お気に入りの和歌はありますか？　巻第七

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ねをかけよ鳴くや軒ばの山鳥のしだり尾ながきあやめをぞふく(正徹)

あらち山峰の白雪やたののに浅ぢをかけてうづむ比かな(正徹)

4様なれ

朝戸あくる袖にさえ来てあらち山はらふばかりの峰のあは雪(宗祇)

あらち山みねのあは雪ふるままにやたのの浅茅うちしぐれつつ(九条道家)

あらち山みねのあは雪きえなくにやたの野原は若菜つみけり(飛鳥井雅有)

あらち山ふもとのあさぢ露のまにはやくもふれる峰の淡雪(三条西実隆)

あらち山やたのの野べも春めきぬ峰のあは雪きえやしぬらん(後鳥羽院)

かたしきのとふのすがごも冴えわびて霜こそむすべ夢はむすばず（李花集)

山たかみ我のみふりてさびしきは人もすさめぬ雪の朝あけ（新葉479)

わすれめや都のたぎつ白河の名にふりつみし雪の明ぼの（李花集）

おのづから雪ふみわけて問ひこしも都にちかき山路なりけり（李花集)

雪つもる越のしら山冬ふかし夢にもたれか思ひおこせん（李花集）

山里の年の暮こそあはれなれ人のたてたる門の松かは（宗良親王千首）

この暮もとはれむ事はよもぎふの末葉の風の秋のはげしさ（新葉921）

ありそ海のうら吹く風もよわれかしいひしままなる波の音かは（新葉964）

うきほどはさのみ涙のあらばこそ我が袖ぬらせよその村雨（新葉513)

北になし南になしてけふいくか富士の麓をめぐりきぬらん（新葉540）

木曾路河あらしにさえて行く浪のとどこほるまをしばしまたなん（李花集）

旅の空うきたつ雲やわれならん道もやどりもあらしふく頃（李花集）

ひとり行く旅の空にもたらちねの遠きまもりをなほたのむかな（李花集）

老の波またたちわかれいな舟ののぼればくだる旅のくるしさ（新葉525)

わすれずよ一夜ふせやの月の影なほその原の旅心ちして（新葉557）

おくれじと思ひし道もかひなきはこの世のほかのみよし野の山（新葉1324）

嵐ふき空にみだるる雪もよに氷ぞむすぶ夢はむすばず(九条良経「千五百番歌合」)

富士の山いくかすぎぬとかぞふれば同じ麓に有明の月(顕昭「三百六十番歌合」)

ゆふま山松の葉風にうちそひて蝉のなくねも峰わたるなり（顕昭「六百番歌合」)

死にやらぬ命ひとつにはかられて憂き身のはてを人に見えぬる(顕昭・「守覚法親王家五十首」)

つらきをも憂きをも夢になしはてて逢ふ夜ばかりをうつつともがな（新勅撰977）

ふじのねは問はでも空にしられけり雲より上にみゆるしら雪（新勅撰1296）

をしからぬ命なりせば世間の人の偽になりもしなまし(貫之)

手もふれで月日へにけるしらま弓おきふしよるはいこそねられね(貫之)

思ひやるこしの白山しらねどもひと夜も夢にこえぬよぞなき(貫之)

白雲の衣ほすてふ山がつの垣ほの谷は日影やはさす(藤原家隆)

白妙の衣ほすなり郭公天のかぐ山おりはへてなけ(藤原家隆)

春ををしみ天の香具山袖ぬれてあすは卯月の衣ほすとも(藤原家隆)

いまよりの秋風たちぬしろたへの衣吹きほすあまのかぐ山(藤原家隆)

いつしかと衣ほすめりかげろふの夏きにけらし天のかご山(藤原隆季)

雲晴るる雪の光や白妙の衣干すてふ天のかぐ山(藤原良経)

白妙にゆふかけてけり榊葉に桜さきそふ天のかぐ山(藤原俊成[続拾遺])

春霞しのに衣をおりかけていくかほすらん天のかご山(藤原良経[続後撰])

白妙の衣ふきほす木枯しのやがて時雨るる天のかぐ山(藤原雅経[続古今])

朝あけの霞の衣ほしそめて春たちなるる天のかぐ山(土御門院[続古今])

なきぬなり木綿付け鳥のしだり尾のおのれにも似ぬ夜半のみじかさ

片糸をよるよる峰にともす火にあはずは鹿の身をもかへじを

ひさかたの中なる河のうかひ舟いかに契りてやみを待つらん

蘆の屋のかりねの床のふしのまにみじかく明くる夏の夜な夜な

うちなびくしげみが下のさゆり葉のしられぬほどにかよふ秋風

いまはとて有明のかげの槙の戸にさすがに惜しき水無月の空

飛鳥河ゆくせの浪にみそぎしてはやくぞ年の半ば過ぎぬる

秋とだに吹きあへぬ風に色かはる生田の杜の露の下草

須磨の海人のなれにし袖もしほたれぬ関吹きこゆる秋の浦風

なほざりの小野の浅茅に置く露も草葉にあまる秋の夕暮

浅茅生の小野の篠原うちなびき遠方人に秋風ぞ吹く

五月雨の雲間の月の晴れゆくをしばし待ちける時鳥かな

うつりあへぬ花の千草にみだれつつ風の上なる宮城野の露

散らば散れ露分けゆかん萩原やぬれての後の花の形見に

しのべとやしらぬ昔の秋をへておなじ形見に残る月影

秋をへて昔は遠き大空に我が身ひとつのもとの月影

天の原おもへばかはる色もなし秋こそ月の光なりけれ

いそがれぬ年のくれこそあはれなれ昔はよそにききし春かは(西園寺公経)

ははきぎのよそめばかりは道たえて一夜ふせやの影もしられず(後柏原天皇)

その原やふせ屋におふるははきぎのありとはみえてあはぬ君かな(坂上是則)

山風に桜吹きまきみだれなむ花のまぎれに立ちとまるべく(遍昭)

時雨より猶さだめなくふる物はおくるる親の涙なりけり

防人の堀江こぎいづる伊豆手舟楫とる間なく恋はしげけむ(大伴家持「万葉集」)

いづて舟おひ風はやく成りぬらしみほの浦わによする白波(順徳院)

時しらぬ山は富士のねいつとてかかのこまだらに雪のふるらむ(伊勢物語)

菅原や伏見の暮に見渡せばかすみにまがふを初瀬の山

袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ（古今2・貫之）

霞たちこのめもはるの雪ふれば花なきさとも花ぞちりける（古今9・貫之）

かすがののわかなつみにや白妙の袖ふりはへて人のゆくらむ（古今22・貫之)

わがせこが衣はるさめふるごとにのべのみどりぞいろまさりける（古今25・貫之）

あをやぎのいとよりかくる春しもぞみだれて花のほころびにける（古今26・貫之）

人はいさ心もしらずふるさとは花ぞむかしの香ににほひける（古今42・貫之)

くるとあくとめかれぬものを梅の花いつの人まにうつろひぬらむ（古今45・貫之）

にほひをば風こそおくれ人はいさ心もしらぬ宿の梅が枝(足利義尚)

天の下めぐむ草木の芽も春に限りも知らぬ御代の末々(式子内親王)

松の葉の白きを見れば春日山木の芽もはるの雪ぞ降りける(源実朝)

ちりぬればとふ人もなし故郷ははなぞむかしのあるじなりける(源実朝)

くるとあくとめかれぬ空も霞みけりいつの人まに春はきぬらん(宗良親王)

山たかみ見つつこえゆく峰の松かへりこむまで面がはりすな(長慶天皇)

うちむれて若菜つむ野の花かたみこのめも春の雪はたまらず(家隆[続古今])

おしなべて木の芽も春のあさ緑松にぞ千世の色はこもれる(藤原良経[新古今])

白妙の袖にぞまがふ都びと若菜つむ野の春のあは雪(後鳥羽院[続拾遺])

春雨のふりそめしより青柳の糸の緑ぞ色まさりける(凡河内躬恒[新古今])

春風の霞吹きとく絶え間より乱れてなびく青柳の糸(殷富門院大輔[新古今])

青柳の糸を緑によりかけて逢はずは春に何を染めまし(西園寺公経[続拾遺])

袖ひちて我が手に結ぶ水の面に天つ星合の空を見るかな(藤原長能[新古今])

夏の夜は岩がき清水月さえてむすべばとくる氷なりけり(賀茂重保[風雅])

袖ひちて結ぶしら波立ちかへりこほるばかりの松の夕風(藤原家隆)

すむ人もうつればかはる古郷の昔ににほふ窓の梅かな(藤原家隆)

人はいさ心もしらずとばかりににほひ忘れぬ宿の梅がか(正徹)

くるとあくとみてもめかれず池水の花の鏡の春の面影(藤原実有[万代集])

霞たちこのめ春雨きのふまでふるのの若菜けさはつみてむ(藤原定家)

誰が為とまだ朝霜のけぬがうへに袖ふりはへて若菜つむらん(藤原定家)

浅緑霞たなびく山がつの衣はるさめ色にいでつつ(藤原定家)

花の香も風こそよもにさそふらめ心もしらぬ古里の春(藤原定家)

世の中は見しも聞きしもはかなくてむなしき空の煙なりけり

妹背川かへらぬ水の別れには聞きわたるとも袖ぞぬれける

天の下のどけかれとや榊葉を三笠の山にさしはじめけむ

思ひ出でぬ事こそなけれつくづくと窓うつ雨を聞きあかしつつ

山人の昔の跡をきてみればむなしき床をはらふ谷風

ながらへば又このごろやしのばれむうしと見し世ぞ今は恋しき

青柳の糸よりかけて春風のみだれぬさきに見む人もがな(家持集)

青柳の糸のくはしさ春風にみだれぬいまに見せむ子もがも(万葉集・巻十)

よろづ代をちぎりそめつるしるしにはかつがつけふの暮ぞ久しき（千載797）

思ひきや年のつもるは忘られて恋に命の絶えんものとは（千載866）

露の命きえなましかばかくばかりふる白雪をながめましやは（新古1581）

さびしさにあはれもいとどまさりけり独りぞ月は見るべかりける（千載993）

わが庵はをぐらの山のちかければうき世をしかとなかぬ日ぞなき（新勅撰306）　

箱根路を　われ越えゆけば　伊豆の海や　沖の小島に　波の寄る見ゆ

ひとりのみながめて散りぬむめの花しるばかりなる人はとひこず（新古54）

一声はおもひぞあへぬほととぎすたそかれ時の雲のまよひに（新古208）

すぎはてぬいづらなが月名のみしてみじかかりける秋のほどかな（新勅撰361)

神なびのみむろの梢いかならんなべて野山も時雨する比（新古525

里のあまのさだめぬ宿も埋もれぬよするなぎさの雪の白浪（新勅撰425)

ふりつもる雪をさながらてらす月今夜なりけり白川の関（冬題歌合）

つれもなき人の心はうつせみのむなしき恋に身をやかへてむ（新古1146）

かみな月時雨もいまだ降らなくにかねてうつろふ神なびの森

わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人は言ふなり

君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る(紀友則)

