914です
>>909氏の「家出」のシーンからアナザーストーリーでお目汚しを
「もういやよ。何もかもいや!」
涙をにじませた目を伏せ勝ちに、何かから逃げるような早足で街を行く秋子。
秋子は確かに逃げていた。
現実逃避の大言壮語ばかりで、社会の革新どころか、家庭の保守さえできない夫から。
成長を拒否して引篭り、怯懦と怠惰の言い訳をカルトまがいの思想に求める息子たちから。
そんな3人を、強く優しい母・貞淑な妻として支えた自身の人生から。
20年間家庭を気丈に支えてきた自分の中で、何かが壊れたような気がした。
だが、自分を縛っていた自分自身が「何か」から解き放たれたような気も…
家を飛び出したものの、秋子には行くあては無かった。
父は「女三界に家無し」を、女のあるべき姿として常に秋子に説きつづけた。
「夫が至らないなら、それを補うのが妻の務めだ」。受け入れてくれるはずもない。
また、年老いた父の心労を増やすこともしたくなかった。
それでも秋子は逃げる。あの家から少しでも遠くへ。