パワプロクンポケットバトルロワイアル Part4

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1ゲーム好き名無しさん

野球をあまりしない野球バラエティゲームのやっぱり野球をしない二次創作リレー企画。

パワプロクンポケットバトルロワイアル!

(残虐な表現が多分にあるので、嫌悪感を覚える方は注意してください)

パワプロクンポケットバトルロワイアル専用したらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11574/
(予約はここにある予約スレで行ってください。予約期間は三日間です)
まとめwiki
http://www33.atwiki.jp/pawapokerowa
(MAPはここのメニューから飛べるページにあります)
前スレ
パワプロクンポケットバトルロワイアル Part3
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1233666233/l50
過去スレ
パワプロクンポケットバトルロワイアル Part2
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1217460066/l50
パワプロクンポケットバトルロワイアル
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1215357377/l50

【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
優勝者のみ元の世界に帰ることができる。 (優勝者は願いが叶う?)
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

>>2->>3は書き手として参加したい!という方は読んでいただけると幸いです。
話を読むだけなら、分からない単語(首輪とか禁止エリアとか放送とか)があった時に初めて見る程度でOK
2ゲーム好き名無しさん:2009/12/09(水) 16:47:17 ID:2+oJx91p0
【ステータス】
投下の最後にその話しに登場したキャラクターの状態・持ち物・行動指針などを表すステータスを書いてください。
テンプレはこちら。

【地名/○○日目/時間(深夜・早朝・昼間など)】
【キャラクター名@出典シリーズ】
[状態]:(ダメージの具合・動揺、激怒等精神的なこともここ)
[装備]:(武器・あるいは防具として扱えるものなどはここ)
[道具]:(ランタンやパソコン、治療道具・食料といった武器ではないが便利なものはここ)
[思考・状況](ゲームを脱出・ゲームに乗る・○○を殺す・○○を探す・○○と合流など。
       複数可、書くときは優先順位の高い順に)

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

【能力制限について】
裏出展の参加者→基本制限なし。移動速度、耐久力は制限有り?
メカ亀田→一部武器は制限?
超能力→体力消費増大?
死んだ人は生き返りません
友子の体内にある暗示装置→威力制限と疲労(程度は暗示の内容と書き手の裁量次第?)
しあわせ草ドーピング選手→ドーピング済みで銃を避けれる時期は要制限
それ以外の身体能力が少し上がった程度ならOK
しあわせ草→特に制限なし、よく効く薬草みたいなもの
霊体相手でも物理攻撃は必ず効く、ゲーム中で効かなくてもロワ会場では効く
3ゲーム好き名無しさん:2009/12/09(水) 16:48:06 ID:2+oJx91p0
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。主催者の手によってか何らかの細工が施されており、明らかに容量オーバーな物でも入るようになっている。四●元ディパック。
「地図」 → MAPと、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。【地図】に挙げられているのと同じ物。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。肝心の食料の内容は…書き手さんによってのお楽しみ。SS間で多少のブレが出ても構わないかと。
「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。(ただし第一回放送まで支給されていない、もしくは見ることが出来ない)
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。

【『首輪』と禁止エリアについて】
ゲーム開始前からプレイヤーは全員、『首輪』を填められている
(かならずしも首輪の形である必要性は無し。参加者の形態などによってはチップなどになっている)
首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ
(例外はなし。不死の怪物であろうと、何であろうと死亡)
開催者側は、いつでも自由に首輪を爆発させることができる
24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ
『首輪』を外すことは専門的な知識がないと難しい
(下手に無理やり取り去ろうとすると、首輪が自動的に爆発し死ぬことになる)
開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると、首輪が自動的に爆発する

【放送について】
放送は6時間ごとに行われる。つまり0時開始だとすると6時、12時、18時、24時ごとになる
放送内容
「禁止エリアの場所と指定される時間」
→出来るだけ離れた地点を2〜3指定。放送から1〜2時間前後ずつで進入禁止に
「前回の放送から今回の放送までに死んだキャラ名」
→死んだ順番、もしくは名簿順に読み上げ
「残りの人数」
→現在生き残っている人数
「主催の気まぐれなお話」
→内容は書き手の裁量で
4ゲーム好き名無しさん:2009/12/09(水) 16:48:47 ID:2+oJx91p0
参加者名簿

3/3【パワプロクンポケット】
○教頭/○進藤明日香/○平山紀之
4/4【パワプロクンポケット2】
○荒井紀香/○曽根村/○二朱公人/○凡田大介
4/4【パワプロクンポケット3】
○たかゆき/○鋼毅/○三橋一郎/○四路智美
1/1【パワプロクンポケット4】
○天本玲泉
1/1【パワプロクンポケット4裏】
○プレイグ
2/2【パワプロクンポケット5】
○埼川珠子/○塚本甚八
1/1【パワプロクンポケット5裏】
○愛
4/4【パワプロクンポケット6】
○青野柴夫/○荻原新六/○島岡武雄/○ほるひす
3/3【パワプロクンポケット6裏】
○落田太二/○ヘルガ/○メカ亀田
7/7【パワプロクンポケット7】
○東優/○芹沢真央/○倉見春香/○七味東雅/○野丸太郎/○ブラウン/○レッド
3/3【パワプロクンポケット7裏】
○黒羽根あやか/○七原正大/○布具里
8/8【パワプロクンポケット8】
○上川辰也/○黒野鉄斎/○白瀬芙喜子/○高坂茜/○灰原/○森友子/○八神総八郎/○リン
4/4【パワプロクンポケット9】
○太田洋将/○九条英雄/○椿/○夏目准
2/2【パワプロクンポケット9裏】
○エリ/○カネオ
7/7【パワプロクンポケット10】
○アルベルト・安生・アズナブル/○越後竜太郎/○大江和那/○神条紫杏/○十波典明/○浜野朱里/○芳槻さら
2/2【パワプロクンポケット10裏】
○タケミ/○ピエロ
3/3【パワポケダッシュ】
○小波走太/○二ノ宮金太/○芽森わん子
1/1【パワポケ甲子園】
○甲子園児

60/60
ネタバレありの名簿
http://www33.atwiki.jp/pawapokerowa/pages/28.html
5 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/09(水) 16:50:33 ID:2+oJx91p0
十波典明、夏目准、二朱公人、ヘルガ、リンを投下します
6夢 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/09(水) 16:51:27 ID:2+oJx91p0

【題目:夢】


【一幕:ある女には夢がある、希望を運ぶ絶望の夢が】


その校舎はあまり見栄えの良いものではなかった。
木造建築はよく言えば年季を感じさせ、悪く言えば古臭い。
ペンキも剥がれ落ちており、余計にそれを感じさせる。
はっきり言ってしまえおう。もうこの校舎はボロボロ、建て替えの時期なのだ。

そのボロボロの校舎の前に、三人の人間が居た。
一人は野球のユニフォームを着た体格の良い男、二朱公人。
もう一人は露出の多い薄着のメイド服を着た女性、夏目准。
最後の一人は色気のない軍服に痛んだ髪、そして冷たい目が特徴的な女性、ヘルガ。
その三人は一人の少女に会いに来ていた。
この殺し合いに乗ってしまったと思われる少女、芳槻さらを止めるつもりなのだ。
恐らく学校に芳槻さらは居るだろう。
彼女の体はひどく傷ついていたし、ヘルガが言うには精神的にも相当な疲労があったらしい。
ならば、最も近い施設であるこの学校に身を隠している可能性は非常に高い。
二朱と准は顔を見合わせて、何も言わずにうなづく。
彼女を止める最後の決意を決めたと言うことなのだろう。
下手をしなくても殺されてしまうのだ、引き返すならここだろう。
だが、最後の最後に引くようなことはしなかった。
それについてヘルガは問いただす、さながらその中にある恐怖を見透かすように。

「行くのか?」
「ええ、行きますよ。そのために来たんですから」

半ば予想していたとはいえ簡単に言う二朱を見て、やはりこの男は奇妙だとヘルガは感じた。
どうも落ち着きすぎているような気がする。
見るからに普通の人間だ、剣呑とした雰囲気は一切として感じない。
なのに、この落ち着き具合は異様と言わざるを得ない。

「死ぬってのはすごい怖いですよ。銃を向けられただけで泣いちゃいそうなぐらい怖いですよ」
「それが普通だろうな」
「でもね、俺にはもっと怖いことがあるって最近ようやくわかったんですよ」
7夢 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/09(水) 16:52:15 ID:2+oJx91p0

二朱は笑いながら言い放つ。死ぬよりも怖いことがあると、平然と言ったのだ。
それは違うのではないか、ヘルガはそう思う。
死は絶対であるが故に恐れられなければいけない。
でなくては、死を恐れなくては人は何を恨めば良い。
全ての恐怖の先には死がある。
食物が少なくなることも、住む場所が失くなることも、衣服を着れなくなることも、全て死が待っている。
銃を向け食物を奪い住居を破壊する。
そんな誰にでも分かる明確な死をもたらす存在。
ヘルガの目的はそんな存在を、憎しみの大本を作ることなのだ。
言っておくがヘルガは殺人狂でも人間をとことん毛嫌いしているわけでもない。
ただ、死と言う分かりやすい恐怖がより効果的だと思っているからこそ暴力と言う悪を選んだのだ。

「新婚なんですよ、俺。仕事の方も順調ですしね。あ、プロ野球選手なんです。
 自分で言っちゃうのもなんですけど今が人生の絶頂ってやつですね」
「それが失くなるのが怖い、ということか?」
「ですね、あんまり良いことなかった人生で支えになってた野球と支えになってくる人が居るわけですから。
 それが失くなるのが怖い、それをもう感じれないのが怖い。死にはしませんよ、また一人になるだけです。
 でも、銃弾が頭上で飛び交う瞬間でも『もう終りだ!』って時にはそればっかり考えてました」
「……?」


「俺は、生きて帰って野球をする。たとえこれが現実だろうと夢だろうと、生きて帰って野球をします」



【二幕:ある女には夢がある、未来へと羽ばたく夢が】




「俺は、生きて帰って野球をする。たとえこれが現実だろうと夢だろうと、生きて帰って野球をします」

その二朱の言葉を聞きながら、准は考えていた。
衣装関係のブランドを立ち上げると言う自分の夢のことを。
喫茶店でウェイトレスをしているのもそのためだ。
自分でデザインしたメイド服を着て、客やマスターの等の反応を見て改良していく。
単純にお金も手に入るし、雰囲気の良いお店だから若い客も多いためファッションの勉強にもなる。
大学は既に単位を取り終わっている、普段のお茶らけた准を見ると意外かもしれないが。
彼女は純粋に必死なのだ、夢ために必死に進んでいるのだ。
そして、二朱にもそんな夢があるらしい。
准の未来へと向かっていく夢とは違う、今を維持したいと言う夢が。
何となくではあるが、二朱への親しみと言うか仲間意識が少し強くなったような気がする。
8夢 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/09(水) 16:53:28 ID:2+oJx91p0

そんなことを考えていると、そろそろ行こうか、と言う二朱の声が聞こえる。
行くと言うのは芳槻さらの元にと言うことだ。
芳槻さらには夢はあるだろうか、人生をかけるに値する夢は。
あるのなら説得もできるかもしれない、なければ作っていけば良い。

准は腹を決めて脚を一歩踏み出す。
ザリザリと砂をふむ感触を覚えながらグラウンドへと歩いていく。
一歩一歩進むごとに死ぬかもしれないという恐怖を感じる。
両端に同じように進む二人がいるからなんとか耐えられる状態だ。

ちょうどグラウンドの奥にある部室棟の隣までついた、その時だった。

「……伏せろ!」

ヘルガが大声で叫び、准の頭を無理やり抑えつける。
躊躇いなく抑えつけられた為か、顔面が思い切り地面と接触してしまう。
怒りを覚えるよりも顔に傷ができたのではないかと心配してしまう。
だが、そんな考えも直ぐに聞こえてきた、パン、というタイヤがパンクした時に鳴る音とよく似たものにかき消される。

「あ、ぁぁ……!」

その瞬間、隣で呻き声を出して二朱が崩れ落ちる。
准はそこでようやく理解した、襲われているということを。
素早く身を低くして部室棟の方へと目をやると、そこには黒く疾走する影があった。
こちらへ向かってきている、そう認識した瞬間には既に二朱の身体を蹴り上げていた。
取り付く島もない、積極的に殺し合いに乗った人物だ。
二朱の身体が二メートル以上吹っ飛ぶ、まるでサッカーボールのようだ。

「動くな!」

そして、ヘルガが銃を取り出して黒い影へと向ける。
影も素早く銃をヘルガへと向ける、躊躇いのない素早い動きだ。
しかも、准の姿を射竦めるように睨みつけて牽制を入れることも忘れていない。
准はようやくそこで影の正体が金髪の女だと気づいた、かなり整った容姿をしている。
一つの無駄もない、明らかに暴力に慣れた人間の動きだ。

「……」
「……」

ヘルガと女のにらみ合いが続く。

だが、十秒ほど経った時に女が容赦なく引き金を引いた。
9夢 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/09(水) 16:54:31 ID:2+oJx91p0

相手の殺気のようなものが伝わったのか、ヘルガが撃つよりも早く横へと転げるが右肩に銃弾が直撃する。
これでヘルガはその銃を撃てない、それどころか移動のスピードも落ちる。
二朱は銃で撃たれた、呻き声を上げながら身じろいているのを見る限り死んではいないようだが。
ヘルガは肩を撃たれ拳銃を取り落とした、痛みのあるあの身体では満足な狙いをつけられないだろう。
ならば、次の標的は唯一五体満足な准のはずだ。

勇気を奮えと先程から煩いほどに頭が訴えかけてくるが、憎いことに心が怯えきっている。
所詮、准はただの一大学生なのだから無理もないだろう。
目の前の女は躊躇いなど欠片もなく人へと引き金を絞った。

「……」

女は銃を仕舞い、ツカツカと准へと向かってくる。
准の心が折れかかっていると判断し、銃弾を節約する腹づもりなのだろう。
動かなければいけない、そう思いながらも身体が動かない。
その時に、突然後方からスパナが飛んできた。
それを女は顔を動かすだけの動きでよけるが、僅かに驚きの表情が混じっている。

「……!」
「くそ、避けられたか」

最初に撃たれた二朱が立ち上がっている。
どうやら当たった場所は腕だったようで、致命傷は免れているようだ。
スパナはたしか二朱の支給品だった。
女は准とヘルガと二朱の三人を見比べ、僅かに位置を変えて全員を見晴らせる場所へと移った。
その動き一つとっても手馴れているように見える。

「……そっちからね」

ポツリと女は呟いて、二朱の方へと向き直る。
三人の様子を見て二朱が一番動けると判断したのだろう。
そして、その二朱から潰すことにした。
それをヘルガも理解したのか、素早く准の方へと詰め寄る。

「銃はあるか?」
「え? い、いえ、ありませんけど……」
「ちっ……他に武器になりそうなものは?」
「スコップぐらい……」

その返答にもう一度ヘルガは舌打ちする。
銃ならばどうして自分のを使わないのだろう、と准は思った。
准の視線を感じたのか、ヘルガは銃を取り出して引き金を絞ってみせた。
銃弾は、出ない。そして准にだけ聞こえるような小声で「モデルガンだ」とつぶやく。
「だからあの女を撃てなかった、しかもあの女はそのことに気づいた」とも付け加える。

「くっ……かぁ!」
10夢 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/09(水) 16:55:56 ID:2+oJx91p0

【三幕:ある男には夢がある、安穏な日常と言う夢が】

「くっ……かぁ!」

鳩尾に信じられない衝撃が走る。
だが、こんなもの野球ボールと比べたら、と思いなんとか耐える。
そして手に持ったナイフで腕を斬りつけようとするが、スルリと避けられる。
まるで親に遊ばれている子供のようだ。

「……」

女性は冷たい目のまま握りこんだ拳を振るってくる。
フェイントもなにもない、ただのストレートを避けることもできずにまともに食らう。
肩から感じる痛みと高山の山頂ではないかと思うほどの息苦しさが原因だ。
このままでは素手で嬲り殺される。
冗談でも誇張でもなく二朱はそう思った。

だが、その瞬間に女は直ぐに後ろへと飛び下がる。
スコップを構えたヘルガとナイフを持った准が居たからだ。
その光景に僅かに目を見開いたが、次の瞬間に直ぐに銃を構え直す。
三対一ならば銃を使う必要があるという考えだろう。
確かに三人が一斉にかかってこられた場合には紛れがあるかもしれない。
女はどこまでも冷静だった。

膠着状態が続き、最初に脚を踏み出したのは二朱だった。
右手に持ったナイフを前に突き出しながら突進する。
女はそれを落ち着いてよけて、腹に膝を叩き込む。
崩れ落ちる二朱を眺めずに、追撃を狙っていたヘルガのスコップをさらに避ける。
准はそれを呆然と眺めていた。
まるでボクサーとチンピラの喧嘩。
チンピラの攻撃は当たりもせずにダンスのように軽やかにボクサーに避けられる。

「准ちゃん! 逃げて!」

倒れ込んでいた二朱がそう叫ぶが、准は動けない。
恐怖と義務感の板ばさみになり、勇敢に前へと進むことも惨めに後ろへ退くこともできない。
准の動かない様子を見て、何度も二朱は叫び続ける。
それを女はうざったく思ったのか、ヘルガのスコップを蹴りで弾き飛ばすと。

――――パン

再び二朱へと向かった引き金を絞った。
今度は肩ではなく、心臓へと向けて。

「あ……ああ……!」
11夢 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/09(水) 16:57:22 ID:2+oJx91p0

その様子に声をあげる准、女は相変わらず冷静に二人を眺めている。
人を殺したというのに全く動揺していない。
次はどちらを殺すべきか、どれが最善か。そんなことを考えている顔だ。
だが、直ぐにその顔が驚愕と痛みに歪んだ。

「つ!……なっ!?」

そこには女の右腕にナイフを突き立てた二朱の姿が会った。
荒い息をつきながら、しがみつくようにして女にナイフを立てている。

「二朱さん!」

心臓に打ち抜かれても、人間は直ぐに死なない。
夢の中とはいえ二朱は死にそうな目に何度も遭い、生きてきた。
人よりも痛みや死の恐怖に強いが故の行動だった。
しかし、女は痛みに耐えながらも冷静な行動を崩さなかった。
女は素早くナイフを抜き取り、代わりに二朱の目へと突き刺す。
二朱は声にならない声を上げて苦しむ。
そこから女はさらに固めに人差し指を突っ込んで、眼球をナイフで切り取った。

ひどい、と准が思うよりも早くにそれを持って女は去っていた。
ヘルガも肩を抑えながらそれを見つめる。
准もぼうっと眺めながら、はっ、として二朱の側へと駆け寄る。

「二朱さん!二朱さん!」

必死に准は二朱へと呼びかける。
だが、瀕死の際である二朱はそれが聞こえていない。

「……婆ちゃん」

何も見えない目で、何かを見ながら二朱は空へと手を突き出した。

「にい、ちゃん……」

血の涙を流しながら、その名前をつぶやいた。

「……」

最後に、声にはならなかったものの口を動かした。
そして、悲しんでいるような笑っているような顔をしながら。
二朱公人は、死んだのだ。

【二朱公人@パワプロクンポケット2 死亡】
【残り35名】
12夢 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/09(水) 16:58:27 ID:2+oJx91p0

