よりによって予感的中かよ・・・。
目の前にいるのは、まぎれもなく自分の妹だという事実は、嬉しくもあり、悲しくもあった。
俺たちは兄妹なんだ―――そう伝えることができない自分と、運命が憎らしかった。
「どうしたんですか?」
無垢な目で、不思議そうに聞き返す千尋―――
そのときの俺には「なんでもないよ」としか言えなかった。
「そろそろ風呂、空いたかな・・・よかったら先に入る?」
「はい。」
章子が風呂に入ってから、たっぷり40分は過ぎていたので、そう促した。
それに、今は千尋と顔を合わせるのがつらいという事情もあった。
ふー・・・
千尋が部屋を出ると、深く息を吐いた。
かなり浅い呼吸になっていたらしく、肺のあたりが少し痛んだ。
しかし・・・どういうことだろう。
あの子は俺と血が繋がっていることを知らないようだった。
そうすると、昼間は3人で何を話していたのだろうか?
それに、千尋は親父のことを話すときに全く抵抗が無いようだった。
優しい人?俺のイメージとはだいぶ違う。
しかし、嘘をついているとも思えない・・・。
ただ一つわかっているのは、俺と千尋は兄妹だということだけだ。
千尋の両頬の、親父から受け継いだと思われるほくろがそれを裏付けていた。
全員が風呂に入り、徐々に夜は更けていった。
明日は土曜日で休日のためか、友美はさっきの怒りも忘れたようにはしゃいでいる。
千尋と章子は空き部屋に二人で寝ることになった。
もう少し・・・いや、いくらでも聞きたいこともあったが、今日はやめておいた方がいいだろう。
「しばらくうちに泊まっていくことになったからね。仲良くしてね。」と母さんは言った。
母さんにも聞きたいことは山ほどあったが、昼間の雰囲気を考えると聞くのもはばかれた。
明日はバイトもある。
もう寝た方が良いだろうと思い、寝床に入った。
しかし、神経が興奮しているからか、全く寝付けない。
明日は朝早いのに・・・。
時計を見ると、12時を回っていた。
やれやれ・・・と思いながら、トイレに向かった。
その途中、廊下で誰かがうずくまっているのが見えた。
・・・千尋ちゃん?
どうしたんだろうと思い、声をかけた。
「どうしたの?」
千尋は暗闇の中で顔を上げた。泣いているのだろうか。
「おなかが・・・・」
千尋は両手を腹に当てている。
「痛いの?」
コクリとうなずく。
「そっか・・・でも、こんな所にいたらもっと痛くなっちゃうよ。」
そう言うと、千尋の体を抱きかかえた。
「・・・・健太さん・・・。」
「ん?」
「お母さんの所は・・・嫌です。」
どうしてだろうと思ったが、事情はあえて聞かないことにする。
「じゃあ・・・俺の部屋に来る?」
千尋はコクッと力無くうなずいた。
部屋に行き、ベッドに寝かせる。
千尋はまだ苦しそうに顔をゆがめている。
よく見ると、千尋は胸に下着をつけていない。
しかも、生地の薄いパジャマらしく、ふくらみが目立つ。
・・・バカ、何考えてるんだよ。
「何か飲む?」
「いい・・・です。」
「痛いのはこの辺?」
みぞおちのすぐ下あたりをさすってやった。
「はい・・・。」
たぶん心因性の腹痛だろう。
こういうタイプの腹痛は、普通一晩寝ればけろりと治る。
しかし、それを引き起こした要因を取り除かなければ、また再発するだろう。
「健太さん・・・」
「何?」
「あたし・・・」
そこで千尋はいったん言葉を切った。
「お母さんが・・・怖い。」
「どうして?」
「・・・・。」
お父さんが怖い、というのなら俺の中で全てつじつまが合うのだが・・・
今の状況がさっぱり理解できない。
「そういうときもあるよな・・・」と、独り言のように言った。
しばらくの沈黙の後、また千尋が涙をこぼしはじめた。
正直、かなり困惑していた。どうすればいいだろうか。
「なあ、千尋ちゃん・・・」
「・・・・。」
「今日はこの部屋で寝る?」
「・・・いいんですか?」
千尋が鼻声でたずねる。
「うん、だから・・・もう寝ちゃいなよ。」
安心したといった表情になり、目を閉じた。
「健太さん・・・。」
「何?」
「あたしたち、しばらくこのお家にお世話になるみたいです・・・。」
「あー、そうみたいだな。」
「ここにいる間、健太さんの部屋で寝てもいいですか?」
「いいよ」とは言えなかった。
いくらなんでも、ここで千尋と一緒に寝るわけにもいかない。
兄妹だとは言っても、千尋はこのことを知らないのだから。
「・・・・。」
「駄目ですか・・・?」
「うん・・・。明日からはお母さんのところで寝な。」
「・・・・わかりました。」
千尋は泣きそうな顔になり、顔を向こうにそらした。
「ごめんな・・・。」
「いいんです・・・。あたしこそ変なこと言ってごめんなさい。」
千尋との距離が急に遠くなった気がした。
時計のアラームで目を覚ました。
そっか、あのまんま寝ちまったんだ・・・。