思ふにはなほ色あさきもみぢかなそなたの山はいかがしぐるる（新葉1357）

あかで散る花のまぎれに別れにし人をばいつの春かまた見ん（李花集）

我こそはあらき風をもふせぎしに独りや苔の露はらはまし（新葉1388）

いすず川その人なみにかけずともただよふ水のあはれとはみよ（新葉582）

おなじくはちるまでをみて帰るかり花の都のことかたらなん（新葉1025）

いづて舟はや来寄すらしあなし吹くするがの海の三保の興津に（宗良親王千首）

この秋の涙をそへてしぐれにし山はいかなる紅葉とかしる

いかにせむさらでうき世はなぐさまずたのみし月も涙おちけり

ながめつつおもひしことの数々に空しき空の秋の夜の月

むかしだに猶故郷の秋の月しらず光の幾めぐりとも

明けば又秋の半ばも過ぎぬべしかたぶく月の惜しきのみかは

幾里か露けきのべに宿かりし光ともなふ望月の駒

高砂の尾上の鹿の声たてし風よりかはる月の影かな

露さえて寝ぬ夜の月やつもるらんあらぬ浅茅の今朝の色かな

独りぬる山鳥の尾のしだり尾に霜置きまよふ床の月影

惜しみかね思ひこりにし我が心また花見ればあくがれにけり（万代集）

生きてなぞ後のつらさを歎くらん逢ふにかへてし命ならずや（万代集）

友千鳥もろ声に鳴くあかつきはひとり寝ざめの床もたのもし

足引の山のしづくに妹待つと吾が立ち濡れぬ山のしづくに(万葉集・大津皇子) 　

身にかへてあやなく花を惜しむかな生けらば後の春もこそあれ(藤原長能)

身にかへて惜しむにとまる花ならばけふや我が世のかぎりならまし(源俊頼)

世をへても逢ふべかりける契りこそ苔の下にも朽ちせざりけれ

を初瀬の花のさかりを見わたせば霞にまがふみねの白雲（千載74）

月見れば思ひぞあへぬ山たかみいづれの年の雪にかあるらむ（新古388）

恋ひ死なむことぞはかなき渡り川あふ瀬ありとは聞かぬものゆゑ（千載762）

風さゆるとしまが磯のむら千鳥たちゐは波の心なりけり（新古651）

思ひ出づるそのなぐさめもありなまし逢ひ見て後のつらさなりせば（千載701）

こぎいでて生田の浦にうきながら心は月のみ舟にぞのる（季経入道集）

あひゃ

みねたかき天のかご山しろたへのたが衣手を雲にほすらん(藤原信実)

かぐ山のあまぢのかすみおりはへて神もやむかし衣ほしけむ(藤原基家)

五月雨は雲のおりはへ夏衣ほさでいくかぞあまのかご山(藤原為家)

香久山やあまぎる雪の朝がすみそれとも見えずほす衣かな(正徹)

白妙の衣ふきほす木枯しのやがて時雨るる天のかぐ山(藤原雅経[続古今])

朝あけの霞の衣ほしそめて春たちなるる天のかぐ山(土御門院[続古今])

冬きては衣ほすてふひまもなく時雨るる空の天のかぐ山(後嵯峨院[続後撰])

佐保姫の衣ほすらし春の日のひかりに霞む天のかぐ山(宗尊親王[続後拾遺])

佐保姫の霞の衣をりかけてほす空たかき天のかぐ山(二条為重[新後拾遺])

春すぎて夏きにけらし白たへの衣ほすてふあまのかぐ山

夏の来て卯の花白くぬぎかふる衣乾すらし天のかぐ山

香久山やあまぎる雪の朝がすみそれとも見えずほす衣かな(正徹)

飛ぶ鳥の明日香の里を置きて去なば君があたりは見えずかもあらむ（万葉1-78）

下荻もおきふし待ちの月の色に身を吹きしをる床の秋風

白妙の衣しで打つひびきより置きまよふ霜の色にいづらむ

秋とだにわすれむとおもふ月影をさもあやにくに打つ衣かな

山賤の身のためにうつ衣ゆゑ秋の哀れを手にまかすらむ

川風に夜わたる月のさむければ八十氏人も衣うつなり

秋風にそよぐ田の面のいねがてにまつ明け方の初雁の声

伊駒山あらしも秋の色に吹く手染めの糸のよるぞかなしき

高砂の外にも秋はあるものを我が夕暮と鹿は鳴くなり

てる月の心の水にすみぬればやがてこの身に光をぞさす（千載1218）

秋風にあふばせを葉のくだけつつあるにもあらぬ世とはしらずや（久安百首）

敷妙の枕はかへじわぎもこが寝くたれ髪にふれてしものを（久安百首）

ちりまがふ花のよそめは吉野山嵐にさわぐ峯の白雲（新古132）

なつかしき移り香ぞする藤袴われよりさきに妹やきて見し（頼輔集）

身のうさの秋は忘るる物ならば涙くもらで月はみてまし（千載298）

わたの原しほぢはるかに見わたせば雲と浪とはひとつなりけり（千載530）

恋ひ死なむ命はなほもをしきかな同じ世にあるかひはなけれど（新古1229）

恋ひ死なば世のはかなきに言ひおきてなきあとまでも人にしらせじ（千載666）

朝寝髪我は梳らじうるはしき君が手枕触れてしものを(作者不明記「万葉」11-2578)

秋の日は糸よりよわきささがにの雲のはたてに荻のうは風(正徹)

露霜にあへずかれ行く秋草の糸よりよわき虫のこゑかな(正徹)

涙だに心にかなふ秋ならばさやけきままの月はみてまし(宗尊親王)

荻の葉に風の音せぬ秋もあらば涙のほかに月は見てまし(道助親王)

身のうさの秋は忘るる物ならば涙くもらで月はみてまし(藤原頼輔)

花見るもくるしかりけり青柳の糸よりよわき老のちからは(藤原頼輔)

霞たつ春の衣のぬきをうすみ花ぞ乱るるよもの山風(藤原雅経[続拾遺])

橋姫の霞の衣ぬきをうすみまださむしろの宇治の河風(藤原家隆[新後拾遺])

暮かたの秋さり衣ぬきをうすみたえぬ夜寒に今ぞうつなる(源家清[玉葉])

ひなしや因幡の山の松とても又帰りこむ昔ならねば(二条為氏[続拾遺])

鳴すてて因幡の山の郭公なほ立ちかへりまつとしらなん(藤原経平[新後撰])

別路ぞ今は慰む君がかく待つとしきかば千世もへぬべし(源季広[続千載])

峰に生ふる松吹きこしていなば山月の桂にかへる秋風(堯孝)

佐保姫の霞の衣ぬきをうすみ花の錦をたちやかさねむ(後鳥羽院)

よしやさは頼めぬ宿の庭に生ふるまつとなつげそ秋の夕かぜ(後鳥羽院)

夜半の月いづるとやまの嶺におふる松をもはらへ秋ふかき風(後鳥羽院)

程もなくいでていなばの嶺におふるまつとしつれば有明の月(後鳥羽院)

君が代にくらぶの山の峰に生ふるまつは千とせをかぎるばかりぞ(源実朝)

都にもまつとしきかばいでさのみ紀のせきもりよ人なとどめそ(木下長嘯子)

放蕩のすゑの松山母ひとり待つとし聞けば今から逃けむ(�恂{邦雄)

網いれて大魚とるらん舟あそびまつとしきかば来む日頃へず(橘曙覧)

思ひあへず秋ないそぎそさ牡鹿のつまどふ山の小田の初霜

さを鹿のふすや草むらうらがれて下もあらはに秋風ぞ吹く

夕づく日むかひの岡の薄紅葉まだきさびしき秋の色かな

時雨つつ袖だにほさぬ秋の日にさこそ三室の山はそむらめ

久方の月の桂の下紅葉宿かる袖ぞ色にいでゆく

契りありてうつろはむとや白菊の紅葉の下の花に咲きけん

夕づく日うつる木の葉や時雨にしさざ浪そむる秋の浦風

長月の月の有明の時雨ゆゑ明日の紅葉の色もうらめし

すまのうら関ふきこゆる春風にかすみみだるるあけぼのの空(藤原範宗)

あふさかの関ふきこゆる風のうへにゆくへもしらずちる桜かな(兼好)

女の尻の穴を舐めれええええええええええええええ

信濃路や見つつわがこしあさま山雲は煙のよそめなりけり（新葉1176)

いほざきや松原しづむ波まより山はふじのね雲もかからず（新葉1177）

をはつ瀬の鐘のひびきぞきこゆなる伏見の夢のさむる枕に（李花集）

夢の世にかさねて夢を見せじとや尾上の鐘のおどろかすらん（李花集)

われを世にありやととはば信濃なるいなとこたへよ嶺の松風（李花集）

思ひきや手もふれざりし梓弓おきふし我が身なれんものとは（新葉1234）

春の夜のおどろく夢は跡もなし閨もる月に梅が香ぞする

つばくらめ簾の外にあまたみえて春日のどけみ人影もせず

浅緑みじかき草の色ぬれてふるとしもなき庭の春雨

昨日けふ世はのどかにてふる雨に柳が枝ぞしだりまされる（風雅110）

あさがほの花のまがきは明けにけり月に見えつる露もさながら（徽安門院一条集）

窓しろき寝覚の月のいりがたに声もさやかにわたる雁がね（風雅548）

さびしさのながめは明日もかくやあらむ秋と冬との名はかはるとも（徽安門院一条集）

むら時雨もるや板まのときのまも思ひさだめぬ月の影かな（新千載610）

秋みしはそれとばかりの萩がえに霜の朽葉ぞ一葉のこれる（風雅759）

さびしさのながめはわきつ夕日さす岡べの松の秋のはつ風(藤原家隆)

けふよりは春とは知りぬ然りとて昨日にかはる事はしもなし(京極為兼)

月影のさしくるおなじ板間より音してもるはむら時雨かも(俊恵)

雪となりしぐれとなりてうき雲のふりもさだめぬ神な月かな(宇都宮景綱)

木々の心花ちかからし昨日けふ世はうすぐもり春雨のふる(永福門院)

逢ふことは波ぢはるかに漕ぐ舟のほのみし人に恋ひやわたらむ（新拾遺1032）

さすがいかに人の思はばやすからんつつむがうへの夢のあふせも（風雅1027）

つつむ中はまれの逢ふ夜もふけはてぬ人のしづまる程をまつまに（風雅1106)

人よされば誰か夜がるる夜がれとて逢はぬたえまをうしといふらむ（風雅1160）

人のかよふあはれになしてあはれなるよ夢はわがみる思ひ寝なれど（風雅1184）

をちかたの里は朝日にあらはれて煙にうすき竹のひとむら（風雅1641）

朝ぎりのはれゆくをちの山もとにもみぢまじれる竹の一むら(前大納言実明女)

しられじな霞にもるる三日月のほのみし人にこひわびぬとも(衣笠家良)

うきながら年ふる中もさすがなるあはれのふしのつもらずはなし(伏見院)

ひとむらの霞の底ぞにほひゆく梅の梢の花になるころ（風雅70）

心うつすなさけよこれも夢なれや花うぐひすの一ときの春（風雅1491）

そことなき霞の色にくれなりてちかき梢の花もわかれず（風雅204）

ふりよわる折々空のうすひかりさてしもはれぬ五月雨のころ（三十六番歌合）

行きなやみてる日くるしき山道にぬるともよしや夕だちの雨（風雅409）

月をまつくらき籬の花のうへに露をあらはす宵のいなづま（風雅577）

花はみな霞の底にうつろひて雲にいろづくをはつせの山(新勅撰・藤原〈九条〉良経)

心うつるなさけいづれとわきかねぬ花ほととぎす月雪のとき〈玉葉・永福門院〉

花霞色わかれつるをちかたはかをるばかりに暮なりにけり(藤原為子)

おもひこし不破の関屋の旅ねかなぬるともよしや夕暮の雨(肖柏)

めぐりゆく雲にしたがふ村時雨いく里かけて冬をつぐらん(伏見院)

みしま江につのぐみわたる蘆の根のひとよのほどに春めきにけり（後拾遺42）

雪きえばゑぐの若菜もつむべきに春さへはれぬ深山べの里（詞花5)

荒小田のこぞの古跡の古よもぎいまは春べとひこばえにけり（新古77）

ねやのうへに雀のこゑぞすだくなる出でたちがたに子やなりぬらん（好忠集）

み苑生のなづなの茎もたちにけりけさの朝菜になにをつままし（好忠集)

