テイルズオブジアビスのSS

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1ゲーム好き名無しさん
SSはここで書け
2ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 14:51:39 ID:???
書かない
3ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 14:57:40 ID:???
御自分のサイトでどうぞ
4ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 14:59:37 ID:???
食堂の隅で一人淋しくちょこちょこと食事をとるディスト。
「…淋しいよぉ、ジェイドは今頃どうしてるのかな…マルクト軍に入ったからピオニー陛下も一緒で楽しいだろうなぁ…」
見た目も派手な彼がぶつぶつ独り言をつぶやきながら猫背でスープを飲んでいる姿は傍からみると気持ち悪い。
そんな彼に近付く者は誰も居なかった、ただ一人を除いて。
「おじさーん、ここすわってもいい?」
明らかに気持ち悪い彼に臆することなく、彼の傍までやってきたのは一人の少女、神殿で生まれ育ち、つい先日神託の盾に入ったばかりの少女だった。
「…ジェイドは僕が居なくて淋しくないのかな?ピオニー陛下は僕が居ないと淋しいだろうな…」
誰かが話しかけてくるとは思ってなかったディストは少女の声に気付かず、なおも自分の世界に入り続ける。
「お・じ・さーん!」
再び少女が声をかけるとディストが驚いて目を見開く。
「え?僕?」
「そうだよー。おじさんに声かけたの!」
最初は少女の言ってる意味が解らなかったが、ディストは十数秒考えた後ようやく状況を理解し少女にこう言った。
「おじさんではなーい!」
「えー?どっからどう見ても正真正銘紛う事無くおじさんだよー!」
「ちがーう!」
「おじさんじゃなかったらなんなのー?」
ゴホンと一つ咳払いをし、ディストは少女にこう告げた。
「僕…じゃなくて…私はケテルブルクが生んだ千年に一人の天才科学者『薔薇のディスト』様だ!」
ディストのあまりに胡散臭い自己紹介に少女は少し引いたが、一つのキーワードに引っかかった。
「…天才科学者って事は、特許やらなんやらとか持ってておじさんもしかしてもしかするとお金持ち??」
「いや、お金はあんまり…」
「なんだ、貧乏人か。」
「う…」
少女が一瞬物凄く冷たい、人を見下すような目をしたが次の瞬間には人懐っこい笑みを浮かべた。
「それよりここ座ってもいーい?」
「席なら他にもあるでしょうが。」
「だってー、他混んでておっきなオラクル兵ばっかであたし潰されそうなんだもーん。」
「キミみたいに強引な子供なら心配ないと思うけど…」
「なんか言った?」
再び少女の様子が変わりディストに凄んで睨みつける。
なんとなく恐い幼馴染を思い出したディストはおとなしく少女に折れた。
「いやいや、座りたいなら勝手に座りなさい!」
「うん、おじさんありがと♪」
「だからおじさんじゃなーい!」
席に着いた少女はご飯を食べながら途切れる事無くディストに話しかける。
「ねぇねぇ、おじさんさっき薔薇のとか言ってたけど…おじさん…ゲイ?」
「なんでそーなる!」
「ふえ?薔薇族って意味じゃないの?」
「なんで子供がそんな言葉知ってるんですか!?」
5ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 15:00:29 ID:???
「やっだー、常識だよー♪じょ・う・し・き☆」
「どこの常識ですか、どこの…ところであなた、さっきから馴れ馴れしいですけど名前ぐらい名乗りなさい。」
「え?おじさん…ゲイじゃなくて…あたしみたいなょぅjょに興味が…」
「がきんちょに興味はない!私が名乗ったんだからあなたも名乗りなさい!」
「よかったー、乙女のピンチかと思っちゃった。」
「自分から話しかけた癖に何言ってるんですか、いいから名乗りなさい。」
「もーう、そこまでどうしてもって言うんなら特別大サービスで教えてあ・げ・る☆」
少女は手に持ったスプーンを置き、イスから立ち上がり腰に手をあてて堂々と名乗った。
「あたしはアニス・タトリン、ついこの間オラクルに入ったばかりの才色兼備のフレッシュ美少女だよ♪」
これが、後に導師守護役になるアニス・タトリンと六神将になる死神ディストの出会いである。
6ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 15:01:14 ID:???
ディストは事あるごとにアニスと共に行動するようになっていた。
彼はアニスの中に残虐で冷酷で人を人と、いや、生き物を生き物とは思わない幼馴染の面影を感じ、惹かれていたのだ。
「ねぇねぇねぇ、ディストぉ〜。」
アニスは後ろ振り返り、浮かぶイスでついて来るディストに声をかけた。
「何ですか?アニス?」
足を組み、片肘をついたポーズのままディストは返事をする。
「なんでついてくるの〜?あ、もしかして、この前はガキに興味は無いとか言っておきながらやっぱりアニスちゃんの事が好きなんだ〜?」
アニスはその場で踊るようにクルっと一回りして、ほっぺたに両人差し指をあててぶりっこのポーズをとりながらディストにそう言った。
「何を言ってるんですか!私はただ、こんな子供を一人で行動させるのは心配ですから忙しい中、わざわざこうして暇を見てアニスの傍に居てあげているんでしょうが!」
ディストは慌ててそう言った。
ただ、その慌てっぷりがあまりにわかり易かった。
「ふ〜ん、まぁ、そういう事にしておいてア・ゲ・ル♪」
アニスは底意地の悪そうな笑みを浮かべてディストのイスを突いた。
「うー、何か釈然としませんが…」
「気にしない☆気にしない♪」
アニスは話しを終わらせると、前を向いて歩き出した。
ディストはそこでアニスの背を見てあるものが目に留まった。
「ところでアニス、前々から気になっていたのですが…」
「ん?な〜に?」
アニスがくるりと一回転半して再びディストの方を向いた。
「いつも背中にくっついているソレ、何ですか?」
「あぁ、コレ〜?」
アニスはいつも背中に背負っているぬいぐるみを手に取った。
「トクナガ、ママが作ってくれたぬいぐるみだよ♪」
7ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 15:02:00 ID:???
「ほう、中々素敵なデザインですね。」
「う、悪趣味の化身のようなディストにデザインを褒められても…」
「う、うるさいですよ!それより…なんでそんなものをいつも肌身離さず持ってるんですか?」
アニスは第一音素の譜術で顔の下から光を当て語りだした。
「このトクナガにはねぇ…秘密があるの…」
「ゴ、ゴクリ、な、何ですか?その秘密って?」
おどろおどろしく語るアニスの話に、ディストは平静を装いつつ(明らかに動揺しているが)続きを促す。
「実は…このトクナガは…」
「トクナガは…?」
そこでアニスは下から当てていた光を今度はスポットライトのようにトクナガに当ててこう言った!
「トクナガは正義の使者なのだ!」
「おぉ!正義の使者ですか!」
「例えばかわいい〜アニスちゃんが、見るからに変質者、中身はもっと変質者のディストに襲われそうになった時!」
「襲いませんよ。」
「な〜んとその時トクナガがみるみる巨大化するじゃあ〜りませんか!
巨大化したトクナガは必殺トクナガクラッシャーで変態で乙女の敵、ディストを押しつぶす!
そんな訳でアニスちゃんは無事純潔を守ることが出来たのでした、めでたしめでたし。
ありがとうトクナガ♪…って事になるの。」
「所々納得いきませんが…トクナガにそんな秘密が…」
「あったらいいよね〜♪」
「…」
やっぱり、どこかこのアニスはあの幼馴染に似てるなぁ。
ディストはそう思ってまたもやアニスに親近感を覚える。
アニスに深い親近感と懐かしさを覚えたディストはアニスにある提案をした。
「そうだ、アニス、私がトクナガをさっきの話みたいに巨大化できるようにしてあげましょうか?」
「え?できるの?」
半信半疑のアニスに胸を張るディスト。
「この天才科学者ディスト様にかかれば不可能はありません。」
「でもどうやって?」
「簡単です、アニスの音素振動数にだけ反応して膨張するようにすれば可能です。
「できるの?そんな事?」
「中の綿の中に譜業装置を組み込めばアニスの思いどおりにトクナガを動かすことも出来ます。」
「すっご〜い!ディストって単なる変態オヤジじゃ無かったんだ!」
「最初から天才科学者って言ったでしょう!」
この翌日に、神殿内を巨大なぬいぐるみに乗って闊歩する少女が目撃されたらしい。
今日はいつも堂々とアニスのストーキングをしているディストが居ない。
居たら居たで見た目がアレで中身はもっとアレなので鬱陶しいが、居ないと少し淋しい。
「はぁーあ、枯れ木も山の賑わい、取り巻きは人気のバロメーター、お料理にパセリが無いと何か損した気がする。」
ようするにあんなディストでも居ないよりは居た方がいいと言う事だ、時々おごってくれるし。
「あれ?あれれー?」
一人でぶつぶついいながら儲け話でも転がってないか神殿内を歩いていたら、礼拝堂で知り合いを見つけた。
「あれって根暗ッタじゃん、導師守護役がなんで一人で礼拝堂に居るんだろ?」
導師守護役のアリエッタだ。
アリエッタは故郷を失って以来、ライガに育てられいたところを当時師団長の一人だったヴァン・グランツが保護して、アニスの両親が面倒を見ていた少女だ。
イオンが導師に就いてからは、導師守護役としていつも導師イオンにくっついていたのに今は一人でいる。
「根暗ッタ、、一人でなにやってるの?あ、もしかして大好きなイオン様に嫌われちゃったとか〜?」
アニスはちょっとからかってやろうとアリエッタに近付くと、アリエッタの様子にギョッとした。
「…うぅ〜、アニス〜…」
涙でグシャグシャに濡れた顔は真っ赤に腫れている、一体何時間泣けばこんな状態になるのだろう?
「はぅあ!ど、どうしたの!?アリエッタ?一体何があったの!?」
「…うっ、ヒック…あのね、あのね…うっ、イオ…まが…ヒック…」
アリエッタは必死になにか言おうとしてたがまともに話せる状態じゃない。
「アリエッタ!落ち着いて、何言ってるかわかんないよぉ〜。」
「…うっ、ヒック…うわぁ〜〜〜〜ん!」
アニスは必死でアリエッタを落ち着かせようとするがアリエッタは大声で泣き出してしまった。
「あ、ちょっと、えっと…アリエッタ!?」
「うわぁ〜〜〜〜ん!イオンさまぁ〜〜〜〜!」
「あぁんもう!普段はぼそぼそとしか喋らないクセになんで泣き声だけは大きいのよぉ!」
アニスは耳を塞ぎながら途方にくれる。
「こうなったらしかたない!トクナガちぇ〜んじ!」
このまま礼拝堂の中で、大声で泣かせる訳にもいかないのでアリエッタをトクナガに乗せてアニスの部屋まで運ぶことにした。
最近いつもアニスについてまわっていたディストが今日は一人で行動している。
目の前には大詠師モースと主席総長に就任したばかりのヴァン・グランツが居る。
「お二人がお顔を揃えて何の御用ですか?」
ディストは二人の何か尋常ならざる空気を感じつつも平然と訊いた。
ローレライ教団と神託の盾の幹部の二人を相手にしても普段とかわらない。
曲者揃いの幼馴染達や、最近一緒に居たアニスみたいなタイプと接しているといやでも鍛えられるというものだ。
「貴公がマルクトのカーティス博士の学友だと聞いたものでな。間違いないか?」
ヴァンが物静かに、しかし威圧的に尋ねる、いや、尋ねるというより確認だ。
「えぇ、ジェイドは唯一無二、お互い頼り頼られ貸し借りなしの親友です。」
そのジェイドが聞いたら心外ですねと言いそうだが、少なくともディストはそう信じている。
「そうか、では貴公に協力を頼みたい。」
「任務ではなく協力ですか?」
「非公式な任務と思ってくれていい。」
ディストは目の前に居るヴァンとモースの顔を見る、二人とも真剣な目をしている。
普段から真剣に預言の成就に尽くしている二人だが、それにも増して真剣だ。
「もし、私が断れば、どうするおつもりですか?」
ディストが訊くとヴァンの口元に僅かな笑みが浮かんだ。
「断れない、貴公について少し調べさせていただいた。」
ヴァンが懐から書類の束を取り出した。
「そ、それは…」
書類に美しい女性の絵が…
「ネ、ネビリム先生…」
今まで平然としていたディストの顔色が変わるのを見てモースが言った。
「彼女についての情報が欲しいのだろう、お前が協力してくれるのであらば教団が彼女について調べよう。」
「…いいでしょう、この天才薔薇のディストがこの知能の全てで協力してさしあげましょう!」
モースが満足そうに頷く。
「それで、私になにをしろと?」
「フォミクリーだ、ある人物のレプリカを作って欲しい。」
号泣するアリエッタをやっとの思いで部屋まで運んだ。
途中で教団員やらオラクル兵やら預言を詠んでもらいに来ていた人やら巡礼者に奇異の目で見られてしまった。
「あぅ〜、途中ですれ違った人みんな、絶対あたしがアリエッタをいじめたと思ってるよ〜。」
アリエッタは依然大声で号泣している。
「あ〜んもぅ!こういう時に限ってパパもママも居ないしぃ〜。」
こういう時に頼りになる二人が居ないので、アニスは仕方なく自分で泣きじゃくるアリエッタをあやす。
「ほら、アリエッタ、いいこいいこ。」
大きいままのトクナガでアリエッタの頭をなでたり抱きしめたりする。
小一時間そうしているとようやくアリエッタが落ち着いてきた。
「アリエッタ?もう大丈夫?」
「…」
アリエッタはコクンと頷く。
「何があったか話してくれる?」
「…あのね、アニス…」
「うん、どうしたの?」
アニスはできるだけ優しく話を促す。
「イオンさま、ご病気なの…」
「病気!?導師のイオン様が?」
導師イオンが病気だなんて初耳だ、教団が意図的に隠しているのかもしれない。
教団の最高指導者である導師の病気を隠しているとなると…
「ヴァン様も、モース様も、もうずっとイオン様に会わせてくれない…」
導師守護役のアリエッタでさえイオンに会えない。
しかも会わせないようにしているのはイオンを除けば教団のトップの二人だ。
「アニス!イオン様、大丈夫かな?イオン様、元気になるかな?またイオン様と一緒に居られるかな?」
アリエッタは止まった涙をまた目に浮かべる。
そんなアリエッタに、アニスは何と声をかければいいかわからない。
「イオン様が…死んじゃったら…どうしよう…」
「アリエッタ!そんな事言っちゃダメだよ!」
「だって…イオン様が…イオン様が……イオンさまぁ〜〜〜!」
再び泣き出したアリエッタにかける言葉をアニスは見つけることができなかった。
アニスは今のアリエッタに安易な気休めを言えなかった…
一体何時間泣いたのだろうか?
アリエッタは泣きつかれて寝てしまった。
「はぅ…ようやく寝てくれたよぉ…」
アニスもトクナガでずっとアリエッタをあやしていたので随分疲れている。
しかし問題はこれからどうするかだ。
導師イオンがどうなっているか確かめないことにはどうしようもない。
導師イオンがどうなっているか確かめないままにしていたら…
「アリエッタが泣き止まない、しかたないからまたあたしがあやして寝かす、また起きたら泣く、しかたないからあたしがあやす…
はぅあ!永久ループじゃん!おっといけないせっかく寝たアリエッタが起きちゃう。」
とにかく導師イオンが今どういう状況なのか確かめるしかない。
「しかたない、アリエッタが起きたら調査に行くか。」
アニスも疲れたのでそれまでしばらく休むことにした。

