【ステータス】
投下の最後にその話しに登場したキャラクターの状態・持ち物・行動指針などを表すステータスを書いてください。
テンプレはこちら。
【地名/○○日目/時間(深夜・早朝・昼間など)】
【キャラクター名@出典シリーズ】
[状態]:(ダメージの具合・動揺、激怒等精神的なこともここ)
[装備]:(武器・あるいは防具として扱えるものなどはここ)
[道具]:(ランタンやパソコン、治療道具・食料といった武器ではないが便利なものはここ)
[思考・状況](ゲームを脱出・ゲームに乗る・○○を殺す・○○を探す・○○と合流など。
複数可、書くときは優先順位の高い順に)
【作中での時間表記】(0時スタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【制限について】
裏出展の参加者→基本制限なし。移動速度、耐久力は制限有り?
メカ亀田→一部武器は制限?
超能力→体力消費増大?
死んだ人は生き返りません
友子の体内にある暗示装置→威力制限と疲労(程度は暗示の内容と書き手の裁量次第?)
しあわせ草ドーピング選手→ドーピング済みで銃を避けれる時期は要制限
それ以外の身体能力が少し上がった程度ならOK
しあわせ草→特に制限なし、よく効く薬草みたいなもの
霊体相手でも物理攻撃は必ず効く、ゲーム中で効かなくてもロワ会場では効く
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。主催者の手によってか何らかの細工が施されており、明らかに容量オーバーな物でも入るようになっている。四●元ディパック。
「地図」 → MAPと、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。【地図】に挙げられているのと同じ物。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。肝心の食料の内容は…書き手さんによってのお楽しみ。SS間で多少のブレが出ても構わないかと。
「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。(ただし第一回放送まで支給されていない、もしくは見ることが出来ない)
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
【『首輪』と禁止エリアについて】
ゲーム開始前からプレイヤーは全員、『首輪』を填められている
(かならずしも首輪の形である必要性は無し。参加者の形態などによってはチップなどになっている)
首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ
(例外はなし。不死の怪物であろうと、何であろうと死亡)
開催者側は、いつでも自由に首輪を爆発させることができる
24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ
『首輪』を外すことは専門的な知識がないと難しい
(下手に無理やり取り去ろうとすると、首輪が自動的に爆発し死ぬことになる)
開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると、首輪が自動的に爆発する
【放送について】
放送は6時間ごとに行われる。つまり0時開始だとすると6時、12時、18時、24時ごとになる
放送内容
「禁止エリアの場所と指定される時間」
→出来るだけ離れた地点を2〜3指定。放送から1〜2時間前後ずつで進入禁止に
「前回の放送から今回の放送までに死んだキャラ名」
→死んだ順番、もしくは名簿順に読み上げ
「残りの人数」
→現在生き残っている人数
「主催の気まぐれなお話」
→内容は書き手の裁量で
ネタバレ注意
【参加者・生存者状況・○=生存、●=死亡】
1/3【パワプロクンポケット】
●教頭 /○進藤明日香/ ●平山紀之
4/4【パワプロクンポケット2】
○荒井紀香/○曽根村/○二朱公人/○凡田大介
2/4【パワプロクンポケット3】
●たかゆき / ●鋼毅 /○三橋一郎/○四路智美
1/1【パワプロクンポケット4】
○天本玲泉
1/1【パワプロクンポケット4裏】
○プレイグ
0/2【パワプロクンポケット5】
●埼川珠子 / ●塚本甚八
1/1【パワプロクンポケット5裏】
○愛
2/4【パワプロクンポケット6】
●青野柴夫 /○荻原新六/ ●島岡武雄 /○ほるひす
2/3【パワプロクンポケット6裏】
●落田太二 /○ヘルガ/○メカ亀田
6/7【パワプロクンポケット7】
○東優/○芹沢真央/○倉見春香/○七味東雅/○野丸太郎/ ●ブラウン /○レッド
3/3【パワプロクンポケット7裏】
○黒羽根あやか/七原正大/布具里
7/8【パワプロクンポケット8】
○上川辰也/○黒野鉄斎/○白瀬芙喜子/○高坂茜/○灰原/ ●森友子 /○八神総八郎/○リン
3/4【パワプロクンポケット9】
●太田洋将 /○九条英雄/○椿/○夏目准
1/2【パワプロクンポケット9裏】
●エリ /○カネオ
5/7【パワプロクンポケット10】
●アルベルト・安生・アズナブル / ●越後竜太郎 /○大江和那/○神条紫杏/○十波典明/○浜野朱里/○芳槻さら
1/2【パワプロクンポケット10裏】
○タケミ/ ●ピエロ
2/3【パワポケダッシュ】
○小波走太/ ●二ノ宮金太 /○芽森わん子
0/1【パワポケ甲子園】
●甲子園児
残り42/60
乙゚
こっ、これは乙じゃなくてジャイロボールなんだからねっ!
野丸太郎、投下します
花丸高校野球部のユニフォームを着た男、野丸 太郎は商店街の漢方屋の中に居た。
畳敷きの床に座り込み、放送の内容を思い返しつつ新しく支給された名簿を見るためだ。
いつでも逃げれるようにデイバックは背負ったまま、最悪メモはここに置いていっても良いという気持ちで。
ウージーの残弾も手榴弾もまだまだ残っている、当分は武器がないので殺せないとはならないだろう。
禁止エリアも近隣のエリアではないので移動が不便になる心配も無い。
ただ不安な要素があるとしたら、赤いヒーロー・レッドと殺し合いに乗っているらしき二人の女性の存在だ。
野丸はヒーローの凄さをよく知っている。
たった一年練習しただけで野球の腕前を全国レベル、いやプロレベルまで上げた。
しかも、簡単に男性警官を重傷にする怪人をあっという間に倒すほど強い。
そのレッドと戦っていた二人の女も危険な存在だろう。
最初に襲われた男とは違い、しっかりと狙いをつけて銃を撃った際の反発に負けていなかった。
少なくともあのスーツを着た方の女は銃を撃つことに慣れていて、人を殺すことに躊躇いは無い。
銃を撃ちなれているということは警察なのだろうか? と野丸は当たりをつける。
野丸にとって銃を撃ちなれている職業なんて警察か全年齢対象ゲームで名前を書いてはいけない職業ぐらいだ。
少なくとも野丸にはあのきっちりとスーツを着こなした女性がヤの着く職業の人とは思えなかった。
(どちらにしろレッドやあの二人組とは会いたくないですね、『知らないうちに死んでいた』がベストです。
とりあえず何時レッドかあの二人組が来ても良いように逃げる準備はしておかないと行けませんね。
……それにしても、名簿は何時の間にデイバックの中に入っていたんでしょうか?)
野丸はしっかりと支給品は確認してあった。
その中にはメモ帳や地図などはあっても殺し合いの参加者の名前が載った紙はなかったはずだ。
(最初に僕達はあの大きな部屋から突然屋外へと移動してましたから、それを使ったのでしょうか?)
結局野丸がたどり着いた答えはこの先役立つとは思えない答えだった。
彼は最終的な目標は殺し合いに勝つ、なのだから殺し合いを開いた人間がどんな技術を持っていようと関係がない。
(それにしても、東さんは即死じゃなかったんだ。
まあ、人間は簡単に死なないらしいし。
でも、あんな重傷を負ったんだしそのうち死んじゃうでしょうね)
病院は遠い、何より医者が居ないのだから助かるわけが無い。
つまり、自分が殺したのと同じだ。
世話焼きで生徒会長と野球部のキャプテンをこなしていて『平均的じゃないのに皆から尊敬されている東さん』を。
(まあ、しょうがないですよね。殺し合いですし、殺すのが普通なんだから。
……でも、出来るなら僕の目の前で死んで欲しかったですね)
そんな危ない思考をしながら口元を歪ませている彼は気づいてない。
『平均的じゃないのに皆から尊敬されている東さん』という存在を超え、『それよりも凄い僕』になる。
それは『何事も平均的な普通な僕』から遠く離れていることに。
(七味くんも参加されられているんですか……悲しいですけどこれも殺し合いですから。
殺し合いなんだから殺しあうのが普通ですよね)
元々、彼が普通を求めたのは奇妙な口調で馬鹿にされたのが原因だ。
普通になればからかわれる事もないだろう、そう思ってへりくだった標準語で喋っている。
別に最初から彼は狂人なわけではない。
少し単純でからかわれるのを嫌う、そんな普通の男子高校生なのだ。
ただ、運が悪かった。
最初に出会ったのが柄の悪い、殺し合いに乗ったチンピラで。
そこで野丸が何よりも気にしている普通と言う言葉を出されて。
殺し合うのが普通だと思い込むことで、頭が破裂した死体を見た後に襲われて弱っている精神を壊れないように保って。
『凄い東さん』を撃ったときに劣等感が拭われる快感を感じて気がして。
たった六時間の間に、これだけのことが積み重ねられたのが運の悪さが彼を凶行に走らせている。
もし、最初に出会ったのが東や七味といった気の置ける殺しあいに乗っていない人物だったら。
もし、チンピラが『殺しあいに乗るのが普通』と言わなければ。
もし、見せしめなど無く『それは普通ではない!』と思えることが出来れば。
もし、東に対して『普通じゃないのに尊敬されている』という劣等感を持っていなければ。
殺し合いには乗っていなかったかもしれない。
そんな『もし』を上げても何も変わらない。
矛盾を抱えつつも彼にとっての『普通』を過ごしている今は変えることの出来ない事実なのだから。
口元を少し上げた笑い顔がひどく醜く見えることに、全身に負った火傷は関係ない。
ただ、彼が歪んでしまっただけだ。
【野丸太郎@パワプロクンポケット7】
[状態]全身に軽度の火傷
[装備]ウージー
[道具]支給品一式(不明支給品0〜1)、予備弾倉×2、手榴弾@パワポケ10裏×5
[思考]
基本:普通に過ごす
1:生き残るために人を殺す。
2:東を自分の手で殺したい。
>>9 投下乙です
野丸は着実に壊れてきてますね
一般人の野丸がどこまでやれるか注目せざるを得ない
そしてMADktkr
残り42人ってのがなんか深く響いたぜ…
てかアニ2のあのMADも貴方だったのかwww
投下乙!
野丸の内面描写がうまいな。リレーって感じがする
貴重な一般人マーダーの今後に期待
>>9 投下乙です
野丸は一般人マーダーのホープとなれるか
そんでもってMADまで作るなんて超人すぎるw
セリフの流れに重みを感じたぜ
あ、今更ですが野丸の現在地が書かれてないですね
>>13 ……orz
はい、すみませんでした
現在地は【E-2/商店街・漢方屋/一日目/朝】です
今からwikiに収録するのでその際に追加させていただきます
予約が2つ来たぜw
うれしすぎるw
あ、本当だw
まあその内の一つは俺なんだが
おお! 俺がネットから離れている間に二つも予約が!
正座して待ってるぜ!
ところでさ、11からの支給品ってありかな?
特に裏の武器
あー……どうするかねーw
俺はなんとも言えないなw
裏はロワのネタ探しながらやってたから、弾数どうなってんの?、ってのが第一印象だったしw
コスモミキサーくらいらないいんじゃないかな
後はカレーなべとか、救急キットとかもどうだろう
俺は別にいいかな
パワポケだし、パワプロのもの出されるとかそんなぶっ飛んだのじゃないんだし
九条、凡田、真央、走太投下します。
一回目の放送からもうじき1時間が経過する。
九条は歩みを進めながら、凡田とともに様々な情報の交換、ならびに推理・憶測を行っていた。
まず、放送が流れると同時に、九条は凡田にメモを命じ、自身は変わらずに地図の確認を行い、ホテルへと向かっていた。
すぐにでも参加者、そして死者の確認をしたいところではあったが、
一刻を争う時にいちいちそのことで一喜一憂はしていられない。
とりあえずはメモだけ凡田に任せ、後で確認をすることにしたのだ。
凡田もすぐさまにそれに応じ、「わかったでやんす」と言って筆記用具を取り出し、放送を歩きながらではあるがメモに取った。
「凡田くん、この中に知り合いの人はいるかな?」
しばらく歩いたところで立ち止まり、腰を下ろし、先ほどの放送の内容を二人で確認することにした。
既に凡田の知り合いに関しては本人に尋ねてはいたのだが、この放送を聞いて新たな情報が得られないかと期待を寄せて尋ねてみる。
「そうでやんすね……二朱くんと、オーナーと……う〜ん……これはどうなんでやんすかねぇ……」
二人の名前を指差してからしばし唸っている凡田に、どうしたのかと尋ねると、どうも名簿に記載されている『愛』という名が気になるらしい。
「わからないんでやんすよね〜。何で名字が書いてないでやんすかねぇ……」
「それは確か、君のチームの……」
「監督の娘さんでやんす」
それを聞いてああそうか、と呟く。
九条も同じようなことを気にかけていたのだ。
名簿に記載されている中での彼の知り合いと言えるのは、椿、准、太田、ピエロ、東、芹沢、レッド、七味、ブラウンの9名。
なぜいるのかと多少疑問の残る者もいたのだが、時間移動が可能であるならばこれも納得である。
しかしそこで彼が疑問に思ったのは、『タケミ』という名の存在であった。
以前に滞在していた商店街。
その一角に気まぐれな漢方屋があるのだが、そこの店主も『タケミ』という名であったのだ。
彼女には『広川武美』という氏名がしっかりと存在し、名前だけとかカタカナで名前を記載される道理は全くもってない。
本人なのか、全くの別人なのか、まるで予想ができない。
また、彼の中にはそれ以上に強く衝撃を受ける内容が、他にあった。
それは、名簿の中の『夏目准』という名前であった。
維織やカンタ、奈津美の名が刻まれていないことに胸をなでおろしていた矢先にその名前を見つけてしまった。
自分よりも10歳近く年下の癖に、タメ口をきいてきて、小生意気で、
そしてなぜかいつもメイドの服装をしていて、なんかいつも絡んでくる女の子。
散々からかわれてきたのだが、嫌いだったわけではない。
それどころかこんな状況である、今この瞬間も無事でいてくれることを願うばかりであった。
(あいつのことだから意外とケロッとしているかも…………いや、いくらなんでもそれはないな。
こんな状況だ、怖がっているに決まってる。…………自棄になって人殺してたりしたらどうしよう……)
そんなことを思いながら、九条は横にいる凡田のことを眺める。
恐らく彼も心配しているのだろう。
二朱という名の、仲の良い青年のことを。
「なあ凡田くん」
「なんでやんすか?」
「君の友人の、その二朱くんと言う人はどんな人なんだい?」
互いに不安なことが多いだろうから、とりあえずは何気ない話でもして場の空気を和ませよう。
そんな気持ちで質問をしたのだが、凡田の口からは予想だにしないような言葉が返ってきた。
「そうでやんすね………………一言で言っちゃえば………『ラブハンター』でやんす!」
「え?」と目を点にしながら九条が固まっていると、凡田はすぐに付け加えて解説を行ってくれた。
一言で言ってしまえば、女にだらしのない男、ということだった。
スキャンダルにこそならないが、女と聞けば鼻の下をのばしているらしい。
それをチームメイトらの中では、『ラブハンター』というニックネームを付けてからかっているということだ。
……なんか心配して損したなぁ、と思いながら、再び地図に目を落とす。
「今どこまで来たんでやんすかね? 結構歩いた気がするでやんす」
そう言いながら隣に凡田が座り込んでくる。
方向は間違っていないのだが、九条自身もどこを歩いているのかはあまり把握しておらず、凡田に言われて初めて確認する形となった。
2時間くらいずっと歩き続けており、疲れも溜まってきているだろう。
そろそろ安全に休める場所の確保が求められてくるところだ。
「う〜ん……島全体の大きさが分からないから何とも言えないけど、たぶんこのあたりまでは来てると思うんだよね」
「へぇ。目印とかはないんでやんすか?」
「そうだなぁ…………この泉と、コンクリートの道路はさっき通ってきたから、E−5の……左手に倉庫が見えるあたりだと思うけど」
「そうでやんすか。随分と歩いたでやんすねぇ……倉庫でやんすか〜……あれ?」
九条が地図を指で追って説明し、凡田がそれに従って周りの景色を見る。
あたりはすでに日が昇り、非常に見通しが良くなっていた。
そして、倉庫があると思われる方向を眺める凡田が何かを発見したようだ。
「ん? どうしたんだい、凡田くん?」
「いや、あっちの草むらが動いたような気がしたでやんす」
「えっ……!!!」
それを聞くと九条は、すぐさま凡田をその場に伏せさせ、自らも身を低くする。
そして、デイパックの中のスタン・グレネードに手を伸ばし、様子を窺う。
今の凡田の言ったことが100%信頼できるものであるかは分からない。
しかし、この見通しの良い場所で襲撃されたら、流石のナイスガイもただでは済まされないだろう。
数秒間様子を見るが、特に草むらが動いている様子はない。
だが、僅かながらに人の気配を感じるのも確かである。
かすかに草の根を分けるような音も聞こえる。
「凡田くん、あの辺りで間違いないかな?」
「そうでやんすね。……確かめてみるでやんすか?」
すると、九条の返事を待たずに、凡田は近くにあった小石を思いきり投げつけていた。
九条が止めに入るのも遅く、凡田の放った小石は、弧を描いて飛んでいく。
流石プロ野球のピッチャー、とでも言ったところか。
小石は50メートルほど離れた草むらの中にきれいに落下していった。
そして、それと同時に、「うわあ!」という叫び声が聞こえた。
「ヒットでやんす!」
喜々とする凡田を尻目に、九条は立ち上がる。
突然石を投げる、という行為自体はとんでもないものであったが、お陰で草むらの中にいるのがどんな人物かがおおよそ把握できたのだ。
恐らくは、小学生くらいの男の子だと九条は考えた。
まず第一に、聞こえてきた声が声変わり寸前の少年のそれであったこと。
そして、殺人者であるかもしれない人物を目の前にして、叫び声をあげてしまうような不用意さから、こちらに敵意のない少年であると判断した。
ともなれば、まずは安心させることが第一である。
100%そうと決まったわけではないので、念のため袖の中にスタン・グレネードを忍ばせながら、手をあげて草むらへと近づいていく。
「さっきはすまなかった。……そこにいるんだろ? 出てきなよ?」
声をかけながら近づいてみるが、今のところ反応がない。
後ろからは凡田がついてくる。
一歩、また一歩と歩みを進めていく。
草むらまで15メートルほどの場所へ差し掛かったとき、九条の耳に先ほどとは違う物音が聞こえた。
ヒュンッという風音。
そして、身をかがめて当たりをやり過ごす。
直後、バキッと言う音とともに「ぐへっ……でやんす!」という叫び声が後ろから聞こえた。
振り返ると、宙を舞う凡田の姿がそこにあった。
☆
追撃とばかりに、見えない襲撃者による攻撃を受けた凡田は地面に叩きつけられ、「ぐえっ」という変な声をあげ、気を失った。
そして襲撃者は、風を切るような速さで九条の元へ駆け寄ると、一発、二発と打撃を繰り出す。
しかし、その二発は確実に九条へと命中したのだが、九条は直撃を免れ、逆にその見えない襲撃者に対して蹴りを放った。
「ドスッ」という鈍い音とともに、その場に相手が崩れ落ちるのを九条は感じていた。
恐らく腹への直撃。
襲撃者はせき込んでその場へ倒れこんでいる様子である。
姿を消して近づいたはいいが、ここが草むらの上であることを襲撃者は忘れていた。
草むらに刻まれる足跡をしっかりと確認し、冷静な対処をした九条に軍配が上がることとなった。
「もしかして……ブラックか?」
九条がそうつぶやくと、姿の見えなかった襲撃者がうっすらとその姿を現した。
それは黒いヒーロー……からすっと少女へと姿を変える。
ヒーローのひとり、ブラックこと、芹沢真央だ。
「……やっぱり…貴方だったの……どおりで……ケホッ…」
九条を見上げてそれを確認すると、再び真央はせき込んでうずくまる。
本来なら蹴り一発くらいでここまでダメージを負うこともないのだが、どうもこの島に来てから体力の消耗が非常に激しくなっていた。
その後も数十秒間苦しそうにしていた真央だったが、ようやくせきが治まると、立ち上がって九条を見つめる。
最初の蹴り以降に追撃がないということは、九条には真央に対しての敵意、少なくとも殺す意思はないということだろう。
真央も、九条がこんな理不尽な殺人ゲームを容認するような男でないことは知っていた。
「君は……このゲームに乗っているのか?」
真央と顔を合わせると、逆に九条がこんなことを尋ねてくる。
それもそのはず、である。
敵意のない相手に突然襲い掛かっていったのだから、疑われても仕方がない。
真央は申し訳ない、といった表情で、ひとつひとつ事情を説明していく。
八神・カズ・走太のこと、暴走している浜野のこと、それを追って出ていったカズのこと、
更にそれを追いかけて飛び出した走太のこと、それを追って出てきた自らのこと。
そして、つい先ほど九条と凡田を発見し、何者か分からないものとコンタクトをとるのをためらっていた時に、石を投げられたことで思わず飛び出して行ってしまったこと。
九条は、その真央の口から語られる一言一言に時折頷きながら耳を傾けていた。
そして、目の前でこちらを見つめる真央の瞳をのぞき込む。
真央も、ブラウンと同じように、九条が旅の途中で出会ったヒーローの一員だった。
「ブラック」を名乗り、その名の通り、黒い衣装に身を包んだヒーローでありながらも、
九条は他のヒーローにはない、無垢で、純粋な、真っ直ぐな思いを、この少女から感じていた。
そして、今目の前にいるこの少女も、その時と何ら変わることのない思いをその瞳に宿しているのを、九条は強く感じた。
☆
「本当に……ごめんなさい……」
「いいでやんす、いいでやんすよ。慣れっこでやんすから」
ボコボコに顔を腫らした凡田がちらりと目をやると、思わず隣にいた九条は目をそらす。
「でも……本当にそっくり…」
「湯田くんでやんすか? ……よく言われるんでやんすよ。……あまり気にしないでくれでやんす」
お互いに事情を共有し合った九条と真央は、とりあえず安全な場所を確保して話し合おうと、凡田を担いで先ほどの草むらの中へと入って行った。
そこには畳2枚分くらいのスペースがあり、ちょこんと小学生くらいの男の子―――小波走太が座っていた。
最初は走太も見知らぬ男2人の出現に驚いていたが、真央が丁寧に説明をしてくれたお陰で、すぐにその硬さもなくなっていた。
野球をやっているということもあり、気も合いそうだ。
凡田のこともどこかで見たことがあると言っている。
その後は凡田が目覚めるまで互いに細かな情報を交換していった。
大きく共有すべきことはなかったが、九条からは、信頼できる人物として、七原正大、布具里、四路智美、二朱公人などが、
注意すべき人物としては、椿、黒羽根あやかが挙げられた。
真央の挙げた人物は大体が九条も知るようなものばかりであったが、走太からは芽森わん子の名が挙げられ、それぞれがそれらをメモに記した。
凡田が目を覚ました後はこの後の動きをどうとるか、という話になった。
「私たちは……」
真央がちらりと走太の顔を窺うと、走太が前に出る。
「…俺は……やらなきゃいけないんだ。たとえ死ぬことがわかっていたとしても……」
力強く一言一言を噛みしめるように走太がいう。
その瞳には強い決意と信念が宿っていた。
それを聞き、九条は腰を落として走太と顔を合わせる。
「走太くん」
「は、はいっ…」
「……君の言う通りだ。僕たちにはやらなきゃいけないことがある。
だから僕らはこれから仲間を探しに行くし、君らもその大江さんという人を探しに行くんだろう。」
一呼吸を置いて九条は続ける。
「だけどね……死にに行くんじゃない。たとえどんな危険なところに行くとしても、死にに行ってはいけない。
……僕らはね、死ぬために戦うんじゃないんだ。必ず生きて帰ってくるために戦うんだよ」
その言葉を聞き、走太は八神に言われたことを思い出していた。
―――だけど忘れないことだね。
―――君は人を守るためにそれを使うんだってことを
ポケットにしまってあるレーザーカッターを握りしめ、走太は思った。
(そうか……俺……死ななきゃいけない……死ななきゃ意味がないってどこかで思ってたかもしれない。
だけど違うんだ。本当に人を守るってことは……お姉さんや八神さんや、九条さん、みんなの…親父のためにも……生きて帰らなきゃならないんだ!)
「……俺、わかったよ」
走太は顔をあげ、九条の目を真っ直ぐに見つめる。
「俺はこのゲームをやめさせたい。……それで帰って、親父を助けるんだ!」
それを聞き、九条は走太の頭にポンと手をおいて笑顔を浮かべながら言う。
「ああ、しっかりお姉さんを守ってやってくれ」
「はい!」
元気に返事をすると、走太は真央の手を引いて駈け出して行く。
真央は少し戸惑ってはいたが、九条の顔をちらりと見ると走太とともに駈けていった。
「ホテルで会おうなー」「気をつけてくれでやんすー」
残された二人がそう声をかけると、「ありがとうおじさん!」という走太の声が聞こえてきた。
「………行っちゃったでやんすね」
「そうだね」
「ヒーローがついてるし大丈夫でやんすよね?」
「うん」
「……なんか…元気ないでやんすね?」
心配そうに凡田が九条の顔を覗き込むと、顔をひきつらせている九条がそこにいた。
「はぁ……おじさん……か」
【E-5/一日目/朝】
【小波走太@パワポケダッシュ】
[状態]:健康、軽い擦り傷
[装備]:ガンバーズのユニフォーム、スニーカー、高出力レーザーカッター
[道具]:支給品一式(ランダムアイテム不明)
[思考]
基本:生還し親父を復活させる
1:殺し合いを止める。
2:人は殺さない。
3:真央、八神、和那、九条、凡田を少し信頼。
4:浜野朱里を警戒。
[備考]
※参加時期は最後の大会の前から、誰ルートかは後続の書き手さんにお任せします
※八神、大江、九条、凡田と情報交換をしました。
【芹沢真央@パワプロクンポケット7】
[状態]:疲労、腹に軽い痛み
[装備]:私服
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1〜3個
[思考]
基本:弱きを守り悪を挫く『正義の味方』を貫く
1:走太についていく
2:人を守る。
3:浜野朱里を警戒。
4:時間になったらホテルに向かう
[備考]
※参加時期は黒打くんにアメコミのヒーローについて教えてもらった後
※八神、大江、九条、凡田と情報交換をしました。
【E−5/草むら/一日目/朝】
【九条英雄@パワプロクンポケット9】
[状態]:健康、正義の味方としての決意
[装備]:ギター
[参戦時期]:維織GOOD後からアルバムまでの間
[道具]:支給品一式、ロケット弾、スタングレネード、野球人形、大正編の仲間の名前が書かれたメモ
[思考・状況]
基本:参加者全員を助け出し、亀田を倒す
1:ホテルに向かいながら仲間を集める。
2:彼女(森友子)を埋葬したい。
[備考]
※七原、真央、走太と軽い情報交換をしました。
【凡田大介@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身に打撲
[装備]:無し
[参戦時期]:本編終了後
[装備]:お守り
[道具]:支給品一式、鍵
[思考・状況]
基本:ガンダーロボを救出したい
1:ホテルに向かいながら仲間を集める。
2:基本人殺しはしたくない。
3:九条を信頼。
4:チームメイトにH亀田がいる
[備考]
※七原、真央、走太と軽い情報交換をしました。
以上で投下終了になります。
誤字などが多いかもしれませんが、何かあればご指摘ください。
乙
投下乙
乙なんだけど、9主と各ヒーローとの知り合い設定って公式にあったんだっけ?
いや、ヒーローを見てきたみたいな台詞はあったはずだからそれ自体はまだいいんだけど、ブラックの本名を知ってたりと、ところどころ違和感が……
俺の記憶ぬけだったら本当に申し訳ないが、そこがかなり気になった
投下乙です
対主催の繋がりが増えてきたな、どうなるにせよ楽しみなことでさー
マーダーが元気百倍な今の状態は厳しいところだから頑張って欲しいものだ
オレはマーダー応援派だけどねw
>>36 正直な話、9の主人公は謎だらけなんだよね、椿もだけど
だから登場話でヒーローと知り合いってこと書いてる人いたんだしもうそれで突っ走るのが一番良いかと
作者じゃない上に完全に個人的な意見で申し訳ない
投下乙
走太には頑張って欲しいな
そしてラブハンターwwwお前は何をしてたんだと
ヒーローのとこは俺も気になった
公式でぼやかされてる以上ぼやかしたままなのが一番いいと思う
椿も七味のことぼやかしてたしね
投下乙
俺もブラックの名前を知ってるのは気になったなぁ
個人的には
>>38と同意見なんだが、細かい所を突っついてもしょうがないというのもあるし、うーん
ブラックが人間体になって何かを感じる九条、とかいうのも面白そうだとか思ったりしたりするし
投下乙
個人的にはどうせ二次創作だし肩肘張らずにこのままでもいいと思うけど
別に完全な矛盾じゃないしね。公式でぼかされてるとこを想像してみましたー程度だし
投下乙です
個人的にはどっちがどっちでもいいけど、
>>40が言うほど軽いもんでも無いような気がしなくもない
オリキャラ化を否定する訳ではないが、9主レッド説をスタッフによるミスリードだと思う人には作者氏の主観を押しつけられた事になるし
まあ二次創作だし拘りすぎてもしょうがないんだけどね
とにかく作者氏の見解を少しだけ聞かせて欲しい
修正しないというならその姿勢は通しきるべきだし
みんなサンクス。そしてスマソ。
完全にこちらのミスです。
自分で読み返してだが、9主がヒーローを知っていた(ブラックを知っていた)としても、真央の名前を知っているのはおかしいと思った。
自分としても、オリキャラ化させるよりはぼかすような形をとりたいと思うので、少なくとも、
>>23 ×椿、准、太田、ピエロ、東、芹沢、レッド、七味、ブラウンの9名
○ 椿、准、太田、ピエロ、東、レッド、七味、ブラウンの8名
ここの部分の訂正は必要だと思った。
じゃあ、真央関連を修正してくれる、ってことで良いんですかね?
他に問題はない……と思うし
>>43 そうですね。
上記のものに加えてここも修正しておきます。
>>28 × 真央も、ブラウンと同じように、九条が旅の途中で出会ったヒーローの一員だった。
「ブラック」を名乗り、その名の通り、黒い衣装に身を包んだヒーローでありながらも、
九条は他のヒーローにはない、無垢で、純粋な、真っ直ぐな思いを、この少女から感じていた。
○ 真央も、ブラウンと同じように、九条が旅の途中で出会ったヒーローの一員だった。
九条の知る真央は、「ブラック」を名乗り、その名の通り、黒い衣装に身を包んだヒーローであった。
しかしそのとき、九条は他のヒーローにはない、無垢で、純粋な、真っ直ぐな思いを、ブラックから感じていた。
矛盾を感じるのはこの辺だと思いましたが……他に明らかにおかしな部分があればご指摘お願いします。
45 :
ゲーム好き名無しさん:2009/02/11(水) 01:19:02 ID:+kPCnfLeO
自分はそれで構わないと思います、氏本人に任せるつもりでしたし
そして予約にキャラ追加が来たぜぇ……!
質問があるんだけど、wikiの1ページに収まる分量って何KBだっけ?
分割するなら分割用のタイトルでも考えておこうとか思ってるんだけど
31KBか32KBぐらい
48 :
ゲーム好き名無しさん:2009/02/12(木) 00:18:59 ID:viVjoWTWO
すいません。誰も突っ込まないんで書きますが、九条がピエロの死を全く悼んでないような気がするのですが?なんか「ピエロだから仕方ない」とかそんな空気なんでしょうか?
>>47 遅れましたがありがとうございます
一つお願いがあるのですが、今日の夜に投下する予定なんですが、日付が変わった頃になるかもしれないのですがよろしいでしょうか?
延長しておいてこんなんで本当にすいません
50 :
ゲーム好き名無しさん:2009/02/12(木) 12:50:19 ID:ieXMJ7Vg0
楽しませてもらって指摘するのは恐縮ですが・・・
個人的にやりとりとしてはおもしろいのですが
九条は自分のことを「おじさん」と称していたように思います
>>48 ピエロを仲間にしてなかったていう可能性だってあるぞ
まあ、ど忘れだったらついでに修正されるんじゃない?
二朱公人、ほるひす 、東優、荒井紀香、夏目准 、神条紫杏、芳槻さら
投下します
しえーん
荒井紀香は迷子になっていた。
自分がどこを歩いているのか、自分がどの方角へと向かっているのか。
そんな事は知らない、本人が知らないのだから当然他の誰にも分からない。
二朱公人を捕まえる、ただそれだけのために歩いていた紀香だったが迷子になっていた。
彼女の悪運の強さからして、迷子になろうが視界が霧で覆われようが、最終的には上手いこと目的を果たしていそうなものだが、今回ばかりはそうはいかなかったようで。
つまりは、彼女は今、二朱達の行く先とは正反対の方向に進んでいた。
「ふふふ〜ん、これだけ歩いたのにまだ二朱君に会わないです。
さてはあの女に崖から突き落とされたかもです。
ぬけがけは絶対に許さないです、もしそうなら二朱君の仇をとるしかないです」
そんな斜め遥か上まで飛躍した発想を彼女は展開させる。
そもそも、この周辺に崖などは存在しない。
会わない会わないと嘆く彼女だが、そもそも彼女は今どこを歩いているのか。
少し時間を遡ってみよう。
◆ ◆ ◆
イタチによる謎の大爆発に巻き込まれ、火の玉のようになりながら上空を飛んでいった紀香。
その途中で二朱を見つけたまでは良かったが、そのまま紀香はさらに遠くまで吹っ飛んでいく。
二朱達が居たところを大きく通り過ぎて、ようやく着地したのがエリアD-5の南東部。
そこから直感で南西の方向に進んできたつもりだったが、いつの間にやら彼女は真南の方角へと歩を進めていた。
それにしてもこのイタチ飛ばしすぎである、そう思う者も居るだろう。
紀香が目にしたメイド、夏目准が連れてこられた時代のイタチの人形だったなら、ここまでの力は無かったかもしれない。
しかしこのイタチはそれ以前の年代から持ってこられたらしく、小規模な超常現象の一つや二つは軽くおこしてしまう程の力を持っていたようであった。
閑話休題。
そんなこんなでエリア一つ分くらいの距離を丸々吹っ飛ばされた紀香だったが、その移動の壮絶さに対して本人の身体へのダメージはそこまで深刻ではないようである。
着陸して少しの間は戸惑っていたが、すぐに目的を思い出して二朱が居たとおぼしき方向へと歩き出す。
目標はおおまかに見積もって北西の方角、ここまでは良かったのだが、歩いている途中で段々と西よりへと傾いていき、何時の間にやらエリアC-5の森の中を邁進していた。
◆ ◆ ◆
と、紀香が今も前進を続けている経緯にはこんな流れが背景にあった。
一度夢中になった彼女はそう簡単には止まらない、挫けない。
定時放送? なんですかそれおいしいですか?
愛しのダーリンが腹黒メイドをときめかせている間にも、彼女はまた一歩進んでいく。
雲行き怪しい三角関係の行方は、如何に───?
【C-5/森/1日目/朝】
【荒井紀香@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身のところどころに軽い火傷、体力消耗(小)
[装備]:なし
[参戦時期]:紀香ルート・2年目クリスマス
[道具]:支給品一式、呪いの人形、ランダム支給品0〜1個
[思考]
基本:二朱くんに会う
1 二朱君の見えた方向(西)に進む
2 二朱君との愛の営みを邪魔するひとは容赦しないです
3 あの女(夏目准)が二朱君を手にかけていたら仇をとる
[備考]
※ 進む方向が間違っていることに気付いていません。
※ 第一回放送に気付いていません。
さて、知らぬ間に敵を増やしていた准と二朱は、さらを追って東へと進んでいた。
二人は気を紛らわせるために世間話に花を咲かせていたが、バトルロワイアルの主催、亀田の部下による定時放送が始まると空気が変わる。
禁止エリアの発表、そして、これまでの6時間で命を失った者達の公表。
それは、この場が殺し合いの場であることを再認識させるには十分過ぎた。
たったの6時間で18人もの人間が死んでいるのだ、これを異常と呼ばずして何と呼べばいいだろう。
准は平静を装って禁止エリアについてメモを取っている。
二朱は神妙な顔つきで放送に聞き入っている。
全ての放送が終わると、准はデイパックから名簿を取り出す。
それに見入っていたかと思えば、しばらくすると今後は名簿にチェックを入れている。
放送が始まってからの間、ここまで二人は沈黙を続けていたが、頃合いを計って二朱は准に話をかける。
「准ちゃん、今は何をしているんだい?」
「名簿の中の、亡くなった方の名前に印をつけておこうかなって」
「……さっきの彼の他に知り合いは居なかったかい?」
「うん。私の知り合いはみんなそんなにやわじゃないから」
「そうか、良かった」
嘘だ、少なくとも准の知っている人物が二人放送で呼ばれている。
さっきの彼というのは先程目撃してしまったピエロである。
もう一人は、ジャジメントスーパー支店長の太田である。
しかし親しくないどころか寧ろ敵対関係にあるので、死んでしまった事は悲しいがそれほど引きずる事ではない。
何故嘘をついたのかというと、単純にそこまで気が回っていなかった、ただそれだけの理由だった。
「ところで准ちゃん、一回放送を聞いただけで全員の名前を覚えていたのか?」
「うん、これくらい喫茶店で注文をとるのと同じ要領でやれば朝飯前です」
「へぇ、凄いもんだな」
「もっと褒めてくれたっていいんですよ?」
「ああ、本当に感心するよ。大したもんだ」
「二朱さん本当にそう思ってる〜?
ま、いいや。メモも終わったしそろそろ行きましょうか」
「ああ、早く彼女を助けてあげないとな」
(維織さんが来てなくて、本当に、良かった……)
支援なんだな〜
◆ ◆ ◆
ところ変わってまたあるところ。
男と女と何ともいえないものという奇妙な集団もまた、目的に向かって歩を進めていた。
少し歩いたところで、空から得体の知れない声が聞こえだす。
「おい、ほるひすとやら、歩く速度を落としてくれ。
亀田の言っていた事が正しければ、これから聞こえるであろう放送を聞き逃すわけにはいかない。
私がメモを取るから、お前は周りに警戒だけしていてくれればいい」
「わかったよ」
指示を出したのは神条紫杏、応えたのはほるひす。
そのほるひすに東が担がれる格好となっている。
───我輩の名前はチバヤシ、チバヤシ公爵であ〜る!
勘のいいものは気づいたかも知れんが───
やがて始まる放送、禁止エリア、死亡者と相次いで告げられる重要事項を、神条は正確かつ迅速にメモに残していく。
途中で字が雑になったりしたものの、なんとか禁止エリアと死者全員の名前を記録することに成功する。
その後、名簿が配布されたことを確認すると、メモに残した名前と名簿のそれを照らし合わす。
彼女の知り合いの名前もいくつかある、その中で死亡した者もいた。
(野球部の中心選手が命を落とすとは、惜しい事になったものだ。
だが仕方が無い、ここは油断を晒せばそれが文字通り命取りになる世界。
開始早々に命を落とす者というのはそういう者、あるいはツイていなかった者。
そういう人間は早かれ遅かれいずれ命を落とすだろう。
まあ、かという私もまだまだ甘いものだがな)
彼女が歩きながらそんな事を思案していると、ふと何かにぶつかる。
どうやらそれはほるひすの身体のようである、妙に冷たくてあまり気持のよいものではない。
そして、そのほるひすの眼前には、
「どいてもらえませんか? いや、どいて下さい」
ほるひすや東と甲子を引き裂く要因となり、神条と同じ高校に通う、芳槻さらの姿がそこにはあった。
しえーん
◇ ◇ ◇
「どうする? ねえどうする?」
ほるひすは神条に問いかける。
「生憎銃を持った相手に刃向かうなどという危険を犯すつもりはない。
どいて欲しいと言うのならどいてやれ」
「おっけー」
さらと対峙していたほるひすがあっさりとさらの正面から居なくなり、さらの目の前から障害物がなくなる。
さらは軽く舌打ちをしながら、空けられた道を通り過ぎていく。
ほるひすは動かない、神条に至っては振り返ろうともしない。
ただそれだけの事でさらの精神は刺激され、さらの心の中のスイッチが後押しされてしまう。
ズガガガガガガガッ───
「芳槻さん──ッ!」
その銃声に一番に反応したのは、ほるひすに担がれている東だった。
彼はほるひすの腕の中から抜け出してさらの下に向かおうとしたが、重傷を負っている上にほるひすが予想以上にガッシリと東を抱えていたために、ほるひすから離れることすらままならない。
「止めろ東、じっとしていろ!」
そんな東を制しようとする神条、ほるひすは無言で東を抱えたままである。
その間に、さらは機関銃を持って走り去っていく。
東は追う事を諦める、神条はさらをただ見つめているのみ。
結果として、さらを追う者は誰一人として居ない。
それでも、それでもさらは逃げるように駆けて行く。
◆ ◆ ◆
同じ高校に通う自治会長の神条紫杏。
彼女は、私の事などまるで関心が無いかのように見えた。
いや、実際彼女は私には関心など無いのだろう、私なんて信用に値しないと考えているに違いない。
東さんだってそうだろう、私が甲子君と一緒に居ない事で、私が甲子君を殺したと思っているに違いない。
当然だ、私なんて暗くて可愛げも無い危険な女だ。
神条さん、東さん、誰も私に障ろうとしなかった、関わろうとしなかった。
別にいい、一人で居るのには慣れている。
慣れている、そう、慣れている───はずなのにっ。
ちっぽけな自分が孤独の恐怖に押し潰されそうなのが感じられる。
会いたい、お父さんに、十波君に───
帰りたい、元の世界に───
でもどうやって? 脱出? そんなの私一人じゃ出来っこない。
じゃあ、皆を殺して───? 十波君はどうするの?
どうして今私は泣いているんだろう?
これが『絶望』なのかな?
十波君と帰りたいのに、二人の参加者が優勝者にはなれない。
ああ、私にはどうにも出来ないのかな?
自分の無力さが心底恨めしい。
もう考えるのも疲れてしまった、早く学校に行って少し休もう。
今は何も考えたくない。
危ないと思ったら殺す、怪しいと思ったら殺す。
誰が私を責められるだろうか、元よりここは殺し合いの場。
こうすることが自然で、『普通』なんだ。
それが普通の、ごく普通の女の子が出した結論だった。
しえんもするよ
しえーん
【E-3/林/一日目/朝】
【芳槻さら@パワプロクンポケット10】
[状態]:左頬・右目周辺に痣、顔面を中心に激痛、足に痛み(中)、精神的疲労(大)、肉体的疲労(大)、所々に擦り傷
[装備]:機関銃(残弾中程度)
[道具]:支給品一式、サイボーグ同盟お手製時限爆弾、スペツナズ・ナイフ
[思考・状況]
1:……疲れた。
2:学校へと向かう。
3:……二人は、どう思うだろうか?
4:十波君のことは信じられる?
[備考]
※ 第一回放送の内容をどこまで把握しているかは、後続の書き手さんにお任せします。
ただし、メモなどには記録していないようです。
◆ ◆ ◆
さらの姿が見えなくなったのを確認して、神条達は再び歩き出していた。
東の怪我の具合も芳しくない、一刻も早く病院に向かいたいところだが、ほるひす一人だけならまだしも、神条にはそこまで体力はない。
歩くペースとしては早い方だが、それでも刻一刻と時は過ぎていく。
そんな時だった、彼らは同じく道を歩いていた二人の男女に鉢合わせる。
二人は、誰かを追って歩いているという。
「俺の名前は二朱公人だ、モグラーズで野球をやっている。
んで、こっちの彼女は夏目准」
そう名乗ると二人は軽く会釈をしてくる。
あっさり名乗りだすとは迂闊な連中だ、まあ嫌いじゃない。
「私は神条紫杏だ。こっちの二人は……」
「ほるひすだよ」
「東優だ、よろしく頼む……ウッ……」
「東、お前は安静にしていろと言っただろう、無理をするな。
で、話を戻そうか。
二朱と言ったか、貴方は人を追っていると言うが、その相手はもしかして芳槻さらという少女ではないか?」
単刀直入に話題に入る、グズグズしている時間はない。
彼らを無視して病院を目指しても良かったが、何らかの情報が得られるなら得ておきたかった。
しあーん
「ああ、そうだ」
「目的は何だ? 彼女の首を掻きに行くのか?」
「なっ、そんな事をする訳ないだろ!
彼女は道を踏み外そうとしている、だから俺達は彼女を止めに行く。
それだけだ」
「ほう……、だが悪い事は言わん、止めておけ。
正常な判断が出来なくなった者は何をしでかすか分からん。
彼女は今かなり錯乱している、説得空しく二人まとめてズガン、じゃあまりにも報われないだろう?」
そうだ、これでいい。
忠告をする事によって、今のところは敵意が無いように見せられる。
頭の回る相手ならば見破られるかもしれないが。
「君達は彼女が向かっていった方向からやって来てたね。
彼女に会ったのかい?」
「ああ、背後から銃で狙われもした、幸いにも当たりはしなかったがな」
「だったら尚更だ。
これ以上犠牲を出してはいけないし、彼女に罪を犯させてもいけない。
これは俺達二人の考えだ、そうだろ准ちゃん?」
「うん、彼女には助けが必要だから、私達が……」
彼らは理想に囚われている。私はそう判断する。
理想に溺れて死ぬのは勝手だが、それを掬い上げようとして自らの身を沈めるのは御免だ。
「ふん、そこまで言うのなら止めはしない。
だが、決して警戒は怠るな。油断を見せたら命は無いものだと思え」
「ああ、注意しておこう。
最後に聞きたいことがある、君達は殺し合いに乗っているのか?」
「いや、そう易々と亀田に踊らされて人を殺すような真似はしないさ」
「そうか、君達も道を踏み外すさないようにな」
「ああ、その忠告はありがたく受け取っておこう」
結局彼らから有益な情報は殆ど得られなかった。
彼らはさらを追い、私達はそれとは別方向にある病院に向かっている。
病院まではまだ距離がある、その間に、自分がこのバトルロワイアルでどう動くべきか、再考すべき時が来ている。
漠然とだが、そんな気がした。
【D-4/草原/一日目/朝/】
【東優@パワプロクンポケット7表】
[状態]頬に小さな傷、甲子がやや心配、左腕重傷、傷心
[装備なし]
[道具]詳細名簿、支給品一式
[思考]
1:平山、甲子の死を悲しむ
2:病院へ向かい、その後レッドと合流
3:野丸をどうにかしたい
【ほるひす@パワプロクンポケット6表】
[状態]表面が焦げてる
[装備なし]
[道具]支給品一式、不明支給品0〜2
[思考]
1:こうし……
2:びょーいんへむかう
【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[状態]健康
[装備]コルトガバメント(7/7)
[道具]なし
[思考]
1:平山の言葉を伝える
2:東を病院まで連れて行く
3:出来ることならカズと朱里、十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
[備考]
※ この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています
※ 芳槻さらを危険人物と認識しました。
※ 島岡の荷物は、島岡を殺害した者に持ち去られただろうと判断しました。
◆ ◆ ◆
「二朱さ〜ん、カッコよかったよー。
ちょっとときめいちゃった♥」
「えっ、そうかな? 照れるなぁ〜」
(扱いやすいわね……)
二朱の勘違いは一体どこまで広がっていくのか?
二朱選手の次回の活躍にご期待ください!
【D-3/路上/一日目/朝】
【二朱公人@パワプロクンポケット2】
[状態]:健康
[装備]:ナイフ
[道具]:支給品一式、スパナ、拡声器、不明支給品0〜2
[思考・状況]
1:東へと向かって芳槻と会う
2:准ちゃんと一緒に行動、彼女を守る
3:みんなで協力して亀田を打倒する
※備考 このバトルロワイアルを夢だと思っています。
【夏目准@パワプロクンポケット9】
[状態]:腹部に刺傷(立ち上がれる程度には回復)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2個
[思考]
1:東へと向かってさらと会う。
2:二朱を絶対に信じぬく(第一印象は好印象)
3:九条さんに会いたい
4:さらを助けてあげたい
投下終了です、しえーん及びしあーんありがとうございました
2ヶ月ぶりに書いた結果がこれだよ!
>>69の
「二朱さ〜ん、カッコよかったよー。
ちょっとときめいちゃった♥」
の&は、収録時には半角の&に直していただけると幸いです
ご迷惑おかけしますがよろしくお願いいたします、何なら土曜日にでも自ら収録しても良いのですが
投下乙です
北は危険なんだぜー、さらの他にも色々とヤバイ人がいっぱい居るんだぜー
頑張れラブハンター! 准を守れラブハンター! でも痛い目には遭え!
ハーレムを築くというバカを原作でやったんだから当ぜ(ry
そして、紫杏の胸が何時ラブハンターに揉まれるかでドキドキしてたのは俺だけでいい
投下乙
人間交差点、という題名だけあって人間関係が錯綜してるね
つか准が早々に二朱の手綱握っててふいたwww
>>71 弾道うpイベントですねわかります
ああ、偉そうなこと言っておいて結局管理人氏に収録させてしまったorz
代わりと言っては何ですが、前々から気になっていたところを直しておきましたです……
どうもサンクスです、【戻る】のところを直してくれたのかな?
金土とネット弄れなかったから少し遅れたぜ……
公式より
東京都 の Mr.Sさん 16〜18歳 の質問
Q.そういえば、パワポケ8で白瀬が湯田君を見てドキっとしたイベントの真相はどうなったんですか?
A.白瀬にはなぜか亀田に関する記憶があったのです。
どこまでの記憶があったんだろうな
予約キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
>>505 いや、一人で書きたい人だって誤爆を見る限りでも少なからずいるようだし、下手にかき乱すよりはそのエースの作品を楽しんだ方がいいんじゃないかなーと
ま、結局書きたくなったら書きに行ってしまうんだろうがw
誤爆orz
レッド、投下します
真っ赤なフルフェイスのヘルメットと同色のスーツを着た怪しい男、レッドは放送を聴いて歯を食いしばっていた。
ロケットランチャーを放った女の二人組と元チームメイトの野丸 太郎はレッドから逃げ切ってしまった。
つまり、レッドは見事に空回りしてしまったと言うことだ。
「クソッ!!」
レッドは怒りを逃がすために何度目になるかも分からないほど思いっきり壁を殴りつける。
最初に知り合った少年、甲子 園児。
先ほど知り合ったばかりの少年、平山 紀之。
放送が嘘を言っていない限り、この二人は死んでしまったのだ。
僅かな、本当に僅かな間の縁だったが彼らは『悪』ではなかった、それは間違いなく胸を張って言えることだ。
そんな人間達が死に、二人を殺したであろう悪はのうのうと生き残っている。
その事実がレッドの心をより強く怒りに染め上げる。
「だが、何時までもこうしている場合じゃないッ……!」
終わったことはしょうがない、と冷酷に切り捨てるわけじゃない。
しかし、レッド自身が発した言葉の通り何時までもうだうだといじけている場合でないのも確かだ。
今必要なのはこれからどうするかと言うこと。
それが死んでいったもの達に報いる道なのだから。
「甲子は芳槻さらという女に殺されたのだろうな」
それは間違いないはずだ、とレッドは心の中で続ける。
甲子は芳槻さらと言う女を説得しようとして失敗し、殺されたのだ。
芳槻さらの名前が呼ばれなかったがこれ以上とない証拠になっている。
「やはり、あのときにせめて銃を奪っておけば……!」
芳槻 桜空は説得をしようとした善良な少年を殺す『悪』だったのだ。
それを見極められなかった馬鹿さ加減に自分で自分を殴りたいというのがレッドの嘘偽りのない心境だ。
東の静止を振り切って銃だけでもこちらのデイパックに入れておけば良かった。
少し口論になったとは言え最終的に分かってくれたのだ、多少でも無茶な行動をしていても良かった。
そうすれば甲子も死ぬことはなかった、自分の失態は数え切れない。
正義の味方であるレッドには悔やんでも悔やみきれない結果となっている。
「……これ以上、犠牲を増やすわけにはいかない!」
レッドは歯をギリギリとかみ締めながら西を向く。
あの二人組は西の入り口から出て行った。
あの悪を見逃すわけにはいかない、一刻も早く悪を倒して仲間と合流する。
「七味東雅……俺は正義の味方ではなかったがな、それでもヒーローだ、ヒーローでないといけないのだ。
悪を倒す、それがヒーローだ。
お前が子供の頃に描いた絵に込めた思いがそうではなかったとは言わせんぞ。
ブラックがブラック自身の意思で俺たちと袂を分かったように、俺は俺の考えを変えることはしない」
名簿に見つけたレッド達ヒーローを生み出した男、この島の何処かに居る七味東雅。
名簿には載っていなかったレッドたちヒーローの中でもどこか異なった空気を持ち、ついにはレッド達を裏切ったブラック。
レッドは目の前に居ないその二人の顔を思い浮かべ呟く。
ちなみに、レッドは気付いていないが仲間の一人であるブラックこと芹沢 真央はこの殺し合いの場に呼ばれている。
だが、芹沢 真央とは七味 東雅の『名前は何か?』と言う問いに答えた即興の名前のためレッドは知らないのだ。
そして、詳細名簿には【『スキヤキ』という名の猫を飼っている無口な少女】としか書かれていなかった。
詳細名簿とは名ばかりで実際は本当に当たり障りのないことしか書かれていない。
例えばレッドは【花丸高校の野球部に所属している正義の味方】。
白瀬芙喜子や八神総八郎と言った面々には【サイボーグ特別対策室の一員】と簡単な性格しか書かれていない。
つまり、詳細名簿は嘘も言っていないが必ずしも本当のことを書かれているわけではないのだ。
かつてレッドたちヒーローは正義の味方という役割を果たすために暴走していたことがある。
ヒーローの姿をしているのだからヒーローとして生きなければいけない。
そのことが先行し自分たちの存在を必要とされるために悪の組織を作り上げたのだ。
だからこそ、七味東雅に対して正義の味方ではなかったと言い切れたのだ。
だが、今はそうではない。
やり直しが利く、と言う意味ではない。
自身がヒーローである限り、やらなければいけないことがあるということだ。
今までの行動が正義の味方のものでなかったから正義を通してはいけないなどと言うルールは存在しないのだから。
「悪を滅ぼす、それが俺の役割だ!
野丸も、あの二人組も、芳槻も! 他に害を為す前に俺が、殺す!」
覚悟を決めるためにあえて声に出す。
ここに居るヒーローは自分だけなのだから、自分が悪を倒すしかないと。
自分は一般人を大きく上回る力を持つヒーローなのだから、自分しか悪を倒すことが出来ないと。
そして、それが東やほるひすや七味たちの命を守ることに繋がり、ブラウンの無念を晴らすことにもなる。
そう、自分はヒーローなのだから、自分の領域である戦闘なのだから東たちを守らなければいけない。
決意を強めレッドはビルの外へと足を踏み出す。
その決意、レッドにとっての正義である『悪を倒す』ことがどのような結果になるかは誰にも分からない。
【E-2/一日目/朝】
【レッド@パワプロクンポケット7表】
[状態]殺人者に対する激しい怒り
[装備]なし
[道具]支給品一式、ナオのリボン、超人ライダーボトルキャップ、ゴーカート
[思考]
1:野丸or2人組(白瀬、愛)orさらを追い、仲間に害を為す前に殺す
2:1の後病院に向かう
3:レッドとして反省し、ブラウンの分も悪を倒す
4:東やほるひすを守る
投下終了です
矛盾、誤字脱字の指摘お願いします
投下乙!
迷走マーダーとはまたおいしい
なまじ戦闘力はある設定だからどう転がっていくか非常に見物だ
乙!
レッドは歪んでるけど、墜ちそうにないのが救いか
戦闘能力が高いだけに誤殺がないのを祈る
11裏でモールやら倉庫を動き回ってみると、ロワの情景を思い出すのは俺だけか?
>>85 あるあるw
というかハタ人間編がロワっぽい。
主催 カメダ
黒幕 ギャスビゴー
ステージ パライソタウン
支給品 ハタ人間編の武器
参加者 本来の仲間候補
ルール いつもの
にすればもうそれでロワが完成するじゃないかw
椿無双ですね、わかります
……あの面子だったら椿は原作バトロワの桐山ぐらいチートだなw
村山は恐怖からマーダーになるも、襲いかかったクラスの女子に返り討ちでズガンですね
光の戦士光山さんですね、わかります
>>89 何故か光山さんが多くの悲しみを乗り越えてかっこいい対主催になる姿が浮かんだ
でも光山さんは最後は格好悪く死にそう
崖から落ちたりとか
トイレに駆け込もうとするあまりトイレが禁止エリアと気付かず爆死とかな
トイレに駆け込もうとして間違えて女子トイレに入って、フッキーに銃殺される、まで読んだ
もしこれが完結したら次は参加者は皆パライソ中学校の生徒の設定でまた作れそうだな
あ、大人が出れないか
青野さんやフッキーが中学生って設定もそのうち違和感が消えてなくなったんだぜ
椿だってホームレス中学生って設定ならいける気がするぞ
いまだに青野が中学生っていうのは違和感がある
ハタ人間化した仲間からもつっこまれてたし
黒野鉄斎、灰原を投下します
見るものに年季を感じさせるボロボロの壁と編みの荒くなった畳、お世辞にも綺麗な部屋とは言えない駄菓子屋の居間。
その居間で黒いマントを羽織り左目に眼帯をつけた怪しげな様子の老人がちゃぶ台の前に座り込んでいた。
老人の名は黒野 鉄斎、世界征服を目論む自称・悪の天才科学者である。
足元の不安定な闇の中を歩き回ったことが老体には厳しかったのか、ふぅっと息をついて奥から拝借したお茶をすすっていた。
もちろん、『ただ疲れたから』というだけで駄菓子屋に留まったのではない。
黒野も出来る事ならさっさとゴミ処理場に行き、何か亀田の技術を知ることが出来るものを漁りたい。
だが時間は六時ちょっと前、そろそろ放送とやらが始まる時間。
放送から何か推理できることがあるかもしれないので、落ち着いて考えるため駄菓子屋に留まったのだ。
(この放送で得れる情報は少ないじゃろうが……まあ、何かヒントがあるかもしれんしのぉ)
黒野は、亀田が何故殺し合いを開いたのか、ということが気になっていた。
人を集めてきて殺し合い――中々に非道な行いだ、人体実験に勝らずとも劣りもしない。
それが亀田の歪んだ欲を満たすためか、それともまったく別の目的があるのか。
殺し合いを開催した理由が分かれば亀田の虚を突くことが出来る可能性も高くなる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪
早速、放送が始まった。
短い間音楽が鳴り響き、ん、ん……と小さな、息を吸い込むような音が聞こえる。
『おはよう! 諸君!』
そして音に続いた声を聴き、黒野は僅かに眉を潜めた。
(最初と声が違う……この感じ、機械で声を変えている音じゃぁないの、別人の声じゃ。
やはり我威亜党という組織はブラフではなく実在し、組織単位で殺し合いを企んだと考えて間違いはなさそうじゃのぉ。
……しかし、無駄話しかしとらんの)
放送は黒野が想像していた事務的なものではなく、『チバヤシ公爵』なる人物の一人語りに終始している。
亀田の言っていた死者と禁止エリアの発表に移る気配すら全く感じない。
『……ん? なんであるか、チキン男爵? ああ、わかってるである、発表であろう?』
(チキン男爵……新しい名前じゃの。しかし公爵と男爵が居るとすると……間に入る侯爵・伯爵・子爵もおると見て構わんの。
もちろん他にも爵位を持っていない人間も居るに決まっておるじゃろうし、同じ爵位を持っている人間も居るじゃろう。
あの場に居た大勢の人数を誘拐するなど少人数で出来るわけが……待てよ、誘拐?)
『では、まずは禁止エリアの発表である』
一瞬、黒野の頭にちょっとした考えが浮かぶ。
だが、浮かんだ瞬間に禁止エリアの発表が始まったために考えを断念する。
自分の外れているかもしれない考えよりは命を大事にする程度には正常な思考は残っている。
大人しく禁止エリアの場所をメモし、それを見て地図に×印を書き込んでいく。
(……禁止エリアは島の端が多い。亀田はまだ禁止エリアで参加者を追い込むつもりはない、ということか)
『では次に……お待ちかねの死亡者の発表である!』
死者の発表までの間に頭に浮かんでいることをメモに書き込んでいく。
中には文章になっていないものもあるが、頭に留めておくよりは効率的だ。
『……もういいであるか? では発表である!』
その声が聞こえた瞬間、メモに書き込む動作を止めて新しいメモに死者の名前を書き込んでいく。
青野 柴夫から始まりアルベルト=安生=アズナブル、越後竜太郎と五十音順に名前が呼ばれていく。
多い、それが書きながらの黒野の感想である。
『以上!
……うむ! 最初の二人は陛下の手にかかったから引いたとしても十六人であるか!
四分の一以上もの人間がわずか六時間の内に誰かの手にかかってしまうとは……
人間とは恐ろしいものであるなぁ〜♪』
(十六人で四分の一と言うことは六十人ほどと言ったところか……
それにしてもわしが一人とも会っていない内に十六人も死んだのか。
……その中にはたかゆき、もか。
まあ、データは残っておるからもう一度作れるが……それでもやるせないのぉ)
『あ、そうそう。
デイバックの中にこの殺し合いに参加した人間の名簿を入れておいたである。
まあ、早めに目を通したほうがいいであろうなぁ〜、ではまた次の放送で会おう!
何人残っているか楽しみにしておこうではないか♪』
(名簿、今更か……最初から渡さなかったのに何か理由でもあるのか?)
しかし黒野には名簿が何故今更支給されるのか、名簿に目を通す、などを行う前に考えておくことがある。
それは禁止エリアの発表の前に気づいたことだ。
誘拐した、と言うことでふと頭に過ぎった考え。
(わしは気づけばここに居た。ここに来る前は確か……寝とったの、研究も順調に進んでおったし。
靴は……我威亜党の連中に履かされたのかのぉ? まあいい、今はそこじゃない。
今考えること、それは他の人間はどのようにつれて来られたかについてじゃ。
わしと同じように寝ている状態から連れてこられたのか?
それとも力ずくで意識のある状態から無理やり連れてこられたのか?)
