葉鍵大戦記2 Red Key Black Leaf
1 :
鮫牙:
2 :
名無しさんだよもん:02/05/05 08:30 ID:bnLP41tU
華麗に2ゲット〜
優雅に3ゲット〜
無様に4ゲット〜
希望も絶望もなく5ゲットズザザーッ
無難に6ゲットだゴルァッ!
じゃあ…"7"………よろしいでしょうか?
どうでもいいんですが現実の方の月姫勢力はもう虫の息ですな。
新スレ乙
10 :
名無しさんだよもん:02/05/06 00:21 ID:rMRjXp1W
絵描きさんも参加してほしいな。
「閣下、東部方面軍の鷲見元帥から通信が入っております」
「つなげ」
「お久しぶりです、下川閣下。お変わりないようで何よりです」
疲労しきった下川には皮肉にしか聞こえない挨拶だった。
「堅苦しい挨拶はええ。さっさと用件を言いや、鷲見」
「はい、本日は、第9師団の編成完了及びこれに伴う東部方面軍の再編成等について、
報告と要請を行いたく存じます。お時間はよろしいでしょうか?」
「ん、ほな聞こか」
「はい…」
淡々と続く鷲見の報告を遮るように、下川は深く溜息をつき、切り出した。
「要するに、われんとこの連中のポストを増やしたい。そういうことやな?」
「確かにそうとも言いますね。しかし、これは部隊の効率的運用及び士気向上に資する
と考えております。是非ともお願いしたく存じます」
「ふむ…、まあ、ええやろ。そもそも東部方面についてはワレに一任しとるしな」
「閣下!」
「なんや? 中上?」
「空軍編成まで含むこのような高級人事ならばそれなりの事前調整が必要かと。それを
このように簡単にお決めになっては、無用の混乱を招くおそれがあるかと…」
「じゃかしいわ! ワシがええと言うたことに文句あるんか?」
「いえ… そういうわけでは…」
こうなっては中上に為す術はなかった。
「それとな… おい、鷲見、ワレもよう聞いとけ。これは無事に新師団をこさえたって
ことへの褒美ちゅうこともあるんや。ワシはしっかり働くヤツには報いる男やからな。
だからええか? ワレに預けた軍、無駄にするんやないで。何のためにワレにそないな
大軍預けとるか分かってんやろな?」
「もちろんです。ご期待に沿うよう全力を尽くします。
それと… 閣下、要請をお認めいただきありがとうございました」
「ところで、最近、件の叛徒共やエロゲ国のファシスト共が、我が国への侵攻を開始し、
さすがの閣下も手を焼いているとの話ですが… こちらからも増援を派遣いたしましょ
うか? こちらには若干の余力があります。いかがでしょうか?」
「余計なお世話や!」またも下川の怒声が響いた。
「鷲見! ワレ、ワシがさっきゆうたこと、ホンマに理解しとんのか?」
「と、いいますと?」
「ワレに大軍くれてやっとるのは、エロゲ国のバカ共から国を守らせるためや!」
「それは重々承知しておりますが」
「だったら余計な気回さんと、気ぃ入れてやることしっかりやれや。調子に乗っとると
ヤツらに痛い目に遭わされるで。そもそもあの師団は、エロゲ国、エフアンドシー軍閥
や連合の阿呆共が侵攻してくる可能性が高こうなったんでこさえるのを認めたんやで。
そこを忘れたらあかん。ええな!」
「諒解しました。出過ぎた真似をしてしまい申し訳ありませんでした」
「分かったならええ。他に用事はあるか?」
「ありません。本日はありがとうございました。それでは失礼いたします。」
「ああ、ほなな」
「国歌元帥殿は大層ご機嫌斜めのようで」
そばにいた三宅中将は、笑いをこらえきれないといった感じだ。
「しかし、国歌元帥御自らこう仰っていただければ、我々も地盤固めに専念できると。
その意味で、非常にありがたいお言葉でしたな。もちろん再編成の件も含めて」
「まぁな。しかしあそこまで強気だとは少々意外だったが…
ところで、エロゲ国の方はどうなっている? 連中はちゃんと駆除しないと、国歌元帥
殿がお怒りになるからな。不意打ちでもされた日にはさぞ大変なことになるだろうさ」
茶化した言い回しでは鷲見も負けてはいない。
「まったくです、元帥。
それで、彼の国に潜入させている工作員からの報告によりますと、エフアンドシーや
ゼロといった軍閥で、軍の移動の兆候が見られるとのことです。大々的な動員はまだの
ようですが、それも時間の問題かと」
同じく同席していた中村中将の報告だった。
「間違いない。来るな」
「あと、エフアンドシー軍閥支配地域では我々への敵意を煽るデモが連日発生しており、
また、同人コミケ国にまで葉鍵討伐のための義勇軍への参加を募る檄文が回っていると
いうことです。やはり、みつみ大佐、いや少将でしたね。みつみ・甘露の名義で彼の国
に撒き散らした挑発ビラが効いたのでしょう」
「『脳内補完』か… やりすぎのような気もするが… 情報部の連中もえげつないな」
「まぁ後顧の憂いは早めに叩き潰すのが上策。それも向こうから仕掛けた形にすれば、
我々としても大義名分が立つというものかと。そのためには少々手荒なことも…」
「それは分かっている。私も否定するつもりはない。引き続き情報収集にあたるよう、
情報部に指示しておいてくれ」
「分かりました」
一方、シェンムーズガーデンでは…
「閣下、何卒ご再考を」
中上が覚悟を決めて進言した。
東部方面軍を優遇しているという印象を古参の将校達に持たれたら、ただでさえ人材が
不足気味の下川陣営から、さらに離反者が出かねないからだ。それに、当の中上本人も、
新参者の東部方面軍の連中が自分の立場に次々に迫ってくることが気に入らなかった。
「ワレの言いたいことは分かっとるわ!」
「?! それでは、何故あのような…」
「阿呆! この状況下でさらに鷲見達まで敵に回してどないするんや!
あいつら、人の足下みて、無茶苦茶な要求突きつけてきよる。調子に乗りよって…
だがな、ここは忍耐のしどころや。些細なことでも口実になるよなことをしたらあかん。
やるなら高橋のアホたれと鍵を始末した後や」
「だからと言って…」 さすがの中上も粘る。
「じゃかあしい! 誰のせいでこんな話になってんと思うとんや!
高橋と同調しそうな麻枝のアホたれさっさといてこましたろと思うたら、ワレが不手際
で取り逃がしたとかぬかしおったんやろ? ちゃうか?」
「そ、その件については、誠に申し訳ないと…」
「おかげで、こっちはやりとうもない2正面作戦や。で、さらに3正面か? んなこと
できるわきゃねーやろ!」
「ですが、鷲見元帥は裏切るような方ではないかと…」
「阿呆! 勝手に部下を将官に格上げして、自分の手元に空軍を勝手にこさえて、事後
承認求めてくるんやで? 完全になめられとるやないか! あいつら、ワシが隙を見せ
たらいつでも寝首かきに来よる。だからこそ、慎重にならざるを得んのや」
「・・・・・・・・・」
もはや中上は返す言葉を見つけられなかった。
「どいつもこいつも… まぁ今にみとれ、ワシの力を見せつけたるで!」
そしてシェンムーズガーデンに不気味な笑い声が木霊していた…
メンテ〜
もっかい。
ハァハァ(;´Д`)
19 :
旅団長:02/05/08 20:59 ID:L6IkCaSg
めーんて
めんてん
22 :
名無しさんだよもん:02/05/09 20:10 ID:JR2S2c7E
あ〜げ
処刑寸前のところを米村高広中佐共々誰彼中隊に救出され、
鍵領経由で空き地の町へと舞い戻った青紫超参謀だったが、現地の情勢はなかなか厳しいものがあった。
第10RR装甲師団“トゥーハート”は這々の体で南方のシモカワグラードへと敗退していったが、
代わりに正統リーフ軍と月姫旅団、そして鍵集成師団が進駐してきていた。
彼らは目前に迫った下川リーフ領侵攻の準備に忙殺されており、空き地の町の復興は
全く手つかずの状態にある(軍の補給に関連する施設は急ピッチで復旧工事が進んでいたが)。
「みんなに確認しておきたい」
帰還を果たした日の夜、青紫は軍事顧問団が残していったプレハブ司令部に主立った面々を集めて、
そう切り出した。メンバーは青紫のほかに
・蝉丸、岩切をはじめとする誰彼中隊の面々
・顧問団が残置を命じた特殊部隊指揮官の大佐
・空き地の町戦役の最中に志願した元月姫ゲリラの民間防衛隊指揮官
・成り行きでついてきた下川リーフ防空軍中佐・米村高広
が揃っている。
「私たちは、里村茜と軍事顧問団が再びこの町に戻ってくるまで、この町を守り抜く。
それで間違いはないかな?」
青紫の問いに米村を除く全員が頷いた。あの“里村茜と愉快な狂人たち”の元で展開された苛烈な防衛戦は、
所属も境遇もバラバラな者たち一つにまとめ上げていた。
青紫に恨み骨髄であるはずの民間防衛隊長ですら例外でなく、彼の言葉に素直に頷いている。
それほどまでに、茜と顧問団の存在は彼らにとって大きかった。
見捨てられた自分たちを必要としてくれた、そして一緒に血を流してくれた彼女たちのために、
我々は一致団結して彼女たちの帰還を待つ!
「しかし現状はどうだ? 正統リーフ軍や月姫旅団は、ここを軍事拠点としか見ていない。
復興はすべて軍事最優先、民生は全くの後回しだ」
月姫旅団の乾有彦少佐が残っていればまた別だっただろうが、彼はすでにここを離れ、
町の南方へと移動していた。近日中に迫った下川リーフ領侵攻作戦の際には、
そこを攻勢発起線として突進を開始するはずである。そして今町にいるのは、月姫旅団の本隊だった。
「そして、ようやく戻ってきた民間人もバラックでの耐乏生活を強いられている。これが、彼女たちが帰るべき町の姿か?」
「違うっ!」
青紫のややオーバーな身振りに答え、これまた米村を除く全員が異口同音に叫ぶ。
「車長はあの少女の心の呪縛を解き放った。そして彼女は、我々の精神の闇を払った。
ここは我々にとって特別な町だ。その大切な場所を、荒廃させたままにしてはいけない」
皆の気持ちを代弁して大佐が言う。
「このままでは、あの少女が帰ってきたときになんと言って詫びたらいいかわからんよ」 民間防衛隊長も同調する。
「ここはもう見捨てられた町じゃない。俺たちの町だ。
俺たちの大切な町は俺たちの手で守って、蘇らせる」
蝉丸が力強く力説する。
「……」
どう反応していいのかわからず、米村は無言で答えた。
第一、彼は茜たちとは面識がまるでない。思い入れのしようもないのだ。
「ならば、取るべき手段は一つ!」
前歯を剥き出しにして笑うと、青紫はピッと右の人差し指を起てた。
「正統リーフや月姫勢力があてにならないなら、私たちで政府をつくって復興するしかない!」
みんなが――今度は米村も含めて、唖然とした。
「それはつまり……」
「正統リーフは先頃、里村茜を首班とした自治政府擁立を画策したそうじゃないか。
私たちはその構想を利用させてもらう。ただし、主導権を握るのはこっちの方だという理解を、
相手に解らせる必要はあるがな」
「それはいいとして、その独自政府設立の工作は誰が?」
聞かずにはいられなくなって、米村が尋ねる。
「もちろん、リアルリアリティを極めたこの私だ!」
高らかに宣言する超参謀だったが、その場にいた全員が一斉に頭を抱えた。
そう、誰もが青紫の今までの経歴を熟知していたのだ。
彼が率いた第3RR装甲師団“デキスギ”が壊滅したのはここからさほど遠くない場所だし
(近くの岩山陣地から現地が見通せたりする)、第10RR装甲師団への潜入工作が失敗した件は、い
まだに記憶に新しい。いや、それ以外にも根本的な問題がある。
「待ってくれ。正統リーフには原田准将がいる。奴は俺たちやあんたがいる政府なんて、
絶対に認めないはずだ。高橋元帥と交渉に入ったとたんに、海兵隊が襲撃してくるぞ」
「それに、原田は御堂の身柄を握っている。下手に動いたらどうなるかわからん」
蝉丸と岩切が一斉に反論の声を上げる。
「何、原田が切り札を握っているならば、こちらも切り札を用意させてもらうまでだよ。
安心したまえ」
ちっとも安心できない! と全員が心中で突っ込む。そんな空気を全気にせず、
青紫は話を続けた。特殊部隊大佐の方に向き直る。
「それはそうと、幸いここには鍵軍も駐留している。彼らに正統リーフとの交渉の仲介を頼もうと思ってるんだが
――大佐殿、駐留鍵軍の詳しい詳細はわかるかね?」
内心の不安はとりあえず押し隠し、大佐は答えた。
「鍵軍集成師団は本領にファシスト軍の本格侵攻を受けたとかで、本日未明に本隊が撤収していきました。一応、同盟堅持の保証として同師団の倉田連隊が残っています。
まぁもっとも、今の状態を『倉田』連隊と言っていいのかどうか……」
「というと?」
「先の戦闘で連隊長が独断専行したあげく、見事にファシストに叩き潰されましたからな。
おかげで連隊は壊滅、連隊長の倉田中佐は更迭されました」
首を手刀で掻き斬る仕草をしてから、大佐が続ける。
「鍵軍が駐留部隊に倉田連隊を選んだのも、損害が大きすぎて本土防衛戦に投入できないから、
という判断もあったようですな。現在、集成師団参謀の裏葉中佐が臨時に連隊長代理を勤めています」
「仲介交渉が務まるような相手かね?」
「まぁその点は全く不安はありません」
「よし、それでは早速接触を始めようではないか。
おそらく正統リーフはシモカワグラード攻略を急いでいるはずだ。あまり時間はないぞ」
「まってくれ」
今までほとんど傍観者モードに入っていた米村中佐が、思わず口を挟んだ。
「あんた、さっき『こっちも切り札を用意する』とか言っていたが、
一体どんな切り札があるというんだ? とりあえず確認させてくれ」
「忘れたかね米村中佐。私にはまだ決定的な切り札が手つかずで残っていることを。
あぁ、黒マルチ艦隊に狩り出されていなければ、だがな」
「というと、まさか……」
青紫は一瞬だけRR親衛隊将校としての凄みのある笑みを浮かべて、その質問に答えた。
「そう、アビスボートを召喚する」
27 :
旅団長:02/05/09 22:31 ID:fRLvLjQd
>>23-26 自分もちょっと書いてみました。
「空き地の町再び」投稿完了です。
さすがに自分が関係する戦線のSSは書きづらいので、ちょっと超参謀の方を……
あ、
>>26は「3」じゃなくて「4」です。スマソ
ところで、阿鼻様艦長のキャラはどーすんの?
だれか阿鼻様プレイしたことある人っている?
ついに超政権が……RRの本願成就、なんてすばらしいんだ
アビスボート艦長(船長と呼べ?)は「どうすればいいんだ」の名言残したおっちゃんのはず。
名前忘れたけど
31 :
名無しさんだよもん:02/05/10 01:22 ID:H5twaTKD
「沈黙の艦隊」の戦術をパクって黒マルチ艦隊に戦いを挑む超先生。
正直、町をほっぽって女と逃げたやつが
なぜこんなに信頼されてるのか疑問に感じるんだが…
見捨てたと思われても仕方ないんじゃないか?
微妙な心理だろ。
素性がバラバラの、阻害されて追い出された者というだけが唯一の共通点であった連中が自分自身のために自立しようとし、その際の結束の象徴、精神的支柱として軍事顧問と茜を選んだだけと思う。
もっと言うと、自分たちの正当性のためにも「女を連れて逃げた」などということはあってはならないと、あえて誰もつっこまないとか。
何か、カルトに引っかかった連中の自己肯定みたいだが。まあ、そんな感じでいいんじゃない。
どっちにしろ、前スレにあったように
茜と顧問団はまたここに戻ってくる運命か・・・。
しかし…鍵なしでどうやってシモカワ・グラード落とすんだ?
攻めるほうは守るほうの3倍の兵力が必要ってのを聞いたことがあるんだが…
制空権も取れそうにないし…
シモカワグラード攻略は現段階では不可能でしょ。
鍵の残ってる連中は敗残、正統葉は今の戦力じゃ冒険はできない、そして何より制空権がない。
とりあえずは防衛体制整えて空き地の町に引きこもるのがよいかと。
それよりも今は鍵州都に迫る危機だよ。
下川リーフが予備含めて5個師団くらい投入してきてるのに、州都の守りは貧弱極貧急増旅団(他にもあり?)。
苦戦に次ぐ苦戦が予想される州都防衛戦が優先されると思う。
OHP師団の本体が予備に編入されたと言うことは、州都方面守備隊は捨てごまかのう。
37 :
中上の企図:02/05/11 00:59 ID:Xy8zAWAj
「参謀本部、第3部長への覚書より」
敵の可能行動は以下の通り。
E-1 正葉南部から攻撃
E-2 鍵と組んで、鍵自治州から攻撃
E-3 防御に徹する
絶対的な兵力で劣る故に、敵は攻撃を難しいと考える。
しかし、下葉の軍主力の展開位置によってはE-2を起こす可能性がある。国境線が広大なので、一気に包囲が可能になる。
つまり、鍵自治州沿いに我が軍主力を配置すれば、場合によっては攻撃もありえる。
我の行動方針。
O-1 鍵自治州を攻略後、葉鍵中央回廊から攻撃
O-2 正葉南部から攻撃
O-3 鍵自治州境界付近で防御し決戦する。
しかし、空き地の町を取られてしまうと、そこは正葉南部、葉鍵大回廊の制高点になるので、あそこで頑強に防御されると抜くことは困難である。
つまり、O-3は準備期間を与えてしまうので、難しい。
そこで、O-1かO-2になる。
もし、我がO-1、O-2をとり、頓挫すれば、敵はE-1、E-2を行うと思慮される。
勝機はあるかもしれないな・・・
うう、前スレがdat落ちした。
後半に結構重要な設定があったのに保存してないよ〜。
39 :
旅団長:02/05/11 03:33 ID:5iIHcqvH
正葉首脳部はこう考えているんではないかと思ってましたが……
1.
シモカワグラード守備兵力は第10RR装甲師団の敗残部隊(前スレ777)。
もちろん元からの防衛部隊もいるだろうが、現時点では決して「強大」とはいえない。
2.
同市は(設定にもよるが)下葉−東葉陸上連絡線を制する位置にある(と考えられる)。
東葉の引き込みを狙っている正葉としては、多少の無理を承知でも取りたい要衝。
3.
