神7のストーリーを作ろうの会part8

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395:2014/01/15(水) 19:12:27.08 I
次回楽しみにしてます!
頑張ってください!
396ユーは名無しネ:2014/01/17(金) 22:28:03.72 0
第七話

「颯、だいじょうぶぅ?」
救護エリアに岸くんがかけつけた時には高橋が中村の付添いの元、担架の上でうずくまっていた。長い足からは血が流れている。
「高橋!!!大丈夫か!!?」
岸くんが駆け寄ると、高橋は方目を瞑りながら身を起こした。辛そうな表情だ。
「いて…岸くん先生ごめんなさい…ちょっとヘマをしちゃって…でも大丈夫…」
「大丈夫ってお前…すごい怪我…」
肉がえぐれてしまって出血がなかなか止まらない。養護教諭が一生懸命処置していた。
「おい颯大丈夫か!?あいつぜってーわざとだろ今からボコってきてやる!!」
遅れて駆け付けた7組の連中は皆憤慨の表情を示していた。栗田と神宮寺が今にも殴りこみに行きそうな勢いで叫ぶ。
「上等だコラァ!!実力で勝てねーからってフザけた真似しやがってあいつら…まとめてあの世に葬ってやる!!」
「どういうこと…?まさか…」
岸くんが記憶を掘り起こしていると、岩橋がそれに応える。
「100M走のスタートダッシュで体当たりされたんだ…。颯がそれで転倒してその足の上に乗っかられて…誰がどうみてもわざととしか思えないよ」
「そんな…」
「おい栗田行くぞ!!こんなことされて黙ってられるか!!神宮寺サイダーショットお見舞いしてやらぁ!!」
「たりめーだ!!栗田スペシャル地球破壊爆弾落してやらぁ!!!」
「僕の配置していたスナイパーを戻すか。完膚無きまでに叩き潰してやろう」
羽生田がスマホで誰かに連絡をとろうとし、栗田と神宮寺が殴りこみに行こうとテントを飛び出そうとした。
しかし岸くんは叫んだ。
397ユーは名無しネ:2014/01/17(金) 22:33:10.19 0
「駄目だ!!栗田、神宮寺、校内で暴力沙汰なんか起こしたら優勝どころじゃなくなる!!羽生田もスナイパーは呼ぶな。高橋の代わりは誰かが出ればすむことだ」
しかし皆は岸くんの言葉に反論する。
「何言ってんだよ、やられたらやり返すに決まってんじゃんよ。そうじゃなきゃ泣き寝入りじゃん。俺だって食われたもんは食い返すがモットーだし」
「郁の言う通りだよぉ岸ぃ。こんなの許せないよぉ颯が可哀想だよぉ」
「俺も…なんか許せない…」
「僕も谷村に同意見だよ…これはいじめと同じくらいタチが悪いよ」
「岸、てめーは黙ってろ。これは俺らの問題だからな」
栗田が総括してそう告げると、岸くんはさきほどとはうってかわった冷静な口調でこう返す。
「お前らが悔しいのは分かる。俺だって悔しい。できれば高橋に怪我をさせた奴をボコボコにしてやりたい。だけど…」
岸くんはそこで目を瞑って絞り出すような声でこう言った。
「だけどそれをやったらもうこの後の種目は出られない。7組は暴力騒ぎを起こして棄権だ。そしたら今まであんなにがんばってきた努力が全部パーだ。
眠い目を擦って皆で朝早くから長縄跳びの練習にあけくれたのは優勝を目指してたからだろ?なのにそれを自分達の手で無駄にしていいのか?」
「…」
「岩橋が腹痛に耐えながら朝早くに登校してきたことも、倉本が何がなんでも絶対食べてくる朝ご飯を中途半端に終わらしてまで朝練に参加したことも、
栗田が必ず2時間やるオンラインゲームを1時間に削ってまで睡眠時間を確保しようと早寝したことも、神宮寺が一番家が遠いのに一度も朝練に遅刻しなかったことも、
高橋が朝練より早い時間から自主トレしてることも、谷村が縄にひっかかる度に自我修復で乗り切ってきたことも、
中村が体力がないのにもかかわらず一回も縄にひっかからないくらい集中していたことも、羽生田が長縄の極意を色んなサイトで調べてくれたことも俺はみんな知ってるから…
だから最後の長縄までお前らにちゃんと出場してほしいんだ。ここで問題を起こしたら『やっぱり7組は落ちこぼれの集まりだ』って烙印を押される。そんなのは俺は嫌だ。だってお前らは…」
岸くんは目を開けた。
「お前らは落ちこぼれなんかじゃない。こんなにも仲間思いで根性のある奴らだから、俺は皆にそれを見てほしい」
398ユーは名無しネ:2014/01/17(金) 22:34:43.30 0
全員が押し黙る。お互いに顔を見合わせ葛藤と闘っていた。
仲間をやられた悔しさと、がんばってきたことがふいになるという板挟みの中で天秤は揺れる。どちらかに傾けばどちらかが未消化のまま終わる。そのもどかしさに誰もが頭を悩ませた。
「みんな」
ややあって、その沈黙が破られる。
「俺は大丈夫。足の怪我だから縄は回せるし長縄跳びは皆揃って出場できるよ。だからリレーの代わりだけお願い。やってくれるよね皆?」
それは高橋の声だった。一番悔しい思いをしているであろう彼から前向きな意見が出たことで、全員の天秤は同じ方向に傾いた。
「…分かった颯。スナイパーではなく医療班を呼ぶ。養護の先生だけでは処置にも限界があるだろうからな」
羽生田はスマホを再び動かす。そして岸くんにこう言った。
「とりあえず岸くん、君はエントリーの変更を本部に伝えてくれ。100Mリレーは誰が代わりに出る?」
「あ、じゃあ俺が出る!」倉本が手をあげた。
「200Mリレーはじゃあ僕が出るよぉ。スウェーデンリレーは谷村出てよねぇ」
「…分かった。自信ないけど…」
エントリーの変更が決まると、岸くんはそれを伝えに行く。その後ろ姿を見ながら7組は気持ちを切り替えた。
だが高橋が抜けた穴は大きく、それまで3位だった7組は下から二番目の6位にまで落ちてしまった。
そして最後の種目の長縄跳びを迎える。これで7組が優勝するには100回を超える必要があった。


