『諸君!』 2007年7月号
激論 「従軍慰安婦」置き去りにされた真実
日米首脳の露骨な政治決着をどうとらえるか。対立する研究者が一堂に会して白熱の討論
秦 郁彦(現代史家)/大沼保昭(東京大学大学院教授)/
荒井信一(茨城大学名誉教授・駿河台大学名誉教授)
http://www.bunshun.co.jp/mag/shokun/shokun0707.htm 【大沼】・・・・まずはこれまでの経緯を振り返りつつ、なぜ慰安婦問題が再燃したのか、その
背景を探ってみたいと思います。米国との関係で慰安婦問題の消長を振り返ると、何回かの
盛り上がりがみられますね。
【荒井】 はい。今回は過去から数えて慰安婦問題「第三の波」といえるでしょう。
(中略)
【荒井】 もう一点、今回の第三波で非常に重要なのは、日本の「ナショナル・プライドの回復」
を警戒する声が共和党内からも出始めていることです。小泉、安倍両政権の下、靖国参拝や
改憲へ向けた動きが具体化していますが、これを警戒している。さらに、「教科書から慰安婦
の記述が消える」「復古調の歴史教科書が登場した」という情報が伝えられ、警戒感を増幅し
た面もあります。
【秦】 ここらで日本を叩いておけ、という意図でしょうか。
【大沼】 そうした意図も米側にはあるかもしれない。
(続く)
>>349 (続き)
(中略)
【秦】 たしかに大沼さんがおっしゃったように、今回の決議案に至る流れはメディアが形成
したともいえます。
(中略)
【大沼】 以前から感じていることですが、外国メディアの特派員の中には、日本の
女性問題や戦争責任問題について先入観をもって取材している人がかなり多いですね。
そんな記者が書いた記事を諸外国の読者が読み、日本に対する歪んだイメージが
定着していくのは恐ろしいことです。国益という議論以前に、世界に日本を正確に理解して
もらうためにも、外国メディア特派員に何らかの対応を迫られているのではないでしょうか。
今回の安倍発言が問題になっていた四月から五月にかけて、私は講演のためハーバード
大学を訪問していたのですが、ジョン・ダワー教授など著名な日本研究者が異口同音に
強調していたのは、「『ニューヨーク・タイムズ』にせよ『ワシントン・ポスト』にせよ、
米国のメディアの日本報道は極めて偏っており、われわれは非常に憂慮している」という点
でした。また、海外メディアではありませんが、在日外国人がよく読む『ジャパン・タイムズ』
の報道も慰安婦問題については極めて偏向しており、当初から一貫して先入観に満ちた
記事を掲載していましたね。
【秦】 とくに『ニューヨーク・タイムズ』の偏向ぶりは目に余りますね。わけてもノリミツ・オオニシ
支局長(日系カナダ人)は、たびたび日本の歴史問題について記事を執筆していますが、
学問的根拠もなしに荒唐無稽な内容に満ち溢れたキワモノ記事が多い。
(続く)
>>350 (続き)
(中略)
【秦】 ジャーナリストだけでなく、いわゆるジャパノロジスト(日本学者)の偏向も目につきます。
たとえばハーバード大学のアンドルー・ゴードン教授はライシャワーの後継者として著名な
日本史学者ですが、『日本の200年 徳川時代から現代まで』(みすず書房)という著作をめく
っていたら、慰安婦について間違いだらけの記述をしていました。「数は十万から二十万人」
「銃で脅されて拉致された」「女性たちの多くは、賃金の支払いを受けなかった」「売春婦という
よりも奴隷に近い状態」式の二流週刊誌も書いたことがないひどい認識を下品な筆致で書いて
いるのです。これがハーバードの正教授かと、溜め息が出てしまいましたよ(笑)。
『中央公論』 2007年7月号
特集●〈情報を奪われ続ける日本の現実〉 インテリジェンスという戦争
情報能力の欠如という弱みを抱える日本がいま直面している危機とは何か
大英帝国、情報立国の近代史
民主主義国のインテリジェンス・リテラシーとは 中西輝政
アメリカの場合も同じで、アメリカ大使館の一等書記官が実はCIA東京支局長であるとか、
AP通信の東京特派員は実はCIAの××部局員であるといったことは珍しくなかった。
http://www.chuko.co.jp/koron/back/200707.html