テイルズ オブ バトルロワイアル Part18

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1名無しさん@お腹いっぱい。
テイルズシリーズのキャラクターでバトルロワイアルが開催されたら、
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。参加資格は全員にあります。
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。
これはあくまで二次創作企画であり、ナムコ及びバンダイナムコゲームス等とは一切関係ありません。
それを踏まえて、みんなで盛り上げていきましょう。

詳しい説明は>>2以降。

【過去スレ】
テイルズ オブ バトルロワイアル
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1129562230
テイルズ オブ バトルロワイアル Part2
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1132857754/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part3
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1137053297/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part4
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1138107750
テイルズ オブ バトルロワイアル Part5
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1140905943
テイルズ オブ バトルロワイアル Part6
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1147343274
テイルズ オブ バトルロワイアル Part7
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1152448443/
テイルズオブバトルロワイアル Part8
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1160729276/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part9
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1171859709/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part10
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1188467446/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part11
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1192004197/l50
テイルズ オブ バトルロワイアル Part12
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1197700092/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part13
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1204565246/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part14
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1213507180/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part15
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1224925862/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part16
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1231916923/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part17
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1286810498/

【関連スレ】
テイルズオブバトルロワイアル2nd Part12
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1283236233/


【したらば避難所】
〔PC〕http://jbbs.livedoor.jp/otaku/5639/
〔携帯〕http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/otaku/5639/

【まとめサイト】
PC http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/
携帯 http://www.geocities.jp/tobr_1/index.html
2名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 14:58:26 ID:wm+8j+r30
----基本ルール----
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができ、加えて願いを一つ何でも叶えてもらえる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去12時間に死んだキャラ名」
 「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。

----「首輪」と禁止エリアについて----
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去12時間に死んだキャラ名」
「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。

----「首輪」と禁止エリアについて----
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
 首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
 主催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
 この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
 24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。 
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
 下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。
 プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
 たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止能力が使えるようにもならない。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 禁止エリアは3時間ごとに1エリアづつ増えていく。

----スタート時の持ち物----
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を配給され、「ザック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「着火器具、携帯ランタン」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「支給品」
 「ザック」→他の荷物を運ぶための小さいザック。      
 四次元構造になっており、参加者以外ならどんな大きさ、量でも入れることができる。
 「地図」 → 舞台となるフィールドの地図。禁止エリアは自分で書き込む必要がある。
 「コンパス」 → 普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「着火器具、携帯ランタン」 →灯り。油は切れない。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
 「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
 「写真付き名簿」→全ての参加キャラの写真と名前がのっている。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「支給品」 → 何かのアイテムが1〜3つ入っている。内容はランダム。
※「ランダムアイテム」は作者が「作品中のアイテム」と
 「現実の日常品もしくは武器、火器」の中から自由に選んでください。
 銃弾や矢玉の残弾は明記するようにしてください。
 必ずしもザックに入るサイズである必要はありません。
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
 ハズレアイテムも多く出しすぎると顰蹙を買います。空気を読んで出しましょう。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 14:59:42 ID:wm+8j+r30
----制限について----
 身体能力、攻撃能力については基本的にありません。
 (ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合があります)
 治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法は発動すらしません。
 キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限されます。
 しかしステータス異常回復は普通に行えます。
 その他、時空間移動能力なども使用不可となっています。
 MPを消費するということは精神的に消耗するということです。
 全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内ということでお願いします。

----ボスキャラの能力制限について----
 ラスボスキャラや、ラスボスキャラ相当の実力を持つキャラは、他の悪役キャラと一線を画す、
 いわゆる「ラスボス特権」の強大な特殊能力は使用禁止。
 これに該当するのは
*ダオスの時間転移能力、
*ミトスのエターナルソード&オリジンとの契約、
*シャーリィのメルネス化、
*マウリッツのソウガとの融合、
 など。もちろんいわゆる「第二形態」以降への変身も禁止される。
 ただしこれに該当しない技や魔法は、TPが尽きるまで自由に使える。
 ダオスはダオスレーザーやダオスコレダーなどを自在に操れるし、ミトスは短距離なら瞬間移動も可能。
 シャーリィやマウリッツも爪術は全て使用OK。

----武器による特技、奥義について----
 格闘系キャラはほぼ制限なし。通常通り使用可能。ティトレイの樹砲閃などは、武器が必要になので使用不能。
 その他の武器を用いて戦う前衛キャラには制限がかかる。

 虎牙破斬や秋沙雨など、闘気を放射しないタイプの技は使用不能。
 魔神剣や獅子戦吼など、闘気を放射するタイプの技は不慣れなため十分な威力は出ないが使用可能。
 (ただし格闘系キャラの使う魔神拳、獅子戦吼などはこの枠から外れ、通常通り使用可能)
 チェスターの屠龍のような、純粋な闘気を射出している(ように見える)技は、威力不十分ながら使用可能。
 P仕様の閃空裂破など、両者の複合型の技の場合、闘気の部分によるダメージのみ有効。
 またチェスターの弓術やモーゼスの爪術のような、闘気をまとわせた物体で射撃を行うタイプの技も使用不能。

 武器は、ロワ会場にあるありあわせの物での代用は可能。
 木の枝を剣として扱えば技は通常通り発動でき、尖った石ころをダーツ(投げ矢)に見立て、投げて弓術を使うことも出来る。
 しかし、ありあわせの代用品の耐久性は低く、本来の技の威力は当然出せない。

----晶術、爪術、フォルスなど魔法について----
 攻撃系魔法は普通に使える、威力も作中程度。ただし当然、TPを消費。
 回復系魔法は作中の1/10程度の効力しかないが、使えるし効果も有る。治癒功なども同じ。
 魔法は丸腰でも発動は可能だが威力はかなり落ちる。治癒功などに関しては制限を受けない格闘系なので問題なく使える。
 (魔力を持つ)武器があった方が威力は上がる。
 当然、上質な武器、得意武器ならば効果、威力もアップ。

----時間停止魔法について----
 ミントのタイムストップ、ミトスのイノセント・ゼロなどの時間停止魔法は通常通り有効。
 効果範囲は普通の全体攻撃魔法と同じく、魔法を用いたキャラの視界内とする。
 本来時間停止魔法に抵抗力を持つボスキャラにも、このロワ中では効果がある。

----TPの自然回復----
 ロワ会場内では、競技の円滑化のために、休息によってTPがかなりの速度で回復する。
 回復スピードは、1時間の休息につき最大TPの10%程度を目安として描写すること。
 なおここでいう休息とは、一カ所でじっと座っていたり横になっていたりする事を指す。
 睡眠を取れば、回復スピードはさらに2倍になる。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 15:02:46 ID:wm+8j+r30
----その他----
*秘奥義はよっぽどのピンチのときのみ一度だけ使用可能。使用後はTP大幅消費、加えて疲労が伴う。
 ただし、基本的に作中の条件も満たす必要がある(ロイドはマテリアルブレードを装備していないと使用出来ない等)。

*作中の進め方によって使える魔法、技が異なるキャラ(E、Sキャラ)は、
 初登場時(最初に魔法を使うとき)に断定させておくこと。
 断定させた後は、それ以外の魔法、技は使えない。

*またTOLキャラのクライマックスモードも一人一回の秘奥義扱いとする。


【参加者一覧】 ※アナザールート版
TOP(ファンタジア)  :1/10名→○クレス・アルベイン/●ミント・アドネード/●チェスター・バークライト/●アーチェ・クライン/●藤林すず
                  ●デミテル/●ダオス/●エドワード・D・モリスン/●ジェストーナ/●アミィ・バークライト
TOD(デスティニー)  :1/8名→●スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/●リオン・マグナス/●マリー・エージェント/●マイティ・コングマン/●ジョニー・シデン
                  ●マリアン・フュステル/○グリッド
TOD2(デスティニー2) :1/6名→○カイル・デュナミス/●リアラ/●ロニ・デュナミス/●ジューダス/●ハロルド・ベルセリオス/●バルバトス・ゲーティア
TOE(エターニア)    :2/6名→●リッド・ハーシェル/●ファラ・エルステッド/○キール・ツァイベル/○メルディ/●ヒアデス/●カトリーヌ
TOS(シンフォニア) :1/11名→●ロイド・アーヴィング/○コレット・ブルーネル/●ジーニアス・セイジ/●クラトス・アウリオン/●藤林しいな/●ゼロス・ワイルダー
             ●ユアン/●マグニス/●ミトス/●マーテル/●パルマコスタの首コキャ男性
TOR(リバース)    :2/5名→○ヴェイグ・リュングベル/○ティトレイ・クロウ/●サレ/●トーマ/●ポプラおばさん
TOL(レジェンディア)  :0/8名→●セネル・クーリッジ/●シャーリィ・フェンネス/●モーゼス・シャンドル/●ジェイ/●ミミー
                  ●マウリッツ/●ソロン/●カッシェル
TOF(ファンダム)   :0/1名→●プリムラ・ロッソ

●=死亡 ○=生存 合計8/55

禁止エリア

現在までのもの
B4 E7 G1 H6 F8 B7 G5 B2 A3 E4 D1 C8 F5 D4 C5 B3

21:00…E1 0:00…C3 3:00…F2 6:00…H3


【地図】
〔PC〕http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/858.jpg
〔携帯〕http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/11769.jpg
5名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 15:03:29 ID:wm+8j+r30
【書き手の心得】

1、コテは厳禁。
(自作自演で複数人が参加しているように見せるのも、リレーを続ける上では有効なテク)
2、話が破綻しそうになったら即座に修正。
(無茶な展開でバトンを渡されても、焦らず早め早めの辻褄合わせで収拾を図ろう)
3、自分を通しすぎない。
(考えていた伏線、展開がオジャンにされても、それにあまり拘りすぎないこと)
4、リレー小説は度量と寛容。
(例え文章がアレで、内容がアレだとしても簡単にスルーや批判的な発言をしない。注文が多いスレは間違いなく寂れます)
5、流れを無視しない。
(過去レスに一通り目を通すのは、最低限のマナーです)


〔基本〕バトロワSSリレーのガイドライン
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
6名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 15:04:10 ID:wm+8j+r30
━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活はどんな形でも認めません。
※新参加キャラクターの追加は一切認めません。
※書き込みされる方はスレ内を検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。(CTRL+F、Macならコマンド+F)
※参加者の死亡があればレス末に必ず【○○死亡】【残り○○人】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※具体的な時間表記は書く必要はありません。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。

※基本的なロワスレ用語集
 マーダー:ゲームに乗って『積極的』に殺人を犯す人物。
 ステルスマーダー:ゲームに乗ってない振りをして仲間になり、隙を突く謀略系マーダー。
 扇動マーダー:自らは手を下さず他者の間に不協和音を振りまく。ステルスマーダーの派生系。
 ジョーカー:ゲームの円滑的進行のために主催者側が用意、もしくは参加者の中からスカウトしたマーダー。
 リピーター:前回のロワに参加していたという設定の人。
 配給品:ゲーム開始時に主催者側から参加者に配られる基本的な配給品。地図や食料など。
 支給品:強力な武器から使えない物までその差は大きい。   
      またデフォルトで武器を持っているキャラはまず没収される。
 放送:主催者側から毎日定時に行われるアナウンス。  
     その間に死んだ参加者や禁止エリアの発表など、ゲーム中に参加者が得られる唯一の情報源。
 禁止エリア:立ち入ると首輪が爆発する主催者側が定めた区域。     
         生存者の減少、時間の経過と共に拡大していくケースが多い。
 主催者:文字通りゲームの主催者。二次ロワの場合、強力な力を持つ場合が多い。
 首輪:首輪ではない場合もある。これがあるから皆逆らえない
 恋愛:死亡フラグ。
 見せしめ:お約束。最初のルール説明の時に主催者に反抗して殺される人。
 拡声器:お約束。主に脱出の為に仲間を募るのに使われるが、大抵はマーダーを呼び寄せて失敗する。
7>>5修正版(参加者名簿):2010/12/18(土) 15:05:09 ID:wm+8j+r30
【参加者一覧】 ※アナザールート版
TOP(ファンタジア)  :1/10名→○クレス・アルベイン/●ミント・アドネード/●チェスター・バークライト/●アーチェ・クライン/●藤林すず
                  ●デミテル/●ダオス/●エドワード・D・モリスン/●ジェストーナ/●アミィ・バークライト
TOD(デスティニー)  :0/7名→●スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/●リオン・マグナス/●マリー・エージェント/●マイティ・コングマン/●ジョニー・シデン
                  ●マリアン・フュステル
TOD2(デスティニー2) :0/5名→●リアラ/●ロニ・デュナミス/●ジューダス/●ハロルド・ベルセリオス/●バルバトス・ゲーティア
TOE(エターニア)    :0/4名→●リッド・ハーシェル/●ファラ・エルステッド/●ヒアデス/●カトリーヌ
TOS(シンフォニア) :0/10名→●ロイド・アーヴィング/●ジーニアス・セイジ/●クラトス・アウリオン/●藤林しいな/●ゼロス・ワイルダー
             ●ユアン/●マグニス/●ミトス/●マーテル/●パルマコスタの首コキャ男性
TOR(リバース)    :0/3名→●サレ/●トーマ/●ポプラおばさん
TOL(レジェンディア)  :0/8名→●セネル・クーリッジ/●シャーリィ・フェンネス/●モーゼス・シャンドル/●ジェイ/●ミミー
                  ●マウリッツ/●ソロン/●カッシェル
TOF(ファンダム)   :0/1名→●プリムラ・ロッソ

●=死亡 ○=生存 合計1/48 【優勝:クレス・アルベイン】

禁止エリア

現在までのもの
B4 E7 G1 H6 F8 B7 G5 B2 A3 E4 D1 C8 F5 D4 C5 B3

21:00…E1
00:00…C3
03:00…F2
06:00…H3
8名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 15:05:58 ID:wm+8j+r30
以上、テンプレ終了です。
前スレのリロードをしていなかったので、一箇所ミスしています。
そこについては、お手数をかけますが次スレで修正いただければと思います。
9名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 16:29:06 ID:2lL1kA9j0
世界日報(統一教会の新聞)と自民党の見解が同じな件
http://www.worldtimes.co.jp/syasetu/main.html
2010年12月17日性描写規制/遅きに失した都条例改正
http://www.worldtimes.co.jp/syasetu/sh101217.htm
2010年11月29日児童ポルノ規制/子供保護の観点で厳しく
2010年9月19日ネット有害情報/罰則規定を設け厳しく対応を


「マンガ規制条例」の裏に蠢く「警察利権」
竹花豊、青少年・治安対策本部、倉田潤、桜井美香
週刊朝日2010年12月24日号
http://megalodon.jp/2010-1217-1154-21/www.seospy.net/src/up2683.jpg
http://megalodon.jp/2010-1217-1151-29/www.seospy.net/src/up2682.jpg


石原慎太郎が画策するマンガ規制条例可決の愚
苦情は月2・5件 被害実態もない 
戦前の言論規制は「エログロ」から

この条例案の陣頭指揮をとる、都青少年・治安対策本部についても、
「出版物の規制を、警察庁の出向者が加わった部署が担うのはおかしい。
かつて、青少年条例は生活文化局の所管でした。
少なくとも、治安組織から条例の所管を外し、別の部局に配置換えすべきです」(長岡氏)

ちなみに、現在、都青少年・治安対策本部長を務める倉田潤氏は、
06年に公職選挙法違反の架空調書をデッチあげた志布志事件(03年)が発覚した際に、
鹿児島県警本部長を務め「自白の強要はなかった」と県議会で答弁していた人物だ。
戦前、治安維持法下による言論規制は、漫画本などの「エログロ・ナンセンス」の取り締まりから始まった。
週刊朝日2010.12.17
http://megalodon.jp/2010-1207-0912-46/www.seospy.net/src/up2550.jpg
http://megalodon.jp/2010-1207-0907-10/www.seospy.net/src/up2548.jpg
10名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 22:45:18 ID:l02z77em0
改めて新スレ立てていただきありがとうございました。
それではいささか急ではありますが11時から投下を始めたいと思います。
お気づきの方でお手隙でおれば、支援いただければ幸いです。
11END of the Game ー爪弾きミニゲームー  1:2010/12/18(土) 23:01:25 ID:l02z77em0
O.参加者を配置する8×8の盤を「会場」、王を配置する1×1の盤を「本拠地(真)」と以後便宜的に定義する。

第六戦noticeより
1.「会場」と「本拠地」の二つの盤は連続的に隣接していない。

(1)式より
2.特殊移動を除き、駒を「本拠地」に移動させることはできない。

(2)式より
3.この特殊移動を「転移」と定義する。

第六戦noticeより
4.駒を盤の外側へ移動させる場合は“絶対に”「本拠地(真)」を通らなければならない。


(3)(4)式より
5.駒を「会場」の外へ移動させる場合は「会場」より「転移」を行い「本拠地(真)」へ移動しなければならない。




第一戦及び第六戦noticeより
6.王を除く全ての駒の初期配置は「会場」のCD45の2×2マスである。

第一戦及び第六戦noticeより
7.この4マスはその構成が「本拠地(真)」と相似している。

(7)式より
8.この4マスを「本拠地(偽)」と定義する。

(6)(8)式より
9.王を除く全ての駒の初期配置は「本拠地(偽)」である。

主催情報より
10.王を除く全ての駒は初期配置以前に「本拠地(真)」を見たことは無い。

ここで第六戦noticeより
11.「転移」による移動を行う場合「現在位置」と「転移先位置」の2マスを確定させなければならない。

よって(9)(10)(11)式より
12.王を除く全ての駒が「現在位置:会場」より「転移先位置:本拠地」へ「転移」しようとした場合
   「本拠地(真)」の位置を知らない駒の「転移先位置」は自動的に「本拠地(偽)」になる。

(12)式より
13.「本拠地(真)」に一度でも配置されていない駒は「本拠地(真)」に「転移」できない。

(5)(13)式より
14.「本拠地(真)」に一度でも配置されていない駒は「会場」の外へ移動できない。


故に
15.【「本拠地(真)」に一度でも配置されていない王を除く全ての駒は「脱出」出来ない。】/ QED



「つまり――――――――――どういうことなんでしょうか……」

サイグローグはそういって、白煙と共に暗い天井へとぼそり呟いた。
12END of the Game −爪弾きミニゲーム−  2:2010/12/18(土) 23:03:18 ID:l02z77em0
「とまあ、そんなことも最初は思いましたがね……この紋章を頂いた時は……
 ……盤上の駒は、誰一人として脱出不可能……まあ、こんな面倒な手順を踏まずとも……平たく言ってしまえば、
 【本拠地を通らなければ脱出できない】【本拠地に入ったことの無い駒は本拠地を知らない】【本拠地を知らなければ会場から本拠地には入れない】
 この3つの組み合わせというだけなのですがね…………」

そう呟くサイグローグは煙管を左手で弄び、薄暗い部屋の中に紫煙をくゆらせている。
本来の絶望側プレイヤーであるベルセリオスが構築した55の駒を閉じ込める鉄檻を眺めながら、道化は溜息をついた。
1つ1つは簡単に抜けることができるのに、3つ同時には絶対に抜けられない悪魔の監獄。
超技術フィールドでも膨大な監視でもない、たった3つの公式の組み合わせによって構成された王を守る論理の城塞。
エンブレムを手にし主催側の情報を知った今だからこそ、ジャッジでもあるサイグローグはその檻の強固さを実感する。
ベルセリオスは本気で駒を閉じ込めるつもりだったのだ。王に反抗はおろか、あの盤上から出してやる気さえない。
執念さえ感じるほどの完璧主義には、サイグローグでさえ『何もそこまでしなくてもいいのに』という想いを禁じえない。
水の一滴さえ漏らさないこの城壁は、一体王を何から守る為のものなのか。一体何を逃がさないようにするためのものなのか。
道化すらそう疑問を抱きたくなるほど、このシンプルな迷宮は完璧だった。
 
「私が見る限りでも、抜け穴のない……さながら出口無きラビリンス―――――――――――――――だったはずなのですが」

そう。完璧“だった”。つい先ほどまで―――“更なる迷宮が現れるまでは”。
サイグローグが視線を下げると、紫煙の向こうに見慣れた盤があった。
8×8の、何度見たかもわからない世界、唯一今までと違うのは“そこに駒が一つしか残っていない”ということだけ。
「少しはしゃぎ過ぎてしまいましたか……完全に虚を突かれてしまいました……いやはや、喰えないカミサマです……」
サイグローグが王を動かして放送の一手を行っている間に、全てが変わり、そして終わってしまった。
一体何が起こったのか、何故こうなったのか、こんなの有り得るのか。
様々な“謎”が盤上を蠢き、王と法を司るサイグローグでさえその全容を見渡すことができなくなっている。
「真逆、放送に被せてくるとは思いもしませんでした……
 例えるならば私がツモ山からじゃんぱいを掴んで捨て牌を切るまでに7枚全部をすり替えられたようなもの……
 いやはや、とんだギャンブラーがいたものです……」
迷宮封印<パズルブース>。それが人間の作り上げた絶対の檻に対する、女神の答えだった。
いや、これは最早答えとは呼べないだろう。むしろその真逆……“謎”の極致だ。
『この密室からは絶対に脱出できません。どうやれば脱出できるでしょう?』という問いに対し
『私は脱出しました。さて、どうやって脱出したでしょう?』と応じたのだから。
「場所が場所ならば『質問を質問で返すなあーっ!!』と怒っても良いのでしょうが……神様は学校を出ていないでしょうしねえ……」
サイグローグは煙を目いっぱいに吸い込んで、三度大きな溜息と共に白煙を吐く。
これではまるでトンチだ。屏風の中の虎を捕まえさせるはずが、逆に屏風に消えた虎を探す羽目になっている。
絶望側が用意した謎を更に大きな謎で覆い隠すとは。放送という絶望手によって隠された神の一手―――――それは正しく“神隠し”だった。

「という訳でグリューネ様……私、とんと分かりませぬ……そろそろ、答えを教えて頂けませんでしょうか……?」
13名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:04:33 ID:SkxBARbw0
14名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:04:53 ID:J6AtjGUc0
15END of the Game −爪弾きミニゲーム−  3:2010/12/18(土) 23:04:58 ID:l02z77em0
そう言ってサイグローグが顔を上げ、盤面から視線を対面へと移す。
そこには、女神はいなかった。代わりに存在感を発揮しているのは、女神が要るべき場所に屹立する一体の像だった。
木目と金属の意匠によって組み上げられた、両腕で自らの胸を抱きしめる聖母マリアの彫像。
聖母が抱擁せしは、咎を持った罪人。その茨の腕に抱かれた罪人は感激のあまり絶叫と自ら血液と共に罪を洗い流す。
故に人はそれをこう呼ぶ。アイゼルネ・ユングフラウ――――――鉄の処女<アイアンメイデン>と。
「鉄の処女といっても、実際は木で出来ているモノが殆どなんですが……その中でも随分と出来の良い品です……通販で買った甲斐がありました……」
何処から持ちだしたのか、何時の間に運び込んだのか。そんなことさえも馬鹿らしくなるほど中世の拷問具はその存在を誇示していた。
通販での謳い文句は縁結び・恋愛運上昇の御守りだといったか。だが、そんな華やいだ効能など消し飛んでしまうほど、その像は赤く染まっていた。
サイグローグが指を弾くと、ガシンと処女が震え、聖母の瞳や扉の隙間からじわりと紅い汁が血涙の如く漏れ出す。
像の股下を大きく濡らす血の池は、とてもではないが1回や2回で出来るものではない。既に処女は10回以上涙を流している。
例え処女の中が二重扉になっていようが、そもそも棘が付いていなかろうが道化にとっては関係無かった。
閉ざされている限り、アイアンメイデンの中がどうなっているかなど誰にも分からない。ならばそこから血が出ようが何が出ようが矛盾など存在しない。
2つの力を備え、天に最も近い場所に座すサイグローグにとって、閉ざされた鉄の処女の内側を弄ぶことなど造作もないのだから。

だが、サイグローグが相対する存在もまた天に座す女神だ。
鉄の処女が恥じらう様にゆっくりと開かれると、そこからグリューネが現れる。
拷問具から出てきたにも関わらずその立ち居振る舞いは一流のモデルの如く優雅で、
先ほどまでメイデンから噴出していた血は一体何だったのかという疑問さえ蕩けてしまう。
「何度問われようとも同じです。私が示したモノが全て。それ以上を答える義務はありません」
そう言ってグリューネは拷問具の中で少しだけ乱れた銀の髪をその手で中空に梳き、どさりと椅子に座る。
普通ならば不調法であるはずの仕草さえ華美に映るその美しさに誰もが思うだろう。
たかが鉄の処女ごときに、この神なる美貌を傷付けることが出来るはずがないと。
サイグローグは知ってか知らずか、女神の美しさから視界を掌で覆うようにして仮面を擦る。
女神に言われずとも、道化にもそれが無駄な問いであることは重々承知していた。
アイアンメイデンに閉じ込める前にも、サイグローグは既にこれと同等な“質問”を女神に繰り返していたのだ。
額のティアラに電気を流した。深い井戸に落とし水を流したetcetc。
およそ考え付く痛みを伴う心無い拷問を幾千幾万と、休む間もなく与え続けたのだ。
その中には当然“女”神にしか通用しないモノや、一目見ればお肉を暫く食べられなくなるモノもあったが、
その全てを克明に記すことさえも憚られる程、その毒に塗れた拷問は悲惨に過ぎた。
「……CERO:Z解放をご購入頂ければ全て公開したのですが……ええ……ま・こ・と……残念無念です……」
煙管を回しながらサイグローグは冗談めかすが、道化にとってこの状況は冗談ほどには笑えるものではない。
普通のプレイヤーならばそれだけで泣き叫びながら、どうか止めてくれと答えを吐露しただろう。
だが女神は決して折れなかった。決して口を開くこと無く、その全てをそよ風の如く流しきったのだ。
アイアンメイデンの前には、拷問のプロを呼んでまで女神の口を割らせようとさえしていたが、それさえも効果が無かった。
ちなみにそのプロがどうなったかと言えば、自慢のドリルで女神を喘がせるよりも前に、
女神の器の大きさに自信を喪失して白化してしまったのでサイグローグが速やかに片付けてしまった。
中年が石コロ遊びに興ずる彫像など、何処に置こうが部屋の景観を損なってしまうのだから。

「まあ、別の意味で十二分に愉しませていただきましたから良しと致しましょう……
 しかし、本当に教えて頂けませんでしょうか……? 一体この一手、如何なる思惑で打たれたのですか……?」
「どうしました、道化。貴方らしくない愚かな問いです……それこそ、答えるとでも?」
16END of the Game −爪弾きミニゲーム−  4:2010/12/18(土) 23:06:07 ID:l02z77em0
道化のくたびれた様な問いかけに、女神は口元を手の甲で押さえ苦笑する。サイグローグもまた、煙管を噛みながら苦虫を潰す様にして笑んだ。
自分の打った一手について「こう打てば貴方はこう打つので、後何手でチェックメイトにできます」などと喋るプレイヤーがいるだろうか。当然反語だ。
その思惑を推測し、自分の戦略の中で愉しむこと。それもまたこの戦いの愉悦の一つなのだから。
もっとも、神の放ったこの一手は推測するどころの話で無かったのも事実ではある。
「何を悩むことがありますか? 私の一手が不服であれば、強制破棄で砕いてしまえばいいでしょう?」
「……クククク、グリューネ様も存外陰湿でいらっしゃる……それが出来れば労苦はありません……」
女神の挑発にサイグローグは自分の額を小突きながら項垂れた。
矛盾を見つけ出してこの一手を破壊してしまう――――確かにそれは最も確実な対応法なのだ。
サイグローグの力ならば僅かな矛盾の一つでもあれば、そこから鎖を撃ち込み粉々のバラバラに砕いてしまえるだろう。
“だが、矛盾があるかどうかも分からないモノ”を一体どうやって砕けというのか。
糠に釘、水に刀、暖簾に腕押し、カニに武器。最後の一つは若干意味合いが異なるが、つまりはそういうことだ。
(得られた駒の情報は飛び飛びの音声だけ……これだけではどうとでも解釈できてしまう……)
これだけの大掛かりな駒の消失、探せば矛盾はあるかもしれない。だが、それを立証することがあまりに困難なのだ。
曖昧過ぎて逆に矛盾を見いだせない。それを見つけ出せなければ、崩しようがない。
ベルセリオスの論理の檻を剛の極みとするならば、グリューネのそれは柔の極み。
人間は神を檻に閉じ込めたが、神は煙か光となってひゅるりと網目から逃げおおせたのだ。
(さらに押し込んで問い詰めても良いのですが…………これ以上は墓穴ですね……)
ならば、この謎の正当性を問い詰めるという手もある。『これでは私が手を進められない。この謎は本当に解けるのですか? 解けなければ矛盾です』と。
だが、サイグローグはそうしなかった。プレイヤーとしての経験は浅くとも、ここまでの戦いを見続けてきた経験がその一手に死の匂いを嗅ぎ取っている。
恐らく、否、間違い無く“グリューネはそれをこそ待っている”。
もしサイグローグがうっかりそれを問うたならば、女神は満面の笑みでこう答えるだろう。

『解けます。では、解けぬ貴方の代わりに今から答えを見せましょう』と。

そうして、悠々と種明かしと共に駒を更に進めるのだ――――――恐らく、チェックメイトまで一気に。
つまりは事実上の絶望側のパスだ。答えを持つグリューネだけが延々と手を進め、その答えを盤上にて示すだろう。
それが矛盾あるものであったならばまだ救いがあるが、もし矛盾が無かったら……恐らく、その時にはサイグローグの逃げ場は無くなっている。
(グリューネ様のあの自信……一か八か、運否天賦に賭けるには少々分が悪いですか……)
人間を観察することを趣味とするサイグローグは、神とは言えどグリューネというプレイヤーをある程度見極めていた。

グリューネというプレイヤーを一言で表すならば『絆が伝説を紡ぎだすバトルロワイアル』だ。

意味や想いなど、一つ一つは弱くか細い糸を紡いで強大な縁とし、圧倒的な火力で攻守ともに圧倒するスタイルを得意とする。
一度陣形が完成すればそれは七色の伝説となる。そうなってしまえば、彼女の奇跡の前に防御も攻撃も全く無意味だ。
ベルセリオスとの戦いからみても、女神が全力で放つ奇跡は多少の矛盾ではビクともしないだろう。
謎が解けずにパスを続けるということは、彼女が奇跡を構築するのを指を食わえて見逃し続けるということだ。
逃げ場無しの状況であのタイムストップ級のクライマックスコンボを食らったならば、サイグローグとて肉片が残るかどうか。

「……おや……もしかして私……かなり窮地ですか……?」
17名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:06:51 ID:J6AtjGUc0
   
18名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:06:53 ID:pZiKVJE00
 
19名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:06:54 ID:SkxBARbw0
20END of the Game −爪弾きミニゲーム−  5:2010/12/18(土) 23:07:05 ID:l02z77em0
さも今気付いたかのように白々しく、サイグローグは煙管の灰を落とした。
つまり、サイグローグはこの神の一手を壊すことは出来ないし、かといって解けないからと見逃すことも出来ない。
こうして思考するだけでも、彼女に奇跡を生み出す時間を与えてしまっている。
向かい合わざるを得ないのだ、この神が構築した迷宮の謎へと。

「全く……絶望…………王を操る側が『こうさつ』に挑む羽目に陥るとは…………では、参りますよ……」

サイグローグが煙管を虚空に片付けて盤をコツンと指で叩くと、一枚の羊皮紙が現出した。
道化はそこに、何処からか出した羽ペンに黒インクを吸わせ、洒脱な文体で自分の名前を書き記した。
「代行者サイグローグの名に於いて……オーダー発令…………“全軍集結しなさい”……」
その時だ、何処からともなく金属音が鳴り響いたのは。
重厚な白銀の鎧兜と腰に佩いた剣の擦れる音。無数の蹄鉄が地面を撃ち鳴らす音。
それは即ち、戦争音楽。戦士達がその命の価値を今一度問い質す直前の、開戦前のプレリュード。
序章が鳴りやむと、そこには錚々たる演奏者達がいた。彼らは己の楽団の御旗を立ててその出自を隠すことはしない。
魔科学を追及せし北部軍事王国軍――――――――――――――魔導砲2門以下、参軍。
神の眼を封印せし神殿を擁する世界最強の王国軍―――――――――――――七将軍旗下、参陣。
鏡面世界唯一の王国軍、賢王に統治された雪下の王国軍、繁栄世界教会騎士団、推参。
獣王に統治されし王国正規軍、七聖連合宗主国近衛軍、参戦。
ヘイズル神聖王国軍、フレスヴェルグ国家騎士団、ニーズホッグ新帝国軍、直参。
これだけでも半分も数え切れぬほどの軍団“群”が、サイグローグの背後に荒海の如く波打つ。
法を――――そして王を守る秩序の力が、部屋の間取りなど吹き飛ばしてしまうほどに集結していた。

その中から、白馬に乗った一人の騎士が躍り出る。真白き正義の甲冑を輝かせた、あの法の守護騎士だ。
「王の代行として……貴方にこの“群団”の全権を委任します……法の守り手としての務めを果たしなさい……」
横に並んだ騎士――――新任騎士団長にサイグローグは視線を合わせること無く機械的な命令を発する。
目で伝える必要などない。そこに騎士団がいて、そこに王を脅かす反逆者が隠れている。ならば果たすべき任務はたった1ツ。
「Order is only one……“生死不問<デッドオアアライブ>”……謎のヴェールに隠れた卑しき犯罪者7名を――――」
評議会の命令に呼応するように、騎士団長が剣を天に掲げる。それに従う様に、無数の兵士達が槍と剣を力強く構える。
兎にも角にも、消えてしまった7つの駒の存在を再び盤上に確定させなければ話にならない。
存在を確定させてしまえば、どのようにでも対処できる。
隠れているならば、見つけ出すまで。隠れることができる場所を、創りだすまで。彼らが隠れた場所を、棺桶とするまで。

迷宮ごと、焼き払ってしまえ。
「―――――見つけだして処刑せよ……!」

21名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:08:05 ID:J6AtjGUc0
 
22名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:09:02 ID:SkxBARbw0
23END of the Game −爪弾きミニゲーム−  6:2010/12/18(土) 23:09:16 ID:l02z77em0
世界が、ひねくれ切ったアルカナルインが爆発した。
そう思えるほどの怒号と無数の足音が織り混ざった地鳴りが、一直線に迸る。
目指すは女神、そしてその奥に隠れた身元不明の7人の容疑者へと。

「考察提示……7つの駒はやはり直接盤の外側へ抜けだした可能性があります」
「反論します。絶望側代行に、ベルセリオスの組み上げた檻の絶対性を確認。“会場の駒は盤外に出る際、絶対に本拠地を通ります”!」
「絶望代行、及び判定者として回答……この檻に関するベルセリオス様の絶対を保障します……“会場の駒は盤外に出る際、絶対に本拠地を通る”……」

サイグローグが提示した一手が一軍の一斉突撃と化し、女神の喉元へ突き抜ける。
だが即座にグリューネが右手で空を横一文字に切ると、地面から真っ赤な溶岩が噴出して騎士の鎧や骨ごと溶解させていく。
女神の神術に対し、サイグローグは法律書を読み上げるように判定をその被害報告と共に告げた。

「ならば、本拠地に到達後にどこかへ隠れた……もしくは到達後、即座に脱出した可能性があります……」
「否定します。絶望側代行に放送時の王の状態を確認。王は本拠地に存在する駒の生体反応を確認していました。そこに抜けはありますか!?
 “参加者が本拠地に存在していならば、王はその生体反応を確認できます!!”」
「絶望代行回答、反論を保障します……“王は本拠地の生体反応を確認できます”
 ……判定者より追加補足……“本拠地内に限定して、王の観測エリアに死角はありません”……」

再び放たれた左翼からの弓矢の雨嵐を、グリューネが放った蒼き輝きが掻き消してしまう。
そして跳ね返った矢の一本一本が放った本人めがけて戻り、その喉や心臓を突き刺していく。
やはりベルセリオスが組み上げた密室は有効に機能している。密室から出る扉は1つ、そしてその扉は常に王の監視下にあったのだ。

「王が“天才”にアンデット化の処置を施していた事実を提示……7駒全てアンデットになった可能性……死体ならば生体反応は確認できません……」
「否認します。判定者に法の効果を確認。“死亡確認無き死者の存在を禁ずる”!!」
「判定者回答……法の効力を認めます……“生者は死を確認しなければ死者にはなれず、死者でなければアンデットにはなれない”……」

だが、更に死角を潰そうと騎士団は右翼から更に重装騎兵二個師団、突撃猟兵四個旅団を投入。
錐行陣で突撃し、前線の死体を蹄鉄でブチブチブチブチとミンチにしながら女神の脇腹を抉りにかかる。
しかし、女神の防壁は未だ機能を続け、氷壁と化した防御の前に騎兵は全て凍死してしまった。
だが戦果報告を紡ぐサイグローグは満足気に笑んだ。これでいい、これであの7駒全てを“会場に閉じ込めた”のだから。
その事実に比べれば、たかが三軍壊滅など必要経費でしかない。所詮は盤外の駒だ。換えは幾らでも効く。
たった一人、たった一人が女神に一太刀入れればいい。それで女神の持つ一手は消滅する。

「駒が全ての首輪を外した・壊した可能性を提示します……生死判定は首輪によるもの…………外してしまえば反応が無くなる可能性がある……!」
「却下します。例え王がそれを認識できなくとも“私達は認識が可能です”!」
「プレイヤーによる否定有効……例え王が知らなくとも、私達は認識できる……首輪の有無は、この謎に影響しない……」

死体の山以上に積み重なっていく痛みと怖れとそれを忘れる為の怒りの断末魔が空間を満たすが、サイグローグの報告にとっては何の阻害にもならない。
無理矢理の脱出・本拠地での潜伏説をほぼ完全に抹消された……否、“本当の意味で7駒を会場に閉じ込めた”騎士団はついに砲撃と共に大攻勢へと転ずる。
この戦争の中で恐らくは最重要となるであろう要衝――会場潜伏説を抑えようと、無数の兵士達が命を散らせていく。
一体何が彼らを戦いへと駆り出しているのだろうか。
それさえも瑣末なことと踏みつぶしながら、騎士たちは謎へと突き進んでいく。
謎に覆い隠された謎を暴き、その答えを殺す為に。
24END of the Game −爪弾きミニゲーム−  7:2010/12/18(土) 23:10:32 ID:l02z77em0
この戦いは、プレイヤーによって生み出された全ての可能性が真実となる資格を持つ。
そして今グリューネは自らが創りだした謎によって自分の持つ一手―――――7駒を王から逃がす1つの可能性を守っている。
だが、それと同等の一手をサイグローグが提示できれば“どちらを真実と選ぶかはプレイヤーの判断だ”。
だからこそサイグローグはこの騎士たちと同じく無数に存在する可能性を、1つでも多く届かせようと雨霰に降り注がせ、
グリューネはその全てを神の一撃で押し流し、サイグローグの放つ騎士たちを鏖殺し尽くす。
相手の持つ可能性を嘘と殺害する為に、自分の持つ可能性を真実と創生するために。
盤上に於ける真実を探す『考察』ではない『こうさつ』。
真実の創り合い、可能性の殺し合い――――――――――――それこそが、彼らの本当の『考殺』に他ならない。

「会場がバテンカイトスである説を用います……! 精神世界であるが故に……駒は全てデータ的存在であり……削除によって消えた可能性が……!!」
「本気で有り得ると思っているのですか!? 絶望側代行に確認。“データであろうとなかろうと、消えた痕跡を王は確認していない”!!」
「絶望代行回答……どちらにせよ痕跡は確認できません……“存在が生身であるかそうでないかはこの謎に影響しない”……!!」

ほぼ全ての兵力を潰され窮地にあるはずのサイグローグが腹の中で笑んだ。
騎士団の殆どを殺しているのが女神の力ではなく、ベルセリオスの密室の硬さであり、
自分が絶対に通れない壁にぶつかって死ねと騎士たちに命じていると理解していながらもなお嗤っていた。
駒は脱出していない。本拠地にも行っていない――――――つまり、まだ会場内だ。兵力の半分を殺して確認した。
そして状況から見て首輪は恐らくまだ解除されていない、更に、データや精神的な存在である可能性も潰した……
それを、更に半分の死体の山で塞いで潰した。ならばこれで終わりだ。
サイグローグが再び王の紋章と法の書を重ね合わせ、守護の光を生み出す。
逃げ場を全て死体で塞がれたグリューネの持つ謎の答えを――――希望の輝きを消し去る、真実の光を!

「ならばこれでチェックです!……宣言・主催者行動<光竜滅牙槍>ッッ……!! 
 【7駒の消失を王が確認……非常事態による特例を発令……“現時点で参加者7名の首輪爆破措置を行いました”】……ッ!!」

生きた意味もろとも木っ端微塵に吹き飛んでいく兵士達、死に行く理由も木っ端微塵に吹き飛ばしていく神術。
その嵐中を辛うじて駆け抜けた法の守護騎士が剣に天の光を収束させ、眩い程の光の龍を女神に向けて穿ち抜いた。
会場の中にいるならば、7駒が何処に隠れていようがこれで死ぬ。首輪によって殺せぬ駒など存在できない。
死ななければ、会場の何処にも存在しない。“会場内から出られないのに、居ない”――――論理破綻だ。法の光の前に女神の迷宮は破壊される。
避けなければ必殺。しかし避けることは許されない光の一撃が女神を狙い穿つ。
駒が消えたからと言って首輪即爆破など、無粋極まりないものだろう。
だが道化にとっては知ったことではない。グリューネが尻込みして7駒の居場所を教えれば爆破を止めればいい。
言わないのであれば……この一手が空気を読んでなかろうが、会場内のどこに隠れていようが、殺してしまえば問題は無い。
どちらにしても希望は潰えて、これにて終了――――――

「無駄です―――――判定者に結果判定要請。王はその死を確認できましたか!?
 “存在しない駒の首輪を爆破を確認することは何人にもできません”!!」

だが、女神の奇跡は容易くなかった。
女神が正面ににかざした右手から蒼き障壁が生み出され、法に輝く光の龍槍を完全に防いでいた。
生死さえ謎のまま。矛盾も真実も覆い隠す闇の底に、光は届かなかった。
そして、空いた左手より振り抜かれた悪魔の槍が一直線に突き進み、守護騎士の鎧を貫いて射抜く。

「くっ……判定……通しです……“王による爆破指示は確かに行われましたが、首輪の爆破を確認できません”…………」

サイグローグによって述べられた結果に盤上が静まりかえる。
爆破すれば問答無用で死亡を確定させる王の首輪も、存在しない人間を殺すことはできない。法に従う無辜の民を斬ることはできない。
剣を以て切り拓くことが出来なかった騎士はガクリと膝をつき、その動きを静止した。
全ては決した。団長につき従う様に、その背後に可能性を失った騎士たちの骸が、海のように横たわっている。
法の光であろうが、謎の持つ闇を全て照らすことはできなかったのだと。

25名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:11:08 ID:pZiKVJE00
 
26名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:11:45 ID:J6AtjGUc0
  
27名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:11:58 ID:SkxBARbw0
28END of the Game −爪弾きミニゲーム−  8:2010/12/18(土) 23:12:52 ID:l02z77em0
「これでも、届かないというのですか……」
倒れ伏す夥しいほど堆く積まれた騎死の墓標を横目に、サイグローグは口元を押さえて唸りを堪えた。
無論、全てを賭してその王命を遂行しようとした忠臣達に対する労いなどではない。
盤外へ逃げ出した訳ではない。死体で密閉した。
本拠地に隠れ留まっている訳でもない。死骸で封鎖した。
首輪をはずした訳でもない。死蝋で塗り固めた。
不正に消失した訳でもない。死者で閉じ込めた。
生きて出ること叶わぬ死の密室。なのに、その中で殺そうとしても―――――――――――その生死すら確認できない。

額を指で小突きながらサイグローグは頭を捻るが、この謎に対し打開策を見いだせない。
あまりに酷い論理破綻のように見えるのに、何が矛盾が分からないから通さざるを得ないとは何たる皮肉か。
道化は更なる抜け穴を探そうと考えるが、その可能性を一向に見つけられない。
考え得る可能性は全て叩き壊されてしまった。しかも、女神の力ではなくベルセリオスの檻の硬さによって。
ベルセリオスの絶対の檻がなまじ強力過ぎるが故に、可能性を消してしまうのだ。
可能性を考察するサイグローグの姿は、まるで密室に閉じ込められたのが道化の方であり、
懸命に檻から逃げ出す為に存在しない抜け穴を探しているかのようだった。
難易度UNKWOUN所ではない難易度GODの迷宮。ここに、出題者と回答者の立場は完全に逆転していた。

「どうしましたサイグローグ……貴方が次の手を進めぬというのであれば、私が先に手を進めさせていただきますが……?」

グリューネが気力と自信に満ちた声でサイグローグに甘い言葉を紡ぐ。
謎という最強の楯で駒を守りながら、一方的に王まで駒を進めていく心算であることは疑いようもなかった。
(さて…………どうしましょうかね……)
女神の魅惑的な睦言にサイグローグは煙管を銜えて煙を肺に充たし、状況を整理する。
(この状況で私が取ることのできる戦略は2つ……1つは謎を解くことを諦め、この結果を受け入れること……つまり狂剣優勝で戦いを終わらせること……)
7駒が消えてしまった以上は仕方が無い。とりあえず与えられた結果を唯唯諾諾と受け入れて、この戦いを終わらせてしまうこと。
優勝者が決定してしまったのだから、その結果を以て終わらせることも1つの方法ではある。
元よりサイグローグは雇われプレイヤーであるからして、ちゃっちゃっと手仕舞いにしてしまうのもアリではある。
(ですが……これは不可能です……48人のバトルロワイアルでいいならこれで終わらせられるでしょうが……
 “私が代行しているのは55人のバトルロワイアル”……7駒足りない状況では終わらせられません……)
だが悲しいかな雇われプレイヤー。雇用主の指示には従わなければならない。
恐らくグリューネもそこを読んだ上でこの謎を仕掛けている――――――55より減っては不味いということを。
もっとも、グリューネとて本当に7駒に消えられても困るはずなのだから、おあいこだが。
(となればもう1つは、この謎を考え続けること……これも良策とは言えません……それならいっそグリューネ様の回答提示を待った方が早い……)
ここまで考えて可能性が見つからなかったのだ。これ以上時間を費やした所で正解が見つかるとも思えない。
直にグリューネが揚々と彼女自身の持つ可能性――――『正解』を示しに来る。そうなっては手遅れだ。
それまでにサイグローグが正解を見つけそこに矛盾を見出すか、新たな可能性を提示できない限り、
唯一の可能性であるグリューネの奇跡――――『正解』は無二の真実として確定する。
(建前上にはどうとでも取れる謎であるが故に通しになる、しかしその実あり得る解答……可能性は極めて限られている……)
ベルセリオスの創った密室を逆に利用した謎、それが解けるまで道化はパスを強いられ続けて反撃の機会さえ奪われる。
(つまるところ……謎を解けぬ私にはこの七駒に触れることはできない……触れられるとすれば王の喉元に剣を突き付けられた後……
 私に王を守る術は無く…………この戦い、既にしてチェックメイト――――――――遅かれ早かれ終了ということですか……)
女神の放った強烈な手を前に、サイグローグはただ指を銜えて黙り続けるしかないのだ。それは、なんとも。


(―――――――――――――――“面白く、無いですね”……)
29名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:13:31 ID:J6AtjGUc0
  
30名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:14:31 ID:SkxBARbw0
31END of the Game −爪弾きミニゲーム−  9:2010/12/18(土) 23:14:42 ID:l02z77em0
サイグローグが机を指で叩きながら黙考する姿を見て、グリューネは自分の一手が道化に通じていることを確信した。
煙も吹かさず、お喋りもせずに考え続けるのは、本気で謎に窮している証だ。
あの道化にはこの謎は解けない。少なくとも、解けるまでに今しばらくの時間はかかるはずだ。
後はその間に手を進めて、全ての“準備”を完成させれば――――――――――――――

「ミニゲームというものが……ございますね……」

その時放たれたサイグローグの言葉を理解するのに、女神ほどの存在でも幾分の時間を必要とした。
負けを認めての諦めか、もがき続ける悪態か。
そのどちらかが出てくると思っていた女神は、まさか無関係な言葉が出てくるとは思いもしなかったのだ。
「かけっこや……鬼ごっこ……ダンスに……スシにウェイトレス……おじさんもいましたし……夢の中にもあります……」
サイグローグは肺に溜めた煙を口からリングにして何個か吐き出し、それが消えるまでぼーっと見上げながら言葉をつづけた。
「得てして……やらなくても良いのですが……物語を全て愉しむとなれば……ついつい挑戦したくなるもの……
 物語を十全に愉しむための……さながら素材のうまみを引き出す香辛料のようなものですか……」
一体何のことを言っているのだろうか。そう思う一方で、グリューネはその道化の言葉から耳を離すことができなくなっていた。
顔を天井に向けながらも、そこ言葉そのものに目があるかのようにサイグローグの意識は盤上から反れていない。
「ですが……強過ぎるスパイスは時として……舌を痺れさえ……料理そのものの風味を殺してしまう……
 料理を純粋に愉しむ為には……むしろ邪魔な存在となってしまう…………」
ねめつける爬虫類の如き視線。いつも通りの気色悪さのはずの気配に、グリューネは今までよりも少しだけ多く唾を飲み込んだ。
盤を見るサイグローグの意識が、僅かに変わったような雰囲気を覚えたのだ。
「故に私はこう思うのです……料理にスパイスをかけるかどうかは……御客様が選べるようでなくてはならないと……
 “それを振りかけないという選択肢があってこそ……スパイスは料理を彩ることができる”のではないかと……」
絶体絶命のはずのサイグローグが呟いたのは、完全敗北の宣言ではなく唯のモノローグだった。
不可視の剣を突き付けたはずのグリューネは、道化の口から出てきた命乞い以外の言葉に眉をひそめる。
「どういう、意味ですか?」
「いえいえ……感服いたしましたということですよ……このサイグローグ……グリューネ様の迷宮……解くことができませんでした……」
それはサイグローグの素直な言葉だった。存在自体が捻くれ捩じれ曲がったこの道化の言葉の中では一番素直だっただろう。
女神の思惑通り、全ては終わる。終わってしまう。永遠に遊べるおもちゃなど存在しない。
「このサイグローグ……本心を申せば……出来ることならばこの遊戯……
 8つの駒で……出来る限り永く永く遊びたかったのですが……この神の一手の前では最早それも叶いませぬ……
 ならばどうして永遠に続けたいなどと我儘を申せましょうか…………終わらぬ物語など無い………しからば……御仕舞でございます……」
そう言ったサイグローグは仮面の奥の瞳を瞼で閉じ、そのまま煙管から煙を吸った。
永く永く味を確かめるように、まるで最後の一服を愉しむように。
グリューネは少しだけ急く様にして言葉を紡ぐ。素直な言葉のはずなのに、小さな針の筵を羽織るような痛みに包まれて。

「認めるのですね? ならばこのゲーム、終了を―――――――」

女神がそう言い切る寸前だった。道化の煙管がガンと盤へと縦に撃ちつけられ、突き刺さったのは。

「ええ、御仕舞ですよ―――――――――――――こんなミニゲーム……下らない“考察ごっこ”はね…………ッ!!」
「なッ!?」

グリューネはまだサイグローグというプレイヤーを理解し切れていなかったのかもしれない。
それを見たグリューネの驚愕を前に道化の口元が喜悦にへし曲がる。
その笑顔は陰鬱な嘲笑であり、狂悦の破顔一笑だった。
サイグローグにとってこの戦いは“自分がどれだけ愉しめるか”でしかないのだ。
それだけが道化の心であり、その心にのみ隷属する。
だから嗤い続ける。だからおどけ続ける。だからアソビツヅケル。
もう終わらせるしかない? 結構、だったら終わる間際まで遊び尽くすだけだ。

全力で、徹底的に―――――――――“盤をブチ壊してでも”。
32END of the Game −爪弾きミニゲーム−  10:2010/12/18(土) 23:16:01 ID:l02z77em0
――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――


『――――――クククク、ハーッハッハッハハハァッ!! あったぞッ! そうか、その手があったわあアァァァッッッ!!』

帳が完全に降り立ち、かつて惨劇を見下ろし続けたあの双月が浮かぶ夜空にミクトランの嘲笑が満たされる。
理解出来ぬものへの恐怖に充たされたあの絶叫、その後の異常な放送事故より幾秒経った後か、
腹の底から、腸をねじり切ってしまうのではと心配してしまうほどの爆笑が闇夜を斬り裂いて放たれた。
座る者の居なくなった野外のウッドチェアに座ったクレスは魔王の外套、その残骸を口で切りながらそれを聞いていた。
『イッ、ヒヒッ、ヒャーヒャヒャヒャ……あ、ああー、済まん、済まん……少々手違いがあった……忘れてほしい……ん? んンん〜〜〜??』
腹を抱えながら背を屈めて息を整えているのが手に取るような笑いから落ち着いたミクトランが、突如ワザとらしく何かに気付いたような声を出す。
『今しがた、新たなる死者の情報が入った。本来ならば次回放送にて伝えるべきだが、特例だ。静聴して聞くが良い』
机に置いたランタンの軟い明りに照らされた、クレスの手がそこで止まった。
『グリッド! キール=ツァイベル! メルディ! カイル=デュナミス! コレット=ブルーネル!』
魔剣の刀身を握っていたクレスの手に力が籠り、掌の生命線につうと血が流れる。
その刀身を魔王の外套で覆っていなければ骨にまで達していただろう。
『ヴェイグ=リュングベル、ティトレイ=クロウ―――――――――――――7名の死亡をたった今確認したッ!』
自らの血に滲んだ手で、クレスは自分の額を擦った。真白い新しきバンダナがその拭った場所だけ紅く染まる。
『以上計14名の死亡確認を宣言するッ! 確かに、確りとッ!!』 
クレスは目を閉じて内側から湧き上がる物を堪えるようにして扉の向こう側に消えた彼女達を思い出す。
大丈夫だ。きっと、無事のはずだ。“これはきっと嘘をなのだと”。
『ここに計54名の死亡を確認したァ……よって、よってこの天上王ミクトランが宣言するゥッ!』
あの時に僕に出来たことは全てした。ここに残った自分が彼女達に対して出来ることは2つしかない。
1つは、祈ること。彼女達の命を、彼らの未来を、それが光り輝いていることを。
『勝者、クレス=アルベイン。彼の者の勝利を以ってッ、ここに、今此処に! バトルロワイアルの終結を宣言するッ!!』

ミクトランの狂気に近い叫びの中で、クレスは押し黙ったまま静かに佇んでいた。
そのクレスの意思を代弁するかのように、クレスの傍で大地に突き刺さった2本の斧が持ち主から放たれる何かに震えていた。
カタカタと小刻みに笑う金属が突き刺さった大地は、闇の中で“何の輝きも見せなかった”。

『ついては優勝者クレス=アルベイン! 開始時の説明通り、貴様に報奨を授けよう。
 即ち! 貴様の“願いを叶え”ッ!! “元の世界へと帰してやろう”ではないかッッッ!!!』

灯りで焙るように俯いていたクレスの顔が僅かに持ちあがる。
優勝者の願い。久しく聞いていなかった言葉に可笑しみを感じたのだった。
なにせ、一番最初は全員を殺してその願いで全員を生き返そうなどとも考えていたのだから。
永く久しく忘れていたもの。それをまさか、今になって手にするとは。

『今より1時間! たった1時間だけD4の禁止エリアを解除する! 
 それまでの間にそこを通過し、D5山岳の河口へと来い!! 貴様の首輪の反応によって“扉が開くようにしておく”。
 首輪を外すのはその中で行う。いいな? 万一にでも首輪が機能していないなどあれば扉に入れんぞ!?』

魔王の布を巻き終えた魔剣を肩から足へかけて、クレスは力無く笑顔の出来そこないを作った。
あの時の決意は、最早遥かな過去。過去から今に至るまでに積み重なり過ぎたモノの前にもう思いだせなくなってしまった。

『さあ、魔剣を携え我が下へ来るが良い優勝者! 
 全ての屍を乗り越えた2%以下の奇跡よ、その奇跡に見合う対価をこの天上王ミクトランが与えようぞッ!!』

今此処にいる僕の願いは、今此処に残る僕に出来ることは――――――――たった1つ。
王の高らかな通告を聞きながら、勝者は双月の夜空を見上げた。



――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――

33名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:16:23 ID:pZiKVJE00
 
34名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:16:34 ID:J6AtjGUc0
  
35名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:16:49 ID:SkxBARbw0
36END of the Game −爪弾きミニゲーム−  11:2010/12/18(土) 23:17:24 ID:l02z77em0
「これは、一体…………?」
内から湧き上がる驚愕に身体を震わせながらグリューネはそれだけを辛うじて呟いた。
希望側が提示した『7つの駒の消失』の謎に対し道化が提示した応手は、およそ女神の思惑を超えていた。
いきなりの7人死亡の宣告、そして優勝者クレスに対する王の優勝宣言―――つまり、名実ともにバトルロワイアルの終わりだ。
だが、謎を仕掛けた側であるグリューネの驚きはそこではなかった。
7駒を“隠した”グリューネは7つの駒がまだ無事であることを知っている。“王では殺せないのだ”。
王が無理矢理優勝者を決めて、バトルロワイアルを終わらせようとしたと考えれば王が嘘を吐くのは理解できる。

問題は王の優勝者への対応が『第六戦と変わっている』ことだ。

第六戦にて唯一の生存者であった氷剣は魔法陣によって転送され真実の本拠地に辿り着いた。
優勝者が決定したと認めるならば、同じ手法にて同じ結果が出てこなければおかしい。
禁止エリア解除、そして会場の中心への誘い。変化した結末。
そして何より、永遠に遊び続けようとする道化が放ったこの一手、如何なる意味か。
「クククク……“諦めて”してしまえば……分かることもいくつかあります…………
 まず……“まだ7駒は脱出していません”……脱出したというなら、そう示せば良いだけのことですから……」
王の駒を動かしたサイグローグは王を握ったまま、クスクスと笑っていた。
今までよりも僅かに冥く、脂ぎった笑顔だった。
匂いさえ漂う嫌気を放ちながら、サイグローグは言われてみれば当たり前の事実を告げた。
脱出できるならわざわざ隠すなどというクッションを置く必要は無い。それを隠すということはまだ脱出できていないと言っているに等しい。
「ならば何故隠すのか……敵を知り己を知れば百戦危うからずや……グリューネ様の立場になって考えれば分かるというもの……」
サイグローグはそう言って煙管の中に火種を投じ、更なる煙をプカプカと浮かべた。
煙に濁ったその瞳は最早盤面を視ること無く、ただグリューネの瞳の奥だけを見つめ続けている。
「隠すということは、今触られては困るということ……“つまり、まだグリューネ様の奇跡は完成していない”のでしょう……?
 二手や三手では済まぬ、本当の神なる奇跡……この謎は、その時を稼ぐ為の布石……」
この謎がグリューネの、希望側の時間稼ぎであることは明々白々だ。
ベルセリオスの絶対の檻を破る奇跡を創るとなればそれ相応の絆を紡がなければならない。
この神楯はその為のもの。全ての絶対を破る神剣を鍛える為の守りなのだ。

「ならば……まだ遊ぶ時間はあります……時間があるならば……私は遊ぶだけ……
 『謎に包まれし七駒に手は出せない…………?』……結構でございますとも…………
 ええ、逆に……チェス盤をひっくり返して考えれば良いだけ…………」

普通のプレイヤーならば、血眼になって7駒を探し続けるだろう。
あるかどうかも分からぬ正解を求め、トライアンドエラーを繰り返すだろう。
だが、サイグローグは普通ではない。白と黒では分けることのできない異端のプレイヤーなのだ。

「8つの駒で遊べないなら―――――――――――――“1つの駒で8駒分遊び尽くせば良いだけ”でございます……!!」

だからこそ躊躇い無く“捨てる”。触ることの出来ない玩具など必要無い。
触れる玩具で、目いっぱいに遊べば良いだけだと嗤うことができるのだ。
37名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:17:34 ID:J6AtjGUc0
   
38名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:18:21 ID:J6AtjGUc0
 
39名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:18:25 ID:SkxBARbw0
40END of the Game −爪弾きミニゲーム−  12:2010/12/18(土) 23:19:05 ID:l02z77em0
「それがこの謎の答えとなるとでも!?」
激昂するグリューネの詰問に、サイグローグは間断無く応じた。
正解以外では絶対に破ること叶わぬ女神の謎、それをどうやって破るというのか。
「なりますよ……では、謎に対する返答を正式に行いましょう……この消失事件……十中八九“魔剣が関わっています”……
 ……『ならば、それに関わった魔剣の担い手に7駒を“もう一度この世界に戻させれば良いだけ”』でございます…………!!」
ならばどうするか。決まっている。神なる楯を破るは魔王の剣が相場だ。
2人の天使が落ちた――――否、女神が殺したことで、3人の時空剣士による精霊王の縛りも解けている。その力をこの局面で利用しない手は無い。
サイグローグが構築した混沌から、何がどういう心の経過を経てこの結果に至ったかは分からないが“魔剣の力は絶対に関わっている”。
「……何故、魔剣が関わっていると確信できるのです。放送中に王が聞いたたったあれだけの会話から考察可能だと?」
「グリューネ様は実に正直な御方です……駄目ですよ……“あんな露骨に2人だけ殺しては”……魔剣解放狙いが透けているではないですか……」
「っ……ですが、放送前、彼らは一触即発の状態でした。打ち合わせて協力する暇などなかった! どうやって7駒全員で魔剣で脱出すると!?」
「そんなことは知った事ではございません……過程がどうであろうと、それしか答えが無いのですから……
 “とにかく魔剣を使った”……私にとってはそれで十二分でございます……」
息を呑むグリューネを見ながらサイグローグは満足げに微笑んだ。
盤上で展開した謎を見ず、グリューネの差し筋からの逆算だけで道化は正解以外の全てを掌握する。
駒は所詮駒。敵対するはプレイヤー。チェス盤をひっくり返せば駒など見ずとも手は読める。

「魔剣にて閉ざされた謎ならば……魔剣にて開くは道理……魔剣を用いて、もう一度7駒を会場へと呼び戻す……
 これならば『7駒が何処に消えた』という謎を回避できる……これが私の答えです……私はこの謎を―――――――“解きません”……」
エターナルソードが答えを知っている。ならばエターナルソードに答えさせればよい。
それが道化師の答えだった。自分が解く必要は無い。解きたくもないモノを、態々解く必要などないのだ。

道化の提示した解答に、グリューネは唖然としたまま立ち尽くしていた。
そんな女神を見ながら眼筋を歪めたサイグローグは煙を燻らせながら慰めを紡ぐ。
「ククク……申し訳ありませんグリューネ様……恐らくはこの謎……相当の自信を以て構築なされたのでしょうが……
 わざわざ“こんな下らないモノ”に真正面から向き合うほど……このサイグローグ……酔狂ではございませぬ……」
「下らない……と……?」
「ええ、下りませんとも…………全ての可能性が真実となるこの戦いに置いて……唯一の正解など存在しない……
 そんな戦いの中で“謎を問う”ことがどれほど無意味なことか……考えれば分かるというもの……」
それは至極当然のことだ。確かにグリューネは謎という宝箱に7駒という宝石を入れて閉じた。
宝箱に閉じる以上、グリューネは宝箱を閉じる鍵を……正解を最低1つ持っていなければならない。そうでなければ論理破綻になるから。

だが“それは絶対に鍵を使って宝箱を開けなければいけないということではない”のだ。

針金を使ったピッキングも、宝箱そのものを壊すのも、空間を捩じって中身だけ取り出すという方法もある。
それらは鍵を使って開けるよりも無作法でとてもスマートではないが、宝箱の中身を得る手段として“矛盾してはいない”。
「謎への応手など……この程度の屑手で十分……矛盾が無ければそれでいい……
 ……これは殺し合い…………誰が生き残るか、誰が死ぬか……それこそがメインディシュ………
 料理を愉しむに……煩く入る音楽も…………煌びやかな演出も必要無い……
 無理矢理かけられた香辛料など以ての外……料理はただ旨ければそれでいい……」
そう、宝箱に入れたからと言って鍵で開けられるとは限らないように―――
―――謎を創ったからと言って、その答えが出題者の望むものとなるとは限らない。
矛盾さえなければ、正解である必要などないのだ。

「私が楽しみたいのは『バトルロワイアル』でございまして――――ミステリや謎解きがしたければバトルブックの裏にでもお書き下さいませ……ッ!!」

故に、謎を問うことに意味は無い。唯一の真実が存在しないバトルロワイアルに、本当の謎<ミステリィ>など存在しないのだから。

41名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:19:53 ID:J6AtjGUc0
    
42名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:20:18 ID:SkxBARbw0
43END of the Game −爪弾きミニゲーム−  13:2010/12/18(土) 23:20:41 ID:l02z77em0
謎を踏み躙るその一言にかける言葉を見失ったグリューネに、サイグローグはおやおやと肩をすくめながら嗤う。
「どうしました……? 何やら御気分が優れぬご様子……まるで……期待していた答えが返ってこなかったと憤懣やるかたなしかの表情……
 もしや……期待していました……? ……グリューネ様の用意した正解に沿って戦いが進むものだと……思いこんでいました……?」
唇を震わせながらも返す言葉を探して息詰まる女神の表情は、溺れた者のそれだった。
サイグローグの惚けたような物言いは、明後日の方を向きながらも全てグリューネの頭上に星と当たる。
「これ見よがしに散りばめられたヒント……もったいぶった言い回し……
 まるで生娘が初めての夜を男から誘ってくれるのを待っているかのよう……
 付き合ってくれると思ったのでしょう……? サインに気付いてくれると……
 伝わって当り前だと…………相手も望んでいるのだと“決めつけていた”でしょう…?」
ああ、それは哀れにも笑える喜劇。
『あ、あんたのことなんかコレッポッチも好きじゃないんだかね、本当なんだから!』と言えば『好き』というサインと思いこんでしまうなんて。
なぜ素直に『お前は俺のことが嫌いなんだな』と考えてはいけないのだろうか。裏の意味までいちいち考えてやなければいけないというのか。
「素直に一撃で7駒を王の元まで運びきってしまえば良かったものを……わざわざ謎で覆い隠すから……こうやって壊されるのです……
 実に無意味……これ即ち徒労の極みでございます……それともまさか……この私が……そんな遊びに付き合うと……本当に思っていたのですか……?」
奥床しさなんて何の役にも立たない。思いは伝わらなくて当り前なんだから。
だから道化は謳う。素直な気持ちを、誰もが誤解しないように、分かりやすい言葉で――――――真実で。

「エロやらしく胸を揺らせば誰もがホイホイついていくと思ったら大間違いでございますよ…………せくしぃねえさん<アフロディーテ>様……ッ!!」
「サイグロォォォォォォォ――――――グウゥゥゥゥゥッッ!!!!!!」

グリューネが激昂と絶叫と共に右手を天高く突き上げる。
美しき女神らしからぬその振る舞いは、グリューネという神から最も縁遠いもののはずだった。
だが、それを取り繕うことなくグリューネはその突き上げた右手に可能な限り全ての神力を集約する。
女神の慧眼にも、今自らに噴出した衝動の正体は分からなかった。
その神性を堕としめる罵詈か、女としての何かを弄るような雑言か。あるいは、自らさえも自覚せぬ内側の隙間を道化に抉られた痛みか。
先ほどまでの拷問などとは比較すらできない痛みに苦しみながら、グリューネは力を具現する。
自分の知らない逆鱗に触れられたグリューネの怒りを代弁するかのように、彼女の前方に巨大な力の塊が形作られる。
「貴方だけは……貴方だけはッ!!」
眼の前の存在が受け入れられない。希望を、心を嘲笑うこの道化を“許せない”。
星の光を集めたかと思うほどに光輝く神の大きな掌が、怒りに震えるグリューネの心を示す様に顕現した。

「そこまで滅びの本懐を遂げたければ……叶えてあげます――――――――ゴッドプレスッ!!」
44名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:21:03 ID:pZiKVJE00
 
45名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:21:20 ID:J6AtjGUc0
 
46END of the Game −爪弾きミニゲーム−  14:2010/12/18(土) 23:22:13 ID:l02z77em0
突き出した右腕をサイグローグへ振り下し、グリューネの最大神術が発射される。
常の天空からの一撃ではなく、水平撃ちで撃ち出されても尚、その威力は神のそれだった。
許せない。認められない。受け入れられない。呼吸をするたびに希望を、光を穢す眼前の存在を許容できない。
女神の中のありとあらゆる拒絶の意思が、大神術に力を与える。
幾千幾万の言葉よりも力ある神撃。道化の一手ごとプレイヤーを確実に潰す程の威力がサイグローグへ直進する。
だが、サイグローグは一歩も動かなかった。動けなかった、ではない。“動く気が無かった”。
全てを滅しかねぬ暴力の前に一歩も退かぬその姿は、サイグローグでなければ勇者のそれだっただろう。
だが、先ほどまでと一切変わらず卑しい微笑を浮かべ続けるサイグローグはペラペラと百科全書を読んでいるだけだった。
グリューネの怒りの眼線さえも見ること無く、残り数枚で終わる本の文章を追い続ける。
「……クククク……怖いですねえ……私の貧弱な肉体では、触れれば一瞬で消し飛んでしまいそうです……
 そこまで気に障りましたか……若干誇張して申したのですが……案外……図星でしたァ……?」
そう言いながらも、サイグローグの視線は本から外れていなかった。
残り2頁で終わるそれを、急く様にに読み続ける。まるでもう読めなくなるかのように。
「しかし……これも私の心の素直な有様でございます……『己が心に従い、己の思うさまを貫く』……烏は実に良いことを言っておりました……
 こんなただ操作が面倒なミニゲームを無理矢理させられるなんて……私……死んでも嫌でございますから……」
「それが遺言か、道化よ……ならばその口ごと……永遠に閉ざしてあげますッ!!」
残り1頁。サイグローグの正面には巌の壁の如く神の掌が迫りくる。
その巨きな手に似合わぬ神速で迫る一撃は、最早アラウンドステップでも避けようがない。CC+3されるよりも早く戦闘不能になるだろう。
「マモレナカッタ……は嫌ですね……“貴方”は……騎士崩れとは違うでしょう……?」
全てを読み終えたサイグローグが本を閉じる。僅かに目を瞑るその仕草は、一見神の威光の前に罪を懺悔するようにも見えた。
だが、浮かび上がるその歪んだ確信から紡がれた言葉が全てを台無しにする。法よ、貴方に問う。“私に罪がありや”?

