゅ。なら、それにぴったりな人材がいる限り、
無駄に死なせはしましぇん」
「なるほどね。ではせいぜい、その利用価値とやらに甘えさせてもらいますか」
でも、いつかは出し抜いてこいつから逃げないとな――同時にそう思う旅団長。
でなければ、みきぽんに取り込まれて背中から挿されてしまう。彼が望むのは
『自らが管制する状況下で鍵を滅ぼすこと』であって、『みきぽんの使い走りで鍵滅亡の駒にされる』
ことではない。
「――ところで私は、TYPE-MOONと自治区、どちらに顔を売っておけばよろしいので?」
「当面は両方へ。両者の間を上手く泳ぎ渡って、うまく月姫の力を利用することが肝要でしゅ。でも……」
そう言うと、みきぽんは1通の電文を差し出した。
「ほう……下葉も我々を承認してきましたか」
ふっと微かな笑みを浮かべて、旅団長はその電文をみきぽんに返した。
「これを見せたと言うことは、この逢魔ヶ辻政権を下川リーフの一員とさせ、
月姫民族自治区をより重視するってことですね?」
「そうでしゅ」
ま、妥当なところだろう――旅団長は内心で呟いた。普通に考えて、正葉と下葉のどっちが
軍事的に優位か、火を見るよりも明らかだ。主要流通路を下葉に押さえられている現実を無視して
下葉と敵対してしまったものみの丘の轍を踏むよりは、まだファシストの言いなりになる方が
賢い選択というものだ。
「今から記者会見を開いて、狗法使い襲撃のニュースと一緒に下葉陣営参加を正式に発表しましゅ。
それと同時に下葉軍の防衛進駐を受け入れましゅから――レギオンしゃんは茂美しゃんと一緒に、
その準備にかかってくだしゃい」
同日0330時
逢魔ヶ辻町役場ロビー
「――以上に述べましゅたように、我々鍵自治州正統政府は、下川直哉国家元帥の示してくだしゃった
ご厚意を受け入れ、国家元帥閣下による統一葉鍵国体制の下でものみの丘の簒奪者どもと戦っていきましゅ」
町役場の住民戸籍係カウンターを借用して作った会見テーブルを前に、みきぽんははっきりとそう宣言した。
この声は、今彼女の目の前にいる逢魔ヶ辻CATVのカメラを通じて、新大陸や旧大陸――
そして国連や主要各国に中継されているはずだ。
「か、閣下! それはつまり、ロディマスの正統リーフ政府とは断交する、と受け取ってよろしいのですか!?」
逢魔ヶ辻日報新聞の記者が、どもりながら尋ねる。弱小地方紙には不釣り合いな檜舞台であることを考えれば、
まぁ舌をもつれさせるのも仕方ないとは言える。
「そうでしゅ。迅速に回答くださった高橋総帥閣下には申し訳ありましぇんが……
ロディマスの方々には、ただ頭を下げるばかりでしゅ」
そう言って頭を垂れるみきぽん。端から見れば、心底そう思っていそうな態度ではあったが――
『よく言うよ。最初から高橋をダシにするつもりだったくせに』とは、
別室でTV画面を見ていた旅団長がなつきにぼやいた言葉である。
「それでは、この逢魔ヶ辻政権はロディマスとも戦端を開くのですかっ!?」
「その点は下川国家元帥閣下と協議しなければなりましぇんが、我々の目的はまずものみの丘の簒奪者
――先に述べたように、正統政府樹立直後に暗殺者を送り込んで後ろ暗い手段で我々を抹殺しようとした、
鍵第三帝国を名乗る無法者と戦うことでしゅ。我々は、まずこちらを優先したいところでしゅ。
もちろん、この逢魔ヶ辻を防衛してくだしゃるために進駐してくる葉鍵国軍がどのような作戦を持っているかまでは、
我々は知りましぇんし、また口を差し挟むことではありましぇん。葉鍵国軍の作戦方針を定めるのは、
ただ下川国家元帥閣下のみ――我々は、閣下に自分の希望を述べるまででしゅ」
のほほんとした口調とは裏腹の強い意志を持った瞳に、そこにいた記者やカメラマンはただ圧倒されるだけだった。
「会見はこれで終わりましゅが、最後にロディマスのTYPE-MOONの方々、南方先端部の月姫民族自治区の方々、
そして新大陸の各地に散っている全ての月姫の方々に一言申し上げましゅ」
一旦言葉を切ったみきぽんは――今までで一番深く頭を下げた。
「今まで鍵自治州政府は独立戦争よりこの方、月姫民族の方々に耐え難い苦しみを与えてきました。
これは現在ものみの丘を不法占拠する無法者達が為してきた悪行でしゅが、
当時元勲であった私にも責任はありましゅ。このことを思うと、私は慚愧に耐えましぇん」
この日の日記に旅団長が『あれほど見事な演技は見たことがない』と書いたほどの、
声涙ともにくだる迫真の演技だった。とてもではないが、今まで月姫弾圧政策に
無関心を決め込んできた801至上主義者の言葉とは思えない。
「正統政府がこの先鍵自治州の秩序を回復するにあたって、この問題を避けて通ることはできましぇん。
いえ――避けて通ることなど許されましぇん。よってここに――正統政府の名において、
今までの自治州政府が行ってきた月姫弾圧政策が間違いであったことを認め、
虐殺され、尊厳を奪われ、民族自決を否定されてきた月姫の方々に心よりの謝罪をいたしましゅ
――誠に申し訳ありましぇんでしゅたっ!」
後に『4・3自己批判』『みきぽんの謝罪』と言われることとなる、みきぽん一世一代の宣言だった。
緊張感溢れるようなないような。
保守。
ついでに点呼。いちー。
>>93 喋り方が緊張感を和らげているな。
言い方を変えれば、雰囲気をぶち壊しているとも表現できるがね。
にー。
だがそれがいい。
さーん。
よん。
98 :
鮫牙:03/04/05 11:51 ID:RVlM+tK8
5
というかみきぽんの書いてる文章って、必ずしも語尾を『でしゅ』にしてなる訳じゃないしなぁ。
そこまでこだわる必要ないのかも。
6
7
というか、あーゆー口調混ぜないと葉鍵を銘打つ別のものになる罠。
8
キャラ立たせるのに大げさになっちゃうのは仕方ないことかと。
9
しかしくほちゃんせっかくパワーアップして復活したのに
ろくな戦闘描写もなくしぼんぬかよ。血沸き肉踊るバトルを期待してたのに。
ど う す れ ば い い ん だ
いや、一応、身も蓋も無い対応と言う奴を考えてはいるのですが・・・・
まっ、それは兎も角
10
11だよっ♪
「実は生きてた」とかそういう男塾展開はマジ勘弁
展開がわからなくなってきているので後方支援サイトをいくらか
更新してくれると有難かったり
>>102 ま、狗法使いが一匹狼ではなくて鍵の後ろ盾で動いていた以上、
監視任務に就いていたみきぽんに連絡がいかないはずが無く、
であるならば手ぐすね引いて待ちかまえていないと叛乱首謀者としてはおかしいわけで……
本筋の方をスムースに流したかったんで思い切って割愛しました。勘弁してください。
>>107 >>51以降を収録しました。
>>106 了解です。
急いで書きますデス(汗
でも、チョットだけ同情して。
こんな事態の急変は予想してなかったデス(涙
110 :
名無しさんだよもん:03/04/07 13:19 ID:VZzd/zJv
保守
111 :
名無しさんだよもん:03/04/07 13:32 ID:L9QyKWO7
4月3日 0830時
逢魔ヶ辻北方 旧補給基地
「奴らは…ナニをやってるんだ?」
呆然とした光岡大尉の言葉が司令室に響く。
「な、ナニをって、何でナニがあわわわわ」
むやみにお凸の広い副官は少々錯乱していた。
まあ、こんなものを見せられては無理はない。
監視カメラが捕らえた映像、それは大勢の男と女が汁まみれでくんずほぐれつ入れたり出したり、
一言で言ってしまえば乱交パーティー生中継だったのだから。
ことの起こりは数時間前、彼らがこの基地を占拠したことに始まる。
逢魔ヶ辻であんなことになっているのにここが放っておかれるはずもなく、
みきぽん中将が下葉につくことが発表された後時を隔てずしてここは制圧された。
下葉からの亡命者等で構成された彼ら、その名も独立中隊”田代”によって。
もともと基地を警備していたのがこの部隊だった事もあって、
制圧は実にスムーズに行われ、抵抗らしい抵抗はほとんど見られなかった。
パイロットほか基地の人員は身柄を拘束され、一部屋に集められたのだが、
彼らはあろうことか暇だからといってヤリ始め、瞬く間にこの有様である。
「奴ら、見られていることに気づいているのか?」
「…むしろ見てほしいとか言ってるそうです」
光岡大尉は天を仰いだ。性的倒錯者の集団とは聞いていたし、
彼自身この数日何度か誘いを受けたことはあった。
だが、まさかこんな状況で始めるとは。WINTERSの人間はみなこうなのだろうか。
だとしたらWINTERSの支配地域ではこのような饗宴が毎日繰り返されているのか。
本能と肉欲が理性と良識を駆逐した世界、それはまるで旧約聖書にある退廃の都。
あまり想像したくない世界だ。もしかつて琥珀大佐らによって進められていたように
JRレギオン少将が鍵の実権を握ることになれば、鍵もいずれこうなったのだろうか。
「奴らどうにかならないんですか?これじゃあ見張りはたまったもんじゃありません」
「明日になれば機体と一緒に護送される。たった1日の辛抱だ。我慢しろ」
そう、明日になれば乾少佐の第一独立装甲連隊が到着し、我々はあの性的倒錯者達から解放される。
彼らはロディマスに送られ、WINTERSとの折衝が済み次第機体と共に海路で本国送還となる予定だ。
そして、この任務を終えれば我々は月姫の戦士として認められる。
監視付きの窮屈な生活も少しは改善されることだろう。
「いや、もしかしたらこれは高度な作戦かも知れんな」
「高度な作戦…ですか?」
「そうだ。考えても見ろ。あんな状況で見張りの集中力が続くと思うか?」
確かにそうだ。周りを見渡せば男性兵士はみな前かがみ、平静なのは光岡大尉ぐらいのもの。
ましてあえぎ声を直接聞かされている見張りの心情は察するに余りある。
WINTERSとの関係悪化を恐れる上層部によって基地の人員はくれぐれも丁重に扱えとの
お達しが出ている手前、手荒な手段で止めることもできない。
「考えすぎじゃありませんか?やつらが何か考えてるとは思えませんよ」
傍らにいた兵士が口を挟んだ。彼も当然のごとく前かがみである。
「こういうのはな、考えすぎぐらいがちょうどいいんだ。
そうだな…。念には念を入れて滑走路も破壊しておくか」
「いいんですか?勝手にそんなことして」
「かまわんだろう。どうせここは航空基地としては半端だからな」
もともとこの基地は魔女飛行隊が来る前は航空基地としてはほとんど使われていなかった。
月姫旅団は固定翼機をほとんど使用していなかったし、
正統リーフ領にはいくらでも大きな飛行場があるのだ。
STOL能力の高い機体しか使えないこの基地の戦略的メリットは
逢魔ヶ辻に最も近いことだけだったのだが、そこが敵地となった今では逆に欠点である。
琥珀大佐はすでにこの基地を地上部隊専用の基地として改装するプランを練り始めており、
光岡大尉にも、必要ならば滑走路等の破壊を許す命令を下していた。
もっとも、本当にそこまでする必要があるかは光岡自身も疑問に思っていた。
いかにJRレギオンとWINTERSが深い関係にあるからといって、WINTERSの目的はあくまでも千島奪還だ。
そしてあの下川が葉鍵国固有の領土であり、漁業権益などのうまみも大きい
千島を手放すとは到底考えられない。正葉とWINTERSの交渉しだいでは、
魔女飛行隊がこのまま正葉陣営に残留することもありえない話ではない。
(となると…また我々がやつらのお守りをすることになるということもありえるのか)
ため息が漏れる。所詮我々は少し前まで敵だった人間。
こういった誰もが嫌がる役目が回ってくるのも仕方があるまい。
だからといって我々にほかの道などありはしないのだ。
青紫と共に戦うことを選んだものはみな空き地の街に引き渡された。
残ったのは超の一文字を捨てたものたち。青紫の呪縛から逃れ、俺と共に月に全てを捧げると誓った者達。
それに、俺はいかなる逆境にあっても、裏切られたなどという弱音を吐きたくはない。
軍人が死地にあるのはむしろ当然のこと。
友を裏切り、上官を裏切り、護国という己の信念すら裏切って月厨の犬と成り果てようと、
それは己のなした選択であり、裏切られたなどという女々しい言い訳でそれを汚したくはない。
俺が戦い続けることで翡翠が─あの地下要塞の暗闇の中でただ一人安らぎを与えてくれた娘が
笑顔に近づけるというなら、この余命幾許もない犬畜生の生も意味あるものであろうから。
「泥をかぶるもの」投下完了です
みっちゃんぜんぜん気付いてません(w
4月3日0900時
逢魔ヶ辻町役場
「……」
着慣れた軍服に付けられた、真新しい階級章。それをそっとなぞりながら、
なつきは何とも言えない違和感を味わっていた。
無理もない。つい先日まで昇進などまるで無縁の境遇に置かれ、万年少尉のままで終わるものと
覚悟していた自分が、まさか大尉の階級章を身につける事になるとは思ってもみなかったのだから。
この日0400時、アクアプラスシティから一連の通達が届けられた。逢魔ヶ辻政権が
『鍵自治州における唯一の合法的政権』であるとの正式宣言、月姫民族自治区関連を包括した
『鍵自治州特別措置法』の緊急制定と『葉鍵国鍵自治州秩序回復支援本部』の設置、
第9RR山岳師団“キズアト”の進駐などの重要事項と共に、
『みらくる☆みきぽん中将を元帥に叙し、鍵自治州の正統な統治者に任ずる』との
国家元帥命令も入っていたのだ。これによりみきぽんは晴れて元帥となったのだが、
それに伴い彼女は、一部の者の階級を引き上げて正式に正統政府軍の軍人に任命する元帥命令を発したのだ。
これからやってくる“キズアト”司令部幕僚との釣り合いを取る意味で行われた命令なのだが、
これによりそして清水なつき少尉は中尉を飛び越え一気に大尉に昇進してしまった。
落ち着かないのも仕方ない。
(まぁいいか……階級が変わっても別に部隊を指揮してる訳じゃないし……)
なつきの任務は、いまだに旅団副官だ。ただし旅団名は『鍵自治州正統政府軍第801基幹旅団』
に変わったが。旅団長の腹心という現状も変化はない。階級への違和感を無理矢理押し殺すと、
なつきは目の前の執務机に座っているみきぽん元帥を眺めた。
何が楽しいのか、変な鼻歌と共に書類を決裁している。
なつきがみきぽんの前にいるのは、みきぽんと基幹旅団との間の意思疎通をスムースにするため、
と言うことになっている。あながち嘘ではない。アクアプラスシティから元帥杖授与式のためにやってくる
一一の安全を確保するために、すでに“キズアト”の先遣偵察部隊が越境、逢魔ヶ辻近辺に展開していた。
第801旅団、そして旅団隷下に組み込まれた第1降下猟兵大隊も彼らと共に行動を開始しており、
旅団長もその指揮のために現場を飛び回っている。
この重要な時期にみきぽんと旅団司令部との連携を欠くことが出来ないと言うのは、確かに事実ではあった。
だがもちろんそれだけではない。実際、なつきは旅団長から次のように言い含められていた。
『いいかなつき? とにかくみきぽんの動きを監視しろ。当面は亡命かませられないにしても、
背後から襲われないように注意だけは払っておきたいからな』
(でも、監視って言ったって仮に中将……じゃなかった、元帥がその気になったら、
こっちは瞬殺されるだろうしなぁ。はぁ……)
心中密かにため息をつくなつきに気づいているのかいないのか――奇妙な鼻歌を一旦中断して、
みきぽんはにこやかに今見ていた書類をなつきへと差し出した。
「やっぱりレギオンしゃんに首輪を付けて飼っておいてよかったでしゅ。
これで正統政府軍も格好がつきそうでしゅね」
「は……?」
怪訝な表情を浮かべて、なつきはその書類を受けとった。見ると――トヨハラからの電文だった。
『逢魔ヶ辻政権が下葉内部において『千島返還』に関する我々との交渉開始を働きかけてくれるなら、
WINTERS師団とスウェーデンとの間にある兵器購入コネクションを逢魔ヶ辻政権に開放し、
同国からの武器買い付けを水面下で代理・仲介する用意がある』――内容を要約すればこんなところだ。
「平井たんも賢く考えてくれましゅたね。これが通れば、トヨハラは下葉体制内部に
交渉の足がかりを得られましゅ。北方総督府を通しての返還要求にプラスで、
搦め手からの手段を手に入れられましゅからね。いやいや、これもレギオンしゃんの人脈のおかげ
でしゅね」
「いや、元帥閣下……そうかもしれませんけど……」
想像の埒外にあった事実に混乱しながらも、なつきは試しに問うてみた。
「それなら……何で魔女飛行隊はあっけなく正葉側に拘束されたんですか?