誘拐の方法、黒野はこのことについて疑問に感じたのだ。
黒野は眠っているところを誘拐された、恐らく眠りが深くなるように催眠ガスを放り込まれたのだろう。
だが、他の人間が同じ方法をとられたとは限らない。
安全策を取るならば全員が眠っているところを襲うのが当然だろう。
だが、ひょっとすると誘拐される場面に意識がある人間がいるかもしれない。
そんな人間がいるとしたら、その時の出来事は非常に興味が湧いてくる。
――――どのような方法で参加者を眠らせたか。
――――誘拐した人間はどんな服装をしていたか。
――――何か武器を装備していたか。
それらを知るだけでも亀田の技術へと近づくヒントとなる。
そのためにも他の参加者と進んで接触する必要がある。
「とにかく、出会った人間に片っ端から尋ねていけばいいだけじゃ。
今大事なのは亀田の技術を知り、この首輪を外すことじゃからのぉ!」
黒野にやることはたくさんある。
まずはゴミ処理場へと向かって、何か面白いものがないかを探す作業。
それと並行して首輪を外す工具を探す作業も行い、参加者とは率先して出会う。
どれも徒労に終わるどころか危険人物に襲われて死んでしまう可能性が高いが、当たればこれ以上となくでかい。
ハイリスクハイリターン、それもロマンの一つと言うものだ。
今にも零れてしまいそうな笑いと心から湧き上がる興奮を抑えながら立ち上がる。
その目はぎらついた獣のような目をして獰猛な笑みを浮かべている。
ソレも当然だ、黒野は終生の野望が達成されるまで死ぬわけにはいかないのだから。
【D−6/駄菓子屋/一日目/朝】
【黒野 鉄斎@パワプロクンポケット8】
[状態]:健康
[装備]:銃剣
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1個(確認済み)、ノートパソコン(バッテリー消耗小)、駄菓子数個
[思考]
基本:亀田の技術を手に入れた上で生きて帰る
1:まずはゴミ処分所を目指す
2:首輪を外す
◆ ◆ ◆
黒野が駄菓子屋から外へと踏み出した同時刻、ちょうど真南に当たる辺鄙なある民家。
その民家に第三世代アンドロイド・灰原が隠れるように身を置いていた。
その民家は古いわけでもなく新しいわけでもなく、『何処にでもあるような』という言葉が似合う家だ。
赤い屋根に白い壁の二階建て、庭は狭いが日当たりは良い。
ごく普通の平凡な民家。
そんな民家に、畳の広がる居間という部屋が世界一似合わないだろう男、灰原は居た。
灰原の目的はこの殺し合いで最後の一人になること。
傷はもちろん、疲労すらない今の状態で灰原が体を休める理由などない。
「……普通の野球ボール、か」
しかし、灰原にはその民家で休む理由が出来てしまったのだ。
ここに来る前、ちょうどC−7に当たる場所で出会った男、青野から奪った支給品の一つである。
青野曰く、この支給品は喋るボールという摩訶不思議な代物。
灰原はこれを調べることによって我威亜党の技術レベルを知ることが出来るのではないかと考えたのだ。
このことは近くに居た黒野にとってこれ以上とない幸いとなった。
刀を持ったアンドロイドと銃剣しか持たない老人の勝負など端から見えているのだから。
(……スピーカーというわけではないのか?
いずれにせよ、解剖してみなくては判断出来んか……)
先ほどから軽く叩いてみたり、『おい』と声をかけてみたりしていたが何の反応も示さない。
目つきの鋭いスーツの男がピクリともしない野球ボールに話しかける姿はシュールだった。
しかし、何時までもボールと睨めっこを続けているわけにも行かない。
灰原は壁に立てかけていた刀を手にし――――
「ちょ、ちょっと待つんじゃ! 喋る、喋るからその刀を下ろすんじゃい!」
身の危険を悟った野球ボールの叫びによって止められた。
「……何故黙っていた」
「お前さんみたいな危ない奴と話せるかい」
「ふむ……」
灰原の問いにしっかりと人間らしい答えを返してくる野球ボール。
このことから人工知能という線は薄いだろう、と灰原は当たりをつける。
確かに小さな野球ボールの中に脳の代わりとなるものを入れれるとは思えない。
可能性があるとすればスピーカーを埋め込んでいるか、灰原には知る由もない未知の技術を使われているか。
もしくは――――。
(……超能力者が絡んでいるのか?)
世の中に超能力者と呼ばれる体一つで超常現象を起こせる存在がいる。
ただの駒である灰原はそれほど詳しくないが、一口に超能力にも様々なものがある。
火を出すことが出来るというイメージのしやすい能力。
自分が行ったことのある場所へと体を通すことで物を行き来させることが出来るとんでもない能力。
その超能力者ならボールを喋らせる、ボールに人格を宿すという理屈を無視したことも出来るのではないかと灰原は考えたのだ。
「おい」
「……なんじゃい」
「何故ボールが喋る」
「わしは人間じゃ! ……まあ、確かに今はボールじゃがの」
「つまり、お前は人間だったのか?」
「そうじゃ……まあ、ちと理由あってこんな姿になってしまったが」
ボールは少し怯えを見せながらも灰原の問いに答えていく。
嘘をついている、ということを考えずにボールの言葉を素直に受け取ると元は人間だったらしい。
もし超能力だとすると、その能力は人格を別のものに移す能力、といったものだろう。
「ならば何故ボールの姿をしている」
「……話をしても、どうせ信じんじゃろ」
「痛みは残っているのか?」
カチリ、と刀を鳴らして灰原はボールを脅すように睨み付ける。
実際には興味深い対象であるので無傷のまま現物の状態でオオガミグループまで持ち帰りたい。
そのため、傷をつけるつもりはないのであくまでただの脅しに過ぎない。
しかし、ボールには十分な効果があったようだ。
「分かったわい! 言っとくが全部本当のことじゃからの!」
「……」
刀を仕舞い直し、周囲の警戒を解かずにボールの話へと耳を傾ける。
どこから声を出しているのかも謎、どう灰原を認識しているかも謎。
構造からして謎の物体、例を見ないという言葉はこんな時に使う言葉なのだろう。
そんな灰原の思案を他所にボールは目(のような物)を細めて喋り始めた。
曰く、自分は六年前まで息子を持つ普通の人間だった。
曰く、その子供とプロ野球を観戦しに行った際にホームランボールで頭を打ち死んでしまった。
曰く、しかし人間かどうかすら分からない奇妙な姿をした老人、野球仙人によって生き返ることが出来た。
曰く、その際に人間の体ではなくそのホームランボールの姿になってしまった。
曰く、そして、子供が六年以内に全国大会で優勝しないと今度こそ本当に死んでしまう。
「というわけじゃ」
「……」
「……何度も言うが嘘は言っておらんぞ」
話だけを聞くならばその野球仙人という老人が超能力者なのだろう。
最大の問題はその老人の能力だ。
本当にこのボールが死んでしまった所をボールとして蘇らせたのか。
それとも気絶していただけの所に意識をボールに移したのか。
前者ならばそれは強力な超能力という言葉では片付けられない神の領域だ。
後者でもボールという無機物に意思を宿らせる、という無茶を行っていることから高ランクの超能力者だ。
(聞いたこともなければこの男をボールにする意味も見出せない、特定の組織に属していないのだろう。
――――貴重な存在だな。
超能力者は研究の余地がある、その被害者であるこれを持ち帰ることはオオガミに大いにプラスになる)
「おい、聞いているのか?」
「……デイパックの中から外の様子は分かるのか?」
「口が開けっ放しの時なら聞こえていたが……ところでこれはなんなんじゃ?」
「知らないのか?」
少し驚きの色を入れて灰原は逆にたずねる。
ボールは少しムッっとした表情(?)をして少しすねた言葉で答える。
「無知で悪かったの! わしはなーんも知らんわい!
……じゃがこれは異常じゃぞ、いったいなんなんだ?」
「亀田の――これを開いた男のことだ――言葉を借りるならば殺し合いだ」
「こ、殺し合い!? おい、いったいどう言う事じゃ!」
「詳しくは知らん、俺に聞くな」
灰原はボールオヤジの言葉を切り捨てて、デイパックの中へと放り込む。
そして、素早くデイパックの口のチャックを閉める。
「おい、ちょっと待た――――」
「……ほう」
瞬時に声が遮断される様子に感嘆の声を上げる。
デイパックへと耳を近づけるが僅かな音の一つも聞こえない。
どのような仕組みかは科学者ではない灰原は分からないとは言え、実物を持ち帰ることは我威亜党は拒否するだろう。
自分達の技術を敵となる組織に渡す人間が居るなら見てみたいものだ。
しかし、このデイパックとボールは持ち帰れば、オオガミグループにとってプラスに働くこと受けあいだ。
だが、灰原が最も優先すべきことはオオガミグループに亀田の属する我威亜党の存在と技術を伝えること。
デイパックとボールに気を配りすぎて死亡してしまっては元も子もない。
あくまでデイパックやボールの秘密は解明できればベストというだけの話。
皆殺しするまでに解明できなくても仕方ない、という扱いだ。
とは言え、名簿に部下である白瀬 芙喜子の名が載っていることによって保険も出来た。
先ほどの放送で名前で呼ばれてしまった青野よりも期待できる。
たとえ自分が失敗しても白瀬がオオガミグループに情報を持ち帰れば良い。
これで白瀬が生きている限り大胆に動くことが出来る。
それはデイパックとボール、首輪の解明にも手を伸ばせるということだ。
だが、同時に面倒なことも出来た。
名簿に載っていたもう一人の部下、八神総八郎のことだ。
性格テストから見ると殺し合いには消極的だろう、ひょっとすると我威亜党を倒そうと考えているかもしれない。
それは結構なことだが、恐らく殺し合いに積極的な人間も止めようとするだろう。
殺し合いに乗った灰原としてはその行動は非常に困る。
出来ることなら他の参加者が潰しあって、漁夫の利となる形が一番だ。
「……行くか」
いずれにせよ、邪魔になるものは誰であろうと殺し、邪魔にならずとも役に立たないのならば殺す。
それに八神はCCRに疑心を抱き始めている、この機会に処分するのも手だろう。
灰原にとっての最優先事項はオオガミグループへ情報を伝えること。
そのためならば彼はなんでもする、それが彼の役割なのだから。
【D−6/民家/一日目/朝】
【灰原@パワプロクンポケット8】
[状態]:健康
[装備]:正宗@パワプロクンポケット7裏、トムプソン(2/4)@パワプロクンポケット7裏
[道具]:支給品一式、ムチ@パワプロクンポケット7裏、とぶやつ@パワプロクンポケット8裏、ボールオヤジ@パワポケダッシュ
[思考]
基本:優勝し、亀田の持つ技術をオオガミグループへと持ち帰る。
1:離れ島へと向かう。
2:見敵必殺、ただし相手が複数いる場合など確実に殺せないと判断した時は見逃す。
3:白瀬に指示を与えたい。
4:喋るボール(ボールオヤジ)を持ち帰る。
[備考]
※参加時期は不明、後続の書き手さんに任せます
【ボールオヤジ@パワポケダッシュ】
※灰原に怯えています。
※名簿は見ていないため走太の存在を知りません。
※デイパックの口が閉じられた状態だと外の様子がわかりません。
投下終了です
矛盾誤字脱字の指摘お願いします
投下乙です。
黒野博士は冷静に現状を考えているようでかっこよかったです。
たかゆきのコピーをとろうと考えるけど、それでもやるせない博士の心情に涙。
灰原隊長はやっとボールを取り出しましたが、オヤジ哀れw
GJ!
投下乙です
隊長はやっぱり色々考えてるなあ、ふっきーと連携を取ろうとするのが彼らしい
そして親父の虐げられっぷりにワロタw
哀れすぎるwww
遅くなりましたが、投下しますね
「十八人ですか」
誰にも聞こえない声で曽根村は呟いた。
それはこのゲームが始まってから今までに死んだ人数。
事態は自分の思っている以上に早く推移している、それが彼の率直な感想だった。
(始めに殺された二人を引いても十六人……。既に四分の一以上が誰かに殺された訳ですか。まあ、その内の一人は鋼なんですがね。
これは私も色々と考えなくてはなりませんね)
そこで最初に彼が考えたのは今後の自身の身の振り方だった。
水族館時の彼の計画では、強者に身を守ってもらい頃合いを見計らって後ろから事を起こすというもの。
現在でもその考えは概ね変わりない。だが、考えに変わりがなくても状況が当初とは変わってしまっている。
先ほどまでとの何よりの違いは、保護者がいなくなってしまったことだ。
曽根村自身も痛感していることだが、真っ当な方法で彼に何人もの人間を倒す実力はない。
そのため、彼が生き残るためには外敵から身を守ってくれる保護者の存在が必要不可欠なのだ。
続いて考えたのが名簿のこと。
チバヤシ公爵が言ったように、バックの中にはいつのまにか名簿が入っていた。
だが、名簿といってもA4の紙に名前が羅列されてるだけの簡素な代物であったが。
その中で曽根村の知る名前は二つ。
(二朱公人と凡田大介。記憶が正しければ確か彼らはモグラーズの選手だったはず。
凡田の方はよく知りませんが、二朱には多少の因縁がありますね。
けど、この場には関係のないものなので頭の片隅に留めて置く程度にしておきましょうか)
他にも気になる名前が一つ。
『メカ亀田』
(これはカメダが送った刺客と考えるのが妥当でしょうね)
そして、今彼にとって何よりも重要だったのは『高科奈桜』の名前がないことであった。
つまり彼女は偽名を名乗っていたことになる。
このような状況下だ、確かに偽名を名乗るのも分からなくはない。
だが、偽名を使ったシチュエーションが悪かった。
話によれば、彼女は半ばパニック状態のまま水族館に電話をかけたことになる。
そのような者が咄嗟に偽名を名乗るものであろうか。
その点が曽根村には腑に落ちなかった。
(鋼は惜しかったですが、高科奈桜のことを考えてみると水族館を出たのは正解だったかもしれませんね)
そして、最後に考えたのは目下の所の重要事項、進藤明日香についてだった。
彼女は曽根村にとっては、鋼の様なお人好しを釣るためのエサでしかない。
だが、当の明日香は先ほどの三橋との接触以来、時折「三橋君が何で……」だの嘆き続け、うつむいたままだ。
そのため、進行速度はかなり遅いものとなってしまっている。
早さ的にはいつ三橋に追いつかれても不思議ではないが、運がいいのか何故かそのような気色はない。
だが、いつまでもこのままではいられない。死者数から考えるに危険人物は三橋でなくても多数いるからだ。
このまま明日香と一緒にいれば自身の行動に大きな支障をきたすのは明白だ。
それならばいっそ自分の手で……、そう思い曽根村が懐に手を差込みながら辺りを見回す。
そして、身長190cmを越えるであろう大女と目があった。
咄嗟に曽根村は銃を向けようとしたが、それより早く女の方が口を開く。
「あ〜、怪しいもんとちゃうんで、そんな物騒な物は出さんといてくれますか?」
□
彼女は大江和那といい、人捜しをしているらしい。
曰く、相方のボケが過ぎているのでそれにツッコミをいれにいくそうだ。
つまり、友人が凶行に走っているのを止めたいということなのだろう。
だが、曽根村にしてみればどうでもいいことであった。
例え、大江が説得に失敗しようが唯の女子高生が一人死ぬだけだからだ。
もちろん、大江はまかり間違っても唯の女子高生ということはないが、曽根村が知る由もない。
ただ、浜野朱里という危険人物が近辺にいるということが分かっただけでも価値のある接触ではあった。
そういえば、とふと高科奈桜のことを思い出す。彼女もこの近くにいるのではなかったか。
もしかしたら彼女の正体は浜野朱里かもしれない。女子高生という点でも一致する。
「大江さん、役に立つか分かりませんが前に気になる電話があったんですよ」
大江に高科のことを話す。
どうやら当たりだったようだ。
高科奈桜は彼女達のクラスメイトであるので、浜野がその名を使うのは充分あり得る話だそうだ。
「いや〜曽根村さん、本当にありがとうございました!これであいつを探すのも大分楽になるってもんですよ」
「お役に立てて光栄です」
「それと曽根村さん、行く当てがないんやったら病院に行くとええですよ。
あたしの仲間がおるはずなんで」
「仲間、ですか?」
「はい。得体が知れへんけど八神さんは頼りになりますし、真央はなんか隠しもっとるって感じですね。走太君もいい子ですし」
「そうですか、では病院に行ってみますかね」
「じゃ、ここらでウチは行きますね。さっさとツッコまんといけないんで」
そう言って大江は今にも駆けだそうとする。
「待ってください!」
が、それは今まで黙っていた明日香の一言によってすぐに止められた。
「えっと、確か進藤ちゃんやったよね、何?」
「どうして……、どうしてそんなことができるんですか!?」
それは曽根村が聞いてきた明日香の声の中で一番大きく、そして一番気持ちが籠もっていると感じられるものであった。
「そんなことって?」
大江が面を食らいながらも返事を返す。
彼女もまさか明日香がこのような声を出すとは思ってなかったのだろう。
「だから、どうして殺し合いに乗ってしまった友達の所に行けるんですか!?
私は……、私は……あんな三橋君なんて見たくない!!」
それは本心からでた言葉であった。
好意を持っていた幼なじみが殺人ゲームに乗り、自身の知り合いの言葉にも耳を貸さずその人さえも殺す。
明日香にとっては悪夢以外の何物でもなかったのだろう。
だからこそもう二度と見たくないし、思い出したくもないのだ。
大江は真摯な態度でその質問に答える。
「ん〜、そりゃウチはあいつの相方やからな。あいつがボケたらツッコムのが相方であるウチの仕事や」
「それだけですか?」
「それだけ、やない。それで充分なんや。
確かに他人から見たら馬鹿げた理由かもしれへんけど、あたしとあいつにはそれでええんや。
なんちゅうのか、相方ボケと言われるかもしれへんけど、多分ウチはあいつのこと信じとんねん。
あいつなら分かってくれるって。まあ、ウチらの場合その過程で殴り合いになることは必須やけどな」
支援
明日香は大江の声に耳を傾け続ける。
「進藤ちゃんが何を悩んでんのかウチは知らんけど、あんま難しく考える必要ないんやで?
あいつを信じとるなんて言うたけど、本当はあたしの我が侭なだけやと思う。
あいつの本心なんて知りようがないしな。
だから、まずは自分が何がしたいか考えるんが先決や。
そうすれば自ずと答えは出てくるんやない?」
「私がしたいこと…………」
答えは既に出ていたのかもしれない。
ただ、それを直視したくなかっただけなのだ。
直視してしまえば三橋が人殺しだという現実を認めなくてはならない。
認めてしまったら三橋のこと信じることができなくなってしまう気がしたから。
だからこそ、ただの逃避だったとしても答えから目を逸らしてきた。
だが、大江の話によって明日香の本心は逃避を止めた。
三橋一郎を止める、それが彼女の願いであったと気付いたから。
そして、何よりも彼女は三橋のことを信じていたいから。
「大江さん、ありがとうございます。おかげでなんか頭の中がスッキリしました」
「そりゃよかった。それじゃ、進藤ちゃんの悩みが晴れたところでウチはそろそろ行かせてもらいますわ。
曽根村さん、情報ありがとうございました。
それに進藤ちゃんも元気でな」
「ええ、そちらもお友達を止められるといいですね」
「大江さん、本当にありがとうございました。そちらもお元気で」
別れの挨拶も澄まし、大江はこんどこそ出発しようとしたが、何かを思いだした顔をしながら立ち止まり二人の方に振り返る。
「ところで、二人はいつから来た人なん?」
支援
曽根村と明日香は質問の意味が分からないといった風であったので、大江は説明を開始する。
説明が終わった後、二人の出した答えはもちろんバラバラであった。
「まさか、こんなことが……」
「不思議ですね。大江さんとは歳は変わらないはずなのに、戸籍上は親子ほど違うなんて」
「ウチの方もビックリや。まさか、十年以上違うなんて思いもしなかったわ。
この調子でいったら明治とか大正時代の人もおったりしてな。
それじゃ聞きたいことも聞けたし、こんどこそウチは行きますわ。二人共ご無事で」
そう言い残し、大江はこんどこそ浜野を探しに地を蹴った。
大江が去り、その場には明日香と曽根村が残された。
「……曽根村さん、すいませんが病院へは一人で行ってくれませんか?」
明日香が小さくも力強い声で曽根村に告げる。
「三橋一郎を止めに行くんですね?」
「はい……!」
「決意は固いようですね。分かりました、私は一人で病院へと向かうことにしましょう。
ですが進藤さん、ちょっと気負い過ぎてるように感じます。
疲れも抜けてる様に見えませんし、水族館に行く前にあそこの民家で休んではいかがですか?」
そう言って曽根村はある民家を指さし、明日香も疲れを感じていたことは事実だったのでその提案を承諾した。
民家は極々一般的な造りになっており、明日香は水分を取りながら居間で体を休め、その間曽根村は使えそうなものはないか家捜しをしていた。
(今でも私にはあの優しい三橋君が殺し合いに乗ってしまったなんて信じられない。
けど、三橋君が鋼さんを殺したのは逃げちゃいけない現実。
だったら私はどうすればいいのか?
現実を見ず、空想の中の彼の姿を追い続けるのか?
いや、違う。
答えは最初から出ていたことだ。
彼を止める、それが私の答えだ。
いや、ただ止めたいのだ。
我が侭に過ぎないのかもしれないが、私はこれ以上三橋君が誰かを殺すところなんて見たくない。
だからこそ、彼の真意を計るためにも私は三橋君をの下に戻ろう。
三橋君なら分かってくれる、そう信じて……!)
30分ほど経ったであろうか、曽根村も家捜しを終え、明日香も充分とは言えないが疲れを回復させた。
「それではそろそろ行きましょうか」
曽根村が出発を促す。
明日香も黙って首を縦に振り決意を新たに民家を後にした。
「それでは進藤さん、私は一足先に病院へと向かわせてもらいます。
三橋君を止められるといいですね」
「はい……!三橋君は絶対に私が止めてみせます!」
「絶対に止める、ですか。希望に満ちていていいですね。
でも、それでは私が困るんですよ」
「えっ?」
支援
支援
明日香が疑問に思う間もなく、パン、と一発の銃声が響く。
それと同時に明日香は胸の当たりに猛烈な熱を感じ、脚から力が抜け、そして崩れ落ちた。
「ど、どういうことですか……曽根村さん……?」
「どういうことって、決まってるじゃないですか。優勝するためですよ。
まあ、もっとも今はそれだけじゃないんですがね。
大江さんの話を聞いて私は心が震えるのを感じました。
考えてもみてください、時間移動ですよ?使いようによっては神にも悪魔にもなれる。
そこから見るとドリルコーポレーションのなんと小さなことか。
だから、ただ優勝するだけではなく、亀田皇帝に気に入られる優勝でなくてはいけないんですよ」
明日香はただ曽根村の言葉を聞くことしかできなかった。
何かをしようにもどうやっても体に力が入らないからだ。
曽根村の言葉はなおも続く。
「ですから進藤さん、あなたのしようとしていたことは非常に鬱陶しい。
説得に失敗してあなたが死ぬだけなら何でもないのですが、万が一にも三橋が改心してしまってはどうするんですか。
ゲームを積極的に動かす者が少なくなる展開なんて皇帝は望んでないはず。
それにね、新たな保護者の目処が立ちましたので、あなたもう用済みなんですよ。
残念ですね、水族館に行くなんて言い出さなければもう少しは長生きできたのに」
「私は……三橋君を…………」
その言葉を最期に進藤明日香は息を引き取った。
明日香を葬った後、曽根村は返り血を浴びたシーツを元あった民家の中に隠し、次の目的地となる病院へと身体を向ける。
「さてと、病院には大江さんの仲間がいらっしゃるんでしたね。
大江さんから話しを聞いたと言えば警戒はされないでしょう」
そこにはいつもと変わらない曽根村の姿があった。
鋼や明日香の死など何でもないように。
【進藤 明日香@パワプロクンポケット 死亡】
【残り41名】
【G-6/一日目/朝】
【大江和那@パワプロクンポケット10表】
[状態]健康、頭にたんこぶ
[装備なし]
[道具]支給品一式(不明支給品1〜3)
[思考]
基本:バトルロワイヤルを止める
1:朱里と出会って説得する
【備考】
※重力操作にかけられた制限の存在に漠然と気付きました
【曽根村@パワプロクンポケット2】
[状態]右手首打撲
[装備なし]ナイフ、ブロウニング拳銃(3/6、予備弾数30発)
[道具]支給品一式
[思考]
基本:漁夫の利で優勝を目指す
1:病院へ向かい、大江和那の仲間と接触する
2:研究所へと向かう
さるさん規制くらったので、仮投下スレに残りを投下しときました
どなたか代理投下してくださったら幸いです
また、誤字、矛盾ありましたら指摘お願いします
代理投下終了ー
まあ言いたいことは色々あるけど凄いことに一言で表せるぜ
曽根村ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
ふう、すっきり。大鉄兄さんになった気分だぜ♪
投下&代理投下乙でした
明日香ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ついに曽根村が本格的に動き出したか・・・
こいつなら簡単に病院組に溶け込めそうだし、今後の策謀に期待だぜ!
それにしても亀田の下で働く曽根村か・・・あれ?どこかで見たことあるような・・・
投下乙です
いよいよ曽根村が本領発揮とでもいいましょうか
どこまで曽根村がステルスってくれるかに期待せざるを得ないです
乙でありんす
のぉぉー明日香ー
今日初めてこの板にきた
↓
おおっ 俺の好きな明日香がでてるじゃないか!
↓
・・・鬱だ死のう・・・
明日香は開始前では人気あったんだよな、確か
そういや1勢は全滅か
>>129 お前パロロワは初めてか?力抜けよ
まあマジレスすると、wikiで一番最初からとりあえず読んでくれると嬉しいな
>>131 いや、結構ロワ好きで何個か読んだこともある。
殺される前だと、好きなキャラがやばい状態になれば上手く逃れる話を作って
先に投下するって手があるが、死んじゃったらそれまでだろ。
このスレを知った1つ前の話でお亡くなりになってたら結構ショックだったな
まあ、他のロワだと人気キャラが序盤で死んだらその書き手を叩きまくって
話を取り下げさせるという手があるみたいだがあれは最低だったな
4人位ザオリクが発生してたし
白瀬芙喜子、愛、投下します
CCRのエージェント・白瀬芙喜子と月光の忍者・愛の二人組は、赤ずくめの男から逃げるように西へと向かっていた。
あのヒーローの様な服装をした男の動きは只者ではなかった、単純な力や俊敏さだけなら愛や白瀬よりも上かもしれない。
格好から見て最初に死んだブラウンと言う男の仲間だろう、あの動きの鋭さから見ても間違いない。
ならば、ブラウンと言う男が真っ先に亀田へと反抗したのと同じように、あの男も殺し合いに乗っていないだろう。
殺し合いに乗っていようがいまいが強者は面倒な存在だ、出来ることなら他の強者と何処かで潰し合いをしていて欲しいものだ。
「あの妙な服装の男、最初に殺された男の仲間かしら?」
「多分、ね。あんな変なのがそれぞれ独立してるなんて考えたくないわね。
それと多分だけど、あの赤いのがあの男達の中で一番強いわね」
「なに、あの男たちのことを知ってるの?」
「全然知らないけど、あーいうのは赤いのが一番強いもんなのよ」
「……その理屈だと火龍が一番強くなるから私としては御免こうむるわ」
愛は白瀬と軽口を叩き合いながら、鉄で出来た扉を興味半分警戒半分に眺めてから消防署の中へと入っていく。
そして、その後を白瀬が周囲を警戒しながら入る。即興ながらもそれぞれがやるべきことをやっている、悪くないコンビだ。
消防署の中はガランと開けており、別段変わった様子はない。
「中から人の気配はしないわね……」
「そう。じゃあ、早速名簿の確認ね」
白瀬が部屋の中央に置いてあった椅子に腰掛け、テーブルにデイパックを乗せる。
それに習うように愛も椅子に腰掛け、挙動不審と言えるほどに室内をきょろきょろと見渡す。
「どうしたの? ひょっとして、どこか痛めた?」
「……妙なところね。壁の材質も、そこに転がっている鉄の固まりも始めて見るわ。
白瀬は、不思議に思わないの?」
愛にとって白瀬は同盟を組んだ相手だとは言え、いつかは殺すことになる相手。
心理戦になった際に舐められないためにも、弱みのようなものは見せたくなければ主導権もこちらが握っておきたい。
しかし、まだ経験の少ない若い忍者である愛が取り乱すほどにはこの島は異常だった。
「先ほどの『ほうそう』とやらは妖術か何かでしょ、それは納得できるの。
でも、他のものは全て異常よ。幾らなんでもあの筒の破壊力や人を乗せて走る鉄の固まりは有りえないわ」
愛はゆっくりと自分に言い聞かせるように、だが途中で押さえきれずに声に静かだがはっきりとした怒気が込められてくる。
「……そうよ、有り得ないわ。あんなものがあるのなら忍者や武士は、刀や槍や弓や馬は何の意味もなくなるじゃない。
いえ、もっと有り得ないのはこの袋よ。
何であんな大きな筒がこの袋の中に入るの? 訳が分からないわ、何もかも、ね……!」
不思議なのはあの筒・ロケットランチャーや、鉄の塊・車だけではない。
忍術を使った際に感じる普段よりも大きな疲労、見たこともない何かで舗装された道路、高速で走る人を乗せた鉄の塊。
他にもまだまだある。この部屋に転がっている物や、奇妙な縦に伸びた建物。
その全てが愛にとっては異常なもの、有りえないものだ。
それがこの島には溢れている。それが愛にとってたまらなく落ち着かなかった。
「……ねえ、愛。もう一度聞くわ。アンタは何処の国の、何処の組織に属してるって?」
「風賀の国の月光よ」
「……」
白瀬は迷いのない愛の言葉を受け止めて、真っ直ぐに見据えてる。
愛はその視線に怯むことなく、睨み返すように白瀬を見つめる。
僅かな時間、沈黙が場を支配し――――ふうっと言う白瀬のため息に壊される。
「なに、アンタ本気で言ってるの?」
「どういう意味?」
「……嫌なのよ、私は。ファンタジーとかメルヘンとか、そういうのが気軽に出てくるのって。
いわゆるバック・トュー・ザ・フューチャー? この場合は過去から来たことになるから違うけど」
「だから、どういう意味よ?」
白瀬の何の脈絡のない言葉に、愛は若干の苛立ちを込めて言葉を投げかける。
勝手に納得し勝手に苛立たれ穏やかに構えていられるほど、愛は大人ではない。
「あんたの疑問の答えはね、時間の違い。そう、時間よ」
「……時間?」
「私はね、あんたが生きてた日の、明日の、明日の、明日の、明日の明日の明日の……とにかくすっごい明日を生きてたの」
「…………ごめんなさい、意味が分からないわ」
「うん、分かりやすく言うわ。私は未来から、いや、正確には違うわね。あんたは過去から現在に来ちゃったのよ」
「………………ごめんなさい、まだ、意味が分からないわ」
「つーまーりー。未来なのよ、ここ。あんたにとっての」
「………………………未来? ここが?」
「そう、未来」
白瀬の言葉が全く理解できないと言った風に、間の抜けた表情で白瀬の言葉を復唱する愛。
その白瀬はと言うと、今にも舌打ちしそうな様子で頬杖をついている。
ロケットランチャーで平山を殺害した際の楽しそうな笑みなど、今は何処にも無い。
「あんたが私のことからかってるって可能性のほうが高いんだけどね。
まあ、その時はつまらない冗談言った罰として死なすけど」
「……未来? い、いや、ちょっと待ってよ。いきなりそんなこと言われても……!」
「受け入れなさいよ、あんたも忍者って言うぐらいなんだから考える前に動きなさい」
「失礼を承知で言うわ、白瀬の話が今まで一番有り得ない。
有り得ないけど……ここまで有りえないことが続いていたら、それが本当なのかもね」
「そう考えるのが自然だから……ああもう! こんな馬鹿らしいことで自然なんて言葉使いたくもないわ!
とにかく! あんた、車見たこと無いんでしょ? ロケランのこと知らないんでしょ? 舗装された道路も見たこと無いんでしょ?
だったら、あんたは本気で頭が逝ってる電波女か、昔の人間かのどちらかなのよ。
……時間の行き来が自由に出来るなんて気に入らないけどね。
時間を行き来できるなら、死人にまた会えるのなら、やり直しが出来るのなら、死が軽くなるじゃない」
既に苛立ちを隠そうともしなくなったようで、白瀬は言葉を吐き捨てる。
どちらも口を開こうせずに時間が流れる。
それを破ったのはまたも白瀬だった。
ただ今度はため息ではなく、苛立っているわけでもない、落ち着いた声色だ。
「まあ、そんなことを考えてもしょうがないわ。今大事なのは生き残ること、そのためにも現状の把握よ」
「……そうね、後のことは後に考えれば良い。名簿って奴からね」
白瀬は頭を切り替えて机に向き直り、名簿を広げる。
納得のいかない部分が多くあるが、白瀬の言うとおり今は生き残ること考えなければいけない。
椅子に腰をかけて机に広がる紙を眺める。
「名簿、つまり殺し合いの参加者の名前が載ってるってことね」
「……多いわね」
「それでも、十八人は死んだわ。死んだ人間で知った名は?」
知った名、それは二つあった。
一つは教頭斎、名簿には教頭斎と似た名は教頭しか残っていないことから考えると間違いないだろう。
もう一つは自分をその教頭斎から救った女、埼川珠子だ。自分の小刀が致命傷だったのか、生き延びるものの別の人間に殺されたのか。
いずれにしろ、関係ない。死んでしまったものはそれまでだ、まさか生き返るわけもあるまい。
愛は教頭斎――教頭と埼川珠子の名前を教えた。
「ふーん……私があんたと合流するまでに殺したのは一人。
つまり三人+ロケットランチャーでぶっ飛ばした零から五人だから、私達が関わった死者は三人から八人か」
実際には平山紀之しか死ななかったので四人である。
だが、遠目からで、しかも即座にレッドの襲撃に遭った二人には分からないことである。
「……意外と、別の場所でも死人が出てるのね」
「そりゃ意外と面倒な人選してるみたいだしね、向こうさんは。手ごわい人間は多いと考えた方が良いわ」
「知ってる名でもあるの?」
「ええ、まあね。ほら、言ったでしょ。八神って言う同僚。それと灰原って元上司も居るわ、どっちも男ね」
「ああ……八神ってあの」
インパクトが強かったため、よく覚えている。
愛は今まで殺してきたのは裏切り者か憎い相手か月光の敵のどれかだ。
それで良いし、それ以上に理由なんて要らないと思った。
だが、目の前の女は好きだから殺すという訳の分からない理論を喋るのだ。
今はそこを突っ込んでも仕方が無い。
「で、この灰原ってのはとっくに死んでるのよ」
「……は?」
「少なくとも、私はそう思っていたわ。生きていても良くて研究所か、悪くて廃棄所かに行ってると思うしね」
「……よく分からないけど、つまりこれは生き返らせたのではなく過去から連れて来た、ということ?」
「この場合は生き返らせるなんて上等な物じゃないけどね、どちらかと言うとリサイクルよ」
「?」
「まあ、過去から連れて来られたんでしょうね。
治療するにも時間もかかるんだし……って、あー! そっか、私よりも先に来る可能性もあるんだ!
今まで見た武器も施設も全部知ってたから、そっちに頭が回らなかった……!」
自嘲気味に笑いながら頭を押さえる。
確かに白瀬よりも先の未来から連れて来られた可能性もある、むしろそれは当然のことだろう。
そして、愛と白瀬の間にある年数と同じぐらい離れた未来から拉致された参加者が居るということも考えられる。
「じゃあ、亀田はとんでもない奴ね。風格なんて全く無いけど、得体が知れないわ」
「まあ、どんな器の小さい人間でも数百年前の人間が相手なら技術で上回れるもの」
逆に言ってしまえば、亀田の恐ろしいところは未知の技術だけ、ということになるが。
技術を逆手に取れれば、勝ち目はある。
今のところ、二人に冒険する気はさらさら無いが。
「……そう言えば少し思ったんだけど、ひょっとするとあの男もあの男の暮らしてた時間じゃ普通なのかもね」
「嫌ね、あんなのがうろちょろする世界なんて」
少し想像して、直ぐに気味が悪くなった。
一色で統一した服を着た人間しか居ない世界。想像したが非常に気味が悪い、まるで怪談だ。
「……まあ、良いわ。で、これからどうする?」
「まだ同盟は組んでいた方が良いわね。少なくともあの赤い男が居なくなるまでは」
「一先ずここに留まるべきかしらね」
「……そうね、ここは迎え撃つには悪くない場所だわ」
方針はおおよそ決まった。
現状維持で、一先ずは消防署に留まり、数時間経っても人が来ないようなら場所を帰る。
考えられる限り、これが最善の策のはずだ。
(……そっか、この隊長は私よりも未来から来た修復された隊長って可能性もあるのか。
いや、オオガミなら第三世代の修復をよりも第四世代の製作に移るだろうし……じゃあ、カメダがジャンク置き場から?
あの性格歪んでそうな奴なら、彼を揺さぶるためにやりそうだけど……ま、別に良いか。
どうせ報告上では死んでるんだから、もう一回殺したって。
むしろ、隊長と合流しようかしらね。あの人なら腕も確かだし、オオガミ云々言えば丸めこめそうだし。
じゃあ、隊長と出会ったら愛を切り捨てるってことにしときましょう。隊長と挟み撃ちすれば一発でしょ。
ただ、傷を負ってたら話は別ね。その場合は愛の方が使えるでしょ)
(未来……か。どうやら、本格的に亀田にゴマをするしかなくなったわ。
野球人形の完成のためには猫の手も借りたいぐらいだもの、一刻も早く戻らないと。
……まずは現状整理ね。今、最も警戒すべき相手はあの赤い男でも見知らぬ強者でもなく、白瀬ね。
銃とか『ろけらん』とか『くるま』とかを使えない、知らない同盟相手なんて切り捨てるはずよ。
……だけど、白瀬は私を切り捨てるつもりでも、私は白瀬を簡単に切り捨てるわけには行かないわ。
白瀬や赤い男レベルの人間がゴロゴロ居るとしたら、私が生き残れる可能性は低いもの。
せめて仲間が居れば別だけど……私には居ないわ。白瀬には灰原って上司が居る……って、これは危険な要素ね。
灰原と白瀬が同組織と言うことは、灰原と遭遇した際に私が切り捨てられるかも……。
でも、逆に言えば灰原と遭うまでは私を裏切る可能性が低いと言うことね)
だが、各々はさらにその先のことを、別々に考えている。
目前の最善策は同じだが、それ以降は全く違う。
何故ならこの殺し合いで生き残れるのは一人だけ。向かい合っている女はいつか殺さなければいけない相手、つまり敵なのだから。
「それにしても、今更隊長ねぇ……ジャンクは大人しく廃棄処理所で眠ってて欲しいわ。
…………まあ、リサイクルは悪いことじゃないけど、気分が悪いのよ」
【D-2/一日目/朝】
【白瀬芙喜子@パワプロクンポケット8表】
[状態]健康
[装備]ベレッタM92(8/15)
[道具]支給品一式×3(不明支給品0〜2)、予備弾倉×5、さおりちゃん人形@パワポケ6裏、ケチャップ(残り1/4程度)、煙幕@パワポケ5裏×2
[思考]基本:優勝する
1:戦力増強のため弱者から倒す、強者は後回し。
2:八神を最優先で殺す。
3:愛と行動するが、灰原と合流できそうならば愛から灰原に乗り換える。
4:過去の人間が居るってことは……未来の人間も居るってことかしらね?
[備考]
※未来や過去から集められてるのではないかと思っています。
※灰原に関しては作り直したのか、過去から浚ったかのどちらかだと思っています。
【愛@パワプロクンポケット5裏】
[状態]右脇腹に傷(応急処置済み)
[装備]なし
[道具]支給品一式
[思考] 基本:自分が生き残ることが第一。
1:未来……ピンと来ないわね。
2:生き残るためなら、他の人間を殺すのもやむ終えない。
3:一先ずは白瀬と共に行動するが、白瀬への警戒を怠らない。
[備考]
※参加者はそれぞれ違う時間から誘拐されたと何となく理解しました。
投下終了です
自分では気付いていないまずいところもあると思いますので、指摘をどうかよろしくお願いします
投下乙です
やっぱりフッキーは頭が回るなあ、しかし愛も忍者だからこっちもやっぱり頭は回ると
頭脳派コンビを書ける人は尊敬出来ます
投下乙!
この二人、マーダーなのに良いコンビだ
それにしても亀田に対する言い様がひどいなwww
このころはまだラスボスの威厳があったはずなのに……あったよね?
>>142 5裏では……
かっこよく主人公の前に現れたはいいが、たとえ主人公を倒してもダミーの人形で爆死オチ。
ああ、ラスボスの威厳なんてその頃からなかったんだねw
表のルッカさん、裏のカメダとはよく言ったもの
あの二人、やってることはえげつないのに小物オーラを放ってやまないんだぜ!
ほっしゅ
そろそろ紫杏と浜野を合わせ、これがジャッジメント主催でないことを紫杏に確認させたいのですがどうでしょう?
好きに書けばいいと思うよ、冗談でも煽りでもなく
説得力0じゃなければOKさー
無理の無いように話が作れるならいいんでねえの
10主は戻らない歯車の後か…
切ないな…
三橋一郎、浜野朱里、投下します。
気がつくと、ベンチに座っていた。
目を擦りながら眼前を見ると、そこに広がるのは熱気と歓声が渦巻くグラウンド。
このグラウンドには見覚えがある。忘れようにも忘れられない、甲子園のグラウンドだ。
上等な黒土が敷かれ、地方の球場よりも綺麗に整備されている。
自分はここに立ったことがある、今覚えばあれが自分の全盛期だったのだろう。
そんなことを考えながら、バックスクリーンを眺めた。
そこには極亜久高校と聖皇学園という文字、そして幾人かの名前と数字が羅列されている。
どうやら今の状況は甲子園決勝戦のようだ。
そして、ふと『ああ、これは夢なんだな』と確信する。
今までも夢の途中で夢だと気付くことはあった。
そんなときは夢なのにひどく冷静で、せっかくだから夢の状況を楽しんだりと思ったりもした。
ただ、今は到底そんな気分にはなれない。
どうせなら夢だなんて認識せずに、良い夢を見ながら幸せに浸りたかった。
たとえ、目を覚ました後に待っているのが悪夢を現実にしたかのような出来事でも、今は逃げたかった。
それでも、今の現実はマシだと思うことにした。
ひょっとすると今までのことが夢だったのかもしれないとか、そんな馬鹿なことも考えておくことにした。
「どうしたんでやんすか、急に声だししなくなって? ひょっとして何処か悪いんでやんすか?」
「……ん、大丈夫だよ亀田くん。ちょっとばてただけだから」
プロテクターとキャッチャーミットをつけたまま話しかけてきた亀田 光夫。
六時間ぶりに見たその姿に、三橋は笑いながら言葉を返す。
その返しに亀田は怒ったように顔を真っ赤にさせ、怒鳴りつけるように大声を出す。
これは甲子園の決勝なんだから怒るのも当然だよな、と少し自分の態度を反省する。
夢とは言え久しぶりに親友と野球をするのだ、自分はもちろん親友にも楽しんでもらいたいものだ。
「三橋くんはキャンプテンなんだからしっかりしてくれでやんす!
鋼とアルベルトが■んじゃっただから、ここが正念場なんでやんすよ!」
「ははは、ごめんごめ……ん?」
突然聞こえた、野球場にふさわしくない単語。
いや、もっと言ってしまえば脈絡もなにもあったものではない唐突な言葉。
一瞬耳を疑うが、亀田はそれに気付いているのか居ないのか。どんどんと言葉を投げかけてくる。
「どうしたでやんすか? 鋼とアルベルトを▲したのは三橋くんじゃないでやんすか。
ほら、隣を見るでやんすよ」
気付くと、隣には帽子を目深に被り俯いた状態のままピクリとも動かない鋼とアルベルトが座っていた。
鋼はわき腹を抉られたまま胸から血を流し、アルベルトは肩からわき腹にかけて大きな傷を負っている。
「残りはまだまだ居るでやんすよ、早く殺してくるでやんすよ。そのための鬼の手じゃないでやんすか」
「あ……」
今までグローブをつけていたはずなのに、気がつくと禍々しい赤色をした鬼の手へと摩り替わっている。
呆然としたまま手を見つめる。
十秒ほど見つめた後、やっと視線を上げるとそこには衣装を変えた亀田がにんまりとした表情で立っていた。
「ほら、まだまだ生きてる人間は残ってるでやんすよ。
平山くんに村上くんに水原くんに三鷹くんに武田くんにボブくんに佐藤くんに鈴木くんに田中くんに
荒井三兄弟に明日香ちゃんに由紀ちゃんに智美ちゃんに外藤さんにようこ先生に紀香さん。ヒナコちゃんや
火星オクトパスの連中も、もう数えるのも面倒なぐらい居るんでやんすから……って聞いてないでやんすか」
亀田の言葉通り、何も聞いていなかった。
甲子園のグラウンドには大勢の人間が居る。
そこには亀田が言わなかった人間も、大勢居る。
父が居る、死んだはずの母も居る、生まれる前に死んでしまった弟も居る、猪狩進も居る、倉刈さんも居る、
たかゆきも居る、服部も居る、立花も居る、ドミオも居る、社長も居る、火星オクトパスの社員達も居る。
それだけじゃない。
野球に関係のない知り合いも居れば、スーツを着た人間も居れば、学生服を着た人間も居る。
どの人間も悲しそうな、それでいて憎むような目をしていない。一緒だ、鋼やアルベルトと。
ただこちらをじっと見ている。
三橋にはそれがどんな気持ちで見ているのかは分からない。
ただ、やっと一つだけ理解出来た、夢も現実も大して変わりがないってことを。
どうやら自分は当分の間、この悪夢に悩まさなければいけない。
いっそのこと、自分を憎んでくれれば楽だと言うのに。
◆ ◆ ◆
『おはよう、諸君!』
三橋は不快な甲高い声で目を覚ます。
辺りを見渡すと清潔な床が広がっている、どうやらあの後に水族館の廊下で眠ってしまっていたようだ。
我がことながら無用心極まりないな、と思いながら体を起こす。
隣には一人の人間が居た。
一瞬、身構えてしまうが、直ぐにそれが死体だと思い出す。
薄く漂ってくる血の臭いも、僅かに見える裂けた肉も、先ほどよりも青くなったように感じられる顔も。
全てがリアルでグロテスクだった。
現実も夢もどちらが特別辛いわけではない。
夢でも現実でも休めないことが辛いのだ。
変わりがあるとしたら現実は痛みがあるということぐらいだろう。
(……これが放送って言う奴かな?)
頭を夢のことや鋼のことではなく、機械を通して聞こえてくる妙にはしゃいだ声へと無理やり持っていく。
そして同時に、鋼から逃げるように走って立ち去る。
声の感じも違うし、何より口調からして亀田ではないことは明らかだ。
死者と禁止エリアの発表、この二つが主なはずなのにそれを始める気は感じさせない。
三橋は小さなため息をついて、水族館の奥へと進んでいく。
念のために充電をしておいたほうが良いだろう、予備電池はどうしても、と言うときのために使うべきだ。
行くべき場所は充電も出来るであろう事務室。
入り口にあった内部地図ではここからさほど遠くもない場所にあったはずだ。
早足で事務室へと向かっていると、ようやく禁止エリアの発表に移ったようだ。
(A-2、C-8、H-4……近い場所に禁止エリアは無いな)
A-2・C-8・H-4、A-2・C-8・H-4……と頭で呟きながら歩いていると、ようやく事務室を見つける。
疲れた表情で扉を開くと同時に、死者の発表が始まった。
(死者……死んだ人間、か)
そう考えた瞬間、頭にアルベルトと鋼の顔が思い浮かぶ。
二人は無表情だ。死んだ魚のような目で俺を見ているのかその先を見ているのかよく分からない。
いや、どれも見ているわけが無い。二人は死体なのだから。
『青野 柴夫、アルベルト=安生=アズナブル……』
「……」
自分が感じた感傷を打ち払うように、軽く頭を横に振る。
これから多くの人間を殺さなければいけないのに、こんな調子じゃ先が思いやられる。
三橋は素早く椅子に座りメモを書きなぐっていく。
恐らく当の三橋でも読み返すのが難しい字だが、三橋にはそんなことを気を使っている余裕なんて無い。
『教頭……』
「……教頭」
頭に過ぎったのは、高校時代の恩師……とは口が裂けても言えないオカマ口調の気持ち悪い教頭。
教頭としか言ってないので、別の学校の教頭の可能性もある。
しかし、三橋は理解している。
亀田が開いた殺し合いなのだから、教頭といえば極亜久高校の教頭である可能性が高いということを。
嫌な奴だった、好きになれる要素が微塵も無かった、どれだけ邪魔をされたかなんて数えたくも無い。
それでも、死んだと聞かされるのは嫌な気分だった。
『たかゆき……』
「……ッ」
自分が殺していない、自分の大事な仲間の名が呼ばれる。
人間と言い張る何処から見てもロボットな外見のたかゆき。
先に博士に作られたのだから、自分は兄貴、つまり偉いと言って三橋をこき使ったたかゆき。
度々殴ってきてパーツを壊してきたりショートにしてきたりしたロボット。
そのたかゆきが、死んだ。
『鋼 毅、平山 紀之……』
「平山くんも……か」
鼻に絆創膏をつけた高校時代のチームメイト。
少し臆病なところもある大事な仲間。
それは亀田にとっても同じだったはず。その平山が殺し合いに参加させられ、そして死んだ。
支援
支援
「……」
メモを取り終え、どうするでもなく椅子に腰掛けて事務室を見渡す。
薄汚れた天井、整頓されているわけではないが物が散乱しているわけでもない机、毛布を敷かれたソファー。
いや、敷かれているのではなく先ほどまでソファーで眠っていた人間が居るのだろう。
考えることでもない、明日香か鋼かスーツの男か……いずれにしろ、ここには人が居たのだ。
確かに監視カメラもあることを考えるとここに篭るのは良い作戦だろう。
そんな風に考えている三橋を無視して、頭上から流れてくる放送ではチバヤシ公爵が楽しそうに喋っている。
(そう言えばチバヤシ公爵って誰だ?
亀田くんの知り合いだろうけど、俺は知らないぞ。まあ、そんなことは今までも何回もあったけど)
亀田は三橋にいつも詳しい話をしているわけではない、むしろ何も話さないときの方が多い。
いつものことだと思い、もう少しだけ休んでからここを出ようと決めると―――
『プルル、プルル――――』
突然、電話が鳴り出した。
三橋は少し考え込む。
ここで出るべきか出ないべきか。
誰が電話をかけて来たかは分からない。
(……ひょっとすると、亀田くんか?)
頭に過ぎったのは自身の親友にして、自分を含む大勢の人間に殺し合いを強要した亀田光夫。
第一回放送終了という区切りの良いところで、何か命令を言ってくるのは不自然なことではない。
少しだけ考え込み、とりあえず電話に出てみることにした。
さすがに電話に出たから即死ということはないだろう。
「はい」
『あ、あの、鋼さんですか?』
だが、電話越しから聞こえる声は聞きなれた親友のものではなく、声の高い若い女性と思われるものだった。
◆ ◆ ◆
少しだけ時間を遡ったスーパーの一室に、一人の眼鏡をかけた小柄な少女が居た。
端から見ても苛立っている、恐らく眼鏡の奥の瞳はひどく鋭いものだろう。
「……名簿なんてものがあるなら最初に渡しておきなさいよ!」
少女、浜野朱里は苛立ちのままに並べられた棚を思いっきり蹴り付ける。
何か硬いものがいくつか砕けた感触がしたが、別に関係ない。
そんなことを気にかけている余裕なんて朱里にはない。
なぜなら、殺し合いをしている人間の名前が書かれた名簿が全員に渡されたのだから。
夜明けまではここに居て、体を休めることは出来た。
そして、放送で十六人死んだことが分かり黒猫に蹴られた痛みをほとんど引いた。
さあ、ここからが本番だ、という時に名簿が配られたのだから、出足でつまづいてしまったのだ。
名簿を見れば朱里が数時間前に語った偽名が早々にばれる。
つまり、自分の言ったことが嘘だと疑われる可能性が大いにある、ということだ。
しかも、内容が『黒い服の女に襲われてパニックになって電話をした』と言ってしまった。
頭を働かせれば、パニックに陥った高校生が簡単に偽名を使うことは少しおかしいと気付く。
はっきり言ってしまえば、朱里の作戦の一つは墓穴を掘る結果になってしまったということだ。
(終わったことは仕方ないわ。今ならまだ間に合うかしら?)
ただ、その二つはおかしいだけであって確実に敵だと判断できる材料ではない。
鋼が黒猫に会っていなければ、少ないとはいえ疑心を埋め込むことも出来る。
(そうと決まれば早速連絡ね。ここから出るのはそれが終わってからでいいでしょ)
水族館に居る鋼がどんな対応取るのかは予想できない。
ひょっとすると朱里が殺し合いに乗っていることに気付くかもしれないし、気付かないかもしれない。
向こうも殺し合いに乗っている可能性も0ではない。
そんな風に考えながら、相手が出るのを待つ。
中々出ないのはこちらを警戒しているのか無視しているのかそもそも其処に居ないのか。
もう、水族館から逃げたかもしれないと判断して電話を切ろうとした瞬間。
『はい』
鋼と少し違った男の声が聞こえた。
鋼ではない、鋼はもう少し低かったような気がする。
「あ、あの、鋼さんですか?」
だが、ここで慌ててはいけない。
あくまでパニックに陥って保身のために偽名を名乗ってしまった女子高生を演じるべきだ。
『いや、鋼じゃなくて、俺は……鋼の知り合いだよ』
「鋼さんの知り合い……」
どうやら鋼はチームを組んでいたようだ。
確かに一人よりもチームの方が外敵からの対応は楽だろう。
その仲間が裏切る危険も高いが。
「あ、あの、謝りたいことがあって……鋼さんに伝えてくれませんか」
『……とりあえず聞いておくよ』
「その高科奈桜っていうのは嘘でして……私、浜野朱里って言うんです」
『浜野……朱里? えーっと……確かに名簿にあるね』
「私、怖くて……友達以外信用できなくて、思わず嘘を言ってしまったんです! すいませんでした!」
とにかく勢いで謝っておく。
出来るだけ、自分の言ってることも本当かもしれない、と思わせておきたい。
どうせ高科奈桜の名前を使うのは親切高校の同学年だと当たりはつけられる。
『そっか……友達、か』
どう出るか様子を見ようと思っていたが、妙なところに食いついてきた。
少し慌てるが、何とか言葉を返す。
「はい、友達ですけど……」
『……友達は、連れて来られているのかい』
男は朱里が偽名を使ったことを責めるでも問い詰めるでもなく、世間話をするように聞いてくる。
朱里は迷うが、隠す必要もないし同情を買いやすい可能性が高いので素直に答えておく。
「ええ、神条紫杏って言う子と……一応大江和那っていう子が」
『そうか、大変だね……ところで、君は何処に居るんだい?』
「さっき電話したときから移動していません」
『……そっか』
男はそこで言葉を切り、ごくりと唾を飲み込む小さな音が聞こえた。
『……一つだけ聞きたいことがあるんだ』
「なんですか?」
『君は殺し合いに乗っているのかい?』
突然の質問。
同情されているのかと思っていた朱里には虚を突かれたことになる。
疑われている可能性は高いと思っていたが、ここまでストレートに来るとは思わなかった。
「わ、私は殺し合いになんか――――」
『俺は乗ってる。鋼を殺したのは俺だよ』
「え?」
『君が殺し合いに乗っているのなら協力しよう、殺し合いに乗っていないのなら殺す。
君の友達の神条さんも大江さんも乗っていないのなら殺す。
殺すんだ。鋼も鋼の仲間も、殺し合いに乗っていないからね。
もう一度聞くよ、君は殺し合いをするつもりはあるかい?』
それは殺し合いに乗っているのかと問い詰めるのではなく、自分は殺し合いに乗っているという告白だった。
瞬時に頭を動かしてどうするべきかを考える。
……答えは一つだ。無闇に自分が殺そうとしていることをアピールする必要は無い。
どうせ乗っていると答えても、向こうが乗っている以上紫杏とカズは殺されてしまうのだから。
「……私は殺し合いなんて出来ませんし、したくもありません」
『そうか……』
プ、という間抜けな音の後にツーツーという無機質な音が響く。
どうやら鋼は三橋という男に殺され、同行者は逃亡したと思われる。
その同行者は既に黒猫と出会った可能性も低からずある。
恐らく朱里の誤報は失敗するだろう。
そして、携帯電話を持っている相手には気をつけろ、という情報も回るだろう。
つまり朱里の策はこれ以上とないぐらい完璧に失敗した。
しかも、殺し合いに乗っている男に目をつけられた。
もっともあくまで自称なため、こちらの態度を窺うだけだった可能性もないわけではない。
(かと言って、携帯を簡単に捨てるのも惜しいわね。今回は失敗したけどまだ使えはするんだから)
隠しておけば大丈夫だろう、多分、きっと。
そんな風に呑気に考えて、いつも銃を隠しておいたところへと隠しておく。
支援
(さて、それよりもまた別の問題があるわ)
少し、冷静になれた。
部屋を出て、近くにあった駄菓子の封を切って口に含みながら考え込む。
その内容はデイパックのことだ。
正確な時間は分からないが、放送が終わると名簿はデイパックの中に入ってあった。
殺し合いが始まってから六時間の間でしっかりと確認したのにも関わらず、だ。
有りえない、普通ならば。
だが、朱里はこれを可能にする方法を知っている。
(殺し合いにワームホールが、ジャジメントが絡んでいる……?)
ワームホール、自分の体と自分の行ったことのある場所を繋げるジャジメントに所属する超能力者。
特Aクラスと呼ばれる強力な超能力者、今日も便利な移動手段として世界中を駆け回されているのだろう。
そのワームホールの能力を使えば、先ほどまではなかったものがあってもおかしくはない。
ただこのデイパックの謎が、全てワームホール関係として片付けられない部分もある。
その理由として、どんなにデイパックを探しても名最初に見つけたもの以外が出てこない、ということだ。
ワームホールの能力は自分の体と自分の行ったことのある場所を繋げるもの。
つまりワームホールの能力ならば、デイパックは『ワームホールの体の付近』に繋がっているはずなのだ。
それならば、デイパックの中を隈なく探せばこれ以外のものが一つぐらいは見つかっても良いはず。
なのに名簿と最初の支給品以外の物が全く見つからないと言うのはおかしな話だ。
このことからワームホールとはまた違った能力、もしくは技術が使われていると見るのが妥当だろう。
そして、それがはっきりとしない状態で詳しく調べるのも危険。
どんなしっぺ返しが来るか分かったものでない。
(ワームホールが関係しているのならジャジメントも絡んで……いや、それはないわね。
ジャジメントが関連してるのなら紫杏とカズが殺し合いをさせられるのは明らかにおかしいわ)
今、ジャジメントはオオガミグループと戦争をしている。
比喩でもなんでもなく、文字通り戦争をしている。
細菌兵器を世界中に撒き散らし合い、サイボーグなどの戦闘員で重要な部署を急襲し合う戦争。
健全な戦法も汚い戦法も関係なく、お互いがただ勝つためだけに争い合っている。
今の戦争の状況はジャジメントが圧倒的に不利、だというのに終わりが見えない。
泥沼だ、ジャジメントとオオガミのような怪物同士の潰しあいは莫大な時間と金と人員がかかる。
警察や政府もジャジメントやオオガミの前では意味を成さない。
税金対策に国を持つようなグループだ、国への影響力なんて考えるだけ馬鹿らしい。
その二つがぶつかり合っているのだ。
ジャジメントとオオガミはもちろん、日本や外国だって被害が数えるのも億劫なほど出るだろう。
ボロボロの戦争をしているジャジメントが戦争に繋がるとは思えない殺し合いなんて開くとは考えづらい。
民間人も巻き込んでいることを考えるとリスクも大きいのだから。
やるなら自分達の作ったアンドロイドだけでやるだろう。
そう、それこそ朱里がかつて体験した時のように。
(……ということは可能性は大体三つね。
ワームホールが個人的に協力しているか、ワームホール以外の私の知らない超能力か。
まあ、間違いなく後者でしょうね。ワームホールに個人的に協力出来るような時間があるわけがないわ)
自由な時間があるのかも怪しいワームホールが個人的に協力できるわけがない。
あったとしてもジャジメントが許すとも思えない。
結論として、ワームホールは関係ないという結論に達する。
朱里はスーパーから一歩出て、久しぶりに見た太陽に目を細める。
空は青く澄んでおり、これが殺し合いなんてふざけたものじゃなければ良かったと心の中で愚痴る。
そして、殺し合いという単語にひどい不快感を覚える。
(……私の命は安くなんて無い。
最初から死ぬ予定だった? ショーの見せしめ? 作られたアンドロイド? そんなこと関係ないわ。
私は皆を殺して生き残った。その私の命が安かったら、私も皆もとんだピエロじゃない)
今でも思い出す、無残に笑いながら死んでいった姉妹の顔を。
その姉妹達の死体の上で自分は生きている。
だから、自分の命は安くなんてない、安いわけがない。
さて、まずやるべきことは神条紫杏との合流だ。
朱里にとって紫杏は守り抜きたい人間だ。
神条紫杏の騎士となる、というようやく見つけた自分の役目を放棄することはしたくない。
大江和那は……少々複雑な思い入れのため保留にしておく。
だが、他の人間は正直どうだって良い。
殺しに来るのなら殺すし、危うい思考をしていたら殺す。
たとえそのことで紫杏から何かを言われようと関係ない。
だから、殺し合いに乗れ、なんてこちらから乗り気なのだ。
紫杏と出会えば紫杏の方針に乗り換えれば良い、
もっとも、紫杏の性格から考えるに方針自体は今の自分と同じようなものだろうが。
朱里は歩き出す。
サバイバル形式、武器は六尺棒だけ、敵の情報はほとんどが不明。
状況は前の殺し合いよりも分が悪い。
だけど、死ぬわけにはいかない。その気持ちだけで歩いていく。
◆ ◆ ◆
ガチャリ、と電話を切ってから椅子に座りなおす。
「友達……か」
ポツリと呟いて空を見上げる。
浜野朱里という少女が放った、友達以外は信用できない、という言葉。
その言葉になんとも言えない気持ちが三橋を襲う。
「……今はやるしかないよな」
とにかく考えることを先延ばしにするために、名簿に目を通す。
名簿に目を通すと知り合いがそれなりに居る。もっとも、ほとんどの人物は既に死んでいるようだが。
残った知り合いは四路智美、進藤明日香、荒井紀香の三人。
この三人も、殺さないといけない。
「辛いのは、今だけだ。そう、今だけだから……」
【H-6/水族館/一日目/朝】
【三橋一郎@パワポケ3】
[状態]:健康 エネルギー75%
[装備]:鬼の手、パワーと走力の+パーツ一式、豪力
[道具]:支給品一式×2、予備バッテリー、野球ボール数個、ランダム支給品
[参戦時期]亀田の乗るガンダーロボと対決して敗北。亀田に従わされしばらく経ってから
[思考]
基本:亀田の命令に従いバトルロワイヤルを円滑に進めるために行動する。
1:少しだけ休んでから移動する。
2:参加者を積極的に探して殺す。
3:もしも相手がマーダーならば協力してもいい。
4:亀田に対する恐怖心。
[備考]
※萩原(名前は知らない)は死んだと思っています。
【G-7/スーパー/一日目/朝】
【浜野朱里@パワプロクンポケット10】
[状態]腹に打撲(痛みは引いた)
[装備]六尺棒
[道具]支給品一式、携帯電話、塩素系合成洗剤、酸性洗剤、油、ライター
[思考]
基本:優勝して紫杏の元に帰る。
1:紫杏を優先して探し出す。カズをどうするかは……保留よ。
2:携帯はとりあえず今は使わない。
3:黒猫(真央)を警戒。
※携帯電話に登録されていた水族館以外の施設は後の書き手に任せます。
投下終了です
……三週間ぶりということもあってマズイなところもあると思います
誤字脱字矛盾の指摘、どうぞお願いします
投下乙!