「“零条違反”―――――――――緊急宣言・その魂に誓いし正義を貫け<エナジーコート>……ッ!!」

“汝に罪無し”。守れ騎士よ、その命を以て。

47名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:22:19 ID:SkxBARbw0
48名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:22:26 ID:DMuUuR5R0
しえん!!!!
49END of the Game −爪弾きミニゲーム−  15:2010/12/18(土) 23:22:55 ID:l02z77em0
「!?」
グリューネの驚愕、その視線の先にはゴッドプレスの着弾衝撃波があった。
だが、それはサイグローグではない。女神からサイグローグを覆う様にしてその一歩手前にたった、守護騎士の姿があった。
胸に開いた鎧のヒビから血を流しながらも、己が精神を引き換えに究極の護りを構築するスキルを尽くしてゴッドプレスを防いでいる。
「莫迦な、何故貴方がッ!?」
既に発動し切ったグリューネにゴッドブレスを止める術は無く、ただその懐疑だけを口にする。
その駒がどういう存在であるかを知らぬグリューネではない。
サイグローグに隷属させられているとはいえ、その本質は強きを挫き弱きを救う守護者のはずだ。
「サイグローグ! 今直ぐ退かせなさいッ! 酷使し尽くした騎士をまだ楯として使うなど、恥を知りなさい!」
使役者であるサイグローグにグリューネは退かせるよう叫ぶが、道化は聞こえていないかのように
「どちらのことを言っているのですやら……私は止めませんよ……“この駒では貴方に勝てなさそうですから”……
 もっとも……もともと私が操っている訳ではありませんので……どうしても止めたければ直接騎士に言ってください……」
「くッ……何故、何故貴方はサイグローグに従うのです!? どうしてそこまで――――」
どうして逃げないのか。どうしてあんな邪悪の塊を守るというのか。しかも、何故私から守るというのか。
想いの全てを踏み躙る道化を守り、それを排しようという私を阻むというのか。正義は私に、希望にこそあるはずなのに。
だが、グリューネの問いは最後まで紡がれることは無かった。
悪魔の槍を穿たれながらも輝きを失わぬ蒼き瞳が、命果つる間際にあっても誇りを捨てぬ獅子の如き金色のたてがみが、
血に塗れてもその光を示し続ける真白き鎧が、騎士を包む何もかもが誓いを体現していた。
騎士は自らの意思で、今この死地に立っている。グリューネを敵と見つめている。
守るべきモノを、阻むべきモノを見極めて、その切っ先を向けるべき方向を定めている。
彼だけではない。彼の後ろにあった幾千幾万の死せる騎士たちも皆同じ思いだったのだろう。
その願いが、砕けぬ規律が、神の一撃をここに防いでいる。
「何故……なのです…………」
グリューネはただそう呟くしかなかった。
精神力が尽きようとしているのか、鎧のあらゆる所にに亀裂が走り、楯と剣は砕けて消えた。
それでも尚神の力に立ちはだかる騎士の誓いの護りに、謎によって構成された神の楯と同等、いや、それ以上の硬ささえ錯覚する。
これほどの力が、何故神を阻むのか。その気高さが私に牙をむくのか。
答えを求めて吐露した問いではない。だが、騎士は自らを圧殺する神の力の中で、僅かに口を開いた。
グリューネはその口元を見続ける。どうしても知りたかった。今自分を苦しめているこの力の正体を。
邪悪たるサイグローグを守るという魂の誓い。命を賭けてでも退けぬ意味。守るべき味方と倒すべき敵を分ける境界。

“法とは、一体何なのか”。

ブチン。
だが、その願いは叶わなかった。得られた音は、とても言葉とは言えない肉に拉げる音。
答えはない。肉さえ消滅するほど全ての魂を果たし尽くし、義務を全うした鎧の残骸だけが残っただけだった。
50名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:23:30 ID:J6AtjGUc0
 
51名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:23:46 ID:DMuUuR5R0
支援
52名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:24:14 ID:J6AtjGUc0
  
53END of the Game −爪弾きミニゲーム−  16:2010/12/18(土) 23:24:35 ID:l02z77em0
「クククク……【私の一手は全て通し】ですよ?……お忘れになりましたか……?」
茶番劇の頃合いを見計らったようにサイグローグは項垂れるグリューネに声をかける。
その手に持った法の書は、その角からチリチリと燃え上がり中のページもハードカバーも焼き尽くしている。
法は役目を果たした。その力と引き換えに、サイグローグは埃1つ付けること無くブラックスーツを着こなしている。
その一手を殺そうとしても、プレイヤーごと潰そうとしても、何度やろうとも同じこと。
法を司るサイグローグを傷付けることなど、絶対に出来るはずが無いのだ。
「さて……グリューネ様の我儘で大分時間を使ってしまいました……
 そろそろ次の料理を食べましょうか……早くしないと冷めてしまいますよ……?」
そう言いながらニタニタと先ほどまで紅茶を入れていたティーポットを取り出し、新緑の茶葉を淹れる。
そんな鼻につく優雅さを前にグリューネは歯を軋らせた。こうなった以上、サイグローグはもう謎に見向きもしないだろう。
つまり隠した7駒を動かすことに関して障害は無くなった。だが、サイグローグが剣士に狙いをつけた以上安心はできない。
魔剣を用いた何らかの方法で無理矢理、7駒を取り返しに来ないとも限らない。
可能性がある限り、グリューネは道化の一手に応じなければならない。
銀の髪を強く指で梳きながらグリューネは思考した。
グリューネの最善は剣士をC3に固定したまま7駒を急ぎ王の元まで運ぶことだ。
わざわざ敵の誘いに乗る必要は無い。どんな厄介な相手がD5で待ち受けているとも―――――――――

「……待ちなさい……次の料理? この盤上には最早駒は1つです。材料がありません。まさか――――――」
「漸く気付かれましたか……? その通りです……このサイグローグ……何も無償でグリューネ様にお付き合い頂こうとは思っておりません……
 我が夜会に相応しき…………相応の“お土産”は御用意させていただきました……」
顔を上げたグリューネにサイグローグは嫌らしい笑みを満面に浮かべる。
7駒が隠れた以上、盤上に駒は剣士一つしかない。一人では踊ることはできない。“新たな踊り手が現れなければ”。


「出すというのですよ……このサイグローグが……絶望側代行として――――――――『主催戦力』を……ッ!!」



サイグローグが王の紋章を掲げると、煙管で開けた盤の中央がドクンドクンと心臓の如く鳴動する。
「居たのですか、主催戦力が!?」
「これはこれは異なことを……誰が“い”ないなどと言いましたか……? “い”ますよ……中央に……しっかりと……ククククク……!」
盤の中央。それはこの島の中で唯一といっていい程異端の場所だった。
村にも、町にも、教会にも、ありとあらゆる施設に主催に至れるような手掛かりもヒントも無かった。
その中で唯一疑いが向けられているのがこの山岳地帯だ。
54名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:24:42 ID:DMuUuR5R0
4円
55名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:25:01 ID:SkxBARbw0
56END of the Game −爪弾きミニゲーム−  17:2010/12/18(土) 23:25:38 ID:l02z77em0
駒を欺いた偽本拠地のトラップは山の北に隣接した湖の底。
会場内で首輪を精密に運用する為の施設が中央にあるという学士や天才のかつての推測。
ジョーカーたる客員剣士の初期配置もこの中央。
海神が傷を癒す為に使った洞窟の奥の岩室の存在。

唯一の疑惑、それは最早1つの真実だ。“ここが王の心臓に最も近い場所なのだと”。
ましてや、それを王の使役する駒にて守ろうと云うのだから、最早疑う理由さえ無い。
「つまり……貴方の狙いは……」
「ご賢察でございます……私は王の力を用いて魔剣を奪い、貴方の隠した真実を壊す……
 貴方は魔剣を用いて……王の真実を暴く機会を得る……今更チマチマした考察や小技のやり取りなど面白くありません……
 王の真実と魔剣を賭けての……零距離での殴り合いと参ろうではありませんか……」
サイグローグは諸手を開いてグリューネを誘う。自らの心臓を晒す代わりに、お前の心臓を奪える距離まで近づけと。
遊びを徹底的に追及する、グリューネとは全く違う形のリスク度外視の一手。
ベルセリオスならば絶対に最後まで出し渋ったであろうそれさえも餌に、サイグローグは誘っているのだ。
グリューネは口に手を当ててサイグローグの申し入れを吐き出さないように堪えた。
互いの心臓を貪り合うというおぞましき誘い、しかし、無碍にするにはあまりに惜し過ぎる誘い。
ベルセリオスは徹底して王を表側に引き出そうとはしなかった。
常に盤上の駒を巧みに操り、直接操作を最小限にして全ての流れを掌握してきた。
故にこちらは王に対する全貌を未だ掴み切れず、その不確定情報というヴェールが王を守り続けている。
ともすれば脱出不能ロジックよりも厄介な障壁であり、7駒が王に辿り着いても破れるかは五分五分であったのだ。
だがサイグローグはその守りの力を棄て、攻めに転じようと言っているのだ。
7駒を王に送り込む前に、王の情報を得られれば得られるほど、この後の情勢は有利に傾く。

(受けるべきか……どの道、この後剣士には可能な限り会場を破壊してもらう予定であったことを考えれば……)

あくまでもグリューネの王攻めの本命は不可思議の中に隠した7駒だ。剣士の戦いは直接7駒に影響はしない。
言ってみればこれはグリューネにとってはサブイベントに過ぎない。
行う必要はないが、クリアすれば相応のモノを得ることができる。それはグリューネの王の攻略に大きく寄与する。
ましてや使用する駒は“あの”剣士だ。既に会場破壊を想定して装備の再編は済ませてある。
サイグローグの駒がなんであれ、決して引けを取ることはないだろう。

(それに……万が一……万が一サイグローグに魔剣を利用される事態になれば……“その時は”……)
57名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:25:46 ID:pZiKVJE00
 
58名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:26:54 ID:J6AtjGUc0
  
59名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:27:01 ID:DMuUuR5R0
しえん
60END of the Game −爪弾きミニゲーム−  18:2010/12/18(土) 23:27:04 ID:l02z77em0
グリューネはそこまで考えた時だった。グリューネの鼻の頭に熱く湿った何かがかかり、思わず飛びのいてしまう。
顔を下げて視野を広げたさきにあったのは、香り高い湯気を浮かべた緑茶だった。
それを持ったサイグローグはグリューネの驚き顔を堪能した後に言った。
「どうぞグリューネ様……茶柱がたっていますよ……? 運気が向いている証拠でございます……」
「貴方は、要らないのですか?」
「私は結構でございます……出涸らしの……ポットに残った最後のひとしずくで十分でございますよ……」
いけしゃあしゃあとのたまうサイグローグの顔を見て、グリューネは1つの決定を下した。
なによりも、この道化が許せなかった。法の名の下に無法を繰り返し、正義に燃えた騎士たちを無為に殺すその残虐が。
そうまでして心臓を晒すというのなら、我が手に握った魔剣を欲すると云うのならば―――――――

「あえて貴方の誘いに乗ってあげましょう。後悔しても知りませんよ、道化」
「両者合意を確認しました……それでは始めましょうか……どうぞお手柔らかに……クククク……」

グリューネはサイグローグの差し出した緑茶を奪い、酒を煽る様に飲み干す。
その軽薄な笑みも、この瞬間までだ。覚悟せよサイグローグ。
ベルセリオスのゲームを砕く前に、その心臓に魔剣を突き立ててくれようぞ。

「こう見えて私の拳もけっこうお喋りでございまして……色々分かるかもしれませんよ……ただし―――」
 
――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――Next SubEvent Start

61名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:27:16 ID:SkxBARbw0
62名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:27:41 ID:J6AtjGUc0
  
63END of the Game −爪弾きミニゲーム−  19:2010/12/18(土) 23:27:53 ID:l02z77em0
夜空を劈く王の叫びが途絶え、夜が本来持つ静寂が辺りを包みきった頃だった。
夜を僅かに遮る椅子の軋みが夜の村に響く。灯りに照らされたクレスが立ち上がった音だった。
ここの中央に来る前にもう一度拾ったガイアグリーヴァ、そしてティトレイから渡されたオーガアクスを両方纏めて片手に握る。
もうひとつ餞別に得たメンタルバンクルが手首にフィットしていることを確認して、魔王の布に覆われた魔剣を背に背負う。
武器を幾つも持って灯に映るその影は、まるで何処かに戦争に行くかのような有様だった。

だが、その例えは決して誤謬ではない。クレスは今から戦いに行くのだ。
王が招いている。来いと、報奨を授けんと待ち構えている。
無論、これが罠であるということは分かっている。だが、それでもそれがクレスにとって褒美であることは間違っていなかった。

「……すまない。僕は、君が命を賭けて護ったコレット……ちゃんを、君の代わりに守ってあげることも出来ない」
灯りを消す前に西の方を向いて、クレスはそう一言つぶやいた。既に暗夜で見ることはできないが、その方向には1つの土山ががある。
命を賭けて選んだ男の死体が。自分が作った死が埋葬されていると確信していた。
彼は、一人の少女を守り通した。それに引き換え、自分は何一つ守ることが出来ないまま、こうして優勝してしまっている。
この汚れた掌は、何も守ることができない。最後の最後に、自分を救ってくれた人達とさえ離れて、こうして独り立っている。
「だけど……出来ることはするよ……僕にしか、出来ないことを……」
出来ることは、戦うこと。クレス=アルベインとして、剣として、戦いぬくことだけ。
ミクトランが待っていると云うのであれば、丁度良い。恐らく配下の敵もいるかもしれない。なお良い。
それを自分が倒せば、壊せば、ティトレイやコレット達に向かう脅威はその分だけ減る。
そう、倒すのだ。それが、クレスに残された最後の願い。それしか最早願えぬ、歪な剣。

灯りを消すと、世界が本当の闇を取り戻す。その中で、クレスの瞳孔だけが闇色に輝いた。
D4まで一時間。走っていかねば間に合うまいが、この程度の距離なら鍛錬の内だ。

「―――――――――全てを斬って終わらせる。それだけが、僕の望みだ」

そう言って、闇に剣が駆け出した。
世界の中心に、全ての終わりをもたらす為に。

剣を以て真実を切り裂け。そして至れ、本当の終着駅に。


<――――――――――――――――――――――――――――――――――――片道切符代わりにその爪、剥がせていただきますが……ッ!!>




【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP10% TP25% 第四放送を聞いていない 疲労
   善意及び判断能力の喪失 薬物中毒 戦闘狂 殺人狂
  (※上記4つは現在ミントの法術により一時的に沈静化。どの状態も客観的な自覚あり。時間経過によって再発する可能性があります)
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷 背中に複数穴 コレットのバンダナ装備@若干血に汚れている
所持品:???@ダオスのマントで覆われた魔剣 オーガアクス ガイアグリーヴァ メンタルバンクル
    ホーリィスタッフ サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2
基本行動方針:「クレス」として剣を振るい、全部を終わらせる。
第一行動方針:島の中央・山岳地帯に向かう
第一行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:C3村・中央広場→D4経由で中央山岳地帯地下へ
64名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:28:06 ID:P2pP1tnP0
支援
65名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:28:15 ID:DMuUuR5R0
四塩
66名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:28:37 ID:J6AtjGUc0
  
67名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:28:51 ID:SkxBARbw0
68名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:29:29 ID:l02z77em0
投下終了です。急な投下でありながら多大な支援を戴き、誠にありがとうございました。
69名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:31:05 ID:J6AtjGUc0
    
70名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:37:19 ID:twRINgVB0
投下乙!
そして知らぬ間に現れて白化したストリーガウさんに合掌w
71名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 23:48:19 ID:SkxBARbw0
サイグローネが投げたー!?
これはひどいw だが言っていることはご最も
ミニゲームは必ずしもやらないでいいからこそミニゲーム
その点では絶対やらないといけなかったLのパズルブースはテンポ悪くしていたからなあ
他にも細部に施されたネタが実に効いていたぜ……
そしてお前はほんとに何やってんだ、ふれん(仮)w
しかしこれは当分の間は全てがクレスにかかっているということか
グー姉さんの会場破壊や主催戦力ともども気になるぜ
72名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/19(日) 03:41:02 ID:YlkHiTBG0
執筆お疲れ様でした。
直前の感想とかぶってしまいますが、ミニゲームとの形容には納得だw
前話の「パズルブース」宣言といい、今回の「絆が伝説を〜」といい、シリーズ原作
からシンプルに、かつ、きっちり出してくるネタがたまりませんね。
そして主催戦力……そうね、決まってなかったってことは決めていいんですよね。
チェス盤返すのはメチャクチャな打ち手であれども、決まってなかったことを書いていく
のが物語ることでもあるので、ひとしきり笑ったあと、ちょっとしんみりしてました……w
このSSでしんみりするのか! かもしれませんが、会場にひとり立つクレスの背中にも
しんみりするものがあるなあ。ちょっと早めのクリスマスプレゼント、楽しませていただきました!
73名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/19(日) 11:18:12 ID:5Y1r5wcqO
>>10
了解しました。
お待ちしています!
74名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/19(日) 11:53:50 ID:qTt+rPoy0
>>73
昨日の話だぜ?w
7573:2010/12/19(日) 15:28:29 ID:5Y1r5wcqO
しまったリロードをし忘れていた…申し訳ない
支援できませんでしたが投下乙です!
じっくり読ませていただきます
76名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/22(水) 00:37:15 ID:fVnM+Ty70
投下乙!
やべぇ。無茶苦茶続きが見たい!
77名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/22(水) 21:29:23 ID:GvqwN48V0
投下乙!
通販で買ったアイアンメイデンに拷問のプロ、ミッドガルドやセインガルドの軍に、
チェス盤をひっくりかえしてチラ裏してろ……
サイグロのネタの数半端ねえwグリッドお前の役どころ取られてるぞw
78名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/26(日) 20:02:10 ID:juZsEHYO0
投下します
79End of the Game −蒼天層・まずは最初の刀鳴らし−:2010/12/26(日) 20:03:06 ID:juZsEHYO0
剣は、鋼と火と水によって精錬される。
思えば、僕の人生はずっとその繰り返しだった。
心を鍛え、磨き、さらに身体を鍛え、傷無く磨き、そして技を鍛える。ずっとその繰り返し。
そうやって鍛えられるものだと思っていた。
第四教練を治め、いつかは奥義さえ伝承されるものだと思っていた。いつかは。
今は村外れの森のイノシシにさえ手こずっていても、いつかは楽に倒せるものだろうと思っていた。いつかは。

ユークリッド騎士団の元団長でもあった父ミゲール。
その父の師でもあり、まだ子供であるはずの僕にさえ剣術の髄を教えてくれた師匠トリスタン。
どこまでも慈しみ、愛してくれた母マリア。
村一番の剣術道場の跡取りとして村の人たちは僕に良くしてくれて。
年相応に気兼ねなく語り合える親友がいて。その横には僕に手作りのぬいぐるみをくれる彼の妹がいて。

何もかもがあった。僕を満たし得る素材が僕の周りにあった。
その中でゆっくりと、しかし真っ直ぐな白刃を鍛えていくのだと思っていた。
僕はそうやって形成されるのだと信じていた。

でも、僕はまだ知らなかった。
この十余年、磨いてきたのは鉄だけだった。“まだ剣ではなかったのだ”。
火を入れ水を与え、鎚で打って鍛冶は成る。何もかもを凌駕するほどの高温と冷たい水だけが、真の剣を鍛える。

アセリア暦4304年、一本の剣を鍛えた。
心に点いた業火と、全てを濡らした凍る驟雨で。
その剣の色を、僕はきっと知っていたのに。

闇に包まれた夜の山を、双月の灯りだけが照らしている。
月光を表面の半分で受け止める山岳は雪も無いのに白く輝き、自らが世界の中心であることを誇示しているかのようだった。
月のもつ神秘を一身に受けた無名の山のその姿は霊峰ファロースの如き神性を発揮し、見る者全てを近付き難くする結界を形成している。
荘厳と静寂に形作られたこの領域に入るのは、稚児か余程の不心得者だけだろう。

そんな場所に、無粋が響く。神域を泥足で踏み荒らすかのような足音と刃鳴りが煩く夜を阻害する。
やれ不埒者よ姿を現せとばかりに月が煌々と辺りを照らすと、不自然な影が草原にあった。
薄汚れた髪に巻かれた不細工な白ハチマキに、追い剥ぎでもしてきたのかと怪しむほどに汚れの無い黄色の外套。不埒者ではなく浮浪者の類であったか。
その者を辛うじて不埒者にとどめていたのは、その背に負った薄汚れた布に包まれた剣であった。
片手に握った剛斧二つも異常ではあったが、鞘にも納めず背中に背負ったそれはあまりに歪だった。
背負われた長身の剣は柄まで全部、血塗れの襤褸切れに包まれている。
鞘が無かったにしても、あのような巻き方では一度破けば二度と使い物になるまいに。
鞘を買う金もないというのか。それとも、一度抜けば納める必要が無いのか。
そのように見当違いに案じているかのような月を、不埒者は横目で見つめていた。
決して届かぬ星を掴むような若々しさなど微塵も無く“ああ、届いたのか”と気付くような無感動さで。
その視線に月光の輝きが僅かに揺らいだような気がした。天より見下ろすはずの月が、地に這う穢れを畏れている。
だが、その穢れに包まれた剣を背負った不埒者は直ぐに視線を山に向けなおし、歩みを進める。
その道程を月は煌々と照らしていた。石コロ1つ余さず示し、どうか蹴躓くことなく、速やかに失せてくれと懇願する。
河の口の奥に不埒者が入り、完全にその気配が消えた時、再び月が爛々と生気に満ちて輝きだす。
生きている喜びを噛みしめるかのような躍動ある月光は感謝の現れだった。
あの眼は、間合いを測る剣士の其れ。“あと一歩踏み込めば、月まで届いた”だろうから。

そんな月の怯えなど知る由もなく、剣士は消えて失せた。もう月灯りが生きた人間を照らすことは二度と無い。


ぴちゃぴちゃと垂れる雫でさえ姦しい。そう思いたくなるほど、この石室の暗闇は静寂に過ぎた。
クレスはジリジリと仄かに燃えるランタンを掲げながら、その静寂の中で立ち止まる。
D4から東に走り、突き当たった川から沿って山を目指し、源泉を目指した道程、その終着点だった。
進むにつれてどんどんと狭く細くなっていく道を突き進んできたが、クレスの体躯で入れるのはここまでだ。
クレスは暫く川に埋まっていく道を見ながらしばし考え、溜息をつく。
これ以上先となると、泳ぎに達者な小さな女の子かいっそ人魚でもなければ進めないだろう。
仮にそんな稀有な人物がいたとしても、進める距離が僅かに伸びるだけだ。
潜った先に新たな道が無いとも限らないが、源流だけあって流れが激しい。水の中で武器を流してしまえば間抜け以外の何ものでもない。

ランタンがじりじりと岩室を炙る中、クレスは鼻をひくつかせた。
誰かが、ここにいたのだろう。流水によって完全に冷え切ったクレスが眼を細めて確信する。
この薄明かりの中でも見つかる痕跡がある訳ではない。強いて言うならば“匂い”。
人体を破壊することへの快楽と、未来での殺戮を夢見て眠るような“陽気”が源泉の口にこびりついている。
クレスは鼻を覆い、頬を不快と僅かに歪める。その匂いにではない。そんな僅かな匂いさえ理解できてしまった自分への不快だった。
不快に耐えかねたように、クレスのランタンを置いて空いた手が魔剣へと伸びる。
ここが終点とは思えないが、これ以上先に進めないのも事実。されども道があるとも思えず。ならばいっそ山ごと――――
そうクレスが決“断”しようとしたとき、山が鳴り響いた。
命惜しさに我が子を供物を差し出す様に、クレスの正面、源泉の隣の岩壁がゆっくりと開いていく。
あまりに紋切り型の隠し扉を前に、クレスは僅かに鼻を鳴らした。どうやら間違いなくここは敵の腹の中らしい。
手近な小石を拾い、扉の向こうの闇へ投げてみれば残響音は遥か奥へと抜けていく。
まだまだ先は長く、察するに地下へと進む道か。ならばこれから入るのは地獄か、虎口か、はたまた墓場か。

<アセリア暦4304年。地下の墓地に棺あり。
 黒き禍の騎士、この封を解きて魔王が蘇るだろう。若き騎士は己が無力の果てに、莫逆の友を失うだろう>

クレスは自分の喉元、その奥が冷え切ったように乾いたのを感じた。
嚥下する唾が粘膜に吸い込まれ、脳よりももっと身近な場所で古傷が呻く。
だが、その疼きを2回の呼吸で治めたクレスは、二本の斧をとランタンを掴み直しその扉へと歩を進める。
虎の顎であろうが、悪鬼の胃の中であろうが、クレス=アルベインにとっては問題ではなかった。
此の扉をくぐった先、何であろうと、何があろうと。

――――――――――――――――――――――Encount!!

瞬間、クレスの眼前に大太刀が出現する。既に十分な加速を得たその刃は、触れれば骨はともかく肉ならば確実に切断するだろう。
だがクレスは鍛錬を積んできた者特有の反射神経故か、間一髪で飛び退いてその殺傷範囲から逃れる。
左のランタンは邪魔と即座に地面に落とし、2本の斧を左右に振り分けて下がり、突如現れた敵を見やる。
上半身だけの体躯、無機的な鋼の肌、厳つい程に先鋭化した肩鎧―――――――虹色の輝槍。

敵の全体を見ようとしたところに、クレスの視界が輝く光で埋めつくされる。
上空より降り注ぐ光、その光源を確かめようとクレスが見上げると、虹色の美しい刃が5本も落下していた。
クレスは驚愕する暇さえ無いとばかりに左で防ごうとオーガアクスに力を込めるが、思考がその行動に急ブレーキをかける。
あれは唯の武具にあらず、魔力によって形作られたもの。恐らく物理的な防御では不足する。
そう判断したクレスはすぐさまオーガアクスを手放し、更に身を軽くして術の着弾点より退避する。
身代わりとばかりに残されたオーガアクスに虹槍が降り注ぎ、その眩むほどの光が空洞を満たしてクレスの眼前に広がる者たちの輪郭を明らかにした。

それは機械なのだろうか。それとも生命なのだろうか。それさえ断じられぬ程、彼らは曖昧だった。
上半身だけの鎧が浮遊している。一番素直な形容をするならばそれが最適だろう。
1つの鎧は武者のように尖り、その骨だけの様な腕に大きな剣を握っている。恐らくは前衛型か。
1つの鎧は魔術師のローブのように丸みを帯びており、腕をその中に隠している。先の術はこいつらのものか。
いずれも、どう見積もっても人間とは思えない異形。だが、機械というには余りに骨や生命を連想させる。
クレスが戸惑うのも無理からぬ話だった。
生命と機械が明確に区別されたアセリアには存在せぬ、機械工学と生体工学のハイブリッド。
神の眼の持つ膨大なエネルギーと天上の科学力の結晶たるダイクロフトのモンスター。
近接前衛型モンスター――――ヘルマスター。
術撃後衛型モンスター――――ウィザード。
いずれも精霊とヒトが交わりしアセリアとは根本から文化や思想が異なる、紛れ無き科学的異世界の魔物だ。
他にもナイチンゲールや、唯一クレスの記憶とフィットするバジリスクキング等がその奥に身を潜めている。
プリズムフラッシャの虹光が消え、岩室に暗闇がリロードされる。
唯一の光源であるランタンが地面で赤々と前衛のモンスターの表面だけを僅かに照らしている。
クレスが悪過ぎる視界状況の中で闇のその先を見据えると、冥府より逆流するかのような敵意が迸っている。
目視で確認した以外にも、まだまだ奥に何かが存在することは疑いようも無かった。
は、とクレスは背後から微かに聞こえた擦過音に気付き、半身になって背後を確認する。
しかし時は既に遅く、そこにあったのは無骨に紅く照らされた巨岩の壁が完全に通路を密閉する瞬間だった。

キィン、と耳障りな電子音が一斉に響く。そして前方の機械は剣を鳴らし、後方の機械は詠唱の光を放ち始める。
置かれた状況が理解できたのならば、早々に死ねと言わんばかりの攻撃開始の合図だった。
眼の前の、そして更に奥の敵意。それらを前に、クレスは戦闘へと意識を向けて背後に手を回す。
だが、その手は途中で止まり、僅かに逡巡したあとにガイアグリーヴァを構え直した。
状況は理解している。退路は断たれた。残されたのは星麗しき蒼空へ通ずる天道ではなく、冥底へと通ずる四万由旬の獄道のみ。
わざわざ“蓋を斬る”つもりもない。逃げる気など毛頭なし。もとより、この心に帰路など無いのだから。

詠唱が光り輝く、剣が近付く、石化攻撃が待ち構える。
クレスはオーガアクスの位置と状態を確認し、まだ使用可能であることを確認しながら意識を敵へと向ける。
深呼吸一回。それで全ての回路を戦闘用に切り替える。

「行くぞ!!」

前衛突撃、後衛晶術発射、そして剣士は剛斧を握り敵前衛へと走り抜ける。
盤上で行われる最後の戦い。その始まりは、あまりにオーソドックスな通常戦闘だった。




【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP10% TP25% 第四放送を聞いていない 疲労
   善意及び判断能力の喪失 薬物中毒 戦闘狂 殺人狂
  (※上記4つは現在ミントの法術により一時的に沈静化。どの状態も客観的な自覚あり。時間経過によって再発する可能性があります)
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷 背中に複数穴 
所持品:???@ダオスのマントで覆われた魔剣 ガイアグリーヴァ メンタルバンクル
    ホーリィスタッフ サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@若干血に汚れている
基本行動方針:「クレス」として剣を振るい、全部を終わらせる
第一行動方針:眼前の敵を排除
第二行動方針:奥底へ進もう……
第三行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:中央山岳地帯・開かれた石室の向こう

*石室へ戻る道は閉ざされました
*オーガアクスはクレスの近くに落ちています 

【エンカウント(敵に近い←1・2・3・4・5→敵に遠い)】
・ナイチンゲール×2【待機位置4、AI設定:術(プリズムフラッシャ)を優先して使え】
・ウィザード×3【待機位置5、AI設定:術(バーンストライク・スプラッシュ・エンシェントノヴァ・インブレイスエンド)のみ使え】
・ヘルマスター×3【待機位置1、AI設定:近くの敵を狙え】
・バジリスクキング×2【待機位置1、AI設定:近くの敵を狙え(通常攻撃時確率で石化異常)】
83名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/26(日) 20:08:29 ID:juZsEHYO0
投下終了しました。
84名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/26(日) 20:44:40 ID:LwiPKrKG0
 
85名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/26(日) 20:54:32 ID:LwiPKrKG0
反射的に支援したら、すでに投下が終わってただと……w

それはそれとして、執筆お疲れ様でした。
クレスの半生を描く文章、非常に雰囲気が美しいなあ。『剣』として生きてきた、
あるいは生かされてしまった彼の道行きや奥深さがよく伝わります。
主催戦力との遭遇から戦闘への流れも、システム的な用語を出しつつ綺麗に
整えられているところがゲームの二次創作らしくて良いなぁと思ったり。
敵の出典に合わせて、D2ベースの敵AIも面白い。パズリックな面白さは本編の
シャーリィ戦あたりから楽しんでいましたが、今回はどう繋がれていくものか。
コンパクトにまとまったなかに、気になるところがポロポロと出てくるお話、GJでした!
86名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/26(日) 22:43:45 ID:T8P8VWsy0
投下乙!
月明かりの中を駆けるクレスからなんともいえない哀愁を感じました。
「クレス」として剣を振るう彼ははたしてどこにたどり着くのか。
次回も期待してお待ちしています。
87名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/28(火) 20:53:11 ID:geJJ/HP/0
投下乙!文章がめっちゃきれいや…
にしても呼びつけておいて殺す気マンマンなミクトランひでーなw
88名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/01(土) 21:34:31 ID:1qX5oA1n0
新年明けましておめでとうございます。それでは今年の投下を、始めさせていただきます。
一対一の真剣勝負、そこには技術の持つ粋の全てが収められている。
同等の武器、同等の能力を持った2人の技術が拮抗する時、その勝敗を分かつのは非常に微小な要素となる。
それは練度であったり、一瞬の取捨選択であったり、はたまた2人が歩んできた過去の積み重なりであったりする。
無粋な横槍、手助けなど、周囲から一切の不純物を取り除いた完全な相対の中でのみ、
普段は小さ過ぎて形に出来ない、彼らが研鑽練磨してきたものの持つ“見事”を勝利と敗北の狭間に、垣間見ることができるのだ。
故に、真剣勝負は何よりも美しい。勝者にも敗者にもその美しさがある。

ならば、実戦は美しくないということだろうか。
一対多は当り前。横槍不意打ち飛び道具に虚言、罠。休憩や回復も完備。反則も無く審判は端から不在。
そもそも相手は勝手知ったる人間でさえ無く、四足多腕有翼人外化生上等。相手にとってこちらは敵ではなく餌。
生き残った方が勝ちで、どれだけ崇高な志があろうが死ねば土塊と成り果てて潰える。
大雑把で曖昧。真剣勝負が国お抱えの宮廷画家の名画ならば、実戦はさながら新米画家が仲間の顔に塗りたくったへのへのもへじか。

そんなものに、美しさなどあるのだろうか。あるのだ。

確かに、真剣勝負が持つ一種の気高さ、あるいは騎士道や武士道が持つ崇高さというべきものは無い。
そう言った微細な様式美が呼吸できるほど、戦場は美術館やサロンほど緩慢な場所ではない。
だが、レトリックな様式美を全て廃したその先にもう一つの美が存在する。
勝つ為に、極限までリスクを排除する。
生きる為に、最短最小最大効率で勝利を得る道筋を見つけ出す。
欲するものの為に、考え得る限りの策を編み、実行する。
死なぬ為に、華美な色気出さず、基本を丁寧に忠実に実行する。
望む為に、全てを見極め、全てを支配する。

一切の手段を選らばず、真の最善たる手段を選ぶ。
この酷過ぎる矛盾すらも許容する実戦の真―――――――合理という名の機能美だ。

ロッククライマーが僅かな岩場を見つけて登っていくように、苛烈な環境であるほど、そこからの活路は細く薄い。
しかし、その活路は確かに活きる路であり、これ以上ないというほどの理の輝きを放つのだ。
千年の研鑽を経た宝石には無い、蛇足を付加される前の純粋なる原石の光の“美事”なるや。

故に、実戦は何よりも美しい。敗者には辿り着けぬ生き残ったという結果にもまた、真の美しさがある。
クレス=アルベインが身を投じた戦いの備えた美とは、まさにそれだった。

90名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/01(土) 21:36:19 ID:qUArQncS0
支援
91名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/01(土) 21:36:31 ID:RCGVg2Ar0
 
92名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/01(土) 21:37:14 ID:RCGVg2Ar0
 
ドドドォンと炎弾が3発着弾し、燃え焼けた大地の底からジュワァと水蒸気を纏った水流が立ち昇る。
けたたましく放たれる術撃を前にクレスは疾駆していた。的を絞らせること無いよう、常に全力で走り続けている。
一度でも巻き込まれれば、圧殺されてそのまま終了だ。それほど今のクレスの肉体は損耗し切っていた。
いかにミント、そしてマーテルの起こした奇跡により呪いを封じ込めたとはいえ、その肉体までも一新された訳ではない。
ロイドと銀髪の剣士、二人の腕利き剣士を同時に相手取り、
雷を駆使し翻弄した『コングマンだと思い込んでいた』両剣士を相手に最終奥義を放ち、
挙句の果てに本来ならば勝負自体が有り得ない晶霊術師キール――確か一度前にも見たような気がする――によって心臓にかなりの電圧を叩き込まれた。
如何に村に入るまでは休息を行っていたとはいえ、生半可な剣士ならばこの内2つも重なれば剣を握れない身体になっていただろう。
こうして戦いの形になっているだけ、クレスの積み重ねた鍛錬が勝ち得た幸福に他ならない。
だが損傷状況は予断を許さず、特に心臓は常に爆弾を抱えているも同義だ。数の上で既に劣勢、長引かせれば更に分は悪くなるだろう。

しかし、それでもクレスは一太刀すら振うことなく走り続けていた。
岩室ほど狭くは無くとも、お世辞にも広いとは言えない空洞内を、進行方向を壁と敵で塞がれないことだけを徹底して、走り続けていた。
近付いては剣を向けてくるヘルマスター達に返しの刃を向けることも無く、更に退いて逃げていた。
だが、クレスの行動は理に適っている。斧は威力が高いが故に、その重量も生半ではない。一太刀振うだけで大きな隙を生むことになる。
例えその刃がヘルマスターを1体両断できたとしても、待っているのはバーンストライクとスプラッシュの挟み撃ちだけだ。
故に、中途半端な攻撃さえも気安く放出はできない。しかし、それほどの重斧を以て走り続ければ待っているのは疲労だけだ。
このままでは自滅する。なのに攻めること無く走り続けるクレスは一体何を待っているのか。

その時だった。直近の晶術二つを走り抜けたクレスが、ヘルマスターらの位置を見て飛翔したのは。
「鳳凰天駆!」
跳躍の最頂点に達したクレスが焔を纏い、さながら火鳥の如くウィザード達を強襲する。
嘴の如く正面に突き立てられた炎の斧に、縦に3体並んでいたうち一番手前のウィザードが腹のど真ん中を穿たれる。
前衛後衛完璧に整えられた布陣を前に、真正面から前衛と斬り結ぶ馬鹿者は居ない。いるとしたら墓の中だ。
守るべき味方の後衛がないのであれば、わざわざ敵前衛の足を止める必要などない。
たった一人戦場に立つ剣士が真っ先に潰すべきは後衛だ。攻撃術の雨霰の中ではまともに剣を掲げることさえできないのだから。
クレスは詠唱直後の間隙を狙い、アルベインの強襲技を以て前陣をすり抜け後衛を喰い破った。
斧に突き刺さったモンスターを見ながら、クレスはその手ごたえを感じた。
やはり後衛型故か、脆い。この業物の斧であれば一刀で十分に裂ける。ならば―――――残りも倒す。
94名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/01(土) 21:39:55 ID:qUArQncS0
  
クレスの視線が突き刺さったモンスターの更に奥に移る。
そこには接敵を許して慌てふためくようなウィザードと、その後方で早く早くと急くように詠唱を輝かせるウィザードがいた。
他2体が詠唱を終えているにも関わらず、まだ詠唱している。
モンスターが唱えているのがエクスプロ―ドのような上級術だと断じるのに時間はかからなかった。
突き刺したモンスターを振り落としている暇はない。クレスはエンシェントノヴァを唱えようとするウィザードの“更に奥”を見ながら斧を振う。
「虎牙破斬!」
通常の斬撃を放つことなく、上下二段の連撃を放つ。急務であるのは詠唱している方の破壊であるが、唯の斬りでは奥のウィザードに届かない。
槍や剣と異なり突きによる攻撃を想定していない斧では、秋沙雨のように間合いの離れた相手を穿てない。
だからこそ、クレスは虎の二連で前方のウィザードを“押した”。斬られたモンスターはたたらを踏むようによろよろと下がるが、
背中が後ろの同型にぶつかってしまう。なぜお前も下がらないのかと後ろを向いたが、理由は明白だった。
詠唱中のウィザードの後ろには洞窟の湿り滴る壁があった。後方に存在し過ぎた為に、彼らには退くべき背後が無かったのだ。
更に言えば、彼らを守るべき前衛は未だ遥か遠く。クレスの手によって、限界まで距離をあけられてしまった故に。
「獅子閃空破!!」
それを最初から確認し、壁と自分で彼らを挟みこめるように強襲したクレスの赤い一閃が放たれる。
虎牙破斬の着地によって込められた足への力を殺すことなく放出された威力が、既に穿たれた1体含めて3体を纏めて壁へと縫いつける。
既に詠唱は潰されていたが、クレスの拳は止まらない。空いた右の掌に込められた獅子の一撃が、刃に残った残骸を掃うかのように壁に押し潰した。
彼らは最も不幸だった。彼らはクレスにとって一番恐るべき存在であったが故に、真っ先に呪われてしまったのだ。

撃破の余韻に浸る間もなく、クレスは身体ごと後方を振り向く。そこには中衛に位置し、詠唱を進めていたナイチンゲールが2体いた。
周囲を取り巻く法陣の色は白。一番最初の光属性の槍は、あちらのものだったか。クレスは詠唱者を誤っていたことに舌打ちした。
「魔神剣!」
だが、それ以上に悔む時間は無い。クレスは走るよりもまず先に斧で地面を逆上げに払い地面から衝撃波を飛ばす。
剣よりも重い斧故か、以前に見せた無色無拍の神撃ではない白色の衝撃。だがそれでも、ナイチンゲールのうち1体の詠唱を妨害するのには十分な速さだった。
被弾を免れたもう一体が、急ぎ虹槍を黒い天井から降らせる。しかし、槍にて貫くべきクレスの姿はもうない。
魔神剣を放った後、直ぐに“前方に回避した”クレスはそのままの速度で斧を2体を纏めて両断するべく横に薙ぐ。
1体はその断面から醜い機械の部分を晒しながら倒れ落ち、もう1体は断絶された1体が楯となり、辛うじて機体が二つに分かれることを避けた。
だが、この状況においては余命が2秒延びたというだけでしかない。
クレスの剛斧が、手負いの機械を今切断するべく、斧を振り上げ――――――――――――なかった。
「!!」
クレスは咄嗟に身を屈め、ガイアグリーヴァの刃の部分で楯と覆った。
直後、2体のバジリスクの牙がその刃に噛みつく。その牙にクレスは掠り傷でさえ触れる訳にはいかなかった。
後一歩で最後の後衛を破壊できる。その魅力を封じ込め、迷わず防御に専心する。
仲間が一切いない今のクレスにとって石化は死と同義だ。相討ちすら許されない今の状況では僅かな欲さえ命取りになる。
渇望するべきは、死なぬこと。倒れないこと。袋小路に追いやられないこと。勝つことは至上ではない。
その実戦における絶対律を忠実に守り、クレスはバジリスクの石化をギリギリで防ぐが、その表情は苦みきっている。
楯越しにでも軋む身体は、それほどに弱り切っている証。
バジリスクの背後から聞こえる金属音の群れは、引きつけておいた前衛が戻ってきた証。
時間がかかり過ぎた。万全ならばまだ短縮できた5秒が、この危機を招いている。
「獅子戦吼!」
クレスは半ば強引な獅子戦吼で斧に噛みつくバジリスクを弾き飛ばす。
無理な姿勢で放たれたそれは威力は全くと言っていい程なかったが、僅かに間合いさえ開けられれば十分だった。
「鳳凰天翔脚!!」
その間隙を見逃さず、地面に倒れたナイチンゲールを蹴り上げて炎で斬りつつ、バジリスクから更に距離を空ける。
何とか後衛の壊滅という最低条件を達したが、それで終わりになれば苦労はしない。
クレスは魔神剣を数度放ち牽制するが、漸く到着したヘルマスターがバジリスクの前面に立ち、自ら食らうことで楯となっていた。
5体一丸となって進む隊列は、壮観であり狡猾だった。バジリスクを強引に狙えばヘルマスターに止められて、バジリスクの牙にかかってしまう。
鳳凰天駆で背後を取ったとしても、攻撃に転じる前にヘルマスターが再び楯となるだろう。
そもそも、絶対に石化出来ない今、バジリスクキングの間合いに入ることさえできないのだ。
だが、遠距離の雄である魔神剣は前衛の楯を突破できない。この状況を破るには、魔神剣程に遠く、魔神剣よりも威力ある攻撃しかない。

クレスはじりじりと後退しながら一瞬だけ、背後の剣を見た。
黒にまで固まってしまった血塗れの襤褸切れに包まれた剣。その歪な剣を握ろうと僅かに手が緩む。
だが、何かを振りほどく様にして掌の肉に食い込むほどぎゅうとその手を握り締める。
その決意が形になったか、クレスはハッと何かに気付き、二度と迷うことなく敵の隊列へと駆け出した。
血迷ったか。ヘルマスターは眼前の愚か者を撫で斬りにすべく剣を振りかざし、バジリスクキングはその愚か者の面を永久に飾っておくために牙を顕わにする。
だが、クレスは血迷ったのでなければ諦念し万歳突撃をしたのでもなかった。
「紅蓮剣!!」
跳躍、そして投げられた斧が紅き焔を纏いながら回転して落ちていく。
アルベイン流剣術において、間合い外からの攻撃は魔神剣だけではない。
互いの間合いよりも遥かに遠い位置より放たれた燃える飛び道具は回転を携え恐るべき威力で隊列のど真ん中を狙い落とす。
バジリスクキングを守る様に真中に配置されたヘルマスターが高熱の斧によって飴のように軟く斬られ、
2匹並んだバジリスクキングは、寸分違わず2匹の間に着弾した轟斧によって爆裂する。
木っ端微塵といってもいい程の威力。これほどの奥義を持ちながら、何故使わなかったのか。
その答えを示すべく、残った2体のヘルマスターが仲間を悼むことなくクレスの着地地点へと急行する。
龍と共に空を駆けるドラゴンライダーの備える二段ジャンプや、スカイキャンセルといった小器用な技は、王道そのものの剣術たるアルベイン流には存在しない。
故に、一度中空を舞えば後は唯地面に落ちるのみ。ましてや、今クレスの手元には武器が存在しないのだから。
それこそが紅蓮剣の最大の弱点。間合い外からの高威力と引き換えの、着地し剣を得るまでの圧倒的な隙である。
助走をつけながらの紅蓮剣のため、クレスの身体は放物線を描く様に宙を泳ぐ。
その放物線は綺麗な弧を描き、それ故に着地点を推測するのは容易だった。
着地する間際のクレスに接敵し、2体のモンスターは今度こそと高らかに剣を振り上げた。
武器を、ガイアグリーヴァを持たぬクレスを殺す為――――“オーガアクスを持った”クレスを攻撃せんと――――!?
「!?」
混乱を示すような乱雑なノイズがヘルマスター達に走る。
何故クレスがバジリスクキングを潰すすためとはいえ、貴重な武器を手放したのかを一瞬で理解する。
しかし、もう遅い。
振り下ろされた刃は斧もヒトも無く、無意味に大地を裂いた。その情けない姿を雷光が遍く照らす。
「襲爪雷斬!」
迸る雷光がオーガアクスを輝かせ、そしてヘルマスターの1体を貫く。
残るは剣を地面に刺してしまい抜けずにもがく哀れな機械と、その頭上より斧を掲げる剣士が一人。勝敗を問う必要などなかった。
雷刃一閃。雷の速度で振り下ろされた刃が、最後の1体を金属の塊へと還す。
計10体。あれだけ賑やかだった洞窟が、再び静まりかえる。生き残ろうが、死のうが、唯一の勝者しかいない戦場には静寂しかない。

「僕、の……勝ちだ!」
だからこそ、クレスは斧を掲げそう言った。自分に言い聞かせるように、この勝利は“僕”だけで得たものなのだと示す為に。
だが、その叫びに言葉を返す者は無く、ただ洞窟だけが空しく残響する。
生き残る為に、死なぬ為に、技の全てを尽くして敵を屠る。そこに一切の無駄は無く、全ての不純物を排した純粋は何よりも美しい。
だが、その美しさは冷たく乾いていた。その美しさを共有するモノがいなければ、美しさにも技術にもなんの意味があるのだろうか。

そう、独り。勝利しても、独り。

その空しさに押し潰されるかのように、クレスの膝が重力に沿って折れる。
辛うじてオーガアクスを杖にして上体まで伏せることを拒むが、その損傷は誰が見ても明らかだっただろう。
この戦闘だけでつけられた傷は僅かであれど、既に瀕死一歩手前の位置に立つクレスにとっては何が致命になってもおかしくはないのだ。
既にコレットを助ける為に割って入った時でさえ、相当な無理がかかっていたのだから。
「集、気法…」
乱れる呼吸を無理にでも整え、クレスは人間が本来持つ治癒能力を活性化させる。
この島では焼け石に水の処置であるのは最早言うまでもないことではあったが、今この場では若干状況が異なっていた。
ティトレイから譲り受けたメンタルバンクルから、装備した腕を通じてクレスに光が伝播している。
その効果は敵を倒すごとにTP+5%。斬り捨てた敵は10体だから、そのTP回復量は実質全体の半分となる。
本来ならば3時間から5時間休憩しなければ回復できないものが、たった5分足らずで得られたのだ。
参加者一人を倒すだけでも苦労する島の上では扱いにくいアクセサリだったが、この様な機械を壊すだけで回復できるならば、メンタルシンボル等よりも役に立つ。
じわじわとした回復を待っていられない自分にとって最高の餞別を渡してくれたティトレイに、クレスは力無く笑った。
そして立ちあがり、クレスは少し離れた場所のガイアグリーヴァを拾い直す。
歪なものとはいえ笑い顔をまだつくれるだけの活力を得たが、その対価として得られた精神力の殆どは幾重の集気法によって失われてしまった。
そしてお世辞にもその得られた活力は、失った精神力と帳尻が合わないものだ。
乱発は出来ない。だが、再び剣を握ることが出来る、それだけでクレスにとっては十分な回復だった。

ガイアグリーヴァを拾い直したクレスが目を細めて更なる奥を睨むと、ぼう、と岩肌と水の湿りがおぼろげに映る。
どうやら闇に眼が慣れてきたらしいのか、クレスはランタンを拾うことなく奥へと踵を向ける。
ここから先は、ランタンで片手を潰す余裕さえなくなるだろう。
唯一の光を手放し、クレスは更に奥へと向かう。深く深く、更なる闇のその深淵へと。


―――――――――――――――――――――――――――――Cless Win !  Go To Next Stage!!



【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP20%@集気法をTP40%分使用 TP20% 第四放送を聞いていない 疲労
   善意及び判断能力の喪失 薬物中毒 戦闘狂 殺人狂
  (※上記4つは現在ミントの法術により一時的に沈静化。どの状態も客観的な自覚あり。時間経過によって再発する可能性があります)
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷 背中に複数穴 
所持品:???@ダオスのマントで覆われた魔剣 ガイアグリーヴァ オーガアクス メンタルバングル
    ホーリィスタッフ サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@若干血に汚れている
基本行動方針:「クレス」として剣を振るい、全部を終わらせる
第一行動方針:奥底へ進もう……
第二行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:中央山岳地帯・開かれた石室の向こう→さらに奥へ


【Notice】

新しいチャットが出現しました

Select:『大地の味がする』
98名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/01(土) 21:44:57 ID:1qX5oA1n0
投下終了です。名前が長すぎたため簡略しましたが、正式なタイトルは

『End of the Game −蒼天層・ここでグミを使うような奴のお帰りはあちら−』

になります。
末尾にも書きましたが、次回投下はスキットとなります。
それでは今年一年も、よろしくお願い申し上げます。
995 修正:2011/01/01(土) 22:03:40 ID:1qX5oA1n0
【Notice】

新しいチャットが出現しました

Select:『大地の味がする』



【Notice】

新しいスキットが出現しました

Select:『大地の味がする』

でした。すいません。
100名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/01(土) 22:07:21 ID:RCGVg2Ar0
執筆お疲れ様でした! 素敵なお年玉だなあ……このバトルは。
敵の群れを抜けて、本格的にバトルに突入して以降は2Dテイルズの戦闘画面で
想像できました。技を出すタイミングとか集団戦闘における戦術にしても、リアルさと
「テイルズらしさ」の両立がかなっていて、これは、すごくいいなあと。

>そう。独り。勝利しても、独り。

それで……そんなにも高いバトルの再現度や、流れや技の出し方などをきちんと計算
された描写の巧みさ・美しさに浸っていた――SSの文章に引き込まれていただけに、
このくだりにはつよく衝撃を受けました。
クレスの活躍は……ああ、でもなあ、私たちが読んでても救われないんだよなあ……。
この一文だけでふっと冷静にさせて、心を奪っていく描写が凄い。序章でも綺麗な
文章が際立ってましたが、綺麗な文章だからこそ沁みます、こういうの。
なんだか、「泣いた」んじゃなくて「じわっと」きました。次のスキットも楽しみにしております。
101名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/04(火) 22:56:38 ID:y+skNz/r0
tesu
102名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/05(水) 17:44:02 ID:RfsvlgYK0
クレス一人でバジリスクと戦う時の恐怖はランドアーチンよりも凄い
それを思い出した
103名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/05(水) 18:06:00 ID:zHF02fvj0
せめて、ミクトランくらいは倒せ。
104名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/07(金) 03:28:58 ID:Q7TKDPSM0
ふと見ると二話も投下が
投下乙!
刀鳴らしはタイトルがかっこいい上に内容にぴったりだ
研ぎ澄まされた一本の日本刀の如きクレスに読んでいて戦慄を禁じ得ない
薬中化は抑えているはずなのに、いや、むしろだからこそか。ひしひしとした怖さがある
「断」のようにところどころの山だろうが月だろうがぶった斬りかねない描写もいいなー

ここグミは作中の言葉をかりるなら機能美の一言に尽きる
本当に美しい勝ちざまだ。薄氷を渡るが如きぎりぎりの勝利を、当然のように掴むのがナイス
個人的には大好きな紅蓮剣大活躍が嬉しかったw
次はスキットだそうだが、前のグレイドの時のように台詞だけなんだろか、楽しみだ
105名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/08(土) 18:12:08 ID:HAwNJRiE0
書き手の一人です。
現在、2chにおいて情報漏洩が起こり、閲覧・書き込みに際して問題が発生しているようです。
事態が収束するまでは、したらばの以下のスレッドにて企画を進行いたします。

URL:ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5639/1131447039/l50(頭にhをお付けください)

比較的使用されていない避難所内の「新作キタ───(゚∀゚)───!!!」スレッドを再利用し、
ここをアナザー用の投下・感想用スレッドとして用いたいと思います。
急な話ではございますが、被害がどれほどのものになるか想定出来ない為、
ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
106名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/15(土) 08:59:52 ID:5sILkSyRO
保守
107名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/23(日) 11:25:16 ID:vcaf1KVpO
保守
108SKIT「大地の味がする」:2011/01/23(日) 21:14:11 ID:p2sh/jBb0
「ヘルマスターCを排除。残存エネミー無し。チェック……応手はありますか?」
「ありません……リザイン。勝者……グリューネ様でございます……」
出現した敵を全て撃破したグリューネの初戦勝利をサイグローグが宣言する。
「どうしました? 大風呂敷を広げた割には、随分と手緩いですね。まさかこれで終わりだと?」
サイグローグが盤上に出した敵駒を鮮やかな手並みで排除したグリューネは、
少しだけ背を逸らし、その豊満な胸を道化に突き出して挑発する。
だが、サイグローグはそんな貴重なサービスシーンなど眼中にないように眼を伏せて、
仮面越しにも伝わる程の不満を洩らしながら盤上を見つめていた。
「不満があるならば、何か言ってはどうですか? 私の手に何か不自然でもあったと?」
「いえ……グリューネ様の一手……通しでございます……誰の目から見ても矛盾も不合理も無き、
 瑕疵無き一手……覆す余地などございません……まこと、自然の極みでございます……」
「そう本心から思うのであれば、せめて私の眼を見て言えばどうですか? 怒らないから言ってみなさい」
「…………本当に言っても?」
「最初からそう言っています」
「本当に……?」
「いいなさい」
暫く考えた後、サイグローグが俯き加減のまま、聞こえるかどうかギリギリの音で呟いた。
「――――――――――――大地の味がします」
「今、何と?」
「……豊かな滋養と、作り手の慈愛に包まれた野菜の……芳しき香りと、力強き味わい……
 清涼なる流水に洗い、そのまま歯を立てればシャリと輝き鳴らす繊維のきめ細かさ……
 根より培った素材の味を極限まで引き立てた繊細なる味わい…………これ正しく大地の味でございます……」
眼を瞑って詩人か料理審査員かとばかりの論評を紡ぐサイグローグ。
どんな批評皮肉を吐いてくるかと身構えていたグリューネは少し驚いたような顔をする。
「意外ですね。貴方がそのようなことを口にするとは」
「私はいつでも正直でございますよ…………ですから、食べた感動のあまり思わず厨房へ向かい、
 暖簾を掻き分けてこう叫んでしまいたい―――――“このやさいを作ったのは誰だあっ!!”……と……」
「!?」
「これまで万漢全席かくやの美味珍味至高の粋を尽くした料理が振舞われていたというのに……
 何が悲しくて、今更野菜を丸齧りしなければならないのか…………実に貧乏臭い……」
「私の一手が、野菜だと?」
「オフコース……どれだけに旨かろうとニンジンはニンジン、キュウリはキュウリ……素材は所詮素材……
 ただ素材に齧り付くだけなら犬でも出来ること……それを如何に加工し、調味し、盛り付け……『料理』とするか……?
 それこそが本能で喰らう畜生と理性にて嗜むヒトの境目…………今更素材本来の味など……誰も求めていないのですよ……」
神の一手、そこに込められたモノを咀嚼し理解しながら尚“クソ不味い”と吐き捨てるサイグローグにグリューネは歯を軋らせる。
「それが無惨に駒を全滅させられたプレイヤーの言葉というなら、滑稽というしかありませんね」
「紳士たるものレディ・ファーストでございますよ……グリューネ様の料理を堪能するべく先ずは食前酒を用意した次第……
 しかし…………どうやらグリューネ様はコース料理の“手順”はおろか調理法さえお解りになっていないご様子……
 このまま野菜ばかりの精進料理が続けばお客様の舌を退屈させてしまう……仕方ありませんか……」
やれやれと溜息をつきながらサイグローグが指を鳴らすと、盤がドクりと鳴動し始める。
「ダンスに不慣れな淑女をエスコートするもまた紳士の務め…………ご教授してさしあげますよ……
 肉の味を……肉に塗す香辛料のスパイシーさを……上手な肉の斬り方を……」
ニヤ付く道化が指を鳴らすと、盤がぞぞぞと唸り這い振動する。一秒ごとにビートを上げていく振動は、まるで時計の針を早めるかのよう。
「シナリオ7から20をショートカット……地形、及び配置を変更……準備完了……
 おっとりなグリューネ様のリズムに合わせていては夜が明けてしまいます故……少々“巻かせていただきます”……
 何を勿体ぶっているのかは存じませんが……伏せ札があるなら早めに切ることをお勧めしますよ……ククククク……!」
サイグローグが笑みながら蠢き色立つ盤の躍動は、次なるゲームの始まりの鐘。
グリューネは射殺すほどの眼光で道化を穿ち、何かを決意するかのように応酬を告げた。

「……こちらの台詞です。その言葉を吐いたこと、後悔など許しませんよ」
109名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/23(日) 21:16:34 ID:p2sh/jBb0
投下終了です。

避難所にも書きましたが、一応の事態鎮静化を受けてロワ進行を本スレに戻します。
再度問題が発生した場合は、避難所進行を含めその際に検討といたします。
110名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/23(日) 21:46:58 ID:LWKoYYyI0
執筆、そして誘導と、お疲れ様でした。
タイトルが巧かったので色々と想像していたけれど、こうくるか。
クレスの掘り下げは「新章突入、そして仕切り直し」ってな印象を受けたのだけど、
煮込んたシチュウが好きらしいサイグローグの口には合わないですよねーw
メタ視点を巧く使って、読み手の読みたい(であろう)山場を見せようとする動きも巧み。
面白い試みをやってるなあ、と思いつつ、道化の素敵な語り口を堪能させていただきました。
111名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/28(金) 19:10:39 ID:vbyIV6m+0
お、本スレに戻ってきたか、了解です
さて、確かにこれは仕切りなおし
いや、むしろサイグロさん曰く、巻いていくだそうだから、「これからまた急転直下行くぜー!」宣言かな?
楽しみです
112名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/05(土) 20:54:09 ID:5KSLWUnHO
保守
113名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/14(月) 15:27:34 ID:vipQ/BEh0
保守
114名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/21(月) 16:45:10.71 ID:nALDD6bHO
保守
115名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/27(日) 09:36:17.55 ID:W1XBDlUb0
マイソロ3のコングマンとミントの仲のよさは笑った
そりゃクレスもああなるわw
116名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/01(火) 00:52:24.06 ID:fOjEKaKz0
なん…だと…?<仲の良さ
117名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/01(火) 06:13:42.21 ID:xDAintRV0
コングマン「聞いてくれミント! 今日はフィリアさんと五分も会話できたぜ!」
ミント「まあ、それは良かったですね」

コングマン「なあ、ミント! フィリアさんに何をプレゼントすればいいと思う!?」
ミント「心が篭っているものが一番だと思います」

コングマン「ミント! お前、いいヤツだな!!」

こんな関係だったな
ぶっちゃけクレスより絡みが多かった気がw
118名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/01(火) 21:00:56.69 ID:fOjEKaKz0
投下します。
119End of the Game −今生層・壊刀乱麻キラーズ− 1:2011/03/01(火) 21:01:58.33 ID:fOjEKaKz0
震えている。
影が、光が、空気が、そして自分の吐く息が。
天下無双を名乗るに相応しい腕を持つ剣士の吐息が、けれども何かに怯える様に小刻みに震えている。
緊張か恐怖か……或いは疲労か。
一時的に復活した自我と迫り来る狂気の狭間では、それすらも判らない。
一人の剣士として存在を宣言した筈の“クレス=アルベイン”は、しかしそれほどまでに不安定であり、何処までも曖昧だった。
幾ら高く立派に立っていようが、所詮は砂上の楼閣。
何時崩れ落ちるやも分からぬ脆い楼閣から、大黒柱を抜くなぞ論外だ。
そう、だからクレスは背の最強の一振りを解けない……否、解かないのか、或いは……。
それすらもクレスには判らなかった。
今出来る事を続ける為には“多分”それを使うわけにはいかないのだろう、と漠然と思っているだけだ。
クレスが少しでも永く、剣でなく剣士で在るには、それは“おそらく”抜いてはならぬ<抜けぬ>禁忌の黒刃―――究極の諸刃の剣なのだ。

直ぐ側にあるにも関わらず剣を抜けない<抜かない>。即ちアルベイン流を越える最強の剣技を使う事すら叶わない。
何という下手な笑い話か。命を賭するべき最終決戦で剣士が加減をすると宣う。
そんな愚かな剣士が何処の世界に居よう。……だが困った事に、その大莫迦は確かに此所に居るのだ。

背負う獲物が放つ魔力の芳しさは、蜂がこぞって群がる蓮華の蜜のようであり、甘い誘惑に違いなかった。
挙句重みは鉛の杭と化し、クレスの足を地面に縫い付けようと必死になっている。
重い。そう……余りにもおもいのだ、それは。抜けば愛しい人へのおもいを砕いてしまうほど。
ふとクレスは、立ち込める暗雲から逃れる様に手元を見る。そこには、闇にぎらりと怪しく浮かぶ弧月の二枚刃があった。
それはまるで常夜の町から見上げた双月のようで、クレスは目を細めて霞んでしまった記憶を懐かしむ。
三日間の痛ましく壮絶な記憶が、それをもう届かぬほど遠くしてしまっていた。
だが、それでも自分の中に“まだ残っている”。その事実は少なからずクレスを安堵させた。
だがそう思う度に背の悪魔がずしりと心に伸し掛かる。
こうして懐かしむ事すら出来なくなるかもしれない未来の自分は、思うに今以上に――――――――孤独、としか言い様がなかった。

アルベイン流は剣・刀・斧・戟・棍……ありとあらゆる武具に応用出来る様な究極の流派だが、本質は剣を扱う為の流派である。
それもただの剣ではなくグリップソードを、だ。
故にアルベイン流の得手不得手で言えば、斧は言うまでもなく後者だった。
だがクレスの手に握られているのはその不得手な斧が二本。
有終の美を飾る最終戦にしては、余りにも頼りない獲物だった。
棒切れよりは役立つとは言え決して満足とは言えないその斧の柄を握り直すと、クレスは足をゆっくりと前に出す。
不服そうな素振りは全くない。武器が何であろうが、“敵を壊してしまえば一緒”だからだ。
邪魔だと捨てたランタンは遥か遠く、光は最早無いにも等しい細やかなものだった。
それでも、本当の意味で光一つ在りはしない闇の中では確かな道標になる。
洞窟が馬鹿正直に一本道だったのは実に幸いだった。……偶然か或いは主催の計いか。
後者だとすれば馬鹿にされているとしか思えないが、今更安い挑発に乗るほどクレスは愚かではない。
屈辱に眉一つ動かさぬクレスを、地面に浮かぶ影は強情なとけたけた笑った。
湧水に滑る岩肌はてらてらと煌びやかに光を反射している。まるで金銀玉が散りばめられているかのようだ。
黴の臭いと嫌に肌に纏わり付く湿気には、いつの間にやら身体も慣れてしまっている。
何も音を出す気がない洞には足音だけが響いていた。
それは山彦の様に壁を反射し奥へ走ってゆくと、やがて闇に殺されてゆく。
今際の際の声の様なやけに虚しい残響だった。
夜よりも遥かに暗いであろう洞穴は、人の欲の様に底が見えない。
身体も音も光も感情も命さえも、その洞穴は何でも飲み込んでしまいそうだった。
漆黒の魔獣は、孤独な剣士をその腹に閉じ込めようと躍起になっているのだ。
120End of the Game −今生層・壊刀乱麻キラーズ− 2:2011/03/01(火) 21:02:35.75 ID:fOjEKaKz0
数分歩いた後、クレスは歩みをはたと止める。
足音が反射しない。吸い込まれてしまいそうな虚ろな黒は、そこで大きく口を広げていた。
狭い廊下は終わり、此所からは会場。
そう、そこはまるで……殺劇の為に用意されたコロッセオ。

クレスは震える息を深く吐くと、その空間の中心まで足を進め、斧を左右に構える。
――――――――――――――“居る”のだ。
幾ら闇に乗じて姿を消そうが機械になり殺気や生気を消そうが、“臭い”は消せない。

「……行くぞ」

一斉に詠唱を始める敵の晶力に照らされたクレスの輪郭に、深い影が落ちる。
相手の数は丁度10。ナイチンゲール2にウィザード3、ヘルマスター3にバジリスクキング2。
種と割合に敵の作戦、それら全てが第一戦と同じ。
変わった事と言えば……2Dから3Dへ、狭い廊下から360度見渡せる広い闘技場へと進化した程度か。
……だとすれば随分舐められたものだ。
躊躇無く三方向から飛び掛かってくるヘルマスター達を一瞥し、クレスは笑みとも取れる複雑な表情を浮かべた。

“これならどうか”と挑戦者を試すような舞台には、けれども観戦者や応援者一人居ない。
誰も覗かぬ孤独な最終戦。難易度はまだまだベリーイージー。
人をおちょくる様な第二戦は、開始の掛け声としては余りにも小さ過ぎる呟きで幕を下ろした。


クレス=アルベインは、戦闘において鬼才である。
血統の影響もあるだろうが、それでも有り余る程の才を彼は持っている。
剣技、気功、体術。その三要素をあの年齢で極められる屈強な戦士はそうそう居ないだろう。
この舞台の中でさえ、そこまでの猛者はスタン=エルロン一人しか居らず、そしてそのスタンはクレスに敗北している。
挙句クレスはあらゆる武具を扱え、ぶしつけ本場で馬上槍術をやってのけ、時空剣技を自在に引き出しそれを我流奥義に昇華しているときた。
本人は純粋に鍛練が生んだ力だと謙遜するだろうが、確かにクレスには他人には無い才能があったのだ。
           .......
……そんなクレスに、一度使用した手が万に一つでも通じるだろうか?