しばらく経って目を覚ますと余程疲れていたのかまだ隣でアリエッタが寝ていた。
「…イオンさまぁ…」
「はぁ、寝ても覚めてもイオン様か。」
このまま寝かせててやりたい気もするが、それでは問題が解決しない。
「ほらぁ、アリエッタ朝だよ、いや、朝じゃないか…とにかく起きろー!」
「…イオ…さま…あれ?アニス?イオン様どこ?イオン…さま…」
アリエッタが起起きるとまた泣き出しそうになる。
「やば…泣くなアリエッタ!これからイオン様が今どうなっているのか調べに行くよ!」
泣き出しそうなアリエッタがピタっと止まる。
「ホント?」
「ほんとほんと、だから泣かないで。」
アリエッタがコクリと小さく頷く。
「うん…でもどうするの?ヴァン様もモース様も会わせてくれない…」
「逆に言うとその二人は会ってるって事だよ。」
「?」
つまり、二人の周りの人物話を訊けば何かわかるかもしれないという事だ。
「よぉし!まずは総長の側近から当たってみよう!」

「まずは総長の右腕、魔弾のリグレットからいくよ。」
「うん…でも、どうやって?」
リグレットはピシっと背筋を伸ばし、凛としていて眼光鋭い冷たい感じの美女だ。
アニスちゃんランキングでは眼鏡をかけると教師っぽい人第一位に入っている。
正直簡単に教えてくれるとは思えないが…
「…ここは母性本能をくすぐる作戦でいくよ。」
「ぼせいほんのう?」
「ライガの母性本能までくすぐっちゃうアリエッタなら楽勝だよー。」
魔物の母性本能までくすぐれるのならばあのリグレットの母性本能もくすぐれるだろう。
「よくわかんない…」
「とりあえず困ったら泣けばいいの。」
「…うん、わかった。」
「よーし!それじゃあさっそく行ってみよう!」
「リグレットさまぁ〜」
「…さま」
アニスができるだけかわいらしくぶりっこでリグレットに声をかける。
「…何だ?」
(うっ…全然アニスちゃんのかわいさが伝わってない。)
リグレットは背筋をピンと伸ばしたまま目線だけアニスに向けてくる、まるで上から威圧しているように。
「えと…あ、あたしはアニス・タトリン、それでこっちが導師守護役のアリエッタです。」
「…です」
「…導師守護役?」
リグレットはアリエッタに目線を移す、その鋭い眼光にアリエッタはビクッとおびえる。
「それで、導師守護役が何の用だ?」
「…あの…」
アリエッタは早くも泣き出してしまいしそうだ。
「ちょと、アリエッタ、まだ早いよ、涙は女の最終兵器なんだから。」
アニスが小声でアリエッタに注意する。
「…」
リグレットの不審そうな目が痛い。
「あはは…。リグレット様!」
アニスは苦し紛れに愛想笑いした後、持ち前の切り替えの早さでキリッと真剣な顔になる。
「導師様が病気で倒れたと伺いましたが本当ですか?」
「…ですか?」
アリエッタがアニスの後に続いてぼそっと訊く。
「導師守護役なら知っているだろう?」
「じゃあ本当なんですね!?」
「あぁ、そう聞いている。」
意外とあっさり認めた、こっちに導師守護役がいるのでとぼけても無駄だと分かっているのだろう。
「じゃあじゃあ、導師様は今どんなご様子なんですか?」
「…イオン様、大丈夫?」
「…いや、私は詳しい事は聞かされていない。」
知らないのかとぼけているのかリグレットは肝心な所を教えてくれない。
「では、私はもう行くぞ」
リグレットはさっさと話を切り上げて去ろうとする。
「…仕方ない、アリエッタ、一か八か最終兵器『乙女の涙』だよ。」
「…う、うん」
アリエッタはリグレットの服の裾をつかんだ。
「…まだ何か用か?…う!」
服の裾をつかまれたリグレットが何事かとアリエッタを見ると、アリエッタは目に涙を浮かべていた。
「な…え?…何故だ?」
リグレットはアリエッタの涙にうろたえる。
「おー、アリエッタの乙女の涙、効果バツグン♪」
正確には乙女の涙と言うより子供の涙なのだが…とりあえずリグレットにも効果があるようだ。
「リグレットさま…イオンさま…大丈夫なの?イオンさま、なおるの?」
「あ、いや…私は…コラ!スカートを引っ張るな!」
「イオンさま元気になる?イオンさま…イオンさま…」
リグレットは困り果て、さっきまでのピンと伸ばしていた背筋が嘘のようにアリエッタの前にしゃがみこむ。
アリエッタの頭をなでたりして、必死に泣き止ませようとするが一向にアリエッタは泣き止まない。
「ほら、泣き止みなさい、いいこだから…」
「はぅ〜、リグレット様アリエッタのママみたい」
アニスがその様子を見てのん気なコメントをするとリグレットの放った銃弾がアニスの頬をかすめた。
リグレットはアリエッタをあやしながらもアニスに銃口を向けている。
「…リグレット様、アリエッタのお姉さんみたい…」
アニスが訂正するとリグレットが銃を下ろしアリエッタに集中した。
「イオンさま大丈夫なの?イオンさまは?」
「う…、そうだ!ラルゴなら何か知っているだろう、ラルゴに聞いてみるといい。」
困り果てたリグレットはそれだけ言い残して走り去ってしまった。
「あ、逃げた!ラルゴに任せて逃げるとは…意外にセコイ人だな〜」
その声が聞こえたのかアニスの足元に銃弾が飛んできた。
「…何でもないです。」
アニスがつぶやくとようやくリグレットの気配が消えた。
「さてと…さぁ、アリエッタ、泣き止んで、次はラルゴの所に行くよ。」
「…うん。」
「次は総長の右腕、黒獅子ラルゴだね。」
「…アニス、リグレット様にも右腕って言ってたです。」
そういえばリグレットにも右腕と言った気がする。
「言葉のあやだよ、そんな細かい事気にするから根暗になるんだよー。」
「アリエッタ根暗じゃないもん!」
「はいはい、少し元気がでたみたいだしはりきってラルゴに当たってみよー♪」
「…アニスのイジワル…」
「はいはいはい、それよりラルゴをどうするか、だね。」
黒獅子ラルゴ、馬鹿でかい図体をした大男で顔もかなり厳つい。
アニスちゃんランキングでは世紀末覇者っぽい人第二位に入っている(第一位はヴァン)。
誠実で真面目で仁義に篤い、知っていたとしてもヴァンから戒厳令でも出されていたら口を割らせるのは至難の業だ。
「…アニス、今度はどうするの?」
「今度はねぇ…」
あの手のタイプの大男は意外と子供に甘かったりする、特にアリエッタのようなタイプは放っておけないだろう。
「やっぱり、最終兵器は乙女の涙で行くよ。」
「…わかった。」
「よーし!それじゃあさっそく行ってみよう!」