三橋は戻れそうにないなぁ
浜野は浜野で危険だし
けど、二人とも周りにいるのがマーダ―的には危ないんだよな
投下乙です
朱里の雲行きが怪しくなってきましたねー
紫杏に会うのが死亡フラグな気がしてなりませんねw
ところで、wikiのデザインって変えられたんですか?
なんか個人的には見辛いになってしまって……
>>167 ……デザイン弄ってから戻すの忘れてたorz
まとめはケータイで確認してたから気付きませんでした、申し訳ありません
大変遅れました
十波典明、四路智美、投下します
「……冗談じゃないわよ、この扱い」
四路智美は手元の探知機を眺めながらポツリと呟いた。
先ほどまで自分が居るエリアの参加者の所在を教えてくれたこの探知機が、今はうんともすんともしない。
理由は単純、バッテリー切れである。
「六時間しか持たないのね……この探知機」
そんなこと何処にも書かれていなかったじゃないか、と愚痴りながらデイパックの中へと仕舞い込む。
放送が終わってから新しく二つのものがデイパックの中に入っていた。
一つは充電器、もう一つは名簿。
その名簿には知り合いの名前が何人か入っていた。もちろん、自分が動く意味である三橋一郎の名前も。
(三橋くん……)
どう動いているかは分からない。
殺し合いに乗っていないとは思うが、絶対とは言い切れない。
ひょっとすると智美と同じように他の人間の動きに合わせて動くのかもしれない。
そう、荒井紀香の動きに合わせて。
(……紀香さんはもう別の人と再婚したって言うのに、三橋くんは紀香さんのために動いてもおかしくないわね)
三橋が紀香のことをどう思っていたかは、当人ならぬ智美には分からない。
本当の愛情を持っていた可能性もあるし、なあなあで結婚した可能性もある。
(三橋くんと会わないとね……)
とにかく今の優先事項は三橋と出会うこと。
そのついでに人を一箇所に集める、それが行動方針。
そのためにも探知機は有効に使いたいところだったのに、ここに来てのバッテリー切れ。
(危険人物候補も大勢居るって言うのに……!)
メカ亀田、十波典明、サングラスの男。
危険だと確実に言える人間だけで三人も居る。
他にも殺しに来る人間は大勢居るだろう、既に十六人も死んでいるのがいい証拠だ。
(とにかく、この充電器でなんとか探知機を充電しないと……!)
予備バッテリーでも使えるようになるらしいが、智美の手元に予備バッテリーなどない。
とにかく、充電して探知機というアドバンテージを取り戻すべきだ。
そう思い、動いた瞬間。
「あ、そこの女の人!」
突然、背後から声をかけられた。
開けた場所ではあるが、
懐の銃を取り出しながら振り返り、声のほうへと銃を向ける。
片手でしっかりとジュニアコルトを握り、キッとにらみつける。
声をかけてきたのはユニフォーム姿の青年。智美よりは年下、恐らく二十前後というところだろう。
瞬間的に記憶の中の三橋と被るが、直ぐに切り捨てて言葉を投げつける。
「何の用かしら……?」
「芳槻 さらって子を知らないか!? 親切高校の芳槻さら!」
「……知らないわね」
「そうか、ありがと!」
聞くだけ聞いてあっさりと背を向けて走り去っていく青年。
手に持っているのはナイフだけ。デイパックの中に何か持っているかもしれないが口は閉じている。
見る限り、殺し合いに積極的な様には見えない。
「ちょっと待って!」
「……なんだよ。こっちは急いでるんだ!」
状況を整理すると、目の前の青年は芳槻さらという女子高生を探している。
恐らくそれが第一で殺すとか殺さないとかそういうことは頭にない。
このまま呼び止めるのは得策ではない、逆上して殺される可能性もある。
だが、上手く行けばホテルに二人連れて行けるかもしれない。
「そんな無闇に走り回っても、簡単に見つかりはしないわ」
「ここで喋ってても同じだ! とにかく俺はさらを!」
「だから、落ち着きなさいって言ってるのよ。そういう時こそ頭を働かせなさい」
「俺は頭は――――」
「芳槻さらって子の特徴は? 性格は? 何か癖は?
……そういうことを考えなさいよ、落ち着いて」
智美の言葉に何か返そうとしたが、何も出てこなかったのか黙り込んでしまう。
その様子を見て、智美はさらに畳み掛ける。
「確かに走り回るのは確実だけど、危険だわ。何時殺し合いに乗った人間と出会うかも分からない」
「それは……そうだけど……」
「ここは人の多いところ、芳槻って子が行きそうなところを目指したらどうかしら?」
「さらの……行きそうなところ……」
とりあえず丸め込んでホテルへと連れて行こうとしている智美の言葉を噛みしめる様に繰り返し呟く。
その顔は先ほどまでの緊迫した表情や苛立った表情とは少し違う、必死に頭を働かせている表情。
「さらが……さらが……行きそうな場所……」
「……思いつかないのなら、私と一緒に来ないかしら?
ひょっとしたら、私の仲間がさらさんを――――」
そんな青年に向かって智美が行ったのは勧誘。
少なくとも殺し合いに乗っているようには見えないし、頭を使うのもあまり得意でないようだ。
ならば、丸めこむことは可能だ。
そう思い、智美は言葉を続けようとするが。
「……あそこ、か?」
「え?」
「うん、わかったよ。ひとまずぞこに向かってみるか!」
今まで伏せていた顔をあげて、智美へと向かって勢いよく言葉を返す。
……ひょっとして話すら聞いてなかったのかもしれない。
いや、聞いていなかっただろう。
よく知っている、これは三橋一郎と同じタイプの人間だ。
まあ、三橋はここまで一つのことしか頭に入らない人間ではなかったと思うが。
「ありがとう! おかげでさらが行きそうなところが分かったよ!」
「……そう、それは良かったわ」
ここは呼び止めておきたいが、肝心の呼び止める理由もない。
無理に呼び止めた場合、殺すまではしないにしろ逆上して何か危害を加えてきそうだ。
それほど目の前の男は危うい。
ここは大人しく見送るのが無難だろう。
「私の名前は四路智美。
これからホテルに行くんだけど、貴方も芳槻さんを見つけたら一緒に来てくれる?」
「……四路さんは、殺し合いに――」
「乗っていないわ。だって生き残れる確証なんてないし……人殺しなんて絶対にしたくないわ」
鋭くなった目線に男の警戒心は高いと分かる、こんな状況なら警戒するのも当然だ。
智美としてもそちらの方が足手まといにならないで有り難い。
「……だから人手が必要。残念だけど、私は女だから力がないのよ。
それに人は多いほどいいわ、一人よりも二人、二人よりも三人。
自分が考え付かないことを考え付くかもしれないんだから」
「……」
男は少し考えた後、すぐに答えを返す。
恐らくさっさと芳槻さらという少女を探しに行きたいのだろう。
「分かった。さらを見つけたらホテルに行くよ」
「そう、良かった。……そう言えば、貴方の名前は?」
「ああ、俺は――――十波、十波典明って言うんだ」
「……!?」
智美は銃を持つ手に思わず力が入る。
状況的に間違いなく森友子という女を殺したであろう男、十波典明。
それが目の前の男だというのだ。
「……十波くんはここで知り合った人間は居る? その人はどうしてるの?」
殺し合いに乗っているのなら森友子と出会ったとは言わないだろう。
もしくは嘘をでっち上げるかのどちらかのはずだ。
智美は密かにトリガーへと指をかけて、静かに十波の出方をうかがう。
ピッチリとしたユニフォームからは武器があるようには見えない。
「ああ、そうだ!
軍隊の服みたいなのを着た亀田によく似た男と、パーカーを着た髪の毛が一本逆立った女の子、それと作業着を着ててリボンをつけた女の子!
この三人は危ないから気をつけて欲しいんだ!」
亀田によく似た男とはまず間違いなくメカ亀田だろう。
工場で死んだ男の言葉も考えるとこれは嘘ではないと結論付ける。
問題は残りの二人。
森を殺したであろう十波の言葉を信じるのは危険かもしれない。
警戒する程度にとどめておくべきだ。少なくとも、こちらから襲いかかる必要はない。
「……他には? 今は別れているけどここで会った人とか、信用できる人とか」
「えーっと……最初に、女の人と会ったんだ」
「女の人?」
智美は身構えながら話を聞く。
目の前の男が森という女を殺したのならば、いきなり襲いかかってきてもおかしくない。
「森 友子って女の人……知ってると思うけど、もう死んでる」
「……誰に殺されたの?」
我ながらくさい芝居だと思いながらも問い詰める。
向こうがどういうつもりなのかを知らないと、こちらも出方を決めづらい。
「正当防衛とはいえ……俺がやったんだ、森さんを」
「正当防衛? つまり、森って女の人は殺し合いに?」
「……」
智美の言葉にこくりと頷くだけで応える十波。
それを信じるわけではない。
殺し合いに乗っているのに十波が嘘を言っているだけかもしれない。
「……分かったわ。じゃあ、今はそのさらって子を探しに行くのね」
「さらを見つけたらホテルに行かせてもらうよ」
そう言って十波は北へと向かって走って行った。
ホテルとは逆の方向だ。
しかし、あの十波という男はひどく判断しづらい。
嘘をついているようには見えないが、本当のことを言っているのかというとそうでもないような気がする。
正当防衛とは言っていたが、それにしては森の死を悲しんでいるように見えた。
「……頭はあまり良いようには思えないわね」
智美に何も考えずに話しかけてきたのが良い証拠だ。
もし智美が殺すつもりなら死んでいた、十波にはそのことを注意しなかったが。
「とにかく、今は三橋君ね……」
そう、今は三橋一郎を探し彼の方針を見極めるのが第一。
背が見えなくなるまで十波を見送ると、智美は再び足を動かした。
【C−6/一日目/朝】
【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:健康
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)、探知機(バッテリー機)
[参戦時期] 3智美ルートで主人公の正体が1主人公だと発覚後。
[道具]:支給品一式、ダイナマイト5本、充電器
[思考・状況]
基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:しばらくは情報集めと人を集め。
2:十波典明の言葉を丸っきり信用するわけではないが、一応警戒。
3:第三放送までにはホテルPAWAに集まる人をどうするか方針を決めたい。
4:亀田の変貌に疑問?
備考
※メカ亀田を危険人物を判断しました。
※ピンクのパーカーを着た少女と作業着を着た少女を警戒。
※探知機は充電が必要です。民家なら充電できます。
◆ ◆ ◆
「さら……さら……!」
小さく彼女の名を口にしながら俺は走っていく。
こんなに思いきり走るのは久しぶり、いや初めてかもしれない。
ひょっとすると甲子園決勝よりもずっと力をこめているかも。
だけど、今の俺にはそうするに十分すぎる理由がある。
先ほどあった人間のほとんどが殺すことを目的にしていると思った時の悲しさ。
放送で越後の名前を聞いた時の悲しさ。
名簿を見たとき、カズや紫杏や浜野や八神さんの名前を聞いた時の悲しさ。
彼女の名前を見たとき、その全て吹っ飛んだ。
「さら……さらぁ!!!」
死んだはずのさらが何故ここに居るかなんて知らない。
嬉しいのか悲しいのか怒っているのかわからない。
たぶん、喜びと悲しさと疑問と虚しさと怒りと嬉しさが入り混じりって変にハイになってるんだろう。
正直、なんでさらが生きているのかなんてどうでもいい。
このさらが別人かもしれないなんて疑問もどうでもいい。
今はただ、たださらの居るかもしれない『学校の屋上』へと向かう、それだけだ。
だって、俺は――――
――――ただ心の底から、さらに会いたいと思ったんだだから。
【C−6/一日目/朝】
【十波典明@パワプロクンポケット10】
[状態]:「人を信じる」という感情の欠落、野球に対しての情熱
[装備]:バタフライナイフ、青酸カリ
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:さらを探す、とにかく今はそれだけ。
1:殺し合いはしたくないし、“信用できる人間”を探す。
2:“危険な人物”は仕方ないから倒す。
3:かつての仲間、八神もいつか自分を裏切るんじゃないかと不安。
[備考]
1:信頼できる人間とは「何故自分と手を組むのか、その理由を自分が理解できる人物」を指します。
2:逆に「自分の理解できない理由で手を組もうとする人間には裏がある」と考えてます。
3:さらルート攻略中に他の彼女ルートにも手を出していた可能性があります。
4:たかゆきをタケミの作ったロボットだと思っています。
5:タケミを触手を出す事の出来る生き物で、殺し合いに乗っていると思っています。
6:高坂茜とメカ亀田の名前を知りません。
投下終了です、こんな時間に支援、本当にありがとうございます
誤字脱字展開の矛盾見つけた際はご指摘お願いします
投下乙です。
互いにどうかやり過ごしましたかw
智美も冷静に動くし、十波の名簿を見た反応が切ない。
GJ
東優、小波走太、神条紫杏、芹沢真央、ほるひす、投下します
「ふう」
二朱公人と夏目准の二人組と分かれて直ぐ、神条紫杏は僅かに息を吐きながら周囲を見渡す。
周囲に気を配りながら歩くのはさすがに疲れる。
東を担いで歩いているほるひすは自分の倍は疲れているだろうと思い、隣へ視線を移すが。
(……さっぱり分らん)
作り物のようなその姿からは何を考えているのか察することが出来ない。
観察眼はそこそこあると自負していたが、ここまで真意が読めないのは初めてだ。
本当に人形なのではないかと疑ってしまうほどだ。
言動から、仲間の死や怪我を悲しんでいる、ということは何となくではあるが理解できる。
だが、それだけだ。
本当のところどう考えているのかわからない。
(これはサイボーグというよりロボットと言った方が近いな)
親友である浜野朱里の話からそういうものがあるということは知っている。
浜野朱里自身そういうものだ、実際証拠として机を素手で壊すところを見せてもらった。
だが、これはサイボーグという人間をモデルにしたものとは違う気がする。
まるでテレビアニメに出てくる怪獣のような、そんな姿形をしている。
「……!」
「しあん、ひと」
「……そうだな」
そんな風にほるひすのことを考えていると、小柄な影が見えた。
ほるひすに返事をしながら身構える。
大きさからして子供だろう、野球帽をかぶっているようだ。
野球少年、ということだ。どうにも野球関係者と会ってばかりだ。
(……さて、どう来るか)
懐の銃に手をやり、向こうの出方をうかがう。
相手が殺し合いに肯定的ならば、残念ながら私はこの引き金に指をかけるだろう。
逆に殺し合いに否定的ならば、私はこの引き金から指を離し交渉へと移ることになる。
(……ここまで受け身になるとはな。しかし、奈何せん情報が少なすぎる)
殺し合いに乗った場合と乗らなかった場合、どちらが正解なのか判断できる材料すらない。
最初の推理のジャジメントのテストだという証拠すら見つかっていない。
そう思った理由だって『こんなことが出来るのはジャジメントぐらいだ』という消去法にすぎない。
ジャジメントの敵対組織とも考えたが、護衛が大勢居る中で自分を簡単に誘拐できるとは思えない。
ならば、消去法的にジャジメントとなる。
「……あー、そこの少年。悪いが、急いでいるので退いてくれないか?」
意を決して目の前の影に話しかける。
平然を装ってはいるが、全神経を目の前の少年に集中させる。
少年だから殺し合いに乗っていないとは限らない、銃を撃ってくる可能性だってある。
少年の筋肉ではまともに狙いをつけられないだろうが、当たる可能性だってゼロではない。
「えっと……」
突然話しかけられたからか、少年は驚いた風な表情を浮かべる。
そこに少し違和感を覚えた。
六時間もの間、殺し合いという場に居たにしては妙に落ち着いている。
もう少し錯乱状態になってもおかしくはないのだが。
「あ、あの少しお話良いですか? 俺、小波走太って言います」
「……芹沢真央」
「……ああ、私は別に良いがこっちには怪我人が」
「神条さん、僕は構わないよ……」
走太の後ろから出てきた黒い服を着た少女に少し驚きつつも、言葉を返す。
どことなく幽霊のような雰囲気を持った少女。
(知らないうちに疲れているのか……?)
「私は神条紫杏、こっちの怪我人は東だ。そして……」
「ほるひすだよ」
「……………………」
「ころさないけど、ひともまもるよ」
「……………………そっか、ほるひすか」
僅かな間を開けて、顔をぴくぴくと動かしながら何とか返事をする。
当たり前だが、どの人物もほるひすを見れば似たような顔をする。
私もそうだった、二朱という男もそうだった、夏目というメイド服の女もそうだった。
例外としては芹沢という女ぐらいだ。ぴくりともしない。
「東の治療のために病院へ向かっている、わかるとは思うが交戦するつもりはない。
急いでいるんでな、通してくれると有難い」
「あ、ちょっと聞きたいことが……!」
「……病院なら、八神さんが居る。私たちが……聞かなくても良い……」
「そ、そっか……」
「八神?」
「えっと、ここで知り合った男の人です。たぶん今も病院に居ると思うんですけど」
「ふむ」
簡単に殺せそうな子供二人を殺していない、ということはその八神という男は殺し合いに否定的なんだろう。
もちろんこの二人を騙して居る可能性もあるため、会ってみなくては何とも言えないが。
「すまないな、色々と情報交換と行きたいが何分急いでいる。ここらでお別れだ」
「それとこの先に九条っていうその、少しボロイ服を着たオジサンが居るんで。
その人は殺し合いに乗ってないんで安心してください」
「そうか、助かる」
とは言っても東が居る以上、そう簡単には追い付けないだろう。
ほるひすもそろそろ疲れてきているだろうし、現実的に考えるとまず会えない。
まあ、しかしその九条という男が人を見つけた瞬間に襲ってくる人間でないと分かっただけで十分だ。
「行こうか、ほるひす、東」
「うん」
「あ、ああ……」
「それじゃ!」
たいして情報を交換する暇もなく五人は別れた。
走太としても東の怪我がある以上、長く引き留めるわけにもいかないので仕方ないことだ。
三人(?)について行くということも出来るが、九条や八神が向こうには居る。
それなら、自分達はまず先に進むべきだと走太は思った。
真央としても九条と出会えば安全だと判断し、持っている情報は病院で八神から聞けばいいと思った。
八神や九条がそう簡単に死なないと楽観していた部分もある。
そして何より、何よりも、『七味東雅』という名前が真央の冷静な思考を奪っていた。
言葉や態度には出さないものの、かなり動揺している。
紫杏も慣れない夜道の歩行や、周囲への警戒で披露していた。
それに謎が多すぎる状況や親友とつい七時間ほど前に別れた恋人が巻き込まれていることへの苛立ちもある。
とにかく、少し落ち着いた場所で考えたいというのが本音だ。
つまり、バトルロワイアル特有の状況が各々の思考をどこか狂わせていた。
その普段とは少しだけ違う思考のもとで出された結果が正しいかどうかは分からない。
こんな狂った状況での正解なんて分からない。だから、この行動が吉となるかもしれない。
だが、少し普段とは違い焦りによって出された答えだ。
その焦りがどう出るか、それは今は分からない。
意をせずして五人は出会った。
だが、この中の誰もが知らないことがある。
真央は目の前の女が近い将来に大勢の人間を犠牲にすることを。
紫杏は目の前の少女が親友たちの先輩となることを。
走太はあるかもしれない未来にほるひすと似た何かと戦うことを。
ほるひすは誰も知らない、その存在の正体とか考えとかもうなんか色々と。
【D-5/草原/一日目/朝/】
【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[状態]健康
[装備]コルトガバメント(7/7)
[道具]なし
[思考]
1:平山の言葉を伝える。
2:東を病院まで連れて行く。
3:出来ることならカズと朱里、十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
[備考]
※この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています
※芳槻さらを危険人物と認識しました。
※島岡の荷物は、島岡を殺害した者に持ち去られただろうと判断しました。
※神条紫杏一行とは情報交換を行っていません。
【東優@パワプロクンポケット7表】
[状態]頬に小さな傷、甲子がやや心配、左腕重傷、傷心
[装備]なし
[道具]詳細名簿、支給品一式
[思考]
1:平山、甲子の死を悲しむ。
2:病院へ向かい、その後レッドと合流。
3:野丸をどうにかしたい。
【ほるひす@パワプロクンポケット6表】
[状態]表面が焦げてる
[装備なし]
[道具]支給品一式、不明支給品0〜2
[思考]
1:こうし……
2:びょーいんへむかう。
【芹沢真央@パワプロクンポケット7】
[状態]:疲労、腹に軽い痛み
[装備]:私服
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1〜3個
[思考]基本:弱きを守り悪を挫く『正義の味方』を貫く
1:走太についていく
2:人を守る。
3:浜野朱里を警戒。
4:時間になったらホテルに向かう
[備考]
※参加時期は黒打くんにアメコミのヒーローについて教えてもらった後
※八神、大江、九条、凡田と情報交換をしました。
※神条紫杏一行とは情報交換を行っていません。
【小波走太@パワポケダッシュ】
[状態]:健康、軽い擦り傷
[装備]:ガンバーズのユニフォーム、スニーカー、高出力レーザーカッター
[道具]:支給品一式(ランダムアイテム不明)
[思考]基本:生還し親父を復活させる
1:殺し合いを止める。
2:人は殺さない。
3:真央、八神、和那、九条、凡田を少し信頼。
4:浜野朱里を警戒。
[備考]
※参加時期は最後の大会の前から、誰ルートかは後続の書き手さんにお任せします
投下終了です、誤字脱字矛盾の指摘お願いします
おおっ、投下来てる
乙です!
ほるひすって体力どうなんだろうな。無尽蔵でも違和感ないのが凄いけどwww
紫杏も真央も相手に会えてもルートが違うのが悲しいな…
投下乙です
それにしてもここはレベル高いから安心して読めるw
hosyu
ほしゅ
規制中のため、仮投下スレに投下しておきました
投下乙です
タケミはこれくらい不安定な方が見ていて愉しいなあw
メカ亀田は割と冷静みたいなので、これからの活躍にも期待できそう
あと、2レス目の
「早速でやんすが、お前は殺し合いに乗っているんでやんすか?」
「……そうだよ、少なくとも私は人を殺すつもりはない」
の受け答えが不自然な気が
勘違いだったら申し訳ない
……失礼しました、少なくとも、は消し忘れです
まとめ収録の際に直させてもらいます
ん、乗っているんでやんすか?に対する答えが肯定になっているのがおかしいんじゃないのか?
…………オーケー、落ち着こうオレorz そして日本語理解しようorz
「そうだよ、」の後に、「私は乗ってない。」が入ります
201 :
◆7WJp/yel/Y :2009/06/17(水) 16:02:04 ID:c5HRn7f30
保守代わりに本投下を
昔、彼女は一人の男と出会った。
それ以前のことを彼女はよく覚えていない。
その男が印象に強すぎたことと、どこに行っても似たような反応を取られたことが原因だろう。
始まりは他愛もないものだったと記憶している、少なくとも彼女には他愛もないものだった。
それを男はどう思ったのだろうか。
彼女のことを天使と崇め、敬った。
戸惑った、この上なく戸惑った。
彼女は確かに天使と言えないこともない。
ただ男が頭の中に描いている天使とは程遠い存在だ。
人が築き上げた文明をリセットするだけのための兵器。
彼女は人に都合のいい天使ではなく、黙示録に書かれた審判の日に現われる天使に近しい存在だ。
なのに、男は神を盲信する狂信者に似た瞳でこちらを見つめてくる。
そんな男は思想家……らしい、あくまで自称だが。
確かに頭は良かった。頭は良かったが、賢くはなかった。
子供だった、と言っても良いかもしれない。
でも、彼女はその日々が楽しかったのを覚えている。
彼女は人を救いたかった。 彼は彼女が全ての人を救うと信じて疑わなかった。
彼女は自分の力の限界を知っていた。 彼は理想を見ることをやめようとしなかった。
彼女はそれだけで良かった。 彼は彼女を守るために有志を募り始めた。
彼女は。 彼は。
◆ ◆ ◆
『遺跡に眠れし三つの宝玉を揃えたとき、願いを叶える天使が現れる』
真相を知っているタケミからすればとんだ笑い話だ。
天使は願いを叶えなどしない、天使は元に戻すだけだ。
元に戻す、それは文字通り人間の居ない世界に戻すことだ。
だと言うのに、誰が天使が願いを叶えるなど言い出したのだろうか?
タケミには思い至る点がある。
それは、宇宙へ新たな母なる星を求めて旅立った天使なるモンスターの親にあたる創造主。
人を殺すのは人、天使はただの兵器にすぎない。
色合いの美しく香り漂う果物をぶら下げ、その実は一瞬で死へと至らす毒物。
それが天使にすぎない。
「で、お話しする気になったでやんすか?」
目を覚ますと、見知った声が聞こえた。
それはここに来る前のメガネをかけた愉快な仲間の声で、悪魔としか思えない邪悪な催しを開いた男の声で。
顔を見ると同じく仲間の、悪魔のような男の顔で。
ただ、雰囲気は違った。
仲間の賑やかな暖かさもなく、男の吐き気すら覚えるほどの邪悪さもない。
ただただ冷たい印象、それはわざと演じているのではない。
単純に、感情の元となる心の底が冷たいのだ。
「殺す気はないでやんすよ、安心するでやんす」とは言ったものの、どうも安心できない。
殺すつもりはないのは分かる。
本当に殺すつもりならさっさと殺しているつもりだ。
目撃者も居ないはずだ、ならさっさと殺してしまえばいいのだから。
だから、不安に感じているのなら命の危険ではなく目の前の男の不気味な印象。
故にタケミは口を開くのを躊躇った。
しかし何時までもそうしているわけにもいかない。
「……分かったよ、話す気分になったから」
「そいつは良い。じゃあ、早速一つ聞いて良いでやんすか?」
「良いよ……」
「早速でやんすが、お前は殺し合いに乗っているんでやんすか?」
「……そうだよ、私は乗ってない。少なくとも人を殺すつもりはない」
体の調子から感じていた。
タケミはもう天使の仕事をまっとうすることは出来ないだろう。
天使、いや、モンスターとしての力が全盛期と比べて大きく劣っている。
そして、それは仲間も同じだとモグラ乗りの仲間と遺跡を潜ったときに感じていた。
まだ力が残っている天使はいるかもしれない。
だが、少なくとも自分は違う。
もうお払い箱だ。だから、モグラ乗りについていこうと思ったのだ。
それがロマンというものなのだろう。
たかゆきの言っていた「自分は人間だ」というものと同じなのだろう。
少し考えてそう結論を出した。
たかゆきの言葉はモグラ乗りが言っていた『傷つけない娯楽人形はロマンだ』という言葉と同質のものだと。
……理解ができたわけではない。
タケミは天使だ、人を滅ぼす天使だ。
この触手も、溶解液も、全てが人を滅ぼすものだ。
人間が銃を使うのとは全く違う。
「そうでやんすか、そいつは都合がいい。
なら何か秀でたところ、自信のあることはないでやんすか? たとえば、機械弄りとか」
「……機械なら直せるよ。もちろん道具が居るけど」
「ははは! これは都合がいいでやんすね! じゃあこいつを調べてくれないでやんすか?」
男はマントの下からぽいっと何かを投げつけてくる。
慌ててキャッチし手元を眺めた瞬間、タケミは顔から血が引いていく。
「これって……!」
「首輪でやんす。ちょっと死体からちょっぱって来たんでやんすよ」
「ちょっぱったって……!?」
「悪党でやんすよ、人を殺そうとした屑でやんす。何も気に病む必要はないでやんす」
首輪、メカ亀田にも帽子の男にも銃を持った少女にも恐らくタケミの首にも着いているだろう首輪だ。
参加者全てを殺し合いに強要させているもっとも大きな要因。
これがある限り、この島に居る全員は亀田なる男に命を握られていることになる。
それを調べてくれ、とメカ亀田は首から外れた血のついた首輪を渡してきたのだ。
「あんた……!」
「だから、オイラは殺しちゃいないでやんすよ。
そいつだって最後の最後に人の役に立てて幸せなんじゃないんですか?」
「だからって、こんなこと!」
「……いちいちうるさいでやんすねぇ。
じゃあ、何でやんすか? お前は一発勝負で自分の首についてるものを外すんでやんすか?
凄い度胸でやんすね、オイラも見習いたいでやんすがそこまでの度胸はないんで今は無理でやんすね」
「それは……」
「……ま、嫌って言うなら構わないでやんすよ。
無理やりやらせた腹いせにオイラの首輪を外すのに失敗する、なんてことになったら嫌でやんすからね」
「そんなことやらないよ!」
駄目だ、目の前の男とはひどく合わない。
確かに殺し合いに乗ってはいないようだが、命を軽く見過ぎている。
そこまで考えて、自分も人のことは言えないとタケミは思った。
むしろタケミが生まれた経緯を考えると、タケミ自身が命に対する冒涜だ。
「……そう言えば自己紹介がまだだったでやんすね、オイラはメカ亀田でやんす」
「亀田!?」
「そう、亀田を模して造られたロボットでやんすよ。と言っても、オイラは既に廃棄されたんでやんす」
「廃……棄?」
「そう、廃棄でやんす、処理所行きでやんすね。
まあ、はい了解しましたとは受け入れないでやんすけどね。見事逃げきってやったんでやんすよ」
メカ亀田は口元はにんまりと歪める。
それを笑みだとタケミは一瞬分からなかった。
「お前は?」
「……タケミ」
「そうでやんすか。タケミ、お前は放送は聞いてないんでやんすよね?」
「うん」
タケミが頷くとメカ亀田はデイパックから地図と一枚の紙を取り出し、乱暴に渡してくる。
少しむっとしながらもタケミはその一枚の紙に目を通す。
愛、青野 柴夫……
「これって……?」
「名簿でやんす、気づけばデイパックの中に入っていたんでやんすよ。
……まるで、オイラ達が亀田の前からこの島に居たときとそっくりでやんすよ」
「テレポート、ってわけ?」
「理解が早くて助かるでやんす。
何か、気がついたことがあったでやんすか?」
気づいたこと、と言われてもタケミには思い到ることがない。
完璧なテレポートなんてまだ無理なはずだ。
少なくとも核も出来ていない今の状態では。
「あれ?」
ということは亀田は自分たちを作った人間の子孫か何か?
それならばテレポートを使いこなしていても不思議でない。
だが、それをメカ亀田に言うべきだろうか?
まだ確定ではない情報、メカ亀田は好きなタイプではないがロボットと言うだけあって論理的思考をする。
タケミとてこんなところさっさと抜け出したい。
その時にメカ亀田は頼りになるだろう。
ならば無駄な情報を教えて混乱させない方がいいだろう。
「どうしたんでやんすか?」
「……ううん、そう言えば……その、あの女の子はどこに行ったのかなって思って」
タケミが話題を変えた先は少女の話題。
メカ亀田は、ああ、と呟いた興味もなさげに呟いた。
「知らないでやんすよ、オイラが周辺を見回ってた時にはもう居なかったでやんすよ」
「そっか……」
つまり、野放しというわけだ。
たかゆきを殺した人間が何処かで人殺しをしている。
それがどうにも気分の悪い話だ。
「……うん、ありがと」
「知り合いは?」
「……知り合いは居たけど、死んじゃったみたい」
「そうでやんすか……まあ、休んでると良いでやんす。
少ししたら移動するでやんすからね」
メカ亀田はタケミの答えを聞かずに、マントを翻しながらタケミの視界から消えていった。
その姿を眺めて、少ししてから軽い溜息をつく。
「……」
音もしない工場の内部でタケミは考える。
たかゆきの言う『人間』という言葉、これからどうするかということ、メカ亀田が信用に値するかどうか。
そして、ある一人の男のこと。
(……目に見える人を救うだけで、良かったじゃない)
◆ ◆ ◆
「……やはりPXタイプでやんすね、それも初期の骨董品でやんす」
工場周辺、粗大ゴミかと思われる凸凹が目立つ機械の前にメカ亀田が立っていた。
タケミと別れたのはこれの確認が目的。
(状況から見て、こいつも参加者でやんすね)
近づいて損傷具合の確認を行う。
見た目はひどいが、データはある程度は無事のようだ。
(天才、唐沢博士が作ったロボット……当の昔に全部消えた骨董品だと思ってたんでやんす。
……きちんと整備されてるでやんすね)
今はPXタイプではなくBXタイプが着手されている。
だが、順番や性能ではなく唐沢博士の作ったロボットを亀田が連れてきたということがポイントだ。
亀田は唐沢博士と親交があった。
ひょっとすると、このPXタイプは唐沢博士の特別せいなのではないか?
少ししか喋っているところは見ていないが、高い自我を持っていた。
興味深いし、何よりロボットだ。
部品が自分が傷ついた際の修復に使えるかも知れない。
「備えあれば憂いなし……でやんすよ」
メカ亀田はにやりとほほ笑んだ。
唐沢博士、間違いなく稀代の天才と言える科学者だ。
あの科学者のお陰で数えきれない人間が助かり、あの科学者の所為で数えきれない人間が死んだ。
その科学者が製作したロボットがここに二つ。
一つはPX-001と呼ばれるロボット、たかゆき。
一つは第一世代と呼ばれる死から蘇ったサイボーグ、三橋一郎。
「データも興味深いでやんすねぇ……何か面白いものが入っているといいんでやんすが」
【B−7/工場/一日目/朝】
【タケミ@パワプロクンポケット10裏】
[状態]:疲労(中)
[装備]:作業着、コンパス、時計
[道具]:支給品一式、爆弾セット(残り5個)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、首輪を外すために行動する。
1:……人間、か。
2:出来るだけ戦いたくないが、どうしようも無ければ戦う。
[備考]
※モンスターとしての力は短時間、疲労大の条件の下、発動可。
※十波典明、高坂茜の名前を知りません。
【メカ亀田@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:損傷なし
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3個、青野の首輪、PX-001(たかゆき)
[思考]
基本:『殺し合い』を失敗させた後に亀田を殺す
1:工具とジャミング用の機械を見つける。
2:脱出のために役立ちそうな人間を優先して仲間にする
4:サングラスの男(灰原)に激しい殺意と敵意
[備考]
※参加時期は不明
※メカ亀田は灰原の名前は知りません
※自動追尾ミサイルとバリアーは没収されています
※青野の情報は全部嘘だと思っています。
※十波典明、たかゆき、高坂茜の名前を知りません。
改めて乙
投下終了
とりあえずネカフェは面倒なので規制解除されてほしい……orz
今の予約分は今日明日中に投下します
>>210 乙かれ様です
しかし最初の頃よりもスレが寂しくなったなあ
パソコンが規制されているため仮投下させてもらいました
代理投下出来るかたがいらっしゃったら代理投下お願いします
仮投下できるかテスト
木が覆い茂った森の中を二つの影が蠢いている。
その速さから見るに、影は走っているようではない。
かと言って、歩いているようにも見えない。
二つの影は全力で走るほど速くはなく、歩くほど遅くもないというスピードで森の中を移動していく。
「親父、何か見えたか?」
「いーや、人っ子いないぜー」
その影の正体は、神出鬼没、頭脳明晰、容姿端麗、行動力抜群の名探偵こと七原 正大。
そして、自称世界的考古学者、七原正大の父の布具里である。
探偵と言うよりも冒険者の七原、現在進行形で火事場泥棒のように遺跡を漁っていく布具里。
その二人にとって森の中を素早く通り抜けることなんて目を瞑っていても出来るぐらい慣れたことだ。
何せ獣すら通らない道なき道を行かなければならないことだって数あるのだから。
どのようなスピードが最もエネルギー効率がいいのかも熟知している。
「やっぱり、森の中には居ないよな」
「で、どうするんだ息子よ。発電所やら研究所やらには行かなくてもいいのか?」
山の三合目ほどを横這いに移動してきた二人だが、それよりも上にある二つの施設には行っていなかった。
その理由はいくつかあるが、単純にそこまでの時間がない、というのが最も大きなものだ。
残り十二時間を切り、未だに仲間はおろか注意を促す必要がある危険人物にすら出会っていない。
山へと迂回しながら街を向い、丁寧に整備されているであろう道を使ってホテルに向かう。
それが七原のたてたとりあえずの予定。
だが、それでいいのか?という不安が渦巻いてきた。
その原因は先ほど聞こえてきた放送での死者発表に他ならない。
(青野さんや、鋼……それにタマちゃんまで死んでしまうなんて……!)
呼ばれた名前には冒険を共にした仲間の名前が呼ばれた。
それもどの仲間も一癖も二癖もある猛者。
(しかも、タマちゃんと鋼は死んでたはずだろ……?)
帝都で起こった大地震によって現れた化け物。
あの化け物の前に倒れ、死んでいったであろう七原と二人の仲間。
その二人の仲間も、出会う前に死んでいってしまった。
そして、帝都のその後を詳しく知っている可能性の高い青野さんもまた同様に死んでしまった。
ふと、隣に映る中年の姿を見て疑問が浮かぶ。
「……そう言えば、親父」
「なんだー?」
隣から聞こえてくるのんびりとした声に、少し苛立ちを覚える。
こちらは生き残ろうと必死だと言うのにどうしてもこうもマイペースなのだ、と。
なるべくその苛立ちが前に出てこないように、声を抑えて尋ねる。
支援
「親父は俺から300円借りに(貸さなかったけど)来たあとは何してたんだ?」
(※注! この時代の1円は今の5000円の価値があります。つまり150万円です。非常識極まりない)
七原はひょっとすると布具里も我威亜党に何かちょっかいを出していたのではないか、という考えが浮かんだのだ。
それに、純粋な興味と言うのもあった。
七原や妻を放っておいてまで何をしていたのか、という興味が。
「んー……いつも通りだな。遺跡に行って、そこで調べたことを大学のお偉いさんに教えて……」
「なんだ、また遺跡漁りか」
「おいおい……ちょっとはお父さんの仕事に興味を持とうと思わないのか、我が息子よ?
たまには、お父さんすごーい!僕も将来はお父さんみたいになる!、とか言ってた頃を思い出せよ」
「言ってないから! そんなこと言ってないから!」
昔から家族をおざなりにして遺跡を巡っていた父。
そんな駄目父に憧れることはない。
……奇しくも父と同じく冒険者、そして(父の借金が原因とはいえ)膨大な借金を抱えることになったが。
「ったく、親父は相変わらずだな……」
「相変わらずってなんだ、息子」
無駄口をたたき合いながらも足を止めずに前へと進んでいく。
いつかこんな父を尊敬する日が来るだろうか、なんて話を考えて馬鹿らしく笑えてくる。
少なくとも、借金がある限り父を尊敬する日など来ないだろう。
「っと、神社が見えたな」
「普通だねぇ、特に歴史的価値はなさそうだ」
「……無理するなよ親父。息子の前でカッコつけたいのは分かるけど」
無駄口を止めることなく進んでいく。
七原は銃を懐に備え、布具里も何かをしようとするものの息子に銃を巻き上げられて何もない無手で進んでいく。
そしてかなりの距離まで近づき、とりあえず門をくぐって中に入ろうと正面に回った時だった。
「おっと! そこを動くなよ!」
「……そう来るよなぁ、普通は」
「あらら……」
目の前には猟銃を構えた一人のボロを着た男。
七原と布具里が放送の前に出会った九条という男とよく似ている。
こちらをじっくりと観察するかのような眼をして、直ぐに障害物へと体を滑らせれる位置に居る。
猟銃はボルトアクション、つまり再装填に時間がかかるため最初の一撃を避ければ危険度は格段に減る。
だが、七原の目的はあくまで向こうも予想以上に落ち着いている。
焦らなければいい関係が気付ける、と思いたい。
「よし、手をあげな。変な動きするんじゃねーぞ」
「はいはい……」
銃は懐にしまい、手を上げて向こうの出方をうかがう。
布具里が何かをしないかと七原は内心ひやりとしていたが、幸い手を上げている。
「んじゃあ、単刀直入に聞く。お前らは殺し合いに乗っているのか?」
「乗っていない」
男の台詞に間髪をいれず答える。
敵意はない、それを分からせるのはひどく難しい。
何故なら人は嘘をつけるし、それが常識だから。
「……そうか、だが動くなよ? 悪いが簡単に信じるわけにはいかないんでな」
「分かった。こっちも撃たれちゃ堪らないからな」
そう言いながらも、男は猟銃を放そうとはしない。
「少し話があるんだけど……ここからの話をするってこと良いかな?」
「構わないぜ」
「手を組まないか?」
顔を見ずに猟銃と腕だけを観察する、怪しい動きを見せればすぐに避けれるように。
男に撃つ気配はないとは言え、油断はできない。
考える素振りは見せているのに隙は見せない。
少なくとも修羅場や危険にはなれているようだ。
「……ちょっと待ってろ。仲間を呼ぶ、詳しい話を聞くのはそれからだ」
◆ ◆ ◆
「……」
「……」
「……」
本堂の中に居るのは三人の男女の若者。
その誰もが口を開くことはなく、俯いたまま目を合わせようとしない。
その理由は先ほどの放送だ。
十八人、十八人もの人間が死んだのだから当然とも言えよう。
最初の二人は亀田と言う元凶に殺されたとしても、残りの十六人はこの島に居る人間が殺したのだ。
それが一人なのか、それとも十六人なのか、それとも人を殺した人間も全員死んでしまったのか。
いずれにしろ落ち着かない。
しかも、天本玲泉は知り合いである島岡武雄を失くしているのだ。
穏やかでいれるわけがない。
「……天本さん、春香ちゃん。俺、ちょっと椿さんのところに行ってくるから」
「え……?」
「椿さんばかりに見張りを任せてるのもまずいからね」
そう言うと足早に七味東雅は二人から離れていった。
ここに居づらくなった、と言うよりも居ても立っても居られない、と言った風だ。
だが、残された彼女と倉見春香には沈黙が続いていく。
先ほど出会ったばかりなのだ。
話す共通の話題もないし、話す気力もない。
「先輩……」
春香がぽつりと漏らした一言。
玲泉も少し居心地が悪かったのだろう、その言葉を拾うことにしたようだ。
「倉見さんは七味さんと仲が良いんですね」
「え? え、ええ、そうですよ! 先輩と私は恋人ですからね!」
「恋人……そうですか、道理で倉見さんは七味さんを信頼するわけですね」
「えへへ……あ、でも、先輩が少し変なです」
「変……ですか?」
玲泉が思い出す限り七味に妙なところはなかった。
むしろ何とかして殺し合いから脱出しようと必死になっていることから頼りになるぐらいだ。
それとも日常では情けない、と言うより穏やかな性質なのだろうか。
そこまで思って玲泉の頭に一人の男が思い浮かぶ。
知っている限り、最もあり得ないことを実現させた人間。
そして玲泉のいま最も大切な人間。
島岡が死ぬのにショックを受けたと同時に、彼が居ないことを大きく安堵した。
「先輩、私のこと知らないって言ったんです」
「え?」
「……私とここに来てから会ったとき、私のことを知らないって言ったんです」
「どういう、ことですか?」
いまいち理解が出来ない、と言う風な表情で問いかける。
倉見も困ったような表情で語り始める。
愚痴を零し始める、と言い換えてもいいかも知れない
「先輩……全部忘れちゃったんです。私とデートしたことも、初めて会った時のことも……」
「……では、これから作っていくというのはどうですか?」
「え?」
「これから、作っていけばいいんですよ。
忘れたものを思い出すことに時間をかけるよりもよっぽど有意義ですよ」
「これから……」
「ええ、これから楽しいことをして、これからもう一度恋人になればいいんですよ」
積木が崩れれば積み直せばいい。
砂の城が波で壊されたらまた作り直せばいい。
それは簡単なことだ。
何故積木が崩れたか、とか、何故波がここまで届いたか、などを考えるに比べれば、とても簡単なことだ。
出来る筈だと玲泉は漠然と思う。
あの人が自分を忘れてしまう。
それはとても悲しいことだろう。
だけど、そこでめそめそ泣いているようなことはしないだろう。
「泣いていてくるような幸せはいりません。そんな幸せはこちらから願い下げですよ」
「……凄いですね、天本さん」
玲泉の言葉に心の底から感心したように春香は呟く。
その様子をどう思ったのか、玲泉は相変わらず笑みを絶やさずに言葉を紡ぐ。
「そうですか? 私は倉見さんの明るさが凄いと思いますよ。心から笑う、というのは難しいですから」
「それだけが私の取り柄ですから!」
「ふふふ」
「えへへ!」
先ほどまでの沈黙は何処かへと行ってしまった。
二人は笑いながら、ここを脱出しようと心に誓う。
「東先輩も居ますからね! みんなで脱出してまた先輩と一からスタートします!」
「私も、あの人の居る島に帰りたいですからね……」
「え、あの人って?」
「私の、そう、大事な人ですよ」
「え、そうなん」
「おーい、二人とも―!」
春香の言葉を遮る形で七味の声が聞こえてくる。
その声に春香は嬉しそうな表情を浮かべ、玲泉はそれを見てクスリと笑う。
ひどく和やかな雰囲気だ。
出ていくまでの雰囲気しか知らない七味は少し不思議そうに首をひねる。
「人が来てる。椿さんが言うには殺し合いには乗ってないらしい。
それでその人たちをどうするかで俺たちの意見が聞きたいってそうだ」
「人が……東先輩じゃ、ないんですよね?」
「ああ、知らない人たちだ。とにかく来てくれ」
その言葉に少し緊張しながら七味の後ろへ着いていく二人。
どんな人間が居るのか、その人は本当に殺し合いに乗っていないのか。
いろんな疑問が頭に渦巻きながら、椿の傍へと来た。
「よう、お嬢ちゃんたち。早速で悪いが、少し話し合いと行くぜ。
こればっかりは俺が一人で決めるわけにはいかないから」
椿の言葉に何も言わずにただ頷く。
そして横目でその殺し合いに乗っていないらしい二人を見る。
一人はハンチング帽が特徴的な男。
もう一人は真っ白な服とあり得ない顔の骨格が目を引く男。
見ただけではどんな人間かは分からない。
「よし、話し合いだ。言っとくがそこから動くなよ」
「分かってる、そしてこっちは一つだけ聞きたいことがあるんだ。まずはそれから聞いて見ていいかい?」
「……良いぜ、言ってみな」
話は椿とハンチング帽の男が中心で進むようだ。
恐らくその話を聞いて私たちが決めろということなのだろう。
三人は一言も聞き逃さないように沈黙する。
「……今が何年の何月何日か、わかるかい?」
「…………あん?」
「馬鹿らしく聞こえるかもしれないかもしれないが、大事な質問だ。
もう一度言うぞ、今日が何年の何月何日か、わかるか?」
椿はすばやくこちらに目をやる。
あの椿が戸惑っている、と言うのは少し意外だった。
「そんなの××年の大晦日、いやもう正月か三が日にはなってるか? とにかくいきなりなんだ」
「え?」
「……椿さん」
「あんだ?」
「……いや、話が早くて助かるよ。そっちも時間が違うのなら、ね」
ハンチング帽の男が少し肩の力を抜いて笑ったように見えた。
玲泉たちは四人は訳が分からない。全員が狐に包まれたかのような顔をしている。
「後ろの三人は不思議に思ってる筈だ。良いかい、俺たちは『違う時間』から集まれたんだ!」
「……あん?」
「…………」
「…………」
「…………」
「息子よ、それはいきなりすぎるぞ」
「こう言うのは最初に核心をついていた方が楽なんだよ。
そっちで話し合ってみな。間違いなく最後に覚えている日が見事に違うはずだからな。
誘拐されたから、なんて言葉が不自然に思えるぐらいの違いがね」
男は自信満々に言い放つ。
さすがに疑問を覚えたのか椿はこちらに向き直り、「今日は何日だ」と尋ねてくる。
結果は男が言ったとおり、皆が皆、見事に違った日は言った。
「せ、先輩はもう20歳なんですか」
「そうか……春香ちゃんは俺のいっこ下なんだ」
わずかな誤差。
ひょっとすると七味が春香を忘れているのも何か訳があるのかも、と関係ないことを玲泉は思った。
そんな中、椿は苛立ったような表情のまま二人の男へと体を向ける。
「……おい、話を聞かせろ。どうせまだとっておきが残ってんだろ?」
「俺たちは大正から連れてこられた」
「……はあ?」
椿が何度目かになる間の抜けた声を出す。
それも仕方がないだろう、いきなり大正時代の人間だ、なんて言われたら。
玲泉だって訳が分からなかった。
だが、その言葉以上に、次の言葉が玲泉の胸を捉えた。
「そして、俺は一度死に、そして生き返った……死んでいた仲間も、生き返った。
恐らく亀田の仕業だ。あいつはこちらの理解の外の技術を持っている」
「…………………………え?」
天本玲泉はあまりの出来事に呆気を取られてしまった。
『自分は死んだ』と目の前の探偵と名乗った男は語った。
『仲間も死んでしまったがこの殺し合いに巻き込まれて、もう一度死んでしまった』とも言った。
椿や七味に倉見、それどころか連れの男すら信じていないようだが、彼女には思い当たる節があった。
そして、まだ話が続いているようだが一向に耳に入ってこない。
(呪……神隠し……そして、お婆様)
彼女が今行っている思考はあまりにも飛躍した考えなのかもしれない。
実際に彼女の祖母である天本セツが起こした呪いは『人をこの世から、記憶から消す』というもの。
『人を生き返らせる』というものとは見事なまでに逆のベクトルを持った呪いだ。
しかし、しかしだ。
(人を消すことが出来るのなら……蘇らせることだって出来る……?)
願望だ、あまりにも自分にとってだけ都合のいい願望。
そう、祖母のセツを蘇らせることができる、なんて願いは。
だが、祖母一人の命だけで、執念だけで一時的にとは言え人を二人も消したのだ。
そして、恐らく。野球部が甲子園に行けなければ野球部全員を消していただろう。
ならば49人の命を使えば、人を生き返らせることもできるのでは?
彼女の思考はどんどんと一人歩きをしていく。
(私に一度も優しくしてくれなかったお婆様。
あれだけ思ってくれた優しいお爺様を放って、若いころのロマンスばかり夢を見ていたお婆様。
いい年をして、あの人に昔の恋人を投影していたお婆様。
結局、一人で満足して勝手に死んでいったお婆様)
頭によぎる顔は、しかめっ面でも怒気を孕んだ顔でもない。
あの人を初めて見た時の驚きを浮かべた顔と、苦しそうながらも幸せそうな笑みを浮かべている顔だけだ。
(……私は、お婆様なんて嫌いだ)
良い思い出などない。
どんなに思い出しても彼女の記憶にはセツに優しくされた覚えはない。
母のことを悪く言われたこともあった。
色々とこきを使われたこともあった。
いつも愚痴を言っていた。
悪いことばかりを思い出す。
それはひょっとすると彼女自身のブレーキなのかもしれない。
彼女も悟っているのだ。ここで決意してはいけない、と。
それはしてはいけないこと。
理性をもって、打算のままに行動して、それをすることは人としてしてはいけないことだ。
必死でそう思考が流れないようにする。
そして、まっ先に思い出すのは『あの人』のこと。
彼女を受け止めてくれた『あの人』。
今も彼女と一緒に居てくれる『あの人』。
その人のためにもそれをするわけにはいかないと、必死に『あの人』のことを思い出す。
そして、あの人の動きを、言葉を、全てを思い出す。
白球へと向かって走っていくユニフォーム姿の人。
甲子園まで行き、優勝をしたあの人。
秋の日、私が全てを告白し、それでも受け入れてくれたあの人。
その時の言葉は、今でも――――今、でも―――――
『……天本さんは、結局お婆ちゃんのことが好きだったんだよ』
「あ……」
『本当は、全部お婆ちゃんのためにやったんだろう?』
「あ……ああ…………!」
その際に思い出した言葉で、もう駄目だった。
口で祖母のことが嫌いと言おうと、頭で祖母の嫌なところを思い出そうとしても。
彼の言葉と、唯一の自分の居場所だったことを思い出してしまったら駄目だった。
想像するのは彼女自身と、あの人と、そして祖母が一緒に並んでいる。
(……私は……)
変わりはない、高校時代にやっていたこと何の変わりはないはずなのだ。
そう、彼女は燃えるゴミの日に燃えるごみを出すぐらいの自然さでそれを行えばいい。
焚き火をするぐらいの気軽さで火をつけた時のように。
自然な動作でお弁当に痺れ薬を混ぜたように。
気まぐれのように祖母の最後を看取った時のように。
そして、祖母を蘇らせてあの人と暮らせばいい。
一緒だ。
あの時と同じように、彼女は結果的に人を殺すように動ければいいだけだ。
彼女の心に静かな、けれども熱い炎のようなものが浮かび始める。
先ほどまで倉見 春香と一緒に話していたころの穏やかな気持ちはない。
真っ赤ですらない、それはガスコンロで作られたかのような安っぽい高温の青い炎。
それに、椿の首輪の外すという言葉だって確実ではない。
願いを叶えるという言葉が嘘だとしても、全員を殺すというのは元に戻る方法の一つでもある。
気づいたときには、七原という男との会話は終わっていた。
どうやら、一先ず行動を共にすることになったようだ。
椿が良いと言った以上、何かしらの策があるのだろう。
要注意人物であるが、頼れる人物でもある。
彼女は今までとは違った目で椿を観察していく。
だが、あまりにもジロジロと見ていると要らぬ疑いを受ける。
彼女は振り返り、二人の男へと声をかけた。
「では、これからよろしくお願いしますね。七原さん、布具里さん」
彼女は自然と、全てを吐露したあの秋の日以来となる類の笑顔を浮かべていた。
【C−2/神社/1日目/朝】
【倉見春香@パワプロクンポケット7表】
[状態]:健康
[装備]:麻酔銃@現実(一発消費)
[道具]:なし(七味が持っている)
[思考]
1:休んで七味の足手まといにならないようにする。
2:あわよくば七味の記憶を取り戻す。
【七味東雅@パワプロクンポケット7表】
[状態]:健康
[装備]:セイラーマンサーベル、支給品一式×3、ランダム支給品2〜6個
[道具]:なし
[思考]
1:春香ちゃんを守る。
2:ゲームに乗らない人物を守る、そして一緒に協力する。
3:ヒーローがいるなら合流する。
[備考]
※七味東雅の高校時代は彼女とも付き合わずまじめに野球一筋でした。
※七味東雅は記憶喪失ではありません。
2年前のことなので春香の事を覚えていないだけです。(生徒会くらいのときしか面識がないため)
【椿@パワプロクンポケット9表】
[状態]健康
[装備]鉈、ムラタ銃
[道具]支給品一式×2(不明支給品1〜4)
[思考]
基本:生き残るのに手段は選ばない。
1:とりあえず七味、春香、天本、七原、布具里と行動する。
2:天本を利用してゲームを有利に進める。
【天本玲泉@パワプロクンポケット4表】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式(不明支給品1〜3)
[思考]
基本:日の出島に帰る。
1:人を結果的に殺す。
2:このチームを利用する。
【七原正大(ななはら まさひろ)@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[装備]:地味な色のベスト、ニューナンブM60(6/6)
[道具]:支給品一式、Pカード、九条と凡田の知り合いの名前の書かれたメモ、予備弾(12/12)
[思考]
基本:亀田を倒す。
1:仲間を集めるために動き回る。
2:ほるひすに警戒心。
3:第三放送前にホテルPAWAへと向かう。
[備考]
※大正編のどの人物とどの程度面識があるか、メモに誰の名前が書かれたかは後の書き手に任せます。
【布具里@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[装備]:亀田幻妖斎の服
[道具]:支給品一式、ランダム支給品残り0〜1個(本人確認済み)、亀田幻妖斎の仮面
[思考]
基本:正大に寄生して生きる。
1:仲間を集める。
2:第三放送前にホテルPAWAへと向かう。
3:死んでたのか……息子よ。
[備考]
※確認済みの支給品の中に、衣服になるものは入っていません。
代理投下終了。
代理投下ありがとうございます
ひとえに感謝を
投下&代理投下乙!
黒いよ天本さんwww
これは予想外だったな〜。椿に暗雲の兆しが見えてきた
そして今んとこ一番の大所帯の今後に期待
仮投下させてもらいました
お暇な方いらしたら代理投下お願いします
代理投下いけるかな?
書き込めたならとりあえず誤字脱字と思われる箇所を指摘してみる
>>217 下から2行目
>>だが、七原の目的はあくまで向こうも予想以上に落ち着いている。
あとどこかにもう一つあったはずなんだけど、思い出せないやorz
リン、という女が居る。
その名前が本名なのか偽名なのかを知っている人間は居ない。
リンについて知られているのはその確かでない名前と腕の確かな情報屋ということだけだ。
「……」
リンは静かに一人の男、島岡 武雄の死体の前に立っている。
彼女は女豹のようにしなやかな体を屈めて、島岡の左目へと目がけて鉛筆を当てる。
そのHBの鉛筆はゆっくりとわずかな隙間を目へと埋めていく。
削られた箇所が完全に見えなくなった頃、右手を鉛筆と目玉の境目に当て左手で鉛筆を斜めへ倒していく。
テコの原理で島岡の眼球はゆっくりと持ちあがっていく。
遂に眼球が完全に空気に触れることになる。
視神経と網膜血管を包んだ細長い膜だけが人体と繋がれており、グロテスクな薄気味悪さを覚える。
リンは顔色を変えずに顔を島岡の目前まで近づけ、眼球を口に含む。
そして、眼球自身を潰さないように優しく舌で包み、歯は細長く島岡の体へと繋がっている膜を摘む。
歯で膜を摩り下ろして、眼球と身体を完全にちぎる。
それは遠目から見るとひどく妖艶な姿だ。
見目麗しい美女が地面へと膝を落とし、寝そべった人間へと顔を近付けているのだ。
耳を澄ませば僅かにチュク、チュク、と粘ったい水が混じり合う音も聞こえてくる。
想像を膨らませるには十分すぎるシチュエーションだ。
だがしかし、現実はそれほど甘くはない。
リンは顔を離し、デイパックから紙を取り出す。
ティッシュのような上等なものではなく、ごつごつとしたメモ用紙だ。
そのメモ用紙を口元へと当て、頬を動かして何かを吐き出す。
もちろん、その何かとは島岡の眼球だ。
噛みちぎった眼球と人体を繋げていた管がひどくグロテスクだ。
再び鉛筆を持ち、右目にも同じ作業を行う。
口の中に何とも言えない不快感が広がっている。
顔をしかめるが、一人の両目を抉った。
自己申告だけではあの女、黒羽根 あやかが何か屁理屈をこねてくるかもしれない。
証拠を持っていけば恐らく大丈夫だろう。
リン以外に殺された死体から取ったのではないか、と言われればそれまでだ。
だが、そんなことを言い出したらどうやっても自分が殺したとは証明できない。
さて、これからどうするか。
目を切り離す直前に聞こえた放送によると近くに禁止エリアもなくしばらくは安泰。
今は動かない探知機で最後に見えた画面が正しければ、人は南、つまり学校に留まっていた。
ならば、学校に向かうべきだろう。
そこならば電気も通っているだろうから探知機の充電も出来る。
リンは学校へと足を動かす。
(茜も彼も無事……か)
学校へ向かう途中で頭に過ったのは放送で名前が上がらず、そして名簿に名前が載っていた二人のこと。
高坂茜が巻き込まれていたのは知っていたし、八神総八郎が連れてこられている可能性も考えていた。
どちらか一方しか生き残らすことが出来ないなら、自分は茜を選ぶだろう。
ふと、こんな思考をしているとは自分も変わったものだ、と思った。
昔ならたとえ彼が殺し合いの場に居たとしても、こうは思わなかったはずだ。
死なせたくないと思いつつも、消極的に自分の生存を最優先として動いただろう。
それがどうだ、今は自分の生存なんてハナから考えていない。
命を投げ捨てている、人間変われば変わるものだ。
ただ、その変化は不快ではなかった。
◆ ◆ ◆
長い痛んだ金髪を片手で軽く髪を梳かしながらヘルガは学校の外へと足を踏み出した。
先ほど流れた放送で呼ばれた埼川珠子という女の名を思い出す。
死んだ、それを確認した。
放送の内容に偽りが交じっているということはないだろう。
それが虚言だとばれた時、目の前に釣った餌である『優勝賞品』の効果が激減してしまう。
これほど大掛かりな舞台を用意できるほどの組織ならば金や地位を用意することぐらい簡単だ。
そして、金に目をくらんだ人間が喜んで殺し合いに乗る可能性だって高いのだ。
こんな普通じゃない状況で普通な思考を持て、というのも酷なもの。
間違っても欲のために他人を殺す人間を庇うつもりはないが、少し同情の念を覚えてしまう。
「……野球のグラウンド、か」
ふと後ろを振り返り、学校を眺める。
そこには一つのボロボロの金網ネットと地面に埋め込まれたホームベースと少し盛り上がったマウンド。
日本の学校ならばどこでも見られるだろう風景。
「野球とひどく縁があるものだな……」
口元を釣りあげて笑い、前へと向かって歩き続ける。
ここに来る前に最も記憶に残った人間は野球をしていた。
ここに来てから最初に出会った人間は野球をしていた。
ここに来てから最初に体を休めた場所は野球場だった。
思い返して改めてここ半年近くの間は野球と深い縁があったのだなと再認識した。
「まあ……だからと言って、どうというわけではない」
ただ、少しだけキャッチボールぐらいならしてもいいかもしれない。
そんなひどく似合わない感傷を抱いていた。
最初に出会った男の影響かもしれないし、名前も覚えていない不思議な男の影響かもしれない。
こうも野球に縁があるとさすがに興味も出てくる。
「……!」
だが、そんな呑気な考えもそこまでだ。
僅かに足で木の枝を折る音が聞こえた。
ヘルガは周囲のものよりも一際大きな木の影に隠れて様子を窺う。
ナイフを懐に忍ばせモデルガンを片手で持つ。
息を殺し、音が聞こえた方向へと視線を移す。
「……」
(少女……歩き方がぎこちないな、怪我をしているのか?)