武器購入仲介のついでに魔女飛行隊もこちらに協力させればよかったのに……」
逢魔ヶ辻政権は謀叛直後から、魔女飛行隊に注意喚起を促していた。
なつきも現に何度も連絡をつけていたのだが、魔女飛行隊からの返答は『心配無用』の一言だけだった。
そして結局、正葉側に拘束されている。
「それはでしゅね、平井たんの保険なんでしゅよ」
「保険……ですか?」
「そうでしゅ。平井たんは正葉側優位のうちに内戦が終結した場合も想定しているんでしゅ。
後ろにアメリカが付いているから、100%有り得ない話ではないでしゅけどね」
自ら下葉陣営に身を投じているにもかかわらず、みきぽんは他人事のように内戦予測を語っていく。
「その時に備えて、平井たんは正葉に恩を売ろうと考えたんでしゅよ。
北方総督府の目もあるでしゅから露骨に味方するわけにはいかないでしゅけど、
亡命させるなり集団逃亡させるなりして、表だっては関係を切った上で魔女飛行隊を
正葉側に参戦させる気なんでしょうね。
そこで正葉に恩を売って、内戦終結時に千島領有を認めさせる算段でしゅ」
「しかし、たかが1個飛行中隊では……」
「正葉は航空兵力が不足してましゅ。大動員をかけたとしても、それが前線配備されるのは
今日や明日ではありましぇん。その間のリリーフエースというのも、必要なんでしゅよ?
あるいは、そこから更にアメリカにナシつけて、そこから手を回すかもしれましぇんけど」
「つまり……」
「そうでしゅ。平井たんは、内戦がどっちに転んでも千島を取り戻すべく手を打ったんでしゅ。
この調子なら、そのうち東葉にも接触しかねましぇんね」
肩をすくめて苦笑するみきぽんに、思わずなつきは質問を発してしまった。
もっとも、みきぽんの腹を探って旅団長に報告しようという思惑もなくはない。
「しかし元帥閣下、武器購入の伝手が出来るのはいいですけど、千島返還なんて主張したら
しぇんむ……いえ、国家元帥閣下がお怒りなのでは?」
「別にこっちが千島返還を主張する必要はないでしゅ。単に交渉ルートの世話をして、
あとはトヨハラの勝手でしゅ。そこまでする義理なんてありましぇんし」
のほほんとした顔で平然と言ってのけ、みきぽんは背もたれに伸びをしながらもたれかかった。
「それに、下川しゃんもその辺はわかってましゅよ、多分。トヨハラの話を聞くふりをしてるだけで、
スウェーデン製兵器の購入に道が開けるんでしゅから。話だけ聞いて、交渉を長引かせて、
その間に甘い汁だけ吸えばいいんでしゅ」
ロシア製兵器の独自改装を進めている下葉にとっては、特に銃砲系大手のボフォース社との
太いパイプが出来るのが大きい。
「もっとも、その辺はトヨハラもわかってるはずでしゅから……勝負はそこからでしゅけどね。
でもそれはこっちが関わることではありましぇん。こっちはせいぜいネクストンから金を引き出して、
兵器を買いまくるとしましゅか」
外面だけなら罪のない笑いをみきぽんが浮かべたところで、ドアがノックされ茂美が入室してきた。
内心はともかくこちらも外面だけは立派な敬礼をして、今現在忠誠心を捧げる相手に報告する。
「一一閣下が、アクアプラスシティより特使としてみえられました。護衛の1個連隊も同時に到着しています」
同時刻
ものみの丘
(確かに人は、あまりにショックが大きいとなぁんにも考えられへん。それはわかる。けどな……)
そう思いながら、AIR航空隊司令・神尾晴子大佐は冷め切った視線を列席者に向けていた。
(国家の指導者が、そんなやわなメンタリティ持てってええと思うてんのか、こいつら?)
元々歯に衣着せぬ物言いと強い押しで決して上品とは言えない世界を泳ぎ切ってきた晴子には、
元勲に対する態度において、忠誠心と批判精神を区分して両者を混同しない癖があった。
そんな甘えた態度が許されないような艱難辛苦な道のりを歩んできたからなのだが、
だからこそ今目の前で繰り広げられている元勲たちの醜態を幾分離れた視点から批評できている。
その晴子の目から見て――今の元勲たちの有り様は『無様』の一言に尽きた。
ものみの丘にみきぽん造反の第一報が入ったのは、4月2日1922時――つまりは、
みきぽんが正統政府樹立を内外に宣言したその時だった。
もちろんその約1時間前、1830時頃から町役場や警察署との通信回線が不通となったことに、
ものみの丘のいくつかの部局は気づいていたし、その情報は中央情報局も掴んでいた。
だがその兆候を彼らは月姫ゲリラによる破壊活動だと思いこみ、
暢気のもみきぽんに調査と鎮圧を命じていたのだ。つまり、みきぽんが謀反を起こすなど彼らは全く考えておらず
――それ故に、事の真相が明らかになった時、彼らは正真正銘のパニックに陥ってしまった。
その混乱から漸く立ち直って彼らが緊急会議を招集したのが2244時。
この時晴子にも、ものみの丘地区の実質的な防衛司令官としての立場から出席の命令が出された。
だが、会議は空転して踊りまくる。逢魔ヶ辻への対応策で
『何かの間違いだ。みきぽん中将はだまされているか、脅迫され無理矢理謀叛を強要されたはずだ』
と主張し特殊部隊によるみきぽん解放を主張する涼元大将と、
『前後の状況からして強要されたとは考えにくい。みきぽんの自発的な謀叛と捉えるべきだ』
と主張し鎮圧を主張する折戸大将との間で鋭い対立が発生したのだ。
そうして時間を浪費している間に――正葉よ下葉が相次いで逢魔ヶ辻政権を承認し、
さらにはみきぽんははっきりと下葉への従属を宣言してしまった。
ものみの丘は、事態を早期に解決できたはずの貴重な数時間を無為に過ごしていたに過ぎない。
晴子が心中で突っ込みたくなるのも宜なるかな。
(涼元大将の意見は論外や。折戸大将の言うとおり、みきぽんは自発的に謀叛の道を選びよった。
それは間違いない)
そう晴子は思いながら、改めて列席者を見回す。
(そやけど会議が空転したんは、何も涼元大将の強情さばかりやない――
麻枝総統が何も言ってへんのが大きいわ)
情勢を報告する書類を目の前に広げながら、疲労の色を隠そうともせずに腕を組んでいる麻枝を見つめながら、
晴子はそう結論づけた。
事実、麻枝は会議が始まってからほとんど喋っていない。数時間前、視察先から戻って
ここへ駆けつける最中だった雲龍寺魁中将が暴漢に襲われたとの連絡が入った時に、
魁の事を気遣った時に二言三言喋ったくらいのものだ。
そして晴子は、麻枝が沈黙し続けている理由に気づいていた。
(みきぽんの謀叛が信じられへん……信じとうないんやな。慈愛に満ちた我らが偉大なる指導者は)
皮肉げに麻枝への尊称を呟いて、晴子はぎりっと歯を噛み合わせる。
(慈愛に満ちた元勲たちの集団統治? はんっ! 総統ともあろうお方が、
そんなヌルい偽善に浸っとるんやから始末に負えんわ……それに足下掬われてんなら、世話無い。
久弥大将の時は、まだしも冷静やったと思うんやけど)
以前、久弥を追放――ものみの丘に言わせれば『円満に袂を分かった』――
した時との対応を思い出して、晴子はふうっと小さくため息をついた。
もっとも、久弥大将が造反した時は麻枝と久弥との間の対立が数ヶ月かけて進行したせいもあり、
麻枝の方も心の準備が十分出来ていた。それに数ヶ月という時間的余裕が、
周囲のサポートを容易にしてもいたのだ。
だが、今回は違う。昨日までは誰もみきぽんが謀叛するなどとは考えてもいなかったし、
予測もしていなかった。だからこそ麻枝も激しく衝撃を受けたのだし、
周囲も茫然自失としてしまったのだ。それはわかる。わかるが……
(つまり、『慈愛に満ちた元勲統治』っちゅうお題目を、こいつらみぃんな信じ込んどったんやな。
せやから、その仲良しなお仲間が裏切ったことがむっちゃショックなんか……
はぁ、おめでたいこっちゃ。これが国家指導部の在り方かいな)
何とも情けない気分に浸りながら――それでも列席者からは視線を外さない。
(今はこんな会議しとる時やあらへんのに……)
晴子の思考の中の皮肉屋な部分を活性化させながら、つらつらと徒然なるままに考えを進めていく。
(時間が経てば経つほど、逢魔ヶ辻の防備は強化されてくはずや。今頃下葉の連中も町に入った頃やろ。
早く爆撃かまして、ものみの丘の意志を全世界に示すべき時なのに)
一応AIR航空隊は、B-70“ヴァルキリー”を始め全機が即時出撃態勢となっている。
今のところ彼女たちだけが迅速に逢魔ヶ辻へ有効な攻撃を加えられる部隊だった。
もっとも本土防空戦も遂行する必要があるから、出撃できるのは“ヴァルキリー”
+護衛の戦闘機数機といったところだが。
(でもま、出撃は無理やろな。総統が現実を受け入れるまで、2〜3日は逢魔ヶ辻への爆撃
なんて命令下りるわけないわ……いや、それどころか『今からでも遅くないから原隊へ帰れ』
なんてビラ撒いてこいとか言うんやないやろな?)
はぁっと今度ははっきりとため息をついて、晴子はぐったりと机に突っ伏した。
(ウチら、なんでこんなボンボンを指導者に戴いとるんやろ……このままじゃホンマに滅んでまうで、
この国……むっちゃアホらし)
だが――晴子はわかっていた。そう。一番『アホらし』のは、こんな状況にもかかわらず、
未だに麻枝への忠誠心を失ってなく、この国の行く末に気を揉み続けている自分だということに。
もっとも、自覚していたからと言ってどうなるものでもなかったのだが。
>>123 申し訳ない、おやびん確かに中将でしたな(汗
DOZAと混同しておりました。
謹んで謝罪と補償を(ry
125 :
112:03/04/11 05:31 ID:hYdmBCOF
乾少佐は中佐に昇進してましたな。
賠償はできませんが謝罪を。
>>84 そういえば東葉にも元帥が一人いたと思われ
保守
>>126 ぐあ。
鷲見は高橋より上であることはない、って先入観がありました(汗
吊ってきます……
129 :
山崎渉:03/04/17 15:56 ID:ocEBuI9Z
(^^)
216.73.176.146 , ip-216-73-176-146.hqglobal.net , ?
4月3日 08:30
正統リーフ領 ミサキ駐屯地
一概に月姫民族といっても、そのすべてが彼らの土着宗教を信仰しているわけではない。
長き流浪の年月の間にさまざまな宗教に触れ、改宗を余儀なくされたもの、自発的に改宗したもの等は
枚挙に暇がなく、彼らの土着宗教自体がこういったさまざまな宗教の影響を受けたこともあって、
彼らの宗教事情はそれこそ某極東の島国のごとく混沌としていた。
今、ここミサキ駐屯地にいる聖堂騎士大隊は、伝統的にその中でも全月姫民族の15%弱を占める
ローマカトリックの信仰者によって構成されていた。
重機械化歩兵大隊ということになってはいるものの、その実態はかつての乾大隊と同じく
戦車、歩兵戦闘車、自走砲、攻撃ヘリなどを統合した戦闘部隊である。
全体的に乾大隊よりも機動力に重点が置かれており、主にミニ空中機動旅団といえる
真祖の姫君大隊では火力が足りないときに投入されることが多い。
そんな聖堂騎士大隊も連隊規模への改編が進められていた。乾大隊に出向していたヘリ部隊を呼び戻し、
96式多目的誘導弾の導入等によって、その機動力を維持したまま火力の増強を図る。
それが【Playm】フェイズUaにおける聖堂騎士大隊の再編計画である。
その予定は変更されたものの、この時点では改編は順調に進んでいた。
TYPE-MOON総裁奈須きのこがミサキ駐屯地にやってきたのは、そんな朝のことだった。
シエル少佐の食卓から、カレーが消えるなどということはありえない。
この日の朝食はパンとスープ。パンにはもちろん前日の残りのカレーをたっぷりとつけて。
実はゲリラにとってカレー粉は必需品である。食料の補給があまり期待できないゲリラにとっては
野生動物は貴重な食料であるのだが、カレー粉はその臭み消しに大活躍するのだ。
ゲリラ戦の最中はカレーの匂いのするものしか食べられないことも珍しくなく
しかもそれの多くは蛇だったりトカゲだったりするわけで、
そのせいかゲリラが普通にカレーを食べることはあまりないのだが、
(ちなみに琥珀大佐はカレーを料理として認めていなかったりする)
シエル少佐は例外である。ある意味ゲリラになるために生まれてきた女性かもしれない。
香辛料の匂いが鼻腔をくすぐる。この匂いをかぐとゲリラになったばかりのころを思い出す。
あのころはまだ遠野財団の支援もなく、武器に少ない金を回したおかげで、
主食はネズミやら山猫やらのカレー粉まぶし焼きだった。
あれからもう10年はたっただろうか。いつしか私は前線から離れ、あの味を思い出すことも少なくなった。
あのころの仲間達もあるものは死に、あるものは戦場から離れ、
文句を言いながらその実一番良く食っていたブルーは、今は遠くkanonシティにいる。
「腹も膨れたところで本題に入ろう。おめでとうシエル。君は今日から中佐だ」
感傷を遠くに投げ捨て、奈須きのこは紙の束と階級章を渡した。
紙の束の内容は昇進の辞令、今日正式に発足する第7聖堂騎士連隊の編成表、そして作戦指令書。
「君には空き地の街でVN旅団第2連隊と合流後、部下を選抜して下葉領内に浸透、
ゲリラ戦をもって逢魔ヶ辻への物資輸送路を攻撃してもらう。詳しくは作戦指令書を読んでくれ」
シエル中佐はため息をついた。面倒なことになったからというのもあるが、
主な要因は作戦指令書を見て、誰が作ったか一目でわかってしまったからであった。
こんなに分厚い作戦指令書を作るような人間を、彼女は一人しか知らない。
「軍から離れたんじゃなかったんですか?総裁どの」
「シビリアンコントロールは必要だろう?少し口を出しすぎな気もするがね」
「まあ、こちらとしては頼もしい限りなんですけどね。
でも、私たちまで空き地の街に行って大丈夫なんですか?」
「VN旅団第1連隊もやっと練成が終了したし、
その他の部隊もいつでも動けるようになっているから、心配する必要はないよ」
「それなら安心ですね。では、こちらの要件のほうも済ませてしまいましょう」
そう言って、シエル中佐は懐から1枚の便箋を取り出した。
そう、これこそが奈須総裁がここに来た本当の目的。
これを受け取るためにわざわざ忙しい合間を縫ってここまでやってきたのだ。
「『ご友人』からのお便りです。中は見ていないので安心してください」
戦後かなり経ってから
ロックブーケ中央放送局第102スタジオ
「ドキュメント葉鍵内戦・第四回 内戦戦局のターニングポイント」収録風景
「教授、何故TYPE-MOONは、この時期を境に対鍵政策を一変したのでしょうか?」
「はい。これはこの約1年後に起こる千代田連合の乱と深い関係があります」
「といいますと?」
「この時期から既にソフリン中央政府への反乱を計画していた千代田連合にとって、
エロゲ国内の分離主義的な潮流が弱まるのは歓迎できないことでした。
もし彼らが反乱を起こすまでに鍵第3帝国が解体されていたり、瀕死の状態になっていたとすれば、
それは彼らの計画に大きな悪影響を及ぼす───と、彼らは考えたのです。
そして、情報収集等多くの分野で千代田連合の援助を受けていたTYPE-MOONは、
彼らの意向を無視することができませんでした」
「しかし教授、葉鍵国内での分離主義を容認するような行動をとっては、
正統リーフ内部でのTYPE-MOONの状況を悪化させる危険はなかったのでしょうか?」
「ところが彼らの方針転換は正統リーフ上層部にはむしろ歓迎されました。
高橋大将らはみきぽん中将の発表を受けて、正統政府を下川ファシストの走狗として叩き、
麻枝元帥らを下川ファシストの暴虐に反抗する同士として、鍵第3帝国と一時的な同盟関係を結ぶ───
統一の問題に関しては、粘り強い交渉によって解決する───
こういった筋書きを練っていたのです。そして、その障害となると思われたTYPE-MOONが
その対鍵政策を体制転覆を目的としたものから、体制内改革を目的としたものへと変更したことは、
正統リーフにとって歓迎すべきことだったのです」
「解説ありがとうございます、教授。
さて、このTYPE-MOONの方針転換は、この内戦の構造にどのような影響を与えたのでしょうか?