「ラ・ル・ゴ・様♪」
「…さま…」
今回もできるだけかわいらしくラルゴに声をかける。
「何だ?」
目をギョロリと剥き先ほどのリグレットよりも高い視点から見下してくる。
アリエッタはおびえてアニスの陰に隠れる。
「えっとぉ…あたしはアニス・タトリン、こっちの後ろにいるのが導師守護役のアリエッタですぅ。」
「…です。」
「導師守護役か、それで何の用だ?」
リグレットと同じような反応をするラルゴ。
これならリグレットと同じように乙女の涙で攻略できる気がする。
「あの、ラルゴ様、導師様のご病気についてお伺いしたいんですけど。」
「導師様の病気?」
「絶対他言しませんから本当の事をおっしゃって下さい!」
ラルゴは首をかしげる、ひょっとしたら知らないのかもしれない。
「私はそのような事は聞いていないが…」
しかし、もし知らなかったとしても簡単に引き下がるわけにはいかない。
せめて代わりに何か手がかりをくれるまで引き下がれない。
「ラルゴ様がお隠しになるのはわかりますぅ、でもせめて、せめて導師守護役のこのコだけは真実を告げてあげて下さい!」
「いや、しかし…」
アニスの勢いにたじろぐラルゴ、どうやら予想通り子供に弱そうだ。
「さっきリグレット様にお尋ねしたらラルゴ様に訊けと仰ったんです!」
「…くっ、リグレットめ…」
「ラルゴさまぁ、お願いしますぅ!」
「…お願いします…」
アニスとアリエッタに詰め寄られラルゴの逃げ場は無くなった。
(アリエッタ、ここで更に秘密兵器!)
アニスがアリエッタを突いて合図する。
「…おねがい…します…イオンさまのこと…教えてください…です。」
アリエッタが涙目で懇願するとラルゴも観念した。
「わかった、わかった!わかったから離れろ!」
アニスとアリエッタが離れるとラルゴはその場に片膝を付いてしゃがみ込んだ。
戦場では決して片膝をつくことがなかった彼も、アリエッタの涙(アニスの知略?)には無力だった。
「…実際のところ私も導師については全く知らない、だが…」
「だが?」
「預言の詠める導師なら自分の病気や死期を知ることができる、何の準備もしないで倒れるとは思えん。」
「なるほどぉ。言われてみればそうですねぇ。」
普通の人には死に関する預言は読めても告げないので死の預言は知ることはない。
だが、自ら預言を詠むことができる導師なら死の預言も知ることができる、自らの死の預言を詠んだ導師が死後の事を何も決めずに死ぬとは思えない。
それは死ぬまでいかないまでも、病気で倒れるとしても同様だ、長期臥せるとなると何か倒れている間の事を決めておくだろう。
「沙汰が無いのは無事の証拠ではないか?」
「…でも、ヴァン様もモース様もイオン様に会わせてくれないです…」
「うーむ、騒ぎを大きくしないためではないか?
私も知らなかったくらいだ、導師が病気となると教団内も穏やかではいられまい。」
情報操作か、ありえない話しではないが…
「おそらくヴァン閣下と大詠師閣下のお心遣いだろう…ん?」
そう言ったところでラルゴは何か思い出したようだった。
「ラルゴ様、どうかなさったんですか?」
「そういえば今朝、ヴァン閣下と大詠師閣下に一人の男が呼ばれていたな、もしかしたらその男が何か知っているかも知れん。」
「本当ですかぁ?」
嬉しそうに聞き返すアニスだが、内心またタライ回しかと舌打ちする。
「お二人に呼ばれた男ってどなたですか?」
「名前は知らぬが…浮かぶイスに乗って移動する怪しげな男だった。」
浮かぶイスに乗った…怪しい男?
それって…
「天才科学者とか言っていたな、導師を治療するとでも預言に詠まれていたのではないか?」
しかも(自称)天才科学者となるともう、あの男しか居ないだろう。
「あのー、ラルゴ様、それってメガネかけて白髪でなんかトカゲっぽい人じゃなかったですか?」
「あぁ、その男だ、知り合いか?」
「えぇ…まぁ、知り合いというか何というか…」
「それならば話は早いだろう、後はその男に訊いてくれ。」
「はい、ありがとうございましたぁ♪」
ラルゴは「やれやれ」と言って立ち去った、心なしか最初より小さく見える。
黒獅子と恐れられる屈強な男も子供には弱かった、特に今回は相手が悪すぎたようだ。
「…アニス、次はだれのとこ?」
次に訪ねる相手の事を考えると思わずため息がでる。
居ないより居た方がマシだとはいえ、居ない時にわざわざ会いに行くのはめんどくさい相手だ。
「…アニス?」
ため息をつくとアリエッタが心配そうにアニスの顔を覗き込んだ。
まぁ、めんどくさいが訪ねるより他にない。
「次はディストって変質者のところに行くよ。」
「へ、へんしつしゃ?」
「そう…アリエッタ、気をつけなよ、あたししばらくストーカーされたんだから。」
アニスはにやにや笑いながらアリエッタに冗談を言うとアリエッタは本気でおびえた。
「冗談だよ、アリエッタ、まぁ、変質者には違いないけど危険はないから安心していいよ。」
「…あんまり安心できない…です」
「気にしない気にしない♪次、行ってみよー☆」
「あ、アニスー、待ってー…」
「でぃーすーとぉー♪アニスのお願いきいてぇー☆」
いつも出来る限りかわいらしく振舞うアニス。
そのアニスが、これ以上無いくらいかわいらしく甘えた声でディストに声をかける。
「…何ですか?アニス?」
警戒しつつ返事をするディスト。
アニスがこんな甘えた声を出す時は、たいてい裏がある事をディストは知っている。
食堂で海老フライをとられたり、街で蜜ラーメンをおごらされたり、服を貢されたり…
ここ一週間を振り返るだけでも枚挙に暇が無い。
「あのねぇーディスト、今日はこのコ、アリエッタのことでお願いがあるの♪」
「…お願いが…あるです。」
アニスが後ろに隠れていたアリエッタをディストの前に押し出す。
アリエッタはペコリとディストに軽く頭を下げる。
「ディストこういうょぅjょ好きでしょ?だからお願いきいてぇー☆」
「人聞きの悪いこと言わないでください!」
あいかわらずからかうと面白い男だ。
もうすでにディストをからかう事はアニスの日課になりつつある。
いつも通りのやり取りをしたところでアニスは話を続ける。
「今日はこのアリエッタの初ブラ記念日だからディストに見せて感想を訊こうと思って…」
「…え?」
「な、なな、何を言っているんですか!?あなたは!」
アニスの期待通りいいリアクションをする二人。
ディストのリアクションは言わずもがな、アリエッタの小さいながらもかわいらしいリアクションもなかなか見ごたえがある。
その二人のリアクションを堪能して満足したアニスは本題に入る。
「まぁ、冗談はこれくらいにしてディストに訊きたい事があるの。」
「じょ、冗談だったんですか…驚かせないでくださいよ」
「え?ディストまさか本気で期待してたの?やっだー、この変態さん♪」
「期待なんかしてません!」
ディストが真っ赤な顔で照れ隠しに大声で叫ぶ。
「…で、私に何を訊きたいのですか?まぁどんな事でもこの天才、薔薇のディストが…」
「あのね、このアリエッタは導師守護役なの。」
「人の話を聞きなさい!」
「だって長くなりそうなんだもん。」
「く…」
最近いつもアニスの傍にいたディストはアニスの口の上手さ、狡猾さはすでに骨の髄にしみている。
アニスに文句を言った所で勝てるとは思わないので、ディストは大人しく引き下がるしかない。
「でね、この導師守護役のアリエッタが…」
「…ちょっと待ってください!フォ、フォ、導師守護役って…導師をお守りする…あの導師守護役ですか?」
ディストは見た目にはっきりと、派手に動揺した。
「ディスト〜、ボケはもういいよ〜他に導師守護役あるの?」
「い、いえ、そうですか…あの導師守護役ですか…」
ディストはいつも挙動不審だが今日はいつにも増して様子がおかしい。
メガネの奥の目は泳いでいるしイスの上で貧乏ゆすりをし、イスごと揺れている。
「ねぇ、ディスト、あんた導師イオンのこと何か知ってるでしょ?」
アニスがそう訊くとディストは動揺からかイスから落ちた。
「し、知りません!私は何にも知りません!」
オーバーアクションで否定するディスト。
何かを隠していることは明らかな態度だった。
「ディスト〜、何か隠してるでしょ〜?」
「知りません知りません知りませーん!」
アニスに詰め寄られ、子供の頃、隠し事をすると拷問をかける幼馴染を思い出した。
トラウマに触れたがコレだけは喋る訳にはいかない。
「ディストぉ!アニスちゃんがこんなに頭下げてるのに教えてくれないのぉ!?」
これ以上ないくらい尊大な態度のアニス。
「いつ頭を下げたんですか!?」
イスの下に頭を突っ込みガタガタ震えるディスト。
「こーらー!出て来い!アニスちゃんの頼みが聞けないのかー!」
「痛い!痛い!アニス!止めてください!」
頭隠して尻隠さず状態のディストの尻を蹴りまくるアニス。
しかしディストは顔を出さずに頑なに何も言おうとしない。
「あ、アニス…」
「あん?何?アリエッタ、今いいとこなんだけど…あ」
エキサイトしてきたところでアリエッタに突かれるアニスが振り返ると…
「モース様!ヴァン総長!」
アニスはディストの尻に足を当てたまま固まってしまった…

