1 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
2 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/11/19 21:16
■ローカルルール■
○書き手用○
・どのレスの続きかを必ず明記する事。文章の最初に >>レス番号 をつける。
・文中で芸人が死亡または同盟を組んだ、仲間になったなどの場合は、最後に必ずその旨を明記。
・文章が長くなる場合は、一度メモ帳やエディタで作成、確認してから連続コピペを推奨。
・長編になる場合は、このスレのみの固定ハンドルを使用する事を推奨。
・これから書こうと思う人は、必ず過去ログに目を通す事。
※専属の書き手がいる芸人は無闇に動かさない。
※専属芸人の続きを書きたかったり、自分の話と繋げたい場合は、スレ内で呼びかけ確認を取る。
※長期間放置されたままで、明らかに前の書き手がいないと思われる場合は、新たな書き込み可。
○読み手用○
・コメント、感想、励ましメッセージ、注文などはsage進行で。
・書き手に過度の期待は厳禁。書き手さんだって、書けない時もあります。
○共通用○
・死んだ芸人は原則として復活禁止です。
・「あくまでもここはネタスレッド」です。まったりと楽しみましょう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/11/19 21:17
4 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/11/19 21:17
生存者の状況
【見方】
芸人名―専属書き手の有無/有の場合は名前
〔共に行動している芸人名〕
(その芸人の話の状況)
DT編関係
今田耕治 ―-無
〔単独行動中〕
(【DT松本、木村祐一、ココリコ・田中】の様子を伺っている)
130R・板尾―-無
〔単独行動中〕
(【DT松本、木村祐一、ココリコ・田中】のところへ向かっている)
DT松本、木村祐一、ココリコ・田中 ―-有?(継続中か不明)
〔DT松本、木村祐一、ココリコ・田中〕
(街へ向かっている)
DT浜田・堀部―-有/小蝿さん
〔DT浜田・堀部〕
(人肉ロールキャベツ食事中)
5 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/11/19 21:18
その他継続中の話と書き手さん
小蝿さん
村田渚、佐野ただひろ、元ブラジル代表、プロペラZ
B9さん
天津・向 、ブロンクス・中岡/野口、ヘッドライト・和田、
南海キャンディーズ・山崎、ネゴシックス
◆gvBXpGyuycさん
田上よしえ ・ダンディ坂野、北陽・伊藤、テツandトモ、ユリオカ超特Q、カンカラ
奥様は社長、さん
爆笑問題・田中 、5番6番、太田夫人・田中夫人・長井夫人
ヒマナスターズさん
ビーム、ダブルブッキング、マイマイカブリ
書き手見習いさん
18KIN・大滝、ピーピーングトム・桑原
森月さん
ハリガネロック、メッセンジャー、中田カウスボタン
コッソーリさん
The PLAN9・灘儀 /ヤナギブソン
K2さん
陣内智則
6 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/11/19 21:19
書き手不在の生存芸人
冷やし中華はじめました
ビートたけし 、ダンカン、グレート義太夫、松尾伴内、そのまんま東、ガダルカナル・タカ、井手らっきょ
清水ミチコ
浅草キッド
電撃ネットワーク・ダンナ小柳
マギー四郎、マギー審司
それじゃ改めて、書き手さんよろすくお願いします。
・・・今度は即死しませんように。
即死判定って1KBだっけ?
それまで頑張ってもたせましょう
スマソ。1KBじゃ少ないね(汗
いくつだったかな?
48時間以内に25レス以上だったような気が。
また即死したらショボーンですよね。。。どうしたものか。
印象に残った話の感想をものすごい勢いで書いていく、とか?
>>1 乙です。
書き手さん、ガンガッテください。
>>12 じゃあレス稼ぎのためも含めて、前スレで書いた質問もう一回してもいいですかね?
ログまとめサイトも一通り見たのですが、死んだ方を出すとまずいので、一応確認します。
磁石、カリカ、モジモジハンターはまだ登場していないでしょうか?
もし登場していないのなら書かせていただこうと思うのですが、よろしいでしょうか?
書き手不在の芸人さんたちも盛り込んでいきたいと思っております。
ただ、こちらの都合で2週間ちょっと忙しい日々が続きますので、
本格的に執筆するのはそれ以後となってしまいそうなのですが、
もしよろしければお願いします。
あと、だいたひかるとタカアンドトシも書きたいと密かに思っている自分。
即死回避
即死しませんように。
前スレ 876-886の続き
それを見つけた時の佐野は。一体何が起こったのか、にわかには信じられなかった。
樹の根元に腰を下ろした桶田と村田の二人の姿。これは良い。
しかし何故、桶田を中心としたその周囲に血が飛び散ってしまっているのだろうか。
「・・・何が・・・あったんです?」
二人に駆け寄り、名前を呼んで。佐野は乾いた声で問いかける。
間近で見やれば、桶田はもう息をしていないようだった。
流れ出た血も、赤から変色しつつあって。随分時間の経過があった事を伺わせている。
「誰にやられたんです? こんな・・・一体・・・。」
佐野は残るもう一人、村田へと言葉を絞り出した。
「信じられない・・・有り得ないですよ、こんなの・・・・・・。」
震える声は、確実に村田の耳には届いているだろう。しかし、村田は俯いたまま動こうとしない。
所々血の飛沫で汚れてはいたけれど、血の通った肌、微かに上下する肩。
佐野の見た所では、彼は確実に生きている筈なのだけれど。
「ねぇ、渚さん。」
村田の正面にしゃがみ込み、訊ねながら、佐野は村田の肩を掴んで揺さぶった。
「・・・一体、ここで何が起こったんです?」
「・・・見ての通りや。」
ようやく、か細い村田の声が返ってくる。
「桶田は死んでしもた。いや、あいつは殺された・・・・・・いや、ちゃうなぁ。」
「俺が、殺した。」
顔をもたげ、自嘲その物の薄い笑みを口元に湛えながら。告げる村田に、佐野は一瞬言葉を失う。
・・・何で?
何で村田に桶田を殺さねばならない理由がある?
今までずっと側で見てきたこの人は。桶田に対して別に憎しみを抱いてはいなかったはずだ。
袖を分かったあの時でさえも桶田の希望を理解し、それに相応しい行動を自らで取って。
それはいつも通りの彼らのネタやトークでのやり取りのようだったのに。
「全部・・・つまらない、俺の勘違いや。」
内側に疑問が一気に噴出するのが、佐野の表情から見て取れたのだろうか。
村田は力無く告げて、長い息を吐く。
「ホンマ、しょうもない奴やろ。俺は。」
そう呟く村田はもうこの場にしっかりと腰を下ろしたまま、動く気力もないように佐野には思えた。
罪悪感か、それとも自己嫌悪か。
原因はどちらにせよ、今はこれ以上心を閉ざしている場合ではない。
そう、桶田を欠いてもまだ、彼の立てた計画は頓挫してはいないのだから。
現に今この時でさえ、山火事は燃え広がっているのだ。この辺りも、間もなく危険な区域となるだろう。
しかし村田をここに残して一人だけで計画を遂行するには、佐野は傷付きすぎていた。
「・・・・・・・・・・・・。」
荒療治は好きじゃないんだけどな、と口に出さずに一つ呟いて、佐野は右手を村田の顔へと伸ばした。
再び俯こうとするその顔を強引に上を向かせ、間髪入れずに頬へと殴りかかる。
ゴツッと鈍い音が上がり、村田は座り込んだ姿勢のまま、転がるように地面へと倒れた。
「本当に、しょうがない人ですね。」
佐野は倒れたまま動かない村田へ視線をやり、意識して棘のある声を上げる。
「僕を見て驚かなかったって事は・・・少しは計画の事は知っているんでしょう?
だったら、渚さん。あなたが今何をするべきか・・・御存知の筈、ですよね?」
言った途端、ピクッと村田の肩が震えるのが見て取れた。佐野は更に声を荒げる。
「それをわかってても尚、そこで凹んでいるんだったら・・・桶田さんは完全に無駄死にって事になるんですよ!」
けれど佐野の作った拳が自らの頬を打つさまを、他人事のように映していた村田の黒い瞳には。
まだ、元のような力強い輝きは戻っていない。
相方、それ以前に古くからの親友である人物を自らのミスで殺しておいて、今すぐに立ち直れと言うのは
確かに無茶な話である事に間違いないし、逆に瞬時に立ち直るようだとそれはそれで考え物ではあるけれど。
今は、この『ゲーム』を崩壊させるための計画の遂行を果たすべく、村田の力がどうしても必要なのだ。
だからこそ。
「思い出して下さい、気付いて下さいよ。あなたがこれから何をするべきか!」
「・・・・・・俺に何が出来るいうんや!」
佐野の声に被せるように、村田が大声を上げた。
「どいつもこいつも・・・俺なんかに何を求めてんねん! じゃあ何や、俺には希望の匂いでもするのか?
あの鐘を鳴らすのは俺なンか? 冗談やないわ、過剰に期待すんのもエエ加減にせぇ!」
『どうか桶田さんと協力して一緒にみんなを助けたって下さい。』
佐野の言葉に、松丘が携帯に残したメッセージが頭をよぎり、横たわったまま村田は喚く。
「あなたが何と言おうとも・・・あなたはこの島の芸人達をゲームから助け出せる人だと。僕は信じてます。」
けれど、村田の発する大音量にも何一つたじろぐことなく、佐野は村田に告げた。
ドラクロワの自由の女神のように、旗を掲げて群衆の先頭を走れる人間は、そうそう多くはない。
とは言え、かつて光を全身に浴びて、バブルのただ中を駆け抜けたフォークダンスde成子坂のツッコミとして。
そして今またスタートラインへ立ち返り、空へと羽ばたこうとするピン芸人として。
この人なら、村田渚という芸人なら、その任を充分に果たし得る・・・・・・。
そう信じているからこその佐野の訴え。
しかし、村田は。ゆっくりと身を起こしながら、佐野の言葉を軽く鼻で笑って捨てた。
「俺は、桶田を殺した男やぞ。何なら、お前の事も殺すかも知れへんねんで?」
自嘲にまみれた村田の呟き。けれど佐野は退く事なく、村田に微笑んで見せる。
「・・・・・・信じてますから。」
「・・・嘘や!」
村田のヒステリックな叫びと同時に、ヒュッと空気が裂ける音が上がった。
突き出された村田の右腕。その手に握られているのは血に濡れた懐刀。
桶田の命を奪ったその刃で、村田は佐野をも貫こうとする・・・・・・けれど。
佐野は微動だにしなかった。
それは決して反応できなかったからではない。村田の行動をちゃんと目で、全身で、認識した上での静止。
そして、突き出された刃は、小刻みに震えながらも佐野の胸のすんでの所で止まっていた。
「何で逃げへんねん!」
「・・・言ったでしょう、信じてる、と。」
子供のように喚く村田に答えながら、佐野は懐刀を握る村田の手にそっと触れる。
一本一本、村田の指を刀から引き剥がそうとする佐野に、村田はもう抗う事はできなかった。
「・・・せぇいっ!」
狙い澄まして投げつけた出刃包丁は獲物を外し、ビィィンと樹の根っこへと突き刺さる。
慌てて包丁を拾いに走った堀部を馬鹿にするように、野兎はぴょこぴょこと藪の中へと駆け去っていった。
「畜生、何だよ・・・なぁ。」
根っこから包丁を引き抜きながら、堀部は恨めしそうに唸る。
「こんな、一杯いるんだからそろそろ一匹ぐらい取れても良い筈なんだけど・・・。」
世の中には、何でもない切り株に蹴躓いて死ぬ兎もいるというのに。
先ほどから小動物狩りに勤しむ彼のスコアは、未だにゼロのままであった。
「人の肉なら、別にこんなに苦労しなくて済むんだけどなぁ・・・。」
堀部に飯の調達を命じた男が最後に付け加えた言葉。
『何があろうとも人肉だけは材料に使うな。』
それを忠実に守りながらも、彼に精の付く肉料理を食べて貰うために。
堀部はずっと、こうして出刃包丁を片手に森の中を右往左往しているのである。
島の中央で起こった山火事は、ジワジワとその範囲を広げていた。
そして、今も時折この島は強い地震に見舞われていて。
本能的に危機を察したのか、先刻から島中の鳥や小動物がしきりに南の方へと大移動を行っている。
だから、狩猟の経験などはあろう筈がない自分でも、今なら芸人を襲った経験を活かして
多少の獲物は確保できるのではないか。
そんな当初の堀部の安易な予想も、現実には容易に裏切られてしまっていた。
堀部の苛立ちは徐々に焦りに変わる。
もしも、このまま一匹も獲物を狩る事が出来なかったらどうすればいいのだろう。
いや、仮にこの後、何とか獲物を狩る事が出来たとしても、持って帰った時に浜田が空腹の余り
機嫌を損ねてしまっていたら?
仮定の想像をしてみる度、堀部が辿り着くのは自身が斬り殺される、そのヴィジョンで。
そんなはずはない、と自らに言い聞かせる呟きは、しかしして彼の心の平安を揺るがせる呪文のようであった。
ガササッと藪をひっきりなしにかき分けながら、堀部は野ネズミや野兎の気配を探す。
本来上策である筈の、一所でジッと小動物がやってくるのを待ちかまえるなどと言う作戦は、
もう今の堀部には採っている余裕など無かった。
とにかく早く獲物を見つけなければ。そして捕らえなければ。
強迫観念に取りつかれたかのように、慌ただしい動きで茂みをうろうろしていると。
急に開けた場所にたどり着いてしまい、堀部はチラッと視界に入った人の姿に慌てて茂みに身を隠した。
それは森を通る比較的広い道の側。
堀部からは20m程離れた、一本の樹の根元に三人がそれぞれ腰を下ろしているようである。
・・・どこかのトリオだろうか。
茂みからひょこっと顔を出して、彼らを観察しながら堀部は小さく呟いた。
幸い、彼らからは堀部に気づいた様子が感じられない。
一人は仮眠でもしているのか、樹により掛かったままピクリとも動いていないようだったし。
そしてもう一人はどうも三人目に左腕へ布を巻き付けられているようである。
幾ら向こうが万全の調子でなさそうだとしても、三対一で勝てる自信は堀部にはない。
食料を奪うチャンスではあるけれど、ここはまぁ気づかれなくて良かった・・・・・・
そう思いながら、茂みの中に戻っていこうとした、その時。
二人目の包帯を巻いて貰っていた男が動き、三人目の男の姿が堀部の目に留まった。
小柄な男。その頭には大振りの白い布が、バンダナのように巻き付けられている。
ドクン。
堀部の心臓が一際大きい音を立てた。
男の黒い髪に、布の白さは良く栄える。堀部の目は、アッという間にその白さへと釘付けになった。
ドクン、ドクン、ドクン・・・・・・
早く目を背けよと訴えるかのように、堀部の心臓が激しく音を立てる。
ねぇ、僕をバラバラにしたのは、誰?
・・・・・・ねぇ、僕をバラバラにしたのは、誰?
聞き覚えのある、しかしここでは聞こえる筈のない声が、堀部の耳に届く。
君、僕の太股の肉でロールキャベツ作っただろ。
・・・・・・君、僕の太股の肉でロールキャベツ作っただろ。
あれ、違うな。腕の肉だったっけ?
・・・・・・あれ、違うな。腕の肉だったっけ?
囁く声と共に聞こえる、ノイズじみたピアノの音色が堀部の思考をかき乱す。
知らず知らずの内に、堀部の全身から汗が滲み出していた。
それでも堀部の鼓動をメトロノーム代わりにでもしているかのように、なおも乱れた音色は堀部を包み込む。
それは彼の心に再び狂気を呼び覚ます、革命のエチュード。
何とか逃れようと両手で耳を塞ぎ、その場にうずくまる堀部の脳裏に光が瞬くように何かがちらつきだした。
ウィンドウなりタブなりを閉じ、キャッシュから削除しても尚、記憶から排除する事が出来ないグロ画像のように。
いや、それはグロ画像その物であっただろう。
赤い血、裂ける肉、覗く骨。蠢く器官、そして・・・・・・一面の闇。
ねぇ、僕の身体、不味かったとは言わせないよ?
・・・・・・ねぇ、僕の身体、不味かったとは言わせないよ?
囁く声はピアノの音色と入り交じって決して止む事はない。
正常な精神には不快以外の何物でもない、この苛めから逃れる方法はただ一つだけ。
右手に握っていた出刃包丁を振り上げながら、堀部の口からもはや人ならざる声が、上がった。
木々の枝の隙間から見上げた大陽は、真上の方へと移行しつつあった。
村田は自分のバッグから取り出したヘネシーで佐野の左腕の傷を消毒し、
畜産農家から盗ってきた着替え用のシャツを裂いて作った、包帯代わりの布を巻き付けていた。
指先に付いた琥珀色の液体をちろっと舌で舐め、村田は一つため息を付く。
「ホンマは・・・これ、『ゲーム』から上手く逃げ出せた時・・・みんなで飲もうって思ってた。」
「大丈夫ですよ。まだ半分以上残ってますし、後で飲みましょう。」
「・・・せやな。」
答えながらも村田の視線はチラチラと桶田へと向けられていた。
佐野もそれに気づいてはいたけれど、その事については敢えて口を閉ざしている。
正直、どれだけあと生きられるのかも分からないけれど。彼の残りの人生に於いて、
確かにそれは常に意識していかなければならない自らを縛する鎖・・・いや、彼の心を拘束する十字架に似ていて。
けれど今だけは。もうしばらくの間だけはその鎖の存在を忘れていて欲しい。
一人で十字架を背負わねばならないのなら、その一端に触れ、支える事を許して欲しい。
口には決して出せないけれど、そんな事を佐野は漠然と考えていた。
何せ、結果的にではあるが彼をこの『ゲーム』に引き込んだのは佐野なのだから。
「渚さん。」
記憶を頼りに何とかそれらしく包帯を巻き終えた村田に、佐野は呼び掛けた。
「・・・ん?」
「さっきは、殴ったりしてすみませんでした。」
「・・・エエよ。気にせんといて。」
薄く赤みを帯びている自分の頬に軽く手で触れ、村田は答える。
「ホンマにお前には助けられてばっかりやな・・・」
ありがとう、と呟きながら佐野を見上げようとするその表情が、不意に強張った。
それは奇声、としかあらわしようのない音。
間近で突如上がったかと思うと、それは急にかき消えて。
「渚さん!」
ぶつぶつと何かを呟きながら誰かが足早に近づいてくる気配に、佐野が村田の名を呼ぶ。
そうだ、まだ『ゲーム』は終わってはいないのだ。
「誰かを助けるために・・・誰かと戦わなアカンのって。」
つらいな、と誰に言うでもなくポツリともらし、村田は地面に転がる佐野の日本刀へと手を伸ばした。
本来の持ち主が拾い上げようとするそれよりも早く、鞘に収まったままの重たいそれを何とか両手で掴み上げて。
即座に佐野の脇を掠めたその向こう側へと村田は日本刀を突き出す。
どうやら佐野の身体で向こうは村田の動きが見えなかったらしい。
カウンター気味に村田の突きは佐野へと包丁を振り下ろそうとしていた男の腹部に命中した。
「・・・渚さんっ!」
「怪我人は黙って見とき。」
予想外の攻撃に、男が腹を押さえてうずくまるその隙に。素早く立ち上がり、佐野と位置を入れ替えて。
男を・・・堀部を睨み付けながら村田は不安げに声を上げた佐野へ言い放つ。
柔らかい口調ながらもその奥底に凛とした芯のような物が感じられ、佐野は懐刀を構えながらも
自ら堀部へと斬りかかろうとするのは止めた。
「・・・今までずっと考えてた。でももう迷わない。少なくとも今、そう決めた。」
村田は日本刀を鞘から抜き払う。
「誰に何と言われようとも、僕は僕のやるべき事をやる。だから・・・・・・」
落ち着いた口振りで告げながら、村田は一度傍らの桶田へと視線をやった。
桶田のその口元に、ふっと笑みが浮かんだように見えたのは、村田の気のせいだろうか。
「僕らの邪魔する奴は・・・もう、容赦せぇへん!」
堀部へと視線を戻し、村田は声を張り上げる。
同時に刀を振り上げて、堀部へと斬りかかった。
スレ立て乙、という事で早速書き貯めてた文を投下。
村田さんの立ち直りが早すぎる気もしますが、まあそれはそれと言う事でw
成子坂編の年内完結を目指して、このスレでもよろしくおねがいします。
>15
アメデオとチャップメンとフラット以下の人力芸人は入ってますか?
(キングとCUBEの死亡は確認できたのですが)
この辺も登場してなかったと思いまして、
もしよければ書かせて頂きたかったりします
新スレになって書き手さん増加の予感?
フットって、2人とも生きてますか?
え〜、新参者ですがよろしくお願いします。
それでは、書かせていただきます。
得体の知れない気持ち悪さとはこういうことを言うのだろうか。
生ぬるい風が全身を包み込み、体中の組織が徐々に熱を帯びていく。
だが、不思議と汗は出なかった。
――――― あれから、どれくらい経っただろう。
男はゆっくりとあの時の光景を思い出した。
このゲームが始まって、そう間もないころの記憶。
――――― 俺は、悪くない。
頭ではわかっている。あれは俺のせいじゃない。
けれど、あの瞬間は今も鮮明に俺の脳に焼きついている。
あいつの顔、あいつの声、あいつの呼吸、あいつの……血。
思わず自分の手を見る。今でもはっきりと思い出せる感触。
あいつを刺したときの、妙にやわらかい、あの手応え。
――――― 悪いのは、あいつだ。
何回も何回もそう自分に言い聞かせる。
だが、どこか体の奥の部分に、罪の意識が巣食っていた。
それは、俺があの時を思い出すたびに、確実に大きくなっていく。
きっかけを作ったのはあいつだ。
あいつが突然襲い掛かったりしなければ、こんなことにはならなかった。
正当防衛だ。俺に非なんてどこにもない。
だけど、俺は、確かに、手をかけた。
偶然なんかじゃない。自分の意思で、あいつを刺した。
それは紛れもない真実だった。
「……!」
涙が出た。あいつを殺してから、初めての涙だった。
少し冷静になったからだろうか。
別に、悲しんでいるわけじゃない。
ただ、怖かった。
怖くて怖くてしょうがなかった。
男は震える手でメガネを外し、スポイトでたらしたようなその一滴の涙を、
何度も何度も、強く擦った。
『Nと!』
『Sで!』
『ビタッ!!』
ふと、漫才をやってたころの自分を思い出す。
楽しかった、それなりに幸せだった自分。
相方の顔。ちょっとケンカ腰のつっこみ。
俺が考えたどうしようもないボケ。
ネタあわせ。お客さんの笑い声。
なんだか全てが懐かしかった。
その途端、涙があふれ出た。
スポイトだったはずの涙が、途端に大量に流れ出た。
流れた涙は頬を伝い首を伝い、赤い布地にそっと染み込む。
……佐々木は、今の俺を見たら何て言うだろうか?
放送で名前は呼ばれていない、だからきっと生きている。
会おうと思えば会えるかもしれない。
けれど、その時の俺は、本当に俺でいられるだろうか?
磁石の永沢喬之は、声を殺して、泣き続けていた。
「もう、死体ばっかりですね」
至極冷静な様子でカリカの林克治が呟いた。
「やめろよその言い方。笑い事じゃないんだから」
それに反発するように返したのは同じくカリカの家城啓之。
「これでもまだそこそこの数生き残ってるんですよね……信じられない」
後ろにいる2人の会話を聞きながら、磁石の佐々木優介は独り言のように呟いた。
視線の先には、中身は違えど幾度となく見た死体の山がまた広がっていた。
「これは……コージーさんですね、こっちは……星野卓也さんですか」
やはり冷静に林が呟く。
「星野さん……天国でも自分実況してるんでしょうかねえ」
「ま〜た不謹慎なことを〜」
相変わらずのカリカのやりとりが繰り広げられる。
この2人と佐々木が出会ったのはほんの数十分ほど前のことだった。
別にどちらから声をかけたというわけではない。
歩いている途中に偶然出会い、そのままなんとなく行動を共にしている。
磁石とは事務所も芸風も違うカリカ。
危険だといえば危険だが、佐々木には雰囲気でわかるものがあった。
ああ、この2人は、流れに身を任せているだけなのだなあと。
誰かを狙うでもなく、何か目的があるわけでもなく、
それこそ散歩でもしてるかのような雰囲気がカリカにはあった。
少なくとも、佐々木にはそう感じられていた。
佐々木がそう思うのは、自分にも似たところがあったからなのかもしれない。
今の佐々木には、不思議と生への執着心が薄れていた。
それは、1番最初に鉄拳が殺されたときからそうだった。
眼前に広がった光景とは対照的に、不思議と、落ち着いていた。
他の芸人が殺された現場に偶然出くわしてしまったときも、
物陰から冷静にそれを見ていたこともある。
心のどこかが冷め切っていたのだ。
ただ、1つ気がかりなのは……
「どこにいますかね、永沢さん」
急に乾いた風が頬を掠めた。
「さあ……どうでしょうね」
佐々木は前を向いたまま答える。無意識のうちに青い袖口を握り締めていた。
永沢がまだ生きていることは確かだった。
このゲームに参加して、佐々木は一度も放送を聞き逃したことはない。
だが、依然として永沢の姿は見当たらなかった。
それなりに探し回っていたのにもかかわらず、である。
別にそれほどコンビ仲が良かったわけではないが、
このまま相方に合えないまま死んでいくことを想像すると、
微かにやるせない気持ちになる。
「しかし重いなあ〜これ!」
突然家城が、両手に持っているものを振り回しながら叫びだした。
「おい、物騒なもの振り回すなよ」
見るからに無骨なその武器が風を切る。
チェーンソーである。
「佐々木さんは軽そうでいいですね〜」
家城は佐々木の右手に包まれた拳銃に目をやった。
そして次に林を見る。
「……俺の武器のほうが軽いだろう」
家城はその言葉を待っていたかのようにケラケラと笑った。
そういえば武器がなんなのか聞いてないな。と思いながら、
とりあえずろくなものではないことを佐々木は悟った。
「笑ったね」
突然家城が佐々木を振り返ったと思うと、妙ににやけた顔で近づく。
「今、かすかに笑ったでしょう」
「……?」
佐々木は何のことを言われているのかわからない。
大体、話の流れ上、なぜここで佐々木自身に会話がふられるのかが理解できなかった。
「その笑顔、好きです。15アイル獲得」
家城はそう言ってまた林に視線を戻し、何事もなかったかのように歩き始めた。
少々呆気にとられた佐々木ではあったが、自分の前を歩いていく2人の背中を見た後、
再び、佐々木は小さく笑った。
とりあえず、まずはプロローグまで…。
これからちょくちょく磁石編を書かせていただきます。
文章が下手な上に芸人さんたちの交友関係とかも全く詳しくないので、
現実との変な食い違いが出てくるかもしれません。
まあ、何とか頑張ってみようと思いますので、よろしくお願いします。
パラシュート部隊編書かせてもらってもよろしいですか?
まだ出てませんよね?
磁石も最近気になるだけに、興味でてきました。
カリカはすごく飄々としてカリカらしい。
書き忘れました。
>>39 【結合】
佐々木優介(磁石)・カリカ
44 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/11/21 20:18
モジハンも楽しみにしてま〜す。今ひとつキャラがわからん人たちなので、
余計に。
45 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/11/21 20:31
去年、爆笑田中一派の話を書かせていただいた者です(奥様は社長さんとは別人です)。
同じくタイタン芸人であるキリングセンス&GO・JOの短いエピソードを、
年内に貼らせていただきますが、よろしいでしょうか。
冷や中マジで解散するとはオモワンカッタ…
芸人続ける気あるのかどうかは前々から怪しかったけど…
>45
よろしくおながいします。
>>45 冷や中は設定上まだ生きてますよね……どうしましょうかw
ところで、話ずれますけど友近や森三中もまだ生きてますよね?
生存者状況に入ってないから気になっているのですが……。
特に森三中はログまとめサイトで黒沢嬢が大島嬢を撃ったところで終わってて、
ものすごく気になってますw
自分の勘違いかもしれないですが、どうでしたっけ……?
vol.4,5っていつになったら読めるようになるんだろう…
気になって仕方ない
磁石編と平行してもう1つ。↓
「俺ってさあ……悪いことしてるのかなあ」
それが目の前にいる男への最後の言葉だった。
その直後、「ゴキッ」という鈍い音が響く。
「と……東京は怖いところとです…」
顔面を血に染めた熊本訛りの男は、そう言ってあっけなくその場に崩れ落ちた。
鼻は完膚なきまでに叩き潰され、
脇腹には何か鋭いもので貫かれたような傷がある。
どちらにも共通していることは、今なお血が溢れ続けていること。
「俺に会ったのが運の尽き……? 残念だったねえ。でもよく頑張ったほうかな」
ハマカーンの神田伸一郎はそう言うや否やおもむろに金槌を振り上げ、
もう動くことない標的めがけて再度振り下ろした。
金槌は仰向けになった標的のちょうど眼球のあたりに命中し、
「グシャ」っという先刻とはまた違った音を響かせる。
「ほら、拳銃ばかり使うと弾が勿体無いから……ね」
神田はそう言った後、天使のような顔で笑った。
「じゃ、次はあなたの番ですよ」
神田は横目でちらりとそばに倒れている男に目をやった。
「や……やめてくれ…助けてくれ……頼む」
急に矛先を向けられた男の顔が恐怖で歪む。
だが、その流れ出る血の量を見れば、
どのみち男が助からないだろうことは誰の目にも明らかだった。
「ふふ……じゃあ、なんか面白いものまねやってくださいよ」
神田が、今度は悪魔の笑顔で呟く。
「……じゃ、じゃあ、えなりかず」
男の声が唐突に止まった。
「……それ、もう見飽きました」
男は何が何だかわからない様子で眼球をぎょろぎょろと動かした後、
「キュヘッ」という短い音を口から出して、そのまま絶命した。
「死に際だからとっておきのものでも出してくれると思ったんだけど」
神田はそう言いながら、男の首に突き刺した槍をゆっくりと抜いた。
「つまんないなあ……ムカツク」
一瞬、左腕が疼く。かすり傷程度の銃弾の通り道がそこにはあった。
「まともに当たらないでよかったな……けどあんな武器持ってるなんてさ」
神田はいつぞや狙った獲物のことを思い出していた。
「何にも考えないで狙ったからな〜。今後の教訓かあ?」
最初に自分の銃弾が命中していたから油断してしまったのだろうかと考える。
だが、神田はすぐにその記憶をかき消した。
今となってはどうでもいいこと。その獲物はもう死んでいるのだから。
神田は槍と金槌を足元に放り投げ、天を仰いだ。
両手をゆっくりと広げむせ返るような血の匂いを嗅ぐ。
「俺ってさあ……悪いことしてるのかなあ」
堕ちた天使か、悪魔の落とし子か、正気を失った人間か。
その区別はもう誰にもつかなかった。
【ヒロシ ホリ 死亡】
今回はとりあえずこれで終わりです。ハマカーン神田狂わせてしまいました。
>>44さん、モジモジハンターはもう少し待って……。
で、パラシュート部隊書いてもよろしいでしょうか。
パラシュート部隊書かせていただきます。
挙動不審さん、乙です!
貴方の書かれる芸人さんが私も好きな人ばかりで、なんだか凄く嬉しいです。
磁石編にハマカーン神田編、これから書かれるであろうモジモジハンター編、並行しての執筆作業は大変かと思われますが、楽しみに待たせて頂きますね。頑張って下さい!!
個人的には神田が気になります。普段優等生キャラっぽいだけに、狂ったら怖そうだ・・。
「・・・・・くっそぉぉう!」
パラシュート部隊斉藤は、死体を見るたび半べそをかきながら自暴自棄をしていた。
ぺぺもどこ行ったんだよ・・・・・。オレどうしたらええねん・・・・・・。
歩きながらずっと泣いていた。人が人を殺して何になるんだろうか。
なんでこんなことせなあかんねん・・・・・・。斉藤は何度も何度も石に額をぶつけた。
こんなことしたくないしたくないしたくないしたくないしたくないしたくない―――――。
額からツツーと血が流れてきた。
「こんなのちっとも痛くないよ・・・・・・・。」
またぶわぁっと泣き出した。
「・・・・・・・まぁたお前泣いとんのか!」
振り向くとそこには相方ぺぺがいた。
「・・・・・?何してんねんお前、血ィ出てるやん。お前どこにいたんだよ、探したやん」
「はは・・・・・」
とりあえず相方が見つかって気が抜けた。イヤ、今一瞬誰かに殺されるかと思ったのである。
「あ?ぺぺこそ、その肩・・・・・・」
ぺぺの肩は包帯に血がにじんですでに真っ赤だった。
「あぁコレ?コレはね・・・・・・イヤ、・・・・・ちょっとね・・・・・」
「ふうん。これからどうするの?」
矢野の顔がくもった。
「・・・・・・ちょっと今・・・・・危ないねん。・・・・・逃げるよ」
「おぉいおいおい!ちょぉ、待てって、危ないって何が?」
矢野はだまったまま早歩きした。
それから会話が途切れた。斉藤はどうしても何が危険なのか聞きたかった。
しかし、あいかわらず矢野の顔はこわばっていて聞くに聞けなかった。
やはり歩くたびに見つかる死体。頭がなかったり、何かを訴えているかのように見えたり・・・・・。
また斉藤は泣き出した。
「・・・・・改めて言うけど・・・・やっぱり泣き虫やな。」
矢野が、泣いている斉藤を見て言った。やっと口を開いてくれたので安心した。
「でもな、もう泣くのやめ・・・・」
かぼそい声でつぶやいたが斉藤にはちゃんと聞こえていた。
声を殺して・・・・・やっぱり泣いていた。
「・・・・・・なぁ、何が危険なのか・・・・・教えてくれへん?・・・・・」
おそるおそる斉藤は聞いてみた。 ・・・・・・・・・・・。
矢野は何も言わない。・・・・・だろうな。
そのとき、急に矢野はピタッと止まり後ろを振り返った。
「お前に・・・・心配かけたないねん」
また早々と歩き出した。 心配?何が?
斉藤にはなんのこっちゃわからなかった。
2人が歩く道はどんどん山の奥の奥へと入っていった。
「こんな山奥に小屋なんかあんのかい・・・・・・・」
徐々に不安がこみ上げてきた。でもやっぱり矢野の様子がおかしい。
だまってついていくしかなかった。
足がパンパンである。
「ぺぺ〜 もう、オレ疲れてんけど〜。」
「大丈夫やって。もうすぐやから」
それ何回言ってんねん・・・・・・。斉藤は疲れに負けて座り込んでしまった。
矢野は辺りを見まわし、斉藤を背負おうとした。
「そ、そこまでせんでもええて!それにお前、肩・・・・・」
「逃げなあかんゆうとるやろ!」
いきなりキレだした矢野に、目が点になった。
「あ・・・・・ゴメン。なんでもない・・・・・・」
斉藤を背負い、また歩き出した。
「いっ・・・・・・。」
「ほらーやっぱり肩痛いんやろ?オレもう足大丈夫やから降ろしてくれって」
矢野は斉藤を降ろした。斉藤は自分のカバンから包帯を出し、矢野の肩に巻いた。
「ほな、もう大丈夫やろ。これ誰にやられてん。」
矢野は何も答えずにカバンを持って歩き出した。そんな矢野の冷たい態度に
また泣いた。でも矢野の反応はなかった。
いつになく冷たい態度にいいかげん怒りがこみ上げる。
「さっきからなんやねん!小屋は見つからんし、隠し事はするし、包帯の礼もないし!」
「しっ!静かにしろ!誰かに見つかったらどなぃ・・・・・」
「・・・・・どうしたん?」
斉藤が振り向くと、そこには青木さやかがいた。
「よぉ!!奇遇やな!」
「ち・・・・近づくな!危ない!」
青木さやかは不気味な笑みを浮かべながら歩いてきた。
「やっぱりココにいたのね」
「やっぱりココにいたのね」
「きさま!なんでココがわかった!」
「女の勘よ」
矢野は急いでカバンから武器の弓矢を出して青木に向けた
斉藤は事態が飲みこめず、きょとんとしていた。
「弓矢ねぇ。そんなもの私に向けてもムダよ。当たらないんだから。」
青木は散弾銃を取り出して矢野に向けた。
「お、お前、ぺぺに何するねん!」
斉藤は青木の銃を奪おうとしたが、青木は斉藤の腹を蹴った。
「いってぇ!」
パンパンッ
静かな山奥に銃声が大きく鳴り響いた。
「ぺぺ!」
矢野の肩に銃が当たった。
その場に倒れこむ矢野。事態を飲みこめない斉藤は再び涙があふれた。
「あら、2人いっぺんに殺してもいいのねぇ。・・・・・・・・・・・覚悟しな。」
「・・・・・・斉藤!戦え!」
「え?!」
「戦うんや!早よ戦え!」
「うるさい!2人とも殺してやる・・・・・殺してやる・・・・・殺すのよ、絶対・・・・・」
青木の顔は例えようもないくらい恐ろしい顔つきをしていた。
斉藤は弓矢を拾った。 青木は斉藤の足に向かって散弾銃を打った。
――――――痛ッ!
左足に激痛が走った。しかし――“戦え” この言葉を忘れてはいない。
立ち向かう!今のオレは泣き虫じゃない!
ヒュッ トスッ
何かに刺さるような鈍い音がした。 ドサリ
「殺す・・・・殺すのよ・・・・絶対・・・・・に」
そう言い残して青木は倒れた。矢は青木の心臓に刺さったのだ。
斉藤は弓をゆっくりと手から離した。当たった――――――。
「斉藤!やったやん!当たったやん!」
斉藤は大慌てで矢野の元にかけよった。
「ぺぺ、肩・・・・大丈夫か?」
「なんとか平気や。・・・・・・ありがとうな・・・・・。オレ・・・・やっぱりお前に心配かけて・・・・」
斉藤はすべてわかった。矢野が隠し事をしていたのは青木に追われていて―――んで・・・・
――――ん?――――アホ!何が「心配かけたないねん」や。
「お前も、足大丈夫?」
「ん・・・・・」
2人はその場で休むことにした。
ただ、斉藤には「人を殺してしまった」という妙な感情が生まれていた。
【青木さやか 死亡】
初参加で、パラシュート部隊編書かせてもらいました。
文章ヘタクソですいません・・・・・。いやはや・・・・・。
しかもワケわからんところで青木さやかが出てきてるw
今後もパラシュート部隊書かせていただきます。よろしくおねがいしますです。
青木さやかって既に殺されてなかった?
・・・・・・・・・・・・・・・・マジっすか?! _| ̄|○
人から話聞いて読んでみたいと思ったんですが
ここにあまり詳しくなくて一昨日やっと見つけました。
(芸人バトルロワイヤルって聞いてたのでyahoo検索引っかからなくて;)
それから一気に読んだんですけど、すごかったです。
何かショックでぼーっとしてるんですけど
なにか書きたくて。本当にすごいなと思いました。
途中で色々もめてるとこもあって(荒らしさん?)、
泣いてる自分って下らないのかなとかも
思ったんですが、やっぱり読めてよかったなと思いました。
HPされてるコモさんもありがとうございます。
すごい大変なことなのに。これからも頑張って下さい。
書き手さんたちも本当にありがとうございます。
しょうもない感想でごめんなさい。
これからも楽しみにしています。
>>57-
>>61 削除させてもらった方がよろしいでしょうか。
番外編として楽しませて頂いたらどうでしょう?
既に死亡している芸人を間違って使用してしまったということは
今までにも何回かありましたし。
青木さやかっていつどうやって死にました?
72 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/11/22 21:05
すいません、大変迷惑をおかけしました。
>>58〜
>>71まで削除依頼を出しました。
削除され次第、
>>57から続きを書かせていただきます。
>>雪乃丞さん
青木さやかさんって本編(?)ではかなり特徴のない殺され方をしているので、
こうやって雪乃丞さんが青木さやかさんらしさを出してくれて嬉しいです。
重複したことはあまり気にしないで下さい。
すごく楽しく読ませていただきました。
>>@挙動不審さん
佐々木さんとカリカの合体…続き楽しみにしてます!
あの…多分誰も気にしちゃいないと思うのですが、
アメデオチャップメン投下してもよいでしょうか?
生い茂る背の高い草木の中から、一人の女が顔を出していた。
「気づかれなくて……よかった」
そう呟いたのはだいたひかるだった。
だいたは視界の隅に収められているその異様な光景に、何とも言えない感情を覚えていた。
気持ち悪いとも違う、怒りでも悲しみでも驚きでもない、不思議な感情。
だいたはつい先刻に見たその一部始終を思い出し、身震いした。
数メートル先に転がるのは、見るも無残な死体。ヒロシ、そして、ホリ。
ハマカーン神田に嬲り殺された2つの人間が転がっていた。
あたり一面血の赤で染まり、ある種芸術的なものを感じさせられるほどでもあった。
「どうして……こんなことができるんだろう」
だいたはある意味で尊敬に近い気持ちを覚えた。
とりあえずいつまでもここでのんびりしていても仕方がない。
またここに神田が戻ってこないと言う確証なんてどこにもないのだ。
そうして、だいたが立ち上がろうとしたその時。
「……あれ」
低い男の声がした。
「……これ……ホリ?」
モジモジハンターの肖田シロは目を細めながらそう言った。
「う……そんな、やっぱり……う、うえええええええ!!!」
肖田の後ろに立っていた男が胃液を吐き散らした。
だいたは息を潜めてその2人を見ていたが、後ろの男を見て再び鳥肌を立てた。
嘔吐を終えて肖田を見上げるその顔は、殺戮を繰り返した男の相方。
ハマカーンの浜谷健治であった。
「……何回死体見たんだ。そろそろ慣れたら……」
肖田は浜谷の方を見ずに呟く。
浜谷はその言葉に対して何かを言いかけたようだったが、
再び出かかった胃液と共にその言葉を飲み込んだ。
「……神田の仕業か?」
肖田が質問を変える。
「……わ、わからない。けど、あのとき確かにホリさんは言ってた。
神田に殺されそうになったって……」
浜谷が切れ切れといった感じで言葉を発する。
どうやら2人はこの惨状が神田の行いによるものだと感づいてるようだった。
「狙った獲物は逃がさないってか」
今度は浜谷に視線を合わせながら言う。
「……あいつは、そういうところがあるんですよ。」
浜谷は肖田のほうを見なかった。何か別のことを思い出しているような顔だった。
「……ハローバイバイの2人から、神田がぜんじろうさんやクールズを襲ってたって、
それ聞いたとき、あいつなら正直やりかねないような気がしたんです。」
浜谷が今にも泣きそうな顔で言う。
「けど、俺、まさか……まさかそんなことって思ってて、信じたくなくて、でも、でも……」
浜谷の声が震えた。
「……本当に止められるのか?」
肖田が問う。
「……わからない、わからないけど、会わなきゃ……とにかく会わないと……」
浜谷の目から涙が溢れ出た。
その大量の涙は、撒き散らした胃液の上にポチャンポチャンと落ちていく。
「……頼りないんじゃないか?」
肖田が一歩踏み出す。
「俺は…まだ死にたくない。もし神田に襲われたらそのときは……」
肖田は手に収めた小さな銃をクルッと回転させ……受け止め損ねた。
「あっ」という肖田の小さな呟きと同時に、銃は地面にカツンと落下する。
「プッ……」
浜谷が思わず吹きだす。
「……笑う元気があるんならさっさと行くぞ、おい。」
肖田が銃を拾いながら言う。
「もっと完璧にかっこつけてくださいよ」
浜谷が立ち上がりながら笑った。
「……潰すぞ」
肖田もまた、笑っていた。
だいたは去っていく2人に声をかけようか最後まで悩んだが、結局そのまま見過ごした。
会ったら、きっと神田のことを言わなければいけなくなるような気がした。
ここで見た神田の殺戮を伝えなければいけなくなるような気がした。
それがだいたには少し抵抗があった。
それに、自分が加わったところでお邪魔虫になるに違いない。
けれど。
だいたは最初に支給された武器である虫除けスプレーを手に持った。
手に収めたそれをクルッと回転させ……受け止め損ねた。
スプレーはそのまま茂みの中に落ちてゆく。
だいたはそのスプレーを拾いながら、静かに笑った。
事の顛末を見届けたいというただの好奇心か、2人に情が移ったのか、
だいたはこっそり2人の後をつけることにした。
だいたひかるが潜んでいた茂みのすぐ近く、
土の壁に開いた、人が2人入れるくらいのそこそこ大きな横穴の中。
磁石の永沢はそこにいた。
涙は既に止まっている。
とにかく、音を出すわけにはいかなかったから。
永沢もだいたと同じく、近くにいながらも神田との対峙を回避していたのだ。
背の高い草やツタに覆われているため、この穴の存在は外からはほとんど気づかれない。
永沢自身、この穴を発見したのは運のいい偶然としか言いようがなかった。
そっと穴から顔を出す。
そこには、2つの死体が転がっている他には何もなかった。
「ふぅ……」
永沢は安堵のため息をつき、再び穴に潜り込む。
そして、神田の豹変ぶりを思い出した。
「怖いなあ……本当に」
そう言いながら、ちらりと傍らに目をやる。
そこには永沢に支給された武器である、穴あき万能包丁があった。
「……俺も……同罪かあ」
神田ばかり非難はできないなと思った。自分だって人を殺しているのだから。
あのとき、いつのまにか寝てしまっていた永沢を起こしたのは、
1発の銃声と、悲鳴だった。
それを聞いた瞬間、永沢は体を強張らせた。
近くで何かが起こっている。寝起きの永沢でもそれはすんなり理解できた。
そっと顔を出した永沢の目に映ったのは、ヒロシとホリに襲いかかっている神田の姿。
すぐに顔を引っ込めた永沢は、そのまま時が過ぎるのをじっと待っていた。
それからどのくらいたったか。
物音が聞こえなくなって数分後、今度は誰かの話し声が聞こえてきた。
見ると、モジモジハンターの肖田と、ハマカーンの浜谷。
そしてそれを茂みの陰から見ているだいたひかるが目に映った。
3人とも敵意がないことは一目でわかったが、
永沢は神田のときと同じようにすぐに顔を引っ込めた。
―――――――― もしもあの時と同じようになったら……
そう考えると、誰かと接触する気にはなれなかった。
もっとも、ここが禁止エリアに指定でもされない限り、
最初から永沢はここを出るつもりはなかったのだが。
「佐々木は……正気でいるかな。」
永沢は神田の姿を思い出しながら呟いた。
【浜谷健治(ハマカーン) 肖田シロ(モジモジハンター) 結合】
え〜、最近1日に1回は書いてる気がするので、1〜2週間ほど休憩します。
(もしかしたら細かいものをアップするかも)
調子に乗って、もともとは書く予定のなかっただいたひかるやハローバイバイまで
文中に登場させてしまいました。自分で自分の首を絞めてるかのようですな。
最後に、一応補足。
今書いた
>>76-81は、上の
>>34-39と、
>>50-51からの続きとなります。
モジハン、肖田ってどっちだっけか。
>>挙動不審さん、乙カレー!
いや〜神田さん気になりますねー!!!
>>83 肖田さんは、ボケの方です。
>>84 ありがとう。
ボケっつーと・・・あれ?
目が怖いほうかな?
>>85 そう、目が怖い方。「・・・・・・・・・じゃあショートコント」って言う方ね。
>>86 ありがとう2。
最近モジハンと磁石好きになったんで、楽しみにしてます。
書き手さん方かっこいいなあ。
すみません、アメデオ捨て逃げさせて頂きます。
バタン
森枝の目の前で人が倒れて死んだ。
とどめを刺される前に逃げてきたのだろうか。
胸部を刺されたらしく、出血部分押さえている。
洋服が真っ赤に染め上げられていた。
だらだらと赤い血が噴き出していた。
「死にたくない」
ヒューヒューと息が奇妙な音を立てて漏れた。
その音も次第に止んでしまった。
一応これがダイイングメッセージになるのだろうか。
倒れた男の腹を足蹴にしてその死を確かめる。
死にたくないそう言って同業者の男は死んだ。
お互い誰か名も知らない、ただ同じ芸人であるという事しか分からない。
侘びしさと恐怖と見ず知らずの人間に看取られてひっそり死んでいくのだ。
外にいる人間にこそ悲しんでもらえるものの、
中にいる人間にはただ、1人の男が死んだ。
ただそれだけのことでしかない。
殺されるか?
生きるか?
ならば殺せ。
選択肢はそれ程多くはない。
男の顔がもの凄い形相のまま死後硬直を起こしだした。
ああ、俺もこうなるんだな。
一瞬、死んだ男の顔が自分の顔にダブって見えた。
背筋を冷たい汗が流れて落ちる。
その汗を出した原因が恐怖なのだろうか…。
数人ごと呼ばれて吐き出された荒野。
森枝が呼ばれる前に出ていったハズの誰も自分を待った形跡はなかった。
このまま1人で時間を過ごしていったところで生き残れるとは思えない。
まだゲームは始まったばかり。
何をするにしても、それまでの時間人を殺す以外やる事はない。
ふと相方の大川原や、同期、先輩後輩の顔が次々と思い出される。
誰かを探してみようと思った。
生きているだろうか。
その中の誰かに殺されるだろうか。
見ず知らずの誰かに殺されるくらいなら。
それでも、
「俺だってまだ死にたかねーよ。」
ぎゅ、と唇を噛んで震える体を押さえた。
芸人バトルロワイアル。
その説明を聞いた時の大川原の顔が忘れられなかった。
鉄拳が質問をして、殺された瞬間。
ただでさえ重かった空気が、さらに異様なものとなった。
その中で1人…大川原は笑った。
薄く口角をあげただけで一見だけでは笑ったようには見えない。
でも、森枝はあれは笑ったのだと、妙に確信した。
どうして笑ったのか。
会う事ができれば、聞きたいと思う。
殺す以外にやる事がなければあとは殺されるだけだ。
それまでの時間の生き甲斐を見つけた気がした。
人間生きる目的さえ見いだせばその目的のために必死になって足掻く。
この場においてはそれが単なる気休めだとしても、だ。
とりあえずこの場所から去らなければ。
死んだ男を殺し損ねたと思った誰かが血の跡を追ってやってこないとも限らない。
歩いて行く内に木立が並ぶ一カ所で塊を見つけた。
生臭い、鉄の臭いを発する塊を見つけた。
「!」
低い鼻を摘みその塊に近付く。
殺された人間の塊だった。
人数など数えられない程積み上げられた、ただの塊としか称しようがない。
1番上に置かれた人間に恐る恐る触れてみる。
血はまだ固まっておらず、生暖かい。
殺されてそう時間がたっていない証拠だろうか。
心臓がドンドンと早くなって、キンと耳鳴りが頭の中を占拠する。
よく塊を観察し、誰か知った顔がないか見つけようとする。
だが、ランダムに置かれた体は顔を隠しそれが一体誰なのか全く把握できない。
ただでさえ、混乱した頭。
知った顔と選別する事は元より困難だった。
その時、そう遠くなく近くない所で生きている人間の気配が分かった。
足音、荒い息遣い。
森枝は死体の塊とその足音の方とに頭を交互に動かす。
もう、どうしたらいいのか考える思考は残されていない。
殺すか、殺されるか。
は、っと塊に目をやり1体、2体と死体を動かす。
だんだん足音が近付いてくる。
早く早く、気だけが急いて手が震えて行動がままならない。
ガサガサ
「くそ、くそ、何で俺がこんな目にっ。」
男の声はイントネーションからして関西のものだ。
森枝は死体の中に隠れてその声に耳を傾けた。
「死にたない、死にたない…」
男はぶつぶつ、それだけを呟いていた。
俺はここにいない。
俺はここにいない。
俺はここにいない。
森枝は目をつむって自分に言い聞かせた。
死体の塊の、死体に扮装して、死体の役を演じて、死体のように、息を殺した。
今、少しでも生きた人間である気配を出してしまえば、全てが終わる。
終わってしまうのだ。
カタカタと震える体を必死になって押さえつけた。
「殺す 殺す 殺す 殺さな俺が殺される。
はははははははははははははは」
震えた声で呟いたかと思えば、とたんに甲高い声で笑い出した。
「何や皆そこにおるんやろ!
出てこいや!俺を殺すんやったらはよやらんかい!」
狂っていく様が声だけでありありと分かった。
その声に、震えていた体がぴたと動きを止めた。
血の動きすらも止まっていくかのようだった。
「ぐぇ」
ガツンと、何かがぶつかった音がして、
同時に蛙が潰されて出すような声を発し、男の悲鳴が止まった。
死体の中にいる森枝には何が起きているのか全く分からなかった。
また別の誰かが来て狂った男を殺したのだろうか。
じっと、息を殺しその誰かが誰であるかを探る。
「おーナイスコントロール。」
この声には聞き覚えがある。
森枝は死体を動かしてその男の名前を呼んだ。
「森っ森だろ?」
死体の中から這い出て後輩であるフラットの森を見つけた。
「森枝さん!何してんですか!」
中途半端に高い声。
驚いて目を丸くする森の顔にどれだけ胸をなでおろしたか分からない。
「おいおい、俺を殺すなよ。」
「驚かさないで下さいよ!」
森は戦闘態勢に入っていた目を和らげた。
「うわ、臭っ!」
「死体ん中に隠れてたからなー。」
血塗れになった顔を拭こうとして、洋服すら血塗れになっているのを見る。
死体の中1番上にあった人間の中からそんなに汚れていないものを選び、剥ぐ。
それで顔と手を拭いた。
「これ誰?」
森が殺した男、狂っていった男の顔を覗き聞いた。
「さぁ、俺関西の人間と縁ないから全然知らないです。」
「ていうかお前よく殺せたなぁ。」
「死んでないですよ、多分。」
「はぁ?」
「俺石投げただけですもん。」
森はにか、と笑って男の側に落ちた石を拾った。
「渡されたバッグにでかい石1つしか入ってなかったんですよね。」
さぁ、と血の気が引いていくのが分かった。
「おい、逃げるぞ!」
うーん、と男が唸り声をあげて起きようとしていた。
森枝は咄嗟に男の武器と思われる猟銃を拾って叫んだ。
もつれそうな足を叱咤し、森の腕をつかんで走り出した。
【アメデオ森枝 フラット森 合体】
無駄に長くなりました、すみません。
しょぼいやつらばっか出てきます、すみません。
@挙動不審さんのメンツが豪華でどきどきものです。
97 :
ラーメンズ小林どうなった?:03/11/24 03:06
「あれ?俺、何してたんだ?確か片桐が・・・!!」
小林はすべて思い出した。
「俺はただコントが作りたかった、こんなばかげたゲーム早く終わらせて、
片桐と一緒にコントが作りたかっただけなのに・・・」
小林の目から涙があふれてくる。
「俺、泣きたくないのに、泣いてる場合なんかじゃないのに、
絶対人前で泣かないって決めてたのに・・・
ごめんな片桐、すぐお前のところに行くからな。」
小林はズボンの裾に隠し持っていたメスを取り出すと、
その刃先を自分ののど仏へと向けた。
・・・
「あれなにためらってんだよ。動けよ。動け!!」
小林は地面に腕をたたきつけなんども自分ののどをかき切ろうと試みるが、
腕が言う事を利かない。
「賢太郎。」
小林は振り向いたそこには見覚えのある顔が、
「片桐!!お前死んだはずじゃ?どうして?え、片桐!!」
小林は片桐のもとへ走った。
もう常識なんかどうでもよかった、目の前には片桐がいる。
そうかたぎりは生きていた!ただそれだけのことだった。
「賢太郎、俺、お前の作るコント大好きだよ。
お前のコントは間違えなく世界一さ。
世界一面白い俺様が認めるんだから間違えない。
だからお前は生きろ!そして、世界中のやつを笑わせろ。
そしてたんまりもうけて、俺様の石造を世界中に建てまくれ!!」
「お前も一緒に行こうぜ!俺ら二人でラーメンズだろ?」
「ごめん。賢太郎、俺は無理だ。」
「なんでだよ!」
「だって俺、死んでるからさ。」
「何、言ってんだよ。生きれるじゃんか。」
「なー。賢太郎、神様って、本当にいるんだな。
俺様天才だからよ、神様が最後にお前に合わせてくれたんだ。」
「お前片桐だろう。怪物片桐仁がそう簡単に死ぬはずないじゃないか!」
「いつものお前らしくないぞ。賢太郎、
もっと冷静になれよ、俺は死んだんだ。」
「俺は認めねーよ。またお前とコントやるんだ!
そうだいい設定があるんだ。こいつは面白いぞ。ある男がいて・・・」
「落ち着け賢太郎!!」
「・・・」
「最後にひとつだけ頼みがあるんだ。」
「・・・」
「生きろ。生きろ賢太郎!」
「片桐。」
「俺、見てるからな、ずーっとずーっと見てるから。
約束破ったら、一生口利かないからな。」
「うん。約束守る。絶対生き残るよ!お前のためにも。」
「よし、いつものお前に戻ったな、それじゃーな。どうやら時間がきたみたい。
またな、天才。」
「片桐!!」
小林は目の前にいた幻が消えると同時に叫んだ。
そして、メスを拾うと走り出した。
どこに向かってるわけでもない。
何がしたいわけでもない。
ただ、ただ、小林は走り続けた。
(片桐は死んでない。
俺の心の中にずっと生きてるんだ!だから俺は死なない。
だって俺が死ななけりゃ片桐も死なないんだから。)
やがて小林は走りつかれ、歩いていると、一軒の家が見えてきた。
「よし!これで休める。」
小林が小走りで家のドアに向かう。
(誰かいる!)
何かに気づき立ち止まり、息を殺しドアに向かった。
ドアは少し開いていた。小林が中をのぞくと二人の男が討論していた。
「お前が殺せよ!」
「やだよ。」
「何でだよ。こいつ俺らをころそーとしてたんだぞ!」
小林は二人の顔に身をぼえがあった。
海砂利水魚もといクリームシチュウ上田と有田だった。
(何の話だろう?殺すってだれを?)
小林がその先に目をやると鋭い目つきで二人をにらむ男の顔が見えた。
(大竹さん?)
シティーボーイズの大竹まことが椅子に縛られていた。
「わかった俺がやる。お前は見張っとけ。」
そういうと上田はバタフライナイフを持って、大竹に近づいていった。
大竹は顔色変えずにただ上田をにらんでいた。
小林は黙ってドアから離れようとしていた。
上田が大竹のそばにつくとナイフを構え、
大竹の胸に向かって勢いよく下ろしたその瞬間、
「誰だ!」
ありただ小林に気づき叫んだ。
その声に驚いた上田はコントロールをミスり
大竹を縛っていた縄を勢いあまって、切ほどいてしまった。
その瞬間、大竹は上田からいとも簡単にバタフライナイフを奪うと、
上田の胸を一突きし、
それに気づいた有田が近くにあったガラスの灰皿で後ろから殴りかかろうとしたが、
大竹は後ろを向き隠し持っていたコルトパイソンで有田の心臓を打ち抜いた。
そして、大竹は小林の後を追いかけた。
(銃声?また人が死んだのか?片桐、俺はどうすれば・・・)
小林は全速力で走った。
102 :
101続き:03/11/24 04:09
小林は走りつかれ草むらに隠れた。
「!!」
小林が横に目を向けると北陽の虻川の死体が転がっていた。
(落ち着け!落ち着くんだ!!)
小林は虻川の荷物と思われるバックを手に取ると中から
小型ナイフとスタンガンを取り自分のポケットに隠した。
ガサッ
「!!」
小林は足音に気づき恐る恐る覗くと大竹が銃を片手にあたりを見渡していた。
それを見て、小林はすべて悟った。
(躊躇したらやられる。)
小林は考えた。そして周りを見渡し、自分の武器と身体能力すべてを計算し、
あらゆる可能性を割り出した。そして、飛び出すと同時に大竹に向かってメスを投げた。
大竹は不意を付かれ一瞬立ち止まり、
銃を二発撃ったが小林の投げたメスが右足に刺さり標準がずれた、
一発の銃弾が小林の肩をかすめる。が、小林は止まらずに大竹の懐の中へ飛び込むと、
ナイフで胸を一突き。大竹は倒れた。
小林は大竹が持っていたコルトパイソンとバタフライナイフを奪いまた走り出した。
(俺には片桐がついている)
続く?
ヒマナーズさんのストーリーから引用しました。申し訳ないです。
もしかしたら小林はじめ登場人物はとっくに死んでるかもしれませんが
どうしても小林だけは書きたくて書いてしまいました。すみません。
>>97-103 …え?ヒマナスターズさんなら知ってるけどヒマナーズって誰ですか?
まとめサイトもきちんと読まずに、しかもローカルルールさえ無視して
何が「どうしても〜」なの?詫びりゃ何してもいいと思ってるの?
既に完結している名作を汚す、荒らし紛いの真似は辞めて下さい。
というか、マ ジ で 二 度 と 来 な い で ね 。
>>97-103 ・・・。
信じられん。なにやってんすか?
ラー好きなだけにむかむか。
>>97-103 既に皆さん書かれてますが、御自分のされた事を今一度考え直されて下さい。
そして、誤字が多すぎます。うpする前に読み直し等されたのですか?
とりあえず、まずヒマナ氏に謝って下さい。そして、削除依頼を出される事をおススメします。
前スレ
>>865続き。
『痛い!痛い!怖い!嫌や!もう嫌や!!もう!!なんやねん!!!』
向は走る。ただ、ひたすら走る。
中岡に撃たれた左肩からは血が溢れ、ぬるぬると上着を真っ赤に染めるが血は止まることなく流れる。
激しい痛み。肩に同調したのか、はたまた中岡の顔を見たせいか背中の傷までもが疼きだす。
それでも向が足を止めることはない。
はぁ……はぁ……はぁ……
息をきらし、時折うしろを振り返りながら向は走る。向が走る。
何が向をそんなに焦燥さしているのか向自身もよく分からないかった。
死ぬ事なんぞ怖くなかったのではないのか?死に直面して臆病になっているのか?
確かに『死にたくない』それは大きい。しかし、それよりも今の向にとって怖いのは
【死】よりも【中岡】だった。鎌で背中を切り裂かれた時からあった予感。
『なに』とは口では説明しにくいが感覚的なものが本能に訴えてきていた。
ドスン
木の根に躓き、向は音をたてて倒れる。
頬を地面でこすったのかチリッとした痛みが頬に走り、「くそっ!」と呟くと握りこぶしを地面に叩きつけた。
銃もナイフもカバンも石田の所へ置いてきてしまった今、【策士】でしかない向が体一つで
180cmで整った体格と銃を所持した中岡とやりあうのは、いくらなんでも勝算がなさすぎる。
(おまけに左肩はもう動かすのもままならないほど深い傷を負っている)
向はギシギシと歯ぎしりをすると、もう一度地面を殴りつけた。
その時……足音が聞こえた気がした。
気のせいかと思ったが耳を澄ませば間違いなく一歩、一歩、土を踏みしめるような音が
近づいてくるのが聞こえる。
「向さ〜ん。向さ〜ん。隠れても無駄ですよ〜。早く出てきてくださ〜い。ぶち殺してあげますから」
『中岡!!?』
向は慌てて木陰に隠れた。
高鳴る心臓。全神経を中岡の方へ集中させる。
「向さ〜ん。潔く出てきたらどうですか〜?」
そう言いながら中岡はクスクスと笑っている。
『なんやねん、あいつ……』
畏怖嫌厭の情。なんと表現したらよいのだろう。
出口のない迷路の中に放りこまれ、こちらの手の内や心理をすべて上から眺められた上で
追い詰められていく感覚……否、それも適切な表現ではない。
底知れぬ深さ……暗闇の中で気がつけば背後に立たれているような不気味な……そっちの方がまだ近い。
あいつは『リアル』だ。反吐が出るほど不快で、もどかしく、イライラばかりが募る。
「向さ〜ん。いるんでしょ?殺してあげますから出てきてくださ〜い」
幸い、まだこちらがどこにいるのか気付かれていないようだ。
下手に動くと見つかってしまうが、だからと言ってこの状態で此処でジッとしてるのも得策とも思えない。
『どうすればええねん?』
そんな時、向の目にサクが飛び込んできた。
自然の木々に囲まれたこの場所で違和感を放っている人工物。
向のヘソあたりの高さの柵。
中岡に気をはらいながら、向は音をたてないように近づき柵の外を覗き込んだ。
向は自分のいる場所は森だと思いこんでいたが少しばかり傾斜がついていたのか?それとも柵より
むこうの土地が一段低いのか?柵のむこう側は高さ約3〜4メートル位の傾斜面になっており、
その下には建物が何軒か立っているのが見える。
『これはチャンスちゃうか?』
中岡に気付かれないようにここから下へ降り、建物の中に逃げて隠れれば助かるのではないか?