視界に映った少女は俯き足を引きずるように移動している。
手に持った機関銃がひどく不釣り合いだ。
ヘルガは話しかけるかどうかを僅かに考える。
「おい」
「! だ、誰ですか!?」
体は木から出さない。
少女は慌てて機関銃を構え、眼には怯えと苛立ちと絶望が覗ける。
ヘルガは抑えた声で話しかける。
下手に刺激をするのは危険。
殺し合いに乗っているようには見えないが、かなり混乱して衰弱している。
「落ち着いてくれ、私は話をしたいだけだ」
「……じゃあどうして姿を見せないんですか」
「こちらの方が安心できるだろう? 声の方向から私の場所は察することが出来るだろう」
「……」
「君は殺し合いに――――なっ!?」
ヘルガは投げかけた言葉を自身の驚愕に溢れた声で遮り、木の幹で出来た段差の下へと身体を滑らせる。
彼女の動きから数瞬ほどを置いて、耳をつんざく激しい音が現れた。
爆発、やはりあれは爆弾だったようだ。
ヘルガが話をしている最中に少女が取り出したもの、それは爆弾だ。
銃は銃弾が減ることを嫌ったのか、それとも単純に気分の問題なのか。
とにかく彼女は爆弾を出し、それを使った。
段差の中から外を覗き見る。
少女の姿は消えている、どうやら逃げたようだ。
殺し合いに完全に乗っているわけではない、自暴自棄になっていると言ったところだろう。
ヘルガは少女が完全に近く居ないと把握すると静かに顔を出し足早に立ち去った。
(あの少女……)
僅かに見えた瞳はヘルガの胸を軽く痛めつけた。
どうすれば良いのか分からない迷子のような瞳。
だけど、それを教えてくれる人が居ないと悟っている瞳。
未来への希望が見えない瞳。
誰を憎めばいいかも分らない瞳。
あのような瞳が横行する世界が、来るかもしれない。
それがヘルガが何よりも胸を痛めさせられた。
◆ ◆ ◆
「……」
リンは学校の前に立っていた。
人の動く気配はしない。
中で隠れているか、学校には既に誰も居ないかのどちらかだろう。
リンは壁を乗り越えてグラウンドの端を通って校舎へと向かう。
この距離からでは物音一つ聞こえない。
リンは開いた窓から校舎内へと潜入し、奇襲に備えてグロッグ19を構える。
人の気配は、しない。
何かが動く音が聞こえないのだ。
「誰も居ない……」
唇を僅かに動かしてぼそりと呟く。
幾らなんでも静かすぎる。
人が動いていれば物音の一つもするだろう、何より誰も居ないこの古い学校ならば足音は響く。
あるとすれば息を殺して罠が発動するのを待っているか、だ。
その可能性を考えていたからこそ正面から入らなかった。
リンは片手でドアを開け、教室の中へと素早く体を滑り込ませる。
探知機で充電し直せば誰かが隠れているかもわかる。
向こうが待ちの戦法を取っているならこちらが動かない限り危険はない。
もし、誰も居なくてもそれはそれで御の字。
気を取り直して学校を離れればいいだけの話。
探知機を充電し、ゆっくりと椅子に腰をかける。
ノルマを少しクリアしたことによって、時間に余裕は出来た。
充電をして、人を殺す。
ひとまずはその方針で行けばいい。
◆ ◆ ◆
芳槻さらは痛みの走る体に鞭を打ちながら学校へと向かっていた。
全身が軋むような痛みに苛まれながらも、必死に足を前へと動かす。
休むことはできなかった。
先ほどの恐らく高さから考えて女性だろう声の人間が迫って来ているだろうと想像すると、一刻も早くこんなところから立ち去りたかった。
「はぁ……はぁ……」
信じられなかった。
あの声の言うことが信じられなかった。
(多分……それはきっとこちらを疑っていたからかな)
さらはそんな風に考えて、ゆっくりと頭を振った。
そうじゃない、と。
自分でも理解している、何か理由をつけているだけだ。
(私は、多分誰も信じれないんだろうな)
だから、爆弾を投げつけた。
話を聞かずに、いつの間にか傷つけられることを恐れて。
危ないと思ったという理由だけで。怪しいと思ったと言う理由だけで。
殺す以外の道を選んだのだ。
銃を引くのも面倒だったから爆弾を選んだ。
その所為で無駄な恐怖を、声の人が怒って襲ってくるかもしれないなんて恐怖を覚える破目になった。
とにかくそんなことを考えていてもしょうがない。
今は学校に行くことだけを考えよう。
足を動かす。
体の節々から来る痛みに耐えながら
きっと、恐らく、信じられるだろう人間との思い出の場所に。
【F-3/学校/一日目/朝】
【リン@パワプロクンポケット8】
[状態]健康
[装備]グロッグ19(8/15)
[道具]支給品一式×3、劣化版探知機、充電器、ヒヨリンセット(化粧品中消費)、支給品一覧表、島岡の両眼
[思考]
基本:一先ずノルマの三人殺しはクリアしておく。
1:学校で待機。
2:八神と茜は何としてでも生き残らせる。
3:劣化版でない探知機が存在するのなら入手してしておきたい。
4:第五回放送の前に役場へと向かう。
【E-3/林/一日目/朝】
【ヘルガ@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:健康
[装備]:モデルガン、ナイフ、軍服
[道具]:ラッキョウ一瓶、支給品一式
[思考・状況]
基本:亀田という悪を育てるために亀田に立ち向かう。
1:あまりにも亀田に対抗する戦力が大きくなってきた場合はそれを削る。
【芳槻さら@パワプロクンポケット10】
[状態]:左頬・右目周辺に痣、顔面を中心に激痛、足に痛み(中)、精神的疲労(大)、肉体的疲労(大)、所々に擦り傷
[装備]:機関銃(残弾中程度)
[道具]:支給品一式、スペツナズ・ナイフ
[思考・状況]
1:……疲れた。
2:学校へと向かう。
3:……二人は、どう思うだろうか?
4:十波君のことは信じられる?
[備考]
※第一回放送の内容をどこまで把握しているかは、後続の書き手さんにお任せします。
ただし、メモなどには記録していないようです。
174 愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y [sage] 2009/06/21(日) 20:36:22 ID:SX6UGa1A0
投下終了です、誤字脱字矛盾の指摘をお願いします
早く規制解除を……!
代理投下終了
相変わらず心理描写が巧みで、上手く読ませる文章なのが素晴らしいです
代理投下ありがとうございます
誤字脱字については毎度毎度お騒がせしますorz今回の投下分を収録する際に修正します
規制中のため、仮投下スレに投下させてもらいました
誤字脱字展開の矛盾あれば指摘お願いします
乙!
それにしてもリンのエロさは…ゴクリw
252 :
ああ:2009/06/24(水) 11:08:47 ID:MB+JxcBFO
いつも見て小説の参考にさせてもらっています
これからも頑張ってください
まさか3ヶ月レスがなかったのか・・・?
仮投下で止まってたのを本スレ投下
あと、今回の予約分も一緒に投下します
非自然的なまでに真白な色で床が埋め尽くされ、幅六寸ほどの幅を持った個室が並ぶ、初めて見る部屋。
個室が並んでいる、と言ってもそれほど大そうなものではない。
中に入った人間の背中から太ももを隠す程度の扉と、同じ大きさの小部屋と小部屋を仕切っている壁。
その部屋が暖かな湯気で埋め尽くされている。
ここは野球場内部の簡易シャワールームという場所。
先ほど埼川珠子を殺した私は優雅に水浴びをしていた。
かなりの長寿だと自負しているが、今この瞬間ほどに快適な時間は初めてだった。
この妙な形の栓を捻ると瞬時に気持ちの良い熱湯が出てくる。
絶えることなく、だ。
長く濡れ羽色の艶やかな髪の端から端まで瑞々しい精気を取り込んでいるような気分で心が躍る。
この世界にはこれが溢れているのだとしたら、元の窮屈で汚い世界に帰る気が失せてくる。
大げさな言葉ではない、これにはそう思わせるに十分な魅力を感じる。
目前を見ると石鹸を見つけ、それを体にこすりつける。
……泡が瞬時に立ち花の匂いが漂う。
マズイ、これはマズイ。
少し石鹸を体に擦りつけるのが楽しくなってくる。
いっそのこと、この世界に常駐してしまおうか?
元の世界に置いてきた鷹森には悪いとは思うが、それほどにこの世界は快適だ。
人はこの島の外に溢れているらしいし、幸い自分は血があれば何とか生きていける。
そうだ、この世界で名探偵のように探偵業をしてみるのも悪くないかもしれない。
自分ならばどんな場所にも行けるし、忍びの里で鍛えた尾行術も行かせる。
思ったよりも生きていける確信が得られる。
この世界で生きていくことを視野に入れて考えてもいいかもしれない。
「ふぅ……」
栓を逆方向に捻るだけで、お湯は放水をやめる。
快適だ、何度思ったかも分らないがとにかく快適だ。
入り口で見つけた布を手に取り、体にまとわりついた水滴を拭っていく。
このタオルにも驚かされる。
冗談のような手触りの良さと何処までも沈んでいくような柔らかさを持っている。
これがそこら中に出回っているのだとしたら何とも羨ましい世界だ。
決めた、この殺し合いが終わったらこの世界に住もう。
「鷹森は……私が居なくて清々してるでしょうね」
かなり振り回してきたから、彼は私に良い感情を持っていないだろう。
正直、一人でも十分に生きられるし行きずりの仲だ。
別に遠慮も要らなければ許可を取る必要もない。
完全に水滴を拭った後、先ほどまでの心地よさに少し後ろ髪を引かれながらも服を着ていく。
まずは簡素な形の下着を身に着け、シャツに袖を通し、ズボンに足を通し、最後にマントを羽織る。
少し汚れている為、気持ちの悪さがあるが贅沢は言えない。
壁に立てかけておいた愛刀を手に取り、外へと向かう。
しばらくはここに停滞する必要がある。
便利ではあるが、充電が必須とは面倒な機械だ。
「あ」
ふと、思いついて立ち止まる。
プレイグの待つ部屋へと向かう前に布を拝借しておこう。
あれほど心地いいものならば何枚あっても足りはしない。
◆ ◆ ◆
くるくる。
くるくる、くるくる。
くるくる、くるくる、くるくる。
道化師の格好をしたいかつい顔の男、プレイグは手持無沙汰だと言わんばかりに手元の杖を回していた。
くるくる回っていくファンシーなデザインの杖。
それに似合わないプレイグの空を睨みつけるドギツイ顔。
何度目かになる舌打ちをしながら、プレイグは後方のドアを眺めた。
そのドアを眺めて思い出すのは、同行者の吸血鬼、あやかの『少しだけここで待機する』という言葉。
確かにリンと言う女は殺し合いに乗ったようだから、自分達が無理に動く必要がまだない。
理屈は分かる。プレイグもあやかも体力を温存するに越したことはないので、急ぐ必要はないだろう。
ただ、向こう側に主導権を握られているのがひどく気に入らない。
仕事をする時は常に妹のイルと一緒のため、コンビで動くこと自体には慣れている。
信頼も戦法も向こうに抱く感情も天と地ほどの差があるが。
いつも兄妹ではプレイグ主導で動いているのだが、今回は向こうの都合に振り回されっぱなしだ。
柄じゃない、こんなものはプレイグは柄じゃない。
やはりイルと組むのが一番気分も乗るし戦法もかみ合う。
何よりも今回の相手は幾らなんでも回りくどいやり方を好み過ぎる。
金髪の女も先ほど殺した相手も、殺し合いに積極的にされるには難しい相手だった。
ならば、あやかが誘導しプレイグが奇襲をかけるという正攻法で行くのがベストなはずだ。
だのにあやかはそれをしない。
わざわざ金髪の女を逃がして自らを危険人物として知らせるようにした。
面倒で非効率的なやり方だ。
仕事はさっさと終わらせて次の仕事を探すのが賢い金の稼ぎ方と言うものだ。
もちろん愚痴を言ってもしょうがないことであるし、道具やコンビを組む条件は破格なのも事実だ。
だが、信用は出来ない。
あやかの目的は殺し合いの活性化、つまりはプレイグと共に人を殺すことではない。
あの女は殺し合いが面白くなるのならば、誰が勝ってもいいのだ。
いや、プレイグを殺して殺し合いが活性化するような状況になれば間違いなくプレイグを殺す。
プレイグもそれを承知の上で組んでいるのだ。
そのデメリットに目をつぶられるぐらいにはあやかの戦闘力と探知機は優秀だ。
「お待たせしました、プレイグさん」
そんなことを考えていると、にこやかな表情で黒羽根あやかその人が近づいてくる。
デイパックと探知機と刀を持っている、準備は万端と言ったところか。
どうやら今にも出発するつもりのようだ。
思ったよりも積極的なのだな、と考えながらプレイグも腰を上げる。
未だにあやかに主導権を奪われているのは癪だったが。
だが、プレイグの予想とは異なりあやかも椅子に腰をかける。
「なんや、まだここに居るんか?」
「ええ、そうですね……後少し、ここでのんびりしていきましょう」
「まあ、あの金髪の姉ちゃんが働いてくれるやろうから構わんが」
自分から動く必要はない。
狭い通路ならば広範囲に攻撃できる呪文『ボーボー』で逃げ道はなくせるため、籠城には持って来いだ。
加えてリンと言う女が殺し合いに乗っているだろうし、放送を聞く限り他にも殺し合いに乗っている人間も居るようなのでわざわざ自分達が動く必要性は全くない。
故に籠城は正しい選択肢の一つでもあるのだが、そんな賢い選択をあやかがしたことが意外だった。
「探知機が少しの間だけ使えなくなりましてね。それが回復するまでの間、ですよ」
「構わへんで、急ぐ理由もないしな」
プレイグは再び椅子へ腰を落とし、杖を回し始める。
相変わらず気持ちの悪い装飾がされた杖だ、ひどくプレイグには合わない。
だが、杖のあるなしで魔法の成功率が多少なりとも違ってくる。
新しい杖が手に入るまでは贅沢を言えない。
「さて……」
「ん、どないしたんや?」
そんなプレイグを幾らかの時間眺めた後、あやかは席を立つ。
何をするのか気になったプレイグは思わず尋ねてしまう。
あやかは相変わらず綺麗に笑顔を作り、静かに言葉を返した。
「ここなら写真があるかと思いまして」
「まだこだわっとったんかこのボケェがぁ!!」
【G−3/野球場/1日目/朝】
【黒羽根あやか@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:歓喜、テンション↑
[装備]:妖刀ムラマサ@パワプロクンポケット7裏、日本刀
[道具]:支給品一式、高性能型探知機、充電器、タオル数個
[思考・状況]
基本:『殺し合い』を円滑に進めるために動く。方法は問わない。
1:休憩、充電が終われば動き出す。
2:ゲームに乗っていない人間は殺す、マーダーに出来そうだったらする。
3:『名探偵』は、今度こそこの手で………
[備考]
1:参加者全員の顔と詳細情報についての知識を持っています。
2:探知機はあやかには反応しません。
【プレイグ@パワプロクンポケット4裏】
[状態]:健康
[装備]:ハヅキの杖@パワプロクンポケット4裏
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3(杖は無い)
[思考・状況]
基本:『殺し合い』に乗り、優勝を目指す。
1:あやかについては保留。とりあえず今は殺さない。
2:もっとまともな杖が欲しいでホンマ……
[備考]
1:杖がなくとも呪文を唱える事に支障はありません。精神的にほんの少し落ち着かないだけです。
↑ここまでが仮投下していた分です
↓ここからは今回の予約分です
四路智美が十波典明と別れて数十分ほど後、彼女は自分の心が軋む音が聞こえた。
泉を囲む形で広がっている森。
十波は南西の位置から北へと向い、智美は東へと向かった。
そして、泉の南東の位置である女性と出会ったのだ。
その女性とは彼女にとって忘れることのない女性。
特徴的な顔立ちと口調と、彼女『達』と一回りほど年の外れた年齢。
少し皮膚や服に焦げのようなものが見えるが間違いない。
この女性のことを彼女は忘れようにも忘れられない。
大げさに言ってしまえば、彼女の人生を変えた原因かもしれない女性。
女性の名は荒井紀香、三橋一郎の妻だった女だ。
「……紀香さん」
智美は懐の銃に手を伸ばし、絞りつくすように静かに声を出す。
心の奥から何とも言えない不快な感情が溢れだしてくる。
殺すつもりはない、拳銃に手を伸ばしたのはあくまでも護身だ。
まだ三橋がどのような方針で動いているのかを彼女は知らないのだから。
恐らく三橋は殺し合いに乗っていないだろう、とは彼女も思っている。
ただ、ただもし、何かの為に、彼女の知らない何かの為に殺し合いに乗っている可能性もある。
最悪の場合では洗脳されている可能性もある。
なにせ、亀田はあの唐沢博士と一緒に逃げたのだから。
「ふふ〜ん、誰ですか?」
「四路智美、貴方の亡くなった方の旦那さんの同級生です。何度か会ったことはありますよ」
「知らないです」
「……そうですか」
智美は努めて事務的に問い詰めていく。
感情のまま動けば要らない論争で時間を割いてしまうと彼女は分かっているからだ。
彼女の前に立つ荒井紀香という女性は理不尽なまでにマイペースな女性。
ひょっとしたら自分を中心に世界は回っていると疑いもなく信じているのではないかと疑ってしまうほど。
(……そう言うところ、皮肉抜きで少し羨ましいけどね)
「一つ聞きます、貴方は殺し合いに乗っていますか?」
「ふふ〜ん、二朱君は何処ですか?」
「……はい?」
智美の場を緊張させてもおかしくない問いは疑問文で返される。
ただし、紀香のそれは全く交渉的な一面を持ってはいない。
「ふふ〜ん、お鼻が焦げ臭くて場所が分からないのです。こっちの方に少しだけ似た匂いがしたのです」
「……ニシュ、いえ、二朱君、って言うのは?」
「ダーリンです」
そこで智美は納得する。
二朱、と言うのは新しい旦那の名前なのだろう。
再婚したと言う話は知っている。
もう五年も経っているのだから何もおかしな話ではない。
亡くなった相手に何時までも操を立て続ける人間の方が少ないはずだ。
(それでも嫌な感じが広がるのは……彼女への嫉妬、か。みっともないわね)
智美は、ここまで未練がましい人間だとは思わなかった、と考えながら首を振った。
ある程度ではあるが状況を把握して、眼を紀香に移す。
相も変わらず何を考えているのかわからないある種究極のポーカーフェイス。
実際は何も考えていないだけなのかもしれないが。
「私も、手伝いましょうか?」
「ふふふ〜ん?」
「二朱って人を探すことをです」
「ふふふ〜ん、助かるです」
意外にもあっさりと協力すると約束した紀香。
智美にとっても即決は意外だったが、逆に断るのが予想通りだったか、と問われればNOだ。
要は、彼女は紀香の思考や行動を読める気がしないのだ。
「……じゃあ、貴方の持ってる支給品を」
「あげるです」
「え!?」
支給品を見せてくれ、と言う前に彼女は人形を投げつけてきた。
慌ててその人形をキャッチし、観察するように眺める。
綺麗とはお世辞にも言えない、可愛らしいとも同様に言えない。
どちらかと言えば不気味な人形。
少なくとも子供が好みそうな外見ではない。
歯に衣を着せずに、一言で、ハッキリ言ってしまえば、趣味が悪いのだ。
「それの所為で二朱君を見失ったのです、要らないのです」
智美には知る由もないが、先ほどまで紀香は移動時間の短縮になると喜んでいた。
だが、結果は二朱を見失ってしまった上、焦げ臭さで二朱の臭いを拾いきれないという散々なものだ。
まさに踏んだり蹴ったりな状況になってしまったのがこの人形に理由があると言っても間違っていない。
一向に顔色を変える気配すら見せないが、どうやらご立腹のようだ。
智美としては大人しく受け取っておくしかない。
断ると本気でどんな風に動くのか分からない。
下手をしたら殺されかねない。
「……分かりました、とりあえずついて来て下さい」
「ふふふ〜ん、わかったです」
とりあえずホテルまで連れて行く。
二朱公人、名簿を流し読みした時に珍しい苗字だったので頭に入っていた。
二朱を九条と凡田が連れてくれば、紀香の扱いは任せればいい。
連れてこなければ、誰かに押しつければいい。
そんな風にこれからのことを智美が考えていると、イタチの人形と『目が合った』。
「え?」
勘違いだ、と思うよりも驚きの声を漏らす。
しかし人形が目を動かすわけもない。
だが、智美は確かに目が合ったように思えたのだ。
(疲れてる……のかしら?)
ふう、とため息をついてデイパックの中へと人形を仕舞う。
不気味な感覚が背筋に広がるのを感じながら、手を入れた際にこつりと何かが当たる。
恐らく感触からして探知機だろう。
電池が切れた状態の今はただの鉄屑と変わりないものだが。
「……?」
だが、少し触った感触がおかしかった。
先ほどの人形と言い何かがおかしい。
(何も起こってなんていないに決まってるわ。
ずっとデイパックに入れていたし、デイパック自体を乱暴に扱ったこともない。
壊れる要素もない、この不思議なデイパックの中で佇んでいたはずよ)
まるで否定するかのように思考が埋め尽くされていく。
嫌な予感、この人形を見てからそれが広がっていくのが止まらない。
ゆっくりと探知機を取り出す。
やはり持ったときの感触が最後に触れたときと違う。
「……!?」
「ふふふ〜ん、ガラクタです」
智美が取りだしたものは、紀香の言うとおりガラクタだった。
それだけならば何の問題もなかった。
それが探知機の形を思い出させるものでなければ。
壊れていた、探知機を中心に規模の小さい爆発が起こったかのような壊れ方だ。
これで二度と使えないだろう。
自然に壊れたのだ。
確かに物である以上そのようなことが起こる可能性は付いて回る。
だが、幾らなんでも唐突すぎる。
ならば何が原因だ。
十波と出会った時は何の問題もなかった。
ならばそれから後に起こったことだ。
それから後は東に向い歩き、紀香に出会い、人形を貰った。
自然で壊れていないのならば、紀香か人形が原因と考えるのが自然だろう。
――――そこまで考えた時、ふとデイパックの中にある人形の目が光った気がした。
智美は躊躇うことなくそれを捨て、紀香の手を引いて東へと駆け出して行く。
紀香の機嫌の悪そうな声も耳に入らない。
あの人形はこの殺し合いなんて異常な状況が可愛く見えるほどの異常な物だと智美は判断した。
直観だ。理論だとか証拠だとか、そんな確たるものは何もない。
だからこそ、これが不気味だった。
エリアを超えたころ、ようやく安心できた。
あれのことは忘れよう、引きずっていて得するようなものではない。
そして、その頃。
――捨てられて草むらの中に潜んでいるイタチの人形は。
――――その眼を、真っ赤に光らせていた。
【C−6/一日目/朝】
【荒井紀香@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身のところどころに軽い火傷、体力消耗(小)
[装備]:なし
[参戦時期]:紀香ルート・2年目クリスマス
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考]基本:二朱くんに会う。
1:目の前の女(智美)についていく。
2:二朱君との愛の営みを邪魔するひとは容赦しないです。
3:あの女(夏目准)が二朱君を手にかけていたら仇をとる。
[備考]
※第一回放送に気付いていません。
【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:嫌な汗が背中に伝わっている。
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)
[参戦時期] 3智美ルートで主人公の正体が1主人公だと発覚後。
[道具]:支給品一式、ダイナマイト5本、呪いの人形
[思考・状況]
基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:しばらくは情報集めと人を集め。
2:十波典明の言葉を丸っきり信用するわけではないが、一応警戒。
3:第三放送までにはホテルPAWAに集まる人をどうするか方針を決めたい。
4:亀田の変貌に疑問?
備考
※メカ亀田を危険人物を判断しました。
※ピンクのパーカーを着た少女と作業着を着た少女を警戒。
※ 探 知 機 は 呪 い の 人 形 に 壊 さ れ ま し た 。
投下終了です
誤字脱字展開の矛盾等の指摘お願いします
乙です
相も変わらず呪いの人形はすげえなwww
267 :
ああ:2009/06/28(日) 07:15:22 ID:tC/g5O7zO
お疲れ様です
まさか、智美とのりかを会わせるとはw
268 :
ゲーム好き名無しさん:2009/06/28(日) 14:01:37 ID:y+41leY/0
失礼、こちらに報告を忘れていました
規制中のため、仮投下スレに投下させてもらいました
誤字脱字、展開の矛盾等があれば指摘お願いします
>>269 乙です
あと誤字発見
212
×煤で汚れているとはいえ比較的軽症な和菜がうろたえ
○煤で汚れているとはいえ比較的軽症な和那がうろたえ
乙です
相変わらずワクワクさせてくれますw朱里は残念だし和那はどうなるかわからないし…続きが楽しみだww
>>259 ご指摘ありがとうございます、wikiに収録する際に直させてもらいました
273 :
>>272:2009/07/10(金) 19:35:53 ID:WFn895iRO
274 :
ああ:2009/07/13(月) 20:47:52 ID:n+UcEVynO
御馳走様です
相変わらず上手いですね
もはや俺の楽しみです
テスト
書き込めた……だと……?
うし、仮投下スレを本投下するぜぃ!
三橋は閉じていた瞳をゆっくりと開き、瞬きを幾度かした後ソファーに下ろしていた腰を持ち上げた。
充電は九割ほど済んだ、全快ではないが十分な量である。
腕を軽く振り体に不調がないかを確かめた後、荷物をまとめていく。
荷物は鋼の支給品は言わずもがな、事務室の中で思ったよりも物を見つけることが出来た。
魔法瓶、ライター、カップ麺、ボールペン、メモ用紙、ハサミ。
他にもノートや穴あけパンチやホッチキス、乾電池などが置かれある。
カップ麺は必要ない、サイボーグは食料を必要としない。
乾電池も必要ない、三橋の規格に合わない。
持っていく必要があるとしたらライターと熱湯ぐらいだろう。
事務室に置かれていた物をしまい込んだ後、鋼の残して行った支給品をデイパックへと放り込んでいく。
ポイポイ、と迷うことなく整理していが、鋼の持っていた『それ』を見て驚愕に固まってしまう。
『それ』は物騒なんて言葉を通り越した物だった。
何故それを使わなかったのか?
この部屋にはライターもあった、使えなかったわけではないし、まさか見落としていたわけもあるまい。
……そんな疑問が浮かぶのも一瞬だけだ。
答えなんて決まっている、鋼は殺す気がなかったからだ。
もちろん、これを使えば明日香とスーツの男も巻き込むことになったという理由もあるだろう。
だが、その二人が立ち去った後、長々と話していた時に隙を見て使うことも出来た筈。
その素振りすら見せなかったことから、やはり鋼は三橋を殺す気などなかったのだ。
それは嬉しくも悲しくもない。
ただ、虚しい。
やはり、三橋にはこういう作業は向いていないのかもしれない。
だが、性格的に向いていないから、という理由で辞めることは出来ない。
それが出来たら三橋はこんな所に居はしない。
そんなことが出来るのならとうの昔に、亀田の命令に逆らってネオプロペラ団から離れている。
「……いつまでも、こうしてるわけにはいかないな」
何度目かになる台詞をつぶやき、前を見つめる。
鋼の持っていた支給品と事務室で必要と判断した物はすべて回収した。
いや、正確に言えば全てではない。
野球の硬式球、それだけは置いてきた。
先ほどの甲子園で人を殺す夢を思い出すし、何よりも幸せだった時期の象徴だ。
拳が鈍ってはいけない。
それは親友への裏切りだ。
しっかりと鬼の手を握りしめ、それを顔の前へと持っていく。
赤い、最初に見たときより幾分か赤い。
三人の血を吸ったのだから当然と言える。
そう、三橋は三人もの人間をこの手で殺したのだ。
かつての恩師を、かつてのライバルを、ユニフォームを着た名も知らぬ青年を。
「……」
だが、後悔しても何処にも進みはしない。
今はとにかく進まないといけない。
友のために殺人を犯したのだ、三橋の気持ちで最初からそれは変わっていない。
殺したことを後悔していても、何も変わらないのだから。
切り捨てることと拾うことが大事だ。
この場合、切り捨てるのはこの島に居る人間の命、拾うのは亀田光男との友情。
そう決めたのだ。
重い腰を起こして、様々な感情を秘めながら水族館を出る。
「……あのー、三橋一郎さん、ですか?」
その瞬間、関西方面特有の訛りを持った声をかけられた。
慌てて身構えながら振り返ると、そこに居たのは一人の少女だった。
少女、とは言ったものの一見すると少女とは思えない。
身長はプロスポーツ選手であった三橋よりもさらに高い。
目測なため確かなことは言えないが、少なくとも185センチは軽く超えているだろう。
声の高さと、童顔と、特注と思われる制服のお陰でなんとか高校生だと分かる。
いや、先に挙げた三つを考えれば普通は簡単に高校生だと分かるだろう。
だから三橋が少女を高校生だと思えなかったのは、目に見える部分以外による要素が大きい。
雰囲気、そう雰囲気だ。
普通の女子高生とは違う剣呑とした雰囲気を持っている。
ただ立っているだけなのに隙もない、笑ってはいるもののこちらの様子を静かに伺っている。
これは喧嘩が強いとかそういうレベルではない。
武道をやっている、それも素手でやる形のものだろう。
人を倒すことだけを重点を置いて、飽きもせずに毎日毎日と体を苛め続ける。
そんな連中に素手と素手の対決で勝てるとは思えない。
しかし、丸っきり不利とは言えない。
なにせこちらには一撃必殺の鬼の手がある。
鋼の鍛えられた腹筋はもちろん、木の幹すら貫けたのだ。
鍛えているとはいえ目の前に居るのは女子高校生。
当たれば殺せる。
そのアドバンテージがあれば殺せる。
「えーっと、三橋 一郎さん……でええんですよね?」
「……ああ、俺は三橋だ……君は?」
「ああ、うちは大江 和那言います。さっきそこで進藤ちゃんと曽根村さんに会いました」
「!?」
その言葉とともに後ろへと素早く下がることで距離を取る。
明日香とスーツの男に会ったと言うことは三橋が殺し合いに乗っているということを知っているはずだ。
だと言うのに話しかけてきたと言うことは、少女も三橋と同じく殺し合いに乗っているということか?
殺し合いに乗っているのなら協力する選択肢も出来る。
「あ、先に言っときますけどうちは殺し合いなんてしませんよ」
だが、三橋の頭によぎった考えは否定される。
ならば何故三橋に話しかける。
これ以上犠牲を増やさないために三橋を殺すのならば話しかけたりはしないはず。
と言うことは、鋼と同じ、ということか。
そう言えば、大江和那と言う名前は先ほど電話で話した浜野朱里の言っていた名前だ。
それでいて殺し合いに乗っていない。
期せずして三橋は朱里に電話越しに放った言葉を実行することになったようだ。
「説得でもするつもりかい?」
「うーん……それはうちの役割やないと思います」
「……?」
「分かってるんでしょ? 進藤ちゃんは三橋さんを止めようとしてる、ってことぐらい」
「ッ!」
図星を衝かれたような気分だ。
そうだ、明日香は三橋を止めに来る。
三橋一郎の知る進藤明日香はそういう人間だ。
だが、そうだと言って簡単に気持ちを変える気はない。
「そうか、それは有難いな」
「……」
「探す手間が省ける」
三橋は亀田にやれと言われた仕事を破棄することはできない。
それは身体を支配する回路を埋め込まれているからではない。
何度も言うことになってしまったが、三橋自身がそれをしたくないからだ。
亀田の願いは叶えてあげたいし、亀田に喜んでほしいし褒美も貰いたい。
今までそうすることによって亀田に付き合ってきたのだ。
「多分、彼がアンタぐらいの年になったらそんな感じなんやろうな」
「なに?」
「ちょっと三橋さんが知り合いと似とってな。嘘をつくのがヘタクソなところとか」
「……」
「ドヘタクソや。気が良すぎて人を不幸にする嘘をつくことが出来ん人間や。
……びっくりやで、うちの知り合いとよう似とるで」
目の前の大江という少女の言葉が終ると同時に飛びかかる。
何となく不快だった。
目の前の少女の見透かしたような眼が三橋の癇に障るのだ。
目の前の少女のまるで三橋が善人で、無理をしていると言わんばかりの言葉に苛立ったのだ。
そうだ、鋼もそんな眼をして、そんな言葉を放っていた。
憐れむような、懐かしがるような、まっすぐな眼を。
諭すような、引き留めるような、綺麗な言葉を。
そんな眼は、そんな言葉は今の三橋にとって不快な物でしかない。
「おっと……」
三橋の突進を少女は紙一重で、しかし余裕をもって避ける。
やはり格闘技、それも動き方からして空手に近い物をやっているようだ。
空手、そう高校時代のクラスメートである元空手部の村上海士や他の空手部員の動きと似ている。
何度も空手部に乗りこんだ記憶の中の部員が目の前の少女のように動いていた。
ただ、今の動きにそれだけでは説明のつかない妙な感じを覚えた。
どう妙なのだ、と聞かれるとうまく答えられないが、とにかく妙だった。
とは言え、戦いの最中に思考に大部分を取られるのは危険。
三橋は相手を観察しながら距離を取り直す。
「なっ……!?」
「悪いけど、少し眠ってもらうで」
だが、距離を取ろうとする三橋よりも早く、少女は三橋の眼前に『ノーモーション』で迫ってきた。
訳が分からない、とはこういうことを言うのだろう。
足を動かした様子はなかった。
腕を振った様子はなかった。
肩が動いた様子はなかった。
しかし、少女の身体によって風が切られていく感触は覚えた。
目の前の少女は身体を動かさずに、体を動かしたのだ。
唖然としているところを、素早く突き出された少女の掌底が三橋の顎を捉える。
顎に押されるような感触が続き、そして突き出されるような衝撃が頭に長く響いていく。
ぐらぐらと、世界が横に横にとずれていくような感覚を初めて覚えた。
「こいつは……!?」
「かぁ……!」
接近戦という鬼の手を突き刺すチャンスも忘れて転がるように逃げる。
少女は意外そうな、それでいて複雑な顔をして三橋を眺めている。
「今の感触……サイボーグ?!」
少女の驚愕に歪んだ顔と何処か悲痛な声に対して、三橋は言葉を返さない。
正確に言うならば言葉を返す余裕がない。
立っていることすら危うい状況、気を失わなかったのが最大の幸運。
この状況はマズイ。
先ほどの動きを見るに正面からでは少女が迫ってくるのを悟るのは難しい。
「……くそっ!」
ならばここは引くしかない。
戦うにしても満足に動けない今の状況は危険だ。
殺される可能性はまずないとは言え、気絶すれば鬼の手を奪われる可能性は高い。
鋼から奪った支給品ならば、間違いなく殺すことができる。
きちんと発動して命中すれば人を十回殺しても余り得るほどの強力な武器なのだから。
ただ、回数制限とライターを使うことを抜いても準備に時間がかかること、そして場所を選ぶこと。
この三つの条件から今は使うことが出来ない。
故に現状は鬼の手が唯一の武器と言ってもいいだろう。
「あ、ちょい待ちや!」
水族館の作りは完璧ではないがある程度は把握している。
水族館と言う割には、ここはあまり入り組んだ場所ではない。
出入り口付近の一階ではなく、地下のトンネルや入り組んだ鑑賞水槽の傍を逃げ回るのが得策だろう。
幸いにも、この水族館は出入り口が複数ある施設だ。
逃げ切れる可能性が高い。
その利を生かして何とか逃げ回る、一瞬で考えれる策なんてそれぐらいのものだろう。
だが、三橋は逃げ切れるという確信に近い思いがあった。
三橋の体は走力パーツで強化してある、今の三橋の足は特別速くもないが遅くもない。
だが、そのスピードの基準は下手をすればプロをも凌ぐ超人揃いの裏野球大会が基準。
地の利+単純なスピード差、逃げることに重点を置けばほぼ安泰に近い確率で逃げ切れる。
しかし、少女は三橋のそんな計算を軽く無視し迫ってくる。
「くぅ……!」
「進藤ちゃんと約束したさかいな……とは言え、サイボーグや。悪いけどマジでいくで」
少女は三橋のスピードを簡単に上回り、正面へと立ち塞がる。
やはりおかしい。
確かに股下の長さとしなやかな身体ならばそれ相応のスピードは出るだろう。
だが、幾らなんでも速すぎる。
身体能力が優れている優れていない、鍛えている鍛えていない、とかそんなレベルではない。
何かがある、三橋が見落としている何かが。
「っ!」
だが、少女は三橋の思考に割り込むように蹴りを入れてくる。
鋭く速い、三橋は不様に階段を転げ落ちていった。
身体に鈍い痛みが広がる。
迫ってきている、何度も言うがこのスピードはあまりにも速すぎる。
目を放していたのはわずかな間、階段を駆け降りる音も聞こえなかった。
飛び降りた着地の音も小さい。
まるで高所から飛び降りてきたような、そんなスピードだ。
「!?」
不格好を承知でとにかく適当に鬼の手を振り回す。
当たりはしなかったが、向こうが距離を取るために離れてくれた。
恐らく鬼の手が非常にマズイ物だと悟ったのだろう。
劣勢に追い込まれた三橋がこの隙を逃すわけがなかった。
素早く振り返り、大急ぎで地下を駈けていく。
自分ではあの少女に勝てはない、それを三橋はハッキリと理解した。
戦略的撤退や仕切り直しなんて綺麗なものではない。
はっきりとした逃亡、恥も外聞もない行動。
三橋は体裁もなく懸命に走って行く。
目指すは別出入り口。
その瞬間、デイバックから二つの筒を取り出す。
一つは熱湯に入れ替えたペットボトル、振りまくだけで虚を突くことはできるだろう。
一つは三橋の切り札、鋼の元の支給品、恐らくこの殺し合いの中で最も強力な武器。
(あの子、早めに殺しておきたいな……)
接近戦しか出来ない三橋にとってあの少女はかなり相性が悪い相手だ。
銃器を手に入れればまた別だが、鬼の手を当てることすら出来ない現状はかなりまずい。
故に、三橋は一方の筒を静かに開いた。
◆ ◆ ◆
浜野 朱里は水族館に来ていた。
手に持つは六尺棒とデイパックだけ。
いつも肌身離さず持っていた武器は全て奪われた。
そう思うとひどく不安になる。
戦力の低下、という面での不安もあるだろう。
だが、姉妹たちとの繋がりであるものが奪われた、ということが何処となく空虚感を覚えた。
「……」
朱里は無言で、それでいて周囲を警戒しながら水族館の中へと入っていく。
理由は単純、先ほどの電話の主、三橋一郎を殺しに来たのだ。
参加者を減らしてくれる存在だが、紫杏を殺すようなことは断じてあってはならない。
大江和那は……保留だ。あまり考えたくない。
とにかく、紫杏と合流するにもとにかく動く必要がある。
ならば、危険要素も排除しておこうと考えたのだ。
不意打ちならば殺せる、銃を持っていない人間ならば確実に殺せる。
都合のいいことに、先ほどから音が聞こえる。
しかも複数で地を蹴る音と壁にたたきつけられる音。
間違いなく戦闘、ならばやることは一つ。
決着のついたところを横合いから思いきり殴りつける、それで終わりだ。
(下を駆ける音……一方が逃げ出して終わりか。なら、ためらう必要はないわね)
聞こえた音がした場所は階段の踊り場。
大丈夫だ、素手で行ける。
そう判断し素早く駆ける。殺すのに一分もかけない、数秒でケリをつける。
「なっ……!?」
だが、廊下の角を曲ったときに見つけた階下に想像もしなかった姿で身体を固まらせてしまう。
うすい青色を基調としたブレザー、そして190センチを軽く超える身長とそれに似合わない童顔。
その姿を朱里はよく知っている。
神条 紫杏とは別の意味で殺すことを躊躇う人物。
思えば高校時代で共に居ることが多かったかも知れない人物、大江和那だ。
「……お、おー、ようやっと見つけたで朱里」
「カズ……」
和那が少し驚いた表情を浮かべた後、手を上げてカツカツと階段を昇りながら話しかける。
戦闘のためか額から汗が流れている上、言葉にも疲れを感じさせる。
朱里はその様子にはっきりとした言葉を返せない。罪悪感に似た、らじくない感情が胸に渦巻いていく。
「走太くんと真央に聞いたで。アホなことやっとるらしいやないか」
「…………」
「誤解や、とは言わんのか?」
「……言わないわ。どうせアンタ信じないでしょ」
「信じるかもしれへんで?」
「嘘ね。アンタ、そう言うことは無駄に鋭いんだから」
吐き捨てる様に朱里は言葉を投げかける。
和那は相変わらず笑みを浮かべたままだ。
ひどく気分が悪い、まるでお前には私を殺せないと言われているようだ。
「退いてほしいの、カズ。ここに居る男に用があってね」
「三橋さんを殺すんか?」
「知らないのなら教えてあげるわ。その三橋って言う男は」
「殺し合いに乗ってんのやろ? そんなん知っとるで」
なら、と口を開こうとするところを和那の笑みで遮られる。
いつにも増して大江和那という女が余裕を持っている。
こんな状況だと言うのに、その余裕が朱里には不思議だった。
「朱里、うち少し考えたんや」
「……なにをよ?」
「どうにかして、殺し合い以外の方法でここから生きて帰れんかなって」
「はっ!」
その言葉に思わず笑ってしまう。
余裕ぶっている割には言葉は理想もいいところだ。
和那の言葉からは具体的な策を感じることが出来ない。
甘い、とことん甘い。
「アンタ馬鹿? いや、馬鹿だったわね。なら聞いてあげるわカズ。
首輪はどうするの?どうやってこの島から出るの?我威亜党とか言う頭のイカレた連中はどうするの?
少なくともこの三つは考えてるんでしょ?」
「そんなん、後で考えればええ」
「はぁ?」
あまりの返答に朱里は思わず、意味が分からない、と言った気持ちを表情に出してしまう。
この三つが解消されるのなら、朱里は喜んで殺し合いを放棄しよう。
最も、襲いかかってくる相手はその限りではないが。
「なあ、朱里。そうやないんや、そんな仕方なしに殺すとかやりたくないんや。
うちはまだ高校生のガキンチョや。お前や紫杏や彼と一緒に笑い合うような年ごろや。
それでええし、それだけで構わへん。
朱里、うちは完全無欠のハッピーエンド以外お断りや。
死ぬんは畳の上で息子やら娘やら孫やら曾孫やらに囲まれて死ぬって決めとるからな」
「……そんなの、無理に決まってるじゃない」
強く否定したいはずなのに、朱里はかすれた小さな声が漏れるように出ただけだった。
何故かはわからない。
おかしいとは思う。だが、否定することが出来ない。
「アンタは……私たちは、そんな平凡な日常なんて送れないのよ。
大げさな話じゃ決してないわ。
死ぬまで戦って、死ぬまで利用されて、死ぬ時は誰にも知られずにひっそりと、よ。
私たちはね、生きるために死ぬまで戦うなんて馬鹿なことしか出来ない類の生き物なのよ」
「アホなこと言うなや、そんなん抗ってみなぁ分からんやないか」
「無理よ、私とアンタはいつか死んじゃうの。
もちろん死ぬ場所はアンタの言う畳の上でじゃないわ。
打ちっぱなしの冷たいコンクリートの上で、誰にも見届けられず惨めに死ぬの。
……そういうものなのよ。アンタはどうなるかは知らないけど、私は間違いなくそう死ぬわ」
「そんな、そんな悲しいこと言うなや」
つかつか、と足音を立てながら朱里の目前まで和那が迫る。
人一倍背の高い和那と人一倍背の低い朱里の差は子供と大人以上のもの。
見上げる朱里の険しい目線と見下げる和那の笑っている目がかち合う。
そして沈黙が数瞬だけ続き、再び和那が口を開いた。
「朱里が居らんなったらうちは誰にツッコめばいいんや」
「関係ないわね、何度も言うけど私たちはドライな関係のはずよ。
アンタが思ってるような幸せな関係じゃないわ」
「朱里がどう言おうと、うちらはダチや。
うちがボケた時は朱里が突っ込んで、朱里がボケた時はうちが突っ込む。そうやろ?」
「……アンタねぇ」
「言っとくけど、これだけは譲らんで。朱里のやってることはうちにはどうしても許容出来んかってな。
どうしても進みたい言うんやったらうちの屍を越えて行きぃ!」
カッカッカ、と愉快気に笑いながら立塞がるように朱里の前に出る。
恐らくここをやり過ごしても死ぬまで追いかけてくるだろう。
それに、喧嘩は慣れたものだ。
思えば喧嘩と稽古の違いはあれど、会うたびに殴り合っていたのだ。
やるしかない、とため息を吐きながら身構える。
何故か六尺棒は、使う気になれなかった。
デイパックを地面へと落として和那を見据える。
最初に相対した時よりも威圧感を持っており、何処か余裕も感じさせる。
この一年弱の間で何倍も大きく成長したのだろう。
そう素直に思えると目の前の天才だ。
ふと蘇るのは、朱里と和那の通っている保険医でありジャジメントの一員でもある桧垣という男の言葉。
『貴方の代わりなら幾らでもいる』
この貴方と言うのは朱里だけを指している、決して和那のことを言っているわけではない。
熟練しているとはいえアンドロイドである朱里が、未熟ではあるとはいえ超能力者である和那を。
間違っても壊すような真似をするなと、そう言っているのだ。
そう考えていると、和那が迫ってくる。
身体を動かさずに、不自然な体勢で迫って来ているのは、こちらに向かって『落ちてきている』からだ。
彼女が朱里側へと落ちてきた原因となった超能力。
それは『和那本人にかかる重力の向きを変える』という能力。
単純な、それでいて強力な能力。
一山幾らのアンドロイドに過ぎない朱里とは比べ物にならない貴重な戦力だ。
だが、朱里は簡単に和那の拳を避わし当てるだけのジャブとはいえカウンターを入れた。
「くぅ……!」
この勝負、朱里は負けるとは思っていない。
勝率的に見れば六分四分、低く見積もっても精々割合が逆になるぐらいのものだろう。
何故なら、朱里には和那がいつ落ちてくるかぐらいなら分かるのだ。
落ちると言う動作は思っているよりも恐ろしいものだ。
想像してみればわかる、僅か10メートルとは言えそこから飛び降りるのだ。
幾ら和那が慣れているとはいえ、落ちる瞬間は身を強張らせる。
それは僅かな動きだが、構えが固められている和那が強張らせれば直ぐに見抜くことが出来る。
旧式だとはいえ朱里は戦闘用にカスタムされているサイボーグだ。
手数で言えば互角、単純な速さならば向こうが上。
だが、和那よりも朱里の方が目も良ければ耐久も優れている。
負ける要素が見当たらない、と言うほどではないが朱里が優位に立っているのは間違いない。
「てりゃい!」
「……」
腹にカウンターに入れたと言うのに、和那は体勢を崩したままで上段蹴りを入れる。
無茶な体勢で放った蹴り、だが異常なまでに重い蹴りだ、防いだ腕がビリビリと痺れを覚える。
彼女の能力は移動のためだけでなく攻撃にも転じることが出来る。
恐ろしいことに、能力を応用すれば彼女は真上に向かって体重を乗せた攻撃も出来る。
他にも掴んだだけでも骨を折ることも出来るし、超上空へ持ち上げて落とすことも出来る。
その上、和那自身が優れた武術家でもある。
恐らく槍、もしくはそれに準じた武器があれば間違いなく朱里は簡単に抑え込まれるだろう。
朱里に本来の武装を入れたとしても、難しいところだ。
そこまで考えた思わず笑みが浮かぶ。
最初はそれほどの差はなかった。
たとえ槍を持っていたとしても朱里の方が完全に上回っていた。
それは覚悟の問題とか以前の単純な技能の差が故だ。
変わってしまった。
目の前の少女はあの最低の世界で立派に生きていける程に強くなっているのだ。
蹴りの衝撃をそのままに、痛みを逃がすように後ろへと蹴りの勢いに任せて飛ぶ。
衝撃を逃がすために後ろへと飛ぶ、言葉にすると馬鹿らしいものだ。
しかし、それぐらい出来なくてはあの世界で近接戦闘など出来はしない。
二・三メートルほど飛ばされ、階段を転がり落ちる。
鈍い痛みに襲われながら体を立て直そうとするが、和那は既に目の前に迫ってきていた。
機動力では和那が明らかに上回っていると認めざるを得ない。
そして間髪をおかずに朱里の顔に強い蹴りが叩き込まれる。
容赦はない、もちろん容赦なんてしていたらその隙に反撃している。
階段の踊り場の壁に大きく叩きつけられて、肺の中の空気を全て吐き出す。
だが、それが助かった。
痛みには慣れている、追撃のために目の前に迫っていた和那。
その蹴りに対して、滑るようにしゃがみ込んで躱わす。
完全に避け切れず頭に僅かに蹴りが決まるが、その痛みを無視するように足払いをかける。
和那が強制的に重心を低くするところを狙って攻撃を入れようとするが――――
「……ちっ」
だが、それは決まりはしなかった。
和那の重力を操る能力で朱里とは逆方向に向かって『落ちて』いったからだ。
急な動作だったためか、上手く着地できずに背中を壁に思いきり叩きつけられる。
それでも朱里のワン・ツーをまともに食らうよりは何倍もマシだっただろう。
もし決まっていたら痛みのあまり見せた隙で良いように責められていただろう。
とは言え、結果は同じだ。
朱里もこれで決まるとは思っていなかったし、そこで手を止めるつもりなどさらさらない。
和那には劣るとはいえ素早い動きで迫る。
まずは鳩尾に拳を入れて動きを止め、次に意識を刈り取る顎への一撃。
これで終わりだ。
これで終わらせて、人を殺しに行く。
そこまで考えて、ふと思考に意識をやってしまう。
結局自分はどうしたいのだ、と朱里は考えてしまったのだ。
和那を殺す、という選択肢が浮かばなかった。
おかしい、明らかに自分はおかしい。
これが神条紫杏ならばまだ分かる、神条紫杏は浜野朱里が命を懸けてでも守るべきだと思った対象だ。
だが、何故大江和那を殺すという選択肢が浮かばなかったのだ。
「朱里ぃぃぃぃ!」
その声にはっ、とさせられる。
動きが鈍っている、このままではマズイ。
直ぐに動きに集中させようとするが、もう遅い。
伸ばした朱里の腕が届くよりも速く、和那は懐に潜り込み、全体重をこめた拳を顎へと打ち上げた。
瞬間、この意識を刈り取られそうなほど痛烈な一撃で、抱えていたもやもやの正体を何となく理解した。
それは、今はもう懐かしい記憶と春先に起こった二つの大事な記憶。
そのどちらも痛みに襲われる中の、朱里にとって忘れることのできない記憶だ。
―――――それは、かけがえのない姉妹を失った記憶と、かけがえのない親友が出来た記憶。
どうして偽名を使う際に和那の名前を使わなかったかが分かった。
――――それは不快だからではなく、友達を利用するような真似をしたくなかったから。
どうして三橋に紫杏だけでなく和那も殺すと言われた時に不快な感情が生まれたか分かった。
――――それは和那が朱里にとって、居なくなって欲しくない人物だったから。
どうして和那を殺すと言う選択肢が浮かばなかったかの分かった。
――――それは浜野朱里にとって、大江和那は大切な友人だから。
ふらつく足元。ぐらぐらと揺れる脳髄。力の籠らない身体。
和那は警戒するように朱里を見ている。
それとは対照的に朱里は口元を弛ませる。
おかしくてたまらなかった。
朱里にとって大切なのは自分だけのはずだった。
大切だと思った姉妹はもう死んでしまい、さらにその姉妹は朱里に生きていて欲しいと思ったから。
だと言うのに、今は大切なものが自分以外にも出来てしまっている。
「……カズ」
「なんや」
未だに警戒を解こうとしない。
思ったよりも自分は信用されていないようだと朱里は少しおかしくなる。
まあ、この友人兼弟子とこれから親交を深めるのも悪くない、とも思った。
「とりあえず、お腹空いたから何か食べましょうか」
「――――! ああ、ええで!」
一瞬で警戒を解いて駆け寄ってくる和那。
それがどうにもおかしくて朱里は思わずクスリと口を動かすだけとはいえ笑みが浮かぶ。
一度笑みがこぼれるともう止められない。
クスリと笑うだけでなく大口を開けて笑いが零れる。
和那はその様子を見て一瞬だけキョトンとした顔を見せるが、すぐに釣られるように笑いだす。
朱里と和那自身にも何故笑っているのかよく分からない。
ただ、おかしくて楽しくて、とても嬉しいと言うことだけは分かっている。
笑いを止めようとはしない。
まるで二人は凱歌を歌いながら故郷へと帰る兵士のようだ。
彼女たちの笑いは事務室にたどり着くまで続いた。
「は、ははは……あー、おかし」
「なんやねんいきなり笑いだして」
事務室のソファーに腰かけて二人は僅かに出た涙を裾で拭う。
数十秒ほど笑いをおさめることに時間をかける。
事務室はソファーと作業用の机、そして監視カメラと意外と広い作りになっている。
「……なんやえらい荒れとるなぁ」
「三橋って奴が漁ったんでしょうね」
「そう言えば、朱里。なんで三橋さんのこと知ってるの?」
しえん
意外そうな顔と声で和那は朱里を見る。
朱里は眉をひそめ機嫌の悪そうな声で答える。
あまり良い関係とは言えないようだ。
「殺し合いに乗ってるそうよ。……まあ、アンタも知ってるけど」
「あー、まあ朱里が来るまでどつきあったし。って、そう言えばなんで朱里はそれを知ってんの?」
「これでここに連絡した時に、ね」
朱里はデイパックから名刺大の厚みのある機械を隣に座っている和那の膝に放り投げる。
少し慌てた様子で和那は受け取り、それをじっと眺めて確かめるように呟く。
「ケータイ……?」
「その中に入ってた番号の一つがここでね。それで掛けたら三橋で出たってわけ。
殺し合いに乗らないとアンタや紫杏を殺すーとか言う意味不明な脅しかけられたわ」
「あー、これで進藤ちゃんや曽根村さんに電話したんか」
「……知ってたの?」
少しだけ、朱里の声の調子が沈み和那からも目を逸らす。
殺し合いに乗っていた、と言うことに負い目を感じているのだろう。
「ああ、構わへん構わへん。幸いっていうんかな、死んだ人も怪我した人も居らんし。
ほら、あれや。大事なんはこれからのことやーってよく言うやろ?」
「べ、別に後悔とかそういうわけじゃ……!」
「照れへんでもええって。それよりはよメシでも食お。お腹ペコペコやねん」
大げさに腹を押さえて、机の上に置かれていたカップ麺を眺める。
しょうゆ、塩、味噌、トンコツと何でも揃っているが和那はとりあえずと言った様子で塩を手に取った。
「朱里は何にするー? 色々あるでー」
「私は……しょうゆでいいわ」
「りょーかい」
その言葉を聞くと魔法瓶に手を伸ばして素早くお湯を注いで行く。
流れるような手慣れた動作だ。
そして、いつの間にか他のカップ麺から抜き取った大量のかやくを入れていく。
和那の突然の行動に驚いたのか朱里が目を大きく見開く。
「な、何やってんの、アンタ?」
「んー、どうにもすきっ腹で……かやく大量に入れて補おうと」
「なら二個食べればいいじゃない」
「阿呆! 乙女がそんなカロリー無視できるかい!」
「……って言うか、それって美味しいの?」
「よう知らんけど、まあ具沢山でお得度高いやん」
無茶苦茶な論理を言いながら和那はソファーに腰掛ける。
朱里としてはそのようなマニュアルから逸脱した冒険をする気にはならない。
朱里は大人しく平均水量平均時間で行くことにする。
未来の可能性の一つにそんなえり好みすら出来なくなることを知らずに。
「お、出来たみたいやで」
「少し早くない?」
「そうか? まあ、少々構わんやろ」
「……よっぽどお腹空いてるのね」
「あー、どうにも疲れやすくてな……なんかいつもより疲れやすいわ、歳かな?」
「言ってなさいよ」
カップ麺と同じ場所に仕舞われていた割り箸を取り出して、蓋を開ける。
その瞬間、湯気が顔に当たり思わず頭を下げる。
いずれにしろ美味しそうなものだと言うことは確かだ。
割り箸を二つに割り、同じタイミングで麺を啜る。
「おお、美味い」
「そうね」
「けど、ちょっとスープが少ないんがなー」
「……かやくを入れ過ぎなのよ」
「んー、まあ美味いから別にええか」
「アンタが構わないって言うのなら別に良いけど……それよりこれからどうするかよ」
まったりとした空気の中で朱里が真剣な顔で切り出す。
和那は麺をすすりながら目だけを動かして朱里の話を聞く。
そんな呑気な和那に特に注意をするわけでもなく、朱里はラーメンを啜りながら話を続ける。
「一先ず紫杏と合流ね。悪いけど他の奴を信用は出来ないわ」
「んー、確かに紫杏は心配やな。あれでも一応ただの女子高生やし」
神条紫杏、朱里がいま最も安否の確認を急ぎたい人物。
朱里が命に代えてでも守ると決めた、ただ一人の人間だ。
紫杏は朱里のことを友達だと思っているようだが、やはり朱里からすると主従の関係だ。
主が紫杏で従者が朱里、やはりそれが一番しっくりと来る。
そして、その紫杏は殺し合いに乗っている可能性が高い。
自身の能力と現状を考えた結果、生き残る可能性が殺し合いに高いから乗った。
神条紫杏と言う女はそれを平然と考え、平然と実行に移せる一面を持っている。
だからこそ朱里が紫杏に入れ込むのだが、やはりそれは少しマズイ。
和那を殺したくない、と朱里ははっきりと認識してしまった。
殺し合いに乗る手伝いは出来ない。
となれば、残された手段は説得しかない。
骨は折れるだろうが、やるしかない。
覚悟をきめて、話を次に進める。
「その後は……とりあえず首輪ね。
紫杏もさすがに工学系には詳しくないからこれは私が担当するしかないわね」
「おー、頼りになるのー!」
「茶化すんじゃないわよ、大事な話なんだから。
とりあえず、方針らしい方針なんてこんなものでしょ……あと、アイツも探すの?」
「あったり前や! もちろん十波君だけとちゃうで! 全員で生きて帰るんや!」
「はいはい……でも、正直意外ね。
私はなんだかんだでアンタはかなりドライな奴だと思ってたんだけど」
朱里の描く和那は、馬鹿ではあるが人の感情の機微には鋭くそれを計算して動くタイプの人間だ。
いわゆる世渡りの上手いタイプ。
夢もあまり見ず、人は汚い部分を持っていることを知っているはず。
なのに、全員で生きて帰る、という言葉を放つのはひどく意外だった。
「……これは全部あのメガネの所為やろ。
殺し合いに乗った奴を心からなんて恨めんわ、しゃあない部分が大きすぎる。
もちろん、だからって全部許せるわけやない。
知り合い殺されたらうちもキレるし、多分思いっきりぶん殴らな気が済まん。
でも、それだけや。間違ったと認めて立ち直ろうとするんやったら喜んで助けたる。
それでええと思うんや。憎んだり憎まれたりとか……そんなん、辛いだけや。
まあ、あのメガネの場合は話は別やけどな。
警察にぶち込むぐらいはしたるわ。
悪どいことやって、刑務所から出てきたら死ぬまで思いっきりぶん殴り続けるけどな!」
「ふーん……」
正直、甘い話だなと朱里は思う。
簡単に立ち直れるわけがないし、そんなことをしていたら時間がいくらあっても足りない。
だけど和那の気持ちは分かる。
和那は妥協したくないのだろう。
喧嘩の最中に喋った『ハッピーエンド以外お断り』という言葉。
きっとそれが和那が動く理由の根っこになっているのだろう。
実際はまだ六時間しか経っていないというのに相当数の人間が死んでいるのだ。
たとえ運よく生き残ってもハッピーエンドなんて口が裂けても言えない。
彼女はどんなに辛いことがあっても、和那自身の力が及ぶ限りハッピーエンドを目指すだろう。
296 :
ゲーム好き名無しさん:2009/07/20(月) 11:13:51 ID:nvI4sGWDO
いえー、さるった
「まあ、良いんじゃない。ところでアンタは面白い情報でもないの?」
「あ、あるであるで!」
嬉しそうに声を上げる和那、その様子は人懐っこい大型犬を思わせる。
そんなことを朱里が思っているのを気付いていないようで、嬉々として口を開く。
「なんでもなぁ、あのメガネはタイムマシンをもっとるらしいで!」
「………………………………………………………はあ?」
空いた口がふさがらない、とはこういうことを言うのだろう。
タイムマシン、実にファンタジーだ。
そんなものがあるわけがない、現実にネコ型ロボットは作られる気配すらないのだ。
その代わりと言わんばかりに殺人機械、アンドロイドは大量に作られているが。
と言うか、多分ネコ型ロボットが作られるのはずっと後だろう。
高性能AIを搭載するならメイドロボよりも戦略兵器の方が先に作られる。
それは歴史を振り返れば簡単に分かることだ。
「なにそれ頭湧いてるんじゃない?」
「き、きついなぁ。でもでも、たぶんマジやで? 現にうちが五人も昔の人と会ったんやから」
「馬鹿にされてんじゃないの?」
朱里に取りつく島もない。
端からあり得ないと言う考えで話を進めるのだからそれも仕方ない。
と言うより、よっぽどのことがなければ向こうがからかっていると思うのが普通とも言える。
「いや、でもやで、よー考えてみ。
あり得んことが続いてるんやから、それぐらいのことがあってもおかしゅうないやろ」
「あり得ないものはあり得ません」
「ほら、超能力かもしれへんで? ジャジメントかて全部知ってるわけやないんやろ?」
「そんなヤバいのがあれば目につくわよ……多分」
「いや、でもタイムマシン的な力があれば未来から来たってことだってあり得るやろ?」
「うっ……!」
「それに皆が皆うちと会ったとき口裏合わせとる様子はなかったで。
第一、二人に至ってはうちにそのことを教えた人と会ってもおらへんかった」
「……でもねぇ」
確かに和那の言い分も通らないわけではない。
同時に変な理論をでっち上げる人間の言葉を鵜呑みして、辺りの人間からはあまり触れられないようにされている可能性も同じくらいある。
正直な話なら朱里は和那が痛い人間だと思われている可能性の方が高いと思っている。
支援
だが、だからと言って流してもいい話題ではない。
全くあり得ないということ言い切ることが出来ない。
そして、和那はここに来る前に曽根村と言う男と進藤と言う女に出会ったとも言っていた。
つまり二人組が同時に質問されて、タイムマシンの存在を認めたということだ。
鼻で笑うことも出来ない。
出来ないが、やはり信じることは理性が拒む。
「……まあ、考える余地がないわけじゃないわね。今は置いておくけど」
「冷たいなあ……んで、どうするんや?」
「あんたの口ぶりだと仲間が居るのよね」
「居るでー! 八神さんに真央に走太くん!」
「ふぅん……」
真央と言うのは恐らく黒猫のことだろう。
確か和那は『真央と走太くんを襲った』と言っていた。
それに真央、マオ、つまり猫だ。
安直ではあるが黒猫という肩書きに合う。
あの正義の味方を自称する女なら殺し合いになんて乗らないだろう。
信用は出来る、出来るがやはり和那や紫杏ほどではない。
だが、残りの二人はどうか分からない。
一方は子供だから、なんて言い捨てれるわけがない。
子供は簡単に残酷になれる。純粋で我儘な子供はある意味殺し合いに向いてると言えなくもない。
最初に亀田に反抗したような子供の方が少ないのだ。
大人も安全とは言えない、騙すことに慣れているのだから。
ただ、大人は勝手に考えすぎてくれるから楽だ。
「とりあえず、紫杏を探しましょ。それから考えたんで良いでしょ」
「せやな、んじゃさっさとメシ食おうか」
和那の言葉に朱里は頷き、同時に二人はカップを持ち上げて流し込むように具とスープを胃に収めていく。
真面目な話、乙女のやることではない。
花も恥じらうどころかゴミ漁りの鴉もビックリの荒々しさだ。
カップ麺と割り箸、その他のゴミは片付けずに無遠慮に机の上に置いておく。
どうせ亀田の用意した会場だ。
わざわざ綺麗にするのも馬鹿らしい。
「さ、行くわよ。アンタが居れば車なんかよりよっぽど便利だから助かるわ、少し怖いけど」
「悪い、それ出来へん」
「……はぁ?」
「なんや、ひどい疲れるんよ。いつもは歩くよりも楽なぐらいやのに。
正直、今も三橋さんと朱里との喧嘩で結構動き回ったさかい眠りたいぐらいお疲れやで」
「……ふぅん。しょうがないわね、歩いて行くわよ」
ここで和那が嘘をつくわけもない。
先ほどの食事は情報交換も兼ねていたから問題ない。だが、移動時間を延ばす意味はない。
無駄な時間を惜しいことぐらい和那も分かるだろう。
恐らく本気で疲れを感じているのだ。
「カズ、これ持ってなさい」
「っと……棒か。へえ、結構頑丈なええ奴やん」
六尺棒を手渡すと感触を確かめると、満足そうにほほ笑んだ。
これで戦闘は楽になった。
朱里が危険になったとも言えるが、和那の疲れが酷いと言う言葉が本当ならば体力を抑える必要がある。
ならば、全身自体が凶器の朱里よりも、天才とは言えただの人である和那が武器を持つのは当然だ。
「後は、道具を一つに纏めておきましょう。無駄な荷物は邪魔よ」
「つまり、じゃんけんやな!」
「……なに言ってんの?」
「じゃんけんで荷物持ちを決める、これは常識やろ、常識!」
「……まあ、別にいいけど」
「おっしゃ、いくでー! 最初はグー、じゃんけん、ぽん!」
和那が出した手はグー、朱里が出した手はパー。
結果は朱里の大勝利。
ニコリともせずにデイパックの口を開き、和那のデイパックに物を詰め込んでいく。
支給品一式、携帯電話、塩素系合成洗剤、酸性洗剤、油、ライター。
これですべて。
そのデイパックを見るからにしょげている和那へと押しつけるように投げつける。
「問題は色々あるわ……首輪とか面倒くさいことのこの上ないわね」
「……ま、大丈夫やろ!