「話は大体わかった。」
なかば呆れた様子でアニスのこれまでの経緯を聞くヴァンとモース。
「その行動力は大したものだが…しかし方法はあまり褒められたものではないな。」
簡単に言うとアリエッタを使ってリグレットとラルゴを泣き落とし、ディストに拷問をかけて口を割らせようとした。
この目の前の、少なくとも見た目はあどけないこの少女がそんな事をするとは…
呆れたが妙に感心してしまう。
「まぁ、今回は導師イオンの身を案じるアリエッタのためにした事だ、モース様、今回はお咎め無しでいいでしょう。」
「そうだな、処罰をすれば査問会にイオン様の病気を知られることになる、見なかった事にしてよかろう。」
自体が落ち着くまで教団内でも導師の事を知られるのは避けたい。
ディストのフォミクリー技術で問題解決の糸口を掴んだ今、いたずらに教団内を騒がせる必要も無い。
そう、所詮は子供のいたずらだ、ヴァンとモースはそう判断した。
「導師守護役アリエッタ、ならびにアニス・タトリン、本来ならば何らかの処罰を下すところだが今回は不問とする。
ただし、次はこうはいかんと言う事を肝に銘じておけ。」
「はい…」
さすがのアニスもこう言われては引き下がるしかない。
導師が病気で臥せっている今、実質教団のトップの大詠師モース。
神託の盾の主席総長ヴァン、この二人が相手ではアニスも強く出られない。
下手なことを言うと折角のお咎め無しがパァになるかもしれない、今アニスが処罰されると両親にも迷惑をかけてしまう。
「…あの…」
しかしアニスが引き下がった時、前に出たのはさっきまで黙っていたアリエッタだった。
「…何だ、アリエッタ?」
「…ヴァンさま…イオンさまは?」
「ちょ、ちょっと!?アリエッタ?」
驚いたのはアニスだ、さっきまではずっとアニスの後について自分からは喋らなかったアリエッタが、この二人を前にして急に口を開いたのだから。
折角のお咎め無しがパーになりかねない、だが…
「イオンさまは…?」
アリエッタがあまりに健気なのでアニスもアリエッタを止められない。
「はぁ…しょうがないなぁ…」
今日一日の努力が無駄になるのもなんだかシャクなので、もう少しアリエッタに加勢する事にした。
「モース様、ヴァン総長、アリエッタにイオン様の教えてあげてください、このままだとまた同じような事が起きるかもしれませんよ。」
ヴァンとモースは少し考えた後、頷きあい口を開いた。
このままアリエッタが納得しないまま話を終わらせても、再び同じことが起こるのは、アリエッタの様子を見ても明白だったからだ。
「アリエッタ、アニス、これから言う事を絶対に他言しないとローレライとユリアに誓えるか?」
アニスとアリエッタは顔を見合わせ、そして頷いた。
ヴァンの話はこうだ、
「アリエッタの知っての通り導師イオンは先頃から病に臥せっている。
そこで大詠師閣下と私で教団にいらぬ混乱が起きぬように事実を隠すことにした。
しかし今日、ディストの協力で導師の快復のめどが立った。
快復に専念するためにもうしばらく会わせることができないが直に病は治だろう。」
と言う事だった。
要するにディストのおかげで導師イオンは快復する、その間面会謝絶という事だ。
ただ何故そこまで頑なに導師イオンに会う事を拒むのかは腑に落ちない。
もっとも、アリエッタは導師イオンが無事だと言う事がわかったので、それで安心しているようだが。
「まぁ、なにはともあれよかったね、アリエッタ。」
「うん…アニス、今日はありがとう。」
ようやくアリエッタも元気が出てきたようだ。
「…でもアニス」
「ん?なにー?」
アリエッタが顔を赤らめながらアニスに尋ねた。
「…アニス、なんでアリエッタが今日初めてブラ着けたこと…知ってるの?」
「…」
一瞬の沈黙。
そして、アリエッタの言葉を理解したアニスが興奮してアリエッタに詰め寄った。
「うっそー!アリエッタマジで今日初ブラ記念日なのー!?」
「あ、アニス声が大きいです…」
もう興奮したアニスにアリエッタの声は届かない。
「見せて見せてー!」
「アニス…だめ!」
二人の少女はこれから起こることを知る由も無く、今はまだ無邪気に馴れ合っていた…
以前アニスになついていたディストは最近姿を見せない。
おそらく、導師の治療の協力に専心しているのだろう。
そのかわりといっては何だが、今現在守護するべき導師が居ないアリエッタが、なにかとアニスと共に行動するようになっていた。
先の一件で、アニスがアリエッタに世話を焼いたのが効いたのか、アリエッタはアニスになついているようだ。
今日も神託の盾騎士団の訓練終わりにアニスの部屋に遊びに来ている。
「それでね、イオン様、アリエッタに、『アリエッタは優しいですね。』って言ってくれたの。」
「ふーん。そうなんだ。」
「それからね、イオン様、アリエッタの作ったご飯食べて『とてもおいしいですよ』って言ってくれたの。」
「ふーん、よかったね。」
「それから、それからね、イオン様、アリエッタに『アリエッタが居てくれて嬉しいです』って言ってくれたの。」
「ふーん…」
「それから、それから、それからね…」
二人はアニスのベッドに腰掛け仲良くお話ししている。
アリエッタは大好きなイオン様が元気になると聞いて安心したからか、以前よりだいぶ元気が出たようだ。
毎日訓練終わりにアニスの部屋に来て、アニスに延々と導師イオンの話をしている。
(このコ、よく喋るようになったのはいいんだけど…結局根暗っぽいんだよねー。)
とは言え、以前のアリエッタを考えるといい傾向ではある。
「それでね、イオン様がね…」
「アリエッタってほんっとイオン様大好きだねー。」
時折タイミングを見計らってアリエッタにこう言うのが『ディストをからかう』に替わって、最近のアニスの日課になっていた。
毎回、律儀に真っ赤になって照れるアリエッタは、留守のディストに替わるアニスのおもちゃだ。
「おやおや、真っ赤になっちゃって、かーわいー♪」
「…アニスのイジワル…」
「お、言ったなー!根暗ッタ!」
そう言ってアリエッタにじゃれあう様に飛び掛る。
「アリエッタ根暗じゃないもん!」
そう言いながら楽しそうなアリエッタ。
二人とも本当に楽しそうにじゃれあう。
アニスはいつも神託の盾の中で、大人に混じりながら元気に笑顔だが、年の近いアリエッタと遊んでいるアニスこそ、彼女の等身大の、本当の姿なのだろう。
「あのね…アニス…」
しばらく二人で暴れた後、アリエッタがアニスにつぶやいた。
「アリエッタ、イオン様大好き、でもね…アリエッタ、アニスの事も大好き…」
アリエッタは笑顔で言った。
笑顔のアリエッタは、いつもの暗い顔のアリエッタのよりもとても魅力的に見える。
「あたしも…アリエッタの事好きだよ、大事なトモダチ!」
「アニス…うん、トモダチ!」
「おや、これはこれは、ヴァン様にモース様。」
ディストが作業しながら様子を見に来たヴァンとモースに挨拶をする。
「首尾はどうだ?」
「ベルケンドでの研究データがありますからこれを利用すれば明日からレプリカ作成を出来ますよ。」
ディストはニヤリと自身ありげに薄笑いをうかべる。
ディストの顔自体は美形なのだが、この薄気味悪い表情のせいで損をする。
もっとも本人は気にしていないようだが。
「そうか、スピノザは死んだ導師から抜いたレプリカ情報からではレプリカ作成は難しいと言っていたが…」
「そのスピノザとかいう研究者がこのベルケンドの…
まぁ、ご心配なく、この天才『薔薇のディスト』のスーパーハイグレードな頭脳を持ってすれば…」
「可能だというわけか、貴公に協力を要請して正解だったな。」
ヴァンに言葉を途中で遮られディストは少しムッとしたが何かを言える立場ではない。
「まぁ、そういう訳です、導師のレプリカを作る事自体には問題ありません。」
ディストはムッとしながらだがヴァンにそう言った。
ヴァンはよし、といった風に頷いたがモースはまだ納得していないようだ。
「しかし、その導師は預言を詠めるのか?」
モースの心配はそこだった。
導師のレプリカを作っても預言が詠めなければ何の役にも立たない。
「レプリカは第七音素を使って作成しますし、オリジナルの導師が預言を詠めましたし、預言を詠む素養はあるでしょう。
しかし、レプリカには能力劣化という問題が付き纏います。
特に、今回は死後に抜き取ったレプリカ情報からの作成ですから、確実に預言を詠める保証は出来ませんね。」
ディストの説明を聞いてモースは笑った。
「ならば複数体レプリカを作成しその中から優れた物を選べば問題なかろう。」

