テイルズオブバトルロワイアル2nd Part11

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1名無しさん@お腹いっぱい。
テイルズシリーズのキャラクターでバトルロワイアルが開催されたら、
というテーマの参加型リレー小説スレッドの2周目です。
参加資格は全員にあります。
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。
これはあくまで二次創作企画であり、バンダイナムコゲームス等とは一切関係ありません。
それを踏まえて、みんなで盛り上げていきましょう。

詳しい説明は>>2以降。

【前スレ】
テイルズオブバトルロワイアル2nd Part10

http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1236911151/


【過去スレ】
テイルズオブバトルロワイアル2nd 感想議論用スレ
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1217252638/

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part2
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1220284765/

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part3
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1220805590/

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part4
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1221714713/

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part4(実質5)
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1221714971/

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part6
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1223568942/

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part7
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1224680497/l50

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part8
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1225550753/l50

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part9
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1227941534/

【避難所】
PC http://jbbs.livedoor.jp/otaku/5639/
携帯 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/otaku/5639/

【2ndまとめサイト】
PC・携帯両用 http://www.symphonic-net.com/tobr2/mobile/index.html


【1周目のスレ(現在アナザールート進行中)】
テイルズ オブ バトルロワイアル Part16
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1231916923/

【1stまとめサイト】
PC http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/
携帯 http://www.geocities.jp/tobr_1/index.html
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 08:46:27 ID:NbbboTdm0
----基本ルール----
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができ、加えて願いを一つ何でも叶えてもらえる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
 開催場所は異次元世界であり、海上に逃れようと一定以上先は禁止エリアになっている。

----放送について----
 放送は12時間ごとに行われる。放送は各エリアに設置された拡声器により島中に伝達される。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去12時間に死んだキャラ名」
 「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。

----「首輪」と禁止エリアについて----
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
 首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
 主催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
 この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
 24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。  
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
 下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。
 プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
 なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
 たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止能力が使えるようにもならない。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 禁止エリアは3時間ごとに1エリアづつ増えていく。

----スタート時の持ち物----
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を配給され、「ザック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「着火器具、携帯ランタン」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「支給品」
 「ザック」→他の荷物を運ぶための小さいザック。       
 四次元構造になっており、参加者以外ならどんな大きさ、量でも入れることができる。
 「地図」 → 舞台となるフィールドの地図。禁止エリアは自分で書き込む必要がある。
 「コンパス」 → 普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「着火器具、携帯ランタン」 →灯り。油は切れない。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
 「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
 「写真付き名簿」→全ての参加キャラの写真と名前がのっている。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「支給品」 → 何かのアイテムが1〜3つ入っている。内容はランダム。
※「ランダムアイテム」は作者が「作品中のアイテム」と
 「現実の日常品もしくは武器、火器」、「マスコットキャラ」の中から自由に選んでください。
 銃弾や矢玉の残弾は明記するようにしてください。
 必ずしもザックに入るサイズである必要はありません。
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
 エクスフィアを出す場合は要の紋つきで支給するようお願いします。
 ハズレアイテムも多く出しすぎると顰蹙を買います。空気を読んで出しましょう。

----マスコットキャラの扱い----
 マスコットは「支給品」一つ分相当とカウント。
 なお、ロワでの戦いにおいて全く役に立たないマスコットキャラは、この限りではなく、「支給品」一つ分とは見なさない。
 ミュウを支給する場合はソーサラーリングを剥奪した状態で支給すること。コーダ、ノイシュ、タルロウXの支給は不可。
 マスコットキャラはプレイヤーではありません。あくまでも主役はプレイヤーという事を念頭に置いて支給しましょう。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 08:47:41 ID:NbbboTdm0
----制限について----
 身体能力、攻撃能力については基本的にありません。
 (ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合があります)
 治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法、即死術は発動すらしません。
 キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限されます。
 しかしステータス異常回復は普通に行えます。
 その他、時空間移動能力なども使用不可となっています。 (短距離のテレポート程度なら可)
 MPを消費するということは精神的に消耗するということです。
 全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内(半径100mほど)ということでお願いします。

----ボスキャラの能力制限について----
 ラスボスキャラや、ラスボスキャラ相当の実力を持つキャラは、他の悪役キャラと一線を画す、
 いわゆる「ラスボス特権」の強大な特殊能力は使用禁止。
 これに該当するのは
*ダオスの時間転移能力、
*ミトスのエターナルソード&オリジンとの契約、
*シャーリィのメルネス化、
 など。もちろんいわゆる「第二形態」以降への変身も禁止される。
 ただしこれに該当しない技や魔法は、TPが尽きるまで自由に使える。
 ダオスはダオスレーザーやダオスコレダーなどを自在に操れるし、ミトスは短距離なら瞬間移動も可能。

----武器による特技、奥義について----
 格闘系キャラはほぼ制限なし。通常通り使用可能。ティトレイの樹砲閃などは、武器が必要なので使用不能。
 その他の武器を用いて戦う前衛キャラには制限がかかる。

 虎牙破斬や秋沙雨など、闘気を放射しないタイプの技は使用不能。
 魔神剣や獅子戦吼など、闘気を放射するタイプの技は不慣れなため十分な威力は出ないが使用可能。
 (ただし格闘系キャラの使う魔神拳、獅子戦吼などはこの枠から外れ、通常通り使用可能)
 チェルシーの死天滅殺弓のような、純粋な闘気を射出している(ように見える)技は、威力不十分ながら使用可能。
 P仕様の閃空裂破など、両者の複合型の技の場合、闘気の部分によるダメージのみ有効。
 またチェルシーの弓術のような、闘気をまとわせた物体で射撃を行うタイプの技も使用不能。

 武器は、ロワ会場にあるありあわせの物での代用は可能。
 木の枝を剣として扱えば技は通常通り発動でき、尖った石ころをダーツ(投げ矢)に見立て、投げて弓術を使うことも出来る。
 しかし、ありあわせの代用品の耐久性は低く、本来の技の威力は当然出せない。

----魔法の使用に関して----
 ロワ会場ではマナが特殊な位相をとっており、魔法使用者の記憶によって指向性を持ち、様々な形態となる。
 すなわち魔法の内容が術者の記憶にあるのならば、
 周囲のマナが晶術・フォルス・爪術など各々に最適な位相を勝手にとってくれる、ということである。
 それゆえ術者は元の世界のものと寸分違わぬ魔法を再現できる。
 召喚術や爪術など、厳密に言えばマナをパワーソースとしないタイプの魔法でも、
 会場のマナが変異して精霊や滄我の代役を務めてくれるため、発動に支障はない。
 ただしこの位相をとったマナは回復魔法とは極めて相性が悪く、回復魔法はもとの一割ほどしか効果がない。
 気功術などによる回復さえマナに妨害されるため、会場内では傷の回復は至難。

----晶術、爪術、フォルスなど魔法について----
 使用する前提条件として、「精神集中が可能」「正しい発声が可能」の条件を満たしていること。
 舌を切り取られているなどして、これらの条件を満たせていない場合、使用は不可能。
 仮に使えても、詠唱時間の延長や威力の低下などのペナルティを負う。
 「サイレンス」などで魔法を封じられた場合、無条件で魔法は使えなくなる。
 攻撃系魔法は普通に使える、威力も作中程度。ただし当然、TPを消費。
 回復系魔法は作中の1/10程度の効力しかないが、使えるし効果も有る。
 魔法は丸腰でも発動は可能だが威力はかなり落ちる。
 (魔力を持つ)武器があった方が威力は上がる。
 当然、上質な武器、得意武器ならば効果、威力もアップ。
 術者が目標の位置をきちんと確認できない場合、当てずっぽうでも魔法を撃つことはできるが、命中精度は低い。
 また広範囲攻撃魔法は、範囲内の目標を選別出来ないため、敵味方を無差別に巻き込む。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 08:49:06 ID:NbbboTdm0
----時間停止魔法について----
 ミトスのタイムストップ、アワーグラスなどによる時間停止は、通常通り有効。
 効果範囲は普通の全体攻撃魔法と同じく、魔法を用いたキャラの視界内とする。
 本来時間停止魔法に抵抗力を持つボスキャラにも、このロワ中では効果がある。
 ただし、広範囲攻撃魔法と同じく目標の選別は不可であり、発動者自身以外は動くことが出来ない。
 TOLキャラのクライマックスモードも、この裁定に準拠するものとする。

----秘奥義について----
 秘奥義は一度だけ使用可能。その際、発動したキャラが持つ未使用の秘奥義も使用不可となる。
 使用後はTP大幅消費、加えて疲労が伴う。
 また基本的に作中の条件も満たす必要がある(ロイドはマテリアルブレードを装備していないと使用出来ない等)。
 秘奥義に類する強力な術技は秘奥義扱いとする。
 該当するのはシゼルのE・ファイナリティ、レイスの極光、TOLキャラのクライマックスモードなど。
 Iの覚醒はSB・OLと同じ扱い(何度でも使用可)だが、前世の姿に戻ることは秘奥義扱いとする。
 SRの追加秘奥義は2つ合わせて一つの秘奥義とする。TP消費は普通の秘奥義より増える。
 またリヒターのカウンターは秘奥義扱いとする。その前に普通の秘奥義を使っていたならば、当然カウンターは発動不可能である。

----TPの自然回復----
 会場内では、TPは戦闘ではなく時間経過で回復する。
 回復スピードは、1時間の休息につき最大TPの10%程度を目安として描写すること。
 なおここでいう休息とは、一カ所でじっと座っていたり横になっていたりする事を指す。
 睡眠を取れば、回復スピードはさらに2倍になる。
 なお、休息せずに活動している状態でも、TPは微量ながら徐々に回復する。
 回復したTPをすぐさま回復魔法にあてれば、ある程度ダメージの回復は見込める。
 しかし、かなりの集中力を割くためこの作業中は不意打ちに弱くなる。事前に鳴子を張っておくなどの対策は可能。

----状態異常、変化の設定について----
 状態異常並びに変化追加系は発生確率を無視すると有利すぎる効果なので禁止とする。
 Rの潜在能力やフォルスキューブ(マオ)、Dのソーディアンデバイス、D2のスロット、一部のエンチャントが該当する。
 D2のFOEも禁止。ただし術技にデフォルトで付加されている能力は有効とする。例として、
●ヴェイグの絶・霧氷装
●ミトスのイノセント・ゼロ
●ダオスのテトラアサルト
●ジルバのシェイドムーン・リベリオン
 等が挙げられる。
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 08:50:00 ID:NbbboTdm0
----合体技の再現(SのU・アタック、R仕様秘奥義など)----
 ロワを通して仲良くなったキャラや、同作品から来た仲間同士であれば、協力して合体技を使うことも出来る。
 合体技を編み出せる仲間、ならびに魔法・特技の組み合わせは各原作に準拠するが、
 このロワ中では次の条件を満たしている場合でも合体技の発動が可能。

  例1:異なるキャラ同士で、同名の魔法・特技を組み合わせた場合。
   例えばSの複合特技である「プリズミックスターズ」は、リフィルの「レイ」とジーニアスの「グランドダッシャー」などで発動するが、
   同名の魔法を習得しているので、フィリアの「レイ」とシャーリィの「グランドダッシャー」でも、「プリズミックスターズ」は発動する。

  例2:「それっぽい」魔法・特技を組み合わせた場合。
   例えばSの複合特技である「襲爪雷斬」は、本来ロイドの「虎牙破斬」とジーニアスの「サンダーブレード」などで発動するが、
   ジーニアスの「サンダーブレード」をジェイドの「天雷槍」などで代用することも可能。
   また常識の範囲内で考えて、それなら合体技が成立しそうだと考えられるなら、まったく新規の組み合わせも可能。
   例えばシャーリィの「タイダルウェーブ」で発生させた水を、ルビアの「イラプション」で加熱し、高温の蒸気を発生させて、
   もともとはジーニアスの魔法である、高温の蒸気で敵をあぶる魔法「レイジングミスト」を合体技として編み出すことも出来る。

  補則1:なおクレスなどは単体で「襲爪雷斬」を放つことは出来るが、同名の技でも合体技の方が威力は上である。
  補則2:新規のキャラ同士の新規の魔法・特技の組み合わせは自由に考えて構わないが、
       それにより成立する合体技は必ずシリーズのどこかから「本歌取り」すること。
       世界観の維持の観点から、まったく新規の合体技を編み出すことは禁止する。
  補則3:もちろん合体技を繰り出す当事者達は、ある程度以上気心が知れあっている必要がある。
       小説中で「仲良くする」ような描写を予め挟んでおくこと。
  補則4:合体技は当然大技であるため、発動させるためには上手く隙を作らねばならない。
       同じく小説中で「隙を作る」ような描写を予め挟んでおくこと。
  補則5:AのゲームシステムであるFOFを用いた、術技のFOF変化も上記のルールに準拠するものとする。
       FOFの属性と変化する術技の組み合わせは原作に準拠するが、上記のルールに違反しない限り、
       書き手は全く新規の組み合わせを考案してもよい。下記も参照のこと。

ケースバイケース、流れに合った面白い展開でお願いします。

----ゲームシステムのクロスオーバー----
 ロワ参加者は、デフォルトの状態では原作世界の知識しか持たないものの、
 ロワで他世界のキャラと交流を持ったり、何らかの方法で他の世界の知識や技術を得た場合、
 その世界特有のシステムを使いこなすことが出来るようになる。
 例えばリオンが事前にジェイドから説明を受けていれば、ジェイドの「タービュランス」で発生した風属性FOFで、
 自身の「双牙斬」をFOF変化させ、「襲爪雷斬」を放つことも可能。上項も参照のこと。
 ただしRのフォルスやTの獣人化など、その世界の住人の特異体質によるシステムのクロスオーバーは、
 原則として不可とする。
 ただしSのハイエクスフィアを用いた輝石による憑依などで、
 R世界やT世界の出身者の肉体を奪うなどした場合は、この限りではない。
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 08:51:08 ID:NbbboTdm0
----シリーズ特有の強化スキルやシステムについて----
シリーズのシステムに関わらず、特技・奥義は単独で発動可能とする。ただし連携の順番は原作に倣うこと。

P・・・なし。
D・・・ソーディアンデバイス、リライズは全面禁止とする。
E・・・潜在晶霊術は禁止とする。
D2・・・スロットは全面禁止とする。エンチャントは追加晶術、連携発動、リカバー(D2にはリカバーを使えるキャラがいないため)、
     特技連携、晶術追撃、秘奥義、追加特技、通常技連携、空中発動のみ有効とする。
S・・・EXスキルの「一定確率で」系、ガードステータス、ゲットウェル、スーパーガード、ライフスティル、メンタルスティル、
   グレイス、ステータスキープ、エンジェルコール、レジストマジック、 メンタルサプライ、コンセントレート、オートメディスン、
   スペルコンデンス、サプレスダッシュ、サプレスロウアー、MCディフェンド、ラッシングラン、パフォーマー、グローリー、
   HPリバース、レストアピール、アーマードブロウ、ガードアウェイは禁止とする。
R・・・フォルスキューブのドレインは禁止。潜在能力も禁止とする。
L・・・我流奥義は使用可。ただし副極意による追加効果の付与は禁止とする。
A・・・ペインリフレクト、アクシデンタル、ライフリバース、エンジェルコール、ピコハンリベンジ、オートメディスン、グローリー、グレイス、
    ADスキルの「一定確率で」系は禁止とする。
T・・・なし。
I・・・武器カスタマイズ、アビリティは全面禁止とする。
   (リジェネ、リラックス、悟り、グミの達人、踏ん張り1〜4、封印防御等を除けば能力アップなどしか残らないため)
SR・・・スキルはアビリティのみ有効。例外としてエミルが支給品のコアを入手した場合、アトリビュートの特技変化系を使える

----TOAの設定について----
 会場の音素量が少ないため、ルークの音素乖離は参戦時期に関わらず行われない。
 ただしルークが無茶をして第七音素を大量に使ったときはその範疇に属さないものとする。
 コンタミネーション現象は禁止とする。これはビッグバンの議論を防ぐためである。
 超振動は秘奥義扱いとするが、会場の音素が少ないため威力は半減される。
 それでも一撃必殺級の上、他の物を巻き込んでしまうのでよく考えてリレーしましょう。
 ティアの譜歌ナイトメアは、声に魔力が宿っている訳ではないため拡声器を使っても効果範囲は変わらない。
 また敵がある程度弱ってないと無効とする。
 カースロットは原則有りとする。ただし同じエリアに居ないと使えない、一人しか操れないといった制限を課す。
 勿論操られた者が憎しみを抱いている対象がいなければ効果は現れない。
 また導師の力のためレプリカのイオン、シンクには相応の疲労が襲うものとする。
 第七音素注入で怪物化はロワのバランスを崩してしまう為禁止とする。譜術式レプリカ製造も同様である。
 アンチフォンスロットは有り。ただし効果は一日。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 08:53:07 ID:NbbboTdm0
----その他----
 *作中の進め方によって使える魔法、技が異なるキャラ(E、Sキャラ)は、 初登場時(最初に術技を使うとき)に断定させておくこと。
  断定させた後は、それ以外の魔法、技は使えない。
 *クラースは精霊(の力)を呼び出せるが、精霊自体は召喚できない仕様とする。
  理由はSのオリジンとロイド等との設定の兼ね合いが複雑なため。
 *Pのディストーションやカメレオン、Dエクステンションはあまりにも強力なため使用不可能な設定とする。
 *スタンの空中魔法変化技は下級は特技、中級と上級は奥義の扱いとする。
 *キールにはフリンジ済みのインフェリア晶霊が入ったCケイジを最初から与える。勿論これは支給品枠の一つとして考える。
 *Rの聖獣の力は参戦時期に関わらず有効とする。
 *アニー、ジルバの陣術は厳密に言うと魔術ではない為詠唱を必要としない。地面に方陣を描くことで発動させる事。その方法は問わない。
 *ジルバの月のフォルスは、対象が限りなく弱っていないと使用できない仕様とする。
  また乗り移っている間は一切のダメージを受けないため確かに無敵だが、
  逆に言うと本体は実に隙だらけ(同時に二人操るのは無理があり、こっちは操られている方が入っている)なため制限対象には入らない。
 *エミルはコア化をもって死亡扱いとする。このコアには莫大な量のマナが含まれている(センチュリオンコアも同様)。破壊も可能。
 *リバイブは危険になったら自動でHP回復大の扱いとする。

━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活はどんな形でも認めません。
※新参加キャラクターの追加は一切認めません。
※書き込みされる方はスレ内を検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。(CTRL+F、Macならコマンド+F)
※参加者の死亡があればレス末に必ず【○○死亡】【残り○○人】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※具体的な時間表記は書く必要はありません。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
※投下宣言は「○○分後に投下します」など時間を指定するのではなく、宣言後すぐに投下するよう心がけて下さい。

※基本的なロワスレ用語集
 マーダー:ゲームに乗って『積極的』に殺人を犯す人物。
 ステルスマーダー:ゲームに乗ってない振りをして仲間になり、隙を突く謀略系マーダー。
 扇動マーダー:自らは手を下さず他者の間に不協和音を振りまく。ステルスマーダーの派生系。
 ジョーカー:ゲームの円滑的進行のために主催者側が用意、もしくは参加者の中からスカウトしたマーダー。
 リピーター:前回のロワに参加していたという設定の人。
 配給品:ゲーム開始時に主催者側から参加者に配られる基本的な配給品。地図や食料など。
 支給品:強力な武器から使えない物までその差は大きい。   
      またデフォルトで武器を持っているキャラはまず没収される。
 放送:主催者側から毎日定時に行われるアナウンス。  
     その間に死んだ参加者や禁止エリアの発表など、ゲーム中に参加者が得られる唯一の情報源。
 禁止エリア:立ち入ると首輪が爆発する主催者側が定めた区域。     
         生存者の減少、時間の経過と共に拡大していくケースが多い。
 主催者:文字通りゲームの主催者。二次ロワの場合、強力な力を持つ場合が多い。
 首輪:首輪ではない場合もある。これがあるから皆逆らえない
 恋愛:死亡フラグ。
 見せしめ:お約束。最初のルール説明の時に主催者に反抗して殺される人。
 拡声器:お約束。主に脱出の為に仲間を募るのに使われるが、大抵はマーダーを呼び寄せて失敗する。
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 08:54:07 ID:NbbboTdm0
【書き手の心得】

1、コテは厳禁。
(自作自演で複数人が参加しているように見せるのも、リレーを続ける上では有効なテク)
2、話が破綻しそうになったら即座に修正。
(無茶な展開でバトンを渡されても、焦らず早め早めの辻褄合わせで収拾を図ろう)
3、自分を通しすぎない。
(考えていた伏線、展開がオジャンにされても、それにあまり拘りすぎないこと)
4、リレー小説は度量と寛容。
(例え文章がアレで、内容がアレだとしても簡単にスルーや批判的な発言をしない。注文が多いスレは間違いなく寂れます)
5、流れを無視しない。
(過去レスに一通り目を通すのは、最低限のマナーです)

〔基本〕バトロワSSリレーのガイドライン
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)

【地図】
通常:ttp://www.symphonic-net.com/tobr2/img/map0.JPG
禁止エリア(既:赤 予定:水色):ttp://www.symphonic-net.com/tobr2/img/map.JPG

【補足】

同一パートの投下は本文(状態表)投下終了後、24時間置きましょう。

修正がある場合には
誤字脱字レベル、ストーリーに変更が無い場合、最初の投下より24時間。
ストーリーに何か変更がある場合一旦取り下げ、修正作投下から24時間空けるのが望ましい。
また修正の場合、書き手が来ない際の猶予期間ですが、修正依頼から五日間以内に何らかのアクションを願います。アクションが無い場合強制破棄になる可能性もあります。
なお、作品を取り下げる場合は書き手の方で一度宣言する事。
宣言から再投下の間に同一パートの被り作品が投下されたら涙を堪えて避難所へ。

荒れる事が予想される場合には捨てトリップ推奨。
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 08:58:04 ID:NbbboTdm0
【参加者一覧】 
TOP(ファンタジア)  :1/4名→●クレス・アルベイン/○クラース・F・レスター/●藤林すず/●ダオス
TOD(デスティニー)  :5/7名→○スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/○フィリア・フィリス/●ウッドロウ・ケルヴィン/○チェルシー・トーン/○イレーヌ・レンブラント/○ミクトラン
TOE(エターニア)   :5/6名→●リッド・ハーシェル/○キール・ツァイベル/○チャット/○フォッグ/○レイス(レイシス・フォーマルハウト)/○シゼル                  
TOD2(デスティニー2) :6/8名→○カイル・デュナミス/○リアラ/○ロニ・デュナミス/○ジューダス/○ハロルド・ベルセリオス/●ナナリー・フレッチ/●バルバトス・ゲーティア/○エルレイン   
TOS(シンフォニア)  :3/7名→○ロイド・アーヴィング/●クラトス・アウリオン/○リフィル・セイジ/●リーガル・ブライアン/●プレセア・コンバティール/●マグニス/○ミトス・ユグドラシル
TOR(リバース)   :5/8名→○ヴェイグ・リュングベル/●クレア・ベネット/○マオ/●ユージーン・ガラルド/●アニー・バース/○サレ/○ジルバ・マディガン/○アガーテ・リンドブロム
TOL(レジェンディア) :3/6名→○セネル・クーリッジ/○シャーリィ・フェンネス/○クロエ・ヴァレンス/●ノーマ・ビアッティ/●ワルター・デルクェス/●ステラ・テルメス
TOA(アビス)    :4/8名→○ルーク・フォン・ファブレ/○ティア・グランツ/●ジェイド・カーティス/○アッシュ/●イオン/○シンク/●ディスト/●アリエッタ
TOT(テンペスト)   :1/2名→○カイウス・クオールズ/●ルビア・ナトウィック
TOI(イノセンス)   :2/5名→○ルカ・ミルダ/●イリア・アニーミ/○スパーダ・ベルフォルマ/●リカルド・ソルダート/●ハスタ・エクステルミ
TOSR(ラタトスクの騎士):4/5名→○エミル・キャスタニエ/○マルタ・ルアルディ/○リヒター・アーベント/●アリス/○デクス

●=死亡 ○=生存 合計39/66

禁止エリア
03:00:A1
06:00:F3
09:00:A6
12:00:D6

現在までのもの
B1,F5,G7,C3
10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/25(水) 09:28:04 ID:yZ0xCQIAO
>>1
次はどのパートだろうかwktk
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/25(水) 12:56:25 ID:kIy9McTh0


                    =========== 、
                    ヽ マ グ ニ ス ヽ================================、、
                     ii ==========='                        .ll
                     ll                                .ll
                     ll      >>1 乙 、 だ 。 豚 が ・ ・ ・       ll
            _        ll                                .ll
          /  `ー 、    ll、                               .ll 
        /:::::::::::::::::::::::::::ヽ    `-======================================>>==''
       /..::::::::::::::::::::::::::::::::..\                 , ー- 、
      /..:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.l,               /`` '"l;;;;,`;,、
     l;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::::::::::::::::::::::::::.ヽ_           /y、       '_;;ヽ
     l;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::::::::::::::::::::::::l_!ヽ         .!/≠>      -= lー-、
     l;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::::::::::::::::::::/ ̄ \        /  ,ヘ. i ヽ、i|   ミ;;;;;;l;;;;/
      !;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:::::::::::::/__l、`ヽ  ヽ   .,-、'";;l ー 、   /ヘ ,, l`;;;;;;;/;;,,,ヽ、
     ヽ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:::::::::::::::lゝ-'     l_   l;;;;;;;;;;;;>、   `   /v_;;;;/- =、;;;;)
      \;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;::::::::::::::::l、      ゝ、`l ーll'<  \_ _ //ヮ,フ、;;;;;,,ヽ、
        ヽ;:;:;:;:;:;:;:;;;:::::::::,ー'ー-、 /- ̄ ヽ l  ll .l     /彡L-=,,i,ヽ、;;;;;;;;;;;;;;;)
         ヽー-、__ ,/  /, ヘ、'   , へl  ll l    /!ヽ、;;;;;;;l;;;;、ヽ、;;;;;/
          |   i     i /   \'"   ヽ/ l.lヽヽ_ノ// ii llヽ 、l;;;;!;;;;;;;;i
          i   l     v___    ヽ、   .! l l 丶ー / ii /l  l;;;;;i;;;;;;;l
          .l   l       7ヽ、       l/ l  /  /./ ー./  /,;;;;i、;;;!
          l::...        /`ー'\     l/ー 、 //  ,ー、  l;;;/、
         ,、l:::::::::...      ./`i  ,l、 ー,-,='  / ,/'  ,/  ヽ__/ ヽ、__
         l)、ヽ、:::::::::::::::::: /! l ,< ヘヽ、//==-、_//  /    ヽ ,- ='"  /
         l 、\ `、ー-一' ,'"/l 、  `ゝ、'-、___//__ ,'",     )'    -'`,
          l  `ヽ==-=-'`   l_ゝ、 .lー-`ー--,--- ' l     <、, ヘ’, -=ヘ
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/25(水) 14:23:45 ID:wb4EG+NaO
ナッシュです。規制のため携帯から失礼します。
テイルズロワラジオのお知らせに参りました。
第一回ラジオを11/28(土)の21時から放送しますので、お時間のある方はよろしければどうぞ。
ラジオのアドレスは当日スレに書き込ませていただきます。

では、失礼しました。
13 ◆FY07Y1/rCo :2009/11/25(水) 23:13:48 ID:EONJPIR+0
思いのほか早くやるべきことが片付いたので、修正投下します。

冒頭に

眼前に佇む城は、記憶の中のそれと大差ない。

「フィリア、何か分かったか? 」

ルークの言葉に、フィリアは申し訳なさそうに首を振る。
早く友と再会したいだろうに、ルークはフィリアの調査に付き合ってくれている。
一人でも大丈夫とは言ったが、危ないだろうとルークは折れず結局付き合わせてしまっている。
消えない不安。そして無力な自分への苛立ち。役に立ちたいという焦り。
時間を割いて、外壁を一回りしても成果という成果は見られなかった。
雪だ。
フィリアの知っているそれよりも酷く、ここは雪に覆われている。まるで吹雪がこの城だけを襲ったようだ。
それがフィリアの調査の邪魔をする。
中に入りましょうとフィリアは告げた。

遥かな高みから、二人を眺めている人間がいることに気がつかずに。




を追加でお願いします。

>>12
楽しみにしています
14名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 00:10:31 ID:2/iEBJJFO
修正おつー
15名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 10:41:01 ID:4dxLznGdO
今時間が一番進んでないのってどこ?
放送そろそろかと思ったけど、シゼルたちとエミルたちとミトスたちとクライマックスだからまだ無理だな
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 16:00:56 ID:ON6VeHEBO
神組と双剣士組が遅れてるな
どっちも書きにくいw
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 23:13:58 ID:aGfTZPXlO
>>15
http://www.symphonic-net.com/tobr2/mobile/time.html
こいつを参考にすればいい。
一番進んでないのは、二刀流組もだけど神組だな。神組はダントツで進んでない。なにせ放送直後だからなぁw
18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 23:18:50 ID:OYmIF+W00
一番進んでて9時か。放送が12時だから、何気にまだまだだな。
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/28(土) 21:10:58 ID:FZEAD56U0
今からラジオ放送します〜よろしくお願いします。

ラジオのアドレス…… http://nash-tobr.ddo.jp:8000/
掲示板のアドレス…… http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13268/

聞き方は↓からどうぞ
http://www.atamanikita.com/start-shoutcast/shoutcast-14.html
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/01(火) 08:21:58 ID:fAe6+5yT0
皆、期待のパートってある?
俺はサニイタウンと塔だが。地味に館も気になるけど。
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/01(火) 16:42:46 ID:7Tc39pPnO
双剣士組かな
エリクシールという希望があるけどロニも来そうだしw
スパーダ死んだらルカが危険だなw
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/01(火) 20:12:47 ID:27hxN6ICO
そのルカ自身も着々と自殺フラグを積み重ねてる件について……。
後マオが動き出してからが地味に気になる。
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 08:14:56 ID:uqJ7icdNO
サイグローグを介入させまくりたいな
ジョーカーが2、3人居てもいい

ロニに元の世界の仲間以外皆殺しに出来たら、ロニ他仲間は生還させてやるとか
チャットにあと三人殺せばお前の罪をなかったことにしてやるとか
エミルにマルタの状況を教えてやって、ロニかチャットと同じ条件で薬やるとか

介入なんて最終手段ですけどね

双剣士組と神組に介入させてもいいかもしれない
何でもありなサイグローグいれたら書きやすくなるかも
神組は意外と心脆いから
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 16:36:09 ID:kKKlFO8m0
ルカか・・・あいつの行動はデクスの発言によって変わるからなあ・・・どうなるか予想できんな
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 19:08:40 ID:X5FAt9HrO
ルカレインとロイド組は前以上に孤立してるな…
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 19:40:25 ID:l/8dVc9C0

ホームレス兄弟「俺たちもう終わっちゃったのかな・・・」→弁護士「5700億円の遺産相続の件でお話が」
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/news/1259734276/l50

393 : しらたき(catv?):2009/12/02(水) 18:02:25.20 ID:6MQrDJuw
お金持ちがケチな理由がわかったかな?
金が金を生むから金持ちは金持ちなんだ。
だから、この兄弟は金持ちの孫でも、ずっと無一文のままだったんだね。
金のなる木の金自体を無くしたら、金持ちなんてただのコジキ。

397 : しらたき(catv?):2009/12/02(水) 18:04:14.17 ID:6MQrDJuw
鳩山さんが偉いわけじゃなくて、鳩山さんが持っているたくさんのオカネが偉いというわけなんだね。
彼からオカネを取り上げたら、何も残らないただの変なオジサンだよ。

399 : 定規(catv?):2009/12/02(水) 18:06:50.40 ID:4D3Vma0e
鳩山兄弟に金が無かったらこんな兄弟になってたんだろうな
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 19:55:06 ID:FR5O9Zdx0
 久しぶりにきてみれば2作投下されてたんですね。

 ヴェイグとアッシュ・・・ついに出会ってしまいましたね。
 そして1st以来のヴェイグ・カイルコンビですね。
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/04(金) 18:38:02 ID:KmglfJmcO
ミク話削除しちゃった人、戻ってこないかな
やっぱ書き手がたくさんいた方がそれぞれ個性が出るから見てて楽しい
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/05(土) 00:43:48 ID:C2hYVpMeO
あの人全話読んでたみたいだからとりあえずロムはしてるのかね?戻ってきてくれるならそれにこした事はないが…案外別の話書いてたりして
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/05(土) 08:54:53 ID:XVboDfDqO
ふと思ったんだがリバース勢危険人物ばっかりだなw
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/05(土) 12:23:46 ID:PyvCYlqtO
それでも猫姫なら……猫姫なら何とかしてくれる……!

引きこもってたせいで空気もいいとこだがなww
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/05(土) 12:25:11 ID:Bcgbs9000
いや、猫姫なら、レイスが居る以上これからのはず・・・!!
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/05(土) 21:35:03 ID:XVboDfDqO
>>32
IDすげえなw
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 06:01:05 ID:aqN3pbHz0
>>23
双剣士組って何気に何らかの形で死亡経験があるな
それも仲間との争い関係で
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 18:09:12 ID:ljr8QVH20
ナッシュ氏ね
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 20:36:12 ID:0//cX23vO
そうだよ。ナッシュ氏。
マッシュ氏でもラッシュ氏でもなくナッシュ氏。
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 22:13:25 ID:z9jPJ6hD0
誤爆か?
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/09(水) 22:31:35 ID:7dsYtXoI0
グレイセスのコス変でアイマスや初音ミクが出てたな・・・どうしてこうなった・・・俺の青春だったテイルズシリーズはどこに行った・・・
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/09(水) 23:01:49 ID:v5uWx4+vO
もうオレはテイルズはそういうものとして諦めてる
技名だけは頂けないがw


とは言ってもラタトスク以降やってないけどね
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/09(水) 23:03:57 ID:cEIskdGS0
俺、未だにD2やってるよ
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/10(木) 14:36:05 ID:mev6rhaU0
ラタ以降ってTOHとTOGしか無いじゃないか
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/10(木) 16:22:47 ID:tBHuyGnDO
>>41
ラタ、TOV、TOH、TOGだな
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/10(木) 22:59:02 ID:s/mmvbCx0
レディマイとVSもあるな
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 20:40:10 ID:ZamIJAewO
グレイセス発売だな
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/12(土) 08:57:57 ID:kEqQRlqM0
ロワで支給された品が本編に逆輸入
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/12(土) 12:01:03 ID:3BD4IbvkO
何がきたの?
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/12(土) 15:38:53 ID:4Dl9+MAm0
>>45
む?
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 00:57:44 ID:oDUBFDch0
カイルの生首か?
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 16:16:41 ID:/dXx9a4HO
カイルの生首ロッドを持って「私の英雄を見つけてくれてありがとう」か。どうしてこうなったww
問題はここのリアラも精神状態的に……。
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 23:57:44 ID:LozOGExj0
カイルの生首って?
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 00:18:24 ID:ES7vhA7kO
TOGにゲスト参戦したリアラの依頼に「私の英雄を見つけて欲しい」というのがある。
その英雄というのが「カイルの頭を模した飾りが先端についたロッド」の事。
それを持って笑顔で「私の英雄を見つけてくれてありがとう」「俺は英雄になる!とは言わないけどね」。

つまり生首持ったヤンデレに見えない事もない。
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/16(水) 12:57:20 ID:VB9I6mk0O
なるほど。そんなことか。
生首っていうからどんなものかとビビったよww
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 12:59:45 ID:NDcRe61IO
今回のゲストの一人であるヴェイグは塔のてっぺんで主人公達を待ち構えているんだっけ
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 07:17:51 ID:dpmKUx9PO
だな。
念願の一人秘奥義を習得して米具さん歓喜。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 10:05:49 ID:zNU4VAu4O
>>53
Gでの30階建ての塔から世界が見渡せる視力があればフォルスなんていらないよなww
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 15:10:54 ID:0CVDg7msO
ここまでのSSをまとめて本にしたら何ページくらいになるかな?
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 16:32:49 ID:T9ikARQPO
ちくしょう!ネタバレやめてくれよ!まだGやってないのに!
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 16:54:41 ID:4xEnf2Hm0
>>56
何ページどころじゃないな。グロリアだけで小説一巻分だw
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 17:33:14 ID:T9ikARQPO
そういや今日はチャットか。さて、そろそろ投下がくるか…?
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 18:14:37 ID:9jM31FrLO
投下こいこい!
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 00:05:39 ID:JNVs1xIwO
チャットに入るのは恥ずかしいからここで。
チャットで話してる書き手もそうでない書き手も、楽しみに読ませてもらってるよ。
アナザーのクオリティは確かに異常だけど、ここも数あるロワの中でもトップクラスに良く出来た話だと思う。
つまり応援してます頑張って!
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 15:39:28 ID:D0faW9kQ0
投下します
63仄暗い水の底、奇跡の呼声 1:2009/12/20(日) 15:40:08 ID:D0faW9kQ0
300秒。
何かを成すにはあまりにも物足りない時間を前に、小手先の言葉を弄ぶ暇は無い。
「……フィリアか? いや……そうか、ハロルドか」
此方と彼方を分け隔てる巌の境を越えた音が、ミトス=ユグドラシルに問うた。
ほう、とミトスは感嘆を僅かに漏らす。
見知らぬ人間がジューダスはここにいると分かり、
かつジューダスとエミリオ=カトレットの関係性を知り、
あえて別の人間を遣いに出すならばこのライン以外に考えようがない。
話し相手の知性を疑う必要が無いと分かったミトスは、鷹揚にいった。

「怨むかい?」

その言葉に、沈黙が淀む。
前後の繋がりだけを考えれば意味不明過ぎる返事だ。
だが、ミトスは壁の向こうの人物がこの言葉の意味を誤らないと確信していた。
その問いは、自分が誰を殺したのかを白状しているに等しい。

その僅かな沈黙でさえも、今この状況に於いては相当な時間と言えた。
岩石の青黒い封印。その奥で、ジューダスと呼ばれる男がどれだけの思考を重ねているだろうか。
その間を、ミトスは埋葬した土の感触をこの壁と比べながら待った。

「……怨んだところで、失ったものは取り戻せない。それに、許しを求めに来た訳ではないだろう?」
「確かにね。わざわざ巻き添えを食らいに来て死んだ奴の為に許しを求めるほど、優しくないよ」

少し、自虐の色が強すぎたなとミトスは思った。
この掌の感触を加味しても、あの女に与える憐憫としては少し重すぎる。
ハロルドに言われた言葉が後ろ髪を引いているのかと思う。
それとも何か、失ったものは取り戻せないと、今更言われてしまったことにささくれ立っているというのか。

「ふん、不器用な奴め……達観しているつもりだろうが、唯の焼け鉢に聞こえるぞ」
「へえ? そのまま死ぬのがお望みだったのかい? それは気が利かなかった」

全てを透かすような声に、ミトスは明確な苛立ちを覚えた。
まるで自分よりも格上(あるいは、潜った奈落の深さ)であるかのような言葉だった。
同時に、違和感を覚える。この邂逅にハロルドが一枚噛んでいると分かっていてミトスを挑発するのか。
そこまで読みが利く人間であるならば、この出会いの意図はジューダスの回収であると分かっているだろうに。
64仄暗い水の底、奇跡の呼声 2:2009/12/20(日) 15:41:31 ID:D0faW9kQ0
さて、どうやって脱出させるか。
ミトスはジューダスが何を言い返してくるかを待ちながらそんなことを考えた。
水が溜まっている以上、壁を打ち抜いてそれをどこかに逃がしてやればいいのだが、
残響から見てかなりの水量があるだろう以上、下手に割れば洞窟へのダメージが読めない。
最悪自分自身やパッセージリングまで水が及ぶ可能性も無くは無い。
アウトバーストで割った瞬間、エクスプロ―ドで蒸発させる……まあ、普通に考えて水蒸気火傷で死ぬな。
(それにしても、遅いな……)

1分。
皮肉も侮蔑も怒りも無い沈黙に折れたのはミトスの方だった。

「……オーケィ。何が望みだ? 聞くだけ聞くよ。どの道、それしかできない」
「ここから逃げておけ。お前がルーティを殺したというなら、あいつと鉢合えば無事ではすまない」

ああ、成程なとミトスは思った。
スタンという人間はまだ朧にしか聞いていないが、この話しぶりでは付近にいるマーダーであることは疑いようが無い。
ここから救助するには、いずれにしても派手な手になる。感づかれる公算は高い。
そしてそれは、この付近にいるハロルドを危険に晒すことになる。

「……気に入らないね。まるで、僕がそいつに勝てないみたいじゃないか」
嘘だ、とミトスは自覚する。気に入らないのは自らの命を惜しむそぶりも見せぬ当人、そして。

「僕が、手も足も出なかった。ハロルドならこれだけで伝わるはずだ。
 何処からかは分からないが、何かで身体能力が半端無く上がっている。現状では勝ち目が見えん」
「もしかして、宝石みたいなものを付けてた?」

嫌らしい笑みを浮かべながらミトスは壁に問いただした。向こう側の人間を嘲笑う要素を見つけたからだ。
「お前の世界の兵装か」
「何だお前、エクスフィア装備“如き”に負けたのか」
無論、ミトスはジューダスという男の能力を過小評価しているわけではない。
同等の人間が立ち会って、エクスフィアを持つ持たないの差はそれなりにでかい。
だが、相手が知らないことを此方が知っているというのは強気になるには十分な要素だった。

「その程度なら、別に労苦も無い。仇討位はしてやるよ」
「馬鹿か。僕はそんなこと頼んだ覚えは無い。鉢合うなと言ったんだ」

ん? とミトスは僅かに首を傾げた。危険なマーダーが居るから逃げろという話ではないのか。
ルーティを殺したこちらの能力を過小評価は考えにくい。ならば……ああ、そういう。
65仄暗い水の底、奇跡の呼声 3:2009/12/20(日) 15:42:29 ID:D0faW9kQ0
「マーダーとは言え、旧知の間柄では死ぬのを見るのも嫌と。本能的に即死タイプだねお前」
「あいつは、そんな男じゃない。とはいえ、恐らくそう思わない人間も多いだろうがな」
「ここに入ってから変わったと。環境如きで河岸を変えるような自我の乏しい奴なの?」
「今のあいつは、何かを見失っている。あの宝石の、せいかもしれん」
「無いね。自閉するならともかく、発狂するなんてエクスフィアには無いよ」

ハロルドが最も嫌悪しそうなタイプだな、とミトスは思った。
だが、それならばフィリア、そしてジューダスのこの信頼の置き方はどう説明すればいいのか。
装備した者の精神を狂する宝石、そんな御都合なアイテムなんてある訳が――――――

(……まさかね。どうにもあの女の死を引き摺り過ぎじゃないか僕)

不意に、ルーティが護ったラタトスクの顔を思い出す。
そんなものまで有るとしたら面倒極まりないし、同時にサイグローグの底の浅さが知れてしまう。

「どうした?」
「何でも無いよ。……で、どうする? 僕、もう行ってもいいわけ?
 一か八か、そのスタンってやらを救ってくれとか試しに聞いてみるとかしないわけ?」
「……そこまで望める程、僕は面の皮が厚くない。僕は、あいつを完全に否定することができなかった。
 今のお前はかつてのお前でも僕でも無いと、真っ向から糾せなかった。
 多分、もう、あいつを救える奴は――――――――――――――」


「…………ざっけんじゃねえよ……ピーピー女々し……いコト、ぶつくさ……言い…………やがって」


ミトスの警戒レベルが3倍ほど立ち上がる。第三者が居たのか、と戦闘態勢に入ろうとするが、
その声が向こう側から聞こえることに気付いて矛を収める。

「無理だったから、守れませんでしたーとか、はっ、なんだそりゃ、その仮面はチキンの骨で出来てんのか」
ジューダスの声もそうだが、今度のはまた豪くガキだな、とミトスは思った。
「お前に、何が「わっかんねーに決まってんだろ……! 守りたいと思ったら、何が何でも守る……
 それが出来ね―なら、いや、その覚悟がねーなら、最初っから口にすんな…………中途半端が、一番、最悪だ……
 鍛え上げたら、後は、真っ直ぐ、折れない……それが、誰かの剣になるってことなんだからよぉ……」

ずきり、とミトスの胸が痛んだ。生きたいとは思わないが、むざむざ死にたくもない。
正に自分のことだな、と少し思う。
66仄暗い水の底、奇跡の呼声 4:2009/12/20(日) 15:44:36 ID:D0faW9kQ0
「……マリアン……」
「んぁ? なんか言ったかコラ」
「いや、何でも無い。……で、お前にここから何が出来るというんだ?」
「へっ、決まってんだろ…………おい、そこのガキ、聞いてんだろ」

ジューダスの僅かに緩んだような声の後に浴びせられた言葉に、ミトスは僅かに面食らった。
言うに事欠いて僕をガキか。

「なんだガキ。お前が思ってるよか、僕は年上だぞ?」
「おーおー恐え恐えー。ルカお坊ちゃま並みに弄りがいがありそーだなぁーひゃひゃひゃひゃ」

けらけらと笑う新しい声に、ミトスは純粋な怒りを覚えた。もう殺すか。

「遺言位は、聞いてやるよ。だからさっさと言って死ね」
「―――――――――――頼む。そのルカって奴を、守ってやってほしい」

その誠実さは、ここに集う水よりも綺麗だった。
吐き出す直前の言葉さえ喉に押し戻されてしまう力があった。
それだけで、この刃のきらめきを疑う余地は無かった。

「イリアも、リカルドもいねぇ。あのブタザルが居たからコーダがいる可能性もあるけど、それも微妙だ。
 もう、あいつを護ってやれるのは俺しかいねえ……でも、このザマじゃそれも、無理くせぇ」

そこでミトスは当然のことに気が付き、相手の言葉の奥、その息遣いに注力した。
過呼吸に近い……酸素が、足りてなさすぎる……

「だから、頼む……「俺」を、ルカまで運んでくれ……それだけでいい。
 顔も知らねえ奴に頼むのは胸糞悪ぃが、背に腹も変えられねえ。俺は……もう二度と、裏切りたくねぇんだ」
「……お前の死体を担いで、何処にいるかも、それこそ生死もわからない奴を探せって? 僕にメリットあるの、それ?」

ミトスはこの時、僅かだが別にそれを行ってやってもいいかと思った。
もし身体を再構築できるならば、さほど苦痛ではないからだった。
だから、これは境の向こうの「剣」の覚悟を問うだけの言葉。ただそれだけ、だが。


「ある。最強の“剣”を貸してやる。天地空如くを制す、とびっきりの一振りを、な……」


「お前……その、体は……」
67仄暗い水の底、奇跡の呼声 5:2009/12/20(日) 15:45:40 ID:D0faW9kQ0
ジューダスの狼狽と壁越しに伝う何かをミトスは同時に確認した。
「へへ…………もーちょい後にとっておきたかったんだけど、な、
 このまま人として何も守れないまま死ぬくらいなら…………前世に墜ちてでも、守る方を、俺は選ぶ」

衝立の向こうで鶴が機を織っている。だが、その障子は厚くミトスにそれを覗くことはできない。
「で、どーするよ……やってくれんのかよ? ああ、別に無理だったら別にいいぜぇ? 
 これ、ちっちぇえガキじゃ到底扱えない代物だしよォ、しゃーねぇよなあ?」

「…………ほざけ。その挑発、乗ってやるよ」
ミトスが応ずる。決して怒りで相手に乗った訳ではない。
少なくとも、この声の主はもう長く持たない。だが、その言葉に明確に存在する“最強”が気になった。
だが、そこでもう一つの疑問が沸く。“少なくとも”?

「へへ……後は、あんただ……どーするよ、そんなザマで、よ……諦めるか?」
「…………悪夢は、何時もここから始まった…………」

その問いに、壁の向こうの声は自らに言い聞かせるように呟いた。
水没する願い、闇に掻き消える希望。それは声の主を構成する基点なのだろうか。
それが、少しだけ代わる。命の使い方を見つけたような声だった。

「だが、諦めなければ……そこからでも、人は過ぎたる願いをかなえることも出来る、か」

コン、と壁がミトスの方に向かって震えた。
岩の状態を確かめるかのような振動、そして、間髪をいれず殺意がミトスの正面を穿った。
「魔人闇!!」
僅かな水と共に黒き闇の刃が壁から生え出てくる。殺意に半歩だけ退がったミトスは、それを見た。
迸る黒が消えたのちに現れたのは、白き光の刃。

(レーザーブレイド……これが、最強? まさかな)
「何をしている。それを掴め」
「……このレーザーを、素手で? 冗談じゃ……」

言いかけた言葉を呑みこみ、ミトスはそれを掴んだ。掌がじゅうと焦げる。
痛覚はシャットしない。これは烙印のようなものだ。罪を癒すには、罰しかない。

「生憎と、仲間を殺した相手にかける情けは無い。一気に引くぞ。掴んでろ」
「言わなくていいから、とっととやれよ」
68仄暗い水の底、奇跡の呼声 6:2009/12/20(日) 15:46:30 ID:D0faW9kQ0
その瞬間、ミトスの腕が壁の向こうに吸い込まれる。
流石に刃で拓かれた道は狭く、岩で腕に傷がつく。だが、それでも少しずつ先に進んだ。
「お前に頼める義理は無い。だが、一つ聞いてもらえるか」
「その問いには最初に答えた」
「…………カイルとディムロスを、探してほしい。スタンを殺さず止められるとすれば、あの二人だけだ」
その名前に深淵より響く何かを感じながら、ミトスは先を促した。
「ディムロスはそう問題は無いだろうが、出来ればカイルを、死守してほしい。
 恐らくロニも放送で相当なことになっている可能性が高い。下手をすれば、リアラも。
 あいつが死んだら、最悪で3人の戦力が、黒に墜ちる」
「…………やることが多い。そのついででいいなら」
「構わない」

ずい、とミトスの手が水の中に触れる。火傷が猛烈に染みた。
「なんでえ、随分とおねだりするんじゃねえか……あー、わりぃ、俺も一コリクエスト。
 つーか、忠告だな。ルカに我を渡すなら、早めにしてくんねぇ?
 “俺がこれ出来る、ってことは、ルカもやりかねねぇ”。アスラに墜ちたら、そーとー面倒になるぜえ」
「覚えとく」

その言葉に、満足したかのように声はふぅと息を切らした。
そして、ミトスの手に一つの柄が握らされる。

どくん。

その時感じた感覚を、ミトスは一生忘れないだろう。
オリハルコン、ヒヒイロカネ、シルクスチール合金。如何なる神鉄を扱えばこんなものができるのか?
いや、材質だけの問題ではない。ドワーフの精鉄技術に勝るとも劣らぬこの業物…………

(エターナルソードと同じ、神の錬鉄か!!)
「お前、これは……」
「ひゃひゃひゃ……貸しはでけぇぜ……聖剣デュランダル……、確かに、わ、たし……た、……む……」

水に集い、沈む音。もう直ぐ、全てがみっしりと満たされる。
ああ、気付くべきだったのだ。何が5分か、それは水が満たされるまでの時間の話だ。
マーダーに追われた手負いが、水の中で5分も……まともにあれる、訳が……

「……その刃で、断ち切ってくれ……スタンの、夢は、イレーヌの世界は……ここで淀んでいいものじゃ、ない……」

願いは鉄、意思は焔、水にて整え、型に嵌めて精錬。
そこより剣は生まれる。
折れぬ、力強き、聖剣を越える奇跡の刃を。

「「ルカを・スタンを……頼む……」」

ミトスが一気にそれを引き抜く。
爆発的なエネルギーが境界を引き裂く。
蒸発する水は、剣の産声か。

69仄暗い水の底、奇跡の呼声 7:2009/12/20(日) 15:47:16 ID:D0faW9kQ0
――――――――――――――――――――――――――――


驚くほどに静かに、そうして巌と水は消滅した。
立ち尽くすミトスの髪に滴った水は、血のにおいがした。
眼前には壁を抜けて存在する空間。
どさりとおかれたサックが2つ。水に散った紙がいくつか。

そして、壁の向こうで死んだ、黒衣の死体がいっこ。

あの失血で、この空間に満ちた水で、あそこまでのことが出来るものなのか。
いや、そもそも、本当にあの声は、ここから響いたものなのか?
この剣の柄にぴったり嵌った、首輪の存在は、何?

……悪夢に囚われていたのは、誰?

だが、ミトスはそこに拘らなかった。少なくとも、この剣の感触がある今は。
(ハロルド、どうやら、謎解きしている暇はもう無いかもよ?)

「ミトス=ユグドラシルの名に於いて、確かに聞き届けた」

悪夢よ此処より終われ。天使握りし聖剣が、その介錯を仕ろう。



【ミトス・ユグドラシル@ミトス 生存確認】
状態:HPTP100% 謎解きにちょっとやる気が出てきた ある重大な何かに気付いた?
   小さな罪悪感 大樹が気になる 天使化 びしょぬれ
支給品:ジェットブーツ エリクシール 紫電 スペクタクルズ×10 ロイドの仮面セット(残り3枚) レーザーブレード
    苦無×18 ミスティブルーム とうもろこし イオンの首輪 デュランダル サック×2(ジューダス・スパーダ)
基本行動方針:取り敢えず死ぬ気は無いけど生きる気も無い
第一行動方針:この島の舞台裏の解明
第二行動方針(A):ルカにデュランダルを渡す
第二行動方針(B):カイル、もしくはディムロスを確保する(スタンを止める?)
第三行動方針:ティア探しにかこつけて、あの巨大なマナの正体を確かめる。
       出来れば感知した方向(現場)に行ってみたい。ティアは見かけたら回収。
第四行動方針:ルーティの仲間へは隠しもしないがあえて真実をいう気もない。
       また事実を誤魔化す気もない。
第五行動方針:ハロルドにいつか「ぎゃふん」と言わせる
現在地:C6・アラミス湧水洞内


【ジューダス 死亡確認】
【スパーダ=ベルフォルマ 死亡確認】

*デュランダルの精神が現存しているかは不確定。
*スパーダは死亡判定。確定です。デュランダルから死体にも戻れません。
*デュランダルの柄には、小型サイズの首輪が付いています。

【残り 37人】
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 15:48:50 ID:D0faW9kQ0
投下終了です。
無茶やってるので問題があれば破棄します。
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 16:51:50 ID:JNVs1xIwO
投下乙です。
スパーダが聖剣状態をキープ出来るかどうかは、原作でも言及されてないし問題無いと思います。


二人分の遺言を受けて、ようやくミトスが動き出すか……?
だがルカもカイルもかなりヤバいぞ。急げミトス。
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 16:54:42 ID:fsdwlBXi0
投下乙です
ミトスって瞬間移動出来なかったっけ?
視認できなければ駄目とか?
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 16:58:38 ID:JNVs1xIwO
「死んでも」キープ出来るかでしたね
こういう独自の解釈も、他には無いこのロワの面白い所だと思います
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 17:46:52 ID:fsdwlBXi0
>>72
ごめん。どっちにしろ描写ではどう足掻いても手遅れだったんだな
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 18:18:44 ID:2fbH/74yO
投下乙です!