現状を放置すると、正葉−鍵陸上連絡線が空き地の町において、
直接下葉の圧力に晒されてしまう。シモカワグラード攻略の是非はおいても、
ある程度前線を南下させて同地点の安全を確保したい。
個人的には上記2の極度の重視、つまり大戦中に米豪分断を目論んで
珊瑚海・ソロモン海へと突出していった帝国海軍と同じ轍を正葉が踏んでいる、
という流れを作りたかったんですが。
>>38 とりあえず保存していたのをあぷしておきました。
http://homepage2.nifty.com/legion/support/1016258488.htm
40 :
鮫牙:02/05/11 05:50 ID:Ocv1/c6J
RR親衛隊組織図(仮案)
RR親衛隊総帥
下川直哉国家元帥
葉鍵大本営(統合参謀会議)
参謀総長
中上和英陸軍大将
|_参謀本部作戦課長
| 松岡純也中将
|_事務総監
| 山崎岳志准将
|―――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――― |
| | | |
RR親衛隊海軍参謀長 RR親衛隊陸軍参謀長 RR親衛隊空軍参謀長 RR技術研究本部長
永田和久海軍少将 中上和英陸軍大将(兼任)ねのつきゆきしろ少将 梅木太郎技術少将
|
|――――――――――――――
空軍降下猟兵師団『シモカワ・シェンムー』 |
ろみゅ少将 |
防空軍司令官代行
中尾佳祐空軍大佐
41 :
鮫牙:02/05/11 05:52 ID:Ocv1/c6J
ズレまくりズラ。おーの
それだけの要所となると、罠があってしかるべきと言う気がするなー……
防衛隊の他に、RR親衛隊も任地に着いてるし。
ば鍵っ子は突撃するとき「うぅぅぅぅぅぅぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」と雄叫びあげるんだろうか
捕虜や部隊をせかすときは「だよもん!だよもん!」というんだろうか
なんて思いつつ、それじゃ露助だよと一人つっこみ。
今際の際には「ありがとう、お母さん」とつぶやくと…。
魔女の大釜は秋子のジャム瓶とか……
「畜生、秋子さんのジャムに漬けられちまえ!」
47 :
狩人たち:02/05/12 21:28 ID:htbihNYh
はるか上空を南へと飛び行く、幾条もの飛行機雲。
地に縛り付けられた自分たちには、彼らがまるでそこを自国の空であるかのように振舞うことを止めることなどかなわない。
自らに残された、数少ないできることと言えば。
「……鬱陶しいったらありゃしないわね」
空を振り仰ぎ、舌打ちとともに忌々しげな呟きを漏らすことぐらいのものだ。
ここは葉鍵国北部、ロイハイト地方。
エロゲ国北部総督領と葉鍵国下川支配地域を結び、東に鍵自治州を睨む要地である。
第3国境警備旅団及び、第1031警察連隊。
この地方の国境を守るのは、24両のT62及びT55Mからなる一個戦車大隊を有するだけの、この二つのちっぽけな内務省管轄部隊があるだけでしかなかった。
内戦前勃発には―――552文書事件の前には、まともな部隊がこの地方を守っていた。
高橋、水無月両雄の下で。
今、彼らはこの国にいない。
亡命したか。
高橋に従い正葉の旗の下へとはせ参じたか。
或は……すでに粛清されたか。
その後には、葉と鍵共同の国境警備隊が創設されるはずだった。
現に、防空軍はすでにその方向で構築が進められていた。
だがそれも、葉鍵の内戦が始まってしまった今となってははかないことだ。
48 :
狩人たち:02/05/12 21:28 ID:htbihNYh
現実に今この国境線を守るのは、旧式装備の一個旅団と一個連隊、それと若干の生き残った防空部隊だけ。
決して長くはない国境だが……守るにはあまりに兵力が少な過ぎる。
五十キロ南方のドートンヴォリ河のラインで主防衛線を築くまでの、時間稼ぎ。
この地を守る警察部隊は、自分たちに課せられたその使命を誰に教わるともなく良く悟っていた。
「悟ってるからって、納得したわけじゃないっての……」
呪詛を漏らしたのは先ほどの女性将校。
T62K指揮戦車のキューポラから半身を乗り出し、がんっ、と拳を砲塔の天板に打ちつけた。
周囲の兵士がぎょっとしたような表情を見せる。
第1031警察連隊長代行、岡田メグミ警察中佐。
攻撃的な性格の持ち主であるこの女性将校は、あまり兵に慕われているとは言えなかった。
加えて言えば、彼女はあまり冷静で判断能力に優れた人物とは言えない。
上層への反感を口にして、怒気を隠そうともせず、兵の様子に気がつくまでに十秒ほどの間がかかった。
ようやく我に帰り、眉を顰め、頬は赤く染めて咳払いを一つ。
「あー……月厨どもはまだ捕捉できないの? 松本からの連絡はまだ?」
強引に話題を変えた。
49 :
狩人たち:02/05/12 21:29 ID:htbihNYh
月厨。
葉鍵国に潜む、忌むべき存在。
国家の敵。反逆者。
燻し、狩り出し、掃滅すべき者。
彼らが根付くのは、エロ同人国国境地域ばかりではない。
葉鍵国内の各種反体制派組織と結び付き、その病巣を各地に深く潜ませている。
このロイハイト地方もまた然り。
エロゲ国田所軍の圧力が強化されるに伴って、軍警がそれに対処すべく行動を開始したところを狙い、彼らは動いた。
―――動いて、敢え無く叩き潰された。
エロ同人国に本拠を置き、正葉と組む東方の同胞と違い、この地域にて叛乱の狼煙を上げる月厨は、その名の通りゲリラ程度の戦力を持つに過ぎない。
田所軍の陸上兵力が動かないと見るや、民間防衛隊(いわゆる自治厨だ)までをも繰り出して大規模掃討作戦を展開した政府軍の前に、彼らはあっという間に叩き潰された。
三千名が蜂起して地方都市を奪い、七百名にまで激減した彼らがほうほうの態で地に潜るまでがわずか一週間。
エロゲ国、或は鍵自治州目指して逃亡を試みる残存勢力を、警察部隊は昼となく夜となく追撃し続けている。
「はっ、現在のところまだなにも……」
「連隊長。連中、もうエロゲ国や鍵あたりに逃げちまったんじゃないですかね?」
「それならそれでいいわよ。でも、第三旅団からはなんの連絡もないじゃない」
眉を顰めて部下に応じ、岡田は「それに」と言葉を続けた。
「折角時代錯誤なモノ引っ張り出してきたんだから、使うだけ使っとかないと」
「……確かに。今時、正規軍相手にはこんなもん使えませんからね」
振り帰った岡田の視線を追うように、部下たちも彼女の乗車の向こうへと目を向けた。
その視線の先に、二両のT62火炎放射戦車が並んで駐車している。確かに、こんなものをこの時代に使えるものではない。
「まぁ、そう言うことだからさ。出先にはきりきり働いて連中を狩り出すようにせっついてあげないとね」
なるほど、と連隊の幹部たちが納得と苦笑の中間のような表情を浮かべる。
50 :
狩人たち:02/05/12 21:31 ID:htbihNYh
警察師団編成で、ただでさえ貧弱な装備が中央に吸い上げられていることもある。
倉庫の奥底眠る物資を引っ張り出さなければならないほどにこちらは弱体だが、それ以上に敵は弱体だ。
緊迫している様で、どこか茫洋とした空気。
それは戦場に流れるものではない―――むしろ、狩り場に漂うそれだ。
「さて、と。エロゲ国の連中が動き出す前に、こっちの中を綺麗にしておかなくちゃね……」
肩を竦め、目を細め、荒涼たる荒野の向こうに敵を見据えるようにして。
岡田は口許に不敵な笑みを刻んだ―――
ああ、
「糸冬」
の一文字入れ忘れますた。
岡田というと、ジェットストリームアタック……
というか、辺境の月狩り部隊と似たり寄ったりの装備しか有さない鍵の州都防衛隊って……
州都攻防はバ鍵っ子一掃を狙う戸越中将の策謀か?
巻き込まれる市民は哀れだな……
現状と照らし合わせると、エロ同人国じゃ反月姫勢力が政権を奪取して大規模な月姫追放運動を展開し、月姫連隊(おそらく月厨唯一正規の軍事組織)はますます「固有の領土」を必要とするようなにる。
エロゲ国じゃ、相変わらずの月厨迫害。
鍵においての迫害は下葉の比ではなく、また月姫勢力と同盟を結んでいたとしても関係なく続いていくだろう(人種差別的なものですな)。
下葉では、例のごとく反抗的月厨はテロリストとして即刻処刑されるだろうが、久瀬の存在や鍵のような差別感情がないおかげでそれほど扱いは酷くない(とはいえ、檻のない囚人状態で常に監視の対象)、そのうち強制移住はありそうだけど。
まともなのは正葉。とはいえ、領土譲渡がもし計画されていたら、それがばれたら……どうなるんだろね? なまじ愛国者すぎる連中多そうだし
何か、受難やね
OHP師団主力を後方にさげたところをみると、まごめちんは本気らしい。
馬場「私の将軍諸君は、戦争経済というものをまったくご存知ない」
州都目前まで迫った下川リーフ軍に、kanonシティに転進しようという麻枝の作戦案に反対意見を述べた馬場VA財閥総裁。
また、この日、鍵っ子評議会(鍵の国会に当たる)においても全会一致で州都死守が議決される。
馬場総裁:世界に冠たるVA財閥の総裁。大企業の総帥とはいえ政治的には一個人に過ぎないのだが、鍵自治州経済は実質的に彼の支配下にあり、政治家も彼の腰巾着に過ぎないために鍵は彼の国家ともいえる。また、いかに麻枝といえども逆らうことはできない。
なんて事を妄想してみたり。
58 :
旅団長:02/05/13 07:45 ID:sqG2UHvF
>>54 州都に対する下葉軍の圧力増大がある程度の時間をかけて進行したならば、
市民が疎開するだけの余裕はあると思う。けろぴーシティ失陥後なら市民も嫌がりはしないだろう。
しかし、州都内居住区に押し込められた月姫難民は……
つーか、OHP事情にわかる書き手ってどのくらい居る?
その人達に書いてもらわないと、物語が進まないと思う。
旅団長サイトに出てくるやつとうぐぅちゃんしか名前しらんし。しかも何した人なのかよく分からない。
支援サイトで補足してくれる人いないかなー……
61 :
名無しさんだよもん:02/05/14 02:13 ID:SMnCShZR
バ鍵っ子age
63 :
62:02/05/14 02:37 ID:NkYFbZa+
ちなみに、OHPにも詳しそうな強者の鍵っ子共が揃っていそう、ってことよ(w
保守派
65 :
名無しさんだよもん:02/05/14 22:24 ID:ZI3A4waP
まごめスレ
まごメンテ
メンテしますた
期待a…やっぱりsage
第1RR装甲師団“ライプスタンダルテ・シモカワ・ナオヤー”
第2RR装甲師団“ダス・リーフ”
そして、第13RR義勇装甲擲弾兵師団“ヨーク”
これが、後世「バトル・オブ・キィ(鍵本土決戦)」の異称で知られることとなる
鍵自治州都攻防戦に下川リーフ軍が投入した主力陸上戦力だった。このほかに占領地の
治安維持用にRR親衛隊3個師団が後方に待機、さらに中尾佳祐大佐が指揮する空軍機が
支援することとなっていた。さらに下川国家元帥は、作戦に遅延が生じた場合は
空軍降下猟兵師団“シモカワ・シェンムー”の投入もあり得ると明言しており、
まさに下葉の総力を挙げた作戦といってよかった。
もちろん、現状で動員可能な機動戦力の過半を投入しているからには、その目的は
たかが州都一都市の奪取のみではあり得ない。現に中上和英参謀総長が残したメモには
・早期に州都Airシティ、およびその後方のKanonシティを奪取
・この段階で鍵野戦軍に決戦を強要し撃破
・その後、葉鍵中央回廊西側出口であるものみの丘まで打通し占領
の指示が書き込まれている。つまり、鍵軍事力の中核を撃破し、同時に正葉−鍵同盟の
地理的連携を分断することによって、鍵を正葉陣営から脱落させることを目論んでいた
のである。確かに、主力の大半を投入するだけの戦略ではあった。
「閣下、観戦武官の皆様が到着しました」
太田香奈子大尉の報告に、この侵攻作戦の指揮を執る柳川裕也大将は書類から顔を上げた。
「通せ」
「はい」
しばらくして、東葉――リーフ東部方面総監部の制服を着た男女3人が指揮装甲車の
中に入ってきた。リーダーらしき、奇妙な仮面をかぶった男が敬礼する。
「東部方面総監部第9師団所属、ハクオロ大佐です。本官以下2名の観戦武官としての
同行を許可願います」
「RR装甲軍司令官、柳川裕也大将だ。話は参謀本部から聞いている。貴官らを
観戦武官として受け入れる」
第9師団“うたわれるもの”の編成を何とか完了した東葉には、ひとつの懸念材料が
あった。実戦経験の不足、言い換えれば戦訓が足りなかったのだ。
東葉は総監部創設以来、常に戦力を温存することによって国内権力闘争に一定の影響力を
及ぼし続けてきたのだが、そのために大規模な戦闘を経験してこなかった。このため、
かつてみつみ美里が率いていた空挺部隊をほとんど唯一の例外として、
ろくな実戦経験がない(これには、東葉が担当するエロゲ国南部総督領との国境が比較的
安定していたことも影響している)。
そして東葉は、先日そのツケをたっぷりと払わされた。久弥・椎原軍の侵攻に、
まともに対処することができなかったのだ。第6、第9の両主力師団が改編中で
動けなかったという事情があるにしても、迎撃部隊が国境からビッグサイト平原まで
潰走したのは、紛れもなく「惨敗」でしかなかった。結局、柳川率いる第13RR“ヨーク”
の出動を願うという、東葉の独立性に泥を塗る真似をしてようやく撃退できたという
体たらくだった。
この戦闘結果を検討した東葉首脳部は、敗戦の主要因を「実戦経験の不足」にあると断定、
これを補うために、あらゆる手段を用いてその種の経験を入手し、足元を固めるべきであると
結論づけた。ちょうど東葉の戦略方針が明確に下葉寄りへと旋回したこともあり、
当初はロイハイト地方への連隊戦闘団の派兵も検討されていたが
(これには下川との政治的取引という側面もあった)、これは下川国家元帥の一言で
潰されてしまった。そのため代替としてRR装甲軍への観戦武官の派遣案が浮上、
これは参謀本部への根回しが効いてなんとか承認された。
そして人選の方はすんなりと、第9師団歩兵連隊長のハクオロ大佐と決まった。
新設師団の実戦指揮官の中核的存在――早急に経験を会得させるべき人物だったこと、
その優れた観察眼に定評があったことが主な理由だった。またハクオロのほかに、
横蔵院蔕麿少佐(第6航空団基地業務隊長)、立川郁美少佐(東部方面総監部付)が
選抜された。蔕麿はその肥満しきった外見からは想像もつかないほどの情報収集・
分析能力の高さを、郁美は総監部付であることの自由度の高さとこれも高い分析能力を
買われてのことだった。
「下川国家元帥や中上参謀総長がどう思っているかは知らないが」
挨拶を終えた柳川は、やや皮肉気な笑みを浮かべて切り出した。
「私として貴官らを邪険に扱う気はない。ビッグサイト平原以来の縁もある。
こちらの指揮を邪魔さえしなければ、自由に活動して差し支えない。
どこを視察してもいい。ただ、作戦中の外部への通信は一部制限させてもらう」
「お心遣い、感謝します」
「それと、今から作戦会議を始める。オブザーバーとして出席したまえ」
「よろしいのですか?」
ハクオロが少し驚いた表情になる。
「何、別に東葉に隠すような話は出ないよ。それに真の機密情報は直接私の元に届く」
さらりと言いにくいことを口にすると、柳川は書類を3束取り出した。
「現時点で判明している、敵軍の州都防衛部隊の情報だ。参考にするといい」
作戦会議は、参謀総監の月島中将が取り仕切る形で進行した。
「現段階で判明している州都防衛部隊の編成は、配布した資料のとおりです」
ちなみにその資料には、次のように記されている。
自治州都Airシティ防衛部隊
臨時編成旅団“EREL”
鍵っ子義勇軍OHP師団機甲戦闘団を中核に編成。
なおこれにより、OHP師団本隊は規模を縮小の上、北部国境地帯の戦略予備兵力として
待機に入ったと思われる。
旅団長 JRレギオン少将
旅団司令部─司令部付隊
├OHP第11戦車連隊“EREL”
├OHP歩兵第3連隊“妄想” 隷下に懲罰第999大隊“バレネタ”を含む
├自治州軍集成第101連隊
├OHP工兵大隊“SS職人”
├Airシティ郷土防衛大隊
└後方支援隊
「以前の情報と異なるのは、旅団飛行隊に関してです。当初はMi24“ハインド”初期型を
中心とした攻撃ヘリ部隊がいると思われていましたが、どうやらそれは誤りで、
飛行隊自体を保有していないと判断されます。指揮官と思われたヴィットリオ・カーフ少佐も
ヘリ部隊の指揮経験はなく、司令部付隊で戦車隊を指揮しているとの工作員情報です」
「……!」
「……?」
ハクオロは怪訝な顔で、隣の蔕麿を見た。明らかに顔が強ばっている。声をかけようかと
一瞬考えた、今が会議中であることを思って月島の方に意識を戻した。事情はあとで聞けばいい。
「それでは、空からの脅威は格段に減少したと考えてよろしいか?」
“ライプスタンダルテ・シモカワ・ナオヤー”師団長が質問する。
「お見込みのとおり。鍵軍による経空脅威はAIR航空隊によるもののみと考えて
差し支えありません」
その場に安堵の空気が流れる。先の黒マルチ艦隊による攻撃でAIR航空隊が甚大な被害を
出したのは既に周知の事実である。それはつまり、一方的に空から叩かれる危険性の減少を
意味していた。
「敵の装備車両については、従前の情報のとおりですか?」
“ヨーク”隷下戦車連隊のティリア少将が尋ねる。
「昨日、Airシティ中央貨物駅に増援が到着しています。おそらくこれが最後の増援ですが、
その中に未確認の大型装甲車両が確認されています。ただ、1両だけですので基本的な
情勢に変化はありません」
ここで一旦言葉を切り、コーヒーを軽く口に含んでから、月島は書類のページをめくった。
「それと、敵指揮官がJRレギオン少将であると判明しました。
経歴は――まぁ随分と多彩です。葉鍵国独立以前はVN主義極左運動の幹部活動家として
火炎瓶闘争や爆弾闘争を主導、感萌主義の極右鍵っ子と血で血を洗う武装闘争を
展開していました。現在の旅団の部隊章『ヘルメットと火炎瓶』はおそらくこれにちなんでいます。
独立後は鍵っ子義勇軍将校となりましたが主張の過激さ故に孤立化、そのため『海外研修』
の名目で追放されています。ここで留意したいのはその追放先です」
「……ほう、『真冬戦車学校』か」
柳川がおもしろそうに呟く。
エロゲ国の一軍閥、WINTERS師団隷下の機甲戦術教導隊。指揮官の東雲真冬准将の名から
『真冬戦車学校』と呼ばれるそこは、その独特かつ実践的な教育内容から大陸でも有数の
戦車将校養成機関として知られていた。
「ええ、そこを中庸の成績で終えています。あそこのレベルを考えるなら、
結構なところまでいったといえます。
その後、鍵軍上層部が軍内の不良分子――いわゆる『バ鍵っ子』に強攻策で臨むように
なった関係で現役に復帰、OHP師団戦車隊を率いてバ鍵っ子粛清にあたってきています。
叛乱勃発に伴い、OHP師団機甲戦闘団を率いて州都防衛の任に就いており、
先日の集成旅団編成と同時に少将に昇進しています」
「戦闘経験については何か?」“ダス・リーフ”師団長。
「北部国境地帯で何度か経験しているはずなのですが、残念ながらそのあたりの情報は
入手できていません。ただ、目立った活躍ではないのは間違いないでしょう」
月島はそこで書類を閉じた。
「結論を言えば、旅団装備が貧弱ですから必要以上に警戒する必要はないでしょう。
しかし甘く見るつもりもありません。あの真冬戦車学校の卒業生ですから、
要注意人物であることは事実です。侮っていては足下をすくわれかねません。
当初の予定どおりに全力を持って叩き潰し、後顧の憂いをなくすのが上策と考えます」
月島の言葉に頷くと柳川は立ち上がり、冷徹な瞳で一同を見回した。
「諸君、RR装甲軍の目的地たるものみの丘に至るには、州都Airシティは必ず奪取しなければ
ならない。ここを取れない場合、私たちは補給線を自治州内部に伸ばすことができない。
万全の態勢で鍵野戦軍との決戦に臨むためにも、迅速に敵旅団を粉砕し州都を陥とす。
攻撃開始から60時間で州都を完全に制圧する!」
応ッ、と出席者全員が答えた。
「立川少佐、この州都攻略戦をどう見る?」
次々と出撃していくRR装甲軍各部隊を併走する高機動車(これは東葉から持ち込んでいた)
から眺めつつ、ハクオロは尋ねた。脳裏ではつい先刻までの会議を反芻している。
「……」無言。
「……立川少佐?」
「……」無言。
「……あのぉ、もしもし?」
彼の隣に座った郁美は、そのふくれっ面をプイッと反対側に向けた。
「だから、何度も言ってるじゃないですか! 『立川少佐』なんてよそよそしい
呼びかけではなくて、『郁美』とお呼びくださいと!」
「う……いや、そうは言っても、やはりけじめというものが……」
「それに、できれば、『いくみん』とお呼び……」
「それは遠慮させてもらう」
観戦武官団の団長は、書類上ではハクオロとなっている。だが実際のところ、
この見た目は幼い、高い声と大きなリボンと愛らしい少女が実質的なリーダーと
なっていた。「ハクオロ大佐は、どうやったて年下の少女に手玉に取られるからな」
とは菅宗光大将の弁である。
「まぁそれはともかく
「話をそらさないでください!」
「いや、だから……ああ…………………………郁美」
「はい!」
にっこり笑う郁美と、がっくり肩を落とすハクオロ。
「州都攻略の見通しですね」
少し考える仕草をしてから、彼女は答えた。
「もしかしたら、州都攻略は手間取るかもしれません。最終的には陥とせても、
作戦が決定的に遅延することも有り得ます」
「その理由は?」
「装甲軍司令部が、敵将を過小評価している可能性があるからです。月島参謀総監は
『甘く見るつもりはない』と発言していましたが、そう考えること自体すでに
甘く見ているとも言えます」
「しかし、敵指揮官――確かJRレギオン少将だったか、彼がそれほどまでに警戒すべき
人物だと思う根拠は?」
ハクオロの至極真っ当な問いに、郁美は笑みを消して真剣な表情でハクオロに答える。
「ハクオロさん、WINTERS師団が葉鍵国と激しく敵対しているということは知っていますか?」
「ん? ああ、確か例の千島列島問題で対立していたな」
葉鍵国北西部、ロイハイト地方の沖合からエロゲ国北部総督領のはるか沖合に連なる数十の島々、
千島列島。葉鍵国独立時にひろゆき国連総長の仲裁によりこの島々は葉鍵国の領土となり、
今は下葉が実効支配している。だがエロゲ国の一部には、今なおこれに強く反発する動きがあり、
WINTERS師団はそのなかでも最強硬派として知られていた。「千島列島全島即時奪還」
を熱烈に呼号しており、師団章も「千島奪還旗」を選択している。近年はその強硬な
領土獲得運動から月姫勢力との共闘も強化、エロゲ国としては珍しい親月姫勢力として
台頭してきていた。当然、下葉との関係は最悪に近く、「愛国者」の多い正葉でも受けはよくない。
「そのWINTERSの真冬戦車学校で、中庸の成績とはいえ葉鍵出身将校が受け入れられたんです。
ふつうなら課程修了すらできないと思います。並の――まともで良識的な葉鍵軍人に、
そんなことができますか?」
「……そう言われると、確かにそうだな」
「そ、それに、WINTERS師団との人脈的つながりも、無視できないと思うんだな」
今まで黙ってふたりのやりとりを聞いていた蔕麿が口を挟む。
「Airシティにも月姫難民はいるし、ひょっとしたらその関係で地下支援が入ってる可能性も、
あ、あると思うんだな」
話しぶりや口調はアレだが、確かに考慮すべき事項ではあった。
「なるほど……」
冷徹な、良く通る声が3人の背中に降ってきたのは、そのときだった。
「ここにいたか、ハクオロ大佐」
振り向くと、サイドカーに乗った柳川が近づいてくるところだった。あわてて高機動車を止めるハクオロ。
「どうされたのです、閣下」
「いや、なかなか興味深い情報が入ったのでな。観戦武官として、知っておいて損はないぞ」
そう言って柳川は、通信兵が走り書きしたメモをハクオロに寄越した。
「州都で暴動が発生した。詳細は不明だが、集成旅団が市民に対し発砲、死傷が多数でている模様だ」
77 :
旅団長:02/05/17 20:11 ID:uTmybAFk
>>69-76「東方の友人」、投下完了です。
さすがに自分のことを自分サイドではかけないので、下葉サイドでやってみました。
東葉観戦武官団は、ちょっと先走りすぎたかも……
多砲塔戦車でも搬入したんだろうか……?
