1 :
名無しの語り部:
レフキー、という都市がある。
人々の夢を奪いつつ、また同時に与え続ける都市。
夢を抱いた若者なら、必ず一度は訪れる都市。
この街を、昔から住んでる人々はこう表現する。
「全てが有り、そして全てが無い街」(ALL AND NOTHING)
皆に伝えたい物語・伝説も数え切れないほどあるのだが、
今回は、『これから』物語を作る(であろう)人々の話を語るとしよう………。
過去ログや関連リンク、お約束は
>>2-3 あたり。
2 :
名無しの語り部:02/08/07 04:38 ID:B/VqUhjj
国崎最高
4 :
名無しさんだよもん:02/08/07 04:39 ID:B/VqUhjj
【書き手さんのお約束】
○書き手さん、絵師さん、新規参加募集中!
○ただ、新規参加の方は過去ログには目を通すように願います。
○SSを投稿する際には、どこのパートからのリレーなのかリンクを張っておくと
読み手さんにもわかりやすくなります。
○後書き、後レスなど、文章中以外での補足説明は避けましょう。
SS書きはSSで物事を表現することが肝要です。
○作品の最後に書く補足説明は、作品内の纏め程度に考えてください。
補足説明とは、作品内で書いていない設定を述べる場所ではありません。
○新キャラを登場させる際は、強さのインフレも念頭に置きましょう。
以上でよろしいでしょうか。
7 :
追加:02/08/07 10:07 ID:mSCjXx3U
【読み手さんのお約束】
○感想は常時募集中です。今回は本スレ感想スレ統合の方向で。
○書き手叩きは控えましょう。
○指摘や意見は、詳しいほど書き手さんのためになります。
逆に、ただケチを付けるだけでは、書き手さんのためにも、
また他の読み手さんのためにもなりません。
○読んでる内に、新たに書き手さんになりたくなった方は、
【書き手さんのお約束】を参考にして下さい。
○絵師さんも随時募集しております。
「……話すのでは、なかったのか?」
どこか、切り出しにくそうな、いざ口にしようとしてとっさに気後れしたような風。
視線をわずかに坂神蝉丸からずらし、吉井は小さく一つため息を吐いた。
ぴんと反り返った癖毛を一房小指に巻き付け、くいっと引っ張り、それからようやく視線を正面に戻す。
「……うん」
ようやくそれだけを呟いて、また彼女は次の言葉までに幾ばくかの間を置いた。
蝉丸とて、暇な身ではない―――いや、だからと言って特に忙しい身でもないのだが。
しかし呼びとめられてすでに十分近く、さすがに浪費される時間への懸念が生まれたらしい。
冒険中に多少は溜まった軍務のこともある、捕虜の女には悪いが(いや、人を呼びとめながら待たせているのは彼女だが)もうそろそろ退席してもよかろう。
判断をくだし、別れを口にしかけたそのわずかに先に、吉井が途切れた言葉の先を続けた。
「共和国は……」
まがりなりにも、苛烈を以って鳴る帝国の将兵である彼女が、これほどまでに口にするのを躊躇った問い。
それが蝉丸の関心を引き戻す。
いったいどれほど大層な質問なのか、あるいは虜囚の身となったこの期に及んでも軍人としての勤めを果たし、こちらの内情を探ろうと言うのか。
蝉丸は警戒し、内心で続く問いへの態勢を整える。
だが、それからまたしばしの合間を空けて吉井の口から漏れた質問は―――
「あの、さ」
「む?」
「その、共和国は……どんな……国なの?」
―――そんな、酷く単純な質問だった。
これだけもったいぶった挙句に、いったい彼女は何を言い出すのだろう。
率直に理解は出来ない―――あるいは、単刀直入にこちらの国情に切りこんでいるのか。
まさかそんなはずもない。まともな答えの返る問いでないことぐらい、わからないはずがないからだ。
ではなんだ、これは更なる問いへの前振りか。こちらを混乱させてから、確信へとそろそろと迫って行こうと言うのか。
わからない。不可解だ。少なからぬ疑問符を抱きながら、蝉丸はその困惑を胸の中に閉じこめたままで捕虜を見返した。
模範回答を探るような間。
先ほどとは逆、蝉丸が待たせて吉井が焦れる。
「……他の国の者ががどう見るか、それは俺にはわからない。
だが、俺はこの国が好きだ。命をかけるのに足りる祖国だと思う」
「そう言うことじゃなくって!」
ひょっとすると、愛国心を問われているのかもしれない。
ようやく真面目くさって応えを返す蝉丸に、そんなのは誰だって同じだとばかり吉井はふるふると大きく首を横に振った。
吉井とて、自分の生まれ育った土地が好きだ。その土地に住まう人々の気質が好きだ。
帝国を裏から支配するガディム教団は、あまり好きでは……いや、命を脅かされた今となってははっきりと嫌いだけれど。
よほど悲惨な境遇でない限り、誰だってそうだろうと思う。自分の生まれ育った環境を愛するのは、誰しも共通の想いなのだ。
―――他の、より興味、関心、または憧憬を惹く土地がない限り。
そんな、他者への関心のきっかけは、ほんの些細なことからも生まれるもので―――
「街路に、人が多いね。
その割に、衛兵の数は少ないみたい。治安上の不都合なんてないのかな?」
後半になるにつれ、声量が小さくなる吉井の言葉は独白に近い。
「街は賑わっているものだろう。その賑わいを保つためには、過剰な警備は却って望ましくない。
人心を不安に落しいれ商業活動にも負の影響しかもたらさないるからな。
そして街が富み民に食が行き渡れば、武威に頼らなくても治安は自ずと定まるものだ。
……帝国では、違うのか?」
「それは、街は賑わってるけど……でもやっぱり同じじゃないよ。
兵士の姿が見えない街区なんてないし、治安の問題があるから露天商も厳しく制限されてる。
百人以上の人間が、許可を得ずに一箇所に集まることは禁止されてるし……」
街のあちこちに兵士が配置されているのは、軍人が帝国民のステータスであるという側面と同時に、やはり不満分子を威圧するためでもある。
集会を禁じるのは、煽動や暴動を警戒してのことだ。
何故それらが必要となるかというと、帝国にもたらされた富が、一部の特権階級に収奪されているからとしか言いようがない。
そのもっとも悪しき具象とも言うべき人物が、酒と女に溺れたおのれの主君の姿を思い起こして吉井はこめかみに鈍痛を覚えた。
そうだ、それに、と彼女は口篭もる。視線がついと、何気なく外の世界へと投げられる。
囚人を閉じこめている部屋には似つかわしくなく、この部屋には窓があった。
数十万の人口を誇る大都市、レフキーの海側の町並みを一望できる窓。
騒がしく、活気に満ち、人は皆気ぜわしそうな、しかしどこかほのぼのと暢気な空気が溢れていて。
地上五階からのその眺めは、帝国に慣れた吉井にとってあまりにも異質なものだ―――
「……街は、こんなに明るくないな……」
わずかに頭を擡げた羨望が、わずかな気の緩みをついて胸の外へと走りぬけた。
我知らず呟いてから、はっとして口を抑えるがもう遅い。
「あ、で、でもね、帝国は共和国みたいにどっちを向いても人間種しかいない、なんてことはないよ。
人も亜人も同じように街や村で暮らして、同じ帝国臣民として暮らしてるんだから。
そう言う意味じゃ、帝国の方がびょうどうなんじゃないかな?」
弁明の声は、はじめ甲高く後は尻すぼみ。
平等と言う単語は、まるで生まれてはじめてその言葉を口にするかのようにぎこちなく、彼女は息継ぐ暇なく早口でまくし立てる。
見るからに不自然だ。
やばいかもっていうか、絶対にマズイ。
変な奴と思われたんじゃないかないやそんなことはどうでもよくて、ああもう敵の前でなんて間抜けな醜態さらしてるんだろう。
恥と怒りに顔を真っ赤に赤らめて、くてんと首を項垂れてしまう。
だが、返って来たのは予想のはるか彼方、別のベクトルまで離れてしまった代物で。
「……む。確かに、我が国ではあまり亜人との和解が進んでいるとは言えないところがあるからな。
その点では、見習うべきところもあるのかもしれん」
「そうそう……え、えっ!?」
苦し紛れの紛らわし。
ただそれだけのはずだった発言への思わぬ真剣な対応に、吉井はさらに動転する。
さらに切りこむべき言葉も見つからない、上を下へ、視線ばかりがきょときょとと。
まるっきりの不審者状態であることが、自分自身にすら良く解る。
……その動転を蝉丸にはっきりとは気取られずにすんだのは、外部からの干渉のおかげだった。
カンカン、と分厚い扉を叩くノッカーの音。
蝉丸の注意がそちらに向くと、吉井もさっと平静を取り戻す。
「坂上殿、失礼いたします」
彼にとっては聞きなれた衛兵の声。
「む。なんだ……急用のようだな」
蝉丸が外の衛兵の呼び声に応じているうちに、吉井は一つ大きく深呼吸して、すっかり壊れかけた自分自身を建て直した。
何事もなかったかのように窓際の椅子に腰掛け、蝉丸と外の衛兵の会話の全てを聞き逃すまいと耳を澄ます。
「はい、坂神殿。柏木衛兵隊長が御呼びです。
閣下の執務室まで出頭願います」
緊迫―――よりも、自分の告げる言葉が信じられないかのような呆れを多分に含んだ声音。
「なんでも、沖合いに浮島が現れたとかで。ともかくお急ぎください、城内の特務部隊員には待機命令が下っておりますので」
【蝉丸 梓に呼ばれる】
【吉井 共和国って結構良いかも〜】
13 :
Uスレの1:02/08/07 21:45 ID:dDedouWv
以上、投稿しますた。
ご意見ご感想ご批判など、よろしくお願いいたします。
1乙〜 & 早速新作 キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
蝉丸の生真面目さがいい感じですな。吉井は少し雰囲気変わった?
まあ、ああいう経験をした後だし、当然と言えば当然ですかね。
女王ちゃん様に当てられたというのもあるかも(w
彼女はいずれキーキャラクターになりそうな予感。
しかし、こういう政治話とか帝国サイドの陰謀話なんかは
結構葉鍵ファンタジーならではの楽しみですよね。
「それで、これからのことだけど」
来栖川綾香さんは、軽く天を見上げる。空は星輝く夜の姿。
「彼はあなたはもう導かれている、といってたわね?」
それはおそらく、あの鉱石の事だろう。不思議な声に導かれて辿り着いたその先にあったもの。
遠き時代の名も知らぬものへ、隠された理を求めるならば私の声に答えよ …確か、そう言っていたはずだ。
隠された理、それが秘宝の事なのか。どちらにしても、あれが全ての道標だろう。
と言うか、それしか思い当たらない。
「祐介?」
「あ…ああ、それは多分何とかなる…と思う」
「そう、心当たりはあるんだ。ならいいけど、それって何?」
僕は、彼女に例の鉱石の事を話した。
自警団の事を口にしたとき、少し、彼女は表情を動かしたが。
「…なるほどね。でもそれだと自警団に渡しちゃったのは失敗だったわね」
「なんとかするよ、それは」
とりあえず詩子さんに相談して、それでも駄目なら…
「なんとでもなるよ」
そう…なんとでもなるのだ。それが、シュン曰く、僕が消されようとしている原因なんだから。
「なら、それは任せるわ。じゃあ明日にでも交渉しに行くとして今日のところは休みましょう?」
「………」
休む、といっても…僕の宿は叔父さんがとったものだ。もう、あそこには戻れない。
となると、適当な宿をとるしかないのだが…
「あ、そう言えば、あなたはあそこには戻れないのよね。じゃあ、適当な…と言っても、今からじゃなぁ」
こんな遅くに部屋が空いている宿も少ないだろうし、僕には余りお金の持ち合わせがない。
結局のところ…野宿しかないわけだ。
「そうね、仕方ないか。…私に一つツテがあるんだけど、よかったらどう?」
「ツテ?」
「居心地は保証できないけどね」
そう言って、微笑む。どこか含んだ笑みなのに、陰鬱よりも清々しさが伝わってくるのは彼女の人となりが成せるわざだろう。
とにかく、断わる理由はない。僕は肯いた。
…そして案内されたのが、ここだった。
彼女曰く、来栖川商会フィルムーン事業所の仮眠室らしい。
ただし、その上に支店長クラスの、という修飾が付くらしいが。
「………」
彼女の後ろについて事業所までやってきて、彼女が事務員らしき誰かと話しているのを後ろからぼんやり眺めていて。
話がついたようだと思っていたら、この部屋に通されたわけだけど。
部屋は宿の部屋より数倍は広いし、ベッドも大きい。
窓際に備えられたテーブルにソファは、見るからに高級な雰囲気が漂っている。
…なるほど、確かに居心地は悪い。
あまりそうと感じさせないので忘れていたが、来栖川綾香という人は、この世界でも指折りのお金持ちだったのだ。
血統書付きの…と言うには我ながら癖がありすぎると思うが…平民である僕には、どうにも馴染めない。
馴染めないまま、朝はやってきた。
重い瞼を誤魔化しながら身繕いして、部屋を出る。
事業所のロビーはたくさんの従業員が行き交いして随分と活気があった。
その中では、僕は完璧に浮いた存在だった。
自分だけが、別の世界にいると言う事。それに気付いてしまうから、寂しさを感じてしまう。
一人でいれば、暗く沈まずにすんだのに。
僕は、ロビーの隅に備えられた椅子に座った。
朝になったら迎えに来るといって彼女とは別れたけど…この状況はあまりにも辛すぎる。
僕は、そっと溜息を付いた……
…と、そのときだ。
バン!!と勢いよく扉が開き、のっしのっしと大男がロビーのど真ん中を横切っていく。
大男は頭に白髪を混じらせていて、薄汚れた格好をしているものの、見るからに只者ではない雰囲気を漂わせていた。
そして、その顔立ち…僕は、それをよく、知っていた。
「朝早くに邪魔する。ここに綾香様がいらっしゃると聞いたが?」
ロビーの向こうにいるのに、はきはきと通った声が僕のところまで聞こえてくる。
周りの人たちもみな、何があったのかとその大男を見ていた。
大男の後ろで堂々と立っている二人の女性と、なにやら肩を落としている男性を除いて。
…それにしても、綾香…だって?