【四幕:ある女には夢がある、泥溜りの横で輝く夢が】


リンは自分の右腕に生じた傷を眺めていた。
骨折はしていないだろう、精々が打撲程度だ。
拳を開け閉めしたり手首を動かしたりして、銃を撃つ際に支障がないかをチェックする。
……痛みがある。耐えることはもちろん可能だが、銃を撃つ際に身体が嫌がるぐらいの痛みだ。
ここであの学校に居る少女も含めた三人を襲うのは悪手だ。
銃の照準が定まらない今、しかも限り有る銃弾が余分に減ってしまうかもしれない。
第五回放送までは先が長い。ここで焦って万が一が起こってしまうのが一番最悪のケースだ。
ならば、休憩。その間にこの探知機の充電もしておこう。
そうと決めれば行動は早い、リンは短い間で荒く切り取った眼球を眺める。
これで二人目、残りは一人。
三人ならば直ぐに終わるだろう、気を抜けばこちらが返り討ちにあってしまうが。

「とにかく、焦らずに、スピーディーに……」

黒羽根あやかと共にいるからと言って茜の安全が100%保証されたわけではない。
むしろ、強者と出会った場合に見捨てられる可能性の方が高い。
だからこそリンは安全確実に素早く残りの一人を殺さなければいけない。
確実に自分が守れるように茜の側で守ってやらねばならない。
その際に茜がリンのことをどう思うか、それは想像に難くない。
否定されるか、されなくても元の関係には戻れないだろう。
それでいい、元々リンが一方的に打ち切った関係なのだ。

リンはかちゃりと銃を叩いて、一先ず役場へと向かうことにした。
そこで身体を休めてから、最後の一人を殺しに行く。
金色の髪を流しながら、彼女はさっそうと立ち去っていた。


【F-3/一日目/午前】
【リン@パワプロクンポケット8】
[状態]右腕裂傷
[装備]グロッグ19(5/15)、ナイフ
[道具]支給品一式×3、劣化版探知機、充電器、ヒヨリンセット(化粧品中消費)、支給品一覧表、島岡・二朱の両眼
[思考]
基本:一先ずノルマの三人殺しはクリアしておく。
1:八神と茜は何としてでも生き残らせる。
2:劣化版でない探知機が存在するのなら入手してしておきたい。
3:第五回放送の前に役場へと向かう。
13夢 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/09(水) 16:59:21 ID:2+oJx91p0


【終幕:ある男には夢がある、愛しい少女を救う夢が】


「二朱、さん……」
「……」

准は泣き崩れるように二朱の遺体にしがみつく。
ヘルガはそれを痛ましい表情で眺める。
女はどこかに行ってしまった。
突風のように現れて、とんでもない被害を残してあっという間に去っていく。
見事な手際だ、人殺しに慣れているのではないかと勘ぐりたくなるほどに。

「夏目……私たちは芳槻さらを」
「……」
「二朱もそう思っていたんだろう? 芳槻さらを止めようと、そう思っていた」
「…………わかってます。わかってる、けど」

二朱は准の所為で死んだようなものだ。
准がもっとしっかりとした、不気味なまでに冷静な女だったら二朱は死ななかった。
ヘルガのように動けていれば、二朱は死ななかった。

「やめろ、簡単に動けるわけがないんだ」
「でも……」
「死は恐ろしいんだ、絶対なんだ。簡単に怯えを失ってはいけない。死は、恐れるものなんだ」

准はその言葉に何も返せない。
確かに死を恐れない人間なんて居ない。准の行動はある意味ではとても人間らしいものだった。
だけど、その怯えが他人に死を与えてしまったのだ。

「……」
「今は動くしかない。強くなるのはこれからでいい、と言っているんじゃない。
 もう准はこれから強くなるしかないんだ、芳槻さらを止めると決めたのならな」

ヘルガの言葉にうなづくだけで准は返す。
その言葉は全てに正しいのだ。
死は恐れるもの、動けるわけがない、これから強くならなくてはならない。
そのどれもが、正しい。

「わかりました……けど、お墓だけでも……」

そう返そうとした瞬間、それを超える大声が響いた。

「スミマセン! 芳槻さらって子を知りませんか!」

声の方向に立っていたのは、二朱公人を思わせる体格の良い野球着姿の男だった。
14夢 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/09(水) 17:00:34 ID:2+oJx91p0

【F-3/学校/グラウンド/一日目/午前】
【十波典明@パワプロクンポケット10】
[状態]:「人を信じる」という感情の欠落、野球に対しての情熱
[装備]:バタフライナイフ、青酸カリ
[道具]:支給品一式
[思考・状況]基本:さらを探す、とにかく今はそれだけ。
1:目の前の二人にさらの居所を尋ねる。
[備考]
1:信頼できる人間とは「何故自分と手を組むのか、その理由を自分が理解できる人物」を指します。
2:逆に「自分の理解できない理由で手を組もうとする人間には裏がある」と考えてます。
3:さらルート攻略中に他の彼女ルートにも手を出していた可能性があります。
4:たかゆきをタケミの作ったロボットだと思っています。
5:タケミを触手を出す事の出来る生き物で、殺し合いに乗っていると思っています。
6:高坂茜とメカ亀田の名前を知りません。
7:さらが過去から連れてこられた、と思いました。

【夏目准@パワプロクンポケット9】
[状態]:腹部に刺傷(立ち上がれる程度には回復)、深い悲しみ
[装備]:スコップ
[道具]:支給品一式×2、スパナ、拡声器、不明支給品0〜4個
[思考]
1:二朱さん……
2:九条さんに会いたい。
3:さらを助けてあげたい。

【ヘルガ@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:右肩に怪我
[装備]:モデルガン、ナイフ、軍服
[道具]:ラッキョウ一瓶、支給品一式
[思考・状況]
基本:亀田という悪を育てるために亀田に立ち向かう。
1:あまりにも亀田に対抗する戦力が大きくなってきた場合はそれを削る。
2:謎の男に対する驚き。
15 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/09(水) 17:02:20 ID:2+oJx91p0
誤爆った……orzこちらでもしっかりと

投下終了です
誤字脱字矛盾等、見つけた際は指摘お願いします

そして遅くなりましたが、現在地の更新です
http://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0352.jpg
16ゲーム好き名無しさん:2009/12/09(水) 23:04:15 ID:mAIA63utO
乙゜
順調に学校フラグが回収されてる
ラブハンター好きだったのに死んじゃった…
主人公でも容赦ねえなw
八神以外弱いからなあ…
17ゲーム好き名無しさん:2009/12/14(月) 22:05:46 ID:KU3v3QyYO
九条もチンピラ数人程度なら楽勝な位強かったのにな
まあ相手が悪かったか
12の発売での強さの変動はないよね?
18ゲーム好き名無しさん:2009/12/14(月) 22:17:44 ID:xhLFrlQT0
強さなんて飾りです、偉い人にはそれが分からんのです
19ゲーム好き名無しさん:2009/12/15(火) 19:03:34 ID:JY+Y10Z40
予約キター
20 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/17(木) 15:39:06 ID:3cnIskB70
投下します
21東へ ◆7WJp/yel/Y :2009/12/17(木) 15:39:49 ID:3cnIskB70

メカ亀田とタケミは東へと向かって黙々と歩いていた。

「あの病院とかがある島に行くの?」
「そうでやんすよ、多分あそこに行くまでには一つか二つぐらいは死体があるはずでやんすから」
「そうなんだ……」
「……」

二人の間に会話は少ない。
タケミはメカ亀田とはあまり話したくなかった。
メカ亀田の価値観には興味がある、だけどそれを聞くのはひどく残酷で辛い。
作られたものであるタケミにはその事実を直面させる言葉はあまり好ましいものではないのだ。
対して、メカ亀田の脳に占められているのは一人の男のこと。
青いスーツをサングラスをつけた、刀一本でメカ亀田と渡り合った男だ。
あの男は殺し合いに乗っていた、ならば八時間以上たった今なら一人ぐらいなら殺しているはずだ。
だが、メカ亀田の目的はその死体ではない。
目的はあのサングラスの男。
メカ亀田が工場にこもっていた間に、あのサングラスの男は何度かの戦いをしているだろう。
日本刀と言う近距離戦しか出来ない武器ならば、遠距離武器を持った人間と戦った際に傷をおった可能性が高い。
ならば、適度に傷を負いつつ強奪した武器の少ない今が狙い時だろう。
こっちもそこそこに動ける状態で、最悪の場合でもタケミと言う壁がある。
なによりも、負けっぱなしと言うのはやはり気分が悪い。

二人が会話なく東へと進み続けて幾程か経った後、そこで二人は一つの死体と出会った。

「これって……」
「……死体でやんすね。ふん、よく似てるでやんすよ」

タケミは口元抑えながら呻き、メカ亀田はつまらなさそうに呟く。
目の前に転がるものは死体。
メガネを掛けてボロボロの作業着を身に纏った一人の男だ。
その姿にタケミは見覚えがあった。
いや、見覚えなんてものじゃない。
今も隣に立っているメカ亀田にそっくり、ほとんど同じなのだ。

「……オイラもよく知らないでやんすけどね、亀田によく似た人間は大勢いるんでやんすよ」
「クローン……?」
「さあ? 全員が兄弟だとか全くの赤の他人だとか……ま、オイラには関係ないことでやんす。
 オイラにとって意味のあるのは亀田だけでやんすから」

そう言いながらもメカ亀田はツカツカとその死体へと近寄ってくる。
その様子にタケミは慌てたような表情で声をかけた。

「首輪はやめてよ」
「……こいつも乗っていたのかもしれないでやんすよ?」
「それでも嫌なの」
22東へ ◆7WJp/yel/Y :2009/12/17(木) 15:40:31 ID:3cnIskB70

タケミの言葉にメカ亀田はおどける様に肩を竦める。
妙に強がっている様子がメカ亀田には面白くてたまらなかった。
あるいは愛らしいと言ってもいいかもしれない。
ひょっとすると、メカ亀田の人間に対する偏屈した想いがそう感じさせるのかもしれない。

「まあ当てはあるから構わないでやんす、放っておくでやんすよ。
 あ、まさか墓まで堀たいなんて言わないでやんすよね?」
「……」
「ちなみに、一人でする、は駄目でやんすよ? お前を連れてきたのは首輪を外すためなんでやんすから」

今の状況で最も大きな枷となっている首輪。
それを外すためにはメカ亀田とは違う視点の技術者の意見も欲しい。
何事も慎重に物事を進めたいのだ。
それに、先にも言った通りタケミは万一の時の盾となりえる。
頭も悪くないため、手放すには多少惜しい人材だ。

「……では、行くでやんすか。この調子だと放送までには島へ行けるかもしれないでやんすねえ。
 長時間、工場で時間を潰してしまったでやんすからねえ」

【C−7/一日目/昼】
【タケミ@パワプロクンポケット10裏】
[状態]:疲労(小)、メカ亀田に対する複雑な感情
[装備]:作業着、コンパス、時計、シールド@パワプロクンポケット3
[道具]:支給品一式、爆弾セット(残り5個)、ラブスコープ@パワプロクンポケットシリーズ、工具箱
[思考]基本:殺し合いには乗らない、首輪を外すために行動する。
1:出来るだけ戦いたくないが、どうしようも無ければ戦う。
2:メカ亀田は気に入らない。
[備考]
※モンスターとしての力は短時間、疲労大の条件の下、発動可。
※十波典明、高坂茜の名前を知りません。

【メカ亀田@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:損傷なし、上機嫌
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、PX-001(たかゆき)、ドリル
[思考]
基本:『殺し合い』を失敗させた後に亀田を殺す。
1:ジャミング用の機械と実験用の首輪を見つける。
2:サングラスの男を探すために、東へと向かう。
3:脱出のために役立ちそうな人間を優先して仲間にする。
[備考]
※参加時期は不明。
※メカ亀田は灰原の名前は知りません。
※自動追尾ミサイルとバリアーは没収されています。
※青野の情報は全部嘘だと思っています。
※十波典明、たかゆき、高坂茜の名前を知りません。
23 ◆7WJp/yel/Y :2009/12/17(木) 15:41:13 ID:3cnIskB70
投下終了です

……短くまとめるのが難しいと知った今日この頃
24ゲーム好き名無しさん:2009/12/17(木) 18:24:26 ID:pjY/ww0PO
乙です
このグループは対主催のカギだから
動向が気になりますね
25ゲーム好き名無しさん:2009/12/18(金) 01:22:23 ID:WqypbblF0
乙ッス
首輪を調べたいけど首輪を奪えないタケミがどうなるか期待
26ゲーム好き名無しさん:2010/01/05(火) 20:15:14 ID:paMd7DhfO
ほしゅ
27 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/06(水) 13:48:55 ID:nkIHXw8G0
愛、白瀬、天本、椿、上川、わん子、カネオを投下します
28 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/06(水) 13:50:14 ID:nkIHXw8G0

「ちょっと路線変更ね」

白瀬は殺人クワガタによって付けられた傷を直しながらつぶやく。
傷は深くないが、血が出てしまったことが辛かった。
愛もそれを感じながら、目で白瀬へと続きを促す。

「この傷と出た血……待ち一方じゃもう無理ね」
「血があるのは辛いわね。普通の人間なら、危険を感じて寄り付かなくなるわ」
「だから路線変更、時間帯的にもちょうど良いしね」

そう言って白瀬は先ほど回収したウージーと元からの支給品だったベレッタを机の上に置く。
代わりにソードと言う最初に殺したらしい人物から回収した武器を手にとる。
その効果はレーザーナイフなるものの刃をさらに長くしたようなもの、とのことだ。
殺傷力は問題ないのだろう、恐らく使わなかったのは白瀬の好みの問題だろう。

「今度は次に来た人間と接触するわ、もちろん友好的な態度でね」
「内から壊す、つまりは隠密活動ってこと?」
「ええ、ただし私だけね」
「……どういうこと?」

答えを先延ばしにするような白瀬の口調に、愛は苛立ったように尋ねる。
白瀬に主導権を握られている。そのことが愛に妙な焦燥感を覚えさせるのだ。

「私が消防署の中に呼びこむ。愛は予め決めておいた瞬間に襲ってくれれば良いわ。
 それで中から私も攻撃する、このソードでね……つまり挟み撃ちの形にするわけよ」
「挟み撃ち……確かに単純だけどこれ以上なく効果的な戦法ね。
 だけど、色々と問題があるわよ。まず百歩譲って中に呼び込めたとしてもいつ襲えばいいの?
 こういうのってお互いの疎通が取れていないと、あまり有効なものにならないんじゃないの?」
「だから、今からやるのよ。そろそろちょうどいい合図が大々的に流れてくれるでしょ?」
「合図っていうと………………ああ、放送のこと?」
「そ、放送が終わった瞬間に貴方は私たちを襲ってくれれば良いわ。これで挟み撃ちは成功。
 この作戦で一番危ないところがあるとしたら、消防署内に呼び込む段階だから愛のデメリットは少ないわ」

白瀬はソードを起動させ、その調子を確かめるように軽く振り回して見せる。
その白瀬の動きが焦りからであることを、愛は此処でようやく気づいた。
元々口数の多い白瀬だが、今の口調は若干早口になっている。
思ったよりも肩にかかった傷が深いのか、それとも何かまた別の理由か。
とにかく白瀬は焦っている。
正攻法で行くことを避け、愛を矢面に立たせようとしている。
しかしその焦りを上手く利用すれば、これからの動きの主導権を握ることも可能かもしれない。

「分かったわ、じゃあ銃を渡して頂戴」

だが、愛はあえて白瀬の言葉に従った。
理由としては白瀬にはまだ利用価値があることと、白瀬の立てた作戦も悪くないと思ったからだ。
29 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/06(水) 13:51:43 ID:nkIHXw8G0

「それと、このウージーって言うのは引き金を絞れば銃弾が勝手に飛び出てくるわ。
 反動が強いから気をつけて。狙いはつかないだろうけど、銃弾をばらまく感じに撃てるから貴方には最適よ」
「銃か……まさか使うことになるとは思わなかったわ」
「本当はアンタがソードで牽制して逃げたところで、後ろから私がウージー撃つ方が効率は良いんだけどね。
 さすがにウージー持ってる人間の言う事に従うほど楽観的な人間はいないでしょ」

不承不承と言った様子で白瀬は愛にウージーとベレッタの簡単な使い方を教えていく。
今までの行動から愛の大まかな膂力については把握したのだろう。
ウージーにしろベレッタにしろ両手で扱うこと、銃弾は無駄に使わないこと、銃でトドメを刺せるとは思わないこと。
この三つだけを伝えて白瀬は愛に銃器を手渡した。
愛は手渡された瞬間に覚えたズシリと来る重みに奇妙な高揚を感じる。
貧相という文字を体現したような里に所属してある愛としては、一生の間にこんなものを持つことになるとは思わなかった。
もちろん今の苦しい台所事情のままで一生を終えるつもりはない。
ないのだが、この手の新しい武器をこんな若い内から持てるようになるとは考えてもいなかったのだ。

(……それに、不慣れな武器を使ったが故の『事故』って言うのも起こるかもしれないわよね。
 それは白瀬も覚悟してるでしょう)

今は手を組んでいても、どうせいつかは倒すべき敵。
わざわざこちらが向こうの不利を察したことを知らせる必要などありはしない。


   ◆   ◆   ◆


椿はあまりにも上手く行き過ぎる状況に笑みを耐えながらも、猟銃を構えていた。
鋭い目付きとボロボロの服とが相まって、まるで冬の山に篭って獣狩をする猟師にも見える。
その猟師のような獲物を狙う目つきは殺人者だけを警戒していた。
殺し合いに乗っていない人間に注意する必要はもはやないと言っても構わない。
その容姿から向かい合った人間に警戒心を呼び起こさせてしまうが、今は隣に天本玲泉と言う無害を表している少女がいる。
少しもめても天本に仲介を頼めばいい、それで丸く収まる可能性が高い。
さらにあの神社で同盟と呼べる、五人もの人間と仲間意識を埋め込むことが出来た。
揉め事を回避出来る方法をいくつも手に入れたのだ。

今怖いのは分かりやすい殺人者と、椿と同じように背後を狙うタイプの人間。
前者は野丸太郎、銀髪とピンク髪をしている女の二人組、そして芳槻さらなる少女が居るとわかっている。
情報とは強力な武器になる、このようなサバイバルでは特にだ。
それをしっかりと手にいれることが出来た。
これは大きなアドバンテージとなる。
そう、例えばこんな状況でもだ。

「ま、待った待った! いきなりなんなのよ!」
30 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/06(水) 13:54:09 ID:nkIHXw8G0

