葉鍵で大長編ドラえもんを製作しないか?Vol.4

このエントリーをはてなブックマークに追加
594名無しさんだよもん
595名無しさんだよもん:03/03/31 07:59 ID:L/gB6eN+
596名無しさんだよもん:03/03/31 09:43 ID:DWos6HA9
597第5回 うたわれ:03/03/31 18:56 ID:AnpUN53S
「ほりいけ」ってなんスか?(´Д`)
それさておき
>ドラえもんが電波で壊れる→(+д+)マズー
弱ッ!
>のび太が千鶴さんをオバサンと言って狩られる→((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
怖ッ!!

そんなこんなでスタート。
「こーら!起きた起きた!!」
鍋のようなものを叩いて騒音を立てながらソポクが起こしに来た。客人に対して遠慮がないのはのび太たちが子供だからである。
「ううーーん。」
まだ日が昇るか、昇らないか・・・本当に早い時間だった。
「ホラ!冷たい水で顔を洗って、シャキッとしてらっしゃい!!」
「はーい。」
眠すぎて二人はまだ上手く頭が働いていないようである。ソポクが指差した方向に行くと、テオロが井戸から水を汲んでいた。
「おはよう・・・ございます・・。」
「応ッ!今日もすがすがしいいい朝だなぁ!」
「・・・・そうっすね。」
ジャイアンが死にそうな声で挨拶する。
「・・・・・ぐう。」
「おい、立ったまま寝るなよ、ノビタ!!」
ガッッ!!のび太の頭に衝撃が走る。
「!!・・・あたたたたぁ・・・。」
衝撃の原因はテオロのチョップだった。
「悪りぃな、井戸に落っこちたら危ねえところだったからな!」
「そうだぞ、のび太、テオロさんに感謝しろよ。」
「・・・・・うう・・。」
頭を抱えながらのび太は涙を堪える。
「ジャイアン、そのテオロさんってのは他人行儀っぽくて嫌なモンだな。」
「じゃあ、なんて呼んだらいいんすか?」
「そうだなぁ・・・うぅーん。」
「『親ッさん』でいいんだよ、親ッさんで。」
突然ソポクが会話に割り込んできた。
「『親ッさん』・・・。」
「またかよ!カアちゃん・・・俺はまだ若いんだぞ・・・。」
「いいの!お前さんがそれ以外の呼ばれ方されると、あたしには帰って不自然に聞こえるよ。」
「あー?・・・親ッさん・・・。」
のび太は叩かれたショックからようやく意識を取り戻しつつあるようだった。
「いい?ノビタも、コレは親ッさん!」
「親ッさん・・・。」
「親ッさん、親ッさん、親ッさん、親ッさん・・・。」
ソポクはまるで鳥に言葉を覚えさせるようにのび太に繰り返した。その異様な光景にテオロとジャイアンはただ立ち尽くすのみだった・・。
『森の神さま(ヤーナゥン・カミ)いつも恵みをありがとうございます 大神(オンカミ)ウィツァルネミテアに感謝を』
「ええと・・感謝を。」
「いただきます。」
「いただきます。」
本日の朝食は・・・。モロロになんかの野菜の汁物と・・。
「・・・虫?」
バッタだろうか・・・?火で焙られたと思われるそれっぽい虫が盛られている・・・。
「残さず食べないと力入らないよ。」
テオロとソポクはそれが当然のようにパクパク食べている・・・。ここはそれほどまでに貧相な場所なのか?しかしここで「いらない」等と抜かしたらさっきのように殴られるだけじゃ済まされない。
「そんじゃ食ってみる・・・。」
のび太より先にジャイアンが食べてみる・・・。
「おーっ。なかなかイケるぞ!なんか新鮮な味わいだ。」
「そう?どれどれ・・・。・・・うん。なかなか美味しいかもしれない。」
ちょっと苦いが食べられないほどではない。
「そうだ!お前ェらにちょっとやるモンがあるんだ。」
「え?」
ちょっと待ってろ、とテオロはその場から出て行く。向かったのは蔵のほうらしい。
「これなんだけどよ、まあ今日からお前ェらは辺境の村のモンだ。男なら得物(ぶき)くらい持っておきたいからな。キママゥもお前ェらみたいな子供を特に狙ってくるって話だし。」
持ってきたのはいくつか釘が打ち込まれてるバットと・・・木で作られた筒らしきもの?
「この棍棒はジャイアン、お前ェにやるぜ。」
「お・おう・・・。」
いつも野球でバットを振り回してるジャイアンだが、釘が打ち込まれたそれはかなり凄みがあるように見え、少し動揺してしまった。
「昔、俺が遊んでたモンだが・・・身を守るにはなんとかなんだろ。」
「・・・身を守る・・てなんかこの辺にヤバイもんでもいんのか?」
「まあな。野性のケモノは凶暴だから気をつけろよ。それと、ジャイアンは狩りにも出るかもしれないからな。」
「狩り・・・か。」
ジャイアンはバットを持った後、何かに納得したように力強く頷いた。
・・・あれがもし普通のバットなら、「のび太!まずお前から試させろ!」なんか言って振り回してくるだろうな・・・。
「そんで、ノビタはコレだ。なんか聞く所によるとお前ェ、射撃が得意なんだって?」
「え?まあ射撃には自信があるけど・・?」
「ふうん・・・そうには見えねえけどなァ・・。」
「いいです。よく言われます。」
「まっ、とにかくノビタにはコレだ。」
30センチくらいの木で作られた筒。それと先に小さい丸い板が付いた棒。丸い板は筒にぴったりはまる。ひょっとして・・、
「水鉄砲?」
ジャイアンとスネ夫が竹筒で作ったやつを見たことがあったのび太はそう聞いて見た。あの時はのび太が的にされ散々な目にあったのだが。
「ちょっと違ェな。この石を空気圧で飛ばすモンだ。」
と、よく磨かれた丸いビー玉くらいの石をのび太に見せた。数は20あるかないか。
「こうして筒にはめてだな・・・、」
テオロは筒に石をギュギュっとはめた。
「こうやって押し出す・・・。」
テオロは銃口を窓の外に向けた。狙うは木の上で鳴いている鳥か?距離はざっと10メートルはある。
「よしゃッ!」

バァン!!

「うわっ・・・!びっくりしたぁ・・・。」
乾いた音が朝の山々に響き渡った。鳥の姿はない。どうやら打ち落とされたのではなく、音に驚いて逃げてったようだ。
「ったく、朝っぱらからそんな五月蝿いもの・・・ご近所さまに迷惑でしょ!」
ソポクは呆れたように言う。
「悪りぃ悪りぃ・・。まっそんなところだ!まともに当たったことねエから、今まで畑から鳥を追い返すモンということで使ってたが、最近は鳥の奴も賢くなったモンだから、これぐれェじゃあ逃げなくなっちまったんで捨てちまおうかと思ってたんだが。」
銃口からは煙が出ている・・・。
「まァ、脅かすくらいなら出来んだろ。」
「うん、やってみるよ。」
「まあ、後で練習でもするってこった。さあさ、早くメシ食わねえと。」
「よし!食い終わったら出んぞ!さっさと着替えた!」
巨大な斧を腰にぶら下げ、大きな鍬を担ぐとテオロは準備万端といった感じだった。
「・・・・あのう・・・、ぼくたちの服は?」
今現在のび太たちが着てる服は真っ白い浴衣である。
「ああ、アンタたちが着てた服ならボロボロになっちまったんで、捨てようと思ってたんだけど・・。」
ソポクの指さした方向にそのボロボロの服はあった。
「よくまあコレで生きてこれたもんだよ。しかもあれだけの傷で済んだなんて・・。運がいいんだか悪いんだか・・・。」
服をよく見ると、燃えたような跡やら、ザックリえぐられたような跡やらでひどかった。
T・Pのユニホームのバリアー機能が二人を軽症で済ませたのだろう。
「まあその代わりにコレ用意したよ。お古だけどまあいいよね。」
ソポクは風呂敷に包まれたものを持ってきた。その結び目をソポクが解くと綺麗にたたまれた服が出てきた。
「そっちがジャイアンかな?それでこっちがノビタに合うと思うけど。」
二つの違いはジャイアンがズボンとジャンパーみたいなもので、のび太のはソポクが着ている服に近い。近いと言うより・・・?
「ノビタのはあたしのお古なんだ。」
「えー?」
「しょうがないだろ?これしかアテがないんだし。」
「うーん。」
確かに贅沢は言えない。
(いいさ、もうどうなったって知るもんかい)
「ありがとう、ソポクさん。」
「・・・そのソポクさんってのはなんかやだね。」
「え?」
「そうねえ・・ソポク姉さんでいいんじゃない?」
「姉さん・・・。」
「姉さんだァ?いいんだよカアちゃんで!」
テオロが突っ込んでくる。さっき「親ッさん」って呼ばされるハメになったのを少し根に持っているようだった。
「何、言ってんだい!アンタは親父顔だから『親ッさん』だけど、なんであたしが『カアちゃん』になんのさ!?」
「いいじゃねェかよ!そっちの方がカアちゃんには似合ってるって!」
「何だってえ!!」
「・・・ううっ。」
ソポクに怒鳴られてテオロは怖気づく。のび太とジャイアンはこの迫力ある夫婦喧嘩に口を挟めない・・。
「いい!?ノビタ?あたしのことは『ソポク姉さん』!わかった?それ以外の呼び方で呼んだら承知しないからね!!」
凄みのある睨みでのび太は硬直する。
「ソポク姉さん・・・。」
「そう。ソポク姉さん、ソポク姉さん、ソポク姉さん、ソポク姉さん・・・・。」
再びソポクによるのび太への洗脳が始まった。
「オイ!ジャイアン!お前ェだけは『カアちゃん』って呼べよな!カアちゃんになんかされそうになったら俺が守ってやっから!」
「『カアちゃん』でいいのか?」
「そうだ。カアちゃん、カアちゃん、カアちゃん・・・。」
「それはもういいっつーの!」
ソポクによるのび太への洗脳はまだ続いていた・・・。

女モノの服を着たのび太とジャンパーらしいものを着たジャイアンはそれぞれの得物を持って外に出た。

この辺境の村が山々に囲まれているせいか、まだ薄暗い。しかし周りの家々からは炊事のために出る煙が昇っている。鳥たちの大群は今までのび太たちが聞いたこともない鳴声を上げながら空を旋回している・・・。

(とんでもない所だなあ・・・。)
と、そこへ。
「おはようございます!テオロさん・・・あっ!もうその子達良くなったんですか?」
長い髪の毛を後ろで束ね、輪投げの輪のようなものを髪飾りとして付けた、赤い着物を身にまとった可愛らしい少女がこちらに挨拶してきた。年はのび太たちよりも年上だろう・・。
「・・・・・・・。」
その少女には尻尾があった。その尻尾がぶんぶん揺れている・・。
(もはや尻尾のひとつやふたつ・・・。どうだっていいや、もう・・・。)
「応よ!オイっ、挨拶しとけよ、この子はエルルゥってんだけど、この子のバアちゃん・・・つまり村長がお前たちを助けるために、色々と苦労してんだぜ。ハクオロの後だったから薬草も残り少なかったからな。」
「そうなんだ・・・。本当にどうもありがとう、ぼくはノビタ。」
「おれはジャイアン。なんかおれたちが知らない間で苦労かけて悪かったです。」
「ふふっ、とにかくその様子だと元気になったみたいで良かったですね!私はエルルゥ、おばあちゃんが薬師をやってるのを手伝ってます。エルルゥさん、でいいです。」
本当に優しそうな人みたいだ。
と、そこへ・・・、
「ウウ・・・ッ・・・・。」
「うわっ!」
不気味な声を上げながら、見るからに怪しい仮面を顔につけた男がやって来る・・。
背はテオロと同じくらいで、青と黒と基調とした着物を着ている・・。
「あっ・・大丈夫ですかハクオロさん・・・。」
「ああ・・まだ傷が痛むようだ・・・。」
「大変だなぁ・・アン(兄)ちゃんもよ。」
「ああ・・・ところでこの子達は・・・?」
「えーっと・・昨日言ったっけか?アンちゃんが倒れてた場所の近くでアンちゃんと同じように倒れてた奴らだ。アンちゃんほど傷が深くねェから連れてきてるんだが・・・。
アンちゃんは知らないのか?コイツら、多分アンちゃんと似たようなところから来たと思うんだがなぁ・・・。」
「さぁ・・・私には・・・。」
「いいか、お前ェら。聞いた通りこの人は一昨昨日森で倒れてて、瀕死の状態だったんだ。エルルゥのとこで看病されてなんとか命は助かったんだが、
目覚めたらなんと記憶がねェってんだ。それで自分の名前すら覚えてねェから仮に『ハクオロ』って呼んでんだが・・・。お前ェら本当にこの人に見覚えねェか?」
のび太とジャイアンは慌てて首を横に振る。こんな怪しい人と関わった覚えなんぞ微塵もない。
「そうか・・・。まぁ、そのうちなんとかなんだろ!アンちゃん、コイツがノビタ、そっちがジャイアンだ。」
「ノビタです。」
「ジャイアンだ。」
「そうか・・・、私はハクオロ・・、よろしくな。」
やはり不気味である。
畑にやってきた。
広大な畑が当たり一面に広がっている。だが、ちゃんと畑として機能しているのはほんの一部だった。あとはよく見ると荒地ばかりである。
「ここはモロロの畑だ。なかなかどうも上手く実ってもらえねェんでチト困ってんだが・・・。」
「なるほど・・・。」
ハクオロは土を少し手に持ってつぶやいた。・・・どうやら何かわかったらしい。
「上手くやってみたら、この畑はちゃんと収穫できるようになると思います。」
「え?マジか、アンちゃん!?」
「ええ、ただ少し人手が必要となりますが。」
「その時はぼくたちも手伝いますよ。」
のび太が口を挟む。今までのことからして、この村の人たちの食料情勢があまりにも気の毒に
思えたからだ。
「おれもだ、ハクオロさん。みんなでたらふく食っても余るくらい作ろうぜ!」
「ダハハハ!!夢のように景気がいい話だな!!」
テオロが笑い飛ばす。腹いっぱい食べることが夢のような話・・・。・・・今までの自分たちの生活が思い出される・・。
「・・・そうだな。その時は頼むぞ、ノビタ・ジャイアン君。」
「はい!」

ひとまず、今日の彼ら、のび太、ジャイアン、ハクオロにとっての仕事とは村に慣れることであった。
ここにはこういう家族が住んでいる、とか。ここに蔵がある、だとか・・・。
この森の奥は危ないから行くなとか、特にこの森の入り口にあるほこらには手を触れるなとか・・・。

「そうだなあ・・・とりあえず働くのは明日からだな。んじゃ、お前ェらは得物の扱いに慣れておけよ。特にノビタは練習あるのみだからな!」
「うん!わかった」
「それじゃァ、俺はちょっと狩りにでも行ってくらぁ。じゃあな!」
「いってらっしゃーい!!」
「・・・ねえジャイアン。狩りってまさか朝出たバッタじゃあないよね?」
「バカ、んなわけねえだろ、あんなでっけえ斧持ってバッタ取りはねえっつうの!熊とか鹿とか・・・普通はなんかの動物を捕まえるんだろ。」
「だよねえ・・、でもさ、なんでそれをこの人たちはそれを食べないのかな?」
のび太は別に今までの貧相な食事に不満があるわけではない。ただ、気が付いたことを言ってみただけだ。
「さあな・・・近く村祭りでもあって、それに備えてるんじゃねえの?」
「そうかなぁ・・・?」

バァン!!

「ゼーェゼーェ・・。はぁはぁ・・・。」
のび太は射撃の特訓を始めた。狙うは20メートルくらい先にある木に吊るした大きな葉っぱである。あれを打ち抜こうと努力してるのだが・・・。
「ゼェゼェ・・・つかれた〜ぁ。」
何分威力が威力なもんで一発打つのに相当力が要るのだ。打つのに力めばその分狙いを定めるのが難しくなる。死ぬ気で打っては外れ、打っては外れ・・・。これにはかなり参った。
「のび太には力がねえんだよ、これからは体を鍛えていかねえと村のみんなについて行けねえぞ。」
ジャイアンはさっきからソポクに借りたナイフでバットの持つところを削っていた。自分に合うよう調整してるという。そのせいか本当に野球のバットのように見えてきた。
「そりゃ!えい!どおっ!」
野球のフルスイングの形で素振りを始めた。釘バットを振り回すジャイアンはいつも以上に楽しそうだった。
「ホラホラ、のび太もサボんなよ!どりゃ!」
「うぅーん、わかったよお・・・。」

バァン!!
「ヒー、ヒー、もうだめだぁ・・。」
ようやく最後の一発だけ葉っぱに命中させたのだが、すでに体力の限界だった。ジャイアンは川に魚がいるかどうか見に行った。大物がいそうなら釣り竿を作るらしい。
「はぁ〜。」

・・・休みは予習・復習・読書・スポーツ・規則正しい生活!!マンガ・テレビ・ゲーム・昼寝してる場合じゃないことは十分にわかっているわね!!・・・

そっちのほうがマシだったのかなぁ・・・。
のび太は柔らかい草の絨毯(じゅうたん)の上で大の字になって寝転がる。
目に映る空はどこまでも青く澄み渡り、周りは鳥の鳴声がどこからか聞こえてくるほど静かで、空気が綺麗な山の風・・・。本当にここはいいところである。
今度静香ちゃんでも連れてこようかな・・・。ここにいるのはいい人たちばかりだもんな・・・・・。きっと気に入るだろう・・・。

「zzzzz・・・・。」

すっかり疲れ果てていたそのままのび太は寝てしまった。
・。
・・・。
・・・・・・。
バァン!!
「!!」
のび太はその音に驚いて目が覚めた。この音は確かに自分の鉄砲のもの。なのに何故?
慌てて辺りを見渡すとそこには・・・。
「・・・・!!」
目にも留まらぬスピードで、慌ててそれは逃げていった。どうやら後姿から見るに女の子らしい。・・・そんなことより。
「あー!ぼくの鉄砲返してよう!!」
のび太は慌ててその子を追いかけることにした。

・・・早い。早すぎる・・・。いやぼくが遅すぎるんだろうけど・・・。

結局、見失ってしまった。

「あーあ。親ッさんになんて言えばいいんだろう?」
打った鉄砲の弾を拾いながら途方にくれていると、後ろから「おお、そこにいたのかね。」と女性の声で声をかけられた。振り返ると白髪の老婆と・・・
「あー!さっきぼくの鉄砲持ってった子ー!!」
のび太は指差して叫ぶと、その子はビクッと怖気づいて老婆の影に身を潜めた。
「やっぱり、これはテオロのとこにいる子のものかね。テオロがお前さんにやったんだろう?」
「はい、そうですけど。」
「まったく、何を考えてるんだか・・・、こんな子供の、しかも村の客人に得物を渡すなんて・・・。」
「はあ・・・。」
「そうだ、この際自己紹介しようかね。私はトゥスクル。一応ここの村長なんかをやっておるよ。」
「え?ってことはエルルゥさんのおばあちゃんで、ぼくたちを看病してくれた人?」
「ああ・・・。まあハクオロと比べればお前さんたちの傷はたいしたことなかったがね。」
「それでも色々と苦労かけたようで・・・、本当にありがとうございました。」
「なあに、子供が気にすることじゃないよ。ただ薬師として当たり前のことをしただけじゃからな。何もないとこだが、ゆっくりしてくとええ。」
「でも・・・ぼく達なんかがこの村にいたら、色々と大変なんじゃないんですか?」
のび太が言ってるのは無論この村の貧しさのことである。さっきから気になっていたのだ、この村のよそ者であるぼくらが、ただですら貧しいこの村にお世話になるのは、それだけでかなりの負担になるんじゃないか?と。
「遠慮せんでええって・・・。村として、客人をもてなすだけの貯えくらいはちゃんとある。」
・・・しかし、あの食事に、あの畑。自分に気を使わせないつもりで言ってる嘘にしか聞こえない・・・。
「それにテオロたちはお前さんたちを働かせようとしてるみたいだしねえ・・・。まあ。お前さんたちが働きたくないと言えば働なくてもええしな・・。」
「いえいえ、とんでもない。出来る限りがんばって働きます。いまいちダメかもしれないけど、みんながもっと幸せになれるように努力しますから!」
「そうかい・・・。なんかお前さんならそう言うと思ったよ。」
トゥスクルは微笑んで頷いた。
「そういうことならコレは返すべきだねえ・・。コラ、アルルゥ!」
「ん・・・。」
青い服を着てる物静かな女の子はアルルゥというらしい。この子もエルルゥと良く似た尻尾がある。
「エルルゥさんの妹さんですか?」
「ああ・・・。こう見えてもなにかと困るほど好奇心があって・・・。まあこの鉄砲のことは許してあげてくれんだろうかね?」
「ええ、いいですよ。」
嫌とはさすがに言えない。
「ホラ、アルルゥ。それをこの人に返しなさい。」
「・・・。ごめんなさい。」
アルルゥはそっと鉄砲をのび太に差し出した。
「どうしてこんな危ないもの打ったりしたの?」
「・・・・。楽しそうだったから。」
「・・・・楽しそう・・・か。」

・・・「ぼくも入れてよ」
・・・「なんで?」
・・・「えっと・・・楽しそうだから。」
・・・「あのね、のび太、お前に一体何が出来るんだ?このおれたちの研究に。」

それにしてもよく打てたもんだなと思う。意外とこの子は力があるのかもしれない。いや、もしかして自分は女の子より力がないのか?
「いいよ、またいつでも貸してあげるよ。でも今度からは一言言ってよね。」
「ん!」
怒られると思っていたアルルゥは嬉しそうに微笑んだ。
・・・なんだこの子、無表情だと思ったら笑うと可愛いもんじゃない・・・。
「やれやれ、もうお友達どうしとは、なかなかお前さんも隅におけないねえ・・・。」
「ええっ!!」
「・・・・!」
顔を真っ赤にしてアルルゥはポカスカとトゥスクルの胸を叩き始めた。
「わかったわかった・・・。じゃあここでさよならだ。ええとお前さんは・・・ノビタだったかな。」
「はい!ノビタです。」
「じゃあノビタ、また明日だね。ホラ、アルルゥも。」
「ばいばい。ノビタ。」
「じゃあね、ばいばーい!!」
のび太はトゥスクルたちが見えなくなるまで手を振り続けた。
「さて、ぼくも帰るとするかな。」
その帰り道、のび太はトゥスクルが言った『隅に置けない』が頭の中でぐるぐる回って、顔が時折耳まで真っ赤になっていたことは、誰にも言えるわけがなかった。
翌日の畑を耕す作業にのび太たちも参加することになった。
ハクオロ曰く「石と砂利の除去は徹底的にやるべきだ。」とのことで畑の隅から隅まで文字通り徹底的に行われた。
ジャイアンはテオロたちの村の男たちに混じって鍬で振るって耕す作業。のび太は除去された石や岩を指定された場所に捨てに行く作業である。
「うりゃ!そりゃ!えいやっと!!」
ジャイアンは鍬というものがこんなにも重いものだということを始めて知った。
「まだ子供なんだから鍬なんて振り回すのはちょっと危ないんじゃないカニ?まったくテオロってやつは・・・」
と、一緒に畑を耕す老人ヤァプ(通称 ヤー)が言うと、
「子供子供って、俺が子供ンときゃあ鍬さえ持てれば大人だって言われたんだぜ?」
「そういうことじゃなくて・・・もともとこの子は客人ダニ・・・。」
「いいってことよ!おれも好きでやってることだし。」
ジャイアンはこうして村の者たちと一緒に働くことで、早く村の中に溶け込もうとしていた。
テオロも口に出さなかったが、同じ理由でのび太たちを働かせようとしてるに違いなかった。
「まっ・・・手伝ってくれるなら、それはそれでとてもありがたいダニ・・・。」
「へへへ・・・。」

「ふぅ〜。」
藁で編んだ重ーーーい籠を担ぐいで歩くこと10分。ようやく捨て場に到着した。
どさささーっ、と石が捨てられる。
「ゼーゼー・・・。また行かなきゃなんないのかー。」
「本当に悪いね・・・。君たちに手伝わせ・・ることが。」
と、タァナクン(通称 ター)が本当に申し訳なさそうに言う。なんとなくこのいつも怖気付いた感じがのび太と波長が合った。
「いいのいいの!大体ターくんの2分の1くらいしか持ってないんだし。・・・というか持てないんだし。
ウーくんなんか2籠も同時に運んでるんだし・・・。」
通称 ウー(ウゥハムタム)は先ほどから物静かに黙々と大荷物を運んでいた。
「がんばってー!ウーくん!もうちょっとだよー!」
のび太は自分の方に手招きする。ウーはそりゃそりゃといった感じで歩調を速めた。
どさささーっ。
「わあ・・すごいなあ、ウーくんは。なんか籠を背負うコツでもあるの?」
「こ・・・コツ?ははは・・・。」
のび太は、いつの間にか、この『なんとなくいじめられっ子』メンバーのなかに溶け込んでいた。

「昼メシだぞーォ!!」
「わーーーい!!」

畑の前で昼食となった。
「皆さん、ご苦労さまでーす。」と、やってくるのはエルルゥとソポク。
今日のお昼はモロロをふかしたものを細かく刻んだダンゴみたいなものだった。
「どうだ?アンちゃん・・・なんとかなりそうか?」
「ええ・・。皆さんのおかげでだいたいの基盤は出来始めていますよ。」
「しっかし、畑に石がねえと、畑って感じがしねえなあ・・。」
「何ワケのわかんないこと言ってんだい!?ハクオロに任せとけゃなんとかしてくれるんだから、言うとおりにしてりゃいいんだよ!」

「なあ・・・のび太、ここは石器時代かなあ・・・。」
「でも鉄の斧は親ッさんが持ってるじゃないか。」
「んじゃあ、鉄が出来始めたくらい・・か?」
「多分そんなところだろうね。」
と、そこへ。
「おと〜さん。」
「?」
アルルゥがこちらにやってくる。お父さんとはハクオロのことらしい。
「ん。」
持ってきたのは蜂の巣である。それをハクオロにプレゼントしてるようだ。
蜂の巣・・・。
「まさかハチ食うんじゃねえだろうな・・・。」
「さすがにそれは・・・?」
なかった。ハクオロが蜂の巣そのものをおずおずと口に入れると意外にもそれは旨いらしい。
「ん、ノビタも。」
「へ?ぼくにも?」
手に持つだけでも怖い蜂の巣・・。それをそのまま食べるのは実際やっていると想像以上に怖かった。だが・・・
「あー、でも意外とおいしい。コーンフレークって感じかな?うんうん・・これはいくらでも食べられるよ!」
のび太は絶賛した。異常においしく感じたのは、ここ数日甘いものに飢えていたからだ。
「ん!」
それを聞くとピューっとどっかへ行ってしまった。
「ヒット&アウェイか・・。」
蜂の巣を食べながらのび太はつぶやいた。
「ゼェゼェ・・ヒィヒィ・・・ハァハァ・・・。」
のび太はついに畑の前で倒れこんでしまった。
「よーし!今日はここまでにしておきましょう!!」
とハクオロの声が響いた。
「オイ、のび太しっかり立てって!」
「うん・・。」
ふらふらと足が落ち着かない。泣き言なんて許されないのでのび太は無理していたのだった。
「しかし随分とやったモンだなぁ・・・。」
あたり一面の畑のほとんどが既に耕されていた。村の男一同が力を合わせた結果である。
「ええ。明日には基盤が完成するでしょう。そこから、また肥料などを蒔いていくことになります。」
「はぁー。まっ、ややこしいこたァよくわかんねェからその辺はアンちゃんに任せた!」
「はい・・・任せておいてください。今日はみなさんご苦労様でした!!」
各地で「応ーっ」とか「お疲れー」とかの声が聞こえた。

やっとのことで家の前に着く。
「ふぅ〜。みんな働いてるんだ・・・。小さい子供からおじいちゃん・おばあちゃんまで。」
「ああ・・・。でも、逆かもな。おれたちは今まで働かなさすぎたのかもしれねえ・・・。」
「そうか・・・。働かなきゃ食べられないって本当だね・・・。」
今日本日のび太の銃の練習はなかった。
次の日は物凄い筋肉痛がのび太・ジャイアンに襲い掛かった。
しかもここ数日間の食事の貧しさ・・・かなり参るものがある。
・・ガマンガマン・・・みんな一生懸命やってるのに・・・ぼくだけ逃げるわけにいかないし・・・

今日の畑仕事はそれほど多くなかった。昨日のうちに大体は終わらせたからであった。
「これを畑に蒔けばいいんだね?」
「ハイなるべくまんべんなくお願いします。」
「ふーん。こんなんで本当にモロロが出来るのかしら・・・?」
「ええ、畑に必要な栄養素の大体はそれに含まれていますから。」
「まっ、いいか。あたしがぶつくさ言ってもしょうがないしね。」
肥料を蒔くのは女の仕事らしい。男たちはこれから狩りに出かける。
「ぼくはちょっと無理です、筋肉痛が・・・。」
「まあしょうがねェ。オイ!ジャイアン行くぞ!」
「オウ!!」
勇ましくジャイアンらは森へと入っていった。
「銃の練習しなくちゃ・・・一人だけ遊んでるわけにもいかないし・・・。」

バァン!!