耳を見ませてみるが、応対している従業員の言葉は聞こえない。が、大男の声は聞こえた。
「そうか、ではしばらく待たせてもらおう。すまんが迷惑をかける」
どうやら、あの人たちは彼女に用事があるらしい。何かワケありみたいだけど…
…さて、僕はどうしたものだろうか。
【長瀬祐介 来栖川商会事業所のロビーで待機】
【来栖川綾香 そのうち事業所に顔を出す?】
【謎の四人 来栖川商会フィルムーン事業所にやってきた】
というわけで、『二日目』をお送りします。
遂に彼らが到着しました。正体はぼかしましたが、バレバレですね(笑)
気が付いた事があったら意見、感想よろしくです。
フィルムーンに辿り着いた国崎一行は、取り合えず海辺の宿に陣取っていた。
たどり着いた時にはすでに昼を大きく回っていた。
「うーむ、やはり海際の町はいいな、おい。みろよ沙織、このホタテ」
「ふっふ〜、こっちのお魚だって、いい匂いだよ」
じゅうじゅうと香ばしい音をたてるホタテの浜焼きと、ふんわりと蒸気を立ち上らせる魚の串焼き。
そのどちらも、とれたて新鮮。
国崎と沙織はしばし睨み合ってから、お互いの得物に目を落とす。
『………』
しばしの沈黙の後。
「おばちゃーんっ、俺もこの魚の串焼きくれ!」
「あたしもホタテ追加ねっ!」
二人はこの調子で、宿のメニューを片端から制覇していた。
と言っても、国崎は金無しなので、沙織のオゴリが大半だったが。
「はふはふ……そう言えば、すばるはどうした? 確か沙織と同室だったろ」
「もぐもぐ……うーんと、何か用事があるって出てったきり……セバスさんは?」
「あ、同じだ。 セバスもここの警備隊長に用があるとかで、出掛けてったままだ」
そんなわけで、取り残された二人組は、ちょっと遅めの昼食を取っていたのだ。
さすが海沿いの街だけあって、腕っ節の強そうな船乗りたちが集まってきている。
がやがやと、港町特有の喧騒に満ちた酒場の中で、ふたりは平らげた皿の山の前で一息ついていた。
「ふぅ、食った食った。 さて、俺はちょいと散歩するつもりだが、お前はどうする?」
「そうね、特に用事も無いし、あたしもついてこうかな」
取り合えず食べた分の御代を払ってから、二人は連れ立って外に出た。
日が眩しいくらいに照っていて汗ばむ陽気だが、それほど不快感は無い。
酒や宿を求めてうろつく冒険者や船乗りたちの声が、そこかしこで聞こえてくる。
そんな港町を、ふたりは何するでもなくぶらついていた。
「……こういうのも悪くないわね」
「まぁな」
酒場の一軒から、どっと男達の笑い声が零れてくる。
「そう言えば、往人君はどんな目的があって旅してるの?」
「お前……」
セバスの時もそうだったが、どうしてこの娘は人の内情を詮索するのが好きなのだろうか。
また頭をぽかりとやろうかと思った国崎だったが、日頃奢られているのを思いだし、ぐっと我慢する。
「……俺らの話を聞いてたんだろ。 俺は秘宝を探してる」
「なんで?」
「………。ある奴に必要なんだよ。呪いを解く為の秘宝が」
国崎はそういって、大きく溜息を漏らした。
始めて観鈴に出会った時の事を思い出し、国崎は目を細めて空を見上げる。
「ふーん……」
さすがにそれ以上突っ込む事はせずに、沙織は手を頭の後ろで組んだ。
通りをぶらぶらする内に、二人は何時の間にか港に出てきていた。
「……お、あれ見てみろ」
「うわ、何あれ……ひょっとして海賊船?」
二人がいる所から海を挟んで反対側の港に、異彩を放つ船が泊められている。
その船には幾つも鎖が掛けられ、中から宝箱が自警団によって運び出されていた。
目を輝かせて近付こうとする沙織とは対照的に、国崎は冷めた表情で彼女を引きとめた。
「ちょっと、何するのよ往人君」
「捕まった海賊船ってとこだな……自警団の連中がいる。中には入れてくれそうに無いぞ」
言われてみれば、その周辺の港には自警団がたむろし、近付こうとする人達を追い払っていた。
「へぇ、でも海賊かぁ……ちょっとカッコ良くない?」
目をきらきらさせる沙織に、国崎は呆れたように首を振った。
「お前な、海賊が捕まったらどうなるのか、知らないのか?」
「え……えっと、どうなるの?」
いつに無く真剣な国崎の声に、沙織は少し困ったように首をかしげる。
「縛り首だよ、例外無くな。 海賊ってのはそういう商売だ。 捕まれば必ず死ぬ……馬鹿な連中だ」
厳しい口調で囁く国崎に、沙織は困惑した視線を投げかけた。
「往人君、ひょっとして昔、海賊と……」
「うわあああああぁぁぁぁっ!!」
言いかけた沙織を遮って、突如悲鳴と怒号が木霊する。
ぎょっと振り返った二人が見たものは、鎖を次々に引き千切り、海中に沈んでいく海賊船の姿だった。
「嘘っ、海賊船が……!」
「マジか……」
呆然とする二人の前で、海賊船は見る間にその姿を海中に消していった。
「あ、あれって沈んだんじゃないわよね……」
「……潜ったって感じだな……いや、ちょっと待て」
自分の言葉に何かを感じたのか、国崎はぎょっと目を見開く。
「……確か前に、晴子が海に潜れる船がどうこう言ってなかったか……まさか」
言うなり、いきなり走り出した国崎に、沙織はきょとんとしてから、慌てて声を掛ける。
「ちょ、ちょっとどこ行くのよ〜っ!」
「明日の朝までには戻るっ!」
「あ、明日までにはって……どうしろってのよ……」
呆然とその後姿を見送って、沙織は頭を抱える。
結局一人ぼっちになってしまった沙織は、溜め息混じりに元来た道を引き返し始めた。
「は〜あ、男の人ってどうしてみんな勝手なんだろうね……」
そう呟いた瞬間、沙織の視界を、見覚えのある後姿がよぎった。
「………え………?」
一瞬の驚きの後、佐織は慌ててその後姿を追うが、すぐさま彼は町の中に消えていってしまう。
「祐くん……なの?」
通りに立ち尽くしながら、沙織はぽつりと幼馴染の名を呟いた。
子供のときに離れ離れになり……そして、二度と会う事の無かった少年。
その彼がこの街にいるかもしれない……だが、その彼の横に寄り添うようにしていた少女が、沙織の心に影を落としていた。
って、今見たら真上にすでに四人組がっ!?
す、すいません、話が前後しちゃったみたいです……
えっと、時間の流れ的には、「二日目」の前に入る話として思ってくれると嬉しいかな……
そんなに無理はないと思うんですが……
【国崎一行 フィルムーン入り】
【国崎 沈んだ海賊船を追う】
【沙織 長瀬祐介の幼馴染】
とりあえず現在の祐介は二日目に入ってます。
話の流れはこんな感じ?
海賊船捕縛&沈没
御一行フィルムーンに到着。
↓
夜・祐介、鉱石を手に入れる
↓
深夜・祐介、綾香と出会う
翌日、事業所で御一行と出会う。
なんで皆前スレがまだdat落ちしてるのに書けるんだ?(汗
カチュなりホットゾヌなり専用ブラウザにはログ保存機能があるからな。
オフラインで参照できて楽だし、書き手ならつかっとけ。
は、早い……!
>二日目
鉱石の件、氷上発言の件、祐介には大きな試練ですね。
果たしてどう展開していくのか?
ところで、綾香の家出情報ってどれくらい広がってるんですかね?
事務員の態度とセバスの態度のギャップがやや微妙?
そして、最高パーティー キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
と思ったら……
>求め人との遭遇
ん?と思ったら前日のお話だったんですね。
到着早々四者四様の行動してるのがワラタ。
それぞれ海賊組にどう絡んでいくのでしょうか?
それから、海賊に対する政府の態度が厳しいことが判明。
大丈夫か?相沢一家。
しかし、これって偶然なのか〜。すごいなぁ。
>>26 お、情報サンクス〜。
そうか……かちゅか。う〜ん、便利なら使ってみようかな……
31 :
1=26:02/08/10 06:01 ID:5IkIu/Yb
俺は29じゃないんだ。
あと、俺はカチューシャうまく動かないので<スレッド一覧も表示されなかった。
ホットゾヌ使ってたりする。
板ショートカットで葉鍵板に飛んで、既読のはレ点でソートできるんでスレッド見つけるのも楽。
落ちたら赤い矢印がついてるし。
タブ式だから複数窓開いてもごちゃごちゃしないんで、いろんなところを巡回しやすい。
とはいえ、機能的にはどっちもたいした違いはなさそうだったし、使いづらいものを無理に使えとはいわん。
やっぱコミケ中はキツイか……
夜の帳が下り、ただ星の光が照らす場所に彼女たちはいた。
周囲から聞こえるのは、涼やかな虫の声のみ。
「どうしても、行くの?」
「ごめんね。私にはやることがあるから」
「そう…なら、もう止めないわ。ただ、ひとつだけ教えて。
あなたが探しているのは、誰なの?」
「………」
外套を纏った少女は、静かに目を閉じる。
尋ねた少女は、耳の奥で、何かが弾けている様な音を聞いた。
「…私の声が、聞こえる人を」
「声?私はあなたの声が聞いているわ」
チリ、チリ、と。断続的に続く音に、少女は眉をひそめる。
それは不快と言うほどではない、わずかな違和感。
「…聞こえていないよ」
「わからないわ」
「聞こえるようにすることもできる」
「あなた、何を…」
チリ…
音が、止まった。そして、外套の少女はそっと微笑む。
「…でも、それじゃ意味がないから」
「何故?」
「私の見ている世界と、みんなが見ている世界は違うから。
でも、私と同じ人がいる。私と同じところから、世界の声を感じている人がいる…
だから、その人に会いに行くの…ごめんね、郁未ちゃん」
「気にしないで。言っていることはほとんどわからないけど、決意はよくわかったわ。
…またね。瑠璃子」
「あれから、もう一年も経つのね…」
「郁未ちゃんは胸がまた大きくなったね」
しみじみと昔の事を思い出していた郁未は、少し口元を引きつらせて笑った。
彼女、月島瑠璃子はそういう少女だった。感情も雰囲気も常識も、全て置き去りにした場所で生きている。
端的に言えば、マイペースなのだ。おそろしく。
「と、ところで。そっちは?」
郁未は、瑠璃子の後ろにいたメガネの女性に眼をやる。
瑠璃子はつい、と視線を動かしたが。
「気にしないで」
『っておい!』
何事もなかったかのように郁未の隣りに座る瑠璃子に、二人同時に突っ込みが入る。
瑠璃子はくすくすと表情を動かさずに笑うと、
「冗談だよ、由宇ちゃん。席、座ったら?」
「ゆ、由宇ちゃん…!?」
久しく聞かなかった愛称にくらりと眩暈を感じた彼女、猪名川由宇だった。
「はぁ、相変わらずね瑠璃子。誰でも『ちゃん』付けで呼ぶのも」
「誰でもってワケじゃないよ。呼びたい人がいて、それで使うだけ」
「なるほど、そういうキャラやったわけかい。旅の途中は猫カブってたんやな」
とりあえず瑠璃子の隣りに座るとエールを注文する由宇。
同じものを追加で頼む郁未。
山葡萄のジュースを頼む瑠璃子。
「へぇ。興味あるわね。どんな感じだったの?」
「まるで借りてきた猫、深窓のお嬢様って感じやな。んで、あの風詠みの能力やろ?