ここは消防署のちょうど前方。
まずは施設を回り、何か使えるものはないかと思っていたところを早速人と出会ったのだ。
紫色のパンツスーツを着た、銀髪の女。
椿はレッドからの情報が頭に過ぎり、その次に女の姿勢を見て直ぐにピンときた。
この女は普通の職業についていない。
警察かヤのつく自由業か、とにかくあまり穏やかな職業についている人間ではない。
そういう人間は姿勢から分かるのだ。
警戒しながらもリラックスした姿勢と言うものは武道家は取らない、常に危険に晒されている人間が取るのだ。。

「悪いが、お前さんのことは信用出来ねえなぁ」
「……ッ! この血は襲われた時のよ、別にやましいものじゃないわ」
「そうかねえ? 俺には襲ったときに返り討ちにあったようにも見えてしょうがねえんだわ」

いたぶる様に椿は相手を追い込んでいく。
恐らく向こうも椿が何らかの情報を持って接していることに気づき始めただろう。

「なにか、勘違いしているみたいね。はっきりと言っておくわ、アタシは殺し合いになんて乗っていないわ」
「悪いが信用出来ない、二度目になるがこっちもはっきり言っておくぜ。
 んで、仲間は何処に隠れてんだい? いつ襲う算段だ? ある筋から聞いているんだぜ?」
「…………ああ、そういうことね」

女はようやく納得がいった、というような顔を作り上げてうなづいた。
その動作だけで、椿は僅かに分が悪くなったことを感じ取る。

「そもそも、私はそのピンク髪の奴に騙されたのよ。これはその傷」
「……あぁん?」

女の口から飛び出た言葉は、お世辞にも優れた言い訳とは言えないものだった。
それを女自身も理解しているのか、どこか自棄になっているような印象を受ける。
あるいは、椿が引き金に指をかけないと判断したが故の行動か。

「私は……まあ、警察みたいなものよ。公安とかそういう方面のね。
 そりゃある程度物騒な真似もするけど、一般市民を殺せるわけないわ。
 で、私はあのピンク髪に車に乗って人を轢き殺そうとしてる奴がいるって聞かれたわ。
 車よ、分かる? あれで暴れ回られたら」

そこで椿はレッドの言葉を思い返してみる。
この銀髪の女とピンク髪の女が組んでおり、重火器で人を襲ったと確かにレッドは言っていた。
だが、肝心などうしてレッドがそう確証したかという点に着いては聞いていない。
そして、そのことからレッドの言葉と銀髪の女の言葉に分かりやすい矛盾はないのだ。
とは言え、そこで「なーんだ、それなら仕方ないよな」と言えるほど椿は馬鹿でもお人好しでもない。
同行者の天本だって白瀬の言葉を一片も信じちゃいない。

(とは言え、どうするべきかねぇ……)

猟銃のトリガーを引いて銀髪の女を殺すか、それとも見逃すか。
31 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/06(水) 13:55:51 ID:nkIHXw8G0

まずトリガーを引いた場合どうなるか。
まあ、目の前の女は死ぬだろう。それは間違いない。
ミスをしたとしてもここを立ち去る。
怪我をしている状態で交戦するとは思えない。

次に見逃した場合はどうなるか。
女は生き残り他の参加者を殺し続けるはずだ。
恐らく将来的には椿にとってよろしくない存在となるだろう。
だが、逆に言えば参加者を減らしてくれる存在であるとも言える。

どちらもそれなりのメリットとデメリットが存在する。
ならばどっちを取るか。

(……お嬢ちゃんを刺激するのは避けておくかい。足手まといになられると困るしな)

椿が選んだのは見逃すという選択だった。
天本を必要以上に刺激することを避けたのだ。
どんなに覚悟していても、血を見ると人は興奮するものだから。

「分かったぜ……だけど、はいそうですか、と信じられるほど純じゃねえんでな。
 支給品の一切を出してもらうぜ。スーツの上も脱ぎな」
「……ほら、これでいいかしら」
「嬢ちゃん、調べてくれ。俺は見張っておくからよ」

そう言って足で小突いて天本に指示を出す。
天本は特に文句も居わずにデイパックの口を開ける。
その間にも椿は女から目を離さないし、余裕も与えない。

「ところで、お前さんの名前は?」
「……白瀬、白瀬芙喜子よ」
「そうかい、思ったよりも普通の名前なんだな。雰囲気からもっと仰々しい物だと思ったぜ」
「椿さん、中のもの見終わりました。ケチャップと人形、それとこれぐらいです」

白瀬との会話を遮る形で天本が椿にあるものを渡す。
筒、のように椿は見えた。物々しい、装飾のないただの筒だ。
恐る恐る中を覗いてみるが、特に変わったところはない。

「ただの筒よ、愛は銃を奪っただけ。何もしないなら、別に持っていっていいわよ」

白瀬はそう椿に言い放つ。
椿は僅かに考え込み、白瀬に人数を減らせるためには武器を与える必要があると判断した。
もちろんこれが白瀬の言うとおりただの筒である可能性もないわけではない。

「……そうかい、じゃあこいつは帰しておくぜ。だが、それだけだ」

渡しておくことにし、ここから立ち去れ、と言外に伝える。
32 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/06(水) 13:57:10 ID:nkIHXw8G0

「……分かったわ。信じられない、って言うのなら構わない。
 私がここから出て行く。アンタたちも気を付けなさい、ここには危険な奴がいっぱい居るからね」
「そいつはご丁寧にどうも。そちらもどうぞ気を付けて」

白瀬は背後を見せずに、椿たちを何度も見ながら立ち去っていく。
その動作に隙は一切として無い、やはり後ろめたいことを抱えている人間だな、と椿は再認する。

(しかし、襲わずに話だけをしていくとは……あの傷から判断すると仲違いしたのはホントみたいだな)

上手い嘘を付くコツと言うものは嘘の中に幾つかの真実を混ぜる物だと言う。
恐らくその真実と言うのは『ピンク髪と別れた』ということなのだろうと椿は思う。
だからこそ白瀬は必死になった。
失策を犯した後に失策を続けるわけにはいかない、ここで獲物を待ち受けていたのだろう。
だがそれもレッドの情報のおかげで失策。

(ンんー、どうにも上手く行き過ぎて怖いってもんだな)

天本から顔を隠すようにして、椿は密かにほくそ笑む。
バトルロワイアルが始まって以来、ミスらしいミスをしていないと思っているのだから当然とも言えるだろう。
だが、それは椿の勘違いに他ならない。
既に二匹の鬼が仕組んだ罠に足を踏み入れてしまい、後生大事に抱え込む宝物が毒を持った蛇であることを椿は知らないのだ。
このまま行けば椿は高確率で椿は死んでしまう。
例え二匹の鬼の罠を潜り抜けたとしても、毒蛇に噛まれてしまうだろう。
とは言え、毒蛇は相手を選ぶ。
同じ毒蛇であり、盾である椿を早々に噛みはしない。
つまり、椿の他の獲物が見つかれば、椿は助かる可能性が若干上がるのだ。
そういう意味では椿はやはりツイているのかもしれない。

「椿さん、人です」
「っと……あん、三人か」

背後から天本に声をかけられ、ようやく気付く。
椿は少し不注意だったと思うと同時に天本が思ったよりも周りを見ていることに驚く。
だが今はその三人の人影のことが優先だと頭を切り替える。
三つの影の内訳は成人男性が二つに小学生ぐらいの自動が一つと言ったところか。

「んー、殺し合いに乗ってるようには見えねえな」
「そうですね」

さすがに子供連れで殺し合いに乗る馬鹿はいない。
仮に殺し合いに乗っていたとしても、少なくとも出会った瞬間に殺すような真似はしないだろう。
椿と同じような方針をとっているのならば情報交換ぐらいならば出来るだろう。

「話しかけてみるか、嬢ちゃんは少し離れてな」
「……ええ、分かりました」
33 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/06(水) 13:57:58 ID:nkIHXw8G0

椿は猟銃を肩で担いだ状態でゆっくりと距離を詰めて行く。
その際に天本を庇う風を装いながらも、その存在をアピールすることを忘れない。
薄汚い格好と言うものは普通の人間が考えるよりも遥かに警戒心を呼び起こす。

「俺たちは殺し合いには乗っていない! 少し話がしたいが構わないか!?」

声を発したのはちょうど少女の影と男に挟まれている、真ん中の男だ。
中肉中背、裾の長いコートを着ている以外は特別分かりやすい特徴と言うものはない。
だが、なんとなくあの男が三人組の中心人物だということは分かった。

「オーケー、こっちも乗るつもりはねえ。出来るなら友好的に行きたいところだ」
「……ありがたい。だが、少し休めるか? こっちには小さい子も居て、その子も疲れている」

椿の言葉に、やはり真ん中の男が反応を示す。
たしかに顔つきを見るにもう一人の男はあまり頼りになりそうに見えない。
つまり、話をするなら真ん中の男ということか。

「いいぜ、この中で話してみるか」


   ◆   ◆   ◆


消防署の中に入って十分、広い部屋の中で上川は先程であった二人組と向かい合っていた。
上川は軽く言葉を交わした限りの情報で、目の前の二人組のことを考える。
ボロボロの服を着た、逞しい身体つきをした男は椿と名乗った。
名簿にその名があり、さらにあの黒い板に名前が乗っていた人間だ。
とは言え、あの黒い板が何を示しているのかは不明なため、それだけで判断を下す事は出来ないが。
上川が話した限りの印象では、あまり油断ならないタイプのように見える。
その椿を一先ず信用したのは、ひとえに隣に居る天本玲泉なる女子高生の存在が大きい。
まさかこんな女子高生を連れて人殺しをする人間はいないだろう。
恐らく、椿も殺し合いには乗っていない。
上川と同じく、殺し合いに乗っていない人間との交流をスムーズにするために天本を連れているのだろう。

「さて、情報を交換しとこうか。こういうのはなあなあで流しとくのが一番いけないからな」
「分かった、俺も色々と知りたいからな」

情報を交換するように椿は早々に提案した。
上川も遊ぶつもりはない。
わん子とカネオとあまり頭のよろしくない人間としか会っていなかったため、話が手早く進むことに僅かながら頬が緩む。
34 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/06(水) 13:59:15 ID:nkIHXw8G0

「さて、まずは重要なことからだ。
 俺たちには他に仲間がいる、ちょうど四人と一人な。人づてからも居れれば他にも何人か居るな」
「そいつは良い、人数は武器になるからな」
「名前は七味東雅、倉見春香、七原正大、布具里、そしてレッドだ。
 後は九条って野郎と凡田大介って男、四路智美って女。後は東とかい高校生もだな。
 レッドはちょうどそんなマフラーをしてるから分かりやすいだろうな」
「マフラー……ヒーローってやつか。あのブラウンとか言う奴と同じ」

最初に亀田に殺されたコスプレ男、ブラウン。
あの動きから察するに恐らく戦闘用のサイボーグだろう。
レッドも同じくサイボーグである可能性が高い、これはかなりいい情報を聞いたものだ。

「こっちは椿たちが初めて会った。だが、わん子ちゃんの知り合いは居るらしい。
 小波走太、小学生。あの二ノ宮という子どもとも知り合いらしい」
「……そうかい。嬢ちゃん、その子と一緒に居てもらえるか?」
「私ですか?」
「ああ、むさくるしい男よりも何倍も落ち着くだろう」

椿はそう言って、ある種厄介払いのようにわん子を天本に任せた。
天本は僅かに椿と上川の顔を眺めた後、何も言わずにわん子の手を引いて部屋の隅へと行く。
わん子も同じように上川の顔を眺めていたが、天本の方へとついて行った。
そして、椿が会話を再開し始めた。
恐らく友好人物の次は危険人物のことだろうと上川は当たりを付ける。
わん子や天本と言った普通の少女が居なくなったことでタイミングも良い。

「危険な奴はピンク色の髪をした女と野丸太郎とか言う高校生、後は芳槻さらって同じく高校生だ」
「……すまん、さっきも言ったが俺たちが会ったのはアンタたちが最初だ。
 だから、そっちも分からないんだ」
「……そうかい」

若干ではあるが、確かに眉をしかめて椿はつぶやいた。
一方的に情報をしゃべったことが少し納得がいかないのだろう。
頭がいい人間ほどバランスを考えるものだから。
逆に上川は思わず笑みを浮かべそうになる。
情報が一方的に入ったことに味をしめているのではない、頭の働く男が仲間になったことにかなりのツキが来たと感じたからだ。
放送が来るまでここに留まり、その間に情報をしゃべってもらう。
そして共に行動する。わん子やカネオなどよりも何倍も頼りになる人間だ。

(こいつは、ツキが回ってきたかな)

上川は堪えきれずに、歪んだ笑みを浮かべた。
35 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/06(水) 14:01:22 ID:nkIHXw8G0

   ◆   ◆   ◆


「ふう、説明書、捨てといてよかったわね」

白瀬は消防署の付近で何をするでもなく時間を潰していた。
姿を隠すことは仕事柄得意であるため、見つかることはまずないだろう。
故に今は放送までの時間を待つだけ。
しかし、ソードが奪われなかったのはツイていた。
これがなければ、愛と合流した際にイニシアティブが握られてしまうかもしれなかったのだから。

「あの赤いのが情報触れ回してんのね……作戦ミスかー、焦りすぎたかな?
 ま、愛は大丈夫でしょ。ウージー持ってるんだし」

それにどうせ危険に晒されているのは自分ではない。
今、危険なのはあのボロボロの服の男と少女、そして愛だ。
機を見計ってソードで乱入すればいい。
囮と本命が逆になっただけ、むしろ挟み撃ちの形がより強力になったとも言える。
もっと言ってしまえば芝居をしなくても良いことから、存分に身体を休めることが出来る。

「頑張ってねえ、一応アタシも後で行くから」

椿や上川と同じように自分の成功に味を締めるように、白瀬は少し笑った。


【D-2/消防署付近/一日目/午前】
【白瀬芙喜子@パワプロクンポケット8】
[状態]左肩に刺し傷
[装備]ソード@パワプロクンポケット9裏
[道具]支給品一式、さおりちゃん人形@パワポケ6裏、ケチャップ(残り1/4程度)
[思考]基本:優勝する
1:戦力増強のため弱者から倒す、強者は後回し。
2:八神を最優先で殺す。
3:愛と行動するが、灰原と合流できそうならば愛から灰原に乗り換える。
4:過去の人間が居るってことは……未来の人間も居るってことかしらね?
[備考]
※未来や過去から集められてるのではないかと思っています。
※灰原に関しては作り直したのか、過去から浚ったかのどちらかだと思っています。
36 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/06(水) 15:00:11 ID:nkIHXw8G0

【D-2/消防署/一日目/午前】
【愛@パワプロクンポケット5裏】
[状態]右脇腹に傷(応急処置済み)
[装備]ウージー
[道具]支給品一式×3(不明支給品0〜2)、ベレッタM92(6/15)、ベレッタの予備弾倉×5、煙幕×2
[思考] 基本:自分が生き残ることが第一。
1:放送明けに奇襲を仕掛ける。
2:生き残るためなら、他の人間を殺すのもやむ終えない。
3:一先ずは白瀬と共に行動するが、白瀬への警戒を怠らない。
[備考]
※参加者はそれぞれ違う時間から誘拐されたと何となく理解しました。

【D-2/消防署/一日目/午前】
【椿@パワプロクンポケット9】
[状態]:健康
[装備]:鉈、ムラタ銃
[道具] 支給品一式×2、不明支給品1〜4
[思考・状況]
基本:生き残るのに手段は選ばない。
1:天本とともに行動。
2:一応は協力者or黒野鉄斎を探してみる。
3:天本を利用してゲームを有利に進める。
4:第3放送前後にホテルに行く。

【天本玲泉@パワプロクンポケット4】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具] 支給品一式、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本:日の出島に帰る。
1:椿と共に行動。
2:一応は協力者or黒野鉄斎を探してみる。
3:人を結果的に殺すが、今は様子見。
4:第3放送前後にホテルに行く。
37 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/06(水) 15:01:31 ID:nkIHXw8G0

【上川 辰也@パワプロクンポケット8】
[状態]:疲労中、走力+5
[装備]: 走力5@パワポケ3、ヒーローのスカーフ@パワポケ7、拳銃(麻酔弾)予備カートリッジ×3@パワポケ8
[参戦時期]美空生存ルート、ルナストーン引き渡し後
[道具]:支給品一式、レッドローズの衣装@パワポケ8、ヒーローのスカーフ三個@パワポケ7、本@パワポケ8裏、『人間の潜在能力の開発』に関する資料@パワプロクンポケット4、黒い板@パワポケロワオリジナル
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
1:仲間を集める。
2:首輪を詳しく調べたい。
3:放送の後に港へ向かい、脱出方法が無いかを調べる。
4:頼もしい仲間を集めたらカネオに催眠術をかける。

【芽森 わん子@パワポケダッシュ】
[状態]:疲労小、仲間が出来て嬉しい。
[装備]:ヒーローのスカーフ@パワポケ7、モップ@現実
[参戦時期]:わん子ルート、卒業直後
[道具]:支給品一式(食料はキムチと何か)、ヒーローの衣装セット@パワポケ7、ヒーローのスカーフ四個@パワポケ7
[思考・状況]
基本:殺し合いから脱出する。
1:タツヤさんに付いてく。
2:走太君を探したい。
3:いつか、タツヤさんに自分の正体を打ち明けたい。

【カネオ@パワプロクンポケット9裏】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]リュックサック、ヒーローのスカーフ@パワポケ7
[思考]
1:まだまだ食べ足りないんだな〜
2:弟たちを探す。
3:春香に会ったら、『おしおき』をする。
[備考]
※参戦時期は9裏主人公の戦艦に最初に乗り込んできた後です。
※春香の名前は知りません。また春香の見た目に関する情報も、暗かったために曖昧です。
※テレポートをすると疲れが溜まる事を認識しました。
 テレポートの移動距離に関する制限は認識していません、またテレポートの制限の度合いは以降の書き手にお任せします。
※名簿は見ていません。
※現在は他の2人とデイパック経由で繋がっているため、テレポートはできません。

【ソード@パワプロクンポケット9裏】
宇宙全域で使われているビームソード。
多くのキャラクターが所持していることから使い勝手はいいものと思われる。
38 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/06(水) 15:02:20 ID:nkIHXw8G0
投下終了、タイトルは『潜むは蛇と鬼』です
誤字脱字等がありましたら、指摘お願いします
39ゲーム好き名無しさん:2010/01/06(水) 20:45:17 ID:vYM5jWT7O
投下乙!
マーダーコンビと椿、上川、そしてある意味一番怖い天本
椿と上川の腹の探り合いもおもしろいしマーダーコンビの
主導権争いも激化…