「よし!」
大体、力を入れるコツがわかってきた。葉に当たる確立は3分の2ぐらいまで上昇した。
「あとは百発百中で打ち抜くことと・・・的を小さくしていくことと・・・
遠くまで飛ばすようにすることと・・・。」
ぶつぶつ言いながら弾を拾い集めていたその時、
「ノビタ〜。」
「ああ、アルルゥ、どうしたの?」
アルルゥが走ってこっちにやってくる。
「いい的見つけた。来る。」
「的って・・?わっわっ・・!!」
のび太はアルルゥに強引に腕を引っ張られて、カカエラユラの森の中へ連れて行かれた。
「・・いきなりなんだってのさ?」
「アレ。」
アルルゥが指差した方向には
「・・蜂の巣!!」
大木のかなり上の方の枝に巨大なハチの巣があった。
「ノビタ、落とす、アルルゥ、拾う。きゃっほう。」
「・・・・。いやいや、きゃっほうじゃないよ。そんなことしたらたくさんのハチがこっちに飛んできて、とんでもないことになるよ!」
「ノビタ、ハチに追われる。アルルゥ、追われない。そのうちに取る。きゃっほう。」
「・・・・・!!」
ヤバい、ぼくはアルルゥの為にハチに生贄にされてしまう。しかも蜂の巣のために。
「大丈夫、コレかぶる。」
手渡されたのは分厚い結構大き目の布。つまりこれを頭から被ればOKということか?
「・・・・大丈夫なの?これで。」
「大丈夫。」
断言された。さあどうするのび太・・・。
・・・・。・・・・・。・・・・・・・・・あーもう!
「じゃ、やるよ!やればいいんでしょ!!」
これがのび太のファイナルアンサーである。本当に最後の遺言になりそうだ・・。
「んーノビタえらい。」
ハチに刺されないように一切の隙間なく体を布で包んだ後、草陰に隠れながら徐々に目標の木へ近づいていく。
アルルゥはのび太の反対方向へ回り、準備体制が整った。
(なにやってるんだろ・・・蜂の巣の為に・・。)
弾を銃にセット、銃口を目標にスタンバイ完了。
一発勝負!
バァン!!
成功。ゴッと地面に巣が落ちた音がしたあと、
「ヒエーーーッ!!」
中から出てくる出てくる巨大なクマンバチが!!!
「わぁああああああ!!!」
逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる!!!!
だが思いっきり逃げた為か布がほどけ始めた!!
「・・・・っ!もうだめぽ・・・・。」
頭の中が真っ白になりながらも全力疾走を忘れなかった。

・・・・・・・。
「ゼエエエッ・・・・アア・・・。」
刺されたか?意識が朦朧としてくる。
・・・・・・。
・・・うっ。
・・・意識がまだはっきりしない・・・。
だが・・まだ生きているようだ・・・。自分は寝かされているらしい・・・。
「まったくアルルゥは何を考えてたの・・・!」
「う・・・・・・。」
「ノビタくんにもしものことがあったらどうするの!?もう少し私が見つけるのが遅かったら危ないところだったのに・・・・!!」
エルルゥの涙交じりの声がのび太には少し嬉しい反面、痛かった。
「・・・・ごめんなさい・・・。」
そうか・・・エルルゥさんが見つけてくれたのか・・・。
「まったく、今度と言う今度は許されないねえ。アルルゥ!!」
「ん!・・・・。」
トゥスクルの怒鳴り声が響き渡る・・・。
・・・まずい。起きなきゃ・・。
「・・ちょっと待ってください。」
「ノビタ・・!」
「ノビタくん・・。」
3人は一斉にこっちに眼を向ける。ここはトゥスクルの家らしい。
「もういいですよ。こうしてぼくが大丈夫ならなんの問題もないでしょ?」
「でも・・・ノビタくんは・・・。」
「いいんです、こういうの慣れてます。」
ジャイアンに。
「ノビタ〜。ごめんさい〜。」
涙を流しながらアルルゥが抱きついてくる・・。抱きついてくる!?
「わーっ!!わわわっ!もういいよ!ごめんさいでも、ごめんくさいでも!!」
「・・・ノビタ、一言いいかね?」
トゥスクルがゴホン!と咳払いをして
「あまり女に優しすぎると馬鹿を見るよ。」
「・・・はぁ。」
「大丈夫なんですか?痛みませんか?」
「ええ、ぜんぜん平気です!」
「そう良かった・・・。」
「じゃあこれでぼく帰ります。もう暗いし。アルルゥももう離れてさあ・・・。」
「・・・送ってく。」
「え?」
「それがいいんじゃないかね?途中でまた毒が回ったら話にならんし、まだフラフラしてるみたいだし・・・。」
「じゃあさ、一緒に行こうか?アルルゥ・・。」
「・・・ん!」

「何をさっきから影で黙ーって見てるんだい、お前さんは?」
「あ?いや・・・アハハ・・。」
「ハクオロさん・・・まさかアルルゥをノビタくんに取られるとか思ってるんじゃないでしょうね?」
「アハハハハ・・・まあ私は『父親』だしね・・・。」
「・・・思ってたんですね?」
「アハ・・・アハハハ・・・ひィィイーーッ!?」
満天の星空の下、二人は並んで歩く、見事な月夜である。
「ノビタ・・。」
「なんだい?」
アルルゥはのび太に例の蜂の巣を見せつけ・・
「ぐっじょぶ!」
「・・・・・・・。」
さっそく馬鹿を見た・・・・。
「ちょっとあげる。はい。」
「あ・どうも・・・・あんがと・・・。」
命がけの戦利品を頂いた。そして自分の命がとても軽く感じさせた。
「・・・おいしい・・・。」
「ん!」
満足したような顔をアルルゥは見せた。なんだか納得がいかない・・。
「アルルゥ・・・これもおいしいんだけどね・・・。」
「ん?」
のび太は星空を見上げながらつぶやいた・・。
「これより美味しいものは世の中にはいっぱいあるんだ・・・、いや、ぼくはこれより美味しいものを食べてきた・・・んだ。」
「ほんとう!?」
「ああ・・・そうだよ。例えば・・・・・・・・・・・・例えば・・・ぼくのママが作ったホットケーキとか・・・ドラえもんが・・・
あのケチなドラえもんがたまに気まぐれでくれたりするどらやきとか・・・!」
「・・・・?」
「学校で毎日お昼に出てくる給食だって!・・・そうだよ・・そうだったんだよ!駄菓子屋で10円で売ってるガムだって、なんだってそうだ!・・・美味しかった、ただわからなかった!
静香ちゃんが焼いたクッキーなんて・・・ぼくは・・・ぼくは・・・なんて・・・。」
のび太は跪(ひざまず)いてしまった・・。
「・・シアワセだったんだろう・・・。うっ、うっ、うわぁああああああん!!」
のび太は耐えられなくなった、この村の人たちの温かみが。優しくしてくれれば優しくしてくれるほど、あの元のなんでもなかった毎日が愛しく思い出されてしまう。・・・ママは・・・今元気なのか・・?
パパは・・・あの一度も海外になど行ったことがないパパは・・海外出勤など行って大丈夫なのか?二人とも・・・ぼくのこと心配してるんじゃないか・・・?スネ夫は自由研究出来ているのか・・・?出来杉君は・・・?そして静香ちゃんは・・・・?
みんなみんなみんな・・・・本当に今どうしてるんだろう・・・!?
「ノビタ・・・・。」
そうだ・・・だからって村の人に寂しそうな顔なんか見せられない・・!ましてやこうやって泣くことなんかできっこない!!
だってそんなことしたら村のみんなが余計に気を使わせてしまう・・・余計に優しく接してくる・・・。みんないい人だから・・・。
でも、でもでも・・・その時ぼくは本当に耐えられなくなっちゃうじゃないか・・・!!
「ノビタ・・・・!!」
でも・・・恥ずかしいことかもしれないけど、こんなぶっきらぼうなアルルゥだから・・・ぼくはこうして目の前で泣くことができるのかもしれない・・。
男として恥ずかしいな・・・。女の子の目の前で泣いて安心してるぼくは・・・・。
ぼくは・・・・。
ぼくは・・・・・アルルゥが・・・・。
「のび太!!」
「ハッ・・・!」
目の前に自分のママが・・・、こんなぼくを叱ってくれるママが・・・!
「ノビタ!ノビタ!だいじょうぶ!?」
ち・・ち・・がう・・・ア・・アルルゥ・・・・・。
「・・う・う・うわあああああっ!!アルルゥうううっ!!」
のび太は思わずアルルゥに抱きついた。アルルゥはそれを拒むことはせず、ただ黙ってのび太の背に手を回してきた。
アルルゥの体温が・・・・・・ぼくの・・・こころを・・・とかしてくれた。

それは星が美しい月夜の晩のことだった。
それから数日後の畑。
「おおおッ!!ついにやったな!アンちゃん!」
「本当に芽が出てきちゃった・・・。」
エルルゥは目の前に広がる畑を見渡すと少し呆然としてしまった。
あの荒野はどこへやら。あたり一面に広がる緑色が眩しい生きている畑がそこにはあった。
「すげえ・・・ハクオロさんのおかげだぜ!!」
「そうだ!よくやったぜアンちゃん!」
ジャイアンとテオロは興奮した口調でハクオロの肩をバシバシ叩きながら誉めた。
「いや・・・村のみんなが、力を合わせたからだ・・・!みんな、あと少しだ!」
「おーっ!!」

バァン!!
相変わらずのび太は銃の練習に明け暮れていた。
「もう少しで・・・戦える・・・かもしれないな・・・。」
のび太は決めたのだ。アルルゥたちを・・・前のぼくたちのように・・・哀れになるくらい気づかない幸せな・・・宝物のような毎日を送ってもらうように、ぼくが導いていくことを。
そして大切な人たちを命がけで守っていくことを。そんな目標が出来たから、銃の練習は前よりさらに頑張れる。それに・・・。
「ん〜がんばれーノビタ〜!」
「うん!」
・・・ぼくの大切な人が見てくれているから・・・。
「おお、精が出るねえ。」
「ああ、トゥスクルさん!」
「おばあちゃん!」
「ほう・・・まだ練習してるのかね?」
「はい!だいぶ上手くなったような気がします!」
「ほほう・・・。どれ、ちょっとその腕前を見せてもらおうかね。」
「ええ、いいですよ。じゃあアルルゥ!」
「ん!」
アルルゥは木によじ登り、地面から3メートルくらいの細い枝にちょっと大きめの皿をバランスよく乗せ、その上に手のひらサイズの葉っぱを五枚重ねて置いたあと、木から下りた。皿は落としても割れない材質のものだった。
「一体何が始まるってんだい?」
「いーから、おばあちゃんは見てるのー。」
「ハイハイ。」
「よし!準備完了!いつでもいいよアルルゥ!」
「ん!」
のび太の右手は一発弾が込められた銃。左手の指と指との間には計4つの弾・・・。
木からの距離は20メートルあるかないか。
「えい!!」
アルルゥは思いっきり木を蹴っ飛ばした。その衝撃で木は揺れ葉より先に皿は地面に落っこちた。
ゆら、ゆら、ゆらと落ちる五枚の葉・・・。
「・・・はあっ!!」
ズババババァン!!
のび太はいつもの様子とは想像できないスピードで計5発打った。
「・・・・・。」
アルルゥは五枚の葉っぱを拾い集めると、トゥスクルの方に駆け寄った。
「全弾命中。」
「・・・・・・ほう!」
確かに全ての葉っぱはど真ん中を打ち抜いていた。言うまでもなく葉は風に乗って不規則に動くものである。
「こんなところです。」
「いや・・・これはたまげた!まさかお前さんがここまでやるとはの・・・!」
「ん!ノビタはすごい!」
「いや・・・まだまだです。これからは自分が移動しながら打つ練習に、上下から狙い打つ練習やら・・・まだまだですよ・・。」
えへへ・・・とのび太は頭を掻きながらトゥスクルに話す。
・・・トゥスクルは思った。この子は・・・強くなる・・・と。
「ノビタ・・・ひとつ弾を借りていいかね?」
「え?弾を、ですか?」
「ああ・・・あとでいいものあげるから・・・。」
「はあ・・・いっこだけなら全然いいですけど・・?」
いいものとは何ぞや?
「じゃあ、これからも頑張れよお前さん・・・ホッホッホ・・・。」
トゥスクルは弾を一個持って帰ってしまった。
「・・・・まあ、あとでなんかくれるなら、楽しみにしておこうっと・・・。」
「ノビタ、もらったらアルルゥにもちょっとわけて。」
「ハイハイ。」

翌日の朝、いつもどおり畑を見に行ったその時、
事件は起きた。
「なっ、なんだよ・・・・!!こりゃあ!!」
「こ・・・んなのって・・・。」
ジャイアンとのび太は今自分たちが見てる光景が信じられない様子だ・・。

柵が破壊され、畑の半分は無残に何者かに荒らされていたのだ。

「クソッタレが!!一体誰がこんなことしやがった!!」
テオロは怒りのあまり、残った少ない柵を蹴っ飛ばしてしまった。
「ひどい・・・みんなが・・・頑張った畑なのに・・・。」
エルルゥもショックを隠せない。
「・・・・!親ッさん見てください!」
「どうした?アンちゃん。」
「足跡です・・・これは人間のものではありません。何かの獣です!」
「・・・獣?」
「多分その獣の毛でしょう・・・あちらこちらに落ちています。」
ハクオロは一本ひょいと拾って見せた。
「ふーん、・・・もしかすっとこりゃあ・・・!」
「あっ!ねえ!あそこになんかいるよ!」
のび太が畑の真ん中を指差す。確かに人間ぐらいの大きさの『何か』がゴソゴソ動いている・・・。
「あっ!!クソ!やっぱりキママゥだ!!」
「キママゥ!?」
よく見ると猿より大きめの・・・チンパンジーぐらいの動物がバリバリ音を立てながらモロロを食べている!
「クソーッ!!ぶっ倒してやらぁ!!」
「おれも行くぞ!!うぉおおお!!」
テオロとジャイアンは皆が止めるのも聞かず、一目散にキママゥ目かげて走っていってしまった。
だが、キママゥは意外にすばしっこく、簡単に逃げられてしまう。それどころか余裕をかまして怒鳴り声を出しているテオロたちを尻目に、木の上で盗んできたモロロを味わいながら食べている。
「クソが!!降りてこいやァ!!」
「ギッタギタのメッタメタな目に会わしてやるぞ!!」
ところが、さっきからテオロがクソ、クソと騒いでるせいか・・・。
「あーあ。やっちまったダニ。」
顔面にそれがかかったテオロとジャイアンが戻ってきた。
「アンタ臭いよ!とっとと洗ってくる!!」
「のび太〜」
「うわぁ来ないでよ!!」
「クソーーーーーッ!!」
臭い二人は敗北者の雄叫びを上げるのだった。
「というわけで、キママゥをぶっ殺す会議を開く。」
「テオロ、もうちょっと言い方を変えるべきダニ。」
「うるせェ!!アイツらなんか俺たちが逆に食ってやらァ!!」
「そうだ!!あいつら絶対許せねえ!!」
「やれやれダニ。」
「ワナを仕掛けるというのは?」
気弱なターが提案する。
「アイツらはかなりの数の集団行動を取っている、1匹2匹引っかかるワナぐれェじゃ全然ダメだ。しかも奴らはちょっとばかし賢けェ。いつでも同じワナに引っかかってはくれねェな。」
「お前さんより賢いかもね。」
と、ソポク。
「・・・他ッ!!」
「柵をもっと頑丈なものにする。もしくは有刺鉄線でも付けるとか。」
「奴らは運動神経もいい。これからは柵なんかあまり意味をもたねェかもな!」
「じゃあどうするダニ?」
「それを話し合ってるんだ!」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・他ッ!!」
「・・・・・・・・。」
「ハァ〜、おし!こういうときはアンちゃんに任せよう!!」
「え!?」
「おおそうだ!ハクオロさん!奴らをギャフンと言わせるやつ、頼むぜ!!」
「フーム・・・・今までの話からして奴らを返り討ちにするというのは、あまり効果的ではないでしょう。」
「・・・てェ、なると?」
「こちらから出向いて一網打尽にします。相手の過半数を減らせば、以後からはそうたびたびはやっては来ないでしょう。」
「しかし・・・奴らは常に群れで移動してやがる・・・どうやって?」
「私に考えている策があります。」
「・・・・・むう・・。」
「いいんじゃないんかね?ハクオロが考えているその策とやらで。」
トゥスクルがようやくこの場に出てきた。
「村長!こんな緊急事態に今まで一体どこに行ってたんで!?」
「ちょっとな。その奴等に一泡吹かせてくれる新しい得物を作ってて遅れてしまっての。」
「おおッ新しい得物!そいつは一体?」
「秘密じゃ。」
「あ?」
「・・・文句あるかえ?」
「・・・あ〜、まあ村長の考えることだから、きっとなんかあんだろうからいいけどよ・・。」
「とりあえず、ワシはワシで準備しといた。あとは皆の衆!力を合わせ、ハクオロに従い、害獣キママゥに一泡食わせてくれようぞ!!!」
「おおーーーっ!!」
「・・・なんか一番いい所取っていったぜ・・・村長・・・。」
テオロの家へ帰る途中でのこと。
「ノビタ・・・ちょっと・・。」
「トゥスクルさん!?」
なにやらトゥスクルが手招きしている・・・。闇夜に浮かぶトゥスクルの笑顔はホラー映画のように不気味だった。
「・・・・なんでしょう?」
「ほら、弾じゃ。一個借りておっただろう・・?」
「ああそう言えば・・・。」
弾を受け取る。別に何も変わっていない。
「それと、これをノビタにやろうじゃないか。」
渡されたのは巾着袋。
「・・・?中身見ていいですか?」
「ああ・・・いいよ。」
「・・・・・ん?・・??」
中から出てきたのは先ほどの石と同じくらいの大きさの・・・?
「弾じゃ。」
「え?」
「だから今お前さんが持ってる鉄砲の弾じゃ。今回のキママゥ退治に役立つじゃろうて・・・・。」
「・・・・・。」

・・・「ちょっとな。その奴等に一泡吹かせてくれる新しい得物を作ってて遅れてしまっての。」

「これがその得物!?」
「そうじゃ、ノビタに授けよう。」
「しかし、これで打つとどうなるんですか?」
「打ったらわかることじゃ。ホッホッホ・・・。」
笑いながらトゥスクルがすぅーと闇夜へと消えた。闇夜からはトゥスクルの笑い声が今でも聞こえてくる・・・・。
怖い夜になりそうだ。
作戦はいたってシンプルなものだ。まず二班に分かれる。一方は『追い込み班』。もう一方は『始末班』。
まず『追い込み班』が隠れてキママゥを待ち伏せし、現れた所を大声を上げながら鉦を鳴らし包囲してゆく。
その時点で、わざと一ヵ所だけ人の手薄な場所を作っておく。
そのまま包囲網を縮めれば、奴等は間違いなくそこから逃げようとするだろう。
その先には幾重にも仕掛けられた罠があることも知らずに。
しかし、中にはそれから逃れるヤツもいる。
その残りを待ち構えて始末するのが『始末班』というわけだ。

始末班

「暇だなぁ・・・・。」
「そうですね・・・。」
「おれ眠くなってきた・・・。」
この作戦の欠点はキママゥが来るまで待ちぼうけになること。その間実に暇だった。
始末班メンバーはハクオロ・テオロ・ジャイアンである。
「よし、しりとりでもしよう。り・・・『臨死体験』。・・・・。」
「ダーハハハ!!アンちゃん弱いなー。じゃあ俺が『り』だ。えー『流産』!!」
「何で『流産』・・・しかもダメじゃねえか!ああもうおれに任せろ!『リアス式海岸』!!」
「・・・よく知ってるな・・・そんな言葉・・。」
「社会でやったばっかだったし。」
「おおッ!そうだ!『輪姦』!!」
「・・・・なんだ?『りんかん』て?」
「・・・ホラ、親ッさん・・・説明してくださいよ・・・。」
「いいじゃなねェか、どうせダメだし。」
「なんでみんな『りんご』とか『りす』って素直に言えねえんだ?」
「ダーハハハハ!そこが大人のしりとりってやつさ!!」
「・・・・・・・・。」
「暇だなぁ」
追い込み班

「その時、志摩子さんはきぜんとした態度で言ったんだ、『もしこのことで罰があるのなら、すべて私が引き受けましょう』って。」
「うわー、かっこいいなあ・・・。」
「でもその後、乃梨子が『いいえ、罰なら私に・・・!』・・・て駆け出そうとしてるんだけさ、それを止めたのは、なんと黄薔薇さま(ロサ・フェティダ)・・・つまり令さまだったんだよ!」
「なっ!なんてこっタイ!どうしてなんだい!?」
「・・そう!ここからが盛り上がるところなんだよ!」
のび太は以前静香ちゃんから借りた文庫本の内容をウー、ヤー、ターに聞かせていた。

ここも暇だった。

「ノビタは色んなこと・・知ってるね・・・。」
「そうかなぁ・・・今まであんまり言われたないけど・・・?」
「うん、ノビタは物知りですごいダニ。」
「漫画やらテレビやらの話題がそんなにすごいことなのかなあ・・・。」
そう言えば当たり前だがここには漫画など存在しない。本は一応存在するが、薬師トゥスクルの所しかないらしい。
「情報・・も財産ってことかな・・?」

・・・・。
「・・・・・・来る!」
アルルゥは風が運んでくる森の噂話を聞いていた。森は全てを知っているらしくこれから起きる事態も知っているらしい・・・。
・・・。・・・。・・・。
「・・・おと〜さんが!!」
血相を変えてアルルゥは走りだした。
始末班
エルルゥは始末班のほうへソポクが淹れたお茶を運んでいた。
そこはなんだか男3人が難しい顔して頭を抱えている。
「みっ皆さん!どうしたんですか!?なにか大変なことでもあったんですか!!」
「ああ!エルルゥ!!実はだな・・・。」
「ハイ・・・・。」
「『り』で始まる言葉で面白いのないか?」
「ハァ?」
「いまのところ1番はジャイアンの『リリーフピッチャー』2番目は私の『離婚届け』3番目は『リンパ球』なんだが・・・。」
「まったく、遊んでないでくださいよ!キママゥを駆除するチャンスは一度きり!これを逃したらみんなで作った畑がまたメチャクチャにされるんですよ!」
「・・・・・・。ああー。そう言えば。」
「忘れてたんですか!?・・・やれやれ・・。」

追い込み班
「さて、と、イザとなった時の為にもう一度だけ確認しよう。」
「うん!」「ウム!」「それがいいダニ!」
「キママゥが現れたら・・・」
「大声を・・・出し、鉦を・・・鳴らす!」
「その間はみんなで手を繋いで逃げさせないタイ!」
「一箇所だけ隙間を空ける!でもそこから逃げたら罠だらけの道になるんダニ!!」

始末班

「そこから逃げてきたキママゥは手負いだがよ、」
「手負いだからこそ容赦はない。」
「絶対に油断はできないっつーことか!」
「それだけのことです。・・・なのにどうしてしりとりの話になったのか聞きたいですね。」
「あれ?確かアレってアンちゃんが言い出したことじゃねェか?」
「ウグ・・・ッ!!」
「そうだ!ハクオロさんが悪い。」
「ひっひどいぞジャイアン君!!」
======カンカンカンカンカン!!!!!!======

「「うぉおおおおおおおおおお!!!」」

「おっっと!始まったようだぜ!!」
「さあ、エルルゥは追い込み班のところへ行け!怪我した人がいるはずだ!!」
「はい!!ハクオロさんも気をつけて!!」
ダッ!とエルルゥは走っていく。
「こっちにはどんくらいくるんだ・・?」
「さあ・・?」

キィィ!!キィィイ!!キャキャアア!!

キママゥは迫力ある人の波に押し出される。キママゥの数は30前後。予想以上の多さだ。
逃げるキママゥ、だがそこは、
「キャギャアアアアア!!!」
罠にはまり断末魔の声をあげるキママゥたち。だが数が多く、逃げた奴も多いはずだった。
「はぁ〜、なんとかなるのかなぁ、ジャイアンたち。」
とその瞬間、ザザッ!!っと草陰から動く音が!
「ノビタ!!」
「ワッ!なんだ、何かと思ったらアルルゥじゃないか・・・ビックリさせないでよ・・・。」
「いいから来る!おとーさんが!!」
「えっ!ハクオロさんがどうかしたの!?」
「ノビタの助けがいる!ノビタ、おとーさんたち助けて!」
「!!」
「こっち、近道!!急ぐ!!」
「うん!」
「あっ!?ノビタ!!」
「すぐ戻るよ!!」
「・・・あれ?今のアルルゥですか?どうしてこんな危ないところに・・・?」
「大変だ!エルルゥ!ハクオロさんたちが!!」
「!?」

始末班

ウキャーッ!!キイー!キィイイイイ!!
集まったのは15あるかないか・・・。
「クソ!!思ったより数が多いぞ!!」
「仕方ないですね・・・。二人とも一塊で行動するんだ!決してはぐれるな!!」
「応ッ!!」
ウキャアアアア!!
15のうち2つがこちらにやってきた!迎え撃つハクオロ・テオロ。
二人はキママゥの首目がけて仕込みが仕掛けられた鉄扇と巨大な斧を振り回した。
「ハアッ!!」
「ドリャア!!」
ドン!っという音がして吹っ飛ぶ2つのキママゥの首。そこから黄色い血液がピューっと飛んでいた。
「うッ・・・すげえ・・・。」
っと、
キィイイ!!
ジャイアンのほうにも一匹やってくる!
「手加減しねえぜ!!うりゃあああ!!」
ジャイアンはバットをまっすぐ上から頭を目がげて振り下ろした。
が?
バシ!っとキママゥは真剣白刃取りの如く、受け止めた!!
そこからおもむろにクルリと一回転したかと思うと
ドン!!
「ぐああああっ!!」
ジャイアンは顔面からドロップキックを食らわされ後ろに2メートルくらい吹っ飛ばされた。
「チッ!」
鼻血をぬぐいながら起き上がる。が、脳震盪でも起こしたか?イマイチ視点が定まらない・・・。
「ジャイアン!!」
残った二人はジャイアンを取り囲むように隊形を変える。
だがキママゥ側はその隙に3人を取り囲んでいた。
「親ッさん!コイツら弱いんじゃないんですか!?」
「ああッ!?そんなこと言った覚えねェぞ!?」
「えっ?じゃあ今まで退治したことは?」
「ねェよ!!こいつらすばしっこくて追いかけることもできねえかったんだよ!!」
「・・・・し・・・しまった・・・!!」
「く・・・そ・・・こいつ等・・!!」
キャアアアアア!!
計13匹のキママゥは一斉に歯をむき出しにして威嚇を始めたのだった・・・。

ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!

のび太はアルルゥと共に森の中を走り抜けていく。森の中はそこらじゅうに巨大な木の根が地面から浮き出ていて思わず転びそうになるのだが、アルルゥは慣れた動きで全力疾走を続ける。
「アルルゥ!!」
「!・・・お姉ちゃん!?」
「エルルゥさん!」
後ろからエルルゥがやってくる。
「・・・ハクオロさん達が危ないんですね!?」
「ん!」
「・・・・ノビタくん!どうか頼みますよ!!」
「そんなこと言ったって・・・!!」
「ノビタくん!君にはおばあちゃんから何かもらってるはずです!だっておばあちゃんその為に徹夜までしたんだから!!」
「・・・・!ウソ!あの弾の為に徹夜!?」
「ハイ・・・・!おばあちゃんはノビタくんに預けているんです!この作戦の勝利のカギを・・・!」
「・・・・・そんな!」
「・・ノビタさんを信じています!おばあちゃんも!私も!」
「アルルゥも!!」
「・・・・・わかった!やるしかないんだ!!」
今までだってなんとかしてきたんだ、今度だってやってやるんだ!
「・・・・・・。」
ハクオロ・テオロ・ジャイアンは蛇に睨まれた蛙の如く動けなかった。
3人の背面には断崖絶壁の岩壁。現在、相手のほうが圧倒的に有利。少しでもこちらが動けば隙が出来てしまう・・・。
相手は余裕なのか、一気に襲い掛かってしまえばそれで終わりなのに、じりじりと包囲網を縮めていく・・・。
ジャイアンは自分の不甲斐なさに腹を立てていた。今回、勝とうと思えば勝てる相手だった気がするのだ。それが自分のせいで負けることになるとは・・・。この場合『負け』は『死』に直結する。
自分は今まで様々な大冒険の中で絶体絶命のピンチに陥ったことは幾たびもある。ところがそれは敵方の勢力や力が余りに大きすぎたからで、自分らの実力がどうこうと言う問題ではない。
ところが今回の相手はただの猿。
・・・釣竿なんか作って遊んでいる場合ではなかった・・・のび太のほうがよっぽど練習してたじゃないか!
・・・相手は当初こちらを憎んでいたが、今はなんやら楽しそうだ・・・こちらに向けられる目は殺気ではなく好奇心・・・『こいつら人間は死ぬ間際にどんな断末魔の声をあげるんだろう?』
『巣に持ち帰って食ってやろうか?それともバラバラにしたあと、見世物としてこっそりと人間の畑に置いてやろうか?』・・・コイツらには仲間を殺されたということは、もうどうでもいい話らしい・・・。
やはりただの猿か?それにおれが負けるのか!?
「・・・・ふざけんな・・・ふざけんじゃねえっ!!!」
ジャイアンは飛び出していってしまった。
「ジャイアン!!」
キッィイイ!!
『殺っちまえ!!』と言う意味の合図の雄叫びが上がる!
・・・と、その瞬間!
チュドォドォドォオオオオオオオン!!!!