「がんばれみんな…!」
岸くんは祈るような気持ちで両手を組みながら7組の長縄を見守った。
高橋の足の怪我は羽生田の手配した医療班によって万全の治療が施されたが予断はならない。歩くのも辛そうだがそれでも弱音一つ見せず彼は長縄を取った。
「はじめ!!」
号令とピストルが鳴り、最終競技の長縄が始まった。
399ユーは名無しネ:2014/01/17(金) 22:36:23.99 0
掛け声と回数を数える声がこだまし、グラウンドには土埃が舞う。全校生徒およそ700人が一斉に跳ぶと地面が揺れそうな錯覚に陥る。各クラスの担任もそうでない教師も皆唾を飲んでその勝負の行方を目で追った。
20回…30回と進むごとに脱落するクラスが出てくる。その中で1年7組はまだ闘っていた。
「がんばれ…がんばれ…!!」
一歩も動いていないのに、岸くんの全身はもう汗だくだった。握った掌から汗が滴り落ちそうになっている。
50回を過ぎると、残っているのは4クラスになった。2年と3年に1クラスずつ。そして1年は7組と現在二位のクラスだ。
「大丈夫か…みんな…」
さすがに辛そうな表情になっていた。高橋は「上半身だけだから大丈夫」と言っていたがそれでも両足で踏ん張らないといけない。相当痛むのか脂汗が浮いていた。
身が軽そうな栗田と神宮寺も顔を歪ませている。岩橋は顔が蒼ざめているからもしかしたら腹痛が発症したのかもしれない。
羽生田は涼しい顔を装っているが着地でふらついている。中村は長縄の前のスウェーデンリレーで最終走者だったから400M走ったのがここにきて影響し始め辛そうにいつも以上に顔が白い。
そして倉本が腹を押さえてフラフラとよろめき始めた。
「71…!72…!」
70回を過ぎると一騎打ちになる。2年と3年のクラスは脱落し、1年同士の対決になり全校生徒がその勝敗の行方を見守った。
「がんばれ7組!!根性見せろー!!」
岸くんが叫ぶと、やがてそれは7組の応援コールに変わった。その力を受けたのか彼らの顔に生気が戻る。
「すげー!!90回超えた!!」
誰かがそう叫ぶと同時に、残っているのは7組だけになる。二位だったクラスは80回で終えた。これから7組が逆転で優勝するにはあと何回跳べばいいんだっけ…?と岸くんが計算を始めた時、100回を告げるコールと歓声が起こった。
「うおおすげえー!!!」
109回目で、倉本が着地時に足の踏ん張りがきかなくて転倒した。
「倉本!!」
岸くんは駆け寄り、倉本を抱き起こした。汗でびっしょりと濡れた顔からは悔しさが滲んでいる。
「ちっくしょう…なんでこけるんだよ…まだまだいけたのに…ちくしょう…」
「何言ってんだ!!凄いことだろ倉本、109回も跳んだんだぞ!!」
岸くんの言葉を肯定するかのように拍手がどこからともなしに起こる。やがてそれはグラウンドじゅうを埋め尽くした。
7組の生徒はそれをどこか不思議そうに、呆然と見ていたが神宮寺の「うおおやったぜー!!!」の雄叫びとともに抱き合ったりハイタッチで互いの健闘を讃え合う。それまで悔しそうに唇を噛んで涙をこらえていた倉本にも笑顔が戻った。


.
400ユーは名無しネ:2014/01/17(金) 22:37:13.20 0
「それでは表彰します。優勝、1年6組…」
7組は惜しくも2位だった。あともう5回跳べていれば優勝に届いたが、それでも晴れやかな気分でいっぱいだった。2位のトロフィーと盾は高橋が受け取る。
「にしても凄いな岸先生、一体どんなマジックを使ってあいつらやる気にさせたの?」
横に立つ教師がそう問いかけてくる。答えは決まっていた。
「俺は何もしてません。だってあいつら元々やれる奴らなんですよ。ちょっと問題児っぽいところもあるけど根はいい奴らで…可愛い奴らです」
岸くんは心の底からそう思って言った。最初はとんでもない連中だと思ったが体育祭の練習を通じてかなり距離が縮まったように思う。もう辞表の必要はないかな…と思いながら教室に戻ってHRを始めた。
「あーくそ…俺がこけなきゃ優勝だったのに…」
「そんなことないよ倉本。お前、長縄のこと考えて弁当いつもの半分しか食べてなかったじゃん。岩橋からもらったおにぎりも颯からもらったメロンパンも終わってから食べようとしてるのも知ってるから」
岸くんがそう励ますと、倉本は照れ臭そうに鼻をかいた。
「皆もお疲れ様。ホント凄かったよ。もう誰も7組のこと落ちこぼれだなんて言わないだろうな。職員室でも見直したって話題になってたよ」
「まー俺らがちょっと本気だせばこんなもんよ。にしても疲れたぜ…今夜はオ○ニーは3回くらいが限度だな…」
神宮寺の冗談とも本気ともつかぬ軽口に皆で笑う。
「ホント感動した。だから今日は俺が皆に労いの意味をこめて奢っちゃうよ!何が食べたい?」
岸くんがそう申し出ると、歓声があがる。
401ユーは名無しネ:2014/01/17(金) 22:37:59.59 0
「僕はたこが食べたい。たこ焼きなんかいいかな」岩橋が食前の胃腸薬を飲みながら言った。
「俺はとにかくなんでもいいから食べたい!!やっぱ肉かな。おっにくー!!」倉本が叫ぶ
「俺はパンが食べたいぜギャハハハハハハ!!」栗田はあくまでパン派だ
「まー俺もやっぱ肉だな!!スタミナと精力の元だしな!!」神宮寺はサイダー片手に言う
「俺はメロンパン!!」高橋は拳を突き上げた。
「プリンが食べたい…」谷村は控えめに主張した
「ひじきが食べたいよぉ…あ、でもひじきって可愛くないからぁじゃぁオムライスぅ」中村がぶりっこしながら挙手をする
「纏まらないな…とりあえずひととおりネットで食材を出前するか」羽生田はPCを動かした。
あれよあれよという間に教室は宴会場と化した。飲んで食べてのどんちゃん騒ぎを繰り返した結果…
「何やってるんだお前ら!!!岸先生!!これはどういうことですか火災報知機が作動して校内中大騒ぎだぞ!!!ブレーカーも落ちてるし一体これはなんの騒ぎだ!!!」
「え?」
7組が教室にあったホットプレート5台とたこ焼き器2台、炊飯器3台、ティ○ァールのポット、電子レンジにオーブンレンジにホームベーカリーにもちつき器に電気グリル鍋をたこ足配線で使ってバーベキュー大会をしたおかげで電力がオーバーしブレーカーが落ちた。
さらに七厘でサンマを焼いたからその煙で火災報知機も作動する。見ると、校庭には消防車が何台も止まっていた。
「うっそ…」
岸くんは大目玉をくらった。そして一旦上がりかけた7組の評価は再び元に戻ったのである。
さらにお説教が終わって教室に戻ると食い散らかされた教室はそのままで、「岸後片付けよろしく頼む」と黒板に記されていた。
「うう…やっぱり辞めようかな…こんなクラスの担任…」
涙目になりながら片付けた岸くんだったがどこか達成感があったのは言うまでもない。


つづく
402ユーは名無しネ:2014/01/19(日) 13:13:51.00 0
カラオケ代宿泊

アイフォン

カラオケ

アイフォン

ぺヤングヤキソバin博多
403ユーは名無しネ:2014/01/20(月) 13:27:17.75 0
めっちゃいい話((泣
404ユーは名無しネ:2014/01/25(土) 18:20:45.97 0
感動した!岸くんは最近本当大人っぽくなってけしからん
最後は神7らしいごちゃまぜ感w
405ユーは名無しネ:2014/01/25(土) 21:21:08.07 0
作者さん本当に乙です
ここだけでも元気な栗ちゃんが見られて嬉しいな…
406:2014/01/26(日) 10:39:43.89 I
最高です!
407ユーは名無しネ:2014/01/26(日) 17:41:06.72 0
日曜ドラマ劇場「私立神7学園高校」

第八話


昼休み終了の予鈴が鳴り、岸くんは早歩きで1年7組の教室に向かった。職員室から遠いため普通の速度では間に合わないのである。
「やばい…あと1分…」
腕時計を見ながら岸くんは歩みを速めた。と、そこで後ろからガラガラガラ…と車輪が回る音がして風が吹き抜ける。
「岸ぃお先にぃ」
「あ、こら、中村、廊下でスケボーはいけません!」
岸くんはたしなめたが中村は笑ってスケボーで廊下を走り去った。
「まったくもう…」
溜息をつきながら本鈴と同時に到着し、岸くんはガラリとドアを開けた。
「うわっ」
いきなり頭に何かが落ちてきた。お約束の黒板消しである。
「ギャハハハハハハハハ!!バッカじゃねーの!?」
栗田を筆頭に爆笑が起こる。しかしこれも日常茶飯事であるからもう岸くんは気にしない。てへへと笑って教壇に立つとそこには…
「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああカエルううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
岸くんはカエルが大の苦手だ。そのカエルが教壇の上に乗っていた。おぞましい姿を目にしただけでもう脊髄反射的に生理的嫌悪が呼び起こされて全神経が拒絶する。天井に頭をぶつけるくらい跳び上がるとまた爆笑が起こった。
「やだもぉ岸驚きすぎぃ。これよくできてるでしょぉ昨日ド○キホーテで買ったんだよぉ」
くすくす笑って中村がぴょこんと前にやってきてそのカエルを掴む。どうやらおもちゃらしいがそれにしてもリアルすぎる。分かっていても鳥肌が立つ。
「はい。岸にあげるぅ」
あろうことか中村はそのカエルを投げ付けてきた。ぬめりまでリアルだ。岸くんはまた絶叫した。