ただ傾斜は急で下手すれば……しかし迷っている暇はない。
中岡の声が少し遠ざかった所を見計らって向は柵をこえ、ゆっくりと降りていく。
が、お約束のごとくズルッと足を踏み外すと、綺麗なフォームでゴロゴロと転がりながら落下しお尻で着地。
「痛ったぁ!!」と思わず声をあげてしまい、慌てて自ら口を手でふさぐ。
そして、急いで立ち上がると一番に目についたクリーム色の建物の中に駆けこんだ。
幸運なことに建物の入口は開けっぱなしにされており、駆けこむやいなや向は辺りを見回し
人がいないことを確認すると、その場にしゃがみこんだ。
『はぁ……はぁ……しんど。でも助かった……。ここは……図書館?いや、市民会館か?』
そこはロビーのような場所で、監守用か案内用か?小さな窓まであり、電源の切られた自動販売機が
いくつか並んでいる。閑散とした館内は所々に空き缶やゴミくずが落ちており、お世辞にも綺麗とは言えない。
しかし、ここはどこか凛とした空気を放ち、独特の空間を作り出している。
向はそんなこの場所の不思議な雰囲気に好奇心をあおられ、立ち上がると館内を歩きはじめた。
すると1人の男が倒れているのを発見する。
もうすでに息をひきとっており、髪の毛をつかみ顔を覗き込んだが知らない顔だった。
しかし向は一気に警戒の色を強める。敵は中岡だけではないのだ。
気を抜いたら殺される、そういう戦場にいるという事を忘れてはいけない。おまけに自分には武器がない。
気を張りながら徘徊する。すると、あちらこちらヒビ割れが目立つ卵色の壁にポスターが数枚、
間隔をあけて貼られてあるのに気付く。
近づいて見てみると【劇団ミツバチ公演 ライ麦畑でつかまえて】と表記されている。
そういえば、ここに入る瞬間に入口のところに同じポスターが貼ってあるのを見た気がする。
慌てて中にかけこんだので、まじまじと見る時間はなかったが……。
「劇場?」
どうやら向が図書館か市民会館だと思っていた此処は、小さな劇団が使っていた劇場のようだった。
「……ということは」
向は肩の傷のことも忘れて軽やかな足取りで走り出す。
ここが劇場なら、かならずあるはずだ。楽屋や化粧室、さまざまな扉を次々開けていき、ついに大きな扉を発見する。
向はその大きな扉を勢いよく開いた。
「あった……」
客席とその先に広がる舞台。
こんな辺鄙な地の劇場なので当たり前のようにキャパは小さいが間違いなく客席と舞台がそこにあった。
向はおおきく深呼吸すると、客席を一歩一歩踏みしめ舞台へとむかう。
静寂に包まれた薄暗い舞台、人っ子一人いない客席を前に一人立つ。
舞台からの客席。
向はハッと息をのんだ。
頭が真っ白になる。
懐かしい古里に帰ってきたような感覚
懐古の情で心がいっぱいになる。
ドクンと心臓が脈打った。
「え〜、天津と申しまして、こうして漫才してるんですけど。」
無意識に口から零れる台詞。
「ちょいと聞いとくれ、木村くん。おい?木村?きむ……ら?」
返事がない。木村がいない。
なぜ?
『お前が殺したからやん』
耳の奥から聞こえてくるは、聞き覚えのある相方の声。
「俺が……殺した?」
『殺した』 『殺した』 『殺した』
『向が木村を殺した。』
『向がみんなを殺した』
『もっと生きたかった』 『死にたくなかった』 『お前が殺した』
『殺 死に く 命の なな イラナイ 死 ココロ かったのに
す た 尊い 死 汚い 存在 に の 死ねば たい
ない 炎 く スンダ なんで お前が 生きて やり
人殺し れば て のに ? たく 痛み て
いなけ 呪い 言葉 謳え 悪く ない カラダの 殺し
お前がさえ 憎い の 死を 望め のに 死んだ 悲鳴 いた
人生 お前の すべき 最低 嫌い 死 で イ
ガラクタ せいで 嫌だ 刺 いや に な 痛
終わり 死刑 殺さないで 自殺 殺 い た さ い
罪人 に 僕は 奪った 醜 く 殺 な 死』
無数の声が向を襲う。それらの声は全て聞き覚えのある彼らのものだった……。
「あ、ああ……あっ…あ、嫌や。やめろ……やめろーーー!!」
『死にたなかったのにお前に殺されてん』
『向さんの事、信じてたのに』
『痛い』 『苦しい』
「そんなん……だって……ちゃう…やん。だって……それが…」
『こんだけ殺して』
『『『『マンゾクシタ?』』』』
「うわぁぁぁぁぁぁぁああああああーーーーーーーー!!!!!!!!!」
向は頭をかきむしると胎児のように体を小さく丸くし、その場に崩れ落ちた。
目を大きく見開き、その瞳から止めどなく涙が流れる。滴が眼鏡のレンズに落ち、視界が滲んだ。
「う……うっうう……ああああ……ああああああぁ!!」
嗚咽を洩らし、鼻水をたらしながら子供のように大声を上げて泣く。
怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!
ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!
慟哭する向は、左肩の傷口に自分の指をめり込ませる。
グチュと生々しい音がし激痛に「ぐわぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!」と叫び声を上げる。
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。傷が痛い。心が痛い。
恐怖より痛みの方がまだましだ。自虐と自己保身を意味するところの行為。
止まりかけていた血が再び向の手を伝った。
綺麗な紅色。
これはきっと夢や。目ぇ覚めたら、いつもの汚い布団の上で。
劇場に行けば芸人がいて相方がいてお客さんがいて……漫才をする。
そうやろ?答えてや。なぁ?なぁ!!もう嫌や。
なんでこんな事になってんな?俺が悪いん?なぁ!答えろって!!
「こんな所にいはったんですね」
泣いている向の上から声が降ってくる。
顔をあげると中岡が静かに冷たい笑顔で自分を見下ろしている。
「そんな顔をドロドロにして、なにしてはるんですか?」
神様、こいつが俺を死者にするための使者ですか?
不思議なことに中岡の顔を見たとたん涙が止まり、驚くほど心が落ち着く。
あぁ、そういう事か。
「俺を殺すんか?」
「はい。」
「なんで?」
「唐戸を殺したからですよ」
「唐戸以外にもいっぱい殺したで。いや、殺したっていうのはあれか……死に追いやった」
「僕は正義の味方じゃないんで。復讐ってそんなもんでしょう」
「俺を殺しても唐戸は生き返らへんで」
「…………………。」
「俺を殺しても何の意味もない」
「わかってますよ!!だって唐戸は死んだんですからね!!
あなたを殺しても何もならないかもしれません!何も変わらないかもしれません!!
そんな事わかってます!でも……」
中岡は大声でまくしたてると呼吸を乱し、下唇を噛みしめる。
そこにはもう中岡の余裕の笑顔はどこにもなかった。
「唐戸が殺されて、野口が病んで、それなのに貴方が……のうのうと生きてるんが許せないんです」
苦しそうで、辛そうで、今まで見えなかった中岡の感情が手にとるように分かる。
そんな中岡に向は安堵の笑みを洩らした。
「何が可笑しいんですか!」中岡は鋭い口調でそう言うと、向の襟首を乱暴につかんだ。
「なんや、ちゃんと中岡なんや。よかった」向のその言葉に、中岡は怪訝な顔をする。
向はため息をつき、目を閉じた。もう涙も枯れて出ない。
でも……悲しい。今さらながらに全てが悲しい。
自分が死へと追いやった人たち。仲間。自分とは関係のないところで死んでいった川島さんや松ちゃん。
舞台で共に笑って、時に漫才を武器に戦って、楽屋でつまらないやり取りで遊んだり、
飲み屋でお笑いについて熱く語ったり。
なんであの瞬間をつまらないと思えたんだろう?
なんで人を殺すスリルにとりつかれてしまったのだろう?
その時はそれが最高の楽しみ、自分が特別であるための最高の手段だと思った。
綺麗な花を咲かすためには他の花を切り落とさないといけないはずだった。
美しく咲く唯一の花になりたかった。枯れてしまうのが怖かった。
そのためには犠牲はいとわなかった。それがたとえ身内であっても……。
それがルールだったはずだ。自分はルールに則っただけだ。
『死ぬんが怖いから人を殺すんや!』
そうや、それがどうした?
怖かった。ほんまは大声出して叫びたいほど毎日が怖くて仕方がなかった。
狂えば……発狂すれば、狂人になれれば恐怖から解放されると思った。
ゲームの主人公に永遠の死は訪れない。戦うという条件のもとにそういう呪いをかけられているから。
でも勇者になんてなれるわけなかった……。勇者もきっといつか気づくに違いない。
モンスターを殺し殺戮を繰り返したはての平和と栄光に自分の行動の愚かさを……勇者は勇者でないことを。
でも……
『向さんは向さんでしかないですよ!いいじゃないですか、それで』
そう思えるほど……強くなかった。弱い自分を認めれるほど強くなかった。
いつだってどこかで弱い自分が震えながら見ていた。そんな自分に気付くたび狂うということに
拍車をかけなければいけなかった。
なんで最後まで狂いきれへんかったんやろ……。
もう自分を見失って理性の欠片もないくらいめちゃくちゃになって、自分の悪や罪を正義と信じ、
罪と愚かさに気づく事なく終わりを迎えられたら、どれだけ幸せだっただろう。
なぜ、ここまできてあの頃の自我を取り戻してしまったんだろう。
なんて……なんて残酷な話なんだろう。
罰―――なんだろうか、ストリーク・ランチ・ババリア・ママレンジ・足軽エンペラー・
中山功太・ブロンクス唐戸・NONSTYLE………そして相方木村を殺した罪の罰。
ならば自分はこの罰をあがなってはいけない。罪には罰がついてくる、受け入れなければいけないのだ。
この身をさしだしても贖いきれないほどの罪の重さだが……この命を捧げることが自分ができる限りの最大の償い。
前は死ぬのが怖かった。でも今は違う。
今は自分の罪の重さが怖い。この手が何人もの人の血で染まってるかと思うと怖い。
自分は人の首を切り落とせる人間だったという事実が怖い。怖い。怖い。
狂いきれなかったけど狂ってはいる。じゃないと人の首を切ることなんてできない。ましてや相方の……。
全てが遅い。
でも、もうどうでもいい。死ぬんだから。
修道院で『死は楽園。死は理想郷』なんて戯言を吐いたが、死は無だ。無。無。夢。
舞台の上で死ぬ―――よく芸人が冗談で言ったりするが自分はそれができるのだ。
芸人の死に方としては悪くない……いや最高だ。
おまけに自分を殺してくれるキャストまで用意してもらえている。
不思議とあれだけ怖かった【死】がもう怖くない。
それどころか、死という闇が大きく手をひろげ自分を受け止めてくれるような気がした。
「なにか言い残したいことはないですか?」
最後の慈悲とでも言うように中岡は静かな口調で尋ねた。
言い残したいこと?
いろんな言葉が頭を駆ける。が、その9割がボケである事に気づき
自分はすっかり芸人・向清太朗に戻ったんだと実感させられる。この地に連れてこられてからは
【他者の命の剥奪】という事ばかりが脳裏をかすめ、面白いことなんてなに一つ浮かばなかった。
考えようともしなかった。それが今『死にぎわに言い残した面白い一言とは?』という大喜利のお題でも
出されたかのごとく、ボケばかりが頭に浮かぶ。しかしここでボケてもスベル確立100%。
そんなチャレンジャーな事をして銃弾でつっこまれると言うのも面白さそうだが、いくらなんでも不謹慎だし
中岡に対しては誠意を見せなければいけない身なので残りの1割の中から言葉を選ぶ。
「お前は……間違えんなよ」
ボケに埋もれたその言葉は、今、向が中岡に言える最大のアドバイスだった。
「……もう遅いです」
絶望にちかい表情で答える中岡に「そんな事ないって。お前はまだ大丈夫やって」と慰めの言葉をかけ、
なに自分は今さら良い先輩ぶってるんだろうと惨めになる。中岡がこんな顔をする原因も自分にあるのに。
中岡はため息をつくと「向さんとの無駄話も疲れました」と銃口を向の額に押し付けた。
『カチャ』安全装置の外れる音。
もし死後の世界というものが存在するなら自分は間違いなく地獄行きだろうが
もし木村に会えたら一番に謝ろう。きっと許してはもらえないけど……。
でも何回でも何十回でも何百回でも何千回でも謝ろう。『ごめんなさい』と。
「さよなら」と呟くと中岡はゆっくりと引き金をひいた。
パーーーーン!!!!!
響く銃声。
倒れていく体。
死んでいく細胞。
失われていく体温。
――――――ゴメンナサイ。ミンナ、ゴメンナサイ。
ゴメンナサ…イ……ゴメン…ナ……サ…………
【天津 向清太朗 死亡】
今日はここまでで・・・。
スレ立て乙です。長期放置本当にすいません。あと前回感想くれた方々ありがd。
まさかネゴ氏にそんなに反応があると思ってもみなかったので( ゜д゜)ポカーンとしてしまったw
乙!
最後に少しだけでもいつもの向に戻れたようで良かった。
これから中岡と野口が気になる…
>95の続き
走ったり歩いたりを繰り返すうち行き止まり…というより崖下に行き着いた。
「と、とりあえずこの辺に隠れてよう。」
森枝はぜえぜえ、息を吐きながら森に提案する。
崖の上を見上げればところどころ木生えて上から2人を確認する事は難しいだろう。
下ら辺にもまた生い茂る木々にはばまれて見つかりづらい、と判断できた。
「は、はい…あれ大川原さんとかってどうしました?」
「知らない、お前会ってねぇの?」
「知りませんよー、俺船場探してる途中だったんですもん。」
森の相方である船場の馬顔を思い出す。
「皆無事なの?」
「さぁ?さっきの死体の塊みたいの結構ごろごろしてましたよ。」
走ったせいでかいた汗と血の臭いが入り交じってとてつもない異臭を発している。
森枝はその臭いによって芸人達のなれの果てを思い出し顔をしかめた。
ゴミのように扱われて置き捨てられた無数の死体を…思いだした。
ぱたぱたシャツを揺らして胸元から風を送り、腰をおろしながら声をかけた。
「森枝さんって武器何でした?」
ごそ、バッグの中から森枝がとりだしたのは、何の変哲もない靴下が1足。
白のハイソックス、それだけしか入っていなかった。
「悲惨っすね。」
「いや、これちょっと…。」
森枝は足下の土を掘り出す。
爪の中に細かな砂が入り込んで痛んでいく。
靴下の中に靴下をいれる。
その中に掘り出した砂と小さな石をつめて込む。
ぎゅうぎゅうにつめて、がっちりしばる。
「ほら、棍棒。」
得意気に笑ってみせると、森はおー、と歓声をあげ拍手をした。
「はーしかしこんな直接的な武器じゃ無理だなあ。」
「ですよね、俺なんて石っころでしたし。」
「そういや、この猟銃って使い方分かる?」
先程遭遇した関西の男からつい奪取してきた猟銃を掲げて見せる。
「説明書とかないと分かんないです。」
だよなー、がちゃがちゃいじってみるが、暴発でもされたらかなわない。
その内あきらめて放り投げた。
使えなければ例え武器だとしても、ただの荷物にしかならない。
猟銃を放り投げた音が消えて遠くから銃声が響いてきた。
時折爆発音も混じっている。
後には2人の周りに鳥の鳴き声が1番近くに寄り、とても静かだった。
この場所だけは殺し合いとは関係のない、そんな風に錯覚してしまいそうな程静かだった。
「どうします?」
森が空を仰いで聞いてきた。
「どうするってもなぁ。」
それにならって森枝も空を仰いだ。
空は何も変わる事なく、ただ青かった。
それは腹立たしい程の青だった。
青の中白い雲がわずかに流れていくのを目で追いかける。
「あーメシってどうするよ。」
「のど乾きません?」
「あータバコ吸いてぇ。」
静かな青と白を見上げて、ため息混じりの会話は途切れがちになる。
「──死にたくないです。」
森がぼそり呟いた。
しばらくの間をおいて返された言葉は至極当然で、当たり前な感情。
「誰だって死にたかねーよ。」
でも、と森枝は思う。
恐らく2人は生き残る事はないだろうと、あきらめとはまた違った感じで考える。
たった1人が生き残るこのゲーム…その1人に自分らがなれるとはどうしても思えない。
森は体育座りをした膝の中頭を埋めて声を振り絞った。
「死にたくないです、まだ生きてたいです。」
「生きるぞ。」
生き残る、ではない。
森枝は青い空に誓約を投げた。
「生きるんだ。」
その強い言葉に森は驚いた目を向けて茶化した。
「……森枝さんの真面目な台詞って初めて聞いた気がするんですけど。」
「芸人が真面目な台詞喋ったって面白くもなんともないじゃん。」
「そうですねぇ。」
「ま、こんな所にいつまでもいたら見つかるのも時間の問題だし…誰か探しに行くか。」
森枝が立ち上がる。
森は大きく頷いてまっすぐ前を向いた。
「でも森枝さん臭いのなんとかして下さい。」
森に歩きながら言われ、森枝はその頭をはたいた。
歩いて行く内にわき水を見つける事ができた。
「水〜〜〜。」
遠目で誰もいない事を確認する。
「後ろ誰もいないな?」
「いません、俺先に行って見てきます。」
森は足音を消してゆっくりその水場に近付いて周囲に視線を巡らせる。
右手の人差し指と親指で丸を作ってサインを送る。
「あー水〜。」
「水筒とかあれば持ち歩きできんのにな。」
「ですね、この場所ちゃんと覚えておいた方がいいですね。」
「あ!」
森が突然声をあげて、右前方を指さした。
そこに、運がいいというか偶然というか同じ事務所の人間が立っていた。
「前田っ、前田お前無事だったのか!」
JCA10期生のオレンジジュース前田が真っ青な顔で呆然と立ちつくしていた。
顔色の悪さに気付けず、森ははしゃいだ声をあげて近寄る。
「森さん…森枝さん。」
小さな声でそれだけを発してそのまま気を失って倒れてしまった。
【アメデオ森枝 フラット森 オレンジジュース前田 合体】
展開に無理がたたって大変ですみません
改行の仕方が変で読みづらくすみません
またしても無駄に長くてすみません
B9さん>お待ちしてました。続編うp乙です。
ここの板見てからなんだか向の見方を無意識に変えてしまってたんですがw 最期はいつもの向でしたね。良かった。
中岡は向を殺せて満足だったんでしょうか。あとは中岡が気掛かりです。野口と和田もですが。
マイペースに執筆の方頑張って下さい。応援してます。
不法投棄さん>ハイペースですね!乙です。
船場を登場させる予定はあるのでしょうか?個人的に好きなので、気になります。
続編も期待してます!頑張って下さい。
新スレになってから調子良いですね。読み手としては嬉しい限りです。
>B9さん
文章も展開もカッコよすぎです。さらに惚れましたw
自分にももっと文章力があればなあ…
>不法投棄さん
自分のはメンツが豪華なだけですよ〜
展開の組み立て方とか技術はまだまだ修行中…
それはさておき、合体した3人の今後が気になりますね。
次の展開に興味津々です。
>>76-81 (
>>82) の続きです。
血が滴り落ちていく。
緩やかな軌道で、一粒。
緩やかな軌道で、一粒。
「!」
勢いよく瞼をひらいたその男は自分が一体何者であるかを確かめるように、
ゆっくりとゆっくりと自分の体を見た。
その姿は自分が思い描いている自分と同じもの。
白い服に、赤い血液。
「……またか」
ハマカーンの神田は自分自身に呟いた。
右手に包まれた拳銃を握り直し、簡単に辺りを確認する。
誰もいないことを確認した後、神田は目に付いた木の根元に腰を下ろした。
背中に伝わるゴツゴツとした木の感触が神田の意識をはっきりと呼び覚まさせる。
「……白昼夢? それとも……」
神田はあれこれ思い悩んだ後、一つ溜息をついて思考を休息させた。
神田はこのゲームに参加してから、度々意識が無くなることがあった。
気がついたら、たった今過ごしてきたはずの数秒間の記憶がなくなっている。
それがいつ起こるかは定かではない。
歩いているとき、休んでいるとき、それこそ人を殺している真っ最中でも、
途端にほんの一瞬だけ意識が途切れることがあるのだ。
そして意識が戻った後はまるで夢を見ていたかのような感覚に陥る。
夢。
その時の夢がいつも同じものであることは神田にはわかっていた。
目を覚ますと断片的に残る色のイメージが脳の中を疾走し、粉雪のように消えていく。
黒と、赤と、暗いオレンジ色。
それがいったい何を意味するのかはわからないが、神田はある確信があった。
このゲームに参加して、なぜ簡単に人が殺せるようになってしまったのか?
どうして人が死ぬのを見て笑っていられるのか? 嬉しく思うのか?
どれもこれも、以前の自分なら考えられなかったことのはずだ。
その答えが夢の中にある。そんな気がした。
「……無駄かな」
神田は頭の中に組み立てられていたパズルを徐に崩した。
きっかけなんて関係ない。ただ、今は人を殺せればそれでいい。
夢の正体を知ったからといって、何かが変わるわけでもない。
人殺しが快感だということは、何も変わらない。
「骨折り損……あれこれ考えたって意味なんてないよな?」
神田がそうつぶやいたときだった。
「……!」
神田は確かに聞いた。その懐かしい声を。
「……ほら、いつまでも泣くなって。撃つぞ」
肖田は再び手に収めた小さな銃をクルッと回転させ……再び受け止め損ねた。
「あっ」という肖田の小さな呟きと同時に、銃は地面にカツンと落下する。
「……わざとやってません?」
浜谷が笑う。
「……お前を元気づけようとしてだよ」
肖田が頷きながら答える。
「でも本当はわざとじゃないでしょう」
浜谷がまた笑う。
「……想像に任せる」
不敵な笑みで肖田が答えた。
ヒロシとホリの凄惨な死体を後にして、
ハマカーンの浜谷とモジモジハンターの肖田は先を急いでいた。
一刻も早く神田を見つけなければ。
そして、できることなら、
止めなければ。人殺しを。
そうは思いながらも、浜谷の中からはまだ望みが消えたわけではなかった。
ハローバイバイの2人は、神田が何人もの芸人を殺していたと言っていた。
ホリは自分の言葉で、神田に殺されそうになったと言っていた。
そして、先刻、ホリの死体が転がっているのを見た。
それでも、まだ自分の目では見ていない。
自分自身の目では、神田を見ていない。
だから信じたい。何かの間違いであってほしい。
浜谷は神田を頭の中で弧を描くようにして思い出した。
まだハマカーンを結成する前、柔道部の先輩だったころの神田。
人一倍頑固で、自分をいつも引っ張ってくれていた神田。
笑っている神田。泣いている神田。ふてくされる神田。
そして、自分を最高の相方だと言ってくれた神田。
次々と、まるで死人を思い出すかのように、
浮かんでは消え、浮かんでは消えていく相方の顔。
浜谷は一瞬でも『あいつならやりかねない』と思ってしまった自分を責めた。
あんなにも一緒にいた神田が、人殺しなんてするはずがない。
例えこんな状況下でも、神田は絶対に人殺しなんてしない。
浜谷は自分に言い聞かせた。
こんなことを考えていたなんて言ったら、きっと、神田は笑うだろう。
そうして、『バカかよお前は〜!』なんて言いながら、いつものように自分の頭を叩くんだ。
そうだ、そうに違いない。
頼むからそうであってくれ。
浜谷はまた涙がこぼれそうになるのをこらえ、その薄赤色に充血した瞳を軽く擦った。
突然、前を歩いていた肖田が足を止めた。
思いにふけっていた浜谷が肖田の背中にぶつかりそうになる。
「……?」
浜谷は訝しげに顔を覗き込む。
肖田は何かを考えている様子だった。
「……そういえば」
一瞬の沈黙の後、肖田が口を開いた。
「……さっきの2人の死体……血が流れてなかったか?」
何を考えているのかよくわからない肖田の質問に、浜谷は少し困惑した。
死体が血を流すのは当たり前じゃないか。
浜谷がそう言いかけたとき、キョトンとした顔つきの浜谷を見て察したのか、
肖田が言葉を付け加えた。
「あ……いや、死体だから血が出るのは当たり前なんだ……」
浜谷の目を見る。
「けど……さっきの2人は……今も流れ続けてなかったか?」
その言葉の意味を悟るのに、浜谷は数秒の時間を要した。
今も血が止まらずに流れ続けている。それはつまり……、
「あの2人が襲われてから、そんなに時間が経ってない?」
浜谷が閃いたように言った。
「……だろ? ってことは……神田は俺たちの近くに」
肖田がそこまで言ったときだった。
「動くな」
浜谷の耳に懐かしい声が飛び込んだ。
1〜2週間ほど執筆を休憩するはずだったのですが、
執筆するのをやめた途端、禁断症状が出てしまいましたw
どうやら末期なようです。
小蝿さん、B9さん、不法投棄さん、挙動不審さん
全員まとめて乙です。
やはりB9さんと小蝿さんの文章はすごいです。
私も見習わなければ…。
最近になってようやくフロッピーに保存と言う形で
バトロワ執筆を再開した身ですが、
今度はフロッピーがぶっ壊れたらどうしようという不安にかられています。
しかし、それ以上に今まで書いていなかったので勘を取り戻せるかが不安です。
なんとかしてがんばります…
挙動不審さん大ファンです。続き気になる〜
◆gvBXpGyuyc さんもがんがって下さい!
すいません、今度>>57-
>>61の続きを書かせてもらいます。
青木さやかは番外編ということで・・・・・。
本編熟読してなくてすいませんでした。
>>141 がんがります。
今度こそデータ消失しません様に…
>>142 気になさらずに。私も北陽・伊藤さんの武器を間違えるわ、
歌丸さんの殺傷法を間違えるわ、羽織をハカマと書くわで…
熟読してないことで起こったドジでした
>>141 そんな、大ファンだなんて恐れ多いですよ……
でも、そう言ってもらえるとやっぱり素直に嬉しいですw
これからも執筆頑張りますのでよろしくお願いします。
>◆gvBXpGyuycさん
北陽伊藤さんや田上よしえさんの今後がすごく気になります。
ユリオカさんもこれから色々エピソードがありそうでドキドキものですw
楽しみにしてます!
>>挙動不審さん
今書いてます・・。数ヶ月間のブランクは
途方もなく大きいです。
勘を取り戻すためには書きまくるしかなさそうです。
ひょえ〜・・・
あーびっくりした・・・。
数週間ぶりに覗いたらいきなり「片桐」って単語が飛び込んできたから。
ヒマナスターズさんに謝れ、マジで。
肖田さん、やけに落ち着いてるなあ。石井さんとは別行動かな。
天津・向さん。正気に返ったのは罪ではなく、救いだったんじゃないかな
と。
まるで自信ないけど、オジオズ書くの予約してていいですか?
オジオズはmまだ出てないですよね?
出てなかったらぜひお願いします!!!
あ、それとローカルルールとかちゃんと読んで
>>97-103のようなコトがないようにお願いします・・・・
あんまり知らないけど情熱だけで書きます
オジンオズボーン
(俺はこんなとこ来たらあかんかってんや。)
あと4・5分で禁止エリアになるであろう場所で、オジンオズボーン・篠宮は
そんなことを考えていた。
体は自分でもおかしくなるぐらいに震えていた。
どこか遠くで銃声が聞こえる。そのたびに震えは増した。
(頼む…誰も来んといてくれ)
不意に物音がした。
誰かが近づいて来る。身構える篠宮。
(だ…誰や…?来んな……。…!)
ふっ…と肩の力を抜く篠宮。
「なんや。お前か。」人影が言った。
人影は相方、オジンオズボーン・高松だった。 続けて高松が一言。
「何してんの?もうすぐここ禁止エリアやで?。」
「……。」
篠宮はなんともいえない表情。いろんなことが言いたくなったが
かっこ悪いと思いそれを抑えた。
「…お前こそ何しにきてん!」怒り口調で篠宮が言う。
「…そ…それは…。」なぜか少し照れた顔で黙り込む高松。
「わかった。お前、俺を探しに来たな。」と篠宮。少しにやけ顔。
「…うるさいゎ…人がせっかく…」高松は向こうを向いてしまった。
実はこの二人、ここに来る前にささいなことで喧嘩をしていたのだが、
いつのまにか朗らかな空気が流れていた。
オジンオズボーン・合体
「とにかく。ここを離れやんな後2・3分で死んでまうぞ」
「わかってるわ…。」
一見めんどうくさそうに立ち上がる篠宮。(わかっててここに居ったんじゃ。)
そこまでは言えなかった。
少し気を使いながら進む高松。ため息を一つ。
「…お前…なんでそんなピリピリしてんの?なんか変。」
と篠宮。さっきまで自分が考えていたことは…
…もう忘れていた。
「見てもうてん…」
あきらかに、そういった高松の様子はおかしかった。(また空気が重くなった。)
「…何を?」
おかまいなしに篠宮が問う。
「殺されてるとこ。」
「…誰が?」
「増田さんが…。いっぱい人が死んでて…そこで…。頭を…斧で…。」
「ウソや…」
「なあ…これからどうする!?もうさ…ほとんど俺らが知ってる人らって…!」
高松が言いそうになるのを、篠宮は必死に止める。
「言うな!…こんなんウソに決まってる…!」
この状況。ウソではないことぐらい、篠宮にもわかっていた。でも叫ばずにはいられなかった。
二人とも目は涙で潤んでいた。何故、自分たちだけが生き残っているんだ…。
鳴り響く銃声や血の臭いから逃げながら、二人は思い出していた…。
ここに来る前のことを。
嬉しかったこと…。ほかの芸人から見て、まるで子どもの年だったころ。先輩たちはみんな優しかった。
悔しかったこと…。何かあるとすぐ、売れっ子「キングコング」と自分たちを比べられた。
ここにはもうそんなことを言う奴はいない。かばってくれた先輩たちもすでに亡きものだ。
自分たちしかいない。
と、言ったわけで、続きはまた今度。なんか無責任でスマソ。
名古屋ヨシモトのブロードキャストはまだ書かれていませんよね?
マイナーな気はするんですがどうでしょう、いいでしょうか?
おそらくこのスレの全部を把握している人はいないといっても
過言じゃないんじゃないんでしょうか。
だから、よほどのことをしない限り大丈夫だと思います。
まだ続いてたのか!
ログの内容はもちろん住人の情熱に感動します。
>@挙動不審氏
モジハン楽しみにしてます。
>不法投棄氏
文章がうまいと思います。素晴らしい。
>B9氏
天津はよく知らないのですが、引き込まれます。
芸人のプロフ見まくって勉強しますたw
ところで粋なりってまだ出てないですよね?
本人達解散してしまったけど、ガイシュツでないのなら投下したいんですが。
↑少なくとも、私は知りませんでした。
やっぱり文章力ダメですねぇ。日本人になりたいです・・・・・(ぇ
過去ログとまとめサイト、
その他、スレの所々にちょこちょこ登場芸人の状況がまとめられている
とおもうので、ある程度調べて、なかったらよろしいじゃないかと。
話の辻褄を合わせる為にも書き手さんとなる人には
とりあえず過去ログを今読める分だけでも読んでから
話を書いて欲しいと思います。
>>122 ≪はよ撃てや≫
『うるさいなぁ!言われんでも撃つよ!!』
向清太朗を殺す前に中岡の脳裏で交わされた短い会話。
そして発射された銃弾。
銃弾は向の額を撃ちぬき、脳を破壊し、向はゆっくりと倒れ、そして息絶えた。
やった……自分はやった……唐戸の敵を討った!殺した!
ずっと抱いていた願望、ずっと望んでいた結末、それがいま果たされた。
向を中心に円を描くように真っ赤な血が広がっていく。
中岡は向の胸倉をつかみ上げた。
殴ってやろうと思った。
しかし生命のはいっていない身体という名の器は力なくうなだれるだけで
それは中岡の戦意を喪失させるに十分だった。
ガクッ――――中岡は膝の力が一気に抜けて、その場に座り込んだ。
ツナギが血を吸って赤黒く変色していったが、そんな事気にもならない……。
いや、血で染まっていく事さえ気付いていない様子で中岡は呆然と向を眺めていた。
呆気ない。
実に呆気なかった。
銃を向けてクイッと指を動かすだけで、あれだけ恨んだ先輩は簡単に肉の塊に変わった。
なんて容易なんだろう……。生命とはなんてちっぽけなものだろう……。
もっとグッとくるものがあると思った。
だけど……そこには……何もなかった。
「芸人としては尊敬してましたよ」
死人となった向にむかって呟く。
初めて人を殺した。自分の意思、殺意をもって殺した。
人殺し・殺人鬼・殺人事件・自殺・心中・戦争・死。
日常のそこらへんに転がっている言葉達。
でも、それはあくまで他人事だった。日常ではなかった。
此処へ来て、自分は殺せる人間かもしれないと思ったが、思うのと実行に移すのとでは違うと
どこかで思っている自分もいた。
だけど特に罪の意識もなく、だからと言って達成感があるわけでもない。
混沌とした感情が渦巻いてるだけで、むしろ不快でたまらない。
『お前は……間違えんなよ』
向さんの最期の言葉。遅い……もう遅いです。
でも……自分にはまだ守りたいと思うものはあります。
それはボーダーラインになりますか?
俺はまだ戻れますか?
死人に口なし。中岡の問いに答える人間はここにはもういない。
中岡はため息をつくと「帰ろ」と呟く。
帰る――――野口の所へ。和田の所へ。
憔悴しきっていた中岡は力を振り絞って立ち上がる。立ち上がれる自分は大丈夫だ。
【帰る場所】があるというのは大きい。些細な事のようで決定的に違う。
野口と和田さんは無事なんだろうか?武器もなければ戦闘能力もない二人が襲撃されたらひとたまりも
ないだろう。早く帰らなければ……。
「さよなら」
もう一度、向に本当に最後の別れを告げると、ふらつく足で帰路へとつく。
地に足がついていないような感覚。足を前に出しても全然前に進んでいる気がしない。
それでも二足歩行というヒトに与えられた行為は、嫌でも前に進むものらしく
歩き続けていると和田と野口がいる小屋が見えてきた。(そもそも修道院・小屋・森・劇場は
そんなに距離があいていないので疲れきった中岡でも数時間で行き来できる)
『帰ってきた』
小さな小屋を前にして中岡は鼻がツンとして涙が溢れそうになって慌てて拭う。
小屋を出たのはほんの1日半前。
なのにノスタルジックな感情にとらわれている。
小屋の扉の前で深呼吸するとコンコンと2回ノックをして、澄んだ高めの声で
「中岡です」と言うと、ゆっくりと扉が開いた。
そして、そこには和田が立っていた。
和田は驚いたような顔をした後、八重歯を覗かせて微笑んだ。
「おかえり」
おかえり―――そんな一言が中岡の心に染み渡り、強張っていた心を溶かしていった。
今まで当たり前のように使っていたが、こんなにも暖かい言葉だったんだと気付く。
「ただいま帰りました」
自分はどんな顔をしているんだろう?きっと酷い顔をしてるに違いない、
それなりに自分のなしたことを物語る程度には……。でも和田は中岡に何も聞かなかった。
だから中岡も何も言わなかった。中岡は銃を和田に返す。復讐は終わった。
「あの……野口は?」
「あ、えっと……奥に…おるわ」
そういう和田の口調はなんだかぎこちない。
嫌な予感が走る。手首を切った野口。まさか……あのまま死……。
中岡は慌てて奥の部屋へと走りドアを開ける。
そこには野口がいた。
以前に増して痩せてはいるものの野口はビー玉みたいな瞳をクリっと光らせ
キョトンとした表情で中岡を眺めている。
「野口!!目覚ましたんや!よかった〜!大丈夫?どっか痛ない?
もう手首切るなんてアホな真似、絶対許さへんからね!」
「…………………。」
「野口?」
「……だれ?」
「えっ?」
「おにいさん、だれ?」
「野口?なに……言うてん…の?」
「だれ?」
「しょうもない冗談やめろや!俺やん!」
「しらない」
野口が何を言ってるか分からない。理解できない。
中岡は助けを求めるようにドアの所に、もたれかかっていた和田を見つめる。
和田は小さなため息をつくと「命は助かったんやけど記憶が……」と低い声で呟いた。
記憶が?
記憶が消えた?
「どういう事なんですか!!」中岡は和田につめよる。
「俺もはっきりは分からへん。自殺行為の後遺症なんか……それとも唐戸の事の精神的ショックから
起こるものなんか……とにかく記憶が……それと見た限り年齢も退行してそうやな。
そこらへんの事あんま詳しくないから分からへんけど」
忘れたというのか?自分のことも……唐戸のことも……全て?
「な、なんで!?野口!俺やん!相方の顔くらい覚えてるやろ!!なぁ、答えてや!答えろや!野口!野口っ!!!」
野口の両肩を乱暴に揺すると「いやや!しらん!きらい!むこういって!!」と言って布団に
潜りこんでしまった。呆然とする中岡を「ちょっと落ち着け」と和田はなだめて野口の部屋を出る。
「なんで……だって……そんな……」
「唐戸のこともあるし、辛い過去に耐え切れず保身のために記憶を消したなら問い詰めてやるべきちゃうと思う。
それに、お前はまだええって。俺なんて『おじさん、だれ?』って言われてんで。もう30歳やからあれやけど……ひどない?」
確かに酷い。失礼な話だ。
しかしそんな事はさて置き、まさか野口が記憶喪失になるなんて思ってもみなかった。
「命があるだけでも幸せちゃうかな?」と和田は慰めるような口調で中岡に問いかける。
「そう……です…ね」と疲れきった様子で答え「すいません。野口と話したいんで2人きりにさしてもらえます?」と頼む。
「大丈夫か?」と心配そうな顔をする和田に「はい」といつもの笑顔で答えると中岡は野口の部屋へと戻った。
中岡が部屋に入ると野口は露骨に嫌そうな顔をした。
どうやら、さっき乱暴な事をしたので嫌われてしまったようだ。
「ごめん、もう怒鳴らへんから怖がらんといて。」と野口を刺激しないように優しく言うと
野口のいるベットの脇の椅子に腰をおろす。野口はまだ警戒しているようだ。
「あのね、俺の事は忘れてもええからさ……唐戸の事は覚えとってくれへんかな?
野口が唐戸のことが辛くて記憶を消したんやったら、こんな事言うべきじゃないのは
分かってるけど……でもね、あいつは野口のために命を捨ててん。
格好つけたかっただけかもしれんけど、それは真実やから。何を忘れてもええから、
ただアイツだけは……アイツのことだけは忘れんといてやって。
それが唯一、アイツが生きた証やから」
「からと?」
「そう、唐戸浩二」
「からとこうじ?」
「うん。俺らは3人でブロンクスやってん。」
「ぶろんくす?」
「そう、野口がつけてんで『ブロンクス』って。俺ら3人で一つずつトリオ名の案出して、
野口の友達に誰の案がええか決めてもらって決まったんが野口の案の『ブロンクス』。
俺は絶対『ブーメラン』が良かった思うねんけど、まぁ、そんな事はどうでもええわ。
不思議やね……あの時は、こんなに大切なものになるとは思わんかった。」
そこからは他愛もない昔話を中岡が一方的に喋る。
NSC時代のこと……初舞台のこと……当たり前に続くと思っていた日常のこと……お笑いのこと……唐戸のこと。
野口は遠くを眺めたまま何も喋らず、黙って中岡の話を聞いていた。
その時、コンコンとドアがノックされ、和田が顔を覗かせ「ちょっと」と中岡を呼ぶ。
「はい、すぐ行きます」と返事をし、中岡は野口の手をとると
「とりあえず、もう絶対自殺とかしたらあかんからね!」と釘をさす。
「じさつ?」
「自分で自分を傷つけたらあかんって意味」
野口は理解しているのかしていないのか曖昧にコクリと頷いた。
野口が頷くのを確認すると、中岡は安堵の表情をうかべ「じゃ、ちょっと席はずすから」と言って部屋を出た。
「大丈夫か?」
中岡が部屋を出ると、さっきと同じ質問をもう一度繰り返された。
中岡は「はい、大丈夫です」と笑顔でこたえ「どないしはったんですか?」と和田に尋ねる。
「俺……行くわ」
「えっ?」
「野口は大変やと思うけどお前がおったら大丈夫やろし」
「はい……それは、まぁ。でも和田さんは?」
「相方、探そかなって」
「町田さんを?」
「おぉ。あいつを殺そうとした俺にそんな権利ないかもしれんけど」
「そんなことないですよ!」と中岡が和田の言葉を否定すると
「ありがとう」八重歯をのぞかせて和田は笑い、そしていつもの顔に戻ると
「てことで、俺は行くから」とカバンを肩に背負った。
えらく急な話だと思いながらも『自分が帰るまで野口を頼みます』という約束だったし
探し人がいるなら早いほうがいい。『殺す』『殺される』が当たり前の此処では
明日やればいい事、後回しにしていい事なんて何一つない。今、この瞬間にも殺されかかっている
可能性だって十分あるんだから。そういう意味では今という時をとても大切にできる。
こんな事にならないと気付けないなんて愚かしく皮肉な事だが……。
中岡は和田を見送ることにする。
「じゃあ、元気で…な」
「いろいろと有難うございました」
「ええよ」
家を出て、歩きはじめる和田の背中を中岡は眺める。
もう生きて会えることは、よっぽどの縁がない限りないだろう。
と突然、数メートル離れたところで急に和田が振り返り「野口には気をつけろ」と口にする。
「え?どういう事ですか?」
「野口はお……」
ガシャーーーーン!!
和田の言葉を遮るように家からガラスが割れる音が鳴り響いた。
「野口!!?」中岡は慌てて家へ戻っていく。
和田は走っていく中岡の背中を哀れむように見て、ため息をついた。
言うことは出来た。でも言うタイミングは流された。では言うべきではないのだろう。
言った所でどうすることも出来ない。どうせすぐ分かることだ。
自分にはやるべき事がある。自分は『傍観者』でしかない。干渉しすぎてはいけない。
「ごめんな……」そう呟くと和田は歩みだした、町田を探す長い旅路へ。
「野口!?」
中岡が慌てて戻ってみると部屋の脇の花瓶が落ちて割れていた。
ガラス片が床でキラキラと光り、造りものの花は水溜りに浸っていた。
その横で野口は座り込んで何かに熱中しているようだった。
なにか様子が変だ。
「野口?」
野口のうしろ姿に向かって中岡は恐る恐る声をかける。
「あぁ……中岡いたんや?」野口はいつもよりワントーン低い声で答えた。
「野口、記憶もどったん!?」中岡は慌てて野口に駆け寄る。
ピチャ……っと赤い滴が落ちるのが見えた。
「野口……?」
「野口ちゃうし」そう言いながら振り返った野口の手と口元が血だらけだ。
血にまみれた口を歪めて嬉しそうに笑うと「あげる」と言い
野口は中岡に向かって真っ赤なものを差し出す。
それは小鳥だった。しかし羽根はむしられ白い体は血で染まり
内臓のようなものがダラリとたれている。
ドクドクドクドク
ノグチ?ナニコレ?
中岡の心臓は早鐘を打ち、全身の血が逆流する感覚とひどい眩暈に襲われる。
飛び散った血と肉片。
「あはははははははははははは」
呆然としている中岡に野口はおかしそうに高笑う。
しかし、急に「うっ……」と唸ると野口は顔を伏せ、次の瞬間には
綺麗な瞳で中岡を見上げ口を開く。
「おにいさん、だれ?」
鳥が羽ばたく音がした。
それは世界が終わる音であり野口が壊れる音だった。
これからの中岡……これからの野口……これからの和田……物語は終わらない。
【和田、中岡・野口と別離。】
今日はここまでで・・・。前回感想くれた方々ありがd。本当にありがたいです。
向編としての終わりは一応ここまでで、次からは野口・中岡・和田と
出したいコンビ達を中心として進行させていただきたいと思います。
リアル世界で禿つき坊主にされてしまった野口では何をしてもシリアス性には欠けるんですがw
B9さん乙!すごくドキドキしながら読んだよ。
野口がそれっぽい…。和田の八重歯笑顔に癒された。
リアルブロンクスは貴方の話の設定とはどんどんかけ離れていくけどw
気にせずマターリと書いてね。
B9さん乙です。
ヘッドとブロなんて最高の組み合わせで嬉しいです。
あとまだ出てきてない大好きなコンビがいるので
それもB9さんが書いてくれることを願ってまつ。
B9様乙彼です。
素晴らしいですね。
いつも陰ながら拝見させていただいてましたが
あまりにも素晴らし過ぎたので想いを伝えたく
カキコしました。
これからもひっそり期待するので頑張って下さい。
>B9さん
和田は驚いたような顔をした後、八重歯を覗かせて微笑んだ。
「おかえり」
ココ、最高。゜(゚´Д`゚)゜。
age
皆様素敵な作文されるので、圧倒されております。
ヒマナスターずさんのラーメンズラスト、今読み返しても泣きます。
当方、1回だけ集団催眠編を書かせていただいたものです。
尊敬してやまないヒマナさんの作品な上、あのようなことがあった後ですが、
できればラーメンズの催眠or天国を書かせていただけると幸いです。
>177
あんな事があったからこそ、書いて欲しいです。普通に読みたいですし。
頑張って下さい!!
ヒマナさんの承諾も頂きたい所ですが、最近ココに現れていらっしゃらないのでしょうか?
>>177 読みたいです! ほんと、あんなことがあったからこそ。
ぜひ書いて欲しいです。
>>178,179
ありがとうございます!
元のイメージを壊さないように、頑張って書きます。
>>152から
「あれ…?夢か…。」
そういって起き上がった高松は、とある閉鎖されたはずの劇場の、舞台袖で寝転んでいた。
(何してんだろ俺…緊張して変な夢でも見たのかな…
そうや、舞台や。先輩らの出番かなあ。でもだれも来てないぞ。呼びに行かないと…。)
とにかく、今までのひどい出来事は夢だったのだ。そう思うと嬉しくなった。
楽屋へ駆け出す高松。
「アメザリさ〜ん」
だれも居ないのか。
そっと楽屋を覗き込む。柳原であるだろう人影は、鏡の前の机で突っ伏している。
なんだ、居るのではないか。自分もまだまだこの人に認められていないのだな…。
ちょっとおセンチになりながら高松は人影に近づいた。
「…!!!!」(死んでる…)
すぐそばに居る平井。なぜ反応しないのか。悪い予感は、当たった
死体だ。
「な…なんで…。」
「誰か…誰か…!」
隣の楽屋に駆け込んだ。
そこには…夢の中で見た光景があった…。
ますだおかだのますだ…
確認するまでもなく、その声は聞こえてきた。
「俺がやったってんや…。」
後ろには、ここに居るはずのない人物が居た。麒麟…川島
その形相は、とうていその人物とは思えないほどに変貌を遂げていた
その悪意は手にしている刀から発生しているものらしかった
「お前が尊敬している先輩ら全員、俺が殺してやりました。次は…こいつや。」
そういって川島が刀を(いつのまにか隣に居た)自分の相方に向ける
「……!!?。」
(こいつ…許してたまるか…。)
そう思った、瞬間。
高松は脅えることもなく、川島に飛びついていた。
必死に刀を振りかざそうとする手を押さえつける。
「触った…な。」
川島は不敵な笑みを浮かべた。
不意に川島の力が抜け、その場所に倒れこんだ。刀は高松の手に。
「ごめん…俺にはその刀…どうにも扱えへんかってん。どうか…。その刀どうにか成仏させたってな。
お前らやったらできる。頼んだぞ…。」
そういった川島の声、そして表情は、とても安心しているように見えた。
そして…安らかに息絶えた。
先輩たちを手にかけたはずの男が、自分に願いをたくし、死んでいった。
許せるような、気がした。
許せるはずないのに…。
「…!?…でもちょっと…急にこんなもん渡されたって…!!。」
自分に悪意が芽生えてくるのがわかる。
篠宮を…切ろうとしている!!。
「みやっこ!逃げろ!」
言葉とは裏腹に、その手は振り上げられる。
まったく無抵抗な篠宮に、刀は振りおろされる…!!。
「うわああああ!」
「なにしてんの?たかまっちゃん?」
「あれ?」
また目が覚めた。なんだ。今のが夢だったのか…。
安心と絶望が同時にこみ上げる。殺し合いがあったことに変わりはないのだ。
続きもののお話を執筆されてる方は、初めに『
>>185の続き』と、きちんと飛べるように書いて頂きたいです。その方が読みやすいので。
あと、一旦お話を区切られるんでしたら、「今日はココで終わりです」など書き添えて頂けると、読み手としては感想が書きやすくて有り難いのですが。
読むだけなのに文句ばかり言って申し訳ありません。
寒くなってきて、外には出かけずお家に篭もられる作家さんも多いと思いますのでw 執筆活動頑張ってくださいませ。
>>185 飛べないしわからないしですね。まことにすみません。
半角になってなかったですね。
この、「夢」の感じで、
すぐ死んじゃった芸人などを再登場させまくろうと思っています。
多分長くなると思います、これからもよろしくお願いします。
激しくお久しぶりです。
気付けば今年初め(Vol.6後半)以来となっていました。
いらんことかもしれませんが、参考にして頂ければ幸いです。
◇現時点で確認出来る生存者状況説明(50音順/予約分は含ず)◇
<※付はコンビ・グループの未出の方>
あ行
浅草キッド 水道橋/玉袋 (ビートたけし追跡中・爆問太田の遺志を継ぐ?・3以降放置)
アメデオ 森枝 (フラット森と行動中、オレンジジュース前田発見・靴下所持)/ 大河原 ※
今田耕司 (DT松本一行尾行・ハリガネ待機中・トランシーバー所持・現在地E-5)
オジンオズボーン 篠宮/高松 (もうすぐ禁止エリアとなる場所で偶然再会・合流)
オレンジジュース 前田 (アメデオ森枝、フラット森と合流)/ 村上 ※
か行
COWCOW 多田 (仕掛けつきビデオテープ3本と今田から貰った長槍所持・
ハリガネ大上を刺した後、中田カウス・ボタン一行に発見される・生死不明)
カリカ 林/家城 (磁石佐々木と行動中・普段通り変わらぬ様子・家城はチェーンソー所持)
カンカラ 入山/石田/松井/鈴樹/杉林 (男メンバー4人喧嘩中・
鈴樹、元居た場所を思い出しテツトモを残し先に向かう)
木村祐一 (DT松本・田中と行動中・3で浜田に攻撃され右腕負傷・日本刀所持)
K2 堀部 (DT浜田と接触し正気を取り戻すが浜田に献上する為の食材探索中に
幻覚・幻聴に襲われ再び発狂・出刃包丁所持・村田渚と対決 )
ココリコ 田中 (DT松本達と行動中)
五番六番 猿橋/樋口 (爆問田中達と行動中)
コント赤信号 石井 ※ / 小宮 ※
さ行
ザ・ドリフターズ 志村 (ダチョウ倶楽部肥後と行動中・銃器所持・チームを抜けようとした寺門殺害)
ザ・プラン9 難儀/ヤナギブソン (森の奥にあるログハウスに潜伏中・武器は小型銃と荒縄)
佐野ただひろ (元ピテカンバブー・桶田亡き後、村田と共に彼の遺志を継ぐ)
磁石 佐々木 (カリカの2人と行動中・未だ姿を確認できない相方を気にかける)
磁石 永沢 (正当防衛だが人を殺めたという罪の意識に苛まれている・土壁の横穴に潜伏中)
自転車こぐよ ゆうき ※
清水ミチコ(UNの死後行方不明)
18KIN 大滝 (S&W M36、ナイフ所持・感染症により
命幾許も無いピートム桑原から自分を殺してくれと懇願される)
陣内智則 (麒麟川島(死亡済)の奇襲で共に居た千原等仲間達は全て死亡・
一人生き残った空しさから自らも死を選ぼうとするがそれも叶わなかった・
仲間達の死んだ場所に戻ったそこで川島の所有物だった妖刀村正拾得・頭の中で誰かの声が)
せんたくばさみ 能勢/加藤(感想・要望スレ3にて合流)/吉本 ※
た行
だいたひかる (ハマカン神田の殺戮現場を目撃・虫除けスプレー所持・ハマカン浜谷&モジハン肖田を尾行中)
ダウンタウン 松本 (キム・ココリコ田中を引き連れ南の廃校へ・
「生き残れ 南にある廃校で待つ」と書かれたメモ所持)
ダウンタウン 浜田 (日本刀所持(切れ味は鈍っている)・食材を探しに行った堀部待機中)
たけし軍団 井手らっきょ/ガタルカナル・タカ/グレート義太夫/そのまんま東/
ダンカン(顔に熱傷)/松尾伴内/(3から途中参戦・UN(死亡済)の襲撃で皆負傷している)
ダチョウ倶楽部 肥後 (志村けんと行動中・志村に命じられ上島殺害)
田上よしえ (ダンディ、ユリQ、北陽伊藤と行動中・喧嘩中のカンカラ男メンバー達を仲裁しに
行く途中・虻川の死から完全に立ち直れていない伊藤を気遣う・ヨーヨー所持)
ダブルブッキング 川元 (元箱男・武器は細菌・人間不信)
ダブルブッキング 黒田 (ビーム吉野、マイマイカブリ高橋と行動中・武器はアイスピック・
逃げてきたことで相方から受けるかもしれない復讐が怖い)
ダンディ坂野 (田上達と行動中・テツトモ達と先にカンカラメンバーの元へ向かっていたが
窪に落ち置き去りにされ戻って来た・存在を忘れられがち)
テツandトモ テツ/トモ (カンカラ鈴樹から元の場所を聞く・田上達待ち)
電撃ネットワーク ダンナ小柳 ※
電通マン佐藤 (1でひたすら自分の未来について悩んでいた・その後放置)
友近 (中山功太(死亡済)と落ち合う約束をした小屋で彼を待ち続けている・
修道院から逃亡途中、追ってきた天津向(死亡済)に襲われ腕と顔負傷)
な行
中田カウス・ボタン (ハリガネが去った後、カウス・ボタン対決?)
南海キャンディーズ 山崎 (ノンスタイル石田(死亡済)を武器の地雷で負傷させた後失踪)
ネゴシックス (地雷で片足を無くし瀕死のノンスタイル石田(死亡済)を手当て後
何処かへ消えていった・スケッチブック、ラジカセ、救急箱所持・いい人)
ネプチューン 名倉 (爆笑田中(と、憑依した太田)と一時接触・
プログラムを終わらせるべく総元締めのいる本部を探索中・「正宗」所持)
は行
爆笑問題 田中 (太田憑依中・田中本人は気付いていない・
立川談志(死亡済)を看取った後再び五番六番、冷中達と行動中)
ハマカーン 神田 (ヒロシ、ホリ殺害・武器は槍と金槌・時々意識が途切れる状態が続く)
ハマカーン 浜谷 (モジハン肖田と行動中・確証は無いが、相方が他に危害を
加える側の人間となったことを知る・しかし信じたくはない)
ハリガネロック 松口/大上 (中田カウス・ボタン&メッセンジャーから分離、今田の元へ向かう・
松口の記憶は依然戻らず・大上はCOWCOW多田に刺され腹部負傷)
ハローバイバイ 金成/関 (ハマカーン浜谷と一時接触・神田が他芸人を
襲っていた現場を目撃したらしい・2人で共に行動中らしい)
ビートたけし (表向きのこのゲームの主催者・3から途中参戦)
ピーピングトム 桑原 (感染症による死の間際、大滝に自分を殺してくれと懇願)
ビーム 今仁 (武器は生卵1パック・怪力・マイマイカブリ五十嵐と行動中)
ビーム 吉野 (ダブルブッキング黒田と行動中・武器・ホットプレート)
130R 板尾 (千原jr.(死亡済)と接触後再び単独行動中)
冷やし中華始めました 高橋/能海/鈴木 (爆問田中と行動中・現実世界では解散)
フラット 森 (アメデオ森枝と合流・武器はでかい石)/ 船場 ※
プロペラZ キー坊/岩澤 (佐野に命ぜられ北回りルート巡回中)
ブロンクス 中岡/野口 (野口の仇を討ち、小屋に戻った中岡だが
眠りから覚めた野口は記憶喪失+多重人格となっていた)
ヘッドライト 和田 (ブロンクス中岡&野口と分離、相方町田を探す・拳銃所持)/ 町田 ※
北陽 伊藤 (田上達と行動中・虻川の死から立ち直ったように
振舞うもやはり無理をしている・刀所持)
ま・や・ら・わ行
マイマイカブリ 五十嵐 (ビーム今仁と行動中・武器・緑色をした煙草の箱・現実逃避気味)
マイマイカブリ 高橋 (武器・マッチ一箱・服用した謎の飴玉の効能で空に浮く・こちらも現実逃避気味)
マギー司郎 (審司と行動中・自分の秘密を知る長井を殺す為、攻撃を仕掛けるも返り討ちに遭う)
マギー審司 (司郎と行動中・一度死んだが師匠(司郎)の力によって復活(…))
村田渚 (自らの思い込みで桶田(死亡済)を手に掛けてしまうが
坂コロ松丘の遺品の携帯と、今際の際の桶田の口から伝えられ真実を知る・
佐野の説得で桶田の遺志を継ぎ計画を遂行する決意をする・K2堀部と対決?)
メッセンジャー 會原/黒田 (中田カウス・ボタンの対決を止める?・
會原はエンバーミングセット(遺体保存の用具)所持)
モジモジハンター 肖田 (ハマカン浜谷と行動中・拳銃所持)/石井 ※
元ブラジル代表 小林/大渡 (佐野に命ぜられ東回りルート巡回中)
森三中 大島/黒沢/村上 (6-185で合流・6-794で黒澤、大島を銃撃(?)・村上逃走)
ユリオカ超特Q (田上達と行動中)
計99名(たぶん)
◇番外◇
小薮千豊 (元「ビリジアン」・バトロワで命を落とした仲間たちの仇を討ちたい・りあるキッズ保護?)
りあるキッズ (何者かの手により、ゲームのリストから外された・
何故か新喜劇小藪の元へ2人ともかなり弱っている様子で辿り着く)
太田光代 (爆問太田(死亡済・田中に憑依中)夫人で事務所社長・このゲームを一刻も早く
終わらせたい・芸人の妻達に連絡を取りバトロワの是非を問う、出版社に協力を得ての
国会議事堂に入ってのデモ記事掲載などの計画を練る)
田中夏美 (爆問田中夫人・太田光代と共にゲームを終わらせるために行動を起こす)
長井美奈子(長井秀和夫人・光代に呼ばれ太田宅へ・バトロワ中止計画に賛成)
由香里(タイタン事務員・光代に呼ばれ太田宅へ・バトロワ中止計画に賛成)
◆
◇本編未出芸人の一部◇
(若手系)
アンガールズ/キャン×キャン/さくらんぼブービー/チャイルドマシーン/
チャップメン/チョップリン/T・K・O/ニブンノゴ!/ハレルヤ/パンクブーブー/
ブラザース/ペナルティ/名刀長塚/ラバーガール/ラフ・コントロール
(中堅・大御所系)
大橋巨泉/チャーリー浜/野沢直子/間寛平/
歌丸・楽太郎・山田くん以外の笑点メンバー (円楽/小遊三/好楽/木久蔵/こん平)
よかったらどうぞ。キラー役から死体役まで(w
外の世界でもいろいろ動きがあるようなのでこんなのも載せておきます↓
◇プログラム参加芸人たちと近い場所に居る元・芸人その他◇
オークラ:元「細雪」。解散後はTVや舞台の構成作家に。ごく稀に自らも舞台に立つことも。
原田専門家:大阪NSC11期生(中川家、ハリガネ、陣内と同期)。
卒業後、芸人・2丁目劇場進行を経て現在はCG・イラストデザイナーに。
舞台やTV番組のポスター・チラシなどを作成する。主にうめだ・baseで活動中。
森詩津規:元「シンドバット」。解散後は舞台の構成作家に。Vol.3あたりで既出。
元「−4℃」上嶋祐佳(旧姓):96年、ますおか岡田との結婚を機にコンビ解散・引退。
(当時の相方・松本美香はピンで活動。バトロワ未出)
ひょっとしたら何か力になってくれるかも。
◇現在判明している設定◇
−プログラム開始日−
・【2002年1月2日】(一応、初代スレが立ったのがその日なので)。
結成/デビューがそれ以降の人たちを出させると年月的に
矛盾が生じてしまうので書き手さんたちはお気をつけて。
baseよしもとはうめだと分離前。現・卒業組のフジワラもハリガネも
次長課長もこの話の中ではまだ在籍しています。
−プログラム参加者について−
・日本で活動する芸人全て。
・しかし福田哲平のように、本人の身体の事情で参加を免除されたものもいる。
・既に芸人を引退した者も本人の希望等で参加者の中に交じっていたりする。
・参加者には本部から食料・水・島の地図・筆記用具・
そしてそれぞれ異なった武器の入った、リュックが支給されている。
・参加者全員に架せられた首輪は、無理やり外そうとしたり立ち入り禁止エリア※
に踏み入ると爆発する仕掛けになっているが強力な電圧を加えて内部の回路を破壊すれば外せられる。
しかし外した事が本部に知れるとその芸人は兵士たちに処分される(底ぬけA-L話参照)。
(※時間が経過するごとに立ち入り禁止エリアは増えて行く)
加えて、発信機が内蔵されていて本部が芸人たちの位置を確認している。
・死亡者発表は午前午後の6時と12時の1日計4回。
−舞台について−
・元は人が住んでいた、現在は無人の島。緑が豊か。
・しかし遊園地やスキー場といったレジャースポットなどがあったり
住人も多く、割と栄えていた場所だったらしい。
・島の中央には昔の噴火の影響で生まれた火口跡がある。
・現在、故・元フォークダンスの桶田がプログラムを破壊すべく指揮を取り、故・坂コロ松丘や
佐野ただひろに起こさせた疑似噴火による地震、そして山火事が続いている。
・携帯電話は、プログラム開始時には使えたが途中で本部に基地局を破壊され現在は使えない。
−舞台裏について−
・このプログラムは島の各所に設置されたカメラでTV中継され、
各芸人には優勝者を賭けたオッズが付けられている
(中には何十億単位の金額が付けられている者もいる)。
これは国家ぐるみのプログラムであり、痛みを伴う改革のテスト、そして経済復興が目的である。
そしてそれらは参加者たちには知らされていない。
・島には芸人たちの他、本部側が派遣した大勢の兵士たちも居て芸人たちを監視している
・しかし火山の小規模噴火(実際は桶田の仕組んだ疑似噴火)を見た総本部は
大規模な噴火の起こる可能性を恐れ、島からの撤退命令を出した。
−妖刀村正・正宗について−
・「正宗」と「村正」はその刀を作った刀工の名に由来しており、正宗は村正の
師匠だったが村正の作る刀があまりに禍々しかった為、破門したという伝説がある。
・村正を所有した者は刀に宿った魂に支配され殺人鬼と化し
人を斬る度に理性を保てる時間が短くなる。切る相手が居なくなると最終的には刀の魔力で
所有者が自殺する。解放されるには誰かに殺されるしか今のところ方法がない。
・村正に宿っている魂・女の精は持ち主が人を殺すことで美しく長らえているらしい。
・「負」の力を帯びた村正と「正」の力を帯びた正宗は互いに惹かれあうと言われている。
・これまでの持ち主の遍歴
村正:ネプチューン原田→麒麟川島→陣内智則
正宗:TAKE2深沢→ネプチューン名倉
たぶん他にもあると思います。間違ってる可能性もあるので
見つけた方は補足・修正よろしくお願いします。
Vol.6-769〜現在までの死亡者
(過去ログからの再掲・時間を遡って書かれた話等、既に死亡者として
名前の挙がっている参加者分、本編とは別Ver.と認識されるものなどは省いております。)
足軽エンペラー 西田/山里、ウッチャンナンチャン 内村/南原、魚でF 須藤、
坂道コロンブス 松丘、三拍子 久保/高倉、自転車こぐよ あつし、末高斗夢、
ストリーク 山田/吉本、スピードワゴン 井戸田/小沢、ダーリンハニー 長嶋/吉川、
ダイアン 津田/西澤、高田文夫、千鳥 大吾/ノブ、つまみ枝豆、天津 木村/向、
富田哲平、中山功太、NON STYLE 石田/井上、ババリア 溝黒/三浪、ヒロシ、
元・フォークダンスde成子坂 桶田、ブロンクス 唐戸、ホリ、ママレンジ 健太/公平、
ラッシャー板前、ランチ 田口/風藤、レギュラー 松本、笑い飯 哲夫/西田
Vol.1から現在までの死亡者総数 418人+α
◇専属書き手さんのいる芸人◇
>>5に追加の継続中の話と書き手さん+修正
・カリカ、磁石、ハマカーン、モジモジハンター、
だいたひかる、(予約・タカアンドトシ):挙動不審 さん
・パラシュート部隊(予約):雪乃丞 ◆h//D5xSzUA さん
・アメデオ森枝、フラット森、オレンジジュース前田:@不法投棄 さん
・オジンオズボーン:ななせ さん
・ブロードキャスト(予約):
>>154さん
・粋なり(予約):名無しさん@胃潰瘍。 さん
・太田光代、田中夏美・長井美奈子・由香里:奥様は社長 ◆XVUp.wHBSo さん
・爆笑問題 田中、五番六番、冷やし中華はじめました:久々です さん
爆問田中一行とタイタン妻話の書き手さんは別の方です。
(田中一行の方の書き手さんは久しく姿が見えない状態ではありますが)
以上、間違い・見落としありましたら、修正お願いします。
読解力不足で書き手さんの意図とは別の解釈をしていたらすみません…。
ヒマナスターズさまへ。
7-231のリンクの相関図より馬車馬メンバーさんの設定を
全てではありませんが、引用させていただきました。
勝手にすいません。自分はメンバーについてあまり詳しくないもので…。
それでは書き手の皆さま、執筆頑張って下さい。
一読み手として楽しみにしています。
>>新・集計屋さん
お疲れサマです。ありがとうございました。
>>新・集計屋さん
乙です。そういえばもうすぐバトロワスレ2周年ですね。
時の経つのは早いものです。
>>B9さん
話の展開が読めずただただドキドキです。
これからどうなっていくのでしょうか・・??