突如目の前に爆発が起きた。キママゥは爆発に20メートルは吹っ飛ばされた。ジャイアンたちは巻き込まれずに済んだ・・・。
「なんだァ!?」
「・・・・はっ!」
ジャイアンが背後の絶壁の上を見上げる。そこにいたのは!
「のび太!」
「エルルゥ!!」

のび太はしばし呆然としてしまった・・。まさかこんな大爆発が起きるとは・・。タチの悪いカンシャク玉みたいだった。
だから下にいる皆が止めるのを聞かずに、エルルゥが断崖絶壁を滑り降りていったのを止められることも出来なかった。
「私も簡単な手当てくらい出来ます!だから!」
「何を言ってるんだ!早く退け!」
「エルルゥ!悪りぃが頼まァ!!」
「親ッさん!?」
「アンちゃん・・・ここは『命に代えてもお前を守る』とか言っておくのが男ってモンだァ!!」
「・・・・!仕方ない!エルルゥ絶対傍から離れるな!!」
「・・・・!!ハイ!!」
「形勢逆転ってやつか!もういっちょやってやる!!」
「ノビタ君!!後方支援は任せたぞ!!」
「・・・・!!ハイ!」
キャァアアアア!!怒りを込めた雄叫びを上げて布陣はやってくる!
「やあっ!!」
ドォオオオン!!
だが、のび太の正確無比な早撃ちでその陣形をぶっ飛ばした!
「ドォリャアア!!」
「ハァアアアア!!」
「このやろううう!!!」
勢いをなくしたキママゥたちをハクオロたちが襲い掛かった!
「ドリャア!!」
テオロはキママゥの1匹をまず足を絶ち、
「ダァ!!」
すかさず首をぶっ飛ばした!ボッ!っと音を立てて飛ぶ首。
「ハァ!セィ!!」
ハクオロも3匹くらいまとめて相手をしているようだった。細かい攻撃で相手を弱らせた後・・・
「斬ッ!!」
やはり首を吹っ飛ばずのだ。
「相手の急所を狙うってわけか!!相手を『殺』すことを考える!!」
と、その時ジャイアン目掛けて2匹同時にドロップキックが迫ってくる!!
「同じ手を食うか!!ええぃ!バント!!」
ドン!と相手の攻撃を受け止め、宙に浮かせた後、
「ホームランだぁ!!」
ガキィイイイン!と音がした束の間、2匹のキママゥは顔面からフルスイングを食らって吹っ飛ばされ、岩肌に頭から激突し、絶命した。
キママゥは一息つく暇もない。動きを止めれば最後、のび太の標的とされるだけだった。
そんなこんなでキママゥは弱ってきた。そうなってしまえばもう勝負はついたようなものである。
「最後の一匹!!」
ドン!と最後のキママゥの上半身と下半身を分断したのはテオロだった・・・。

「勝った?」
「勝った。」
「勝った!!」

「うぉおおおおおおおおおお!!」

男たちは歓喜の雄叫びを上げる!勝ったのだ!
「やりましたね!皆さん!!」
「ああ!エルルゥが来なかったらマジでヤベェとこだったぜ!!あんがとな!!」
「ノビタ君もよくやった!」
「いやあ、それほどでも・・・。あれ?ジャイアン・・・?」
ジャイアンはぼうーっと立ち尽くしている?
「・・・・。あ・あ・うわぁああ!!怖かった、もう死ぬかと思ったぞ親父ぃいい!!」
ジャイアンはテオロに泣きついてきた。死の恐怖からたった今解放されたのだ。
「ダハハ!馬鹿!泣くんじゃねえよ!」
「うううう・・・だってよおお。」
「ノビタ〜!!」
アルルゥがやってくる。
「アルルゥ!やったよ、ぼく!」
「ん!ノビタ、ぐっじょぶ!」
「・・・・・・・。」
一番聞きたくない褒め言葉だった。
その晩、テオロの懇願どおり(?)キママゥを煮て焼いて食ってみることにした。
「・・・やっぱ美味いモンじゃないダニ。」
「まったく、ウチの宿六は・・・。まあ毛皮は使えそうだけどね。」
「ところで、ジャイアン君と親ッさんは?」
「ああ・・・あの二人は外ですよ。」
「?」

「親父・・・本当におれダメだ。もしあの時、のび太たちが来るのがもうちょっと遅かったら・・・!」
「『もし』も何も考えんなよ。おれ達は勝ったんだからよ!ダハハハハハハ!!」
「でも!でも!」
「ジャイアン・・・お前を息子だと思って言っておく。男だったら口で抜かす暇があったらます行動に移せ!!絶対に後で後悔しない選択肢を考えるんだ!!」
「・・・・無理だよ。おれにはそんな難しいこと。」
「いいか?俺もこの先何があるかわからねェ!だがな、自分の信じた道だけ進んでりゃ、後は別にそれが失敗であっても、そのことで人に笑われたって気にしねェ!!」
「!」
「『道』を進め!どうなるかは行けばわかるさァ!!」
「・・・親父ィ!・・・おおおッ!!おれは強く生きるぞ!!親父に負けないぐらいにな!!」
「へッ!100年早ェってんだ、ダハハハハハ!!」
「・・・とにかく、このキママゥの毛皮は暖かそうだねえ。ソポク姉さん、ぼくにこれで暖かい服作ってよ。そうじゃなくても毛皮のベルトとかさ!」
「・・・・・。」
その言葉に村人は黙ってしまう。
「どうしたの?みんな。ぼく、そんなに悪いこと言ったかな?」
「ノビタ・・・その毛皮は全部税に取られるんだよ。」
「ええっ!こんなにあるのに!?みんながあんなに苦労したのに!!」
「そう・・・・・あの馬鹿な領主にね。」

月が曇り空で見えなかった晩の事だった。
まだ・・・月は顔を見せてくれないらしい。

第2部 第1話 「辺境の村」終わり 
第2話 「宗教國家オンカミヤムカイ」に続く。
644うたわれ 本日の反省:03/03/31 19:59 ID:AnpUN53S
前回からちょっと間が開いたので一気に掲載。

・・・いや、「マリみて」以外のネタが思いつかなかったんですわ、アハハ。
他にも色々とネタがあるのですが、気にしないでください。

「ドラえもん のび太とうたわれるもの」公式ページ
ttp://www.tekipaki.jp/~midaresetugekka/doratop.htm
 1枚描いてみますた。
ttp://www.tekipaki.jp/~midaresetugekka/2-1-bb.gif
葉鍵でドラえもんを製作しないか? のまとめぺーじ
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/9698/daichouhen.htm

では、皆様ごきげんよう(板違い
645名無しさんだよもん:03/03/31 23:14 ID:mzxS8gE4
大量の投稿に正直、脱帽・・・。
お疲れ様でした。
646名無しさんだよもん:03/04/01 18:13 ID:oo+hkfE6
ちょうどハマッてたせいでツボに入りますた>マリみて
銃で戦うのび太は燃えるなあ…宇宙開拓史の漫画読み返そうか(映画は不可)
647名無しさんだよもん:03/04/01 22:16 ID:u/iv3qPK
うまいなぁ。
本当のドラえもんの大長編みたいだな
648名無しさんだよもん:03/04/02 06:31 ID:+sky4OW3
      ,.-, ‐- 、     
     / ノノハ))丶  
   ∠目*゚ -゚ )ヨゝ グッジョブ! 
  ∩へ_/彡ノノd
 ∈\ ヽヾノ」

キャラの絡みに違和感がほとんどないのが凄いです。
79−81ののび太とアルルゥとか100のジャイアン&テオロとか。
てかテオロは猪木ですか(w
649名無しさんだよもん:03/04/02 14:20 ID:n4kI+x9K
お疲れさまです。
うたわれやってないけどおもしろかったです。
この機会にうたわれをやり始めようかと思いました。
650うたわれ 第6回:03/04/03 03:50 ID:mPu04BFn
皆さん感想あんがとね!
>>645
こんな大量の投稿を読んでくれてあんがとさん。よく規制かからないなと思う。
>>646
元ネタ『チェリーブロッサム』。
『マリみて』って、静香ちゃんに借りてのび太が笑いながら読んでそう。。
公式ページにボツ版掲載します。藁って呉。
>>647
私、そう思えない(悲
>>648
AA有難うです。
のび太×アルルゥ
ジャイアン×テオロ(´Д`)
>>649
最高の褒め言葉有難〜。
この話、本家と比べると無茶苦茶いい加減で手抜きってことがわかります。

マタリと開始・・・。
=「ドラえもん のび太とうたわれるもの」= 

「・・・で?この前の地震で亡くなれた人は18人というわけですか・・・。おいたわしいことですな・・・。」
「地震により被害は並ならぬものです。至急対策本部を設置したほうがよろしいかと。」
「そうだな・・・、そうしてくれ。」
「はっ!」
「・・・地震か・・・。この地の地底が震源地とは・・・。」
「お父様・・・。」
「いや、済まない。そうだな、たかが地震で一体私は何を考えているというのだ・・・。」
「・・・・。」
「ん?あれはなんですかな?」
「あれ?」
「ほら、あの空に見える赤い火の玉のような・・・まるで・・・。」
「隕石!?」
―ゴォオオオオオッ!!

―ドォオオオオオオオオオオン!!!

=第二部 「國と言う名の蜃気楼、友情と言う名の契約証。」=
=・・・・・・・・・・第2話「宗教國家オンカミヤムカイ」=
「ハヒ〜まいったまいった。」
ドラえもんは目を回しながら呟く。
「まったく、時空間を超スピードで渡航できるのはいいが・・・、着地のことを考えていなかったとは・・・。」
T・P総隊長 が首を摩りながら言う。移動時の揺れで首を少し痛めたのだ。
「ねえ・・・?なんかピーピー鳴ってるよ!」
スネ夫が目の前にあるモニターを指差す。
「OVER REV・・・オーバーレブ?・・・なんのことかしら?」
静香ちゃんはモニターの赤いゴシック体の文字を読み上げる。こういう用語は静香ちゃんにとって弱い。
「車でいうエンスト。エンジンが焼けちゃってるってことかな。」
ドラえもんは『RR』のエンジンを切った
「しばらく冷やしてれば直ると思うけど。」
「ふーん。・・・それにしても気持ち悪いな・・ちょっと。」
「ああ、私もだ。外に出て見るか。」
「危険じゃないですか?何がいるのかわからないんですよ?」
「大丈夫だ。その為のバリアーだ!」
「取り合えず出よ。」
そう言ってスネ夫と総隊長は出て行った。
辺りは一面の森。そこをこのタイムマシンが木々をなぎ倒しながら着地したために、生々しく地面が削られたあとが一直線に300メートルほど続いている。まだ砂ぼこりは収まっていない。
「凄いことしちゃったな・・。」
ちょっとびびるスネ夫、あとで誰かに怒られないかな・・?
「それにしてもいい天気だなぁ!清清しいほどだ。」
大きく伸びをして大空を見上げる総隊長。
「ここは・・・日本だね。場所は・・・神奈川県と山梨県の県境ってところかな?」
ドラえもんは『RR』のコンピューターを操作して現在地を確かめた。
「じゃあ、このあたりに『竜』がいるのね?」
「うーん、そのはずなんだけど、レーダーは反応しない。」
「のび太さんたちは?」
「そっちもダメ。今からもっとレーダーの精度をあげてみる・・・。時間が少しかかるけどね。」
「そう・・・。」

「それにしても・・・見慣れない植物が多いな。」
「そりゃ未来ですからねー。」
「まったく・・・この世の未来を見れる機械など発明した人類は神から罰を受けるべきだな!」
「そうですか?面白いからいいと思うけど。」
「面白半分で未来を見てしまったら、きっと後悔すると思うがね。この人間の『面白半分』というのが人類の文明の破滅をもたらすようで・・・嫌なものだ。」
「はぁ・・・。」
「・・・・ん?」
何か・・・木の陰で動いたような・・・?
「・・・・おい!そこのお前ら何者だ!!」
「・・・・!」
外で聞きなれない声がしたので慌ててドラえもんと静香は外に出てみる。すると・・。
「・・・お前らこそ何者だと言うのだ!?そんな妙な耳やら羽やら付けて悪趣味なものだな!」
「なんだと!!」
言い争う総隊長とその総隊長が言うとおりに、獣のような耳を付けた剣士やら、
羽をつけた法衣を羽織っている賢者みたいな人やら・・・その数30名ほどが自分達を取り囲むようにいた。
「どいつもこいつも古臭い格好をしてやがって・・・我々に逆らうのだと数千年早いな!」
「なんだぁ?さっきから一々頭に来るようなこと言いやがって!」
「お待ちなさい!!」
そこに割り込んできたのは。これまた羽を生やした青年である。
「この者達が失礼いたした。我々はオンカミヤムカイの者だ。我々の森が突如荒らされたのでここへ来た。これはあなた方がやったことか?」
「ああ・・・まあそうだな、我々がしたことだ。」
「ならば聞こう。あなた方は何者なのか?」
「・・・説明はできぬな。恐らくこの世界と我々は何か次元が違う・・・。」
「・・・。では我々はあなた方を不審者として扱い、この場でその身を捕らえることになる。」
弓を持った兵士がこちらに向けて弓を放とうとしている。
「わわわ・・・っ!」
「うろたえないでいい・・・。我々はバリアーがある!」
「もう一度繰り返す。おとなしく投降するつもりはないか?」
「・・・ない。逆にそなた達の身、我々が捕らえてみせよう!!」
「剣奴(ナクァン)行け!!」
ウオオオオッ!!
剣を振り回しながら剣士達約20人が襲いかかってくる。
「『正義』ロープ・・・。」
総隊長は種らしきものをその場でばら撒いた。種はロープと化し、襲い来る兵士たちを全員羽交い絞めにした。
「ぐわぁあああっ!!」
ところどころで悲鳴が聞こえる。ある者は木に磔にされ、またある者は口までも塞がれどうすることも出来ずに苦しがっている。
「抵抗するな。抵抗すればするほどそれはヒドくなる。我々はお前達の命を取ろうなどとは考えていないつもりだがね」
「チッ・・・!!」
目の前にいる兵士達は怖気ついて5・6歩下がる。ただ先ほどの青年は下がらなかった。
「成程・・・。ではもう一度聞こう。そなた達は何者なのか?」
「何・・・!?」
「我々の命を取るともりはないと言った。では何故ここにいる?あなた達はなんの為にここにいるのだ?」
「・・・・説明不要。我々のことは構わなくていい。しばらくすればここを出る。」
「・・・悪いがそのような言い分は通すことは出来ない。」
「・・・ならば?」
「・・・弓衆隊、用意!」
ぎぃいい〜と耳を覆いたくなるほど嫌な音が響く。
「あれだけを狙え。後ろの子供は狙うな!」
「フン、勝手にしろ。」
「放て!!」
ドドドドドドドドドドドン!!
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・あ?」
20に及ぶ矢は総隊長の体を見事に射ていた。
「バ・・・・バカ・・な!?・・・私には・・・バリアーが・・。」
ガハッと血を吐き・・・総隊長はその場で倒れた
T・Pのバリアーというものは、次元の操作によって成り立つものである。使用者の体だけを別次元に移すのだ。ところが現在時空間のバランスが壊れ、ユニホーム付属の次元転送制御機能が使用できなかった。
とにかく、こうしてT・P総隊長 青村早紀は絶命した。
「あ・・・・・わああああっ!!!たっ・・!助けてぇええ!!」
怖くなって泣きながら、その場から逃げ出そうとするスネ夫、しかしその場一帯は全て囲まれており逃げようにも逃げられるわけがなかった。
「ド・・ドラえもん!!なんとかしてよ!」
泣きながら懇願するスネ夫、だが・・・。
「どっどうすることも・・できない・・・・よ。」
「そっ・・そんなあ・・・!!」
バリアーが使えない。次元転送が出来ない。どこでもドア使用不可。『RR』も使用不可。使えるとすれば空気砲、ショックガン、ヒラリマント・・・・こんなもので逃げられるワケがない。
「君達に聞きたい。」
先ほどまで総隊長と話をしていた青年が問いかける。
「君達は我々に抵抗するつもりはあるか?我々は君達に興味がある、悪いようにはしない。おとなしく投降することを勧める。」
「・・・・・・・・・。」
3人は顔を見合わせた。相手側は『悪いようにはしない』と発言しているが、総隊長を殺した相手など信用できるはずがない。
現に今目の前に鮮血が広がる総隊長の死体がある。だが、答えにNOと言う事は許されない。言ったら最後、殺されるのみだろう。
「・・・。」
3人はその場でうつ伏せに寝た、敵意がないことへの証明のつもりだった。
「・・・・・・、捕らえろ。」
こうして3人はロープで縛られたあと、馬車に乗せられ、連行されることになったのだ。
3人は不安と絶望感で全身の震えが止まらなかった。
「彼らを眠らせてあげなさい。」
誰かがそう言うと突然布で口と鼻を覆われた。
なんだか急に眠くなってきた。予想はしていたが、やはり薬でも嗅がされたのだろう。
(もうだめになったの?なさけないなあドラえもんは。)
そんなのび太の声が聞こえたような気がした。
気がつくと3人には新しい服が着せられており、手錠をかけられ、T・Pの支給品の一切と四次元ポケットを奪われていた。
そして3人は同時に取調べが行われた。
そこは全面なんかの大理石で作られた6畳ほどの小さな部屋、そこに全面幾何学的な模様が描かれている。明かりは3・4つのランプのため薄暗かった。
「・・・・・・。」
3人は俯いたままお互いに何もしゃべることが出来なかった。旅立ってからここまで本当にあっという間の出来事である。それがもう行き止まりになるとは。
「・・・どうだね?気分は。」
「・・・・。」
やってきた先ほどの青年と顔を合わせたくなかった。総隊長を殺された恨み、自分達がこれから殺されるかもしれないと言う恐れからだった。
「君達の代表者は誰かね?」
「・・・隊長ならもう死んじゃった。」
スネ夫がぼそっとつぶやく。
「・・・なら、君たちの3人の中では?」
「・・・・・。」
スネ夫と静香はドラえもんを方を向いた。
「では君だ。君、名前は?」
「ドラえもんです。」
「ドラエモンか・・。では、君たちはどこから来た。」
「・・・正直に言えばいいんですか?」
「ああ。」
「・・・・・・・・・。」

それからドラえもんはどこから来たのか、自分達は何者なのか、今ここに自分達がいる理由、などをなるべく詳しく話した。
「・・・。というわけなんですが。」
「・・・信じられないな・・。そんなことが君たちにあったなんて。」
「でしょうね。だから総隊長は話さなかったんだと思います。」
「・・・しかし、君たちが言っていることが嘘であると言う証拠もないのが事実だ。」
「・・・・。」
「君たちが乗ってきたという『タイム・マシン』とやらを動かすことは?」
「もう不可能です。」
「何故だね?」
「あのタイム・マシンは軍事用なので時間犯罪者などの他の人の手に渡らないよう、特殊な起動方法を取っているんです。通常はぼく達3人と隊長の声紋を確認させればいいんです。
ただ非常時の場合は隊長一人のみでいい。しかし現在その隊長が亡くなったのでそのどちらも不可能です。
T・P本部はバリアーが効かなくなる・・・またはT・Mがオーバーレブすることなど当然のように考えていませんでしたから。」
「じゃあこれから君達はどうするんだね?」
「・・・T・Pがここへやってきてくれればいいんですけど。こちらも今でも向こうに通常電波を飛ばしてはいるんですが、あちらに届くまで時空間の乱れの影響でかなりの時間がかかります。
このかなりの時間というのが問題で後291年11ヶ月9日かかる計算になってるんです。」
「なんだってえええ!!」
初耳だったスネ夫・静香は驚く。291年後というのは絶対に自分達がもう既に死んでいる。
「可能性があるとすればタキオン通信・・・。まずは超時空ホール・・その核の部分を再び開け、そして電波を飛ばせばわけないです。」
「その超時空ホールとやらはどこにあるのだね?」
「この世界での『竜』の出現ポイントがそうなるはずです。しかしレーダーは無反応。ぼく達は自力で『竜』を探し出し、さらに出現ポイントを見つけ、そこで核を開く方法を考え出し、開いて『RR』からタキオン通信を開始する・・・ことになるでしょう。」
「・・・できるのかね?」
「・・・99,999%不可能・・・です!」
うわああああん!!とドラえもんは泣き出す。それにつられてスネ夫・静香が泣き出す。
もう、自分達は絶対絶命なのだ・・・!
「・・・君達が言ってること何一つ信じられないが・・・、我々は君達の技術力を認める。君達から敵意を感じることもないからだ。」
「・・・・うう。」
「君達を客人と技術者として認めよう。君達の隊長の件は我々のところも非がないわけじゃない。
だがあれは我々にとって正当な行為だと思っている。君達の隊長が抵抗しなければ・・・こんなことにはならなかったんだ。」
「そんな!矢で撃ってくるなんて明らかに殺そうとして殺したんじゃないか!!」
スネ夫は叫ぶ。
「隊長は皆さんを殺すとなんて考えてませんでした!そう言ってたはずです!!」
静香も叫ぶ。
「・・・相手が抵抗する意志があった以上、いかなる理由であれ、不審者は罰せなければならない。今回は君達の隊長は謎めいた兵器を使っていた。そのため処罰の対象となってしまった。」
「そんな!!」
「ダメだ!!」
「!?」
スネ夫と静香はもう一度抗議しようと思ったが、ドラえもんはそれを制してきた。
「わかりました。そちらがそこまで言うのなら今回のことはお互いに水に流すことにしましょう。」
「・・・わかった。」
「これからよろしくお願いします。」
「こちらこそ、君達にはまだまだ聞きたいことが山のようにあるからな。」
「・・・。」
「ディーだ。」
「え?」
「私の名前だよ。それでは後で部屋に案内する。それまでここにいてほしい、では。」
音を立てて石で出来た重々しい扉が開けられ、そして閉められた。
多分鍵でもかけているであろう。自分達が開けようとしても開くまい。
「どういうことだよ、ドラえもん!あいつ等の言いなりになるなんてさ。」
スネ夫を怒りを込めてドラえもんを非難する。
「反発したところで相手に勝てないよ、それにここから逃げた所で行く当てもないし、なにより情報がない。
まずはここでこの世界に関する情報を集めること、行動を起こすのはその後でも遅くないよ。一応相手はぼく達を歓迎するって言ってたし・・。」
「でも・・・。」
「仕方ないよ、よくよく考えれば隊長も悪いと言えば悪かった。」
「人をひとり殺されて『仕方ない』って・・・!」
「・・・ぼく達には選択肢がないんだよ・・・。『仕方ない』って考えることしか・・・。」
「・・・・・。」
再び音を立てて石の扉が開く。
「お迎えにあがりました。どうそ。」
牡丹燈籠(ぼたんとうろう)を持った上品な着物を着た女官と思われる女性が笑顔でやってきた。
終始笑顔だったのは相手が子供であることと、このドラえもんのユーモラスな風貌のおかげだろう。
「しばらくお待ちくださいね。」
と言って、鍵を使って手錠を外す。これで少しは自由の身となったが何も出来ない。
「では行きましょうか。」
女官の後についていく。ここら一帯は牢獄のようだ。壁中にのいたるところに楔形文字でなんやら書かれている。
「さぞかしお辛かったでしょう、あそこは特別に大変でしたから。」
「・・・・?なんのことです?」
「いえ・・・みなさまが先ほどまでいた場所ですよ。あそこにはもう、それはそれは何重にも結界が張られておりましたから。」
「・・・?結界?」
「あら?聞いたところによると皆様は新種の術使いとお聞きしましたけど?あそこの結界は力を出せないようにって・・それはひどくて。
見習いの術者の方なんかたまに痙攣を起こしたかと思ったらそのままバッタリと死んじゃったなんて話よく聞きますが。」
「・・・術使い・・・。」
3人は顔を見合わせる。術使いってなんだ?
「えーと、ここを上がっていきます。」
ようやく狭い廊下を抜け出したと思うと、今度は階段である。
「足元に気をつけてください。」
薄暗い中、足元で蛍光に光る楔形文字は幻想的だった。
5階分上ったところで大きな広間が見え、さらに向こうに見える窓からは外の光が見える。

今まで薄暗かったところに居た反動からか、外の光の眩しさに思わず目を細める。
「わぁー。すっごいな・・。」
そこはまるでアンコールワットに近かった。石による彫刻も見事だし、なにより石そのものが馬鹿に大きいのだ。
地中から這い出たかと思わせる巨大な二等辺三角形の大理石ののオブジェの数々が、建物の背後にそびえ立っており、それは巨大な大砲が搭載された要塞のように思わせた。
「・・・初めて見るな、あんなの。」
「あそこは術の研究所です。今は術者の皆様があそこで研究と稽古の日々を送っていられます。」
「へえ〜。その術ってのは魔法みたいなものなんですか?」
「ええっと、そうですねー。我々オンカミヤリュー族の方が大変な学習をこなされ、厳しい稽古を耐え抜いた一部の方がさまざまな術を使いこなせます。
主に天候操作系統ですね。今現在最高の術者はカミュ様なんですよ。」
「カミュ様?」
「始祖様の力を最も強く受けづかれたここの『オンカミヤムカイ』の第二皇女です。」
「つまりお姫様ってことなんだ、それはそれは・・・。」
「皆さまとそれほど年は変わらないと思いますけど。」
「えっ?そうなんですか!いいなぁ、魔法を使えるお姫様なんてあたし羨ましいわ。」
静香ちゃんがうっとりとした口調で言う。
「・・・そうですね。会いなされたなら一言声をかけて差し上げてください。黒い・・・羽が目印となるはずです。」
「黒い羽か・・・・。」
「では、こちらにどうそ。」

案内されたのは、それほど大きくはないのだが、これまたずいぶん立派な石造りのドーム型の建物である。
全面眩しいほどの大理石が高級ホテルのロビーみたいだ。
「ここはこの國の大使館となっています。」
「大使館!」
「皆さまは当分こちらで過ごされていただきます。不自由なところがあればなんなりと仰ってください。」
唖然とするドラえもんたちをよそに女官はさっさと先へ行ってしまう。
「こちらがドラエモン様、向かってスネオ様、そちらがシズカ様のお部屋となっています。」
中を見てみる。そこに広がっているのは8畳の床と壁が藍色の大理石で作られたとんでもなく高級感あふれる部屋である。
「ヒェーッ!こりゃあすごいや!」
「では本日はゆるりとお休みなさってください。用があればいつでもそのへんの者に声をかけてください。では失礼いたします。」
ぺこりと頭を下げた後女官は行ってしまった。
「ちょっとみんな集合。」
ドラえもんはスネ夫と静香ちゃんを自分の部屋に入れる。
「さて、ここまでの流れ、二人にはどう思う?」
「おもてなしてくれるのはいいけどさ、なんかやりすぎって感じでウラがありそうだね。」
「それはあたしも思うわ。いくらなんでもこれはおかしいわよ。だってさっきまであたし達は殺されるかどうかっていう事態だったのに!」
「そうだね、でもそれは多分こういうことだよ。さっきのディーって人はぼく達を客人と『技術者』として認めるって言ったんだ。つまりぼく達はこの国の技術や文明の向上のために知恵を貸せって言ってるんだろうね。」
「でも・・・そんなにあたしたちって『技術』を持っているように見られたのかしら?」
「『RR』だろうね。あれがあの人たちにとって、とても凄いように見えたんでしょ。」
「それほどまでにぼく達・・・T・Pや秘密道具の技術が欲しいのかな。」
「多分ね。この国・・・いや世界はまだまだ科学による文明が進んでないと見た。」
「それじゃあの『術』ってのは?」
「それはよくわかんないね。どちらにしろ、ここはぼく達の認識してる領域を遥かに凌駕してる世界だから・・・。」
「・・・そうか。」
「のび太さんたち。こんな世界で二人きりで行って・・・今どうしてるのかしら・・・。」
「・・・・・・。」
その問いに答えられる者はいなかった。
664うたわれ 本日の反省:03/04/03 04:34 ID:mPu04BFn
ダメくさい俺設定開始。だめぽ。
665名無しさんだよもん:03/04/03 04:40 ID:3U6ZXr0w
まぁまぁそんなこと言わずに(・∀・)ノ旦チャノメ!
666うたわれ 本日の反省 番外編:03/04/03 05:17 ID:mPu04BFn
   ∧_∧
  < `ш´>
  ( つ旦O
  と_)_)
サンクス。
667名無しさんだよもん:03/04/03 05:42 ID:BzR10W4w
超先生死んじゃった.....