では皆さん、続きをどうぞ」
4月3日 19:30
正統リーフ軍本部
「いかがでしたか?あちらのご様子は」
「一応やる気にはなったみたいですがね、まだ完全には立ち直ってはいないようですよ」
麻枝元帥とホットラインをつなぎ、30分近い直接会談を終えた高橋大将は、
心なしか疲労して見えた。いや、ここに疲労していないものなどいない。
末端の兵士から、軍籍を離れたはずなのにさも当然のようにここにいる奈須総裁にいたるまで、
前日からの一連の騒動のおかげで、ろくに睡眠をとってもいないのだ。
それでも目は死んでいない。否、むしろ極限まで研ぎ澄まされたといえるかもしれない。
「丸一日もたつというのになんと脆弱な…これでは鍵の現在の窮状もうなずけるというもの。
優れた理論を持っていながら、なんとも惜しいことですな」
「まあ、彼は昔からそういうところがありましたからね。
もっとも、彼は基本的に優秀です。必ずや鍵が生き残るために正しい選択をしてくれることでしょう。
ただ、今回の件に関しては、そう手っ取り早い解決は期待できませんがね」
逢魔ヶ辻には、裏葉大佐を始めとして多くの鍵将兵が今もとらわれの身になっている。
あのお優しい麻枝元帥のこと、彼らを巻き込む可能性のあるB-70による戦略爆撃など許すはずもあるまい。
いや、それ以前の問題として麻枝元帥はみきぽん中将への未練を捨て切れていない。
鎮圧するのは仕方がないとしても、できれば生かして捕らえたいと思っているはずだ。
「おそらく彼らが派遣してくるのは、AIRシティの集成師団を中核とした兵力でしょう。
となれば到着するまで約六日。それまでの間にどれだけの兵力を下川が送り込んでくるか、
それを我々がどれだけ阻止できるかで勝敗は決まります。あなた方の腕の見せ所ですな」
「しかし総裁、あなた方は確か麻枝政権を良く思っていらっしゃらなかったと思ったのですが、
いかなる心変わりがあったのでしょうな?」
来た、と思った。我々の方針転換に対し、避けては通れない質問。
答えも既に用意してある。
「窮地にあればこそ、味方は選ばなければならない。そういうことですよ」
「ほう?と、いいますと?」
「総帥。かつての独立戦争において、葉と鍵が共に戦った理由は何でしたかな?」
「共に中央政府から抑圧されており、思想的にも類似点が多かった…」
「そうです。そして鍵がエロゲ主義を捨て去った今でも、我々と彼らの目指すところは似通っている。
それに比べ、みきぽん中将やJRレギオン少将の目指すところは、
VN主義の本道からあまりにもかけ離れている。
遠方の友人としては問題ありません。ですが、同胞として内包すれば、
その歪みはいつか必ず葉鍵国に良くない結果を招きます。思想的に似通っていた鍵さえ、
些細な違いが大きなひずみとなって今回の事態を招きました」
「ましてや彼らの場合、その歪みはいつか葉鍵国自体の存亡を危うくする事態を招く───
と、いうのですね?」
「そういうことです。それに、第3帝国が独立を標榜する限り、
ねこねこルートは今後締め付けられることはあっても、開くことはないでしょう。
つまり、彼らの命運は我々が握っている。いかようにもなりますよ」
それらは、真実だ。たとえその言葉を吐いた者の中に別の思惑があったとしても、
一片の真実であることに変わりはない。
(それに、だ。バ鍵っ子バ鍵っ子といわれているが、
考えて見れば人々のレベルは正葉もやつらとあまり変わりはない。下川を打倒したとしても、
正葉と東葉との対立、下葉と正葉、東葉の経済格差と、問題は山積み。
やつらが存在していれば、いいはけ口になってもくれよう)
彼に─奈須きのこTYPE-MOON総裁にとって、葉鍵の統一というお題目は、
文字通りお題目でしかない。己が望む未来を具現化するための障害となるなら、
いつでも捨て去ってしまえる類のもの。
『ひとつ忠告しておくが、JRレギオンの望む未来は、我々やお前達の望む未来とはかけ離れたものだ。
利用するにしても、適当なところで始末しておいたほうがいい』
友の手紙の最後の部分が頭に浮かぶ。JRレギオン─彼もまた、
己が望む未来を具現化するために戦っているのだろう。
(とはいえ、確かに厄介者ではあるな)
そして、奈須きのこの脳は凄まじいスピードで回転し始める。
ミステリ国で学んだ謀略理論に基づき、あの厄介者の行動を月姫の利益に帰結させるために。
そして、その思考はほどなく、ひとつの案に帰結した。
(そんなに厄介者なら、だ。下川に押し付けて困らせてやるというのもいいな)
4月3日2100時
東葉領・ユウラク郊外 第6師団司令部
『――9時になりました。本来なら連続ドラマ『仁義なき有明』の時間ですが、
本日は予定を変更して臨時ニュースをお送りしています。『仁義なき有明』はまた後日、
改めて放送いたします。
先ほどからお伝えしていますとおり、先ほど午後8時、ひろゆき国連事務総長は緊急声明を発表し、
新大陸各地に散在する大量破壊兵器廃棄を推進するための『国連エロゲ新大陸兵器査察委員会
――UNWICENC』の立ち上げと、査察実施環境整備のために関係各勢力に対する
36時間以内の戦闘停止勧告を発表しました。
またこれを受けて合衆国政府は、新大陸近海へ急派中の全軍を委員会隷下の査察執行軍――
UNWICENC-Forceへ戦力派遣すると表明、各勢力に対し休戦発効の遵守を迫っています。
これには安保理も全面的な支持を表明しており、合衆国と同じく部隊を派遣中の各国も同調するのは
まず確実な情勢です。また、合衆国政府の複数の情報筋の話として、
最も早く現地近海へと到達するのは最新鋭空母『エンタープライズ\』を中核とする機動部隊であり、
それは現地時間翌日夕刻頃だろうとの――』
「ちょっと! ちょっとちょっとちょっとぉっ! なんで『仁義なき有明』やんないのよぉっ!
こんなつまんないニュースなんか止めて、とっとと放映しなさいっ!」
東葉領中部・ユウラク市に駐屯して即応態勢を整えていた東葉第6師団は、
迅速な出撃が可能なように、野営の司令部を同市郊外に設置してそこで部隊の指揮を執っていた。
なお師団幹部たちはこのところ連日ロックブーケで緊急会議に出席しているので、
同師団の留守は千堂和樹大佐が預かっている。
その司令部の中で、大庭詠美中佐は携帯テレビをど突きながら大荒れに荒れていた。
確かに、娯楽の少ない野戦生活での貴重な楽しみを奪われた怒りというのは、もっともな部分もあるのだが……
「アホなことぐちゃぐちゃ叫んどるんやないっ! あんた、今のニュースの重要性がわからんのかっ!」
「何よ! 温泉パンダが偉そうにっ! あたしが楽しみにしてる『仁義なき有明』が放送されないって事以上に
じゅーよーなことが、この世にあるわけ無いじゃないっ!」
「だから大バカ詠美って言われるんや、あんたっ!」
「……頼むからくだらないことで喧嘩しないでくれ、ふたりとも」
詠美と猪名川由宇中佐とのあまりにアホらしい口げんかを横に聞きながら、
和樹はぐったりと机に突っ伏していた。もう、ふたりに直接文句を言う気力も残っていない。
「まあまあ、これも留守役の仕事だと思いなさいよ、和樹」
「……そりゃいいよな、瑞希は。そっちの連隊、割と普通な大隊長しかいないし」
傍らに座っている高瀬瑞希大佐の方へ顔を動かして、恨めしげに呟く。ちなみに和樹は戦車連隊、
瑞希は歩兵連隊をそれぞれ率いている。
「麗奈なちなみ? そりゃまあ、和樹のとこに比べたら大人しいけどね」
苦笑しつつ頷いた瑞希だったが――ふと真顔になって尋ねる。
「ねぇ和樹……それにしても、随分急に話が進んでるわね。私、査察休戦にはいるのは
もうちょっと先の話だと思ってたんだけど?」
「ん?……ああ、それは俺も思ってた。まだ査察の細目も決まってなかったはずなのに、
国連もえらく急な話だよな」
同時刻
ロックブーケ
「間違いありません。今回の国連の急な動きは、逢魔ヶ辻を巡る事態急変を受けてのことです」
もう連日恒例となった東葉首脳陣による緊急会議の席上、中村毅中将はやや緊張した面もちで
出席者に報告した。
「それって、つまりどういうこと?」
緑茶を一啜りしてみつみ美里少将が尋ねる。
「ええ。国連筋――特に安保理は、先の安保理決議を受けて新大陸各勢力が、
査察受け入れに向けて戦闘規模を縮小させることを望んでいたはずです。
決議直後にアメリカから出された非公式通達にも、その意図が読みとれます。
当然ですね。戦闘が激化しては、またいつ大量破壊兵器、特に核兵器の使用危機が高まるか
知れたものではないからです」
「ところが、逢魔ヶ辻政権の成立によって、内戦は一気に流動化しそうになった――かな?」
菅宗光大将が、半分居眠りしたような姿勢で尋ねる。だが、口調は相変わらず
強い意志の感じられるものだった。
「そうです。特に最後の援鍵ルートを切断された鍵は、一気に体制崩壊に進む可能性すら出てきました。
国連やアメリカにとって、これは最悪のシナリオでしょう。鍵が急速に崩壊すれば、
新大陸中央部にパワーバランスを一気に崩すような力の空白が生まれます。そうなれば……」
「間違いなく、下葉や北方総督領各軍閥がそこに殺到する。それは必然的に、
大量破壊兵器の偶発的使用の可能性が高まると言うことだ」
ふぅっとため息をついて、鷲見努元帥は手に持っていた書類をバサッと放り出した。
「それを防ぐための、36時間後――いや、もう35時間後か。とにかく4月5日0800時の査察休戦発効か」
「そうです。とにかくその時点で新大陸全域における戦闘行為を全面的かつ強制的に禁止し、
これ以上の戦局悪化を、特に鍵の急速な自壊を食い止めるのが国連の思惑でしょう。
極端な話ですが、査察の細目なんてその後からゆっくり決めればいい話なんですからね」
「で、それで査察を行って大量破壊兵器を取り除いたら――あとは放り出す、というところか?」
三宅章介中将が、苦笑しながら話を引き取る。
「結局連中としては、弾道ミサイルやNBC兵器を排除できれば、あとは知ったことではないからな。
その後ならば、鍵がどうなろうが我々がどんなことをやろうが、おそらくは干渉してこない」
「そうね――となると」
みつみはそこで言葉を句切ると、じっと一同を見回した。
「『アレ』は、しばらくは凍結せざるを得ない訳ね?」
「ま、当然そうなるだろうな」
苦笑した表情は変えずに、三宅は続ける。
「国連やアメリカが本気になってるこの時期に、この戦局をさらにひっくり返す『アレ』を
ぶちかますわけにはいくまい。査察休戦が続く間――おそらく半年かそこらは、凍結しておかなくてはな」
「それに、どっちみち『アレ』にかまけている暇は無かろうて」
居住まいを正しつつ、菅が合いの手を入れた。
「査察休戦となれば、必然的にわしらは『政治の季節』に突入せざるを得ない。
おそらくどの勢力も、敵対勢力へのテロや謀略を煽り立てて、治安や動員体制を擾乱しようとするじゃろう。
わしらへも、正葉原理主義者のテロが激化するのはまず確実じゃな。それに対処するためにも、
『アレ』はしばらく店晒しにするしかあるまい」
「そうですね――」
肯きつつ、中村は書類を一枚めくった。
「それに、逢魔ヶ辻を巡っては各勢力が熾烈な謀略戦を展開することは、絶対間違いありません。
下川国家元帥閣下から、我々に治安維持協力要請が来る可能性もあります――どう考えても、
『アレ』にかまけている暇は無さそうです」
「ふふ……そうだな」
肩をすくめておどけた笑みを浮かべながら、鷲見は吹っ切るようにため息をついた。
「郁美君には『アレ』の一時凍結を正式に命令しよう。その上で我々は査察休戦に備える――
異議はないかな?」
「異議なし」「ないわ」「ありません」「ないな」……
各々が答え、鷲見の意見に賛同する。
「了解した。それでは各自、その方向で動いてくれ。
それと――おそらく各勢力とも、35時間後の休戦発効までに少しでも優位を確保しようと、
大博打を打ってくる可能性がある。特に逢魔ヶ辻周辺が混乱するのはまず間違いない。
各自そのつもりで、十分警戒しておいてくれ。
特に中村君は麾下の航空部隊の即応態勢を上げておくように。ひょっとしたら、
下川閣下から逢魔ヶ辻への航空支援を要請されるかも知れない。もちろん言われるままに
出すつもりはないが、それでも多少は従っておきたいからな」
>>137-140「査察休戦への誘い」投下完了です。
いい加減査察受け入れに向けて事態を動かさないと拙いと思いましたので、
やや強引で申し訳ないですが、話を進めてみました。
143 :
133:03/04/21 02:14 ID:HM4oEho0
申し訳ないです。裏葉大佐のところを美坂中佐に差し替えてください。
4月3日2200時(休戦発効まで34時間00分)
ロディマス
「――高橋総帥っ! つまるところ、鍵との同盟は堅持するのですか? それとも破棄するのですかっ!」
「いえ、ですからその点に関しては、鍵の分離主義的暴走を押さえるという意味で粘り強く
交渉を続けていくのは必要なことで……」
「つまり、同盟堅持ということですね?」
「いえ、もちろん現行の鍵の体制のままでいいと言うことではないですから、堅持というのは
不適当で、交渉を……」
「では、交渉が不調に終われば破棄ですねっ!?」
「いえ、下川独裁体制を打倒するためには破棄というのは自殺行為であり……」
逢魔ヶ辻政権を下川ファシストの走狗として否定する記者会見の席上、高橋は主に
国外系マスコミの記者達の苛烈な集中砲火を浴びていた。ものみの丘との同盟をどう扱うか
という点に明確な文言を用意していなかったためだ。高橋の弁明も明確さを欠いていたから、
彼らの質問はますます激しさを増していった。
もっとも――明確に答えられるわけもなかった。明確に『鍵との同盟を維持』なんて答えた日には、
どうなるか知れたものではないからだ。
正葉の約半数を占める月姫系国民にとって、鍵というのは同胞を虐殺する不倶戴天の敵であった。
当然にして対鍵感情は最悪レベルであり、以前から『ものみの丘に対しては強硬姿勢で臨むべきだ』
とのタカ派意見が燻っていた。
その強硬論が主流たり得ていなかったのは、ひとえに下川国家元帥及び下川独裁体制に対する恐怖が
大きかったからに過ぎない。大葉鍵嶺の向こう側の同胞虐殺はもちろん弾劾すべき事柄だが、
それよりも目の前の独裁体制の恐怖の方がより切実――今まではそういう認識だったのだ。
だが、みきぽんの月姫民族に対する『謝罪』が、なかば欺瞞的なそんな世論を一気に覆してしまった。
鍵の元勲がものみの丘に反旗を翻したという事実も十分に衝撃的だったが、何よりも下川体制に属すると宣言した彼女が、
ものみの丘の虐殺政策を否定しつつ謝罪したという事実の方が重要だった。
つまり彼女によって示された『月姫解放を進める下葉陣営vs月姫虐殺に奔る鍵第三帝国』
という図式に多くの者が衝撃を受けたのだ。
もちろん、そんな単純な図式を素直に信じ込んだ国民は少数派であり、大多数はこれを
『逢魔ヶ辻政権のプロパガンダだ』と判断するだけの冷静さを持ち合わせていた。
とはいっても――単純な図式というのは、ある意味人の心に浸透しやすい。ましてやそれが
勧善懲悪タイプの話で、自らの同胞が『悪』に虐げられているとあっては――理性とはまた別に、
感情的かつ心情的に支持してしまうことはどうしても避けられない。それに、彼女が弾劾した
鍵の民族浄化政策は事実であり、そこで行われている虐殺そのものは厳として実在するのだ。
そして下葉陣営は戦略的判断に基づくものとは言え、月姫擁護策を次々に打ち出している。
こうして――逢魔ヶ辻政権に対する支持というのは理性的判断が勝って広がらなかったものの、
鍵に対する反感は月姫系国民の間で一気に燃え上がってしまった。いままで『反ファシズム共闘』
のスローガンに押しつけられていた反動もあって、反鍵感情は情緒的な共感とともに
更に広がる様相すら見せている。こうしてみきぽんの謝罪は、正葉―鍵同盟に潜んでいた捻れを
ものの見事に暴き立ててしまった。
高橋が明確に『同盟維持』を表明できない理由はここにあった。国家的戦略として
鍵との同盟を一時的に維持という方策を選択した正葉首脳部ではあるが、
それをそのまま発表してしまった場合の月姫系国民の反応が恐ろしかったのだ。
そんなことをしたら、まず間違いなく反政府暴動が発生してしまう。一時的にとはいえ
『同胞虐殺者』の鍵と同盟を維持するなど、みきぽんの謝罪によって煽られてしまった
月姫系国民の許容するところではない。
国民の圧倒的支持を戦争遂行態勢の基盤においている正葉にとって、国民の支持を失うことほど
恐ろしいことはない。『同胞虐殺の手先』『鍵ファシストの走狗』『指導部のスターリニズム反動体制』
などと国民の半分から非難を浴びるなど、悪夢以外の何物でもなかった。
そのため彼らは玉虫色で飾り立てた建前を持ちだして、『民族浄化政策に奔る鍵と手を結び続ける』
という現実を糊塗するしかなかったのだ。もちろんこれでも反鍵感情を燃え立たせた
国民の不満を抑えることは出来ないが――それで暴動が起こったり支持を失ったりするよりは
マシな選択には違いなかった。
なお、逢魔ヶ辻に対する軍事行動が『後方に潜り込んでの下葉領内におけるゲリラ戦』などと
回りくどいものになったのも、これが原因の一つになっている。逢魔ヶ辻に直接攻撃を仕掛けた場合
――つまり露骨にものみの丘を利する行動を取った場合に、特に月姫系兵士の士気が
どれほど混乱するか、全く予測が付かなかったからだ。
(なんで……なんで俺がこんな目に遭わなければならないんだ!)