>>ななせさん
新参者さんですね。活躍に期待です。ファイトです
おひさしぶりです。
7スレ最後までまとめたのですが、ログの足りないところを
書き手会議所の136さんの公開されているものを参照させていただきました。
勝手にスマソ。
>新・集計屋 さん
膨大な量のログだったでしょうに・・・まとめて下さって乙です。
しかし、よく考えたらプログラム開始(物語内世界)は2002年だったんですよね。
そりゃホリプロコム設定入れたら他の話との統合が取れなくもなるな・・・w
>コモ ◆hcbh0U7bsY さん
お久しぶりです。そして、ログ保管作業乙ですた。
これからもよろしくお願いします。
>>新・集計屋さん乙です。
とても見やすくて参考になります!ありがとうございました。
……2002年だったらあいつらまだ事務所に入ってなかった!
なんて今更気付いてます(w
>>コモさんお初です、貴重なログ参考にさせて頂いております。
乙です、とても乙です。
本来なら最初に書くべきだったのですが…。
アンタッチャブル編の書き手さま、まだこのログ見てらっしゃるでしょうか?
アメデオ編オチまで手元で書き終えまして、
アンタッチャブル編と話を繋げさせて頂きたいと思いました。
というかこっちが勝手にそちらの時間軸に合わせてしまったのです。
お手数をおかけします、もしこのログを見ていらっしゃるようでしたら、
何らかのアクションをとって頂けると修正を取りますので、お願いします。
すみませんです、本当にすまないです。
別にあれですが、チャップメンとラバーガール予約しまつ(w
>新・集計屋さん
お疲れ様です〜。ここまでの量となると、かなりの労力を使ったと思われ…。
本当にありがとうございます!
すごく参考になりました!
>コモさん
初めまして。今回磁石編などを書き始めるにあたって、
何回もサイトのほうを見させていただきました。
これからもよろしくお願いします!
206 :
見てただけの人:03/12/16 23:33
チャイルドマシーンで、書いてみたいんですけどいいんかな?
コモさんって方のサイトに断りいれてからがいいのかな?
>>206 まだ登場していない芸人さんであれば、
このスレで一言断りをいれるだけでいいと思いますよ。
チャイルドマシーン編期待してます。
208 :
見てただけの人:03/12/17 21:45
「ふぅ・・・」
ようやっと一人の男は山の中腹に足を踏み入れたと感じ一息をついた。
山の中は静かだ、島といわれて、小さいものを想像していたが、あれだけの数の芸人を吐き出した後もまだ
静寂を保てる場所があることに驚いていた。
男の名は山本吉貴 チャイルドマシーンというコンビの片割れである。
山本はあの教室でたけしの言葉を聞いてしごく当然に驚き、かつ怯えた。
そして、思わず相方の樅野に視線を送ると樅野もこっちを見返して
「あの林」
と一言だけ告げた。
その言葉を信じて殺し合いの隙間を縫ってただ、進んだ。この状況が、とか、
自分の行く末とか、別にどうでもよかった。ひどくゆがんだ現実の中で、
ただ、相方という言葉にすがっていただけなのかもしれない。
そんな内心の激しい思考とは裏腹に耳に響くくらい静かな林の中で山本は
待ちつづけていた。ここにたどり着く間に、見知った何人もの顔が狂気に走った眼であがいているのを
時には眺め、時には身をひるがえし、時には隠れどうにかたどり着いた。
そして、これからの自分はどうなっていくのかを考えながら樅野を待っていた
209 :
見てただけの人:03/12/17 21:47
とりあえず、触りだけ・・・まだ、片方しかでていませんが、チャイルドマシーン編、風化しない程度にゆっくり書いていこうと思います
一応1からみているので世界観は壊さないようにしようと思っています。
暖かい眼で見守ってくださるとうれしいです
新・集計屋さん、コモさん乙です。
見てただけの人さん。乙です。
続きを書かしていただきます
>>184から
誰もいない、見通しのいい崖で二人は落ち着いてた。
ここなら銃声も聞こえてこない。静かな波の音にかき消されてしまう。
どうも二人とも、このゲームに乗る気はない様に見える。
「なあ…たかまっちゃん…味方になってくれる人っておらへんかなあ。」
意地を張っている場合ではないことに、篠宮も気づいたようだった。
「はぁ!?いまさら何言ってんの!?。二人で行動するって決めたろ!
いま、誰かに会ってもいつ裏切られるかわからんぞ!それに
仲間が増えたところで、どうにもならんよ!」
高松はあせっていた。
「し〜……!!大声だすなや…誰かに見つかったらそれこそどうすねん…。」
なだめる篠宮。
「…。何も信じる気になれないよぉ…。」
高松があせっていたその理由は、ますだおかだ、アメリカザリガニ、
この二組の死と見て間違いは無いであろう。
ここまで弱気な相方を見るのは久しぶりだったようだった。
篠宮は、そんな高松をどうやって慰めて良いのかわからない様子だ。
とにかく。
「誰が殺したんか…知ってんのか?」
話して楽になるのなら、全部言ってほしかった。
>>210 「知ってる人…麒麟の…川島…。」
「!!?。」
篠宮は記憶をめぐらせた。川島…確か同じ出身。同じ名前。
「あの人が…増田さんを…。」
正直よく分からない人だったが、
やはり人殺しができるような人間だったとは思いたくなかった。
おそらくこの状況のせいで気が狂ってしまったのだろう。
そう思うことにした。そう信じたかったのだ。
二人が落ち着いた崖とは遠く離れたところに
静かな波に揺られているものがあった。「それ」は、絶え間なくつぶやき続けている。
〜皆…皆僕は悪い奴だと言う。何故…?〜
〜僕がいったい何をした…?〜
〜僕の周りの者、みな不幸になる。何故…〜
〜何故僕は生まれてきた?誰か教えておくれよ。
早く…僕を見つけておくれ…〜
〜…うん?…〜
「それ」は、怪しげな光を放ちだした
〜又ひとり、不幸になる…〜
〜あ・は・は・は・は・は…愚か者よ…
この禍々しき力をあえて欲するのか〜
村正は、波に乗り、二人が居る崖へと動き出した。
だんだん日も暮れてきた。そんなとき。高松が何かに気付いた。
「ん…?雨降ってきたみたいやでぇ。」
「降っっってぇへんやん!。」
「いや、降ってるって。今、冷たかったもん。」
「小学生かよ…!。」
言っているうちにホントに雨が降ってきた。
こんなやり取りをするほど二人には余裕があったのか。
いや、そういったふうにできるだけ作っていたのかもしれない。
だんだん波が荒波に変わってきた。
「すごいなぁ…。移動したほうがええんと違う?」
そういって篠宮が崖下を見下ろした。
……!!!……
「あれ…陣内さん…。」
崖下を指差して篠宮が訴える。青ざめている。
「へぇ?」
確かに崖下に人がいた!!!。
生死はここからでは確認できそうにない。しかし
この荒波である。生きていても、
早く助けに行かないと間に合わないかもしれない。
(もちろん、見殺しにする。といった選択肢もあったわけだが…
二人は、できるだけそういったことは考えないようにしていたのだろうか。)
二人はすぐさま崖下へと駆け出した。
やはり人影は陣内であった。かろうじて息があった。
「何しに来た…?」
せっかく助けに来たのに、そんな反応をされたことは残念だった。
自ら身を投げたらしかった。一体何故に。
陣内は虫の息でこう言った。
「ほっとけ…。それ……から、二度と…ここに近づい…たらあ…かん…。」
「そんな…死んでしまいますよ!。」
「ええから…、近づくな。」
そんな陣内の態度もむなしく、「それ」が近づいてくる気配があった。
二人はそれに気がつくこともなく、陣内を陸に上げる。
「応急処置ってどないすんねん!。」
「暖かくして、安静にさせよう。なんか役に立つもん持ってる?」
そういわれて篠宮は自分のリュックから物を取り出した。
それは、武器といえるのだろうか。
しゃもじ。
「そんなもん役に立つか!」
「自分は何持ってんのよ。」
高松の武器は、自分の手よりひとまわりでかいメリケンサックだった。
やはり、ここで役に立つものではなかった…。
もうすぐ日が暮れる。
眠りについた陣内の横で二人は大きくため息をついていた。
(何とか一命を取り留めたらしい。)
波も落ち着いてきて、浜部は静寂に包まれている。
「あ〜もういやや。はよ帰りたい。」
「生きて帰れんのかな…。」
二人して現実逃避していた。死体も、人殺しもいっぱい見てきた。
すべてに現実味なんてなかった。
そんなとき、高松は又何かに気付いた。
(……ん……?)
沖のほうから、何か近づいてくる。
(あれは…あの刀は…)
確実に、こちらに向かっている。
(夢で見たんとおんなじやつ…!。)
隣の篠宮に声をかける。
「なあ…あれ何やろな…?」
「…?」
篠宮の目線に、高松は寒気を感じた。
「…ウソ…。」
……篠宮の目の色が変わっていた。
…動けない。
もう誰の願いが届くこともなかった…。
ふら…っと立ち上がり、篠宮は容易に村正を手にしてしまった…。
そして、高松を睨み付けこう言った。
「……ハジメマシテ…。」
(何言ってんねん…。)
恐怖で言葉が出て来ない。
「日ハオチタ。貴様ノ命モオチルトキダ…。」
篠宮はゆっくりと刀を振り上げた。そして微笑んだ。
今日はここで終わりです。
長レススマソ。
間違い一つ発見してしまいました。浜部って…。
浜辺です。すみません。
>見てただけの人さん
チャイルドマシーン編期待してます。
急がず焦らず頑張ってください!
>ななせさん
面白そうな展開ですね。続きが楽しみです。
ただ、陣内さんって専属書き手さんいたような気がするのですが…
許可とか大丈夫なんですか?
>>221 一応まとめスレの掲示板で呼びかけさせてもらったのですが、
誰からも返事が来なかったので、
私はオッケイなんだなといったふうにとりました。
まずかったでしょうか。
>>222 ええんちゃいますか?
だれも文句言わなかったわけだし。
通常、掲示板に確認取って何日反応が無ければ了承と取って良いんだろう。
ななせさんの場合は2日でしたよね。
このスレ毎日じゃなく、定期的に覗いてる人の方が多いだろうしなぁ。
でも、確か陣内10ヶ月書き手さん光臨してないから大丈夫でない?
キープ宣言したんなら話は別だけど。
個人的には陣内好きだから登場嬉しかったよ。
俺の好き芸人はもう放置かなー。のんびりでも良いから書き手さんカモンщ(゜д゜щ)
225 :
@挙動不審:03/12/19 19:36
>ななせさん
そういうことでしたか。事情も知らず申し訳ございません。
あの掲示板の存在をすっかり忘れていたので気づきませんでした。
思い出したついでに自分も書き込みしてきました。
長井秀和さんを書いていた方や、
マギー師弟を書いていた方がもし今もこのスレを見ているのであれば、
今後の展開のことでちょっとご相談があるのでまとめサイトの掲示板を見ていただきたいです。
恐縮ですが、よろしくお願いします。
sage忘れた……。何だか最近ボロボロ……。
え〜、とりあえず久しぶりに、
ハマカーン&モジハン肖田編の続きを下に投下したいと思います
>>138 の続きです。
みんな笑っていた。
ただでさえ狭い車の中で、暴れまわって、熱くなって、
カーラジオの声が響き渡る隙間もないほど、俺たちは笑っていた。
心から楽しそうに。
バカみたいに。
何も考えずに。
思うままに。
ただ、それだけが楽しかった。
それだけでよかったんだ。
こうやって、みんなで。
だけど、
俺が見ているのは何だろう?
俺が今見ているのは何だろう?
どうして俺は、こんなものを見なきゃいけないんだろう?
浜谷はその光景から目を離すことができなかった。
眼前に映るのは肖田の後頭部。ここからでは彼の表情を窺い知ることはできない。
だが、自分と同じような表情をしていることは浜谷にはわかっていた。
―――――――― もっとも、その表情が意味するものは2人の間では違うのだけれど。
気配は完全になかった。いったいいつの間に近寄ったのか。
どうしてこの男はここにいるのか、なぜ姿を現したのか。
それよりも、なぜこの男は―――――――― 銃口を俺たちに向けているのか。
さわさわと木々が風に擦られる。
時間の感覚は既に欠如している。
ただ、浜谷は静かにその男を見ていた。
今最も会いたかったはずの、シナリオに書いてあったはずのその男を。
途端に招かれざる客へと変化した、その男を。
「…カ…ン……ちゃん?」
浜谷の瞳孔の延長線、神田は静かに笑っていた。
「ははっ…、まさか、その呼び方で呼ばれるとは思わなかったな」
肖田の額に銃口を向けたまま、神田は楽しそうにそう言った。
木々の間に神田の笑い声が響くと同時に、肖田の額から汗がたらりとこぼれ落ちる。
反応するタイミングを逃した肖田の銃にはやりきれない震えが伝わっていた。
「……どう…し……て?」
浜谷は小刻みに震えながら呟く。
神田を一点に見つめるその色を失った瞳が、希望が打ち砕かれた現実を如実に表していた。
そこにあるのは、誰ともしれぬ返り血を浴びた殺人鬼。
それは拭いようのない事象だった。
「……どうして? 嫌だな…楽しいからだろ?」
さも当然かのように神田が言う。
その言葉は、浜谷をさらに突き落とすには十分すぎる言葉だった。
同時に、浜谷の体の奥底から、声にならない言葉が滲み出る。
何かにすがるように、本能が。
助けてくれ。
助けてくれ。
助けてくれ。
助けてくれ。
助けてくれ。
助けてくれ、と。
「おっと、動かないでくださいよ。そうしないと……容赦しませんから」
神田は肖田の銃に目線を合わせる。
機会をうかがっていた肖田の右手が硬直した。
「その銃……捨ててください。まあ、どうなってもいいんなら気にしませんけど」
神田が銃の引き金を引く素振りを見せながら笑う。
肖田はそっと後ろの浜谷を振り返った後、自分の形勢の不利さを再確認した。
自分でも気づいていない涙を流しながら微動だにしないその浜谷は、
まるで、もの言わず佇む河川の石。
もう生きたまま死んでいるのも同然だった。
一瞬の間を置いた後浜谷に一瞥し、
先刻よりもさらに量を増した汗をたらしながら、肖田は「チッ」と舌打ちをした。
銃口を元通り地面に向け、そのまま手を静かに広げる。
こぼれ落ちた銃があたりにガシャンという音を響かせた。
時が過ぎるのを待つしかない。
「……はは、ありがとうございます」
あどけない笑みで肖田に笑いかける。
血に染まった向日葵の笑顔は、一つの芸術品のように完成されていた。
「さて…じゃあ、この銃もらっていきますよ。折角いい武器だったのに残念でしたね」
肖田の額に自分の銃を合わせたまま、土に寝そべるその銃を拾おうとしたその時、
またしても突然の来客だった。
「……!」
そこからは一瞬の出来事だった。
新たな来客に気をとられた神田を、肖田が思い切り突き飛ばす。
肖田の銃を拾うために体制を崩していた神田は、
構えていた自分の銃を撃つ暇もなく地面に叩きつけられた。
肖田は矢のような速さで一度土の上に捨て去った銃を再び自分の手に収め、
倒れこむ神田を撃ち抜こうとした ―――――――が。
「…やめろぉぉ!」
突然背後から伸びてきた太い腕が肖田の動作を狂わせ、
その刹那、乾いた2つの発砲音が辺りにこだまする。
緊迫を無視していた数羽の鳥たちが、キーキーという鳴き声をあげ一斉に飛び立った。
標的を失った一方の弾は宙を彷徨い、もう一方の弾は男の肩口に食いこんでいた。
「動くなあ!!」
体制を立て直した神田の怒号が天を仰ぐ。
その雄叫びは、その場にいる全ての人間に向けられていた。
先ほどまでの静寂が一瞬にして嘘に変わる。
指の間から溢れ出る血を食い止めながら、肖田は神田を睨みつけていた。
「ふざけるなよ……」
肖田は目の前の神田を見つめながら、後ろの浜谷に呟いた。
依然肖田の右腕を掴んだままの浜谷は、青白い顔で立ち尽くしている。
ただ、その能面のような顔に包まれた彼の意志は、明らかに燃えあがっていた。
浜谷の行動が、銃弾の軌道を確実に変えていた。
もしも浜谷が動かなければ、間違いなく目の前の殺人鬼は貫かれていた。
もしも浜谷が動かなければ、もう一つの弾が撃たれることもなかった。
肖田の右肩に穴が開くこともなかった。
「ふ……ふははは、はははははははは!!」
神田が銃を構えながら笑う。
冷静さが失われたその顔は、既に悪魔のものとなっていた。
「ハマタニ……お前とコンビ組んでよかったよ…。まさか助けてくれるとはなあ」
笑いをこらえきれない様子で神田が言う。
浜谷は何も言わなかった。
肖田は悔しそうに唇を噛んだ。
そして、事態を引き起こした3人の来客者は、その場からピクリとも動かなかった。
動けなかった。
「はは…ねえ、肖田さん」
ひとしきり笑い終えた後、神田が唐突に呟いた。
肖田は歯を食いしばりながら、怪訝な表情でそれに応える。
だが、その表情は、次の神田の言葉で一変する。
「そういえば……相方さんの姿が見えませんね」
さらに、空気が凍りついた。
それは何気ない言葉だった。
だが、その言葉が何を意味するのか。
「……何をした」
肖田が体を震わせる。
「てめぇ! 答えろお!! 石井に何をしたあぁぁ!!!」
叫び声があがると同時に、再び肖田が神田に向かって動こうとした。
だが、それは例によって浜谷の力によって抑えられる。
「放せ! 浜谷! 放せええ!!」
浜谷の体の中で肖田が暴れる。
それはこのゲームが始まってから、初めて露骨に表した感情だった。
自分の傷口の痛みも、苦しさも関係ない。
誰もが感じとれる最高潮の『怒り』がそこにあった。
「今回は浜谷に免じて許しますよ……ただ…次に会ったときは…」
未だ暴れ続ける肖田を見ながらそう言うと、
神田は自分以外の5人を今一度見渡して、微かに笑った。
そうして銃を構えたまま静かに後ずさりをし、
しばらく行ったところで踵を返して脇の小道へ駆け抜けていく。
肖田は出来ることならその背後を撃ちたかったが、浜谷の力がそれを制した。
来客者の1人にも、その殺人鬼の背後を撃つことはできた。
だが、浜谷から発せられる何かが、彼の行動を制していた。
「すみません…すみません…すみません…」
浜谷は肖田を押さえつけながら、ただ謝罪の言葉を繰りかえしていた。
とりあえず、今回の分はこれで終了。
ところで、今日初めてお笑いバトロワのお絵かき掲示板に行ったのですが、
磁石永沢が描かれていたこと全く知りませんでしたw
描いてくれたにせねこさん! ありがとうございます!
ものすごく嬉しかったです!
235 :
見てただけの人:03/12/19 22:01
しばらくいると、不意に静寂は破られた。
手近な場所に潜んで様子をみると何かにもみあう声が近づいてくる
そこには信じてまっていた、樅野ともう一人誰かがもみあっている。
待っていた樅野のあまりに予想外の登場に突っ込みを忘れて立ち尽くしてしまった。
と、見ると樅野が馬乗りになられた・・・と、思うと同時に体は動いていた。
誰だかわからない芸人を蹴っ飛ばし樅野をひっぱり起こすという動作を
神がかり的な速度でこなし、手を取り合って逃げ出した
(チャイルドマシーン合体)
>見てただけの人さん
ジャンプのレス番号忘れないでくださいね。
>挙動不審さん
続編、乙です。
あぁ〜、神田がどんどんエライ事に・・。
そして石井太郎も出て来て欲しかったのですが、叶わないようですね(ノД`)
また続編楽しみに待たせて頂きます。挙動不審さんペースで、頑張って下さいませ。
@挙動不審さん乙です! (´∀`)つ旦~オチャドゾ
神田…どうなっちゃうんだ…
神田暴れる→うの登場→目を覚ます神田→うのに殺される
うあ、失敗した・・・ごめんなさい
>書き手の皆様
乙です、楽しく読ませて頂いてますー。
当方わざわざ宣言したのに、まだ執筆途中です。
なんかうまくまとまらず、一度白紙に戻して書き直そうかとしてまつ…_| ̄|○
>>61 の続き
ピカッ――――――――――
雷が光った。その雷の光に青木の顔が照らされる。
青木の顔は目が開いたまま、やっぱり笑っていた。
ついさっき見たゴロゴロ転がる死体へと化させてしまった・・・・・・・。
「・・・・・・・・雨や。雨宿りできるとこ探さな。」
「そやな!」
「あ、ちょっと待って。」
矢野は青木の腹に刺さっている矢をひっこぬいた。
「はぁ?それどないすんねん!」
「一生の宝モンや」
「・・・・・宝モン?」
矢の先端から、血がポタリポタリと垂れている。矢野は先端をペロっとなめて
右手で強くにぎった。
「・・・・・休むとこないなぁ・・・・・」
「そらそやわ、こんな山奥まで来て・・・・・」
途切れ途切れの会話。ザクザクという足音が異様に耳に残る。
矢を握るぺぺの手は震えているかのように見えた。
「あかん。見つからんからここで休もう」
そこはとあるでかい木の下だった。葉と葉のあいだから冷たく雨が降ってくるが
体力も限界に達していたので、休むことにした。
矢野はそのまま、コテンと寝てしまった。――だが、矢を決して離すことはなかった。
「ぺぺ?・・・・・・・・・もう寝たんか。・・・・・・お前そんなもん宝にしたって
しゃあないで・・・・・。」
矢をそっと手から抜き取って、パキンと折った。
そのときフッと矢野が笑った。
「・・・・・コイツなんの夢見てんのやろ。」
さっきまで、矢野の顔がこわばっていたので笑顔を見てホっとした。
すいません、名前入れるの忘れました。
>>243は私です。
今回は、ここまで〜。
やっとカキコできました。パラシュート部隊。
でもみなさん本当に上手ですね!私ももっと文章力つけなくっちゃ!
>見てただけの人さん
上にたくさんあるように、
普通に半角で
>>235と打てばいいですよ。
ごく普通に、キーボードで。
ブロードキャストを予約の154=樽々ソースです。
青空・アジアンの二組を書きたいのですが誰か書かれているでしょうか?
あと、ブラザースの谷口さんも書かせてもらいたいです。
稚拙な文ではありますがよろしくお願いします。
青空はもう死んでますよ。
>>250 そうですか。
全文検索かけたつもりだったんですが見落としていました、ご指摘ありがとうございます。
>>新・集計屋さん
遅らばせながら乙です!
本当にこれだけ書き出すのは大変だったと思います。
設定など知らなかった事もあって勉強になりました。ありがとうございました!
>>コモさん
更新乙です!ミスを直していただきありがとうございました。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。これからもよろしくお願いします!
>>樽々ソースさん
青空・アジアンの二組を…と書かれておりますが青空死亡済みでもアジアンを
使われますでしょうか?すいません、自分もアジアンを出したかったもんで…。
もし樽々ソースさんが青空の生死関係なくアジアンを使われるのなら結構なのですが、
アジアンの登場があるかないかで話が少し変わってきますし
これが分からないと書き進めれないので申し訳ありませんがご返答お願いします。
>>B9さん
アジアンは出す予定です。
>>249に追記
ブロードキャスト・アジアン・ブラザースの三組で書かせてもらおうと思います、よろしくお願いします。
>>19-27 の続き
「………で、だ。」
命乞いをするかのように平身低頭。土下座する男を前に、浜田は冷め切った呟きを洩らす。
「そのポン刀持ってる奴に、ジブンむざむざと追い返されてきた、と。」
「…す…済みませんでしたッ!」
「済みませんでしたで済むか! ボケがぁ!」
額をグリグリと大地に押しつける堀部に、浜田の怒声が突き刺さる。
同時に浜田は堀部の右肩を強引に足で蹴り上げた。この本気の蹴りには、堀部も身を起こさざるを得ない。
すでに何発か顔面に拳骨を頂いていたようで。
堀部の顔は鼻血と涙と汗と土とでグチャグチャになってしまっていた。
それでもなお涙をボロボロと流し、怯えきった眼差しを見せる堀部の。
その喉に、浜田は堀部を蹴り上げた足の裏をピタリと添えた。
首輪の金属質の冷たさが、うっすらと熱を帯びた堀部の喉には一際異質のモノとして感じられる。
ぎり……
浜田は堀部の喉に足で圧力を加えていく。
「俺は腹減ってんねん。わかるか?」
子供に諭すような、そして同時に酷く相手を小馬鹿にしたような口調で、堀部に告げた。
堀部も必死にコクコクと頭部だけで頷いて返す。
「お前のどうでも良い話なんて、ホンマは聞きたないねん。これもわかるな?」
コクコク。
「とりあえず。一つだけ、答えろ。」
腹の底に響く、低い浜田の声。
「お前が見つけたそいつら、喰えそうなモノは持ってたか?」
ミシ、と音が上がりそうなほどの圧迫感を堀部は喉に感じる。
「…………。」
連中が。あの3人が食料らしい物を持っているという確信は堀部にはまったくない。
とはいえ、何よりここはまずこの人に殺されない事が最重要事項であろう。
堀部は即座にコクコクと必死に頭を縦に振っていた。
すると。不意に、喉に掛かっていた圧力がかき消える。
息苦しさと痛みが薄れ、堀部は喉を手で押さえながら浜田を見上げた。
彼の顔には半信半疑といった色が何一つ隠されることなく浮かんでいたけれど。
「じゃ、今すぐそこまで案内しぃ。」
素っ気ない調子で、浜田は堀部に命じる。
「俺がそいつらを殺る。せやけど、もしそいつらが何も持ってなかったら。」
「その時は、お前も・・・殺す。」
「・・・大丈夫、ですか?」
これで何度目になるだろう。
不安そうに声を掛けてくる佐野に、大丈夫やとまた村田は声を和らげて答える。
「て、いうかな? お前の方がよっぽど大丈夫やないんやから。気にせんでエエよ、マジで。」
穏やかな光が降り注ぐ林道を。太陽の輝く方向へと、村田と佐野は歩いていた。
配られた島の地図を見た感じだと、もう小一時間ほど歩けば
目指す南の市街地を望める高台には出られる筈なのだけれど。
「俺は、別に・・・そんな気にするほどでもないし。」
「阿呆か。腕そんなに腫らして・・・『別に』な訳ないやろが。」
平然さを装って村田に返す佐野から視線を逸らして、村田はため息混じりに呟く。
しかし、だ。
ここ何時間で、村田の身の上に色々な事が起こりすぎているのも事実。
確かに肉体的にはそれほど傷を負っていなくとも、メンタルの面ではまだまだ危ういといえる村田の事を
佐野が心配する気持ちも決してわからない話ではない。
その気遣いが嬉しくないと言ったら嘘になる。
だからこそ。
「頼むから、もっと自分の事を大事にしぃな?」
村田の口からはそう言った言葉ばかりが漏れ出てしまうのである。
それが傲慢な願いである事はわかっている。でも。
もう、何も失いたくないから。
はぁ、と息を吐いて村田は右手に握る日本刀へ目をやった。
江頭2:50にトランプを投げつけたあの時とも、そして桶田に懐刀で斬りかかったあの時とも違って。
これはこの島で初めて、誰かを・・・そして何かを守りたいという。
はっきり自覚できる想いから振り上げた武器。
ギン。
最上段から振り下ろされる刀身を、堀部は翳した包丁で食い止めた。
金属同士がぶつかる独特の音が上がり、互いの手首に鈍い衝撃が走る。
相手を弾くような形で、二人の距離が少し、離れた。
「・・・・・・ぁああああ!!」
その僅かに開いた距離を躊躇せず踏み込んで。更に村田は斬りかかっていく。
ブゥン、と大きな音を立てて刀は空を切った。
素早く飛び退いた、堀部の口から軋むような笑い声がだだ漏れて、不快感を誘う。
「・・・・・・・・・っ!」
さすがに金属で出来ているだけあって日本刀は重く、刀に振り回されるような錯覚に陥る。
小振りで普段から身近にあり、扱いやすいと言う点で包丁に比べると不利な部分もあるだろう。
堀部の虚ろな目を睨み返しながら、村田は奥歯を噛みしめた。
とはいえ、ここを一人で切り抜けられない事には。
自分に『ゲーム』を潰す事など到底出来るはずがないだろう。
だから。むざむざここで殺される訳にはいかない。
遮二無二。村田は堀部へと切りかかった。
扱い易さでは包丁に劣っても、リーチに関してはまだ刀の方が有利である。
堀部からの反撃を受けない程度に間合いを詰めつつ、力任せに刀をひたすらに振り回す。
今、自分は刃物を持っている人間と相対しているのだという恐怖を、
そしてこれから自分は彼を殺すのだという恐怖を。意志で押さえ込んで。
とはいえ、堀部も黙って村田の好きなようにさせている訳ではない。
包丁の背の部分で刀の一撃を受け止めて。
弾くと同時にがら空きになった村田の左太股に前蹴りを叩き込んできた。
「・・・・・・ンっ!」
左太股と言えば、彼がかつて佐野とのトークライブの帰りに事故に遭い、骨を砕いてしまった箇所。
鈍く伝わってくる痛みに思わず前のめりになりながら、
それでも村田は堀部を視界の中から外す事なく睨みつけ続ける。
そういえば。あの時以来だろうか。
これほどまでに深い絶望と、耐え難い焦燥と。他人の存在のありがたさを感じたのは。
しかし村田への蹴りを契機に、今度は逆に堀部が圧してくるようになってくる。
「アンタさえ・・・居なかったら・・・戻ってくる・・・綺麗な・・・キレイな魂・・・魂がァああアあ!」
堀部の口からはひっきりなしに言葉がこぼれているが、
村田にそれらが最終的に意味する所を理解できるようなモノではなかった。
「キえてなくなれェえええええ!」
「・・・断るっ!」
自在に振り回される包丁の刃に対して村田は上から下から刀を振るい、弾く。
相変わらず刀の重みに振り回されている感覚は否めないが。
その中でも、少しずつ。村田には刀の扱い方がわかり掛けてきているような気がしていた。
昔剣道をかじっていた、その経験がここで蘇りつつあるのかも知れないけれど。
「・・・っらああっ!」
刀を振り回す度に、空気の抵抗が薄れていく。打ち込みが鋭くなっていく。
ヒュン
刀が空気を切る音も、いつしか軽やかな響きに変わっていた。
とはいえ、所詮は素人の身。疲労は頑丈とは言い難い肉体を容易に蝕み、
息も本人に自覚があるのかどうかは分からないが、どんどん荒さを増していく。
肩のみならず、全身で呼吸しながら。村田は刀を構え直した。
こうなれば、最後は精神力の勝負だろう。
「村田さん・・・。」
周囲への警戒を怠ることなく、懐刀を携えて状況を見守る佐野の口から祈るように呟きが漏れた。
手出し無用と村田が言ったから。ここは彼を信じるしかないのだけれど。
もしも。万が一の事があれば。右手に握る懐刀で堀部を刺し殺す覚悟は出来ている。
「刻む刻む刻む刻む刻刻刻キザキザキザキザ・・・キヒャァハハハハハハハハハ!!!」
ゼェゼェ言いながらも、同時に堀部の口をついて出てくる奇声じみた笑い声。
その身体を支配しているのは、彼が感じている感情は。
目の前の獲物を分解しなければという強迫観念を発端とする一つの狂気。
そうする事でしか、彼は安堵する事が出来なくなってしまっていたから。
端正な顔だちを歪めて。彼は間合いを詰めると刃をひらめかせる。
「させへんっ!」
今まで何度も刃を刀で受け止めてきた、そのタイミングを意識してワンテンポ早めて。
堀部が包丁を振り下ろしきる前に、村田は渾身の力で刀を跳ね上げた。
ギィン。
一際大きな金属音が上がる。
手首から腕へと痺れるように伝わっていく重い痛みに、村田は顔を顰めながら。
素早く刀を手元に引き寄せつつ、左足を軸にして堀部の懐に背中を向けて潜り込む。
「・・・・・・っ!」
引き寄せた刀の柄を、村田はそのまま右脇腹の外から堀部の腹部に叩き込んだ。
遠心力・・・というのだろうか。回転の力を活かしての一撃。
更に村田はそこで止まる事なく。正面に向き直りがてらに右足で回し蹴りをも見舞う。
まったくのインドア人間である村田に格闘技の心得などあるはずもなく。
今の蹴りも格闘技好き芸人達が冗談半分に技を掛け合っていた、その見よう見真似であったが。
幸運にも右足の踵は空を切ることなく、ヘロヘロと堀部へと命中する。
そして。妙な手応え・・・というか足応えがあったかと思うと。
堀部はギャッと悲鳴を上げ、うずくまるように蹌踉めいて、膝から大地に倒れ込んだ。
児戯に等しい蹴りであっても。当たり所如何では案外ダメージは与えられるものである。
ましてや、狂的な興奮でいきり立った珍棒直撃ともなれば。
「・・・勝負、あったかな。」
何とも締まらない決着のつき方ではあるが、刀の切っ先を堀部の顔面に突き付けて。
村田は掠れた声で呟く。
「こっから色々組み立てていこう思ったのに・・・まぁ、結果良ければ、やけど。」
それが本音なのかブラフなのかは分からないが、言葉を続ける村田からのアイコンタクトを受け、
佐野が堀部から包丁を奪い取り、遠くに投げ捨てた。
「・・・・・・・・・・・・・・・ぁ」
最初は呆けた目で目の前の切っ先を、そして村田を見上げていた堀部だったが。
それが何を意味しているのか。そして自分の立場はどうなっているのか。
本能的に理解した途端、彼の表情は劇的に変貌する。
それは幼子が自分の失態を見咎められた時の様子にどこか似ていて。
「ぁあああああああああああああああ!!」
サイレンのような怯えきった絶叫が彼の喉から迸った。
「殺さないで殺さないで殺さないで壊さないでイヤ・・・イヤ・・・イヤぁあああ!」
恥ずかしげもなく涙をボロボロこぼしながら、それこそ堀部は必死に懇願しようとする。
「・・・・・・・・・・・・。」
興奮による怒気と哀れみに似た感情が入り交じった眼差しで、村田は堀部を見やっていた。
ここで刀を振り下ろせば、彼の命は終わる。
しかしそれで、本当にそれで良いのだろうか。
「・・・村田さん。」
何かを・・・いや、それはもう明らかになっているのだが・・・を促すように佐野が村田の名を呼んだ。
「あぁ・・・・・・。」
何を今更躊躇っているのだろう。佐野に答えながら村田は声に出さずに呟く。
何があっても計画をやり遂げると・・・決意したはずではなかったのか?
泣きわめく堀部に突き付けた刀の切っ先は、微かに震えていた。
そんな村田の態度から躊躇の匂いを嗅ぎつけたのか。それとも本当に本能的な行動だったのか。
不意に堀部は手元の土を握りしめると村田の顔を目掛けて投げつけた。
「・・・・・・・・・!」
土から顔を守ろうと村田が反射的に左腕でガードをする、その数秒間の間に。
堀部は這うようにして村田から離れると立ち上がり、
包丁を拾い上げながら森の茂みの方へと逃げだそうとする。
「なっ・・・・・・?!」
モタモタとおぼつかない足どりで遠ざかってゆく堀部の背中。
こんな時に役に立つだろう拳銃は、よりによってまだ桶田が身に付けているはずで。
村田は咄嗟に自分の鞄から末高斗夢の武器である壁掛け時計を取り出すと、
フリスビーの要領で堀部へと投げつける。
彼の体格の良さも手伝って、壁掛け時計は茂みに半ば入り掛かっていた堀部の頭部に見事にヒットする。
ゴン、と村田達の位置からもはっきりと聞こえる音が上がり、
堀部はそのまま倒れるように姿を消してしまった。
後には村田達と、元のような静寂が残されるばかりで。
「悪い・・・逃げられて・・・しもた・・・な。」
佐野の視線を感じ、村田は力無くそう口にする。
「村田さ・・・・・・」
そんな事ないですよ、と言おうとした佐野の言葉は途中でかき消えた。
緊張の糸がぷつりと断たれたのか。村田は刀を右手に携えたまま、蹌踉めいて。
こちらも膝から大地に倒れ込んでしまったのだから。
佐野の話によれば、村田が気を失っていたのは数十分ほどの事だったらしい。
その間に、佐野は堀部の消えた茂みの辺りを捜してみたようだったが、
堀部は逃げ切ってしまったようで、その姿は見あたらなかったのだという。
・・・もしも次、あんなシチュエーションになってしまったら。
村田は口に出さずに呟いて。それから天を仰いだ。
命乞いをしてくる相手を容赦なく切り捨てる行為はどうも後味が悪いけれど。
計画を遂行していく中では後ろに憂いを残さないためにも必要な事であろう。
彼なら、何の躊躇もなく刀を振り下ろせたが、村田には果たしてそれが出来るのだろうか。
「いや、出来る出来ないとかとちゃうな。」
自分に言い聞かせるように、村田は呟く。
・・・やらな、アカンねん。
それが計画を受け継いだ人間の使命。
その為の罰も償いも、すべてはこの『ゲーム』から逃げ出した後の話だろう。
改めて村田は手元の日本刀を見やる。
「あ、そうだ。村田さん・・・その刀なんですけど。」
別にじぃっと凝視していた訳ではなかったが、村田の仕草にふと佐野が口を開く。
「・・・これが、どないしてん?」
本来、村田の手にある日本刀は佐野に与えられた武器であり、佐野が持つべき物である。
しかし、ここに至る過程で左腕を負傷してほとんど動かせない佐野が懐刀を、
そして村田が日本刀を持つという事で話し合いはついていた。
「あ、いえ・・・別に・・・・・・もうわかってる事でしょうから。」
「・・・・・・は?」
話を振るだけ振っておいて、一気にすかす佐野の口調に村田は戸惑いを覚える。
『わかってる』って一体何の事? と訊ねようとした、その時。
ゾクッと。村田は全身に悪寒が走る錯覚を感じた。
・・・・・・何かが来る。
得体の知れない厭な予感に村田が進む道の先を見やれば、30mほど先に一人の男が立っていた。
その手に棒状の武器を携えたその男は太陽を背にしているために、顔を伺うことは出来ない。
「・・・あんた、誰や。」
それなのにひしひしと感じる威圧感に圧倒されないよう、村田は声を張り上げて呼び掛ける。
「・・・・・・・・・・・・」
どうも村田の他愛もない呼びかけが、いたくツボに入ったらしい。男は笑うような仕草を見せた。
「何がおかしい!」
相手の仕草の意図が分からず、村田は再び声を張り上げる。
今度は即座にどこかで聞いた事のある声が、返ってきた。
「いやぁ・・・随分面白い事聞く奴やぁ思ってな。」
あーおかしい、と白々しく付け加える彼の名前を、決して二人が知らないはずがない。
ドクン、と村田の心臓が音を立てる。
「自分、浜田雅功って言いますねん。どうぞよろしく・・・・・・て言うと思ったかこのボケがぁ!」
綺麗なクレッシェント型にブチ切れていく声。
声と一緒に抗いがたい威圧感までもが空気をつたって伝わってくる気がして。
「・・・佐野!」
「はいっ!」
言葉を交わさずとも、ここは完璧に意志疎通を図る事ができたようだった。
村田と佐野は、林道から側の茂みへそしてその奥へと駆け込んでいった。
堀部の話では三人組と言う事だったが、目の前にノコノコやってきた二人は
それでも彼の言う彼の出会った芸人の特徴をピッタリと兼ね備えているように浜田には思えた。
その二人が浜田の名前を聞いた途端、逃げるように森の中へと駆け込んでいったのを眺めながら
浜田は口元に笑いが浮かぶのを止める事ができなかった。
「・・・何のために俺が一人でここに居ると思ってんねん、あの阿呆どもが。」
誰に言うでもなく呟くと、浜田は高く口笛を吹き鳴らした。
それは、彼が従える猟犬への合図。
狩りの、始まりである。
>樽々ソースさん
ブラザース、ブロキャス、アジアンですか・・・全く関連性無いですね。
B9さんがずっと新生base芸人を書いてらっしゃるので、流れ的にはお任せした方が良いと思うのですが。そこまで書きたいとおっしゃるんでしたら、さぞかし良い作品を書き上げて下さるんでしょうね。期待してます。
>B9さん
今後誰が登場するかドキドキしたい気持ちはあるのですが、こんな事もありますので、登場予定の芸人さんを予約された方が良いのではないでしょうか?
個人的には、ソラシド書いて貰いたいです。頑張って下さい。
>>樽々ソースさん
わかりました……では諦めさしていただきます。
わざわざすいません、ありがとうございました。執筆頑張ってください。楽しみにしてます!
NSC20期を中心に同窓会みたいなノリ絡めつつw書き進めていたのでアジアンを出せないのは非常に残念です(´・ω・`)
では自分はヘッド町田、ソラシド…あと、とろサーモンを予約さしてください。
まだ新生baseメンバーはまだまだ出すと思うんですがとりあえず今のところはこれだけで…。
>>266 ありがとうございます!266さんのアドバイスに沿わせていただきました。
今、自分が一番出したかったコンビというのがソラシドでしたのでソラシドは出させていただきますw
すいません
>>253を書き込んだ覚えがないのですが…。
B9さんがお使いになられるのであればアジアン、是非使ってください(というのも変な言い方ですが)
青空・アジアンは二組の絡みで使いたかったので…。
B9さんの続き、楽しみにしてます!!
>小蠅さん、待ってました。
ストーリー展開が格好良いですね、
村田渚がどうなっていくのか、楽しみです。
浜田のキャラもリアルで、次も楽しみにしています。
>雪乃丞さん
青木さやかに関してはそのままにしたのですね。
個人的には青木さんの活躍は嬉しいのですが、一応一度死んだ身なので、
設定的にどこかでつじつまを合わせたりなんなりしたほうが良いかもしれませんね。
パラシュート部隊面白そうですね〜。矢は今後の展開に影響を及ぼすのでしょうか。
気になります。
>小蝿さん
浜田さんとの対決があるのでしょうか…。
ますます目が離せない展開になってきました。
村田さんもどんどんカッコよくなっていきますね。
次の展開が待ち遠しいです。
>小蠅さん
すいません、名前書き間違えました。
小蝿さん、挙動不審さん、見てただけの人さん、雪乃丞さん、ななせさん。全員乙です。
新人の活躍が多いです。(小蝿さんの作品もよかったです。リスペクト。)
どんどん精進してください。
…私もがんばります。
>>126-130の続きです。
気を失った前田を抱えてまた来た道を戻る。
事態が飲み込めないまま、2人は前田の意識が戻るのを待った。
夜になり、気温がぐっと下がる。
冬本番でないだけまだ、寒さはしのげる。
「火、起こします?」
「でも誰かに見つかりそうだな。」
崖下で2人は声をひそめて相談し始めた時、前田が目を覚ました。
「森さん?」
寝起きでかすれた声で、呼ばれ振り返る。
「おー起きたか?お前何があったんだよ。」
は、と前田の目が見開かれてかたかたと小さな体を震わせる。
自分の体を両手で抱き込む。
「……大水が。」
俯いてくぐもった声で事実を伝え出す。
「大水が…人を殺したんです。」
「そりゃ、殺すだろ。」
殺さなければ殺されるのだから。
2人は呆れた声を出すと、否定の意を込めて前田が呟いた。
「……翼、村上、船場さんを。」
殺したんです、言葉の最後は聞き取れない程小さかった。
前田の相方である村上、森の相方船場も。
前田と、いや…オレンジジュースと同期であるラバーガールの大水が。
大水の相方であった飛永ですら。
「お前…冗談言うなよ。」
森の声が震えて前田に否定を求める。
しかし、前田はそれも頭を横に振った。
「本当です!大水がっ…。」
森枝の頭は真っ白になった。
「死んだ?」
呟いた途端、白かった頭の中に意味の分からない血色をした映像があふれ出した。
それは押さえられる事なく頭の中でとめどなく出続ける。
「死んだ。」
そう呟いた森は愕然と膝を地面に落として目線をさまよわせていた。
黒目は焦点を合わせるという事を忘れたように、ぐるぐるとうごめいている。
焦点がようやっとあうと同時に、
かっ、といきなり森は前田の胸ぐらをつかんで叫んだ。
「嘘っ、お前嘘言うなよ!!」
「苦しっ…嘘じゃないです!」
「森っ、やめろって!最後まで話聞けって!」
森枝がやっと森の手を前田からのけさせる。
「前田、お前まだ話途中だろ?」
「俺っ、村上が死ぬのを見たんですよ!俺、俺をかばって死んだんです!」
掌を呆然と見つめながらぽつぽつと話始める。
その掌には血がべっとりついていた。
「この血は村上のです。」
大水の武器は鍬だという。
「それで何度も何度も皆の体に突き刺して…。」
血のついた掌でシャツの胸元をかきむしる。
「逃げろ!って…巻き込んで悪かったからって。」
元々前田は村上とコンビを組むつもりはなかった。
けれども、一方的に組もう、組もうと言われ、
前の相方と解散せざるをえない状況にまで追い込まれた。
いつだったか、村上に解散したいと申し出た時も、
『俺は解散せんぞ!』
と、怒鳴られた。
もし、あの時村上に解散を承諾されていたら。
きっと前田は今ここにはいなかったかもしれないのだ。
「だから…村上は俺に逃げろって巻き込んで悪かったって。」
「で、お前は逃げてきたって?」
こくり、頷いた頭はさらにうなだれてしまった。
「船場は、船場は!」
森が食いかかる。
「分かんないです…ただ大水が笑って鍬を突き刺して…。」
混乱した頭で話されたせいで要領を得ない。
森は、
「俺、大水探します。」
「そうだな、前田も一緒に行くだろ?」
びくん、と体を跳ねさせてまた震え出す。
「あいつもう狂ったんです…会ったら、会ったら。」
森枝は森と会った時の関西の男を思いだす。
まざまざと狂っていく様を目の当たりにし、鳥肌を立てた。
でも、と話し出した森の声に2人は意識を元に戻した。
「船場の死体を、船場を俺は弔わなきゃならない。
お前も村上に手を合わせるくらいしろよ、助けられたんだから。」
毅然とした森の言葉に前田は顔をあげた。
闇夜でその表情はよく分からなかった。
「はい。」
小さな声で呟いて、目を閉じた。
森枝はため息をついた。
なんてこった、と。
こんな状況で誰も頼れない。
むしろこの3人の中で1番の先輩なのだ。
昼間腹立たしく思えた青空はもうなかった。
闇の中、わずかに窺える星を見上げる。
大川原、お前も狂ってしまった?
俺はその様を見てどうしたらいいんだ?
───────俺はどうしたいんだ?
今、この場にいない相方大川原の生死に思いをはせた。
しかし、と森枝は笑う。
「森、お前さー皆に嫌われてるけど、何でだろうな?」
ライブで色んな芸人に、
『フラット死ね!ていうか森死ね!』
と言われていた事を思い出した。
この状況におかれて森の言動に触れ嫌われる原因がいまいち分からなかった。
森は嫌そうに顔を歪めた。
「知りませんよ、俺が知りたいです。」
苦笑いではあったが、ようやく3人が力の抜けた顔をした。
生きていく、ただそれだけの事がこんなに難しいとは思わずにいられなかった。
今回はこれまでなのですが、死人のカウント…。
私の分だけとばして頂けますでしょうか?
オチばれになってしまうので、理由は会議所の方に書かせて頂きたいと思います。
面倒臭い事を言いだして本当にすみません!
最後はちゃんと、ご迷惑をおかけする事なく終わらせますのでお願いします。
ああ、何だか空気よめないですみません…
なんだか偉そうな書き方ですみません。
ご迷惑をおかけしてすみません
皆様上手過ぎてどうしよう、な気分です。
>>一応一度死んだ身なので、設定的にどこかでつじつまを
合わせたりなんなりしたほうが良いかもしれませんね。
え?どういう意味でしょうか?(すいません
>>一応一度死んだ身なので、設定的にどこかでつじつまを
合わせたりなんなりしたほうが良いかもしれませんね。
え?どういう意味でしょうか?(わかってなくてすいません
>雪乃丞 さん
@挙動不審さんではありませんが、
青木さやかは3-504で斉木しげるに既に殺された事になっているので
別のお話で再び登場させるなら、斉木に殺されたお話と繋がりを持たせないと
青木が二人いることになってしまいます。
一度死亡者としてカウントされた人を扱ったお話もありますが
内容が本編と関連性の無い場合、それらは番外編として扱われます
(原則的に先に書かれたお話が優先されます)。
拙い説明ではありますがご理解頂けますでしょうか。
>>280 わかりました。説明ありがとうございます。
たびたびすいません・・・・
>>243-244の段階で話のつながりを持たせないと
マズかったですか?
ん?大竹って梅垣と、斉木に殺されなかったっけ?それに、ラーメンズ編はエレキコミックも一緒にいたよなぁ?
ま、まだ、話の途中だから、いいのかな?
あぁ、また違うところみてしまった上の記事はきにしないでください
宣言から随分時間がかかってしまいましたが…ラーメンズ@天国編です。
─ひとつ息をするだけで五臓六腑が焼けただれる程の熱気は、いつの間にかなくなっていた。
自分の両脇を支えてくれていた二人の男も、いつの間にかいない。
くじいたはずの足の痛みも今は感じられない。これが…死後の世界というところか。
小林賢太郎は悔やんだ。自ら死を選んだ事をではない。
今自分を包む未知の世界から受ける、ありとあらゆるイメージを
自分の手によって作品に出来ない事を、である。
「コントバカ、とはよく言われます…はは。」賢太郎はひとりごちた。
しばらく進むと、周囲の白よりもなお純白な光を帯びている場所があった。
目を凝らすとその光を帯びたものは、賢太郎が良く見知った形をしていた。
「あ〜あぁ賢太郎、なんで来ちゃったんだよ?」
それは賢太郎が死んでも会いたかった、会って謝りたかった男だった。
「…仁。」
「粘土道の美術館作ってってお願いしたじゃんかよぉ。」
背中を丸めて体育座りをした仁はふくれっ面だった。
「ああ、お前が看板を作りたいって言っていたから依頼に来たよ。」
「なんだよぉ!そんな事言ったって騙されないんだからな〜。」
子供のように足をバタバタさせて、それでも仁は賢太郎との再会を喜んでいた。
「でも俺さ、賢太郎死んじゃってやっぱりちょっと悲しいんだぜ?」
ひとしきりバタバタした後、仁は少し神妙な顔をして言った。
「なんだよ、お前だって死んでるじゃないか。」
「そう言うなよぉ。だってさ、賢太郎のコントもうできないし。」
「……。」
「でも、ま、あんなところで恐い顔されるよりはマシだったかな…」
そう言いながら仁が覗く下界では、血走った目をした芸人達が
スタートの時よりかなり数が減った今も、殺し合いを続けていた。
仁は、生前の仲間が殺し合いをしている光景から目をそらすように
わざととぼけた口調で続けた。
「それに賢太郎が俺以外と組んでおもしれぇコントしてたら、俺かなしーじゃん?」
「…俺、コントでは当分お前以外に当て書きする気ないから。」
「え?」
仁は聞き返したが、賢太郎は気恥ずかしいのか目を合わせなかった。
でも、賢太郎のその言葉が自分が死んだことへの詫び代わりであろう事は
なんとなく仁にも伝わっていた。
仁は穏やかに微笑んで、それからすっと立ち上がった。
「…決めた!俺、お前と同じ時代に生まれ変わる!」
「は?!」
急に大声を上げられて、賢太郎はびくっとした。
「来世でも、お前の書いた台本演る!」
「なんだよ、まだ俺は何も言っていないぞ。」
「あの世に居る時くらい、俺がいろいろ決めちゃうんだもんね〜!」
"あの世に居る時くらい"、仁らしい言い方でそれもいい、賢太郎は思った。
「でも、勝手に先に死んだのは"この世"でのことだから、
生まれ変わって"この世"に戻ったらしっかり説明してもらうからな。」
わざと事務的に放たれた賢太郎の言葉を聞いた仁は
来世でもビール太りするほどプレッシャーを受けるのか…と苦笑した。
しかし、あの時極限の中で一度は死んでまで抗おうとしたそれを、
後どのくらい待てば味わえるのか、今の仁にはなぜだか待ち遠しかった。
以上です。お粗末でございました。
今アップしたものを見て、リンクしてない事に気付きました…。
今更ですが、
>>286-289です。
アムロ零さん、お待ちしておりました。
片桐がふくれっ面で足をばたばたさせる様が目に浮かびます。・・ちょっとかわいいかもw
これで、色んな意味でラーメンズが浮かばれたと思います。乙でした。
気が向いたらまた何か書いて下さいね
こんばんわ。つづきを書かせていただきます。
>>217から
まだ意識もない陣内に刀が振りかざされようとしていた。
「うぉら!お前の相手はこっちじゃ!」
阻止すべく高松が必死に挑発する。
「ヴァアアアアアアア…ヴリィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
「奴」がこっちを向いた。
目が合う。この世のものとは思えない寒気がする。
さっきまで、意地を張ったり、
なついてきてくれたりした人間のものではない。
彼は考えた。どうする。この状況を。
まず自分には、目の前の「奴」が自分の相方だと信じれる気がしない。
とにかく、陣内の安全は確保しなければ。と、
無意識のうちに、さっきまで居た崖へ敵を誘導していた。
「奴」は、あせる事無くゆっくりとこちらに近寄ってくる。
そして、文字どおり、崖っぷちに立たされた。その時。
「奴」は「突き」の状態を整え…猛スピードで彼の心臓をめがけ突進した…!!
チョップリン・西野は茂みの蔭からそっと顔を出した。
雨がひっきりなしに落ちていて、前髪が額に張り付いていた。
少し高いところで、崖がくまなく見渡せた。刀を持った人間が暴れているのが見える。
オジンオズボーンであることが確認できた。
「―――宇宙の戦士として。
覚悟は良いですか?戦士プレーミア・キレイヤン西野?」
いつのまにか付いてきていた相方・小林が妖精のように呼びかけた。
「うるさい。変なこと言われんでもやるっちゅうねん。
って言うか、なんやねんそれ。」
彼は妖刀村正の行方を追ってきていた。
(あれは…悪魔や。
あの刀に取り付かれたやつらは…倒すべき悪魔や。
篠宮、高松。すまん。
お前らに恨みがあるわけじゃないけど…。
……。
オーケイ。(そういえばどうしてんやろあの人ら。)
覚悟はできた。)
西野は手榴弾のピンを抜き、崖に向かって投げつけた。
抜群のコントロール。
ほぼ沈んだ夕日に照らされ、二つの影が崖下に落ちた。
(これで…これでよかってん)
彼は自分にそう言い聞かせ、その場を後にした
チョップリン・合体斉。
>>293(
>>292)
高松は抵抗しなかった。
なぜか、する気が起こらなかった。
(もう終わりか…。)
爆発音と、誰かの(おそらく陣内の)声が聞こえた。
爆発の影響で、刀の進路が少しずれた、
篠宮の持った刀は高松の腹部を貫通し、
その勢いのまま二人とも海へと落ちていった。
(オジオズ編、いったん休憩。)
――――― 時はさかのぼり、開戦間もない頃のこと ―――――
眼鏡をかけた小柄な男が瀕死の危機に陥っていた
「神様は俺に、あいつと出会うチャンスすら与えてくれへんかったんか…。」
頭ではそんなことを考えていた。
目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
(せめて最後にあいつに逢いたい。あいつにもう一度…。)
その憂いを秘めた死に顔は誰が見ても美しいものだった。
皮肉なことにそのせいで、藤井隆のコレクションに入れられてしまったけど。
――――― さかのぼることもう少し前、開戦直後のこと ―――――
細身な男は自分のリュックの中を見て愕然としていた。
「…おなべのふたと…果物ナイフやないか!!。」
絹のドレスまで入っていた。何てことだ…。
「俺はビ○ンカか!!。」
上から、もてあそばれている事は確実だった。
これで殺し合いをしろというのだ。くだらなすぎて笑えなかった。
(ポジティブに、考えよう。こんな、変な武器ありえん。
ということは、これはドッキリかもしれへん。
じゃあ、この武器って結構おいしいんかも。
たぶんこれは、お茶の間に流れてる。
そんなら、なんか変なことして、目立ったろう。)
―そう思い歌丸師匠に跳びかかってみた。―
―彼に訪れたのは、本物の死の感触だった。―
(あれ…約束違うって…。何で…?。こんなことになんねんやったら
もう一回…あいつと逢いたかったなぁ。)
オーバードライブ石野・緒方・死亡
今日はここで終わりです。
なんか唐突ですみません。
でも、後からつながってくるので。
オジオズの生死は今のところ謎ということで。
>>291 ありがとうございます!そう言っていただけるとホッとしました。
私がライブを見に行っていたのは、もう3年ほど前になってしまうので、
他の芸人さんはあまり知らないのですが…でも、また機会があれば
勉強してお邪魔させていただきます。
アムロ零さん、乙です。
夜中ですが続きかけましたので
どうぞ。まず陣内さん。
>>294から
陣内は、ふと目を覚ました。
あれ?何してんねん俺。又寝てもうたんか…。
確か自分は、村正を正宗のところに持っていく途中だったはず。
あれ?
(大変や!刀が無い。)
陣内は辺りを見回した。
なんと、若い二人が又、殺しあっていた。
(オジオズやないか!)
陣内は叫んだ。
もしあの二人が殺しあって死んでしまったら、
自分が又何もできなかったら、
もう自分の神経は擦り切れて
なくなってしまうのではないかと思ったからだ。
力の限り、叫ぶ。
しかし、
その声は届くことは無かった。
「…ホンマ、無視するやつって最低やわ。」
涙ぐみ、あきらめてそう思った。
気が付くと少年はそこに居た。
学生服を着ていた。
ここどこや…。
タカマツ…。
不意に思い出したその名前。
何故だろう。自分はそいつに謝らなければならないと思った。
でもどこにも居ない。
その前に、ここは何所だ。
なぜか泣きたい気持ちでいっぱいだった。
すると突然、歌が聞こえた。
妙にえらの張った声だ。
「そうさ!皆のた・め×××喜び。
あ・いと、××だけ〜が、と〜もだちさ〜!!」
その歌詞はもしかして…!
アン○ンマン!?
「違う!!緒方マンや〜!!愛というのは俺の相方のイニシャルや〜!!」
何やこの人は!!
でも、見覚えが有るような気がした。
「なんか探し物か?緒方マンが手伝ったろう!」
こいつは怪しい。しかしこの際仕方が無い。
「うん。誰かに謝らなあかんと思うねんけど、見つからんねん。」
「そうか!その前に、ここどこか解ってるか??」
いや、あんた、こっちの質問わかってんねんやったら
いちいち聞くなよ。
でもまあ、聞いとくか。
「え…?何所なん?」
緒方はにんまり笑ってこう答えた
「地獄やで…。」
なんやって?
地獄??
「そ…そんなん嫌や」
「怖がること無いって。こいつらが一緒。」
そこに、自分と同じく学生服を着た、
ロザン菅、麒麟川島などがいた。
「こいつらは、自分の罪を償いに来た。
そして…お前も償わんなあかん。」
俺?
俺が一体何してん。
「思い出せへんねやったら、ホンマに落ちてしまうしかないな!
あっはっはっはっは!。」
緒方マンは、正義のヒーローではなくなっていた。
「緒方マン!な…なんでも償うから、地獄行きは許して〜な!」
「何でも償う…。言ったな。」
またもや緒方マンは不敵な笑みを浮かべた。
やたらとテンションが高かった。
「じゃ…付いて来い。」
緒方マンはそういって歩き出した。
どこやここ…。天国?
高松は、がばっと立ち上がってあたりを見渡した。
そこは、ど真ん中ホールであった。
又俺は夢見てんのか。こんな時に。
「や〜。高松君。久しぶり。二ヶ月…くらいかな?」
話しかけてきたのはOver-Drive石野だった。
ほかに人影は見当たらない。
なんとなく、夢でないような気がしてきた。
そして、石野のいきなりのなれなれしさぶりに少し戸惑う高松であった。
「あ…こんにちは!どうしたんですか。
誰も居ないですね。なんか。」
「ああ…お前に話があるから、皆に先帰ってもらってんや…。」
高松はギョっとした。
石野の様子が何時にも無く真剣だったからである。
(何か、真面目な話だ。)
もしかしたら、ものすごい怒られて
ボコボコにされるのではないか
そう思うほど石野の表情は硬い。
高松は歯を食いしばり構えた。
「なあ、俺らの相方が今何所に居るかわかるか?」
「え…?」
意外な質問に、高松は気が緩んだ
「じゃあ説明するで。ここが天国への入り口やとしよう。
いまあいつらは、そのまったく逆のとこに居る。この意味解るか?」
「地獄の入り口…ですか…?」
「そうや。」
それは、あまりに唐突過ぎる報告だった。
「なんで…なんでですか!」
「相方殺し…重罪と思うやろ。」
「そんな…。」
納得がいかなかった。自分を殺したのは、篠宮ではなく、
あの、村正という刀だ。
そう言いたかった。
このままでいいはずが無い。
高松は考えた。
そして…思い出した。
「石野さん。あいつを地獄行きになんて間違ってます。」
「…なんでや?」
「思い出しました。あいつは…俺を助けてくれたんです。」
それは、二人が崖から落ちる直前の、
ほんの一瞬の出来事であった。
「いきなり上から手榴弾が落ちてきて、
すごい爆発して…
その一瞬だけあいつ、我に帰ったんです。」
「へえ〜。何でわかるの?」
「あいつ、手榴弾の爆風とか、その破片とか…
全部自分で受けて、
しかも、刀を急所からはずしてくれたんです。」
「でもここに居るってことは、結局死んでんな。おまえ
それに、急所はずしたりしたんも、もしかしたら偶然かも知れんでぇ〜。
陣内さんに身投げさせてまであの刀もちだしたような相方
ようかばう気になるわ。ホンマに。」
石野はわざとであろうか、ぶっきらぼうに返した。
それが高松の神経に火をつけてしまったらしい。
「…俺はあいつを信じてますから…!!」
高松は半分泣きながら、石野を睨み付けるようにして言った。
偶然じゃなかったとは確信としては言えないかも知れない。
でも、あの目は、あのときの目はみんなに愛されている
“しのっち”の目に戻っていた。
「それに、それだけじゃないし…。」
増田の死を目の当たりにし、もうだめだと思い、
禁止エリアに足を踏み入れた自分。
そのとき、いつもイキリなあいつが
柄にも無くおびえている様を見かけたおかげで
何とかもとの自分を取り戻すことができたのだ。
「ああそうかい…。ああもう…ムカつくわ〜。」
石野の様子が変わった。
「おまえら、ホッ…ンマに羨ましいわ!!」
「え?」
石野はそっぽを向きながら鼻をすすっていた。
「合・格・や。」
「いや、え…?」
何がなんなんだ。
「入ってオッケ〜?」
緒方マンの声が聞こえた。
緒方マンは高校生の姿の篠宮を引き連れていた。
「あのちょっとキモいおっちゃん知ってるような気がする…。」
第一声がそれだ。
高松は耳を疑った。おっちゃん…?俺が?
しかも、キモイって…。
このガキ、かばうんじゃなかった。。
高松は思った。
いつだってこいつは素直じゃないな
不覚にもそう思った。
「違うやろ。今言いたい事言っとかんなあかんで。」
緒方がそう促した。
「そうや。何も言えへんくなる前にな。」
その石野の言い方に高松は又耳を疑う。
何も言えへんくなるって何…?
「そうやった〜。おっちゃんひどいことしてごめんな。」
「よし!そんだけでええんか?」
緒方が又緒方マンになって聞く。
「あ、あとひとつ。」
「おっちゃん…じゃなくて…」
少年は照れくさそうに言う。
「タカマツ…かばってくれて…ありがとう…。」
高松は何度自分の耳を疑うのだろうか。
「…それは、こっちのセリフや…。」
「じゃ、いこか。」
オバドラに連れられて少年は去っていく。
下を向いて歩くその姿は、泣いているように見えた。
「ちょっと、僕は行かなくて良いんですか!?」
「俺らは全員地獄行きや。
お前は生きてんねんから。みんなの敵とってくれや。」
石野がフニャ〜っとした笑顔で
緒方が目を見開いた笑顔で
篠宮を連れて行く。
そんな、俺だけ生き残っても…。
高松は、自分の姿が薄くなっていくことに気が付いた。
ホントの別れがきたようだ。
最後に言っておこうと思った。
これから地獄の試練に耐えなければならない少年に
「あきら〜!諦めんな〜!!」」
後姿のまま少年はつぶやく
「寒、サブ、さっぶ〜…。」
オジンオズボーン篠宮・死亡
今日はここで終わりです。
最後ちょっとネタばれしてスマソ。
そういえば、オーケイって誰が書くんやろうね。
いつも楽しみに拝見させて貰ってます。
できればスピードワゴン2人の天国編を書かせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?