新年早々爆弾が投下されましたねww
40ゲーム好き名無しさん:2010/01/06(水) 20:47:08 ID:vYM5jWT7O
よく見たら児童が自動になっていましたよ
41 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/07(木) 15:55:54 ID:AAaKO0I50
反応遅れて申し訳ない、wiki収録の際に直して置きます
指摘感謝
42 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/07(木) 16:51:38 ID:AAaKO0I50
重ね重ね申し訳ありません
状態表には午前とありますが、正しくは昼です
43ゲーム好き名無しさん:2010/01/10(日) 13:40:21 ID:2ccU7Vjy0
一人で頑張っていて偉いなぁと思い一枚描いたんだが、参加者ですらないという。スマン。
完全無欠のサイボーグさんがこのスレを見たら、たぶんこんな感じになるんだろうなぁと。
ttp://sageuploader.vs.land.to/1upload/src/sage1_17202.jpg
44 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/10(日) 23:02:02 ID:IKms3tzu0
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
支援絵だよ支援絵ええええええええええええええええ!!!!
作品の方はもう少しで投下いたしまする
45 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/11(月) 02:07:12 ID:7MJHumX+0
遅れて申し訳ない、投下します
46孤高のヒーロー ◆7WJp/yel/Y :2010/01/11(月) 02:08:49 ID:7MJHumX+0

「悪いなぁ。それ、ロンだ」
「んじゃあ、待っただ。こっち切る」
「そんなのあるわけないだろ、常識的に考えて」
「え、常識ってなに、食えるの?」

ガタンゴトン、と一つの車が不恰好に走っていた。
その車の外装はお世辞にも見栄えの良いものだとは言えない。
使い古されており、色合いが薄れており、ガラスにも曇りが染み付いている。
なにより人が使った物が持つ特有の雰囲気を出しているのだ。

その不細工な車に七味東雅・倉美春香・七原正大・布具里の一行が乗っていた。
ちなみに、この車は春香の支給品の中の一つである『二朱公人の愛車』である。
鍵だけを支給され、重要な車は神社に置かれてあったので今まで使えなかったのだ。
余談だが、愛車が中古車と言う二朱なる人物が七味の涙を誘った。
さらに、その愛車が見事に盗まれていることがさらに涙を誘ってくる。
さらにさらに、名簿を見て二朱公人なる人物も連れてこられていることに気づいて七味の涙腺はもはや限界を迎えていた。
その後、車の中にあった綺麗な女性とのツーショットのプリクラを見つけて一気に涙は乾いたが。
彼女いない歴=年齢の人間は彼女持ちの人間には冷たいのだ。
冷たいだけである、決して悔しいわけではない、絶対に悔しくはないのだ。

七味が人知れず心の奥にそんな深い憎しみ(笑)を抱えたまま、一行はこの車で移動することにした。
確かに歩くよりも何倍も速い。何よりもちょうど四人乗りだ、若干狭いのが気になるが。
これを利用しない人間がいるだろうか? いや、いない。

ちなみに免許を持っている人間はゼロであった。

七味は野球に勤しみ、オフは実家でゴロゴロとしていたため免許は持っていない。ちなみにクリスマスは一人で泣いていた。
春香はまだ高校生の身であるし、車を無免許で運転するほど素行の悪い少女ではない。
七原と布具里が運転できたら怖すぎる、ドリフトテクを披露したりなんかした日には歴史がひっくり返ってしまう。
つまり、消去法でマシな人間である七味が運転することになった。
無免許で、山道を、中古車で、他の人間を乗せて、殺し合いの中で。
知っている人間ならば分かると思うが、これはどう考えても危ない。赤ちゃんにウォッカを飲ませる方がまだ安全である。

「おーい、兄ちゃん。あんまり揺らしてくれるなよー」
「今話しかけないでください! これしかもオートマじゃないんですよ!?」
「オートマだかいいともだか知らないが、快適な旅を提供するのは接客の義務ってもんだぜ。お客様は神様ってな!」
「あんたホントに大正の人!?」

必要以上にハンドルに近づき運転する七味に、後部座席で文句をつけるオヤジ一人。
相変わらずこの親子はギャンブルをしている。四人でするPカードを二人でするのに寂しさを覚えないのだろか。
覚えないのだろうなぁ、と嬉々とした声を出し続ける二人を見て七見は思う。
と言うか車酔いしても知らないぞ、と思うがそもそも車特有の酔いを知らないのかもしれない。
だから、素人の運転する車の中で字を見るのだ。これだから無知は困る。
知っている人間ならば分かると思うが、これはどう考えても危ない。赤ちゃんにウォッカを(ry
47孤高のヒーロー ◆7WJp/yel/Y :2010/01/11(月) 02:09:48 ID:7MJHumX+0

「おい、オヤジ。ってなわけでこのオニキリは俺のってことでいいな?」
「チックショー、そう言うのは絶対高値で売れるって相場決まってるのによぉ!」
「いや、そもそもそれ俺のなんですけどね!」
「先輩、元々は私のです」
「奪ったものなのに所有物宣言!?」
「まあ、巡り巡って今は俺の、だ」

そう言いながらオニキリなる日本刀を無限収納を誇るデイパックの中へと締まっていく。
七味は四次元ホ○ケットを思い出す、○で半濁音を隠しても意味がない気もするがそれは気にしない。
それにしても、と七味は思う。

「春香ちゃん、太ももに手をおくのは少しくすぐったいんだけど……」
「えー、別に良いじゃないですか!」

春香は悪びれた様子を見せずに○><と言った風に目を細めて腕をあげる。
いや、七味も別に悪いと言っているわけではない。
可愛らしい年下の女の子との密接なボディータッチはむしろ望むところだ。
だが、彼も男ではあるが、それ以上に生命を優先する生き物であるのだ。
さすがにいつ死んでしまうか分からないこんな状況では
気を緩めてはいけない。
なんかもう後ろで絶賛息抜き中なものすっごい年長の大正生まれが居るが、気にしない。
彼は20歳、自分の気持ち的にも世の評価的にも立派な『大人』なのだ。
ここでしっかりしなければいけない。
そう、女の子に動揺するのではなく女の子に頼れるようなクールな男にならなければいけないのだ。

(あー、それにしても女の子の手とか身体って柔らかいなぁ……)

でもこんなことを考えていたりもする20歳、これはもうダメかもしれんね。

「って、あー! 先輩、前! まえ!」
「え、な、なに!? 車!? もしかして右車線入っちゃった!?」
「人ですよ! って言うかここ車道じゃありません!」

春香が手を置いてきた太ももと、身体をひっつけてきた肩に全神経を注いでいたため前方不注意。
慌てた春香の言葉に考えるよりも早くブレーキに足をかける。
急ブレーキであったため、車体に大きな慣性が働く。
当然狭い後部座席でPカードに勤しんでいた二人が身構える訳がなく、二人は鼻っ面を思い切り前席に打ち付ける。

「っいたぁ! ……ん、ってなんだいなんだい、人かい?」
「あたた……あらあら、また小さな影だねえ」
48孤高のヒーロー ◆7WJp/yel/Y :2010/01/11(月) 02:10:59 ID:7MJHumX+0

二人して同じように顔を撫でながら、七原布具里親子も後部座席から覗き込むようにして前方を眺める。
そこにも影が二つあった、布具里の言うように小さな身体をしている。
中学生ぐらいの少女と小学生ぐらいの少年だ。
七味はその顔に見覚えは全くない。
助手席の春香に「知り合いか?」と尋ねると首を横に降った。
後ろの二人に尋ねようと振り返るが、七味が言うよりも早く春香と同じように首を横に降った。

「話してみようか」
「なら俺が行ってくる、こう見えても交渉の類は得意なんだ」
「おう、頑張ってこいよ息子!」

息子がシリアスな空気を作って、ダメな父親が笑顔で息子を送っていく。
なんだかんだで七原は頼りになるところがあるが、布具里はあまり頼りになるような人間ではないようだ。



   ◆   ◆   ◆


「こんにちは」

車から出てきた人は、ガッシリとした体格の男だった。
ハンチング帽を被りサスペンダーに軽そうなシャツとズボンを着た、特別変わったところのない普通の男。
ただ、手には物騒な色合いの日本刀と重厚な印象をあたえる拳銃を持っているため警戒心は呼び起こさせる。
真央も警戒しているのか、走太の前へと移動して庇うように位置を変えた。
走太もレーザーカッターを取り出して身構える。
49孤高のヒーロー ◆7WJp/yel/Y :2010/01/11(月) 02:12:01 ID:7MJHumX+0

「っと、そんなに構えないで欲しいな。こっちは殺し合いに乗っていない」
「……」
「だいたい、本当に乗っていたら手っ取り早く車で引いてるさ」

その言葉に、なるほど、とレーザーカッターを持つ手から力を抜く。
だが真央は相変わらず走太の前に立ったままだ。
男はそんな真央の様子に、注意深いんだな、と溜息をつくように呟いた。

「俺の名前は七原正大、私立探偵だよ」
「……芹沢真央」
「小波走太です」

軽く言葉を交わしてから拳銃をスボンに差し込む。
日本刀は鞘に手をかけたまま。
信頼というとまた違うが、殺し合いに乗っていないという言葉は信じても良いと思える。

「とりあえず話し合いと行きたいんだが……話せるかな」
「えーっと……」
「……行っておこう」

車はフロントガラスが光に反射されていて、乗っている人間の顔は見れない。
運転席に一人、助手席に一人、後部座席に恐らく一人。
多くても七原を含めて五人程度、少なくても三人は居るだろう。
その人数で殺し合いに乗っているとは確かに思えないし、乗っていたとしても既に攻撃をしてきているだろう。
人数では向こうが勝っている上に、こちらは子供なのだ。
話をするぐらいなら問題ないだろう。
50孤高のヒーロー ◆7WJp/yel/Y :2010/01/11(月) 02:12:54 ID:7MJHumX+0

「自己紹介からだな」

そう言って七原は車の天井に手を付き、中の人間に囁くために身体を屈める。
この動作に僅かながら、向こうも向こうで警戒しているのだな、と走太を感じる。
信じられないのはお互い同じなようだ。

「今は四人で動いているけど、まだ仲間が五人ほど居るよ。
 九条英雄に凡田大介に椿にレッドと天本玲泉、今は別れて仲間を探してる。
 ……今、言った中で知ってる名があるかな」
「え、あ、九条さんと凡田さんになら会いました!」
「……レッドは、私の知り合い」
「そうか、それなら話が早いだろうね」

七原はそう言いながら、こんこん、と芝居がかった動きで車の天井を叩く。
その動作に反応するように、車の運転席の扉が開く。
出てきたのは七原と同じように体格のいい、野球のユニフォームを着た男の人だった。
それにつられるように助手席と後部座席に居た二人も出てくる。
助手席は青を貴重とした制服を着た高校生ぐらいの少女、後部座席にはなんとも形容し難い骨格をした顔の中年がいた。
誰もが若干顔を張り詰めながら、こちらを伺うように眺めている。

「七味東雅、倉美春香、布具里。それに俺を含めた四人で今は行動している」
「えーっと、よろしく。芹沢真央ちゃんと小波走太くん、で良いんだね?」

誰も言葉を発しないことを嫌ったのか、七原が指でさしながら名前を上げていく。
それに応じるように七味と呼ばれた男が走太たちへと声を掛ける。
走太もそれに返答する。
51孤高のヒーロー ◆7WJp/yel/Y :2010/01/11(月) 02:14:01 ID:7MJHumX+0

「あ、はい。よろしくお願いします」
「……」
「……お姉ちゃん?」

真央はうんともすんとも言わない。
ただ、身動ぎ一つせずに、ただ黙り込んでいる。

「まあ、その、なんて言うかな。こんな状況で初対面になっちゃったけど、二人ともこれからよろしくね」
「え、は、はい。よろしくお願しいます」

何の変哲もない、普通の言葉だ。
少なくとも走太はそう感じたし、七味も特別な意味なんて全く込めていないはずだ。
それなのに、真央は何も言わなかった。
不思議に思った走太が振り返ると、そこには顔を俯かせた真央がいた。
走太の視線に気づいたのか、真央はやはり俯いたまま呟くように答える。

「なん、でもない」
「……でも」
「大丈夫」

真央はそこでようやく俯かせて誰にも見せなかった顔を走太にだけ見えるように向ける。
相変わらずの無表情、だが走太には言葉が出せなかった。
今まで真央は無表情を貫きつつも、柔らかい表情を何度も見せてきた。
そのため、走太は真央が感情を表に出すのが苦手な性質なのだと思っていた。
だから、真央の顔に現れた大きな変化に戸惑いを隠せなかった。

「私は……ヒーロー、だから」

頬に一筋だけ、涙が流れていた。
52孤高のヒーロー ◆7WJp/yel/Y :2010/01/11(月) 02:15:34 ID:7MJHumX+0


    ◆   ◆   ◆


覚悟していたことだった。
あの日から、ずっと真央は覚悟していた。

二度と会わないと。

会話を交わすことすらしないと。

姿を消してヒーローであり続けると。

そう思ってずっと動いてきた。

だけど、会ってしまった。
もう二度と会わないと決めたのに、会ってしまった。
全てを忘れた顔で、何も変わっていない笑みを浮かべてくる。
その顔を見ると、堪えらることが出来なかった。

真央の頬に、涙が流れた。


【C-3/一日目/昼】
【七原正大(ななはら まさひろ)@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[装備]:地味な色のベスト、ニューナンブM60(6/6)、オニキリ@パワプロクンポケット7裏
[道具] 支給品一式、Pカード、九条と凡田の知り合いの名前の書かれたメモ、予備弾(12/12)
[思考・状況]
基本:亀田を倒す
1:七味、春香、布具里と共に行動し、協力者or黒野鉄斎を探す
2:走太たちと情報交換を行う。
3:第3放送前後にホテルに行く
4:ほるひすに警戒心。
[備考]
※大正編のどの人物とどの程度面識があるか、メモに誰の名前が書かれたかは後の書き手に任せます
53孤高のヒーロー ◆7WJp/yel/Y :2010/01/11(月) 02:17:24 ID:7MJHumX+0

【布具里@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[装備]:亀田幻妖斎の服@パワポケ5裏
[道具] 支給品一式、亀田幻妖斎の仮面@パワポケ5裏
[思考・状況]
基本:正大に寄生して生きる
1:七味、春香、七原と共に行動し、協力者or黒野鉄斎を探す。
2:走太たちと情報交換を行う。
3:第3放送前後にホテルに行く
[備考]
※確認済みの支給品の中に、衣服になるものは入っていません

【倉見春香@パワプロクンポケット7表】
[状態]:野丸が東を襲ったことによる衝撃
[装備]:麻酔銃@現実(一発消費)
[道具]:なし(七味が持っている)
[思考・状況]
1:七味、七原、布具里と共に行動し、第3放送前後にホテルに行く。
2:走太たちと情報交換を行う。
3:仲間の足手まといにならないようにする
4:あわよくば七味の記憶を取り戻す

【七味東雅@パワプロクンポケット7表】
[状態]:野丸が東を襲ったことによる衝撃
[装備]:セイラーマンサーベル@パワプロクンポケット7裏
[道具] 支給品一式×3、二朱の愛車@パワプロクンポケット2、不明支給品1〜5
[思考・状況]
1:春香、七原、布具里と共に行動し、協力者or黒野鉄斎を探す。
2:走太たちと情報交換を行う。
3:第3放送前後にホテルに行く。
4:春香を守る。
[備考]
※七味東雅の高校時代は彼女とも付き合わずまじめに野球一筋でした。
※七味東雅は記憶喪失ではありません。
※2年前のことなので春香のことを覚えてないだけです。(生徒会の時しか面識がないため)
54孤高のヒーロー ◆7WJp/yel/Y :2010/01/11(月) 02:18:16 ID:7MJHumX+0

【芹沢真央@パワプロクンポケット7】
[状態]:疲労、腹に軽い痛み
[装備]:私服
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1〜3個
[思考]基本:弱きを守り悪を挫く『正義の味方』を貫く。
1:……………………………
2:人を守る。
3:浜野朱里を警戒。
4:時間になったらホテルに向かう。
[備考]
※参加時期はEND【孤高のヒーロー】で主人公に記憶消去したままの状態から。
※八神、大江、九条、凡田と情報交換をしました。
※神条紫杏一行とは情報交換を行っていません。

【小波走太@パワポケダッシュ】
[状態]:健康、軽い擦り傷
[装備]:ガンバーズのユニフォーム、スニーカー、高出力レーザーカッター
[道具]:支給品一式(ランダムアイテム不明)
[思考]基本:生還し親父を復活させる
1:殺し合いを止める、人は殺さない。
2:七原たち話す。
3:真央、八神、和那、九条、凡田を少し信頼。
4:浜野朱里を警戒。
[備考]
※参加時期は最後の大会の前から、誰ルートかは後続の書き手さんにお任せします。


【二朱の愛車@パワプロクンポケット2】
その名の通り、二朱の愛車。これで二朱は今の奥さんと何度もデートに行った。
お代は驚きの20万、駐車場代やらなんやらで実際の予算はもう少しかさむが。
嫁と撮ったプリクラが張ってある。死ねばいいのに、もう死んだけど。

【オニキリ@パワプロクンポケット7裏】
霊刀の上位互換的な武器、普通の日本刀と大きな違いはない。
ちなみに、ゲーム中では何故かウタノが森の中で見つけたりする。
55 ◆7WJp/yel/Y :2010/01/11(月) 03:04:38 ID:7MJHumX+0
投下終了です
56ゲーム好き名無しさん:2010/01/13(水) 01:50:31 ID:S7jpS/9kO
投下乙です!
前半吹いたww憎悪ってwwただその気持ちはよく分かるぜorz
大正組は普段から命の危険にさらされてるとはいえまったりしてるなw

真央、七味、春香の世界は平行世界なんですよね?
どんだけ複雑な三角形関係なんだ 真央泣いちゃったし
荒れそうな予感がするぜ
571122335:2010/01/21(木) 21:52:39 ID:vmQWJC1W0
それでは初投稿します
初めてなので注意点があったら教えてください
58ゲーム好き名無しさん:2010/01/21(木) 22:19:28 ID:pIrMT84z0
おお、新人さんだ
頑張ってくれ、期待してるぜ、と

あと、トリップつけてくれい
#○○○って感じで名前欄に、○○○はテキトーな言葉でいいから
あとシャープは半角で、それとメル欄にsageをば
59信じること:1122335:2010/01/21(木) 23:26:09 ID:vmQWJC1W0
「二朱さん・・・」
そう准がなげいたとき、
「スミマセン! 芳槻さらって子を知りませんか!」
と、突然声をかけられた。
振り返ってみると、二朱公人に似た野球青年がいた。
准が話しかけようとすると、
「まて!」
とヘルガが叫び、
「今すぐデイパックをおろせ!」
と、その青年にナイフをみせた。
その青年は戸惑っていたが、
「安心しろ。我々は殺し合いに乗ってはいない。
 もし乗っていたら、もう刺しているはずだ」
とヘルガが言うと青年はデイバックをおろした。
「お前の名前はなんだ?」
とヘルガが言うと、その青年は
「おれの名前は十波。十波典明。プロ野球選手だ。そっちの名前は?」
「ヘルガだ」
「そうか、ヘルガさんね・・・じゃあそっちの女性の名前は?」
十波は准に聞いた。
「私は夏目准。見ての通りメイドよ」
「そっかー。夏目さんね」

この後、なぜか沈黙が続き、十波が口を開いた。
「それで、話を戻しますけど、芳月さらって子を知りませんか?」
するとヘルガが、
「ああ、それなら今、この学校の中をを探そうとしていたところだ。
 もしかしたら、この中にいるかも知れない、と思ってな」
「え?そうなんですか!ありがとうございます!
 ならば、あの場所にいるに違いない!」
とか言うなり、十波は学校の中へ一人で走って行ってしまった・・・

しばらくして、准が
「大丈夫かな・・・?」
と言うと、ヘルガは、
「たぶん、大丈夫だろう・・・」
といった。

60信じること ◆KDTR.YV83s :2010/01/21(木) 23:52:12 ID:vmQWJC1W0
_____________________________________________________________________


屋上で一人、さらは考えていた。
(お父さん大丈夫かな?)
(十波君は生きているかな?)
(姉さん・・・)
(生きて帰れるかな・・・)
など、とにかくいろいろ考えていた。
(とにかく、この大会を脱出したい・・・)
(死にたくない・・・)
今までずっと一人だったさらは、とても精神的に疲れているはずだ。
しかし、さらはこんなことを思っていた。
(この大会に十波君は出ている
 なら・・・彼に会いたい!)
とはいっても、こんな願いなんて叶うはずはない。
神様がかなえてくれるはずがない。
と、さらは思っていた。
さらはポツリと、
「十波君・・・」
と言ってみた。
その時、屋上の扉が開いた。
さらは、即座に身構えた。
すると、扉から現れたのは・・・
「!! と、十波君・・・?」
さらは一瞬、気分が楽になった。
61信じること ◆KDTR.YV83s :2010/01/22(金) 00:21:19 ID:Bc48ELnn0
「さ、さら・・・!」
十波はそこで固まってしまった。
なんと、探し求めていた少女が目の前にいたのだ。すると、後ろから、ヘルガと准が上がってきた。
准が「芳月さん・・・」といった。すると、さらは、
「十波君・・・と夏目さん・・・と・・・?」
「ヘルガだ」
「ヘルガさん・・・」

しばらく沈黙が続き、十波が
「なあ、さら、おれたちと一緒に来いよ。きっと一人より楽だぞ」
と言うと、さらは、
「でも、貴方がいいって言ってもそちらの二人がなんていうか・・・
 特に夏目さんには・・・ナイフで刺してしまったから・・・」
すると、准が、
「気にしなくていいよ、だってこの格好で話しかけられたら
 誰だって疑うから」
と言うと、さらは、
「でも・・・」 「お願い!信じて!」

しばらくさらは考え続けていた。
(恨みで逆に刺されるかも・・・)
(でも十波君がいる・・・)
(どうすればいいのだろう?)
そしてさらは心の中でこう決心した。
(もう、一人でいるのはやだ!!
 もうあんな思いをしたくない!!)

