『溺れかけた兄妹』
>>262風に素直に考えると幼くして禁断の愛に溺れた兄妹の
美しくも哀しい物語、に、なりそうですが……(w
有島武郎、凄く実直な人なのに女性にハマって情死、だったっけ。
けっこう美形だったような記憶があるけど曖昧。
葡萄は読んだけどとっくに忘れてる、そんな脳内有島チックでGO。
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川遊びに出かけた兄と妹が、脚を滑らせて深みにはまってしまう。
それを見ていた釣り人が助けようと川に飛び込み、
先ず岸に近かった兄を助けようとする。
ところが兄は釣り人の腕を振りほどき、妹を先に助けてくれと懇願する。
自分は嫡男だが庶子で、妹は本妻の娘だから妹の命の方が尊いのだ、と。
しかし釣り人は泣いて訴える兄を先に岩場へ上げ、その後おもむろに妹を助けにいく。
子供にとっては恐ろしい深みだったが、大人から見たら兄を助けた後でも十分間に合う深さだった。
火を焚いて兄妹着物を乾かしてやりながら、釣り人は兄の妹を思いやる心根を褒め、
しかし万一妹を助けている間にきみが溺れ死んでしまったら、
妹は一生、きみを死なせたことで苦しまねばならないんだよ、と、言う。
そしてどちらの命がより尊いというものではないと兄を諭す。
日が落ちかけ、兄は釣り人に礼を言い、妹の手を引いて家路へ向かう。
夕日に照らされる幼い兄妹の後ろ姿が遠ざかり、消えるのを確かめてから、釣り人は煙草を吸い、静かに釣り糸を垂れる。