他に申し出る方がいらっしゃらなければしばらく予約しても構いませんか?
もしどなたか考えている方がいらっしゃいましたら、
一読者として当然そちらを拝見したいのでお伺い致しました。
えぇっと・・・こんな年の瀬にいきなり何ですけれど
現在書き手不在のネプチューン・名倉をしばらく後のシーンに
少しだけ拝借したいので、予約させて下さい。
>ななせ さん
今、ななせさんが村正絡みの話を書いてらっしゃるところで、
正宗所持者をこっちで動かしてしまうと都合が悪いでしょうか?
お答え次第ではネタバレにもなると思いますので、返事の方はしたらばの方でお願いします。
>>小蝿さん
個人的に問題ないです。
向こうの掲示板にもいろいろ書かせていただきました。
>>313 名前忘れてた・・・。
すみません。ななせです。
>ななせ さん
村正と正宗の件は了解しました。
自分も、そちらの話の続きを楽しみにしていますね。
>小蠅さん
ログまとめサイトに来てください…。
もしかしたらまずいことしてしまったかも…しれません。
>@挙動不審 さん
いえいえ、スレも良く読まずにまずい事したのはこっちなのでお気になさらずにw
・・・という事なので、自転車こぐよのゆうきさんも予約でお願いします。
318 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/12/30 23:05
不法投棄さん、ななせさん、アムロ零 ◆2H6dLT3oqAさん、乙です。
・・・皆さん文章うますぎです。私も精進せねば。
で、dat落ち阻止のためあげます。
どーもチャイルドマシーン編かいてます見てただけです。
続きが思いつきません。
今必死に書いてますので駄作ですが、年始には少し書きたいと思ってます。
今年は書き手様方の中に加えていただいて(おしかけて?)感謝してます
では、皆様どーぞよいお年を
書き手様、読者様
あけましておめでとうございます。
唯一のごひいきも無事昇天したので、
今年はしばらく読み手に専念することになるかと思いますが、
機会があればまた書かせていただきたいです。
書き手様、今年も頑張ってください!
>>170続き
田舎でよく見かけるようなありふれた民家。
どこか懐かしい匂いのする家で、そこは時間がゆっくりと流れているように思えた。
それでも時折聞こえる銃声や悲鳴などが、ここが間違いなく殺し合いの場であるという現実を
思い出させてくれる。
カチャカチャと音をたてながら彼は皿にもられたオムレツをスプーンですくい口へと運ぶ。
口に広がる卵の味。卵はこんな戦いが行われる前にここに住んでいたであろう住人が
裏の庭で飼っていたと思われるニワトリの巣から頂戴した。本当はニワトリごと調理しようかとも
考えたが一応「自称・動物好き」である彼……ニワトリの息の根を止めて調理することくらい
簡単ではあるが止めておくことにした。火は倉庫で見つけたガスコンロ。
卵と火があれば作るのは彼の得意料理オムレツで決まりだろう。
あっという間にオムレツをたいらげると、彼は皿も放ったらかしで大きなソファーに寝っ転がり
天井をながめ「心配やわ〜」とその独特なハスキーな声でつぶやき頭をかきむしった。
ソラシド、ツッコミ水口靖一郎。
彼は戦いが始まると同時にこの民家に逃げこみ、幸いなことに今のところ誰かと遭遇することもなく
怪我一つおわずピンピンしていた。
「大丈夫かな……」
水口は小さなため息をつきながら身を起こすと、落ち着かない様子でキョロキョロと辺りを見回し
貧乏揺すりを始める。今、彼が心配しているのは己の身の危険ではない。
「ちゃんと餌もろてるかな、クロ……」
クロとは水口が飼っている猫の名前。
「ツキ…ブチ…チャー…シャチ…カイ…フー…ジャム……。あかん、やっぱり心配やわ。」
ツキ・ブチ・チャー・シャチ・カイ・フー・ジャム……これも水口が飼ってる猫の名前。
そう水口は自宅のマンションで8匹もの猫を飼い、お笑いバトルロワイアルに参加させられる前は
8匹の猫に囲まれる生活を送っていた。
またその8匹に対する溺愛ぶりは目をみはるものがあり、水口の猫好きっぷりは芸人の間でも有名で
芸人仲間からは「猫口」や「猫のうんこくさ口」(これを呼んでいたのは笑い飯の西田だけだったが)など
水口という名前さえもまともに呼ばれることはなかった。
彼の体にはつねに付着している猫の毛とその匂い。
とりあえず彼を語る上で猫なくしては語れないというほど彼は大の猫好きだった。
殺し合いが行われているさなかにいて、飼い猫のことで頭がいっぱいになっているのはこの男くらいだろう。
「あ〜……ホンマにもっそい心配なってきた」
猫の事を考えれば考えるほど水口はソワソワと落ち着きをなくしていく。
「大丈夫、大丈夫や。きっと姉ちゃんがエサやってくれる」
そう自分に言い聞かしなんとか心を落ち着かせると今度は次の不安材料が頭を掠める。
「ほんで、あいつ何で生き残れてんねん!」
アイツ―――相方である本坊元児。
これは別に悪意のある言葉ではなく素朴で単純なる疑問。
183cmの長身で56kgという驚異の細さ。
相方である水口をもポカーンとさせる言動の数々。
基本、意味不明でなにを言っているのかわからない上に何をしでかすかわからない。
緊張感がないくせに緊張しいで、緊張するとさらに意味不明度が増すというなかなか困り者の不思議君だ。
何をされても死ななさそうだけど何をされても死にそうな相方。
水口は『俺、絶対死にたくないねん』という本坊の声を思い出す。
あれはいつだったか?たしかこの戦いに参加させられる少し前の事だ。
楽屋で水口が寝転がっていると、もともと白い顔を真っ青にした本坊がかけよってき
「俺、死ぬかもしれへん……」と突然言い出した。
「何で?なんやねん、いきなり……」
「ちゃうねん…聞いて……俺、死ぬかもしれへんねん」
「だから何でやねん!?」
よくよく理由を聞いてみるとレンタルビデオで【呪いのビデオ】を借りて見てみたら
次の日、発熱したとか何とかで異様にビビった本坊は
「そんなん絶対呪いとしか考えられへんやんか!」と本坊なりに焦った様子で水口に切々と
呪いについて説明し(しかし緊張感は全然ない)
「どうしよ……。俺、死ぬんかな?うわぁ〜…残念やわ」と肩を落としていた。
そんな本坊に水口は「偶然やろ」と呆れながら答えた。
「俺、絶対死にたくないねん」
「お前だけやなくて皆そうやわ!」
「俺、呪いのビデオを呪うわ」
「はぁ??」
「俺の呪いの方が勝ったらラッキーやんか」
「意味がわからへん!」
「ただ俺が死んだら呪いのビデオのせいやから「宇宙のパワーなめんな」って皆に伝えてな」
そう言い残すと、今度は楽屋で寝ていたストリーク吉本をつかまえ
「僕、死にたくないんですよ!吉本さん、聞いてます?聞いてください!」と揺すり起こし
吉本をポカーンとさせた上にウザがられ、しまいには怒られていた。
水口からしたら呪いなんかより何をしでかすか分からない本坊の方がよっぽど怖ろしいが、
結局その呪い云々もなにごともなく数日後に水口が「呪いはどないしたん?」と尋ねると
「呪いって何よ?」とキョトンとしながら答えられて終わった。
本当に手間のかかる相方だ。苦労も迷惑もかけられてきたし会話のキャッチボールが
成り立たずイライラもさせられた。しかし本坊に対しては呆れを通りすぎ
「あいつを1人にすると危ない」という保護者のような感覚の方が大きくなっていた。
なのでこのお笑いバトルロワイアルも本当は最初から一緒に行動しようと思った。
しかし意味もわからないまま殺しあえと命じられ、目の前で鉄拳が殺され
パニックになった芸人達に揉みくちゃにされ、水口が本坊とはぐれるのに時間はかからなかった。
「水口!!」
混乱に陥っていたあの場でかすかに聞こえた自分をよぶ相方の声。
水口はソファーにもたれかかると小さなため息をつく。
本坊は川島と仲がよかったし共に行動しているのかとも考えたが川島はもうすでに……。
死者を知らせる放送があるたび水口は身体を強張らせ、知ってる名前が出てこないことを心から祈った。
しかし無常にも水口の知ってる人間も多く死んでいった。
でも、まだあの相方の名前はなかった。生きてる。まだ生きてる。
「ホンマにはよ見つけたらな、アイツ絶対すぐ死ぬわ」
水口は立ち上がると自分のカバンを拾い上げ、中から3頭身の可愛らしいウサギのキャラクターが
同じく3頭身のタヌキのキャラクターをナイフで刺しているイラストがプリントされたお道具箱のようなものを
取り出した。ウサギの丸い目の中には星が飛び、その顔は満面の笑み。
刺されているタヌキも目を×印にして前足を上げて『やられた〜』みたいなポーズをとっているものの何だか楽しそうだ。
「いや、刺されてんのにえらい余裕やね〜…死んでもうたらええねん!」
イライラとした様子で水口は【良い子のナイフセット】と表記されたその箱を開ける。
中にはその外観とは異なりギラギラと銀色の光を放つ鋭いナイフが数本収まっていた。
「ホンマ、ふざけてるとしか思われへんわ」そう呟きながら水口は一つ一つ吟味するように眺める。
刃渡り25センチはあるのではないだろうか……小さな水口には少し大きすぎるナイフが一本。
そして刃渡り15センチ程度のナイフが一本。7センチ程度のものが一本。
缶切りやハサミのようなものがついているサバイバル用の万能ナイフが一本。計4本。
そしてオマケとしてそれらのナイフを収めるためのケースとホルスターがついていた。
これらが水口に与えられた武器。出来れば銃がよかったが、これもかなり「当たり」の部類に入る武器だろう。
全部を持つとかなりの重さになるため大きいナイフと中くらいのナイフだけホルスターに入れ
装着するとなるべく目立たないように上着で隠した。腕には自信があるが自ら進んで戦う気はない。
しかし武器を持ってるというだけで戦う気でいると勘違いする輩もこの島には多くいるだろう。
そんな人間とはなるべく会いたくなかった。
「さてと」
水口は体を伸ばすとカバンを肩にさげた。
手がかりというほどのものは何もない。本坊もどこにいるのか分からない。
しかしまったく当てがないわけでもなかった。
「水口!〇〇〇〇!!」
水口が最後に本坊を見たとき、聞き取れなかったが本坊は何かを言っていた。
口の動きから考えてそれは場所を表す言葉だったのではないかと水口は思う。
ならばそこへ行けば本坊と会える可能性がある。
オムレツの皿に残った卵を指ですくいぺロリと舐めると地図を片手に水口は家をでて動き始めた。
明けましておめでとうございます。
短いですが今日はここまでです。前回感想をくださった方々ありがd。
樽々ソースさん、よろしいんでしょうか……すいません。ありがとうございます。
樽々ソースさんのお話も楽しみにしてます!
B9さん、新年早々乙です!!
以前にこっそりとソラシドをリクエストした者です。水口の登場に、大興奮してしまいました。
ここでも猫好きな水口&不思議君な本坊で嬉しい限りです。また続編を楽しみにしていますね。マイペースで頑張って下さい。
書き手さん方いつも乙です。
若手は知らない人が多いのですが楽しく見させてもらってます。
皆さん体に気をつけて頑張ってください。
余談ですが堀部のロールキャベツの材料(=幻聴の声の主)に最近ようやく気付きましたw
遅ればせながらB9さん乙です。
ソラシドいいですね。
個人的には、もう死んでしまった人の名前なんかもちらっと出てきて嬉しいです。
続き楽しみにしてます。頑張って下さい。
B9さんお疲れ様です。
以前から感想を書く度に「出してほしい人がまだいる。」と書いてた者です。
その出してほしい人はソラシド(得に水口さん)だったので
名前が出てきた時はかなり嬉しかったです。
しかも猫キャラまで発揮してくださりすごく感動です。
続き楽しみにしてますので頑張ってください。
こんばんは。
オバドラ&オジオズ篠宮その他死亡芸人による
「地獄列車特別編」なるものを書きたいです。
向こう(まとめサイト)の掲示板にもいろいろ書かせてもらったんで
そちらもよろしく。
へりくだりすぎて気持ち悪いかもしれません(笑)。
>>255-265 の続き。
高らかに響く口笛の音。
弾かれたように堀部は木々の間を走り出す。
ガサガサと下草をかき分け、小枝を払い、指示された場所へ、一直線に。
…ここでヘマをやったら確実に俺は浜田さんに殺される。
だから、必ず殺さなければならない。
今までそうやって殺してきたようにこの包丁で切り裂いて、粉微塵に分解(ばら)して。
狂気と正気が互いに具合良く入り交じった今の堀部に、躊躇は無かった。
「消えろォオオオオオオオオ!!」
樹木の向こうに見えた二つの人影。
彼らも物音に気づき、堀部の方を振り向くも迎え撃つには時間が少なすぎる。
絶叫する堀部は包丁を振り回しながら、人影へと飛びかかった。
「佐野ぉ!」
小柄な方の人影、村田の口から鋭い声が上がる。
「……ンっ!」
もう一つの人影、佐野の顰められた顔が瞬時に赤く染まった。
彼の殆ど自由にならなかった左腕が村田を守ろうと差し伸ばされ、包丁の刃を受け止めたのだ。
骨で止まったのか切断こそされなかったものの、包丁は腕に深々と食い込んでいる。
「…ぁがあああ!」
伝わる痛みに顔を歪め、獣じみた叫び声を上げながら。
それでも佐野はまだ自由になる右手に握りしめていた懐刀を堀部へ向けて突きだした。
ほどばしる気迫に、空気が震える。堀部の左肩からも血が噴き出した。
「・・・・・・・・・・・・。」
それは一瞬の出来事。
佐野の血の飛沫、そして堀部の血の飛沫をその身に浴びながら、村田は言葉を失った。
むしろ、何が起こったのか理解しきれていない、と言った方が正しいかも知れない。
何故、ここに堀部が居るのか。これは偶然なのか。それとも必然的なモノなのか。
これが必然的なモノだとしたら・・・何故? 何故? 何故?
強引に引き抜かれた包丁の、存在していた箇所から夥しい血が流れ、佐野の指先を伝って大地に落ちる。
折角村田が巻いた包帯代わりの布は何の役にも立たず、叩き切られた赤い傷口からは白い色が覗いていて。
周囲の緑とのコントラストも含めて網膜に痛い。
「・・・・・・さ・・・の・・・?」
「渚さん・・・無事ですか。」
視線で堀部を牽制しながら発せられる佐野の優しい声が、嘘みたいに明瞭に鼓膜に触れる。
「だったら・・・ここは俺に任せて・・・先に行ってくれませんか。」
彼の言葉の意味を理解すると同時に、村田はハッと我に返った。
「あ・・・アカンアカンアカン!」
俺も戦う! 一緒に行くンや! お前も一緒に行かなアカンのや!
今にも泣きそうな表情で喚く村田へ、佐野は落ち着いた面持ちで言葉を続ける。
「ここでモタモタしてたら・・・この騒ぎを聞きつけた浜田さんに挟まれます。」
その前に渚さんだけでも遠くへ・・・南へ向かって下さい。
「・・・必ず、追いつきますから。」
最後はその流血が嘘のようなしっかりした口調で佐野はそう告げた。
卑怯や、と村田は思う。
そんな穏やかに確信を込めて言われたら。従わざるを得ないやないか。
・・・それが明らかな嘘だと分かっていても。
「何をゴチャゴチャ言ってンだよォお前らァあああ!」
怒声と共に堀部が振り回す包丁によってブン、と空気が震えた。
同時に村田は肩をトンと押されたのを感じる。
自分の方へと伸びている赤い液体にまみれた左手と佐野の微笑みが村田の視界一杯に広がる。
「あ・・・あ・・・・・・」
そのアンバランスさに怯えるかのように二歩、三歩と蹌踉めくように後ずさって。
村田はくるりと二人に背を向けると声にならない叫びを残し、走り出した。
・・・なぁ、これで・・・いつもあの人にメシとか御馳走になってた・・・恩をちっとは返せたかな?
白く霞む視界で何とか遠ざかる村田の背中を捉えながら、誰に宛てるでもなく呟いて。
「逃がスかァ!」
村田を追おうと堀部が踏み出した足へ、佐野は自らの足を引っかける。
「村田さんには・・・手出しさせねェっ!。」
思わず体勢を崩す堀部へ、佐野は渾身の力で懐刀を振り下ろした。
光が差す方向へ闇雲に走りながら、村田は涙が目に滲むのを止める事ができない。
・・・俺が。
あの時、堀部さんをしっかり殺しておかなかったから佐野はあんな傷を負ってしまった。
そう、僕が迷ったりせんかったらこんな事にはならなかったんだ。
・・・そうだ。僕が佐野を傷付けたんや。
それに佐野は浜田が云々とか言っていたけれど。
村田の荷物には松丘から桶田が取り上げた拳銃が入っていたし、別に拳銃を使わなかったとしても
二人掛かりで攻めれば一緒に安全な場所へ逃げられたに違いない。
それなのに。
・・・僕は一人で逃げ出してしまった。
とは言え、振り返って佐野の元に戻る事も今更出来ず。村田はひたすらに走り続ける。
彼の瞼の奥では桶田や佐野を始めとした大勢の人間の顔がひっきりなしによぎっていて。
それらの顔に一斉に罵られているような錯覚に襲われる。
・・・これで良かったのか?
佐野、お前は。こんなしょうもない男のために身体を張って。良かったのか、それで?
何度となく村田の中で繰り返される自問自答。
いや、自らを自らの言葉を以て叩き伏せる思考の流れ。
頬を伝う涙は拭っても拭っても止まる事はない。
右手に握りしめる刀が、左肩から下げたスポーツバッグが。
疲労とはまた別の次元でどんどん重みを増していくように村田には感じられる。
それでも。足をもつれさせながらも何とか村田は森の外れまで走りきる事が出来た。
最後の茂みをかき分ければ、そこはもう彼らが目指していた市街地が一望できる高台で。
「・・・・・・・・・・・・。」
荒い呼吸を整えながら、蹌踉めくようにそして半ば吸い寄せられるように村田はベンチに近づき、腰を下ろす。
灰色の街並みの向こうに、太陽の光が海面に反射した眩い輝きが見えた。
「桶田・・・・・・佐野・・・」
ベンチに仰向けに横たわり、青く澄んだ空を見上げて村田は呟く。
誰かを守るだなんて、助けたいだなんて。自分は何ておこがましい事を考えていたのだろうか。
ずっと守られる事しかできなかったクセに。
「僕のせいや・・・二人とも僕さえおらんかったら死なんで済んだのに・・・・・・。」
か細い声が村田の口から漏れ、周囲の空気に解けて消える。
「だったら・・・お前も死んでそいつらンとこ行くか?」
突如村田に降り注いできたのは冷ややかな、声。
一瞬、村田はそれが彼の思考の中で発せられた自らを責める声かと錯覚するけれど。
「・・・・・・・・・!」
弾かれるように身を起こし、村田が見やった先には一人の男。もちろん、それは佐野でも堀部でもない。
「ジブン・・・随分遅かったやないか。」
口の中にあるのはガムだろうか。クッチャクッチャと顎を動かしながら浜田が村田に声を掛ける。
「・・・ここで待ち伏せとった・・・って事ですか。」
「町に降りるにはどう足掻いてもこの高台に来なアカンからな。」
浜田は村田に答えながら携えていた杖の柄を握りしめると杖から何かを引き抜いた。
それは日光に反射する白い鋼、細身の刃。
「ま、それはともかく・・・ワシの名前知らんボンクラには・・・それ相当のお仕置きが必要やなぁ。なぁ?」
東野幸治から奪ってから、多くの芸人の命を散らせた仕込み杖を浜田は構える。
その姿には迷いなど欠片も存在しない。
「・・・・・・・・・・・・。」
周囲の空気が変わる気配に、村田も自分の刀を鞘から抜いた。
けれど。
受け流しきれない浜田発の威圧感と圧迫感、そして解決できないばかりか今も沸き上がってくる心の迷い。
ぎこちなく刀を構えたきり、村田は自分の身体を自在に動かす事が出来なくなっていた。
>>311 スピードワゴン好きなんで、天国編楽しみにしてます。
>小蠅さん
村田さんはこれからどうなるのでしょう……
次の展開が待ち遠しいです。
そして、佐野さんは死んでしまったのでしょうか。それとも…
うー、気になります。
>>227-233の続きです
また、動けなかった。
仕方がない事といえばそれまでだけれど、自分自身の弱さに腹が立つ。
目の前で繰り広げられていた事態に対して、
結局何もできなかった。
傍観者もいいとこだ。
誰もいなくなった道の上に、だいたひかるは足を進めた。
点々と落ちている肖田の血が、まるで自分をあざけ笑っているように感じる。
興味本位の尾行なんてするもんじゃないと、だいたは後悔した。
ヒュオオオと一陣の風が通り抜ける。
その方向は、あの5人が去っていった方向。
あの人たちはこの後いったいどうなるのだろう。
大まかなことは誰でもわかる。きっと穏やかな道のりじゃない。
だけど、それはもう近いようで遠い世界の話。
だいたはゆっくりと踵を返して、元来た道を辿りだす。
これ以上関わるのが申し訳ないように感じたから。
しばらく歩いたところで、2つの人影が目に入った。
1人は地面に仰向けで倒れており、もう1人は木にもたれかかっている。
共通していることは、既に生気が失われていること。
先刻、この目にしっかりと焼き付けてしまった、2つの死体。
ヒロシとホリだった。
だいたはなるべくその2つから目を逸らそうとして、静かに反対側を向く。
その時。
「……?」
突然、だいたの目に強い光が飛び込んできた。
一瞬の間を置いた後、まばたきをして目を凝らしてみる。
しかし、そこには異質なものなど何も感じられなかった。
「私だけ……?」
ついいつもの調子で呟いたが、周りに誰もいるはずがなく返答は返ってこない。
そんな自分の立場が妙に面白くて、口もとだけ小さく笑った。
「気のせい……かな」
軽く頭を振り、今しがた見た光を脳の中に蘇らせる。
あの光は何だっただろう。
光。
本当に光?
光じゃなかったら何だろう?
残像?
形は?
わからない。
色は?
―――――――― 赤。
「……!」
何かが、ピンと来た。
だいたは胸に1つの考えが浮かんでいた。
ついさっき自分が見た人物を、1人1人頭に思い浮かべる。
ハマカーン神田。
ハマカーン浜谷。
モジモジハンター肖田。
そして、3人の来客者。
思い過ごしかもしれないけど、もしかしたら……
だいたは光が見えた場所へゆっくりと近づいていく。
『それ』を刺激しないように。
その場所が見えてくるにつれて、胸の考えは確信に変わっていった。
それが正解だからといって、どうなることでもない。
だけどやっぱり引き寄せられる。
案外自分って意志が弱かったのかなと、だいたは静かにはにかんだ。
もう関わらないと思っていたのに。
「敵意……ないです」
一言言って背の高い草やツタを掻き分ける。そしてだいたは『それ』を見た。
思い描いていた人物を。
「永沢さん……でしたよね?」
震える手で包丁を構えた磁石永沢を、だいたはやわらかい微笑みで見据えた。
しばらくの間沈黙が支配した。
数秒とも数十分とも思えるようなその静寂の後、
だいたは半ばむりやり永沢のいる横穴に入り込んだ。
永沢はだいたの意図が予測できないのか、ただ包丁を構えたまま震えている。
「……相方の人に会いたいですか?」
「……!」
だいたが唐突に呟くと、明らかに永沢の顔が変わった。
震える手がぴたりと止まる。
「……ど…どういうつもりだ?」
永沢が初めて言葉を発した。
「深い……考えなんてないですよ。」
だいたは永沢の目を見て言う。
「ただ…今は……見つけてあげたいんです。会わせて……あげたいんです」
その言葉の意図は永沢にはわかるところではなかった。
あのとき肖田たちの元に姿を現した3人の来客者は、磁石の佐々木とカリカだった。
真っ青な佐々木の衣装はその場に強烈に浮き上がっていた。
それは、普段隣にあるはずの『赤』がなかったから。
原色のコントラストは失われると激しさが消える。
けれど、この青はその逆ベクトルを進んでいるように見えた。
また相方と離れ離れになった人物が増えたのだろうか?
ハマカーンの神田は狂人と化している。
モジモジハンターの石井は消息がわからない。
じゃあ磁石の永沢は?
佐々木を見て、まず最初にだいたが考えたことがそれだった。
そして、その答えはあまりにも早く気づくことになったのだけれど。
「佐々木を……見たんですか?」
驚きに満ちた声で永沢が尋ねる。警戒心は少し薄れていた。
だいたはその問に静かに頷き、目を逸らす。
「どこに……どこにいるんですか!?」
永沢が目を見開きながら訊ねる。
「ついさっき…他の人たちと一緒にいるところを見ました。」
だいたが言うと永沢は息を荒くする。
驚愕と困惑が混ざったような顔が少し紅潮したようだった。
「……どこで見たんですか! 案内してください!」
今にも掴みかかってきそうな永沢の顔をだいたは再び見つめる。
そして姿勢を少しくねらせ、無言で穴の外に出た。
強い風がだいたに浴びせかかる。
この風が、この風が意味するものは何だろうか。
「……ひとつだけ、約束してください」
慌てて荷物を抱え込んで出てきた永沢に、だいたは静かに言い放つ。
「……佐々木さんを、裏切りませんよね?」
草がざざっと音を立てる。
活発だった蒸し暑さが冷気の中に吸い込まれ、どこかへと漏れていった。
永沢は何も言わない。
だいたもそれ以上何も言わなかった。
永沢が隠れていた穴の中、
彼が残した包丁だけが、無言の2人を見送っていた。
肖田シロ(モジモジハンター)・浜谷健冶(ハマカーン)・
佐々木優介(磁石)・カリカ 【結合】
永沢喬之(磁石)・だいたひかる 【結合】
いろいろ出てきてわけわからなくなってると思いますw
事務所も交友関係も気にせずにとにかく詰め込んで書こうとしたのが失敗だったかも…。
でも、楽しみにしてくれている皆様(と自分)のために、
これからもどんどん書き続けていきたいと思いますので、
今年もよろしくお願いします。
>>@挙動不審さん 乙です。
だいたさんの独特のつぶやき声が耳元に迫ってくるようです。
あ、そーいやもう2年目に突入しちゃいましたね。
これからどれだけ続くか分かりませんが
書いてくださる方がいる限り読みつづけます。
今年もよろしくお願いします。
メルヘンズという芸人予約してもいいですか?
351 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/01/12 20:16
かなりさがってるんであげさせていただきます。
>>351 sageでもいいから書き込んでいたらdat落ちしませんので
余計な事をしないで下さい。
>>352 以前そう言いつつ一斉あぼ〜んで消えてしまっスレ多いから、たまには上げてもイイのでは?
そっちの方が安全。このスレの
>>1-2にsage推奨とも書いてないし。
読み手sage推奨なのはあくまでも違う意味で適応された訳だし。
>>353 で、君も上げるなら上げる時間考えようね。
保守っときます。
vol4,5はいつになったら読めるようになるんでしょう?
今田の過去箇所がどうしても見つからなかったので
6スレ目
>>69の板尾の続きということで。スミマセン…
***
「…やっば、見失った…」
木々の生い茂った獣道で、周囲を見渡す今田。
一本道だと思って油断したのが悪かった。
少し目を離している隙に、松本達を見失ってしまったのだ。
「うう…こんな事なら早うに合流しとけば良かった…」
嘆いてみても後の祭り。
恐らく、何処かに自分が見落とした道があるのだ。
そこではぐれてしまったに違いない。…冷静に、なれ。
今田は小さく深呼吸をして、もと来た道へと駆けだした。
ぐちょ、ぐちょ、ぐちょ。
ぬかるんだ地面が、一歩進むごとに今田の足を絡め取る。
苛立たしげに泥にまみれた靴を引き抜き、額に滲む汗を拭った。
------- くそッ、こんな事で時間喰ってる場合ちゃうのに…。
落ち着け、と何度も自分に言い聞かせているのだが
動悸は不安で速くなるばかり。
文字通り、今田がこうして足を取られているこの間に
松本達はどんどん離れていってしまう。
追いつけなくなってしまう。
もしかしたら、そのまま二度と------------。
「う、わっ!?」
ぐちょん。
思考に気を取られ、油断したのか。
ぬかるみに深く食い込んでしまい、前のめりに倒れる。
手を付いて直撃は免れたモノの、手も膝も泥まみれ。
「最悪…」
普段、潔癖症ともとれる程の綺麗好きである今田は
己のとことん無様な格好に、溜息をついた。
…ただ今は汚れとか、些細な事柄を気にしてる余裕はない。
気を取り直し、立ち上がろうと腰に力を入れる。
「………ん?」
動かない。
身体が、というより、地面に埋まった足が固まったように動かない。
抜け出そうと藻掻くほど、深く深く埋まっていく。
…ものすごく。
物凄く嫌な予感が、ふと脳裏を過ぎる。
「……まさか、な?」
ごぽり。
今田の嫌な予感を裏付けるように、地中は今田の下半身を
少しづつ飲み込んでいった。
-------------- 底無し沼!?
「ギャー!嫌ー!!!!」
ちょっと待て。こんな情けない死に方はありなのか!?
芸人じゃあるまいし!あ、芸人や俺…。…コントじゃあるまいし!
藻掻いて、足掻いて、藻掻いて。
…その焦りが、死期を早めるだけだということに漸く気付いたのは
腰まで沼に埋まってからの事だった。
「ど…どうしよ…」
どうしようもこうしようも無い。
近道しようとして山の中に入ったので、誰か人が通る宛てもない。
…というか、突然のアクシデントにすっかり忘れていたが
今は”殺し合い”の最中なのだ。
仮に誰かに見つけてもらったところで、その人物が友好的である保証は何処にもない。
所謂、絶体絶命。
「こんな死に方は嫌やーーーー!」
思わず、今田は心の底から叫んだ。
死ぬのに納得できるもクソも無いかも知れないけれど
底なし沼にハマって一人逝くなんてあまりにも間抜けすぎる!
「松もっさん…」
走馬燈のように頭を駆け巡る想い出の中。
無意識に口をついて出た名前は”彼 ”だった。
仕事でも、プライベートでも、兄弟のように一緒に居た彼。
今もこの島の何処かに居るであろう、彼。…どうせ死ぬなら。
どうせ死ぬならば、最後にー…。
「じゃあ、どんな死に方なら満足なんだよ」
突如、頭上から降り注いだ声に
今田は驚いて顔を上げた。
切り立った岩場に佇む人影。…見覚えのあるそれは。
「たけし…さん?」
「よう。ピアノ、上手くなったか」
----------------ビートたけし。
「あ、はい!ピアノ有難うございます!!もう何てお礼したらええか」
「そうだよ、まったく。お礼するならまだしも、風邪うつしやがって」
「す、すいません〜」
たけしの言葉にふにゃとヘコム今田だったが…
―――あれ?こんな事してる場合か俺?
そう考えてる間にも今田の身体は更に底なし沼に沈んでいった。
「なぁ、今田」
「はい」
「死ぬの、怖ぇか」
「え?」
たけしの唐突な問いに、今田は眉を寄せた。
「そら、怖いですよ」
「なんで怖いんだ?」
「…それは」
死ぬのは、怖い。
ただ、それを突き詰めて考えた事は無かった。
死ぬのは苦しそうだから?
…否、苦しいのなんて一瞬だ。ならば。
「未練…ですかねぇ」
「どうせ人間いつかは死ぬぞ?」
「そうですけど」
「お前の未練は何だ」
「僕の、ですか?」
…そんなの、数え切れない。と思う。
それでもその無数にある未練の中で、一番大きな。
死を隣に感じた時から、ずっとずっとこびり付いてる心残り。それは。
「松本さんに会いたかった」
「会ってどうすんだ?どうせこのゲーム、一人しか生き残れないんだぜ?」
「僕の芸人としての…人生は、松本さんに会ったことで始まりました。
そしていま、ここにいます。なら…幕もあの人に引いて欲しい」
「そうか」
それが、お前の”満足な死に方”か。
そう呟いて、たけしは口の端を微かに吊り上げた。
「そういや、お前そこで何してんだ?」
「いやぁ…その、底なし沼に嵌っちゃったみたいで…」
「アホか」
「…あはは」
「助けてやろうか」
「えっ!?」
ぱぁ、と輝く今田の表情。
…助かった!
頭の中で祝福のファンファーレが鳴り響く。
「…あれ?でもたけしさん、主催者側の人なんじゃ…もしか、僕を助けに!?」
「んなわけねぇだろバカ。俺も参加することにしたんだよ」
「………え?」
「今田」
かちゃり。
たけしが懐から取り出したモノ。
遠目からでも、それはハッキリ今田の目に映った。
--------------拳銃。
「たけし…さん?」
「俺、お前の事結構気に入ってるからさ。俺についてくるなら、助けてやるよ。
…ただ、俺は松本に会ったら、躊躇いなくアイツを殺す」
別に、アイツにゃ義理もないしな。
そう言って、たけしは黒光りする銃口を真っ直ぐ今田に向けた。
「…断ったら…?」
「今此処でお前を殺す」
どくん。
背筋を走った緊張感に、鼓動が跳ね上がる。
「…マジっすか」
「俺がこんなつまんねぇ冗談言うと思うか?」
どくん、どくん。
「どうだ、今田。俺と来るか?」
どくん、どくん、どくん、どくん、どくん、どくん。
「お断り、します」
「そうか」
…窒息と、撃たれるのと。どっちが苦しいだろう?
目を瞑った今田は、そんな事をふと思った。
「せめて、一発で楽に逝かせてやるよ」
たけしの指が、ゆっくりと引き金を引く。
耳が痛くなるほどの静寂。打ち破られるのを待っている、それ。
「死ね」
「待てや!」
場の静けさを破ったのは、銃声ではなく
何者かの声だった。
恐る恐る目を開け、周囲を見回す。
岩場に立っているたけしから、少し離れた所。
そこに男は居た。
「板尾さん!?」
----------板尾創路。
学生時代からの先輩でもあり、同じ芸人仲間でもある。
その彼が、今。
銃を構え、たけしを静かに見据えていた。
「今田撃った、同時にアンタもお陀仏やで」
「誰だお前?…ああ、見たことあんな」
「そらどうも」
「…で?どうしたいんだよ」
「ここは一つ、休戦といこうやないか。
アンタは今田を撃たない、その代わり、俺もアンタを撃たない」
「信用できねぇな。約束しても、お前らが油断してる隙に
俺はお前らを殺すかもしれねぇぞ?」
「そんときはそんとき考える」
「アホだなぁ、オイ」
でもそういうアホは、嫌いじゃない。
小さく笑いながら、たけしはあっさりと銃を下ろした。
ぷつりと途切れた緊張に、今田はへなへなと腰砕けになった。
(そして、更に沼に埋まった)
「運良いなぁお前」
「は、はあ…」
「でもよく覚えとけよ、今田」
”次は、殺す ”
そう言い残し、たけしは草陰に姿を消した。
板尾が岩場を滑り降りてくる。
「板尾さぁああん!」
「元気か?相っ変わらず不細工でなによりや、うん」
「…感動が薄れるようなこと言わんといて下さい…」
「助かった…」
板尾の助けを借り、沼から這い出した今田は
渇いた地面にぐったりと崩れ落ちた。
「絶対死ぬと思った」
「ほんま運だけはええな、顔はフナやけど」
「…板尾さんのおかげっす。本当にありがとうございました」
一礼すると板尾は銃を弄ぶ手を止め、じっと今田を見据えた。
「俺思うんやけど、たけしさん。別にお前殺す気なかったんちゃうかな」
「え?そりゃないっしょ。板尾さんが来てくれなきゃ……その銃、支給武器すか?」
「や、さっき拾った」
「へ?」
「せやからな、弾入ってないねん」
かっかっかっ、と豪勢な高笑いをかます板尾に、
今田の顔面から血の気が引く。
「ハッタリ…」
「おう。んでもホラ、さっき言うたやんか。
たけしさんが俺らを殺すつもりなら、銃なん持っててもとっくに殺されてるわ」
「どういう意味ですか?」
「気付かなかったんか?あっこに居たんは俺らとたけしさんだけやない。
あと…2〜3人はおったな」
ほら、多分あれやろ、たけし軍団。
板尾の台詞に、再び背筋が凍り付く。
「じゃあ…」
「何があっても手ぇ出すな、とでも言われてたんやろな」
「でも」
「ん?」
「したらなんで、板尾さんはわざわざ俺助けに来てくれたんですか?」
今田の問いに板尾はほんの少し逡巡して、ぼそりと呟いた。
「通り掛かったからな、見捨てんのは流石に後味悪いやんか。
多分大丈夫やろとは思ったけど…根拠なん無いし」
そう言って、板尾は立ち上がった。今田もそれに続く。
向かうべき所など、声に出す必要も無かった。
「行くぞ」
「はい!」
-----------------彼、の所へ。
【板尾創路・今田耕司 合体】
お目汚し失礼致しました。
保守用拙文ということで…。
370 :
名無しさんです:04/01/19 19:38
今度メルヘンズ執筆させていただきます。
ごめんなさい、AGEしまいますた
4,5が読めるようになって非常に嬉しいです
さて、編集しないと…
ふと思ったんだけど。
集団催眠実験の場合、りあるとか小藪さんみたいにバトルに
参加していない人たちは、どうやってあの悪夢から目覚めるんだろ。
優勝が決まったら、かな?
>>235 「俺はきさま等を絶対に殺してやる!!!!!」
そんな叫び声を背に二人はしばらくというには遠すぎるくらい逃げた
しばらく走りつづけたがようやく山本は一息ついて聞いた
「樅野君何でおそわれてたん?」
「それがよくわからんねん、放送でキンコンの西野死んだやん?びっくりしてな
西野が死んだかってつぶやいてたらあの髪の長いのが嘘だっ!!西野はしんでねぇ!!
って叫んで襲い掛かってきたんよ」
「そういや樅野君武器もってないん?」
と、ようやく、そこで落ち着いてお互いの状況を確認してみることにした
「僕のはなんやろ?」
と山本がリュックを漁って取り出したのはハンディターボ・・・
いわゆる溶接機だ
「なんやねんこの説明書・・・銅等を溶接できますと簡単な説明書しかついてないやん」
それをみた樅野は自分のリュックを見ようともせずに言った
「俺のはこれや」
そういってポケットからだしたのはダーツの矢だった
「こんなん俺投げてもあたらへんわ」
そこでようやく二人のあいだに笑いが起き、やっとゆるやかな空気が流れたのだった
とりあえず、年明けには続きを!と思っていたのですが、随分遅れてしまいましたが
一応続き書いてみました。まぁ、どういう話になるのか自分でもわかってない部分が
多いので色々ご勘弁ください
>376
何だか・・随分普段のチャイマと違う気がするのは漏れだけだろうか。喋り方とか、コンビの間柄とか。
読んでるだけなので完璧に書けとまでは言わないが、せめてイメージは崩さんで欲しいな。
続編も頑張って下さい。
井戸田が用を済ませトイレから戻ると、小沢は泣きそうな顔をしていた。
首をかしげ彼に皺の付いたハンカチを差し出す。
「なに情けない顔してるんだよ」
「うるさいよ」
「さっきまではカッコ良かったのに」
そう軽く言うと、小沢から非難めいた視線を感じた。
自分の不謹慎さを反省しつつ、井戸田は小沢の隣に腰を下ろした。
先程から自分達の名前が呼ばれる気配はまるで無い。
システム上の都合かは知らないがあの重々しい門をくぐるのは死んだ順ではないらしい。
ここに来て早々彼らの前を素通りしていく人間もいれば、死んだのは数日前なのにまだ立ち尽くしてる人間もいる。
どちらにせよ人の事など素知らぬ振りで、どれだけ生前仲良くしていた芸人であれ
スピードワゴンの2人に話し掛けようとしてくる人間はいなかった。
そんな状況に戸惑っていたのも最初の内だけだ。
体内時計は正常に働かず、どれだけの時間が過ぎたかは分からないが、
長い時間2人肩を並べ会話をする訳でも無く、その時を待っている。
時折小沢の深い溜息が聞こえた。
「なぁ俺らって芸人失格かなぁ」
先に口を開いたのは井戸田のほうだった。
小沢はチラリと伺う様に彼の方を見ただけで返事をしようとしない。
それはここに来てから井戸田がずっと考えていた事だった。
『小沢を殺せ』
『観客の期待に答える事こそが芸人の望みだろう』
『笑い声の、歓声の、埋め尽くされる拍手の快感を忘れたのか』
頭の中に渦巻くその考えを振り払うように井戸田は壊れた。
小沢を殺せなかった俺は、芸人として間違ったことをしたんだろうか。
そう思うだけで言い知れぬ不快感に胸が圧迫される。
殺せば良かったのか。
「…あの時は言わなかったけど俺はお前に生きてて欲しかったんだよ」
沈黙に押されるかのように小沢は口を開いた。
「ていうかさ、観客なんてどうでも良くない?」
「…何言ってんだよ」
「どうでも良いよ。お笑いと一緒でさ、俺らが楽しくないと意味ねぇもん」
「・・・・・・・・」
「お前を殺して貰う拍手なんて意味無いんだよ」
血で染まった瓦礫、仲間の屍肉を貪る人々、悲鳴奇声怒声笑い声嘲い声。
井戸田はそんな物を楽しいとは思えなかったし、
会場を笑いで満たして貰う拍手の喜びとは比べるまでも無かった。
随分と久し振りに笑った気がした。
唇が笑みの形を憶えておらず、井戸田はぎこちない表情を小沢に向けた。
「…そっか」
「おぉ」
「そうだよな」
「…そうだよ」
「じゃあ小沢さん、漫才しよう!」
唐突であると言えよう井戸田の言葉を聞き、思わず小沢の肩の力が抜けた。
はぁ?と素っ頓狂な声を返し呆れ果てる。
井戸田が唐突にそう結びつけるのは何も珍しいことではなかった。
「青春コンビ」なんて青臭いキャッチコピーが地で当てはまるのは彼の方だ。
小沢の口から止め処なく零れたのは笑い声だった。彼とて久々に、腹を抱えて笑う。
「何、いきなり!」
「いいじゃん漫才しようよ」
「やだって!」
「観客いらねぇっつったのお前だろ!」
不毛な遣り取りが妙に可笑しくて、それだけをただ繰り返す。
2人だけでゲラゲラ笑いながらネタを作った頃のように。
『スピードワゴン、井戸田潤』
名前を呼ばれ息を呑んだのは小沢だけで、井戸田は変わらず笑っていた。
少し上がってしまった息を整え、立ち上がって言った。
「あっち行ってから漫才しような」
「…え?」
「俺先行って待ってるわ」
「・・・・・・・・」
「そんじゃ、これからもよろしく」
言葉を失っている小沢にニコリと歯を見せ、井戸田は1度も振り返らずに扉の奥へと消えていった。
返事が出来なかったのは不意を突かれたからだったが丁度良かった。
小沢は嘘が苦手だった。
「…俺の名前は、呼ばれないんだよ」
まるで扉越しに井戸田を諭すように小沢は囁いた。不思議と悲壮感はなかった。
自ら命を絶ったものの贖罪だと説明されたのは井戸田がいない時だった。
お陰で絶望に泣く所も見られずに済んだ。
ふと、彼に渡されたハンカチを返しそびれたことを思い出す。
血と泥で汚れていたこのハンカチもここに着いてからは元の綺麗な白い布切れに戻っていた。
(ハンカチですら洗い流されるのに、俺は罪を背負わなきゃいけないのか。)
そう思うと小沢は無性に悔しく思ったが仕方が無い。自分が選んだ手段だ。
誰もあの重い扉の先を見た事が無い。
だから「これから」があるか定かではないのは、小沢だけではないのだ。
なのに一抹の不安も感じずああ言い切った井戸田の楽天さに、小沢はかえって安堵感を覚えていた。
これから1日か1週間か1年か10年か。小沢は待ち続けなければいけないらしい。
「…ま、のんびり待っててよ」
扉の奥で井戸田が待っていてくれると考えると珍しく楽観的になれる。
小沢は小さく笑った。
言い逃げの様になっておりました、スピードワゴン天国編です。
お二方が書かれたものやご本人のイメージを崩してしまわないよう努めましたが、
もし不愉快に感じてしまう人がいましたらスミマセン。
ちなみに後藤秀樹さんの設定をお借りしました。許可も取らず申し訳ございません。
長文によるスレ汚し失礼いたしました。読者に戻ります。
>>335-339 の続き
光が走る。
それが浜田の振るう刃だと村田が認識する頃には、浜田との間合いは十二分に狭まっていた。
「・・・死ねやぁっ!」
「・・・・・・・・・!」
電光石火、一撃必殺の一撃を避ける余裕は村田にはない。辛うじて自らの刀で刃を受け止め、身を守る。
・・・重い。
仕込み刀という性質上、浜田の振るう刃は村田の持つそれよりも細い。
しかし、充分に踏み込み、殺意を剥き出しにして振り下ろされた一撃は。
堀部の包丁を受け止めた時以上の衝撃を村田の手首に、そして腕全体に与えた。
痺れる指先が刀を取り落としそうになる。けれど、ここでそんな事をすれば命はない。
生にしがみ付こうとする本能で何とか堪え、村田は後ろに飛び退いた。
けれど浜田との間合いは一向に開かない。
空いた間合いは即座に寄って調節し、反撃する間も与えずに相手をねじ伏せる、浜田の攻め。
それはいつもの彼の話術、番組進行の手並みにも似ているかもしれない。
狂気に侵された者のそれとは違う、浜田の何か一本筋の通った眼力も相まって。
村田は何とか浜田の攻撃から身を守ろうとするだけで精一杯になってしまった。
・・・それではいけない。
頭ではそう分かっていても、村田の身体は立ち向かうという動作を取る事が出来なかった。
じりっ、じりっと後ずさるばかりである。
「・・・どうしたァ? 防ぐばかりやったら何もなれへんぞ!」
全くの我流の、闘争本能に任せた浜田の攻撃であったが。
それでありながら隙がなく、村田は嘲笑うかのような浜田の声に反論する事も適わない。
「まぁ・・・それもしゃーないわな。」
しかし、浜田がクックッと喉を鳴らして笑った、その瞬間。
一瞬だけ攻撃の手が止んだと思われた、数秒間に。すかさず村田は渾身の力で刀を振るっていた。
鈍い手応えが村田の手に伝わる。
しかし、それは刀を金属質のモノで受け止められた時の衝撃ではない。
かといって、人の肉を断ちきった感触とも違う。
「・・・・・・・・・嘘や。」
村田の口から掠れるように言葉が漏れた。
浜田が、振り下ろされた村田の刀の刀身を掴んでいる。
普通なら、そんな事してしまえば刃で手の皮が切れ・・・いや、それ以前に指が切り落とされていてもおかしくないはず。
それなのに。浜田の左手から赤い液体が流れ落ちる事はない。
驚きに目を丸くした村田に、浜田はニィと口元に笑みを浮かべたまま告げた。
「お前・・・模造刀で人を斬り殺せると思ったンか?」
「・・・・・・・・・・・・!」
浜田の言葉を理解しようとするよりも早く、村田は本能的なレベルで危険を察知する。
グイと浜田が左腕を引き、刀ごと村田を引っ張り寄せようとする気配に、
村田は瞬時に刀の柄を手放すと、これまでにない勢いで全力で跳び退いた。
とにかく浜田から遠ざかろうとした故に、着地もおぼつかず、村田の身体は大地に転がるけれど。
整地された高台の固い地面で身体の節々を擦り剥きながらも、手を付いて身を起こした村田の頭から。
それまでそこに巻かれていた古びた白いタオルが、はらりと重力にひかれて大地に舞い落ちた。
それは、結び目が解けた故ではない。タオルは結び目をしっかりと残しながら、断たれていた。
後どれぐらい、村田が身を引くのが遅れていたら。タオル以外の物までも斬り裂かれていたのだろうか。
「・・・カンは、エエみたいやな。」
相変わらず左手に模造刀の刀身を握りしめたまま、浜田が言った。
模造刀。刀を模して作られた、金属の固まり。その刀身に刃はない。
故に、浜田の手にも傷はない。
そうだ、と村田は口に出さずに呟く。
あの時、佐野が言いかけた言葉。『・・・・・・もうわかってる事でしょうから。』
それが、一体何を意味していたのか。
「・・・・・・・・・。」
・・・僕は、何もわかってはいなかった。
もしもあの時、堀部に向かって刀を振り下ろせていれば。
あの刀に刃がない事にも気づけたかも知れなかったのに。
いや、もうタラレバを繰り返すのは止めよう。
少なくとも、今この時だけは。すぐそこの現実だけに目をやり、それを見極めよう。
村田は額に掛かる前髪の乱れもそのままに、蹌踉めきながら立ち上がる。
・・・そうでないと、もっと悪い方へ事態は進んでしまうだろうから。
少なくとも、目の前の相手はこの僅かな時間で、村田に斬りかかりながらも。
村田の持つ刀に刃がない事を見抜くほどの男なのだ。
「しっかし・・・武器も何も持たん状態で・・・一体何が出来るんやろな? ん?」
自分が優位に立った事を誇示するかのような、茶化した口調での浜田の声。
確かに今、浜田が村田に仕掛けてきたら、村田に身を守る術は何もない。
それをしないのは、ここで仕掛けずとも村田を殺せるという浜田の自信なのだろう。
「・・・確かに、何もできないでしょうね。」
模造刀を構えた時に地面に置いたスポーツバッグから、玩具のバズーカが覗いていた。
『・・・ボクを使ってください!』
それを目で確認した瞬間、聞こえる筈のない声が聞こえたように村田には思える。
溌剌とした、そしてどこかクセのあるその声の主の姿を思い浮かべながら。
声に導かれるように村田はバッグの元に駆け寄ると、バズーカを拾い上げ、即座に構えた。
このバズーカこそ玩具であるけれど、バッグの奥底には本物の拳銃も入っている。
まだ、村田からすべての勝機が失われてしまった訳じゃない。
「・・・あなたには分からないと思いますけど。
それでも俺には行かなアカン所が、やらなアカン事がありますから。」
浜田に告げる、村田の膝は震えていた。
相変わらず、浜田から感じる圧迫感は強烈で。気を抜くと心が呑まれる、そんな錯覚に陥ってしまう。
もしも浜田に完全に心が呑まれてしまえば、その時が、村田の死んでしまう時なのだろう。
懸命に浜田を睨み返しながら、まだ自分は倒れる訳にはいかないのだ、と村田は自らに言い聞かせる。
「・・・おやん。」
こいつ、意外と楽しませてくれそうやないか。
普通の若手芸人達ならば、とっくに腰抜けになって殺すしかなくなってしまうだろう中。
怯えを隠しきれないながらも、それでも立ち向かってこようとする村田の態度に、浜田は内心で小さく感心する。
まぁ、若手独特の必死さのようなものを身に漂わせてはいても、村田のその風貌は明らかに30過ぎ。
これで世間知らずなガキ連中と同じリアクションしか取れないのだったら、
それはそれでまた問題かも知れないが。
「・・・そんな物騒なモン持ち出してきて・・・どないする気ぃや?」
からかうような口振りで告げつつ、浜田は奪った模造刀を投げ捨てた。
村田のバズーカを構える姿勢、いや、そもそもバズーカを手に取った時の動作から、
彼の構えるバズーカが本物ではないだろう事は容易に判断できたけれど。
村田の眼差しはやけくそで阿呆な事をやらかそうという人間のそれではない。
それほど遠くない昔にどこかで見たような気もする力強い目に、それを屈辱と敗北感で一杯にしてやりたい。
そんな浜田の加虐的な一面がむくっと顔をもたげてきていた。
それ故に。緩く刀を構えながら浜田は村田に問いかける。
「・・・お前の逝く所はあの世だけやで?」
「・・・・・・かも、知れませんね。」
引き金に指を掛けながら、ぽつりと村田は浜田に返した。
相変わらず迷いは胸の奥底で燻っていて、吹っ切るにはまだまだ遠いけれど。
何だか何もかもがうまくゆかない時も、トンネル出ればそこにはきっと風が吹いてるように。
ここを越えれば。まだ何とか出来るかも知れない。否。そうしなければいけないのだ。
こんな自分に託してくれた、期待してくれた人がいる以上。
掛けられた期待には応えずにはいられない。それが芸人の性なのだから。
自然と張りつめていく空気の中、村田は深く息を吸う。
「せやけど。一つだけ、教えてくれませんか。」
「・・・・・・ン?」
「何で・・・あなたほどの人が、自分の為だけにその力を振るってはるんですか?」
浜田ほどの知名度と影響力、そして純粋に力のある人間が。
何故この『ゲーム』に素直に乗ってしまっているのか。村田には不思議でたまらなかった。
『皆! 浜田に気をつけろ! アイツはな、爆弾大量に持っとるぞ! ほっといたら皆いかれてまうでー! 』
あれは鶴瓶の声だっただろうか。
『ゲーム』が始まってしばらくした頃に、そんな叫びを聞いた気もするけれど。
「簡単な話や。」
すぐに、浜田は村田に答えて返した。
「力のある奴が、ルールに則ってその力を行使して・・・ドコが悪いねん。」
悪びれる様子などまったくない、単純明快な回答。
「その力で、誰かを守ろうとは思わなかったんですか?」
更に問いかけようとする、村田の言葉は声にはならなかった。
浜田の身体がピクッと動く、その微かな気配の揺れが村田の口を閉ざさせる。
同時に会話から戦闘に、意識を再び移行させながらも、村田はどこかで浜田の答えに納得してもいた。
それもまた、がっかりさせない期待に応えて素敵に楽しいいつものあの人であるのだから。
跳びかかってくる浜田に狙いを定め、村田は引き金を引いた。
パァン
バズーカの砲口から乾いたちゃちい音が鳴り響く。
「・・・・・・・・・っ!」
途端に緑・赤・青・白・ピンク・黄。色とりどりの細い紙テープが大量に砲口から吐き出され、
間合いを踏み込み、村田に斬りかかろうとする浜田の身体に巻きつき、絡みついた。
その紙テープのいく束かは、浜田の顔面に覆い被さって、彼の視界を奪う。
「ぁああああああああ!」
役目を終えたバズーカを放り投げ、村田はバッグを拾い上げながら浜田の背後へと回り込んだ。
バッグの中に手を差し入れ、すぐに拳銃の固い手触りを引っぱり出して。
右手で拳銃を構え、照準を定める暇もなく。叫ぶ村田の声に反応して振り返る浜田へと発砲する。
今度は耳をつんざくような音量の銃声が周囲へと響き渡った。
桶田が楽々と使いこなしているのをずっと間近で見ていたためか、
どこかで拳銃がもたらす反動という物に対して甘い考えを持っていたのだろうか。
射撃と同時に右手に衝撃が走り、村田は大きく腕を跳ね上げられた。
そんな状態では狙い通りに弾丸が飛ぶはずもなく、浜田は無傷。
強引に邪魔な紙テープを引き千切りながら、村田目掛けて突進してくる。
「・・・うぉおおおおおお!」
浜田の雄叫びに一瞬圧倒され、二射目の動作に入るのが遅れた村田に肩口から浜田は体当たりを見舞う。
ただでさえ発砲の反動で体勢が不安定な所への一撃に、村田は軽々と吹っ飛ばされた。
その弾みで拳銃が村田の手を離れ、滑るように高台の縁から眼下の山道の方へと落下していく。
「痛っ・・・・・・」
整備された固い高台の地面に再びしたたかに身体を打ち付け、痛みに村田の口から声が漏れた。
しかしぼんやりしている暇はない。
素早く身を起こすと、浜田が紙テープを払いのけている隙に彼が投げ捨てた模造刀を拾い、距離を置く。
そのまま浜田に斬り・・・いや、殴りかかろうかとも考えたが。
村田はそのままくるりと浜田に背を向けた。
浜田とやり合っている内に、いつしか立ち位置が入れ替わっていたらしい。
高台から街へ降りていく山道へ向かうのを、直接妨げるものは何一つなかった。
あくまで今の村田の目的は『ゲーム』から抜け出す道を作る事であり、浜田を殺す事ではない。
いずれ、彼の存在がまた村田の障害となる事もあろうけれど、今ここで無理する必要はどこにもない。
一つだけ、彼を縛る物として佐野の存在があったけれど。
彼になら赦して貰えるだろうと、心の奥で信じながら。村田は一歩、二歩と足を踏み出していく。
打撲を負った手足がズキズキと痛む。
でも、あの鐘を鳴らすのが、自分の使命なのだから。
「な・・・糞ォ、逃がすかぁ!」
浜田の怒声を背後に聞くと殆ど同時に、山道へと駆け出す村田の右肩に激痛が走った。
激痛と共に感じるのは、冷たい異物感と失血による脱力感。
それでも立ち止まる訳にはいかない。
村田は大地を蹴っているという感覚がしだいに薄れていく中、文字通り必死に山道を駆け下りていった。
「・・・・・・ちっ。」
見る見るうちに遠ざかり、小さくなっていく村田の後ろ姿に、浜田は舌打ちをする。
その肩には浜田が投げつけたサバイバルナイフの刃が突き刺さっていた。
しかしその一撃が致命傷には到らなかった事。
そして遊び甲斐のありそうな面白い獲物を十分にいたぶる前に、むざむざ逃げられた事。
沸き上がってくる苛立ち紛れに浜田は乱暴に村田が置き忘れていったスポーツバッグを蹴飛ばす。
地面にこぼれたバッグの中身には、漫画本や中身のたっぷり残っている酒の瓶などが見受けられたが、
浜田が望んでいた空腹を満たせるような物は入っていなかった。
「畜生・・・あの男・・・あの目・・・ムカツクわぁ。」
紙テープがまだいくらか身体に付着しているのもそのままに、ベンチに腰を下ろし、浜田は呟く。
村田の眼差しに感じた既視感の原因を、彼はようやく思い出していた。
『負けれんのやッ!! 兄やんはワシが必ず守るんやッ!!』
キム・・・木村祐一の気迫のこもった目。村田の目もあれと同じ輝きを帯びていた。
中途半端に正義の味方面した、偽善的な目。
「弱い奴を・・・邪魔な奴を叩きのめす事のドコがアカンねん・・・。」
なおも吐き捨てるように呟く、浜田の耳が何かが近づいてくる音を察知する。
うーうー獣のように呻く声から察するに、堀部であろうか。
ベンチに座ったまま、音のした方へと視線をやれば。確かに生々しい血で全身を染めた堀部の姿。
右手に出刃包丁を、左手には懐刀を固く握りしめている人間の腕を携えている。
「なぁ、堀部。」
「・・・何で・・・しょうか。」
よほど激しい抵抗を受けたのだろう。堀部の身体の至る所に傷跡が出来ている。
浜田は一度目線を地面に落とし、改めて堀部の顔を見上げると、告げた。
「・・・死ね。」
短く、一言。それが堀部の耳に届き、理解されるよりもきっと早く。
浜田は仕込み刀を堀部へと投げつけ、その切っ先を堀部の背後へ貫き通していた。
何が起こったのか分からないまま、堀部の身体は膝から地面に倒れ込む。
うつ伏せに倒れた事で刃が一層堀部の身体を突き抜け、流れ出た血が地面を染めていく。
「ムカツク。」
とはいえ、手負いの堀部にとどめを刺した所で、不完全燃焼から来る浜田の要求不満がすべて収まるはずもない。
ベンチから立ち上がった浜田は、堀部には構わず村田のバッグからこぼれたヘネシーの瓶を拾い上げると
栓を空け、一気にあおる。
満足するまで喉を潤すと、まだ中身が残っているにも関わらず、浜田は瓶を地面に叩き付けた。
ガラスの砕ける、高音がやけに心地よく響いた。
【元ピテカンバブー・佐野ただひろ K2・堀部圭亮 死亡】
ついでにここで元ブラジル代表、プロペラZのキープを解除します。
よろしければ、どうぞ彼らを使ってやって下さいませ。
小蠅 ◆ekt663D/rEさん乙です!
村田…何とか逃げられてよかったぁ…
言い訳さん@お腹いっぱい。 さん、そんな恐縮なさらないで下さい!
d(・∀・)グッジョブ!!でしたよ。
皆様どもあけましてしばらくぶりです。
ちょっとネット離れ起こしてる内に色々お話が進んでてわくわくしてます。
なんかもー森枝の結婚の詳細に若干ひきながら、
投下していきたいと思います、よろしくお願いします。
>>273-276の続き
地面に直に寝てたせいで体のあちこちがぎしぎし音を立てる。
その痛みで目を覚まし、隣ですでに体を起こしていた2人に聞いた。
「メシ何食いたい?」
朝になっても前田の顔色は悪かった。
「あ、俺ペッパーランチ行きたいです。」
新宿Fu-側にある安いステーキ屋の名前を森があげる。
「懐かしいなーまだ潰れてないといいなー。」
「潰れないでしょ、あそこ結構人きそうじゃないですか。前田、お前は?」
「胃が痛いんで別に…。」
「っても食うもん何もないか。」
食べ物の話を持ち出した分、空腹感は増してしまった。
3人とも胃の当たりを押さえ、話題にした事を後悔する。
「そういや前田の武器って何渡されたよ。」
「これ、クリップです。」
ジーンズのポケットから銀色に光る小さなクリップを出して見せた。
「うわ、悲惨!」
森が肩をすくめて嘆く。
「とりあえず船場達の遺体がある場所、案内して。」
前田を先頭に3人は黙々と歩いた。
歩く距離が伸びるにつれ、前田の足運びが遅くなっていく。
「どした?」
森が背中にぶつかる直前、問いかけた。
「いえ…もう着くと思います。」
「ああ、血の臭いがきつくなってきた。」
森枝が呟いた。
草むらをかき分けて進むと血の跡が点々と続いていく。
その跡に沿って歩いていく。
ぱしん
「お前は俺の相方を捨ててきたんだ、俺を止める権利はねーだろ。」
振り返った森の目は冷たく、逃げてきたという前田を突き放した。
「森!まだ大水が近くにいるかもしんないから。」
「構いませんよ。」
に、冷たい目はそのまま口を歪めて一応笑った顔を作って見せた。
「元より大水を探しに来たんじゃないですか。」
機嫌の波の激しい森に僅かに眉を眉間に寄せて、
「気をつけろよ、俺らは後ろっから行くから。」
そう繋げるだけで精一杯だった。
小さく頷いてざくざく進んで行く。
その先に……。
見るも無惨な人間の姿が文字通り捨てられていた。
側には、もう顔の判別もできない程に潰された死体が3体…。
その中で船場と思われる死体にかけより、跪く。
「船場…。」
目を閉じて手を合わせて、その名前を呼びかけた。
その場の死体に知らない人間がいない。
皆で同じ舞台に立っていたのに、物言わぬただの物体と化してしまった。
とても奇妙な光景だった。
動かない肉と化した体がかすかに見え隠れする。
その見えた中に森に見覚えのある服の切れ端が分かった。
「……船場っ!」
森は相方の名前を叫び小さな広場となっているその場所に飛び出した。
「森さん!」
前田が背中をつかもうと手を伸ばす。
……バカ過ぎました、これが本来397の頭に入るハズでした。
あーもうすみませんっ
死体を見下ろした前田が、うっと呻いて吐いた。
胃が痙攣して吐き出そうとする。
だが、何も食べていない状況では、吐き出すものは何もない。
胃が震えて喉がひきつって、
「うっ、うっ。」
そんな潰れた声しか出せなかった。
その背中をさすって、
「村上に礼くらい言えよ。」
汗を額から流しながら前田は森枝の言葉に頷いた。
森にならって村上の死体の脇に跪く。
かちかちかち。
歯が鳴る。
手が震えてしまう。
声がかすれてしまう。
胃が気持ち悪い。
前田は思うように動かない口を必死になって形作った。
小さな声は、風によって動かされる草の音にかき消された。
ひたすら涙がこぼれて止まらなかった。
気のすむまで、と森と前田を死体の側に座らせておいて、
森枝は付近に大水の痕跡がないか探しに歩いた。
すぐ側にいれば、確実に3人とも殺されるだろう。
「う、わっ。」
草に足をとられたか、そう思うが確かに森枝は何かにつまづいて転んだ。
「大水っ!」
それは変わり果てたラバーガール大水の姿だった。
「森っ、前田っ。」
慌てて2人の元に戻る。
すると…そこに立っていたのは前田が1人だった。
「お前…。」
「だって、森さんが俺に…。」
涙声で、たどたどしく紡がれた声は衝撃以外の何でもない。
「お前!」
かたん
小さな音を立て前田の手から武器と思われるキリが落ちた。
「森っ!」
駆け寄って森の体を揺する。
口から血が溢れた。
「も、森…俺っ。」
「何、何だ、何だよ!」
「死にたくない。」
それが最後の言葉。
きっと皆、そう言って死んでいくのだと思った。
腕の中で死んだ後輩。
頭の中はパニックを起こして、体中から嫌な汗がどっと吹き出た。
力が抜け、重くなった森の死体に怖さを覚える。
どくん、大きく心臓がなる。
そのまま体を抱えていたら死が移ってしまいそうな気になる。
そっと地面に寝かせて、前田の方を振り返った。
「あ、おい!」
へたへたと地面に崩れ落ちるのを支える。
目は開いているが何を見ているのか分からない。
口をぱくぱくさせている。
「息しろ、息っ!」
ひゅっ、ひゅっ。
奇怪な音が喉の奥から流れる。
過呼吸なのか?