なんてたってうちらは地上最強のコンビ、ファーレンガールズやからな!」
その言葉にピタリと足を止める。
その様子に和那は先ほどはしょげていた顔を、どうした、と言わんばかりに上から眺めてくる。
朱里は額をぴくぴくと痙攣させながら、ゆっくりと口を開いた。
不自然に頬が吊り上っているのがまた不気味だ。
「……ちょっと待ちなさいよアンタ! それ、意味分かって――――――――――――
◆ ◆ ◆
水族館に満たされたのは、爆音。
水族館に広がったのは、閃光。
崩れていく。
魚を鑑賞する、と言う趣をもった娯楽施設は無惨にも崩れていく。
端目から見れば、何が起こったのか理解できなかっただろう。
沈んでいくのだ、巨大な水族館が地中へと。
見るものが見れば『奇跡だ』と呻くだろう。
見るものが見れば『秘密基地だ!』と喜びを露わにするだろう
見るものが見れば『爆発か……』と冷静に分析するだろう。
そう、これは奇跡でも基地の変形でもない。
人が起こした夢のない破壊行動、爆発。
それは『トンネルバスター』という兵器が起こした一つの施設と二人の人間を巻き込んだ一つの爆発。
しえん
◆ ◆ ◆
三橋一郎は大きな窓を鬼の手でぶち破り、そこから外へと出る。
足場は安定している。
西側の窓のため、ここをまっすぐに進めば病院やホテルへとたどり着けるはずだ。
『逃走経路』を確かめて、ようやく準備完了。
そして、壊した窓から階下、つまり地下へと目がけてライターを投げ込み猛ダッシュで離れる。
その瞬間――――爆音が響き、水族館が沈んでいった。
それは支給品、トンネルバスターの仕業。
無色無臭の空気と混じり合うことによって非常に高い爆発性を持つガス。
三橋に勝手は一切分からないが、それが強力な兵器であることは説明書を読むことで理解した。
そして、ライターを用意し、ガスの充満した地下へと放り投げる。
轟音と共に建物を支えていた柱が崩壊し、さらにトンネルバスター自体の威力で地面を壊していく。
綺麗に水族館が地面へと沈みこんでいく。
ある意味壮観だった。
これに巻き込まれたら生きて出ることは不可能だ。
予想以上に強力だ、つくづく自分が手に入れて良かったと思わせる支給品だ。
あの少女から支給品を奪えなかったのは非常に残念ではあるが、贅沢は言ってられない。
わけの分からない動き方をする少女を確実に殺せて良かったとも考えるべきだ。
しかも、音から判断するに少女は直前に誰かと殺し合っていた。
事務室に入っているのが見えたことから和解したようだが、そんなことは関係ない。
トンネルバスターを使って殺す人間が増えただけだ。
「これで……五人目か」
ポツリ、と呟く。
一人目は名も知らぬ青年、二人目はアルベルト、三人目は鋼、四人目と五人目は大江和那と顔も名前も知らない人間。
僅か八時間の間で五人もの人間に手をかけた。
それなのに普通に動けているということが三橋自身にも少しだけ意外だった。
びくびくと怯えることもなく、驚くほど冷静に物を考えて動いている。
「これも、亀田くんの仕業かな……」
支援
頭に浮かんだのは亀田によって体内に埋め込まれた回路のことだ。
これは思考を縛ることはできないが、身体を自由に動かすことが出来ると言う回路。
絶対服従回路とでも言うべきか。
そんなものがあるのなら、思考を誘導する回路があってもおかしくはない。
それを埋め込まれたのではないかと三橋は疑ったのだ。
「……はは、でも、それはないな」
そんな物があるのならとっくに使っているはずだ。
使っているのなら使っているで、人を殺したときに抱く嫌な気持ちを覚える意味も分からない。
だから、これは自分自身の意志で選んだ行動だ。
亀田の思いに応えたいと言う三橋自身の意志で、五人の人間を殺したのだ。
三橋は少しだけ沈んだ水族館を見る。
この惨状は自分の仕業。
沈んだ水族館には三つの死体が埋まっている。
大江和那の死体と、鋼毅の死体と、名も顔も知らぬ人間の死体。
その全てがお魚さんの仲間入りだ。
次に鬼の手に目を移し、自分のやったことを再確認する。
血に染まりさらに禍々しさを増した鬼の手。
武器と言うものは血を吸うことで妖艶な雰囲気を放つのだと三橋は初めて知った。
正しい使用法をしてこそ道具は輝くと言うことなのだろう。
しえん
支援
僅かに考え込む。
思えばこの仕事をしてから考えることが多くなった。
(……殺すだけだ、今はとにかくそれだけを考えよう)
眠れば悪夢にうなされるだろう。
だが、しっかりと仕事をこなせば亀田の感謝の言葉で幸せになれる。
三橋は僅かに俯いた後、すぐにそこを立ち去った。
【H-6/水族館付近/一日目/午前】
【三橋一郎@パワプロクンポケット3】
[状態]:打撲 エネルギー70%
[装備]:鬼の手、パワーと走力の+パーツ一式、豪力
[道具]:支給品一式×2、予備バッテリー
[参戦時期]亀田の乗るガンダーロボと対決して敗北。亀田に従わされしばらく経ってから
[思考]
基本:亀田の命令に従いバトルロワイヤルを円滑に進めるために行動する。
1:少しだけ休んでから移動する。
2:参加者を積極的に探して殺す。
3:もしも相手がマーダーならば協力してもいい。
4:亀田に対する恐怖心。
[備考]
※萩原(名前は知らない)は死んだと思っています。
※大江和那と浜野朱里(名前と姿が一致しない)が死んだと思っています。
※大江和那の能力の詳細を一切知りません
※トンネルバスターは一回分です
【トンネルバスター@パワプロクンポケット10(11?)】
浜野朱里の体内に内蔵された高性能の爆破兵器。
無色無臭のガスで人間が察知するのはまず不可能。
威力は強大で廃ビルとは言えその半分を狙って壊すことが出来る。
平地で単純に爆破させるよりも建築物を壊して二次災害を起こす方が強い。
取り扱いも楽で場所を選ぶことを除けば便利な兵器である。
ただし、ガスは朱里の尻から出る。
今回は缶に詰め込み支給した。
しえん
◆ ◆ ◆
「朱里ぃぃぃ!!」
和那は大声で叫びながら積み重なった瓦礫を紙切れのように吹き飛ばしていく。
これも重力を操る能力の応用。
強く瓦礫も自分自身だと思いこめば、自分が落ちて行く方向に吹き飛ぶ。
これは普通に使うよりも集中しなければいけないため、疲労が大きいが構った事ではない。
六尺棒をテコの原理で上手く使いながら探索を続ける。
あの時、朱里が何か言おうとした瞬間、凄まじい音と同時に地面が沈んでいった。
如何に優れたアンドロイドであろうと、足場が崩れてしまえばなにも出来はしない。
しかし、和那は確かに感じた。
自分の背中に痛いほどに叩きつけられた平手を。
そのおかげで速く反応出来た。
和那は思わず地面が崩れた瞬間に能力を使い、瓦礫の下敷きになることは免れたのだ。
最も直撃を免れただけで、水族館の瓦解に巻き込まれ怪我を負っている。
それでも生きている、和那は生きている。
動けるのなら、朱里を探すしかない。
僅かに涙で潤む目を拭いもせずに瓦礫を退けていく。
大きな瓦礫が少ないのがせめてもの救いだ。
「うっさいわねぇ……」
数分ほど朱里の名前を叫びながら探索を続けていると、何処からか声が聞こえる。
その声を和那が間違えるわけもない。
不機嫌そうな高い声色、ここ一年間毎日聞いていた声だ。
間違えるわけがない。
間違えるほど和那は薄情な人間ではないのだ。
支援
「朱里!」
今まで以上の大声で呼びかけ、声のする方向へと駆ける。
瓦礫が積み重なった影に朱里が倒れていた。
顔をしかめているものの、声を出せることから大事ではないと思いほっと息をつく。
「あんまり大声出さないでよ、うるさいから」
「え、あ、いや、その、すまん」
「……で、なんでアンタはこんな所に居るの?」
「そら、朱里が心配で――――」
「あー、良いから、そう言うの。私は……まあ、もういいから」
「……朱里? ……って、な!?」
和那は朱里の顔から胴体に視線を下げていく。
そこに異様な見覚えのない物体があった。
朱里の身体のちょうど真ん中に一本の短い、しかし確かな鉄筋のようなものが刺さっている。
それに気づいているはずなのに、朱里は何ともないように話をしている。
「多分、下の階に爆弾仕込んだわね。瓦礫に巻き込まれるとはまだまだ甘い」
「……嘘やろ、朱里」
「本当よ、爆発なら何回かやったことあるんだから」
「そっちやないわアホ!」
「……だからうるさいって言ってるでしょ」
「どうなっとるんか分かっとるんか!?」
「分かってるわ、わかってるから、聞きなさい」
端目から見ればひどくおかしな光景だろう。
煤で汚れているとはいえ比較的軽症な和那がうろたえ、瓦礫にサンドイッチされ鉄筋で貫かれた朱里が落ち着きを払っている。
普通ならばどちらもうろたえるものだろう。
だと言うのに、朱里は相変わらず平然とした口調で和那を諭すように言葉を続ける。
「……多分、下手人は三橋ね。超能力者って可能性はあるけど十中八九支給品でしょ。
数は……分かんないわね。アンタはさっき言ってた仲間と合流しなさい」
「朱里はどうすんねん!」
「あー、私は……まあ、なんとかするわよ。なんとか」
「なんとかってなんやねん!」
「聞きなさい!」
「……!」
落ち着いた声から一転、大声で和那を諌める。
「……アンタ、言ったわよね。皆で帰る、って。なら、三橋を止めてみなさいよ。
それさえ出来ないならアンタはただのホラ吹きに過ぎないわよ」
「せ、せやかて朱里が……!」
「私は大丈夫よ、ちょっと最近アンタ私のこと舐めてない?
言っとくけどね、こんな怪我なんて軽傷よ軽傷。足がなくなって初めて重傷って言うのよ。
幸いと言うか私は頑丈だから、って言うかこれぐらい喋れてる時点で察しなさい」
「……」
「ほら、早く行きなさいよ。アンタならこの島一周するのですら二十分もかからないでしょ?
その体力温存するためにも、こんなところでこんなことやってる場合じゃないでしょ」
「……すまん、朱里。パッとやってパッと帰ってくるさかい」
「駄目駄目、手抜きせずにじっくりとやりなさいよ。
あと、紫杏を探すことも忘れないでよ!」
ここで初めて朱里は笑い、じたばたと手を動かす。
和那は笑いもしなければ、その姿を見もしない。
ただ、俯いた状態で立ち尽くしていた。
それを十数秒ほど続けていたが、和那の体が急に中へと浮いていく。
急スピードだ、どんどんと和那の体が瓦解した水族館から離れていく。
空へと、そう、空へと落ちていく。
高さにして約50メートル、これほどの長距離落下は和那は滅多にしない。
恐怖心は不思議となかった。
きっと、空が綺麗に晴上がっている所為だろう。
本当に晴上がっている。
雲と言う遮るもののない、気を失いそうなほど真っ青な空と、東の空に堂々とまばやく太陽。
どこまでも落ちていけそうだ。
少しだけ、何処までも広がる空を呆ける様に眺めた後、涙が零れた。
何故、涙が流れているのかは理解している。
それは大切な親友を失ってしまったから。
和那だって馬鹿ではない、朱里の言葉がすべて嘘だってことぐらいは分かっている。
だけど朱里は先に行けと言った。
「……行こか」
ぽつりと呟き、手元の六尺棒をぎしりと音が鳴るほどに強く握りしめて重力の方向を変化させる。
先ほどまで顔が圧で痛いほどに猛スピードで落下していところを、一瞬の間もなく逆方向へと落下する。
急な重圧で思わず胃の中のものを吐き出しそうになるが、ぐっと噛みしめて
そして地面から約五メートル、その瞬間に重力の方向の変更を交互に行っていく。
地面に身体を打ちつけないためとはいえ、やはり少し体は辛いところがある。
ゆっくりと立ち上がるが、身体を起き上がるよりも早く膝が抜ける。
「なっ……!?」
頭が痛む。
身体が、ではない。頭が痛むのだ。
こんなことは初めてのことだ。
いや、思い返してみると初めてではないことに和那は気付く。
これはあの夜の時と同じ。
朱里との喧嘩で一矢報いた時と同じ感覚。
頭がぐらぐらと揺らされているような感覚と体に力が全く入らない現状。
気絶する!、とここでようやく気付いた。
疲れだけだからと思って甘く見ていた。
体中に残る痛みとガンガン揺らされる意識。
(せ、せや、せめて携帯で連絡を……!)
朱里が詰め込んだデイパックの中にある携帯電話の存在を思い出し、破くようにデイパックの口を開ける。
ひっくり返すようにして中を漁っていく、出てくるものは食料や水やメモ用紙と言った要らないものばかり。
ようやく見つけた
「電話帳……! 病……い……ん……」
だが、そこまで。
携帯を開いたまま、沈んだ水族館をバックにして。
和那は半強制的に意識を手放してしまった。
【G-6/水族館/一日目/午前】
【大江和那@パワプロクンポケット10】
[状態]:全身打撲、疲労(大)、気絶
[装備]:六尺棒
[道具]:支給品一式×2、不明支給品1〜3、携帯電話、塩素系合成洗剤、酸性洗剤、油、ライター
[思考]
基本:バトルロワイヤルを止める。
1:……………(気絶中)
2:朱里ぃ……
3:病院へと戻る。
【備考】
※重力操作にかけられた制限の存在に漠然と気付きました。
○ ○ ○
カズの気配が消える。
どうやら足音がしないことから重力操作で立ち去ったらしい。
馬鹿なカズ、無駄な体力の消費を避けるべきなのに。
しかし、体中からずきずきと鈍い痛みが広がって辛いことこの上ない。
上半身、というか口は簡単に動くのに下半身は既に動かないということは回路のショートだろう。
人間で言うなら脊髄の損傷か。
しかも、なんだか視界がふらふらと揺れているような気がする。
……何度考えても致命的な傷だ、そのうち死んでしまうと言う怪我の典型だ。
ぺらぺらと喋ったのも少し不味かったかも知れない。
ふむ……カズに嘘をついてしまったか。
まあ、嘘も方便と言う奴だ。
悪いことには違いないが、カズもそのうち納得してくれるだろう。
紫杏……どうしているのだろうか?
頭のいい紫杏はきっと悩んでいるだろう。
紫杏をサポートするのもカズに任せてしまったのも申し訳のないことの一つだ。
不思議とさっぱりとした気持ちで満たされていく。
そのことに申し訳がない気持ちも出てくる。
姉妹の亡骸を越えて今まで生きてきたのに、その命を自分勝手な理由で捨ててしまった。
怒っているだろうか?
私としてはやはり姉妹は大事な人たちだ。
その人たちを裏切ったとも取れなくもない行動だ。
駄目だ、ネガティブになり過ぎている。
逆に考えてみよう、私が姉妹の立場だとしたら、どう思う?
……許すな、きっと許す。
喜ぶかどうかは微妙だが、多分許す。
悪いことをしたわけではない。
私は後悔なんてせずに、私がしたいと思ったことをやった。
うん、後悔もない。
後は死ぬだけだ。
死ぬことは怖いが、あのままジャジメントの手駒として生きるのも嫌なものがある。
そう言えば、死んだ後はどうなっているのだろうか?
死後の世界とかいう奴があるのだろうか?
それなら、姉妹に会って謝ろう、死んでしまって御免、って。
その後、胸を張って友達が出来たと言おう。
それとも、天国ではなく来世とかいう奴に直行なのだろうか?
ならば、もし来世なんてものがあって、アンドロイドにもそれがあるのなら。
どうか、次は皆でただの人間に―――――
【浜野朱里@パワプロクンポケット10 死亡】
【残り40人】
※水族館が沈没しました。
※浜野朱里の死体と鋼毅の死体は水族館に埋まっています。
投下終了
さるさんに二回も引っかかるとはこの海のリハクの目を(ry
おお朱里が死んだか
乙
投下乙です!
朱里死んじゃったよ…
結局マーダ―としてはなにもしてないけど、やっぱりカズとは親友なんだよね
朱里の遺志を背負ったカズの今後に期待
保守
保守
久しぶりに来た。
遅ればせながらGJ!と言わせて頂こう。
首里の最後は胸が詰まりました。
首里って朱里のことだよな
あかりで変換してないのか?
投下します
八神総八郎がチバヤシ公爵を名乗る男の放送を聞き終えて早一時間。
未だに回復する兆しのないベッドの上の男を八神は眺めていた。
止血はうまくいっている。
腕は体重を支える足に比べて消費されるエネルギーが少ないため、供給される血が比較的少ない。
だが身体の一部が吹き飛んでいるのだ、死んでもおかしくない。
出血死の前にショック死、逃れたとしても出血死。
止血と言っても何回も包帯を変えて、氷を入れた水をナイロン越しに当てて……それの繰り返しだ。
雑菌が入れば高熱にうなされ、体力が減れば生存率も下がる。
だと言うのに、ベッドの上で眠っている男はまだ激しく苦しむ様子を見せなければ、静かに息を引き取る気配もない。
それに対して少し妙な感覚を覚える。
ひょっとすると目の前の男はサイボーグでは、とも考えたが今は非常事態だ。
一見では分からない、つまり内臓の強化や人工筋肉を使っているのならば外目からでは分かりずらい。
だが、たとえ違法サイボーグであろうと助けない理由にはならない。
こんな殺し合いなんて馬鹿げた状況ならばなおさらだ。
それに、自分にはサイボーグを取り締まる資格があるかすらはっきりとしていないのだから。
(この状態でも生きていられるのは……綺麗に斬られている所為か? それとも応急処置が早かったから? サイボーグ、だからか?
それとも、こいつのお陰か?)
八神は右手に持った一本の棒、いや、杖を見つめる。
この共に入っていた説明書きが正しいのならば、なんと魔法の杖なる物らしい。
杖の効果は『毒や麻痺を回復させる、一日一回、成功率50%、代償として支給品を一つ失う』と書かれていた。
雑菌が原因で高熱にうなされるのも毒と言えば毒だろう。
書かれてはいなかったが、結果から見ると魔法の杖とやらにはひょっとすると裂傷にも効果があるのかもしれない。
その対価となった支給品は拳銃だ。
ただの拳銃ではない、八神の直属の上司、灰原の愛銃だ。
もちろんサイボーグ取り締まりに使っていた拳銃のため火力は申し分なし。
はっきり言って八神がこれを持てば鬼に金棒と言っていいだろう。
それほどの武器のため、もったいないと思いつつも人命とは変えられないと判断して対価として払った。
すると、不思議なことにデイパックの中に入っていた拳銃はなくなっていた。
どういう原理かは分からない。恐らく名簿をデイパックに送ったのと同じ理屈だろう。
しかしながら、当然疑問が浮かんでくる。
杖を患部に向かってくるくるとゆっくり回すだけで効果が発揮されるなんて、まるで魔法だ。
少なくとも八神の知識にはこんな便利な道具は存在しない。
それに杖と言うデザインも腑に落ちない。
わざわざ木で作ったかのように見せる必要性も感じない上に、ひどく脆い印象を与える。
思いきり力を入れればぽきりと折れるそうだ。
(……手触りは似てるけど、まさか本物の木ではないだろうしな。
だけど、知識が半端な以上俺が考えても堂々巡りだな。そういうものなんだと納得するのが一番だ。
今は……別のことだな)
謎の杖から切り替える他の事象へと考えを移す。
そこで頭に浮かぶのは一人の少女、高坂茜と一人の女、リンのこと。
ピンク色のパーカーを着て元気よく走り回っていたのに、最近は何をするでもなくただ空中を眺めるだけで無気力となってしまった茜。
そして、茜と自分の前から去っていたリン。
放送の後にいつの間にか入っていた名簿を見た時は驚いた。
いや、驚いたなんてものではない。
このような異常な事態であればあるほど、落ち着ける訓練を受けた八神が軽いパニック状態になった。
仕方ないだろう、茜は動くことすら面倒だと言わんばかりの状態だ。
デイパックを片手に病院を飛んで行っても全くおかしくないほどだった。
だが、そうしなかったのは彼の持ち前の正義感と義務感の強さ、そしてよく回る頭のお陰である。
前二つによって重傷者を見捨てるような真似ができずに、最後の一つによって茜の無事に着いて理屈づけることが出来た。
茜が動き回るとは考えづらい、何をするでもなくじっと固まっているだろう。
そして、未だに殺されていないということは見つかりにくい場所、もしくは人が来ない場所。
そのどちらかに最初に居ると思われる。
となると、一先ずは安心していい。
殺し合いに乗った人間なら人が集まりそうな場所、つまりは食料や休息する場所がある市街地を目指す。
そして、茜がそんな場所に居るのなら既に殺されている可能性が高い。
もしくは誰かに保護されたか、考えられる限り最初の六時間を生き抜いたならばこれからも生き抜ける可能性もある。
それに芹沢真央と小波走太の二人や友達を探しに行った和那が助ける可能性がある。
リンに至っては死んでいる姿を想像する方が難しい。
強い弱いと言った問題ではなくそう言う女だ。
負けている姿や傷を負っている姿ならばかろうじて想像できるが、死んでいる姿は想像できない。
一人で生き抜いてきたことから、リンは危機を逃れる術を心得ている。
唯一不安なのは、リンが殺し合いに乗ってしまったのではないかと言うこと。
汚い世界で生きる以上、リンにも冷たい面が多大にある。
そして、茜が居ることで殺し合いに乗っていなかったが殺し合いに乗ることに決めた可能性もある。
少しオーバーな妄想だが、全員を殺して自分を殺してでも茜は生き残らせる、と考えてもおかしくはない。
だが、情報の少ない状態では動かないだろう。
これも職業病と言うべきか、リンは情報を集めてから判断するはずだ。
たかだか七時間やそこらで方針を確定させるほどの決断するほどの情報は集められないだろう。
……徐々に気持ちが落ち着いた頃には、茜以外のことを考えれるぐらいの余裕が生まれていた。
その後に生まれた不安は同僚の白瀬と上司である灰原の存在。
不安要素としてはこちらの方が大きい。
茜やリンと違ってどう動くのかが八神では読み切れない。
殺し合いに乗るか反るか、どちらも十分にあり得るように思えてくるのだ。
その原因は一か月前の夜の出来事に外ならない。
日本シリーズ進出を決めた夜、チームメイトであった石中 学から聞いた情報。
衝撃の事実、とはまさにこのことだった。
『CCRは政府の機関じゃない、大神グループの非合法組織だ』
今まで信じてきた組織が私設の軍隊に過ぎなかった、それはにわかには信じがたい話だ。
とは言え、石中の話は確かに辻褄が合った。
政府の秘密機関なんて真偽を確認する方法がほぼ存在しない。
さらに、国家の安全と言えば口止めも容易。
政府の関係者だって自分が知らされていないだけかもしれないと考える。
大神グループほどの巨大な組織となればそれは不可能ではない。
あれだけの資金力を持てば警察上層部とも繋がりも持てるし、軍や警察向けの装備を作っている会社もある。
そして、CCRが秘密の組織だったのも自分達がアンドロイドを作っていたなんて非人道的行為を知られないため。
本当に危険ならば一般市民に注意を呼び掛けるべきなのだ。
筋は通るのだ。
だが、八神を驚かせたのはその次に石中が放った言葉だった。
証拠はあるのか、と言う言葉に対しての、石中の返答。
『あるとも。俺たちはアンドロイドなんだ。つまり、作られた人間だから絶対に普通の人間には戻れない』
最初は八神にも何を言っているか分からなかった。
しかし、すぐに気付いた。
絶対に人間には戻れない、だとすると自分が捕まえたアンドロイドはどうなったのだろうか?
そんなこと決まっている、とっくに処分にされたか大神の研究所に逆戻りだ。
一度逃げ出したモルモットに情けをかけるとは思えない。
それを石中たちサイボーグ同盟は承知だったから、こちらに攻撃を仕掛けてきたのだ。
(黒駒課長と隊長は恐らく全て知っているだろうな。以前から妙な言動が多かったし、管理職だ。
白瀬はドライだけど頼りにはなるから日本シリーズの後にでも相談しようと思ったんだが……こんなことになるとはな)
頭が痛い。
考えるべきこととやるべきことが多すぎる。
一先ずは和那と真央を信じて、目の前の男の容態を窺うだけだ。
そんな時だった、今まで身じろぎもしなかった男がガサリと布団を動かす。
椅子から立ち上がって
「ぅ……ん……」
「……大丈夫ですか」
少しずつ目を開けていく男へと、冷静を装いながら声をかける八神。
その頭の中ではどうやって声をかけるか考えている。
真央の話では意識がある時から腕がなくなっていたらしいが、そこは無理に突っ込む必要はないだろう。
八神はとにかく向こうが話出すのを待つのが一番だと判断する。
なるべく落ち着いて受け答えしないといけないな、と心の中で呟きながら男の姿を見る。
「え……俺……あれ……?」
「ここは病院ですよ。貴方が倒れてたのを知り合いが見つけたから保護したんです」
「病院……保護……そうか、確か俺は殺し合いに……!」
「寝ていた方がいいですよ、その、血を流し過ぎてますから」
「血……? ……あ、う、腕……!」
男は狐に包まれたようなぼんやりとした顔から一転、突如として顔を青くして恐怖に歪む。
が、少しすると恐怖の色が薄くなっていき、寝そべったままこちらに声を掛けてくる。
「ふぅ……ふー、はぁ……」
汗に塗れた顔のまま、大きく深呼吸をして落ち着こうとしている。
その様子に、思ったよりも落ち着いている、と八神は安心した。
パニックを起こされたら非常に面倒だ。
「縛ったのは……?」
「俺ですよ。暴れられたら困るし、寝返りでベッドから落ちたらまずいでしょう?」
「……治療も?」
「素人芸で申し訳ないけどね」
縛ったのは腕がなくなっても存分に動けるタイプのサイボーグで殺し合いに乗っている場合を警戒してのことだった。
しかし、萩原の敵意を見せない言動から少し罪悪感を覚えてくる。
口ぶりが少し言い訳がましくなったのはその所為だろう。
八神はじっくりと観察するように男を眺め、やはり異様なまでに落ち着いていることを確認すると言葉を選びながら声をかけた。
まずは、名前から入るのが自然だろう。
その後は腕がなくなった原因を、いやあえて聞かない方が良いのだろうか、など様々な考えが八神の頭に巡る。
「で、名前は?」
「……萩原、新六」
「八神 総八郎。殺し合いには乗っていないから安心して欲しい」
なるべく穏やかな雰囲気を出そうと努めながら話しかける。
顔色や雰囲気から察するにサイボーグの類ではない、身体の疲労感と右腕の空虚感に耐えているのは演技ではない。
痛みは恐らくと言うべきか魔法の杖による効果だろう。
毒、つまり雑菌を取り除くのと同時に痛みまで取り除くのかもしれない。
だが疲労感は覚えている以上後手に回ってしまう心配はない。
ならば友好的に出て相手がボロを出すかどうか見ていればいい。
「無理に喋らなくていいですよ。頷くか、とにかくこっちに分かるような仕草を返してくれればいいですから」
「……」
荻原はその八神の言葉に頭を縦に振ることで返事をする。
さて、何から尋ねるかと考え、一先ず例の疑問を確実にするために今日が何日かを訪ねておくことにした。
例の、と言うのはタイムマシンのようなものを使っているのは確実だ。
それに荻原が殺し合いに乗っていない人物だとしたら情報は共有しておきたいところである。
それに、もし殺し合いに乗っていたとしてもこちらに不利になるような情報ではない。
亀田の力として時間軸を自由に動き回れるものがあるなんて、そんな情報が殺し合いに乗っている連中に有利に働くとは思えない。
「今日が何年の何月か、分かりますか?」
「……?」
案の定と言うべきかやはりと言うべきか、萩原は眉間に皺をよせて不思議そうな眼でを眺めてくる。
いきなりこんな質問をされれば訳が分からないと思っても不思議ではないだろう。
だが、萩原はそれを頭がはっきりとしているかどうかの確認かとでも思ったのか、短く「四月、です」とだけ答えた。
四月、年数は言わなかったがそれだけで十分だ。
俺が十月、大江さんが八月。そのどちらともかけ離れているのだから。
「俺にとっての今日はYY年の十月二十二日なんですよ」
「……………………んなっ!?」
僅かに顔をしかめた後、徐々に、本当に徐々に驚愕の表情へと顔を染めていく。
萩原は今までの人間とは一線を異なるほどに八神の言葉に反応していた。
顔には焦りと怒りが入り混じった形容しがたい感情が浮かんでいる。
身体が固定されているのも忘れて起き上がろうと身体をもがき出す。
「YY年……!? ど、どういうことだよ!」
「い、いや、ちょっと落ち着いて……」
「これが落ち着いてなんていられるか!」
萩原は、YY年、という八神の言葉に今までの誰よりも激しい反応を見せた。
いてもたってもいられない、とはまさに今の萩原のことを言うのだろう。
八神はそれを宥める様に、しかし力強く抑え込む。
片腕の消失による多量の出血だけでも動けるわけがないのだ。
そこに興奮させてれば回復の見どころが薄くなる。
「くそっ……!」
「……何か、知っているんですね」
「っ! …………ふぅ」
八神の言葉に荻原は僅かに考え込み、そして深く呼吸をして垂れた頭を上げる。
背筋を真っすぐに伸ばした状態で、八神の目を見ながら言葉を放った。
その真剣な様子に思わず釣られるように八神も姿勢を正してしまう。
「タイムマシン、って信じますか」
「……まぁ、今回の件が原因で、なんとなくあるのかなぁ、とは考え始めましたね」
「実際にあるんですよ。完璧ではなくて色々と制約もつきますけど、確かにあるんですよ」
「……なんでそう思うんですか?」
「普通なら言わないんですけど……今は明らかに普通じゃないですから」
萩原はもったいぶるような口ぶりを見せた後、鋭かった瞳をさらに鋭くさせて息を深く吸い重々しい言葉を放った。
「俺は未来から過去を改変しようとした犯罪者を追って時代を駆ける警察官……タイムパトロールです」
タイムパトロール、萩原は大真面目に、表情をひきしめて八神を真っすぐに見据える。
その様子に八神は少し困った顔をしながらも、まあ話を聞くだけ聞いてみよう、と比較的軽く考えた。
あまりその手の理論には詳しくないことから、判断のしようが難しい。
一年や二年の間で共通認識がズレているのだ。
このことから考えて、『タイムマシン』というオーバーテクノロジーが存在する可能性はある。
ならば、それを使って犯罪や、それを取り締まる組織があっても不思議ではない。
むしろあってしかるべきだ。
もちろん、同時に様々な疑問が浮かんでくる。
浮かんでは来るが、話は聞いてみようと思えた。
どうせ萩原の怪我ではここから離れることはできない、時間つぶしにはなる。
話を聞いて、萩原が嘘をついているかどうかを判断すれば良い。
「はぁ……タイムパトロール、ですか」
「タイムマシンが作られてから、そこそこに流通されました。
悪どいことをすればある程度の確率で手に入る程度には。
もちろん、その性能から多くの制約と法律の規制がかかっています。
かかっていますが、そのタイムマシンを使って悪さをしようとする人間は出てきます。
その人間を取り締まるために作られたのが俺たちタイムパトロールってわけです。
……恐らく、亀田もその類の犯罪者でしょう」
険しい表情のまま、ゆっくりと自分自身が確認するように呟いていく。
一方の八神はドラマやSF小説の設定を聞かされているような、現実味のない感覚を味わっていた。
タイムマシンがあるかも、と最初に思ったのは八神自身だ。
だが、それは抽象的で超越的な、便利な物を思い浮かべていた。
それこそ過去にでも未来にでも、昨日でも明日でも百年後にでも自由に行ける、何の制約ない便利すぎる道具。
だが、萩原の語りには幾らかの機能的な制約も付いているらしい。
こんな状況だが、妙な好奇心のようなものが湧いてくる。
もちろん、危機感や怒り、不安などの感情が心の大部分を示しているが、その中でひっそりと小説の続きが気になるような感覚が生まれてくる。
「んー、と言うことは、萩原さんの追っていた犯罪者が亀田ってことですか?」
「いや、たぶん亀田はまた別の人間だと思います」
八神が比較的自然に思いついた推測を萩原は簡単に切り捨てる。
亀田がタイムマシンを持っている=未来人。
そして殺し合いなんて非道な真似をすることから真っ当な人間であるとは思えない。
故に、未来から来た犯罪者と思って問題ない。
そして八神や和那に芹沢と走太の過ごしていた時代はそれほど大きな差はない。
恐らく今までの例から考えて萩原が犯罪者を追って来た時代も八神の時代とそれほど離れていないはずだ。
そのことから、亀田がここ数年の時代を標的にして犯罪を起こそうとしていたと考えられるだろう。
ならば、亀田=萩原の追っている犯罪者、と八神は思ったのだ。
それほどおかしな考えではない。
そんな風に不思議そうな表情をしている八神に説明するように、萩原はその理由を解説し始めた。
「理由は幾つかありますが、主な理由として俺が我威亜党って組織を一切知らないことです」
「……?」
「何故、タイムパトロールが過去が改変されていることに気付けると思いますか?」
「そりゃあ、歴史が目に見えて変わったからでしょう?
タイムパラドックスって理論は置いておくとして、もし過去を改変したのなら歴史の教科書や資料に影響が……」
「そう、それですよ。
もし亀田が我威亜党なんて組織と共に大きな事件を起こしたのなら、俺はそのことを知っていて当然なんです。
「あ、なるほど」
確かにあの亀田は何時までも裏でこそこそとやるようなタイプの人間には見えない。
色々と根回しにしたり部下に仕事を任せるにしても、良いところは全て持って行きたがる様に思えた。
その亀田が自分の名前を一切表舞台に出さないと言うのも考えづらい。
「あと、補足するなら急に歴史が変わるわけじゃないですよ。
歴史的資料や人の記憶や生活環境にゆっくりと馴染んでいくように改変されていくんです。
だから、俺たちは歴史が変わったことに気づけます。
と言っても、どこがどう変わったのかまでは確定できません。
ある程度の時間をかけて完璧に知ることが出来るんです。
そして、その歴史が確定されると言うことは元の歴史を思い出すことすら出来なくなると言うことです。
つまり、俺たちは曖昧な情報を元に動くことになる、ということです」
「……ややこしいな」
SF知識はあまり豊富ではないし、よほどのことがない限り必要ともされないので学ぼうとも思ったことはない。
ある程度自己流に解釈しながら、萩原の話を八神なりに理解していく。
次に続く話を待ちながら八神は若干の好奇心とともに萩原に注視する。
だが、萩原は僅かに顔をしかめて、顔を天井へと向き直して疲れきった声で
「……すみません、未来人云々は後でいいですか?」
「ああ、疲れてるなら眠っていいですよ」
「悪い、で……」
警戒心や疑念を抱く間もなく、萩原は目を閉じて再び眠りについた。
腕から出した血液は致死量には届かないとは言え、それなりの量を失ってしまったのだ。
となると、当分は目を覚まさないだろう。
そして萩原が目を覚ますまでの間に八神がするべきことは情報を纏めることだ。
一先ず、萩原が愉快犯的におちょくっているという可能性を捨てることにする。
タイムマシンを使った犯罪、これは不思議なことではない。
銃があればそれを使った犯罪が起こる、ピッキング技術あればそれを使った犯罪が起こる。
サイボーグ技術があれば、それを使った犯罪が起こる。
それと全く同じだ、有史を振り返ればそれは簡単に理解できる。
だから犯罪が起こった原因でなく、最も考えるべきことは『亀田はタイムマシンを使って何をしようとしているのか』ということだ。
まず考えやすいのは、技術が遥かに劣っている過去の世界で確固たる地位を得ようとすること。
あの芝居がかった口調や立ち振る舞いを考えると、世界征服を目的としている可能性もある。
次に考えられるのは、過去の世界で未来の技術を用いて好き放題に行動すること。
地位や財力などを目的としない、快楽犯罪者である可能性だ。
亀田と相対したのは一時間にも満たない時間、それだけの時間で性格判断をする技能は持っていない。
前者ならば、殺し合いを開く必要を感じられない。
わざわざタイムパトロールに見つけられるような真似をするのは解せない。
後者ならば、殺し合いを開いたことに納得できる。
亀田は人が殺し合う姿を見て愉悦に浸る人格破綻者で、我威亜党はそんな連中の集まりだと言うことだ。
しっくりくることを選ぶならば、やはり快楽犯罪者という線だろう。
「……その場合、殺し合いに勝つことができても生き残れる可能性は低いか?
くそ、そこはゲーム重視か殺し合い重視かで変わってくるな」
ゲーム重視、つまり殺し合いを一つのゲームとして楽しむのならルールを厳守する可能性が高い。
殺し合い重視、つまり殺し合いをさせること自体が目的ならばその勝者を放っておく可能性は低い。
「結論として、まだ分からない、ってことか」
はぁ、と八神は肩をおろしながら軽くため息をつく。
今できることは、茜の身を心配しながら真央たちに託すことだけだろう。
一応、考察を進めておこうと思った瞬間、廊下から物音が聞こえた。
「!」
その音を聞いた瞬間、ドアの傍まで素早く駆け寄り外の様子を音で察するように身体をドアに寄せる。
僅かにコツコツと足音のようなものが聞こえる。
数は一つ、周囲を警戒するようにゆっくりと歩いている。
ただ、歩き方や息の殺し方からプロではないことだけは分かる。
さすがに所持している武器は判断できない。
丸腰である以上、こちらから仕掛ける真似は出来ない。
となると、やり過ごすしかあるまい。
「……すみません」
その声をかけられたのは、相手が去るまで息を殺そうとした決めた瞬間だった。
そのタイミングの良さに思わずドキリと心臓の鼓動が速くなる。
だが、それも一瞬だけ。直ぐに落ち着きを取り戻し、相手の出方を待つ。
「大江和那さんからここなら安全だと聞いて来たのですが……」
大江和那、八神が出会った最初に出会った尋常じゃないほど背の高い少女。
彼女は友達を殺し合いから止めるためにここを去った。
その道中で出会った人間、ということか。
声の人間が安全かどうかを僅かの間だけ考え込み、一先ず応答することにした。
理由は単純に大江和那が死ぬと言う考えがすぐに湧かなかったから。
彼女が見せた不思議な動き、彼女の口ぶりからしてサイボーグを知り戦闘したことがある。
このことから考えても彼女が普通の人間ではなく、八神よりの人間だと言うことは明らかだ。
「動くな。もし動いたのなら、撃つ」
一先ずブラフとして釘を刺してから続きを促す。
足音が規則的なことから怪我をしている様子はない、よって交戦した可能性も低い。
恐らく大江和那に会い、ここに避難してきたと言うのは本当だろう。
本当だろうが、確認はしておきたい。
「あなたの名前は?」
「曽根村、と言います」
「一人?」
「……ええ、一人です」
僅かに空いた間に少しだけ引っ掛かりながらも問いを続ける。
大江とはどこで会ったか、殺し合いに乗っていないのか、武器は持っているか。
曽根村が真実を語る語らないは別として質問を重ねていく。
「貴方は今まで何をしていた?」
「水族館で鋼と言う男と進藤と言う少女と会って……二人とも死んでしまいました」
「……そうか」
曽根村の声には確かな悲しみがあるように思えた。
もう十分、とは言えないが覚悟を決めるしかない。
味方は多い方がいいのは間違いないし、知り合った人間が早々に死んで落ち込んだ人間を放っておくわけにはいかない。
もし腹芸をして八神を騙しているのでは、そんなことを考えていては切りがない。
「服を脱いで物を捨ててから手を上げてください」
「……」
「……初めまして、八神総八郎です」
物音で上はワイシャツ、下はズボンを脱ぎ棄てたことを確認し、ここで初めて曽根村へと身体を晒す。
曽根村はどう思ったのかまでは分からない。
ただ分かることは一つ、傷はない。
しかし、アンダーシャツと下着姿の中年はひどく滑稽だ。
仕方ないこととは言え、こんなことをしなければ一般人を信じる気になれない自分に少し嫌気がさす。
石中の話から自分は法の下に集う正義の集団ではない、と確信したから余計にだ。
「曽根村さん、こっちに来てるください」
「……ひどく簡単に信用してくれるんですね」
「こんな状況ですから、進んで丸腰になる人ぐらいは信じてみたいんですよ」
その言葉を聞くと曽根村はキョトンと呆気に取られたような表情をした。
さすがに臭すぎたかと思いつつ、少し急かすように曽根村を病室の中へと入れる。
もちろん、荷物は廊下に置かせて服は脱ぎ捨てさせたまま、だ。
「そこに座ってください」
「ええ……」
「早速で悪いんですが、その二人が死んでしまった時のことについて聞かせて下さい」
先ほど死んだ知り合いのことについて尋ねるのは酷かと思うが、これからのことを考えると八神は尋ねざるを得ない。
少なくとも人を殺した人間が周囲に居るのだ。
それが事故であれ故意であれ、警戒すべき存在には変わらないのだ。
「……鋼さんは、水族館で三橋と言う男に殺されました。
私も一緒に銃で交戦しましたが、訳のわからない真っ赤な手で鋼さんは死んでしまいました。
進藤さんは……分からないんです」
「分からない?」
その言葉に八神は眉をひそめた上で首をひねる。
殺された時のことが分からないとは理屈に通っていない話だろう。
曽根村は話しづらそうに、だが、なんとか八神に分かるように伝えようと声を絞り出す。
「その、大江さんと別れてからしばらく経った後でした。
少し、疲れていたのでゆっくりと歩いていたら……乾いた、音が聞こえたんです」
「乾いた音……というと」
「……じゅ、銃声、だと思います。私が辺りを窺うように前方を歩いて、進藤さんが後ろを歩いていたので気付かなかったんです。
そ、それで、音に釣られて後ろを向くと胸からち、血を、流した進藤さんが……
そこからは、とにかく無我夢中で逃げてきました。なるべく物の陰になる場所を通りながら、早く病院につけるように」
曽根村はそこまで言い切ると、何かから逃げる様に頭を抱え込み下へと俯く。
曽根村の服に血が付いていたのは別に不思議ではない。
銃殺なら撃ち抜かれた個所やそれぞれの立ち位置によっては血が飛び散らない可能性も十二分にある。
進藤って人を殺した犯人が曽根村を殺さなかったのは銃弾の制限か、単純に気付かなかったからか……
少し不可解ではあるが、説明が出来ないわけではない。
「つまり……近くに殺し合いに乗った顔も名前も分からない人間が居るってことですか」
八神は曽根村が最後まで話を言い終えたと思うと、確かめる様に呟く。
曽根村は反応する様子を見せずにただ俯き続ける。
これでまた頭を痛める要素が増えた。
三橋と言う男と、進藤明日香を殺した銃を持った人間に、浜野朱里。
殺し合いに乗ったと思われる人間が周囲に三人もいると言うことだ。
「そこでじっとしていて下さい」
「……」
八神はゆっくりと席を立って、曽根村から目を離さずにドアの方向へと移動する。
フォローをするべきなのかもしれないが、一先ずは曽根村は放っておくことにした。
いい年なのだ、自分を安定させる術ぐらいは持っているかもしれない。
それに曽根村の見た目からは武器を隠せるようなスペースはない。
少しだけ眠っている萩原を残して部屋を出ることを躊躇うが、曽根村を信用することにした。
「……大丈夫です。そこの男も、曽根村さんも俺が守りますから」
そう言い捨てて扉を閉める。
外に出てから僅かに扉に耳を当てるが、中で何かが動く様子はない
注意しながら、それでも素早く曽根村が廊下に残したデイパックと服を漁る。
まずは服からまさぐっていくと、内ポケットから一丁の拳銃を見つけた。
僅かに焦げたにおいがする、少なくとも一発は撃ったことがあると言うことだろう。
曽根村の言ったことを鵜呑みにするなら水族館で発砲したことになる。
穿った見方をするなら、水族館では発砲せずに進藤を殺す際に使ったことになる。
銃身は、若干だけ熱を持っている、ような気がする。
熱を持っているようにも持っていないようにも判断できる感覚だ。
銃の中の残りの弾は三発消費、予備のマガジンは六発入りがちょうど五つ。
弾数の区切りからしても三発しか消費していないと考えていないだろう。
他にはめぼしいものは服には隠されていない。
次はデイパックの中を調べる。
綺麗なナイフが一つと食料や地図といった八神にも大江にも入っていた共通の支給品と思わしき一式。
「これだけじゃ判断はできないな……」
曽根村が黒か白か、八神はひとまず黒に近い灰色と言う評価を下した。
やはり進藤という女が死んでいるのに、曽根村だけ無事と言うのが気にかかる。
だが、嘘をつくのならもっと凝った嘘をつくのではないか、という気持ちもある。
現実とは得てして不可解なことが多い。
本当に曽根村が殺されなかったのは、ただの偶然で知り合いの死を深く悲しんでいることだって十分にある。
それに、八神としてはこんな状況だからこそ人を信じてみたい。
疑心暗鬼に陥るような真似はしたくない。
曽根村は自ら丸腰になったのだ、向こうはとにかくこちらと協力したがっていると言うことだ。
(とは言え、銃は貰っておかないと……さっき失くしたばかりだし)
どう説得するかが少し面倒だが、自身専用の武器はやはり確保しておきたい。
殺し合いに乗っていても乗っていなくても、他人に武器を渡すと言うことは避けたいだろう。
まあ、それはそれ。後で考えればいいし、最悪銃を手に入れられなくてもいい。
どれだけ警戒をしても、警戒のし過ぎはあり得ない。
警戒は怠れないのだ、何せこちらには動けない萩原が居るのだ。
この状況でCCRや身体を強化したサイボーグが襲ってきたら、そのことを考えるだけで背中へと冷たい汗が走る。
危険が目に見えて増していく現状に、どうにも不気味で嫌な感覚を覚えていく。
「……茜」
殺し合いに乗った人間が居る、命が危ない、その言葉で思わず思い出してしまう。
意識的に考えないようにしていた人間、その人間の名をポツリと呟いてしまう。
今すぐにでも茜を探しに行きたい気持ちと、曽根村と萩原を放っておけない気持ちがせめぎ合っている。
それでも病院に留まっているのは、やはり困っている人を見捨てられないから。
「……」
廊下の東側の窓から太陽を覗きつつ、茜の顔を思い浮かべる。
和那や真央たちを当てにするしかない。
今、八神がすべきことは茜を見つけて直ぐに脱出、もしくは亀田を倒すための方法を模索することだ。
【F-6/病院/一日目/午前】
【八神総八郎@パワプロクンポケット8表】
[状態]健康
[装備]ナイフ、ブロウニング拳銃(3/6、予備弾数30発)
[道具]支給品一式×2、魔法の杖@パワプロクンポケット4裏
[思考]
基本:バトルロワイヤルを止める
1:しばらくは籠城。
2:茜が心配。
3:曽根村を信じたいが、警戒は怠らない。
4:浜野朱里に注意。
5:白瀬、リン、灰原が殺し合いに乗ったのでは?と疑っている。
[備考]
※走太と真央から、彼らにこれまでであった話を聞きました。
※荻原との話でタイムマシンの存在を確信。
【萩原新六@パワプロクンポケット6】
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷、貧血(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 、野球用具一式(バット8本、ボール7球、グローブ8つ)@現実、野球超人伝@パワプロクンポケットシリーズ、パワビタD@パワプロクンポケットシリーズ、自身の左腕
[思考・状況]
1:???
【曽根村@パワプロクンポケット2】
[状態]右手首打撲
[装備]アンダーシャツと下着以外は着ていない。
[道具]なし
[思考]
基本:漁夫の利で優勝を目指す
1:一先ず病院で休憩。
[備考]
※タイムマシンの存在を聞かされていません。
【魔法の杖@パワプロクンポケット4裏】
ヤマダがルクハイドの魔女から貰った魔法の杖。
素人でも100G払うことで毒や麻痺を一日かけて成功率50%程度の確率で直すことのできる。
今回はところどころを弄った状態で支給。
さらに金ではなく支給一つを失うことで使うようにした。
【灰原の拳銃@パワプロクンポケット8】
灰原が本編で使っていた拳銃。
サイボーグ対策のため装甲対策を施していたと思われる強力な拳銃。
魔法の杖の効果の対価として
投下終了です
それと失礼、八神総八郎の状態欄に茜ルートBADからの登場だと書き忘れていました
少し冒険、と言うか無茶な部分もあると思いますので指摘、よろしくお願いします
投下乙です
投下乙です。
乙!
何やら八神に不穏なフラグが立ったような
萩原も話しを小出しで寝ちゃうし、何よりソネムーという爆弾が
それにしても、もう八月も中盤か
書こう、書こう思っても一向に書いてない…
俺、九月に入ったら最低でも一作は投下するんだ…
ゲリラですが投下をば
主催サイドです
高い、高い、空まで続いていそうなほど高い天井を、私は何をするでもなくぼんやりと眺めていた。
ここは私の、我威亜党等幹部であり子爵の名で呼ばれる寺岡 薫に与えられた研究室ではない。
兵器がその力を発揮するまでの間、穏やかに眠り続ける寝室の役目を果たす格納庫だ。
その代表的な兵器が、格納庫の西に堂々と仁王立ちしている巨大な蒸気型鉄人である。
ちょうど八時間前、人の命を奪った兵器だ。
それを思い出すと何もかもが嫌になってくる。
何が一番嫌かと言うと、人殺しに加担していると言うのにのうのうと研究を続けている自分自身だ。
以前は何千万と言う人間を無差別に殺す兵器を開発し、今回は六十に届く人間を殺し合わせるという悪魔の如き所業に手を貸している。
しかも、この二つの非道を起こしているのは同じ組織であり、その事実を知っていて研究成果を渡しているのだ。
愚かなものだ、人道的な思考をするよりも早く研究が出来るという欲に目が行っている。
そこで思い出すのは自身がかつてある冒険家に放った言葉と、ある革命家に放たれた言葉。
『このご時世に女に資金を提供する組織などない』
『貴方は何かを発明しなければ気が済まず、我々はそれを使わずにいられない』
まさにその通りだ。
私が満足に研究するためには我威亜党に傅くしかなく、我威亜党はその研究成果を良心を一切持たずに使い続ける。
そんなことはよく理解している、一度は口を挟んで使い捨てのようにされたのだから。
そして、それでもなお私はここに居る。
本当に愚かな女だとしか言いようがない。
「おや? 誰かと思えば寺岡子爵じゃないでやんすか」
「……!?」
何の前触れもなく、後方から声をかけられる。
振り返るとそこに居るのは一人の男。
その容姿からは平凡な一般男性と似たような印象しか持てない。
しかしながら、実態は『一般男性』なんて言葉が世界一似合わない人物。
権力欲、自尊心が人の五倍は大きく膨らんでいる典型的な悪い独裁者を形にしたような男。
能力は高いことは高いが、天才と言えるほど高いわけではない。
この男を『最悪』たらしめているのは『世界』と『世界』を行き来できる不可思議な効果を持つ機械が原因だ。
現に我威亜党がここまで大きな犯罪を続けることができたのは、この男の持ち込んだ『別の世界』の道具あってこそなのだから。
「どうしたんでやんすか、こんなしみったれたところで?」
「いやぁ、それを言うなら皇帝陛下も一緒じゃないですか」
少しの強がりを含めた咄嗟の返しに亀田皇帝は笑みを深くする。
その質問を待っていた、と言わんばかりの笑みだ。
つかつかと格納庫の奥へと向かい、降ろされた暗幕をにやつきながら怪しい手つきで撫でる。
「こいつをね、見に来たんでやんすよ」
「こいつ、と言いますと〜?」
まさか暗幕のことではあるまい。
案の定と言うべきか、亀田皇帝は鍵を取り出し、閉じられていたスイッチの集まりをむき出しにする。
状況から考えると、あの中のどれかのスイッチを押すことで暗幕が開かれるのだろう。
想像通り、亀田皇帝の指一つで暗幕は反応し、ゆっくりと暗幕はその姿を消していく。
そして、その暗幕の奥から、一つの巨体が姿を現した。
その姿には私もよく見覚えがある。
これは、この巨大な鉄の塊は、蒸気型鉄人だ。
「これでやんす、どうでやんす? 湧き出る威圧感がそこのゴーレムとは段違いでやんすでしょ?」
暗幕の奥に眠っている『それ』は西に聳え立つ蒸気型鉄人とは明らかに違ったものだった。
人型と呼ぶには明らかに異質すぎる。
『それ』は見るからに大きく、重く、太く――――例えるなら辛うじて人を連想させる形を取った小さな要塞。。
ずんぐりとした体躯には足と呼べるものが存在せず、下半身には短く配電線のような何かがはみ出ている。
巨大な樽のような胴体に繋がれた両腕も従来の鉄人のそれとは大きく違う。
肩は丸みを帯びているが、一つの大きな角が外へと向かって突き出ている。
その西に聳えるもう一体との明らかな違いから、これが特別な何かなのだということは十分に理解できた。
「こいつがオイラの切り札、遺跡から見つけた幾つかのオリジナルの一つをオイラが独自に改造したゴーレム。
名づけるならばν頑陀亜浪菩(にゅー・がんだーろぼ)でやんす」
「ν頑陀亜浪菩……」
「ふふ、今日はひどく気分がいいでやんす。子爵にはこいつの本当の凄さを見せてやるでやんすよ」
「本当の、凄さ?」
「そう、こいつの凄さは機体自身の火力や機動力、耐久力でもないでやんす」
嬉しそうに語る亀田皇帝の表情は嘘ついているようには見えない。
興奮が前面に押し出してつかつかと大股で頑陀亜浪菩・νへ近づいていく。
どうするか迷ったが、結局私はスポンサーのご機嫌を取っておくことにした。
こんな状況でも私は研究できる施設を手放すのが惜しいと思っているようだ。
ガチャリと腹部に当たる箇所が開く、ここが搭乗口になっているのだろう。
亀田皇帝に続き、自身もその内部へと這い上がっていく。
「こいつでやんすよ……オイラがνを切り札と呼び、暗幕に隠していた理由は」
少し手こずりながらも私はなんとかνの内部へと入ることができた。
私はメガネのずれを直しながら、頭を上げて内部を見渡す。
内部は思っていたよりも広かった。
奥行きも深く天井も高い、下手な長屋住居よりも広いぐらいだ。
押し詰めれば十五人は入るのではないだろうか?
しかし、そんな広さの感想も直ぐに打ち消された。
それよりも目を引かれるものが中心に聳え立っていたからだ。
「……人間、ですか?」
「そう、人間でやんすよ。最も、これを人間と呼べるのだろうかは微妙なところでやんすけどね」
亀田皇帝の言葉は何もおかしくはない。
νの中心にあったのは培養液に満たされた巨大な信管とその中に目を瞑って浮かんでいる一糸纏わぬ姿の少女だ。
少女の肌にはシミ一つ存在せず、何らかの液体の中に揺れる長い髪には癖一つなく艶やかに広がっている。
顔立ちも整っており吊り上った目と、透明な何かに覆われた小さな鼻と口はバランスよく配置されている。
生まれたままその均整のとれた裸体には何本の線が纏わりついている。
絶世の美女、とはいかずとも成長すればとても魅力的な女性になるだろうと思える。
「この人は、生きているのですか?」
「生きてるでやんすよ、オイラの持つ全ての技術と知識を総動員して延命を施しているでやんす」
「え……?」
亀田皇帝の言葉は私にとって意外としか言いようのないものだった。
血も涙もない自尊心と権力欲の塊のような亀田皇帝が一人の女性を延命しているなんてにわかに信じられない。
ひょっとすると、今までの悪行にも何か理由があってのことなのだろうか?