黙祷・・・。


やっぱりやめ
668名無しさんだよもん:03/04/04 15:03 ID:iTTV0BYe
さて、ここから物語がどう動いていくのか....。
669名無しさんだよもん:03/04/04 16:38 ID:DhAI9neS
公式ページにコラム追加されてた。

で、その中のOP(仮の曲指定は
かなり斬新ですなw。詞も曲に合ってるし。

OPというよりは大長編中の挿入歌?
670うたわれ 雑談:03/04/05 01:38 ID:KNUQCS34
超先生っていうのは名前だけ借りたものなんです。(最初は違う名前だった)
で、問題のOP。>>669さんあんがと!!FCの曲なんぞ誰もわからないと思ってた(w
大長編中の挿入歌のほうがいっか。「夢幻三剣士」っぽく戦闘中に流れるイメージのほうが。
詩はあの曲からイメージしたものです。一部意味不明(藁
それにしても「誰だ誰だ誰だ誰だ!」はなぁ。(´Д`)ウタイズレェ。
それと同じように、小説のほうのイメージなんかも曲に合わせることも多いです。
「このシーンはバックにこの曲が流れていそうな雰囲気にしよう」てな具合に。

今後とも意見よろしくです。
「ドラえもん のび太とうたわれるもの公式ページ」
ttp://www.tekipaki.jp/~midaresetugekka/doratop.htm
「葉鍵でドラえもんを製作しないか? のまとめぺーじ」
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/9698/daichouhen.htm
671名無しさんだよもん:03/04/06 01:55 ID:4OPAoyLy
われものは未プレイだが、やってみようかなと思った。
672名無しさんだよもん:03/04/06 23:47 ID:0woPVKHR
hosyu
673名無しさんだよもん:03/04/07 15:47 ID:L9QyKWO7



美少女が顔出しでウンチ、オシッコしてるのを公開してるサイト
http://www.prettyhips.net/yukari/
674名無しさんだよもん:03/04/08 15:37 ID:exk8SRtZ
続きが来ないなぁ…(´・ω・`)ショボーン
新年度に入って忙しいのか、それともマジ飽きしてしまったのか…
675名無しさんだよもん:03/04/08 21:34 ID:VllVAKzs
まぁ、気持ちはわからんでもないが気長に待て。
小説ってのは案外書くのに手間がかかるものだしな。
俺はたとえ半年以上間が開いても待つつもりだ。
676名無しさんだよもん:03/04/08 22:25 ID:jJ5i/Ijp
そうそう、俺だって半年以上も偽蔵等ヲ・・・・゚・(ノД`)・゚・
677名無しさんだよもん:03/04/08 22:46 ID:u2sXnx/o
マターリと待ちませう。
678うたわれ 第7回 :03/04/09 03:27 ID:yFP6BpMD
あー皆さんごめんなさい・゚・(ノД`)・゚・
最近ちょいと忙しくなってきたのですよー。
ココに一回投下するだけでも結構時間かかってしまうので、
なかなか時間取れないとキツイのですわ〜。
あ〜、でもあと1週間ぐらいしたら一旦打ち切らないとならんのですよ。
一ヶ月ぐらい間を開けさせていただきます。
その間、まとめさんのほうで書き溜めてる分委託していいでしょうか?
一気に公式ページで掲載してしまうよりも、ここで徐々に掲載していったほうが盛り上がるし。
とりあえずスタート・・・。
翌日。
予想通りの展開が3人を待っていた。
まず、昨日に引き続きさらに綿密な身体検査。伝染病、その他の健康上の問題の審査。
挙句の果てには体力測定、IQ判定テストらしきものまでやらされた。
「ハァ〜いつまで続くんだろ?」
「皆様がここに居る間はずっとかもしれませんよ。」
昨日からドラえもんたちの専属となった女官が言う。
「特にドラエモン様は我々が見たこともないような人ですし、見たこともない不思議な道具をたくさんお持ちになられているので、ディー様の興味が尽きないのでしょうね。」
「あのディーって人は何やってんの?」
「哲学者ですね。皆様方のいう『科学者』はこの國にはおりませんでしたので、これからは『哲学者』と『科学者』を掛け持つことになるでしょう。
ディー様の信用はそれはそれは高く、オンカミヤムカイ皇、同時に賢大僧正(オルヤンクル)でもあるワーベ様にも絶大な信頼を得ているのです。」
「はーん。あの人がねえ。」
「・・・ところで、調べておきましたよ。この國に『ノビ ノビタ』、『ゴウダ タケシ』もしくは『ジャイアン』という名前の方がいらっしゃるかどうか。」
「それで!?」
「残念ながら該当する方は一人もおりませんでした。」
「そうですか・・・。」
3人はがっかりした。
「さて・・・と、これから皆様には昼食となります。あちらの個室でお待ちください。」
「ハーイ。」
ここの食事は豪華だった。とにかく量が多いのだ。見たことがない新鮮な魚、野菜、地方の特産物は珍しくてさらに美味かった。
「でも、どらやきはないんだよねえ。」
当たり前のことを口にしてみる。
「しょうがない、『グルメテーブルかけ』!」
4次元ポケットは返してもらっていた。相手に「ポケットの中の道具は定期的にメンテナンスしないと、4次元化学反応を起こして大爆発するかも。」と嘘をついたら、恐れおののいて返してくれたのだ。
ただし定期的に30種ぐらいづつ向こうに貸し出さなければならないのだが。
「じゃ、どらやき〜。」
「ドラちゃん、今からそれ食べたらお昼ご飯食べられなくなるわよ。」
「そうだよ、今日はどんな食事が出るのかなぁ。」
スネ夫と静香はここの食事に大満足していた。
「ぼくはねえ、一日一個はどらやきを食べないと体が動けないんだ。」
それを聞いてスネ夫はジャイアンの言葉を思い出した。
『おれは、一日一回はのび太を殴らねえとメシがまずいんだ』
なんだか懐かしい言葉だった。
「うわっ!」

「・・・?誰かなんか言った?」
「ううん、別に。」

「しゃ、しゃべった!!」

「・・・ホラ、やっぱりどこからか声が聞こえるよ。」
「ホントだ、・・・でもどこにも誰もいないよ。」

「かっ・・・。」

「可愛い〜ぃ!!」
「うわわっ!!」
ドラえもんに突然謎の女の子が抱きついてきた。その女の子は10代中ごろあたりに見えた。
「ねえねえ、『これ』なあに?」
抱きついたままスネ夫と静香に聞く。
「あ〜、え〜とですね。なんなんでしょう?」
ここで『ロボット』という言葉は存在しないので困る。
「えー、オホン!」
ドラえもんはちょっとその女の子から離れて、
「こんにちわ、ぼくドラえもんです。」
・・・・。
「きゃーっ、可愛い〜!!」
ぎゅーーっと抱きしめられるドラえもん。
『・・・狙ったか?』
スネ夫は睨んだ。
「・・・羽が黒い・・・もしかしてカミュさんですか!?」
静香がその場から立ち上がって問う。
「あーそうだよ。私はカミュ。カミュっちって呼んでね!」
「カミュっち・・・。」
スネ夫と静香はしげしげとその女の子を見てみる。
背は自分達より頭ひとつ高めで青い目で銀髪。気さくでひとなつっこそうな顔に似合わず胸が大きい。
2人が考えていた一國の姫君というイメージとは少し違っていた。
「あれ?もしかしてあなた達ってディーが言ってた『なんとかベラベラー』の人?」
「もしかして『タイムトラベラー』のことですか?」
「そうそう!なんか時を越えてやってきた人とか聞いてたけど、まさかこんな子たちだったなんてね!うわぁ〜凄いなあ〜!」
「いやあ別にそうでもないです。」
帰れないタイムトラベラーだし。
「でもでも!カミュが知らない世界から来たんだよね!なんだか憧れちゃうなー。時を駆ける少年少女って。」
「・・・・・・・。」
「あれ?どうしたの?」
「あー、いえ、なんだか・・・ぼく達ってタイムトラベラーなのに、なんだか随分気さくに話しかけてくれるなぁと思って。もちろん悪くないんですけど。」
今までこのオンカミヤムカイで自分達に接してくる人たちは、あの女官を除いてはずいぶん警戒されてきたものだった。
特に「正体不明」のドラえもんは。
「別にー。そういうのカミュは嫌いだし。こだわらないほうだから。」
一瞬だがそれを話していたカミュの表情が曇ったような気がする・・・。
「それにこのドラエモンだってこんなに可愛いし〜。」
「いやあ。あはは・・・。」
「あっいたいた!姫様ぁ〜!!」
髭を生やした老人が入ってくる。どことなく高貴な格好をしていることから位が高い官職の官吏なのだろう。
「あ〜あ、見つかっちゃった。」
えへへと舌を出すカミュ。
「まったく、勉強を抜け出したと思ったらこんなところに・・・。おや、あなた達は・・・。」
「ほら、ディーが言ってた『時を駆ける少年少女』だよ!」
・・・少なくともディーはそういう風には言ってなかったと思う。
「ああ、あの隕石が落ちてきたかと思わせたあの・・・。そうですか、姫様がご迷惑をかけました。」
「いえいえ、とんでもない。」
「じゃあね!また会おうね、ドラち〜!」
「ドラち〜・・・。」
「ばいばい、またね〜。」
嵐のようにカミュは去っていった。
その翌日。
「今日はオンカミヤムカイ皇、ワーベ様とオンカミヤムカイ皇女のウルトリィ様との会談があります。」
「ウルトリィ様って、あのカミュ・・・さんのお姉さんですか?」
「はい。そのとおりです。」
「そんな人たちとあたしたち何を話しあえばいいのかしら?」
「まあ、一応ごあいさつということでしょうから、あまり気になさらなくてもいいでしょう。我々は皆様を国賓としてお招きしておりますので。」
「『こくひん』ねえ・・・。」
「確かに、我々は皆様方に少々ご無礼な振る舞いを見せておりましたが、それは皆様方の本質を知らなかったことでのこと。今更ながら私めから、お詫び申し上げます。」
「あーもーいいよ。そんなの。隊長が亡くなったのを一方的にそっちのせいにも出来ないと思うし。あれはもう事故と思うことにしたんだ。」
あれは事故・・・。仕方のないこと・・・。そうしておかないといつまで経っても前へ進めない・・・。
「いやになるけどね。」
「始めまして、時を超えてこちらにやってこられた皆様。私がこの國オンカミヤムカイの皇(オゥルォ)ワーベと申します。」
今までとはまた一段と派手になった部屋で会談が行われた。
「私はワーベの第一皇子、ウルトリィと申します。どうかお知りおきを。」
「あ・いえ、どうもぼくはドラえもんです、ハイ。」
今までまったく知らなかったとはいえ、一国の皇とそのお姫様の前で思わず緊張してしまう。
ワーベはとにかく威厳がある老人だ。身振りそぶりから本当に皇としての貫禄もある。
それとは対照的に眩しいくらいの存在感があるのは、ウルトリィである。
そのあまりに美しい金髪と、清楚であふれるほどの気品を兼ね備えた姿はまさに「姫君の中の姫君」にふさわしい。
「まずは詫びるべきですな。この度は我々の無知無礼から起きてしまった『事故』、本当に申し訳ありませぬ・・。」
「あーいえいえ。もうしょうがないことですし。」
最近謝られることが多いような気がする。
「さらにカミュのほうも皆様方のお世話になったようで、カミュも喜んでいました。本当に有難うございました。」
「いえいえ、そんなたいしたことしてませんよ。」
「今後も、もしご迷惑ではなかったらカミュの遊び相手になってやってくださいませんか?あの子は皆様方と年が近いですし。」
「はい。それは喜んで。」
「重ね重ね有難うございます。」
「いえいえいえ。こちらこそ。」
場慣れしていないドラえもんたちは2人の対応に少し困ってしまう。
「しかし時を越えてやってこられるとは本当に不思議なものですな。今までそういう話はおとぎ話ですら聞いたことがない。」
「お父様、この世界にはまだまだ私達には知らない世界があるみたいです。これからも私達は精進しなくてはならないみたいですね。」
「そのようだな。」
「でー、ぼくらはこれからこの国で何を?」
「いえ、皆様方はこの上ない国賓ですので、何をしなくてはいけないというものは特にございません。
敢えて言わせていただけるのなら、やはり皆様方の知恵をこの國に教授してもらいたいのです。」
「しかし、ぼくらももともとは普通に暮らしてた人間ですから、『RR』のしくみがどうだのと言われてもなかなか・・・。」
「いえ、構いません。皆様方の知る範疇で結構です。」
「はぁ。」
「わっ!ドラち〜だ!」
そこに割り込んでやってきたのは、
「カミュ、また貴女という人は勉強をさぼってきたのですか?」
「あー、そっ、そんなことないよ!アハハ・・・。」
「嘘だとわかっておる。白状せんか。」
「だってムントが今日ドラち〜たちがお父様達に会いに来るって言ってたからさ〜。ちょっと様子を・・・と思って。」
「はぁ、もうよい。」
「ねえねえ、ドラち〜たちと遊んできていい?」
「・・・。」
一斉に視線がドラえもんに集中する。
「あーいいですよ。ぼくたちは。」
「よーし!じゃあ行こう!」
カミュはドラえもんの手を引っ張って走っていってしまう。
「あっ待ってえ。」
それに続いてスネ夫と静香も後を追いかけていった。
「・・・ディー、もう一度聞くが本当にあの子たちは時を越えてやって来たと申すかね。私にはどうも普通の子供達にしか見えぬが・・・。」
物陰に隠れていたディーが姿を現す。今までの会談を監視していたのだ。
「時を越えたという確信はありません。しかし彼らが証言する、時を越えるために乗ってきた乗り物・・・『タイムマシン』と呼称されるものの材質は、木製でも鉄でも銅でもない、我々が未だ未確認の物体でした。
さらにあの『タイムマシン』には我々の未だ知らぬ領域の技術は山のように積み込まれております。」
「ふうむ・・・。もしもあの子たちがこの國にずっと協力してくれるなら、この上なく強力な後ろ盾になってくれるのだが・・・。」
「しかし、皆さんいい子そうで良かったですね。カミュも楽しそうで・・・。」
「ああ・・・。」
「さてさて、何して遊っぼか!?」
カミュはワクワクしている。
「そうだ!ドラえもんなんか出してよ。なんか遊べるもの!」
「よ〜しそれなら・・・・・・・・。」
「・・・・・・まだ?」
「『雲の粘土』!」
「なあにそれ?」
「いいかい・・。」
粘土というよりクリームが入っているような入れ物からふわふわとした雲のカタマリを取り出す。
こねこね・・・。
「ほうら、『おさかな』。」
魚の形をした雲ができた。
「うわあ・・・。」
カミュは感激して声も出せないようだった。
「でも、それじゃただの粘土と変わらないじゃない。」
「このねじを巻けば空に飛ばせることができるんだよ。」
ぎーこ・ぎーことねじを回す。すると魚の形をした雲はまるで生きているかのように動き出した。
「うわぁ!すごいすごい!!」
空へ飛んでいく魚のような雲・・・。
「さあ、みんなでやってみよう!」
「よーし!」
「ほんじゃぼくも。」
・・・。
「よし出来た!ぼくは船だ!」
スネ夫が作り上げたのは帆船だった。最初はこの遊びを馬鹿にしていたが、もともと物づくりが趣味のスネ夫は次第に楽しくなっていたようだった。
「あたしは白鳥!」
「カミュはドラち〜!!」
「えっ!?これが!?」
ドラえもんは疑問視する声を上げる。確かに顔はなんとなくそんな風に見える。ただ形が崩れていてしかも首しかないのは不気味だった。
「じゃあ飛ばしてみよう!」
大空へ羽ばたく静香の白鳥。勇ましく飛んでいくスネ夫の帆船。ふわ〜っと不気味にドラえもんの生首が飛んでいく・・・。
「ようし今度はドラち〜の・・!」
「もうやめてえ〜。」
「ふう〜まいったまいった。」
部屋に戻るなりドラえもんはため息をついた。
「いいじゃない、楽しかったんだしさ。」
「もちろん楽しかったんだけどさ・・・。でもいいのかな・・・。」
「何が?」
「この国にぼくたちが技術協力することがさ。」
「だって、そうしないでもしないと、ぼくたちはこの国にいられないんだよ?」
「・・・でもよくよく考えてみれば、まだこの世界は鉄の作り方すらまともに伝わっていない。それをぼくたちがいきなり文明の発展というものを無視して科学技術を教えていくことが、いけないことなんじゃないかなあ・・・って思ってね。」
いつになく神妙な面持ちでドラえもんが呟く。
「いいじゃない?ここはぼく達の世界より未来の世界なんでしょう?だったらぼく達の歴史が変わることもないでしょ?」
「まあ、そう言われてしまえばそうなんだけどね。」
「ならいいじゃない!ぼく達はみんなに感謝されているんだよ。ぼく達はみんなにうたわれているんだ、ぼく達はうたわれるものだ!」
「うたわれるもの・・・ねえ。」

窓の外を眺める・・・。
今夜はこんなにも月がきれいだ・・・。

第2部 第2話 「宗教國家オンカミヤムカイ」終わり 
第3話 「宵闇と森」に続く。
692うたわれ 反省会:03/04/09 04:00 ID:yFP6BpMD
敬語嫌い(w
雲粘土で遊ぶネタは私的にかなりイマイチで、
なんとか他のネタに変えられないかなと、考えては見たんですが・・・。

次回、ジャイアンが大活躍〜。
病弱のあのヒロインも登場(w
693名無しさんだよもん:03/04/10 00:20 ID:q+a9H31A
どらち〜って、何かドラキーみたいだw
694名無しさんだよもん:03/04/10 11:58 ID:JISI97WJ
これ、実際に映画化されたら祭りだな。うん。

(というか、元ネタ知らなくてもある程度成立してるしなぁ・・・)
695うたわれ 第8回:03/04/11 03:38 ID:W9nmKeiL
ギャルゲーとドラえもんの共通点とは何か?
それは「あんなこといいな、できたらいいな」の徹底した追求である。
最近のゲームも漫画も複雑&難解で
人間の欲望の根本である「願望の実現」をストレートに表現したものがないと嘆く。

・・・とか言ってみる。

第8回開始。
=「ドラえもん のび太とうたわれるもの」= 

「いいか、ジャイアン?確かに今お前ェはまだまだ背も低いし、力も大の大人に比べりゃまだまだッてトコだ!
だがな、戦い・・・いや殺し合いにおいて、そういった体力がどうだの力がどうだのってェのは二の次なんだ。
刃が心臓を貫けばどんなバカでっけェ奴だって結局は死ぬし、矢が頭に刺さればそれだけで倒れる。
・・・もしもお前ェが誰かと殺し合うのなら『殺す』よりも『人間を壊す』って考えたほうがいいかもな!
武として一流、超一流を分けるのは実の所、経験でも、力でも、得物でもねェ!!直感だ!!いかに自分がその場を生き残るかは直感で切り抜けるしかねェぞ!!
それが『死闘』ってモンだ!!」
「おおッ!!で?おれはどう戦えばいいんだ!?」
「それはお前ェで考えろ。」
「あ〜?」
=第二部 「國と言う名の蜃気楼、友情と言う名の契約証。」=
=・・・・・・・・・・第3話「宵闇と森」=

「だってよォ、今お前ェが『子供』ッてェだけで圧倒的に不利なんだからよ。
お前ェが持っている特性を100%フルに生かさねえと、話になんねェだろ?お前ェが持ってる特性なんかお前ェしかわかんねェんだから、そこんとこなんとかしとけ。
んで、もってから俺に稽古をつけに来い。わかったか?」
「ああ・・・。まあわかった・・。」

「で、どう思う?のび太?」
「えー?自分で考えるんじゃないのー?」
ジャイアンはひとまず銃の練習に勤しんでいたのび太に声をかけた。
「だっておれとお前は心の友だろう?お前おれさまのファンクラブの会長だろう!?」
「あー、なんか懐かしいね、それ。そんなのもあったねぇ。」
「だろ?だからお前はおれのことよくわかってると思ってさ。」
「む〜、ジャイアンの特性ねぇ?何か戦いにおいて得物になるようなもの・・・?」
しばらく考えたのび太が出した答えは・・・、
「・・・歌とか?」
「歌?」
「そーそー。あの物凄い歌を相手に聞かせればもうそれだけで、眩暈、頭痛、吐き気に失神・・・。」
「のび太?その『物凄い』ってのはどういう意味だ?」
「うっ・・!ビッ、ビックリするっていうことだよ!ジャイアンの物凄く響く澄んだ歌声が相手の脳に刺激を与えるんだ!」
のび太は意味不明な説明で切り抜けようと努力する。
「・・・むぅ・・・?しかしなぁ、やっぱ歌うまでに相当隙が出来るだろうし・・。」
「んー、じゃあひとまずアルルゥはどう思う?」
「・・・修行。」
「え?」
「修行あるのみ。」
「修行つったってどうしたらいいんだ?」
「・・・来る。」
ピューッ!とアルルゥは走っていってしまう。
「あ、おーいアルルゥ!?」
ジャイアンとのび太はアルルゥの後を追いかけた。

「アレ。」
アルルゥを追いかけた先にあったものは・・・。
「滝だ!!」
森の中に滝がある。高さは10メートル程度。それほど大きいものではない。
「あれに打たれる。」
「何?・・・なるほど、確かに修行にはなりそうだな・・・。」
「耐えていれば、きっと何かがわかる。」
「・・・つまり『自分』を知るためには絶好の場所ってこったな!よーーし!!」
ジャイアンは上半身裸になって泳いで滝へ向かう・・・。
「うわッ!冷てぇー!!」
「がんばれ!ジャイアン!!」
「よよーし・・・いいくぞおおおお・・・。」
恐る恐る滝に打たれに行くジャイアン。
「うぉおおおおお・・・・・。」
その瞬間から頭から思いっきり重圧がかかり、思わず気を失いそうになる・・。
「ぐわっ!!ぜえぜえ・・・。」
耐えられずにその場から逃げる・・・。
なんてこった・・・!立っているだけなのにそれがこんなに大変なことだったとは・・・!!
「・・・くっ!もう一回だぁ!!」
ヤケになってもう一度打たれてみる・・・。
「ぐぁあああ!!」
滝の流れに吹っ飛ばされ、泉に沈むジャイアン・・・。
「ジャイアン!!」
「ダメ!ノビタ!!」
「どうしてさ?ジャイアン死んじゃうかもしれないじゃない!!」
「転んでも泣かない。自分で立つ。」
「・・・・。」
ぶくぶくと沈むジャイアン・・・。

・・・「『道』を進め!どうなるかは行けばわかるさァ!!」・・・

「・・・!!うっぉおおおお!!」
ザブン!!と水面に顔を出したジャイアン。
「ホッ・・・。」
っと、のび太が胸を撫で下ろしたのもつかの間
「うぉおおお!!」
また滝に入っていくジャイアン。
「どっ・・どうして・・!?」
案の定また投げ出されて沈む・・・。
そしてまた水面から・・・。
「行こ。ノビタ。」
「え?・・・でも・・。」
「邪魔しない。」
「う・・・、ウン・・・。」

「ねぇ、大丈夫なの?ジャイアン置いてって」
「大丈夫。」
「なんでそんなこと言い切れるのさ!?危ないったらありゃしないじゃないか!!」
アルルゥに大声を出すのび太。のび太は最近ジャイアンのことが心配だったのだ。
前回の戦いで危ない目に会ったのは自分のせいだと思い詰めていたのだから。ああ見えてジャイアンはたまに物事を思い詰めるような繊細なところがあるのだ。
今回も思いっきり自分を責め続け、痛めつけるに違いない・・。いくら修行とはいえ滝に打たれるなどとは命に関わることである。
「・・・大丈夫、あそこは森の神様(ヤーナゥン・カミ)が集まる神聖な場所。森は正しい生き物を殺そうと思わない。」
「・・・?」
「森は正しい生き物を導く。ジャイアンは森に好かれてる。だから森はジャイアンを守り、そして導く。森は全てを知ってる。
森はジャイアンが知りたいことを教えてくれる。だから大丈夫。」
「・・・そうか。」
その説明はかなり不明確な所が多かったが、なんとなく説得力があった。森を知り抜いているアルルゥが言った事だったかも知れない。
「・・・ぼくも一回滝に打たれてみようかな・・・。」
「ノビタじゃ無理。」
・・・。

「ぶはっ!!」
ジャイアンはやっとのことで水面から顔を出した。頭がクラクラする・・・。酸素不足だろうか?
「うう・・・うわっ!」
岩に乗ろうとするも足を滑らせてしまった。
ザブゥン!とまた沈む・・・。
「・・・く・・そ・・もうダメだ・・・。」
力がもうどうにも入らない・・。
「・・・・・。」
薄れ行く意識・・・。それが何故か居心地が良かった・・。
そんな中、ジャイアンの脳裏に昔の光景が思い出されていた。

・・・「イヒヒ・・・今夜の肝試しでのび太を驚かせてやろうぜ!」
・・・「のび太のことだから、びっくりしておしっこもらしちゃうんじゃない!」
下らないイタズラでのび太をいじめようとする自分とスネ夫・・・
・・・「この布団のシーツ被ったら幽霊のように見えるよ!」
・・・「なるほど!よーし準備開始だ!!」
・・・・・。
・・・「うう・・怖いなぁ・・・・」
やってくるのび太・・・。
・・・「よし!3・2・1で飛び出せ!」
3・2・1・・・
・・・「ワッ!!」
・・・「キャーーーーーーーー!!出たーーー!!」
・・・のび太は驚きのあまり懐中電灯をこちらに投げてきた・・・。
・・・「うわっ!なんだよのび太!!あぶねえなぁ!!」
・・・「あー?なんだジャイアンとスネ夫?」
・・・「ったく当たらなかったからいいけどよ!」
「・・・・・。あ?」
ジャイアンは気がつくと水面に浮かんでいた。
「・・・?なんだったんだ?今の夢は。」
辺りはもう薄暗い。帰るべきだ。
「・・・・結局何もわかんねえな・・・。」
ジャイアンはぐーっと背を伸ばしてたあと、とぼとぼと家に帰ることにした。

「ただいま、カアちゃん!」
「おかえりジャイアン・・・ってどうしたんだい!?そんなにボロボロになって!?」
「あーちょっとな・・。」
「喧嘩でもしたのかい!?まったく男はやだね!単純だから。」
「そんなんじゃないよ、ソポク姉さん。」
と、奥からのび太が出てくる。どうやらソポクが工芸品を作るのを手伝っていたらしい。
「実はジャイアンはね・・・。」
「のび太は黙ってろ!!」
と一喝した後、トイレのほうに行ってしまった。
「・・・?なんだってんだい?」
「ジャイアンもああ見えて色々あるんだよ。」
「へえー。いろいろ・・ねえ?」
翌日の朝。
いつものようにまずは畑仕事から始めることになっているので、村のメンバーが集まっていた時の事である。
「うらッ!うらッ!」
何者かがこちらにウマ(ウォプタル)でやってくる。
「おおっと!?」
ドカ!と音を立てて落馬する。その人には怪我はないらしい。
「ったく!フン朝の目覚めが悪かったから調子が悪りィだけだ!クソが!!」
なんだか知らないが一人で騒ぎ、一人で怒っている。
「・・・おおっ!エルルゥ!!会いに来たぜ!!」
「・・・・ヌワンギ?」
エルルゥがその人物を見てつぶやく。知り合いらしい。
そのヌワンギという男はいかにも意地の悪そうな目つきをしており、藁で編んだハチマキが彼の粗野な感じを引き立てている。
「どうしたの?」
「おおっ!今度こそお前を連れに来たんだ!」
「え・・?」
「前に言っただろ!今度お前に会うときはお前を連れて行くってな!」
「・・・あれ本気だったの?」
「そうだ!さあ今から来い!!」
「わっ!待って・・!」
「なんだよ?」
「・・・・・行きたくない。」
「ああ?」
「行きたくない・・・この村でみんなと暮らしていたい・・・。」
「なっ!?何言ってやがる!?こんな貧しい村なんか捨てちまえばいいだろうが!!いいか?俺についてくればいくらでも贅沢できる生活を送れるんだぜ!!
なんせ俺は皇(オゥルォ)の弟の息子だからな!将来は皇って約束されたモンだ!!その時お前は皇后だぞ!派手な服着れて、高い宝石着けて、香水だってなんだって手に入る!
・・・どうだ?お前はその時、他の誰よりも幸せになれるんだぞ!!」
「・・・・。そんなの・・・幸せなんかじゃない・・。」
「は?」
今の説明はヌワンギにとって相当自信があったものらしく、それに反論されるとは思っていないようだった。
「・・・・私は・・・今のままでいい!・・・ここで・・・みんなと一緒に居られれば・・・それでいいの。」
「・・バッ!バカな!チッ!もういい!お前は贅沢することの楽しさを知らねえだけだ!そんなら無理やりにでも連れて行ってやらぁ!!」
ガッ!っとヌワンギがエルルゥの腕を掴み取る。
「いやっ!止めて!!」
「うるせぇ!!お前は俺と一緒になるのが一番いいんだ!!」
「やめろ!!」
と、そこで一喝したのはハクオロだった。
「なんだぁ?この妙な仮面つけた野郎は?」
「その人はハクオロさん。うちで看病してる人。」
「はぁ・・・なんだよ患者かよ!俺たちのことで口を挟むんじゃねえ!!」
「エルルゥは嫌がっているだろう!まだ自分の愚かさに気づかないのか?」
「んだと!この野郎!!」
ガン!!とヌワンギはハクオロを殴りつけた。が・・・?
「あ・・・・・?」
ハクオロには仮面のおかげで全くダメージがないらしい、それよりも・・?
「・・・ねえ?ヌワンギ・・・その手・・・。かつてない方向に曲がってるけど・・・?」
「・・・・。ヘヘヘ・・・。何言ってんだよ・・・よっと。」
ヌワンギは左手で右手首を元の位置に直す・・・が、ぷらーんと手は再びかつてない方向に曲がるのだった。
「・・・・ぶははは!アホなやつ!!ひゃひゃひゃ!!」
そこで爆笑したのはジャイアンである。
「・・くっクソ!このクソガキが!!」
ぶん!と左手で拳は飛んでくる。だが勢いがないそれは簡単に右に避けられる。
「・・うっ・・。」
気がつくとヌワンギは村の者達に囲まれていた。そして
「ほう?なんか騒がしいと思ったらヌワンギ・・・来てたのかね?」
「ゲッ・・・婆ァ・・・。」
出てきたのはトゥスクルである。
「どうだい?寝小便は治ったかい?まったく・・・来てたのなら声でもかけていったらどうだい・・・?」
「うっ・・・いや、今日はもう急ぐからな!それじゃまたな!エルルゥ!お前もこのガキも覚えてろ!!」
ヌワンギはウマに乗っていってしまった。
遠くで再び落馬したように見えるがどうでもいい。
「あいつは・・・?」
「ヌワンギはもともとこの村にいた奴だ。突如藩主の跡継ぎとして行っちまったんだが・・・。」
「昔は・・・。」
「?」
エルルゥはつぶやく。
「昔はあんな人じゃなかったのに・・・。」
とても悲しい顔をしてつぶやいた。

午後、再びジャイアンは滝へ向かう。
「うぉおおおおおお・・・!!」
少しは慣れたか?1分は耐えられるようになった。
・・・もしもお前ェが誰かと殺し合うのなら『殺す』よりも『壊す』って考えたほうがいいかもな!・・・
『いかにして壊すか?自分より大きくて、力のある相手を・・・・。』
しかし・・・この修行・・・意味があるのか?
『生き残るためには・・・・?』