なんや神秘的でなぁ…どこぞの神殿の巫女さんと思うとったわ」
「神殿の巫女…ね」
呟いて密かに溜息を付く郁未。そこで、瑠璃子が郁未を指差した。
「ところで、この人の事はどう思う?」
「ん〜。そやなぁ、只者やないって言うか、旅慣れとるって言うか。冒険者か?」
「だってさ、郁未ちゃん」
「………」
郁未は、ちょっとこの少女を小突いてみようと思った。で、すぐに実行に移した。
「とにかく、自己紹介しておこうかしら。私は天沢郁未。この子とは、以前にちょっとした縁があるの」
「うちは猪名川由宇や。クルス商会のキャラバンにおる」
「私は月島瑠璃子だよ」
もちろん知っていたので郁未と由宇はあえて何も言わなかった。
かわりに自分たちのエールを手にとると、チン、とグラスを合わせる。
「なんか、いきなりなかよしさんだね、二人とも」
「共感できる事があるから、人は手を取り合うことができるのよ」
「至言やな。おぼえとこ」
「そんなことより瑠璃子。あなた、何でここにいるの?」
「旅をしてるから。レフキーには何回も来てるけど、そのたびにレフキーので…風は変わるから。
そんなことより郁未ちゃん。あなた、何でここにいるの?」
郁未の言葉をそのままなぞり、くすりと笑みを浮かべる瑠璃子。
その笑みに、何となくいやぁなものを感じて、郁未は少し怯んだ。
「私は…その、用事があって」
「………そうなんだ」
相変わらずの薄い笑み、だがそこには確実に何か含まれていた。
正直、郁未は瑠璃子のそういう所が苦手だった。色のない瞳が、自分の奥底まで届いているようで。
誤魔化せないじゃない…口の中で呟きながら、ばつの悪い顔で郁未は視線を逸らす。
「二人とも、随分と仲ええんやな」
「そうかな?」
首を傾げる瑠璃子に、由宇は肯く。
「何ていうか、随分とリラックスしとるわ。キャラバンにおった時はなんか張り詰めたモンを感じたし」
「そう…かも。いけないいけない。久しぶりに知り合いに会ったから、ついはしゃいじゃったよ」
「瑠璃子。あなたの旅はまだ終わらないの?」
「郁未ちゃん…?」
「みんなで『あそこ』を良くしようって頑張ってる。あまりいい思い出ないけど、私たちの居場所だから」
その言葉に、自分の居場所もあると言っていることを感じて、瑠璃子は肯いた。
「瑠璃子が旅に出ている間に、いろいろな事があったのよ。仲間も増えたし」
「うん。また今度、紹介してね」
はぁ、郁未は溜息をつく。『また今度』がどういう意味か、理解できないほど郁未は鈍くない。
そんな二人を、由宇はじっと見ていた。メガネをきらきら輝かせて。
「なんかワケありみたいやな。二人とも」
「…まあ、ね。あんまり他人には知られたくないワケだけど」
「部外者はお断りってワケかい」
郁未は肯くとエールを飲み干す。トン、とカウンターにグラスを置くと、追加を注文した。
「そういうこと。ま、どうしても知りたいっていうのならそれなりの覚悟をしてもらうことになるかな」
「怖い話やのぅ」
はは、と途中まで笑って、由宇は笑みを止めた。
郁未の目は笑っていなかった。瑠璃子は無色の瞳でじっと見つめていた。
…なんや、この感じは。背筋に寒いものを感じて、由宇は口元を引き締める。
由宇とて、普通とはかけ離れた世界で生きている。喰うか喰われるか、危険に満ちた旅の日々。それはけして生温いものではない。
しかし、この二人から感じるものは世界が違っていた。
知ってしまったら、もう戻れない。これまでの自分は、覆されるだろう。
「…うちは」
【天沢郁未、月島瑠璃子、猪名川由宇 会食中】
【猪名川由宇の返答はお任せします】
と言うわけで『境界線』をお送りします。
もちろん、境界線上にいるのは猪名川由宇です。
彼女は宗団に関るか、関らないか。
次の書き手にお任せします。自己リレーはしません。
>32
地方在住者には関係ないっす。
…ベツニクヤシクナイヨ?
お、新作。ここはコンスタントですね。
>境界線
結構重要な宿題が出来ましたね。由宇、ひいては来栖川が
宗団と関わるか否か、題名通り今後の方向性を大きく左右
しそうな展開です。しかし、瑠璃子の不思議少女っぷりは
郁未や由宇すら翻弄するんですね。
39 :
名無しさんだよもん:02/08/12 22:06 ID:CLXNJ3yb
あげよう。
40 :
雲丹:02/08/13 01:45 ID:kzuSzDsI
メンテ
42 :
空回り:02/08/14 02:07 ID:ldwlJosl
港で沈んだ海賊船を追いかけ、ひいこら街を走っていた国崎は、唐突に立ち止まった。
「……はぁ、はぁ……ちょっと待て、海賊船はどっちに行った……?」
そいう事は走り出す前に気付きそうなものだが、心当たりを思いだし、何も考えずに足が動いてしまったらしい。
「参ったな……っつーか、ここどこだ?」
改めて周囲を見回してみれば、そこは見知らぬ街角。
港からもだいぶ離れてしまったらしく、方角すらわからない状況だった。
いい歳して迷子になった国崎は、しばし佇んでから、おもむろに懐の人形を取り出す。
「……我願う『倒』を……『到』とし、我が道を指し示せ」
国崎の呪文に応え、人形がひょっこりと道の真中に立ちあがった。
人形は踊るような仕草をしてから、一方向を指して唐突にぱったりと倒れる。
「よしっ、あっちだな」
人形が倒れたのは、ちょうど東の方角であった。
国崎は小さくガッツポーズをし、人形を拾い上げようとする。
すこ−ーーーーーーーーーんっ!
その一瞬前に、通りかかった子供の足が、人形を明後日の方向に蹴飛ばしていた。
「あ、なんかけっちったー」
「どうせゴミだろ」
「早く行こうぜ〜」
子供達は何事もなかったかのように、通りを走り抜けていく。
国崎はしばらく、人形を掴み損ねた己の手をじっと見詰めてから、ふっ、と優雅に己の前髪を掻き上げた。
「……今日のところはこの位で許してやろう」
一陣の風が、ひゅるり、と国崎の足元を虚しく過ぎていく。
43 :
空回り:02/08/14 02:08 ID:ldwlJosl
「……。だああぁぁっ、くそ、あのガキども……人形はどこ行った!?」
現実逃避から我に返り、国崎は慌てて周囲を見回した。
人形が無ければ、国崎の旅は話にならない。
見れば、国崎の人形は、少し離れた場所の、乗合馬車の荷台に乗っかっていた。
「……荷台?」
国崎の脳裏に、一瞬嫌な予感が駆け抜け……そして、それは現実のものとなった。
突如、馬車は軽快な音を立て、国崎の人形を乗せたまま走り出していた。
「ま、待てえええええええええええええええええっ!!!!!」
大慌てでその馬車を追いかける国崎の視界の端に、『レフキーまで…ノンストップ』の看板が映る。
「じょ、冗談じゃねぇっ……『足』を『速』とし、駆け抜けろっ!」
脚力上昇の呪文を唱えるが、爆走する馬車には一歩及ばない。
「くそおおっ、おいてけええっ、人形おいてけええええええぇぇぇっ!!!」
「ねぇ、往人くん。おいてけ幽霊って知ってる?」
「………」
「馬車に乗って夜道を走ってると、突然後ろから「おいでけぇぇ…」って恐ろしい声がするんだって。
それで、怖くなって馬車を速くするんだけど、おいてけ幽霊ももっと速くなるんだって。
乗ってた人はもう怖くて怖くて、荷物を次々捨ててくんだけど、おいてけ幽霊はいなくならないの。
もう何も捨てるものが無い…って思った時、なんと見た事も無い人形が荷台に置いてあるの。
で、急いでそれを捨てると、おいてけ幽霊は満足して、いなくなるんだって〜」
44 :
空回り:02/08/14 02:11 ID:ldwlJosl
演出過剰気味に、沙織は臨場感たっぷりに「恐怖! 夜の怪談」を話す。
隣で聞いていたすばるは目をまん丸にして、沙織の顔を見詰めていた。
「そ、それって本当なんですの?」
「わかんないけど、ウチの近くの馬車じゃ、みんなそうやって身代わり人形を馬車に一つ乗せてるよ。
人形を身代わりに投げないと、おいてけ幽霊はその人の魂を食べちゃうんだって。
何か、海坊主みたいだよね。ほら、穴の開いたヒシャクを投げるみたいな。
……って、往人くん、どうしたの?」
ぐったりとベッドに突っ伏していた国崎は、くぐもった声でうめいた。
「……その話の元になった奴とは、俺は多分物凄く気が合いそうな予感がする」
「話の元?」
きょとんとした表情の沙織には答えず、国崎は全身筋肉痛の身体を何とか引き起こした。
結局、国崎はレフキーとフィルムーンを往復するハメになり、宿に帰ってきた時には、すでに日はとっぷりと暮れていたのだった。
当然、海賊船を探す暇など全くない。
帰ったら帰ったで、何故か国崎の部屋には沙織とすばるが陣取っていた。
国崎も一応男なのだが、信用されているのか馬鹿にされているのか、ふたりとも平然としている。
「そう言えば往人くん、晩御飯食べた?」
「……食欲なんかねぇ……それより、なんでお前らが俺の部屋にいるんだ?」
いぶかしげな国崎に問われ、すばると沙織は、顔を見合わせて、困ったような笑みを浮かべる。
「……?」
「えーっと、実は大変な事実が明らかになっちゃったわけで」
何となく嫌な予感がして、国崎は沈黙する。
もじもじしていたすばるが、意を決して口を開いた。
「お金が無いですの」
「………は?」
45 :
空回り:02/08/14 02:13 ID:ldwlJosl
「だからぁ、その……思ってたよりここの宿って、お金がかかるみたいでさ……」
「………」
「あたしはてっきり、すーちゃんが払ってくれるのかなーって」
「えと、私は沙織さんがお金を持ってると思ってましたの」
「で、何とか誤魔化して、一部屋にしてもらったんだけど……往人くんは持ち合わせ……あるわけないか」
国崎は何も言わずに、月明かりの覗く窓に目をやった。
よくよく考えてみれば、この宿を取ったのはセバスである。
いわゆる「お金持ち♪」なセバスとは違い、国崎は言うに及ばず、駆け出しのすばるも金は乏しい。
「……しかし、沙織も金無しなのか? 昼間はあったじゃないか」
「えっと……昼間、ふたりで結構食べてたじゃない? 後、その、つい道でぼーっとしてたら……掏られちゃって」
「………」
国崎は何も言わなかった。
全身の筋肉痛に加え、頭痛までしてきた国崎は、無言のままベッドに突っ伏す。
「あ、あれ、往人くん?」
「……寝ちゃいましたの」
(………これでセバスが帰って来なかったら……俺ら三人、ここで皿洗いかよ………)
うんざりとした現実から夢の世界に逃避しながらも、国崎は内心頭を抱えていた。
結局の所、幸いにも次の日の早朝、セバスが帰ってきたおかげで、皿洗いはせずに済んだ。
寝相の悪い沙織にベッドから蹴落とされて、目を覚ましていた国崎は、帰ってきたセバスに事情を話す。
「ふむ、では私が立て替えておこう」
「すまねーな……」
すやすやと安らかに眠る沙織とすばるを見ながら、セバスは小さく笑みを浮かべた。
「では、済まないついでに、少し付き合ってくれぬか。来栖川の事業所に、少々用事があるのでな」
【国崎一同、来栖川の事務所へ】
求め人との遭遇→二日目の間の話を書いて見ました。
間違ってたりおかしな所が有りましたら、指摘してください。
「効くでぇ、これは」
酒飲み親父の様な台詞と共に、女性は二振りの青竜刀を構えなおす。対峙する相手は不敵な笑みでただ、応えた。
そして――
「いよいよ盛り上がってきたみたいだな……冬弥さん」
「それに比例して僕等の存在感は薄くなっていくね……祐一君」
――その対峙している二人に『情けない』『へたれで困る』など散々な言われ様のキャプテン――相沢祐一は戦闘態勢の二人を遠巻きに眺めていた。
眺めていた――と言っても、先程の戦闘も目で追うのがやっとで、更には両者共々まだまだ挨拶程度の小競り合いだったのだからミラクルカノン号の船長相沢祐一は呆然と目の前の光景を見守るしか、する事は無かったのだが。
勿論、絶体絶命のピンチに現れた副船長の神尾晴子に興味を惹かれたらしい目つきも人相も悪い、おまけに生まれつき剣が刺さっても大丈夫な男は最早、祐一には興味が失せた様子だったのだから、このまま逃げ出したとしても追い駆けられる心配は無かっただろう。
ただ……それは余りにも――カッコ悪い。とゆーかそれでは正しく“へたれ”だろう。『危なければ危ないほど燃える。それが男ってもんだろ』などと豪語していた男の行動とはとてもではないが、思えない。
――そんな訳で逃げ出すわけにも、かと言ってあの二人の戦闘に武器無しで参加するわけにもいかず、ミラクルカノン号のキャプテン、相沢祐一は――眺めているしか無かったのだ。
「くそっ……やっぱりアイツには、勝てない。無理だよ……祐一君、覚えているかい? あの傭兵の事を。僕等が別行動を取る原因になった傭兵だよ」