穏和な表情で記者達の集中砲火に耐えながら、高橋の内心はかなり荒れ狂っていた。
(だいたい……鍵の連中が虐殺を止めないのが悪い!)
八つ当たり気味な感想だが、真実である。
全ての原因がそこにあるわけではないが、鍵が月姫虐殺政策を全く止めようとせず、
むしろ国家の基本政策に規定している時代遅れの姿勢に多くの原因が潜んでいることは間違いない。
極端な話、彼らがこの民族浄化を止めれば、高橋だって思い悩む必要はないのだ。
だが、高橋も幾度と無く虐殺政策放棄を促しているにもかかわらず、ものみの丘が
政策を転換する気配は全く見られない。高橋でなくとも、文句の一つも言いたくなってくる。
(ふぅ……まぁいい。とにかく今は、国民の反鍵感情を何とかしなくては……解消は無理にしても、
悪化だけは防ぎたい。そのために館山君には因果を含めているが……)
同時刻
空き地の町
「――我々は、高橋総帥閣下によって統率される正統リーフ体制の一員です。正式な体制発足はまだですけどね」
ロディマスとほぼ同時刻に始まった記者会見の席上、館山は肩をすくめて少しおどけた表情をして、
余裕のあるところを記者達に示していた。
「その意味において、『下川独裁体制打倒』に向けて邁進することは当然であり、
我々もそれを躊躇するものではありません。
しかしながら、我々にもある一定程度の裁量権というものはあります。特にこの空き地の町は
最前線に位置しており、逢魔ヶ辻とは隣接しているという特殊な状況におかれています。
このような状況下においては、『独裁体制打倒』という大枠を維持しつつも、
それに添った独自の判断もまた許容されうるものと考えています」
ここで一旦言葉を切って、記者達を静かな表情で見回す。
「今回逢魔ヶ辻に成立した政権は、確かに下川独裁体制に与するという過ちを犯しました。
しかし私たちは彼女たちの隣人として、彼女たちがそうせざるを得なかった苦しい事情も
十分理解しています。確かに我々は正統リーフ体制の一部として彼らと敵対する運命にありますが、
それ以前に隣人として、彼女達に正道に立ち戻るべく説得するために、
交渉チャンネルを保つべきだと思うのです」
一斉にたかれるフラッシュ。
「我々も、その構成員に多くの月姫民族を抱えています。そした彼女達は、真摯に過去の過ちを
謝罪する姿勢を見せてくれました。我々は、本質的に彼女達の至誠を信じています」
(うわ、無茶苦茶言ってるな、私……)
表情は変えずに、館山は心中で自分に突っ込みを入れていた。
(国家関係に『至誠』なんて……ああ、ばからし)
「ですから、我々は彼女達と非公式の外交チャンネルを持って交渉し続ける道を選択します。
これは高橋総帥の指示に依らない、我々独自の判断ですが……正統リーフの外交方針の大枠からは
外れていないと確信しています」
さらに激しいフラッシュの洗礼を浴びながら、館山は先刻高橋との電話会談で示された
『方針』を反芻していた。そう――対外的には『空き地の町独断』という体裁で
逢魔ヶ辻と交渉チャンネルを持つことを、高橋が秘密裡に支持するという『方針を』。
(これで国内の反鍵主義反政府運動を防ぎ、月姫系国民の不満をガス抜きする。
ものみの丘からの抗議には『空き地の町独自の方針だから』としらを切り通す――
確かに上手くいけば何とかなりそうですけどね)
奇妙に醒めた感慨を持ちつつ、館山はそっと高橋に問いかけていた。
(でも、そんなに上手くいきますかね。どうも、その辺の腹芸は敵の方が得意そうな予感がするんですけど……)
「――私からの発表は以上です。記者のみなさん、何か質問は?」
AF書き殿、月姫参謀殿、生きてますか〜〜〜
150 :
149:03/04/23 05:22 ID:L/5eWADF
31殿と鮫牙殿を忘れるなんて…
∧||∧
( ⌒ ヽウツダツロウ
∪ ノ
∪∪
異動、業務引き継ぎで死んでます……
当方携帯。
152 :
鮫牙:03/04/23 19:56 ID:v0D9M7/i
広告代理店の営業は忙しいのよ
皆さん忙しそうでつねえ…
それはそうと131に間違いがありました。
>文句を言いながらその実一番良く食っていたブルーは、今は遠くkanonシティにいる。
kanonシティーではなくけろぴーシティーです。
何とか生きてます月姫参謀です。
申し訳ないです、殆ど参加出来ずに。
何とか明日明後日迄には秋葉タン達のお話の続きをうpしたいと思いますので、
お見捨てなくです(汗
でも旅団長殿、穏やかに回しましたね(笑
この流れに沿う形で、ssの素案を組みなおさないと………頑張るぞー(爆
4月3日2330時(休戦発効まで32時間30分)
シェンムーズガーデン
「――つまり、今回の叛徒同盟が選択した同盟維持など、政治的に無意味です」
会議室に、久瀬の朗々とした声が響き渡った。とてもではないが、
つい先ほど東葉から帰京したばかりとは思えない。
「まぁ、内務尚書の意見にも一理あるとは思うが」
反対側の席に座っていた中上が、眼光鋭く久瀬を見つめた。手元で書類をめくりつつ、
視線は外さない。
今まで久瀬は、今回の正葉が打ち出した正葉―鍵同盟維持という方針が戦局に
どういう影響を与えるかを論じていた。結論から言えば『全くもって無意味』。
理由は――記者会見の席上で高橋が苦悩していた理由と本質的に同じだった。
つまり『国民の支持を失ってしまうから、同盟維持を明言できない』。
もちろん国民に見えない範囲で鍵に援助を与えることは出来るが、秘密援助など所詮たかが知れている。
その論旨を反芻しながら、中上は反論を試みていた。
「しかし連中とて莫迦ではないだろう。マスコミを通じた情報操作、強硬派の懐柔、
あるいは過激分子の逮捕拘禁などで同盟にアレルギーを示す住民感情を緩和し、
中長期的に同盟強化を容認させる方策を、きっと採ってくるはずだ。いつまでも
『無意味』と構えていて良いものかな?」
「もちろん、それはよくありません。内務省の全力を挙げて、あるいは逢魔ヶ辻にいる
元革命家を使ってロディマス方面の世論対立を煽り、叛徒指導層と住民の分断を促進することは
必要です。
ただ――いくら叛徒どもが情報操作をしようとも、住民の対鍵アレルギー、
もしくは反鍵感情が好転する可能性は低いと見ています。いや、叛徒どもが軍備を
固めれば固めるほど、その種の感情は悪化します」
「? どういうことだ、それは?」
議論テクニックのためではなく、久瀬の言葉の意図が本当に読みとれずに、中上は尋ねた。
「参謀総長。ロディマスの叛徒どもが大規模急速動員を実行に移しているというのは、
間違いありませんね?」
「ん?……ああ、それは間違いない。詳細は不明だが、叛乱軍のヒューミント情報や
シギント情報の分析からは、大規模かつ急速な部隊改編作業が窺える。作業完了後の動員規模は
……数万。多くても十万を超えることはないだろう。それでも戦力バランスに
有意な影響を与えるのは間違いない」
実際よりも低い見積もりだが、もちろん彼らはそれに気づいていない。
「で、その急速動員と同盟維持にどのような関係が、内務尚書?」
「この大規模動員をかける過程で、ロディマスの叛徒どもは必ず、領域内において
大規模な宣伝を行います。自軍が大兵力を持つと印象づけることで、支配住民の間にある
『脆弱な軍事力』という不安を取り除き、支持を強固なものにする必要があるわけです。
ところがこれを推進するとなると、支配住民の目には一体鍵との同盟はどう映るか」
一旦言葉を切り、水差しを呷ってから久瀬は言葉を続けた。
「現在、支配住民の間にある叛徒同盟への支持理由というのは、それを選択しないと
我々に対抗できないからというのが最大のものです。つまり鍵の公称18万の兵力が
必要不可欠だと思うからこそ、鍵の傍若無人な振る舞いを許そうという世論があるわけです。
無節操な独立宣言や配慮の足りない民族浄化政策を執る鍵を
心底信頼すべき同盟相手と思っている住民など、まず存在しません。
そのような状況で、この数万に達するであろう動員が進めば、一体どうなるか?」
「……支配住民の中に、鍵に頼らずとも自力で我々に対抗可能だとする意見が当然出てくるな、確かに」
中上が言葉を引き取った。
「連中のうち旧ロディマス地方住民には、自分たちこそが正統な葉鍵国民だという意識がある。
それからすれば、『傍流』の鍵の助けを借りなければ戦争を遂行できないと言うのは、
ある意味屈辱だ。自力で対抗可能な兵力を持てたと彼らが考えるなら、
同盟不要論が台頭してくるのは不可避……なるほど、そう言うことか」
「参謀総長の言われるとおりです。そして月姫系住民に関しては……これはもう、
言及する必要もありませんね」
微かに苦笑の表情を浮かべて久瀬は列席者を見回し、持論を展開し続ける。
「もちろん動員の成果を宣伝しなければこれらの動きは表面化しないでしょうが、
それは戦争遂行の必要上まず有り得ません。兵力比において圧倒的な劣勢に立たされている彼らは、
内部はもとより国際的信用を確保するためにも、絶対にこの動員を喧伝する必要がありますから。
さて、この支配住民の意識変化に叛徒指導部が動くかですが、
短期的には我々が期待するほどの変化は見込めないと内務省では考えています。
これらの意識変化はあくまで一般住民レベルの話であり、
叛徒指導層はまた別個の戦略的思考を有しているからです。
ただし、彼らの体制は『民意の反映』を旗印にしていますから、まったく影響がないわけではありません。
少なくとも支配住民の世論に配慮し、露骨な同盟維持にはやはり踏み切れないでしょう。
そのため叛徒同盟の維持は、間接的なものにならざるを得ないと言えます。
そして視点を中長期的なものに切り替えた場合……」
ここで意識的に言葉を切って、久瀬は少し沈黙した。そして十分周囲が焦れたころを見計らって、
説明を再開する。
「この急速動員がもたらす鍵不要論は増大もしくは停滞しこそすれ、解消される見込みはまずありません。
つまり、支配住民の中で鍵不要論は徐々に増大していくのです。当初は叛徒指導層も
これを無視することは出来るでしょうが、ある一点を超えてしまえば
この圧力に抗することはできなくなります。彼らが『民意の反映』を重視する限り、
これは避けられない未来です。
この点からも、同盟維持などすでに意味を失っているのは明白です。はっきり言ってこれは、
叛徒どもが『孤立していない』という幻想に耽り続けるためのものです」
「――なるほど、ようわかった」
上座から、重低音の効いた声が発せられた。久瀬がその方向へ向き、一礼する。
「恐縮です、国家元帥閣下」
「そこまで洞察できてるんなら、この先ロディマスの叛徒どもが採るだろう回避策も予測できてるんやろな」
「現時点で判明している情報で考えるなら、という条件付きですが」
「それでええ。言ってみ」
軽く顎をしゃくって、下川は促した。再び一礼して、久瀬は下川をしっかりと見据えて話し始めた。
「この手詰まりに対する回避策ですが、考えられるのは現在のところふたつです。
ひとつは、ものみの丘ではなくねこねこ師団との同盟を打ち出す策です。
これならば支配住民の強硬な反発を受ける可能性は低いですし、何よりねこねこを支援することで
援鍵ルートの封鎖を解く効果も期待できます。もっともこの場合、いかにして『鍵の間接支援』
という色合いを消すことが出来るかが一つのポイントになりますが。
またものみの丘との同盟ほどではないにしろ、月姫系住民の不満は蓄積していくでしょうから、
それに対する手当もいります」
「その点については、参謀本部でも検討している。今のところその兆候を示す情報は入っていないが、
警戒するに越したことはないだろうな」
固い声のままで肯く中上。そして、無言で続きを促す。
「もう一つの可能性は……ロディマスの叛徒勢力が、『民意』など簡単に無視して、
指導者層の考えのみで突っ走る政治体制に転換してしまう策です。つまり彼らが口を極めて罵る
『ファシズム体制』に自ら路線変更するのです。これならば支配住民の反発など力で押さえつけて、
好きなだけ同盟堅持を表明でき……」
久瀬の言葉は、ここで途切れた。突如聞こえた来た大音声の笑い声に掻き消されてしまったのだ。
「……」
列席者はみな、呆気にとられた表情でその笑い声を発する主――下川直哉国家元帥に
視線を集中させてしまった。堂々とした体躯を小刻みに震わせ、愉快で愉快で堪らないといった
風情で誰憚ることなく笑い続ける下川。
――どれくらい、そうして笑い続けていただろうか? ようやく肺活量の限界に達したのか、
下川は笑いを納めてぎろっと周囲を睥睨した。
「おもろい話やないか。こっちを散々『ファシスト』と罵っとった高橋が、進退窮まって結局は
こっちと同類になる、か……くっくっくっ……いや、是非ともそうなって欲しいもんやっ!
無様に道化になった高橋の面を拝めるんなら、いっそのこと『正統リーフ』を
国として認めてやってもええでっ!」
その30分後
シェンムーズガーデン・国家元帥私室区画
「――随分ご機嫌ですね?」
「ああ? 当たり前や。大見得切った高橋が『堕落』するところを見れるかもしれん話――
例え可能性の話としても、おもろいことこの上ないわ」
グラス片手の下川は、近頃ほとんど見られなくなった上機嫌さを久瀬に見せていた。
(確かに、上機嫌だな……)
寝間着に着替えてベッドに腰掛ける我らが国家元帥閣下を見て、久瀬はそう思った。
何しろ、下川がこの寝室に他人を招き入れるのは、よほど機嫌がいいときだけなのだ。
そして彼は、ここ1年誰も寝室に他人を入れていない。
「まぁええ。久瀬、貴様はとにかくロディマスへの諜報を強化するんや。とにかく煽れ――
住民の反鍵感情を煽りまくれ」
「了解しました――本格的に動き出すのは、休戦発効後でよろしいですか?」
「ああ、それは任せる。頑張れや? ほんまに高橋を『ファシスト』に転向させられたなら、
真面目に考えてもええで、『正統リーフ承認』をな」
また、思い出し笑いのように微かな笑い声を上げる下川。
「そや――久瀬、他に連中が採りそうな方策はないか? 今は上機嫌やさかい、
どんな突拍子もない話でも聞いてやるで? 信じるかどうかは別やけどな」
「他の方策――ですか?」
突然の下川の言葉に、一瞬戸惑う久瀬。
(どういうつもりだ? 余興……か?)
にやにやと笑いながらグラスを傾ける下川を見つめながら、どう答えるべきか少し思案してしまう。
(余興だな……なら、下手に真面目な話をしてもしらけられるだけか。だったら……
ロディマスが考えそうな方策のうちで、もっとも荒唐無稽な奴を話しておくか)
「そうですね……結局のところ彼らの『手詰まり』とは、我々を攻撃する際に鍵の内部事情に
関与せざるを得ないという地政学的要因に起因しています。ならば、その地政学の面から
根本的に解決してしまえばいいでしょう」
「どうするんや? 大葉鍵嶺でも核で吹き飛ばして更地にするか?」
くっくっと含み笑いを漏らしつつ、グラスに口を付ける下川。
「いえ……逢魔ヶ辻を通らずに我々へと攻め込むルートを開発してしまいましょう」
下川に調子を合わせて、久瀬も含み笑いを浮かべつつ口を動かしていく。
「急速動員を待って、東部州北部・大リーフ湾岸へ乱入すればいいんです――
そう、査察休戦明けと同時に、東部方面へ大規模渡洋作戦を敢行するわけです」
――下川の笑みが、すぅっと消えていった。
お〜い、誰か旅団長以外の書き手の行方を知らんか?
1 名前:名無しさんだよもん投稿日:03/04/29 21:54 ID:FpkbP27Z
月姫参謀にも結局書くって言ってたのに放置されてるし、一体どうなってるんだ?