「あのディスト、中々使えるようだな。」
ディストの研究室から帰る途中にモースはヴァンにこう漏らした。
「性格や人格にやや問題はあるが、頭脳はかなりのものだな。」
「はい、あの性格ですから今回は餌で釣れましたが…」
モースは少し考えこう言った。
「餌を小出しにすればよかろう。」
「…奴はそれで納得するとでもお思いですか?」
「納得はせんだろう、だが代わりに地位を与え奴の研究を支援してやればよい。」
「…さすがはモース様ですな。」
ヴァンはモースを軽蔑しながら皮肉混じりに言った。
ダアトの教会内で暮らすタトリン家の朝は早い。
父のオリバーはまだ夜中というような時間から出掛けるし、母のパメラもアニスも日が出る前から起きなければならない。
「アニスちゃん、ハンカチは持った?」
「ちゃんと持ってるよ〜、ママこそハンカチ持ったの?」
「あらあら、そう言えば忘れてたわ。」
「はぁ…そうじゃないかと思ったよ。」
「そうそう、アニスちゃん、お財布は持った?」
「あたしが財布忘れるわけないでしょー、ママこそちゃんと持ったの?」
「あらあら、うっかり忘れるところだったわ。」
「もぅ!ママ!人に言う前に自分の持ち物ちゃんと確認しなよ!」
「アニスちゃんはしっかり者ねぇ。」
のん気にコロコロと笑う母にため息を一つついてしまう。
毎朝同じようなやり取りをしているのだから、この母にも少しは学習して欲しい。
とは言うもののそういう、少し間の抜けたところが母らしいといえば母らしい。
「はぅあ!もうこんな時間!それじゃ行ってきま〜す!」
無駄に時間を喰ってしまっていつの間にか神託の盾の集合時間が迫っている。
アニスは慌てて出かける事にする。
「はいはい、行ってらっしゃい。」
「ママも遅刻しないようにね!」
のほほんとしたパメラに背を向け、あわただしく部屋を飛び出す。
まだ人の居ない教会内を駆けて抜けて神託の盾本部へ走る。
「よーし!アニスちゃんギリギリセーフ!」
アニスが神託の盾本部に着いた時ちょうど当番の兵が集合のドラを叩こうとしている所だった。
集合時間に遅れると、やれ子供だから、やれ親と暮らしているから甘いなど言われてしまうので遅れるわけにはいかない。
例え子供であろうと神託の盾に入ってしまえば特別扱いは無い。
任務や訓練の時間外で優しくしてくれる兵士は居るが、いざ任務や訓練に就くとアニスもただの一人の神託の盾兵なのだ。
「さぁ〜って、今日も一日頑張るぞ〜!」
幼いながらも一端の神託の盾騎士団の一員として、アニス・タトリンの元気な一日が始まる。

「ディスト、導師の様子はどうだ?」
このところ大詠師モースは、毎日のようにディストの所を訪れ、導師のレプリカの様子を見に来ている。
そろそろ世間も、どこにも導師が姿を見せないことに気付いており、代わりの導師を用意しなければならない時期に来ている。
「七体中、使えそうなのは今のところ三体ですね。」
「ほぅ、具体的にはどのような状況だ?」
ディストが譜業装置のディスプレイをモースに見せ、現状を説明する。
「まずは第一候補、ダアト式譜術、預言を詠む能力ともオリジナルに近い能力を持ったレプリカ、精神、情緒などの内面的にもオリジナルにかなり近いですね、ただしこのレプリカは体力がかなり虚弱ですね。
第二候補は身体的にはもっとも健康なレプリカです、ダアト式譜術もすでに幾つか習得しています、しかし預言は並みの預言師程度にしか読めないでしょう。
最後に第三候補、預言を詠む能力はオリジナルの導師にかなり近いレプリカです、ただ情緒面がかなり幼いままなかなか成長しませんね。預言を詠むだけならばともかく、導師にするには今のままでは不可能でしょう。」
いつものように薄笑いを浮かべながら報告するディスト。
「第一候補が無難か、教育にはどれくらいかかる?」
「具体的な日数はわかりませんがこれまでの経過からそれほど時間は掛からないでしょう。ただし…」
「…ただし?」
「もともとレプリカに記憶がありませんから、導師の外面は似せる事が出来ても導師の素顔を知る親しい人間は欺けないでしょう。」
導師と親しい人間…モースの頭にまず浮かんだのは導師守護役のアリエッタだった。
今まで四六時中導師イオンと行動を共にし、導師イオンに特別な感情を抱いているアリエッタ。
そのアリエッタを欺くのは不可能だろう。
「そうか…わかった、その件は何とかしよう。」
アリエッタが駄目ならばアリエッタの代わりを用意すればいい。
「こちらには後で第一候補の教育係を寄こす、では後を頼んだぞ。」
「はい、ところで他のレプリカはいかがなさいますか?」
「預言の詠める第三候補だけ生かしておけ、他のレプリカは始末しておけ、ザレッホ火山に放り込めば誰も発見で出来んだろう。」
モースは、もう新しい導師の第一候補以外に興味がないといった様子で非情に言い放った。
「…わかりました。」
「は〜い、みなさ〜ん☆こちらが第一石碑でーす♪」
アニスは午前中の神託の盾の訓練を終え、午後からは教団の方の仕事、巡礼者の石碑巡礼の案内をしている。
石碑巡礼の案内は、神託の盾騎士団の一員である前にローレライ教団の団員であるアニスの仕事の一つだ。
幼い頃から教会で暮らしているアニスにとって石碑巡礼の案内は慣れたもので、毎日多数の巡礼者の案内をしている。
かわいらしい身振り手振りを交えて面白おかしく賑やかに案内するアニス。
最近アニスはちょっとした名物になっていて、よく巡礼案内の指名が入る。
「それじゃあこの第一石碑で復路巡礼は終わりでーす♪お疲れ様でしたぁ。」
にっこり笑顔でアニスがお疲れ様でしたと言うと巡礼者から「えぇ〜!」と声があがる。
どうやらアニスのファンになった巡礼者の声らしい。
「もーう、アニスちゃんを困らせないでくださ〜い、またダアトに来たときアニスちゃんをご指名してね♪」
最後にウインクすると巡礼者(ファン)達が「は〜い」と野太い声を揃えて返事をする。
「それじゃあみんな♪まったね〜☆」
巡礼者(ファン)達の「アニスちゃん、またねー!」の声を背にダアトに帰るアニス。
巡礼者が見えなくなったところでぶりっこ割合を100%から通常の50%に落とし、少し疲れたのでトクナガに乗って帰り道を歩く。
「はぁ〜あ、アニスちゃんくたくた。でもまだ今日は後一組四大石碑巡礼の案内あるんだよねぇ〜。」
仕事が終わったらアリエッタとパフェでも食べに行こう、そんな事を考えながら帰路につく。
忙しいながらも充実した毎日、今はまだ、いつまでもこの毎日が続くと思っていた。
朝は慌ただしく目覚め出掛けて、神託の盾本部で訓練し、ローレライ教団員として巡礼者の案内をする。
そして仕事が終わればトモダチのアリエッタと遊ぶ。
こんな忙しいけど幸せな日常がもうすぐ終わるとは思いもしなかった。
動き出す運命に流されるとは思いもしないで少女は今日も過ごしていた。

続く
26ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 15:27:34 ID:???
27ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 17:25:41 ID:???
何これ
28ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 17:39:31 ID:???
無駄に長くさせすぎ
ダラダラと続いていてツマンネ
29ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 17:58:34 ID:???
ツマンネ
自分でサイト作って勝手に書け
30ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 18:01:28 ID:???
チラシの裏にでも書いてろ
31ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 19:07:58 ID:???
32ゲーム好き名無しさん:2006/01/26(木) 20:42:05 ID:???
 
33ゲーム好き名無しさん:2006/01/27(金) 03:47:10 ID:???
散々長いの見て最後に続くときたのには唯一ワラタw
もういらねえってのwwwwww
34ゲーム好き名無しさん:2006/01/27(金) 23:53:10 ID:???
糞スレage
35ゲーム好き名無しさん:2006/01/28(土) 14:11:52 ID:???
クソうざい
36ゲーム好き名無しさん:2006/01/28(土) 19:09:24 ID:???
アビス厨痛すぎ
37ゲーム好き名無しさん:2006/01/28(土) 20:01:10 ID:???
糞SSの続きマダ?
38ゲーム好き名無しさん:2006/01/28(土) 22:46:13 ID:???
続きはここ