そして、さらはこういった。
「わかりました。ついていきます」
「芳月さん!」
「でも勘違いしないでください。
 私は十波君を信じただけですから」
「わかってるよ。私は芳月さんに
 信じてもらう為に努力するから! ねっ、ヘルガさん!」
「ああ、分かった」
そして、十波が、
「よし行くぞ!夏目さん、ヘルガさん!」
「もちろん!」「わかった」
とまとめた。そして、
「一緒に行こう!・・・さら!!」
「・・・はい!!」
こうして4人は動き出した。
この大会を終わらせるために・・・
62信じること ◆KDTR.YV83s :2010/01/22(金) 00:33:12 ID:Bc48ELnn0
【F-3/学校/屋上/一日目/日中】
【十波典明@パワプロクンポケット10】
[状態]:元気、野球に対しての情熱、さらを見つけて安心
[装備]:バタフライナイフ、青酸カリ
[道具]:支給品一式
[思考・状況]:さらと合流。4人で動き出す
[備考]
1:信頼できる人間とは「何故自分と手を組むのか、その理由を自分が理解できる人物」を指します。
2:逆に「自分の理解できない理由で手を組もうとする人間には裏がある」と考えてます。
3:さらルート攻略中に他の彼女ルートにも手を出していた可能性があります。
4:たかゆきをタケミの作ったロボットだと思っています。
5:タケミを触手を出す事の出来る生き物で、殺し合いに乗っていると思っています。
6:高坂茜とメカ亀田の名前を知りません。

【夏目准@パワプロクンポケット9】
[状態]:腹部に刺傷(大分回復)、新たな決意
[装備]:スコップ
[道具]:支給品一式×2、スパナ、拡声器、不明支給品0〜4個
[思考]
1:九条さんに会いたい。
2:さらに信じてもらいたい

【ヘルガ@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:右肩に怪我(大体回復)
[装備]:モデルガン、ナイフ、軍服
[道具]:ラッキョウ一瓶、支給品一式
[思考・状況]
基本:亀田という悪を育てるために亀田に立ち向かう。
1:あまりにも亀田に対抗する戦力が大きくなってきた場合はそれを削る。

【芳槻さら@パワプロクンポケット10】
[状態]:左頬・右目周辺に痣、顔面を中心に激痛、足に痛み(中)、精神的疲労(十波と会ってほぼ回復)、肉体的疲労(中)、所々に擦り傷
[装備]:機関銃(残弾中程度)
[道具]:支給品一式、スペツナズ・ナイフ
[思考・状況]
1:准とヘルガはまだ信じない
2:十波君のことを信じる
63 ◆KDTR.YV83s :2010/01/22(金) 00:35:13 ID:Bc48ELnn0
初投稿はこれで終了です。
改善点があったら教えてください。
64ゲーム好き名無しさん:2010/01/22(金) 13:17:54 ID:LFfpi8mU0
一先ず投下乙とだけ
さらはまだポジティブではないが……簡単に信じちゃったの
とは言え十波も十波でなに考えてっかわかんないし別に良いのか

んで、改善点はまずはリアルタイム執筆は辞めておきなされ
まずメモ帳か何かにSSを書いて置いて、投下するときはコピーと貼りつけを使う
ロワスレに限らず、リアルタイムはどのSSスレでも嫌われるので
あとsageろ、な? ココ気持ちの良いところじゃないのよ
65 ◆KDTR.YV83s :2010/01/22(金) 19:15:05 ID:Bc48ELnn0
>>64さんすみません。次は気をつけます。
ご指摘ありがとうございます。
66 ◆KDTR.YV83s :2010/01/22(金) 20:15:43 ID:Bc48ELnn0
後1つ。
>>62の時間帯は、日中ではなくて、昼です。すみません。
67ゲーム好き名無しさん:2010/01/23(土) 23:32:52 ID:rgq+yAn40
特に矛盾もなく死者も出なかったのに破棄に追いやられたか
今回のことは色々な意味で残念だな
68ゲーム好き名無しさん:2010/01/25(月) 21:20:02 ID:pzzASy8wO
◆KDTR.YV83sさん乙!!
正直下手だ!でも頑張れ!応援してる!!

と謎なテンションでレスしてみたわけだが
もっと推敲してみるべきだと思いますよ
何度も読み返すことで誤字も減るし内容も深まる
声に出して読んでみるのもいい方法です
あと会話を続けるときに言葉をはさみ過ぎな気もします

ごちゃごちゃと書きましたがとにかく一つだけ注意
何度も読み返すといった作業を怠らないことです
そうすればきっと上手くなると思います
めげずに書いてください!期待してます!
69ゲーム好き名無しさん:2010/01/25(月) 21:21:56 ID:pzzASy8wO
あとも一つ
sageとメール欄に書いてね
70ゲーム好き名無しさん:2010/01/26(火) 20:36:26 ID:MR4z7qTo0
ちょっと間が空いてしまいましたが、◆jnvLTxNrNA氏の代理投下を開始しますね
71偉人の選択 ◇jnvLTxNrNA:2010/01/26(火) 20:39:14 ID:MR4z7qTo0
八神総八郎が病院を出た後、神条紫杏は考えていた。
それは『このグループから離れるか、否か』ということ。
今まで彼女は、その場の選択を他人に任せる様に行動してきた。
しかし、ここにきて彼女は自らの意志で行動を起こそうとしていた。
理由は、その場の選択を他人任せてきたことにより、今まで一度としてグループ内の主導権を握れていないからだ。
これはジャジメントが自分に課した試練なのである。
最後の1人になるにしても、全員を束ねて脱出するにしても、主導権を握れないことには話にならない。
しかし今さらこのグループの主導権を握るのは至難の業だ。

このグループは、今はここにはいないが、病院に人を集めた八神、それと四路智美が主に中心となって動いている。
八神と四路は大人で、落ち着きがあり、ある程度の戦う力も持っているようだった。
対して紫杏は八神より年下…それ以前にこのグループで最年少で、戦う力は皆無。
八神達に比べたら全く頼りない。
そんな紫杏がこのグループで主導権を握るのはかなり無理がある。
確かに、紫杏は一高校の自治会長を勤めた身だ。上に立つ人間のあるべき人格(すがた)も知っている。
72偉人の選択 ◇jnvLTxNrNA:2010/01/26(火) 20:42:01 ID:MR4z7qTo0
しかし、紫杏は自分と同い年か、それより下の人間の上に立ったことはあっても、自分より年長の者の上に立ったことはなかった。

つまり、紫杏には、同世代の上に立つ力はあっても、年長者の上に立つ力はないのである。
そんな紫杏がこの殺し合いの場で主導権を握り、トップに立つにはどうすればいいか?

紫杏はそれを考え、一つの案にたどり着く。

それは、一度このグループを離れ、自分と同世代のグループを作り、後でこのグループと合流したとき、
同世代グループのトップとして八神達以上、最低でも八神達と同等の立場にのし上がるというもの。

しかし、この案には一度1人にならなければならないという問題がある。
今のグループに同世代の人間がいないからだ。
同世代の人間が1人でもいれば、その人間と2人でグループを離れるのだが…

この近くには、パーカーの女の子を始め危険人物が多い。
そんな場所を1人で行動するのは自殺行為だ。
また、同世代のグループが必ず作れるとは限らないし、例え作れたとして必ずトップに立てるとも限らない。

(朱里の力が欲しいな)

自治会で自分と共に働いてくれた、心を許した数少ない親友。
彼女は強化人間だ。彼女がいてくれれば心強いと紫杏は思った。
73ゲーム好き名無しさん:2010/01/26(火) 20:42:57 ID:Cd6QAUtJ0
 
74偉人の選択 ◇jnvLTxNrNA:2010/01/26(火) 20:44:33 ID:MR4z7qTo0
「曽根村さん」
「何でしょう?」
「カズ…大江和那に会ったと言っていたな?それはいつだ?」
「第1回放送の後、わりとすぐですかね?」

時計を見て今の時刻を確認する。

10時過ぎ。

第1回放送は早朝6時である。

(カズが病院を出てから少なくとも4時間か…未だ朱里を見つけられないでいるのか、それとも…)

「神条さん、どうかしましたか?」
「いえ…少し…同級生ですから…」
「まさかあなたまで病院を出るとか言わないわよね?」

すかさず智美が横やりを入れる。

「…………」
「何よ、その間は」

「すまないな、四路さん。私も1人で行動させてもらうことにする」
「はあ!?」
「な、何言ってるでやんすか!?ちょっと待つでやんす!」
「もう決めたことだ」

紫杏の発言にその場にいた者は例外なく驚いた。
…いや、ただ1人、荒井紀香を除いて…
グループ内で最年少と思われる少女が1人で行動すると言い出したのだから、この反応は当然と言える。

「せめて理由を聞かせてくれないかしら?」
「ふむ…」

75偉人の選択 ◇jnvLTxNrNA:2010/01/26(火) 20:46:11 ID:MR4z7qTo0
理由は簡単だ。このままこのグループにいても、トップには立てないだろう。
たとえこのままこのグループにいて、殺し合いの場から脱出できたとしても、自分がトップでなければジャジメントは自分を見放すだろう。
そればかりか、ジャジメントの裏の顔を知っている人間として処分するだろう。

つまりこのグループと共に行動を続けることは、この殺し合いの場でのみ命をつなぐその場しのぎでしかないのだ。

ここでアクションを起こして、成功しない限り、紫杏に後はない。

もちろんこんな事を他人に言う紫杏ではない。

「カズと朱里の漫才があまりにも長いんでな。止めに行こうと思う」
「それは、あなた1人でやらなきゃいけないこと?」
「私の身勝手で皆さんを危険にさらす訳にはいかないからな」
「あなたにできるの?」
「私は一応、高校で自治会長をやっていたんだ。2人はそのときの側近みたいなものでね。私の指示には従ってくれると思うが」

76ゲーム好き名無しさん:2010/01/26(火) 20:48:03 ID:Cd6QAUtJ0
 
77偉人の選択 ◇jnvLTxNrNA:2010/01/26(火) 20:48:46 ID:MR4z7qTo0
「1人で行動したとして、2人を見つけるより先に危険人物に出くわしたらどうするの?」
「口は上手い方だと自負している。何とか言いくるめるさ」
「さっきのパーカーの女の子みたいに話が通じない相手なら?」
「それなら私はそこまでの人間だったということだ」
そう、そこまでの人間だったということ。この状況を1人で乗り越えない限りジャジメントに処分されてしまう。

「急に死にたがりにでもなったのかしら?」

「私はこの世にもう未練はない。死を受け入れる心構えはできている」

紫杏ありとあらゆるものを捨ててジャジメントに入ることを決めた。
最高の校風を作るべく奔走した高校も、愛した人でさえも。

「そんなさびしいこと言うなでやんす。生きていれば、きっと幸せなこともあるでやんす」
「あたしはもう幸せになることは諦めたんだ!」

そう、諦めたのだ。十波から離れることを決めたあの時、紫杏は自分が幸せになることを諦めた。


「「「……………」」」

「すまない。少し感情的になってしまった」
「いいわよ。行きなさい」
「オーナー!?」
「頭がかたい人みたいだし、何を言ってもきかないわ。勝手にしなさい」
「すまない、四路さん。必ず後で合流する」
「それなら第3回放送までにホテルPAWAに来なさいな。そこに私が集めた仲間が全員来るはずだから」
「わかった」

「あと、三橋一郎という男に気をつけて下さい。彼は真っ赤で凶悪な右腕をしてるのですぐにわかると思います。」

「曽根村さんもありがとうございます」

そう言って紫杏は荷物をまとめ始めた。

78偉人の選択 ◇jnvLTxNrNA:2010/01/26(火) 20:51:51 ID:MR4z7qTo0
「しあん…」
「ほるひすか、世話になったがしばらくお別れだ。みんなを頼むぞ」
「ほるひすだよ。ころさないけどひともまもるよ」
「うむ。その意気だ」

そして席を立つ。

「銃はいるかしら?」
「いらないな。私は銃に関しては素人だ。弾数も限られているし、『下手な鉄砲数打ちゃ当たる』というわけにもいかないからな。それに先も言ったが、私の身勝手で皆さんを危険にさらす訳にはいかない。」

智美の問いにそう返すと紫杏は病院を後にした。

はっきり言えば怖い。
『死を受け入れる心構えはできている』といったが、それは仮面をかぶった『私』の本心であって、小心者の『あたし』の本心ではない。
『死ぬのは怖いことだ』、『死にたくない』これが小心者の『あたし』の本心。
しかしこのグループにいたんでは、必ず自分は破滅する。
1人で行動したところで破滅を免れた訳ではないが、しかし成功するかもしれない。その確率はまさに『箱の中の猫』である。
そう『あたし』に言い聞かせて、神条紫杏は『私』の道を歩き始めた。

79ゲーム好き名無しさん:2010/01/26(火) 20:53:56 ID:Cd6QAUtJ0
 
80偉人の選択 ◇jnvLTxNrNA:2010/01/26(火) 20:54:21 ID:MR4z7qTo0
【F-6/病院/一日目/昼】
【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[状態]:健康
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、詳細名簿、ノートパソコン(バッテリー消耗小)、駄菓子数個
[思考]まずは朱里と合流したいな…
基本:どのようにも動ける様にする。
1:自分と同世代のグループを作りそのトップに立つ
2:生きて帰って平山の言葉を伝える。
3:出来ることならカズと朱里、十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
[備考]
※この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています
※芳槻さらを危険人物と認識しました。
※島岡の荷物は、島岡を殺害した者に持ち去られただろうと判断しました。
※小波走太一行とは情報交換を行っていません。

【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:嫌な汗が背中に伝わっている。
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)、バット
[道具]:支給品一式、ダイナマイト5本
[思考・状況]基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:三橋くんが殺し合いに乗った……か。
2:十波典明の言葉を丸っきり信用するわけではないが、一応警戒。
3:亀田の変貌に疑問?
[備考]
※メカ亀田を危険人物を判断しました。
※ピンクのパーカーを着た少女を危険人物と判断、作業着を着た少女を警戒。
※探知機は呪いの人形に壊されました。

【曽根村@パワプロクンポケット2】
[状態]:右手首打撲
[装備]:ナイフ、ブロウニング拳銃(3/6、予備弾数30発)、バット
[道具]:支給品一式×3、魔法の杖@パワプロクンポケット4裏
[思考]
基本:漁夫の利で優勝を目指す
1:一先ず病院で休憩。
[備考]
※タイムマシンの存在を聞かされていません。

81偉人の選択 ◇jnvLTxNrNA:2010/01/26(火) 20:56:08 ID:MR4z7qTo0
【凡田大介@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身に打撲
[装備]:お守り、バット
[道具]:支給品一式、鍵
[思考・状況]基本:ガンダーロボを救出したい
1:基本人殺しはしたくない。
2:九条を信頼、そして心配。
[備考]
※七原、真央、走太と軽い情報交換をしました。

【ほるひす@パワプロクンポケット6表】
[状態]:表面が焦げてる、悲しみ?
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜1
[思考]基本:ころさないし、ひともまもるよ。
1:こうし……ひらやま……しあん……

【荒井紀香@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身のところどころに軽い火傷、体力消耗(小)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、野球人形
[思考]基本:二朱くんに会う。
1:二朱君との愛の営みを邪魔するひとは容赦しないです。
2:あの女(夏目准)が二朱君を手にかけていたら仇をとる。
[備考]
※第一回放送に気付いていません。

【萩原新六@パワプロクンポケット6】
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷、貧血(中)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式 、野球用具一式(ボール7球、グローブ8つ)@現実
    野球超人伝@パワプロクンポケットシリーズ、パワビタD@パワプロクンポケットシリーズ、左腕
[思考・状況]
1:???