おー、とうとう司令部付隊と懲罰大隊の戦闘か?
しかし、カーフが戦車指揮するかい。
博物館からP40でも引っ張り出してきたか、あるいは<ナルバレック>でも受け取ったかね。
旅団長!
わざわざエロゲ国を挑発して、戦闘を起こそうとしている(
>>14)東葉が
余所に部隊の幹部を派遣なんてしてて良いものですかね?
さては突囲逃走用の装甲列車と見たが、如何w
>>80 東葉部隊は実戦経験少ないということらしいからいいんでない。
後背地で戦場の報告だけ聞いてると、戦前の日本陸軍みたいにろくな事にならないしね
84 :
G-3:02/05/17 23:30 ID:BjDlfqWd
下葉作戦計画 中上プラン
1RRPzD、2RRPzDを下葉北部に配置、13RRPzGDを鍵南部の国境線に配置。
当初、13RRPzGDが攻撃を行うが、爾後、攻撃を停止、遅退に移り鍵主力を誘
致する。
爾後、主力たる1RRPzD、2RRPzDが攻撃を開始、Airシティ、Kanonシティを通過
しものみの丘まで突進し包囲を完成させる。同時に、南北から包囲網の圧縮を行
い鍵主力を殲滅する。Airシティ、Kanonシティの防衛部隊は要塞防衛部隊である
ので攻撃を行わないと思慮される。迅速に包囲し、ものみの丘を占領する事を方
針とする。
鍵作戦計画 真冬の奇跡
敵主力を、Airシティへ誘致導入する。爾後、南部の主力を以って北西へ進撃、
敵の後方連絡線を遮断し包囲殲滅する。奇跡を信じよ。
--
といった形でしょうかね。
VA財団に要請してエロゲ国領域全域から対人・対戦車・センサー地雷
かき集めてこれれば守りは非常に楽になるんだが…
侵攻ルート見えてるし。
86 :
G-3:02/05/18 00:07 ID:plxy0Nzs
>>85 でも、地雷も要塞も回避できますから。そこまで、Axisにこだわらなくても良いと思い
ますよ。ですが、逆にAxisのぶれが重大な結果を生む場合もありますが。
ObjはあくまでObjであり、AxisやMSRはあくまでAxisやMSRであるという事です。
何か、Airシティ→Kanonシティ→ものみの丘で一つの作戦という気がしてきたなー。
特に死守にこだわらないなら一度くらいはAirシティ陥落する話があってもイイかも。後で取り戻せば(それが可能なら)いいわけだし。
それともシモカワグラード強襲してしぇんむー命令でも発令させるとか
>>79 ナルバレックを検索してみたら、
埋葬機関の長しか引っかかりませんでした(w
解説キボンヌ
90 :
名無しさんだよもん:02/05/18 01:08 ID:2VlgNy4R
スターリングラードとバトルオブブリテンという二大激戦地を合わせたような戦いになるのか。
どちらの戦いも市民が大きな犠牲を受けたな。
91 :
旅団長:02/05/18 04:04 ID:+FG3mQyF
艦船搭載76ミリ砲ベースと聞いたような気がする・・・
T−80U戦車も怖くない?
88を積んだ3号戦車という感じですか?
アハト亜Hと
95 :
旅団長:02/05/19 10:43 ID:QPjooA/v
>>オトマティック対空戦車
毎分120発の、機関銃並の発射速度を誇る76mm砲。
そんな速射砲の連撃に耐えられる戦車なんて存在しません(w
難点をいえば
・車高が高い。
・外部電源車が必要。
・携行弾数が90発。速射してたらすぐ弾切れ。
イタリア戦車なだけに、たとえ車体がレオパルとでも『走りに特化した』車体なんだろーね
打ち逃げご免
装甲も薄いから対戦車戦には不利っしょ。
説明を見ていると外部電源車は要らないという風に書いてあるように思えるのだが・・・
電源を搭載したレオパルドA1の車体とか書いてあったような・・・
戦車軍団相手に奮戦するイタリア戦車大隊・・・逆に下川不利な気が・・・ 以下シュミレーション
状況、装甲師団所属T−80Uを中心とする機械化部隊が地形を利用した『OTOMATIC』戦車隊の待ち伏せ攻撃を受けた場合を想定。
鍵国州都防衛隊の攻撃は爆薬を抱えた肉弾突撃と軽対戦車兵器、そして脅威といえば基地外共の残したTOWUシステム及びAT−4、LAW−80程度の物であり
それも殆どは正規軍に渡され州都防衛軍には殆ど回ってこない代物であり、その弾薬さえ不足しているとの事だった。
重装甲と自動装填装置付125ミリ砲の前にコンクリート製のトーチカは無力であり、散弾の前に肉薄する歩兵も無意味であった。
だが、数時間後状況は一変する・・・運悪く起伏の或る森林地帯を越える事になった先遣隊の前に恐怖が襲いかかった。
それは機関銃の如き砲撃から初まり、一発の威力はそこそこなるも次々と戦車が葬り去られていくという受け入れがたい事実だった・・・
「同志!何が起こっている!」
「か・・・艦砲射撃かと思われ・・・」
「馬鹿な・・・内陸部まで入れる艦艇があるものかっ!」
焦る車長に留めを刺す出来事が起きる・・・すぐ傍を前進していたT−80Uの重厚な車体がハンマーで叩き潰されたような格好で爆発した・・
「一体何なんだ????」
「に・・・2号車が潰れました!」
さらに数分とたたない内に3号車、4号車を叩き潰され残るは中隊長車一両のみ・・・1両となったT-80Uに恐ろしいスピードで砲弾が降り注ぐ・・・
「馬鹿な・・・艦載速射砲でもなければ此処までは・・・」
間一髪で窪地に逃げ込んだ隊長車のみを残して10両以上存在した偵察中隊のT−80Uは壊滅した。
随伴していたBMPや歩兵の最後は言うまでも無い・・・
空き地の街以来の地形を利用した集中砲撃の前に悪態を付き、生き残った事を感謝する事しか中隊長には擦る事が無かった。
このとき彼等は知らなかった・・・州都防衛軍最強の戦車隊の存在を。
問題は一両しかない上に制空権喪失中と言うことやね。
しかも、物量に勝る下葉はスチールローラーしてくるだろうから10両くらいまとめてつぶされても何ともおもわんだろう、うげぇ……
他が(ば鍵っ子とか)弱すぎて敵中孤立しかねんし……
TOS-1とか9A52スメルチが100両くらいでスターリンのオルガンよろしく一斉射してきたらと思うと……
ツカ、そんな砲撃喰らったら旅団すらひとたまりもないぞなもし
100 :
旅団長:02/05/19 21:46 ID:w9Xklfrt
>>88 あれ? 昔何かで読んだ本には外部電源車がいるとかなんとかあったような……
もしかしたら、他の対空車両と混同してたのかも。
しかし思うんですが……イタリア人って何考えてこんな化け物を試作したんでしょう?(w
>>89 しかし下葉航空戦力も、中尾の変節のおかげで(虎狼の幕舎後編)100機程度の戦闘機を州都攻防戦開始時に
投入可能とはいえ、AF師団航空戦力の迎撃に多くを割かなければいけないことを考えると、
実のところAIR航空隊を圧倒するまでには至っていないのでは?
その辺に希望を託しています。
101 :
鮫牙:02/05/19 22:12 ID:vEripUIN
装甲軍には航空戦力はチョッパーしかないしねえ。
イタリア人<まあ、たった一人で敵の軍港に魚雷持って潜入して、軍艦沈めて
帰ってくるような連中だしね。
ニトロ+軍なんかは、イタリア軍のイメージだな。
シェンムー直々の説得(という名の恫喝)で引っ込んでそうな気配ばりばりなんだが<AF
あれですか、ニトロ+軍は昼食後2時間の銃講座を毎日開いてて、珍しい銃を見ると撃たずにいられず、銃を撃つことを至上の快楽としてたりするんで(w
103 :
掃討戦:02/05/20 22:14 ID:Gn/TE3Lk
乾いた銃声。
対戦車ロケット弾の怪音。
空に燦然と輝くのは、青白い照明弾の放つ閃光。
闇を切り裂く数多の小さな白い光源は、白熱した銃弾だ。
そして地上を真っ赤に染め上げるのは、家屋、車輛、家畜……そして人が燃え盛る炎。
青、白、赤。
三つの不吉な光が、この辺境の集落を覆い尽くしている
最大の激戦地。
村落の中央、泉の涌く広場。
撃破されかく座した、一両のBTR60。
その陰に隠れるように、別のBTR60が停車していた。形式はVVS。指揮通信車輛である。
そのBTR60VVSのさらに陰、ひょこひょこと覗いては引っ込む頭が一つ。
「反撃、急に強くなったね〜」
周囲で爆ぜる銃弾を気にした風もなく、大隊長である松本リカ警察少佐は間延びした口調で言った。
「強くなったというか、数が多くなったといいますか」
敵の火点に向けて射撃を加えつつ、部下の中隊長の一人が応じる。
「どうせまた、今までみたいにすぐ逃げちまうんでしょうがね」
「逃亡部隊の主力に追いついたのかな?」
「さぁ……連中に罠を仕掛ける余力があるとも思えませんから、それじゃないでしょうかね?」
「うーん……」
考えこむ仕草を見せる松本少佐。
仕草だけ、である。
どうせ細細考えるのは部下に任せっぱなしだし、そもそも深く考えてもあまり高等な事は理解できない人物なのだ、この女性士官は。
104 :
掃討戦:02/05/20 22:14 ID:Gn/TE3Lk
ただ、人の話は良く聞く。正論ならばあっさり納得して、それに則って行動する。
だから、底抜けに能天気な性格とあいまって、部下の受けは悪くない。
もっとも、指揮官に必要な決断力(と判断力)に欠けているのは紛れもない事実。
罠か、それとも本当の敗走なのか。
本日五度目の接敵も、判断付きかねるうちに徐々に銃火は弱まって行く。
やはり敵を取り逃がしたこれまでと同じように。
戦死一名、負傷者18名。
確認殺害戦果、七名。
それだけの死者と負傷者とがこの戦いの全て。
それ以上もそれ以下もなかった。
そして、掃討戦はさらにしばらく続くのである。
105 :
掃討戦:02/05/20 22:15 ID:Gn/TE3Lk
「……おかしい」
松本の大隊から南方、二十キロほどにある連隊本部。
地図を睨み、獰猛な唸りを発するのはコートに身を包んだ岡田警察少佐だ。
睨む先、ライトに照らし出された地図上には無数の矢印。
この一日で、各個に掃討作戦を展開する連隊隷下の各部隊が、『ゲリラの残敵』と遭遇したポイントを指し示す矢印。
無数の、矢印。
昨日までは一本もなかったはずのそれが岡田をいら立たせる。
「多過ぎる……残敵は七百ちょっと、のはずでしょ?」
「その情報が誤っていたのかも……」
「確認した死体の数が八百。捕虜が二千。敵が五千もいたら今ごろまだ攻防戦の最中だろうし、逃走した敵兵が二千もいればもっと早くぶつかってるわよ」
忌まわしげに吐き捨てて、岡田は足もとの雪塊を蹴散らした。
この雪。この残雪。
敵の動きを教えてくれるようでそうではない。
月厨は道の上を歩かない。車輛を持たないから、路上を歩く必要がない。
土地勘を頼りに道なき道を歩む。道なき道を歩み、こちらの裏を掻いて逃げつづける。
松本の大隊を覗き、トラックが主力の輸送車両であるこちらは道路の近辺からなかなか離れられない。
路上に足跡、轍が残る。こちらの位置を、月厨どもに指し示す。
明らかに、敵はこちらの動きを掴んでいる。戦力も把握されているだろう。
それに比べて、こちらは敵の残存戦力を把握することすらままならない。
惑わされ、翻弄され…………引きこまれている?
106 :
掃討戦:02/05/20 22:16 ID:Gn/TE3Lk
「……馬鹿馬鹿しい。引きこんで、何ができるっての」
もし、叛徒とつるむ東方の月厨どものように、十分な兵力が敵にあるのなら。
今ごろ壊滅しているのはこちらの方だ。
しかし現実に、先に市街戦で敵は半数を超える兵を失い、西、つまりは鍵ではなく頼るべき者もない北へと壊走した。
それこそが、敵の完全に統制を喪った実態を示している。何も心配する事はない……
自分にそう言い聞かせ、岡田は眼光鋭く部下たちを見渡した
「各大隊に伝達。北方の第五国境旅団と連動し、今週中に月厨どもを撃滅する。
敵を狩り立てつつ、フェーネル山方面へと追い込んで行け」
【糸冬】
ちなみにフェーネル山は例によってフィルスネタです。
107 :
鮫牙:02/05/21 23:31 ID:/7DtFUBr
書きたい事はあるのに時間が〜
k
おとさせはしないっ!
同刻、東部方面総監部にて
「あ、彩じゃない。どしたの〜 こんなトコで」
「あ… 大庭中佐… ごきげんよう…」
「な〜にかたっ苦しいコト言ってんのよ。あいかわらずね、彩は」
旧知の2人は大庭詠美中佐と長谷部彩中佐。詠美は味方からも「緑の悪魔」
と畏れられる天才戦術家であったが、士官学校で同期だった長谷部中佐の前
ではついつい地がでてしまい、まるで普通の女の子にしか見えない。
「…それで編成が完了して… 連隊長、忙しそうだったから、私が報告に…」
「そんなことでわざわざ総監部まで来たの? リチギ、というかヒマねぇ。
そんなのてきとーに通信入れて、パパッーと済ませちゃえばいいのに」
「それじゃダメです… ところで大庭さんはどうして此処に?」
「あたし? あさひのトコからもらった戦車じゃぜんっぜん足りないから、
もっと新しいヤツ増やしてって司令部にお願いしたんだけど、そしたら自分
で総監部に説明してこいって言われたから、しょーがなく来てやったのよ」
「そう… それで上手くいった?」
「ダメダメ。ぜんっぜんお話にならないわよ… もぉ、ちょおムカツク〜」
「おーおー 相変わらず詠美ちゃん様はなーんも分かっとらんねー
てっきり改心したと思うてたけど、見込み違いやったわ」
「うっ、うるさいわね! この田舎パンダ! 何しに来たのよ!」
振り向くやいなや、詠美は後ろの声の主に毒づいた。
「あ…、猪名川さん…」
「なんや〜、久しぶりにおうたのに、つれないなー、詠美ちゃん様は(w」
「な、な、何よ!」
詠美とこの猪名川由宇中佐、顔をあわせればいつもこの調子である。しかし、
それは、お互いに認め合う良きライバル同士の挨拶のようなものであった…
「ところで、シェンムーのやつ、とうとうマジに鍵討伐始めよったな」
「司令官が柳川ってヤツだったよね? あの何考えてるか全然分かんない
いやらしい目つきをした… あたしアイツ大っ嫌い。態度ちょおデカイし」
「ま、確かにいけすかん奴やけどな」
「そーよ! この前だって、あたし達の目の前でやりたい放題だったしさ。
大体、何で負けたフリまでしてあんなヤツの手を借りなきゃいけないのよ!
あたしに任せてくれたら、あんな連中コテンパンにしてやったのに〜!」
「あのな、詠美、よう聞き」
憤懣やるせない詠美を遮るように、由宇が口を開いた。
「分かってるわよ!新しい師団の編成中だったからでしょ。今は少しでも
味方の損害を押さえたいって、耳にタコができるほど聞いたわよ!」
実際、久弥・椎原の侵入の際はロクに戦闘もせずに退却したので、損害は
極めて軽微なものだった。また航空戦力に至っては損害は皆無だった。
何せ、敵機の領空通過を、ただ見送っていただけだったのだから。
そして、それが詠美には何より我慢できなかった。
「それは確かに理由の一つや。でもって、それに納得いかんちゅうあんたの
気持ちはよう分かる。せやけどな、これも今後のための布石なんや」
「フセキ?」
「おっと、詠美ちゃん様には難しすぎたかもな〜、堪忍や」
「バ、バ、バカにするんじゃないわよ! そ、そのくらい…」
「悪い悪い、無理せんでええで」
「う〜っ」
「話元に戻すで。ま、要するに今後ウチらが有利にコトを進められるように、
あらかじめ仕込みをしといたってことや」
「かつての第4師団・トゥハート師団が、例のゴタゴタでバラバラになって
以来、単独の部隊としてみればウチらがまぎれもなく最強や。それはええな」
「あたしたちはアイツらにだって負けてなかったわよ!」
「ま、客観的に見ての話や」
第2師団から第5海兵師団までの各部隊は、正統リーフの樹立に至るまでの
一連のゴタゴタで散り散りになり、これらの部隊、つまり東葉以外のリーフ
国防軍(陸軍等)は、事実上消滅していた。なお、下川直轄のRR部隊とは、
これら旧国防軍の残存部隊をかき集めて再編成したものである。
このため、第6師団と第6航空団、要するに東部方面軍は現在の下葉におい
て有力な位置を占めていた。また、独立戦争時には、主にエロゲ国の新大陸
南方総督領の各軍閥、とりわけ盟主であるエフアンドシー軍閥と戦闘を重ね、
その領土の一部を奪取するなどの戦果を挙げてもいた。さらに東部方面軍は、
多方面展開を可能とするべく拡充が図られてきた部隊であり、その意味でも
トゥハート師団と並んでリーフ側の双璧であった。さらに、東部方面軍支配
地域では同人ゲリラやテロリストの活動が盛んであり、彼らはその鎮圧行動
で休む間もなかった…
しかし、司令官以下、元々エロゲ国からの亡命者が中心であった東部方面軍
は、その戦歴にもかかわらず、冷遇といってもよい扱いを受けていた。彼ら
の戦果も、高橋上級大将主導の体制では正当な評価を受けることもなかった。
それどころか、彼らが出した損害を過剰に取り沙汰されて、誇り高き葉鍵国
には相応しくない無能な軍隊との烙印さえ押されていた。にもかかわらず、
東部方面軍がある程度の自治を認められていたのは、ひとえに下川国家元帥
の拡大主義的な戦略の「駒」としての価値を認められていたからであった。
「だから、私達は自分を小さく見せる必要がある… ということですか?」
久しぶりに彩の声が響いた。とてもか細い声ではあったが。
「そや、さすがやな。よう分かっとる。
エロゲ国の軍閥程度なら、ウチらで十分や。まぁ、千代田連合に一気に侵攻
されたら、ちとキツイかもしれへんけどな」
「それじゃ、チャッチャとやっつけちゃえばいいじゃない!」
「アホか… あのなぁ、彩はんがゆうたろ? ちっとは頭使いや」
詠美は戦術面においては天才的なセンスを持っていたが、いざ戦略的な話に
なるとからきしダメであった。
「あの… だから私達が強いと思われれば、それだけ他の方々の警戒を招く
ことになるんです…」
「ホンマ、彩はんは物わかりがええなあ。誰かさんとは大違いや。そうや、
警戒されればされるほど、潜在的なウチらの敵が増えるんや。シェンムーの
奴だっていつ攻めて来よるかわからんしな。用心に越したことはあらへん。
エロゲ国との関係においてもや。例えばな… 詠美、もしあんたがあの国の
人間で、ウチら攻めよと思うとるけど、あんたらだけじゃとても勝てへんと
見込んどったら、どないする?」
「だったらみんなで攻めればいいだけじゃん。戦争は数、数がすべてよ!」
「そや、それや。で、徒党を組まれたら流石にキツイからなあ」
「だから、私達は取るに足らない勢力を演じる… そういうわけですね…」
「そうそう。話早くて助かるわ。詠美ちゃん様もちゃーんと見習えや」
「よけーなお世話よ! キーッ!」
「それにしても、猪名川さん、流石です…」
「ん? そらウチらは三宅のボスが最初に編成した部隊やから、お偉方とも
付き合い長うてな。だから何となく分かるんや。大したことあらへんで」
「それにしても、そうならそうとあたしたちにも言ってくれればいいのに。
だいたいこんなやり方セコいわよ!」
「あのな、詠美。欺瞞情報流すのは戦争の基本やで。兵隊動かすのがいくら
上手くてもそれだけじゃ勝てへんのや。それに『敵を騙すにはまず味方から』
というやろ。我慢しいや。そのうち嫌でもドンパチやらされるようになるわ」
「何よそれ。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ!」
「あ、あのぅ… それじゃ、立川さん達が派遣されたというのも…」
また喧嘩になりそうだったのを、彩が機転を効かせて話を逸らした。
「もちろんそうや。幸いかどうかは分からへんが、ウチらダメ軍団と見下さ
れとるせいか、何の警戒もなしに入れてもろてるわ。ハクオロのあんちゃん
はホンマに実戦見せたれってとこやろが、いくみんやヨコは完全にスパイや。
間違いない。でもって、油断させつつ諜報活動、一石二鳥や」
「そうですか… でも、やはり悲しいことですね…」
「しゃあないよ、シェンムーはいつか絶対攻めてくる。あやつの行動みたら
火を見るより明らかや。お偉方もそう思っとるから、こんな真似しよっては
るんや」
その時、総監部の外で何かが爆発したような音が響いた。
「?! ちょっと何なのよ!」
「一体何事や!」
3人はロックブーケ市内を見渡せるバルコニーへと足を速めた。
ロックブーケ、東部方面総監部が置かれているこの都市は、葉鍵国南東部に
位置する重要拠点であり、独立戦争時において鷲見達の部隊がエロゲ国から
奪取したものである。
一年を通じて温暖な気候と太陽と海の恵みの祝福を受けるこの都市は、人々
から「陽光の街」と称えられていた。また、ロックブーケは同人国やアニメ
国をはじめとする各国と貿易を行っていることもあり、商業をはじめとする
各種産業も盛んで活気に満ち溢れていた。特に中心部の市場は万国貿易市場
と呼ばれ、年2回開かれる世界各地の産品が集まる祭典には、各国から多く
の商人や観光客が集まり、歩くことさえ苦労するほどの盛況ぶりであった。
「どきなさい!」
爆破により瓦礫の山となった現場は、既に警察によって封鎖されていたが、
それをかき分けるようにして、その一団は現れた。
「何だ! ここは立入禁止だぞ」
「お黙りなさい。私は総監部警務隊の澤田といいます。道を空けなさい!」
「ハッ、失礼いたしました、澤田大佐」
「挨拶は結構。状況は?」
「あちらのビルに仕掛けられた時限爆弾が爆発しました。これによる死者は
7人、負傷者は90人を超えると思われます。なお、現場付近路上で逃走中
の犯人を発見しました。爆弾を所持しておりましたので間違いありません。
その男は現在こちらで身柄を拘束しています」
「分かったわ。連れてきなさい」
「諒解しました」
「単刀直入に言うわ。他の仲間は?」
「…」
「聞こえなかったのかしら? あなたに選択肢はないのよ」
銃口が一斉にその男に向けられた。
「薄汚いお前らに話すことなどないな。で、オマエが指揮官か?メス豚」
容疑者の男は嘲笑まじりの笑顔のまま毒づいた。瞳に異様な光を輝かせて。
「まずい! 全員待避! 早く!」
「な、何です?」
「いいから! 早く隠れて!」
「神聖なるリーフを汚す貴様らは我が国から出て行け! 正統リーフ万歳!!」
男は叫び、そして思い切り奥歯を噛んだ…
辺りは閃光に包まれ、そして轟音と煙の混沌が押し寄せる
その光景は総監部からもハッキリと見えていた。
「ひゃっ!? また爆発?」
「テロやな… 毎度毎度ええ加減にせいや!」
「あそこは繁華街… 何てことを…」
詠美、由宇、彩の3人は、ゆらゆらとした白煙をただ見つめていた…
「ッ、ゴホッ あなた達、大丈夫?」
真紀子が呼びかける。
「ハッ! 全員の無事を確認しました。ただし、警察に死傷者が…」
「そう… こうなってはどうしようもないわ」
「それにしても… また原理主義者ですか。もう我慢なりませんよ、隊長」
「ええ… とにかく、他にも仲間がいる可能性があるわ。周囲を徹底的に捜
索しなさい。急いで!」
「諒解しました。敵を見つけ、必ず殺してやりますよ!」
「さよか… うん、ご苦労さん。そのまま情報集めといてや。ほなな」
「とにかくウチらはこの街を、いやウチらについてきてくれとる街とそこに
住んどる人達を守らなあかん…」
由宇は2人にも状況を一通り説明し、そしてつぶやいた。震えた声で。
「詠美、回りは敵だらけや。だからな、セコくたって何だってええやんか。
なりふり構っておられへん。力を蓄えるんや。安心せい、最後には皆殺しに
したる。だからあんたも我が儘言わずに耐えるんや。ええな!」
鬼気迫る由宇に気圧されて、詠美は借りてきた猫のようだった。
「わ、わかったわよ」
「まあええ。だが覚えとれ。借りは必ず返したる。首を洗って待っとれや!」
ロックブーケの空には由宇の怒声が響いていた…
とりあえず『「陽光の街」にて』、貼り付け完了です。
ちなみに、名前の由来はベタベタなので省略させていただきます(w
あと、東部方面軍拠点都市ロックブーケというのは、とあるRPGの
ボスキャラの名前で、池袋を反対に読んだ「ロクブケイ」をいじった
ものと言われています。
個人的には大志が出てこないかなーとか思ったり。
あいつなら石原完爾閣下のなしえなかった世界最終戦争を成し遂げてくれるはず。
まずはエロ同人国事変ですか
122 :
名無しさんだよもん:02/05/23 01:53 ID:R3h7X7io
大志=カーチス・ルメイとかは?