誰がスパネタを持ち込めと言ったw
れ、連休に入れば……
165 :
月姫参謀:03/05/01 21:22 ID:S/2kvK1g
忙しさに全然書いて居なかったので、マジで上手く纏められません(涙
短くて宜しければ、本日中にうpできるのですが………それで宜しいでしょうか?(汗
保守
167 :
名無しさんだよもん:03/05/04 14:52 ID:EsbCYmiP
浮上
3月31日 1517
ロイハイト地方小規模村落 歌月十夜師団野戦陣地
薄汚れた野戦服をだらしなく着込んだ貧相な小男が、受話器を耳に充てながらペコペコと頭を下げていた。
何とも覇気の乏しい男。
襟元の大尉の階級章もくすんで見えた。
「ええ、はい。判っております・・・・・・・・・事故に見せ掛けて・・・はい。仰る通り防空分隊には米製の新鋭
携帯SAMを渡しておりますので・・・・はい、お任せを・・・・・・」
顔にはびっしりと汗が浮かんでいる。
汚れきったハンカチでしきりに拭いているが、汗は一向に引く気配は無い。
「ええ、はい。とてもとても」
意味の通らない言葉をもごもごと連ねた時、唐突に叩きつける様な音と共に通信は切れた。
溜息と共に受話器を眺めた小男。
そしてゆっくりと視線を巡らす。
「こんな会話で良かったですか」
恐る恐る。
言葉の端々に恐怖を漂わせて、尋ねた男。
その視線の先には漆黒の防眩迷彩服に暗褐色のコートを着込んだ長身の男、ネロ・カオス。
銃を構えている訳では無い。
部下が傍に佇んでる訳でも無い。
だが、其処に立っているだけで威圧感を与えるだけの存在感が在った。
「構わん。大佐の足が地に着くまでの間誤魔化せればそれで良い」
抑揚の無い声。
「しっ、しかし防空分隊の兵は狂信的なまでの正嫡派ですから・・・」
「それは既に制圧した。問題は無い」
「はっ、はぁ・・・・・・」
こめかみの汗を拭こうとする男。
ハンカチを持つ手が震え、上手く拭き取れない。
脳裏に蘇るのはネロ・カオスがこの航空管制室に乱入した際の手際。
何かの冗談の様に吹き飛んだ防音扉。
ネロ・カオスの手が一閃する毎に、黒い何かが男の部下達を屠っていく。
抵抗はおろか逃げ出す事も出来ぬ早業。
撒き散らされる血と、かつて人を形成していたもの。
警備も含めて20名近くの人間が、音を上げる事無くほんの数分で骸をさらす羽目に成っていた。
それは正嫡派の宴席等でよく述べられる主流派に対する陰口、『人外の化物集団』を実証する、正に
悪夢的光景であった。
更に恐ろしいのは、そんな惨劇を演出したネロ・カオスの身には一滴も返り血が付いていないと云う事。
恐るべき殺戮の技巧。
それが何時、用済みと成った自分に降り掛かるのか。
強い恐怖と悪寒とを男は自覚していた。
生き残った部下の手前、士官としての意地から歯を食いしばり必死に耐えている。
だが同時に男が自覚していない事もあった。
男を含めて生き残った者、その全てが遠野正嫡派に属していないと云う事。
そして殺された男達が遠野正嫡派の主義に心酔していた事も。
「心配をするな。殺しはせん」
脅えきった男の内心に気付いたのか、ネロ・カオスが視線を外の駐機場に向けたまま興味なさげに告げる。
その意図、意味を痺れたように鈍った男の頭が理解する前に金切り声が上がっていた。
「嘘吐き!」と。
叫んだのは生き残った部下の一人。。
首から上が、まるで何かに噛み千切られたように無い女性の身体を抱きしめながらネロ・カオスを睨み
つけている女性だった。
空港の管制職員で在った事から同僚共々、無理矢理に少尉の階級を与えられ歌月十夜師団に連れられて
来ていたのだ。
「人殺しの化物の癖に!!」
女性はその経歴故に当然、軍人としての訓練など殆ど受けていない。
であるが故に、ネロ・カオスが作り出した凄惨な光景に精神が耐えかねたのであろう。
その瞳に正気の色は乏しかった。
殺される。
生き残っていた誰もがそう思った。
叫んだ女性も又、その僅かに残っていた理性で、己の最後を想像した。
だが、ネロ・カオスの反応はそんな予想に反したものであった。
「フム?」
鼻を鳴らし視線を外から女性へと移す。
「それで? 軍務を生業とする者が人殺しを忌避しても始まらんと思うがどうかね?」
からかう様な口調。
実際、その目元は面白がる様に歪んでいた。
「化物と云う表現が何を意図するかは推測でしかないが、そももそ一つ指摘すればだがね少尉、君の
属するこの歌月十夜師団師団長である遠野・四季、正確には遠野家の成り立ちを知っているのかね」
「なっ!?」
極めて冷静なネロ・カオスの指摘。
その時であった。
管制室無いに置かれていた通信機が鳴ったのは。
視線を通信機とネロ・カオスとの間に往来させた男。
対してネロ・カオスは黙って頷き、錯乱した女性をじっと見つめる。
「少しだけ口を噤むか、それとも使えぬようになるか好きな方を選べ」
使えぬ-その意味するものは一つ。
その事に気付くや故に慌てて両手で口元を塞いだ女性。
些か滑稽な仕草。
だが、今この場に居る者でそれを笑う者は居ない。
否、余裕が無いのだ。
ネロ・カオスが視線をゆっくりと生残った者達へとも振り向け、対して生残った者達は慌てて女性と
同じように口を塞ぎ頷いていたのだ。
そして全員の“了解”を確認すると、男へともう一度視線を合わせる。
その意味を男は誤解しなかった。
「わっ私だ、どっどうしたかね?」
男は、ばね仕掛けの人形の如き動作で受話器を取ると2、3語と言葉を交わす。
そして丁重な仕草で受話器を通信機に戻す。
見れば、その顔には何処かしら清清しさが浮かんでいた。
「レーダーが秋葉大佐の機体を確認したとの事です」
薄曇の空に響く重々しいローターブレード音。
黒色が濃い空に生まれた白い点、それは真白に染められたUH60-JA。
側面にはUNの文字が描かれていた。
それは、この臨時航空管制室が味わった尤も長い時間の終了を告げるものであると同時に、歌月十夜師団の
味わっている「longest day」が第2幕へと入る事を教えるものであった。
在る師団の長い一日、第2段終了です。
我ながら短いですね(汗
でもまぁ保守代わりと云う事で御寛容をば………
後、一回でケリ付けたいナー
174 :
不穏:03/05/05 17:33 ID:6aNeM57c
4月4日0027時 シェンムーズガーデン外郭防衛線
深夜だというのに、なにやら一帯が騒がしい。
月を遮り、取り囲むように連なる山岳が落とす地に闇の中に目を凝らして見れば、当番兵以外の者すらなにやら兵舎を飛び出して騒いでいる。
居並ぶもの達の幾人かが、手にした紙を振って騒いでいる。
彼ら、そしてその彼らを取り巻く者たちに共通するのは、興奮と動揺。そして幾ばくかの―――惧れ、だろうか。
あとは、ばらばらだ。
安堵の息を漏らすものがいる。
突然、それも押し付けられたものであっても、この先行きの見えない内戦に休戦という岐路となりうる事件をもたらされたことを喜ぶ兵がいる。
それでなくとも、彼らの、彼らの家族の頭上にある日突然第二の太陽が現れる日が遠のいたことに、感謝を隠し切れない一群がいる。
顔面を蒼白に、或いは真紅に変えて、怒号を放つものがいる。
突然、それも押し付けられた休戦、国家の威信そのものである弾道ミサイルと核兵器の処分、国際社会の下した裁定に怒り狂う兵がいる。
それでなくとも、下川政権の正統性と勝利を疑わぬ彼らにとり、占領軍のような国連軍を迎え、叛徒どもと同じテーブルに付くことなど到底許しがたいことだった。
シェンムーズガーデン防衛隊は、政治的にきわめて政権への忠誠心の高い部隊がその大半だ。
それだけに、却ってこの事態を迎えた衝撃が大きいのだろう。
下川政権は最初に停戦期間の設置とそのための協議を呼びかけていたにもかかわらず、国連は実質その呼びかけがなかったかのように―――すべての勢力が非協力的なものとして振舞った。
その傲慢な態度に対する多くの不快感と、数ヶ月は戦闘が落ち着くという少なからぬ解放感。
相反する感慨にさらされた兵は或いは持ち場の中で、或いは持ち場を離れてまで争論に浸り、各級指揮官もそれを統率する役割を果たせずむしろ議論の輪に身を投じる始末。
そして、唯一部隊として統制を保ち、またその性格上この混乱を取り締まるべき警察部隊はといえば、自然沈静を待っているのか打つべき手を見出せないのか、はたまた要塞内部を固めれば問題ないと考えているのか、積極的行動を何一つ起こしていない。
175 :
不穏:03/05/05 17:34 ID:6aNeM57c
いまや、シェンムーズガーデン防衛隊は心理的要因から軍組織としての姿を失いつつあった。
かって、高橋、水無月両人が姿を消した国防軍がそうであったように。
先日、青紫を失ったタソガレ師団残余がそうであったように―――
「天祐、って表現が適当かどうか分からないが……ありがたいことだな」
にこりともせず、にこりともできず、河島大佐がつぶやいた。
半地下化された連隊本部の一室、そこにすえつけられたテレビが垂れ流す映像も、どのチャンネルをまわしても今回の停戦命令に関するものだ。
テレビだけではない。葉鍵国だけでもない。
エロゲ新旧大陸のすべてのメディアが、昨晩夕刻からこの調子だ。
見捨てられたはずの大陸にもたらされた、国連という国際機関の介入、そしてその内容がもたらした衝撃は、ソレほどまでに大きい。
(天佑……か)
適当な表現が見当たらなかったから、適当に当てはめた言葉の的外れぶりに思わず苦笑を禁じえない。
天佑。そうだとするなら、誰にとっての天佑なのだろう。
束の間であれ、平和を手に入れた兵士だろうか。
NBC兵器と弾道弾の脅威から解放される市民だろうか。
そのどちらでもないだろう、と彼は思う。
いずれ時期が来れば終わる、それまでに何時破られるとも知れぬ、心臓を押しつぶすような緊張を伴うひと時の『平穏』を天の助けと呼べるのか。
核やBC兵器の使用が禁じられたといって、市民生活への攻撃が止むわけではなく、日々の生活への負荷が軽くなるわけでもない。それは天佑と呼ぶに相応しいのか。
いや、それよりもだ。
河島大佐の口元が、くっきりと、歪んだ、疲れ果てた笑みの形を作った。
耳に入るのはキャスターの空虚な言葉ではなく、室外から今も伝わる憎悪、激情という実をいっぱいに詰め込んだ生きた怒号。
176 :
不穏:03/05/05 17:35 ID:6aNeM57c
そうだ。もし、これが人の心の助けになるほど、天佑と呼ぶに相応しいほどの事柄であるなら。
なぜ兵たちは、たとえ押し付けられたものであっても、これまでの『天佑』に対する拒絶感を示すのだろう。
―――そして自分自身、どうしてこの『命令』に素直に喜びを覚えることができず、下川に対する嫌悪感と同様の思いを米国にむけることを禁じえないのだろう。
(つまらない感傷だ……)
ふるり、と頭を一振りして、湿りきった思考を中断する。
今は、現実的な問題に目を向けるべきだろう。
そう、目前に迫った問題に。訪れることが約束された好機に。
彼らが手を下すべき問題に、彼らの全能を集中するべきなのだ。
その好機をもたらしたことこそが、それだけが、この一連の忌まわしい国際情勢を天佑と呼ぶに相応しい―――
「……これで下川は必ず、シェンムーズガーデンの穴倉から出てくるはずだ。そこを狙うしかない」
天佑。
首都にもしばらく姿を見せず、牢固な城砦に篭ったあの独裁者が、無防備な姿をさらす『かもしれない』という期待。
いや、期待ではない。確信だ。
傍らで頷く七瀬彰の顔に、前と変わらぬ迷い、先にも増した緊張がにじむ。
唯一の光源であるテレビ画面が、ぼんやりと二人の顔を照らし出す。
おそらくは、数日後。同じキャスターが伝えるニュースは、いったいどのようなものになっているだろうか。
177 :
不穏:03/05/05 17:35 ID:6aNeM57c
「国連は、下川提案を完全に黙殺して、一方的に不可避の要求を突きつけた。
受託はしかたがないにしても、権威を手ひどく傷つけられた国家元帥としては、国民を納得させる為になんらかのアクションを示す必要がある……」
震える声で一時につぶやき、七瀬は声同様震えながらも、しかし迷いのない瞳を幼馴染の上官に向ける。
「……できるかどうかわからない。でも、やるしかないんだね」
「やるしかないさ、ここまできたなら。
退路は無いんだ。生きる為には、死の危険を冒さなきゃならない」
敢えて、河島は強がるようなことを言わなかった。
自分自身の言葉だ。この計画にはぬかりしかない。油断はないが、限られた手札しか持たない彼らにあるのは隙ばかり。
下川を殺したからといって、その先が平和に直結するとは限らない。万が一何もかもが上手く運び、高橋と原田の政権が葉のすべてを掌握しても、鍵や東葉との戦争が継続しないという保証はどこにもない。
成功の報酬と、そのために飛び込まなければならない危険とを推し量れば―――危険のほうが余りにも大きい。
だが、何もしなければ、確実な死だけが唯一の未来なのだ。
だから、まずは生き残らなくてはならない。
当たり前の結論だけが、当たり前のように二人の前に残る。
祖国を変えるにしても、平和を取り戻すために行動するのだとしても、今を生き延びなければ何の意味もない。
だからこそ―――敢えて死地に飛び込まなくてはならないのだ。欠片ほどの可能性を勝ち取るためにも。
「……中島大佐から、じきに連絡があるだろう。
国家元帥のスケジュール……それがわかりしだい、具体的な準備に取り掛かる……生きて、連中に会おうな」
<糸冬>
4月4日0200時(休戦発効まで30時間00分)
下葉領クマノフスク
「第19山岳狙撃兵連隊より報告。戦域メッシュ05219-31218にて敵性兵力と接触。
装甲部隊を伴う中隊規模。激しく攻撃を受く。現在応戦中。指示を請う」
「司令部偵察第21小隊より報告。戦域メッシュ05290-31300にて敵性兵力の南進を確認。
歩兵戦闘車を中核とした中隊規模。このまま監視を続行する」
「逢魔ヶ辻より通告。801旅団全部隊警戒配置に付く。第9軽戦車連隊との共同作戦支障なし」
逢魔ヶ辻南方約40キロ。大葉鍵嶺山麓にある小村クマノフスクには
第9SS装甲山岳師団“キズアト”司令部が置かれていた。逢魔ヶ辻からリアルリアルティ・ナ・オーヤ
へと到る亜幹線道路が通り、いくつかの大規模農道が分岐するこの村は、
ちょっとした交通結節点とも言える場所だった。実際、鉄道から離れている点を除けば、
司令部設置箇所としてはまずまずの地形と言える。
その村の郊外にある司令部専用装甲車の中で、下川によく似た、堂々とした体躯の師団長が
じっと地図を睨んでいた。中将の階級章を付けてはいるが、どちらかと言えば
佐官クラスの武闘派実戦指揮官といった面持ちの人物ではある。
「……ふん。敵はかなり練度の高い部隊と見て間違いないな」
見る者に凶悪な印象を与える笑みを浮かべながら、ニウェに代わり師団長として
着任したばかりの醍醐中将は戦況が書き込まれた地図を指で叩いた。
1キロ四方で方眼の入った戦域メッシュ地形図には、師団参謀達が情報を次々に表示している。
「そうですね――夜間、しかも無電封止を実施しているにもかかわらずこれほど
連携の取れた浸透突破が出来るなんて、かなりすごい部隊だと思います」
醍醐の向かいに陣取っている作戦参謀を務める女性将校が、地図をジッと見つめながら同意する。
参謀教育を終えたばかりという経歴に相応しく、まだ言葉の端々に固さと初々しさが残っている。
「ふん……『すごい部隊』か……」
彼女の口にした参謀らしからぬ言葉遣いを反芻しながら、醍醐は地図上の敵兵力展開状況に見入った。
「確かに、そのとおりではあるがな」
逢魔ヶ辻南方に叛乱軍装甲戦力が浸透の模様――この情報が醍醐の元に届けられたのは、
停戦勧告発表の約1時間前、4月3日1857時のことだった。
この時醍醐は、“キズアト”司令部を逢魔ヶ辻南郊へと移動させるべく準備中だったが
(当初案の司令部の逢魔ヶ辻市街進駐案は、政治的理由及び『勢力境界線に近すぎる』という
軍事的理由により修正されていた)、直ちにその作業を中止し敵迎撃に向けての態勢転換
及び情報収集を全部隊に命じていた。
もちろん、その後の停戦勧告発表のニュースは司令部も各部隊も承知していたが、
士気にはほとんど影響が出ていない――というより、現に敵の攻撃が迫っているときに
そんなものに気を回している余裕はなかった。ただ、
36時間後に強制的に停戦せざるを得ないと言う条件さえ認識していればいいだけだ。
さて、現在醍醐は、元々“キズアト”隷下にあった
第9軽戦車連隊
第19山岳狙撃兵連隊
第20山岳狙撃兵連隊
師団直轄山岳砲兵連隊
の各戦闘部隊の他に、近隣に配置に付いていた部隊の中で比較的まともな状態だった
親衛隊第56師団第239自動車化狙撃兵連隊
内務省警察軍第6国境警備旅団第3警備大隊
の総計で1個増強連隊規模の歩兵部隊の指揮権も握っている。
厳密に言えば指揮命令系統の違う親衛隊や警察軍を統一指揮できるなど破格の好条件なのだが、
これは前任者のニウェが積極攻勢に出るためにあれこれと根回しした結果の『置き土産』であった。
このうち第9軽戦車連隊は、『軽戦車』の名が付いているものの実質的には他の戦車連隊との
装備の差はない。この場合の『軽戦車』はPT-76水陸両用軽戦車装備部隊として発足したという
伝統を示す程度の意味しか持っていない
(列強各国の装甲部隊の一部が未だに『騎兵』の名に固執しているのと似ている)。
これは、他の『山岳狙撃兵』『山岳砲兵』も似たようなものだ。
こうして逢魔ヶ辻近辺で一番強力な下葉側部隊として正葉軍迎撃の任に当たることとなった
“キズアト”だが、現在の配置は以下のような状況になっている。
クマノフスク・師団司令部近辺
……第20山岳狙撃兵連隊、第239自動車化狙撃兵連隊、師団直轄山岳砲連隊
クマノフスク東方20キロ・国鉄北東縦貫線沿線
……第19山岳狙撃兵連隊
逢魔ヶ辻町内及び近辺
……第9軽戦車連隊、第3警備大隊
クマノフスク―逢魔ヶ辻間の距離を考えるなら、先遣隊としてすでに逢魔ヶ辻に入っている
第9軽戦車連隊と第37国境警備隊が、同町を防衛しながら今回の浸透攻撃に対処するのは難しい。
醍醐としては師団の中核たる戦車部隊を禁じ手にされた格好である。
もっとも、その点を醍醐はさほど心配していない。当初は貴重な装甲戦力を先遣させたことを
後悔していた。いや、戦力もそうだが、醍醐自身は嫌っているが優秀さは認めざるを得ない、
第9軽戦車連隊長のリサ・ヴィクセン大佐がいないのが痛かった。
だが――停戦勧告のニュースを聞いて以降はさほど気にならなくなっている。
「敵もこの点では混乱しているだろうが――とにかく30時間後には何があっても戦闘を
停止しなきゃならんのだ」
問わず語りといった風情で、醍醐は地図を見ながらその女性参謀相手に語り始めた。
「おそらくUNWICENC-Forceは敵地内での部隊移動も『戦闘行為』と見なすはずだ。
となれば、30時間後にこの敵部隊は、必ず叛徒勢力圏内に引き上げてなければならん」
「つまり――敵はある程度で切り上げてお家に帰るはず、ということですか?」
「……まぁ、そういうことだ」
一瞬何ともいえない表情になったが、醍醐はそれを押し殺して話を続ける。
「だからこいつらは、基本的には放置していて何ら問題はない。深く浸透すれば休戦発効までに
戻れなくなる。ここら辺で暴れたとしても、そう長くは留まれないから被害もたかが知れている。
適当にあしらっていれば何ら問題はないが――」
低く唸りながら、丸太のような腕を組んで不機嫌そうに鼻を鳴らす醍醐。
「それではあまりに消極的すぎる。できればこいつらを撃破――とまではいかんでも無力化させねば、
何のためのRR装甲軍なのだ?」
「で、でも……シェンムーズガーデンがそれを許すでしょうか?」
『狂犬醍醐』の二つ名にふさわしい凶暴な声を上げる上官に、その参謀はどもりながらも
反問してきた。ある意味、恐れを知らないともいえる。
「許すも何もあると思うか? ニウェ閣下も……いや、下川国家元帥閣下も、
奨励しこそすれ許さないはずがない。ここで有力な叛乱軍部隊を撃滅しておくことは、
あらゆる意味で有利に働くのだ。ただ……」
「ただ、何でしょうか?」
「今言った状況は、当然敵も承知している。これだけ見事な機動を示す部隊の指揮官が、
その程度のことに気づかないはずもない。だから、その彼をして」
この敵部隊が聖堂騎士大隊であり、指揮官が女性であると言うところまでは、醍醐も掴んでいなかった。
「いかにして我々の望む土俵に上がらざるを得ない状況を作り上げるか、それが肝要となる。
幸い……もとい、残念ながらあの女狐の部隊は手元にないが、奴抜きでも敵をはめる策を考えんとな」
「は、はい……」
「……人ごとではないぞ?」
凶暴な雰囲気はそのままに、醍醐は唇の端をつり上げた。どうやら、笑っているつもりらしい。
「君は作戦参謀なのだ。ならば、この敵を罠にかける策は君が考えねばならん」
「……え? え? えぇ?」
「何を狼狽えている。参謀教育課程を首席で終えたほどの君ならば、きっと出来るはずだ。
もう、情報は十分に集まった。1時間だけ時間をあげよう。その間に原案を作成するんだ
――期待しているぞ、伏見君」
口をパクパクとさせている伏見ゆかり中佐を眺めて、醍醐はますます唇をゆがめていった。
Routesキャラ登場でつか。
多分この世界のアメリカ大統領はアレックス・グロリアなんだろうけど、
いったいどんなキャラなんでつか?当方未プレイなもんでサパーリ。
そういや醍醐って対空砲火指揮とかしてたな。
ほしゅ
ほしゅー
保守
今日はお肌のメンテn
(千鶴&みつみ(共に三十路)に拉致されました、ここを押しても無駄です。)
整備兵 − 今日は定期のめんてなんす −
最近平和なのでほとんど使っていないものばかりです。
定期的にめんてなんすしないと使えなくなってしまうのです。
191 :
名無しさんだよもん:03/05/19 22:32 ID:o+4Ea8bA
.