カイルの所には捜索対象のティアとマーダーミクたん、そしてルカは真逆の方向にw
それに加えて近くにはロニがw

今まで地味だった反動なのか…?これから一気に目立ちそうな予感w
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 18:55:02 ID:fsdwlBXi0
>>75
ルーティ殺したのと今回でジューダス殺したと誤解される可能性高いよな
お前の義母は殺したけど叔父を殺したのはお前の義父だって言っても今のロニが納得するとはとても
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 21:56:07 ID:uJ2mvew10
投下乙。ミトスが一気に重要な役回りになったな。
さて、ルカとスタンはこれからどうなるのか。ロニはどこへ行ったのか・・・これはみなぎってきたw
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:54:15 ID:wcJ8ygrMO
カイルとディムロス対スタンっていうのも見てみたい
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 23:56:49 ID:fsdwlBXi0
このままだとカイルとシャルVSスタンもあり得るかな
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 18:42:34 ID:sMVPrrH3O
>>79
そうすると相性が合わないからヤバイんじゃないか?
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 01:19:23 ID:nREMYYk/O
東に向かえばルカとディムロス、南に向かえばカイルとティアがいるんだよな。
東にはロイド、南では大乱戦。
どちらに向かうかで状況がかなり動きそうだ。

なんか1stのジェイを思い出すな
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 19:00:26 ID:P5KoIej+O
さて、チャット情報によれば先週末投下予定の書き手氏が…。
つまりクリスマス投下に期待してもいい、そういう事でいいんだな!?
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 22:56:31 ID:OeUnGYdzO
てかよく考えたら、参加者達がほとんど寝てない件w
寝れる状況じゃないのは分かるが大丈夫かな?
ロイド達やルーク達、スタイレにガオラキア組もまだだよね
まあまだ時間進んでないとこもあるけど
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/25(金) 09:05:22 ID:GSOJg5ESO
なんてこった…。
ジューダスもスパーダも終了ですか…。
共にシリーズ内唯一の良心キャラだったが、いなくなるのはかなり辛いな。
気がつけばD2組は泥沼化してるし、I組はルカのみと全滅にリーチ。
ミトスはこれからどうするんだろ…。
ルカが正気に戻るかどうかはミトスとエルレイン次第だな。

ディムロスは、今はリアラが持ってるんだっけ?
マオに渡ったらスタンを止められなくなるのでは?
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/25(金) 20:20:27 ID:+YC7zojeO
なんとか投下をクリスマスに間に合わせようと思ったんだけれど…無念。すみません。
でも近日中に投下はしますので、その時はよろしくお願いします。
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/26(土) 00:18:18 ID:4Igf92t80
まってるぜー
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/26(土) 00:46:06 ID:yjOc4Cl2O
投下期待ィィィィイイイイ
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 08:31:34 ID:bDCQ/MiEO
期待せずにはいられないな…!
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 18:23:34 ID:vic4cvlpO
ジューダス様が死んでるんだけど何故かな^^;
おかしいよね^^;
去年の1月に私が書いた奴は破棄されて今回は許容してるって^^;
おかしい;おかしい^^;
しばらくスレ見てなかったら勝手に正史になってるし^^;
おいおいおい^^
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 18:29:45 ID:vic4cvlpO
俺がエリクシール飲ませる話あったよね^^;なんで破棄されてこっちは採用されてんの^^; ちょっと本当に信じられない^^;
誰も更新しないから俺がせっかく書いたのに破棄かよおい^^;
ちょっと目を離した隙に好き勝手やりやがってよぉ 大体エリクシールあったり生存する流れだったよね^^;
自分の好みで勝手にジューダス様殺すなよ^^;
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 18:33:02 ID:Cvrx5ry1O
書いてみたいけどネタがちっとも思い付かない……
つくづく書き手さんは凄いなぁと思うわ
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 18:51:43 ID:vic4cvlpO
PART9の632をしっかり見ろよ^^; ちゃんと書いてあるだろ^^
あれが正史だからまとめサイトの方はよろしくお願いします^^

ジューダス様死んだら荒れるよ多分^^;
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 21:58:39 ID:jz9Yae5rO
>>92
スパーダについてはスルーですかそうですか…。
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 22:13:20 ID:q+keASjxO
まぁ以後スルーで。
構ってやるな
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 23:50:46 ID:rP3NRoTrO
久しぶりに見たw
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 18:13:21 ID:ojKv7GhNO
期待してるぜ
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 23:24:37 ID:gZ6YLDTp0
投下します。年越しついでに支援がてら楽しんでいただければ幸いです。
98バッド・アップル方程式 1:2009/12/31(木) 23:25:36 ID:gZ6YLDTp0
「でも、解ったのは…。失いたくない。皆を」
少年は、少女から目を逸らしたまま拳を握る。手中の何かを喪わまいと誓う様に、強く。
不確かなものを掴み、確かにする様に、硬く。
「親も、友達も、スパーダもアンジュもリカルドもエルマーナもコーダも…」
少年は小さな口からぼそぼそと、不器用に言葉を零す。
神に罪を懺悔する様に、罰を受けようと吐露する様に、少年は灰色の声を零し続ける。
対する少女は項垂れた少年の旋毛を見ながら、腰に手を当てて黙していた。
「そして、」
少年は何度か手を開閉させた後、何かに決意した様に、すっと頭を上げた。
煤と砂に塗れた銀髪を風に靡かせながら、けれども懸命に、強い眼差しは真っ直ぐに。
一寸の迷いさえも感じさせないその険しい面構えは、少女の胸を強く打った。
「……イリアも」
目を細めたまま少年を凝視する少女は、口をへの字に曲げ、鼻から息を吐いた。
帰ってきたのだ。世界を変えようとしていた魔王が、いや……“ルカ=ミルダ”が。
自分を見付けて、見失って、偽って自棄になって。
それでも少年は、少年を取り返して帰ってきた。

「とにかく、おかえり。おたんこルカ」

だから少女は、腕を組みながら笑って応えた。世界は今、変わった。
少年が少年を取り戻した今、世界を変える事は、こんなにも簡単なのだ。
「イリア…」
「イナンナはね、アスラを裏切ったけど、あたしはあんたを裏切ってない」
頬をぽりぽりと掻きながら、少女は少年の斜め上に目線を向ける。
「そしてさ…。誰もあんたを責めたりしてない」
それが少女なりの照れ隠しなのだと、少年は理解していた。
だから少年は、少女らしいな、と少しだけ微笑む。
「でも…。謝らなきゃ」
確かに少女は少年を裏切っていない。
だが……だが、しかし少年の罪の意識が消えた訳ではない。
申し訳なさそうに佇むそんな少年を見て、少女は大きな溜息を一つだけ吐いた。

「あんたはルカでしょ? ルカはあたし達に何か悪い事したっての?」

ああ、と少年は目を細め、胸中で唸った。これだ。これがイリア=アニーミだった。
「…何も」
少年は左右に小さく首を振った後、笑う。
帰って来たんだ。僕の居場所に。
「さ、あたしの家に行こう」
そう言ってにへら、と笑ってみせる彼女は、太陽の様に眩しくて。
「みんな居るから」
そうして彼女は、その紅潮した頬を隠す様に、目を伏せた僕の肩を乱暴に叩くんだ。

ああ、でも……でもさ。ねえイリア、リカルド、スパーダ。
もう此所に、君達は居ないんだよね。
なら、僕<アスラ>よ。
帰るべき家すら失くした僕<ルカ>は……。



『なんて、孤独なんだろうね』



99バッド・アップル方程式 2:2009/12/31(木) 23:26:35 ID:gZ6YLDTp0
ポジとネガ。闇と光。黒と白。
決定的な違いが何処かにありながらも、寄り添い合う二つの要素。
一方がなければ存在しない、知覚出来ない差。消失する独立性。産まれる平行性。陰陽互根。
陰がそれを自覚したように、陽の考えはあまりにも陰に似過ぎていた。
光から逃げる様に入り込んだ部屋の隅で、陰は膝を抱えてがたがたと震える。
白に、陽に怯える様に顔を伏せ体育座りをするその姿は、傍から見れば酷く惨めなものだった。
互いの相似要素と差異要素を、漠然とだが自覚してしまった陰。
彼にとって、陽の喪失はそれ程までの事変だったのだ。
本来、それは陰である彼が選ぶ要素だった筈だ。
死、即ち陰。生、即ち陽。ならば自殺という濃黒は、間違いなく陰の極み。
だが、陽であった少年はそんな陰の極みを自らの手で選んだ。
白亜の世界に居る筈の、純粋無垢な少年が、自ら命を絶つ黒塗れの道を選んだのだ。
……いや、一切の汚れすら許さない汚れなき純白を無と形容するならば。
それならば、或いはそれは陽として正しい選択なのかもしれない。
それとも、陰陽可分だと言うのか。
太極図というものがある。陰陽を表した絵図の事だ。
その絵図には、陰陽の中に、更なる陰陽が小さく円で表されている。
陰から陽へ、陽から陰へ。繰り返す状態変化の表現と、万物螺旋。物事の無限性の示唆。
白の中の黒円、黒の中の白円。生死。陰陽。
現在、二人がその小さな円の中に奇跡的にも在ると言うならば、陰陽は逆転しているとでもいうのだろうか?
皆を喪いたくないが故に、自分を殺すと言う黒円。
自分を喪いたくないが故に、皆が死ねば良いと言う白円。
死という共通の要素はあれど、二色は真逆だった。
成程確かにそう言われれば、陰陽の逆転……決して判らなくもない話だ。
陰は自重気味にけたけたと笑うと、ひゅうと口から息を吸ってふと無表情に戻る。
……なんだよそれ。ずっと前からもう、白は目前に見えていたって事じゃないか。
変われる可能性は、ずっとそこに在ったって事じゃないか。
だったらもう、恐れる事なんか何もない。君の選択なんかに惑わされる必要もないんだ。

差し出された救いの手を拒んだ君は、寂しそうな、けれども何処か柔らかな笑みを浮かべていた。
それはまるで、蜉蝣の命の様に儚い微笑で。
そして、それはとても歳半ばいかぬ人の子が浮かべるものではない、達観の色をしていた。
“夢幻泡影”。
確かアシハラ―――あの特異な文化圏にある島国の文献の中に、そんな四文字熟語が記載されていた気がする。
進んで火に入る夏の虫と化す事が、果たして幸福と言えるのだろうか。
自ら命を絶ってしまう事が、本当に唯一無二の救いなのだろうか。
死、極限の悦楽。それは命のかたちを模した刹那のカタルシス。
悶え震えて言葉を失う程の、絶頂にも似た瞬間の極限美。
ただ、それが想いから逃げた人に対する褒美だとするならば、余りにも小さ過ぎる、残酷な幸福ではないだろうか。
他にこの苦しみを、怒りを、悲しみを……憎しみを、解放する術はないのだろうか。

否。

死が幸せだなんて、喪失が救いだなんて、僕にはとても思えない。
死なんて認めない。生こそが僕の真理。模したものは要らない。命のかたちが、ホンモノがそこにある。
陽が陰に墜ちたこの台本を悲劇と呼ぶのなら、カタルシスを味わうべきは間違いなく僕だ。

“喪いたくない”。
もう僕は喪いたくないんだ、何も。/『だから君が変わりに亡くせばいい』
僕ばっかり嫌な目に遭いたくない。/『だから君が嫌な目に遭えばいい』
一人で悩んで、一人で決意して、一人で死んで。
何も、何も良い事なんかないじゃないか。そんなのは寂し過ぎる。
自棄になって自分を壊そうとも、後に残るのは後悔の念だけだ。
それが分かってるから僕は壊れたくなんかない。/『だから君が壊れちゃえ』
あの時、解った答えじゃないか。力を行使しようとして、自分が消えてしまえばいいと願って。
その結果、到達した解だ……そう、僕の替わりは居ない。僕は君じゃあない。
僕の見付けた幸せのかたちも、命のかたちも、全部僕のものだ。
憎しみも、恨みも、悲しみも喜びも怒りも、全部僕のものだ。
他人の考えた方法なんかで、この傷を癒させはしない。
100バッド・アップル方程式 3:2009/12/31(木) 23:28:07 ID:gZ6YLDTp0
「彼は死んだんだ、最期の最期に黒に裏返って。
 死んでしまった以上、もう裏返る事は二度とない。だから彼はずっと黒なんだ。
 黒くくすんで汚い、哀れな陰……それが死」

感情の無い声を、陰は両膝に顔を埋めて呟く。
陽が行き着いた先の陰。それを見た陰は、純粋な憐憫しか抱かなかった。
くく、と肩を揺らして嘲笑する。惑わそうったってそうはいくものか。
ゆっくりと深呼吸すると、拳を強く握る。
ドロドロとした漆黒の油脂を塗りたくられた部屋に、コンクリートに似た灰色の亀裂が走った。
「なら、僕は白で居たい。
 死が救いとして彼の中に有り得たのは、彼がそれまで白だったからだ。
 僕とは違う。僕はあんな風に、惨めに死にたくない。哀れでは居たくない」
ブラックボックスが急激に捩れる。景色がぐにゃりと歪み、世界は軋みびきびきと悲鳴を上げた。
「僕は幸せでいたい。“愛されていたい”」
白が無ならば黒も無だ。互いが決して交わり得ない要素である故に、その本質は驚く程、似ている。
他を拒み、寄せ付けない無という本質。

その一点に置いて、“黒は、紛れもなく白だった”。

故に嫌悪する。似過ぎているからこそ、同族だからこそ、人は違おうと無意識に行動する。
「だから今度は、僕が白を貫き通す番だ。それこそが救いなんだ。
 僕は生きる。生きたい。死なない……死にたくない」
蜘蛛の巣の様に、縦横無尽に駆け巡る灰色の罅に包まれて、陰はゆっくりと整った顔を上げる。
銀色の髪がふわりと揺れて、少年のやつれきった白い頬をかさりと撫でた。
閉じられた瞳をゆっくりと開く。もう、何も畏れない。答えは直ぐそこにある。
「それが僕が導き出した答えだよ、黒に墜ちた哀れな君へのね。
 君は闇に包まれた海底から見ているといい。もう、僕ばかり黒<不幸>ではいさせないよ?」
松脂の様にねっとりとした笑みを顔へとボンドで張り付け、陰は短く嗤った。
黒い世界を、今までの自分を、陽であった少年を、底から嘲笑うかの様な汚れた笑みだった。
そう、それは決裂の誓約の具現。今までの自分との、ルカ=ミルダとの別れ。
少年は静かに立ち上がると、軋む世界の空を仰いだ。朽ち逝く黒が清々しい。
「不快な世界は消えるんだね。今、この瞬間からの世界は白。
 此所からは、神でもある魔王アスラの独壇場だ」
静かなる宣言は、しかし厳粛に、圧倒的存在感を以て世界に谺した。
頂点から一抹の光が差し込み、世界が壊死し、がらがらと崩れてゆく。
黒から白へと、陰から陽へと。世界を破壊しての個の誕生。
それは正に、爆誕。魔王アスラの降臨。
「だから……今度は、僕以外が黒になる番だ。覚悟はいいかい?」
米粒大の黒片の驟雨を全身に浴びながら、魔王は、アスラは白い世界に身を預ける。
かつて神だった頃、自分がした様に……力で世界の頂点に伸し上がる。
それだけの話。今の自分は魔王アスラ、ならばその程度の試練、訳もないでしょう?

「―――――――――――――誰も彼も、死んでしまえばいい。それが一番良いんだ」

そう言って彼は、白へと……死路へと足を踏み出す。



【select:white road;】


101バッド・アップル方程式 4:2009/12/31(木) 23:29:16 ID:gZ6YLDTp0
ふと誰かの言葉が聞こえた気がして、すう、と目を開く。
目前に広がる、薄桃色に染まった鮮やかな空には、しかし彩雲一つ泳いでいない。
優しい黎明の息吹に火照った四肢を撫でられ、ルカは身震いした。早朝の空気は未だ肌寒い。
風に乗ってやって来た煤の苦い臭いに顔を顰めと、ルカは上体をゆっくりと起こした。
遠くからは波の音が聞こえる。随分と穏やかな、透き通る様な音色だった。
間の抜けた寝起きの表情のまま、ルカは小動物の様に辺りをきょろきょろと見渡す。
緑地に黒の斑模様の絨毯の中、こちらに背を向けた一人の女性が、崖の上から大海原を見下ろしていた。
赤みの金色に染まった海面は、まるでアスファルトに立った陽炎の様にゆらゆらと揺れている。
ルカは中途半端に開いた口を何度かぴくりと動かすが、上手く声が出せず、言葉を飲み込んだ。
瞬間、景色が砂嵐に掠われる様な感覚がルカを襲う。
同時に覚える、胸を出鱈目に刺された様な、得も言われぬ恐怖と痛み、不快感。
ぞわり、と背筋に寒気が走る。それは生温く湿った指先で横腹を撫でられた様な、そんな気持ち悪さに似ていた。
甘ったるい黒蜜の様な何かが、でろりとルカの首筋を伝った。甘美な匂いが鼻腔を刺激する。
ガツン、と辞書の角で頭をぶたれたかの様な衝撃。視界の中心からきらきらと星が散る。
脳裏を駆け巡る記憶。男の言葉。それはルカの耳の内部を反芻して離れようとはしなかった。


『確か……後ろの方で呼ばれた気がするな』


あの時、奇妙な挙動で紫髪を掻き上げながら、男はさらりとそう言った。
シャツのボタンを締める様な、自然で流暢な言葉の流れだった。そう記憶している。
そうだ。それを聞いて自分は、あまりのショックに意識を失ってしまったんだった。

ルカは糸が切れた操り人間の様にがくりと膝を崩し、朝焼けに染まった地平線を見る。
放送でスパーダが呼ばれた? それって、スパーダが死んだって事?
……ああ、そうか。そうなんだ。
もう誰も居ないんだ。イリアもリカルドも、皆、居なくなってしまった。
敵だったハスタだって、もうこの島には居ない。気付いた時には僕は一人だ。
如何して僕ばっかり。何時だってそうだ。僕ばっかり嫌な目に遭う。
一体、僕が何をしたっていうんだ。
何で僕ばかり、僕の仲間ばかりこんな目に遭わなきゃいけないんだよ。
何で僕の仲間が死ななきゃいけないんだよ。

だったら―――――――――――――――――――――――――皆が死ねばいいのに。

再び、視界に星が散った。ぱぁん、と銃弾か何かに身体を弾かれた様な衝撃に、ルカは草原に倒れ込む。
薄れ行く現実への愛着。色彩と音とが混ざり合い、歪む世界の中、黄金と白が見えた。
天地が蕩けて出来た黄金のスープの中を、白い法衣がゆらりと靡く。
陽であった少年の救いだった筈の聖女の背は、何時もよりもずっとずっと小さかった。
ルカは揺れる前髪の隙間から、血走った眼を見開き、聖女を凝視する。
人一人救えずに悩む聖母の背中は、実に痛々しく、哀れだった。
法衣の焦げが、聖母を余計に貧弱で見苦しく見せている。
それを見たルカは、ざまあみろと嘲笑う様に口元を歪めた。
……そうだ。喜劇なんてもの、此所にはありはしない。有り得ないんだ、希望なんて。
彼女は彼を救えなかった。そんな木偶の坊に如何して自分が救えようか。
どれだけ優しくても、包容力があっても、愛があろうと努力しようと、どうせ悲劇は避けられなかった。


「同情だけじゃ、何一つ救えない」


102バッド・アップル方程式 5:2009/12/31(木) 23:30:46 ID:gZ6YLDTp0
何かを思い出したかの様にぼそりと呟き、俯せになった身体を起こす。
ゆらりと力無く立ち上がったルカは、首筋に指先を這わせた。
この戒めの首輪は、相も変わらず参加者全員の命を掌握している様だった。
サイグローグ、相も変わらず喰えない道化師だ。
嗚呼、と恨めしそうにルカは唸ると、ぎりりと思いきり奥歯を軋ませた。
優しさなんかで、この首輪をどうにかする事なんか出来ない。
首輪という脅し、隔離されたこの状況、仲間の全滅……常識的に考えて、もう日和ってはいられない。
ぎょろりと目玉を動かし、音もなく足を踏み出す。ルカの双眸からは、とっくに光は消えていた。
エルレインの背は、ガラ空きだ。ルカの起床に気付いていないのだろう。
ならばこれはチャンスだ。このまま近付いて、崖下に落としてしまえば良い。
そうすれば、また一歩近付けるじゃあないか。
そうだ、殺してしまえ。どうせ何時かは皆、死ぬ。
それが早いか遅いかだけの差なら、今殺してしまったところでさして問題は無い。
構うものか。殺ってしまえ。

目をかっと見開き、ルカは表情のみで笑う。
そしてゆっくりと前方へと進み、聖母の背に向けて両手を、

「起きましたか、ルカ」

熱された鉄板を触った様な反応をした指先は、やがて何か躊躇を感じさせるような弧を描きながら、後悔の海に沈む。
突き落とす寸前に落とされた優しさに溢れた言葉、それは偶然にしてはタイミングがあまりにも出来過ぎていた。
「……。ルカ……僕が?」
ルカは目線を横に流しながら首を小さく傾げる。
“ルカ”という単語は、今のルカにとってあまりにも無意味で特殊な二文字だった。
少なくとも、エルレインがルカの殺意に気付いていたのか否かの疑問を置き去りにするだけの効果を、その二文字は持っていた。

「僕は、ルカなんかじゃあないよ。彼はさっき“死んでしまった”んだ」
小粋なジョークでも飛ばすかの様に軽く笑いながら、ルカは他人事の様に言う。
しかしながら無関心を装って言われたそれは、随分と明瞭とした声色での宣言に相違なかった。
エルレインはすっと立上がり、訝しげな表情を携えてルカへと振り向く。
何を言っているのかとでも聞きたそうなその表情に、ルカは軽く肩を竦めて笑ってみせた。
それこそ、何を言っているのか、とでも返すかの様に。
「イリアとリカルドとスパーダの仲間だったルカは、ルカ=ミルダはもう居ない。
 此所に来る以前の僕は、もう誰の中にも居ない」
エルレインは表情を曇らせた。
イリア、リカルド、スパーダ……前者二人は放送で、後者は先程紫の男から聞いた名前だったからだ。
故にエルレインにとって、想像は容易だった。
例えば、ルカがスパーダの死で箍でも外れてしまったのか、という風に。
「僕はアスラだ。うん。きっと僕はアスラなんだよ」
表情は笑っているにも拘らず、かっと見開かれたその目は、人形の様に生気を失い、ちっとも笑ってはいない。
非常に危険な兆候だ、とエルレインは強く思った。
人の心は弱く、儚く、脆い。そして負へと墜ちる可能性と速度は、年齢に比例して上昇するものだ。
エルレインは冷静に、しかし着実な狂化をするルカを見て、告げるべき言葉を口内で選ぶ。
「ルカ、顔色が優れないようですが大丈夫ですか」
103バッド・アップル方程式 6:2009/12/31(木) 23:32:02 ID:gZ6YLDTp0
そうして告げられた言葉は、救う道でも何でもない、単なる気休みの言葉。
会話を続ける為だけの、無意味な言葉だった。
「聞いてエルレイン。僕は最初殺し合いに乗るつもりだった。そっちの方が賢い選択だと思ったから。
 でも、皆が居るからやめたんだ。仲間も出来た。皆で脱出するんだって、根拠も無いのに思えたんだ。
 でも、結局皆居なくなっていく」
エルレインは目を細める。聖女とは何だ。神とは何だ。救いとは何だ。
選んだ言葉すら、価値が無い。奇跡<レンズ>が無ければ、墜ちる人の子一人、救えない。
嗚呼、ならばそれは……


「だから、僕は殺し合いに乗る事にしたよ。それが僕の見付けた正義だから」


……それは、なんて無力―――。



【please selecting,goddess】



正義という言葉が大嫌いだ。
自分が正しいって旗を振り翳して、悪を定めて討つ、その口実の単語だと思うからだ。
そいつの正義が成立するには、何かが絶対悪にならなきゃいけない。
何かを犠牲にしなきゃ、正義は世界に生まれない。そんなのは嫌だ。
何も犠牲になんかするもんか。何かを喪った上での平和なんて、幸福なんて。
そんなの、ただ虚しいだけじゃないか。
だからやっぱり、正義という言葉が大嫌いだ。


ロイドは問う。どうして、と。
闇夜に乗じて肉薄した刃は、ロイドの右手からすらりと伸びたオブシディアンに、確りと捉えられていた。
軋みながら火花を上げる刃……いや、杖には、明確な殺意が宿っており、ロイドは焦躁に駆られざるを得なかった。

「久し振りだね、ロイドさん」

どうして、という問いには答えず、少年はゆっくりと俯いた顔を上げた。
磨き上げられた玉の様に美しい銀髪の隙間から、一際大きな双眸がロイドの顔を貫く。
朝に焼けた絢爛な景色の中、しかしその瞳は、終着点の見えない闇の螺旋の様な底無しの混沌色をしていた。
「お前はあの時の……!」
ロイドは声のトーンを一段階上げる。ぎり、とオブシディアンの柄を握る右手に力が入った。
苦々しい思い出が脳裏にフラッシュバックする。
「残念だけれど、今度はあの時の戦闘みたいにはいかないよ。
 見た目は一緒だけれど、あの時の僕<ルカ>と今の僕<アスラ>は別人なんだから、ね!」
ルカは、器用に杖をオブシディアンの側面に宛行い滑らせ、鍔を弾きながらそう言った。
「……そうみたいだなッ!」
体勢を崩されたロイドは、慌ててバックステップで距離を取り、そして踏み込みからの右突きを繰り出す。
神速のそれを容易く見切ったルカは、ひらりと身を翻しながら挑発気味に笑ってみせた。

「あは。思ったより優しいんですねロイドさんは。
 今、“そっち”で僕を殺せたのに、君はそうしなかった」
104バッド・アップル方程式 7:2009/12/31(木) 23:33:48 ID:gZ6YLDTp0
左手に持ち替えた杖をくるくると回しながら、ルカは右手でロイドの左手を指差す。
瞬間、ロイドの首筋にじわりと生温い汗が浮かんだ。
動揺に僅かに揺れる左手を右手で隠すと、ロイドは目を細め、左手に握られた木刀を一瞥する。
……今の一瞬で、左手での反撃を躊躇した事が読まれていた。
それはロイドの警戒レベルを幾つか上げる事に充分過ぎる理由だった。
成程。確かにこの饒舌っぷりといい手垂れっぷりといい、以前とは大違いだ。
「僕なんか片手で充分って思っているのかな。それとも真逆……斬るのが恐い、とか?」
右手を口元に当て、くすくすと笑うルカにロイドは純粋な苛立ちを覚えた。
ロイドは、お世辞にも挑発に強い人間とは言えない。
何処までも真っ直ぐで、単純馬鹿な熱血漢だからだ。
ならば、どう見ても年下の少年が繰り出す挑発は、その安さに拘らずロイドの額に青筋を浮かべるには充分過ぎた。

「そんなんじゃない! 俺はこれ以上余計な犠牲を出さないって決めた。それだけだ!」
「犠牲。犠牲ね。不快な言葉だよ。別に彼等は犠牲になったつもりなんてないかもしれないのに」
わざとらしく頭を左右に振り、ルカは間髪を入れず、半笑いの声でそう放つ。
やれやれとでも言わんばかりに肩を竦めるその様子に、ロイドは自らの頭が熱くなってゆくのを感じた。
「ふざけろてめェ! 揚げ足取ってんじゃねェ! 俺は皆を救いたい、それだけだ!」
ロイドは声を張り上げ、漸く左手を、木刀の切っ先をルカへと向けた。
臨戦体勢に入ったロイドの様子に目を細めると、ルカはハン、と鼻で笑う。
それはロイドの言葉を嘲笑で一蹴したという事であり、勿論ロイドはそれを分かっていた。
ロイドは己の中のマントルがふつふつと沸き上がる幻想を感じながら、拳を震わせる。
同時に、まるでルカはそれを待っていたかの様なタイミングで杖を右手に持ち替え、素早く葦を蹴り上げた。

―――弧月閃。

譫言を言うかの様にぼそりと零れた言葉を、ロイドは決して聞き逃さなかった。
猛る旋風。夜明けの冷たい空気を肌に感じつつ、ロイドは胸を縦にかち割る一閃を右に避ける。
素早く斬り上げられたその一閃は、朝日を浴び金色の残像を、三日月をロイドに見せた。
刹那、少しばかり出て来るタイミングを違えたその月が、その弧の中心から二つに分かれ横にスライドする。
ロイドはそれがルカの追撃だと気付くまでに、さして時間を要さなかった。
すぅと冷たい空気を吸うと、ロイドはオブシディアンと木刀を前方方向、上下に構える。
幻影の三日月ごと人を食らわんと、鋭利な虎の大牙が草原に唸った。

瞬間、激しい衝撃波にルカとロイドは目を細める。
力と力の激突。ルカの攻撃に明確な殺意が籠っている分、ロイドの苦戦は必至だと言えた。
力の拮抗に軋む剣と聖杖。獲物で言えば勝敗は明らかだったが、戦闘に望む想いが現状をイーブンにしていた。
“ロイドは自分を殺せない”。
それを朧気ながらに理解したルカは、焦躁に表情を歪めるロイドを嘲笑い、剣の腹に収まった杖へと力を込める。

「……救えないよ、君には何も。目前の人間さえもね」
それは、悪魔の囁き。心を折る為の言葉責め。
「理想だけなら誰にでもあるんだよロイドさん。
 大層な理想の旗を掲揚するのは結構だけれど、君はそれをまるで実現出来ていないじゃあないか」
ロイドに聞こえる程度の小さな声で、ルカは尚も高揚の無い声色で執拗に続けた。
「現に今、何処かで死んでるかもしれない誰かを君は救えていない。救おうともしていないんだ。
 にも拘らず口だけは一人前。これを傲慢だと言わずに何と言うんだろうね?」
高い金属音が森に谺す。ルカが放った薙払いに、ロイドは苦しそうに舌を打って応じた。
105バッド・アップル方程式 8:2009/12/31(木) 23:34:43 ID:gZ6YLDTp0
「常識的に考えて、これ以上犠牲を出さないなんて不可能だよ。
 水面の月に向かって吠えるだけならば、誰にでも出来るさ。
 口先だけの優しい理想論者なんて……」

ぴりぴりとロイドの腕が鳥肌を浮かべる。魔力の残滓が、オブシディアンに収まったルカの杖へと集う。
ロイドは息を飲んだ。ルカの髪の毛が僅かにふわりと揺れ、更には気流の渦がロイド達を中心に草木を揺らす。
そうして訪れるは、凄まじい熱風。急激な温度上昇に歪む、聖杖の周辺。
ヤバい、とロイドは足を半歩引き、喉を火傷しないよう、空気を出来るだけ吸った。
同時に目前に産まれる、自らの服と同じ紅。
そう、それは酸素気流を巻込んだ焔の高波。
森に咲く全ての生命を飲み込み灰燼と帰す、猛り狂う魔焔の波動ッ……!

「幾らでも居るんだよ、偽善者さん―――熱波ッ、旋風陣ッ!!」

けたたましく焔が啼く。朝方の冷めた空気を目茶苦茶に抉じ開け、熱の波動は旋風と化し樹々を飲み込んだ。
灼熱の焔の一閃が辺りを巡る。ルカは焦げる草木の間、揺れる焔の奥を素早く見渡した。
ロイド=アーヴィングがこの程度でやられる様な温い敵ではない事は、一度刃を交えたルカがよく知っている。
ならば必ず何処かから仕掛けて来る筈だった。
それにしても、とルカは思う。
よく覚えてはいないものの、ロイド=アーヴィングの人と成りはこうだっただろうか。
デクスの情報からそう思い込んでいたが、どうやら情報に並々ならぬ食い違いがあった様だ。
まぁ、どうせ皆殺しの予定。今更そんな事、些細過ぎる差異だ。
自分を襲った事に違いはない訳だし、何、気にする事はない。
ルカはそこまで考えると、ふと頭上を見上げた。

「……ああ。木を隠すには森の中、って言うものね、ロイドさん」
ほォら、やっぱり来たじゃないか。
そうじゃなきゃ面白くない、とでも言う様にルカは笑い、空へと舞い上がる鳳凰を確りと見据えた。
ならばとルカも輝く聖杖を握り直し、焔の翼を身体に纏う。
……その稚拙な灯を纏う雛鳥、この魔王の業火に包まれた鳳凰で撃ち落としてやろうぞ。
「熱さで俺に勝つ気なら、イフリートでも持ってきやがれってんだ……!」
ロイドは吐き捨てる様に叫ぶと、覆い被さる樹々の葉を焼きながら、高く高く飛翔する。
そして相対するルカもまた、その灼熱の翼をめいっぱいに広げ、深緑の彼方へと舞い上がった。
紅の放物線が頂点に達した瞬間、互いの視線が交差する。
一人は、同じ技を使用された事への驚きの視線。一人は、その驚きを嘲笑う歪んだ視線。
此所に、二羽の鳳凰有り。
燃え上がる覚悟を糧に、全てを破壊の力に変えて天を駆け……そしてやがては、大地へと降臨する。

「「―――――――――――――――――――――――――鳳凰天駆ッ!!!!!」」

大気は立ち上ぼる焔柱に水分を失い、虚空は紅の境界線を引かれ縦に裂け、大地は燃え上がる。
焔よりも真っ赤な鮮血の飛沫を顔に浴びながら、嗚呼、とルカは唸った。

「何とでも言え。俺は諦めない」

大地に降り立ったルカは、無表情のまま背後へと振り返る。
声の主は左肩から血を流しながらも、揺らめく焔を背に、けれども揺らぎなく立っていた。
106バッド・アップル方程式 9:2009/12/31(木) 23:36:05 ID:gZ6YLDTp0
「もう一度言うぜ……“何とでも言え、俺は諦めない”。
 誰も犠牲にならない道を探して、こんな残酷な事しやがった主催者を倒す。
 俺はこんなゲーム認めない。だから、お前が行こうとしてる道も認める訳にはいかないな」

背後に立つ焔柱は強烈な光源となり、ロイドの顔には深い影が落ちていた。
熱風に揺れる逆立った髪、首から伸びた白い飾り布。それらは何故か、妙な威圧感を放っていた。
故に、ルカは半分だけ開いていた口を半ば無意識に閉じる。
黒く塗られてしまったロイドの表情は、全く窺えない。
しかし、そこに灯る橙色の光は、双眸に煌めく焔は。

確かに神々の焔の具現、鳳凰よりも、咎人を祓う地獄の業火よりも、何よりも―――“熱かった”。

「困ってる奴が目の前に居たら救ってみせる。その為に血を流す覚悟はとっくに出来てるさ。
 あとはお前が覚悟するだけだぜ。“俺の手を取る覚悟”を……!」
ぞくり、と寒気がルカの全身に走った。ルカは確信する。それが明らかな、萎縮なのだと。
しかし、これは何という覇気。何という熱。もしや気圧されているとでも言うのか。
この魔王が、天地の覇者アスラが、気圧されてしまっていると……!?
馬鹿な、とルカは生唾を飲み込み、頭をぶんと振る。
イニシアチブはこちらにある。今の鳳凰天駆でも傷を追ったのはあちらだけ。
ならばこの戦いは最早イーブンどころではなく、ゼロサムゲームである事を証明している。
なのに、なのに何故。
「どうしたよ。もうお終いか?」

―――何故、目の前のコレは、こんなにも強さを感じさせるんだ?

「……ふぅん」
ルカは項垂れ、自嘲気味にそう零した。
それはルカが考えを改めた事の表れであり、ロイドを強者として認めた瞬間だった。
そして、ルカは氷の様な冷徹さを垣間見せる瞳で、ロイドを睨み付ける。
それは、ロイドの強さを絶対に打ち倒すという硬い気持ち。
ルカはこの瞬間、もし自らの考えを覆せば、ロイドの強さに心を倒されると確信した。
故に、決心する。絶対に自らを覆して堪るものかと、ロイドを必ずや抹殺するのだと。

「じゃあ、僕を救ってみせてよ。優しい理想論者さん」

だからルカは心の底からロイドを嘲笑い、胸中で宣言出来る―――覚悟完了、とッ!!

「何を……ッ!」
「押しつけの優しさなんか要らないね。迷惑なだけだよ。現実はもっと汚い。
 君に何が分かるんだ。全てを喪った事なんかないくせに、偉そうに言わないでくれるかな?」
ルカはそう吐き捨て、ロイドの理想論が詭弁に過ぎないのだと嗤う。
そしてその小さな体躯を捻り、大地を蹴り上げると、今までよりも一層強い斬撃でロイドを強襲した。

「……優しさなんかじゃ! 誰も! 救えないッ!」
空中からの振り落としの一撃、斜め下から右足を軸にした振り上げの一撃。
「ぐ……ッ!」
そして、そのまま軸足を中心にして回転し、遠心力を味方に付けた薙払いの重い一撃。
目にも止まらぬ連撃には、今までの太刀筋とは明らかに異なる狂気の類が孕まれており、
さしものロイドも、これには動揺し目を見張らざるを得なかった。
(何だこの力? 何だこの速さ!? 明らかにおかしいだろ、この動き!)
明らかに、歳半ばいかぬ子供の動きとして、この挙動はおかしい。
ロイドは動揺を隠す様に唸り、フェイントからの蹴りを繰り出すルカから距離を取る。
ここで漸くロイドは、はっとして目を見開いた。この挙動、どこかで見た記憶があると思えば。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 23:37:46 ID:N3+vk5dj0
支援
108バッド・アップル方程式 10@代理:2010/01/01(金) 00:16:12 ID:oLbzzqbH0
……そう、これはまるで。
(まるでミトスやユアン、父さんみたいな、戦争経験者の隙が無く力強い太刀筋ッ……!)

「ロイドさん、そんなに防御ばっかりしてて良いの? “そのうち壊れるよ”」

溜息混じりのその一言に我に帰ったロイドの背筋を、汗が伝う。
それがどういう意味なのかをルカへと問う前に、破壊という二文字はロイドを訪れた。
「崩昇襲斬」

“ガードブレイク”。

強烈な打ち下ろしで左手の木刀のガードを壊し、そして打ち上げで右手のオブシディアンのガードを弾く。
ヤバい、とロイドは思う。この一合は、確実にロイドの戦術負けだった。
飛躍的にパワーとスピード、そしてポテンシャルのギアを上げたルカに、ロイドは焦ってしまったからだ。
そしてその焦躁は、ロイドを防御面に徹させた。その結末が、これだった。
「しまッ……」
「―――魔王炎撃波」
容赦無く、一抹の躊躇も無く、魔王の焔波の一撃がロイドの胸を補足する。
幾らイニシアチブがあろうとも、肝心の獲物が杖では、斬撃は殆ど意味をなさない。
故にルカは、ロイドへの確実な一撃を焔系の術技に絞っていた。
ルカの取ったその戦術に、間違いは無い。むしろ満点と言っても良いだろう。
「……啼き声?」
だが誤算があるとすればそれは、ロイドの頭の回転の早さを見誤った事である。
ルカの取った戦法は、ロイドも朧気ながらに予想していた戦法だったからだ。
今まででロイドを危機に晒したルカの攻撃は二度あった。
一つ、熱波旋風陣。二つ、鳳凰天駆。
どれもこれも、物理面は薄く魔術的要素が強い攻撃。
おまけに手数が少なく、モーションが派手で重い一撃だった。
ならば、冷静になりさえすれば自ずと戦法と特徴は見えてくるものだ。

“敵は炎属性の一撃でキメる戦法を取る、前陣速攻型の大剣使いの魔剣士だ”、と……!

派手な音が聞こえた。土嚢を地面に思い切りぶつけた様な鈍い音だった。
ルカは恨めしそうに音源を見る。焔の段幕の向こう側に、胸に蒼光を携えた赤尽くめが見えた。
「……ねぇ。今の、どうやって避けたの?」
「獅子戦吼を反対方向に撃つように闘気を練った。それだけだ」
血が混じった唾を叢に吐き捨てながら、ロイドはそう言って立ち上がる。
ルカは舌を打つべきか舌を巻くべきか悩んだ末、舌を巻いた。
器用にも程がある。焔を目前にして寸での判断、そして闘気の放出ベクトルの反転。
到底自分には出来る真似ではないし、やろうとも思わない手だ。
驚嘆を通り越し、呆れた様に肩を竦めると、ルカは樹々の合間から差し込む光を見上げた。

「……例えば。
 例えばそれが自分の望むそれでも、望まないそれでもなかった時、どんな反応をすればいいんだろう?」
声の色が変わった、とロイドは思った。
唐突過ぎる話と、僅かに和らいだ殺気。もしや罠か、とロイドは眉をぴくりと動かす。
「何の話だ」
決して油断する事がないよう、木刀とオブシディアンを構え、ロイドは腰を低くする。
109名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 00:18:35 ID:dO2/XuwU0
支援
110バッド・アップル方程式 11@代理:2010/01/01(金) 00:22:31 ID:oLbzzqbH0
「デクスさんにスパーダの生死を聞いた時に、僕はそう思ったんだ」

スパーダ? ……いや待て、それよりも。

「デクスだって!?」
怪訝そうに叫ぶロイドだが、それを疎ましそうに見ただけで視線を外し、ルカはぽつぽつと言葉を続ける。
「……そしたらね。意外な事に気付いたんだ」
会話のペースすらもがルカに握られている。そんなもどかしさに、ロイドは奥歯を軋ませた。

「望む答え、さすればこの剣は、仲間を奪った悪を打ち倒し、スパーダを守る為。
 望まない答え。さすればこの剣は、万物を薙ぎ払う魔王の一撃へ。有無も血塗れに祭る、狂気に歪む神の裁きを。
 分るかなロイドさん。……つまりどちらも、血塗れた道だったという訳なんだよ」

きぃん、とルカの周囲が茜色に染まる。
やがてそれはロイドとの世界とは若干の異なりを見せていたものの、足元に魔方陣を形成していった。
魔力のブーストに、ルカの髪がばさばさと乱れる。
一瞬のみ躊躇したが、その一秒後ロイドは断定した。これは間違いなく詠唱だ、と。

「ば、馬ッ鹿野郎……ッ!」
気付いたらロイドは駆けていた。おかしいな、と思う。
それが詠唱を邪魔する為ならば、“気付いたら駆けていた”という文は適当ではないからだ。
ならばとロイドは確信する。
これは、ルカを救いたいからなのだと。
それは間違っているんだと、まだ直せるのだと理解させる為なのだと。
「仲間の為に人殺しをするなんて、おかしいだろ……!」
この想いを、声を、手を……届かせたかったからに違いないのだとッ!

「そろそろ目を覚ませよ!
 お前はあんな主催者の話を、蘇生とかいう都合の良い話を、信じてるってのかよォッ!」
ロイドは、ルカが感じているだろう心の痛みに顔を歪めながらも必死に手を伸ばす。
届け。掴め。まだだ。まだ諦めるなよ。
俺が断言してやる。お前はこっちに来れるって。



だってお前―――――――――――――――――――――ずっと、泣いてるじゃないか。



「どうせ仲間は皆死んでしまった。
 なら、信じた方が楽だし、何よりその方が合理的だよ……スパイラルフレア!」
けれどもそんな想いは届かぬと、涙は一瞬の迷いだと嘲笑する様に、ルカは天術を紡いだ。
螺旋を描きながら駆け抜ける焔は、ルカの後悔を灰と化し、希望を焼き切り、そして零れる涙を蒸発させる。
ルカは苦しそうに笑った。
ああ、熱い。
こんなにも熱いのに。
こんなにも覚悟してるのに。
……どうしてこんなにも、寒くて虚しいんだ。

「楽……? 合理的……? そんなものの為に、お前は人を殺すってのか?」

―――駄目だ、駄目だぜ。全然駄目だなお前。
焔の弾丸が過ぎ去り、黒く焦げた線路を残した大地には、矢張りロイド=アーヴィングが立っていた。
翡翠光の魔術防壁のベールに身を包み、確りと立っていた。
「そうだよ。僕はもう迷わない」
悪びれる様子もなく淡々と応えるルカの胸倉を、ロイドは勢い良く掴んだ。
111バッド・アップル方程式 12@代理:2010/01/01(金) 00:26:55 ID:oLbzzqbH0
これだけ近くに居るのに、分かり合えない届かない助けられない。
己への純粋な憤りに、それが半ば八つ当たりだと知りつつも、ロイドは目を見開いてルカに迫った。
相手の顔に唾をかけん程の勢いだった。

「てんめェ……冗談は休み休みに言いやがれ!
 例え願いが叶ったとして、生き返った仲間がお前を祝福するとでも、本気で思ってんのかよォッ!」

ひゅう、と一陣の風が、決して分かり合えない壁だとでも言う様に、ルカとロイドの間に吹いた。
ロイドの荒々しい息遣いだけがルカの耳に届く。
犬歯を剥き出しにしたその表情は、ルカにとって暑苦しい以外の何物でもなかった。

「……はは。何を言い出すかと思えばそんな事。
 君は何も知らない癖に、全部を悟った様な事を言うんだね」
やがて口を開いたのは、ロイドを心底嫌悪するかの様に目を細めたルカだった。
ばしん、と乾いた音が森に響く。ルカの胸倉を掴んでいたロイドの手は、見事に弾かれていた。
呆気に取られるロイドを傍に、ルカは服の乱れを直すと、きっ、とロイドを睨み付ける。

「……だったら他に解決法があるってッ!? 笑わせるよね!
 じゃあ答えてよロイドさん! 脱出法は!? 首輪は!? 喪った仲間はッ!? 24時間ルールはッ!!?」
ロイドは口を開きかけるが、言おうとしている言葉の全てが言い訳だと気付き、口を閉ざした。
今のロイドは、確かにどうしようもなく無計画だった。
その口から漏れる理想論の全てが夢のまた夢で、とても現実的とは言えない。
ルカを納得させる術を持たないロイドには、苦痛に顔を歪め、ルカから目を逸らす事しか出来なかった。

「……ほらね、答えられない。八方塞がり、袋小路。
 そんな現状でも強がって、一切の希望さえ見えない理想論を吐くだなんて、全く君は」
―――子供だよね。
嘲笑と共に吐き捨てられた言葉に、ロイドは下唇を強く噛んだ。
俺にはこいつを救えないのか? いや、そんな事はない筈だ。必ず救ってみせる。
……でも、どうやって?

「教えてあげるよロイドさん」
無言で屈伏しかかっているロイドに満足したのか、ルカは杖先をロイドの胸に向け、わざとらしく笑ってみせた。
「……君に人は救えない」

ずん、と突きが繰り出される。杖では確かに斬る事は出来ないが、刺す事なら出来る。
突きに特化した特技はルカの得意分野ではなくスパーダの領域だが、相手が動かない的となれば話は別だった。
この至近距離では避ける事も絶対に不可能だ。


「――――――――違うな」


“だが、止める事は出来る”。
ルカはぽかん、と口を開いたまま杖の先を凝視した。
突き出された聖杖は、胸に穴を開ける寸前の位置で右手に力強く握られている。
ルカの顔がみるみるうちに朱色に染まっていった。何故、と震える声で呟く。
何故それでも心が折れないんだ、ロイド=アーヴィング。何故、そこまで理想論を貫けるんだ。
何故、赤の他人の為にそこまで動けるんだ。
血の粛清の犯人じゃなかったのか、君は?
ルカは歯を食い縛り、勢いに任せて杖を引き抜く。
112バッド・アップル方程式 13@代理:2010/01/01(金) 00:32:58 ID:oLbzzqbH0
それは理解の範疇を超越した壮絶な馬鹿への、純粋な憤りの表れだった。

「救えるさ……救ってみせる」
お前も、例外じゃない。
そう続けるロイドへ、ルカは唇の端をひくつかせながら、ふざけないでよと返した。
「いいや、ふざけてなんかいないさ。
 一人では辛くても二人なら、三人なら……皆ならなんとかなる。
 苦しみも悲しみも、全部俺が背負っていく。今は方法がなくとも、皆が居れば方法が出るかもしれない」

本物の馬鹿だ。
ルカは動揺しながらも強く確信する。一体全体こいつは、何を言っているんだ。

「俺は頭が悪いから、何も思い付かない。だから確かに今、俺はとことん無力かもしれない。
 でも、互いに補い、力を合わせられるからこその仲間……そうだろ?
 だから、俺達のところへ来い。お前の居場所は、そこじゃないだろッ!」
「居場所は此所じゃない?」
ルカは拳を強く握り、恨めしそうにロイドを見上げた。
「僕だって、好きで此所を選んだ訳じゃないのに。
 ……馬鹿馬鹿しい。そうして、人は一人で死んでいく」
ロイドは言葉を失った。その口調に、歳とは掛け離れた明らかな達観があったからだ。
その達観はまるで、古代対戦の英雄、四大天使が一人ミトス=ユグドラシルの様だとロイドには思えた。
「……マオみたいに」
ルカは聖杖をくるりと一回転させ、バックステップをしつつ両手で構えた。
「命の喪失は人を孤独にする。そうして出来た深い孤独の闇は、絶望と諦観の螺旋しか生まない
 だったら最初から群れないでいる方が、喪うかもしれない仲間なんて作らない方が、ずっと真面で賢いよ」
目覚時計は何時壊れた?
ルカは喋りながら思った。
“目覚時計は何時壊れた?”
「理想は、叶うまででは理想で居てくれる。でも叶ってしまえば単なる現実だ。
 なら、最初から現実主義の方が、余程合理的だよ。
 上手な生き方のコツは―――諦める事さ、ロイドさん」
針が進まない。ベルが鳴らない。秒針が痙攣を繰り返す。
「……これが僕の正義だ。それを今更曲げる事なんて、」
噛み合わないのだ。時計の歯車が、何処か抜けている。もう、誰も目を覚ませない。

「―――不可能なんだよ」

そう言って繰り出すは、サイドステップからの左上方向への薙払い。
それを右で防御しつつ、ロイドは左でルカの横腹へと突きを放った。
しかしルカも甘くない。
器用に身体を捻り、迫る木刀を右足で蹴り上げ、身体を捻りながらの空中からの回転斬りを放つ。
ロイドはバックステップでそれを避け、近くの樹を蹴り上げると、直ぐさまルカへと突進しながら叫んだ。

「ふざけろ! 黙って聞いてりゃ何が正義だ! 俺はその言葉が一番嫌いなんだ!」
ルカはロイドの突進を、杖を地面に垂直に構えて防御する。
鈍い音と共に散る火花。ロイドは拮抗する刃に力を込め、更に言葉を続けた。

「そんなのただの口実だ! お前は正義って言葉に縛られて、痛みも苦しみも、悲しみもッ!
 そうやって全部無理して背負い込んでるだけじゃねぇか! 辛かったら言えよ!
 諦めるなよ、誰かを頼れよ! 一緒に悩めよ! 人は……ゆっくりでも変われるんだから!!
 お前は変わる事が恐くて、臆病だから正義に胡座をかいてる屑だッ!!」
113名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 00:33:56 ID:dO2/XuwU0
支援
114バッド・アップル方程式 14@代理:2010/01/01(金) 00:37:36 ID:oLbzzqbH0

ルカの顔が一瞬だけ水に打たれたかの様にはっとする。
しかし、その純粋な表情に次の瞬間浮かんだのは……紛れもなく、憎悪と怒りの色だった。
「う、五月蠅い……!」
理由も分からぬ底知れぬ黒い感情。
それを胸の内側に止めて吐露しないようにするには、ルカは余りにも幼過ぎた。
「五月蠅い五月蠅い五月蠅あぁぁああぁぁぁあぁぁあぁァいッ! 全部僕のものだ!!
 孤独も! 苦痛も!! 不安も後悔もッ!!!」
どう、と溢れた魔力に大気が震撼した。
ルカの表情が悲しみに、怒りに、目茶苦茶に歪んでゆく。
しかしそれはまるで、稚児の捏ねる駄々の様に自我に塗れて―――何よりもルカの内面を如実に表していた。


「勿体なくってさぁッ! 君なんかにあげられるかあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁッ!!!!!!」


生じた風圧で落ち葉もろともロイドを吹き飛ばし、ルカは大口を開けて泣く様に叫ぶ。
その覇気に呆気に取られるロイドを尻目に、遠く森の奥からは、神の後光とでも言うべきなのか、差し込んだ光が煌めいていた。
「ち……畜生、出鱈目だろこんなの……どれだけ強さが上がるんってんだよコイツ……!」
やってられないとばかりに吐かれた言葉は、ルカに届く前に地響きに掻き消される。
その時だっただろうか。ロイドは咆哮とは別に、おかしな音を確かに聞いた。
ぼすん、だかどずん、だか、上手く音を言葉に出来ないが、そんな感じの重く鈍い音だった。
ただ分かるのは、それが何か大切な物を落としてしまった様な音に聞こえて仕方がなかった、という事だった。
ロイドは吹き荒ぶ風から腕で双眸を守りつつ、首を少しだけ傾げる。
立ち上がりつつ一通り目線だけで辺りを見渡したが、何か音を出しそうな物が無かったからだ。
だが、確かにはっきり聞こえた。爆風に鼓膜を揺らされているにも拘らずだ。
それは例えるなら、まるで身体の中から響いた様な音で。
「……待て、“身体の中から”?」
そう呟いたのと同時だった。不意に、ロイドの背後から足音が聞こえたのは。
ロイドは自らの顔から血が引いてゆくのを感じた。走る戦慄にどくん、と心臓が脈打つ。
真逆、いやそんな事がある訳がない。
ロイドは半笑いの表情のまま、舞い踊る木葉を捉えていた視線をゆっくりと下ろす。
同時に、腹の底から苦々しく唸った。
突き付けられた現実は、獣の肝汁よりも苦々しくロイドの身体に流れ込む。

「へ、へへ……何だよコレ……嘘だろオイ……」

じわり、とロイドの右胸から血が滲んだ。
生憎とこんな目立つものを右胸から生やす趣味は、自分にはこれっぽっちもない。
嗚呼、じゃあこれは何だ。幻想の類か何かか。それとも何だ。新しいファッションとでも言うのか。
……なんて、馬鹿馬鹿しい話。
ロイドは力無く笑うと、ぐい、とソレを掴もうとしてみる。
漏れる溜息。ソレを掴めたのだと認識した瞬間、ロイドの頭は白に襲われた。
掴めてしまったという事は、即ちそれが疑い様のない現実だという事の証明なのだと、ロイドは理解しているからだ。
つまり光り輝くソレは、固形化した鋭い光刃は。

確かに―――――――――――――――ロイドの胸を貫き、飛び出しているのである。

少しだけ遅れて、全身を針で刺したかの様な激痛がロイドの全身を支配する。
苦悶に顔を歪ませながら、脂汗を額に滲ませ、ロイドはゆっくりと背後を見た。
そこに居たのは一人の女で、その女はロイドの右胸から容赦無く光槍を引き抜く。
その衝撃なのか、ロイドの口はさながら水道の蛇口の様に大量の血液を吐き出した。
まるでトマトケチャップの中身を一本丸々ブチ撒けたかの様な、凄まじい量の紅が辺りを染める。
115バッド・アップル方程式 15@代理:2010/01/01(金) 00:42:08 ID:oLbzzqbH0
ロイドは朦朧とする意識の中、そうして自前の鮮血の池に、全てを喪った様に崩れ落ちた。

「愚かな、ロイド=アーヴィング」

汚物でも見る様な目でロイドを見下すは、圧倒的な存在感を放つ聖女、エルレイン。
「……幾ら口で善人ぶろうと、血の粛清の罪は消えない。その罪、万死に値する」
エルレインはそう呟くと、暴走寸前のルカの方へと首を向け、眉を顰めた。
無論エルレインは、ルカが道を誤っている事を充分に理解している。
だが、にも拘らず彼女はルカに同行し、殺人に荷担しているかの様に見える。
その事実に疑問の声が上がるのは当然だ。では、それは一体何故なのか?
答えは単純にして明快だった。
エルレインは最終的な手段はまだしも、基本的に不幸な人間を死によって解放する行為を潔しとはしていない。
そしてこの場合、ルカは不幸な人間に該当すると言っていい。
ならば、エルレインが選択すべき道は一つしかないだらだ。
“ルカを監視し、上手く導き、方法を発見次第幸福に導く”。それだけなのだから。
そして幸か不幸か、エルレインはロイドの元へ来て作戦を立てるまでにルカと交わした会話で、ソーディアンの存在を知った。
そしてソーディアンのコアクリスタルが莫大なレンズエネルギーを秘めている事は、最早言うまでもなく明らかだ。
つまりエルレインは、ソーディアンを使用した疑似的な奇跡による幸福付与を目論んでいるのである。
更にエルレインは考える。もしこの会場にソーディアンが五本揃っているならば……。
もしかするとこの会場<バトルロワイアル>そのものが、奇跡の産物なのかもしれない、と。
それならば死者の復活、異世界混合の説明は容易であり、ソーディアンは妄想世界を固化する楔の可能性がある。
更に言うならば、そうだとすれば会場の内側からソーディアンのコアクリスタルを利用して、
奇跡そのもの<バトルロワイアルの開催>を奇跡で破壊する事も、決して不可能とは言い切れない。
ならばチェックメイトだ。
いいだろう。奇跡を用いて、あの道化が何でも思い通りに負の連鎖を生む事が出来ると言うならば。
まずはそのそのふざけた幻想を―――



「“ぶち壊す”、ってか?
 へへ、考え込んでるとこ悪いが……俺、こんな所で死ぬ訳にはいかねーんだよ、おばさん」



―――!!?
「出来ればコイツには頼りたくなかったんだけどさ、もう仕方ねーよな」
エルレインはその声を聞くや否や、直ぐさまバックステップをしつつロイドの方向へと首を回した。
それはカイル一行と対等に渡り合った聖女、エルレインの最高速度での反応である事は間違いなく、
仮にも手負いのロイドが着いて来れる筈がない、
いや例えロイドが万全を期していたとしても、その最速を余裕で越えるスピードだった。
だが。
……だがしかし、エルレインがロイドが居た筈の茂みを見た時、
血溜まりさえあれど、ロイドの姿はそこに全く存在していなかった。
そして何故、とエルレインが思うよりも速く、更にはルカがエルレインに気付くよりももっと速く、
ロイド=アーヴィングは、まるで荒ぶ風の如くエルレインの背後へと回り込む。

……異常だ。この状況は。

エルレインが背後の気配に気付き、そう思うまでに掛かった時間はコンマ三秒。
そして、魔力が生む光子から双剣を両手の中に即座に構築し、振り返り様に斬撃を放つまでにコンマ二秒。
合計にして半秒。ロイドにとって、それは欠伸をしても尚暇を持て余す程に長過ぎた。
だが、それが常人にとって如何に刹那なのかは、最早問う必要が無いと言っていいだろう。
しかし、エルレインの繰り出す左右からの斬撃“に”立つ……。
116バッド・アップル方程式 16@代理:2010/01/01(金) 00:46:47 ID:oLbzzqbH0
もとい、“光の双剣に両足を乗せてエルレインへ剣を向ける”ロイドにとっては。

「遅ェ」

その長さを問うのは野暮というもの……ッ!
「……!!」
ロイドがエルレインを峰打ちで吹き飛ばしたその瞬間、ルカはロイドの上空1mの位置から杖を振り下ろしていた。
だが、ロイドはそれを空中を滑降し、避ける。絶好調のルカの、アスラの断首の一撃を避ける……ッ!
「な……!?」
そして、ルカの腹を木刀の背で“手加減して”打ち付ける。
数メートル吹き飛ばすに止どめる様に、ルカの肝を潰さぬ様に優しく。
だが、その筋はあくまでも力強い。
胃の内容物が喉を焼く感覚に喘ぎながら、衝撃に吹き飛ばされながら、ルカはロイドに畏怖の念を覚えた。
この強さ、あの熱さ。その存在感。そしてあの輝く翼、神々しさすら感じる清冽な蒼。
これはまるで……天使。
まるで赤児の手を捻るかの様に容易く、ロイド=アーヴィングは人の限界を超越した。
ならばそれは確かに天の使いの神通力の権化。確かに“神速の”域。
疾風の様に攻撃をするりと可憐に避け、雷鎚の様に正確に、強烈に敵を撃つ。


それは正に―――――――――――――――――――――――――――疾風迅雷!!!


「馬鹿な……」
ふらつきながら立ち上がったエルレインは、ロイドのその変わり様に、背に生えた大翼に生唾を飲む。
そんな。
真逆ロイド=アーヴィングが神だと、天使だとでも言うのか。
その様な高位存在だとでも言うのか。
血の粛清を起こした張本人が、非人道的なこの男が、私と……神と対等だと、そう言うのか。

「そしてその現実を私に認めろと、愚かな人の子の存在を赦せと……そう言うのかッ……!」

エルレインは下唇を噛み、死んだ筈の人間の復活に、天使という未知の存在に狼狽する。
そんなエルレインを尻目に、鳩尾を打たれダメージを負いながらも、木を背に身体を支えるルカ。
彼は、額に遠目からも見える程の脂汗を滲ませつつ、だが苦しそうに笑っていた。

「ひ、ふひゃひゅ、ははは……あッは!
 天使ッ! 君も神様だったなんて……面白いなァ!
 これからこの魔王アスラが、その翅ごと理想も毟り取ってあげるよロイドさん!
 さぁ、来なよッ!」

天使? 神の遣い? 大いに結構じゃァないか。聖剣で展翅してみせようぞ。
天を統べる覇者、天使風情に遅れ無し!
ルカは意気揚々と肩を震わせると、杖をロイドに向けて不敵に笑う。
「また俺がお前らと戦うって? ……………………………………やなこった」


―――だが、ロイドはその誘いを断った。


「は?」
それどころかルカ達に背を、蒼い翼を向けるや否や、あろう事か一目散に逃げ出したのだ。
しかし、それはロイドの頭がおかしくなった訳でも何でもない。ロイドは至って真面だった。
117バッド・アップル方程式 17@代理:2010/01/01(金) 01:33:32 ID:oLbzzqbH0
ロイドは思うのだ。
幾ら天使化したとは言えど、手負いの己一人ではこの化物達には絶対に敵わない、と。
先程はたまたま敵の油断と陣形の崩れを上手く突いただけだ。
即ち、面と向かって対峙すれば相手は魔剣士一人に実力が未知数な、魔剣士であろう女が一人。
近接用の剣術もだが、魔術もあってその戦闘は鉄壁の布陣と形容しても差し支えはない。
ならばこちらはジリ貧。待っているのは十中八九、死だ。
仮にシンクとクロエがこちら側に加わったとしても、クロエは戦闘に支障が出る程の手負い。
更に、シンクにはそこまでの戦闘は期待出来ない。
つまるところが……こう言うと残酷なようだが、現状で二人は単なる足手纏い。
そして此所でグズグズしている間に、恐らくその二人は騒ぎから何事かとこちらへ来てしまう。
ロイドはそう踏んでいた。そしてそれは諦めでも何でもなく、冷静な戦況判断だと言えた。
故にロイドが迷わず取った行動は、突っ込む事ではなく、純粋な撤退であったという訳だ。
……此所にクラトスかリフィルが居たならば、ロイドの選択を大いに褒めただろう。
だが、ロイド自身は複雑な心境にあった。
この異常な地だからこその、命の優先と言う名の“見捨て行為”。
確かに正しい選択だが、以前のロイドなら取りはしない選択だろう。
そしてそれは、同時にロイドの成長を暗示している。
ロイドはこの異常な地を前に、仲間の死を前に、確かに変化していた。
そしてロイドはその変化を少なからず嫌悪していた。
自分が臆病になったのか、大人になったのか。考え方が父に似てきているのか、そうでないのか。
今のロイドにはそれを決める事が出来なかったからだ。
ロイドはその脚力故にひとっ飛びでがらりと変わってしまう景色の中、爪を噛みながら眉間に皺を寄せる。

何にせよ、あんな隠し玉<エルレイン>が居た以上、今は取り敢えずルカは保留だ。
自分が死んだら元も子もない。
だから、今は心から祈るしかない。ルカが何時かこちら側に来れる事を。



【select:white road,too】
118バッド・アップル方程式 18@代理:2010/01/01(金) 01:38:12 ID:oLbzzqbH0



西に逃げよう。
右胸に開いた穴と背に生えた翼に目を白黒させるシンク達に、ロイドは先ずそう言った。
シンクは口を半開きにし、訝しげにロイドの右胸をまじまじと見る。
肺静脈切断、右肺破裂、肋骨損傷。医学知識の無い自分が大雑把に並べただけでも、これだけ言える。
常識的に考えて、明らかな致命傷だ。人間なら間違ってもコレで生きていられる筈がない。
だが、シンクはその現実を受け入れた。
現に目前にこうして生きているのだから疑い様が無いし、異世界の住民にそれを問うのはナンセンスだからだ。
ならロイドの復活も、まるで天使の様な光翅も、“そういうもの”なのだと認識する他はない。
「取り敢えず話は後からだ。後ろからアイツらが追って来てる音が聞こえる。早くしないとヤバい」
音なんて全く聞こえないのだが、シンクは頷いた。
この様子から判断しても、ロイドの頭がおかしくなったとは考え難い。

「い、いやアーヴィング……そんな事よりもお前、その傷……!」

だが、クロエはそう易々と非現実的要素を受け入れられる程、人間が出来てはいなかった。
シンクは焦躁に黄色い声を上げるクロエへと、小さく舌を打つ。
仲間の死や“あの蝶のメッセージ”で動揺して間も無く、ロイドが度肝を抜く姿で走ってきたのだ。
クロエがこうなるのは当然だったが、シンクは苛立ちを隠せなかった。

「詳しい話は全部後だ。兎に角ヤバいんだ。今の俺達じゃぜってー殺られちまう。
 悔しいがここは……逃げるしかない」
両手を上下させて慌てるクロエの肩を掴み、ロイドはそう言った。
クロエはロイドの苦しそうな表情を見て、悟った様に俯く。
ルカという事柄をロイドがクロエに言う事はないが、クロエは何かしらの要素を見出したのだ。
孰れにせよロイドにとって、それが苦渋の選択だった事はクロエには容易に想像出来た。
一方、シンクは眉をぴくりと動かし、真剣にロイドの言葉を飲み込む。
シンクはロイドの実力を割と高く評価している。
精神面は甘いとしか言えないが、甘いなりにも芯は固く、肉体面ではなかなかどうして屈強だ。
そのロイドが胸に穴を開けて逃げてきて、尚且つ“絶対に殺される”と言うのだ。
ならば、それは信用に足る言葉。
「分かったよ。ロイドが言うなら間違いないんだろうね」
シンクは肩を竦めると、クロエに目線で同意を促す。出来れば、厄介は御免被りたい。
「ああ……そうだな」
シンクを横目で見つつ、クロエは頷きながら応えた。
どの道、今の自分ではどう足掻いても足手纏いにしかならない。
……ふと、あの言葉を思い出す。

“お願い、クロエさんを探して。
お兄ちゃんと私を止められるとすれば……もう、クロエさんしか居ないと思うから”。

テルクェスが残した古刻語だ。
そして東方面からテルクェスが来た以上、恐らく西方面にクーリッジ達は居る。
そう考えるクロエには、ロイドの提案はむしろ一石二鳥であり、却下する理由もなかった。
強いて言うなら、心配事が一つ。クロエは自らの胸へと視線を落とした。

「だがアーヴィング、すまないのだが私はちょっとこの状態では……上手く走れないかもしれない」
この傷で走れと言うのは、少しばかり酷な話。しかし、勿論ロイドもそれを分かっていた。
ロイドは頭を左右に小さく振ると、口を開く。
119バッド・アップル方程式 19@代理:2010/01/01(金) 01:43:11 ID:oLbzzqbH0
「大丈夫だ。俺の背に乗ってくれればいい」
「……待て、何だって?」
クロエは思わず吹き出してしまいそうになるのを抑え、半笑いで聞き返す。

「心配するな。天使化は疲労しないから、気にしなくてもいいさ」
「い、いやそういう問題じゃっ、」
「何だよ、走れないんじゃなかったのか?」
「……う……うん」

困った様に首を傾げるロイドに、クロエは結局顔を服に埋め、目線を流しながら頷く。
……何だ、この気持ち悪い茶番は。
シンクは鳥肌が立つ腕を擦りながら、嫌悪感に舌を打つ。平和な連中だよ、本当に。
「よし、決まりだな。シンクは……走れるか?」
突然話を振られ、僅かに動揺する。言うべきか言わないべきか。
これでも烈風と呼ばれた六神将、そのトリッキーで素早い体術は評価されていた。
だが、此所でその片鱗を感じさせていいものだろうか。
……気にし過ぎか。
「大丈夫だよ、これでも足の速さだけは自信があるんだ」
たかだか走れるか否かの質問。走ったところで支障はない。
「悪いな、シンク」
申し訳なさそうに言うロイドに、シンクは気にしないでよと返し、続けた。
「それより急ごう。
 もたもたしてる暇はなさそうだしね。早くしなくちゃ追い付かれかねないんだろう?」
ロイドは頷き、瞼を閉じるとルカ達の足音に耳を澄せた。
「だいぶ近くまで来てるみたいだ。……クロエ、乗ってくれ」
ロイドは中腰になり、クロエを促す。
一瞬の戸惑いを見せつつも恥ずかしそうに乗るクロエを見ながら、シンクは襲撃犯と今後について考えていた。
実を言うと、最初は襲撃犯を迎え撃っても良いのでは、とシンクは思っていた。
何故なら、ロイドを襲撃した犯人がオールドラントの住民である可能性もあったからだ。
ルークはまだしも、他の面子はアッシュにアリエッタ、ティアにジェイド。
全員が軍人で、何時ゲームに乗ってもおかしくはない連中ばかりだからだ。
しかし、シンクはその可能性を完全に棄てた。
何故ならロイドの胸に開いた穴の形状は円く、更にその周囲は焦げている。
推測するに譜術的要素による集中近接型の一撃だが、オールドラントにはその様な種類の術撃は存在しない。
故にシンクはロイドの提示した逃走案に同意したという訳だ。
しかし、とシンクは腕を組み思う。
恐らく相手は複数だとは言え、あのロイドが逃走する様な厄介な敵。
参加者の人数も減っている今、これからは敵も更に厄介になっていくだろう。
おまけに西へ大きく移動する以上、エンカウントも増える。ならば一筋縄ではいかない、か。
何時までも猫を被りきれるとも限らないし、アクシデントが起きればボロが出ないとも言いきれない。
ならば、今まで以上に気を引き締めていかねば。
シンクは走り出すロイドの、何故か小さく見える背を見ながらそう決意するのだった。



【please selecting,angel】



さんさんと照り付ける天の玉。こうこうと肌へと吹き付ける自然の息吹。
鼻をくすぐる大地の芳香、さらさらと揃って踊る葦の群。
120バッド・アップル方程式 20@代理:2010/01/01(金) 01:48:17 ID:oLbzzqbH0
僅かに垂れた前髪を触角の様に揺らしながら、ロイドは足を止め俯く。
風と水に深く掘られた渓谷は、白い霧を吐きながらどうどうと水を轟かせていた。
ロイドの背の翼が、光を浴びて蒼を乱反射させる。谷を覗くと、待っているのは目が眩む程の高低差。
懐の地図を手に、シンクはやれやれと肩を竦めた。百聞は一見にしかずとはよく言ったものだ。
そこに掛かっている筈の橋は……それは見事に、最初からそこに存在していなかったかの様に落ちていた。

「どう、するんだい?」

谷から吹き付ける風に服を靡かせながら、少しばかり息を乱したシンクが徐に問う。
「あ、ああ……多分俺が飛んだ方が速いから……そうだな、シンクも俺に捕まってくれ」
シンクは頷きながらロイドに近付いた。
此所まで逃げてくる途中、ロイドから天使化についてのおおまかな話は聞いている。
ならば確かに、別段反対する理由がない以上、ここはロイドに任せておいた方が良さそうだ。

「ところでアーヴィング、徒に西に行くのは得策じゃないと思うぞ。
 目的地は何処か先に決めておいた方がいいんじゃないか?」

と、突然聞こえるのはロイドに背負われたクロエの声。
ロイドは短く唸ると、眉間に皺を寄せながら辺りをぐるりと見渡した。
目印になる様な建物と言えば……見える範囲では一つだけだ。
ロイドは覚悟を決め、シンクを抱えながら翅を羽撃かせる。
足音は、追い付かれる事はないだろうが決して遠くはない。油断は出来ない。
この谷を渡る速度で、出来れば差を付けたいところだが……さて、相手が飛行能力があるか否か。
まだ能力が未知数である以上、この逃走劇もどうなるものやら。
ロイドは苦笑を浮かべると、大地をがむしゃらに蹴り上げる。
“上手な生き方は諦める事”。
ふと反芻する、ルカのその言葉。
“上手な生き方は諦める事”。
ロイドは再び胸中でその言葉を転がす。
自分は彼を救えないのだろうか。裏切られ、全てを喪い、そして諦めたミトスとの戦いの様に。
林檎の様に真っ赤な衣装とは逆に、ロイドの中身へと腐った様な灰色が蟠る。
……なんてろくでなしなんだ、俺は。
ロイドは溜息を吐く。
同情や共感にも似た何かが、何時までも心の裏側に突き刺さっていた。

「……。一旦あそこまで行く」
その想いを断ち切る様に、ロイドはそう切り出す。
しっかりしろ自分。今はそんな事よりも、クロエ達と逃げる事の方がよっぽど重要だ。
「多分、走って行くなら遅くても九時前には着ける筈だ」

そうして、天使は騎士と烈風と共にその場から天高く飛翔する。
目指すは天を貫く高き塔。天使を追うは神子を携える天の覇者。
黎明で待つはもう一人の天の王。遠く狙う、後光を告げし雷光の輝き。
やがて訪れる九の刻。神々集う混沌の園は、更に淵へと奥深く―――。
121バッド・アップル方程式 21@代理:2010/01/01(金) 01:53:02 ID:oLbzzqbH0
【ルカ・ミルダ 生存確認】
状態:HP65% TP80% 両手の皮がずる剥け 死への反骨心
所持品:子供じゃないモン 聖杖ユニコーンホーン
基本行動方針:エルレインを利用しつつ、エルレイン含む参加者を全員抹殺
第一行動方針:ロイド一行を追う
第二行動方針:仲間を殺した犯人は確実に抹殺
現在位置:E6

【エルレイン 生存確認】
状態:HP95% TP95% 衣装に焦げ 左手火傷 三つ編みが解けている 無力感に苛立ち 天使化に不審
所持品:ルグニカオオ紅テングダケ 少し囓られたルグニカ紅テングダケ バクショウダケ
    クレアの首輪 ピクルスストーン
基本行動方針:カイルとその仲間を抹殺し、罪無き弱きヒトを幸福へと導く。マーダーと主催者は殺す
第一行動方針:ロイド一行を追う
第二行動方針:ソーディアンの様なレンズエネルギーを秘めた物を探し、奇跡を起こす
第三行動方針:ルカの監視。ルカの行動が行き過ぎた時はどうにかして止める
第四行動方針:主催者等の情報収集。信頼できそうな人物には館のことを教える
現在位置:E6

【シンク 生存確認】
状態:HP85% TP30% 居心地が悪い 服がボロボロ 右足に噛み痕
支給品:すず 未完のローレライの鍵 リコーダー 聖剣ロストセレスティ
    シンクの仮面 クレーメルケイジ(C) ディストの首輪
    ソーディアン・アトワイト(カースロット発動中。意識無し)
基本行動方針:ルーク達を引っ掻き回して楽しむ為に、ロイド一行を利用してルーク達と合流する
第一行動方針:取り敢えずはしかたないなので逃げる。まぁ、レムの塔は諦めるしかないよね……
現在位置:D5渓谷上空

【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:HP45% TP65%(0%でEND) 左肩に浅い切り傷 右足に切り傷 強い決意
   右胸貫通傷 常時天使化(解除すれば失血多量で死亡)
所持品:オブシディアン 木刀セット ソーサラーリング ダガーナイフ
基本行動方針:打倒サイグローグ。死んだ仲間の為にも対主催を貫く
第一行動方針:ひとまず逃げる。ルカやエルレインの事はそれからだ
第三行動方針:仲間を集める。リフィルとクラトス等のブレーンであれば尚良し
現在位置:D5渓谷上空

【クロエ・ヴァレンス 生存確認】
状態:HP45% TP100% 帽子紛失 打撲 胸に止血済中裂傷
   シンクへの複雑な心境 迷い
所持品:安全ヘルメット
基本行動方針:打倒サイグローグ? 出来ればセネルやシャーリィと合流し、シャーリィだけでも守る
第一行動方針:取り敢えず逃げる。その後シンクと一度、ゆっくり話をしたい
現在位置:D5渓谷上空







陰は知らない。陽が死にきれず、陰になりきれなかった事を。
皮肉にも、迷いの末に陰陽が導き出した答えは同じ……他者の排斥。
結局白も黒も、縋った旗は同じだったのだ。
陰は思い出すべきだった。何時か何処かの道化師が言った言葉を。

白い道と、黒い道。
どちらを選んでも、行き着く先は――――――――――――――――――同じなのだ。
122@代理:2010/01/01(金) 02:07:32 ID:oLbzzqbH0
投下終了です。2010年もテイルズロワ2ndをよろしくお願いします。では皆様よいお年を!