・・ザブン!!
「ゼェーゼェー!!」
滝壺目指して泳ぐ・・・。
打たれる・・・沈む・・・・。
また・・・意識が・・・沈む・・・。
・・・「わかってねえなぁ!!のび太!いいかバットはな、腕で振るうもんじゃない!体全体で振るんだ!!」
・・・「えいっ!こんな感じ?」
・・・「はぁ〜なんてキレのないフォームなんだよ・・・。いいか!こう振るんだ!こう!!」
・・・「おお〜さすがはジャイアン!キレがあるねえ!やっぱり才能があるねえ!」
スネ夫がおだてる。
・・・「だろ?野球は腰とキレだキレ!!ベースランもキレ!滑り込みもキレ!腰が命だ!!いいか!こうだあ〜!!」
・・・くるくるとスケートのように回る。
・・・「おお〜!!キレがあるねえ」
・・・「だろ!よーしちょっと待ってろ!」
・・・・・・・。
・・・「どうだ?似合うか?」
カアちゃんのマフラーを二つ結んで腰に巻きつけた。マフラーは地面に着いてしまっているほど長い。
・・・「行くぞ!くるくるくる〜!!」
・・・コマのように回るとマフラーは遠心力でぶんぶん振れる。
・・・「わあ凄い凄い!」
おだてるのび太・スネ夫・・・。
・・・「そうか?くるくる〜!」
ボカ!殴られた。
・・・「馬鹿なことやってるんじゃないよタケシ!なんかよくわかんないのがクルクル回ってるから、よく近づいて見たらタケシじゃないか!!
まったく!こんなのぶんぶん振り回してたら近づくにも近づけないだろ!石でも投げてみても、タケシがフラフラして見えるからなかなか当たんないし!!
とにかく!マフラーをおもちゃにするんじゃないよ!!さっさと店番に戻りな!!」
・・・・またひどく下らない夢を見た。
辺りは夕暮れ。さて、もう帰ろう・・・。

その頃のび太はトゥスクルと話をしていた。
「てなワケで王国には平和が戻りました。でもまだ冒険の日々は終わらないのです。新たな仲間を加え再び旅に出て行ったとさ・・・。」
「ほう・・・。お前さんたちの世界ではこんな物語を子供に教えているのかい・・・・。よく出来た話じゃのう・・!」
「まあ面白い話だとは思うけど・・・。」
のび太が話しているのは現在も絶好調、大人気の少年漫画のあらすじである。しかし目の前の老人に関心を持たれるのは変な感じだった。
「よし!明日も頼んだぞ!ノビタ!」
「えー?またぁ〜?」
「ええじゃないか・・・。ワシだってお前さんの為に弾を作っとるんだし。アルルゥも続きが気になるじゃろ?」
「ん!気になる!」
「はいはい、わかりましたよ。ホントに二人とも・・・やれやれ。」

後に、この少年漫画をのび太がトゥスクルに紹介したことが、のび太たちの命を救うことになるなど、この時は夢にも思わなかった。
709うたわれ 反省会:03/04/11 04:37 ID:W9nmKeiL
最近連続投稿の規制によく引っかかるようになりました。
昔はあんまりなかったのに・・・ブラックリスト(?)にでも載ったか?(藁

どうでもいいけど708の「少年漫画」を考えてみてください。
答えわかっても言わないでください、いちおう(w
ヒント・この後出てくる敵の特徴。今でも大人気。
「王国」に平和→新たな仲間加え再び旅に出る。
710名無しさんだよもん:03/04/11 18:27 ID:upWhvjCK
あー、なんか今回のジャイアンを見てたら大魔境見たくなってきた。

>ああ見えてジャイアンはたまに物事を思い詰めるような繊細なところがある

この文見たからかな。大魔境にそんなシーンあるし。
こういう一面を見られるのが「大長編ドラ」の醍醐味だからなあ。よく掴んでますね。

少年漫画はアレで砂。前にのび太も狙撃手として活躍したし(w
711名無しさんだよもん:03/04/12 23:01 ID:k2e1SVoX
少年漫画が分からないな。ともかく保守
712のびわれ(代行人):03/04/13 11:58 ID:olvZf9PG
作者の方から原稿を託された者です。
これから一ヶ月程、毎日2つぐらいずつ投稿していきます。
(作者の方が出張から戻られるまで)


それではさっそく開始。
その日の晩、ジャイアンは夜中に目が覚めた。
「・・・トイレ・・・。」
ここのトイレは外にあり、無論ボットン便所である。
外はここは山奥だからか意外にも冷えるので、その度に着替えなくてはならない・・・。
「昼間・・溺れてたくさん水を飲んだからだよなあ・・。」

用を足した後、何か物音が聞こえた・・。どうやらウマの足音だ・・・・。
「まさかあのヌワンギって奴!寝込みを襲うつもりか!!」
考えてみたら音はエルルゥの家のほうから聞こえた!マズイ!ヌワンギは諦めきれずに夜に襲い掛かってきたのだ!!
「しまった・・・!油断してた!・・・今からのび太や親父を起こしている場合じゃない!!よおし!!」
ジャイアンは早速釘バットを持って単身エルルゥたちの家へ走った・・・。
「・・・・。し・しまった!遅かったか!!」
謎のウマに乗った集団はたった今ウマで走っていってしまった。間違いなくエルルゥの家から出てきたシルエットは女性だった。自分の足で走って追いかけても間に合うはずもない。
「チクショウ!何をやってたんだハクオロさんは!?」
「・・・・!そこにいるのは誰だ!!」
と、そこへ。
「ハクオロさん!?もう!何やってんだよ!アイツら行っちゃうだろーが!」
「・・・何?ジャイアン君はアイツらが連れ去るところを見ていたのか?」
「ああ!急いで後を追わなきゃ!」
「よし!ウマでアイツらを追おう!」
ハクオロがウマに跨り、ジャイアンはその後ろに乗る!
「しっかり?まってろよ!ハッ!!」
ハクオロがムチを叩くとウマは漆黒の森の中を走り出したのだ。
715名無しさんだよもん:03/04/13 12:36 ID:5O7OksQy
(・∀・)ゴクローサン!
「もうちょっとだ!まったくアイツら・・・連れ去るなんて許せねえな!ハクオロさん!!」
「ああ・・・。しかし、本当は誰かに連れ出されたんじゃなくて、自分から行ったんじゃないか?と思うのだが・・・。」
「何言ってんだよ!?そんなわけないだろーが!!」
「そうか・・・?確かに怪しい連中だったが・・・。」
「当たり前だろうよ!」

「ふう・・・。さてこっからがわかんねえ・・・。」
ウマは一度止まる。広がるのは月夜に照らされた山間・・・。
だが・・・。
ヒュッ!!バン!!
突然どこからか矢が飛んできた!
キュキュエエエエ〜!!と鳴声をあげながらウマは行ってしまう。
二人はウマから投げ出されてしまった。
「・・・ッ誰だ!?」
「動くな。」
「ウッ・・・!」
「動けば首と胴が分かれることになる。」
何者かがいつの間にか後ろに回りこんでいた・・。
喉元から伝わる冷たい感触・・・。
これは・・・刃・・!!
間違いなくコイツはヌワンギ達の一味だ!
「誰だ・・何のために我々の後をつけてきた!!」
「!?」
「もう1度聞く、お前らは何のためについてきた!!」
マズイ・・・恐らくハクオロさんも同じようなことになっているに違いない。
どうする?このままコイツに従うか?それとも・・・このまま殺されるか?
イチかバチか・・!やるしかない!!
「・・・・・!!」
あらぬ限りの力を振り絞って地面を蹴る。偶然かハクオロも同時に同じことをしていた・・だが!
「・・・馬鹿が。」
男は自分達の頭上をひらりと一回転しながら自分達の前に立ちふさがる!
一瞬その男の腰のあたりがキラッっと光った気がした。・・・・!
シュバッ!!
慌てて亀のように首を引っ込める!一瞬光の筋が頭上に見えた気がした。
・・・もう一歩遅れてたら・・・死んでた!?
「チッ!!」
男の外套(アペリュ)の留め金が飛びその下から男の姿が現れる。
「見たな・・・。」
そこから現れたのは痩せすぎな躰をした鋭い目をした男・・・。
と言ってもそこにあるのはまったく無駄のない筋肉質の躰。
その眼光は抜身の刀ようにギラギラしている・・・。
「これでこのままお前たちを帰すわけには行かなくなった。おとなしく投降するが良し。さもなくば・・・・」
『ぎぃいいい〜』とどこからか弓を引く音が聞こえる・・・。
(囲まれてる・・?)
「さもなくば死ぬことになる」
(くそ・・・!絶対絶命か・・・!?)
「待たんか!!」
「!?」
そこから現れたのは意外にもトゥスクルであった。
「その死ぬとはどういうことじゃ!?」
「トゥ・・トゥスクル様・・・。」
「トゥスクルさん?」
「・・・・・・・・!?」
(なんでこの男はトゥスクルさんを知っている!?)
「人様の命を奪うとはどういうことかと聞いてとるんじゃ!!」
「あ・・・あれはですね・・・その・・・」
「口答えするする気かえ!?」
「あ・・いえ・・済みません・・・。」
(なんだ?急にヘコヘコと頭を下げだして・・?)
「すまんねえ・・そこのお二人さん・・っておや?ハクオロにジャイアンかね!?こんなところで何をしてるのかね?」
「それはこっちの台詞ですよ。」
「そうだぞ!エルルゥさんはどうなっちまったんだ!?」
「ハァ?」
ハクオロ・男・トゥスクルは頭を傾げる。
「え?だって・・・ハクオロさんはエルルゥさんが連れ去られたからここまで追ってきたんじゃ・・?」
「何言っているんだ?私はエルルゥに頼まれて、トゥスクルさんを追いかけてきたんだぞ?」
「ハァ??」
「そうか・・・エルルゥがの・・・。」
「ったくなんだよ!おれはてっきりヌワンギが・・・って・・。」
ハクオロの話によると、真夜中にトゥスクルがエルルゥに黙って出かけていったのをエルルゥが心配したのでハクオロはその後を追いかけてきたということだった。
「で?そのトゥスクルさんはどこに?」
「ちょっと診察にじゃよ。少しばかり躰の弱い子がおっての・・・。」
「診察ですか?こんな夜遅くに?」
「ああ、夜遅くでないといけない事情があっての・・・。」
「?」
「さて・・・これからワシはこの者たちと一緒に行くことになるが・・・、そうだ、・・・お前さんたちも来るがええ。」
「なっ!?何を言い出すのです!!こんな素性の知れない男とワケのわからないままついてきたこの子供を連れて行けるわけがありません!!」
「・・・この男も子供も家族同然・・・それを疑うと?」
「クッ・・・わかりました。トゥスクルさんがそう仰るのなら・・・。」
「しかし、ワシはこのことを孫に伝えなければ・・・。そうじゃのう・・・。」
トゥスクルは懐から木管を取り出しサラサラと何か書いたようだ。
「これを孫に。」
「わかりました・・・ドリィ!」
「ハイ」
と、どこからか返事がしたかと思えば、いつの間にか額に大きな鉄の装甲を着けた身軽な軽装の上に胸当てをつけ、紺色の袴を着た少女が立っていた。
トゥスクルからその木管を受け取るとザッ!と地面を蹴る音がしたかと思うと、既に少女は消えていた。
「さてと、行くかえ・・。」
「・・・・・・・。」
「なんだよ?顔をジっと見てよお?」
「『オボロ』だ。お前達の名前は?」
「・・・ああ、『ハクオロ』だ。」
「おれは『ジャイアン』。」
「『ジャイアン』はいいとして『ハクオロ』と名乗ったお前・・・巫山戯(ふざけ)ているのか?」
「何もその男は巫山戯とりゃせんよ。それがその男の名前だ。さて行くかいの・・。」
「は・・・ハイ!グラァ!」
「ハイ、では失礼します。」
とまたまたどこからか現れた少女が現れた。先ほどのドリィとまったく同じような顔をしてまったく同じような服を着ている。間違いなく双子だろう・・・。違うとすれば袴の色だ。ドリィが紺色。グラァは赤だ。
「わっわっ!何をするんだよ!」
「済みません・・・場所を知られては困りますので。」
目隠しされてしまった。ハクオロのほうもされているに違いなかった。
「では、行きます。足元に注意してください。」

もうどれくらいの時間が経ったであろうか?同じ所をグルグル回ったりなんだったりと、目が回り始めた・・。
突如オボロが言う。
「開門!」
と言うとぎぃ〜と重々しい音がする。音から察するに随分大きな木製の門があって、その中の建物もそれ相当に大きいのだろう。
「ではトゥスクル様お願いします。」
「うむ・・・では、ハクオロ、ジャイアン・・入って来たらええ。」
「ちょ・・ちょっと待ってください!!いくらなんでもそれはトゥスクル様の頼みでも聞くわけには行きません!!」
「・・・・何を言うておるかね?まだこの者たちを疑うとでも?」
「・・・しかし!!」
「大体お前はあの子を過保護すぎる。一体いつまで自分の駕籠のなかに閉じ込めておくつもりかえ?」
「駕籠って俺はそんな・・・。」
「ならば文句はないね。」
「・・・・クッ!」
しばらくして目隠しを取られる。

「・・・・お兄さま・・・今帰られたのですか?」
「ああ・・・今帰ったユズハ・・・。」
そこにいたのはベットで寝ていた女の子だった。ベットに散らされたその長い黒髪は腰まで届くほど長く、顔は汚れを知らないかと思うほど『綺麗』と言うより『清らか』という言葉が似合った・・・美少女だった。
オボロのことを『お兄様』と言ったことからこの二人は兄妹か?あまり似ていない・・・。恐らく親違いなのかもしれない・・・。
そのユズハという子の黒髪がランプに照らされて茶に見えるせいなのか・・・?
とても・・・可憐で儚い感じがした。
「・・・・今日は他に誰かいらっしゃるのですか・・・?」
「・・・・え?」
この子、目が見えていない・・・・。
「ああ、そうじゃ。紹介しようかね。一人はハクオロ・・・。ワシのところで一緒に暮らしとる男でワシの患者でもあり、家族でもある。もう一人の子供はジャイアン。まあ同じ村に住む子供じゃ。」
・・・子供ってそれだけかよトゥスクルさん!・・・、まあ自分はトゥスクルさん達にとって、かなりワケのわからない存在なんだろうが。
「そうですか・・・。賑やかでユズハは嬉しいです・・・。」
笑う姿にもあまり生気が感じられない。・・・何かとんでもない難病なのだろうか。こんな可愛い子が病気で・・・難病で・・・近いうちに死んでしまうかもしれないような気がしてきた。
それがどんなに許されないことであるかはわかっていたが、それほどまでにこの子の笑顔はジャイアンの心を離さない。不安と言う鎖から。
「じゃあ診察を始めるから、お前さんたちは一回出て行っておくれ。」
722山崎渉:03/04/17 15:54 ID:POPg0HZN
(^^)
24.237.68.63 , 63-68-237-24.gci.net , ?
「・・・・あの子、どういう病気なんだ・・・?」
「・・・・俺にも詳しいことはわからないが・・・、『さまざまな神様が体内で争い合う』だそうだ・・・。」
「・・・・・・・。」
何か・・・その響きがひどく怖かった。そしてその神様とやらを憎んだ。いやユズハを苦しませる存在に『様』など付けたくなかった。
「それはいつからだ?」
「生まれたときから・・・だ!」
オボロは苦しそうな顔をした。それは何故か・・・ジャイアンはわかっていた。
兄がこうやって健康そのものであるのに、なんで何も悪くない妹が生まれたときから苦しまなきゃならないのか。出来ることなら代わってやりたい、でもそんなことはできない。悔しいが何も出来ない。
ユズハの存在はオボロにとって救い、安らぎ、生きがいであるのと同時に苦痛、重荷であるのだ。だがオボロにはそれ以上に愛があったのだ。
「・・・・・。」
・・・・。

「終わったぞえ。じゃあ・・・ワシはオボロとハクオロに話があるから・・・その間ジャイアン。お前がユズハの話し相手になってやるがええ。」
「なッ!こんな馬鹿なガキにユズハの相手が務まるわけがないでしょうに!!」
はっきりと馬鹿と言われたが・・・・歯向かってもこの男には敵うわけがないので、仕方なく黙っていた。ここには病人もいるわけだし。
「子供だからええんじゃ。ユズハも気兼ねがなく話せるし、第一あの子には話し相手・・・いやもっと広い世界を見せてやる必要があるじゃろう。ジャイアンにはその架け橋となってもらう。」
「えっ・・・しかしよお・・・。」
そんな重要なことおれに任せていいのか?
「・・・クッ!!わ・わかった、じゃあジャイアンとやら!ユズハに変なこと言ったりするんじゃないぞ!!その時は命がないものと思え!!」
「静かにせんか!お前はいいから早く出てけと言うとるのに!」
「わかったなーっ!」
こうして部屋にはそのユズハとジャイアンだけが残された。
「あ・・・ええとなんて言ったらいいだろ?ええっと・・・?」
ジャイアンは何をしゃべったらいいかさっぱりわからない、目の前に居るのは年上の美少女・・・緊張までしてしまう。
「ふふっ・・・・ジャイアンさまですよね・・?」
「はっはい!その通りでございます!!」
・・・さま?様なんかで呼ばれたから変な口調になってしまった。
「私のことユズハとお呼びください・・。」
「いえいえ滅相もない、おれ・・・あ、いや、そのぼくは『ユズハさま』と呼ばさてください。」
ジャイアンにとってユズハは、今まで彼のなかで一度も会ったこともないタイプの人間だった。
それ故何故か話すのすら緊張してしまう。
「そうですか・・・?今日は来て下さってありがとうございます・・・。」
「い!いえ!トンデモないことでございまして!」
ジャイアンはパニクっていた、本当に何を言えばよいのやら?考える考える・・・。
「・・・オボロお兄さまはユズハさまにとってもやさしいんですね。」
何故か敬語で会話することにした。当たり障りのなさそうなオボロの話題からスタートした。
「ええ・・・お兄さまはユズハにいろいろと尽くして下されます、本当に優しいお兄さまで・・・ユズハは本当に幸せです。でも・・・。」
「・・・・?」
何故かユズハは悲しい顔をした。
「でも・・・ユズハが病気であるそのことで・・・ユズハはお兄さまに本当に迷惑かけてしまっています。ユズハは・・・いけない娘です。」
がぁーーーーーん!!!しまったぁ!!おれとしたことが!!
「そそそそそそんなこと、ないですよ!ユズハさま!!そ・そうです!そうに決まっておられます!」
「そうですか?・・・・本当に。」
「ハイ!ええっと・・・そうですね、ぼくにも妹がいるんです。ジャイ子っていうぼくより2つばかり年下の・・・。」
「そうなのですか・・・。」
「はい!だからぼくめにはわかるのです!兄が妹のことで頑張るのことは決して苦になることではありません。」
「・・・・ユズハのお兄さまも・・・?」
「はい、もちろんそうでございます。そうですね・・・じゃあぼくの妹のことでも話しましょうか?」
「はい、お願いします。」

ジャイアンは「クリスチーネ・剛田」というペンネームで漫画を描いているジャイ子のことを話しだした。
何度新人賞に出しても落選続きで落ち込んでいた時に、自分が秘密道具でジャイ子の作品を雑誌に刷り込んだこと、
しかしその後ジャイ子は冷静に自分の作品を読み返した時、自分はまだまだだということに気づいて反省したこと。(29巻)
その後の自信作「愛・フォルテシモ」で当選は逃したが、雑誌社からは絶賛され(37巻)、その後同人誌「虹のビオレッタ」で
「この本はきっといまに値打ちが出る」と賞賛されたこと・・・・。(39巻)
「つまり、ジャイ子は順調に漫画の腕を上げていってるってわけなんですよ!」
もはや自分の妹の自慢話である。
「それはそれは・・・・一度見てみたいですね。そのジャイ子さまが描かれた絵を。」
「はいはい!もうそれは機会があればいつでも・・・・・。」
待てよ・・・?
「・・・・・・。・・・!!!」
がぁーーーーーん!!!しまったぁ!!おれとしたことが!!
「もう済みませんホントにおれ・・・あーそうじゃなくて!ぼくはもう本当に馬鹿といいますか・・・。」
「いえ・・・気にされてしまわれたのでしたら・・ごめんなさいね・・。」
「いえいえ。もう謝らなくてはならないのはこちらのほうです!すみません。」
「・・・・・。」
はぁ・・・。確かに今、目の前にいる年上の美少女と二人きりで話せるのは嬉しい。だがここまで疲れるものだったとは・・・。いや・・・というか、この人は何を自分に求めているのだろう?それがわからない・・・。
「・・素晴らしいことですね。努力して成長するしていくなんて・・・。」
「え?ジャイ子のことですか?」
「ええ。ユズハは寝たきりで・・・お兄さまに頼ってばかりで・・・。ユズハは努力も成長もできません・・。ユズハは寝たきりだから、何もしないし何もお兄さまにできないんです。本当に・・・何もできない・・・娘です。」
「・・・・・・・。それは違いますよ、ユズハさま。」
「えっ?」
ジャイアンは真顔だった。本当に物事を真剣に考えている証拠である。
「ぼくにはわかります。何故オボロお兄さまがユズハさまのために頑張っておられるか・・・。」
「・・・。」
「ユズハさまは何もしてないと言った。でもそうではないです。兄のためになにもしてない妹など兄はその人を自分の妹などとは思いません。これは自分が兄だからわかることです。」
「はい・・・でも・・。」
「しかし、オボロお兄さまはユズハさまのために頑張っていらっしゃる。・・・ユズハさまは今までも今でもそしてこれからも・・・オボロお兄さまのために色々と頑張っておられるのです!
それが直接目に見えないものではないのですが・・・ユズハさまはオボロお兄さまにとってなくてはならない存在になっているはずなのです!ゴふっ・・・。」
「・・・?どうかなされました・・・?」
「あ、ひえ、あんえもありまへん・・・うう・・・。」
普段使い慣れていない敬語を使用してたので舌を噛んだだけのことである。
「はーぁ・・・。よし!ええーと、とにかくそういうことで、ユズハさまは自分を責める必要はまったくありません!」
「・・ごめんなさい・・・。」
「え?」
「いえ・・本当に・・・、今までの話はユズハにとって、とてもとても有難いものです・・・。しかし、やはりユズハはお兄さまに迷惑をかけているという考えが拭えません・・・。
ユズハは生まれた時から・・・こんな躰の弱いユズハで・・・。・・・・本当にこれからも、お兄さまを苦しませてしまう・・・!」
「・・・!そ、んな・・・!」
「ユズハは・・・いけない娘です・・・。」
「ちがうんだよ!!そんな考えをしちゃだめなんだ!!」
「ジャイアンさま!?」
今のは敬語などを使っている場合ではない。本気で気持ちを伝えるのに飾りは邪魔だ。
「苦しませる!?そんなことを考えちゃいけないんだよ!!兄妹はな!支えあうもんなんだ!!
例え、支えようとして・・結果的に苦しませても・・・!あとで謝りゃ許してくれる!大事なのはその気持ちだよ!それが、本当に有難いもんなんだ!お互いにとって!!」
「・・・・。」
「躰が弱い!?ならば!強くしようと努力すればいいじゃんか!!強い躰になって・・・兄を超えるほど強くなって見せるとか言ってれば!それだけで・・十分すぎるよ・・・。」
「・・・ジャイアンさま・・。」
「だって・・・ユズハさまは・・・今のそれだけで凄く強いんだから・・・。おれとは比べ物になんねえくらいにさ・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・ジャイアンさま・・・ひとついいですか?」
「・・・・なんでしょう?」
「・・・ジャイ子さまに会ってよろしいでしょうか?」
・・・・っ!
「それは・・・出来ません。今は・・・おれでも会えない・・。」
「・・・・・。済みません、気に障る事言って・・・。」
「いえ、いいんです。とりあえず今、この瞬間は。」
「え・・・?」
「なんだか変なこと言うけど、おれ今ユズハさまと話してたらジャイ子と・・・いや、ジャイ子と言うより、
自分の妹と話してる気がしてきました。今、目の前に妹がいる、・・・これだけのことで兄は癒されて、元気がもらえるんです。これは、今ここにいるユズハさまにしか出来ないことですよ。」
「・・・・・ありがとうございます。」
「元気出して、おれにも、オボロのひとにも元気を分けてください。その為に病気なんかぶっ飛ばしましょう!」
いろいろあって、最後にはわけのわからない口調になった。なんだ?『オボロのひと』とは?
730名無しさんだよもん:03/04/19 23:44 ID:c4gMtsHA
お疲れさまです。
731名無しさんだよもん:03/04/20 00:32 ID:ekxxVXPC
>オボロのひと
にやや受け
732名無しさんだよもん:03/04/20 00:47 ID:9AItkoMB
期待sage
733名無しさんだよもん:03/04/20 08:30 ID:wBwc2DQb
おもろい。
続きが楽しみ
「オイ、こっちは終わったぞ。さあさあ帰れ。」
と、ドアからオボロとハクオロとトゥスクルが出てきた。
「・・・帰られてしまわれるのですか・・・。」
「ええ。また来ますよ。」
その言葉にちょっとオボロが反応する。来るな・・・。もう2度と来るな・・・。
「あの・・・帰られる前にふたつ・・・お願いしていいですか・・?」
「はい?」
「これ・・・。」
ユズハは自分の髪の毛を一本抜いた。
「ジャイアンさまも・・・。」
「ああ・・・。」
ジャイアンも一本抜く。どうでもいいが、もともと髪が短いのでちょっとばかし痛かった。
「これを・・・小指に結んでください・・・再会できるおまじないです。」
「えーと、これを・・・こうか・・・。」
自分の小指に女の人の髪の毛が結んであるのは、やってみるとかなり恥ずかしいものだった。
「それともうひとつ・・・。」
「はい。」
「これからはジャイアンさまのことをジャイアンお兄さまと呼んでいいですか?」
「ええっ!!」
「・ ・ ・ ・ ・ ・ ・。」
オボロは口を開けたまま白目を向いて気絶した。
「おい?お前さん?生きとるかね?」
とりあえず無視しておく。
「あ・・・ああ・・そう呼びたいのなら・・・いいですとも。」
「それと、ユズハのことは『ユズハ』とお呼びください。お願いします。」
「・・・わかりましたよ、ユズハ。」
「ありがとうございます。ジャイアンお兄さま。」
「やれやれ。なんとか日が昇る前に帰れたかね。」
「・・・・。」
「・・・物憂げしそうに小指を見てるね。まったくこれだからやだねぇ。」
「!いやいや!ユズハはおれの妹だし!」
「・・・もうそこまで話が進んでるのかい、ジャイアン君?」
「いやぁそういう意味じゃないっつーの!」
「じゃあどういう意味だかね?」
「ああもうそういう意味なんだっつーの!!」
「マジか!?」

翌日。

ジャイアンは朝から滝に打たれに行った。と言うのも・・・。
「あれえ、ジャイアンなんだかウキウキしてるね。なんかあった?」
「え?いや?なんでもねえよ。ふんふ〜ん♪」
「いや・・・なんでもないってことないよねえ・・・アルルゥ?」
「・・・ジャイアン修行不足。心の乱れ、隙が出来る。」
「ムッ!言われてみるとそうだ!よ〜しやっちゃうぞ〜!ふふ〜ん♪お前のぉ〜感じてるぅ〜感情はぁ〜♪」
「・・・ダメだ、こりゃ。」

ザザザザザーッ!!山の中に響く滝の音は絶えることはない。
「おーい!ジャイアンお昼ご飯だよお!」
「・・・・・・・・。」
「お〜い!」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・ホントになくなっちゃうよいいの〜?」
「・・・・・・・・。」
「まさか立った寝てるんじゃないだろうね?」
「そんなわけない。邪魔になる。」
「ハイハイ。じゃあジャイアン残しとくから、いつでも来なよーっ!!」
「・・・・・・・・。」
・・・・・・・・・。
「・・素晴らしいことですね。努力して成長するしていくなんて・・・。」
・・・・・・・・・。
ユズハは生まれた時から・・・こんな躰の弱いユズハで・・・。・・・・本当にこれからも、お兄さまを苦しませてしまう・・・!
・・・・・・・・。

躰が弱いとか小さいとか・・・力が弱いとか・・・そういうことじゃない・・・・・・。
大事なことは・・・。そこから逃げないことだ!逃げずに戦う!しかしどうすればいい・・・?逃げないで相手に立ち向かう為には・・?
滝の流れ・・・、水は石を削る・・・がそれには時間がかかる・・・。
時間があればいいんだ・・・。相手を倒すための。

・・・「今日さ、あるテレビ番組見てたら興味深いことがわかったんだ。車に閉じ込められたまま海に落ちたら、スーパーなんかのビニール袋に小銭をいれて振り回せば窓ガラスが割れるんだよ!」
・・・「私、昨日テレビで源氏物語の特集してたの見たの!十二単って素敵だったわぁ〜。」
どうでもいい出来杉君と静香ちゃんの会話。
・・・「遠心力の力なんだ!遠心力の力はそれほど力を要れずに物凄く・・・」
・・・「服を何重にも重ねて着るの!裾がこーんなに広いの!」
・・・・・・。
・・・「力が一点に集中すると物凄い破壊力が・・・。」
・・・「でも物凄く重いのよね・・・。」
・・・・・・。
その時バカなのび太は言った。
・・・「そんなに分厚いんならジャイアンのキックに耐えられるね。いやそんなにバカ広い裾なら・・・」

「ぼくはその服の中に隠れるね。ジャイアンが襲い掛かってきてもわかんないでしょ?」

・・・・は?隠れる?服に?

・・・「ったく当たらなかったからいいけどよ!」
何故当たらなかった?
・・・石でも投げてみても、タケシがフラフラして見えるからなかなか当たんないし!!
何故よく見えない当たらない?