82ゲーム好き名無しさん:2010/01/26(火) 20:57:58 ID:MR4z7qTo0
以上、代理投下終了です。
83ゲーム好き名無しさん:2010/01/26(火) 23:40:39 ID:JPZZDRj8O
乙です
紫杏すげー発想だな
このグループで長になれないなら別のグループで長になろうと
なるほどと思いました
84ゲーム好き名無しさん:2010/01/28(木) 10:52:41 ID:/wTQPpbeO
投下乙
このグループは単純な対主催じゃないから気になるな
85 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 21:51:24 ID:44ZTHtFpO
それでは投下します。
しますが、今回気合い入れすぎて、とんでもなく話が長くなってしまいまして…
3話分ぐらいあります。というか3部に分かれています。
リレー小説なのに書きすぎた感が否めないです。
本編投下は2作目のひよっこですがよろしくお願いします。
86CHERRY BLOSSOM〜桜色の空〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 21:54:06 ID:44ZTHtFpO
あの日以来、俺、十波典明はほぼ毎日同じ夢を見てきた。
気持ちの良い朝の目覚めなんて数えるほどしかない。
それは、さらと学校の屋上で楽しく過ごすという平凡ながらも幸せな夢。
だけどその夢の結末は決まってさらが俺の目の前で消えてしまうというもの。
『人なんて、いざとなったらみんな裏切るんです』
という言葉を残して。

何回も見た夢だ。夢を見ながらでも結末はわかっている。
夢の中だけでもと、何回も、何回もさらを引き止めようとした。
でも夢の終わりが近づくと俺の身体は金縛りにあったかのように動かなくなり、
さらが目の前で消えてゆくのをただ、ただ見ているしかない。

そんな夢をほぼ毎日見てきた。


だが今度こそ止めてみせる。

俺はもう二度とさらを失わない。


◆ ◆ ◆ ◆

俺はようやく学校にたどり着いた。
かれこれ2時間もの間、ほとんど全力で走ってきて、息も限界だ。
一直線に走ってきたから、途中に山があったが乗り越えてきた。
改めて考えると山のすそをまわった方が早かったかもしれないが、今はどうでもいい。

今はさらだ。さらに会うことだけを考える。

87CHERRY BLOSSOM〜桜色の空〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 21:55:21 ID:44ZTHtFpO
ちょうどグラウンドに人がいる。2人だ。
2人に向かって大声で訪ねる。

「スミマセン! 芳槻さらって子を知りませんか!」

しかし、軍服を着た金髪の女の人が振り向きざまに銃を構えてきた。
すぐに俺は手を上げて戦う意志が無いことを示す。
その女の人が俺の名前を聞いてきた。

「十波、十波典明っていいます。プロ野球選手です。って、うわっ!?」

俺はちらりとメイド服を着たお姉さんの方を見て驚いた。
彼女の側には胸と目から血を流して死んでいる男の死体があった。

(まさかこの人達、人殺し!?)

「お前の考えていることはわかる。が、断じてそれは違うぞ」

どうやら軍服の女の人に思考を読まれたらしく、それを否定される。
軍服の女の人はヘルガさん、メイド服のお姉さんは夏目准さんというらしい。
ヘルガさんによると、今の今まで殺し合いに乗った人間に襲われていて、
その戦いの中でこのユニフォームの男の人、二朱公人という人が殺されてしまったらしい。

俺は、話の全部を信じたわけではないが、一応そういうことにしておくことにする。

88CHERRY BLOSSOM〜桜色の空〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 21:56:20 ID:44ZTHtFpO
「俺、芳槻さらって子を探してるんです。
 俺の考えが正しければ、さらはここに来ていると思うんですが知りませんか?」
「奇遇だな。私達も芳槻さらを探しに来たんだ。
 彼女は肉体的にも、精神的にもかなり疲れ果てているようだったんで保護してやりたくてな。」
「さらを一度見たんですか!?」
「まぁな、危うく爆弾を投げ込まれかけたが…
 こっちの夏目も一度会って腹を刺されている。
 はっきり言って芳槻さらは危険な状態だ。早く保護しないと取り返しがつかなくなる」

やっぱりと俺は思った。この島に来ている芳槻さらは同姓同名の別人なんかじゃない。
俺の知っている、冷たく他人を寄せ付けないさらだ。

「さぁ、行こう。夏目もそろそろ立ち上がれ。」
「待って……せめて、お墓だけでも……」
「墓は芳槻さらを保護してからでもできる。今は芳槻さらを保護することが先だ」
「でも……二朱さんは…怪我した私を治療してくれた恩のある人なんです。
 だから、二朱さんをこのまま野ざらしにするなんてできません」
「くどいぞ!」
「あの……」

89CHERRY BLOSSOM〜桜色の空〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 21:57:49 ID:44ZTHtFpO
俺はおずおずと手を上げて会話に割り込んだ。同時にこちらを向いた2人の視線が痛い。

「さらのことは俺1人に任せてくれませんか?」

准さんが目を丸くし、
ヘルガさんが、1人でできるのか?と言いたげな怪訝そうな顔をする。

「お願いです。さらは俺にとってとても大事な人なんです。
 さらのことはよく知ってるつもりです。だから、俺1人に任せてくれませんか?」
「……わかった。そこまで言うならお前一人に任せよう。私達はその間二朱の墓を掘っている。
 ただし、30分経っても戻って来なかったら、私達も行くからな!」
「わかりました!ありがとうございます!」

俺は軽くお礼を済ますと校舎に直行した。さらがいるとすれば校舎の屋上。
俺は階段を見つけると、一段とばしで上り始めた。
今度こそ、さらを変えるために…

90ゲーム好き名無しさん:2010/01/28(木) 21:58:47 ID:rB3tz3hX0
 
91CHERRY BLOSSOM〜桜色の空〜:2010/01/28(木) 21:59:00 ID:44ZTHtFpO


◆ ◆ ◆ ◆


後に残されたヘルガと准は十波の後ろ姿を見つめていた。

准は不安そうに大丈夫かな、とつぶやく。
「大丈夫だろう」

准のつぶやきにヘルガが答える。

十波のまっすぐな瞳、ヘルガはそれをしあわせ島で出会ったある青年、
そしてこの島で出会った越後竜太郎に重ねていた……


【夏目准@パワプロクンポケット9】
[状態]:腹部に刺傷(立ち上がれる程度には回復)、深い悲しみ
[装備]:スコップ
[道具]:支給品一式×2、スパナ、拡声器、不明支給品0〜4個
[思考]
1:二朱さん……
2:九条さんに会いたい。
3:さらを助けてあげたい。
4:十波がさらを救えるか少し不安。


【ヘルガ@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:右肩に怪我
[装備]:モデルガン、ナイフ、軍服
[道具]:ラッキョウ一瓶、支給品一式
[思考・状況]
基本:亀田という悪を育てるために亀田に立ち向かう。
1:あまりにも亀田に対抗する戦力が大きくなってきた場合はそれを削る。
2:十波を少し信頼。


92CHERRY BLOSSOM〜桜色の空〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 22:00:23 ID:44ZTHtFpO


◆ ◆ ◆ ◆


響き渡る2発の銃声に、さらは目覚めを余儀なくされた。
眠っていた時間は十数分程度。体力なんて全く回復していない。

すぐに機関銃を構えて、屋上の唯一の出入口である扉に意識を集中する。

しばらく待ったが扉が開く様子は無い。

ため息をついてさらは機関銃を下ろして俯く。

「……もう…嫌だ……帰りたいよ……お父さん……十波君……」

しかし、すぐに3発目の銃声。更にその後には男の断末魔の叫び声が響く。

さらは今度は両手で耳を塞ぐ。
その声が彼女が今最も会いたい人のものに似ているから。

手放した機関銃がガタガタと耳障りな音をたてて、足元に転がる。

ベンチに座り、膝を抱えて小さくなる。

「会いたい……会いたいよ……十波君に……十波君に会いたいよ……」

さらの目に涙が浮かぶ。

この島に来てからさらの身に起きたことは凄惨すぎた。
身体を痛めつけられたことも、
生きるため、死にたくなかったために他人を傷つけ、殺してしまったことも、
ただでさえ、既に重たい枷を背負ったさらには、重すぎるものだった。

「……もう…いっそ…死のうかな……死んだら…きっと楽になる…」

93ゲーム好き名無しさん:2010/01/28(木) 22:00:55 ID:rB3tz3hX0
 
94CHERRY BLOSSOM〜桜色の空〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 22:03:37 ID:44ZTHtFpO
◆ ◆ ◆ ◆


俺は階段を登りきって、屋上への扉の前にいる。
2時間走り続けた足に更に鞭を打って、4階建て校舎の階段を一気に登りきった。
息は上がり、膝がガクガクと笑っている。

この扉の向こうにさらはいるだろうか?
ドアノブを持つ手が震える。
意を決して扉を開く。


突き抜けるような澄み渡った青空。


太陽の光が眩しい。


遮断物のない屋上を吹き抜ける風が気持ちいい。


いい天気だ。


こんないい天気の下で、笑顔にならないで暗い顔してる奴なんてバカでとことん暗い奴だ。


間違いない。


間違いなく越後よりバカで、田島より暗そうな顔をしているに違いない。


そんな、バカで、暗い顔をした奴が



「………いた……」


95CHERRY BLOSSOM〜桜色の空〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 22:04:21 ID:44ZTHtFpO


◆ ◆ ◆ ◆


扉が開く音にさらは顔を上げ、屋上に上ってきた人物を見て驚く。
しかし、すぐに我にかえって足元に転がっていた機関銃を構える。

「来ないで下さい!」

先ほどまで会いたがっていた十波の登場にもかかわらず、さらがとったのは拒絶の態度と言葉。
さらの中で誰かが『十波君も裏切る』という警鐘を響かせる。

それでも十波はさらに向かって歩み続ける。
機関銃が怖くないわけではない。
でも、十波は『さらは引き金を引かない』と信じていた。

特に根拠は無い。しかし十波はさらを信じていた。

根拠も無く人を信じるなんて高校3年の甲子園以来だな、と十波は思う。
実に、実に久しぶりの、心地よい感覚に包まれる。

人を信じるのに理由なんていらない時もある。
理由なんか無くても信じたいと思えば、信じられる。

十波はそんな簡単な感覚をなんとなく思い出した。

96CHERRY BLOSSOM〜桜色の空〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 22:05:34 ID:44ZTHtFpO
十波とさらの距離が縮む。

残り5m。

十波はさらが顔中痣だらけであることに気づく。
何でもっと早く駆けつけてやれなかったのか、と奥歯を噛みしめる。

残り3m。

「来ないでって言ってるでしょ!?」

さらが二度目の拒絶の言葉を吐く。

十波の足はまだ止まらない。

残り1m。

十波が足を止め、左手でさらの機関銃の銃身を握る。

「今すぐこれを離せ、さら」

さらが、首を横に振る。
機関銃を持つ手がカタカタ震えている。

「十波君……いったい何をしに来たんですか?
 私を心配して来てくれたんですか?」

そうだ、と十波が頷く。

「この島の人達もみんなそうでした……
 うわべだけで心配そうな顔をして、凶器を片手に持ってたり、騙して利用して囮として捨てるための駒にしようとしたりしました……
 十波君もそうなんじゃないですか?」
「違う!そんなことない!
 俺はさらを本当に心配して、助けたいって思ってる!」
「口では何とでも言えるんですよ!
 口ではそんな事言っても、人なんて、いざとなったらみんな裏切るんです!」

夢の時と同じ言葉に十波の口が止まる。

97CHERRY BLOSSOM〜桜色の空〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 22:06:15 ID:44ZTHtFpO
「……もう私は、誰も信じる事ができないんです……
 いつか、世界さえも、私を裏切る日が来るんです。
 だったらこんな世界、生きてても意味ないですよね?
誰も信じる事ができない世界に疲れちゃいました……だから私は……」

さらが機関銃を思いきり振って銃身を握った十波の左手を振り払う。
そして、銃口を自分の腹に押し当て、




ガッ!




さらがその引き金を引こうとした瞬間、十波が機関銃を蹴り上げた。
さらの手からはじき出された機関銃は、放物線を描いて十波の後方に落下した。
突然の出来事にさらが目を丸くする。

「俺はまだ…まださらには死んで欲しくない!
 俺はさらが好きだから!」
「っ!」
「たとえ、この世界の誰も信じる事ができなくても、俺だけは信じろ。
 絶対に俺はさらを裏切らないから!
 何があってもさらを絶対に守るから!」
「………………」
「さら。俺と付き合ってくれないか?
 この馬鹿げた島から抜け出したら、二人でいろんな所に行って、いろんなものを見て、一緒に笑おう!
俺はさらが好きだ。
もし、この言葉を信じてくれるなら…
俺の言葉を信じてくれるなら…
笑って返事をして欲しい」



98CHERRY BLOSSOM〜桜色の空〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 22:07:55 ID:44ZTHtFpO
「………………」

さらの中で再び誰かが最大音量で警鐘を鳴らす。
『十波君も裏切る』と。

「………………」

(確かに、裏切られるかもしれない。
 でも、私は十波君を……!)


「わ、笑わないとダメですか?」
「へっ?」

さらの頬がピンクに染まる。
十波は思わず、すっとんきょんな声を上げた。

「そ、その……は、恥ずかしくて、顔を見られたくないのですが……」
「ダメだ。
 この青空の下では、笑顔じゃないとダメなんだぞ。
 こんないい天気の日に、こんな青空の下で暗い顔をしている奴はバカなんだよ。
 だから、笑顔で返事してくれないとダメだ」

さらが顔上げる。そこに先ほどまでの絶望の色は無い。

「私は十波君を……信じます。
 私も十波君が好−−−−」



バスン



一筋の閃光が駆け抜けた。

光は、さらの背中側から腹部を貫通し、
そのまま十波の右上腕を掠めた。

さらはたたらを踏んでふらふらしたが、やがて力を失って仰向けに倒れた。

さらが倒れたことで十波の視界が広がる。

広がった視界に写ったのは、涙を流し、こちらに向かってライフルを構えた、親切高校自治会長、神条紫杏の姿だった。


99ゲーム好き名無しさん:2010/01/28(木) 22:11:06 ID:rB3tz3hX0
 
100 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 22:11:18 ID:44ZTHtFpO
以上が第1部です。
続いて第2部を投下します。
101CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 22:12:19 ID:44ZTHtFpO
時は少し逆上る。

神条紫杏は、病院を出てすぐ東に向かった。
理由は単純。病院より西は危険地帯だからだ。
パーカーの女の子を始め、危険人物が何人も確認されている。
そして殺し合いに乗った彼らは確実に獲物を追って病院に向かっている。
いわば、もう、ふたの開いた箱の中の猫である。
猫が死んでいるのか、それとも生きているのか、もうわかっているのだ。
それに対し東は、まだ、ふたの閉まった箱の中の猫である。
曽根村という男から聞いた、三橋一郎という男や、進藤という女を殺した謎の狙撃手が確認されているが、
2人が病院に向かっているかは、わからない。
もしかすると、北の橋を使って島の北部に行ったかもしれない。

曽根村が生きているというのがそう考える根拠だ。狙撃手が曽根村に気づかなかったとは考えにくい。
がしかし、気づいていればすぐにその後を追い、紫杏達が病院に着く頃には追いついていると考えられる。
ところが、そのような事態にはなっていない。
となると、狙撃手は本当に曽根村に気づかなかったのだろう。

102CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 22:13:07 ID:44ZTHtFpO
三橋一郎のことも同様に考えられる。
かといって油断は禁物である。箱の中の猫が死んでいるのか、それとも生きているのかは、そのふたを開けてみなければわからないのだから。

紫杏は細心の注意を払って東に進む。すると前方で煙が上がっているのを確認する。
(方角的に水族館か。カズと朱里か……っ!!)

慌てて路地裏に飛び込んだ。前方に人影を確認したからだ。

(気づかれたか?)

殺し合いに乗った人間ならまずい。
ただの女子高生がバット1本で太刀打ちできる相手など限られている。

路地裏からそっと相手の姿を見る。

(ふむ、あれが三橋一郎という男か…)

禍々しい右腕を見てすぐに理解する。

(何故今頃こんな所を通るんだ?やはり東で何かあったのか?)

三橋は紫杏に気づかなかったようで、そのまま通り過ぎていった。
三橋をやり過ごすと、ほっと胸をなで下ろし、路地裏から出てさらに東に進む。
目指すは煙の上がる水族館。おそらくカズか朱里のどちらかがいるだろう、という目星をつけた。

103CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 22:15:50 ID:44ZTHtFpO


【G-6/一日目/昼】

【三橋一郎@パワプロクンポケット3】
[状態]:打撲 エネルギー70%
[装備]:鬼の手、パワーと走力の+パーツ一式、豪力
[道具]:支給品一式×2、予備バッテリー
[参戦時期]亀田の乗るガンダーロボと対決して敗北。亀田に従わされしばらく経ってから
[思考]
基本:亀田の命令に従いバトルロワイヤルを円滑に進めるために行動する。
1:病院へ向かう。
2:参加者を積極的に探して殺す。
3:もしも相手がマーダーならば協力してもいい。
4:亀田に対する恐怖心。
[備考]
※萩原(名前は知らない)は死んだと思っています。
※大江和那と浜野朱里(名前と姿が一致しない)が死んだと思っています。
※大江和那の能力の詳細を一切知りません
※トンネルバスターは一回分です
※神条紫杏には気づきませんでした。


◆ ◆ ◆ ◆

ウチ、大江和那は夢を見ていた。怖い夢を。

変な話やけど、夢を見ながら、
(あぁ、これは夢なんや……)
と思うことがある。

それは、とても現実ではあり得へんことが起こったとき。
夢やないとあり得へんことが起こったとき。

例えば、今見てる夢みたいに、大切な、とても大切なダチが死ぬ夢。

104ゲーム好き名無しさん:2010/01/28(木) 22:16:48 ID:rB3tz3hX0
 
105ゲーム好き名無しさん:2010/01/28(木) 22:17:52 ID:rB3tz3hX0
 
106ゲーム好き名無しさん:2010/01/28(木) 22:20:20 ID:rB3tz3hX0
 
107ゲーム好き名無しさん:2010/01/28(木) 22:28:36 ID:rB3tz3hX0
 
108CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 23:12:40 ID:44ZTHtFpO
夢やってわかってる。こんなことはあり得へん。

わかってんのになんでこんな悲しくて、

涙がでるんやろか?