---
以上で代理投下終了です。途中で時間が空いたりして申し訳ない
そしてルカ……スパーダの悪い予感が有る意味的中してしまったか
ロイドもカウントダウンが始まったし…向かう先の塔は崩壊確実だぞーw
投下乙です! & A HAPPY NEW YEAR!!
123名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 09:53:14 ID:73K+ItHgO
作者さん&代理の方乙です
ルカレイン組も泥沼だなあ
デクス適当なこと言いやがってw

西も大混戦になりそうだ

とにかくGJでした
124名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 22:21:19 ID:nrn8EaHS0
デスクの嘘は結構重く影響したなー
しかしロイドはかっこいいぜ
125名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 03:20:04 ID:QyfbY7HV0
乙です
かっこいいけどロイドやべー
TP切れるまでに治療できるかな?
126名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 11:37:07 ID:eZxCfVsK0
とりあえずあけおめ。
そして年越し投下とは、さすがはここの書き手さんw GJです。
ロイドの熱血とルカとマオの対比がすげえなあ。エルレインにも目的がまた一つ増えたみたいだし、向かう先は塔とかおまwこの先が実に楽しみ。
そして相変わらずのパロディっぷりに笑ってしまった。ハチマキに上条さんw
127名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 19:08:52 ID:jYa4SCac0
おおまかにこのロワも流れが見えてきたな。
西から東に行くメンバーが多くて、橋も破壊。実質上の東西分断だな。
そんでもって塔にはほぼ全員のメンバーが時間的に集合可能。テイルズ1でいうC3村集合とサウブレを会わせた感じか。これからが楽しみだなあ。

えーっと…現時点で塔に行く予定or居るのは、
ジルバ・シャーリィ・アッシュ・カイル・ティア・ヴェイグ・ミクトラン・ロイド・クロエ・シンク・エルレイン(ロイド達を見失う可能性あり)・ルカ(同じく)・
チャット(未定?)・アガーテ(多分塔が崩れたら責任感じて行くだろう)・レイシス(アガーテが行くなら同行するだろう)・ミトス(大樹の元へ行くなら時間と最短距離的に騒がしくなってる塔を通過するだろう。ロイド組とはちあわせる可能性もあり)
ってとこか。
あと可能性としてはリフィル・キール・スタン・イレーヌ ・ロニ・カイウス・チェルシー・フィリア・ルークがあるし、こいつは楽しみすぎる。
128名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/11(月) 23:47:34 ID:n7NvjhWm0
保守
129名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/13(水) 15:58:44 ID:cBdK3tKw0
テイルズロワラジオを行っているナッシュです。
今週の1月16日(土) 21:00〜に、テイルズロワ2ndを題材としたラジオを
行いたいと考えております。
お時間がありましたら、よろしければご参加ください。

ラジオ掲示板のアドレス→ ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13268/
ラジオのアドレス等はこちらにも書いてありますが、当日また改めて張らせていただきます。
130名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/16(土) 21:15:08 ID:5CeRw0oe0
今から12時過ぎあたりまでラジオ放送しています。

ラジオのアドレス
http://nash-tobr.ddo.jp:8000/
聞き方はこちらからどうぞ↓
http://www.atamanikita.com/start-shoutcast/shoutcast-14.html
131名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/20(水) 19:47:43 ID:gn+hANiw0
保守
132名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/25(月) 11:32:52 ID:2fQpTRYh0
規制解除を願って、保守!
133名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/28(木) 16:48:20 ID:rcjmKZhVO
規制解除きたあああ!
134名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/28(木) 19:01:10 ID:zwJGM1PnO
規制解除記念に保守
135名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/29(金) 14:07:34 ID:Cod58LMQO
規制解除イヤッホオォォウ!!!
136名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 10:37:43 ID:QLOd9lWSO
お、規制解除きたか
137名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 19:02:20 ID:Z7TJBHJY0
取り敢えずサイグロの一番恐ろしい所は
脱出ルートが明確になってきたら
一番最初に脱出した者の願いを叶えましょうって普通に言いそうな所だな
138名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 19:23:18 ID:ks0nPWMaO
脱出して死者の蘇生を願えるんなら優勝する必要ないな
139名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 20:21:28 ID:Jx++w9pu0
>>138
問題は、それが約束されたとしても誰だって死ぬのは嫌だという事だ。

それに、「安心しろ、後で蘇生してやるから」って約束が守られないと考える方が自然だしなあ。
140名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 20:45:48 ID:i3ZXBxpkO
開催理由も単なる娯楽っぽいしなー
だからこそ結果には執着しなさそうでたちが悪いな
141名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 21:00:22 ID:ks0nPWMaO
>>139
うーん、そうじゃなくて…
失ってしまったものを取り戻すために人を殺して優勝する必要がない…ってこと
ルカが優勝じゃなくて脱出を狙うみたいな
142名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 23:16:37 ID:Z7TJBHJY0
みんなで生きるための脱出も
順位を設定されたらどこかで疑心暗鬼が生まれそうだなと思ってさ
143名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/01(月) 08:43:50 ID:jSUpptZuO
脱出しても面白い事ないからな。なまじ死線を潜り抜けてきた猛者ばかりだから、どうせなら仲間失って絶望した奴等は優勝して願いを叶えてもらおうと考えるのでは?
144名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/01(月) 14:58:44 ID:GKAsNNnY0
>>143
1stが全員対主催だったのにあの終わりだったことを忘れたか?
2ndマーダーでも純粋な優勝狙いってほとんどいないんだぞ
145名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/02(火) 01:33:33 ID:SHz9lwDW0
>>139
D2でエルレインとジューダスが全く同じやりとりをしただろうな
ジューダス「何故スタンを殺した」
エルレイン「邪魔だった。安心しろ、後で生き返らせる」
ジューダス「それで解決すると本気で思ってるのか?」
エルレイン「駄目なら記憶を改竄させる。それでも駄目なら夢の世界で幸せに暮らしてもらう」
ジューダス「わかった。死ね」
146名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/07(日) 21:45:05 ID:ZK5Oju+3O
ジューダス様……
147名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/10(水) 09:59:57 ID:7rXH5TNS0
ほしゅ
148名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/10(水) 22:10:38 ID:7rXH5TNS0
マーダーでもないスタンがキルマークトップの3とはな。皮肉なもんだ
149名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/12(金) 19:37:24 ID:EKrtGARvO
ジューダス様ぁ…
150名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/13(土) 04:54:27 ID:JFdGVfZ10
しかも全員有望で善良な対主催だってのがまたね
スタンの所業をカイルやロニが知ったときが今から楽しみ
151名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/13(土) 17:54:23 ID:9AY+O0JoO
>>148
かといって対主催ってわけでもない。
実に複雑なものだ…。

現在の殺害数ランキングってどんな感じ?


>>149
わかったから死者スレ池。
152名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/16(火) 09:15:53 ID:774PPjgs0
ランキングが避難所にあがってたな。いつ見ても意外な結果だ
153名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/17(水) 17:17:56 ID:FqWBL4DIO
そろそろ俺の忠告聞けよ^^;
ジューダス様があそこで死ぬとか前の話読めよ^^; どう考えても薬飲む流れだった
しかも前俺が投下した奴の方が出来がいいというね^^;
ハァ…もう成り済ましてし破棄宣言されるかもしれないから気をつけてね^^
154名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/17(水) 19:08:37 ID:TEHvyIqvO
〉〉153
書き手の心得ちゃんと読んだのか?
155名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/17(水) 20:39:55 ID:vEcagCw1O
>>153
わかったから死者スレ池。
156名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/19(金) 19:26:50 ID:bpzdnMOwO
投下します
157ジューダスの置き土産:2010/02/19(金) 19:28:13 ID:bpzdnMOwO
カイルはジューダスが死んだ、そんな気がした。
カイル「そんな…ジューダスが死んだなんて…くそ………くっそぉぉぉぉぉぉ!」
カイルは己の無力さに涙を流し崩れ落ちた。

――――
――


サイグローグ「ジューダスが死にましたか…ククク……次は誰が…」
ザシュッ!
サイグローグ「ぐぉぉ…これは…ジューダス…の置き土産…か……
戦いが始まる前に斬られていたとは…大した奴だ…」
バタッ…


こうしてバトルロワイヤルは幕を閉じた。皆は解放され、助けてくれながらも助けてくれジューダスに対深い悲しみを表しながらも黙祷を捧げた。
そしてこれからは争いの起こらない平和な世界を作るとジューダスの墓標に誓い自分達の世界へ帰っていった…。


【テイルズオブバトルロワイヤル2nd 完】
158名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/19(金) 19:30:27 ID:bpzdnMOwO
投下終了です!
長かった2ndもいよいよ終わりましたね!^^
私のようなものがトリを務めさせていただきすいません^^;
次の3rdでもよろしくお願いします^^
みなさんお疲れさまでした!^^
159名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/19(金) 21:29:26 ID:bpzdnMOwO
乙!
よかった 3はH、VもGも参戦か楽しみだ!
面白かった^^
160名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/19(金) 22:27:54 ID:hgTCWHhpO
ワロタ
161名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/19(金) 23:32:31 ID:TXS/9JVs0
久しぶりだな。
一応>>157は無効ですと書いておくか。

ちょっと展開のぶっ飛び具合に噴き出してしまった
162名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/20(土) 02:48:25 ID:8+rsx9Gg0
言うまでもないだろうが、以降スルーでな
163名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/20(土) 09:06:54 ID:QuVIg83/O
>>162
そんなこと言う時点でスルー出来てないよ
164名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/20(土) 12:16:14 ID:P5UfA9Gw0
むしろみんな適当にあしらってるのに
一人だけ鼻息荒くして浮いてる感じだな
165名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 07:18:04 ID:nQFyOc81O
ちんぽ
166名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 10:12:52 ID:/xzvYfh20
おまえらなに無駄にギスギスしてんだw
167名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 14:24:31 ID:v1xjyEo1O
ジューダスが死んだのにも関わらず、空気読まずにジューダス様とかぬかしてクソなSS投下して自演してる奴が悪い。
それが全てだ。
168名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 14:39:21 ID:IN5AKp/60
様式美ってことで笑ってスルーしてやれよ
本人も無理して通す気はないんだし
ユフィの人はユフィが死んだら投下止めたんだっけ
まあ、後半ネタ切れっぽかったしなあ
169名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 18:08:58 ID:gqVrkkNEO
>>167
そんな鼻息荒く文句言ってたら思うつぼだぞ
170名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 21:25:43 ID:t8mbPk/MO
って言うかジューダス様の人ってネタじゃないの?
171名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 23:01:20 ID:sUO0lwmS0
最初期は微妙だが、それ以降はネタだよ
毎回クソ真面目に反応する人はいるけど
172名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/22(月) 19:27:12 ID:HNIMpEJ2O
ネタだとわかってはいるが、さむいだけで、いい加減ウザい。
確か一番最初はスタンがらみのところだっけ?
あの付近でやめておけばよかったのに。
173名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/22(月) 23:28:19 ID:shgDQJvEO
なんだかんだで伸びるあたりいいか悪いかにせよ何かしら魅力があるんだな
174名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/24(水) 09:49:48 ID:0bv9DkLF0
まーまー平和にいこうぜ!
175名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/24(水) 23:50:38 ID:RJT5lkd00
このスレで平和とはなんとも皮肉めいたものである
176名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/25(木) 06:34:45 ID:TPV1YCnhO
本編ドロドロww
177名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/03(水) 01:06:28 ID:OqRp5gVUO
ほしゅ
178名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/03(水) 07:01:03 ID:YIRDy90SO
>>176
むしろデロッデロ
179名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 17:42:37 ID:fbx4wprfO
数あるパロロワの中でもここまで描写が濃いのはそう無いよな
グロリアなんて読むのに一時間かかったぞ
180名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 18:03:17 ID:DpT7zzHcO
それがこのロワの特徴であり長所だな。短所とも言えるが。
葉鍵で言うとどろり濃厚ピーチ味くらいドロドロだ。パロロワの中でもかなり粘着質でアングラなイメージ。
これだけ過疎でも安定した感想とかがあるのはそういった個性があるからかもね。

自分は最近読み始めたクチだが、第3クールからは麻薬のような妙な魅力がある。
181名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 19:34:36 ID:txC10FvcO
そういえばオレ、読み始めてちょうど一年くらいだ
何かお祝いしないと

マオたんと祝いたいなぁ
182名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 23:57:41 ID:vjLhXrVnO
俺は読みはじめて約一年半……てか最初から居るな。
第三クールの最初に荒れた時はどうなるかと思ったが、今は安定してて何よりだ。
183名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 00:26:37 ID:UTGWrmI/O
このロワの住民ってどの位居るのかね?
過疎かと思えば話題振ったらゾロゾロ出てくるし、書き手も意外と多いし。
本当に過疎なのかどうかも分からん。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 03:08:07 ID:DMJRqNhZ0
ロイドが1st終盤とほとんど同じ状態になってしまって、
いよいよもって主人公&ヒロイン勢の活躍が危ぶまれるなぁ。

今の所台頭してるマーダー(あくまで個人的な印象)は、
ミクトラン、マオ、ルカ、ジルバ辺りか。
第五クールの最後まで、果たして誰が生き残ってるのか、全く予想できないぜ……。
この先どんな展開が来ても、簡単に納得してしまいそうだよ。
185名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 05:34:08 ID:UTGWrmI/O
妙な説得力はテイルズロワの御家芸だと思うw
落ち着いてみるとかなりぶっ飛んでるのに、それを感じさせないのは流石だよな。

期待のマーダーは……デクスかな。あいつのラーニング能力は半端無いし、頑張ればリヒターにも勝てるかもしれん。
対主催はやっぱりアッシュが格好良い。そろそろ死にそうな気配がするが、なんとか生き延びて欲しいもんだ。
186名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 08:13:50 ID:30dwFjof0
そこは1stで歴代最弱ラスボスをああも強く見せた実績あればこそだなw
187名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 08:51:09 ID:1/4i2tvPO
ミクたんのことかーー!!!!
188名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 09:44:15 ID:0gg5v6LQO
>>185
ロワでのアッシュは妙にかっこよく見えてしまう不思議。
しかし相手はマーダーなりかけのヴェイグかよ。
うまくヴェイグを説得できるかな?
あとカイルはどう動くんだろ…。
189名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 14:56:39 ID:a6/N4/DW0
アッシュはアニーの死と、日記を受け継ぐエピソードがあったからこそ、
対主催の中でも一番焦点が当てられてるんだろうね。

俺としてはカイウスにはがんばってほしいところだけど、
不運にもラスボス格に何度も狙われて心身ともにボロボロという……。
そろそろ良い目を見てもいい頃だと思うんだ(・ω・)

しかし、サイグローグはサブキャラが故に底が知れない恐ろしさがあるよなぁ。
対主催を貫くとしても、どんな決着をつけるのが最善なのか、
全然思い浮かべることができんよ……。
190名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 15:29:18 ID:UTGWrmI/O
そもそもサイグローグを倒すのって無理な気がする。
しかもロワを開催した時点でサイグロの目的は達成されてるからなあ。
どうあがいても後味が悪い最後になりそうだ。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 15:32:21 ID:30dwFjof0
ハッキリ言って他人の不幸が蜜の味ってだけの奴だから
脱出したらお疲れさんってそのまま帰しそうなんだよな。ただ再招集の危険は無くもないが
つか神の視点じゃなく出場者の視点ならそれが怖くて戦いを挑みそう
192名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 15:46:45 ID:a6/N4/DW0
>>190
>どうあがいても〜

「どうあがいても、絶望」ってのを思い出したw
考えてみると、あれもバトルロワイアルに通じるものがあったんだな。
世界に反抗したけれど救われなかった人たちが多かったし。
そう結びつけると、絶賛燃え展開中の1stアナザーも、
絶賛ドロドロ中の2ndも、碌な終わりになる気が全くしないぜ……。
193名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 20:52:12 ID:o2oHPfyxO
投下します。
19421秒間の沈黙 1:2010/03/06(土) 20:54:42 ID:o2oHPfyxO
苛ついていた。

理由は幾つかあるが、それが全てあいつに関しての事だという現実に一番苛ついていた。
僕は右に流れた前髪を人差し指と親指の間に入れて弄る。参ったな。
何故もこう、厄介な事が自分にばかり廻るのか。
それも、全てがまるで台本通りであるかの様な、そんな見事なまでのあいつの仲間関係の事。
ここまで来ると、最早運命とやらを意識せざるを得ない。
だから先ず最初にこう思った。

“何かの意思が自分とあいつの間に溝を作ろうとしている”と。

やっぱり話が上手く出来過ぎてる。
例えるなら、たまたま拾ったEXジェムがレベルMAXだったってくらい出来過ぎてる。
万物に効能を示すという霊薬、音素を収束させる宝玉、移動して情報を収集しろと言わんばかりの靴。
早々に出会った天才、死者の声に精霊を庇う母、それを殺せなかった誰か。
……これではあまりにも都合が良過ぎはしないだろうか?

僕は自嘲気味に笑いながら前を見る。
ぼんやりと、シャドウの様に黒くくすんだ闇の彼方に、ぬるりと蠢く人が居る。
そいつは、まるで消えかけの蝋燭の様に何処か儚げで、それでいて獣の様な生々しい息遣いをしていた。
銷沈した様子とは逆に、時折眉間に皺を寄せたくなる程の邪悪な気を放っている。
ふと、つんと血の臭いが鼻を刺す。
背に死神か何かを感じているかの様に震え、怯えるそいつは、僕を焦点の合わない双眸でずっと睨んでいた。

最初、僕はこいつが一体何をしにこんな洞窟の奥深くに来たのか、それを問うつもりだった。
別にさしたる興味も無かったんだが、少し誰かと話しておきたい気分だったからだ。
こいつがそんな問いに答える訳もなく、剰え僕に斬り掛かって来るかもしれないなんて事は当然分かっていた。
それでも、いや、だからこそ僕は尋常ならざる様子のこいつと話しておくべきだと思った。
最期の言葉が発狂した叫び声だなんて、とてもじゃあないがセンスが良いとは言えないと考えたからだ。

だが僕は結局、今もこいつ――ロニ=デュナミスだったか。ハロルドによればルーティを慕っていた奴だ――に何も話し掛けていない。
この洞窟が一本道だという事に気付いてしまったからだ。
つまりが、こいつはあのいけ好かない博士と出会った可能性が高い、という事だ。
ハロルドが殺気をぎらつかせながら洞窟を歩く人間を見逃すとは到底思えない。
解剖材料とばかりに殺気ではなくメスをぎらつかせそうだ。
19521秒間の沈黙 2:2010/03/06(土) 20:57:38 ID:o2oHPfyxO
第一、ハロルドは一応曲がりなりにもロニを心配していた。接触を避けるとは思えない。

……だが、そうすると何故こいつが此所に居る?

幾らこいつが仲間だったとは言え、ハロルドは軍人。精神が安定しない人間を見逃すだろうか。
情けを掛けたのか? いいや、そこまで日和ってはいないだろう。
仲間に情けを掛けるくらいなら、きっと御飯に掛けて食べてしまう。そういう女だ。
なら或いは僕に何かを期待しているのか? ……有り得ないな。
あいつなら僕がここまで考えるのも想定内だろう。
なら、あいつが期待した結果は得られないであろう事は明らかだ。
やれやれ。何にせよこいつが用があるのは僕じゃあなくジューダスだろうな。
なにせハロルドがジューダスの情報を黙秘するメリットがない。
なら、何をしに来たのかを問うのは野暮、か。

僕は十メートル程前に立ち竦むそいつをまじまじと見る。
血濡れだった。
胸に空いた小さな穴の意味を、僕は多分、解っている。

……全てを知る身としては、少しだけ、どうするか迷いがあったと思う。

だが僕は足を静かに踏み出すと、そいつから視線を外し暗闇の先を見つめた。
ぶつぶつと念仏の様に何かを呟くそいつの横を通り過ぎ、僕は先へと進む。
時間にして十五秒。十五秒だ。たった、十五秒の出会いだった。
その後五秒程歩いて、最後に少しそいつが気になって振り向く。
延々と続いていく道の中には、もうそいつの姿はなかった。
まるでそこには最初から誰も居なかったかの様な静寂だけが、ずしりと居座っていた。
僕は火傷した掌と洞窟の奥を交互に見た後、少しだけ息を吐く。
外はそろそろ黎明の頃合だろうか。
地獄を思わせる湿気た洞穴に居ると、陽の光が少しだけ恋しい。




「さよなら、ロニ=デュナミス」




―――僕は、ジューダスが死んだ事を勿論知っている。
19621秒間の沈黙 3:2010/03/06(土) 21:00:29 ID:o2oHPfyxO
【ミトス・ユグドラシル@ミトス 生存確認】
状態:HPTP100% やる気+ 小さな罪悪感 大樹が気になる 天使化
支給品:ジェットブーツ エリクシール 紫電 スペクタクルズ×10 ロイドの仮面セット(残り3枚)
    レーザーブレード 苦無×18 ミスティブルーム とうもろこし
    イオンの首輪 デュランダル サック×2(ジューダス・スパーダ)
基本行動方針:取り敢えず死ぬ気は無いけど生きる気も無い
第一行動方針:この島の舞台裏の解明
第二行動方針(A):ルカにデュランダルを渡す
第二行動方針(B):カイル、もしくはディムロスを確保する(スタンを止める?)
第三行動方針:ティア探しにかこつけて、あの巨大なマナの正体を確かめる。
       出来れば感知した方向(現場)に行ってみたい。ティアは見かけたら回収。
第四行動方針:ルーティの仲間へは隠しもしないがあえて真実をいう気もない。
       また事実を誤魔化す気もない。
第五行動方針:ハロルドにいつか「ぎゃふん」と言わせる
現在地:B5・アラミス湧水洞内

【ロニ・デュナミス 生存確認】
状態:HP10%以下 TP55% 脇腹に刺傷(処置済) 胸部刺傷 ヴェイグへの警戒と微かな同情
   精神的ダメージ大(半精神崩壊?) 右腕大裂傷 憎しみ+ 右足甲骨折
所持品:さつまいも タフレンズ×1 やや小さくなったシーツ 温石
基本行動方針:ジューダスに会う
第一行動方針:東へ
第二行動方針:サレ、アリエッタ、チャット、ルーティを殺した奴、ナナリーを殺した奴は絶対に殺す?
第三行動方針:ゲームのことは深く考えたくない
現在位置:C6・アラミス湧水洞内
197名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 21:02:51 ID:o2oHPfyxO
投下終了。久し振りなのに短くてすまんです…
198名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 21:57:44 ID:UTGWrmI/O
投下乙!
とりあえずミトスとロニの遭遇は何事も無く済んだか。
けどロニの行く先にはジューダスの死体があるし、本人もかなり限界だし……。
ええい、救いは無いのか救いは!
199名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 01:51:37 ID:/bjLbfia0
投下乙。あなたは俺の英雄だ
傷口に火傷の跡があるとかでスタン=マーダーと気付くかもな
200名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 04:15:16 ID:/bjLbfia0
ジューダスの首輪はあんままなんだよな
ミトスなりの自分が認めた男への敬意かね
201名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 09:58:52 ID:T+lXuSCJO
これジューダスの死体を見た瞬間にロニの発狂マーダー化確定だな。
そんでもってそのジューダスの姿を見たロニの反応が楽しみすぎる。
短文だけど、ワクワクするような展開にしてくれた書き手さん乙であります!
202名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 10:03:35 ID:/bjLbfia0
カイルが死んだらリアラ、ロニ、スタンがOUTになるから気をつけろっては言っておいたのに
まさか自分の死が引き金になるとは考えもしなかったんだろうな
原作からしてそういう奴だから無理もないが
203名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 10:28:04 ID:7cfnEUXDO
投下乙。短いのになかなか面白かった。
ロニはもう駄目だってミトスは悟ったんだろう。
ジューダスとルーティの事を言ったらアウト。殺したらジューダスの遺言に反すからアウト。
ジューダスの死を言わなかったのはミトスなりの優しさか。どのみちロニは詰んでたな。
204名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 11:13:11 ID:/bjLbfia0
でもハロルドはカイルかジューダスならどうにかしてくれるという期待があったんだよな
距離的に仮面の方が近いからそっちに行くのは読めていただろうし
希望を残したように見えたジューダスの死がこうなるとは皮肉というか何というか
205名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 14:28:27 ID:T+lXuSCJO
もはやロニ終了のお知らせだな。
ジューダスとナナリーは死亡済み。
リアラは半マーダー化。
ハロルドはマイペース。
となると、カイルかD2組最後の光となるのか?
206名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 14:31:54 ID:NUXtYrMOO
本気でドロドロだな。
ロニ頑張れー明日があるさきっと
207名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 16:18:17 ID:ueuSf1mY0
「これぞバトルロワイアル」を地で行ってるよなぁ。
初めはゲームに乗る気なかった奴ら(例:マオ、ルカ)も、
不運が重なりすぎてマーダー化しちゃったし、ロニも危ういし……
まさに主人公なロイドは死へのカウントダウン刻み始めたし、
カイウスはルビアが本当に死んだのを知ったりとか、チェルシーが死ぬようなことがあったら、
獣人化→狂マーダー化する恐れがありそうだから……

……俺としては、1stのシャーリィのようなボスマーダーの出現を期待しちゃってるんだけどさ。
う〜む、我ながら外道だ……。
208名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 17:05:31 ID:brxHf+hOO
確かに桁違いの強キャラって居ないよな。
実力的にはミトスとネレイドの2強なイメージだけど、今ひとつ強く見えない。
209名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 17:21:52 ID:7cfnEUXDO
殺害数が現すように皆平均的だよな。
実力的には現時点ではミトス・ネレイド・エルレイン・ジルバが強いだろうが、際立った派手な戦闘がないからな。
一対多数とかだと強いのがわかるが、なまじ賢い奴が多いからそういったイベントが皆無だ。


え?ミクトラン?誰でしたっけ?
210名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 17:52:31 ID:brxHf+hOO
その辺の面子はラスボスの面目躍如だな。後は天使化ロイドも最強クラスか?
リヒターも一応強い筈なんだが、何故かデクスにすら負けそうな気がするww
ミクトランは強いかどうか判断つかん。サレがビビって逃げる程度には強いんだろうけど。
211名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 18:40:00 ID:vFJnnkzfO
ミクトランは一応剣の達人だが、このロワでは強く見えないなw

受験終わったからリバースやってるけど、やっぱジルバ様強いなw
「死ねッ!今すぐ死ねッ!!」とか「お仕置きの時間だよ」とかロワでも言ってほしいw
212名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 18:56:25 ID:ueuSf1mY0
ステルスマーダーとして行動する必要がなくなったら、存分にはっちゃけると思うw
そして死ぬ間際に「〜めちゃくちゃにしやがってぇぇぇぇえぇえぇぇっ!!」って叫ぶに違いない!

いや、しかし、そろそろ他全員が脅威に感じるほどのマーダーを出しても違和感無い頃合いだと思う。
それが誰になるのか、引き金を引くのは誰か、気になるところではあるね。

予測としては、イレーヌの死でスタンが狂マーダー化したりとか……
213名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 20:21:12 ID:7cfnEUXDO
スタンはかなりの魅力があるね。実際、今の主人公格ではロイド以上ではなかろうか。
キレるとかなり怖いマーダーになるだろうな…。
214名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 20:38:26 ID:brxHf+hOO
塔&サニイタウンのイベントが終わる頃には人数もかなり減るだろうし、そろそろ出てきてもおかしくないよな。
やっぱり第一候補はスタンだろうな。今までに積み重ねられた厨強化フラグが一気に回収されたら……。
215名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 20:45:21 ID:2mzeG/hY0
ただでさえ、イグニスとエクスフィアで強化されてるからなぁ。
そこにネクロノミコンを利用してアビシオン化したりでもしたら……

だ、駄目だ、誰も勝てる気がしないぞ!(汗
216名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 20:50:02 ID:brxHf+hOO
一応、右目の死角という明確な弱点があるけどな。
そのために特訓はしてたし、幾らかは補えそうだけど。
217名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 20:57:44 ID:s968HPFcO
>>215
揚げ足取りみたいで悪いけど前々から疑問なのもあったんで。
ネクロノミコン使って強化するのに必要なのってきっとSの魔装備だと思うんだけど、
惑星譜術の媒介であるAの魔装備で出来んのかなぁ…?
218名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 20:59:28 ID:brxHf+hOO
……ネビリム先生復活フラグ?

ジェイドもディストも死んでからじゃ微妙か。
219名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 21:16:06 ID:2mzeG/hY0
>>217
ああ、そうだった。早とちりしてしまったorz
となると、あとスタンの強化フラグはあったかな?
魔剣ネビリムはバトルロワイアルの場合、人を殺すごとに力を増すって解釈してるけど。

なんらかのきっかけでジューダスとナナリーを斬ったのがスタンだって知ったロニが、
恐ろしくとんでもないことやらかす可能性があるよな……。
220名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 21:41:33 ID:vFJnnkzfO
半精神崩壊起こしてるロニがジューダスを見て、スタンが殺したなんて分かるかな?
火傷とか見てもスタンとは結び付けまいとするんじゃないかな?
その場合、確実にミトスが誤解されるだろうなw
221名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 21:53:51 ID:7cfnEUXDO
俺がロニだったらミトスを疑う。というか冷静だったとしても状況から見て明らかにミトスが犯人。
ミトスもそれを分かってるから迷った挙句ジューダスが死んだって言わなかったんじゃないのか?
ジューダスが死んだのを伝えても、ロニがミトスに斬りかかる→返り討ちでロニ死亡だろ?
そのうえミトスは多分ロニの胸の傷がハロルドのせいって分かってるし。
見逃しても見逃さなくてもどうせロニ終了、だからさよなら。さてハロルドになんて説明しようか。
今回の話はそんなミトスの複雑な心境の話だと思ったが。
222名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 22:00:24 ID:2mzeG/hY0
誤解フラグかぁ、それもあったか。
仮にミトスに襲いかかっても、適当にあしらわれるのを想像してしまうけど……w

今の緊迫した状況で一石を投じるのは誰になるんだろう?
アガーテとレイシスが晶霊砲を発射することで状況が一変するかもしれないし、
どこかのグループが突然波紋を広げるかもしれない。
むむむ、考えれば考えるほど、わからなくなってきたぞぅ……。
223名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 22:44:54 ID:brxHf+hOO
晶霊砲は一石どころか巨岩だろww
状況が動くのはやっぱり9時の晶霊砲発射からじゃないか?
今はそこに向けての繋ぎの時期だから、状況が膠着するのは仕方ないと思う。
224名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 23:41:45 ID:2mzeG/hY0
9時からかぁ>晶霊砲発射

今掲載されてる時点で、エリアごとの時刻はどうなってるんだろう?
明確な時間表記がされてないから、じっくり読み返さないと良くわからないな。
225名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 00:15:21 ID:wbdzMxgQO
>>224
まとめサイトにキャラ別時間表があるよ
226名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 00:22:37 ID:G1g6eeNQ0
あれま、全然気付いてなかった(汗 どうもありがとう。
見てみると、まだ9時を迎えていないキャラが多いんだなぁ。
ドロドロを展開していった先の晶霊砲発射……それまでどうなることやら。
227名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 00:27:49 ID:XHQ16grAO
俺はカイルが女の子になってくれればみんな幸せになれると思うんだ
228名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 00:32:50 ID:1KkejESnO
1stを読めば幸せになれるよ!

しかしカイルは本当にヒロイン体質だな。
1stでは戦うヒロイン、2ndでは囚われのヒロインとか誰が予想したよ。
229名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 00:34:22 ID:PTgnKoJoO
>>227
さあ1stに戻るんだ
230名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 04:15:15 ID:oYpwU9hpO
俺は2ndのヒロインはクロエかなと思ってる。
1stはたいてい、女キャラが悲惨な目に遭ってたよな…。
2ndも似たもんだけどさ!
231名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 04:20:06 ID:nnTO+czA0
>>213
デクスとやる気が無いとはいえいい勝負したりでまだそこまで強くはないんだよなあ
意味のないことだがもし条件が良くて1VS1だったならジューダスと戦った時負けてたと思う
ジューダスはたぶんトップクラスの強者だがスタンのドーピングも大概だったわけで
232名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 04:25:40 ID:nnTO+czA0
連投悪いがロニってミトスに気付いていたのかな?
っというか段々ヤツの関与が表立ってきたな
よく考えたらサイグロとの相性抜群なんだもんなあ
233名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 09:01:17 ID:oYpwU9hpO
ミトスに気付いていたかどうかは、まだロニ側の描写がないからなんともいえないなあ。
あとヤツって…? 考えても考えてもわからなかったよorz
234名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 10:45:07 ID:wbdzMxgQO
ロニはミトスとすれ違うまで立ち止まってたみたいだし、気付いたっぽくないか?
ミトスの視点での話だから何とも言えないが…

>>230
個人的にはヒロインはクロエかチェルシーかな
235名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 11:00:15 ID:l9kfnqDjO
>>226
晶霊砲がドロドロを吹き飛ばしてくれるさ
そしてその後は熱血展開に……ならないかw
236名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 15:58:15 ID:oYpwU9hpO
他のロワなら熱血展開になるかもしれないけど、
これは……ほら、テイルズロワだからさ。
シゼル以外にも誰かを巻き込む予感しかしないよ!
237名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 18:29:53 ID:+qWQtHT3O
ロニとミトスに関しては誤解もクソもない気がするな。
万が一ロニがジューダスのことを誤解しなかったとしても、ルーティの件があるからなぁ。
ルーティの件についてはロニ側が何も知らないからなんとも言えないが。


問題は晶霊砲組かな。
ターゲットはネレイド(っつかシゼル)だっけ。
ターゲット狙うのに失敗して関係のないキャラを大量に殺したりとか起こり得るのでは?
238名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 07:53:19 ID:bML4eZba0
1stだとロニを殺したのはリオンだが
2ndだとロニに最後のダメ押しするのはジューダスなんだな
239名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 20:24:37 ID:zcb5L5/h0
240名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/11(木) 04:56:43 ID:hA5UiYxd0
恐ろしい事実に気づいてしまったんだが
純粋な対主催でしかも心身ともに健康な参加者の中で一番機械に詳しい奴ってフォッグじゃね?
支給品を除いて。つか支給品が真面目に考察、脱出フラグ要員として機能してるロワってテイルズくらいじゃないか?
241名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/11(木) 14:38:38 ID:oznAwuOFO
フォッグ…館組か…。
しかしフォッグとクラースは泥酔中。
エミルは起き上がり直後?
デクス乱入したら、まともに戦えるのはリヒターだけじゃね?
そもそもデクスが同じヴァンガードであるリヒターを相手に刃を向けられるだろうか?
242ルート分岐のお知らせ:2010/03/11(木) 16:15:08 ID:5G77mOXk0
ここでルートを分岐します。

〜沈黙<ここまで共通ルート

長門有希の情報転送録(大事な分岐点のため却下しないこと)
1を選んだ→有希ルート
2を選んだ→通常ルート

小説を投下する際はルート名を記入してください。
243長門有希の情報転送録1:2010/03/11(木) 16:16:35 ID:5G77mOXk0
YUKI.N>あなた方に一つ聞く。どうしても。聞いて欲しい。
YUKI.N>最近ある少女がマオ好きだという事を、貴方は信じますか?
YUKI.N>丁度絶好の相手を見つけた。
YUKI.N>その少女はマオのデータのためなら何としてでも使いたいという。
主催「・・・!?」
YUKI.N>リバース陣全員の爆発装置のプログラムはすべて私が掌握した。
YUKI.N>加えて、人物情報も。
YUKI.N>ある少女は貴方が参加させたマオを「氏んだ扱い」にしながら…
244長門有希の情報転送録2:2010/03/11(木) 16:22:37 ID:5G77mOXk0
主催「全てのものは、生まれた瞬間から、死に向かって進んでいるのです……」
YUKI.N>私の考え、聞いて。
YUKI.N>まずマオのデータを他の世界に転送する。その際持ち物は自動で複製する。
YUKI.N>それから精神状態などの不安定要素は私がなんとかする。
YUKI.N>私は考えた、それがあなたの…喜び……
YUKI.N>次にリバース陣全員の爆発装置を起動させる。時間無視で。
YUKI.N>…そう。これで「マオ以外」氏んだことになる。
YUKI.N>あくまでも誤魔化すためのもの。これは却下してもいい。
YUKI.N>なぜならこの言葉を聴いているときマオはすでにマオではなくなっているから…。
(※YUKI.Nは長門有希の事です)
245長門有希の情報転送録3:2010/03/11(木) 16:24:11 ID:5G77mOXk0
※ルート分岐(却下は書き込みではなく行動に対してです)
・リバース陣全員の爆発装置起動を許可しますか?
1.はい 2.いいえ
YUKI.N>…そう考えると。質問は終わった。マオのデータを転送する。
YUKI.N>3…2…1…Enter
そして、マオのデータは転送され、持ち物だけが残った。
---(ここまでです。あとは情報)
共通…【マオ死亡確認…データの転送】
マオの持ち物は自動で複製されるためマオがいたところにも出現する。
願いで生き返らせる…なにもなかったように生き返ります、ご安心を。
あとはどういう感じかはあなた方に任せます。
246長門有希の情報転送録のルート分岐による情報:2010/03/11(木) 16:27:02 ID:5G77mOXk0
1を選んだ→有希ルート
【他の生存しているRキャラ死亡確認…有希の手で爆破】
※主催以外有希の手で爆破されたことを知らない。
2を選んだ→通常ルート
それ以外の確認条項なし

繰り返します。これごと却下しないで下さい。
※忘れてた。主催とマオのいる所にいた人以外
※データの転送を知りません。
247有希るーと解釈:2010/03/11(木) 16:55:45 ID:5G77mOXk0
3クール目死亡者数がルートで変動する。

共通
マオ…有希の手でデータが転送され、死亡(行方不明)。
有希るーと
他の生存していたR組↓
有希の手で首輪を爆破され、死亡。

当然有希はゲストのためみんな有希の手と知らずに
主催の手と考える。これ、どう思う?分岐、却下する?
(共通は共通のためマオ死亡確定。)
248名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/11(木) 17:00:03 ID:5G77mOXk0
支援を要求する!(くんつぁいとのまね)
249名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/11(木) 17:01:59 ID:hA5UiYxd0
あぽ〜んが多すぎて何がなにやら
250まとめ:2010/03/11(木) 17:04:47 ID:5G77mOXk0
※ルート分岐(却下は書き込みではなく行動に対してです)
・リバース陣全員の爆発装置起動を許可しますか?
1.はい 2.いいえ
YUKI.N>…そう考えると。質問は終わった。マオのデータを転送する。
YUKI.N>3…2…1…Enter
そして、マオのデータは転送され、持ち物だけが残った。
---(ここまでです。あとは情報)
共通…【マオ死亡確認…データの転送】
マオの持ち物は自動で複製されるためマオがいたところにも出現する。
願いで生き返らせる…なにもなかったように生き返ります、ご安心を。
あとはどういう感じかはあなた方に任せます。
1を選んだ→有希ルート
【他の生存しているRキャラ死亡確認…有希の手で爆破】
※主催以外有希の手で爆破されたことを知らない。
2を選んだ→通常ルート
それ以外の確認条項なし
繰り返します。これごと却下しないで下さい。
※忘れてた。主催とマオのいる所にいた人以外
※データの転送を知りません。
3クール目死亡者数がルートで変動する。
共通
マオ…有希の手でデータが転送され、死亡(行方不明)。
有希るーと
他の生存していたR組↓
有希の手で首輪を爆破され、死亡。
当然有希はゲストのためみんな有希の手と知らずに
主催の手と考える。これ、どう思う?分岐、却下する?
(共通は共通のためマオ死亡確定。)
251分岐増加:2010/03/12(金) 16:13:40 ID:2RB7m7sy0
長門は情報統合思念体なのですが…。
TO以外禁止のルールが有ると思っていなかったので増やします。
こんな風に考えました。
〜沈黙

長門有希が…
来る→長門有希の情報転送録へ(上にあります)
来ない→マオ暴走ルート(裏ルート)
長門有希の情報転送録で…
1を選んだ…有希ルート
2を選んだ…通常ルート(表ルート)
…これなら主催も喜んでいると思います。
マオ暴走ルートはリアラが危険になりますが…。
252名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/12(金) 16:23:27 ID:8ICB8rfMO
フォッグってどんなキャラだったっけ。
253名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/12(金) 22:22:09 ID:k6QIjBsfO
>>251
勝手にルール追加したり変えたりしてんじゃねえよ!
消えろ。そして二度とこのスレに来るな。


>>252
おう、アレよ。いつものアレ。
254名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/14(日) 18:27:00 ID:sgBuCvSS0
>>253
そのリオンと思われるセリフは…
まさか地震起こしているんじゃないだろうね!?

それにルート分岐は1にもあったよ!?
255名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/14(日) 18:29:11 ID:sgBuCvSS0
256名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/14(日) 19:27:56 ID:v5CPtw6MO
まあ、真面目に書いたのか釣りなのか分からないけど破棄だね。
>>7-8辺りに抵触してるし展開を縛り過ぎだし。リレーの意義を理解しろ。
257名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/14(日) 19:29:12 ID:WtsqghmeO
このロワに長門を持ってくる必要性は全くもってないよね……。
258名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/15(月) 04:12:56 ID:7gP+mMOhO
続きを読みたいが、鬱展開だと分かってるから読みたくない。
なんだこれ。
ミトスがんばってくれないかな。
259影時間-Shadow Time-:2010/03/15(月) 16:31:35 ID:SNnrPHJq0
※【】は画面外のソフィによるナレーション。
※他は画面外のエステルのナレーション。
【影時間、それは1日と1日の狭間にある時間】
画面外のヒュー「これは魔法とかではありません。」
画面外のマリク「一つのシステム。」
【参加者の時間が止まる…はずだった】
画面外のコハク「だった?」
画面外のヒスイ「ほとんどが動けなくなるわけだ。」
【時間にとらわれない一人の少年がいた】
画面外のリタ「まさか、マオ…?」
画面外のユーリ「そう、現オルセルグだな。」
画面外のパティ「リバウンド効果なのじゃ。」
【以上。ここまでの死亡者3クールだけで9名。】
画面外のシング「おい!?参加者の残りは!?」
【37名。あ、そうそう。】
画面外のアスベル「は?」
【殺そうとしているマオはすでにデータが飛んだの、確認。】
画面外のシング「消さざるを得ない!」
そして、シングは無断で飛び込みます。
シング「輝け、俺のスピリア!」
すいませんが、巻きが入ります
シング「翔旺神影斬!」
【マオ、無断進入のシングに斬られ、死亡。】
画面外のコハク「シングー!戻ってー!」
シング「あ、ごめん!」
【残り36名。ループセット確認。影時間終了。】
それでは、第3回放送に入ります。
その前に、報告があります。まず、影時間中にシングさんが
無断で進入していましたが、戻ってきました。
シングさんはオルセルグさんに翔旺神影斬をぶつけて、
無断で殺しています。以上です。
260影時間-Shadow Time-@投下終了:2010/03/15(月) 17:56:53 ID:SNnrPHJq0
長門はボツ決定。

ちなみに主催にはこれだけ知らせている。
画面外ユーリ「そう、現オルセルグだな。」
画面外ソフィ【以上。ここまでの死亡者3クールだけで9名。】
画面外シング「おい!?参加者の残りは!?」
画面外ソフィ【37名。あ、そうそう。】
画面外ソフィ【殺そうとしているマオはすでにデータが飛んだの、確認。】
画面外ソフィ【画面内のマオ、無断進入のシングに斬られ、死亡。】
画面外ソフィ【残り36名。影時間終了。】
その前に、報告があります。まず、影時間中にシングさんが 無断で進入していましたが、戻ってきました。
シングさんはオルセルグさんに翔旺神影斬をぶつけて、 無断で殺しています。以上です。
持ち物は一部翔旺神影斬のせいで切られています。持ち物の散乱も確認。

ちなみにルール合わせ版
【マオ死亡 無断進入のシングに斬られた】
261名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/15(月) 21:50:59 ID:nFnqUIBNO
ネタを書くならせめてジューダス様の人みたいに面白いのを書いてくれ
262名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/15(月) 21:59:32 ID:2FIJiYwP0
ま、ジューダス様の人と違って
ちゃんとsageも入れてない時点で……ねえ?
263名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/15(月) 22:25:20 ID:6HAO3NSw0
男は黙ってスルー
264名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 02:14:07 ID:w255qBtc0
どうしてこうなった?
っていうかいつからこのロワは狂った?
265名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 18:22:52 ID:KZ3Nv7730
>>狂った
公式の時点で狂っていないか?
>>sage
スレごとスキマ送りにされるため却下
あ、でも990から許可するね
>>ジューダスの人みたいに面白いネタ
画面外のリタ「つまんない!」
>>○○○○○をシングが…
このまま狂気のを続けたらかわいそうなので。
いやならルート分割をお勧めします。
266名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 18:25:54 ID:WDVx6bFD0
流石に避難所の様子見てると荒らしに見えてくるんだけど……
267名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 18:50:06 ID:KZ3Nv7730
sage
268名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 18:52:07 ID:YIEzJLXc0
何でスルーしないで真面目に受け取る?
一過性の嵐みたいなもんだろ。荒らしだけに
269名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 19:41:35 ID:KZ3Nv7730
>>一過性の嵐みたいなもんだろ。荒らしだけに
ち、違います!みんながそう思ってしまうだけです!
そんなにイヤならルートを分割して下さい!
270名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 19:46:38 ID:KZ3Nv7730
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm10041703
これ、笑うとこ?
271名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 20:06:39 ID:KZ3Nv7730
272名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 20:40:04 ID:tCxGc7mvO
なんだニコ厨か。なら仕方ないな、気違いばっかりだもの。
273名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 21:21:30 ID:KZ3Nv7730
投稿者「にょろ〜ん」
>レス削除…ヤローテメーブッコロースルートへ
>無視、無視…裏ルート突入
>仕方ない、受け入れよう…いつも道理分岐発生
>別のを書けば?…ルートは分岐せず、通常ルートへ
>来るな!…上のどれかがランダムで発生
>スレごと消失…もうやるな!ルートへ
274名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 21:24:42 ID:KZ3Nv7730
>>259は死亡したキャラ達が雑談するスレ、
ロワに出れなかったキャラで雑談するスレで再生されています。
bySテル
275名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 22:03:29 ID:WU604OLpO
むずかゆいというか鳥肌たつよ…よくもネタでなく自信満々でこんなの人に晒せるなぁ
276名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 22:48:29 ID:7lbpsqsm0
ここに来てる人間が言うセリフじゃないな
277名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 23:02:48 ID:d6ddfesRO
もういい加減にしろよ。
長門だの画面越しのシングだのスキマ送りだのアホか。
そんなことしたいならこことは別に新しくパロロワ作れよ。
278 ◆fwCZRxMsEw :2010/03/17(水) 19:10:32 ID:DOgSJ4V40
>>251-277
投稿者「にょろ〜ん」
>レス削除…ヤローテメーブッコロースルートへ
>無視、無視…裏ルート突入
>仕方ない、受け入れよう…いつも道理分岐発生
画面越しのシングにする…画面外も巻き込むルート発生
長門にする…裏ルート&有希ルート発生
>別のを書けば?…ルートは分岐せず、通常ルートへ
>バカ呼ばわりを続けるor来るな!…上のどれかがランダムで発生
>スレごと消失…もうやるな!ルートへ
※画面外も巻き込むルートが発生しなければ録音は消滅します。
279 ◆9cqspYnQyTCr :2010/03/17(水) 21:41:38 ID:DOgSJ4V40
…。
280名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/17(水) 23:37:22 ID:fSjGcFFuO
>>278
いい加減にしろ!!
いつまで同じことを繰り返すつもりだ!
そんな書き込みをしても無駄なのが分からないのか?
281名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/17(水) 23:45:19 ID:uUQxQgWN0
>>280
自演乙
282名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 00:04:08 ID:fSjGcFFuO
>>281
おいおい、冗談はよしてくれよ。
俺は>>278じゃないぞ。
283名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 00:05:30 ID:jWfMuT1V0
まあいちいち構っちゃうあたりで
迷惑さとしては似たようなもんだよ?
284名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 00:20:11 ID:i1NZG5xuO
>>283
わかってはいるが、あの勢いではあのままスルーしても>>278の思う壷な気がしてならんのよ。
それどころか、今まで良質なSSの書き手さん達の苦労が水の泡になってしまう。
それだけは避けたかったから、なんとしてでも止めさせたかった。
すまんかった。
285名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 00:28:01 ID:EWRYcAtnO
何言ってんだこいつ
286名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 00:34:53 ID:dNXLM4Mz0
2ちゃんねるに来るのは初めてなの?
だったらヘタに口出さずにROMってたほうがいいよ。
287名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 01:36:34 ID:SA78QM0j0
飛ばし読みだが、とりあえず>>278>>280(=>>282,>>284)が対立してるのはわかった。
だけど、>>278の目的はまだしも、>>280の目的がわからない。

>>280よ、もしまだこのスレをみてるなら>>286の言うとおりROMれ。
今のお前さんが何を言っても叩かれるだけだぞ。
288名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 06:20:47 ID:5K2yvGKFO
グロリアってグロリアラかと思ってた。
289名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 13:21:32 ID:5RwIvqoW0
>>288
ワロタw
290278:2010/03/18(木) 18:07:45 ID:XcHrvwhP0
  __)ノ
.,'´,  `ヽ
i ノリノ从))〉
ヾ(リ> ヮ<ノリ 
 ノ「._|_|エ[]フ <>>287おつー
く/ノj土jj、
   |_lヲ
291名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 18:18:09 ID:XcHrvwhP0
  __)ノ_
.,'´,   `ヽ
i ノリノ从))〉
ヾ(リ> ヮ<ノリ 
 ノ「._|_|エ[]フ <>>288をなおしたー
く/ノj土jj、
   |_lヲ
292名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 18:19:03 ID:XcHrvwhP0
  __)ノ_
.,'´,   `ヽ
i ノリノ从))〉
ヾ(リ> ヮ<ノリ 
 ノ「._|_|エ[]フ <>>290をなおしたー
く/ノj土jj、
   |_lヲ
>>288ごめんね
293名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 18:19:50 ID:XcHrvwhP0
  __)ノ_
.,'´,   `ヽ
i リノリノ从))〉
ヾ(リ> ヮ<ノリ 
 ノ「._|_|エ[]フ <>>290をなおしたー
く/ノj土jj、
   |_lヲ
294名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 03:36:08 ID:y35tWGPf0
したらばに仮投下しました
自分でいうのも何ですが相当穴だらけな気がするので
意見をお願いします
295名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 14:05:39 ID:y35tWGPf0
投下します
296題名のない”夢”だけど 1:2010/03/19(金) 14:07:04 ID:y35tWGPf0


「なあ今の子、すっげー可愛くなかったか?」
「何だ? お前はああいうのが好みなのか?」
「好みっつーかよ。ただ可愛いよなあって。よし!」
「おい、何処へ行く?」
「ナンパだよ。ナ・ン・パ! この伊達男落とし神ロニ様の手際を照覧あれってな」
「ナナリーはどうするんだ?」
「な、ナ、ナナリーがどうしたってんだよ。あんながさつで乱暴な女。お断りだっつの」
「ほう? 随分とお似合いのようだがな?」
「だ〜〜れが! あんな女はゴリラと結婚するのがお似合いだっての。いやゴリラでもあんなじゃじゃ馬が相手じゃお手上げってもんだ」
「へ〜〜え。あんたはアタシをそういう風に思ってたわけかい。じゃあ、ゴリラもお手上げの力とやらをあんたで試させてもらおうかねえ!!」
「アイタタタタタタッタ! ナナリーさん、その関節をその方向に曲げるのだけはやめ、ってジューダス! てめえ俺を陥れやがったな。今の俺を笑ってやがんだろ!?」
「ふっ、そんなわけがないだろう。偶然とは怖いな」
「嘘つけ! んならその仮面を外してってイタイイタイ、アーッ!」


暗い世界を歩いていると黒が横たわっていた。その姿に衝撃を受けた。何処かでアレなら自分を救ってくれると期待していた。
それが本心からの気持ちかは本人にもわからないこと。
けれどもきっと何かが変わると思っていた。そのことだけは確かだった。
なのに、会いたかった少年の死体を見てもロニは何も言わない。ロニの歯はもはや言葉を出すために思い通り動かすこともままならない。
普段なら憎まれ口の一つでもたたき、そしてその3倍の破壊力を持つ皮肉が返ってくる場面であるはず。
それなのにロニの口は吐瀉物を吐き出す様な形のまま変わることはなく、彼の手は寒さから体を守るように自分の体を抱きしめるような形を保っていた。
(おいおい、何やってんだよ? 今はボサッとしている場合じゃないだろ? 寒いってんならヘソを隠せヘソを)
何のことか自分でもハッキリしないことを考えながらロニは手を体から引きはがす。
普段は縦横無尽の活躍を見せるその手は、何が出来るのかすら持ち主に忘れさせるほど弱々しく感じられた。
ロニは手を黒に伸ばす。それの死を心の底から確信しているのに彼の手は止まることをしない。
何を確認したいのか? 
心の奥底では自問する前から解っていた。でもそれを表面では認めたくない。
自分が守れなかった仲間の、掛け替えのない友の顔を見る為に伸びきった手は遂に仮面を外す。

その顔は――――安らかだった。
297題名のない”夢”だけど 2:2010/03/19(金) 14:08:09 ID:y35tWGPf0


(そういえば、ここに来てからこんなにマジマジと誰かの死に顔を見るのは初めてだったな)

そんなことを考えながら彼は黒の死に顔を見つめる。
紅く黒い靄が濃さを増し始めたが今の彼には見えない……
いや、この世界に来たときから彼がそれを確と認識するのは不可能と言ってもよかった。
水気、そして大きく蹂躙するように走った火傷を伴った斬り傷。
黒の死因を特定するのは普段の彼なら簡単なこと。
だが確認する気すら起きないこの瞬間の彼にはどうでもいいことなのだろう。
何故なら現在の彼は内側からがじわじわと湧き起こる感情に翻弄されていたから。
それが最初に持っていた紅さは色が強まり次第に黒に変わっていく。
この流れを止めるのは今のロニ=デュナミスには不可能に近かった。
その感情は嫉妬という古今東西あらゆる人々が悩まされてきた感情。でも今の状況で抱くには不謹慎すぎるもの。

(何故だ? 何故俺はコイツに嫉妬する? 仲間だぞ。ダチだぞ。皮肉ばかり言うし、
  ナンパの失敗を笑われたことやナナリーに関節技を極められるところ
  をからかわれたこと―オレって心が広かったよな―は何度もあったがそれでも俺はコイツを妬ましいと思ったことは一度もなかった)

黒い思考は視界を奪い始め、まるで眼球を一文字に斬られたかのような激痛を与える。でもこれはイヤな痛みなんかじゃない。
どこか心地よさを感じさせる痛みでもあった。
目が見えない、湿り気を帯びてはいるが湧水洞が産み出す澄んだ空気は彼の肺に届かず、爆風のような熱いものしか感じられない。
何故だろうか、彼の周りに漂う漆黒がさらに濃度を上げた。
漆黒に昇華した紅に包まれながらも辛うじて残っている。
残っていてももはやどうしようもなく歪んだ正気を保とうと青年は思考を始める(何故かそうすることが正しいように思った。)


俺は平穏を守ろうと思った。仲間を、大切な人達を守ろうと思った。それは確かだ。
だから自分は【自分? それは誰のことなんですか?】うるさい、俺に入るんじゃねえ。
自分はハロルドに会ったとき安心した。これでようやく解放されると【何からですか?】色々なことからだよ!! 
でもあいつはそれをしなかった、ここから出してくれなかった。ここ? ここって何だ? 
俺が俺でいられない場所? 俺は俺なら安心していられたのか? いや待て、考えを変えろ。
俺はスタンさんに命をもらったからその命で盾になろうと思った。
だって俺から見てもスタンさんは格好良くて自信に満ちてて間違いなんか犯さないような人に見えて、
だから俺はスタンさんの言葉を宝物のように大事にしていたし、それをカイルに伝えてスタンさんの代わりにアイツを守ろうと【それは? 何という言葉なのですか?】
298題名のない”夢”だけど 3:2010/03/19(金) 14:09:31 ID:y35tWGPf0


………………アレ? 何だっけ? 
まあいいや、とにかくスタンさんのように誰かを守ると決めた瞬間、俺は盾になろうと思った、ならなければいけないと思った。
大切な人達や弱い人達を守る存在になると決めた。
スタンさんならそうしようとするだろうし、それが俺の“夢”になって存在意義になった。
その為に死に物狂いで鍛えて、偶にはナンパをしてフラレて、でもその生き方で良かった。
それが、スタンさんの代わりになることが、自分の喜びでもあったからだ。
稀に重荷に感じるときがあってもそれ以外の生き方なんて考えもしなかった。
だからカイルを、孤児院のチビ達を絶対に守ろうと思っ【その道を選ばせたのは誰?】
バルバトス……俺の命と引き換えにスタンさんの命を奪った奴。
世の中にはあんな奴らがウジャウジャいやがる。
糞を煮詰めて最上にしたような輩を俺は神殿騎士の頃から何人も見てきた。
そんなゲス野郎共は許さないし、そいつらから被害を受ける弱い人達を守ろうと【何故その男に復讐しようとしなかったのですか】
だって仕方がなかっただろ? あのときの俺はまだほんのガキで無力で【それだけ?】だから何なんだテメェは! そ、そうだよ。
俺は復讐なんかしね……する。俺はナナリーやルーティさんを殺した奴をゆるさね【それは】憎いからだ。
俺の大切な人達を傷つけ、殺そうとする奴が堪らなく憎いから……放っておけばきっともっと人を殺すから【誰を殺すのですか?】大切な人だよ! 
カイルとか、リアラとか、俺は盾だから。
スタンさんの代わりにあいつ等を守る盾だから【違うでしょう?】え?【貴方は誰も守っていないでしょう? 貴方はもはや盾ではないでしょう?】
そ、それは確かにキールもウッドロウさんも俺の目の前で【もっと前ですよ】
何だと?