「あの、この女の子は一体……?」
「こいつが、オイラの最大の長所を限界までに伸ばした正体でやんす。
いや、弱点を失くしたと言うべきでやんすかね?」
「……?」
「こいつはね、超能力者なんでやんすよ。それもオイラと相性ピッタリのね」
僅かの間だけその言葉が理解できなかったが、失望と共にその言葉の意味が胸の中へと訪れた。
生かしておいておく価値とやらまでは分からないが、この女性の人格には何ら興味はないらしい。
少しでも亀田皇帝の善性を信じた私が馬鹿だった。
「この女の名は……なんでやんしたかね? まあ、それは些細な問題でやんす。
こいつは世にも奇妙な超能力を操る者、超能力者の中でもさらに希少な存在。
ワームホールだとか、デス・マスだとか、ババヤガンなんて能力よりもオイラと相性ピッタリの能力の持ち主。
ずばり、『確率変動』の能力を持つ女でやんすよ」
「確率変動……って、言いますと?」
あまりにも突飛な単語に、私の脳が追い付かない。
私はなんとかオウム返しのように問いかける。
亀田皇帝は説明をするのが楽しくてたまらないと言った風に、口を止めずに言葉を滑らせていく。
「その名の通りでやんすよ、この女は1%を100%に出来るんでやんす。
確率の操作、起こる出来事がどんなに低くても絶対に成功させるんでやんす。
証明は厳密に言えば不可能でやんすが、」
「……えーっと、つまり自分が望んだ通りの出来事が起こるってことですか?」
それが真実ならば凄い、としか言いようがない。
頭のいい人間が手に入れても、頭の悪い人間が手に入れても、悪い結果にしかならない。
絶対に不可能なこと以外は自分の思い通りにことが運ぶようになるのだから。
「……って、ちょっと待って下さい。それならそれで世界征服をすればいいだけの話じゃないですか」
そうだ、そんな一厘しかない事象を十割に変えられるのならば、手下など必要ない。
この少女と頑陀亜浪菩νともう一体の頑陀亜浪菩、そして鉄人さえあれば今にでも世界を征服できるのではないか。
我威亜党なんて芝居がかった組織を作る必要なんてない。
私の言葉に亀田皇帝は楽しそうに、しかし少しだけ憂いを持った複雑な表情で言葉を返した。
「つまらないでやんすよ、そんなもの」
「は……?」
「オイラ自身の手で愛と勇気を振りかざす連中を倒してこそ意味があるんでやんす。
あの借金探偵に勇者やら中間管理職の忍者、英雄に近い宇宙船長たちの鼻を明かせるんでやんすよ!
だから、準備に準備を重ねてからやることに決めたでやんす、どーせ例の如くお邪魔虫が湧くに決まってやがるでやんすからねぇ」
「……これも、準備なのですか?」
「当然!」
亀田皇帝の目はその『次』への野望に輝いている。
そして、その目には今行われている惨劇自体への興味は薄いように私には見えた。
この惨劇での目的が達成されるのが当たり前だと、そう確信している。
「ところで、この少女は……?」
「ああ、そう言えばその話だったでやんすね。
こいつは暗示装置と薬の連続でほとんど自我と言う物が薄まっているでやんす。
つまり、心の一番深いところが無防備なまでに剥き出しになっている、とも言えるでやんすね。
まあ、この状態で電気信号やら口八丁やらを使って能力を強制的に使わしてる、って感じでやんすよ」
「……」
吐き気がする。
もはや表情を取り繕うのも厳しくなってくる。
聞くんじゃなかった、人体実験は私の専門外だ。
いや、今さらからも知れない。
私は既に殺し合いなんて馬鹿げた、悲惨極まりない企画の手伝いをしているのだから。
「ふふ、どうしたでやんす? ずいぶんに顔色が悪いじゃないでやんすか。
じゃあ、オイラは秋穂侯爵の所に行ってくるでやんすからね。
ああ、そうそう。νを勝手に弄ったら……どうなるかぐらい分かるでやんすね?」
「ッ!?」
脅しのような、からかいのような、どちらにでも取れる言葉を放ってνの中から亀田皇帝は出ていった。
取り残された私はじっと内部を眺める。
今の私では理解できない水晶板と複雑な英数字。
中心へと向かい、私は巨大な試験管へと手を触れる。ちょうど少女の眼前に当たる位置だ。
長い髪の少女は何の反応も示さなかった。
亀田皇帝の『暗示装置と薬の連続』という言葉の通り、少女は外からの何かしらの衝撃がない限り目を覚まさないだろう。
目を覚ましても亀田皇帝の持つ妖術という胡散臭いものや、何処からか持ち込んだ暗示装置で操られる。
彼女は今までそうされてきたのだろう。
そして、これからもそうなるだろう。
亀田皇帝は自身が立ちあげたこの殺し合いを『次への準備』と言った。
つまりこれは、亀田皇帝の暗い欲望を満たすためだけでなく、世界征服という目的を果たすための準備なのだろう。
それがなんの実験なのかは私は知る由もない。
今の惨劇を超える未来の惨劇への実験なのか、単純な何かを作るための儀式なのか。
実験を続けることが出来る、という欲望に抗い切れない愚かな私にはそれを察することが出来ない
ただ、そんな愚鈍な私にも一つだけ分かることがある。
私はどうせ研究を続けるだけだろうし、少女に至っては思考することすら許されないということだ。
350 :
ああ:2009/08/20(木) 16:14:14 ID:+HXMWz+FO
まさか亀田もこの自信作が中学生にボコボコにされるとは思って無かっただろうなぁw
なんか唐突でオリジナル要素が大きすぎるような気が…。
ν頑陀亜浪菩や確率変動の少女とか。
それにワームホール、デス・マス、ババヤガンの三人の出てる11の時間軸のキャラが出てないのに何で亀田が知っているか、知っていてなんで殺し合いに連れて来なかったのかが疑問です。
それに確率変動の能力が本当なら亀田には捕まらないと思うな。
それこそ逃げよう思えば100%逃げられるし、洗脳されないように抵抗すればそれも100%だし。
>>351 えーっと、色々と理由はあるんですが。
まず、ν頑陀亜浪菩と確率変動を出したのは並行世界移動装置でバトルロワイアルと開催できた理由の裏付けのためです。
並行世界移動装置の行先は完全ランダムなので、確率変動の力で確定させた、という。
そして、デス・マスたち超能力者を知っていたのは彼らが11の時間軸になって唐突に表れたわけではないので知っていてもおかしくないと。
連れてこなかったのは、上川が居るのに美空がいなかったり、さらが居るのにナオが居ないのと同じように、その存在を知っているから必ずしも殺し合いに参加させるわけではないのでおかしくはないと判断してです。
捕まった原因は研究所を襲ったか保険医と手を結んでたかで決めかねたので、確定させないで出しました。
……似たような世界に二度も行けたっていう謎に対する解答の小出しのつもりだったけど早かったしかなり読み取りにくかったと反省しています
>>351 >それに確率変動の能力が本当なら亀田には捕まらないと思うな
寝てる間に麻酔とか使って深い眠りにして攫われてると気付かせないとか
考えれば方法なんていくらでも作れると思うが
苦しいところは無いと思いますよ
保守
ほしゅ
今更だが、わざわざ確率変動の少女なんてオリ要素出さなくても天月五十鈴@パワポケ10で代用効く気がする件
確か運だか偶然だかを操れる能力持ってたはずだし
358 :
野球好きの名無し:2009/09/05(土) 01:04:49 ID:oUmn/pPuO
こんばんは。
いつも読ませてもらってます。
今更ながら◆7WJp/yel/Yが言わんとしていることをかみ砕いて整理させていただきます。
この先読んでいて?なことがあるとあれなので。
まずカメダの平行世界移動装置について、9裏のクライマックスでカメダが言うようにこの装置は別の可能性の宇宙、パラレルワールドを飛び回ることを可能にする装置です。
具体的に言えば7表の主人公が倉見春香と付き合う世界とその平行世界である7表の主人公に彼女ができない世界の両方に行けるということです。
もしカメダがパワポケ10天月五十鈴BADに進む世界に現れ、10表の主人公が3年夏の大会に敗れ、行方不明になった天月五十鈴を回収、拉致したとしたら。
このバトロワ開くことや参加者が同じ時代から来てもルートが違うことを説明することができます。
以上が自分の考察です。
確率変動の少女が天月五十鈴と決まったわけではないですが…
◆7WJp/yel/Yさんが言わんとしていることを自分なりにかみ砕いてみました。
もし違えばただの妄想ですね。
違っていれば指摘お願いします。
ほ
し
どうぞどうぞーですー
ラジオか……人は集まるのだろ(ry
住民は何人くらいいるんだろうか
元作者だけど寂しいスレになったな
12が発売したら活気づくんじゃないかと密かに期待してる
367 :
ゲーム好き名無しさん:2009/10/02(金) 15:22:03 ID:aPoBZZQXO
久々の予約だぁ!
楽しみに待ってます。がんばって下さい!
まじで!?
期待してます!
投下します
そこは真っ暗な、何も見えない闇の中だった。
俺はそんな場所をうろうろと彷徨うように歩いている。
何処に向かっているのか、それが俺自身にも分からない。
しかし、何も見えないというのに不思議と俺は淀みなく歩いている。
足場も見えなければ一寸先も見えたりはしない。
――――段差があるかも、壁に当たるかも、ひょっとしたらこの先は落とし穴があるかも。
そう考えると、急に恐怖を覚えた。
今まで何の警戒もなくすいすいと動いていたのが嘘のように動けなくなった。
立ち竦む、とは今の俺の状態のようなことを言うのだろう。
闇の中がこんなに怖いなんて思わなかった。
一歩も動けない、この先は底のない落とし穴があるなんて根拠もなく考えてしまう。
脚がすくんで、動けないまま何分経っただろうか?
ほんの数分だったような気もするし、一時間も立ち尽くしていたような気がする。
そんな時に俺の耳に一つの音、いや、声が聞こえた。
「……東さん」
聞き覚えのある声、この声は誰だったろうか。
俺はゆっくりと、怯えの入った表情のまま振り向いた。
「痛いですよ……東さん、東さん……」
「甲子、くん……」
「痛い、痛いんだよ……痛くて痛くて……どうにかなってしまいそう……」
そこに居たのは、死んだはずの甲子園児だった。
ただし、その姿は俺が最後に見た甲子の姿ではなかった。
眼球は醜く飛び出し、腹はどす黒い色をした液体に染まり、身体のあちらこちらが泥で汚れている。
だが、何よりも違っているのは、彼の右腕が綺麗になくなっていることだ。
「東さん……東さん……!」
その姿に対して恐怖を怯えるよりも早く、同情を覚えるよりも早く、俺は自己嫌悪を覚えた。
あの時、甲子を追っていれば、レッドの言う通りにして居れば。
そのことに関する後悔は尽きない、甲子には謝っても謝りきれない。
「気にすることはありませんよ、東さん。ここでは人が死ぬことは『普通』なんですから」
そんな俺に追い打ちをかけるかのように、野丸君が目の前に現れる。
その顔に卑屈に嘲っているようにも見えるし、優越感に浸っているようにも見える。
ただ一つ言えるのは、野丸のかつての笑顔とはまるで別物だということだ。
「だから東さんも殺しましょうよ、逃げるよりも楽ですよ?」
「嫌だ! 俺は……俺は……!」
そんな声なんて聞きたくない、と言わんばかりに耳をふさいでうずくまる。
ひょっとすると、みっともなく涙を流しているのかもしれない。
キャプテンとして弱みを見せなかったあの時とは大違い。
まるで子供だ。
「大丈夫ですよ、東さん」
この声は――――!
そんな時に、聞き覚えのある声に振り返る。
もっとも親しかった後輩、ヒーローが主力となったチームで腐らずに努力を続けた男。
そして、この場に同じくして連れてこられてしまった男。
振り返るとそこには―――――
____
/__.))ノヽ
.|ミ.l _ ._ i.)
(^'ミ/.´・ .〈・ リ
.しi r、_) | ヒーローはわしが育てた
| `ニニ' /
ノ `ー―i
◆ ◆ ◆
「うわぁ!!!?」
ガバッ! と空気を裂いたのではないかと見間違うほどの素早さで、東は俯いていた顔を大きく上げた。
荒い息を吐きながら辺りを見回す。
ここで東は自分が夢を見ていたことにようやく気づく。
軽く頭を振って意識を覚醒しようとすると、いつもより少し視界が高いような気がする。
落ち着いてくると、謎の生き物――――ほるひすに背負われていたことに気づいた。
周囲にはほるひすを含めて七人、東の意識がある時よりも確かに増えている。
若い女が三人、若い男が二人、老人が一人、そしてほるひす。
あまり共通点の少ない七人だ。
気になることと言えば、後輩の湯田に似ているモグラーズのユニフォームを着た男が居るぐらいだ。
しかし、よく似ている。亀田と言う男にも、湯田にも。
「……どうした、東」
辺りを見渡している東の耳に妙な口調の高い声が聞こえてくる。
その声の主は神条 紫杏、一緒に同行していた同年代の少女だ。
妙に落ち着いた態度と冷静な口調はひどく頼りになる。
「ああ……ごめん。ほるひす、ちょっと眠って回復したから一人で歩くよ」
「あまり、無理はしない方がいい……背負っているわけでもない私が言うのも何だが」
「いや、もういい。ありがとう、ほるひす」
辺りを見渡すと橋が見える。
かなり長い間、おぶってくれていたのだろう。
表情からは疲れや感情は読み取れないが、ほるひすが『良い奴』なのは東にも理解できた。
力もあるし、信頼できる。
この殺し合いの会場で初めて出会い、これまで一緒に居ることで東は大きな信頼を抱いていた。
無口で分かりづらいが、悪い奴ではない。
それが東のほるひすに対する嘘偽りのない評価だった。
「ところで、そっちの人たちは?」
東はほるひすの背から降りて紫杏に尋ねる。
なるべく当たり障りのないように、なるべく刺激しないように。
見知らぬ人物が五人、おそらく眠っている間に仲間となった人たちなのだろう。
放送の前に出会った人たちが同じ高校生が多かったことと比べて、今回は年上が多い。
一番若そうな女の人でも恐らく二十代半ば、老人は背筋がシャキッと伸びているがかなり年だろう。
そんなことを考えていると、その中のボロボロの服を着た男が声を掛けてきた。
「えーっと、東……くん、だったかな? 俺は九条 英雄、その、なんだ、よろしく」
ぎこちない笑顔をした(ように東には見えた)男、九条を見た時、東に何か妙な感覚が走った。
何処かで会ったことのあるような、そんな気分がするのだ。
デジャビュ、慨視感と言う奴だろうか。
少し記憶をたどってみるが、心当たりがない。
だが、何処かで会ったような気は確かにする。不思議な気分だった。
(……気のせい、なのか?)
「オイラは凡田でやんす〜! よろしくお願いするでやんす!」
「凡田……って言うとモグラーズの選手だった凡田選手? ……いや、でも、若いような」
「……あー、まあ、それには海よりも深い理由があってでやんすね。
でも、知っていてもらえると嬉しいでやんすねぇ」
「ほ、本物ですか!? 凄い……こうして見ると、本当に湯田君に似てるなぁ。
でも、凡田選手ってもう30を越えてたはずじゃ……?」
本物のプロ野球選手に出会えた、ということに思わず場所を忘れて興奮してしまう。
どれだけ冷静な男に見えても、やはり根は野球少年。
テレビの向こうのプロを見ると我を忘れてしまうのは仕方がないことだろう。
「……ま、それには深い理由があるんでやんすよ。詳しいことは病院で話すでやんす!」
「そうですか……」
少し謎めいた言い方に引っかかりを覚えながらも東は頷いておく。
ひょっとすると事態は残酷なだけでなく、東が考えている以上に複雑なのかもしれない。
凡田との会話が一通り終わり、次は誰と話すべきか、と思いながら周囲を見渡す。
ふと、綺麗な女の人と目があった。
少しだけ目つきの鋭い、出来る女、と言った風な女の人だ。
「……四路 智美よ。こっちは荒井 紀香さん」
「よ、よろしくお願いします」
邪険、とも取れるほどに素気ない挨拶。
東は自分が何か感に障るようなことをしてしまったのではないかと不安になってくる。
荒井 紀香なる女性は何やら等身大の人形を弄っているし、わからない二人組だと東は思った。
しかし、妙ではあるが巧妙に作られた人形だ。
関節部分も多いし、ひょっとするとただの人形ではなくからくり人形と呼ばれる類の人形なのかもしれない。
野球のユニフォームらしきものを着ているということは野球をするのだろうか?
一野球少年としては非常に気になるところだ。
そんな風に考えていると紫杏が話しかけてきた。
「東、気にするな。四路さんは最初から機嫌が悪い。
九条さんと凡田さんの知り合いということで簡単に合流できたがな」
「……そうか。ところであのお爺さんは?」
東がそう言うと紫杏は露骨に顔をしかめた。
紫杏のその表情に、東は思わずしまったと口走りそうになる。
勝手な思い込みかもしれないが、紫杏があからさまに嫌悪の情を顔に出すのは珍しいと思った。
そして、紫杏はそのしかめた顔を直そうともせずに口を開く。
「黒野 鉄斎、なんでも科学者らしい」
「おっと、違うぞ小娘! ただの科学者じゃない、わしは悪の天才科学者じゃ!」
紫杏の言葉に割り込むように黒野という老人が割り込んでくる。
その姿は見た目から察せられる年をまるで感じさせない堂々としたものだ。
背筋は伸び、眼光は鋭く、不敵な笑みを顔に張り付けている。
だが、その言葉はひどく物騒な物だった。
それと多分、この人が大声でわしと言っていたのがあの訳の分からない夢の原因だろう。
「我が悲願、世界征服への道のり一歩じゃ! 喜んで貴様ら愚物に手を貸してやろう!」
「……とまあ、変人だ。お互いの持つ詳しい情報は病院に着いてから話すことになっている」
紫杏はぶっきらぼうに答える。
どこか気に食わないところがあるのか、と聞こうとも思ったがそのような雰囲気でもないのでやめた。
しかし、どうにも空気が重い。
こんなふざけた状況での急造の集まりということもあるのだろうが、如何せんなんとか和ませたいところだ。
だが、年上の人間ばかりの状況で上手く場を和ます手段は東は詳しくない。
キャプテンや生徒会長として活動した経験ことから自分から引っ張っていく手段はそれなりに知っている。
だが、相手が大人の場合でもそれは通じるのか、と言われればまた別だ。
(……ここは黙っておこうかな)
「おお、そうだ若造」
東がそう判断した瞬間、黒野鉄斎が話しかけてきた。
まさか、黒野に話しかけられるとは思っていなかったのか思わず焦りを見せてしまう。
だがそんな東の事情は知らんと言わんばかりに大いに語り始める。
「中々良い身体をしておるな、どうだ? 『怪人』になってみる気はないか?」
「怪人……ですか?」
「そう、怪人じゃ。人を超えた存在、と言えば分かりやすいの」
「……すみません、遠慮しておきます」
「そうか! まあ、気が向いたら話を聞きに来るといい!」
「……博士、戯れはやめてくれ。東は怪我人だ」
紫杏が横やりを入れる形で黒野に釘をさしたおかげで、東はある言葉を飲み込めた。
恐らく、世界征服をたくらんでいる黒野の機嫌を損ねただろうから。
――――できれば怪人でなく、ヒーローになりたい。
ずっと思っていたことだ。
もし、自分がヒーローのような存在ならば、と。
ヒーローならば、レッドのように強ければ甲子や平山は死ななかったはずだ。
何せヒーローが二人もいることになるのだから、死ぬはずがない。
そして、野丸も止めれていたかもしれない。
もっと、もっと自分が頼りになれる存在で、もっと強ければ。
そんな風に無いものねだりをする自分が少し嫌になり、東は顔を横に向ける。
そこに、一人の少女が見えた。
その少女はけらけらと顔をゆがめながら、手に持った仰々しい鉄の塊に手をかけて――――
「危ない!!!!」
そこでようやく頭と身体が働いた。
あの少女が持っているのは機関銃、そしてあの少女はこちらに向かって撃とうとしている。
東は大声で注意を促した。
他にも九条と四路は気付いていたらしく、素早く周囲の人間の手を取りながら物陰に移動する。
幸い、幾つか倉庫のような建物が並んでおり簡単に隠れることができた。
その僅かな後に何発もの銃弾が発射される音が響き渡った。
もしも、九条や四路が気付かずに物陰に隠れることができなかった。
「なっ――――!?」
少女は見た目からは想像出来ないほど俊敏な動きでこちらに迫って来ていた。
銃は撃たずに、物陰に隠れさすことで数を減らす。
最初の攻撃は威嚇、当たって殺せればラッキーと言ったところなのだろう。
フェイク、そう気づくのに時間がかかりすぎた。
「あははは!」
狂ったように笑いながら、少女は銃を撃つ。
撃った方向は東とは逆、九条と凡田、黒野が居る方向だ。
完全に背を向けたわけではない、こちらにもある程度は対応できるような姿勢を取っている。
恐らくこれは威嚇、遮蔽物が多いこの場所では当たらない。
本当の目的はこちらを錯乱させるための射撃だ。
だがしかし、確かに隙は存在する。
(……今だ!)
恐らく少女は逆の方向の人間は逃げると予想していたのだろう。
普通の人間なら殺せるチャンスよりも生きるチャンスを選ぶ。
全くおかしくない考え方だが、今の東は普通ではなかった。
さらを逆上させ、甲子と平山を死なせ、野丸が殺し合いに乗ったというのに止めることができなかった。
もう後悔はしたくない、その気持ちだけが東を動かす。
だから、端から見れば無謀と思える行動だが、東は満身創痍の身体を動かしていた。
「ひゃっ!?」
東は羽交い絞めの形で女の子を抑え込むことに成功する。
少女の可愛らしい声に一瞬力が抜けそうにもなるが、なんとか固定する。
だが、じたばたと東の胸の中で暴れる少女の衝撃で身体に強い痛みが走る。
「くぅ……ぁぇあ!」
「あ!?」
苦痛に襲われながら、気合いを腹の底から振り絞るように言葉になっていない声とともに膝で少女の右手首を蹴りつける。
思いきり蹴りつけたから、かなりの痛みを覚えた筈だ。
強く握っていたにも関わらず落してしまったことはかなりの痛みだっただろう。
自分の年の近い少女を痛めつけた、ということに多少の罪悪感を覚えるが頭を横に振って甘い考えを振り払う。
これは仕方のない処置だ。
足元に落ちた機関銃を思いきり遠くへと蹴飛ばす。
万が一にも機関銃を再び使われないための配慮だ。
ただ、そこで安心したのが悪かった。
僅かにも力を抜いてしまったのだ。
僅かとはいえ体の自由を取り戻した少女が、さらに強く暴れ始める。
胸から伝わってくる衝撃が怪我のある左腕に響き、思わず拘束を緩めてしまう。
「……!」
その隙を少女は逃がさなかった。
素早く東から離れながら、手を背後のデイパックに伸ばす。
すると、驚くほどの速さで立ち去って行った。
「あ……」
「東、大丈夫か?」
既に機関銃を回収した九条と紫杏が駆け寄ってくる。
それに凡田、黒野が続き、智美と紀香は相変わらず一歩引いた形でこちらを眺めている。
「すみません……逃げられました」
「気にするな、俺たちが出遅れたのも原因なんだ」
九条はばつが悪そうな顔をしながら、東を慰める。
そして、機関銃をぽんぽんと軽く叩きながら少女が逃げて行った方向を眺めた。
「とりあえず、放っておくわけにはいかないな。
俺が追うから、皆は先に行っておいてくれ。あんまり刺激するわけにもいかないしね」
九条は平然と言い放ち、機関銃を東に手渡す。
恐らく機関銃を持って紫杏たちと一緒に病院へ行け、と言いたいのだろう。
だが、東も素直に従える状態ではなかった。
全く役に立っていない、それどころか二人もの人間を死なせてしまった。
そして、あの少女に自分の対応の失敗で芳槻さらを暴走させてしまったことも思い出させる。
もうあんな感情を抱きたくない、今度こそ救ってあげたい。
真面目で人の良い東は死に怯えるよりも、人を助けたいという気持ちが強かった。
「俺も行きます!」
「……東?」
「俺がもっとうまくやっていれば、あの子とは今ここで話が出来ていたかもしれません。
だから、俺がなんとかしたいんです」
「しかしだな、東。お前は怪我が……」
東の言葉に紫杏が反応する。
確かに東の怪我は酷い、なるべく早く処置すべきだろう。
だが、九条は紫杏に諭すように腕で東と間に遮るように伸ばす。
「分かったよ、一緒に行こうか」
「……九条さん?」
その言葉に紫杏は厳しい目を九条に向ける。
激昂しているわけではない、ただふざけたことは言うなと冷たく訴えているのだ。
九条はその紫杏の厳しい視線を真正面から受け止めて、じっと見つめ返す。
それが数十秒ほど続いた後、紫杏が先に折れた。
ふう、とため息をついて背中を向ける。
「じゃあ、行こうか。東、くん」
「はい!」
言うが早いか、東は機関銃を持ったまま走り出す。
その行動の速さに感心しつつも、危うさを覚える。
九条は東の素早い行動を眺めながら、凡田へと向き直る。
「……凡田くん、ほかの皆を頼むよ」
「分かったでやんす」
「俺も東……くんと一緒に行ってあの子を止めるよ。男は若い君一人になるけど、構わないね?」
「構わないでやんすよ。でも、無理はしちゃダメでやんすよ」
「ほるひすだよ」
「そ、そうだったな、ほるひすも居たな……とにかく、頼んだよ!」
凡田はそう言うと他の五人を連れだって逆方向、病院へと向かって進み始めた。
ギターを背負って東の後を追おうとする九条。
まだ高校生ほどの少女が殺し合いに喜んで乗っている、とは考えづらい。
恐らく錯乱したか、恐怖で襲わざるを得なかったか。
そんな少女を保護してやらなければいけないと、どちらかと言うと善人の九条は考えていた。
あまり大人数で圧迫するように探索するのは良い手ではないだろう。
「そうじゃ、若造。これを持って行け」
そんなところを、黒野に引きとめられた。
振り返ると、少し面白くなさそうな顔をした黒野が立っている。
その手には手のひらに収まる程度の大きさのスプレー缶が握られていた。
外見から中を察することはできないが、黒一色の缶はひどく物騒な印象を与える。
「うぉっと……こいつは?」
「催涙スプレーじゃ! ……どうも、貴様は傷つける相手を選びそうな性質じゃからの。
こいつなら死ぬことは絶対にない、安心して使うといい。
それじゃぁの! 生きてまた会おうではないか!」
「……はは、縁起が悪いことを言いますね」
九条はおかしそうに笑いつつ、何処かに懐かしそうに目を細めてスプレー缶を受け取る。
何度か指先でスプレー缶を遊ばさせながら、黒野に軽く頭を下げる。
後ろ向くと東はとっくに少女を追って目の届かない場所へと行っていた。
深い息を吐いて、顔を引き締める。
懐かしさにやられそうだったが、ここで気を抜いては行かない。
こんなふざけた物は抜け出して、笑顔で帰る。
九条には待っている人が居るのだから。
そして、志を新たに一歩を踏み出した瞬間。
パンパンパン!
後方からタイヤがパンクしたかのような乾いた音が三つ響いた。
「……博、士?」
振り返ると、そこには一人の男が地面に突っ伏していた。
仰々しい黒いマントと、髪が覆いきれていない頭部。
九条の知る限り、最も死にそうでなく、殺しても殺せないような人間。
自称・悪の天才科学者――――黒野 鉄斎の姿がそこにあった。
◆ ◆ ◆
東は走っていた。
少女を止めるために、二度とあんな悲しい思いはしないために。
絶え間なく痛みが襲いかかる身体で走っていた。
息が荒い、走ることがこんなに辛いのは初めてだった。
「居た……!」
だが、その甲斐もあってか少女の姿を見つけることは比較的早く出来た。
安堵と警戒を同時に抱くという奇妙な経験をしながら、東は大声で少女へと
「君!」
少女は止まらない、振り返り僅かに恐怖を覗かせる顔が見せただけだ。
怯えていると判断して、ようやく東はそこで自分が機関銃と言う凶器を持って走っていることに気づいた。
確かにこれを持って追ってくる男が居れば恐怖を感じるだろう。
これは捨てた方がいい、東は素早く地面へと機関銃を投げ捨てる。
「待ってくれ! 俺は君を殺すつもりなんてないんだ!」
「……!」
「ほら、機関銃も捨てた! 信じてくれ!」
殺しにきた少女に向かってこんなことを言うのは妙なことだと思いながら、東は叫び続ける。
あの怯えたように見えた眼から、少女は本気で殺し合いに乗っていない。
東は本気でそんな風に考えていた。
おっ、投下来てる
「……ホント、ですか?」
「本当だ! だから……話をしてみないかい?」
東の顔と転がった機関銃を交互にちらちらと見ている。
それを何度も何度も繰り返した後、恐る恐る、しかし確かに東の方へと歩みよってくる。
その姿にほっと溜息をついて爽やかな笑顔を作る。
「俺は東。君の名前は?」
「私の名前は……」
「名前、は?」
東が優しく聞き返した瞬間、少女は姿を消し――――腹部に衝撃が走った。
膝が折れ、地面へと崩れ落ちる東。
何が起こったのか理解できない。
少女が消えたと思ったら、ヘソのあたりにしびれるような衝撃が走り、まるで金縛りにあったかのように身体の自由を失った。
ただ、疑問だけを顔に張り付けて、唯一自由の効く首を餌にがっつく鳩のように動かしている。
「……ッハ」
「?」
「ハッハハハッハハ!」
おかしそうに笑いを上げる少女。
その手には黒い髭剃りのようなものが握られている。
髭剃りと違うと言う点と言えば、先端の両端に短すぎる棒のようなものがつけられ、びちびちと水が沸騰しているような音を出している。
そこで、東にもようやく茜が攻撃を仕掛けてきたということに気づく。
東には知る余地もないが茜は『アップテンポ電波』で瞬発力を上げ、手に持ったスタンガンを出力全開で東へと押しつけたのだ。
当然、身構えもしていなければ、特別な装備もしてない。
だから、東はここまで。
今の茜に機関銃はない、迷うことなく追い討ちをかけてくる。
と言っても殴りかかったわけでも踏みつけてきたわけでもない。
優しく触れてきただけ。
ただ、それがスタンガンで、出力は最大で、場所が首筋なだけ。
今度のスタンガンによる攻撃が奪ったのは東の体の自由だけでなく、意識も失った。
◆ ◆ ◆
寝転がった東を眺めながら、茜はどうするかをしばらく考え込むように上を向いた。
軽く考えて思いついた方法は二つ、スタンガンを当て続けるか、機関銃を使って殺しきるか。
機関銃は音が響く。仲間が来てまたあんなことになるのは避けて置きたい。
そこで、東の腰の部分についたベルトに目が行った。
その瞬間、茜の頭にピンとアイディアが来た。
思えば、東には借りがあった。
まだ右手がビリビリとしびれている、この借りは返さなければいけない。
となると、なるべく苦しい死に方だ。
茜は素早く東のベルトを抜き取り、その長さを確認するように手を滑らせる。
十二分に首を絞めれる、それを確信すると茜はにんまりと顔をゆがめた。
「では……」
地面に転がる東へと跨り、ベルトをゆっくりと首の下へと潜り込ます。
そして、潜り込ませたベルトの両端を掴み取りサイズを合わせる様にベルトを巻いていく。
ゆっくりと、甚振るようにじりじりと締めていく。
留め金がうなじについた時、ようやく思いっきり引っ張りこむ。
すると、東の身体は眠っているはずなのに非常に面白いことになった。
口内から唇が突き出され、瞼から眼球が今にも飛び出そうなほど目を見開いている。
涎も吹き出し、目からは涙、鼻からも液体、匂いが急激にきつくなったことから尿も出たのだろう。
「……汚い」
茜はまるで下世話なテレビの内容への非難のような気軽さで吐き捨てる様に呟く。
ここまで追い込むと、身体が勝手に再び暴れられては困る。
茜は再びスタンガンを首筋へと押し付ける。
ただし、今回は出力を弱めて、体の自由をなくす程度の電流で。
これを何度も繰り返す。
茜の弱い腕力で締め落とし、暴れる気配を見せればスタンガンを当てる。
何度も、何度も、何度も、何度も、繰り返す。
それを幾度繰り返したのだろうか。
覚えてきた感覚と違う感覚が来たとき、茜は頬をゆがめた。
――――落ちた。
それを確認すると、念には念を、と言わんばかりに最大出力のスタンガンを突き付ける。
念入りに、首と左胸に当てる。
そこまでやってようやく死を確信し、茜は機関銃を取りに戻った。
【東 優@パワプロクンポケット7 死亡】
【残り39人】
支援
◆ ◆ ◆
そこに居たのは一人の男だった。
濃い青のスーツとサングラスが特徴的な男。
両腕に銃を持ち、腰にベルトで日本刀を固定しているひどく物騒な姿だ。
背中にもデイパック以外の何かを背負っているようにも見えるが、イマイチよく分からない。
男は再び淡々とした動作で銃に再び手をかける。
「お前ぇ!!」
パン! パン! パン!
九条の怒りの声を無視して銃声が三発、ひどく簡単に、迷いもなく、無表情に銃を撃ってくる。
その姿で確信したこの男は殺しに慣れている。
恐怖で歪んだわけでもなんでもない、この男は自分の意志で狂うことなく人を殺している。
素早く物陰へと隠れて、姿の見えない男へと向けてロケット弾を取り出す。
ここが平地でなくてよかったと心から思う、もしも隠れる場所がなければさっきの
ここで退くわけにも九条もいかなかった。
あの男は危険だ、ここで排除して置いておく必要がある。
それにロケット弾と言っても物陰越し、死ぬことはない……だろう。
かなりの重傷を負うだろうが、死にはしない。
そのことが九条に躊躇いなく引き金を引かせた。
――――――――!!!!!
その瞬間、轟音とともに男の居た場所に火の手が上がった。
まるで引き金を引くことでそこに仕掛けられた爆弾が作動したのかと勘違いする程の速さ。
それでいて固定されたバズーカ砲からの衝撃は思ったより幾分も軽いものだった。
「……すご――りょ――、―れ」
あまりの威力に驚きの声を上げてしまう。
だが、その声も九条自身は聞き取れなかった。
轟音が響いた所為か、耳が馬鹿になっているのだろう。
しかし、これほどの威力ならば殺してしまったかも知れない、そう考えると妙な恐怖心を覚える。
バズーカ砲をポイと捨てて、ゆっくりとした足取りで近づく。
一発切りのロケット弾をここで使うのは早計だったかもしれない。
激昂した所為か、正常な思考を失っていた。
少し反省していると、耳も回復してきた。
ゆっくりとその音を追い空を眺めると、目を疑った。
「……なっ!?」
そこに映ったのは宙に浮いた男だった。
いや、宙に浮いた、という表現では甘いかもしれない。
それは空を飛んでいる男。そう、男は空を飛んでいるのだ。
背中に身につけた小型のロケットのような機械。
アレを使って、男は飛んでいるのだ
あまりの突飛な出来事に何の反応も出来なかった。
男が空から降りながら、棒のような何かを振りかぶる。
恐らく銃、黒野を殺し九条へと向けて撃ってきたものだろう。
それを思いっきり振り下ろしてくるのをまるで他人事のように見ていた。
「がぁ……!?」
僅かに遅れて事の恐ろしさに気づき、倒れこむように男の落下点から外れる。
結果、銃による撲殺は防がれたが追撃するように蹴りを入れられる。
容赦のないそれだけで人を殺す気なのではないかと思えるほど鋭い蹴り。
内臓の奥の奥に響くような蹴りだ。
「……」
男は一切の躊躇いもなく追撃をかけてくる。
ただ、今度は蹴りなんて甘いものではない。
腰に差した刀を素早く抜き取り、切りかかってくる。
「くぅ……!」
痛む体に鞭をうち、なんとかその凶刃から逃れるために身を捻る。
既に動けないと判断していたのか、男の刀は空を切りなんとか一命を取り留めることに成功した。
だが、男はそれでは終わらない。
九条をサッカーボールだと勘違いしているのではと思うような気軽さで蹴りつけてくる。
再び腹部を襲ってくる鈍い鋭い痛み、吐瀉物をまき散らしながら必死に立ち上がる。
ここで引くわけにはいかない、九条はがむしゃらにギターを振り回した。
通常の人間よりも鍛えられた九条が振るうギターは風切り音が聞こえるほどの鋭いもの。
仕込み武器を警戒したのか、今度は男が距離を取り直す。
その隙に懐へと手を伸ばし、九条の最後の武器を取り出す。
サングラスの男も九条が何かを取り出したのに気づき、素早く距離を詰めようとする。
だが、少し遅い。
九条はその兵器を取り出し、男へと向かって投げつけた。
それはスタングレネード、音と光で相手を麻痺させる兵器。
耳をふさぎ、情けなく灰原に背を向け、それを起動させる。
それは、まるで孔雀が畳んだ羽を広げるように、空中へと一瞬で広がっていく。
範囲はそれほど広くはない、多めに見積もっても五メートルあるかないかだろう。
しかし、灰原のサングラス越しにも僅かに効果があったらしく、僅かにだが光を嫌う吸血鬼のように前かがみになる。
イタチの最後っ屁と言われるかも知れない。だがしかし、僅かな間で十分だった。
ボロボロになったギターを杖代わりにして体勢を保ち、通さないと言わんばかりに歯を食いしばって睨みつける。
これでようやく同じ状態。
立っているのも辛い今の状態で、この踊る様な自然さで人を傷つけてくる男にようやく並べたのだ。
だが、それもわずかな間。
だからと言って逃げるわけにもいかない。
ここで逃げ出すと、この男は間違いなく病院へと向かい生き残った五人と東を殺す。
「……っ!」
歯を強くかみしめてギターを振りかぶる。
男は逃げて行った黒野達を追うことを諦めたのか、悠然とした態度で刀を構えている。
先ほどのような隠された武器を警戒しているのかもしれない。
生憎だがそんなものは持っていない。
文字通り残されたのはギターだけ。
かつての相棒、今は仲違いをして袂を分かった男、椿の物だ。
おかしな縁だが、悪い気分ではない。
「……」
サングラスの男は身じろぎすらせずに九条を見据えている。
スタングレネードを食らったと言うのに、それを感じさせない不気味な男。
男よりも距離の離れていた九条ですら、頭がガンガンと鳴り響き、世界がチカチカと火花を散らしていると言うのに。
不気味だ、人間味がない。
もしかしてこの男は本当に化け物なのかもしれない、そんな考えが九条の頭に過る。
男の構える刀の透きとおった刀身は陽の光を反射し、艶美に輝いている。
そして磨かれた鏡のような刀身とは対照的に、男のサングラスは一切の光を通さずに奥に眠る瞳を露にしない。
サングラスの男が刀を正眼に構える。九条がギターを身体の前へと翳すように突き出す。
お互いが武器を構え合った状態での膠着は、一瞬だった。
九条が一歩踏み出す。男が刀を担ぐような構えに構え直す。
九条の狙いはギターをバットのように使い、男のこめかみへと叩き落とすこと。
リーチを考える必要はない。正確に言うならば、そんな暇はない。
サングラスの男のスピードは異常の一言だった。
九条が先に一歩踏み出したはずなのに、男はいつの間にか懐に居る。
次に見えたのは銀色に淡く輝く鋭い何か、それは直線で喉へと向かってくるためか刀だと認識はできなかった。
首筋に鋭い痛みが走る。
喉を切られた。喉を貫かれた、ではなく、喉を切られた。
まばゆく輝く刀身を九条の喉に触れ合わせてから引き抜いたのだ。
だが、まだ動ける。
九条は自らを鼓舞し歯を強く噛みしめて脚を踏み出す。
ギターを右腕一本で振うが、それ自体は簡単に避けられる。
それでいい、スウェーをするように逃げさすのが元々の九条の狙いなのだから。
(……こいつも連れて行く!)
左腕の裾に隠していた銃剣を取り出す。
朦朧とした頭と、ゆらゆらと揺れる視界だがこの距離なら外さない。
左腕を伸ばし、奴の腹へと思いっきり突き刺す。
「なっ……!?」
「……腹は急所だ、装甲で覆っている。銃剣程度では第三世代の装甲は貫けん。
ましてや、ただの人間の膂力ではな」
九条の左手首に手刀を落として銃剣を落とす。
だが、そんなことに意味はない。
九条は既に虫の息だ、なにせ喉を貫かれたのだから。
痛みによるショック死をしなかったのは、この男を止めるという意志のため。
しかし、それも失敗に終わった。
九条を立たせる理由はここで消えたのだ。
だから、銃剣を持たせていても何の危険もない。
それでも左手首に手刀を下したのは灰原の機械のような冷静さによるものだ。
「ちく……しょう………!」
その名にヒーローという単語を持った男の最後の言葉は、怨嗟の言葉だった。
目の前に居る男に届かなかったことに対する悲しみ、むざむざと黒野を殺させてしまったことに対する苦しみ。
そして、男を止めることすらできなかった無力極まりない自分への怒り。
だが、様々な感情を持った怨嗟の言葉はサングラスをつけた冷たい男には届かない。
男は笑わない、涙を流さない、苦しまない。
なぜなら彼はアンドロイド、命を持っただけの人形だから。
こうして、ロマンを声高に語るドンキホーテは声の届かないコッペリアに殺させた。
結局、彼はヒーローではなかったのだ。
全てを救い、皆を笑顔にし、悪人すら改心させる。
そんな、子供の憧れではなかった。
彼はただの夢追い人。
過去も未来も関係ない、ここに居る彼は、ただの夢追い人だった。
支援
し
____
/__.))ノヽ
.|ミ.l _ ._ i.)
(^'ミ/.´・ .〈・ リ
.しi r、_) | 支援はわしが育てた
| `ニニ' /
ノ `ー―i
支援
sien
【黒野 鉄斎@パワプロクンポケット8 死亡】
【九条 英雄@パワプロクンポケット9 死亡】
【残り37人】
【F-6/一日目/午前】
【荒井紀香@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身のところどころに軽い火傷、体力消耗(小)
[装備]:なし
[参戦時期]:紀香ルート・2年目クリスマス
[道具]:支給品一式、野球人形
[思考]基本:二朱くんに会う。
1:目の前の女(智美)についていく。
2:二朱君との愛の営みを邪魔するひとは容赦しないです。
3:あの女(夏目准)が二朱君を手にかけていたら仇をとる。
[備考]
※第一回放送に気付いていません。
【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[状態]:健康
[装備]:コルトガバメント(6/7)
[道具]:支給品一式、詳細名簿、ノートパソコン(バッテリー消耗小)、駄菓子数個
[思考]基本:どのようにも動ける様にする。
1:平山の言葉を伝える。
2:病院へと向かう。
3:出来ることならカズと朱里、十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
[備考]
※この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています
※芳槻さらを危険人物と認識しました。
※島岡の荷物は、島岡を殺害した者に持ち去られただろうと判断しました。
※小波走太一行とは情報交換を行っていません。
【ほるひす@パワプロクンポケット6表】
[状態]:表面が焦げてる、悲しみ?
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜1
[思考]基本:ころさないし、ひともまもるよ。
1:こうし……ひらやま……
2:びょーいんへむかう。
【凡田大介@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身に打撲
[装備]:お守り
[道具]:支給品一式、鍵
[思考・状況]基本:ガンダーロボを救出したい
1:ホテルに向かいながら仲間を集める。
2:基本人殺しはしたくない。
3:九条を信頼。
4:チームメイトにH亀田がいる
[備考]
※七原、真央、走太と軽い情報交換をしました。
【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:嫌な汗が背中に伝わっている。
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)
[道具]:支給品一式、ダイナマイト5本
[思考・状況]基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:しばらくは情報集めと人を集め。
2:十波典明の言葉を丸っきり信用するわけではないが、一応警戒。
3:第三放送までにはホテルPAWAに集まる人をどうするか方針を決めたい。
4:亀田の変貌に疑問?
[備考]
※メカ亀田を危険人物を判断しました。
※ピンクのパーカーを着た少女を危険人物と判断、作業着を着た少女を警戒。
※探知機は呪いの人形に壊されました。
※五人は九条と東に何があったのかは気づいていません。
◆ ◆ ◆
―――――このままではいけない。
もう日も高く昇り始めたというのに、まだ茜は三人(一人はロボットだったが)しか殺せていない。
こんなのでは『お兄ちゃん』に見捨てられる。
嫌だ、それだけは絶対に嫌だ。
お姉ちゃんだけでなくお兄ちゃんにまで見捨てられたら茜は生きていけない。
それは誇張でもなんでもない。
誰も居ない世界に生きている価値なんてない、『お兄ちゃん』の人形にすらなれない『妹』に価値なんて存在しない。
まるで寒さをしのぐように両手で身体を抱きしめる。
震えが止まらない。
死ぬのなんて怖くない、お兄ちゃんとお姉ちゃんに出会うまでは死んでいたようなものだ。
だから、だからこそ、お兄ちゃんとお姉ちゃんに見捨てられるのが怖い。
震えが治まったのは一時間も経った時のことだった。
「……さ、行きます!」
無理に明るい声を出して、歩き始める。
彼女は別に殺しに嫌悪も抱いていなければ、死を恐れてもいない。
ただ、依存できなくなることだけが怖かった。
【F-7/一日目/午前】
【高坂 茜@パワプロクンポケット8】
[状態]:幸せ、早く殺したい、右手首打撲
[装備]:機関銃、冬子のスタンガン@パワプロクンポケット8
[道具]:支給品一式、アップテンポ電波、予備弾セット(各種弾薬百発ずつ)
[思考・状況]基本:みんな殺して幸せな家庭を取り戻す。
1:人を殺すために人の居るところへと向かう。
【冬子のスタンガン@パワプロクンポケット8】
彼女候補キャラの一人、雪白 冬子が護身用に所持していたスタンガン。
違法サイボーグの動きを止める程度の威力がある。
◆ ◆ ◆
灰原はパーカーを着た少女が橋を渡る姿を、刀についた血を拭いながら眺めていた。
あの少女は殺し合いを積極的に進めている。
体格には恵まれていないが支給品にはこの上なく恵まれている。
使える、灰原は瞬時にそう判断した。
先ほどのように、少女が取りこぼした人間を殺していけばいい。
一時間もの時間を潰したのも悪くない。
あの五人組は病院に向かっていた、そこに少女が向かえば一網打尽に出来るだろう。
「……」
灰原は何も喋らずに、じっと少女を観察する。
少し不用心だ、あんな大声を出して動くなど利になる行動ではない。
だが、少女が未だに殺しに積極的なのは朗報だ。
自分で動かずに他の人間を利用するのが利口なやり方と言う物。
「……」
正宗が太陽の光を反射する。
灰原は何も口に出さず、ただ少女の追跡を始めた。
後ろに残る三つの死体になんの感慨も示さず、ただ動き始めた。
【F-7/一日目/午前】
【灰原@パワプロクンポケット8】
[状態]:健康
[装備]:正宗、銃剣
[道具]:支給品一式、ムチ、とぶやつ(エネルギー切れ)、ボールオヤジ、催涙スプレー@現実
[思考]基本:優勝し、亀田の持つ技術をオオガミグループへと持ち帰る。
1:茜の後を追う形で動き、極力無駄な動きを避ける。
2:見敵必殺、ただし相手が複数いる場合など確実に殺せないと判断した時は見逃す。
3:白瀬に指示を与えたい。
4:喋るボール(ボールオヤジ)を持ち帰る。
【催涙スプレー@現実】
かけられると、辛いです。
投下終了です
誤字脱字矛盾その他問題を見つけられた際は指摘お願いします
っと、途中の多くの支援、ありがとうございました
投下乙でした
灰原つえー、9主やっちゃった
東は最後までいいとこなかったな、応援してただけに残念
そして黒野博士が死んだのは対主催にとってかなり痛手になるな
5人の方も焦げくさい雰囲気が漂ってるし・・・
これからもがんばってください
GJ
9主が死んだか
やっぱアンドロイドは反則的な性能だな
あと別れた方の5人九条に気付いてないなら黒野にも気付いてないんじゃ?
ですね、ミスですorz wikiに保管する際に修正します
タケミ、メカ亀田投下します
「じゃ、早速始めるでやんすよ」
いつの間にか戻って来ていたメカ亀田は、何の脈絡もなく何かを開始する、と宣言した。
状況を把握し切れていないタケミの手から首輪を奪い取り、作業机の上に投げ出す。
爆発物を扱っているとは思えないほどの乱暴な仕草で、タケミも一瞬それがただの首輪だと誤った判断をしてしまったほどだ。
「……何をするの?」
「決まってるでやんすよ、首輪の分解。ちょうどいい腕も見つかったでやんすね」
顔を向けず声だけを返して、ガチャリガチャリと金属が触れ合う音を出しながらメカ亀田は何かを行っている。
そこでようやく気付いたのだが、メカ亀田の手が先ほどの鋭い人も殺せそうな爪ではなくロボットらしいアームになっている。
何処か見たことのあるような手だな、と思いながらタケミはその様子を眺め続ける。
どうにもメカ亀田は一人歩きを続けて周りと距離をとりすぎる癖があるようだ。
ひょっとすると『自分は人間とは違う、つまり他とは違う』という考えの表れなのかもしれない。
「ほれ、これをつけておけでやんす」
「っと……なにこれ? 楯と、ゴーグル?」
「ラブスコープと機動隊のシールドでやんす。それでオイラの分解を覗いていろでやんす」
メカ亀田から渡されたものはレンズ部分の横にアンテナのようなものが伸びているゴーグルと、タケミ一人なら十分覆えそうなシールドだった。
なるほど、これで首輪を解体する様子を観察しろということか。
そこまで考えて、ようやくタケミはことの重大さに気づき狼狽した。
「……って、分解するの!?」
「当たり前じゃないでやんすか、代わりの作業用の腕も見つかったでやんすからね。
ほぼ同時期だから無理やり合わせたのが少し不安でやんすが……」
「ほ、本気で分解するつもりなんだ……! それと、代わりの腕? そんなのよく見つけたね」
「まあ、変えの腕を見つけたのはたまたまでやんすけどね。ところで、首輪を見てて気づいたことは?」
カチャリカチャリと手を確かめる様に動かしながら、タケミに問いかける。
首輪を弄っていて気づいたことなど大したことではないが、一応説明するようにメカ亀田に話す。
メカ亀田が試している可能性も考慮してなるべく当たり前だと思われることも含めて詳しくだ。
「……それほど難しそうな作りじゃないね。
多分、特殊な電波を受け取ることに機能をつぎ込んでると思う。
だから、それ以外にはあんまり手が回ってないと思うよ。人数分を作らなきゃいけないし。
ひょっとすると、禁止エリアって言うのに踏み込んだり離れたりって言うのを繰り返すとオーバーヒートで壊れるんじゃない?」
「まあ、オイラもお前の意見と大体は同じでやんす。さすがに壊れるってことはないでやんしょうがね」
そう言いながら、メカ亀田は工具箱を開き道具を取り出す。
そして、取りやすい位置に工具を並べるとじっくりと首輪を眺め出した。
ひどく手慣れた動作だ、メカ亀田がズブの素人でないことが分かる。
「まあ、どんなに観察しても実際どうなのかは中を見ないと分からない、というわけで解体でやんす。
なに、内側に衝撃を集中させて首と胴を切り離す形式みたいだからあまり被害は来ないでやんす。
それでも手首から先は『はい、さようなら……』でやんすけどね。
オイラはロボットだから平気なだけでやんすけど」
「それで、私はこの重装備ってわけ?」
メカ亀田は分解を続けながら、タケミはそれを注意深く観察しながら軽口を叩き合う。
僅かだけ考え込むように眺めた後、メカ亀田は素早く解体を始めた。
工具を扱う手は慣れている、下手をしたらタケミを上手いかもしれない。
だが、それも仕方ないことだ。
タケミは知る由もないことだが、メカ亀田はプロペラ団から逃亡している間に何度なく自身の身体を改造し続けた。
そのため、絶対的な知識量はともかくとして機械を弄るということはタケミよりも上なのだ。
メカ亀田は工具を滑らすように動かし、全工程に必要と思われる。
ここまではタケミでも初見で出来る。
問題はここからだ、と思い視線に熱を込めた瞬間。
ポン!
何かがはじけるような音共に首輪が破裂した。
一瞬、何が起こったのか理解できなかったが、落胆と共にゆっくりと理解できた。
分解の結果は途中で失敗した。
被害自体は少ないが、タケミの心に残った落胆の気持ちは大きい。
だが、そんなタケミとは対照的にメカ亀田は淡々とした表情で首輪の残骸を眺めている。
「……どうやら、首輪を分解しようとすると爆発する仕組みでやんすね」
「そりゃそうに決まってるでしょ」
「そう、確かにそれは決まってるでやんす。だけど、実際に試してみてそれは99%から100%へと変わった。
ついでに言うなら、その際には警告のメッセージは出ない。
そして、爆発の規模自体はそれほど大きなものではない。これが分かったのは大きいでやんすね。
とにかくこうやって堅実に可能性を埋めていくのが大事なんでやんすよ」
「…………それもそうだね。まさか、機械に諭されるとは思わなかったよ」
タケミはその言葉を半分皮肉を込めて、しかし半分は本当に驚愕の念を込めて零した。
たかゆきと言いメカ亀田と言い、タケミの想像を軽く超えてくる。
人間なんて区分はない、人間とは心のあり方だと言ったたかゆき。
機械は人間よりも優れている、それを証明するために自分は復讐すると言ったメカ亀田。
二人の機械は全く違った意見を発しているのに、どちらもタケミの胸に響いてくる。
メカ亀田は好きにはなれないが、たかゆきの話を聞いた後だけにその思想には考えさせられる。
どちらが正しく間違っているのか、それとも答えにあるのか。
人間でない生き物が人間と同じ場所で暮らすにはどのようにすればいいのか。
ただ平和に暮らしていただけだったタケミの胸に響いてくるのだ。
「機械が人間よりも優れているのは当然でやんすよ、余計な思考をしないでやんすから」
そんなタケミの思いを知ってか知らずか、メカ亀田は馬鹿にするように笑う。
しかし、何処かその笑みはぎこちないように思えた。
やはり、笑いの一つをとってもメカ亀田とたかゆきは全く似ていない。
「さて……ちょっとオイラのデイパックから自前の腕を取ってくれでやんす」
「……わかったよ」
タケミは考えるのをやめて、転がっていたデイパックを拾ってチャックを開ける。
もう太陽が昇ってかなりの時間が経ったと言うのにデイパックの中は真っ暗な闇に包まれている。
不思議な道具だ、やはり亀田はタケミたち天使を造った人間と何らかの関係を持っていると考えていいだろう。
「えーっと、腕っと……これかな?」
タケミはデイパックの中に腕を突っ込み機械の腕を探す。
ひんやりと冷たい感触がタケミの手のひらに伝わる。
恐らくこれがメカ亀田の本来の腕なのだろう、タケミは躊躇いなく引っ張った。
デイパックの中から覗いてくるのはPという文字をつけた巨大な直方体。
見覚えのある、忘れようもない姿。
見間違えるわけもない、これは間違いなくたかゆきだ。
「なっ! こ、これって!」
「ああ、ちょうど外に転がってたスクラップでやんす。せっかくだから有効活用させてもらったでやんす。
ちなみに、壊れた腕はそれから取った奴だからそれにもう腕はないでやんすよ。早くオイラの腕を……」
「なんで!?」
こともなさげに喋るメカ亀田に、ふつふつと怒りが湧いてくる。
死人が泥を塗るような行為、何故それをこんな簡単にできるのか。
タケミはメカ亀田に詰め寄り、睨みつけながら怒鳴りつける。
「なんで!? なんでたかゆきを傷つけたりしたの!?」
「何を妙なことを。それはオイラが見つける前から壊れていたでやんすよ」
「違うよ! なんでたかゆきを眠らせてあげなかったの、って聞いてるの!」
「そんなの意味がないことでやんす」
「意味がないってどういうこと!?」
話は平行線だった。
当然だ、メカ亀田とタケミの価値観は決定的に違う。
たかゆきを人間の死体のように扱うタケミと、スクラップになった鉄くずを見るメカ亀田。
すれ違うわけがない。
そんなタケミがうざったくなったのか、メカ亀田は吐き捨てる様に言葉を投げつけた。
「……ちょうどいいでやんすね、次はこいつの身体の中にある首輪で実験するようでやんすよ」
その言葉に、目を見開いてメカ亀田を見る。
冗談でしょ、と言わんばかりに。
だが、黒いサングラスの奥にある瞳は何も見えない。
瞳は見えず、頬を吊り上げて笑っているわけでもない。
大真面目に、何の罪悪感を覚えずにメカ亀田はたかゆきを首輪のように分解しようと提案したのだ
そのことを遅れて察して、タケミは大声でメカ亀田を怒鳴りつける。
「ふざけないで!!!」
たかゆきの前に立ち、親の仇を見つけたかのように鋭い眼光でメカ亀田を睨みつける。
これ以上は譲れなかった。
たとえ、メカ亀田がどれぐらい危うい存在で、タケミを殺すことに何の躊躇いも覚えない機械だろうと譲れはしない。
怒りをむき出しに、犬の威嚇のようにメカ亀田をじっと睨みつける。
だが、メカ亀田は軽くため息をついて、教師が出来の悪い生徒を諭すように言葉を放つ。
「ふざけているのはお前の方でやんすよ。
そいつはもう物でやんす、0と1を並べるメインコンピュータが壊れた機械なんてただの鉄屑でやんすよ。
機械の長所は壊れても有効活用できること。
腐っていくタンパク質の塊と違って鉄屑は加工できるでやんすからね」
「やめてよ! たかゆきを……たかゆきを物みたいに言わないで!」
「物みたい、じゃなくて、物、なんでやんすよ」
冷たく何の情もなく言い放つメカ亀田に、タケミは言葉を上手く返せない。
間違っているとは思う、だが、口で勝てる気がしない。
ただ分かったのは、タケミとメカ亀田が分かり合うのは不可能だろうということだ。
「そんな簡単に割り切れるなんて思わないで……皆が皆、あんたみたいに強いわけじゃないの」
「…………ま、お前がそこまで嫌がるのなら止めておくでやんすよ。でも、分かってるでやんすか?
そいつの中から首輪を取り出さないと言うことは別の人間で実験するってことでやんすよ」
馬鹿にするように厳しい言葉を投げつける。
だが、これでぐうの音も返さないだろうと思っていたメカ亀田の期待を裏切るようにタケミは言葉を返した。
「私は……そこまで善人じゃない」
その言葉にキョトンとメカ亀田の動きは止まり、数瞬後に大声で笑い始めた。
愉快でたまらないと言わんばかりに、前かがみになって腹を押さえながら笑いだす。
タケミの、そこまで善人じゃない、という言葉。
それはつまり見知らぬ悪人相手なら何をしても構わないと言っているのだ。
メカ亀田はタケミへの評価を改めた、タケミは決して機械に詳しい『だけ』の女ではない。
冷たい演技をして、赤の他人を最初から居ない存在と思える優秀な女だ。
実際にどう思うかは関係ない。
悪いことをしたし、自分とは関係のない人間だから拷問や生き地獄ではなければ別に何をしても構わない。
そう割り切れる人間なのだ。
ただ、その強がった表情がなんとも未熟で面白くて、メカ亀田はついつい声を張って喋ってしまう。
「はは、分かったでやんすよ。
PX-001には手を出さないでやんす、代わりに今度会った殺し合いに乗った馬鹿から首輪を取るでやんす。
それで、いいでやんすね?」
タケミは言葉を返さず、ただ黙って頷くだけだ。
そんな素気ない態度を返されたと言うのにメカ亀田は上機嫌だった。
「ああ、それと早く腕をつけてくれでやんす♪」
【B−7/工場/一日目/午前】
【タケミ@パワプロクンポケット10裏】
[状態]:疲労(小)、メカ亀田に対する複雑な感情
[装備]:作業着、コンパス、時計、シールド@パワプロクンポケット3
[道具]:支給品一式、爆弾セット(残り5個)、ラブスコープ@パワプロクンポケットシリーズ、工具箱
[思考]基本:殺し合いには乗らない、首輪を外すために行動する。
1:出来るだけ戦いたくないが、どうしようも無ければ戦う。
2:メカ亀田は気に入らない。
[備考]
※モンスターとしての力は短時間、疲労大の条件の下、発動可。
※十波典明、高坂茜の名前を知りません。
【メカ亀田@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:損傷なし、上機嫌
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、PX-001(たかゆき)、ドリル
[思考]
基本:『殺し合い』を失敗させた後に亀田を殺す。
1:ジャミング用の機械と実験用の首輪を見つける。
2:脱出のために役立ちそうな人間を優先して仲間にする。
3:サングラスの男(灰原)に激しい殺意と敵意。
[備考]
※参加時期は不明。
※メカ亀田は灰原の名前は知りません。
※自動追尾ミサイルとバリアーは没収されています。
※青野の情報は全部嘘だと思っています。
※十波典明、たかゆき、高坂茜の名前を知りません。
【シールド@パワプロクンポケット3】
これを手に入れると最も高給なお仕事であるボディーガードの仕事が出来る様になる。
……なのだが、ストレスが溜まりやすい仕事の上ドリルよりも値段が高いため、あまり使われない可哀そうなアイテム。
詳しい強度は不明。
【ラブスコープ@パワプロクンポケットシリーズ】
皆大好き彼女攻略の際の便利アイテム。
これをつけることで好感度を見ることが出来る。
基本的に自分に好意を寄せている相手をラブスコープをつけて覗き見るとハートが浮かび出る。
投下終了です
誤字脱字矛盾その他問題を見つけられた際は指摘お願いします
そして、>>344-
>>348の作品ですが、自分勝手な話だとは思いますがどうしても通しておきたいです。
正直、破棄するかどうかこの一か月と半月考えこんでいたので安易なリアクションを取ることが出来ませんでした。
早まったと言うよりも暴走してしまった、作品をどうするかの明文化が非常に遅い、と言う点では自分でも猛省しています。
ただ、どうしても同じ作品なのに違うルートから何人も来ていることの説明はしておきたいと思いましたので書きました。
作品の内容としては
>>358の方の解説で全く間違いがありません。
もちろん、そのやり方が不味かったと反省しています。
ガンダーロボも11裏のガンダーロボを改造したということで、特別なものだと言うことを主張しようと思って名前をオリにしてしました。
オリジナル要素が強すぎることが気に食わなかった方も少なくはないと思います、浅慮でした。
保管の際にガンダーロボの名前を『ν頑陀亜浪菩』からただの『ガンダーゴーレム』に直したいと思います。
確率変動の少女も、亀田にとっては能力が重要で名前はどうでもいい。
寺岡子爵のキャラ付けも兼ねての視点を固定した以上、五十鈴の名前を出せなくなりました。
明確に宣言しておきますと。
確率変動の少女=天月五十鈴@パワプロクンポケット10のBADEND。
ν頑陀亜浪菩=11裏の馬鹿でかいガンダーロボに五十鈴を乗せたもの。
です。
>>351さんの意見には感謝しています。
厳しくはあらずとも否定的な意見を頂けることで作品をじっくりと見直すことができました。
至らぬ作品だとは思いますが、どうぞ平に……
危ない作品にも見放さずに様々な意見をくれた皆様に、ただ感謝。
投下乙です
ここでまさかの対主催三人死亡か
俺が勝手にキーマンだと思い込んでいた黒野博士や
主人公が死んで、これからどうなるの?と
wktkしながら見てました
黒野博士が死んだことでタケミとメカ亀田の重要性が
増してきました 彼等がどう動くのかも気になります
連レスすいません
皆さんこのロワ内での戦闘力をどのように考えていますか?