「浜野朱里はお前が殺したんだ」
「誰や!?」

突然誰かの声が響く。辺りを見回す。…誰もいない。

「ウチが朱里を殺したってどうゆうことや!?」
「だってそうだろ?お前があそこで三橋一郎をきっちり始末しとけば、
 殺し合いに乗った人間に情けをかけなければ、浜野朱里は死なずにすんだんだ」

それはあまりに理不尽な理由。しかし、理不尽でいて的をえている。

「さぁ、大江和那。お前も殺し合いに乗れ。浜野朱里の仇をとるんだ」
「嫌や。ウチには無理や。人を殺すなんてことできへん」

ウチは耳をふさぐ。この声を聞き続けたらどうかなってしまいそうや…

「三橋一郎が憎くないのか?憎いだろう?だったら殺せ!三橋一郎を始末するんだ!」
「嫌や…やめて…かんにんや…」
「殺せ!」
「殺すんだ!」
「さぁ、早く!」

一つやった声が二つ、三つと増えていく。
109CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 23:13:52 ID:44ZTHtFpO
ウチはその場にうずくまる。

(もう嫌や……助けて…十波……)

それはウチの大事な人の名前。彼が駆けつけてくれたら、どれだけ救われるだろう。

「カズ♪」

「朱里?」

顔を上げると、そこには死んだはずの朱里の姿があった。その顔は笑顔。
でもその笑みは心から楽しくて笑ってるようなものではなくて、ウチを嘲るような乾いた、冷たい笑み。
その笑みを浮かべて朱里は言い放つ。

「どうして三橋一郎を殺さなかったの?
 おかげで私が死んじゃったじゃない♪」

「いやああ゛あ゛あ゛ああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

◆  ◆  ◆  ◆

「カズ!おいっ!カズ!」

また別の誰かによって和那は意識を引き上げられた。

「…だ…だれ……?」
「私だ!紫杏だ!どうしたカズ?ここで何があった!?」
「うぅ…紫杏…朱里が…朱里が死んでしまって…ウチが…三橋一郎を逃がしたから…ウチのせいで朱里は…」
「落ち着けカズ!お前のせいじゃない。」
「紫杏…」
「詳しい事情はよく知らないがこれだけは言える。
 お前は友人にツッコミはいれても、友人を殺すようなことはしない!
 だからお前のせいじゃない!」
「紫杏……うわーーーん!」

110CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 23:15:08 ID:44ZTHtFpO
紫杏の強い言葉に和那は勇気づけられ、同時に留めていたものが溢れ出す。

「頭を垂れるな!前を向け!カズらしくないぞ。さぁ、泣いてるヒマはない。ここには狙撃手がいるかもしれないからな。」
「…うん……わかった…」
「うむ。わかったら移動だ。ここは危険地帯だからな。少し休んだら、お前の力で…そうだな…学校まで飛んでくれないか?情報交換はその後だ」

この紫杏の言葉に和那は残念そうな表情で答える。

「すまん紫杏。そいつはちょっと無理なんや」
「?」
「なんやこの島来てから調子悪くてな、あんましこの力使えへんのよ。なんやものすご疲れんねん」
「ふむ、そうか…なら仕方ない」

無いものをねだってもしょうがない。紫杏はそう割り切る。

「なら私でも使えそうな武器は持ってないか?」
「……………」
「どうした?」
「いやぁ、この島来てから今までいろいろあったからな、よう考えたら自分に何が配られたか確認してへんわ」
「……………」
「そんな冷たい目で見んとってよ」

111ゲーム好き名無しさん:2010/01/28(木) 23:15:21 ID:rB3tz3hX0
 
112CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 23:15:58 ID:44ZTHtFpO
冷たい目線も浴びせたくなる。紫杏は本気であきれていた。
この殺し合いが始まって10時間は経つのに支給品をチェックしてないのである。

「どれ、そのデイパックを貸してみろ」

そう言って紫杏は和那からデイパックを半ば奪い取るように受け取ると、中を探り始めた。

「量が多いな…2人分くらい入ってないか?」
「朱里が2つあった荷物を一つにまとめたからなぁ」
「ふむ……油とライターか……こっちは塩素系洗剤と酸性洗剤…この2つは『混ぜるな危険』ということか……携帯電話?」
「それ朱里のや。それ使て水族館来る前に電話してたみたいやで」

見たところこの島の施設の電話番号が登録されているようである。

(まぁ、使えるか…?)

あるものを発見した紫杏の動きが止まる。

「どうしたんや紫杏?」
「いや、お前は本当に支給品を確認してなかったんだなと思ってな」
「えろうすんまへんな」
「まったく、お前に合ったこんなものが支給されているというのに」
「?」

113CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 23:17:04 ID:44ZTHtFpO
これは和那には間違いなく使えるが、他の人間に使えるとは限らないもの。
少なくとも紫杏には使えない。というか使いたくもない。
紫杏は小瓶に入ったそれを和那に渡す。

「これは!?桧垣センセのしあわせ草エキス!?」

親切高校において希望者に投与されるしあわせ草エキス
身体の奥に眠る超能力を目覚めさせるというある意味劇薬だ。
しかし万人が万人とも身体の奥に超能力を眠らせているとは限らない。
少なくとも紫杏の身体には眠っていない。

実はこのエキスにはひどい依存性があり、依存者は定期的にこのエキスを投与しないと禁断症状を起こすのだ。
禁断症状とは和那が気絶する前に起こった現象である。
このエキスが和那の手に渡った(いや、最初から持っていたのだが)ことは非常に大きい。これで和那は禁断症状の心配から解放される。

紫杏は使えるものがないか再びデイパックを探り始める。

「ふむ、これは「よっしゃー!!」

突然和那が気合いの入った雄叫び(?)を上げる。
どうやら早速エキスを飲んだらしい。

「元気回復や!行くで紫杏!」
「いや、待て。お前は先まで気絶してたんだぞ?」

114CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 23:18:02 ID:44ZTHtFpO

エキスを飲んだからといって、体力が回復したわけではない。あれは禁断症状を抑えるものだ。
しかし和那はそう思っていない。バッチリ回復したと思っている。
人間、思い込みは大事だ。『元気があれば何でもできる』というやつである。

「何言うてんねん。ウチはもう元気や。えーと、学校やったかいな?」
「話を聞け!」

紫杏は和那に危うさを感じる。切り替えが早すぎるのだ。
和那は先まで朱里のことで泣いていた。確かに元気を出せとは言ったが、元気すぎる。
そこに紫杏は危うさを感じていた。

「何ぐずぐず言うてんねん?思いたったらすぐ行動や!」

そう言って和那は紫杏を抱える。

「しっかりつかまっときや。落ちるでぇ」
紫杏の制止の声を無視して、和那は学校へ向かって落下を始める。
紫杏の悲鳴だけがその場に残った。


【桧垣東児特製しあわせ草エキス@パワプロクンポケット10】
親切高校において希望者に投与されていた薬品。
身体の奥に眠る超能力を目覚めさせる効果がある。
何度も服用すると依存症になり、定期的に投与しないと禁断症状を起こす。
115CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 23:19:58 ID:44ZTHtFpO


◆ ◆ ◆ ◆


カッシャーーン!!
バリバリバリ!!

神条紫杏と大江和那は校舎の外壁と窓、廊下と教室を隔てる木製の壁を盛大に突き破って校舎内に突っ込んだ。
ここは十波典明と芳槻さらがいる校舎と中庭を挟んだ反対側の南側校舎。
門から入れば北側の校舎の影になる、4階建ての校舎。その4階。
幸いにも和那が直前までなんとか減速していたことや、もろい木製の壁がクッションになったので、お互い軽いダメージですんだ。

「このバカ者!この力はいつもより疲れるんじゃなかったのか!?
 いきなりこんな無茶しおって! 
計画性がないにもほどがあるぞ!」
「えろうすんまへん。先まで元気やったのにもうヘトヘトや。
 最後の方は力上手く使えへんかったしな…
 紫杏、先のエキスまだある?」
「あの一本きりだ!バカ者!」
「そんなぁ…
 さっと学校行って、ぴゃっと病院戻るつもりやったのに…」
「どこまで計画性がなかったんだ…
 まぁやってしまったものは仕方ない。とりあえず屋上に行こう。
 外の空気を吸いたい。吐きそうだ」

減速したとはいえ、軽くエリア3つ分を、心の準備もないまま落ちたのである。
吐き気をもよおすのは当然だ。


116CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 23:20:50 ID:44ZTHtFpO


◆ ◆ ◆ ◆


屋上への階段を上りながら和那は紫杏に尋ねる。

「なぁ、紫杏、あんたは朱里が死んだことどう思ってるん?」
「……どうしたんだ?急に」

吐き気のため少し間を開け、片眉をつり上げて紫杏が答える。

「いや、親友が死んだのにあんまこたえてへんなぁと思って…」
「ふむ…あまり実感がわいてないのかもしれんな。
 私は朱里が死んだのを見てないし、強化人間の朱里が死ぬなんて思ってなかったから。」
「ウチの言うたこと信じてへんの?」
「いや、信じてはいる。お前は嘘をつける人間ではないからな。
 だが朱里が死んだことでくよくよしてもいられない。ここは殺し合いの場なんだ。
 くよくよして死にでもしたらあの世で朱里にぶっ飛ばされるぞ。
 朱里の無念のためにも私達は前に進まなければならない。」

そう進むしかない。紫杏には後がないのだから。

「やっぱ紫杏は強いなぁ…」
「カズだってもう立ち直っている。似たようなものだろ?」
「まぁね……お互いドライやなぁ…」


117CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 23:21:35 ID:44ZTHtFpO
(ドライ、か……)


『ドライ』それは度が過ぎれば『非情』ということ。
紫杏がジャジメントに入ったら真っ先に覚えさせられるであろうこと。

(こうしてあたしはどんどん非情になって、
 何万何千という人が死んでもなんとも思わなくなるのかな?)

「ところでカズ、先ほどお前のデイパックを探っていたらこれを見つけたのだが、
 私が使ってもいいか?」

紫杏は『あたし』を『私』で押し込め、話題を変える。

「何それ?ライフル…?」
「あぁ、しかもただのライフルじゃないぞ。レーザーライフルだ」

突拍子もない紫杏の言葉に和那は目を丸くする。

「レ、レーザー!?それビーム出るんか!?
 冗談きついで?」
「しかし、この殺し合いにはタイムマシンが使われてる可能性があるのだろ?
 未来の武器が持ち込まれていても不思議じゃない。
 まぁ、未来にそんなオーバーテクノロジーじみた武器が発明されるとは限らないが」
「あっ、紫杏もタイムマシンのこと知ってるんや?」
「病院に行って八神さんに会ったからな。
 カズの行動を知るきっかけにもなった。
 それで話を戻すが、このライフル、私が使っていいか?」
118CHERRY BLOSSOM〜不協和音〜 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/28(木) 23:22:16 ID:44ZTHtFpO
「紫杏、もしかしてそれで人を?」
「まさか。護身用だよ。
 殺し合いに乗ったものに対する脅しには使えるだろ?
 バット一本じゃ、あまり脅しにもならないしな。
 それに、実際に、本当にレーザーが出るとは限らん。
 一度くらい試し撃ちするべきか?」
「いやいや、やめとき。万が一、人に当たったら大変やからな。
 にしても護身用にしてはけったいなもんやなぁ…
 まぁ、ウチはこの棒があったらええし、別に使ったらええよ」
「悪いな、使わせてもらうぞ。
 さぁ屋上だ」


2人は屋上に出た。カズは大きく伸びをすると2、3回深呼吸をする。

「しっかしええ天気やなぁ。ここが殺し合いの場なんて信じられへんわぁ。
 な!紫杏!」
「………………」
「紫杏?どうしたんや?」

紫杏は黙ってただ一点を見続けている。和那も紫杏の目線の先に焦点を合わせる。
その先は中庭を挟んだ反対側、北側校舎の屋上。

「あれは……十波?……とあともう1人……
 誰やあの女の子……」

カチャリ

「え?」

和那が気づいたときにはもう遅かった。
ライフルを構え、スコープを覗いて照準を芳槻さらの背中に合わせた紫杏は、迷わず引き金を引いていた。


119ゲーム好き名無しさん:2010/01/28(木) 23:23:12 ID:rB3tz3hX0
 
120ゲーム好き名無しさん:2010/01/28(木) 23:41:02 ID:FFlCI3hq0
 
121ゲーム好き名無しさん:2010/01/28(木) 23:49:07 ID:7QlkGBJXO
しえん!
122 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/29(金) 00:01:17 ID:oGMhkgQSO
以上が第2部です。
途中、さるさんくらいました。
また途中支援して下さってる方ありがとうございます。
二度目のさるさんくらいました。
第3部は、したらば仮投下スレにも投下してあるので三度目のさるさんの時には、どなたか代理投下していただけたら幸いです。
間隔が10分開いたらさるさんくらったと思って下さい。
それでは、第3部投下です。

123代理投下:2010/01/29(金) 00:01:30 ID:gF3VP89l0


◆ ◆ ◆ ◆


さらが撃たれた。

少し時間がかかったが十波は理解した。

「さ、ら……?」

仰向けに倒れたさらの名を呼ぶ。


既にさらを中心として真っ赤な血の池ができ始めている。


「うわああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!
 さら!!!!さらあぁぁ!!!!!」


さらのもとに片膝をついてしゃがみ込み、力の抜けたさらの身体を起こす。
傷口からは鮮血が溢れ続けている。


「と、十波……君……」

「っ!?さら!?」

「ごめん…なさい……十波…君…
 せっか…く……私を…心配…して…来て…くれたのに……
 こんなことに…なって…しまって。」

さらが申し訳無さそうに謝る。
それに対して十波は首を横に振る。

「さら!お前は悪くない。
 俺がもっと、もっと早く来ていれば!
 そうだ、血を、血を止めなくちゃ」
124 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/29(金) 00:03:20 ID:44ZTHtFpO
CHERRY BLOSSOM〜戻らない歯車〜


◆ ◆ ◆ ◆


さらが撃たれた。

少し時間がかかったが十波は理解した。

「さ、ら……?」

仰向けに倒れたさらの名を呼ぶ。


既にさらを中心として真っ赤な血の池ができ始めている。


「うわああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!
 さら!!!!さらあぁぁ!!!!!」


さらのもとに片膝をついてしゃがみ込み、力の抜けたさらの身体を起こす。
傷口からは鮮血が溢れ続けている。


「と、十波……君……」

「っ!?さら!?」

「ごめん…なさい……十波…君…
 せっか…く……私を…心配…して…来て…くれたのに……
 こんなことに…なって…しまって。」

さらが申し訳無さそうに謝る。
それに対して十波は首を横に振る。

「さら!お前は悪くない。
 俺がもっと、もっと早く来ていれば!
 そうだ、血を、血を止めなくちゃ」

125 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/29(金) 00:05:54 ID:oGMhkgQSO
「残念……ですね…
 やっと…他の…人を信じる…ことが…できると…思った…のに……
 やっと…十波…君に…会え…たのに……
 もう…お別れ…なんて…」

「しっかりしろ!さら!お別れなんて言うな!
 この島を抜け出したら、二人でいろんな所に行って、いろんなものを見て、一緒に笑うんだ!
 お前は俺が助ける!」

十波はユニフォームを脱いでさらの傷口にあてがい、止血を試みる。
しかし貫通した傷口から溢れる血は止まることをしらない。

「何…で……泣い…て…るん…ですか……十波…君…?
 この…青空…の…下…では……笑顔…じゃ…ないと……ダメ…なん…でしょ……?
 こんな…いい…天気…の…日に……こんな…青空…の…下…で……泣いて…る…人は……バカ…ですよ……?」

さらは十波に笑いかける。
顔中痣だらけで腫らしているし、血の気が引いて蒼白になってきているが、
さららしい、可愛らしい、とても穏やかな笑顔。
十波は先ほどから流れる涙を慌てて拭う。

「そ、そうだよな!涙なんか流して俺バカだよな!
 こんなにいい天気なのに…」

十波がさらの手を握る。
祈るように、強く、強く、強く。

126 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/29(金) 00:07:33 ID:oGMhkgQSO
「なぁ、さら…
 俺、プロ野球選手になれたんだ。
 今年から大活躍して新人王とかいっぱいタイトル穫るんだ。
 だから…さら、テレビで、できれば球場に来て、俺の活躍見ててくれよ!」

「…?……十波…君…は…まだ……高校…生…でしょ……?
 気が……早い…です…よ……?
 でも……わかり…まし…た…十波…君…
 私…いっ…ぱい……いっぱい……応援…します…約束…です……
 だか…ら…十波…君…も……頑張…るって…約束…して…下さい…」

「あぁ、約束だ」

2人はお互いの手を強く握り、約束をかわす。
それは、果たされることはない約束。
しかし2人は約束をかわす。
果たされることはないとわかっていても、認めたくないから。


「……十波…君……大……好……き……」

「さら……?さら!!
 さらぁぁぁああああぁぁぁぁ!!!!!」


さらは目を閉じ、永遠の眠りについた。もう二度と目覚めることはない。

最期に紡いだ言葉は遅すぎる告白の返事。
至福の時は、桜の花ようにあっという間に散った。

十波の悲痛な叫びが晴れ渡る空の下、虚しく響き渡った……

【芳槻さら@パワプロクンポケット10  死亡】
【残り34名】


127 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/29(金) 00:08:38 ID:oGMhkgQSO
【F-3/学校/北側校舎屋上/一日目/昼】
【十波典明@パワプロクンポケット10】
[状態]:「人を信じる」という感情の復活?
    さらを失ったことによる大きな喪失感、右上腕に怪我
[装備]:バタフライナイフ、青酸カリ
[道具]:支給品一式
[思考・状況]基本:???????
[備考]
1:さらルート攻略中に他の彼女ルートにも手を出していた可能性があります。
2:たかゆきをタケミの作ったロボットだと思っています。
3:タケミを触手を出す事の出来る生き物で、殺し合いに乗っていると思っています。
4:高坂茜とメカ亀田の名前を知りません。
5:さらが過去から連れてこられた、と思いました。

※北側校舎屋上に十波が蹴飛ばした機関銃(残弾中程度)が落ちています。

※本当に「人を信じる」という感情が復活したかは、後続の書き手さんにお任せします。
 復活しなかった場合、
 1:信頼できる人間とは「何故自分と手を組むのか、その理由を自分が理解できる人物」を指します。
 2:逆に「自分の理解できない理由で手を組もうとする人間には裏がある」と考えてます。

 の記述をお忘れなく。

128 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/29(金) 00:09:34 ID:oGMhkgQSO
◆  ◆  ◆  ◆

「こんのダボ!!あんた自分が何やったかわかってんのか!?」

中庭を挟んで南側の校舎の屋上で和那は紫杏を取り押さえていた。
ライフルは奪い取って中庭に投げ捨てた。

「……………」

「なんとか言えや!紫杏!」

「……………くく」

「?」

「くくく……あはははははははっ」

「な、何笑てんねん!?」

神条紫杏は笑った。笑うしかなかった。
人を殺めるという過ちを犯した自分に。
早くも決心が揺らいでしまった自分に。


屋上の扉を開いた瞬間、彼女の愛した男、十波典明の声がした。

声のする方を見ると確かに十波がそこにいた……芳槻さらと一緒に……

(?)

何かを話しているようだった。
紫杏は自慢ではないが地獄耳だ。
ゆえに十波のこの言葉を拾ってしまった。

『俺はさらが好きだ!』


(!?)

129 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/29(金) 00:10:20 ID:oGMhkgQSO
そこからの行動は彼女自身でも驚くくらいスムーズだった。
ライフルを構え、スコープを覗いて芳槻さらの背中に照準を合わせる。
引き金を引く。一筋の光が芳槻さらを貫いた。
自然と涙が流れたが、手は震えなかった。

何故こんなことをしてしまったんだろう?

何故こんなことができてしまったのだろう?

何故涙が流れたのだろう?

芳槻さらに対する嫉妬の念のせいか?

自分のことを『愛している』と言ってくれた、十波の裏切りに対する怒りのせいか?

まだ心のどこかで幸せを、
十波と共に生きるという幸せを望んでいるのだろうか?