医者でもなんでもない、ただの芸人である森枝にはそれは分からない。
ただ、息ができていないそれしか分からなかった。
頬を叩く。
乾いた音が何度も響いた。
乾いた血がこびりつく手が喉をかきむしる。
乾いた血ではない、鮮やかな赤い液体が流れていく。
瞬きをする事を忘れた目からずっと涙がこぼれていた。
苦しげに顔がしかめられる。
ずっと前に、相方を失った芸人軍団の話を書くと宣言した者ですが、規制になってばっかだったので正直諦めてました。
また規制になって、当分書き込めなくなるかもしれません。
でも、また書き込める時が来ると分かったので、必ず書きます。
それと、相方を失った芸人軍団編と言うよりも、あさりど堀口編になると思います。
>168 名前: 不法投棄 投稿日: 2004/01/27(火) 15:18
>あんな中途半端な所(396〜401)で止まってしまってますが、
>書き込みがエラーになっちゃってます。
>初めての事なのでよく分かってないんですが、多分私も規制くらってるみたいです。
>違うのかしら…。
>解除待ちってところなんでしょうか、すみません。
規制ついでにしたらばより。
書き上げれたので、早めに発表します。
タモさんを乗り越えるなんて、やっぱ無理だったんだな。
急速に薄れ行く意識の中、堀口はそう感じた。
芸歴13年、欽ちゃん劇団所属、あさりどのボケ担当、堀口文宏。
彼はたった今、タモリに撃たれたばかりである。
このプログラムが始まった当初、色々考えた。
最後の一人に生き残る。
無理だ。
何百人もいる芸人の中で、何のとりえも無い自分が生き残れるとは思わない。
それに、人なんか殺せない。
相方を探そう。
こんな大きな島で、見知った人と会うことさえ奇跡さ!
結局死ぬのは嫌だから、限界まで隠れてることにした。
そんな時、放送で相方、川本成の死を知った。
・・・信じられなかった。
この目で確かめるまで信じられるわけが無い!
僕は無謀にも、相方を探すことにしたんだ。
半日ほど探し回ったけど見つからず、疲れきったので切り株に座っていた。
落ち着くと、何て馬鹿なことをしたんだと思えてきた。
始まった当初から銃声などは聞こえていた。
ここで殺し合いが行なわれているのは確実なんだ。
だったら放送も本当のことだろう。
成が殺されててもおかしくない。
それに、亡骸を見つけてどうしようって言うんだ。
相手が分からないんだったら復讐しようもないし、復讐したって相方は返ってこないんだ。
相方のことも考えた。
あいつと出会ったのは、まだ高校生の時だった。
百人ほど居た同期生の中の数少ない生き残り。
そんな僕らがコンビを組んだのは、同い年だったのもあるけど、気があったから。
今でもマネジャー含め、三人で旅行に行くほど仲良しだったんだぜ。
あいつは歌、うまかったなぁ。
もう聴くことはないんだな。
あいつは器用で、いつも僕が足を引っ張ってた。
なぁ、何で死んじまったんだよ。
そんな時、出会ったのがBOOMERの河田とエネルギーの平子、アンバランスの山本だった。
よく見知った面々。
「俺たち組んでるんだけど、お前も組む?
もうさ、生き残れるわけがないんだよ。
川本死んだんだろ?
俺たちも相方が死んだ。
一緒に組んでさ、最後に一花咲かそうぜ。」
そうだな・・・何百人といる芸人の中で、自分一人が生き残れるとは思えない。
相方が死んだ今、たとえ生き残って元の世界に帰って何になる?
俺一人じゃ何も出来ないんだ。
今までだってそうだった。
ずっと相方の足を引っ張ってきた。
よく知ったこいつらと、一緒にどでかい打ち上げ花火を上げるのもいいかもしれない。
「一緒にたけしさんを殺しましょうよ。」
三人は僕から見てそれぞれ先輩や後輩だけれども、年は僕より上だ。
頼りになるだろう。
「いいよ。」
それから色々あったが仲間も増え、二人のベテランを殺して切り株に座ってた時と比べ、驚くほど気分が高揚していた。
大分疲れてはいたのだが。
それがいけなかった。
みんなそうだ。
そこに現れたタモさん。
いいとも青年隊であった僕にとって、師匠である大将に次ぐ恩人である。
その姿を見た時、このグループに入って初めて迷いが生じた。
いや、迷いというより怯えか。
「堀口、大丈夫か?
お前は外れた方がいいかもな。
何しろ身近過ぎる。」
「外さないほうがいいと思います!
こんな程度で動揺されては、これからの活動に支障が出ると思います。
ここは思い切って参加させるべきですよ。」
自分のことで周りが争っている。
「参加させてください。
いずれ乗り越えなきゃいけない壁だったんだから・・・」
言わなきゃ良かった。
いや、言ったほうが良かったか。
所詮はただの売れない若手芸人。
ちっぽけな存在。
儚い命。
死んだら天国に行けるって本当かなぁ?
人殺してるから地獄かな。
じゃあ、成とは会えないか。
終
>>327続き
お気に入りのボーダーのシャツの襟首をつかまれ壁に押しつけられると
銃をひたいに押し当ててくる相方をヘッドライト町田は不機嫌そうに睨んだ。
「やめろや」
「……………。」
「離せ」
「……………。」
「なんか言えや」
「……死んでくれ」
「嫌やわ」
お互い表情一つ変えずにこう着状態が続く。
それでもやはり長い付き合いのせいか無表情の和田の目の奥に迷いのようなものが
潜んでいる事を町田はすんなり見抜いていた。
『あ〜ぁ、本気の目してもうて。しかも死んでくれって何やねん。お前が殺すんとちゃうんかい。
だいたい「死んでくれ」って言われて「はい」って言うわけないやろ。アホか。』と心の中で
悪態をつきながらため息を漏らすと町田は「やめろって。離せ言うてんのが分からへんのか?耳遠いんか?」と
銃を突きつけられている身とは思えないくらい強気な口調で吐き捨てた。
それでも和田は何も言わず町田を見つめたまま銃口を町田の額から離さない。
『う〜ん……やっぱりコイツ、俺のこと恨んでたんか。
確かに日頃、自分は和田に対して厳しすぎたような気がしないでもない。
でもだからって「はい、じゃあ殺し合ってくださ〜い」って言われて
「わ〜い。じゃあ日頃の恨みもこめて殺しちゃうぞ」なんて馬鹿な行動に出るなんて
許すわけあらへん。ましてや、この俺に銃をむけるなんて言語道断や……。
だいたいお前に俺が殺せるわけがないやろ。アホちゃうか。』
町田は銃身をつかむとグイッとそのまま和田の腕ごとねじりあげた。
と、言っても細身の町田の力は強いものとは言えず「くっ」と和田の顔が痛みに歪んだ程度だった。
「ホンマに殺すくらいの気ないんやったら、そんなアホな真似すんなや」
そう言うと町田は銃身をつかんでいた手を乱暴に突き放し、軽蔑の眼差しをむけると
和田を放って歩き出した。もし殺そうと思えば後姿なんて隙だらけだったわけだし簡単に殺すことができただろう。
しかし和田はそうしなかった。できなかったのかどうかは知らないが町田にとってはもう
別にどうでもいい話だった。ただ少し胸が痛んだ。それだけだった。
「回想その1終わり」と言うと町田は「ん〜〜…」と体を伸ばした。
空は驚くほど青く晴れ渡っていて今日は殺し合いがなされてるなんて思えないほど爽やかな清々しい日だ。
独り言をつぶやく町田を「どないしたん?」とソラシド本坊が不思議そうな顔で覗き込んでくる。
和田と町田の間にあった事を本坊は知らないし別に町田も教えようとも思わないので
「なんもない」と答えると「それより手がかりも何もないのにどうやって水口探すねん」と話をそらす。
町田の言葉に本坊は何も言わず苦笑いを浮かべた。
そんな本坊を眺めながら町田はここ数日にあった事を反芻するように再び回想へと戻った。
和田と別れ、しばらく当てもなく歩いていると「町田!!」と自分の名を呼ぶ声がし
振り返るとそこには本坊が立っていて、町田が「おぉ」と軽く会釈すると本坊は
「よかった〜〜!」と言ってでっかい体でしがみついてきた。
「1人でめっちゃ怖かってん。町田と会えてよかった!」
「いや…ごめんやけど、俺、誰とも一緒に行動する気ないねん」
「ホンマに良かったわ!もう、一人でこっわ〜…ってなっててさ」
「おい、聞け」
「やっぱり1人より2人の方がええやんか」
人の話をまったく聞かず肩をすくめながら無邪気な笑顔を浮かべる本坊を見ていたら
拒むのもしんどく正直もうどうでも良くなって、放っておいたら付いてきたので
一緒に行動することになった。人一倍でかく人一倍緊張感がなく人一倍不思議な本坊と
行動するのは町田ならずともそれなりにリスクをともなう危険な行為で、
人に見つかりやすい上に何をしだすか予測不可能な本坊を扱うのは慣れない町田にとっては
困難きわまりないことだった。(そう考えると和田は楽で良かった)
水口の苦労が身に染みるように分かって『あれはあれで世話を焼くのが好きな奴やったから
うまくバランスがとれてたんかもしれへんなぁ…』なんてどうでもいい事を考えながら
本坊がいらん事をしないかだけ目を光らせていた。
しかし町田にとって本坊といてマイナスばかりかと言うとそうでもなかった。
本坊元児。この男には危機感というのが恐ろしいほど欠落していた。
劇場にいる時から本坊の紡ぎだす意味不明の言葉の数々は
芸人を始め、お客さん・スタッフ・社員・相方の水口でさえ呆然とさせ
頭に「?マーク」を浮かばせている所を町田は幾度となく見てきた。
その本坊の不思議ぶりはこの地に来ても変わることはないらしく、
偶然遭遇してしまった敵と認識するに十分な名も知らぬ芸人に銃を突きつけられながら「誰だ!?」と
尋ねられ「あのですね〜、吉本興業のソラシドの本坊と言いまして……ボケをやらしてもらってます。
え〜…誕生日は8月7日でして、獅子座のO型です。」と『誰だ!!?』という質問だけに
律儀に答えると相手が唖然としている間に立ち去るという有り得ない『無敵』ぶりを発揮し
何度かやばい場面も乗り越えてきていた。その『無敵』ぶりのおかげで町田も何度か命拾いしている。
しかし、それはあくまで運が良かったからで『無敵』というには不安定すぎる代物だった。
少しつつかれれば脆くも崩れさる危ういものという事を忘れてはいけない。
町田も本坊もまだ本気で人を殺す気でいる人間と遭遇していない。
『まぁ、ひょっとしたら【そういう人間と会ってへん】っていうのもコイツの悪運の強さ
なんかもしれへんけど』なんて考えながら町田は、まるで遊園地を歩く子供のように
ピョンピョン跳ねながら楽しそうに歩く本坊のうしろ姿を冷めた目で眺めていた。
そんなこんなで気がつけば町田は本坊になつかれ、町田も本坊を切り離すタイミングを失ってしまった。
何だかんだ言いながらも町田もそんな本坊の緊張感のないお気楽さは嫌いじゃなかったし
本坊は典型的な憎めない奴だった。
しかしそんな緊張感のない無敵で自由な本坊にも例外が四つほどあった。
一度目は水口の話をしていた時。ニ度目はある死体を見たとき。
三度目は麒麟田村の死を知った時。四度目は麒麟川島の死を知った時。
一度目の水口の話をした時…というのは町田と本坊が共に行動するようになってすぐの頃だった。
「水口はどないしたん?」と町田が何の気なしに投げかけたこの一言がいけなかったらしく
本坊は表情を曇らせると「水口が消えてん」と急に動転したようにアタフタしだしたのだ。
「消えた?どういうことやねんな?」
「水口が消えてん」
「だから……」
「水口が消えてん」
本坊は壊れたレコーダーのように「水口が消えてん」と何度も何度も病的なほど何度も
「水口が消えてん」だけを言い続けていた。どうやら見失ってはぐれただけのようだったが
【此処】で【はぐれる】というのは一生会えない永遠の別れの確立をおおいに含んでいるので
【だけ】という表現は相応しくないのかもしれない。何はともあれこれが一度目の例外。
二度目はある死体を見たとき。
血なまぐさいものが苦手な本坊は死体を怖がり、転がる死体を発見するたび
「うわぁ〜…あかん!」と騒ぎながら町田の後ろに隠れ、死体から遠ざかって見ないようにしていた。
しかしある死体を前にして急に静かになったかと思うと自ら近づいていき食い入るように見だしたのだ。
その死体は見るに耐えない血の海に浮かんだズタズタになった肉塊で、惨殺と呼ぶに
ふさわしい死体だった。『よくもまぁこんな完封なまでに人を壊せるもんやな』と町田でさえ吐き気を
もよおすその死体を本坊はキョトンと不思議そうな顔で眺めていた。
「お前、死体をマジマジと見るとか止めとけや。悪趣味やな〜。」
「なんか大切な事忘れてる気がする……」
「なんやねん、大切な事って?この死体がどないかしたん?」
「なんやろ……なんやと思う?」
「知らんがな。こっちが聞いとんねん。」
その後も死体の前にしゃがみこみ「大切なことのはずやのにな〜…」と首を傾げながら本坊は
しばらくその死体を眺めていた。その姿は雨上がりの水溜りの前にしゃがみ水面を覗き込む子供のようで、
死体を前にその行動は異常ではあったが本坊のおかしな言動なんて今に始まった事じゃないので町田も
「変な奴」っていう以上は気にとめなかった。
(ただ本坊が死体にむかって手を伸ばした時はさすがの町田も慌てて止めた)
三度目は田村の死を知った時。本坊はピクリとも動かなくなった。
町田はそんな本坊を眺めながらまるで電池が切れた玩具を実写で見ているような感覚を覚えた。
「えっ……あ…えっと……町田?」
「なに?」
「今の放送、何?」
「死んだ人間の名前を知らせる放送やろ」
「嘘ぉ?だって麒麟の田村裕って……」
「………………。」
「同姓同名?」
「………………。」
「そんなん…だって……えっ……死んだん?」
「………………。」
町田から見て本坊は田村の死を事実として実感することができないで困惑しているように見えた。
当然と言えば当然だろう。元気な田村しか知らない本坊にしてみれば血に染まり物体と化した
田村の死体をリアルに想像することなんて到底無理で、想像できたからと言ってそれを現実として
受け入れれるというのはまた別の話だ。町田もこんなに落ち着いていられるのはある意味、死をリアルに
実感できない証拠にすぎない。数え切れない死体や死というものを見てきたがそれが自分や身近な人間に
降りかかるなんてつねに思っていたら多分人間は気が狂ってしまう。
それによって狂ってしまった人間もここには数多くいるんだろうが、町田や本坊は
あえてそこを繋げない事で自我を保っていた。
それが恐らく本坊の中で壊れたのがこの瞬間だったんだと町田は思う。
そして四度目の川島の死を知った時……。
放送で川島の名前が呼ばれた瞬間、町田は本坊に目をやる前に
『ついにこの時がきてもうたか』と頭を抱えた。田村が死んだ時から何となく嫌な予感はあった。
ヘッドライト町田・麒麟・ソラシド・アジアン・ママレンジ健太はNSC20期で同期だ。
中でも川島と本坊がとても仲が良かったのは有名な話で、その川島が死んだとなると
本坊が平常でいられない事は目に見えている。
町田が本坊に目をむけると、本坊は立ち上がり乱暴な足取りでどこぞに向かって
歩き出している所だった。町田は本坊の腕をつかみあわてて引き止めた。
「どこ行くねん!」
「文句言うてくる」
「はぁ?」
「あの放送、嘘ばっかりやんか!」
「……多分、嘘は流してへんと思うで」
「じゃあ、今のなんなん!?麒麟川島って…おかしいやんか!」
「川島が死んだってことやろ」
「川島は死なへんよ!!」
「お前が認めたくないんは分かるけど死んでん」
「なんで…なん?なんでそんな意地悪言うん?死なへんやんか!?川島は死なへんねん!!」
今にも泣きそうな本坊を哀れむような目で見やりながら町田は夢や希望といった類を
もたす事もできずただ唯一の事実を告げる。
「死なへん人間なんておらへん。川島は死んでん」
本坊はこの世の終わりのような顔をすると「なんやねん!町田なんか嫌いや!」と子供じみた言葉を
町田にぶつけると手で顔を覆いながら走り去ってしまった。
放っておいたら、目を真っ赤に腫らして帰ってきて一応はいつもの本坊を繕ってはいたものの
表情は暗く、スッと切りめを入れて開いた傷口のような目とその中にころがる焦点の
合っていない黒い瞳を落ち着きなく左右に揺らしていた。右手の拳は木でも殴りつけたのか血が滲んでいた。
町田はそんな本坊を眺めながらやるせない気持ちになったが放っておいた。
もちろん本坊は(町田もだが)川島が大量の殺人を繰り返し、本坊の存在さえも覚えていないであろうほど
狂い散ったことも、はたまた田村を殺したのが川島であったという事も知るはずもなかった。
もし本坊がこの事を知ったら…いや……川島の事だけではない。レギュラー松本や天津の向……
本坊と仲の良かった人間がことごとく狂っていったと知ったら、彼はどういう反応を見せていたのだろう?
怒ったのか?諦めたのか?納得したのか?悔やんだのか?止めようとしたのか?
なにも関係のない自分を責めたのか?はたまた己も狂気の道に引きずりこまれていたのか?
実にサディスティックな好奇心のわく所であるが今はまだその時ではない。
とにかく本坊は川島の死を境に虚ろな表情や翳りのある顔をするようになり口数も減り、
もともと細い本坊の体はなおいっそう痩せ細り、見るに耐えないさまになってしまった。
「鏡って俺がいる時、俺が映ってるやんか。でも俺がおらへん時ってなにが映ってると思う?」
川島の死後、初めて口を開いたかと思うと本坊は町田にそんな事を尋ねてきた。
話しの意図が見えない町田は「はぁ?」としか言えず「ええから答えて」と促す本坊に
困惑しながら「景色やろ」と答えた。
「それはそこに視点をおいてるから景色が見えてると思ってるだけやねん。
はい、じゃあ誰もいてへんとき視点がないとき鏡には何が映ってる?」
「なんやねん。意味がわからへん」
「だから、俺がいる時に俺が鏡見たら俺が映ってるやんか。それは俺という視点がそこにあるから
そう見えてんねん。じゃあ、俺がおらへんとき誰もおらへんとき視点がないとき鏡には何が映ってると思う?」
「何も映ってへんのちゃうか?」
「そう!何も映ってへんねん!じゃあ、何も映ってへん鏡ってどんなんよってなるやんか!?」
「だから何やねん!」
「……じゃあ人は死んだらどこ行くと思う?」
「なんやねん?鏡の話はもう終わったんかいな。」
「終わった。次は人は死んだらどこへ行くかの話」
「……………………。」
「やっぱり真っ暗で孤独な所なんかな?」
「……………………。」
「生まれ変わりとかあるんかな?神様とかおるんかな?」
「……………………。」
「神様が生まれ変わりの権利を与えるんやとしたら、神様に忘れられたらずっと
真っ暗で孤独なとこにおらなあかんのかな?」
「……………………。」
「川島や田村は忘れられへんかな?心配やわ……あの2人やったら大丈夫やろうけど。
でも何も映ってへん鏡がどんなんなんか分からへんように結局死んだ二人がどこに行ったか
なんか誰も分からへんのかな。あの2人はまた俺の手の届かへんとこ行ってもうたんかな?
せっかくちょっと追いついたと思ったのに……」
「止めてくれへん?そんな話聞きたないわ」
「………なんで?」
「何でもくそもそんな話聞きたないねん」
「寂しい…やんか。救われるものがあるって思わな…寂しいやんか……」
「ここに救いを求める方が残酷やろ」
「そんなん…ッ……嫌やもん!『はい、死んだーー!』で終わりなんて嫌やんか!?
何で一緒に悲しんでくれへんねんな?」
そんな本坊の言葉を聞いてやっと町田は『あ、今の流れ悲しんでたんや』と気づく。
下唇を噛みしめ辛そうな顔をする本坊に町田は慰めの言葉も救いの言葉も思い浮かばず、
ため息をつくと必死に堪えているような本坊に「我慢せんでも泣いてええで」と
抑揚はないが優しい口調で言葉を送った。それが町田にできる精一杯の優しさだった。
その言葉に本坊は顔をそむけると、その長い黒い髪で顔を隠しうつむいた。
そして本坊は顔を上げると「気使わしてもうてごめんな?」と壊れそうな笑顔を町田にむけて
「ちょっとトイレ行ってくるわ」と立ち上がり木陰の方へと消えていった。
そして帰ってきた時はまた目が真っ赤だった。
戻ってきた本坊に町田は「おかえり」と言うと本坊は少し驚いたような顔で
「ただいま」と言っていつもの笑顔を町田に向けた。
そして弱々しく「町田は死なんといてな?」という本坊の言葉に町田は「おー」と
適当に返答したが、どう考えても今にも死にそうなのは本坊の方だった。
町田は泣ける本坊が羨ましかった。『俺も和田が死んだら泣くんやろか?』と
考えてみるも即座に『泣けへんやろな……。』という答えしか出なかった。
同期でそこそこ仲の良かったママレンジ健太の死に対しても『死んでもうたか〜…』くらいの
感慨しかなかった。正面に座っている本坊を眺めながら『本坊は俺が死んだら泣くんかな…?』と
町田は想像する。多分、泣くだろう。コイツが死んでも俺は泣かへんやろけど
俺が死んだらコイツは泣くだろう。和田はどうだろう。泣かへんやろな。
泣いたら何か気持ち悪いし……そもそもアイツが泣くとこなんて想像できひんしな。
でもそう考えると自分の死に泣いてくれる人がいるというのも悪い気はしなかった。
町田は真っ赤に目を腫らした本坊を静かに見つめ『俺とコイツが生きてる間に水口の死を
知らせる放送だけは聞きたないな……』と思った。
鬱屈とした空気が流れ、そんな空気をかき消すように町田は「水口探しに行くか?」と本坊に尋ねる。
本坊は弱々しく「うん」と頷き、「大丈夫か?」と心配そうに顔を覗き込む町田に対して
「当たり前やんか」とはにかみながらガッツポーズをとる本坊はいつもの本坊だった。
そんな本坊に町田はクスッと笑うと「はよ見つけんとな」と立ち上がるとポンポンと本坊の背中を叩いた。
本坊は微笑を返すと、また少し翳りのある表情を見せ「そうやね……なんか嫌な予感がする……」と
町田がわざと避けていた不吉な言葉を溢すと本坊は天を仰いだ。
こうしていくつかの例外を越えて町田と本坊は水口を探すために動き始めた。
今日はここまでです。とてつもなく長くなってしまってすいません。
いつもの事ながら前回感想をくださった方々ありがとうございました。
本坊の不思議キャラ出そうと思ったら何だかよく分からない事になってしまいました。
難しいです…。あと説明になってしまうんですが和田が町田に銃をむけたのは戦いが始まって
すぐの頃という設定で和田が中岡に言っていた「相方を殺そうとした」というのがこの事です。
長々と失礼しました。
>B9さん
乙。またしてもグッジョブでした。
文章、キャラ共に見せ方が上手すぎます。
一気に読ませてももらいました
B9さん乙です
本坊さんの、鏡の話、今日baseで聞いたばっかだから妙にリアルでした
続き期待してます
>B9さん
乙華麗です。
漏れも鏡の話聞いたことあるのでリアルでよかったです。
いつも楽しみにしています。ヘッドライトに期待!
B9さんお疲れ様です。
ソラシドにヘッドライトなんてかなり嬉しい組み合わせ。
四人ともマジで死んでほしくない。
このままラストまで引っ張ってくれていいぐらい。
+ネゴもw
>B9さん
鏡の話がここでも出てくるとはw
町田らしい会話表現が凄いです。
B9さん乙です。
町田と本坊の会話表現がリアルで凄いです。
「あの2人はまた俺の手の届かへんとこ行ってもうたんかな?
せっかくちょっと追いついたと思ったのに……」
本坊のこの言葉深くて泣けた。・゚・(ノД`)・゚・
B9さんお疲れ様です。
ソラシド板でここの存在を知り初めてやってきたのですが、B9さんの執筆、一気に
読ませていただき、本気で感動してしまいました。
人物の口調が特にリアルで、頭の中で本人達が浮かんできてしまいます。
これだけ素晴らしい書き手さんに、好きな芸人を書いてもらえるとは幸せです。
次回にも期待しております。頑張って下さいませ。
保守。
さらに保守
更に更に保守
>>385-392 の続き
・・・・・・肩の痛みを堪えながら、何とか浜田に追いつかれることなく
山道を駆け下り、市街地の中に入った所までは覚えている。
錆び付いた観光案内の看板に内心ツッコミを入れた事も、何となく覚えている。
でも。 気がついたら、村田は見知らぬ天井の下にいた。
「・・・目、覚めました?」
上半身の素肌に直に当たる毛布の暖かさに違和感を覚えながら、ぼんやりと天井を見上げる村田にか細い声がかかる。
聞き慣れた声に視線をやれば、ギョロッとした大粒の目。
「・・・お前・・・ゆうき か?」
数秒の間を置いてから彼の名を呼び返そうとした時、彼の首元に村田は目を引き寄せられた。
「ゆうき・・・どうしたん、それ・・・。」
ゆっくりを身を起こしながら、村田は彼の傍らにいる男、自転車こぐよのゆうきに問いかける。
彼の首には『ゲーム』の開始時にはめられた首輪と・・・一本の矢があった。
矢は後ろから射られたようで、ちょうどゆうきの顎の下に鏃があるといった塩梅。
「『ゲーム』が始まったばっかりの頃に、やられました。」
とはいえ、はっきりと声を出そうとするとさすがに苦しいのか、相変わらずか細い声でゆうきは答える。
運が良いのか悪いのか村田には一概には分からないが、矢は重要な器官のない場所を貫いていたらしい。
それほど遠くない昔にワイドショーを賑わせていた矢ガモ、矢猫と同じ状況なのだろうか。
「なかなかシュールな格好でしょ」と無理矢理笑顔を作ってゆうきは言うけれど、
シュールすぎるこの格好で舞台に出ようモノなら、客席にどっぴかれる事間違いないだろう。
「・・・お前が俺をここまで運んで来たんか?」
一つ息をつき、手早く周辺を見渡して村田はゆうきに訊ねた。
桶田や佐野、そして彼自身の血を吸った、真っ黒の・・・元々は灰色だったフード付きのトレーナーが
村田の枕元に丁寧に折り畳まれていたが、模造刀の姿はない。
しかし、彼の寝かせられていた辺りに血の痕は残っていないから。肩の傷の出血は止まっているらしい。
無理矢理手を伸ばして傷口を触ってみると、何かでしっかりと塞がれているようだった。
もっとも傷は身体の内側でまだジンジン痛んでいるけれど。
「・・・・・・・・・。」
村田の問いに、ゆうきは軽く目を伏せた。
どうしたん? 続けて訊ねようとした時、みしりと床が軋む音を聞き、村田はそちらに目をやった。
東南アジアめいた顔だちの、ベルトから二本の刀を下げた男がそこに立っているのが見える。
どうやらその片方は村田が持っていた模造刀のようであるが。
「良かった。気がついたんやな。」
関西のイントネーションの混じる声に、村田は記憶の底に沈んでいた名前を引っぱり出した。
「・・・名倉、さん?」
これまで幾多の悲劇を演出してきた妖刀・村正に対抗しうる力を秘めた刀、正宗の現在の所持者であり、
同時に『ゲーム』に勝ち残るためでなく、『ゲーム』の本部を探し出すために島を歩き回っていた男。
ネプチューンのリーダーであり唯一の生き残りでもある名倉 潤は、村田の様子に安堵したように表情を崩した。
「しっかし、『コギャル殺し』も随分堕ちたもんやな。」
「・・・いきなり何ですか。放っといてくださいよ。
まぁ、そっちは相変わらず『メスラクダ』でいらっしゃるようやけど。」
戯れに投げかけた言葉への村田の反応に、十分彼の意識が戻っている事を確認して。
名倉はオロオロと心配げに状況を見守っているゆうきに部屋の外へと目配せした。
「・・・・・・・・・。」
「大丈夫や。約束は守る。だから見張り・・・頼むで。」
不安げなゆうきの眼差しに名倉は苦笑すると、穏やかな口調でそう告げる。
さすがにそう言われればそれ以上の反発はできないようで。
地震の影響でとっ散らかった部屋の中を横切り、ゆうきは部屋から出ていった。
彼の手にはリアルな鉄道の模型が握られている。あれが彼の武器だったのだろうか。
ともかく、間もなくして部屋には村田と名倉の二人だけとなった。
「・・・あなたが・・・俺らを助けたんか?」
ボトムのポケットにスタンガンの堅い感触はあるモノの、模造刀が名倉の元にある以上、ここは大人しくするしかない。
座り込んだまま、まずは素直に村田が問いかける。
「あぁ」と名倉は壁により掛かり、素直に頷いて返した。
「あのちっちゃい子がお前を引きずって歩いてるのを見かけたからな。何か懐かしい顔やな思って。」
ちょっと話をしてみたいと思ったんや。名倉は言い終えるとふぅ、と息を吐いた。
・・・・・・俺は今、嘘を付いている。
ボキャブラのバブルがヒートアップしていたあの頃ならともかく。
今はまったく別々のステージに立っている以上、名倉が彼と顔を合わせる事は無かったけれど。
それでも後輩達の話で彼の奮闘振りは聞き知っていた。
そんな彼と少しで良いから話をするチャンスが欲しかった。それは事実だ。
けれど、決してそれだけの為に彼を助けた訳じゃない。
幾ら探してもヒントすら掴めない、『ゲーム』本部の情報を聞き出したいという思惑もある。
そして何よりも。
名倉の腰に吊されている正宗が。あの時だけは、どうしても鞘から抜けなかったのだ。
無理矢理に引き抜こうとすれば、耳鳴りのようなキーンとした音が頭の中に響いて。
結局村田のみならずゆうきまでも助けざるを得ない状況になってしまったのだった。
あの、首に矢の刺さったちっちゃい子までも。
「・・・ありがとうございました。」
そんな名倉の内心を知ってか知らずか、一つ呼吸を挟んでから村田は名倉に感謝の意を告げると頭を下げた。
「お陰で助かりましたわ。肩の・・・傷も。」
浜田の投げたサバイバルナイフが作った右肩の傷。この傷のせいで村田の右腕の力は極端に落ちてしまっていた。
最悪左腕一本で模造刀を振り回さなければいけないのかと考えていた身に、この処置は大きい。
「結構深い傷だったみたいやったし、とりあえず傷口だけは塞いどこ思って瞬間接着剤で止めといたんや。
」
瞬間接着剤と聞いて一瞬村田は固まったが、よくよく名倉の話・・・と言ってもそれは今は亡き
くりぃむしちゅーの上田 晋也の蘊蓄の受け売りらしかったが・・・を聞けば、瞬間接着剤は医療用にも
使える成分で出来ており、人体には害はないモノだとの事で。
ようやく納得し、改めて村田は頭を下げた。
「じゃ、今度は俺から聞こか。」
・・・その答え次第では、折角傷を塞いだのも無駄になってしまうやろけどな。
冗談とも本気ともとれない口調で名倉は言い、村田をジッと見やる。
「・・・お前は『何のため』に戦ってるんや?」
穏やかな大粒の瞳に慈愛の光を湛えたそれは、名倉を無視して原田 泰造と堀内 健がはしゃいでいる姿を
しょうがない奴やな、とでも言いたげに優しく見守る時の眼差しに似て。
浜田から感じたモノとは異なる威圧感に、村田は無言で考える。
勝ち残るため。守るため。復讐のため。正気のまま『ゲーム』で殺し合うには様々な理由があるだろう。
桶田も、佐野も。しっかりとそれを根拠にして戦ってきていた。
浜田のそれなど、あまりにも単純明快だったじゃないか。
・・・でも、自分は。
一体何のために戦っていたのだろう。
「・・・分かりません。」
しばらく考えた末、村田は名倉にそう答えた。
「みんなを殺して勝ち残るために戦ってるのではないんやって事は、確かなんやけど。」
桶田が考え、途中まで実行されている『ゲーム』を潰すための計画を、
自分が最後まで推し進めなければいけないのだという自覚は、村田にもある。
でも。
江頭2:50に対してトランプを投げつけたのは、恐怖からだった。
そして桶田に向かっていった時は、憤りから。
堀部と戦った時は、佐野に良い所を見せたかったのと、やはり怒りから。
浜田との時は、とにかく自分の身を守る事で精一杯で。
本当の意味で自分が戦う理由という物をしっかりと確立し切れていないのを、村田は痛感させられる。
「・・・そうなんや。」
咎めるような響きは声に含めずに、名倉は村田に答えた。
「でも、お前が殺してまわりたがっとる人間やないて分かっただけでも、ありがたいわ。」
『ゲーム』の序盤ならいざ知らず、今の名倉に進んで他人をあやめるつもりはないが、
やはり村田が殺す側の人間だったりするのなら、後ろの憂いは断っておくに限るから。
「じゃあ・・・名倉さんは。」
何のために戦ってはるんですか? 毛布をギュッと握りしめて、村田は名倉に問い返した。
名倉は痛々しげに微笑んで、即答する。
「償う、ためや。」
自分の身ならず、原田や堀内、ふかわやTIMを始めとした面々の犯した罪を。
『・・・俺は許せない。ナベプロの芸人が許せない!』
アンタッチャブルの山崎 弘也にまったく似合わない鬼のような形相で叫ばせた、その償いのために。
「俺らを狂わせた、『ゲーム』の本部を叩きつぶすためや。」
いまだに疼く、山崎に斬られた背中の傷に賭けて、この言葉には嘘はない。
そう名倉が断言した途端、村田の黒い瞳にキラリと光が灯った。
元々嘘を見抜くことには自信があったが、さすがに今はその力も鈍っている事だろう。
それでも。
今の名倉の言葉に嘘らしい物は感じられなかった。
「・・・良かった。」
声に出さず呟き、彼は誰に告げるでもなく続ける。
「聞いたか。『ゲーム』を終わらせようとしとったの、俺達だけやなかったんや・・・!」
みなさん、ほんと素晴らしいです。見るたびに感動します。
それと、タカアンドトシを予約していたんですけども、
磁石編等でいっぱいいっぱいになってしまい、さらに近頃忙しくなってしまったので、
タカアンドトシ予約放棄します。
書きたい方がいればどうぞ。
保守
あげ
まとめサイトさんの掲示板に書き込めないのですが…。
こちらに失礼します。
時間軸や軌跡などをほんの一部、自分のPCで勝手にまとめているのですが
ノンスタ石田と地雷の話がログの何処にあるのか見付けられず_| ̄|○
分かる方いらしたら教えて下さい…。
インパルスはでてますか?
>>440 Vol.7の天津8にあります。
>>441 板倉さん、堤下さんとも初期にお亡くなりになってます・・・。
チョップリンって書かれている方います?
板倉さん、地獄編にてお借りします。
気が付くと篠宮はそこにいた。
そこはうす暗いゲームセンターのような、
RPGゲームのボスが現れそうな場所。ここはエントランス・ホールのようで、どこかに通じているのだろう扉がたくさんあった。
とにかく、今の言葉で言うととても「ケバイ」場所だった。
(オバドラの二人の姿はいつのまにかどこかへ消えていた。もともと、石野はここの住人ではなかったのだ。)
ここが何所なのか、どうして来たのか、さっきまで何をしていたかがいまいち思い出せない。
「YAAA!君が前代未聞のアンラッキーボーイ、篠宮君だね!?地獄へようこそ!!」
迎えに来たのは、地獄の番人、インパルス・板倉であった。
悪魔のコスプレがこれでもかというほど良く似合っていた。
「どうしてそんなに悪いことしたの?なんかムカつくことでもあったの?ねえ?」
そう聞かれると篠宮は少しずつ思い出してきた。
自分のしたこと。そして、なぜそうしたのかを。
「どおでもいい…。…早く連れてって。」
「もう…又そんなイライラして。それにタメ口?まいいけどさ〜…
あ〜あ、今頃相方は天国でいい思いしてるんだろうな。差別だ。こんなの。いやんなっちゃう。」
そういいながら、板倉は篠宮を地下鉄のホームのような場所に案内した。
遠くのほうから、列車の近づく音がした。
「はい。君に受けてもらう地獄は、『列車地獄』って言ってね、きついよ〜。
列車って言うのは、まずレールの上を走るでしょ。これは、一定の秩序に逆らえないって事を表してるの。
脱線したら…でしょ?だから。
そんでね、ここは地獄だから、その列車の中ではいいことなんて一つも起こらない。列車の外に逃げようとしても無駄だよ。
レールの外側に道なんて無いんだ。この地獄の場合はね。もしそんなことしたら、永遠に闇のなかに閉じ込められちゃうの。解った?」
篠宮はぞくぞくして説明を聞いていた。もうここから逃げられないのだろうか。
「あ、そんで運転手さん。この人が怖い。いい人ってね、ストレスで性格が分裂して…。ああもうこのへんでいいか。しゃべりすぎた。
じゃあね。」
板倉はまた誰かを迎えに行くのであろう。振り向いてどこかへ歩いていった。
「え…・ちょっと!」
突然何かに強く背中を押され、彼はの体は列車に飛び込んだ。
板倉が突然振り向いた。
さっきまでとは口調がだいぶ違う。こちらを睨みつけるようにして淡々とこう言った。
「あ…そうだ…言い忘れていたけどさ・・・。その列車の終点“南の廃校”だから。」
「“南の廃校”…?」
「そう。恋、裏切り、希望と絶望…青き怒りや悲しみ。そして、いまやすべての始まりや終わりまでもが、そこに集う…。
思い出してみろよ。おまえや、お前と一緒にいた連中が、何を着ていたか。」
「学生服…。」
「そう。それって、学校に行くためのものだろ?」
「…・・・。」
「じゃ。行ってらっしゃい。」
列車のドアが閉じて、ガタンゴトンと動き出した。
>>447-448 前触れもなくいきなりスマソ。
地獄編です。
どうか、本スジ関係なし、おまけとして読んでくれたら光栄です。
登場人物さんスマソ。
保守。
数字も縁起悪いし。
連続レススマソ。
最近読み始めました。
ふと気づいたら前、放送があったのが1年前なんですけど。
なんだか結構放送で言う人数も凄いことになってるのでは?
しかし、時間軸が混乱してて放送しようがない気も・・・
タモさんとかUNとか結構放送されたら影響ありそうなのに。
>>440さんに期待させてもらっていいですか?
書き手の皆様も頑張って下さい。
452 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/03/06 19:14
hosyu
あげとこ。
454 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/03/06 22:59
あ、あげれてないw
>>341-347の続き
戦争なんて、テレビの向こう側だけの話だと思ってた。
だけれど、今はその“向こう側”に自分がいる。
実感はありすぎるくらいある。
銃声、悲鳴、死体……、全てがこの状況を自分の神経に伝えている。
だからこそ、今目の前にある背中が不思議でたまらない。
この人は、何を思って俺に背中を向けているのだろうか。
「怖く……ないんですか?」
永沢は言った。
だいたは振り向こうとする仕草を一瞬見せ、そのまま硬直する。
奇妙な緊張が2人の間に生まれた。
「包丁……置いてきたんですよね?」
だいたはそう言い再び前に進みだす。
その姿を見た永沢は、何故だか慌てたように言い放った。
「俺は……俺は、1人、殺してる」
蚊の泣くような声だったが、だいたの耳にはその言葉ははっきりと飛び込んだ。
再び生まれる緊張がだいたの足を止める。
そうして、歩き出してから初めてだいたは永沢を振り返った。
「もう、怖いとか怖くないとか、よくわからなくなってきました」
だいたは言う。
「……そうですね、殺されるかもしれない。あなたに。だけど、じゃあ逆に聞きたいです。怖くないんですか? 私のことが」
永沢と出会ってから一番強い口調で言った。
一番激しく、意志のこもった口調で。
永沢はメガネの奥からだいたの顔を見つめ、その問には答えずに、静かに目線を逸らした。
言葉が一つも出てこなかった。
しばらくして、再びだいたは歩き出す。
永沢は顔を上げその背中をもう一度見直した。
気負けした。女は強い。
永沢は震え混じりの溜息をついた後、その背中に従うことを決意した。
そう、決意したのだが―――――。
一瞬だけ、永沢は忘れていた。
ここが“向こう側”だということを。
その刹那、恐怖なんてものが存在できないほどの驚きと困惑が
永沢の目の前で起動した。
「かはっ」
それが、ついさっきまで強かったはずの口からこぼれ出た音。
聞きなれた銃声とともに、漏れた音。
認識は早かった。
目の前で崩れ落ちる小柄な女の―――――だいたひかるの体。
誰かが、誰かが撃ったのだ。
「だ、だいたさん!」
永沢が駆け寄ろうとしたとき、2つのものが同時にその動きを止めさせた。
続けて地面に撃たれた銃弾と、だいた自身の静止の声だった。
「くるなあっ!」
普段の、ほんの数秒前までのだいたからは想像もできないほどの口調。
その口もとからは血が吹きこぼれている。
一つの銃弾がだいたの外側だけでなく内側をも変えていた。
「早く逃げて! 早く! 早く!」
だいたは血を吐きながら必死に永沢に叫んだ。
しかし、当の永沢は一歩も動かなかった。
無意識の葛藤が判断を鈍らせる。
今何をすべきか。何をすべきだろうか。
「私は、私はもういいから! 早く! 今逃げれば絶対会えるから!」
永沢が結論に達する前にだいたが再び叫び、そして、乾いた音。
3発目の銃弾がだいたの太腿に命中した。
衝撃でだいたの体が大きく跳ね、血液が飛び散る。
そうしてそれを見たとき、ようやく永沢が動いた。
本能だったのかもしれない。
あの時、あの時あいつを殺したように、自分の身を守るための。
走った。
必死に必死に永沢は走った。
途中、もう1発銃声が聞こえた気がした。
けれど振り返ることはできなかった。ただ、逆方向に走り続けた。
助けたかった。
助かりたかった。
何が自分の思いか。
何が自分の嘘か。
もう何もわからない。
わからないまま、わからないまま走り続けた。
『今逃げれば絶対会えるから』
この言葉だけが永沢の頭を掠める。
誰に会えるというのだ。
佐々木に? 佐々木に会えると言いたかったのか?
佐々木。
俺が生きていれば、いつかは佐々木に会えるかもしれない。
だけど、あの人には―――――。
その言葉を放った張本人には。あの背中の持ち主には。
きっと、もう会えない。
会えたとしても、それはただの塊。
塊。
塊なんだ。
「ふう……」
木々の間からそっと顔を出し、もう動かなくなったそれを確認する。
「やっと……死んでくれた」
地面に横たわるだいたひかるを凝視しながら、彼女は笑った。
キシモトマイだった。
キシモトはこのゲームに参加してすぐに豹変した。
人格を形成する回路のどこかが大きく狂っていた。
キシモトは使い終わった銃を手入れしながらあたりを見回し、
すとんとその場に腰を下ろす。
「前々からムカツいてたんだ……たいして面白くないくせにさー」
キシモトはこれまで何人もの芸人を殺していた。
それも、女芸人だけを執拗に狙って。
そして、今までほぼ無名の女芸人しか殺すことができなかったキシモトにとって、
今回のだいたひかるはそこそこの収穫となっていた。
「あーあー、私以外の女芸人全員死んでくれないかなー」
微笑み混じりの呟きが風を泳いだ。
【だいたひかる 死亡】
はい。今回はここまでです。
だいたひかるが死に、磁石永沢は再び1人となってしまいました……。
自分で書いておいてなんですが、嫌な展開ですw
さて、それでですね、今回登場したキシモトマイさんなんですが、
ストーリー上どうしても「だいたひかるを殺す役」がほしかったので、
急遽登場させてしまいました。
なので、今後の私のストーリーにはキシモトマイさんは出てきません。
ということで、他の書き手の皆さんへの提案なのですが、
貴方の物語にキシモトマイを登場させてみませんか?w
もし、この「女芸人キラー:キシモトマイ」を物語の中で使いたいという方がいれば、
断りなく自由に使っていただいて結構ですので。
もちろん、しばらく経って誰も希望者が出なかった場合は
私が責任を持ってキシモトさんの話の続きを書こうと思います。
追記。
キシモトマイを使用する場合、生かすも殺すも自由ですので。
思うがままに動かして構いません。
大変ご無沙汰いたしておりましたのに参加させていただきます。どうぞよろしくお願いします。
T・K・O木本は黙々と作業に没頭していた。
みなが生きるか死ぬかの瀬戸際で必死になって戦っている時に、
意外に余裕のある様子だ。
足取りも軽く、その場所に周辺を行ったり来たりする。
その場所、それはスタート地点。
本部周辺は驚くほど手薄で、行動するには非常に楽だ。
(さっさとこんなしょーもないゲームは終わらせんとな。)
作業をしながら何度仲間の名前を聞いただろう。
その中に相方の名前が無い事に何度胸を撫で下ろしただろう。
1人でも多くの仲間と帰るために、自分ががんばらないといけない。
この作戦を成功させなければいけない。
(あと少し。あと少しで終わる。)
リュックから出てきたガスバーナーというちっぽけな武器を、
初めはあんなに疎ましく思っていたのに、今では必要としている。
殺すためではなく、守るために。
「あらま、ごっつ気ィ合う人がおったもんやなぁ。」
木本の様子を少し離れたところから発見した男がいた。
なすなかにし中西だ。
「・・・と言いたいところやけど、どうやろうな。
あの人も1人、俺も1人。その理由によりけりってことで、
仲間になる可能性は、ほぼゼロか・・・」
自嘲気味に呟くと、じっと木本の姿を見つめていた。
ガソリンを入れた空き缶を並べ、
数本でまとめたタコ糸に蝋を染み込ませて少し入れてたらす。
木本はそれを延々と並べている。
本部の裏側に並べられるだけ。
これに一斉に火をつければ、本部は壊滅的なダメージを受ける。
本部がなくなれば、このゲームも終わる。
そうすれば、みんな帰ることができるのだ。
「カラン・・・」
次の空き缶に木本が手を伸ばした時、そんな寂しい音がした。
手元を見ると、空き缶は最後の一つ。
これを並べれば、終わる。
(みんなで帰るんや。)
木本は丁寧に最後の空き缶を手に取り、ガソリンとタコ糸を入れ、並べた。
思わず息をついて座り込んでいると、後ろに気配を感じた。
誰かが立っている。けれど本部の人間じゃない。
本部の人間ならこんなことをしている自分はもう射殺されているだろう。
だったら、誰が?
「よかった、会えた。」
「中西っ!?」
聞き覚えのある声に振り返ると、
武器やら何やらいろいろなモノを乗せたリヤカーを携えた中西が、
弱々しい笑みを浮かべて立っていた。
中西は木本の横を通り過ぎると、木本がこれまでに必死で並べた空き缶をじっと見つめる。
何か攻撃を仕掛けてきそうな雰囲気はない。けれどリヤカーに乗った夥しい量の武器、アレは誰かを殺して奪ったものと考えて間違いないだろう。
しかしさっきの弱い笑顔は、とても誰かを殺す人間のものとは思えない。
「これ、今から火ぃ着けはるんですか?」
「そ、そうやけど。」
「導火線短過ぎですよ。こんなんに火ぃ着けたら、着けた木本さんももれなく巻き込まれますやん。したら、帰れなくなるやないですか。」
「けどこのゲームを終わらせるには、もうそれしか思いつかんから。」
「・・・・・じゃあ俺が火ぃ着けますよ。やから木本さんは、みんなと一緒に帰ってください。またあの舞台に立ってください。」
突然の中西の申し出に、思わず木本は眉をひそめた。
この状況で火を着けたら、中西だって巻き込まれることには変わりない。
みんなで一緒に帰るためにこれを用意したのに、犠牲者が出ては意味が無い。
それに火を着けるとしたら、やり始めた自分が着けるのが筋。中西に代わりに着けてもらって、自分の代わりに犠牲になってもらいたいなんて微塵も思っていない。
「みんなと一緒に帰って、芸人を続けてくださいね。」
「何言うてんねや!お前も・・・」
「お願いします。」
お前も一緒に帰るんや!と言おうとしたが、中西の一生懸命な目に言葉を飲み込んでしまう。
一体何が中西をそうさせるのか。この数日間の間に何があったのか。木本は混乱する思考回路を必死で整理していた。
>>431-436 の続き
窓越しに見える、二人の様子に今から殺し合いが始まるような緊張感はない。
俯いた村田に優しげに声を掛ける名倉の姿を見やって、ゆうきは小さく安堵のため息をもらした。
彼の周囲は驚くほど静かで、吹き抜ける潮風が立てる音すら聞こえそうなほど。
しかし本来のこの島では当たり前だったのかも知れないこののどかな静寂が、
実は異常なものである事は、彼も忘れてはいない。
それは、ゲームが始まってすぐの事。まだまだ周囲には大勢の芸人達がいて。
ゆうきもその頃は、相方のあつしと一緒に行動をしていたものだった。
街の中を駆け抜けて、とにかく安全と思われるような場所へ。
そうする事で何がどうなるかはわからないけれど、このパニック状態の中で彼らが出来る事と言えば
そのぐらいのものである。
武器として与えられた物と言えば、ゆうきは鉄道の模型。そしてあつしは飴玉一つ。
鉄道の模型の方はヌンチャクのような使い方をすればまだ何とかならない事もないだろうが、
妙ちきりんな説明書きが添えられていた飴玉に関して言えば、ふざけてるのかと言うより他になく。
・・・まさかその飴玉を巡って後に先輩達が大騒ぎを起こすとは彼らに想像できるはずもないけれど。
ともかく、ストライドの広いあつしが先に立ち、ゆうきがそれを追いかけるという形で
ずっと彼らは走っていたのだった。
「待てよっ! ちょっ・・・速すぎるって!」
先を行く長身の金髪に、ゼェゼェと息を荒げながらゆうきは叫んだ。
かつて喘息を患ってしまった経験から、呼吸器に過度の負荷を掛ける事にどこか恐怖があるようで。
一刻も早く・・・という気持ちも分からなくはないが、発作を再発して悶絶している所を狙われたら、
それこそひとたまりもないのだ。
「・・・でもっ!」
走る速度は微塵も落とさず、ゆうきの方を振り向いてあつしは答える。
現に人が死んでいる所を見てしまったのだ。人が人を殺している所に遭遇してしまったのだ。
これはもうドッキリなどではなく、現実に自分達の身に降りかかってきている出来事。
そう思えば、自然とオーバーペースになるのも仕方のない事と言えようけれど。
「・・・・・・・・・っ!」
不意に、ゆうきの方を振り向いたままのあつしのポーカーフェイスながらも整った顔が驚愕の色に染まる。
「 !」
何かの言葉が彼の口から放たれた・・・そうゆうきが認識した瞬間、
彼は首にドスッという衝撃と冷たい異物感を感じて、その場に転んでしまった。
起き上がろうとしたゆうきの視界にあったのは、首元から突き出た血に濡れた鏃。
そっと手で触れてみると・・・矢は彼の首を貫いていて。
「・・・行けっ!」
ジワジワと痛みが矢が突き刺さった周辺から伝わってきて。ゆうきはにわかに身体中から力が失われるような錯覚に陥った。
その中で、彼は走る足を止めて離れた場所に呆然と立ちつくしているあつしに声を振り絞って叫ぶ。
「良いから、行けよっ!」
喉が塞がれているのか、上手く声が出せない。
それでも何とかゆうきは上半身を小さく起こしてあつしへと叫んだ。
放たれた矢は一度だけではない。ひぃふっと次の矢が彼の頭上を通り過ぎていく。
狙いが甘かったのか矢はあつしを大きく逸れて地上に落ちたようだったが。
「・・・・・・・・・。」
唇をキュッと噛みしめたあつしが、くるりとゆうきに背を向ける姿を眺めながら。
ゆうきはそれで良いんだ、としだいにぼんやりする思考でそう思っていた。
ここで二人揃って死ぬ必要はどこにもない。
あつしの後ろ姿を見送る視界が白く染まっていき、ゆうきの意識はぷつんと途絶えて。
まさかこの後まもなくして意識を取り戻したゆうきが、あつしの名を定例放送で聞く事になるとは
まったく誰にも想像できなかった訳だったが。
その一方で、部屋の中では。
かいつまんでではあったけれど、名倉から彼の辿ってきた軌跡を聞かされて
村田もまた深くため息を付くより他になかった。
良くも悪くも大勢の芸人達の間を動き回った故の、彼が見聞きした状況は
膝を抱えて小さくなっていた村田には想像する事もできないぐらいの重みを持っていて。
「ボキャ天の同窓会やったら・・・もっと違う形でやって欲しかったわ。」
小さく呟いて、村田は名倉の顔を見やる。
「こんな形であの人らの事・・・聞きたなかった。」
「それはこっちも同じや・・・。」
苦々しげに名倉は言うと、ベルトから下げた二本の刀の内、鞘に収まっている方の刀の柄にそっと触れた。
「とにかく代償がデカ過ぎたわ。それだけの事はしてしもたとは言え・・・当たり前の事に気づくためには。」
呟く名倉の脳裏をよぎるのは、今は亡き人々の顔。
原田 泰造、堀内 健、深沢 邦之・・・太田 光、田中 裕二といった面々の他にも、
庄司 智春を始めとした彼が手に掛けてしまった芸人達の顔もそこにはある。
後悔からか歪む名倉の横顔に、村田は『ゲーム』の中で自分の歩んできた道など
随分と些細な物のように思えて、下手に声を掛ける事は躊躇われた。
確かに心細い思いはした。
松丘や江頭2:50や色々な芸人に鉢合った時は、生命の危機を実感したものだった。
何も話してくれなかった桶田の態度に不安と空恐ろしさを覚えなかったと言えば嘘になる。
でも。
本当はずっと村田は周囲に守られていた。それに気づかずに、すべてを壊したのは自分自身。
「・・・で、そっちはどないだったんや?」
部屋中に満ちる沈黙を破るかのように、自然と俯きがちになる村田へ名倉は問いかける。
「・・・・・・・・・。」
はっとして村田は口を開こうとしたけれど、思ったように言葉が出てこなかった。
自らの手を血に染め続けた彼にとって、それまでの軌跡を口にする事は多大な苦痛を伴っただろう。
それを聞くだけ聞いて置いて、自分の事はノーコメントで、となど言えるはずもないのだけど。
一つ自分に意を決させるように大きく深呼吸して、村田はようやく名倉に告げた。
「・・・桶田を、殺しました。」
村田の言葉に名倉が大粒の目を更に見開いた、その瞬間。
「村田さん! 村田さん! 来て下さい、ちょっと・・・あれ!」
外を見張っているゆうきの、稽古場や舞台で聞く本気のそれからは比べようもなく弱々しくか細いながらも
張り上げられた大声が部屋の中へと響いてきて。
名倉と村田は思わず顔を見合わせ、ゆうきの居る外へと駆け出していた。
「・・・・・・・・・!」
足元に気を付けつつ家の外に出て、ゆうきの指さす先に目をやると二人は一瞬言葉を失う。
島の南側に広がる海の上空に、小さくではあったけれど飛来してくるヘリコプターの編隊の姿が見えた。
その様は、十人中八人が頭の中に地獄の黙示録宜しくワルキューレ騎行曲を思い浮かべるほど。
もっとも、かの映画と違って今回のヘリコプターは大型の輸送用ヘリのようであるが。
「何や、あれ・・・!」
一つ呼吸を挟んで呆然と呟きを洩らす名倉に対し、村田は思わずグッと拳に力を込めた。
「桶田の・・・あいつの思惑通りや。」
「何やって?」
「・・・えっ?」
名倉とゆうきの二人の視線と疑問の声が同時に村田に注がれる。
「あいつが企んだ『ゲーム』をぶち壊す計画には幾つか段階があってな。
まず一つ目はこの島の火山を人工的な爆発で活発化させる事、
次は島に山火事を起こして・・・島におる人間を一箇所に炙り集める事。
これで芸人達はもちろん、『ゲーム』を仕切っとる連中のこの島から早く逃げたぁさせんねん。」
何かに背を押されたように村田は喋りだし、ヘリの群を睨み付ける。
「それで・・・これはたけしさんや本部の連中にも感謝せんとアカンけども・・・
『ゲーム』の管理に一層の人が投入された事で、そいつらを回収するための足が
どうしてもいっぱい必要となる・・・言う訳や。
そこで、最後の段階として迎えに来たあのヘリを芸人達で強奪する。」
殺した殺されたは一旦置いておき、ただただ一つの目的のために動く集団の力を利用して。
不安定な火山と燃えさかる炎のただ中に『ゲーム』を管理しようとした連中を残してサヨウナラ。
・・・これがあいつの望んだ未来の姿。
村田はそう言うも、わずかに自嘲気味な笑みを浮かべて見せた。
「もっとも・・・俺が阿呆な事してしもたばっかりに・・・計画通りに行くかはわからんけどな。」
「ヘリを・・・強奪か。」
あの突然の山火事には、こいつらが一枚噛んどったんか・・・とまじまじと村田を見やりつつ。
名倉は小さく呟いて、彼に問うた。
確かに目の前に飛来してくるヘリを見ていれば、後どれぐらい生き残っているのかは判らないが
この島の芸人達も何とか運び出せそうな気もしなくもない。
「せやけど・・・連中とやり合うなら・・・首輪の事はどないすんねん。」
ヘリポート・・・のような物はこの周辺にはないはずだから、臨時の物があつらえられるだろうけれど
そこに攻め込んでいったは良いが、首輪を爆破されて全員が御陀仏という流れになったら笑うに笑えない。
「そこはもう気にせんでもエエと思う。」
村田は即座に答え、名倉を見上げた。
「武器を持って警戒する事はあっても・・・わざわざ首輪の起爆エリアを設定する余裕は向こうにはない筈や。
それに、首輪に関してはこっちにも策がある。」
何しろ、幾ら切羽つまっとってもそんな阿呆な事をしたらどうなるか、連中が判ってへん筈もない。
これが、自分のように『ゲーム』を滅茶苦茶にしたい人間が他にもいるのだという安堵感なのだろうか。
続ける村田の口調に、先ほどまでは見られなかった不貞不貞しさの色合いが滲んでいるように思え、
名倉はどこか驚いたように・・・そして頼もしげに村田の顔を覗き込んだ。
「せやな。」
特に煽らずとも、あのヘリの大群がこの島の一角・・・しかも山火事のお陰で芸人達が動けるエリアは
当初に比べてかなり限定されている・・・に降り立てばヘリを奪おうと押しかける連中が出るだろう。
それを首輪の爆破という方法で押さえつけようとすれば、それだけでかなりの芸人が
胴体と頭部が離れた状態となるに違いない。
「最悪・・・残ったのがたけし軍団だけなんて笑えへん状況にもなるやろからな。」
「えぇと・・・たけし軍団さんと言えば・・・首輪、付けてないんでしたよね。」
恐る恐る口を開くゆうきに、名倉は頷いてみせた。
「想像してみぃ。生き残った芸人がビートたけしとたけし軍団になった場合・・・どんな光景が繰り広げられるか。」
村田にも言われ、ゆうきは何とか考えてみようとする。
数秒ほどの思案の末、ゆうきは二人を見上げてゆっくりと口を開いた。
「・・・・・・もしかして、自動的にたけしさんが優勝者・・・に?」
殿に対して盲目的な忠誠心を誓う軍団の面々なら、もちろん最後の一人は誰であるべきか
その為には自分達はどうすればいいのか、そのぐらいの事は考え実行するだろう。
「軍団連中の間で殺し合いが始まるか・・・それとも揃って自死するか。
どっちにせよ、最後の盛り上がりを期待しとった連中からすれば、萎える展開やろなぁ。」
ククッと笑って名倉は言い、せやから、連中は首輪で芸人は殺せへん。そう続けて呟いた。
彼だって、仮にも本部に殴り込みを掛けようと企んでいる男である。
そのような確信がなければ、首輪が脅威でないと考えていなければ、行動など起こせるはずがない。
「そこまで判ってはるんやったら、わざわざ聞かんといて下さいよぉ。」
「悪いな。ちょっと試させて貰ろたわ。」
はぁ、と肩を竦めて言う村田に、名倉は余裕げな笑みを湛えたまま答える。
「桶田が関わっとったんには普通に驚いたけど・・・計画の内容や覚悟次第では
こっちの行動にも支障が出てくるかも知れへんし。」
「こっちの行動・・・って?」
「さっきも言うたやろ? 本部を見つけて、みんなの恨みを晴らすんや・・・て。」
続けての名倉の言葉に引っかかる物を覚え、村田が名倉に問いかけると。
名倉は正宗の柄に手をやって、真面目なトーンでそう告げた。
スッと笑みの消える顔。本気だから・・・覚悟があるからこそ出来る態度。
「こんな事言うたらエエ気はせんやろけど、そっちの計画を陽動にして・・・俺は俺の道を行く。」
あのヘリが本部の連中を回収しに来たヘリなら、待ち伏せていれば目当ての獲物にも巡り会えよう。
後がどうなるかは判らない。周辺にいる連中に蜂の巣にされるかも知れないし、
何とか生き延びる事もできるかも知れないし。
もっとも、生き延びたところで太田に託された芸人として生き続ける道を歩むのはかなり難しいように思えるが。
「・・・しゃーないな。」
おろおろとするゆうきの側で、名倉に返す村田の言葉にはさほど落胆の色は見られなかった。
「まぁ、そんな所やろと思ったけど・・・とりあえず。」
敵じゃないてわかったんやから、俺の武器、返してくれるかな?