.
408ユーは名無しネ:2014/01/26(日) 17:42:09.06 0
「えー…だからしてここの公式の答えはこうなってああなって…」
ようやくカエルの悪夢から立ち直った岸くんは「幼児でも分かるかもしれない数T」を片手に数学の授業を進める。だが…
「中村…栗田起こしてくれない?」
栗田のいびきで声が掻き消されてしまう。岸くんは隣の席でその栗田の寝顔を微笑ましげに見つめる中村に懇願した。
「えぇ〜こんなに気持ち良さそうに寝てるのに起こすなんて可哀想だよぉ。栗ちゃんの寝顔可愛いしぃ」
「岩橋…神宮寺起こしてくれない?」
神宮寺もまた深い眠りに落ちていた。同じく隣の席の岩橋に頼むと彼は眉間に皺を寄せる。
「寝てる時に起こされると嫌だろうから…僕は人の嫌がることはしたくない…」
「…じゃあ高橋お願い」
「はい!分かりました岸くん先生!神宮寺起きて!朝だよコケコッコー!」
神宮寺は起きたが栗田は最後まで爆睡だった。どうしたもんかと考えながら職員室に戻ると各教科担当が忙しく中間テストの問題を作成していた。
「岸先生、ちょっと手伝ってくれる?これを…」
「あ、ハイ」
作業をしながら岸くんは同僚の教師に訊ねられる。
「テスト対策進んでる?落ちこぼれ抱えると大変だよね。これ1学期の学年成績表なんだけど見てごらん」
「これは…」
岸くんは戦慄する。平均点が7組だけ異常に低い。それというのも8人しかいない中で学年最下位とブービーがいるからだ。最下位は栗田、その次が神宮寺である。
「栗田と神宮寺がいるから俺らは大丈夫って気ぃ抜かれるとちょっとね。まあ多少気を抜いたところであの二人より下がることはないけど」
「で、でもあの二人は勉強はダメだけどあれはあれでいいところが…えっと…あったっけ…なんだっけ…」
「でも実際問題としてクラスから留年出すと大変だから担任は必死だよ。岸先生もがんばってね」
ぽんぽんと肩を叩かれたがシャレにならない。皆揃って二年に進級させて涙涙の終業式を迎えたい。これはもう可及的速やかに学力アップに向けて集中的に強化する必要がある。岸くんは神宮寺と栗田に放課後補習を受けるよう諭したが…
「アホか!なんで俺が放課後までお前と一緒にいなきゃなんねえんだよ。れいあ、ゲーセン行こうぜー」
「うん。じゃぁねぇ岸ぃ」
栗田と中村は行ってしまった。それを神宮寺と羽生田がやれやれと肩をすくめながら見る。
「おい岸くんよ、栗田はしゃーねーよ。俺と違って前世からのアホだからよ。まあこの神宮寺はやればできる子だからな。いっちょ学年ブービーからトップへ昇りつめてやるか」
「お、おう…頼む神宮寺、お前だけでも…」
神宮寺だけでもやる気になってくれたのは有り難い。羽生田と谷村の手助けを受けて放課後の補習を始めた。
「いいな…岸くん先生に補習だなんて…俺も神宮寺くんみたいにバカかアホになりたい…」
「颯…うらやましい気持ちは分かるけど神宮寺に失礼だよ君…」
うらやましがる高橋を岩橋が教室の隅でたしなめていた。

.
409ユーは名無しネ:2014/01/26(日) 17:42:57.88 0
けたたましい電子音が交錯する中でも特徴のある酒ヤケ声は絶好調である。得意のシューティングゲームで高得点をたたき出し、栗田のテンションは最高潮にまで上がっていた。
「すごぉい栗ちゃんランキング一位だよぉ」
「だろ?すっげーだろ手にマメできるまでやりこんだからよ!」
二人で盛り上がってプリクラを撮り、太鼓の達人で汗を流し、UFOキャッチャーでふなっしーのぬいぐるみをゲットする。はしゃぎながら店を出ようとすると、出口でヤンキーにからまれた。
「それ神7学園の制服だろ?おぼっちゃんがこんなとこ来ていいわけ?」
「こっちのボク可愛いねぇ。セーラー服の方が似合うんじゃないの?」
ヤンキーが中村の頬に触れようとすると中村は嫌悪感を露わにした絶対零度を放つ。
「クソ汚ねぇ手でれいあに触んじゃねーよ!」
栗田が反射的に蹴りを入れた。相手はよろめいたがすかさず仲間が「何しやがんだコラぁ!!」と殴りかかってくる。すると今度は中村が持っていたジュースをぶっかけた。
「栗ちゃんには指一本触れさせないよぉ。ジュースで顔洗って出直しなよぉ」
「てめぇこの男女!!」
あわや乱闘、というところで従業員によって通報を受けた警察が到着する。一時間後には連絡を受けた岸くんと付いてきた7組達がやってきた。
「何やってんだよ栗田、中村!ゲーセンで喧嘩とかテスト前なのに…!」
「うるせーなあいつらの方からからんできやがったんだよしょーがねーだろ」
「そうだよぉ。正当防衛だもん。僕達悪くないよぉ」
「だけど…」
確かに話を聞くと、きっかけは相手が作ったがやり返してしまうと同罪である。それをやんわり告げたが二人はそっぽを向く。神宮寺がやれやれと肩をすくめた。
「しゃーねーよ岸くん、嶺亜と栗田はお互いしか心許してねーし俺らが何言っても無駄無駄」
「まあ事なきを得たんだからいいじゃないか。それより腹が減ったからコンビニにでも寄ろう」
「いいねー!!肉まん食おうぜー!!」
羽生田と倉本も諦め気味でさっさと出て行く。岸くんは溜息をついた。
410ユーは名無しネ:2014/01/26(日) 17:43:40.16 0
「どうもあの二人は俺の言うことに全く聞く耳持ってくれないな…。何を言っても馬鹿にされるばかり…」
落ち込んでいると高橋と岩橋がフォローを入れてくれる。
「そんなことないよ!岸くん先生の良さは二人にだって分かってるはず。栗田君言ってたよ!「岸が涙目になるとおもしれー」って。嶺亜くんだって「岸ほどイタズラにひっかかってくれる単純な人はいないよぉ」って楽しそうに話して…」
「思いっきり馬鹿にしてるじゃん…」
「先生元気出して…良かったら胃薬…」
「ありがと…でもいらない…」
しかし落ち込んでいる暇はない。中間テストまであと一週間を切った。せめて神宮寺だけでも成績最下層から脱出させなければ…と放課後の補習の内容に頭を悩ませていた時である。
「大変だ岸くん!!栗田が…!!」
羽生田と神宮寺が息せき切って始業前に職員室を訪れる。何事だ、と職員室はにわかにざわついたが岸くんは二人の表情を見てただごとではないと予感し、廊下で聞くことにした。
「なんだって…!?」
岸くんは耳を疑う。教室に向かうと、ちょうど血相を変えて飛び出して来た中村とぶつかりかける。
「中村、どこに行くんだよ!?まさか…」
「離してくれるぅ?栗ちゃん助けなきゃぁ」
腕を掴む岸くんを睨みつけて、中村はそれを振りほどこうとする。だが、行かせるわけにはいかない。
「お前が行ったって二人してやられるだけだ!警察かどっかに…」
「あいつらは僕に一人で来いって言ったのぉ。でないと栗ちゃんが危ないからぁ。だから離せよ!!」
最後はいつものぶりっこ口調ではなく男の顔つきになって岸くんの腕を振りほどくと中村は走り去ってしまった。