・・・「行くぞ!くるくるくる〜!!」
・・・「遠心力の力なんだ!
・・・「力が一点に集中すると物凄い破壊力が・・・。」
・・・「服を何重にも重ねて着るの!裾がこーんなに広いの!」
・・・「でも物凄く重いのよね・・・。」
・・・遠心力の力はそれほど力を要れずに物凄く・・・」

=刃が心臓を貫けばどんなバカでっけェ奴だって結局は死ぬし、矢が頭に刺さればそれだけで倒れる。
=つまり相手を倒すことそれ自体は大して難しい問題じゃない。
=なら逆に刃にも矢にも躰が当たらなければ・・・絶対に死ぬことはない・・・。

つまり、力も、背の高さも関係がない。戦闘にとって一番重要なこととは・・・?
(だが勢いがないそれは簡単に右に避けられる。)
(慌てて亀のように首を引っ込める!一瞬光の筋が頭上に見えた気がした。)
(・・・もう一歩遅れてたら・・・死んでた!?)

『敵の攻撃を避ける』こと

その為に必要なもの。
「十二単だ!!」

どどどどどどどどどーっと!!のんびり昼食を食べていたのび太とアルルゥに何者かがこちらに向かってくる!
「ジャイアンかな?」
「ジャイアン。」
「はぁ〜、まったく、食べるなら食べるとはっきり言ってくんなきゃだめじゃ・・・」
どどどどどどーっ!!
「ぐわぁ!!」
のび太は吹っ飛ばされた!
「アルルゥ!」
「ビクッ!!」
何事か!?とアルルゥは身構える。だが・・?
「このとおり一生のお願いだ!!」
ジャイアンは目の前で土下座している。
「・・・?」
「アルルゥは確か機織が出来るんだったな!?」
「・・・ん!」
「おれのために十二単を作ってくれえ!!」
「〜んぅ??」
「はぁ〜ぁ??」
その時、森の中ではヌワンギがウマで辺境の村を目指して走っていた。
「へっへっへ・・・今度こそエルルゥを・・・・。」
だが、ゴン!再び落馬してしまう。
「くそ!テメェ!!」
ヌワンギはウマ蹴り飛ばそうとしたら、逆に後ろ足で蹴り返されてしまった!
「♪〜」
晴れて自由の身となったウマはなんか歌いながら走り去っていった。

「あああ〜!!クソ!クソッ!!」
キレるヌワンギの目に映ったものは、村の人間が大事にしていた霊宿だった。
「クソ!こんなものなァ!!こうしてやらぁ!!クソ!クソがぁ!!」
ヌワンギは拳と持っていたナタで霊宿(タムヤ)をぶっ壊してしまった。
「ハハハ・・・・あ?」
ふと、あることに気づいた。
「ギャァアア!!手がぁ!かつてない方向にぃ!!」
ひとりで大騒ぎしながらヌワンギは帰っていった。

その夜のこと。

「さて、と準備完了!っとへへへ・・・。」
「ふぁああ〜ねむ・・・。」
ジャイアンとのび太は寝静まった夜の中起きていた。
「こんな夜中にどこ行くってのさ・・・。明日も早いんだよ!もう。」
最近のび太の口調がソポクに似てきたような気がする。
「いいからいいから!へへへ・・・。」

・・・「子供だからええんじゃ。ユズハも気兼ねがなく話せるし、第一あの子には話し相手・・・いやもっと広い世界を見せてやる必要があるじゃろう。ジャイアンにはその架け橋となってもらう。」

今度はのび太も連れて行くつもりだった。大勢のほうがユズハも喜ぶだろう。
「・・・・・・・?」
「・・・・・・・?」
靴を履いている2人は『何か』に気づいた。
「ねえ?なんか変じゃない?」
「ああ・・・おれもそう思う。なんか変だ。なんか。」

・・・・蟲の鳴声がしない・・?

ウォオオオオオオオオ!!!
静かな夜に獣の咆哮が轟く。
「!!」
「なんだぁ!?」
慌てて外に出る・・・すると・・・
「あ・・・・・。」
2人は開いた口が塞がらない・・・。
遠くで馬鹿でっかい『何か』が『何か』を食べている・・・。
・・・と、「ギャァアアアア!!助けてくれぇ!!」
と悲鳴が・・・。その後
「助け・・・ぐはっ・・・ァ・・・・。」
そして何も聞こえなくなった。

それを食べている『何か』がこちらを向いた。
白に黒の斑模様。巨大な虎のようにも見える。
その闇夜に光る眼は明らかに自分達を映し出している。
マズイ、マズすぎる・・・これは・・・。
「ど・・すればいいんだ・・。」
「逃げようよ・・・。逃げるしかないよ・・・。」
どこへ?逃げる・・?
「馬鹿やろォ!早く入れ!」
と誰かに引っ張られた。
「「主(ムティカパ)」に食われてェのかよ!!ぼやーっとしてんじゃねェ!!」
グォオオ!!とムティカパは吼えたあとこちらに猛スピードで走ってやってくる!
「わぁああ!!」

バン!!慌ててドアを閉め、滅多にかけることがない鍵をかける・・・。

ソポクは当然起きていた。4人は家の奥で一塊になる。
「奴が入ってきたら裏から出んぞ!!」
「それで逃げられるかな!?」
「無理だよ!どうするんだい!?お前さん!!」
「俺が食い止めるぜぃ!!」
「無茶だよ!・・・それよりもぼくにちょっと考えがある!!」
「え・・・!?なんだよのび太、それは!?」
「あんまり期待できるものじゃないけどね。でも時間ぐらいなら稼げるかもしれない。」
「・・・・・。」
「『アレ』が来た瞬間が勝負だ・・・・。」

イヤに静かな空気をムティカパのドスドスという足音が切り裂いている。
・・・・・・何も音がしなくなった・・・。
時間が止まったかと思った・・・。

バァン!!ドアは一撃でムティカパにぶっ壊された!
742名無しさんだよもん:03/04/23 23:14 ID:aDCUUFdx
なんだか、久しぶりにドキドキさせられている。
こりゃ、本当に初期の大長編ドラえもん、そのものだ。
「ウォオオオオォオオン!!」
耳を覆いたくなるほどの咆哮!
「それえっ!!」
のび太は巾着袋の中身・・・あのトゥスクル特製の弾15個近くを一気にムティカパ目掛けてぶちまけた!
「逃げろぉおお!!」
4人は必死で裏から出て行く!
猛烈な勢いで追うムティカパ・・・が!

チュドォドオオオオオオオン!!!

「うあああっ!!」
のび太たちは爆発の威力でその場から吹っ飛ばされたが怪我はなかった。
のび太がぶちまけた弾が、ムティカパが踏んだことで一気に家ごと爆破されたのだ。
壁がもともと藁で出来ていた家だからか、炎の激しさは闇夜を夕方かと思わせるほどだった。
もうもうと噴き上げる煙・・・・。空に星は見えない・・・。
「・・・やったか?」
やった・・・はずだ。あの爆発の中を生き延びることが出来るモノなどいない・・・。

はずだったのに。
「・・・・・あ・・ああ?」
炎の中、立っていた、そいつが・・・。そいつはこっちを向いているように見える。まさか・・まさか・・・!
ウォオオオオオオオオオンン!!!
そいつは再び吼えたのだ!自分たちに向かって!

「だっ・・・ダメだ・・・!どうすればいいんだ・・・!?」

一歩・・・また一歩と近づいている・・・・。
・・・死ぬしかないのか・・・・?

と、その時。ポツリ・・・ポツリと雨が降り出してきた・・。

「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・?」

どうした?何故やってこない・・?

「・・・・・・・・!」
ザッ!森の方へ走り去っていくムティカパ・・・。
「は・・?は?え?な・・・・どういうことだろ・・・・。」
「・・・と・・とりあえず助かったんじゃねえか?」
「そういう・・・ことにしとけ・・・!ダハハハハ!」
「・・・・・・・・はぁ、寿命が縮まったよ。ホントに・・・。」

雨は強くなり、炎が消えるのも時間の問題だった。
翌日・・。

「キリクリのところは全滅かえ?」
「ああ!子供はまだ赤ん坊だってェのによ!」
ムティカパ対策会議がエルルゥたちの家で開かれた。
「・・・・・でも、どうすればいいんだ!?あの爆発でも死なねえなんてよ!」
「柵でも作る・・・でも・・無駄だよね。」
「ったく誰が霊宿壊したんだよ!!」
「・・・なにもかも無駄だ・・・。ああなっちまった『主』はもう止められねえ・・・。」
「じゃあこのままアイツに食われろって言うのかよ!!ふざけんな!あんな奴ぶっ潰せばいいんだ!」
「その方法がねえんダニ・・・。」
ケンケンガクガクとはこのことだろう。誰も彼もまったく意見らしい意見も出せず、会議の進行は難航を極めた。
「なんかあんだろ!なんか!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
皆一斉に目を伏せ口を閉ざす。過去にも何かあったらしい、だがそんなことは構ってられない。
「・・・・まいったな。そうだ!ハクオロさん、なんかねえ?」
「・・・・・親ッさん、ジャイアン君、ちょっと見てください。」
ハクオロが持っているものは一本の糸だった。
「これを何でもいいですから切ってみてください。」
「え?この糸を切ればいいのか?」
「はい、どんな武器を使っても構いません。」
「よーし、行くぜェ!!」
糸は切り株の上に置かれた。
ドン!とその上にテオロの斧が振り落とされる。
ガキーーィン!!
「うおッっと!」
斧はその一本の糸のために弾き飛ばされてしまった。
「よし!おれがやる!」
斧はジャイアンに交代される。
「どりゃあああ!!!」
ガキィイイイインン!!
「うおっっと!?」
やはり弾き飛ばされる。
「よっしゃ!二人で持ってみるか!」
「よしきた!親父、全力で行くぞ!」
「おおッ!せーの!!」
ガキィイイイイン!!
「くそーーーーっ!!なんだこりゃあ!?」
「ムティカパの体毛です。現場に落ちていたのを拾いました。」
「なにぃ!?これが体毛!?じゃあこれに包まれたアイツは・・・。」
「・・・炎でも・・・刃でも・・・奴の体まで届かせることできないでしょう。」
「チッ・・・!なんて野郎だ!!」
「何故だ・・・。」
ハクオロは呟く。
「えっ・・?」
「何故ムティカパは突然森へ帰ったんでしょう?昨日ムティカパはダメージはないにしろ大爆発を受けています。つまり相当怒り狂ってたはずです。親ッさんたちを見逃すわけがない。・・それなのに?」
「俺達は無事か・・・。」
「何故・・・?」
「おと〜さん。」
と、お茶を持ってきたアルルゥ。だが切り株につまずいて転んでしまう。
「あちちッ!」
「あーあ。アンちゃんびしょ濡れじゃねえか。」
「・・・・・!」
ハクオロは先ほどの糸を拾い上げる。そして引っ張ってみる。すると・・・ぷちっと切れてしまった。
「お・おい・・・アンちゃん・・??」
「そうか・・・!ムティカパが森に帰ったのは雨だ!雨に濡れるのが嫌だったんだ!」
「ええーと?つまり・・・。」
「濡れたムティカパは弱い!!倒せる!!」
「よっしゃー!!準備開始だァ!!」
「オイオイ、親ッさん!相手は弱くなっていてもあのムティカパですよ!」
「いいってことよ!ダハハハハ!!」
「ダハハハと言われてもな・・・・。」

「おおそうだ!アルルゥ!例のアレは出来たか!?」
「ん!」
アルルゥはジャイアンに『服』を差し出す。
ごく普通の着物なのだが袖が異常に長い。袖だけで1メートルはある、当然着てしまうと袖が地面についてしまうだろう。
「なんかイメージと違うな・・・。それに3枚じゃないか?12枚じゃねえの?」
「そんなに材料ない。これでガマン。」
「それにジャイアンが十二単はないでしょ?そっちのほうが男らしくていいよ。」
ジャイアンが本当に十二単着たらハクオロの鉄扇借りて歌いだしそうだったので、とりあえずおだてておいた。
「まあいっか!よーーし!見てろよムティカパめ!まずはお前からぶっ倒してやるかんな!ダハハハ!!」
のび太は思った。ジャイアンの笑い方がテオロに似てきたなぁと・・・。
それにしても・・・ジャイアンは本当にこの服を着ただけで強くなって、しかもあのムティカパに勝てるのだろうか?
なんか無茶しそうで怖かった。そこらへんも似てきたような気がする。
作戦はこういうことになっている。
まず森の入り口付近でハクオロ・テオロは鉦をバンバン叩き騒ぐ。
出てきたムティカパを落とし穴まで誘導する。
落とし穴には溢れんばかりのたっぷりの水、これにドボン!ってな具合である。
その後、弱体化したムティカパをのび太・ジャイアン・エルルゥも加わって総攻撃を仕掛けるというわけだ。

「じゃあアンちゃん行くぜぇ!!」
=カンカンカン!!カンカンカン!!=
「しかし、こんなので本当に来るんでしょうか?」
「ああ、まず間違いねえ、奴は自分の住処をで騒がれるのを一番嫌うからな。」

ウォオオオオオオオオオン!!

「そーら来たぜェ!!逃げんぞ!アンちゃん!」

どどどどど・・・・!!

「なっ!クソ!こいつらァ!!」
目の前を数匹のキママゥが邪魔をする。
「親ッさん!そいつらは無視だ!!」
「わかってはいるがこうしつけえと離せねえェ!!」
「・・・ぼくに任せて!」
罠の近くで待機していたのび太が立ち上がる。
「親ッさん!伏せて!」
ドォン!
のび太が放った通常の弾はキママゥの眉間に命中し、頭から黄色い鮮血を噴出しながらキママゥは絶命した。
「早く!早く!」
「お〜ッ!!ハァハァ・・・。」
親ッさんは意外に足が遅い・・。後ろからはムティカパが追いかけてくる!
749のび太とうたわれるもの =第2部= 第3話「宵闇と森」 170:03/04/28 18:48 ID:yxpLtsFE
(どうする・・・!?)
「どりゃあああ!!」
「ジャイアン!!」
止める前にジャイアンが飛び出していってしまう。
キィイイ!!と一匹のキママゥがジャイアンに襲い掛かる。
バッ!右腕の袖を飛んでくるキママゥに振り回すジャイアン。
「ギィイイイッ!!」
ゴッ!という打撃音がした後、キママゥは腹になにか決まったらしく悶えている。
そこを間髪入れずに釘バットでぶっ飛ばした。
「あの袖・・・何か仕込んでいるんだ!」
「おい親父!!早く!」
「おおッ!」
キママゥの攻撃はジャイアンに集中されてきた。だがジャイアンはそれをコマのようにクルクル回ったり、袖を振り回したりするだけで全ての攻撃を回避出来ていた。
「そうか・・・わかってきたぞ・・・。ジャイアン君の考えていることが!」
「え?」
「ノビタ君、戦いにおいて常に動いているものを攻撃するというのは意外に難しいものなんだよ。」
ボクシングにおいてのスウェーのようなことを言っているのだ。
あのデンプシーロールという必殺技でわかると思う。
「それに・・服だ、派手に振り回している袖の流れが厄介だな。」
「確かになんか仕込んであるみたいですけど・・・『流れ』というのは?」
「目で追ってしまうんだよ、無意識にあの流れるような袖の動きを。目の前で派手に動くものだからね。」
「・・・しかし・・・だからといって攻撃を避けられるわけじゃ・・?」
「相手は袖に意識が少しでも集中してしまう。だが、その一瞬の隙に派手な袖の動きとは別にジャイアン君はあのダボダボの服の中で移動しているんだ。」
例えばブオッ!と相手の目の前で袖を上に振り上げる。相手は一瞬その袖に集中してしまう。
だがその間にすかさず地面スレスレまで伏せ(この時まだ服は元の位置にあるように見える)、相手はその服を目掛けて攻撃。無論、服は破けてしまうが意味をなさない行動である。
「『服』を攻撃されても躰そのものに当たらないのでは攻撃は意味がない。相手に一種の残像を見せながら攻撃していると言っていいだろう。」
「よっしゃァ!!」
親ッさんは罠の前に到着した。ジャイアンもそれに続いた。
「背が小さな子供にしか出来ない技だ。」
ムティカパは全速力でやってくる。
このままなら間違いなく罠にひっかかる、と誰もが思っていた。
この誰もが、というのは走ってきたハクオロ・テオロ、さきほどまで戦っていたジャイアン・罠の前で待ち構えていたのび太・エルルゥ、そして落とし穴担当係のウー・ヤー・ターの3人である。

しかし、彼らはひとつ重要なことを忘れていた。
それは野生動物のカンの恐ろしさである。
例えばこんな話がある。ある飲食店にたくさんネズミが出てくるようになった。そこで店のそこいらじゅう隙間もなく目立たない色の延着シートを置いておいた。
しかしまったくネズミは取れない。そこで専門の業者に頼んでネズミが通る通路を監視する。ネズミが出たらそいつらが出てきた通路をリモコン操作の仕掛けで封鎖。
逃げられる通路は一箇所しかなく、そこからの粘着シートは2メートルも続くのだ。ネズミが出てくるのを発見できれば100%確実に捕まえられるはずである。
作戦は彼らの思惑どおり行った。まずはネズミを発見、通路を封鎖。ネズミは慌ててその場から逃げ出す。無論向かった先は2メートルの粘着シート。
だが、思いもよらなかった驚くべき事態が発生した。飛び超えたのだ。ネズミは2メートルの粘着シートを。無論このネズミは一般的なごく普通のちいさいネズミである。

今相手は森の『主』であり、その落とし穴が仕掛けられている場所に人間が手を込んだことぐらいわかっていた。
さらに致命的なのは、ムティカパがイヌ同様鼻が利くことにより、水の匂いがわかったことだった。

つまり、先ほどのネズミの件と同じようなことが発生してしまった。
そいつは飛び越えてきた、落とし穴を。
「・・・・・・・なッ!!」
予想だにしなかった事態にしばし一同呆然としてしまう。だが・・・、
―ウォオオオン!!
周りの木々の枝が揺れるほどの咆哮で一同は我に帰った!
「ひぇえええええ〜っ!?」
こちらを睨むムティカパ・・・即攻撃しないことから罠の事を見破ったことを多少なりとも自信に持っているに違いない。
いや、罠ごときで倒せると思っていた人間達たちの馬鹿さ加減をしっかりと認識させる時間をくれてやる為か?
どちらにしろムティカパ側が圧倒的有利という事実は変わらない。再び『死』が目の前まで足音を立てながらのび太達に迫りつつあった。

「やれやれ、これだから最近の餓鬼めらは考えが甘いんじゃ・・・。」

・・!?どこからか声が聞こえる!?何処?

「ここじゃよ、『主』、お前さんたち・・・。」

上・・・細木のてっぺんのほうを見る・・・そこに立っていたのは・・!
「おばあちゃん!?」
「トゥスクルさん!?」
木のてっぺんで腕を組み、不適に笑うトゥスクル・・・。背には大きな樽・・・・・?
何故かのび太はその姿を見て嫌な予感がした。あの笑顔は何かが起こる前兆だ。
「っていうか全然気づかなかった・・・!」
「よッ・・・と!」
何を思ったかトゥスクルはその場からジャンプした!高さ15メートルはある!
「おっ!おばあちゃん!!」
エルルゥが悲鳴に近い声を上げる。
だがトゥスクルはひらりと華麗に着地。キッ!とムティカパを見据えて・・。
「さて・・・ワシも加勢するとするかね。」
なんなんだよ、アンタは・・・。その姿にムティカパさえ呆然としてしまった。
なんなんだよ、アンタは・・・。その姿にムティカパさえ呆然としてしまった。
「『主』よ・・・。ひとつ問いたい。もはや止まる気はないのかえ?」
「・・・・?」
のび太達はトゥスクルが言っている意味がよくわからない。
「止まらぬなら・・・成敗してくれるわい!!」
トゥスクルは樽と繋がっているホースを手に持った。

背に背負った水がはいった大きな樽。相手は雨で濡れることが弱点の強敵・・・。

「『アレ』かよっ!!」

どおおおおーっ!!とトゥスクルのホースから水が一斉に放射される。
「グォツ!?」
逃げるムティカパ、しかし遅かった。その姿はとうにずぶ濡れになっていた。
「ノビタ!一気にやっちまうのじゃあ!!」
「お・・おう!!」
何故かトゥスクルの指揮の下、火薬弾3発をムティカパめがげて打ち込む!
―ドドドォオオン!!!
「グォオアアアアアッ!!」
悶えるムティカパ・・・効いたみたいだ・・・。
「皆の衆、見たとおり今の『主』は恐れるに足りん!!全軍突撃じゃああ!!」
「オオオーーー!!」
とりあえず今はあまり細かいことを気にしている場合ではないのだ。
753のびわれ(代行人):03/04/29 23:02 ID:aXkt0G6g
やべ。ちょっとミスった。
このネタは・・・ワ(ry
754名無しさんだよもん:03/04/29 23:50 ID:lYEXWOVv
凄い量だね
で、誰かデジタルノベル化してるわけ?
―ゴオオオオオオオオオッ!!
怒り狂ったムティカパが襲い掛かる!
「ドリャアア!!」
「セイャーーァ!!」
テオロとハクオロは同時に攻撃を仕掛ける。
―ガキィイイン!!
「おッ?」
「あ?」
テオロの斧とハクオロの鉄扇が止められる。ムティカパの両手の爪で受け止められた!
ムティカパが腕で力任せに振るい、2人は左右に吹っ飛ばされる!
「ぐああああっ!!」
2人は地に受身を取りながら着地。幸いダメージは軽いようだ。
「なら、おれさまが相手になるぜ!!うらぁあああーっ!!」
一気に間を詰めるジャイアン。それに合わせてムティカパが出る!
―ウォオオオッ!!
爪を真上から振り下ろされる!
「甘いぜ!!」
くるりと回ってそれを避けるジャイアン。
「どんなもんでぇ!!」
確かに爪はジャイアンを貫いていない。だが・・。
「グッ!クッ・・・くそーっ!離せえっ!」
爪はジャイアンの袖から離しはしなかった。ジャイアンは地面に爪で磔にされてしまった。さらに!
―グォオオオオン!!
そこからムティカパがジャイアンを丸呑みにしようと大きな口を開けて迫ってきた!
「ジャイアン!!」
「・・・・・甘いぜっ!!」
ジャイアンはとっさに自分が着てる服を脱ぎ捨てた。といっても裸になったワケではない、・・・それでもフンドシ一丁なのだが。この服のメリットのひとつは脱ぎやすさもあったのだ。
「どりゃああ!!」
ジャイアンは釘バットをムティカパの開いた口めがけてフルスイングした。
―グォオオオオッ!!!!
口を血まみれにしながら後ずさるムティカパ。その隙を逃さず
「だあああああっ!!」
ガン!と顔面に釘バットを叩き込んだ。苦しそうな悲鳴を上げるムティカパ、そこを
「破ァアアアア!!」
「斬ッ!!」
テオロとハクオロがトドメを刺したのだった。

どさっと倒れるムティカパ、既に絶命しているだろう・・・。

「は・・・はは・・・ハハハハッハ!!いっっっっやっほうう!!!おれたちの勝ちだぜぇ!!」
飛び上がって喜ぶジャイアン。
「・・・ダーハハハハハ!!まったくよくやったぜ!ジャイアン!!」
「最高だよ!ナイスファイトだよ!!」
「フム・・・お主もなかなかやりおるの!」
各自、ジャイアンに称賛の声をあげる。この戦いは間違いなくジャイアンが最も活躍しただろう。
いや・・・別の意味でトゥスクルか?
先ほどの服を着るジャイアン。
「・・ボロボロになっちまったな・・・。一戦一戦で服を交換しなくちゃいけねえのか・・。」
「では、少なからず皆さん怪我をしてますから、今から簡単な手当てしますね。」
「お〜っ。頼むぜエルルゥさん!」
それから村に帰る途中でのこと。
「さぁ〜てェ!今夜はパァ〜っと宴会だ!今夜の酒の肴はムティカパの塩焼きだぜェ!」
「・・・あれ食うのか?」
アイツは村の人間を食べている。そいつを食うということは・・・・。
「・・止めとくか。」
「・・そうしたほうがええさね。」
「でもあの体毛はちょっとばかし使えるんじゃない?」
「そうさの。ジャイアンの服にちょいと補強の意味で編みこんでおけば、かなりのものになるかもしれんの。」
「おおっ!それはすげぇもんになりそうだな!」
「おい村長?あれを編みこむのか?」
「濡らせば何てことないただの糸になっちまうからの。・・・まあ敵の返り血を浴びないよう注意するんじゃな。」
「おうっ!」
「・・・おとーさん!ノビタ!」
向こうからアルルゥがやってくる。
「アルルゥ!やったぞ!」
「ん・・・・・・・・。」
「・・・・?」
ぐっじょぶ!とか言ってくれるのかなあと期待していたが、何も言ってくれない。
「おい?アルルゥ・・・お前ェ、腹どうした?」
「・・・・・・う。」
よく見るとアルルゥのお腹がぽっこりと膨らんでいる。
「・・・・赤ちゃん。」
「は?」
「アルルゥ、赤ちゃんできた。」
「へぇ〜、赤ちゃんねえ・・・・。・・・・・。」
「はぁぁぁ!?」
「アルルゥとノビタの赤ちゃん。」
「ぶっ!!」
「おいおい、ノビタ、お前ェ本当に連射が早ぇんだなァ!!」
それを言った直後、テオロはドカッ!とソポクに殴られる。
「あ〜いや別にそのう・・・あはは・・・。」
「『あはは』!?身に覚えあるのか!?」
「え?え?なんだか、よくわかんないけど、何、赤ちゃんが出来るってそんなに騒ぐことなの?」
「・・・・・・あーいや、そうだよな・・。ウン、気にするなよ・・・・。」
大人たちは誰に目を合わせることなく、遠い目をしている。
『キュイイイッ』
「?」
何か動物の鳴声がしたような気がする・・。よく見るとアルルゥのお腹は何かもぞもぞと蠢(うごめ)いている・・。
「アルルゥ!何隠してるの、見せなさーい!」
エルルゥはもごもごと動いている懐に手を突っ込む。そこから出てきたものはムティカパによく似た動物だった。イヤ、似ているというより・・?
「こいつァ、ムティカパの赤ん坊じゃねェか!?」
「え!?なんったってそんなモノをアルルゥが!?」
「う〜。」
「オイ、アルルゥ、ソイツをこっちに寄越すんだ。」
「・・・ヤ。」
「あのなァ、そいつはそのうちにコイツのように馬鹿みてェにでかくなってよ、また人を襲うようになる。そしたら取り返しのつかねェ事態になるんだ。わかるよな?」
「・・・・。」
首をふるふると振るアルルゥ。そしてエルルゥからムティカパの赤ちゃんを奪い取ると森の奥へと走っていってしまう。
「オイ!アルルゥ!!どこ行くんだ!!」
759名無しさんだよもん:03/05/03 00:50 ID:F7hd2WT4
保守
「さぁ・・・ソイツをこっちに寄越すんだ!」
「ヤ・・・!」
「いい加減にしねェか!?今回の一件だけで一体何人死人が出たかわかってんだろ!!」
「ヤ・・・!!・・・・約束・・・したから・・・。」
「約束・・・・・・・・?」
「約束した・・・・・・・。育てる。」
「育てるだァ!?そんなもん育てられるわけがねェだろ!!さぁ!!」
「ヤ・・!!」
見るとアルルゥは涙をぼろぼろ流している。こういうのはのび太にはダメだった。
「ぼくからもお願いします。この赤ちゃん助けてあげてください!」
「何言ってやが・・・。」
「私からもお願いします。」
「お姉ちゃん・・・ノビタ・・・。」
「いいんじゃないかぇ?ちゃんと育てると言うておるんだし。」
「村長・・・?」
「アルルゥ・・・『呼ばれた』のかぇ?」
「うん・・・。」
「呼ばれたってどういうことですか?トゥスクルさん。」
「わからん・・・。ただ姉様がそう言ってだけなんだがね・・。」
「・・・・・。」
「テオロ、もしこのムティカパの奴でなんかあったらワシの首をやろう。それでいいかね?」
「ウグッ・・・。首なんかはどうでもいいが・・・わかった。村長がそこまで言うならそれに従うまでだ・・。」
「ノビタ、アルルゥが母親なら、お前が父親じゃ。しっかり頼んだぞえ。」
「はいっ!」
「『はい』なんか言っちゃってるよ・・・。」
「・・・ハクオロさん、さっきから何を拗ねているんですか?」
「まあ、とにかくめでたしめでたしっつーことで!ダハハハハ!」
それから、このムティカパの赤ちゃんには「ムックル」と名前が付けられた。
「ムックル」・・・アイヌ語で「口琴」という意味である。


第2部 第3話 「宵闇と森」終わり 
第4話 「野盗襲撃!」に続く。
762のびわれ(代行人):03/05/03 15:08 ID:JGL3krdo
760と761を合わせて178ということで。

来週からは第4話となります。オリキャラも登場。
只今出張から帰ってまいりました。意外と早く帰れました。
何はともかくまとめページの方、お疲れ様です&本当に有難うございました。
しかし・・・反応が相変わらずないですねぇ。・・・いや余り笑えない。
でも公式ページのHPのほうは1000ヒット行ってるんですよねー。更新してないのに(w
あ〜、も〜、どうなんでしょう?皆さん流石に飽きたんかなー?
このスレ立ってから随分経つしなぁ。
普通にこの小説つまらないというのが原因なんでしょうけどね〜。

ちなみに今まで投下したのと未発表の2部5話の半分くらいで、私がどんくらい書いたかっていうと原稿用紙400枚分くらいです。
参考までに『星の記憶の伝承者』は180枚(作者2人合わせて)。『マリみて』なら一冊余裕でできるくらい・・・。それでもまだ序盤なんですが!!