黒い炎が彼を包む。思考を澱ませる邪悪な何かが彼を導く。
眼も見えず、考えることしかできない彼は、闇の炎に抱かれるとはこういう事なのかとぼんやり思った。


【ここに来る前、貴方は守ると誓った少年に何と言いました?】

は? 俺が何て言ったのかをどうして知ってるんだよ。えっと待てよ……駄目だ、思い出せねえ。いや、思い出せないんだって! 
だから止めろ! 引きずり出すな! 引きづり出すな!!
思い出させるんじゃねえ!!!!!!!!

『俺はおまえの盾になろうと自分に課していた。でも――――おまえは盾としての俺を必要としなくなってた』

声から言葉にならない何かが突き出る。それは地獄への道を案内された者の恨みが篭もった声か、それとも――――

(止めろ、止めてくれ。頼む。頼むよ。俺にそれを気づかせないでくれ!!!!)
299題名のない”夢”だけど 4:2010/03/19(金) 14:12:06 ID:y35tWGPf0

【此処に来る前から、貴方は既に貴方ではなくなっているのですよ】

終に湧水洞を絶叫が満たす。誰かの手が顔を覆う。
ロニは思う。ジューダスは己の信念を貫いて神を殺し、消滅とも死とも知れない道を選んだ。それが彼の誇りだったからだ。
ナナリーは10年後の人間で、でも神の救いを最初から最期まで拒絶してロニ達と、ロニと別れた。それが彼女の強さだったからだ。

(俺は……俺は何が出来た? 何を守れた? 何を守れば良かったんだ? 
  ジューダスは18年前の人間でしかもメチャクチャ凄い奴で。
  ナナリーは10年後の人間で、生意気で、でも俺はアイツが好きで、それでも別れは決まった運命で。
  だから俺にはカイルしかいなかった。でもアイツは俺が必要じゃない。盾の守るものは人でなくてはならない。
  ジューダスは自分の運命を切り開く剣としての道を選んだ。
  でもカイルは違う。剣としての生き方を選んだのなら盾である俺の意義もある…………けれども)


『守るべき存在を見つけ、おまえ自身が盾になった。――おまえは立派にリアラを守ったさ』

盾が守るものは盾であってはならない。しかも、カイルは守る相手の望みを全て叶えた。
本人が認めなくともあれがリアラを救う唯一の方法だった。盾を盾が守る? 
しかも俺みたいな出来損ないのなり損ないが? あり得ない。
自分の存在を真に確立させるためには盾は一つでなくてはならない。
盾が盾を守ることは矛盾なのだから。
彼は気づく、彼の嫉妬の正体は羨望に基づくものであったということに。ハロルドから死という形でもたらされ、見ないで済んだはずのもの。
本来ならば神を殺したことでもたらされる消滅により、目を逸らしていられる“夢”の挫折と存在意義の消滅という事実からの逃避を望んでいたのだ。
きっとやるべきことをやった顔で逝けたのだろう。横たわる黒のように。
安らかに消滅できただろう。神を殺した英雄の一人として。そんな最期ならスタンの命を最高の形で終わらせることが出来たはずだ。
 

何故サイグローグの報酬に心を動かされたのか、気づいた。
何故ウッドロウさんの視線に怯えたのかが分かった。何故キールの言葉に共感したのかが分かった。
俺は最初から存在しなかったんだ。だから新しい夢を、存在意義を求めようとサイグローグの甘言に惑わされたんだ。

狂った視線は焦点が合うことはない。だがそれはオブジェだった黒を次第にジューダスという個へと彼の認識を変えさせる。
それが彼の想いすら変える。
それは何者の手によるものか、亡き友によるものか、愛する者によるものか、敬愛する養母によるものか。それともまた別の何かか。
何であれ、そこから産まれるのは新たなもの。本来なら希望と呼ぶべきもの。


ああ、でも、自分は知っている。
奈落の底に堕ちてもそこから這い上がり、英雄として生きた少年を。過去を捨て、未来のために戦い続けたスタンに並ぶ英雄を!! 
口から耳からあらゆる穴から入り視界を奪っていた邪気が、靄から霧となっていたものが消えていくのをロニだけが感じた。
自分はサイグローグには従わない、“夢”が途切れたのならここから創めればいい。もう一度、盾としての人生を歩めばいい。
この世界で、俺はロニ=デュナミスを、”夢”を取り戻せばいいんだ!!!!
300題名のない”夢”だけど 5:2010/03/19(金) 14:13:35 ID:y35tWGPf0


朧げにあった彼の姿形はしっかりとしたものとなり、彼を渦巻いていた邪気はもう誰にも見えない。
水の流れが今の彼には幼き頃に好んだルーティの子守歌のように聞こえた。

「とりあえず、だ。ちゃんとした所に埋めてやんねえとな」

ジューダスの死体を軽々と担ぎ、今までの弱々しさが嘘になったかのように歩き始める。

「俺は馬鹿だからさ。どうすれば正解なんて分かんねえ。だからさ、真似をしてみようと思うんだよ。
 なりきりとかそんなんじゃなくて只、俺の憧れ達のマネ。そこから始めるんだ。
 つまり、どんな状況になっても自分の信念のために足掻くってこと!」

親友に語りかけながら今まで来た道を戻る。

「まず、犠牲者を減らすためにしなきゃいけないことを考えるとな。
 ゲームに乗ってる奴は殺す必要があるよな。
 おまえも火使いにやられたようだし、危険だから火を使う奴は皆殺し。
 よし、よし、次は……そうだなあ」

楽しげに語りかける。まるでかつての旅の途中であるかのように。

「銃以外にも危険なものがあるだろうから知らないアイテムを使う奴は皆殺し。
 あと、ゲームに乗ってなくても俺達を見て逃げたら殺す。だって逃げるってことは疚しい何かがあるってことだろ? 
 当然じゃねえか。他は……」

少し考えてから笑顔で言う。

「俺の夢は盾になること! 
 だから術を使う奴は色々危ないから皆殺し! 
 回復晶術も俺が使えるからいらないんで皆殺し! 
 俺以外に誰かを守ろうとする奴? あたりきしゃりきの戦吼爆ッ破よ! 
 俺以外の盾はいらねえ」

狂った眼で、何も見てないような濁りきった眼で前を見据えながら歩く。狂気は見えなくなっても消えたとは限らない。
301題名のない”夢”だけど 6:2010/03/19(金) 14:15:39 ID:y35tWGPf0


【貴方が守ろうとしていたあの少年は?】

「ああ、カイル? ん〜〜、あいつはリアラの盾だからなあ。
  面倒だからリアラとまとめて殺しておくか。
  ハハッ、我ながら素晴らしい行動方針だ!」

その身に染み込み一体化することもままあるのだ。



【ロニ・デュナミス 生存確認】
状態:HP10%以下 TP55% 脇腹に刺傷(処置済) 胸部刺傷  精神崩壊 最高にハイッってヤツ 右腕大裂傷 右足甲骨折 ???
所持品:さつまいも タフレンズ×1 やや小さくなったシーツ 温石
基本行動方針:“夢”を取り戻す。盾として生きる
第一行動方針:ジューダスの埋葬
第二行動方針:マーダーは殺す。火を使う奴は殺す。アイテムを使う奴は殺す。自分から逃げる奴も殺す。術を使う奴も殺す。回復する奴も殺す。誰かを守ろうとする奴も殺す。
第三行動方針:サレ、アリエッタ、チャット、カイル、リアラ、ルーティを殺した奴、ナナリーを殺した奴、ジューダスを殺した奴は絶対に殺す(ハロルド? さあ?)
現在位置:C6・アラミス湧水洞外


「なあ、ロニ。夢ってあるか?」
「よく……分からないです」
「そっか。昔な、こんな奴がいたんだ。ひねくれてて、皮肉屋で、口を開けば嫌みばっか言う奴でさ。
 あの時の俺はあいつの本心に気づけなかったけど、あいつがイイ奴だっていうことは分かってた。
 だからあいつは俺の友達だったし、あいつを信じたことも後悔していない」
「はぁ……? それが俺の夢と何の関係が?」
「うぅん、関係無いかもしれない。けれども、あいつに今の世界を見せてやりたいと思ってさ。
 守ってくれる親もいなくて、大切な人のためにどうしようもない状況を必死に生きたあいつも、今の世界なら自由に生きられたんじゃないかって思う。
 あいつが苦しんでいたのを知っているせいかな。お前には精一杯夢を見て欲しいんだ」
「やっぱり、よく解らないです。でも……」
「でも?」
「今、おれがこうして美味しいパンを食べていられるのはスタンさん達のおかげだっていうことは知っています。
 おれだけじゃなく、世界中の人が知ってます。だから、スタンさんやルーティさんはおれの理想の大人です」
「ハハッ、俺は理想なんかじゃないさ。お前も大人になったら俺を追い越せるような凄い奴になれる。断言できる。なにせお前は」
「おれは?」
「俺の一番弟子で、自慢の息子だ。俺なんかを夢や理想にするにはお前の未来は大きすぎるよ」




悪夢はいつもここから始まるのでしょう? 皆殺しの斧槍が織りなす新たな悪夢。瞳を閉じずにいざ御笑覧あれ。
302名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 14:18:40 ID:y35tWGPf0
投下終了
避難所で投下したものに結構手を加えましたが
大筋は変わってないです
303名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 14:22:32 ID:y35tWGPf0
ごめんなさい。凡ミスです。

> 【ロニ・デュナミス 生存確認】
> 状態:HP10%以下 TP55% 脇腹に刺傷(処置済) 胸部刺傷  精神崩壊 最高にハイッってヤツ 右腕大裂傷 右足甲骨折 ???
> 所持品:さつまいも タフレンズ×1 やや小さくなったシーツ 温石
> 基本行動方針:“夢”を取り戻す。盾として生きる
> 第一行動方針:ジューダスの埋葬
> 第二行動方針:マーダーは殺す。火を使う奴は殺す。アイテムを使う奴は殺す。自分から逃げる奴も殺す。術を使う奴も殺す。回復する奴も殺す。誰かを守ろうとする奴も殺す。
> 第三行動方針:サレ、アリエッタ、チャット、カイル、リアラ、ルーティを殺した奴、ナナリーを殺した奴、ジューダスを殺した奴は絶対に殺す(ハロルド? さあ?)
> 現在位置:C6・アラミス湧水洞外

これを

【ロニ・デュナミス 生存確認】
状態:HP10%以下 TP55% 脇腹に刺傷(処置済) 胸部刺傷  精神崩壊 最高にハイッってヤツ 右腕大裂傷 右足甲骨折 ???
所持品:さつまいも タフレンズ×1 やや小さくなったシーツ 温石 ジューダスの死体
基本行動方針:“夢”を取り戻す。盾として生きる
第一行動方針:ジューダスの埋葬
第二行動方針:マーダーは殺す。火を使う奴は殺す。アイテムを使う奴は殺す。自分から逃げる奴も殺す。術を使う奴も殺す。回復する奴も殺す。誰かを守ろうとする奴も殺す。
第三行動方針:サレ、アリエッタ、チャット、カイル、リアラ、ルーティを殺した奴、ナナリーを殺した奴、ジューダスを殺した奴は絶対に殺す(ハロルド? さあ?)
現在位置:C6・アラミス湧水洞内

に変更お願いします
304名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 14:26:15 ID:y35tWGPf0
※ミトスに気づいていたかどうかは不明。聖剣デュランダルに目を奪われていた可能性もあり?

これを状態表の最後に追加します。何度もごめんなさい。修正はこれで最後のはずです
305名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 14:49:01 ID:azLP/2ZD0
新人さん乙。また書いてくれると嬉しい。

むう…しかしやはりこうなってしまったか。口ではカイルとリアラ殺すって言ってはいるが…実際会ったら殺せないだろうなあ…。
306名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 15:10:29 ID:1vOCgSagO
ロニは結局「兄貴」だからなぁ…。
どうなるんだろ

個人的には何とか持ち直して欲しいけど
遭遇しそうなのってだれだ?
307第3回放送-いままでのていろわ-1:2010/03/19(金) 16:32:15 ID:ATvGXWi50
「サイグローグさんが気絶しているため、代理がお送りします。
死亡した人は
ジューダス、スパーダ・ベルフォルマ、
ジェイド・カーティスとアリエッタ、
アリスちゃーん、ノーマ・ビアッティ、
ルビア・ナトウィック、ウッドロウ・ケルヴィン、
クラトス・アウリオンです。
次に、禁止エリアですが…
残りは38名…仕方ありませんね。一気に2エリアごと禁止にします。
PM03:00にF1とF2、PM06:00にD2とD3、PM09:00にE6とE7、 PM12:00にB4とB5。
繰り返します。PM03:00にF1とF2、PM06:00にD2とD3、PM09:00にE6とE7、 PM12:00にB4とB5。
さて、ここで1つおしらせです。マオが突然分裂しました。
繰り返します。マオが突然分裂しました。
理由は不明ですが、早めに対処…あ、今1人消えました。残りは37名です。
ん、サイグローグさんがおきましたか。交代します。」
※マオへの影響はありません。単に誰かがデータを複製しただけです。
※第3回放送-いままでのていろわ-2はほかの人がお願いします。
※その最中に人が消えた場合はその都度参加者をお知らせするよう。
308第3回放送-いままでのていろわ-1_訂正:2010/03/19(金) 16:38:51 ID:ATvGXWi50
「サイグローグさんが気絶しているため、代理がお送りします。
死亡した人は
ジューダス、スパーダ・ベルフォルマ、
ジェイド・カーティスとアリエッタ、
アリスちゃーん、ノーマ・ビアッティ、
ルビア・ナトウィック、ウッドロウ・ケルヴィン、
クラトス・アウリオンです。
次に、禁止エリアですが…
残りは38名…仕方ありませんね。一気に2エリアごと禁止にします。
PM03:00にF1とF2、PM06:00にD2とD3、PM09:00にE6とE7、 PM12:00にB4とB5。
繰り返します。PM03:00にF1とF2、PM06:00にD2とD3、PM09:00にE6とE7、 PM12:00にB4とB5。
さて、ここで1つおしらせです。マオが突然分裂しました。
繰り返します。マオが突然分裂しました。
理由は不明ですが、早めに対処…あ、今1人消えました。残りは37名です。
あとは…ミトスがスパーダの体を使っています。
ん、サイグローグさんがおきましたか。交代します。」
※マオへの影響はありません。単に誰かがデータを複製しただけです。
※第3回放送-いままでのていろわ-2はほかの人がお願いします。
※その最中に人が消えた場合はその都度参加者をお知らせするよう。
309名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 16:48:33 ID:ATvGXWi50
エレメンツ内のエル「わからーん!」
310名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 17:32:01 ID:ATvGXWi50
エレメンツ内の??「もなずくー」
311名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 17:53:10 ID:azLP/2ZD0
ロニも結局、サイグロの口車に乗せられて崩壊か…

>>306
西方向にしか行くとこないから、もし塔に行ってカイルと鉢合わせでもしたら……
もしくは北の館に行くか、或いはルカ達とはち会うかだね。
高い可能性なのは、ロニと同じく西に渡ろうとしているスタイレと時間的にもジャストタイミングだからそれかも。
312名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 19:37:00 ID:Vo6ul30s0
新作来た!投下乙です。
思考がスライドしていく描写が良かった。
本人的にはいたって冷静かつ落ち着いてるつもりなのが恐ろしい

しかしせっかくマーダーとしてデビューするにしても
HPが頼りなさすぎるなw
313名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 20:42:18 ID:7i/t1lYC0
1stのクレスのように、体力的にボロボロでも、発狂でリミッター外れたからべらぼうに強くなりました……なんてもないしなw
このままじゃ、最初に退場するマーダーNo.1の座は堅いぜ!
314名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 20:45:06 ID:jPrRUpQx0
うわっ、まともな方向にいくかと思ったらやばい方にずれちまったー!?
投下乙!
自らを成り立たせていた基板を失っちまっていたからこそのぶれか
ぐいぐい引き込まれて行く怖さがあった
315名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/19(金) 21:23:00 ID:2w6V0rOYO
このロワのHP回復手段ってグミ系と回復術だけ?
316名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/20(土) 10:40:14 ID:OCI0akaa0
エリクシールとかオベロナミンとかもあるよ!
317名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/21(日) 13:34:04 ID:QEdRTGkX0
避難所に仮投下しました
318308からのお知らせ:2010/03/21(日) 18:38:05 ID:g6RGnj3V0
次回が投稿されたので、「いままでの」は1回のみにします。
319名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/21(日) 20:03:01 ID:QEdRTGkX0
投下します
320涙くん、さよなら 1:2010/03/21(日) 20:03:51 ID:QEdRTGkX0


ど、どうして?

だからちょっと興味があるんだヨ。

止せ、リアラ。此奴は危険だ。

リアラにだけ届く声。でも反応は隠せません。マオへの警戒をほんの僅かですが強めます。
そのことを敏感に感じ取ったオルセルグは少し機嫌を損ねてしまいます。
オルセルグはまだ子供だからです。
何だよーと口を尖らせるオルセルグの様子はオークション、
それもワン・ギン御贔屓の好事家なら家の一つや二つを売ってでも求めるほどに
愛らしいものでした。
それは彼の姿形、そして表情がもし普段通りだったら、という仮定がつきますが。
ですが自分の犯したことにより、
カイル以外の全てが牙をむいているように見えているリアラには、
それがまるで死刑の宣告のように見えてしまうのです。
彼女の怯えは幼さを強く残す、少女が故の細い脚に後退を選ばせました。

わかったヨ。ちょっとお話ししない?

少女を怯えさせてしまったことを敏感に感じ取ったマオは態度を和らげます。

え?

実を言うと、最初からちょっとお話ししたかったんだ。
だってキミ……

その続きは笑みとともに言葉に出します。それは同類を見つけたことからくる喜びなのでしょうか。


――ニンゲンジャナイデショ?――
321涙くん、さよなら 2:2010/03/21(日) 20:04:48 ID:QEdRTGkX0

ど、どうして?

先程もいった言葉をリアラはまた言います。

ど、どうして? アハハ。面白いことを言うネ。だってキミは怖がってるもの。

その台詞は先程までリアラに聞こえていたあまり覚えのない、
でも耳障りさは一級品の口説き文句よりさらに心に響いきました。
これが演劇ならば今頃唐突にカミナリが鳴り響き、ショッキングな音楽を奏でたでしょう。
それとは反対にあまりにもお約束通りな演出に観客たちは失笑するか眠りこけてしまったでしょう。
ですが、彼女の存在が何であるかを見破られたことには言葉ほど驚きを感じません。
彼女もまた目の前の少年が人間ではないことを直感で知っていました。
それはかつて、仲間が彼女の正体を見破った感覚にも似ていたかもしれません。

(ジューダス……今どうしてるのかしら)

もしや放送で呼ばれていたのではないか。
そう思うと…………何故か想うだけで胸が張り裂けそうになりました。
ロニやハロルドのことを考えても同じでした。
でも、自分と会ってはいけない。今まで会ったみんなのように死なせてしまうから。
カイルと会わなければ。

(そうしないとわたしは死神になってしまう)

ジューダスのことを、ロニのことを、ハロルドのことを
気にするのは不思議だとリアラは思いました。
今わたしが求めているのはカイルだけなのに。
ですが、そこに意識がいったのは一瞬。
意識はすぐに草を踏みしめ、オルセルグと同じ大地に立っている現在の自分に戻ります。

な、何を言ってるの?

しらばっくれなくてもいいヨ。怖いヨネ? 
当然だヨ。殺し合いの世界。渡る世間もヒト斬りばかり。
怖くて怖くてボクならヒトを滅ぼしちゃいそうだヨ。
322涙くん、さよなら 3:2010/03/21(日) 20:05:56 ID:QEdRTGkX0

風が吹く。でもそれは自然が出すもの。リアラのものでもオルセルグのものでもないもの。
なぜそれが追い風であるようにリアラは感じるのでしょうか。
ああ、自然は美しい。
場違いなことを思いながら、その風を身に受けつつリアラは反論の言葉を言います。

違う。わたしにはカイルがいる。カイルの隣なら怖くない。

カイル? そういえばさっきも言ってたネ。

私の大切な人。愛しい人。

それはヒトなんだよネ?

うん。

ヒトは醜いヨ。ヒトは汚いヨ。

少年は言います。

マオっていうヒトになりきろうとして、
でも結局は迷って怯えて居場所失って、
お母さんから嫌われて死んじゃったコがいたんだ。ボクと似ているけど遠い存在。

あなたはやっぱり人ではないのね?

もちろん。ボクは『眼』だヨ。失礼だなあ。
ヒトがどういう存在かを見極めるために創られたもの。それがオルセルグ。

……何を言っているんだ。此奴は?

リアラが助けを求めるように、いつの間にかその手に収まっていたディムロス。
もの言う剣は喋ります。

うわ!? 剣が喋った!? 

オルセルグはディムロスの声に驚きます。
当然と言えるでしょう。
ですが今更だと言えるでしょう。
矛盾とも言えるでしょう。
少年はヒトであろうとした自分をすでに辞めようとしているのですから。
今はヒトであろうとした痕跡を殺すことに腐心している最中なのですから。
ヒトがヒト以外に驚くのは当然ですが、
ヒトでなし。いや、ヒトではないものが人外に驚くのは多少おかしい。
おまけに彼は『眼』。
物事をありのままに観ることを使命としている存在です。
323涙くん、さよなら 4:2010/03/21(日) 20:07:01 ID:QEdRTGkX0


(まだマオが残っているのか。ボクの中に)

驚きから立ち直ったオルセルグは思います。
薄々自覚していたことでも、直面すると嫌なもの。
また機嫌を損ねましたが今回は表に出ませんでした。
一方のリアラは疲れ、哀しげな双眸は変えませんが素直に驚きを表すオルセルグに、
ほんの少し安心を覚えます。
そして彼女は彼の今までの言葉に共感を感じます。
感を観じ、やはり感じます。二重の感。
そう、彼が言った通り人間は怖い。
人間は、恐い。

け、けれども、わたしはカイルなら信じられるの。だってカイルはわたしの英雄だから。

エイユウ? そんなもの、神様と同じくらい幻想だヨ。

幻想じゃない。

少し微笑みます。その表情を作ったのは何故か久しぶりだと感じられました。
さっき満面の笑みを作ったばかりなのに、フシギフシギ。
神の化身である聖女は言います。

英雄も神様も全部ホント。

へ?

わたしは聖女、人間を救うために神が造った化身。

少年は口をあんぐり開けます。
もしその様子をかつての彼の仲間だった緑が見たら、
その表情をひとしきり笑った後でマオも笑わせようと努力したことでしょう。
ですがオルセルグが表情を変えるのは笑顔へとではなく、憤怒です。

324涙くん、さよなら 5:2010/03/21(日) 20:07:43 ID:QEdRTGkX0

…………何だよ? それ。
神様って……どのくらいのことが出来るの?

それはヒトと笑いあったマオとしての感情でしょうか。
それとも『眼』としてヒトを観察していたオルセルグのものでしょうか。
リアラは予想外であるはずのその言葉を聞いても何も言いません。
その予感があったからでしょう。リアラは答えます。

たぶん、あなたが想像していることは全て出来るわ。エルレインも同じ。

ふ、ふざけないでよ!! 何だよ、反則だよ! 何でそんなのが来ているんだよ!
何でそんな凄いのがサイグローグに捕まってるんだよ!
おかしいよ! ありえないよ! 
ああ、分かった。神様なんでしょ!? じゃあ、苦しんでるボクを助けてくれるんだね!

少年は合点がつきます。エルレインの時には確信しませんでした。
むしろ、妙なことさえ言わなければ叔母さんとしてヒルダと一緒のポジションに――
ぶつよ? とおば……お姐さんの声が聞こえたのでそこの言及はお終いです。
ああ、悲しいかな。愛くるしいマスコットポジションとしての過去。
ですが神の存在を今は信じました。
本人が自分で明かす前にかなり近いところまで見破りました。
それは自分がマオではなくオルセルグだからだと直観しました。
逆に言うならオルセルグにマオがもっと強く残っていたら、
願うことを拒絶したかもしれません。

(さっきは情けなく驚いちゃったけど……
大丈夫だよね。失態返上だよね)

うん、調子は戻った。自分はやはり正しい。

325涙くん、さよなら 6:2010/03/21(日) 20:08:40 ID:QEdRTGkX0

オルセルグはそう考え、リアラ。聖女にいいます。

殺してほしいヒトがいるんだ。それはね――――

リアラ、逃げろ!! この少年はもう手遅れだ!!!!

ディムロスは言います。
これは牽制の意味合いが大きいものです。
何せリアラの背後は扉。
察するに、いや絶対に彼の能力は超強力な炎。
密閉空間で戦うのは自殺行為と言えるくらい危険なこと。
いえ、自分は神だと言い出すリアラも十分に危険ではあります。
ですがそれはよくよくお話し合いをするか、
ちゃんとした診察を受け、処方された虹色のお薬を飲めば治ることです。
ティアの花を利用するのもいいかもしれません。
それに今の自分はリアラの保護者。守る義務があります。
それにディムロスの持つ力はオルセルグに引けをとりません。
むしろ、条件が揃えば目の前の負傷が激しい少年の撃破は容易いこと。
ディムロスの能力を感じているマオが戦闘を避けようとする可能性はゼロではないのです。
いえ、それが賢明な判断と言えましょう。
つまり

ココカラキエロ

彼の警告は言外にそのような意味を仄めかしていました。
326涙くん、さよなら 7:2010/03/21(日) 20:09:34 ID:QEdRTGkX0

『剣』は黙っててよ。今言ったヒトたち。さっきも言ったよね?
皆殺しにして欲しいんだ。ボクが戻るために。お母さんに愛されるために。

残酷な顔で言います。その表情をリアラはじっと見つめます。
もはや彼女の中にルビアを殺した瞬間から続いていた精神的動揺はなくなっていました。
カイルに逢うと、どんなことをしてでも遭うと決めてもまだどこかに残っていたのに。
彼への恐れは初めからありません。
でも人間達への恐怖で彼女の心は崩壊寸前でした。
彼女自身、不思議に思います。
ですがすぐにその理由が解ります。
最初の予想は大きく外れ、目の前の少年は決して
罰罰罰罰で丸丸丸丸ではないことに気づいたからです。
それは自分が本来そうなるであろう、そうなったであろう生に少年がいることを
同時に気づかせます。
それは彼女が聖女であったことも大きいでしょう。
“であった”? リアラは首を傾げます。何でしょうか?
重要なことに辿りつきそうな気がするのです。

【それは貴方が】

出来ないわ。

リアラはハッキリと言います。
それを聞いたオルセルグは憤怒に歪めたままだった顔で

どうしてさ!?

と叫びます。近くに敵がいることを考えないのでしょうか。
考えていませんでした。
その能力はあっても、
今のオルセルグは蜘蛛の糸に食らいつこうとするのと同じくらいには貪欲だったからです。
どうして。何で。何を言っている。
何故、彼女たちはこのような言葉を交わしてばかりいるのでしょう。
人ではないものなのに。人の上位に立つものなのに。裁き、救うものなのに。
327涙くん、さよなら 8:2010/03/21(日) 20:10:45 ID:QEdRTGkX0

(ああ、そうだ。自分はこの少年を救えない。だって)

【貴方は聖女でいることを最期に放棄したから】

(違うわ。わたしは最後まで聖女として生きた。聖女だから救えないの)

あの瞬間まで、自分は聖女として生きた。

『レンズを砕いて、わたしを解放してくれれば――』

今の自分はまだ聖女だ。心の在り方ではなく、存在として。
そのことを直感としてリアラは理解していました。
神のレンズを砕いたはずなのにどうして? 

そう思う自分がいました。
ですが少なくともそれは今の状況に於いてあまり関係のないお話。

(わたしは誰も、何も救えない聖女なの)

自分は何も救えない聖女。リアラはそう自分に言います。
ルビアを斬った時のように、自己否定の言葉を自分に突き刺します。
そうです。リアラはルビアを殺し、ノーマを助けられず、
シンクがいるのにロイド達から逃げ出しました。
あのときの自分はどうするべきだったのでしょう。
どうすれば皆を救えたのでしょう。

328涙くん、さよなら 9:2010/03/21(日) 20:11:36 ID:QEdRTGkX0

『リアラ、あんたは……生きるんだよ』
『今度は……ちゃんと救えた、から……あたし、は』

亡き親友の死が頭に浮かびます。
それはある意味、ルビアを斬ったことより忌まわしい過去になっていました。
今度? ナナリーが誰かを救えなかったことがあったのでしょうか。
脳内シナプスとハロルドが言っていた、考えを巡らせる何かが高速回転するのを感じます。
ルーのこと? いいえ、違います。あれは信念の末の結末です。



【貴方は何も出来ないのですよ】

もはや恒例となり始めた。何処からの声は無視します。
これを聴いているのは自分だけなのだろうかと思いました。
ひょっとしたらオルセルグも似たような声を聴いているのかもしれません。
そう、この声によく似た黒さを見たことがあるのをリアラは思い出しました。
エルレインの魅せた悪夢。
そこでジューダスは過去を断ち切り。ナナリーは弟との生を肯定しました。

(じゃあ何? ナナリーが救えなかったのはもしかして)

ウソだ。ボクが子供だからって意地悪言ってるんだ。

思い巡ることを止める言葉がオルセルグから放たれました。
願いを叶えない聖女への不満。
レンズがあればどんなことからでも救うエルレインは
逆にレンズが無いものを救いはしませんでした。
それへの不満は幼き聖女へ向けられます。
このような不平には慣れていました。慣れても心は擦り切れていました。
英雄を求め、過去へ跳ぶほどに。

マオ

リアラはその名を口にします。
それを聞いた少年は電撃を受けたかのように体を震わせます。
まるで……それが彼の“名”であるかのように。

その名前をつけてくれたのは……

少しの逡巡。けれどもそれは滑らかに舌から出た。

誰なの?
329しばらくおまちくださいー:2010/03/21(日) 20:43:18 ID:g6RGnj3V0
  ゛ (⌒) ヽ
  ((、´゛))
   |||||
  _, ,_   ヒュー「しょおーですから!」
(#◎д◎)
  ⊂彡☆))Д´)
330涙くん、さよなら 10@代理:2010/03/21(日) 21:42:58 ID:+MYX3OQk0
名前。きっとこれは大事なもの。
自分はリアラだ。フォルトゥナがつけた名前。
そしてこの名と共に聖女として生きることを義務づけられました。
リオン=マグナス。意味は偉大な獅子。転じて偉大な王。
それを愚劣な手で従えようとしたミクトランの傲慢さが窺えるような名です。
その名前を捨てたジューダスがリアラ達に言ったことがありました。

『彼女を愛した理由? そうだな……名前を呼んでくれるのは。
あれほど優しい声で名前を詠んでくれるのは彼女だけだった。
エミリオ=カトレット。ハハ、ありふれた名かもしれないがな』


ユージーンっていうヒトがつけてくれた……らしいよ。
古代カレギア語で『無』っていう意味。くだらない名前だよ。
何にでもなれるって言いたかっ

なれるわ

リアラは迷い無く言います。

『カイル、わたし……死ぬことは怖くないの』

何故、自分は生きたかったのか。
自分は死を選んだはず。愛する人の手で殺される道を選んだはず。
自分にカイルが必要であることは確かだ――です。
でもそれは目の前の少年のように、人ではないことからくるものではありません。
オルセルグは会いたかったのです。
『無』である自分を知る者に。その上でマオという「名」を殺したかったのです。
過去を断ち切るために。
きっと彼がリアラに言う願いを叶えても何も変わらなかったでしょう。
331涙くん、さよなら 11@代理:2010/03/21(日) 21:43:55 ID:+MYX3OQk0

デュナミス。『資質』、『可能性』。
その名前を持つ、わたしの大好きな男の子は最初……只の男の子だった。
ううん、最後までただの男の子だった。でも彼は変わったの。英雄になったの。

それが何?

きっとあなたも“戻る”必要なんかないんだと思うの。
ううん、そのままでいる必要なのかも。
あなたは何にでもなれる。
嫌なら別の名前を名乗ってもいい。違う道を歩んでもいい。

全てを見透かしたように言います。
そうです。自分は聖女だ。そう思っていて…ました。
でも何も救えなかった。だから英雄を求めた。ました。
そんな存在なら自分では出来ないことも出来ると思った。思っていました。
けれども最初から分かっていたのかもしれません。しれない。
いや、気づこうとしなかっただけなのだ。

『カイルはリアラの英雄』

みんなそう言いった。
ですが。ああ、何故忘れていたのでしょう。自分の本当の望みを。
彼女は神として、聖女として産まれた。
でも、でも、けれども。
332涙くん、さよなら 12@代理:2010/03/21(日) 21:44:38 ID:+MYX3OQk0



聖女という名の少女が綴る童話は終わりを告げる。
それは自分と近い存在、
近くて危うい道を進もうとしている聖なる炎の化身との出会いがもたらすもの。
チェス盤を支配する道化師ですら予期できなかったこと。 
当然だ。道化が予測できない存在は何だ?
決まっている。彼を遙かに上回る道化だ。
彼女はずっと独り芝居を続けていたのだ。カイルはリアラを守ろうとした。
それはリアラが聖女だからではない。男が愛する女のために命を賭すことに何の理由があろうか。
そう。それはリアラにとって最大の自己否定。
聖女を守る英雄ではなく女の子を守る英雄。



彼女が大好きだった仲間達は、一度も彼女を聖女として観なかった。



誰も彼女に救われようとしなかった。
リアラはようやく分かった。ナナリーの最期の言葉の意味を。
彼女は悲しんでいたのだ。カイルに負けないくらい。
リアラに死を選ばせた自分の不甲斐なさを。
あの時、ルビアは彼女を見つめていた。
視線が告げていたものは“助けて”が四割、“痛い”が一割、“如何なったの”が三割。
後の二割は? 
心を突き刺す刃で出来た傷が、自分の無力さと鈍感さをハッキリと思い知らせてくれる。
ルビアは自分を“心配”していたのだ。
あんな地獄のような状況で、あれほどの奈落に近い世界で小さき花のような乙女は

『泣かないで、苦しまないで、お願いだから自分を責めないで』

残ったわずかな勇気で必死にそう伝えようとしたのだ。混乱と恐怖の中で。
333涙くん、さよなら 13@代理:2010/03/21(日) 21:45:28 ID:+MYX3OQk0

自分は神に存在の消滅を主張した。
だが基から存在などしていなかった。自分は心の何処かで最初から人間の強さを知っていた。
だからこそ、自分で救うことを諦めて英雄を捜した。
あの戦いは彼女にとって通過儀礼に過ぎなかったのだろう。

『次に生まれたときは同じ人間として――』

消滅すら必要なかったのかもしれない。
ジューダスやナナリーを知ることで神の無用さを完全に思い知らされたのだから。
生まれ変わらずとも自分はカイルと会うことで普通の女の子になったのだから。
そうすることに何の意味が? 人々は問うかもしれない。
ああ、認めよう。神は無力だ。聖女など何を救えるものでもない。
そんなものにこだわり続けるからイニシエーションを終えたことに気がつかないのだ。
あの時、あの瞬間、レンズを英雄が砕いた瞬間から。
リアラは聖女から解放されていた。
生きていたかったのは死ぬのが怖かったから。
死ぬのが怖いのは自らの前に開けた道を無意識の内に知っているから。
今の自分は聖女ではなく少女。だからこそ、成れるものがある。
334涙くん、さよなら 14@代理:2010/03/21(日) 21:46:11 ID:+MYX3OQk0

「貴方はこの世界にいる貴方をマオと呼ぶ人に会うべきなんだと思う。
その結果殺してしまうことになっても」


もしかしたら最悪の結果を招くことになるのかもしれない。
スタンはカイルを愛さない。今の歴史がそうさせているからだ。
それと同じようにマオが会いたい人間達。
その全てと逢っても彼がお母さんと呼ぶものは
マオを、オルセルグを愛してくれないと知るだけかもしれない。


「それ、聖女の言う台詞? 
結局ボクの願いを何一つ叶えないで自分でどうにかしろっていうことでしょ?」

そんな結果でも、少年は知ることができる、かもしれない。
マオという名をつけてくれた人がどれだけ彼のことを想っていたのかを。
リアラはその言葉にニッコリと満面の笑みを浮かべる。
それは、地下で月に向かって笑いかけたものとは全く別質のもの。

「ごめんなさい。ウソ、ついてたの。わたしはただの普通の女の子。
誰かを守れる、救えるような聖女じゃないの」

マオは憤怒を嚇怒に変えてリアラに殺気をぶつける。
だが今のリアラには何も効果を為さない。

「もういいよ。その剣、早く貸して」

手を突き出すその様子は間違いなくディムロスを用いてリアラを灼熱の斬撃で討つつもりだろう。
それを知りながらリアラは笑顔でそれを差し出す。
それに抗議の声を上げようとするディムロスだが寸でのところでそれを止めた。
リアラの想いがハッキリと伝わったからだ。
そして、その意味がわからないほど彼は愚かではない。
少し指先を伸ばせばディムロスを掴める。それは解っているのに、動かない。
本能で気づいたからだ。
いくら細工されようとソーディアンは使い手との精神同調が強大な意味を持つ。
同調。つまりソーディアンは自己がハッキリしていない者が使うと忽ち精神を蝕む劇薬となるのである。
335涙くん、さよなら 15@代理:2010/03/21(日) 21:46:57 ID:+MYX3OQk0


「やっぱりいいよ。興味なくした。ボクの勘違いだったみたい」

「そう」

笑顔のままリアラはディムロスを“あるべき場所”に戻す。

「君がいた施設を調べようと思ってたんだけど。
 やーめた。ハッキリ言って君のことは大嫌いだけど……
 大人しくヒト探しを続けるよ」

「そう。頑張ってね」

「君、最初はどう見てもこっち側だと思ってたのにな」

「あなたのおかげで大切なことがわかったの。
 うん、違うかな。大切なことを認めたの。
 とにかく……ありがとう」
 

【マオ 生存確認】
状態:HP65% TP90% 精神疲労 エルレインの素性を知った エルレインを信頼、けれども依存したくない 精神不安定
   リバウンドへの強い恐怖 激しい迷い 間違った方向への強い自立心 リバウンド進行中
   左顔面全体及び右腕、左足首、胸、腹、背中に火傷(一部は炭化済み) 足に裂傷(フィアフルストームに因る) 脱力感? リアラのことが大嫌い
   アニー以降の放送を聴いていない 聖獣の化身・オルセルグとしての意識 封魔の石により炎に包まれている
所持品:忍刀・東風 ワルターのサック 封魔の石 黒髭ダガー ワルターの首輪の欠片
基本行動方針:お母さんや聖獣達に愛されるため、『マオ』を完全に殺す ?
第一行動方針:取り敢えず休む
第二行動方針:マオの辿った道程を戻り、マオを知る者全員と会う。そして殺す。モリスン邸へ向かう。
第三行動方針:マオを知っているヴェイグ、アガーテ、サレ、ジルバと会う。そして殺す。
          フォルスはある程度近づけば探知できるので後回しにして、モリスン邸に集った人物を優先する
第四行動方針:マオを殺してもリバウンドが治まらなかったら、聖獣に代わりヒトを滅ぼす 。
第五行動方針:隠された神殿の扉を開く鍵を入手する? (意味があるのか?)
現在位置:E7・ナーオス基地前
336涙くん、さよなら 16@代理:2010/03/21(日) 21:47:50 ID:+MYX3OQk0



リアラは進む。そしてマオは留まる。怪我が痛いから少し休むよと、そう言って。
リアラは駆ける。草原を嵐のように、草を焼くような速さで走る。
右手に持つのはソーディアン・ディムロス。
彼は既にリアラのことを認めている。だがそれでも問わずにはいられない。

『心境にどれほどの変化があったかはあえて訊かないが。
結局のところ……お前は何者なんだ?』

その言葉にリアラは微笑む。空の色は関係無かった。
自分を取り巻く世界が何かは分かっていても、今この瞬間の空は果てしなく美しい青空だった。

涙くん、さよなら

『自分を分かってほしい、間違いに気づいてほしい、もっともっと分かり合いたい。
そんな風に相手を思ってないと喧嘩なんかしないし出来ないだろ?
本音ぶつけ合ってさ。怒鳴って、怒って、泣いて。
それを乗り越えて初めて本当に仲良くなれるし、幸せにもなれるんだ』

無き親友の言葉が胸に染み渡る。それともこれは、この地で眠る英雄達が運ぶメッセージか。
あの時に諭された自分は、下手をすると取り返しのつかないことをしてしまうところだった。
でも今は違う。自分は普通の女の子。聖女になれず、誰からも頼りにされない。
そんな存在。でも変わってみせる。
ロイド達にもう一度会おう。話をしよう。それで駄目なら泣いて、怒って、別れよう。
その後で、いつか分かり合える未来を目指そう。


聖女では救えなかった。だから同じ人間ならそれが出来ると思った。
337涙くん、さよなら 17@代理:2010/03/21(日) 21:48:34 ID:+MYX3OQk0

神に生まれ変わることも、望めば出来たのかもしれない。
でもそれはしなかった。
人間とは無理難題を神に要求する一方でその難題全てを解決できてしまうのだ。
そんな者たちに何が出来よう。逃避と呼ばれてもいい。
無力なのに責められる立場に誰がなろうとするだろうか。
自分は……ナナリーのようになりたい。ジューダスのようになりたい。
ハロルドのようになりたい。ロニのようになりたい。
そして――カイルの隣で対等な立場に立ち、一緒に笑える同じ英雄になりたい。
誰も望んでいないかもしれない目標。
けれども、人々を救いたいという気持ちも本物で、みんなと並びたい気持ちも本物。
なら答えは決まっている。名乗る名前も称号も決まっている。
誇りを持ってディムロスの問いに答える。許されるはずだ。
これくらいワガママでもカイルは大丈夫だろう。ちょっと気が早いけど。

「ソーディアンマスター、リアラ=デュナミス。英雄を目指す普通の女の子よ」


【リアラ 生存確認】
状態:HP100% TP30%  ディスト以降の放送を聴いていない  聖女だった自分を過去のものとしました 
    カイルへの依存から完全に脱却 称号『ソーディアンマスター』 不屈の魂 リアラ=デュナミス
所持品:南国の蝶 レンタルビューティー ソーディアン・ディムロス 考察メモ 工具箱
    ホイッスル ??? 旋風 ポイズンパウダー フリーズリング
    アビシオンのフィギュア 左腕 ナナリー、ディスト、ノーマ、ルビアのサック
基本行動方針:英雄になる。殺し合いの打破
第一行動方針:ロイド達に会って話し合う
第二行動方針: カイル達を探す。同士を集める。
現在位置:E7・ナーオス基地前 →E7・草原

【ソーディアン・ディムロス】
基本行動方針:殺し合いの打破。リアラと共に戦う
第一行動方針:放送の内容を教えないと。
第二行動方針:リアラの素性を知りたい。


そう、知っての通り、悪夢は終わらなかった。終わらせることが出来なかった。
けれども、夢の始まりは……冒険の始まりは……どんなときでも風が吹く草原からと決まっている。
338名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/21(日) 21:50:22 ID:+MYX3OQk0
代理投下終了です。
書き手さん新作乙!まさかリアラがこっちに行くとは……
前回のロニとは反対の方向に行って面白かったです。がんばれリアラ
339名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/21(日) 21:59:39 ID:RaPQ1sb/0
代理投下乙、そして書き手さんも乙!
まさかのリアラ覚醒…。オルセルグ(マオ)との邂逅がリアラを対主催に転向させるきっかけになるだなんて、誰が予想できただろうか…。
前回のロニ発狂とは正反対の意味で震えました。ここから主人公&ヒロイン勢の覚醒が次々と起こるのか…!?
今後に期待せざるを得ないじゃないか…!
340名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/21(日) 22:05:26 ID:ub13TeGP0
投下乙です!
まさかのリアラ覚醒に震えが止まりません!!
341名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/22(月) 09:43:49 ID:VOVNgnte0
乙。ロニとの対比を狙ったのがよくわかった。うーん、ここからどんな展開になるやら。リアラがロイド達に追い着くとアトワイト関連がピンチだぞシンク。
シンクはリアラはもう駄目だって思ってたけど、読みが甘かったな。この誤算が波乱を呼びそうだな。

というか相変わらずまとめサイトの仕事の早さには驚かざるを得ないw
342名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/22(月) 11:10:26 ID:kiams9v80
乙。
リアラかっけー!
343きんしえりあどうしようかな:2010/03/22(月) 17:52:59 ID:IU4Rd+zb0
  ゛ (⌒) ヽ
  ((、´゛))
   |||||
  _, ,_   ヒュー「しょおーですから!」
(#◎д◎)
  ⊂彡☆))Д´)
死亡スレにロニがいますが…「代理アスベルの誤算」です。
さて、禁止エリアどうしようか。
2エリア同時禁止…-いままでのていろわ-と同じ禁止エリアにする
いつもどうり…貴方達が決めましょう
どうせならもっと多く…2エリア同時禁止に1つ追加
344名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/22(月) 18:23:27 ID:n6tCb+aiO
やっと読み終わった。
リアラ覚醒かぁ乙。
345名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/22(月) 18:58:44 ID:IU4Rd+zb0
リバウンドは死亡後こっちでしょおーりします。
346名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/22(月) 19:45:04 ID:IU4Rd+zb0
そんじゃ、あでゆー
347名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/23(火) 01:15:55 ID:7lz3RoyA0
ロイドが死ぬ前に会えればいいなあ
天使状態ってHP回復するんだっけ?
348名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/23(火) 14:06:17 ID:6qQVnlum0
 いつのまにか2作も投下されてたんですね。

 ロニは吹っ切れたかと思えば・・・とんでもない方向に狂っちゃってますね。
 しかし、体力ピスピス・・・どうなる事やら

 対するリアラ、遂に復活してよかったです。
 ただ、今の状況だとロイドたちに出会わずにルカ・エルレインと出会いそうで怖いですね。
349名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/24(水) 18:03:18 ID:ctLwnhtj0
あん?
350名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/24(水) 18:35:16 ID:jQJSUuhr0
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm9956937
腐林檎方程式(^H*6)Bad Apple方程式でつかえそうなBGM発見。
聞きたいならttp://blog.livedoor.jp/ufreyr/?v=sm9956937
マオがリアラを対主催にしたとは…。
今、マオに死亡フラグまたはそれに順ずるものはありますか?
なければorリバウンドのみならば、
一時投稿に後で投稿する拡声器のフラグを使ってください。
351名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/24(水) 20:08:19 ID:Nonmlk730
スパーダ!? デュランダルから戻ったのか!?
352350:2010/03/24(水) 21:40:04 ID:jQJSUuhr0
拡声器のフラグと共に皆殺しの場合の方針をいれました。
353名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/25(木) 05:06:39 ID:yAZf4hPT0
ロワ語り盛り上がったね。住民はやっぱり多いって改めて知ったよ。
354名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/25(木) 07:27:29 ID:RGz9KKWy0
 ロワ語りにあったけど、塔に向かってるのって誰がいたっけ?
 17人(または25人)とあったけど、どのパートが誰なのか何人か把握しきれない。
355名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/25(木) 12:43:19 ID:yAZf4hPT0
>>354

多分こう。

対主催組(2人)が三巴の乱戦(6人)をしている最強クラスマーダーを遠距離からハイパーMAP兵器で狙い発砲したが、そのMAP兵器はマーダーに当たろうが当たらまいが、とある塔に直撃してしまう。
問題は、現在そのとある塔が三巴の乱戦状態だということ。(5人)
更にその塔にMAP兵器が当たるまでに、発覚しているだけで2グループが行く。(4人)
またその2グループを2グループが追っている。(3人)

更に更に、塔に行くフラグが立っているグループがいる。(3人)
そしてそのグループに会いに行くグループがいる。(2人)
挙句、時間的にMAP兵器発射時刻までに塔方向を目指しているグループがある。(3人〜)
確定17人、高い可能性で25人超という生存者の三分の二以上が巻き込まれるパロロワ界でも屈指の超乱戦フラグバースト。



対主催組(アガーテ、レイス)が三巴の乱戦(カイウス、チェルシー、ジルバ、シャーリィ、セネル、シゼル)をしている最強クラスマーダーを遠距離からハイパーMAP兵器で狙い発砲したが、そのMAP兵器はマーダーに当たろうが当たらまいが、とある塔に直撃してしまう。
問題は、現在そのとある塔が三巴の乱戦状態だということ。(ミクトラン、ヴェイグ、カイル、ティア、アッシュ)
更にその塔にMAP兵器が当たるまでに、発覚しているだけで2グループが行く。(ロイド、シンク、クロエ、多分ミトス?)
またその2グループを2グループが追っている。(ルカ、エルレイン、リアラ)

更に更に、塔に行くフラグが立っているグループがいる。(チャット、キール、リフィル)
そしてそのグループに会いに行くグループがいる。(ルーク、フィリア)
挙句、時間的にMAP兵器発射時刻までに塔方向を目指しているグループがある。(ロニ、スタン、イレーヌ、他は未定)
確定17人、高い可能性で25人超という生存者の三分の二以上が巻き込まれるパロロワ界でも屈指の超乱戦フラグバースト。
356名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/25(木) 14:15:49 ID:RGz9KKWy0
 おお、なるほど。ありがとう。
357名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/25(木) 15:33:35 ID:qm1g5L6LO
書き手泣かせだよね…。
1stの悲劇みたいにならなければいいけど。
358名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/25(木) 17:15:19 ID:yAZf4hPT0
1stのは即リレーだったからだぞ。
359名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/25(木) 17:51:18 ID:ksTGRsc40
よし、次の禁エリにその塔をいれよう。
マオ生存確定かも、てことで。
360拡声器の声:2010/03/25(木) 18:33:36 ID:ksTGRsc40
ふとそこに本来の拡声器用マイクと電波妨害機があった。
マオは電波妨害機のスイッチを切り、放送を始めた。
「みんながこの放送を聴いているときには、ボクはもうおかしくなっているのかな…。」
「もしかしたらもう無視されているかもしれないけど…。」
「で…でも、この状況をどうかするには、これを使うしかなかったんだよ…。」
「エルレインでも、リアラでも、他のみんなでも…誰でもいいから…」
「いままでのことを忘れたいから…みんな、勝手に放送入れて、ごめんね…」
「誰か…ボクを…殺して…」
「あと…主催への恨み以外で勝手に塔を壊さないでね…。」
その後、精神が満身創痍に近かったマオは電波妨害機であちこちのサイトのコメントを
一気に放送させた。無論、その中には弾幕も含まれている。主催に向けた弾幕も含まれている。
この時からマオは2重人格になっていた…。

【マオ 生存確認】
状態:HP65% TP90% 精神疲労 エルレインの素性を知った エルレインを信頼、けれども依存したくない 精神不安定
   リバウンドへの強い恐怖 激しい迷い 間違った方向への強い自立心 リバウンド進行中
   左顔面全体及び右腕、左足首、胸、腹、背中に火傷(一部は炭化済み) 足に裂傷(フィアフルストームに因る) 脱力感? リアラのことが大嫌い
   アニー以降の放送を聴いていない 聖獣の化身・オルセルグとしての意識 封魔の石により炎に包まれている
   ☆拡声器フラグ発生済 ☆2重人格発生済
所持品:忍刀・東風 ワルターのサック 封魔の石 黒髭ダガー ワルターの首輪の欠片
基本行動方針:お母さんや聖獣達に愛されるため、『マオ』を完全に殺す/主催を殺して脱出、リバウンドを解く
第一行動方針:取り敢えず休む/拡声器に任せる
第二行動方針:マオの辿った道程を戻り、マオを知る者全員と会う。そして殺す。モリスン邸へ向かう。
第三行動方針:マオを知っているヴェイグ、アガーテ、サレ、ジルバと会う。そして殺す。
          フォルスはある程度近づけば探知できるので後回しにして、モリスン邸に集った人物を優先する
第四行動方針:マオを殺してもリバウンドが治まらなかったら、聖獣に代わりヒトを滅ぼす 。
第五行動方針:隠された神殿の扉を開く鍵を入手する? (意味があるのか?)
現在位置:E7・ナーオス基地前
361名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/25(木) 18:39:24 ID:yAZf4hPT0
しかしあれだわ。
ロワ語りで「選択」がこのロワの主題、って聞いておお、と思った。今更だけどねw
OPからしてそうなのに俺はなんでド忘れしてたんだか。
362☆初登場項目:2010/03/25(木) 19:20:07 ID:ksTGRsc40
【本来の拡声器用マイクと電波妨害機】
分類…アイテム
主催は電波妨害を使って放送していたという証拠、
そして死亡フラグの1つ。
【☆拡声器フラグ発生済 ☆2重人格発生済】
拡声器フラグは上を見れば分かる。
2重人格は「本来のマオの人格の復帰」からです。
マーダー化した時一時的に消えていました。
右がそれです。
ちなみに2,3,4,5は左側限定。
363名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/25(木) 20:02:22 ID:qm1g5L6LO
>>358
あー、過密してたんだったね。ごめん。
2ndは意図的にやらなきゃ大丈夫か。
364名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/26(金) 23:55:01 ID:iG9llwgh0
投下します
「やはり、クレメンテに話しかけても返事がありませんね」
「さっきも言っただろう。ソーディアンは役目を終えて、眠りについたんだ」
「分かってはいます……けれど、残念ですわ」
「気持ちはわからなくもないがな」
「皆さんともお別れなんですね」
「当然だ」
「また……お会いしたいものですわ。お茶を飲みながら楽しくおしゃべりをして」
「ふん、くだらんな。やりたければ勝手にやってろ」
「リオンさんは参加なさらないんですか? 
お茶請けするお菓子もたくさん用意いたしますわ」
「ごめんだな。甘いものは昔から好かない。それに僕は忙しいんだ」
「そうですか……でしたらご都合がつきそうな時にご連絡ください」
「気が向いたらな…………忘れるなよ、フィリア」
「何をですか?」
「ソーディアンが再び目覚めるとき、世界の調和は再び乱れる」



「まず、彼女の容態を見せてください」

口火を切ったのはフィリア。
その言葉にルークは反論の言葉をあげようとするがフィリアは小声で大丈夫ですとルークに言う。

「いいよ。でも気をつけてね。かなり危険な状態なんだ」

ならその娘を玉座に寝かせるべきだろうとルークはすぐさま思ったが、
それを口にはしなかった。
その代わりに剣を抜き、構える。
マルタを受け取りに行こうとしているフィリアに何かあったらすぐに反応出来るよう。
フィリアは玉座への階段をゆっくりと昇り、マルタに近づく。
フィリアは本職の医者ではない。だが幼き頃から神殿で暮らし、
古代文明の研究に身を捧げた者として、かなりの知識を持っている。
発達した医術の復活。それで救える命は千や万ではきかないほどのものである。
フィリアはマルタに顔を近づける。
熱を測るが冗談のように高い。
胸に耳を当るが心拍数は少ない。
呼吸に意識を向けるがそのリズムは不規則を極めるもの。
瞳孔、喉、発汗、思いつく限りの診断をするがサレの言うことに間違いはないようだった。
誰かの保護が必要なのは確かだ。
ゆっくりと意識を失った少女を背負い、ルークの所へ戻る。
彼が何か言うかとフィリアは思ったが特になかった。
マルタの保護に賛成なのか、
サレの動きに全神経を集中させているから目に入らないのかは見極めがつかない。

「話せ」

ルークが言う。
怒りを滲ませた声で、今にも斬りかかりそうな眼でサレの返答を促す。

「何を思いだしたのか、話せ。どうしてイオン達を襲ったのか、話せ」

その言葉にミュウも同意するかの様に肩の上で鳴く。
サレもまたフィリアとマルタのことを特に意識はしてなかったのだろうか、
ルークの要求を予想していたかのように言葉を紡ぐ。

「大切な人がいたんだ」

フィリアがその言葉に肩をびくりと震わせるが誰も気づかない。

「こう見えて、僕は娼婦の生まれでね。四星……
 まあ、将軍職とでも思ってほしい。そこまで成り上がるには力しかなかった」

娼婦……その言葉にルークは眉を顰める。縁はなかった。
むしろ努めて関わろうとはしなかった人種だがそれでもイメージは湧く。

「毎日が死にもの狂いだった。そうしなければ僕はゴミのまま、
 掃き溜めで終わっていたからね」
“掃き溜め”という言葉に自嘲という特等のスパイスを乗せる。
それをルークとミュウは無表情で口に入れるが、明らかに困惑の色が浮かんでいた。

もう一押しかな? ずいぶんとチョロイんだね。

サレは頭の中でそう推測するが、もちろんそれを表には出さない。

「そんな中、一人の女性と恋に落ちた。彼女は城で働くメイドでね
 ……おっと、馴れ初めを語らせるのは勘弁してくれ。
 語るくらいなら死を選ばせてもらうよ」

ルーク達はじっとサレの話に聴き入っている。

横にいる女の子は今頃、悲劇の主人公になろうとしている僕にメロメロってとこかな?
あまり意識はしないけど……美しい顔とは得なものだね。
――心を弄ぶのにこれほど役立つのだから

「世界が変わったよ。見るもの全てが美しく感じられた。
 城は楽園となり、世界は彼女を包む優しきヴェールに見えた。
 そして何より……」

ここで一端、間を開ける。さあ、引きずり込まれただろう。
そして予想できるだろう? 僕がゲームに乗った理由が。
体中にたっている鳥肌を堪え、サレは話を続ける。

「掃き溜めに見えていたスラムが救うべき哀れな場所に見えた。
 僕は確信したんだ。“愛”は全てに勝ると。
 だから僕はこのゲームに喚ばれてどうしても彼女の元へ帰り――」


            それで、この茶番を何時まで続けるおつもりですか?