.
411ユーは名無しネ:2014/01/26(日) 17:44:21.06 0
「ど…どうしよう…どうしよう…」
岸くんはうろたえた。せっかく用意してきた『ミジンコ脳のための化学T』のテキストをぐしゃぐしゃにしながら右往左往する。
「栗田が登校途中に昨日いざこざを起こした連中に拉致られたらしいんだ。中村に一人で来いって…そうしないと栗田の命の保証はないって…」
中村の机の上にはその連中が書いたと思われる汚い字のメモがあった。丁度門をくぐろうとした谷村が偶然それを受け取ったらしい。
「でも…危ないよそれ…だって昨日の報復でしょ?栗田も中村もやられちゃうんじゃ…」
岩橋が心配そうに呟く。
「シャレんなんねえぞおい…栗田はやられるし中村はヤられる…どーすんだよ…」
「神宮寺、今はそんな下ネタ言ってる場合じゃないよ!なんとかしないと!」
高橋がつっこむ。倉本も一緒に肩パンをした。
「やっぱり放っておけない…行かなきゃ!!」
「待て岸くん、教師の君がそんなトラブルの中につっこんで行ったら大問題だぞ。最悪の場合解雇だ。僕らが行って助けてくる」
「けどはにうだ、お前らが行っても問題になれば7組みんな停学か下手したら退学だぞ!お前らは問題児だけど暴力事件だけは起こさずにきてるからこその7組への処置じゃないか。これで暴力沙汰起こしたら皆揃って進級できなくなる!!」
「だけど岸くん先生がいなくなったら俺ら寂しいよ!!だから岸くん先生は行っちゃダメだ!!」
高橋が必死の形相で止めてくる。岸くんは葛藤に喘いだ。
こうしている間にも栗田と中村は…
もどかしさと闘いながら、岸くんは結論を出した。


つづく
412:2014/01/26(日) 17:53:31.33 I
今回も面白いです!
続きが気になる…>_<
413ユーは名無しネ:2014/01/28(火) 19:08:18.61 0
チャイニーズ空気プレン 沖縄そば  日テレマー君

チャイニーズ空気プレン 沖縄そば 日テレマー君  

チャイニーズ空気プレン 沖縄そば  日テレマー君

チャイニーズ空気プレン 沖縄そば
414ユーは名無しネ:2014/01/29(水) 19:48:41.07 0
作者さん面白いです。続き楽しみ〜
415ユーは名無しネ:2014/02/02(日) 19:22:46.04 0
日曜ドラマ劇場「私立神7学園高校」

第九話

指定された場所は使われていないプレハブ倉庫で、どこかの会社のものだったのか倒産したらしく荒れたままだ。ガラスがところどころ割れていてひと気は全くない。扉を開けると中に数人のヤンキーが待ちかまえていた。
「お?まさかほんとに来るとは思わなかったぜ。見かけによらず度胸あんだな」
「ひゅーひゅー、飛んで火に入る夏の虫ってヤツー?」
中村にはそのヤンキーは見えていない。見えているのは…
「栗ちゃん…」
縛られて苦悶の表情を浮かべる栗田だ。唇の端に赤い傷口が見える。
「れいあ来るな…今すぐ帰れ…でないとお前まで…」
「おっとお前は黙ってな」
頭を踏まれ、栗田はうめき声をあげる。中村の血は瞬間沸騰した。
「栗ちゃんに何すんだてめえら!!ブッ殺すぞ!!」
「おいおい女の子がそんなはしたない言葉使っちゃダメだろ」
跳びかかろうとすると、背後から羽交い締めにあう。振り向くと昨日ジュースをかけてやった男だった。男は中村の顔に自分のそれを近づけ、にやりと笑う。
「お前の言うとおり、今朝はオレンジジュースで顔洗って来たぜ。どうだ?少しは男前になっただろ?」
「汚ねぇ顔近づけんなよぉ。俺に触れていいのは栗ちゃんだけだ」
唾を吐いてやると、男は中村を乱暴に地面へと蹴りつける。華奢な彼の体はいとも簡単に吹っ飛んだ。
「上等だ…その栗ちゃんの前で犯してやろうか…女みたいに」
「やめろてめーら!!れいあに手ぇ出しやがったらマジで殺すぞ!!フザけんじゃねえ!!!」
栗田はもがく。が、縛られた腕と足ではどうにもできない。中村は数人に押さえつけられて制服を脱がされようとし、悲鳴を上げる。
万事休す
そう思った時だった。
416ユーは名無しネ:2014/02/02(日) 19:23:39.36 0
「待てえええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
誰かの絶叫が轟いて、扉が開く。
「…?」
栗田も中村も逆光でよく分からなかったが、目が慣れてくるとその姿が浮かび上がる。
「岸ぃ…?」
服装といい声といい、全体の雰囲気は岸くんだ。だが断定ができない。何故ならば、黒い仮面で顔を隠しているからだ。
「誰だてめえは!?」
誰かがそう訊ねた。すると岸くんとおぼしきその仮面の男はこう答えた。
「わ…私は仮面ティーチャーだ!!生徒を更生させるべく仰せつかった正義の男!!それ以上詮索するな!!」
「仮面ティーチャーだとぉ…?フザけやがって…パクリはどうかと思うぜ」
「おっと待った!!ここに仮面スチューデントもいるぜ!!」
仮面ティーチャーの後ろには同じく仮面で顔を隠した7組の連中(多分)がずらりと並んでいた。一人だけひょっとこのお面なのは恐らく谷村だろう。指をくるくる回していた。
仮面ティーチャーはヤンキー達を指差しながら、
「うちのマドンナに手を出してもらっちゃ困るな…あと、そこの酒ヤケボイスモデル体型ボーイは大事な中間テストを控えているからそれ以上アホになってもらっちゃ困るんだ。返してもらおう!!」
「上等だコラァ!!」
ヤンキーどもは襲いかかってきたが羽生田の用意した超強力モデルガンによって次々に撃ち落とされて行く。
そうこうしているうちに手配した警察がやってきて、仮面ティーチャーと仮面スチューデントは中村と栗田を救出するとこれまた羽生田が待機させておいたリムジンへと乗り込み、学校へと舞い戻った。

.
417ユーは名無しネ:2014/02/02(日) 19:24:18.56 0
中村と栗田は保健室で手当てを受ける。中村は軽傷で済んだが栗田はけっこう痛めつけられたから大事を取って保健室で休むことにし、中村もそれに付き添った。
「先生、ちょっといいですか、技術の授業で生徒が怪我をしてしまって…ちょっと動かせない状態で…来てほしいんですが…」
養護教諭が呼ばれ、保健室を出て行くと二人きりになる。ベッドに寝そべりながら栗田は中村に問いかけた。
「…あぶねーとこだったな、れいあ」
「うん…」
「岸が…あいつらが来なかったら…俺らやばかったな。今頃ここにいねーかもしんねー」
「うん…」
保健室の窓の向こうではちょうど7組が体育の授業の最中だった。岩橋はお腹をおさえて走り、倉本はウィダーインゼリーでエネルギーチャージをしている。神宮寺はチャラさ全開でドリブルをし、高橋はそれをカットしていた。
谷村は木陰できのこになっていて羽生田は一人でエアリフティングをしている。それを岸くんが笛を鳴らしながらまとめようと躍起になっていた。
「なーれいあ」
「ん?」
中村が聞き返すと、栗田は身を起こす。彼は少し掠れた声でこう言った。
「…あと一週間で、俺、最下位から脱出できるかな」
栗田の言いたいことが、中村にはちゃんと分かった。だけど彼がちょっと素直でないことも分かっているからそれがどこか微笑ましくて笑みが漏れる。
「できるよぉ。栗ちゃんはぁほんとは頭いいってこと知ってるもん。やればできる子だもん、がんばろぉ」
中村は栗田の手をぎゅっと握った。