4月4日0415時(休戦発効まで27時間45分)
クマノフスク東方20キロ・国鉄北東縦貫線シーバ信号所
「危険です師団長っ! お下がりくださいっ! ここは私が……」
「ええいっ! これしきの攻撃に狼狽えるなっ! こちらに構う暇があったらさっさと指揮を執れっ!」
まさに狂犬のごとく大声で喚き第19山岳狙撃連隊長を怒鳴りつけながら、
醍醐は銃弾が飛び交う戦場に身を晒していた。一見無謀そのものに見える行動だが
――醍醐なりに銃弾の発射位置などを推測して、狙撃されにくい地点を選んで移動している。
随行するゆかりをさりげなくその巨躯で隠しながら、さらなる蛮声を張り上げる醍醐。
「たかがゲリラごときにおたつくなっ! 退くなっ! その身で攻勢を跳ね返せっ!
ここでRR装甲軍の名誉を貶める行動を取る奴は、この醍醐が射殺するっ!」
醍醐師団長が麾下部隊のうち最も激しい戦闘を展開している第19山岳狙撃兵連隊を
『視察する』と称して司令部専用ヘリで移動してきたのは、15分ほど前の午前4時過ぎのことである。
クマノフスクから最も近い鉄道路線である国鉄北東縦貫線
(もっとも戦場に近すぎるためこの近辺では物資輸送は行われていない)近辺に展開していた
第19山岳狙撃兵連隊は、今回の聖堂騎士大隊の攻勢においてもっとも強い圧力を受けていた。
鉄道路線という分かり易い目標付近に展開していたこと、
大規模な浸透行動に適した地形がその近辺くらいだったことがその原因であるが、
それでも19連隊はよくその圧力に耐えていた。
ちなみに19連隊は“山岳狙撃兵”とは名乗っているが実際は他の機械化歩兵部隊と
同等の装備・編成となっている。戦車こそT-72が若干あるくらいだが、
歩兵戦闘車はBMP-2とBMP-3が配備されており、兵の士気もニウェが猛訓練を課していたため
かなり高い状態に保たれていた。とはいえ、聖堂騎士大隊とて士気の高さでは負けていないし、
装備の面ではむしろ19連隊の方がやや不利とも言える。そのためシーバ信号所付近での戦闘は、
どちらが優勢とも付かない様相を呈していた。
確かに、醍醐自らが乗り込んでくるだけの理由はあったのだ。
森の中で白煙が上がり、次の瞬間対戦車ミサイル――重MATが飛び出してきた。
おそらく89式装甲戦闘車が潜んでいるのだろう。直ちにT-72やBMP-3が付近へ攻撃を加えるが
――見る限り撃破した様子はない。一方の対戦車ミサイルは遮蔽物に身を隠しきれていなかった
BMP-2に命中し、見事それを粉砕してのけた。
その様子を双眼鏡で眺めつつ、ふんと鼻を鳴らす醍醐。
「やはり敵の装備も練度も高いか。となるとTYPE-MOONの連中と見て間違いないな」
「そ、そうなんですか……ひうっ!」
すぐ脇のBMP-3に銃弾がいくつか着弾し甲高い音を立てる。その音に身を竦ませながらも、
ゆかりは気丈に問い返した。
「そうだ。ロディマスの叛徒どもでこれだけの装備、練度、そして士気も兼ね揃えているのは、
旧国防軍系部隊ではなく旧月姫ゲリラ系の部隊の方だ」
ゆかりとは違って悠然と構え、肝の据わったところを余すところ無く見せつける醍醐。
にやりと唇の端を歪め、ゆかりに説明を続けていく。
「VN旅団は装備も士気も高いが、練度が今一歩のところで劣っている。
2・14事件からロディマス不法占拠までの間地下潜伏を余儀なくされ、
部隊としての統一指揮や練度維持が出来ない状態にあったからな。
これは奴らの能力云々以前の環境の問題だ」
VN旅団によるロディマス制圧戦を分析した下葉軍参謀本部は、
VN旅団を構成する旧国防軍部隊の練度をそのように評価していた。
“タソガレ”師団を完全に奇襲するという圧倒的な戦術的優位を確保していたにも関わらず、
重要拠点制圧の過程でかなりもたついたことからの推論だった。
「そ……そう言えば、先の空き地の町戦役も実際に叛乱軍の先鋒に立ったのはTYPE-MOONでしたね」
まだ青い顔色のまま、それでも答えるゆかり。
「そうだ。もちろん他の要因もあるだろうが、叛徒どもはTYPE-MOONの練度の高い兵力に
頼らざるを得ない状況なのだ……今のうちはな」
凶悪な視線を戦場全体へとやりながら、醍醐は話を続けた。
この新任参謀を横にしていると、普段以上に舌が回るのを止めることが出来ない。
「伏見君、これが、ロディマスの叛徒どもがTYPE-MOONと同盟を組んでいる真の理由だ。
旧国防軍部隊だけでは我々に対抗することに不安を覚えざるを得ないと言うところだな、うむ」
「で、でも……いずれ旧国防軍系部隊も練度を上げてくるんでしょうし、
それはそう遠くない将来の話だと思います。だから、いつまでもそうとは……」
「そうだ、そのとおりだ。だからこそ、今の時点でその『お家の事情』につけ込めば、
君の作戦が図に当たる確率も上がるというわけだよ」
そこまで言うと、醍醐をその巨躯を揺らして豪快に笑い始めた。
その獰猛な笑顔に燃えさかる装甲車の炎を反射させ、ゆかりの肩をバンバンと叩く。
「さぁ、君のお望みどおり、ここまでやってきて“キズアト”師団長がこの醍醐である
ということを敵に晒したぞ。今頃連中、望遠カメラで捉えた映像を上へと報告している最中だ。
では、作戦を次のステップに進めようではないか、伏見作戦参謀?」
ゆかりが原案を描き、醍醐が修正を加えた作戦案がこうして動き始めていた。
196 :
名無しさんだよもん:03/05/22 14:05 ID:f8jFMkNJ
ホシュ
もはやここまでかな。
残念だけど、書き手は旅団長以外全員抜けちゃったみたいだし。
忙しいとか理由にしてても、もう顔も出さないもんなぁ……
アク禁規制なんてとっくに解けてるのに戻ってこない人もいるし。
あるリレー小説ファンの朝。
「今週はとんでもない事件ばかり起こった週だったな…」
そういって家の中を歩いていた彼は、家具にぶつかりインテリアの壷をおとしてしまう。
するとその中から煙が溢れ出て、そこに一つの人影が現れた。
「わたしはこの壷に宿っておりました妖精でございます。
出してくれましたお礼にあなたの望みを一つかなえてしんぜましょう。」
そこで彼は、今日のテレビで見た事件を思い出しこう答えた。
「今、紛争状態にある中東に平和をもたらしてください」
ランプの精は戸惑いつつこう答えた。
「あの… あそこの地域は宗教やらなにやら複雑な問題が山積しておりまして…
ほら、聖戦とかいって戦争や殺人を否定してないでしょ?
そういった背景があるので、その願い事はちょっと… 」
といって、他の願い事をするよう促した。
そこでリレー小説ファンの男は考え直し、次の願い事を述べた。
「葉鍵大戦記に新作を投稿してください」
壷の精はニュースを放送しているテレビを見つつ考えこんだ。そしてこう答えた。
「中東の平和の可能性を探ってみましょう」
こっちとしては、例え既存の書き手が全員逃亡しているとしても、
誰かひとりでも新規に書き手が入るならまだまだ継続できると考えているが。
元々多量に作品が上がるようなリレーでもないし、1〜2週間に1作品程度なら維持は出来るだろう。
ただまあ、あと1ヶ月も書き手に関してこのままの状況が続くようだったら、
企画打ち切りを決断した方がいいかも知れない。
200 :
鮫牙:03/05/24 22:02 ID:6RlSOgnJ
むう
27日から5日の作品投稿数 大戦記 →4
6日から11日の作品投稿数 大戦記 →0
12日から18日の作品投稿数 大戦記 →0
最近はこんなんらしい
つーか旅団長痛い。
管理人が露骨に一勢力に肩入れしてるってのはどうよ?
強引に軍事顧問を追い出したり狗法使いを瞬殺したりしても
遠慮して誰もろくに文句も言わない。
こんなことじゃやる気も失せるって。
AF書き氏はファンタに戻っちゃったみたいだし。
シモカワグラード4月3日12:00時
シモカワグラード、人口200万の下葉北部最大の都市にして北に正葉、南に東葉が位置する
重要拠点である。
この都市は葉鍵国で最も冬が美しい町と呼ばれている。歴史を感じさせる都市の建造物に降り
注ぐパウダースノーその光景はまるで、御伽噺の中の王都のように人の視界に移る。
城塞都市の城壁の一角そこに、ルミラはまるで姫君のように、銀髪を靡かせ町並みを眺めてい
た。眼前には慌しく動く、兵士と避難する市民の列が見える。
古い砦の銃眼には近代的な機銃が添えられ、町には騎馬の変わりにBMP3やT72AGが蠢
いている。
私達は何時になったら人々に安息を与えることが出来るのだろう。
貴族の血筋の美女は悲しくため息をついた。
私達は誰もが虐げられることなく、子供が道で飢えて死ぬ事のない国を作りたかった。
だけど、私達はあとどれぐらい殺せば、どれぐらい殺せれればその夢を叶える事が出来るのだ
ろう。
――――私は、私の夢を裏切らない―――
そう、私達は夢を諦めるには殺しすぎた。
シモカワグラード軍司令官それがルミラに与えられた役職であった。親衛隊第一軍と第三軍、
シモカワグラード防衛隊を合わせたその軍は総兵力で9万にもなりおおよそ彼女は下葉の国軍
の3分の1の指揮権を持つことになった。
シモカワグラード軍 総兵力8万9千 総司令官ルミラ=ディ=デュラル陸軍大将
シモカワグラード防衛隊 総兵力5千
RR装甲軍第15機械化歩兵連隊(配置済み)
RR装甲軍第64機械化歩兵連隊(配置済み)
親衛隊第一軍 総兵力3万2千
親衛隊第1装甲師団(移動中)
親衛隊第3装甲師団(移動中)
親衛隊第4装甲擲弾兵師団(移動中)
親衛隊第三軍 総兵力5万2千 司令官インカラRR中将 参謀長ササンテRR中将
親衛隊第56狙撃兵師団(配置済み)
親衛隊第32狙撃兵師団(配置済み)
親衛隊第28狙撃兵師団(配置済み)
親衛隊第13装甲師団 (配置済み)
親衛隊第15狙撃兵旅団(配置済み)
親衛隊第22砲兵旅団 (配置済み)
北部方面軍とでも呼べる程の大兵力であった。数の上では東部方面軍ですら上回っている。
――あくまでも数の上である。このうち第三軍は数の上では最大であるが、兵質指揮能力
共に最低レベルでとてもではないが、正葉の機械化部隊の猛攻に耐えれるものではない。
その中でも、まともに使えそうな部隊は逢魔ヶ辻に派遣していた。
彼女が戦力として期待しているのは、子飼いの第1軍、そして防衛隊であった。
つまりは、シモカワグラ―ド軍は総兵力の半数にも満たない4万弱が実質的な戦力であった。
シモカワグラード4月4日02:40時
「第1軍はあとどれぐらいで到着するの?」
「軍用列車と、輸送機をフルに使っていますが、あと最低8時間は掛かります」
「という事は、当面は実質2個連隊で戦線を支えないといけない訳ね。第三軍も案山子程度
の役割は果たすでしょう。停戦前には空き地の町を陥落させるわよ」
「はい」
幕僚達との会議の席にルミラの副官が息を荒げて飛び込んで来る。
「大変ですールミラ様」「逢魔ヶ辻が正葉の攻撃を受けてます!」
その報告に彼女は苦笑いを浮かべながら呟いた
「成る程そう来ましたか。高橋上級大将」
206 :
鮫騎馬:03/05/25 23:40 ID:4BaHt0G6
シモカワグラード軍登校しますた
207 :
鮫牙:03/05/25 23:46 ID:4BaHt0G6
↑ぐは鮫騎馬ってなんだー(死)
まんこ
>>203-205 ご苦労様。
>>202 自分は特定勢力『だけ』が有利になるような展開はやっていないが?