静寂を大広間が満たす。いや、音どころか存在すら消え失せたと言ってもいい。
ただ一人を除いて。

「貴方は今までもそうやって人々を騙し続けていたんでしょうね。
何時になったらあなたに眠る良心の神は目を醒ますのです?」

驚きを全てに表しながらルークとミュウはフィリアを見る。
驚いたのはその言葉にではない。
彼女の形相にだ。それは一見静かで、けれども誰にすら真似できない激情を秘めたもの。
玉座が急に冷たいものに感じられる。自分が座っていたのは岩じゃないだろう?
最高級の繊維で出来た、上質のソファ。今はこの場の王を支えるもののはずだ。
なのに全てが冷たく感じる。
シャンデリアも燭台もカーペットも全てが岩仕掛けの雑なブリキに見えてくる。

【世界は全て絡繰り細工】

目の前の……まるで意識していなかった、
ハッキリ言うと侮っていた少女から目が離せない。

「な……何のことだい? どうして僕が君達を騙しているなんて勘違いするのかな?」

「女のカン……いえ、貴方の眼を見ればわかりますわ」

毅然というフィリアに対し、サレはようやく調子を取り戻す。

「眼……ね、ずいぶんと勝手な価値基準じゃないか。
そんなことで君は僕を嘘つき呼ばわりするのかい?」

「ええ、勝手そうかもしれません。ですが私(わたくし)は知っています。
 貴方がついた嘘と似ている、愛する人の為に生きた方を、
 彼は……貴方と違い、冷たい瞳を隠そうともしませんでした。
 ですが貴方とは違い、誰よりも温かな情をその内に秘めた方でした」

フィリアの脳裏に浮かぶのは海底洞窟での戦い。
誰にも理解されず、信念のために、愛のために死地へ赴く彼の姿。
自分は知っている。
愛するもののために戦った人を、動く屍となっても運命に翻弄され続けた戦士を。
彼との思い出が、彼がくれた勇気が、彼との別離の思い出が自分に教えてくれる。
この男は嘘をついているということを。

「彼との記憶が虚構を崩し、真実を捉えさせてくれます。貴方はつく嘘を間違えました。
私には……私達にとってはその嘘をつくという行為そのものが最大の侮辱です」

静寂はまだ破られない。サレは遂に諦めるが、どうしてこうなったのかは納得がいかない。
本来ならマルタを預け、敵意がないことを証明してから同行するつもりだった。
だが、目の前の少女を見ればわかる。
彼女は彼に怒りを抱いている。小柄な体躯には不釣り合いなほどのものを。
もはや言いつくろう術がない。

「改めて聞かせてくれないかい? 君の名前は?」

「フィリア=フィリス」

感情を込めずに彼女は自らの名前を告げる。
新しいターゲットは決まった。弄ぶ心は決まった。
けれども今では分が悪い。予備のために残してあった逃亡の策を実行すべき時期。
そう考えサレは天上を仰ぎ見る。王が見る天井とはこんなにも近いものなのか。

(さあ、作戦開始だ)

心の中で呟く彼。心の中にある小さな敗北感を忘れぬよう誓い。ルーク達を見下ろす。

「なっ!?」

だがサレは驚愕の声を漏らした。彼らが小さすぎるのだ。
そこまではいい。
自分はこのディストチェアーと書かれた玉座で空を飛び、奇襲を図り、
そのままフォルスを用いて逃走するつもりだったから。
エネルギー効率が悪すぎるこれも奇襲として用いるなら上等の道具となる。
座ったまま跳躍するなど普通は考えもしないのだから。
だからこそ王の玉座に見えるよう飾り付け、演出した。十全だった。
しかし自分はまだ仕掛けを発動させていない。
椅子に力を込めていない。これではまるで――

「トラクタービーム」

轟音とともにサレの顔が天上へめりこみ、埋まる。
慌てたように首から下だけをジタバタさせる様子をルーク達に見せる。
頭を抜こうと右手を考え無しに突っこもうとしたが、
救出叶わずそのまま千切れさせるに終わった。
恐らく痛みのあまり絶叫しただろうがこちらには届かない。
それは何よりも無様といってよかった。
サレの醜く滑稽なダンスを見ながらルークはフィリアに確認する。

「アイツは超がつくほどのゲス野郎。そういうことなんだな」

「ええ、かまいませんわ」

フォニムとマナに互換性があることは聞いていた。
ここに来る途中でルークがこの雪の上で思いっきりFOF変化をしたら
楽しいだろうなあと言ったのを聞き、それについて詳しく聞いた。
そして確信した。
この世界には全ての力を変換する――または翻訳する何かで満ちているのではないかと。
脳の中を調べられたことも考えた。記憶の操作、言語の操作。
だがそれなら言語を一つに統一すべきではないのか?
その方が遙かに容易いのではないか?
ならば何故自分たちは互いに意思疎通が出来る。
異世界の文字を異世界と認識しながら理解できる?
これは一つの仮説。だが術の発動に大きな役割を果たしたもの。
この世界のエネルギーの在り方は行使者の記憶が左右する。主観で全てが変わる。
まるで、自己を持たず迷うことが命取りであるかのように。
賭に近い仮説だった。マルタの所に行った際、すぐさま術を発動できるよう
力場をこっそり細工したときも保証はなかった。
サレが自分をナメきっていたのが幸いした。
自分がかつては後衛術士だったこともプラスに働いたのだろう。
そして、答えが目の前にある。
この仮説が真実とは限らないが現実に有用なものとして目の前にある。
なら、自分に出来ることはあるはずだ。
スタンに、リオンに、旅を通して自らの信念を貫くことの尊さを教わった。
それを侮辱するものは誰であろうと許さない。


天上の中で、サレは恐怖する。この力はあの男と同じものだ。
青きネギを自在に操る高貴なる白銀の王者と同じものだ。
死の足音が近づくのを感じる。
頭に穴を開け、約束された勝利のネギを携えた男が自分を迎えにくる。
その光景は、サレを震わせるのに十分なものだった。
何だ、自分は生に執着を持ってはいなかったはずだろう?
サレの問いは誰にも届かない。物理的に顔が埋まっているのだから当然でもあるが。
そうか、自分は……。
現実はこんなものだと自らの死でヴェイグ達に示せるのだと思った。
だから死を恐れなかった。だがこの世界は違う。
こんな小娘たちにしてやられるとは思わなかった。
彼女の目が逆に自分の心を蹂躙する。自分の証を残せる場ではない。
キール達が自分を歯牙にもかけなかったことがハッキリと事実を主張する。
ここは、自分の手に負える場所ではない。
超希少なヒューマのフォルス使い。そんな自分に何も不可能なことはなかった。
ミルハウストに勝てはしなかったが、心理戦では遙かに上をいく確信があった。
でもここは違う。そんなものは意味がない、心の否定は既に行われていた。
二重否定をやってもサイグローグは自分に何も思わないだろう。
そんなことで奪える操り糸はたかが知れている。
彼の線路を辿っただけに過ぎないのだから当然だ。
完全なる恐怖と挫折、それらは終に嵐に愛された男を真に狂わせる。
力を躊躇無せず際限なく自分の身を考えずに放とうとする男に立ち向かうのは――
聖なる焔と白き使徒。


【ルーク・フォン・ファブレ 生存確認】
状態:HP60% TP100% 強い決意 第2回放送の遅れがひっかかる サレへの怒り
   全身に傷・打撲・痣 イレーヌとスタンへの不思議な感情 イオンの死にショック
所持品:メロメロコウ ミスティシンボル ソウルブラスト ミュウ  ルークの日記
基本行動方針:今自分に出来る事をする
第一行動方針:サレを殺す。その後、城の中にいるイオンに会いに行く
第二行動方針:城を探索したらチャットを探しに南へ?アッシュやジェイド達の手かがりを探す?マルタの「願い」を叶えるのを手伝う?
第三行動方針:アッシュやティアと合流したい
第四行動方針:アリスを探してイオンの仇を取る?
第五行動方針:スパーダ・ジューダスが気になる
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間

※ルークの音素乖離はルール規定通り現在は安定状態です。ですが、当人はその事に気付いていません。

【フィリア・フィリス 生存確認】
状態:HP100% TP100% 深い悲しみ(多少持ち直し) サレへの怒り 巨大な魔力(マナ)がちょっと気になる
所持品:マジックミスト メンタルバングル ホウテイバンリ
基本行動方針:仲間を探しながら情報収集に徹する
第一行動方針:サレを殺す。マルタのことはその後考える(保護の必要性は感じている)
第二行動方針:城を探索したらチャットを探しに南へ。クレメンテについて話をしたい
第三行動方針:ハロルドと再会したら時間跳躍について尋ねる
第四行動方針:スパーダ・ジューダスが気になる
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間

※ルークの身体についてと、彼がそう長く生きられないと自覚している事に薄々気付きました。

【マルタ・ルアルディ 生存確認】
状態:HP40% TP100% 右肩に傷跡 右の片袖無し デスガロ熱発症
   軽度凍傷(処置済み) 空腹 迫り来る死への恐怖 センチュリオン・コアの存在への不安
所持品:エミルのマフラー 鬼包丁 レンズ×29 情報入り名簿 温石 蟻地獄人の人形 外套代わりの毛布×2
基本行動方針:死ぬまでにエミルに会いたい
第一行動方針:エミルに会いたい。
第二行動方針:エミルに会えたら、マフラーの件を謝りたい
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間 フィリアの側

【サレ 生存確認】
状態:HP25% TP25% 全身に中裂傷や刺傷(治療済)右腕喪失(肘上から) アリスへの失望 ウッドロウへの恐怖 天井王 フォルス暴走5秒前 天井に顔が埋まっている
所持品:ペイルドラグ ガーネット 水や食料三人分 ダイヤモンド〔TOP〕 ディストチェアー(下に名前が書いてある) 壊れたジャム瓶 ユージーンのザック (??? ???)
基本行動方針:ゲームに乗り、ヒトの心を否定する
第一行動方針:こんちくしょうがあああああ!!!
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間 天井の中
374名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 00:08:02 ID:K5oT/IEk0
投下終了しました
375名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 00:14:19 ID:K5oT/IEk0
すみません、訂正です。
> 【フィリア・フィリス 生存確認】
> 状態:HP100% TP100% 深い悲しみ(多少持ち直し) サレへの怒り 巨大な魔力(マナ)がちょっと気になる
> 所持品:マジックミスト メンタルバングル ホウテイバンリ
> 基本行動方針:仲間を探しながら情報収集に徹する
> 第一行動方針:サレを殺す。マルタのことはその後考える(保護の必要性は感じている)
> 第二行動方針:城を探索したらチャットを探しに南へ。クレメンテについて話をしたい
> 第三行動方針:ハロルドと再会したら時間跳躍について尋ねる
> 第四行動方針:スパーダ・ジューダスが気になる
> 現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間
>
> ※ルークの身体についてと、彼がそう長く生きられないと自覚している事に薄々気付きました。



> 【フィリア・フィリス 生存確認】
> 状態:HP100% TP90% 深い悲しみ(多少持ち直し) サレへの怒り 巨大な魔力(マナ)がちょっと気になる
> 所持品:マジックミスト メンタルバングル ホウテイバンリ
> 基本行動方針:仲間を探しながら情報収集に徹する
> 第一行動方針:サレを殺す。マルタのことはその後考える(保護の必要性は感じている)
> 第二行動方針:城を探索したらチャットを探しに南へ。クレメンテについて話をしたい
> 第三行動方針:ハロルドと再会したら時間跳躍について尋ねる
> 第四行動方針:スパーダ・ジューダスが気になる
> 現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間
>
> ※ルークの身体についてと、彼がそう長く生きられないと自覚している事に薄々気付きました。

に変更します。ごめんなさい
376名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 00:36:46 ID:M2i8MjsP0
乙です
377名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 00:45:47 ID:mMmmgNDn0
投下乙
ルーク達がサレを殺すのが先か、フォルスが暴走するのが先か、
どちらにせよ次の話で血を見ることになりそうだ
378名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 01:38:00 ID:K5oT/IEk0
避難所指摘ありがとうございます

>>370
>
> だがサレは驚愕の声を漏らした。彼らが小さすぎるのだ。
> そこまではいい。
> 自分はこのディストチェアーと書かれた玉座で空を飛び、奇襲を図り、
> そのままフォルスを用いて逃走するつもりだったから。
> エネルギー効率が悪すぎるこれも奇襲として用いるなら上等の道具となる。
> 座ったまま跳躍するなど普通は考えもしないのだから。
> だからこそ王の玉座に見えるよう飾り付け、演出した。十全だった。

これを

だがサレは驚愕の声を漏らした。彼らが小さすぎるのだ。
そこまではいい。
自分はこの玉座で空を飛び、奇襲を図り、そのまま逃走するつもりだったから。
エネルギー効率が悪すぎるように思えるかも知れないが奇襲として用いるなら
王がふんぞり返る玉座すらも上等な道具となる。
座ったまま跳躍するなど普通は考えもしないのだから。
だからこそ自分を飾り付け、演出した。
自分は悲劇の王だと、もはや動く力は持たないと。
それで十全のハズだった。

に変更をお願いします
379名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 01:40:06 ID:K5oT/IEk0
そして

>>373
> 【サレ 生存確認】
> 状態:HP25% TP25% 全身に中裂傷や刺傷(治療済)右腕喪失(肘上から) アリスへの失望 ウッドロウへの恐怖 天井王 フォルス暴走5秒前 天井に顔が埋まっている
> 所持品:ペイルドラグ ガーネット 水や食料三人分 ダイヤモンド〔TOP〕 ディストチェアー(下に名前が書いてある) 壊れたジャム瓶 ユージーンのザック (??? ???)
> 基本行動方針:ゲームに乗り、ヒトの心を否定する
> 第一行動方針:こんちくしょうがあああああ!!!
> 現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間 天井の中



【サレ 生存確認】
状態:HP25% TP25% 全身に中裂傷や刺傷(治療済)右腕喪失(肘上から) アリスへの失望 ウッドロウへの恐怖 天井王 フォルス暴走5秒前 天井に顔が埋まっている
所持品:ペイルドラグ ガーネット 水や食料三人分 ダイヤモンド〔TOP〕 壊れたジャム瓶 ユージーンのザック
基本行動方針:ゲームに乗り、ヒトの心を否定する
第一行動方針:こんちくしょうがあああああ!!!
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間 天井の中

二度と無いように以後、気をつけます。
ふとそこに本来の拡声器用マイクと電波妨害機があった。
マオは電波妨害機のスイッチを切り、放送を始めた。
[定時放送まであと1時間]
「みんながこの放送を聴いているときには、ボクはもうおかしくなっているのかな…。」
[会場に声が響く]
「もしかしたらもう無視されているかもしれないけど…。」
[殺される人の声に混じる少年の声]
「で…でも、この状況をどうかするには、これを使うしかなかったんだよ…。」
[マーダー対主催の本気の本音]
「エルレインでも、リアラでも、他のみんなでも…誰でもいいから…」
[暴走する拡声器の声]
「いままでのことを忘れたいから…みんな、勝手に放送入れて、ごめんね…」
[もし、殺されなかったら…]
「誰か…ボクを…殺して…」
[ある日の未明、この世界は削除される]
「あと…主催への恨み以外で勝手に塔を壊さないでね…。」
[主催は削除直前に全て禁止エリアに…。]
その後、精神が満身創痍に近かったマオは電波妨害機であちこちのサイトのコメントを
一気に放送させた。無論、その中には弾幕も含まれている。主催に向けた弾幕も含まれている。
「コメントの数で勝負?」「こんちくしょうがあああああ!!!」
「ソーディアンマスター、リアラ=デュナミス。英雄を目指す普通の女の子よ」
「早くこのシナリオ終わってくれ」「さよなら。くたばれ、また明日。」
「アプリコットフィズは巣に帰れ」「言っている本人が一番空気を読めていない」
「発狂じゃない」「発狂だ」「おかしい」「おかしくない」
「殺しを急かすのも程々に」「ああ、たった今、ミトス=ユグドラシルの死亡を確認した。」
「全てを…終わらせる」
※弾幕は一部自作、あとはロワから
この時からマオは2重人格になっていた…。
※原作のマオの性格補正と書き手の虹補正だから…ごめんね
【マオ 生存確認】
状態:HP65% TP90% 精神疲労 エルレインの素性を知った エルレインを信頼、けれども依存したくない 精神不安定
   リバウンドへの強い恐怖 激しい迷い 間違った方向への強い自立心 リバウンド進行中
   左顔面全体及び右腕、左足首、胸、腹、背中に火傷(一部は炭化済み) 足に裂傷(フィアフルストームに因る) 脱力感? リアラのことが大嫌い
   アニー以降の放送を聴いていない 聖獣の化身・オルセルグとしての意識 封魔の石により炎に包まれている
   ☆拡声器フラグ発生済 ☆2重人格発生済
所持品:忍刀・東風 ワルターのサック 封魔の石 黒髭ダガー ワルターの首輪の欠片
基本行動方針:お母さんや聖獣達に愛されるため、『マオ』を完全に殺す/主催を殺して脱出、リバウンドを解く
第一行動方針:取り敢えず休む/拡声器に任せる
第二行動方針:マオの辿った道程を戻り、マオを知る者全員と会う。そして殺す。モリスン邸へ向かう。
第三行動方針:マオを知っているヴェイグ、アガーテ、サレ、ジルバと会う。そして殺す。
          フォルスはある程度近づけば探知できるので後回しにして、モリスン邸に集った人物を優先する
第四行動方針:マオを殺してもリバウンドが治まらなかったら、聖獣に代わりヒトを滅ぼす 。
第五行動方針:隠された神殿の扉を開く鍵を入手する? (意味があるのか?)
現在位置:E7・ナーオス基地前
381名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 19:07:47 ID:NJmqtAs70
投下乙です。最近どうした?なんか盛り上がってんなw
とりあえずサレには不覚にも笑わせてもらった。いや、本来は笑う内容のSSではないのだがw頭が天井にってw
[弾幕が飛び交う]
「ここは下界でやっている戦い、バトル・ロワイアルの特別観客席です。
惜しくも今回招待状を出せなかった皆様のために、特別に観客席を用意しました」
「……それに、出ないほうが幸せだったかもだし」
「ウッドロウ様はぁ、元から空気だったからしょーがなもががっ」
「愚かな争いだな・・・」
「あぁ…私ってこんな役ばっかり…」
チャット、ちゃんとしなさい!
会長は今日も快調!
ヒルダはいつ来る?昼だ!
アニーの兄!
プレセアプレスでアッシュを圧縮!
ノーマの馬!
ユージーンの友人!
ウィル居る?
//続く
魔王マオ!
ティアはあっティア(あっちや)!
ジェイド、井戸へ移動!
リフィルがくリフィろい(栗拾い)!
アニスにはニス!
レイシス、死す!
たいした大使!
かなりナナリー!
意外にガイがイガイガ!
ケルヴィンかっぱエビセン!
ヴァレンスの罪はバレんっス!
※上は間違いですぅ
(ネタだね)(ネタね)(ネタだな)(ほうれん草!)
(どう見てもネタだろ)(絶対ヴェイグさんとの誤解ネタがある…)
「あの男が主催者向けというのは理解したけど、
一緒にいた機械人がそのまま出れる可能性は少ないんじゃないの?」
「フハハハハハー!!! 見たか!あの蒼き翼と背から靡く蒼髪!
まさかかつてのカーラーン大戦において絶滅したと言われていた
プロトゾーンの第二進化形態・エアロスをこんなところで
お目にかかることが出来るとは夢にも思わなかった!!
あの、言うなればお節介な弟が生き別れた姉を見守るかのような
優しい瞳、お前達も堪能したことだろう!ああ、見事だ!!
今のこの気持ちを何か例えるならば、
それはあたかも当たらないと思っていた宝クジで1等が
当たったような、いや、ちがうな。
そんなありふれたものではなくて、もっと高尚な喜びである事は
当然だけど、ああ悲しい哉、私の乏しいボキャブラリーでは
この感動を言い表わす事は出来ないのではないかという事実に
今気づいた次第であったりするのは事実なのだが、
私は何を言っているのか自分でもわからなくなってきてしまって、
もう、このあふれ出すパトスを押し止どめる事はなんぴとたりとも
出来ないであろうことはもはや事実と限りなく確信に近かったり
するのだよ、これが。
プロトゾーンの存在を知った時にはよもや、
あの偉大な原始生命体にお目にかかれるとは中々
信じ切れなかったのだが今こうして自分の目で超稀少動物を見るに
つけ、ああ何と自然とは素晴らしいものなのだろうかという
思いを新たにするこの私は考古学者でよかった。
つまり、とってもうれしい。
そういうこと」
「つくづく人間とは愚かな生き物よ」
「最高のショーだと思わんかね?
おお…見ろ!劣悪種どもがゴミのようだ!」
[そして別のマオの声がかかる]
「な〜んか嫌なヒトがいるんですけど、…爆炎よ焼き尽せバールストライク!!」
[そこにつっこむ誰かの声]
「そんな術あったっけ?」
//投下終了
(…あとでまとめ投稿します)
※全5レスです。
【本来の拡声器用マイクと電波妨害機】
分類…アイテム
主催は電波妨害を使って放送していたという証拠、
そして死亡フラグの1つ。
【☆拡声器フラグ発生済 ☆2重人格発生済】
拡声器フラグは上を見れば分かる。
2重人格は「本来のマオの人格の復帰」からです。
マーダー化した時一時的に消えていました。
右がそれです。
ちなみに2,3,4,5は左側限定。
387名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 19:44:28 ID:gD9IERrO0
>>379
そーどますたーゆーりにでてきたね
388名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 19:56:54 ID:QVa8uNoNO
うを!サレ話の人投下乙であります!
天井王ってwwwwww
シリアスなのに笑いが止まらないwwwwwww
389名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 20:47:05 ID:iFiVgZuUO
書き手さんまとめさん乙です
サレって城に因縁あるのかな
390名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 21:16:05 ID:HwRo29x70
投下乙です!
サレはもう踏んだり蹴ったりだww

それにしても、最近投下多くて嬉しい。自分も絵でも描いて支援頑張ってみようかな
391名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 21:31:26 ID:z8b3eoXW0
天井王www
本気で怒ったフィリアこえええ!
後何気に主観によりうんぬんってのは考察進んだなあ
投下乙!
392よーし、予告どうり投下するよー:2010/03/28(日) 05:04:40 ID:YRjuw2IP0
393投下スタート:2010/03/28(日) 05:13:01 ID:YRjuw2IP0
「はぁ…。」マオは退屈な気分になっていた。

ふとそこに本来の拡声器用マイクと電波妨害機があった。
マオは電波妨害機のスイッチを切り、放送を始めた。

EP(えぴそーど)242/拡声器の声〜暴走するマオの本音

[定時放送まであと1時間]
「みんながこの放送を聴いているときには、ボクはもうおかしくなっているのかな…。」
[会場に声が響く]
「もしかしたらもう無視されているかもしれないけど…。」
[殺される人の声に混じる少年の声]
「で…でも、この状況をどうかするには、これを使うしかなかったんだよ…。」
[マーダー対主催の本気の本音]
「エルレインでも、リアラでも、他のみんなでも…誰でもいいから…」
[暴走する拡声器の声]
「いままでのことを忘れたいから…みんな、勝手に放送入れて、ごめんね…」
[もし、殺されなかったら…]
「誰か…ボクを…殺して…」
[ある日の未明、この世界は削除される]
「あと…主催への恨み以外で勝手に塔を壊さないでね…。」
[主催は削除直前に全て禁止エリアに…。]

その後、調子に乗ったマオは電波妨害機であちこちのサイトのコメントを
一気に放送させた。無論、その中には弾幕も含まれている。主催に向けた弾幕も含まれている。

「コメントの数で勝負?」「こんちくしょうがあああああ!!!」
「ソーディアンマスター、リアラ=デュナミス。英雄を目指す普通の女の子よ」
「早くこのシナリオ終わってくれ」「さよなら。くたばれ、また明日。」
「アプリコットフィズは巣に帰れ」「言っている本人が一番空気を読めていない」
「発狂じゃない」「発狂だ」「おかしい」「おかしくない」
「殺しを急かすのも程々に」「ああ、たった今、ミトス=ユグドラシルの死亡を確認した。」
「全てを…終わらせる」
※弾幕は一部自作、あとはロワから
この時からマオは2重人格になっていた…。
※原作のマオの性格補正と書き手の虹補正だから…ごめんね
394拡声器の声〜暴走するマオの本音2:2010/03/28(日) 05:15:07 ID:YRjuw2IP0
[弾幕が飛び交う]
「ここは下界でやっている戦い、バトル・ロワイアルの特別観客席です。
惜しくも今回招待状を出せなかった皆様のために、特別に観客席を用意しました」
「……それに、出ないほうが幸せだったかもだし」
「ウッドロウ様はぁ、元から空気だったからしょーがなもががっ」
「愚かな争いだな・・・」
「あぁ…私ってこんな役ばっかり…」
チャット、ちゃんとしなさい!
会長は今日も快調!
ヒルダはいつ来る?昼だ!
アニーの兄! ノーマの馬!
プレセアプレスでアッシュを圧縮!
たいした大使! かなりナナリー!
ユージーンの友人!
ウィル居る? ジェイド、井戸へ移動!
395拡声器の声〜暴走するマオの本音3:2010/03/28(日) 05:25:27 ID:YRjuw2IP0
魔王マオ!
ティアはあっティア(あっちや)!
リフィルがくリフィろい(栗拾い)!
アニスにはニス!
レイシス、死す!
意外にガイがイガイガ!
ケルヴィンかっぱエビセン!
ヴァレンスの罪はバレんっス!
(ネタだね)(ネタね)(ネタだな)(ほうれん草!)
(どう見てもネタだろ)
(絶対ヴェイグさんとの誤解ネタがある…)
「あの男が主催者向けというのは理解したけど、
一緒にいた機械人がそのまま出れる可能性は少ないんじゃないの?」
「つくづく人間とは愚かな生き物よ」
「最高のショーだと思わんかね?
おお…見ろ!劣悪種どもがゴミのようだ!」
[そして別のマオの声がかかる]
「な〜んか嫌なヒトがいるんですけど、…爆炎よ焼き尽せバールストライク!!」
[そこにつっこむ誰かの声]
「そんな術あったっけ?」

…その後、この弾幕が何かを起こす…はず。

【マオ 生存確認】
状態:HP65% TP90% 精神疲労 エルレインの素性を知った エルレインを信頼、けれども依存したくない 精神不安定
   リバウンドへの強い恐怖 激しい迷い 間違った方向への強い自立心 リバウンド進行中
   左顔面全体及び右腕、左足首、胸、腹、背中に火傷(一部は炭化済み) 足に裂傷(フィアフルストームに因る) 脱力感? リアラのことが大嫌い
   アニー以降の放送を聴いていない 聖獣の化身・オルセルグとしての意識 封魔の石により炎に包まれている
   ☆拡声器フラグ発生済 ☆2重人格発生済
所持品:忍刀・東風 ワルターのサック 封魔の石 黒髭ダガー ワルターの首輪の欠片
基本行動方針:お母さんや聖獣達に愛されるため、『マオ』を完全に殺す/主催を殺して脱出、リバウンドを解く
第一行動方針:取り敢えず休む/拡声器に任せる
第二行動方針:マオの辿った道程を戻り、マオを知る者全員と会う。そして殺す。モリスン邸へ向かう。
第三行動方針:マオを知っているヴェイグ、アガーテ、サレ、ジルバと会う。そして殺す。
          フォルスはある程度近づけば探知できるので後回しにして、モリスン邸に集った人物を優先する
第四行動方針:マオを殺してもリバウンドが治まらなかったら、聖獣に代わりヒトを滅ぼす 。
第五行動方針:隠された神殿の扉を開く鍵を入手する? (意味があるのか?)
現在位置:E7・ナーオス基地前

//投下終了
※弾幕は一部自作、あとはロワから
※原作のマオの性格補正と書き手の虹補正だから…ごめんね
☆【予告をせずに即投下】
元ネタはいおしすの音楽なの〜ん
【本来の拡声器用マイクと電波妨害機】
分類…アイテム
主催は電波妨害を使って放送していたという証拠、
そして死亡フラグの1つ。
【☆拡声器フラグ発生済 ☆2重人格発生済】
拡声器フラグは上を見れば分かる。
2重人格は「本来のマオの人格の復帰」からです。
マーダー化した時一時的に消えていました。
右がそれです。
ちなみに2,3,4,5は左側限定。
396投下終了:2010/03/28(日) 05:29:51 ID:YRjuw2IP0
「そんな術あったっけ?」
リタはつっこみ係です。
いのせんすとヴぇすってどうじしんこう?
397弾幕に関して:2010/03/28(日) 17:45:27 ID:YRjuw2IP0
弾幕は幻覚ですが、マオが操作しているため、ある程度は追尾します。
☆フォルス暴走5秒前
世界崩壊5秒前とかのもじり?
398名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/28(日) 22:00:33 ID:YRjuw2IP0
鮪…サーバー?
399名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/29(月) 18:46:24 ID:X8n++eWZ0
はに?どうかしました?
400名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/29(月) 18:53:06 ID:X8n++eWZ0
nano-n
401名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/29(月) 19:27:17 ID:X8n++eWZ0
a
402名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/01(木) 19:00:13 ID:mUODjFuk0
まだやってたの
403名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/06(火) 01:54:37 ID:DIkRlwo5O
保守
404名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/09(金) 07:42:45 ID:7+wyTJhgO
規制解除きたー

今って男女比22:15か
女ばっかり死んでるイメージがあったけど
比率は初めとあんま変わってないのね
405名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/10(土) 00:37:53 ID:wZLWgI6jO
テイルズシリーズ自体が男女比3:2ぐらいだからな。
至って真っ当な比率だと思う。
406名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/10(土) 09:16:05 ID:5NtKcK/TO
やたら死んでるイメージだったけど、意外と女も生きてるんだな。
407名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/10(土) 12:05:31 ID:NJU4AsMEO
そう考えるとなんかバランスいいな。
参加してない人気キャラが多いからそう見えるのかもね。
408名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/11(日) 09:18:34 ID:QTfeP14tO
出てない人気キャラと言っても、1stと合わせれば大体出てるよな


ヒル……ダ……?
409名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/11(日) 09:57:48 ID:O2tOkCFbO
俺の嫁ディスってんのかメーン
410名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/11(日) 13:58:06 ID:QTfeP14tO
すまんかったw

実際、1st2nd通して出てない味方キャラってヒルダとウィルぐらいなんだよな。
411名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/11(日) 18:15:28 ID:fHaUe/iuO
グリューネ…
412名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/11(日) 20:07:22 ID:QTfeP14tO
1stのミクトランと対局してるのは覚醒グリューネっぽいから省いた
微妙にスレチだな
413名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 08:16:16 ID:eWJOjNxh0
正直リリスが一度も参戦していないのが意外でしょうがない
414名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 19:48:09 ID:/CQECx3R0
まだ二回しかやってないじゃないか
415名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 07:38:48 ID:nBWK7nGlO
確かにw

まあ、AAAロワにはファンタジア勢が、LSロワにはジニとプレはいるけども。
あとバルバトスは結構いるよなw
416名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 08:47:22 ID:/p53J4B4O
リリスはバランスブレイカーだからかもなw公式設定が強過ぎるw

もし参加したら、酢飯の二の舞だったかもね
417名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 12:13:12 ID:SnUhdbjJO
ぶっちゃけ別称使われるとあの展開がただのヘイトと見られかねない
(というか実際にそういう印象持って引いてしまった人を何回か見かけた)から止めてくれ
418名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 12:31:39 ID:/p53J4B4O
酢飯の事か?元々原作スレでもそう呼ばれてるし、最早なかば愛称みたいなもんだろ?机みたいな。
気にする事ないと思うけど…
419名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 15:59:48 ID:hvTm+CeU0
あれってベルセリオスの手引きもあっての結果だからなあ
まあ、当時はシャリアンチの流れにそのまま乗ったって感じもあったことは否定しない
今回の穴子もキャライメージでああなったって気がしなくもないが
主催者サイグロだしリメDの悪霊穴子を連れてきたんだろ
420名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 16:01:23 ID:hvTm+CeU0
ごめん、ずれたレスをしてしまった
そんなん言うならロニはホモだしカイルは馬鹿だしジューダスは仮面だし
ナナリーに至っては   だぞw
421名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 17:59:57 ID:nBWK7nGlO

    ∩_∩
   〃ノノノMハ
   川´_ゝ`)       無益な…
  (⌒`::::  ⌒ヽ
   ヽ:::: ~~⌒γ⌒)
    ヽー―'^ー-'
     〉    |
    /     |
   {      }
   |    ニニつ
   {  ,イ ノ ^J
422名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 18:38:26 ID:CpQ5+KPeO
ウッドロウ…空気王
バルバトス…穴子
カイル…馬鹿
リアラ…聖女
ロニ…ホモ
ジューダス…壁
ナナリー…
ハロルド…天才
エルレイン…L雨
ロイド…攻略王
リフィル…先生
クラトス…パパン
ヴェイグ…米具
マオ…魔王
ユージーン…友人
セネル…セネセネ
シャーリィ…酢飯
マルタ…丸太
デクス…机

他に何かあったっけ
423名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 18:52:01 ID:aN3BLVbmO
D2は全員かよw
424名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 00:20:27 ID:dq07suQz0
ジェイド…大佐
カイウス…クマー
微妙かな
425名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 02:38:32 ID:dq07suQz0
そういや会場に蔓延しているエネルギーは記憶が位相に干渉するって突き止めたのって
リフィルとミトスだけだっけ? それを証明したのはリフィルだけなんだよな
他に判明しているのはマナを感じられない種族でもマナを感じられるとか
エネルギーの循環路だっけ?
426名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 09:14:48 ID:dq07suQz0
>>425
リフィルじゃなくてフィリアだった
427名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 09:48:35 ID:VpcVkWCaO
>>422
前にも書いてあったが、ジューダスは仮面な。

あとこれも追加してやってくれ。
つ【サレ…天井王】

魔王という愛称がつけられるのは、マオの他にもルカがいるな。
ルカに限って言えば、隠れ攻略王でもあるし。

しかしマオが魔王とか、これなんてディスガイア?
428名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/17(土) 11:28:41 ID:04CRIR4RO
あれ?何故かジューダスが壁になってる。仮面と書いた筈だったんだが。
429名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 16:01:48 ID:n0J8CRRLO
>>422
俺はセネルを仙人って呼んでる。
430名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 19:08:18 ID:OCnh6itS0
投下します
431素敵なタイミング 1:2010/04/18(日) 19:09:28 ID:OCnh6itS0
英雄になろうと決めた少女を迎えることとなったのは三つの墓だった。
とはいっても一つは少し離れたところにあったが。
彼女がロイド達と会うために森中を駆けずり回りロイドを捜した。
走りながらディムロスに聴き逃した放送を教えてもらった。
ロニのくだりに入って彼女は瞳を伏せたが、
自分が立ち直れたのだから彼も大丈夫だろうと結論付けた。信じることを決めた。
しかし彼女が見つけたのは焼けた草木のみであり、
ようやく見つけた人の痕跡が皮肉なことに目の前の十字架である。

枝と枝を繋ぎ簡素な十字架にしたそれはここで誰かが死んだと言うことを示す。
だがそれ以上に証明していることがあった。
それはロイド達が、恐らくではあるが死者を埋葬し、
彼らの死を悼む時間があったということだ。
つまりあの混乱を無事切り抜けたということなのだろう。
そこだけは喜んでいい。
ここに来る途中、走りながらあの時の一部始終を聞いた彼女は
墓の主がノーマ、ディスト、ルビアの三人だということは容易に想像出来た。
何をするつもりだとディムロスは不思議そうに問いかける。
リアラが彼女の墓を見つけたら絶対にやろうとしていたこと。
償いにもならない行為だがやると決めた以上は決意を翻してはならない。
今から墓荒らしをするわ。
と、自嘲気味に相棒へかける言葉でディムロスも何が起きるのかを承知したようだ。
ディムロスをスコップに見立てて穴を掘る。
晶術を使えば容易く作業が終わったのだろうがTPの節約のためにひたすら掘り進む。
浅い場所に埋められていたおかげで彼女の死体はすぐに見つかった。
とはいってもディムロスの主張により、
念のために三人全員の墓を暴くことになってしまったが。
432素敵なタイミング 2:2010/04/18(日) 19:10:36 ID:OCnh6itS0
ルビアの顔を両手で挟み、一文字に切り裂かれた両目を真っすぐに見つめる。
誰がこの罪を許すだろう。いや、許されるべきではない。
彼女の心配を最悪の形で斬り裂いた自分をどう許すというのか。
心配そうにマスターの名を呼ぶディムロスの声には返事を返さない。
ルビアの頭をそっと地面に置いてから、
リアラはサックから氷漬けにされた左手を取り出す。
そしてソレを接合するかのように切断面に合わせる。
聖女の道は捨てた。だがそれはあくまで心の持ちようの話。
その力でできることがあるのなら行使することにためらいはない。
ソーディアンのコアクリスタルから強大な晶力を引き出す。
彼女の力がエルレインに大きく劣っていたのは
何もリアラが少数の人々の救いを見つけるために産みだされたからというだけではない。
彼女の無力感が、疎外感が迷いとなり低いレベルの奇跡しか使えなかったのだ。
だが皮肉にも無力な神から英雄を目指す人の道を選んだ彼女に迷いはなく、
神の奇跡は本来のものとなって顕現する。
その力は寸分のブレもなく氷漬けにされた死者の腕に働きかける。
光りに包まれたのは僅かな時間。
目が慣れてきたディムロスは驚愕の声を漏らす。
痛々しく切断されていた腕が元通りになっているのだ。
それを確認したリアラは瞳を閉じ、別れを悼む。
その間にディムロスは首輪を回収すべきか否かについて悩んでいた。
脱出のためには首輪の解析は必須。
しかしマスターがそれを許すか否かというと……相手が相手だけに厳しいだろう。
思案しながら首輪を見つめていると、
何か妙なものがディムロスのコアクリスタルに反応した。

(何だ? あの首輪は……どこかおかしい)

だがその疑念はハッキリと形になることはなく、
首筋を無形のスライムが這いずり回るような不快感を与える。
ディムロスの思惑を他所にリアラは死体達への黙祷を終え、
埋めなおす準備を始めようとしている。
433名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 19:12:18 ID:OCnh6itS0

考えろ。考えろ。この違和感は何だ?!

ノーマの身体をほんの少し整える。
グシャグシャになった顎はワンピースの裾を切り裂き、
スカーフの様に巻くことで隠す。

首輪。装飾? 違う。アトワイトにプレゼントを……馬鹿か俺は!

穴に向かう際に、半開きだったサックに足をぶつけ、中が少し飛び出す。

あれはディストのメモ?

ある超天才奇天烈変人科学者が言った。
大切なのは100%のひらめきと100%の努力だと。
彼の中にあるピースがカチリと組み合った。

リアラ! と呼びかける声に彼女は振り返る。
丁度死体を運ぶ作業に取りかかろうとしていたところだった。

『ロイド達は何処に行ったのだと思う?』

怪訝そうな顔で首を傾げ分からないわ。だからこれから捜さないと。
と言うリアラ。
彼女の手の中にある剣は言葉を続ける。

『位置から察するに塔も街もある西に向かった……と考えるのが定石だろうが』

ここで一旦、言葉を区切り、じっくりと吟味しながら続ける。

『ディストがまとめたメモがあっただろう?
  そこに手がかりがあるかもしれん。
  その中にとっておきのモノの在処が書かれているハズだ』

自信満々に言うディムロスにリアラはとっておき? と問いかける。

434素敵なタイミング 4:2010/04/18(日) 19:14:14 ID:OCnh6itS0

『墓の数、そして状況証拠から見てもシンクは生きているのだろう。
  私の晶術の様に骨も残さず灰になったのなら別だが、ロイドとクロエは術師ではない。
  アトワイトも水を司るソーディアン。雷を司る老ならまだしも彼女では無理だ』

探索の途中で見つけた焼け跡。
あれをやったのは術師、それもかなりのレベルの者だろう。
ロイド達とぶつかりあった可能性もなくはないが、
見たところ術師にはもう一人仲間がいた。つまりは二対一、もしくは二対二。
だが後者なら乱戦必死となりもっと場が荒れていただろうことから却下。
マーダー達(最悪の場合としてだ)が同じマーダーであるシンクと
潰し合ったと考えるのが妥当だが奴の素早さから鑑みるにすぐさま
撤退したと言うことだろう。
つまり、ロイドとクロエが逃げた後に
シンクは術師、そしてもう一人と戦ったということ。

それがロイドの行くところと何の関係が? とリアラは言う

『重要なのはシンクが向かった場所だ。
 ヤツが行った方向と負傷したロイド達が行く方向が重なるとは思えない。
 二対一、しかもロイドはかなりの猛者だ。十中八九撤退を選ぶだろう』

それがどうかしたの? ともどかしそうに訊くリアラに
ディムロスはこう答える。

『奴は発信機を秘密裏に作っていた。
 シンクに挑みかかったとき付けておいた可能性がある。
 レーダーの在処を知ることは最重要事項と言っていいだろう。
 シンクとは別の方向を行くだけでロイドと会う可能性が飛躍的に上がるからな』
435素敵なタイミング 5:2010/04/18(日) 19:15:16 ID:OCnh6itS0

その言葉に驚いたリアラは飛びつくようにディストのメモをディムロスと読み漁る。
ディムロスの言った嘘は置いておくにしても、
ディストは元の世界でシンクと知人だと言っていた。
その言葉が確かならシンクの狙いも書かれているのかもしれない。
可能性は決して高くはないがそれでもいい。
本当の狙いは別にあるのだから。

………………

メモの内容はハズレとは言えない、大当たりと言って良いだろう。
しかし、読む者が読んだのならばそれこそゲームの破壊に繋がるのであろうそれは
技術者でも軍師でもない二人には難解すぎた。
何せ一番分かりやすかったのが、ルビアの筆談の写しだったのだ。
その論文は専門用語で埋め尽くされており、容易に読み解けるものではないのだ。
稀代の天才の考えを知るには知恵者の助けが不可欠ということなのだろう。
幸いにもリアラの仲間には心当たりが三人いる。

だが、リアラとディムロスが長い時間をかけて考察メモから
ほんの一部ではあるが拾い上げた情報に
件の下手人の情報が含まれていなかったわけではない。
曰く、シンクはレプリカというものらしい。
そのレプリカが何なのかは説明されていなかった。
注目すべきはその先の記述。

回復術が制限されているのならば第七音素が制限、
または絶対数が減らされていると考えてよい。
だが、シンクは平然と行動していた。第七音素が命と言っても差し支えない存在なのに。
彼の音素が乱れているようにも見えない。
しかしあの発言はサイグローグのブラフではないことも確か。
その証拠にリアラの術は極小の効果しかもたらさなかった。
ならばどういうことか? 
436素敵なタイミング 6:2010/04/18(日) 19:16:41 ID:OCnh6itS0
この世界に流れるエネルギーは本当にフォニムなのか?
仮にそうではないとしたらこの世界のエネルギーは異世界の戦士全てに適応されるよう、
何にでも“なりきる”ことができるのではないのだろうか。
つまり、この世界のエネルギーを解明するにことができたなら
少なくとも回復術の制限はなくなり死者数を飛躍的に減らすことが出来るだろう。
そしてサイグローグとの戦いにも必ず有利に働くはずだ。

第七音素が何かは分からないがつまり回復術の制限には裏があると見てよいのだろう。
まあ、シンクやロイド達の行方の手がかりには
全くと言っていいほどならなかったし
当然、発信機の在処も記述されていなかったのだが。
拾えた情報は氷山の一角といっていいレベルでも
有力な情報を手にいれることは出来た。
盗聴されているのならメッタなことを口にすることは出来ない。
しかし旅の間ずっと自分の消滅という運命を隠しながら旅をしてきたリアラだ。
精神面での年長者達には負けるが演技には自信がある。
ディストのメモにあった思考の細工と干渉。
エルレインによって思い通りに作られた世界の人々を思い出す。
レンズを額につけた人々。
ジューダスやハロルドはあのレンズが
何らかの洗脳効果を持つと見て間違いないと言っていた。
この世界、そして自分たちもある種似た作用の元にいるのか。
それは同じく異世界の文字が読めるソーディアンも例外ではない。
もしシャルティエがこの世界にいるのなら
ジューダスと会わせることで
ソーディアンに施された細工について解るかもしれない。
だがそれはいいとしても神の化身である
自分にすら効果を及ぼすということがあるのだろうか。
エルレインの夢も、
デリスエンブレムを見つける際に仲間たちが直面した術も効かなかった自分が?
それが可能ならば神以上の力を持っていることになる。
そんな存在がこのゲームを主催しているのか。
437素敵なタイミング 7:2010/04/18(日) 19:17:49 ID:OCnh6itS0

『メモにはレーダーについて書かれていないようだな。
 一応ディスト、ひょっとしたら密かにルビアに託していた可能性もあるだろう。
 二人の身体も調べた方がいい』

それを聞いた彼女はディストの近くへと寄る。
服の中、ありとあらゆる所を調べたがめぼしい物は見当たらない。
首が切り落とされていたのは首輪を回収するためだろう。
首輪にレーダーが隠されていたら厄介だが
まさか発信機にレーダーを隠すわけもないだろうとリアラは思った。
特に収穫もなかったのでディストの死体を墓穴に戻す。
ルビアの死体も調べた。
奇跡によって表面上(あくまで外面だけだが)は綺麗になっているソレを調べる。
最後に触れるのは首輪。一応だがやらないよりはマシだと思った。
かなり精巧に作られた銀細工の文様が施されている。
それを見てシャルティエの柄にあるジュルベ模様を思い出す。
ジューダスが珍しく自慢げに見せたのも納得するほどの美しさだった。
ハロルドが設計したとは思えないほどに。
首輪を指でなぞるとディストのメモに書かれたものと
同じ文字が見つかるが意味はわからなかった。
異世界の文字なのだろうから当然だ。


         え?


     “異世界の文字?”


438素敵なタイミング 8:2010/04/18(日) 19:19:09 ID:OCnh6itS0
頭に電流が流れる。体中を最大の解を見つけた瞬間のような鳥肌がはしるのを感じる。
異世界の文字だ。そう、異世界の文字。読めないのは当然。
ならば、何故、どうして自分はディストやルビア、ロイド達の文字を読むことが出来た?
いや、それはいいとして何故首輪に書かれている文字が読めない。
同じ文体。しかもメモと照らし合わせたら装着者の名前が記されているだけと解るのに?
どちらも異世界の文字には違いないのだ。脳が操作されているのではないのか?
考えることは決して得意ではない。
ウジウジ考えることは得意だが、彼女はあくまで感覚で力を捉えるタイプだ。
自分の中に、脳の中に入り込む。狂いそうになった時を思い出す。
そういえば……あの時、何かが自分に語りかけてきたような記憶がある。
何を喋っていたのかは思い出せない。
だが必死に思い出そうと思慮の深くのそれが持つ形を捉えようとする。

……ぬいぐるみ?

何だそれは? 何時から自分は少女趣味になったというのだ。
すぐさまそれを却下しようとした。
だが……そのシルエットが自分の頭から離れない。
そうだ。自分はかつてソレを確かにどこかで見た。
記憶が溢れる、それに脳が耐えられず無意識に体が震える。
頭に浮かぶありったけの考えを地面に書き連ねる。
論理を通さずただ書き殴る。
だがそこに書かれてある記述にディムロスは驚愕する。
最後にリアラはある程度まとまった結論を出す。

賛成なら一度点滅。反対なら二度点滅

私たちは脳に細工を施されているのかもしれない。

けれども一つ解ったことがあるわ。

異世界の文字を翻訳しているのは脳ではなくきっと――――――よ。


439素敵なタイミング 9:2010/04/18(日) 19:21:12 ID:OCnh6itS0
決して信じたくはないことだがその解には絶対の自信があった。
超常から、レンズから産まれた自分だからこそ理解出来たのだろう。
英雄たちとの旅が彼女に真実を受け入れる勇気をくれたのだろう。
エネルギーから産まれた少女がソレの存在に気づくのは必定。
異物は聖女の存在と相容れないからだ。
だが人としての道を選ばなければそれを不快なものと一蹴し、
考える事を放棄しただろう。
あらゆる時間、次元を生きる人の願いが産んだ神の化身でありながら、
それを無力とし、人の強さに憧れ目指した彼女だからこそ辿りつけた数ある解の内の一つ。

彼女の解に対する相棒の答えは……一度の点滅。

ディムロスにとって正直信じたくない思いが強い。
だがこれが一番納得出来る答えなのも事実。
もっとも、これがあくまで数ある真実の内の一つであることは二人ともわかっていたが。

『それでどうする? 首輪の回収をするか? 
恐らくこれがサイグローグの用意した脱出への鍵となり得るものなのだろう。
もっとも、罠の可能性は十二分にあるがな』

ディムロスの問いにしばし考える。
ディストのメモにあったのだ。
もし自分だろうが誰であろうが志半ばで死ぬようなことがあったら
遠慮せず首輪を回収すべきだと。
まるで遺言のようだとリアラは思う。
死者の意志を継ぐのは大切だ。
けれども……やはり心のどこかで抵抗してしまう。

死さえ、それが信念の末のものであるのなら幸福になり得る
440名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 19:39:31 ID:KlfQAoLnO
支援
441素敵なタイミング 10:2010/04/18(日) 20:15:00 ID:OCnh6itS0
この言葉を言ったのは誰だったか。
物語に出てくる英雄の言葉だったような気がする。
この世界の影響から恐らく意図的に外されたであろうモノ。
首輪から導き出される脱出法は所詮主催者の掌の上なのだろう。
だが、今は少しでも手がかりが欲しい状況。
餌であろうとそれが無用となる訳ではない。
ならば悪辣、残酷と罵られようと自分が殺した人の死を利用させてもらおう。
貴方の、貴方達の意志は英雄志願の自分が引き継がせてもらおう。
覚悟を決めたリアラはディムロスを振りかぶり、
花のようだった少女の首を切り落とす。






「な、何で追いつけないんだよ!?」

焦ったような声をあげるのはルカ=ミルダ。
捕り逃してしまったロイドを追いかけ、殺そうとしている真っ最中だ。
相手が自分と同じく神を前世とするような
何らかの超常と関係があるのはわかっていた。
だが自分は魔王アスラだぞ。
天使など所詮は神の御使い、
下界に降りて女を孕ませるか、神の使いっパシリが精々じゃないか。
死神も魔槍も屠った自分を、魔王を、下等な種族が翻弄しようというのか。

「ルカ……いえ、アスラ。提案があります」

そう言うエルレインに返ってくるのは鬱陶しそうな目。
それを気にすることなくエルレインは喋る。
442素敵なタイミング 11:2010/04/18(日) 20:15:41 ID:OCnh6itS0
「相手の速度に追いつくのは無理ならば、こちらも空を飛びましょう」

呆気にとられたような顔のルカが聖女に質問する。

「そんなことが……出来るの?」

迷いなく頷くエルレインだがルカはさらに困惑を深める。
君は一体……? そんな言葉に返されるのは。

「神の代行者。人々を幸福に導くための存在」

彼女がいた世界では何度も繰り返された定型文句。
それに納得したわけではないようだが、
このままでは永遠に鬼ごっこを続けるよりはとエルレインに任せることを決める。
エルレインの腰にしがみつくルカの姿は
お化けに怯えて母に泣きつく子供のそれと実に似ていたが、
そのことを気にする者は誰もいない。
エルレインは大きく息を吸い込み精神を集中させる。
奇跡が制限されようと飛行能力を無くすまでは至らなかったらしい。
エルレインとルカは光りに包まれ、
そのまま先程とは比べものにならない速度で空を翔ける。
腰にしがみついたルカは眼下の景色を見るよりも、
エルレインの強大さに意識が集中していた。
理由は分からないが彼女は自分に味方している。
だが、全てを殺し、過去を取り戻すと誓った以上は
異世界の神を殺すことは必然。
怖くないと思えば嘘になる。だが自分は魔王アスラだ。
初めて戦場に送られた時だって、塵のように敵を殺したじゃないか。
443素敵なタイミング 12:2010/04/18(日) 20:16:26 ID:OCnh6itS0
初めて? 
ダメだろ〇〇、君はアスラ。
何千年も戦場を支配したのに初めても最期もないだろ?
頭の中で声が響く。そうだ、そうだった。
うん、大丈夫。自分は殺れる。
殺ってまた皆と会うんだ。世界を救う旅をまた始めるんだ。
水で抉れた渓谷、
白き霧は白雲に浮かぶ城へ乗り込む時の気持ちを思い出させた。
その一方でエルレインは遂にロイド一行を視認する。
忌ま忌ましいが神々しいと称すしかない羽を背に負い、
先程は見なかった二人を抱え移動している。恐らくは仲間だろう。
虐殺をここでまた起こすための、
マオやカイウス、チェルシー達の幸せを壊すための禍々しき同志といったところか。
これ以上速度を上げるのは危険かもしれない。
ソーディアンどころかレンズも無い彼女に自力での飛行は荷が勝ちすぎた。
だが、彼女の信念は進むことを止めない。
さらに自らの力を引き出そうと意識を集中させ――

「エルレイン!! ルカ!!」

予想だにしなかった声は後方から、
当然彼女たちから見れば遥か下からのものだ。
そこには少女が立っていた。
彼女はたった一人でエルレイン達を呼び止めていた。

「リアラ……か」

唐突に声音を変えたエルレインにルカは戦慄する。
リアラが死人の名を呼んだことから来る不快感はあったが
そんなものは目の前の現実に圧倒され萎んでしまった。
今までとは比べものにならないほどの殺気。
444素敵なタイミング 13:2010/04/18(日) 20:17:08 ID:OCnh6itS0
ロイドにぶつけたアレは余興に過ぎなかったというのか。
リアラを見つめながらルカは思う。
彼女は本当に聖女が繰り返し言っていた怨敵カイル=デュナミスの仲間か?
この世界で初めに遭遇した少女はこんな化物と対峙していたのか。
ゆっくりと下降するエルレインを待たずルカは聖女から飛び降りる。
谷を挟んで向き合うのは地面に着く程に長いローブを身に纏った女性と
裾の短くなったベビードールを着て、大剣を右手に持つうら若き乙女。

「マオに会ったわ」

感情を篭めずに口火を切るのはリアラ。

「あなたを、この世界で自分を知る全員を殺すと言っていた」

その言葉を聞きエルレインは嘆息する。
やはり彼はこの世界の毒に当てられてしまったか。
思い出すのは辛さを必死に押し殺し気丈に振舞う幼子の姿。
同年代の友人と仲睦まじく遊ぶ様子。
そして……自分の胸で泣き、頼るように抱きしめる弱々しく震えたヒト。
そうだ、所詮は弱き者。剥き出しの悪意にはあんなにも無力で脆い。
だからこそ守るべきだった。


守ってやりたかった。


ふと浮かんだ思考をエルレインは即座に脳から削除する。
今まで自分は何を考えていたのだ。
神である自分が郷愁を抱き、個人のことに心を割くなど、
歴史すら支配する神が過去に囚われるなど、
絶対にあってはならない。それは弱き人間の感情だ。
445素敵なタイミング 14:2010/04/18(日) 20:17:54 ID:OCnh6itS0
聖女は気を取り直してリアラを睨みつける。
ソーディアンを持つのならば本来は驚異となるだろう。
だがエルレインは少女のことをよく知っていた。
迷い、臆病で、守ってくれる英雄がいなければ壊れてしまいそうな存在。
出来損ないと言うべきモノ。
まったく、神は何故このような無力な存在を創ったのだろう。
しかし、そんな無能が相手なら殺して奪うのも容易。
カイル=デュナミスの仲間を殺せる。
その事実に幸福の聖女は無意識に凄惨な笑みを浮かべる。
空を飛んだ疲れは残っているが
リアラの元まで飛んでいき仕留めるだけの余力は十分過ぎるほどある。
ルカにはそのままでいるよう目配せをし、武器を構える。

だが対岸にリアラはいなかった。

濁流をつんざく様なルカの悲鳴がこだまし、
彼の気配が遙か彼方へと吹き飛ぶのを感じる。
何だ、何が起きた?
予想外の出来事にエルレインは混乱する。
何故ルカがいた場所にリアラがいる。
幸いにも剣先の位置が持ち主の後ろを向いていたことから、
柄でルカのみぞを強打したことがわかり、彼の命が恐らく無事であることを確認する。
だが安心も束の間。リアラはすぐさま空中へと飛び、詠唱を開始する。
空を飛ぶ? 
ソーディアンのレンズパワーと聖女の力を合わせれば
さした負担もなくそれは出来るだろう。
つまりはそういうことか。
エルレインは自らの失態に歯噛みする。
奇跡の行使を感じたリアラは彼女の後を追ってきた。
本来追いつけないだろうそれはソーディアンの力をもってして
見事追いついてみせたというわけだ。
446素敵なタイミング 15:2010/04/18(日) 20:18:36 ID:OCnh6itS0
まあいい、この失態は十分埋め合わせが出来る。
今すぐ愚かな少女を殺せば解決するのだから。
リアラが繰り出すのは幾つもの火球。
だがそれは同じく浮上したエルレインがいた地面を焦がすに終わった。
エルレインの狙いは接近戦。相手の懐に入り心の臓を貫く。
そのために必要なのは大技ではなく小技。
聖女の周りを光弾が飛び交い、狙いをソーディアンマスターへと定める。
だがそれを防ぐのは光弾を丸ごと焼き尽くす炎の嵐。
螺旋となった炎蛇は空を赤く染め上げエルレインへと襲いかかる。
舌打ちしながら已むを得ず氷塊を作り出すことで炎を止める。
戦いが始まってからまだ数分も経っていないが
エルレインは目の前の戦士の実力に瞠目する。
まさかこれ程とは思いもしなかった。

「一体、お前に何があった?」

「出会い、そして夢の始まり」

「何を言っている? 聖女の歩むべき道を見つけたと言うことか?」

その言葉にリアラは首を振る。

「私はもう聖女じゃない。カイルが……愛する人がフォルトゥナを砕いた瞬間、
 聖女に縛られた私は死んだわ。
 今の私はリアラ=デュナミス。人として生き、英雄を目指す普通の女の子」

予想外の言葉。
それは神の代理者であることに誇りを持っているエルレインに許せるはずもなく。
怒りの言葉とともに七色の剣雨を降らせる。

「この愚か者め。
 限りなき力を授かっておきながら神の道を拒み、人の道を歩むと言うのか!
 弱く、愚かな人々になろうというのか!?」
447素敵なタイミング 16:2010/04/18(日) 20:19:18 ID:OCnh6itS0
その言葉を耳に入れながら空中を滑るように移動し、光の剣を背後に置き去りにする。
彼女の怒りを避けながら、
ディムロスのコアクリスタルから先程の倍以上はある
火の雨全てをエルレインに狙い放つ。

「どうしてあなたは人の強さを信じないの!?
  あなたは聖女としての自分に限界を感じないというの!?
  マオがあんなに苦しんでいるのを見ているんでしょう?
  救えなかったことを悔いていないというの!?」

マオのことを引き合いに出され聖女の頬が歪む。
自分も努力はした。
炎の中に足を踏み入れてでも、彼の不安を消そうと、
屈託のない笑みを取り戻してやろうと思った。
また自分に笑いかけて欲しかっ――

「黙れ黙れ黙れ黙れ! まだやりなおせる!
  貴様ら悪を断罪し、また彼に会えばあの家で、皆で笑いあうことが出来る!
  あの幸福を喪わせずに、喪わずに済む!」

自分は何を言っているというのだろうか。
あれはただの戯れ事だろう。
自分は見たではないか。
和やかな空気が放送に壊される光景を。
もはや過ぎたことだ。そう、幻想だ。
杖を一直線にリアラへ突き出し、渾身の力を持って空を弾丸のように突き進む。
その速さは音に匹敵し夢をほざく聖女との距離を無にする。
10m、9m、8m、7,6,5
死ねリアラ。神を捨てた愚か者め。
貴様の目指す夢も貴様が語る幻想も全てこの私が壊――
448素敵なタイミング 17:2010/04/18(日) 20:20:10 ID:OCnh6itS0
「させないわ。これは夢でも幻想でもない。
理想を具現するためならヒトはどんなことでも現実にすることが出来る」

振りかぶる剣、先程自分に道を示してくれた英雄の首を切り落とした時と同じ構え。
だが、違うのは。

「ファイアーストーム」

ルカへ行った奇襲と同じやり方で炎の嵐を噴出力に使い、
エルレインに瞬速の斬撃を放たんとしているその一点。
しばしの考察も兼ねた休息の中、
エルレインの力を感じてから動くという後手の極みでも彼女に追いつけたのは
これが理由だ。
弾丸と嵐を纏う斬撃がぶつかり合う、負けたのは聖女。
傷はなく、圧力に屈しただけだが驚愕と挫折をその顔に貼りつかせ川に落ちて行く。
だがその瞬間を好機としている。伏していた魔王が空高く舞い上がり、
背後から心臓を穿とうとする。
彼の得意戦法は対空。神を差し置き空に舞う不逞の輩達を許すことは決してない。

『来たぞリアラ!』

再開した時から殺気をぶつけてきた彼。
彼の心情に何が起こったのかを知ることは出来ないが、
仲間の死が彼をこうさせてしまったのだろう。
さっきまでの自分と同じように、涙を流しながらその道を選んだのだろう。
なら、戻ることは出来る。
自分のような、ずっと愚かなヒロインという
一人芝居を続けてきた女にも出来たのだから。
449素敵なタイミング 18:2010/04/18(日) 20:20:53 ID:OCnh6itS0
相棒の言葉にリアラは予め指に嵌めていたフリーズリングから氷粒を発射させる。
眼前に突然現れた予期せぬ物体に一瞬身を強ばらせる。
そう、戦場での一瞬は致命的だ。
アスラどころかルカですらそれが解っていたのに。
リアラは自らの下に重力場を発生させ、
エルレインと同じところに落下する。
空を飛ばないルカと変わらぬスピードで落ちるはずだったが
自らにかけた術で落下速度を遙かに上回る。
ここに来るまでに自分の素性も手持ちの札も全て話しておいた。
だからこそここまで上手くことが進んだ。
リアラの狙いは低所からの射撃。
支給品、プッシュベイビーの置物をさらに斬り裂いた服の裾で旋風に括りつける。
近接戦闘で最大の弱点は決め手のなさ。
ソーディアンの晶力で自らの身体能力を底上げすることも考えたが、
慣れないことをいきなりやるのはリスクが高過ぎる。
そこで使うカードは毒。
正規の方法でやったわけではないから
効果にムラはあるだろうが一度なら効くだろう。
重りをつけ、毒に浸した剣が一点集中の爆発を速さに変え、
ルカへと発射される。
その軛は見事ルカの腕に突き刺さり、苦痛に悶えながら彼も落下して行く。
ルカがリアラと行動を共にしていたとき、
ポイズンパウダーの毒は適切な治療を施せば
決して大事には至らないと言っていたから大丈夫だろう。
これで一人無力化した。
勝てる。勝てるぞ、リアラ=デュナミス。
そう思えたのは刹那をも上回る短き時だけ。

「調子にのるな」
450素敵なタイミング 19:2010/04/18(日) 20:21:38 ID:OCnh6itS0
怒りを含んだ声は谷の底、水面に立っている聖女から来るもの。
強大な力が水上に集まる。それは宇宙となり魔剣士リアラを包みこむ。
戦士の全感覚、全神経が危険信号を鳴らす。

『リアラ!!』

相棒の声が響く、宇宙から星が、銀河が迫ってくる。
重力場を緊急解除し、空中に逃げようとするがもはや間に合う距離ではない。
そもそも左右を岸壁に挟まれているのだから逃げ場はない。
ならば手段は一つ。