祐一にだけに聞こえる声量で話しかける、藤井冬弥。意識してではないが、この場では何故かひそひそ声で話さなければいけない様な空気が既に出来上がっていた。特に、この二人には。
「……あ、ああ、冬弥さんと坂下が束になっても敵わなかった、って奴か」
「うん、あの漆黒の剣は魔剣で、切った相手の血を吸って持ち主の傷を癒す事ができるみたいなんだ。加えて青竜刀で抉られて出血した傷も筋肉だけで塞がったみたいし……」
「……どうすればいいんだ」
まるで八方塞がりだ。出血も筋肉だけで止められ、切れば切る程傷が回復していく。おまけに相沢一家の戦闘部隊長とキャプテンの腹心を勤める者を子供扱いにする程の戦闘技術。その強さは、人間の域を超えていた。
「幾ら晴子さんでも一人じゃ無理だ。早く、誰か……増援を呼ばないと。幸いもうこの近くに船は行き着いている筈だから」
「だ、だけど……」
「僕等が居たって足手まといにしかならないよ。精々あの剣に血を吸い取られて、アイツを回復させるぐらいが関の山だ」
「……わ、判ったよ、冬弥さん。確かに利き腕も使えない状態じゃ、助けるどころか、助けられちまうな」
助けられたアトに言っても、冗談にもなりはしない。二人はこの場を晴子一人に任せる事にして船が到着しているだろう場所へと向かう事にした。
――其処に、傭兵――柳川祐也に匹敵する人物がいるハズもないのだが。
「晴子さぁーーん! 俺達増援を呼んでくるからっ! それまで頑張ってくれぇーー!」
「それと、その漆黒の剣は相手の血を吸って持ち主の傷を癒すみたいですから気を付けてくださぁーーいっ!!」
ある種の静謐さが漂っていた雰囲気が乱雑な声で掻き乱された。見れば、二人は晴子が現れた方へと消えて行く途中だった。
「うっっさいわぁーー! どあほーー! さっさっと行かんかぁーーいっっ!!」
ったく、と呟いて晴子はこめかみに人差し指をあてた。なにやら難しい顔している。
「……ふん。船のキャプテンがあのザマか。まるでまだ自分達が捕まって縛り首にあう“かも知れない”なんて事は頭の片隅にも入っていないんじゃないか?」
苦笑とも取れる、皮肉気な笑いを漏らして、一歩、近づいた。――遊びは終わり、という事らしい。
「――そう見えるか? まぁ、あんたがどう思おうと、そりゃ勝手やけどな。尤も、若い時はあのぐらいの方がちょーどええんや。そないな事よりも……そないにがっつくなや。良いオトコがだいなしやでぇ〜?」
酒を呷りながら艶のある声を出す。余裕綽々、という態度だ。
「くくく……これまでお預けを喰らってたんだぞ? お前が気兼ね無く戦える様にキャプテンまで逃がしてやったんだ。どうやらお前があの海賊達の中で一番の強者のようだからな。――なかなか殊勝な心掛けだな?」
からかう様なその問い掛けに、晴子の眉が顰められる。
「どーゆー意味や?」
「知れた事。お前等の中に一人切れ者――犬飼と言ったか。そいつにはこちらも出し抜かれたがな。まぁ、そんな奴がいるんだ。副船長のお前が時間稼ぎをしている間に残りの連中を退避させる事ぐらいは考えるさ」
晴子は大袈裟に肩を竦めながら、お見通ーしって訳かい、と呟いた。
「ほんならそこまで判っといて海賊の親玉をわざわざ逃がしていいんかい? オタク、プロやろ?」
「ああ……心配するな。お前と遊んだアトにちゃんと全員捕まえてやるさ。船はこの近くにあるんだろうが……どうせ暫くは動くまい。こちらとしてはあのやっかいな船だけでも抑えておければ十分なんだがな」
そうかい……と、最後に酒を呷り、青竜刀を構える。――その引き締まった目は死に臨む者の顔ではなかった。
「……そやけどなぁ、あんたは前提の部分がまちがっとるわ」
「どういう意味だ?」
「決まっとるやんか。うちが、あんたをここで、仕留める。――そしたら万事解決やろ?」
斜に構えた鋭い視線で、臆面もなく言い放つ。晴子の昼行灯とした雰囲気は既に無く、その双眸には殺気が満ちていた。
その視線を受けて、狩猟者は高揚とした面持ちで――
「美しい煌きだ。――この手で消し去ってやらなければならないと想う程に」
――その凶眼を光らせる。
刹那、晴子が踏み込んだ。風景から晴子だった部分だけが抜け出したような自然な動作だった。
距離を数歩で埋め、低い姿勢から逆袈裟の要領で左手の刀を振るう。鋭い呼気が僅かに漏れた。柳川はそれを正面から力任せに漆黒の魔剣で受け止める。今度は手加減なんてしなかった。晴子の左手首に衝撃が伝わる。
そんな痛みには構わず、右手のごつい刀を真っ直ぐに突き出す。だが、柳川は半身を翻して――丁度、晴子から見た左側に――滑り込み、その勢いを乗せた蹴りを打ち込んだ。お腹の辺りを強打した一撃で晴子の体は軽く浮きながら派手に吹き飛んだ。
「ほう……直撃する瞬間に自ら後ろに飛んでダメージを軽減したか」
感嘆するように柳川は呟く。晴子はすぐに立ち上がって、
「ちょっと酔っててな、よろけたんや」
そう言っておどけてみせる。
「くくく……どうやらまだまだ楽しめそうだな」
柳川は酷く可笑しそうに口元を歪ませる。対照的に晴子の表情は若干、強張っているように見えた。きっと、腹の辺りの血の染みが――広がってきている所為だろう。
◇
【神尾晴子・柳川祐也/戦闘中】
【相沢祐一・藤井冬弥/仲間の所へ移動中】
お話としては「酔虎」の続きです。
意見やら変な箇所があったら遠慮なくどうぞ。
お、圧縮直前のタイミングで新作x2ですか。
>空回り
久々にコミカルなエピソード。こういうのもいいですね。
国崎の爆走ぶりが笑えます。結局国崎は手がかりを
見失ったまま翌日、と。次は残る三人の用事がどうなった
のか、ですかね。
>誰が為に――
こちらは一転一騎討ち真っ最中。某スレで絶好調の柳川、
ファンタジーでも存在感たっぷりですね。しかし、海賊団の
ピンチは変わらず。さて、どうなりますか。
52 :
名無しさんだよもん:02/08/16 00:13 ID:f61K0wkn
ageメンテ
「……同志名雪!」
「はいっ!」
大志の声に応え、名雪がぱっと小麦の袋を手放した。
袋は瞬く間に鼠の群れに覆われてしまう。
そして一瞬の後、北川の放った銃弾が、袋に仕込まれていた火薬を引火させる。
それによってかなりの数が炎に包まれるが、それでも壁中を覆い尽くす黒い絨毯は、減る気配が見えない。
「大志っ、管理室はまだかっ!?」
「くっ……名倉女史!」
大志の叫びと同時に、友里の操った風が、北川の足に食らいつこうとしていた鼠を吹き飛ばした。
それを見送って、大志は舌打ちする。
思わぬ鼠たちの反撃で小麦袋の大半を失った事で、状況はかなり厳しかった。
大志の計算では、管理室までに後4回は袋を投じたかったが、すでに名雪の手元には袋がひとつしか残っていない。
名雪に背負われながら、ぐっと唇を噛む大志を横目で見て、友里は溜息を漏らす。
「……仕方ないわね。 “風の靴”を使うから、あなた達、転ばないように気をつけなさい」
「!?」
一体何をするのか、と訊ねる暇もあればこそ、足元から吹きあがった風が北川と名雪を包み込んだ。
次の瞬間、3人は弾かれたように下水道を滑っていた。
「う、うわうわうわうわあああっ!?」
「落ち着け同志北川っ! 名倉女史の術だっ!」
驚きのあまり転びそうになった北川に、名雪の上で大志が怒鳴る。
まるでタイヤのついた板に乗っているかのような感触に、北川は必死でバランスを取った。
「は、は、速いのはいいけど、バランスが……っ!」
あっという間に鼠の群が遠ざかるのを見ながら、北川は顔を引きつらせる。
「落ち着いて、北川君! 体重を後ろじゃなくて、前にかけるんだよっ」
名雪のアドバイスに、北川は必死の形相で体を前に傾ける。
もっとも、そう言う名雪の方も、大志を肩に抱えているせいで、あまり安定した動きとはいえなかった。
だが、その友里の術の威力は確かであった。
瞬く間に鼠の群れから遠ざかると、馬車並の速度で下水道を疾走する。
だが管理室のドアが見えた所で風が消滅し、北川はまともに床に転げ落ちた。
「がぶぐぶぐぶぐっ……!」
ずりずりずり、とやたら痛そうな音をたてて、北川は顔面で下水の床を滑る。
3メートルはゆうに滑ってから、えびぞりになっていた足がぱたりと落ちた。
対して、運動神経の優れた名雪は、僅かによろけて尻餅をついただけだ。
名雪は大志を下に降ろし、顔をしかめてお尻を撫でる。
「いたた……そっか、あの時名倉さんの足が速かったのって、“風の靴”を使ったからなんだね」
「風使いの本領発揮と言った所か、流石だな……名倉女史!?」
だが、その友里がぐったりと倒れているのを見て、大志は慌てて彼女の所に駆け寄った。
大志が友里の頬を叩くと、彼女はうっすらと目を開いて身体を起こす。
「っ……大丈夫か」
「……ええ。 外なら何でもないのだけれど、密閉された空間だと……風の精霊の機嫌が悪くって」
青い表情で苦笑してから、友里は立ちあがろうとして……再び膝をつく。
それを支え、大志は厳しい表情で首を振った。
「無理をするな。これから先は、我輩に任せておくがいい……同志北川、彼女を頼む」
「お…おう」
痛そうに顔面を擦りながら……それでも顔が潰れていないのは流石と言うべきか……北川が友里を受け取る。
友里の“風の靴”のおかげで、かなりの距離を引き剥がしたものの、アルジャーノンは確実にこの場所に迫ってきていた。
「………来るがいい」
管理室、その扉の部分に仁王立ちになり、大志は小さく呟く。
大志の背後の机の上には、たっぷりと火薬を仕込んだ小麦の袋が置かれている。
その手に握られた短剣が閃き、床にぱっと鮮血が飛び散った。
血には、移り香のように、魔術師の魔力が濃く染み付いている。
ぽたぽたと血が流れる腕を庇いながら、大志はゆっくりと部屋の中に足を踏み入れた。
「……『The sea and the gallows refuse none...』」
大志は机の上に腰掛けると、ゆっくりと足を組む。
間を置かずに、ざわざわとした大群の迫る異音が、管理人室に響いて来た。
「さて、飛んで火にいるなんとやら……ふむ」
大志は軽い口調で呟くと、静かに正面を見据える。
扉の枠に、一匹の鼠が座って、じっと大志を見詰めていた。
「……どうした、来ないのか? お前達の欲しがっている魔力が、ここにあるぞ」
ぽたぽた、と垂れる大志の血に、鼠の目の色が変わる。
どこから涌いて出たの下、雲霞のごとく押し寄せた鼠が、我先にと部屋に雪崩込んできた。
瞬く間に大志の姿が鼠の群れに押し潰され、黒く塗りつぶされていく。
「今だっ!!」
次の瞬間、鼠に覆い尽くされた大志が眩い光を放ったかと思うと、その姿が管理人室のすぐ前に出現する。
同時に、横合いからぱっと駆け出した名雪が、管理人室のドアを蹴飛ばした。
凄まじい音を立てて、鋼鉄の扉が閉ざされる。
「……はぁ、はぁ……同志北川っ、奴らが開けた穴から、中を狙撃するのだっ!」
「おうっ!」
瞬間移動……それこそが、大志の最後の手段にして、切り札であった。
しかし、あの瞬間に即座に呪文を唱える余裕など、なかったはずである。
友里は、その場に座り込んだ大志に肩を貸すと、悪戯っぽい笑みを浮かべて顔を覗き込んだ。
「……全く、あなたには驚かされっぱなしだわ。今時、テレポートを使える術士なんて、アカデミーの主メンバーくらいのものよ。
しかも、そのマジックアイテム……」
大志のしていた色眼鏡のレンズが、割れて落ちるのを見て、友里はその欠片を拾い上げる。
「一度呪文を込めてから、後で解放できるディレイグラス……確かにこれなら、疲労も呪文も関係無しに魔法が使えるわね」
「ふふ、まぁな。呪文を込める力があるのはフレームの方で、レンズは使い捨てだが」
「そっか、あの時北川くんを助けたのは、そのレンズの力だったんだね」
「うむ………って、同志北川、何をしている」
呆れたような三人の視線に、北川は乾いた笑みを浮かべながら、慌てて銃に弾を込める。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。 すぐに弾を込めるから……」
「……やれやれ、今度から撃ったらすぐに込めるようにするべきだな」
管理人室に閉じ込められ、パニックを起こしている鼠の群れの怒号が、石の壁を通して外にまで聞こえて来ていた。
しかし、その為になかなか抜け出せず、壁に穴をあける事も出来ていない。
ようやく北川が銃に弾を込め、鼠が開けた穴から中を撃とうとしたその時、急に名雪が声を上げた。
「………北川くん!」
「んあ?」
「その……どうしても、殺さなきゃ駄目かな」
名雪の台詞に、誰もが驚いたように彼女を見つめた。
「……同志名雪」
「あのね、大志くん。確かにアルジャーノンは悪い事をしたし、人も襲って殺しちゃったよね。
でも、本当はそれはアカデミーの実験のせいなんでしょう?