花ちりし庭の木の葉もしげりあひてあまてる月の影ぞまれなる（新古186）

かきこもる那智の御山の霜ながら今朝の朝菜に菊やつままし(加納諸平)

春風につのぐみそめし津の国の難波の蘆は今ぞかるらむ(香川景樹)

をざさ原一よのほどにくる春やうれしきふしのはじめなるらん(橘千蔭)

くもりなきおほうみのはらをとぶかりのかげさへしるくてれる月かな(曾禰好忠)

朝風に今日おどろきてかぞふれば一夜のほどに秋は来にけり(和泉式部)

蘆の根もつのぐみぬらん三島江の岸の青柳色づきにけり(藤原家隆)

この里のならの葉がしはもとつ葉もさびしくもあらず茂る下草(藤原家隆)

雪わけてゑぐの若菜もおひにけり今日のためとはいかでしりけん(平忠盛)

山寺のおくのかよひぢきて見れば峰のしきみはもとつ葉もなし(藤原良経)

神まつる比にも今はならの葉の月にもれたるもとつ葉もなし(順徳院)

春はただかすむ色よりおしこめて花鳥までのなさけをぞみる(伏見院)

月も見ず嵐も聞かずのどかなるみ山の庵の夜すがらの雨(伏見院)

明けぬやと寝ざめてきけば秋の夜のさもまだふかき鐘の音かな(伏見院)

明けぬやと鐘よりのちにおきてみればまだ山暗ししののめの空(楊梅兼行)

おきてみれば明がたさむき庭の面の霜にしらめる冬の月かげ(中山家親)

友もなくなすわざもなくつくづくとかかげてひとりむかふともし火(冷泉為村)

くちのこる老木の梅はさきやらで春待ちえても花ぞ稀なる(源有房)

更くる夜の庭のまさごは月しろし木陰ののきに水鶏声して(花園院)

時わかぬ浪さへ色に泉河柞の杜にあらし吹くらし

あさなあさなあへず散りしく葛の葉に置きそふ霜の秋ぞすくなき

秋はいぬ夕日がくれの峰の松四方の木の葉の後もあひ見ん

ただ今の野原をおのがものと見てこころづよくも帰る秋かな

冬はただ飛鳥の里の旅枕おきてやいなむ秋の白露

冬きては一夜二夜を玉ざさの葉分けの霜の所せきまで

晴れ曇るおなじ眺めのたのみだに時雨に絶ゆる遠の旅人

神無月くれやすき日の色なれば霜の下葉に風もたまらず

花鳥のあかぬわかれに春くれてけさよりむかふ夏山の色(西園寺実兼)

待ちなれしむかしににたる雲の色よあらぬながめの暮ぞかなしき(朔平門院)

朝あけのこほる波まにたちゐする羽音もさむき池の村鳥（玉葉942）

ちぎりありて逢ひ見むこともしらぬ世にはかなく人を思ひそめぬる（玉葉1257）

わがこころ春にむかへる夕ぐれのながめの末も山ぞかすめる（風雅7)

梢よりおちくる花ものどかにて霞におもき入相の声（風雅250)

思ひなすほかには春の暮もなしかすめる空にむかふ心は(伏見院)

春雨のゆふぐれしほる花のうへにひびきもおもき入相の鐘(伏見院)

鳥のゆく夕べの空よそのよには我もいそぎし方はさだめき(伏見院)

夜をながみよもの思ひのいくうつりさめてもおなじ窓の灯し火(伏見院)

つくづくと見ぬ空までもかなしきはひとりきく夜の軒の春雨(伏見院)

おきてみる軒端の霜のしろたへにこずゑもさむき冬の朝あけ(伏見院)

霜こほる門田のおもにたつしぎの羽音もさむき朝ぼらけかな(藤原公衡)

風はらふ梢ばかりはかつおちてしづえに残る松の白雪(三条実重)

山ふかき秋をみるにも思ふかなこれよりおくの夕ぐれの空(藤原保季)

ふりにける世々にかはらぬ跡とめてふたたび越えし関の白雪(鷹司冬平)

つくづくと雨ふる里のにはたづみちりて波よる花のうたかた(鷹司清雅)

あらましに思ひしよりもながらへて花と月とにながめなれぬる(衣笠家良)

いつしかもかすみにけらしみ吉野やまだふる年の雪もけなくに（玉葉7）

かつきゆる庭には跡も見えわかで草葉にうすき春の淡雪（風雅40）

しづかなる老の心のなぐさめにありしよりけに花ぞまたるる（新後撰56）

ふりくらす雨しづかなる庭の面にちりてかたよる花の白波（玉葉248）

秋山のふもとをめぐる夕霧にうきて過ぎゆく初雁のこゑ（続千載430）

かりにきてたつ秋霧の曙にかへるなごりも深草の里（玉葉740）

野とならば鶉となりて鳴きをらむかりにだにやは君は来ざらむ(「伊勢物語」第百二十三段)

ねやのうへに片枝さしおほひそともなる葉広がしはに霰ふるなり(藤原忠通)

ほのぼのと春こそ空にきにけらし天のかぐ山霞たなびく(後鳥羽院)

ちりをだにすゑじとぞ思ふさきしより妹とわがぬるとこ夏の花(凡河内躬恒)

早苗とる鳥羽田のおもを見わたせばいくなみあらん田子のをがさよ(藤原俊成)

なれにしもおとらぬものを我やどせよもぎが杣の虫のあるじよ(慈円)

その下のきりぎりすだに音もせで冬がれ蓬たてるすごしも(源具顕)

榊とる卯月になれば神山のならの葉がしはもとつ葉もなし（後拾遺169）

みたやもりけふは五月になりにけりいそげや早苗おいもこそすれ（後拾遺204）

夏衣たつた川原の柳かげすずみにきつつならすころかな（後拾遺220）

そま川の筏のとこの浮まくら夏はすずしきふしどなりけり（詞花76）

蝉の羽のうすらころもになりしより妹とぬる夜のまどほなるかな（好忠集）

曇りなき青海の原をとぶ鳥のかげさへしるくてれる夏かな（好忠集）

みんな騙されないで！！！！
日本でレイプ強姦犯は、中期的に見たら、激減しています！
しかも強姦殺人なんて実は年間ゼロ件。（殺人既遂は年600件、強盗殺人は年60件）

昭和４０年には実に７０００件近くもあった強姦事件は、
最近ではずーっと毎年２０００〜２４００件ぐらいと（全て外国人含む）、
中期的には実は★激減している★のが本当の真実です。みんな騙されないで！！！！

●平成14年警察庁犯罪詳細統計（h14のURLを変えればh15以降もみれます、なお1ページ目は罪責別死傷結果数）
http://www.npa.☆go.jp/toukei/keiji8/☆H14_05_2.pdf　　☆は取って！

●昭和40-45年頃の犯罪統計〜H14の2ページ目と比較すれば強姦犯が中期的には激減しているのが一目瞭然です〜
http://www.npa.☆go.jp/hakusyo/s49/☆s49s0401.html

凶悪なレイプ犯罪が最近激増しているという虚偽の洗脳イメージのバックには、今や●日本最強力の圧力＆権力団体●になった
フェミニズムの凄まじい圧力と要求の一つ（男性に多い犯罪をことさらわめき立てること）があります。
フェミに完全に押さえつけられてもう１０年以上も経ってしまったマスコミの報道から皆さんが日々形成していた虚偽のイメージと、
本当の真実との落差、をきっかけに色々なことに気付いて欲しい。
■■■中期的には、日本で強姦は驚くほど激減しています（７０００件⇒２３００件）■■■

【参考】男女共同参画局予算（年間９兆９千億円！！！！！）
その実体は過激フェミ学者＆団体員の巣窟。
すでに国家・社会・生活の●本当にありとあらゆる面に●、巨大かつｷﾁｶﾞｲじみた影響力を陰に陽に行使。
スーパー省庁として、全ての官庁/審議会に過激メンバーが出向し、そこでも害悪を撒き散らしています。
1997-99年にだまし討ち的に出来たばかりの局が（外野でわめいていたフェミ団体が権力中枢になだれ込みました）、
財政が火の車にもかかわらず、毎年桁外れの●天文学的な●予算を浪費。
さらに権限・利権を貪るために、「男＝悪・ﾀﾞﾒ」の醜悪な宣伝洗脳行為の方もぬかりがありません。
このほか都道府県・市町村全てのレベルで男女共同参画課なるものを作らせ、
そこでもまた信じられないような額がｷﾁｶﾞｲ的に浪費されています。
※本投稿は是非保存しておいて下さい。

みしま江や霜もまだひぬ蘆の葉につのぐむ程の春かぜぞふく(源通光[新古今])

山河のこほりのくさびうちとけて石にくだくる水のしらなみ(藤原有家)

朝ぼらけ霞ながるる山川のこほりのくさびうちやとくらん(如願)

冬来ては田中にたてる水ぐるま氷のくさびうちそへてけり(藤原為家)

むすびおきし雲雀の床も草かれてあらはれわたる武蔵野の原(後鳥羽院)

秋風にほずゑなみよるかるかやの下葉に虫の声よわるなり(西行)

宿さびて庭に木の葉のつもるより人まつむしも声よわるなり(藤原良経)

秋はいぬ風に木の葉は散りはてて山さびしかる冬は来にけり(源実朝)

さらに又うすき衣に月さえて冬をやこふるをののすみやき(後鳥羽院)

花すすき草のたもとも朽ちはてぬ馴れて別れし秋を恋ふとて　

朝夕の音は時雨の楢柴にいつ降りかはる霰なるらん

霰降るしづが笹屋のそよさらに一夜ばかりの夢をやは見る

信楽の外山の霰ふりすさみ荒れゆく冬の雲の色かな

山賤の朝けのこやに焚く柴のしばしと見れば暮るる空かな

旅寝する夢路はたえぬ須磨の関通ふちどりの暁の声

鳴くちどり袖の湊を訪ひこかし唐舟もよるの寝ざめに

浦風やとはに浪こす浜松のねにあらはれて鳴くちどりかな

昨日といひ今日とくらして明日香川ながれてはやき月日なりけり(古今集：春道列樹)

村雨の露もまだひぬ槙の葉に霧たちのぼる秋の夕暮(新古今集：寂蓮)

世をてらす仏のしるしありければまだともし火もきえぬなりけり(千載集：覚忠)

ねがはくはしばし闇路にやすらひてかかげやせまし法のともし火(新古今集：慈円)

さとびたる犬のこゑにぞしられける竹よりおくの人の家ゐは(藤原定家)

夕立の雲間の日かげ晴れそめて山のこなたをわたる白鷺(藤原定家)

雲とほき夕日のあとの山ぎはにゆくともみえぬ雁の一行（風雅539）

暮れもあへずいまさしのぼる山のはの月のこなたの松のひともと（風雅587）

わが心すめるばかりにふけはてて月を忘れてむかふ夜の月（風雅611）

風になびく尾花が末にかげろひて月とほくなる有明の庭（風雅634）

きりぎりす声かすかなる暁のかべにすくなき有明のかげ（新拾遺1617）

おきてみる朝けの軒ば霜しろし音せぬ風は身にさむくして（藤葉集）

君がため惜しからざりし命さえ長くもがなと思ひけるかな（藤原義孝）

かきこもる那智の御山の霜ながら今朝の朝菜に菊やつままし(加納諸平)

をざさ原一よのほどにくる春やうれしきふしのはじめなるらん(橘千蔭)

春風につのぐみそめし津の国の難波の蘆は今ぞかるらむ(香川景樹)