基地害系の軍人が似合いそうだ。
むしろお花畑にいそうな感じ
124 :
旅団長:02/05/23 21:03 ID:pwo6MINa
>>113 >東部方面軍支配地域では同人ゲリラやテロリストの活動が盛んであり、
これは、月姫ゲリラは含めて? それとも除いて?
東葉の対月姫スタンスって、結構重要な戦略要素だと思うんで。
>>123 こんな感じ?
あさひを広告塔として大隊長にした事と、言論弾圧でコミぱが開けない事を理由に抗議して葉鍵国を脱出・・・(違)
多数のデブオタ、ガリオタとともに亡命。 亡命先でガリオタを徹底的に訓練、デブオタを減量によりガリオタにしてから訓練する事で驚異的な戦闘集団に変貌。
目的はただ一つ、あさひを軍隊の重圧から解き放つ事。 そのためには手段を選ばない・・・
>>126 正解。
>>98辺りでバレていると思った。 ネタがあったんでついやってしまった。
基地外を書くクソッタレは俺だけだから直わかるか(汗)
あさひの扱いが茜とまったく同じだ。
>>124 月姫ゲリラはおそらく北が活動拠点だろうから、南の東葉までわざわざ
自爆テロをやりには来ないんじゃないかな。
>>117のとおり、テロリストは
主に正葉(高橋・水無月)の支持者を念頭に置いています。
ただし、正葉と月姫は、元々同じ民族で、しかも正葉には月姫が肩入れ
しているという設定があるわけだから、東葉の対月姫スタンスは敵視か、
それに近いものではないかと。少なくとも良いはずはないと思います。
ちなみに蛇足ですが、由宇達の台詞や真紀子の部下の台詞は、頻発
するテロにより一般的なレベルにも正葉への敵愾心が広まっているこ
とを表しているつもりです。
>>125 大志の性格からいえば、彼が自分の主義主張であさひに干渉すること
はまずないと思います。まぁ頑張るあさひを応援するだけでしょうね。
不思議なことに、青紫派も正統葉と起源は同じだったりする。
民族同じでも宗派が違うんだろうな……
RR親衛隊はVN革命以降に葉鍵臣民となってるから、間違いなく民族が違うんだろうけど。
しかしどうなんだろ、高橋原理主義者にとっては、月姫は敵の敵は味方理論で同盟結んでるだけで、そこには同情も共感もないという感じだろうし。
むしろ潜在敵として信用はしてないんじゃなかろうか。
鍵は、イデオロギーとしては明らかに反月姫だし(人道的モラルは別としても)
131 :
旅団長:02/05/24 12:23 ID:BNRpngI5
>>129 東葉が直接月姫勢力と対峙していないのなら、結構選択肢が広がるのではと。
例えば、エロゲ国南方総督領に侵攻し、占領地に月姫民族による傀儡国家を樹立するという
「河豚計画」のような謀略をブチ上げることも可能でしょう。
仮に実現しなくても、「固有の領土」を渇望する月姫側の動揺と正葉側の疑心を狙え、
正葉−月姫同盟の結束の乱れをも誘えるかと。その際は「鍵自治州での月姫難民迫害」もカードとして有効です。
要は、直接的被害を受けていないのなら、感情的にはともかくとして政略的に、
月姫勢力を自陣営に引き込む選択肢を入手できるということです。
ちゃん様がアルクの一つも書いてればなー
現実世界ではTYPEMOONのきのこ氏と千代田連合の一角ニトロプラスの虚淵氏に
繋がりができてたりなんだと面白いんだが誰かそこらへんフォローせんのかね。
千代田連が、そもそも名前しか出てこないからねー。
エロ同人情勢は複雑怪奇なり
>>133 ……ネタの先回りされた(涙
なりきり板の吸血大殲スレなんかのネタも絡めたいなとかおもっとったんだが。
しゃーない、書きなおし〜
>>132 アルクは知らんが秋葉と翡翠なら藤原竜の同人誌で描いとったのう。
>>130 いや、意外と月姫はVNと言う一点でのみ見れば
以降の葉鍵作品よりも高橋・水無月的ではあるが。
もっとも、その辺の考え方とかはハッキリして無いから
どうとでもなるんだろうけど。
VN主義で行くと、本家と元祖争いしそうだよ。
だが、原理主義者ならVN以降のLeafよりもTYPE-MOONの方
がより近いと考えるんじゃないかな。よって手を結んでいると。
高橋原理主義者にとって、VNは常に高橋とともりあり。だからなー……
近いけど違う。そこが後の禍根になりそうな予感ではある。
原理主義者にとっては、TYPE-MOONもVNの精神に則ってはいるが、所詮は高橋の二番煎じ……と侮蔑してそうなところがありそう。
ま、そういう連中だから原理主義者なんだろうけど。
Airシティ、月姫難民居住区の近くにある、薄汚れたスラム街にFOXという名の
酒場がある。
酒場の中では、屈強なアウトロー達が安酒を片手に談笑したり、ビリヤードに興じた
りしている。酒場のマスターはそんな客を無視して、電話に夢中になっている。
「JRレギオン少将、荷は無事に届いたか?」
「ああ、流石だな。それからもう一つ頼まれてくれないか?」
「あんたの旅団と共闘しろだろ。あんたには借りがある。言われなくても協力してや
るさ」
「すまない」
「あやまる事はないさ。あとで報酬は馬場総裁に請求する」
男は電話を切ると、酒場の2階へと上がっていった。客達は急に静かになり、その光景
を見守っている。
酒場の2階の部屋のドアを開ける。其処にはオレンジ色の髪をした、ツインテールの
一人の少女が立っている。少し生意気そうな顔に不安な表情を浮かべてる。
「仕事が出来たしばらく家を空ける。昔世話になったやつが困っているんだ」
少し、間を置いて男は言葉を続ける。「真琴、すまない」
沢渡真琴は男の言葉に少しうつむいて答えた。
「うん…我慢する」
傭兵集団"妖孤"
葉鍵国のどの権力にも所属しない部隊としては兵力、練度、武装、財力全てにおい
て最大規模である。独立戦争、ケイハン戦線でその名を広く知られることになる。
男の名は狗法使い。この葉鍵国最強の傭兵集団"妖孤"の実質的リーダである。
かつてマコピストの教祖という顔も持ってたが、それももはや過去の話である。
「あの頃の俺は浮かれ熱病に犯されていたな」彼は教祖時代の自分を語る時自嘲気味
にそう語る。彼は自分の愚かさを認識していた。そして大切なモノを失いかけた時、
初めて自分の愚かさに気がついた。そして、自分の帰るべき場所に戻ってきた。
「愛してるよ。真琴」狗法使いは愛するモノの細い体を抱きしめそう呟いた。
俺は何故戦う?葉鍵国の為か?鍵自治州の為か?麻枝元帥の為か?
――――――違う。
俺が戦うのは沢渡真琴の為。
俺は彼女の為なら全てを敵に回して構わない。
「真琴、髪留めを貸してくれないか?」
「え?」
「戦場でもお前の事、考えていたいからな」
「う、うん」
真琴は狗法使いの言葉に慌てて、ツインテールのリボンを外す。
それを狗法使いは無造作に自分の服のポケットの中に入れると、真琴の顔を引き寄
せ、唇を重ねる。「さよならは少しの間だけだ」
そして、狗法使いは真琴を部屋に残して出ていった。戦場へと。
傭兵は正規軍と違って動きにくく、重いボディアーマは着用はしない。軽装で動き
やすいベストを好む。狗法使いはベストにポケットに予備マガジンを詰め込み、愛銃
のSIGSG550を取り出した。足のベルトにはSIGP220が収まっている。
2階から降りてきた狗法使いは、酒場の客に告げる。
「俺達の今度のお客さんは、RR装甲軍だ。パーティの会場はAirシティ。パー
ティはJRレギオン少将との合同主催だ。せいぜい盛大にもてなしてやろうぜ」
リーダの言葉に酒場に集まったアウトロー達が男女問わず歓声を上げる。
酒場の地下には満載されている、パーティ道具が酒場の机、カウンター、ビリヤード
台に積み上げられる。
さて、パティーの始まりだ。敵さん達、お前等に愛の力の偉大さを教えてやる
144 :
鮫牙:02/05/26 21:36 ID:0vWoAe+1
真琴はグレーゾーンとのことでしたので、こういう形にしてみました。
という訳で旅団長、伝説の男狗法使いが援軍にやってきます。
>>129 さうですか・・・そうすると逆に真面目にあさひ大隊の副官を務めていそうですね。
「おかしい……」
耳障りな電子音。前線や出先の本部と交信するオペレーターの声。
アクアプラスシティ、内務省ビル。
その地下に、内務省が管轄する軍事力の中枢、中央作戦管制センター。
内務尚書を兼ねる久瀬警察中将は、数百キロ離れた辺境で戦闘中の部下と同じ呟きを漏らした。
「……第三国境警備旅団からの報告は? 引っかかるようなものはないのか?」
これも、部下と同じ問い。
敗走し北上する敵の残党。
にも関わらず、増大する抵抗。
引きつけられ、国境線に吸い寄せられる味方の残存兵力。
あまりに危うい一連の動き。
今ここでエロゲ国から二本の腕が伸び、残党を追って国境沿いを走りまわる一個旅団と一個連隊を抱きかかえたら……国境の守りは消失する。
問いを受け、報告書の束を抱えた吉井ユカリ少佐は難しい表情をした。
「国境の外側での動きでしたら、特には。
大規模な物資集積、部隊移動、交信量の増大ともに空襲と同時にはじまっていますから……」
加えて言えば、制空権を喪失した今となっては恒例だった越境偵察もままならない。
引っかかるような情報がないと言うより、情報を集める耳がないというべきだろう。
「全てが統一された一連の動きと見る必要もあるな。裏を固めるためにも、首魁を早く捕捉する必要がある」
盗聴と買収と暴力とでこの世の謎の全てを解き明かす、と悪名高い秘密警察も、証拠となる人物や資料を入手できなくては捜査のきっかけが生まれない。
憮然とした表情を浮べ、久瀬中将は中指で眼鏡のズレを押上げた。
時あたかもRR装甲軍が、鍵自治州へと攻勢発起を準備中。そのため陸軍主力は中部から南部に掛けて展開している。
ロイハイト地方ボスニア港を拠点とする艦隊もそうだ。主力は鍵自治州沖に出撃し、残っているのはクリヴァクV級三隻を中核とする、わずかな国境警備隊の艦艇のみ。
今、葉鍵国北部国境は建国以来最も無防備な姿を晒していた。
その国境を支えるのは、内務省の戦闘部隊のみ。
天井に掛かる祖国の大地図を見上げて、久瀬は決然とした声で命じる。
「月厨に、AFか。連中ごときに、蟲潰しの邪魔をさせる訳にはいかない。
ラントール地方から警察連隊を一個引きぬいてロイハイトに回せ。急がせるんだ」
―――久瀬の決断は迅速だった。
だがそれは同時にあまりにも遅過ぎた決断でもあった―――
朝もやの中。
松本リカ少佐は昨晩最後の戦場となった国境の街を歩いていた。
短時間だが、激しい銃撃戦が交わされたその街。
最初警察部隊が侵入した時には誰もおらず、何時の間にかゲリラが湧き、戦闘が終る頃にはまた警察以外は誰もいなくなった、その街。
街の東郊に流れる一本の川。
エロゲ国北部総督領に発し、流域を潤すのに十分な推量を湛えたまま南へ流れ、やがてドートンヴォリ河に合流する流れだ。
普段は船が行き交うだろう河。その川面を霞が覆い隠す幻想的な光景を見つめ、彼女は嬉しげに目を細めた。
次の瞬間、悄然とする。
「……綺麗だけど、あまり楽しくないなぁ」
人っ子一人いないゴーストタウン。
そうでない土地では、月姫系住民の憎悪の視線が注がれる。
子供からの投石に、敵からの攻撃と即断して反撃を命じた事もある。
戦争は、もともと楽しいものではない。
だがこれでは―――なおさらだ。
安易な正義感に逃れる事もできない。松本はもともと正義感云々にはそれほど興味がない人間ではあったが、それでもまだ人間らしい部分を残した警察将校でもあった。
親友の岡田のようには、どうしてもなれない。
「あれ?」
そんな鬱々と楽しまざる、朝の散歩の最中。
上流に、はじめて船の姿を見た。
二つ、三つ。まだ増える。四つ、五つ、六つ…………
「あれ? 船……違うなぁ。なんだろ……」
船の進みは遅々として遅い。
遅いだけでなく……姿もおかしい……?
「PT76……第三旅団かな?」
旧ソ連の開発した、水陸両用戦車。
76mm砲装備のその戦車は、葉鍵国では内務省警察部隊が主に運用していた。
となれば、この区域では第三国境警備旅団……のはず、なのだが。
「違うなぁ……形がちょっと違う……」
砲塔が大きい。
主砲も若干大きい。
その形状にも心当たりがある。というよりも、エロゲ国との国境線を守るにあたり、彼女が徹底的に叩きこまれてきたものだ。
「あれは……63式戦車?」
PT76の中国版。85ミリ砲を搭載した水陸両用戦車。
それが北から向かってくる意味に、そしてそれらが月姫の記章を掲げている事に松本が気付くだけの暇もなく。
水上の63式水陸両用戦車、WZ551六輪兵員輸送車の車列。
それらの車載火器が一斉に火を吹いた―――
糸冬
以上、投稿しますた。
ラントールはまたまた例に拠ってフィルスネタでふ。
狗法使い立つ!
下葉の侵攻がもはや時間の問題となったこの時、伝説の漢が再び銃を取り戦いに赴く。
この知らせは、静かに、しかし野火のように鍵自治領を駆けめぐった。
そして、州都Airシティに獰猛な鍵っ子達が集まりはじめた。
集成旅団に対しては静観を決め込んでいた彼らも、狗法使いが出てくるとなれば話
は別であった。ある者は狗法使いと共に戦うため、ある者は鍵の名誉を守るため、
そしてある者は身を立てるため…
様々な思惑が交錯する中、狗法使いの名の下に鍵っ子達が集結しつつあった…
「やめて下さい!お願いです!娘を返して!」
「お母さん!助けてお母さん!」
「うるせぇ!俺達はこの街を守ってやるために来てやったんだ!
そんな俺達の疲れを癒すために使ってやろうってんだから、ありがたく思えよ」
月姫難民居住区・通称月姫ゲットー付近では、前にもまして目にするようになった
光景だ。しかし、今日のそれはとりわけタチが悪かった。金品の略奪どころか誘拐
である。月姫難民達の我慢ももはや限界だった。
「いい加減にしやがれ!お前らここから出て行け!」
「そうだ!俺達がいつまでも黙ってると思うのは大間違いだ!」
義勇兵達はいつの間にかゲットーの住民に囲まれていた。
「うぅ、お前ら、月厨の分際で俺達に逆らうのか!」
「うるさい!さっさとその娘を離せ!」
パァァンーッ
次の瞬間、怒声をあげた男は、そのまま何も言わない肉塊になっていた。
「うるさいね。ここの豚どもは」
銃をぶっ放したその男は、殺した相手のことなど目もくれないかのように続けた。
「君たち、こんな豚共相手に何やってんの? さっさと殺っちまえばいいじゃん。
アヒャハハ。こうやるんだよ」
パァァン、パァァン
また2人倒れた。月姫難民達はもう抵抗する気さえ失せていた。
「あ、dbdb様だ!」
Airシティ住民達が集まってきた。彼らの英雄を一目見ようと。
dbdbと呼ばれるこの男、通称でぶでぶ、頻繁に名を変えるのでこのように呼ばれる
この男は、鍵っ子系過激派では名を知られ、狗法使いのもと集まってきた義勇軍の
なかでは最もタチの悪い男であった。
「鍵を貶す奴らに死を」これが山にこもり「煉獄」を名乗って活動を続けた彼らの
モットーである。鍵のために死を賭して戦う梁山泊を気取っていた彼らだったが、
実際は、付近を通りがかる者を獲物に金品を巻き上げるただの野盗集団であった。
「やぁ、市民のみなさん。集まってくれてうれしいよ。君たちはよく分かってる」
ワァァ! でぶでぶの呼びかけに群衆がどよめく。
「だけどね。ここの豚共は、僕たちが協力を求めたら、くってかかって来たんだよ」
そして月姫難民達を指さした。
「この一大事に駆けつけた僕たちに協力しないなんて。酷い奴らだと思わないかい?」
「そうだ!この月厨どもが!」
「お前らはAirシティから出て行け!」
市民達のボルテージは、彼らの「英雄」に煽られて爆発寸前だった。
誰かが石を投げはじめた。それは瞬く間に石の雨に変わる。
「月厨は死ね。この国から出て行け!」
ゲットーの中では難民達が声を潜めて嵐が過ぎるのを待っていた。
彼らの家は投石で窓が割られ、壁は穴だらけになっていた。
「あたし達だけ…あたし達だけ…どうしてこんなひどい目にあうの?」
娘の問いかけに、母は黙って首を振り、声を出さないよう促す。
「もうイヤ!誰か助けて!助けてよぉ…グスッ」
その時、突然投石が止んだ。
そしてけたたましい銃声が耳をつんざく。
「キャァー」「た、助けてー」
娘は思わず窓から身を乗り出して外の様子を確かめようとし、凍り付く。
そこには見覚えのある冷たい笑顔の悪魔が兵を率いて立っていたからだ。
「あ、あ、あぁ…」
「し、市民に向けて発砲するなんて!お前らそれでも…」
「それがどうした?お前達に生きている価値なんてないね。第2射、はじめっ」
またも悲鳴が飛び交う。しかし、それはAirシティの鍵系市民のものであった。
「き、君たち!僕たちは義勇軍だよ。それなのに銃を突きつけるなんて!」
「一部始終見物させてもらいましたよ。でぶでぶ君でしたっけ?随分調子に乗って
いたようで。お前達は我々には不要です。だから殺しても何の問題もありませんよ」
「え?え?あんた誰?」
「kagamiと申します。お見知りおきを。といってももう殺しちゃいますけどね」
「ヒッ、カ、カガミ?あの?」
「おや、私も有名になったものですね」
「え、えぇ。それはもちろん!