それにこの鼠たちは、そんなアルジャーノンに操られて、こんな事してるんだよね。
だったら、アルジャーノンさえいなければ、この子達は普通の鼠でしょう?」
自分の思いを伝えようと、必死で言葉を紡ぐ名雪。
大志はじっと彼女を見詰めながら、静かに腕を組んだ。
「……だから、どうしても殺す必要なんて、無いんじゃないかな、って思うんだ。
上手く言えないけど、こんなやり方で焼き殺しちゃうのって、あんまりじゃないかな……」
「……では、同志名雪。この状況でどうすればいいと思うのかね」
「それは……」
大志に指差された先には、例の穴から出ようともがく鼠達、そして鳴き声の木霊する管理人室があった。
すがるような目で名雪に見詰められ、北川は思わず目を逸らした。
「あのさ、大志……何か方法は無いのかな」
「北川くん…」
銃を下ろし、北川は静かに大志を見詰めた。
「俺からも頼む。
お前言ったよな、俺の銃とこのアルジャーノンに、共通点があるって。
その意味をずっと考えて……俺思ったんだ。
兵器と武器……それを生み出したのは、多分大志のいう“野望”なんだと思う。
高みを目指したい……もっと強くなりたい……強い武器を作りたい。
そんな思いが集まって、俺の銃を生み出し、アルジャーノンを作ったんだ」
大志は何も言わず、静かに北川を見つめている。
「俺は、この銃を下げて田舎から出てきた。
俺は俺の“野望”をこの銃に託し、旅に出たんだ。
このアルジャーノンも多分、そういった“野望”から生まれたもんなんだと思う。
俺はこいつらを作ったっていう、犬飼って人は知らない。
その犬飼って奴は酷いとは思うけど、そいつも多分、自分の“野望”があったんだと思う。
俺の銃とアルジャーノン……どっちも、“野望”を託された武器なんだ。
ただ、アルジャーノンは必要とされずに捨てられたってだけの話しで。
だから、そんな“野望”の犠牲になったこいつらを、簡単に焼き殺すのは酷なんじゃないか?」
「北川くん……ありがとう」
北川は照れたように頭を掻くと、大志を見詰めた。名雪も、静かに大志に問いかける。
「大志くん……私達、間違ってるかな……冒険者だったら、甘すぎるのかな?」
「甘すぎる」
きっぱりと言い放った大志に、北川と名雪は顔を俯かせる。
だが、しばらくしてから大志は苦笑を浮かべ、友里に顔を向けた。
「……だが、確かに。こやつら自身に罪があるわけではない。
名倉女史、風使いならば、この管理人室の空気を抜いて、中の気圧を下げる事は出来るか?」
「え……ああ、そういう事」
大志の言った意味を理解し、友里はクスリと笑った。
「気圧を下げる?」
「論より証拠だ……名倉女史、やってみてくれ」
友里が頷くと同時に、幾重にも風が渦巻き、管理人室に開いた穴から、空気が流れ出していく。
「本当に、こんなんで大丈夫なのか?」
「ああ。中の空気を抜いて酸欠にしてしまえば、鼠達は残らず失神するだろうさ。
例えアルジャーノンといえど、身体はただの鼠だからな……手間をかけてすまないな、名倉女史」
「いいえ、生け捕りにした方が、私も寝覚めがいいもの」
額に浮かんだ汗を拭い、友里は笑みを浮かべた。
「ふむ、これでいいはずだ。奴らが失神した後で、ゆっくりとアルジャーノンの首輪を探すとしよう」
「ありがとう、大志くん」
「いや何、我輩とて無闇な殺生をする気はない……名倉女史?」
………その瞬間だった。
突然、大志が弾かれたように、友里を突き飛ばす。
一瞬何が起こったのか、理解出来ない3人の前で……銀色の風が、大志の身体に潜り込んでいた。
「っぐあああああああああああああっ!!!!」
大志の絶叫と、大量に飛び散った鮮血が、北川の顔にまだらを作る。
「……た、たい……し?」
ごぶり、と大志の身体に浮かんだ異様な膨らみが、胸の部分で止まった。
がくりとうな垂れた大志の口から、溢れる血と共に、くぐもった声が漏れる。
『……動クナ……コの男の心臓ノ上に、私はイる』
「ま……さか」
カラカラに乾いた口で、北川は呻いた。
ようやく、北川は忘れていた最後のピースを思い出していた。
すべては、周到に組まれた罠だったのだ。
襲う事も……負ける事も……こうやって、大志の作戦に引っかかる事さえも。
この時、この瞬間を狙うための。
「アルジャーノンっ…………!!」
アルジャーノンは、人間を自在に操れるのだ。
【鼠の群れ 管理人室に閉じ込められ、失神】
【大志 アルジャーノンに捕まり、コントロールされる】
長すぎる上に、読みづらいですね。すいません。
北川グループを進めてみました。
それでは、誤字脱字修正ありましたら、指摘よろ。
メンテ♪
62 :
名無しさんだよもん:02/08/17 19:24 ID:QGYilk/3
ついでにage……
>運命の刹那
いや、ついに来ましたね。クライマックス。全員が自分の役割を必死で
果たして行って、なおかつ上回ってくる敵を命を削って封じ込め、
で、その全てが真の敵の掌上……。王道的展開ですが、伏線も利いて
いますし、お見事。残る決戦も非常に楽しみです。
「一週間で軍を整えろと命じたら、どれだけの兵力が集められる?」
彼女が領主の傍らを離れ、城内をひとり散策するなどほとんどないことだった。
もっとも、室内の視線が彼女に集中したのはただの物珍しさからではない。
彼女はこの城でもっとも悪意を引き受けている人物で在り、同時にそうであってさえ城の者が敬意を捧げなくてはならない地位にある人物だった。
そしてたった今、その悪意を更に増幅させるに足る発言を、まるで気安い友人への挨拶であるかのように気軽な口調で行なった。
彼女、帝都から派遣された軍事顧問太田香奈子卿が、居並ぶ一人を除くニノディー重臣団の敵意と軽蔑と驚愕と焦燥の入り混じった視線を一身に浴びたのは、そういった理由からだ。
このところますます私室に引き篭もるようになった橋本辺境伯、その不必要に豪奢な執務室。
本来の主が一度も使ったことのない絹張りの椅子に腰掛けて、遠征中溜まりに溜まった書類の類に目を通していたツインテールの女は唐突の闖入者を険悪な声と眼差しで出迎える。
「……無茶言わないでよ」
呆れと怒りが滲み出るその呟きは、その場の重臣たちの感想を代弁したものだ。
兵を集めるには費用が嵩む。
人数を集めるだけなら、農兵を強制徴募すれば良いのだがそれでは即戦力としては心もとない。かと言って、傭兵を募るにはそれなりの金がかかるのだ。
さらに、彼らに与える食糧の類はどうするか、またまだ農閑期まで若干の間のあるこの時期に、農民から働き手を奪えば今年の収穫がどうなるか、問題は山ほど連なっている。
無論、それだけではない。
兵を集める。軍を整える。塔を築き、城壁を高くし、糧食を蓄え、武具を集める。
それも国境の、敵対国家と対峙する最重要拠点において。
それらの行為がどれほどの大事であるか、この色情狂の軍事顧問殿ははたして理解出来ているのだろうか?
「集められるだけで良いから」
そんな重臣たちの白眼視を気にする様子は、半裸に近い姿の軍事顧問殿にはまったくない。
「香奈子ちゃん……それは」
言いかけて、周囲の空気の重さに口を噤んでしまった瑞穂を気に掛ける様子もまるでない。
いや、はたして彼女の存在に気が付いているのかすらわからない。
―――一方通行の敵意に満ちた、奇妙な重量感を湛えた沈黙。
悪意というものは、それを対象が何らかのかたちで反映してくれるからこそ持続させ高揚させることができるものだ。
であるなら、どれほどの憎悪を篭めてねめつけたところで、それをまるで空気であるかのように素通しさせてしまう相手に、それが通じようはずもない。
やがて諦めたように重苦しくため息を吐き、岡田はわしゃわしゃと頭をかきむしった。積み重なった羊皮紙から何枚かを抜き出し、一瞥してピンと指で弾く。
「兵を民から募れってだけなら、陸兵五千と水軍千は揃えられるけど。
糧食や武器を揃えた上に、一軍として行動するだけの最低限の調練を施すとなると、結局即座に動かせるのは常備の二千と水軍だけね」
もちろん、全てを動かすわけにはいかない。
このニノディーはレフキー街道を扼する要衝、備えを空けるわけにはいくはずもない。
それでなくとも、街道の治安を守る巡察隊、旅人や商隊から税を集めるための関所などに人手を取られているのだ。
実際にすぐさま岡田の自由になる兵は、かき集めても五百を超えるまい。
……ほんとに、どうにもこないだの任務で損耗した兵が勿体ない。
数は少ないが気心知れた子飼いの精兵、帝国貴族の風上にもおけない怠惰な領主の影響を受け、士気の下がりきった兵どもと違って多少なりとも当てになる存在だったのだが。
そしてそれを指揮する指揮官達を喪失したことが痛かった。
辺境伯領にとっても、そしてそれ以上に自分自身に取って―――
ともかく、あの能無し連中の中から少しは使えそうなのを鍛えなおして、帝都にも皇帝直轄軍の協力を要請して……ああ、でもこれは後に為すべきことだ。
逸れかけた思考を建て直し、彼女は読みとった数字から新たな数字を計算する。
「……半年掛ければ、万に近い数は集められるわよ」
「そう、たかだか辺境伯の手にある軍事力としては、大したものね」
「だてに、国境の要地を委ねられてる訳じゃないってこと。
……でも、時間を掛けるわけにはいかないんでしょ?」
人間にしては、理解が早い。
香奈子は岡田の的確な推測に、小さな満足を覚えた。
「敵が来るわ。彼らが魔と呼ぶモノに奪われた、幼き体を求めてね。
岡田卿、あなたは一度会っているはずだけど」
意味ありげな視線を向けての香奈子の言葉に、岡田の瞳に狂暴な光が宿る。
「……そう言えば、あのラル……いや、御使いがそんなことを……」
自慢ではないが、彼女は人から受けた恥辱をそうそう忘れるタイプではないと自認していた。
いや、今度ばかりは恥辱だけではない。
掛け替えのない、背中を安心して預けられる親友を二人、あの連中のせいで喪った。
……いや、吉井はともかく松本はまったく無関係に行方不明になっていたりするが、この際原因はどうでも良かった。
少なくとも、松本が行方不明になったのは共和国領なのだ。憎むには、それで十分。
共和国と、流れものの冒険者たち。
借りは、必ず返す。いかに陰湿で残忍な手段であっても、必ず返す。
その機会がなければ、自分から作り出す。
ならば、今度のように向こうからのこのこと首を差し出してきた場合はどうする?
「で、どうしろっての? 軍事顧問殿」
答はこの上なく簡単だ。
機会を逃さず、必ず殺す。捉えるだけでは物足りない、必ず殺す。
ならば、その指示を軍事顧問の口から引き出さなくてはならない。岡田は切に、彼女の望む指示を香奈子が口にすることを願った。
「この城に繋がる全ての街道の警備を」
「それだけ?」
その反問は、いささか焦れたように、不満げに聞こえたのではないだろうか?
口にしてから、岡田は自分の迂闊を罵った。
悪い予感は的中する。そこまで無表情だった軍事顧問のかんばせに、一瞬だが歪な笑みが浮んだのだ。
「こちらからはそれだけ。あとは、あなたが自分で好きなようにしてくれるでしょ?」
「……面倒な汚れ仕事を、こっちに押し付けようって言うの?」
切り付けるような反問、そしてまた後悔というプロセスを律儀に再現してみせる岡田。
……あたしのバカ。今度は意識し過ぎだ。なんて下手な演技。
「別に、押し付けるつもりはないわ。監視だけしていてくれたらいい」
そんな岡田の焦燥を、きっと彼女は見透かしているのだろう。淡々と
……それから今度ははっきりと、淫蕩な、娼婦のような笑みを浮べて付け加えた。
「……あなたが我慢できるなら、ね」
くすりと微笑んだ瞳の奥は、とてもとても虚ろで意思の欠片すら見つからなくて、それでいて朱い幽かな光が正面から直視した者にだけ、深奥に潜む狂気の存在を自己主張していた。
それで、自分が相手にしているモノ、藍原瑞穂の親友だったはずのモノがいかなる存在であるか、はっきりと認識する。
間違いない。
間違うはずもない、完全に人の中に紛れこむことの出来る彼らがこうも露骨にその本性をさらけ出しているとは意外だったが、
いや、その意外性こそが、彼らの狙いなのかもしれないと岡田は思いなおす。
現に瑞穂は気がついていないではないか。彼女の親友が『選ばれて』しまったことに気がついていないではないか。
つまるところ、太田香奈子もまた神の贄なのだ。あの物言えぬ幼き娘がそうであったのと同じように。
「……ふ、くくっ、くは、あははっ、あはははははっ!