「飛連閃」


―――――――通じる訳がないのだ。
“閃”……否。それは一筋のか細く美しい“線”だった。
剣を振り下ろさんとしていた三体のヘルマスターは、一切の無駄が無い太刀筋が刹那に暗闇を走り抜けたのを辛うじて視認する。
敵と言えど天晴。
彼等が機械ではなく人間であれば、目を奪われ自然とそう思った事だろう。
尤も相手が人間であれば――――少なくともそれを思う頃には、四肢を絶たれ脳をなます斬りにされているだろうが。
クレスが迷い無く繰り出した初撃は、それほどまでに洗練された一線だった。
言葉を失うほど絢爛で、それでいて血も涙も無いほど残酷。

必殺。
そう、掛け値なくクレスの一撃は“必殺”なのだ。
121End of the Game −今生層・壊刀乱麻キラーズ− 3:2011/03/01(火) 21:03:41.09 ID:fOjEKaKz0
きん、とワイングラスを爪で弾いた様な澄んだ音が闇に囲まれた闘技場に反響する。
真っ先にクレスに飛び掛かっヘルマスター達は、この時着地するクレスの右手に握られたオーガアクスに“線”の残像が続いている事に漸く気付いた。

「!!?」

瞬間、未だクレスへと剣を振り下ろしてすらいないヘルマスター達のコアに衝撃が走った。
二機のヘルマスターの思考プログラム内にエラーコールがけたたましく鳴る。
“今、我々はこの人間に攻撃をされたのか?”
回路を駆け巡るWHYの三文字。機械の反応速度を人間が超えられるはずがない。
残る一機は、それを疑問に思う事すら出来なかった。
コアに走った衝撃が動揺の電流による衝撃ではなく、剣が走った事による物理的衝撃であったからだ。
何故か真ん中から四つに分裂し空中解体された同族を見て、残されたヘルマスター達はこの時初めてクレスが斬撃を放ったのだと気付く。
クレスの刃の餌食となった最初の一機は幸運だった。
鬼神の様な闘気と殺気に触れる事なく機能停止したからだ。

機械は生物ではない。
それはごくごく当たり前の事だ。機械を初めて見て十数分と経っていないクレスでさえそれは薄々理解している。
クレスは目線だけで辺りを伺った。詠唱待機の光が幾つか見える――――――予想通り“未だ撃てない”か。

「……!!」

闇に橙色の火花が散った。
ヘルマスター達は同族の死に僅かの動揺も見せず、着地しようとするクレスへと剣を突き出す。
彼等には「近くの敵を狙え」程度の単純な命令信号しかインプットされていないからだ。
彼等は腐っても機械。優秀過ぎる故の……欠点がそこにある。

ヘルマスター達は着地するクレスを前後から挟み、左右二本の剣を素早く斬り上げた。
隙の無い動きに仲間の死に躊躇さえ見せない思い切りの良さ。
二機のコンビネーションは誰の目から見ても簡潔且つ完璧だった。
着地する前に四方から迫る斬撃……勝利を確信するには十分過ぎる状況だ。
人間の肉体構造上、空中で前後どちらの剣もいなせる訳がない。

そう、クレス=アルベインが――――――――――――――――――“人間”なら。

「焼けて、蕩けて、弾けて、砕けて、無様に中身曝け出して……」
クレスの正面側のヘルマスターは、サーモグラフィモニタ越しの闇に浮かんだ紅い弧月に気付く。
「……僕に剣を向けた事を、地獄の底で後悔し続けろ」
サーモグラフィモニタが一気に鮮血色に染まった時、文字通り“全てが終わっていた”。
残されたのは精練された装甲をまるでアイスのように溶かされてしまった背後の一機と、脳天から股まで串刺しにされた一機。

ヘルマスター達の敗因は二つあった。
一つ。ヘルマスター達は初撃の際、クレスの右手に“オーガアクスしか握られていなかった”事に気付くべきだった。
二つ。クレスが“右と左で違う特技を使える”事を思い出すべきだった。
初撃に神速で放ったのは右の飛連閃、そして――――――空高く投げたガイアクリーヴァによる左の紅蓮剣。

死合開始から僅か数秒。飛連閃の予備動作から着地寸前まで。
たったそれだけの時間でヘルマスター達はスクラップ以下の屑と化してしまった。

―――舐めるな鉄屑。同じ面子で勝てるとでも思ったか?

屍の中心に降り立つ鬼神の背が語るその言葉に、残ったモンスター達は戦慄する。
正に努力と才の二重奏が生み出す神業。しかしそれを褒める者は誰も居ない。

仲間も恋人も宿敵さえも、誰一人。……誰一人、居ないのだ。
122End of the Game −今生層・壊刀乱麻キラーズ− 4:2011/03/01(火) 21:04:28.54 ID:fOjEKaKz0
着地すると同時に、十数の眩い剣が洞内に降り注がんとクレスの頭上で輝いた。
労いの言葉も無ければ、一息吐く暇さえ与えられない。
分かりきっていた事ではあったが、クレスは舌を打つと勢い良く地面を蹴り上げる。
同時に前後左右を素早く確認するのも忘れない。
辺りが光に満ちている今の内にこの空間の大きさと敵の位置を把握しなければならないからだ。
クレスの視線が舐める様に闇を走る。
真正面奥に詠唱待機するウィザードが一体、右前奥と左前奥にはまだ詠唱完了していないウィザードが一体ずつ。
右にバジリスクキングが二体、左には―――姿が見えない。
だとすればと後ろを横目で確認すれば、ナイチンゲールが二体。

クレスは再び迫る光の剣を確認すると、焔の翼を纏い逃げる様に後ろへと翔んだ。
何度も言うが一撃でも食らえばそれが致命傷になりかねない。
幾ら鬼才の鍛え抜かれた身体と言えど、その実は数百詰まれたトランプタワーの様に脆く儚かった。

しかし、クレスとて単純に逃げている訳ではない。
翔んだ方向には詠唱を開始するナイチンゲール。着地と同時に狼狽するナイチンゲールの脳天をかち割ると、クレスはオーガアクスを構えた。

「……獅子戦吼」

青、いや極限まで青が圧縮された―――黒き獅子が虚空に牙を剥く。
バギョッ。
鉄関節が出鱈目な力で折れ曲がる禍々しい音が闇に響いた。
斧へ串刺しになっていたヘルマスターは、その瞬間踏み砕かれた煎餅の様に木っ端微塵に砕け散る。

「!?!?」

詠唱しながら遠目にクレスを見ていたもう一体のナイチンゲールは、その様子に気でも違ったのかと目を白黒させる。
獅子戦吼では闘気を飛ばせても精々が2、3mが限界だ。
幾らこちらに向けて放とうがそれは変わらないし、何よりそれはほぼ“決定事項”だった。
ミクトラン側からインプットされた情報によれば、クレス=アルベインは“威力強化した技で間合いを狭める事は可能でも、広げる事は出来ない”からだ。
無論威力に拘らなければ効果範囲も広がるだろうが、それにしては今回は獅子の威力が凶悪過ぎる。
零次元斬がそれらを証明している。威力を底上げするには如何しても密度を上げる必要性があるのだ。
結果として、効果範囲は狭まる。当然だった。
……なのに一体全体誰も居ない空間に向かって何をしているんだ、こいつは。

―――だが、その答えを直ぐにナイチンゲールは身を以て知る事になった。
砕け散ったヘルマスターの残骸が数百の凶弾となり……ナイチンゲールの全身を驟雨の如く襲ったのだ。
気付いた時には視界に穴が空いていた。術を詠唱していたナイチンゲールには成す術もなかった。
後に残るのは皮肉にも仲間の死骸に風通しを良くされた骸だけだ。
クレスはその様子を確認せずに息を吐き、横目でちらりと背後を睨む。
詠唱待機していたウィザードは―――“まだ詠唱待機していた”。

「ッ……!」

その意味を理解すると、クレスは素早く後ろへ飛ぶ。
半秒と待たず、バジリスクキングが放った石化光線がクレスの先程まで居た空間を襲った。
「く、はッハ……あははハ……」
クレスは嗄れた声で呆れた様に笑うと、バジリスクキングの背に斧を力の限り突き立て、そのままその斧ごと遥か後ろで詠唱待機するウィザードへと放り投げた。
後はまさに刹那だ。ひゅん、と風を切る音が僅かに鳴ったかと思った時には、ウィザードの命は疾うに終わっていた。
バジリスクキングの腹を破ったオーガアクスは、そのまま鈍い音を上げてウィザードの頭部も串刺しにし、標本でも作るかの様に会場の壁に突き刺さる。
クレスは生唾をごくりと飲み込むと、眉一つ動かさず懐から素早く出した杖で背後を突いた。
「ゴぎゅぷッ」
同時に妙に歪んだ悲鳴が上がる。
クレスの持つ杖は……獲物を無くした今こそチャンス、と背後から襲いかかっていたバジリスクキングの大きな口を見事に貫いていた。

「獲物は二つだけだと言ったかい?」
123End of the Game −今生層・壊刀乱麻キラーズ− 5:2011/03/01(火) 21:05:34.66 ID:fOjEKaKz0
思わず身震いする様な冷め切った声色でクレスは呟く。
口蓋から脳天を突き破ったホーリィスタッフが緑色の血をぬるりと滴らせていた。
びくびくと脈打つように、バジリスクキングは惨めに痙攣を繰り返している。
その度にびゅるびゅると飛び散る生臭い鮮血を顔にたっぷりと浴びながら、クレスは残された面子の方向を静かに向く。
……その様は異様としか言えなかった。
闇に立つは噎せ返る程の血の臭いの中、眉一つ動かさず虚ろな目を見せる剣士。
定期的に顔に掛かり続けている粘性のある血液を拭おうともしないその様は、思わず目を覆いたくなるほどに壮絶な絵だった。
ホーリィスタッフに刺されたバジリスクキングは弱々しく悲鳴を上げ、同情を誘っている。
正義の騎士と呼ぶには、クレス=アルベインのその姿は―――――あまりにも、禍々しかった。


クレスは乱れた息を整える様に深呼吸をする。
遠く構えるウィザード二体は律義に詠唱を待機していた。クレスはそのあまりの危機感の無さと滑稽さに堪えきれず、肩を小刻みに揺らす。
……どうも、想像していたよりもこいつらに命令を下したミクトランは頭が足りないらしい。

――――――人工知能<アーティフィシャル・インテリジェンス>。
下等機械でありながら自ら考え、プログラムされた作戦を最善策で遵守するというアセリアの技術力では到底存在し得ない脅威の器官である。
それ故に、この連戦にクレスはある程度の苦戦を強いられる筈だった。
だが、此所が“会場内”である以上、多勢に無勢が何も苦戦を強いられるとは限らない。
クレスは先の戦いの敵の様子を見て、ある程度それを理解していた。
確かに此所がアセリアであったならば……この状況でクレスは傷の一つでも負っていたかもしれない。
しかし此所は敵味方関係無く、数々の特殊ルールの上に成立する限定空間。
そう、敵AIにとってそれこそが仇になった。


<宣言・確定事項≪アブソリュートゼロ≫――――――会場内において味方への術技マーキングは無効となるッ!!>

ルールに縛られているのは、何もこちらだけではない。
このルールこそが、最低限の命令しか下されていないモンスター達にとって最大の弊害だった。
<近くの敵を狙え>、<術のみを使え>……数ある命令は、全て“敵”においてのみ有効だ。
即ちマーキング無効である会場内において、仲間が交戦している場所に術を打ち込むのは……最大の命令違反だった。

“敵を攻撃する事は出来るが仲間を攻撃する事は出来ない”

コアにデフォルトインプットされているであろうその当然の思考こそが、彼等の猛攻を鈍らせていたのだ。
故にクレスは初戦と異なり、術を警戒せずその場で前衛と獲物を交えた。
その穴を利用する為、今もこうして―――――――“あえてバジリスクキングを虫の息で生かしている”。

ウィザードには最早どうする事も出来なかった。
百舌鳥の早贄えの様にバジリスクキングを串刺しにして担ぐクレスを前に、攻撃する術を持てなかった。
仲間が生きていている以上、術で巻込む事は出来ない。
<待機位置5・術のみを使え>としか命令されていないが故に、クレスが近付けば逃げて再び詠唱するしか選択肢がないのだ。
状況的には人質を取られたのにも同然。そもそも万に一つ、クレスから逃げられる筈もない。

「獅子戦吼」
ガイアクリーヴァを回収し、逃げ惑うウィザード達を隅に追い詰め、クレスは落ち着いた声色でバジリスクキングを圧殺する。
飛び散る内臓と体液の雨の中、さて次はお前達だと顔を上げる鬼にウィザード達は歯向かう気すら起きなかった。
「奥義、襲爪雷斬破」
暗闇に雷が走り抜け、戦斧が低く唸る。勝負は一瞬だった。
ウィザード達の未来は、最初から―――死しか有り得なかったのだ。

「……僕、の、勝ちだ……!」
124End of the Game −今生層・壊刀乱麻キラーズ− 6:2011/03/01(火) 21:06:20.74 ID:fOjEKaKz0
勝利。
それを確認する様にクレスは零す。誰に言うわけでもなく、ただただ垂れ流す。
今自分に出来る事はこれだけだ。どんな手を使ってでも勝利をこの手に。
是も非もない。ただ前に進むだけだ。誰も居ないなら、善し悪しも、卑怯も何もあったものじゃない。
勝利だけが道なのだ。まだ大丈夫。忘れていない。まだ超えていない。そう、まだ……。

クレスは糸が切れたように倒れ込む。わなわなと震える両手で顔を覆い、何かに堪える様に背を小さく丸めた。
揺れる喉と歪む口、そして絶えぬ肩の揺れは無自覚だった。
洞内を反響する声は、自分を惨めに感じさせる。二戦。たった二戦目で“このザマだ”。
背中のソレでもない、ただの斧を一振り振っただけで、まるで安いペンキのように、ボロボロと剥げ落ちていく。
もう、自分にはどうしようもないのかもしれない。
クレスはゆっくりと立ち上がると、諦めた様に声を飲み込み肩を落とした。
同時に得られたTPを用いて集気法を唱えながら、静かに視線を上げ行くべき道を見る。
真っ暗な闘技場の出口は……“まだ開いていなかった”。



【Pause――――

 おやおや……そんなに声を荒げなくてもよいではないですか……折角の美貌が台無しですよ……ククッ……

  それはそうでしょう……雑魚を何匹屠った所で、道が拓く道理がありません……“お約束”―――マナーという奴でございますよ……

 グリューネ様も今しがた……“法”を使用したではないですか……何もルール違反ではありません……
 ……私? 私はしっかりと……えぇ、しっかりとルールを遵守しております……おりますとも……紳士ですから……
 はて……何を仰っておいでで……“私が一度でも法を守らなかった試しがありますか”……?
 おや……何やらお気に召さない様子……これはおかしいですね……私めは事実を言っているまでですが……
 ……貴女はいつもそうですね……事実をありのまま伝えると決まって同じ反応をする……
 これでは……『わけがわからないよ(笑)』とでも言いたくなります……もしや――――“ルール違反とはこういうのを言っておられますか?”……

  <宣言・飛刃空襲≪セヴァートフェイト≫―――作戦並びに号令固定解除/エネミー追加{Comand:five swords}>

 ……仕方ありません……お望みあれば、投入致しましょう……扉を開くための番人を……
 ……同じ反応では……退屈です……退屈だと私、眠たくなってしまいます……折角の白昼夢としてはこの舞台、少々刺激がなく退屈でして……
 ……ならば『夢もキボーも無いじゃない』と泣き叫ぶまで永遠に踊ッテ貰オウカト……クくクくクックくくククックくハハハ……!

 ―――――Encount!!】



ボズン。
例えるならサンドバックを大砲で撃ち抜いた様な、そんな鈍い音だった。
クレスは身体をくの字に折ったまま吹き飛ばされ、激しく動揺する。
自分の身に何が起きたのか全く分からなかったからだ。
瓦礫に全身を殴打され、クレスの視界に星が散る。
油断していたとは言え、腐ってもクレス=アルベイン。
並の敵ならば、例えクレスが小便中であったとしても一撃を許すわけがない。
それはつまり、クレスに攻撃した敵のレベルが桁違いである事を示していた。
クレスもそれを瞬時に理解する。……この敵は今までの雑魚とは比較にならない。
本気で戦わなければ――――――間違なく、五体満足ではいられない。
クレスは口内の血を吐き捨てると、瓦礫から立上がりよくもやったなと前方をぎろりと睨む。
土煙の向こう側には人影が五つ。それぞれが身に着けるは銀色に輝く鎧。靡くは栗色の髪。
蒼色の焔を上げる禍々しい獲物に、見間違えるはずのない―――


「まさか……お前らとはね……」

125End of the Game −今生層・壊刀乱麻キラーズ− 7:2011/03/01(火) 21:07:29.76 ID:fOjEKaKz0
―――血よりも紅い緋色のバンダナ。

「は、はは……せめて聞かせてくれよ……何で……」
焦点の合わぬ目玉をひん剥きながら、クレスは覚束無い足取りでふらふらと後退る。
珈琲に垂らしたミルクの様に、ぐにゃりと視界が歪んでいった。
どん、と壁に背をぶつける。ふるふると顔を左右に振るが、視界から“彼等”が消える事は決してなかった。
全身にどっと汗が噴出すのと同時に、顔から血が引いてゆくのを感じる。
わなわなと震える手からガイアクリーヴァはいとも簡単に抜け落ちた。
がらぁん。
最強の戦斧が情けなく音を上げたのを合図に、クレスの悲鳴が喉を焼く。

「……何でお前等がそこに居るんだよ―――――“僕”」

谺する悲痛な叫び声の中、五振りは腹を抱えて大爆笑。
何でと聞かれてもこっちが困るって。だって、産まれちまったんだもんさぁ。
手前が産み落としたクセして、用済みになったら勝手に廃棄物扱いってか? それで本人は満足ってか?? あ???
……ソンナモンコッチカラシタラタマッタモンジャアネェヨナァオイ。


「ヒャは。久し振りだな―――――――“僕”」


対峙するのは数時間前に砕かれた哀れな剣が五振り。銘をアルベインと云う。
さぁ、騎士クレス。今こそもう一人の自分と向き合って……グッチャグチャのミンチ以下のカスっきれになっちまえよ。


<クク……なにも主催戦力がモンスターだけと言った覚えはありません……尤も……これは夢……幻想“かも”しれませんが……。
 幻想と思うならば……どうぞその身体で剣の痛みを味わってお確かめくださいませ……ククク……クハハハ……>


「何時まで府抜けた顔してんだよォ“クレス=アルベイン”んんッ――――――飛燕ッ連脚アァッ!!」
はっと気付いた時には、一振りのアルベインが半狂乱で襲いかかって来ていた。
クレスは乱れる心音に落ち着けと無理矢理言い聞かせた。
ガイアグリーヴァを拾う暇は無く、懐のホーリィスタッフでアルベインの脚を受けようとする。

「ヒャ、ハはハァ! だァ目だそれじゃア。全然駄目だッて」
「くカカカッ! 手前ェの剣はお飾りかよ!?
 こちとら殺しに掛かってんのにッ! ン甘ェってんだらアァァ!!」

―――何時の間に!? 否、空間翔転移か!!
対応を嘲笑しながら上空から襲い来る剣は二振り。クレスの身体が突然の奇襲に僅かに強張る。
その隙を見逃す程、アルベインは剣が出来ていない。

「ンな棒切れで俺の技が防げるッワケぁ……ねぇだろうがよォおッあァァあぁァッ!!!」

クレスが注意を目前のアルベインに戻した時には時既に遅し。
いや、そもそもたかが後衛用の貧弱な杖でアルベインのキョウキが防げるわけがなかったのだ。

「なッ……!?」

アルベインの脚は、ホーリィスタッフを粉々に砕きそのままクレスの胸に確りと届いていた。
クレスの視界が暗転し、体内を電流が駆け抜ける。
肉を抉り、肋骨の隙間から内臓を蹴り上げるその一撃は、まるで身体の芯をレイピアで突き刺す様な激痛をクレスに与えた。
しかしそんなクレスに休む暇は半秒たりとも無い。
競り上がる胃液を鼻と口から吹き出しながらも、クレスは直ぐさまバックステップで距離を取る。
二振りの空間翔転移による串刺し刑から逃れる為だ。
126End of the Game −今生層・壊刀乱麻キラーズ− 8:2011/03/01(火) 21:09:14.67 ID:fOjEKaKz0
「まだ*かないつもりかよ。おめでたいな“僕”は。それで誰も彼も救えるとでも思ってんのか? ははハひゃ」
「そんな覚悟で俺に勝とうってんだからさあッ! さいッコーの笑い種だよなあァァあぁぁぁぁ!!!!」

しかし、それを待ち構えていたかの様にクレスの左右の耳元で二振りのアルベインが嗤う。
「「獅子……戦吼ッ!!!!」」
天性の反射速度か。咄嗟に残ったオーガアクスを背中にまわして直撃を防ぐ。
しかし、鋼を伝う獅子の双咆哮の前にはその防御など気休めにもならずオーガアクスは弾かれてしまう。
地面にエターナルソードを突き立てる二振りから目を離す間もなく、クレスは背の衝撃に意識を飛ばされそうになった。
二回転、三回転。
地面を派手に回転するクレスの行き先にアルベインの一振りが転移し、狂った様に頭を蹴り上げる。
ぱきょ、と小気味好い音。クレスの鼻と耳から血が吹き出した。

「……ッはァ! ははヒヒははハハハHahaハッ!!! しねSHI廻しね死ね死に曝さァァえッ!!!!」
「殺してころして殺ス殺し尽くして殺し抉って斬って殺すて砕いて刻んで壊してぶッ殺し斬ッ潰しちまうだけだらあァァ!!」

そうして無理矢理中空へと浮かばされたクレスの顔面へと、素早く転移したもう一振りのアルベインは、躊躇せず拳を振り下ろす。
受け身を取る隙すら与えない。見事な連携だった。

ぐしャり。

<作戦変更・攻撃頻度5→2へ>

血と反吐と鼻水と剥れた皮膚と……数え出したらキリがないほどの有機物が奏でる不愉快な合唱に、アルベイン達は愉快愉快と哄笑する。
下品に笑うアルベイン達の手にはエターナルソードは握られていない。
もうクレスに対して使わない事にしたからだ。
クレスの命がもう永くなく、またそれは一つしかない事を狂っているなりにも理解したからだった。
殺人衝動のみで動く彼等にとって、こんなにも愉快で最高な玩具はない。
それを直ぐに手放してはつまらないというものだ。
アルベイン達は、最早完全にクレスを雑魚以下の残滓としか見ていなかった。

<さてグリューネ様……王手でございますが……何時まで“ソレ”をもったいぶっているんでしょうねぇ……?
 ……ほら……早く抜かなければそのうち死んでしまいますよ……それでは……実につまらない……ククク……>

もう何度目だろうか。
地面を派手に転がり血を撒き散らしながら、クレスは得も言われぬ虚しさに下唇を噛む。
朧気な視界の隅に映るのは、狂気と快楽に溺れ、中身の無い笑い声を上げる剣の姿。

「はは……ひゃははハッ! かかカカカッ!!!」


<そこまで、抜かせたいのですか――――――――――ならば“望み通りにしてあげましょう”……!>


127End of the Game −今生層・壊刀乱麻キラーズ− 9:2011/03/01(火) 21:10:07.68 ID:fOjEKaKz0
これがかつての……否、今の僕自身にも存在するであろう“もう一人のクレス=アルベイン”。
今も押し殺している僕自身の影の姿。そのなんと……なんと、醜い事か。
とは言えど何時かは見なければならない獣には違いなかった。
俺は僕で僕は俺。どちらもがどちらにも潜む現なのだ。
だがそれにしたって、この仕打ちはないだろうよ。
解けと言うのか。抜けと言うのか。成れと迫るのか。
今一度コレを、お前を理解してその上で――と。
勿論今なら、楽な道を選んで諦める事だって出来るだろうよ。
孤独な戦いに負けたところで一体誰が僕を責める? そう、誰も責めやしない。
……だけども勝てと。誰も見ていない戦いを、しかし誰かの為に勝利し続けろと、きっとそう言うんだろうね。
嗚呼、そうか。もう無理なんだね。ここからはもうこんな生半可な気持ちでは進めない。
そもそも五人の自分相手に、今のままではどだい勝てっこない。
生か死か……ははは。そんなの、選ぶまでもないだろ。
もう決めたよ。遅かれ早かれ――ねばならない肉だった。
この際これが現実か妄想かなんて関係ない。もういいんだ。
分かってる。お前の事も、もう僕は痛いほど分かってるんだ。
僕も汚れる覚悟を決めるよ。だから――――――――――――――――――――


<宣言・狂気抜刀≪スタイルシフト≫。覚悟しなさい、サイグローグ。これが、お前を殺す剣ですッ!!>
「狂<剛>招来――――――」

瓦礫から立ち上がった死に損ないが、潰れかけた喉で小さく呟く。
疾うに狂ってしまったこの地下で、けれどもまた一つ……狂気を呼び寄せる確かな音が、大地を震わせるに足る悍ましい何かが、その言葉にはあった。
世界も空気も闇も光も血肉もマナも何もかもが、クレスのその言葉に息を飲む。
その呪いは……超えてはならない一線を超える足音そのものに相違なかったのだ。

「―――――――皆殺しだ、僕共が」


【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP10%@ TP20% 第四放送を聞いていない 疲労 打撲裂傷多数
   狂気抜刀<【善意及び判断能力の喪失】【薬物中毒】【戦闘狂】【殺人狂】の4要素が限定的に発露しました>
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷 背中に複数穴 
所持品:???@ダオスのマントで覆われた魔剣 メンタルバングル
    サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@若干血に汚れている
基本行動方針:「クレス」として剣を振るい、全部を終わらせる
第一行動方針:奥底へ進もう……
第二行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:中央山岳地帯・開かれた石室の向こう→さらに奥へ

*ホーリィスタッフは破壊されました。オーガアクス、ガイアグリーヴァはクレスから離れた位置に落ちています。

【エンカウント(敵に近い←1・2・3・4・5→敵に遠い)】
・???<アルベイン?>×5【待機位置1、AI設定:技を優先して使え】
状態表に誤りがありました。↓のように修正して投下終了です。
さるさんになってしまいましたので、お手数ですがどなたか修正及び投下終了の連絡をお願いします。


【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP10%@ TP20% 第四放送を聞いていない 疲労 打撲裂傷多数
   狂気抜刀<【善意及び判断能力の喪失】【薬物中毒】【戦闘狂】【殺人狂】の4要素が限定的に発露しました>
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷 背中に複数穴 
所持品:???@ダオスのマントで覆われた魔剣 メンタルバングル
    サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@若干血に汚れている
基本行動方針:「クレス」として剣を振るい、全部を終わらせる
第一行動方針:眼の前の自分達を殺す
第二行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:中央山岳地帯・開かれた石室の向こう→さらに奥へ

*ホーリィスタッフは破壊されました。オーガアクス、ガイアグリーヴァはクレスから離れた位置に落ちています。

【エンカウント(敵に近い←1・2・3・4・5→敵に遠い)】
・???<アルベイン?>×5【待機位置1、AI設定:技を優先して使え】
129名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/01(火) 21:50:26.71 ID:eL3mWp070
おお、3月頭にくるかw 執筆と投下、お疲れ様です。
良いなあ、この文章。スキットの「大地の味がする」ではないけれど、気負いや
無駄のない描写が、素材の味をそのままに戦いを美しく描き出してる……。
で、まったくと同じ陣容による第二戦で、よりダイレクトに見えた乱戦の『美しさ』。
作中で言及されたとおり、これこそがクレスと機械の違いでもあるだろうなと
感じるのだけど、それを戦術と、戦術を伝える文章で表し得ているのが素敵でした。

……そして、そうだよなあ。同じことの繰り返しだったから、きっちりと型を知って
敵手を型に嵌められるだけの技量を持つクレスは、余裕があるからこそ自分が
孤独であることに意識を向けられもするんだよなあ……。
それでも戦うためにミントのホーリィスタッフを出してきたときには、涙が滲んじまった。

そして自己へ向きあったティトレイがミルクティーなら、こっちはコーヒーとか、
相変わらず小ネタが巧い。ぐるぐる回る戦場が、螺旋のようなvs,自分の乱戦となって、
覚悟を決めたクレスがいずこの奥底へ向かうのか。
今からが本番だというのに、ものすごく楽しませていただきました。GJです。
130名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/02(水) 09:33:37.60 ID:MsdiCJ9JO
投下乙!
とりあえずサイクロてめぇネタ言うことに命でも掛けてんのかよw

しかしクレスは今回明らかに描写が「悪」側だよなあ。
最後の一言と言いどんどん悪魔じみてく…。
ミントの遺品だったホーリィスタッフがクレスの手で血に濡れていって狂ったクレスの手で砕け散るってのがまた憎い演出。
131名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/02(水) 14:25:36.19 ID:ZuhOwyMfO
乙。…ぶしつけ本場?
132名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/03(木) 19:29:17.55 ID:7v1sIP1GO
>>131
ググってみ

乙過ぎる格好いい文でした!
133名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/03(木) 19:57:31.21 ID:T5Vz3MSRO
ググったがこのロワ関連しかかからない件について。

ぶっかけ本番とは違う…んだよな?
134名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/03(木) 20:59:55.99 ID:7v1sIP1GO
>>133
申し訳ない。俺がググったのはぶしつけ本番だった
135名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/04(金) 10:21:49.11 ID:y+1KkI1zO
恐らく「ぶしつけほんばん」を「ぶしつけほんば」とうち間違えたか、予測変換間違いだろう。
アナザーは携帯書き手さんが一人いるからね。仕方ないw
136名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/04(金) 18:49:08.21 ID:HJrLC/NQO
ぶっかけwww
それを云うならぶっつけ本番だろ
137End of the Game −今生層・狂気伐剣ベルセルク− 1:2011/03/04(金) 21:32:50.42 ID:t7gd3J9Y0
狂招来<ゴウショウライ>。

ただ、その7文字だったはずだ。一秒に足りぬか足りるかで綴れる言葉の音だ。
情けない命乞いでさえもう少し長いだろう。
なのに、アルベイン達は止まった。女を貪るように血肉を欲し続けるあの残骸たちが、止められている。
散乱しながら凝縮する十の眼球が見つめるその先には、一人の剣士。
既にその吐息は虫以下で、立ち上がるのもやっとの有様だ。

一太刀浴びせれば、吹けば飛ぶように朽ちるだろう。その程度の存在だとは既に見切っている。

だが彼らは動けなかった。何故という問いに答えられるほど、ハッキリとした理由はない。
ただ、動けなかった。彼は我らより劣っていると云うのに。
ただ、足が重かった。我らは彼よりも純粋であると云うのに。
ただ、喉が渇いた。彼は誰よりも弱いと云うのに。
ただ、眼が離せなかった――――――――彼の持つ剣が、あまりにも妖し過ぎたが故に。

「ハ、ハハハっ! 丸腰に何が出来るっていうんだ? 雑魚は大人しく解体けてろよッ!」

アルベインの内の一振りが、周囲にまどろむ気配を振りほどくかのように嘲笑する。
そう、瞼を閉じて再び開けば何のことはない。眼前の剣士はまだその背中の剣に触れてさえいないのだ。
だから剣を抜くことは出来ない。そして今から抜くというのなら、その前にバラバラにしてしまえばいい。
そう考えたか一振りは剣先をジャリジャリと地面に掠らせながら剣士へと斬りかかる。
対する剣士は一歩も動かない。襤褸のまま佇むその姿は、断頭台の死刑囚の如く静謐だ。
だが、分かる。まだ動けない4振りにも、動かされた1振りにも否応なく矛盾を確信できた。
“剣は既に抜かれているのだと”。
だがクレスの空手は未だ何も掴まず、関節を揺らしている。ならば何を抜いたと云うのだろうか。
剣士に恐ろしさは微塵もなく、ただ、その不可視の剣が怖ろしい。
その答えを知ろうとするかのように、アルベインは剣を逆風に振り上げる。
自分を包むその気配を振り斬るかのように―――――――

「虎牙――――「集気“砲”<しゅうきほう>」

その瞬間だった。アルベインの振り上げようとした剣がガクンと落ちる。
自分の剣に起こった異常に釣られて視線が剣の柄へと泳ぐ。
そこには握るべき剣を握らず、剣士の掌を重ねた手首があった。
「ガ…ッ!? しゅ、集気法が、何で…ッ!?」
剣に加速が乗る直前の一瞬に重ねられた掌打が、虎牙破斬の出かかりを完全に殺した。
何千何万と技を鍛え、全てを知り尽くしたものにしか理解できないその刹那を寸分違わず狙い撃つ剣士。
しかも、アルベインを止めたそれは剣ではなく拳だった。

攻撃技でさえない集気法が何故この手首の奥から発するような痛みを生み出すのか。
自らが丸腰になったことにさえ気付けない程動揺したアルベインがその疑問を洩らそうとするが、
ずい、と眼前に立ったクレスの存在に息さえ出来なくなる。剣を持たぬ剣士が剣の間合いでどうなるかなど決まっている。
だがクレスはそうはしなかった。ふわりと、アルベインの血に固まったの髪に手を乗せる。
それはさながら、親が息子の頭を撫でるかのようだった。
渾身の決意を以て親に反逆の意思を見せた息子の勇敢さを讃え、その成長ぶりに報いるかのように優しい手のひらだった。

「獅子―――――
「まさか、回復技で剄を――――――」
だが親に歯向かった“しつけ”は不可欠だ。頭上に集う気配に、アルベインは怖れ慄く。
大気中の『気』を『集』めて体内の治癒力を促進させる集気法。
だが、今アルベインの頭上に集まっているのは大気ではない。
もっとどす黒く、内側より湧き出でて鈍く光る粘液だ。

 ―――――戦吼」
138End of the Game −今生層・狂気伐剣ベルセルク− 2:2011/03/04(金) 21:35:07.43 ID:t7gd3J9Y0
ゴヌギャァ。
擂り潰したような、圧し砕いたような、噛み切ったような不細工な音が響く。
その集めた殺気を、制限にかかる治癒に使わなかったら。損傷個所ではない、例えば拳に集めればどうなるか。
例えば体内に湧きあがった獣の闘気を、足の爪先から掌に集めたならば。
体内で加速された気を、頭上から一気に下方へ叩き込まれたならば。
本来ならば横に吹き飛ばされるだけのはずの力で、逃げ場無き大地と共に挟まれたなら。
少なくとも身長は10センチ縮み、首のあった場所から白い骨が肉を裂いて現れるらしい。

クレスが手を頭からそっと離すと、頸椎が陥没した残骸は糸が切れたように折れて倒れた。
その様を見て残りの4人はゴクリと唾を飲み込む。
彼らはアルベインであるが故に、その技が何かを過つことなく理解していた。
獅子戦吼。突進から繰り出される獅子の闘気が鎧の上から、楯の前から、防御の奥へと敵を弾き飛ばす“徹甲”の特技。
それは最早自分たちの与り知る獅子戦吼ではなかった。
本来の技ならばあるはずの、十分に加速距離を確保された上での突進モーションは無く、
叩きつけるはずの掌は相手の頭を優しく撫でており、ましてや相手を喰らう獅子の気も存在しない。
何処をどう見比べても獅子戦吼ではない異技。だが、彼らはアルベインだからこそその技を理解してしまった。
本来なら身体ごと加速されるはずの闘気を集気法と重心移動を用い、体内で加速させたのだ。
足の爪先から指先まで約2メートルもある発射口を経て繰り出されるそれは零距離にして無拍子。
確かにそれは彼らの持つ技ではなかった。放ってから当てて相手の防御を破壊する獅子の咆哮ではなかった。
『当ててから放ち』、相手の防御ごとその大きな顎で“丸呑みする”―――――――人命を破壊する為に完成された技だ。

何故だ。アルベインの内の1本が自問する。
他の3本も恐らくは同意見だっただろう。なぜなら彼らは皆等しく『剣』であったからだ。
眼の前の虫けらが“捨てられなかったモノ”を棄てて強くなったのが彼らなのだ。
友情、慈愛、正義etcetc。クレス=アルベインが抱えていた不合理・不純物の一切合財を排して彼らは存在している。
剣を鈍らせる不要なアプリを全て削除して、剣としての機能を極限まで特化させたからこそ彼らはここまで強いのだ。
ならば、何故。何故俺達が圧し折れている? 何故剣も抜いていない剣士に陥没した頭部で地面を舐めさせられている?
何故、俺達があんな出来そこないの初期ロットに攻め込むのを躊躇している?
無手のまま立ち尽くすボロボロのクレスを見ても、筋肉をごっそり抉られた自分の腕は剣を抜きに行かない。
潰れた瞳に映るのは喉を寸分違わず突き刺す刃と柳の幽霊が如く貧相で虚弱なニンゲン一人だ。
隙だらけの今、百と三十八の刀剣で裁縫の針山にされた他の3本と一斉に攻め込めば血祭りにされてしまうのは必定。
なのに、動けない。腿から下をごっそり輪切りにされたこの両脚は動いてくれない。
見えるのだ。胸骨から切開されて顕わな心臓の心眼が捉えてしまう。
薄らと、剣士の罅割れたその傷の奥に、確かな刀身の輝きとコノセツナニモオレガコロサレタトイフカクシンガ――――――

「アッ…あっあああああああ!―――ひゃ、しょ、ショウ転移!!」
139End of the Game −今生層・狂気伐剣ベルセルク− 3:2011/03/04(金) 21:36:38.26 ID:t7gd3J9Y0
アルベインの1本が、突然転移する。残り3本がその消え失せた所を凝視するのは、その転移が戦略的戦術的なものではなかったからだ。
だが、遥か中空に現出したとうの一本にさえ何故自分が空間翔転移を発動してしまったのか分かっていなかった。
寒い所で鳥肌と共に震えるかのような反射だった。転移を終えたアルベインは中空で身を震わせる。
失ったはずの右腕の筋肉が在る。切断したはずの足が繋がっている。串刺し刑にされた3本は見下ろせば何一つ欠けること無く存命している。
何より、生きている。生きて、世界を見ることができている。誰しも持つ生ける者の世界。それを死に、殺気に侵蝕されたのだ。
屈辱であった。三欲よりも殺人を希求し、人肉の柔らかさに安らぐ『剣』である自分が、あんなアルベインの出来そこないに“逃げてしまった”。
唯の剣士如きに何たる屈辱。しかし、その屈辱を知ってなお逃げてしまった。
他の三本よりもほんの少し、本当に僅かに早く“あれ”を見てしまったために“逃げた”。
傷ついたクレスの肌、人間の皮の隙間から見えた、僅かな色。
柄を親指で起こした時に覗くほんの少しの刀身の色。血よりァかく、鉄より黒ぃ、腐敗した脂の色。
たった数ミリにも満たぬ刃の色に、殺されかけたのだ。
ダインスレフか羽々斬か安綱か。古今東西の妖刀魔剣を掻き集めたとてあんな刀がある訳が無い。
何なのだ、あの色は。あんな刀がこの世にあるのか。そもそもアレは刀なのか。
転移した今もまだ悪寒が消えない。転移してなお、アルベインは網膜の奥に斬り刻まれたその剣の持ち主が―――――いない。

「飛燕連脚―――――」

見下ろす大地にクレスがいないことと、アルベインの3本が天井―――自分の後ろに視線を集わせていたことと、
背後から響く底冷えする無感動な声を理解したのはほぼ同時だった。
転移したその場所の“先”まで読まれたか、と時空移動に伴う硬直の中でアルベインは息を呑む。
常ならば、翔転移に翔転移で応酬されたならば相手とて硬直の時間は同じなのだから先に硬直から逃れられるこちらの好機だ。
だが、見下ろす大地の異常――――クレスがいた場所に奔る亀裂を見てはそんな甘い夢さえ抱けない。“これは翔転移でさえ無い”。

「う、そガ! 剛しょ、まで、集束なんて――――――」
「剛蹴/集<招>来ッ!」

アルベインは自分の考えが見事的中したことを“打ち込まれた蹴りによって理解した”。
皮下の筋繊維の断裂する感覚が、ただの飛燕の蹴りに尋常ならざる膂力が蓄えられていたことを伝える。
肋骨がドミノのようにバラバラと倒れ折れていく音に、それがアルベイン流の攻性気功術『剛招来』の力であると知る。
だが、折れ曲がったまま捩子こまれて肋が肺に突き刺さる圧力が、それだけではないと教えていた。
本来ならば約30秒、身体全域を強化するはずの剛招来を集気法で“集中”させたのだ。クの字に曲がった背骨がそう言っている。
30秒を3秒にて十倍濃縮して、身体全てから脚部に限定した剛招来。その跳躍力と威力の前には、折れた骨でズタズタにされた体内から逆流して噴血するしかない。

ぐちゃ、と情けない圧迫音を出しながら墜落したアルベインの残骸。
電気信号だけでピクヒクと振動する肉塊の上にふわりと着地して
ぶちゃ。
と押し潰して立ち尽くすクレスに、残る全てのアルベインは恐怖を隠さなかった。
血と臓物と脳漿の上に立ちながら微動だにせず、しかしてアルベインの内2本を瞬殺したのだ――――しかも、剣さえ使わずに。
否、剣は抜かれている。この伽藍の天井を超えた先の夜空より暗く、この瓦礫の大地の奥深くの深淵よりも冥い漆黒の刃が。
人間という名前の鞘の奥から覗く刃を見ては、アルベイン達は己の持つ剣の情けなさを否応にも認めざるを得なかった。
殺意を、千人殺してもまだ足りない飽くなき欲求が生み出したアルベインの黒剣。だが、クレスが持つ剣と比べればなんと心許無いことか。
殺意そのものの量は然程変わるまい。だが、その密度があまりにも桁外れている。
自分たちが誇っていた殺意が、薄く、まるで綿のように弱く思えるほどに“あやしい”。
その“あやしさ”に比べれば彼らの鍛えた刃など檜棒同然だ。さながら、クレスとロイドの時空エネルギーを比べるが如く。
その殺意に一本の線が通っているかのような鋼刃は、何よりも真っ直ぐに思えた。
140End of the Game −今生層・狂気伐剣ベルセルク− 4:2011/03/04(金) 21:37:26.19 ID:t7gd3J9Y0
だが、何が違うと云うのだ。クレスを棄てたアルベインとアルベインに成り切れなかったクレス。
性能の優劣は明白。しかし結果は真逆。何故我らでは眼前の存在に“太刀打ちできない”のだ。

<Arts ShortCut:術技ショートカット設定        R+□:アルベインA『次元斬』
                            R+△:アルベインD『虚空蒼破斬』
                            R+×:アルベインE『転移蒼破斬』 Registration Completed:術技を登録しました>

背に控えた刃のこともある。ここは折られた二振りの轍を踏むことなく、警戒を密にしてあの殺意の正体を見極めるべきだ、
アルベイン達は慎重な足捌きでクレスの周囲へと散ろうと――――――――――――――――

<Input→R+□・△・×>

「そんなまだるっこしいことが出来るかァァォッッッ!!!」
アルベインが先ほどまでの恐れなど何処吹く風と素知らぬ顔で跳躍する。
「ただの雑魚ッ! 所詮肉片!! 身の程知らずの青二才如きに、俺が負ける訳が無いだろぉッ!!」
委縮し切った刃を少しでも輝かせようとするように、アルベインの周囲に蒼の闘気が奔流する。
「羽虫が! 恐怖して圧し折れろ!! 鳴き吐いて、後悔をぶちまけて、ゴミのようにくたばりやがれェェェ!!!!」
まるで懇願するかのように感情を吐露しながら、アルベインは転移の光に包まれる。
過剰な威嚇とこれ見よがしに醜悪なエネルギーの発動は、まるで死地に赴く前に煽った火酒のよう。
まるで崖っぷちに立たされた場所で無理矢理背中を押され“嫌でも覚悟を決めなければならなくなった”かの如く。

<Input→R+□・▼・×!!>
「次元斬!!」「虚空蒼破斬!!」「転移蒼破斬!!」

震える大太刀が中空より振り下される。
潮騒ぐ蒼の波濤が正面を覆い尽くす。
背後より転現したアルベインが蒼を拡散させる。

前門の波濤、後門の怒濤。中空には断頭台。
あまりにも見事にテンプレートな全方位殲滅連携。
神々の剣術を前にしては如何なクレスといえど集気法と剛招来の徒手空拳、ヒトのワザで凌げるものではない。
クレスは僅かに眼を瞑った。無論それは死を覚悟した諦観では無い。
閉じた瞳で背なの剣を掴み、胸の前に出す。掌に触れるはボロボロの黒衣と刃。
魔王、そして英雄。時を統べた二人の覇者の血を吸いし骸布。そしてそれに包みしは―――――――――時を超える、最強の魔剣。
クレスは自分の手が誰にも分からぬ程細かく、しかし確かに震えていることを自覚していた。
あの時空の刃を捌けるのは、時空の刃しかない。それは承知している。
それでもクレスは躊躇った。幾ら曰くつきの衣とはいえ所詮は唯の襤褸切れ、物理的な意味合いは皆無に等しい。
だが、心は違う。魔王の血によって戒めたその鞘を抜けば“もう引き返せない”。
そしてそれは――――彼女が最後の最後で託してくれた『僕』を諦めることに他ならない。

だが――――――

「オリジン。契約するよ」

既に、答えは決めている。クレスは迷いを塗り潰す様に瞳を閉じて一切の逡巡無くその名を告げた。
ドクン、と空間が揺れて聖骸布に包まれた魔剣が布の狭間で青に輝く。
それは青く、何処までも青くて、まるで光届かない深い海のように紫で――――――――――――黒かった。

141End of the Game −今生層・狂気伐剣ベルセルク− 5:2011/03/04(金) 21:38:29.02 ID:t7gd3J9Y0
その荒野には何も無かった。
赤黒く焦げた大地は枯渇し、壊死している。
熱の無い白い太陽は凍てついた光を無慈悲に注いでいる。
昼も夜も無い、水も熱も無い、生命など在るはずが無い死の大地。

そこに、クレス=アルベインは立っていた。かつて夢見たあの鉄と死の世界だ。
地平線の果てまで死に絶えた景色を見て、クレスは今になって思う。
世界の第一元素―――――――マナが完全に無くなれば、きっとこういう世界になるのだろう。

『そうだ。マナの無い世界、心が死んだ世界。どちらも、行きつく先はそう変わらない』

そうクレスが思えたのは、その死を比較できる景色を知っていたからだ。
クレスが声がした背中の方を向くと、そこにはかつての景色とは違い、1つの樹があった。
大きく、高く、樹齢何千年を刻んだかも分からない大樹。この黒鉄の世界で唯一見ることの出来た緑だった。
しかしそれは既に若く瑞々しい新緑とは程遠く、人生の半分を終えた人間の肌のようにしわがれていた。
あの日親友と狩りに出かけた森の奥で見た、あの枯れかけた樹のようだ。

だがそれこそがクレス=アルベインという枯野に“遺された”唯一の緑であり、
彼女が全てを尽くしてクレスの為に願い、この死んだ大地に植えた奇跡の結果だった。

「……オリジン」
クレスと大樹の間に立つ三対六腕の偉丈夫は一番内側の腕を組み、クレスを睥睨していた。
世界を司る精霊、それらを統べる統括者。精霊王オリジン。
「まずは、お礼を言わせてください。ありがとう。契約より先に、コレットちゃん達を行かせてくれて」
『状況が状況だったからな。一から穴を作るならともかく、元々あった穴を広げるならば今の魔剣ならば可能だった。
 それだけだ……しかし、行き先を確かめなかったのは軽率だったな。あの穴の行き先はあの天上王の下でもこの空間の外側でもないぞ。
 あの者、一体何のつもりで彼の場所を選んだのだ……死ぬつもりか……?』
「多分、大丈夫だと思いますよ。何処かは分かりませんが、彼が選んだ場所ならそこは世界で一番安全な場所ですから」
クレスはそう言って胸を擦った。剣を腹に穿たれながらも放たれた、伝説<クレス>を超える永遠。
それを直接喰らったクレスだからこそ確信できる、絶対の安全だった。
『ならば、何故お前も行かなかった。今度こそコレット=ブルーネルを守りたかったのだろう?』
「それはティトレイに任せました。長く付き合った訳じゃないけど……なんとなく、似てるんですよね。だからかな。それに……」
クレスは自分の左手を前に出して、その掌を見つめる。
「もう僕は、戻れませんから」
そう言いながらクレスが思い出したのはコレットを羽交い絞め――というにはあまりにも稚拙だったが――していたあの男の手首を斬った感触だった。
今のクレスの技量を持ってすれば、あの時あの男もコレットも無傷で切り離すことは可能だった。
実際、抜刀するその瞬間までクレスはそうするつもりだったのだ。“だが、そうすることができなかった”。
「僕の手は、もう寸止さえ許してくれない。肉を斬りたくて、骨を斬りたくてたまらなくなってる。
 いや、僕の手がなんて言い訳も出来ない―――――――僕が、殺したくてどうしようもないんですよ」
穢れた掌を見つめるクレスの顔は、泣いているようにも嗤っているようにも見えた。
どれだけダジャレで取り繕ろうとも、正道の剣技に固執しようとしても、彼はもうクレスではないのだ。
142End of the Game −今生層・狂気伐剣ベルセルク− 6:2011/03/04(金) 21:39:13.00 ID:t7gd3J9Y0
それを十二分に理解しているのか、オリジンが重たい腰を上げるように言葉を紡ぐ。
『正直な感想を言えば、お前が一番有り得ないと思っていた。
 純粋にこの非情な世界を憂いていたロイド=アーヴィングでもなく、
 利己に過ぎたとはいえ形だけでも世界を守ろうとしたミトス=ユグドラシルでもなく、真逆お前とはな』
値踏みをするかのように見下して侮蔑するオリジンの言葉を、クレスは唯黙って聞いていた。
ロイドが魔剣を完成させて以降、三重契約の罠に囚われていたとはいえオリジンは魔剣を通じずっとクレスの傍にいたのだから。
『お前の心は完全に死んでいた。少なくとも甦る可能性は完全に潰えていた。
 マイティ=コングマンが刻みし呪い。コレット=ブルーネルが囁いた呪い。デミテルが与えた呪い。
 別個でありながら複雑に絡み合う呪いに歪んだ英雄譚の中で溺れ死ぬより無かった。そのハズだった』
コングマンはその拳がどれほどクレスという青年の瞳に焼きついたか知らなかった。
コレットは自分がクレスを応援した言葉が、どれほどの意味を持っていたか知らなかった。
デミテルはクレスが既に呪われていたことを知らずに薬物を与えてしまった。
クレスを堕とした3人は、他2つの呪いなぞ理解さえしていなかった。そして当のクレス本人も。
故にクレスを蘇らせる解答は誰も持っていなかった。ハッキリ言って、1ガルド賭けるのも莫迦らしい一番の大穴だ。

だが、ロイド=アーヴィングが一人の少女の為に死に、ミトス=ユグドラシルが世界よりも守るべき、貫くべきモノを見つけて死んだ。
2人とも、オリジンに契約した誓い―――――【守るべき世界】よりも大切なモノの為に死んだ。
そして、今、クレス=アルベインがクレスとしてオリジンの前に立っている。
殺人鬼ではなく、清き乙女が最後に夢見た、かつてオリジンが契約したあのクレスとして。

「クレス=アルベイン。ヒトを棄てて、剣になろうとしたその成れの果てよ。
 今こそ約束を果たそう。お前は何の為にその力を得た?」

オリジンが問う。決して特別な重みは持たず、しかし精霊の王たる威厳を持った問いだった。
クレスは眼の前の左手をそっと握り、両の眼を閉じる。

「心臓に電撃を喰らって、分かったことがあります。何で僕が負けたのか。
 彼はとても弱かった。肉体的にも、技量的にも、いや、そもそも魔術師が剣士に刃向かうだけで有り得ないんですけど」

そう言ってクレスは残った右手で心臓を擦る。本来なら既に止まっているべき、残された命が振動している。
「それでも、彼は勝った。どれだけ斬っても、腹に刃を埋め込んでも勝てなかった」
キール=ツァイベルの強さの根源。たった一人を守る為ならば、狂人であるクレス以上に狂えた。
誰かを守りたい、救いたいと言う願いは力になる。技術や武器なんて比べ物にならない程の力を。
「それは、彼に守るための強さがあったから。彼だけじゃない。あの城で、あの村で、僕が殺してきた人は誰も僕を見ていなかった。
 ただ、守りたい人のことだけを想っていた。僕の剣はそれを斬ることも出来なかった」
誰よりも強くあろうとしたクレスは剣を向ける相手しか見ていなかった。
だけど、相手はそうではなかった。マーテルも、スタンも、ロイドも、その瞳は最後まで救いたい人を、守りたい人を見つめていた。
クレスが満たされないのは当たり前だ。最初から、勝負にさえなってなかったのだから。
「結局、僕は一番弱かった。それはきっと、僕には無かったからだ」
クレスはゆっくりと半分瞳を開けて、答えを告げる。
およそ殺す為の全てを備えていたクレスが負けて、勝った彼らが持っていたもの。

「僕の剣は最初から黒かった。僕の剣は―――――誰かを守る為の剣じゃなかった」
143End of the Game −今生層・狂気伐剣ベルセルク− 7:2011/03/04(金) 21:43:00.65 ID:t7gd3J9Y0
それこそが、誰よりも強いクレスを最弱たらしめる理由。
たかがボア如きに手こずったトーティス村の道場息子を魔王殺しの英雄、時空戦士筆頭へとたらしめたのは村を焼いた業火と降り注いだ雨。
悔恨・憎悪・復讐。クレス=アルベインの強さは絶対的な敗北――――“守るべきもの全てを失った所から始まっているのだ”。
だから負けられない。負ければ全てを失うことを知っているから。
だから強い。強くなければ、何も守れないことを知っているから。
全てを殺して全てを蘇らせるという可能性を真っ先に至ってしまうのは、失うことの意味を体験しているから。

「だから、僕は殺すことしかできない。誰かを倒して、何かを殺して、前にあるものを斬ることしかできない」

呪われたのは、とっくの昔に呪われていたから。クレス=アルベインは最初から魔剣として鋳造されていたのだ。
「でも、こんなにどうしようもない僕を、血塗れた僕を、最後までクレスだと信じてくれた人たちがいました」
だが、クレスはその穢れた左手を握り込み額に当てる。
ロイド=アーヴィングをコレットの眼の前で斬り殺し、苦しみ喘ぐミントの傍には駆けつけることさえできなかった。
どれだけ彼女達を苦しめたかなど数えられるものではない。それでも彼女たちは、魔剣に墜ちた殺人鬼を聖剣を担いし騎士と信じた。
それが自分というものを失いかけたクレスにとって、どれだけ光り輝く導であったか。絶やしてはいけないと誓うに足る救いだったか。
「コレットちゃん、そしてミント。彼女達が願ってくれた僕で在り続けたい。
 彼女たちが僕をまだ剣士だと思ってくれるなら――――――――――僕は剣士として、彼女達を守りたい」
それこそが哀れな魔剣の願い。血を吸わずには居られない妖刀であっても、聖剣と同じように誰かを守れるのだと願いたい。
彼女達が信じたクレス=アルベインとして、彼女達を、彼女達が進む世界を守りたいのだ。

『どうやって守る』
「――――――――全てを、斬ります。彼女達を脅かす全てを、彼女達を苦しめてきたこの世界を。
 もう二度とこんな魔界が彼女達を引き込まないように、主催者も、この洞窟も、空間も、一切合財を斬って滅します。
 それが、人を棄てて僕が得たこの力を今また振う理由です」

例え俺が、殺すことしか出来ない黒剣だとしても。

オリジンは一番内側の腕を組みながら答えを告げたクレスを見つめる。その瞳はお世辞にも真っ直ぐなものではなかった。
瞳孔が散大しかけて、今にも折れそうに危うい瞳だった。そして同時に、崩れ落ちそうな視線を懸命に真っ直ぐにしようとする決意があった。

『お前の覚悟は了承した、クレス=アルベイン。
 ならば最後に問おう。この私に何を誓う。その血塗れの手で我が剣を掴み、何を願うか』
「コレットちゃん、ティトレイ。あの場所にいた人たち。彼らなら、きっとこの世界から抜け出して、貴方の願う世界を取り戻せる。
 僕はその可能性を守る。僕にしか出来ないやり方で。その為に―――――――力を貸してくれ、オリジン」
144End of the Game −今生層・狂気伐剣ベルセルク− 8:2011/03/04(金) 21:43:48.57 ID:t7gd3J9Y0
紡がれた言葉に淀みは無かった。
剣に出来ることは斬ることしかない。だが剣士はその剣で何かを守ることができる。
だから、今一度クレスは欲する。輝ける光を蝕む闇を斬るための、更なる黒い力を。
『自分がどのような道を選んでいるか、分かっているな。希望を絶やさぬ為に力で絶望を滅する。
 自らがより強大な闇となり、あらゆる闇を道連れに堕ちる。それは魔王の道だぞ』
オリジンの言葉には窘めも怒気もなく、ただ案ずるかのような音調しかなかった。
ある哀れな孤児達が引き起こしたデリス・カーラーンの滅び、それを回避する為に別の星の国家を消滅させる。
希望を託せる者達を守るために、望みを託して優勝せんとするマーダー達を戮殺する。
クレス=アルベインが今から歩む道は、紛れも無くかつてクレスが破ったダオスの道に他ならない。
「それで光を守れるなら、僕はこの道を選びます」
クレスは選んだ。いや、もうそれしか選べないとは分かっている。それでも、クレスは自分の意思で堕ちることを選んだ。
今ならダオスの気持ちが分かる気がするとクレスは思った。人は時として、最も莫迦な選択をしてしまう。
あまりに優しくあまりに愚かな、壮烈過ぎて逆に悲壮な決意が、魔王を魔王たらしめるのだ。
『お前は遠からず私を失望させるだろう。三度お前に力を貸すことは、有り得まい』
オリジンは断定するような口調で言う。世界を守る時空剣士は、全てを殺す魔王ではない。
今はまだ高潔と言える精神も、堕ちてしまえば唯の虚言、殺人鬼の戯言だ。だからこそ―――

『だからこそ、今此処に誓うお前に応えよう。最後の時空剣士、クレス=アルベインよ。
 例えどれほどお前が堕ちようとも、お前が輝きを守る為にその黒刃を振い続ける限り、我が魔剣の担い手と認めよう』
クレスの眼の前に一振りの剣が顕現する。炎の赤と氷の青を綾なす紫の魔剣が、荒廃した大地に突き立った。
「ありがとう。契約の指輪は要るのか? 力を示す必要は?」
『お前は既に契約済みだ。今のは覚悟を問うたに過ぎぬ。力は―――――私が殺されてはかなわん』
オリジンは自嘲めいた音調で答え、クレスはその剣を引き抜かんと柄に手を伸ばす。
近付くにつれて、クレスは掌に当たる光に言い知れない重みを覚えていた。
ロイド=アーヴィング。自分の知らない、しかし確かに時間を背負った時空剣士。
そしてもう一人、ミトス=ユグドラシル。朝にティトレイが言っていたことが確かなら、クレスが姉を殺したあの少年もまた時空剣士だったらしい。
きっと彼らもオリジンと契約したのだろう。世界を救うための力を、守りたい人を守るための力を得る為に。
だがクレスは違った。ダオス城に入り、ダオスを討つための力を欲した。ダオスが何を成さんとしていたかに想いを馳せることさえ無く。
魔剣に近付く手が僅かに止まる。そんな未熟な契約しかできなかった自分が最後の時空剣士としてこの剣を握る資格があるのだろうか。
だが、クレスは握った。世界に誓った2人分の願いの重みを噛みしめるように掴み、そして魔剣が光り輝く。
『力は、解き放つ一太刀にて示せ。お前の決意を、覚悟を、力を。“お前が手にした剣”で示してみせよ』
クレスがその輝きを両の手で掴む。左手は柄に、そして右手はソードグリップに―――――――――


145End of the Game −今生層・狂気伐剣ベルセルク− 9:2011/03/04(金) 21:44:19.44 ID:t7gd3J9Y0
眼を再び開いて、クレスの瞳は再び現実を捉える。
叫喚と共に三方を取り囲む時空剣技の檻の中、クレスだけがひとり静謐に佇む。

「―――――――――――――――――――――――――――虚空蒼破斬」

アルベイン達の喚き散らすような狂声の中心で、クレスは魔剣を腰溜めに構える。
大地が罅割れんばかりに足の親指に力を溜めたその構えは居合いのそれだ。
骸布に包まれた魔剣に蒼い光が、蒼破斬の闘気が収束する。

「――――――――――――――――次元斬」

蒼破斬と魔王の血。二重の鞘の中で次元斬の紫が輝く。
否、黒布を内側より少しずつ破る程に濃縮するそれは、最早輝きでは無かった。
殺したいから斬るのではなく、守るために斬る。
今までただ溢れていた衝動が明確な1つの目的の為に集束して、この黒を生み出している。

「――――――――空間、翔転移」

蒼い刃が迫りくる中、半分以上張り裂けた鞘の中に納めた剣をグリップと柄で両手持ったクレスの周囲に転移の光が浮かび上がる。
蒼破斬による納刀、次元斬の濃縮、そして翔転移による抜刀。
鞘を厚くしたことで更に高濃度に轟縮された刃は、アルベイン流ではなくクレスだけの剣だ。

「零次元―――――――いや」

転移の光に空間が歪む。刹那にも満たぬ抜刀の中で、クレスはその名を紡いだ。
答えを決めた今、最早歪んだ記憶に覆い隠す必要はない。
闘気の収縮、そして解放。半円ではなく正球状の爆裂は、ある技の模倣に過ぎなかった。
あの城で放たれ、あの地下で人としてのクレスを終わらせた技。お姫様を連れだした筋肉隆々の魔王が放った奥義。
それを斬るため、それに負けないために作り上げられた歪なる時空剣技。
それを、今放つ。白く輝く真なる魔剣<エターナルソード>と、黒く輝く真なる魔剣<キョウキ>で。

「次元斬・重爆<ヘビィボンバー>ッッ!!」

真名を告げて骸布が弾け飛んだ瞬間、空間が爆縮した。
一気に膨張した世界を周囲を取り巻く有象無象の蒼ごと、本当の次元斬が空間を抉り斬る。
それは既に破壊でさえ無い『消滅』。次元斬が発現し終わった場所が光さえ存在しない『無』へと変貌する。
しかし、それは一瞬のことだった。水の中に入った風船がパンと割れるように、無を満たすために周囲の空間が収束する。
それはブラックホールを倍速したかのような光景だった。残る魔剣の出来損ない共が消失する無の中へ吸い込まれる。
断末魔さえ無にされて消えさる彼らは、まるで廃棄処分されるかのように無意味にその存在を終えた。
真打が登場してしまった以上、影打が存在して良い道理など無いのだ。
再び空洞内に静寂が充つる。
だが洞の中に溢れる狂気は途切れることは無かった。たった一人そこに在るクレスだけで、この地下が狂うには十分だった。
誰もが死んだ場所で、存在しない屍の上でクレスは鞘より抜かれた剣を軽く振った。
時を超える魔剣。しかし、その刃の色は紫では無かった。
その両刃は白銀だった。千年経とうが陰り一つ無いだろう輝きを放っていた。
そしてその鍔にはクロスにも見える金色の意匠、その柄との交点には第二の柄<グリップ>が在る。
ソードグリップを用いることもあるアルベイン流に最適化された、クレスの為の魔剣。
太古の昔世界を斬り、そして世界を繋いだ紫ではない―――――魔王の城へ至るために使われた白銀。

アセリア暦4354年・トレントの森。クレス=アルベインが時空剣士となって掴んだエターナルソードたっだ。

ミトスとロイドが途絶え、ついにたった一人に確定した最後の時空剣士が自分の魔剣を背負い直そうとする。
だが、既に鞘を失った魔剣を収納する場所など無く、クレスはそのまま歩みを始める。

「これがお前の招いた剣だ、精々祈れ天上王。だけど―――――――」

剣士クレスは知っている。
自分が何を抜いたのかを、越えてはならない一歩を越えたことを。
それでもクレスは進む。更に奥へ、更なる闇へ、更なる狂気へ。

「お前も、この世界も―――――塵一つ、この世には残さない」

魔王クレスは知っていた。
その額に捲いた白布が紅く滲み始めていることを、とっくの昔に知っていた。


―――――――――――――――――――――――――――――Cless Win !  Go To Next Stage!!