.
418ユーは名無しネ:2014/02/02(日) 19:25:52.81 0
「へ?まじですか?本当ですか?これ幻覚じゃなく?」
岸くんは目を擦ってみた。だけど変わらない。神宮寺の隣には栗田が座って教科書を開いている。
「いーから早くしろよ。分かってると思うけど俺にも分かるように説明しろよ」
「え?あ、は、はいそれでは最初の公式から…」
狐につままれたような気分で岸くんは補習を始めた。一体どういう風の吹き回しか…栗田が放課後のゲーセンにも行かず、居眠りをすることもなく素直に机に向かっている。
やっぱりヤンキーどもに痛めつけられてどこか打ちどころでも悪かったのだろうか。それとも明日地球は滅亡するのだろうか…。
「わりーけど神宮寺、このクラスの最下位はおめーだ。俺はやればできる子、栗ちゃんだからな」
栗田は神宮寺の鼻をつついた。なにおう、と神宮寺も言い返す。
「何言ってやがる、能ある神宮寺は爪を隠す、次の学年トップはこの俺だぜ」
なんだかよく分からないがやる気になってくれたのは嬉しい。岸くんははりきって『記憶喪失になっても分かる数学T』『3歳から始める英文法』『はじめてのこぶんかんぶん』のテキストを開く。
「いいな…栗田くんと神宮寺だけ岸くん先生を二人占めなんてずるいよ…」
後ろの席で高橋がぶつぶつと文句を言いながら自習をする。
「がんばってクラスの平均点を上げれば先生に褒めてもらえるんじゃない?颯」
岩橋がぽんぽん、と高橋の肩を叩いて慰めるとその後ろからきついツッコミが放たれる。
「人のことより岩橋、君もうかうかしてるとあのアホアホコンビに抜かされて最下位になるぞ。君、漢検いつになったら合格するんだ?」
実は岩橋は栗田神宮寺に次いで成績が悪かった。特に漢字をがんばらなければいけないのである。辛辣な羽生田のツッコミに岩橋は目に涙を浮かべる。
「うう…これは言葉のいじめだ…でも最下位とかシャレにならない…僕は大学に行くっておじいちゃんと約束したんだ」
谷村は教室の隅で黙々と自学自習をし、倉本は「食べながらやると捗る」と左手で菓子を掴み、右手で鉛筆を動かして勉強していた。
7組は皆真剣に中間テスト対策に取り組む。普段の授業より真剣な姿に岸くんは苦笑いしつつも、このがんばりを無駄にしたくないとテキスト片手に張り切って挑んだ。
『1年7組、岸先生、至急職員室までお願いします。繰り返します…』
勉強が佳境に入った所で校内放送が流れる。岸くんは職員室に呼ばれ、教頭先生が苦い顔をして立っていた。
「岸先生、7組の生徒が1限と2限にごっそり教室からいなくなってたと聞いたんだが…本当かね?」
「え…いや、それは…」
やばい…岸くんは背中に汗をかいた。
「保健室に7組の栗田と中村が怪我で訪れたとあったが…何かやらかしたんじゃないだろうね?そういえば先日、この二人は補導されかけたと聞いたんだが…」
「いやいやいや、あれはささいな誤解で…!1限と2限は特別集中講座で別室で中間テスト対策に臨んでおりましたし本当に何も問題ありませんし今も中間テストに向けてがんばってますから御心配なく!」
「なんでもいいけど暴力沙汰だけは勘弁だからね。そんなことになったらもう7組は学校に置いておけないからね。岸先生もあまり彼らに肩入れせぬよう…」
ひとしきりお説教を喰らって溜息をつきながら教室に戻ろうとすると、その手前で声をかけられる。
419ユーは名無しネ:2014/02/02(日) 19:26:44.16 0
「岸ぃ」
中村の声だった。
「なに?どしたの?」
しかし振り向くと目の前にカエルがあった。岸くんはびっくり仰天の総毛立ちである。
「うぎゃああああああああああああああああqwせdrftgyふじこlp;!!!!!!」
腰をぬかすと中村がくすくす笑いながら岸くんを見おろしている。
「岸ってほんとにカエル嫌いなんだねぇ。おっかしいぃ」
「あのね…」
取り繕いながら立ちあがると、中村はそのカエル(のおもちゃ)を手に持ちながら小悪魔的な笑みを浮かべる。
「岸ぃ目ぇ瞑ってみてぇ」
「へ?なんで…?」
またなんかイタズラをしかけてくるつもりだろう…分かっていたが条件反射的に岸くんは言う通りにしてしまう。こういうところが馬鹿にされる所以なんだろうなぁ…と思っていると…
「ふぇ?」
岸くんは一瞬何が起こったのか分からなかった。分からなかったがほっぺたのあたりになんだかふんわりと柔らかいマシュマロに包まれたような、そんな感触が当たった気がする。
確かめる間もなく中村が背を向けた。
「…助けてくれてありがとぉ」
それだけ言って、ぱたぱたと中村は教室に戻って行く。呆然としながらその後ろ姿を見ていると彼は急に振り返った。
「栗ちゃんには内緒だよぉ。…あ、あと颯にもぉ」
「ちょ…ちょちょちょちょっと…!!」
ほっぺたを押さえながら岸くんは動揺の頂点に達した。哀しいことに生まれてこの方女の子とは無縁で、こうしたことに慣れていないのである。ましてや女の子じみた男の子にほっぺたにチューされてしまってはもう心臓がどえらいことになっている。
違う。俺にはそのケはない。ないはず。ないと思う。ないかもしれない。ないとも言い切れない?いやいや違うそうじゃなくて…
パニック状態で岸くんが中村を追うとしかし彼はいきなり大笑いしだした。
「なぁ〜んちゃってぇ。今のチューはこの子でしたぁ」
中村はカエルのおもちゃを両手に乗せてにっこり微笑んだ。
「へ?」
「ほんと面白ぉい。岸って」
きゃっきゃと笑って中村は教室に入って行く。一杯くわされただけである。なぁんだ…と岸くんは肩の力が抜ける。浅い溜息をつきながら続いて教室に入った。
420ユーは名無しネ:2014/02/02(日) 19:28:33.79 0
「おい岸何やってたんだよおせーぞ。お説教か?」
栗田が腕を組んで座っている。
「いやまあそんなとこ…そんなことより続きやらなきゃ。えっとどこまで行ったっけ…」
気持ちを切り替えて、岸くんは栗田と神宮寺の成績UPに努めた。二人は驚異的な集中力を見せ、暗くなるまでそれは続いた。
「おう、岸御苦労だったな。まあ見てろよ、俺次の中間テストは学年一位だからなギャハハハハハ!!」
「栗ちゃんお疲れぇ。ゲーセンよるぅ?」
「んー…ゲーセンは暫くいいかな。それより腹減ったからなんか食って帰ろうぜー」
7組達は上機嫌で帰って行く。それを見守りつつ、誰もいなくなった教室の窓を閉め、電気を消そうとしたところでそれが目についた。
教卓の上に、あのおぞましいカエルのおもちゃが乗っている。恐る恐る近づいて見るがやっぱり気持ち悪い。だけどおもちゃと言われればおもちゃだ。これがさっき自分のほっぺたに…と思うと身震いした。
「…?」
けど、待てよ。と岸くんは思う。カエルのおもちゃはプラスチック製である。ちょん、と触ってみたが無機質なぺたんとした感触が返ってくる。あの時のあの感触はもっとこうふわっとしていてそれでいて柔らかくてもうちょっと甘美な感じが…
「…」
ふと思い立って、岸くんは我慢に我慢を重ねてそのカエルのおもちゃを手に取ってみる。やっぱり軽いプラスチックだ。そして非情に嫌だったがそのカエルの口を自分のほっぺたに当ててみた。
「…うーん…」
やっぱり全然違う。だとしたら、あれはやっぱり…
思考に浸りかけていると、ガラリと教室のドアが開く。びっくりして岸くんはカエルのおもちゃを落としてしまった。
「あ?何やってんだ岸?」
入ってきたのは栗田だった。何故か背中に汗をかいた。
「いえ、何も…」
「ふーん。あ、こんなとこにあったぜ俺のケータイ!やべーやべーこれがなきゃれいあにおやすみコールもできねーとこだったぜ。んじゃな」
机の上に乗った自分の携帯電話を手にすると栗田は教室を出て行く。若干の安堵感と共にそれを見送ると岸くんはカエルを拾って教卓に乗せ、電気を消した。
「ま、いいか。皆無事だったんだし。それに中間テストの対策を練らないと…」