(もちろん状況にもよりますが)
原作の展開からいくと八神>灰原とかは判断出来ます
しかし裏からの参戦もありますし、よくわからないところがありますよね
例えば七原と八神はどっちが上なのかとか
レッドとブラックとか
投下乙
見知らぬ悪人はどうなっても構わないと言い切れるタケミが好きだー
ぬおお……大好きで応援していた東、黒野、そして九条が死ぬとか……たまらん!
灰原の冷酷さと強さに痺れるぜ。
メカ亀田! こーなったらもーお前が希望の星だ!
投下します
殺し合いが始まってから九時間、そろそろ小腹も減ってきたでしょう。
ここで黒羽根村が代表にして我威亜党幹部、黒羽根あやかによる調理教室の時間です。
場所はここ、野球場内部の選手休憩所です。
そして、今回作る料理は『らいすかれい』です。
これは大正の世にも普及している料理です。
ですが、今回は八十余年後のより美味となったであろう『らいすかれい』。
一味も二味も違うだろうと予想できます。
無駄口はこれほどにして、早速準備に取りかかろうと思います。
幸いと言うべきか、『れしぴ』はここにありますので、私でも何の問題もなく始めれるでしょう
まずは米を炊く、ですか。
すてんれす製のぼうる一杯の水を注ぎ、洗米を始めます。
本来ならばこの工程でかなりの時間を取られますが、今回は無洗米とやらを使えるのでその工程を大きく省くことができます。
無洗米とは言え二回ほどは研いだ方が美味しいと書いてあるので、念入りに洗米をするのも忘れてはいけませんよ。
細かいようですが、ごしごしと削るようにではなく大量の水で揉むように米を研いで行くのが大事です。
この動作を二回繰り返し、後は数十分の間水に浸しておきます。
無洗米とやらを使うのは私も初めてなので少々怖い部分もありますが、まあ大丈夫でしょう。
あ、それとこの『炊飯器』は、なんでも勝手にお米を炊いてくれる優れものらしいですよ。
これを使えば一時間もたたずにふっくらご飯のお出まし、と言うわけです。
では、その間にカレーの具材の準備をしておきましょう。
必要なものは玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、牛バラ肉、調味料諸々。
まずはお肉を一口大ほどの大きさに切り、塩と胡椒を適量振りかけます。
次は玉ねぎとにんじんとじゃがいもの皮をむいて、それぞれを適度な大きさに刻んでいきます。
詳しく言うなら玉ねぎは薄切りに、にんじんとじゃがいもは大きめの乱切りに、と言った大きさです。
今度は鍋の底に『さらだ油』を入れて弱火で熱します。
油の強いた鍋には、まず薄く切った玉ねぎから入れていきます。
その際は玉ねぎの甘味が出すために、弱火でしんなりするまでじっくりと良く炒めるのが大事です。
玉ねぎがしんなりとして来たら、いったん鍋の端へと玉ねぎを寄せて牛肉を一緒に炒めます。
だいたい、中火で牛肉の表面の色が変わる程度に炒めれば良いでしょう。
そこまで炒めると、残りのじゃがいもとにじんを一斉に鍋へと入れましょう。
後は野菜が柔らかくなるまで炒めましょう、ここまで来ればもう完成しても同然です。
そして、野菜が柔らかくなれば鍋へと水を入れてください。
ぐつぐつと沸騰するまでよく茹でるのを忘れないよう。
水がぐつぐつと煮えたぎったら、『かれいるー』を入れましょう。
それほど長い間待つ必要もありません、『るー』が溶ければ問題ないでしょう。
と言うわけで、調理を行ってからちょうど一時間、これで『らいすかれい』の完成です。
これまでのことで何か質問はありますか、プレイグさん?
「……ワシはこの小芝居にどんなリアクションを取ればいいんや?
しかも、それ全部その紙に書いとることを丸々そっくり喋っただけやな?
それと話を振ってくるまでずっと律儀に振りを待っとったワシに言うことはそれだけか?」
あらあら、ずいぶんと無粋ですねプレイグさん。
女性が手料理をふるまうと言うのに、感謝の言葉もなく。
「女性ってタマかお前は、だいたい化け物に男も女も関係あるかい。
その便利アイテムが使える様になったんやったら、ここでゆっくりする理由なんてやろ」
ああ、そのことなら何の問題もありません。
先ほど起動させて確認したところ、思ったよりもマーダーと思われる人間が固まっているので、私達が動く必要はありません。
「あん? なんで殺し合いに乗っとる奴まで分かるんや?」
死者の場所とその参加者の位置、そして頭に入れてある前情報から大凡の判断はつきますよ。
少なくともどこそこのエリアにはマーダーが居る、とかそれぐらいはね。
「……そうか、つまりそいつらが仕事をしてくれるから無理に動く必要はないっちゅうことか」
そう、私達が動くのはそういうごたごたが終わってからです。
疲労しきっているところや殺し合いに乗った人間から逃げきって安堵した所を難なく殺す。
そう言うえげつないのがプレイグさんの好みでしょう?
「人聞きの悪いこと言うな、わしはなるたけ楽に仕事をしたいだけじゃ。
……まあ、そういうことなら今は大人しくメシとしゃれこむか。腹が減っては、とか言うしな」
そうです、我々は労なく実だけを取ることが出来ます。
まあ、それでも確実ではないですが無理に動く必要がないのも事実でしょう。
「……なぁ、まさか」
え? なんですか?
「ひょっとしてお前、このカレーっちゅうのを食ってみたいだけか?
わざわざ急ぐ必要もないが、ここでゆっくりする必要も同じくらい必要ないで」
まあ、八割ほどはそういう理由が含まれますけどね。
ああ、本当に良い匂い……この進んだ時代の『らいすかれい』はどんな味なのでしょうか……?
「ま、構わへんけどな。こっちも腹が減ってきたのも事実やし」
……そろそろ、ですね。
お米も炊けて、かれいも良く煮込まれてきました。
うわ、見て下さいよプレイグさん。このお米、物凄く美味しいそうですよ。
「分かったから、お前はいちいちうるさいねん」
かれいも湯気を出してて……匂いは強いけど、見た目ほど嫌な匂いではありませんね。
お皿に米をついで、その上にかれいをかけると……
見るからに美味しそう……見た目からも思ったよりも食欲をそそられますね。
で、では、まずは一口…………うぅぅんん!
こ、この一口噛んだだけで脳天を突き抜けて広がる旨味……!
ふっくらとした米と辛みのあるかれいが見事に潰し合うことなく引き立て合っている!
ああ……水浴びの気持ちよさと言い『らいすかれい』の美味しさと言い、私もう大正の生活には戻れない……!
「は、確かに美味いけど、そこまでではないやろ。
作る過程は楽で早そうやが、味だけならもっと美味いものは仰山あるで」
あら、プレイグさんがそう言うとは意外でしたね。
何せ毎日毎日雑草や泥水を啜って、満足に腹を満たしたことがないのでしょう?
「人を乞食みたいに言うな、ダボが」
【G−3/野球場内部サロン/1日目/昼】
【黒羽根あやか@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:歓喜、満腹、テンション↑
[装備]:妖刀ムラマサ@パワプロクンポケット7裏、日本刀
[道具]:支給品一式、高性能型探知機、充電器、タオル数個
[思考・状況]
基本:殺し合いを円滑に進めるために動く。方法は問わない。
1:『らいすかれい』美味しい! 未来凄い!
2:ゲームに乗っていない人間は殺す、マーダーに出来そうだったらする。
3:名探偵は、今度こそこの手で………
[備考]
1:参加者全員の顔と詳細情報についての知識を持っています。
2:探知機はあやかには反応しません。
【プレイグ@パワプロクンポケット4裏】
[状態]:健康、満腹
[装備]:ハヅキの杖@パワプロクンポケット4裏
[道具]:支給品一式、カレー調理用セット(食材三人前、包丁鍋フライパンスプーン皿、いずれも汚れてる)
[思考・状況]
基本:『殺し合い』に乗り、優勝を目指す。
1:あやかについては保留。とりあえず今は殺さない。
2:もっとまともな杖が欲しいでホンマ……
[備考]
※杖がなくとも呪文を唱える事に支障はありません。精神的にほんの少し落ち着かないだけです。
投下終了です、タイトルは 究極にして至高の料理、その名は――――! です
誤字脱字矛盾等の指摘どうかよろしくお願いします
そして予約ktkr
投下乙
少し前の静けさが嘘のようなラッシュだな
投下します
小波走太は肩で息をしながら歩いていた。
殺し合いが始まって八時間超。
その間、ずっと神経を張り詰めて来ていたのだ。
慣れていない長時間の歩行も辛かった。
真央の足を引っ張りたくない、と言う思いからペースを速くしてしまったのも失敗の一つだろう。
様々な要因があるが、とにかく走太の体力は底を尽きかけていた。
真央もそれを察しているのか神条紫杏一行と別れた辺りから目に見えてスピードを落としている。
だが、走太にとってその気遣いは嬉しく感じさせると同時に自分を惨めに感じさせる気遣いであった。
自分は一切合財役に立っていない。
ずっと真央に助けられてばかりだ、最初に会った時から今に至るまで、ずっとだ。
しかも、名簿に目を通してから真央の様子が何処かおかしい。
きっと知り合い、それも大事な人が連れてこられているのかもしれない。
今にも走り出して探し出したいだろう。
それなのに、真央は走太を守るために歩くペースを落としている。
(……みじめだなぁ)
二ノ宮のような犠牲者を増やさないために出てきたのに。
やれたことと言えばこうして真央の行動の足かせになっているだけ。
(……駄目だ駄目だ、考えすぎるな)
あそこで病院で怯えているなんて許せない。
誰が許しても走太自身が許せない。
二ノ宮が勇気を振り絞っているのに自分は振り絞れないのは悔しいし、顔向けも出来ない。
自分の顔を、パシリ、と小気味のいい音を立てて叩く。
痛みと共に頭も引き締まってくる。
(うん……まだ、頑張れる!)
頭をしっかりと前へ向けて、力強く足を踏み出す。
空元気かもしれないが、落ち込んでいても事態は好転しない。
いきなりな走太の挙動に真央は一瞬目を丸くするが、すぐに普段のむっつり顔に戻る。
ただ、その顔は少し笑っているように走太には見えた。
「なぁ! そこの二人!」
後ろから男性の低い声が聞こえたのは、ちょうどそんな時だった。
その声が聞こえると同時に、すっと自然な動作で真央は走太を庇うように前へ立ちはだかる。
それが、やはり自分は弱い人間なのだな、と走太には思えて奮い立たせた心が萎えかける。
振り返った先に居たのは、何処にでも居そうな平凡な男だった。
強いて特徴をあげるならば、体格が良く服装から野球選手であるということぐらいか。
「っと、そう身構えないでくれ。俺はちょっと聞きたいことがあるだけなんだ」
男は焦った表情のまま、腕を上げてずいずいと近づいてくる。
警戒して欲しいのか、欲しくないのか良く分からない行動だ。
ただこんなやりとりでも分かるのは、この男の人は何か焦っているということだけだ。
「なあ、芳槻さら、って女の子を知らないか?」
「芳槻さら……?」
「………………知らない」
「そっか、ありがと!」
そんな素気ないやり取りだけをしただけで、男は再び走り始める。
殺す気がないのは分かったが、幾らなんでも素気なさすぎる。
走太はそんな男の行動に僅かな間だけポカンとしてしまったが、慌てて引き留める。
こちらとしても仲間は欲しいし、情報も欲しい。
何よりこの調子ではいつ死んでしまうかも分らない。
まだ12の子供にこんなことを思わせる程度には、この男の行動は訳が分からなかった。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「っと……ってぇ!!? なんだよ、こっちは急いでるんだ!」
ガシリ、と飛びこむように男を抱き止める形で引き留める。
男は急な衝撃に呆気なくバランスを崩して頭から地面へと落ちてしまう。
さすがに頭に来たのか、乱暴な動作で走太を振りほどきながら怒鳴りつける。
その剣幕にうっ……っと怯みかけたが、なんとか言葉を発する。
「き、聞きたいことならこっちもあるんです」
「…………ああ、そういうことか。情報交換ってわけか」
徐々に頭が冷えて来たのか、肩を落とす形で息を吐きながら得心を得たばかりに頷く。
これで落ち着いて話が聞けると走太も同時に肩を落とした。
ちなみに真央はその間警戒を解かずに男を眺めていた。
「えっと、名前は何て言うんですか? 俺は小波 走太で、こっちの女の人が芹沢 真央です」
「十波 典明、プロ野球選手だよ」
「……プロ野球選手?」
「知らないのかい? 野球少年なら知ってるかもと思ったんだけど……」
年頃のリトルリーガーに知られていないことがショックだったのか大げさに肩を落とす。
そこで走太は時間の差を思い出し、まずはそこから話すことにした。
ちらりと真央を見ると、真央は頷くだけだ。
とりあえずは走太に任せると言いたいのだろう。
「えっと、突然ですけど、十波さんはタイムマシンって知ってます」
「漫画とかアニメとかで時々出てくるあれ? そりゃ知ってるよ。
……で、何が言いたいんだ? まさか、タイムマシンが実際にあるとか言いたいの?」
「……えっと……はい、そうです……」
「…………俺、急いでるんだけどな」
男は半ば貶すような眼で走太を見る。
確かに急いでいるというのに、そんな馬鹿げたことを聞くためだけに呼び止められたのなら頭にも来るだろう。
これは不味い、それははっきりと分かるのにどうすればいいのか分からない。
走太が慌て気味に言葉を選んでいると、真央が短く口を挟んだ。
「……今日」
「ん?」
「……今日は、何年の何月何日?」
真央の言葉に、あっ、と声を漏らしそうになる。
確かに日にちのことを言えば納得してもらえるかも知れない。
走太は失態を取り返すように、慌てて言葉を続ける。
「お、俺たちと時間が違うと思うんですよ! 今まで会ってきた人もそうでしたし!」
「何を馬鹿な……」
走太の言葉を心底馬鹿にするように鼻で笑う十波を見て、さすがに急過ぎたか、と自身の発言を反省する。
先ほどから良い所がまるでない、振い出した勇気は早速萎えだし始めていた。
だが、実際はそれでも全く意味がなかったわけではないようだ。
先ほどまで鼻で笑っていた十波は少し考え込むように顎を触り始めると、走太へと向き直った。
「……つまり、さ。時間が違う、ってことは死んでる人間は生きているかもしれない、ってことかい?」
「え、えーっと……その……」
「あり得る、かもしれない…………生きてた時間から連れてくれば」
「え、あ……」
真央が言葉少なながらもしっかりと答えを返していくのに対し、走太はしどろもどろになりながら成り行きを眺めざるを得なかった。
もう自分は黙っていた方がいいのかもしれない、走太はそんな風にも思いだし始めていた。
そんな走太の考えを知ってか知らずか、十波は顎を触ったまま顔を輝かし始めながら呟く。
その顔には希望にあふれているが、走太は置いてけぼりの気分になっていた。
「……そっか、そういうことか!」
「?」
「ありがと! 二人とも!」
それだけを言い残して、再び走り始める。
せわしない人だ、頭のどこかで冷静にそう思いながらも走太は必死に十波を引き留める。
何かを焦っているようだが、こちらもまだ聞きたいことや言わなければいけないことも残っている。
「あの!」
「なに、まだなにかあるの?」
少しうざったそうな顔をしながら、振り返り息を吐く。
だが、ここで折れてはいけない。
殺し合いからの脱出と亀田を倒すため、多くの仲間と様々な情報を集める必要がある。
「俺たち、人を集めてるんです。この殺し合いから抜け出すために!」
「……それで?」
「貴方も来てくれませんか? 俺たちと一緒に」
「一緒に? 悪いけど俺はさらを探す必要があるから無理だ」
取りつく島もなく十波は一言で断る。
よほど急いでいるのだろう、苛立ちがさらに深くなったように見える。
これ以上長引かせるのは得策ではないとまだ年若い走太にも理解できる。
「俺たちも着いて行きます!」
「君たちが?」
十波は驚いたように目を丸くし、値踏みするように真央と走太を眺める。
そして、数瞬だけ考えるそぶりを見せて、ようやく答えを返した。
「……いや」
「え?」
「気持ちは有難いけど……遠慮しておくよ。
それと、俺も一人仲間を探してる人を知ってるからさ、その人の所に行ってくれよ。
四路智美、って人で病院に向かってるんだ……じゃ、俺は急ぐから」
その答えはノー、十波は走太の誘いをはっきりと断った。
真央と走太を観て、役に立たないと判断したのだろう。
それだけを言い残して、十波は再び走り始めた。
走太はまだ忠告しなければいけないこと、聞かなければいけないことがあるにも関わらず、十波を止めることはできなかった。
やはり自分は無力、いや、役立たずなのだろうか?
誰の邪魔にもならないように、病院に留まっておくべきだったのだろうか?
「気にすること、ない……」
「え?」
突然の真央の言葉に驚いた表情で振り返る。
そこには優しそうに笑った真央が腰を落とし目線を合わせて話しかけて来ていた。
思えば真央の笑っている顔を見るのは初めてだ。
そして、優しい口調と声色で、真央はゆっくりと言葉少なに走太へとはげましの言葉をかけた。
「貴方は頑張っている……それだけで、皆が頑張れる」
◆ ◆ ◆
夢に見るのはいつもあの日のことだった。
さらが笑顔で消えていく、あの日の光景を夢に見る。
何度も何度も、飽きもせずに同じ夢を見続ける。
だが、それは決して悪夢ではない。
どんなに辛い夢でも、彼女は確かにそこに居る。
ならば、それが辛いわけがなかった。
だから、辛いのはその後。
目が覚めた時に、彼女の居ない現実が待っていることが辛かった。
目が覚めた時に、誰も信じれないだろう今が待っていることが悲しかった。
どんなに泣いても、どんなに涙が枯れ果てても、どんなに心が醒めても。
彼女は戻ってこない。
それを誰よりも痛感しているからこそ辛かった。
だけど、今、この場所に彼女が居るかもしれない。
それは恐らく死ぬ前の、死ぬ前の助けられなかった芳槻さら。
だが、結局は死ぬほど思い詰めている彼女に変わりはない。
だったら、俺は今度こそ後悔はしない。
俺はあの日にどうすれば良かったのか、ずっと考えてきた。
その答えを出して、俺は今度こそ彼女と―――――
【D‐3/一日目/午前】
【十波典明@パワプロクンポケット10】
[状態]:「人を信じる」という感情の欠落、野球に対しての情熱
[装備]:バタフライナイフ、青酸カリ
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:さらを探す、とにかく今はそれだけ。
1:殺し合いはしたくないし、“信用できる人間”を探す。
2:“危険な人物”は仕方ないから倒す。
3:かつての仲間、八神もいつか自分を裏切るんじゃないかと不安。
[備考]
1:信頼できる人間とは「何故自分と手を組むのか、その理由を自分が理解できる人物」を指します。
2:逆に「自分の理解できない理由で手を組もうとする人間には裏がある」と考えてます。
3:さらルート攻略中に他の彼女ルートにも手を出していた可能性があります。
4:たかゆきをタケミの作ったロボットだと思っています。
5:タケミを触手を出す事の出来る生き物で、殺し合いに乗っていると思っています。
6:高坂茜とメカ亀田の名前を知りません。
7:さらが過去から連れてこられた、と思いました。
【芹沢真央@パワプロクンポケット7】
[状態]:疲労、腹に軽い痛み
[装備]:私服
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1〜3個
[思考]基本:弱きを守り悪を挫く『正義の味方』を貫く
1:走太についていく
2:人を守る。
3:浜野朱里を警戒。
4:時間になったらホテルに向かう
[備考]
※参加時期は黒打くんにアメコミのヒーローについて教えてもらった後
※八神、大江、九条、凡田と情報交換をしました。
※神条紫杏一行とは情報交換を行っていません。
【小波走太@パワポケダッシュ】
[状態]:健康、軽い擦り傷
[装備]:ガンバーズのユニフォーム、スニーカー、高出力レーザーカッター
[道具]:支給品一式(ランダムアイテム不明)
[思考]基本:生還し親父を復活させる
1:殺し合いを止める。
2:人は殺さない。
3:真央、八神、和那、九条、凡田を少し信頼。
4:浜野朱里を警戒。
[備考]
※参加時期は最後の大会の前から、誰ルートかは後続の書き手さんにお任せします
投下終了
誤字脱字矛盾等の指摘お願いします
十波切ないな…
頑張ってさらに会って欲しいわ
投下します
七原達による衝撃的な事実によるショックの余韻を残したまま六人は情報交換を行っていた。
内容の中心となったのはお互いの放送前までの行動と、名簿による知人の確認。
「……九条に会ったのか」
「ああ。だけど、このメモにあんたのことは書いてないようだが、どういう関係なんだ?」
九条の仲間の情報が書かれているメモを片手に七原は椿に問いかける。
「なに、以前組んで仕事をしてたってだけさ。今は解散しちまったがな。何もやましいことはねえよ」
「そうか。あいつは俺達とは別ルートで仲間を集めているはずだ。
第三放送前にホテルで落ち合うことになっている」
「なるほど。あいつがしそうなことだ」
その後、滞りなく情報交換は終わり今後の方針の検討を始める。
「とりあえず、殺し合いに乗ってない人を見つけるってのが一番。
そして、その中でも七味の知り合いである黒野鉄斎を優先的に捜すってのでいいか?」
先ほどの情報交換により名簿に載っている各自の知り合いの情報は共有されている。
そのため、七味により黒野鉄斎が天才的な科学者であることを知ったのだ。
いつの間にかこのグループの中心になっていた七原が仲間に同意を求める。
椿も天本もまだ事を起こす段階にないことは分かっていたので、下手に不信感を与えるような真似はしない。
それどころか二人は黒野に関する情報まで仲間に話した。
天本曰く『直接の面識はないが、とにかく怪しい研究をしている』ということ。
椿曰く『こっちの世界の人間にとってはそこそこに名は知れている』ということ。
三人もの証言があれば信頼性が増したのか反対意見がなかったので、この案が採用された。
「今後の方針も決まったことだけど、他に何かあるかい?」
七原が辺りを見回す。
「それでいいんじゃないか。けど、そうだな……、その黒野って人が凄いってのは分かった。
だが性格はどうなんだ?それによっては再検討も必要だろ」
布具里の疑問に七味が答える。
「ああ、その点でしたら何の問題もありませんよ。さっきも言った様に変人ですけど根は良い人ですから。
こんな殺し合いもロマンが云々で乗ってるとは思えません」
「だそうだ、親父。これでいいだろ?」
「OKだ。じゃ、出発と行きますか」
「あ、その前に」
七原が口を開こうとした時、何かに気づいた。
続いて椿、やや遅れて布具里もそれに気づく。
「何者かが近づいて来てるな」
「ああ、それもこいつはかなりの速さだぜ。だが、気配を隠そうともしてねえ。
相当自信があるのかただの馬鹿か……。ま、隠れて様子を見るのが無難だな」
椿の意見を採用し、天本、七味、倉見の非戦闘要員と、護衛として布具里が神社の本殿に身を隠し、残った七原と椿は近くの茂みにその身を潜ませた。
待つこと数十秒、二人の前に現れたのは全身を真っ赤なスーツに包んだヒーロー、レッドであった。
「ここに誰かが居るのは分かっているんだ。大人しく出て来い!」
レッドの恫喝が終わると同時に茂みから七原と椿がその身を晒す。
「どうやら、人違いのようだな。だが、一応聞いておこう。お前たちは殺し合いに乗っているのか?」
「俺は七原。でこっちが椿だ。安心しろ、俺達はどちらも殺し合いには乗ってない。
そして、お前ももちろん乗ってないんだろ、レッド?」
「……俺の名をどこで知った?」
「簡単な話さ。俺達の仲間にお前の知り合いがいるんだよ。そいつからお前の話しを聞いてたってだけさ。
勿論、殺し合い何て間違っても乗らないような正義のヒーローだってこともな」
「誰から聞いた?」
「待ってな。今よんでくるよ」
そう言って七原は本殿まで駆けだし、その場には椿とレッドが残される。
「どうしたんだ、俺の顔がそんなに珍しいかい?」
レッドは仲間の一人であるブルーのことを思い出しながら答える。
「いや、お前と似ている仲間が居てな。姿は全然違うが雰囲気がまるでそっくりなんだ」
「ヘヘっ、そいつは奇遇だな。俺にもお前さんによく似た知り合いがいるよ。
度丁寧にここにも連れて来られているらしいしな」
「ほう、それは是非会ってみたいな」
「だが、多分むこうはあまり会いたくないと思うぜ?若気の至りを思い出して良い顔をする大人はいないからな」
言葉の意図が分からず怪訝な顔をするレッドをしり目に椿はククッと笑っていた。
そんな中、七原が四人を連れて戻ってくる。
「レッド!」
「七味……。なるほど、お前か」
七味は再会を祝おうとしたが、レッドにその気はないようだ。
「七味、悪いな。俺は急いでいる。お前に会えたことは嬉しいが、無駄な時間を過ごす訳にはいかないんだ。
短く用件だけ言おう。お前達は野丸か銀髪とピンク髪の女の二人組、もしくは芳槻さらという黒髪の女子高生を見てないか?」
「悪いがどれも心当たりがないな」
七味に代わり七原が簡潔に答える。そうか、とレッドが小さく呟くとそのまま七原達に背を向け走り始めた。
時間が無いと言っていたように、情報がなかったらもう用済みなのであろう。
そんなレッドを七原は即座に引き留める。
「お、おい、ちょっと待てよ!急いでいるのは分かったが、せめてそいつらのことだけでも教えてくれないか?
口ぶりからするとおそらくは危険人物なんだろう?」
七原の説得が功を奏したのかレッドは歩みを止め、再び七原達の方を向き直す。
「……俺としたことが軽率だったな。確かに悪人の情報は共有していた方がいい。
これ以上犠牲者を出さないためにもな」
犠牲者、そんな言葉がでるということはレッドの捜している四人は殺し合いに乗っているのだろう。
その聞き慣れない単語のためか七原だけでなく、他の五人も息を飲み込みながらレッドの話に耳を傾ける。
そしてレッドの話しが始まり、東達との合流から野丸と二人組を取り逃がすところまでが簡潔に語られた。
その話に衝撃を受けない者はいなかった。
それもそのはずで、天本を除きこのメンバーの中で命の危機に瀕した者は居なかったからである。
どこかで『殺し合いなんて自分には関係ない話』、そんな驕りがあった。
だが、そんな妄想はレッドの話によって無残にも打ち砕かれた。
特に七味や春香は大きなショックを受けている。野丸が殺し合いに乗り、東を襲ったというのが相当堪えたのだろう。
また、七原も自分の行動を猛省していた。
近くで殺し合いが行われているというのに自分がしていたのは何だ?親父とギャンブルなんてしてる場合ではなかっただろう。
「レッド、野丸君が東さんを撃ったていうのは本当に本当なのか?」
「七味……、何度も言った様に本当の話だ。俺がこの目で見ている。
それと説得なんて甘い考えは捨てておくべきだな。じゃないとお前が殺されるぞ。
それじゃ、そろそろお前達の方の話しを聞かせてもらおうか」
今度は七原が自分達の知りうる限りの情報を簡潔に述べた。
これまでの行動、名簿の知り合い、個人の時間軸の違い、亀田とほるひすについて……。
流石のレッドも時間軸の違いとほるひすについては驚きが大きかったようだ。
「まさか、ほるひすがな……。そのような奴には見えなかったが。
だが、今居ない奴の話をしても仕方がない。真実が知りたかったら病院に行ってみるんだな。
そろそろ俺は行かせてもらうぞ。黒野鉄斎のことは見つけたら最優先で保護しよう。
では、さらばだ。生きてまた会おう」
そう言うとレッドは再び七原達にせを向け走り始め、その姿はすぐに見えなくなった。
神社には六人が残った。
やはり知り合いが知り合いを襲うというのは衝撃だったのだろう、七味と春香のショックの色は強い。
だが、今はそんな二人を気遣っている余裕はない。七原は最低限の励ましの言葉を二人にかけ、レッドの来訪によって途切れていた話しの続きを始める。
「話を戻すぞ。黒野鉄斎並びに協力者を捜すわけだけど、俺に一つ提案があるんだ。
このチームを二つに分けないか?」
「二手に分かれれば捜索の効率は上がるでしょうが、その分危険は増えるのでは?」
「確かに危険は増えるだろう、単純に戦力は二分の一になるしね。だけどそんなことは言ってられないと思うんだ。
今もどこかで人が殺されているのかもしれない。それが黒野鉄斎だったらどうする?
俺達は指針の一つを失うことになる。危険かもしれないけど、時間をかける訳にはいかないんだ」
これ以上の反論は不信感を与ええないと踏んだのか天本からの反論はなく、他のメンバーからの反対もない。
そのため話し合いの結果、七原、布具里、七味、春香の組と椿と天本の組に分かれることとなった。
前者は南方面を後者は北方面を主に捜索し、第三放送前後にホテルに集合。
間に合わない場合はホテルに連絡するという取り決めとなった。
そして、話し合いが終わると早速行動に移る。
このバトルロワイアルという腐ったゲームを打倒するために。
【C‐2/神社/一日目/午前】
【レッド@パワプロクンポケット7表】
[状態]:殺人者に対する激しい怒り
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ナオのリボン@パワポケ10表、超人ライダーボトルキャップ、ゴーカート@パワポケ7表
[思考・状況]
1:野丸or2人組(白瀬、愛)orさらを追い、仲間に害を為す前に殺す
2:1のあと病院に向かう
3:黒野鉄斎の保護
4:レッドとして反省し、ブラウンの分も悪を倒す
5:東やほるひすを守る
6:余裕があれば第3放送前後にホテルに寄る
【倉見春香@パワプロクンポケット7表】
[状態]:野丸が東を襲ったことによる衝撃
[装備]:麻酔銃@現実(一発消費)
[道具]:なし(七味が持っている)
[思考・状況]
1:七味、七原、布具里と共に行動
2:第3放送前後にホテルに行く
3:仲間の足手まといにならないようにする
4:あわよくば七味の記憶を取り戻す
【七味東雅@パワプロクンポケット7表】
[状態]:野丸が東を襲ったことによる衝撃
[装備]:セイラーマンサーベル@パワポケ7裏
[道具] 支給品一式×3、不明支給品2〜6:
[思考・状況]
1:春香、七原、布具里と共に行動
2:協力者or黒野鉄斎を探す
3:第3放送前後にホテルに行く
4:春香を守る
[備考]
※七味東雅の高校時代は彼女とも付き合わずまじめに野球一筋でした
※七味東雅は記憶喪失ではありません
2年前のことなので春香のことを覚えてないだけです(生徒会ときしか面識がないため)
【椿@パワプロクンポケット9表】
[状態]:健康
[装備]:鉈、ムラタ銃
[道具] 支給品一式×2、不明支給品1〜4
[思考・状況]
基本:生き残るのに手段は選ばない
1:天本とともに行動
2:一応は協力者or黒野鉄斎を探してみる
3:天本を利用してゲームを有利に進める
4:第3放送前後にホテルに行く
【天本玲泉@パワプロクンポケット4表】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具] 支給品一式(不明支給品1〜3)
[思考・状況]
基本:日の出島に帰る
1:椿と共に行動
2:一応は協力者or黒野鉄斎を探してみる
3:人を結果的に殺すが、今は様子見
4:第3放送前後にホテルに行く
【七原正大(ななはら まさひろ)@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[装備]:地味な色のベスト、ニューナンブM60(6/6)
[道具] 支給品一式、Pカード@パワポケ10表、九条と凡田の知り合いの名前の書かれたメモ、予備弾(12/12)
[思考・状況]
基本:亀田を倒す
1:七味、春香、布具里と共に行動
2:協力者or黒野鉄斎を探す
3:第3放送前後にホテルに行く
4:ほるひすに警戒心
5:もうギャンブルはしない
[備考]
※大正編のどの人物とどの程度面識があるか、メモに誰の名前が書かれたかは後の書き手に任せます
【布具里@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[装備]:亀田幻妖斎の服@パワポケ5裏
[道具] 支給品一式(不明支給品0〜1、本人確認済み)、亀田幻妖斎の仮面@パワポケ5裏
[思考・状況]
基本:正大に寄生して生きる
1:七味、春香、七原と共に行動
2:協力者or黒野鉄斎を探す
3:第3放送前後にホテルに行く
[備考]
※確認済みの支給品の中に、衣服になるものは入っていません
以上で投下終了です
矛盾や指摘があったらお願いします
投下乙です!
レッドは合流したけどまた離れる、か。良い感じに迷走してるな
二チームに分かれて動き出す、ってことはこのチームはこれからが本番ですな
続きが気になるじぇー!
ポケ7組にはがんばってもらいたいなぁ。
ほるひすについて気がかりな事を言われてもレッドの思考は「ほるひすを守る」のままか。
やはり信頼できる仲間というのはいいもんだな……レッドがんばれ!
投下乙!!!面白かった!!!!
久しぶりに投下してくれてうれしいわ
投下乙
ここで黒野が死んだのを知るとどう反応するんだろうか
天本といい椿といいなかなか不安定なグループだな
今後の展開に期待
448 :
367:2009/10/17(土) 23:33:21 ID:l8bRscqNO
仮投下スレに投下しました。
読んでコメントしていただければうれしいです。
コメントはできれば仮投下スレにお願いします。
皆さんの評価次第で書き手として参加するか決めたいと思います。
辛口採点大歓迎なので、どんどんコメントして、ダメな所はダメ出しして下さい。
投下乙した!
維織さん儚い……補完は良いものだ
これから一人になるわけですが、前に歩けそうだけど九条は帰らない
希望があるようでない感じがしんみり来るぜ……!
補完乙っした!
投下してみればいいと思うよ
予約ktkr
10月は魔物、俺覚えた
452 :
367:2009/10/20(火) 12:51:15 ID:cq2LpXJhO
まとめの方に自分の作品をのせていただきありがとうございます。
ホント感謝感激です。
…ただ、まとめの方にのってから脱字に気づきました。
最後の方の『社長を後にする。』ではなく、
『社長室を後にする。』でした。
まとめの方にのってからですいません。
愛、白瀬、野丸
投下します。
「ふふ…うふふ…ははは…」
自然と笑みがこぼれる。
様々なビジョンが頭の中を駆け巡り、そのたびに笑い声が漏れる。
それは、東優が苦しみ、段々と死んでいく姿。
そして次の標的を捜し求めては殺し、次々と倒れていく、目の前の参加者たち。
そんな野丸太郎は、早く誰かを殺したいと言わんばかりに、ウージーを手に取り、嬉々とした表情で商店街を闊歩していた。
「ふふ…へへ…だれもいないんですかね?」
商店街は閑散としており、歩を進めるたびに野丸の足音が響き渡る。
人がいないのならその辺の猫でも犬でも殺しておきたいところだったが、猫の子一匹見つからなかった。
「殺し合いってことは、やっぱり沢山の人を殺すのが普通ですよね。
…それにしてもここは人があまり集まらないようですね。
う〜ん……あちらの方なら人がたくさんいそうですね。」
誰に話しかけるでもなく、自分に言い聞かせるわけでもなく、
野丸は言葉を吐き、商店街を後にすると、西の方角へと歩いていく。
もはや何が普通なのか、彼にはわからない。
何で普通を求めるのか、覚えていない。
もしかしたら、彼の中での普通は、殺人を行うための都合のよい言葉でしかなくなっているのかもしれない。
しかし、当の野丸本人はそんなことに気づくことも気にかけることもなく、ただ、普通を求めていく。
ただ普通を手にするため、殺人の対象を求め、歩み続ける。
☆
消防署にとどまっている二人・白瀬芙喜子と愛は、じっと息を殺し、消防署の二階の窓から外の様子を窺っていた。
30分ほど前、あの全身赤ずくめの男・レッドがこの消防署の前を通りかかったのだ。
激昂した様子で歩いてきたレッドは消防署を見つけると、その前で立ち止まり、外側から中を覗き込むように、消防署の前でじっと立ち止まっていた。
恐らく、あの男には奇襲は通じないだろう。そして二人がかりであっても、一筋縄ではいかないだろう。
そう思った二人は、急いで二階へと昇ると、レッドが通り過ぎるのを待った。
レッドはしばらく訝しげな様子で消防署を見つめていたが、気配がないのを悟ったのか、それとも違う何者かの存在に気付いたのか、
中に入ってくるでもなく、そのまま西に向かって立ち去って行った。
「そろそろ大丈夫かしら?」
「そうね……。もう遠くに行ったみたい」
「……ふぅ。……どうやらアンタが忍者ってのも本当みたいね。……あんまり信じたくないけど」
「なによ。まだ疑ってたの?」
CCRのエージェントである白瀬と現実の忍者である愛にとっては、姿をくらまし、気配を消すことなどは朝飯前である。
特に、忍びとして生まれ、育ってきた愛は、人目を避けることに加え、敵の居場所を正確に察知することにも長けていた。
「それより……結構待ったけど誰も来ないわね」
「ええ。でも焦りは禁物ね。せっかくこんな良い隠れ家見つけたんだから、
慌てて外に出て行って、みすみす狙い撃ちなんてされたら元も子もないわ」
「ええ。でも……結構時間も経った割には誰も来ないわね」
時計を見ると、9時15分を回ったところである。
正確な時間は把握していなかったが、大体ここに留まってから1時間くらい、といったところだろうか。
数時間はここで待ち伏せをするつもりなので、2人にここを離れる気はさらさらないが、
レッド以外の人物の動きを全く把握できていないのは歯がゆくもあった。
「そうね。ちょっと整理してみようかしら。時間もありそうだし」
そう言うと白瀬はデイパックの中から名簿と地図を取り出して床に広げる。
「えーと……18人死んだわけだから、残りは42人。私たちとあのレッドとかいうのを引いて39人ね。
……まぁ放送から何人か死んでいるとしても、まだ結構な人数が残ってるわけよね」
簡単な計算をしながら地図と時計を交互に見て独り言のように言う。
「それで全部のエリアが8×8の64。そのうち禁止エリアが3つで、
殆ど海のエリアが6つくらいあるから、動けるのは55くらいかしらね」
紙に書くわけでなく、自分の頭の中で次々と計算を続けていくため、隣にいる愛はなかなかついていけていない。
そんなこと関係ないさと言わんばかりに、白瀬は次々と数字を口ずさんでいく。
しかし、突然投げ出すように、動きを止めた。
「はぁ……。色々考えてみたけど……人の動きなんてやっぱり計算できるもんじゃないわねぇ……」
「え? じゃあさっきから色々計算してたのは?」
「あぁ……。確率としてだけど、今1つのエリアに何人いるのかとか、これまでのペースから見て何人くらい死んでるのかとか、
私らがここで待ち続けてたら、いつ頃人が通りかかるのかとかね、色々考えてみたんだけど、なんか面白くなくってねぇ」
「え?」
「……面白くなくなっちゃったのよ。こんな未来とか過去とかから馬鹿みたいに人を集めてんのに、
今更ちょっと計算したくらいで何をどうしようも意味ないじゃないってね。
イライラするだけだからやめちゃったの」
どんなに冷静に現実を見つめなおしてみても、
やはりあのカメダとやらのデタラメな技術だか能力のことを思うとイライラが湧いてくる。
恐らく、根本的にあの男の人格が気に入らないということもあるのだろうが、
そんな中でろくな動きが取れないというのが何よりも腹立たしい。
「……まぁいいわ。どの道ここにいればとりあえずは安全なんだし。そのうち誰か来るでしょ」
「…………そうね……」
自分に言い聞かせるように、白瀬がデイパックに物をしまっていく。
そこまで状況を本格的に理解していない愛は、苛立ったり落ち着いたりを繰り返す白瀬を少し不審な目で見つめる。
二人の間に一瞬の静けさが漂ったそんな折、ダダダダ……、という音が辺りに響き渡った。
☆
「さて、どのくらい歩いたのでしょう。30分くらいですかね」
野丸太郎はひたすら一本道を歩き続けていた。
30分ほど歩き続けているのだが、全く人と出会う気配はない。
それでもひたすらにアスファルトの上を歩き続けている。
そんな野丸だったが、突然大きなコンクリート状の建物を発見した。
遠目では分かりづらいが、3階建てくらいで、1階部分はシャッターで閉ざされている。
「あれは何でしょうか。……方向から見て消防署でしょうかね。
……あ、もしかすると東さんはあそこに隠れているのかもしれません。
消防署にも救急箱くらいはあるはずですからね。」
地図を見て、一人で呟いて一人で納得する。
そして、勝手に確信を持った野丸は迷いなく消防署へと歩を進めていく。
商店街ほど沢山ではないが、道の両端にはいくつかの建物が並んであり、その一番隅に消防署はあるようである。
「うふふ……。なんとなく東さんの匂いがしてきたような気がします。
すぐに殺してあげますよ。東さん……ふふふふ……」
危ないことをつぶやきながら、一歩ずつ、ゆっくりと、ウージーを手に進む。
そして、廃屋と思われる建物の目の前に来ると、すぐ隣に消防署があった。
待ち伏せされているのではということを考えると、さすがにすぐに飛び出していくのは危ないと思い、建物の陰に隠れて様子を窺う。
救急車の出動のためか、消防署の目の前は少し開けた様子になっており、消防車が数台は止められるくらいのスペースが空いている。
「うーん……広いですねぇ……」
すぐにも飛び出していきたい思いはあったのだが、ここから飛び出してしまっては、
警戒されたり、狙われてしまうかもしれない。
裏口に回ろうかとも考えてみるのだが、消防署は壁を伝うようにして窓が張り巡らされており、
裏口に回るにはどの道姿を晒さなくてはならない。
どうやって突破しようか、と野丸は考える。
「まずはどの辺に人がいるのかを確認しなければなりませんね……。
……と言ってもここからだと中の様子が全く分かりませんねぇ」
ああでもないこうでもないと様々な考えを巡らせながら、消防署への侵入方法を熟考していく。
しかし、平々凡々な高校球児である野丸には、とてつもなく良い発想はなかなか浮かんでこない。
うーん、と腕を抱えて建物に寄りかかりながら考えを巡らせていく……。
そんな時、突然、道の向い側の草むらがガサリと音を立てたのを野丸は見た。
「だ、誰ですか?!」
とっさにウ―ジーを構えると、引き金を引く。
弾が一気に発射され、草むらが踊るように揺れる。
そして草むらの中にいる何者かの体をマシンガンがとらえたのを、野丸は撃ちながら感じた。
先ほど東を襲撃した際と同じ感覚である。
「やったか?」と思ったのだが、その音の主はマシンガンによる襲撃に驚く様子もなければ、
傷ついて呻くわけでもなく、不気味に草むらの中に佇んでいる。
「そ、そこにいるのはわかってますよ。で……出てきなさい!」
そう叫ぶと、野丸は自分自身が身を隠している立場であるということを忘れ、
ウ―ジーを構え、その草むらに向かって次々と弾を撃ち込んでいく。
何度も、何度も、同じ場所に向かってフルオートで連射をしていく。
そしてその度に命中している感覚があるのだが、全くダメージを与えられている感覚がしない。
何者なんだこいつは、と野丸が口に出そうとすると、その瞬間、草むらから一つの影が野丸の目の前に飛び出してくる。
「うわあ!!!」
それは、全長2メートルはあるかという、巨大な昆虫。クワガタだった。
巨大な体と、その体の半分近くを占める顎。そして本来のクワガタにはあるはずのない巨大な口がついている。
キリキリと顎を動かすとともに歯を鳴らしており、お腹を空かせているのか、ということを予想される。
野丸が知るはずもないが、このクワガタ、この大会が始まって間もない時刻に一人の参加者を捕食しており、
お腹を膨らませてずっと昼寝をしていたのだが、再びお腹を空かせ、ランチタイムを求めてここまで歩いてきたのだった。
そして、道路の真ん中に飛び出してきたこの奇怪な生物を見て、野丸は腰が抜けたようにその場にへたり込んでしまう。
羽を広げて飛翔し、大きな口をあけてクワガタが飛んでくる。
野丸は死に物狂いでウ―ジーを構え、やけくそに撃ち続けていく。
しかしクワガタの装甲は固く、ウ―ジーによる銃撃を撥ね退け、物ともしない様子で襲いかかる。
「こ、これはやばいですよっ! うわぁぁぁぁ!!!」
5メートル、4メートル……とだんだん近づいてくるクワガタ。
周りを一切気にせずに叫びながらウ―ジーを連射していく。
先ほどと同じく、一切効き目があるような様子は見られず、物ともしない様子で襲いかかってくるのだが、
そのクワガタの顔面に弾が命中した瞬間、一瞬だけクワガタの動きが止まった。
勿論それに野丸が気づくはずはないのだが、ただひたすらにウ―ジーを撃ち続けていると、
2回、3回とクワガタの顔面や口元に弾が命中していき、ひるんだクワガタは遂に逃げるように飛び去っていく。
「はぁ……はぁ……どうにか、撃退はできたみたいですね」
クワガタの襲撃から逃れ、ほっと一息を入れて肩をおろす野丸だったが、間髪いれずにその瞬間、右肩に衝撃が走る。
突然の衝撃に何が起きたのか全く理解できない野丸だったが、ふと自分の右肩を見て、それが真っ赤な血で染められているのに気がつく。
「……え?」
何が起こったのかを確認する間もなく、続けざまに右のわき腹に、今度ははっきりと痛みが走る。
「う……わぁぁぁぁ!!!」
また叫びながらその場に崩れ落ちる。
一体何が起こったのだ。そう思い、辺りを見回すと、消防署の目の前に人影らしきものが見えた。
目を凝らしてみてみると、銃をこちらに向けて立っている女性の姿が目に入った。
それは数時間前、野丸が一瞬だけ接触した、あのレッドと戦っていたスーツ姿の女性であった。
痛みに堪え、うずくまりながら、野丸は考えた。
撃ってきたということは、あの女性は殺し合いに乗っているということだろうか。
どちらであろうと自分はあの人を殺さなければならないのだが、この状況で、それができる確率は限りなく0%に近い。
単純な戦闘能力でいえばあちらの方が何枚も上手であるし、姿は見えないが、あちらは二人組だったはずである。
全く勝ち目はない。
どうにかして話し合いに持ち込み、隙を見て逃げるか、二人とも殺してしまうかしかないだろう。
恐らく、警察であるのだから、この状況でも人の話を聞くくらいの余裕はあるだろう。
そう決断すると、野丸はなんとか上体だけ起こすと、ウ―ジーを捨て、両手をあげてその女性の方へ向き直る。
「えっと……降参です……」
野丸がそう言うと、そのスーツの女性――白瀬芙喜子は、不信の目を強めながらも、いきなり3発目を撃つことはなく、銃を構えたまま口を開いた。
「アンタ……もう一人はどこへ行ったのかしら?」
☆
消防署の外で鳴り響いた音が銃声――それもマシンガンの類――であるとほぼ同時に気がついた愛と白瀬は、すぐに窓の正面から左右に分かれ、壁際に身を隠した。
こちらに対する威嚇なのか、それとも交戦中なのか。
続けざまに鳴り響く銃声を聞き、その発信源の正体と目的をとっさに思い浮かべる。
銃声は20秒から30秒ほど、一定の間隔をおいて鳴り響いていたが、男の悲鳴と共に鳴りやんだ。
「誰かやられたのかしら?」
「さあね……。今のだけじゃ判断し難いわ。でも、外でマシンガンぶっ放してる奴がどんな人間かくらいは予想できそうね。」
愛の問いかけに、チラリと窓から外を覗き込んで白瀬が答える。
外には誰もいない。しかし、少し離れた場所、隣の建物の影にかすかに人影を見ることができた。
先ほど悲鳴があったことから考えても、交戦があったのではと予想する。
「状況から考えて、二人以上の人間が交戦していたのは間違いなさそうね。
それと、大体30秒くらいかしら。あんなに長い間マシンガン撃ち続けて、悲鳴が聞こえてきたのは。」
「まぁ……結構長い間鳴ってたわね」
「普通に考えて、そんだけ撃ってやっと命中、なんてのはド素人としか考えられないわ。少なくとも、銃に関してはね。
まぁ、やけくそで撃ちまくってたら当たっちゃって、死体見て叫んだのかもしれないけどね」
白瀬が先ほどの影を指さして言うと、愛もその先を見つめ、人影を確認する。
そして、言い終わると、白瀬は立ち上がり、銃を手に嬉々とした表情で部屋を後にする。
「というわけで、大したことない奴みたいだから、早めに仕留めておきましょ♪」
「え……でも、まだどんな奴かはっきりとわかったわけじゃないんでしょ?」
「大丈夫、大丈夫。そんなときのための同盟じゃない、愛?」
目的とは一致しているので仕方がないか、と思いながら、愛も渋々白瀬の後に着いていく。
何の武装も用意していなかったが、サポートだけならどうにかなるだろう。
二人が裏口から消防署の外に出ると、再び銃声が鳴り響く。
今度は、銃声と同時に悲鳴も聞こえてきており、先ほどよりもより切実な叫びであるようにも感じられる。
殺したと思っていた相手が生きていて、止めを刺そうとしているのだろうか。
どのみち、目の前の相手に必死になっているのであればありがたい、と言わんばかりに白瀬は小走りに対象が見える場所へと移動していく。
すると、銃声はすぐに止み、白瀬の目の前に現れたのは、サブマシンガンを手に、腰が抜けたように建物にもたれかかり、へたり込んでいく男の姿であった。
その男とは、白瀬と愛がレッドと対峙した際に、レッドに突然襲い掛かっていった男である。
しかし、その男が狙っていたであろう対象はどこにも見当たらない。
もしかしたら、この男が狙ったのはレッドだったのだろうか。
そんな考えも一瞬頭を過ったが、深いことを考える前に目の前の男をどうにかせねばと思い、白瀬は銃の引き金を引く。
目の前の男・野丸太郎の右腕が鮮血に染まるのを確認すると、続けざまにもう一発を発射、
完全に命中はしなかったが、弾は野丸の腹をかすめ、野丸はその場に崩れ落ちた。
このまま止めを刺してもいいかと思ったが、何も話せなくなる前に、先ほどまで交戦していた相手がどこに行ったのかを聞きだす必要がある。
そして、都合のいいことに、野丸は銃を捨て、手を挙げて降参をしてきた。
もし野丸の相手がレッドであった場合、素人の銃で怪我をするとは考えにくい。
戻ってくる前にはっきりさせておかないといけない。白瀬はストレートに野丸に向かって問う。
「アンタ……もう一人はどこへ行ったのかしら? さっきまでアンタがマシンガンぶっ放していた相手よ」
「あ、ああ……。どこかに飛んで行ってしまいましたね」
白瀬の問いに、すぐに殺されることはないと、野丸はほっと胸をなでおろした。
そして、安心したからか、パッと聞いただけではさっぱり理解のできない返答をしてしまう。
「飛んで行った? ……アンタ何の相手してたの?」
「えっと……巨大なクワガタでしたね。逃げたみたいですけど」
「……クワガタ……? …………アンタもしかしてあたしのことからかってるわけ?」
「え……いや、違いますよ。本当ですよ。いたんですよ、大きいのが。信じてくださいよ。
普通はそんなのいないですけどね、普通は。でも、ほら、普通の僕が言うんだから間違いないですよ」
不信しながら銃を構えて野丸を睨みつける白瀬。
それに対して野丸は必死に弁明しようとするが、なかなか上手く説明することができない。
このままでは何もできないままみすみす殺されてしまうと思い、思い切って一歩前に出ると、地面に足をつけたまま、頭を下げ、伏して、土下座のような体勢をとった。……というより、白瀬に向かって土下座をした。
「すいません! 嘘みたいだけど本当です! 僕……ただ普通になりたいだけです!
ああいうのに襲われたら普通はああするだろうと思ってやりました! だから……」
土下座をした状態で大声を上げて叫ぶ野丸を見て、白瀬は呆れ返っていた。
この状況で土下座。
銃を向けられている中で、相手から目を逸らすなど、白瀬からすれば、それこそ普通ではない。
それでも尚、普通、普通と叫ぶ野丸に、白瀬は嫌気が差してきた。
もう大した情報は引き出せそうにないし、本人も環境のせいか、相当頭がイッてしまっているようだ。
そんなことを考えていた白瀬は、野丸のすぐそばまで歩み寄り、その頭に銃を向ける。
そして、野丸が顔を上げると、目の前には銃口が見えたが、あまりに突然すぎる出来事に何も言葉を発することができなかった。
「あんたねぇ……普通になりたいとか言ってたっけ?」
「へ……は、はい……」
白瀬の問いかけに、野丸は間の抜けた声で言葉を返す。
そしてそれを聞いた白瀬は、ため息をつき、呆れたような口調で続ける。
「はぁ……。いいわ。いいこと教えてやるわよ」
「は、はい…」
「……普通なんてのはね、普通になろうとした時点で、普通にはなれないのよ。」
「……え……?」
「……だから、つまり、あんたは最初から失格ってわけ」
「え……え……」
白瀬からの言葉を受けて、野丸は言葉を失う。
そんな野丸に、白瀬は容赦なく言葉を浴びせ続け、そろそろ終わりにしようと、銃の引き金に手をかける。
「…………」
「だから、あんたは普通にはなれないの。……そんなこと人殺しに参加してる時点で気づくべきだけどね」
「……ウソだ」
「はぁ……。ウソじゃないわよ。あんたは普通じゃない。人殺しに参加した罰で、ここで死ぬの。
……まぁ、それが今のアンタにとっての、普通なのかもね」
「……ウソだ……ウソだ……ウソだそんなことー!」
「白瀬!危ない!」
「えっ……?」
屋根の上で待機していた愛の警告を受け、白瀬は何者かの気配に身の危険を察知し、野丸の顔に向けられていた銃口を、そちらに向ける。
白瀬の左手方面からは、巨大な殺人クワガタがものすごい勢いで飛行してきており、白瀬が銃を向けたときには、
既にそれがクワガタの形をしているものであると識別するのが困難なところまで接近してきていた。
白瀬は、銃撃は不可能だととっさに判断し、身を翻して襲撃から逃れようとするが、一瞬早くクワガタの右顎が白瀬の左肩を貫く。
「……ぐっ……」
痛みに声を上げそうになるが、ぐっと歯を食いしばり、銃をクワガタの顔面に向けて、1発、2発と撃ち込んでいく。
まったくダメージがある様子はないが、時間稼ぎ程度にはなったようで、白瀬はクワガタの顎を掴み、自身の体に突き刺さったそれを思い切り引き抜いた。
「くっ……な、なんなのよこいつ……」
大顎から逃れてひと安心、というわけにもいかず、血の匂いを嗅いで興奮したクワガタが尚勢いを増して白瀬に飛び掛っていく。
しかし今度は屋根から飛び降りてきた愛がその足を掴んでおり、思うように動きが取れない。
「ほら見てください。僕の言ってることが正しかったじゃないですか! やっぱり僕が普通なんだ!」
立ち上がった野丸が大声で叫ぶ。
クワガタに気をとられていた白瀬と愛がその声のする方を見ると、手榴弾を両手に抱えた野丸がもの凄い形相でこちらを睨み付けながら立っていた。
「僕は……僕は普通なんだぁぁぁぁー!!!」
野丸はそう叫ぶと、手榴弾を二人に向かって投げつける。
まずい、ととっさに感じた愛は、自分が今足を掴んでいる巨大なクワガタを思い切り投げ飛ばした。
しえーん
支援
殺人クワガタ最強説浮上
運よく命中したのか、二人の目の前で爆発が起こると、あたりに煙が立ち込める。
爆発による被害はなかったが、しばらく煙があたりを覆っており、その煙が晴れたときには、
そこに野丸の姿はなく、動かなくなった巨大なクワガタが転がっているだけであった。
「一体なんだったのよ……」
「さあ……。とりあえず仕留めそこなったわね」
「ええ……。でもあいつはもう完全に壊れてたわ。ほっといても勝手に死ぬわよ。
とりあえず……銃を置いていったみたいだから、回収しておいて頂戴。あたしは少し休むから。
……ああ疲れた……」
そういうと、白瀬は左肩を抑えて消防署の中へと入っていく。
愛も野丸の忘れ物を拾うと、後に続いた。
【D-2/消防署/一日目/午前】
【白瀬芙喜子@パワプロクンポケット8表】
[状態]左肩に刺し傷
[装備]ベレッタM92(6/15)
[道具]支給品一式×3(不明支給品0〜2)、予備弾倉×5、さおりちゃん人形@パワポケ6裏、ケチャップ(残り1/4程度)、煙幕@パワポケ5裏×2
[思考]基本:優勝する
1:戦力増強のため弱者から倒す、強者は後回し。
2:八神を最優先で殺す。
☆
野丸太郎はひたすら走っていた。
どれくらい時間は経過したかわからない。
右肩とわき腹からはまだ血が流れている。
でももう痛みなど感じない。
さっきのあの女の人の言葉が頭から離れない。
「普通にはなれないのよ」
「あんたは最初から失格ってわけ」
「あんたは普通じゃない」
「ウソだ。ウソだ。ウソだ。ウソだ…………」
何度も声に出してその言葉を否定するのだが、それが頭から消えることはなかった。
だから、ひたすらに走る。
忘れるまで走り続けてやる。
そのうち、草むらに入り、丘を登り、森の中へと入った。
もう30分は走ってきた。それでもあの言葉は野丸の頭の中を侵食し続ける。
「ウソだ……そんなことない……僕は……普通なんだ!!」
野丸が大声で、高らかに叫んだときだった。
『ピー、ピー』
「……え?」
昼間なのに静かな森の中に、電子音が鳴り響く。
『爆発まで、30秒です』
「え……なんで……あ……」
野丸は数時間前まで眺めていた地図を思い出す。
最初にいた商店街から西に歩いてきて、消防署であの女の人に出会った。
そしてつい先ほど、あの人に言われたことを忘れようと思い切って走っていった方角は……商店街の反対側――西だった。
そしてその方角にずっと進んでいくならば―――。
―――禁止エリア
それに気がついた野丸は、ガタガタと足を震わせてその場に崩れ落ちる。
しかし、あきらめきれない野丸は、地面を這い、雑草を掻き分けて、森の外を目指す。
そうしている間にも、25秒、20秒、15秒と、無常にも首輪は時を刻んでいく。
「だ、誰か……出して……ここから出してください! 出して……助けて!」
いくら叫んでもその声は誰にも届くことなく、空しく森の中に響いていく。
「僕は……まだ普通に……普通に……普通にならなくちゃいけないんだ……だから……」
必死に地べたを這いずり回る。先ほど銃撃を受けた傷口に土が入ったり、草が摺れたりするが、そんな痛みはもう感じない。
『残り10秒です。9,8,7……』
「なんで……なんでこんな目に遭わなくちゃならないんだ……」
『残り5秒です。4、3、……』
「僕は……僕は…………普通になりたかっただけなのに…………」
仰向けに倒れた野丸の目からは一筋の涙が流れ出す。
そしてそれがスイッチであったかのように、首輪が小さな音を立てて爆発する。
パタリと倒れ、動かなくなった野丸だったが、その目からは涙が流れ続けていた。
【野丸 太郎@パワプロクンポケット7 死亡】
>>467続き
3:愛と行動するが、灰原と合流できそうならば愛から灰原に乗り換える。
4:過去の人間が居るってことは……未来の人間も居るってことかしらね?
[備考]
※未来や過去から集められてるのではないかと思っています。
※灰原に関しては作り直したのか、過去から浚ったかのどちらかだと思っています。
【愛@パワプロクンポケット5裏】
[状態]右脇腹に傷(応急処置済み)
[装備]ウージー
[道具]支給品一式
[思考] 基本:自分が生き残ることが第一。
1:未来……ピンと来ないわね。
2:生き残るためなら、他の人間を殺すのもやむ終えない。
3:一先ずは白瀬と共に行動するが、白瀬への警戒を怠らない。
[備考]
※参加者はそれぞれ違う時間から誘拐されたと何となく理解しました。
携帯なのにでしゃばったからいろいろミスった
すまんな
投下乙です!
野丸の死に方と言い、白瀬も何かイライラしてることと言い場が欝々しいぜ……
のだが、殺人クワガタwwwww
シ、シリアスなはずだったのに笑っちまったぜ……w
投下乙
殺人クワガタすげえ、マジすげえ
野丸の最後のセリフでインペラー思い出したのは俺だけじゃないはず
ロボロワ終わったなー。
何人か書き手さんが流れてきてくれるといいけど……。
クワガタ危険過ぎるwwww
へたしたらクワガタが優勝してたな
っと、業務報告ー
野丸死亡話のガラスの仮面にて残り人数の表記がなかったので書き足しておきましたー
そして予約が来た……だと……?
しかも新規さんとかこれは夢ナリかキテレツ
いいねこの勢い
代理投下、開始します
上川は、ぼんやりと一人の男を眺めていた。
その視線の先には、全く緊張感の感じられない顔で床に寝そべっている男が1人。
先ほどから上川やわん子が動こうとしているのに、その男は起き上がる気配すら見せない。
今までに、上川は何度か説得を試みている。
状況を伝え、これからの方針を説明し、なんとか動いてくれないかと頼む。
しかしその度に、カネオからは生返事が返ってくるだけ。
もちろん、無理矢理カネオを引きずって動かす事はできる。
だが、上川の疲労も完全には回復していないのだ。そんな無駄なことで体力を消費したくはない。
あくまでそれは最終手段、できれば説得だけで事態を収拾させたいところだ。
(しかしコイツ、扱いにくい奴だな…)
普通の説得が通用しないとなると、方法を変えるしかない。
上川はそう思い、口を開いた。
「…とにかく、いつまでもこんな山の中にいるわけにもいかないだろ?」
「む〜ん、そうは言っても動けないものはしょうがないんだな〜」
もっともこの返答は、上川も想定済みだ。
そして次に、そばに居たわん子に矛先を向ける。
「…それにほら、わん子ちゃんの友達も探さないといけないしね」
「タツヤさんの言うとおりだワン!早く走太君を探すんだワン!」
上川の予想通り、今まで黙っていたわん子はすぐさま同意した。
色々とカネオに対する恨みもあったのだろう、その語勢はかなり強い。
方法を変える−−つまり、わん子に矛先を向けるのだ。
それによって2対1の状況を作り出し、2人がかりで説得しようという魂胆だ。
まあカネオの性格からして、上川もそう上手くいくとは思っていなかったが。
「む〜ん…しょうがないんだな〜」
しかし上川の予想に反し、カネオがゆっくりと立ち上がる。
それを見届け、上川は安堵した。
(…相変わらずよく分からん奴だな。
さすがに形勢の悪さを感じたのか、それとも単に腹具合が落ち着いただけか?