http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamechara/1135994886/l50

本人人気者気取りみたいです。
39ゲーム好き名無しさん:2006/01/29(日) 20:47:35 ID:???
ここにSSを貼って「素直な」感想を語るスレにしようぜ
神託の盾本部、ここでアニスは毎日神託の盾兵として鍛錬している。
アニスは今日も戦闘の時に使用する譜術の訓練に精を出している。
アニスは全身のフォンスロットに第六音素の力を集中させ譜術を詠唱する。
「光のてっつい!リミテッド!」
アニスが放った譜術が訓練用の人形に命中し、人形が吹っ飛ぶ!
「やったぁ、アニスちゃん天才☆」
練習中の譜術だったが絶好調、どうやらこの譜術は完全に習得出来たようだ。
「よーし、このアニスちゃんの華麗な譜術をアリエッタにも見せてあげよう♪
おーいアリエッタ〜、いいもの見せてア・ゲ・ル☆」
トクナガの背に乗り少し離れた所で同じように譜術の練習をしていたアリエッタに駆け寄るアニス。
しかしタイミング悪くアリエッタは譜術の詠唱をしている最中だ。
「歪められし扉よ、開け、ネガティブゲイト!」
アリエッタが放った第一音素の譜術が訓練用の人形数体を薙ぎ払った!
その譜術はアニスが先程習得した譜術よりも難易度の高い譜術だった。
「ふぅ…あ、アニス」
アリエッタが傍に来ていたアニスに気付いた。
アニスはトクナガに乗って呆然とアリエッタを眺める。
「?アニス?どうしたの?」
アリエッタの譜術を見て呆然としているアニスの顔をアリエッタが覗き込んだ。
「え?あ、なんでもないよ、それにしても凄い譜術じゃん今の。」
アニスは、ハッと我に返り、自分より難しい譜術を使えるアリエッタに、習得した譜術を自慢しようとした事が恥ずかしくなって慌てて誤魔化した。
「うん、アリエッタ、イオン様お守りするために一生懸命練習したの」
相変わらずアリエッタは大好きなイオン様の事となると健気でかわいらしい。
アニスは照れ隠しに、そんなアリエッタをからかう。
「ふ〜ん、大好きなイオン様のためか、なるほど愛の力だね、アニスちゃん納得♪」
アニスがからかうとアリエッタはやっぱり例によって真っ赤になる。
「アリエッタったら、照れちゃって☆か〜わい〜♪」
「…アニスのイジワル…」
「あ〜、アリエッタったら、こんなに優しいアニスちゃんを掴まえててそんな事言うんだ〜?
そんな事言うコにはくすぐりの刑でお仕置きだ〜♪」
アニスはニヤリと笑ってアリエッタの脇の下に手をのばす。
「あ、あん…アニス〜、くすぐったい…」
神託の盾の女性仕官の軍服は脇が露出しているのでくすぐりやすい。
アニスはアリエッタの敏感な反応に気をよくして更に調子に乗る。
「えーい、こちょこちょこちょ!ここか?ここがツボか?」
「きゃん…だめ、だめだよ、アニスぅ…」
「よいではないか、よいではないか♪…ってあれ?」
気がつけば回りに人垣が出来ていた。
視線がイタイと言うより恥ずかしい。
「あはははは…こりゃまた失礼しましたー!」
アニスは慌ててアリエッタをトクナガに乗せてその場を逃げるようにして去った。
「あー、びっくりしたー、チッあのロリコン共め!」
無我夢中でその場を離れたのでいつの間にか神殿内まで来ていた。
「…恥ずかしかった…」
「ごめんごめん…あ!しまった、見物料取ればよかった!」
「アニス…反省してない」
「やだな〜、じょうだんだよー、冗談♪」
まったく悪びれる様子も無い、この程度でへこたれるアニスではない。
しかし、これからどうしようか、すぐに神託の盾本部まで戻るのも気が引ける。
「おや、アニス、こんな時間に何をしているんだい?」
「あ、パパ。」
オリバーが、これからどうしようかと頭を抱えてぐるぐる回っているアニスを見つけた。
オリバーが知る限りダアトでこんな動きをするのは彼の娘しかいない。
「パパこそどうしたの?今日は一日中、図書室のお掃除するって言ってたじゃん。」
「いや、その予定だったんだけどさっきまでモース様に呼ばれていてね。今からお掃除再開するところだよ。」
「モース様に?何でまた?」
そういえばタトリン家は大詠師モースに多額の借金をしている。
もしかしたらその借金の話かも…
「さぁ、何でだろうねぇ、そういえばアニスの事を少し聞かれたかな。」
「ふぇ?なんでモース様があたしの事を?」
アニスの心配とは違い、どうやら金の話では無いらしい。
しかしモースは何故アニスの事を…
「何かいたずらでもしたんじゃないのかい?」
「ぶー、アニスちゃんそんな悪い子じゃないもん。」
オリバーの様子を見る限り、特になにか意味のある話ではなかったようだ。
もっともオリバーが話の意味に気付かなかっただけかもしれない。
「アニスさっきアリエッタにいたずらした…」
「あれは愛情表現だよー。」
アリエッタがアニスのいたずらという言葉に反応して口を挟むがアニスが軽くあしらう。
「はっはっは、二人とも仲がいいなぁ、それじゃあ私は行くよ。」
モースを信頼しているオリバーは大して気にしていないようで、さっさとその場を去った。
「うーん、モース様があたしの事を…何でだろ?」
しかしアニスは釈然としない。
どれだけ考えようとここ最近はモースに気にされるような事はしていない。
「…アニス、なにかいけない事したの?」
真剣にモースが自分の事をオリバーに尋ねた理由を考えているとアリエッタが口を挟んできた。
しかもかなり疑いの目で。
「もぅ!アリエッタもしつこいなぁ!アニスちゃんはいい子だからいけない事なんかしないよー」
アリエッタの疑いの目があまりに痛かったので、おどけてはぐらかそうとするが依然アリエッタは疑いの目をアニスに向ける。
アニスも普段が普段だけにアリエッタに疑いの目を向けられても仕方ないのだが…
「…」
「ちょっとぉ!何よその疑わしさ切なさと心強さに満ちた目は!?」
「アニス…モース様に怒られる前に謝った方がいい…アリエッタも一緒に謝ってあげる。」
「うう…気持ちは嬉しいけど、まずあたしを信じて欲しいよぉ…」
結局その後どれだけ考えてもモースが自分の話をする心当たりが見つからなかった。
事は全てアニスの知らないところで進められていたのだ。
「私をベルケンドの第一音機関研究所の責任者に?」
ヴァンはディストに導師のレプリカ作成の見返りを渡すためにディストの元を訪ねた。
ディストはモースの指示で不要な導師のレプリカを処分するためにザレッホ火山に来ていた。
「そうだ。」
溶岩の熱気の中二人は汗一つかかずに向き合う。
「先程頂いたレプリカ情報の重要な部分が抜けていた事の代わりにですか?」
「さすがだな、気付いていたか。」
「このレプリカ情報は私が人生の大半を駆けて求めていたものです、足りないことぐらい一目でわかりますよ。」
「すまないな、だが代わりにベルケンドでレプリカの研究をさせてやろう。」
モースの指示で当初ディストに渡す予定だったとある人物のレプリカ情報の中から重要な部分は抜いていた。
その代わり、ディストに地位とレプリカ研究をする場を用意した。
もっともこれはヴァンの都合でもあるのだが。
「…導師のレプリカを作り終え、もう用がないはずの禁忌の技術を研究させるとは…何か裏でもあるのではないですか?」
「…お前に叶えたい願いがあるように私にも果たすべき目的がある。」
「目的…ですか?」
いつも仮面を被るように本心を隠していたヴァンの素顔を垣間見たディストは、ヴァンの目的に興味を抱いた。
「あぁ、……待て、殺気だ何か居るぞ!」
ヴァンがディストに自分の目的を教えようとしたその時
「魔物…ではなさそうですね。」
一筋の烈風が二人を襲った!
「アカシック・トーメント!」
烈風が地面に手を着くと凄まじい音素の奔流がヴァンとディストを飲み込んだ!
「ダアト式譜術か!」
その烈風はは導師と同じ姿をした少年だった。
「導師のレプリカのうち一体ですね、火口に落としたと思いましたが…」
身体面は最も丈夫でダアト式譜術もいくつか習得出来たレプリカ。
そのレプリカが生きていて二人に襲いかかって来たのだ。
「ただでは死なないよ…お前たちだけでも連れて行ってやるよ!」
すさまじい殺気、恨みや憎悪に満ちた殺気を放ちそのレプリカは襲い掛かってきた!
「面白い!ちょうど新しい譜業兵器のテストをしたかったところですよ、カイザーディスト!」
不意打ちを喰らい一瞬遅れをとったディストもすぐさま戦闘態勢をとり、実験中だった巨大な譜業兵器を起動させる!
導師のレプリカとディストは対峙し、今まさに激突しようとしたその時だった。
「そこまでだ!」
ヴァンが一喝し、導師のレプリカもディストも動きを止めた。
「導師のレプリカよ、その男を殺してどうする?」
「僕を生み出した事を後悔させてやるのさ!」
ヴァンは剣こそ抜いていないが、その気迫でレプリカを圧倒する。
ヴァンの気迫に押されながらもレプリカが答える。
「なるほど…だがその事に大した意味は無い。」
ヴァンの意味が無いという言葉を聞いてレプリカが鼻で笑った。
「意味?そんなもの必要ないね、下らない理由で僕らを始末しようとしたんだ、だからそいつを殺すのにも意味なんていらないね。」
レプリカは、自分が生まれてきた事を自嘲しているようにも見える笑みを浮かべ、そう言った。
ヴァンはその姿にかつて預言に踊らされ生まれ故郷を滅ぼしたころの自分を見た。
そしてこう思った。
このレプリカなら…私の考えに同調し、同志となるだろう、と。
「大詠師モースがわざわざ導師のレプリカを作成させたのは何故だかわかるか?」
突如ヴァンがこんな事を言い出しレプリカは戸惑いながら答えた。
「導師が死ぬと困るからだろ?」
レプリカの答えは至極真っ当、だが大切な部分だ抜けていた。
「いや、少し違う、導師が死んだのであれば別の者を導師にすればいいのだからな。
大詠師モースがわざわざレプリカを作成させたのは導師の死が預言になかったからだ。」
「…預言に無かったから?」
そう、モースが焦って導師のレプリカを作成させたのは導師の死が預言に無かったからだ。
「…この世界は預言に支配されている、大詠師モースも最初は預言を利用していただけだったのだろう。
だが今は預言に魅了され預言の亡者と化している、だから預言に無い導師の死を恐れた。
だからお前たち、導師のレプリカを作らせたのだ。」
「預言に無いから…そんなことのために僕たちは生み出され、ゴミのように捨てられたというのか!」
レプリカは抱いていた、預言に対する怒りを。
その怒りはヴァンがかつて抱いた怒りと同じものだった。
「そうだ、全ては預言のために行われた事だ。」
「ふざけるな!そんな物のために!」
「…そうだ、この世界は預言に支配された狂った世界だ、お前ならそれがわかるだろう?」
レプリカは何も言わず怒りに震えていただけだが、ヴァンにははっきりと頷いたように見えた。
その様子に満足したヴァンは続いてディストの方を向き言った。
「ディスト、私の目的に興味を持っていたな、教えてやろうか?」
「え?えぇ…」
急に話を振られたディストは間の抜けた返事をした。
そしてヴァンはディストとレプリカを見てこう告げた。
「私と共にこの狂った世界を変えないか?」

続く
44ゲーム好き名無しさん:2006/01/30(月) 13:54:45 ID:???
もう続かなくていいよ
何も面白みがなくてツマンネ
45マララー( ・∀・) ◆uAUwMARaRA :2006/01/30(月) 14:32:40 ID:???
 