.
421ユーは名無しネ:2014/02/02(日) 19:29:50.93 0
一週間後、中間テストの成績表が配られると7組はお祝いムード一色だった。
「見たかこれが神宮寺様の実力だ!!見ろ、この華々しい成績表を!!」
「やっぱ俺はやればできる子だったぜギャハハハハハ!!」
神宮寺と栗田は見事最下位とブービーから脱出した。平均には遠く及ばないがそれまでの彼らの成績からすれば驚異的な飛躍である。7組の平均点は7クラス中6位に浮上した。
「がんばらなきゃ…栗田と神宮寺には抜かされたくない…」岩橋は成績表を眉根を寄せながら見ている。やはり漢字と英語がネックだった。
「お、ちょっと上がってる。今夜はご馳走にしてもらえるな!」倉本はうきうきと出前のカタログを見比べている。
「はっ…化学の順位が2つ落ちてる…期末テストは岸くん先生に集中的に教えてもらわないと!」高橋は色めきたっている。
「さ…下がってる…」谷村はむしろ順位を落としてしまって自我修復にいそしんでいた。
「栗ちゃん凄いよぉ。前は最下位だったのに下から10番目に上がってるよぉ天才だよぉ」中村は栗田を褒め讃えている。
「さーて、来週のサザエさんは…」羽生田は切り替えが早い
テンションマックスの神宮寺と栗田を筆頭に7組は祝賀会の準備を始めた。しかし岸くんは前回の反省を活かし、学校内でのどんちゃん騒ぎは阻止する。7組はぶーたれたが渋々近所のファミレスで妥協した。
なんだかんだでけっこう言うこときくようになってきたなぁ…と岸くんが感慨に耽っていると乾杯の音頭をせがまれた。
「えー…それでは…7組のこれからの益々の発展を願いましてー…」
咳払いをしながら乾杯の音頭を取ると「年よりくさい」と笑われる。それを皮切りに店員が顔をひきつらせるほどのどんちゃん騒ぎを7組は始めた。
422ユーは名無しネ:2014/02/02(日) 19:31:02.88 0
「んじゃ次は俺とれいあでテゴマスの「猫中毒」歌うぜ!!てめーら口伴奏よろしくな!!」
栗田と中村の猫中毒に始まり谷村の「最上川舟歌」で終わり7組の祝勝パーティーは終わった。テーブルの上にはおびただしい数の皿が乗せられており、そのほとんどを倉本がたいらげていた。
「これは…」
伝票を見て岸くんは凍りつく。これは明日から塩と麦で暮らさなければならないかな…と覚悟を決めているとひょい、とその伝票が宙に舞った。
「まーこれは岸くんの慰労会でもあるからよ。ここは俺達が払っといてやるよ」
神宮寺がそう言うと7組達はうんうんと頷く。
「へ?本気…?」
これはまた何かの落とし穴?と岸くんが半信半疑で言うと羽生田がゴールドカードを持って会計に向かった。その際に「おい倉本、君は食べ過ぎだから他の奴より多く払えよ」とつついていたが倉本はレジ前のキーホルダーを見ているふりをして聞き流していた。
ファミレスから出ようとすると、ちょうど出入り口のあたりで数人の男子高校生とはち会う。このあたりでは荒れていることで有名な工業高校のものだ。
「あ?なんだてめーら神7学園か?ちょうど良かった。俺らにおごってくんね?」
からまれ始め、緊張が走ったがしかし…
「そんじゃ誰が駅まで行っちゃくか競争な!!それいけー!!」
栗田の号令とともに、7組達は走りだした。岸くんも慌ててそれに倣う。
出遅れた分、岸くんは彼らの背中を拝むことになったがその背中が語っているような気がした。「問題はもう起こさない」と。
それは希望的観測のような気もしたが岸くんは何故か確信する。そうしてなんともいえない高揚感とともにぶっちぎって一番先に駅に到着した。もちろん「教師のくせに大人げねー」と非難を浴びたが流れる汗とともに笑ってごまかしたのだった。


つづく
423ユーは名無しネ:2014/02/02(日) 20:18:30.99 0
仮面ティーチャー岸www
現実の世界は最近栗田不足過ぎだからここに来れば栗ちゃんが元気に暴れまわってる姿が見れて嬉しい
いたずらっ子れあくりかわいい
424:2014/02/02(日) 21:37:20.62 I
仮面ティーチャーを織り交ぜてくるとはさすが作者さん(笑)
谷村くんのひょっとこと羽生田くんのサザエさんに笑っちゃいました(笑)
425ユーは名無しネ:2014/02/02(日) 21:39:25.11 0
栗田って誰?聞いたことない笑
426ユーは名無しネ:2014/02/03(月) 13:19:39.61 0
★新@果てない空 嵐  グランドピアノ編曲および演奏 クラシック調
https://www.youtube.com/watch?v=hJLow1Hlf4g
★新@勇気100% NYC 光GENJI グランドピアノ編曲および演奏 クラシック調
https://www.youtube.com/watch?v=-jRDCkHe4pM
新@My Resistence タシカナモノ Kis My Ft2 クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=D_6uy3vdmJ0
新@LIPS KAT TUN クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=T9GSSQP30Q4
新@青春アミーゴ 修二と彰 クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=-p26Lw0-0wI
新@ココロ空モヨウ 関ジャニ∞ クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=3houfFK_-y8
※ジャニーズJr.の為にピアノで編曲し演奏しました。C.Pianoman
★ジャニーズとJr.のピアノ曲(36曲)
https://www.youtube.com/playlist?list=PLLk7LVX6o_zAj7S9uK8ADdjpXbt_gHyx5
427ユーは名無しネ:2014/02/06(木) 20:49:24.53 I
栗田知らないんならここ来るな。
それかちゃんと調べてから来い。
428ユーは名無しネ:2014/02/08(土) 14:00:06.57 0
ゴーヤ焼きそば

ゴーヤ焼きそば

ゴーヤ焼きそば

ゴーヤ焼きそば
429ユーは名無しネ:2014/02/08(土) 17:49:55.16 0
ぺヤング醤油スパゲティー

まるちゃんのケチャップそば
430:2014/02/08(土) 22:09:28.27 I
栗ちゃんかっこいいですよ!
知らないんですね^_^
431ユーは名無しネ:2014/02/10(月) 23:53:23.97 0
新@No 1 Friend Kis My Ft2 クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=oRoZ08MwKxk
新@棚からぼたもち 舞祭組 クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=ODTYFqQB9Xg
新@俺たちの青春 高木雄也 HEY! SAY! JUMP! クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=LSg4uRhWeho
新@Summer Lover Kis My Ft2 クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=C6dUpndL3qk
新@冒険ライダー HEY! SAY! JUMP! クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=cxelJyYei6c
新@スクール革命 HEY! SAY! JUMP! クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=ImSSq3otkzg
新@Wonderful World!! 関ジャニ∞ クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=0bcO7utK46M
新@Luv Sick Kis My Ft2 クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=g6uWhNrZNgc
新@名前のない想い Sexy Zone クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=Cw0PafZPBag
新@急☆上☆SHOW!! 関ジャニ∞ クラシック調 ピアノ編曲および演奏
https://www.youtube.com/watch?v=OMA-5qmHLVQ
※ジャニーズの為にピアノで編曲し演奏したよ。C.Pianoman
432ユーは名無しネ:2014/02/11(火) 21:22:29.61 0
火曜ドラマ劇場「私立神7学園高校」