……あはは、ふぅ……ははは……はは、御使い方は、誰も彼も意外に横着ね!」
突如哄笑をはじめた岡田へと、重臣たちが狼狽した様子で顔を向ける、その様子すら気にならず、岡田は笑い過ぎて涙の滲んだ目尻を拭った。
羽ペンを脇に置くと椅子から立ちあがり、腰に佩いた新調のサーベルの柄を叩いて香奈子を見据える。
「ま、いいけどね。確かにあたしも、あの連中を八つ裂きにしないと気が済まないから」
「岡田様!」
悲鳴にも似た瑞穂の制止の叫びは、岡田が挙げた手に制された。
……いや、制されない。
知識は深いが、内気でおとなしい背景のような存在と思われていた彼女が、岡田に面と向かって反論するなど誰も思いはしない。
その、誰もが思わぬ事態がそこに現出している。
誰も口を挟めない。
ただ瑞穂と岡田と香奈子の三人だけが、微妙な距離感をもってそれぞれに対峙していた。
「兵を集めれば、共和国との関係がどうなるかと言うことくらい岡田様もわかってるはずです!」
「……そうね、わかってる。だけど、これはニノディー辺境伯領の問題よ。帝都の指示は受けない」
「帝国本国から派遣された軍事顧問がその指示に関わっている以上、一地方領主の問題では片づきません!」
「その軍事顧問殿からの指示は、城塞防備と警備の強化だけじゃない。共和国との関係が悪化してる今、それは当然の措置よ」
「それはそうですが……!!」
「くどい! あんたの言いたいことはわかってるけど、あたしはあたしの好きやらせてもらう!」
なおも食い下がろうとする瑞穂を、岡田は最後は怒鳴るようにして一蹴した。
初めてあった時、香奈子の変貌を想い涙をみせた瑞穂。その彼女が、香奈子の指示に抵抗する胸中はどれほどのものか。
その葛藤を思いやる余裕など、今の岡田にありはしない。
瑞穂がさすがに押し黙ったことを確認すると、怒鳴りつけた凶相もそのままに香奈子を睨み据え、嗤った。
「気に食わないけど、気に入ったわ。いいわ、あんたの指示通りにしてあげる」
嗤い、筆立てに置いた羽ペンを手に取り、立ったまま新たな羊皮紙にそれを走らせる。
そして書き上げた新たな命令書を傍らの官僚にぐいと押しつけた。数人の武官に目配せし、大股に部屋から歩みさる。
呆然としていた重臣の多くも慌ててそれに続き、幾人かの官僚が岡田が残した書類の山の始末に頭を悩ませるだけだ。
……そして、その中にそもそもニノディーの臣でない者達の姿も紛れている
「……香奈子ちゃん。」
バタンッ、と音を立てて扉が閉じると同時に、瑞穂がためらいがちに友の名を呼ぶ。
「瑞穂」
能面のような顔で、死霊のような声音で、自分の名前を呼び返してくる親友。
それでようやく、彼女にもわかった。
いや、わかってはいた。理解はしていた。
認めたくなかったから、認めなかっただけなのだ。
彼女のきまじめな部分が、神を疑うことを拒ませた。
彼女の人を信じる心が、香奈子が変わった原因を自身の中に求めさせた。
だが、違う。これは、違うのだ。
「……香奈子ちゃん……違う。あなたは」
「瑞穂」
瑞穂の動揺をまるで無視して、九官鳥のように同じ言葉を囀る香奈子。
まるで、その名前と眼前の対象が合致しているか否かを確認しているかのような―――いや、事実そうなのだろう。
もう一度、小さく瑞穂と呟いて軽く頷いた。そして四度、瑞穂の名前を口にする。
「瑞穂。邪魔をしたら、殺してしまうかもね」
「……な……」
「ああ、それとも」
獲物を見定める肉食獣のような視線。簡単な事務手続きを説明するかのような淡々とした口調。
言葉を失う瑞穂に対して、香奈子は能面から一転満面の笑みを浮かべて言った。
「『私』と同じに、なる?」
―――それは、香奈子が香奈子であった頃とまったく同じ笑みで―――
「……?」
背後のやりとりも気にとめず(と言うよりも、意識的に排除して)書類の整理にあたっていた官僚の一人が、訝しげに振り向いた。
その鼻先を掠めるように、瑞穂がローブを靡かせ駆け去っていく。
きらめく雫がいくらか宙に舞った気がしたが……
(しょせんよそ者連中のやりとり、それは自分には関係ないことだ)
官僚はすぐに作業に没入し、瑞穂がこの城で見せた二度目の涙は、誰の脳裏にも残ることはなかった。
<糸冬>
【岡田 茜・ルミラご一行対策】
【太田香奈子 岡田に入れ知恵】
【相原瑞穂 かなり孤立気味】
71 :
Uスレの1:02/08/18 21:32 ID:/6Llyhjj
以上、投稿しますた。
茜も動かしてみたいけど、いまだにONE未プレイな罠。Moon.もやってない自分は完全な葉っ派ですな(汗
ご感想、妙なとこなどありましたらご指摘宜しく願います〜
……そもそも長過ぎたですね(汗
72 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:09 ID:lO4MeInw
新作ご苦労様です。
暇だったので、キャラの能力をまとめてみました。参考程度に見てください。
73 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:13 ID:lO4MeInw
名前:坂上蝉丸
職業:王立騎士団特務部隊隊長
技能:剣術
備考:
名前:長瀬源之助
職業:王立図書館館長
技能:自然術など
備考:元・王立騎士団特務部隊。彩の師匠。詠美とは何か因縁がある様子。別名:鬼魔術師。
名前:長谷部彩
職業:王立騎士団特務部隊隊員
技能:自然術
備考:
名前:保科智子
職業:神官(白魔術&戦士)
技能:戦槌を操る
備考:
74 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:14 ID:lO4MeInw
名前:保科智子
職業:神官(白魔術&戦士)
技能:戦槌を操る
備考:
名前:川名みさき
職業:剣士
技能:双刀術、気配出た辺りの状況を察知、早食い、大食い
備考:たまに目が見えるようになるらしい。
名前:上月澪
職業:ルーンユーザー
技能:ルーンマジック
備考:言葉がしゃべれない代わりに、るーんまじっくと言う黒魔術の一種を使う。現在、ラルヴァ憑き。
名前:里村茜
職業:白魔術師
技能:白魔術
備考:高レベルの白魔術師。アカデミーにおいて何らかの役職に就いている。
75 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:14 ID:lO4MeInw
名前:上月澪
職業:ルーンユーザー
技能:ルーンマジック
備考:言葉がしゃべれない代わりに、るーんまじっくと言う黒魔術の一種を使う。現在、ラルヴァ憑き。
名前:里村茜
職業:白魔術師
技能:白魔術
備考:高レベルの白魔術師。アカデミーにおいて何らかの役職に就いている。
名前:南明義
職業:剣士
技能:剣術
備考:そこそこの場数を踏んでいます。
名前:国崎往人
職業:言霊使い
技能:剣術、高速言語、人形を動かす
備考:現在みすずの呪いを解くための秘宝を追っている。
名前:御影すばる
職業:合気使い
技能:大影流合気術
備考:酒に弱い。
76 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:15 ID:lO4MeInw
名前:宮田健太郎
職業:戦士
技能:剣術、目利き
備考:超高性能な鎧を所持。ただし、本人はかなり弱い。目利きに関してはかなりのもの
名前:七瀬留美
職業:戦士
技能:剣術、斧術
備考:かなりの腕力を所持
名前:北川潤
職業:銃使い
技能:集中力、370m先からの狙撃、皿洗い
備考:散弾とライフルとハンドガンを所持
名前:水瀬秋子
職業:武具屋兼宿屋の主人
技能:武器の生産及びカスタマイズ、調理
備考:
名前:千堂一樹
職業:剣士
技能:剣術
備考:魔剣阿修羅の、修羅場モードにより驚異的な力を出すが、反動で倒れる。
名前:七瀬彰
職業:町医者/ホワール魔法学園生徒
技能:白魔術、医療技術
備考:腕はウィザード級
77 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:16 ID:lO4MeInw
名前:しのさいか
職業:町医者助手?
技能:医療技術、白魔術
備考:腕は、さほどでもないと思われ。白魔術を勉強中
名前:住井護
職業:剣士
技能:剣術
備考:
名前:月宮あゆ
職業:盗賊
技能:
備考:
名前:折原浩平
職業:盗賊ギルドの長
技能:
備考:通称"闇の王"。瑞佳とは結婚している。
名前:大庭詠美
職業:具現化絵師
技能:「ある条件下で描いた絵を、完全に具現化させる能力」、芸術(絵画?)、いろんな物に対する先見の明
備考:
名前:柏木梓
職業:摂政兼衛兵隊長
技能:詠美を宥める、政務
備考
78 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:17 ID:lO4MeInw
名前:日吉かおり
職業:衛兵隊/梓直属の部下
技能:
備考:
名前:藤田浩之
職業:町民
技能:「何でもそこそここなす」、忍術、機転
備考:ピンチを知恵で切り抜けるタイプ。
名前:倉田佐由理
職業:議員の娘
技能:
備考:
名前:ルミラ・ディ・デュラル
職業:魔界貴族
技能:魅惑、アンチマジック、宝石獣の作成、霧化
備考:魔族の保護や条約に違反する魔族の殲滅
名前:長岡志保
職業:放浪の歌姫/情報屋
技能:呪歌、情報収集・管理能力、情報操作、剣術、魔術、体術
備考:剣術、魔術、体術ともに中途半端
名前:森川由綺
職業:白の歌姫
技能:呪歌
備考:
79 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:17 ID:lO4MeInw
名前:高瀬瑞希
職業:
技能:怪力
備考:夢はお嫁さん
名前:九品仏大志
職業:魔術師
技能:黒魔術、テレポート
備考:呪文は大志オリジナル? 魔術を込めて任意に発動出来るメガネを所持
名前:美坂栞
職業:街娘
技能:図鑑で得た知識
備考:晴香お手製の対野犬用丸薬所持
名前:霧島聖
職業:白魔術師
技能:白魔術、メス投げ、医療技術
備考:
名前:柏木初音
職業:調理人
技能:声真似(千鶴の)、変身(白リス)
備考:偽善者一歩手前
名前:柏木耕一
職業:鍛冶屋
技能:鍛冶、戦闘技能
備考:秘宝塔と関係のある"魔族の剣"を所持。元戦士。
80 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:18 ID:lO4MeInw
名前:久瀬
職業:旅芸人一座団長
技能:
備考:
名前:広瀬真希
職業:旅芸人一座副団長
技能:
備考:
名前:椎名繭
職業:旅芸人一座のマスコット的存在
技能:
備考:
名前:天野美汐
職業:旅芸人一座のマネージャー
技能:白魔術
備考:
名前:矢島
職業:旅芸人一座のパシリ
技能:ふられること
備考:
名前:御堂
職業:旅芸人一座パシリ兼用心棒
技能:
備考:元王立騎士団。真希に多額の借金あり
81 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:18 ID:lO4MeInw
名前:セリオ
職業:クルス商会の者
技能:
備考:クルス商会の製品を常に持ち歩き、ドラえもんの様に出しては売りつけます。
名前:水瀬名雪
職業:体術家
技能:体術
備考:常人を遙かに凌駕する身体能力を保有。
名前:月島拓也
職業:傭兵
技能:鞭
備考:何か能力を隠している模様
名前:柳川
職業:傭兵
技能:剣術、生命の輝きを見る
備考:筋肉で血止めができる特異体質。他人の血を吸い傷を癒す魔剣を所持
名前:河島はるか
職業:王立騎士団特務部隊員
技能:
備考:
名前:天沢郁未
職業:FARGO宗主
技能:不可視の力、剣術
備考:大剣を所持
82 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:19 ID:lO4MeInw
名前:巳間晴香
職業:テンプルナイト"パラディン"
技能:薬学(化学?)の知識、白魔術、剣術
備考:周期的に、殺戮衝動が訪れる。段々その間隔が短くなっている模様。
名前:姫川琴音
職業:テンプルナイト"シスター"
技能:白魔術、超能力
備考:超能力は万物を簡単に破壊出来るらしい。
名前:鹿沼葉子
職業:宗団患部
技能:暗殺術、毒や、精神に対する魔術、肉体的・性的苦痛に対してかなりの耐性
備考:
名前:深山雪見
職業:ソードマスター
技能:剣術
備考:「剣聖ゆきちゃん」の異名を持つ
名前:篠塚弥生
職業:傭兵
技能:槍術
備考:高槻のおもり
名前:高槻
職業:ロード
技能:
備考:
83 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:20 ID:lO4MeInw
名前:緒方英二
職業:盗賊ギルドの長(近隣都市の)
技能:
備考:通称、闇の声。浩平の盗賊としての養育者
名前:柏木楓
職業:盗賊ギルド幹部(浩平の秘書?)
技能:変身(黒猫)、黒魔術
備考:シェイプシフター
名前:岩切花枝
職業:浩平直属の部下/暗殺者/元・王立騎士団特務部隊隊員
技能:
備考:耕一には戦場で救って貰った恩があるらしい。誰かと因縁あり。
名前:岡田
職業:レザミア帝国特務機関三銃士が一人
技能:剣術、銃、魔導剣、指揮
備考:現在暴走気味
名前:吉井
職業:レザミア帝国特務機関三銃士が一人
技能:剣術、銃、戦略
備考:
名前:松本
職業:レザミア帝国特務機関三銃士が一人
技能:
備考:
84 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:20 ID:lO4MeInw
名前:折原みさお
職業:
技能:永遠の構築、精神体を飛ばす
備考:精神体は端末であり不死身
名前:長森瑞佳
職業:
技能:
備考:死んでるか植物状態か精神異常。浩平とは結婚している模様。
名前:長瀬源一郎
職業:
技能:長瀬ネットワークの管理
備考:元・旅芸人一座の団長。長瀬ネットワークは世界中の長瀬のネットワークを束ねたものらしい
名前:凸
職業:魔術師
技能:魔術
備考:魔術の腕前はウィザード級。但し種類は不明。現在メガネの呪いにより言葉が話せないため使用不可
名前:牧村南
職業:レフキー執政官
技能:高い行政能力
備考:
名前:雛山理緒
職業:侍従
技能:
備考:
85 :
名無しさんだよもん:02/08/19 00:21 ID:lO4MeInw
名前:遠野美凪
職業:
技能:他人に自由に夢を見せる
備考:まだ力が弱いため、不思議な羽により力を制御
名前:みちる
職業:
技能:
備考:武術とシャボン玉作成を修行中
名前:長瀬祐介
職業:
技能:電波、スキャニング(物質の情報を読みとる)
備考:
名前:長瀬源五郎
職業:学者
技能:算術、魔法倫理学、歴史学、古代研究学、新技術研究
備考:
名前:橘敬介
職業:陰陽師
技能:陰陽術、刀術、式神使役
備考:才能はないが、知識だけならマスタークラス。知識を託す者
名前:氷上シュン
職業:
技能:永遠の操作。記憶の消去
備考:緋愴の槍を所持
名前:柚木詩子
職業:フィルスノーン自警団
技能:警棒による戦闘術
備考:
名前:貴之
職業:フィルスノーン自警団隊長
技能:人員指揮
備考:
名前:ジョージ
職業:宮内貿易公司社長
技能:
備考:
名前:シンディ
職業:宮内貿易公司秘書
技能:
備考:
名前:宮内あやめ
職業:宮内貿易公司副社長
技能:
備考:
名前:相沢祐一
職業:海賊・相沢一家キャプテン
技能:
備考:
名前:藤井冬也
職業:キャプテン補佐
技能:
備考:
名前:神尾晴子
職業:相沢一家服キャプテン
技能:鉄扇、東洋系体術、刀術
備考:青竜刀『酔虎』『雫龍』を所持
名前:神尾観鈴
職業:相沢一家一員
技能:魔力無効化
備考:観鈴の能力は呪いの副産物だと思われ。
名前:沢渡真琴
職業:相沢一家一員
技能:魔力の暴走
備考:祐一にその力がむく事はない。普段は鈴で封印。
名前:坂口好恵
職業:一家の戦闘部隊長
技能:体術
備考:
名前:犬飼俊伐
職業:ミラクルカノン号操縦役
技能:生命の魔石の研究による知識、算術、魔法倫理学、歴史学、古代研究学、新技術研究
備考:知能を持つ動物の研究をしていた。
名前:観月マナ
職業:忍者
技能:忍術
備考:麗子暗殺任務を負うが失敗。忍者としての能力を含めた記憶を失う。
名前:石原麗子
職業:女医
技能:忍術、医術
備考:元忍者
名前:高倉宗純
職業:忍軍頭目
技能:
備考:
名前:小坂由起子
職業:孤児院のシスター
技能:
備考:
名前:川澄舞
職業:
技能:魔物を生み出す、血のうさぎを生み出す
備考:魔族の血が混じった少女。現在佐由理と同行。
名前:巳間良祐
職業:
技能:
備考:高槻の領地にて白竜を飼育?