榊とる卯月になれば神山のならの葉がしはもとつ葉もなし（後拾遺169）

みたやもりけふは五月になりにけりいそげや早苗おいもこそすれ（後拾遺204）

夏衣たつた川原の柳かげすずみにきつつならすころかな（後拾遺220）

そま川の筏のとこの浮まくら夏はすずしきふしどなりけり（詞花76）

蝉の羽のうすらころもになりしより妹とぬる夜のまどほなるかな（好忠集）

曇りなき青海の原をとぶ鳥のかげさへしるくてれる夏かな（好忠集）

身にさむく秋のさよ風ふくなへにふりにし人の夢にみえつつ

くもりなきおほうみのはらをとぶかりのかげさへしるくてれる月かな

霜枯るるよもぎが杣のかれまよりゆきげににたる冬の若草(定家)

暮れやらぬ庭のひかりは雪にして奥くらくなる埋火のもと（風雅878）

恋ひあまるながめを人はしりもせじ我とそめなす雲の夕ぐれ（風雅1236）

てる月はわが思ふ人のなになれやかげをしみれば物のかなしき（玉葉1657）

人こそあれ我さへしひてわすれなば名残なからんそれもかなしき（風雅1274）

人しれず我のみよわきあはれかなこのひとふしぞかぎりと思ふに（風雅1275）

春うときみ山がくれのながめゆゑとふべき花のころもわすれて（風雅1479）

志賀の浦や氷も幾重ゐるたづの霜の上毛に雪は降りつつ

駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮

待つ人の麓の道やたえぬらん軒端の杉に雪おもるなり

雪折の竹の下道跡もなし荒れにしのちの深草の里

大伴の御津の浜風吹きはらへ松とも見えじうづむ白雪

神さびていはふ御室の年ふりて猶木綿かくる松の白雪

ながめやる衣手さむく降る雪に夕闇しらぬ山の端の月

小泊瀬や峰のときは木吹きしをり嵐にくもる雪の山本

時しらぬ宿の軒ばの花ざかり君だにとへな又たれをかは(永福門院)

人とはぬ谷のとぼそのしづけきに雲こそかへれ夕ぐれのやま(九条行家)

おほけなくうき世の民におほふかなわが立つ杣に墨染の袖(慈円)

ときはなる松のみどりも春くれば今ひとしほの色まさりけり(源宗于)

雪とのみふるだにあるをさくら花いかにちれとか風の吹くらむ(凡河内躬恒)

はる深き色にもあるかな住の江のそこも緑に見ゆるはま松(よみ人しらず)

川上に夕立すらし水屑せく梁瀬のさ波たちさわぐなり（詞花78）

なが日すらながめて夏をくらすかな吹きくる風に身をばまかせて（好忠集）

きてみよと妹が家路につげやらん我がひとりぬるとこ夏の花（後拾遺227）

みそぎする賀茂の川風ふくらしも涼みにゆかん妹をともなひ（好忠集）

わぎもこが汗にそぼつる寝たわ髪夏のひるまはうとしとや見る（好忠集）

妹と我ねやの風戸にひるねして日たかき夏のかげをすぐさむ（好忠集）

志賀の浦や浜松がえの春の色を空にふかめて立つ霞かな（新千載17）

桜花うつろふ色は雪とのみふるの山風ふかずもあらなむ（風雅239）

かくてこそ見るべかりけれおく山のむろの戸ぼそにすめる月かげ（風雅1566）

今もなほわが立つ杣の朝がすみ世におほふべき袖かとぞみる（新千載1664）

暮れかかる山の下道わけ行けば雲こそかへれあふ人はなし（新続古今947）

わぎもこが汗にそぼつる寝たわ髪夏のひるまはうとしとや見る

みそぎする賀茂の川風ふくらしも涼みにゆかん妹をともなひ

入日さし蜩の音をきくなべにまだきねぶたき夏の夕暮（好忠集)

むら鳥の浮きてただよふ大空をながめしほどに夏はくらしつ（好忠集）

山城の鳥羽田のおもを見わたせばほのかに今朝ぞ秋風はふく（詞花82）

朝ぼらけ荻のうは葉の露みればやや肌さむし秋の初風（新古311）

山里に霧のまがきのへだてずはをちかた人の袖も見てまし（新古495）

神なびのみむろの山をけふ見れば下草かけて色づきにけり（拾遺188）

春日野の雪間をわけておひいでくる草のはつかに見えし君はも(壬生忠岑)

よをかさね待ちもよわらぬ心こそこぬ人よりも猶つれなけれ(平親清五女)

川ごしの柴つみ車いかがするこほりのくさび冬はたえせじ(大江匡房)

秋はててねをなく虫の霜をおもみよもぎが杣の心ぼそさよ(大江匡房)

宇治川や氷のくさびうつたへに水の車ぞ絶えてめぐらぬ(正徹)

梶をたえ行末もしらず由良の戸をわたる舟路の春の霞に(正徹)

音あらき浪の手玉もゆらの戸をわたる舟人心くだけて(正徹)

ゆらのとや波ぢの末ははるかにて有明の月にわたる舟人(北条政村[玉葉])

由良のとを夜わたる月にさそはれて行衛もしらず出づる舟人(源家長[続後拾遺])

かぢをたえ由良の湊による舟のたよりもしらぬ沖つ潮風(良経[新古今])

あまのすむ浦こぐ舟の梶をなみ世をうみ渡る我ぞ悲しき(小野小町[後撰])

わが恋は行方も知らずはてもなし逢ふを限りと思ふばかりぞ(凡河内躬恒[古今])

浅みどり野べの霞にうづもれてあるかなきかの身をいかにせん(曾禰好忠[続後撰])

さよふくるままに汀や凍るらん遠ざかりゆく志賀の浦波(快覚法師)

あくる夜のをのへに色はあらはれて霞にあまる花のよこ雲（慈道親王集）

おもひおく種だにしげれこの宿のわがすみすてんあとの夏草（慈道親王集）

風かよふ松は軒ばにうづもれて閨しづかなる雪のあけぼの（慈道親王集）

唐崎の松をもこえてにほの海やみぎはにたかき雪のさざ波（慈道親王集）

唐崎やこほる汀のほどみえて波の跡よりつもる白雪（慈道親王集）

いかばかり花さきぬらむ吉野山霞にあまる峰の白雲(寂蓮「新勅撰集」)

ほのぼのと花のよこ雲あけそめて桜にしらむみよしのの山(西園寺公経「玉葉集」)

しがの浦のこほりをはらふ山風にまたとほざかる雪のさざ波(定為)

暁につもりやまさるそともなる竹の雪をれこゑつづくなり（玉葉976）

かへりみる都のかたも雲とぢてなほ遠ざかる五月雨の空（新葉535）

白妙にたなびく雲を吹きまぜて雪に天霧る峰の松風

なびかじな海人の藻塩火たきそめて煙 は空にくゆりわぶとも

しられじな千入の木の葉こがるとも時雨るる雲に色し見えねば

松が根をいそべの浪のうつたへに顕れぬべき袖の上かな

初雁のとわたる風のたよりにもあらぬ思ひを誰につたへん

久方のあまてる神のゆふかづらかけて幾世を恋ひわたるらん

露時雨下草かけてもる山の色かずならぬ袖を見せばや

名取河いかにせむともまだ知らず思へば人を恨みつるかな

あけやらぬねざめの床にきこゆなり籬の竹の雪の下をれ(藤原範兼)

かへりみるわが故郷は霧こめていやとほざかる大よどの浦(藤原長綱)

なほ冴ゆる嵐は雪を吹きまぜて夕暮さむき春雨の空

朝嵐は外面の竹に吹きあれて山の霞も春さむき頃

峯の霞ふもとの草のうすみどり野山をかけて春めきにけり

何となく庭の梢は霞ふけて入るかたはるる山のはの月

木々の心花ちかからし昨日けふ世はうすぐもり春雨のふる

遠近の鶯の音ものどかにて花ひらけそふ宿の夕暮

はかなくも今をうつつとたのむかな過ぎにしかたの夢にならはで（続後拾遺1227）

あだし野や風まつ露をよそにみてきえんものとも身をば思はず（新後撰1501）

いつまでとかくるたのみぞあだし野に風まつ露を玉の緒にして(公順)

瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあわんとぞ思う（崇徳院）

乱蘆のかれ葉もさやぐ三島江や氷の上は浦風ぞ吹く(二条為道)

風さゆる神がき山のささのはに夕しもさやぎかくるしらゆふ(藤原為家)

梢をばさそひもあかず梅が香のうつる袖まで春かぜぞ吹く（新後拾遺44）

むら時雨はれつる跡の山風に露よりもろき峰の紅葉ば（新千載612）

いにしへをこふる涙にくらされておぼろにみゆる秋の夜の月(藤原公任)

春といへばかすみにけりなきのふまで浪まに見えし淡路島山(俊恵)

難波津に咲くやこの花冬ごもり今は春べと咲くやこの花(王仁)

なにとなき草の花さく野べの春雲にひばりのこゑものどけき

山もとの鳥の声より明けそめて花もむらむら色ぞみえゆく

峰のかすみ麓の花に鳥のこゑ野山の春は夕べなりけり

花の上にしばしうつろふ夕づく日入るともなしに影消えにけり

入相の声する山の陰暮れて花の木の間に月出でにけり

散るとなみ花おちすさぶ夕暮の風ゆるき日の二月の空

み吉野は春のけしきにかすめども結ぼほれたる雪の下草（後拾遺10）　

世の中をなになげかまし山ざくら花見るほどの心なりせば（後拾遺104）

ほととぎす声まつほどは片岡の杜のしづくにたちやぬれまし（新古191）

しののめの空霧りわたりいつしかと秋のけしきに世はなりにけり（玉葉449）

あしひきの山の雫に妹待つと我立ち濡れぬ山の雫に(大津皇子「万葉」2-107)

をぐら山秋とばかりのうす紅葉しぐれて後の色ぞゆかしき（玉葉766）

咲きわけし花の名はなほしられけり秋の末野の霜がれの比（三十番歌合）

けさのまの雪は跡なく消えはてて枯野のくち葉雨しほるなり（玉葉987）

いかにせむ雲のゆくかた風のおと待ちなれし夜ににたる夕を（風雅1278）

見し夢をわが心にもわすればや問はずがたりにいはれもぞする（玉葉1265）

山人の真柴にまぜてさす尾花風ふかねどもまねきてぞ行く（玉葉2275）

逢ひ見てののちの心を先づ知ればつれなしとだにえこそ恨みね

年もへぬ祈る契りは初瀬山をのへの鐘のよその夕暮

おもかげは教へし宿にさきだちて答へぬ風の松に吹く声

世とともに吹上の浜のしほ風になびく真砂のくだけてぞ思ふ

住の江の松のねたくや寄る浪のよるとはなげき夢をだに見で

暮るる夜は衛士のたく火をそれと見よ室の八島も都ならねば

蘆の屋に蛍やまがふ海人やたく思ひも恋も夜はもえつつ

うへしげる垣根がくれの小笹原しられぬ恋はうきふしもなし

みどりなるひとつ草とぞ春は見し秋はいろいろの花にぞありける

あけぬれば色ぞわかるる山のはの雲と花とのきぬぎぬの空（惟宗光吉集）

雨はるるなごりの露やおもからし下枝かずそふ山ざくらかな（惟宗光吉集）

ふじのねははれゆく空にあらはれてすそ野にくだる夕立の雲（風雅1515）

みし秋の尾花の波にこえてけり真野の入江の雪のあけぼの（惟宗光吉集)