―【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP25% TP30% 第四放送を聞いていない 疲労
   狂気抜刀<【善意及び判断能力の喪失】【薬物中毒】【戦闘狂】【殺人狂】の4要素が限定的に発露しました>
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷 背中に複数穴 
所持品:エターナルソードver.A,C,4354 ガイアグリーヴァ オーガアクス メンタルバングル
    サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@少し血に汚れている
基本行動方針:剣を振るい、全部を終わらせる
第一行動方針:奥底へ進もう……
第二行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:中央山岳地帯地下

【エターナルソードver.AC4354】
 多重契約状態から解放された本来のエターナルソード。
 紫の魔剣ではなく、クレスが契約者としてが振るったアセリア暦4354年<未来>の形状となった。
 柄にソードグリップを備えた白銀の神剣。クレス=アルベインの為の剣。

【バトルメモ〜クレス解禁!黒の刃を解き放て!!】
 隠しイベントにやり込み……様々な条件を乗り越えてついにプレイアブルキャラに復帰したクレス! 
 これまでのアルベイン流剣技<Alvein>に加え、勿論今までみんなを苦しめてきたあの強さも健在!!
 その名は狂剣術<Berserker>。あのゲームバランスを崩壊させる性能が使用可能! 
 ただ撃つだけでも圧勝できるのでどんどん使おう!!
                                                    ただより高いモノは無いけどね。


【Notice】

新しいスキットが出現しました

Select:『五臓六腑に染み渡る優しさ!』
148名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/06(日) 11:58:21.44 ID:fHTPAwovO
1週間たたずに投下来た!投下乙!
クレス強すぎて吹いた。
149名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/06(日) 14:17:36.46 ID:NchndrNI0
投下乙です!
まさかこんなに早く新作が来るとは


とうとうクレスが覚悟を決めたか…ダオスと同じ道とは何とも
P版エタ剣は熱いな
150名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/06(日) 14:31:28.71 ID:wSKtxjb/0
おお、気付かぬ間に二つも話が!
投下乙!

飛連閃きたああ!
なりダンXといい、作戦といい、詠唱待機といい、ショートカットといい、
後のTOGネタといい、ゲームシステムネタ組み込むの相変わらずここは上手いな
しかしクレス増えたw 
偽物いっぱいはRPG系の王道だけど、光景想像してちょっとシュールだったw

そして遂にクレスが抜いたか
集気法つええええ!なうちはまだまだ本気ですらなかった
エタ剣の色違いはTOSプレイした時にも、こんな色だったっけーっと紫の見て首捻った俺には嬉しいw
クレスの戦う動機にはなる
確かに最初からダオスに向いていたわけじゃないけど、クレスは全て失って、その後は怒りや因縁で戦ってたよな
未来ダオスなんて別に今すぐ世界滅ぼすぞーってもなかったのに
鈴の両親とかは洗脳してたから問題なかったわけじゃねえけど
ヘヴィボンバー描写もだけど、個人的には時空剣技の檻描写が好きだったな

ああ、でもあれだ
次のスキットのタイトルがなんかえぐそうだと思ったのは俺だけ?
傷にしみる的な意味で
151名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/06(日) 17:08:31.69 ID:oR8scfXVO
エタ剣にグリップは要らなくね?とは思った
152名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/08(火) 20:53:26.62 ID:gux5WNDN0
スキット投下します
153SKIT「五臓六腑に染み渡る優しさ!」 1:2011/03/08(火) 20:54:27.24 ID:gux5WNDN0
「あ……ありのまま 今 起こりました事を話させていただきます……
 『薬物上がりの“狂剣”5振りなら大丈夫だろうと思っておりましたら空間ごと斬滅させられました』
 な……何を言っているのかお分かりづらいと思いますが私めも何がどうなったのやら……
 盤面がどうにかなりそうでした……潔癖症の神官にお薦めの危険な街ジャンクランドだとか
 次元斬発生半径2m分世界が小さくなっただとかそんなチャチなものではありません……
 もっと恐ろしい黒刃の片鱗を味わわせていただきました……
 と……そんな小動物でも思いつきそうな感想しか浮かばない程、この私動揺しております……!

 いやしかし、何某か策をお持ちとは思っておりましたが真逆真っ正面から狂剣を強化、いえ狂化してくるとは……!
 ですがグリューネ様、いくらなんでもこれはやり過ぎではございませんかぁ……?
 集気砲……? 発剄型獅子戦吼……? 剛蹴来……? まさか徒手空拳でこちらの駒を粉砕されるとは……
 しかもダジャレ……ダジャレと来ましたか……ダジャレでトンデモアーツにインフレ時空剣技とは……
 もしやあれでございましょうか、私を片腹大激痛させて殺す作戦でしょうか……?
 何と言う策士…! グリューネ様……おそろしい女(神)!! ですが私負けません……ええ、負けませんとも……
 崩壊するな腹筋…! 負けるな横隔膜……! 道化師はお客様を笑わせるのであって、笑ってしまってはいけません……!
 クククク……う、ウププププ……ああ、辛い、我慢が…… ああ、白いのが出そう……! 
 と私ことサイグローグは後ろの棚の喪服の様な色合いのブサかわぬいぐるみを思い出しながら苦悶を浮かべます……

 ―――――耐えました! 頑張った私!! よくやりましたマイ腹筋! さあ、ここから反撃の時間でございますよ……
 というよりこの様な一手、梃子摺る道理もありません……
 “やりすぎ”……この一言で全てが片付きます……片手で頭蓋及び頸椎陥没……? 強化した脚力で肋骨複雑骨折及び内臓破裂……?
 神代の剣技の重ね合わせ、物理的な鞘の効果補助を合わせた1回限りの破壊力とはいえ、発動領域が空間ごと消失……?
 常識的に考えて拡大解釈<エクステンション>にも限度が過ぎるではございませんか…? 剣でさえなく拳で敵を瞬殺などと……
 女神なのですから空気を読みましょうよ……これを許してしまうと以降この事実を基点にやりたい放題でございますからねえ……
 巷では『空気など読むな!』とおっしゃる方もおりましょうが、もしやグリューネ様もそのたぐいで……?
 ああ、いいえ、お答えになる必要はございません……ごさいませんとも……強制破棄を穿てばそれでおしまいですから……

 それでは宣言・敵手強制破棄……幾ら薬物による強化が在るとはいえこの様な無茶な展開を認めることはコノボクガッ。
 ……おや? 喉の調子が悪うございましたか……喋り続けるというのも疲れるものですからしてご容赦を……
 気を取り直して宣言・敵手強制破棄……このような拡大解釈を認めれば今後カッコワルイトコロヲクソ,スマナイ。
 ……ま、まあ二度程度の失敗は誰にでもありますから……
 それでは重ねて宣言・敵手強制バカナッ!

 こ、これは一体どういうことでございましょお〜〜〜〜〜!?!?!?
 宣言をしようとしても出来ないなんてぇーーーーー何故出来ないンだぁーーーーーー!!
 
 と、サイグローグはサイグローグはインフェリア王立劇場が立ち見含めて満席で
 観客全員スタンディングオベーションな程の名演技をお見せした次第でございますが……
 ぶっちゃければこの私、プレイヤー代理であると同時にジャッジでもあります故……最初から理解しております……
 
154SKIT「五臓六腑に染み渡る優しさ!」 2:2011/03/08(火) 20:55:22.99 ID:gux5WNDN0
 これは潰しておくべき手……申請すればたちどころに破壊できるでしょう……ですが、こちら側からは申請できません……
 何故なら……薬物によるエンチャントを施した“狂剣”を動かしてきたのはベルセリオス様―――――“絶望側”なのですから……!!
 希望側が要求するならば至極道理でございますが……これまで散々エンチャントを施した絶望側が
 いざ狂剣が自陣から駒失したからと『薬物強化でも強化し過ぎだから駄目』などと申しても……
 そのような都合の良い道理などあるはずもございません……
 一度切った牌での役上がり……一度通した事象の否定は御法度でございます……
 故に……希望側が通してしまった場合……以後薬物強化を論点とした破棄請求は不可能……ッ!
 “狂剣の薬物強化に制約はございません”……破棄リスクゼロで強化可能……正に青天井でございます……!! 
 実に見事でございますグリューネ様……破棄出来ぬ以上この一手は私も通さざるをえません……Congratulationでございます……!

 と、グリューネ様の今回の一手を私なりに咀嚼して解釈してみたのですが……いかがでしたでしょうか……?」

一気にこれだけまくしたてておきながらティーポットに淹れた緑茶を悠々と啜りながら、サイグローグはグリューネに正否を問うた。
「――――私が言う手間が省けた以上に言いたいことが山ほど増えましたが……何故貴方は眼鏡をかけているのです?」
「おやぁ……ここは『なんで精神世界にしかいないはずのもう一人の狂剣が敵として、しかも何人もでてくるんですか?』と聞くところだと思いますが……
 いきなり私の溢れ出るオシャレオーラに目を付けるとは……グリューネ様のえっち……でございますか……違いますか……
 当てが外れてしまいました……このサイグローグ思わぬ肩透かしにションボリしております……ションボローグでございます……」
「王の本拠地には影を実体化させる鏡があると聞き及んでいます。この程度の演出、始まる前から読み筋でした。
 それに比べれば貴方の趣味の悪い眼鏡の方がよっぽど胡散臭いでしょう」
「眼鏡ではございません……眼鏡(黒)でございます……私とて身形には気を遣うものでして……
 手元にあったアタッチメントからつけて見た次第でございます……時に、グリューネ様……」
「なんですか?」
「いえ、私……今仮面の上から更に黒メガネをかけております……」
「不自然な上見苦しいですね。それが何か?」
「ええ、おかげさまで……今、世界が真黒黒介でございます……手元のポットも見当たらぬ次第でして……
 当然……盤面の駒の位置も形も色も、全然まったく見えないありさまでございます……」
グリューネは道化の戯言の意味を測りかねて言葉を詰まらせる。サイグローグはやれやれと、口を開いた。
「……仮に、仮に、まったくの仮定の話でございますが……もし今、そっと駒を元の位置に戻しても……
 私めは気付くことができないでしょうなあ……いえ……今、眼鏡をかけておりますが故……」
「――――――つまり、元に戻せと? 剣士にここから切り込まれるのがそんなに恐ろしいですか?」
「いえいえ、私何も言っておりません……唯の仮定法……例え噺でございます故……
 して……ではそろそろ眼鏡を外そうかと思いますが……宜しいでしょうか……?」
「好きになさい」
「本当に……?」
執拗に問いかけるサイグローグに、グリューネは今までとは少し違った不快感を覚えた。
大人が、子供の間違いを見るに見かね、自発的にそれに気付くことを期待しているかのような真綿で絞るかの如く甘ったるい誘導だった。
「諄い! ベルセリオスが、彼を黒く鍛えに鍛え上げたのは他ならぬ貴方達絶望側です。
 貴方達の罪が鍛えたこの剣で貴方達の心臓を“抉り”、その罪をここに罰する……それが私の一手です。
 “一度差した手は絶対に覆らない”――――――――――今更命乞いを聞くと思いますか?」
グリューネはその甘言を一蹴する。
これまで散々駒達を苦しめ弄んで置きながらそのような戯言を紡げることが何より許せなかったからだ。

「三度……グリューネ様の意思を確認させていただきました……ご無礼をば……二度と申しませぬ……
 それが希望側の意思ならば…………是非も無し…………大宣言・最高裁開廷<アドバンスドゲート>……ッ!!」
眼鏡を外し、サイグローグは一言呟きながらフレームと硝子を握り割った。
そしてその血の雫が盤に落ちると、それは波紋となって円陣を展開し部屋の周囲を塗りたくる様に封鎖していく。
155SKIT「五臓六腑に染み渡る優しさ!」 3:2011/03/08(火) 20:56:02.19 ID:gux5WNDN0
「これは……!?」
「周回を重ねた遊戯に待つのはグレードショップだけではございませんよ……
 グリューネ様のこの一手……正しくGOD級の難易度……これに相対するならば、最早UNKNOWNでは足りませぬ……
 故に……私も“更なる高み”へと上り詰めようではありませんか……未知を越えて……悪魔を超えて……ッ!!」
黒血が全てを覆い、部屋を全て闇に閉ざす。それは星の見えない夜空、否、光射さぬ宇宙の底だった。
上も下も右も左も無くただ2人のプレイヤーと盤面、そして1つのティーポットがあるだけだ。
だが、グリューネはその珠の様な肌にひりひりと伝わる敵意を感じていた。まるで道化師の舌の上で弄られるかのような、温い感情を。
「怒っておりませんよ……私何も怒っておりません……自慢ではないですがこの私……
 例え『お前ってトランプ武器にして戦いそうだよな(笑)』と言われても怒らない程に大らかだと自負しております……
 怒ってないので怒ったグリューネ様はお茶などいかがですかな……これが最後の一滴になりますが……」
「この状況でよくもそんなものを勧められますね。一体この空間は? 得意の盤外撹乱でしょうが、この程度で揺らぐとでも?」
「そうですか……要りませんか……“ひとしずく”さえも拒むとは……ならば―――――――使わせていただきましょう……!!」
サイグローグはそういってポットを逆さに振ると、ポットの先端から緑茶の最後の一滴が虚空に落ちる。
そして、その一滴が翠に光り輝いた。この方向も天地も定まらない暗闇において唯一の光が世界を満たす。

「この御方まで引っ張り出す気はなかったのですが……グリューネ様がそのようなお考えである以上は致し方ありません……
 私のコレクションの中でも超絶弩級Sの切札を用いるよりないでしょう……」
「サイグローグ! 一体何をする気ですか? それにその翠の滴ッ――――――まさか!?」
「あの御方を招聘するにはこの部屋では少々手狭でしたから……部屋の方を強化させていただきました……
 さあ、来られるまで少々時間がかかるでしょうから……それでは次手を始めましょうカ……
 ……“最早取り返しはつきませんよ”グリューネ様……この一手にて貴方様が“賭けたモノ”は見極めさせていただきました……
No More Bet……一度チップを賭けた以上、オりることは許されません……」

滴より放たれる翠の輝きに眼を細めながらグリューネは叫び、逆光を受けたサイグローグは悦楽に顔を歪め直す。

「宣言・混沌解放<難易度Chaosが解放されました>……それではどうぞグリューネ様……難易度カオスの洞窟を抜けて法廷へ……
 …………願わくば、即死だけはしないで下さいね……? クカカカカ……カカカカカカッッ!!!」

虚無の空間に道化の嘲笑が響き渡る。その中でグリューネは唯一の光源……緑色の滴を見ていた。
光射さぬ闇の中唯一の導となる光を――――――――――“希望のひとしずく”から、眼を離せなかった。
156名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/08(火) 20:57:54.90 ID:NXSHCQtw0
 
157名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/08(火) 21:01:06.95 ID:gux5WNDN0
投下終了です。

Pエタ剣のソードグリップについては、
ゲーム的にクレスがグリップを使用しているところがほとんどなく、
また一部の秘奥義カットインではグリップを使っていると非常に曖昧な扱いであるため、
今のところグリップで行こうかと考えています。

ただ、絶対にグリップが要るんだ、というほどのものでもなく、
現状では修正も容易であるため、現状では判断を保留し
以降で意見があれば修正も考慮する、ということにしたいと思います。
158名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/10(木) 12:11:38.96 ID:picRjqEcO
投下乙!
腹筋は崩壊するわ横隔膜は完敗するわで笑いすぎて横腹が痛い

前半と後半のギャップが見事でした
サイグローグの切り札とは何なのか……次回もwktkしながらお待ちしています
159名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/10(木) 12:24:07.06 ID:8vnneYmKO
あの御方しか思い浮かばないがリメイク版の性格だったら嫌だなぁ…

>>157
グリップあっても良いと思います。戦いに幅が出そうだから
160名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/11(金) 00:46:54.68 ID:f6m8wZer0
ロイドの没ボイスに「極光剣」「冥空斬翔剣」「時空剣技」があるんだが
採用されてたら最強…いや究極の主人公だな
161名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/11(金) 01:55:03.87 ID:6mZFHnYYO
でっていう
162End of the Game −覇王層・超絶技巧的剣術− 1:2011/03/11(金) 22:16:16.10 ID:M/Jwx5Sf0
                                                                              CAUTION
ガリ、と地面を擦る音が無数に重なり、小波のように洞窟に響いていた。
それだけならばこの暗がりに合わせて眠りの1つにでも誘ってくれるのだろうが、
その波の音を阻害するように、小さくも甲高い電子音が鳴り叫んでいる。
狭くは無いが決して広くは無い洞窟の通路に犇めく様に、約50機のヘルマスタータイプの接近戦型モンスターが警戒線を形成していた。
そして、その後方には晶術の準備を進めるヴィザ―ドタイプの術撃戦モンスターが30機ほど待機している。
それだけも十分であろうが、中空の隙間まで塞ぐようにしてエリアルナイトが10体ホバリングしていた。
総勢百機。一個中隊規模の天上の生体兵器モンスター“など”がその通路を塞いでいた。
このあまりに物々しい防御陣を前にしては、ネズミ一匹通る気も失せるだろう。
だか彼らは理解していた。彼らが一体何を塞ぐためにここにいるのかを、
そして、それを塞ぐためにはこれだけの戦力が必要なのだと。
最前列のヘルマスターの一体がシグナルを全軍に発する。洞窟の残響音から、対象が第一警戒線に踏み入れたことを認識したからだ。
それに応ずるように、前衛は刃を構え後衛は術を待機し始める。有効射程の第二警戒線に入れば、一斉に集中砲火が始まるだろう。
あまりに過剰殲滅。だが、彼らは承諾していた。これでも足りないことを。

“既に小隊5つ分を壊滅した”対象を殲滅するならば、これが最低条件なのだとガンッ。

「!?」
それは突然に過ぎた。ヘルマスターの一体が突如横転したからだ。
躓くべき足も小石も無い中で、まったく突然に転んだその現象は、滑稽を通り越して不気味だ。
何をやってるんだ、シャッキリしろよと人間の兵士ならば語りかけるように傍の一体が横転した機体に振り向くガンッ。

「!「?「!「?「!「?「!「?「!「?「!?」!」?」!」?」!」?」!」?」!」?」!」

二度も続けば誰もかもが異常を認識する。だが、それよりも早く次が発生した。
ガンガンガン、ガガガガガガ、ガガッガガッ、ガガガガッッ。
転んだ。最前列の機体も、最後尾の機体も、そうでない機体も区別なく転んだ。
そして転んだだけではなかった。転んだ機体が起き上がるより前に、幾つもの何かが身体にぶち当たる。
1つ1つはそう重くはない、だが、その数量が尋常ではなかった。何百の不可視の鼠が彼らの後方への逃げるように地を這って駆けてゆく。
まるで彼らの眼前に迫りくる者から逃げ出す様に、刃の如く地を駆けていく。

「魔神剣」

迫りくる死から逃げ出す様に、命を啄ばんで駆けてゆく。
遠くから響くヌメッた声と共に、不可視の刃が無数に疾る。
前衛の魔物たちは理解できないまま半数以上が横転し、その更に半分以上が理解する人工知能ごと破壊されていた。
今自分達を射程外から斬り刻んだ無色の刃が、剣士が先ず覚える初歩の初歩であることなど。

【ヘルマスター号令・防御頻度3→5、攻撃頻度3→1<今は耐えろ>】

まだ大地とキスをしていない残りのヘルマスターが両手の剣を交差させ防御に構える。
霰弾を浴びるかのような衝撃を前面に受けるが、踏ん張れば耐えられぬ程ではなかった。
数秒後には防御ごと削り殺されるだろう。だが、それが前衛の仕事だ。
その数秒さえ稼げるならば、例え個体が幾つか砕けようと彼らの勝利だ。

前衛の働きに報いるように、彼らの遥か後方から晶術の光が大量に輝く。
ありとあらゆる属性の術が、朽ちかけたヘルマスター達の上を越えて彼らが討つべき敵に降り注ぐ。
注ぐ、注ぐ、注ぐ。流星雨が地表の一点に集うように、破壊力が理不尽に降りてくる。
その威力は語るまでも無く、着弾点の周囲を瓦礫にして舞い上がる。
濛々と立ち込める土煙は浴びただけで焼け爛れそうな熱量を帯びており、
モンスターたちの誰もが対象を仕留めたと思ったとしても無理はなかった。

「―――――、―――――……?」
「守護、蒼(ほう)陣」

重力に沈む土煙の中から浮かび上がった蒼い影は、二つの斧を交差するように大地に突き刺していた。
人間の守りと神々の護り。二つの剣技を重ねた防壁が一切の威力を断絶する。
深く深く沈みこんだ黒の手前の蒼。触れれば塵ごと燃え尽そうな闘気を纏った剣士。
唯の人間であるはずの存在に人ならざる兵器達は怖れ慄く。これは最早剣士というより、兵器のそれに近い。
163End of the Game −覇王層・超絶技巧的剣術− 2:2011/03/11(金) 22:17:42.45 ID:M/Jwx5Sf0
人ならざる魔物から畏怖される対象は―――――クレス=アルベインはこの場にいる誰よりも兵器的なのだ。

驚きに“たたら”を踏むモンスターたちの隙をクレスは見逃さず、
斧刃を大地に突き刺したまま秒を跨ぐことなく魔剣を掴んで斬撃の構えを取る。
その場にいる誰もがぐうと守備に身構える。如何にクレスであろうとも一足飛びで斬り込める距離ではない。
剛招来による脚力強化の兆候は無し。なればここは魔神剣乱打による弾幕ならぬ斬幕を敷いて更に間合いを詰めてくる心算か。

ここは防御で凌ぎ、反撃点を見つけ出すべき。そんな雑多な計算を踏みつぶす様に、クレスはその場で剣を振った。
「!?」
眼の前の光景が理解できず、モンスター達は戸惑う様に行動を鈍らせる。
まるで箒でゴミを掃う様にしてクレスが魔剣で2つの斧を打ち、打たれた斧が中空で回転したのだ。
風車のように軽くクルクルと回るその斧の様があまりにも非現実的であり、
ともすれば大道芸に見惚れるように魔物たちはその意味不明な状況の中で静止した。
「紅蓮、剣ッ!!」
「!!!!」
クレスがその中空の斧を更に打ったとき、彼らは至極明快な解答を得た。
回転する斧の中心点をクレスが撃ち抜いた時、ガイアグリーヴァとオーガアクスは火車と化して彼らに襲いかかり、
草刈り機が芝生を平らげるかのように有象無象の雑魚を捌いていくのだ。
魔神剣などとは比較にならぬ質量ある遠距離斬撃はヘルマスターの防御を切り裂いて地面に着弾する。
無論、その周囲に生じた爆発は近辺のモンスターを微塵に砕いたのは言うまでも無い。
「真空―――――」
唖然とするヴィザ―ド部隊は、最早あらゆる状況が突然かつ重複すぎて驚きすら上げられなかった。
後方に控える彼らの更に後方から響いた声の主は、転移の光を払い落しながら構えをとっている。
紅蓮の双剣斧が散々暴れ刈って彼らの眼を集中させた隙に、既にクレスは彼らの後方へ転移していたのだ。
しかも、既に構えた居合いを維持して―――――転移の硬直さえ“溜め”と化して。
「破斬!」
横一文字に薙がれた魔剣の抜刀が哀れな兵器達を真っ二つに増やしていく。
ウィザードの名を冠する通り、術撃型モンスターは近接型に比べて防御力を失っている。
だがそれを差し引いても、この一閃の切れ味を身を以て体感しないものには豆腐の如き軟さに映るだろう。

完全に背後を取られたモンスター達は、さながら不意打ち<サプライズドエンカウント>を喰らったかのように混乱の極みへと落ちる。
いや、そもそもクレスに―――時と空間を渡る時空剣士に陣形で挑もうとしたことが既に間違いだったのかもしれない。
ましてや相手は既に兵器の領域。取ろうと思えば背後など簡単に取れるし、そもそも背後を取るまでも無く圧倒的なのだから。
最早陣形も作戦も無く、蜘蛛の子を散らす様にクレスから逃げ惑うモンスター達。
既に倒れた者達を踏みつぶしながらも距離を確保しようとする彼らを斬り落そうと
クレスが再び魔剣を構え直した時、無数の光条がクレスを狙い撃つ。

【エリアルナイト号令・最後尾に再配置。作戦:術技のみを使え。術技設定:デルタレイON.それ以外をOFFに】
「ッ!?」

クレスが近くに“突き刺しておいた”オーガアクスを斬り払い、回転する楯と化した斧で光条を防ぎきる。
その奥には、後退しながら下級光晶術・デルタレイを滅多撃ちしているエリアルナイト達がいた。
中空にいた分だけ彼らはよく状況を俯瞰していたために、彼らは地上部隊よりも混乱が少なく遅滞戦闘を行えたのだ。
空を飛んでいる以上魔神剣は届かない。飛び道具の斧2つはクレスの手元には無い。クレスに彼らを斬る術は無い。
ここは下級術の高速回転で少しでも時間を稼ぎ“虎の子”の隙を作らねば――――
「遠くに飛べば逃げられると思ったか?」
断定するような、憐れむように飛び回る蠅へそう告げたクレスが、重心を落として力を溜める。
白き魔剣を両の手に握り、クレスは時空の力を刀身に乗せて引き絞る様に腕を引いた。
「オーディン、今一度借りる」
その一言に、天使の羽を持った空の騎士達は言い知れぬ予感を得る。
背後から頬に金属を当てられたような悪感は、自分が刃の間合いにいることの確信だ。
まるで発射直前の弓の弦の様なクレスを前にしては、その感覚もむベなるかな。
だが、これだけの距離があるなか剣に何が出来る。既に彼我の距離は13――――――

「射殺せ、神槍<グーングニル>――――――――――次元斬・風迅!!」
164End of the Game −覇王層・超絶技巧的剣術− 3:2011/03/11(金) 22:18:55.84 ID:M/Jwx5Sf0
剣であったならば、届かなかっただろう。そう言うかのようにクレスが魔剣を突き抜いた。
本来時空の刃となって薙ぎ払うべき次元斬。それを突き出すことによって時空の刃が激変する。
その刃は本来の次元斬に比べれば極小の小ささ。
しかし、その軌跡は穿つべき対象との最短距離を最速で駆け抜け、絶大な貫通力を漲らせて風を切り裂く。
その神なる刃は、人の技を――――クレスの刃に刻まれし有る双剣士の積み重ねた技術を経由して、神なる槍と化す。
騎士達が持つ天使の翼が赤に染まる。当然だ。主神の槍を向けられて、勝てる軍団など存在しない。
遥かに遠く、その距離130m。人の剣では決して届かぬ間合いさえ、今のクレスにとっては剣が届く領域―――斬界なのだ。

【“狂剣”号令・待機解除、攻撃頻度5<全力で行くぞ!>】

「やっぱり直接ぶった切らなきゃ駄ァん目だよなあああああッッッ!!!!」
「ブチ斬れろよぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!!」

その領域を土足で踏みにじる様にクレスの前後左右から狂い捩子曲がった剣達が斬り込んできた。
有るものは転移で、有るものは屍を踏み越えて、アルベイン達は様々な方向・方法で襲いかかる。
共通するのは唯1つ。殺したくて、殺したくて、強者の骨と筋肉を解体したいという生理のみ。
モンスターの群れの中に潜んでいたのか、虎の子の強襲兵が技を放った直後の隙を狙いコキャ。

「はへ? 手、指、あれ? 逆ぬ?」
「もういいよ。分かってるから」

一番早くクレスに近接した狂剣の1つが、関節を外された自分の左腕を見ながら血を噴出させる。
剣の重さを支える指の3本も潰してしまえば、まともに剣は握れない。
その手に在ったはずのファルクスは容易くクレスの掌に収まり、自分の胸を貫いていた。
1本の死など目もくれず、残りのアルベインが剣を振り下す。
彼らは殺人欲求そのもの。例え同類であっても死んでしまった者に目をくれる訳が無い。
だが、クレスはそれを無理矢理“目をくれさせた”。
突き刺さったままのアルベインをファルクスごと振り、即席の楯として他のアルベインの斬撃をめり込ませる。
「に、人間を楯に!?」
「鏡を見なくても分かってる。僕が、もうどうしようもなく真っ黒だってことは」
人間に一度刃物が刺さると、筋肉が収縮して抜けにくくなる。
アルベインの肉楯に何本もの剣が突き刺さり、自分を斬った剣を残らず奪っていた。

「だからさ、頼むよ―――――――」

剣9振り分の重量に耐えかねて、肉の針刺しがぼたりと落ちる。
そこに刺さった刃を魔剣で弾くと、針刺しの皮を切り裂いて剣が飛び散りクレスの周りには数え10の刀剣が並び立つ。
まるで全ての武器がたった一人の支配下に置かれたかのような光景の中で、
剣の魔王は心底懇願するようなかすれ声と共に、10の内の1本を掴んだ。
常軌を逸した方法で丸腰にさせられたアルベイン達も、辛うじて生き残った兵器達も顔を歪めるしかない。
何が狂気か、何が恐悦か。眼の前の存在が誰よりも何よりも―――――――

「も う 全 部 黙 っ て 端 折 ら れ ろ」

こいつが一番狂ってるんだから。

165End of the Game −覇王層・超絶技巧的剣術− 4:2011/03/11(金) 22:20:24.34 ID:M/Jwx5Sf0
<2分38秒92で決着ですか……3分たたずと100体全滅とは…………いやはや……>

びちゃ、と暗闇の洞窟に血肉の滴る音が響く。
倒れたアルベインの一人のマントがじりじりと燃えて、この饐えた脂の匂いに充たされた洞窟を照らしていた。
あるところには壊された機械が成人男性の頭のあたりまで堆く積み上げられ、
その鉄屑の墓場から目を逸らして壁の方を向けば、タペストリーのように擂り潰したような血肉が磔にされている。
ランタンがあれば、もっと克明に見ることができただろう。100の刃機がいっしょくたに混ぜられ、蹂躙され、屍の河と沈んだこの光景を。
その河の真ん中で、一人の剣士が立っていた。
投刃として使ったものやその剣術に耐えかねて壊れた剣を除いた、まだ無事な武器がその周囲に突き刺さっている。
百を殺めてなお、その背中には熱が立ち昇っている。メンタルバンクルで還元されたTPは500%。疲労など有り得るはずもない。
蹂躙した屍の上で、数少ない兵に囲まれて勝利に立ち尽くすその様は、戦場跡に立つ勝者のそれだ。

<数で攻めた所で暖簾に腕押しですか……一騎当千とはこのこと……これに勝てる駒は……恐らくないでしょう……>

その戦場の跡で勝者は、クレスは独り立っている。
立ちはだかる敵は悉く皆殺し、彼に仕えるのは油と血に塗れた心無き鋼の刃だけだ。
熱の無い、独り立つには寒すぎる戦場。その中でクレスは口を抑えた。
喉の奥から、胃の底から、腸の末端からせり上がる何かを押さえつける。
寒くて、痛い。なのに、なんで、どうしてこうも――――――――――“たの”。

<困りました……ええ、実に困りました……何を投入しても勝てない……なら仕方ありません……“ここから先は趣味で造るとしましょうか”>

突然起きた音がクレスの思考を遮断し、クレスは半ば本能的に魔剣を握り直した。
衣服の掠れる音、肌を岩肌に擦らせる鈍い音が多層的に響き、まるで転んだかのような音に思える。
一瞬クレスはコレットのことを思い出し得も言われぬ罪悪感を覚えるが、直ぐに押し殺して背後を振り向く。
新手か、喰い残しか。どちらにしても斬り直すまで。クレスは息を吸う様に簡単に切り替えてその敵を――――――

「―――――――え……?」

クレスの動きが突如止まり、握り締めた掌が緩んであわやエターナルソードを落としかける。
剣士にとって剣は離すべからずものだ。それを緩めてしまうほどに、クレスがそいつを凝視してしまった。
肉が燃える灯りにそれは淡く照らされていた。
それは小さく蹲っているように見えた。クレスに比べれば頭2つ分は小さな身体が前のめりに倒れている。
華美ではない、しかし丈夫そうな布で出来た上着とスカートはそれが少女であることを教えていた。
この岩肌に足を引っ掛けて転んでしまったのだろうか。その顔面は突っ伏されて見ることが出来ない。
だが、クレスは驚愕した。恐怖したと言っても良かった。
床に隠れて見えない顔の代わりに、頭部が煌々と照らされていたからだ。
子供特有の大きな“されこうべ”に、青い髪が伸びている。
肩まで伸びているはずの髪は、二つにして横分けに束ねられていた。

―――――――――――――――――大きな、大きな珠のような、髪留めで。
「アミィ……ちゃ、ん……」

クレスが、ついにその名を告げる。
アミィ。アミィ=バークライト。無二の親友であるチェスター=バークライトのたった一人の肉親であり、
両親を失っても懸命に生きている、トーティス村の誰もが認めるだろう気立ての良い娘であり、
そして、クレス=アルベインが守れなかったものの極北だった。

眼前の現実を前にしたクレスの衝撃は、尋常ならざるものだった。不意打ちで金槌を後頭部に直撃させたとてここまで響かないだろう。
そしてその衝撃は同時に、クレスが如何にある種の甘えを持っていたかを雄弁に伝えていた。
この島に集められていたことは知っていた。第一の放送にて名前が告げられたことも知っていた。
だが、クレスはこの時この瞬間まで、その事実を何処か遠くの出来ごとのように捉えていたのだ。
それは、数千年前の戦争や飢餓のように。対岸の火事を眺めるように。
『アミィ=バークライトは死んで“しまいました”』と、ただ事実だけを切り取っていただけだったのだ。
そしてその事実は次々に起きた状況や自身の変化によって次々と埋め立てられ、今や『過去の事実』という名の化石になっていた。
166End of the Game −覇王層・超絶技巧的剣術− 5:2011/03/11(金) 22:21:20.77 ID:M/Jwx5Sf0
それは決してクレスだけを責められる話ではない。この島で生きていた人間が誰もが多かれ少なかれ行っていたことなのだ。
身体の傷も心の傷も同じことだ。触って掻き毟っていては、何時までも爛れてしまう。
ハンドエイドや包帯で覆う様にして、忘却や現在によって新しくして変えなければならない。
過去は棺に納め、今という土を被せて埋葬する。肉体的にも、そして精神的にも死せる過去と決別の契りを結ぶ。
そうして時間だけが傷を癒し、変え、人を新たなる道へ、無限の未来へと歩ませるのだ。

<でも……瘡蓋を敢えてぴっぺがすのがだぁい好きな者もおりまして……例えば、私の様な……>

アミィの右手がびくりと動き、クレスの方へと伸ばされる。
爪の先まで震える手で、懸命に手を伸ばす。1ミリでも先に進もうとするようにキッとその大きな瞳を前へと、クレスへと向ける。
その様が、もしや死体ではないかと疑い―――否、“そうであってほしい”と思いかけたクレスの願いを踏みにじる。
死んでない。眼の前の少女は、かつて守れなかった少女は―――――――ここに明確に存在しているのだと。

【Open Menu≪メニュー画面を開きます≫

さて……それでは始めまショウか……戦闘前の準備を疎かにしてはいけません……いけませんとも……

 →Equip<装備します>・Item・Tactics・Option……

……まずは装備変更と……あー……申し訳ありませんが少しお静かに願えますかグリューネ様…………今編成中でして……

  →『???』≪装備を変更するキャラクターを選択します≫

ふむ……装備可能なのは最大3つまでですか……なんでわざわざこんな制限があるのでしょうか……ぶつくさ言っても仕方ありませんか……

   →装備1:装備されていません 装備2:装備されていません 装備3:装備されていません ≪注意・初期装備可能数は3に設定されています≫

1つは確定していますから……先ずは武器でしょう……しかし、相手はあの狂剣……生半可な武器では太刀打ちどころではありません……

    →装備1:UZI SMG(30連マガジン5つ付き)装備2:装備されていません 装備3:装備されていません

やはりコレにしましょう……“中々、使いようによっては”便利ですからねェ……

     →装備1:UZI SMG(30連マガジン5つ付き)装備2:不明支給品 装備3:装備されていません

……駄目ですね……思い浮かびません……とりあえず伏札にしておきましょう……後で必要になるかもしれませんし……

      →装備1:UZI SMG(30連マガジン5つ付き)装備2:不明支給品 装備3:エクスフィア

―――――――――最後の隠し味は、勿論コレで「サイグローグ! それは、本当に止めな」静粛に願います……“妹”に使うのは最早お約束でございますかね……

 Set End、Closed Menu≪メニュー画面を終了すると戦闘に入ります。よろしいですか?≫

お待たせしました……それでは、始めましょうか……ここからが主催攻略戦、本番でございます……!!

 Encount!!】

167End of the Game −覇王層・超絶技巧的剣術− 6:2011/03/11(金) 22:22:07.63 ID:M/Jwx5Sf0
その伸ばされた手を掴もうとアミィに駆け寄ろうとした時、クレスはそれに気付いた。
伸ばされた掌の中に、炎に照らされて輝く何かを見つけたのだ。
それは、宝石だった。暗闇の中でも青く輝く宝石が、アミィの右手にあった。
もしそれが指輪やブレスレットとして装飾されていれば、年頃の娘が背伸びしたオシャレとして微笑ましいものだったろう。
だが、そう思うにはこの状況はあまりに異常であり――――――その瑞々しい肌に直接めり込んでいては、尚更だった。

「アミィちゃん、今行く! その手を動かすな!!」

叫ぶクレスの脳裏に去来したのは、コレットの胸元に在った宝石だった。
そして同時に、自分がまだ唯のクレスであった時に彼女から聞いたことを思い出す。
あれは、エクスフィアは、確か、外してはならないものじゃなかったのか――――――――

だが、その願いは小石のように無碍に突き返された。
ついに力尽きて伸ばされた右手が落ち、その時に引っかかった石にあたり宝石が肉体より剥がれおちてしまう。
そして、アミィの体が地面に横になったままビクンと跳ねて―――――“人間を辞め始めた”。

<宣言―――――魔界創造≪リライズ&デュアライズ≫……ッ!! 
冥府より這い出て盤上へと再び戻りなさい――――――――――――『死を駆ける親友の妹』ッ!!>

電極を押し当てられたカエルのように、アミィはビクンビクンと跳ね続けた。
それと同時に、少しずつ彼女の小さな体が膨張し、その肌もまた青緑色に変色していた。
「アミィ、ちゃん……」
秒刻みに変質していく存在にクレスがその名前をかけることが出来た時には、既に衣服は内側から破り裂かれていた。
その掌はクレスよりも大きく、その肢はクレスより太く長く、ついに変質は下半身から上半身、そして顔へと至る。
緑色の血管が浮き出て、人だった肌は見る間に溶け出していく。 全身どろどろに溶けた少女の体は、最早少女の“てい”を成していなかった。
ゆっくりと立ち上がる少女を…いや、既に少女でも人間ですらなくなったそれは、一体何と呼べば良いのだろうか。
頭部もある。掌もある。足もある。胴も指も、四肢さえも完備している。人の形が確実に存在するのに、それは確実に人間ではなかった。
まるで繰り糸によって立ち上がら“される”その姿は、人形<エクスフィギュア>と呼ぶより他に無かった。

クレスは眼の前に立つ『人形』をクレスは茫然と見る。
魔物と呼びたくはなかった。怪物と呼びたくはなかった。化け物などは以ての外だった。
だが、魔物と、怪物と、化け物という以外に、コレを表現する相応しい言葉が見つからない。
素体が小さい分、一般的なエクスフィギュアよりは小さかっただろう。
しかし、エクスフィギュアを知らないクレスにとってそれは何の気休めにもならなかった。
撫でようと思えば簡単に撫でられた頭は、もう背伸びをしても椅子無しでは撫でることはできないだろう。
包もうと思えば抱きしめられた身体は、もう抱きしめられない程太い。
地面につくほど伸びて肥大化した両腕、人間の五本ではなく動物の三本で鋭く伸びた足の爪。 。
僅かに残った衣服は、窮屈そうに湿った肌に張り付いている。

何処からどう見ても、それはもうクレスが識るアミィの最低条件を満たしていなかった。
もし、これが最初からこのままでクレスの前に立っていたならば、終ぞ気付かなかっただろう。
だが、クレスは見てしまった。自分を好いてくれていた儚い少女が、少女で無くなる瞬間を。

なによりその青緑色の“のっぺらぼう”の頭についた、小さな小さな2つの髪留めが否応なく
これが確かにアミィ=バークライトであることを今も証明し続けてしまっていた。

「お”、お”、お”お”お”……」

人間の声帯を失った人間未満が音を放つ。
その変貌は、数えれば1分にも満たない時間だっただろう。だが、クレスにとっては1年よりも長かった。
自分が忘れていた過去が、目を背けていた事実が、クレス=アルベインが零してきた罪が此処に結実している。

「OOOOOAAAAAAHHHHHH!!!!!」
「くそ、アミィちゃん、僕だ、クレスだ!!」
168End of the Game −覇王層・超絶技巧的剣術− 7:2011/03/11(金) 22:23:12.57 ID:M/Jwx5Sf0
人形が足を持ち上げ、クレスめがけて振り抜く。
元々巨体故に鈍いエクスフィギュアでありアミィに体術の心得もないため、それは素人の不細工な蹴りだった。
だが、クレスはそれを紙一重ではなく、目一杯に下がって回避する。
技術は皆無。だが、そんなものを物ともしない気迫がその脚には漲っていた。直撃すれば骨折では済まないだろう。
だが、なによりも、眼前の存在への畏怖がクレスをここまで下がらせていた。
クレス=アルベインはこの島に降り立った時、生き残り全てを元に戻すために全てを斬る決意をした。
クレス=アルベインはこの島に独り残った時、生き残る全てを元に帰すために全てを斬る決意をした。

全てを、斬る。だけど、その全てに―――――――――彼女は、“誰かが代わりに殺してくれた”者は含まれていただろうか。
偶々、彼女はクレスと出会う前に死んだ。自分の手で殺さずに済んだ。その幸運が、クレスに問うことを見逃した。
だからこそ、運命は今一度問いかける。お前の決意は、本当に全てを斬ることが出来るのかと。

「クッ……」
クレスが再び一足飛びで退き、人形との間合いを開ける。
その問いから再び逃げ出す様に、罪との距離を開けようとする。一度は相対した過去から目を背けようとする。

<当然、逃げますよねえ……全く状況が理解できないのですから、下がって見極めたくなりますよね……
 でも“駄目なんですよ”……だって、貴方が今使っている駒は―――――『魔王』なんですから……だから―――“この御方は赦さない”――――>

だけど人間は知らない。過去は決して切り離せない。
直視できる過去ばかりみつめて断ち切った気分になっても、過去は分け隔てなく確実にそこに在る。
どれだけ忘れようと、見ないふりをしようとも、現在を生きる者達の足元に在る。

<上方に蓋を、下方に土を、右方に壁を、左方に塀を、後方に鍵を、前方に柵を。斯くして六方を封し、ここに戦域を形成する>

過去は、生きているのだ。こんな風に、光輝く未来を妬んで生きている。
故に―――――――――――――現在に生きているヒトは、過去から“逃げられない”。







<結審―――――――――BOSS戦及びイベント戦におけるバトルフィールドからの逃走を禁ずる【ヘキサゾーン】ッ!>







169End of the Game −覇王層・超絶技巧的剣術− 8:2011/03/11(金) 22:24:24.92 ID:M/Jwx5Sf0
ベタンと足がもつれ、100のモンスターにさえ地を付かなかったクレスが地面に倒れ伏す。
クレスには何が何だか、理解が出来なかった。足が、凍ったように動かなくなった。
まるで、逃げ出すなという様にそれ以上後ろに下がることを拒否している。
クレスはゆっくりと、自分の体を確かめるようにして立ち上がった。
身体は頭の思う通りに動く。道は通じている。下がれば、少なくとも洞窟の入り口までは下がれるはずだ。少なくとも、物理的には。
だが出られない。下がろうとすると、背中が、まるで鉄の壁に押しつけられたように冷たくなる。
上も、下も、右も左も前も後も、目には見えない脱出不可能の密室に閉じ込められたように出ることを身体が拒んでいる。

「クソ、僕は、どうすれば――――――ちくしょう……ッ、ちくしょうッッ!!」

クレスは悔し涙を浮かべるように顔を歪め、魔剣を握り直す。
しかしその心中は先ほどまでとは比べ物にならないほどに歪み切っていた。
退くか、斬るか。それさえも決めかねて、クレスは歪曲された戦場へと呑みこまれる。


だが、答えは最初から決まっているのだ。

知っているだろうか。“魔王からは、絶対に逃げられない”。
故に――――――――――――――“魔王もまた、絶対に逃げてはならないのだ”。

例え、相手が親友の妹だとしても、その魔物が自分に淡い気持ちを寄せてくれていたとしても。

「ONIICHAaaaAAAAAAHHHHHN!!!!」
「アミィィィィィィィィィィィッッッッッッッッ!!!!!」

バケモノが叫ぶ。魔王が叫ぶ。
アミィ=バークライトでも、クレス=アルベインでもない者達がすれ違う運命に叫んでいる。

眼の前の化物は、何か。
アミィ=バークライトは既に死んでいるのではなかったのか。
そもそも、これは本当にアミィなのか。

数々の謎が泡のように浮かんでは、消えてゆく。不気味な泡が、コポコポと。
まるでショウタイムを待ちわびた観客の拍手の如く。

嗚呼、嗤っている。

世界が、法が、物語を嘲笑っている。


170End of the Game −覇王層・超絶技巧的剣術− 9:2011/03/11(金) 22:27:28.25 ID:M/Jwx5Sf0
【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP30% TP50% 第四放送を聞いていない 疲労 眼前の状況に重度困惑
   狂気抜刀<【善意及び判断能力の喪失】【薬物中毒】【戦闘狂】【殺人狂】の4要素が限定的に発露しました>
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷 背中に複数穴 
所持品:エターナルソードver.A,C,4354 ガイアグリーヴァ オーガアクス メンタルバングル
    サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@少し血に汚れている
基本行動方針:剣を振るい、全部を終わらせる
第一行動方針:眼の前の存在は何か。そしてそれは斬れるのか――――――?
第二行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:中央山岳地帯地下

*周囲にはアルベイン?がドロップした武器(いずれも刀剣系。うち1本はファルクス)が何本か落ちています。


【Amy Barklight? 存在確認】

状態:HP100% TP100% エクスフィギュア化 BOSS
所持品:UZI SMG(30連マガジン5つ付き)不明支給品(0〜1)
基本行動方針:号令・お前に任せる発令中。キャラクター固有の思考にて行動します。

*エクスフィア@要の紋無しが???の近くに落ちています

【不明支給品(0〜1)】
 それはね、いざというときにキミを助けてくれるものなんだ。

*CAN NOT ESCAPE<ボス戦の為、戦闘フィールド外への脱出行為は一切禁止されています>
171名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/11(金) 22:28:18.94 ID:M/Jwx5Sf0
投下終了です。
172名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/11(金) 23:02:06.60 ID:4euSD3CtO
投下乙です!
あぁぁしかしなんて胃の痛い展開に…
173名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/15(火) 00:39:14.36 ID:ydcc5/6m0
取り急ぎ保守
174名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/15(火) 01:17:16.31 ID:8kwdyL6R0
みんな地震の被害にあってませんように
175名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/16(水) 16:17:05.09 ID:mtgJPzYo0
「ONIICHAaaaAAAAAAHHHHHN!!!!」
ってシャーリーかよww
176名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/16(水) 18:31:07.83 ID:W6FpxoFCO
>>175
全然気にならんかったのに、冷静に読み返して盛大に吹いたwww
177名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/21(月) 17:12:34.84 ID:dEfM9apb0
しかしこれ、前半の殺戮劇、すっかり道化感がついたミクトランは見てるのかな?
見てたらどう思ってるんだろw
もうサイグロさんじゃないけど、こいつに真っ向勝負で勝てる奴想像できねえ!
だからこそ胸糞悪くなる絡めてなんだろうけど……
でもこの絡めてって結構諸刃だよな
178名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/26(土) 20:40:01.59 ID:ycSwRPt/0
保守
179名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/31(木) 17:36:41.40 ID:l9gB7zjH0
しかしCAUTIONの元ネタが今やってる魔法少女のものだとしたら
クレスさん死亡フラグビンビンすぎるぜ……
180名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/01(金) 19:54:16.37 ID:GmBkeW1X0
肉体的な死亡ならまだマシだと思えるのが怖い
181名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/03(日) 08:10:55.96 ID:dRm8ASqRO
>>179-180の元ネタを知らんかったから色々調べてみたら、
とんでもない欝アニメということは分かった
182名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/08(金) 03:36:41.51 ID:l4mDwyq4O
保守
183名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/09(土) 12:37:38.09 ID:nTWk7lqr0
早く続きが見たい。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/15(金) 17:19:27.37 ID:+C2Vut1o0
ていうか筆者生きてる?
185名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/17(日) 14:16:26.85 ID:B18cdj8a0
生きてると信じるしかあるまい・・・
186名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/17(日) 16:25:24.59 ID:rG8rkURi0
3月11日に投下してたんだし
大丈夫なんじゃない?
187名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/17(日) 17:57:04.73 ID:IbVsJ1Qf0
とりあえず【筆者 生存確認】だけでも頼むわ
188名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/17(日) 20:56:40.81 ID:F32c93TZO
保守
189名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/17(日) 23:00:18.60 ID:v3K12RDB0
たのむから、せめてミクトランくらいは倒せ。
190名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 00:51:55.35 ID:XLHJS1JMO
お前らどこに潜んでたの
191名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 04:58:19.84 ID:+s3kxqYX0
割と毎日チェックしてるんだぜ
192名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 05:43:00.72 ID:Y9Up9b8a0
同じく
193名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 10:33:50.12 ID:/5R1bzyBO
上に同じ
194名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 12:19:11.13 ID:LkwqaLpLO
上に同じ
195名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 13:15:43.51 ID:HS+46wxkO
上に同じ
196名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 14:01:30.76 ID:lyq8MqN3i
上に同じ
197名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 14:17:11.35 ID:2IopXlSaO
同上
198名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 14:45:53.27 ID:/5R1bzyBO
おいw
199名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 15:13:46.02 ID:11rFtVDxO
潜みすぎだろw投下あったと勘違いしたじゃねえか
200名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 15:58:55.82 ID:1zUgZXjGO
人のこと言えないが何してるんだww
201名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 18:18:49.71 ID:/5R1bzyBO
謎の連帯感www
202名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 19:31:53.88 ID:H81kYykVO
なるほど、キール達がどこに消えたかと思ったらこんな所に・・・・
203名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 22:57:30.12 ID:UDgAXYKr0
こんなにいたのかよww
204名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 23:55:30.70 ID:1EtM4XIF0
俺もいるぞ!
205名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/19(火) 00:18:02.61 ID:jf7klYMyi
僕も仲間に入れてクレッス!
206名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/19(火) 16:03:16.81 ID:mQMa/XGyO
>>205
時空剣士は黙ってろww
207名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/19(火) 22:01:01.35 ID:f3qmdL2UO
出遅れた…

このロワを楽しみにしてる人がたくさんいるみたいで嬉しいな
208名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/19(火) 23:46:32.80 ID:hgg3xqg10
なに、気にすることはない
209名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/20(水) 01:37:21.75 ID:mZybLfNqO
>>208
空気王こんなとこでなにやってんだw
210名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/20(水) 07:20:18.45 ID:ZhSMMkgaO
投下以外でこんなスレ伸びたの久しぶりだなww
211名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/20(水) 19:07:15.26 ID:VdsHVjyEO
正直ここ毎日チェックしてるのは自分だけなんじゃないか、そう思った時期もありました…
212名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/20(水) 19:30:41.79 ID:ihfEeT3jO
>>211 同じく。

停滞してた時は過去スレを見直してたな〜

…あの時は末期だった
213名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/22(金) 02:17:51.60 ID:4xIHacz50
オレも毎日チェックしてるわ〜
マイソロ3やってティトレイとメルディがめちゃくちゃ可愛かったからロワでも生き残って欲しいな
とりあえず筆者の無事を祈る、
214名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/23(土) 00:32:15.40 ID:KKs5SDUF0
一話一話が長い&今年に入ってテイルズ以外のロワを読み始めた、でまだアナザー356話までしか読めてない。
超が3つぐらいつくような長文もあるみたいだし、最新話読むのいつになるんだろう・・・

今になって思えば携帯まとめサイトの存在を知らずにPCまとめで読んでたのは失敗だったなぁ。
せっかく300話あたりまで猛ペースで読んでたのにSSがないと勘違いしてそこで読むのいったん止めちゃったからなあ。
一度勢いを止めちゃうと再び立て直すのって難しいですよね。
終盤で長文頻度が高くなってたところで止めちゃったからなおさら。
215名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/23(土) 22:31:54.16 ID:IbATUWafO
>>214
そんなに生き急ぐなよ…勿体ないだろうが
出来ることならアナザーをもっかい最初からまっさらな状態で読みたいぜ
216名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/23(土) 23:35:39.71 ID:SzlPXR/s0
356話といえばそろそろキールがはっちゃけるところか
もう読んだけどwktk
217名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/24(日) 00:03:18.48 ID:8do3iygh0
>>214
黎明の英雄までは何としても読むんだ…黎明の英雄までは…
218名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/24(日) 01:26:13.31 ID:bZxY1BKA0
ティトレイ好きだからアナザーで戻ってきてくれたのうれしかったなあ
殴り合いまでしてくれて
219名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/24(日) 11:42:36.19 ID:2okyfois0
いろいろとコメントどうもです。
すこしずつ読んでいきたいと思います。

考えてみればなかなか読み進まなかったのは去年までの高校3年間TOAの二次創作リレー小説に参加してたからだった。
このロワ知ったのも4年前の中3のころだし。
まあ、二次創作書いてたって言ってもあらすじはそのリレー企画の企画者があらかじめ決めてたし参加者8人との分担だったし内容も素人だからここの、というかパロロワの書き手にはとうていなれませんけどね。
220名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/26(火) 04:59:55.01 ID:7jXnvQicO
保守
221名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/29(金) 23:19:04.67 ID:1Z+9dQdoO
保守る
222名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/02(月) 10:47:18.26 ID:HgzGN92p0
保守
223名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/05(木) 06:49:33.69 ID:htZoJJp9O
保守
224名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/10(火) 00:08:06.66 ID:CVhnptUBO
保守
225名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/12(木) 21:18:52.47 ID:cnZ1s512O
期待保守
226名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/14(土) 18:42:59.04 ID:WyhCtoZR0
なんだかんだで読み手が増えるというのは同じ読み手としても嬉しい
227名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/14(土) 23:24:12.52 ID:X7I12TzIO
>>226 同じ読み手として同じ意見です。

昔は感想とか議論とかですごく活気があったな〜と思います。

今さらだけど、ここで今までの感想とか参加者を語ったりするのはダメなんでしょうかね?したらばでやるべきなのか…そもそも終盤だから終わってからするべきなのか…?
228名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/14(土) 23:38:50.83 ID:sHFdS/a80
むしろどんどんするべきじゃないかな!

ってな訳で以前に落としてた各話タイトル解説に見せかけた煽りの続きが少し出来たので落として見る。話のタネにするなりスルーなり自由に!
(どこまで落としたか忘れたので第一放送後から)

67:逃亡
彼女は逃げた。ヒアデスさえ殺すこの世界の誰かから。
禁止エリアになるこの場所から。悪鬼巣食う塔から。なにより、内より囁く闇の声から。
だが哀れなる少女は知らない。逃げた先に安息がある保障などないことを。
彼女が怖れ逃げた塔が、誰かにとっては安息の拠点に思えることを。

68:波紋
池に石を投げれば水面に波紋が浮かぶ。放送と参加者の心はちょうどこういう関係なのだろう。
ロイドにとって投じられた石は大きく重く、水面を大きく波打たせた。
ジューダスの水面は、あまり波打たなかった。ただそれだけだ。
だけど、波立たない水面は無い。波紋は薄く、しかし広く彼の心に浮かんでいる。

69:強者を求めて
弱肉強食。あまりにもシンプルで、それ故に剛力。
闘争心に支配されたコングマンにとって唯一絶対のルールであり、ルーティの死は肉片程度の意味しかない。
町の明りを導に歩むチャンピオン。恐らく、彼の行く先にはノイシュタットの英雄となる歴史と交わらないであろう。
少しずつ、少しずつ、バトルロワイアルの毒が歴史を軋ませていく。

70:天才と忍者
ジーニアスとしいな。2番目に結成された同じ世界のパーティ。
その縁のおかげか、アビシオンフィギュアまでも寄ってくる。
この調子でコレットとも寄れれば良かったが、今は逃げる方が先決だ。
だがその前に、E2が町なのか村なのか城なのかはハッキリさせといた方が良いと思うよ?

71:転落
転げ落ちること。落ちぶれること。堕ちること。
ただ闇雲に走り回っている間に母親は命を落とした。何も守れず息をする生き物に、英雄の資格は無い。
故に、崖から身を落とすのは至極当然。だが、どん底から這い上がるかどうかは彼の自由だ。

229名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/14(土) 23:39:40.61 ID:sHFdS/a80
72:重なる想い
古代の英雄、未来から英雄を求める少女。神の御遣いたる天使、神より分かたれた聖女。
偶々偶然出会った壮年と少女は近しく、遠い存在だった。
だが今は“カイルを守る”。ただその想いを重ねて、同じ道を歩む。

73:ハッタリ作戦
はったり。実力を実力以上に見せかけること。
晶術も使えないのに晶霊術の詠唱のマネをし、先に二人しかいないと思わせておいて四人の利を大きく見せる。
まさにグリッド率いる漆黒の翼にふさわしい作戦といえる。
しかし、はったりという言葉は本来「殴る」の隠語だ。そして彼らが敵対するのは「はったり」のチャンピオンである。

74:壊れる音
その音は参加者を壊す。そこに自分の知る人の名前が呼ばれなくても、聞いた後に聞く前の自分には戻れない。
だけど、壊れた音には誰も気づかない。自分の中の何かが壊れる音と、自分の耳に入る壊す音しか聞こえない。
たとえ、自分の隣にいる少女のがどれほど壊れたとしても、聞こえない。

75:決意
自分の意思をはっきり決めること。また、その意思。
回復も攻撃術も技も料理もジャッジメント!することも、何でもできるまったくハンディなオッサン、クラトス。
こんな十得ナイフみたいな傭兵と一緒にいてはついつい甘え、何でもお任せしたくなるのも無理からぬことだ。
いやいや、それではいけません。その大きな瞳を前に向けて、自分の意思で歩かなければ大切な人も見つからないだろう。

76:深き一雫
真っ白な色は時として清潔とは限らない。他の色ならさほど目立たない汚れもひどく目立って、消しても消えないものになってしまう。
心も同じだ。純粋な心も一度黒い雫をぼたりと落とされれば、消えず奥底まで汚れが残る。
表面だけぬぐっても決して消えない染みになる。後はもう、染みがわからなくなるまで泥まみれになるしかない。

とりあえずまた10話単位で、目指せ第二放送って感じで。
230名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/15(日) 00:33:38.40 ID:9FNQakgP0
ふう…2回目読んでてやっとアナザーまでいったぜ!
と思ったら煽り文がきてた、GJ!
68:波紋 76:深き一雫 の2つが個人的に好き。
231名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/15(日) 01:57:18.36 ID:BmeG8DDPO
煽り文!!失礼ながらすっかり忘れてました…かなりGJです

自分は地味に69が好きですね〜

アナザーが始まってから何度もコングマンの名前が出てきて、クレスにかなり大きな影響を与えてたなんて想像もつかなったな〜

真っ当なクレス=アルベインを終わらせた男ってイメージ。……デミテルの呪いやら何やらでそれから先のクレスは別人過ぎる。


そんな別人のクレス好きなんですけどね
232名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/17(火) 08:44:57.38 ID:Rpq0vJ5MO
GJ!ひそかに待ってたんだぜ!
これは改めて読み返したくなるなwww楽しみにしとります
233名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/19(木) 23:44:17.09 ID:/x6XUopH0
77:残された者
すずとチェスターを喪ったミント、そしてルーティを喪ったスタン。
残されたものは誰もが等しく悲しみ、嘆き、そして選択を迫られる。
目の前の天才を殺して王様の褒美を得るか、王様を倒して眼の前の天才の褒美を得るかを。
どちらにしても、彼ら凡人が進む道はこの天才を越えた先にしかない。

78:紅蓮天翔
「今だ、俺は鳥になる!」でおなじみTORティトレイ・マオコンビの秘奥義。
炎を纏った鳥となって翔るというのは青少年ならば胸が熱くなる光景だろう。(火傷的な意味で)
だがしかし、その道はすでにアルベイン流が9年前に通過していた!(PS2版発売から換算して)
再生する樹も鳳凰の前には燃え散るのみ。あれ、じゃあ紅蓮天翔って樹のフォルスと相性悪いんじy(ブレイジングヒート!)

79:砂塵の果て
機動戦士ガンダムSEED PHASE21「砂塵の果て」?(SEED放送は2003年のため辻褄は合うが)
砂漠の虎、アンドリュー=バルトフェルド。その歴戦の戦士の死亡回。実際は生きてたんだけどね。
ただし、こちらの砂漠の歴戦の戦士はそうはいかない。夜の砂漠で杖しか持たず、飢えた鬼に出くわせば「こうなる」。
実は生きていましたなんでオチは望むべくも無し。砂に血を吸われて乾いて、塵に果てる。

80:分裂
生物学ならば個体数を、仲間を増やす行為。しかしそれは1つの生物から分かれるということ。
そもそも種族が違うマーテルたちとシャーリィは生物学的には最初から分裂している。
ならば組織としてはどうか。ただ別行動しただけでは分裂とはいわない。敵対的に独立して初めて分裂という。
シャーリィは兄を求めマーテル達から分裂した。たとえマーテルが仲直りできると思っても「分裂した時点で敵なのだ」。

また10話分

81:信じる想い
信じて想えばそれが叶う、そんな都合良くゲームが進む訳がない。
彼のパートナーは洞穴のはるか頭上で、彼を今まさに殺そうとするのは金属バットという名のマジカルステッキ。
奇跡も、魔法も、ないんだよ。それでも父親に会いたいかい? だったら僕と契約して魔法元少年n
鍋の蓋「それには及ばないわ」
234名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/19(木) 23:48:00.74 ID:/x6XUopH0
82:修羅の継承者
いきなり島のあちこちに飛ばされていたならば、まだ自分を騙せたかもしれない。兄も、モーゼスも実は参加していなかったと。
だが、彼女は知っている。飛ばされる前に、見て会って聞いてしゃべっている。守ってやると、生きて会おうと。
彼女の前に転がった二つの死体も、同じように大切な人と会ってからこの地で死んだのだろうか。
何れにせよ彼女は継いだ。殺したいと一人の修羅が持った武器と、ただ会いたいと一人の修羅が抱いた渇望を。

83:崩壊
呼んで字のごとく、壊れること。ゲシュタルト崩壊や放射性崩壊などいろんな崩壊があるが、どれも元には戻れないイメージが強い。
誤解とはいえ、コレットへの疑念からジーニアスの電撃を受けて完全に壊れてしまったのは大きな皮肉だ。
雪崩、土砂崩れなど、崩壊には大きなエネルギーを伴う。そして他の何かを壊して壊れる。

84:分岐点
分かれ道。程度の差はあるが、ゲームの場合、選ばなかったルートには二度と戻れないことが多い。
クレスとコレットはティトレイをサレに任せて負傷者の血を追った。この場合どこが誰にとっての分岐だったのだろう。
コレットにとって負傷者を追おうとしたことか。クレスにとってサレにティトレイを預けたことか。サレにとって玩具を手放したことか。
彼らは自分にとって正しい道を選べたのだろうか。もっとも、夜の森では道がろくに見えるはずもないのだが。

85:選択肢
これもまた分かれ道。ただし、分岐と違って選択には明確な意思が必要となる。
乗るか、乗らないか。殺すか、殺さないか。守るべきは死んだ命か、今生きている命か。
一度しか決められない選択肢だ。慎重に選ぶといい。ただし時間制限があることを忘れるな。

86:BUMP OF CRAB
カニの衝突。BUMP OF CHICKEN風に訳すなら「カニの反撃」か。
殻に閉じこもったジーニアスをつついてしいなが電撃を食らったことを意味しているかはさておき、
テイルズオブシリーズにおいてカニがいかに恐ろしいかは語るまでもない。
手を出してはいけないのだ。仲間を攻撃したことを後悔するシリアスな空気さえも吹き飛ばしてしまうのだから。


変な所に「また10話分」とはさんでしまいました。ごめんなさい。
第2クールは全部で90話以上。第1クールの1.5倍ですね。
235名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/20(金) 01:03:09.65 ID:7iiyxEV7O
乙です!