正宗と一緒にベルトから釣られた模造刀に視線をやり、村田は名倉にそう告げていた。
「柳原さんが死んだとこ、見たんです。」
「マジでか!?」
「正確には死んで砂浜に打ち上げられてた柳原さんですけど。あ、これ、柳原さんがすごい思いっ切り握ってました。死んでんのに。」
話しながら中西は、ポケットから黒ぶちのめがねを出す。それは木本にもよく見覚えのある、相方の平井が愛用していたメガネだった。どういう状況でそうなったのか、木本はますます分けが分からなくなる。
柳原が平井を殺すなど想像できない。じゃあ、殺したのは・・・
「2人を殺したんは俺じゃないですよ。俺が殺したのは、殺したのは・・・俺には関係の無い人だけですから。ああ、でも一人だけ関係のあるヤツも殺したんですけどね。」
やはり中西はあの大量の武器を、他の芸人を殺す事で手に入れていたのだ。そして・・・
「多分今木本さんが想像してること、当たってますよ。やって俺が、相方を殺したんですもん。」
それは一番聞きたくない告白。中西の様子がおかしかった原因は、本当に残酷すぎるものだった。
けれどふと木本は思う。中西は相方を殺したというが、殺されたはずの相方の名前はまだ放送で呼ばれていない。この数時間のうちに殺したので、まだ呼ばれていない可能性もあるが。
「どういうことか、聞いても?」
「俺はね、木本さん。あいつを置き去りにしたんです。立ち入り禁止エリアに。俺とあいつはずっと一緒に行動してました。だから交代で仮眠を取ったりしてたんです。でも・・・・・」
でも・・・何回目かの放送の時、俺らのいた場所が後30分ほどで禁止エリアになるってわかったのに、寝てる相方を置き去りにして、俺だけ逃げたんです。相方は、穏かに寝息を立ててました。」
話しながら、中西は目に涙をいっぱいためていく。相方の那須は幼馴染み。ずっと一緒にいた、かけがえの無い存在だと誰が見ても分かるほど仲が良かった。そんな相方を置き去りにしたことが、悔しいのだろう。
「俺は精神的に追い詰められてました。アメザリ、ますおか、知ってる人がいっぱい死んで、どんどん追い詰められてました。そしたら急に思ってしもたんです。俺は最後まで、コイツを殺さずにいれるやろうか?って。」
「なんでや!普段のお前らの事考えたらそんなん・・・」
「ありえない?そうでしょうか?俺はそうは思いませんでした。やから、恐くなって相方を置き去りにしたんです。誰かに殺されるのも、俺が殺すのもイヤや。やから、立ち入り禁止エリアに。同じ死ぬなら、それがまだ一番マシかなって。」
「それはいつ?」
「確か・・・・・木本さん、走って!!」
突然中西に突き飛ばされて、木本は半ば転がるように少し走る。するとモノの数秒で木本の置いた空き缶が次々と燃え上がり、爆音をたて始めた。何が起こったのか分からず、木本はその場に立ち尽くしてしまった。
けれどその理由はすぐに理解できた。本部の人間が炎の中から悶えるように出てくる。長く話し込みすぎたのだ。何かの用事で出て来た本部の人間が気付いていた。それを見た中西が、咄嗟に木本を助けてくれたのだ。
木本はその炎に駆け寄ろうとして、躊躇する。今出て行けば本部の人間に見付かる。中西の気持ちは無駄になる。その場に本部の人間が続々と集まって消火活動が始まっていた。けれど苦労した甲斐あってか、炎はその勢いを弱めない。
本部を飲み込むようにして広がる炎を見つめる木本を、また離れたところから見つめている男がいるこことに気付かずに。
本部からは大勢の人間が出て来て、上を下への大騒ぎだった。望んでいた結果だ。けれどそんな事よりも、中西の安否の方がずっと気がかりだった。本当は自分があの爆発に巻き込まれていたはずなのに。
真実だってまだ一つも聞いていない。相方の那須は死んだのか、生きているのか。ここまでどうやってたどり着いたのか。
「きーもーっちゃんっ。」
本部に見入る木本の隣りに、明るい声で呼びかけながら一人の男が立った。この呼び方、この声、確かめるまでも無い。相方の木下だ。
「きもっちゃん、あれどないしたん?」
「ああ。」
「ああ。じゃ分からんやん。あれ誰がやったん?」
「俺と中西や。」
「うそん!すごいなー。これでこのゲーム終わったらええのになー。」
木下は呑気な笑顔で、どちらかと言えば嬉しそうに本部を見つめている。リュックサックを2つ肩から下げて、そのうちの一つにはべっとりと血が付いていた。
それを見て、木本は息を飲んだ。木下も人を殺してここまで生き残っていたのだ。それがこのゲームの本文なのだろうけど、何となく嫌な感じだ。
「で?中西は?」
「中西は・・・・俺を助けて、逃げ遅れた。」
「え・・・」
木本のその言葉に、木下の笑顔はすぐに消えてしまった。その言葉を裏付けるように、視界の中の本部では、黒焦げの男の死体が撤去されようとしていた。
【なすなかにし中西 死亡】
木下の笑顔が消えたのは、可愛がっていた後輩の死を知らされたからだと木本は疑わなかった。けれどすぐにこのゲームの中でそんな感情は存在しないと思い知らされる。
「なーんや、おもんな。せっかくコンビ2人とも俺が殺そう思ってたのに。」
「はぁ?」
「マイブームやねん。コンビ芸人の2人ともを殺すの。なんか舞台踏みたてって感じの若い芸人もめっさ殺したった。」
言いながら、木下はリュックから大量の注射器とアンプルを出して木本に見せる。それがどういうものなのかは分からないが、木下はこれで何組かの芸人を殺してここまでやってきたのだ。
「もうすぐ立ち入り禁止になるエリアが狙い目やね。この筋弛緩剤をそのエリアにいる芸人に打って、放置するだけ。ごっつお手軽。」
自慢げに、そして楽しそうに木下は説明して聞かせる。その様子を見ていて、木本は吐き気がした。相方もこのゲームに参加しているのだ。
それはここにいる以上は当たり前の事なのだけれど、こんなにも笑顔で話をして聞かされたくはなかった。
そして話の内容からしてどうやら、木下はすでに中西の相方である那須を殺したようだ。だから中西を探していた。つまり中西は那須を殺していなかったけれど、木下が那須を殺した。もう那須は生きてはいない。中西が置き去りにしたあとに、木下が見つけたのだろう。
「きもっちゃんと一緒に帰ろう思ってや、めっさがんばってんで。本部もなんか大変な事になってるみたいやし、一緒に帰れる可能性も出て来たかもやなぁ。」
「那須を、いつ殺した?」
「ついさっき。多分次の放送で名前流れると思うで。あ、コンビでそれぞれに他のコンビを一人ずつ殺すっていうのもいい感じかも。」
木本はそんな木下の様子を見ていて、狂ったこのゲームの結末にハッピーエンドはありえないと確信した。そして、一つの決意を固めていた。
本部があの状況では次の放送がちゃんと流れるかどうかは分からないが、真実がハッキリしたのでもうどちらでも良かった。殺した張本人も、目の前にいるのだし。
木本はなるべく心がけて普段通りの笑顔を顔に貼り付けると、木下に話を切り出した。
「これ、平井のメガネ。死んでる柳原が握り締めててんて。それを中西が拾って持ってきたらしい。」
「ふぅん。じゃあ柳原は勝ったんや。」
「そうやな。殺されたけど、勝ったんやろう。俺はこういうコンビ愛には共感できる。けどなぁ・・・お前のは違うと思うぞ。」
「なんでーや?俺かってきもっちゃんと一緒に帰るために、がんばって他の芸人の事殺してきたんやんか。きもっちゃんとまた一緒にコントしたいから。」
「けど俺は違う。俺はみんなで帰るために、本部を破壊してこのゲームを終わらせる事ばっかり考えてた。みんなでっ、帰りたかったんや!」
木本の怒ったような口調に、木下は悲しそうな表情を浮かべ、口をへの字に曲げて膨れ面へと変化させた。
「きもっちゃんのアホ!なんで俺の気持ち否定するような事平気で言えるねん!俺はただまた一緒に漫才がしたかっただけやのに!きもっちゃんは俺がいらんのか!」
「悪いけど、今のお前は、いらんわ・・・」
木本も悲しそうな表情を浮かべ、しぼり出すようにそう答えた。木下の表情はみるみるうちに険しくなっていった。
476で書き忘れましたすみません。
【なすなかにし 那須死亡】
お久しぶりです。
スレ6−874からの続きになります。
「首相、困りましたねえ。あの島火山起こした者が出たそうで」
首相官邸に来ていた安部幹事長が、目の前にあるプラズマ
テレビを見て言った。
「その位別に問題ないでしょう、幹事長。あの島が無くなったと
してもまた新しい兵隊をあの島に送り込んで、芸人達を別の島
に連行すればいいだけの話です。それにビートたけしとたけし
軍団ですか、あの連中も今はこのバトルの参加者である以上は、
やっておしまいにしなさい」
立っている幹事長の横に座っていた小泉首相は、その位なんて
事はないと阿部幹事長を見返した。
「その中でも特に邪魔なのは、ネプチューンとか言う芸人トリオの生き
残りの名倉と、後、この女ですか」
部屋にある机に近寄った安部幹事長は、その上に置いていた雑誌S
PA!の表紙を指さして言った。
「ああ。今は死んでいる爆笑問題太田の妻、太田光代ですか」
これ以上芸人達を死なせない為にも、普段し慣れない化粧をした光
代の大きな顔写真が、その雑誌に大きく載っていた。
「名倉よりも更にこの女が邪魔ですね」
夫である太田よりも目立たないながら、社会的には芸能事務所社長
である以上、他の業界の人間達にも顔が通じる以上、首相にとっても
邪魔である事この上ない。
邪魔だ。
小泉首相は思った。
「安部君。あの映像とネットと、雑誌などこうなるとマスコミ全部が邪魔
ですね。今にして思えば、あの第2次世界大戦の頃の状態が良かった
かもしれませんね」
持っていたリモコンでプラズマテレビの電源を切った小泉首相は、静
かに言った。
「首相、軍隊にあの島でやらせるべくは何ですか」
安部幹事長はまず何をやらせるべきかと、小泉首相に聞いた。
「たけし軍団、全員を殺してしまいなさい。そして、あの女をギリギリまで
泳がせて、日本にいる不平分子が出尽くした後で一網打尽にしてしまい
ましょう」
取りあえず新しい兵隊をあの島に送ってから、たけし軍団全員を殺しな
さいと、小泉首相は立ち上がって返事をした。
スイマセン割って入って。つづき早く読みたいでつー。
スピワゴ天国編イイ(・∀・)!!
2人が口論を繰り広げている間にも、本部は勢いよく炎を上げている。けれど、もうそれどころではない木本は、その様子を振り返ることなく木下を見据えている。
「木下は、どんな結末を望んでる?」
「きもっちゃんと、帰りたいってずっと思ってた。このゲームが始まってから、一緒にスタートできんかったし、すごい気がかりやった。やから他の人間のことなんて、考えてなかった。一番、大切な人と一緒に帰りたいって望んだだけや。」
言いながら、木下はずっと眉間に皺を寄せたままでいた。木本は一番大切な人と言われた事は嬉しかったし、今のお前はいらないと言ったことを少し後悔したりした。自分の事を思ってくれた上での結果だったのだと思うと、複雑だ。
そしてたった1人しかいない相方木下と一緒に帰れるなら、この結末でも妥協できると自分にいい聞かせようとしていた。
「木下、俺・・・・・」
木本が口を開こうとした時、本部が大きな爆音を立てた。その音に木本は思わず本部に目をやる。本部からは大きな火柱が上がり、それまで消火活動をしていた人間が蟻の子を散らすように逃げ惑う。
「きもっちゃん、俺はきもっちゃんがいればそれでよかってん。」
「きの・・・した?」
最後に自分の名前を呼んでくれたことに少し微笑みながら、木下は崩れ落ちる木本の体を支えた。片手には注射器が握り締められている。
泣き出しそうになるのを必死に我慢しながら、ズルズルと木本のからだを引きずって炎に向かって歩く。もうこんな燃え盛る炎に近付く物好きなどいない。邪魔するものは何もない。
「よかった、きもっちゃんが他の誰かに殺されんで。」
炎の中に木本の身体を放つと、木下はゆっくりと深呼吸をして、自分も炎に向かって一歩ずつ踏み出し始めた。
【T・K・O木本 死亡】
しばらく来ない間にずいぶん進んでる!
書き手さんお疲れ様です。
続き楽しみにしています。頑張って下さい!
「何してはるんですか!」
炎に向かってまっすぐ歩く木下の腕を、誰かがつかんで引っ張る。振り返ると、タケウチパンダが必死の表情で両手で木下の右腕をつかんでいた。
「死んだらおしまいでしょ!本部が燃えて、帰れるチャンスが見えてきたんですから、もうちょっとがんばりましょうよ!」
「・・・別に、もうええから。」
パンダの言葉に、木下は空ろな表情でそう答えて、さらに炎の方へ歩き出そうとする。パンダは木下に抱きつき、全身で木下を止める。
「こんなことしたら木本さんに怒られますよ!」
「なんで?俺はきもっちゃんを殺してんで。」
「え?」
木下の告白は、パンダに大きな衝撃を与えた。パンダは思わず木下の腕をつかんだ手が緩んでしまう。瞬間、木下はパンダを突き飛ばして炎の中に飛び込んだ。
「木下さん!!」
パンダの声が虚しく響く中、木下は声をあげる事もなく炎に包まれ、その姿を消した。まだパンダの手には、木下の腕をつかんだ感覚がはっきり残っている。止める事が出来たはずだ。なのに油断した。そんな後悔が止めどなく押し寄せてくるばかりだった。
【T・K・O木下 死亡】
「やーれやれ、本と参ったよ」
ろくな物食ってねえから、体力落ちてるのも分かるしな。
田中は1人夜の海岸で寝転がっていた。
「何デブが一人言言ってるんだ」
その声を聞いて、田中の顔が引きつり、あわてて跳ね起きた。
「た、高田さん!? ひ、久しぶりですっ! 」
田中に話し掛けたのは、放送作家であり、たけし軍団の参謀格である
高田文夫だった。
「よう。直接合うのは、かなり久しぶりだな」
「は、はい。ああびっくりしたあ」
あーびっくりしたと田中は、自分の隣に座った高田を見て言った。
「何だ、お前。幽霊が出てきたかのように、びっくりされると俺も困るんだ
けどな」
高田はそれもそれで何だかなと、呆れ顔をした。
「所で一体、何ですか」
何の用で俺に会いに来たのですかと、田中は聞いた。
「いや、俺は談志師匠ん所入門して真打ちもらってるけどさ、それでもた
けしさんみたいな真っ当な芸人でもねえ、放送作家だからさ。昨日福田
官房長官って言うの、護衛連れて俺の所やって来て、『お笑い番組やら
ないのなら、日本にお前だけ連れ帰るつもりでいるんだが』って内容の話
して来てさ、取りあえずたけし軍団の連中じゃ使えねえし、王様の耳はロ
バって感じで、お前にっていうか、何か相方がお前の後ろで、ごたごたやっ
ているような気がすっから、取りあえずそっちにはしばらく時間くれって言っ
て置いたから、まあ言い捨てしながら、どうしようか考えるつもりでここ来た
のよ」
高田は田中に憑依している太田が見えているのか、今ここに太田がいる
かのように話を切り出した。
「え? 光、放送でも死んだってやってましたでしょう」
何故そんな事を言うのかと田中は不思議に思ったが、憑依している太田
は、
『まあ、高田さんならバレてもしゃあねえよな』
仕方ねえよなと納得した。
「お前が見えていない物を、俺が見えているんだから、ひょっとしたら俺にも、
死線が見えているのかも知れねえな」
普通人間が近くに立っているのに、ぼんやりとなんか見えねえ筈だもんな
と、高田は付け加えて言った。
「で、結局高田さんはどうするつもりなんですか。官房長官の言う通りに、日
本に帰る気なんですか」
田中は官房長官の言う通りにするのかと、高田を見上げて聞いた。
「本音言うならたけしさんの側、たけしさんもう参加者に戻っちまっているから、
政府が絡んでいる以上死ぬ確率高えみてえなのに、このまま官房長官の言
う通りに帰ったら、俺人非人になっちまうから、帰りたくねえんだな」
八時だよ全員集合の件でいかりや長介と袂を分かって以来、ビートたけしに
はずっと世話になった上、いつ死ぬか分からない人間の側を離れるのは人
じゃねえだろうよと、高田は返事をした。
「まあ、そりゃあそうでしょうね」
それもそうですよねと、田中は相づちを打った。
『まあ、そりゃあそうだろうよ。俺が高田さんの立場だったら、その言葉乗って
船乗ってその後の事考えても構わねえけど、たけしさんの事考えたら迷うのも
分かるよな』
太田は2人の背後で話を聞いていたが、そりゃそうだろうなと、2人には聞こえ
る訳がない声で言った。
「おい、田中空耳かな。高田さんが迷うのも分かるよなって声したの」
気のせいかなと高田は言った。
「気のせいですよ。どうしたんですか、俺の後ろで光が見えるとか、そういう事ばっ
かり言って」
田中は俺には聞こえませんよと、自分の周りを見た。
「田中、俺やっぱり見える訳がない物が見えるみたいだから、死線が見えてるみ
てえだな。死線が見えるんだったら、俺は好きなようにさせて貰う。どうするのか
はここでは言わねえ。お前の首わっかで盗聴されてるかも知れねえからな」
死線が見えるようだったら、俺の好きなようにさせて貰うと、高田はどうするか
結論付けた。
「あ、もう1つ官房長官、気になる事言ってたな」
「何がです」
田中は何があったのかと、高田を見た。
「お前の死んだ相方のカミさんいただろ」
「社長ですか」
「お前さんだったら、そういう事になるよな」
高田はまあ、お前からしてみれば所属事務所社長なんだろうなと、1人納得し
た。
「そうですね」
「おたくん所の社長、『お笑い界のジャンヌ・ダルク』とかしゃれた名前で、雑誌と
かネットで祭り上げられているみてえだな」
今の高田の言葉に田中は目をぱちくりさせた。
「このバトルを止めさせようと、同志を募って中止活動してるみたいだ」
田中はどういう事かと一瞬頭が真っ白になったが、光代の性格を考えて夫で
ある太田が死んだ以上、光代だったらやりかねないと思った。
「おたくん所の社長が、どう動くかは俺には読めねえが、まあお前らが最後のギ
リギリまで生きてるのを祈らせて貰うわな」
どうなるかは、こうなった以上俺にも読めないが、俺の腹は決まったからと高
田は静かに結論付けた後、
「今度会う時は、日本で会おうな」
手を軽く振ってそのまま立ち去って言った。
『まあ、勝手に高田さん勘違いしてくれて良かったわ。バラされたら俺成仏出来ね
えし、こいつ以外取り憑く事出来ねえから、浮遊霊にしかなれねえしな』
田中が取り残された後、その背後にいた太田が独り言を言った。
ども403ご連絡ありがとございました(汗)
しかし自分で出した内3組も解散するとは思いませんでした。
>396-401の続きです。
森枝はゆっくり、手を首にかける。
そう、それは当たり前に、自然にして緩慢な動作で。
口内に沸く唾液を飲み込む。
汗が額から流れてくる。
ひゅっ、ひゅっ。
喉をかきむしる手の上から森枝の手が。
次第に首輪を避けて首に食い込んでいく。
殺されるか?
生きるか?
ならば殺せ。
選択肢はそれ程多くない。
頭にのぼっていた血がす、と冷めていくのを感じた。
違う、俺は殺したいんじゃない。
前田の体から力の一切が抜けたのかがくり、落ちた。
奇怪な喉の音は止まった。
一応息は正常に戻ったらしい。
どうやって戻ったのかは分からない。
殺したいんじゃない。
殺されたいんじゃない。
ただ、生きていたいだけだ。
震える手を開いて見つめた。
前田を抱え起こす。
2人からは血の臭いしか感じられなかった。
何かにせかされる、おいたてられるように覚醒していく脳に対して、
前田のまぶたがゆっくりと開いていくと、視界一杯に森枝の笑った顔が映し出される。
「おー、お前よく気絶するよな〜。特技か?」
もう、辺りは暗かった。
2、3度瞬いて周囲を見渡す。
手の感触が。
「あ。」
前田の手に塗られていたハズの血がきれいになっていた。
「手なー洗っといた。」
ほれ、ときれいになった手に小さな赤い木の実が渡された。
「それ多分木イチゴだと思うんだけど。
食べとけ、さすがに無飲無食はまずいだろ。」
流された赤い血。
渡された赤い実。
前田はそれを1つずつ口に含む。
口に強い酸味が広がって、顔をしかめた。
「……お前、大水も殺しただろ。」
森枝は前田の横に座って地面を見ながら聞いた。
しばらく重い沈黙が流れる。
「俺が殺しました。」
小さな声だった。
「そっか。」
森枝はそう相槌を打つ事しかできなかった。
前田が大水を殺した。
だからといって自分が何をいえばどうなるのか想像できなかった。
前田が森を殺した…それは、前田が生きる道を選んだ。
ただそれだけの事だ。
「そっか、てそれだけですか?」
「んーじゃ、村上を…。」
「違います、それは違います。」
最後まで言う前に強いトーンで遮られた。
「キリ、それが本当のお前の武器か?何で森を殺した?同期だった大水を殺したのは?」
そこまで言い切ってため息をついた。
「そんな事…もう、本当にそんな事なんだよな。」
「え?」
「何か感覚麻痺してきてるんだろよ。俺もお前も生きていたいそれだけだ。
だから俺を殺すな。俺もお前を殺さないから。」
前田の視界がぐにゃと歪んだ。
つん、と鼻から頭にくる。
「すみません、すみません。」
涙声でひたすら謝り続ける。
うなだれた頭をくしゃりなでた。
前田からは血の臭いが濃く漂う。
森枝からも血の臭いが染みついていた。
くん
鼻を動かしてその臭いを嗅ぐ。
最初は体が震える程の恐怖をもたらしていたのに。
今、こうすると異臭でもなんでもない。
馴染んでしまった。
ぼんやり、明けていく空を仰いだ。
「森枝さん、俺見張りします…寝てて下さい。」
いつの間にか前田が起きて疲れ切った顔をして提案した。
「いや、もう動こう。
今なら皆寝てるだろ、こんな時間っから人殺すやつはいないと思うし。」
「でも、寝てないじゃないですか。」
首輪の下、あがいて傷になった皮膚を触る。
治療法など2人ともわからない、濡れた布で血を洗い流しただけ。
深くえぐれた傷が痛々しい。
前田が動かした手を視線で追いかける。
首をしめた感触が指先から脳みそに伝わる。
柔らかい肉に食い込んだ指。
血の生ぬるい温度。
骨がきし、と音を立てた。
森枝は手を握りしめてその感覚を追い払う。
わざとらしく立ち上がり、ぱんとジーンズについた土埃を払った。
「大川原を探す。」
まだ死んではいない、放送で名前を呼ばれていないはずだ。
前田は小さく頷いた。
そういえば、と思う。
同期のチャップメンはどうしただろうか。
野田と大川原は相当仲が良かったはずだ。
昔は同居していた程だった、次いで和田もそこに転がり込んでいた。
もしかすると3人で一緒に動いているのかもしれない。
そんな事を考えて歩き続けていた。
思い浮かぶのは隣で笑った大川原の顔。
お前は人を殺して生きているか?
俺は人を殺してまで生きていたいのか。
狂ったのは国か
お前か
それとも─────
俺が先か
今回はこれまでです。
途中で名前欄元に戻っちゃってます(汗)
紛らわしい事になってすみません。
早いとこチャップメンださないと
497 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/03/30 09:07
あげ
初めてカキコしますが、まえのことになってしまってごめんなさい。ロザンは、
どうなったんでしょうか?過去スレ4〜7読んでないので(読めない)分からないんです。
復活させちゃダメなんですよね?でも、死亡者リストに載ってないし、なんかウヤムヤのまま
終わってしまってるんで、私が続き書きたいなぁ〜…ダメですか?
長々と失礼しました。
過去スレ4〜7はこのスレの途中でhtml化されてますよ
≫499
あ!!ありがとうございます!!
見てるだけしかできませんが(爆
書き手さんガンバッテ下さい!
あげ
>>455-459の続き
倒れこむように地面に手をつく。
冷たくて、暖かい。
微かに湿ったその土が、永沢の手を優しく迎え入れた。
「くはっ……か…ゲホォッ!」
半分胃液が混じった唾が、喉の奥から染み出てくる。
止まらない息の鼓動が体を締め付けながら、
1滴、また1滴と吐き出されていく。
目を閉じて思い出す。
あの人の最期を。
だいたひかるの最期の声を。銃声を。
後ろを振り返らなかったことを少し後悔する。
どうして、せめて見届けるぐらいのことが出来なかったのか。
どうして素直に逃げてしまったのか。
後の祭りだとはわかっていても、無性に腹がたって、後悔して。
―――――殺した。
そうだ、俺が殺したんだ。殺したようなもんだ。
これで、2人目だ。
「……!」
一瞬、脳裏をなにか懐かしいものが通り抜けた。
2人目? じゃあ1人目は、あいつ。
地面についた手を見る。この土。この場所。まさか。
まさか。
まさか。
地面に手をついたまま、四つん這いの状態で進み出る。
永沢の目は見開いていた。
ただ事じゃないほど緊張しているのに、不思議と汗は出なかった。
恐ろしい偶然だ。またこの場所に舞い戻ってくるとは。
目の前には茂み。この茂みの先には何があるか。
それはもう予想はついていたはずだった。
だがそこにあった光景は、永沢が知るものとは少し食い違っていた。
「これは……」
そこにあった死体は2つ。アップダウンの阿部と竹森だった。
「どうして……?」
あの時自分に襲い掛かってきたのは、
あの時自分が殺したのは阿部だけだったはずだ。
けれど、そこには首にナイフが突き刺さったままの竹森の姿があった。
「後を……追ったのか……?」
永沢は震えた。震えが止まらなかった。
自分がしたことで、自分が阿部を殺したことで、また一つ死体が増えたのだ。
絶命した竹森を見る。気のせいか、まだ生気があるような気がした。
放送で名前が呼ばれていた覚えもない。まだ死んで間もないのか。
「3人目……」
永沢は呟く。
恐怖に狂って襲いかかってきた阿部。
相方の後を追った竹森。
何者かに撃たれただいたひかる。
みんな、みんな自分が殺した。
殺した。
永沢は目に熱いものが溜まるのを覚えた。
どうして、どうしてこんなことになってしまったんだろう?
「……ははっ…は……はは………はははは……」
永沢の口から笑いが生まれた。ごく自然だった。
笑うしかなかった。流れる涙も気にせず笑った。
笑いながら、永沢は何かを切り離した。
「もう……何が何だかな」
今まで穴にこもっていた自分。
人を殺したことを責めていた自分。
殺されることを怯えていた自分。
何もかもが、永沢の中からこぼれ落ちた。
殺人は―――――このゲームの主旨だ。
何も言わず立ち上がる。
涙は相変わらず流れていたが、いつのまにか質は変わっていた。
死んだ3人を頭に浮かべ、反対側を向き、深く深く、頭を下げた。
それが彼なりの謝罪と供養だった。
殺されるなら、いつでも殺されてやる。
運が良ければ佐々木に会える。運が悪けりゃそれまでだ。
ポケットに折りたたんでいた地図を開く。
現在地はすぐわかった。この場所は、よく覚えている。
「あの穴が……こっちの方角だったか?」
ここに向かえば、もう1度佐々木の後を追えるかもしれない。
ホリやヒロシの死体をまた見るだろうか。
だいたひかるを殺した奴と出会ってしまうだろうか。
でも、もうそれは取るに足らないことだ。
どこかで何かが吹っ切れていた。
相変わらず、涙は流れていたけれど。
短いですが今日はここまでです。
503の名前を間違って名無しさんにしてしまいましたw
すみません。
4月になるとさすがにまとまった時間を作りづらいですね・・・
とりあえず保守。
508 :
名無しさん@お腹いっぱい:04/04/12 20:11
あげ!
509 :
通過@19:04/04/13 10:48
久しぶりにきました。
今は見る側で存分に楽しんでます。書き手さんがんばって!
>>419の続き
「はぁ〜〜……」と吐き出された溜息は鉛のような重さをもって空気中へと溶けていった。
いっその事、この鬱蒼とした気持ちも溜息と一緒に出て行ってもうたらええのに……と
思ったが世の中そんなにうまく出来てはおらず、吐き気にも似たその気分は水口の胸の辺りで
もやもやと停滞し続け一向に消える気配はない。胃の辺りがキリキリと痛んだ。
そんな柔な神経の持ち主でもなかったはずやねんけど……と自嘲的に笑う顔も引き攣っている。
民家を出るまでの水口は場所にそぐわないくらい余裕があった。
なのにどうしてこんな事になってしまったのだろう?
理由はいたって簡単……
「あかん、またや」
水口は苦しそうに顔を歪めると足を止めた。
背筋にゾワリと撫でられてるような感覚が走り……同時にぶわっと一斉に鳥肌が立つ。
後ろに誰か居る……見られている……そんな気配。
「大丈夫や、どうせ誰もおらへん。さっきもそうやったし、その前もそうやった。」
自分に言い聞かせるようにそう言うと乱れた心拍を打ち続ける心臓を押さえ
呼吸を整えると、水口はゆっくりと振り返った。
だけど……いや、やはりと言うべきか、そこには人影どころか虫の一匹さえいやしない。
水口はふたたび溜息をついた。
今度は鉛のような重さではなく底なし沼に突き落とされたような諦念と陰湿さを含んだ溜息だった。
極限状態で張り詰められていた緊張感が一瞬緩んだことで溢れだす脱力感と
疲労感……それに安堵と不安と苛立ち。
それらは混じりあうわけでもなく混沌とした状態で水口の精神を圧迫する。
「限界」という二文字が頭をかすめると水口は遂に「も゛ーー!なんなん、ほんま!腹立つわ!」と
声を上げると髪の毛をかきむしりながらその場にしゃがみこんでしまう。
「くすっ」と笑うような声が聞こえたような気がした。気が狂ってしまいそうだった。
オムレツを食し、民家を出た水口は奇妙な視線に悩まされていた。
身の毛もよだつような突き刺さる視線→振りかえる→誰もいない→歩き出す→
身の毛もよだつような突き刺さる視線→振りかえる→誰もいない→(REPLAY)→(ENDLESS)
そんな事をここ数時間にノイローゼになるくらい何十回、何百回と繰り返していた。
水口は格闘技をやっていたことがある、しかしだからと言って視線や気配を
敏感に感じとれるほど感覚に優れているわけでもなければ神経質な人間でもない。
だが、そんな水口でもこの視線ははっきりと視線として察知し認識することができた。
裏を返せば察知し認識せざるおえないほどのナニカがその視線には含まれていた…という事だ。
こんな陳腐な言葉をもってしか説明できない己の文章力には落胆するほかないが
少しでも伝わってくれる事を願おう。
つまりそれくらいその視線は異様さ…そして異常さを帯びていたのだ。
最初、水口を襲ったのは恐怖だった。
殺し合いが当然のように行われ、銃声が当たり前のように響き、
血まみれの芸人が理不尽にあちらこちらで己の人生の幕を下ろしているこの場所で
誰かに見られている感覚……それは「死」を意味する可能性を大いに含んでいる。
例えば人を殺す気でいる芸人がゴルゴ13よろしくライフルの銃口を水口へと向けて、
その狙撃のターゲットとして照準を合わせていても何もおかしくはない。
そう思うともう水口の脳裏にはゴルゴ13が自分にむけてライフルを構えている
ビジョンしか浮かばなかった(こういう書き方をしてしまうと滑稽な感じにしかならないが、
実際自分が「死」というものとリアルに隣り合わせの世界でゴルゴ13に狙われていると思うと、
それだけで充分恐怖の対象になりえるものだ)
もちろん水口もみすみす殺されるわけにはいかなく、木々が立ち並ぶ視界が良いとは
いえない森へとはいり縦横無尽に逃げまわった。
しかしそんな簡単に解くことのできる視線なら水口もこんなに焦燥感に駆られる事も
なかっただろう。視線の主が水口を逃すことはなかった。
次に水口の中に湧いたのは違和感。
約2時間が経過しても見てるだけで一向に攻撃をしかけてくる様子を見せない視線の主。
「あれ?撃ってこうへんやん?」
もちろんそれは水口にとっては幸いなことだったが同時に不可解で、
次第に水口も「なんかおかしいぞ」と思い始め……そして気付く、その視線には悪意や
殺意といったものが微塵も感じられないという事に。
いや、だからと言ってそれを好意的なものと受けとるにはいささか無理があり、
そう……あえて言うなら、絡みつくような纏わりつくような粘着的な……まるで遠目から
水口を眺めて観察しニタニタと笑い楽しんでいるような……そんな視線だった。
ストーカーの被害というのは本当に悪質だ。世の中から消えてしまえばいい。
この時の水口は真剣にそう思い、鉛のような重さを含んだ溜息を吐いた。
水口が視線の異様さに気付いてから更に2時間経過、やっと場面は文頭へと戻る。
「なんやねん、ほんま!なんで俺なん?頭おかしいやん!?」
しゃがみこんだままの水口はブツブツと悪態をつき続けた。
もう愚痴でも言っていないと本当にノイローゼにでもなってしまいそうだったからだ。
懐のホルスターに収められたナイフを上着越しに触れ、その感覚を確かめる。
このナイフを使っての無謀な計画が水口の頭をかすめたが考える間もなく却下。
つきまとう視線が水口の不快感をあおるに十分で気持ちが悪くたって姿の見えない相手に
手の出しようもない。だいたいこんな視線を繰り出せる人間はまともじゃない。
そんな人間を相手にはしたくない。
水口はチッと舌打ちし「不快やわ」と吐き捨てると立ち上がり再び歩き始めた。
それからどれだけ歩いただろう?
死者および禁止区域を知らせる放送が一度流れ、水口が知っている人や
親しかった人の名前もその中にあり、沈んでいた水口の心をさらに沈ませた。
そしてそんな水口の心を映すように雲行きまで怪しくなってきて、ポツリポツリと
小雨が降り始める。踏んだり蹴ったりとはまさにこのことだ。
水口は気難しい顔をすると雨を防げそうな場所を探し始めたが、街から遠く離れた
この場所は残念なことに右を見ても左を見ても木々しかない。
そんな状態に諦めを覚えかけた……その時、水口の目に不思議なものが飛び込んできた。
大きな木に隠れて死角になっていたので今まで気づかなかったがそれは祠(ほこら)だった。
近づいて見てみると祠の中には赤いよだれかけをしたお地蔵さんが安らかな顔で
ちょこんと納まっている。
覗き込むと祠は小さい(いや、地蔵を囲うだけの祠にしてはかなり大きい。
あくまで水口が意図している事を考えると小さいという意味だ)が、それでもまだ人が一人
ギリギリ入れるくらいのスペースは空いていた。
いくらなんでも罰当たりで人道的ではないような気がしたが殺し合いが行われている中で
人道を唱えても仕方ない。
水口はしばらく考え込み「まぁ、しゃあないやろ」と呟くと、手を合わせ
「一緒に休ませてください」と言って屈むと体を小さくさせて後ろ向きで祠の中へと
体をおさめた(正面から入ると中で体の向きを変えることができない)
カバンを抱えたままお地蔵さんに寄りかかるような三角座り、少し…いや大分窮屈だったが
びしょ濡れなるよりはマシだった。
小雨は本降りへと変わり灰色の空からザーザーとうちつける雨を水口は祠の中から
静かに眺めていた。アノ視線はこんな大雨の中でもまだ断続的に続いている。
しかし水口の疲れはすでにピークに達していたし、視線には無視を決め込んでいた。
ザー…という雨の音が響くなか、瞼の重さに耐え切れなくなった水口は目を閉じた。
すると急激な睡魔に襲われる。もともと安心して寝れる環境ではなく寝不足だった上に、
心身ともに疲れていたこともあり一定の雨音が眠気を誘うのだ。
ウトウトとし始めたかと思うといつのまにか水口は眠りについてしまっていた。
「水口さん?死んでるんっすか!?水口さん!!」
自分の名を呼ぶ声と共にペチペチと頬を叩かれ、水口は目を覚ました。
「んっ……」と声を発しながら顔をあげると頭をぶつけ、自分が祠の中にいた事を思い出す。
全身が痛い。無理な体勢で寝てしまったのだから当然といえば当然だ。
寝ぼけ眼でよだれを拭い(お地蔵さんによだれかけをつけた人も本当によだれが
垂れるなんて想定していただろうか……)声がした方へと目をむけた途端、
水口の眠気は吹っ飛んでいってしまう。
「大浦に中立!?」
そう、そこに立っていたのは大浦梶の大浦とけもの道の中立。
「何してんの?」
「何してんのはこっちの台詞ですよ!何してはるんすか、そんなとこ入って?」
「何って……雨宿りやん」
「もうちょっと他に場所あったでしょ。どこ入ってるんすか〜」
「まぁまぁ、水口さんが生きててんから良かったやん」
呆れた様子の大浦と強面の顔に似合わずニコニコと笑う中立。
この場所で知っている顔に出会えるというのがこんなに嬉しいことだったんだと水口は痛感する。
しかし、その時……水口はふと違和感がないことに違和感を感じ、そして気付く。
―――――アノ嫌な視線が消えている。
水口はキョロキョロと辺りを見回したが、そこにはただ緑の木々が立ち並び、
さっきまでの雨が嘘のように空はどこまでも青く晴れわたって、
乾ききっていない雨の水滴がまるで滑り台からすべり落ちるように玉葉の上を
滑降するという、あまりに平凡で穏やかすぎる光景が広がっているだけ。
アノ嫌な視線も人の気配もそこには存在しなかった。
あれだけ執拗なまでに水口を追いかけまわした視線が突然消える……
それは不可解でしかなく、もっとよく考えさえしていればこの時点の水口にだって
この後に起こる悲劇と呼ぶに充分なソレに対して何か手立てができていたかもしれない。
いや、「もしも〜だったら」とか「こうなっていたかも」なんていう、
あり得もしない未来を過去に依存させ、空っぽな希望とそれゆえの絶望を煽るだけの言葉は
何の意味も持たず、ただ虚しくなるだけだから止めておこう。
とりあえず、この時の水口は顔見知りに出会えた高揚感とあの忌まわしい視線からの
解放による安心感でいっぱいで、このことについては深く追求しなかった。
どこか麻痺していた感は否めないが、それが水口のとった行動だ。
「水口さん?」と中立に呼ばれる声で我に返った。
「どないしたんすか?いきなり黙り込んで?」
「いや、何もない。それより何でお前ら一緒なん?」
「相方の中村探してたら大浦と会うて中村の居場所知ってるって言うから
連れて行ってもらってる途中やったんすよ」
中立の言葉に水口は『そういえば俺も相方探しとったんや。忘れとった……』とすっかり
忘却されていた自分の目的を思い出すと「本坊知らん?」と2人にむかって尋ねた。
中立は「本坊さんですか?いや、見てないっすね」と申し訳なさそうに答え、
そしてそんな中立の横で何かを考え込むような仕草をしていた大浦は顔を上げると
「僕も知らないっすけど≪アイツ≫やったら知ってるかもしれないっすわ」と
どこか嬉しそうな声を出した。
「≪アイツ≫って誰よ?」
「今から中村がおるとこ行くんですけどそこに≪アイツ≫もいますから水口さんも
一緒に行きます?多分……いや絶対≪アイツ≫は本坊さんの居場所知ってますよ。
ほんま≪アイツ≫は何でも知ってますから!大丈夫です!行きましょ!」
「ちゃうがな、だから≪アイツ≫って誰なん?」
「行けば分かりますから!ええから、行きましょうよ!」
水口は大浦が時折見せる根拠の見えない強引さは少し疎ましく思う一方で
嫌いではなかった。大浦の言う≪アイツ≫が誰なのかは分からなかったが
本当に本坊の居場所を知っているならそれに越した事はないし、
素直にその提案を受け入れることにした。
「しゃあないなぁ……」なんて呟きながら水口は祠から出ようと「よいしょ」と
腰を上げようとして硬直する。すっと血の気が引いていくのが分かった。
水口はもうすでに歩き始めている大浦と中立を「ちょう待って!」と慌てて引き止める。
「どないしたんすか?」と不思議そうに振り返る2人。
「大切な話があんねん。ちょっと頼みたいねんけど……」
神妙な口調でそう言う水口に、中立は不思議そうな顔をし大浦は表情を曇らせた。
「悪いけど出られんくなってもうたから出るん手伝って」
「「……………………。」」
そう……無理な体勢で祠に入り、そのまま長時間居たせいかガッチリとはまってしまって
抜けなくなってしまった体……。
この後、行われるアメリカテキサス州で起こった路地に挟まってしまった猫救出劇ならぬ
お笑いバトルロワイアル中に起こった祠に嵌ってしまった水口救出劇については
多くを語るに及ばない。
片や勇敢な警察官が救出し、片やしがない後輩に助けられたくらいの違いでしかない。
ただ一つ述べておくとするなら、その救出劇の間ずっと呆れた様子で水口に
小馬鹿にするような言葉を投げかけ続けた大浦(始終ヘラヘラとした笑みを絶やさず、
後に水口によって蹴られる運命が決定済み)が先ほど少し垣間見せた曇った表情の直後に
どこか意味ありげな安心したような表情を浮かべていた事くらいだろうか。
しかし迂闊にも水口にはそんな事を気にしている余裕はなく見逃してしまっていた。
そして、狂った歯車がゆっくりと…しかし確実に動き出し、壊れた世界はさらに壊れる事となる。
【ソラシド水口、大浦梶大浦、けもの道中立 合体】
今日はここまでです。今回も長くなってしまってすいません。
それと長期放置スマソです。前回感想をくださった方々ありがdヽ( ´∀`)ノ
訂正なんですが
>>413の6行目。
×完封なまでに
〇完膚なきまでに
なんでこんな馬鹿な日本語間違えをしたんだか…
日本語勉強しに逝ってきます…λ...
おぉぉ。
読んでてドキドキしました。
それにしても本当に文章が上手い。
新作お疲れ様です。
B9さんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
今回も読んでいて息が詰まる思いでした。
今後の展開すごく楽しみです。おつかれさまです。
B9さんお疲れ様です。待ってました!!!
大浦さんの言うアイツが気になります…
こんな事を言うのは生意気ですが、
B9さん初めの頃からどんどん文章が上手くなっていますね。面白い!
B9さん乙です!!
自分の中での大浦像が、「何となくつかみ所の無い不思議な子」だったので(ただ単に、あまり見た事がないだけなのですがw)B9さんの書かれる大浦に凄く興味津々です。
続編も、目一杯期待して待たせて頂きます!!頑張って下さい。
本ページのほうのvol.1〜7を抜粋して読んでいて、少し気になった事があるのですが、
ルート増田って、氏んでますか? ハリガネ松口に「頃せ!」と、言われただけで、
まだ氏んでいないと思うのですが? だれか、そこら編のことお分かりになるかたいたら返信お願いします。
まだ、生きてるって話だったら面白いのにな…
ぼちぼち、自分もまたちょっと手を出したくなってしまったので、後々書きたいと
思います。ストロング・マイマイズ、きぐるみピエロで。
まだ出てなかったと思うので
>524
そーいえばそうだね。増田さんの生死は定かじゃない。
チャブの柴田さんが一度ルートのこと呟いてたけど、堂土さんの脱落は
放送で聞いて知ってたけど、増田さんの脱落はその時点では判ってない。
いいんじゃない?存命で。
スピワの集団催眠編って書いてもよろしいでしょうかね?
どうせ私が書くもんなのでしょぼいですけど。
528 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/04/25 12:53
どぞー
自らに銃口を向けた後、小沢は何処かを彷徨っていた。
まるで夢から醒めるみたいに、ゆっくり、ゆっくりと浮上していく。
―まぁ、天国には行かないだろうな。
―でも、地獄に行くくせして浮上するのか?
ぼんやりとした意識の中で、小沢はふとそう思った。
―自分は、人を殺したというのに。
「おはよう、小沢さん。」
目を開けると、殺したはずの人物が至近距離で笑っていた。
小沢は状態を飲み込めずただ瞬きばかりを繰り返す。
「やっと起きましたよー。この人失格。はい、ワッペンちょうだい。」
井戸田はそんな小沢はお構い無しに、白衣の男からワッペンを受け取っている。
「はい、失格。」
無邪気な子供のようにケラケラと笑いながら、井戸田はワッペンを小沢の額に押し付ける。
小沢は身を起こして周りを見回した。
そこには死んだはずの藤井や岩見がいて、井戸田と同じくこちらを見てニヤニヤと笑っていた。
「小沢君、最後かっこよかったなぁ。」
「『こっから先は、自分で選べ』だっけ?漫才で使ったら?この台詞!」
笑いあう三人を前に小沢は今だ呆けていた。
「全部…夢?」
呆けたまま、やっと小沢は口を開く。
「そうだよ小沢さん。全部夢だったの。」
井戸田が優しく答える。
「皆、死んでないの?」
「そうだって。僕らもぴんぴんしてるやろ?」
飛石連休の二人もおどけたように答える。
その瞬間、小沢の両目から涙が溢れ出した。
「潤ー!!!!」
「何泣いてんだよ!!おい!抱きつくな!気持ち悪い!!」
「だってぇだってぇ!!!」
甘えたように小沢は泣きじゃくる。
「俺…潤の事っ…。」
井戸田は少し困ったように小沢を引き剥がすと宥めるように頭を2回叩いた。
「小沢さん、夢でしょ?全部夢だったんだから。」
だからもう忘れた、と井戸田は笑う。
「確かに向こうじゃスベったけどさ、その分こっちで笑い取んなきゃ。
俺たち二人で『いつもご陽気なスピードワゴン』だろ?」
その言葉に、ひたすら小沢は泣いた。
嬉しくて、笑いながら泣いた。
この時だけ小沢は、普段は信じないはずの神様に感謝した。
小沢にとっては、ここがもう「天国」であるような気がした。
ものすごくヘボいですが書かせていただきました。
スピワゴ小沢はよく泣いているので、泣かなかったあの時は辛かったんだろうなと思いまして。
それで、思い切り泣いて欲しかったんです。
なんかぶち壊してすいません。
>>527 乙でした!
何気にラストが切なかったので
泣きながら笑っている小沢さんが幸せそうでした。
534 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/04/27 19:29
>>527 乙!!
なんか凄いスピワっぽさが出てる。。。
ヘボくなんかないですよー
age
537 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/05/07 00:05
>>365-372 の続き
「まぁ・・・別に構わへんけど。」
模造刀に一度目線を落とし、それから村田の顔を見て、名倉は小さく答える。
「まさかお前、その格好のまま出掛けるつもりなんか?」
そう言われて、村田はふと自分の現在の格好を思い出した。
血や泥で汚れたボトムはともかくとして、上半身は肩の応急処置の為も相まって素っ裸。
「せめて何か羽織って行ったらエエんとちゃうの?」
「わ・・・わぁってるわ!」
ニヤニヤとしつつも冷静に告げる名倉に対し、村田は顔を真っ赤にして言い返す。
気付いた途端に海の方から吹き抜けてくる風が肌寒く思えたようで、身体を丸める村田の様子に
悪いとは思いながらもゆうきは小さく笑った。
逆に考えれば自分の格好に気が回らなくなるぐらいに、『ゲーム』を潰す算段に
村田の意識が向いているという事でもあろうけれど。
シャツなり何なりを取りに、バタバタと建物の中に戻っていく村田の背中を見送った視線を
名倉はふと傍らのゆうきの方へを向ける。
するとゆうきもまた名倉の方を見上げていたようで、二人の視線は見事に鉢合った。
片や全国区の看板番組持ち芸人、片や事務所ライブの若手コーナーで藻掻いている無名芸人。
たとえ、村田がその間を介していたとはいえ、本来ならこうして至近距離にいる事すら
畏れ多く緊張する相手を前にしていても、ゆうきは微塵も退こうとはしない。
いや、村田が自分の格好を忘れていたように、ゆうきもまた自分の立場という物を
しばし忘れていただけなのかも知れないけれど。
しかしそんなゆうきに対して、名倉も腹を立てるような事はしなかった。
「何か、言いたい事でもあるようやな。」
穏やかな口調のまま、ゆうきに問いかける。
「えと、あの・・・その、えぇとですね?」
その、どこか静かな水面を思わせる彼の纏う気配に、ゆうきの方が逆に戸惑った。
ギョロッとした目が数秒ほど泳いで。
「撃ったの・・・そう、あの時、『ゲーム』が始まったばかりの時に。僕らを撃ったのは・・・あなたですね?」
ゆうきが首を射抜かれた、あの瞬間。
あつしの口から放たれた叫びは 「まさか・・・ネプチューンの・・・名倉っ!」 。
敬称を付ける余裕もない、反射的なその言葉がもしも真実だとすれば。
ワタワタとしつつも告げるゆうきの言葉に、名倉は小さく肩を竦めて見せた。
「やっぱり・・・気付いとったんか。」
ふぅと深く息を吐きながらの名倉の呟きに、今度はゆうきの表情が強張る。
「せや、その通りや。あの時お前らを射ったのは・・・間違いなく、俺や。」
『ゲーム』が開始した直後、与えられた弓を使いこなすために、名倉は見知らぬ若手芸人を標的にして
その試射を行っていた。
数多くの逃げまどう芸人達の中で、ふと彼の目を引いたのはあつしの金髪。
そこで動く的を狙う練習台として、名倉は走る二人に照準を定めて矢を射ったのだ。
見事にゆうきの首に矢が命中しても、名倉には喜びこそ感じても罪悪感はまったくなかった。
自分が生きるために必死だった事が、彼の常識的な判断を鈍らせていたのだろう。
「・・・今は、ホンマに悪い事をしたと思ってる。」
神妙な表情で一人呟く名倉をゆうきは黙って見上げる。
気を失って倒れていた村田を引きずって街中を歩いていた最中に、彼と出会った瞬間。
ゆうきの首を貫く矢を見た名倉の表情が、一瞬だけハッと変わった事に彼は気付いていた。
目の前の芸人が“自転車こぐよのゆうき”である事は知らずとも、
かつて自分が射殺した筈の人間である事は覚えていたようで。
・・・何故、この状態でもなお生きているのか。
それはゆうき自身が知りたい所ではあるけれども。
この驚きと恐怖もまた、名倉に二人を助けさせるキッカケとなったのである。
「・・・・・・・・・。」
どう言葉をついで良いのかわからなくなり、ゆうきはただただ黙って名倉を見上げ続けた。
こんな状況でも名倉から発せられるスターのオーラはひしひしとゆうきに伝わってきたけれど
彼がそれに圧倒される事なく居られるのは、加害者と被害者という構図がそこに存在しているからだろうか。
いや、そんな物などこの『ゲーム』の中ではナンセンスの一言でしかない訳だけれど。
「っと、お待たせ・・・・・・って、どないしたん?」
奥からだぼっとした長袖のシャツを着込んで戻ってきた村田が、無言で見つめ合う二人の様子に目を丸くする。
「お前ら・・・緊張のしすぎでおかしぃなったんか?」
何かキモイ空気漂っとったで、と一歩軽く後ずさって続けて問いかける村田に、名倉は彼の方を向いて苦笑した。
「・・・ンな事ないわ。」
まぁ、とっくにおかしぃなってるかも知れへんけど。
小さく付け加え、名倉は腰のベルトから下げている二本の刀の内、鞘に収まらずに剥き出しになった方の
刀の柄を握ってしゅっと引き抜いた。
日の光を受けてキラリと刀身が輝く。
眩さに目を細める村田に、名倉は刀をそっと差し出した。
「それじゃ、返すで。」
そんな名倉の言葉と共に村田が受け取ったのは刃のない、模造刀。佐野から渡された、彼の武器。
桶田からは計画を受け継ぎ、佐野からは武器を渡され、松丘からは・・・まぁ何か預かってたのかも知れないけれど。
とにかく手に感じる重みに、色々な人間から様々なモノを託されて自分はここに立っている・・・
そんな意識が村田の中で再確認された。
「せや、その・・・刀な。」
思わずジッと刀に見入る村田に、名倉が自らの刀を鞘から抜き出しながら声を掛ける。
「ちぃとこれも見てみ。ほら、似とるやろ。」
こちらは村田の物と違って刃を有する本物の刀。
無造作にそれが村田へと差し出される様子に一瞬ゆうきは肝を冷やすけれど。
もちろん名倉に村田を斬ろうという意志はなく、村田も素直に刀に目をやった。
間近で見る真の日本刀は村田の持つそれにはない、どこか凛とした気配を漂わせている。
そういえば、昔。ネタ見せにわざわざ家にあったという日本刀と武者鎧を持ち出してきた者が居て。
その時に見せて貰った刀からも、同じ様な生半可な気持ちでは触れてはならないような気品を感じたモノだった。
「・・・・・・・・・。」
そんな過去の記憶に連動するように、その刀を持ちだしてきた者が今も無事なのか、村田は不意に不安になる。
今は本職を持ち、芸人を生業としては居ないが、彼は時に人の前に立つ事がある。
『ゲーム』から彼は逃れられたのか。それとも、この島のどこかで闘っているのだろうか。
「多分・・・それな、こいつの・・・正宗のレプリカやで。」
瞬時に思考が綴られ、言葉を失う村田に名倉はそんな彼の内面など知らずに自らの言葉を紡ぐ。
そう言われてみれば、村田の持つ刀と名倉の持つ刀はサイズも刃の模様も似ているように思える。
しかし日本刀なんてどれも一緒なんちゃうん? 刀から名倉の顔に視線を移し、そう言いかけた村田の口は、
名倉の真剣な表情によって閉ざされた。
「泰造を狂わせたあの刀が・・・村正が悲劇と混乱を生み出す刀やったら、こっちは混沌から活路を斬り拓く刀や。」
どこか自らに言い聞かせるような調子で、名倉は極めて真面目に村田に告げる。
「何か似ていると思わへんか? ツッコミと。」
「・・・何とも、俺には答えようがないけどな。」
今の俺はピン芸人なんやし、とわずかに憮然として村田は名倉に答えた。
「ただ、こんな状況から立て直して綺麗にオチまで持っていくのは・・・結構難儀しそうやな。」
「せやけど、やらなアカンねん。」
「・・・・・・ですよね。」
刀を鞘に収め、名倉は真摯に村田に答える。
それに同意するかのようにゆうきもか細く口を開き、その響きに名倉と村田は驚いたようにゆうきの方を見た。
ぽつりと洩らした一言に二人が揃って自分に注目する様に、逆にゆうきは思いっきりたじろぐ。
放っておいたら思わず尻餅を付いてしまいそうなゆうきに、先に村田が声を掛けた。
「お前は、俺と一緒に来たらアカン。ここに残りや。」
有無を言わせない、助言というよりも指示・・・いや、命令にも似た一言に、ゆうきは目を見開く。
「悪いけど・・・お前の首、今は何ともないかも知れへんけど・・・いつどうなるかわからんし。」
絶対に迎えに戻ってくるから、頼むから今はここから動かんといて?
鋭いキッパリとした調子から、そんな懇願するような口調に転じ、村田はゆうきに頼む。
「でも・・・・・・。」
幾ら相手が村田であっても、即座に同意するのは躊躇われ、ゆうきは不安げに村田の顔を見やった。
確かに彼の首には名倉の射った矢が今もなお突き刺さっている。
とはいえ、村田だって体調が万全という訳ではない。
いついかなる状況に転じるかわからないのは彼だって同じであろう。
けれど。
村田はできる事なら一人で背負いたかった。
これから挑む戦いの幸も不幸も、すべて自分の責任において。
ウケるもスベるも己次第・・・そんなピン芸と並べて語る訳にはいかない事柄だろうけれど。
これ以上、誰かの笑顔を思い出しては後悔などしたくない。
「・・・大丈夫、や。確かに俺じゃ頼りないやろけど、任せといて。」
ふわりと痛々しげながらも笑みを浮かべた村田に、ゆうきはそれ以上反論する事は出来なかった。
躊躇いながらこくりと頷くと、村田の手が伸びてきて、彼の汗や埃でクシャクシャになった頭を撫でる。
「・・・スマンな。島を出られたら・・・絶対呑みに連れて行ったるから。」
その時は、いくつ舟盛り頼んだかて・・・余った刺身を頭に盛られたかて怒ったりせぇへんから。
いつぞやかに珍しく酔い潰れた村田にゆうき達が仕掛けた悪戯を引き合いに出し、
ゆうきに告げる村田の口振りは驚くほど優しい。
それが尚更ゆうきの不安を煽る事になるとわかっていても、咄嗟に他の良い方法が思いつかない以上
村田にはそうするしかなく。
「・・・・・・必ず、ですよ?」
「・・・あぁ。」
恐る恐る重ねて確認するゆうきに村田は頷いた。
その傍らで、名倉がふと表情を翳らせていた事など彼らには知る由もなかっただろう。
『戻ってきますよね?』
『大丈夫。絶対戻ってくる。』
名倉の脳裏を掠めたのは、『ゲーム』が始まったばかりの頃のそんな会話。
言葉を交わした相手はアクシャンの安井 順平。
彼は村正によって正気を失った原田とそして名倉自らの不注意によって傷付き、
安全を確保するために名倉が民家に残してきたにもかかわらず、後にその死亡が確認されてしまっていた。
もしかしたら、名倉の知らない所で彼の傷が急に悪化したのかも知れない。
それとも彼を・・・いや、彼らを待つ間に他の芸人に殺されたのかも知れない。
場合によっては彼が名倉の指示を無視して民家から出歩いた可能性も無視できない。
しかし結局その場に居合わせられなかったのだ。彼の死の原因について考える事は無駄な事なのだろう。
もしかしたら、それが名倉が安井を側に連れていれば防げたかもしれないモノであったとしても。
いや、それこそ考えるのは不毛な事柄だろう。
この『ゲーム』の中での選択に、正解も不正解もない。結果がすべてであるのだから。
「・・・名倉さん?」
ふと意識が思考にのめり込んでいたらしい。不安げに村田が呼ぶ声で名倉は我に返る。
「あ、あぁ・・・・・・。」
「ホンマに、ありがとう御座いました。」
ゆうきの説得を終えたらしい村田は軽く頭を下げ、それからゴソゴソとボトムのポケットを漁りだした。
すぐにスタンガンを取り出して、村田はそれを名倉の方へと差し出す。
まさかそこにスタンガンを隠しているとは思わなかったようで、名倉はにわかに表情を強張らせるけれど。
「・・・・・・・・・?」
「これを、首輪に当てて使って下さい。そうしたら首輪は外れますから。」
桶田はそうやって首輪を外してました。まぁ、信用できへんのやったらそれで良いんですけど。
言いながら村田は名倉にスタンガンを握らせて、それからクルッと彼に背を向けた。
「それじゃ・・・行ってきますわ。 願わくば、次は・・・島の外で!」
不自然なほど明るく村田は言い残し、模造刀を右手に民家を駆け出していく。
「気を付けてな。」そう名倉は村田の後ろ姿へと呼び掛けようとしたけれど、
外に向かって大声を張り上げるのはこの状況下では好ましい行動ではない。
それゆえ口に出さずに名倉はその言葉を心で叫び、最後に彼に握らされたスタンガンのスイッチを入れる。
本来ならば、スタンガンを爆弾が仕込まれている首輪に当てるなどと言う行為など出来るはずもないし
他の人間の発言ならば周到な作戦かなどと疑う所であろうが、名倉は素直に火花を放つ電極を首輪に押し当てた。
バチッと静電気が走る時の何倍もの大きな音が上がり、首輪に紫色の光が走る。
「くっ・・・・・・!」
「・・・な・・・っ!」
予想はしていたモノの、余りの衝撃の大きさに名倉とゆうきの口からそれぞれ驚愕の叫びが漏れた。
そしてその次の瞬間にはスタンガンからも首輪からも光は消える。
「・・・・・・・・・。」
途端に喉への圧迫感が薄れたような感覚を覚え、名倉は首輪に指を掛けた。
すると、今までなら何も起こらなかった首輪からガシャリと金属同士が触れ合う音が上がり、
続いてスルリと首輪は名倉の首元から外れ、その手に握られるばかりとなる。
「本当に・・・外れた・・・。」
余りに僅かな時間での出来事に、まだ状況を把握しきれていないような呆然とした呟きをゆうきは洩らした。
「こんなに簡単に外れるんなら、やっぱり・・・もしかしたら・・・」
「せやけど・・・村田の奴、自分の首輪・・・外してないんとちゃうのか・・・?」
これでちょうどバッテリーの残量が空になったらしい。
何度スイッチを押しても反応一つ起こさないスタンガンを手に、名倉はポツリと呟いていた。
よほど特殊な電池を使ってさえいなければ、街中の電気や民家でバッテリーの補充は出来るだろうが。
村田の首輪が一度外された後に無理矢理はめ直されたモノであるようには彼には思えなかった。
「おい、ゆうきとか言ぅた・・・そこのちっちゃいの!」
すかさず路上からクルッとゆうきの方を向き、名倉は声を上げる。
「俺が許す、今からあいつを追っかけて来ぃ!」
自分で何とかすると口にしつつも、バッテリーの残量の少ないスタンガンで自分の首輪を外さず
名倉の首輪を外す事を選択する。どこかで名倉が事を成す事を期待している・・・
それは村田の中で覚悟が固まりきっていないが故の現象なのだろう。
けれど、そんな生半可な状態のままでは、近い内に彼は密かに彼自身が期待していた通りに死ぬ事となる。
「でも・・・村田さんが・・・。」
何げにぞんざいな呼ばれ方をした事はともかくとして、ゆうきは名倉の急な指示にしり込みした。
彼の気質である。行ったら行ったですぐ戻れと言い張り、同行を許してなどくれないだろう。
「その時は言うたったらエエんや、芸人への『来るな』は『来い』って意味や、と。」
名倉はキッパリと言い放って、それがわからんお前が間違っとるとな、と付け足した。
まさかこんな所で芸人の御約束を口にされるとは思わなかったが、確かにそれも一理あるように思えて
ゆうきは表情をパァッと変化させる。
「確かにお前がここを出る事で・・・危険は増すかもしれへん。でも、後悔はしたくないやろ?」
追い打ちのように掛けられる名倉の言葉が、村田の説得を一度は受け入れたゆうきの心を動かしていく。
思わず数歩、村田が出て行った方向へ歩を進めてから、彼はふと立ち止まって名倉を見上げた。
「ありがとうございます。」
クシャリと顔を歪めて微笑み、ゆうきは告げた。
「名倉さんの事、憎くないって言ったら嘘になるし、僕も正直そこまで人間出来てないですけど。」
・・・外でまた逢えたら、その時にはあなたを尊敬する芸人って言って回りますよ。
ゆうきの声はか細く、首を貫く矢は痛々しげではあるけれど。
口調ははっきりとしており、大粒の瞳もまだ力を失ってはいない。
「・・・・・・・・・。」
それは、赦しと受け取ってエエのやろか?
思わず口に出しかけた言葉を飲み込み、名倉はゆうきへ頷いて返した。
まだ『ゲーム』は終わってはいない。
確かに殺し合いの熱病に浮かされた芸人達も徐々に目を覚ましつつあるけれど。
本当に赦しを必要とするのは、『ゲーム』が終わってから・・・そう、
芸人達がこの島の外に出て、それぞれの現実と向き合う事になってからだろう。
それでも緊張と畏怖だけでなく、僅かに敬意と感謝の混じったゆうきの眼差しは、名倉の心を少しだけ軽くする。
「・・・ありがとな。」
口から自然と漏れた言葉は、彼自身が驚くほど素直な響きを持っていた。
「外で、逢おな!」
【ネプ・名倉、村田渚&自転車こぐよ・ゆうき組と分離】
>>538でのアンカーは
>>465-472 が正しい物です。
あと、今回で自分の話での名倉さんの役目は終わりなので、
名倉さんのキープを解除します。
ついでに現実世界では自転車こぐよは解散してしまってまして。
ゆうきさんは新しい相方さんとヒデヨシというコンビで再スタートを切っています。
ですがこの話の中では自転車こぐよのままで、もう少しだけ頑張って貰う予定ですので
どうか御了承下さい。
548 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/05/07 12:58
昔めちゃイケでお笑いバトルロワイアルって企画あったな
549 :
マイナスドライ:04/05/08 23:00
どうも。ずっと読み手だった奴です。
かなり前のですが、ニチョケンの集団催眠話書いてもいいですか?
つっても、そんな大層なもんは書けませんが……。
誰か書かれる予定、或いは別の人間に書かれるのが嫌だった場合、言ってくだされば止めます。
>>549 書いて書いてください。小堀を格好よく(笑い)
そうそう、小堀を格好良くw
552 :
マイナスドライ:04/05/13 16:48
それでは書かせていただきますニチョケン集団催眠編。
格好良いか否かはともかくとして、小堀コール(笑)にお答えして、当初より小堀さんの出番多めに致しました。いえ、元々多かったんですが……。
拙作ではありますが、よろしければお付き合いください。
いつここ催眠実験編を構想中に思ったんだが、
もし二人の立場が逆だったら、山田さんは菊池さんを殺したんだろうか。
早くミテミタイヨードキドキ なんだかんだでニチョケンオタな俺…
いつここ立場逆なら>>
殺したんじゃね?感性似てるって言うし ただ絵とかそういうの繋げていくと
菊池さんが殺す方が綺麗で泣ける展開になったのでコレで正解だと思われ
なんか偉そうデスマソ なんか大間違いもしてたらスマソ なんだかんだでシッタカです
大事な人を誰にも殺させたくない。でも守りきれない自分も見たくない。
それならいっそ――というのが菊池さんの結論。
しかし山田さんが同じ結論に達するかというと、どうなんだろうな、
というのが553の疑問だったんです。
思いついたまま書き込んだんで、言葉足らずになりました。
スマヌ。
立場が逆だったら
誰かに殺られるのならば自分の手でと思うかもしれない
でもそのあと自害するだろうか?