一応カット出来る分はなるべくカットし、文章の表現もなるべく簡略化などしているのですが、それでもこのままだと完結までに2000枚を軽く超えそう・・。
流石にそこまで行ったらもうネタで済まされないレベルまで来てしまいます。・・・紙面化も考えましたけどね(w
そもそも『2ちゃんねる』という掲示板の中で一人でこんなに長々と小説書き続けてもいいものなのか?
あのハカロワのようにリレーならまだしも私一人ではサーバーにも負担かけるのちゃうかと・・。

それにしてもよく聞くのが「うたわれ」をやっていないという意見。
無論「うたわれ」をやってない人でも楽しめる作品にしようと努力してきたつもりです。
しかし、そもそもこの企画自体が「葉鍵のキャラクターとドラえもんキャラを組み合わせたらどうなるか?」と言う実験めいた物だと思うのですが
それは「皆が知ってる葉鍵のキャラ」という前提にあります。それなのに『やったことない』じゃあな・・・。

そもそも既にドラえもんとはかけ離れた作品です。我ながら致命的・・。

で・・・打ち切りも考えたことには考えましたが、どうしようかなー!?
選択肢 その1
ひとまず「ドラえもん のび太とうたわれるもの」を打ち切る。
それで、まとめページの方には私の都合でまたハタ迷惑かけると思いますが、あの5話の途中までをそちらで一気に掲載してもらう。
そして「星の記憶の伝承者」を私が完結させる。

あれならもう中盤入ってるし・・・。皆AIRなら知ってるだろうし・・。

そもそも今、このスレがあるのはあの最初の神の書き手がいる為だったし。
私が書き始めたきっかけだってあの書き手がいたからだし。

ただ致命的なのは私はDREAMはクリアしたがSUMMER以降からやってねぇ事(w
その2
「ドラえもん のび太とうたわれるもの」を続ける。
ただし今まで以上に書くペースが遅れる。
しかも完成する可能性は無に近い。
その3 その他。

さて・・・どうすっかな・・・。

公式ページ。(ちょっと更新)
ttp://www.tekipaki.jp/~midaresetugekka/doratop.htm
まとめさんページ(アタマアガラズ)
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/9698/daichouhen.htm
768名無しさんだよもん:03/05/04 02:48 ID:9++u4tsm
俺もうたわれやってません
なので、興味が無いのでここまで全部読んでません
ですが、毎日、物語が進んでいるか物凄く気になるのでチェックしてます
応援してますので頑張ってください
769名無しさんだよもん:03/05/04 07:33 ID:13/mbLHW
普段ROM専ですが、いつも楽しく読ませて頂いてます。
うたわれもドラえもんも好きですし、お世辞抜きで面白いので是非続けていただきたいです。
770名無しさんだよもん:03/05/04 08:00 ID:ReVseOww
「〜やってない」「〜未見」という意見は、たぶん不可避です。
某スレでそれぞれ別の作品を題材に、5本6作品連続で「○○は未プレイなので〜」と言われたことありますし。
(順にWA+まじアン、ONE、NW、TH、こみパ。
 自分の場合うたわれもAIRも未プレイだったりしますし)

それでも充分に楽しめる出来になっていると思いますので、
『のび太とうたわれるもの』の続きを是非お願いしたいところです。
771名無しさんだよもん:03/05/04 08:04 ID:iyb1TPDC
選択肢その2キボンヌ
772名無しさんだよもん:03/05/04 09:27 ID:uebkPNlo
初代スレからずっと見てるが禿げしく続きをキボンヌ
773名無しさんだよもん:03/05/04 11:41 ID:t1C8RX+T
是非2で。頑張って下さい。
ところで、葉鍵の国は何処へ消えたのだろうか。結構期待してたのだが。
774名無しさんだよもん:03/05/04 15:02 ID:6SmBHAXM
是非選択肢2を。
うたわれをやってみようか、という気にさせてくれたので。
775うたわれ作者ー。:03/05/04 18:25 ID:mNs1sjR/
皆さんマジっすか!?選択肢1じゃなくて2!?
『1』がたくさん来るものと思ってただけにちょっとびっくりしてます。
期待されているのか、いないのか・・・。

う〜む・・・。そんじゃー続けてみましょうか。
どうせ、完成してても未公開の分がまだまだあるんだし。
あとHPに来てくれた人、あんがとね。
776うたわれ作者ー。:03/05/04 18:34 ID:mNs1sjR/
<宣伝>
ゴメンなさい。ちょっとだけ浮気してた。(続けるかも)
ttp://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1051883096/l50
それと自分、同人ギャルゲーを製作してます。
タイトルは「Peter pan.」
頭の隅にでも置いておいてくれると幸いです。

まとめ様へ。物凄く馬鹿な話なのですが、そちらへメールでうたわれのワードパットを送ったあと、
私、間違えて自分のPCから削除しちゃったんですよー。
手間隙かけますが、私のメールアドレスに送り返して頂いてくれませんか?頼みます・・。
777名無しさんだよもん:03/05/04 18:39 ID:/kK1c98M
無類に面白いので続けて欲しいと思う今日この頃。

んで、一つ提案なんですが、作者さんが出張中代理の方が毎日UPしてましたが、あの位の量
が毎日続く方が個人的には嬉しい。
(新聞小説みたいなノリで)
778名無しさんだよもん:03/05/04 19:21 ID:sgBBriOb
ゴミ箱を空にしてもデータを復活できる有名なフリーソフトがあるよ。
「復元」っていうのが。デフラグとかやってたら駄目だけど。
http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se192983.html
779名無しさんだよもん:03/05/04 22:37 ID:r4S9vZpv
>作者さん
すいません
なんか間に割り込んで感想を書くのは気が引けるので
控えてました。

ノビタのたくましさに、
普段情けな癖に大長編になるとカッコつけるのはズルイなぁと思っておりまする。
780うたわれ作者ー。:03/05/05 04:03 ID:Cw2MdhWZ
>んで、一つ提案なんですが、作者さんが出張中代理の方が毎日UPしてましたが、あの位の量
>が毎日続く方が個人的には嬉しい。
>(新聞小説みたいなノリで)
私も出来れば毎日載っけたいんですけどなかなか・・。
努力はしますね。
>「復元」
まとめさんから無事に届きました。皆さんすんません。
>なんか間に割り込んで感想を書くのは気が引けるので
割り込んでくれえ・・・マジで。

一応明後日あたりから再び開始予定です。
781名無しさんだよもん:03/05/06 23:35 ID:VSsgWmAt
hosyu
782うたわれ 今日の一言:03/05/07 12:43 ID:jkE+x8JO
なんでワンコインフィギュアにクーヤさんがいないのですか?
いや、マジで。
783うたわれ これまでのあらすじ:03/05/07 12:44 ID:jkE+x8JO
大長編ドラえもん VOL,2CH
「のび太のうたわれるもの」これまでのあらすじ。

夏休みの自由研究でタイムマシンを使用したことで
時空の嵐・・・怪物『時空乱竜』が放った光線に巻き込まれて、超未来に行ってしまったのび太とジャイアン。
ドラえもん、スネ夫、静香は臨時のT・P(タイムパトロール)になってそれを追う。

のび太とジャイアンは時空間を漂流。
そしてヤマユラの里・・・通称『辺境の村』と呼ばれる所に行き着いていた。
そこで出会う獣のような耳や尻尾が付いている人々。
彼等はのび太達を暖かく迎え入れ、そして打ち解けていく。

突如現れた辺境の村を襲う大型凶獣「ムティカパ」。
記憶喪失の青年、ハクオロの知恵と村のメンバーの力を総結集し、退治することに成功したのだった。

一方、時空間のバランスが崩れたことによって、帰れぬ身となってしまったドラえもん達は、
宗教國家オンカミヤムカイの哲学者、ディーの取り計らいで「技術者」として迎え入れられることになる。
皇女とは思えないほどの気さくさを持った美少女、カミュとも仲良くなり、それなりに楽しい日々を送っていたのだが!?
<ギャアー!!ギャアー!!>
森の朝は動物の鳴き声で騒がしい。
そこを目立たぬよう緑のコートで身を包んだ集団が、自分たちの行く手を邪魔する枝をナイフで切り落としながら進んでいく。
数はざっと30人程だ。
その中で一人だけ黒いコートの奴が居る。

集団はやがて関所に出くわした。
関所側は高台から集団の存在を確認すると、すぐにそこに居た全ての人間に召集をかけた。
関所側は今日こんな怪しげな集団が通る事など事前に聞かされていなかったからだ。

集団は物怖じすることなく関所を通り抜けようとする。
「待てぃ!!」
状況ががただ事ではないことを察した番人2人がそれを怒鳴り声で制した。
「ここからは我らオンカミヤムカイの領地!貴様等が今日通る事など、こちらは聞いていない!貴様等何者だ!!」
二人の番人は集団を相手に槍を構える。
朝の静謐な空気は突如、物々しい雰囲気に包まれることとなった。
「・・・。」
しかし集団は門番に対して何も答えようとしない。
「・・・代表者は名乗り出よ!!」
すると集団の中のある男が黒いコートの奴に合図を送った。
黒いコートの奴は門番の前へと出る。
「貴様か!?貴様等は何者だ!!答えよ!」
門番の槍の矛先は黒いコートの奴に向けられている。
「・・・。」
すると、黒いコートの奴はゆっくりと鞘から剣を引き抜いたのだ。
「!!貴様!何を考えている!?」
「・・・。」
黒いコートの奴は門番の声を聞く耳を持っていない。
「・・・5。」
「は?」
「4・・・3・・・2・・・。」
突如黒いコートの奴が始めたカウントダウンに合わせて後ろの集団はずるずると後ろに下がる。
「何だ!?質問に答えろ!」
「1・・・・!」

その瞬間2人の門番は見た。その黒いコートが自分達の目の前から一瞬のうちに消えたのを。
そして片方の門番は見た。いつの間にか遥か上空へと飛んだ黒いコートの奴が、門番のもう片方の首を剣で飛ばしているのを。
門番は慌てて矛先を相手に向けようとするも、相手と次元が違い過ぎた。

ドン!と音を立てて吹っ飛ぶ2人目の門番の首。
やがて関所から「敵襲ー!!」の声。
やってくる武装した数名の男達。
だがやはり彼等でも黒コートと次元が違っていた。

辺りに飛び散る関所側の人間の欠片。
関所の一人はこのことを伝えようとウマで逃げようとするも、ウマは既に集団の他の連中によって殺されていた。
「・・・ちっ!!最後に残ったのは俺かよ!!」
関所の最後の人間は黒コートに向かって剣を構える。
「俺は他の連中とは違ってそう簡単にはやられないぜ。お前にもな!!」
「・・・。」
「真剣勝負だ。お前名前は何て言う?答えろ!!」
「・・・『真剣勝負』ですか。面白いことですわね。」
「・・・・なッ!!お・・・お前まさかっ!!!」
「行きますわよ?準備はよろしくて?」
「くっ・・・行くぞ!!アァアアアアアアアアアッ!!!!」
最後に残った男は必死に立ち向かう。
「・・・。」
無言でそれに音速でそれに合わせる黒コート。
<<ズバッ!!>>
「・・・。」
その瞬間、関所側の男の胴は真っ二つに分かれていた。

「あらあら、口の割にはたいしたことなかったですわね。それとも・・・私が女だってわかったから遠慮なさってくれたとか?」
男の上半身の前で腕を組む黒コート。
「・・・そういうことにしておいて差し上げますわ。そのほうが私にとっても気分がよろしいことですし。」
黒コートは後ろを振り返って何事もなかったかのようにその場から立ち去ろうとする。
「・・・ああ。そうでしたわ。名前を聞かれてましたわね。」
黒コートは頭からフードを取る。さっきから邪魔だったのだ。

そこから現れる青髪の美しい顔。口は微笑を形取っていた。

「私はカルラ。貴方のことは忘れるまで忘れなくってよ。」

=第二部 「國と言う名の蜃気楼、友情と言う名の契約証。」=
=・・・・・・・・・・第4話「野盗襲撃!」=
787うたわれ 関連サイト:03/05/07 12:52 ID:jkE+x8JO
忘れてた。今日の一言に書くべきだった。
公式ページ
ttp://www.tekipaki.jp/~midaresetugekka/doratop.htm
まとめページ
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/9698/daichouhen.htm
788うたわれ 今日の一言:03/05/08 14:18 ID:vRO4euqE
_, ._
  ( ゚ Д゚)   ガッ・・ガシャ
  ( つ O. __
  と_)_) (__()、;.o:。
          ゚*・:.。


特に意味はない。
「魔女のお婆さんは魔法を『チチンプイ!』って唱えると、シンデレラのみすぼらしい格好は、すてきなすてきなドレスになったのです!」
「うわあ、素敵ね〜。」
「ふわぁあああ〜。」
静香ちゃんはカミュにシンデレラの話を聞かせてあげていた。ドラえもんとスネ夫はその間実に暇だった。
「ねえ、しずちぃ!それってどういうドレスかしら?」
いつの間にかカミュは静香のことを「しずちぃ」スネ夫のことを「スネラー」と呼んでいた。
「そうねえ・・・ドラちゃん紙と色鉛筆あるかしら?」
「あるよ。ハイ。」
静香ちゃんがサラサラと描いてみせる。
「こんなものかしら?」
フリルのついた本当に少女趣味のドレスである。
「へぇ〜、これはすごいわねぇ・・。見てみたいわぁ本物を。」
「それなら着させてあげるよ。」
「ええっ本当?ドラち〜!!」
「『着せ替えカメラ』〜!ハイチーズ!」
「わぁあああ〜こんなの初めて〜!!」
「とても似合うわよカミュっち!」
「ふぁあああ〜。ねむ・・。」


スネ夫は悩んでいた、それはこの国の人たちへの対応についてのことである。
今日はモールス信号の技術を教えた。相手は感謝感激大満足で聞いてくれた。
そして笑顔で「明日も頼みますぞ。」と言ってくるのだ。
果たして明日は何をネタに話せばいいのだろう?
ドラえもんはあの数限りない秘密道具の解説で日々を追われている。また静香ちゃんはこうしてカミュの話し相手となっているし、静香ちゃんは料理の調味料やら調理法などを教えていた。
自分にはプラモ、ラジコンなどが作れるがこの国では意味がない。やれやれ、こんなことなら学校に通っていた普段の生活の方がマシかもしれない。
「そうだ!見てよしずちぃ・・・コレ!」
「あら・・・可愛いお人形さんね、でもちょっと服が破れちゃってるわ。」
「だからそれでこの子にも服を着させてもらえないかしら?」
「もちろんいいよ。ハイ、チーズ。」
人形に合わせてシャッターを切るドラえもん。
「わぁ〜素敵っ、見違えちゃったわ!」
「そうだわ!カミュっち、お人形まだあるかしら?」
「うん、まだまだたくさんあるけど?」
「じゃあ、たくさんお人形を用意してみんなにドレスやタキシードを着せて、お城の舞踏会を再現してみましょうよ。」
「うわぁ!いいね、それ!やろう、やろうっ!!」
スネ夫は考えていた。それはこの世界についてのことである。
この人たちは何故、羽やら獣のような耳やら尻尾やらがついているのだろう?
飾りか?と最初は思っていたがそうでもないらしい。この世界はそれを違和感もなく受けれられている。一体どういうことなんだろう?
最初に考えられたのはパラレルワールド説。しかし、ドラえもん曰く、時空座標測定器が一応測定不能ながらも正常に働いている為それはあり得ないと言う。
ならば『現在』から『この世界』に至る期間で、人間に突発的集中的な突然変異の繰り返しがやってきてそれでもって羽やら尻尾やら生えてきたと言うのはどうだろう。
・・・あり得ることはあり得るかもしれない。だが現在より文明が遅れてるとはどういうことだ?
今の『ホモ・サピエンス』が核戦争かなんかで大半が滅びたとして、生き延びたごく一部が強い放射能を浴びたとか・・・。
白亜紀後期で急激な進化をし始めた哺乳類の先祖と言われるトリコノドンだってネズミそっくりな奴が最後には人間になるんだ。それなら・・・。
いや、そもそもぼくなんかにこんなややこしいことがわかるわけがないのだが。

「よーし、できたっ!」
「あとはこの人形が踊りだしたりすると楽しいんだけど・・。」
「よーし・・・じゃあハイ!『サイコントローラー』!この脳波制御装置を人形につけて・・・」
ドラえもんはギュギュっと人形の頭にマイクロチップを埋め込んだ。
「後は・・・スネ夫くん、これを握って。」
小さいコントローラーを渡される。
「え?ぼくが?」
「『動け』って、頭のなかで考えるだけでいい。この人形10人を同時に躍らせて欲しいんだ。」
「ええっ!こんなにあるのに!?」
「スネ夫くんなら出来るでしょ。」
「はいはいやってみせますよ・・・。・・・・。!」
わしゃわしゃと動き出す人形。
「よし、ぼくは音楽を担当しよう。」
ポケットからラジカセを取り出すドラえもん。
「スネ夫さん、あたしが手拍子するからワルツで躍らせてね。」
「えっワルツ・・・?まあ適当にやってみるけど。」
「じゃあミュージックスタート!」
〜♪〜〜♪〜〜〜#〜♪
「うわっ!うわっ!すごいすごい!!本当にすご〜いっ!!」
カミュは感激してもはや興奮状態だ。
「いい調子よスネ夫さん。」
「あっ、ちょっと話しかけないで。ややこしくなるから。ええっと・・・。」
実に頭がこんからがる作業である。
「すごいなぁー・・・みんなはいつもこんな風に遊んでるんだー。」
「あ。ぼくは違うからね!人形なんかで遊んでなんかないからねー。」
793名無しさんだよもん:03/05/08 19:34 ID:CABNTcjU
スネラー……スネ夫の格好を真似する人?
スネカミにするヌワンギとかインカラとか……
うわあ、想像したら凄いことになった(w
794名無しさんだよもん:03/05/08 21:59 ID:IkXW04YT
「ミュージックスタート!」で宇宙小戦争を思い出し
ニヤリとしちまったい。
795名無しさんだよもん:03/05/09 00:19 ID:dtoxiwLI
本家ドラよりも、スネ夫の出番(主に頭脳労働担当として)が多くて、巧いなぁと思う今日この頃。

796名無しさんだよもん:03/05/09 10:27 ID:EfQYRY9r
今日の一言のAAと「特に意味はない」というコメントが
物凄く気になる今日この頃。
797うたわれ 今日の一言:03/05/09 13:41 ID:7nSUhQMH
q∧ ∧
     (*゚ー゚)
     / ||y||ブ
    ノ_/'ノゞヽ

・・・酒。
798うたわれ 今日の返信:03/05/09 13:45 ID:7nSUhQMH
相変わらず1行目がずれるなぁ・・。
>>793
スネラーってやっぱ変だな。何人や?
>>794
流石だな。貴方。
>>795
奴は何もやってない気がします。
>>796
本当に意味はない。
公式ページ
ttp://www.tekipaki.jp/~midaresetugekka/doratop.htm
まとめページ
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/9698/daichouhen.htm
その翌日。皆で森へピクニックに行くことになっていたのだった。
「遠くへ行ってはなりませんぞ!姫様の身になにかあったら拙僧はなんとお詫びしてよいのやら・・・。」
「大丈夫だって!心配しなくたって私には術も使えるし、へいきだよっ!」
「ですから余計に心配なのですぞ!?皆様方どうかどうか・・・姫様をよろしくお願いいたしまする〜っ!!」
「はい、わかりました!」
「それじゃ行ってくるね〜!」
「ああ・・姫様・・・。」
「本当に心配してくれてるんだね、ムント様は。」
「いやや、あれはもう過保護というかなんというか・・・。いいの!カミュはもう大人だもん!」
「いいじゃない?心配してくれるひとがいるだけでさ、それだけでなんというか幸せだと思うけど。」
「ふふん、別にカミュだってムントのことが嫌いじゃないもん。ま、騒いでくれるのは楽しいけどね。」
「ふふっ・・・、あら?」
静香が突然足を止めて振り返る。
「どうしたの?静香ちゃん。・・・てスネ夫くん?」
スネ夫は先ほどから足を止めていた。
「ちょっとさ・・・。話があるんだけど・・・。」
「なあに〜?」
走り寄るドラえもん、静香、カミュ。
「僕さ・・・今日ものすっごく嫌な予感がするんだ・・・。」
「えー?どういうことだい?こんなにいいお天気、最高のピクニック日和じゃない。」
・・・と、ドラえもんが首を傾ける。
「ちがうよ、僕が言いたいのはこの森なんかに来たくなかったってこと!・・・この森は前にT・Pの総隊長が殺されてるじゃない・・・。」
「・・・あれは事故だよ、事故。そう思うことに決めたじゃない。」
「でも・・・。」
流石に目の前で人が殺されるのを見たスネ夫のショックは大きいようだった。
「なあに!スネラーのことはカミュが術でちゃあんと守ってあげるよっ!」
「・・・。」
スネ夫は美少女に『守ってあげる』と言われて嬉しい反面・・・カミュのことがいまいちアテにならないのを感じていた。
「・・・ドラえも〜ん、なんか身を守る道具出してよ。」
「う〜ん。・・・まあ一応各自、自分の身を守れるくらいの装備くらいはしといて正解かなぁ。」
「でしょ?だから僕を『完全無敵』にする道具出してよ。」
「完全無敵・・・か。じゃあ、『ジークフリート』!これで君は不死身になる!」
ドラえもんが出したのは液体の薬が入ったビン。
「おおっ!で?これ、どうやって使うの?飲むの?」
「これを一滴お風呂に入れる、そして肩まで浸かって一時間。これで完全無敵になれるんだ。」
「・・・え?ちょ・・ちょっと待って。お風呂?今何処にお風呂があるの?」
「・・・ないね。」
「じゃあ使えないじゃんか、他のはー?」
「・・・『バリヤーポイント』・・・はあのことで駄目だったし・・・。・・・うーん・・・。」
今現在、次元そのものが不安定で、ドラえもんの道具の一部は使えない状態にあった。
「じゃあ・・・これでどうだい?『ツキの月』(アニマル惑星)。ゴツゴーシュンギクって言う薬草が原料なんだ、これを食べればとんでもないくらい運がつきまくるんだ。」
「・・そんなんで大丈夫なの?」
「強運が味方になってくれるんだよ。ある意味完全無敵でしょ?」
「ウ〜ン。」
「・・・で静香ちゃんには・・・。『痛みはねかえりミラー』。」
「・・・普通のコンパクトミラーに見えるけど、これをどうするの?」
「何かが襲い掛かってきたら、そいつをこのミラーに映すんだ。そうしたら・・・。」
「『痛みが跳ね返る』ってわけね。」
「なんだよ〜、そっちのほうが『完全無敵』じゃないか・・・モグモグ。」
スネ夫は『ツキの月』を食べながら抗議する。それにしても中々美味しい。
「使い方に注意点があるとするなら一つ。鏡に映す人物を間違えないこと。もしもぼくやスネ夫くんが映っていたら・・・。」
「・・・!やだわ、ドラちゃん。私怖くて使えないわ。」
「静香ちゃんなら大丈夫だよ。何よりコレ以外に敵から身を守る方法がないんだ。」
「・・・わかったわ。」
「さらにT・Pの支給品、『タイムシーバー』の電源を入れっぱなしにしておこう。今は時間を飛び越えての通信は出来なくても、普通のトランシーバーとしての使い方は出来るからね。そして何かの理由ではぐれた場合でも居場所がわかる。小さいから襟元にでもつけておいて。」
『タイムシーバー』の大きさはギターのピックぐらいである。
「さらに何があった時の為のタケコプターを翼で飛べるカミュっち以外のみんなに配ろう。さらにテキオー灯を使う。」
懐中電灯型のテキオー灯は、照らされると24時間どんな状況下に置いても適応できる体になれる道具である。
「このくらいでどうだろう。あんまり派手に装備しちゃうと返って周りから目立っちゃうしね。」
「うう〜ん、わかった・・・ことにしとく。」
「とにかく、何もなく、無事に終わることを願おうじゃないの。」

4人は早朝の森を歩く。
静香とカミュは今まで静香が見たこともない珍しいきれいな花を見つけては少しずつ取っていく。聞くと後で花の髪飾りを作るとか。
ドラえもんはたまに害のなさそうな小動物を見つけては、『ほんやくコンニャク』で会話してみせたり、スネ夫がたまに『桃太郎印のきびだんご』でその動物や鳥を手懐けてみせたりととピクニックは大いに盛り上がっていた。

「この後にある関所を抜けると小さな村があるの。そこでちょっと休んでいこっか。」
「そうね。手も汚れたし。」
「足も疲れたし。」
やがて4人の前方の遥か先に関所が見え始めた。
803名無しさんだよもん:03/05/09 16:15 ID:KxSvQnbl
>>797
http://www.big.or.jp/~monadowa/sanka/sanka2.htm
AAコピペの方法です。これで多分ずれないと思います。
804名無しさんだよもん:03/05/11 00:05 ID:bvWuUeYz
>>799-802
ここまでドラえもんの道具に精通しているとは、驚き。
スネ夫が使い方が難しいキャラだと思いますが、キャラが生きていていい感じ。
凄いおもろいです
805名無しさんだよもん:03/05/11 23:28 ID:x4ws2Vo8
hosyu
806うたわれ 今日の一言:03/05/12 03:47 ID:Fui9IoYT

  ,__    
  iii■∧   /
 ミ*゚ー゚彡 /
   ミ   つ
   ミ  ミ
 〜ミ  ミ
   ∪∪

決まれッ!!(w
807うたわれ 今日の感動:03/05/12 03:58 ID:Fui9IoYT
決まったー!!
・・って皆さんスイマセン。サンクス>>803
ああ、しぃが可愛い・・・。
>>804
奴はどうなんでしょ?何をやればいいんだろー?
やっぱ最終的にはアヴ・カムゥに搭乗して戦うのか!
クーヤが乗っていた白いアレに。スネ夫が道具で直してさ。
「僕はクーヤの仇を取るんだーっ!!」つってハウエンクアとの一騎打ちに向かうとか!!
カコイイぞスネ夫!!
・・・いつの話になるんだろ・・・。

公式ページ
ttp://www.tekipaki.jp/~midaresetugekka/doratop.htm
まとめページ
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/9698/daichouhen.htm
「・・・・?おかしいわね。」
「え?カミュっち、何が?」
「門番がいないことが。」
「ねえ・・何か匂わない・・・?」
「言われてみれば・・・なんか・・・。」
・・・。何か嫌な予感がする。
関所の中は柵に囲まれて見えない。それが異常な不気味さを漂わせている。
「引き返すべきか・・・どうか・・・確認してから考えるべきね。」
「・・・。」
あたりの空気が緊張に包まれる。
「・・・ねえ・・・。」
スネ夫がゆっくりと口を開ける。
「これって、血の匂いじゃないかな・・・。」
「・・・。」
それに誰も答えることは出来なかった。
だってそれはとうにわかっていたことだったから。

・・・でも確認せずにはいられなかった。
あそこで異常な事態が起こっていることは容易に想像できる。
だが、これを放っておけば後にさらに事態が悪化するのは間違いない。

「行こう。」

各自、装備品を確認しながら関所を目指す。
森は相変わらず静まりかえっていながらも、関所から発している不気味なオーラは痛いくらいに感じ取れる。
だが、彼等は引き返そうとは思わなかった。

関所前。門は開きっぱなしになっている。
やはり・・・そこには人の破片が飛び散っていた。

「・・・。」

目を覆いたくなるも、その赤の色はどうしようもないくらい目立ってしまっている。

「・・・。」

ヒドく気持ちが悪くなる光景ながらも、なんとかそれに耐え切れていた。
彼等・・・ドラえもん、スネ夫、静香は今までの冒険で修羅場というものに少しは慣れていたのかもしれない。
今、一瞬でも自分の隙を見せてはならない。そういうことがわかっていた。

関所の隅にある、兵士が控えるために建てられた建物から男が一人・・・またひとり・・・と出てくる。
バッ!と振り返り囲まれた柵の上を見るとやはり男達が一人二人と剣を構えている。

男達は緑のフードにマント両手に曲刀、腰に大きな袋をつけた、そしていかにも悪人ヅラの男・・・。

ギィイイ!バタン!
その音に振り返ると先ほどの門は男達によって閉められていた。
「囲まれたってわけ・・・ね。」
カミュは呟いた。囲まれるのがわかっていたが、ここまで事態がマズイものになっていたとは思いもしなかった・・!

