放課後を告げるチャイムが鳴り、解放された女生徒達の声がにぎやかに響き始める。
ある者は部活へ、ある者は談笑しながら外へ、そしてある者は教室に残って、話に花を咲かせている。
その中の一団。ショートボブの少女が、一人離れて、荷物を鞄に詰め込む少女に話しかける。
「ねぇ、理奈。今日、デニが新作デザートメニュー出すんだって、一緒に行かない?」
友人の呼びかけに、理奈と呼ばれた少女が振り向く。流れそこねたツインテールを掻き上げ、背中に回した。
そんななにげないしぐさにさえ、光の欠片を撒くような、華やかさがある。
表情が曇った笑顔であることが、非常に惜しい。
「ごめん、早紀。今日はレッスンがあるから……。良かったら、また誘って。じゃあ!」
理奈は優雅さと快活さを併せ持つ足取りで、教室の外へと駆けだしていった。
早紀はその背に向かって手を振り、小さいため息をついた。
談笑していた面々が、しょげた早紀の肩を叩く。
「ほらね。理奈はダメだって。いつも誘っても断るんだから」
「うん。でもぉ……今日はヒマかも、って思って」
「しょうがないよ。私たちだけでいこ。あ、新メニューだけどさ……」
「理奈、もう一度。最後のターンではもっと高く飛べ。それと足をふらつかせるな。最後が決まらなかったら、全てがアウトだぞ」
「は……はいっ!」
切れ切れの息の下から、強い返事を返す。美しい顔から汗が玉になって零れ、フローリングの床に落ちた。
「英二さん……少し休ませましょう。理奈ちゃん、もうふらふらじゃないですか」
あまりにハードな練習に、見かねたプロデューサーがそう言うが、
「いえ……まだやれます。もう一度」
遮ったのは、理奈だった。足はまだ疲労に震えているが、目の光は少しも損なわれていない。
「理奈もこう言ってる。もう一度頭から」
「しかし……」
「続行だ」
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