78と81吹いたwww


84・85は感慨深いな
ここのくだりから、この先どれだけ悪夢を生むことになったかを考えると…
236名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/20(金) 09:40:51.32 ID:OyoQihx1O
ファンタジアでは蟹と鶏はやたら強かったよね



結局宝箱取れてないや・・・
237名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/20(金) 12:34:40.92 ID:wMJFB/Y9O
乙ー
次も楽しみにしてる
238名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/21(土) 14:34:25.91 ID:Z2HdKP7a0
蟹はたしかに恐ろしい…
紅蓮天翔やクラトスあたりにも吹いた
しかしコングマンとかシャーリィ・マーテルとか懐かしいな
ダオス・マーテル・ミトストリオは好きだっただけに、シャーリィのことなんかほっといていいから関わるなー!って思ったw
コングマンはリメD見てどうしてこうなったry
239名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/21(土) 16:37:34.23 ID:sR2JlIRoO
>>238
リメD未プレイの俺にリメコングマンさんの魅力を教えてくれ
240名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/21(土) 21:46:40.16 ID:m9Nh6soF0
続きです

87:銃声
銃の発射に伴う爆発音。
「声」というには大きすぎるその力強さは、バトルロワイアルに翻弄されたしいなにとって唯一絶対に裏切らない仲間だったのかもしれない。
しかし、所詮は金属。本当の仲間との絆の前には、比べるまでもない。
だが銃声は開始の合図にも用いられる。しいなの肉体を吹き飛ばした砲声は、鬼達が暴れ始めるという合図でしかなかった。

88:鬼がきたりて
しんがきん著「鬼が来たりて」?。
その鬼に死相を見取られれば必ず死ぬ。マグニスに見つかってしまえば死相がでるということか。
だからこそ、サレに目を向けた隙にクレスたちはかろうじて生き残ることができたのだろう。
だが、動かなかったバルバトスの目はクレスを見逃さなかった。それは死相を見られるよりも厄介なことだろう。

89:Tender
弱い、華奢な、敏感な、思いやりがあってやさしい。
ミミーのことを指しているのならどこから突っ込めばいいのだろうか。フランスパンでボッコボコにしてくる娘なのに。
やはりトーマのことか。キスにドキマギする華奢で敏感な心、夢うつつのミミーを叩いて起さない思いやり。まさにTenderだ。
それになにより、Tenderは柔らかいという意味を持つ。もちろん、肉として。なんともTenderだ。

90:作戦会議
目標を達成するための一連の戦闘行動。そしてそれを決める会議。
マーダーを倒すことだけが戦闘ではない。所持品を整えることも、移動することも、脱出方法を探すこともすべてひっくるめて戦闘である。
なのでキールが慎重に検討を行うのもこれは当然だ。彼らはすでに戦闘中なのだから。
だが、会議中も足元は見たほうがいい。いつまでも踊っていては、進む前に足場がなくなってしまう。

91:それはまるで紅き魔女のように
まるで〜〜のようには直喩法に分類される。ストレートに、誤解なく伝えたいことを伝えることができる表現。
「それ」がチェスターの死体のそばでゲームに乗ることを決意したアーチェであることは容易に想像できる。
なら、アーチェは紅き魔女のように「何」なのだろう。紅く血に汚れたことか、魔女のように他者を生贄にするということか。
しかしアーチェが紅き魔女のようになんであれ、その決心が揺らぐことはないだろう。
241名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/21(土) 21:47:04.66 ID:m9Nh6soF0
92:Escape
逃げる。「三十六計逃げるに如かず」というように、勝てない相手には最良の選択だ。
もしここで無条件降伏をしていれば身ぐるみ剥がされ全員死んでいただろう。かといって生粋のチャンピオンに交渉などできるはずもない。
戦力を残して逃げ切ることだけが、唯一未来を掴み取る道だ。
生きてさえいれば、再び立ち上がれる。ただし、はぐれた仲間と合流できた場合に限るが。

93:新・剛運な彼女
13話「剛運な彼女」の連歌。メガグランチャーの次はセイファートキーとプリムラの強運振りが唸る。
押してくるわっ…!押してくるっ…!ものすごい力で…!フフフ… 来てるわよ……! 今私の背に…いわく形容しがたい何か…
インフェリアの魔物のような物……そういう連中が今…大挙して……私の背に覆い被さって来てる! 重い重い…!
この名探偵ではもう……体勢が保てないほどね……! 強運が苦しい…! 「はいはい、コンパス使って戻りますよプリムラさん」

94:闇の襲撃者
カラスがデザインの基となっているカッシェルが夜の闇を駆けて参加者を襲う姿はまさに闇の襲撃者だ。
アミィの死体に動揺したメルディを襲うことなど造作もない。
だが、この場所に襲撃者は二人いた。それは心の闇より生まれ、怯える背中の隙間を這ってその黒い手を伸ばす。
破壊神ネレイド。本当の闇が彼女を襲い尽くすのはそう遠くはない。

95:呪縛
スペル。呪文による自由の束縛。
魔術や晶術のあるファンタジーでは物理的な束縛呪文もあるが、ここではそんなもの必要はない。
マテ、やオスワリと同じだ。幼いころから徹底的に痛めつけて、しつけてやれば爪術もTPも要らない。
だからコロセも同じ。どれだけ辛い呪文でも、鎖に繋がれた子犬は従うしかない。

96:破壊の時
かたや全てを壊そうとするメルネス、かたや壊れかけたネレイドの器と「私の中には獣がいるんです系美少女」のマッチメイク。
場を整えて宣伝もすれば満員御礼のビックカードとなっただろうが、今回はギャラリー無し。
だが、それも正解かもしれない。舞い飛ぶ弾丸、飛び交うインディグニション。
戦いを見守る大地なんて、あっという間に壊れてしまうのだから。だからこそ、決着はまだ先の機会に。
242名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/24(火) 00:35:52.41 ID:/pEuw9/8O
アーチェさんとか、そういや参加者だったか懐かしい…
243名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/26(木) 05:45:38.98 ID:qPod2z6NO
アーチェさんのビッグバンが見たかった…
244名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/31(火) 09:23:55.10 ID:hm37zq/FO
ほしゅる
245名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/31(火) 21:04:46.51 ID:yI83+j9W0
そういやあの頃はビッグバン、普通の魔法だったな…
246名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/03(金) 15:34:29.59 ID:XfcYO+z4O
ビッグバン使えるのって、アーチェさんとダオスくらい?
247名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/03(金) 17:58:23.60 ID:YAbl64wR0
>>233
ブレイジングハーツとエイミングヒート混じってね
248名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/03(金) 17:59:33.25 ID:YAbl64wR0
うあああああ
249名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 09:07:57.41 ID:CeDoJpLp0
本日19:00より投下したいと思います。
容量は45kb前後。お手隙の方がおられましたら、支援を願います。
250名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 13:23:03.06 ID:lhwxNNXaO
きたああああああああああああ

全力全霊で支援する
251名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 18:24:19.92 ID:+szHCU1MO
待ってました
252名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 18:56:32.54 ID:diS2IQyp0
待ってたんだな、これが!
253名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:01:21.67 ID:CeDoJpLp0
それでは投下します。タイトルが名前欄に収まらないため、名前欄では省略します。
254名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:02:37.72 ID:diS2IQyp0
 
255End of the Game −覇王層・以下略− 1:2011/06/04(土) 19:02:54.68 ID:CeDoJpLp0
クレス=アルベインが後ろに向かって走っている。
どんな人間だって後ろを向くことも走ることも出来るのだから、特段驚くべきことでもない。
それが“あの”クレス=アルベインであるというだけで、その普遍は特別へと昇華される。

腐食し、黒虫の餌となった女の死体をぐちゃぐちゃと刻み潰した“あの”クレスが、後ろに移動している。
その一刀で島の中で数々の剣士たちを屠ってきた“あの”クレスが、敵との距離を明けている。
年端もいかない少女を人質に取る卑怯者を、指だけ狙って切断できる“あの”クレスが息を荒げて走っている。
十体の機械兵士を前にしても怯むことなく、見事に勝ち切る“あの”クレスがたった一匹のモンスターに。
倫理と引き換えに人間の臨界に達した自分五人を文字通り瞬殺せしめた“あの”クレスが心千路に乱れて。
剣と鋼の軍列相手に下がることなく叩き殺しきった“あの”クレスが壊乱するように。

この舞台における最強の称号『優勝者』を担った“あの”クレスが―――――――――――退いてしまっている。
その異質さを今更語る必要は、恐らく、無い。
だが同時にその理由を弁明する必要も、無い。

「EGYAEEGYAKOOVA”AァIGAAAAAッッッ!!!!!!!」

バックステップの着地、膝が衝撃を吸収するよりも先に更に跳躍して後方へと飛び退くクレスの鼻先を
伸ばされた爛れた爪先が掠めると、人間を沸騰しながら発酵させたような腐臭が鼻腔を抉る。
(動きを止めないとどうにもならない。兎に角、動きを―――――――)
そう判断ながら着地したクレスの眼の前でロングソード、スレイヤーソード、ムラマサが地面に突き刺さる。
いずれも先ほど襲ってきた自分達の得物であり、地面に落ちていたり壁に突き刺さっていた刃だ。
バックステップと同時に、逆手に下げた魔剣で後方に放たれたクレスの魔神剣。
その中にクレスが手首を介して僅かに混ぜた“捻り”が、号令の如く各方に散っていた剣を浮かせて飛ばし、自身の眼前に結集させる。

「ごめん! 少しだけ我慢してくれッ!」

魔神剣を手足の如く用いるその技量を感嘆する暇などなく、クレスは魔剣を構える。
並走するだけでは何の解決にもならない以上、先ずは動きを止めなければ話にならない。
その為に、クレスは魔剣を3つの剣へと走らせる。クレスの技量を以てすれば狙った場所に飛刃を差し込むことなど造作も無いだろう。

(動きを止める! そのために、足を―――――――――――――――)

今、彼女に“何を我慢させようとした”!?
256End of the Game −覇王層・以下略− 2:2011/06/04(土) 19:03:40.33 ID:CeDoJpLp0
「う、ああ”っ!」
魔剣が振り抜かれると同時に3つの刃が飛翔し、膝裏や爪先、腿に纏わりつくようにバケモノの足周りに突き刺さる。
器用に人体構造の隙間を縫う様にして極まった刃は、さながら箱の無い剣刺しマジックだ。
関節を縫う様にして通されたその刃は敵を全く傷付けることなく、しかし一歩でも動けばその脚を血に塗れさせるだろう。
それは正に剣の標識。“動くな”という強固な意思の具現だった。

<随分と小器用なものでございます……寸分の狂いなく巡らされた剣の柵……
 いやはや、ここまで堂々とインチキ剣法を出されては最早呆れを通り越して難癖つける気も失せると言うもの……
 通しましょう……その剣の柵……“動けば怪我をする”という魔王の命令……しかと受け取りました……>

動きを止めたバケモノを確認して、ぼんやりとした闇の中でクレスはどっと疲れを吐き出す様に荒く呼吸をする。
それは見事な技のキレとは打って変わって、歪み、惑い切った仕草だった。
狂い無き精密拘束。だが、一番最初に思いつき、実行しようとしたのはそれとは似て非なることだった。
それはもっと素直で、もっと効果的なこと。何ら迷う必要のない最善。
だが、クレスはそれが出来なかった。真っ先に思いついて―――否、真っ先に思いついたが故に、思いついたこと自体を恥じた。
(何で、そんなことを考える? まだ敵かどうかも分かってないのに。
 分かっているのか。アレは、バケモノなんかじゃない。アレは、あの子は―――――)

<ええ、構いません……だって……それは逆に言えば……“怪我をすれば動いていい”ということ……>

「GA,AZA……ZAN……ZA,GAAAAA……」
正気と狂気の狭間で揺れるクレスの僅かな逡巡が、貴重な時間を奪い去る。
ぶち、ぶしゅぅ、と暗がりの中でハッキリと見えなくとも容赦なく聞こえる出血の音がクレスの耳を満たす。
眼の前のバケモノが、魔王の勅令を無視してその脚を刃に押しあてていた。
「なッ……! やめろ、やめるんだ!!」
剣で示しても伝わらないのに、クレスの言葉など耳に入るはずもなく、バケモノは前へ、前へと手を伸ばす様に足を出そうと柵へ押しつける。
肉を千切り、血を垂らしながら柵の向こうへと進もうとする。
痛みを対価に、血液を通行手形と示す様に、剣の柵はじわじわと大地から抜け始める。
破れない扉など無い。超えられない壁など無い。本当の意思の前に、魔王“如き”の命令など意味を成さない。
「くそっ、何が、どうなって……」
バケモノが股から腿へと血を滴らせ、標識ごと前に進もうとする。
自分が立てた剣の刃がそれを傷付ける光景を前に腹の内から湧き上がる疼きを押し殺して、クレスは再び足に力を溜める。

<そんなものは精々『お願い』でしかない……本当の意味での『命令』には成り得ない……
 本当の『命令』というのは――――――『こういうコト』を言うのです……ッ! さぁ…………判決をッ!!>

あと何秒もなく拘束は破られるだろう。それまでに、何としても距離を取らねばならない。
あの化け物の彼女の一ツ眼から見えぬ場所まで、そして自分の二ツ眼に入らぬ場所まで。
クレスの一足が、怯えたその身体を遥か遠く遠く――――――
 
<再審―――Uターン禁止【ヘキサゾーン】。“BOSS戦より逃げることは禁じられています”>
257End of the Game −覇王層・以下略− 3:2011/06/04(土) 19:04:25.82 ID:CeDoJpLp0
―――――――逃げるなよ。
バックステップを取ろうとしたクレスはその背中に、ぐいと力を感じた。
鉄の棒よりも硬く、そして熱いものが焼きゴテのように押しつけられている。
だが、クレスにはそれを振り払うことが出来ない。押しきることも、振り払うことも、斬り捨てることも出来なかった。
まるで自分の背中から生えてきた自分の腕が、逃げるな、逃げるなとそのマントを摘まんでくるかのように、撤退する意思を剥奪してしまう。
心臓から皮膚に向けて音が響く。その心の内より放たれる絶対なる言葉の前には、肉体という下僕は傅くしかない。

言われてしまった以上は“従わざるを得ないのだ”―――――――――その理由が分からなくても。
何があろうとも、眼前のソレが何であろうとも。

「……ィ……ちゃ、ん……!」

足を血に塗らせながら歩むバケモノが、例え、例え。

――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――

「どういう……ことですか……」
喉の震えを懸命に抑えながら、グリューネは辛うじてそう言った。
「どういうこと? グリューネ様がそれを仰いますかな……? 貴女は見事バトルロワイアルを終わらせました……
 バトルロワイアルの終わりに伴い……“本来のルール”も適応させて頂きました……物語<Tales>のお約束、究極の様式美をね……!」
参加者同士の闘いならばいつ何処で逃げても問題ない。所詮は見世物、狗共がやいのやいのと噛み合うのを王が楽しむための娯楽だ。
だが、その狗が鎖を引き千切り王に牙を向けんとする今、王様が狗のルールで戦う道理は無い。
「第一…………“こんなの”面白くないですもの…………」
刻み煙草を火皿に詰めながらサイグローグは淡白に言った。
排便を急ぐも使用中のトイレの前で「今トイレに入ってるの誰なの!?」と問われた時のように、
特に勿体ぶる理由もなく、吸って吐くその煙のようにあっさりと理由を告げる。
「『突如眼の前に現れたバケモノは親友の妹だった! 襲い来る幼女を斬ることが出来るのかッ!?
  嗚呼、運命の坩堝に翻弄される哀れな剣士はその剣を如何に振うのかッ!? 後篇へ続くッ!!』
 ―――――という感じで大枚はたいてマッチメイクを整えたというのに……そこで主演がドタキャンなんて有り得ないでしょう……?
 観客は“この後”を待っているのですよ……少しは“流れ”を読んでくださいませ、グリューネ様……」
そう言ってブヒャぁと大きく白煙を吐きだしたサイグローグの軽薄で淫蕩な笑みをグリューネは見ていなかった。
眼を伏せて、押し固めた両の拳をテーブルに押しつけている。震える下唇は、上唇にて啄ばまれていた。
道化師の表情を見て更なる怒りを逆立てず、テーブルを介して今ある怒りを減じるには成程効果的だった。
だが、道化から眼を逸らせばそこに在るのは虚空にあって尚存在を示し続ける盤面だ。
そこにあるは無数の破片の中に立つは二つの駒。
1つは女神の操る魔剣。立ち塞がる全てを切り裂く、何物にも阻むことのできない最強の鬼札。
かたや道化が繰り出した駒は――――ハッキリ言って最弱だ。
力でも、能力でも、知性でも。ありとあらゆる性能で劣り、いくら手を施した所で最強を上回ることのできない『歩』以下の駄駒。
性能だけで言えば機械人形や、鏡写しの狂剣の方がまだ勝ち目があるだろう。
「何故……」
だが、グリューネはその駒にある感情を禁じえなかった。
「これが出てくるのです……これを―――――出せるのですか…………これは……この者は……」
機械人形や、鏡写しの自身等とは根本的に意味合いが異なる駒。
強くはなく、便利でもない、役立たずの駒。だが、たった一点に於いそれは他全ての存在を凌駕している。

「―――――――――既に死んだはずでないですかッ!!」

それは生ける者達の舞台より降りた―――――――――“存在してはいけない駒”なのだ。
258End of the Game −覇王層・以下略− 4:2011/06/04(土) 19:05:16.72 ID:CeDoJpLp0
「だから……何だと仰るのですかな……?」
「惚けるな道化! これまで貴様の佞言に付き合ってきましたが、こればかりは見過ごせません。
 死者を墓場より持ち出すなど正気ですか!? 一体何を考えているのです!?」
「落ち着いてくださいませ……先ほども申し上げたではありませんか……グリューネ様が用意せしめし魔剣……
 私、その切れ味に大変感銘を受けました……その切味はさながら……主神オーディンがグーングニルを人間にレンタルしている時に携えし剣の如し……
 ですから私は見たいのですよ……その剣で斬れないものがあるのか……だから……『こんにゃく』をご用意させていただきました……」
グリューネは顰めた眉の間の皮膚を摘まんで頭痛を堪える。
存在できない駒の召喚。その明白な禁忌でさえ、サイグローグにとっては『こんにゃく』を持ちだした程度なのだ。
暗がりの中で背後から人肌に温めたこんにゃくが当たったら驚くだろう。その程度の手品で―――――“死者を蘇らせたのか”。
「そのようなことを聞いているのではない! この戦いにて死者を眠りから覚ますことなど許されない! 
 苦痛の中で果てた魂魄を面白半分で蘇らせるなど、あってはならない! 我が浄化にて、眠らせます!!」
虚空さえ裂けそうな女神の叫びと共に、一本のブリリアントランスが『親友の妹』に向かって投躑される。
通った先が清浄されていく程に、その槍にはグリューネの神の力が込められていた。
これほどの力であるならば、邪法によって現れた死駒などたちどころに在るべき場所へ還されるだろう。
そう、死者は常世に、生者は現世に。そうでなくては世界は立ちいかない。
それが世の、神が見守りし世界の絶対なのだ。死者が蘇るという矛盾は、あってはならない。
「それがカミサマの審判ですか……残念ながら二つ間違えてますよグリューネ様……」
だが、道化はその絶対を嘲笑う。光の槍を前に、一切挙動を変えず煙を燻らせ、
神に見守られた楽園を、永久に続くと思われていた平穏を――――なかったことにした。
「“本当に全員が死者を蘇らせてはいけないと思ってるンですカ”ァァァァッッ!?―――――――――――――――判ッッッ決ゥゥウッッ!!」
サイグローグは裂けんばかりの大口で天を仰ぎ叫ぶ。闇しかない虚空に天と地はない。
だが、それでもサイグローグは確かに上を仰いだ。自分が見上げた場所が天なのだと、自分が見下す場所が地なのだと。
迷い無き確信を以て世界に問う。この一手、有りや無しや。

『結審、基本的王権の尊重・第一項【アスティルベ】。“王が世界の死者をこの盤に招く権利を保障します”』
 
天がそれに応ずるように黒き虚空の中に七つの光が走る。
銃弾よりも早く鋭い光弾が寸分の狂いなくグリューネの槍に向かって衝突する。
「ッ!! そ、それは……」
『初手に於いて盤上にありしは55の駒。その内、21の駒。その意味するところ、分かりますね』
出力だけで言えば、グリューネの槍の方が強かった。だが、七つの光は決して消えることなく槍を穿ち続ける。
『少なくとも、それらは盤の外で1度決定的な滅びを迎えています。そして、この盤の上に集められた』
グリューネの光は、確かに強く温かかった。慈愛に満ち、アンデットを有るべき世界に還す力を持っていただろう。
だがそれだけだった。温かいだけでは、強いだけでは――――彼女の光は破れない。
『そして、王は既に初手にて宣言しています。絶望側代行、主文の読み上げを』
「……読みあげまショウ……『景気のいい話もある。もちろん、このゲームの勝者はもといた世界に帰還出来る。
 それだけではない。その際に願い事を一つ、叶えてやろう。 願い事の数を増やしたりすることは出来ないし、
 無論私の命をくれてやることは出来ん。だが、それ以外の願いなら、どんなことでも叶えてやれる』……」
それは、冷たい光だった。熱を持たず、均一に平等に地面を照らす、人工の光だった。
心の無い光の飛礫が、明るい槍を打ち壊す。死者を眠らせてあげて、辱めないでと謳う祈りを踏み躙る。

「『望むなら死者でさえ蘇らせてやろう。何なら、このゲームで死んだ者全てを蘇生させた後で、各人の故郷に送り返してやることも出来る。 』!!」
259名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:05:32.04 ID:diS2IQyp0
 
260名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:06:21.36 ID:SYkrbYJ90
支援
261End of the Game −覇王層・以下略− 5:2011/06/04(土) 19:06:36.79 ID:CeDoJpLp0
そんな甘い祈りは届かない――――――――この世界は最初から、死者を冒涜した上にのみ成り立つ背徳の宴なのだから。
『もう一度問いましょう。他の駒ならば兎も角、王が仮に死者を蘇らせたとして、何をどう許せないというのです?』
その宴の主催に向かって、死者を蘇らせるなと喚くことのなんと愚かで空しいことなのだろう。
ただ、有言が実行されただけではないか。正直者を裁く法律は、この世界にはない。
粉々に砕かれた槍の輝きがキラキラと降り注ぐ中で、グリューネは食い縛る様に虚空を見上げた。
「可能性を……考えなかった訳ではありません」
その瞳の先には、漆黒よりも黒い虚空の中にあって、明星の如く放たれる光があった。
「聖獣王がわざわざ私を呼びに来たこと。そしてなにより、剣に残った片鱗とはいえあの精霊王が盤上に閉じ込められていることからして、
 “世界に残っていた精霊・神々が余さずこの世界に囚われているだろうこと”は考えられました。
 そして更に、戦いを進める内に、少しずつ六聖獣達も奪いながら、この世界はより悪辣に成長しているのだろうと」
精霊。大晶霊。滄我。世界の内にありて世界を見守る調停者達。
彼らは最初から盤上にあった。ある時はマナと呼ばれ、ある時はクレーメルと呼ばれ、そして爪術とも呼ばれた。
彼らは全にして個、個にして全の集合体だ。盤上を満たす力が複製であれ、本物であれ、その力の片鱗は始まりからして既に在った。
その事実が意味するのは―――――――“彼らが舞台装置としてこの世界に閉じ込められたことに他ならない”。

そして、その“始まり”より運よく逃れ、彼らを救わんと動く聖獣達もまた1人、また1人と希望という名の出口を見つけられず、彷徨い果てる。
この盤は人間の意思が錯綜する迷宮であると同時に、神々を閉じ込める監獄でもあるのだ。

「―――――ですが、真逆“貴女まで囚われていたというのですか”。貴女さえも、逃がさないというのですか」

だからこそ、彼女がここにいない理由もない。
『……ええ、その通りです。時の紡ぎ手よ。星は違えど私も世界の片鱗。彼らの世界がここに呼ばれた以上、私も此処に在る』
凛とした声だった。幼くもなく、しわがれてもなく、太くもなく細くもない、唯々力強い女性の声だった。
「ククククク……そろそろご紹介させて頂きましょうか……グリューネ様があんまりにも私の判定者兼任を卑怯卑怯とブーイングするので……
 判定者のアルバイトを呼ばせていただきました……これで私も心おきなくプレイヤー代理に専念できるというものでございます……」
広げた翼から羽根が散る。一切の穢れを持たぬその羽根の白は、黒き不義を退ける正義の象徴。
右手に持った杖が振り下される。その杖の先が導くは過つことのない、唯一絶対の真実。
「隅っこで埃を被っていた中古品ですが……こと“この領域”では中々強うございます……先の新米騎士“如き”と同じとは努々思わぬよう……」
翠の髪が虚空に棚引き、そのふくよかな胸部が揺れる様は彼女が実に女性的なる存在であることを示している。

かつて、世界を彷徨う彗星があった。
そしてその星の根に、1つの樹があった。精霊の加護を受け、その星を豊穣へと導く大樹だった。
だが枯れた。憎しみに縛られた愚かな男と、愛を知らず狂気に囚われた哀れな女と、何もしなかった惰弱な王のせいで枯れ果てた。

「2つ目の間違い……それは、この世界を裁くのは神ではありません……彼女が体現するもの……それ即ち“法”……」

だが、精霊は生き残った。僅かに残った希望のひとしずくの中に、辛うじて残った。
精霊は、枯れたことを嘆くことはしなかった。再び咲くことを望まなかった。
ただ、見定めた。自らの樹を枯らした者の罪の在処を、そして、その罪に足る罰を。

「緑系巨乳おねえさんと……グリューネ様とキャラ被りにも程がありますので……喰われないよう精々お気を付けください……ククク……」
262名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:06:56.86 ID:diS2IQyp0
 
263End of the Game −覇王層・以下略− 6:2011/06/04(土) 19:08:03.53 ID:CeDoJpLp0
それは、数多の運命を導く女性なる者。
それは、アルカナ20の『審判<Judgement>』。
それは、“守る”騎士とは異なる“裁く”ことに特化した最強の判定者。

「ノルン……なぜ、貴方が……!!」
『答えるまでもありません。私が行うことなど、一つしかないでしょう?』

カーラーンの精霊、ノルン。其はもう一つの世界樹の守護者にして、罪と罰を見定める審理の女神。
彼女の顕現した以上――――――――――ここから先、ルールは“キビしく”なる。

『……来なさい、時の紡ぎ手グリューネ。貴方の紡ぐ物語、果たして是か非か――――――――私が裁きます』



――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――



けたたましい音を奏でて剣が折れ、割れ、引き抜かれる。
大根のように太い脚を、血の色のスカートで纏って人形は再び動き出す。
赤い靴を履いてスキップを。たかが肉が千切れた程度で、所詮骨にヒビが入ったくらいで、歩くことを止めることなんてできやしない。

<さあて、巡りの悪いグリューネ様も状況を理解できたところで……続きを始めましょうか……
 応手願いますよグリューネ様……この退路絶たれた死の舞台にて私の駒を如何に処するか……
 殺すのか、殺されるのか……さあ―――――『選択』をッ!!>

行け、行け、逝け。その手に硝煙を抱きしめて。
恋した少女よもう一度奈落の底の底まで、今度こそは、想い人とともに。

「DAZDAZDAZGAGAEEEEEUJYUぇGYAAAAAAAAAEEEぃあYYANNNNNNNッッンッッッ!!!!」

<クッ……言われずともッ!!>

吹き飛ぶ剣の中で、化物の想い人は苦悶と共に剣を握る。
紛うことなき自身の悔恨の化身。その剣で守ることのできなかった少女。
助けなければ、守らなければ。そう強く強く思う。
なのに、傷つけまいと振るった剣で血塗れになる彼女を見て、思ってしまった。そして恥じた。
あんなに痛そうに歩くなんて、それなら、いっそ―――――――

「――――――――アミィ、ちゃああああああああんッッッ!!!!!」

“両足の骨を刺し貫いて地面に縫いつけてしまえばよかった”と、思ってしまうなんて。

道化が化物を動かす。審判者がそれを見定める。
あまりにも理不尽な混沌と、酷薄な秩序の中で女神は歯を軋らせて剣を掴む。
問答、説明、理屈一切無用の退路封鎖。赤い靴を履いた化物は死ぬまで想い人を追って走り続ける。
もうただの詰将棋。いずれは追いつかれ、抱きしめられる。それまでに選ばなければならない。

選択は慎重に。既に難易度は混沌<Chaos>。一撃見逃せば、直ぐに戦闘不能になる。
もう、クリアできるという保証はされていないのだ。
264End of the Game −覇王層・以下略− 7:2011/06/04(土) 19:08:36.50 ID:CeDoJpLp0





第383話

  「End of the Game −覇王層・クッルルル〜〜緑樹の断罪者ノルン登場♪ サイグローグの卑劣な罠にクレスさん大ピンチです!?−」






265名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:08:48.72 ID:diS2IQyp0
 
266End of the Game −覇王層・以下略− 8:2011/06/04(土) 19:09:32.63 ID:CeDoJpLp0
クレスは暗きに病むる横穴を全力で疾駆していた。ただし、直線にではない。
パラ バラ バララバッパバラ。
「――――くそっ」
反響する変拍子を刻む火薬の音が、自分を襲う金属の襲来をクレスに予報する。
クレスはバックステップしながら右手のエターナルソードを後方に下げて、
代わりに突き出した左手のガイアグリーヴァを盾のようにして前方に翳す。
エターナルソードではなく、防御面積の大きい斧を盾代わりにするのは当然だった。
弧を描かず、弓の張力を使わず火薬の爆力だけで直線に飛ぶ石弓―――『銃』の恐ろしさをクレスは、クレスの左手は理解していた。
単発式<オートマティック>と連射式<サブマシンガン>の違いはあれど、アレは間違いなくこの掌を貫いた力だと。
斬られれば痛む『斬撃』や喰らえば傷つく『術撃』とは根本から異なる力。
当たれば一発、問答無用で“持っていかれる”『銃撃』の力、一度味わえば忘れることなど無い。
無論、銃撃“ごとき”でどうにかできるほど今のクレスは甘くはない。
銃―――“無限の長さを持った槍”。しかも人間では対応し切れない速度を持った突撃。
故に刃先に囚われずに眼と銃口を見極め、その槍の軸さえ外しておけば正面から何発撃とうが喰らうことなど無い。
「アミィちゃん! 僕だ、分からないのか!?」
だが、それはあくまでも“自分を狙っている”“単発式”であったならばの話だ。
超人的な回避を魅せることなく、クレスは亀のように斧刃に自分を可能な限り覆って銃弾の雨を凌ぐ。
しかし実際に斧の楯に当たる弾丸は少なく、その一部はクレスの皮膚を切り、また大部分は洞窟の外壁に減り込んだ。
目が慣れてきたとはいえ未だ機械の油灯りしかない闇の中、銃口など見えるはずも無い。
ましてやそれが狙いをつけているとは到底思えぬ、散らかすような霰弾ではあのクレスといえども防御を選択せざるを得ない。
守護方陣や蒼破斬ならば確実に防げるだろうが、その“溜め”に一歩でも立ち止まればあの速度から逃げられない。
「しまッ!!」
クレスの背中にドン、と冷たい衝撃が伝わる。洞窟の壁がクレスの背面をがっしりと塞いでいた。
退けない理由が理解できるだけまだマシではあったが、実戦において最重要である位置取りを仕損じたことが、
クレスがどれだけの動揺を抱いていたかを雄弁に語っている。
「EGAEGAZUAAGYAAAAAA!!!!!」
「糞ッ!!」
クレスが止まった一拍の隙に、フィギュアは両手を広げてクレスに肉薄する。
まるで抱きしめる寸前のように大きく開かれた両腕は、クレスの左右から逃げ場を奪う。
迎撃は必至と、クレスは意を決したように魔剣を構えた。しかしその意は決してフィギュアを殺そうとするものではなかった。
「道が無いなら、斬り拓くまでだ!!」
自分に言い聞かせるようにしてクレスはフィギュアに背を向け、洞窟の壁に剣を撃ち込む。
壁に隙間を作って、やり過ごす。うまくいけば、そのまま掘り進んで彼女の手のとどかない場所まで下がって次の手を考える時間ができるはずだ。
この剣は決して彼女を斬るためにあるのではない。闇を切り裂いて、その向こうにいるはずのミクトランを斬る為の剣だ。
だからこそ、クレスは躊躇無く第三の道を選んだ。
追い詰められたからといって安易な選択に身を委ねること無く、真に自分が望む道を掴みとるために。

<ルール違反宣告。許可無き戦闘フィールドの改変・破壊は禁じられています【てっぺき】>

巌の如き、鈍い音がした。切り裂くための、人の首を何個も落せそうな威力が、まるまる波に変換されたような音だった。
100の敵を屠ったあの剛剣が壁に切れ目を入れただけで、まったく道を斬り拓けていなかった。
まるで、そんな道なんてありませんと、心底馬鹿にするためだけに立ちはだかる鉄の壁だった。

<これも駄目だと!?>
<で・す・か・ら……サウザンドブレイバーやらブルーアースやら何でもありの島の上と一緒にしないでくださいよ……
 “ここは破壊エフェクト作ってないンですかラ”……ほら、そういう無駄なことしてると……ブチ抜かれちゃいますよ……こんな風に……!!>

「A,AAAAEAAAAA!!!!!!!!!!」
「あっが…ああああああああ!!!!!!!!!!」
267名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:10:14.12 ID:diS2IQyp0
 
268End of the Game −覇王層・以下略− 9:2011/06/04(土) 19:10:23.86 ID:CeDoJpLp0
振るわれた緑色の巨腕がマント越しに直撃し、完全に晒されていたクレスの背中に鈍痛が走り、塞がり掛けていた傷が開く。
ビシリと背中に走る音。しかもその勢いを逃がせぬまま壁に衝突し、地面にその顔を埋めた。
<クリーンヒット頂戴しました……更に追撃【インパクトハンマー】ッ!!>
<〜〜〜〜〜〜させませんっ!>
フィギュアは倒れ伏したクレスに向かって左手を振りかぶる。
頭蓋に向けて一気に振り下ろされる腕は、もはや拷問具にしか見えない。
だが、あわやというところでクレスの反応が間に合い、剣で拳を受け止める。
物理的なガードはできなかったが、衝撃の瞬間、クレスは集気法を背中に集中させることで軽減させたのだ。
「本当に……分からないのか……」
だが、物理的なダメージは軽減できても心の衝撃までは減じられない。
幾ら声を枯らせども、耳もない人形にその思いは伝わることはなく、こうして今窮地に立っている。
受け止めた剣の刃先に、醜く肥大化した少女の腕がめり込み、血を剣に伝わらせる。
言葉は伝わらず、触れ合えば血が伝うのみ。やはり、今更どうしようもないのか。
「あァァァァァ!!!!」
そう叫んだクレスの両腕を赤い闘気が包み、エクスフィギュアの豪腕を一瞬だけ強引に持ち上げる。
その一瞬の隙に、クレスは飛び退いて彼女との距離を開ける。
背中に走る激痛。しかし、それを堪えてクレスは遠間で剣を構え直した。
「IGE,ANGE、EZUGYAIGYAIGYAIGYAAAAAAAAA!!!!!」
その腕からするりと抜け出たクレスを惜しむように、フィギュアの慟哭【インセイン・セル】が洞窟に響き渡る。
黒い衝撃波を受けながら、クレスは堪えるように風の向こう側を見た。
彼女が何故生きているかなんて分からない。あのミクトランが用意した偽者か、それとも蘇生させたのか、それさえも分からない。
(でも、彼女は苦しんでる。あんな化物にさせられて、したくもないことを強いられて……苦しんでるんだ……)
だけど、目の前の少女を救うことが出来るとするならば、それはきっと自身にしか出来ないことなのだ。
「GYAAAAA!!!」
(その苦しみから解き放つ。ごめん、アミィ……俺は、僕は―――――)
再び突進を始めたエクスフィギュアを前に、クレスもまたフィギュアに向かって突進する。
殺すことしか出来ない自分。ならば、目の前の彼女を救う方法も、一つしかない。
魔剣が煌き、その刀身に腕を振りかぶった化物が映る。覚悟を決したクレスの一撃が哀れな娘を――――――“斬らなかった”。

「“僕”は、諦めない!!」

自分の中のありったけの“人間”を掻き集めたクレスが大きく身を屈めてその巨腕を回避する。鼻先が地面にかすれ、焼けるように痛む。
それほどまでに地面に近い状態で走ることで、クレスはエクスフィギュアの脇を通り抜けることに成功した。
「WGAA!!」
その手にクレスを掴めず、クレスが自分の背後に回ったことを理解したのか、フィギュアは踵を無理やり大地にあてつけて反転しようとする。
(ここだ!)
その一瞬を見逃すまいとクレスの目がガンと見開き、エターナルソードを投げて地面に突き立てる。
そして跳躍。突き刺した魔剣の柄に“着地”、三角飛びで勢いを殺すことなく反転する。
最初から反転するつもりだったクレスと、クレスが抜けたことに気づいてから反転したフィギュアではクレスの方が行動が早い。
クレスが剣を持たない右掌に力をこめたとき、まだフィギュアはつんのめったような状態だった。
(中がどうなってるかは分からないけど……人間の形で、両足で歩いてるってことは、骨はあるはず)
素体がどうであれ、あれだけの巨躯に鈍重さ。体重も増加しているはずだ。
(あれだけの重さがこれほどの速度で走って、それを急に反転させれば、必ず膝に負担がかかる)
これまでの動きを見る限り、彼女はクレスを追い続けていた。襲えと命令されているのか、化物としての本能か、その理由は分からない。
だが方向を変える為に、彼女は必ず脚を止める。そこにどれほど負荷がかかったとしても。
(膝の軟骨じゃ吸収しきれないほどの負担。そこに、もう一押しを加えれば――――――)
269名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:12:14.96 ID:diS2IQyp0
 
270名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:14:01.13 ID:diS2IQyp0
  
271名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:14:47.58 ID:PODv6a2j0
支援
272名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:15:47.60 ID:diS2IQyp0
   
273名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:16:00.68 ID:SYkrbYJ90
しえん
274名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:16:48.95 ID:diS2IQyp0
   
275End of the Game −覇王層・以下略− 11:2011/06/04(土) 19:19:39.30 ID:CeDoJpLp0
「――――ゴメン!」
バッキン。
振り抜かれたクレスの掌打、というよりただの一押しがエクスフィギュアの右膝を真横に曲げ折る。
ただでさえ両腕が伸びてバランスが悪い体躯を片足で支えることなど出来るわけもなく、エクスフィギュアは自重に耐えかねて地面に倒れた。
「AGAEGYAEAEAIBANAEDE……」
腕をバタバタ動かすが、移動できない今クレスに届くことはない。
「DAZGYAADE……」
やがて諦めたのか、フィギュアは悔しそうにその握り拳を地面に置いた。
その様を、クレスは呼吸を整えながらずっと見ていた。どうか立ち上がるなと祈りながら。
次に立ち上がられてしまっては、もう本当に一つしか手段が思いつかなかったから。
深き大地の置くでもその願いが天に届いたのか、その刃を振り上げる必要はなかった。

「よか、った……今度は、守れた……」

クレスは心の底から安堵の表情を浮かべた。殺す以外の方法で、斬る以外の術で目の前のものを守れたことが何よりも嬉しかった。
それは自分がまだ堕ちきっていないことを信じるに十分な事実だった。
(でも、ここからどうすれば……)
しかし状況は依然として変化していない。アミィはいまだエクスフィギュアのままで、
これがエクスフィギュアというものであることもよく分かっていないクレスにはそれを元に戻す正道を知らなかった。
<これが、私の答えです。ご期待に添えなくて申し訳ありませんね。
 貴方が何をのたまおうが、ノルンが何を縛ろうが、私の道が揺らぐことはありません。
 心の傷を抉るその卑しい策を何度繰り返そうが、無駄なこと……大人しく王への道を譲りなさい>
(やっぱり、使うしかない)
呼吸を整えたクレスが息を一度ゴクリと飲んで、魔剣を拾い直した。
時間を操る魔の剣、エターナルソード。それによってアミィを化物に成る前の時間に逆巻く。
成功するかは分からない。だが、何も試さずに諦めることだけはしたくなかった。
何より失敗した後のことも、成功した後のことさえも考えたくなかった。
<――――――――成程、このアイテムなら……>
<? 負けが過ぎて声も出ませんか? 言いたいことがあるならはっきりといったらどうです?>
闇の向こうの彼女を見やる。のっぺらぼうの一つ目が、自分を見つめているのが分かった。
その長い手でも届かない距離を、懸命に伸ばして唸っている。
待たせてゴメン、とクレスは思った。でも、今度こそ君を―――――――
「時の剣よ、頼む。どうか、彼女を――――――――――」






<え? ああ……ごめんなさい、ツマラナイです>
「ちゃんと俺の手でブチ殺させてくださいな♪」





276名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:20:19.49 ID:diS2IQyp0
    
277End of the Game −覇王層・以下略− 12:2011/06/04(土) 19:20:38.32 ID:CeDoJpLp0
あの音を、僕は何度聞けばいいのだろうか。
振り下された剣が風を斬る。幾千幾万と自分のすぐ傍で鳴り響いた音をクレスは知っている。
グシャ、と骨と肉をまとめて圧し潰した音が混じった。耳よりも先に、目で聞いてしまった。
「ははは、はははは」
怪物が、クレスに伸ばした異形の掌から汁が塗れる。噴出孔には、栓をするかのように極太の剣が捩子こまれている。
僅かに残った灯にテラテラと輝く脂の色は、とても綺麗に虹色のスペクトルを映し出していた。
それだけで肉と骨で混じり合った脂の瑞々しさが分かった。分かってしまった。
「ひゃは、やっわら、柔っ、生い! 軟! やっば、ツルって切れる! いゃっは!!」
化物の上に「何か」が居た。腐りかけの果物に群がる蠅のように、化物の上でタカっていた。
だが、蟲は湧かない。なぜならばこれは作り立ての腐肉。
蝶よ花よと愛でられた初心な心から作り上げた、出来立てほやほやの臓物だ。
それを瞬間エクスフィギュア保存方式で密封。鮮度抜群、賞味期限をバッチリ守っています。
「GYA、アギャIGYATT、DDDDDDAZAAZJIJIJJJNUGAAA!!!!」
「ひゃはははははっ、足りない。もっと、もっと!!」
喘ぐ化物の上で、折れた右足も、起き上がろうとする右腕も、特に何もしてない左足も、グジャグヂャに壊されていく。
それから発せられる波を、クレスは掌で耳を塞ごうとした。だが、魔剣を持っていた右の耳を塞げなかった。
三半規管を通って音は脳でその姿を識る。鼻腔を通って粘膜に付着する臭素が思い出させる。

<なってない。実に“なってない”んですよ……>
「乾いて仕方ないんだよお腹が空いて仕様無いんだよ!!」

それは、どうしようもない破壊衝動。
ギラギった血の匂いに誘われて、音を立てて溢れだしたもの。
下腹部ごとその化物の胎盤を突きさせば湧き上がる肉片。
いくら返り血を浴びようと、いくら泣き叫ぶ声を聞こうと飢えて乾く砕けた杯。

<頑張ったら報われるとか、信じる者は救われるとか……もういいンですよ、そういう“場違い”なのは……>
「いいよ。凄く“具合が良いよ”!! アミィちゃんッ!!!
 こんなに柔らかかったんだねッ! 温かくって、二チャニチャしててぇ――ッ!!」

<え……コレ、ですか? いやだって、生き残ってたんで……もう一度起こしました……
 いやぁ“11本目”をこっそり混ぜておいて正解でしたよ、ホントウ……>
剣を落としてしまいたかった。有無を言わさず両の手を眼球へ運び、握り潰してしまいたかった。
その光景を見たくなかった。その画を身体の一片にも留めておきたくなかった。
それでも、剣だけは棄てられなかった。自然と、掻き毟る左の二の腕に血が滲む。
自分に唯一残ったものに懸命に縋り、クレスはその醜行を観劇する。

「殺すのって――――――――――最ッッッッ高!!!!!!!」

血に塗れた満面の笑みで、そいつは笑っていた。新世界の夜明けを視るように晴れやかに。
排された善を補う様に悦楽を貪り、歪んだ口元に白い歯が嗤う。
未来に歩くための足も、光を掴むための腕も、夢を育むための胎も失った化物の上で、
血に塗れながら、退廃した悦楽に善がって獣<オレ>が戯れている。

278名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:20:42.53 ID:SYkrbYJ90
 
279End of the Game −覇王層・以下略− 13:2011/06/04(土) 19:22:37.83 ID:CeDoJpLp0
眼前で突如開演したアルベインの凶行、その果てをクレスは唯々眺めていた。
血塗れになり、ボロボロの虫の息の半身。それが血肉を補う為に殺戮する。
びちゃびちゃと液状になるまで叩き尽された肉片が岩床の亀裂に染み入っている。
耳を塞げば目と鼻から、鼻を塞げば耳と目から、目を塞げば鼻と耳から伝わってくる。
「……A………I………」
四肢を失ったそれはフィギュアと、人形と呼ぶのもおこがましかった。
横たわった胸の下から、おかゆのように緑色の肉汁が零れているそれを人の形だと誰が認めるだろうか。
クレスが守ろうと、救おうとしたものは、どうしようもない程ヒトとして終わり切っていた。
肌寒い闇の洞中で、汗も出せないクレスの頬に水気が付く。
腐肉より沸き立つ、人肌よりも少し熱い蒸気がクレスに伝っていた。
じゃあ、アレは何なのだろうか。人形でも化物でもなくなってしまったアレは、なんなのだろう。
ほかほかと湯気を立てて鼻を擽る、闇の向こうのアレはなんなのだろう。

<やっぱり“こう”あるべきでしょう…………適度にグロットしておかないと……『洞窟』だけに……♪>
蛆を潰すような音と共に、眼前の自分が、汚れることも気にせず肉汁の中に足を突きいれる。
―――――アミィが作ったのかな?
赤いのは豆板醤で。熱せられた出汁の中で挽肉が湯掻かれている。

<何をバカなことを! 第一、何故同陣営で殺し合うのです! 有り得ないでしょう!!>
呆然とするクレスをみて、アルベインがああと得心したように笑った。そして、おたまに掬うようにして剣の腹に『料理』を乗せた。
―――――アイツ、料理が好きだったから。
サイコロ大にまで崩された豆腐はやけに固そうだ。

<判決――――控訴棄却。第二審に於いて既に『敵味方識別無効』は宣言済み。加害者が心神喪失状態のため、動機は不問。
 ルール上、対主催同士、マーダー同士が攻撃することに問題はありません。“主催戦力同士でも同じこと”です>
だって、そりゃあ君に先に食べて欲しいと思うじゃないか。彼女だってそう望んでるはずさ。だって、
―――――おいおい、ほどほどにしておけよ?
脂まみれのルウは、きっと胸やけを起こすだろうな。でも、
<そうそう……それに既に宣言されているではありませんか……どこかの頭の中までほんわかしておられる神様が、自信満々なお顔でねぇ……?>
そんなにだらしなく垂らされたら、俺が先に食べる訳にはいかないじゃないか。なあ、クレス。
(どれ、ちょっと味見を)
アミィちゃん“で” 出来たマーボーカレーは、食べたらきっと――――――

<〜〜〜〜〜〜〜サイグローグ! 貴様だけは、お前だけは絶対に許しませんッ!!>
「シ、にぃ、曝せェェェェェェェェェェええああがああああぇぁぇぇぇああがあああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

星を三枚にオロしてしまいかねないほどの絶叫が、洞窟に響いた。
喉よ潰れ裂けよとばかりの劈き、頬が裂けそうなほどの大口から涎を出すことも厭わず、クレスは魔剣を突き構えて突進する。
殺し損ねた奴が残っていたのだとか、自分が気付かなかった敵が潜んでいたのかだとか“心の底からどうでもよかった”。
その表情を真正面から見たならば魔界の王でさえ道を譲るだろう。それほどまでにその表情は人間を逸脱していた。
剣を掴んだ以上いずれ棄てると決めていた人間。
それでも掻き集めたりったけの人としての願いを無碍にされたクレスに迸ったのは、絶対的な殺意だけだった。
あの穢れた色を見たくなかった。だから視界が飛びそうなほどに速く走る。
あの腐臭に塗れた笑い声を聞きたくなかった。だから音も風も届かないほどに叫ぶ。
斬って抉って、消し飛ばす。今のクレスにあったのはその衝動だけだった。
あれを見続けては、あれを聞き続けていたら、僕はもう一度“取り返しがつかなくなる”。
だから、頼むから散って無くなってくれ。

<おおぅ……くわばらくわばら……ここは防御を『選択』させていただきますよ……>
280名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:23:13.46 ID:diS2IQyp0
 
281End of the Game −覇王層・以下略− 14:2011/06/04(土) 19:23:24.50 ID:CeDoJpLp0
血塗れのアルベインが、極上の笑みと共に化物に唯一残った腕の無い上半身を頭蓋から掴んで持ちあげる。
自分で辱めた死体を盾にする。人間としても剣士としても堕ち切った自分を前にして、クレスは目を爛と輝かせた。
<今更そのような手に乗るとお思いですかっ!! 愚弄も時として無為と知りなさい!!>
最高だ。最高過ぎるほどの屑っぷり。素敵過ぎて、盾ごとブチ抜くのに一切の躊躇も必要ない。
クレスの神速の瞬突が神槍かくやの煌めきと共に放たれる。
未だ短いとはいえクレスの人生の中で一、二を争うほどの斬撃は、並みの瞬迅剣など比べ物にならない程に純粋で完璧だった。
それが斬撃九法に於いて最大の殺傷力を持つ「突き」であるなら、言わばこれはクレス=アルベインの最大殺傷力と言っていい。
化物の肉骨で出来た咄嗟の盾など、何千何枚重ねても徹し斬るだろう。
泡を吐き続けるその盾が何で出来ていたかなど、最早クレスにとってはどうでもよかった。
それはもう失われてしまったのだ。守れなかったのだ、救えなかったのだ。故に、もう顧みる必要は無いのだ。
その代わりに、奪った者を、救われるはずだった少女を穢した奴を、この剣にて処断する。
それだけが既に息絶えた彼女に報いる術なのだから。

<流石グリューネ様……私などとは『覚悟』が違いますねえ……でも、いいンですかァ……?>
「死っねええええええ!!!!!」

時の剣よ、今僕は憎悪に誓う。眼前の合財をここに斬り飛ばさせろ。







<“まだ、死んだか確認していない”ンですけどぉ……?>




「た、すけ……クレ、ス……さ………」




え?




ぶっちゃ






282End of the Game −覇王層・以下略− 15:2011/06/04(土) 19:24:08.28 ID:CeDoJpLp0
役目を終えた突きから推力が失われ、魔剣の刃先が地面に突き刺さる。
吹き飛ぶ鮮血の中でクレスは、茫然とした。
エターナルソードを頭蓋に受けながらもゲラゲラと笑いながら砕けたアルベイン。
だが、その笑顔をクレスが見ることはできなかった。アルベインの笑顔とクレスの間には、1つの遮蔽物が残っていた。
アルベインを殺傷したその瞬間に聞いた、その狂嘲と風斬り音に掻き消えて聞こえるはずの無い声。
その意味を疑問とするより早く、視界が意味を理解する。
「え゛、あ゛……」
微かな、しかし確かに在る嗚咽とともに伸ばされた腕があった。
たった今死んだアルベインに犯され尽くして唯一残った上半身と、僅かに残った右腕がそこにはあった。
破損というには過酷すぎるほど滅茶苦茶に乱壊しても前に伸びる腕。喉の無いのっぺらぼうが壊れた音を出している。
何故、まだ生きているのだ。
四肢を『誰に?』もがれて、下半身を『俺に?』ミンチにされて、『僕の手で?』あれだけ血を失って。
生きていられるはずはない。鼓動もなく、生気も消し飛んでいた。あれはもう、唯の『モノ』だったのに。
湧き上がる疑問がクレスの咽喉を内側から圧迫する。それだけで首輪に頼らずとも頭蓋が爆発しそうだった。

「ぁ―――――うぇ―――――ぇ」

疑念に圧殺されるクレスの脳裏に、生けるものの声が響く。
少しずつ化物が溶けているのが分かった。緑色の腐肉が、栄養を失う如く固体から液体へと垂れ落ちていく。
垂れて剥げて、崩れ落ちた腐肉の中から小さな掌が現れる。小さな宝石がすっぽり収まりそうな窪みの空いた甲だった。
手がクレスに近づくたびに腐肉は落ちて、その奥から赤に染まった小さな胸が現れる。
顔を覆っていた肉が剥げると共に、全神経が引き裂かれるような痛みを憶える。
何故、何故、どうして。心臓を内側から引っ掻くように浮かぶ祈りのような疑問。
その小さな杯にどれだけ入っていたのだろうと思えるほどの血液が、化物“だったもの”に刺さった魔剣の根元から溢れている。
治療の術を持たぬ物が己が研鑽の無力を慰めるような反射で、クレスは魔剣を引き抜こうとして、
クレスは腐肉の落ちた血塗れの懐に何かが入っていることに気付いた。

「じン―――ばッ―――――だん――――で――――」

―――――あっ、そうだ忘れてた。アミィが、お前に渡したいものがあるってさ。

それはマトリショシカだった。フィギュアの中に入っていた人間の懐にあった、人の形だった。
血に濡れた重みか、残った衣類がずれて“それ”が彼女の懐からずるりと落ちる。

―――――あ、クレスさん、こんにちは。これ・・・つくったんです。

脳裏に浮かぶ彼女が、クレスに差し出す。
血の気を全て失った、真白い“これ”よりも、ずっと赤みがかった笑顔だった。
落ちた人形はバキンと真っ二つに砕けていた。既に役目を終えていた証だった。

―――――クレスの格好をした人形だ。ハハハ、よくできてるじゃないか。お前、毎晩遅くまでそれを縫っていたのか?

一度目は、トーティス村で死んだ。黒鎧の災に飲まれて訳もわからず死んだ。
二度目は、名も知らぬ島で死んだ。またも訳もわからず、気狂いに追い回されて死んだ。
そして三度。訳も何もなく彼女はそこに存在し、異形と化し、バラバラに解体された。
そこで三度死ぬはずだった。死ななければ救われない哀れなお人形だった。
だが……そこに、ほんの少しの奇跡があった。
彼女が三度冥府へと連れ去られるその瞬間、代わりの人形が先に連れ去られてくれたのだ。

<封じ手を開封……3つ目の支給品は…………反魂のマスコット【リバースドール】でございました……ました…!!>
「ご、わ――――――――――だ、っだん――――――」
283End of the Game −覇王層・以下略− 16:2011/06/04(土) 19:24:55.57 ID:CeDoJpLp0
リバースドールは失った四肢をよみがえらせるものではない。死神が過ちに気づき次第、再びその袖を冥府へ曳かれただろう。
どの道死ぬしかなかった少女が、しかし確かに掴み取った奇跡。たった数秒だけとはいえ、三度目にして得られた彼女の新たなる運命。
死神が訪れるより先に、四度目の救い<Death>を彼女は手に入れる。他ならぬ愛しい愛しい人の手で。
<こ、こんな……こんなことまで……何処まで屁理屈を……ッ!!>
血の泡を吐きながら、唯一人間の形を残した上半身がガタゴトと歯を鳴らす。
唯一残った腕を伸ばしながら、彼女は人間へと還っていく。
生命そのものを蘇らせるボルトマンのレイズデッドならばともかく、一度変質した生命は二度と戻ることは無い。
だが……身体が元に戻るだけならば、手段は絶無ではない。
エクスフィギュアとは、体内のマナ―――つまり生命の暴走に対して肉体が適応しようとした異形だ。
そもそも“暴走するべき生命そのもの”が失われれば暴走の仕様が無く、肉体は定常状態へ沈静する。
異界の住人であるマウリッツのエクスフィギュアが死に瀕して本来の形に定着したように、ある会社の会長夫人が夫の拳に貫かれた時のように。
その魂が現世に還ることなく冥府へと送られるときもまた、その呪いは解ける。

「―――――て、―――……たぁ」
<……結審。死亡確認無き死者を禁ずる【キュア】。
 その駒の状態が如何なるものであれ、死亡確認宣言が未完である以上―――――その死はまだ確定していません>

べたべたに穢れた少女の手がクレスにゆっくりと近づく。
何かを言おうとしているのはクレスにも分かった。だが、分かってやることはできなかった。
今更理解し始めていた事実が体中を渦巻いて、聞いてやる余裕もなかった。
(なんで……諦めたんだ………………死んだって、思いこんで、決めつけて……)
指先の神経が戦慄く。アルベインごと“これ”を突き刺した時の、その感触を思い出して震えていた。
死後硬直した不味い肉とは比べ物にならない極上の――――――生きた娘を深く深く突き刺す感覚を。

震えるクレスの唇に触れる寸毫、その手がふわりと落下した。
彼女の腕を持ち上げていた最後の糸が切れて、重力へと沈んでいく。
その全てをクレスは見ていた。
止まった血の噴水を、
緩やかな筋肉の硬直を、
しな垂れる青い髪を、
何も拾わない耳朶を、
平衡していく熱量を、
息のない無音を、
二度と進まない電気信号を。
自分の全てを動かすこともできないまま、彼女が動かなくなるのを見続けた。


「何が……全部を斬るだ……俺は……また大切に……でき、な、カッ……た……」


陵辱された女の子。毎日夜鍋してこさえたお守りのお人形が守ってくれました。
騎士様は、そんな可哀想な可愛そうな女の子をちゃんと殺し直してあげました。
「―――――うぁ―――、――っ――――」
彼女が、大切に大切に抱きしめていた素敵なお人形。
渡したかった相手に――――――“ぶち壊されてしまいましたとさ”。
「――――――――――――あぅ」

下らないオチの為にでっちあげられた模造の悲劇。
これは、それだけの物語だった。

284名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:24:57.06 ID:PODv6a2j0
支援
285名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:25:02.40 ID:diS2IQyp0
 
286End of the Game −覇王層・以下略− 17:2011/06/04(土) 19:25:47.36 ID:CeDoJpLp0
ならば今響くこの拍手もまた作りモノだだろうか。
人の叫びではなかった。獣の咆哮ではなかった。およそ生物の発する音ではなかった。
<ク、クククク……クハハハハハ…………その顔ですよ……エッとイウ呆然……気付かなかったことに対する気恥ずかしさ……>
怒りではない。悲しみではない。喜びでも、快楽でもない。
言葉に出来る程度の感情では到底奏でられない旋律が、闇の中で連鎖している。
<死角から衝突した木槌にてチカチカ光る星の輝き…………道化とは“それ”を食して生きる者でございますれば…………!!>
音波よりも電磁波の方がまだ適当な表現だった。
目玉をぷっくりと浮かせながら頭を抱えたクレスから発せられていたのは、鼓膜よりも先に神経を焼き斬る、そんな波だった。
<グリューネ様のその驚愕と恥辱に塗れた生御尊顔をリアル拝謁出来ただけで……
 不肖このサイグローグ、道化冥利に尽くるというものでございます……クプククククゥッ……!!>
残響し拡散し増幅して自らの耳に帰還する声が、まるで自分の愚かさに腹を抱えた誰かの大爆笑のようで。
その嘲りの中で、クレスの額に巻かれた白が赤黒く滲んだ。
それは面積にしてみればほんの少しだったけど、堕ちると決めた時よりも、ずっとずっと汚らわしく思えた。
<こ、の……卑怯者が……ッ 自分が何をしたか分かっているのですか……!!>
<ヒキョウモノ……何故グリューネ様が私の母方の曽祖父の戒名をご存知なのでごさいましょうか……?
 それはさておき、どうにもお気に召されぬご様子……確かに……何分即興に頼った部分が多く決して出来のいい脚本ではありませんが……>
半欠けの死体の前で、クレスは泣いていただろうか。
血に塗れた両手で覆った顔面はグシャグシャで、涙を流していたとしても血にしか見えなかった。
<……ふぇンむ……“何も分かっていない”グリューネ様を強引にハメたと言われてしまえば確かに否定できません……
 微温湯につかっていたグリューネ様には聊か洗礼が熱うございましたか……>
凡そ肺の中の空気をすべて失っても慟哭は続いた。
血を吐き続けてでも、肺胞の底の底に湧き上がる泥流を全て体外へ追い出さんと唸り続けている。


<……もう一度、あげましょうカ?>
<え?>

クレスの嘆きを雑音が阻害する。背後で複数の肉が地面に蠢く音だった。
叫喚を止めたクレスが、握った左の魔剣を強く握る。
もう、自棄の一歩手前だった。振り向いた先に、新手がいようが殺し損ねが何匹居ようが、
こんがらがった心では、やることが一つしか思い浮かばなかった。

<――――――――――――“チャンス”を……>

皆殺す。この目の前で倒れ伏す幾人ものアミィ=バーク  ライ   ト   の           群ェ?


「やあ……」「うう……」「痛……」「えぐッ……」「ひっく……」「うぇえ……」
雑音は泣き声だった。蹲った何人もの少女が脅えたように嘔吐いている。
小さな灯しか無い洞窟の中でもはっきりとクレスにはハッキリと見ることができた。
その何れの少女もあちらこちらに擦り傷を作っていたのを。
誰も彼もが息絶え絶えに疲れきっていたのを。誰も彼もが艶を失った青い髪を大きな髪留めで二つに縛っていたのを。
闇の中でクレスを見つめて差し伸ばされた少女たちの体に、宝石が剥げ落ちたような穴があったのを。

「あ……」「A」「Ah」「GA」「AAAh」「GYA」「GYAGAGA……」
<な……な…………サイグローグ……お前は……!!>
<親友の妹を再構成【リファイン】……エクスフィアにて肉体を再拡張【エンハンス】……
 武器は……考えるのも面倒ですから無しにしますか……
 ……とりあえず、12体ほど再配置しましョウ……後は、減り次第逐次補充で……>
287名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:26:50.28 ID:diS2IQyp0
  
288End of the Game −覇王層・以下略− 18:2011/06/04(土) 19:26:59.37 ID:CeDoJpLp0
泣き声は次第に鳴き声になっていった。
エクスフィアの外れた箇所を基点として葉脈の如き異常な幹腺が浮き上がり、ごぼごぼと肉と骨を溶かしていく。
彼女たちの奥で、肥大化した肉が立ち上がっているのが分かった。直近の6人の闇の向こうに、まだまだ存在するのが理解できる。
居るのだ。この奥に無数の化物が、何人ものアミィ=バークライトが。

<さ、どうぞグリューネ様……これだけ居れば……“一匹くらいは、助けられるでしょウ”……?>
「「「「「「「「「「「「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」

少女だったもの達の咆哮。そして、クレスめがけて振るわれる怪腕。
クレスは辛うじてアミィの上半身を抱え、二つの斧が落ちている場所へ飛び退く。
下がったことで視界が広くなって、クレスは目の前の地獄を過つことなく理解した。
12の化物全てが、クレスだけを見つめて意識を放っている。

(は、ははは……そうだよね…………当たり前じゃないか……)

唯一人間として残ったアミィの亡骸を胸に強く抱え、辛うじて斧二つを回収したクレスは無意識に笑顔を作っていた。
耐えられぬ心を守るようなその笑顔は、ともすれば泣いている様にも見える。

「「「「「「「「「「「「RAAAARAhAAAhAARAARAAAA!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」
「ウああああああああァァァッァァあああAああAAああ゛あ゛ああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

きっと罰なんだろう。化物達に背を向けながらクレスは思った。
自分がここに至るまでに犯してきた罪。守ることのできなかった命。
その全てが、今自分の背中に襲い掛かろうとしている。お前を絶対許さないと、高らかに宣告している。

<……さあ、健気な少女を救うべく精々頑張って下さいませ……
 ……無理だと思えば、どうぞお進み下さい……中ボスは既に撃破されておりますので……>

クレスは走った。怪物を救うことも斬ることも選べず、ただ前に逃げた。それしか出来なかった。
自分が罪人であることなど、クレスはとっくに知っている。罰は与えられて当然だ。
クレスは心の中で懇願した。せめて、王を殺すまで待ってくれないか。その後ならば、いくらでも裁かれていいからと。
しかし、裁判官はどうやら罰を与えたくて仕方ないらしい。
ありとあらゆる拷問器具を用意して、クレスを断罪しようとしている。
もう、その手でアミィを殺してしまったことに“苦しむことさえ許さない”と。

<これも、これも通すというのですか……ノルン……!! それが貴女の云う法なのか……ッ!!>

罪で穢れた刃を王の喉元に突き立てて死ぬのが先か。
王にたどり着く前に穢れた罪を裁かれて、死に絶えるのが先か。

<……絶望側、合法です――――――――――――さあ、次の審理へと向かいなさい>

これは、哀れな死刑囚の公判記録。
死刑台に至るその末路は、審判の女神だけが知っている。




―――――――――――――――――――――――――――――Cless Win !  Go To Next Stage!!