46ゲーム好き名無しさん:2006/01/30(月) 15:58:18 ID:???
「悪くねえ!おれは悪くなんかねえぞ!」

終わり
47ゲーム好き名無しさん:2006/01/30(月) 16:01:17 ID:???
48ゲーム好き名無しさん:2006/01/31(火) 01:28:43 ID:???
腐女子は本当に執念深いから困る
ついに完成した新たな導師イオン。
その導師イオンを病気が快復したと言いヴァン以外の六人の詠師に秘密裏に会わせた。
結果、誰一人まさか本物の導師イオンが死亡していてレプリカと入れ替わっていると気付くものは居なかった。
いや、誰も本物とレプリカが入れ替わっているなどと思いもしなかっただろう。
「他の詠師達は誰も導師がレプリカだとは気付きませんでしたね。」
ヴァンと共にレプリカ導師を詠師達に会わせたリグレットがヴァン専用の事務室へ帰るなりそう言った。
そう言うリグレット自身も、導師がレプリカだと言われなければ気付かなかっただろう。
「リグレット、もはやあの導師はレプリカではない、本物のローレライ教団の導師なのだ。」
ヴァンがリグレットの言葉を訂正した。
「導師イオンは最初から死亡などしていない、レプリカなど存在しない、そういう事だ。」
そう言ってから思わず少し笑ってしまった。
やがて世界もそうなるのだ、ヴァンの計画が成就したあかつきには預言に縛られた世界ははじめから存在しない事になる。
今回の導師の件とは反対だが、レプリカが初めからそこに存在してたかのように入れ替わる点は同じだ。
「しかし…問題は導師守護役だな、大詠師モースは新たな導師守護役にうってつけな者を見つけたと言っていたが…」
以前の記憶の無いレプリカの導師に、以前の導師を知る導師守護役をつける訳にはいかない。
つまり今の導師守護役、アリエッタは解任させなければならない。
リグレットは以前導師を心配して訪ねて来たアリエッタの泣き顔を思い出して胸が痛んだ。
愛する人のために涙を流す少女から、愛する人の傍に居る権利を奪わなければいけないのだ。
任務に私情を挟まない冷徹なリグレットいえど何も感じずにはいられなかった。
「今の導師守護役、アリエッタはどうなさるんですか?」
本来リグレットの気にする事ではない、リグレットに何か出来る訳でもない。
だがリグレットは訊かずにはいられなかった。
「リグレット、お前に訊かれるとは思ってもみなかった。」
リグレットとの付き合いは長いがリグレットが私情で口を開くことはほとんど無い。
そのリグレットがアリエッタの事を気にかけたのだ、ヴァンは思わずリグレットの顔を見やる。
「い、いえ、失礼致しました、どうかお気になさらず…」
リグレットはハッと我に返り首を振った。
私としたことが何を言っている、そう思った次の瞬間にはいつものリグレットに戻っていた。
「…リグレット、明日は六神将結成の日だ。」
普段の顔に戻ったリグレットを見てヴァンは急に話を変えた。
「リグレット、私が六神将最後の一人に誰を選んだかわかるか?」
リグレットは気を引き締めアリエッタの事を頭の外へ追いやりヴァンの話に集中する。
「いえ存じ上げません。」
そう答えるとヴァンが遊ぶように言った。
「予想でかまわん、言ってみろ。」
そう言われてはリグレットとしても誰か考えなければならない。
自分、ラルゴ、自称天才科学者の怪しげな男ディスト、ヴァンが数年前にダアトに連れてきた少年アッシュ、導師イオンのレプリカを拾ってきたシンク。
すでに聞いている五人を思い出し、そして自分がおそらくそうであろうと思った人物を答えた。
「…はい、おそらくカンタビレかと思います。」
師団長の一人だ、ヴァンに対する信頼や忠誠心はリグレットの知るところではないが、この人物を置いて他に適任も思い浮かばなかった。
リグレットらしい無難な模範解答だな、ヴァンはそう思ってから正解を告げた。
少しリグレットの驚く顔を期待しつつ。
「六神将最後の一人は…アリエッタだ。」
リグレットはヴァンの期待通りの顔を見せた。
「アニスー!」
神託の盾の訓練、ローレライ教団の仕事を終え一息ついたアニスに珍しい出来事がやってきた。
なんとあの根暗…もとい、おとなしいアリエッタが元気に腕を振りながらアニスに駆け寄ってくるのだ。
「どぅわ!あ、アリエッタ?どうしたのハイテンションで?熱でもあるの?
ハイテンションなんてアリエッタのキャラじゃないよー!」
以前と比べれば随分明るくなったとはいえ、依然暗いが服を着ているようなアリエッタ。
そのアリエッタが大声でアニスを呼びながらやってくるのだ、アニスも何事かと心配せずにはいられない。
「あのね、あのね、アニス。」
よほど興奮しているのか、アニスの声を無視、というより声が届いていない。
アリエッタは顔を赤くして熱の上がったように話を続ける。
「イオン様、お元気になったの!」
「ふぇ?」
アリエッタの言葉より、様子に面食らっているアニスはアリエッタに聞き返した。
「だからね、イオン様のご病気が治ったの!」
アリエッタはアニスの目前まで迫りもう一度言った。
アリエッタが待ちわびたこと、導師イオンが病気から快復したと。
「ほんと?よかったじゃんアリエッタ!」
アリエッタが好きな人、導師イオンが快復したのだ。
導師イオンが病気で倒れ、子猫のようにふるえて目が溶けそうなほど泣いていたアリエッタを知っているアニスはアリエッタの喜びがよくわかる。
アリエッタは本当に嬉しそうだ。
「うん、よかった、ホントに…」
導師イオンが倒れてから、落ち込んでいたアリエッタをそばで励まして力になってくれたトモダチ、アニスに大好きなイオン様の快復を伝えたアリエッタは気が緩んで思わず涙を流してしまった。
もっとも今流した涙は以前の涙とは違い嬉しい涙だ。
「ほらほら、泣かない。嬉しい時は笑顔だよ!」
アニスは微笑んでそっとアリエッタの涙を拭ってあげる。
「うん…ありがとう、アニス。」
アリエッタはまだ少し、瞳に涙の粒を浮かべたままアニスに微笑み返した。
幸せそうな、とても暖かい笑顔で。
「それで…イオン様になんて言ったの?」
アリエッタの興奮が冷め、涙も止まったのを確認してアニスが訊く。
アニスはまた、アリエッタの「イオン様がね」話が始まるのを覚悟して尋ねたのだが、予想に反してアリエッタの表情が曇った。
そして少し沈んだ声でアリエッタはこう言った。
「…アリエッタ、イオン様とまだお話ししてないの…」
「え?なんで?イオン様と会ったんじゃないの?」
てっきりアリエッタは、病気から快復した導師イオンに会ったとばかり思っていたが違うらしい。
アニスの不思議そうな顔を見て、アリエッタが首を振ってから言葉を続けた。
「ううん…トリトハイム様がイオン様元気になったって言ってたの。」
「そっかー、まだ直接会ったわけじゃないんだー。」
どうやらまだ導師は詠師職に就いている人間としか顔を会わせていないらしい。
その詠師の内トリトハイムが、導師イオンが倒れてから心配していたアリエッタにだけ特別に快復したことを伝えたらしい。
「…でもね、イオン様と会ったらいっぱい、いっぱいお話しするの!」
まだイオン様に会えてない、でももう少ししたら会える。
アリエッタはそう思ってまた曇った表情に笑顔を咲かせた。
「ホントによかったね、アリエッタ!」
アニスもそんな嬉しそうなトモダチの笑顔を見てると自然と笑顔になった。
「うん!」
嬉しい、イオン様が元気になる。
トモダチのアニスも自分の事のように一緒に喜んでくれる。
アリエッタの心の底からの笑顔。
本当に素敵な笑顔だった。

アニスはこの笑顔が最後に見るアリエッタの笑顔だとは思いもしなかった

続く
879 :SS作者 :2006/01/30(月) 20:19:34 ID:ViHhW0LV
すいません。
これからはGJのみのレスは付けない方向でお願いします。
お礼レスは3行以上

884 :名無したんはエロカワイイ:2006/01/30(月) 21:47:30 ID:oKl03MpZ
空気読めてないのは分かった。
53ゲーム好き名無しさん:2006/01/31(火) 18:18:23 ID:???
「ルーク、あんまり幻滅させないでくれ・・・」

END
54ゲーム好き名無しさん:2006/02/01(水) 15:09:32 ID:???
55ゲーム好き名無しさん:2006/02/02(木) 11:49:49 ID:???
 
