日本をアジア大陸において占めていた地位から排除しようとしながら、
もしそれが成功した場合、そこに生ずる空白を埋めるものは、我々が排除した
日本よりもさらに好みに合わない権力形態であるかもしれないという大きな
可能性について、我々は何ら考慮しなかったのだと、私には思われた。
そしてこれは実際に起こったことなのである。
このことに関連して、私が今言及している講演が、朝鮮戦争中に行われた
ものであることを指摘したい。私は当時、朝鮮半島において我々が陥って
いた不幸な事態の中に、我々が以前日本の国益について理解を欠いていた
ことへの、また日本に代わる好ましい勢力があるかを考えもせずに、
日本をその地位から排除することにのみ固執したことへの、皮肉な罰と
いうべきものを認めないわけにはいかなかった。
この例によって、私は外交政策における我々の選択が必ずしも
善と悪との間で行われるのではなく、むしろより大きい悪とより小さい悪
との間で行われることが多いことを指摘しようとしたのである。
「我々は、大陸からの圧力を防ぎ止めるために、この地で戦うこととなった。
思えばこの圧力こそ、他の誰かが防ぎ止めていた時には、なんということは
ないと思っていた圧力なのだ。」 (朝鮮戦争勃発に際して)
ウォルター・A・マクドゥーガル著 『太平洋世界』 (共同通信社)
ジョージ・F・ケナン
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