289名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:27:36.25 ID:SYkrbYJ90
  
290End of the Game −覇王層・以下略− 19:2011/06/04(土) 19:27:45.90 ID:CeDoJpLp0
【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP15% TP45% 第四放送を聞いていない 疲労 眼前の状況に重度困惑
   狂気抜刀<【善意及び判断能力の喪失】【薬物中毒】【戦闘狂】【殺人狂】の4要素が限定的に発露しました>
   背部大裂傷++ 全身装甲無し 全身に裂傷 背中に複数穴 目の前の現実に狂乱
所持品:エターナルソードver.A,C,4354 ガイアグリーヴァ オーガアクス メンタルバングル アミィ(?)の上半身
    サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@血に汚れている
基本行動方針:剣を振るい、全部を終わらせる
第一行動方針:エクスフィギュアとは戦えない。前へ、前へ、とにかく逃げる!
第二行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:中央山岳地帯地下

*現在クレスの居た場所の付近に UZI SMG(30連マガジン4つ付き)空マガジン×1 リバースドール@効果失効済 が落ちています。

【Amy Barklight? 死亡確認】
【???<アルベイン?>×5,ナイチンゲール×2,ウィザード×3,ヘルマスター×3,バジリスクキング×2 死亡確認済】


【Notice】

新しいスキットが出現しました

Select:『ぎょくおん!』

291名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:28:05.81 ID:diS2IQyp0
  
292名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:29:24.68 ID:CeDoJpLp0
以上で投下終了です。多大な支援、ありがとうございました。
スキット及び次回も準備を進めていますので、なるだけ早く投下できるようにしたいと思います。
293名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:30:21.73 ID:diS2IQyp0
  
294名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:32:22.08 ID:SYkrbYJ90
投下乙!
ここにきてノルンの登場か……!
グリューネが完全に追い込まれてるが、はたして。
295名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 19:58:10.23 ID:diS2IQyp0
投下乙!
こんんの外道がああああああ! 
クレスがアスベルになっちまいそうだぞ、守れなかった的に!
文字通り必死の想いで守ったと思った人を自分に殺されたと思ったら自分が殺していた
な、何を言っているのか分からないが俺にも分からry
でも確かにロワ的には死亡表記は絶対だよな…
主催者らにはあんま関係ないけど、アミィは参加者だったんだし
しっかしアミィ一人相手にもこれだけの想いだったのに、それを踏みにじるかのようなアミィ軍団…
クレス、どうなっちまうんだろ。どうすんだろ
296名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 22:46:44.90 ID:MCTsUJCeO
ただの大樹の精霊以上の力の描写やアルカナといい筆者は間違いなく原作なりダン1の理解者だな

でもだからこそ「希望のひとしずく」は出さないで欲しかったかな・・・
297名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/05(日) 01:42:00.18 ID:Jbuh6m2H0
投下乙!
298名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/05(日) 01:44:11.08 ID:mUjERjpB0
執筆・投下、お疲れ様でした。
これは、ああ……もう。ちょっとなに言ってるか自分でも分かりませんが、
「救うこと」や「蘇らせる」ことへの皮肉が、ほんとうにたまらない。
基本的には、『Tales(物語)』の終わりをもって幕が閉じる。……そこで人物の生が
「完結」するかたちで終わっているから、俯瞰や想像がかなうわけであって――。
それを考えたらもう、蘇らされたものはもう、21人なんてものじゃない。
書き手、それも二次創作の書き手として頭の隅においてはいたことを、メタ視点や
パロディなどのギャグも交えて、誰にでも読ませるかたちに仕上げる手腕には
いつも素晴らしいなと思わされます。こういうこと考えなくても書けるのに、楽しく
なれるだろうに、見ないでいいところを直視してストーリーテリングに活かす作業は
大変なんじゃないかと思いますが、だからこそ、話に魅力を感じます。
こうしてわけのわからん感想くらいしか返せませんが、読んでる間が楽しいです。

そして、アオリ文のほうも、地味に楽しみにしております。
ものの見方になんとも言えない諧謔味があって、おもわずSSを読み返しました。
299名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/06(月) 21:13:27.02 ID:vQUJ0/+Y0
めさ伸びてると思ったら投下きてた…
投下乙です!!
クレスさん大ピンチすぎて胃が痛くなりました…。
楽しみにお待ちしております!ご無理のございませんよう!!
300名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/11(土) 15:44:32.38 ID:nlTJvmgdO
保守
301名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/16(木) 07:43:21.30 ID:CIvQIOoLO
保守
302名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/19(日) 22:29:55.53 ID:qQuqN+GJ0
スキット投下します。
303SKIT「ぎょくおん!」 1:2011/06/19(日) 22:30:44.97 ID:qQuqN+GJ0
「何故、こんなことに……」
「【誤殺なう】と……ぷ、ぶひゃひゃひゃ……失敬。うぷ、ププププ……幼女を殺して、出た感想が『あぅ』って……
 生娘じゃないんですから……い、今思いだしただけで……くっひゃ、ハハハハハ……」
圧倒的不利の中で希求した最善を完膚なきまでに踏み躙られて頭を抱えるグリューネの前で、サイグローグは爆笑していた。
ドッキリに成功したのと同レベルの笑いを浮かべながら嘲るこの道化に、グリューネは最善を踏み躙られたのだ。
ならば、眼の前の仮面に対して抱く感情など、一つしかない。
「その下卑た笑いを止めなさい。下郎が……ッ!!」
「フハハ……重ねて失敬……しかしグリューネ様のお顔も、一度“鏡で”見た方がよろしいかと思いますよ……
 私の手が余程気に入らなかったご様子ですが……一体何処がお気に召さぬと……?」
「全部に決まっているでしょう? 
 何の事前宣言も無く死者の召喚し、全滅させたはずの兵隊の数を後から変更し、
 主催戦力同士で殺し合わせ、自分で殺しておきながら都合よくリバースドールで生かし、
 無理矢理、剣士が親友の妹を殺す状況を作っておきながら何をいうのですか!」
浴びせるようにグリューネはサイグローグの非を責め立てる。
騎士道斯くやと正々堂々、正面から戦ってきたグリューネにとって許すべからざるものだった。
裏を突くだけならベルセリオスも行ってきたが、これは次元が違う。
言ってみればジャンケンで相手がグー、キー、パーどれを出すか読んでいたら、影絵の『犬』を出されたようなものだ。
「犬もかなり強力だと思いますが……いずれにせよ全て応手済みでございます……
 バトルロワイアル開始時に生きた死者の存在は確認済み……故に、王による死者蘇生の可能性は提示されております……
 狂剣の人数については……そもそも百体全滅したとは申しましたが……“雑魚を追加しないなんて一言も言っておりません”ので……♪
 主催戦力の同士討ちについても既に解答済み……このゲームでは同陣営の仲違いは禁止されておりません……
 リバースドールについても同様……主催戦力がアイテムを持ってはいけない、などとは言っていませんので……」
予め用意してあったとしか思えない流暢さでサイグローグはグリューネの攻撃をブロッキングしていく。
1つ1つは否定し切れぬ灰色の罠。しかし、それを積み重ねればここまで黒く卑劣になるのか。
「ですが! 最後の1つだけは見逃せません!! 死者を蘇らせることを百歩譲って認めたとしても、
 12体も同時に存在できる訳がないでしょう!? しかも、死体は未だ残っているというのに!!」
サイグローグが攻撃を捌き終えた僅かな隙を突き、グリューネのアクアレイザーがサイグローグを狙い撃つ。
狙うのは、サイグローグがまだ防御をしていない箇所。
だが、それさえも待ち構えていたと道化は笑みを浮かべ、それと同時に絶妙なタイミングで翠の光が周囲を包む。

『結審、基本的王権の尊重・第二項【プリティラリア】。王が複数の同一人物を盤上に同時配置する権利を保障します』
304SKIT「ぎょくおん!」 2:2011/06/19(日) 22:31:12.89 ID:qQuqN+GJ0
ノルンの頭上から射出された二つの光条がサイグローグの死角をカバーするように降り注ぎ、グリューネの術は蒸発さえも許さず分解される。
『この盤に於いては【王国客員剣士】と【仮面の剣士】が駒として同時に配置されています。
 グリューネ……この状況で、複数の同一人物が同時に存在することは果たして許されぬ罪でしょうか?』
「ぐ……それは、そうですが……!!」
淡々と述べられるノルンの問いに、グリューネは押し黙るしかなかった。
勿論、その問いにはいそうですねと言える訳が無い。鏡合わせの裏切り者達と今眼前で増殖した妹達では背景が根本的に異なる。
だが、言葉にしてしまうと―――確かに『同一人物の同時存在』としか表現のしようがないのだ。
しかし、どうしてもここで引き下がってはいけないように思い、グリューネはなんとか喰い下がろうとする。

「ならば……せめて、説明をするべきではありませんか!?
 この自分の行いを是と、正義と謳うのであれば……己が身の潔白を、審らかに示すべきでしょう!?」
「成程……つまり私が紳士であることを示すために、全裸になって『受け止めて……僕のエクスカリバー……』と
 グリューネ様に不敵に申せと……いやはや……想像していた以上の変態淑女っぷりでございます……」
「どこをどう聞けばそのような解釈になるのですか……!!」
「了解しました……つまり、私に対して『受け止めて……私のエクスカリバー……』と申したいと……」
「貴様という道化はどこまで……!」

グリューネが盤をバンと叩いた所で、サイグローグはやれやれと頭を振る。
「冗談はここまでとして……グリューネ様の申請、お受けいたしました……
 確かに、ここまでの状況……何も分からぬグリューネ様にとっては頭の痛い問題でありましょう……
 死者が簡単に蘇ったり……実に“ふしぎ、ふしぎ”……更には……何人にもふえたり……まっこと“ふしぎ、ふしぎ”……でございます……」
うんうん、とサイグローグはワザとらしく首を縦に振って言葉を続ける。
「今のグリューネ様はさながら砂漠に放り出された旅人……何処に向かえば良いのかの目印も無く……
 彷徨えば彷徨うだけ喉の渇きが自身を苛む……それが……『疑問』……その渇きを潤すためには……水を飲むよりありません……」
そう言いながら暑がって舌をだらしなく垂らした犬の真似をするサイグローグに、グリューネの感情が高ぶったのは言うまでも無い。
「王が如何にしてこの状況を作りだしたのか…………気になって仕様の無いグリューネ様の渇き……
 砂漠で迷う者に水を差し伸べるも紳士の務め……グリューネ様の苦しみを……取り除いて差し上げましょう……」
だが、この時のグリューネの耳は今までのどの時よりも研ぎ澄まされていた。
人を小馬鹿にすることに長けた道化が吐くであろうこれ見よがしなヒントを逃すまいと、サイグローグの一言一句に耳を傾けていた。
サイグローグが喉をいからせて重低音を作り、コホンと咳払う。果たして、王が何をしたのか――――――――――











「なに、気にすることはない」









305SKIT「ぎょくおん!」 3:2011/06/19(日) 22:31:49.49 ID:qQuqN+GJ0
そのとき――――――――――確かに空気<セカイ>が、反転した。
「ふざけるな!!」
「ふざけてなどおりませぬ……疑問が気になって仕様無いというのなら気にしなければ良い……
 所詮地を這う民衆に偉大なる王の御業・御心を理解するなど無理なこと……不遜なことは考えずに、ただ誰が行ったかだけを知っていればよい……
 いやはや、流石はかの賢王……実に含蓄のある御言葉を歴史に残したものです……」
「誤魔化すな。それの何処が答えだと言うのか。これまでの異形の奇手に、納得できるとお思いですか!?」
道化師のあまりの浅薄さに、グリューネは堪らず盤に身を乗り出し、道化の胸倉を掴もうとする。
「渇きを取り除く、とは言いましたが……水を与えるとは一言も言っておりませんよ……?
 それに……答える必要のないものをわざわざ答えて差し上げる必要も……ありませんので……ねえ、ノルン様…?」
サイグローグはノルンへと視線を写し、グリューネも釣られて彼女へと目を動かしてしまう。
まさか、まさか“そんなことは絶対にありえないですよね”と懇願するように。


『―――――終審、希望側の請求を棄却。絶望側のバトルロワイアル開催に伴う『開催方法』の説明義務を免除します【サテライトスォーム】』


その懇願を見据えた上で、審判の女神の重き一言が月の光となってグリューネに降り注ぐ。
痛みはない。だが、肌から筋肉を経由して骨に達して光が透過していく度に、細胞一つ、末梢神経の先まで停止させられていくのが彼女にも分かった。
本当に美しいものを見たとき人が理由なく静止してしまうように、ノルンの真言の前に、グリューネの肉体は平伏する。
『……仮に、サイグローグが……絶望側が貴女の要求に応じ【王によって死者が再び存在させられた理由】を説明したとしましょう』
瞼ひとつ動かせなくなったグリューネの中にある意思を見て取ったか、ノルンがゆっくりと口を開く。
サイグローグは何事か、と口を挟もうとしたが少し考えてから聞く体勢へと移行した。
『死者が蘇ることを善しとしない貴女は、当然それを納得しないでしょう。
 何とかその論理に矛盾を見出し、それはあり得ないと主張する。聡明な貴女です、おそらくそれは認められるでしょう』
ノルンはゆっくりと、稚児をあやすように語った。本来この後行われるべき攻防を、筋道を立てて進めていく。
『当然、この現象を通すべきサイグローグは再び否定を行うか、代替案を提示しなければなりません。
 ですが、もしそこでサイグローグが再否定出来なかった、あるいは理由の代替案を持っていなかったとすれば?
 その時―――――【王によって死者が再び存在させられることはない】という論理が成立してしまう』

問いと共に、ノルンの強い視線が突き刺さり、グリューネはノルンの言わんとすることを察してしまった。
“問題はそこだ。そこに矛盾が生じる”。

『しかし、このバトルロワイアルでは初手―――王による他駒への開幕宣言の時点で、死者が再び存在しているという事実が決定しています。
 そもそも……貴女がこれを否定しようと思ったのはこの世界を“貴女が正しいと思う世界”に戻すためでしょう。
 ですが、それを否定すれば世界が成立しない。つまり、貴女がこれを否定する理由も存在しなくなるのです』
バトルロワイアルの中で起きた結果であるならば、その過程を否定し、その結果をなかったことにできるだろう。
だが、始まりだけは否定できない。
“きのうころんだじぶんをちゅういすることはできない”――――バトルロワイアルの中で、バトルロワイアルそのものを否定する行為は“許されない”のだ。
『故に、絶望側は王が如何にして盤を作り上げたかを語る義務を負いません。
 ただ【王の力】と知っていればよい。語るに落ちるよりは、語らぬが賢者の在り方です』
説明しなければ、破綻することはない。そう言い切りながらノルンはグリューネの戒めを解く。
体を動かせるようになったことを確かめながら、グリューネは悔しそうに言った。
「だから……認めろと? 一度最初に死者を辱め、弄び、穢したのだから……“今更気にするな”と……それに納得しろというのですか……!」
『ええ、たとえ貴女が納得出来ようが出来まいが……“決定されている結果を覆すことは出来ません”。
 仮にも世界を調停する神を名乗るのであれば、弁えなさい』
306SKIT「ぎょくおん!」 4:2011/06/19(日) 22:32:25.45 ID:qQuqN+GJ0
奥歯をかみ締めながら項垂れるグリューネを、ノルンは少しだけ表情を曇らせながら見ていた。
「ありがとうございます……私、ベルセリオス様ほど口が上手くないので、まともに説明していたら勝てなかったでしょうから……」
『別に、貴方の為に行ったわけではありません』
一部始終をニタニタと見守っていたサイグローグが心無いねぎらいの言葉をかけ、ノルンがそれに無機質に応じる。
どうみても味方同士とは思えないのに、今のグリューネには二人がつるんでいるようにしか見えなかった。
なぜこちらの手が悉く否定され、サイグローグの非道が許されるのか。
あのスカートの中に何万ガルドを差し込めばここまで卑劣な判定が許されるのか。

「結構です……貴方達がいくら私を巧言令色で煙に巻こうと、卑劣非道を重ねようと、私の道は揺るぎません。さあ、次を始めましょう!」
自分を奮い立たせるように、グリューネは目を絞りながら盤面へと目を向ける。
確かに今回はサイグローグとノルンの反則寸前の策略に落ちてしまったが“そういう奴等なのだ”と分かってしまえばやりようもある。
こんな卑劣な相手に屈し、敗北を認めるなどあってはならない。矢でも鉄砲でも光跡翼でも、全て叩き斬ってしまえばよいのだ。

『随分と勝利に拘っているようですが……“何故、そこまで拘るのですか?”』
「え……?」
『何のために勝とうとするのですか?』
(私は、勝って……何を……?)

突如放たれたその問いに、グリューネは思わず口を噤んだ。
何故自分がこうも苛立っているのか、そして“勝ってどうしたいのか”を、上手く言葉に出来なかった。

『どうやら……貴女は一度、己の貌を見たほうがよいのでしょう……』
そういって、ノルンは杖を振り空間の中に光の渦を作り出す。
「……次は、一体何を……!!」
『貴女は今、とても酷い顔をしています。人も、神も……自分の姿を自分の眼で見ることはできない……
 グリューネ。貴女は知るべきです。貴方が何を許せないのか……貴方が何をしたいのか……』
光の奔流が、やがてひとつの形を作る。それは家具ほどの大きさを持った鏡だった。

『これは「うつらないかがみ」。虚像でも、実像でもない……真実を映し出す魔法の鏡です……サイグローグ』
「……まあ、いいでしょう……手を借りてしまいましたからね……次はお任せしますよ」
「クッ……また新手ですか? 誰が来ようと関係ありません……! 来なさい!!」

グリューネがキッと眼力を集めて鏡へと向く。だが、鏡はグリューネに背を向けたままカタカタと何かをしながら独り言を呟いている。

『追伸。何か、変なタンスがしつこくてさぁー。うぇ〜〜〜ん。泣きたいよ〜〜〜―――――――ほい、送信っと』
そういうと、鏡の影から鳥型のホログラムがふよふよと虚空へ飛び立ち、何処かへと消えてしまう。
『うわぁっちゃあ!? あぁ〜〜〜またいつもの癖で“弟君”って書いちゃったよ……怒るだろうな〜〜』
鏡は後ろを向きながらぶるぶると左右に身体を揺らしながら飛んでいった鳥を惜しむように見ていた。
能天気そうな声は何処までも清々しく場違いで、それが何よりも空恐ろしい。
『ま、いっかー……って、あれ? うわわ、もしかしてカーテン上がっちゃってる!? 出番!?』

自分の在る状況に漸く気付いた鏡が彼らの盤へと向かい合う。
それは真実だけを映す鏡。虚飾無く、容赦なく正解に辿り着く天才装置。

『えー、コホン。ほいほ〜〜〜〜い! 魔法の鏡だよ〜〜〜〜〜ん!!』

衒いなく笑い抜く鏡の向こうで、きっとグリューネは吃驚仰天な貌をしていたろう。
307名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/19(日) 22:33:19.59 ID:qQuqN+GJ0
投下終了です。次話は今週中に投下の予定です。
308名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/19(日) 22:45:08.87 ID:LKEifc8s0
投下乙!
後何回俺は腹筋をガードブレイクされればいいんだ……
309名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/20(月) 22:35:23.63 ID:H4ZEkIr0O
投下乙!
うーんタイムパラドックス…
310名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/21(火) 02:19:24.36 ID:qgNGM557O
なりダン1知ってる奴は数々のオマージュにニヨニヨ出来るなw
311名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/22(水) 21:07:48.25 ID:FfLfb0L/0
投下します。
312End of the Game −禽獣層・鏡の中の自由な真実− 1:2011/06/22(水) 21:08:42.40 ID:FfLfb0L/0
雨が降っていた。
押さえきれない悲しみを表すように、苛烈に。
けれど雨は重たい水滴で身体を濡らすだけで、更に気持ちを募らせ鈍らせる。
決して、その穢れを洗い流すような真似はしてくれない。

逃げる背中に追い打ちをかけるように雨は降っていた。
惨めな自分を責める雨は、細かく細かく、目を凝らさねばよく見えないほどの量だった。
当然、洞窟に雨が降る訳が無い。白妙に目が眩むほどの、攻撃術の雨だった。
雨垂れにしては大きすぎる炎の滴、霧雨にしては白く輝きすぎている光の粒。
過剰纖滅の雨は、防がれることなく、少年と抱えられた少女の死体を掠める。
決して自然の音ではない、けたたましい半鐘<サイレン>の音。時折、無数の視覚センサーが赤い光を覗かせる。
雨は優しくなどなかった。
雨は、侵入者を排除するためのプログラム――望むならば、大量の同胞を殺された憎しみに過ぎなかった。
先程まではいくら束になって数で襲おうとも雑魚でしかなかったが、今は違う。
戦意を喪失した、逃走しか能のない奴に躊躇する理由はない。高らかにサイレンを鳴らし、天上万歳、天上王万歳と人を殺す機械は行進するのみ。
幼い怪物の泣声が雨音に混じる。雲霞む軍列の中に、不規則な重量感ある足音が響く。
それだけで、彼の剣は怯懦に震えた。その両腕は、か細い亡骸を包むことしかできなかった。
雨は外側より鳴りて、彼の身を紅く濡らす。死ねと、死ぬべきだと。
雨は内側より鳴いて、彼の心を黒く塗らす。どうして、どうして生きているのと。
強い雨足で降り注ぐ音の中で、少年の弾むような息はかき消されてしまって聞こえてこない。凍えた吐息も、白くは色つかない。
ただ重さに平伏し、ただ跪いて息絶えろと、雨は背中を追い立てる。

やがて背を押していた雨は、向かい風が吹き、身体の表側を傷付けていく。
顔を上げると、天上の機械モンスターが大群割拠として、波のように広がっていた。
ひとりに向けるには幾ら何でも多すぎる量だ。絶望以上のものを与えようとしているのか。
前から後ろから、過去から未来から耳から頭から半鐘の音が交差する。
重なり合い、追随し、ぐわんぐわんと響き渡る不協和音は、もはやどこから聞こえるのかも分からない。
ただ、あの日の憎悪と悲痛が蘇るようで。脇に抱える少女の体は、半分なのにいやに重くて。
ああ、煩い。黙れ。何も聞こえないくらいに煩すぎる。
何も聞こえない無音に終ぞ耐えかね、少年は大口を開けて向かい風に牙を剥いた。
耳の周りを飛ぶ蠅を払う様に、握った時の剣を振るう。白い雨の中に、黒に近い暗すぎる蒼が光を放つ。
彼の感情を物語るかのように、蒼い光は音速を越えて忌まわしき鐘の音を呑み込んでいった。
切り裂かれた雨を、彼――クレス=アルベインは駆け抜ける。更に彼の身体が傷付かれようとも。


313End of the Game −禽獣層・鏡の中の自由な真実− 2:2011/06/22(水) 21:09:27.64 ID:FfLfb0L/0
◇◆◇


あの鏡は何だ。
いきなりどこからか声が聞こえたかと思えば、作り物の短い足が生えた鏡が遠くから迂回しながら走ってきた。
盤のそばまで来たかと思えばピョンと跳ねて立ち止まる。登場にしてもダイナミック過ぎないだろうか?
対岸の椅子に腰掛ける女神が唖然とする。
それを差し置き、鏡はまるで胸を張っているかのように身体を仰け反らせて女神の方を見る。
一体なにをそんなに誇らしげにする必要があるのか。だが、誇らしげになる理由も分かる。
鏡には女神の表情が映っていた。状況に追いつけてないのがありありと分かる、何とも間抜け面だった。
対面する道化師サイグローグはこれは愉快と、ほの暗い笑い声を上げ、目を細めて微笑を被る。

『どったの? お腹冷えたとか〜?』
いきなり現れたかと思えば、いきなり言葉で責めてきた。
なんと無礼にも程がある鏡だろうか。結果として反発心が表に出る。
女神が握り拳を作り上げ、卓上へ向かってどしんと拳を叩きつける。柔和な顔つきに似つかわしくないほど、表面を歪めさせていた。
そんな怒気など通じない、いや、そもそも怒りを向けられていることさえ理解せず、鏡は人懐こそうにグリューネをマジマジと見つめる。
その瞳に、一瞬でも醜く浮かび上がった感情を見逃すことはしない。また愚かしい表情が銀盤の上に映る。
「何の趣向ですか」
「さあ……私は何も……聞くのであれば、あちらの精霊にお聞き下さいませ……ほう、次は綺羅星ですか……私も勉強しなければ……」
眼を鏡から背けるように道化に問うが、サイグローグは女神の詰問もするりと抜けてわざとらしく書物を読んでいた。
ひょいと手を捻らした途端、手の中には虫眼鏡が現れる。
仮面越しに虫眼鏡を使って、老人のように書物の文字を見ている。読んではいない。あくまで、見ているだけだ。
何も言わない女神に、サイグローグは手の虫眼鏡をぐうっと相手の方へと伸ばす。届いてさえいれば押しつけてしまうほどに。
「グリューネ様……まぁた顔が歪んでおりますよ……」
にたにたと笑うサイグローグに、女神グリューネは苦虫を噛み潰したような顔をした。
当然だろう。虫眼鏡越しに見れば顔が歪んで見えて当たり前だ。
しかし、グリューネの方から虫眼鏡を覗いてもサイグローグの瞳は見通せない。
仮面の奥に隠れた目はどこを見ているのか、見当すらつかない。見当も付けたくなかった。
これ以上、いたちごっこをしていても仕方がない。グリューネは顎を持ち上げ、道化師の後方で空に漂う精霊を見つめた。
鷲のように大きな翼と、翡翠を思わせる緑色の長髪。
髪を留める、花のつぼみと枝葉を模した簪の飾りが女性らしさを更に引き立てていた。何よりも、彼女が大樹に纏わる者であることの証左になる。
本来ならば、敵対すべき存在ではない筈なのだが――目尻を引き絞り、大樹の守護者を見据えた。
「ノルン、この鏡は一体?」
『先ほど述べた通りですよ……あの時の紡ぎ手ともあろう者が、とても酷い顔をしていたものですから。
 一度ご覧になった方が良いのではないかと思い、こうして呼んだのです。日曜大工程度の拵えとはいえ、使う分には役に立ちますから』
ノルンの答えに、随分と楽しそうな家具がいたものですね、とグリューネは呆れがちに息をついた。
当の鏡はというと皮肉が通じないのか、頭(と思しき鏡の上部)に手を当てながら盤面の裏側をマジマジと見つめている。
『ふんふん、凄っご。こーなってるのか〜〜……ってあれれ? いつのまにか置いてけぼりでお話〜? こら〜無視するな〜!』
と思えば急に諸手を上げ、地団太を踏んでぷんすかと怒り出すものだから、こっちの方が愉快なのではないかと思ってしまう。
「顔なら見ました。私としたことが、随分と取り乱してしまったようですね。少しはポーカーフェイスというものも学ばないといけませんね」
目を閉じ、テーブルの上で手を重ねるグリューネ。鏡の方へは、もう見向きもしなかった。
もう用済みだから引っ込みなさいと言わんばかりの態度に、鏡は怒ったままだ。
そうだ、そのまま無視してしまえばいい。このようなもの、道化師と審判者の単なる幻惑、戯れだ。

『――――1つだけ、忠告をしましょう』
314End of the Game −禽獣層・鏡の中の自由な真実− 3:2011/06/22(水) 21:10:09.00 ID:FfLfb0L/0
耳の鼓膜が、後ろ側から撫でられた。もちろん直接ではない。静かな女性の声音が冷水のように浴びせられる。
良く言えば冷静で客観的な、悪く言えば冷徹で感情の乏しい声に、ぶるりと身体が震えた。
『ポーカーフェイスは“表面だけを隠すもの”です。確かに心の内を悟られぬようにするのは、有効かもしれません……ですが』
いつの間にか、前方にいた筈のノルンがグリューネの後ろへと立っていた。
振り返って確かめるまでもない。否、振り返ることができないのだ。
いつの間にか目前のテーブルと盤は消え、代わりに先程の鏡が立っていたのである。
そして、鏡に映る自分の顔が、
『それは、悟られるだけの心の内を自分が知る時のみ。真実を知らなければ、嘘はつけません。
 真実のみを純粋に求めるこの鏡の前には、真の無い偽りなど無意味―――――さあ、見えるでしょう?
 貴方の心がざわつき、荒れているのが。そう、嵐の日の時化のように』
平静をまるで隠さず、ひどく怒り狂ったものだった。
あまりに自分とは似ても似つかぬ姿に、とても目を逸らすことなどできなかったのだ。
「一体、何を。こんなもの、ただの“まやかし”でしょう」
『まやかしかどうかは、鏡に問えば分かること……鏡よ、この場で一番醜いのは誰ですか?』
『えっとねー、グリューネって人が現在世界ナンバーワンだってさ』
痛烈な皮肉に、ぎこちない笑みを浮かべるグリューネとは反対に、魔法の鏡は楽しげにくるりと一回転してみせた。
回転したところで鏡の向こうにいる自分の表情は変わらない。
「サイグローグを差し置いて私が? 冗談も大概に……」
『まちがーいごーざいませ〜ん。嘘だと思うなら何か聞いてみてよ、質問してくれれば何でも答えてあげるよ〜!』
「〜〜〜ッ! 何も問うことなどありません。すぐに去りなさい!」
勢いよく手を払うも、魔法の鏡は天を仰いで考え込むような素振りを見せる。
何て空気が読めない鏡だ。ここは場の空気を汲むところだろう。
空気を読まなければ、まるで、見てはいけないものを。
『あり、つまんないな〜。じゃ、ちょ〜っと意向を変えて、あたしが質問しちゃおーかな!』
――敢えて。
この鏡は、敢えて空気を読んでいない。珍妙な行動に出るかと思えば、裏側ではかなりの頭脳を働かせている。それすらも自然体というのか。
先程の白銀の騎士のように、サイグローグやノルンの仲間なのか、それとも操られているのかも分からない。
だが、どちらにせよ。この鏡は、確かに女神を追い込むべく動いていた。女神がそれに気付いたときには手遅れだった。

『さっきから酷い酷いってむくれてるけどさ、何がどう酷いのさ?』

先ほどまでと変わらない音調、しかし確かに真剣な声色で鏡は眼前の女神に問う。
『死んじゃった人がいきなり生き返ったこと? 確かに普通は生き返らないよねー。
 けど、バトルロワイアルが始まった時だって、死んじゃった人は生き返ってたんだしさ〜。
 別におかしくないんじゃないかな? 悲しいことだけど、あの子だって死んでた筈だよね』
グリューネは下唇を噛んで溢れ出しそうな言葉を堪えた。
確かに、この遊戯の駒は、元いた世界では既に死んでいる筈の者が大量にいる。
かつて時空剣士と刃を交えた魔王も、人を唆して愉しむ蛇も、実験の果てに壊れてしまった狂人も。
王に弄ばれていた幼き客員剣士でさえ、命は零れ落ちてしまっていた筈だ。
何より王は、勝ち抜いた者への褒美として“死者蘇生”ということも吹き込んでいた。
嘘だと考える者もいた。だが、初めから死んだ者が生き返っているのだから、王は死者蘇生が可能だという点も否定できない。
「ですが、これだけ大掛かりな現象を犯したのです! 王とて、何度も蘇生が出来る訳がありません!!」
『出来ないなんて、誰が言ったの? 【蘇生の為に用いられる術】は使えないよ? 制限されてるからねぇ。
 でもさー、制限する側の王様が出来ることは、そんなに不思議? ねえ?』
「そ、それは……!」
315End of the Game −禽獣層・鏡の中の自由な真実− 4:2011/06/22(水) 21:10:42.38 ID:FfLfb0L/0
最初の一回だけしか出来ないだろう。出来るのであればマーダーを蘇生させているだろう。何度も繰り返した考察だ。
だが出来ないとは、しないとは明示されていない。穴熊に籠った王様のことなど、誰も知らないのだ。確証のない推理など、妄想にも劣る。
正体不明のヴェールに隠れた王様を否定することはできない。それは、例え1パーセントであろうと肯定も在り得るということなのだ。
『あ〜っ! それとも、さっき戦ってた剣士くんとあの子が知り合いなのに、戦い合ってたのがダメ?
 そうだよねー。知り合いとなんて戦いたくないもんね〜。あたしもまた教官とかと戦うことになったらイヤだな〜』
うんうんと頷く鏡に、グリューネの表情が一瞬和らぐ。
たった少しの呼吸の間は、か細い希望は、後に訪れる絶望のためにのみ存在する。
『けど、それはグリューネやあたしの都合だよ。
 もしかしたら、ピピピ〜って操られてたのかもしれないよ。お薬とか、魔法とかね。
 もしかしたら、誰かを人質に取られてたのかもしれないよ。大切な人の為なら、仕方ないよ。
 もしかしたら、混乱して相手が誰かも分かってなかったのかもしれないよ。暗いしね。
 もしかしたら、本当に殺そうとしていたのかもしれないよ。優勝して叶えたい願いがあったかも。
 整合する可能性は幾らでもあるよ。なのにさ〜“ただ知り合いをぶつけた”ってだけで酷いって言うのは、ちょ〜っとイジワルじゃないかなぁ』
悪意も諧謔も無く、純粋に不思議そうに自分を見つめる魔法の鏡に、グリューネは漸くその本質を理解し始めた。
この鏡は論理に真実を求めている。感情面で同調することはあれど、理に沿っていなければ女神に味方することなどないのだ。
サイグローグよりも、ノルンよりも、むしろその在り方はベルセリオスのそれに近い。
グリューネの白磁のような顔に、さっと赤味が差す。決して照れや恥といった類の感情ではない。
膝の上で丸められた手が、僅かに震えていた。
「この状況が認められないことを、ただの意地悪だと言うのですか?」
『ほら、あたし、一応研究者だからさ。目の前の現象をただ納得できないからって否定されたら、堪ったものじゃないよ〜
 100回同じ実験をして99回同じ結果が出て1回だけ違う結果が出てさ、その1回をただの偶然とか間違いだって切り捨ててたら実験にならないよ』
がたん、と椅子が倒れる。
「それとこれは話が違います! 王が蘇生できたとして、戦わせることが出来たとして、何故、あの少女である必要があったのです!」
勢いよく立ち上がったグリューネは、もはや目の前の鏡像と同じ表情をしていた。
暢気にふらふらと揺れる鏡に、できることなら椅子を投げ付け割ってしまいたい。
止めていたのは椅子を放り投げるはしたなさとまだ少し残る理性、そして白銀の騎士の末路だった。
『事実は事実。こういうことを出来るかもしれない王様のお城で、こういうことが起きた。それだけだよ』
またしても自信たっぷりに胸を張る魔法の鏡に、苛立ちしか覚えられない。
理不尽に対して湧いて出る不快感は本物だ。だが、理不尽が論理によって主張され、道理となる以上、反論することはできない。
『魔法の鏡、マフラーが曲がってますよ』
『あ、ゴメンゴメンお姉さ……よっととい。それじゃ、いきますか〜〜〜?』
鏡がもぞもぞと動き、表面がぼこぼこと波打っている。
……そもそも。今まで疑問にも思わなかったが、あの鏡、自分のことを研究者だと言っていなかったか?
ただの鏡が手もないのに、一体どうやって何を研究するというのか。そして鏡の内側から聞こえる、不自然な衣ずれの音。
――あの鏡、ただの着ぐるみか!
ならば怒り狂った表情も、単なる作りものに過ぎないということではないか。所詮は幻だ。
『って、ほらほら! よそ見していいの? もうかなりピンチだよ?』
今気付いたと叫ぶ鏡の声につられて盤を見て、グリューネはようやく平静を取り戻した。
気付けば、目の前にいた鏡は消え去り、テーブルと盤が戻っている。
だが、事態は少しだけ動いていた。対面している道化師が、剣士の周りへと無数の駒を“詰め終えていた”。
ピンナップマグを読みながら、サイグローグは足で駒を動かしていたのだ。
「……しまった……!」
身体を前のめりにさせ、グリューネは厳しい目で詰問する。
しかし後方に大樹の精霊を侍らせる道化師は、足の指を開閉しながらいつものように卑しく嗤うだけだ。

「隙だらけでございますよ、グリュゥネさまぁ?」

316End of the Game −禽獣層・鏡の中の自由な真実− 5:2011/06/22(水) 21:11:21.26 ID:FfLfb0L/0
◇◆◇

気づけば、少し広々とした空洞へと出ていたらしい。おかげで、敵の総量がおぼろげに把握できる。
「虚空蒼破斬」を放った後でも、まだ機械兵士は残っていた。
流石に、蒼破斬の衝撃波に合わせて駆け抜けても、一発だけでは完全に喰らい切れなかったらしい。
いや、喰い尽くすことができなかった。あの機械の中に埋もれた少女の残骸までも喰うことを躊躇った。
前方を蹴散らすことはできたが、生き延びた兵士たちが後続する。
片やエネルギー量はあろうとも疲れを知らない機械、片や少女の亡骸を抱えた手負いの魔王。
物量で考えても、やがて体力を切らして追いつかれ、無慈悲に命を奪われる羽目になるだろう。死に様はあえて想像しないことにする。
遠くからのデルタレイやバーンストライクといった術が、じわじわと血を奪っていく。
動揺が心を支配し、息に混じり嗚咽にも似た声が漏れるが、少女だけは落とすまいと必死に抱えていた。
むしろ落ち着きのない心理が、手に込める力を強めていたとも言えなくもない。
だが冷静さの欠如が仇となったか。それとも前へ逃げていれば何とかなると思ったのか。
“完全に逃れ切るには、時間が必要”なのだ。
逃げるための時間が足りない内は、敵の攻撃を受けることも厭わない。
逃走には相応の覚悟が必要なのだ。時間を止めている訳でもあるまいし。
終わりなき道に、クレスの体力は刻一刻と削られていく。
そして――誰が一体想像するだろうか。
何と情けない。数多の命を屠ってきた魔王は、あろうことか、石に躓いたのだ。
そして、その拍子に一番手放してはならない欠けた躯を手離してしまう。

<あっちゃー。勝負の邪魔をする気はなかったんだよ、ごめんね〜。でもコレ私のせいだよね。う〜ん、責任感じちゃうな〜〜〜>

すぐさま拾いに立ち上がろうとするが、穿たれる雨がそれを阻む。
前方へ突き動かす力は消え、倒れ伏せたまま、その場に留まる。
顔のない機械兵士たちがニタァと笑ったように見えた。獲物を仕留め、我らが勝利する時を今か今かと待ち望んで楽しんで笑っている。
あるモノは手のサーベルを振りあげ、あるモノは一斉に晶術を唱え始める。

<よっし、じゃあ“ここは私が助けてあげるよ”! カチャカチャ〜〜ポンっと!!>

不味い、躯を失ったその手で剣を握り直したとき。
そのときには、既に遅かった。


【我が友が吹かせるは祝福<zelhes>の風、夜天の再会を祝して力を貸して<リィンフォース>!!】

“機械兵士”には、遅かった。
――振り上げたサーベルを落とす前に、本体であろう鎧の胴を矢が貫いたのだ。

クレスがはっと顔を上げようとすると、すぐ横を目にも止まらぬ速さで矢が飛び進んでいった。
頬を掠める炎は目が眩むほどに熱い。だが、その後に感じるのは背筋を凍て付かせるほどの憎悪だ。
我を無くしたかのような乱れ撃ちは、決して出鱈目に放たれているのではない。どれもが機械兵士たちの身体の要所を狙っているのである。
矢羽の一部を毟りて曲射。親指を除く四指の関節に矢を挟みて三射。射法八節全てを無視して狙われるは太股、手首、目、首、心臓、眉間。
弄んだり、確実に殺しにかかり。じわりじわりと、確実に。残される傷にはは憎しみしか残らない。
クレスが今見た、そして“かつて見た”その光景は―――――正しく、狩りとしか言いようがなかった。

連続で矢を放ち、時には同時に矢をつがえ、気付けば機械兵士も化物もみな沈黙していた。
クレスは矢の主の方へと振り返る。疲れ切った顔には、それを忘れさせるほどの笑顔さえ浮かんでいた。
数々の技、矢を放出するリズム、どことなく感じる“匂い”。
それらは、決して悪い結果をもたらさないと予感させるものがあった。
見覚えのある、ひとつに束ねられた銀髪。切れ長の瞳。油断のない、正に獲物を狙う豹のような佇まい。
よく彼が戦場で用いていた弓も一緒だ。矢がつがえられ、引き絞られようとしている。
クレスの笑みが凍りつく。
鳴弦の音がいやに大きく聞こえた。

「……チェスター」
317End of the Game −禽獣層・鏡の中の自由な真実− 6:2011/06/22(水) 21:12:31.77 ID:FfLfb0L/0
親友は黙ったままクレスを通り過ぎて死んでしまった少女の亡骸へと近付き……座り込んだまま、妹を抱え上げる。
下半身を失った躯を深く、深く抱きしめるその背中から迸る感情が、まるでそれ自体が矢のようにクレスに突き刺さる。
そして感情はすぐさま鉄へと変性し、親友――――チェスター=バークライトの鋭鏃がクレスへと向けられていた。
なぜ。それを問う前に、冷たく矢は放たれた。
無意識に避けようとした本能と乱れた理性がせめぎ合うが、鏃に微かに輝く無色の液体を見た瞬間大きく矢を避ける。

噛み締められた唇は強さのあまり血の気が引き、今にも血がぷつりと現れそうだ。
既に息絶えた妹の死に顔を見つめる相貌には、音さえ聞こえてきそうなほど眉間が寄っている。
瞳孔が開いている。青みがかった眼の黒目から、どす黒い憎しみに満ちた冷気が溢れる。
思わず後ずさりし、刺々しい気を放つ親友から遠ざかった。気付かずに湿った洞窟の壁へと肩が触れる。
壁の低熱でさえ、今ここに立っている目の前の彼が作ったのではないかと錯覚してしまう。
こんな姿見たこともない、と言うつもりはない。
クレスには、この表情にどことなく見覚えがあった。全てが終わって始まったあの日も、こんな顔をしていた。
だが何よりも違うのは、身が凍えてしまいそうな視線――――殺意が、明らかに自分へ向けられていることだ。
「何の冗談だよ、チェスター」
張り付けられたような笑みで顔面を固めさせたまま、クレスはうわ言のように呟く。
もしかしたら、殺しという名の薬でキメてしまったせいで幻覚でも見ているのではないか、とさえクレスは思った。
しかし、この予想でさえ理性的な判断の下に弾き出したものである以上、嘘に違いなかった。

<ピンチに駆けつける親友! ロマンだねえ、お約束だねえ。絶望にはそれに見合った希望を――――物語はこうでなくっちゃねえ>

むしろ幻ならどんなに良いだろうか。
チェスターはクレスの言葉に耳を傾けることなく、手で血に固まった妹の髪を解いた。
「こんなにめちゃくちゃに、酷い有様にされて……可哀想に……」
少女の手足は原型を留めていないほどグチャグチャにされており、指も掌も足の甲も記憶の中にある姿を思い出せない。
言ってしまえば少女の体は飾りのついた一本の棒にしか過ぎず、まるで子どもの乱暴で綿を千切り取られた人形のようだった。
そこには人間の尊厳はなく、正に単なる“遊び相手”の姿だ。

<でも“ここは違うよ”。さーって、借金もチャラリらったことだし、あたしに出来ることをやろっかな〜!!>

「許さねえ……絶対に……」
チェスターは妹を地面に横たわらせ、幽遠として立ち上がる。
ゆっくりと持ち上げられた腕は、矢を番え、弓を構えて弦を絞る。
身体から指先へ、そして弓へと伝播した憎悪は、鳴弦を首を絞めるかのような音に変化させる。
三日月型にしなった弓の体は美しく、ゆえに冷たくて孤独だ。決して届くことのない、遠い存在。
「俺は絶対……テメェを殺す……!!」


【ほいさ、流れて転ベ紅蓮の螺旋<ファーストアタック>!!】

チェスターの双眸がクレスを捉える。既にクレスは矢で括り付けられたかのように、身動きを取ることができなかった。
暗闇の中に浮かぶふたつの眼は、相手に狙いを研ぎ澄ましているようで、まるで何も見ていないようだったからだ。
空虚に満ちる殺意だけが、今の彼を動かしている。
“殺したい人間”という存在が、的を射止めるためだけに、矢の精度を確かなものとさせる。
放たれた弓は避けてさえいなければ、確実にクレスの心臓を抉り一瞬で命を終わらせていた。
だが、さっきの機械兵士たちのときのように、矢は一本で終わらず霰として降り注ぐ。
太股、手首、目、首、心臓、眉間。チェスターにとって、目の前の殺人鬼は狩りの対象でしかないのである。
「止めろ! 止めてくれ、チェスター!」
抵抗することなく、回避と戦斧による防御を繰り返してクレスは呼びかける。
しかしチェスターが手を緩めることはない。
318End of the Game −禽獣層・鏡の中の自由な真実− 7:2011/06/22(水) 21:13:13.33 ID:FfLfb0L/0
「テメェがアミィを殺したんだろう! なんだよ、あの傷。逃げるあいつを、甚振るように、楽しそうに!!」
ざわり、と背筋に悪寒が走る。
殺した。確かに――殺したのは僕だ。剣を突き立てたのは僕だ。反論のしようのない事実に喉の奥が渇く。
けれども、甚振ったのは僕じゃない。僕の姿をした、僕じゃない別人だ。
それともあれも僕なのか? 目を逸らしてはいけない、もうひとりの僕なのか?
確かに、あれも僕だ。全力で反吐を吐きたいくらいに僕だ。けど、だけど。
自分と、自分じゃない自分、けれども自分自身。どちらも違く、どちらも正しい。
何を肯定していいのかも分からない感覚に、クレスの頭は混迷し、いっそのこと煩わしい全てを斬り捨てろと心が囁く。
「……違う! あれは、僕じゃない!!」
「そんな物騒な得物を振り回しておきながらよく言うぜ! 全く、大した快楽殺人者だな?」
必死に内側の疼きと、それが齎しただろう惨事を否定するも、チェスターには届かない。
ただ目前の殺人鬼を殺すために指先が弾かれる。せめて荘厳に逝けと音色を奏でるかのように。
「あんな無残な姿になるまで痛めつけるなんて、テメェは人間か?」
「違うんだ! あれは」
キッとチェスターの目付きが鋭くなると、矢に赤い光が集う。
「黙れよ、この気狂い!!」
クレスの身体が跳ね、動きを止める。
矢が首元を掠めていったが、気にする余裕など奪い取られていた。

――――気狂い、だって。僕はもう狂人でしかないのか、チェスター。

血のように赤い光を帯びた矢は……否、矢の形をした光は、幾重にも分岐し無数の矢を形成する。
洞穴を照らす冴えた光は、憎悪に満ちたチェスターの表情と、今にも張り裂けそうなクレスの心を曝け出させる。


【夜鷹の爪跡、円環を描き龍を屠る<ホークネイル>!!】

「殺す……絶対ェ殺してやるっ!! 地獄の果てまで、どこまでだろうと、追いかけてやるッ!!」
背中から数本の矢を掴んで、チェスターは懐の瓶へとその鏃を浸す。
その様からクレスは容易に確信した。先ほどの矢の輝きは、やはり毒か。
だが、クレスの気づきなど知ったことかとチェスターは毒矢を掴んで射撃を放つ。
チェスターの最終弓技・屠龍が、それぞれが歪な曲線を描いてクレスの下へと収束する。
親友の弓の腕は誰よりも知っている。紙一重ならともかく、毒を食らわぬよう完全回避するのがどれほど困難なのかも。
クレスは襲い来る毒爪を防ぐことなく――「不味い」と警鐘を鳴らした無意識が、ひとりでに身体を動かし、前へ進みながら矢を避けさせた。
情けない面貌のまま、無駄のない身のこなしで回避する姿は奇妙にすら見える。
そして意識の制御を離れた肉体は、剣を携え、笑い、何気なく親友の肉を抉ろうと
(だめだ)
剣を握る左手の首を右手で押さえ込む。笑いかけた口の端を必死に歯で食い縛る。
無意識は、もうひとりの僕だ。
理性で御し、意識で抑えなければ、浅ましく血を啜ろうとする欲望が露わになる。
たとえ既知の人間であろうと、幼い頃から一緒だった幼なじみであろうとも。
だが、攻撃を止めて敵に接近するなど痴愚の極みでしかしかない。絶好にして絶体絶命の隙が生じていた。

319End of the Game −禽獣層・鏡の中の自由な真実− 8:2011/06/22(水) 21:13:46.63 ID:FfLfb0L/0
【前触れの無い悲劇、それは突然の衝撃<サドンインパクト>!!】

そしてこの少女が、阿呆な隙を狙わない理由がない。

「隙だらけです……五月雨ッ!」
クレスは、平静な声が聞こえてやっと後ろに誰かがいることを知った。
ぎりぎりのところまで気配に気づかなかったのは当然である。クレスの背後に立つ少女は忍者だからだ。
悟ったときには、既にクレスの首筋には赤黒く変色した血のような色の刃が添えられ、静かに、
「――――ッ!!」
刃は空を咲いた。
空間翔転移でとっさに移動したクレスは、逆に少女の後ろを取る。
まだ背が低く幼い体躯でも、纏った経験と冷酷さは隠し切れない。大きく束ねられた栗色の髪が目に留まる。
少女は静かに振り返る。横顔が髪の奥から覗く。あどけない面差しに、色のない眼光が宿る。
「すず、ちゃん……どう、して……!」
親友と同じく、ここにはいない筈の少女の姿に、クレスはおののく。
幼き頭領、藤林すずもまた死んだ筈なのだ。そう放送で言っていたではないか。
死者とは思えぬ大きく円らな瞳は悲しみに満たされ、クレスの顔を映していた。
だが、きゅうと半秒目を瞑り、再び開かれた“まなこ”には静湖の如き静謐な覚悟―――忍びの境地が映る。
「その振る舞い……ダオスに洗脳された方とお見受けしますが、私の使命は道半ばで潰える訳にはいかない……御覚悟を!」
立ちはだかる者の命を奪おうと、すずは忍刀を構え、空いた手で複数の苦無を備える。
有り得ない光景に、クレスは胃のむかつきさえ覚えた。
状況はワン・オン・ツー。こちらは剣を振るうことを躊躇し、相手方は仲間と同じ姿のくせに殺る気満々だ。
戦わなければならないのか。仲間を殺さねばならないのか。
悲しみは雨のように降り注ぐ。


【終焉の宣告にはまだ早いよ〜〜! グルーヴィな音階で運命を導け<フラックスフォーム>!!】

雨を、クレスは剣を翳して除けた。
逆さに突き立てた剣から、方陣が天に刻まれ、青い守護の傘を作り出す。
全ての機械兵士が矢に貫かれたはずが、術の雨は未だ止んではいなかった。
否―――クレスだけを狙って降り注ぐこれは“魔術の雨”だ。
傘越しにクレスが見上げれば、上空では箒に跨った魔女が飛んでいる。
指先にマナを集中させ、銃弾を放つような気軽さで低コストの魔術を連発する。
ファイアボール、アイスニードル、ストーンブラスト、ウィンドカッター。根幹たる四元精霊の基本術を、それこそ雨粒のように降らせている。
「アーチェ……!?」
「チェスター! あたし、チェスターと一緒だよ! 一緒にいるよ! チェスター!!」
桃色の魔女アーチェ・クラインは楽しそうに笑い声を上げながら、クレスを殺そうとしていた。
傘はやがて雨粒の威力に耐え切れず霧散し、やむを得ず虚空蒼破斬の闘気の網で無理矢理にでも術を掻き消す。
それでもなお詠唱を紡ぎ、クレスを誅殺せんと、さながら戦闘機械のように魔術を繰り出していく。
その箒の先につけられた神秘の紋章が、彼女の狂気に呼応するように詠唱を加速させる。
「うるせえぞアーチェ! 喋ってる暇があったらアミィを殺したあいつをそのまま貼り付けてろ!!」
「う〜〜〜〜でも、いいよチェスター! それでアンタが喜んでくれるなら、私は誰だってブチのめしちゃえるんだから!!」
魔術と弓術による遠隔攻撃のタッグを、ひたすらクレスは往なしていく。
隙を突いて必殺を狙うすずの一撃を、かろうじて防いでいく。
息が絶え絶えに切れる。何故だ、とクレスは頭の中で何度も何度も問うた。

何故、こちらを攻撃してくる。何故、戦わねばならない。

320End of the Game −禽獣層・鏡の中の自由な真実− 9:2011/06/22(水) 21:15:13.28 ID:FfLfb0L/0
【……ホントにこれやっていいのかな〜〜〜? ま、いっか! 四連携完了・4倍速詠唱!!
 具現せよ新たなる原罪。その罪贖うは我が振う灰燼の剛腕<ドリームファンダム&フラドブランム>ッ!!】

決まっている――――――戦わなければならないからだ。お前が産み落とした罪を、購う為に。

「なっ……!!?」
突如、噎せ返るような熱波が洞窟内に巻き起こる。
肌を刺す熱が意識を一瞬でも空白にし、強烈な風が髪とマントを煽り立てる。
洞窟が強く赤く照らされた。光源は、洞窟の地面が融解したことによって現れた、活力に溢れたマグマだった。
クレスは絶句する。――どうして。どうして“貴方”がいるのか、と、呻きすらしなかった。
熱気に包まれ、人影はおぼろげにしか見えない。黒い影があるだけで、輪郭すらはっきりとしない。
本当に“貴方”がいるのか、一目見ただけでは分からなかった。
「援護、感謝します! このまま一気に押し切りましょう!!」
『試練でもなく、精霊王を敵に回すとはな……実に業腹であるが、この世界では主の契約に従うよりないか…!!』
だが、すずがイフリートの主と会話しているのを見ては、クレスにとってはそうとしか考えられなかった。
いきり立つマグマの中で聳えるは、火の精霊イフリート。召喚術を使え、そしてすずの仲間なのは、ただひとりだけ。
なぜここにいるのか、という問いさえ最早口に出来なかった。生と死をぐちゃぐちゃにされたこの地獄で、いるいないを問うことも徒労だ。
クレスの疑問に答えることなく、イフリートはゆっくりと炎で燃え盛る腕を掲げる。
「クラ―スさんも、敵だっていうのか……!!」
その光景にはやはり見覚えがあった。
世界の元素を司る高位存在、精霊。召喚術は彼ら彼女らと契約を結びて呼び出す。その威力は計り知れない。
クレスはもはや本能的に、召喚術を阻止しようと動いていた。
アミィのときは、狂気に身を任せずとも何とかすることはできた。
しかし、かつての仲間たちを複数同時に相手にするなど、今の“僕”にできるのだろうか?
否、“温過ぎる”。仲間だからといって剣を振るうこともできないなど、温過ぎる。ただの魔王には荷が重過ぎるのだ。
跳躍し、時空の剣に蒼い光を纏わせる。光は刀身の形を作り、本来の刃よりも数倍大きいものとなる。
時空剣技・次元斬が、精霊の腕から生まれる火球を切り裂かんと、

【すかさず回避! 我を守れ限りなく絶対たる騎士の円楯<アクセルモード・ラウンドシールド>ッ!!】

洞窟を駆け抜ける影が、跳躍し、剣を振り上げる。
クレスの目の前に現れた影もまた、同じように蒼い光を剣に纏わせていた。
長大した光の刃は、クレスの次元斬に酷似していた。ゆえに、それらが鍔迫り合いをすれば、打ち消し合うのも必然と言える。
蒼刃が消え、イフリートの赤光によって影が照らされる。姿が曝け出される。
時空剣技を真っ向から打ち破れるのは時空の剣しかない。
あの機械の群れに“自分”を混ぜてこなかったのはこのタイミングで隙を突くためかと、クレスは驚きを納得しようとした。
しかし、向かい合った自分の眼を見て、クレスはその気持ちを霧散させてしまう。そこにいたのは狂人ではなかった。
傷の付いた年季の入った鎧、赤いマント、赤いバンダナに……濁りのない、茶色の瞳。
クレスは思い出す。そうだ、チェスターが弓を射る隙を守ってきたのは、すずちゃんの忍術と共に前線を守ったのは、
アーチェの、そしてクラ―スさんの詠唱時間を作ってきたのは、いつだって君だった。
それはきっと、魔王が失ってしまった昔日の楯。誰かを失うことなく、その背中に守るべきものをもった青年。

(今更―――――俺に騎士の真似ごとなんて、見せるなよ!!)

剣の魔王は嗤った。自らの狂気に―――“嫉妬”に身を委ね、目の前の“光”を一瞬で惨殺した。

◇◆◇


グリューネは、指先で掴んでいた白い駒をそっと静かに置く。
表情は晴れやかなものではなく、口唇の先は僅かに震えてさえいた。
今は、やむを得ず魔王に敵の一駒を斬り伏せさせたが、本当ならば手を出したくはなかった。
「……こんなオカルト、あり得る訳が……」
【コドクナタタカイヲツヅケタダオスヘノ……】
『セメテモノタムケダ〜〜ってね。よくできてるでしょ? 名付けて「メカボ中年2号」!』
真正面を見据え、グリューネは鷹揚すら見せずに吐き捨てた。
対面に配置されたのは4つの黒駒。いずれも、明らかにこちらの駒に対応して選出されている。
いくら王の下へ行かせるのを阻むためとはいえ、死んでいった仲間たちと戦わせるなど、鬼畜人外の行いとしか思えない。
道化師の後ろに控えていたノルンは、背の翼でふわりと盤の上空へと浮遊する。
「どうやって作った? いや、それより、何故プレイヤーでもない貴女が指せる?」
『どうやってって言われてもな〜〜〜こう、ドデスカ〜コン!ってね!!
 それにこれくらい、このオジサンじゃなくたってルールさえ分かれば誰だってできるよ?』
「…………これも、王の権利行使ですか? ノルン」
『そうです。死者の存在も、異なる世界の人間の召喚も、王は初手にて行っている。全ては合法、故に真実として受理される』
「そうでございます……勿論、ジャッジ……いや、元ジャッジ(仮)である私の目から見ても……これは“通し”でございます……」
無言でグリューネは歯を噛み締めた。
こんなことがあってたまるか! そう叫びたくなったが、法の、ルールの下で成立している以上、何も返すことはできない。
どんなに理不尽で、許しがたくとも、現実として受け入れるしかない。
(ですが……ですが……死者をいくらでも蘇らせることができ、かつ幾らでも追加で駒を召喚でき、
 挙句理由も無く自分の思い通りに動かすことができるというのが絶望側の、王の権力だと云うのなら……それでは……)
『自分に勝ち目がないなんて“酷過ぎる”?』
それが鏡の言った言葉だったのか、自分の心から出た言葉なのか、グリューネは理解するのしばしの時を要した。
自分の顔はさっきの鏡に映ったような醜い顔をしているに違いなかった。思い出す度に戒めねばという気持ちに駆られる。
その鏡はというと、ついに正解を解き明かしたという陽気さで部屋の中でくるくると回って遊んでいた。
ノルンが目配せすると、魔法の鏡は数十秒考え込んだあと、どこかにある手をポンと打った。
「そっかそっか。やっぱりそう思ってたのかあ。なるほどねー。ほんじゃ“いきますか”〜〜〜?」
訳の分からないコンタクトに、グリューネは頭部に電流が走るのを感じた。
何か、何か――嫌な予感がする。
ノルンは手に持っていた杖を魔法の鏡の方へと放り投げる。そして、鏡はどこからか腕をにゅっと伸ばした。
全身が映るほどの鏡に、腕と足だけが付いた、なんて不格好な姿。だが、魔法の鏡はその怪しい外見とは真逆の、厳かな姿を見せる。
精神集中によって杖はくるくると自転する。
敵の連携は全て揃った。陣容が整った以上、向こうがやることは一つしかない。
間違いない。これは、詠唱だ。例えその文句が、どれだけふざけていようとも。
◇◆◇

びちゃり、と空から地面に死体が落ちた。
イフリートの振り落とした炎の腕が、灼熱の衝撃波を生み、死体は数秒で灰となった。
魔王クレスは転移によって後方へと陣取る。けれども、地面に着地した時には既に、次なる一手が訪れようとしていた。

【開け過去の扉。砕けたカケラ、一網打尽にみんな集まれ〜〜〜〜〜〜〜〜♪】

これまでの闇と打って変わって煌々と燃える地獄の底で、処刑人達が処刑道具を輝かせる。
弓は何本も矢を束ねて構えられている。
魔術は詠唱待機にされ、すぐにでも発動できる状態だ。
姿なき召喚術士は新たな術を紡がんとし、精霊と対話をしている。
そして、それらを庇うかのように、小さな忍者は忍刀を携え構えている。
誰もが、今ここで燃え尽きたクレスを見ていない。その眼は、殺すべき者だけを見据えている。
剣士というものは、例え複数が相手であろうと、攻撃の順序がそれぞれ違っていれば対処ができる。
だが一説によれば……3人同時に襲いかかった場合、世界で1番強い剣豪であろうと、命を散らしてしまうという。
これからクレスに襲いかかろうとするのは、正に“一斉砲火”だ。
仲間たちは、確実にクレスを殺そうとしているのだ。

<両者、布陣を確認……審議を開始します。グリューネ……願わくば、これが結審となることを祈ります>

弓の弦が鳴る。マナが爆発しようとしている。忍んで、静かに命を奪おうとしている。
決断せねばなるまい。ここで死ぬか、それとも――――

【そんじゃお待たせしました! 希望が勝って当たり前、絶望が負けて当り前。
 ―――――まだこれが“そんな物語”だと思ってるそこのカミサマに。アタシが勝利より重き敗北を具現するッ!!】

鏡の国に迷い込んだクレスに向けられるのは、自由な彼女が招きし時を越えた戦士達。
自由に楽しそうに、真実が物語を破壊する。

【いくぜみんな、レッツラゴー! 誰もが夢見た大進撃<ドリームストライカーズ>!! ぅいやっほ―――――いッ!】

悪夢が現へと突撃し、終焉の訪れを告げる銃杖の撃鉄が引かれた。




チェックメイト。



クレス=アルベインは、ここで死ぬ。
【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP10% TP50% 第四放送を聞いていない 疲労 眼前の状況に重度困惑
   狂気抜刀<【善意及び判断能力の喪失】【薬物中毒】【戦闘狂】【殺人狂】の4要素が限定的に発露しました>
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷多数 背中に複数穴
所持品:エターナルソードver.A,C,4354 ガイアグリーヴァ オーガアクス メンタルバングル
    サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@少し血に汚れている
基本行動方針:剣を振るい、全部を終わらせる
第一行動方針:君達も斬れと――――――?
第二行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:中央山岳地帯地下




【Chester Barklight? 存在確認】

状態:HP100% TP100% アミィを殺した者への深い憎悪 BOSS
所持品:クレインクィン@TOP(残り矢数:100%) 毒(液体) ???? アミィの上半身
基本行動方針:号令・お前に任せる発令中。キャラクター固有の思考にて行動します。
現在位置:中央山岳地帯地下


【Arche Klaine? 存在確認】

状態:HP100% TP100% チェスターへの狂おしいまでの愛情 BOSS
所持品:ミスティブルーム ミスティシンボル ????
基本行動方針:号令・お前に任せる発令中。キャラクター固有の思考にて行動します。
現在位置:中央山岳地帯地下


【Fujibayashi Suzu? 存在確認】

状態:HP100% TP100% 忍としての冷徹な覚悟 BOSS
所持品:忍刀・血桜 苦無(20/20本) ????
基本行動方針:号令・お前に任せる発令中。キャラクター固有の思考にて行動します。
現在位置:中央山岳地帯地下


【イフリート 存在確認】

状態:HP100% TP100% 召喚状態 BOSS
所持品:無し
基本行動方針:契約者の指示に従い、敵を焦滅する。
現在位置:中央山岳地帯地下


【Cless Alvein? 死亡確認】
*支給品(1〜3。一つは剣型の武器)が周囲に落ちています。
代理投下終了。
乙でした! 読んでくるので感想はまた後ほど。
325名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/22(水) 22:33:29.07 ID:mjTs0VGC0
前回の鏡の口ぶりからパスカルだとは思ってたが、今回は隠す素振りもなく全開だったなw
投下乙〜
スーパーファンタジア大戦勃発!
まだ出てきてないあの人達は出てくるのか!?
あとあちこちに散りばめられた小ネタに吹いた

……しかしほんと、パスカルの言い分じゃないけど
希望が勝って当たり前展開だと死者は主人公らの味方をするのがお約束なんだが、それを徹底的に反転させられてるなー
326名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/22(水) 22:46:28.83 ID:Vvq55Wfi0
投下乙!
アミィの次は仲間たちか……しかもまだあの人は出てきてない、と。
はたしてクレスにこのチェックメイトを回避する手立てはあるのやら。
327名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/23(木) 15:34:39.34 ID:2T+seu/10
投下乙。

能々考えてみれば、バトルロワイアルという主催完全支配下の領域である以上
どこまでも対主催側には無理ゲーが課せられるのは自然である訳で
サイグローグがやっているのは勝利条件を満たす為の定石でしかないという話。
完全に人の心情や道徳倫理を無視してるけど、向こうはバトルロワイアルを開催した絶望側だから
寧ろとことん蛇蝎魔蝎に徹する必要がある。代指しのサイグロとしては最低限負けないようにした上で
希望側を好き勝手蹂躙したいだけなんだろうけど「ルール上は」問題無い。
サイグロをぶっ飛ばしたけりゃ「ルールに則って」壺を調達して叩き付ける他無い。

あと何人か控えてそうだし、クレスが保つのか心配だなぁ。
328名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/24(金) 08:52:25.25 ID:ssU5EoeXO
不謹慎だが、めちゃテンション上がる回でした投下乙&執筆乙です!

魔王討伐メンバー怖すぎるぜ
329名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/30(木) 02:31:11.04 ID:ijoWx6hIO
保守
330名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/02(土) 02:38:54.13 ID:zJpws+5O0
かなり間が空いてしまいましたが、各話元ネタ解説風コメント 10話分です。
>>247さん、指摘ありがとうございます。今のところまとめに乗るほどのものでもないので、
お手数ですが各自脳内修正していただけたらと思います…面目ないです。

97:ふられストーカーマン
ロニの称号「ふられマン」。女性を口説けば百発零中でおなじみのロニだが、ストーカーとはどういうことか。
そりゃあ首輪探索機械を持って歩いているし、女性とあれば大体口説くが、ストーカーはないだろう。
ただ声を掛けただけじゃないか。それなのに獣のように取り乱して逃げるなんて。
まったく、大体ストーカーと言ったら俺達の中じゃジューダスのことj(フラグが立ちました

98:暗転入滅
暗転:舞台を暗くして場面を転換すること。入滅:煩悩、迷いから解放されること。
サムライスピリッツのボス・天草四郎時貞の必殺技「汝暗転入滅せよ」や、
るろうに剣心第208幕「暗転入滅」で単語を見たことがある人もいるかもしれない。
眼の前を暗幕で覆われ、光の見えぬ迷い道に入ったポプラおばさんはリオンの手で入滅する。
尚、仏教に於いて煩悩・迷いから完全に解放されるには肉体を棄てなければならない。

99:祈りがもたらすは
齎す(もたら―):1.持ってくる。2.(主に悪いものを)引き起こす。
名も知らない死者の読み上げに祈るヴェイグ。それはまだ彼の中に一抹の良心が残っていた証か。
齎されるのは幸運。この島で数少ない安息できる拠点に辿り着けたことか。
齎したのは不運。手を伸ばせばポプラおばさんを助けられたことを知ることができないことか。

100:それは儚い夢の始まり
儚い(はかな―):空しく消える様子、不確実で見込みが無い。人の夢と書いて儚いと言えば物悲しくなる人もいるだろう。
ジョニーと出会えたものの塔、そしてC3村に辿り着くまでに誰にも会えなかったファラの焦燥は募るばかり。(しかも、迂回した森にはリッド達がいた)
その間にも殺し合いは進み、それを何とかしたいともがくファラにとって村にあった拡声器は最高のアイデアに見えただろう。
しかしそれは『儚い』夢。無駄であり、取るに足りず、思慮分別の足りない、粗末な夢。人はそれをフラグという。

101:今するべきこと
to do。昨今の社会人はするべきことをリスト化したTODOリストを作ると良いらしい。
ジューダスのTODO:1・カイルや仲間達を探す、2・リオンのことをどうにかする、3・ミクトランを倒す
ロイドのTODO:1・飯を食う、2・ジューダスの嫌いな食べ物を聞く、3・笑う
バトルロワイアル参加者として、人間としてどちらのリストが正しいのやら。
331名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/02(土) 02:39:45.97 ID:zJpws+5O0
102:赤と黒と青と
黒い夜に浮かぶ赤い星と青い月の下で、赤い髪の貴族が黒髪のメイドと青(紫?)髪の軍人に癒される話。
赤星と青月は夜空の描写にしばしば出てくる二つの月(シルヴァラントとテセアラ)のことだろうか。
そんな星の名前などよりも、今マリアンに必要なのは眼の前の仲間を癒すことだ。
ゼロスに通じる、自分が良く知るエミリオをその力で癒す時は来るのだろうかと思いながら。

103:邪の風、移動
邪の風=サレの移動開始。しいなが死んだとはいえ、ティトレイが逃げ出した以上サレも動かざるを得ない。
血を出し続けるコレット、そしてそれを看病するクレスでまだまだ遊ぶためにもティトレイの謀殺とコレットの治療は必要だ。
パーティの中に隠れ、同時に思う様に動けなかった嵐がついに動く。ある者に病を与えに、ある者の病を癒すために。
にしてもクレス、処置の為とはいえコレットの服を脱がすのはいかがなものか。
肌寒い夜に服を脱がせば、風邪をひいてしまうかもしれないのに。

104:目
光を受容する感覚器。空の色も海の色も陸の色も、目で光を受けなければ分からない。
だとするならば、光を集める目玉は世界そのものなのかもしれない。
カイルのアホ面も、遠く分かれたナナリーの姿ももう見えない。目玉を失くしたロニにとってそれは世界を失くしたに等しい。
世界ごと爆散するロニを見つめるリオンの瞳に光は無い。当然だ。彼は今、マリアンという光を取り戻す為に戦っているのだから。

105:空っぽのココロ
フォルスが心の力で使われるものならば、感情は燃料とも考えられる。
当然、燃料以上の火力で怒りを燃やし続ければ枯渇するのは必然だ。
全てを吸い尽くしてしまった油田には何が残るか。役目を終えた機械と、干乾びた砂漠が残る。
今更海の水を吸ったところで、枯れた緑が蘇るはずが無い。

106:人形劇
人形を介して表現される演劇。敢えて人形で演じることに、人形劇の趣はある。
人が直接演じるのと違い、人形劇は誰かが操っていることが明白だからだ。
どれだけ自分の意思で戦っているように見えても、、闇夜の中でどれほど熱い戦いをしようとも、何か感傷めいた感情を見せても、
遥かな高みで操る蛇と天上王の糸がくっきり見える限り、それはただの滑稽な喜劇でしかない。
332名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/03(日) 11:55:44.48 ID:NC0VYNjiO
おおぉ乙!今から読んでくるわ
333名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/04(月) 22:47:16.68 ID:jAkijAar0
なんだかパーティメンバーが集結しつつある1stのTOP勢をみてると
2ndですっかりぼっちになってるクラースさんがますますかわいそうだw
334名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/04(月) 23:33:23.38 ID:BU1zupuR0
>>333
2ndはもともと参加者の時点で時空戦士6人中3人参加してないから仕方ないw
クレスにしてみればこんな集結のしかたはかわいそうってレベルじゃなんだろうけどな……
335名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/08(金) 14:23:15.03 ID:BOxMT+R/0
読んでてアタマがクラクラしてきた…
なんというカオス、なんという狂劇…
336名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/10(日) 01:40:30.96 ID:4qasCoCG0
>>330 解説風コメント良いな〜読み返したくなってくるw

最近いっきに読んで本編見て絶望して、アナザーではらはらして・・・
ハッピーエンドを望むのがスレの総意だと思ってたんだけど意外とそうじゃないんだね

人気投票があったらしくて過去スレとか覗いて探してるんだけど見つからない・・・
誰か順位覚えてないですか??
337名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/16(土) 21:45:07.29 ID:ZapMmCDi0
解説風コメント続きです

107:抽象の現
抽象:ある1つのものから注目したい部分を切りとり、それ以外を無視すること。その対義語は具体、つまり現実。
現実に存在するティトレイから、怒りを無視し、悲しみを無視し、喜びを無視し、楽しさを無視した。
デミテルが出会った人形は正に抽象化されたティトレイだった。しかし、ティトレイは確かに自分から「俺」と言った。
抽象とは全てを無くすことではない。感情を切り取った先には、それでもこびりついた本質が残っている。

108:残骸
戦場や災害跡に残された死体。原型を留めない程に破壊された状態で残ったもの。
ここではロイドとジューダスが発見したチェスターとヒアデスの死体のことか。
しかし、バトルロワイアルを戦場とみても、一方的に巻き込まれた災害とみても、ここで死んだ者は皆残骸だ。
一々気にしていては、夜を歩くことさえできなくなる。

109:dear.
親愛なる。大切な人へ贈る手紙の書き出しにもなる。
親愛なる貴方へ。私は大丈夫。とっても頼りになる天使のように素敵なオジサマと一緒なの。
親愛なる息子へ。私は大丈夫だ。生まれてまだ間もない少女と共に行動している。
カイル「リアラ! 知らないおじさんについてっちゃだめだー!!」
ロイド「父さん……幾ら母さんが死んだからって……ロリコンは駄目だろ!!」

110:Get Marionette
丈夫でしなやかな最高級の木材を使った木彫りの人形。
「帰りたい」という唯一の願いで編まれた光の糸は絶対に千切れない。
デミテル は にんぎょう を てにいれた。後は操者の腕の見せどころである。

111:天才のひらめき
発明王エジソン曰く「天才は1%のひらめきと99%の汗」。
これを閃きが大事だと見るか、それとも努力が大事なのだと見るかは自由だが、
閃きのままに洞窟のあちらこちらを駆けまわるハロルドにしてみればどちらも同じなのだろう。
そしてそれに巻き込まれる田舎者達にとっては、どっちにしても迷惑だ。
338名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/16(土) 21:47:30.94 ID:ZapMmCDi0
112:悪夢は近い
嫌な夢のことを悪夢という。だが、眠ってみる夢に近いも遠いも無い。
だからここでは「夢としか思えない程恐ろしい現実」のことを指しているのだろう。
ソーディアンによって引き起こされたであろう悪夢を打ち破るのもまたソーディアン。
だが、1つはジョーカーの手に、もう1つは蛇の手に。彼女達が望んだ夢は、最悪の形で叶おうとしている。

113:エンカウント
遭遇。エンカウントは和製英語であり、本当の英語は「encounter」。
夜の森で誰に出会うかを選ぶのは難しいが、せめて不慮の事故には逢いたくないものだ。
闇討ちが出来るほどの手練にも、マグニス達のような野蛮なのにも出会いたくは無い。
そう願うサレは二人組に遭遇する。野蛮ではないが手練であるクラトスに出会ってしまったのは、果たして事故か不幸か。

114:漆黒の翼・グリッド
漆黒の翼のナンバー1。音速の貴公子グリッド。
忘れがちなことだが、参加者の中で本来の漆黒の翼は彼ただ一人である。
たった一人だけになった団長が、闇の中で生きてきた組織のリーダーに覚悟を問われる。
その問いに震えてながら答えた時、彼は本当の意味で再び団長となった。ただし決意は股から出る。

115:螺旋の邂逅
機動戦士ガンダムSEED PHASE-44「螺旋の邂逅」? ここでは遺伝子の二重螺旋ではなく蛇の螺旋か。
首輪レーダーを逆手に取られ、リオンは闇を駆ける蛇の采配で、寝ている間にマリアンを奪われたゼロスと遭遇する。
ディムロス、アトワイト、シャルティエ。会場内に存在する全てのソーディアンの邂逅は間近。
そして、蛇さえ知らぬリオンとマリアンの邂逅もまた、確実に近付いていた。

116:安息、それとも
自分以外の全てが敵となりえるバトルロワイアルでは、メルディの様に1人逃げて隠れ続けるのが安息を得る一番の方法だろう。
だが、それではいつか誰かに襲われるかもという恐怖からは逃げられない。それでは完全な安息とは言えない。
自分を纏う闇を裂いて抱きしめてくれた温かい腕にメルディは思い出す。支えてくれる誰かと共にあることこそ、安息なのだと。
だからこそ、彼女はこの安息を厭う。初めて得たのは安息か、それともいずれ来る別離の哀しみか、彼女には分からなかったから。
339名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/24(日) 14:26:01.98 ID:OOVoJ3M00
109吹いたww
340名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/30(土) 11:24:09.96 ID:6Nt7pX7IO
カイルとロイドの絶妙なユニゾンアタックwww
341名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/01(月) 02:08:18.68 ID:BidyfXRQ0
戦闘描写ぱねぇなーおもしろかった
フォルスとか明らか原作もっと有効活用しろよって感じだから読んでて感心したわ
342名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/08(月) 05:38:58.53 ID:RowlxVCC0
・・・ふぅ
343名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/13(土) 16:49:29.36 ID:X78L9Cq7O
このスレ的にあまり関係ないけどセネセネの中のひと結婚おめでとう!