もしくは少々腕に覚えがある分
不利な状況になったとしても行けるとこまで一緒に行こうと思うかもしれない
ただその場合自分を守ろうとしてくれている山田を見て
「自分のために山田くんが他の誰かに殺されるのは耐えられない」
→結局菊地が山田を刺す
いろいろ考えてみたものの最後は本編通りにたどり着くんですよね
難しい
557 :
マイナスドライ:04/05/15 21:21
前回の書き込みのままずっと何でか書き込めませんでした……。
気を取り直して、以下から集団催眠編を。
558 :
マイナスドライ:04/05/15 21:22
「おっ、やっと起きたわうちの相方。なんや小堀、お前長いこと生きとったなぁ」
耳に入ったその台詞が、最初はまったく理解できなかった。
ただ、死んだはずの相方が隣でげらげらと笑っていたので、思わず呟いた。
「……おお、幽霊」
「ちゃうわ」
渡されたワッペンを見つめ、小堀は顔をしかめた。去っていく白衣の後姿を睨みながら、ぼそりと呟く。
「なんでオレんとこはおっさんやねん」
「ええがな別に」
相方が呆れたように笑う。
「別にやあらへん。起きてすぐにマスクのおっさんはないわ。ほら向こう、あいつんとこは女がワッペン渡しとるやないか」
「ええやんけ、そんなもん。それに起きてすぐ会うたんならオレや」
「お前幽霊やん」
「まだ言うとんか」
ええからワッペンつけろや、と修士が安全ピンを渡してくる。どうやら服に直接留めなければいけないらしい。銀色のそれを見て少し気が抜けた。安全。安全ピン。
なにが安全じゃ、と胸中で毒づいてから、ここは確かに安全なのだと思い直す。食事を取りに行った、死んだはずの相方。騒々しい体育館。また一人と起き上がる芸人。その度に泣き声まじりの歓声が上がり、白衣がワッペンを持って近づく。
まさに阿鼻叫喚の地獄絵図といった、あの光景がいまはこんなにも遠い。引き金を引いたはずの自分の手はいま、震えることもなくワッペンをつけている。人を殺した感触はとうに薄れ、限界を超えていた筈の緊張はぶつりと途切れていた。
あれがすべて意図的な夢だったなんて、悪趣味もいいとこだ。
「集団催眠だったんかーい、つって」
一人で突っ込んでると、ちょうど二人分のパンと缶ビールを持ってきた修士が怪訝そうな顔をする。
「何やソレ」
「オチや」
「アホか」
一言で一蹴される。
缶ビールとパンを受け取って、とりあえずどちらにも一口つけた。どれだけ寝ていたのかはわからないが、どうやら空っぽだったらしい胃袋にアルコールが牙を剥く。
「ほんま、悪趣味やでー」
「ワッペンか?」
「アホか、集団催眠や」
559 :
マイナスドライ:04/05/15 21:25
そう告げると、修士はビールを飲みながら眉をひそめた。
「ええがな、夢やったらそれで」
そういう見方もある。が。
「なんぼ夢でも、ええことあらへんわ」
苦々しく吐き捨てる。ふいに小堀は気づいた。
「……ちょっと待てや、礼二さんは? 剛さんは起きてはるんか」
「剛さんはまだや」
小堀は立ち上がった。
「行ってくる」
「ちょ、待てや。どこ行くん」
慌てたような修士の声に足を止める。
「決まっとる、剛さん起こすんや。……こんなもん、いくら夢でも続けとったらアカン」
「おいちょっ……待てって、お前。落ち着けや。そう簡単に起こせたらオレらいつまでもここにおらんがな。こんな……胸クソ悪い」
辺りを見回して、修士は思い切り顔をゆがめる。
そのときようやく、この相方もただ納得しているわけではないのだと気づいた。だが、そう……駄々をこねたってどうにもならないのだ。泣いたって喚いたって、きっとごめんのごの字さえ貰えはしないだろう。子供ではないのだから。
だったら、少しでも前向きに捉えた方がいい。少なくとも誰も死んではいなかったのだから、そのことを喜ぶべきだ。
小堀は座りなおして、とりあえずパンをかじった。修士も黙って缶ビールを呷る。年を取ると臆病になるのだと改めて実感した。
小堀はふいに、また口を開いた。
「集団催眠だったんかーい、つって」
まったく同じ台詞だったが、相方からの返事は違った。
「もうエエわ」
「ありがとうございま……」
「なに漫才にしようとしてんねん」
下げた頭を無理やり引っ張られる。小堀は短い髪をがりがりと掻き毟った。
「お前が先にノってきたんやんけ」
「お前がさっきこれがオチやー言うたから、相方として相手してやったんやないか」
「ほんならええやんけ」
顔をしかめてみせるが、さきほどの台詞を思い出してなんだか小堀は浮かれた。
560 :
マイナスドライ:04/05/15 21:27
「……なんや、えろう久しぶりな気ぃするわ、漫才」
「そんなもん、戻ったらまた百分すんで、きっと」
口調は呆れたようだが、あきらかに相方の顔にも明かりがさす。どちらともなく顔をあわせて、にやり、と笑んだ。
「ええなぁ」
「ま、早く復帰するにこしたことはないわ」
修士の台詞に頷きながら、
「まあそれもやけどな、ほんでもまあ、最初にするんは決まってるやろ」
「うん?」
「寝てる川島の顔に落書きや」
広い体育館のどこにいるのかは知らないが、とにかく寝ている男たちを適当にさして言うと、相方は今度こそ呆れ顔をつくった。
「修学旅行か。嫁もおんのにいつまで学生気分やねん」
「ええがなちょっとぐらい。瞼の上に目描くねん。寝てんのに目ぇ開いてんねや、おっもろいでー。ああそうや修士お前、絵うまいんやから描いてくれや」
「イヤじゃボケ。ちっとはじっとしとかんかい。つーかお前、そんなん言うなら――」
そこで早口で捲し立てていた相方の言葉が急に途絶え、しばらく迷うように間をとってから、勢いと声を殺して、続けた。
「自分がまず大勢に謝り行ってこいや、このボケが」
「…………」
咄嗟に返事を返せなかったのは、その言葉にショックを受けたとか、そういうことではなく。本当に夢であってよかったという脱力感と、そして自分がしたことの残酷さにようやく気づいたからだった。
「……知ってたんか」
「先に起きた奴らが、文句言いながら一発ずつお前のこと蹴ってったわ」
561 :
マイナスドライ:04/05/15 21:31
そういえば妙に腹が痛い。
「なんで止めてくれへんねん」
「しゃーないやろお前が悪いねんから。むしろそんぐらいで済んでよかったわ」
「…………」
「……後で謝ってこいや」
「……おう」
頷くと、少し首を傾け、深い息をつきながら修士はしみじみと言った。
「ホンマ、夢でよかったわ」
「せやんなぁ」
再び頷く。
修士は缶ビールをぐいと呷って、辛気臭い空気を吹き飛ばすように、天井に向かって叫んだ。
「ビールがうまいんは、平和な証拠や!」
同じように、小堀も無機質な天井を仰ぐ。
「せや、発泡酒じゃアカンねんで!」
「ビールや、ビール!」
「あっ、アカン! 空になっとるわ……」
やけに軽い缶に口をへの字に曲げ、小堀は再び立ち上がる。今度は修士は止めてこなかった。小堀は空き缶を二本両手に下げて、相方を見下ろす。
「どこやねん、ビール」
「なんやその言い方。食堂は向こうや。ついでにつまみも持ってこい」
修士が指差した方は、体育館の唯一の出入り口だった。後は行けばわかる、と無責任に言われ、仕方なく歩き出す。途中、寝ている何人かを軽く踏んだのには心の中だけで謝った。
「ええ響きやわ食堂。学生時代思い出すなぁ」
「だからって落書きはすんなよー!」
ぼそりと呟いたつもりだったのに遠くから相方が水を差してきて、驚いた小堀は危うく転びそうになった。
562 :
マイナスドライ:04/05/15 21:32
体育館の外に出れば、以外と起きた人間が多いことに気がついた。特に食堂入り口前は人込みで足取りが鈍くなるほどだ。といっても、食堂があまり広くないのもあるだろうが。
(知っとる奴もおるわ……)
つまりこれだけの人間があの悪夢の中で死んだのだ。自分もその中の一人とはいえ、いままでと変わりない姿になぜか薄寒さを感じる。
缶ビールは容易く手に入ったものの、つまみと言えるようなものは大してなかった。考えてみればコンビニとは違うのだ。あの給食当番姿から考えれば、ビールがあっただけで奇跡的なものだろう。仕方なくまたパンを買う。
体育館に戻れば、また起きている人間が増えていた。例え夢だろうが彼らが一度殺された――或いは自殺した人間であることを思うと、それが嬉しいことなのか、それとも悲しいことなのか、もうよくわからなくなってくる。
そういえば起きてから相方と白衣のおっさん以外とは一言も話していないことに気がついて、小堀は辺りを見回した。誰とでもいいが、なんとなく馬鹿な話をしたい、そんな気分だった。
ふと、大きな背中を見つける。
(――礼二さんや)
声をかけようと、そちらに足を向ける。が。
「!」
座っている背中越しにまだ寝ている男を見つけて足を止めた。それは、小堀自身が逃がし、『向こう』で生き延びさせた男だった。
『向こう』で生き延びさせたために、自分の横で弟が目覚めを待っていることも知らず、復讐にかけずり回っている男だった。
その途端、あの瞬間の血の臭いや引き金の感触や麻痺した神経が、一気に全身に蘇った。あまりにも鮮明な死の空気に一瞬だけ鳥肌が立ち、すぐに余韻すら残さずかき消える。
瞬く間にまた無機質な体育館が視界に入った。
だが、それでも足はそれ以上男のところへ進もうとしない。
563 :
マイナスドライ:04/05/15 21:33
それはある意味、殺すことよりも死ぬことよりも、怖かった。
良かれと思って――ただ良かれと思って命を賭してまでしたことが、こんな風に地獄を長引かせる結果になった。
それに気づいた礼二が、否、或いは起きてそのことに気づいた剛が、もし自分を責めてきても。何も言い返すことはできない。
拒絶されることへの恐怖が、小堀の足を凍らせていた。
かといって踵を返す気にもなれず、しばらくその背中を眺めていると――
くるりと、目を逸らす暇さえなく、礼二が振り返った。
不思議そうな顔をして座ったまま小堀を見上げる。
「――なんやお前」
それに続く言葉を予想して彼は身構えた。
が。
言葉は続かなかった。礼二はそれきり堪えかねたというように吹き出すと、腹を抱えて笑い出したからだ。
ひいひいと息さえ出来ず笑い続ける先輩の姿に、小堀は驚きより先に腹が立ったが、さすがに黙って笑いの発作が収まるのを待っていた。まさかいまさら、自分の顔が面白いから笑ったというわけではないだろうが。
憮然として立ち尽くしていると、ようやく息を整えた礼二がそれでも笑みを崩せないまま、手招きする。
「おう、来いや小堀。なんやお前あのあとすぐ死んでもうたんやなァ」
「はあ、まあ……」
頷いて。
ある言葉にひっかっかる。
「あのあと……?」
なんのことかと詰め寄ろうとした矢先、
「決まっとるがな、ねちっこい性格の小堀くん。お前めっちゃ男前やったでぇ!」
再び爆笑した礼二の笑い声に包まれながら、動揺した小堀は今度こそ足をもつれさせて盛大に転んだ。
視界のどこかで、持っていたはずの缶ビールが天井高く舞い上がるのを見た、気がする。
564 :
マイナスドライ:04/05/15 21:34
「なんやお前、えろーからかわれたらしいなァ。こっちまで礼二さんの笑い声聞こえとったわ」
という相方の台詞に、返す言葉は見つからなかった。
あれから二十分、話したというよりは延々と一方的に笑われた。
礼二から聞いた話によれば、どうやら自分の『向こう』での最期の叫びは、こちらでは寝言扱いになったらしい。これは猛烈に恥ずかしかった。思わず缶ビールを念入りにシェイクしてしまう。
もっとも、どうやら修士は食堂に行っていて聞いていなかったらしい。それが唯一の救いである。
あんな状況でなければ、あんな台詞、恥ずかしくて言えるものか。にやにや笑って「男前やった」と返された日には、恥ずかしくて死んでしまうだろう。ついさきほど返されたばかりではあるが。
妙に気疲れして、それでもどこか清清しい気持ちを精一杯隠しながら、眉根をよせる。
「ばんばん肩叩かれたわ」
「ええってええって、元気な証拠や」
振りまくった缶ビールを相方に渡す。彼はそれに気づいたようだったが、ただ笑って受け取った。
つまみを挟んで、相方の向かいに腰を下ろした。
「ほんでも、確かに思ったより元気やった」
「そらそうやろ、実際はずっと寝とっただけやからな」
修士は味気のないパンを齧った。まだ缶ビールは開けない。
小堀も缶は腕組みをして、
「せやなぁ……まあ言うても、あんな夢やったらかえって疲れそうやけどな。ま、醒めない夢はないちゅーことやろ」
「うわ何言うてんの自分。くっさいわー」
相方は思い切り顔をしかめた。
「そういうんは鏡見てから言ったほうがエエで」
「ナニその言い草」
「本当のこと言うとるだけやがな」
ひとしきりくだらないことを言って、何事もなく笑いながら。
「よっしゃ、乾杯や」
どちらともなく言い出した台詞をきっかけに、とりあえずはお互いの、そして先輩、後輩の無事を祝して、二人は二本目の缶ビールを勢いよく開けた。
何度も振られたスチール缶は、盛大に噴出した白い泡を撒き散らしながら、満たされた空気の中で笑うように揺れた。
565 :
マイナスドライ:04/05/15 21:37
マジで無駄に長くなりましたが、以上でニチョケン集団催眠編終わりです。
勝手に礼二さんを出してしまってスイマセン。
あと勝手にゼッケンやら体育館やらに色々細かい設定つけてスイマセン。
以後書く際に、ばっちり無視してくださって結構です。
今回初めて参加しましたが、もしイメージを崩してしまったらごめんなさい。
だらだらしていて駄目な文章ではありますが、書いていて楽しかったです。
それでは読み手に戻ります。失礼しました。
いつの間にか鯖移転があったんですね
そして小堀が格好イイ(・∀・)!!
素敵です大好きです感服です
機会があったら是非是非また何か書いて欲しいです
マイナスドライさん乙!!
>マイナスドライ氏
乙です。
面白かった!
本当にニチョがやりとりしてる姿が目に浮かぶようでした。
小堀カコイかったです(w
お久しぶりです。そして書き手さんの皆さん、乙です。
みなさん・・・上手です。ますます面白くなってきましたね。
私も久しぶりにバトロワを保存してあるワードを起動したんですが
・・・・進展ありましぇん・・・。それでも、近日うp予定です。(´・ω・`)
age
572 :
マイナスドライ:04/05/26 22:02
感想ありがとうございます。
初めてで不安だったので、楽しんでいただけたようで嬉しいです。
妙な間違いに気づきましたので、この場で訂正します。
>>564 小堀も缶は腕組みをして
→小堀も腕組みをして
他にもおかしい日本語が多々あるかもしれません……。
できれば多少のミスは笑って流してやってください。
ホシュ
575 :
名無しさん:04/06/01 17:57
若手コンビを4組くらい使って書きたいシナリオはあるんですが、
喋り方とかキャラとかを良く知ってる芸人がいないんですよねー。
絵的にめぼしいのは何組かいるんですが…。
最低限、標準語か関西弁かそれ以外か、相方同士の呼び方はどうか。
それだけ分かれば書けそうではあるんですけど、
やっぱりファン歴の長い方にまかせといた方が良いんでしょうか?
基本的にテレビで1、2回漫才やコント見ただけで、
本人達が喋ってるの聞いたことなかったりするんですが(ぇ
>>575 なんか、他の方々はどう思うのか知らないが
漏れとしてはあなたにはあんまり書いて欲しくないよ・・・。
あはは。やっぱそうですよねー。
まぁ、最低限の事分かっててもどうせ今までの職人さんみたいに
各々のエピソードを盛り込んだ泣かせる話は書けないですし。
よく知る芸人さん達はもう既出だったり、専属の書き手さんがいたり。
シナリオは何処か他板のBR企画に持ってこうかな(´・ω・`)
それじゃぁこのまま読者してます。職人さん達頑張ってー。
>>575 よく知っている芸人がいないなら、
芸人を知ることから始めたらいいよ。
それが嫌ならアウト
575は悪い人ではなさそうだが、対象への愛がなさ過ぎるw
1.2度見ただけで絵ヅラだけで選んで安易に公表しようとするのは
パロディとはいえ愛を持って書いてる書き手さんに失礼だとオモ
>どうせ今までの職人さんみたいに
>各々のエピソードを盛り込んだ泣かせる話は書けないですし。
厳しい事言うようだけど、こういう同情を誘うような書き方は嫌がられるよ。
どういうつもりで書いたか知らないけど、文章力を競う場じゃないんだし
何か根本的な所で間違ってる気がすると言ってみるテスト
大体ここで駄目なら速攻他板のBR企画に持ってくというのはどういう事かと。
つまり自分の書きたいシチュに適当に当てはまれば当てはめる人物は誰でもいいのかと。
誰でもいいようなポジションに当てはめられた、人物を駒としてしか扱っていない小説なんて
この板住人だろうが他の板住人だろうが誰も読みたくなかろうて。
その芸人が好きだったら、ずっと見てるうちに
自然と言葉づかいや人格や交友関係やその間柄を覚えるし
その上で、この人だったらどうするかと膨らませつつ書けば
自然とそれらしい話(575の言う、
各々のエピソードを盛り込んだ泣かせる話)は出来上がるはず。
だから先走る前にまず芸人本人の人格に興味を持って下さいよ575さん。
通過@19さん、ぜひお願いします
読みたいです!
本人達のキャラ完全に無視して書いてる人も、たーまにいるけどねw
せっかくシナリオに自信あるなら、本人達をもうちょっと研究してみては
>>575
おそらく、文章的に魅せることができるならソレはソレでいいと
思うが、ここを読んでる人はやはり芸人を知ってる人ならではの
文章を求めてるし、作家さんたちも随所随所にそういうのを
ちりばめてるから、ただ文章が良くてもここの読み手は満足しな
いような・・・
あとファン歴が長いからいいんじゃなくって、登場人物に対して
の愛情がある方がいいと思うテスト
583 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/06/09 18:55
保守
>>538-546 の続き
未だに火の手を広げながら煙を上げる山から吹き下りてくる風と、
海の方角から潮の匂いを纏いながら吹き抜けてくる風とが、活気を失った路上で入り交じる。
耳を澄ませば、風の合間から微かな呻り声が聞こえそうな錯覚を覚えながら
村田は一人、路肩に倒れた17アイスの自動販売機に腰掛けて、海の見える方角…南を眺めていた。
「また、一人になってしもたか。」
口には出さずに呟いて、村田は軽く肩を竦める。
「…まあもう一人も慣れっこや。」
しかし、今度は声に出して呟くその口調や、どこかサバサバしたようにも見える彼の表情は、
かつて森の中で木の根元に座り、心細さを紛らわすために一組のトランプを弄んでいた時の面持ちとは別人のよう。
それもその筈だろう。
同じ一人で行動していても、あの時と違って今の村田には自分を支えるものの存在や、
自分がこれから何を成さねばならないのかが、しっかりと認識できているのだから。
しかし、今日の朝がたから食事はおろか、気を失う時以外にろくに休息を取っていない為に、
徹夜麻雀明けの時以上に消耗が著しい今の村田の身体の状態は、彼の意志とは反比例するかのようで。
名倉達と居たあの民家から出て1kmも歩かない内に、村田としては不本意ながら…ではあろうが、
こうやって一旦休憩を取る事にせざるを得なかったのであった。
ズボンのポケットを探り、村田は色々動いていた内に歪んでしまったタバコのケースを引っぱり出すと、
残っていた最後の一本を口にくわえて火を付ける。
ケースが歪んだ時に巻き込まれてしまったのだろう。タバコはやや折れ曲がってしまっていたが
如何せん他には吸うタバコがないのだ。
もちろん、売店や自販機、それに民家を探せば出てくるかも知れないが…そこまでする余裕は村田にはない。
ここは不格好でも我慢するしかないだろう。
「……………。」
今もなお募るはやる気持ちを押さえ込むように、村田は肺の中の煙を深く吐き出した。
芸人達による物品の強奪…そして島を襲う地震によって、すっかりと生活感を失ってしまった風景の中で。
嗅覚に感じるヤニ臭さだけが、いつもと同じ日常の延長線上に自分は居るのだという事実を思い出させてくれる。
ネタを作ったり、ネタ見せに行ったり、誰かと呑んだり、バイトしたり、ライブに出たり。
そんな日常に帰るためには。もう少しだけ、あともう少しだけ村田は無茶をする必要があった。
『ゲーム』の運営者側の連中を迎えに来たヘリを強奪する…。
口ではサラリと言う事もできようが、桶田が考案した計画の最終段階、それは決して容易な物ではない。
しかし、最後の一人になるまで殺し合うという『ゲーム』の意図に反してなるべく多くの芸人達を
この『ゲーム』から脱出させる為には、それぐらいの事は為し得る必要はあるだろう。
それは、単純に『ゲーム』に乗って、優勝を目指す事よりも難しいに違いない。
けれど、村田はその道を往く事を決めたのだ。
それ故に、もうしばらくの間はどんなに身体が苦しくとも、弱音を吐く訳には行かなかった。
タバコの先端に着けた火は、いつの間にか折れ曲がった中程にまで達しようとしている。
名残を惜しむように最後にまた深く煙を吐き出して、村田はタバコを足元に投げ捨てた。
靴の裏で火を消すその様はマナーがなっていない事夥しいが、それはまたさておくとして。
空いた手で模造刀の柄を握りしめると、村田はゆっくりとその場に立ち上がろうとした。
貧血からだろうか、途端に眩暈を覚える村田は、蹌踉めきながらも何とか模造刀でバランスをとって大地に立つ。
全身が上げる悲鳴が逆に今にも途切れそうな村田の意識を持続させるという不思議を実感しながら、
大丈夫。村田はそう小さく口にして、目指す方向をどこか眩しそうに見やった。
彼は人を笑わせようとする事しかできないただの1人の芸人でしかない。
どんな危険にも真っ向から立ち向かっていける映画や漫画やゲームのヒーロー達とは違う。
けれど、時として芸人という生き物は彼ら以上の奇蹟を軽々と、そしてドラマティックに引き起こしてみせる。
大丈夫。もう一度確認するように村田は口にして、数mほど自販機から歩を進めた。
もしかしたら村田がここまで生きてこられたのも一つの奇蹟なのかも知れないけれど。
あともう一つ二つなら、どこかにそれを積み重ねる余地はあるに違いないし
それを成し遂げるのがまた芸人なのだから。
ふらつきながらも、自身で思っていた以上にはしっかりとした足どりで村田は道路の中程にまで歩み出た。
吹き抜ける潮風を全身で感じる、その最中で。
「…………っ?」
不意に村田の耳は、何かの音を拾い上げた。
風に歯向かうように北の方角から、空気とそれ以外の何かを伝わってそれは響く。
村田の眉がピクリと動いた。
「ゆう…き?」
呟くと同時に村田は咄嗟に北の方角…今まで彼が歩いてきた方を向く。
しかしそこには相変わらず無人の街並みが広がっているだけ。
「何が…何があったんや?」
村田が聞き取ったのは、確かにゆうきの口から発せられた音。
例えるならば、ゴッド・サイレン。まさしく神の声、しかしただの奇声。
とは言え、ゆうきの喉には矢が刺さっており、彼には大声を上げる事はできないはずだった。
それでも今もなお、確実に村田の耳には姿の見えないゆうきの声が届いている。
疲労による幻聴の線も考えてみるけれど、やはりそれとも違うように思え、思わず海に背を向けた、村田の視界の中に。
路地の物陰から、ゆうきの小さな姿が文字通り転がるようにして現れた。
ゆうきがどんな表情をしているのか、村田の位置からは確認する事はできない。
けれど、地面を這うようにしながら何とか立ち上がろうとするゆうきがふと村田の方に向けた目と
ゆうきの様子を見やる村田の視線とは、確実にぶつかっていた。
「・・・・・・・・・・・・っ!」
思わずゆうきの方へと数歩走り出しかけた村田へ、ゆうきは必死に首を横に振ってみせる。
・・・これは、来るなという意志表示?
自分はあの民家から出てきておいて、何故、そんな事を?
村田の脳裏に疑問が浮かぶけれど、ゆうきを追うようにして彼の視界の中に現れた
その男の姿、存在、発する気配が瞬時にその答えを示していた。
彼は立ち上がれないゆうきの背中を踏みつけて動きを封じ込み、ゆうきの首を貫く矢に手を掛ける。
グッとゆうきの頭部が引っ張り上げられるその様子に厭な予感を覚え、村田は叫ぶ。
「や・・・止めろっ!」
海から吹いてくる追い風に乗って、村田の叫びは彼の耳に届いたようだった。
彼がチラリと村田の方を見やり、口元を歪めて笑ってみせた・・・そう村田には見えた、その次の瞬間。
矢はゆうきの喉から強引に引き抜かれ、傷口から遠目でもはっきりとわかるほどに血が噴き出してゆく。
全身から血の気が引くような感覚と、血が煮えたぎるような感覚を同時に味わいながら
村田は唇をきつく噛みしめた。
互いの距離は、およそ10mほど。急いで背を向け離脱すれば、今ならまだ彼から逃げ切れるかも知れない。
ここは『ゲーム』からの脱出が、計画を実行する事が最重要項目。
変な事に首を突っ込んで、自分の身を危うくする必要はどこにもない。
けれど。村田の模造刀の柄を握る手に、自然と力がこもる。
険しい表情をその顔に浮かべながらも、臆す事なく村田は彼の方へと歩き出した。
たとえ再び彼の元から逃れたとしても、やはりいずれどこかで彼と顔を合わせる事になるだろう。
それに、『ゲーム』を破綻させるために他の芸人の力がいる村田にとって
『ゲーム』に則って芸人を殺していこうと行動する彼の存在は、厄介なんてレベルのモノではない。
ならば、まだ身体が自由に動かせる内に、これ以上の傷を負う前に。
戦うしかない。彼と・・・浜田 雅功と。
これがどれだけ無謀な判断であるかは、村田自身が一番良くわかっている。
もしかしたら、名倉が危惧したように村田の中で無意識の内に死を望む思考が働いたのかも知れない。
けれど、一度そうすると決めたからにはあとは後悔しないように胸を張るだけのこと。
一歩一歩と距離を詰めてくる村田に、浜田は薄笑いを浮かべたまま声を掛けた。
「・・・今度は逃げへんのか?」
「逃げた所で、限界があるやろ。」
開き直りの境地、とでも言うのだろうか。
あの高台で向かい合った時と同じく、浜田からは強い威圧感が発せられていたけれど
今度はそれに囚われる事なく受け流して、村田は応じる。
流れるように口をついた言葉に村田自身が驚くけれど、
よく考えればもっと面と向かい合うのに勇気を必要とする人を彼は知っているし
それに舞台に立つ時の、客を前にした時の緊張感に比べれば、まだ何て事はない。
高台で向かい合った時ほどの間合いで足を止め、静かに刀を・・・正宗を模した彼の武器を構える
村田の落ちつき払った姿に、浜田は軽く目を見開くようなリアクションを見せた。
あの時、この男は拳銃や玩具のバズーカといった隠し玉を見せたりはしたものの、
結局は浜田から辛うじて逃げ延びる事しかできなかったはず。
それが良くもまぁ、こうして平然としてリターンマッチを仕掛けようという気になれたのか。
「なかなかの阿呆のようやな。」
「・・・どうも。」
「ジブン、名前は?」
手に握っていた血に濡れた矢を無造作に足元に投げ捨て、浜田は村田に問う。
この短い間に彼の意識を変えるほどの出来事があったのか、それとも他に秘策でもあるのか。
まぁ、何にせよ目の前に現れたからには叩きつぶす、浜田とすればそれだけであるが。
「村田・・・渚。」
模造刀を両手で構えた際、左肩・・・浜田の投げたナイフが傷を作った箇所がズキッと痛んだ。
やはり傷口を塞いでいるだけでは限度があるという事だろうが、
かといって右腕一本で模造刀を振り回せるほど村田に腕力も体力も備わってはいない。
痛みが顔に出てくるのを何とか堪えながら、村田は答えた。
営業であまり自分の名前にピンときた客がいなさそうな場合に口にする、
フォークダンスDE成子坂ってコンビの云々といった追加説明はこの男には不要であろう。
それに、さすがに今はそれを口にする権利など村田にはないように彼自身も思えてならず、
自然と素っ気ない返答となった。
「ムラタナギサ、ねぇ。」
浜田は村田の言葉を軽くオウム返しすると、せや、と更に問いかける。
まだ仕込み刀を構えていない、比較的無防備と思われる浜田の格好であるが、
それでも隙がないように、安易に近づけないように感じられるのはやはり浜田の実戦経験の豊富さか。
「平井 堅の知り合いにそんな名前の奴がおったって話を聞いた気がしたけど・・・それが、ジブンか?」
「人違いやと思いますよ。」
答えて村田が軽く目線を伏せると、路上に横たわるゆうきの姿が自然と視界に入ってくる。
自らの血で作られた赤い水たまりの中で、藻掻くようにまだ小刻みに指先が動いているけれど
もうその命が事切れるのは時間の問題でしかないだろう。
「自分を助けようと努力してくれた人間を片っ端から何人も見殺しにしておいて・・・それでいて
本人はあなたを殺すだなんて無謀な事しようとしとる・・・そんな阿呆が天下の平井 堅の同級生な訳ないやろ。」
自嘲以外の何物でもないと言った吐き捨てるような調子で村田は言葉を続け、そして目線を元に戻した。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
しかし浜田を見据える村田の眼差しは、相変わらず意志を秘めたもの。
阿呆と自身を称しながらも、決してヤケクソになっているのではない事がその黒い瞳から伺えた。
スッと浜田の表情から余裕めいた笑みの要素が抜け落ちる。
そのままゆったりとした動作で仕込み刀を構えた、瞬間。
誰が合図した訳でもなかったが、二人は互いへ向かって踏み込み、斬りかかる。
刀と刀が真っ向から衝突する音が周囲の空気を震わせ、響き渡っていった。
何だかバトロワと言うよりも違う物が色々混じってる気がしなくもないですが、
次で成子坂編は完結です。
今までダラダラダラダラと申し訳ないですが、もう少しだけの辛抱ですので
どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
小蠅さん、お疲れです。
成子坂編とうとう完結ですね。
構想が最初に発表されたときから随分時が経ったことを考えると、
なんだか感無量です。
ラスト1回がんばって下さい。
>>517 続き
水口が大浦と中立と出会ってから2時間と15分という時間が経過していた。
気がつけばいつしか太陽は傾き、夕暮れへと変わっている。
大浦の「『アイツ』やったらきっと本坊さんの居場所知ってますよ」という言葉に
連れられ、3人がたどり着いたのは廃墟と称しても何の遜色もない寂れた建物だった。
老朽化で壁の一部が崩れ、剥き出しになった鉄骨が錆びて変色を繰り返している。
埃っぽい空気。鼻につくカビの臭い。薄い膜が張ったようなくすんだ視界。
朽ち果てた生活感。夕日によって朱色に染まり滲む廃墟同然の建築物。
雨上がりの夕暮れは必要以上に天も地も赤く染め、その情景は人に不安感と
気味の悪さを覚えさせるに十分で、水口も例にもれず一抹の不安を抱きながら
朱に歪む建物を見上げる。しかし小さくこぼれる溜息にどこか覚悟を
決めたような表情を浮かべると埃っぽく淀む建物の中へとゆっくりと足を踏み入れた。
「中立!お前、どこ行っててん!うわぁ〜…もう会えへん思たー、再会のブレーンバスター!」
「痛っ!なにすんねん、お前!……と怒ると見せかけて感動のラリアット!」
「痛い!痛い!ギブ!ギブ!ギブ……と見せかけて腕ひしぎ逆十字固め!」
「ぐふぉ、ちょう待てお前!うわっ、マジで痛い!マジで痛い!」
「またまた。演技うまいなぁ、お前は!」
「演技ちゃうわ、ボケぇ!どうしてくれんねん、お前!おい、マジで痛いやんけ!」
さて場面変わって……以上、けもの道二人の再会風景。
「相方の中村探してたら大浦と会うて、中村の居場所知ってるって言うから
連れて行ってもらってる途中やったんすよ」と言っていた中立の念願叶って
果たされたそれは感動とは程遠いものだったが、けもの道らしいと言えば
けもの道らしい再会だった。
そんな慌しい再会模様を傍目に水口はチラリと大浦の様子を窺う。
大浦はけもの道に目もくれず、心ここにあらずの落ち着かない様子で
膝を揺すっていた。ここに来るまで饒舌だった大浦はどうもこの建物に入ってから
口数がぐっと減って、どこかソワソワしているように見える。
水口は「大浦?」と声をかけた。虚ろな目でボヤーっと遠くを見ていた大浦は
その声で我に返ったように「えっ?あっ?なんですか?」と間の抜けた声を
出すと振り返る。
「大丈夫か?」
「どないしたんすか、いきなり?」
「いや、なんかボサーっとアホみたいな顔してたから。それよりお前、梶は?」
「さぁ?カヌーにでも乗って逃げてる途中ちゃいます?」
そう言うと大浦はたいして面白くもなさそうにヘラヘラと笑った。
しかし大浦のその調子のいい笑みに反して水口を直視する大浦の眼は
異様に鋭い眼光を放っていて、水口は一種の気まずさと居心地の悪さを感じると
小さく咳払いをして話をそらす。
「それより『アイツ』って誰なん?会わすんやったら、はよ会わせてくれへん?」
「あっ……えっと……出かけてるみたいっすね。もうちょっとしたら帰ってくると思うんで」
「そうなん?いつ帰ってくるんよ、そいつは?」
「あ〜…ちょっと分かんないっすね。でも多分もうちょっとで帰ってきますよ」
「なんやねん、それ」
あれだけ胸を張って大丈夫と言っていたわりにえらく頼りない話だった。
そもそも『アイツ』『アイツ』と言うが大浦はその『アイツ』が誰であるかを
明かそうとはしないし、なんならどこか曖昧模糊な表現ではぐらかしてるような印象さえ受ける。
だいたいその『アイツ』が本坊の居場所を知ってるなんていう保証はどこにもないわけで
そう考えると此処でこうしている時間がひどく無駄に思えてくる。
「俺、行くわ。誰か知らんけどソイツおらへんねやったら用ないし……」
「待ってください!」
「だっておらんねやろ?」
「もう少しで帰ってきますから」
「だいたい『アイツ』って誰やねんな?」
「水口さんは生き残りたくないっすか?」
「はぁ?」
「生き残る方法があるんすよ」
「なんの話してんの?俺は……」
「『アイツ』は言うんです。「生き残れる方法がある」って。
ちょ…水口さん聞いてください。俺も最初は「そんなアホな」って思ってたんすよ。
でも『アイツ』はホンマすごいんですって!うまく説明できないんすけど完璧なんです。
ここに来るまではただの同期でしかなかったのに、ここに来て『アイツ』と
行動して話して俺……気付いたんすよ」
「どないしてん、お前?落ち着け、何の話をして……」
「正直僕は水口さんはラッキーやと思いますよ。だって『アイツ』と関われるんですから!
良かったっすね、『アイツ』と関われて!良かったっすね、『アイツ』に選ばれて!」
「……………………。」
水口の言葉も耳に入らない様子で必死に『アイツ』について熱弁する大浦を
水口は黙って哀れむような眼で見ていた。
こんな意見はただの偏見でしかないし、気を害される方もいるかもしれないが
陶酔しきったような口調で誇らしげに『アイツ』について語る大浦は酷く宗教的な匂いがした。
大きな恐怖やどうしようもない困難にぶつかってしまった時、心の拠り所として
宗教に走る人がいるというのは水口も聞いたことがあったが今の大浦はまさにそれに見えた。
ここで仲良く生き残るなんて話を信じ『アイツ』を絶対的存在として嬉しそうに必死に話す大浦。
純粋な信念と、まるでそう信じないと恐怖に押しつぶされ壊れてしまいそうになるから
必死に信じこもうと自分に言い聞かせているような念願。
そのくせ淀んだ瞳にはどこか絶望的な観念が見える。
矛盾した念が大浦の中に存在し、ギリギリのバランスで成り立っている。
水口は大浦を可哀想だと思う、だけど仕方ないとも思う。
いつも笑っているお調子者が本当に何も考えずただヘラヘラしているだけだと
思えるほど水口も鈍感ではなかったし、鳴り響く銃声、時折聞こえる断末魔の叫び、
青紫の死斑が浮かび仄白く青みがかった固い肌の死体、
血液とリンパ液と黄色い粘膜に濡れる肉片、
内側から食い荒らすふやけた米粒のような蛆虫、死の存在。
それらは人を狂わせるに充分だと思うから……。
しかし同情こそすれどそれに付き合ってる暇はない。
水口は「悪いけど」と言うと立ち上がり出口へとむかい、それを大浦が慌てて引き止める。
「待ってください!水口さんは強い人かもしれないっすよ。
でも怖くないわけないでしょ!強がらんといてください。
ホンマに怖くないんすか?止めてくださいよ、そんな目で見んといてください!
俺、そんな風に生きれないっすもん。死にたくないんすよ!
臆病のなにが悪いんですか?なにがいけないんですか!?
生きるためやったら媚びることだってできるでしょ、そりゃ!」
そこまで言うと大浦は今にも崩れ落ちそうな壁に拳を叩きつけた。
いくら退廃しているといえど、コンクリートのそれに渾身の力を
叩きつけた大浦の手は痛々しい音をたてるとジンワリと赤みを帯びる。
しかしそれでもなお饒舌になった大浦の口が止まることはない。
それどころか加速し加速し、回転度数が増し、耐え切れなくなった三半規管が
吐瀉物をぶちまけるように感情のコントロールのきかなくなった大浦は感情を吐露し続ける。
「えっ、わかってます?死ぬんすよ!
来るんが当たり前やと思って疑問さえ抱かなかった明日が僕らにはもうないんですよ!
疑うことさえせんかった未来がもうここにはないんです!
人生はいっつもそうっすよ……何でもない顔をして裏切っていく。
まるで運が悪かったね、とでも言いかねない勢いで俺らの存在を否定しよるんすわ。
僕らの日常ってそんな幻想じみたもんでした?ねぇ?ねぇ!?
死ぬんすよ!何も残せないまま……殺されて死ぬんすよ!
水口さんに……水口さんにこの怖さが分かるんですか!」
「わかるよ」
大浦の感情の荒波に対するたった四文字の回答。
それは静かに……しかし確かな力を持って発せられた。
その時の……そのたった四文字の回答を耳にした時の大浦の顔を水口は多分一生忘れないと思う。
それは呆然、驚愕、愕然、悲哀、絶望、切望、哀願、安堵……そのどれでもあったし、どれでもなかった。
大浦は何かを言おうと口を開いて、だけど結局無様に口をパクパクさせるだけで言葉は一向に
言葉にならず、混乱の渦巻く瞳を見開いたまま…まるで体の大切な螺子が外れたように
ガクンと体を揺らすと膝からその場に崩れ落ちた。
水口はそんな大浦を再度哀れむような目で一瞥するともう一度、今度は自分に
言い聞かせるように「わかる」と呟く。
人は救いがあると思わないと怖くて生きていけない。
人は何かに頼らないと不安で生きていけない。
人は何かに依存しないと孤独で生きてなんていけなくて、
何かにすがりつかないと壊れそうになる。
しかし生きていけなくても生きていかなくてはならない。
気づいてはいけない、自分の矮小さに。
気づいてはいけない、死の前に人は無力だということに。
気づいてはいけない、自分の死に何の意味も持たせてもらえないことに。
気づいてはいけない、此処で死んでも数多の芸人の中の死亡者の1人としてカウントされるだけということを。
自分の死が数学的換算しかされない虚しさ……でもそんなのは此処でなくても同じことだ。
あの生命の危機なんて微塵も感じなかった頃の日常の中にだって、例えばメディアの中なんて
反吐がでるほど死に溢れていたが、それらは数字や文字として記号化され、ただ消費されていた。
身も蓋もない言い方をしてしまえば、それが少し特殊で狂った「殺し合い」という
シチュエーションとして我が身にふりかかってきただけなのだ。
簡単に手にすることの出来る死の情報がテレビや紙面というどこか虚構じみたツールを
通しているせいで麻痺してしまってはいるが、「死」が非現実で非日常的なものだなんて言わせない。
それでも人は自分は、自分だけは死なないと…いや、もちろんいつかは死ぬ。
だけど今、そして近い未来に「死」もしくは「殺」が存在しているかもしれないなんて思っちゃいない。
それはもちろん「死」なんて考えなくてよいほど平和で幸せな環境にある恩恵でもあるが
同時にそうやって「死」の恐怖から目を逸らすことで平安を保っているからに他ならない。
だからこそ…そんな穏やかな日常が一転し「死」や「殺」が身近に迫った時、それらは全て反転する。
人は「生と死」に対して利己的で傲慢で……だけど、それはいつだって目をそらしたくなるほど
人間的な純粋な感情を孕んでいて……病んでるのは皆一緒だ。
そしてそれはタチが悪いことに不変的で普遍的。信念と強迫観念なんていつだって表裏一体。
憔悴しきった大浦は「わかる」と答えた水口に対して「そうっすよね」と力なく笑った。
その口唇には古時計の秒針が振れた瞬間のような断続的な痙攣が続いている。
「でも、もう遅いっすよ。水口さんが悪いんです。俺らの前にあらわれて、いつもと
変わらない様子でいるから……いたから……」
そう言うと大浦は水口へと向けていた恨めしそうな視線を諦めたように地面へと落とし、
おじぎ草のように背中を丸めてうなだれた。
「死にたくない……死にたくねーよぉ……」
涙で揺らぐ悲愴感たっぷりの声。
悲痛なまでに響いて、静寂にかき消される。
しかしその悲痛な声はいつしか笑い声へと変わり、大浦は項垂れていた頭をもたげると
何故か勝ち誇ったニンマリとした笑みを浮かべて高らかに笑った。
そして立ち上がると「これは救いなんです」とまったく救われない顔でそう宣言する。
「俺は『アイツ』と会った。これは偶然じゃなくて必然なんすよ!
水口さん、わかってください。お願いですからもうちょっと待ってください。
もうすぐアイツ帰ってきますから。水口さんが参加してくれないと始まらないんすよ!
アイツの描いた計画が……だから頼むから待ってください。
お願いします。お願いします……お願い…します……」
興奮した様子の大浦はたかが外れたように視点の合わない瞳をキョロキョロと
落ち着きなく揺らしながら水口へと歩み寄ると「参加?計画?どういうことやねん?」と
訊ねる水口の言葉をかき消して「お願いします。頼みますから待ってください」と必死に訴える。
そんな大浦を前に水口はもう「ちゃうがな…なんやねん…どないしてもうてん……」と
困惑することしかできない。
その時―――「そうですよ、水口さん。意地を張らずに参加すればいいんです。」という
不安定な揺れるようなか細い第三者の声が部屋に響いた。
ゾワッと寒気とともに鳥肌がたつ。突き刺さるような視線。
間違えようもない纏わりつくようなアノ視線。
民家を出てから水口をつけまわし追いかけ続けたアノ視線。
水口は慌てて振り返る。こいつが『アイツ』?
「田中……」
そこには善意的な顔にニンマリと不気味な微笑を浮かべたマラドーナ田中が立っていた。
今日はここまでです。
前回感想をくれた方々ありがd。期待にそえるよう頑張りたいです。
前回、日本語勉強してくると言っておきながらまた間違いを発見。
訂正
>>510の2行目
×鬱蒼
○鬱屈
鬱蒼って……こんもり生い茂ってどうする……。
一応、うpする前に読み返してチェックはしているんですが
お見苦しいミスの連続スマソです・゚・(ノД`)・゚・
>>小蠅さん
乙です。白熱した展開に目が離せません。
成子坂編のラスト頑張ってください。楽しみにしています。
>B9さん
乙です!!!
まさか田中くんやと思いませんでした…
影薄いから、ここでも存在感無かった(笑)
非常に続きが気になります。頑張ってください!!
>B9さん
乙です!私もまさか「アイツ」が田中だとはびっくり。
どーなるんだ?これからどーなってくんだ?
>B9さん
乙華麗です。相変わらず文章が華麗です!!
アイツの正体が分かってとてもびっくりです。
マラドーナがとても楽しみです。
頑張って下さい!!
追記
正にオーウラナイトでしたねw
B9さん乙です
田中の名前に思わずニヤリと来てしまいましたw
読みごたえ抜群の文章と思わぬ展開に目が離せません!
B9さん乙です。
ソラシドヲタなもんで、いつも以上にハラハラしながら読んでます。
「アイツ」が田中だったとは、自分もビックリしました。
これからも頑張ってください!
>>B9さん
オツカレー様です!!!田中さんがカコイク見えますた (´Д`)
610 :
名無しさん@お腹いっぱい:04/06/18 22:45
保守
611 :
名無しさん:04/06/19 00:39
芸人かどうか判断難しいメル欄の二人でちょっとした番外編を投下したいんですが、よろしいでしょうか?
パンクブーブーとアンガールズとさくらんぼブービーとミラールと
ヴェートーベンとエルシャラカーニとタイムマシーン3号と
あと、キンコメの死亡前後の細かい話とダリハニ土砂崩れの影響と
ノンスタと三拍子の死体とロザン・プラン編の海辺の救急鞄のその後って
どなたか書いていらっしゃいますか?
>>614 キングなら今野は濱口登場シーンで
一言もしゃべることなくアイスピックで昇天。
高橋はタモリ編で相方を看取れなかった芸人で
でてきてるけど全く台詞なし。
あとは全部読んでるけど見たおぼえないですね。
というわけでキングオタな俺としてはキング話は興味津々です。
がんばってください。
>>615 その当時まだそんなに有名じゃなかったからね・・・キング。
作者さんもとりあえずこんな芸人いたっけな扱いだったんじゃないかな?
どうせだったら名前使って欲しくなかったな。CUBEも名前だけだったしね。
不法投棄さんに上手いように使って欲しかったな。
>>616 禿同。CUBEも石川あたりがやらかしてくれるかなと思っていたのですが。
なので天国でも催眠でもどなたか書いてくれればなぁと密かに期待しときます。
あげ
>>614 ノンスタ、石田は南海キャンディーズの山崎に手榴弾で足吹っ飛ばされた後
天津向に撃たれて、ブロンクス中岡に看取られて死んだ。
井上も向に殺されて、その後首無し死体で中岡に発見された。
ただ、2人ともその後は書かれてないはず。
ああ、石田はネゴに足の手当てしてもらったんだっけか。
その後また悪化したとこを向にやられたんだよな。
そういえば千鳥ってもう出てきましたっけか?
>620
千鳥は既に出てきて両方とも死にましたよ。
笑い飯のエピソードを辿ればわかるかと。
久しぶりに着てみたらずいぶんな良スレが。
もう死亡してるけど、エレコミ・アルファ・おぎやはぎ・小林と、長井秀和がかなり好きでした。
どうでもいいこといってスマソ
モジハン・ハマカーンの続きが読みたいと呟いてみるテスト。
石井さん、生きててくれ(ノД`)。
624 :
名無しさん:04/07/02 15:04
便乗してハリガネロックの続きはどこいったんだと呟いてみる。
文才があればなぁ…
書き手さん待ちage
私もプランの吽(灘儀・ギブソン)の続きが気になって…
えっと、一人読みたいと言って下さった方がいたのでグレチキ編投下します。
駄文ですが気に入らなかったらスルーしてください。
――――雨が、窓ガラスに歪な模様を描いている。
渡辺は、長い間窓に向けていた視線を外すと、ちらりと向かいに座っている相方に視線を向けた。ずっと横を向いたまま固定されていたせいで少し首が痛むが、この状況では仕方が無い。
目の前に座る北原は相変わらず眉間に深い皺を寄せたまま黙り込んでいて、高校時代からの相方である渡辺には、今の彼に言葉をかけたとしても片っ端から叩き落されてしまうに違いないと分かっていた。
零れかけた溜息を無理矢理押し込めて、渡辺は視線を下に向けた。
(・・・・・・なんでやろな)
ゲーム番組で同じコーナーの担当をしていたあのコンビも、その番組で別のコーナーをやっていたあのコンビも、番組で共演した事のある芸人達も・・・・・・
それどころか、日本中の芸人全てが、逃れようの無い運命の渦に巻き込まれている中で。
(なんで、俺らは普通に打ち合わせなんてしとるんやろ)
目の前にある台本は、まだ手付かずのままだった。気を利かせてくれたのか30分程二人だけの時間をもらえたのだが、二人だけの時間は気まずい。
沈黙を破るのも憚られて、渡辺は再び零れかけた溜息を押し殺した。
・・・・・・今の自分達を、「お笑い芸人」と呼ぶのは少し語弊があるのかもしれない。
仕事はレポーターや俳優としての仕事が中心で、ライブもやらなくなった。
だが、それを後悔しているというわけでは無い。この世界を懸命に走ってきた結果が、今の自分達なのだから。
渡辺には、新しい夢も出来た。作家になるという夢が。
結果を出せるまでファンにも報告はしないつもりで、活動も始めている。
ただ・・・・・・それでも、芸人としての自分を完全に捨てられる程、彼らは初心をすぐに忘れるような人間ではなかった。芸人として上京してきた、あの頃の心を。
割り切る事が出来ない思いが、重くわだかまっていた。
なぜ自分達が参加させられなかったのか、見当はついている。
活動実体が無いのならともかく、過去に某玉入れ番組で最低記録を叩き出した自分達を政府がうっかり見逃す事などまずあり得ない。だとすれば・・・・・・自分達は故意にリストから外されたのだ。参加させても大した「駒」にはならないだろうと。
芸人としての自分のプライドが、心の中で拳を振り上げ壁を叩いている。
『このままで、ナメられたままで本当にええんか!こんなの蛇の生殺しやないか!』
血を吐くような声で叫ぶその声を消すには、まだ時間が足りなかった。自分の心を整理する為の、時間が。
ゲームの名を借りた凄惨な殺し合いに参加せずに済んだのは喜ぶべきなのだろうが、今は喜びより過去の自分が抱いていた夢や思いを踏み躙られる苦しみの方が勝っていた。それは目の前に座っている相方も同じだろう。
ただ、このまま黙っていては折角の二人きりの時間が無駄になってしまう。
勇気を振り絞って、渡辺は相方の名前を呼んだ。
「・・・・・・雅樹」
妙に気恥ずかしくて、いつもはふざけ半分にしか言わない下の名前。その声に込められた響きを、北原は正確に読み取ったようだった。
「・・・・・・なんや?」
「・・・・・・このままで、ええんか? 確かに今の俺らは芸人とは呼べへん、せやけど・・・・・・」
続ける言葉が詰まったのか、渡辺は唇を噛んで俯いてしまった。
「黙ってのほほんと見てろ言うんか・・・・・・日本中の芸人達が・・・・・・知り合いが、殺し合ってくのを」
渡辺自身まだ自分の中で状況を整理しきれていないのか、最後の方はもう誰に向かっての言葉なのかも分からなくなっていた。ただ、震える声で言葉を紡ぐ。
「・・・・・・こんな事なら俺も参加させられてればよかったわ」
「・・・・・・んなわけないやろ」
喉の奥から搾り出すような声に、渡辺は顔を上げた。俯いている北原の表情は分からないが、その拳は指先が白くなる程に強く握り締められている。
「・・・・・・んなわけ、あるか・・・・・・」
「・・・・・・」
「どんなに辛くても、いつかは乗り越えられるかもしらんやろ・・・・・・」
まるで自分に言い聞かせるような北原の言葉を、そこに込められた思いを聞き、渡辺は再び視線を窓に向けた。
この瞬間、二人は決心したのかもしれない・・・・・・どれ程辛い事があっても、命の続く限り生きようと。
今、自分達が受けている痛みなど、遥か遠い島で殺しあう芸人達の苦しみには到底及ばないものでしかないのだから。
――――雨はまだ、止まない。
お目汚しスマソ。もうコントやらないのだろうか、グレチキ・・・・・・
度々すみません、流れ星のお2人は既出でしょうか?
630 :
名無しさん:04/07/06 21:32
下がりすぎage
磁石の続きとパンクブーブー・アンガールズが読みたいなぁ…
はなわって出てきてる?
>>629 いえ、未出です。
>>631 初期に死体役で出ますた。
前後のエピソードは特に書かれていません。
>>623 >>630 磁石・モジハン・ハマカーン等々停滞して申し訳ございません。
どんなに遅くても今月中には続きをアップしますので……
グレチキ懐かしいw
「んなわけ、あるか」って彼らの歌のタイトルで似たようなのありましたよね?
>>634 「んなことあるか」ですね。
実はちょっとかけてましたw
それでは名無しに戻ります
グレチキ話乙です。
唐突ですが、天津向の話で氏んだbaseメンバーと、
麒麟、ケンドーコバヤシ、キングコングを地獄編でお借りしたいです。
一ヶ月ほどしたら書き始めるつもりです。
よろしくお願いします。
小蝿さん、応援してます。
渚さんどうなっちゃうんだろう…
age
>>636 天津向の話で氏んだbaseメンバーの中に大好きな芸人がいるのです。
楽しみに待ってます。
ホシュ
あばれヌンチャクのエピソードってありますか?
643 :
名無しさん:04/07/25 19:33
あげ!
644 :
名無しさん:04/07/27 15:26
波田陽区って出てきてます?
まだ出てない
保守
647 :
名無しさん:04/08/03 09:02
あげ
>>584-590 の続き
「・・・はぁっ・・・あぁっ!」
一歩一歩踏み込んで間合いを詰めながら、同時に村田は幾度も刀を振るう。
互いの身体のコンディションを考えれば、戦いが長引けば長引くほど村田が不利になるのは当然の話。
ならば、たぎる心が傷付いた肉体をカバーできている内に決着を付けるほか無い。
しかしこの無謀とも思える村田の突進と連撃にも、浜田は冷静に対処する。
これが経験の差なのかも知れないけれど。異国の闘牛士を思わせる軽いステップで間合いを外し
仕込み刀を突きだして逆に牽制すらしてみせて。
避けきれないカウンターの鋭い刃にピシッと村田の皮膚が裂け、血が滲む。
「ジブン・・・何を焦っとんの?」
そんな余裕など本来ない筈なのに、くすりと口元に笑みを浮かべて浜田は村田に問うた。
「必死すぎて見てられへんわ。みっともない。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
しかし、その声は村田の耳には届いていないらしい。
ゼェゼェと早くも上がる息を何とか落ち着かせながら、彼はただジッと浜田を凝視しているだけだった。
漆黒の瞳に、執念の光が揺れる。
「・・・チッ。おもろな。」
そんな村田の瞳に木村の凛とした眼差しが・・・護るべきモノのために戦う人間の目が連想され、
浜田は思わず舌打ちをした。
・・・どいつもこいつも偽善者ぶりよって。
もちろん、浜田にも護るべきモノはある。
けれどこの『ゲーム』は殺し合ってこそナンボのモノではないか。
殺す側に回る事で『ゲーム』の緊張感を楽しみ抜く道を選んで、何が悪いというのだろう。
一体、誰に浜田を咎める事ができるのだろう。いや、できるはずがない。
それなのに。この瞳は、浜田の行動を赦そうとはしないようで。
「さっさと・・・消えろや!」
苛立ち紛れに振り下ろされた浜田の一撃を、村田は何とか身体を反らしながら刀で受け止めた。
ギリギリと上から押しつけられる浜田の力に対抗するように、村田も下から力を込める。
その腕に、全身に、微かに自らを縛する不可視の鎖の気配を今もまだ感じるけれど、
それは決して己を罰したり戒めるためだけに存在するのではない事を思いだしたから。もう村田には怖くなどない。
この鎖は抱いた夢を手放さないための鎖であり、次々と迫り来る困難から信念を守り通すための鎖でもあるのだ。
五秒、十秒と刀を介して力比べが続けられる最中。浜田が今まで刀に込めていた力を急に抜く。
上からの圧力がなくなった事で、村田は上へ伸びあがり、体勢を崩して無防備になる・・・所だったけれど。
そこを狙って横薙ぎに振るわれる浜田の刃は空を切った。
「・・・・・・・・・なっ!」
まるで浜田が力を抜くタイミングを前もって察していたかのように。
村田は身を翻して間合いから逃れていたのだ。
潮の匂いのする風が、路上を吹き抜けていく。
「・・・・・・どうして。」
中途半端に仕込み刀を構えた格好のまま、ボソッと浜田が口を開いた。
「どうして、ジブンはそない頑張ンのや。」
ジブンのやっとる事が無駄だとか、思わへんのか?
「・・・何で・・・やろなぁ。」
今度の問いかけは、村田の耳に届いたらしい。
前髪が風に煽られて揺れる下で、浜田の一挙手一投足を見逃さないようにか両目をしっかり見開きながら
喘ぐような声で村田は呟いた。
「もっと早ぉ殺されとったら良かったのにとか・・・思わなくもなかったけど。」
もしも、あの時。
震える手で拳銃を握る松丘に、頭蓋骨を撃ち抜かれでもしていたら。
返り血を浴びて確実に平静を失うだろう松丘がその後どう行動するのかはわからないけれど、
少なくともあの森の静寂の中で一生を終える事もあったのかも知れない。
でも。そうはならなかった。
「これが、自分の選んだ道やから。」
そして、幾つもの命を礎にしたこの道が、きっと自分の願う場所へと続いているから。
今更勝負を降りるなんて事は出来ようはずがない。ギュッと模造刀の柄を握り直して村田は浜田へと答えた。
「その道とやらの終点はどこやねん。 ・・・何や、ママの所か?」
幾分からかいを帯びた浜田の問い。しかし村田は不快げな表情を浮かべる事もなく、素直にまた答えた。
「僕のような奴にでも・・・待ってる客がおるんでね。新ネタひっさげて・・・早ぉ帰らなアカンねん。」
村田はゆっくりと模造刀を構える。
「僕は・・・やっぱり芸人やから。」
笑いたくば笑うがいい。いや、寧ろ率先して笑って欲しい。
けれど、だから。これ以上『ゲーム』に囚われている訳にはいかないのだ。
穏やかに告げた言葉に一瞬虚を突かれた浜田の隙をつき、村田は今までで一番の渾身の力で斬りかかった。
彼の纏うシャツは滲んだ血でじわりと染まっており、
彼とそれ以外の人間の血を吸ったボトムはもう元の色を思い出せないほどに変色してしまっている。
そんな満身創痍という言葉が似合う彼の風体とは裏腹に、村田は素早い動きで刀を振るう。
「こんな所をさっさと抜け出て・・・みんなと舞台に・・・立ちたいんやぁっ!」
「・・・・・・・・・くっ!」
太陽の光を反射してか、模造刀の刀身が白く輝いた。
さながら光の剣を振るうかのような一撃を、浜田は辛うじて仕込み刀で刃を受け止め、力を外側に逸らそうとする。
刹那。
キィン
一際高い金属音が響いたかと思うと、細長い棒状の金属が宙を舞った。
有り得ない方向からの光の反射に驚愕しつつ目を細める浜田の手首に、今までで一番重い衝撃が走る。
「やっ・・・た・・・」
「・・・嘘や。」
殆ど同時に二人の口からか細い呟きが漏れた。
浜田の握る仕込み刀の刀身が、先ほどに比べて著しく短くなってしまっている。
いや、短くなったのではない。その中ほどから村田の模造刀に叩き折られたのだ。
柄から離れた刃の先端が、コンクリートに跳ねて乾いた音を立てている。
東野から奪って以降、浜田の武器として多くの芸人の血を吸ってきた過程で
使い手の知らぬ所で刀身に疲労が蓄積していた事はあったにせよ。
見事なまでの刃の断面に、浜田は舌打ちをすると柄を投げ捨てた。
「ちっ・・・面倒くさ。」
吐き捨てるように呟く浜田には構わず、相変わらず双眸に強い光を宿して村田は模造刀を振り回す。
決して浜田の発する圧倒的な気迫が薄れた訳ではない。
本来ならピクリと指一本動かすのも躊躇われる位の殺気と威圧感を浜田は放っている。
しかし村田はそれに心乱される事なく、ただひたすらに目の前の相手を倒すために動いていた。
それが集中の賜物なのか無我夢中、開き直りの境地なのか。誰にも確かめる事はできないけれど。
今までと変わった間合いに戸惑うように、浜田は何とか村田の振るう刀の切っ先を避けた。
つい先ほどは浜田も隙をつかれたという事もあったが、しかし冷静に相手を見定めようとすれば
彼の動きはやはり直線的で、尚かつ負傷と疲労から緩慢なモノになっているのは明らかだった。
このまま村田の命のタイムアップまでのんびり粘るという作戦も取れなくもないところだが
まさか浜田もそこまで暇人ではない。
「・・・これやっ!」
機敏に視線をめぐらせて、街路樹のツツジの根元に黒いコードのような物を見つけると
浜田はすかさず駆け寄って手で掴み、力任せに引っぱり出した。
「何・・・?」
ブチブチという音を立てて引き抜かれたコードを、浜田はその片側がまだ地面に繋がっているにもかかわらず村田へと投げつける。
浜田の様子に一旦攻撃を止め、注意する体勢に入っていた村田だったけれど
まさかいきなりそう動くとまでは読み切れなかったらしく、反射的に顔面をカバーして刀でコードを叩き落とそうとした。
ヒュンッ
空気が唸る音がして、村田は模造刀を握る両手首に軽い衝撃が加わるのを感じる。
「くっ・・・しまったっ」
どうやらコードの先端に重りのような物が付いていたらしく、その影響でコードが模造刀に
グルグルと巻き付いてしまったようであった。
「何か知らンけど・・・上手く行ったようやな。」
ククッと笑って浜田はコードを剥がそうとする村田よりも早く、グイとコードを手元へ引っ張った。
力一杯に引っ張られ、模造刀を握りしめたまま村田もずずっと浜田の方へと引き寄せられる。
模造刀を手放せば、自由な間合いを取る事ができるだろう。
しかし、今の村田に素手で浜田と戦えるだけの余裕はどこにもない。この武器を手放したら、それでお終いである。
それ故に完全に力負けしていたけれど、何とか浜田に抗おうとコードを引っ張り返す村田の瞳は
なおもしっかりと、何かを訴え掛けるかのように浜田の姿を捉え続けていた。
その眼差しが、浜田の感情を逆撫でする。
・・・何や、その態度。
顔と名前の一致しないその他大勢の内の一人のクセに。
「・・・たぶん、その目がアカンのやろな。」
ポツリとそう呟くや否や、浜田はコードを引き寄せる両腕に力を込め、ずるずると距離を縮めていた模造刀の刀身を右手で掴まえた。
今度は高台の時のように村田に模造刀を手放す時間を与えず、刀身を引き寄せながら
左手で村田の手ごと柄を握りしめる。
「・・・・・・・・・っ!」
「バイバイ。」
踏ん張りきる事ができずにグイと強引に引き寄せられた、村田の視界一面に浜田の顔が映った。
その顔に浮かぶ他愛もない遊びを思いついた子供のそれに似た、屈託のない邪悪な笑みが
フッと過ぎる影によって隠され、次の瞬間彼の視界全体が赤く黒く染まる。
まるで舞台上で予期せぬタイミングで暗転が起こったかのような現象に、これは何だと思う間もなく
村田の両目の奥から強烈な熱と激痛が頭を貫くかのような勢いで走った。
痛みに目を開けていられず、思わず顔を覆った指の隙間から涙とはどこか違う液体が頬を伝って流れ落ちる。
「・・・? あ・・・何、厭、厭や、イヤやァアアあああ!」
自分の身に一体何が起こったのか理解できない・・・いや、薄々感づいてはいても理解したくない
村田には決してわかる筈のない事だろうけれど。
アスファルトの上で自らの頸から流れ出た血のただ中に横たわっていたゆうきは、うっすらと目視していた。
緋色の慟哭で顔を濡らし、意味不明な音を絶叫する村田と、右手の指先を赤く染め下卑た笑い声をあげる浜田の姿とを。
「ヒャッヒャッヒャ、エエザマやなぁ・・・今までの威勢はどないしたんや、ナギサちゃん?」
見ていると不愉快になる目なら、潰してしまえばいい。
木村と相対した時もそうだが、それを実行して卑怯などと言われる筋合いは浜田にはどこにもない。
この『ゲーム』では殺した者勝ちである。勝てば文句など誰にも言わせはしない。
今の一撃で傷付いたのは瞼だけなのか。それとももっと奥にまで傷は達してしまっているのか。
そんな事を悠長に判断できるだけの冷静さはもう村田にはなく。
模造刀を取り落とし、両手で顔を押さえてどこか逃げまどうように蹌踉めく様子が滑稽でならず、
浜田はドスンとヤクザキックを村田に見舞う。
視界が塞がれ、どこから仕掛けられたのかも判断できない中での一撃に、村田は簡単に地面に叩き付けられるように転がった。
「お前なんかを待ってる客が、一体どこにおるっちゅーねん。阿呆か。」
ペッと唾を吐き、浜田は村田の手ごと顔を踏みつけて問う。
このまま骨を踏み砕いてしまえそうなほどに踵に体重を掛けて。
「・・・うゥうァああ・・・あああ・・・」
とはいえ、苦悶の表情でうめき声を発するばかりの村田は、浜田の言葉を理解できるような状態ではなかった。
視界が塞がれ、何も見えなくなったとわかった瞬間に、計画の事や闘争心はもちろん
そもそも自分が誰であり今何をするべきなのかといった事ですらしばし思い出せなくなるほどに
村田の思考はパニックに陥って弾けて飛んでいて。
ただその中で真っ白になってしまった思考が村田に一つの記憶を連想させる。
それは忘れもしない2003年の12月の事。
フリーの身から再び事務所に厄介になって以降、約一年掛けて若手枠を勝ち抜いた村田が
初めて一本ネタ枠でネタを演じられる事となったあの日。
「ちょっと待って・・・・・・頭の中真っ白になった。」
あろう事か村田は途中でネタを忘れてしまい、元の流れに戻す事ができないまま
グダグダと表現する事もできないぐらいの状況でネタを終えなければならなくなってしまったのだった。
コンビなら、トリオなら・・・他に誰かがいたのなら。
ネタを飛ばしてもフォローして続ける事ができるだろうが、それが叶わないのがピン芸人。
一番怖れていた事が現実のモノになってしまい、村田が舞台上をオロオロする度に空気は笑い声で揺れる。
笑われても笑わせても笑いが起きるなら一緒…という考え方も決してない訳ではないが
笑わせるつもりで臨んだネタの最中に不本意な理由で笑われるという事が、どれだけ彼にショックを与えたか。
その時に感じた耐え難い恐怖心もまた村田を襲う。
灼けるように痛む全身が凍り付いてしまうかのような錯覚に襲われ、村田の涙腺に涙が滲むけれど、
頬からこぼれ落ちるのは生暖かい赤い液体ばかりであった。
「悔しかったら何か言ってみぃ、アアン?」
挑発するような声と共に浜田の踵に力と体重が籠もり、目の奥の痛みで痛覚を占拠されていた頭部に軋むような痛みも加わる。
気が狂うか、それとも死ぬか。
この苦しみから逃れるために与えられた二つの選択肢に村田が手を伸ばしかけた、その時。
「やぁあああああああ!!」
どこか間の抜けた、それでいて命がけとわかる叫び声が響いたかと思うと、村田の頭部に掛かる圧力はフッと途絶えた。
「クソ・・・貴様、まだ生きとったんか!」
「生憎と俺・・・しぶとい・・・ですよ?」
激痛と暗闇のただ中で、村田の意識は遠くで交わされる会話を捉える。
・・・この声は・・・確か・・・。
どこか聞き覚えのあるその声の主を村田が思い出そうとした、その時。
『・・・村田さん。』
『村田さん!』
『渚さん。』
別の誰かにも次々と名を呼ばれたような気がして。
彼らの名前と顔を思い出した瞬間、時化で荒れていた海がサァッと凪ぐかのように、
彼の心をかき乱していたパニックと恐怖が薄れ去るのを村田は感じた。
・・・あぁ、そうや。そうやった。
誰に言うでもなく、村田は一人確認するように呟きを洩らす。
僕は確かにピン芸人やけど・・・だからと言って、決して舞台の外でまで一人っきりではない。
大勢の人間が周りにいて。時には助け、また時には助けられてここまでやってこれたのではなかったか?