そ、それで僕もちょっと調子に乗りすぎたけど、これから心を入れ替えてあなたに…」
パァァン… ワルサーP99の咆吼が木霊する。
「おやおや、軍曹、彼、何か言いたそうだったのに、酷いですねぇ。クスッ」
「ちゅ、中尉殿。中尉殿もどうせ、こっ殺すつもりだったからいいでしょ?!」
「それじゃ軍曹。後は任せますよ。この下衆ども、適当に処理しておいてください」
「はっ、はい、中尉殿。それじゃ遠慮なく処理させていただきます!」
日雇いSS軍曹が瞳を輝かせて頷いた。彼の一物はそそり立っていた。
軍曹の指揮の元、機関銃が一斉に咆吼する。
そして義勇兵の悲鳴が、市民の悲鳴が、辺り一帯に木霊する。
それは街中にはあまりにも不釣り合いな凄惨な光景だった。
「えへ、えへへ。そうだ、殺せ、殺せ、もっとだ〜!」
満面の笑みとともに虐殺を行う日雇いSS軍曹を一瞥し、kagamiは溜息まじりに呟いた。
「さて、旅団長には何て報告しましょうかねぇ」
−終了−
>>76に続けるということで書いてみました。ちょうどイイ設定を
>>141-143で鮫牙氏が用意してくれたこともありましたし。あと
市民に発砲するといったら、どう考えてもやはりkagamiでしょう
そうなると相手はバ鍵っ子。お膳立てがここまで揃ったので、
ついつい書かずにはいられませんでしたよ(w
さて、kagami中尉は、これをレギオン旅団長にどう報告するのか。
そしてAirシティはどうなるのか。続きが楽しみです(w
葉鍵板のコテハンを出すのはちょっと危険じゃない?
下手に厨なコテハンだすと乗り込んでくるかもよ。
でぶでぶがやってきて、ここで雑談なんかかまされたら正直たまらん。
159 :
鮫牙:02/05/27 00:59 ID:IIfsKPAm
「は早く仲間が皆殺しにされてしまいます」
「で、お前さんは俺に助けを求めてここまで来た訳か」
「はい」
酒場の客達は虐殺を辛くも逃れ、助けを求めて来た"義勇軍"のメンバー、
ルーファス@オレモナーに対して侮蔑の表情を隠そうともしない。
中には、冷笑を浮かべる者すらいた。
「残念だな。それは出来ない」
「え」
「お前等の戦いには美学がない。特に愛が無さすぎる」
そう言うと同時に、狗法使いはルーファスが瞬きしている間に引き抜いた
SIGP220の引き金を引いた。ルーファスには狗法使いの手に突然拳銃
が現れたように見えたことだろう。
疑問を感じる前にルーファスの脳は眉間に打ちこまれた、炸裂鉄鋼弾によ
って破壊された。
酒場に歓声が上がる。
「やっぱリーダの早撃ちは何時見ても凄ぇなあ」
「ああ」
歓声の中、狗法使いが口を開く。
「どうやら、俺の名声に集る銀蝿共の駆除の手間は省けたようだ。これから、
旅団長のとこに行くがお前等、行儀良くしろよ」
>>157 そう言われてみれば確かに危険かも。軽率でした。
ただ、旅団長が出ているし、一回こっきりだからイイかなと思ったもので…
以後気をつけます。
161 :
鮫牙:02/05/27 01:19 ID:IIfsKPAm
確かに、危険ですね。くるなよル―ファス(ガタガタ)
むしろもわ〜にウンコを食べさせてみよう!
とかいってみるテスト
OHPのコテハンにしても有名どころに留めて欲しい。
ただでさえ手を広げ過ぎの感が強い企画なんだから。
後に『ゲットー門外の虐殺』の名で知られる暴動鎮圧から3時間後。
2人の軍人が足早に州政府庁舎に乗り込んできた。ひとりは、“EREL”集成旅団参謀長の
鍵っ子ストーカー大佐、もうひとりは第11戦車連隊第1大隊長の紅茶すらいむ中佐。
紅茶すらいむは元々実戦部隊指揮官ではあるが、旅団司令部の人手不足のために
州政府との調整連絡役も押しつけられていた。
「本来なら旅団長自らが出向かなければならないことなのですが、どうしても都合が付かないため、
我々が代理で参りました」
挨拶もそこそこに、鍵ストは応接室で待っていた州知事に告げた。
「では、あなた達にこれを手交する」
今にも掴みかからんばかりの形相で、州知事は1枚の書類を手渡した。州知事の署名押印の入った、
旅団への抗議文書。
「これと同様の者を、我らが偉大なる指導者――」
そこまで言って背筋を正す州知事。
「麻枝元帥閣下にも送達申し上げた」
一旦言葉を切り、何度が深呼吸してから州知事は続けた。
「あなた達は、なんということをしてくれたのだ! 何の罪のない一般市民に銃を向け、
あまつさえ発砲するとは! あなた達は護民の軍隊ではないのか! 市民を暴虐から護る防人ではないのか!
我らが偉大なる指導者麻枝元帥閣下に対し、恥ずかしいとは思わないのか!」
「州知事閣下の主張は確かに承りました」
紅茶すらいむ中佐が答える。
「しかしながら、閣下は基本的なところで間違えておられます」
「どこが間違っているというのだ!」
「今回の件は、何の落ち度もない月姫難民に対し暴行を働こうとした自称義勇兵と、
それに節度無く同調した州都市民によって発生した暴動です。つまり、彼らは牙無き人々に牙を剥いた暴徒であり、
この時点で我々の護るべき市民ではなくなっています。『理性無き民、暴虐を働く民は護るべき民ではない』
の原則は、州知事閣下もご存じでしょう?」
多分州知事は納得しないだろうな、とは思いつつも紅茶すらいむは言い募った。
確かにkagami中尉の「鎮圧」手段に問題がなかったとは言えないし、不逞義勇兵を把握し切れていなかった
狗法使いにも非はあろう。そこを衝かれたら苦しいな……
だが、州知事の反論は彼の予想を遙かにこえていた。
「それは普通の場合だろう、中佐」
「え?」
「今回は、あの忌むべき月厨ども、市民ですらない不逞難民が相手ではないか!
奴らをどう扱おうが、それで善良な市民が処分を受けるいわれはない!」
「「……は?」」
思わず異口同音に間抜けな声を出して、顔を見合わせる鍵ストと紅茶すらいむ。
「待ってください、州知事閣下! 確かに彼らに自治州の市民権はありませんが、
『当分の間、月姫難民は自治州市民に準じる扱いをする』という布告が麻枝元帥から出ています。
当然彼らにも、自治州憲章の生存権保障規定が準用されるべきです!」
「そうは言うがね紅茶すらいむ中佐。あの不逞難民どもはゲリラの温床となっているではないか。
このAirシティでも、過去何度かゲリラのアジトが摘発されている。奴らを甘やかした場合、
善良な市民の安全が保障できないではないか。
たしかに我らが偉大なる指導者麻枝元帥閣下の出された布告は承知しているが、
不逞難民より善良な市民の権利を優先するのは当然だ」
「……」
紅茶すらいむは呆然とする以外に何もできなかった。彼も鍵自治州における月姫難民迫害は
何度も目にしていたし、その現実に心を痛めてもいた。そして、彼自身も幾度か居住区に足を運んで、
その実態をつぶさに見てきている。
「州知事閣下。すでに自治州内の月姫ゲリラはあらかた殲滅されており、残存もロイハイト地方との
境界付近に撤退しています。今市内に残っているのは本当の難民、自らを護る牙を持たぬ流浪の民です。
その点は旅団も調査しておりますし、私自身も確認しています。武装蜂起の危険性はありません」
「中佐、その認識は甘くないかね? 奴らは所詮屑だ。我らが偉大なる指導者麻枝元帥閣下のお考えすら理解できない、
低知能の、善良な社会を毒する害悪だ。ずるがしこい奴らのことだ。きっとまだ武器を隠し持って、
我らが偉大なる指導者麻枝元帥閣下のお教えを理解する善良な市民に牙をむくに違いない!」
州知事は冗談を言っているんだろうか――そう思いこむことで、紅茶すらいむは現実逃避したくなった。
まさか州政の最高責任者が、バ鍵っ子囚人兵と同レベルの愚論を振りかざすとは! ここまでこの知事は無能だったのか?
いや、と彼は思い直した。少なくとも州都市民の安全確保や疎開は必死になって推進していたし、
周囲の反対を押し切って州都にとどまり続けることを選択してもいる、気骨のある政治家だ。
無能ではあり得ない。つまり――月姫差別を善良な市民の常識だと思っているにすぎない。
ちなみに、何もこれは州知事に限った話ではなく、鍵自治州全体を覆っている「雰囲気」だった。
月姫民族は虐げられて当然と、ほとんどの者が何の疑いもなく信じ込んでいる。
なお、“EREL”旅団幹部の多くが難民擁護に動いているのも、元々は「月姫排斥」を
狂ったように叫ぶバ鍵っ子囚人兵を強権をもって統制管理するための方便にすぎず、
特段の政治信条があるわけではなかった。
もっとも今では、紅茶すらいむやkagamiのように、「本気」の面が出始めていたが。
「はぁ……」
露骨にため息をつきながら、鍵ストが切り出した。
「つまり、月姫難民に対する暴行略奪など罪ではない、そうおっしゃりたいわけで?」
「そこまでは言っていない! 確かに推奨すべき行為ではないかもしれんが、
それを理由に処断されるのは理不尽きわまる!」
「なんとも、そのあたりは見解の相違ですな」
そう言うと、鍵ストは紅茶すらいむを促して立ち上がった。
「我々はあくまで『理性無き暴徒は護るべき民ではない』の主張に基づいた反論を麻枝元帥に提出します。決着は最高指導部でつくでしょうな」
本来の鍵ストの目論みでは、州政府の難民に対する認識が“常識”レベルにあると仮定して、
それを前提に妥協点を探るつもりだった
(場合によってはkagami、狗法使い両名による直接謝罪も考えていた)。
だがここまで認識が隔たっていては、もうどうしようもない。
この決裂を旅団長にどう報告しようかと思いつつ、鍵ストは振り返って州知事に最後の一言を告げた。
「それと、一々『麻枝元帥』の枕詞に『我らが偉大なる指導者』と付けるのはやめてくれませんか? 鬱陶しい」
泣きたかった。泣きたくなるほどに情けなかった。
紅茶すらいむは、「言ってわからぬバ鍵っ子囚人兵は鉄拳制裁」が常識の旅団将校の中にあって、
ほとんど唯一の「言って解らせて矯正」がモットーの穏健派だった。JRレギオンからは
「空想的理想派」と批判され、何度も罵り合いの論戦になったほどである
(それが戦術面の信頼関係に影響を与えていない点は興味深い)。
だがそれも、鍵自治州という体制を、より強固に守護せんがための努力だった。
鍵を護ることに価値があると信じてのことだった。しかし、少なくとも彼の認識において、
護るべき体制とは公然と民族差別を肯定する体制のことではない。
自分がこの州都で防衛戦を戦うことの意義って何なのか――そう思って深く沈んでいく彼に鍵ストが声をかける。
「中佐、そう落ち込むな。月姫差別は鍵自治州全体の病だ。ある程度で割り切らないと、
自分が何のために戦うのか見失ってしまうぞ――確かに、あの州知事があそこまでアホだとは思わなかったが」
「もう見失いかけてますよ。できることなら、今から柳川大将に白旗振りたい」
「言うな――俺だって実はそうしたいんだから」
あながち冗談でもなさそうな口調で苦笑すると、ポンと紅茶すらいむの肩を叩いた。
「これからは厳しくなるぞ。もう州政府の協力は見込めない。郷土防衛大隊や自治州軍集成連隊も
士気はがた落ちだろう。市民の協力は何をか況や。なかなか楽しい状況じゃないか、うん?」
「ベルリンの総統官邸に立て籠もったドイツ人どものほうが、
まだ希望に満ちあふれていたような気がしますよ、大佐」
「――確かに。“妖狐”兵団の戦闘加入くらいか、明るい材料は」
今頃は、狗法使いが直々に司令部に乗り込んで、今回の件について謝罪しているはずである。
「とにかく敵が本格的にやってくるまで、ゲットーの警備はkagami中尉と狗法使いにやらせよう。
こっちがきちんと統制すれば、そうそう間違いはないはずだ。懲罰大隊の莫迦どもが手を出してきても、
奴らなら大丈夫だ」
「あれほどとんでもないことをしでかしたのに、ずいぶんとあの二人を買っておられますね」
「俺はkagamiの野郎も狗法使いも大嫌いだが」
苦笑と言うには少し大きな笑いを浮かべながら、鍵ストは徴発で旅団が入手したオフロード車に乗り込んだ。
「こういう局面でも臆せず対処できる奴らだとは思っている。どんな手段を使っても難民を護るだろうよ。
もっとも、奴も俺たちも、あとで非難罵倒の雨霰だろうがな」
同時刻。
ゲットー門外に折り重なった死体の山、街路をどす黒く染める流血の跡。
生々しい“虐殺”の痕跡が残る街路を、kagami中尉は鼻歌交じりで闊歩していた。
「日雇いSS軍曹、ずいぶんすっきりしただろう?」
「そ、そりゃもう、ころ、殺しまくりましたから」
kagamiには、流血の場に臨むと口調が丁寧になると言う奇妙な癖があった。
今は戦闘の興奮も引け、普段の口調に戻っている。
「ちゅ、中尉殿。俺たち、歴史に、な、名が残りますか?」
軍曹らしからぬ問いに、kagamiはにこやかな表情のままに尋ねた。
「どうした、急に?」
「さ、さっき、『貴様は歴史に残る大罪人だ』とかほざいた奴のドタマを、ぶ、ぶち抜いたもんで」
「歴史に残る、ねぇ……」
笑みは絶やさずに、kagamiは答えた。
「まぁ、これだけのことをしでかしたんだ。きっと私たちの名は歴史書に載るだろう。
その点は期待していいぞ」
もっとも、好意的に書いてくれる史家なんていないだろうがな、と心中で呟く。
ああ、自分の名はウィリアム・カリー中尉と同列ですか?
そんなことを思っているkagamiの横に、かなり古い、どこで入手したのかも定かでないジープが停車した。
「kagami中尉、お迎えに上がりました」
「ああ、清水少尉、ごくろうさん」
運転手を務めている旅団副官の清水なつき少尉に軽く手を挙げて答えると、彼は助手席に乗り込んだ。
「軍曹、私はこれから、直接旅団長に報告してくる。その間は任せたぞ」
「りょ、了解!」
「さっき連絡があったが、“妖狐”から応援の分遣隊が来る。そいつらと協力して居住区を護れ」
そこまで言って、kagamiはハタと考え込んだ。
「なぁ、清水少尉。分遣隊の指揮官の名前は聞いているか?」
「え? えぇ?、えぇっと……」
慌てて手帳を取り出して確認するなつき。実は『あの』kagami中尉を前にして焦りまくっている。
その緊張のあまり、危うく「kagamiお兄ちゃん」と口走りそうになったのだが――
それが未遂にとどまったのは、彼女にとって大いに幸運なことだったと言えよう。
そうこうしているうちに、なつきはやっと目的の情報を見つけることができた。
「えーと……あ、そうです! ヌワンギ。確か連絡では、ヌワンギとかいっていました!」
170 :
旅団長:02/05/27 22:44 ID:pHBxc3hC
>>164-169「後始末」投下完了です。
何考えてるかわからん指揮官の下で、好き勝手にやる者もいれば、
それに胃と頭を痛める者もいるわけで……
ちなみにkagami中尉の口調については、前スレ747との整合性を持たせるため、
こういう設定にしました。
……ヌワンギかいw
下葉に高槻やら久瀬がいるように、鍵側にも葉系キャラがいるわけねw
っかし、中部で鍵州都への攻勢を企ててる間に北部でAFの地上軍が侵攻?
州都への総攻撃続ける余裕なんてあるのかね?
AF地上軍相手ならRR親衛隊の二軍でちょうど良いくらいかと。
エアカバーがあれば、練度も志気も兵装も数も依然圧倒的に余裕ありますし。
問題は、AFの後から来るかも知れないエロゲ国の軍隊かと思われます
まあ、よほどのことはない限り万全でしょう
ageる。
∧_∧∩
< `∀´> メンテの方法は私が知っている。私に任せたまえ
( つ く
( \
し' ⌒ヽ つ
「灰田戦闘団の速度が鈍ってきましたね」
「当たり前だってば。訓練未了の山賊みたいな兵ばかりの部隊でこんな長時間行軍してるんだぞ、
並の指揮官ならとっくの昔に逃亡続出だって」
もっとも、奴が士気の維持に使ってる手を考えると頭が痛いのよね。
心の中でそう愚痴りつつ、田所は次に打つべき手を考えていた。
ドートンヴォリ上流を水陸両用車で渡河し、若干の抵抗も一蹴して橋頭堡を確保した
AF&月姫合同軍は、その戦力の大半を用いて下葉北部の中心部を突破しようとしていた。
いくら質において優勢である下葉といえど、展開していた部隊が警察軍―要は
ニ線級の予備部隊―1個連隊では、完全機甲化を果たし数個師団の戦力を投入した
合同軍に勝てる道理も無い。質的には大差ないか、合同軍が優勢なのだから。
とどのつまり、下葉北部には、もはや合同軍を制止することの出来る戦力は存在して
いなかったのである。
「損害も無視できない数字になってきています、むしろ灰田は再編成に当て、
後詰を出すべきでは」
「馬鹿言うない蒲生ちゃん、今の勢い失ったらウチは負けよ? むしろここは損害を
省みず戦果拡大に走るべき局面なの。渡河が終わった部隊で投入可能な奴はあるか?」
「君島戦闘団が渡河終了しました。準備出来次第、出発させます」
「上等だ」
馬羽龍馬参謀長の答えに満足した田所は、椅子に深く座りなおした。
やれやれ。正直義理もクソもねぇ鍵っ子ドモに肩入れする必要なんざカケラもねぇんだが、
スポンサーのご意向とあっちゃ逆らうわけにもいかねぇ。
弱小軍閥としちゃあ、兵力の補充は死活問題もいいとこだからな。
「蒲生ちゃん、VAの馬場総裁に電話入れてくれ」
「馬場総裁、送ってもらった90式U型、ありゃ中々だね」
「まあ、ウチとしてもローの目玉ってことで売ってる奴ですから。なんか有ったら
遠慮無く言ってください」
しばらくの社交辞令の応酬の後、本題が田所の口から紡ぎ出された。
「しかし総裁、ウチにとっちゃ多大な援助と実戦経験が得られて丁度いいんだが、
あんたがそこまでウチと鍵に肩入れする理由が判らんのだがね?」
「簡単に言ってしまえば、まだ甘い汁を吸う余地は十分ある、ってとこです」
「アンタは商売人だからな、だがそれでもだ、連中を見過ごしておくのがアンタの足元に
火をつけるような気がするんだが」
「黙って見ておく気はさらさら無いですよ。適当なところでVAは全力で鍵を潰します。
それまでは躍らせておきます」
「ふん、それはビッグ3の統一見解と見ていいのかね?」
「構いませんよ。F&Cとアリスは、葉鍵領域を放置することはいずれ最悪の事態を
招くという見解に達しています。ウチもそうです。絞れるだけ絞れば後は棄てるだけ」
「さすがだな。ま、ウチは今のところはそっちの命令どおり動くだけだ。葉が全力を
こっちに向ける前に逃げさせてもらうよ」
「はい。ああ、撤退時はインフラを徹底的に破壊するのを忘れないでください、今回の
主目的はそれなんですから」
「あんたも悪よのう、総裁」
「いえいえ、田所さんにはかないませんよ」
けけけけけけけ。
瀬尾戦車中隊が行く先々は、軒並み死の都と化していた。
「当然の報いだ、枯葉どもめ」
「口を慎みなさい、少尉。明日は私たちがああなっても不思議じゃないんだからね」
AFから供給された63式軽戦車の砲塔から、沿道に広がる凄惨な光景を見る。
あまりに電撃的な侵攻のため住民の避難が間に合わなかったことが、さらにこの
惨事を拡大していた。
田所のAFは、その軍規の破綻ぶりではエロゲ国でも有数の存在である。
さらにこの北部下葉侵攻作戦にあたって大規模な増強(VAの援助によるもの)が行われ―
モラルは地に落ちた。
侵攻前の北部下葉の人口は約400万。
侵攻から3日目には、これが3/4に落ちたと言われている。
北部下葉は、インフラはおろかそれを必要とする住民さえも根絶されようとしていた。
かつて月厨ゲリラとしてこの北部下葉をテリトリーにしていた瀬尾は、複雑な気分を覚えた。
以前私が先輩から受けた教育では、戦争というのは金儲けのために行われるものだと
言われていた。なのに、今のこの戦争…全てを破壊し、全てを略奪し、全てを殺しつくす
このタタール人のような戦争は、一体何なの?
民族と宗教が絡んだ戦争は、終わりが無いのは知ってるけど…
答えはいくら考えても見つかるはずも無く、瀬尾はもう考えるのを止めた。
訂正。
馬鹿言うない蒲生ちゃん→馬鹿言うない馬羽ちゃん
ヌワンギってどんな奴よ?
何となく、怒り心頭のシェンムーが自ら兵を率いて田所を強襲しこてんぱんにのしてしまう展開を思いついた。
トカレフとスペツナズナイフで次々と敵兵を惨殺し、返り血で真っ赤になった顔をにやつかせ、逝っちゃった目つきで失禁しながら逃げまどう田所を追いつめるのよ
……
おもしろそうだからもう少し戦局が移行したら書こう。
国家指導者が自ら手を下すなんてことはありません。
あり、田所は現地に行ってないの?