変な体勢で寝ていたせいか、体のあちこちが痛い。
目の前のベッドの上で、千尋は安らかな寝息をたてていた。
かわいいな・・・。
自然と笑みがこぼれる。
この子が自分の妹なのだと思うと、妙に愛しい気持ちがわいてくる。
千尋の頭をなでて、バイトに行く用意をした。
・・・それにしても眠い。こんな状態で大丈夫だろうか。
しかし、行かないわけにはいかない。
憂鬱な気持ちで家を出た。
荷物の積み卸しのバイトは、こんな日にはきつかった。
いつもよりも荷物が重く感じられる。
「元気ないな、健ちゃん。」
田口裕也が話しかけてきた。
裕也は同じ高校の同級生なので、何かと話が合う。
「昨日あんまり寝てないんだよ。」
確か昨日は、1時過ぎまで千尋と話をしていた。
「あ、もしかしてコレ?」
裕也は小指だけをピッと突き上げた。
「そうそう、張り切りすぎちゃって腰痛えよ。」
あたりで笑い声が起こった。
「のろけてねえで仕事しろー。仕事。」
誰かが叫んだ。
やばいやばい、怒られるのは勘弁。
さっさと終わらないかな・・・。
眠くてしょうがない。
「なあ、裕也。」
「なに?」
「お前さあ、もし小6の女の子が一緒に寝たいって言ってきたらどうする?」
「あー、小6なら普通に食うよ俺。」
「・・・もういいや。」
「え、もしかして、今そういうおいしい状況なの?」
「・・・そう。」
「で、やっちゃったの?うっわー、まだ小学生だろ?かわいそー。」
「ありゃ冗談に決まってんだろ!・・・で、普通に困ってんだよ。」
当たり障りのない所だけ説明してやった。
「ふーん・・・一緒に寝てやりゃいいじゃん。」
「親とかはどうすんだよ。」
「そこはやっぱほら・・・男が泥かぶってやらなきゃ。」
こいつの言うことにも確かに一理ある。
千尋を傷つけたくない。
傷つけないための最前の方法はいったいなんだろう。
家に帰ると、千尋が章子に怒られていた。
俺が帰ったのを見ると、
「昨日はごめんなさいねー、千尋が勝手に健太さんの部屋に行っちゃって・・・。」と言った。
千尋は完全にしおれてしまっている。
昨日もそうだったが千尋は章子の前だと、幼い子供のような態度になる。
昨日千尋が言っていた言葉を思い出した。
「お母さんが・・・怖い。」
この親子の間にいったい何があるのだろう。
「いや、俺が千尋ちゃんを借りたんですよ。」
「え?」
「眠れないから、一緒にトランプとかしてたんですよ。
そしたらいつの間にか千尋ちゃんが寝ちゃって・・・。」
これでいいんだな?裕也。
可愛い妹のためなら泥でもなんでもかぶるとしよう。
「な、千尋ちゃん。」
「え?あ・・・。」
千尋はまたうつむいてしまった。
千尋の同意を求めずに、
「じゃあ、昨日の続きやろっか?」と言うと、千尋を2階の部屋まで連れて行った。
「ごめんなさい・・・健太さん。」
「いいよ。・・・今夜も来ていいよ。」
「いいんですか!?」
「うん。何かして遊ぼうな。・・・じゃあ俺飯食ってくるから。」
「はい!」
今まで見たことのない笑顔でそう言った。
「あ、それと、そこら辺の漫画とか読んでもいいよ。」
そう言って、部屋をあとにした。
今回、伏線全部消化できるかな・・・。
心配だー。
みんな、支援ありがとです。
時間が不規則ですいません。
|ω・`)つC
C
涅槃サン大量Upお疲れ様です
Upが中途半端にならないよう、もう次スレを立てたほうがよさそうですね
>>970の人、いけそうですか?
>971
すいませんm(_ _)m
スレ立てたことないので、他の方お願いします。
俺がやってみます。
テンプレはそのまま引継ぎで行きます。
974 :
973:05/03/04 23:32:27 ID:YM21+vaU0
975 :
973:05/03/04 23:36:48 ID:YM21+vaU0
奥の部屋で母さんと章子が何かを話しているらしい。
ボソボソと話し声が聞こえる。
みんなよりも遅めの昼食を食べていると、友美がやって来た。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。昨日あの子と一緒に寝たって本当?」
「そうだよ。」
「変なことしなかった?」
「してないよ。」
本当は少しドキッとさせられた場面があったが、言わないでおいた。
「ふーん・・・。お母さん、機嫌悪かったよ。」
「なんで?」
「・・・しーらない。」
あ、間違えた
じゃ、976はなかったということで
うめ
うめ
梅
産め
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995
996
997
998
999
余裕で1000(σ・∀・)σゲッツ!
1001 :
1001:
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。