『・・・右腕を伸ばせ。武器はそこだ。』
聞こえたままに伸ばした右手の指先に、固い感触が触れる。
視界は暗く閉ざされたままだったけれど、この手触りは模造刀の柄の物。
あの時、結局掴まえる事のできなかったネタの断片を、今度はしっかりと村田は引き寄せて握りしめた。
そのままアスファルトに血で濡れた左手を付き、ゆっくりと身を起こす。
身体がもう自分のものではないかのように自由に動かないけれど、不可視の何かに支えられるかのように
村田は何とか両の足で立ち上がる。
「村田さん!」
かすれがすれに弾むゆうきの声が左の後ろの方から聞こえた。
「村田さん! 浜田さんはここです! 俺が押さえてます! だから早く!」
必死の響きに、村田は声の上がる方を向く。
照明の落とされた舞台の上で、立ち位置を示したバミがぼんやりと蛍光の光を放つかのように、
漆黒の視界の中の一ヶ所に淡い光が灯ったように村田には感じられた。
「クソがっ、離せ・・・この死に損ない!」
文字通りゆうきも最後の力を振り絞っているのだろう。喚く浜田の声が、淡い光に力を与える。
・・・そこなんやな?
ゆうきに確認するための言葉は声にならない。
でも、そこで間違いないと村田は確信し、模造刀を低く地面に水平に構えると。目指す方向へと走りだした。
たとえ刃のない模造刀でも、先端の尖った箇所なら人を刺し貫く事ができるはず。
・・・だからあと数mだけでエエ、身体よ動いてくれ。
この男が他のみんなが帰るべき場所へ向かう、その妨げにならへんように!
大地がぐらりと揺れ、ミシミシと周囲の建物が軋む。
何かの前触れのような地震ではあるが、しばらく前から頻発しているお陰で、今更誰も驚く事などない。
「・・・・・・ったく、クソが。」
ただ、民家の壁にもたれ掛かったまま、浜田は小さく毒づくと唾を大地に吐きかけた。
彼の目の前の路上には二つの死体が転がっている。
共に大量の血を流し、楽に死んだのではない事は明らかに見て取れた。
その血の一部は浜田の服にも染み付いていて、鮮やかな赤が酸化して茶色に変わろうとしている所のようである。
「・・・・・・・・・・・・。」
結局、村田の放った最後の一撃は浜田にダメージを与える事はなかった。
目を封じられながらもゆうきの声と浜田の声から村田が合わせた照準は、ピッタリと定まっており
子泣きじじい宜しくしっかりとゆうきにしがみ付かれた浜田は一瞬焦りはしたけれど。
傷付き衰弱した村田の肉体に、あと一歩を踏み出すだけの余力は残っていなかったのだ。
膝から崩れ落ちるように、本当に浜田の目と鼻の先で村田は倒れ、それっきりピクリともしなかった。
その結末に呆然とするゆうきを引き剥がしてパチキを決めれば、こっちも永遠におとなしくなって。
しかし、浜田を苛立たせる要素は村田達とは他にあった。
「一体・・・何を意味しとるんや。」
呟く浜田の視線の先にあるのは、先ほどの村田とやりあっていた際に浜田が使った黒いコード。
咄嗟の判断ではあったけれど、村田の模造刀を封じて浜田を勝利へ導いた殊勲の道具。
けれど、ひとまず決着がつき、冷静になった浜田がふとコードを見てみた時。
コードの先端に取り付けられていた物が何だったのかに浜田は気付いたのだった。
それはCCD。TV番組の収録で主に部屋の隅や物陰に仕掛けられ、用いられる小型のカメラ。
このカメラ部分がさっきは偶然重り代わりになり、村田の模造刀にコードが巻き付く結果になったのだ。
「こないなトコにCCDが仕掛けられとる必然性・・・考えたぁはないが・・・」
仮に防犯カメラとするなら地上ではなく上に取り付けられているはずであるし、
島の住民が残したパンチラ盗撮用のカメラとしても、こんな僻地の島の、決して大通りでもない道路の道端である。
そもそもスカートをはいた人間が通るかどうか。
渋い口調で浜田は呟きかけるけれど、不意に首を左右にブンブンと振って、浮かんできた懸念を払いのけた。
「ま、別にこんなん、後で誰かとっ掴まえればエエ話や。」
それよりも、次に出会う芸人はどれだけ自分を楽しませてくれるだろうか。
それとも、また木村や今さっきの村田のように、浜田を責めるような偽善者めいた目で睨んでくるのだろうか。
そっちの方が浜田にとっては重要な事のように思われ、ニィッと浜田は笑うと傍らに立て掛けておいた
正宗の模造刀を掴んで寄りかかっていた壁から離れた。
仕込み刀が折れて使い物にならない今、こんな物でもハリセンよりは役に立つだろうから。
「さぁて・・・次は誰を思いっきりしばいたろかな。」
歪んだ笑みを嬉々として浮かべながら浜田は誰に言う出もなく口にすると、
転がる死体に背を向け、どこかへと歩き出していった。
その行き先は・・・とりあえずの所は海へ向かう・・・南の方角であったという。
【村田 渚・自転車こぐよ(現ヒデヨシ) ゆうき 死亡】
以上をもちまして、DT浜田さんのキープを解除し、延々続いた成子坂編も完結です。
原作で言うところの三村ルート的な役割の話の筈がいつの間にか
それどころじゃなくなっていて、自分の無茶さと無謀さ加減には笑うしかないですが。
こんな話でも最後までお付き合いいただき、本当に感謝しています。
レス返しはできませんでしたが、気に掛けて下さるレスも本当に嬉しかったです。
これにて自分は名無しに戻りますが、どの書き手の皆さまの話も続きを楽しみにしています。
それでは、お疲れ様でした。
村田渚が初めて出てきた頃からROMってたものです。
…小蝿さん、長い間本当にお疲れさまでした。
結局死んではしまいましたが、
この村田渚氏の行動、言動が、
これからDT浜田にどう作用していくかがほんの少し興味があります。
それが誰によって表現されるかはわかりませんが…。
小蝿さん長い間お疲れさまでした〜
最初から読んでて、どうなるんだろうと
非常に楽しみにしてました。
小蠅さん乙でした。
人が少なくなってからも続けていた小蠅さんの話は、とても素晴らしかったです。
ちょうど成子坂をボキャブラの再放送で見たので
話に入り込んでしまいました。
本当に、お疲れ様でした!
664 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/08/11 00:18
保守age
666 :
名無しさん:04/08/18 02:45
どんだけ時間かかってもいいから
見てみたい…っていうのは押しつけですね…スミマセン
わかりました
>>665 そして保守age
長らく放置してすみませんでした。
パラシュート部隊執筆中(?)の雪乃丞です。
青木さやかの手違いについてちょっと考えたのですが
>>241-243でパラ部続編を書いてます。その間に斉木と梅垣が
青木を最終的に殺したということにしてもらっても
よろしいでしょうか?
すみません、ageてしまいました・・・・・。
ななせさん、小説の続き楽しみにしてます。オジオズ…泣きました。
>>666さん、雪乃丞さん、只今構想中です。がんばってみます。
有難うございます。
↑わ、すみません。雪乃丞さんじゃなくて>669さんですね。
過去ログ見たらやっぱり劇団ひとりと鳥居みゆきの話が泣ける〜
切ないんですよね、なんか。
673 :
名無しさん:04/08/24 20:04
落ちそうだage
>>672 同意。あの話は自分の中では屈指の名作。
たまに見返すとリアルで読んでた当時とは
違った視点で読めて面白かったりする。
結構あっさり死んじゃったさまぁ〜ずとか
くりぃむは今だったら違う使われ方したんだろうな。
書き手さんへの不満では決してないけど。
そうそう。久しぶりに読んだら新たな発見がある。
これほんと長く続いてるね。
麒麟川島+レギュラー西川編が楽しみで毎日ドキドキしてたのを今でも思い出すわ。
私も初めからの読者だけど。
書かれる時代によって主役が違うのが面白い。
ロザン菅編も麒麟川島編も、先日ラストを迎えた村田渚編も
バカリ升野編も、ラーメンズ編もウンナン編もビートたけし編も
みんな大好きだわ。
そしていつまでも終わらないハリガネとメッセンジャー…(つД`)
時代を表してるんだろうなぁ。このままフェードアウトしないで欲しい。
ハリガネメッセ陣内辺りは一時期続きを凄い楽しみにしてたけど
やっぱ難しいね。陣内は色んな人と絡んでる分簡単に死なせられないし。
ハリガネは今田の所に向かってるし、今田と絡むってことは松本軍団と絡むってことだし、
松本軍団が動いたら物語が本格的に動くし。
…書き手さん、気楽にがんがっておくれ。
679 :
名無しさん:04/08/31 22:45
保守age
保守ついでに。
最近このスレを読んだんだが、すげえ面白いな。リアルタイムで読めなかったのが悔しいが。
個人的に中川家、take2、TIMあたりの話がすごい好きだ。剛と深沢かっこよすぎwTIM極悪すぎw
681 :
名無しさん:04/09/02 19:11
品川の死んだすれはどこにあるんだ?
きぼんぬ
過去ログ、中川家といつここで泣きました・・・。
個人的にはテツトモ一行が気になります。
書き手さん頑張れ保守。
実はあさりど堀口を書いたヘタレなのです。
カンニング・どーよ・ヒロシ(死ぬ前)・波田陽区を使いたいのですがよろしいでしょうか?
「なのです」って…
どう打ち間違えてしまったのか。
ちゃんと確認しないと駄目ですね。
>685
今、書き手さんが減ってますし、おっけーではないでしょうか?
個人的に見てみたいです!がんばってくださいーい
地獄編のさわりの部分だけできたので、うpします。
本編よりギャグっぽい感じだと思います。
それから、いつもどうり登場人物さんのキャラは想像です。
よろしくお願いします。
「オジオズ篠宮・新base・ケンコバ・キンコン・麒麟・ロザン・地獄編」
地面も空も、空気さえも。
何も無い不思議な空間を、ガタン、ゴトンと列車が走っていた。
列車の中には、ぼんやりとした影たちがたむろって座っている。
それは、このゲームで「加害者」となり命を落とした者達だった
「あ〜あ。何所に連れて行かれるんかなあ…。」
青年がつぶやいた。
篠宮であった。
無意識ではあったが、「人を(それも、相方を。)刺した」というショックで、一時的に消えた記憶も、
もう元に戻りつつあった。
彼の罪は、ほかのものに比べかなり浅かった。
なんせ、彼が発狂した原因は「村正」といった刀にあり、その上誰も手にかけていない。
その村正でさえ、彼が呼び出したものとは限らない。実際のところ、誰の意思かははっきりしていなかった。
そしておそらく、この列車に乗っている(乗せられた)人物の中では最年少であろう。
そんなわけか、彼の座席は一番前の車両の、一番見晴らしのいい場所にあった。
(なんか景色すごいなぁ〜。)
外はただ真っ暗。真っ黒なのか、真っ暗なのかよく分からなかった。
そして、運転席にはさっきまで「緒方マン」を名乗っていた男が静かに、
ただただこの列車を加速させているのが見えた。
そのまんまであるのだが、オーバードライブ・緒方である。
ちなみに、電車を運転中の人間と話をしてはいけないというのは
現世でもここでも同じのようだ。
「……」
ただただ時間が過ぎていく。篠宮は、少しずつ不安を覚えるようになった。
ここのどこが地獄なのだろうか。
ただ、列車が走っているだけだ。
それが、恐ろしくてたまらなかった。
運転手はすべてを知っていた。
この列車には、ブレーキなどついていないということ。
この、ぐるぐると闇の中を加速し続け、走り続ける列車こそが地獄だということ
そして自分が、犯罪者たちとともにこの列車に自分の魂の運命すべてをゆだねてしまったという事を。
車掌の格好をして乗っていたはずの石野は、天使に連れられていってしまったのか、何所にも居なくなっていた。
列車はどんどん加速する。
闇の中を、ぐるぐると回りつづける。
…のはずだった…
〜ピンポンパンポン〜
「ご乗車の皆様にお知らせいたします。むゎあことに申し訳ございません。
ただいま、多数のチャレンジャーが急に下車するとの事で、臨時停車いたします。」
〜ポンピンパンポン〜
確実に、居ないはずの石野の(いい)声であった。
「……は??……“チャレンジャー”!?」
「いやあ。ちょっと前に活きのよすぎるやつが(地獄に)入ってきたからぁ。
お前らでなんとか落ち着かせといて〜。頼むわ。」
電車内の通路の真ん中が一瞬ブラックホールのような穴になった…。
(もう!こんな扱いひどいわぁ〜!)
篠宮はその穴に吸いこまれていった。
ここでいったん区切ります。
死に神に扮する板倉に案内され、彼、ケンドーコバヤシが行き着いた先は
暗いくらい闇の中であった。
「ここで一生暮らすのが地獄に来た者への罰…ということなんやろうか。」
嘘をついたものは地獄に落とされるのだろうか。納得がいかないことも無かった。
ふらふらと闇の中を放浪するケンコバ。そのときである。
「ケンコバさん…あなたが来るのを待ち焦がれていたのですよ。
僕もあなたももう死んだ身。復讐したとしてもなにもおこらないはず。」
ケンコバの意識内に、直接話しかける誰かの声があった。
「なんや誰や。俺に恨みがあるなんて…。昔付き合っていた彼女か??
そうか。あの時の…。
おい!俺にもう一度会いたいのか!
ならどうして素直にそう言ってくれない??」
いつもどおりジョークで返すケンコバ。
「けっ……。こんな時まで笑いを取りに行くのですか??あなたは!
それがサービス精神だと。芸人の魂だと。
あああああ!もうそれがウザイ!やはり僕にやっつけられるべきです。
あ・な・た・は。」
「声」はなおもケンコバを罵倒した。
「もしかして…お前は…。」
ケンコバは「声」に尋ねた。
「ふふふ。僕の姿を確認したいのなら、
まず僕のところまでたどり着いてください。
お話は…それから、ですよ。」
「いや、今の見下したようなしゃべり方でばればれやぞ!
おまえやろ!ノンスリーブのお前やあ!」
「うるさい!…今はノンスリーブじゃないですよっ…。
とにかく僕のところまで、来・て・く・だ・さ・い・ね。カッハハハ。」
「く…卑怯やぞー!こらー…!おーい!!」
声は聞こえなくなった。
「何所におんね〜ん!!」
小走りであたりを散策するケンコバ。ふとあるものに気が付いた。
「ん…??うわあああ!」
これぞ地獄の風景というのだろうか。
死んだ時のままの形で、彼らはそこにいた。ゲームのなかで、
天津向に殺された面々であった。
まるで、お化け屋敷の一室のようにはりつけにされていた。
「ああ、ケンコバさんじゃないですか。」
もちギャグを叫びつつ飛び降りたストリーク吉本が話しかけた。
「お…おまえら…なんやその姿。」
「ああこれですか…。なんやここでは、
自殺ってのは罪が重いらしいんですよ。
で、仲間や、連帯責任やゆうて
向にやられたやつまでみんな連帯責任でここに貼り付けられて。
今こんな感じです。」
常識的に考えてありえない話だ。
なんて理不尽な連帯責任だ。とケンコバは思った。
「そうなんか。」
まあここは地獄なのだからなあ。と、ケンコバは無理やり自分を納得させた。
「助かる見込みは?」
ケンコバは吉本にたずねた。
「いまのとこ、ありません。」
あきらめたような表情で吉本が答えた。他のメンバー達も下を向いている。
「そうか…。」
想像するのも困難な、なおかつどうすることもできない後輩達の苦しみに、
ケンコバはただ落ち込むことしかできなかった。
「俺は…あいつを探さんなあかんねん。」
「あいつって、誰ですかあ。」
ストリーク山田がその独特な口調で聞いた。
「西野や…。」
「西野!?何でっすかあ〜?」
「それは!俺が聞きたいくらいやねん!。」
ケンコバがキレ気味で答えたので、山田は肩をすくめた。
「はあ…そうですかあ。
まあ僕らはここで見守っとくことぐらいしかできません。
ので。頑張ってくださいと言うしか…。」
「頑張りたかったけど、殺されてんやああ!俺は!。
今からやることなんか がんばれるか!」
馬鹿でかく、怒鳴り散らしたケンコバの声に、負けるしかない山田。
息を切らすケンコバと、貼り付けにされたbaseメンバーの脳天から
また、あの声が聞こえた。こんどはボケのほうの声。
「ケンコバさん。見苦しいっすよ。アハハ。
だから、ヒントをあげます。闇の一番暗いところに、僕らはいます。
早く来てくださいよ〜。」
そしてまた、声は聞こえなくなった。
「ケンコバさん、あっちが暗いですね。」
山田が気を使った。
「っ……」
無言の肘うち。ケンコバ。
「痛いっ…なにするんすかぁ〜。」
そのままケンコバは闇へと進んでいった。
「がんばれって言われたら怒られたから言わんけど、
僕ら密かに応援してるんで〜」
闇の中に、山田の声が響き渡った。
またここでいったん区切ります。
「小林さん…。お先です…。僕は、あいつらの“影”に打ち勝てへんかった。」
漆黒の闇の中。
闇に突っ伏す一人の男がいた。その名は田村裕。
そしてその目の前で。
玉座に座っているのは、キングコング・西野亮廣だった。
「ああ〜☆ひまやぁ〜もう終わった〜誰もこ〜へん。」
そう言って彼はあくび、伸びを繰り返し、
用意してあった手鏡でにらめっこ遊びをして暇をつぶした。
しまいには、水晶に映った、はりつけにされた人達に
悪戯をして楽しんだ。
その寛大な態度が半ば遊び半分の冗談なのか、それとも本気なのかは
隣にたたずむ相方、キングコング・梶原雄太にも、本人にも定かではなかった。
「ケンコバさん、遅いな〜★。」
「暇やし、またあいつらに悪戯したんねん!」
そう言って西野が水晶を手にした、そのときであった。
「ちょっとお遊びが過ぎたなあ。西野ッチ…。」
死に神と化した姿で、麒麟・川島明はそこにいた。
「ああ…ええ声が聞こえてきたなあ…。でもちょっと遅かったんちゃう?
お前の相方が一番乗りで今そこに…ほらよぉ。」
かつて地獄のダミ声と称された彼の声。
しかし今は、万人を魅了する七色の声。そして彼は言った。
「地獄の裁きを終え、今此処に至る…。…なあ西野ッチよ。
…田村を傷つけた罪は重いぞ…、
今此処で貴様を成敗する!覚悟しろや!」
「やってみろやい川島君〜↑。…やれるものならなあ!!」
両者は、睨み合った。
その最中である。
すとん。と一人の青年が落ちてきた。
「いった!もう!なんやねんあの乗務員…。」
オジンオズボーン・篠宮である。
「…!?西野っち!」
彼は西野とは親しい仲である。
その西野が、変わった姿で目の前にいる。
しかも、その西野と対峙しているのは、仲間の敵であるあの川島なのである。
彼がその間違った決断をするという事は、むしろ自然なことであった。
篠宮は川島に飛び掛った。
篠宮の必死のタックルが川島の巨体に炸裂した。
「くっ。…何やとぉ…。」
その隙を西野が見逃すことは無かった。
「よっしゃ!篠っち!よくぞやってくれました!」
西野が座ったままの状態で両腕で首を絞める動きをすると、
不思議なことに川島の身体が
宙に浮いた。
「あぐぁ」
「おまえもすぐに相方の元に連れってやるよ。
ここでの死は、存在そのものの死を意味する。
誰の記憶にもお前は残らない…。」
「おおやった!…よなあ…西野ッチ…?」
篠宮が小声で勝利の詞をたたえた。
そして、西野が勝利の笑みをこぼすその5秒前。
「川島…俺はまだ…ここで生きてるぞ…。」
「!!」
田村が気力を振り縛ったのだった。
今度は西野に一瞬の隙ができた。川島は、
西野の遠隔操作を取り払った。
「はあ、はあ、はあ、くそ。油断した。」
せきこむ川島。
「カジ!とどめさしとけって!」
「…え…は、はい!」
梶原が田村の脳天にハンマーを振り下ろそうと動いた瞬間、
川島も一瞬にして田村の許へ飛んだ。
「それは許さんぞぉぉ!」
ハンマーは川島の刀(大がま)一振りによって砕かれた。
「おいおい…どういうことやねん。
西野っち…?説明してよ…。」
篠宮は、その場にへたり込んでしまった。
(彼は…知らない人には以外かもしれないが、キングコングよりも
芸人としては先輩なのである。)
「篠っち☆。お前ももう、いらんわ」
「は…?西野っち…!何言ってん?どうしてもうてん!うぉい!!」
「シネェェェェェェ!!」
「漆黒の闇の色」で塗られた矢が、篠宮の
のどもとめがけ飛び出した。
「待て!」
ケンコバの一喝が、矢を打ち消した。
「西野、どういうことや。」
「ケンコバさん!…待ちこがれていましたよ。あなたが来るのを。
どうやら役者がそろったみたいですね。
うぉまえら、全員そろって消えちまえ!?★☆★」
西野の復讐劇が「おっぱじめ」られようとしていた。
今日はここまでです。お付き合い有難うございます。
スレ汚し、連続レススマソ。
それでは。
>>683 がんがります。
あと、小蝿さん長い間、乙でした。
ななせさん、文章が拙すぎますね。誤字も多いですし。話も飛びすぎでよく解りません。
もし、まだこの先続きを書かれるのだとしたら、もう少し過去の書き手さんの作品に目を通すなりして、勉強してらして下さい。
age
そうでつか…。
改行ミスが多いとうpしてみて気づきました。
本編では気合入れなおします。どうもスマソ。
708 :
名無しさん:04/09/11 08:22:45
何コレ。ななせはもう書かないでね。
おもんないし、読みにくい。>>ななせ
よく書く気になれたね、これ以上読みたくないから本編とかマジ勘弁。
710 :
名無しさん:04/09/11 12:07:06
きちんとするといっているのだからいいのでは?
708,709>
それならあなたたちは書けるんですかと言いたい。
うわあ…。芸人のネタの批評したら
「じゃあ、貴方が舞台に立って笑いが取れるんですか!?」
っていうのと同じじゃん。アイタタタ。
マンセー意見ばかりし書けないならここ廃れるよ。
でも、自分は別に金もらってやってるわけじゃないから、
やめようと思えばやめれるけど…。
人気とか要らないから、批評を無視して書くこともしようとしたらできます。
でも、だからこそためになる意見とか
応援はは有難いと思っていますです。
その点、芸人は生活がかかってるわけだから、
何されようと文句が言えない。(言いにくい)。
と思います。
最初に「登場人物さんのキャラは想像です」って書くのは得策ですねw
全体的にここの書き手さん達レベルが高いから比べられるのはしょうがない
地獄編ってまだ決まった設定とか少ないし、読めない事はないですよ
つか俺が自信ナクナッテキタ
下手な文章でスレ荒れる! ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!
(( (`Д´) (`Д´)
(/ /) (/ /) ))
< ̄< < ̄<
あるある探検隊!
あるある探検隊!
_(Д´ ) _(Д´ )
ヘ| |\ ヘ| |\
< <
チュートの集団催眠編というのは既出でしょうか?
ぜひ書かせていただきたいのですが・・・。(っつても大層なもんは書けはしませんが・・・。)
717 :
名無しさん:04/09/11 22:57:04
716>ぜひお願いします!!
>>716 自分で「大層なものは書けない」と思うんだったらやめとけ。
超大作だ!自信満々!!ってのは難しいだろうが、ある程度きちんとしたものが書けたと思ったら、うPすれば良い。
この流れで駄作でも書こうものなら、徹底的にこき下ろされるぞ。
>>717 ありがとうございます。
>>718 わかりました。アドバイスありがとうございます。
ということで、チュートリアル集団催眠編です。
「んぅ・・?」
福田は目を覚ました。
まだ、少し視界がぼやけている。
だが、明らかにここはさっきまで自分がいた場所ではなかった。
見慣れない天井、色々な人の声と、マジックペン。
そしてなんだか少しシンナーの匂いがする。
「福田っ!?福田っ!?」
すぐ耳元で聞きなれた声がした。
「何っ!?えっ!?徳井君っ!?」
「福田ぁ〜・・・。」
そこに居たのは幼馴染兼相方のチュートリアル徳井義実であった。
福田には状況がよく把握できなかった。
徳井は死んだ筈である。
その復讐をするために、自分はケンコバを殺した・・・。
その後、たむらと陣内に会い、自ら命を絶ったのである。
その筈なのだが明らかにここは天国でないようだ。
だとすると、何故自分が生きてここにいるのか?そしてここは何処なのか?
いくつもの質問が湧き出てくる。
「あんなぁ、しゅつっ、しゅうだんさいみんじっけんやってんて。」
不思議そうな顔をしているだろう自分に相方は、一回噛んだ後よくわからない単語を口にした。
「えっ?それは・・。」
「チュートリアルの福田さんですね?」
徳井に質問を投げ掛けようとした瞬間、給食当番のような格好をした女がやってきて、自分にそう尋ねた。
「えっ?あっ!はい。そうですけど。」
そう答えると、女は自分に「失格」と書いてあるワッペンを渡し去っていった。
「なんやねん、今のは・・・?」
「あんな、だから俺らは集団催眠実験って言うのにかけられてただけやってんて。
今までのは全部夢やったんやて。」
徳井は色々説明してくれた。
まず、自分たち芸人は集団催眠実験なる物に掛けられていた事。
今生きているのが現実で、さっきまでの殺し合いは全て夢だったこと。
今起きているのは「夢」の中で死んだ人であって、
寝ているのはまだ「夢」の中で生きている人だということ。
これ以上は何を質問しても誰も答えてくれないこと等。
身振り手振りで一生懸命に説明してくれた。(まぁ興奮しているのか、かなりの割合で噛んでいたが。)
「ほんなら、俺らは生きてんの?」
まだ少しぼんやりとした頭で徳井に尋ねた。
「うん!俺らはまだ生きてんのっ!」
相方は泣きそうな顔をしながら嬉しそうに首を振った。
「よかった・・・、ほんまに・・よかった・・・。」
どうやら徳井は真剣に自分のことを心配していたようだ。
少し泣いていた。
「そっ・・か・・。んじゃ飯でも食いにいこか?」
泣いている徳井を見るのがなんだか気恥ずかしくて福田は徳井に尋ねた。
「うんっ!」
徳井は嬉しそうに顔をあげた。
そして、少し含み笑いに歪んだ顔で福田に尋ねた。
「でもその顔で行くの?」
「えっ!?」
目の前にあった大きな鏡を見ると自分の顔にマジックで「テカテカ」と書いてあった。
「コーラーッッッ!!!!」
体育館中に福田の声が響き渡った。
チュートリアル集団催眠編終了です。
一応自分の中ではきちんとしたものは書けたと思ったのですがどうでしょうか?
駄文・乱文だと思われた方お目汚しスマソ。
724 :
名無しさん:04/09/13 21:57:29
>711
おもんないのにはレス付かない。そこは今まで暗黙の了解だったろ。
以前投下したことあるけどまるでレス付かなかったよ。
私はその後「あぁ…もっと精進しよう」と思って投下してない。
職人さんもある程度、空気は読むべき。
でも下手くそなのにお愛想でマンセーしたことなんかないよ。
気に喰わない職人さんがいたら読まずに、「保守してくれてる」と思えばいいさ。
ネ申っつーのは滅多にいないからネ申というわけで。
それでなくとも人が減ってきてるんだから、ケチ付けんのやめようよ。
725 :
釜飯:04/09/14 03:09:47
カンニング・どーよ・ヒロシ・波田陽区を投下させていただきます。
長くなるのでHN付けました。
あさりどの時よりは上手くなってると思います。
726 :
釜飯:04/09/14 03:11:14
僕らが集まれたのは奇跡だった。
こんな奇跡が起こるなら、もう一つ奇跡が起こるんじゃないかと思ってしまっていて今日に至る。
竹山さんの武器はシャベルだった。
大型のものだから戦えないことは無い。
中島さんの武器は包丁だった。
始めはmy包丁と比べてブツクサ言っていたけど、この状況ではしょうがない。
自分にある武器が当たっただけでも幸運なのだ。
テルさんはロバのぬいぐるみだった。
あのロバート・デ・ニーロのモノマネの時にポケットに入れてるやつ。
これが役に立つとは思えない。
ケンキさんは俳句セット。
これは意味不明。
そして僕の武器はピストルだった。
ガンマニアではないからそれ以上は分からない。
こんな武器なので、何かあったら僕がみんなを守ることになった。
正直、自信は無い。
727 :
釜飯:04/09/14 03:12:09
>>726 僕達はラッキーだ。
今まで誰にも襲われてない。
食事は中島さんのおかげで美味しい物が食べられる。
これだけだったらただキャンプをしてるだけの気がする。
でも死体は見ているし(顔は見ないようにしているので誰だか分からない)遠くで誰かが誰かを殺したのも見ている。
今起こっていることは現実なのだ。
でもこんな奇跡が起こったんだ。
期待してしまうじゃないですか。
しかし幸運はいつまでも続くものじゃない。
それは、あまりにも唐突だった。
728 :
釜飯:04/09/14 03:13:10
>>727 こは森の中の小屋。
二階で見張っていたケンキさんが下りてきた。
「着流しで日本刀を持った奴が近づいてきたんだけど、どうする?どうやら誰かを殺したみたい。」
緊張が走った。
いや、まだ敵だと決まったわけじゃない。
血が付いてるからだって。
怪我をしてるだけという可能性もある。
「ヒ、ヒロシ、お前一番前に出ろよ。守る係だろ?」
竹山さんに押し出される。
その時、ドアが開いた。
「拙者、人殺し大好きで御座います。」
波田陽区だ。
ギターは持ってない。
これじゃホントにただの侍だ。
目が…正気じゃない。
笑ってるよ。
ぼ、僕が何とかしなきゃ。
でも体が震えて動けません!
729 :
釜飯:04/09/14 03:14:09
>>728 「じゃかぁしぃぃんじゃぁワレ〜!!!!!!!!」
中島さんが包丁で日本刀に向かったぁ!?
な、何か互角に戦ってるんですけど!
むしろ押してます!
「あっ!!」
中島さんの、包丁が、波田陽区の、左わき腹に、刺さった。
中島さんが慌てて包丁を引き抜く。
これは逆効果。
あふれ出る鮮血。
倒れる波田陽区。
僕達は慌てて波田陽区を囲む。
「せ、拙者…ひ、人を殺しすぎました。切腹!」
目を閉じて自分の日本刀で右わき腹を刺す。
暫くして呼吸が止まった。
切腹は儀式。それは割腹らしいよ。
曖昧な知識で呟いてみるも、雰囲気は変わるはずも無い。
730 :
釜飯:04/09/14 03:15:07
>>729 「ど、どうする?」
やっとのことでテルさんが口を開いた。
「どうするって…他の隠れ家を探して移ったほうがいいんじゃ、ない?」
ケンキさんが答える。
「この日本刀、貰った方がいいかな。」
とテルさん。
「…日本刀、貰う替わりに墓を作ってやろうか。あくまでも『日本刀のお礼』にやぞ。」
竹山さんが言った。
あくまでも日本刀のお返し、っていうのは勿論建前。
目の前でこんなことになって、無視をするほど僕達は肝が据わってない。
日本刀を貰わないのは勿体無い。
ギリギリの正当化。
竹山さんがシャベルで穴を掘って波田陽区を埋めた。
ケンキさんが俳句セットで「波田陽区の墓」と書いた。
中島さんは川で包丁と日本刀を洗った。
テルさんは小屋を掃除した。
731 :
釜飯:04/09/14 03:15:55
>>730 僕は役立たずだ。
何も出来なかった。
見張りをしながらつくづくそう思う。
波田陽区が襲ってきた時、体の震えが止まらなかった。
これ以上ここにいても足を引っ張るだけ。
…散歩に行って来る。
そう言ったのは全ての作業が終わった後。
ピストルはこっそり置いて行った。
暫く歩いて誰にも会わなかったら、僕には幸運という武器があるってことで皆の所に戻ろう。
誰かに会ったら、その時はその時。
なるようになるだろう。
732 :
釜飯:04/09/14 03:17:35
>>731 その後ホリ君に会った。
ハマカーンの神田君にも会った。
「と……東京は怖いところとです…」
ヒロシです。やはり僕に幸運などありませんでした。
…健一です。最後に家族に会いたかったとです!
先に逝ってしまうことを許して下さい!
やっぱり死にたくない!!!
【カンニング・どーよ 結合】
733 :
釜飯:04/09/14 03:19:27
今回は以上です。
728の最初の「こ」が抜けてしまいました。
釜飯さん乙です。
ブチキレ中島w
続き期待してます。
釜飯さん乙。竹山の武器がシャベルなのが異様にワロタ。
そういえばカンニングって今まで出てきて無かったんだね。意外。
>>601 「田中……」
かすれた声で発せられたその言葉は驚きと困惑のイントネーションを含んで
廃墟の一室という小さな空間に大きく響いた。
いささか演出過剰な登場を果たした田中は、驚きを隠すこともせず呆けた顔の
水口を見ると何がそんなに可笑しいのか「クックックッ」と肩を揺らしながら笑い、
しかし水口の顔に露骨に怪訝な表情が浮かんだことに気付くと「あっ、気に障りましたか?
すいません」と柔らかい物腰でペコリと頭をさげる。スムーズな一連の動作。
その落ち着きはらった言動が逆に不気味さを与えている事に自覚はあるのだろうか?
水口は混乱する頭を落ち着かせようと現状の把握に努めると、怪訝な表情を崩さず
「なんやねん?」と問いかける。言葉はその一言で十全だった。
全ての感情や疑問がその「なんやねん?」に集約されている。
しかし田中はその問いに答える気はないらしくコツコツと足音を立てながら近づいてくると
「別に水口さんに危害を与えようとか考えてないんで安心してください」と云って
目をすっと細めた。ヒョロリと頼りない体つきと顔つきに似合わない自信に満ちた口調と
面持ちが、それを見る者に不均衡さと曖昧な違和感を覚えさせる。
田中は口元だけフッと綻ばせると「水口さんにも参加して欲しいんです」と云った。
「参加?」
「信じてください」
「宗教の勧誘か?」
「そうですねぇ…。残念ですけどそう思われても仕方ないでしょうね。
でも宗教とかそんなんじゃないんで安心してください」
「なに企んでんねん?」
「企んでるなんて人聞きの悪いこと言わんといてくださいよぉ。何も企んでませんって。
ただ楽しい計画に水口さんも参加してもらおうと思ってるだけですよ?」
「悪いけど自分らに付き合ってられるほど暇ちゃうねん」
そんな水口の言葉を受け、それまで善意的で穏やかだった田中の顔にニタリと……
確信的な嘲笑が浮かぶ。そしてその薄笑いを絶やさないまま田中は癪に障ることを
意図しているであろう…どこか演技がかった挑発的な態度をとると、声を裏返らせながら
「逃げるんですかぁ〜?」
……と云った。その一言は一瞬にしてその場の空気を凍りつかせる。
いつもの水口なら「どないしてん、お前?」で笑って流せたかもしれない。
でも【いつも】と呼ぶには現状は異常をきたし過ぎていたし、一向に全貌が見えない会話にも
いい加減イライラしていた。水口自身そんな「あざとさ」を見逃せないほど神経質に
なっていた感は否めない。田中の一言は十分過ぎるほどの威力を以って、それでなくても
ささくれ立っている水口の神経を逆撫ですると逆鱗に触れる。
「なんやねん、お前!」
その言葉と共に水口は乱暴に田中の襟首につかみかかるとグイッと上に力を加えた。
大浦が慌てて止めに入るが止まらない。知ったことか!
しかし、そんな水口も数分後には自分の行動を思いっきり後悔していた。
やっぱり暴力はあかん。あかんよ、ほんまに。……というのも、あれだけ強気な発言を
豪語していたわりに襟首をつかまれた田中はビクッと体を強張らせ畏縮するとオロオロと
蚊の鳴くような声で「す、すいません。すいません」と繰り返した。
その姿があまりに脆弱で同情を誘うものだったので拍子抜けし、同時に罪悪感に苛まれると
「どないやねん」と言って掴んでいた手を慌てて離したが、顔を紅潮させた田中は
「うっ……ケホケホ」と大袈裟なほど咳き込むと「大丈夫か?」と背中をさする水口に対し
「あっ、はい…大丈夫です。ただ水口さんに話を聞いてもらいたかっただけなんです……」と
申し訳なさそうにヒョロヒョロと頭をさげ「水口さんは生き残りたくないですか?」と続けた。
正直もうそんな話は聞きたくなかったしウンザリだったが何となく悪いことをした気分に
なっていた水口はここで話を聞いてやらなければ自分が悪人みたいではないか……と観念し
「もう……そんな話したいんやったら話しいや」と疲れた様子で田中の話を聞かなければ
いけない破目になる。『なんか腑に落ちひんわー』と思ったが「あっ、いいんですか?」と
嬉しそうにしている田中を見たらどうでも良くなった。はぁ……しんど……。
(――――――田中の話)
「えっとですね〜……水口さんも気付いてると思いますが、
このプログラムには致命的な欠点があります。わかります?」
「わからん。なに?」
「ここに集められた芸人の数が多すぎるという事です。
不謹慎な話、死亡者を告げる放送も途中から数えるのが億劫になって止めました」
田中の言葉に水口は小さく頷く。その意見に異論はない。実際、水口も放送があると
自分の知っている名前・親しい名前が出てこないかだけに注意を傾け人数なんて
もう数えていない。
「この殺し合い…戦い…試合…生き残り…まぁ、なんて呼んでもいいんですけど
それに大切なことは【勝つ】ことじゃなく【負けない】ことなんです。
裏を返せば別に負けなければ勝つ必要もないんです。
そしてこの場合【負けない】≒【死ななければ】=【生き残れる】
死なないためには……一人より何人かでいた方がいいと思いません?」
「でも、そんなん言うても生き残れるのは……」
「そう、一人です。でもさっき言ったようにこの島には芸人の数が多すぎますからね。
本当に最後の一人……一人以外の人間が全員死ぬまでにどれくらいの時間が掛かると思います?
実際結構な速度で人が死んでいってますけど、それでもある程度時間がかかると思っていいはずです。
もしかしたら……どこかで打ち切られる可能性だってゼロじゃないですし、ここに集められたぶんの
芸人が本土でどういう扱いになってるのか分からないですけど、これだけの数が向こうの世界で
いっせいに消えたことになってたら誰だっておかしいと思うでしょ?家族やファンの人達だって
黙ってないと思いますよ。憶測ですけどね。そう考えたらもしかしたら希望だってあるかもしれない。
ここに連れてこられる前……よく「死にたい」とか「消えてしまいたい」とか、別に死にたいなんて
これっぽちも思ってないのに口にして、それを免罪符にしていた事がありました。
でも今は死を想定するより生を紡ぎたいという概念のもとに動いています。人は一人じゃ生きれません。
そういう計画です。今はまだ打ち明けることは出来ませんけど……でも必ず【何か】を変えることに
なります。【何か】を……」
それから田中は一体どのくらい喋ったのだろう?
ハッキリは分からないが「シラフでもこんな喋る奴やったんや?」と半ば感心を覚えるほど、
かなりの時間しゃべり続けた。そして水口はといえば場違いなほどノンビリと
『今日コイツよう喋るな〜…』なんて考えながら饒舌に話し続ける田中をただボーっと眺め、
もうほとんど話も聞いていなかった。
最初の15分はまだ真剣に耳を傾けていたし田中の云いたいことも分からないでもなかった。
しかし確信的な部分が意図的にはぐらかされている事に気づき、表面上の絵空事な説明が
続くようになってからは聞く気も失せた。そもそも水口の経験上、あまり饒舌に喋る奴は信用できない。
それは水口自身が嘘をついた時や焦ったときに必要以上によく喋る癖がある…という
自分のことを棚に上げた教訓ではあったが、あながち的外れな持論でもないはずだ。
水口は、まだ喋り続けている田中を「悪いけど」という言葉で遮ると「やっぱり遠慮しとくわ。
さっきも言うたけど暇ちゃうねん。相方も探さなあかんし」と淡々とした口調で断り、
踵を返すと足早に出口へと向かった。しかし………
「待ってください!」
その一言が水口の足を止める。もしこの「待ってください!」が田中の言葉だったなら
恐らく水口も足を止めることはなかっただろう……しかし、水口を引き止めたのは
田中ではなく大浦だった。そしてその呼び止める声は「死にたくない」と訴えかけた
あの時と同じ響きを持っていた。
「待ってくださいよ。お願いします、水口さん」
「そんなん言われても……」
「じゃあ、こうしましょ!どうせ、もう暗いっすし今日はここで
一泊してってくださいよ。明日落ち着いて話しましょ?
それでダメなら諦めますから。一眠りしてから本坊さんを探しても遅くないでしょ」
悪い話じゃない。日はもう沈み、コバルトグリーンの闇が辺りを包み始めていた。
闇は刻一刻と深さを増していくだろう。5人もいれば交代制で見張りをすれば
1人でいるよりずっと精神的にも肉体的にも安全に安心して寝れるに違いない(おまけに
『こん中やったら一番先輩やし、あわよくば他の奴らに見張り任して朝まで寝れるわ』という
打算的な考えも頭をよぎった)
しかし本当は寝れるとか寝れないとか…そんな事より大浦のことが気にかかっていた。
先ほどクラッシュした大浦の【死の恐怖】に対する悲痛な叫びは棘となって
まだ水口の心に深々と刺さっている……。
「……一泊だけやで?」
こうして水口は廃墟で一泊していくことになる。長い夜が始まる。
そして人が死ぬ。無常にも無情にも無上なほど残酷に。
今日はここまでです。長期放置スイマセソ…三ヶ月……(((;゚Д゚)))
そして前回レスをくださった方々ありがとうございました。
>B9さん
乙です!!
読めば読む程、情景が見えてきて感嘆しました。
個人のキャラがまんま出てますよね
読んでて思ったんですが、こないだのソラシドさんのトークに行ってたんじゃなかろうか、と。
あくまで憶測ですが。
また続き期待してます。気長に頑張ってください!!
B9さん、乙!
特徴がすごく掴めていて面白いです
マターリ続き待ってますよ〜
747 :
名無しさん:04/09/18 18:24:25
age
B9さん乙。話が本当に面白いです。
特に最後の
>無常にも無情にも無上なほど残酷に。
の言い回しがウマー!
次回も楽しみにしております。ゆっくり書いてくださいな。
わー。長く待ってた甲斐ありました。
ドキドキするなー。お疲れ様です。次回作もいつでも待ってますんで。
今日初めてこのスレ発見して過去ログも読みました。
ロザン書きたい…!と思ったのですがすでに書かれていたので、
番外編としてこっそり晒させていただきます。
ちなみにランのお二人を挟んで菅と宇治原再会という設定です。
会いたかった、殺したかった。
ゲーム開始からずっと思い続けていた相方が今、自分を見つめていた。
「すが…」
宇治原が言う。俺は笑う。やあ、ひさしぶり。俺会いたかってん、おまえに。
処理の終わった先輩お二人を踏み越えて、俺の名前を言ってから言葉を失くした宇治原の前に立つ。
俺が背伸びしたらキスでもできそうやね、うわキッショ。
しかもオマエの顔、疲れと寝不足で普段以上に死神みたいな顔しとる。おもろい。
「呼んだ?」
>>751 「おま、何してんねん…。」
宇治原の顔が崩れる。涙がダラダラ流れてあーあー鼻水まで。汚いなぁ。
俺に付けんなよ、なあ。一応俺男前ランキング上位やねんから。
「どーにもならん状況で人間がやるべきは、嘆くことより楽しむことちゃう?」
何か間違えてますか?その方が精神衛生上とってもいいことでしょう。
何か間違ってるなら教えてよ京大生。俺よりずっと頭がいい、俺よりずっとアホな、
大切な大切な、この世界でただ一人きりの相方くん。
まあオマエが何を言っても、いつもみたく丸め込む自身はあんねんけど。
さっきから泣くばかりで声も出せないヘタレな相方を抱きしめ、その体温に思わず笑いがこみ上げる。
この暖かい体に血が流れなくなり冷たくなる、それがどれだけエエもんか、オマエは知らんやろ?
>>752 「オマエは俺だけを追えばよかってん。オマエの前におる敵、俺がみーんな殺しとけば、
オマエ殺されへんやろ?時にはオマエの後回って、オマエだけは、俺が守ったる、な。」
「すが…」
いかにも搾り出した声が耳元でして、抱きしめられる。
暖かい体を感じてますか?殺人鬼の僕にも血が流れてますか?
十分味わったなら、それを全身に浴びてもっと人間というものをかみ締めればいい。
京大生宇治原くん、これも一つのお勉強ですよ。アホなオマエに教えたるわ。人間てこんなにもろいんやて。
「ほな、もう会われへんと思うけど、お元気で。」
バイバイ、と耳元で言いポケットからサバイバルナイフを取り出し付きたてる。
即座に宇治原は感動的にもまわしていた腕を放しさらには俺の腕をすり抜けて、
>>753 首から赤い水。英語では水とお湯の区別はつけないけれど何処かの国では更に氷と水とお湯、
すべてが一つの単語だったと、無駄な知識が沸いた。
参考文献・高校入試のときの国語の問題。宇治原は転校生やったから、この文章知らんやろ?
俺結構びっくりして、試験中やったけど「へぇ」って言ってもーて。
だってな、高得点取ろうと血眼になって文章読むより、楽しんで文章読んだほうが得やん?
その方が出来るやん?
どうやって動いてどこに狙いを定めれば、宇治原はどうやって動いてどう避けるか全部分かってた。
数学は得意やってんて。オマエの単純な動きなんて、全部求められるわ。
だからどうやれば、「偶然宇治原が俺に致命傷を与えるか」なんて簡単に分かったし、
ダンスは苦手でもオマエの動きに合わせればええんやから、簡単に出来た。
>>754 なに、アホみたいにまた泣いてんねん。
どーせ「殺人鬼と化した相方を止められるのは俺しかいない」とか、正義感翳してたんやろ?
殺人鬼殺せたんやから、もっと喜べや。何泣いとん。キッショい顔して。吐けるで。
自分が刺したんやから、ちゃんと見ろや。叫んでないで、なぁ。うるさいって。
「菅…っ菅ぁぁっ!!!」
>>755 「ほんま、ごめんなぁ。」
俺が芸人になりたいとか言わんかったら、京大法学部、オマエやったら主席で卒業できたんやろな。
司法試験にも一発で合格して、胸にひまわりのバッジつけて、ああ、でもオマエなら検察官かなぁ。
だってオマエ、ひまわり似合わんって。何処の世界に金色のひまわりつけた死神がおんねん。
「宇治原、生き残って、な。
ほんで、これ終わったら、オマエ、かしこやねんから、こんな国、変えたって、なぁ。
そしたら、オマエが、総理になるんかな。似合わへんて。
小泉さん見てみー?今の、時代、ルックスかて、大事、やねんて。」
宇治原が駆け寄ってきて、必死で血を止めようと傷口を手で押さえる。
「アホ、か。患部を、心臓より、高く上げて、直接圧迫と、近くの脈を、間接圧迫せな。」
聞きかじった知識が口からこぼれる。こんなん話したいんとちゃうて。
もっと。色々。何話したかってんやろ、俺。
なあ俺、自分で神様に愛された子やったと思うで?めっちゃ強運やしルックスえーし。
早死にしたりちっさいころ大っきな病気する子は「神様に愛されすぎて天使として召されるから」とか、
聞いたことあるやろ。正しく俺やん?
せやったら、もう神様は俺のこと、見放してくれたかなぁ。
子供の悪戯にしちゃ、過ぎたやろ。もう地獄に堕ちてもええやろ?
それやったらええなぁ。金色のひまわりつけた死神が、宇治原みたいな、死神来んかなぁ。
757 :
名無しさん:04/09/21 14:42:04
>>756 「菅、菅ぁ…。」
途切れた意識がふ、と戻り、ああそうや、言いたかってん。
ひとこと、うじはらに、いわな。ちゃんと、めぇみて。
なんも、まっくらでみえんけど、いわな。なあ。
かみさま、さいごに、もうちょっと、じかんをください。ひとこと、だけ、いわせてください。
「うじはらぁ…あ」
時間をくれなかった神様よりも、ひまわりのついた死神と手をつないだ。
【ロザン 死亡】
終わりです…最後の最後で上げてしまってすみません('A`;)
あと、このあと宇治原ア本でおながいします。
759 :
名無しさん:04/09/21 14:44:33
うざいわ!!氏ねや!
761 :
名無しさん:04/09/21 21:09:26
番外編ですがとてもいい作品でした。
文章がとても良かったです。
りあるキッズのその後を書いてしまったのですが、
作者さん書き込んでもおkですか?
駄目なら番外編てことでいいんですが…。
過去ログを読んだところ森三中は、
村上と大島を撃った黒澤が逃亡じゃないですか?>192
てことで、勝手に黒澤書かせていただきます。
ログ置き場から張られてあるpart8が読めないのでつじつま合わなかったらスマソ
もしアレならアボンの方向でおながいします。
黒澤は走った。何処へ、どうやってなどとは考えられない。
ただ今いる場所は怖い、逃げたい、それだけが黒澤の全神経を支配していた。
走りながら、さっき銃で打った人間は誰だったろう、と考える。
よく知っているが思い出したくない。
大切な人だったと記憶してるからなおさら、どういう間柄だったか考えたくなかった。
ただあの二人は、「男」ではなかった。
背の高い方は髪が短くて一瞬「男」だと思ったがそれを否定するに十分な大きな乳房があった。
「男は嫌男は嫌男は怖い男は怖い…!」
そう、黒澤は狂ったように繰り返す。
実際狂っているのかもしれないが、それを判断する人物は存在しない。
闇雲に走り、自覚はないが蓄積した疲労が脚を重くする。
怖くて、ただ怖くて死にたくなくて何よりここには今、彼女の最も恐れている「男」が沢山いて、
黒澤は走った。
「…っあ!!!」
>764
何かにつまづき、ようやく黒澤の脚は止まった。
恐怖に支配された彼女は再び逃げようとするが、
彼女の意思に反して、膝は愚行を嘲笑うかのようにがくがくと震えて立ち上がることすら出来ない。
「くそっ!」
苛つき脚を無理やり引っ張ろうとし、そこで今まで全く見ることのなかった地面を、黒澤は振り返って見た。
「いやぁぁぁぁっ!!男っ!!!!」
彼女の脳がそこにあったものを認識し、叫ぶ。
黒澤が躓いたのは開始早々菅に殺害された西野であった。
「男男男男…!!男は嫌男は怖い男は嫌男は怖い男は男は…っ!!!!」
奇声を上げ、黒澤は偶然落ちていた包丁(ナイフとの機能性の重複や重量などを考え
菅が西野を殺害した後に捨てたものだ)を手に取ると、
西野の死体に馬乗りになり何度も何度も、既に冷たくなった体に突き刺した。
「男はあたしを傷つける男はあたしを傷つける男は怖い男は怖い男は男は嫌い嫌い嫌い…っ!!!!」
生前、西野の女遊びが激しかったことは、黒澤も知っていた。
だからなおさら黒澤は西野を嫌悪し、
包丁を突き刺した胸の肉がミンチ状になるまで何度も何度も体に包丁を突き刺す。
回数が重なるごとに細かくなった肉片は飛び散り黒澤の顔に付着したが、
「男」を抹消することに夢中であった彼女は全く気づかずにいた。
>765
西野の胸にぽっかりと大きな穴と、その中に山積みになった肉片が出来た頃、
ようやく黒澤は深呼吸してまるで害虫を駆除したようなすがすがしい気分になった。
眼鏡にこびり付いた肉片を服のすそで拭き、西野の近くに落ちていたナップザックに手を伸ばす。
「男があたしから何かを奪おうとするならあたしが奪ってやる…男は嫌い男は嫌い…。」
ブツブツと独り言を言いながら、中身を取り出す。
中には軍手とスーパーのビニール袋が一枚入ったきりだった。
「なーんだこれっぽっち?
生前ろくなことしてない男に、まともな武器なんて支給されないか。」
そう言うとナップザックの中身から視線を外し、嘲笑うかのように西野を一瞥した。
価値のない戦利品を捨て置き立ち去ろうとする黒澤には一匹の害虫を駆除したことでついた自信があり、
先ほどのように恐怖で顔を引きつらせ奇声を上げながら走ることはしなかった。
だが、優雅に数歩歩いて踵を返す。
「だめ…まだ『男』はなくなってない、胸に穴が開いたからって、『男』はいなくならない…!!」
今度は西野の顔に背を向けて馬乗りになった黒澤は、なれない手つきでベルトを外しズボンと下着を脱がした。
>766
「コレがあるからいけないんだ、コレがあたしを傷つけるコレがこわいコレが怖いコレが…!!」
武器などは入っていなかったため興味をそそらなかった西野のナップザックから軍手を取り出し、ペニスを掴む。
女遊びが激しかった割にはずいぶん小さいと嘲笑えばそれだけで西野を傷つけられたのだろうが、
それに絶大な恐怖を感じる黒澤にそんな台詞は言うことができるはずもなく、
彼女は躊躇うことなく、包丁で根元から切り取った。
「…なぁんだ、男ってこんなにも簡単に取れるもんなんだね。」
汚物に触るように親指と人差し指でそれを持ち高く掲げ、ふるふると振ってみる黒澤の表情は、
今度こそ満ち足りた表情であった。
簡単に切り取れてしまったことで恐怖は嘘のように消え、今ではただの肉片と変わらない。
持っていた油性ペンで「西野」と名前を書き、
軍手と同じようにナップザックに入っていたビニール袋にそれを入れ、
子供のように袋を回しながら鼻歌交じりで新たな「獲物」を探し始めた。
「男は嫌い男は怖い男なんていなくなればいい
おとこなんてかんたんにけせるんだからおとこなんていなくなればいい…!」
【西野亮廣・性転換w】
西野氏はもうすでにあぼんしておりましたよ。
…あ。そういうことか…w。
勘違いしました。スマソ。
(゚∀゚)イイヨイイヨー
今後の展開が凄く楽しみですw
スレもまたイイ感じに賑わってきましたね
俺もいい加減仕上げなきゃ
>>750 とっても良かったです。
文章が綺麗で感動しました。
773 :
名無しさん:04/09/22 22:17:29
762>りあるキッズのその後ですか!?
ぜひお願いします!!
>761
文章は一気に書き上げてオタくせぇwと自分自身笑ってしまったので
そういっていただけて本当にありがたい。
>768-770
ええ、そういうことです。
>771
続き書く気はないという…w
布石はばら撒くんであと好き勝手にやれや!というのは、
撒く方も好き勝手する方も好きです。
最初から自分でやるのは偏るので激しく苦手です。
>772
ありがとうございます。
文章は(以下同文
>773
じゃあ投下させていただきます。
書き上げてみたら日本全体の行方まで絡んできて、
婦人軍団が何も出来なかったように書いてしまいましたがその辺はスルーしてください。
すみません(;´Д`)
倉庫に保管されてあるりあるの話がめちゃくちゃ好きです。
「これだけはできる」と目の前が開けてから一体何回罵倒と笑いとを浴びただろう。
安田(りあるキッズ)はぼんやりと、寝起きで頭痛の残る頭で考えた。
あの日、泣き疲れた長田(りあるキッズ)が狂ったように笑い、
残された者は残された者らしく精一杯やろうと言った日以来家には帰っていなかった。
帰ったところで軍が待ち伏せしているだろうし、そこにいるはずの「家族」はとうの昔に殺されてもういない。
見せしめ、といっても過言ではない。
家族が日本の諸悪の根源である「お笑い芸人」としてプログラムにも参加せず路上で漫才をしている。
それは現代日本において一般庶民を処刑するのに十分すぎる理由だった。
「起きたんか?」
「うん。」
硬い床のせいで疲れは取れないが、それでも思考能力を一定ラインで保つには睡眠は不可欠だ。
プログラムに参加しなかったために生き残ったお笑い芸人の「りあるキッズ」が宿泊できるホテルも宿を貸してくれる人間も、存在しない。
匿えば自分たちもろ共殺される。
無関係の人を自分たちのせいで死に追いやることはできず、二人はずっと野宿を続けていた。
初めは「劇団員のみなさん」に助けてもらい、それからは空き家や廃ビル、
時には反政府軍支部で最低限の睡眠をとり、路上ライブでのわずかな施しで飢えをしのぎ、
ただお笑いをやるためだけに生きていた。
反政府軍に入らないか、とも言われたが自分たちがやるべきことは「お笑い」であり
「クーデターを起こすこと」ではないと断った。死んでいった、同志の弔いと自らの存在のために。
>775
「ほな、行こ。向こうさんもここ、そろそろ嗅ぎ付けるころやろ。」
政府から逃げるように日本全国を転々とし、お笑いをやる。覚悟はしていたが辛い日々だった。
「なあ、今度のライブ、他の芸人のネタ、やってみーひん?」
やっと落ち着けるねぐらを見つけ、ネタ合わせをしているときに長田が言った。
「え、いややんそんなん。パクりやで。」
「ちゃーうって。パクり元なんてもうおらんし。
何より紹介やで、俺らよりおもろい人もいてましたーそんなん殺した政府許しませーんみたいな、
そんなネタ安田も書いたやろ、許しませーんて直接言わんで回りっくどい言い方のヤツ。」
長年各地を転々としたせいか、最近長田の関西弁が嘘っぽくなってる、と安田は思った。
そう思ってる自分も関西方面は政府が重点警備をしいているため長く避けていたせいもあり、怪しい。
「せやなぁ。それに俺のネタも枯渇してきよったし、相方の書くネタつまらんし…。」
「それゆーたら終わりやで安田くん。」
>776
長田が茶化して、二人は小さくわらった。大声を出したら見つかってしまう。
客前以外ではもうずっと大笑いはした記憶がなく、
それすら作り半分の笑いであるから本気で大笑いしたのはいつが最後だったろうか。
ため息を吐いて、安田が言った。
「ほんなら、誰にしよか。」
もう出会うことのない顔が次から次に思い出される。
最初こそ思い出すことすら避けていたが、今では自分たちの状況を全て受け入れ、
それを「笑い」へと昇華できるまでになっていた。
「やっぱ、ダウンタウンさんやろ。」
>777(ラッキー!
そんな生活が何年も続き、今ではお笑いを志す若者がちらほら現れたと、二人は噂で聞いた。
「お二人を追って、僕らもライブやってるんです」と握手を求めてきた若者もいた。
長田は単純に喜びかつて先輩芸人がしてくれたように若手を指導し遊びを教え、
人見知りの安田は「尊敬している」と言われるたびにちょっと戸惑い、それでもやはり嬉しかった。
だがそのような若者は現れては政府に消された。
相変わらずお笑い芸人狩りは続き、最近では生息数が少ないからとある程度数が集まるまで収容所に入れ、
定期的に小規模ではあるがプログラムを実行しているらしい。
長田も安田も運良く生き残ってはいたが、巨額の懸賞金をかけられたために何度も危ない目にあい、
そのたびに匿ってくれた「ファン」と名乗るものや後輩は、二人の前から次々と消えていった。
「何のために、俺らお笑いやってんねやろ。犠牲の上に立って、やる価値あるんか?」
長田がそう言う度に安田は叱責し、犠牲があったからこそもっと多くの人間を笑かさなあかんやろ、
と泣きながら言った。
>778
長田はゆっくり、息を吸い、吐いた。
閉じていた目を開き、
かつて吉本興業本社ビルが建てられていた場所に作られた相方の墓と仲間の慰霊碑に花を添えた。
少しの間に長い夢を見たようで、空の色がまぶしく目を細める。
深く刻まれた皺が、いっそう深く長く、長田の顔の上に人生を描いた。
安田の亡骸はそこには埋葬されていず、この小さな島国のどこか土の下で、まだ眠っている。
掘り起こしたい気は山々だが、長田の記憶にそこがどこだったかは刻まれていない。
あの日、いつも以上に機嫌が悪そうに見えた安田にあえて声をかけなかったのは誰でもない、自分だった。
あのときもっと早く声をかけていれば、と悔やむことを何度繰り返したかは分からないが、
最近ではそれもしなくなった。
代わりに、思い出すようにしている。ああすればよかった、などという無駄なことは思わず、ただ、思い出す。
あの日、何も言わずにずっとうつむいたままの安田が口を開き、震える声で言った言葉だけは、
長田はあの当時していたネタを忘れた今でもまだ、一語一句間違えずに言える。
>779
「人間はな、周りの人間が笑うとる中で泣きながら生まれて、
周りの人間みーんなが泣いとる中、笑って死んでいくんやで。
笑いは、『何かが生まれる』とき、生まれんねや。
『何かがなくなる』とき、生まれるもんちゃうで。
死ぬとき笑えんのは死ぬヤツだけや。
泣きながら死んでいく芸人を見て笑うのは、間違うとる。
『笑い』は生まな。せやから、長田、ずぅっと、生み続けーや?」
「安田?」
そこで長田は、安田の肌の色が青白いことに気づき頬にふれた。冷たい。
見ればずいぶん派手な赤いシャツだと思っていたシャツは、血で濡れていた。
「安田ぁっ!!?」
>780
駆け寄り肩を抱き、既に意識を半分手放しかけている安田を乱暴に振る。
細い体は折れそうで、長田の手の下で軋む音がした。
「おまえは、生み続けーや?俺が死んでも、お笑い、ちゃんと続けんねで?」
「何ゆーてん…つか、どしたんこれ、なぁ。
…っなぁ、オマエやん、俺が書くネタおもろないっていつも言ってたんは…
俺、なんもおもろいことできんって。オマエがいっちゃん、知っとるやろ?
オマエがおらんかったら、俺、何にツッコんでええかわからんやろがい!!」
「あ、ほか。逃げぇ、長田。すぐ、追手も、来るて。
こない血ぃ流れて、ここもバレるから、なぁ。新しい相方でも探したら、よろしいがな。」
「アホはおまえじゃアホぅ!!おまっ、一人で寝れんやろ?死んだら一人やで、なあ!!安田ぁっ!!
俺の相方は、オマエじゃないと、あかんねん…なぁ、こんなときまで勝手に、逝って、わがままゆーて。
解散しましょそうかいなで、すむ関係ちゃうやろ俺ら、なぁ!!」
>781
「あんとき、俺にもーちょい力あったら、今頃オマエここに眠っとったんかなぁ。」
長田の目から涙が流れた。
あの日から数日後クーデターが起こり、腐りきった政府は崩壊した。
社会の害悪とされていた「お笑い芸人」という存在は
「笑い」という人間らしい感情を生む存在として認められ、圧力でもみ消された芸人たちは尊い犠牲として今、
長田の立つ場所に慰霊碑とともに安らかに眠ることの出来る場所を与えられた。
しかしここは形だけで、前政府は証拠隠滅の一環としてプログラムの行われた島を全て海に沈め、
回収された死体も破棄したため、亡くなった芸人の骨は一本たりともここに埋められてはいない。
「でもなぁ、オマエがあともーちょい頑張っとったら、今頃大御所でもてはやされとったで、俺ら。」
長田は「お笑い」が解禁された日に芸人を辞め、
自分は決して歩むことはないだろうと思っていた「普通の生活」を過ごし年を重ねた。
何人もが長田を引き止めたが、あとを継ぐ若者は何人も生まれるだろうし、何より相方がいない。
「相方探して、しんどいんやで、かなり。」
それから無意識に「お笑い」を避けてはいたが、
今年小学生にあがる孫が「お笑い芸人になりたい」と言った時には笑ってしまった。
家系からは考えられない、ずいぶんと真面目だが毒づいた子供で視力が悪い、安田によく似た子だ。
彼は誰を相方に選ぶのだろう。
できれば自分みたいな、年齢の割には女好きなマセたガキがええなぁ、と長田はぼんやり思う。
「そろそろ、そっち行ってもええか?」
心残りと言えば孫のボケがどんなものかが気になるが、暖かい光に目を細めた長田は幸せそうに、笑った。