シェンムーの恫喝にあっけなくヒロインをちゃん様からみさき先輩(似の誰か)に変えた田所のへなちょこ具合をやろうとしたんだが、まあ適任者がいればそいつにやらせよー
まあ、軍の最高指導者が戦線視察に赴くのは第二次世界大戦の初期までやね
「戦争物」を理解してない書き手が現れ始めたな。
かなりエアフォースワンを意識してる。
つか、特殊部隊率いそうなキャラ紹介してくれ。
そうでないと柘植の逆激シリーズみたいに最高指導者が前線に赴くことが正しいという電波展開しそうだ。
>>184 紹介してくれ、ってキャラを知らずに書かれても困るぞw
自分で精査しるw
そろそろゲームキャラが枯渇してるよぉぉぉぉぉっ!
ば鍵っ子みたいにリーフの方面で熱狂的なコテハン教えてよぉぉぉぉぉっ!
おおもりよしはる位しか思いつかないよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!
あ、そういえばまだ一度としてまともに表に出てきてない宮内一族がいたなー。
今までも出てこなかったし、これからも出てこないようなら、特殊部隊の狙撃班に編入されたとして出してみるか。
青紫な人々というところがちと問題だけど(w
戸越中将は部下から手渡された一枚の手紙をつまらなそうに眺めていた。
手紙の差出人は、今や一連の紛争の主戦場となりつつあるAIRシティの市長からである。
宛先は、鍵っ子義勇軍総司令部とある。『我等が指導者』麻枝准元帥に宛てた文面であった。
内容は仰々しい挨拶に始まり、『我等が元帥』に対する長々とした辞令美句が並んだのち、
ようやく本題へと繋がっていた。
ふん、くだらない。戸越中将はその冒頭の挨拶文を読んだだけで、読む気力の99%を
損失し、本題部分だけを読むことにした。市長の手紙からはバ鍵っ子特有の腐臭が
漂っている。それは、彼等特有の選民思想とでもいうべきものであった。
自分達こそが麻枝元帥の崇高なる思想を理解する選ばれた者であり、鍵国国民として
あるべき存在だという。それを理解できない月厨どものと、理想主義的な久弥派と
呼ばれる人々の追放を訴え、最終的には葉から分離独立し自分達だけの国を
持つというのが彼等の一般的な考えである。自らの正当性を疑わず、時には過激な
行動にでることもあった。
一昔前のことである。麻枝元帥によって「大気論」なる葉鍵国の政策についてまとめた
書物が出版された。その内容は難解を極める物であり、久弥派の人々からは、
その難解さについて批判がおこっていた。麻枝元帥自身もそのことを認めたのだが、
一部のバ鍵っ子は、これら久弥派の言動を「読解力不足」として痛烈に非難した。
久弥派とバ鍵っ子の間では対立が起こり、その緊張が頂点に達した時事件が起こった。
自治州議会に於いて反麻枝的発言を行った久弥派議員が何者かによって惨殺された
のである。事件現場には「文盲」と書かれた紙があり、バ鍵っ子による犯行と
目されていたが結局犯人はみつからなかった。麻枝信望者の議員が裏で動いた
との噂もあり、事件は迷宮入りした。また、事件が起こった時は、おりしも久弥大将が
失踪した時期でもあり、久弥の勢力は急激に衰えることとなり、鍵自治州、特にAIR
シティはバ鍵っ子の街となったのである。
「ふぅ」
戸越中将は大きく息を吐き市長からの手紙をデスクに投げた。本題を軽く読んだ
だけでも疲れる。ところどころに誇大妄想的で自慰的な文章が目立ち、斜め読み
しただけで軽い苛立ちを覚えた。まったく、どうしてこんな文章が書けるんだ。
ただ、月厨を虐待したバ鍵っ子がkagamiの奴に殺されただけじゃないか。
自らの愚行を棚にあげ、他者を誹謗するとは本当におめでたい。月厨が死に、
貴様等バ鍵っ子も死んだ。まったく、めでたい限りじゃないか。kagamiにしては
上出来だよ。
戸越中将は小さく笑いを漏らし窓の外へ目をやった。
そこに映るのは見慣れたOHP師団駐屯地の光景ではない。AIRシティから
50q以上離れた田舎町の光景である。
リーフ軍が州都侵攻に動き始めてから師団本部はその規模を縮小し、この
街に陣取っている。装備は一線級のものに改められ、機動打撃力は大幅に強化
されていた。リーフ側の動き次第ではいつでも動くことが可能である。
しかし、戸越中将が動くことはない。彼の目的がそれを拒否しているのである。
戸越中将の目的はバ鍵っ子の一掃。彼が長年温めてきたプランである。
情勢が不安定な葉鍵国のこと、いずれは紛争が起こるとくらいは予想がついていた。
そして、緒戦は鍵陣営にとって不利な展開になるであろうことも。敵対勢力が
どこか主要都市に攻撃を仕掛けてきた際、バ鍵っ子達をそこに集結させて一掃して
しまおうという計画だった。AIRシティの財産と優良な市民達の退避は完了している。
中には自らも銃を手に戦うという市民もいたが、戸越中将はこれを強制的に移住させた。
その反面、街から逃れようとするバ鍵っ子に対しては徴集令状を発し、強制的に
防衛隊の中へと組み込んだ。それでも逃れようとするバ鍵っ子に対しては、
敵前逃亡罪として銃殺を指示している。
なお、この徴集令状はOHP師団が独断で発行したもので、戦争が終結するまで
鍵首脳部の耳に入ることはなかった。後世にいう所謂「まごめ券」である。
AIRシティは恐らく陥落する。しかし、AIRシティが陥落したとしても痛いことはない。
あの場所にめぼしい物はなにもない。市庁舎を占拠しても、州議会を占拠しても
工場の生産ラインも手に入らなければ、補給物資も手に入らない。
あるのは地下に潜ったゲリラ達である。戸越中将は彼等に絶対死守を命じていた。
どんなことがあっても降伏するな。都市が占拠されても地下に潜って戦い続けろ。
麻枝元帥は諸君等の働きに期待している。こう言えばバ鍵っ子どもは文字通り
死ぬまで戦う。脱落者は仲間内で処理されるはずだ。
AIRシティを占領してもリーフ軍はなにも手に入れられない。我々は、敵の補給線が
延びきり、兵の疲労が極限に達したときに叩けばよい。その為の戦力は温存してある。
最終的に勝つのは我々だ。バ鍵っ子達にはそのための犠牲になってもらおう。
『偉大なる祖国』の役に立つなら彼等も本望だろう。
戸越中将は再び市長の手紙に目をやった。そして小さく鼻で笑う。
とりあえず、こいつを麻枝元帥に見せるわけにはいかないな。お優しい元帥のことだ、
こいつを見せたらどんな反応を示すことやら……。
戸越中将はライターを取り出し市長の手紙に火をつけた。それを灰皿に捨て、
燃え上がる炎を横目に外を見る。
田舎の生命保険会社を徴発し、臨時司令部とした窓向こう側にはAIRシティへと
繋がる空がある。太陽は西に傾き、空は真っ赤に染まっていた。AIRシティが
この空のように真っ赤に染まるのはあと僅かである。AIRシティは完全に封鎖されていた。
各地にERELの監視の目が光り、通信はOHP師団本部によって全てが検閲されていた。
AIRシティは決して逃げられぬ煉獄となる。その煉獄の中で悶え苦しむであろう
バ鍵っ子達の姿を想像し、戸越中将はひとり大きく唇を歪めた。
続く
>>187-189 「まごめ計画」
以上、まごめちんを出してみました。
なにやら久しぶりの投稿になりますね。
書こうとは思ってのですが、イマイチネタが思いつきませんでした。
OHP事情もよくわからないので、また当面の間は書けそうにないです。
191 :
鮫牙:02/05/31 00:08 ID:VVwPi/ez
わーい、狗威殿だ。安心してくだされ。俺もよく知らず、適当に書いてます。
しかし、まごめちん、悪党よのう。っとそろそろ久弥も出さないと…。
リアル水無月もうだめぽ(号泣
梓なで肩過ぎるよね……
初音はむしろ好感もてたが……
これは正葉総崩れか。伝説の英雄はもはや腕がなまっちまってて、いざ戦ってみるとダメダメだった、と(w
195 :
旅団長:02/05/31 08:17 ID:xVMabo9e
装備を一新してシモカワグラードに突入した正葉VN旅団。しかし新装備はまるで使えず、
水無月大将の作戦は全て裏目に出る。そして、気がついたらRR親衛隊に逆包囲されていた。
正葉軍主力に“消滅”の危機迫る! そのとき月姫は!? 鍵は!? 青紫超政権は!?
……てな感じですか?(w
196 :
鮫牙:02/05/31 22:53 ID:9YXJcvkw
正統リーフ反撃の狼煙に早くも暗雲が…。まあ、プレイしてみてから、考えよう。
メモ3だって、最初は違和感バリバリだったけど、プレイしていくうちに萌えてきた
し。
バ鍵っ子と優良市民を区別する辺り、選民思想入ってるな・・・
逃亡罪で死刑という辺りどっちもファシストっぽいのかな?
逆にしぇんむーがトカレフとナイフで暴れるという
>>180 は面白いと思います。
…久弥系弾圧があったから鍵国では久弥系のキャラクターは不遇なのかと思ったりする。
正葉が張子の虎だった場合・・・最悪しぇんむー1人勝ちになりそうですね・・・
>>181-
>>182 フセイン君を忘れてないかい?
フセイン君はイラン・イラク戦争時、人海戦術などで劣勢に立たされたとき自ら戦地に赴き陣頭指揮を取ったという・・・
直接手を下すのは確かに無理でしょうが、陣頭指揮はそれでも残っているやうです。
>>185
ここではいたるがバーレットライフルぶっ放しヘリを落としつつ車を運転することぐらいやってのけるからある程度はOKでは?
資料としても552文書くらいしかないですし・・・
いや……しぇんむ〜が単独吶喊はやめてほすぃ。
ちょび髭伍長宜しく前線に「比較的近い」指令部で指揮を取るのが関の山だろう。
彼が、自分から「国家指導(会社経営)に専念するため」現場(作曲)から身を引いた人間である事を忘れてはならない。
彼は「野心に狩られて現場を捨てた」男なのだ。
と言ってみるテストw
選民思想というより政治的不穏分子の一掃ですね。
まごめちんは普段からバ鍵っ子対策に苦悩してそうなので、個人的怨嗟も入ってるかな?
200 :
鮫牙:02/06/01 20:30 ID:vrvdQgxu
いたるの゛アレ"には裏設定が…
そろそろdat落ちの恐れありのため警衛。
202 :
名無しさんだよもん:02/06/02 22:27 ID:k6jhYxhX
いいか…
これから…浮上を試みる。
成功しても 厨がいるかも 真上にな
他のスレが回るのを祈るだけだ
全速で逃げる 広告スクリプトからな
帰港するぞ
成功したら ビールをふるまう
dat逝きと思ったろう
厨は無警戒だ
どうだ? いいな
注気開始!
警察軍の戦列を突き破った、AFの兵士達にとって葉鍵国民は非戦闘員ではなく
文字どうりの獲物であった。軍規の有名無実でえろげ国からも忌み嫌われているAF
軍は葉鍵国民間人に対しても暴虐の限りを尽くしていた。
この小さな村落も例外ではなく、略奪、暴行、放火、殺人。警察軍の武装警官達が
命がけで守る筈だった、少女が犯され子供達が炎の中に投げ込まれ殺されていった。
まだ若い、一人の武装警官は守る筈だった者が犯され殺されていく、その光景を肺
を打ち抜かれ、絶望と自分自身の血に溺れながら眺めていた。
「タ―ニャお前は早くお逃げ!」
「いやだ、ママと一緒じゃなきゃ!」
泣きすがる娘を説得しようとした母親の頭が弾けとぶ。娘には何が起こったのか、
理解できなかった。AFの兵士が娘の頭上で黒星拳銃の銃口から出る煙を吹き消し
ながら言う。
「可哀想になあ、お嬢ちゃん。すぐにママのとこに送ってあげるからなあ」
そして、再び銃声が響く。しかし、頭を吹き飛ばされたのは少女ではなく兵士の
方であった。この兵士同様に頭を吹き飛ばされたAFの兵士の死体が周囲に散乱し
ている。
「狙撃だ!まだ警察軍の残党が残っていたのか?」
「馬鹿な、ここらの警察軍は駆逐しきった筈だぞ」
虐殺に夢中になっていた、AFの兵士達が突然の襲撃にその手を止め慌てふためく。
特徴的な爆音が何処か遠くから響く。そして、それは次第にAFの兵士に近づい
て来る。AF兵達の心拍数が徐々に上昇していく。
そして、それは彼らの前方の茂みから飛び出してきた。
RR親衛隊陸軍第34ヘリコプター大隊所属のMi−28ハボックが発射する30
m機関砲の砲弾は瞬時にYW531を蜂の巣にし、その2秒後に火達磨に変えた。
同時刻内務省庁舎
「久瀬内務尚書、葉鍵本営から入電!機動演習中のテネレッツア軍RR親衛隊陸軍
第2師団所属第2戦車連隊及び、第3歩兵連隊、RR親衛隊陸軍第34ヘリコプター
大隊が救援に向かったそうです」
司令室に安堵の声が上がる。
「そうか、これで親衛隊に借りができたな」
出来れば、国民を殺した償いは警察軍の手で行いたかったが、やむえないな。
下らない縄張り争いで苦しむのは民衆だからな。引き下がるべき場面では素直に
引き下がってやるさ。
「我が国民を虐殺した蛮族を一匹たりとも生かして葉鍵領から出すな!」
指揮官の怒声と共に無数のハボック攻撃ヘリがAF軍の戦列に襲い掛かる。ロケット
ポッドから発射される、ロケット弾は次々にAF軍兵士の吹き飛ばし、肉片に変えてい
く。応戦する装甲車両も次々に対戦車ミサイルと30m機関砲の餌食となり鉄屑へと代
えられていく。
葉鍵国北部ウメダシティに設けられたテネレッツア軍基地は未だ建設中であり、プレ
ハブを臨時作戦司令室としていた。
「第3歩兵連隊より入電、民間人の避難は完了しました」
「じゃあ、第3歩兵連隊、第2戦車連隊の地上戦力も加わって本格的な掃討戦や。っと
第34ヘリコプター大隊には、AF軍の退路を塞ぐよう、命令しといてな」
テネレッツア軍総司令官、河田中将はのほほんとした口調で指示を与える。
空き地の町戦役終結後、葉鍵黒国家元帥下川直哉は鍵攻略戦と平行して新たに正統リーフ
討伐軍を編成していた。
それが、河田優陸軍中将を総司令官とする、通称テネレッツア軍である。
2個師団と1個ヘリコプター大隊からなるこの軍はしかし、今はまだ編成中で現在かろう
じて、1個戦車連隊と歩兵連隊、ヘリコプター大隊が機動演習を行える程度である。
練度の面からも、旧国防軍からなる装甲軍、空軍降下猟兵師団「シモカワ・シェンムー」
に比べれば見劣りは免れない。
「でも、それはいまのうちや」河田中将は相変わらずの口調で呟く。僕はこの軍を葉鍵国最強の
軍に育ててみせる。そして、見てろや原田君。君の首は僕が取ってやるさかい。
リベンジャーは、静かにそう己に誓いをたてた。
正統リーフ討伐軍「テネレッツア軍」
総司令官河田優陸軍中将
編成
RR親衛隊陸軍第2師団
RR親衛隊陸軍第4師団
RR親衛隊陸軍第34ヘリコプター大隊
現在編成中の為、書類上のみ存在。
武装
戦車 T84−120
装甲車MT−LB
装輪装甲車BTR−90
小銃AK103
武装ヘリMi−28 ハボック
206 :
鮫牙:02/06/03 02:44 ID:V4vltpDg
投稿終了。自治州戦も書かないとなア…。
■■■■■国民よ立ち上がれ!■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
Leaf・Key板は我々葉鍵の民が血を流し、汗を流し築き上げた板である。
それをage厨月厨どもを筆頭とする板違いの移民どもは、
我々の地をあたかも自分たちの物であるがのごとく振る舞い、
板違いスレッドを建て、我々の権利を不当に侵害している。
隙あれば葉鍵の文化を破壊し、異文化を我々の土地にうち立てようと企てている。
さらに、荒らし目的の糞スレ建てage荒らしといったテロ活動によって、
我々の板は治安悪化の一途を辿っている。
諸君!、このままでよいのか? 奴らの思うがごとく侵略されるだけでよいのか?
今こそ現状を問いただし、葉鍵板に未来のために行動するときである。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
面白いコピペがあったので貼っておく。
208 :
鮫牙:02/06/03 18:08 ID:Owt13hEk
ついに、親衛隊の戦力が出てくるあたり、しぇんむー軍にも限界が出てきたかな?
自らを戒める為にコテハン装備。頑張れ漏れ。
>>208 こうなるとどうあっても気になるのが正葉だなぁと思う今日この頃。
今のところは腑抜司令官の烙印を押された流れになってる
水無月&高橋だけど、どんな隠し球持ってるかわかったもんじゃないからな。
まあ、そうでなければこんなに急いで
テネレッツァ軍を組織する事もなかったんだろうけどな。
正統リーフの隠し玉ってHMX-13列車砲だけか?
つか、河田俄然張り切りそうやね。
何しろ彼の向かう先には原田・超先生という二大宿敵がいる上に、目の上のたんこぶ水無月もいるわけで……。
不安要素となると、あんまないね。
超先生がアビスボート召集し、さらに下川リーフの潜在超先生派隊員に寝返り活動でもしたとして……うう、やはりリニューアル痕の成果如何なのかなー?
>>212 100まで読んだが、厨房が暴れてるだけにしかみえない。
>>211 超先生の温厚な性格から推測して、アビスボートは政治兵器で使わないと推測され・・・
せいぜい黒マルチ艦隊が迫ってきたら通常魚雷で攻撃する程度かと思われ・・・
>>175-177 ここではこんなこと言ってるけど、馬場はそう簡単に己の手のうちを明かすようなタイプではないと思われ。
エロゲ、ネギ、葉鍵の3大エロゲ国家を牛耳る怪物政商の目的は謎の方が面白いんじゃないか。
217 :
鮫牙:02/06/05 21:48 ID:dQmGbxHO
最近よいやく、狗法使い氏のホームページをハッケンしました。
いや、何か狗法使い氏に萌えてしまいそう。壊れぷっり爽やかすぎ。
218 :
名無しさんだよもん:02/06/06 02:41 ID:kMOw6FJf
age
>>207の続きみたいのがあったので貼っておく。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
宣 戦 布 告
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
Leaf・Key板は我々葉鍵の民が血を流し、汗を流し築き上げた板である。
それをage厨月厨どもを筆頭とする板違いの移民どもは、
我々の地をあたかも自分たちの物であるがのごとく振る舞い、
板違いスレッドを建て、我々の権利を不当に侵害している。
隙あれば葉鍵の文化を破壊し、異文化を我々の土地にうち立てようと企てている。
さらに、荒らし目的の糞スレ建てage荒らしといったテロ活動によって、
我々の板は治安悪化の一途を辿っている。
我々はこのような現状を打破するために行動に出る事となった。
一、移民は徹底的に排斥する
一、板違いスレッドは確実に潰す
一、月厨揚厨は見つけ次第その場で処刑する
我らの葉鍵板に勝利を!そしてテロリスト共には確実な氏を!