いつしかとほのめかさばや初尾花たもとに露のかかるおもひを（惟宗光吉集）

夜をこめて山路はこえぬ有明の月より後の友やなからん（続千載833）

さをしかのいるのの薄はつをばないつしか妹が手枕にせん

ちる花をせめてたもとに吹きとめよそをだに風のなさけとおもはん（風雅1473）

神まつるけふぞ吹きける朝東風のたよりまちつる旅の船出は（道行きぶり）

勝つことは千里のほかにあらはれぬ浦ふく風のしるべまちえて（道行きぶり）

世にすまばげにかくもがなつれなくて残るを惜しむ有明の月（東野州聞書）

分けゆけば花にかぎりもなかりけり雲をかさぬるみ吉野の山（新千載99）

みるままに門田のおもはくれはてて稲葉にのこる風の音かな（新後拾遺321）

てる月のかくるるにつけて思ふかな雲がくれにしよはのかなしさ(源通親)

めぐりあひておなじ雲井にながめばやあかで別れし九重の月(尊良親王[新葉])

たづねても人ぞたどらん面影をみしや其ともおぼえざりせば(下冷泉持為)

あやしくもむすぼふれぬる心かなみしやそれともまだわかぬまに(烏丸光広)

いかにして思ひ出づらん俤のみしやそれともわかぬ契りを(武者小路実陰)

めぐりこし月にとはばやこぞのけふ雲がくれにし人のゆくへを(本居宣長)

めぐりあひて見し夜の空もみづぐきに月かげながらうつしとめけむ(加納諸平)

おほかたの秋のあはれを思ひやれ月に心はあくがれぬとも（千載299）

年くれて我が世ふけゆく風のおとに心のうちのすさまじきかな（玉葉1036）

雲のうへの物思ふ春はすみぞめにかすむ空さへあはれなるかな（玉葉2298）

めぐりあひて見しやそれともわかぬまに雲がくれにし夜半の月かげ（新古1499）

なきよわる籬の虫もとめがたき秋のわかれやかなしかるらん（千載478）

北へゆく雁のつばさにことづてよ雲のうはがきかき絶えずして（新古859）

月影のそれかあらぬかかげろふのほのかにみえて雲がくれにし(源実朝)

数ならで心に身をばまかせねど身にしたがふは心なりけり（千載1096）

めづらしき光さしそふさかづきはもちながらこそ千世もめぐらめ（後拾遺433）

くれぬまの身をば思はで人の世のあはれをしるぞかつははかなき（新古856）

いとどしく春の心の空なるにまた花の香を身にぞしめつる（新勅撰44）

春ごとに心をしむる花の枝に誰がなほざりの袖かふれつる（新古49）

ふく風ぞ思へばつらき桜花心とちれる春しなければ（後拾遺143）

またぬ夜もまつ夜もききつほととぎす花たちばなのにほふあたりは（後拾遺202）

滝つ瀬や岩もとしろくよる花はながるとすれど又かへるなり

峰つづき暮れて吹きたつ山風にさかぬ野辺まで花ぞ散りしく

岩がくれ咲けるつつじの人しれず残れる春の色もめづらし

薄緑まじるあふちの花みれば面影にたつ春の藤浪

ほととぎす空に声して卯の花の垣根もしろく月ぞ出でぬる

ほととぎす声もたかねのよこ雲になきすてて行く明ぼのの空

そらならばたづね来なまし梅の花まだ身にしまぬ匂ひとぞ見る(藤原頼通)

こぬ人によそへて見つる梅の花ちりなん後のなぐさめぞなき(藤原定頼)

きみならで誰にか見せむ梅の花色をも香をもしる人ぞしる(紀友則)

きみならで誰にか見せむ梅の花色をも香をもしる人ぞしる(紀友則)　

行きくらすゐなのささ原そよさらに霰ふりきぬ宿はなくして(藤原為家)

夜な夜なの月も涙にくもりにき影だに見せぬ人を恋ふとて

我が袖にむなしき浪はかけそめつ契りも知らぬ床の浦風

白玉の緒断の橋の名もつらしくだけて落つる袖の涙に

恋ひ死なぬ身のおこたりぞ年へぬるあらば逢ふ世の心づよさに

あふことはしのぶの衣あはれなど稀なる色に乱れそめけん

今のまの我が身にかぎる鳥のねを誰うきものと帰りそめけん

忘れずは馴れし袖もや氷るらん寝ぬ夜の床の霜の狭筵

忘れじの契りうらむる故郷の心もしらぬ松虫の声

風わたるゐなのささ原そよさらにうきふししげく露ぞ乱るる(九条教実)

うらみばやゐなのささ原とにかくにいでそよつらきふしのしげさを(宗尊親王)

しかのこゑ虫の音もまだ有馬山ゐなのささ原そよや初雪(木下長嘯子)

暮るる日のゐなのささ原風たちぬいでそよ夏をわするばかりに(中院通勝)

春風はそよとばかりの音もなし霞みわたれる猪名のささはら(契沖)

天の原へだてぬ月をしるべにてもろこしまでも行く心かな(寂然)

今日といへば唐土までもゆく春を都にのみと思ひけるかな(藤原俊成[新古今])

心のみもろこしまでもうかれつつ夢路に遠き月の比かな(藤原定家[続古今])

大かたの秋の寝覚のながき夜も君をぞ祈る身を思ふとて(藤原家隆[新古今])

うたた寝にもろこしまでもみつる哉夢はうつつに猶まさりけり(源季広[続後拾遺])

いとどまた光やそはん白露に月まちいづる夕顔の花(津守国助[新後撰])

かげしげき木のした闇のくらき夜に水の音して水鶏鳴くなり

草の末に花こそみえね雲風も野分ににたる夕暮の雨

夕立の雲も残らず空晴れてすだれをのぼる宵の月影

夜の雨に竹の葉末はなびき伏して朝けの窓の風の涼しさ

むら雀声する竹にうつる日の影こそ秋の色になりぬれ

風にきき雲にながむる夕暮の秋のうれへぞたへずなりゆく

夕顔の光をそへし白露の消えにしかげぞ面影にたつ(源通親[高倉院昇霞記])

心あてに露も光やそへつらむ月に色なき夕顔の花(源具親[千五百番歌合])

たそかれにほのぼのみえし夕顔の花の露にや光そへけん(西園寺実材母)

むらさめの露けき花の夕顔に光そへてもゆく蛍かな(飛鳥井雅有)

咲けばちる夜のまの花の夢のうちにやがてまぎれぬ嶺の白雲(正徹)

夢にだにあふ夜稀なる都人ねられぬ月に遠ざかりぬる(九条良経[新後拾遺])

夢ならばまたも見るべき面影のやがてまぎるる世をいかにせん(藤原忠良[新後拾遺])

おのづから逢ふ夜稀なる契をば忍ばずとても誰かしるべき(藤原信実[新拾遺])

まだ宵と思へばしらむ横雲にやがてまぎるるみじか夜の月(源有忠[玉葉])

霜枯れはそことも見えぬ草の原誰にとはまし秋のなごりを(藤原俊成女[新古今])

あま人のもしほの煙なびくやと思ふかたより風もふかなん(花園院[新千載])

思へただ逢ふ夜稀なるあけくれに露きえわびし人の面影(後鳥羽院)

袖にふけさぞな旅寝の夢はみじ思ふかたよりかよふ浦風(藤原定家[新古今])

初雁も思ふ方をやしたふらんなくねにまがふ秋の浦波(三条実重[新続古今])

恋ひわびてなくねにまがへ友千鳥思ふかたよりせめてかよはば(宗良親王)

河浪のよる瀬にわたる村千鳥なくねにまがふ水の音かな(後崇光院)

河浪のよる瀬にわたる村千鳥なくねにまがふ水の音かな(後崇光院)

なけやなけ蓬が杣のきりぎりすすぎゆく秋はげにぞかなしき（後拾遺273）

身にさむく秋の夜風のふくからにふりにし人の夢にみえつる（好忠集）

人はこず風に木の葉はちりはてて夜な夜な虫は声よわるなり（新古535）

妹がりと風のさむさにゆく我をふきなかへしそさ衣の裾（好忠集）

なにごともゆきていのらむと思ひしに神な月にもなりにけるかな（詞花140）

ひさぎおふる沢べの茅原冬くればひばりの床ぞあらはれにける（詞花141）

心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花〔源氏物語・夕顔「夕顔」〕

見てもまた逢ふ夜まれなる夢のうちにやがてまぎるる我が身ともがな〔源氏物語・光源氏「若紫」〕

うき身世にやがてきえなばたづねても草の原をばとはじとや思ふ〔源氏物語・朧月夜「花宴」〕

霜の下にかきこもりなば草の原秋の夕べもとはじとやさは(西園寺公経[千五百番歌合])

めには見て手にはとらえぬ月のうちの桂のごとき妹をいかにせむ(湯原王「万葉集」)

ありと見てたのむぞかたきかげろふのいつともしらぬ身とはしるしる(作者不詳「古今和歌六帖」)

霜氷る門田のおもにたつしぎの羽音もさむき朝ぼらけかな(藤原公衡[続後撰集])

朝ぼらけなく音さむけき初雁の葉月の空に秋風ぞふく(真昭法師[続後拾遺集])

思ひいづることは現かおぼつかな見はてでさめし明暮の夢(弁乳母)

さめやする今はとみえし秋の夜の夢路かたしくさよの手枕(藤原家隆)

消えはつる夕べも悲し明け暮の夢にまよひし春の故郷(俊成女)

浪風に吹上の千鳥打佗びて鳴く音悲しき暁の空(源通光)

夕づく夜沢辺にたてるあしたづの鳴くね悲しき冬はきにけり(源実朝)

はま千鳥なくねかなしき明暮にたが衣々の袖のうら人(正徹)

消えはてん草の原までとはずとも露の哀れはかけむとすらむ(藤原実定)

思ひかね草の原とてわけきても心をくだく苔の下かな(藤原俊成)

よしさらばきえなばきえねうき身世にとはれんものか草の原まで(藻壁門院但馬)

見てもまた程なくあくるしののめにやがてまぎるる村雲の月(長慶天皇)

いかにしてすぎにしかたをすぐしけむ暮らしわづらふ昨日けふかな（千載966）

夜もすがらちぎりしことをわすれずは恋ひむ涙のいろぞゆかしき（後拾遺536）

しる人もなきわかれ路に今はとて心ぼそくもいそぎたつかな（後拾遺537）

煙とも雲ともならぬ身なれども草葉の露をそれとながめよ（後拾遺異本歌・537の次）

わすれじのゆくすゑまではかたければ今日をかぎりの命ともがな（新古1149）

あすならば忘らるる身になりぬべし今日をすぐさぬ命ともがな(赤染衛門[後拾遺])

春霞かすみし空の名残さへけふをかぎりの別れなりけり(九条良経[新古今])

忘れじのゆくすゑかたき世の中にむそぢなれぬる袖の月かげ(源家長[新勅撰])

忘れじのゆく末かはるけふまでもあればあふよを猶たのみつつ(藤原家隆)

逢ひみむの行末まではかた糸のよりよりかこつ中のうきふし(堯孝)

よしさらばつらさは我にならひけりたのめてこぬは誰かをしへし（詞花316）

とこも淵ふちも瀬ならぬ涙川そでのわたりはあらじとぞ思ふ（清少納言集）

これを見ようへはつれなき夏草も下はかくこそ思ひみだるれ（続千載1073）

たよりある風もや吹くと松島によせて久しきあまのはし舟（玉葉1251）

我ながらわが心をもしらずしてまた逢ひみじとちかひけるかな（続後撰843）

関の戸は鳥の空音に明けつれどふままくをしき雪ぞふりぬる(俊恵)

関の戸を鳥のそら音にはかれども有明の月はなほぞさしける(藤原定家)

鳥のねを聞くよりやがて相坂のせきとめがたききぬぎぬの空(飛鳥井雅親)

まれにきてあふさか山のかひもなく鳥の空ねにはかられにける(三条西実隆)

夜をこめて鳥のそらねにはかるともよにあふ坂の関はゆるさじ(清少納言)

いかにしてすぎにしかたをすぐしけむくらしわづらふ昨日けふかな(中宮定子)

