三月一日。美坂香里の誕生日。北川潤はその日、学校に現れなかった。
「どうしたの、香里? なんだか元気なさそうだけど」
「え? んーん、何でもないわ。心配かけてごめんね、名雪」
その日の終礼。涙をこらえながら教室に入ってきた担任が伝えた、衝撃的な事実。
北川が、交通事故で死んだという、そんな話。
登校中に、道に飛び出した女の子をかばって、代わりにはねられたらしい。
そんな担任の話を全て聞くこともなく、教室を飛び出す香里。それを追う名雪と祐一。
久しぶりに訪れた北川の家。そこで香里は、北川と無言の対面を果たす。
布団の中に在る北川は、とても事故にあったとは思えないほど、いつも通りだった。
それは、まるで眠っているかのような。
「ねぇ、北川君? 嘘でしょ? 冗談でしょ? いつもやってるみたいな……」
呆然と呟く香里。北川の頬に触れる。命の温もりは感じられなかった。
「嘘っ! 嘘って言ってよ! ねえ! ねえってば!!」
北川をかき抱いて上半身を起こさせる香里。何の力も反応も返ってこない。
そんな香里に何の言葉もかけられず、ただ後ろで見ているしかできない祐一と名雪。
もう動かない北川を抱きしめて泣いている香里の姿に、いたたまれず二人は部屋を出る。
香里独りしかいない部屋。やがて涙も枯れた頃。
北川を横たわらせ、彼に向かって語りかける。
「ねえ……どうしてあたし、素直になれなかったのかしらね。
どうしてこんなきっかけがないと、素直になれないのかしらね」
枯れたはずの涙もまた湧き出してくる。
「北川君……あなたの優しさ、素直さ、勇敢さ……全部含めて、あたし、あなたのことが好きだったのよ」
そう言って、もう冷たい北川の唇に、自分の唇を重ねた。
「っしゃああぁぁぁぁ!!!! 北川潤、大復活ううぅぅぅぅ!!!!」
上がる雄叫び。立ち上がる北川。呆然とする香里。
「ありがとう、美坂っ! お前の愛のパワーで、無事地獄から這い上がってきたぜ!」
目を白黒させていた香里だったが、何となく現状を理解すると、口を開く。
「本当に? 帰ってきてくれたのね北川君! ああっ、あたしうれしいっ!!」
さしもの常識人香里も、目の前で起こった不可解な現象に、何かスイッチが壊れたようで。
「俺はもう一度 この腕で抱き締めるために 地獄から蘇ったぜ 何か文句があるかよ?」
「全然ないわ あたしあなたに抱かれるために 生まれて来たんだから もうどうってことないわ」
歌うように語り合う二人。
「ああっ、生き返って最初に美坂の顔が見られるなんて、これ以上の幸せはないって感じだぜ!」
「そんなっ! でもそんなことより、美坂なんて他人行儀な言い方しないで、香里って呼んで♪」
「ああ、わかったぜ香里! だったら俺のことも、潤って呼んでくれよな!」
「うん、わかったわ、じゅーん♥」
いつの間に部屋に入っていたのか、祐一と名雪が二人で合唱している。
「「♪らーーららーららー ラブゾンビー ラブゾンビー♪」」
北川と香里を中心に激甘フィールドが広がっていく。
たまたま窓際を通りがかった猫がフィールドに呑まれて、白い彫像と化した。
ソドムを顧みたロトの妻は塩の柱になったというが、猫は砂糖の塊になっていた。激甘だし。
「もう放さない! 例えどっちかが死んだとしても、あたしたちは永遠に一緒よ、潤!」
「もちろんさ! さあ、二人だけの誰も知らない物語を始めようぜ、香里!」
「「♪らーーららーららー ラブゾンビー ラブゾンビー♪」」
「神様ありがとうっ! あたしの人生で、最高の誕生プレゼントだわっ!」
「そんなことないさ! きっとこれから、どんどん幸せになる、いや、幸せにしてみせるぜっ!」
「「♪らーーららーららー ラブゾンビー ラブゾンビー♪」」
そんな幸せそうな二人を中心に、町の人たちはどんどん砂糖の柱になっていきましたとさ。
めでたしめでたし。
>>338-339 以上「ぱんちら舞を録画できなかった某氏のための、北川×香里の砂を吐くようなおはなし」でした。
ええそうです。筋少のあの曲がモデルですよお兄さん。
なんつーか、ベタにベタを重ねてさらにベタを塗ってベタを振りかけたって感じですな。
こんな感じでよかったんでしょうか?どうも自分としては、何かが間違ってる気がしないでもないのですが(w
>>337 お話割り込んじゃってごめんなさいです。エピローグお待ちしてますですよ。にゃあ。