25.
日本帝安食品株式会社が増資をする際、
帝国証券は主幹事証券会社としての業務を行うことになり、
坂崎もこれを担当することになった。
テイアンの担当者の一人は、女性だった。
坂崎よりも八歳程度年下だった。
坂崎は、仕事をしていくうちに彼女の臨機応変さと可憐さが気に入り、
ある日仕事後に飲みに誘った。
女性と飲みに出歩くのは、本当に久しぶりだった。
「奥様に叱られますわ」
ワインを傾けながら、女が言った。
この言葉に、坂崎は寂しく微笑んだ。
「妻とは別れました。娘がいますが、妻のところにいます」
坂崎は、東京の夜景に目を逸らして静かに言った。
「まあ……」
女は驚いて坂崎を見つめた。
それから、一瞬押し黙り、やがて決意したように言った。
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