確かに下葉有利、鍵不利の傾向は認めるが、それでも逆転の余地が残る書き方はしている。
それに、正葉や東葉、空き地の町は有利にも不利にも転がせるようにやっている。
軍事顧問追い出しで主導的役割を担ったのは確かに事実だが、
少なくとも自分一人の独断では突っ走ってはいない。
狗法使いについては、瞬殺は置くにしても展開はああするしかなかった面がある。
希望するなら詳細を説明するが。
それにそもそも、書き手の離散が問題になったのは軍事顧問追放よりもしばらく後、
自分が国連安保理決議の回を書いた後からだから、
自分を非難するならば、上記2点ではなくむしろこの点ではないか?
いや、別に戻ったとかそーゆー訳では……(笑
ところで旅団長、正統政府に言及してないのは意図的なのか?
当方130〜140あたりの展開があまりに露骨で萎えた口なんだが。
>>211 そのレスで指定してる範囲の前半は、旅団長が書いたものじゃないんじゃ?
露骨とか何とかワケわからんよ。
>>211 すまんが、言ってることが全く意味不明なんだが?
仮に
>>137-141のことを言っているにしても、
前段の『正統政府に言及してない』と論理的に繋がらないので、
文章として何が言いたいのか類推できない。
どの部分の、どの表現(もしくはどの展開)が、
どのように露骨で、その結果どのように萎えたのか、わかりやすく説明してくれ。
214 :
名無しさんだよもん:03/05/27 03:32 ID:E2AAY8Rh
なんつーか、このギスギスした雰囲気が末期的やね。
ん、ここ数日頑張ってる人がいるみたいね
216 :
211:03/05/27 23:01 ID:kXGjZkVa
>>自分は特定勢力『だけ』が有利になるような展開はやっていないが?
>>確かに下葉有利、鍵不利の傾向は認めるが、それでも逆転の余地が残る書き方はしている。
>>それに、正葉や東葉、空き地の町は有利にも不利にも転がせるようにやっている
旅団長が必死に生き残らせようとしてる正統政府について何も言ってないのが気になったんだがね。
でもいくら正統政府を生き残らせたいにしたって137〜140は強引だったんじゃないかい?
リレー小説は結果よりも過程を楽しむもののはずなのに、旅団長は結果のために書かれるべき過程をはしょる傾向があるような気がするぞ。
安保理決議だけじゃなく狗法使いにしたって、そこに至る過程をきちんと書いてさえいれば何も言われないと思うよ。
その過程すっ飛ばしていきなり瀕死の重症で転がってちゃあ、それこそ( ゚д゚)ポカーンってやつだろ。
217 :
鮫牙:03/05/27 23:35 ID:IwxnUKO6
ええと、そう言った議論は、後方支援連隊でやって頂きたいです(汗)
一人で全部しょいこまなきゃいけないのかとか、その時点で
下葉に従属し外交権を(表面上)喪失している正統政府を取り
上げなければ可笑しい展開なのかとか、いろいろあるんですが。
鮫牙氏のおっしゃるように、その種の議論は支援連隊でやっ
ていただけると……
内容じゃなくて書き手の素質批判になってますよ。
こちらも後方支援板でやる分はかまわないが、211が同意しないとどうにもならないので、
先方が同意するまではこちらでやらせていただきたい。
>正統政府について何も言ってない
『下葉有利、鍵不利』の言葉で包括的に示されている。
ちなみに、上記引用文で自分が言及していないAF、WINTERS、ネクストン、アリス、F&C、
メビウス・プルトップ、北方・南方両総督府、安保理常任理事国も
そちら的には「言及してないのには裏がある」と考えるのかな?
>でもいくら正統政府を生き残らせたいにしたって137〜140は強引
そう言うふうにしか読みとれなかったのなら、それはそうとしか書けなかった当方の力不足だ。
しかしあの話の意図するところは、
・不利になりすぎた鍵の状況を強制的に現状維持させる
・なし崩し的に査察がうやむやになるのを防ぐ
の2点が主眼であって、正統政府云々はまったく副次的な結果に過ぎない。
>リレー小説は結果よりも過程を楽しむもの
その『過程』を重視するあまりに話が細目に陥りすぎ、煮詰まりすぎて訳がわからなくなると
以前にも批判が上がっていたが?
過程重視も結構だが適宜過程を端折って展開を進めないと、結局『リレー』にはならない。
話が転がらないと、そもそも『過程を楽しむ』ことすらできない。
ああ、端折り方の手法について云々なら、こちらも反省すべき点はあるかも知れない。だが……
>その過程すっ飛ばしていきなり瀕死の重症で転がってちゃあ、それこそ( ゚д゚)ポカーンってやつだろ。
で、その過程を詳しく書き、Airシティ攻防戦の時に激しく批判を浴びたような、
コテハン主軸の話に持っていけ、と?
コテハン登場人物はあくまで刺身のつまでなければならんというのが、Airシティ編での教訓だ。
その意味で、つまの限度を超えそうな狗法使いは『邪魔』でしかなかった。
だからこそ、手早く話を片づける必要を感じた。
ちなみに自分はどうなのだという反論が来そうなのであらかじめ言って置くが、
前スレからの推移を読めばわかるとおり、逢魔ヶ辻政権の主軸はあくまでみきぽんとして描いており、
『旅団長』はあくまでみきぽんに従属し引きずられるだけの存在として描いていない。少なくとも自分は。
逢魔ヶ辻政権の話自体もみきぽん、茂美、なつきの3名で話を進めているし、
『旅団長』も
>>90以降は直接登場させないで話を書いている。
以上が当方の意見だが、何か反論は?
なお、以後の話を後方支援板
http://cgi29.plala.or.jp/brigade/bbs2/index.cgi で行う意志はありや?
>>220 ×→存在として描いていない
○←存在としてしか描いていない
そもそもコテハンなんて出さなけりゃこんなことには(略)
ていうか作中に作者の分身が存在する時点で荒れるに決ま(略)
↓次から何事も無か(略)
(略)
唐突に旅団長が戦死しているというオチはどうだ?
他の話と矛盾が生じないんだったら、別にそれでもいいんじゃないの?
>>225 旅団長、もちつけ。
議論にもならん煽りの相手まで引き受けてどうするよ?
いや、こっちは本気でそう思っているのだが?
この場合、
>>224が煽りかどうかは自分にとっては関係ない。
自分の目的は特定のキャラを生き残らせることではなく、
可能な範囲でこちらの想定した線に沿ってストーリーを展開させることにある。
いままで展開させるのに使っていたキャラを殺された場合は確かに予定は狂うが、
だからといってこちらの思惑が達成されない訳じゃない。
まだ使えるキャラはたくさん居るから、そちらに乗り換えて話を進めるまでのことだ。
現段階で自分から始末をつける必要は感じないが、
他の書き手がそうする必要を感じてそういうストーリーを書き、その話に矛盾がないなら
こちらが反対する理由などまるでないし、その意志は尊重しなければなるまい。
まあ、そんなに簡単に殺せるのはコテハンキャラだけだろうし、
それをいきなり矛盾無く書けるかどうかは全くの別問題だが。
追記
実のところ、『旅団長』を戦争が終わるまで生き残らせるつもりなど
自分の想定した筋書きでは元々なかったわけだが。
だから、唐突に死ぬ展開になってもその筋書きを前倒しすればいいだけのことだし。
同意
シモカワグラード4月4日08:00時
何百台という車両の列が、このシモカワグラードの大通りに長蛇の列をなしている。
片側三車線の道路の二車線を埋めるそれらは、このシモカワグラードから疎開しようという人々の群れだ。
取るものも取りあえず、わずかでも早く。
気の焦りとは裏腹に少しも前に進まない状況にいらだち、クラクションと怒号が戦場音楽のように非友好的な楽曲を奏でていた。
停戦前に大規模な正葉の攻勢がある、そんな流言が流れていた。
ありえない話だ、とルミラは思う。
彼らには攻勢に出るような余力はないし、みきぽんの独立宣言からは肝心要のエアカバーすら失ってしまった。
どうもトチ狂ったとしか思えない10万人軍隊建軍の噂も伝え聞くし、今ここでわざわざ七面鳥撃ちの的になるようなつもりはないはずだ。
だが、住民にとってみれば、そんな難しいことはわからない。不安心理は募っていることだろう。
その点に関しては疑問がない。つい先日、わずか数時間のこととはいえ、この地で激しい市街戦があったことは事実なのだから。
何気なく車窓から外へ向けていた視界に、交差点の角のパン屋に突っ込んで停止したBRDM2が過ぎった。
「あまり、準備は進んでいないようね?」
やや批判的な声は傍らの、革張りのシートを陥没させるようにして鎮座する肉の山―――インカラに向けられたもの。
その剣呑な様子に怯えたように、インカラはキセルを求めて軍服の懐をまさぐるその手を止めた。
噴出すというより迸るといったほうがよさそうな脂汗も見苦しく、彼は流れる景色と上官とを世話しなく見交わした。
「にゃ、にゃも……そんなこと仰られても、攻勢準備と高槻のゴロツキどもを掃討するのに手一杯で。
市街の復旧まで手が回らにゃあで……にゃぷっ、回らないのです」
高槻のゴロツキ、などすでに市街に残ってなどいない。だからこそ、警察師団も早々に兵を引き上げたのだ。
あまりに愚にもつかぬ弁解である。
もっとも、彼自身はどれだけ自分がつまらない弁明を行っているか、何故こちらを見据える上官の柳眉が険しさを増しているのか、さっぱり理解はできていないのだが。
下葉の要衝、古き街、冬の都、シモカワグラード。
独立後、権勢誇る国家元帥によって無粋な個人名を冠されるより遥かな昔より刻んできた、深く折り重なった時間が染み出すような落ち着いた佇まい。
市中心部に位置する古城を再生した司令部からは、見えないものがそこにある。
外周南部から大公園にかけて、転々と転がる戦闘車両の残骸。そして銃座として遮蔽物として利用され、降り注ぐ銃砲弾によってぐしゃぐしゃに陵辱された建築物。
つい一昨日、警察軍とシモカワグラード防衛隊が、この都市の支配権を巡って繰り広げた市街戦の残滓である。
首都方面から駆けつけた警察部隊は親衛隊の腰が引けた制止など気にも留めず、唐突に市内に突入し防衛隊の司令部を襲った。無論、高槻一派の身柄を求めてのことだ。
装備と練度において勝るが兵力において劣り、さらに自分たちが何故急襲されるのか想像もつかない防衛隊だったが、立ち直りは流石に早かった。
市街戦に熟達した警察部隊の攻撃を凌ぎ、半日後にササンテ少将が仲介に入るまで市中心部への突入を一兵たりとも許さなかったのだ。
戦闘停止の合意を見たときには、すでに高槻のシンパなどシモカワグラードに影も形もなかった。
そもそも一派と呼べるだけの勢力があったかどうか、それすらも定かではない。秘密警察は証拠があると主張しているが、その証拠は国家機密であるので開示できないという。
少なくとも防衛隊はまったくの冤罪だと憤っていたし、ルミラもまた警察の言い分には疑問を抱いていた。
即ち、防衛隊に高槻のシンパ勢力が存在したのは事実として、警察がしゃにむに攻撃を仕掛けたのはその後の主導権争いにおいて優位を確保しようとの意図ではないか、という疑問である。
比較的先入観の少ないルミラをして、それは一抹の真実を含むのではないかと勘繰らせるに十分な説得力を持つものだった。
それほどまでに、同じ独裁者に忠誠を誓う各軍組織間の相互不信は強いのだ。
もちろん、彼女は大人であるし、それ以前に良識的な優れた軍人であり政治家の素質を持つ人物でもあったので、おそらくは個人的な好悪から発するそのような猜疑を口に出すことなどなかったのだが。
「捜索はほどほどに打ち切っていいわ。秘密警察も入っているんでしょう?」
つまらない猜疑は口にはしない。だが、それでも内に抱く幾ばくかの嫌悪感は我知らず言葉に乗ってしまうものだ。
インカラが先ほどから脂ぎった体躯を小刻みに震わせているのは、何も空調の効いた車内に小さく開けた窓から外気が吹き込んだなどということではないだろう。
自身の無能(自覚はないが)に向けられた不快と、久瀬率いる内務省に向けられた不快。
この雷名とどろく恐るべき上官が、珍しく漏らす身内への反感を明確に感じ取っているからだ。
「そ、それはもちろんにゃも……ええと、確か責任者は高井鈴美とかいう警察中佐で……」
度外れた愚鈍さには定評のある彼ではあったが、恐怖心のなせる業か、今度ばかりは正しい反応を見せた。
これ以上のご機嫌を損ねぬよう、自身の得られた情報を可能な限り述べ立てる。
しかしその彼のくどくどしい説明の後半を、ルミラはまったく聞き流していることまでは理解が及ばなかった。
当然だろう、自身の無能さを弁えない彼にはわかろうはずもない理由だからだ。
秘密警察の監視対象には、装甲軍や親衛隊も入っている。
ならば、インカラの元に入ってくるような秘密警察の動向など、偽装の上に欺瞞を被された原型を留めぬ代物なのだ。
軽く手を上げ、ルミラは半ば以上聞き流していたインカラの言葉を遮った。
「とりあえずは、いいわ。すでに市内に入っていることさえわかれば」
眼差しが車中、天井へと引き戻され、体重を預けられたシートが豊かな弾力でルミラの背中を押し戻す。
ふるり、と小さく頭を左右に振ると、合わせて美しい白銀の御髪が小川のせせらぎのように震えた。
「部隊展開は当然だけど、ライフラインの復旧も急がせて。市民の動揺が収まらないわ」
もちろん、市民の動揺を抑えるのに最も重要なことは、空き地の街を陥としシモカワグラードの安全を確保することなのだけど。
これは口には出すことなく、彼女は軽く瞑目する。
第一軍の先遣隊は、すでに戦線に展開しを終えた。
列車や空輸で続々と到着しつつある主力も、十二時までにはいちおうの布陣を終える。
休戦発効は明日の今ごろ。時間差なく作戦を発動したところで、20時間ちょっとの攻勢で果たして空き地の町を取れるかどうか……
完全奪取はまず無理だろう。彼我の戦力差を考えても、市街戦というものはそうまで容易いものではない。
逢魔ヶ辻方面の戦局も流動的だ。正葉がここにかかわずらっている限り、空き地の町に正葉の増援が出現することはないだろうが……逆に、こちらがみきぽんへの増援を迫られることも十分ありうる。
上手くいって、市街の一部を占領できるというレベルだろうか。
最悪、市外周防衛線の封鎖ぐらいに留まるかもしれない。
おそらくは後者だろう。敵の力量は、トゥハート師団が身をもって示してくれたではないか―――
「……にゃも?」
肉塊が、奇妙な声を発してごそごそと蠢いた。
「?」
それに釣られたわけではなかったが、ルミラもまた眼を見開き上体を起こす。
耳障りに鼓膜を打つのは、聞きなれたヘリのローター音。
それも一機や二機ではない。まるで天を覆った蝗の羽音のよう。
しばらく耳を澄ませ、やがてはっきりと理解して、ルミラの口元に笑みが浮かんだ。
そう、これは贈り物。
敬愛する指導者から、彼の愛娘に対するとびきり素敵な贈り物。
「『シモカワ・シェンムー』の空中突撃連隊……ようやく、貸し与える決心が付いたのね。
ありがとうございます、国家元帥。この御礼は戦場の戦果でお返しします―――」
<糸冬>
ぐは、ごめんなさい(汗
ってわけで『空からの使者』投完です。
まー、リアルに考えれば、この時期に新に増援なんて注ぎ込まれても対応してる時間がないんでしょうがw
流れ的におかしいとこなど、ご指摘ありましたらよろしくお願いします。
4月4日0610時(休戦発効まで25時間50分)
ロディマス
「間違いないのですね? 確かに、“キズアト”師団長はあの醍醐中将なんですね?」
「ええ、その点は間違いありません。聖堂騎士大隊からの直接報告も、電送された写真も、
指し示す事実はただ一つです」
奈須の念押しの言葉に、琥珀は淀みなく応えた。
「そうですか……」
そう言ったきり、奈須は戦況図に視線を落とす。
聖堂騎士大隊とVN旅団第2連隊による、逢魔ヶ辻南方への浸透攻撃――本来ならこれは、
下葉軍のこれ以上の逢魔ヶ辻入城を阻止し、ものみの丘から討伐軍を『結果的に』
側面援護するはずの計画だった。
しかし、国連の停戦勧告によって全てがご破算となってしまった。たった36時間では何をするにも短すぎる。
だいたい、この短時間ではものみの丘は実質的に何も出来ない。
ものみの丘からの討伐が不可能な以上、彼女らの攻撃も無意味なものとなったのだ。
それなのに何故攻撃が継続されているかと言えば、一度動き出した攻撃命令を取りやめることの
官僚機構的な困難さもあるのだが、『休戦直前にある程度の戦果を挙げておくのは無駄ではないだろう』
という正葉首脳陣の消極的な意志の為だった。
確かに空き地の町戦役以降、正葉軍は通常兵力で目立った戦果を挙げていない。
国内世論を思い通りに操るためにも、ここである程度の見栄えのいい戦果を挙げておくことは
無駄ではないとの考えに到ったのだ。
こうして作戦計画は『36時間以内でそこそこの戦果を挙げられる程度』のものへと急遽変更されたのだが
――その最中に飛び込んできたのが、シーバ信号所で陣頭指揮を執る醍醐の姿だった。
(どうしよう……)