…まあ、今はカネオを動かせただけで良しとするか)
だがその一方で、一つ危惧しなければならない点がある。
走太関連の事ばかりでわん子を誘導していると、困った事態に追い込まれるかもしれないのだ。
(もし万が一、走太とあのガキが再会してしまったらどうなる?
その途端、走太関連の誘導が効果を失うんじゃないか?)
例えば、上川が「走太を探す為に港へ行こう」と提案する。
しかしその道中で走太と再会してしまうと、わん子にとっては港へ行く意味が無くなるのだ。
そうなると、上川は港へ行く新しい理由を探さねばならなくなる。
(だが理由がコロコロ変わっては、いくらガキとはいえ怪しまれるかもしれんな…
最悪の場合、今まで積み上げてきた信頼関係にヒビが入る恐れもある。
今までは信頼を得るために話題に出してきたが、これから走太の話題を出すのはできるだけ避けた方が無難だな)
とはいえ、あまり走太の話題を避け続けるのも、それはそれで逆効果だろう。
走太の話題を出しすぎても駄目、出さなくても駄目。
上川自身、ここまで難しい舵取りを迫られるとは思わなかった。
港へ向かう道中、その辺りはよく考えておく必要があるだろう。
(…まあ相手がガキなのを考えると、そこまで心配する必要はないのかもしれんがな。
とにかく用心しておくに越した事は無いだろう)
そこまで考えをまとめたところで、そばの2人に声をかける。
「じゃあ、そろそろ出発するか」
それを合図に、3人は研究所の外へ出た。
久々に外の明るさを感じ、上川は思わず目を細める。
(ひとまず、この山を下りるのが第一だな)
上川の目的は、あくまでこのゲームからの「脱出」だ。
頼りになる仲間、そして首輪を外せる人間とは出会っておきたい。
そして、山よりも平地の方が、人と会える可能性は高い。
危険人物と鉢合わせしてしまう事も考えられるが、それを怖がっていても仕方がない。
どの道、首輪を外せなければ死んでしまうのだ。多少の危険には目を瞑るべきだろう。
「まず、この山を下りようと思う。
山道は予想以上に体力を消耗するものだし、できるだけ早く平地に行ったほうがいいからね」
そして少し考えた後、上川は付け加える。
「…ああ、それと、3人が別れ別れにならないようにしないといけないな。
とりあえず、わん子ちゃんはオレのデイパックを掴んでくれるかい?」
そう言うと同時に上川は後ろに手を回し、カネオの黄色いコートを掴む。
これで、3人が1つに繋がった事になる。
もちろんこれは、カネオが勝手に「飛んで」逃げてしまう危険性を防ぐためだ。
研究所の中で試した限りでは、カネオは複数を同時に「飛ばす」ことはできなかった。
片手が塞がってしまうのは痛いが、ここでカネオを逃がすわけには行かない。
(とりあえず、今打てる手はこのくらいだな)
そう判断し、上川は何気なく後ろを振り返った。
見ると、わん子は相変わらず暗い面持ちで歩いている。
よく考えると、さっきから殆ど口を開いている様子がない。
もっとも、ゆっくり考えをまとめたい上川にとって、それは好都合だ。
だが、さすがにわん子の気分が塞ぎすぎるのも困る。
最悪の場合、肝心な時になって上川の言葉に耳を貸さない恐れもある。
時々は会話を交わし、適度に気分を晴らしてやる方がいいだろう。
(…そうなると、できるだけ早く話題を振っておいたほうがいいな。
危険人物と出会ってから話を始めるのでは遅すぎる)
そして、話題もできるだけ選んだ方がいい。
なるべくわん子が明るくなりそうな、それでいてあまり話が長引かない話題。
「…わん子ちゃん、ちょっと質問していいかい?」
「もちろんだワン」
「もし1つだけ願いが叶うとしたら、わん子ちゃんはどうする?」
少し考えて、上川はこう聞いた。
わん子を誘導するための、新しい理由を探す目的も兼ねて。
● ● ●
わん子は考えていた。
上川に聞かれた質問に対する答えは、すでに用意できている。
−−もう1度、あの世界に戻りたい。
−−そしてできることなら、ずっと人間として生きていきたい。
それが、今のわん子の心からの願いだった。
今となっては全てが手遅れだけど、そう思わずにはいられない。
人間として過ごした生活は、とても楽しかったから。
…でもそれを言って、上川は信じてくれるだろうか?
頭が変だと思われて、見捨てられはしないだろうか?
今のわん子にとって、それはたまらなく怖い。
「…それは秘密だワン」
結局、言い出そうとしても声が出なかった。
…いや、言い出す勇気が無かったのかもしれない。
「そうか。
ゴメンね、いきなり変なことを聞いちゃって」
上川が言う。
それを聞き、わん子は何となく申し訳なく思った。
(…でも、タツヤさんにはいつか言いたいワン)
信じてもらえるかどうかは関係ない。
今の時点では、上川だけが、唯一信頼できる人なのだから。
そして、信頼できる人にいつまでも本当の事を隠し通したくはないから。
幼いが故言葉にはできないけれど、それがわん子の本心だった。
支援
● ● ●
「む〜ん、ボクは食べ物が欲しいんだな〜」
「…お前、まだ食い足りないのか?」
上川は小さくため息をつく。
この調子では、またカネオが余計な事をしでかすかもしれない。
(やれやれ…いつになったらオレの心配のタネは無くなるんだ?)
上川はもう1度、今度ははっきりとため息をついた。
【B−3/研究所付近/1日目/朝】
【上川 辰也@パワプロクンポケット8】
[状態]:疲労中、走力+5
[装備]: 走力5@パワポケ3、ヒーローのスカーフ@パワポケ7、拳銃(麻酔弾)予備カートリッジ×3@パワポケ8
[参戦時期]美空生存ルート、ルナストーン引き渡し後
[道具]:支給品一式、レッドローズの衣装@パワポケ8、ヒーローのスカーフ三個@パワポケ7、本@パワポケ8裏、『人間の潜在能力の開発』に関する資料@パワプロクンポケット4、黒い板@パワポケロワオリジナル
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
1:仲間を集める。
2:首輪を詳しく調べたい。
3:山を下りた後港に向かい、脱出方法が無いかを調べる。
4:頼もしい仲間を集めたらカネオに催眠術をかける。
[備考]
※黒幕に大神がいると可能性があると考えています。
※首輪の考察をしました。
考察した内容は以下の通りです。
1:首輪には爆発物が仕掛けられている。
2:首輪には位置情報を送信する機能ある。
3:移動した位置が禁止エリアなら爆破の為の電波を流され爆発する。
4:盗聴機能や小型カメラが首輪に仕掛けてあると予想しました。
※現在カメラ対策としてスカーフを首に巻いています。
※考察の内容が当たっているかは不明です。
※わん子からパワポケダッシュの登場人物に付いての知識を得ました。
わん子の事をオオカミつきだと考えています。 ヒゲの神様(野球仙人)の事を記憶を操作する能力を持っている人間だと予想しました。
※暗示催眠の能力は制限のせいで使う度に疲労が伴います、使用しすぎると疲れて気絶するかも知れません。
※能力に制限がかかっている事に気付きました。
情報を引き出す時や緊急時以外は使用を出来るだけ控えるつもりです。
※黒野鉄斎が研究していた『人間の潜在能力の開発』に関する資料を発見しました、機械は反応しません。
それが我威亜党の目的と関係あるかどうかは『全くの不明』です。
※我威亜党、野球人形、探偵の名前を本で見つけました。
本については我威亜党の誰かが書いたお遊びだと思っています。
※資料の最後に書かれていた『黒野鉄斎』が主催側の人間だと思っています。
※ここに置かれている全ての資料が『ミスリード』である可能性もあると思っています。
※研究所においてあった本には様々なジャンルの本があります。
【芽森 わん子@パワポケダッシュ】
[状態]:疲労小、仲間が出来て嬉しい。
[装備]:ヒーローのスカーフ@パワポケ7、モップ@現実
[参戦時期]:わん子ルート、卒業直後
[道具]:支給品一式(食料はキムチと何か)、ヒーローの衣装セット@パワポケ7、ヒーローのスカーフ四個@パワポケ7
[思考・状況]
基本:殺し合いから脱出する。
1:タツヤさんに付いてく。
2:走太君を探したい。
3:いつか、タツヤさんに自分の正体を打ち明けたい。
【カネオ@パワプロクンポケット9裏】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]リュックサック、ヒーローのスカーフ@パワポケ7
[思考]
1:まだまだ食べ足りないんだな〜
2:弟たちを探す。
3:春香に会ったら、『おしおき』をする。
[備考]
※参戦時期は9裏主人公の戦艦に最初に乗り込んできた後です。
※春香の名前は知りません。また春香の見た目に関する情報も、暗かったために曖昧です。
※テレポートをすると疲れが溜まる事を認識しました。
テレポートの移動距離に関する制限は認識していません、またテレポートの制限の度合いは以降の書き手にお任せします。
※名簿は見ていません。
※現在は他の2人とデイパック経由で繋がっているため、テレポートはできません。
代理投下終了
ふむ、とりあえず一言
お前のような初心者がいるか!良い意味で!
代理投下ありがとうございます。
NGも覚悟で投下したので、ここまでして頂けると嬉しい限りです…
それと、私の不注意による変更不足が1つありました。
状態表内の【B−3/研究所付近/1日目/朝】を
【B−3/研究所付近/1日目/午前】に修正させて頂きます。
投下&代理乙
上川の考察が深い
その描写が出来る書き手さんすげーわ
乙です!
初めての投下ということですが
作者氏がこれまでの話を読み込んでいるのが
よんでいて伝わってきました
今後の作品も期待してます!
ほっしゅ
tes
さら、リン投下します
東から日の差し込む教室の片隅で、リンは充電が終わり機能を取り戻した探知機を見た。
探知機は早々に仕事を果たして、反応を示している。
別の人間の反応を示す点はちょうど真ん中。
この探知機は自分を中心に反応するタイプのもの。
つまり、かなりの接近を許してしまったと言うことだ。
廊下は老朽化が進んでいるため、体重移動をするだけでぎしりと悲鳴をあげるほどだ。
だが、床の悲鳴が全く聞こえない。
そのことから学校に入ってきていないのは間違いない。
ならば、待ち伏せするのが常道だろう。
「……それにしても、劣化とは言うけど幾らなんでも使い勝手が悪すぎじゃないかしら」
あまりにも近すぎて北から来ているか南から来ているかさえも分からない。
とは言え、接近が悟れると言うメリットがあるのは十分か。
期待しすぎなければ十分に使える道具ではある。
そんなことを考えながら、解体し整備を終えたグロッグを手に取る。
弾丸は残り8つ、無駄撃ちはできない。
無駄撃ちはできないが、悟らずに近づいて確実に仕留める方法なら8つも弾があれば十分。
ちょうど今、近づいてきている人間を殺せばノルマ完遂まで残り一人だ。
「さて……と」
開け閉めの際に音が立つことを嫌い、リンは開けっ放しにしていたドアを抜ける。
情報屋として気配を消す術は心得ているが、この床では足音を完全に消すことは叶わない。
だから、最短ルートで階段まで移動する。
階段下の影となる場所は隠れるには匹敵の場所だ。
襲撃には奇襲が基本、殺されたことに気付かれないぐらいがちょうどいい。
そこで息を殺して待ち続ける。
仕事柄リンは待つことは得意だ、もはや生態と言ってもいい。
待つこと数分、ようやく床が軋む音が聞こえてきた。
より息を殺して、迫ってくる音に対して身構える。
緊張も興奮もない。
その手の感情を押し殺すのは仕事で慣れている。
やがて、現れた影の招待は青いブレザーを着た女子高生だった。
髪の黒さが少し不自然だ、おそらく染めているのだろう。
地毛が奇妙な色でからかわれることを嫌ったのか、それとも一度染めていた髪を染め直したのか。
背丈は、どちらかと言えば小さい。
女性にしては長身のリンだからそう感じただけかもしれないが、間違っても大きくはない。
それにしても、ひどい有様だ。
可愛らしい顔に大小様々な青痣が多くできている。
その痣で腫れた顔では前が良く見えないのだろう。
俯いたまま、ポツポツと歩くその姿からはリンの存在を察しているとは思えない。
手に機関銃を持っていると言うのに恐怖は感じない。
強力な武器を持ちながらも顔が痣にまみれていると言う事実が、惨めに見えて堪らない。
ここまで哀れな姿をしているのなら、一瞬で殺してやるのが慈悲と言うものだろう。
そう決め、グロッグで確実に仕留めるにはもう少し近づかなければいけない。
あと、二歩ほどだ。
片目を閉じる形にして額に狙いを定める。
頭を撃ち抜けば、痛みも少なく死ねる。
「お姉ちゃん……」
ポツリ、と漏らした言葉に引き金に掛けた指が止まる。
あの少女は今、お姉ちゃん、と呟いた。
悲しそうに、縋るように、お姉ちゃんと呟いた。
「……ッ!」
不意に少女の姿が記憶の中の茜が被る。
その姿が被った瞬間、リンの指は凍ったように動かなくなった。
あり得ないと思いつつも、その指はピクリとも全く力が入ってくれない。
弱くなった弱くなったと常に思っていたが、まさかここまでとは思わなかった。
「……ノルマは、あと19時間超で二人、か」
ポツリと呟く。
まだ時間も大分残っているし、残弾も8発ある。
殺したくない、と思うなら別に殺す必要もない。
それに、どうしても殺せなければ学校に戻ってあの少女を殺せばいい。
まるで無理やり自分に言い聞かすように考えながら、リンは学校から静かに立ち去った。
◆ ◆ ◆
「お姉ちゃん……」
さらはポツリと呟いてみる。
お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん……
呟くだけで、憎しみや怒りと言った負の感情がふつふつと湧いてくる。
だけど、負の感情だけではない。
懐かしさと認めたくないが好意に似た感情も、また湧いてくる。
そういう相手なのだ。
可愛さ余って憎さ百倍、だけど確かに姉のことが好きだった。
答えの分からない不思議な感情が胸に埋め尽くされている。
「……でも、もういいか」
さらは疲れ切った目をしながら、消え入りそうな声で呟く。
とにかく疲れた、色んなことがありすぎた。
姉のことを考える余裕はない。
あの、たくさんの憎しみとちょっとだけの好意が混じった複雑な気持ちを抱くのは、とにかく疲れる。
「どうして、こうなっちゃったんだろう……?」
最初からさらは死にたくないだけだった、本当にそれだけだった。
メイド服の女性、夏目准を刺したことも(生きていたが)、悪魔のメイクをしたピエロを殺したのも。
全ては死にたくなかったからだ。
生きたかったのではなく、死にたくなかったのだ。
今までの生活からさらは朧げながらに気づいていた。
生きたいと思うことと死にたくないと思うことは、違うことだということを。
そんなことを考えながら階段を一段、二段と数える様にゆっくりと昇り続ける。
ギシッ、ギシッっと床は軋みを上げながらも柔らかにさらの身体を受け止める。
身体中に走る痛みをこらえながら、一歩一歩踏み出す。
これほど階段を昇るのが辛かったことはなかった。
しかし、どんなに辛くてもさらは歩みを止めない。
屋上に行けば彼がいるかもしれない、その一心だけがさらを支えている。
一階から二階へ。
――――顔から走る痛みに、膝が震える。
二階から三階へ。
――――身体中の怪我から来る疲労に、膝が震える。
三階から四階へ。
――――彼が拒絶するかもしれない恐怖に、膝が震える。
四階建ての校舎、その屋上にたどり着く。
どうやらこの学校はさらの母校と同じく屋上を開放しているようだ、ノブを捻るだけで扉は簡単に開く。
ゆっくりと、躊躇いながらも扉を開ける。
開けると、ひし形に結ばれたフェンスとその奥に広がる青空が見える。
屋上という場所から見る風景はどこの学校も似たようなものらしい。
「……まだ、来てない、か」
さらは周囲を見渡し、屋上での先客が居ないことを確認すると肩を落とす。
そして、震える身体に鞭を打ち設置されたベンチに向かう。
辿り着くや否や、倒れこむようにベンチへと横になる。
空は真っ青で、気を抜くと吸い込まれそうなほどだ。
一瞬ではあるものの、自分が殺し合いに巻き込まれていることを忘れてしまったほどに。
良い場所で、良い時間だ。
これで殺し合いでなければ、いつもの昼休みや放課後となんら変わりがない。
そこまで考えて、さらはふと待つのは常に自分だと言うことを思い出した。
「いつも、私が彼を待ってたな……」
さらはそう呟きながらくすりと笑って、ゆっくりと目を閉じた。
【F-3/学校周辺/一日目/午前】
【リン@パワプロクンポケット8】
[状態]健康
[装備]グロッグ19(8/15)
[道具]支給品一式×3、劣化版探知機、充電器、ヒヨリンセット(化粧品中消費)、支給品一覧表、島岡の両眼
[思考]
基本:一先ずノルマの三人殺しはクリアしておく。
1:八神と茜は何としてでも生き残らせる。
2:劣化版でない探知機が存在するのなら入手してしておきたい。
3:第五回放送の前に役場へと向かう。
【F-3/学校屋上/一日目/午前】
【芳槻さら@パワプロクンポケット10】
[状態]:左頬・右目周辺に痣、顔面を中心に激痛、足に痛み(中)、精神的疲労(大)、肉体的疲労(大)、所々に擦り傷
[装備]:機関銃(残弾中程度)
[道具]:支給品一式、スペツナズ・ナイフ
[思考・状況]
1:zzz……
2:二人は、どう思うだろうか?
3:十波君のことは信じられる?
[備考]
※第一回放送の内容をどこまで把握しているかは、後続の書き手さんにお任せします。
ただし、メモなどには記録していないようです。
投下終了です
誤字脱字矛盾等があれば指摘お願いします
乙です
リンがアカネと重ねてしまうところが印象深いですね
ところで十波も学校に向かっていますが
さらと会ってどんな反応をするのか
てか会えるのか
そのへんが気になります
投下します
「手を挙げて、そのまま動くな」
あ、どうも。おはようございます、皆さん。
モグラーズ黄金時代を支えている二朱公人です、黄金時代って言っても初優勝したばっかりですけど。
でも、これから優勝したり二位だったりすれば黄金時代って言われるようになると思います。
だから頑張ります、新婚ほやほやですし。
で、そんな俺ですけどたった今、夢の中で外国人の兵隊さんと向かい合ってるところです、懐かしい。
相手がごつくてむさ苦しいおっさんじゃなくて美女なのは初めてだけど。
「こちらに殺すつもりはない。殺すつもりはないからこそ、こうして貰っている」
だよね、殺すつもりだったらもう撃ってるよね。
とりあえず大人しく手を上げておこう、気の短い人だった嫌だし。
銃をこちらに向けつつ、女性はじっと睨みつけてくる。
なんとか切り抜けたいところだ。
大丈夫、前の夢みたいに敵兵に捕まりそうになった時と似たように動けばいいさ。
「デイパックを脚元に」
「……」
後ろへと向かってデイパックを投げ捨てる。
俺や准さんも一足では取りに行けないが、向かい合っている美人さんからはもっと届かない。
とは言え、こっちは素手で向こうは拳銃。
どっちが有利なのかは小学生でも分かるほど明らかだ。
唯一の救いは、この美人さんが攻撃を仕掛けてくる気がないと言う事か。
ちなみにこの美人の軍人さん、芳槻さんを追って学校に向かっているところに奇襲してきたのだ。
後方から突然現れて拳銃を着きつけなれ現在に至る、というわけだ。
「殺し合いに乗る気は?」
「ないよ」
仮に乗っていっても同じ返答をするはずだから意味はないだろうけど、しっかりと殺し合いをするつもりはないことをアピールしておく。
しかし、日本語でしゃべってくれるとは中々俺に優しい夢だ。
そんなことを考えてる俺とは別に、美人さんはこちらを値踏みするように見てくる。
いやぁ、美人に舐める様に見られると言うのも悪くないものだね。
たっぷり数分、俺を見た後は准さんに。
慎重な人だな。
「……失礼した、言い訳じみて聞こえるだろうがこんな状況だからな」
「いえいえ、お気にせずに」
でも、銃は下ろさないんですね。
慎重と言うか、疑り深いんだろうな。
だけど、こんな状況だとそれぐらいが普通なんだろうな。
「回りくどい言い方は苦手でな、簡潔に言おう。私に協力してもらいたい」
「協力……ですか」
殺し合いなんて馬鹿げたことから脱出するためには、見るからに冷静そうな美人さんとは協力したいところだ。
冷静そうだし、美人だし、軍人だし、美人だし。
だけど、チームを組んでいるからには准さんが嫌だと言えばそれを尊重しなくてはならない。
チラリと准さんの方へ目線をやる。
俺の視線の意味を察したのか、こくりと頷く。
「良いですよ、こっちから願いたいぐらいです」
「そうか」
ここでようやく美人さんは銃を下ろす。
ちょっと警戒を解くのが早いような気がするが。
と、思ったがそれはそれで美人さんなりの気遣いなのかもしれない。
「ヘルガだ。そちらの名前は?」
「名前ですか、俺は二朱公人」
「夏目准、です」
自己紹介は大事だよな。名前で呼ぶのと、あなたとかお前とか君とかで呼ぶのはかなりイメージが違う。
いや、こんな美人二人にあなたとか呼ばれるとなんか勘違いしそうだけど。
浮気じゃないよ? 浮気してる気分にはなっても実際は浮気ではないからね?
「一先ず、何処かで腰を落ち着けたいが……」
っと、いけないいけない、協力するにしても、芳槻って子のことを言わなきゃいけないな。
もしヘルガさんがそれを嫌がったら……まあ、その時はその時だ。
「あ、っと……その、俺たちやらなきゃいけないことがあって」
「……?」
「芳槻さらって子を探してるんです」
准さんがはっきりと答える。
意志の強い、しっかりとした答えに聞こえる。
ならばここは准さんに任せておくとしよう。
俺もそれほど口がうまい人間じゃないことだし。
どちらにせよ、ヘルガさんは殺し合いには乗っていないと言うことは分かった。
乗っているならさっさと俺たちを殺してるだろうしな。
これで俺たちが会った殺し合いから脱出しようとしているのは神条さんたちを含めて4人、か。
殺し合いから脱出しようとしているのが少数派なのか、多数派なのかは何とも言えないなぁ。
現実的に考えるなら、芳槻さんのように結果的に殺し合いに乗った人の方が多いんだろうな。
脱出の方法が見えていない上に、それに立塞がるのは我威亜党とか言うわけのわからない組織だけでなく同じ被害者もいる。
考えてみると、かなり辛い状況だ。
…………ま、なんとかなるだろう。
どんなに怖くても、これが夢であろうと、人を殺すのはなるべく避けたいしな。
◆ ◆ ◆
「芳槻さらって子を探してるんです」
私は決意を固める様に、はっきりとその言葉を口にした。
少し痛み気味に思える金髪の軍人ヘルガさんは妙な威圧感があり、正直な話怖い。
怖いけど、仲間になると言っている人に苦手意識を覚えるわけにもいかない。
「芳槻さら……知り合い、か?」
「いえ、ここで私が最初に会った女の子です」
さらの顔を思い出すと、胸が痛くなる。
冷たさを装った目でこちらを見てくるあの顔、可愛らしい少女にはあんな顔をして欲しくない。
それに、ひょっとすると私もあんな風になっていたかも知れないのだ。
たまたまその次に出会った二朱さんが助けてくれたから、こんな風に冷静でいられる。。
……その二朱さんはちょっと頭が緩くて、ちょろい類に入るけど。
どちらかというと、この状況で何の見返りもないのに私を助けてくれた軽い尊敬の念、と言うのが大きい。
「ふむ、そちら側の言う芳槻さらなる少女かは分からんが……10代後半ほどの少女なら一人見かけたぞ」
その言葉に私は芳槻さんだ!と思った。
でも、まだその子が彼女だと決まったわけではない。
ちゃんと芳槻さん本人かどうかを確認しなきゃ。
……それにしても、近付いてきているのか。
ドクリ、と胸が強く鳴った。
それはついに近づいてきたことに対する期待か、それとも一度刺されたことでの恐怖感か。
怖いのかな……うん、怖いんだろうな。
しょうがないよね、刺されたんだから。
でも、私は彼女をまだ信じてみようと思う。
それは子供が本を読んで『ああ、僕も人と仲良くしよう!』と思うぐらいの弱い気持ちかもしれない。
だけど、私は確かに信じてみたいと思うんだ。
「それって、青いブレザーを着て……?」
「……ああ、青を基調とした高校の制服だったな」
間違いない、その子だ!
「その子は何処に!?」
喰いかかるようにヘルガさんを問い詰める。
少しだけ驚いたような顔をしたが、直ぐに表情を戻す。
その顔の変化で、少し熱くなりすぎたことを察する。
コホン、と咳払いを一つだけしてヘルガさんから離れる。
「……西か北のどちらか。恐らく学校か役場辺りだな」
◆ ◆ ◆
メイド服とウェイトレス服を足して手足の露出を上げたような服を着た女、夏目准を観察する。
見る限り普通の女性だ。
精一杯の勇気で立っているような、危ういとも思える状態だ。
どちらかと言えば、隣の二朱公人なる男の方が気にかかる。
妙に落ち着いていると言うか……淡々としていると言うか。
とても命の危険に晒されているようには見えない。
……実感が湧いていないだけの、平和ボケした男か?
「学校か役場……」
ポツリと確かめる様に呟いた夏目。
どちらへと先に行くか迷っているのだろう。
確かに殺人者が居るこの場では一刻も早く会いたいと思うのは自然だ。
……あの少女か。
確かに私としても気になる存在である。
悲しい眼は嫌いだ、この先どうなるか余計に不安になる。
「行くなら、学校からの方がいい」
「えっ?」
「あの方角には、殺し合いに乗った人間がいるからな。
……もし会ってしまえば、不味いだろうな」
その言葉で夏目の顔が真っ青へと変わった。
急がなければ、芳槻なる少女は死ぬ。
それは芳槻さらに会おうとしている夏目には何よりも避けなければいけないことなのだろう。
「なら、急がないと! 二朱さん」
「了解!」
行く、か。
チラリとしか見ていないが、簡単にあの少女が前向きに動くとは思えないがな。
そもそも、私がここに来てから出会った中ではあの少女は一番『普通』だ。
最初に出会った抜けた、しかし愚直なまでに自分に正直だった越後竜太郎。
漂漂としつつも剣呑な雰囲気を纏った埼川珠子。
ニコニコと笑顔のままなのに得も知れぬ威圧感を放つ妖怪なる黒羽根あやか。
誰も彼もが普通ではない。
唯一、普通に近いと言えば目の前の夏目ぐらいだろう。
普通だが、それでも前向きに生きている。
二朱はまだよく分からない。
常人とはかけ離れた度胸の持ち主なのか、それともただの危機感の薄い間抜けなのか。
しかし、人数が揃ったのは良いことだ。
数が多いと言うのはそれだけで有利であるということだ。
もちろん数の多さゆえの不利と言うのもあるにはあるが、その不利に負ける程度ならそれまでだっただけ。
そして、この二人が困難へと向かっている、と言うのも中々良い。
困難を乗り越えることより強くなるためには必要なことだ。
『芳槻さら』という困難を乗り越えれば、亀田と言う悪を鍛える噛ませ犬としての『格』も上がる。
窮地から立ち直った芳槻さらもまた良い噛ませ犬となるだろう。
ならば、ここは付いていくのがベストだろう。
「……ふむ。ならば、それもまた『アリ』か」
「?」
「私も行こう……あの少女のことは私も気になるんだ」
さて、この急造のチーム
で何処まで行けるか……
【E-2/路上/一日目/朝】
【二朱公人@パワプロクンポケット2】
[状態]:健康
[装備]:ナイフ
[道具]:支給品一式、スパナ、拡声器、不明支給品0〜2
[思考・状況]
1:学校へと向かって芳槻と会う。
2:ヘルガさん・准ちゃんと一緒に行動、守る。
3:みんなで協力して亀田を打倒する。
[備考]
※このバトルロワイアルを夢だと思っています。
【夏目准@パワプロクンポケット9】
[状態]:腹部に刺傷(立ち上がれる程度には回復)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2個
[思考]
1:学校へと向かってさらと会う。
2:二朱を絶対に信じぬく。(第一印象は好印象)
3:九条さんに会いたい。
4:さらを助けてあげたい。
【ヘルガ@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:健康
[装備]:モデルガン、ナイフ、軍服
[道具]:ラッキョウ一瓶、支給品一式
[思考・状況]
基本:亀田という悪を育てるために亀田に立ち向かう。
1:あまりにも亀田に対抗する戦力が大きくなってきた場合はそれを削る。
2:二人の性格を把握しておく。
投下終了です
誤字脱字の指摘お願いします
ラブハンターw それどころじゃねーだろww
さあ学校にどんどんフラグがだっていくが…
続き期待します!
これって参加したい時はしたらばの方とかに宣言すればいいのか?
いや聞いてみただけなんだが
お 新しい人かな?
>>512 把握。書きたいキャラって他の人が登場させたキャラでも……まあwiki見る限りよさそうだな。詳しくはそっち行ってみるよ。サンクス
>>513 1、2、ダッシュと甲子園はやってないから、無理そうだと思ったらROMに徹しますけどね
おじさんも書いちゃおうかな
>>514 書いてもいいと思います
まあ俺も1と2はやったことあるって程度だし偉そうなこと言えないがw
今は誰も予約してないのか
でもPCが巻き添えでアクセス規制喰らってるから無理だったり……。バトルロワイヤル系は初めてなので、やりやすそうな流れになったグループがいれば書いてみようと思いますw
投下します
日が真上に聳え出した昼時、自然の匂いと言う抽象的だが確かに感じるそれに溢れたのどかな島が一つある。
ぽかぽかと心地よい陽気と目に優しい緑が溢れたのどかな島には似つかない血と亡骸に溢れていた。
なぜならば、この島は革命組織・我威亜党によって『殺し合い』の会場に選ばれたから。
そして、殺し合いという人と人が傷つけ合い欺きあう場所では異様な五人(?)組が一つ存在していた。
内訳は男が一人、女が三人、生き物かどうかも判別できない物が一つ。
男は野球のユニフォームに身を包んだメガネの男、凡田大介。
女の一人は濃い青のスーツに身を包んだ二十代半ばほどの女性、四路智美。
同じく女の一人は白色のブレザーに身を包み長い髪をポニーテールに纏めた女子高生、神条紫杏。
残りの女の一人は赤いセーター(少しだけ焦げている)にのっぺりとした顔が特徴的な女性、荒井紀香。
そして、生き物かどうかも判別できないもの、まるで幼子の落書きのような色合いをしたほるひす。
おおよそ共通点と言えるものもない五人組。
そんな五人組では会話も少ない。
少ないが、今はそれ以上に妙な空気が五人の間に漂っていた。
後方から聞こえてきた三つの銃声が原因である。
後方、つまり先ほど別れた九条達が少女を探索しに行った方向だ。
何かが起こった、それは小学生でもわかるほど簡単なことだ。
だのに、先頭に立つ智美と紫杏は一切振り向かずに黙々と病院へと歩を進める。
「オーナー…………」
「……気にする必要はないわ。九条さん達がマシンガンで試し撃ちでもしたんじゃないかしら?」
「く、黒野博士も戻ってこないでやんすよ?」
「手伝いに行ったんでしょ。用が済んだら一緒に戻ってくるはずよ。
そんなことより、早く病院に居る人たちと合流しましょう。
私たちの持ってる武器と情報を多くの人間に知らせる必要があるわ」
「さっき、凄い音が……」
「……そうね、もう繕わないわ、戦闘になったかもね。それもあの女の子ではない別の女の子と。
で、どうするの? 銃が二つあるけど、それでどうするの?
助けにいくとか言うけど、貴方はその襲っている人間を殺すの?
……殺せないでしょ、貴方じゃ。なら、私たちはまず仲間と思える人間と会うべきよ」
「………………」
「大丈夫、九条って人は生きてるわよ。第一、あのロケット弾を見たら誰だって逃げ出すわ」
凡田の疑問に、智美はにべもなく否定の言葉を続ける。
顔も見せずに言葉を並べる智美に、凡田は怒りではなくやるせなさを覚える。
凡田だって分かっている、あの銃声は確実に戦闘の合図だ
そして戦闘になったということは九条達はピンチだと言うことだ。
ならば、助けに行きたい。九条はここに来て最初に出会った人間であり、良い奴だから。
だけど、智美の「持ってる武器と情報を多くの人間に知らせる必要があるわ」という言葉も分かる。
ここで智美に荷物を渡し、あの大正時代の人間たちから聞かされた情報を教えればいいのかもしれない。
だが、病院で全て話せばいいと思っていたので、智美たちには触りすら喋っていない。
一から話していたら、間に合わない。
かと言って、何も話さずにここを去っていくわけにはいかない。
何せこの中で『タイムマシン』の存在を知っているのは凡田だけだ(少なくとも凡田はそう思っている)。
それに、九条なら大丈夫かもしれないという安心感があった。
九条は自分よりも大人だと思ったし、何より凡田は会場に来てから一度も知り合いが死んでいなかった。
唯一の知り合いの二朱も、放送の前に出会った九条に智美、七原や布具里も死んでいない。
見せしめとして二人が死んでいたが、心のどこかでそれは別のことだと思っている部分も少なからずあった。
もちろん気を抜いているわけではない。
九条に死体があると聞かされた時は驚いたし、強力そうな銃を持って現れた少女を見た時は腰が抜けそうになった。
ただ、これだけ大勢の仲間と共に居て、さらに病院には別の仲間がいる。
その事実が凡田を少しだけ、ほんの少しだけ勘違いさせた。
死ぬことはないだろう、と。
俊敏で落ち着いた九条なら何とかするだろう、と。
奇妙な信頼感を理屈にして、凡田はこのまま智美たちと共に病院へと向かうことにした。
「ぼんだ……」
「……大丈夫でやんすよ、ほるひす。九条くんも黒野博士も普通じゃないでやんす。
その二人と一緒なら東くんだって平気でやんす」
「……がんばれ。ほるひすもがんばる」
「あ、ありがとうでやんす」
まさかこの奇妙な生き物のような何かに励まされるとは思わなかった。
妙だ妙だと思い、話しかけてすらいなかったがいい奴なのかもしれない。
それにだんだんとこの妙な姿も可愛らしく見えてきた。
やはり仲間は良いものだ。
「着いた、か」
奇妙と言えば、この神条紫杏も奇妙な口調だ。
気取った、と言うよりもお固い口調。
とても凡田よりも五歳以上年下の女の子口調ではない。
それに妙な、そう妙な威圧感があって苦手だ。
ただ単純に威圧感があると言うだけなら、何人も見ている。
この整った可愛らしい顔で、お固い言葉とテキパキとした行動のギャップが奇妙なのだ。
「……で、これからどうするでやんすか?」
「まあ、とりあえず……貴方達が会った男の子と女の子の名前を出せばいいんじゃない?
この大人数だし、殺し合いに乗っているとは思われにくいでしょ」
確かにそうだ。
殺し合うのに五人も組んで動き回る酔狂な人間がこんなにも多く居るわけがない。
下手をすれば裏切られるかもしれない、その不安が四人分だ。
とは言え、そのまま直ぐに足を踏み込む勇気が湧かない。
もし、この病院に居るのが小波たちの仲間ではなく、その人を殺して獲物を待っている殺人鬼かも知れない。
その可能性を考えると簡単には足を踏み込めなかった。
とりあえず辺りをうろつくこと十数分。
やがて痺れを切らしたのか、智美が一息ついて病院へと向き直る。
「……私が行くわ。銃を持ってるの」
ジュニアコルト、それほど大きくない素人目にも扱いやすそうな拳銃を取り出して病院へと足を踏み出そうとする。
凡田もそれに続こうとするが、先に病院の自動ドアが開いた。
病院から誰かが出てくる。
それを理解した瞬間、心臓の動悸が速くなる。
だが、それも二人の男性が両手を挙げたことで若干治まる。
「俺は八神総八郎、中にもまだ萩原って人と曽村って仲間が居る。
俺たちには殺し合う意思はないし、そちら側にもないものと思う。
協力してほしい、より多くの人間でここから脱出するために……って湯田くん!?」
落ち着いて言葉を並べる、出来る大人と言った風に見えた八神が突然驚愕の声を上げる。
凡田もその突然さに驚くが、八神の視線が凡田に向いていることに気づき、その意味を察する。
「湯田じゃないでやんすよ、オイラは凡田大介でやんす」
凡田は落ち着いて言葉を返す。
自分に似過ぎた人間がいることはよく知っている。
何故居るか、までは知らないが。
ただそれを考えるとひどく嫌な予想しか浮かばないため、あまり考えないようにしている。
「そ、そう……でしたか。いや、それにしてもよく似てる、口調まで……」
「……世の中にはあまり触れない方がいいことあるもんでやんすよ。
それに、今はそんなことを話してる場合じゃないでやんす」
八神の驚いた姿を見ると徐々に対照的に落ち着いてきた。
そして、紫杏はその遣り取りがじれったく思えたのか言葉を挟んできた。
「そのつもりで来た。小波走太という少年たちから話を聞いて、な」
その言葉に八神なる男は再び驚きを見せたのち、ふぅっと短い息をついた。
そして、顔を上げて軽い笑みを作って、ゆっくりと自動ドアへと向き直る。
「入ろうか、話は中でしよう」
◆ ◆ ◆
時間僅かに戻して、病院の一室。
八神 総八郎は東の窓から外を眺めていた。
太陽は既に天高くまで登りはじめており、間もなく八神たちの天井に届くだろう。
それはつまり、二度目の放送が始まることを指している。
前回の放送では十八人もの人間が死んでしまったことから、今回の放送でも多くの人間が死んでしまっただろう。
ひょっとすると、今こうして居る間にも死んでいっている人間が居るかもしれない。
支援
(抑えろ……!)
歯を食いしばり、今にも飛び出したくなる気持ちを抑える。
八神はただの人間だ、全てを救えるわけがない。
目に届く所に居る家族すら満足に守れなかった男がそんなことが出来るわけがないのだ。
ここは慎重にならなければいけない。
石橋を叩いて渡るほどの慎重差を持って、冷静に動く必要がある。
だから、八神は万全を期して真央や和那の帰りを待たなければいけないのだ。
おおよそ病院の内部は把握した。
それほど大きな病院ではないが、決して小さな病院でもない。
拠点としてはかなり優れていると言えるだろう。
もちろん禁止エリアに指定された場合は、直ぐに移動を開始しなければいけないだろうが。
もし病院が禁止エリアになった際にはレジャービルへと移るのが妥当だろう。
その場合は重傷者である萩原がウィークポイントとなってしまうが。
(……未来人、か)
萩原のことを考えると、彼が申告した自分はタイムパトロールと言うことを嫌でも思い出させる。
その瞳は嘘をついているようにも見えなかったし、状況証拠から考えても簡単に嘘だと決めつけることも出来ない。
だから、信じておく。
理論的に可能不可能ではなく、ただ彼を信じてみる。
そこまで考えて、今度は廊下で落ち着かないようにうろうろとしている曽根村の姿をちらりと盗み見る。
特別、危険な人ではないと判断していいだろう。
今までの様子を見る限り、普通の人間だ。
世界の裏に違法サイボーグとその取り締まり組織があると言う夢物語を鼻で笑える普通の人間に見える。
だからこそ、残酷だった。
普通の人間にこんなことをさせる亀田の存在は許しておけない。
「んん……」
「起きたかい、萩原さん」
亀田の残虐性を再認識していると、萩原が呻くような声と共に身体を起こす。
寝かしつけた方がいいのかもしれないが、彼にはまだ聞きたいことがたくさんある。
悪い気もしたが、是非を問える状況ではない。
だが、萩原に未来のことやタイムマシンのことを詳しく聞こうとしたが、どうやら寝返りを打っただけだったようだ。
思考の邪魔をされたが、あまり考えすぎても仕方がない。
ふう、っと息をつき頭を休めようとした瞬間、曽根村に先に声をかけられた。
「……八神さん」
「ん、どうしました、曽根村さん?」
「人です。かなり多いですよ」
「……なんだって?」
八神は曽根村の言葉を確かめる様に、廊下に出て同じ窓から外を眺める。
そこには確かに五人というこの状況下では珍しいだろう大所帯がこちらに向かって来ていた。
「五人、か」
「どうします?」
「……五人のグループが殺し合いに乗ってるとは考えにくいですね」
五人なら、殺し合いに乗っている可能性にはまず乗っていないだろう。
それだけの大所帯で動けば目につきやすく、奇襲もしづらい。
さらに裏切りの可能性もグンと高くなり、裏切りに生じてさらに裏切る、なんて連鎖も起こるだろう。
五人も集まればそれを嫌う頭のいい人間はいるはずだ。
そのことから殺し合いに乗ったグループでないだろう。
「会ってみましょうか」
「あ、会うんですか?」
その言葉に目を見開いて曽根村は驚きの表情を表す。
警戒を抱くのも分かるが、八神は歩を止めずに一階の玄関へと向かう。
その際に、念のためにとブロウニング拳銃を曽根村へ渡しておく。
変わりにバットを一本、萩原の支給品から拝借したが。
「ここで待っていて下さい、俺が一人で行ってきます」
「……分かりました、どうかお気をつけて」
曽根村はブロウニング拳銃をチラリと目を移してから、八神を見送った。
それからは思ったよりも早く終わった。
紫杏の走太たちとこの場所を聞いたという言葉でより危険を感じなくなり、病院の中へと招いた。
そして、現在に至る、と言うわけだ。
特別なことがあるなら、病室まで至る最中に全員の名前を聞いておいたぐらいだろう。
……ただ、ほるひすという妙な生き物は気にかかったが。
六人ほどなら入院患者を眠らせることが大きな部屋、その部屋でベッドを二つだけ残して広々と使う。
ベッドの一つは萩原の眠るもの、もう一つは7人の人間がテーブル代わりに使うためのものである。
「ああ、そうだ。そっちの名前は尋ねたけど俺はなあなあで済ませてたな。
俺は八神総八郎、ただのプロ野球選手だよ、オオガミホッパーズのね」
「オオガミホッパーズ……?」
その単語にスーツの女性、四路智美は眉をしかめる。
聞き覚えがない、ということなのだろう。
となると、時間についての問題を話さなければいけない、ということになる。
しえん
芹沢真央も小波走太も大江和那も、オオガミホッパーズの存在は知っていた。
だから、気を抜いていたがホッパーズが創設する前から連れてこられた人間もいるようだ。
自分の不注意が嫌になる。
見るからに利発そうな女性なだけに説明には骨が折れそうだ。
それに、ふと隣を見ると曽根村もまた的を得ていない顔をしている。
そう言えば言っていなかったな、と思いやはり面倒だと頭を抱えそうになる。
「ええ、三年ほど前でしたかね? オオガミモグラーズがチーム名を変えまして……」
「……オオガミ? ドリルモグラーズじゃなくて?」
「あ、そこら辺はオイラに任せるでやんす!」
さて、どう説明しようか……と八神が頭を捻っていると、突如横から言葉を挟まれる。
メガネをかけた野球のユニフォームを着た男、湯田によく似た凡田大介と言う男だ。
あまり頭のよさそうに見えないこともあって、その横やりはあまりにも意外だった。
「実は、この殺し合いに連れてこられた時にタイムマシンが使われていたんでやんすよ!」
「……」
「……」
「……あー、まあ、そんなわけです」
痛い、と八神は思った。主に四路と白いブレザーを身にまとった女子高生、神条紫杏の視線が。
凡田を見て、その後に八神を見る。
全く嘘をついているわけではないので、肯定しないわけにもいかない。
少し迷ったが、自分なりに噛み砕いて説明することにした。
脱出するだけならば、ある程度は問題ない。
だが、生きて元の居場所に帰る、となるとこれ以上とないほど大きな壁として立塞がる。
……まあ、それも現状の問題を解決しなければ気の逸った妄想にすぎないのだが。
「今は、ひょっとしたら、って程度に考えておいてください。まだやることは山積みですから。
だけど頭から否定することだけは止めてください、それだけは危険です。
常識で考えることと馬鹿げていると鼻で笑うことは違いますから。
行動を重ねれば、その結果どうなるかやがてはっきりします。
だからこの後に詳しいことを話します、今は話すことが積りに積ってますから」
「本当なんでやんすよ! だって、オイラは大正時代の人に会ったんでやんすから!」
「……まあ、いい。八神さんの言うとおり、今はまだやることがあるからな」
ムキになった凡田の言葉を神条は軽く流す。
その表情には軽い焦りや苛立ちのようなものが見える。
賢そうな女の子だが、やはりこの状況では精神も参ってしまうのだろう。
「神条さんの言う通りね、今はこの首輪の解除からよ。
……我威亜党については保留、最優先課題の首輪から片付けるべきね」
「だな、他の情報については芹沢さんたちに任せておいて構わない」
「となると、まずは各々情報を喋っていきましょうか。私は……十波って子と会ったぐらいね。
脱出に使えそうな情報は持ってないわ、危険人物の情報は――」
「っとと、待ってくれ。今からメモをするから」
その言葉と共に素早くデイパックの中から筆記用具とメモ用紙を取り出す。
八神のこの行動で進行役を四路、書記兼口出しが八神と自然と決まってしまったようだ。
二人もそれで問題はないようで、特に何の異論も挟まなかった。
その一方で十波という言葉に神条が表情を僅かに歪ませたのを八神は気付かなかった。
曽根村と奇妙な生き物(本当に奇妙としか言いようがない)、ほるひすは気付いたようだ。
だが、ほるひすは心配そうに眺めるだけで、曽根村は対して興味を抱かなかったので放置した。
「もういい?」
「OK、続けてください」
「危険だと思えるのはサングラスの男とメカ亀田っていう男が危険、パーカーの女の子も危ないわね。
ああ、正直当てになるかははっきりしないけどツナギを着たリボンの女の子も危ないらしいわ」
「……パーカーの女の子?」
その言葉に八神の筆が止まる。
それを不審に思ったのか四路は眉を吊り上げながら八神を見つめる。
八神は顎に指を添えて少しばかり考える様に顔をしかめる。
が、やがて、「いや、気にしないでくれ」、とだけ言って筆をメモ用紙に戻した。
四路は気になったが、一先ずは情報の整理を先に行うことにした。
「私はそれぐらいよ、神条さんは?」
「私か、私も貴方と同じで特に目ぼしい情報はないな。精々が危険人物と友好的な人間ぐらいか」
「名前と容姿は?」
「まずは黒いコートを着た美しい金髪の女性だ、慎重な性格だったな、名前は知らん……どうした、八神さん」
「いや、気にしないでくれ……少し、嫌な気分になっただけだ。
その女はリンって女だよ。俺の古い知り合いだ、物騒な女だよ」
最後に気にしないでくれ、とだけ言って八神はメモ用紙に移す。
明らかに暴力の世界の住人だったあの女性と知り合い。
普通の野球人とは思えない。
だが、ここで問いだしてても簡単には口を割らないだろう。
そういうものだ、あの手の世界の人間は。
「次は野丸太郎、機関銃を持った危ない男だったな。恐らく、気が触れたのだろう。
そして芳槻さら、私と同じ高校の生徒だ。こちらも、この異常な状況で気が立っていたのだろうな」
「……なるほどね」
それにしても軽々と重苦しい内容を喋る娘だ、と八神は思った。
気が触れた、なんて言葉を簡単に使うことは自分はそうならないという自信があると言うことだ。
味方なら頼りになるタイプだな、敵なら面倒くさそうだが。
支援
「仲間は二朱公人と夏目准の二人だけだな。後は小波走太と芹沢真央の二人、それだけだ」
「しあん、れっど、れっど」
「おっと、そうだったな。レッドという男もほるひすの仲間だったらしい。
……今度こそ、それぐらいだな」
「そう、じゃあ次は……曽根村さん、お願いするわ」
「わ、私ですか……私もあまり知り合いはいませんね。大江さんと出会ったぐらいです。
それ以外の人は、その、死んで……」
表情を暗くして曽根村は答える。
仕方のないことだと思ったが、なるべく早く情報の交換を終わらせたかった。
「大江? カズと会っているのか?」
「大江さんと知り合いなのかい、神条さん」
「同級生だ、浜野朱里と言う者ともな」
「大江さんならその朱里さんに会いに行ったよ。なんでも、殺し合いに乗っているらしくてね」
「…………そうか、実にあの二人らしい話だ。腰を折ってすまなかった、続けてくれ」
少し悲しそうな、だけど安心したような複雑な表情をして口を止める。
同級生とは言ったが友達なのだろう、そうでなければこんな表情はしない。
「それから、最初に進藤さんと鋼さんは会って、二人の知り合いの、三橋と言う人が……」
「……!」
「……鋼さんを、殺しました」
その名前を聞いた瞬間、四路の顔は強張り、次の「殺した」という言葉で何とも表現できない顔になった。
悲しんでいるような泣いているような笑っているような怒っているような、あるいは何も感じていないような。
どうとでも取れる表情へと変わった。
だが、口は挟まない。
そのことから八神と神条と曽根村の三人は深く突き詰めないことにした。
おそらく仲の近い間柄なのだろう、その人が殺し合いに乗ってショック、と言ったところか。
「進藤さんを殺した人は……分かりません、見えないところから銃で撃たれたので」
「その方向を確認しなかったの?」
「……すみません、ただただ怖くて。逃げてしまいました」
「そう、ならいいわ。他には?」
「他には……他にはありません」
曽根村はそう言って、会話を打ち切る。
ならば、次はベッドを囲んで時計回りに順番で回っているので八神の番だ。
喋るべき情報は大よそ大江和那と芹沢真央が探索に出かけ、それ以来曽根村以外の人間はここに訪れていない、と言ったところか。
精々が灰原と白瀬芙喜子について気をつけろ、と言ったところか。
他に述べるべきことはない、包み隠さずに言うならば何も知らない。
だから、八神は誇張するわけでもなく小出しにするわけでもなく率直に語った。
その言葉に、神条と四路は特に何の反応も示さない。
恐らく走太から病院に仲間が居るという話を聞いた時から、八神に情報面での大きな期待は抱いていなかったのだろう。
それどころか危険人物の話だったことから、余計に心労が増えたとばかりに顔をしかめてる。
「次は……えーっと」
「ほるひすだよ。ころさないけどひともまもるよ」
「聞いての通りだ。ほるひすの知っていることは私がしゃべったつもりだ。
……死人については、ある程度省略させてもらったがな」
そうか、とだけ言ってほるひすから目を離す。
とりあえず悪い生き物ではないようだ。
扱いについては神条に任せることにしよう。
となると、次は、と一人だけ年を召した女性、四十代ぐらいか、荒井紀香に目を移す。
すると、荒井は人の形をしたかなりの大きさの人形を弄っていた。
あまりのマイペースに、どうするか戸惑っていると助け船を入れる様に四路が口をはさむ。
「……紀香さんは特に話すことはないらしいわ。私と会うまでは」
「ふふふーん♪」
「あと、二朱公人……って人を探している、それぐらいね」
なるほど、と呟いて凡田へと目を移す。
凡田は待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて口を動かし出す。
本当に湯田くんとよく似ている、八神はそう思った。
「オイラはさっき言ったとおり、大正時代の人と会ったでやんす、二人組だったでやんすよ!
名前は七原正大と布具里ってのでやんす、今は北に向かって仲間を集めてるでやんす。
後は小波走太くんと芹沢真央ちゃん……それと九条くんでやんす」
「そうか……その九条って人は何処に?」
「それは、そのぅ……」
「襲われたのよ。今はちょっと別行動、あと二人も、ね」
突然、渋るように言葉を濁す凡田。
それに八神は眉をしかめると、もはや恒例となった四路の横やりが入る。
襲われたとならば大事だ、は聞いておかなければいけない。
喋りづらい凡田には申し訳がないがなあなあで済ませていい時ではない。
「どんな奴に?」
「さっき言ったパーカーの女の子よ」
パーカーの女の子、その言葉に八神の口内が乾く。
まさか、とは思う。
パーカーを着た女の子なんて数えられないほどに居る。
それが、高坂茜だとは限らない。
そう思って先ほどは流した。
だが、今回は引くわけにはいかないだろう。
しえん
「その、パーカーの女の子って言うのは、背は低い?」
「え? ええ、そうね、大きくはないわ」
「髪は短め、で、体格も華奢?」
「ええ」
「髪が、一房だけ上に向かって、跳ねてる?」
「……そうね、これも知り合いかしら?」
「そうだな、知り合い……ああ、知り合いだ」
顔を塞ぎこみながら、ペンが折れるほど強く握りしめる。
その少女は間違いなく高坂茜だ。
何をどう思ったかは分からない、だが茜は殺し合いに乗った。
茜じゃない、なんて甘い考えは捨てた方がいいだろう。
……リンと八神のためなのかもしれない。
人形のように虚ろな茜に考える力があったとは思っていなかった。
「情報は……芳しくなかったな」
「そこはこれから手に入れれば良い……」
確かに情報は振るわなかった。
だが、それ以上に何かを隠している人間がいる。
それは八神の茜であり、四路の三橋であるような人物。
喋りたくないこともあるだろう、八神には四路が頭の悪い人間には見えない。
重要なことならいずれ喋る。
それに、今は茜のことに捉われている。
「じゃあ、次は武器を……こっちはバットが八本とナイフ、拳銃が一つずつです」
そう言って、ベッドの上に自分から遠い位置にそれぞれを配置する。
もちろん拳銃の弾はあらかじめ抜いてある。
いきなり武器を前に置かれたからか、僅かに驚いたように全員の顔がゆがむ。
だが、まず紫杏がコルトガバメントをベッドに放り出したのを見て、四路もそれに続いてジュニアコルトを投げ出した。
もちろん、両者ともに弾は抜いてある。
「使えそうなのはガバメントか……」
「オイラは持ってないでやんす、九条くんがロケット弾を持ってたでやんすけど」
「ろ、ロケット弾?」
「使っちゃったみたいだけどね。ないものをねだってもしょうがないわ。その、ほるひすは?」
「ほるひすの支給品は……使えんな。何故こんなものを渡したのか首をひねらずにはいられない」
相変わらず神条がほるひすの代わりに答える。
その口調は少し苛立っているように見える、やはり武器が思ったよりも少ないことが苛立っているのだろう。
それだけに、その支給品とやらが気になった。
「その使えない支給品ってのは?」
「大砲だ」
「……大砲?」
「150mm砲、戦車につける大砲だな。もちろん戦車はもちろん弾も入ってはいない。
正直、なかった方がマシなぐらいだ」
「そいつは……何とも言えないな」
戦車の砲身ならば生身の人間が持つことはまず不可能だろう。
持てるとしたらそれこそ違法パーツを身につけたサイボーグぐらいのものだ。
智美が出したものが銃一つということは、荒井の武器もないのだろう。
情報と同じく、こちらも芳しくないものとなった。
「……じゃ、俺は行きます」
「? 何所にだ?」
「その、女の子俺の知り合いなんで。ついでにリンも探してこようかと」
「集めたあなたが?」
そう言われると辛い、と言わんばかりに眉をかく。
だが、どうしようもないのだ。
生きて帰る以上に茜が気にかかる、思ったよりも頼りになる女性がいることも大きい。
「ええ、集めた俺が、です。それにこう見えても結構強いんですよ、俺?」
「……そんなに大事な人なの?」
「そうですね。この年でようやく出来た家族ですから、あの二人は大事です」
「……複雑なんでやんすね」
複雑、そう複雑だ。
八神とリンと茜の関係は複雑だ。
家族で言い表すことはできるが、本質はもっと別なものなような気がする。
だが、大事な人であることは変わりはない。
「コルトガバメント、借りていきますよ」
「……構わないが、六発しか残ってないぞ?」
「構いませんよ、どうせ使う相手は限られてます」
これは使うことにならないし、女性の細腕で扱えるものでもない。
素人の凡田も扱いきれるものではないし、ほるひすに至っては銃を持てるかどうかすらわからない。
だから、この中で八神が持って行くとしたらガバメント以外あり得なかった。
「じゃあ、行ってきます。曽根村さん、萩原さんと一緒に情報の説明お願いします。
俺の知っていることはもう曽根村さんに話してありますから」
八神は笑いながら病室を後にした。
こうして、CCR最強のエージェントがようやく動き始める。
脱出すると言う大事の前に、家族を説得すると言う小事を優先して。
それも当然だろう。
彼はしたいと思ったことを、しなければいけないと思ったことを優先する男だから。
【F-6/病院/一日目/昼】
【八神総八郎@パワプロクンポケット8表】
[状態]:健康
[装備]:コルトガバメント(6/7)、バット
[道具]:なし
[思考]基本:茜とリンを説得する。
1:バトルロワイヤルを止める。
2:白瀬、灰原が殺し合いに乗ったのでは?と疑っている。
[備考]
※走太と真央から、彼らにこれまでであった話を聞きました。
※荻原との話でタイムマシンの存在を確信。
※茜ルートBAD確定後、日本シリーズ前からの参戦
【萩原新六@パワプロクンポケット6】
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷、貧血(中)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式 、野球用具一式(ボール7球、グローブ8つ)@現実
野球超人伝@パワプロクンポケットシリーズ、パワビタD@パワプロクンポケットシリーズ、左腕
[思考・状況]
1:???
【曽根村@パワプロクンポケット2】
[状態]:右手首打撲
[装備]:ナイフ、ブロウニング拳銃(3/6、予備弾数30発)、バット
[道具]:支給品一式×3、魔法の杖@パワプロクンポケット4裏
[思考]
基本:漁夫の利で優勝を目指す
1:一先ず病院で休憩。
[備考]
※タイムマシンの存在を聞かされていません。
【荒井紀香@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身のところどころに軽い火傷、体力消耗(小)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、野球人形
[思考]基本:二朱くんに会う。
1:二朱君との愛の営みを邪魔するひとは容赦しないです。
2:あの女(夏目准)が二朱君を手にかけていたら仇をとる。
[備考]
※第一回放送に気付いていません。
【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[状態]:健康
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、詳細名簿、ノートパソコン(バッテリー消耗小)、駄菓子数個
[思考]基本:どのようにも動ける様にする。
1:生きて帰って平山の言葉を伝える。
2:出来ることならカズと朱里、十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
[備考]
※この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています
※芳槻さらを危険人物と認識しました。
※島岡の荷物は、島岡を殺害した者に持ち去られただろうと判断しました。
※小波走太一行とは情報交換を行っていません。
【ほるひす@パワプロクンポケット6表】
[状態]:表面が焦げてる、悲しみ?
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜1
[思考]基本:ころさないし、ひともまもるよ。
1:こうし……ひらやま……
【凡田大介@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身に打撲
[装備]:お守り、バット
[道具]:支給品一式、鍵
[思考・状況]基本:ガンダーロボを救出したい
1:基本人殺しはしたくない。
2:九条を信頼、そして心配。
[備考]
※七原、真央、走太と軽い情報交換をしました。
【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:嫌な汗が背中に伝わっている。
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)、バット
[道具]:支給品一式、ダイナマイト5本
[思考・状況]基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:三橋くんが殺し合いに乗った……か。
2:十波典明の言葉を丸っきり信用するわけではないが、一応警戒。
3:亀田の変貌に疑問?
[備考]
※メカ亀田を危険人物を判断しました。
※ピンクのパーカーを着た少女を危険人物と判断、作業着を着た少女を警戒。
※探知機は呪いの人形に壊されました。
投下終了
さて、次スレはどうするか……
12発売一週間前ってこと考えると、思い切って移転してみるのも面白いのかな?
投下乙
キャラが原作通りにうごいてるのがすげーわ
智美の立ち位置もそれっぽいし凡田の抜けてる感じの表現もめっちゃうまい
続き楽しみにしてます!
ところで新スレの話ですがたててみればよいのでは?
新作も発売されるし心機一転てことで
投下乙です
相変わらずすごいです
ところで、どうでもいい事なんですが気になった点があって
自分に似過ぎた人間がいることはよく知っている。
何故居るか、までは知らないが。
の部分ですが、確か凡田は「何故居るか」まで知ってたと思うんです
俺の勘違いだったらごめんなさい
…にしてもこのグループ、何気に要注意人物だらけですね
智美、曽根村、紫杏、のりか…
とりあえず、がんばれ凡田&ほるひす(と萩原さん)
9とかのイベントの話?
>>538 指摘感謝です
知ってるのは天本さんと山田だけだと思ってた……なんでだろ?
とりあえず『何故居るか、までは知らないが。』の一文を除いておきます
ども、538です。素早い対応ありがとうございます
一応ソースとしては、9でのカンタと凡田のやりとりでの
「ここにもオイラの一族の影が…」的な発言(厳密には心の声)
あと1・2にて、2の主人公が矢部と出会ったことを凡田に話すとき
2主「昨日街で凡田くんのそっくりさんに会ったよ。確か名前は…」
凡田「矢部でやんす」
2主「そうだ矢部だ。知り合いなの?」
凡田「向こうはオイラのこと知らないでやんす。でも他人ではないでやんす…」
と、こんな感じのやりとりがあります。うろ覚えですみません
あと蛇足ですが凡田ってメガネ一族の長男なんですよね、しかももう40代…
長文失礼しました
追記 八神に対して触れるの忘れてた…
完全に危ない方向に進み出しちゃってますね。最悪アカネに殺されかねない
死なないでほしいけどどうなるやら…
以上、これからも応援してます
12発売記念カキコ
まだ買ってないがな!
予約きた!!