野辺までと心ひとつはかよへども我がみゆきとはしらずやあるらん(一条天皇)

これをだにかたみと思ふを都には葉がへやしつる椎柴の袖(一条天皇)

すみませんが、慶賀の詩（現代語訳付き）を読んでは頂けませんでしょうか？
宜しくお願いします。場所はここhttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/6303/1139125056/

月かげのはつ秋風とふけゆけば心づくしに物をこそおもへ（新古今381）

思ひかねながめしかども鳥辺山はてはけぶりもみえずなりにき（詞花395）

足引の山にいり日の時しもぞあまたの花はてりまさりける（風雅202）

いはばしる滝にまがひて那智の山高ねを見れば花のしら雲（夫木抄）

木のもとの住処も今は荒れぬべし春し暮れなば誰かとひこむ(行尊)

おのづから花の下にしやすらへば逢はばやと思ふ人も来にけり(源頼政)

木のもとに住みけむ跡をみつるかな那智の高嶺の花を尋ねて(西行)

木のもとにやどりをすれば片しきの我が衣手に花は散りつつ(源実朝)

尋ねきてうきをのがるる木のもとも棲とすればまつ風ぞ吹く(頓阿)

木の間よりもりくる月の影見れば心づくしの秋はきにけり(よみ人しらず)

桜花こよひかざしにさしながらかくてちとせの春をこそへめ（拾遺286）

葦たづの沢辺に年はへぬれども心は雲のうへにのみこそ（後撰753）

菊の花思ひのほかに移ろへばいとど昔の秋ぞ恋しき(弁乳母[栄花物語])

あるじなき宿の軒端に匂ふ梅いとど昔の春ぞ恋しき(近衛基通北政所[平家物語])

ここのへにかはらぬ梅の花見てぞいとど昔の春はこひしき(源通親[新勅撰])

お医者様でも 草津の湯でも 恋の病は 治りゃせぬ

鶯のやどの花だに色こくは風にしらせでしばしまたなむ（新千載56）

山里の物さびしさは荻の葉のなびくごとにぞ思ひやらるる（後撰266）

をみなへし見るに心はなぐさまでいとど昔の秋ぞこひしき（新古今782）

こぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くやもしほの身もこがれつつ

たれもこのあはれみじかき玉の緒に乱れてものを思はずもがな

いかがせむありし別れを限りにて此の世ながらの心かはらば

うつろはむ色をかぎりに三室山時雨もしらぬ世を頼むかな

消えわびぬうつろふ人の秋の色に身をこがらしの杜の下露

あぢきなく辛きあらしの声も憂しなど夕暮に待ちならひけん

帰るさのものとや人のながむらん待つ夜ながらの有明の月

おもかげは馴れしながらの身にそひてあらぬ心の誰契るらん

しをりつる風は籬にしづまりて小萩がうへに雨そそくなり

尾花のみ庭になびきて秋風のひびきは峯の梢にぞきく

秋の雨の物さむくふる夕暮の空にしをれて渡る雁がね

真萩ちる庭の秋風身にしみて夕日の影ぞ壁に消えゆく

きりぎりす声はいづくぞ草もなき白砂の庭の秋の夜の月

ふりまさる雨夜の閨のきりぎりす絶え絶えになる声も悲しき

はるばると荻の焼原かき分けてみちのゆくてにわらびをぞをる(藤原家隆)

むさしのの荻の焼はらかき分けて遠かた人の霞行くらん(藤原家隆)

軒ちかき梅の立えやしるからん思ひの外にきなく鶯(宮内卿)

心ある軒ばの風の匂ひかな花ちるべくもふかぬものから(嘉陽門院越前)

都へとなにいそぐらむほととぎす暁かけて山ぢいづなり(藤原秀能)

小倉山鹿のたちどのしるべだにたえてかげみぬ五月雨の空(藤原家隆)

見わたせば比良の高ねに雪きえて若菜つむべく野はなりにけり（続後撰34）

けふよりは荻のやけ原かきわけて若菜つみにと誰をさそはん（後撰3）

わが宿の梅のたちえや見えつらん思ひの外に君が来ませる（拾遺15）

道とほみ行きてはみねど桜花心をやりて今日はかへりぬ（後拾遺97）

山桜あくまでいろを見つるかな花ちるべくも風ふかぬよに（続古今104）

世の中にうれしき物は思ふどち花みてすぐす心なりけり（拾遺1047）

山風にちらで待ちけり桜花けふぞこぼれてにほふべらなる(高遠)

花の色をあかでやけふはかへりなん人だのめなる風にまかせて(為光)

山桜ちよの春々けふよりは色さきまされ君がみにこば(能宣)

ほころぶる霞のまよりちる花は山たかみふる雪かとぞみる(能宣)

をぐら山鹿のたちどのみゆるかな峰の紅葉やちりまさるらん(高遠)

恋すてふわが名はまだき立ちにけり人しれずこそ思ひそめしか(忠見)

いざけふはをぎのやけ原かき分けて手折りてを来む春のさわらび(賀茂真淵)

世にあれば今年の春の花も見つうれしきものは命なりけり(本居宣長)

山里も月の夜ごろは心せむおもひのほかに人もとひけり(飛鳥井雅有)

月のかたの思ひの外ににほひしやむめのたち枝の春のさよ風(三条西実隆)

梅の花おもひの外にさくやどは人まちかまへするほどぞなき(木下長嘯子)

朝霞たち枝もみえぬ垣ねより思ひの外に匂ふ梅が香(後水尾院)

思ふには忍ぶることぞまけにける色にはいでじと思ひしものを(読人不知「古今集」)

恋しきをさらぬ顔にてしのぶれば物や思ふと見る人ぞ問ふ(作者不詳「奥義抄」)

白雲のかかる高ねになるほどは幾世つもれる塵にかあるらん(肥後[堀河百首])

山たかみ雲居にみゆる桜花こころのゆきてをらぬ日ぞなき(素性法師「古今集」)

山たかみ雲居にみゆる桜花こころのゆきてをらぬ日ぞなき(凡河内躬恒「三十六人撰」)

たが里の梅のたち枝をすぎつらん思ひのほかににほふ春風(西園寺実氏[続古今])

笹竹のよはにや来つる閨ちかき朝けの窓に鶯のなく(西園寺実兼[風雅])

月も今み山いづらし時鳥ふけゆく空に声のきこゆる(後花園天皇[新続古今])

今年みる我が元結の初霜にみそぢあまりの秋ぞふけぬる(藤原良経[新後拾遺])

ふりにけりわが元結のそのかみに見ざりし色の秋の初霜(源兼康[続古今])

芳野山今年も雪のふる郷に松の葉しろき春の曙(藤原良経[新後拾遺])

都人契りしものをはつ雪に松の葉しろき夕暮の雨(藤原基家)

ながめつつ更行く月の影なれやわがもとゆひの秋のよの霜(宗良親王)

夜夜はわがもとゆひの霜ならでむすびもおかぬ契りをぞまつ(二条為定)

杜鵑あかつきかけて鳴く声を片みみに聞く枕つらしな(桜井基佐)

かすめども芳野の雪の猶さえて松の葉しろきふるさとの春(後鳥羽院)

みよし野の松の葉しろき山のはにかかりもやらぬうす霞かな(後鳥羽院)

置きそめていくよつもれる匂ひともいさしら菊の花のした露(定家)

あふひ草かりねののべに時鳥暁かけてたれをとふらん(定家)

我が道をまもらば君をまもるらむよはひはゆづれ住吉の松(定家)

袖にふけさぞな旅寝の夢はみじ思ふかたよりかよふ浦風(定家)

あじろ木や波のきりまに袖見えて八十氏人はいまかとふらん(定家)

幾千世ぞ袖ふる山の水がきも及ばぬ池にすめる月影(定家)

恋ひわびて泣く音にまがふ浦波は思ふかたより風やふくらむ〔源氏物語・光源氏「須磨」〕

いにしへの秋の夕べの恋しきに今はと見えしあけぐれの夢〔源氏物語・夕霧「御法」〕

霜さゆる汀の千鳥うちわびてなく音かなしき朝ぼらけかな〔源氏物語・薫「総角」〕

見ぬほどにうつろひぬべき梅の花ふかかりきとや後にかたらむ(中務)

恋ひわたる君を見しにはあらねばや思ひ病まれて今日もかなしき(中務)

逢ひみても恋にも物のかなしくはなぐさめがたくなりぬべきかな(（清慎公)

石見のや高津のやまの松風のここに通ひて吹くかとぞきく(木下幸文)

ほのかにも山より月のいづみ川ひかりぞ四方にわきて流るる(三条西実隆)　

袖かけて夕波すずしいづみ川秋のこころや分きてながるる(上冷泉為和)

泉川わきて秋こそかなしけれはらへばむすぶかせの山霧(加納諸平)

みかの原こよひの月の光さへわきてながるるいづみ川かな(松永貞徳)

春はただみきともいはじ泉河わきてかすめる波の上の月(慶運)

泉川こほりにけりなゆく水のわきて流るるかたもなきまで(二条良基)

かけとめよ雲まの月を三かの原袂にわきていづみ川なみ(正徹)

泉川こまのわたりのとまりにもまだ見ぬ人の恋しきやなぞ([夫木抄])

なき影の親のいさめはそむきにき子を思ふ道の心よわさに(定家)

みじか夜のふけゆくままに高砂の峰の松風ふくかとぞきく（後撰167）

けふ堀りて雲ゐにうつす菊の花天の星とやあすよりは見む（兼輔集）

みかの原わきてながるる泉河いつ見きとてか恋しかるらむ（新古996）

よそにのみきかましものを音羽川わたるとなしに身なれそめけむ（古今749）

白雪の今朝はつもれる思ひかな逢はでふる夜のほどもへなくに（後撰1070）

山科の宮の草木と君ならば我はしづくにぬるばかりなり（後撰1397）

夏の夜ののどけき雨をあしびきの山の松風ふくかとぞきく(曾根好忠)

みかの原ながるる河のいつみきとおぼえぬせにもぬるる袖かな(藤原基家)

子を思ふ道こそ闇と聞きしかど親の跡にもまよはれにけり(選子内親王)

花をらむ心もそらに成りにけり子を思ふ道におもひみだれて(大江匡衡)

思ひやるこしの白山しらねどもひと夜も夢にこえぬ夜ぞなき(紀貫之)

花の色はうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに(小野小町)

笛竹の夜ふかき声ぞ聞こゆなる峯の松風吹きやそふらむ(藤原斉信[千載])

位山跡を尋ねてのぼれども子をおもふ道になほまよひぬる(源通親[新古今])

まよひこし心の闇をしるべにて子を思ふ道に月をみる哉(玄覚[新続古今])

くれ竹の世々の宮こときくからに君は千年のうたがひもなし（新勅撰453）

さきにほひ風まつほどの山ざくら人の世よりは久しかりけり（新勅撰1225）

白雲のここのへにたつ峰なればおほうち山といふにぞありける（新勅撰1265）

敷島やこの道なくば子の道に迷ふ心のやみははるけし(正徹)

しらざりし誰もねざめの秋の雨の子をおもふ道にふるは涙を(藤原惺窩)

露だにも名だたるやどの菊ならば花のあるじや幾世なるらん（後撰395）

君がいにし方やいづれぞ白雲のぬしなき宿とみるぞかなしさ（後撰1416）

みじか夜ののこりすくなく更けゆけばかねて物うき暁の空（新古1176）

誰となくおぼろにみえし月影にわくる心を思ひしらなん（後撰737）

旅ねして物おもふ程に秋の夜のありあけの月も出でにけるかな（玉葉1141）

天つ風ふけひの浦にゐるたづのなどか雲居にかへらざるべき（新古1723）

あしたづのさはべの声はとほくともなどか雲ゐにきこえざるべき(信西)