名前:リアン
職業:魔術師アカデミー生徒
技能:魔術
備考:半人前。過去にレザミア帝国と因縁
名前:牧部なつみ
職業:
技能:ナイフ? 物質の具現化(炎の出るナイフなど)
備考:拳銃を所持。
名前:ピロ
職業:
技能:人語がしゃべれる
備考:犬飼によって創られた。逃亡中。
名前:柳也
職業:
技能:
備考:神奈とは許嫁らしい。
名前:裏葉
職業:
技能:穏形
備考:柳也や神奈とは幼馴染み
名前:神奈
職業:
技能:
備考:観鈴や翼人の呪いとの関係は不明
名前:美坂香里
職業:戦士
技能:鎌術
備考:デスサイズ(カラクリ式でコンパクトにまとまる)で戦う。
名前:新城沙織
職業:王立特務部隊員
技能:二重身、薬学の知識
備考:往人達には王立特務部隊員であると言う事は内緒にしている。
名前:佐藤雅司
職業:アーチャー/ホワール魔法学園生徒(黒魔術コース)
技能:弓術
備考:
名前:月島瑠璃子
職業:
技能:電波
備考:普段は、電波の事を風詠みの能力と誤魔化している。
名前:清水なつき
職業:カオスロード
技能:直視の魔眼?
備考:
名前:髭
職業:ロウロード
技能:
備考:聖銃を所持
名前:澤倉美咲
職業:ホワール魔法学園生徒(黒魔術コース)
技能:黒魔術
備考:
名前:名倉友里
職業:魔術師アカデミー保安部主任
技能:風系魔術を詠唱無しで使用
備考:風使い。
名前:ダリエリ13世/ぽてと
職業:レザミア帝国皇帝
技能:変身(犬?)
備考:柏木一族との関係は不明。
名前:まいか
職業:レザミア帝国皇女
技能:
備考:大帝ダリエリ12世の実娘。
名前:コリン
職業:盗賊
技能:
備考:ギルドに属さない盗賊。羽が生えている。
名前:霧島佳之
職業:魔法ショップの店長
技能:黒魔術
備考:ちなみに、魔法ショップは開店休業状態
名前:城戸芳晴
職業:司祭
技能:神聖魔術、医療技術
備考:コリントは幼馴染み。
名前:エビル
職業:ホワール魔法学園の客員
技能:呪符による炎術、メス投げ、変身(青い猫)
備考:
名前:桜井あさひ
職業:魔術アカデミー生徒
技能:黒(召還?)魔術、ほうきで飛行
備考:
名前:神岸あかり
職業:魔術アカデミー生徒
技能:魔術、ほうきで飛行
備考:
名前:スフィー=リム=アトワリア=クリエール
職業:魔術アカデミー生徒
技能:魔術、ほうきで飛行
備考:あかりや、あさひよりは能力値が高いらしい
名前:来栖川芹香
職業:魔術アカデミー生徒
技能:魔術、ほうきで飛行
備考:成績は優秀だが素行が悪い(街の人をさらって人体実験を強行した過去あり)。家出中
名前:神岸ひかり
職業:魔術アカデミー職員
技能:
備考:茜の上司
名前:藍原瑞穂
職業:帝都関係者
技能:
備考:
名前:太田香奈子
職業:帝都から来た軍事顧問
技能:
備考:ラルヴァ憑き
名前:立川雄蔵
職業:皇帝の側近
技能:
備考:
名前:シケリペチム公ニウェ
職業:レザミア帝国宰相
技能:
備考:戦争狂
94 :
72:02/08/19 00:30 ID:lO4MeInw
抜けてるところあったら補完してください。たぶん足りない人とかもいます。
気が向いたら、人間関係やストーリーの整理もするかも……。
>>94 お疲れ様ですー。
急にレスが増えてるから少し、びびったw
>>94 人物一覧お疲れ〜
ちなみに、ホワールにいるのはエビルでなくてイビルだね。
エビはまだ出てきてないはず。
97 :
72:02/08/19 01:18 ID:lO4MeInw
>>96 ですね。間違えちゃったみたいです。
ルミラ一家で出てるのは、ルミラとイビルだけのようです。
一覧乙〜。こういうまとめは時々あると読むのにも助かります。
一点指摘。詩子、貴之の項で、フィルスノーン自警団→フィルムーン自警団ですね。
えーと、おたく縦&横、MOONの少年が抜けている気がします。
……放置組ですねw。あ、後きよみ(黒)も。
やはり、大志パーティーの話は面白いですねぇ。
>復讐は神聖なり
帝国篇の陰謀劇はやはり良いです。辺境伯領は決戦の地の一つと
なりそうですね。中でやはり気になるのがどんどん危うい方向に
追い詰められている岡田。一方の主役となりつつありますが……
しかしみずぴーってばやっぱり不幸。
歌うような旋律の呪文が、風に乗って三人の間を流れていく。
「……これで、いいはずです」
ややあって、茜は溜息と共に両腕を下ろした。
魔法による何の変化もない事に、明義は訝しげに自分の身体を見下ろした。
「本当に結界がかかったのか?」
「ええ。これえ魔族の使う探知系の呪文を、ブロックできるはずです」
静かに頷いて、茜はちらりとルミラに視線を向ける。
ルミラは同意の笑みを浮かべると、ぱんぱん、と手を叩いた。
「さて、私達が来てる事がバレた以上、休んでる余裕はないわね」
「そうですね」
茜はたった今ルミラが撃ち落した、使い魔に目を落とした。
ルミラによると、その小型の悪魔のようなものは、ラルヴァが好んで使う使い魔だそうだ。
主に偵察を目的として、標的の後を着け回すらしい。
「私とした事が、油断大敵って奴ね。逃げたと思ってたら、こんなの張りつけられてたんだから」
ルミラは苦笑を浮かべなら、地面で黒焦げになっている使い魔に一睨みをくれる。
すると、視線がそのまま力となって、黒焦げの死体を粉々に打ち砕いた。
「今、どの辺りまで来てる?」
「地図によりますと、そろそろ橋本辺境伯の領地に差し掛かる所ですが」
レフキー街道の端に陣取り、3人は頭を付き合わせて地図を覗き込む。
「橋本辺境伯っていやぁ、とんでもない放蕩モノって噂だな」
明義が城郭都市ニノディーをとんとん、と叩きながら呟いた。
それに興味を引かれたのか、茜が顔を上げる。
「そんなに凄い人なのですか?」
明義はここぞとばかりに、茜に向かって自分の知識を披露する。
「ま、橋本伯の放蕩ぶりったら、帝国はおろか共和国にまで鳴り響くぐらいだからな。
共和国の高槻卿、帝国の橋本伯ってな具合に、両国の二大放蕩貴族とまで言われてるぐらいだ」
「はぁ……」
ちょっと困ったような顔で、茜は首を傾げた。
「けれど、そんな放蕩貴族が、どうしてレフキーとの国境という重要な軍事拠点に配置されてるのでしょうか?」
「え……さ、さぁ……そこまでは俺も……」
「それは多分……」
ルミラが何か言いかけた時、がらがら、と三人の前を一台の馬車が横切った。
ルミラは口をつぐむと、馬車の御者に向けて手を振った。
「ちょっとそこの人、乗せてもらえないかしら?」
「んー? なんだあんたら、帝国に行く気かい?」
大量の芋を荷台に乗せた気の良さそうな農夫が、ルミラの美貌を眩しそうに見つめる。
「ええ、そのつもりなのだけれど……」
「帝国に入る気なら、関所を通らなきゃならんぞ。通行書はあるんかい?」
「あ……そう言えば、通行書が必要なんだったわね……」
通行書を発行してくれそうな町までは、ここから丸一日かかる。
自分の失策に舌打ちするルミラだったが、茜がバッグから三枚の通行書を取り出すのを見て、目を丸くした。
「あなた、いつの間に……」
「アカデミーに報告した際に、一緒に通行書も発行してもらいました。
第2級通行書ですので、取り合えず全ての関所を通る事が可能のはずです」
「第2級!? うわ、マジだよ……俺第3級より上って見た事なかったぞ」
同じく目を丸くしながら、明義も茜の手元を覗き込んで来る。
そんな三人を見ながら、農夫は相好を崩した。
「大丈夫ってんなら、ほれ、俺の村までなら乗せてってやるよ。ニノディーのすぐ傍だしな」
農夫の好意に甘え、茜達は荷台の後ろに腰掛ける。
ごとごと、と軽快に揺れる荷馬車は、お世辞にも乗り心地がいいとは言えないが、歩きよりは大分楽である。
芋の山にごろりと背を預けながら、明義がひょいと顔を農夫の方に向けた。
「なぁおっちゃん、俺ら冒険者なんだけどさ、帝国で何か噂話とか聞かないかい?」
「噂ねぇ……」
世間話でもするような口調の明義に、農夫も軽く言葉を続ける。
「そういやぁ、つい最近ニノディーのお城に、帝都からお偉いさんが来たらしいよ」
「お偉いさん? それって、三銃士の事かい?」
「いや、あの人たちはもっと前からいるよ。そうじゃなくて、何でも軍事顧問だか何だか、ややこしい職業の人だよ」
それを聞いて、ルミラと茜がそっと目配せした。ルミラの視線を受けて、今度は茜が口を開く。
「その軍事顧問さん、どのような方なのですか?」
「さぁ、俺は知らないが、ニノディーにいる甥の話では、随分と若い娘らしいよ」
「目が虚ろだとか、無気味な雰囲気がするとか……そういった噂はないかしら?」
ルミラの問いに、農夫はしばし顔をしかめると、小声で囁いた。
「これは秘密の話なんだがね、その顧問とかいうのが来てから、ニノディー城の雰囲気ががらりと変わっちまったらしいよ。
冷たいというか、ぞっとするというか……城に食料を運ぶ甥も愚痴ってたよ。
誰も彼もぴりぴりしてて、あんなに居心地が悪い城じゃなかったのにってさ」
「…………」
茜とルミラの間に、さっと緊張が走った。
澪でしょうか、と茜の口が声を出さずに動く。ルミラは一瞬考えるように俯いてから、首を振った。
(まだわからない……ラルヴァが仮初の身体を使うのはよくある事だから……)
(時期的には一致すると思いますが……行きますか、ニノディーに?)
「おっちゃん、おっちゃんの村からニノディーまで、どのくらいかかる?」
「んん、そうさな、歩きで半日ほどかな。どした、ニノディーに行く気かい」
農夫の問いに、茜は僅かに迷ってから頷いた。
「……ええ、そうですね。一応行ってみると思います」
「そっかい。んじゃ、俺の甥を紹介してやるよ。さっきも言ったが、甥はニノディー城に食料を納めてんだ」
「本当ですか!?」
ニノディーにいる軍事顧問の正体はわからないが、数少ない手掛かりである。
城の関係者に紹介してもらえるなら、これほどありがたい事はない。
「……なぁ茜、もしその軍事顧問が澪だったら、俺らの面が割れてるんじゃないか」
小声で耳打ちする明義に、茜ははっとルミラの方を見た。
「っつーわけで、俺は変装を提案するんだが、どうよ?」
「変装……ですか?」
言ってる事は間違っていないが、どうも嬉しそうな明義に、茜は不審そうな顔を向ける。
「そーそ、茜なんか、男装したらかっこいいと思うぜ」
「悪いアイディアじゃないわね」
「……ルミラさんまで」
渋い表情の茜に、ルミラはぱちりとウィンクしてみせる。
「あら、魔族ってのは大体己の魔力を過信してるから、こういった原始的な方法には、よく引っかかるのよ」
「…………」
「何だい、あんたら面が割れたら困るのかい?」
「………っ!?」
小声で話していたはずなのに、しっかりと聞いていた農夫に、3人はぎくりと身体を強張らせた。
だが、そんな3人を他所に、農夫は楽しげに言葉を続ける。
「そうかいそうかい、んじゃ、この俺も一肌脱いでやってもいいぜ。なんか楽しそうだからなぁ」
【茜一行、ニノディー近くの村に移動】
【ラルヴァ対策に、変装するか……茜は男装?】
復讐は神聖なり、の続きに当たるんでしょうか。
それでは、誤字脱字修正がありましたら指摘よろ。
新作新作。久々登場茜パーティーですね。帝国サイドの緊迫ぶりと比べると、
こちらはまだ序章という雰囲気。少数の高レベル冒険者と疲弊している辺境伯軍
との争いを黒幕が煽るという構図ですが、なかなか盛り上がりそうで楽しみ。
ところで、会話を漏れ聞かれる不注意は高レベル冒険者としてはやや不覚な気も。
実はおっちゃん、只者ではなかったり?