「ディムロス、レンズパワーを全開にして!!!!」

返事はないが異論は当然ない。
聖女に遥かに劣る自分の手には天地戦争を二度も勝ち抜いた伝説がいる。
その事実が夢を追う彼女に力をくれる。
晶力を全開放し、ディムロスが持つ最高の晶術を空間全てにぶつける。
乙女の口から獣の如き咆哮が飛び出す。
急激な精神の負担が彼女の目から、鼻から血を流させる。
永遠に続くかと思われた力と力のぶつかり合い。
崩壊していく渓谷。落ちた岩石で水面が埋まる・
だが、いつしか宇宙は消え、残るのは疲弊しきった少女と聖女。
全ての力を出し切った聖女がどうなったかを確認することは出来ない。
聖女の置かれた状況はかなり危険だろう。
そしてそれはリアラもまた同じ。だがさらに危険な状態と言ってもいい。
墓を暴いたときに多少休息したとはいえそれで得たのは雀の涙ほどの回復。
伝説のソーディアンの力を十二分に借りたとはいえ、
もはや術を行使することは不可能と言ってもいい。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 20:25:25 ID:qoWhWIs/O
支援
452素敵なタイミング 20:2010/04/18(日) 21:08:02 ID:OCnh6itS0
毒に喘ぎながらルカは崩壊により更に対岸との距離が拡がった谷を覗きこむ。
何だよアレ。あんなのがこの会場にはゴロゴロいるっていうの?
まるで、現世に今なお生きていたガードルと同じかそれ以上の強さじゃないか。
あんな奴等にイリアやリカルドは殺されたのか?
自分はアスラだ。
その名を聞けばどの戦場でもどんな屈強な兵士でも震え上がった。
なのに、このザマは何だ。
毒を喰わされ、落ちるように体力が低下していく。
身体がダルイ。息を吸うのが苦しい。
非力と思っていた少女はとんだメスゴリラだった。
きっとシンクも似たようなものなのだろう。
自分が傷つけた金髪の彼も。
誰も彼もが超人で、
いじられっ子の自分が敵うような相手じゃない。ってアレ? 
違うだろルカ、ルカ=ミルダ。お前はもう死んだんだろ。
そうだ、自分は全てを元に戻すために戦う戦士。
平和を取り戻すために戦う勇者。
それを邪魔するのなら、覚悟しろメスゴリラ。 
運命に選ばれし伝説のヒーロー、神が貴様を殺してやる。
辛うじて対岸に降り立ったリアラが見える。
剣を杖に辛うじて立っている状態だ。
今なら殺れる。素手でもやれる。
力を更に求める少年は堕ちるような速さで力を漲らせる。
彼の内側に随分前からこだましていた
真なる魔王の産声が銀髪の少年に力を与える。
453素敵なタイミング 21:2010/04/18(日) 21:08:44 ID:OCnh6itS0
まだだ。まだ倒れるわけにはいかない。
きっとこの先にロイドがいるのだろう。
もう少し、もう少しだけ時間を稼がなければ。
信じられないことに谷を飛び越えてきたルカが杖を用い、攻撃してくる。
その衝撃に為す術も無く吹き飛ばされる。

「ハハッ! さっきとは逆だね! どうしたんだいメスゴリラ?
  もう立つのもやっとみたいじゃないか」

普段の彼なら口が裂けても女性をゴリラとは呼ばなかっただろう。
だが自棄になった彼はそれを気にすることはない。

「まだ……倒れるわけにはいかない。
  わたしは、ロイド達に会う! 拒絶されてもいい!
  謝って、泣いて、自分に中にあるありったけの思いを伝える!! 
  そしてカイル達と一緒に夢を叶える!!」

勝ち目はもはやない。ルカの背後には何時の間にかエルレインが立っている。
術のぶつかり合いで崩壊した谷から落ちてきた岩石によって出来た傷。
そしてリアラとのぶつかり合いの衝撃で体力を消耗していたが
武器を振るうのには問題ないだろう。

「夢……ね。じゃあ、それすら奪われた人間はどうすればいい?
  何に救いを求めたらいい? 何を糧に生きたらいい? 
  君の言っていることは恵まれた者だけが持てる夢物語なんだよ!!」

箍が外れたように声を荒げ話すルカにリアラはゆっくりと立ち上がり
毅然とした表情で言葉を返す。

「夢が、思い出が奪われるのはたしかに辛いわ。でも、それだけを見つめないで。
それがあなたを縛る鎖になってはダメ。
何時だって、それがどんなに細く険しくても、貴方の前に道はあるの」
454素敵なタイミング 22:2010/04/18(日) 21:09:40 ID:OCnh6itS0
リアラの言葉にルカは何も答えない。
ただ死刑の宣告をするかのようにゆっくりと杖を頭上に掲げる。
彼女の脳天に迫る杖。必死に呼びかける愛しき相棒の声。
ごめんなさいナナリー。あなたのおかげで本当の自分だけの夢が持てたのに。
ディストさん。救ってもらった命はここで終わってしまいそう。
ルビア。わたしなんかを心配してくれてありがとう。
     あなたの死体を汚してごめんなさい。
ノーマ。ごめんなさい。仇を討てなくて。
ロイド。クロエ。貴方達にまた会うことが本当の始まりだったのに。

そして最後に浮かぶのは本当に大好きな仲間達。

ロニ、ジューダス、ハロルド、会いたかった。信じているわ。
                  皆なら絶対に何とか出来るって。だから自分を信じて。
そして……カイル。この世界は辛いものかもしれない
           けれども、例え貴方がどうなろうとずっと愛しているわ。



「さよならリアラ=デュナミス。君なんかの言葉や思いは誰にも届きはしないよ」









455素敵なタイミング 23:2010/04/18(日) 21:10:43 ID:OCnh6itS0
         






         




       届いたぜ。リアラ



振り下ろされた杖は剣によって防がれ、蒼き羽が少女を空へと連れて行く。
予想外の出来事に硬直したのは一瞬。
エルレインとルカは先程まで戦い、逃した敵を見据える。

「罪人ロイド=アーヴィング」

憎々しげに口にするエルレイン。
それとは対照的に歓喜に満ちた表情のルカ。

「ロイド? どうして……?」

信じられないものを見るかのように目を見開くリアラ。
彼女を抱えて空に浮かぶ天使は笑いかける。

「馬鹿だな。仲間のピンチに駆けつけるのは当然だろ?」
456素敵なタイミング 25:2010/04/18(日) 21:11:27 ID:OCnh6itS0
その言葉にリアラの中から熱い何かが湧き出るのを感じる。
体の奥が震える。もう動かないと思っていた指先が力を取り戻す。
尽きたはずのTPが急激に戻り始める。
まだだ、まだやれる。ロイドの手から降り、空中でディムロスを構える。

「伝えたいことも,謝りたいことも沢山あるけれど……
  お願い。彼女達を止めるために力を貸して」

「トーゼン」

タッグ戦へと移行した場に臨む猛者達は
空に浮かび、武器を構えるのは天使に身をやつした英雄と
神の道を棄て、人の道へ、英雄へと登りつめようとする少女。
そして彼らの鬼気に呼応するかのように
魔王の産声が少年を突き破らんとしている銀髪の少年と
未知の挫折を背負いながらも大悪を殺す意志を固める聖女の四名。


【リアラ 生存確認】
状態:HP50% TP10%  スピリッツブラスター- 聖女だった自分を過去のものとしました 
    カイルへの依存から完全に脱却 称号『ソーディアンマスター』 不屈の魂 リアラ=デュナミス 膝上15cm
所持品:南国の蝶 レンタルビューティー ソーディアン・ディムロス 考察メモ 工具箱
    ホイッスル フリーズリング ルビアの首輪 ノーマの首輪
    アビシオンのフィギュア  ナナリー、ディスト、ノーマ、ルビアのサック
基本行動方針:英雄になる。殺し合いの打破
第一行動方針:ロイドと共にルカ、エルレインの対処
第二行動方針: カイル達を探す。同士を集める。
現在位置:D5 渓谷

【ソーディアン・ディムロス】
基本行動方針:殺し合いの打破。リアラと共に戦う
第一行動方針:目の前の二人の対処
457素敵なタイミング 26:2010/04/18(日) 21:12:09 ID:OCnh6itS0
【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:HP45% TP65%(0%でEND) 左肩に浅い切り傷 右足に切り傷 強い決意
   右胸貫通傷 常時天使化(解除すれば失血多量で死亡)
所持品:オブシディアン 木刀セット ソーサラーリング 聖剣ロストセレスティ
基本行動方針:打倒サイグローグ。死んだ仲間の為にも対主催を貫く
第一行動方針:リアラと共にルカ、エルレインの対処
第二行動方針:リアラと一緒にクロエ達と合流する
第三行動方針:仲間を集める。リフィルとクラトス等のブレーンであれば尚良し
現在位置:D5渓谷

【ルカ・ミルダ 生存確認】
状態:HP45% TP80% 両手の皮がずる剥け 死への反骨心 毒
所持品:子供じゃないモン 聖杖ユニコーンホーン 旋風
基本行動方針:エルレインを利用しつつ、エルレイン含む参加者を全員抹殺
第一行動方針:ロイドとリアラを殺す
第二行動方針:仲間を殺した犯人は確実に抹殺
現在位置:D5渓谷

【エルレイン 生存確認】
状態:HP40% TP20% 衣装に焦げ 左手火傷 三つ編みが解けている 無力感に苛立ち 天使化に不審 体中に裂傷
所持品:ルグニカオオ紅テングダケ 少し囓られたルグニカ紅テングダケ バクショウダケ
    クレアの首輪 ピクルスストーン
基本行動方針:カイルとその仲間を抹殺し、罪無き弱きヒトを幸福へと導く。マーダーと主催者は殺す
第一行動方針:ロイドとリアラを殺し、ソーディアンを奪う
第二行動方針:ソーディアンの様なレンズエネルギーを秘めた物を探し、奇跡を起こす
第三行動方針:ルカの監視。ルカの行動が行き過ぎた時はどうにかして止める
第四行動方針:主催者等の情報収集。信頼できそうな人物には館のことを教える
現在位置:D5渓谷
458素敵なタイミング 27:2010/04/18(日) 21:12:50 ID:OCnh6itS0
ロイドは苦悩していた。
アトワイトが言うにはディムロスは火を司る剣。
そして、方向から見ても対決しているのはエルレイン達。
ディムロスを持っているリアラが相手である可能性は無視出来ない。
そして、仮にあそこにいるのがリアラなら勝ち目は皆無と言っていい。
本当はすぐにでも駆けつけたい。
あの時のことについて話しあいたい。
だが自分はクロエとシンクを守らなければいけない。
彼を後押ししたのは意外にもシンクだった。

「行ってきなよロイド。僕たちなら大丈夫。
  隠密行動は得意だから逃げることくらいなら造作もないよ」

その言葉を聞いても眉間の皺は無くならない。
シンクの言葉にクロエが続く。

「行ってやってくれ。私たちは大丈夫だから。
  もしリアラがまだ混乱しているようなら一喝して
  目を醒ましてやればいい」

正直ロイドに依存してしまいたい気持ちは無視出来ない大きさで
彼女の心を占めている。だがそれではダメなのだ。
雨の中、セネルの背中に縋ったままでは自分は何も守れない。
騎士であることが出来ない。

「わかった。リアラと一緒に必ず帰ってくるから塔の近くで待っててくれ。
  もし敵がいないと確信したなら塔の中で篭城しても構わない」

だがそれではお前が、と言いかけるクロエの言葉をロイドが遮る。
459素敵なタイミング 28:2010/04/18(日) 21:15:53 ID:OCnh6itS0
「今の俺は目も耳もイイから大丈夫だ。
外に潜んでいるなら何処にいようと見つけられる。
篭城しているなら最悪、塔の頂上から入ればいいんだしな」

冗談めかした表情で言うロイドにクロエは苦笑する。
気をつけてと言うクロエにロイドは親指を立てて言う。

行って帰ってこられるさ、今のオレは足が速くて軽いから




「行っちゃったね」

「ああ、そうだな」

歩きながら会話するクロエとシンクだが意識は先程まで
激しく燃えていた空へと向けられている。
まさかここまで化物勢揃いのゲームとは思わなかった。
これではルーク達に会う前に呆気なく殺される可能性が高い。
だからこそ化物同士が潰し合ってくれる機会を見逃すわけにはいかない。
ロイドには利用価値があるにはあったが長期的危機の前では
何の意味もない。
先程の傷を見るに大方惨敗したのだろうが、
とっておきの武器を渡しておいた。
少し惜しいがこちらがあればルーク達を弄ぶのには不足はない。
一応接近戦向けの短剣をもらっておいたから戦力面での不足も問題ないだろう。
ロイドが本当にリアラと合流したのなら厄介だが、
別れ際の様子から察するに大方あのまま発狂して見境なく暴れまわっていると言うのが正解と言っていい。
もし間違っていてもあの戦いに無傷で帰ってこられるはずがない。
どうせ戻ってきても足手纏いになるだろうことは必死。殺した方が今後のためだ。
そうなれば剣も回収できる。
そしてクロエには自分を守る盾としての役割を担ってもらえばいい。
460素敵なタイミング 29:2010/04/18(日) 21:16:54 ID:OCnh6itS0
超がつくほどのお人好しだ。交渉の材料にも使える。
塔まで後一時間といったところかさてお目当ての標的には会えるかどうか。
化物に出会さないよう祈ろう。
クロエがシンクの思惑を知りたいと願っているのを
知っているのか知らないのか。
隣のクロエの思惑も気にせずシンクは歩く。
だがいくらクロエでも今それをしようとするほど状況が読めないわけではない。
塔。そうだ、塔についたら話をしよう。
例えそれが……シンクを殺す結果となっても。


【クロエ・ヴァレンス 生存確認】
状態:HP45% TP100% 帽子紛失 打撲 胸に止血済中裂傷
   シンクへの複雑な心境 迷い
所持品:安全ヘルメット
基本行動方針:打倒サイグローグ? 出来ればセネルやシャーリィと合流し、シャーリィだけでも守る
第一行動方針:塔に行く。その後シンクと一度、ゆっくり話をしたい
現在位置:D4

【シンク 生存確認】
状態:HP85% TP30% 居心地が悪い 服がボロボロ 右足に噛み痕
支給品:すず 未完のローレライの鍵 リコーダー ダガーナイフ
    シンクの仮面 クレーメルケイジ(C) ディストの首輪
    ソーディアン・アトワイト(カースロット発動中。意識無し)
基本行動方針:ルーク達を引っ掻き回して楽しむ為に、ロイド一行を利用してルーク達と合流する
第一行動方針:塔に行く。まぁ、レムの塔は諦めるしかないよね……
現在位置:D4
461名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 21:17:39 ID:OCnh6itS0
何とか自力で投下終了
支援ありがとうございました
462名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 21:38:09 ID:O2rzEIXt0
投下乙!
463名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 22:10:26 ID:mkwyJHYf0
乙です

やべーwww
ロイドかっけーwww
だけどTP切れて死なないか不安だぜ
クロエの思惑もすごいきになるな
なんにせよ期待大だ
464名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 23:54:53 ID:qoWhWIs/O
投下乙です

熱い展開だなw
リアラは本当に変わったな
ルカも本当に変わってしまった…

時間的にスタイレが近くにいそうだな
事態を静観しつつ漁夫の理を狙ってそうで怖いw
まあいくらスタイレでもコイツらとはやりたくないだろうな

クロエ…お前その状態じゃ逆に返り討ちだぞw
なんとか戦いを回避してほしいけど塔は危険そうだしな…
ミクたん達をなんとかしないとこの先は進められなさそうだな

いずれにせよGJでした!
465名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 00:13:46 ID:P4E50aVnO
クロエが危険だな…装備的な意味で
466名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 00:38:09 ID:CbgyvAmgO
ロイドはこの戦いで生き残ってもかなり消耗しそうだな
467名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 13:37:57 ID:8iThEIesO
投下乙
熱く燃える展開にハラハラした
あとリアラが服破きすぎてそろそろ格好がヤバい
468名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/19(月) 22:23:55 ID:kd4Gcl9I0
したらばでご指摘いただきありがとうございます。

>>449

> ルカがリアラと行動を共にしていたとき、
> ポイズンパウダーの毒は適切な治療を施せば
> 決して大事には至らないと言っていたから大丈夫だろう。
> これで一人無力化した。



リアラが読んだディストのメモには支給品についての考察も記されている。
それによれば、ポイズンパウダーは決してすぐさま命を奪うような危険な代物ではなく、
リカバー等、適切な処置を施せば大事には至らないとあった。
ルビアの死に際を思うと毒を使うことに躊躇いがないわけではないが
背に腹は代えられない。
とにもかくにもこれで一人無力化した。

に修正します。本人と証明する手段はありませんがご容赦ください。
469名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 08:22:43 ID:q3Vda9bI0
投下乙、だけど・・・
> 痛々しく切断されていた腕が元通りになっているのだ。
これはまずくないか?エリクシールより優秀じゃないか。
470名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 08:47:30 ID:V15ZVGA70
>>469
イメージ的には皮膚をくっつけて外見を整えただけというイメージです
原作でも奇跡の力>>>>エリクシールだったことは明らかですし。
エルレインがソーディアンがあれば云々って言っていたので
これくらいは大丈夫かなと判断しましたが描写不足だったかもしれません
471名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 08:52:42 ID:V15ZVGA70
>>437

> ルビアの死体も調べた。
> 奇跡によって表面上(あくまで外面だけだが)は綺麗になっているソレを調べる。

一応この部分で説明したつもりになってましたがたしかに分かりにくいかもしれません
472名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 19:43:15 ID:yDYVkog40
 投下乙!

 リアラ・・・ほんとに死ぬかと思ったらまさかのロイド乱入。
 リアラ、覚醒してほんとに変わりましたね。
 なんかむちゃくちゃかっこいいです!

 
473名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 21:08:36 ID:q3Vda9bI0
>>471
奇跡を何度も起こせば、完全治癒も出来るかもしれないってことになるから、まずくないかな?
ノーリスクっぽいし、肉体治癒系の奇跡はいろいろと厄介になってしまう気がするんだよな。
474名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 22:31:40 ID:V15ZVGA70
TP消費量はあえて暈しましたし、ソーディアンの力もかなり強大なのでセーフだろうと判断しました
原作でもレンズの力でとんでもないことを何度もしていますし
エルレインもこの会場でもソーディアンがあれば奇跡を起こせると言っていたのである意味フラグ回収のつもりでした
どのレベルまでの完全治癒が可能かは無責任かもしれませんが後続に任せます
チートぶりでは正直天使とそこまで変わらないと思いますし。
あと、避難所にあったロイドの行動については天使化によりアップした聴力でリアラの意志を聞いていたのが一番大きいです
描写しようか迷いましたが個人的に不粋な気がしたのでカットしました。ここで説明したので意味が無いですがw
475名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 22:41:40 ID:q3Vda9bI0
んー、やっぱり治癒能力はまずいんじゃないかなあ。天使は肉体機動力方向のチートだけど、治癒方面はちょっと気になってしまう。制限の意味が薄くなっちゃうしね。
終盤になったらソーディアンが複数本集まると思うけど、そうなった時に複数本ソーディアンを使った治癒の奇跡はどうなるのかって問題とかが出てくるしなあ。
476名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 22:48:32 ID:V15ZVGA70
正直、今回行った奇跡は皮膚をくっつけただけと説明しましたし
そこから完全治癒の問題に行くのも気が早いと思うのですが
ここまで批判が出るという時点で失敗作なんだろうと納得しました。
このSSは破棄ということでお願いします
477名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/20(火) 22:51:48 ID:V15ZVGA70
ああ、べつに>>475さんの発言のせいと言うわけでもなく
まだロワ内のブラックボックスに手を付ける時期ではないんだと思い、
自分の意志で破棄を決めました。感想ありがとうございました
478名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 17:16:32 ID:QdLnVGgE0
読み手様ばかりだから全然進まないのですねわかります
あーあ、貴重な書き手がまた一人・・・
479名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 17:27:41 ID:h+aymfXk0
いえ、実を言いますとこのSSを書いた時点でVSルカレイン決着ともう一つのSSも出来上がっており
それすら投下してしまったら1月で6作品投下すると言うことになってしまいます。
ロワに参加する時点で書き手のみなさんと繋ぐリレーという形式を大事にしようと決めていたのに自制が効かなくなった自分は
もう参加するべきではないと思うに至りました。決してスレ住民の方々のせいではありません
480名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 18:55:35 ID:m8MUTmLU0
 あれ、破棄されたんですね。
 残念・・・
 
481名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 22:34:49 ID:cLyQm9Ie0
破棄しちゃうのか、もったいない
治癒の描写だけなくす訳にはいかなかったのかね
482貴重な貴重なサービスシーン:2010/04/29(木) 11:07:54 ID:nKicq8KH0
何処の家にでもあるような、清潔感のある脱衣所に現れた一つの影。着衣は汚れに塗れ、顔にも疲れが伺える。
赤銅色の青年――リヒターは服を脱ぎながら、つい先刻の出来事を思い出す。


床に転がる大量のビン。
充満する独特のアルコール臭。
テーブルの上で踊る馬鹿二人。
あれよあれよと言う間に喚かれ、絡まれ、そして―――


(うっ……)

そこまで考えた所で、思考を打ち切り記憶を抹消する。逃避と言えばそれまでだが、人間嫌な事は意外にすぐ忘れるものなのだ。
先程ゲロをしこたま浴びたのも気のせいだし、まさか台所に馬鹿の簀巻きが転がっていよう筈も無い。
何より一日の疲れを癒す良い機会だ。余計な事を考えていては、取れる疲れも取れなくなってしまう。
汚れた服に関してはスプラッシュ、辺りの出力を調節すれば大丈夫だろう。これでも水系統の扱いには自信がある。

汚れた服の下から現れたのは、細身ながら引き締まり均整の取れた肉体。
世の女性が見惚れるような美しさながら、本人は何の頓着もせず服を脱ぎ散らしていく。
あくまで親友の敵を討つ為だけに鍛え上げた体であり、復讐の終わった今となっては最早無用の長物だ。
もっとも、このような場所に呼ばれる事が無かったならば、の話だが。

下着を脱ぐと、肉付きの良い尻が露になる。
体格の割に筋肉がついているのは、その戦闘スタイルに依るものだろう。
左右別々の得物を扱う都合上、体勢を保つ為には卓越したバランス感覚と屈強な足腰が必要となるのだ。

一糸纏わぬ肢体を浴槽に移し、シャワーの栓を捻る。
温かな湯が体を濡らす。汚れと共に一日の疲れも洗い流される心地だ。
赤銅の髪が背に張り付き、得も言われぬ色香を醸し出す。
古代の人々は男性の肉体に美を見出だしたというが、これを見れば納得せざるを得ないだろう。


「……ふう」

それにしてもやはり風呂は良い。水ではなく湯で体を洗う事を考えた者に拍手を送りたい気分だ。
……何やら騒がしい声が聞こえるが、大方馬鹿共が目覚めたのだろう。
どうせなら浴槽に湯を張ってしまおうか。シャワーも良いが、やはり湯に浸かるのは格別だ。
風呂といえば、ミズホという隠れ里には温泉なる巨大浴槽があるらしい。一度は行ってみたいものだ。
……それにしてもやけに騒がしい。後でまた簀巻きにして―――
483貴重な貴重なサービスシーン 2:2010/04/29(木) 11:11:05 ID:nKicq8KH0



(…………ん?)

ちょっと待て。何かおかしい。
落ち着いて考えろ。冷静になれ。


「……スち………ぁぁ……」


……そうだ。泥酔した人間がそう簡単に目覚める筈が無い。ならばこの声は何だ。


「アリ………ぁああああん!!」


いや、この声には聞き覚えがある。馬鹿みたいな声量といい、内容といい、こいつは間違いなく――――




「アリスちゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああん!!!!」




「チッ、最悪のタイミングだ!」

急いで浴槽から飛び出し、全身の水滴を荒く拭き取る。髪はその長さ故に全く渇いていないが、のんびりとしている時間は無い。
あの絶叫からして、デクスはまず間違いなくアリスを探しているのだろう。
探すだけなら大した害は無いが、アリスを守る為にゲームに乗っている確率は決して低くない。
そしてその場合、エミルは骨折二人は泥酔、戦えるのは自分だけだ。


(こんな時にあの馬鹿共め……)

心の中で酔っ払い二人に悪態をつきつつ、置いてあったバスローブに袖を通す。緊急時とは言えど、吐瀉物塗れの服を着るのは出来れば避けたい。
そして、壁に立てかけた斧を手に取る。出来れば剣も欲しいが、居間に戻って袋から取り出している暇は無い。
僅かな遅れが仲間を殺しかねないのだ。特にエミルは死守しなければ、帰還した所で待っているのは破滅のみ。
そうなれば自分もゲームに乗らざるを得なくなるかもしれないが、それは確実に阻止したい。

「間に合え……!」

リヒターはそう言い、廊下を全力で駆けていった。







こうして束の間の平穏は終わりを告げる。喧しいモーニングコールが運ぶのは破滅か、それとも――――
484貴重な貴重なサービスシーン 3:2010/04/29(木) 11:13:15 ID:nKicq8KH0
【リヒター・アーベント 生存確認】
状態:HP100% TP100% 放送に対しての違和感と困惑 焦り やや濡れ リゾートキング
支給品:ストライクアクス
基本行動方針:ゲームに乗る気はない。ギンヌンガ・ガップの封印に戻りたい
第一行動方針:間違いなく居るであろうデクスに対処
第二行動方針:放送内容とクラース、ラタトスクにどう対応するか考える
第三行動方針:ラタトスクの行いについてエミルに知らせたくない
第四行動方針:転移術について更に調べ、元の世界に帰る方法を探す
第五行動方針:イグニスをどうにかしたい
現在位置:A4邸・廊下

※リヒターのデイパックが脱衣所に放置されています。(中身:エバーライト、手紙)


【クラース・F・レスター 生存確認】
状態:HP100% TP100% 未来への黒い予感(今は非顕在) 仲間の死による悲しみ エミル(ラタトスク)へ僅かな共感
   生き延びていることへの罪悪感(非顕在) 戦う覚悟 マナを認識可 泥酔 フォッグへの憧れ 睡眠中 簀巻き
所持品:ピヨノン グミセット 本(武器用の厚く頑丈な物) オパールの指輪
    クラースの考察メモ(書きかけ) 拝借した使えそうな道具
基本行動方針:ゲームには乗らず仲間を集め打開策を図る
第一行動方針:(睡眠中)
第二行動方針:三時間後にリヒターを起こす……筈だったよな……あ、もう五時だよヤバイヤバイ
第三行動方針:自分に出来る事をする
第四行動方針:屋敷に居る者と行動を共にする
現在位置:A4邸・台所


【フォッグ 生存確認】
状態:HP100% TP100% 不屈の強い意志 泥酔 睡眠 簀巻き
所持品:パナシーアボトル メガグランチャー
基本行動方針:リッドの仇を取る。キールやチャットが心配
第一行動方針:(睡眠中)
第二行動方針:邸の中の皆が心配。
第二行動方針:拠点で待機
現在位置:A4邸・台所
485名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 11:16:21 ID:nKicq8KH0
代理投下終了ですー。
486名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/01(土) 02:55:28 ID:HvLXpRtV0
乙です。

本当に貴重だwww
487名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/07(金) 12:23:25 ID:ls03OeV70
てst
488名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/07(金) 20:39:46 ID:D7vzP7z90
このロワの名台詞って何だろうな?
489名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/08(土) 01:49:50 ID:aqdBihoo0
「愛だ!」に一票
490名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/08(土) 13:54:39 ID:FvUPkU5X0
さよなら、ロニ=デュナミスとかシンプルだけど好きだ
ボツSSでデュランダル繋がりかルカがリアラにパロった台詞を言ってるし
491名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/08(土) 14:03:47 ID:w+UJPJWc0
 ところで最新話、なんでまとめに更新されてないんですか?
 あと「テイルズオブバトルロワイアル2ndの事件」に今回の話が破棄される可能性があるとかいうよくわからない書き込みがあるんですが・・・
492名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/16(日) 20:23:26 ID:AIf45uin0
こっちに書くべきだった
名シーン、名エピソードっていうとなんだろ
名言と並行して
493名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/22(土) 14:20:15 ID:foktPp3r0
てst
494名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/22(土) 15:02:44 ID:foktPp3r0
投下します
495僕の過去問 1:2010/05/22(土) 15:04:37 ID:foktPp3r0

他人を本当に理解できる瞬間があるのだろうか?

銀髪の女性は世界を救う戦いでこう言った。
命に優先順位をつけるのならばロイドを一番に据えるべきだと。
金髪の少女は世界を救う戦いの際、試練に挑まんとする青年にこう言った。
世界のために自分の身をそこまで削れるとは尊敬に値すると。
両者の言葉に嘘はない。
そして今、一つの道を選ぼうとする学士は彼女らの言葉を知らない。
それでも彼は……いや、だからこそ彼もまた言葉を紡ぐ。
愛する者への道を選ぶため。
その選択が正解か不正解かもわからずに。
こんなにも早く誰かを手放す結果になることすら予測出来ずに。



アッシュとの別れの後も続けていた老剣との情報交換により、
キールの脳内では惨劇についての推測がある程度出来ている。
赤毛鮪との関係はチャットから直接聞きたかったが、
彼女に落ち着く目処がまるで立っていなかったのだからしょうがない。
あくまで推測でしかないため、過度の信頼は禁物だが無いよりはマシだろう。
まずマルタはサレに連れ去られたと考えるのが妥当。
あの状況で逃げるということはウッドロウに深手を負わされた可能性が高い。
そうなるとどこか室内で休息をとる可能性がある。
ここから近いのは城と塔。どちらにも利点はある。
城は最初の根城だったようで奴も中の仕組みをある程度把握しているだろう。
塔の場合は得体のしれない雪があるがエリアルボードのように空に浮かべば無害。
そして風使いにとって高低差は最強の武器と成る。
戦力面から見ても赤毛デコがあそこに行った以上、先に潰すべき選択肢は塔かもしれない。
とは言っても今の自分達では足手まといが精々だろうし、
あそこに行かれたのならばマルタはもう手遅れかもしれない。
嫌な予感がするから避けようとするとは
ネレイドとの戦いで危険察知能力が高まったのだろうか。
まるで小動物のようだとキールは思う。
南の街という選択肢もあるにはあるが廃墟になっているらしく、
何時、何処が崩れるかもわからない危険な状態らしい。
そして自分も巻き込まれた惨劇についてだが、ウッドロウを殺したのはチャット。
原因は豹変したロニへの恐怖が引き起こした誤射。
その結果が自分の目の前に横たわる二つの死体。それがチャットを壊した。
496僕の過去問 2:2010/05/22(土) 15:05:19 ID:foktPp3r0
いや、それ以前にアニーという医者との交流と別れが大きな転機となったらしい。
そしてアッシュと深い絆で結ばれたのもその女医を介してとのこと。
一日の間にそれほどのことがあればチャットが塞ぎこむのも成程と言えるのかもしれない。
海賊を自称しているとはいえ、彼女の精神はまだまだ未熟だ。
セレスティアの慣習として十の時にから親元から離れ、
膨大な才能の顕現である自作の小屋で独り暮らす。
……間違いなくインフェリアンの同年代とは比べものにならないモノを持っているだろう。
自分達と共に戦った時も可能性に自身が追いついていなかった。
そんな幼い海賊に嫉妬を覚えたこともないわけではない。
しかし、虚勢を張り、暗算に目を回し、小動物に泣かされる姿を見ると、
それが下らない感情にしか思えなくなってしまった。
つまり、この子供はみんなに愛される魅力を持っていたのだ。
かつて自分やもう死んでしまったアイツを散々に振り回しながらも
不思議と不快感を抱かせなかった幼馴染のように。
チャット。と呼びかけると本人の肩だけがビクリと震えた。
そう、反応を示したのはチャットのみ。
死体となった二人が反応を示すわけがないだろうし、
茫然自失となっているリフィルのことは既にクレメンテに任せた。
不可知を学べと言った恩師マゼット博士を思い出させる彼の声音が
自分にほんの少し安心感を与える。
それと同時にほんの少しだけ罪悪感が内に湧く。
老は自分の思惑に気づいているだろうが、それでも後ろめたさを覚えてしまう。
自分がリフィルではなくチャットを激励しようとしているのは、
女教師に会ったばかりでよく知らないからだけではない。
大切な仲間の一人であることを差し引いても、
弱々しく項垂れ涙を拭こうともしない幼き天才の方が……圧倒的に貴重な人材なのだ。
クレメンテやマルタから聞いた限りでは彼女の能力は自分と大差ない。
そして、この会場には恐らく多くの智者が呼ばれている。
参加者との交流により短い区間を移動しただけで
かなりの知識人が参戦していることが確認出来たことからもそれがわかる。
つまり、この会場では自分やリフィルは凡庸な人材に過ぎない可能性が高いということ。
またはこの参加者の偏りそのものがブラフ、
鍵は知識の外にあるということなのかもしれない。
497僕の過去問 3:2010/05/22(土) 15:06:14 ID:foktPp3r0
治癒術師は貴重だが強い制限がかかっているこの会場、
首輪という目に見える“機械”がチャットの重要性を改めて認識させ、
極めつけは自分も治癒術を使える。
以上のことを考慮すると最悪の場合、
今はまだ早すぎるがリフィルを諦めることを視野に入れなければならない。
しかし、チャットだけは確保しておきたい。
帰りを待っているメルディやファラのためにも、脱出のためにもだ。
チャット……。
そう繰り返し呼びかける。
思いよりも先に言葉を届けるために。
彼女の目を見るために。自分の目的のために。
何度目かの試行の末、ようやく顔を上げた彼女の額のエラーラが動揺するかのように僅かに煌めいた。

「今のお前によく似た奴を知っている」

そうキールは言った。
風が吹けばロマンチックな場面だろうが、場を彩る演出は何一つ起こらない。
こんな世界で心地良い風を感じる人間はよほど天に愛されているのだろう。

「そいつは多くの人が死んだのは自分のせいだとずっと責めていた」

と、必死で言葉を選びながら話す自分に心の中で自嘲する。
脳裏に過ぎるのは全てが始まった場所で涙ながらに告白するガキ大将。
それを優しく慰める、“ぼくらの” 親友。

「アイツは押し潰されそうな罪悪感から逃れるために十年以上、誰かのために生きてきた。
けれども、僕は思うんだ。村一つ、
おまけに自分の父親すらメチャクチャに壊した事実に十年も耐えることができるのだろうかと」
自分語りは碌なことにならない。いつもの彼ならそう言うだろう。
それでも彼は止めない。これが自分のすべき“役割” だと信じているからだ。

「ずっと応援してくれる奴が側にいたから生きていけたんじゃないかって。
 お前がアニーという人間とどれほど親しくなったかはわからない。
 その女性から何をもらったのかもわからない。けれども僕はお前が彼女の死に、
 そして自らが招いた惨劇に押し潰されそうになっていることはわかる。
 だって僕はアイツらのことをよく見てきたから。僕はっ……」
498僕の過去問 4:2010/05/22(土) 15:06:57 ID:foktPp3r0
何故か急に言葉が詰まる。だが良い演出だろう。
まるでチャットの悲しみを自分のことのように受け止めていると周りからは見えるはずだ。
息が詰まった喉。部位を殴ってでも動作を正常化したい衝動を必死に抑えながらも
口をこじ開け、言葉にする。

「僕は産まれた時からアイツらの幼馴染だったから」

自分はいつからこれほどまでに上等な役者になったのだろうか。
一から十まで推測尽くし。ここがミンツ大学なら退席を求められるところ。
しかし次のウルタス・ブイを自分がやったのならスタンディングオベーション必至の好演。
今の自分ならメルディをメロメロにさせることだって容易なのかもしれない。
だってそうだろう? 彼は自身に語りかける。 

『説得しているだけなのに、激励しようとしているだけなのに、
 視界が滲みだして、鼻で呼吸することがこんなにも辛くなって、
 舌の震えを抑えるのが精一杯になるほど“役”に入りこんでいるんだ。
 かつての僕たち三人が一緒にいる光景。それがついさっきのことのように思い出せるんだ。』

少女の涙を止めることは出来ず、それどころかさらに量が増す結果となる。
よく脱水症状にならないものだとどこかで呆れながら彼はさらに語る。
後でクレメンテが茶化そうがかまうものか。
サイグローグが嘲笑うとしても気にするものか。
メルディの、僕達の笑顔に少しでも近づくためなら
霊峰ファロースを裸で登り降りすらしてやったっていい。

「今のお前だってあの時の僕達と同じなんだ。悲しくて、苦しくて
 鮪みたいに前へ進むしかなくて。でもお前には応援してくれる奴がいる」

ついさっき仲違いした相手。リッドを思い起こさせる赤毛の猪突猛進馬鹿。
馬鹿だけれども、アレはチャットを応援していた。アイツのために塔へ行った。
何故かそのことを確信出来る。
自分がやっていることはかつての僕達が辿った道をなぞるだけなのかもしれない。
499僕の過去問 5:2010/05/22(土) 15:07:54 ID:foktPp3r0
チャットに、アッシュに、あの二人と同じ苦しみを味あわせるだけなのかもしれない。
それなら僕もそれに加わろう。繰り返される環でしかないとしても可能な限り二人を見守ろう。
所詮は前と同じ役割、弱虫でコンプレックス塗れなのは変わらない。
メルディを自分の都合で徹夜に付き合わせてしまうような、
どこまでも打算で動いてしまう自分。
けれども、二人をリッドとファラのような別れにだけは終わらせないと誓おう。
だから最後の言葉を言う。言葉だけでなく、心もチャットに伝わるように。

「アッシュはどんなことがあってもお前を応援しているんだ。
 どれほど離れようとお前のことを思っているんだ」

泣きながらキールの胸に抱きつくチャットをそのままにしておく。
彼女の髪に水滴がまとわりついているがきっと雨が降っているのだろう。
天候を操る術師が近くで戦っているのかもしれないが
その時はクレメンテ達が知らせてくれるから問題ない。

(いや、待て)

思考が急速に冷えつく、僅かな誤作動を起こしていた脳が正常に動き出す。
それを他所にチャットがハッキリと胸元で途絶え途絶えに宣言する。

「ぼ、ボクはっ、も。もう一度アッシュさんに会いに行きます。
 絶対にっキャプテンを差しおいてカッコイイっマネっなんて!
 さ、させません!」

チャットの言葉を耳に入れながらキールは辺りを見渡す。

(クレメンテとリフィルは何処に行った!?)
500僕の過去問 6:2010/05/22(土) 15:08:35 ID:foktPp3r0
【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:HP50% TP20% 度重なる失敗への激しい後悔 冷静を努める意思による自律
   ヴェイグとイクティノスへの畏怖 ロニへの同情・不安 主催者の言葉を信じる事への僅かな恐怖
   腹、胸から著しい出血(応急処置済み) 右足を挫いた チャットとアッシュに幼馴染達をダブらせています
所持品:誰かのクレーメルケイジ(I) グランドセプター 
    リカルドの首輪 情報入り名簿 温石  ソーディアン・クレメンテ(生き急ぐアッシュが心配)
基本行動方針:殺される気はなく、脱出の道を探す。マルタ、チャット、アッシュとの『協力』を果たす
第一行動方針:状況整理。リフィルとクレメンテを捜すべきか、帰ってくる方に賭けるべきか。
第二行動方針:マルタは城か塔にいると推測(塔の方が可能性が高いと思っている)。サレもそこにいるだろうと考えている  
第三行動方針:チャット(アッシュも)と協力して首輪についての考察と情報集め
第四行動方針:襲われた場合は応戦よりも全力で逃げる
現在位置:D2・平原

【チャット 生存確認】
状態:HPTP100% 首絞めの痕跡 さまざまな死と殺人行為への恐怖と罪悪感
   守られる事と無力さへの極度葛藤 自分の甘さへの不安 急性的なストレスによる鬱症状?
所持品:スタンダードマグ(残り装填4発) 銃弾50 ラジルダの旗 タバサ
    プラズマカノン パナシーアボトル 袋詰め粉砂糖2kg リーガルの首輪 エナジーブレッド×4
基本行動方針:勇気を持つ。アニーの死を乗り越えて生きる
第一行動方針:アッシュやキールと一緒に戦う
第二行動方針:森の死体らしき何かを確認したい
第三行動方針:セネルが心配
現在位置:D2・平原
501僕の過去問 7:2010/05/22(土) 15:09:18 ID:foktPp3r0
足音を草が包む。
クレメンテが先程から自分を掬い上げようとしていたのがどうにも煩わしく、
とうの昔にザックに入れてしまった。
自分は何をすべきかわかっている。
理想を守るべきだ。
教師として生きるべきだ。
だが自分に何が出来る?
今の自分に子供達を守る資格があるのか?
教え子である彼を守ることができるのか?
一度は諦めた命でも彼の理想が果たされる未来を見るために生きようと思えた。
そのためには弟を見殺しにする覚悟すらあった。
理想。夢。それがなければハーフエルフが生きるのに世界は辛すぎる。
それが喪われたら母のように壊れてしまう。だからここへ来た。
彼が、自分達が守った大樹をこの目で見てから全てを決めようと思った。
目の前に広がる森を前にほんの少しだけ躊躇する。
置いてきた二人が危険かもしれない。だがアッシュも言ったじゃないか。
今の自分達は襲われても襲われなくても同じだと。

【リフィル・セイジ 生存確認】
状態:HP80% TP30% 頭部と左足に裂傷・打撲・切傷多数 服に焦げ
   教師/治癒術士としての無力感 後悔 茫然自失
所持品:リヴァヴィウス鉱 ウイングパック リブガロの角 パナシーアボトル
ソーディアン・クレメンテ(生き急ぐアッシュが心配、リフィルちょっと待て)
基本行動方針:殺し合いの打破 。
第一行動方針:大樹ユグドラシルを見て、現実と治癒術士(教師)としての心、どちらを優先すべきか考えたい
第二行動方針:リーガルを殺した人物が誰か気になる、リーガルを殺した人物、爆発音の発生源を警戒する
第三行動方針:死者に対しては慎重に接する
第四行動方針:ロイド達が心配
第五行動方針:先程のマナのようなもの、爆破のマナが気になる
現在位置:D2・平原→ガオラキアの森入口

選んだ道が、決めた心がどうであれ、それを大事にしよう。
そうすれば、神の雷だって屈服するに違いない。


502名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/22(土) 15:11:28 ID:foktPp3r0
投下終了です











あああああああああああ!!
修正ミスった! ごめんなさい!


>>495

> 塔の場合は得体のしれない雪があるがエリアルボードのように空に浮かべば無害。




塔の場合は得体のしれない雪があるがエアリアルボードのように空に浮かべば無害。

に今度こそ修正します
503名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/23(日) 00:37:57 ID:dlwOSRi80
更に追記です。キールの状態表は


【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:HP50% TP20% 度重なる失敗への激しい後悔 冷静を努める意思による自律
   ヴェイグとイクティノスへの畏怖 ロニへの同情・不安 主催者の言葉を信じる事への僅かな恐怖
   腹、胸から著しい出血(応急処置済み) 右足を挫いた チャットとアッシュに幼馴染達をダブらせています
所持品:誰かのクレーメルケイジ(I) グランドセプター 
    リカルドの首輪 情報入り名簿 温石  
基本行動方針:殺される気はなく、脱出の道を探す。マルタ、チャット、アッシュとの『協力』を果たす
第一行動方針:状況整理。リフィルとクレメンテを捜すべきか、帰ってくる方に賭けるべきか。
第二行動方針:マルタは城か塔にいると推測(塔の方が可能性が高いと思っている)。サレもそこにいるだろうと考えている  
第三行動方針:チャット(アッシュも)と協力して首輪についての考察と情報集め
第四行動方針:襲われた場合は応戦よりも全力で逃げる
現在位置:D2・平原

です。クレメンテはリフィルが持ってます
504名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/23(日) 20:19:37 ID:F0WZRMmJ0
投下乙!&まとめさん乙です!
505名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/28(金) 09:07:33 ID:3MZ6olpP0
ほっしゅ
506名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/04(金) 07:00:00 ID:gVbwtt1z0
ほ!
507名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/05(土) 09:53:30 ID:3mhiM2B3O
ひ?
508名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/08(火) 09:54:05 ID:QOmr1yV0O
フンッ!フンッ!
509名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/08(火) 23:47:34 ID:8XWX76PhO
椅子に座って何やってんすかクレスさん
510名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/09(水) 21:48:06 ID:vGX4XwjB0
公式にとめてもらえない
511名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/10(木) 08:13:03 ID:dSYLfd+jO
無限キック
512名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/12(土) 20:55:20 ID:PFPAPqS60
こんばんは、ナッシュです。本日21時からラジオを流しています。
お時間がある方、よろしければどうぞ。
告知が遅くなってしまいすみませんでしたorz

掲示板
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13268/
ラジオのアドレス
http://nash-tobr.ddo.jp:8000/
聞き方はこちらからどうぞ↓
http://www.atamanikita.com/start-shoutcast/shoutcast-14.html
513名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/19(土) 18:48:25 ID:Irptywl9O
ほしゅ
514名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/27(日) 10:47:42 ID:Q1XDN5Sa0
hosyu
515名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/06(火) 07:38:15 ID:wOwOB/xKO
ほす
516名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 19:12:23 ID:4y57ByyO0
ほアああああっしゅううう
517ri-ta:2010/07/17(土) 09:23:06 ID:dqeB+VP10
小説が進まない
518名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/25(日) 10:07:04 ID:8+m2pzlG0
うんぽっぽ
519名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/29(木) 17:48:19 ID:B937NlxD0
さあ、そろそろか・・・?
520勘話求題(代理投下):2010/08/01(日) 15:47:23 ID:De2QNix70
「ジューダスが死んだよ」

アブソーブゲート。そこにある唯一の光源と言っていい粒子の大奔流。
それを円状に取り囲むようにある透明の足場に座りながら
一心不乱に考察・実験結果を書き続ける桃色の髪をした乙女に短く言い放つ。

「………………誰が殺したの?」

その言葉に手を止め、平坦な声で短く問いかける。

「スタン=エルロン」

それに答えるミトスの声も同様に何の乱れも感じさせなかったが、
彼のことをよく知る者が聞けば微かに、
だが見逃しようもない苛立が隠されているのを見抜いただろう。

「この僕が手も足も出なかった。そう伝えろだってさ」

言葉を続けるミトス。彼の方に体を向け、
ゆっくりと顔を上げる彼女の顔には微かな困惑があった。
振り向く際にうず高く積み上がった紙の山に手をぶつけ多くが記憶粒子に落ちる。
らしもない失態に舌打ちをしたがどうでもいいことだろう。

「そのことで他に何か言ってなかった?」

アイツは負けず嫌いだから。
と、疑問に必要のない私情混じりの言を加えるハロルドにミトスが返す。

「宝石、たぶんだけどエクスフィアを付けてるらしいね。
アレがあればたしかに身体能力については飛躍的に向上する。
まあ、その程度のハンデで負けるなんて
アイツの実力も大したことなかったってことだけど」

最後の方に幾分かの嘲りを籠めて言った天使。
だがその言葉に対しても博士は全く表情を変えない

「大方、短い間であの変態仮面にたっぷりと敗北感やら屈辱やらを植え付けられたんでしょうけど、
  そんな憂さ晴らしのためにぺちゃくちゃとくっちゃべってるってわけ?
  その程度の脳なら今すぐ解剖して世のため参加者のために役立てるところだけど」

少年を見上げる女性の目が急激に鋭さを帯びる。
その言葉に冗談はないであろうことは誰の目にも明らかだった。
ソレを見てミトスは床に腰をおろし、胡座をかく。
そしてハロルドの横に散乱している紙とペンから適当なものを選び、
本題に移る。

「冗談。僕がそう簡単に言い負かされるわけがない」
『単刀直入に聞く。ジューダスにテレパシー能力は?』

今、ミトスの手元にある聖剣デュランダル。
今際の際の会話から察するにかつての姿だったスパーダ=ベルフォルマから
剣にその姿変えても会話することは可能であることは確かである。
それに彼についての情報を得る術がない
ミトスはジューダスとの出来事についての何らかの裏付け。または情報が欲しい。
521勘話求題(代理投下):2010/08/01(日) 15:48:17 ID:De2QNix70
「声が震えてるわよ、天使様」
『無い』

普段の彼女なら数行にも渡る嫌味をおまけして書き連ねるだろうところだが
今の彼女にそんな気は全く起きないようだ。
普段の彼女からは考えられない無味乾燥極まる文体と言えよう。

「まあ、その事についての言及は置いておいて……時間がないから手短に言う。
  ロニ=デュナミスに会ったよ」
『僕は確かにあるはずのない声を聞き、アイツと会話をした。
  そっちの世界に似た能力は?』

「そう、そのまま殺しちゃえばよかったのに」
『いくらでもある。強いて言えば――』

ペン先は紙の上に置かれたまま。
何かに気づいた、または何かについて思考を巡らせているのか。
インクが滲んでも動作を再開する様子はない。

「……ホンの気まぐれさ。
  とにかく、東の入り口が埋まっている以上はアイツとの再会は必然。
  早いとこ移動したほうが良いと思うけど?」
『何に気づいた?』

「そうね。やり過ごすにもヘタすれば帰ってきたフィリア達と会う可能性もあるし、
  さらなる調査のためにもルークとティアって子を保護しちゃわないと」
『ソーディアンマスターの資質は先祖帰りに近い。
  文明崩壊以前の人間は念話の類で意思疎通していたらしい』

「じゃあ、どうするの? 今の僕は最悪に機嫌が良いからね。
  もう一つくらいは頼まれごとを引き受けてもいいよ」
『だから何?』

「ミッション失敗。スコアZランクの負け組がカッコつけたってしょうがないわよ?」
『コレは一つの可能性。
ジューダスは最期の最後にソーディアンマスターの資質を極限まで進化させ、
かつての人類と同等の能力を身につけた』

その答えに驚愕よりも失笑するミトス。あまりにも出来すぎているからであろう。
無理もない。こんな土壇場で進化? たしかにここは誰が見ても異常な世界。
趣味の悪いゲーム。だがミトスやジューダスやハロルドに限らず、
この場に呼ばれたものは多かれ少なかれ殺し合いをほぼ日常としていた人種。
そして、ミトス自身は知らないが
ジューダスはかつて己が情念に基づき仲間と斬り合った者。

「……急に試し斬りをしたくなってきたよ」
『ありえないね。決定的な外的要因としては弱すぎる』

「なぁにぃ? 坊ちゃん。新しい武器をもらったからって、遊んでみたくなっちゃった?」
『それが仕組まれたことだとしたら?』

その答えを読み、ミトスは一瞬考えるがすぐに首を振り、書く。

『サイグローグが脳に何らかの細工をした可能性は高いのはさっきも言った。
  けれども思考操作は奴の目的にそぐわないよ』

『細工を勘違いしている。主催者は苦しみ、選択する姿を見たいと言った』

ミトスの思考が答えに行き着く前にハロルドは考察結果を紙上で述べる。
522勘話求題(代理投下):2010/08/01(日) 15:49:09 ID:De2QNix70
「まあ、あなたがヘタレだってことは気づいてたから
  失敗についてはあんまりイジメないわよ」
『異世界の言語の理解。本来はまず起こりえない事象。
  主催者は私達が選択することで何らかの進化をする様子を
  観たがっているのかもしれない』

今度はミトスが動作を止める番。紙に書かれた文字を凝視している。
何かを喋ろうとするが言語化することを失敗したのか、
ひたすらに言葉にならない乱暴に何かを書き綴ろうとする。

「そんな怖い顔しないで落ち着きなさいよ」

そう言って、ハロルドはミトスの側に寄り、
ほとんど無理矢理に彼の手の震えを止める。
それを受けミトスは一拍の間をおき、深呼吸をした後ゆっくりとペンを動かす。


「自分で行っておきながらよく言う。何様のつもりだよ」
『つまり脳を細工して思い通りにするんじゃなくて
  脳を細工して最大限に機能を拡張するってことかい?
  それでこんなでたらめごちゃまぜな人口の場に
  死んだ奴も生きてる奴も放り込んで殺し合いをさせて
  進化を強制的に促すってことかい? それじゃあまるでサイグローグは』

「道化を装った神ってとこかしらね」
『あくまで仮説。間違っている可能性も反証もいくらでも思いつく』

誰も聞いたことがないほどの嘲りと侮蔑で作られた声音はハロルドのもの。
さしものミトスも度肝を抜かれたように顔を上げるが目に飛び込んだのは
スラリと伸びた細い脚。


「さってと、埒の開かない考察も言い合いっこも止めて出発しましょっか」

唐突にいつもの調子に戻り、立ったまま大きく伸びをしながら言うハロルド。

「実験は?」

「ま、あらかた終わったわよ。これ以上は助けを借りないと無理そうだし
  あのアホももうすぐ来るんじゃあね」

テキパキと出発の準備を整えるハロルド。
それをみてミトスも腰を上げ、ディバッグを肩に提げる。
デュランダルを二、三度振り馴染むことを確認した。

「じゃあ、とりあえず出口に行くわよ」

そう言いながら紙の束を持てるだけ持つ。
ほれ、と気の抜けるような掛け声と共にプラネットストームに投げ捨てる。

「いや……何してんの?」

突然の行動に呆れたような声を上げるミトスに
内容は全部頭に入ってるから大丈夫と答えるハロルド。

「ほとんどがイマイチな出来だったしー」

ミトスの為に残しておいた、メモの束という名の書類を渡すと、
二人はそのままアブソーブゲートを出て西の出口に向かう。
523勘話求題(代理投下):2010/08/01(日) 15:50:02 ID:De2QNix70
「それで? 何でも聞いてくれるんだっけ?」

少し湿った岩場を危なげなく歩きながらミトスに聞く。

「とは言ってもこの剣を渡さないといけない奴がいるし、
  カイル=デュナミスかディムロスを確保するつもりだけどね。
  その次なら聞いてもいい」

「じゃあ、そうねえ……首持ってきてくんない?」

「首輪じゃなくて?」
「そ、首。まあ、ボチボチ解剖マスタープリティキューティハロルドちゃんの本領発揮を始めたいってこと。
  あ、体はあなたにだけわかる所に埋めといてね。
  興味が湧いたらそっちもバラすから」

言葉を交わしながら二人は進む。
背後から道を踏み外した男がゆっくりと歩を進めていることを知りながら。

「まあいいけど、まさか全員の首を持って来いってこと?」

その言葉に少し笑みを浮かべながらハロルドはあんたアホね。と、返す。

「全員じゃなくていいわよ。ミクトランって奴とバルバトスって奴。
  後者は死体を見つけたらってことで。ミクトランも出来たらでいいからお願い。
  もちろんあなたが興味持った奴等の首でもオッケー。
  殺し合いに乗った奴ってのが大前提だけど」

「そのミクトランとバルバトスがソーディアンマスターってヤツ?」

「そんなとこね。後者は微妙だけどバルバトスなら身体情報も把握してるから
  比較も出来るわ。それと……」

ハロルドの纏う空気がほんの少し淀む。

「スタン=エルロン。
 ダメだこりゃってくらい改心の余地なく襲いかかってくるようならソイツもお願い」

「いいのかい? ジューダスに頼まれてたんだけど」

その言葉に肩をすくめ、手をヒラヒラさせながら答える。

「私はアイツほどお人好しにはなれないし、成る気もない。
  仲間を殺した奴にかける情けもない。
  あのニヒリストがコテンパンに殺られたんだし、
  仲間を集めて万全の態勢で殺すが吉でしょうけど」



しばらくの後、出口についた二人を移り行く彼誰時が迎える。
薄紫とも言える空を砂漠を覆う雪が
だがその光景を楽しむほど彼らはロマンチストではない。

「で、カイルって奴が何処にいるか見当つくかい?」

「子供は雪が好きだから、このまま雪の上を飛んでいけば見つかるんじゃないかしら?
  ついでにこの雪の正体も調べてきて」

「適当だね……じゃあ、僕は南に行くけどソッチはどうするの?」

「予想通りに計画が崩れちゃったからフィリア達の後を追うわよ。行き先もわかってるし」
524勘話求題(代理投下):2010/08/01(日) 15:52:46 ID:De2QNix70
「じゃあ、G2の街でおちあうことにしよう。僕も目的がある程度一段落したらソコに向かう」

ミトスはそう言って羽を生やし飛行を始めようとする。
止めたのはハロルドの言葉。

「言っとくけど、さっきのはあくまで私の考え。数あるうちの一つの推測に過ぎないわ。
  それを絶対に忘れないように。解答ミスのない人生なんてつまんないんだから」

立ち止まりながらもミトスが顔を向けることはない。
今度は遮られることなく空を飛び、風を切るミトス。


あ、あとアンタの荷物、整理しといたから。


最後にかけられた言葉はミトスに届くことはなく、
サックを開け苦虫を噛み潰したような表情になるのはもう少し先のことだった。

【ミトス・ユグドラシル@ミトス 生存確認】
状態:HPTP100% やる気+ 小さな罪悪感 大樹が気になる 天使化
支給品:ジェットブーツ エリクシール スペクタクルズ×10 ロイドの仮面セット(残り3枚)
    レーザーブレード   大量のハロルドの考察メモ
    イオンの首輪 デュランダル サック×2(ジューダス・スパーダ)
基本行動方針:取り敢えず死ぬ気は無いけど生きる気も無い
第一行動方針:この島の舞台裏の解明
第二行動方針(A):ルカにデュランダルを渡す
第二行動方針(B):カイル、もしくはディムロスを確保する(スタンを止める?)
第三行動方針:ティア探しにかこつけて、あの巨大なマナの正体を確かめる。
       出来れば感知した方向(現場)に行ってみたい。ティアは見かけたら回収。
第四行動方針:ミクトラン、バルバトスの首を集める。スタンも最悪の場合は対象にする。
あと、自分が役に立ちそうだと思った者も。
第五行動方針:ルーティの仲間へは隠しもしないがあえて真実をいう気もない。
       また事実を誤魔化す気もない。
第六行動方針:ハロルドにいつか「ぎゃふん」と言わせる
現在地:C4→南

【ハロルド・ベルセリオス 生存確認】
状態:HP90% TP80% 悲しみと元の世界の仲間達への心配 巨大な魔力(マナ)が気になる 生乾き
所持品:天才ハロルドの杖 スペクタクルズ×84 ローレライの宝珠 紫電 苦無×18 ミスティブルーム とうもろこし
基本行動方針:面白くないのでゲームには乗らない。但し殺しは認める
第一行動方針:フィリア達と合流。その後、G2へ向かう。解剖するチャンスが切実に欲しい
第二行動方針:スペクタクルズで未知の種族のデータ採取! 首輪と謎の魔力は取り敢えずミトスに任せた。
第三行動方針:宝珠関連の謎を調査。名簿のエミルという少年には注意する
第四行動方針:次にロニに会ったら殺す
現在位置:C4→西

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607 名前:戦え名無しさん[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 05:15:27
以上で投下終了です
規制中ですのでミスがないようでしたら
申し訳ないですが代理投下をお願いします


代理投下終了。執筆お疲れ様でした。
板移転のおかげか、4KB・60行/1レスとなっていたので、連投にあたって
レス数を減らすために、こちらの独断で複数のレスをまとめさせていただいてます。
525名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/01(日) 23:57:32 ID:D3J94F5x0
乙です
526名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/02(月) 06:53:12 ID:mK+mKuOC0
乙です!!!相変わらずのミトスとハロルドの掛け合いの面白さ。
ハロルドはルークたちとサレとの戦いに間に合うのか。ミトスはロイドと会うのか。色々と楽しみにさせられるSSでした。
527名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/06(金) 14:04:08 ID:/7tLx7vM0
tes
528名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/08(日) 07:17:03 ID:vU6Jhr7Z0
test
52924(代理投下):2010/08/08(日) 07:20:51 ID:vU6Jhr7Z0




時を刻む速度は変わらずとも、運命を刻む速度は時として激流の如く、彗星の如く加速する。












――0min――





ロイド達がエルレインとルカの追跡をかわすべく
黎明の塔を目指し飛翔を開始するその前後―

英雄を目指し、自らが犯した罪に正面から向き合うべく
駆け出したリアラは、暫くして僅かな力の断片を感じ取り、その足を止めた。
通常ならば感じ取る事など決して叶わぬ距離―
それを感じ取る事が出来たのは彼女が聖女としての過去と決別し、迷いを捨てたが故か、
ディムロスという晶術、そして奇跡の行使に必要な強大な触媒を所持していた故か、
それともその力が自分と同じ聖女に由来していたが故か―

「…エルレイン!」

リアラは力の正体を悟ると再び駆け出していた。
ディムロスが何事か問うが言葉を返す事も、走る速度を落とす事無く駆け続ける。
力を感じ取った理由などどうでもいい。重要なのはただ一つ。

――エルレインが神の代行者として、人々の幸福を妨げる罪人を粛清しようとしているという事

その罪人がバルバトスやミクトランのようなマーダーならばまだ良い。
…正直に言えばそうであれば有り難い話である。運が良ければ自分達の身の危険が減るからである。
だがもし相手がカイルやロイド達だったら?自分達のように神による幸福を否定した者達も
人々を幸福を阻む罪人として、彼女は間違い無くその者達を粛清するだろう。
ロイド自身がそう明言した事は無いが、今までの行動を見る限り、彼も決して
己が運命、未来を神に託すような選択は取らない。つまりエルレインの敵と十二分になり得る。

―最悪の事態をこれ以上繰り返してはいけない!

リアラの思念に感応したかの如く、ディムロスのコアが光り輝く。
それと同時に、リアラの走る速度が飛躍的に上がり、あっという間に彼女の姿は森の奥へと消えていった。
530名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/08(日) 07:22:36 ID:vU6Jhr7Z0
とと、投下宣言を忘れていました。申し訳ありません。
ただ今より代理投下いたします。
53124(代理投下) 2:2010/08/08(日) 07:26:53 ID:vU6Jhr7Z0
――5min――





―畜生っ!まさか…まさか逃げ出すなんて…取り逃がすなんてっ!!!

ルカはロイドを追い掛けながら歯をギリギリ噛みしめていた。

畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生ッッ!!!!!!
畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生ッッ!!!!!!

その瞳に憎悪の炎が燃え滾り、幾度も精神世界で感情が大噴火を起こす。
天を統べる覇者が、古の時代、地上を犇く大軍勢を事も無げに葬り去ってきた魔王である自分が
たかだか血と罪に塗れた天使如きに膝を付かされただと?それも本気の一撃では無く、手加減された一撃で――!

信じられない、否、信じたくない。だが鳩尾に残る強い痛みが、
ルカの身体に重しの如く絡みつく感覚が、それが事実である事を嫌と言うほど認識させる。
それでもまだ、あの時ロイドが向かってきたならば、返り討ちにし、あの背に生えた翼を毟り、
両腕両足を?ぎ取り、絶望と苦痛に満ちた表情を眺めながらその首を刎ねて溜飲を下げる事が出来ただろう。
だが現実はこちらに挑むどころか、一目散に逃げ出す始末である。
ルカ――魔王アスラの怒りと憎悪は頂点まで達しようとしていたのは無理からぬ話である。

―殺す!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すッッ!!!!!!
この魔王アスラの手で、魂の底にまで苦痛と激痛を刻み込んで殺してやるッッ!!!!!!!!