第十話


岸くんは目覚ましの音と共に目覚める。あと5分…あと5分…このまどろみが最高に気持ちが良いのである。ああでもそろそろ起きないといけないかな…なんたって今日は…そうぼんやり考えながら時計のアラームを止めた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
天井に頭をぶつけるほどの勢いで飛び起き、半狂乱で岸くんは支度をして全力疾走した。汗がもうナイアガラのように流れている。しかしなりふり構わずそこまで猛ダッシュをした。その甲斐あって滑り込みギリギリセーフだったが…
「岸先生…生徒じゃなくて教師が集合時間に遅れるとかシャレにならないからね。あと汗拭きなさい。みっともない」
ハンカチを手渡されたがそれはあっという間にびしょびしょになった。とりあえず岸くんは他の教師達に頭を下げて回る。
「何やってんだ岸!滝にでも打たれてから来たのかギャハハハハハハハ!!」
栗田が指を差して大笑いである。その周りで7組の他の連中も笑っていた。
「いやどーもど−も…目ざましが壊れてて…」
「しっかりしなよぉ岸ぃ。岸が遅れたら誰が僕達の世話すんのぉ」前髪を直しながら中村がくすくす笑う
「岸くん先生間に合って良かった!あ…あの、このタオル良かったら…」高橋がぶるぶる震える手でタオルを差し出して来た
「おいおい担任が遅れるとかシャレんなんねーだろ。せっかくの修学旅行なのによ」神宮寺がぽんぽんと肩を叩く
「もしかして先生、楽しみで寝られなかったとか?」岩橋がくすくす笑う
「なんだよそれ小学生の遠足じゃないんだからよー」スナックパンをむしゃむしゃかじりながら倉本が笑う
「さて…そろそろ列車の到着時刻だぞ。おい岸くん、さっさと引率してくれ」腕時計を見ながら羽生田がせかす
「ごめんごめん。じゃあ点呼始めるね。1,2,3…あれ?7人しかいない。うちのクラス8人なのに」
岸くんは点呼をしたが何度数えても一人足りない。おかしい。1,2,3…
「うちのクラスって7人だっけ?7人で7組で神7学園?」
なんだかそんな気もしてきた。深く考えても仕方がない。いないものはいないしさして思い当たる人物もいない。岸くんは到着する新幹線に乗り込んだ。
そこで中村が岸くんに問う。
「ねぇ岸ぃ谷村まだ来てないのにいいのぉ?あの子一人で追いついてこれないと思うけどぉ」
「あ」
岸くんがそうやくそれに気付くと、叫びながら猛ダッシュしてくる谷村が見えた。

.
433ユーは名無しネ:2014/02/11(火) 21:24:03.62 0
「イエーーーーーーーーー!!!!修学旅行ううううううううう!!!!」
7組は浮かれに浮かれていた。おりしも天候は快晴。絶好の行楽日和に京都・奈良への修学旅行である。かくいう岸くんも楽しみで仕方がなかった。遠足の前日に眠れない小学生の如く前夜は興奮してなかなか寝付けなかったのだ。岩橋は図星をついていたのである。
「うう…疲れた…帰りたい…」
すでに疲労困憊の谷村はデッキで蹲って自我修復をしていた。そんなことはおかまいなしに7組は座席に向かう。他のクラスは車両貸し切り状態だったが7組は岸くん含め9人のため一般客と同じ車両にされた。
『絶対に騒ぎを起こさないように』と教頭から釘を刺されている岸くんはテンションアゲアゲの7組を宥めつつ座席の番号を確認した。
「えーっと…5AからE…それと6AからD…ん?」
今気付いたが一般客に混じって制服姿をちらほら見かけた。そして岸くんの席の隣には教師とおぼしき背広姿の恐ろしくイケメンの若者が座っていた。
「も、森田くん?」
「あれ…まさか、岸くん?」
岸くんの大学時代の同期、森田美勇人がそこに座っていた。同じ教育学部で志を共にした仲間である。私立高校の教師になったと聞いたが…。
岸くんが再会を懐かしもうとするとしかし黄色い歓声に包まれた。
「森田先生!写真一緒に撮ってー!!」
「こっちの車両に来てよー森田先生いないとつまんないよー!!」
来るわ来るわ女子生徒の波…どうやらどこぞの高校と修学旅行の日程が被っていたらしい。
しかし美勇人はそれをスマートに追い払う。180近いその長身と眼力…大学時代からモテにモテたそのオーラの前に7組の乙女男子の目がはぁとになっているのを栗田が察知した。
「超かっこいいよぉ…超タイプだよぉ」
「れいあ気を確かに持てよ!隣にもっとかっこいい奴がいるだろ!俺の方が小顔で足長いし!!」
栗田が中村の肩を揺さぶっているとそれまで座席に座っていた生徒が立ちあがる。
「おにい…森田先生、誰そいつら。知り合い?」
「あ、この制服知ってる。神7学園だ」
色白で外国の子役みたいな顔をした少年と、目が大きく紳士的な物腰の少年はまじまじと7組達を見つめた。
「宮近、顕嵐、この子はおにい…俺の大学時代の同期。そっか、岸くん神7学園の教員になったんだ」
「うんまあ色々あって…森田くんは?」
「俺は寅菱学園高校の教師やってるんだよ。俺のクラスは5人しかいないんだけど5人とも俺の可愛い弟みたいな生徒だよ。お兄ちゃんって呼ばせて…いや、えーと…まあ兄弟のように仲良くやってて」
何故か言葉を濁して森田は生徒5人を紹介してくれた。5人はそれぞれすっかり7組の連中とも意気投合し、他の一般客が眉を寄せるほど大騒ぎした。
434ユーは名無しネ:2014/02/11(火) 21:24:35.67 0
「では宮近海斗、得意のモノマネいきまーす!!!」
「おーいいぞいいぞー!!おもしれーなお前!!後で神宮寺特選エロ動画見せてやる!!」
「モノマネならこの羽生田挙武も負けちゃいないぞ!!」
宮近と神宮寺と羽生田は大盛り上がりである。
「阿部顕嵐と申します。ラノベが好きで…オススメはね、これとこれと…」
「顕嵐もかっこいいよぉ…超タイプだよぉ…」
「れいあ節操なさすぎね?イケメンに弱すぎね?いーよいーよ俺グレてやる」
「栗ちゃん拗ねないでよぉラノベ読もうよぉ。凄いよぉ下半分がメモ帳に使えそうだよぉ」
中村は顕嵐にはぁとマークを飛ばし、栗田が拗ねる。
「いやー旅の醍醐味ってやっぱ駅弁だよね倉本くん。もう一個追加する?」
「だよなー。えっと中村うみんちゅって読むのこれ?おもしれー名前だなー」
「二人ともそんなに食べたら胃を壊すよ…胃薬飲んどいた方がいいよ…」
倉本と中村(海人)の食欲に圧倒された岩橋は何も食べていないのに胸ヤケを起こした。
「うう…岸くん先生もかっこいいけど森田お兄ちゃん先生もかっこいいよ…揺れる高橋心…」
「何をそんな悩む必要があるってんだ。男ならどんと一発かましゃいいだろうが!」
「おじさんには関係ないでしょ…なんで高校生の制服着てるの?」
「おじさんじゃない!梶山朝日正真正銘の15歳だ!!」
高橋が己の心に揺れを感じているとそれまでもう一人の引率の先生だと思っていた梶山が同い年と知り、谷村が軽くカルチャーショックを受けた。
「同い年には見えない…世の中不思議だ…」
「お前だって十分老けてるだろうが!!市役所の窓口の隅っこにいそうだろうが!!」
「うるさいな梶山…静かにしろよ。まったくこのゴリラは…」
それまでおとなしくイヤホンで音楽を聞いていた吉澤閑也が迷惑そうな顔を向ける。
「いや吉澤くんも充分ゴリってるよ。ああ岸くん先生と森田お兄ちゃん先生どちらを選べば…。いや、やっぱり俺には岸くん先生しかいない。てなわけでお近づきの印に高橋回ります!!」
435ユーは名無しネ:2014/02/11(火) 21:25:57.20 0
高橋が車内でヘッドスピンを始め、岸くんは慌てて止めた。岩橋は腹痛を訴えてトイレから戻ってこなくなり中村が顕嵐に夢中で拗ねた栗田が暴れ出した。
神宮寺と羽生田がノリノリで宮近と物真似合戦を始めたり倉本が一般客に食べ物をたかりだし谷村は「老けてる」という言葉に傷ついて自我修復を隅っこでしだしたりてんやわんやだった。京都駅に到着した頃にはもうぐったりである。
「岸くんも大変だね。俺も問題児ばかり押し付けられてね…でもまあ慕ってくれるから毎日幸せなんだけど。可愛い男の子達が自分をお兄ちゃんお兄ちゃんと慕ってくれる…こんなに幸せなことはないよね」
「え?あ、うん。まあそうだね」
岸くんはなんとなくぼんやりと思い出す。確か美勇人は小さな男の子が好きだったっけ…と。若干危ない性癖のような気もしたがそんなことより7組をまとめないといけない。挨拶もそこそこに旅館行きのバスに乗り込んだが…
「あれ?岸くん?」
旅館に着くとまたしても美勇人とばったり遭う。
「同じ旅館だったの?偶然だね〜」
しかし同じ旅館どころか人数の少ない7組と寅菱学園の5人組は同部屋に配置されていた。
そこは蒲団部屋を無理矢理宿泊室にしたてあげたような粗末で狭い部屋に骨董品かとみまがうようなブラウン管のテレビが一台。裸電球に破れかけた座布団が人数分あるだけだった。なんという扱い…岸くんは泣きそうになった。