ということで……ふぅ、保守だ。
344 忍法帖【Lv=3,xxxP】 :2011/08/20(土) 06:22:53.53 ID:sVgcRUP30
保守
345名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/27(土) 22:51:56.07 ID:N5o+5D/c0
ほしゅ
346 忍法帖【Lv=7,xxxP】 :2011/09/01(木) 22:13:48.17 ID:f5a5Md0t0
ホシュ
347名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/07(水) 16:31:05.41 ID:/pVSYvZxO
ほしゅ
348 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 :2011/09/12(月) 18:44:17.54 ID:5pxqgnIZ0
ほしゆ
349 忍法帖【Lv=13,xxxPT】 :2011/09/18(日) 19:36:15.49 ID:ILDIqw860
期待保守
350名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/24(土) 00:25:24.37 ID:w6t/+XDQ0
投下します
351End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 1:2011/09/24(土) 00:26:15.83 ID:w6t/+XDQ0
クレスは斃れていた。膝を付き、重力にかしづく様に斃れていた。
拡がって全身を覆う黄土色のマントは、眠りにつく1人の剣士にそっとかけられた毛布のようだ。
事実、クレスは眠りたかった。指一本、筋一本たりとも己が意のままには動かない。
疲れていた。身も心も疲れ果てていた。
怒り、戦い、迷い、戦い、狂い、戦い、痛み、それでも戦ってきた彼が半生。
立ちはだかる壁を、立ち塞がる敵を、押し寄せる困難を、その剣で切り拓いてきた。

このまま永遠に眠ることになろうとも、無理もない。
いや、無理しかなかった。それほどまでに彼は傷ついていた。

いつかは、こうなるのだ。
どれほどの高き壁を登ろうとも、登った先にはより高い壁が待っているだけだ。
いつか現れるであろう超えられない壁に屈するまで登り続ける。
クレスにはもう、そんな修練に費やすだけの力など一滴も残っていない。

『何立ち止まってんだよ、クレス』

震えるだけの力も無い鼓膜に、懐かしい記憶が響いた。
僕が君を追い越せば、君は夜を惜しんで僕の背を追い、僕は既に追い越された君を追う。
力強く伝わる友の声が、心に届く。そうだ、共に強くなろうと約束した。

『なーにやってんのさクレス、だらしないったらないじゃない!』

蓮っ葉な声に、心臓の音が重なる。夏の青空のように突き抜けた少女の声が、神経に通る。
誰も彼もが時の狭間に去っていく、僕なんかとは比べ物にならない孤独を背負いながら、君は笑っていた。
太陽のように眩しかった君よ。君の輝きは、僕の心に惑う雲を払ってくれる。

『年長者よりも先に疲弊してどうする、クレス。お前の力はこんなものではないだろう?』

落ち着いた言葉に、筋肉の間にこびり付いた熱が払われていく。
一番大人でありながら、誰よりも純粋に道を追い求めた貴方よ。
ありがとう。貴方に出会えたからこそ、僕はここまで辿り着くことができました。

『クレスさん、貴方は誰よりも優しく……だからこそ、強い。ここで立ち止まる貴方ではないはずです』

幼くも凛とした音が、僕の中に力を宿す。
宿命を前にしても涙を見せなかった君よ。君が忍者だからじゃない、君は君だから強かった。
その強さが揺らぐ僕を奮い立たせる。君の小さな背中に、僕は宿命を背負う覚悟を見た。


僅かに湧き上がった力を使って、クレスは首を動かし顔を上げた。
仲間達の4つの手が、倒れ伏した僕に差し伸べられている。
ああ、とクレスの奥底から息が漏れる。そうだ、僕は独りで壁に向かってたわけじゃない。
そこにはいつも仲間がいた。肩を貸し合える、道を共に歩める、苦難を一緒に笑い合える仲間がいた。
クレスの膝に、掌に、脚に、腕に微かに、しかし確かに力が漲ってくる。それは自分から生まれたものではない、仲間がくれたもの。
一人では越えられない壁も……みんなとなら、越えられる。

立ち上がり、重ねられた掌にその手を伸ばす。そうだ、未だ戦える。僕はまだ立ち上がれる。
立て、立って、そして



「「「「無様に死ね」」」」


352End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 2:2011/09/24(土) 00:27:48.14 ID:w6t/+XDQ0
立ちあがったその正面に聳えた巨大な牙を前にして、クレスは泣くように笑うしかない。
「何、寝てるんだよ。クソ野郎が……」
2つの斧を咄嗟にかち上げてクレスは眼前の矢を弾く。しかし唯の矢ではないそれを前に、クレスは斧を吹き飛ばされてしまう。
「手前が眠らせたアミィの分にゃ、まだまだ足りないんだよ! ブチ抜け、大牙ッ!!」
弦が千切れるか否かその限界線まで引き絞られた弓から、殺意を乗せた矢が再び射出される。
憎い。許さない。殺す。およそ考え得る全ての負の想念が弦を絞る指より矢へと伝わり、
禍々しい程に巨大な牙となって仇たるクレスに噛み付こうとする。
その意思を込めた矢の前では、銃弾を斬ることさえできるだろうクレスも、魔剣で矢を弾くことすらままならない。
チェスターが矢に乗せた思いを殺しきることが出来ず、クレスはバックステップで意を逃がしながら飛ぶ。

「なんでだ、僕だ、クレスだ! 分からないのか、チェスター!!」
『戦の最中に談笑か。随分と傲慢だな!!』

しかし背後に聳え立つ紅蓮の腕が、友の矢に気を取られたクレスを捕まえる。
サンダ―マント越しでも伝わるその灼熱が、クレスには地獄の窯の温度に思えた。
「クラースさん……クレスです! クレス=アルベインです!! 話を……」
『――――――残念だったな。我が主にとって“お前など知ったことではない”』
誰よりも冷静に、一歩退いた視点から客観視できるクラースならば、剣を用いずとも通じるのではないか。
炎朧の向こうにいるはずの知己に向けた甘い夢もまた、炎に焼かれて消え果てる。
火の精霊は誰かの感情に同調するように、その義憤をさらに燃やしてクレスを掴む右手を輝かせた。
『重ねて言えば……“その剣は、我が仲間のモノ。お前が持って良い剣ではない”ともな!! 
 消し炭にしてくれる、“バーニング・ブレイク”ッ!!』
握り潰すと同時に、イフリートの拳が大爆発を起こす。
その爆炎の煙に放り出されるようにして、クレスが落下していた。
髪の何房かは焦げ目をつけ、皮膚のあちらこちらに火傷を負っていたが、明らかに威力に見合った分量ではない。
僅かに残っていた蒼い輝き―――虚空蒼破斬の鎧が、身動きのとれぬクレスを最後の砦として守っていた。
だが、それも尽きた。嘘を付かぬ精霊の言葉に、ある納得をしてしまった為だった。

「だからって、何で……」
「今更命乞いなど、聞けるとお思いですか」

落下するクレス目掛けて小さな影が飛翔する。
獄炎に彩られた世界の中にあってなお影さえ追い切れぬその速度は、紛うことなく忍の証に他ならない。
「すずちゃん……君もなのか、君も、俺を!!」
「如何にダオスの下僕に惑わされているとはいえ、貴方の剣は血を吸い過ぎました……」
中空を堕ちるクレスが剣を構える。地面を蹴ってすずが跳ぶ。
相手が若くして忍の頭領を務めるほどの才媛といえど、年端もいかぬ少女相手に剣を構える恥を知らぬクレスではない。
だが、剣に生きたその醜い醜い本能がクレスに半自動的に剣による反撃を選択させる。
「“俺をクレスと認めてくれないのか”!?」
「その剣はあの人の剣……決して血に濡れて良いモノではない!
 故にその魔剣、ここで封じさせて戴きます―――――忍法・不知火ッ!!」
燃え盛る地獄の底の少し上で、剣士と忍者が交差する。2人が地面に着地し、鮮血の散る音がする。
「クッ……!」
「すずちゃん……! ご、ゴメン、僕……」
クレスに傷は無かった。剣も、装備も、肉体も、一切欠けることなくすずへと顔を向ける。
裂けた装束の肩口から、紅い血に塗れた少女の柔肌が覗く。
少女の傷よりも重傷を負ったような蒼い顔で、クレスがすずに手を伸ばす。
しかし、惰性的な良心から差し伸べられた掌に投げかけられたのは、幾本もの苦無だった。
「敵に情けを乞うほど、落ちぶれてはいません。もとより、忍者は非情でなければならないのです」
ハッキリと言われてしまったその言葉は、頬を掠めた苦無の傷よりも万倍心に沁みた。
かける情の無い、敵。そう、彼らにとって、彼女らにとって、僕は――――

「で、何時までアタシを無視しちゃってくれてんのさぁ?」
「ア―チェ……グはッ!」
353End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 3:2011/09/24(土) 00:28:52.02 ID:w6t/+XDQ0
陽気な声と共に、レイの光条が垂直にまっすぐクレス目掛けて降り注ぐ。
すずに気を取られていたクレスは、亜光速で直進する光の行軍を回避しきれなかった。
「ほらほらぁ、こっち見ないと3秒かからず黒こげだよ? 
 見なよ、アタシを、この天才美少女魔女の、ア―チェ様を。
 聞きなよ、明るい薔薇の様なアタシの華麗な詠唱を!」
クレスの両側を挟みこむようにして、2枚のサンダーブレードがクレスに斬りかかる。
それを飛んで回避しながら、クレスは箒に跨る桃色の彼女を眇める。
「ア―チェ、話を…!」
「やっとこっち見た! でもゴッメーン。“あたしが見てほしいのはあんたじゃないの”。
 やっぱあんたのキモ黒い視線は要らないから――――――――チェスターの為にブッ潰れてよ」
虚空に投げかけるように胡乱な、しかし確かに存在する意思が呪文を紡ぐ。
狂気に彩られても、彼女は確かに魔術のスペシャリストだった。
果ての未来に棲む魔女の背後から、時空と宇宙の理を捻じ曲げて無数の隕石がクレスを急襲する。
会話も通じず、キャッチボールの代わりに投げられた隕石群。クレスは言葉以外の方法で撃ち返すより術が無い。

「蒼破…! 何、出ない!?」

クレスが闘気の鎧を鋳造しようとするが、常にクレスに寄り添ってきた蒼はこの時閃かなかった。
迫る隕石を前にして、クレスは縋るものを失ったかのようにあたりを見回す。
そして見まわしたその先に、冷酷な瞳で推移を見守るすずが居た。
「言ったはずです。貴方のその偽りの剣技、奪わせていただきました」
ぞくり、とクレスが悪寒を走らせた時、熱風がクレスの外套をはためかせる。
顕わになったクレスの背中には、1つの札が貼られていた。
戦士達が欲する『経験』を多く積める対価に、同時に守りと技を剥奪する契約書―――――其は悪魔の札<デモンズシール>也。

「しま…っ!」

クレスが背中に手を伸ばす。しかし、隕石は容赦なくクレスの周囲を炎ごと踏み潰した。
圧倒的暴威の中で微かな意識が諦観する。
グチャグチャな心の中から掻き集めた仲間達の儚い声なんて、所詮唯の妄想。
この耳を侵す現実の呪言の前に容易く掻き消されてしまう。
どんなに高い壁も、仲間と一緒なら越えられる。それはきっと間違いじゃない。

でも、だったら、仲間だと思ってたものが壁だったとき、僕はどうすればいいのだろう。


―――――・―――――・――――――
354名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/24(土) 00:32:06.07 ID:3QxNTDeR0
支援
355End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 4:2011/09/24(土) 00:32:15.36 ID:w6t/+XDQ0
『ほいさ、これでまた4枚。アタシのカルタはナリヒラも吃驚の“ちはやっぶり”、そう簡単には負けないよ〜?』

ホクホク顔で楽しそうに駒を指す魔法の鏡。だが、その盤面は凄惨と言っていい程一方的な状況だった。
親友たる射手。召喚術士が喚びし紅蓮の精霊。桃色の魔女。幼き忍者頭。
剣士にまつわる4人の戦士が剣士を徹底的に攻め続けている。剣士は、これで既に5回は地面を舐めさせられている。
ノルンの法によって保障された『語る必要のない王の力』によって出現した黒駒を前にして、
その否定を許されていないグリューネは耐え忍ぶより手が無かった。
敵の駒とはいえ、相手は剣士の仲間達。如何に襲われようと、全力で反撃することはできない。
だが、耐える為に仲間達の声を用い剣士の回復を行おうとすれば、記憶の仲間が上の句を告げた瞬間に敵陣の駒が下の句を奪って妨害する。
親友の妹だけだった時とは異なり、戦う術を持った彼ら相手では攻めることはおろか守ることすらもままならない。
結果、女流カルターとずぶの素人の札取り―――成す術無く札を半数近く取られたかのような窮地へと女神は追いつめられた。

「ベルセリオスや、サイグローグでもない、ただの鏡に……!!」
認め難い現実の狭間で、グリューネの目が血走ったように盤に魅入られる。どれほど目を凝らせど、その窮地が変じることは無い。
だがそれを行っているのがベルセリオスでも、サイグローグですらもない何処の馬の骨とも分からぬ存在だという事実を認めるには、
この絶望しかない世界からか細い希望を掴み取ろうとするグリューネにとって辛すぎた。
「何故、貴方が指すのです? ノルンの家具と億歩譲って認めたとして、貴方には理由が無い!」
『理由って言ってもな〜。あるにはあるけどさ〜〜〜見て、手が思いついたから。それだけじゃ駄目?』
「ダメという問題ではないでしょう!? この戦いに私が敗れれば、世界が――――――」
『救われなきゃ、ダメ? 世界を滅ぼそうとしてたら、それだけで負けなきゃいけないの?』
鏡の言葉に、グリューネが喉を詰まらせる。今まで楽天的に喋っていた鏡は、僅かに目を細めながら言葉をつづけた。
『生きたい、生きたいって願っても、ただそれだけで誰かが傷つくこともあるよ。
 星を守りたかっただけなのに、それだけで人類を消そうとした星の意思もいるよ。
 そんな人たちは、どんなに願っても叶っちゃいけないの? それが世界を脅かすから?』
世界を滅ぼすのは悪いことで、世界を守ろうとすることは良いことだろうか。
悪いことなのだろう。それを阻もうとすることは、きっと良いことなのだろう。
だが―――世界が滅ぶから、その願いが叶ってはいけないというのか。
どれだけ努力しても叶ってはいけないのか。本気を出してはいけないのか。そもそも願うことすら許されないのか。
『そんな考えじゃ勝てないよ。これは結末の決まった物語じゃない――――結末を勝ち取る戦いなんだよ』
ここには善も悪も無い。故に結末は決まっていない。
だから戦うのだ。自分の望む可能性を掴み取るために、他者の望む可能性を殺す。
その為に全力を尽くすのだ。持てる手札を全て使い、死力で、全力で結末まで戦い抜くのだ。

『物語なら“やらないほうがいいこと”があるけど……ゲームは“やっちゃいけないこと”しかないんだよ?
 物語に拘る限り、完璧な物語を求めて自分を縛っているうちは――――――絶対に、勝てない』
356End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 5:2011/09/24(土) 00:33:37.48 ID:w6t/+XDQ0
そう、それがグリューネの致命的な弱点。
ブルーはレッドの引き立て役。殻臣の悪巧みが栄えた試しはなく、弱きは助けられ、
ビーチの平和はサンオイルスターに守られる―――――物語ならば存在する“約束”がここには無いのだ。
自分が完璧な物語を綴ろうと“約束”を守っても、相手がその“約束”を守るとは限らない。
“約束”は互いの合意があって初めて成り立つ。片方が想い込むだけの約束など、ただの枷でしかない。

グリューネはありったけの言葉を集めて抗弁しようとしたが、眼の前に繰り広げられた盤面を見ては何も言えなかった。
物語の中で「無い」と思った手も、法に照らし合わせれば「有る」。
物語という『枷』に囚われたグリューネの指し手と、限りなく自由に盤面を泳ぐ魔法の鏡の指し手。
どちらがより優勢になるかなど言うまでも無い。

「己が非道を、よくぞそこまで正当化する…!」
『……分っかんないかな〜〜少し――――――――――頭冷やそっかッ!?』

何かを決したような鏡の前に、光が集う。虚空に拡がる無数の星、そのうちの4つの星の光が鏡に向けて放たれていた。
光を受けた鏡は星の力を収束し、圧縮する。
かつて世界を救いし戦士4人分の力を集め尽くしたその暴威が――――砕けかけた屑星を破壊する。


―――――・―――――・――――――


身も、心も抉られて指一本動かせない程に摩耗し切ったクレスが大地に沈められている。
間一髪で剥がされたデモンズシールが燃えカスとなって散るが、クレスの防御は完全には間に合わなかった。
内側は枯渇し、骨を揺らすことすら儘ならない。
そして、手を差し伸べてくれたはずの仲間達は立ち上がる力ではなく、二度と起き上がれなくするための力を再びクレスに向ける。

「手前なんかにゃ勿体無ェ取っておきだ……こいつを、喰らって……地獄に落ちな!!」
飛翔したチェスターがクレスに向かって衝破を放つ。
そして、それが着弾するよりも先に着地し、五指に体内全ての殺意を蓄えた必殺の大牙を構える。
高威力の双技を重ね合わせたその魔弾は、射抜かれた者の命を許さない。

『……承知した。徒に苦しめるは我が主の本意ではない。この一撃に焦滅せよ…!!』
イフリートが地面に諸手を尽き、焔で地面に紅き魔陣を描いていく。
それはイフリートが相手を全力で争覇するべき敵と認めた時のみ用いる極炎の一撃。
その使用を許可された。それはつまり、対象を塵も残さぬと決めたということ。

「……さて、お立会い。手前ここに呼び出したるは、ジャポン古来に詠われる――――藤林は四六の“がま”にござい!!」
藤林すずが高速で印字を結んでいくと、たちどころにもうもうと煙が湧き、そこから巨大な影が起き上がる。
ぎょろりと辺りを見回して鏡で己を見たかのように醜い汗をだらだらと掻き絞る大蟇蛙に、すずが飛び乗った。
これこそが忍の頭領たる藤林すずの大忍法・口寄之術。そこから繰り出される奥義が、必殺で無い訳が無い。

「終わらせちゃうんだね、チェスター? オッケィ! こいつで、ぶっ飛んじゃいなよ! 出でよ、創生の輝きッ!!」
ア―チェの歌うような詠唱と共に、次元が歪んでいく。地獄の中に形成された亜空の中で、1つの力が誕生する。
それは宇宙を創った真白き力。宇宙が誕生する瞬間の、超高音・超高密のエネルギィ体。
世界を創る力にて世界に徒なす敵を滅ぼす禁呪文。世界創造の瞬間に、それ以外の生命の存在など許されない。
357End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 6:2011/09/24(土) 00:35:09.29 ID:w6t/+XDQ0
4つの力がうねりて混ざり、1つの光となってクレスに向けられる。
その光景を前に、クレスは動けなかった。その力にではない、その力を自分に向ける彼らの目に動けなかった。
怒りに満ちた瞳、陽炎の奥に存在する信念の瞳、玉散る氷刃のように冷たい瞳、楽しそうに歪んだ瞳。
熱も、彩光も、瞼の重さも、何もかもが異なる瞳は、そのどれもが、仲間であるクレスに向けられるべき力ではなかった。
だからこそ、クレスは理解してしまった。彼らの瞳には、クレス=アルベインが映っていないことを。

(最後に会ったのは……ああ、この島に集められて……ミクトランの、説明を……)

魔法陣に導かれて別れたのだったか。その時、自分は彼らを殺してでも優勝するつもりだったのか。
数日前のことのはずなのに、思い返すことも難しいほどの記憶。
だが1つだけ確信できる。そこにいた僕はきっと、クレス=アルベインだったのだろう。
優しく、礼儀正しく、義憤を持ち、強気を挫き弱きを助ける剣士の模範だったのだろう。

この島で再び出会うことの叶わなかった彼らにとって、その瞳に映るクレスとは今も“それ”なのだ。
彼らの中には、未だあのクレス=アルベインが息づいているのだ。
だから、その姿はただ人の形をしているだけで、その声はどこかも知らない異世界の言葉で。
故に彼らにとって今地面に這い蹲る人間は――――クレス以外の誰か、どこかの気狂いでしか、ない。

<これで終わり! 其は星光をも砕く破滅の輝き! 四連携・秘奥義一斉集束砲火【ブレイクシュート】ッッ!!!>

「死ねぇっ、神威!」
『インフェルノ・リミテッド!』
「これで終わりです!忍法、児雷也!来い!!」
「ビッグバン!」

必殺の一矢は放たれ、魔陣は轟き燃えて大爆発し、蝦蟇の大口より蒼いブレスが放たれ、天地開闢の光が破滅を生む。
それは死だった。死ねと、殺されろと、ただの敵に向けて送られた、至極当然の意思だった。

今まさに放たれんとする殺意の中で、クレスは力無く笑う。
分かっていたのに、彼らの傍で燃え尽きた死体を見たら、それだけで笑いを抑えられなかった。
遠くに、思えば遠くに来たものだ。遠くに来過ぎて、もうただいまと言える場所も無くなってたなんて。
彼らの中のクレス=アルベインはとうの昔に死んでいたなんて。
此処にいる俺は、とうの昔にクレスでは無くなっていたなんて。

もうクレスなんて、どこにもいなくて。

―――――・―――――・――――――
358End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 7:2011/09/24(土) 00:36:38.16 ID:w6t/+XDQ0
鏡が発動させた全力全開の極大集束砲撃を前にグリューネには打つ手が無かった。
物理属性・魔法属性を均等に混ぜられたその威力は、例え守護方陣と虚空蒼破斬の二重防壁でさえ余裕で貫通するだろう。
光の速さで加速する粒子は、翔転移で逃げるだけの間も無く剣士の肉体を透過して破壊し尽くす。
仮にここを何かの奇跡で凌いだとしても、その後が無い。剣士では敵を討つことが出来ない故に。
(ここ、までですか…!)
どれほど盤を眼で凝らしても光一筋すら見えぬ状況に、グリューネは喉を詰まらせるしかない。
問答無用の詰みだった。策も駆け引きもへちまもない、湯水と湧き上がる王の勢力が強引に決めた必殺だった。
とてもではないが、許容できるものではない。
だが、許容できないものが巌と存在する以上、グリューネが取れる術は一つしかなかった。

(奇跡の構築はほぼ済んでいます。これならば確実に、七駒を敵本陣まで飛ばせるでしょう……)

降参<リザイン>。剣士の敗北を認め、次の局面へ移ることである。
グリューネにとってはここでの勝負は所詮サブイベント、奇跡を発動させるまでの前座に過ぎない。
これまでの絶望側の手から、少なくともこの地下を下りて行った先に『王』本人がいないことは既に確定している。
あるとすれば、首を折られたパルマコスタの男性の死体だけ。剣が王の命に届かないのは分かっていたことなのだ。
『剣士』の役目は勝つことではなく、あくまで可能な限りこの舞台の奥深くまで斬り込んで王の作り上げた世界の情報を得ること。
その情報を踏まえて、奇跡によって王城へ送り込んだ七駒で王を討ち取る―――――それがグリューネの戦略である。

(ここであの者たちに魔剣を奪われる訳にはいきません。その為には……駒を残す訳にはいかない)

グリューネはそう言って、剣士の駒をそっと指で倒そうとする。
ノルンの法さえも破れるだろうその奇跡を発動させる前に、どうしてもしておかなければならないことがあった。
それは、剣士の死。七駒を隠した扉を閉じたのが剣士とエターナルソードである以上、
その魔剣と契約者を敵に利用されることだけは避けなければならなかった。

(勝てなかったのは悔まれますが、幾つかの王の真実に触れることはできました。これなら――――)

故に、確実に墓地へと送る。剣士よ、貴方の献身が、必ずや王を――――――――倒せる道理が、無い。


剣士の駒を倒そうとしたグリューネの手が止まり、その小さな顎をつうと汗が垂れる。
ここまでの戦いで得られた情報は何だ?
王は無数の機械兵士を使役し、
王は剣士の分身を大量に複製し、
王は死者を何度でも蘇らせ、さらに複製し、
王は思い通りにアイテムを駒に装備させ、
王は呼び出されていない者までも追加で召喚する。

(これを、どうしろというのです?)

あまりに邪知暴虐な王の力。グリューネが得られたのはたったそれだけの、しかし眼を逸らすには巨き過ぎる真実だった。
いかな天上の王が相手といえど、ここまでの死線をくぐり抜けてきた駒達を全てぶつければ戦力で勝りこそすれ劣ることは無いと、そう思っていた。
だが、この力の前では6人だろうが、7人だろうが、55人だろうが駒の数など意味が無い。
グリューネは眼を細めてノルン、そして魔法の鏡を見る。
この地で死した強大な戦士を、英知に長けた術師を盤の外から招聘するという最悪な外法も“どうせ”ノルンは許すのだろう。
まさか蘇らせて呼び寄せることのできるのが、剣士の世界の者達だけと考えるのは甘過ぎる。
恐らくはこの地で死んだ彼らの仲間達、帰りを待つであろう仲間達をぶつけてくる。それがもっとも効果的な王の力の遣い方だからだ。
1度や2度なら凌げるかもしれない。だが、今のように何度も何度も悪夢のような地獄を繰り返されたら、勝ち目が無い。
359End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 8:2011/09/24(土) 00:38:38.57 ID:w6t/+XDQ0
「これは……ベルセリオス様が戻ってくる前に決まってしまうかもしれませんね……?
 少し遅くなりましたが、予約していた品でも買いに行きましょうか、ククク……」

グリューネの心の裏を嬲るように、サイグローグが目を眇める。
いきなり出てきた鏡の奥でニヤつく道化に焦燥を見透かされたようで、ことさら不愉快だった。
「しかし……ベルセリオス様もヒトが悪い……このような素晴らしい力を使わずに置くなんて
 これを使えばもっと“素敵な”こともできるというのに……余程手加減して遊んでいたのでショウか……?」
だが、その虚の空いたような瞳の更に底にある汚物に気付いて、グリューネは総身を粟立たせる。
(ここで、剣士が死ねば……まさか“それさえも蘇らせる”つもりか!)
そう、グリューネがこの地下で起きた現象を知ってしまった以上、最早剣士を墓地へ送ることなど何の意味もないのだ。
丁寧に埋葬した所で、即座に墓を暴かれるのがオチだ。
グリューネならば考えることさえおぞましいと思うその手でさえ、道化は仮借なく行ってくるだろう。

「どうしますか……グリューネ様? 負けを認めて次にいきますか……?」

サイグローグの邪な言葉がグリューネの中の大切なものに触れた時だった。
落としかけた剣士の駒を強く強く握らせる。ともすれば、砕けてしまいかねないほどに。

そして、なにより。

【――ュ――さん!】【×××××さん】【あ△さん!】【グ○○○ネさん!】

何の咎もなくこの世界に巻き込まれ、死んでいった彼らを――――“再びこの場所に立たせるなど”。

【グリ□□□さん】【●ー●さん!】【▼▼ュー▼さん】

何の罪もない、まだ世界に残された者達を――――“お前達の都合で呼び出すなど”。

「……貴様達だけには、負ける訳にはいきません」

させるわけにはいかない。この力は、ここで滅ぼさなければならない。
ガキリ、と鈍く軋む音が盤に木霊する。決して繕えぬ罅を想起させた、黒い悲鳴だった。


―――――・―――――・――――――

360End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 9:2011/09/24(土) 00:40:47.83 ID:w6t/+XDQ0
爆音が止み、濛々と煙る熱が湧き上がる中、敵を屠った4人はその煙が晴れるのを待っていた。
これだけの熱量、直撃していない床でさえ砕くほどの破壊の前では、驕りでも過信でもなくこの中で生きていられる人間などいようはずもなかった。
「殺ったかッ!」
「―――――いえ、まだです!」
アミィを殺した死体をいち早く拝がみたいのか、前に出ようとするチェスターをすずが制する。
忍者だからとしか言いようのない漠然、しかし幼い肌を刺す確信がすずに警告を与えていた。“まだ、終わっていないと”。
「嘘……あれだけの攻撃を受けて、死んでないなんて、ど、どーやってさ!」
『煙が晴れるぞ!』
多勢特有の余裕を失ってア―チェが狼狽する中、焔の中でイフリートと召喚主が晴れる煙の向こうに全神経を尖らせる。

晴れた煙の向こう、4人が見つめたその先には何も無かった。
炎の熱に歪んだ洞窟の闇があるだけ。そのはずだった。
「違う! あれ、陽炎なんかじゃじゃない! あれは……時空の歪み!」
4人の視線の集う場所が大きく歪む。
斬られた傷が自然に癒着し塞がって行くように、無理矢理曲げた物質が元の形状に戻ろうとするように、
本来あるべき形へと収束していく空間の中に、1つの人影が映る。

端を焦がしながらも熱風にたなびく外套を纏い、クレスが片膝をついて上体を起こしていた。
その手に握られた白銀の魔剣は、斬撃の軌跡をなぞるようにして空間に傷を創っていた。
「あの空間の曲がり方……ありゃあ、ダオス城の……!」
『時の狭間に、身を隠したというのか!!』
チェスターとイフリートが驚愕したのも無理からぬことだった。
今彼らとクレスの間に隔たっていたのは、形こそ違えど、かつて時空戦士達が目にしたものだった。
アーリィの鉱山跡、その深い深い道をくぐり抜けた先にある黒雲の空。
そこにあるはずの巨大な城を誰からの眼からも欺き続けた、時の狭間に己が身を隠す魔王の秘術。
そして、それを破ったのもまた、時空剣士のエターナルソードだった。

「開けるのならば、閉じられるのも道理ですが……その魔剣で、ダオスの技まで使うと言うのですか……!」

魔剣の一閃で時の狭間を創り、一度空間と空間を隔絶すればどれだけの力であろうが“たかだか単次元の力”など塵一つ通さない次元の断層。
その絶対障壁を見ながらすずが悔しそうに眼を細めて苦無を構える中、クレスがゆっくりと立ち上がる。
<……貴様達の戯言に付き合ってきましたが……ここまでです……>
クレスが呟いた言葉が4人の耳に掠れて入る。だが、炎の熱で大気が歪む中で全てを聞くことはできなかった。
だが、その代わりに4人は、その眼でクレスから伝うものを見た。
<……貴様達にだけ都合のよい法も、私が何を分かっていないかなど、どうでもいい……>
<?? お〜い、もしもし〜〜〜?>
熱気で息を吸うたびにヒリつく喉で、クレスは乾いた言葉を途切れ途切れに吐いていく。
「は、ははは、だったら、いいのかな……?」
問う様に嗤い、笑う様に問うクレスの表情は、枝垂れた前髪に隠れて分からない。
だが、遠間からでさえも明瞭と分かるほど、隠れたクレスの顔から顎に滴が伝っていた。
361名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/24(土) 00:49:35.84 ID:3QxNTDeR0
支援
362End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 10:2011/09/24(土) 01:02:09.97 ID:w6t/+XDQ0
<ノルン……貴方は私に問いましたね。勝って何がしたいのかと、何の為に勝つのかと>
涙だった。瞳の奥から止め処なく滴が零れ落ちていく。

<勝って何がしたいかなど……私にはありません。世界に害なすものを倒すことが、私の目的にして存在意義>
水気を全て失ってしまった枯木のように、クレスは立ち上がって行く。

弱くか細い、しかし確かに線と繋がった雫が、頬を伝って地面へと落ちる。
クレスはそれをすくおうと、右手を頬に当てて雫を留めようとする。それは、きっと手離しては、零してはならない雫だった。
親友を認める優しさ。仲間を想う慈しみ。人間が人間らしくあるために希うひとしずく。


この夢の雫は、きっと人の心の光だ。無限の闇の中でクレスが取り戻した、二度と手離してはいけない輝きなのだ。
<そなたらが紡ぐ滅びの結末など、認めない。世界は、守られなければならない>


それが零れ落ちる。不要だと、邪魔だと言わんばかりに身体の、心の外に吐き出される。
堰き止めようと留めようとしても、“片手で覆う”指の隙間から雫は零れ落ちる。
両の手で杯を作ればまだすくえたかもしれないものも零れ落ちる。
残された左手には、魔剣がしっかりと握られていた。

<って、また無視かー! こっちを向け〜〜〜〜風よ疾け、天よ震えよ――――弓雨百華咲くが如く!!>

「エターナルソードで、ダオスの術……? どこまで、何処まで俺達をバカにすりゃ気が済むんだ!」
圧倒的な障壁で彼らの最大級の技を全て受けきった畏怖と、受けきっておきながら滂沱の如く零される涙への嫌悪を払拭するように、
チェスターは背中に負った矢のほぼ全てを矢筒から抜き出して、瓶の毒を鏃に撒き散らした。
「またダオスかよ! アミィは、何度、何度お前達に殺されなきゃならないんだよ! 
 アイツが、アイツが何をしたって言うんだ!! なんで死んでもこんな事に巻き込まれなきゃいけないんだよ!!」
腹の底に淀んだ全てを吐きだす様にして、透明な殺傷力に浸された矢が無数に放たれる。
震天の射撃はクレスの頭上よりも高い全ての中空から生ける場所を消失させ、
疾風の飛箭は地面を這って、大地に存在する全ての場所を死地とした。

「許さねえ、お前らは絶対に許さねえ! アミィを殺して笑いやがるお前達だけは、絶対にッ!!」

<その道を阻むと言うのなら、進むべきは最早1つと知るのみ――――>

無数の殺意が限られた空と地を覆うなかで、クレスはそれを見ることなく涙を流し続けた。
所詮は付け焼刃の障壁。次元の断層は修復され、クレスを守るものは無くなった。
363End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 11:2011/09/24(土) 01:04:02.39 ID:w6t/+XDQ0
だが、それは守ることが出来なくなったのではなかった。“守るものが、無くなった”のだった。
どれだけ心を尽くしても、喉を枯らして叫んでも、彼らに届くことは無い。
君は彼らを仲間だと思っているかもしれないけど、彼らにとって君は仲間ではない。
君は彼らを殺すことを躊躇っているけど、彼らは君を殺すことを躊躇わない。
彼らにとって、君はクレス=アルベインでは“ない”のだから。
君は彼らにとって、ただの殺戮者<マーダー>に過ぎないのだから。

――――――――――だったら、君もまた彼らを仲間だと“思ってやる”義理が、どこにある?

垂れる涙の線が細くなっていく。殺意は風の速さでクレスに迫る。
酒の無くなったボトル。それでもまだ呑み足りないと逆さにされて、涙が絞り取られていく。
涙に濡れた掌でクレスは頬を拭った。顔が血と泥で汚れただけだった。

最後の一滴が指の間を滑って落ちる。

きれいなものなど、もうのこってなかった。

クレス=アルベインはもういない。ここにいるのは薄汚れた獣だけ。だったら、だったら。

全てを捨てても、守りたいものがあるのなら。
全てを斬って、今度こそ守ると誓ったのなら。

<我が力の全てを以て、そなたらを討ち滅ぼそう>
「―――――――じゅう、しょう、らい」

ケダモノらしく、噛み千斬ってやる。


その一言を喉から鼓膜に徹した時、クレスの眼前の壁は崩れ落ちた。閉ざされていた壁の向こうに拡がる世界を見る。
全てが枯れて開き切ったその瞳孔は、まるで死者のように暗く冥い闇だった。


364名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/24(土) 01:04:33.50 ID:3QxNTDeR0
支援
365End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 12:2011/09/24(土) 01:04:48.21 ID:w6t/+XDQ0
「なっ!?」『何ッ!?』「うぇえ?」「―――っ!」
その状景に、四者は驚愕で眼を見開いた。
無数に降り注ぎ数多狙う鏃をクレスが撃墜していく。しかも、それは大雑把に『全部』ではなかった。
炎に照らされた洞窟を埋め尽くす箭列、その中で自分に当たるものだけを魔剣の切先で撃ち落としていた。
大技でまとめて吹き飛した所で、残った矢が技の隙に当たってしまう恐れがある。
最小限の動作で必要最低限の弾くべき矢だけを弾くのは確かに戦理に適っている。
だが、音速で飛翔する無数の動体を、掠っただけで絶命至らしむる黒矢を前にして実行するなどとは。

およそ人間には出来ぬ所業。それを可能にしたのは、集気法によって極限までに圧縮された柔招来の集中力強化。
本来ならば集中することで技の精度を高める内気功がクレスの認識力と反応速度、その限界を超越する。
「そんなことをすれば、処理に耐えきれずに心を壊すのに…!」
特殊な印や呪文にて自己催眠の術を知る忍者すずには、眼の前の剣士が行ったことを理解できた。
同時に、それが絶対に行ってはいけないことだとも。
普通の人間は、十人の言葉を同時に効くことはできない。夜空の星を同時に全て見ることはできない。
人間が焦点を合わせて見るモノを選んでいるのは、そうしなければ脳の処理能力が追い付かないからだ。
それを無理にすれば、限界以上の機能を求めれば――――――――

<う、うそぉ〜〜〜!?>
<その為ならば、最早手段は選びません。そなたらが手段を選ばぬように>

最後の一本を弾き終えたクレスが、豪雨に打たれたような槍畑の中で滞空した“親友だった誰か”を見つめる。
今更、心の一つや二つ、狂ったところで何になる。獣たれと望んだのは、お前らじゃないか。

「舐めやがって、俺を雑魚のように見るな! アミィの仇が、その技を使うな! 俺は、アミィは!!」
突きの構えで剣を溜める獣を前に、チェスターは残った矢を振り絞る。
あの獣が何を放とうとしているかは分からない。だが、あの場所から動かず構えたということはそこから当てられる技ということだ。
だが、あれほどの力の溜めである以上その終わりには必ず隙が生じるだろう。少なくとも、乱発は有り得ない。
チェスターが弓を極限まで引き絞る。この一撃で筋が途切れても構わないとばかりに強く絞った。

一閃。獣から放たれた紫の神槍がチェスターの眉間を寸分違わず狙い撃つ。
誰もが怯んでしまいそうな威圧の中で、チェスターは弓への力を緩めることなく、この指に番った弦のように槍の穂先を見つめる。
まだだ、まだ引きつけろ。絞り、閉じ、研ぎ澄ませるように殺意と集中力を練り上げる。
神槍が眉間の皮膚に触れた瞬間、溜めに溜めた全てが解き放たれた。
穂先が眼球に触れるか触れないかの紙一重で、獣が放った槍を回避する。
「これで、止めだ!」
あまりの安堵に緩んでしまいそうな心を振り絞って、チェスターは大牙を構えた。
奴はもう動けない。これで、やっと、アミィの仇を――――――
そう思ってチェスターが再び見据えたその先には、既に突きの構えを終えた獣が居た。


「第三段階。秋“時”雨」

366End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 13:2011/09/24(土) 01:05:50.86 ID:w6t/+XDQ0
チェスターの眼の前に現出した九つの神槍が、全てを奪い尽くす。
腕を動かす両手の腱を、獣を追う両足の腿を、左右の脇腹を、喉と胸を、そして――――弓使いの命である、弦を。
復讐に駆られた弓使いは、最後の最後でその瞳を曇らせた。
遥か遠くの敵を狙い撃つ神の槍を振うだけならば、ケモノでも出来るだろう。
だが、眼前のこれは唯の獣にあらず。狂い狂って尚、その身体に刻まれた武錬を損なわぬ、究極の狂戦士。
次元斬による長距離斬突の十連撃を以てすれば、矢など届く前に刺し殺せる。

「その、沙雨、なん、で―――――」

次元の槍が消えて、穴のあいた喉から血と空気を洩らしながらチェスターは地面にたたきつけられる。
獣と括った時点で――――――この剣を彼のものと信じられなかった時点で、その敗北は必定だった。

「チェスターぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

血液と共に落下していくチェスターを追い、ア―チェが身を厭わず箒で下降する。
それは既にクレスに背中を見せる格好であったが、彼女はそんなことなど眼もくれずチェスターを追い落ちる。
『何をしている、小娘! ぐっ、狙わせんぞッ!!』
隙だらけのア―チェをあの槍の贄にさせじとイフリートがクレスに肉薄して炎の正拳を叩きこむと、
クレスはまるで毬を蹴られたかのように軽く吹き飛んだ。あまりの軽さに、枯葉を殴ったかと錯覚するほどに。
『今のうちに、早く態勢を整え……ッ』
「真空“蒼”破斬」
イフリートが、そして精霊の背中にいる主が地面に落ちた2人へ意識を向けた時、
燃えた死体の上で今まさに居合を抜刀せんとするクレスがいた。
『主、我が背に!』
そういって召喚主の盾と動いた刹那、蒼の一閃がイフリートを襲う。
神槍<グーングニル>よりも短いとはいえ、それでも長く鋭い闘気の怒涛が死神の鎌の如く地面を撫で斬りにする。

<……その力……っ! 我を護れ赤の三色、命令変更・今は耐えろ【トリニティビット】!!> 

『疾いッ! だが、徹さいでかァッ!!』
後ろの主やその仲間達まで衝撃が届かぬよう、イフリートは腕に火のマナを集中させて受け止める。
重い一撃だった。精霊一の力自慢であるイフリートでさえ受け止めきれず自分の身体が宙に浮いてしまうほど、その神剣は重く、速かった。
もてる火力をすべてつぎ込んで、浮かされながらもイフリートは強引に腕を開いて蒼を弾き飛ばす。
『この威力ッ。時空の剣といえど、ここまでの力があるはずが――――』
真空破斬による虚空蒼破斬の薙ぎ払い。ただでさえ強力な虚空蒼破斬が居合いの如き溜めから放たれることでその威力を倍化させる。
次元斬の威力ではない。真空破斬のそれでもない。
古より存在する精霊でさえまったく知らぬ一撃は、イフリートの驚きを得るに十分だった。

<これで、なんとかなったかな? って、ちょっとちょっと神様、その力―――――>
そして、クレスがその懐に入るのにも十分なほど。
『!?』
<この程度の守りで、どうにかなるとでも?>
367End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 14:2011/09/24(土) 01:06:45.68 ID:w6t/+XDQ0
浮いたイフリートが地面を見ると、その真下に獣がいた。
おそらく、蒼破斬を放った瞬間からこちらに詰めていたのだ。
転移か、それとも脚力による跳躍か。蒼き怒涛に気を奪われていたイフリートには判別する術もない。
かろうじて分かったのは、3つ。
主も跳躍し、自分を挟んでこの獣から退避し終えていたこと。
自分たちを見上げる獣の闇の淵が、自分も主も捉えきっていたこと。
そして、既に次の攻撃が放たれていたこと。

<この程度の城塞。私の力の前では、無いに等しい>
「守護方陣」

空いた両腕のガードの隙間を縫う様にしてクレスが投げた刃がイフリートの胸に突き刺さり、その刺さった剣を中心として光陣が形成される。
僅かな間隙を完璧に貫く圧倒的な技量。人生を剣に捧げた者だけが至る御業が、精霊に瑕を創る。
あの居合の威力、この速力。数段跳ね上がった敵の能力にイフリートは驚きを禁じ得なかった。
一体、何故これほど急激に強くなったのか。だが、時空剣技を交えない人の技だけならば耐えられぬ程ではない。
この身は炎。人の剣で斬ること叶わぬ、自然の力なのだから。
『グウゥッ! だが仕損じたな、魔剣を手放すなどとは!!』
「―――!? 違います、それはエターナルソードでは……」
チェスター達の方へ駆け寄ろうとしていたすずが、イフリート達が気付かなかったことに気付く。
剣を投げてなお、あの狂人は魔剣をその左手に握っていたのだ。
斧はともかく、剣はあのエターナルソードのみのはず。ならば、あの剣は何処から湧いたのか。
狂人が吹き飛ばされた場所、そこで焼け焦げた死体を見て、すずは答えを理解した。

<不明の武具を使えるのは、そなたらだけではない。宣言・不明状態開示【ルーンボトル】―――――対象『SOWRD?』>

クレスは吹き飛ばされたのではなく、その位置まで移動しただけだった。
最初にクレスの攻撃から自分達を守ってくれた剣士、その得物を手にするために。“イフリートを確実に斬るために”。
イフリートに投げつけられた刃が魔力を放ち、方陣の光を蒼に染める。だが、その色は時の力ではなかった。
全ての熱を静める、蒼き氷の力、アイスコフィンの魔力だ。

<えぇ!? アイスコフィン!? ありなの?>
<――いいえ、合法です……“アイスコフィンならば”>
『あの一瞬の攻防で、得物を見抜いていたというか!! だが、セルシウスの眷属とはいえ、刀一本、押し返してくれるッ!!』

そう言ってイフリートは自身を構成する炎を更に高め、突き刺さった氷剣を弾き抜こうとする。
成程、イフリートを倒すために死体から武器を漁ると言う着眼点は良し。それが氷の剣であるなら尚のこと文句もない。
だが、炎の精霊と氷の剣では属性の相性は合っても存在の位が違う。遠からず剣ごと蒸発させることができるだろう。
これを破れば、後は奴の肉を燃え散らかすのみと、イフリートは倒すべき敵を今一度見据えようとする。

だが、そこにいたのはイフリートから顔を背けた狂獣だった。
視線を外したという次元ではない。完全に“そっぽ”を向いている。
炎を司る精霊と死闘を行っている最中に、唇を潰して顔を顰めながら全く別のものをみていたのだ。
『我を前にして尚、見くびるかァッ!!』
イフリートの怒りに呼応してその炎熱が最大限にまで高まる。
その熱は洞窟の床を融解してしまいかねない程、さながら恒星の様に燃えた。
あれだけ追いつめられておきながら、あれだけ無様に負けておきながら、この獣の放つ余裕は度し難い。
氷の守護方陣の力が弱まり、アイスコフィンに罅が入る。これが砕け切った時が、狂人の最後だ。
人の身でありながら、その驕り。その肉と剣ごと燃え散らす!

―――――――なら、その前に殺すまで。
<……所詮は、籠の中で縛られた未成熟な精霊。取るに足りません>
368End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 15:2011/09/24(土) 01:07:20.97 ID:w6t/+XDQ0
「守護“氷/槍/方”陣ッ」
狂人の冥い視線がイフリートを捉え、次元斬の神槍がその胸に突き刺さったアイスコフィンの柄を穿つ。
刀身の軸を寸分違わず捉えた一撃は氷剣を楔として炎の精霊を穿ち、守護方陣ごと上空へその巨体を更に持ち上げる。
イフリートの身体を貫けずとも、上へ上へと押しやっていく。
気を緩めてしまえば即座に貫通しかねず、成す術なく耐えるしかなかった。
だが、耐えられる。イフリートは自分を押しやる威力を踏まえたうえでそう確信した。
氷の楔を用いた二重方陣をもってしても、火の概念そのものである精霊を倒しきることは不可能だ。
精々表面を霜で凍らせて、動かす程度。これを耐え凌げばイフリート最大の超新星爆発で、今度こそ滅そう。
イフリートを狂人は見据える。だが、狂人に見据えられていたのは、イフリートの奥だった。
いや、捉えていたのはその奥に隠れた召喚主だ。狂人―――否、獣は最初から喰らうべき肉しか見ていない。
<召喚者ごと、撃ち抜きます>
『まさか、我が主ごと――――――――――――ッ!』
その意図に気付いた時には手遅れだった。左右に逸れるなり、炎に還って存在を解けば主が死ぬ。そして“このまま主ごと押され続けても―――――”。
イフリートなど獣にとっては透明なガラス程度。最初から、獣のその眼は喰い殺すべき人間だけを見据えていた。
殺すべき人間。たった二人で飛ばされた、自分達を誰も知らない過去で初めて道を示してくれた賢者。
風変りではあってもその心は情熱に溢れ、その瞳は夢に輝いていた。誰よりも大人であり子供であった大切な仲間。

それを、喰う。
時空剣技とアルベイン流の複合剣術。神の剣を人の技で振うと言う、どう足掻いても殺すことしか出来ない剣撃で。

『ぬおおおおおおお!!!!!!!』
「AアAガアアァァァAAッッ!!!!!!!」

押しやる。イフリートごと、炎の向こう側にいる者を押しやる。
凍りかけた精霊の巨躯に覆われた者の姿を、吠え猛る獣は視ることが出来なかった。あるいは、見たくなかったのかもしれない。
殺すことしか出来ない獣の僅かに滲み出た惰弱が映したのは、最後までイフリートの姿とその後ろ、岩肌の天井だった。

ぐちゃり。脂が糸を引く音と共に、イフリートが洞窟の天井へと叩きつけられる。
じゅわり。岩肌に突き刺さるアイスコフィン。次元の槍刃越しに、獣の掌に肉を穿つ感覚が伝わる。
じゅじゅじゅ。イフリートの絶叫と共に、脂の乗った血肉が焼け焦げる音が闇に木霊する。
如何にイフリートが自分の熱量を調整しようと思っても、密着した状態で如何程できようか。凍る剣に張り付けられたこの主を。

『おのれ、おのれ。おのれェェェェェッッ!!!!』

自分の主を“炙る”という事実に、四大の一角とは思えぬ程の有らん限りの慙鬼と共に火の精霊はその身を唯の火に還していく。
元の世界ならば、まだ自律的にクレスを滅ぼすことも出来ただろう。だが、この世界では叶わない。
オリジンやゼクンドゥスですら自発的に顕現出来ないこの箱庭では、召喚術者の力無くば形を維持することもできない。
そして、その身は再び唯のマナに、エレメントに還っていくということは―――――術者の意思が絶たれたことを意味していた。


―――――・―――――・――――――Knock Down,『Summoner』is Dead.

369End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 16:2011/09/24(土) 01:08:20.03 ID:w6t/+XDQ0
『うぇ……こんなのって……』
「―――――――“あり”なのでしょう? まさか、通らないとでも?」
盤面の展開に絶句する魔法の鏡に対し、鷹揚ない女神の言葉が響く。
その切れ上がった目尻は、凛としているというよりは冷酷と言った方がしっくりくる。
まるで心を凍らせたかのような虚無。その想いを写したように、盤面で凍った炎が砕けて消える。
『……合法です。ここまでの工程、確かに違反はありません』
ノルンは告げる。圧倒的劣勢を一瞬で覆した女神の鬼手を是と認める。

何故、いきなりこうも変わってしまったのか。優勢だったはずなのに、いつの間にか命を脅かされてしまったのか。
秘奥義を使えぬ剣士の持つ最強の切札、時空剣技とアルベイン流の複合剣術。
ここまで彼らに使っていなかった虎の子を解禁したことは確かに彼らを圧倒するに十分な理由だろう。
だが、理由の本質はそれではない。本質はその前段階“その虎の子を使える状態にしたこと”だ。

そもそも、何故黒駒達があの剣士に圧倒出来たのか。
優れた弓の技量? 矢に仕込んだ毒? 世界を司る大精霊? 根幹たる四大の一角? 
伊賀栗の秘術? 小柄を活かした機動力? 禁術までも修めた才能? 空中を飛べる利?
ここまでの流れを知っていれば誰でも理解できるだろう。“今更そんな瑣末で、狂剣<コレ>に勝てる訳があるか”。

『心があるから、躊躇う。躊躇えば勝てない。ならば―――――“心が無ければ、勝てる”。確かに、理は成り立っています』

単純なステータスで見ればその差は歴然なのだ。アイテムが2,3個あった所で埋められぬ程の差が。
とどのつまり、彼らがコレと勝負の形を維持できたのは“彼らが剣士の仲間だった”ことの一点に尽きる。
彼らが親しかったから、剣士は手を緩めた。
彼らが一緒に旅をしたから、剣士は戦い以外の道を探った。
彼らが共に苦難を乗り越えたから、剣士は最後まで有りもしない可能性を縋ったのだ。

彼らは圧倒していたのではない。剣士が、一生懸命彼らを“圧倒しないでいてやった”のだ。
鏡が女神を翻弄していたのではない。“女神が、翻弄されるくらい手加減してやっていた”のだ。

「そなたらの理不尽、蛮行。少々……野放しにし過ぎました」

なら、それを取ったらどうなるか。
剣士との“繋がり”が無くなれば、どうなるか。
神が本気を出せば、その力を本気で用いればどうなるか。

「最早、世界に絶望など不要です。ここから先は、希望だけで良い」

ただの弓使い? ただの召喚術士? ただの忍者? ただの魔術使い? ただのヒト?
―――――――――――――違う。これの前では、神の前では、人などただの餌だ。

「それでも尚立ちはだかるというのなら構いません――――絶望も、法も、全てを無へと還します!」

覚悟を定めた女神の宣言が、断頭台の如く聞くもの全ての心を縛る。
傍から見れば滑稽だろう。彼らは、唯一の勝機を自分から捨てたのだ。
だから今彼らは等しく圧倒的な神の力に晒され、肉のように死ぬ。
神の物語に逆らうということは、そういうこと。

「それで、いいと思ってるの?」

だからこそ、トリックスターは物語に逆らいたくなるのだ。

―――――・―――――・――――――
370End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 17:2011/09/24(土) 01:09:41.49 ID:w6t/+XDQ0
炎が消え去った後に残ったのは天井に突き刺さった氷剣と“人の形に張りついた燐の焦跡”だけだった。
イフリートが消滅したことで弱まりつつある火の中で、コツン、と小石が跳ねるような音が2つ響く。
血を吸ったように紅く輝く柘榴ともう一つの装飾品が肩に当たり、地面に落ちても、
ア―チェはそれに目もくれず伏せるチェスターを抱きかかえ声をかけ続ける。
「いや……いや……チェスター! チェスター! 返事しなさいよ!! ねぇ、ねぇってば!!!」
腕、足、腹。人体が駆動する為のありとあらゆる継ぎ目に穴が空き、そこから血が染み出ている男は女の叫びに反応を見せない。見せられない。
ただただ生物的な痙攣だけ縁に、ア―チェは泣きそうな表情で、懸命にチェスターに呼びかける。
だが、その叫びが呼び寄せるのは大切な命ではなく、獲物を求めて彷徨う死神だけだ。
岩の削れる音に終ぞア―チェがその音源へ首を向けると、炎の向こうに2つの斧を地面から引き抜いた獣がいた。
熱風でマントをたなびかせ、しかしべっとりと血に濡れた前髪で顔を覆われた獣が血に飢えている。
口元が歪んでいた。笑おうとしているのか、泣こうとしているのか、最早それすらも分からない程に歪んでいた。
そのぐちゃぐちゃになった口元をそのままに、獣がのそりと彼女に向かって歩み始める。

<私は道化とノルンに話しています。ただの紛い物に、最早出る幕はありません。慎みなさい>
<勝てばそれでいい? 幸せの為なら何してもいい? それで、本当にいいの?>
「ア―チェさん。逃げてください」

だが、その耐え難い殺意に抗う者が1人いた。
藤林すず。落ちた2つの宝石を拾った一人の少女がア―チェとチェスター、そして獣の間に立った。
だが、ア―チェは腰が抜けているのか脚を動かすことが出来ず、ただチェスターを抱きしめるだけだった。
すずはそれを見てとったのか、すずは後ろを二度と振り返ることなく右手のガーネットと左手の血桜を強く握り前へ進む。
少女の中に秘められた覚悟を見てとったのか、獣が歩みを止める。すずもまた歩みを止め、およそ30mの距離を隔てて2人は対峙する。

<弁えなさい、器物。死者を辱め、外側から罪なき者を呼び寄せておいて、戯言を吐くなど>
<や〜〜だ〜〜〜! ワー、ワー、ワー! 黙らないもんね!!
 心を壊して、それで勝ち? 相手が何を考えてても勝てば、それでOK?>

「……どうして……」
観念したような、縋るような声がすずから漏れる。辛いものを我慢して食べるような、受け入れがたい事実を嚥下する嗚咽を吐く。
獣はそれを聞いて、何を思ったのだろうか。あるいは何も思わなかったのか。不動のまま、相手の出方を伺う様に佇んでいる。
獣の胸ほどしかない少女が光を潰す様に強く目を瞑る。
あるいはこのまま対峙し続けられればよかったのかもしれない。だが、そうするには彼女らの間に存在するありとあらゆるものが隔たり過ぎた。
そして、彼女の背にはまだ生きた彼女の仲間がいる。そして、彼女の前には。
「……いえ……全ては、遅い……貴方が、貴方の意思で殺すのなら。
 我が同胞を殺し、そして今また仲間を殺すというのなら―――――私が、貴方を討ちます。イガグリの党首ではなく、ただの“すず”としてッ!」
すずはガーネットを懐に仕舞い、もう一つの宝石を手の甲に装着し、忍刀を口に銜え印を組む。
「臨める兵、闘う者、皆陣列べて前に在り――――――――伊賀栗流忍術・分身之術ッ!!」
刀印を四縦五横に切る九字護身の法を以て精神を集中させたすずが、前後左右4体に分身する。
これぞ忍者の忍者たる秘技であり、そして、すずにとってはそれ以上の因縁だった。
「これを、貴方に使わねばならないとは……ですがッ!!」
そして、4人のすずは更に呪印を結び忍術を発動させ、その身を更に二つに別けた。
写身の術。分身によって己の写し身を創りだす忍法。
己が身を4つに分けて更に2つに写し、現れたるは8人の藤林すず。

<そんなの、幸せって、言えるか――――!!>
「私とて、この場で何も学ばなかった訳ではありません。
 出会いに依って編み出したこの術も、例え誰であろうとも殺さねばならぬ時があるということも!」
371名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/24(土) 01:10:17.55 ID:3QxNTDeR0
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372End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 18:2011/09/24(土) 01:11:01.49 ID:w6t/+XDQ0
伊賀栗流の頭首として、ダオスに操られた父母を討つ為に練り上げた忍術の結晶を更に昇華させた八分身。
その全てが同一の意思を以て刃を獣に向ける。あの日、あの日の恩に報いる為に。

<来たれ数多の決意、光を越えた八つの闇よ、歪んだ光をぶちのめせッ! 八体完全非同期連携攻撃【エイトセレスティアル】!!>
「「「「「「「「非奥義・雷迅八獣連撃―――――――――御覚悟をッ!!」」」」」」」」

瞬間、8つの影が八方に散りて獣を取り囲む。
「鎌鼬!」「重ね斬り!」
そのうち2人のすずが獣に向かって真正面から懐に切り込み、その忍刀で無数の斬撃を繰り出す。
魔剣や斧に比べればリーチなど無いに等しい忍刀であるが、懐に一度入ってしまえばその一撃の回転率は大剣のそれを凌駕する。
獣は魔剣で斬り払う暇もなく、剣を楯にして守勢に徹するしかなかった。しかし、少女の矮躯も相まって一撃の重みは薄い。
とてもではないが、正面から獣の守りを割ることなど―――――
「飯綱落としッ!」
掛け声と共に、獣の真上に出現したすずの重力を味方につけた回転斬りが獣の頭蓋の頂点目掛けて繰り出される。
獣はそれを片手の斧で咄嗟にそれを受け止め、同時に強引に正面の2人を薙ぎ払う。
片手を上に廻した以上、残る片手で2倍の連撃を受け止めることは難しいと判断したからだろう。
だが、たかが3人の攻撃で手が回らなくなるようでは忍者相手に、話にならない。
「「「曼珠沙華!」」」
正面の2人が退いたと見るや、3人のすずが獣の三方を取り囲み炎を纏わせた苦無を放つ。
ガーネットの加護を得た彼岸花は、死体に捧げられるようにその全てが獣の守りにくい箇所を狙い放たれていた。
全く異なる死角を三か所も同時に狙われていては、柔招来の効果でも凌ぎきれるものではない。
獣は蒼破の鎧でそれを凌ぐが、その間隙を更なるすずの雷電が狙い撃つ。
時空剣の硬直時間を完全に見切り、過つことなく頸を狙ったその刀に、獣は首を逸らせて皮一枚で避ける。
そして剣の落ちた場所に雷が落ち、獣はそれをサンダ―マントで防御する。
完全な連携、全包囲から死角を縫う所作で、すずは獣の鎧を一枚一枚丁寧に削いでいた。

<押し切る! これで<“人の紛い物”よ――――――――>

一にして八、八にして一。真偽の区別なく8体全てが藤林すずという1人の忍者。
8人の得た情報が、1人の意識に集約されて再び8人を最適に動かしていく。
無論、そのような術に何の反動もない訳が無い。人間1人の脳は1人を動かす為にあるのだから。
それを完全に個別に動かそうというのであれば、その負荷は単純計算で8倍。それを、未だ成長途中の幼い脳に強いる。
その上で、8人に今まで通りの性能を発揮させる。鍛錬を積んだとはいえ、写身をしつつ他の忍術も使いながら。
それは、彼女が備えた宝石の力で自身の能力を最大限に引き上げたとしても手に余るものだった。
使い続ければ、きっと今傷ついている獣のようになるだろう。
「これで、止め! 忍法・五月雨ッ!!」
雷から己が身を守るためマントで自らの視界を塞いだ獣の腹を目掛けて、最後のすずが怒濤の連撃を仕掛ける。
蹴り、斬り、掌底。無数の斬撃打撃で獣を打ち抜いていく。
時を超えて編まれた伊賀栗の絶技。使いこなすには自らがまだ幼すぎる事も承知。
だが、それでも。使わねば斃せないというのなら、使おう。他でもない、貴方の為に。
「やあ―――――ッ!!!」
最後の蹴りが炸裂し、獣は大きくクの字になって後ずさった。
そして、8人のすずが再び結集する。まだ斃れてはいないが、獣はすずの忍術に対応し切れていない。次で勝負は決まるだろう。
如何な強大なケモノであっても、所詮は人間。髪で覆われていようとも眼は二つしかないし、腕は二本しかない。
膂力の差はあれど8倍もの眼と腕の数。その事実は覆すことなど出来はしない。