悪鬼の表情で戦場をのし歩く醍醐の写真を見つつ、奈須は珍しく思い切った決断が出来ずにいた。
狂犬醍醐。戦場では羅刹のごとく振る舞う典型的な猛将。過去にもロディマス地方で
月姫ゲリラと度々戦火を交えた相手なので、奈須も彼の指揮ぶりはよく把握している。
よく言えば勇猛果敢――悪く言えば単純。もちろん戦術的には熟練の域に達している指揮官なのだが、
大局的思考に思慮深さを欠いている面は否定できない。事実、奈須たちはその点をついて
何度も醍醐を出し抜くことに成功してきた過去がある。要は、戦術パターンが読みやすい相手なのだ。
(醍醐ならば、いいようにあしらうことが出来る。師団撃滅……は無理にしても、
大損害を与えるのは決して不可能じゃない。ただ……)
そこまで考えてから、ちらっと壁の大時計に視線を走らす。現在、4月4日0612時。
(タイムリミットまで、現在26時間弱。ちょっと危険な賭け、か……)
休戦発効までに聖堂騎士大隊とVN第2連隊は、必ず正葉領まで引き上げていなければならない。
そうでなければ両者は敵中に孤立してしまい、戦力としては何の意味もなくなってしまう。
(全てがうまくいけば、26時間弱で全てを終わらせるのは不可能じゃない。
ただ、醍醐がそこまで上手く話に引っかかってくれるわけもないな)
醍醐を与しやすい相手とは思っているが、奈須は決して彼を見くびっているわけではなかった。
少なくとも戦場では勇猛な指揮ぶりを見せる指揮官なのだし、
戦場外ではともかく戦場では扱い辛い相手と認識している。
「――逢魔ヶ辻の状況は、どうなっていますか?」
「逢魔ヶ辻ですかぁ?」
書類をめくりながら、琥珀は首をかしげた。
「現在、1個戦車連隊を中核とする戦力が付近に展開しています。指揮官は不明ですが、
展開状況からするとかなり手練れの指揮官ですね。
あ、例の801旅団は彼らと共同作戦をとっているようですね」
「連中が南下する可能性は?」
「それはないと思います。廃空港に陣取っている光岡大尉の部隊が助功を開始していますから」
主に牽引榴弾砲を空港近辺に並べ、戦車連隊を牽制・拘束できる程度の砲撃を加えている。
本来ならもうちょっと大規模に助攻を仕掛けたいところだが
――国内世論やものみの丘の意向を考え合わせると、これでも限界以上の出血大サービスだった。
「それでVN第2連隊は? 相変わらず?」
「ええ……空き地の町南方、境界線を越境した付近で布陣したままです。こちらからは直接指揮できませんし」
信じがたいことだが、この作戦においては聖堂騎士大隊とVN旅団第2連隊を統括指揮する
前線指揮官が存在していなかった。
例えば聖堂騎士大隊が第2連隊と協調行動を取る場合、まず大隊から奈須へ『要請』内容を伝え、
それを奈須が高橋に伝達し、そして受諾した高橋がようやく第2連隊へ『命令』する――
こんな回りくどい頂上調整の手順を踏む必要があった。
もちろんこれには、急速に国軍の形を整えねばならなかった正葉独特の要因がある。
まだ『正統リーフ軍』という統一軍令系統がはっきりと確立されたわけではなく、
旧国防軍系部隊と旧月姫ゲリラ系部隊が事実上の軍閥を形成していたという点がまず第一。
攻撃を担当する聖堂騎士大隊の指揮官がシエル中佐であり、第2連隊の長瀬祐介大佐よりも階級が下で、
統一指揮官をシエルにすると命令系統で支障が生じる点がまず第二。
そしてTYPE-MOON発案の作戦で旧国防軍系の長瀬が指揮を執ることに、TYPE-MOON側が難色を示した点が第三。
他にもお役所的な細々した要因はあるが――とにかくこの作戦において、
聖堂騎士大隊と第2連隊との間で指揮命令系統は直結されていなかったのだ。
――非常に拙いタイミングだった、と言える。正葉側もこの事実上の軍閥化は問題としていたのだ。
これから始まる10万名超の大動員を効果的に行うためにも、これは解消しなければならない。
実際、官僚達は不眠不休で軍閥状態解消に邁進していた。それは急速に進展しており――
もし仮にこの攻撃が1ヶ月後に起こっていたとしたら、ここまで莫迦らしい事態にはなっていなかっただろう。
だが現実として、聖堂騎士大隊と第2連隊は有機的な連携を欠いたまま、攻撃に加わっていた。
「……まあそれはいいでしょう。醍醐中将が相手なら第2連隊よりも我々の方が適しています。
第2連隊には現有位置に留まり、聖堂騎士大隊のバックアップ任務に徹してもらった方がいいです」
奈須の言うとおりだった。連携の取れていない2つの部隊を1つの戦場に突っ込ませても、
いたずらに混乱を拡大させるだけだ。それならば聖堂騎士大隊だけで戦闘をした方がはるかに効果的だ。
「それで、醍醐のおじさんはどうしますか?」
「琥珀大佐の意見は? 個人的なもので構わない」
「チャンスだとは思いますねー。ただ、やっぱり時間が少ないのが気になります」
「やっぱり……」
「ただ、深入りしない程度でおじさんをからかうのは十分アリだと思いますけど」
「深入りしない……」
視線を戦況図に彷徨わせる奈須。シーバ信号所、クマノフスク、逢魔ヶ辻、廃空港、空き地の町……
(確かに、TYPE-MOONとしても『戦果』は欲しい)
切実に胸中で呟く奈須。
(急速動員が完了すれば、TYPE-MOONの発言力は相対的に低下する。政治力を確保するためにも、
この国で我々が惨めな末路をたどらないためにも、少しでも発言力は高い方がいい。
醍醐を翻弄する戦果を挙げれば……発言力低下は幾分か防げる)
10万名超の急速動員。これが完了すれば、TYPE-MOONが保有する戦力は相対的にそのパーセンテージを下げる。
もちろんこの動員計画において彼らの兵力は教導部隊として新生正葉軍の屋台骨となるのであるが
――それでも、現在のような高い発言力を維持するのは難しくなる。
発言力低下は仕方ない流れとして諦めるにしても、低下の幅は小さくしたい。
未だに何を考えているのか掴みきれない原田准将を牽制するためにも、
休戦発効間際に戦果を挙げておくのは決して悪いことではない。
(前任者のニウェなら侮れなかったが……醍醐なら、こっちがヘマをしなければ何とかなる。
深入りしないこと、退路を断たれないことに留意するなら……)
「下葉側に、これ以上の増援の動きは?」
「シモカワグラードに派遣中のS(潜入工作員)の報告をまとめました」
と、琥珀は第1軍の増援状況を推測したレポートを差し出した。それを見つめ、ほぅっとため息をつく奈須。
「大勢に影響はないようですね」
「ええ。もっとも上手くいった場合で、これらの3個師団が布陣するのは今日の昼頃。
それも、ただ『布陣する』だけです」
琥珀が言っているのは、つまりこういうことである。
部隊が後方から前線へと移動する場合、通常は兵員と装備を分けて輸送する。
その方が効率がいいからだが、当然ながらこのままでは戦闘できない。
ある地点まで移動したところで輸送状態を解除し、兵員と装備を一緒に組み直した上で、
戦術機動で前線へと移動しなければならない。
第1軍3個師団の『布陣完了』とは実はこの戦術機動へと遷移する段階を言っていたのだ。
列車や航空機から降りてから現に戦闘が行われている逢魔ヶ辻・空き地の町方面へ到着するまで、
少なくとも6時間、下手をすれば半日はかかる(現地の交通状況はお世辞にも良好とは言えない)。
だから布陣を完了したと言ってもそれが即戦闘可能を意味するわけではないのだ。
それと、3個師団約3万名という大兵力故の問題もあった。
これだけの大兵力ともなれば、1カ所で布陣完了というわけにもいかないのだ。
実際、布陣地域は国鉄北東縦貫線沿線を中心に数十キロ四方の範囲に広がっていた。
この地域にばらけた兵力を師団単位で再配置するのに、これまた時間がかかる。
こんな状態では、休戦発効時刻の5日0800時までに、
正葉側に戦略の修正を迫るような効果的な攻撃を加えられるはずもない。
「ただまあ、この増援のおかげで醍醐のおじさんを撃破した後に戦果拡大とはいかなくなりましたねぇ。
この3個師団、攻勢に加わることは出来なくても戦線の穴を埋めることは出来るでしょうし」
「そうね……」
額をも見ながら、奈須は同意した。
「ただまあ、聖堂騎士大隊と“キズアト”との対決には直接の影響はないことに変わりはない……
わかりました」
吹っ切るように肯くと、奈須は書類をバサッと放り出して琥珀に命じた。
「聖堂騎士大隊に命令。貴隊は可能な限り現地に留まり、醍醐中将が指揮する“キズアト”師団に
最大限の損害を与えるべし。ただし、VN旅団第2連隊による支援地域を決して踏み越えないこと。
そのためには、支援地域内に敵部隊を誘引すべし。
なお、逢魔ヶ辻の敵戦車連隊に迂回挟撃の動きがある場合は、どのような状態であれ作戦は中止する。
敵増援3個師団に予想外の動きが生じた場合も同様とする――琥珀大佐、この内容で命令してください」
「了解です」
「私は、これから高橋総帥に第2連隊が適切な支援を与えるよう『要請』してきます。
命令はそれと同時に発しますので、少し待っててください」
奈須達は、ふたつの点を見逃していた。
一つは“シモカワ・シェンムー”の動きを掴んでいなかったこと。
そしてもう一つは……醍醐が新しい参謀を得て、今までのパターンに当てはまらない戦術を
実行しようとしていたこと。
4月4日0917時(休戦発効まで22時間43分)
クマノフスク
「――以上が、敵の動きです」
ゆかりが疲労を顔色に浮かべつつも現状をおおざっぱにまとめた報告を終えると、
醍醐はそれこそ犬のようなうなり声をあげつつ戦況図を睨みつけた。
シーバ信号所での視察を終えて舞い戻り、朝食を摂ったばかりの猛将は全く疲労の色も見せずに
指揮を執り続けている。
「ふん……連中、思ったよりも慎重に動きよるわい。あくまでこいつらの」
と、空き地の町南方のあたりを拳骨で軽く叩く。
「ここに陣取っとる部隊、こいつらの支援の傘からでないつもりだな」
「もう少し、積極的にこちらを叩くと思っていたんですが……」
はぁっとため息をつきつつ、ゆかりは更に顔色を曇らせた。彼女としては、
『相手が醍醐だ』と知った敵が積極的に戦果を拡大して来るものと予測していたのだ。
「はっはっ! 何、これくらいのことを予測してこそ、真にいたぶり甲斐のある相手と言うものだ」
豪快に笑いつつ、ゆかりの肩をバンバン叩く醍醐。
「優れた指揮官なら、慎重に物事を運ぶものだからな。まぁ、この程度ならこちらの予測範囲内だ。
多少手直しをすれば作戦に支障はない」
そう言いつつ、改めて戦況図に目をやる。
「予想よりも浅い布陣になっているのは……連中、逢魔ヶ辻にいる雌ギツネに後背を取られることを
よほど恐れていると見えるな」
「では、ヴィクセン大佐にはどのように……」
「動くな、と伝えろ。ここで奴が下手に動けば、連中が強く警戒しすぎてしまう。
あくまで第9軽戦車連隊は逢魔ヶ辻防衛に専念すべし……それにまあ、切り札は奴らではない」
「警戒といえば……増援にきてくれる第1軍の方はどうしましょうか? この動きを知られるのも、
相手に警戒させてしまうかも……」
「ああ、こっちの方は……」
と、しばらく虚空を睨んでいた醍醐だが……
「特に手当はいるまい。こいつらが直接の脅威になり得ないことくらい、連中だって見通しているだろう。
特に隠蔽の処置は必要ない」
「了解です」
「奴らは最終局面の正面攻勢にいればいいだけだ。それに連中の指揮権はこちらにない」
このあたりの事情は、聖堂騎士大隊とVN第2連隊との関係に似ている。
ただ、シェンムーズガーデンでは、ルミラが持つ第1軍の指揮権を一時的に醍醐に委譲するよう、
ニウェが下川に直談判している最中だった。RR装甲軍と親衛隊との政治的駆け引きもあるから、
実現するかどうかは怪しいが――政治よりも軍事を優先するニウェらしい行動ではあった。
そんな醍醐以上の猛将だからこそ、“キズアト”が親衛隊1個連隊と警察軍1個大隊を
統一指揮できるという置きみやげを残すことが出来たのだ。
「それに、伏見君の計画がうまくいけば、真の切り札は増援ではなく……」
そこまで言って、唇をゆがめて笑う醍醐。
「まぁよい……それはともかく伏見君。今のうちに休んでおけよ。連中を本格的に追い込むのは、
日が暮れてからだ。夜になれば、とてもではないが寝ている暇はないぞ?」
「で、でも……」
「心配するなっ! 罠が連中を絡め取るまでは、この醍醐でも何とかなる。
伊達に月姫ゲリラ掃討戦を経験しているわけではないことをお見せしようっ!」
旅団長乙
しかしなつきスレと掛け持ちなのに多作ですな。
ほかの書き手は仕事が忙しくてあまり書けないみたいだけど、
旅団長はどんな仕事してるのか気になる。まさか業界(PAM!)
>245
革命k
247 :
名無しさんだよもん:03/06/05 09:31 ID:mxrH+RKU
248 :
名無しさんだよもん:03/06/08 05:53 ID:8FEc5YHa
http://v-v.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1054976751/ 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は飢餓が深刻化し、闇市で人肉の売買まで行われていると、香港の太陽報など中国圏のマスコミが、
脱北者報告書の話として3日報じた。
同マスコミは、5年前中国で結成されたとされる「朝鮮難民援助基金会議」の報告書を信用し、「通常、埋葬されて間もない遺体を掘り出したり、
子供を拉致して殺害し、人肉を販売している」とした。また、北朝鮮当局は「一罰百戒」として、人肉売買者らを公開処刑に処しているとした。
最近公開されたこの報告書には、約200人の脱北難民の証言が収録されていると、同マスコミは伝えた。
ある脱北者はこの報告書で、「北朝鮮では肉類が余りにも不足している上、高く、少数の特権層しか食べれない。
人々は闇市で人肉を販売していることをみな知っている。公の場で言わないだけだ」とした。
またこの脱北者は、「他の動物の脂肪は円形で固まるが、人間の脂肪はダイアモンドの形で固まる」とし、
「北朝鮮でもし今夜死体が埋められるとすれば、翌朝になる前に人肉として売り渡されるだろう」と話したと、
同マスコミは伝えた。
また、他の脱北者(54歳)は自分の孫2人が、ある日、商店街の付近で行方不明になったが、後で警察がその商店から孫たちの手と足を発見したと証言した。
商店街の店主は警察の調べに対し、「子供たちに食べ物をあげると言って誘引し、殺害した」と供述し、処刑されたと、この脱北者は伝えた。
北京=呂始東(シ・ドン)特派員
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2003/06/03/20030603000053.html 真実はいかに?韓国VS北朝鮮?
250 :
名無しさんだよもん:03/06/08 12:35 ID:knCpy7my
今、戦後やっと、日本人が「朝鮮人」「在日朝鮮人」の呪縛から解き放たれた。
泥棒する朝鮮人に対しても、普通に「泥棒・犯罪者・朝鮮人」と言えるようになった。
「朝鮮総連」は拉致の共同正犯であり、日本社会に巣食ったがん細胞・膿である。
犯罪の限りを尽くす、極悪極まりない朝鮮人の犯罪組織 「 朝鮮総連 」 と言えるようになった。
251 :
名無しさんだよもん:03/06/08 14:40 ID:knCpy7my
ほしゅ
ho
書き手いないなあ…
31氏最近見ないなあ…
狗威氏はどうしてるんだろうなあ…
255 :
名無しさんだよもん:03/06/21 01:07 ID:iitydPo8
hosyu
256 :
名無しさんだよもん:03/06/21 14:45 ID:gZw5DINw
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/ 東大. . ∧_∧ ´ー`) \\(´∀` ) n .∩ 三三(っ´・ ∀・`)っ
∧_∧ ( ´Д `)立教i ハ \ ( E).|| ∧_∧ ∧_∧
(丶`Д´) /慶応 \ ノ | 明治/ヽ ヽ_//. .| .| . (丶`д´) ヽ(゚Д゚ )ノ
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【社会】イベントサークル「スーパーフリー」集団レイプ事件 ★50
http://news2.2ch.net/test/read.cgi/liveplus/1056163963/
257 :
名無しさんだよもん:03/06/21 14:47 ID:gZw5DINw
258 :
ゆみっち:03/06/21 15:08 ID:F4GxTmpB
もうだめぽ…
260 :
N速+に再びスレが立ちますた:
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【スーパーフリー】早大生らによる集団レイプ総合スレ★4
http://news2.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1056267621/