みじか夜のかねて物うき暁にやまほととぎす一声ぞきく(後鳥羽院)

暁のかねて物うきあらしかな月も霜よの道のささ原(藤原家隆)

時鳥うきにかたらふ声ならば物思ふ宿を過ぎがてになけ(宗尊親王)

夏の夜の月まつほどは子規わが宿ばかりすぎがてになけ（清正集）

みわの山すぎがてになけ時鳥尋ぬるけふのしるしと思はん(清原深養父・金葉集初度本)

わくらばにあふ坂山のさねかづらくるをたえずと誰か頼まん(九条道家・新勅撰集)

くる人をいかがいとはむさねかづらたえずはすゑも逢坂の関(蓮瑜)

霞たつあふ坂山のさねかづらまたくりかへし春はきにけり(木下長嘯子)

あふさかや夢にもさねんさねかづらくるよを人にせきなとどめそ(後柏原天皇)

横書き味気ない

心をばつらきものとて別れにし世々のおもかげ何したふらん

思ひいでよ誰がきぬぎぬの暁も我がまたしのぶ月ぞ見ゆらん

久方の月ぞかはらで待たれける人には言ひし山の端の空

夜もすがら月に憂へてねをぞ泣く命に向かふ物思ふとて

待つ人のこぬ夜のかげに面なれて山の端出づる月もうらめし

やどりせし借庵の萩の露ばかり消えなで袖の色に恋ひつつ

契りおきし末のはら野のもと柏それともしらじよその霜枯

あふことのまれなる色やあらはれん洩り出でて染むる袖の涙に

さねかづらいまはたゆとや逢坂のゆふつけ鳥のくり返し鳴く(藤原家隆)

いかにせん相坂山のさねかづらはぶきあまたにうつりはてなば(藤原家隆)

むら雲にかくれあらはれゆく月の晴れも曇りも秋ぞかなしき

吹きしをる風にしぐるる呉竹のふしながら見る庭の月かげ

秋風のひびきは峰にさ夜更けて影遠くなる入りがたの月

空きよく月さしのぼる山の端にとまりて消ゆる雲の一むら

秋風は軒端の松をしをる夜に月は雲居をのどかにぞ行く

夕暮の庭すさまじき秋風に桐の葉おちて村雨ぞふる

たえぬるか相坂山のさねかづら知られぬ程を何嘆きけん(源兼康[新後撰])

相坂の関路におふるさねかづらかれにし後はくる人もなし(宗良親王[続後拾遺])

身にしらぬ逢坂山のさねかづら関をばこえてくる人もなし(源頼言[新後拾遺])

さねかづらかけのたれをの長路しるあふ坂山の関の行末(正徹)

さねかづら末葉にむすぶ露かけてもとくる人のありとしられじ(常縁)

秋ならであふことかたきをみなへし天の川原におひぬものゆゑ（古今231）

名にしおはば相坂山のさねかづら人にしられでくるよしもがな（後撰700)

かくてのみやむべきものか千早ぶる賀茂の社のよろづ世を見む（後撰1131）

はかなくて世にふるよりは山科の宮の草木とならましものを（後撰1389）

いたづらにけふやくれなむあたらしき春の始めは昔ながらに（後撰1396）

ねぬ夢に昔のかべを見つるよりうつつに物ぞかなしかりける（後撰1399）

山科の宮の草木と君ならば我は雫にぬるばかりなり

音にのみならしの岡のさねかづら人しれずこそ繰らまほしけれ

くらはしの山のかひより春がすみ年をつみてやたちわたるらん（朝忠集）

我が恋は庭のむら萩うらがれて人をも身をも秋の夕ぐれ(慈円[新古今])

たへてやは人をも身をも恨むべき木の葉しぐるる秋の山里(光西[続後撰])

忍び音の絶えてしなくは時鳥五月待つまを恨みざらまし(今出川院近衛[続後拾遺])

わすれては夢かとぞ思ふ思ひきや雪ふみわけて君を見むとは(在原業平「古今」)

たぐへやる我が魂をいかにしてはかなき空にもてはなるらむ（「大和物語」）

わが宿の梅がえになく鶯は風のたよりに香をやとめこし（玉葉42）

時しもあれ花のさかりにつらければ思はぬ山に入りやしなまし（後撰70）

なく涙やしほの衣それながら馴れずは何の色かしのばむ

かれぬるはさぞな例とながめても慰さまなくに霜の下草

秋の色にさても枯れなで蘆辺こぐ棚なし小舟我ぞつれなき

せめておもふ今一度のあふことは渡らん河や契りなるべき

かきやりしその黒髮のすぢごとにうち臥すほどは面影ぞたつ

さぞなげく恋をするがの宇津の山うつつの夢のまたし見えねば

浜木綿やかさなる山の幾重ともいさしら雲のそこの面影

むせぶとも知らじな心かはら屋に我のみ消たぬ下の煙は

八雲立つ出雲八重垣妻籠めに八重垣作るその八重垣を　スサノオの命　古事記

ひとりねにありし昔のおもほえて猶なき床をもとめつるかな（玉葉2347）

時すぎて霜に消えにし花なれどけふは昔のここちこそすれ（新古1583）

遠近の風とぞ今はなりなましかひなき物は我が身なりけり（新続古今1559）

さすとなき日影は軒にうつろひて木の葉にかかる庭のむら雨

山陰や夜のまの霧のしめりよりまだ落ちやまぬ木々の下露

はるばると渡るや雁の声遠し雲に色ある西の山の端

末高き籬の花はかたぶきて露おちつづく雨の夕暮

露しげき草のうへより明けそめて霧の山辺ぞしばし夜深き

その色とささぬ夕べの悲しきは尾花が風に薄雲の空

わびぬれば今はと物を思へども心に似ぬは涙なりけり（大和物語）

時のまもなぐさめつらん覚めぬまは夢にだにみぬ我ぞかなしき

あらたまの年こえくらし常もなき初鶯の音にぞなかるる（後撰1406）

もろともにおきゐし秋の露ばかりかからんものと思ひかけきや（後撰1408）

わがごとく物思ふときやほととぎす身をうの花のかげになくらん（続古今213）

雲ゐにて雲ゐにみゆるかささぎの橋をわたると夢に見しかな（新勅撰636）

あひ見てののちの心にくらぶれば昔は物も思はざりけり（拾遺257)

世の中をいとふ宿にはうゑおきて身をうの花のかげにかくさん(慶融[続千載])

今はただ思ひたえなんとばかりを人づてならでいふよしもがな(藤原道雅[後拾遺])

あひみてののちこそ恋はまさりけれつれなき人をいまはうらみじ(永源[後拾遺])

思ひ出づるその慰めもありなまし逢ひ見て後のつらさ思へば(藤原季経[千載])

うたたねの夢に逢ひ見て後よりは人もたのめぬ暮ぞ待たるる(源慶[千載])

あだなりし人の心にくらぶれば花もときはのものとこそみれ(藤原忠通[金葉])

いかでなほ恋ひ死ぬばかりこふる身を人づてにだにさぞときかれん(藤原家良)

あひみてのあしたの恋にくらぶれば待ちし月日は何ならぬかな(祐子内親王家紀伊)

今までに昔は物をとばかりもうらみぬ身をば恨みやはせぬ(後水尾院)

いかにせん昔はものをとばかりの歎きしらるるけさのおもひを(後西院)

うつそみのよのはかなさにくらぶれば桜は猶もひさしかりけり(鵜殿余野子)

あひみてののちの心の夕まぐれ君だけがいる風景である(俵万智)

逢ひ見てののちの心を先づ知ればつれなしとだにえこそ恨みね(藤原定家)

けふそゑに冬の風とは思へどもたえずこきおろすよもの木の葉か(藤原定家)

今日そゑにくれざらめやはと思へどもたへぬは人の心なりけり（後撰882）

にほひうすくさける花をも君がためをりとしをれば色まさりけり（玉葉1612）

松山とちぎりし人はつれなくて袖越す浪にやどる月影

たのめおきし後瀬の山の一ことや恋を祈りの命なりける

形見こそあだの大野の萩の露うつろふ色はいふかひもなし

袖の浦かりにやどりし月草のぬれてののちを猶やたのまん

はるかなる人の心の唐土はさはぐ湊にことづてもなし

忘れ貝それも思ひのたね絶えて人をみぬめのうらみてぞ寝る

忘られぬ真間の継橋おもひ寝に通ひし方は夢に見えつつ

たづね見るつらき心の奥の海よ潮干のかたのいふかひもなし

大方の空も涙もかきあへぬ月かげぬらす秋のむらさめ(後鳥羽院)

忘らるる身をば思はで龍田山心にかかる沖つ白波(寂蓮)

誓ひてし人の命を嘆くとてわがたのまぬになしてこそみれ(藤原為家)

もろくなる桐の枯葉は庭におちて嵐にまじるむら雨の音

浮雲は軒ばの峰をこえかかりしばし時雨てまた過ぎぬなり

さやかなる光もぬれて見ゆるかな時雨の後の庭の月影

月のすがたなほ有明のむら雲に一そそきする時雨をぞみる

秋霧のむらむら晴るる絶え間よりぬれて色こき山のもみぢ葉

いつしかと冬をや告ぐる初時雨庭の木の葉におとづれて行く

ながめてもあはれと思へおほかたの空だにかなし秋の夕ぐれ(鴨長明[新古今])

しほたるる身をば思はずこと浦に立つ名くるしき夕烟かな(少将内侍[新拾遺])

埋もるる身をば歎かずなべて世の曇るぞつらき今朝の初雪(後醍醐院[新葉])

恋ひしなん身をば思はず同じ世にあはぬためしの名こそ惜しけれ(寂昌[新千載])

しづむべき身をば思はず涙川ながれて後の名こそをしけれ(崇光院[新千載])

桜花にほふにつけて物ぞ思ふ風の心のうしろめたさに(藤原顕季[新後拾遺])

程もなく消えぬる雪はかひもなし身をつみてこそあはれと思はめ(中務)

おほかたの秋てふ秋のながき夜をこよひともがな星合の空(光厳院)

おほかたの嵐も雲もすみはてて空のなかなる秋の夜の月(藤原定家)

身をすてて人の命を惜しむともありし誓ひのおぼえやはせん(藤原定家)

うくつらき人をも身をもよししらじただ時のまの逢ふこともがな(藤原定家)

身をしれば人をも世をもうらみねどくちにし袖のかわく日ぞなき(藤原定家)

おほかたの秋の空だにわびしきに物思ひそふる君にもあるかな（後撰423）

とふことをまつに月日はこゆるぎの磯にやいでて今はうらみん（後撰1049）

身をつめばあはれとぞおもふ初雪のふりぬることも誰にいはまし（後撰1068）

わすらるる身をば思はずちかひてし人の命のをしくもあるかな（拾遺870）

難波江の葦のかりねの一よゆゑみをつくしてや恋ひ渡るべき(皇嘉門院別当[千載])

手折りもて宿にぞかざす桜花梢は風のうしろめたさに(源国信[新千載])

ながれてもあふせは絶えじ住江の身をつくしてもくちはててなん(中宮上総)

難波人いかなるえにかくちはてむあふことなみにみをつくしつつ(藤原良経)

さてもなほいかなるえにて難波なるみをつくしてもよにしづむらん(藤原雅経)

わびぬればいまはたおなじ山ざくらさそふ風をや花もまつらん(平親清五女)

難波江のみをつくしてもつかへきぬふかき心のしるしあらはせ(二条教頼)

難波潟かへらぬ波に年くれて今はたおなじ春ぞまたるる(鷹司冬平[新千載])

わびぬればみてもかひなき思ひねに今はた同じ夢ぞまたるる(祝部行直[新後拾遺])

あれはてし難波の里の春風にいまはたおなじ梅がかぞする(慶雲[新続古今])