そう、思っていたのだ。幾ら心が離れていても、私達はそれでも人間なのだと。

<――――――――――“わきまえろ”と言いました>
「――――――ァ、――A―――――、――Su――――」
373名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/24(土) 01:12:29.98 ID:3QxNTDeR0
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374End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 19:2011/09/24(土) 01:12:41.93 ID:w6t/+XDQ0
だがその前提ですらも、狂気は忽ちに捻じ曲げる。
上体を起こした獣が2本の斧を上空へ投げ飛ばすと、1本ですずほどもあろう重斧は直ぐに地面へ落下しようとする。
それを獣は魔剣でさらに打ち上げて上空へ戻し、再び落下してきた斧を叩き上げる。
まるでお手玉かジャグリングのように、剣一本で2つの斧を周囲で回転させ続ける。
8人のすずは何事かと警戒しながら、その回転を見つめ続ける。
クルクルと、回々と、狂々と。獣の周囲を回る2つの斧は、やがて回転する斧そのものが獣の周囲で回転するようになる。
それは、それはまるで。
<ぬごっ!>
「「「「「「「「!!」」」」」」」」
直後十分に回転の乗った二つの斧が獣の斬撃によって弾かれ、高速で飛来する凶器となってすずたちを襲う。
それを散開してすず達は回避する。あの重量に、高速回転する刃。すずの華奢な肉体に直撃すれば、胴体が泣き別れることになる。
(一か八か当てに来ましたか。ですが、楯を失くした今なら!!)
だが、忍者たる藤林の者にとって鈍重な手裏剣など当たるものではない。
ましてや、二刀で凌げなかったすず達の連携攻撃を魔剣とはいえたった一振りで処そうなどとは。
すず達はその機を逃がさぬべく、およそ考え得る全ての死角・急所を突くべく八方から攻撃を仕掛けようとする。
だが、獣の爪はその甘えを逃がさなかった。
<ぎゃ〜っす!>
「ガッ」「う”あ”あ”っ」「「「「「「しまったッ!」」」」」」
6人のすずが驚愕にその脚を止めた時、2人のすずがその背中を鮮血で濡らし、死に至る。
別魅を維持できずどろん煙と消える彼女らの背中から襲いかかり、生娘の腹を内側から裂いたのは旋回して獣の下へ還ろうとした二つの斧。
6人の誰か一人でも、2人の後ろを知覚していれば気付けただろう。だが6人、否、8人の視線が眼前の獣へと集約してしまっていた。
そしてその視線が失われた自分、そして回向する二つの刃に気を取られた時、獣はその牙を柔肌へ向けた。
<ちょ、ちょっと、タイ、これはないって……!>
(丙と戊を解除! 丁から辛までで、一斉に苦無全弾投躑!!)
また1人のすずが獣の魔剣で両断され、煙と消える中で藤林すずの総意と呼ぶべきものは、すぐさま牽制打を撃った。
飛ばした斧をブーメランのように回帰させて背後を狙うとは何たる奇策。
一度限りの大道芸とはいえこの威力、やはり近付くのは危険だ。
(ここは、全方位から攻め立ててあの蒼鎧を引き出して―――――――っ!!)
その隙を狙えれば、と言おうとして彼女達はそうすることが出来なかった。
回帰する斧を獣は更に斬りつけると、斧達はその軌道を変えて獣の周囲を回転したまま旋回し始めたのだ。
回転そのものが刃風を生み出す程の斧が、獣の周囲を旋回する。その嵐の中では、如何な精密さを以て投げられた苦無も枯葉に等しい。
その周囲を回る斧に気を取られた隙に、既に飛ばされたもう一方の斧がすずの頭蓋を叩き割って分身をまた一つ煙へと還す。
その斧を纏いながら、獣は獅子戦吼でまた1人の臓器を貫く。前髪の別け目から僅かに覗く瞳らしきものは、殺意に溢れ過ぎて光彩の色さえ分からない。
攻防において中空を無軌道に暴れまわる斧。複数の分身を操るだけでも限界だったすずにとってそれはもう対応しきれるものではなかった。
酷使された脳の悲鳴と獣が自分を殺し続ける情景に抗いながら、すずは胸を締め付けられる想いを感じた。
過去でも、現在でも、未来でも。アセリアを廻り続けるテセアラとシルヴァラントのように。
獣の周囲を回り続ける二つの衛星。それは、それはまるで、あの魔王を護った2つの星。

<っ……ほんと、わっかんないなあ……>
「デリス、スター……貴方は……そこまで堕ちて、何を望むというのですか……」
ぐしゃり。2人のすずが縦に裂かれて消えた時、最後に残った“藤林すず”は思った。
この獣は―――否。器用に剣を操り、二つの斧を衛星のように漂わせた“魔王”は、一体何を抱えて堕ちたのだろうかと。
375名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/24(土) 01:19:15.71 ID:3QxNTDeR0
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376End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 21:2011/09/24(土) 02:06:42.44 ID:w6t/+XDQ0
<なんで、そんだけ強いのに、そんだけ紡げるのに―――――>
「――――、―――――、――――――」
「はあああああああああ!!!!!!!!!」

魔王の一閃と忍者の一閃が交錯する。
小さな胸に迸る鮮血。煙と消えないその赤色、生きるものの鼓動が炎に彩られる。
血と共に力が失われ、刃を落とす。だが、すずはそれでも二本の足で立っていた。誰に立たされるわけでもなく、自分の足で立っていた。
つう、と口から血が漏れる。それを拭うことなく、ゆっくりと後ろを向いた。
汚れ汚れたマントに覆われた背中に、震える手を差し伸べる。
血の泡を飛ばしながら、青く震えたその小さな唇で、すずは言った。

<全部守るって、言えないのさ……>
「われ、と、きて……あ……」

詠うような音色だった。
僅か十と少しの年しか経たぬ人生、それでも走り抜けようとした少女の純真。
落ちかける瞼を懸命に見開いたその瞳で見据えたものを、優しく、怖がらせぬように伸ばされた小さな手。
だが、その手が伸びきるよりも残酷に弱く、言い終わるよりも無情に速く、子供の小さな命が尽きる。
倒れ伏す音。鼓動のない心臓。幼い雀のさえずりは、彼に届いたのだろうか。


―――――・―――――・――――――


377End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 22:2011/09/24(土) 02:07:45.76 ID:w6t/+XDQ0
勝敗は決した。
前方へ翳されたグリューネの掌が白く輝き、同じ輝きを放つエネルギーフィールドに囚われた魔法の鏡が宙吊りになっている。
苦悶を浮かべる鏡面は罅割れて、写し取るべきグリューネの表情を照らさない。
先ほどまで劣勢に立たされていたなどと誰も信じられなくなるほど、女神の圧勝だった。
まるでベルセリオスを撃ち抜いたときのような、否、それ以上の人と神の本質の差だった。

「これで気が済みましたか? 最早、言い訳のしようもないでしょう」

グリューネが無機質な問いを鏡に投げかける。答えを期待した問いではなかった。
「何のつもりでちょっかいを出したのかは分かりませんが、紡がれるべき物語は既に決まっている。
 失せよ、外界の器物。ここはお前のいるべき場所ではありません」
死刑宣告と共にグリューネの掌がゆっくりと拳を作ると同時にフィールドはゆっくりと収束し、魔法の鏡を圧迫する。
バキバキと破片が崩れ落ちる。その終わりの中で、鏡は観念したように小さく溜息をついた。
『ここまでかあ……ごめん、お姉さま。あたしじゃ伝わらないみたい。後、任せちゃっていい?』
『…………ええ。ありがとう……後は、私が……貴方達の想いは、いつか未来に届けます……』
苦しげな表情の中で作られた笑顔に、ノルンに厳かに頭を浅く垂れた。
それが如何に惨い戦いであろうとも、法に則る限り運命を見定めるノルンに差し伸べられる手はない。

『いいって、いいって。ん〜やっぱ全部を守るって、難しいね〜〜』

死者が、生者を殺すことなどできない。
招かれぬ者が、招かれた者に抗うことなどできない。
人は、神には勝てない。

故に紡がれるのは神の勝利だけ。これは正当な結果、自然の運命だった。

『そんじゃ、後はお願い。さて、と…………さっき聞いた、よね……鏡の私が……戦った……理由……』

知識ある鏡が、その身を砕かれながら最後とばかり神に向かう。
法則には逆らえないなど、科学の道を目指すものなら誰よりもよく知っている。
だけど、それでも、せめて僅かにでも変われと湖に小石を投ずる。

『……あなたと、おなじだよ……同じなんだって……鏡なんだから……』
「――――――私と、貴方が同じ? 絶望を撒き散らすお前達と? 戯るな」
『絶望……うん、そう見えるだろうね……見えちゃうよね……実際そうなんだし……』

ボロボロとその身を散らせ、鏡は憐れむように、割れ欠けた視界で女神を視る。

『でもさ、それでも同じなんだよ。この絶』
「“人の子よ”。もう、喋るな」

その言葉が終わるよりも早く。陶片の割れるような小気味よい音と共に、鏡が粉と散る。
雪のようにキラキラと舞い落ちる鏡の中で、審判者は僅かに顔をしかめ、道化は目を楽しそうに歪ませ、
女神の顔に映ったその表情をずっと見つめていた。

「もう、喋らないで」


―――――・―――――・――――――


378End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 23:2011/09/24(土) 02:08:25.90 ID:w6t/+XDQ0
それを確かめる暇もなく、匂いを辿るようにそれは残された命へと歩んだ。
その小さなお尻を石床にへたり込ませたア―チェ=クラインが炎の前に彩られたソレがどう映っただろうか。
「い、いやっ……う、うあぁ……」
かつて彼女はダオスの所業について、彼らの仲間内の中ではかなり早期の段階で疑惑を持っていた。
リアの故郷ハーメルだけを滅ぼす攻撃対象の明確さ、
大国アルヴァニスタについては王子を人質に取っての無力化で済ませ、擁したモンスターの大軍をミッドガルズに集中する魔王の動きは、
彼女には人々が盲目的に畏怖する恐怖の侵略者ダオスとはどうしても一致しなかったのだ。
ア―チェの疑問自体は、現実問題としてダオスの所業で家族を失った若者達との意見の違い、
そして彼らの知らぬ場所で悪逆非道の軍略を展開するデミテル、子供を人質にとって自害を迫るジェストーナなど、
ダオスの配下が人々の期待に応えるように『恐怖の侵略者』像に沿った結果を積み上げたことで無に帰した。
だが、それだけをとって見ても彼女は永きを生きるエルフの血脈に相応しい、真実を見抜く天秤の担い手であっただろう。

「あっ、あああっあ”あ”あ”」

そして彼女の天秤はその瞳に映るソレを見て、完膚なきまでに打ち砕かれた。
炎風に煽られた襤褸切れの外套はそれ自体が命を草のように毟り取ろうと逆上がり、
その手に握る剣をみれば死神の鎌でさえ喜んでその頸を自ら宛がいたくもなる。
最早その瞳に、無邪気に残忍な魔女の面影など無かった。
チェスターしか映らぬはずの彼女の瞳の中は、目を逸らすことのできない狂気に包まれていた。
ア―チェの本能が死を受け入れた。今から、私もこれに食われて死んじゃうのだと全細胞が降伏した。
炎を背に影と塗れたこの獣は、それほどに死そのものだったのだ。
死ぬ。今直ぐに、1秒後に、1分前に、斬られて、摺り潰されて、砕かれて、虫のように、屑のように殺される。
ダオスなどと『次元』が違う。ダオスにはまだ『何故か』『何か』を滅ぼすという意思があった。
だが、今彼女眼の前に立つモノにそんな高尚なものはない。『何故か』はあっても『何か』が無い。
殺す。ただ殺す。何の区別もなく、剣が届く位置ならば殺す。殺せるなら殺す。
魔界の瘴気のように存在自体が人を殺す装置。獣のように、鬼のように、死神のように、人でない死を纏った魔剣の王。

ゆっくりと時の剣が持ち上がり、天辺で静止する。
理由のない厄災。そこにはダオスにはあった何かが欠落し、それ故にダオスよりも完成した『魔王』がいた。

その眼前で血を滴らせた魔剣を振り下ろさんとする魔王を前に、彼女がとれる行為は殆ど無かった。
この距離では状況を打開できる魔術を唱えることも出来ず、そもそもどんな魔術ならば打開できるのか見当もつかない。
立ち上がる前に死ぬ。横に転がる前に殺される。箒を手に取る前に切断される。泣き叫ぶ前に喉が無くなる。
奇跡が舞い降りるよりも早く斬撃が届く彼女に生を模索する道は何処にもない。

「――――っうぅっ。うっ……、うあ……」

今この場で誰よりも死に近い少女は、ゆっくりと魔王の前で手を広げた。
降伏の垂直ではない。大地に平行に、左右の中指の直線に心臓を合わせるように小さな胸を開いた。
ただそれだけでは、ただでさえ捩子の外れた頭蓋が爆ぜたのだとも思えただろう。
だがその瞳に狂気以外の何かが宿っているのを見た時、彼女の傍に何があるかに気付いた時、それは聖人の証と化した。

彼女は護っていたのだ。その背中に沈む、一人の男を。


379End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 24:2011/09/24(土) 02:08:59.35 ID:w6t/+XDQ0
その倒れ伏す男の鼓動は、肉眼では判別できなかった。既に孔から流れた血は河となり、男の身体から失われて幾時が経っている。
死んでいるのか、生きているのか、それは最も間近にいたア―チェにしか分からない。彼女もまた既に狂っていたのか、それさえも。
1つだけ確かのは、彼女がチェスターを護っていたことだけだった。
腰の抜けた動けない身体で、何も出来ぬ魔術師が、己が身1つで魔王に立ちはだかっていた。
上半身だけでも反り返り、手を広げ続けた。鏡合わせのの自分でさえ発狂するほどの狂気を間近に受けて尚護り続けた。

死んでもいい。死ぬしかない。だけど、この命だけは護ってみせる。
もう、失わないと。他の全てを見失っても、これだけは喪えぬと。その意思だけで女は立ちはだかった。
消えかける炎に彩られた魔王の身体が震えたような気がした。歯を軋ませるような音が静寂に響く。
最早その瞳に、無邪気に残忍な魔女の面影など無かった。
生存本能さえもかなぐり捨てて、たった一つの変態を“よすが”に、命を掬おうとした一人の莫迦がいただけだった。

その覆われた瞳は、狂気に耐える彼女の瞳をどう受け止めたのだろうか。
振り下ろされるはずの剣は落ちることなく、その代わりに小刻みに震える。
ア―チェは見上げたその目で、自分を見下ろす魔王が唇を震わせていたことに気付いた。
言葉にさえならない何かがそのまま吐き出されてしまうのを堪えるように、魔王の顔は歪んでいる。
枝垂れた前髪が僅かに揺れ、その隙間がア―チェと重なる。

「ぅえ……、あんた……?」

その瞬間、確かにア―チェの恐怖は無くなった。夢と現が切り替わるように彼女の感じていたものが消える。
だが、それは一瞬だった。彼女の声に呼びとめられるようにして魔王から再び滲み出た狂気は、そんな一瞬などただの気のせいと思わせるには十分だった。
振り上げた剣を降ろし、まるでこれ以上顔を見られたくないかのように右手で顔を覆った魔王が彼女達の横を抜けていく。
何事もなく斧を払い回収し、魔王はすたすたと闇の奥へ歩いていく。

その背中に顔を向ける余裕すらなく、ア―チェは茫然と前を向き続けていた。
殆どの火が消えて、少し遠くに朽ちる少女の死体も闇の中で曖昧になろうとする光景の中で、彼女は辛うじてたった一つの事実を呑みこんだ。
生きた。生き延びた。長らえたのだ。あのどうしようもないほどの死の中で、彼女達2人は生き抜いたのだ。
台風が通過したとしてもそこにいる人間の全員が死なないように、魔王に気まぐれに見逃されただけかもしれない。
それは彼女が努力した結果とは言えぬ、ただの偶然かもしれない。それを彼女が誇るのはおこがましいだろう。
だが、生きた。彼女の心臓は不整に脈動することなく今も鼓動している。これを勝利と言わずしてなんというのか。
生きている。それが、どれだけ価値あることか。

その価値を示す様に高鳴り続ける心臓は、今更に怯え始めたからか。
彼女はその高鳴る胸を撫でて宥め、すう、と大きく空気を肺にいれた。
そして、彼女は顔を下に向ける。彼女が護り抜いた、その意味を確かめるために。
そこには、目を開けて彼女を見つめる青髪の弓使いがいた。

<見逃す……? 忘れたのですか? 『BOSS戦におけるバトルフィールドからの逃走は――――――>

「チェす だ?」
“その身体に、青い刃を突き立てられながら”。


380End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 24:2011/09/24(土) 02:10:46.81 ID:w6t/+XDQ0
冷たい。まず彼女が感じたのはそれだった。
残された僅かな火光を受けた彼女の瞳が映したのは、男の臓腑に突き立てられた剣に滴る赤色だった。
服から滲む男の血。そして、剣を伝い諾々と垂れるのは女の血。
雌雄混じり合う体液に、彼女はその半分が自分の命であると感覚的に理解していた。
次いで、氷に触れたような冷たさと共に燃えるような痛みが体内を焦がす。
足音はなかった。刃が誰かに握られている感覚も無かった。
だから彼女の耳は骨を貫いて破れた臓腑が鼓動の度にびりびりと解れていく音を聞き、
彼女の身体は自分の左肩から貫く冷たい剣の姿をありありと体験することが出来た。


「……うん、そっか。そう、だよね」


激痛の中で全てを了解し、受け入れた一言が彼女から漏れる。
肺を傷つけたか、流れ落ちる命の中で言った言葉の中には酷く乾いた空気が混じっていた。
掴んだはずの命は錯覚だった。生きたい、死にたくない、もうこの命は私だけのものじゃないとしがみ付いてきた執着の終わり。
天井から抜け落ちた氷の剣によってその衝動はここに凍る。
だがありとあらゆる未練の中で、彼女は穏やかに笑っていた。
未練を断ち切るための無理矢理な妥協ではない。心の底から“これでいい”と認めていた。

「う……」
呻き声をこらえながら、彼女は剣が刺さったまま男の身体へと自身を滑らせて身を這わせた。
それは小さな彼女がもし彼に抱きしめられたら丁度腕に頭がすっぽりと収まる素敵な位置だった。
その顔を見つめる。切れ長の眼はしっかりと見開かれている。
その口に耳をすませる。彼女の名前を囁く声を聞く。
胸に顔を埋める。鼻先に、彼の鼓動を感じる。

「こ、れで……」

それで十分だった。
彼女のこれまでの未練、そしてこれからの未練。それらを棄ててもいいと思うには、これで十分だった。


「―――――――ずっと。ずっーと、一緒だよ。チェスター……」


最後の火が消え、彼らの亡骸が闇に包まれる。

人を翻弄し、世界に翻弄された一人の魔女はこうして静かに狩人と眠る。
ヒトとハーフエルフ。生き続ける限りいずれは別れなければならなかった恋人達よ。
せめて死の国ヘルで、永遠に共にあらんことを。



『生』が二人を分かつまで。


381End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 25:2011/09/24(土) 02:11:14.02 ID:w6t/+XDQ0
―――――・―――――・――――――


「……これで、文句はないでしょう?」
ブラックホールの中に鏡の欠片全てを吸い終えたグリューネが、流すようにノルンとサイグローグを見る。
そこにはもう、鏡がいた証は何一つ残っていない。あるのはただ屍の上を歩く剣士の駒だけだ。
「クククク……えぇ、それはもう……最早戦えぬ小娘までキッチリカッキリ潰して作り上げた死体の群れ……
 これに文句などつけられましょうや……いえ……つけられませんですとも……!! ねえ、ノルン様……?」
『―――――合法。ただ、それだけです』
満面の喜悦で拍手を叩くサイグローグと、努めて無表情のまま言葉を紡ぐノルン。
その2人に向けられるグリューネの瞳は、セルシウスの如く冷たく痛々しいものだった。。
「ごたくは結構。次の敵を用意しなさい。“どうせ、彼らもまた蘇らせる”のでしょう?」
「オフクォゥス。とはいえ……いやはや、グリューネ様がまさかこの様な手に踏み切るとは思っておりませんでした……
 絆を盾にした程度では勝ち目無し……こうなってはこちらが仕掛けられる手も限られると言うもの……」
おどけるように手をせわしなく動かしながら、困ったような態度を取る道化にグリューネは吐き捨てて言う。
「まだ茶番を続けるつもりですか? 最早誰が対面に立とうが同じこと、私の力で滅します」
「おぉこわいこわい……ご安心を……先程のガラクタ、玩具の鏡のようなものはもう使いませぬ……
 やはり、私が直裁しなければ戦いにもなりません……それも、後出来て『2戦』というところでしょうか……?」
サイグローグは中指と人差し指をVの字に立ててグリューネに突きつける。
かつての仲間の友愛で絆すような真似が女神に効かない以上、あの魔王相手に使える駒は限られてくる。
その駒をフルに用いて、後2戦で終わらせるということか。

「……いいでしょう。それで自分の無力を認められるというのならば、かかってきなさい」
「了解いたしました……それではそろそろ勝てそうな駒を用いましょうか……
 “魔王を殺すに、相応しい”群れを……さあ、ノルン様……次なる演目の宣言を……!」

サイグローグが諸手を挙げて、盤が再び鼓動を始める。それは生と死が再び逆転し、内側と外側が崩れさる合図。
その中で、ノルンとグリューネの視線が交錯する。

『貴女は、本当にこれで良かったと思っているのですか?』
「……自分で玩具を嗾けておいてよくぞ言いますね。何人であろうと、立ちはだかるならば、無に還します。
 それを望まないのであれば、退がることを勧めますが?」
『無に還すかどうかを、貴女が決めると? 未来を貴女が決めると? 手が紅く濡れていることにも気付かない貴女が?』

ノルンの一言に、グリューネは自分の手を見やる。散った鏡の破片がその白魚のような爪先を傷付け、紅く濡らしていた。
それを胸元によせて隠そうとするが、ノルンはもう遅いとグリューネ以上の冷酷さで宣言する。

『退くのは貴女の方です、グリューネ。ここが分水嶺、これ以上その血塗れた手で進むのであれば私が引導を渡しましょう』
「何故ですか…! 私が紡ぐは、光り輝く世界の未来。貴女もそれを望んでいるのではないのですか!?」
『私は審判を告げる者。希望を望まず、絶望を望まず、ただ見定めるだけです――――――“貴女が『第零条』を侵すのかどうかを”』

グリューネはノルンの言葉に息を呑んだ。第零条、法の騎士をしてその命を用い護らせた“何か”。
それを今グリューネが侵そうとしているという。だが、法を守っているはずのグリューネにはそれが何かが分からない。
かといって、ノルンはそれが何かを教えるつもりがない。ならば。

「煙に巻くだけの言葉ならば不要です。私は希望を紡ぐ。決して折れぬ光の道を、この手で切り拓く。邪魔立ては、させません!」

戦い、滅し、無へと還すだけだ。
そうでなければ、そうしなければ、もう救えないのだから。


―――――・―――――・――――――


382End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 26:2011/09/24(土) 02:11:47.16 ID:w6t/+XDQ0
全てが闇に還った中、一人の男は立ち尽くしていた。
既に彼が戦っていた場所からは大分離れていた。
だが、それでも彼は微かに洞に残響する刃が肉を斬る音を聞いていた。

覆った右手をそっと顔から離す。厚手のグローブに包まれた手では、その手に濡れているのが血なのかどうかも分からなかった。
だが、そんなことはどうでもいいというように男はその手の魔剣を握り締める。
濡れていようが、濡れていまいが、剣がひっこ抜けなければそれでよかった。

斧を収め、剣をと共に彼は進む。闇を纏い更なる闇へと沈んでいく。
闇の中を魔剣と共に進む彼をもしも見ることができたなら、きっと誰もが口を揃えて言うだろう―――



『魔王』と。


―――――――――――――――――――――――――――――Cless Win !  Go To Next Stage!!




生きることは、選ぶことの繰り返しだ。その中で何度か大きな選択をすることがある。
一度決定した結果は変えられない。こぼれ落ちた時の雫は、もう戻らない。


それが誤りだったとき、お前達はどうする? 

それが世界を破滅させたとき、どうする?


<――――頑是なり、愚かなる神よ。貴女に相応しき刑罰は1つしかないのでしょうか>


破滅の未来を変えるべき時空剣士のいない、この世界を。


383End of the Game −禽獣層・さよなら時空剣士− 27:2011/09/24(土) 02:12:49.03 ID:w6t/+XDQ0
【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP5% TP20% 第四放送を聞いていない 疲労 眼前の状況に重度困惑
   狂気抜刀+2<【善意及び判断能力の喪失】【薬物中毒】【戦闘狂】【殺人狂】の4要素が悪化しました>
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷多数 背中に複数穴
所持品:エターナルソードver.A,C,4354 ガイアグリーヴァ オーガアクス メンタルバングル
    サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@かなり血に汚れている
基本行動方針:剣を振るい、全部を終わらせる
第一行動方針:……『敵』は全て殺す
第二行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:中央山岳地帯地下


【Chester Barklight? 死亡確認】
*クレインクィンは破壊され、毒、全ての矢も使い物にならなくなっています。他に支給品はありませんでした。

【Arche Klaine? 死亡確認】
*アイスコフィンが遺体の背中に刺さっています。ミスティブルーム、ミスティシンボルが遺体のそばにあります。他に支給品はありませんでした。

【Fujibayashi Suzu? 死亡確認】
*忍刀・血桜、苦無×20本は全て地面に散乱しています。デモンズシールはクレスに破壊されました。

【イフリート 消滅確認】
*ガーネットはア―チェの遺体の傍に落ちています。


【Notice】

新しいスキットが出現しました

Select:『放送後ティータイム−ベルセリオスの場合−』


384名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/24(土) 02:14:05.81 ID:w6t/+XDQ0
規制が解除されたので投下しました。支援してくれた方、ありがとうございました。

20番が欠番していますが、21〜24までが順に20〜23になります。
(24は二回目のものが正です)
385名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/24(土) 02:41:42.56 ID:qZaRKG9+0
>>384乙!
ついにクレスは再魔王化してしまったか…
386名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/24(土) 02:43:15.90 ID:qZaRKG9+0
あとgj!
スキットも楽しみにしています
387 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2011/09/24(土) 07:02:06.07 ID:PmfM+tFcO
>>384
GJ!
388名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/24(土) 16:50:20.23 ID:3QxNTDeR0
支援が飛び飛びになってしまった
投下乙
クレスはついにまた禁断症状?魔王化?してしまったか……
しかし恐ろしい強さだ
そしてグー姉さんも遂に腹を決めたか
とはいえ心を無くさせてまで勝ちたいとは、相手が相手だから分かるが
389名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/26(月) 01:20:20.29 ID:miRyEmvri
投下乙!
たしかにクレスは死んでしまったな……。
どう言っていいのかわからん。可哀想とも違うし。
390!ninja:2011/09/26(月) 13:53:58.36 ID:BiaeM/md0
断空剣!?♪。
391名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/27(火) 23:27:57.55 ID:xnJofv9+0
投下乙!
クラースさんは最後まではぶられてたあ!
でも本編に参加してたTOP軍団は、活躍出来なかったノーマルを返上するかのように、エキストラとはいえ、心情とかも書かれてて何だか嬉しい
そっか、クレスをクレスと判別されなかったのは、クレスが既にクレスじゃなかったからか…
重ねられる皮肉な技がまた切ない
そして次回、楽しみだ
ようやく引きこもってたベルセリオスが! 
392名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/28(水) 00:22:55.98 ID:WeZcaaIii
今まで引きこもってたベルセリオスは一体どれだけ食料や飲料を消費してるんだろうな
そして床には…
393名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/03(月) 21:31:27.36 ID:EIWuk3Qz0
クレスが・・・ティトレイのように復活とか無いのだろうか・・・
今年終わるまでにもう一回くらいは読みたいな〜書き手さんもTOXプレイ中だろうか?
ヒーローズが出たら絶対ロワでハマッたコンビ使うわ、クレスティトレイとかヴェイグカイルとか
394名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/13(木) 02:30:32.36 ID:2hil23QAO
保守
395名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/22(土) 10:49:56.26 ID:SqRfIelmO
ほしゅ
396名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/23(日) 07:39:01.06 ID:bWBH2h+UO
397名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/29(土) 04:23:18.16 ID:bW4pr+HPO
398 忍法帖【Lv=24,xxxPT】 :2011/10/29(土) 07:49:20.99 ID:elIWb0u+0
399名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/04(金) 22:25:46.43 ID:6jcim3Cq0
400 忍法帖【Lv=27,xxxPT】 :2011/11/12(土) 00:10:40.98 ID:LKgNJ6/B0
401名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/12(土) 10:20:44.92 ID:HehEwgRV0
ア  三  { ,.= r、
|  三 (6' r',ニ7
| 三. | !| { {
|  三. | ミ‐ニ)
! !   ミ !   {
402名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/20(日) 15:03:51.20 ID:e2cQBl540
保守
403名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/26(土) 13:58:27.33 ID:HLD8XgOYO
保守っとな
404名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/03(土) 15:34:22.36 ID:SBB0meSsO
保守
405名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/06(火) 23:44:42.11 ID:JoNqp8WfO
保守。
406名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/15(木) 12:26:36.22 ID:/3ItzD8DO
保守
407 忍法帖【Lv=36,xxxPT】 :2011/12/22(木) 00:25:09.19 ID:Frz7usXy0
期待保守
408名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/23(金) 05:05:17.43 ID:Hziwsc9g0
年越すまでにもう一話読みたいな
409レオン ◆7RGk1kgp5w :2011/12/23(金) 18:35:46.72 ID:d96/inQk0
メンバー表を貼っておく

ロクサス隊メンバー紹介!!!!超完全版!!!!!

◆隊長
ロクサス  ←言うまでもなく最強的存在! 13機関の一人
◆副隊長・特攻隊長
・レオン     ←最後まで戦うこの部隊に欠かせない人材
・セフィロス ←味方か敵の分かれ目に居る人材。是非こっちへ引っ張りたい
・デミックス ←いざって時に助けてくれる   13機関の一人
◆神・王子
救世主(メサイア)獅子様 ←悪に裁きを与える神的存在。
王子   ←凄い人気のあるコテ。VIPの四天王が王子の命を狙ってる
◆裏切り者
バルボッサ ←我々を裏切ったクズで池沼、近いうち潰す。ロクサスから一言あるらしい
◆以下部下・家来
ミミー「ミュウと導師も含む」  ←ロクサス隊に是非入りたいうるさいから入れてやった
子猫   ←ロクサスに縋ってたから入れてやったらしい
ファミザウルス店長   ←ロクサス隊に興味があると言うから入れた
お蔵  ←入隊したいとうるさいから入れてやった 天国板から
烈風のシンク  ←たまに現れるコテ。元アビススレを荒らしてたコテ
るべ     ←???
不毛    ←ヘビースモーカ
スワ太郎   ←日記大好きコテ 現れるスレは主にヤンガス、トルネコスレ
秋葉   ←秋葉原大好きコテ
カダージュ  ←名無し撲滅させようと考えてるコテ
ポポロの弟  ←やり込みゲーマー。入隊したいと言うので入れた
しょういち   ← 名前の通り消防コテ
無転老師   ←改造コードを無断転載する最悪なコテ
じぇすた  ←  同盟を組みたいと言って来たから入れた
hahaha    ←先月まで我々と楽しく会話していた裏切り者
マララー( ・∀・) ←樹海大好きコテ  氏ねって言葉も結構好きなコテ
マス(ry    ←ageる良いコテ
カカ   ←どんなことにも恐れない人
(Φ_Φ)    ←勇気のあるコテ
電車男     ←気ままな人
アブノーマル志向  ←AAを良く貼るコテ 自分勝手な糞コテ
精霊手   ←隊長を尊敬しているコテ VIPから
中田  ←中々戦力になるコテ
アクセル    ←忠実な部下 13機関の一人  VIPから
ウンコマン   ←毒舌野郎だがコテ
アルテマ(・∀・)ウエポン  ←隊長にしか装備できない武器[コテ]今はアルポンと名乗ってる
ヴリトラ ← 味方でも敵でもない奴
PAR    ←荒らすつもりもないコテ。コードツール所有者
精子「精液」   ←仲間に入れてほしいと言ったから入れた
アンセム  ←結構強い 
ゼアノート  ←決戦当時に裏切る可能性が高い。このコテは要注意 13機関の一人
とっとこぺニ太郎  ←下ネタ吐きまくりのコテ
老い耄れじじい  ←ぶっちゃけ勝ち負けどうでもいいと思ってるコテ
Φψ %ゑ    ←中山 悟の霊体。悪い奴でもない 
あ(-A-)ぐ   ←意外なアイデアを出すコテ
ドラクエの人 ←  スレ立てを協力してくれる
ゼクシオン   ←至る所に現れるコテ 13機関の一人
マントヒヒ ← 聖剣3の死を喰らう男みたいなコテ
MML    ←ロクサス隊のファンで仲間になりたいというから入れてやった
星猫     ←マイペースなコテ

http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/goverrpg/1324629846/
410レオン ◆7RGk1kgp5w :2011/12/23(金) 18:35:59.25 ID:d96/inQk0
メンバー表を貼っておく

ロクサス隊メンバー紹介!!!!超完全版!!!!!

◆隊長
ロクサス  ←言うまでもなく最強的存在! 13機関の一人
◆副隊長・特攻隊長
・レオン     ←最後まで戦うこの部隊に欠かせない人材
・セフィロス ←味方か敵の分かれ目に居る人材。是非こっちへ引っ張りたい
・デミックス ←いざって時に助けてくれる   13機関の一人
◆神・王子
救世主(メサイア)獅子様 ←悪に裁きを与える神的存在。
王子   ←凄い人気のあるコテ。VIPの四天王が王子の命を狙ってる
◆裏切り者
バルボッサ ←我々を裏切ったクズで池沼、近いうち潰す。ロクサスから一言あるらしい
◆以下部下・家来
ミミー「ミュウと導師も含む」  ←ロクサス隊に是非入りたいうるさいから入れてやった
子猫   ←ロクサスに縋ってたから入れてやったらしい
ファミザウルス店長   ←ロクサス隊に興味があると言うから入れた
お蔵  ←入隊したいとうるさいから入れてやった 天国板から
烈風のシンク  ←たまに現れるコテ。元アビススレを荒らしてたコテ
るべ     ←???
不毛    ←ヘビースモーカ
スワ太郎   ←日記大好きコテ 現れるスレは主にヤンガス、トルネコスレ
秋葉   ←秋葉原大好きコテ
カダージュ  ←名無し撲滅させようと考えてるコテ
ポポロの弟  ←やり込みゲーマー。入隊したいと言うので入れた
しょういち   ← 名前の通り消防コテ
無転老師   ←改造コードを無断転載する最悪なコテ
じぇすた  ←  同盟を組みたいと言って来たから入れた
hahaha    ←先月まで我々と楽しく会話していた裏切り者
マララー( ・∀・) ←樹海大好きコテ  氏ねって言葉も結構好きなコテ
マス(ry    ←ageる良いコテ
カカ   ←どんなことにも恐れない人
(Φ_Φ)    ←勇気のあるコテ
電車男     ←気ままな人
アブノーマル志向  ←AAを良く貼るコテ 自分勝手な糞コテ
精霊手   ←隊長を尊敬しているコテ VIPから
中田  ←中々戦力になるコテ
アクセル    ←忠実な部下 13機関の一人  VIPから
ウンコマン   ←毒舌野郎だがコテ
アルテマ(・∀・)ウエポン  ←隊長にしか装備できない武器[コテ]今はアルポンと名乗ってる
ヴリトラ ← 味方でも敵でもない奴
PAR    ←荒らすつもりもないコテ。コードツール所有者
精子「精液」   ←仲間に入れてほしいと言ったから入れた
アンセム  ←結構強い 
ゼアノート  ←決戦当時に裏切る可能性が高い。このコテは要注意 13機関の一人
とっとこぺニ太郎  ←下ネタ吐きまくりのコテ
老い耄れじじい  ←ぶっちゃけ勝ち負けどうでもいいと思ってるコテ
Φψ %ゑ    ←中山 悟の霊体。悪い奴でもない 
あ(-A-)ぐ   ←意外なアイデアを出すコテ
ドラクエの人 ←  スレ立てを協力してくれる
ゼクシオン   ←至る所に現れるコテ 13機関の一人
マントヒヒ ← 聖剣3の死を喰らう男みたいなコテ
MML    ←ロクサス隊のファンで仲間になりたいというから入れてやった
星猫     ←マイペースなコテ

http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/goverrpg/1324629846/
411名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/27(火) 19:21:47.87 ID:PWo2LMB80
412 忍法帖【Lv=37,xxxPT】 :2011/12/28(水) 21:17:23.65 ID:nQG/5PB70
413 【凶】 【1764円】 :2012/01/01(日) 01:34:07.54 ID:jyxfihZnO
一番乗り保守
414 忍法帖【Lv=39,xxxPT】 :2012/01/07(土) 08:37:02.07 ID:l5KW5u8I0
二番乗り保守
415名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/14(土) 18:24:09.81 ID:5agI5FKrO
ほしゅ
416名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/25(水) 05:50:33.31 ID:tM6uOoTsO
保守
417名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/29(日) 10:06:16.10 ID:+azJEEPZ0
保 守
418名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/03(金) 18:23:20.24 ID:FzDeqIxg0
ほす
419名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/10(金) 06:26:33.01 ID:MfnFyC8f0
420名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/13(月) 05:16:19.70 ID:HuG7WCyGO
421 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/02/19(日) 20:52:51.92 ID:2MBPqdUW0
422 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/02/28(火) 06:21:57.18 ID:aFcrZWnM0
続き期待保守
423名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/09(金) 05:42:26.90 ID:cKjWtzLn0
424 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/03/11(日) 15:26:52.70 ID:fX0RpwBf0
425名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/18(日) 10:44:05.44 ID:jg00Dr+wO
426名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/21(水) 11:14:17.77 ID:jydt8A/20
次スレってまだ必要ないかな?
427名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/23(金) 10:06:25.34 ID:jfvdEeEQO
そういえばそろそろか…でもまだいいんじゃね?
428名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/26(月) 12:35:44.05 ID:/YGLO8Za0
今450KBくらいだから投下あるようなら新スレかな
429名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/31(土) 17:02:58.99 ID:gTM+Ja/Q0
あげ
430 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/03/31(土) 18:15:38.02 ID:d1io7ZRg0
サゲ
431名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 17:17:53.85 ID:O49rtVViO
保守
432名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/23(月) 12:01:26.66 ID:c6rWqBzY0
433名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/30(月) 09:08:49.62 ID:LhM4UC6LO
しゅ
434名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/06(日) 10:21:27.91 ID:+hznWgyN0
435「よねー!?♪」はキチガイ!:2012/05/13(日) 20:19:11.94 ID:e0PMWxLN0
◆「語尾伸ばしキチガイ」こと通称「よねー!?♪」(>>390)とは?

主にオカルト板、宗教板、癒し板等オカルト宗教絡みスレに生息するキチガイ電波。(忍法帳確認荒らしらしい)

【特徴】
・書き込みは携帯からが多い。
・名前欄が名前欄に!ninjaで出てくる「忍法帳レベル」表示。(じゃないこともあるようだが、大概それ。)
・よねーと語尾を伸ばして(してない場合もあるようだが)最後に「!?♪」を付ける文体が特徴。
(付けないことも。他は、ですよ、したよ、しろよ、ですの、じゃん、〜るよ、〜だよ。という表現を多用)
・上記を満たしてなくとも、書き込み内容は毎回支離滅裂で意味不明なのですぐに分かります。
・死後、アセンション、スピリチュアル等その手の特定用語をスレタイ検索して来ているのか、
 生息板以外の関係テーマのスレに神出鬼没。
・書き込み内容にアニメ、漫画、ゲームの漫画作品名やキャラ名が出てくる為か
 アニメ、漫画、ゲーム好きらしく特定のアニメ、漫画、ゲーム関係スレにも居着いているようです。
(キングダムハーツ、ナムコクロスカプコン、テイルズ関係)

 頭のちょっとおかしい人なので完全無視、水遁するなりしましょう。
436名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/20(日) 01:53:51.73 ID:++RBR2nj0
437!ninja:2012/05/25(金) 19:25:14.82 ID:Olt4uMgR0
438名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/01(金) 07:25:41.58 ID:XocPN/NsO
439名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/04(月) 19:01:35.94 ID:HzBL/UMwO
440名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/09(土) 12:05:42.05 ID:xgGgXpqdO
441名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/11(月) 14:12:00.84 ID:fchwMzpYO
442名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/13(水) 20:23:53.74 ID:04c7EtPmO
443名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/15(金) 19:35:27.19 ID:4xV7R7c0O
444名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/18(月) 16:12:49.11 ID:rwWw8JZ8O
445名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/19(火) 07:11:46.58 ID:YSdIB46e0
446名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/20(水) 02:34:58.92 ID:1M616EH30
447名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/23(土) 13:00:40.71 ID:5pp4G6AF0
448名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/28(木) 23:31:44.28 ID:c/0J18ib0
449名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/04(水) 02:02:51.30 ID:UI0/Z+Oq0
450名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/04(水) 06:19:41.21 ID:dqrPW/q50
続きが見たいいいいい
451名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/05(木) 23:25:34.78 ID:ZhezYjys0
同じくぅぅ
452名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/06(金) 03:30:34.52 ID:jEQCBg/k0
もう何度最初から読み返しただろう
453名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 08:08:26.56 ID:mj3sfXgKO
ほしゅ
454名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 03:38:02.90 ID:DDSng+WJO
455 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/07/28(土) 17:52:36.76 ID:m+vLUJPb0
456名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/09(木) 02:04:00.70 ID:SfaAXBbpO
457名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/17(金) 12:03:27.49 ID:8BOdONGx0
458名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/28(火) 08:33:24.73 ID:5iD0LlL1O
459名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/02(日) 13:55:43.37 ID:4ZtFZfwh0
今月24日には最後の投下から1年になるのか
460名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/09(日) 08:59:15.73 ID:xL9LXgVzO
461名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/22(土) 21:46:08.72 ID:/WzqQe/5O
462名無しさん@お腹いっぱい。:2012/10/02(火) 13:50:03.42 ID:6eE4jrDbO
もう…1年か…
463名無しさん@お腹いっぱい。:2012/10/28(日) 07:51:48.09 ID:Yo7fUBZM0
いつまでも待ち続ける意気込みで保守
464名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/12(月) 11:31:00.47 ID:9VRoGyAW0
465名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/17(土) 22:25:15.35 ID:BIuO3sFz0
466名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/30(金) 12:19:18.81 ID:e1GMPaAQO
467名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/05(水) 18:21:36.36 ID:bJ1+6CZtO
468名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/11(火) 18:09:57.78 ID:+3LyJhXL0
469名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/25(火) 08:57:34.56 ID:GGLCnxYl0
470 【大吉】 【1219円】 :2013/01/01(火) 02:22:54.98 ID:uiNhp6RXO
保守
471名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/08(火) 00:33:42.95 ID:Gt2tuRCt0
【ID】akuserarete
【罪状】煽り通信するキチガイ
ちなみにこいつは銅プレ()
472名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/10(木) 15:42:26.50 ID:uF+7M+jQ0
保守
473名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/23(水) 15:48:38.56 ID:eczmM0aXO
ほしゅ
474名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/30(水) 19:27:51.86 ID:49KCdJu30
ワイール!
475名無しさん@お腹いっぱい。:2013/02/06(水) 19:21:12.10 ID:l8je+pey0
バイバ
476名無しさん@お腹いっぱい。:2013/02/17(日) 09:04:10.31 ID:7B9Iytux0
待つ
477名無しさん@お腹いっぱい。:2013/03/17(日) 17:46:32.56 ID:ao8cEqog0
続き楽しみ
478名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/03(水) 08:59:34.52 ID:A7g+e9N10
もう活動してないの?
479名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/13(土) 13:03:01.51 ID:j9CZHvXg0
一応完結してるんだし打ち切りでいいだろこれ

救いのない話書いて書く人のやる気をへし折ったのが悪い
480名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/13(土) 13:07:08.25 ID:AQ4RPmlI0
>>479
俺も打ち切りに賛成
純粋につまらないし何よりテイルズ オブ ファンを馬鹿にしている
481名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/13(土) 14:58:46.91 ID:bkPeCjV/0
>>479
打ち切りに賛成します
暗いお話は好きではありません
482名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/13(土) 15:44:20.30 ID:qZMrCdmqO
>>479
個人的には好きだから打ち切り反対だな
483名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/13(土) 15:55:13.50 ID:Q/GjpFvz0
俺も打ち切りでいいと思うんだけどね
飽きてきたし
484名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/13(土) 17:36:10.51 ID:6LxOt8eV0
>>479
打ち切り賛成
TOX2の登場で暗いテイルズの二次創作は不要になった気がする
485名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/13(土) 18:17:44.45 ID:2bMa3itR0
自演乙
486名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/14(日) 17:55:53.94 ID:0SA/9baH0
最後どうなるか気になる
487名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/16(火) 09:06:54.26 ID:WSzhHHM90
>>479
もう打ち切りしてかまん
一年も待ったけんど投稿ないき

>>485
全部ID違うから自演じゃない
そもそもID一つにつき一票だろ?
ルール忘れるな

>>486
完結してるやん
488名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/16(火) 09:25:17.22 ID:WSzhHHM90
184 :名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/25(火) 01:13:17 ID:upcGiO/Q
意見が割れそうだが3票先取で
俺は?A+αで

195 :名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/25(火) 01:31:36 ID:37c1UAq0
このスレで何か問題があった際、1日かけて投票するほど重大ではないが議論に決着が付かない、ってことがあったら、この「3票先取」ルールで解決、をデフォにしないか?

197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/25(火) 01:38:40 ID:upcGiO/Q
>>195の意見に賛成する


過去ログをよく読めば投票は三票先取がルールだな
>>480>>481>>484(もしかしたら>>483?)で打ち切り賛成票は三票に達したから打ち切り決定だね
489名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/16(火) 12:57:26.36 ID:SpSsg5wd0
打ち切りか
残念だな
まあルールだし仕方ないか

ありがとう
490名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/16(火) 13:56:35.99 ID:lCrRsbvT0
まあ読み手が何言ってようが書き手が投下するなら続くけどな
491名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/16(火) 16:57:38.57 ID:+msg/BnY0
その書き手は一年以上来てないけどねwww
492名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/19(金) 09:19:31.57 ID:WRHS9S2Z0
俺もいい加減これ打ち切っていいと思う
493名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/19(金) 13:57:26.64 ID:wfsRlY6O0
続き気になる〜
494名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/21(日) 10:54:15.86 ID:K86uyVyw0
せめて行方不明者がどこ行ったのかだけでも知りたかったな
495名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/22(月) 07:55:04.29 ID:hUWOJUVZ0
まあ、打ち切り決まったし仕方ない

某Wikiでは打ち切りが受け入れられない人が必死に差し戻ししてるけどwww
496名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/23(火) 03:30:01.61 ID:+lSLLetbO
なんか自演乙としか思えないんだがこの流れ
口調が同じ過ぎるというか
497名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/23(火) 14:03:52.99 ID:RBbWfX37O
少なくともageてる奴は同一人物だよな
498名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/23(火) 15:23:41.38 ID:r5XHKwi80
まあ、俺も書き手が長い間いないから打ち切ってもよいな
499名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/23(火) 18:29:48.82 ID:Z1m5tbDy0
徹夜して読みふけるほどハマったのになぁ
書き手帰ってきてー
500名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/23(火) 18:43:08.72 ID:z4j13ic+0
500なら打ち切り賛成に一票

>>499
打ち切りは決定事項
諦めろ
501名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/23(火) 18:50:25.45 ID:Z1m5tbDy0
ここ覗きに来てる人ってこの作品の続き待ってる人ばっかだと思ってた
打ち切り賛成意見多いのビックリ
502名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/23(火) 20:32:29.17 ID:+lSLLetbO
いや決定事項とか結論出すの早すぎるだろう
もう一年以上投下がないし個人の意見としては打ち切っても良いとは思うが、
普段の過疎っぷりからしてあと一週間もしくは週末まで待っても良いんじゃないかとは思うぞ

かく言う自分も久々にスレ覗いたらこんな流れになってて驚いた一員だしな
503名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/25(木) 09:01:53.09 ID:p6YF+Ef10
まあ俺も打ち切りに異論ないけどね
504名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/25(木) 09:13:54.76 ID:jwykkd6o0
>>502
これだけ票が集まってるんだから早くはないと思うよ
505名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/25(木) 13:08:42.83 ID:JI/fNeXA0
いつまでこの話してんの?
打ち切るとか打ち切らないとかで無駄にレス数使うなよ……
打ち切りたいなら黙ってdatに沈めておけって
506名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/03(金) 18:46:05.42 ID:eIeLNF8IO
捕手
507名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/06(月) 13:10:27.24 ID:JpofPUGU0
>>506みたいに無意味に保守する奴がいるからだよ
だからさっさと打ち切ってほしいわ
508名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/09(木) 09:03:06.96 ID:l8vrbjMd0
だな
完結しているものを無理に伸ばす必要はないから
アナザーはなかったことにして打ち切るべき
509名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/09(木) 20:35:41.62 ID:Yz4IkItS0
自演乙
続きまだ?
510名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/10(金) 13:11:05.72 ID:BG225h9G0
>>509
自演認定するほど必死な少数派乙
打ち切り決定なんだから諦めろよ
511名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/10(金) 19:43:34.22 ID:9rwl1LoKO
打ち切りかどうかは書き手が決めることだろ
本当かは知らんが執筆中という情報がチャットにあったし
でも切ろうが続けようが報告はしてほしい、1年半も音沙汰なしとか
512名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/13(月) 11:36:34.83 ID:bv3+leuG0
書き手だったけど書く気がおこらないので打ち切りたい
アナザーと2を並行して書くこと自体が間違いだった
gdgdになって書く気がなくなるならちゃんとミクトラン様の完勝で終わらせるべきだったよ
513名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/13(月) 11:48:26.78 ID:r52mLD960
>>512
お疲れさん…
まあ、あの展開じゃあ書く気なくしても仕方ないな

打ち切りには俺も賛成だ
514名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/13(月) 12:47:45.82 ID:Qzr06H6b0
>>512
書き手心折れたんだ
とりあえず乙

一応完結してるから無理して続ける必要はないよ
515名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/13(月) 13:23:00.62 ID:bjbnjfQz0
>>512
ご苦労様です…
打ち切っても問題ないでしょう
516名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/13(月) 19:40:02.72 ID:5dubF0d5O
どんなエンドにする気だったのか、良ければ知りたい
まあそれすらもgdgdと迷走した結果予定からかけ離れてるかもしれんが
517名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/14(火) 08:39:21.08 ID:voIZvAtt0
まとめだれか たのむ
もちろんアナザーじゃないほう

>>516
gdgdすぎて続きが思いつかなかったのでは?
518名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/14(火) 15:29:22.01 ID:w9xOHnKB0
アナザー糞つまらなかったからな
519名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/14(火) 19:00:21.97 ID:IPkXlEOfO
本編もアナザーも面白かったから残念
520名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/15(水) 09:42:06.92 ID:lzbs9q1t0
本編は面白かったがアナザーは面白くなかった

本編後の世界をもっと書いてくれないだろうか…
521名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/17(金) 10:54:24.67 ID:Rlll17Uy0
>>520
同感
522名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/21(火) 09:28:23.33 ID:qw1U6Oz+0
Wikiで打ち切りを認めたくない奴がなんか必死になってるみたいだな
523名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/21(火) 10:54:44.20 ID:QAZMSWAx0
>>522
見てきた
確かに打ち切りを認めたくない奴が必死になってるね
投票はほとんどが打ち切り賛成だったし書き手も打ち切り宣言してるのに
524名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/21(火) 13:46:06.92 ID:usy7Acf+0
ミクトラン「ヒッヒッヒッ! どんなにあがいてもクズはクズだなぁ。」
525名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/21(火) 18:29:40.17 ID:+4LbzeXp0
>>522-523
Wikiの内容、修正しておいたぜ
526名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/21(火) 18:38:44.76 ID:0q8sbfR70
打ち切りを認めたくない連中が粘着過ぎて本当に困る
連中は「(投票では打ち切り賛成圧倒的多数で書き手も打ち切り決定したのに)一方的だ!」「(口調以外の根拠がない上にその口調も全く一緒じゃないのに)全て自演だ!」とのたまってるし
527名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/21(火) 20:03:34.95 ID:0aaGpe09O
前にも言われていたが打ち切りたいならもう書き込まなきゃいいんじゃね?
528名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/22(水) 08:46:58.23 ID:s2lWwzEr0
>>527
連中は諦め悪いみたいようだから無駄
でなきゃ無意味な保守しない
529名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/22(水) 10:57:29.76 ID:wMgc3po20
で本編の要約はまだかい?
打ち切られたアナザーはどうでもいい
530名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/22(水) 16:40:32.47 ID:tZ5zeP5N0
>>522
ただ、エンディングや名簿のネタバレされてたのを直してたのはナイスだった
本編好きなら、それこそ辞典でネタバレはあかん
531名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/23(木) 10:01:47.66 ID:ZXrEy3V70
避難所が打ち切りを認めたくない連中が発狂してるから大荒れだね

ま、勿論俺は打ち切り支持するけど
532名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/23(木) 11:42:54.78 ID:v4AQduI40
たいてい自演認定する奴が必死なんだよね
テイルズファンとして嘆かわしい
533名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/23(木) 11:46:25.56 ID:Dq5S56t40
打ち切り反対!ってやつらは反対なら反対で自分で書けばいいじゃん
「打ち切りは認めないけど俺は書かない、誰か書け」は通らないだろう
534名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/23(木) 13:25:47.16 ID:v4AQduI40
>>533
全くその通りだよ
書き手なんてやろうと思えば誰でもなれるのに

俺は打ち切り賛成だから書き手にならないけど
535名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/24(金) 08:51:56.33 ID:RXVq5N8Z0
避難所で打ち切りを認めたくない人が騒いでたけど、
打ち切り無効のソースが「書き手のtwitter(原文ママ)」って漠然にもほどがあるぞ…

それに仮に明確にソースを示したとしても書き手は一人だけじゃないし、
書き手が長い間続きを書かなくなったのも事実だ。
それにリレー小説なのに特定の書き手が私物化して設定が無駄に複雑になったせいで、
他の書き手が続きを書く気をなくして打ち切りたくなるのは当然だと思うよ。
536名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/24(金) 15:16:30.20 ID:PTmv3Jn00
次々と死んでいって(特に終盤)最後は全滅なのが面白いのにな…
537名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/24(金) 16:53:12.05 ID:RXVq5N8Z0
>>536
そうだよ。
内容は鬱だけど面白いものはいっぱいある。
鬱な名作から鬱を取り除くと糞になってしまう。
538名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/24(金) 18:32:37.31 ID:g1Aqprol0
ミクトラン様がどうなったかが気になる
あとリバース以外の世界のその後も
539名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/24(金) 18:53:20.60 ID:IN2gmAgu0
>>538
同感
書き手には糞つまらないから打ち切られたアナザーなんかよりそっちを書いてほしい
540名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/25(土) 14:37:44.53 ID:4MOYkKztO
自分はアナザーもその後も見たい
541名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/26(日) 16:37:11.59 ID:yIMJjNvS0
>>540
アナザー見たいのは少数派だけ
アナザーは打ち切られた
諦めろ
542名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/27(月) 10:32:38.30 ID:jNK1wCjk0
避難所、相変わらず基地外が意味不明な持論持ち出してて笑ったw
あんなので自演認定できるわけない

ついでに本編はミクトラン完勝ENDなのが少し不満だけどgdgd状態のまま終わったアナザーよりはマシ
いろいろなパターンがある以上たまには主催者が完全勝利したバトルロワイアルも悪くないしな

あと設定複雑だからアナザーは進まないと基地外は誤魔化してるけど
本編以上にgdgdになって書き手が書く気なくしてアナザーが終わったのが現実
543名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/27(月) 18:44:22.10 ID:aIMHfO9w0
アナザーが計画されていたのなら一年以上続きがなかったのはなぜなの?
私物化したせいで迷走したからだよ
ちゃんと計画していたら続きが投稿されないはずがないわ
544名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/27(月) 20:59:56.66 ID:agbnr3vw0
避難所で基地外が必死になっててワロタwww
ストーリーをちゃんと打ち合わせてるなら設定を無駄に複雑にしたせいで迷走して一年以上開くことないからww
545名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/28(火) 14:11:04.88 ID:N+HgtCAY0
書き手さんお疲れ様でした
546名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/28(火) 16:56:42.98 ID:EtvZS79r0
じゃあ俺も
今まで素晴らしい本編を書いてくれた書き手に感謝している
547名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/29(水) 21:59:45.54 ID:/eAYDOXp0
書き手今までありがとう
アナザーは微妙だったけど
548名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/30(木) 10:32:43.74 ID:GZcRmIev0
本編はルーティやセネルやマウリッツが早々に死んだり
逆にデミテルやプリムラやグリッドが中盤から終盤まで生きてて面白かったな
アナザーは面白くなかったけど
549名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/30(木) 11:38:17.89 ID:dk1grTeX0
野望達成に成功したミクトランも凄かったな
参加者全滅後、彼は望んだ世界に行けたと信じたい
550名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/30(木) 12:19:15.20 ID:dCVPttLbO
sage忘れてますよ荒らしさん
551 ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄:2013/05/30(木) 19:27:20.56 ID:0WZC89hd0
        .____
     ;/___ノ(_ \;
    ;/打ち切り反対\;
  ;/ノ(( 。 )三 ( ゚ )∪\;
 ;.| ⌒  (__人__ ) ノ(  |.;
 ..;\ u. . |++++|  ⌒ /;
  .;ノ   ⌒⌒    .\;
552名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/30(木) 20:12:41.10 ID:dCVPttLbO
とうとう反論できなくなったからAAでの荒らしに切り替えたんです?
コピペするだけだから頭使って反論しなくても済むね、元々の発言がコピペじみてたけど
553名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/30(木) 21:49:21.17 ID:GJhB6r/s0
自演とかじゃないぜ。こんだけ言われて書き手がシカトし続けてんならもうアナザーは終わっていいだろ。正直な話意味がわからんし。
擁護派も本当はそう思ってんじゃねーの?よくわからんけどなんかすげえってそれだけジャン。本編は面白かったけどなんかアナザーはよくわかんねー展開ばっかで読者置いてけぼりじゃん。書き手がオナニーしたかっただけなんじゃねえの。
554名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/01(土) 13:36:05.86 ID:IrzUBd3K0
>>553
全くその通りだわ
555名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/01(土) 15:49:35.45 ID:aObJSIh+O
>>553
そりゃ途中でとまっているからワケわからんだろうよ
556名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/02(日) 16:34:52.98 ID:IQQ/GWig0
書き手も打ち切り反対派もやる気がないみたいだから打ち切りは決定でいいよね?
557名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/03(月) 09:58:09.21 ID:JJH/k2Aj0
避難所の荒らし、論破したとか綺麗事言ってるけどやっぱり書き手に縋ってるのかよ
断定できる根拠がないのに全て一人の自演だとか打ち切り反対だけど書けないのでお願いしますとかの詭弁は世間で通用するわけないから

あともうアナザーは打ち切り決まったからこのスレには本編の感想と後日談と設定以外必要ないぞ
どうしても打ち切りを認めたくないor異論があるなら自分で続きを書こう
書けないor書く気がないなら大人しく打ち切りというこのスレの民意を受け入れてくれ
558名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/03(月) 23:58:10.84 ID:sB2Q80ko0
打ち切りにしたいって言うのは勝手だけどいちいちアナザーを貶すのはやめろよ
俺は本編もアナザーも好きだったし、できれば続き見たかったし
559名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/04(火) 05:43:50.78 ID:YKHgmg3DO
>>558
同意
560名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/04(火) 13:27:00.55 ID:/gX5igcJ0
>>558-559
自演お疲れ様です
>アナザーも好きだった、できれば続き見たかった
じゃあ「アナザーのどこが面白いのですか?」と聞かれても具体的に言えますね?
561名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/04(火) 18:19:02.12 ID:oXoExIG80
アナザーという名の蛇足さえなければ文句なしだったけどなぁ
562名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/05(水) 00:13:49.81 ID:TAUXzvgtO
>>558
同じく同意
本編もアナザーも良かった
本編もアナザーもテイルズのお祭りゲームと違って片方のキャラをさげまくったりあげまくったりしないで、原作の性格に近いものなのが良い
563名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/05(水) 12:49:16.08 ID:o5TCwySV0
本編もアナザーも面白かったよ
アナザー打ち切りは残念だ
564名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/06(木) 09:03:02.78 ID:kf2nLnyV0
>>563
打ち切りは仕方ないよ
分散して過疎ったせいで書き手が随筆を続ける気をなくしたわけだしな
565名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/06(木) 12:55:15.00 ID:piF6L3xz0
アナザー面白くなかったなぁ…
566名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/11(火) 12:29:54.89 ID:2My5kBYd0
>>565
僕もそう思った
こんな状況になるとわかっていたら「アナザー無しで2ndに直行」に投票してたよ…
567名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/11(火) 12:34:55.54 ID:2My5kBYd0
ついでに現在の状況

【参加者一覧】
TOP(ファンタジア) :0/10名→●クレス・アルベイン/●ミント・アドネード/●チェスター・バークライト
                 ●アーチェ・クライン/●藤林すず/●デミテル/●ダオス
                 ●エドワード・D・モリスン/●ジェストーナ/●アミィ・バークライト
TOD(デスティニー) :0/8名→●スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/●リオン・マグナス/●マリー・エージェント
                 ●マイティ・コングマン/●ジョニー・シデン/●マリアン・フュステル/●グリッド
TOD2(デスティニー2):0/6名→●カイル・デュナミス/●リアラ/●ロニ・デュナミス/●ジューダス
                 ●ハロルド・ベルセリオス/●バルバトス・ゲーティア
TOE(エターニア)   :0/6名→●リッド・ハーシェル/●ファラ・エルステッド/●キール・ツァイベル
                 ●メルディ●ヒアデス/●カトリーヌ
TOS(シンフォニア) :0/11名→●ロイド・アーヴィング/●コレット・ブルーネル/●ジーニアス・セイジ
                 ●クラトス・アウリオン/●藤林しいな/●ゼロス・ワイルダー/●ユアン
                 ●マグニス/●ミトス/●マーテル/●パルマコスタの首コキャ男性
TOR(リバース)   :0/5名→●ヴェイグ・リュングベル/●ティトレイ・クロウ
                 ●サレ/●トーマ/●ポプラおばさん
TOL(レジェンディア) :0/8名→●セネル・クーリッジ/●シャーリィ・フェンネス/●モーゼス・シャンドル
                 ●ジェイ/●ミミー/●マウリッツ/●ソロン/●カッシェル
TOF(ファンダム)   :0/1名→●プリムラ・ロッソ

●=死亡 ○=生存 合計0/55

アナザー?打ち切られた現実を見ろよ
568名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/11(火) 12:51:19.43 ID:NIl8R7mV0
>>567
こうしてみるとこのロワイアルは悲惨だな…
569名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/12(水) 09:22:14.87 ID:Aswcn3hR0
まあ、ミクトランの完勝だから仕方ない
2ndもサイグローグの完勝になりそうだな
570名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/12(水) 11:33:55.30 ID:Xew5Jer10
このロワは完全に終わったから本編の考察しようか
ミクトランが「精霊王も、セイファートもネレイドも大いなる滄我も弱った。神の断片も本体へと戻った。私を遮る物はないッ!!」と言った時
ゲオルギアスの名前は言わなかったのはエピローグ(a little wish in the despair)から察するに開始時にはすでにゲオルギアスは弱っていたから言うまでもなかったんだろうな
エピローグを読むとこのロワが開始されたのはRのED後(=ゲオルギアスが弱わった後)なのがわかる
571名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/13(木) 08:51:30.61 ID:jpsiMQQ70
>>570
なるほどなぁ
572名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/14(金) 08:07:50.94 ID:nWdmyAN/0
そろそろ容量の限界がきそうなので次スレについて
次スレの>>1はこれでいいかな?

テイルズシリーズのキャラクターでバトルロワイアルが開催されたら、というテーマの参加型リレー小説スレッドです。
本編は完結し、アナザーは打ち切られました。今まで支援&応援ありがとうございました。
なおこれはあくまで二次創作企画であり、ナムコ及びバンダイナムコゲームス等とは一切関係ありません。

詳しい説明は>>2以降。

【前スレ】
テイルズ オブ バトルロワイアル Part18
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1292651805/

【関連スレ】
テイルズオブバトルロワイアル2nd Part14
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1337158663/

【したらば避難所】
PC http://jbbs.livedoor.jp/otaku/5639/
携帯 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/otaku/5639/

【まとめサイト】
PC http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/
携帯 http://www.geocities.jp/tobr_1/index.html
573名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/14(金) 08:29:39.39 ID:bkSnSX2H0
>>572
これでいいと思う
本編は完結してアナザーは打ち切られたけど
設定は相変わらず謎が多いからスレは続いてほしい
574名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/14(金) 10:13:27.49 ID:GlGxyuJm0
>>572
俺も賛成
575名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/15(土) 20:24:21.75 ID:aGqvrKwMO
打ち切りなら次スレいらなくない?
576名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/15(土) 23:01:31.66 ID:7F7JEP/I0
よし、新しくはじめよう
577名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/16(日) 07:49:43.23 ID:O+MwCMciO
3rdか。2ndもまだ中盤だし下手すりゃあっちも凍結しそうなのにまずくないか
とはいえVHGXX2と5作品も増えてるから始めたい気持ちもあるんだよな
読みたいだけでなく書き手になって終盤まで引っ張る意思はあるのか?
578名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/17(月) 09:49:31.55 ID:O5qBcilg0
>>575
まだ判明していない設定があるだろ

>>576-577
3rdが開催されたら間違いなく主催者はオリジン(TOX2)で黒幕はクロノスだな
579名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/18(火) 18:11:55.89 ID:EqXwmpSC0
早く次スレ立たないかな
580名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/20(木) 05:08:28.73 ID:VI+J/ry30
打ち切りという流れにした以上次のスレ立ててまで愚痴るのは建設的じゃないかと
このまますっぱりでいいんじゃね?

>>577
一応第二次スパロワは一次が停滞中に2やろうという話になって立てた結果良い感じに刺激しあってどっちも完結した
581名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/20(木) 05:16:09.55 ID:VI+J/ry30
あんまり見て気分いい鋳物でもなし、2に飛び火は避けたいから新スレいらんだろ
582名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/20(木) 21:07:43.33 ID:LVp+/NUC0
アナザー面白くなかったのは同意。勢いはあったし読んでて熱くなれたけど、オナニーだった
583名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/21(金) 01:31:23.99 ID:ZJzCcvb00
2ndはもう駄目だろう
584名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/25(火) 10:14:12.63 ID:BZvl+J5T0
2ndも打ち切ったほうがいいのかな
585名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/27(木) 12:13:51.95 ID:PeZnmpgE0
勝者のミクトランはあの後どうなったんだろう

別世界なら精霊王とセイファートとネレイドと大いなる滄我を弱らせた意味ないと思うんだけど
586名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/27(木) 12:30:33.66 ID:PeZnmpgE0
>>585
もしや某ニャルラトホテプみたいにボッコボコにされたんじゃね?
587名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/27(木) 12:31:24.27 ID:PeZnmpgE0
うわ、>>585とID被ってる
588名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/27(木) 16:56:31.34 ID:/MLvHpvE0
>>586
俺もそう信じたいな

>>586-587
ドンマイ
589名無しさん@お腹いっぱい。:2013/07/04(木) 10:16:37.73 ID:RrnbrQiO0
ミトスとヴェイグの決戦は面白かったな
590名無しさん@お腹いっぱい。:2013/07/08(月) 11:25:03.28 ID:zMRmWlFU0
早く次スレ立たないかな
591名無しさん@お腹いっぱい。:2013/07/11(木) 11:22:41.78 ID:xBUuhmfD0
俺も早く次スレ立ってほしい
592名無しさん@お腹いっぱい。:2013/07/12(金) 21:32:58.67 ID:sSbejRkGO
今北産業

新SS来てないかなと数ヵ月振りにスレ開いたらなんか祭と葬式とデモ同時開催中みたいなすごい流れになっとるがな
593名無しさん@お腹いっぱい。:2013/07/13(土) 02:06:35.16 ID:s4YYAKBAO
>>592
何か
変なのが
暴れてる

今は書き手が新作持ってくるまで次スレは立てないという結論に至ってる
詳しくはしたらばの雑談スレ読んでくるといいよ
594名無しさん@お腹いっぱい。:2013/07/16(火) 09:01:38.75 ID:YxMB1gq/0
>>593
嘘教えるなよ

次スレは必要と決まっている
ま、本スレはこれで打ち止めで設定議論スレに変わるかもしれないが

>>592
誰も続きを書かないので
投票の結果
アナザーの打ち切りが決まった
595名無しさん@お腹いっぱい。
>>594
設定議論スレも避難所に立ったから必要なくね?