56ゲーム好き名無しさん:2006/02/02(木) 15:24:48 ID:s8afoDDL
ねくろまんこーの名に置いて全員アヌスを開け
アニスにとって運命の日、物悲しい陰鬱な雨がダアトを包んでいた。
その日、アニスが目を覚ましたのはまだ夜が明ける前だった。
まだ夜中といっても差し支えない時間だが、父のオリバーはもう出かける仕度をしている。
寝なおしてもいい時間だったが、アニスは何故かもう一度寝る気にはなれず、起きて父に声をかけた。
「パパ、おはよう」
パメラと一緒に使っているベッドをそっと抜け出し、オリバーのすぐ近くまで寄る。
「おはようアニス、もう起きたのかい?」
オリバーは傍まで来たアニスの頭をそっと撫で、微笑みながら挨拶を返す。
頭を撫でられたアニスもにっこりと目を細めて微笑んだ。
二人はまだ寝ているパメラを起こさないように小声で会話する。
「それにしても…パパ、もう出かけるの?昨日もあたしが寝た後に帰ってきたのに…」
昨夜はそれこそ他の男だったら、浮気しているんじゃないかと思うような時間に、オリバーは仕事を終え帰ってきた。
「大事なお仕事だからね、モース様のご恩に報いるためにも頑張らないとね。」
オリバーは少しやつれた顔で、しかし少しも暗い所のない笑顔で答えた。
本当に人がいい、人が良すぎる、だからアニスは心配になる。
「うん…そうだけど…あんまり無理しないでね。」
オリバーもパメラも、モースからの命ならばどんな無理な命でも遵守する。
それは、二人がアニスが小さい頃に詐欺に遭い、多額の借金を作った時にモースが肩代わりしてくれた事に恩を感じているからだ。
アニスも一家で首を括る羽目にならなかった事には感謝している。
だが、事あるごとにキツイ仕事を押し付けられながらも「ご恩に報いるため」と言って、ロクに睡眠もとらずに仕事をする二人を見ていると、まるで人質をとられている気がしてしまう。
いや、実際に人質なのかもしれない、オリバーもパメラもモースの言う事は従順に従っているので今は気付かないが、もし逆らってモースの不興を買い、借金の事を持ち出されたらまた首を括るような危機に直面する。
オリバーの言うような「ご恩に報いる」と言えば聞こえはいいが、結局のところ借金があるためモースに逆らえないだけなのではないかとアニスは思う。
「そうだ、アニスに昨日モース様から言伝を預かったよ。」
オリバーが仕事に仕度しながら一枚のメモを取り出した。
「モース様から言伝?」
メモにはモースの字で『唱師アニス・タトリンへ』と書いてあり簡素な用件が続いていた。
「なんでも、アニスに大事な用があるらしい、今朝は神託の盾本部に行かず、礼拝堂に来るようにと仰っていたよ。」
メモにもそんな内容が簡単に書かれていた、ただ最後に『大詠師モース』の署名が入っているので一応正式な命らしい。
「うん、わかった…でも何の用だろう?」
そういえば、少し前にモースがオリバーにアニスの事を何か訊いていた。
その時は、オリバーやアリエッタに何か悪いことをしたからモースが怒ってるんじゃないかと言われたが、その後、特に何も達しがなかったから忘れていたが…
もしかしたら時間差で何か叱られるのではないかと、少し嫌な予感がした。
「きっと、大事なご用だから頑張ってきなさい。」
「はいはい、『ご恩に報いるため』でしょ?」
叱られるとしたらあまりにも今更な話だ、きっとオリバーの言うとおり何か大事な用があるのだろう。
考えすぎだと思い、アニスは不安と嫌な予感を頭の外に追い出した。
しかし、今追い出した嫌な予感はあながち間違いじゃなかったと、後で思い知ることとなる。
アニスが礼拝堂に行くとそこにはモースがただ一人で待っていた。
いつも礼拝堂に詰めている詠師トリトハイムも、まだ来てないのか席を外しているのか居なかった。
「モース様、おはようございます。」
アニスがいつもの明るい笑顔で挨拶したが、モースはニコリともせず、ただ「うむ…」とだけ応えた。
「…あの、モース様、本日あたしを呼んだのはどのようなご用件ですか?」
アニスちゃんスマイルが効かないので、もしかしたら悪い用件かと思い、神妙な顔で思いっきり下手にでることにした。
モースは少し間を置いた後に口を開いた。
「唱師アニス・タトリン。」
「は、はい。」
いつになく真剣な眼差しでモースがアニスを見据える。
アニスもしっかり背筋を伸ばして返事をする。
するとモースが再び間を置いてから次の言葉を出した。
「汝を本日付で導師守護役に任命する。」
「…ふぇ?」
モースの絶妙な間に引き込まれたアニスが間の抜けた返事をするとモースがもう一度言った。
「今日からお前は導師守護役だ。」
アニスはモースの言葉を胸の中で復唱する。
導師守護役?あたしが?
その言葉の意味を整理し、理解を試みると一つの答えが出た。
「…それって、アリエッタと一緒に導師イオンをお守りするという事ですか?」
そう、アリエッタと共に導師守護役の任につく、アニスはそうだと思った。
先代の導師エベノス時代は、ホド戦争などで世の中が荒れていたせいもあり、多数の導師守護役をつけていた。
しかし、現在の導師イオンは、今現在常に付き添っている導師守護役はアリエッタのみだ。
教団内でももう少し増やすべきだとの声が高まっているし、病気で倒れた事もあるので、増員としてアニスに白羽の矢がたったとアニスは思った。
「…いや。」
しかし、モースはアニスの言葉を否定した。
そして…
「アリエッタは…導師守護役を解任する。」
アリエッタの親友であるアニスに、アリエッタにとっては大げさでもなく死刑宣告に等しいその事実を告げた。
「え?なんで?どうしてですか!?
アリエッタは一番導師イオンの傍に居て、一番導師イオンの事を理解していて一番導師イオンの事が好きなのに!?」
アニスもその言葉に黙って「はい、わかりました」とは言えない。
他の誰よりもアリエッタの気持ちを知っている、だから理不尽なアリエッタの解任に対する疑問を気持ちのままにモースにぶつけた。
導師イオンのそばに居るべきなのはアリエッタなのだと…
「…だからアリエッタは駄目なのだ…」
だが、その言葉は逆効果だった。
モースはそれ故にアリエッタでは駄目だという。
「え?モース様、それってどういう…」
アニスがその言葉の意味を詮索しようとするとモースはそれを遮った。
「いや、なんでもない…とにかくアニスでなくてはいけないのだ。」
何も訊くなと言う事なのだろう。
ただアニスであれば良い、モースはそう言った。
しかし…
「でも…」
もし、そうなったらきっとアリエッタに嫌われる…
トモダチのアリエッタを傷つけてしまう…
アニスはアリエッタの事を考えるとその栄誉ある命を受けることができなかった。
「モース様…せっかくの機会ですけど…あたしは…」
アリエッタには嫌われたくない。
トモダチと栄誉、天秤にかけるまでもなくアニスにとってはトモダチ、アリエッタの方が大切だった。
アニスは目を伏せ断ろうとした。
だが、モースはアニスより一枚も二枚も上手だった。
「アニスよ、オリバーとパメラはお前が導師守護役になると聞けば喜ぶだろう。」
最近のアリエッタと仲が良いアニスが断ることも想定していたのだろう。
モースはアニスにとってアリエッタよりも大きなものを引き合いに出してきた。
「そして…お前がこの申し出を断ったと聞けば悲しむだろう…」
「…」
モースは皆まで言わなかったが、これは脅迫だろう。
オリバーとパメラ、そしてアニスは借金があるからモースに逆らえない。
借金によって両親の命を握られているアニスに拒否権はないのだ。
いや拒否権はあったかもしれない、だが、両親の命とトモダチを天秤にかける事はアニスにとっては酷過ぎた。
「唱師アニス・タトリンよ、どうする?」
モースはアニスの答えを訊いた、アニスが断らないと確信しながら…
「ご拝命…承りました…」
二つを同時に選ぶことができない自分の弱さに歯がゆさを感じながらアニスは頷いた。
礼拝堂の中にまで響く激しい雨音はアニスの心そのものだった。
そしてアニスは誰にも聞こえないように雨音に隠してつぶやいた。
「アリエッタ…ごめんね」

続く
952 :SS作者 :2006/02/03(金) 22:12:24 ID:A0ZsaAdc
予定ではもうすぐ最終回です。

前と同じく『GJのみのレスはご遠慮ください。』
61ゲーム好き名無しさん:2006/02/06(月) 15:05:27 ID:???
62中山口臭ス ◆Gv599Z9CwU :2006/02/06(月) 16:15:57 ID:???
テラワロスwww
63ゲーム好き名無しさん:2006/02/06(月) 17:40:22 ID:???
オナニー小説きめえw
64ゲーム好き名無しさん:2006/02/07(火) 13:31:03 ID:???
65ゲーム好き名無しさん:2006/02/07(火) 15:43:24 ID:???
66ゲーム好き名無しさん:2006/02/09(木) 12:41:05 ID:???
ルーク:イオンが死んでしまった…
ティア:ごめんなさい…
私のせいだわ…私の障気を導師が身代わりに…
ルーク:ティアのせいじゃないよ!!
本当に悪いのは、大詠師モースと…
一同アニスを見る。

アニス:…私のせいだって言うの!?
ジェイド:せめてアニスには説明して欲しかったですねぇ。
アニス:違うっ!!私のせいじゃない!!
私はただ両親を助けたくて!!
ジェイド:そんなのモースをヌッ殺してからでよかった筈ですよ。
アニス:私は知らなかったの!プラネットスコアを詠んだらイオン様が死んでしまうなんて!
いや、知ってたけど…とにかく!
私のせいじゃねぇ!
私のせいじゃねぇ!!

一同「・・・・・・・・・・・・・・・・」

ジェイド:…(踵を返す)
ティア:大佐。どちらへ?
ジェイド:ブリッジに戻ります。
…ここにいると馬鹿な発言に苛々させられる。
アニス:なんだよぅ!!
私は悪くねぇ!!
アンタらだって何も出来なかったくせに、私ばっかせめるな!!
ルーク:…確かに俺らは無力だ。
でも…!
アッシュ:ルーク!こんなサイテーな奴放っておけ!!
行くぞ!!
ナタリア:貴女は変わってしまわれたのね…
出会った時の貴女とはまるで別人ですわ…
67ゲーム好き名無しさん:2006/02/09(木) 12:42:06 ID:???
アニス:私は悪くねぇ!!そうでしょガイ!?
ガイ:…あんまり、俺を幻滅させないでくれ…
ティア:少しはいいところもあると思ってたのに…
私が馬鹿だったわ…

アニス:なんなんだよ!意味わかんねーよ。
私が悪いってーのか…?
ミュウ:ミュウも…貴様の気持ちはわからんですの(´_ゝ`)
アニス:黙れ家畜があぁぁぁ!!
一緒にすんな!お前何かと!!畜生ーー!!



ユリアシティにて。
ティア:みんな市長の家に行ったわよ。
一体いつまでそうしてるつもり?
アニス:だってみんな私を責めるんだもん…行きたくねー…
フローリアン:ハッ!導師守護役(フォンマスターガーディアン)ってのは脳味噌まで劣化しちまってんのか!!
アニス、ティア:!!?
フローリアン:チッ!僕がもう少し早くモースの野郎の計画に気付いていれば…
テメェもテメェだ!何故良く考えもせずにイオンにプラネットスコアを読ませやがった!!
アニス:何だと!!アンタまで私が悪いって言うの!?
フローリアン:悪いに決まってんだろーが!屑が!!
大体アリエッタの代わりの導師守護役はなぁ…
ティア:フローリアン!やめて!!
アニス:何よ!一体何だって言うの…?
68ゲーム好き名無しさん:2006/02/09(木) 12:42:49 ID:???
フローリアン:…ハッ!まだ気付いてなかったのか…
アリエッタの代わりはなぁ…ヴァンがあみだで決めたんだよ!
お前は選ばれたワケでも何でもねぇ!
たまたまだよ!たまたま。
つまりいくらでも代わりがいるんだよ!ハッ!おめでたい奴だぜ!!
アニス:嘘だ…!嘘をつくなぁー!!
アニス、フローリアンと戦闘。
戦闘後。
フローリアン:死にやがれ!劣化導師守護役がぁぁぁ!!

その後フローリアンがパーティーに。ちなみに戦闘スタイルはシンク+トクナガみたいな感じ。。
69アジカン:2006/02/09(木) 13:04:26 ID:???
もっとおもしろい文かいてよー(^∧^)
70ゲーム好き名無しさん