葉鍵国民党
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
“バトル・オブ・キィ”こと鍵自治州領本土決戦は、RR装甲軍の攻勢により幕が開いた。
鍵自治州領に突き刺さった矢は2本。1本目は柳川裕也大将が直率する第13RR義勇装甲擲弾兵師団“ヨーク”。
この矢はけろぴーシティを発起点とし、自治州領深くに突き刺さる。その後、鍵が決戦を目論んで繰り出してくる
主力野戦軍を誘引し、柳川が決戦場と目論んでいるAirシティ−Kanonシティ間の平原で決戦を挑む予定となっている。
もう1本は 第1RR装甲師団“ライプスタンダルテ・シモカワ・ナオヤー”と第2RR装甲師団“ダス・リーフ”の
2個師団からなる。こちらの矢はけろぴーシティ郊外から一旦下葉領内をイナ河に沿って北上、
アクアプラスシティ−Airシティ−ものみの丘を繋ぐ鉄道幹線と高速道路が通る交通の要衝・カンスースクまで進撃する。
そこから鉄道橋、道路橋、河川舟艇を用いてイナ河を渡河し鍵自治州領に突入、そのままAirシティまで進撃し同市を包囲する。
60時間以内でAirシティを陥とした後はAirシティ−Kanonシティ間に進出し、
“ヨーク”と協同して主力野戦軍を包囲殲滅する予定となっている。
既に“ヨーク”は自治州領の小都市を次々に陥落させ、残り2個師団もカンスースクに到達していた。
現在、両師団の砲兵隊が対岸への制圧射撃を行っている。この方面に同行したハクオロたち東葉観戦武官団は、
その様子を双眼鏡を使って観戦していた。
「現在、鉄道橋1本と高速道路橋1本、一般道路橋2本は自治州軍が爆破している。しかし――」
観戦武官団の案内役を買って出てくれた“ダス・リーフ”師団長はそう言ってイナ河の真ん中あたりを指さした。
短躯のがっしりした体つきに、傷跡と貫禄ある口髭が印象的な、いかにも武人然とした感じの将軍だった。
下川リーフ軍には珍しいタイプといえる。
「自治州軍の奴ら、念入りには爆破できなかったようだな。中央部と右岸寄りの橋桁を爆破しただけで、
完全破壊にはほど遠い。橋脚に至っては手つかずだ。よほど慌てていたようだな」
「しかし、空爆で破壊するなりなんなり、やりようはあったと思いますが」
双眼鏡をおろして、ハクオロが尋ねる。
「多分、奴らもそのつもりだったんだろう。しかしAIR航空隊は大損害を出した挙げ句、
本領の制空権絶対確保も崩れている。その辺で手違いが出たんだろうな。
絶好の阻止線であるここに有効な兵力を配置できないのも、それが原因のはずだ」
ニヤリと凄みをきかせて笑うと、師団長は説明を続けた。
「というわけで、我々は奴らの失敗を最大限活用させてもらう。制圧射撃のあとに舟艇で先鋒を渡河させ、
右岸の橋梁取り付け部を制圧する。あとは工兵を出して橋梁を仮設してしまえば、一気に渡河できる
――本来なら、航空支援を要請して万全を期したいんだがな」
元々この侵攻作戦は、中尾大佐率いる空軍部隊による万全の航空支援態勢が前提となっている。
しかし先頃発生したAF師団のロイハイト地方突入により、全てが狂い始めていた。
彼らを叩くための攻撃機を確保するために、鍵自治州方面に振り向ける攻撃機がほとんどなくなってしまった。
制空権確保のための、戦闘機によるエアカバーはそれでも維持されていたが、こちらも投入機数が3割減となっている。
このため鍵自治州上空の航空戦は両軍とも決定的な優勢を確保するに至らず、
どちらも「一進一退」といった状況となっていた。
戦力激減となったAIR航空隊が全面崩壊にいたらなかった理由はここにある。とはいえこちらも、
戦闘機による制空戦闘が精一杯で、とてもではないが攻撃機を繰り出す余裕はなかった。
B-70“ヴァルキリー”はそれでも出撃可能ではあったが、これは麻枝元帥直々の戦力温存命令により禁じ手となっている。
「さて、ハクオロ大佐。何だったら仮設橋梁の設営を間近で見学するかね? 敵弾飛び交う中での作業はなかなか――」
そこまで師団長が言いかけたときだった。伝令が慌てて駆け寄ってくる。
「師団長! 柳川司令官より連絡が入っております!」
「おぅ、わかった。すぐ戻る」
師団長は頷くと、申し訳なさそうな顔でハクオロに向き直った。
「すまんな大佐。私はこれで戻る。ああ、観戦したいところがあったら自由に見てまわり給え。私から連絡は行っている」
「いえ、申し訳有りません」
恐縮しながらハクオロは答えた。この師団長にあってまだ日は経っていないが、
ごつい外見に似合わず面倒見のいい人物だということはよくわかっていた。
「はっはっはっ、かまわんよ。柳川閣下からは『支障なく観戦させよ』と命令が出ているしな」
豪快に笑うと、師団長は司令部へと戻っていった。ハクオロも高機動車に戻り、車内に乗り込む。
「……ふぅ」
「溜息なんかついて、どうしたんです、ハクオロさん?」
車内に残っていた郁美が尋ねる。
「いや、あの人の良さそうな師団長の顔を見てると、私たちの本当の任務が申し訳なく思えてくる」
いみじくも東部方面総監部で由宇が指摘したように、東葉観戦武官団の真の目的は『下葉実働軍事力の機密、内情等を精査する』点にあった。そしてその真の目的に関しては、ハクオロではなく郁美に全権が任されていた。
「ハクオロさん、その点は割り切ってもらわないと」
少し苦笑気味に、郁美が笑う。
「それにハクオロさんの場合は、本来の意味での観戦武官なんですから、あまり気にしないでください」
「まぁ、そう言うことならこっちは観戦に集中するんだが――本当に連中、気づいていないのかな」
「ほとんどは大丈夫でしょう。特にあの師団長は、本気で信じてくれているようです。
でも、柳川大将は、確実に気づいていると思います」
「それで私たちを自由に行動させているのか。あの優男、顔に似合わずずいぶんと剛胆だな」
「そ、それは、余裕をかましてると、お、思うんだな」
巨体を揺らして、蔕麿が意見を挟んだ。
「余裕というと、横蔵院少佐?」
「か、観戦武官に全てを見せた程度で、じ、自分たちの戦力価値が減るわけがないと、お、思ってるんだな」
「それは、自信の表れと受け取るべきなんだろうな……」
柳川の怜悧な風貌を思い浮かべながら、ハクオロは唸った。内戦勃発以来の彼の活躍、
そしてRR装甲軍のもつ戦略的価値がバックにあればこその、強烈な自信だと言える。
「私たちに隠さなければならない情報は、直接柳川大将が握っているというのもあると思いますけど」
郁美が感嘆するように声を上げる。そして、声のトーンを落として付け加える。
「問題は、その柳川大将の自信が生む隙に、相手側がつけ込めるかどうかです――」
同時刻、AIR航空隊基地。
葉鍵中央回廊西側出口地区、いわゆる「ものみの丘地方」は鍵自治州における地政学的重心に
位置する戦略的要衝である。そしてこのあたりで一番充実した通信設備を持つのがこの基地であり、
内戦勃発後は鍵軍首脳部が詰める、事実上の最高司令部として機能していた。
そして今日も今日とて、麻枝准元帥をはじめとする首脳部が作戦会議を開いている。
「――我が軍の基本方針に変更はありません。いわゆる『後の先』です。ある程度敵軍に先手を取らせておき、
その後一気に反撃に出ます。それまでは、敵の攻撃には基本的に放置で臨みます」」
涼元悠一大将はそう言うと、プロジェクターが映し出した地図画像に指示棒を這わせた。
「反撃の主力は、集成師団および第4師団“ドリームキャスト”。そして改編OHP師団です。
2個師団はものみの丘を発起点にKanonシティまで進撃、事後は敵の動向をふまえ、
デジフェスタウンにて待機中のOHP師団と協同で、敵3個師団の包囲殲滅を目指します。
この3個師団――というより、空き地の街から帰還中の集成師団が決戦場に到達するまで、
あと1週間かかります。その間敵3個師団に行動の自由を与えないためにも、“EREL”集成旅団の
Airシティ死守は絶対に必要です。ここのみは抵抗しなければなりません」
「涼元さん、敵――柳川大将がAirシティを放置する可能性はないかな? 二線級のRR親衛隊を監視として配置し、
主力3個師団でKanonシティに殺到する戦術をとるのでは? 州都に生産拠点としての価値がないのは、
向こうもよく承知しているはずだが」
麻枝が尋ねる。
「確かにその可能性はありますが、柳川大将はまずその作戦を実行しないでしょう」
涼元の指示棒が、カンスースクからAirシティを経由してものみの丘まで動く。
「3個装甲師団を動かす補給物資ともなれば、かなりの量となります。その輸送には、
どうしても同時・大量・高速の鉄道輸送力が必要になります。
そして彼らの利用する鉄道は、どの経路を取ろうとも必ずAirシティを経由しなければなりません。
ここを取らない限り、彼らは鉄道補給線を自治州内部――東側に伸ばすことができないのです。
確かにけろぴーシティからのびる鉄道を利用する手段もありますが、この路線は支線規格の
37キロレールを使用した脆弱な道床であり、しかも単線です。とても3個師団をまかない切れません。
つまり、“EREL”がAirシティに張り付いている限り、3個装甲師団にさしたる行動の自由はありません。
どんなに頑張っても、Kanonシティからこちらには入ってこれないでしょう。もし入ってきた場合、
こちらが叩くまでもなく補給切れで自滅します」
「わかった――制空権の方はどうなっている?」
出席者の中では一番階級が下の、神尾晴子大佐が答える。
「とにかく、連日限界ギリギリ1の出撃を繰り返しとるわ。敵もAFの迎撃に戦闘機割いとるさかい、
何とか互角に持ち込んどるけどな、正直むっちゃきつい」
「今、F-16の新規調達を急がせてましゅ。もうちょっと持ちこたえてくだしゃい」
技術開発本部長のみらくる☆みきぽん中将が慰めるように言うが、晴子は首を横に振った。
「いや、機体の方は別に心配しとらん。それよりも、先の戦いで熟練パイロットをぎょうさん亡くしたのが痛いわ。
はっきり言うて、戦闘機よりも航空傭兵のほうがなんぼかありがたい」
「この状況で、例えば“EREL”旅団に対する近接航空支援はできるかな?」
折戸大将が尋ねる。
「1回の出撃で攻撃機全部喰われてええ言うんなら、出せるで」
「……なるほど」
「まあ無理すれば、通天閣騎兵隊は出せるわ。戦闘機いうてもヘリには手ぇ出しづらいよってな」
意外に知られていないが、制空戦闘機と攻撃ヘリでは、あまりにも活動空域が違いすぎて
逆に空戦が発生しにくい。制空戦闘機が攻撃ヘリを撃墜しようとすれば低高度まで降りてこねばならず、
そうなると地対空ミサイルの脅威に身をさらすことになる。また速度も違いすぎる。
ただし、相手がヘリと同程度の高機動性を誇るVTOL機を出してきた場合は、また話は違う。
現に空き地の町では、軍事顧問団のハリアー攻撃機がハボック攻撃ヘリを大量に喰らっている。
だが現在のところ、下葉は鍵自治州方面には制空戦闘機しか繰り出していない。
「ウチの個人的意見やけど、通天閣騎兵隊は積極的に出した方がええ思う。
そうでないとAirシティ、保つもんも保たんで」
「その意見には賛成です」
折戸も同調する。
「確かに主力3個師団の反撃に備えて航空戦力の温存は必要ですが、“EREL”にもある程度保って
もらわなければなりません。通天閣騎兵隊を出す程度なら、保険としても十分許容できます。
もちろん、大損害が出ないならという条件付ですが」
「わかった。通天閣騎兵隊と防空大隊については積極出撃を許可する。損害軽減に留意し、
直ちに準備にかかってほしい」
麻枝の決断は早かった。あるいは、Airシティを見捨てることへの罪悪感があったのかもしれない。
「それと、空き地の町に駐留している倉田連隊からですが」
中央情報局長官のしのり〜中将が口を挟んだ。
「先ほど、裏葉連隊長代理から連絡が入りました。現地住民の代表が『空き地の町暫定自治政府』
を名乗り接触してきたそうです。彼らは、正葉寄り中立での独立自治権を求めており、
その交渉の仲介をこちらに求めてきています」
「何故、こちらに仲介を求めてきたのだ? 正葉に直接交渉を持ちかければ早いだろうに」
折戸の疑問に、しのり〜は苦笑を浮かべつつ答える。
「多分、自治政府代表の名を聞けば納得できますよ――元RR親衛隊大佐・青紫が自治政府暫定主席です」
声にならない驚愕が部屋に満ちた。もちろん彼らも、青紫の過去の悪行は知りすぎるほどに知っている。
「裏葉君に命令を出そう」
衝撃からいち早く立ち直った麻枝が即断した。脳裏では、空き地の町の戦略的価値や
正葉首脳部と青紫の因縁などの事実関係が、高速で渦巻いている。
「可及的速やかに、自治政府の構成員、目的、保有兵力を把握するよう。特に青紫の意図は重点的に洗い出すこと。
あの男の考えが判らん限り、うかつに動けん――これを最優先命令で出すが、いいかな?」
「それと、裏葉中佐に政治交渉に関する全権を与えるべきだと考えます」
涼元が進言する。
「今後の見込まれる情勢の変化と、空き地の町の戦略的重要性を勘案すれば、あの地に大使的な人物を
置いておくことが肝要です。幸い裏葉中佐なら、能力的にまったく問題ありません」
「わかった。その点も了承しよう。なんなら階級を上げて向こう側と釣り合いを取らせてもいい。
涼元さん、その点もお願いする」
「――麻枝君、ちょっと」
会議が終わり麻枝が息抜きに外に出ようとするところを、しのり〜が呼び止めた。
そのまま麻枝を格納庫裏に連れ出す。
「どうしたんだ、一体」
「麻枝君だけに知らせておきたい情報があって」
そっとまわりを伺ってから、しのり〜は切り出した。
「その情報は、折戸さんや涼元さんに知られたらまずいような話なのか?」
「いや、そうじゃないんだけど……まだ確証のない情報なんだけど、事実だとしたら大変なことだから、
一応麻枝君の耳には入れておこうと思って」
「なるほど……で、内容は」
今まさに出撃しようとしているF-16を遠くに見ながら、麻枝は尋ねた。
「昨晩から今朝未明にかけて、“EREL”旅団司令部に国外から何度か不審な通信波が
着信したらしいの。そのことについて」
「ちょっと待て。確かあの旅団に関する通信はすべて戸越君が管制しているはずだ。
内容がわかっているんなら、不審でも何でもないだろう?」
「ところがそうでもないの。戸越君の与り知らない暗号が掛けられていて、内容がわからないの。
戸越君、そのことでかなりお冠みたい」
「何だって?」
はじめて、麻枝の声に緊張が入り始めた。
「つまり、JRレギオン少将が戸越君に隠れて何か画策している――そう言いたいのか?」
「少なくとも、状況証拠だけなら十分ね。そしてその内容は、私たちに知られてはまずいような、
かなり際どいモノと考えていい」
「……」
麻枝はしばし考え込んだ。あの旅団長が独断で何か企んでいる? そんなことがあり得るのか……?
いや、あり得るか。彼はすぐにそう思い直した。上層部からは死守命令。増援のあては全くなし。
そして迫り来る下葉最強の装甲部隊。そんな状況下に決して上層部に従順とは言えない指揮官が放り込まれたら、
まず何か策謀を巡らす筈だ。何よりもまず、自分自身が生き残るために。
「その通信がどこから発信されたかわかるかな?」
「駄目。どれも特定はできなかった――ただ、1回だけ割り出しかけたんだけど、どうやら気づかれたみたい。
旅団から大出力の通信波を叩き付けられて、傍受機器が昇天したわ」
「そこまでするか、普通?」
黒マルチ艦隊とアビスボートでもあるまいし、とても味方同士がやることとは思えない。
「その時のデータから一応の発信地の推測はできるんだけど、はっきりとは特定できない」
「それでもいい。どこだったんだ?」
麻枝の問いに、しばらく躊躇してからしのり〜は答えた。
「一番可能性の高いのは、エロゲ国北方総督領トヨハラ――WINTERS師団司令部所在地よ」
230 :
旅団長:02/06/06 21:08 ID:z4QWvAu7
>>220-229「自治州領突入」投下完了です。ちぃと長すぎたか……
とりあえず、両軍の現時点での戦略を出してみました。
>>219 どうしてこう、このスレ的にお誂え向きなんだか(w
231 :
名無しさんだよもん:02/06/08 02:41 ID:xd4bHD/I
あげめんて
で、何桁目を縦読みするんですか?
そんな事よりちょいと聞いてくれよ。結構関係あるんだけどさ。
さっき、下葉北部攻め込んだんです。下葉北部。
そしたらなんか戦車がめちゃくちゃいっぱいで進撃できないんです。
で、よく見たらなんかテネレッツァ師団とか書いてあるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前らな、新師団如きで普段来てない下葉北部に来てんじゃねーよ、ボケが。
新師団だよ、新師団。
なんかヘリコプターとかもいるし。ヘリと戦車でエアランドバトルか。おめでてーな。
よーしパパ機関砲撃っちゃうぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。
お前らな、スティンガーぶち込んでやるから地獄に落ちろと。
戦場ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
いつ敵に見つかって蜂の巣にされてもおかしくない、
やるかやられるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。枯葉どもは、すっこんでろ。
で、やっと布陣したと思ったら、敵の隊長が、世界一のまじかる魔法ウィッチ、とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。
あのな、世界一なんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。
得意げな顔して何が、世界一、だ。
お前は本当に世界一なのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、RRに感染してるだけちゃうんかと。
ゲリラ通の俺から言わせてもらえば今、ゲリラ通の間での最新流行はやっぱり、
AT−4、これだね。
AT−4。これが通の武器。
AT−4ってのはRPG−7より威力が高い。そん代わりちょっと高め。これ。
で、そいつで戦車あぼーん。これ最強。
しかしこれをやると次から敵兵にマークされるという危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあお前ら素人は、装甲車でも狙ってなさいってこった。
それもいいけどこっちも聞いてくれよ。本筋とちょっと外れるけどな。
さっきゲットーの警備命じられたんですよ。月厨の。
そしたら増援がめちゃくちゃ態度悪い奴で命令聞かないんです。
で、よく見たら耳が人間じゃないんです。
もうね、アホかと。銃殺だぞと。
お前らな、いくら漏れがキティGUYだからってこんなのよこすんじゃねーよ、旅団長。
ヌワンギだよ、ヌワンギ。
なんか武器が刀とかだし、このご時世にチャンバラごっこか。おめでてーな。
お前折れの命令きけねーのか、とか逝ってるの。もう見てらんない。
お前な、このカスールの銃剣でティムポぶったぎってやるからとっとと史ねと。
ゲットー警備ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
いつ両方の住民から投石始まってもおかしくない、
両方ぶっ頃すか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。チンピラ風情は、皆殺しにしたるぞ。
で、ティムポぶった切ったと思ったら、市にぞこないが、史にたくない、とか言ってるんです。
そこでまたブチ切れですよ。
あのな、命乞いなんで今日日はやんねーんだよ、ボケが。
真っ青な顔して何が、医者はどこだ、だ。
お前本当に俺が助けると思うんかと問いたい。問い詰めたい。肉削ぎながら問いつめたい。
お前、原作よりマシな死に方出来ると思うなよ、と。
虐殺通の俺から言わせてもらえば今、虐殺通の間での最新流行はやっぱり、
火焔放射器、これだね。
火焔放射器。これが通の武器。
火焔放射器ってのは銃器より射程が短い。そん代わり長く燃える。これ。
で、追加で黄燐手榴弾。これ最強。
しかしこれをやると翌日黒襟に呼び出されるという危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあお前らゲリラは、北部下葉でも進軍しなさいってこった。
「この問題はいずれ解決しなければならないものだったからな。きみのプランは実験的で有意義
だと思う」
鍵自治州州都目前の小都市に設けられた、装甲軍臨時司令室で装甲軍総司令官と第13RR義勇
装甲擲弾兵師団を兼任する、柳川裕也大将は提出された計画書に淡々と感想を述べる。
「では」
釣り目のショートカットに少女の面影を残した未だ若い女性士官の顔に期待と不安が浮かぶ。
「好きなだけやってみろ。その間君の大隊は副官の雨宮君に任せる」
「は、はい!ありがとうございます」
女性士官の顔が明るくなる。
青村早紀少佐
その風貌と性格はおよそ士官に似つかわしくなく、大学に入りたての女子大生のような印象
を第三者に抱かせる。が、これでもリーフ軍大学校を常に10番以内の成績で卒業し、模擬戦
での統率力の優秀さに一一(にのまえはじめ)学長に「風貌能力ともに超大佐に反比例した姪」
と言わしめている。
大学卒業後も順調に出世を重ね、現在は第13RR義勇装甲擲弾兵師団ヨークの大隊指揮官と
いう地位についている。実力主義の装甲軍において大隊指揮官となったことからも彼女が単な
る秀才型指揮官でわないことが解る。
そして、今回彼女はある計画を携えて、彼女の上司である、柳川大将に承認を受ける為に
司令室に足を運んだ。
事の発端は陥落させた鍵自治州の小都市でゲリラと市民を区別し、兵の『予期せぬ犠牲』
と民間人の『不本意な虐殺』を防ぐ為、保護票を発行している際に民衆に暴行を受けてる
月姫難民を装甲軍の憲兵が発見したことである。
両者に話を聞いた所、保護票を受け取る為に並んでいる民間人の列から月姫難民を締め出
そうとし、それに暴行を受けた青年が抵抗したのが原因という理不尽極まりないものであった。
この事件は暴行に参加した民間人の30日間の逮捕拘禁という刑罰で幕を引いたが、この事件
に興味を持った青村早紀少佐は、月姫難民の現状を調査し彼らの鍵市民からの差別と死と隣り
合わせの現状に驚き、解決を図る為の知恵を絞ることとなる。
居住区を廃止し、鍵自治区内を自由に出入り出来るようになっても、彼らを雇おうとする人間
は皆無に等しい。それ以前に命すら危うい。結局彼らが最も安心出来る場所は居住区だけとなる。
そこで彼女は月姫難民からなる部隊の結成を計画し、柳川大将に具申する。
教官は彼女の指揮下にある大隊から熟練下士官20名と憲兵隊から30名を工面することに成功
し、演習基地も廃校した学校校舎見つけることが出来た。
2000名の生徒の他に作業員も月姫難民から雇い入れる。
要するに彼女は予備戦力の構築と月姫難民の衣食住と職の解決を同時に図ったのだ。
一通りの準備を一応は終えた、早紀は自室の部屋から窓の外の月明かりを眺めながら呟いた。
「ふう、でも本当に上手くいくかなあ」ため息と少しの間の後言葉を続ける「泣きそうだよお」
その後、結果としてこの計画は久弥派鍵系、葉系で構成される装甲軍をより多民族化させること
になる。
そしてしばらく俯いた後、早紀は月を見上げ、強い口調でつぶやいた。
「でも、やるしかないよね」
237 :
鮫牙:02/06/08 22:51 ID:a2tvweat
投稿終わりますた。という訳で旅団長、Airシティ戦では早紀たんの指揮して
いた大隊は副官の雨宮大尉が指揮しています。多少のハンデになればいいなあっと。
__________________
___ /
/´∀`;::::\< 何やら難しいお話です、はい。
/ メ /::::::::::| \__________________
| ./| /:::::|::::::|
| ||/::::::::|::::::|
239 :
分断 1:02/06/09 16:55 ID:Kh1ZdRoJ
『――おい。kagami! kagami!』
司令部付隊配備のジープの中で仮眠を取っていたkagami中尉は、無線機ががなり立てるその声で
たたき起こされた。
「は、はい! 我が身の全てをあなた様方に捧げます、しおり姫、さおり姫……」
『だぁあっ、寝ぼけてるんじゃねぇ!』
「――なんだ、ヌワンギか」
ようやく頭が覚めたkagamiが、交代でゲットー警備の指揮を執っている妖狐兵団ゲットー分遣隊の
ヌワンギ隊長相手に毒づく。
確か、昼間に股間を負傷して病院にかつぎ込まれたとか言っていたが、とふと思う。
それなのに良くもまぁこんなに元気な声が出せるもんだ。さすが獣耳、体の強靱さが違う。
「私の至福の夢を無粋にも邪魔したからには、よほどの重大事態なんだろうな?」
『至福の夢の中身は聞かないでおいてやるよ』
「聞けよ! いいか、この世を統べる4人の幼き女神たちは……」
『――難民どもの中で、義勇兵志願の動きが広がっている』
賢明にも、ヌワンギは一方的に用件を伝えることでkagamiのオルグを断ち切った。さすがのkagamiも、
一瞬で事態の深刻さを悟る。
「何だと? 志願者はどれくらいいる?」
『今、門のところに100人は集まっている。まだまだ増えそうだぜ。この調子じゃ、
難民全員が志願してきそうな勢いだな』
「莫迦な……大人しくしていれば、柳川大将相手に大人しく降伏できるのに」
そのまま大人しくしていれば、月姫難民は戦時法において保護の対象になりうる。
柳川大将や久瀬内務尚書の「刃向かわなければ悪いようにはしない」方針を信じるならば、
少なくとも殺されることはない。
しかし義勇兵といえども銃を取って抵抗してしまったら、彼らはあくまでも「敵」として
難民を扱うだろう。その先に何が待っているか、特に説明の必要もない。
「わかった、私もすぐそっちに行く!」
240 :
分断 2:02/06/09 16:56 ID:Kh1ZdRoJ
日雇いSS軍曹の運転するジープでゲットー入口に急行したkagamiをヌワンギは駆け寄って出迎えた――が、日雇いの姿を見ると顔色を変えて、股間を押さえつつ後ずさる。
「? どうした、ヌワンギ?」
「な、な、な、なんでもねぇ!」
本人は粋がっているつもりなのだろうが、真っ青な顔で((((゚Д゚)))ガクガクブルブル していては、
ちっとも説得力がない。
「……まあいい。とにかく、状況を説明しろ」
「あ、ああ、わかった」
気を取り直して、ヌワンギは説明をはじめた――しっかりと、kagamiを日雇いの楯にできる位置に移動してからだが。
「1時間くらい前から、こいつらが集まりはじめやがった。事情を聞いたら『集成旅団に志願したい』
とか抜かしやがる。解散するよう言ったんだが、ちっとも言うこと聞きやがらなねぇ。
それどころか、さっきからまた人数が増えてきた。内部の様子からすると、
どうもみんなこぞって志願したいようだぜ」
「ふぅむ……」
毒づくヌワンギの言葉に頷いてから、kagamiは門を潜って群衆の前へと歩み寄った。
慌ててkagamiに付いていく……というより日雇いから必死に離れるヌワンギ。
「君たち――自分たちが何をやろうとしているのか、判っているのか!?」
kagamiの怒鳴り声に応えるように、群衆の中から一人の少女が歩み出てきた。
あのときの、花売りの少女だった。
「君は……」
「中尉さん、お願いします。私たちも戦わせてください」
241 :
分断 3:02/06/09 16:57 ID:Kh1ZdRoJ
「いや、しかし……」
kagamiは言いよどんだ。自分の胸ほどの背丈しかない少女の真摯な瞳に射すくめられ、
思うように説得の言葉が出てこない。
「何故……何故そんな、むざむざ死ぬような真似を」
それだけ言うのが、精一杯だった。いつもの調子が全く出ない。
「中尉さん、私たち月姫の民は、受けた恩義は決して忘れません」
そう言うと、花売りの少女は両手を胸の前で組み合わせて言葉を続けた。
「私たちは、辛いことばかり味わってきた民です。だから受けた恩は、特にそれが異なる民から受けた恩ならば、
何物にも代え難い宝物なんです。その恩に報いるのに、自分の命を賭けるのは当然です。
みんなそう考えています」
「だからといって……」
「中尉さんは、身を張って私たちを護ってくれました。なぶりものにされるところを、救ってくれました。
だったら今度は、私たちが身を張る番です。『異邦の友人の恩は、身を捨てて報いよ』。
それが、私たちの教えであり、信念です」
「……」
「お願いします!」「頼みます、中尉さん!」「俺だって昔はゲリラ兵だったんだ。ちっとは役に立つはずだぜ!」
口々に言い募る難民たち。そんな彼らの叫びを聞いて、kagamiの脳裏に様々な思惑が去来した。
旅団の戦力、迫り来る敵軍、懲罰大隊の動向、旅団長の意向、自分の信念、そして目前の少女の眼差し――
それらをどうにか一つの考えにまとめ、口にしようとしたときだった。
242 :
分断 4:02/06/09 16:58 ID:Kh1ZdRoJ
「kagami中尉!」
彼の背後から怒号が降ってくる。振り返ると、紅茶すらいむ中佐が駆け寄ってくるところだった。
おそらく、急を聞いて駆けつけてきたのだろう。
「これは中佐」
敬礼するkagamiの前まで駆け寄ると、紅茶すらいむは肩で息をしつつ尋ねた。
「事情は、こちらでも、聞いた。彼らが、志願、者か?」
「ええ。現在はこれだけですが、志願を希望するのはほぼ全員でしょう。私は、彼らの志願を
受け入れるべきと判断します」
「……何だとぉ!?」
思わずkagamiの胸倉を掴んで、紅茶すらいむは怒鳴った。kagamiの方がやや背が高いのだが、それには構わず捲し立てる。
「貴様、正気か!? 志願を認めるなど、むざむざ難民に死ねと言ってるも同然じゃないか!」
『月厨を味方になぞできるか!』と言わないあたりが紅茶すらいむらしいのだが、
kagamiは冷めた声で反論した。
「しかし、彼らは全く自発的に志願しています。ここで我々が断っても、個々人のレベルで
RR装甲軍への抵抗を試みるでしょう」
その言葉にやや怯む紅茶すらいむに構わず、言葉を続ける。
「そうなっては、志願を受けようが受けまいが一緒で、どっちみち殺されます。ならば、志願を
受け入れて旅団が彼らの抵抗を管制した方が、まだしも犠牲が少なくて済むんじゃないですか、中佐」
「……そうは言っても、ろくに軍事教練も受けていない難民を志願兵にする莫迦がどこにいる?