幾ら天使と言えどもあの傷ではそこまで遠くには逃げられない。
ましてご丁寧に血の跡まで残している。どこに逃げようとも隠れようとも追いつき、見つけ出すのは容易の筈だ。

「待っていろ…!絶対に捕えて嬲り殺してやるッッ!!!」

まだ身体に痛みは残るが、こうして走る事は出来るのだ。
まして自分は魔王アスラ。この程度で屈するほど堕ちてなどいない!
ルカは杖をさらに力強く握りしめると、走る速度を上げようとする―否、上げようとした。


53224(代理投下) 3:2010/08/08(日) 07:27:46 ID:vU6Jhr7Z0



―何をしている?否、何を見ている?





速度が極端に落ち、ついには立ち止まってしまったルカの足。
エルレインに視線を移したルカが見たのは、先程まで共にロイドを殺すべく駆けていた筈のエルレインが立ち止まり、
今ロイドが逃げた方角とはまるで違う方向を凝視している姿。

ルカの口から抗議や非難の言葉は出なかった。
否、出したくとも出なかったと言った方が正しいだろう。
ロイドと対峙した時とはまるで比較にならないような威圧感。
まるで幾世代も積み重ねて来た憎悪と嫌悪を集約させたような、圧倒的な恐怖――
ルカの薄っぺらな憎悪は瞬時に呑み込まれてしまっていた。

エルレインが突如変貌した理由は明快だった。
ロイドを追い掛けていたエルレインもまた、その途中で気付いたのだ。
今まさにソーディアンが持つ莫大なレンズエネルギーと共に、ここにある人物が向かってきていることを。
その者がかつて同じ神の力によって生み出され、そしてあろうことか聖女の使命を放棄した、
ロイド=アーヴィング以上の大罪人であるということを―――
53324(代理投下) 4:2010/08/08(日) 07:28:44 ID:vU6Jhr7Z0
――10min――





常人ならば到底不可能な、仮に可能だとしても1分と保たず
その身が確実に破綻しても可笑しくない速度で、リアラはひたすらに駆け続けている。
その点にディムロスは驚嘆を禁じえなかった。心境の変化、迷いを捨てたことがキッカケだとしても
この飛躍的な身体能力の向上をどう説明すれば良いのか、ディムロスは改めて彼女の素性に疑問を抱く。

一方、ディムロスという強大なレンズエネルギーを糧に奇跡を行使し、自らの身体能力を向上させて
駆け続けるリアラの胸中には自嘲と後悔の念と、そして恐怖の念が渦巻いていた。
皮肉にも聖女としての過去と決別したことで、今は神の奇跡をエルレインと遜色なく行使出来る。
その力があれば、ナナリーもルビアも死なせずに死んだのではないのか?
考えても詮無き事であり、過去を幾ら悔いても戻す事は出来ないのは分かっていても、その思考は絶えず胸の奥から湧き上がってくる。
ならばせめて、今もなおどこかで生きて戦い続けている大切な人達と再会し、共に戦い、この世界から脱出する――
そう心に決めても、同時にもう手遅れなのではという恐怖の念も湧きあがって来る。
今こうしている間にカイルが、ロニが、ジューダスが、ハロルドが、ロイドが、皆が殺されていたら?
血に染まり、あるいは炭の如く炭化し、あるいは水底で沈み、あるいは毒で悶え苦しみ、血を吐いて…―

――ダメッ!!!

リアラは思いっきり頭を振って不吉な想像を追い払う。
迷っちゃダメ!恐れちゃダメ!ソーディアンマスター、リアラ=デュナミス!!
今私が為すべき事は、エルレインの元に向かう事、そしてカイルやロイド達が襲われていたら助ける事よ!
リアラはさらに踏み出す足に力を込める。力の行使を感じ取った場所まで後少し―――――――


次の瞬間、世界が白く輝いたような気がした。





53424(代理投下) 5:2010/08/08(日) 07:29:54 ID:vU6Jhr7Z0




同時刻――



クロエを背負い、シンクを抱えて飛翔し、橋の落ちた渓谷を渡り終えたロイドは、
その背後に凄まじい衝撃音を聴覚に捉え、思わず背後を振り向いた。
2人が追い掛けて来たのかと思ったがそうでは無かった。どうやら震源は遥か東―
そこに砂埃が濛々と立ち込めているのが微かに見えた。
無論、天使視覚を備えた今のロイドで無ければ到底視認出来なかっただろうが。

「どうしたアーヴィング?」

背負われていたクロエが、不審そうな表情でロイドに尋ねた。
シンクも同様の表情を浮かべている。それは先程の衝撃音が
聞こえなかった事を意味している。だが聞こえていようがいまいが
ロイドにとっては然程重大事では無かった。

何時の間にか、背後から迫っていた筈の足音が聞こえなくなっている。
渓谷で足止めを食らったのかと思ったが、先程まで自分達がいた場所に
2人の姿は無い。どこかで追跡を止めたらしい。だがそうなると
どこに行った?それ以前に何故追跡を止めた?その疑問が、先程の衝撃音と結びついた。


―あのエリアにいて、生き残ったのは自分達と、そして…

「…リアラ!」

その答えに行き着いた瞬間、ロイドの身体を戦慄が貫いた。


53524(代理投下) 6:2010/08/08(日) 07:31:43 ID:vU6Jhr7Z0
――12min――





土埃と灰が舞い、視界は数メートル先もハッキリ視認出来ないほどに薄暗い。
太く立派な木々は楊枝の如くへし折れ、草木や花は燃え続け次々と灰と化し、
大地は至る所に抉られたような跡が刻み込まれていた。

その原因を作りだしたエルレインは、無表情でその光景を眺めている。
リアラの接近に気付き、その膨大な晶力と気配を隠し、その射程に捉えた瞬間に解き放たれた上級晶術『ディヴァインセイバー』
悪しき魂を浄化し、肉体を喰らい尽くす神の雷は、発動速度から言っても回避は不可能であるし、仮に防御出来ても致命傷は免れない。
事実、目の前に広がる荒れ果てた世界にソーディアンのレンズエネルギー以外の力は何も感じられない。
エルレインは特に警戒もせず、ソーディアンを回収すべくゆっくり足を踏み出した。

――何だよあれ…僕はこの後あんな化け物を相手にしなきゃいけないっていうの…?

その背後で、ルカは恐怖で膝が崩れそうになるのを必死に抑えていた。
冒険を始めた当初であれば、腰を抜かし、失禁していたかもしれない。
ロイドの追跡を止め、突如違う方角に向かって歩き出したエルレインに已むなく付いて行った先で見たのは、
圧倒的な天術によって荒廃した大地。冗談じゃない。あんな一撃をまともに受けたら、魔王アスラと言えども只では済まない。

―ここで殺すべきか?否、殺すべきだ

ルカは恐怖を抱きつつも、殺意を込めた視線をエルレインに向ける。
この先イリアやリカルドを殺したような連中と戦う上で、エルレインの力は確かに必要かもしれないが、
後顧の憂いを考えるならば、今ここで確実に殺しておくべきである。
幸いエルレインは隙を見せている。今ここで全力を以って挑めば殺せる筈である。
たとえ異世界の神であっても、自分は幾千年も戦場を支配した魔王アスラ。何も恐れることはない。
ルカは震える身体を必死に抑えながら、杖をゆっくり構える。
そんなルカの様子に気付く事無くソーディアンを探すエルエインは、
砕けた岩の合間から覗くソーディアンの刀身を視界に捉えた。
当然ソーディアン1本では到底このバトルロワイヤルの破壊は叶わぬことだが、
それでも強大な力となり得る。まずは1本――

536名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/08(日) 13:18:53 ID:lbOl5X3b0
テスト
53724(代理投下) 7:2010/08/08(日) 13:21:02 ID:lbOl5X3b0
エルレインが一歩踏み出した次の瞬間、それは起こった。



「……………!」

一瞬エルレインは何が起こったか判断出来なかった。
気付いたのは、自らの身体を包み込む炎。そして灼熱感と激痛。
エルレインは耐え難い苦痛に思わず悲鳴を上げそうになった。
晶力は何も感じなかった。なのに何故炎が私を包み込んでいる!?
苦痛に耐えながら思考を必死に巡らすエルレインの視線に、ルカが映る。
杖を構えたまま、驚愕の表情を浮かべ立ち尽くすルカ。
まさかルカ、貴方が―――僅かとはいえ、エルレインの脳裏を過った疑惑。
その一瞬の疑惑が、エルレインの背後の存在に、そして晶術の詠唱の感知を遅らせる結果となった。

「うう、後ろっ!」

ルカの上ずった声に、エルレインはハッと振り向く。
エルレインの視界に映るは突如動き出したソーディアン――
否!ソーディアンを手にした、死んだ筈の忌まわしき聖女リアラ!


「スパイラルフレア!」

ディムロスの刀身が一際紅く輝き、次の瞬間、渦巻く灼熱の炎がエルレイン目掛けて襲いかかった。
エルレインは咄嗟に腕を突き出し防御壁を目の前に展開する。間一髪で、致命的な結末を免れたものの、
灼炎の渦が生み出す衝撃がその身を激しく叩き、次々と木々を薙ぎ倒しながらエルレインは弾き飛ばされてしまった。

―馬鹿な!?何故あの一撃を受けて生きていられる?それにその力は…!?

身体を蝕む火傷の痛みと、背中に走る衝撃と苦痛に顔を歪めながら、エルレインは驚愕を隠せずにいた。
よく見ればリアラの身体は神の雷により傷つき、服も所々が焼き焦げている。だが到底致命傷とは言い難い。
たしかにリアラの手元には、神の奇跡を行使するのに欠かせない強大なレンズエネルギーが、ソーディアンがある。
奇跡の行使により、咄嗟に強大な防御壁を展開する事も、先程の自分のように晶力を隠し晶術を放つ事も不可能ではない。
だがあれ程までに無力で、救うべき存在に守られるだけの出来損ないの聖女に、そのような真似が…!
53824(代理投下) 8:2010/08/08(日) 13:23:49 ID:lbOl5X3b0
「―たしかに私は無力よ。目の前の仲間を、少女を助けることも出来ない、無力で愚かな存在」

エルレインの思考を読んだかのように、リアラは静かに言葉を発する。
声は大きくない。だが、その言葉に有無言わさぬ威圧感が宿り、エルレインは思わず息を凝らす。
時間にして数秒――だが、その数秒が、リアラの詠唱の感知を再び遅らせてしまう。
我に返ったエルレインは、咄嗟に詠唱を中断させるべく両腕を突き出し、精神力を集中させる。
だがエルレインの晶術構築よりも早く、ディムロスの刀身が、再び紅く輝きだす。それも先程よりも強く――
エルレインの脳内で警鐘が鳴る。詠唱妨害も、回避も不可――この場で取る手段は――相殺。
即座にエルレインは詠唱破棄し、新たな晶術の詠唱を開始する。

「だから私は、聖女に縛られる道では無く、人として、普通の女の子として生きる道を、英雄を目指す道を選んだ」

その言葉と同時に、ディムロスの刀身が一際紅く輝く。次の瞬間に巻き起こるは大地を灰燼と帰す焔の狂嵐。
だが、僅かに早く構築されたエルレインの晶術が、エルレインの周囲を絶対零度の冷気で凍結させ、
焔をエルレインの身体を焼き尽くす前に“蒸発”という2文字の悲鳴と共に水蒸気に変える。
それでも、本来攻撃用の晶術を防御用として構築したことで、エルレインは絶対零度により体温低下、そして四肢の凍傷を引き起こしていた。
だが、己が身体を覆う冷気とは対照的に、エルレインの精神は憤怒の炎が燃え盛り、その理性を焼き尽くしていく。

「…気はたしかか?己が無力さを知りながら、さらに弱く儚い存在である人に成り下がるだと?」
「人は弱くないわ。たしかに、悲しみや憎しみ、苦しみで進むべき道を見失う時もあるかもしれない。
けど、人にはそれを乗り越える強さがある。そして自らの手で幸せを掴み、未来を紡ぐ力がある。
それは決して、聖女や神の力をもってしても叶わない事――――――」
「――この愚か者が!人々が己が弱さ故に負の感情、負の連鎖に囚われ、逃れられずにいるからこそ、我らが存在するのだ!
その者達の救いを求める願い、幸福を求める思いこそ、我々がこの世に顕現せし理由!それをお前は否定するというのか!?」

エルレインの憤怒に満ち溢れた怒声と共に、リアラは周囲が急速に凍りつき始めたのを肌で感じ取る。
氷の棺にその身を囚われ、その身と魂を「終焉」へと誘う上級晶術『インブレイスエンド』
リアラは即座に精神を集中させると、素早く後方に飛び下がり、無慈悲なる終焉の棺から間半髪の差で逃れる。
同時にディムロスを構え直し、詠唱を開始し精神力を再び集中させる。だが、次の詠唱を許すほどエルレインは甘くない。
エルレインはリアラの詠唱に気付くと、右腕を突き出し、3つの光弾をリアラ目掛けて高速で撃ち出す。
本来なら回避不可能な速度――だが、奇跡の行使により底上げされたリアラの身体能力は、
再びエルレインの予想を上回った。リアラは詠唱を中断する事無く、僅かにサイドステップしただけで
デルタレイを回避する。目を見張るエルレイン―――その時、ディムロスの刀身が紅く輝き始めた。
先程のスパイラルフレア、フレアトーネードよりもさらに紅く、そして力強い輝き――


「私達が…フォルトゥナがこの世に生み出されたのは、たしかに人々の幸せになりたいという願いよ。
だけど、人々が持つ強さを、可能性を理解しようとせず、己の価値観のみを押し付ける聖女や神に、人々を本当の幸せに導く事なんて出来ない。
現に貴女は、マオのことを何も知ろうとも、見ようともしてなかった。だから―――――」

最後の言葉は、ディムロスから解き放たれた爆発的な破壊力を秘めた、紅蓮に輝く小さな恒星に掻き消された―――
53924(代理投下) 9:2010/08/08(日) 13:28:21 ID:lbOl5X3b0
――14min――




迫りくる紅蓮の恒星―ソレが秘めた晶力が解放されれば、仮に全晶力を防御に回しても致命傷は免れない。
この短時間での相殺は不可――エルレインは、僅かな時間で正確に判断していた。正に絶体絶命の危機――
だが今のエルレインにとって、自らの命の危機は重大事では無かった。

エルレインは、掻き消されたリアラの最後の言葉をハッキリと耳に捉えていた。



“救えなかったのよ”



己が救いを、想いを、全ての行為を根底から否定する一言―――
それが、エルレインの理性の糸を断ち切った。


黙れ


黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ


黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れッッッ!!!!!



「貴様に……人々の救済という使命を放棄した大罪人に………」

エルエインの中で、爆発的に負の思念が膨れ上がっていく。

「私の……私の一体何が、分かると言うのだあぁあああああぁぁぁぁぁあああッッッッ!!!!!!!!」


エルレインの憎悪と憤怒の怒声と共に具現したのは、嘗て無いほど禍々しく強大な流星の輝き。
それは紅蓮の恒星を上回る破壊力を秘めた、上級晶術を遥かに超える最上級晶術が1つ『トゥインクルスター』
視界を焼き尽くすかのような眩い輝きに、紅蓮の恒星が音も無く呑み込まれ、一瞬の間を置いて、
凄まじい轟音と衝撃が、リアラとエルレインの身体を激しく包み込む。

(馬鹿な…奴はここまで威力の高い晶術をあの僅かな時間で構築し放てるというのか!?)

ディムロスは驚愕した。リアラの正体は分からずとも、彼女が力を行使する際、自分達ソーディアンの核と言える
コアクリスタルに秘められた莫大なエネルギーを精神力と引き換えに利用している事には、ここに至るまでに気付いていた。
同時に、移動だけならまだしも、戦闘ともなれば今のリアラでは長期戦は持ち堪えられないということにも――。
故にディムロスはリアラと共に短期決戦を目指した。晶術『フレイムウォール』による奇襲攻撃から
上級晶術で一挙に決着を付ける作戦。ここまでのリアラの戦い方は、ディムロスから見ても全く問題無い内容。
事実、最後に放ったエクスプロードで勝負に決着が着く筈だった。それが何故このようなことになる!?
54024(代理投下) 10:2010/08/08(日) 13:30:41 ID:lbOl5X3b0
皮肉にも、エルレインの奇跡の行使を最大限まで高めたのは、人々を救済するという使命でも、
願いでも無く、理性を根こそぎ吹き飛ばす激しい憎悪と憤怒の感情――――
エルレインはこの時、リアラとは全く別の形で聖女の縛りから解放されていた。

無論、リアラとディムロスに、エルレインに起こった事など知る由も無い。
今問題なのは、このままでは確実に自分が――最悪の場合、ディムロスと共にこの世から跡形無く消えかねないということ。
幸い詠唱を省略して発動させた影響故か、威力の劣るエクスプロードでも辛うじて耐え凌げてはいるが、何時までも長く抑え込めるものではない。
事実、リアラは限界が近かった。視界が歪み、腕に、膝に力が徐々に入らなくなり、傷口が開き血が流れ始めている。
その様子をエルレインが見逃す筈が無く、憎悪の念をさらに高め、リアラに向かって呪いの言葉を大声で叫ぶ。

「死ねえぇええッッ!!!!!貴様の幻想諸共、跡形も無く消えるが良いぃいいいいいっ!!!!!」
「消え、ない…私には…まだ為すべき事が…叶えたい事がある……」

それも最早叶わないかもしれない。ここまで術の威力に差がある以上、死の運命は避けられないかもしれない。
それでも諦めない。諦めてたまるか――私の力の全てを以って、エルレイン、貴女を倒す―――!!!
リアラの決意に呼応するかのように、ディムロスのコアクリスタルが輝き、消えかかった力が再び身体に集まりだす。

「貴女の、思い通りには……」

強大な流星の輝きに圧倒されかかっていた紅蓮の恒星が、
より激しく燃え盛り、紅く輝きだす。そして――――――――――


「――――させないッッッ!!!!!」


次の瞬間、世界を揺るがすかのような衝撃と輝きと共に、希望も絶望も何もかも根こそぎ消し飛ばすような大爆発が辺りを包み込んだ――――
54124(代理投下) 11:2010/08/08(日) 13:33:14 ID:lbOl5X3b0
リアラは、自分の身に起こった出来事を最初認識出来なかった。
自分が宙を舞っている事に気付いたのは5秒後、
何故自分が宙を舞っているのか、その理由を知ったのがさらに5秒後である。
だがそれはあくまでリアラの感覚であり、現実には5秒も経っていない。
爆発の影響で自分の感覚に乱れが生じたのか、死を前に死神が猶予でも与えてくれたのか――
いずれにせよ、リアラを取り巻く世界は、現実では考えられない程ゆっくりと時を刻んでいた。
そしてリアラは、今まさに自分が、先程の戦いで折れ、槍のような姿を晒す樹木に向かって落下しつつあることに気付いた。
力を行使すればいとも容易く回避出来そうだが、自分の身体も、世界と同じくゆっくりとしか動けない。
何より、大量に精神力を消耗した影響か、全く力が集まらない。最早百舌の早贄のように串刺しとなり、
一巻の終わりという最悪の結末から避けられない絶体絶命の状況。

――まだ、終われ…ない…諦め…ない…!

それでも、リアラは諦めなかった。童話や物語の中なら、王子様が、勇者が、ヒーローが、英雄が颯爽と現われ、
このような危機から姫を、ヒロインを救ってくれるのだろうが、こんな狂気の舞台でそんな夢のような話が有り得る訳がなく、
また昔の自分ならともかく、現実から逃避してそんな陳腐な夢や幻想を抱くなど今の自分はするつもりなんてない。
カイルならきっと、こんな状況でも絶対に諦めなかった筈だ。だから私も最後まで諦めない。
ロイド達に会い、この思いを伝えるために、いつかカイルの隣に対等な立場で立ち、一緒に笑える同じ英雄になるために。


――だから、ほんの少しでもいい!動いて、私の身体ッ!!!





かつて誰かが言った。
<都合の良い奇跡など訪れはしない。何より夢などそこには存在しない。決して逆らえぬ運命がそこにはある>
それは1つの真実の姿。リアラの必死の思いも空しく、身体は僅かしか動かず、死が間近に迫る――

一方で誰かが言った。
<只待つだけの者に奇跡など訪れない。己が力を最後まで信じ、諦めなかった者のみ運命が開け、奇跡は訪れるのだ>
それも1つの真実の姿。リアラの力は死の運命を変えられなかった。だが運命はたしかに開けた。



―――リアラッ!!!!!



空より飛翔せし 蒼い翼を持つ“奇跡”が、死の運命を断ち切った―――
54224(代理投下) 12:2010/08/08(日) 13:35:27 ID:lbOl5X3b0
――15min――





蒼い翼が煌めき、少女の身体が再び空に舞うと同時に、
世界は再び元の速さで時を刻み出した。

「良かった…何とか間に合ったぜ」

奇跡を齎した蒼い翼の持ち主であるロイド=アーヴィングは、
リアラを抱えながら安堵の表情を浮かべた。

「ロイド………?」
“どうして”とか“何で”という言葉が後に続きそうだが、
リアラの口からは、自分を抱えて空を舞う少年の名前しか出て来なかった。
それだけ今の状態はリアラにとって信じられない、有り得ないことだったとも言える。
驚きの余り言葉が出ないリアラに、ロイドは笑って言った。

「俺は馬鹿だから、難しいことはよく分からない。だけど仲間が危険な目に遭ってるなら、俺は何としてでも助けたい」
「仲、間………?」
「たとえ何があっても、俺達は仲間だ。誰が何て言おうと、な」

その言葉にリアラは、目の奥が熱くなるのを感じ、体が震えた。
戦いの中で失われた力が、暖かな思いと共に少しずつ身体に戻って行く。
リアラは言葉を紡ごうとしたが、話したい事や謝りたい事はいっぱいありすぎて
思いがなかなか言葉にならず、そんな自分にもどかしさを覚える。
それでもロイドには十分すぎる程通じていた。ロイドはポンっとリアラの頭に手を置き、
軽々と態勢を整えてリアラを背負うと優しく微笑んだ。

「さ、戻ろうぜ。クロエとシンクが待っている。これからどうするか、話はそれからだ」
「…ええ!」

リアラは笑顔で頷き、ロイドの背中に掴まる。そして一瞬の間――
54324(代理投下) 13:2010/08/08(日) 13:37:21 ID:lbOl5X3b0
―――え?
(……………シンク、だと?)


リアラとディムロスの意識に突如危険信号が灯る。
安堵と歓喜の念が、一瞬で疑惑に変わり、リアラの心を脈打つ。
何故ノーマとディストを殺したシンクが――?

「ロイド…何故シンクが――」

リアラがロイドに疑問を投げかけようとした、次の瞬間――
ロイドは全身の感覚が逆立つのを感じ、咄嗟にリアラを背負ったまま横に飛ぶ。
半瞬ほどの間を置いて、ロイド達がつい先程までいた場所を幾千もの雷が襲いかかる。
態勢を何とか整え、事態を把握しようとしたロイド達は思わず瞠目した。

「…1度ならず2度も逃れられると思ったか?罪人ロイド=アーヴィング」
「エルレイン…!」
「おいおい…マジかよ…!?」

ロイド達の視界が捉えた物は、身体のあちこちが焼け焦げ、顔に酷い火傷を負いながらも、
圧倒的な威圧感と殺気、そして憎悪を纏い、空に浮かぶエルレインの姿。
その姿は最早人々を救う神では無く、死と破滅を齎す死神――否、破壊神を連想させる。
ロイドとリアラは思わず息を凝らした。

(まだあれ程の力を有しているとは…完全に読み誤ったか…!)

悉くこちらの読みを上回るエルレインに、ディムロスは己が読みの甘さに歯噛みする。
…尤も、この場合ディムロスが“甘い”というより、エルレインが異常に“辛い”と言う方を
指示する者の方が多かったに違いないだろうが、当事者の慰めにならないのは言うまでも無い。

ロイドは何時でも動けるように、リアラを背負ったまま静かに身構える。
全身に大きな傷を負っていても、これだけの殺気と威圧感を放つ相手に
リアラを背負ったまま勝てるとはロイドには到底思えない。だが逃げるにしても、
クロエとシンクがいる西の方角をエルレインが塞ぐように空に浮かんでいる以上、
強行突破でもしない限り西へは逃げられない。北か南、あるいは東に逃げる手もあるが、
目的地も定めず無暗に飛べば、最悪禁止エリアに踏み込んでしまい、2人揃って爆死という
最悪の事態にもなりかねない。どうする?考えろロイド=アーヴィング!
思考の逡巡――だがそれはほんの数秒で終わる事となる。
突如として熱風が真下から吹き付けて来たからだ。
54424(代理投下) 14:2010/08/08(日) 13:39:27 ID:lbOl5X3b0
―――真下?熱風?

身に迫る危機を察し、視線を真下に移したロイドが見たのは
紅蓮に輝く鳳凰――否!ルカ・ミルダ!


「今度は逃がさないよ?その薄っぺらな理想論も希望も、何もかも僕が焼き尽くしてあげるよ」


常識を根底から覆した余りに凄まじい戦いに、完全に呑まれてしまったルカの殺意や戦意は、
ロイドの登場と共に再び激しく燃え始めた。先程この魔王アスラに傷を負わせ逃げ出し、
そして今、天統べる覇者を差し置いて空を舞い、世界に仇為す化け物女を背負い再び逃げようとする
無礼非礼の極み、断じて許す事は出来ない。故に、今ここで、魔王アスラの名の下に――――死ね
鮮血に飢え、狂気に満ちた笑みを浮かべ、眼下に迫りくるルカ。
その表情と、その身に纏う極炎の熱波に、ロイドの脳内に嘗て無いほどの警鐘が鳴り響く。

「鳳凰――」

――こいつはやばい…!

先程の鳳凰天駆の比ではない。それは全てを灰燼へと帰す灼熱の鳳凰―
触れる者全てを地獄へと誘う地獄の業火!これを受ける訳にはいかない!回避は…ダメだ、今からじゃ間に合わない!

(当たり前だよ。ロイドさんだけならともかく、そんな化け物女を背負ってちゃ、ね)

ロイドの思考を読んだかのように、ルカは鼻で嗤った。
リアラを背負っていては、回避は勿論不可能、迎撃も満足には出来ない――
それが分かっていたからこそ、ルカは勝負を仕掛けたのだ。
この魔王アスラの力をもってすれば、戦機を捉える事など欠伸が出る程容易な事―
あとはこのまま2人まとめて灰燼と化すだけである。今度こそ勝負あった。
本来なら思考の暇すらないこの僅かな時間でルカは勝利を確信し、哄笑しようと口を開いた。
54524(代理投下) 15:2010/08/08(日) 13:40:58 ID:lbOl5X3b0
――――アレは、何?


だが、口を開けたままルカの表情は、瞬時に凍りついてしまった。
ルカの狂気に歪んだ瞳が捉えたのは、ロイドの右手に輝く光――否、一振りの剣。
その名は『聖剣ロストセレスティ』


「――――猛虎」


ロイドは右手をゆっくり振りかぶり、同時に手にした聖剣ロストセレスティの輝きがさらに強まる。
――それは嘗て己が支配した聖剣デュランダルに匹敵する、万物を支配し、そして破壊する圧倒的な力。
何故そんなものがロイドの手に?ルカの全身に再び恐怖が走った。万が一にもあの一撃をまともに受けたら、
間違い無くGAMEOVER、まるで神に逆らいし愚かな悪魔の如く、呆気なく命を落とす―――

…ちょっと待てよ。神に滅ぼされる愚かな悪魔?逆だろルカ=ミルダ、否――魔王アスラ。

たしかに僕は魔王だが、それは悪しき存在を撃ち滅ぼし、世界を平和に導く正義の存在!
逆にロイド=アーヴィングこそ、この世を滅ぼす悪しき堕天使、悪神なのだ!
正義と悪―――この両者が戦い勝つのは何時の世も正義という2文字!


――どんな力で来ようと、この魔王アスラの絶対的正義の前に敵は無いッッ!!!


ルカは手にした聖杖を握る力を強め、
再び殺意と戦意をその身に纏ってロイドに肉薄する。
そして――


「―――――豪破斬!!!」
「―――――天翔駆!!!」


振り下ろされた聖なる光と灼熱の鳳凰の邂逅―――
半瞬にも満たぬ刹那の静寂の後、光と炎の融合によって
閃光と共に神の雷すら凌駕する破滅の産声が響き渡った。
54624@代理:2010/08/08(日) 19:25:12 ID:3UhwwXgr0
――16min――





暴虐なる烈風と衝撃が、周囲の世界を根こそぎ吹き飛ばして行く。
ルカは地面に激しく叩きつけられ、己が身体で地面を抉り、木々を薙ぎ倒しながら転がっていき、
ロイドはリアラを背負ったまま世界が2転3転するのを感じながら、宙に刎ね飛ばされる。
両者相討ち―――――もしこの場に居合わせたものがいれば、そう判断してもおかしくない光景。
たしかに得物は同じ聖なる武具―聖剣ロストセレスティと聖杖ユニコーンホーン。
解放された力は共に勝利を約束する必殺の一撃。


――両者を分けたのは、覚悟の違い。

嘗て自分達が生まれ育った世界で、大いなる実りを発芽させた際に放った力――
己がマナを―――生命を削り、聖剣ロストセレスティに込めた覚悟の一撃。


勝ったのはロイドだった。


ロイドは必死に空中で態勢を整えながら、素早く周囲を見渡す。
二転三転する視界が捉えたのは、木々を薙ぎ倒し地面を転がっていくルカの姿と、
自分と同じく強大無比な力の嵐に耐えきれず宙に刎ね飛ばされるエルレインの姿。
時間にしてこの間僅か数秒。だがその数秒が、ロイド達にとって脱出には十分すぎる時間だった。

「リアラ!俺の背中にしっかり捕まってろッ!!!」
「え、ええッ!!」

視界が二転三転したため、どこを飛ぶことになるか方角は定まらない。
下手をすれば禁止エリアに踏み込んで一巻の終わりという事もあり得る。
また地面に叩き付けられたルカの安否も気がかりではあった。
だがこの期を逃すと恐らく逃げきれない。チャンスは今だけしかない!
そう判断したロイドは叫ぶと同時にありったけの力を集中させ、一気に飛翔する。
だが、エルレインとてこのまま易々とロイド達を取り逃がすほど甘くも優しくも無い。

「…逃がさぬぞ、ロイド=アーヴィングッ!!そしてリアラッ!!!」

ロイド達と同じく宙に刎ね飛ばされたエルレインも空中で態勢を素早く整えると、
逃走するロイド達を睨みつけ、精神集中する。飛翔する瞬間、視界に映るは地面に倒れ伏すルカの姿――
本当ならすぐにでも駆け寄り安否を確認し、手当てをしてやりたい。
仮に無事であっても、自分がロイド達を追いかけている間に罪無き人々に危害を加えないかどうか不安も大きい。
だが、このまま大罪人2人を取り逃がす事など断じて許される事では無い。
再び憎悪と憤怒の念をその身に纏い、情や不安を心の奥底に追いやると、エルレインはロイド達の追跡に入った。


54724@代理 17:2010/08/08(日) 19:27:04 ID:3UhwwXgr0
――20min――





「くそっ!どこまで追いかけて来るつもりだよ!?」


文句を言って事態が変わる訳が無いし、追いかける側が自分達の都合を考慮することなどまず無いことは
さすがのロイドの頭でも分かることだが、それでもロイド達の少し後方を不即不離で飛行追跡してくる
エルレインのしつこさには、さすがに苛立ちを隠せなかった。

「早くクロエとシンクに合流しなければならないってのに……このままじゃキリが無いぜ」
(シンクか………我々が離れた間に何が起きたというのか―――)

ロイドの言葉を聞きながら、ディムロスは疑問を感じずにはいられない。
リアラも無言ではあったがディムロスと同様であった。
ディストとノーマを殺したシンクの元に戻ると言う言葉の意味は、
ロイドはシンクの行った行為に気付いていないということ――

(いや、それは無い)

ディムロスは即座に己の考えを否定する。アトワイトを通じてシンクの裏切りは伝えてある。
アトワイトの傍にいたロイドがその事実を知らぬ筈はない。となると、次に考えられるのは
その行為を知りながらも、ロイドがシンクを許したということか――――。
正直信じ難い話ではあったが、たしかに、突如として牙を剥くまでのシンクは
善き仲間を演じ続けていた。その演技力は敵ながらも認めざるをえないものであった。
さらに間が悪かった事に、ルビアを手にかけてしまった瞬間をロイドは目にしてしまっていた。
シンク程の策士であれば、そのロイドの驚愕と動揺に突け込み、見事納得させ
逆に信頼を勝ち得る事も不可能ではないかもしれない…。
ディムロスはそこで思考を一時中断すると、ロイドに問いかけた。

『ロイド、クロエとシンクとはどこで落ち合う予定だ?』
「ここから西に見えた塔で落ち合おうつもりだったけど…あいつを撒くまでは無理そうだぜ…!」
『…ロイド、仮に奴を上手く撒いたとしても、西の塔に行くのはひとまず控えろ』
「な、何でだよ?」
『我々を見失ったとしても、奴の様子から見て簡単に捜索を諦めるとは思えん。下手に動けばすぐ捕捉されかねない。
何より――お前が何故重傷を負ってそこまで動けるかは分からぬが、このまま何の手当ても無く動き続けたら、確実に死ぬぞ』
「………………ッッ!」

ディムロスの指摘に、ロイドは言葉に詰まった。
今の自分の状態は、ディムロスに言われるまでも無く知っている。
恐らく天使化を解いた瞬間、待つモノは“死”何かしらの手を打たねばその運命から逃れる事は出来ない。
ロイドとて死にたくは無い。元の世界には、自分の帰りを待つ者達がいる。
だが一方で、クロエとシンクの身も心配なのだ。西の塔に向かう途中で、万一襲われでもしたら
非常に危険な状態に陥るのは間違いない。最悪の場合、2人共――――


54824@代理 18:2010/08/08(日) 19:28:29 ID:3UhwwXgr0
その時、ロイドの不安を見透かしたかのように、リアラが優しく言った。

「ロイド、2人が心配なのはよく分かるわ。でも私とディムロスは、貴方の身体の事も心配なのよ」

ロイドの右胸に出来た傷に気付き、リアラが驚愕の余り血の気が引いたのはほんの数分前。
事情をロイドから手短に聞いたが、何故この傷で生きてられるのかという疑問は解決出来なかった。
だが、その疑問以上に気がかりなのは、ロイドに残された命があとどれぐらい持つかという事。
いかにロイドが超人的な力を秘めているとはいえ、このままでは長くは持たない事は一目瞭然であった。

「この世界でどこまで治療出来るか分からないけど…まずは落ち着ける場所を探して、そこで治療して、それから急いでクロエ達の元に向かいましょう?」
「……ああ!」

ロイドが納得したのを見て、リアラとディムロスは安堵の念を抱いた。
今この状況下でロイドに真実を伝える事は、無用の動揺を誘い百害しかない。
まずはエルレインの手から完全に逃れ、落ち着ける場所まで移動する事が先決。
とはいえ、このままでは延々とこの追跡劇が続きかねない。どのような手を打つべきか――
その時、リアラ達の視界に巨大な建造物が目に付いた。
それはかつてディストが、この世界からの脱出の手がかりがあると睨んでいた、
同時にロイド達が当初向かおうとしていた、惑星オールドランドの巨大遺物―レムの塔。

『ロイド!』
「分かってる!ひとまずあの塔の屋上まで一気に行く!リアラ!しっかり捕まってろ!」
「ええ!」

ロイドの背の翼が一際強い光を放つと、雲を突き抜けて聳え立つ塔の屋上に向かって飛翔した。
その姿を視認したエルレインもまた、塔の屋上に向けて飛翔する。

「愚かな…その程度で私から逃げられるとでも思ったか?」

エルレインは口元に歪んだ笑みを浮かべた。
神を、聖女の存在を否定されたことで頭に血が上っていたのも一つの要因だが、
エルレインの最大の失敗は、完全に相手を見下していたことにある。
たとえロイドが己と同じ神であろうと、その身を罪無き人々の血で穢し、
こうして逃げ回ることしか出来ぬ愚かな存在と、聖女である事を捨てた愚かな少女に何が出来ると言うのか?
その考えこそがいかに愚かだったか、その数秒後に彼女はその身をもって思い知る。


分厚い雲を突き抜け、エルレインが見たのは、塔の最上部に立つ1つの影――

「魔神炎!!!」

その影がロイド=アーヴィングと気付いたと同時に、エルレインは漸く事態を悟った。
防御も回避も不可能な速度で迫る、ディムロスから放たれた炎を纏った特大の魔神剣の直撃を受け、
エルレインは為す術なく地上へと炎に包まれ落下していった。


54924@代理 19-1:2010/08/08(日) 19:31:33 ID:3UhwwXgr0
――22min――





「やったか…!?」
『どうやら直撃したようだ。あれで当分は戻ってこれまい』

無論そのまま死んでくれることが理想ではあるが、
先程の光景を見た後ではそう簡単に死ぬとも、追跡を諦めるとも思えなかった。
ロイドはディムロスをリアラに返すと、翼にマナを集中させようとした、その時だった。

「まだここじゃ危ない…今の内に、もっと遠く―へ……?」
「ロイド!?」
『ロイド!?』

一瞬ロイドは自分の身に起きたことが分からなかった。気がついた時には態勢が崩れ、
両膝を付いてしまっていた。突然の出来事に、リアラが慌てて駆け寄る。
見ればロイドの唇は紫色に変色し、顔も普段よりも色白く、脂汗が滲んでいた。

『先程の戦いで精神力を消耗し過ぎたか…これ以上の移動は暫く無理だな』
「くそっ…早く逃げなきゃいけねえってのに…」

ロイドは悔しさを滲ませながら呻いた。
だが、感情とは逆に力が入らず、身体は言う事を聞いてくれそうにない。

『ここで無理をすればお前の命に関わる。少しここで身体を休めて―』
「――駄目」

ディムロスの言葉を、リアラが深刻な表情で遮った。
ロイドもディムロスも、その表情で全てを察した。
先程地上に落下した筈のエルレインが、再び近づきつつあるのだ。

『リアラ、あとどれ位でここに到達する?』
「この速度だと…多分、1分あるか無いか……」

その言葉に、ロイドとディムロスは愕然となる。
あと1分…ロイドの回復には足り無さ過ぎる。ならばせめて、塔の内部にひとまず身を―――
駄目だ!この塔は最上階から内部に侵入出来ない。せめてもう少し下の階層なら可能だったが…。
くそっ!何故ここまで事態が悪い方向に傾いて行くのだ!?ディムロスは怒りに身を震わせた。

55024@代理 19-2:2010/08/08(日) 19:32:19 ID:3UhwwXgr0
「リアラ…俺に、掴まれ……急いでここから、逃げるぞ………」
「駄目よ!これ以上力を使ったら、あなたが死んでしまうわ!」
「このまま残って戦っても…皆死んじまう。だったら…俺達が生き残れる可能性のある方に、この命を…俺は賭ける!」

――こんな状況でも、ロイドは生きる事を諦めていない…!

ロイドの背中の翼が、さらに強く、蒼く輝き始めるのを見ながら、
リアラは再び胸が熱くなるのを感じた。同時に強く決意する。
絶対にロイドは死なせない。必ずこの場を切り抜け、カイル達と再会し、共に夢を叶えてみせる―――!!!

「この光は……?」

リアラの決意に呼応するかのように、ディムロスのコアが強く輝き始める。
ロイドが何事かを問おうとした次の瞬間、コアの輝きに同調するかのように、レムの塔最上部の床に光が走った。
光は複雑な紋様を描き出しながら、徐々に塔の中央に収束し始める。


やがて光は、天に向かって解放された――――


55124@代理 20-1:2010/08/08(日) 19:33:25 ID:3UhwwXgr0
――23min――





「な、何だ!?何が起こった!?」

塔の中央から天に向かって解放された光は、ある一点に達すると
空に地図と文字を浮かび上がらせていく。同時にレムの塔最上部の床から1つの操作盤が現われる。

『これは…この世界の地図?だが何故そんな物が…』
「……多分この操作盤で操作するみたいだけど、一体何の装置なの…」

リアラは恐る恐る操作盤に近づく。
すると、操作盤のモニターが突如起動し、
リアラの前に次々と文字を浮かび上がらせていく。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『レムの塔転送システム起動 音素充填率68% 転送開始座標固定、転送先名称入力―』

―――モリスン邸 、ファロース教会、アブソーブゲート、ハイデルベルグ城、アラミス湧水洞、大樹ユグドラシル、ガオラキアの森 、
黎明の塔、オアシス、ハリエットの花畑、タタル渓谷、ナーオス基地……

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「まさか…これは転送装置なの?」
「転送、装置…?」
『簡単に言えば、ある地点へと一気に移動する装置のことだ』

ロイドの疑問に答えたディムロスは、コアクリスタルにモニターに並ぶ文字を映し
少しの間沈思したが、すぐにリアラの言葉を肯定した。

『――恐らくそうだろう。ここに表示された地名が、転送可能地点に相違ない』
「じゃあ、これを使えば…!?」

リアラは喜悦の表情を浮かべたが、すぐ表情を引き締める。
これでエルレインから逃げられるが、問題はどこに転送すればいいか。
その時、ロイドが懇願の声を上げた。

「だったら、この西の塔…“黎明の塔”に転送してくれ!」

55224@代理 20-2:2010/08/08(日) 19:36:06 ID:3UhwwXgr0
早くクロエとシンクと合流しないと心配だと言うロイドに対して、
リアラとディムロスは言葉に詰まった。どうすればいい?事実を伝えるべきか?
だが真実を伝えて信じるのか?ロイドは間違いなくシンクに対して強い信頼を抱いている。
その信頼を短時間で打ち崩す事が出来るとは思えない。
そしてこの場合、失敗は間違い無くエルレインとの戦い、そして“死”だ。
仮に黎明の塔に転送した場合も―――

「…分かったわ。やってみる!」
「サンキュー、リアラッ!」
(リアラ!?)

リアラの言葉に、ディムロスは驚愕を隠せない。その意味が分かっているのか?
黎明の塔への転送――たしかにシンクと合流する前にロイドに真実を伝えられれば、
逆に対策を練り、対処も出来るだろう。だが問題はそれだけで無い。
この塔には幸い自分達以外誰もいないが、この世界のほぼ中心とも言える場所に聳え立つ塔は、
敵味方関係無く籠城にはうってつけと言えた。もし敵が籠城している真っ只中に、
もしくは戦闘の最中に転送されれば巻き添えを喰らい、最悪――

だが、ここで理由無く黎明の塔への転送を拒めば、ロイドの不信を誘う――
下手をすれば、シンクに植え付けられた疑問を再び再燃しかねない。どうする―――?


――大丈夫、黎明の塔には転送しないから
『………………!?』

その時、突如ディムロスの精神に響き渡ったのは、テレパシーにより発せられたリアラの声。
一体どういう事かリアラに問いかけようとした次の瞬間、リアラは悲痛な声を上げた。

「…ダメ!何かが原因で、黎明の塔への転送座標の固定が出来ない!」
「何かが原因って…一体何がだよ!?」
「…分からない。今言えるのは、その近くの地点…アブソーブゲートとハイデルベルグ城、大樹ユグドラシルへの転送が出来る位で……」

(成程、そういう手があったか…)

ディムロスはリアラの策と演技に素直に感心した。
これならばロイドの疑惑を刺激せず、黎明の塔への転送は避けられる。
無論、黎明の塔以外なら安全かどうかは判断出来ぬし、またクロエをシンクの傍に置いておく事の
危険性は確かに感じていた。その点はリアラも同様である。ただ、今までのシンクの行動を見る限り、
余程シンクの立場を危うくするような行動に出ない限り、暫くは害される事は無いと確信していた。
仮に危険な状況に陥っても、事情を知るアトワイトなら事前にクロエに危険を知らせ、対処する事も不可能ではない筈。
無論、ディムロスにしてもアトワイトの存在は、戦術面は勿論の事、感情面でも特別――必要不可欠であるため、
本音を言えば早めに合流したいところではあったのだが。


無論、この時点でアトワイトを完全にシンクの手で押さえられている事も、
この選択で愛する者への再会の機会を逃した事にディムロスとリアラはこの時点では気付いていない。



55324@代理 21:2010/08/08(日) 19:36:56 ID:3UhwwXgr0
『ロイド、今リアラが言った通りだ。もし黎明の塔に向かうなら、その3つの地点のどこかに――』
「……大樹ユグドラシル?」

ディムロスがロイドに転送先を選択させようとしたその時、
ロイドから困惑に満ちた声が漏れた。リアラとディムロスが何事か尋ねるが返事はない。

――何故大樹がここに?それにその名は、たしか大樹の存在が安定するまでは自分と仲間達以外知らない筈。
だが、この地図上には確かにその名前がある。これが意味する事は?サイグローグに大樹が奪われた?
それとも同名の全く存在の異なる大樹?それとも――


「ロイド!時間が無いわ!」

リアラの声が、ロイドの意識を現実に引き戻す。
今度は演技では無い。エルレインの到着が間近であることに気付いた事で、
本当の焦燥が言葉に宿っている。ロイドは苦笑した。今ここで考えを巡らせても答えなど出る訳が無い。
百聞は…えっと、何だっけ。まあいい。今はとにかくこの場所から脱出する。
大樹の謎も、黎明の塔に急ぎ向かうのも、全てはそれからだ――ロイドは瞬時に決断した。

「リアラ!大樹ユグドラシルへの転送頼めるか!?」

ロイドの言葉に、リアラは力強く頷くと、
素早く操作盤に指を滑らし、転移先名称を素早く入力する。


『転送先名称確認―座標固定完了。転送開始まで、残り5秒』
転送に向けてのカウントダウンが開始する。


『4秒』


55424@代理 22:2010/08/08(日) 20:22:29 ID:qm2txgq30
転送まで残り僅か。だが、最後まで油断は出来ない。
ロイドは最悪の事態を想定し、聖剣ロストセレスティを身構える。


『3秒』


そしてついに、殺意と憤怒をその身に纏ったエルレインが姿を現す。
未だ衰えない―否、先程よりも強い憎悪と殺意の念に、ロイド達に緊張が走る。


『2秒』


ロイド達を視界に捉えたエルレインの口元が歪む。
今度こそ、その手で神に仇為す大罪人を殺す――――
エルレインはゆっくりと両腕を前に突きだす。


『1秒』


エルレインの両腕に強大な晶力が収束し始める。
そして――――――――――




『0秒――転送開始』




その瞬間、レムの塔の最上階から凄烈な眩い光が解き放たれた――――
55524@代理 23:2010/08/08(日) 20:24:18 ID:qm2txgq30
――24min――





朝日に照らされた世界を、レムの塔から飛び立った光が駆けて行く。
かつて滅び行く世界からの脱出の為に創られた塔が齎した奇跡が
彼らの未来に齎すのは災いか、それとも福か――――。





【リアラ 生存確認】
状態:HP30% TP2% 聖女だった自分を過去のものとしました  カイルへの依存から完全に脱却 称号『ソーディアンマスター』
不屈の魂 リアラ=デュナミス 全身に裂傷、軽度の火傷、服が一部焼け焦げている 精神疲労大
所持品:南国の蝶 レンタルビューティー ソーディアン・ディムロス 考察メモ 工具箱 ???
    ホイッスル フリーズリング 左腕 ポイズンパウダー アビシオンのフィギュア  ナナリー、ディスト、ノーマ、ルビアのサック
基本行動方針:英雄になる。殺し合いの打破
第一行動方針:ロイドと共にエルレインから逃げる。
第二行動方針:ロイドの治療後、ロイドと話し合う。
第三行動方針:カイル達を探す。同士を集める。
現在位置:F6レムの塔→D1大樹ユグドラシル

【ソーディアン・ディムロス】
基本行動方針:殺し合いの打破。リアラと共に戦う
第一行動方針:ロイドと共にエルレインから逃げる。
第二行動方針: 放送内容を教える。その後ロイドと今後の方針の話し合い

【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:HP45% TP35%(0%でEND) 左肩に浅い切り傷 右足に切り傷 強い決意
   右胸貫通傷 常時天使化(解除すれば失血多量で死亡) 精神疲労大
所持品:木刀セット ソーサラーリング 聖剣ロストセレスティ ???
基本行動方針:打倒サイグローグ。死んだ仲間の為にも対主催を貫く
第一行動方針:リアラと共にエルレインから逃げる。
第二行動方針:リアラと今後の方針を話し合う。
第三行動方針:クロエ達と合流する
第四行動方針:仲間を集める。リフィルとクラトス等のブレーンであれば尚良し
現在位置:F6レムの塔→D1大樹ユグドラシル

※リアラは奇跡の行使により、自分の身体能力を上げる事が可能ですが、
精神力の消費が大きいため、使用時間や回数がある点を超えるとリバウンドを引き起こす恐れがあります。
※ロイドはシンクから聖剣ロストセレスティを借りました。その時の経緯は不明です。
他にシンクから所持品を借りた可能性がありますが、現時点では不明です。
ロイドもまた、聖剣ロストセレスティに自分の生命力(マナ)を込めることで攻撃力を向上させる事が可能ですが、
生命力の減少や、精神疲労を引き起こす恐れがあります。
※ロイド、リアラがレムの塔からこの世界の主要エリアに移動出来る事を知りました。
ただし、現時点ではリアラの奇跡によって起動しただけなので、誰もが起動出来る訳ではありません。
また、一方通行なのか自由に行き来出来るかも現時点では未定です。
55624@代理 24:2010/08/08(日) 20:26:10 ID:qm2txgq30
「……逃がしたか」

エルレインは天を仰ぐと、小さく呟いた。
ここまでの戦いで嘗て無い程傷つき、精神力を消耗し、疲労感は激しい。
左腕も先程のロイドの魔神炎の直撃で完全に折れ、使い物にならなくなっている。
満身創痍の状態――だが身体を蝕む激しい痛みよりも、あと一歩という所で裁きの雷が届かず、
大罪人の逃走を許してしまったことに対する無念さと憎悪の方が大きかった。

何時の間にか、先程空を覆っていた地図も文字も消えていた。
恐らく奇跡の行使で起動していた故に、リアラがいなくなったことで
再び起動を停止したのであろう。エルレインはロイド達を追跡すべく装置を起動させようと、
精神を集中させようとしたが、すぐに力を行使するのを止めた。


エルレインの憎悪を辛くも抑え込み、理性を取り戻させたのは、仲間を失い、狂気に囚われたルカの存在――


リアラが救いの使命を放棄した以上、私が守らねば、私が救わねば、誰があの子を救うというのだ?
これ以上、あの子をこのままにはしておく訳にはいかない―――
エルレインはルカを残してきた場所に急ぎ帰還すべく、精神を集中させる。


―――貴女は、マオのことを何も知ろうとも、見ようともしてなかった。だから救えなかったのよ


先程のリアラの言葉が棘の如く、エルレインの理性を傷つけ、再び憎悪の念を渦巻かせる。
だがそれでも、今度こそこの手でルカを救うという使命が、己が憎悪と憤怒を理性の内に抑え込む。

「…私の選ぶ手段こそが、私の信じる道こそが、人々の救済と幸福への導きの最良方法なのだ。待っていろ…それを、この手で証明してみせる……」




自分が信じ続ける幸福を、そして己が存在を否定された聖女は、失い掛けたモノを取り戻すべく帰還する。
己が正しさを証明するために、そして彼女が彼女であり続けるために―――
55724@代理 25:2010/08/08(日) 20:27:55 ID:qm2txgq30
【エルレイン 生存確認】
状態:HP25% TP20% 衣装に焦げ 全身火傷(左手、顔面が特に重度の火傷) 三つ編みが解けている 無力感に苛立ち 天使化に不審
自身の存在価値に対する疑問 リアラとロイドに対する激しい憎悪 体中に裂傷 左手、肋骨骨折
所持品:ルグニカオオ紅テングダケ 少し囓られたルグニカ紅テングダケ バクショウダケ
    クレアの首輪 ピクルスストーン
基本行動方針:カイルとその仲間を抹殺し、罪無き弱きヒトを幸福へと導く。マーダーと主催者は殺す
第一行動方針:急ぎルカの元に戻り、手当てを行う。
第二行動方針:自分が選んだ道が正しい事を証明する。
第三行動方針:大罪人であるロイドとリアラを見つけ次第殺す。そしてソーディアンを奪う
第四行動方針:ソーディアンの様なレンズエネルギーを秘めた物を探し、奇跡を起こす
第五行動方針:ルカの監視。ルカの行動が行き過ぎた時はどうにかして止める
第六行動方針:主催者等の情報収集。信頼できそうな人物には館のことを教える
現在位置:F6レムの塔

【ルカ・ミルダ 生存確認】
状態:HP25% TP80% 両手の皮がずる剥け 死への反骨心 全身にアザ 肋骨、右腕にヒビ 気絶
所持品:子供じゃないモン 聖杖ユニコーンホーン 旋風
基本行動方針:エルレインを利用しつつ、エルレイン含む参加者を全員抹殺
第一行動方針:ロイドとリアラを殺す。エルレインも危険なので今すぐ殺す?
第二行動方針:仲間を殺した犯人は確実に抹殺
現在位置:E6

【クロエ・ヴァレンス 生存確認】
状態:HP45% TP100% 帽子紛失 打撲 胸に止血済中裂傷
   シンクへの複雑な心境 迷い
所持品:安全ヘルメット
基本行動方針:打倒サイグローグ? 出来ればセネルやシャーリィと合流し、シャーリィだけでも守る
第一行動方針:塔でロイド達と合流する。その後シンクとゆっくり話し合う。
現在位置:D5

【シンク 生存確認】
状態:HP85% TP30% 居心地が悪い 服がボロボロ 右足に噛み痕
支給品:????
基本行動方針:ルーク達を引っ掻き回して楽しむ為に、ロイド一行を利用してルーク達と合流する
第一行動方針:塔に行き、ロイド達の到着を待つ。まぁ、レムの塔は諦めるしかないよね……
現在位置:D5

※シンクは聖剣ロストセレスティをロイドに渡しましたが、
他にも何か支給品を渡した可能性があります。その時の経緯は不明です。
55824@代理:2010/08/08(日) 20:29:24 ID:qm2txgq30
代理投下終了です
559名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/08(日) 23:21:04 ID:/S5/CqCv0
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
乙です

なんとかロイドに生き残ってほしいと思っていたから
多少消耗したとはいえ回復が使えるリアラと一緒になったのは嬉しいぜ
560名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/18(水) 02:41:47 ID:ehNdubqhO
保守
561そこから何が見える@代理 1:2010/08/25(水) 19:12:39 ID:8hKlJz6W0
あぁ、と身体の芯から恨み辛みを絞り出す様に彼は唸る。
別に表情なんて変えるつもりは彼にはなかったのだが、どうやら頬の筋肉は強張っており、顔の何処かを吊り上げているようだ。
全く以て、自由が利かない身体だなと彼は不満に思った。
彼は別に今、何の感情も抱いていないつもりだったし、そもそも己は感傷的な方ではないつもりだと思っていた。
尤も、これが捨てた筈の感情によるものかは知るところではないし、第一、疲労によるただの筋肉硬直かもしれない。
ただどちらにせよそんな事は今、彼の中では大した問題ではなかったし、正直に言えばどうだって良い事だった。
取り敢えず、今一番に優先すべき事は目前のヒトを殺す事だと彼は思うからだ。

……さて、どうしてやろうか。彼は顎に人指し指を当て、しばし悪戯を考える子供の様な笑顔を浮かべて考えてみる。
フォルスを使ってもいいが、それではコレは直ぐに壊れてしまうだろう。全然駄目だ。
彼は溜息を一つ零し、頭を左右に振る。
足元には形容し難い金切声を上げながら、助けを求めて地元をのたうち回る男。
彼はその男へと、汚物を見るかの様な蔑みの視線を向ける。腹立だしいくらい五月蠅い。
……そうだ、腕でも砕いて大人しくさせようか。
彼は松脂の様にねとりとした笑みを浮かべ、痙攣する男の二の腕を勢い良く踏んだ。
ごきゃり、と鈍く小気味好い音が彼の足から身体を経て、脳天まで突き抜ける。
ゾゾゾ、と寒気にも似た何かが彼の背筋を走り抜けた。背徳感と罪悪感が絡み、混沌とした飴が下腹部を刺激する。
サディスティックな感情のスパイスは、堪え難い苦痛でもあったが、同時に絶頂にも似た痛烈な快感でもあった。
意味不明な汗に全身を濡らし、彼は開いた瞳孔を忙しなく動かす。
油断すると逝ってしまいそうな、びりびりとした刺激が彼の肌をざくざくと刺していた。
踏み砕いてやった腕に乗せた足へ思い切り体重を乗せると、男は鳥の声にも似た奇妙な声を上げる。
それが堪らなく恐ろしくて悲しくて、寂しくて嬉しくて……彼はヒヒヒ、と泣きながら狂った笑みを零した。
過呼吸になりかけながらも肩を揺らし笑う彼は、やがて咳込み、唾と鼻水を垂らしながらゆっくりと顔を上げる。
うっすらと双眸に涙を浮かべた彼は、姦しい悲鳴上げ人形の頭をがっ、と掴んだ。
おぉ、と悲哀と憐憫の情が喉元まで競り上がる。痺れるような感情の激流が手先から全身へと流れた。
562そこから何が見える@代理 2:2010/08/25(水) 19:14:13 ID:8hKlJz6W0
彼は震える手で、恐る恐る男の輪郭を触ってみる。同時に走る、僅かなたじろぎ。

―――何て、小さい。

今まで脅威だと思っていたヒトは、こんなにもちっぽけな頭をしていたのか。彼は表情を曇らせる。
痙攣を繰り返す男の息は絶え絶えだった。だがそれも当然か、と彼はケケケと笑った。
血塗れの頭を掴む手にフォルスを集中させ、彼は口を開く。

「じゃあね」

暴走したフォルスが、彼の身体を痛めながらも男の頭部を包み込んだ。
吹き荒ぶ魔風に彼は目を細め、そして激しく痛む腕に眉を顰めながら笑う。
狂った感情の狭間では、消した筈の微かな記憶が脳をくすぐっていた。



*************



何時か見た無への扉を彷彿とさせる、闇。
蜘蛛の糸から……一縷の希望から奈落へと墜ちる瞬間に目前に現われる、極上の黒。
かつて低能単純馬鹿な糞牛に開けられた忌々しい穴を思い出す。
そう。これは、この漆黒は間違いなく……死の色だ。
だが僕は“生前”ただ茫然と、しかし喜んで死を迎えた。
死にたくないとか、何でとか、そんな事は一つも思いはしなかった。
ただ何となく、やっぱりそうか、自分は死ぬんだと納得しただけだった。
味方同士の裏切り合い、刺し違い。今思えば随分とあっけなく、醜い最期だったと思う。
けれどそれでいい。何故ならヒトの死なんてそんなものだと思うからだ。
強いヒトも弱いヒトも関係ない。
死はどれだけ宝石で飾ろうが、死以上には決して成り得ない。見窄らしい事に変わりはない。

……平等なんて白昼夢の幻想に過ぎないのだと、僕は思う。
ヒューマとガジュマ。同族の差別すら無くならないのに、その種族の差がどうして埋まろうか。
僕とあの牛の様に、幾ら強くて権力があろうと惨めに死ぬ奴等がごまんと居るのに、アイツらに何が救えるんだ。
僕の何が分かるんだ。何が出来たんだ。何をしてくれるんだ。
……何も出来る筈がない。結局ヒトが辿り着く現実は……あんなもんさ。
あの後アイツらが世界を救えたかは定かではないが、もし僕の死体を見たならば、それは実に滑稽な絵図だった事だろう。
見ていて虚しい事だったろう。悔しかったろう。
……そうだ、それこそが僕の見せたかった真のリアルだ。
僕の死でそれを示せるなら、死がアイツらの心臓に消せぬ焼印を残すなら、それだけでもう充分だった。
自分の皮肉は“生きている”。それが得も言われぬ快感だった。
563そこから何が見える@代理 3:2010/08/25(水) 19:16:08 ID:8hKlJz6W0
だが……だが、だが。

「此所で自分は何を遺せる?」

サレは滑稽にも暗闇にそう問い掛け、口の中で言葉を反芻する。
“此所で自分は何を遺せる?”
顔を囲む冷たい大理石は沈黙したままで、何も語らない。
―――何も遺せないよ。しかし深く沈む暗闇だけは、サレへと自嘲気味にそう告げた。
此所での死に何の意味があると?
駒が一つ減ったところで誰が何の為にどんな興味を持つ?
あの道化は、ヴェイグは、マオ坊やは、アガーテは、ジルバは一体何を思う?

“あのサレが死ぬなんて……相当の実力者が居るんだな”?
“もしかしたら今度は分かり合えたかもしれなかったのに”?
“厄介な奴が死んで良かった”?

……虫酸が走る。
サレは歯を軋ませる。そこにあるのはただの安堵と、事実確認だけだ。
死んでなお恥を晒すだけ。その先に在るものは意味も何もない、ただの同情だ。
そんな命に、どれほどの重さが、価値があると言うのか。

“お前の命は軽いよ”。

かつての言葉が、まるで鏡に反射した光の様に自らの暗い部分を強く差す。
「ふざけるなッ……ふざけるなよ……!」
世界に唾を吐く様に、サレは恨みに満ちた言葉を投げ付けた。そんなの堪ったもんじゃない。
ぼこぼこと脳が音を立て、体液が沸騰してゆく幻想。
底が見えぬ憤怒で、視界が瞬く間に紅く染まってゆく。
現実が自分の死を否定するなら、現実が自分の手に負えないなら、こっちからそんな現実なんぞ願い下げだ。
全て否定し尽くしてやる。全部くたばればいいのさ。
ヒトも、世界も、自分さえも。何もかも知った事か。
僕が僕として意味を真っ当出来ないなら、僕は喜んで差し出す。身も、心さえも。

だから……もう、どうにでもなれ。

ざわざわとサレの肌が波打つ様に震えた。
サレの周囲へと収束した風が、べきべきと音を立てて固形化されてゆく。
一本、また一本。圧縮に圧縮を重ねた強靱な風の糸が、サレの全身を守る強固な盾となり同時に全てを切り裂く強靱な矛となる。
鎌鼬はサレの周囲の障害物を尽く削り、圧縮された風の弾丸は想像を絶する速度で迸る。
思考エラーが重なり重なって束ねられ、完全な狂気の武装が遂に完成された瞬間だった。
刹那、膨大なフォルスと共に厚さ一メートルの天井が文字通り爆ぜる。
564そこから何が見える@代理 4:2010/08/25(水) 19:18:29 ID:8hKlJz6W0
吹き飛ばされた大理石の巨大な礫は風刃に削られ、僅か半秒足らずで直径一センチに満たない小石と砂塵に化した。

「嘘……だろ……」

剣を構えてサレの一挙一動を監視していたルークが、目を皿の様にしてぽつりと零す。
あんぐりと開かれた口が閉まる事はなく、瞬きをする事さえもルークは忘れてしまっていた。
それを尻目に小石の驟雨から身を守るフィリアは、法衣の隙間から天井を恐る恐る見上げる。
吹き荒ぶ嵐の中心に構えるは……血塗れの項を垂れながら哄笑するサレ。
その表情は、常人と呼ぶには余りにも醜悪過ぎ、形容出来ない狂気に満ちていた。
真赤な絨毯に輝く大理石、磨かれた金色の玉座。そこに浮かぶそれは間違いなく現実離れしている。
フィリアは思わず息を飲んだ。白目を向きながら肩を揺らすそれは、ヒトから一線を画し過ぎている。
「……狂ってる」
蒼然とするフィリアの肩を抱き寄せ、ルークはそう吐き捨てる。
コレはもう人間なんかじゃあない、化物だ。……あれ?