逢ふことは遠山鳥のおなじ世に心長くてねをのみぞなく(実兼[続千載])

逢ふことは遠山鳥のおのれのみながき恋路のためしとぞみる(後鳥羽院御集)

朝まだきおきてぞ見つる梅の花夜のまの風のうしろめたさに（拾遺29）

あま雲のはるばるみえし嶺よりもたかくぞ君をおもひ初めてし（続千載1031）

くやくやとまつ夕ぐれと今はとてかへる朝といづれまされり（後撰510）

おほ空に標ゆふよりもはかなきはつれなき人を恋ふるなりけり（続古今1061）

君をまたうつつに見めや逢ふことのかたみにもらぬ水はありとも（新千載2238）

わびぬれば今はたおなじ難波なるみをつくしても逢はんとぞ思ふ（後撰960)

つくばねの峰よりおつるみなの川こひぞつもりて淵となりける（後撰771）

わびぬれば今はたおなじ難波なるみをつくしても逢はんとぞ思ふ（拾遺集766)

難波潟かへらぬ波に年くれて今はたおなじ春ぞまたるる(鷹司冬平[新千載])

わびぬればみてもかひなき思ひねに今はた同じ夢ぞまたるる(祝部行直[新後拾遺])

あれはてし難波の里の春風にいまはたおなじ梅がかぞする(慶雲[新続古今])

世にあればありと言ふことをきくの花なほすきぬべき心地こそすれ（元良親王集）

あまたには今も昔もくらぶれどひと花筐そこぞ恋しき（元良親王集）

おほ空に標ゆふよりもはかなきはつれなき人をたのむなりけり(元良親王集）

ゆく水にかずかくよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり(よみ人しらず「古今集」)

吉野河いは浪たかく行く水のはやくぞ人を思ひそめてし(紀貫之「古今集)

つくばねの峰よりおつるみなの川こひぞつもりて淵となりける（後撰771)

たまさかに逢瀬はなくてみなの川涙の淵に沈む恋かな(京極関白家肥後)

みなの河ふちにはよらじつくばねの峰より落つる雁の一つら(正徹)

筑波嶺やしげればいとどみなの川峯よりおつる音ばかりして(正徹)

小初瀬の花のさかりやみなの河峰よりおつる水の白波(清輔[新後拾遺])

つくばねの嶺の桜やみなの河ながれて淵と散りつもるらん(雅有[続拾遺])

筑波嶺の岩もとどろに落つる水世にもたゆらに吾が思はなくに(「万葉集」巻十四)

袖のうへも恋ぞつもりてふちとなる人をば見ねのよそのたぎつせ(定家)

みなの河みねよりおつる桜花にほひのふちのえやはせかるる(定家)

身をつくしいざ身にかへて沈みみむおなじ難波の浦の浪かぜ(定家)

せきわびぬいまはたおなじ名とり川あらはれはてぬせぜの埋木(定家)

難波なる身をつくしてもかひぞなき短き蘆の一夜ばかりは(定家[続後拾遺])

春風のふかぬ世にだにあらませば心のどかに花はみてまし（万代集）

みなそこに春やくるらんみよしのの吉野の川にかはづなくなり（秋風集）

滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなお聞こえけり

君がため衣のすそをぬらしつつ春の野にいでてつめる若菜ぞ([大和物語])

君がため出づる野原のかたみにやしひても春の若菜つむらん(順徳院)

すみれ草つみつつかへる春の野にたがためとなく袖ぬらしけり(貞常親王)

あだなみの高師の浜の磯馴れ松馴れずはかけて我恋ひめやも

心からあくがれそめし花の香になほ物思ふ春の曙

白妙の袖の別れに露落ちて身に染む色の秋風ぞ吹く

須磨の海人の袖に吹き越す塩風の馴るとはすれど手にもたまらず

やすらひに出でける方も白鳥の飛羽山松のねにのみぞ泣く

おほかたの月もつれなき鐘のおとに猶うらめしき有明の空

下もゆるなげきの煙空に見よ今も野山の秋の夕暮

いく世へぬかざし折りけんいにしへに三輪の檜原の苔の通ひ路

誰が為とまだ朝霜の消ぬがうへに袖ふりはへて若菜つむらん(藤原定家[続後拾遺])

しろたへの袖にぞまがふ都人若菜つむ野の春の淡雪(後鳥羽院[続拾遺])

霞しく荻の焼原ふみわけて誰がため春の若菜摘むらん(九条道家[続後撰])

若菜つむ我が衣手も白妙に飛火の野べは淡雪ぞふる(藤原為家[続古今])

いざけふは衣手ぬれて降雪のあはづの小野に若菜つみてん(藤原為家[新千載])

今よりは若菜つむべきふる里のみかきが原に雪は降りつつ(西園寺実兼[新後撰])

おのづから凍りのこれる程ばかり絶え絶えにゆく山川の水

むらむらに小松まじれる冬枯の野辺すさまじき夕暮の雨

寒き雨は枯野の原に降りしめて山松風の音だにもせず

風の音のはげしくわたる梢よりむら雲さむき三日月の空

河千鳥月夜をさむみいねずあれや寝覚むるごとに声の聞こゆる

月影は森の梢にかたぶきてうす雪しろし有明の庭

君がため浮沼(うきぬ)の池に菱つむと我が染めし袖ぬれにけるかも(「万葉集」巻七 柿本朝臣人麻呂之歌集出)

君がため山田の沢にゑぐつむと雪げの水に裳の裾ぬれぬ(「万葉集」巻十)

里人のすそのの雪をふみ分けてただわがためと若菜摘むらん(後鳥羽院[遠島百首])

君がため春の野にいでて若菜つむわが衣手に雪はふりつつ（古今21）

山ざくらたちのみかくす春霞いつしかはれて見るよしもがな（新勅撰73）

涙のみうき出づる海人の釣ざをのながき夜すがら恋ひつつぞぬる（新古1356）

あはずしてふる頃ほひのあまたあれば遥けき空にながめをぞする（新古1413)

月のうちの桂のえだを思ふとや涙のしぐれふる心地する（新勅撰952）

久しくもなりにけるかな秋萩のふるえの花も散りすぐるまで（玉葉1652）

きみがせぬわが手枕は草なれや涙のつゆの夜な夜なぞおく（新古1349)

秋なれば萩の野もせにおく露のひるまにさへも恋しきやなぞ（風雅1283）

涙川ながるるみをのうきことは人の渕せをしらぬなりけり（続後撰896）

かくしつつとにもかくにも永らへて君がやちよにあふよしもがな（古今347）

あかでのみふればなりけり逢はぬ夜も逢ふ夜も人をあはれとぞ思ふ（新勅撰822）

かくてこそ見まくほしけれ万代をかけてにほへる藤浪の花（新古163）

あしひきの山郭公けふとてやあやめの草のねにたててなく（拾遺111）

しぐれつつ枯れゆく野辺の花なれば霜のまがきににほふ色かな（新古621）

むらさきの色に心はあらねども深くぞ人を思ひそめつる（新古995）

から人の衣そむといふ紫の心にしみて思ほゆるかも(麻田陽春「万葉集」)

わかれてふことは色にもあらなくに心にしみてわびしかるらむ(紀貫之「古今集」)

ありと見て手にはとられず見ればまたゆくへもしらず消えしかげろふ〔源氏物語・薫「蜻蛉」〕

袖におく 涙のつゆにうつしませあふがまほしと 恋る御影を
［皇女和宮］

人ごとのたのみがたさになにはなるあしのうらばのうらみつるかな(続古今集1280)

あめの下かわけるほどのなければやきてし濡衣ひるよしもなき(「大鏡」)

秋の山紅葉をぬさとたむくればすむ我さへぞたび心ちする(貫之[古今])

風吹けばさくらの宮の神垣にぬさも取りあへず花や散るらん(頓阿)

神しうけばぬさもとりあへず手向けおく此ことのはも色や見えまし(正徹)

とりあへず紅葉をぬさと手向山神のこころを神やうけけむ(契沖)

しかりとてなみだの袖やきりたたんむすぶの神にぬさもとりあへず(加納諸平)

朝戸あけの軒ばに近く聞こゆなり梢のからす雪ふかきこゑ

降る雪にしられぬ程にまじる雨の暮れゆく軒に音をたてぬる

鳥の声松の嵐の音もせず山しづかなる雪の夕暮

あれぬ日の夕べの空はのどかにて柳の末も春ちかくみゆ

さてもわが思ふおもひよつひにいかに何のかひなきながめのみして

あやしくも心の中ぞみだれゆく物思ふ身とはなさじと思ふに

もみぢばを風にまかする手向山ぬさもとりあへず秋はいぬめり(信実[続後撰])

みそぎするぬさもとりあへず六月の空にしられぬ秋風ぞふく(公経[続拾遺])

ゆふだたみ手向の山の桜花ぬさもとりあへず春風ぞ吹く(道家[新千載])

そめもあへずしぐるるままにたむけ山紅葉をぬさと秋風ぞふく(為家[続後撰])

見ずしらずうづもれぬ名の跡やこれたなびき渡る夕暮の雲

出でてこし道の笹原しげりあひて誰ながむらん故郷の月

わくらばに問はれし人も昔にてそれより庭の跡は絶えにき

藻塩汲む袖の月影おのづからよそに明かさぬ須磨の浦人

虫明の松と知らせよ袖の上にしぼりしままの波の月影

忘るなよ宿るたもとは変るとも形見にしぼる袖の月影

わかれても心へだつな旅衣幾重かさなる山路なりとも

忘れなむ松とな告げそ中々に因幡の山の峰の秋風

君が代をたえせずてらせ五十鈴河われはみくづとしづみはつとも(宗良親王)

旅の空うきたつ雲やわれならん道もやどりも嵐ふく比(宗良親王)

このたびは幣もとりあへず手向山もみぢの錦神のまにまに（古今420）　

旅の空うきていでにし野山にて道もやどりも月ぞともなふ(為家)

天つ空みちもやどりもしら雲の明くるもしらで月を見るかな(順徳院)

猶さゆる雪につつめるこゑながら梅がえわきてうぐひすぞ鳴く(後鳥羽院)

故郷の朽木の柳冬くればしぐるる色もしのばれぞする(順徳院)

われのみやさてもふりなむ道のべのくち木のやなぎ春めきにけり(如願)

昔おもふくち木の柳なにゆゑにみどりの髪をけづるなるらん(土御門院)

をかべなるくち木の柳さすが猶春とばかりの色は見えけり(伏見院)

ふきそめぬ柳にしるき時つ風なびくを春の初しほにして(後西院)

草も木も西吹く風にくる秋のみにしむいろを初しほにして(姉小路基綱)

一こゑは手向の山のほととぎす幣もとりあへずあくる夜はかな(家隆)

手向してかひこそなけれ神な月もみぢはぬさと散りまがへども(定家)

秋萩のゆくての錦これもまたぬさもとりあへぬ手向にぞをる(定家)

たつ嵐いづれの神に手向山花の錦のかたもさだめず(定家)

みちのべの野原の柳したもえぬあはれ歎の煙くらべに(定家)

みちのべの野原の柳したもえぬあはれ歎の煙くらべに(定家)

紫のひともとゆゑに武蔵野の草はみながらあはれとぞ見る(読人不知「古今集」)

ふるさとのくち木の柳いにしへの名ごりは我もあるかひぞなき(雅有[続拾遺])

鶯のなくはしるきに梅の花色まがへとや雪のふるらむ(紀貫之「続後拾遺集」)

こちふかば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春をわするな（拾遺1006）

さくら花ぬしをわすれぬものならば吹き来む風に言伝てはせよ（後撰57）

雁がねの秋なくことはことわりぞかへる春さへ何かかなしき（続後撰57）

まどろまずねをのみぞなく萩の花色めく秋はすぎにしものを（続後撰1088）

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