誤字:1レス目第6行「これえ魔族の」
メンテしておくじょ
108 :
名無しさんだよもん:02/08/22 20:56 ID:irxsRmsb
さらにage
>>106 まだ出てないおっちゃんキャラの可能性もあり
俺はまじアンあたりを予想したい
叔父甥関係の葉鍵キャラって随分限られてる気がする。一組は既出だし。
まあ、原作の肉親関係に拘泥する必要はないわけだけど。
為念メンテ
確かにまじアンとかは無名おっちゃんキャラ、結構いるなぁ。
一応メンテっと
負けずにメンテ。
……あ、明後日までには……
115 :
雲丹:02/08/27 02:18 ID:/q3OE67V
メンテしる。
やはりここは、こんぐらいのペースのほうが「らしい」ですねw
今日までに間に合いませんでした保守(涙
お気になさらず。気長に待ってますメンテ。
のんびりメンテ。
(て……きて…起きて…)
「ん……」
(誰か来るよ。起きてったら)
誰かに起こされた気がして、川澄舞は起き上がった。
しかし、舞を起こした者は誰も居なかった。
舞はその声に聞き覚えがあったはずだが、誰だか思い出せなかった。
次に寝ぼけまなこをこすって見えたものは、見知らぬ部屋だった。壁も、毎日見つめ続けていたあの塔の石壁とは違うものであった。
「………?」
「う〜ん…むにゃ……」
その舞の傍らで寝返りをうつ物体を見てみれば、倉田佐祐理であった。それで、やっと舞の思考は固まった。
(そうだ。私はあの秘宝塔を抜け出して、レフキーに来ていたんだっけ)
ここは確か、志保とかいう少し騒がしい人の家だったな、と舞は思い出した。
しかしさほど広いわけでもない志保の家を見渡しても、居るのは舞と佐祐理の二人だけ。
とはいっても、さっきまでは大勢いたのだがもう誰も居なくなっていた。
それもそのはず、舞と佐祐理が眠りについてから大分、時間が経過していたからだ。
(浩之も…いない)
藤田浩之は七瀬留美と共に、秘宝塔での戦闘で負った傷の治療に出かけているのだが、
その間眠っていた舞にはそんな事は知る由も無かった。
そんな事を考えていた舞は、不意に自分達がいるこの場所に、複数の気配が近づいているのに気がついた。
誰か来るよ』
先程の声がもう一度頭の中に響いた。
なんだかひどく懐かしいようであり、それでいてつい最近まで聞いていたような声でもあったが、
それが誰のものなのかは思い出せなかった。そうこうしているうちに、気配はどんどん近づいて来ていた。
最初は浩之達かなと考えていたが、ドア越しに伝わってくるのは、何やら不穏な気配。
咄嗟に佐祐理を揺り起こそうと佐祐理に手をかけた。が、突然その手を引っ張られ、佐祐理に抱き寄せられてしまった。
「にゃむ……あはは〜…もう離さないよ〜……」
佐祐理はまだ眠っていた。
寝ぼけながら、何かを決して離すまいとしている佐祐理の腕の中から必死に抜け出そうと、舞は佐祐理を起こしにかかった。
「佐祐理…!佐祐理…!誰か来た。起きて」
「う…ん……?」
それでやっと、佐祐理は長旅の後の眠りから目を覚ました。
「舞…?どうしたの?」
「誰か来た」
佐祐理も不穏な気配になんとなく感づいたのか、護身用の剣を手にして身構えた。
「舞は下がってて」
「………」
佐祐理の後に下がった舞は、静かに窓を開けた。
入ってきたのは黒づくめの者達だった。フードを被っていて顔は見えなかったが、こちらを襲ってくるわけでもなかった。
フードの一人が佐祐理を見て口を開いた。
「倉田…佐祐理お嬢様ですね?」
お嬢様と呼ばれ、倉田家の関係者かも知れないと思い、佐祐理は多少警戒を解いた。
「誰ですか?」
「…お父上が貴方様をお探しになっておられます。至急、お屋敷にお戻りください」
「家に…?おかしいですね、お父様には家には戻りませんと言ったはずですけれど」
「事情をお話します。とりあえず、こちらへ」
ほっとため息をつきながら剣を降ろし、フードの方へ行こうとする佐祐理の袖を舞は引っ張った。
「舞?」
「…行ってはだめ。そいつらは、怪しい」
怪しいと言われたフードの者達は一気に気色ばんだ。
「何を馬鹿な…!お嬢様、そんな娘の言う事など放っておいて早く…」
「…紋章を見せてください」
「は?」
佐祐理に紋章を見せろと言われたフードは、何の事かわからず一瞬固まった。
「ですから、倉田家の紋章を見せてくださいと言ってるんです。こういう時には、必ず持っているはずです」
「紋章、ね……クククク……」
突然妖しげに笑い出したフードを見て、佐祐理は確信した。彼等は倉田家の者ではないと。
「あなた達は誰なんですか!?」
「ククククク……あまり手荒な事はしたくないのだが…」
それは明らかに脅しの文句だった。事実、部屋の空気が一瞬にして変わる。
フードの者達は、今にもこちらに襲い掛かってきそうな雰囲気になった。
「佐祐理…」
「舞は逃げて!」
舞を守ろうとする佐祐理に、舞は続けた。
「佐祐理……飛ぶ」
「ふぇ…?きゃっ!」
変な事を聞いたかと思うと、佐祐理の体はふわっと宙に浮いた。舞が佐祐理を抱き上げたのである。
そして、タンッ!と一気に後に飛んだ。
「なっ…!?」
驚愕するフード達の前で、舞と佐祐理の体は窓の外へ飛び出し、下方へと視界から消え去った。
「なんだと!」
フード被った者達は、慌てて窓へ駆け寄る。その視界に見えたのは、佐祐理を抱えたまま、綺麗に地面に着地した舞の姿であった。
そしてそのまま路地の角を走り去っていってしまった。
「くそっ!」
フードの一人が悔しげに窓樋を叩く。この窓から地面までは結構な高さがある。完全な計算違いであった。
前もって入った情報では、現在この家にいるのは倉田佐祐理一人のはずであった。
小娘一人誘拐するのは楽な仕事のはずだった。そこに、人一人抱え、この高さから飛び去る者がいるとは……
(何かの訓練を受けた特殊な部隊の者か?)
見た目の幼さからか、とてもそうは考えなかった。とにかく、完全な油断である。
「追いますか!?」
もう一人のフードが尋ねる。しかし、それは許可されなかった。
「いや、もうすぐ夜が明ける。騒ぎを起こすのはまずいだろう」
そして、フードの者達は長岡志保の住居から静かに退散していった。
佐祐理は舞に抱きかかえられたまま、走っているその顔を見つめ、一人感心していた。
「やっぱり、舞ってすごいね。佐祐理、重くないかな?」
「………少し重い」
【佐祐理&舞:志保の家から脱出】
【フード被った人達:帰った。何故佐祐理をさらおうとしたかは謎】
Uスレの1さんが書き終わるまでの繋ぎの保守代わりに投稿しますたw
……健太郎(;´Д`)
彼、国崎往人は密かに溜息をついた。
確かにセバスチャンは心強い旅の仲間で、宿代を立て替えてくれた恩人だ。
だから、彼の言うことは優先すべきだろうし、自分の当てがない以上、彼の行動に従うのは自然だ。
けれど――――こんな所で晒しモノになるのはさすがに、抵抗を感じた。
そう、晒しモノだった。カジュアルな街の格好をしている中に、旅の衣装(セバスチャンに言われて武器は隠しているが)の男女四人。
これで目立つなというのが間違いだ。かつ、自分以外の三人が注目を浴びている事を歯牙にもかけずに堂々としていることも拍車をかけている。
「…過酷過ぎるぞ」
意味はないと思いながらも首を竦める。早く、セバスチャンの待ち人が来ることを祈りながら。
と、ふと見ると。
「ん?どうした、沙織」
「え?…えっと。なに?あはは」
突然声をかけられて、誤魔化すように笑みを浮かべる沙織。
その声色は、何かありましたとはっきり語っていた。
「なにがあったんだ?何か気付いた事でもあるのか?」
「気付いたって言うか…」
沙織はちらりと、視線を部屋の隅に向ける。
そこには、椅子に座って明後日のほうを見ている、撫で肩の男がいた。
いや、男というよりは少年だろうか。年の頃は自分より少し下ぐらいだろう。どこか、陰気な雰囲気を漂わせている。
「…アイツがどうかしたのか?」
「どうかって、ワケじゃないけど…」
「けど?」
「知ってる人に、似ていて…本人かどうかはわからないけど」
「なら、確かめればいいだろ」
「うん…うん。そうだね。間違ってたらごめん、でいいもんね!」
沙織はぴょん、と軽くステップを踏むと、その少年のほうに足を向けた。
その時だ。
「おじょぉさまァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
冗談抜きで、地面が揺れた。
壁がびりびり振動する。その発生源の側にいた三人は、度肝を抜かれて腰を抜かした。
「ぱぎゅぅ!?」
直後、もっとも発生源の側にいたすばるが発生源にはねられる。
てん、てん、ころんと床を滑っていくすばるを、往人は何となく見送った。
バキィ!!!
再び、空気を震わせる振動が響く。
見ると、地面に倒れている発生源と、その向こうに片足を上げた状態で静止している美少女の姿がある。
すッと足を引くと、その黒髪の美少女は片手を腰に当てる。
「まったく…どこにでも湧いて出るわね、あなたは」
「それが私の役目で御座います、綾香様。さぁ、今日こそ来栖川に戻ってもらいますぞ」
即座に復活するセバスチャン。復活に相応しく、まるで傷ついた様子が無い。
「嫌よ。私にはやることがあるもの。そんなことより、姉さんはどうしたの?まさか、ほうって出てきたわけじゃないでしょうね?」
「それは…実は深い事情がありまして」
何か、込み入った話を始めるセバスチャンと綾香という少女。
往人はもう一度溜息をつくと、すばるを起こしに行くことにした。
「ぱぎゅぅ…目が回りましたの」
「ま、あんだけ派手に転べばな。って言うか、お前格闘家だろ?かわせよ」
「無茶をいわないで欲しいですの…」
一応、かわせなかった事はショックだったらしい。
衣服の乱れを正しながら、すばるは立ち上がった。
「どうやら彼女がセバスの捜し人らしいな。思ったより、簡単に見つかったもんだ」
「綺麗ですの。それに、立ち振る舞いが只者じゃないですの」
「まぁ、ハイキック一撃であのセバスをしとめるぐらいだからな…」
まったく効いちゃいないがな。心の中で呟く。
そんなことを話していると、セバスチャンはその少女を伴ってやってきた。
三人の前で、コホンとセキをするセバスチャン。
「まず始めに紹介しよう。この方が私の主のご令嬢、来栖川綾香様だ」
「正確には孫だけどね。私の事は綾香、でいいわ。その方が気楽でいいでしょ?」
「あんたがそう言うならな。俺は国崎往人。ま、見ての通り旅芸人をしてる」
「私は御影すばるですの。武者修行の旅をしていますの」
「私は新城沙織よ。えーっと…一応、秘宝を探している、かな」
綾香は三人をじろじろと遠慮なく見回すと、くすりと笑った。
「へぇ、長瀬もなかなか変り種を集めたものね。あ、長瀬ってのはセバスチャンのことね」
「芹香様よりお名前を戴いた時より、私はセバスチャンで御座います」
「…って本人は言っているから良かったら尊重してあげて。
で話は変わるけど。あなた、秘宝を探しているって、ホント?」
突然話を降られて驚く沙織。少し戸惑いながらも、すぐに自分を取り戻す。
「一応ね。私も色々事情があるから、詳しい事はいえないんだけど」
「オーケィ。それだけで十分よ。実は私たちも捜してて実際アテもあるんだけど、二人だけってのも正直不安だから同行者を捜そうと思ってたのよ」
「アテねぇ…まぁ、秘宝の噂なんて、結構転がってるもんだしな」
「まあ否定はしないわ。でも煙も立っていないところを探すよりはマシでしょう?」
三人は顔を見合わせる。そして、
「せっかく見つけた話の種を逃がすのも勿体無いもんね」
「いい腕試しになりそうですの!」
「決まりだな。綾香、だったな。その話、乗った」
「そう言ってくれると思ったわ。それじゃ…彼の事も紹介しないとね」
『彼?』
シンクロする三人の声。
「言ったでしょ、二人って。…祐介、聞いてたでしょ?そういうことになったから!」
綾香は振り向くと、よく透る声で呼びかける。
沙織の肩がぴくりと震え、部屋の片隅にいた陰気な少年が溜息と同時に立ち上がった。
すたすたと、あまり音を立てず歩いてくる少年。
そんな彼に、綾香は問う。
「彼等の事、紹介した方がいい?」
「いいよ、聞こえてたから。…長瀬祐介です。よろしく」
【長瀬祐介、来栖川綾香、セバスチャン、
国崎往人、御影すばる、新城沙織 合流】
というわけで『パーティ』をお送りします。
ようやく祐介たちと国崎一行が合流しました。
何か気付いた事があったらよろしく。
>>126 セ、セリオモワスレテイタ…(((((;゜Д゜)))))ガクガクブルブル
後でなんとか…修正を…(死