つづく
436:2014/02/11(火) 23:24:16.89 I
今回も面白かったです!
まさか小説終わっちゃったかと思って焦りましたけどやっぱり最高です!
ついにトラビス組出てきましたね(笑)
437ユーは名無しネ:2014/02/15(土) 21:09:11.28 0
作者さん乙乙
ここではいつでも神7が元気で胸熱
438ユーは名無しネ:2014/02/16(日) 09:07:36.31 0
作者さん乙!
岸家の話続きやんないかなー
439ユーは名無しネ:2014/02/16(日) 18:24:20.28 0
日曜ドラマ劇場「私立神7学園高校」

第十一話

「これは物置部屋か何かか?」
部屋に入るなり、羽生田が顔をしかめた。
「うわぁなんか昭和の匂いがするよぉ。ブラウン管のテレビの実物なんて初めて見たよぉ。ねぇ栗ちゃん?」
「ギャハハハハハ!!倉庫かなんかじゃね?」
中村と栗田が埃の被ったブラウン管テレビを珍しがっている横では谷村が「神田川」を口ずさんでいた。余計に辛気臭さが増す。
「おい!!泊まりの楽しみっつったら皆で有料放送観ながらエロ談義だろ!!これ有料放送観れんのかよ!?」
神宮寺にとって重要なのは部屋のボロさよりも何よりも有料放送が観れるかどうかであった。
「観れなさそう…どこにもカードの挿し込み口もないから…」
何故か有料放送視聴の仕組みを知っている岩橋がそう告げると神宮寺は暴れた。
「ごほ…神宮寺くんやめてよ埃が舞うよ…窓開けよう」
高橋が部屋の埃に耐えかねて窓を開けるとそこに広がった風景は…
「うわーこりゃ見事な墓地だなー」
倉本がポテトチップス片手に呟いた。
そう、旅館の裏は墓地だった。しかも秋なのに周りは枯れ木ばかりで不気味さを更に際立たせていた。
「そーいやこの旅館って「出る」ってことで有名らしいね。だから格安なんだよね?おに…森田先生?」
同じくカラムーチョ片手に中村(海)が問いかけると美勇人は何故か目を輝かせて答えた。
「大丈夫だみんな!おに…先生が守ってやるよ!ああ、自分のクラスだけじゃなく他にもこんな可愛い男の子達を守ってあげられるなんて俺は幸せ者…」
悦に浸る美勇人をよそに岸くんはなんとかして部屋を変えてもらえないか室内電話で教頭に交渉した。が、無情な答えが返ってくる。
「何言ってんの。7組が問題起こさないようにそこにわざわざ配置したんだから。岸先生よろしく頼むよ」
「そんな…」
窓から一陣の風が吹き抜ける。生温かくて湿り気を帯びたそれに、不吉な予感だけがまとわりつき岸くんは涙目になる。
出ませんように…
岸くんの願いといえばただ一つ、それだけであった。そんなことはおかまいなしに7組と寅菱学園の5人ははしゃぎまわっていた。そしてそれを眩しい目で見守る同期のイケメン少年愛好者…
気が遠くなりながら夕食会場に向かった。


.
440ユーは名無しネ:2014/02/16(日) 18:27:41.99 0
「1番!神宮寺勇太、「抱いてセニョリータ」いっきまーす!!!」
夕食会場の大広間では案の定、7組は大騒ぎだった。しかし端っこに配置されているためさして御咎めもない。時たま教頭の苦い顔が目に入るだけだった。
「おに…森田先生、飲んで飲んで」
「おにい…森田先生、パセリ好きだったよな?あげる」
「おに…森田先生、この後自由時間?」
またしても隣に配置されていた寅菱学園五人組は美勇人にお酌をしたり好物の交換をしたりと和気藹藹と楽しんでいる。相当慕われているようでなんだかうらやましかった。
でも俺も運動会やピンチの救出なんかで7組と絆も深まってきているし…みんなだって少しは俺のこと…と期待しているとぽんぽんと肩を叩かれる。
「岸ぃこれあげるぅ。これもぉ」
中村が岸くんのお膳にトマトとうにを入れた。よしきた、岸くんは感涙に咽ぶ。こうして生徒に慕われることこそ教師の醍醐味…鼻をすすった。
「お、ありがとう中村。じゃあ俺もこれあげる」
岸くんが中村の好物である卵焼きを渡そうとするとしかしその箸が払われる。
「てめーの唾液がついた卵焼きをれいあに食わそうとかセクハラにも程があんぞコラ!!このセクハラ大魔王」
「やだぁ岸ぃそんなのいらないよぉ谷村にでもやっといてぇトマトもうにも僕嫌いだからちゃんと処理しといてねぇ」
「…」
いや違う。これは中村特有のツンデレであって決して残飯処理じゃない。決して…
「谷村、はい…」
卵焼きを仕方なく谷村にあげようとすると彼は顔をしかめた。
「俺、卵嫌いなんだけど…」
「…」
沈黙。
暗い。暗すぎる。谷村は好き嫌いが多いからそこかしこによけられたにんじんやら大根やらがあった。自我修復を繰り返しながら食事をしている。なんだか食欲がそがれるから見ない方がいいかもしれない。
441ユーは名無しネ:2014/02/20(木) 23:36:59.72 0
チャイニーズみそ漬けチャーハン

チャイニーズみそ漬けチャーハン

チャイニーズみそ漬けチャーハン

チャイニーズつけチャーハン
442ユーは名無しネ:2014/02/21(金) 11:57:26.09 0
トラビスキター!
そして修学旅行
羽生田観光じゃないけど羽生田観光のような
443:2014/02/27(木) 21:32:06.54 I
今回も面白かったです(笑)

羽生田観光思い出しますね〜(笑)
444ユーは名無しネ
このスレはもうすぐ容量オーバー(512KB)のため、こっちに引っ越しお願いします

神7のストーリーを作ろうの会part9

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