「アナタたち正式な軍隊じゃないわね!何処の国に雇われたの!?答えなさい!!」
しかし問いかけに答える者はもちろんいない。
そうしているうちにも男達はぞろぞろと増えていく。
「・・・・・。タケコプターで逃げようとしたって矢で狙い撃ちにされるだけだね。」
「・・・なら、どうするべきだろ?」
「逃げるほかないんじゃない?」
「どうやって・・?」
「・・・。」

「コイツ、羽が黒い・・・!?お前、オンカミヤムカイの皇子か!!」
男の一人がそう叫ぶと辺りはざわざわと騒ぎ出した。男達は自分達が“あの”オンカミヤムカイの皇子を取り囲んでいる事を今まで気づいていなかったのだ。
「・・・そう・・・、私はオンカミヤムカイ一の術師、カミュよ!カミュはアナタたちなんかに絶対負けないんだからっ!!」
カミュはその場の雰囲気に怖気づくことなく堂々と男達に向かって言い放った。
ドラえもん達は思った。カミュはやはり一国の皇女として育てられてきたのだ、と。

カミュの黒い羽がバッと広がる。
「オンカミヤムカイの代表の一人として、アナタたちに言うわ!カミュはアナタ達を捕らえなければならない・・・オンカミヤムカイ第二皇女カミュは大好きなオンカミヤムカイの関所のみんなを殺したアナタ達を絶対許さない!!」
その時のカミュの目には涙がこぼれていた。
811うたわれ 反省会:03/05/12 04:06 ID:Fui9IoYT
ああ・・グロいことになりそうだ。(w
「うたわれ」を題材にするとどうしてもなー。

191話の
ここまで事態がマズイものになっていたとは思いもしなかった・・!
は、
思ってもいなかった・・!
のほうが自然だったかしら?
812名無しさんだよもん:03/05/13 01:29 ID:nG43Hn90
思いもしなかった・・!  の方が
思ってもいなかった・・! より緊張感が出る(気がします)。

>ああ・・グロいことになりそうだ。(w

「ちきゅうはかいばくだん」できれいさっぱりと(ry
813名無しさんだよもん:03/05/13 23:30 ID:UDkPvvAv
独裁者スイッチなら(ry
814812:03/05/15 00:56 ID:3q3Jt1+2
保守。
正しくは「地球はかいばくだん」だったな。目でピーナッツを噛んでこよう。
815名無しさんだよもん:03/05/15 16:01 ID:X4TThPYA
次回最終回!
「のび多の人間爆弾」をお楽しみに!
816名無しさんだよもん:03/05/15 23:01 ID:Yu8j0TVm
hoshu
817bloom:03/05/15 23:05 ID:p/+qlMrs
818うたわれ今日の一言:03/05/16 12:57 ID:aV9DXL80
(゜д゜)<あらやだ!
819うたわれ今日の返信:03/05/16 13:02 ID:aV9DXL80
ちょっと行き詰ってた。

>>812
きれいさっぱりとしたいものです
>>813
え〜?(´Д`)
>>814
じゃあ私は鼻でスパゲッティを食べてきます。
>>815
ど う す れ ば い い ん だ

公式ページ
ttp://www.tekipaki.jp/~midaresetugekka/doratop.htm
まとめページ
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/9698/daichouhen.htm
男達は無言で近づいてくる。

「みんな!カミュの側から離れないで!!」
「えっ!?」
「ここにいる皆に見せてあげるっ!!これが・・・。」
突然、カミュを中心に輪を描くように黒い楔形文字の魔方陣が出現する。
「!」
男達はカミュが何かを仕掛けてくるのを察して飛び込んでくる!
「遅いっ!」
カミュは一回パンッ!と手を叩いた後天を仰ぐように右手を上げた。
「これが『火の術法』よっ!!」
―ドオン!!
「ぐぁあああ!!」
「ひぎぃいいいい!!」
襲い掛かろうとしていた男達が突然の大爆発に巻き込まれ火達磨になりながら弾き飛ばされる!
ドラえもん、スネ夫、静香は無事であった。
「これが・・・術!?」
「糞ッ・・・この餓鬼がァ!頭に乗りやがって!!」
再び先ほどと同じ格好をした新たな男達がが布陣を組んでやってきた。
「死ねやァアアアア!!」
男達は一斉に剣を構え、本気になって襲い掛かってきた。
慌てて呪文を唱え、印を切ろうとするカミュ・・・だが、
「・・・っ!間に合わない!!」
「ヒャホーーーッ!!!」
「『バショー扇』!!」
カミュの前で身構えるドラえもん。
「このタヌキが!邪魔するんじゃねェってんだよォ!!」
「タッ・・・タヌキだとっ!!ぶっとべええええっ!!」
ドラえもんはブォンとバショー扇でひと扇ぎするだけで、男たちははあっけなく星の彼方へと吹っ飛ばされてしまった。
「タヌキじゃないってのに!!ネコなんだぞーっ!」
「糞ォ!!ならば、弱そうな奴から狙え!!」
うぉおおおおっ!!新たな野盗達は静香ちゃんを目掛けてやってくる!
「きゃあああっ!!」
だが静香ちゃんは『痛みはねかえりミラー』を相手に向けることを忘れなかった。
「ギャアアアアアッ!!」
「・・・・・!?」
男達はその場で倒れていた。
「ドラえもん!あれ貸して!」
「ハァハァ・・・何!ぼくはタヌキじゃないぞ!!」
「何言ってんの!!『サイコントローラー』とマイクロチップ!」
「え?こんな時に何に使うの!?」
「いいから!」
「ハイ!」
ドラえもんはスネ夫の言うとおりに投げ渡す。
「・・・これをこうして・・・。」
「うぉおおおお!!」
男達はまだまだやってくる。ドラえもんはその度にバショー扇で吹っ飛ばして時間を稼ぎ、カミュはドラえもんが稼いだ時間で呪文を唱え、巨石を落としたり、爆発を起こしたりしてやり過ごしている。
静香は自分に攻撃されかかると『痛み跳ね返りミラー』を向け攻撃を跳ね返していた。
ちなみに何故かスネ夫は敵の攻撃対象となっていなかった。無論ツキの月のおかげである。
「・・・マズイ!ここは先生お願いしますよ!!」
「!!」
「やれやれ・・・こんな子供、女相手に何を梃子摺っていらっしゃるのかしら?」
男たちに先生と呼ばれたのはなんと若い女だった。その女は先ほどの奴らと同じようにフードとマントを羽織っているのだが、その色が真っ黒だった。
黒髪の腰まで届く青みがかった編んでいる長髪、瀕死の野盗達を嘲笑うかのような冷血な目、体は筋肉質ではなく返って細身に見える。
剣は今までの野盗が装備していた細身の曲刀ではなく、燃える炎のような波打った刀身を持っている分厚い大剣。今までのザコとは一味違う様子だ。
「さて・・・行きますわよ!!」
ドッ!女の足が地面を蹴ったと思った、次の瞬間にはドラえもんの目の前にいた!!
「早っ・・・・!!」
「ハァ!!」
ドォオオオンン!!と音を立てて破壊されるバショー扇!ドラえもんは10メートルほど吹っ飛び木に叩きつけられたが、それほどダメージはないようだ。
「ドラち〜っ!!」
カミュが後ろを向いたその瞬間、女はその隙を狙って走りだしていた!
「しまっ・・・!!」
「ごきげんよう。」
唸りを上げて振り落とされる大剣!
ガキィイイン!!!
「・・・・・・?」
「・・・・・・・!?」
大剣を受け止めた物、それは空中に『浮く』曲刀3本だった。
「あれは・・・・もしかして・・・・。」
よろよろしながらもドラえもんは立ち上がる。アレが出来る道具を貸した人物・・・それは・・。
「ぼくが相手だ!!」
スネ夫は女に向かって叫んだ。男達が持っていた剣をラジコン化させたのだ。剣は5本。3本はたった今大剣を受け止めた。残り2本は今スネ夫の左右に浮いている。
823うたわれ反省会:03/05/16 13:10 ID:aV9DXL80
この人野盗じゃねぇし。あらやだ!
824名無しさんだよもん:03/05/16 22:08 ID:pg34g1dk
これ、いつか同人誌にできないかなぁ…文庫本で。
そう言うことになったら…協力したい、すごく。
825名無しさんだよもん:03/05/16 23:31 ID:8rB7xUZp
またタヌキ呼ばわりされた、と勘違いするドラえもんに笑った。
あと剣をラジコンにして戦うというのは「なるほど!」と思ったよ。
そういう使い道もあるのか、とただただ感心。

826名無しさんだよもん:03/05/16 23:37 ID:8rB7xUZp
失礼をば。

× 戦うというのは → ○ 戦うというのには
× 使い道 → ○ 使い方

にしてもバショー扇って能力はシンプルだけど強力だな。
827名無しさんだよもん:03/05/17 00:14 ID:vIP/y4M2
ひみつどうぐの使い方が(・∀・)イイ!!
828星の記憶の伝承者:03/05/17 13:53 ID:Bk84UNjb
どうも皆さん、お久しぶりです。
覚えてくださっている方はまだいるかな……(・_・;
「星の記憶の伝承者」を書いていた者です。

卒業研究が忙しくなってからというもの、筆が遅くなっちゃいました。
それでも、無理して書いたら「面白く無い」とか言われたりして、
「あ〜、やっぱり文章にそういうのが表れるものなんだなぁ」
と思い、状況が落ち着くまで姿をくらましていることにしました。
書き出した時期がまずかったみたいです(・_・;

んで……その後の卒論原稿や新生活の準備、そしてスパロボ等の理由で
自分の書いていた話の存在そのものをすっかり忘れていました(汗

先日、ちょっとしたきっかけで自分が昔書いていた物があったことを思い出しました。
読み返していたら、あの話を書いていた頃の記憶や情熱が蘇ってきました。
ヘッポコな話であっても、ちゃんと最後まで完結させたい、という欲が出てきました。
そんなワケで、いまさらノコノコとお恥ずかしいのですが、近々星の記憶の伝承者を再開しようかと思います。

ここでは、既に続編を書かれている方がいたり、
「のび太とうたわれるもの」という大作を書かれている方がいますので、
自分でHPをこしらえてそこで再開する予定です。
また、続きを書いてくださった方には申し訳ないのですが、
私の力量では私の描く話の展開との都合うまくつけられそうにないので、
その続きからとはいきそうにありません…。
私の我が儘ではありますが、こちらはこちらで話の続きを書こうと思っています。

今度は、ちゃんと最後まで書いてお話を終わらせられるといいなぁ

それでは、HPが完成したら宣伝にやってきます。
スレ汚し申し訳ありません。お邪魔しました〜(・_・
829名無しさんだよもん :03/05/17 16:34 ID:xKlbyQ6V
是非お願いします
830名無しさんだよもん:03/05/17 20:17 ID:Uhodncrr
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
期待して待ってます。
(´-`).。oO(待ってた甲斐があったよ・・・)
831星の記憶の伝承者:03/05/18 02:40 ID:PN+8ukVB
ホームページのスペース借りてきました。
とりあえずURLだけでも

ttp://www.geocities.co.jp/Playtown-Bishop/3320/

それにしても・・・以前書いた文章の修正作業だけで結構かかりそうです(・_・;
続きはいつになったら書けるのやら
832名無しさんだよもん:03/05/19 22:00 ID:RtFCK09D
先が楽しみだなあ。保守。
833名無しさんだよもん:03/05/21 23:07 ID:mSlLw79H
ほしゅ
834名無しさんだよもん:03/05/22 21:41 ID:45Zq/I46
保守っても良いんじゃないカナ?良いんじゃないカナ?
835名無しさんだよもん:03/05/23 18:26 ID:4HTB9f80
とりあえず保守
836名無しさんだよもん:03/05/24 23:07 ID:qVF+DRxE
職人さんが帰ってこないから「葉鍵の国」をリレーSS化したほうが良いのでは?
他力本願で悪いのだが。
837名無しさんだよもん:03/05/25 23:27 ID:+7oVvKLW
保守
838836:03/05/27 00:09 ID:1118iW8/
思ったがリレーSS化ではなく、
自分が「葉鍵の国」の続き書いていいだろうか?
以前の書き手よりも拙い文になるだろうが。
839名無しさんだよもん:03/05/27 00:21 ID:jtHz/ogJ

OnoMaのメコスジ、
http://ono-mayumi.otona-no-jikan.net/iscoolnet/index.html
アコムCMの小●真弓、食い込み画像

840名無しさんだよもん:03/05/27 05:21 ID:4xprggY0
◎お待たせしました◎
http://www.yahoo2003.com/betu/linkvp2/linkvp.html
841_:03/05/27 05:39 ID:ZVGNDxi1
842名無しさんだよもん:03/05/27 18:38 ID:pGl0nXPM
>>838
いいよ、作者が戻ってきたら
作者は作者が書いてきた続きから書き始めればいいだけだし
843名無しさんだよもん:03/05/27 20:19 ID:dIrhz8LA
ついでに以前のように小ネタでも出してないか?
と言った自分がネタを持っていない罠w
 さわやかな日差しの中、水瀬家の朝はパンとジャムから始まる。
 昨日から月宮あゆのサインのために水瀬家に泊り込んでいるのび太とドラえもんもイチゴジャムをつけたパンをほおばっている。

「ところでドラえもん、月宮あゆに会うにはどうしたらいいんだろう?」
「う〜ん、この世界ではまだ祐一さんが引っ越してきたばかりなんだよね…。」

 テーブルの向こうで遅い朝食をとっている祐一に聞こえないように小声で会話するのび太とドラえもん。
 
 ドラえもんの言葉が指すもの、
 それは「今日の夕方までは会えない」である。
 そのことぐらいはKANONをあゆシナリオだけでも数十回クリアしているのび太には理解できた。

「えぇーっ!?ぼく早く会ってサインもらいたいよぅ!」
「しょうがないじゃない、シナリオが進んでいないんだから。」
「クリアデータないの?」
「これはスネ夫君のゲームだからスネ夫君に聞いてよ。」

 そのとき、ちょうどいい具合にポケットから声が聞こえてきた。

『お〜い、ドラえもん、のび太、静香ちゃーん!!』

「あっ、ジャイアンの声だ。」
「一体どうしたんだろう。 …よいしょっ!!」

 ドラえもんはポケットの中に手を突っ込むと力いっぱい引っ張り上げた。
 そしてポケットから顔を出すジャイアンとスネ夫。

「おーい、みんなちょっとONEの世界へ来てくれよ!…あれ、静香ちゃんは?」
「静香ちゃんなら別の世界だよ。 …でも、何でいきなり?」
「いやさ、浩平が『パジャマが誰に一番似合うかコンツェルト』を開くって言うからさ…。」
「ジャイアン、『コンテスト』。」
「そうそう、そのコンテストを開くから一緒に来てくれよ。」

 ジャイアンたちの誘いに、本来の目的が月宮あゆのサインであるのび太が乗るはずも無く、

「えぇーっ!?」

 という文句を発した。
 だがもちろん、ジャイアンにはそのような文句が通じるはずも無く、

「なんだよ、なんか文句あるのかよ!?」

 と返された。
 これにはのび太もたまったものではない。
 「逆らえば死刑」である。断るわけにはいかない。

「あ、ありません…。」

 結局のび太は力に屈するしかないのだった。
846836:03/05/27 22:02 ID:1118iW8/

少し書いてみました。
8行目ミスっている…。
×そのことぐらいは
○そのことは

自分は葉鍵で未プレイ作品がかなりあるのでそちらを誰か支援してほしい。
847117 ◆gDkfZYrzbg :03/05/28 06:42 ID:3iQLV/h+
ガンバ
848名無しさんだよもん:03/05/28 18:16 ID:5D6scVme
>>846
がんばれよー

ついでに保守。
849836:03/05/28 20:08 ID:C/OlS+Sp

えーと…、言い忘れたが自分の書き方では討論スレにあるような展開にならないかもしれない。
それと昨日言ったように、葉鍵の未プレイ作品が多々あるので、舞台となる世界は限定される。
幸いロワやサバなどでキャラについて大まかなことは知っているから大体の作品のキャラは出せるはずだが…。
というわけでもうすぐシナリオの本題に入ることになる。

それから付け加えると、自分は秋子さんは普通の主婦派なので、最強派の人はご容赦を。
850ドラえもんのび太と「葉鍵の国」:03/05/28 20:12 ID:C/OlS+Sp
「じゃあ、早く行こう!」
「あ、ちょっと待って。」

 ドラえもんがスネ夫を呼び止める。

「どうしたのドラえもん?」
「スネ夫君、KANONの記録は消しちゃったの?」
「え?消すわけないじゃない。CG見られなくなるし。」

 そんなにHシーン保持したいのか、骨川スネ夫よ。
 それでも彼は小学四年生だったりする。

「おかしいなあ。クリアデータがあるならALLエンド後の世界に着けるはずなんだけど…。」
「ま、そんな細かいことはどうでもいいじゃない。」

 スネ夫が楽天的に流す。
 それでもドラえもんは暫く考えていた。

「おい、早く行くぞ!それに静香ちゃんも探さないといけないじゃないか!!」

 結局ドラえもんの思考はジャイアンのこの一言により中断せざるを得なくなった。

「あの二人、何でポケットから…?それ以前にKANONの記録って一体何のことなんだよ…?」

 そして残るは祐一の些細な疑問だけだった。
851ドラえもんのび太と「葉鍵の国」:03/05/28 20:15 ID:C/OlS+Sp



 一方―――

「あれ、外が騒がしいようだけど?」

 ジュースを片手にセワシがドラミに話しかける。
 ここはトーキョーシティネリマブロックススキガハラストリートの野比家。
 ドラえもんの生まれた時代22世紀に存在しており、のび太の孫の孫セワシが住んでいる家である。

「セワシさん、また未来デパートが問題を起こしたみたいよ。」
「また?未来デパートも相変わらず杜撰だなあ。」
「新しく発売されるひみつ道具の試作品に欠陥があったんですって。」
「へえ…。それで、今業者が回収に回っているのか…。でもなんでこんなに騒がしいの?」
「それが…、その『ゲーム入り込み靴』には人命に関わる欠陥があるみたい…。」

852あとがき:03/05/28 20:20 ID:C/OlS+Sp
ああ…、またおかしいところが。指摘される前に直そう。
×静香ちゃんを探さないといけないじゃないか!!
○静香ちゃんを探す時間がなくなるじゃないか!

昨日に続き連続ミスだ…。
そんな自分にこの言葉を贈る。
「あわてるとだめなやつ。」byのび太の恐竜でののび太
853名無しさんだよもん:03/05/30 00:07 ID:m1/477i8
保守


「おいドラえもん、本当にここに静香ちゃんがいるのか?」

 ドラえもんたち四人は今温泉街隆山、つまり痕の世界にいる。
 もちろん秋子に出かけてくると一言言ってから来た訳だが。
 ちなみに秋子はジャイアンとスネ夫がいきなり上がりこんでいる事も一秒「了承」である。

「間違いないよ。静香ちゃんの履いている『ゲーム入り込み靴』は間違いなくこの世界にある。」

 ゲーム入り込み靴の位置を把握する機械を片手にドラえもんがその質問に答える。

「しかし暑いなあ。」
「しょうがないよジャイアン、さっきまでKANONの世界にいたんだから…。」
「でもドラえもん、どこに静香ちゃんがいるの?」
「のび太君、ここを何処だと思ってるの?痕の世界に来たのなら、行くところはひとつでしょ?」
「あ、そうか!」

 ここでスネ夫は理解する。
 痕未プレイのジャイアン、理解力の無いのび太はまだ分かっていないようだ。
 そして二人に答えを出すかのようにドラえもんが一声出した。

「そう、柏木家に行くんだよ!」
 駅。
 人が出入りの激しい場所であり、街の出入り口。
 その駅の前に静香は立っていた。

(おかしいわ。確か国崎さんのいる町の駅は廃駅だったはず…。まさか!)

 そう、通りすがりの遠野美凪・みちると思われる人物に案内され、
 駅まで来たはいいが、その駅はどうみてもまだ生きている。
 ここで静香は二つの確証を得た。
 ここはAirの世界ではなく、どこか別のゲームの世界だということ。
 そこにいる二人は遠野美凪・みちるではないということ。

「あの、すいません…。お二人のお名前は?」
「えっ?私は柏木初音ですけど?」
「柏木楓ですが…。」

 やっぱり…。
 これで分かった。
 自分は何処だか知らないが別のゲームの世界にいる。
 国崎に会いたい静香にとって、ここに留まることは無駄以外の何物でもなかった。

「あ、ありがとうございます。それじゃ、私はこ…。」
「お〜い、楓ちゃーん、初音ちゃーん!!」

 そういって静香が早々にこの世界から抜け出そうとしたその時、
 一人の青年が駅から足早にこちらへと向かってきた。

「耕一さん…!!」
「耕一お兄ちゃん!?」

 楓、初音が突然のことにびっくりして振り向く。
 静香はこの状況をすばやく分析した。

(な、何かしらあの人、かっこいい…。国崎さんと同じぐらい素敵だわ…。)

 否、分析ではなかった。
 ただ、国崎往人と青年(柏木耕一)を天秤にかけていただけであった。

「やあ、またしばらく厄介になるよ。 …あれ、そっちの人は知り合い?」
「え?ただ道案内を頼まれただけだけど…。」
「初めまして、源静香です。」
「ふ〜ん、静香ちゃんか…。俺は柏木耕一、楓ちゃんと初音ちゃんの従兄弟で何の変哲も無い大学生だ。」
「耕一さん、どうして一言連絡してくれなかったのですか?そうすれば歓迎の準備ぐらいは…。」
「いや、気を使わせちゃ悪いと思ってね。」

 耕一はそう明るく答える。
 ちなみに最後の一言に「千鶴さんに料理とかの」という言葉を付け加えたかったのは内緒だ。

「ところで…。」

 急に静香のほうを向く。

「君は小学生だよね?」
「ええ。四年生です。」
「あ、いや、なんでもない。それより、これから柏木家に行くんだけどよかったら君もどうだい?
 別にかまわないよね?楓ちゃん、初音ちゃん。」

 ちなみに口ごもった理由が「初音ちゃんのように幼児体系な高校生じゃないよね?」
 という言葉をつけ加えようとしたというのも内緒だ。

「うん。私は別に平気だよ。」
「私も、構いませんが…。」

 二人からはあっさりOKが通る。
 ここで静香は思った。
(この道で出会ったばかりの人を家に呼び込むという、現実では有りえないいかにも二流シナリオにありそうな展開…。
 これが、いわゆる分岐…。ということはここで「はい」を選べば耕一さんルートに…!)
 ついに国崎を裏切ったか源静香よ。

「じゃあ、無理にとは言わないけど来てみたらどうだい?」
「はい。じゃあ、ご一緒させていただきます。」
「そうか、じゃあ一緒に行こう。柏木家はここから歩いてすぐだから。」

 こうして、静香は柏木家へと向かうことになった。

「そういえば、静香さんは何のために駅に来たんだろう…?」

 初音の些細な疑問に答えるものは誰もいなかった。
858あとがき:03/05/30 20:22 ID:nLewa5CS
今回から痕編ということになります。
何せ最初のほうから痕キャラ出しておくと後々まで使いやすくなるし…。
例…痕キャラは敵にしやすい。四姉妹+耕一+柳川は強力な味方に出来る。

ところで>>268−269の249氏が書いた葉鍵の国Air?がまとめページに掲載されていないのは何故だろう…。
一応それにつながるように書いたが…。
859まとめの者:03/05/31 11:30 ID:DspfvfZx
もう少し量がたまってから痕編として掲載しようと思って・・・ずっと忘れていました。
指摘サンクスです。追加しておきました。
あと、いちおう「葉鍵の国」の話を統合しました。


「人命に関わる欠陥!?」

 セワシがドラミに聞き返す。
 ひみつ道具というのは安全性を最優先される。
 それが武器であっても、通常の使い方をしていれば命に関わることは無い。
 ただし、ジャンボガンや熱線銃等といった一部の例外はあるが。
 命に関わる問題が生じているということは、とんでもないことだ。
 楽に新聞の1面は飾る。

「とりあえず、ニュースを見てみましょうよ」

 そういってテレビをつけるドラミ。
 チャンネルを某国営放送のニュースに合わせる。
 ちょうどよくニュースは放送されていた。
 しかも『ゲーム入り込み靴』の特集を。
『えー、今回試作品として限定発売されたゲーム入り込み靴のバグ問題についてですが…』

 キャスターがそんなくだりでニュースを読み上げる。
 先ほどのドラミちゃんの説明とさほど変わらない。
 そして場面は変わり、開発スタッフらしき人がインタビューを受けているシーンになった。

『大体の回収は終了しました。未回収の機体は別時代に渡った物ぐらいです』
『一体どのようなバグなのですか?』
『それが、戻れなくなるんですよ』
『戻れなく? …と言いますとゲームからですか。それは確かに危険ですね…』
『はい。 …ただし、100年ほど前に開発された、あるゲーム以外ではそのようなことは無いんですがね』
『そのゲームとは?』
『うーん…。今のような小さい子供も見る可能性がある時間帯には大きい声ではいえないんですけどね…』

 開発スタッフは一枚のボードを出す。
 見出しには「バグ確認ゲーム」と書かれている。

『こ、これは確かに…』
『でしょう?』

 インタビュアーとスタッフが同時に苦笑する。
 そのボードには、ほぼ全ての葉鍵ゲーが名を連ねていた。
 そしてそのときセワシが思ったこと。
 大きな声で言えないと言っている割にはボードまで作っているじゃないか…。
862あとがき:03/05/31 15:58 ID:KyBcKTFc
この話は映画でいうならドラえもんたちが帰れなくなったことを視聴者に知らせる場面といったところ。

それから自分流葉鍵の国のそれぞれのプレイ済みゲームは下記の通り。
一応参考までに。


ドラえもん KANON,AIR,痕,まじあん,こみぱ,ルーツ 属性は天然

のび太   ONE,KANON(全年齢版・DC版・PS2版・アニメ版含む),AIR,MOON,痕,雫 属性は無し(あゆのみ)

スネ夫 全部 属性はメイド

ジャイアン ONE(DC版),AIR(PS2版),KANON(PS2版),こみパ(DC版),東鳩(PS版),WA(やりかけ) 属性は妹

静香 こみぱ(DC版),ONE(DC版) 属性は無し(ただし最高信者)

ジャイアンと静香が全年齢しかプレイ済みでないのは下の通り。
ジャイアン→親が厳しい。
静香→さすがに小学生の女の子が18禁やらないだろう…。
863あとがき:03/05/31 16:04 ID:KyBcKTFc
ジャイアンは親に殴られるのが頭に浮かぶ…。

「エロゲーに興味あるのは仕方がないとして、不正だけはするなと教えてきたはずだぞ!!」

親父に殴られやりかけのWAをスネ夫の前に投げ出しながら、

「エロゲーなんてこりごりだい。」

というジャイアンの姿が…。
864名無しさんだよもん:03/05/31 16:28 ID:EBWVcIye
>>863
スネオ経由からの割れ物で殴られている情景を想像した漏れは逝って良しですか?
「おやっ、痕の旧版。ドラえもんがしまい忘れたんだな。
 いっぺんひとりでゆっくりみたかった。
 アウターストーリーIN柏木を……」
「三つの選択肢は「おなかのボタンを押す」を選んで…」

プレイ後

「で、で、で、できすぎにそっくり!!」
866名無しさんだよもん:03/06/01 01:54 ID:qTPga65s
>>862
最高信者の静香ちゃんが何故AIRをプレイしていないのか、
ONEはDCに出ていたのか、またPS版はプレイしているのか、
東鳩のPSEとこみパのDCEはプレイしているのか、
すっごく気になるんだが………
静香ちゃんが惚れっぽすぎる・・。・゚・(ノД`)・゚・。
しかし各キャラクターがそれぞれバラバラの世界を行き来するってのは
ややこしい話になりそうですな。書くのも大変だと思いますががんばてください。

葉鍵ゲーのキャラや世界観だけでかなりの数になると思います。
私みたいに把握するのが面倒にならないようにw、
RPGみたく各ゲームから厳選されたメンバーだけを仲間にするといいかも。
最終的にロマカノのような感じになるんでしょうか?
楽しみにしてます。

のび太とうたわれるもの公式ページ
ttp://www.tekipaki.jp/~midaresetugekka/doratop.htm
まとめページ
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/9698/daichouhen.htm

「ごめんくださーい!」

 柏木家の前まで来たのび太たちは門の前でそう叫ぶ。

「あれ…。留守かなあ…?」

 ドラえもんが首を傾げる。
 ちなみに彼らにはインターホンを押すという考えは無いようだ。

「入ってみようぜ」

 ジャイアンがのび太たちを促す。

「でもいいのかな?」
「大丈夫だって。どうせ静香ちゃんも中にいるだろうし」

 ジャイアンとスネ夫は躊躇いもせず門を開けずかずかと中に入っていく。
 なお、これはもちろん不法侵入罪に当たる。

「入って行っちゃったよ…」
「しょうがないなあ…」

 そう言いつつものび太とドラえもんは二人を追って中に入っていく。
 重ねて言うがこれはもちろん不法侵入罪に当たる。
 柏木家の中はまるで庭園のようだった。
 スネ夫の家をはるかに越える広さの庭。
 ただしその隅に生えているキノコは気になるところだが。
 庭には大きな庭石が所々に飾られ、その下は小さな石で敷き詰められている。
 スネ夫の家が洋風なら、柏木家は純和風といったところだった。

「おーい、静香ちゃーん!!」

 四人はまず庭を散策するが、静香はおろか人っ子一人いない。

「おかしいなあ。痕といったらまずここのはずなんだけど…」
「もしかして家の中かな?」

 庭にいないのなら家の中にいるはず。
 のび太の頭脳はそう判断した。
 そして、今ドアを開けようとしたそのとき、

「誰だ!?あたしの家に入ろうなんていい度胸してるなこの泥棒!!」

 そのような声が飛んできた。
 門にはスーパーの袋を片手に持っていて、明らかに買い物帰りという姿をした女性が立っていた。
 その人は紛れもなく柏木梓。
 柏木家の次女であり、ガサツ…いや、男勝りな性格である。

「えっ、ぼ、僕たちは…!!」

 のび太があわてて否定しようとするが、遅い。
 鬼の力は伊達ではない。
 のび太が否定する前に一瞬にして距離を詰め、

「成敗!!」

 拳をのび太の顔にクリーンヒットさせた。梓の拳が容赦なくのび太の顔にめり込む。
 ドラえもん、スネ夫、ジャイアンの三人は声を出すことも出来なかった。
 もちろん眼鏡は後方に飛びヒビ一つ入っていない。お約束である。
>>866
すいません。書き間違えました…。
正しくはPS版ONEですね。あの清水な(略

>>867
いや、決してそんなつもりではなかったんですがね、最高信者という設定からついノリで…。
そして「のびわれ」更新してほしいと思う今日この頃。
自分はうたわれ未プレイだがそれでも面白いと感じるので。