もう後戻りしないと、幸せにはならないと決めたはずなのに…

『同世代のグループを作ってトップに立つ』という本来の目的も見失って、
何故その足を止めてしまったのだろう?


神条紫杏には、わからなかった。


130代理投下:2010/01/29(金) 00:10:53 ID:gF3VP89l0
っと、申し訳ないorz
131 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/29(金) 00:11:03 ID:oGMhkgQSO
【F-3/学校/南側校舎屋上/一日目/昼】

【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[状態]:脱力感、両ひじ、背中に軽いうちみ
[装備]:バット(デイパックの中)
[道具]:支給品一式、詳細名簿、ノートパソコン(バッテリー消耗小)、駄菓子数個
[思考]?????
基本:どのようにも動ける様にする。
1:自分と同世代のグループを作りそのトップに立つ?
2:生きて帰って平山の言葉を伝える。
3:出来ることならカズと十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
[備考]
※この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています。
※島岡の荷物は、島岡を殺害した者に持ち去られただろうと判断しました。
※小波走太一行とは情報交換を行っていません。

【大江和那@パワプロクンポケット10】
[状態]:全身打撲、疲労(中)
[装備]:六尺棒
[道具]:支給品一式×2、不明支給品0〜1、携帯電話、塩素系合成洗剤、酸性洗剤、油、ライター
[思考]
基本:バトルロワイヤルを止める。
1:紫杏!?
2:病院へと戻る。
【備考】
※重力操作にかけられた制限の存在に漠然と気付きました。
※桧垣東児特性しあわせ草エキスは一本きりです。

※学校の中庭に和那の投げ捨てたレーザーライフル(残り電力90%)
 が落ちています。

【宇宙連邦特製レーザーライフル@パワプロクンポケット9裏】
風の強い惑星フローラでも長距離射撃ができるように製造されたライフル。
フローラ配属の連邦兵士に支給されている。
連邦兵士(中尉)曰わく、2km先の標的も一発とのことだが、おそらく訓練したらの話。
だが、高性能であることは間違いない。
文字通り実体弾ではなくレーザーが発射される。
本ロワ内では充電式とする。1回発射するごとに10〜25%電力を消費。
消費電力は発射距離によって異なる。
電力を0から100%充電するのにかかる時間、どれくらいの発射距離でどれくらいの電力を消費するか、の裁量は後続の書き手さんにお任せします。

132ゲーム好き名無しさん:2010/01/29(金) 00:18:06 ID:3CX8qWkI0
どうなったんだ?
規制?
133ゲーム好き名無しさん:2010/01/29(金) 00:20:53 ID:uoYWJPU2O
しあん…
134ゲーム好き名無しさん:2010/01/29(金) 00:21:35 ID:3CX8qWkI0
おっと投下されてたか
乙です

紫杏の今後の身の振り方が気になるな
135ゲーム好き名無しさん:2010/01/29(金) 00:44:03 ID:uoYWJPU2O
しあん地獄耳だったっけ?
136 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/29(金) 01:00:55 ID:oGMhkgQSO
最後の最後に三度目のさるさん…orz
皆さん、ご迷惑お掛けして本当に申し訳ありません。
なんとか投下終了です。
誤字脱字、矛盾などの指摘点をお願いします。

>>130さん
こちらこそ申し訳ありません。
僕が仮投下スレで言ったことと、本スレでやってることが違いますよね?
本当にすいません。

>>135さん
10主人公と荷田が自治会の作った恋愛禁止法について話していると、紫杏が話に割り込んでくる。
という定期イベント(たしか2年春)で紫杏自身の口から明かされていたと思います。
なお、このイベントは定期イベントを省略していると見れなかったと思います。

137ゲーム好き名無しさん:2010/01/29(金) 01:05:44 ID:uoYWJPU2O
そういえばそうでした
すみません
138 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/29(金) 01:10:34 ID:oGMhkgQSO
>>137さん
いえ、じゃんじゃん指摘して下さいね。
勘違いのまま矛盾がまかり通ってしまうのは、避けたいですから。
139ゲーム好き名無しさん:2010/01/30(土) 00:15:58 ID:UMVgEI5X0
投下乙!
あーあ、紫杏はついにやっちゃたか。まあ一回襲われてるし仕方ないか
それにしても、こいつらの関係が複雑過ぎる…。全員が別ルートだからな

あと、細かいことかもしれないですが、この時点では紫杏はカズの能力を知らないのでは?
140ゲーム好き名無しさん:2010/01/30(土) 01:59:19 ID:z7qL1P2A0
色んなデータを貰って読んでたし知っててもおかしくは無いんじゃない?
141 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/30(土) 02:29:29 ID:04/MSY59O
>>139さん
紫杏ルートにおいて、10主人公が紫杏を引き止めるシーンで、
甲子園に居るはずの10主人公が、
「大江に連れてきてもらったんだ。」
と言っても、紫杏が10主人公が居ることに驚いても、
手段についてはあまり驚いて無かったので、紫杏はカズの能力について知っているものかと思ってましたが…
今考えると、この根拠は決定打とは言えないですよね……
どうしましょうか?
142 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/30(土) 02:31:19 ID:04/MSY59O
>>140さん
フォローありがとうございます。
143ゲーム好き名無しさん:2010/01/30(土) 07:39:32 ID:/CBgBmOoO
少なくともジャジメントについて知ってるから超能力について知っているかも
でもカズが超能力もってると知っているのかはよくわからん
確認が必要な気がする
144 ◆jnvLTxNrNA :2010/01/30(土) 08:05:47 ID:04/MSY59O
ポケ10で確認を試みたのですが、知っているとも、
知らないとも言い切れない、まさにグレーゾーンです…
それで、キャラ別SS表から、神条紫杏が登場した話をもう一度全部読んでみたのですが、
◆wKs3a28q6Qさん作の『The Joker』で、
『カズだってそうだ。十波のおかげでようやく男にも慣れてきて、自身の能力とも向き合ってこれたというのに。』
という部分を発見しました。

145代理投下:2010/02/08(月) 21:00:29 ID:QgIZwPiY0
いまさらながらですが、◆1WZThYdb3Q氏の『交錯』を代理投下します
146代理投下:2010/02/08(月) 21:01:59 ID:QgIZwPiY0
260 名前:交錯  ◆1WZThYdb3Q[sage] 投稿日:2010/01/27(水) 22:31:15 ID:5FkF/zDU0

一人の少女が歩いている。
焦ったような、でもどこか楽しそうな表情を浮かべながら。


また別の場所で、一人の男も歩いている。
やはり焦っているが、彼の表情はどことなく暗い。
そこに浮かんでいるのは、不安と、心配と、ほんの少しの恐怖。



――だが、二人は同じ事を考えている。

一方が、もう一方の事を。

ある日突然失踪した、一人の人間の事を。

―そして、信頼していた、「家族」の事を。

 
147代理投下:2010/02/08(月) 21:02:43 ID:QgIZwPiY0
261 名前:交錯  ◆1WZThYdb3Q[sage] 投稿日:2010/01/27(水) 22:32:06 ID:5FkF/zDU0


 ● ● ●


茜は、先ほど逃げてきた道を引き返していた。
理由は単純、あの多人数の集団を追いかけるためだ。
細かい人数は数えていないものの、最低でも5人は居ただろう。
あいつらを殺せば、また優勝に一歩近づける。
そう考えると、茜の頬が自然と緩む。

では、どうやって追いかけるか。
あの集団と会った所に戻り、それから同じ方向に進めばいい。
方向さえ合っていれば、少なくとも遠ざかる事はないはずだ。

もちろん、危険なのは百も承知だ。
さっきだって、一歩間違えば死んでしまったかもしれない。
東が油断したから、東が怪我をしていたから、あの危機から逃げ出せたのだ。
もう一度あんな状況に陥って、助かる保証はない。


でも、茜が逃げるわけにはいかない。
兄は、茜を信じてこの殺し合いに参加させたのだから。
再び三人で笑って過ごすという夢を、茜に託したのだから。

それを裏切るなど、彼女には到底できない。
だから茜は、あの集団の後を追う。
傍目に見れば、彼女の選択は決して利口ではない。
だが彼女にとって、そんなものは関係無い。
あくまで茜が、茜にとっての最良の決断をしただけのことだ。
 
148代理投下:2010/02/08(月) 21:03:42 ID:QgIZwPiY0
262 名前:交錯  ◆1WZThYdb3Q[sage] 投稿日:2010/01/27(水) 22:32:55 ID:5FkF/zDU0


 ● ● ●


病院を後にした八神は、凡田たちが来た方向へと歩みを進めていた。
凡田と会った後、茜がどこまで逃げたのかは分からない。
そんなわけで、八神がその方向へと向かったのに理由は無い。
茜の体力ではそんなに遠くまで逃げられないはず、根拠らしい根拠はそれだけだ。

そして彼の心は、相変わらずある事に囚われていた。
茜が殺し合いに乗っている。
それは認めたくない事実だが、目を背けるのは危険だ。

――でも、何故?
確かにあの人形のような茜なら、言われるがままになっている可能性はある。
何も考えられないまま、ただ従っているというわけだ。
それならまだ、説得できる可能性はある。

ただ、はっきり言ってこの線は薄い。
「殺しあえ」と言われてそれに乗る、そんな行動力が今の茜にあるのだろうか。

となると、やはり進んで乗っている可能性が高い。
そう、限りなく高い。

だが、ここで彼の思考はストップする。
これ以上考えることを、彼の心が拒む。
そしてまた、彼の思考は振り出しに戻る。
八神らしくないことではあるが、事実その繰り返しだった。

――しかし今度は、「何か」に思考が遮られた。

(…あれは?)

彼の視線の片隅に、一つの人影。
そちらに視線を向けて、八神はようやく気づいた。
パーカーを来た少女が、狂ったような笑みを浮かべながら、こちらへ向かっていることに。
 
149代理投下:2010/02/08(月) 21:04:33 ID:QgIZwPiY0
263 名前:交錯  ◆1WZThYdb3Q[sage] 投稿日:2010/01/27(水) 22:33:42 ID:5FkF/zDU0


 ● ● ●


――なんでお兄ちゃんがこんな所に?

茜が八神を見つけた時、最初に思ったのはそれだった。
私を参加させたのはお兄ちゃんなのに、なんでここにいるんだろう?

だが茜は、すぐに思い当たる。

(…そうか、私を励ましに来たんですね。
 やっぱりお兄ちゃんは優しいです!)

もちろん、これは勝手な推測にすぎない。
だが茜にとって、それが事実なのかどうかは関係ない。
自分の信じたいものを信じる、彼女はそれで幸せだから。

「お兄ちゃん!こんな所でどうしたんですか?」

茜は満面の笑みを浮かべて、八神の元へ駆け寄った。

「あ、茜…?」

八神の顔に、驚きの色が浮かぶ。
病院を出て数分しか経っていないのだから、まあ当然だ。
八神自身、こんなに早く見つかるとは思っていなかったのだろう。

見ると、八神が何か喋ろうとしている。
だが茜は、それより前に口を開く。

そして茜は口にする。
きっと、兄が待ち望んでいるであろう言葉を。
きっと、兄が喜んでくれるであろう言葉を。

「大丈夫です、アカネは立派にやってますよ。
 もう、3人も殺しましたから」
 
150代理投下:2010/02/08(月) 21:05:44 ID:QgIZwPiY0
264 名前:交錯  ◆1WZThYdb3Q[sage] 投稿日:2010/01/27(水) 22:34:14 ID:5FkF/zDU0


 ● ● ●


予想はしていた。
こんな状況で、茜がまともでいられるはずがないと。

それでも、やはり八神の視界はグラリと揺れる。
ニコニコと笑っている茜の表情と、放たれた言葉の内容が一致しない。
だからこそ、妙な真実味がある。
今まで考えまいとしてきた事実が、実感として伝わってくるのが分かる。
思わず、顔が歪む。

だが、茜はお構いなしに話し続ける。

「お兄ちゃん、安心してください。
 絶対、優勝してみせますから!」

その言い方に、少し引っかかる。

安心?
俺が?

(…やっぱり、何か勘違いしてるのかな)

まあ、不思議な話ではない。
無理矢理この殺し合いと俺を結び付けようとしている、そんなところだろう。

だからこそ、どうやって説得すればいいのか分からない。
こんな状態の茜にはどんな言葉も届かないことを、八神は知っている。
でも、それが茜の説得を放棄する理由にはならない。
届かないと分かっていても、言葉を投げかけずにはいられない。

「茜…なんで、こんな殺し合いに乗ったんだ?」

自分でも、ストレートすぎる問いだと思う。
知らず知らずのうちに、動揺していたのかもしれない。

「なんで、って…
 お兄ちゃんとお姉ちゃんと、もう一度楽しく過ごすためですよ」

その言葉で、ようやく合点がいった。
茜は優勝を目指している。
俺とリンと、三人で過ごしていたあの頃に戻るために。
 
151代理投下:2010/02/08(月) 21:06:57 ID:QgIZwPiY0
265 名前:交錯  ◆1WZThYdb3Q[sage] 投稿日:2010/01/27(水) 22:35:22 ID:5FkF/zDU0

―――無茶だ。
八神の知っている範囲でさえ、白瀬も灰原も参加している。
いくらなんでも、一般人である茜に勝ち目はない。

「…茜…本気で言ってるのか?」
「何言ってるんですか?茜はいつだって本気ですよ」

茜の口調は、いつもと変わらない。
だからこそ、怖い。
交渉の場は何度も経験しているはずなのに、口の中が乾き、言葉に詰まる。

「…自信はあるのか?」
「そんなの関係ないです。
 お兄ちゃんのために、お姉ちゃんのために、私は優勝しなきゃいけないんです」
「…無茶だよ。
 お前はまだ高校生だ。…それにほら、運動は苦手なんだろ?」

何言ってんだ、と自分でも思う。
俺が言いたいのは、そんなことじゃないのに。

「…お兄ちゃん、どうしたんですか?
 そんなに茜のことが心配ですか?」

でも茜が信じようとしている事を否定すれば、またあの時のように壊れてしまいそうで、怖い。
だから、必要以上に遠回しな表現になってしまうのだろう。
曖昧な言葉では、茜には届かないと分かっているのに。

「でも、私は大丈夫ですよ」

無邪気に笑っている茜を見ると、無性に辛い。
目の前にいる少女に、どんな言葉をかけていいのか分からない。
 
152代理投下:2010/02/08(月) 21:07:53 ID:QgIZwPiY0
266 名前:交錯  ◆1WZThYdb3Q[sage] 投稿日:2010/01/27(水) 22:36:09 ID:5FkF/zDU0

「…じゃ、私はこの辺で行きますね。
 お兄ちゃん、待っててくださいね!」

そう言い残して駆けだした茜を、しばらくの間ぼんやりと眺めていた。
少ししてハッとし、慌てて追いかける。

追いかけても辛いだけだ。
見なかったことにして、ここを立ち去ってしまえばいい。

―でも、俺にはできない。
ただの自惚れかもしれない。
でも、茜を救えるのは、きっと俺だけなんだから。

【F-6/路上/一日目/昼】
【八神総八郎@パワプロクンポケット8表】
[状態]:健康
[装備]:コルトガバメント(6/7)、バット
[道具]:なし
[思考]基本:茜とリンを説得する。
1:茜を追う。
2:バトルロワイヤルを止める。
3:白瀬、灰原が殺し合いに乗ったのでは?と疑っている。
[備考]
※走太と真央から、彼らにこれまでであった話を聞きました。
※荻原との話でタイムマシンの存在を確信。
※茜ルートBAD確定後、日本シリーズ前からの参戦。


【高坂 茜@パワプロクンポケット8】
[状態]:幸せ、早く殺したい、右手首打撲
[装備]:機関銃、冬子のスタンガン@パワプロクンポケット8
[道具]:支給品一式、アップテンポ電波、予備弾セット(各種弾薬百発ずつ)
[思考・状況]基本:みんな殺して幸せな家庭を取り戻す。
1:人を殺すために人の居るところへと向かう。
 
153代理投下:2010/02/08(月) 21:08:35 ID:QgIZwPiY0
267 名前:交錯  ◆1WZThYdb3Q[sage] 投稿日:2010/01/27(水) 22:36:47 ID:5FkF/zDU0


 ● ● ●


一方、茜を追跡していた灰原も、八神の存在に気づいていた。
この状況では、間違いなく邪魔になるであろう存在。
あの少女が八神に説得されてしまう、それだけは避けたい。

だが、ここで始末するには危険が大きすぎる。
灰原が持っているのは、刀と銃剣だけ。
戦闘慣れしている八神が銃を持っていれば、苦戦は免れないだろう。
いくら灰原が人間離れしたスピードを持っているとはいえ、何らかの怪我を負ってしまうのは間違いない。

そんなことを考えていると、少女が走り出したのが目に入った。
八神が追っているところを見ると、幸いなことに説得されたわけではないようだ。

さて、ここで灰原は決断を迫られる。
このまま茜を追うか、病院へと向かうか。
一瞬だけ考えた後、灰原は後者を選んだ。
八神と合流した以上、最早あの少女には期待できないだろう。
それなら、自分が動くしかない。そう思っての決断だ。

一瞬の選択は、時に失策を招く。
彼のこの選択がどちらに転ぶのか分かるのは、まだ先のお話。

【F-7/一日目/午前】
【灰原@パワプロクンポケット8】
[状態]:健康
[装備]:正宗、銃剣
[道具]:支給品一式、ムチ、とぶやつ(エネルギー切れ)、ボールオヤジ、催涙スプレー@現実
[思考]基本:優勝し、亀田の持つ技術をオオガミグループへと持ち帰る。
1:病院の方向へ向かった集団を追う。
2:見敵必殺、ただし相手が複数いる場合など確実に殺せないと判断した時は見逃す。
3:白瀬に指示を与えたい。
4:喋るボール(ボールオヤジ)を持ち帰る。
 
154代理投下:2010/02/08(月) 21:09:42 ID:QgIZwPiY0
代理投下終わりました
【F-6/一日目/昼】に直すのを忘れてた
さあ、溜めてた作品をwikiに収録しなければ
155ゲーム好き名無しさん:2010/02/08(月) 23:12:26 ID:y0l9nubP0
乙です
156ゲーム好き名無しさん:2010/02/09(火) 22:29:17 ID:kwgsF0kyO
乙!
157ゲーム好き名無しさん:2010/02/13(土) 22:53:17 ID:HBge8mjrO
乙です
茜こえーよ
八神が元に戻すことができるのか?気になります
158ゲーム好き名無しさん:2010/02/15(月) 01:18:57 ID:DM6CTzf90
乙!続きが気になる…
159ゲーム好き名無しさん:2010/02/21(日) 11:15:23 ID:1gAhPQvqO
保守
160ゲーム好き名無しさん:2010/02/26(金) 18:37:39 ID:YrJ7xOS90
茜式保守
161ゲーム好き名無しさん:2010/02/28(日) 22:10:17 ID:Eimk3HtLO
保守

べ別にあんたのために保守してるわけじゃないんだからね!〇><
162ゲーム好き名無しさん
保守