それに、難民の大半は老人や女子供だぞ」
「何も最前線に投入しろなんて言っていません。後方支援任務に就かせればいい。大体、
そっちを担当するはずの自治州軍や動員兵の士気ががた落ちの現状では、そうでもしないと
戦線を維持できませんが、何か?」
243 :
分断 5:02/06/09 16:58 ID:Kh1ZdRoJ
「その士気をどん底に叩き落としたのは、一体どこの誰だったかな?」
皮肉を吐いて胸倉を話すと、紅茶すらいむは忌々しげにため息を吐いた。
「まぁ確かに、中尉の言うことにも一理ある。しかし司令部が納得……」
その時、携帯無線機が彼を呼びだした。慌てて回線を開く。
「はい、紅茶すらいむ中佐――旅団長!?」
背筋を伸ばして、彼は無線越しに上官に対し襟を正した。
「はい――はい、そうです。その件ですが、kagami中尉が――はい、はい――え? いやしかし!
――は、はぁ了解しました」
何とも言えない表情で通信を切ると、紅茶すらいむは半ば呆れたような口調でkagamiに尋ねた。
「なぁ中尉……旅団長に、一体どんな鼻薬をかがせている? ロリビデオか?」
「我がZEROの素晴らしき教えなら毎回唱えていますが、それが一体?」
「『kagami中尉がそう判断したのなら、それで間違いはなかろう』だと。一体どこをどうすれば、
貴様をそこまで信用できるんだろうな」
納得できないという風に天を仰ぐ。思わず苦笑してから、kagamiは群衆に向き直った。
まぁ確かに、あの何を考えているかわからない指揮官に何故そこまで信頼されているかは、
自分もわからないところなんだが。
「淑女のみなさま並びに野郎ども! 聞いてのとおり、君たちは志願兵として認められた。
これからは旅団長の指揮命令系統に入って、こちらに命を預けてもらう!」
歓声が爆発した。肩を叩き合う難民たち。一斉に紅茶すらいむとkagami(とその側にいたヌワンギ)
に駆け寄る群衆。そして、kagamiに抱きつく花売りの少女。
四方からもみくちゃにされ、胸に少女の心地よい体温を感じながら、kagamiはポツリと呟いた。
「ま、腹を括りますか」
244 :
分断 6:02/06/09 16:59 ID:Kh1ZdRoJ
さて、kagamiが志願を認める気になった直接の理由が、「花売りの少女が身長130cmの、
大人びた言動の割にはロリロリな外見だったから」だと知ったなら、果たして彼女はどう思ったであろうか?
もっとも幸いなことに、彼女が真相を知ることはなかったが。
こうして、「州都において、JRレギオン子飼い部隊以外では最も士気の高かった部隊」
として知られる月姫義勇隊がようやく登場する。
そして、彼女らは知らない。RR装甲軍隷下に月姫RR義勇兵部隊が編成されつつあることを。
同胞相撃に至る悲劇の引き金を、自らの手で引いてしまったことを。
245 :
旅団長:02/06/09 17:01 ID:Kh1ZdRoJ
246 :
岐路:02/06/09 19:44 ID:7bdUajHK
葉鍵国北部に突き刺さった田所の頚木は四本。
二本はドートンヴォリ川の流れより発し、ロイハイト地方の州都ロイハイト市へと突き刺さる。
AF師団と『歌月十夜』師団がその矛先。
AF師団は言うに及ばず、田所広成が直接支配する山賊紛いの武装集団である。
規律はともかく、指揮官・兵の能力と装備の面では侵攻軍最強を誇る。
完全装備の一個装甲師団規模の兵力は、90式U型MBT、YW309ICVを主軸とする中国最新鋭の装甲車輛で固められていた。
参謀長に馬羽龍馬少将を迎え、君島大佐、灰田大佐らの残忍さと攻撃性では他に累を見ない指揮官達を擁するこの師団だからこそ、河田中将のテレネッツァ軍の放った横合いからの第一撃を持ち応え、がっちり組み合う形に持ち込めたと言える。
では、エロゲ国の全面支援(AF師団だけではない!)のもと、エロゲ国内に拠点を持つ月姫ゲリラにより編成された『歌月十夜』師団はどうか。
確かにこれも、完全装甲化された装甲師団である。しかしその装備はAF師団のお下がり、旧式この上ない。
59式や69式戦車、63式軽戦車、77式兵員輸送車などが大半で、85式U型などは数えるほどしかない。
弾薬も潤沢とはいえない。離反を警戒する田所は、彼らに必要とするだけの補給しか与えないのだ。
兵の能力も高いとは言えない。兵士の多くは北葉とエロゲ国内で活動していたゲリラ出身。
加えて、AF(そしてエロゲ国)が国内の月厨を一掃するために月姫主義反葉鍵義勇軍を計画した時に、募兵に応じた義勇兵たち。
正規軍としての部隊行動も満足に行なえないならず者の集団だ。
しかし、その迫害の歴史、確固たる信念を行動の背景とするだけに、彼らの士気は天を衝くほどに高い。
……時に、溜め込まれた憎悪が暴走する嫌いはあったのだが。
いずれにしても、幾多の新たな憎悪の火種を振りまきながら、今『歌月十夜』師団は最もロイハイトに迫る位置に兵を進めている。
両師団の予備兵力として、CODEPINK旅団がこれに続く。
田所の本来の支配地、STONRHEADS集団軍に属する新編部隊であった。
247 :
岐路:02/06/09 19:44 ID:7bdUajHK
ともに西方海岸沿いより発する残り二本のくびき。
一本はまっすぐ海岸沿いに南へ向かい、ボスニア港を窺がう姿勢を示している。
この集団の基幹部隊はももグミ師団。
残り一本は、最初ももグミ師団とともに南進を続け、テネレッツァ軍の登場に対応する形で同軍の南方に回り込む運動を示していた。
これがSTONEHEADS師団とPIL師団、NEOPIL旅団の三個師団である。
この内、NEOPIL旅団に関しては、訓練未完で定数不足のまったく帳簿上だけでの旅団であった。
残りの二個師団も、葉鍵国の正規部隊に比べれば決して精強な師団とは言えない。
しかし、これらを指揮するのは『女郎蜘蛛』の名将として知られる丸谷秀人大将だった。
凋落著しいエロゲ国田所派、恐らくはその最良の将軍の一人であろう彼の存在は、戦力的な劣勢をカバーしうるものだ。
フェーネル山麓、国境から南方25キロ地点、アノル。
田所地上軍侵攻直後、下葉警察軍との間で五日間の攻防戦が繰り広げられたこの渓谷は、かつて風の町と呼ばれ人口八万人ほどの葉系住民が生活していた。
絨毯爆撃、無差別砲撃、略奪、虐殺、仕上げの放火。
住民は既に一人も残っていない。
都市から脱出する難民の車列は、その多くが蜂起した月姫ゲリラによって襲撃され、殺害された。
都市に残った住民の多くは、激しい戦火とその後のAF師団兵、月姫兵の蛮行に晒され、命を落とした。
下葉兵員の死者・行方不明者、4216名。
非戦闘員の死者・行方不明者、34562名。
248 :
岐路:02/06/09 19:47 ID:7bdUajHK
後に確定されたその被害の多くは、田所軍が住宅街中心を制圧した四日目から、戦闘が終結した翌日の六日目にかけて発生した。
後の世に『アノル虐殺事件』として名高い戦争犯罪の顛末である。
戦火の果て、業の後。
人工物のほとんどが瓦礫か灰燼と化して、まともな建造物が何一つ残らないアノル市街。
焼け跡の中に、ただ一つ大きな施設が残っている。
アノル第一小学校。
熱され炙られ融解しかけたそのプレートから、辛うじてそう読み取れた。
遊具も残らぬ校庭には、主たるべき子供はいない。
屯するのは迷彩服の集団。兵士とも呼べないならず者ども。
頭の中身は、子供より幼稚かもしれない。
略奪した戦利品を見せ合い、どれだけの女を強姦したかを自慢する―――剥き出しの残虐性。幼児性が溢れている。
彼らを引率すべき教師たちは、それぞれ校舎の中を塒にしていた。
兵たちが外気の寒さに晒される中、彼らを使って校舎内を整理・修復させ、やはり戦利品の暖房を持ち込んで自己の生活環境の改善に勤しんでいた。
一部の部屋など、本当にここが教室だったのかとあっけに取られるほどの内装の変わりようを見せている。
将校は何処の軍でも特権階級。
しかし、この田所軍でのそれは常軌を逸している。
その常軌を逸した軍の常軌を逸した総帥は、校長室を己が個室として使用していた。
もちろん、内装は丸一日費やして変更してある。彼好みの派手で悪趣味なものに。
ごてごてと奇異なもので飾り立てたその室内は、もちろん馬羽龍馬少将にとって驚きに値するものではない。
249 :
岐路:02/06/09 19:47 ID:7bdUajHK
彼が驚愕に顔を強張らせることがあるとすれば、むしろこの逆。田所大将の個室があまりにシンプルで機能的なものに変貌していた場合だろう。
「丸谷軍の存在は、敵増援後方に圧迫を加えつつあります。前線からの報告によると、敵軍の正面火力は前日に比して40%減少しました」
「ロイハイトをいつ落せるかが勝負になるな、こりゃ」
ソファに身を投げだし、天井を見上げて田所が呟く。
北部の要衝ロイハイトを包囲して四日。市街外周での戦闘は激化する一方で、まだどちらが優勢とも知れぬ戦況だ。
「馬羽ちゃん。実際、ロイハイトを落せると思うかい?」
「航空優勢はこちらが掌握しています。火力でも圧倒しておりますし、陥落は時間の問題かと」
ただ、と一言付け加える。
「その時間が最大の問題、となりますね」
「それだ」
そこが問題なんだ、と田所は頷いて眉を顰めた。
ロイハイトを守るのは、国境での戦いで撃滅し損ねた警察残存部隊3000名ほどと、郷土防衛隊6000の一万にも満たない貧弱な兵力だ。
本来なら問題なく攻め潰せる敵。
解囲部隊に対応するため、兵力を割いていなければ問題なく攻め潰せるはずの。
「手間取れば下川に反撃の機会を与えちまうな……」
「いっそのこと、この段階で月厨どもに全て任せて我々は引き上げますか?」
「それか、敵の増援に一撃加えて逃げるかだな」
今退くか、一戦して退くか。
退くのは規定事項。
ただ、その引き際が問題だ。
敵増援が出て来たからと言ってケツをまくるのではただの火事場泥棒。
下葉に一定の打撃を与えた事実は誹謗中傷に相殺され、名声を取り戻す事は叶わないだろう。
その上、フリーになった敵兵力が鍵自治州に投入される可能性がある。
250 :
岐路:02/06/09 19:50 ID:7bdUajHK
これは拙い。今度の介入には、下葉兵力を誘引し、葉鍵国内戦長期化を謀る意図も込められているのだ。
では決戦を挑めばどうか?
勝っても負けても名声は手に入る。
そして負けはまずあるまい。兵力ではこちらが優勢なのだ。
しかし、やはり勝っても負けても出血は大きいものになる。
……今後のエロゲ国での勢力争いに、マイナスになってもプラスにはならない結果も予期される。
そして万が一敗北するような事があれば、自分の政治的生命は完全に絶たれるだろう。
「ち……増援の投入が早かったな。下川の決断力ってのを見誤ってたか」
一転、自身が窮地に立たされた事を自覚して、田所は立て続けに何度か鋭い舌打ちを漏らす。
そして軽く瞑目した。今日まで自身の生存を託してきたその直感、それに今度の選択肢も委ねてみようとこころに決める。
どちらを選ぶにしても、そのリスクは極めて高い。
結局どちらのリスクを選ぶか、だ。質量が同じなら、あとは好みの問題じゃないのか?
それに大都市(つまりはロイハイトだ)を一つ消せば、国内の評価も変わる可能性だってある。
何にしても、ロイハイトだ。ここを落さないとそれから後のステップには進まない。
ならその戦闘の帰趨に賭けてみると良い。
落せたらテネレッツァに決戦強要。落せなければ、あとは月姫どもに後を委ねるだけの話だ。
がばっとソファから身を起こし、参謀長の顔を見上げた田所の顔に笑みが浮んだ。
明日の遠足の予定を話す子供のように、日の変わるのが待ちきれないその様子。
「よし。明日、ロイハイトに総攻撃をかける。勝てば良し、それでダメならケツを捲くるぞ」
251 :
岐路:02/06/09 19:50 ID:7bdUajHK
轟音を立てて、殲轟7型戦闘爆撃機の編隊がロイハイト目掛けて飛んでゆく。
その上空を守るのは、殲撃8UM戦闘機の群れ。殲撃11型(つまりはフランカー)の姿もある。
田所軍最良の航空兵力と言って過言ではないだろう。
ようやく再編成が整い、北部戦線に投入されはじめているMiG23/27フロッガー主体の下葉防空軍に決して引けをとらない陣容だ。
そのエアカバーのもと、『歌月十夜』師団は前進する。
師団長のOKSG大佐は遙任――遠く正統リーフの地から離れられずにいる。
代わって指揮をとるのはもう一人のシキ。
AFの将帥たちに勝るとも劣らぬ狂人、師団長代行:遠野四季大佐。
「総攻撃か……くくく、面白くなってきたじゃないか」
総攻撃を含めた全ての状況。
それらを一まとめにして彼は「面白い」と表現する。
遠野志貴とアルクェイド。シェルも含めておいたほうが良いかもしれない。
あの忌々しい連中を除けばすべては彼にとって余興に過ぎない。
ああ、もちろん愛する秋葉を幸せにしてやるというのは全てに優先する至上命題なのだが―――
「ロイハイトを地上から消せば―――」
「遠野が怒るんじゃないか。顔も見たくないって言われるかもね」
月姫蒼香大佐が言う遠野とは、無論四季がライバル視する遠野志貴大佐ではなく、最愛(一方通行だが)の妹である遠野秋葉大佐のことだ。
「うぐっ……しかたない。大人しく行くか。せっかくの状況なのに……」
容赦のない蒼香の指摘に、うなだれてぶつぶつと不平を呟く四季大佐。
秋葉に嫌われる事をなによりも嫌うシスコンであった。
252 :
岐路:
やれやれとその後姿に肩を竦め、月姫大佐は部屋を退出しようとする。
やることはいくらもある。急遽決定した総攻撃を翌日に控えているともなれば、この頼りのない師団長代行の指示を待つ間にもさまざまな準備を整えなければならないのだ。
と、その背中に、四季大佐の呼び声がかかった。
「とは言ってもな。連中、手綱を絞れる状況じゃないような気がするんだが」
振り帰った月姫大佐の眼差しの先。
窓の外、兵たちが熱唱する愛国歌を耳にして四季大佐は面差しを曇らせる。
「パッケーだな、まるで。狂熱に酔いしれ、」
難しい顔をしながら、それは表層だけの事だ。
四季大佐の声音には愉しげな色が隠しようもない。
漠然……明確な形がないから、漠然としたままの不安。
その不安がどう具現化するかはわからない。ただ、それが実際のものになるという確信だけは、月姫大佐の胸中に生まれた。
鋭い視線が突き刺さる、それは彼にとってはむしろ痛快ですらある反応だった。
もはや表情にも狂喜を隠そうともせず、四季大佐は腕を大きく広げて歌うように言う。
「さぁて、本当の戦争をはじめようじゃないか。
オレたち迫害されし流浪の民が、真の解放を手にするための栄光の戦争をな?」
<糸冬>