でも……コイツを敢えて殺す必要があるのか?

何気なくそう考えたのと同時に、ルークの頬をどっと溢れた冷や汗が伝う。
“敢えて殺す必要があるのか?”反芻される言葉は、舌の根に深く突き刺さった。
何だこれは。訳の分からぬ引っ掛かりにルークの視界がぐわんと大きく揺らぐ。

「ルークさんッ」

フィリアの必死な叫び声が、けれどもルークには酷く遠く聞こえた。
頭上から落下する岩にさえ、ルークは危険を全く感じなかった。感じる事を忘れていた。

「“狂ってる”」

何だこの感覚。ルークは瞬き一つせずサレを凝視しながら、生と死の狭間で思った。
何かが、何かがおかしい。
生きる為には、仕方ない……?
ゲス野郎は死んで当然……イオンの敵を取る、復讐……? 俺が……殺す……。
一体誰が狂っ―――


閃光。
ゆっくりと流れていたルークの周囲の景色が、絢爛な純白一色に覆われた。
暗闇から日の当たる部屋に出た時の目が眩む様な閃光が、双眸を激しく刺す。
急速な収縮にずきりと痛む虹彩に、ルークは思わず目を細めた。
「……ジャッジメント」
何が起きた、と翳した手の指の隙間からルークは様子を窺う。
ふと見やれば、フィリアの両手から生えた雷鎚が激しいスパークを撒き散らしているではないか。

「ふィリア」

ルークは莫迦みたくフィリアの名を呼んだ。
フィリアは前髪で表情を隠したまま何も応えない。
565そこから何が見える@代理 5:2010/08/25(水) 19:21:28 ID:8hKlJz6W0
荒ぶ風にお下げを揺らしながら、フィリアは雷刃でルークの頭上30センチの位置にある岩を上空へと打ち上げる。
ここで漸く、ルークの思考は非現実の水面から顔を出した。
……そうだ、自分はあと半秒で脳天をかち割られるところだったんだった。
ルークは腰をぺたりと床に落とすと、天井辺りで光の十字架に粉砕される岩を仰ぎ、思わず今の自分の危機感の足りなさに身震いする。


「何を呆けていらっしゃるんですかッ!?」

ぱぁん、と気持ち良い音が辺りの風音を吹き飛ばした。
「い、ッたぁ……?」
ルークはじんと痛む頬を反射的に触り、2秒遅れて平手打ちされた事を始めて認識した。
理不尽な怒りが僅かに込み上げ、ルークはフィリアをきっと睨むが、その辛そうな表情を見て下唇を噛む。
馬鹿か、俺は。

「ごめん……ちょっと考え事しちまって」

フィリアは慌てて立上がり剣を構えるルークを見ると、溜息を一つだけ吐いて暴れた髪を耳に掛けた。
「しっかりして下さいルークさん。彼の桁違いの晶力が分からない訳でもないでしょう?」
ルークはその言葉にはっとしてサレを見上げる。
サレは剣をサックから取り出そうとしていて、そして―――瞬間、毛虫が背を這う様な不快感と恐怖に、ぞわりとルークの身の毛がよだった。
思わず数歩後退り、フィリアの様子を横目で窺う。
何故気付かなかったのだろう。
フィリアの手は怯える子犬の様に震え、額には玉の様な汗が浮かんでいた。
成程確かに桁外れの音素だ。ルークは心中で唸り、けれど、と棒切れの様に頼りなく感じる剣を握る。
これは本気故の音素……ではない。言うなれば爆発、いや暴発か。
明らかに“無駄な浪費”が多すぎる。
ルークは目を凝らしてサレとサレの音素を見て、そう思った。
無意味な竜巻は無意味に大量の音素を載せて壁を砕き、
馬鹿の一つ覚えみたく放出され続ける音素は、行き場を失い虚空へと消えていた。
それは明らかな無駄としか言い様がなく、更に本人から感じる音素の濃度とそう違いはなかった。
まるで家中の水道の蛇口を全開にして眠っているようなものだ。
操作していないと考えるよりも操作不能と考えた方が余程合理的だとルークは思った。
566そこから何が見える@代理 6:2010/08/25(水) 19:24:41 ID:8hKlJz6W0
でなければ単なる馬鹿だからだ。
とどのつまり……これはある種の“暴走”。そう考えて間違いないだろうという事。

「相手は暴走した手負いが一人、こっちは万全に近いし人数も多い……大丈夫だ。勝てる」

フィリアに聞こえぬ様に零したその言葉は、けれども勝てるという自信の音が全く込められていなかった。
確かに相手は手負いだが、この能力とその風貌。恐らく強力な風使い且つ前衛剣士……厄介だ。
おまけに気絶した少女を守って戦わなくてはいけない。
これはルーク達にとって充分過ぎるハンデだった。

一方のフィリアはサレを真直ぐに見つめる。
風を操り浮遊するサレは、一通り笑い終わるとフィリアへと首をぐるりと回した。
それはまるで腹を空かせた大蛇の様な野性的な動きで、フィリアは思わず目を伏せる。
サレはその顔を見てさぞ満足そうに笑うと、とたんに優しい笑みを浮かべてペイルドラグを気流の渦に投げた。

「さっき僕を攻撃したのは君かい?」

正直効いたよ。
そう続けたサレは、気流を操り器用にもペイルドラグを空中で停滞させ、フィリアへとにこやかに微笑む。
「……そうですわ」
「そうかい。なら死ね」
瞬間、ごうと大気が唸る音が耳を掠め―――サレの隣に浮遊していた“剣が消えた”。
(消え……そんな、有り得、)
フィリアは驚愕に目を見開く。魔力由来の剣でなく、物体の剣が消えるだなんて有り得ない。
フィリアが困惑に判断を鈍らせた最中、
ルークだけが辛うじて、気流の狭間を凄まじい速度で滑る剣を見る事が出来ていた。

“疾い”。

ルークは素直にそう評価し息を呑む。
冷たい汗が額を流れるより、想像を絶する速度に血の気が引くより、肉体が反応するよりも遥かに疾い。
同時にルークは口を開こうとした。フィリアへの距離はたかが数メートル。
しかしその距離が絶望的だった。剣が予測以上の速度で、それでは遠過ぎて間に合わない。
数メートルの距離の筈が、地上からレムの塔の頂上までの長さに感じる……ルークはそんな錯覚さえ覚えた。
想像し得る“最速”を、サレはその数倍で軽々と越えていく。まるで赤児の手を捻る様に容易く。
烈風の二つ名を持つ少年が、のろまなブウサギの様にさえルークには感じられた。
「避けッ」
言葉を言い終わる前に、ルークの網膜にフィリアが串刺しの肉団子にされる未来が視え、戦慄する。
567そこから何が見える@代理 7:2010/08/25(水) 19:26:03 ID:8hKlJz6W0
サレの刃は、恐怖と絶望に震え上がる暇さえも与えない。

串刺し公も言葉を無くし青ざめる一投が、肉を、その背後の影をも貫かんとハイデルベルグ城を震撼させた。


黄塵万丈。大理石が凄まじい音を上げ爆発し、無数の弾丸と化し辺りを貪る。
少し遅れて、土煙どころか礫をも巻き上げる凄まじい突風。
ルークはその身体を吹き飛ばされながら、城内の硝子という硝子が砕ける音を聞いた。
馬鹿げている。無駄に装飾に凝られた柱に身体を強烈に打ち付けられながら、先ずルークはそう思った。
能力が余りにも規格外過ぎる。音素とか譜術とか譜歌とか、そんなレベルを五段階ほど超越している。
「……いや、そんな事よりも」
フィリアはどうなった?
次に思ったのが、それだった。しかし当然確認のしようがなく、ルークは舌を打つ。
だが、とてもではないがあの一撃をフィリアが避けられるとは思えない。
身体へ真面に喰らったとなると、恐らくもう―――

「なんだってんだよ……クソッ!」

怒り狂う風は硝子を巻き込み、低く唸りながら荒び続けていた。
ルークは咄嗟に顔を中心に両腕でガードする。同時に、腕に震えが走っている事を漸く自覚した。
少しだけ冷静になろうと、ルークは息を吐く。歯はがちがちと五月蠅く鳴いていた。

「もしかしてこれが、第三奏流帯<ジェット・ストリーム>……」
恐怖に四肢が支配される中、ルークは風の驚異的速度の正体をそう予測する。
(確か、ノエルがアルビオールに乗ってる時ジェイドと喋ってたっけ。
 その関係で速度が変わるとか、ロニール雪山の上空の気流の突破とかどうとか)
第三奏流帯<ジェット・ストリーム>。
創世暦時代にサザンクロス博士が提唱したとされる、シルフによる特殊音気流帯だ。
だが、とルークは腕の隙間から辺りを伺いながら考える。
それを、個人が生み出すなんて事が可能なワケがない。
ましてや上空十キロ付近で確認される特殊現象が、こんな地表近くで発現するなんて有り得な……―――



「暴走した風遣いなんでしょ? 有り得るわよ、そんなもん」



―――……は?

「ったく、大方こんな事だろうと思った。失望よ、し・つ・ぼ・う」
ごつごつごつごつん、と頭を杖で叩かれる。
失望の読み仮名に乗せてリズミカルに計四回。地味に痛い。完全な不意打ちだ。
568そこから何が見える@代理 7:2010/08/25(水) 19:30:39 ID:8hKlJz6W0
「面白そうだからデータ採取がてらちょっと様子見してたら……予想を裏切りすらしないのねアンタら。
 麻酔無しで解剖されて、ホルマリン漬けどころか塩漬けにされても文句言えないわよこんなザマじゃ。
 情けないったらありゃしない」
むっとして目前を塞いでいた腕をどけ、声の主を見上げる。
晴れのち曇りところにより大嵐。荒れに荒れた局地的城内台風一号、風速約30メートル。
寝癖頭をばっさばっさと暴れさせた、
天才科学者ハロルド=ベルセリオスが……なんの冗談か箒に跨がり、確かに翔んでいた。
口はへの字に曲がり、目はじっとりとルークを睨んでいる。
むすっとした小生意気な表情は、折角の童顔をことごとく台無しにしていた。

「魔法少女……ってか何でハロル、」
「感謝しなさい三歳児。
 あたしがあの剣をシャドウエッジで弾いて箒で救出しなきゃ、この子確実に御陀仏だったわよ?
 ってか、そもそも暴走した奴相手なのにツメが甘いっての。甘過ぎる。女王甘々くらい甘いわ。
 殺るならとっとと殺っちゃいなさいよ全く」

ハロルドはルークの話を遮ると、ぶっきらぼうに左手の荷物をちらつかせる。
何かと見れば……後ろ襟を掴まれ、子猫の様に丸くなったフィリアだった。
「す、すみませんハロルドさん。
 助けて下さってとても有り難いのですけど、そろそろ引き摺るのを止め―――」
「あーはいはい。アンタもしっかりその臆病三歳児を保護しとくのよ」
杖先で頭を掻きながら、ハロルドはまるで失敗したレポートを捨てる様にフィリアをルークへと投げつける。
はぅあと黄色い声を上げるフィリアに背を向け、ハロルドはふぅと肩で溜息を一つ。
コキコキと首の骨を鳴らしながら箒から降りた後、さてと、と小さく呟き上を見上げる。
おぉ、とガラにもなく出る感嘆の念。
先刻までそこに在った筈の天井が跡形も無く吹き飛んでいた。実に見晴らしが良くなっている。
耐久力的にもハイデルベルグ城の構造は優れていた筈なのだけれど、と箒を仕舞いつつ微笑。
ふいにこちらを見下ろす……いや、見下す男と目が合う。ぞわりと背筋を這う生理的嫌悪感。
あぁ、この男とは性格合わないわ。ハロルドはけろっとした表情をサレへと向けながら、そう直感した。

「ハロー。初めまして」

二階あたりに浮かぶサレへと、左手をひらひらと振ってみる。少し違和感。
返事の変わりに風の矢が三本ほど降って来た。難なくそれを躱して、ひゅうと口笛。
569そこから何が見える@代理 9:2010/08/25(水) 19:31:24 ID:8hKlJz6W0
成程、随分良い性格してるわコイツ。

「ハロルド……油断しない方がいいんじゃないか? あいつマジヤバイって」
背後から役に立たない三歳児の声。こめかみに浮かぶ青筋。
ベルクラントに撃たれればいいのに。冗談だけど。
「つべこべ言わずミスティシンボル寄越してあの剣回収!
 アンタもっかいあのウルトラジェットサレバスター受けたいワケ?」
「はっ、はい! 受けたくないですッ!」
きっ、と後ろを睨み顎で床に刺さるペイルドラグを指すと、存外素直にルークは言う事を聞いた。
ミスティシンボルを受けとると、溜息を吐く。
「あ、フィリアは詠唱待機ねー。アイツ風と闇属性半減するからそれ以外で、効果発動まで速いヤツ。
 出来れば地属性が良いわ。弱点だけどヤツにはどうせ当たんないから、守備・隠れ蓑用のつもりで」
一々他人を気に掛けるとこが気に入らないけど、その馬鹿っぷりも嫌いじゃない……なんてね。
「あ……は、はい」

渇いた上唇をぺろりと舐め、ハロルドは瓦礫の隙間から覗く“腕”を見た。
凍結しているが、これだけの長い時間全く溶けていない。
念の為先程触ってもみたが、少しも溶けなかった。物体ではないという証明だが……明らかにおかしい。
それにあの氷から感じる魔力の波長は間違いない。あの雪の主だ。これは重要なヒント。

「邪魔なんだよこんちくしょう……! どいつもこいつも目障りだよッ!
 そんなに死にたいならさぁ! 望み通りに! 殺してあげらあァァァァッ!!」
サレが叫ぶ。目は血走っていて、到底正気の沙汰ではない。
周囲の空間がみるみるうちに鎌鼬で歪み、風の弾丸がハロルド達へと降り注いだ。
「させません! ストーンウォール!」
ナイスアシスト、と呟くと、ハロルドはストーンウォールによる岩影に素早く隠れ風圧に堪える。
また少し何かに違和感。でも気にする程ではない。
……しかし厄介ね、この風操作能力。ハロルドは親指の爪を噛みながらそう思った。
詠唱時間無しという反則級遣い易さ。
挙句に異常な効果範囲と、ジェット気流という馬鹿げた威力。
そして魔術における効果時間の概念から激しく逸脱した、瞬間的常時発動型能力。
しかし、初めて見るタイプではない。そう……恐らく例の雪の主と同じ類の能力だ。
570そこから何が見える@代理 10:2010/08/25(水) 19:35:28 ID:8hKlJz6W0
何故ならこの嵐が術の類なら、さっきの詠唱無しストリームアローまがいの牽制が矛盾するからだ。

「氷結は終焉!」

ナイス土煙。ハロルドは詠唱しつつガッツポーズをする。相手が風使いだからこその利点だ。
さて先程の続きといこう。
……嵐とストリームアロー、“術なら同時に発動出来るはずがない”。
そしてそれは、雪と腕の凍結も然り。
攻撃魔術に限って言うならば、どちらかを発動すれば通常もう一方の能力は消失、
もしくは結晶化した魔物質から潜在魔力が消滅し、物質固定されその時点で操作不能となる。

「せめて刹那にて砕けよ―――フィリア! 詠唱時間稼いで! ルーク! アンタはフィリア守りなさい!」

オールドラント、テセアラ、シルヴァラント……異世界のルールから考えてもそれはほぼ正しい解釈。
何故ならば、“一見独立した世界に見えるこれらの世界は、実は基本ルールがほぼ同じ”だからだ。
以上から考えても、十中八九……いや確実に雪と風の能力者は同世界の住民だと言える。
次に、先程調べたあいつの情報。
【本名サレ、性別男。身長169センチ体重54キロ。年齢24歳、種族ヒューマ。
 HPTP共に残量22%。状態フォルス暴走・凍結。
 弱点地属性、耐性(半減)風・闇属性】
状態欄のフォルス暴走、これが気になった。サレが何かを暴走させているのは様子から見て間違いない。
そしてそれが“フォルス”なるものだと言うなら、
99%の確率で風や雪を生む能力の正体が“フォルス”だと言っていい。
そしてこの“フォルス”だけが何故か特殊だ。要研究。
……しかし、気になるのは異世界の情報だ。
貨幣の単位、術技名、精神力、魔力の源、グミ、アイテム名、伝説。
装備品名、装飾品、精霊の存在、状態異常、モンスター、食文化、ねこにん、世界のシステム。
“異世界にしては偶然で説明がつかない程に共通点が多過ぎる”。
もしかしてこの世界は、いや……これらの世界は、本来―――――――――――――――



「させるかよ、そんなの」



―――――――――――――――なんでアンタがそこに居んのよ風使い。

がくん、と強い衝撃。身体が有無すら言わさぬ速度で出鱈目に吹き飛ばされる。
“超小規模下降噴流―――マイクロダウンバースト”。
571そこから何が見える@代理 11:2010/08/25(水) 20:21:34 ID:8hKlJz6W0
上下左右すら分からぬ世界の中、ハロルドはサレの瞬間移動の原因をそう結論付けた。

「ぐぅ……まるで自然災害ね」

……いや、小規模とは言え下降噴流やジェット気流、旋風を使ってくる時点でそれは分かり切ってた話ね。
でもこれは余りにも凶悪が過ぎるっての。人に許される限界を軽く超えてるじゃない。
ソーディアン・イクティノスでもここまでの力が出せるか如何か。
や、待て。
それならサレの力は……真逆天才の、このハロルド=ベルセリオス様の世紀の大発明を越える能力ってワケ?
……ぐふふふ。ちっとも面白くないわね、そんな馬鹿みたいな才能。

二階の天井の煉瓦が崩れてゆく。城の厚い壁は剥れ、荒ぶ風に何もかもが舞い上がる。
嵐の、自然災害の前には人工物など無力に等しい。その力に恐怖に震える模造品と聖女。
己にも制御出来ぬ限界を超えた力に嗤うは片腕無くした風使い。
ごうと唸り散らす化物に喰われながら―――天才だけが、声も上げずに口元を歪ませていた。



*************



「ひャはカッ、愉快だねぇこれは。人がゴミみたいだよ!」
崩壊し尽くした床へと降り立ち、腹を抱えて大爆笑。自分は台風の目だからまるで安全。
しかし規格外の力に一番驚いていたのが、他でもないサレ本人だった。
こんなに力があったなら、無理矢理にでも暴走していればとすら思う……が。

「これでお前らの心なんか、否定し尽くしてや――――ァ?」

ぶしゅ、とサレの脇腹から紅い飛沫が飛ぶ。何だこれ、と思うと同時に背中に痛みが走った。
足元に落ちていた手鏡を見て蒼然とする。右頬は頬骨が見える程ぱっくりと割れていた。
興奮状態故に今まで気付かなかったのか。
全身を見ればそこら中が血塗れだった事にサレは目を丸くして更に驚愕した。
「はっ、な……な゛ンッ、ァ?」
“フォルス暴走による能力制御への著しい弊害”。
フォルス能力者にとって、基礎知識である事。言わば万人の常識だ。
そしてそれは自然型物理能力保持者にとって致命的。知らず知らずに自分を傷付けてしまう可能性があるからだ。
雨のフォルスを暴走させると、自分が濡れる様に。
樹のフォルスを暴走させると、樹に己が取り込まれる様に。
炎のフォルスを暴走させると、己が炎に包まれる様に。
暴走するのが風のフォルスならば当然……風の刃は己を包む。
572そこから何が見える@代理 12:2010/08/25(水) 20:24:28 ID:8hKlJz6W0
あろう事か、フォルスのプロフェッショナルであるサレは基本中の基本を忘れていた。

「う、うそ……だ」
顔を左右にふるふると震わせ、数歩後退る。ぱしゅ、と右足の皮膚が切れる音。
『馬鹿な』、『有り得ない』などと幼稚な現実逃避。
「止まれ、止まれよ風! 止まれ止まれえぇぇッ!
 あぁ! 畜生ッ! 止まれよ僕のフォルスだろ!!? 命令してるだろうがッ!!
 何で止まらないんだよざッッけんなクソったれッ!!!」
我に帰った様に、風に制止を命令するが、暴走者の命令を訊くワケがない。
確かに命令すれば能力の発動はする。しかし制止する事は暴走者に出来はしない。
正にブレーキの壊れた車。速度が上がり上がって……待つのは確定された死の未来。
サレは血の気が引く様な死に様を想像し動揺に狂い叫ぶが、それすらも暖簾に腕押し柳に風。
不安定な精神が更に暴走に拍車をかけるだけで、何の意味も成さない。

「くっ、そおぉおォォォ―――ォぐぶふゥ!!?」

そんなサレの背に、追い討ちを掛ける様に衝撃が走る。
数歩よろけて振り向くと、奥に拳を振り上げた忌々しい赤毛の餓鬼が見えた。
「……魔神拳。好き勝手暴れやがって。荷物無くしたじゃねぇかよ!
 覚悟しろサレ……俺だってビビってるだけじゃ終われねぇ!」
左足を引き摺りながら、頭から血を流しながら。それでもルークは立っていた。
サレの唇がひくひくと痙攣する。殺す。これだから正義のヒーローってヤツは。

「ぎ、こ……のォ……おま、ごろッ、ご、殺ッ!
 シュタイフェ、ブ――――リ゛ィぶぎょッ!!?」

ばつん、と視界に星が散る。身体が強制的に硬直し、皮膚と衣類が焦げた臭いが鼻腔をつんと刺激した。
血に濡れた紫髪が、静電気によりぶわりと広がる。
「ライトニング。神の天罰ですわ!」
馬鹿な。サレはわなわなと震える拳を強く握った。
何が神だ。何が天罰だ。
神が奪うから、与えるから。だから惨めに嫌われて生きなきゃいけないんじゃないか。
だからこんなに不公平な世の中になるんじゃないか。
そんなものの為に、何が楽しくて死んでやらなきゃならないんだ。
視界の隅に、レンズが割れた眼鏡をくいと上げる女が見える。
白い法衣は血で滲んでいて、だらりと下がった右手からは血が滴っているが、それでも目は死んでいない。

“こんなハズじゃなかった”。

サレはワケも分からず叫び、フィリアへと襲いかかる。
573そこから何が見える@代理 13:2010/08/25(水) 20:25:21 ID:8hKlJz6W0
力も地位も悦びも手に入れてきたじゃないか。気に入らない奴は潰してきたじゃないか。
こんな惨めなハズじゃ、なかった。

「お、ひ、お゛お゛ォォォあァッ! なァに゛がッ、……神ッ!
 あァ絶ッッッ対、ころ゛―――ッずぅぐォ!!?」

腹部の中心に光弾が三つ、クリティカルヒット。サレは瓦礫の海に弾け飛ぶ。
……どうしてだ。何故何時もこうなるんだ。
僕が悪いのか? 何か間違った事をしたか? 誰かが答え合わせでもしたって?
何時誰が何を基準にして悪と正義を区別した?
アイツらの何が……正しいっていうんだよ?
「三対一、多勢に無勢。アンタアホね、これでも勝てるとか思ってんの?
 まぁ確かにその能力は凄いわよ。評価する。
 でも、発動する前に殺れば意味ないから。無力だから」
何で馬鹿が何時もへらへら笑いながら勝つ?
何で正義の旗振りかざして、理想を謳う奴が英雄になる? 如何して悪役は何時も死ぬ?
何が足りない?
地位か?
金か?
名誉か?
女か?
名声か?
数か?
武力か?
愛か?

「っていうか、天才に敵うとでも思ってんの? ヴぅァッカじゃない?
 その小さい脳味噌でも分かるでしょ。
 アンタ程度の凡人がこの天才に勝てる確率は、“ゼロ”だって事くらい。
 毫毛斧柯、優勝劣敗御役御免」

ハロルドがすかさず苦無を投げる。倒れたままのサレは辛うじてそれを風で弾いた。
凡人。その言葉にサレは瓦礫から立上がり、肩を揺らしながら笑う。
これまで散々堪えてきた。数え切れない程、殺してきた。なのに僕が凡人だって?
……そんな馬鹿な話があるか。
天誅だ。凡人にだって、切札があるって事教えてやる。



「かかったわね。連携発動―――プリズムフラッシャ!」



ぱきぃん、と晶力が遥か上空で結晶化する音。
サレは目玉が飛び出んばかりに目を開き、勢い良く天井を仰いだ。
(詠唱破棄!? 違う! かかった……つまり罠? 何時しかけた!?
 ――――――あの苦無かッ!!)
七色に輝く剣が、自分へと降り注がんと待機している。
サレは舌を打ち、フォルスを練った。術でも剣は不味い。刺されば体力的に痛いからだ。
フォルス発動まで半秒も掛からない。瞬く間に上空へ。速度だけは折り紙付きだ。
サレはひとまず安心と息を吐くと、口元の血を拭い背後を見……絶句した。


「避けられるワケないでしょ。だってアンタ、ヴ・ァ・カだもん」


“何故目の前に剣がある”。
574そこから何が見える@代理 14:2010/08/25(水) 20:28:54 ID:8hKlJz6W0
瞬間移動、いや違う。追尾機能がある導術か。油断した……!
上に旋回して避け、や、シャンデルは速度が死ぬ。
スライスバック……馬鹿、下がるから危険だ……く、無理、この距離じゃ間に合わな、


「理解したら死になさい」


砕ける音と、悲鳴と共に刺さる音。
深紅の血飛沫は七色の光に笑える程ミスマッチだった。
まるで撃墜された戦闘機の様に、煙を上げながら瓦礫に落ちるサレ。
絶対無慈悲なハロルドの晶術を受けたサレを、フィリアは可哀相とすら思った。
それ程までにハロルドの手加減は無い。

「……やったのか?」
ルークがすかさず呟く。ハロルドは首を振り、アンタアホねと呆れた様に返した。
「風が止んでないって事は、まだ生きてるって事っしょ。まだよ。気ぃ抜かない事ね」
ハロルドはそう言うと、未だ止む事も無い風に乱れた前髪を指で払い、新たに術を唱え始めた。
フィリアはハロルドの顔を盗み見て、戦慄する。
鷹の様な目に、燃える憎悪の様な晶力……死に損ない相手に、微塵の容赦もない。
いや、本来はそれが正しいのだ。この世界では、甘い人間から死んでゆく。
悪魔の様に冷たく徹しなければ、本物の悪魔に敵う筈がない。
フィリアはハロルドがスプラッシュを発動させているのを尻目に、唇を強く噛む。
認識が甘かった。
嘗ての仲間が亡くなっても未だに何処か、何時もの様に何とかなると考えていた自分が恥ずかしい。

(何か……何か、おかしい。やっぱり違和感がある)

それを尻目に、ハロルドは得も言われぬ感覚に眉を顰めていた。
土煙の向こう側で、渾身の晶力を込めたスプラッシュが風に弾かれた事も原因の一つではあるが、
それよりも気に掛かる何かがずっと前からハロルドにはあった。フィリアを助けた瞬間からずっと。
ただその何かの正体が分からず煮え切らない。……嫌な感覚だ。ハロルドは舌を打つ。

……腐ってもこっちは戦闘員【三人】。
まだこの世界の状況を甘く見てるっぽいけど、この【二人】の実力は確か。
ルークの動きも洗練されてるし、若返ったフィリアの晶術技量は流石エロジジイに選ばれただけはある。
サレを殺せる事に疑いの余地は無い。にも拘らず、一体何が引っ掛かってる……?

「ぐ、ぶ……ふ、ひ……」

不快な笑い声が城内に谺す。
土煙が晴れ、その向こう側……瓦礫に埋もれた玉座の上にサレは立っていた。
575そこから何が見える@代理 15:2010/08/25(水) 20:30:13 ID:8hKlJz6W0
ルークは思わず目を逸す。血濡れで狂った様に笑うその姿は、余りにも醜悪過ぎた。

「くひ…ふ…ヒヒヒひハァひゃははははひひゃははははッ! ハは!!」

どくん、と心臓が嫌な跳ね方をした。こういった時は高確率で碌な事にならない。
“女の勘はカオス理論をも超越する”。ハロルドの幼い頃からの持論だった。
スカートの裾をぎゅうと握る。何だ。何がこの違和感の原因だ。
喉元まで出掛かっているのに、何故分からない。
確かに何かおかしいんだ……この状況の何かが。

「懺悔なさい」

フィリアの声が右耳から入る。サレが鼻で笑う声。
大分弱っているハズなのに、不自然な程の余裕がある。額に流れる汗。嫌に生温い。
確かに違和感はサレに対してでもある。
何かを隠しているのは明白だが、しかしサレが大本の原因ではない。
恐らくもっと根本的なものだ。何か大事な事を忘れて……。

「懺悔! ハハハ懺悔ときたかい! 大層な御身分だ!」
「お前ッ!」

ルークが見え見えの挑発に犬歯を剥き出しにして食って掛かる。隙間風が五月蠅い。
ハロルドは左手の指を人数に合わせて折る。
サレ、ルーク、フィリア、自分。合わせて人数は【四人】。敵も居れたら【五人】。
おかしい。サレが原因でないなら、【四人】のうち誰かに違和感があるはず。
なのに何故【五人】全員――――――――――――――――――――【五人】? いや待て。

「反吐が出るよ、ホンット。
 気分はどうだい聖女気取りのお嬢サマ。さぞかし良いんだろうねぇ」
引算の問題。
物陰から使ったスペクタクルズは何個?
ルークとフィリア以外に使って、元々八十四個から八十二個になったから、答えは当然二。間違えるワケもない。
……【二人】?

「サレ! お前いい加減に!」

この場に居るのは何人だって? 本当に【五人】? 違うでしょ?
最初何人だった? 何時【一人】減った? 何故【五人】になった?
【一人】は何処へ消えた? 何故追い込まれたハズのサレが笑っている?
何故これだけ探しても、もう【一人】が見当たらない?

「……でも、何時までその上から目線が持つかなぁ?」



     ..
本当に“全員”なら……【六人】のハズじゃないか―――――――――――――!!!



「違うルーク!! 罠よッ!!!」
「……え?」

焦るハロルドを嘲笑うかの様に、サレは鳥か何かを呼ぶかの如く口笛を吹いた。
576そこから何が見える@代理 16:2010/08/25(水) 20:32:01 ID:8hKlJz6W0
それを合図に小さな竜巻が瓦礫を掘り起こし、ぐったりとした少女を巻き上げる。
ハロルドは咄嗟にデルタレイを放つが、所詮は下級晶術。抵抗空しく光弾は旋風に弾かれた。
ハロルドは舌を打ち唇を噛む。やられた。最初からそのつもりで隠していたのか。
最初に隠れてる時、サレが私に気付いてないハズがないとは思っていたけど、やはり気付いていた。
即ち一番最初のジェット気流は端から攻撃目的なんかじゃない。
私に相殺させて、爆発が起きてる間にあの子を攫う為の布石だったって事か。
まんまとハメられた上に、切札を最期まで出さず温存とはやってくれるじゃないの。
正直舐めてた。こいつ、意外に頭が回る……!

「気付くの遅いよ天才さん」

フィリアの詠唱を突風で邪魔しつつ、サレは少女を抱えながら全てを見透かした様に嘲笑する。
マルタ=ルアルディ。
抵抗すらままならない、いたいけな少女がまんまと敵の手に落ちてしまった。
ハロルドは目を閉じ、冷静になれと自分に言い聞かせる。
脂汗を浮かべた死に損ないが偉そうにしてるのは癇に障るが、此所で挑発に乗る程馬鹿じゃない。

「なんて卑劣な……!」
低く呟くフィリアに、サレは嬉しそうに笑う。
「うん。良い目だねぇ。でも君さぁ、まだ自分の立場判ってないのかなぁ?」
マルタと共に気流に乗り上昇し、サレは笑顔を見せて小首を傾げる。
その言葉の意味が分からない程、ルークもフィリアも餓鬼ではない。
真逆、と可能性を考えるまでもなかった。
この状況でマルタ<人質>というジョーカーを切った意味。
「何が目的ですか……!」
肝の底から搾り出す様に、苦々しくフィリアは言う。
いや、恐らく目的は分かっていた。この場に居る皆に見当は付いていた。
しかしそれを認めたくはないと、フィリアは胸元のロザリオをぎゅうと握る。
頼る神なんてこの世界にはいないけれど、それでも祈らずにはいられなかった。
にい、とサレが口元を歪める。嫌な予感は何時だって当たる。

「何だと思う?」

サレはにへらと笑い、シロップを煮詰めた様な甘ったるい声で言った。
「ふッ、ふざけ―――」
言い掛けて、ルークは怒号を黙殺する。
577そこから何が見える@代理 17:2010/08/25(水) 20:34:58 ID:8hKlJz6W0
サレの傷だらけの左手が、マルタの喉元にぴたりと当てられたからだ。
「あれれぇ? 良いのかなそんな口僕に利いてさぁ?」
ルークは下唇を噛み、怒りをぐっと応える。
強がってはいるが、サレの左手は震えていた。
全身は傷だらけで、恐らくもうまともに立つ事すらままならないだろう。
十中八九、風で身体を支えている。
あと奥義一発と術一発。その程度で倒れるであろう敵にイニシアチブを握られている。
その現実はルークにとって堪え難い屈辱だった。


「殺せ」


びく、とまるで電撃でも喰らった様に肩が跳ねた。
……最初から答えは出ていたのだ。
剣士の自分が執行役になるであろう事も、全部薄々分かっていた。
自分の目を真直ぐにサレが見つめている。額に嫌な汗がじわりと滲んだ。

「聞こえなかったかい? 僕は“殺せ”って言ったんだよ。
 先ずその眼鏡女を君が殺すのさ、赤毛の坊や」

けたけたと笑いながら、しかし冷酷にサレは告げる。
ルークは隣に立つフィリアを目線だけで見た。驚愕の目がじくりと心を痛める。
出来ない。出来るワケがない。ルークは唾を呑み、そう思った。
「そん、な事。出来る、はず……が―――」
「へぇ? 僕にそんな事言っていいんだぁ?」

瞬間……ぶしゅ、と鈍い音と共に紅い薔薇が上空で咲いた。
マルタの胸がみるみる内に血に染まってゆく。
フィリアが小さく悲鳴を上げた。ハロルドは黙したままただただ震える拳を握っている。
悪趣味な笑い声だけが、三人の鼓膜を揺らし続けていた。

「おおっと、手が滑った。次はうっかり手元が滑って右手首を落とすかもしれないなぁ。
 ……さてと、もう一度しか言わないよ。“その眼鏡女を君が殺せ、赤毛の坊や”。
 そうすればコイツだけは助けてやる。安心しなよ? 僕こう見えても“約束”は守るから、さ」
「ッ、ぐ」
ぐうの音も出なかった。心拍数が上がる。
汗が毛穴から吹き出る。服が肌に張り付いて気持ち悪い。

「……10秒、待ってあげるよ。その間にどうぞ勇気ある選択<処刑>を、英雄殿」

ふざけた一礼の後、ひゃはははは、とどす黒い高笑いがびりびりと城を揺らした。
ルークは渇いた舌を唾で潤す。剣を握る手はかたかたと震えていた。
歯が恐怖に騒ぎ出し、足に至っては疾うに竦んでいる。
武器は一つ。フィリアも俺も支給品袋は一階以外の何処かに飛ばされて、手元には無い。
唯一支給品袋を持つハロルドに何かを借りる暇もあるわけない。
578そこから何が見える@代理 18:2010/08/25(水) 20:35:57 ID:8hKlJz6W0
絶対絶命、四面楚歌。
頭が瞬く間に真っ白になってゆく。何も考えられない。考えられる筈がない。

「ははヒひ、ヒュふッハハッハァッ!! どうしたんだよホラホラホラホラホラホラアァァッ!!?
 早く殺しなよごの女をぶッ殺されたくなかったらさぁぁあぁあああぁァァァァッ!!!」

フィリアを選ぶか、あの少女を選ぶか。文字通り究極の二者択一。
フィリアを選べば、少女は死ぬ。でもそれじゃ駄目だ。
かと言ってあの女の子を選べば、俺がフィリアを殺さなくちゃならなくなる。
いや……恐らくサレは約束を守らない。全員、死ぬ。
たった一人の犠牲で、俺達の安全は保障される。
三人と一人の命なら、優先すべきなのは……いや、そんなの認めない。
こっちの都合で勝手に奪って良い命なんて、有りはしない。
確かに生きる為には仕方がないのかもしれない。
でも、それにしたってあんまりじゃないか。
俺達の事を何も知らない女の子の命を奪って良いだなんて、そんなのおかしい。
命に重さなんかない。どっちも殺せない。俺には……選べない。

横目でフィリアを見る。死ぬ覚悟が出来ている目だ。自己犠牲を決めた目だ。
かつて自分がそうした様に―――フィリアも、消えるのか。
それで良いのかフィリアは?
本当に、自分が死んで何かを救うって事が正しいと思ってるのか?
見届ける立場になって、殺す立場になって初めて分かる……何て、情けない考え。

「ほらどうしたあと九秒だよ!?
 とっとと決断しなよヒーローさんッ!!
 ひャは、真逆この娘を見捨てるなんて言わないよねぇ? なワケないよなぁぁ!!?
 “命は大事”だもんなあぁぁぁ!? “命に色は無い”んだもんなぁあぁあァァァァッ!!?」

この状況を切り抜ける奇跡の一手も何もなく、目の前に広がるのは掛け値無しの絶望。
“今自分に出来る事”。そんな事何も無い。
滴る血と生温い風、嗤い声だけしか此所にはなかった。ルークは剣をゆっくりと握り直す。



残り八秒。希望なんて―――――――――――――何処にもありはしない。



趣味の悪い大爆笑を右から左に流しつつ、ハロルドは歯を軋ませる。
考え得る中で最悪の状況。何故こうなる事に気付けなかった?
冷静に考えれば、あの外道が人質を利用する手段に出るくらい直ぐに予想出来たはず。
私とした事が情けない。……いや、打開策はある事にはあるんだけど。
579そこから何が見える@代理 19:2010/08/25(水) 20:37:16 ID:8hKlJz6W0
無論私の希望としてはそれ一択。でも生憎、此所には三歳児と眼鏡が居る。
勿論人質なんて、私としては死んでも一向に構わないんだけど……彼等はそれを許さないでしょうね。

でも、ならばどうやってこの危機を乗り切る?

連携発動……馬鹿、もうプリズムフラッシャで使ったんだった。最悪。
シャドウエッジは空中に居るから無理。
デルタレイも先刻みたく風で弾かれるか避けられるのが関の山。
っていうかこんな見晴らしの良い場所で詠唱なんてさせてくれる訳が無い。
影の繋がりを利用して鏡影槍で動きを封殺……いやいや、無理っしょ。
奴は空中に浮いてて軌道も読めないし、冗談みたいに疾い。
仮に長期戦になるなら動きのパターンと癖から軌道予測は充分に出来るけど、
人質が取られてる状態で長期戦の期待は論外中の論外。
そもそもこちらは動けない状態なのに誘導だなんてふざけてるし。
剰え今は早朝。
窓からの日差しは目測で十度の傾きで上空のサレを照らしてるから、影は地面じゃなく彼方の壁についてる。
故に無理。
クリア難易度UNKNOWN。打つ手ほぼ無し。
三歳児が墜ちれば、恐らく私はルークを殺して、マルタごとサレを殺すだろう。
墜ちなければ勿論拍手喝采。喜んでマルタごとサレを殺す。
私はそれで一向に構わないし困らない。
されど残り七秒バッドエンドは目前に―――この先はどちらにせよ、彼等にとって絶望しかない。

「ルーク。マルタは諦めなさい。仲間と他人、純粋に命の重さが違うわ」

サレに聞こえない様にハロルドが囁く。ルークは剣を握ったまま硬直して動かない。
ハロルドはちらりとルークの様子を伺った。口が半開きだ。
壊れたか。いや、それとも。
「ちょっと。聞こえてんでしょ、しっかりしなさいよ。
 フィリアと見知らぬあの子。
 どっちの命が重いかなんて最初から分かりきってるでしょ」
反応無し。少しキレそうになるが抑える。遠くでやたら嬉しそうなカウントが聞こえた。
残り六秒。もう無駄か。
どうする私、被害が出る前にマルタごとサレを殺すか限界まで待ってみるか。
悪役は私だけで良い。最悪の結末は避けなきゃ。
「偽善者ぶるのも大概にしなさい。そろそろ怒るわよ」
残り五秒、可笑しな話。これじゃあ私が選択してるみたいじゃないの。


「俺は……選ばない」


残り時間ジャスト四秒。
何かを思い出した様に呟かれたその言葉を聞いて、フィリアの中に何かが走った。

580そこから何が見える@代理 20:2010/08/25(水) 21:03:32 ID:8hKlJz6W0
フィリアは死を覚悟していた。自分が犠牲になるならそれも悪くはないと思っていたからだ。
そんな自分を誇りに思いこそしなかったが、フィリアは自己犠牲の精神を悪いと思った事はなかった。
クレメンテ……自分のパートナーでもあったソーディアンは、最終的にその身を犠牲に世界の平和を選択した。
フィリアはその犠牲を正しい事だとは思わない。
だが、間違っていたと思った事も人生の中で一度たりとももなかった。
ただ漠然と、自分の命で誰かが助かるかもしれないならば、自分も恐らくそうするのだろう、とは思っていた。
フィリア=フィリスという人間は、本当に如何しようもなく人好しだったのだ。
他人を疑わない。疑おうとすらしない。疑う事を悪だと思っているからだ。
疑われる事が辛い事だと信じているからだ。
しかしそれ故にフィリアは人に裏切られる事が常人と比較して極端に多い。
だが、フィリアは裏切られてもその人の良心は必ず生きているであろうと信じている。
仲間だった頃の気持ちは、笑顔は決して嘘ではないと信じているのだ。
だから疑わない。……フィリアはどちらかと言えば生善説を信じている。
スタン同様信じる事は強さだとも思っていたし、フィリアは優しさを常に持つというルールを自分に課している。
それが戦場では甘さに繋がる事も重々承知してはいるが、
フィリアは自分から優しさを取れば、それは最早自分ではなくなってしまうとすら思っていた。
故にフィリアはごく自然にサレの言葉を信じた。それが半ば当然だった。
自分が犠牲になりさえすれば、少女は助かると疑いもしなかったのだ。
“自分が死ぬか少女が死ぬか”。
そう考えた瞬間にフィリアは答えを出した。迷うまでもない問題だと思った。
究極のお人好しのフィリア=フィリスは、何度生まれ変わっても少女の命を選ぶだろう。

“俺は……選ばない”。

だからこそ、その答えにフィリアは絶句した。
残り三秒。決定した死の淵の淵で、少年は余りにも馬鹿げた言葉をほざく。
“選べない”ではなく“選ばない”。
どちらかを選ばなければならない問題で、どちらも選ばないだなんて聞いた試しがない。
どちらも救えるワケがない。そんな虫が良い話がどの世界にあるものか。
何かを犠牲にしなければ、世界は、人は救えない。
それがフィリアの経験上の真理であり常識だった。
バティスタ、グレバム、リオン、イレーヌ、バルック、クレメンテ。
581そこから何が見える@代理 21:2010/08/25(水) 21:04:46 ID:8hKlJz6W0
望まぬ犠牲は数知れず、しかし世界の為ならば仕方無しと葬ってきた。
……血塗れた手で手に入れた英雄の称号。手放すなら今だと思っていた。
犠牲となって誰かの命を救えるなら、安い命だとさえ思っていた。
残り二秒。正真正銘のデッドラインにて、フィリアは先程走った感覚の正体に気付く。
純粋な興味だ。
どちらも選ばないと大言壮語を吐くこの少年は、一体どんな解を出すというのか?

「ちょっと。ソレ、どういう事よ」

ハロルドが震える声で呟く。
ルークは剣を握り締め、フィリアの背後へと誘われる様に足を進めた。
「こうするしかない、こうするしかないんだ! 俺に命を預けてくれ!」
フィリアの背後で剣を大きく振りかぶる。
期待に涎を垂らすサレの口が、悦びに大きく歪んだ。

「そうさ殺れ殺っちまえよッ! 生温い正義なんてこの戦場じゃあ糞の役にも立ちゃしないのさ!
 そら見た事か! 何が人の心! 何が心の強さ!! 偽善者ぶりに反吐が出る!!!
 んなもん本当の現実<選択>相手に折れずにいられるワケないんだよッ!!
 ヒヒャハハハッハァ!!! さぁ! ――――――――――ブ チ 殺 れ ッ !」

人に人を無理矢理殺させる事が何と楽しい事か。極上の喜劇の脚本家になる気分の、何と良い事か。
膨れ上がるカタルシス。
一人で愉しもうとも決して得られぬ悦楽に、サレは気分を高揚させた。
……さぁ、あと一秒。殺してみせろ。
手を染めさえすればお前も立派な“こっち側”だ。

「ルーク、アンタもしかして!」
ハロルドは懐に手を滑らせ、紫電の柄を握る。使いたくはないがもしもの時はルークを。
「ルークさん、貴方は……」
フィリアが振り上げられたソウルブラストを見て驚愕する。結局辿り着いた解は、矢張り。

“絶対に下ろすなよ。諦めろ。見捨てちまえって。あの子の命は俺達の命より軽いよ”

コンマ一秒の狭間で、にたりと笑うもう一人の自分。犠牲の上に立っている自分。
582そこから何が見える@代理 22−1:2010/08/25(水) 21:08:01 ID:8hKlJz6W0
今までと何も違わない。過去のものでもなく、純粋に正しい自分。

“もう、一人殺してるんだ。何人殺ろうが変わりゃしねーって。
 マグニスもあの子も死んだところで、オールドラントには何の不都合もない他人だ。そうだろ?”

ルークは目を細めてそいつを真直ぐに見つめる。
今出来る事はそれしかないんだ、見捨てろと言うそいつを。
……そう。それが多分、最善の判断だったんだろうな。
きっとハロルドも同じ事を考えてたと思う。
ジェイドもティアも、多分此所に居たなら同じような答えを出すんじゃないだろうか。
「おおオおォぉおォォォォぉッ」
ルークは確りと剣のグリップを握り、そして覚悟を決めて雄叫びを上げた。



……でも。でもな。折角受けた二回目の命なんだ―――












「行ッッけえええェぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!
 ブタザルゥゥぅううぅうぅウゥうウゥううゥうゥゥゥゥぅッ!!!」












―――犠牲を出さない道を、奇跡を。この一瞬くらい信じてみたいじゃないか。


583そこから何が見える@代理 22−2:2010/08/25(水) 21:08:41 ID:8hKlJz6W0
それは、針の穴よりもずっとずっと小さな賭けだった。
万に一つも成功する未来が見えなかったし、どうしようもなく根拠もなかった。
チップは全員の命、但しレートは数億倍。
成功すれば全員生還、奇跡の一手は炸裂すれば闇をも切り裂く。
ルークはその奇跡を信じていた。どれだけ小さな可能性でも構わないと。
今何をしているかすら分からないそいつを、信じていた。
恐怖で動けなくなっているかもしれない。
瓦礫に埋もれてしまっているかもしれない。傷を負っている可能性だってある。
最悪、死んでいるかもしれなかった。
それでもルークはそいつを信じ抜いた。頼りの綱にした。
だって―――――――――――――“仲間”を信じる事に理由は要らないのだから!



「……みゅみゅっ!!!(はいですの、御主人様!!!)」



ほら、だから叶う。恐れなければ簡単に奇跡は起きる。
信じ続ける力は、金剛石も運命も話にならない程に強固だ。
確かに根拠もない夢物語に懸けるだなんて、お前は馬鹿かと笑われるかもしれない。
だけどそれが何だって言うんだ。
馬鹿の何が駄目? 嘲笑されるから諦めるのか? 奇跡を信じる事が死ぬ理由になるのか?
584そこから何が見える@代理 23:2010/08/25(水) 21:10:22 ID:8hKlJz6W0
―――夢を見る権利くらい、誰にだってあるじゃないか。

一刀両断。

ルークの斬撃がフィリアの背中一センチ手前を掠れ……現実を、選択を、自分を縦一線に叩き切る。
時を同じくして上空十五メートル。
ルークの一撃を合図として、瞬間的にサレの周囲を濃霧が包み込む。
サレとフィリア。二人の思考が理解に追い着かず身体が硬直する中、ルークとハロルドだけが状況を理解していた。
目を細めて辺りを観察すれば、城内遥か上、落下中の小動物。サレよりも高い位置だ。
手には恐らく濃霧を出したであろうアレと……。

「そうか、例のアレを使っ、」
「言ったろハロルド、俺はどっちも“選ばない”」

だから、力を貸してくれ。
凛とした声色にハロルドががばりと振り向くと、ルークの輝く瞳がそう言っていた。
ハロルドは呆れた様に肩を竦ませる。やれやれ、これだから阿呆は嫌いだ。
直ぐに奇跡とか友情とか運命とか信頼とか、不確かなものを馬鹿正直に信じて無茶に走りたがる。
……だがこの際、天才の言葉を遮ったのは不問としよう。
力を貸せって? 私を何処の誰だと思ってるのやら。

「フィリア、ルーク! 今から私の言う通りに動きなさい!
 皆でアイツ倒すわよ!!」

作戦なんか疾うに七百六十五通りは考えてある。
やってやろうじゃないの、天才科学者ハロルド=ベルセリオスの名に懸けて!



*************



ご主人様がピンチですの。

さしものミュウも、人質を見てそれは理解出来た。
チーグルは知能が通常の動物と比較して、格段に発達している。
情報処理能力、学習能力、記憶力、コミュニケーション能力。
全てにおいて人間の子供とそう遜色無い脳を持っている数少ない生物の一つだ。
故にミュウはこの状況が如何に絶望的かを理解出来た。
つまりミュウが何かしらのアクションを起こすのは、
ミュウが生存していて、且つ状況を見ていた場合に限り半ば必然とも言えた。
しかしその必然条件を知っていたのはルークだけだ。ルークだけが、ミュウの存在に期待出来た。
サレもフィリアもハロルドも、ルークとミュウの絆までは知らない。
ましてやあんな小さくて愛らしい(ウザいとも言うが)生き物が話せるだなんて、
ルークが真剣に話したところで眉唾だ。
だからルークはミュウについてペット程度にしかフィリア達に話していなかった。
フィリアもハロルドもミュウに期待しなかったはそれが理由だった。
585そこから何が見える@代理 24:2010/08/25(水) 21:16:00 ID:8hKlJz6W0
そもそも期待するのが間違っているとすら二人は感じていた。
サレに至ってはもっと酷い認識だった。最初から敵の数にすら入れていなかったからだ。
たかが小動物。見た目で言えば、まだヴェイグのマフマフ、ザピィの方が強そうだとすら思っていた。
故にルーク以外からミュウは完全に意識の外の存在、
路傍の石と何等変わらぬ単なるマスコットだと思われていたのだ。
だからこそ成功した奇跡の策だったと言えるだろう。
そしてミュウはそれすらをも理解していた。
ルークが自分に期待を寄越す可能性と、ルーク以外から埒外である事。
そして、それを利用して自分はこの場の硬直を動かるかもしれない事を。

ミュウは、戦闘になるとアイテム袋に隠れる癖がある。
ルーク達に旅の途中で、そうするように言われた事があるからだ。
今回の戦闘も無論その癖は例外ではなく、ミュウは直ぐにルークの支給品袋の中に身を隠した。
しかしその直後のサレによる嵐の一撃により、ルークとフィリアは支給品袋を無くしてしまう。
そして幸運にもルークの支給品袋は二階の柱に引っ掛かり……風により封が開いたのだ。
恐る恐る支給品袋の口から外を見ていれば、人質ときた。
ミュウは一瞬悩んだ。
解決可能なのが恐らく自分だけとは言え、ソーサラーリングもない今の自分に一体何が出来ると言うのかと。
だがミュウは見つけてしまったのだ。
すぐ側に落ちていたフィリアの支給品袋と、自分の入っている支給品袋にある、とある“最臭兵器”を。

後は、ミュウにとって至極単純な仕事だった。
使うアイテム二つを持ち、サレに見付からない様に崩れた階段を上がり、三階からタイミングを見計らいジャンプ。
確かにジャンプする事に対して堪え難い恐怖と絶大なプレッシャーはあったが、
ミュウはルークがきっと助けてくれると信じていた。だから躊躇せず容易く出来る。

奇跡はお互いが信じなければ起きない。簡単過ぎて難し過ぎる真理だった。



*************



“なんだこれは”。
霧が発生したその瞬間、サレは動揺を隠せず口をぽかんと開けていた。
有り得ない、何が起きた? 何故霧が突然? 導術? 詠唱も無しに?フォルス?
今声が聞こえなかったか? アイテム? 毒霧? 幻術?仲間がまだ居た?
何時から? あの状況でどうやって? 取り敢えずマルタを殺すか?
というかブタザルとは何の事だ? 豚? 猿? どちらにせよ動物……“動物”?
586そこから何が見える@代理 25:2010/08/25(水) 21:17:11 ID:8hKlJz6W0
      ..............
……待て。あの青い生き物は何処へ行った?

次々に浮上する疑問と疑惑。紡ぎ出されるは一つの可能性。全てを繋げて解に至るまであと半秒。
しかしその時が訪れる事はなかった。その前にサレの顔面を得体の知れぬ液体が襲ったからだ。
サレは思わず小さな悲鳴を上げる。そして同時に鼻を襲う、この世の何よりも酷い臭い。

「げグぅ、な、んだ……ごの、ォ……臭……ッ」

こんなにも酷い異臭、いや激臭がこの世にあるものか。
未だ嘗て体験した事の無い刺激に鼻腔と喉が暴れ出し、挙句目をも強く刺激し出す。

最臭兵器“メロメロコウ”。

リーガル=ブライアンが誇る大企業レザレノ・カンパニーが生み出した香水の名称。
……もとい人工公害物。それを顔面に浴びたのだ。
その威力たるや、香水を付けた敵が現れると、それを追おうとする行動に支障を来たす程だった。
ただの香りがそれなら、原液ならばと考える事すら悍ましい。サレの苦痛も尤もだった。
視覚と嗅覚を奪われたサレの脳内はパニックに陥る。
最早フォルスやマルタどころの騒ぎではなかった。
今までに経験した事のない種類の激痛に、サレは身体をくの字に曲げて捩らせる。
目と鼻、喉の奥が火に炙られている様にさえ感じた。
思わずマルタを跳ね除けてのた打ち回るが、生憎そこは床すら無い空中。
サレはもがき苦しみながらバランスを崩し、地面へと落下する。
サレの情けない悲鳴と、主人を無くし荒ぶ風の大合唱が城内へと響き渡った。


「ブタザ―――ミュウ。サンキューな。確り掴まってろ、後は俺がやるからさ」


暴れる風が上げるは鋭い悲鳴。
その隙間を縫う様に突き抜けた人と動物の声が、凛と澄んだ空気を震わせる。
聞こえる筈のない勝利宣言は、けれどもショック状態のサレの鼓膜へと確りと届けられていた。

「サレ、お前が俺の間合いに警戒せずに入るのをずっっっと待ってた。
 翔んでるお陰で近付けねぇし風の防壁があるから、どうやって一撃を与えるか考えてた」

(馬鹿な。未だ此所は空中! なのに何故お前が居るッ)
サレは身体から染み出る嫌な汗を感じながら、有り得ない事態に絶句する。
指の隙間から血走った双眸で世界を見ると、黄金の穂がばさばさと靡いていた。
587そこから何が見える@代理 26:2010/08/25(水) 21:20:21 ID:8hKlJz6W0
涙でぼやけた景色の中、見えた物は何の変哲もない、ただの箒。

「答えは簡単だ。“俺も翔べばいい”」

(……そんな物で此所まで翔んできたってのか!
 霧に汚水に箒ィ!? そんな下らない物に、この僕がしてやられたって?
 そんな、そんな事がッ……!)
サレは屈辱に青筋を浮かべ、鼻水と涎、涙に汚れながらも獣の様に叫ぶ。

「幾ら風で小細工しようが、幾ら速くなろうがパニック状態なら関係ねぇ。だろ?」

条件は整い過ぎていた。
相手が風使いというだけで、幾らでも乱発出来ると最初から思ってはいた。

「それに、お前の行動を越える速さで攻撃すればいいだけの話だしな……ッ!!」

ハロルドは瓦礫に落下するマルタを寸でのところでキャッチしつつ、箒の柄に立つルークを見上げる。
普通、一朝一夕で扱える様になる代物じゃない。
私みたいな稀代の天才でもなけりゃ一発で操るのは中々難しい。
それを考えたら、ぶしつけ本場であそこまで使いこなすとは……中々如何して器用な三歳児だ。
自分の魔力で文字でも書く練習でもしてたのかしら、と詠唱しながら微笑んでみる。
同時にハロルドは周囲の風属性の晶力が急速に収束するのを感じた。
そうか、と関心五割納得五割。
FOF<フィールドオブフォニムス>。
サレの暴走のお陰でハイデルベルグ城全体が晶力に包まれている。
膨大な風晶力、いや第三音素の収束による術技任意進化。即ちあれが……“FOF変化”!



「刹那は無限! その一瞬に俺の全てを懸ける!!
 その臭いごと、ぶッッッ飛びな――――――――――――――翔破ッ、烈光閃!!!!!!」



風の力を借りて繰り出される高速の突きの応酬は、最早目で追う事すら叶わない。
見切れぬ無数の刃は残像と化し、さながら鋭い波動が飛翔しているかの様に美しく煌めく。
光を浴びて絢爛たる虹色に輝くその剣閃は、烈火の如く猛り狂って敵を貫くだろう。
眩い輝きは揚羽蝶の様に美しく、鋭い斬撃は雀蜂の様に素早く残酷に。
天の威光を思わせる閃光から、地獄の風景を思わせる血時雨へと移行するその速度たるや―――正に神速。

“死”。

身体に降り注ぐ七色の剣閃を客観的に見ながら、サレは遂にそれを覚悟した。
588そこから何が見える@代理 27:2010/08/25(水) 21:24:23 ID:8hKlJz6W0
不意に重なる景色。デジャ・ビュ。
……あの時もそうだった。確か獣王山の麓で僕を動けなくしたのもこの技だった。
隊長とドクターバースの娘。あの憎たらしい目、今でも思い出す。
この技を見るのは二回目だ。二回目なのに……見えない。疾い。身体が動かない。反応出来ない。
またこの技で惨めに死ぬのか僕は?
此所でこんな奴等にみすみす殺られるのか? ただの雑魚じゃないかそんなの。
サレは胸と腹に衝撃を感じながらそう自嘲する。

「後はまかせたハロルド! フィリア!!」

見てみなよ、何て憐れなんだろうね。血を撒き散らしながら墜ちてるよ。
ハハ。まるで今まで僕が殺してきた馬鹿共みたいだ。
これじゃ僕もその馬鹿と一緒じゃないか。
面白い。雑魚で馬鹿って傑作だ。笑えるねぇ。救い様が無いなァこれじゃ。

「お呼びよ、フィリア。教えた通りに出来るわよね?」

胸に下げたミスティシンボルを弄りつつ、ハロルドは笑ってそう問うた。
純粋に楽しみだったのだ。フォルスにFOF、そしてこれから試す新たな技術。
今までになかった経験が増えてゆくのはハロルドにとって快感だった。
サレなど既に眼中どころか意識にさえ存在しない。最早敵は踏み台君第一号に過ぎない。

「えぇ勿論、準備も出来てますわ」

フィリアはそれを知ってか知らずか、大きな声でそう返した。
左手で胸を触ってみる。心音は異常無し。
システム・オールグリーン、生命活動は規則的に運行中。
自分は今、此所にこうして生きている。
これは現実だ。自分は確かに心臓を動かして、声帯を震わせて喋っている。
犠牲となる運命を覆してくれた一人と一匹により、此所に立っているのだ。
この恩は忘れない。だから少年の選択を近くで見続けよう、側でずっと感謝し続けよう。
この胸に躍動する小さな奇跡が有る限り、きっと私は二度と運命に屈伏などしない!

「地晶術待機解凍―――グランドダッシャー」/「光晶術待機解凍―――ディバインセイバー」

パチン、と指が鳴る音が二つ。敵を倒すという意思が共鳴する。
光晶力は二人を中心に瓦礫を吹き飛ばし、風すらをも押し返した。
地晶力は強大な光の波動を重力で固定し、やがて強力な力場を練り上げるだろう。
金と白は細かく混ざり合い、凄まじいエネルギーは城全体を震わせる。

「「降り注ぐ光の結晶……!」」

がらがらと音を上げながら崩れゆく壁を背景に、二人は瓦礫に沈みゆくサレを睨んでいた。
589そこから何が見える@代理 28:2010/08/25(水) 21:29:21 ID:8hKlJz6W0
かたやソーディアンを生み出した稀代の天才。
かたや扱いが尤も難しいとされるソーディアン、クレメンテのマスター。
二人の力が合わされば、正に一騎当千、否……二騎当億!



「「ユニゾン・アタック―――――――――――――――――クラスターレイドッ!!!」」



一瞬の静寂、やがて晶力解放。
床上約四十センチ、地面衝突までコンマ一秒もあるかどうか。
床を喰い破りながら自分の落下予測地点へ収束する七色の結晶を見て、サレはもう無理だと思った。
フォルス暴走など比ではないと言っても過言ではない。
どんな極悪人でも死を覚悟する他ない凄まじい魔力……これを直撃して助かる筈がない。
ただ、余りにも綺麗過ぎた。これが自分の命を奪うとは到底思えず、サレは虹の輝きに息を飲む。
床上約二十五センチ。未だに現実味がない。こんな美しい術で僕が死ぬのか? 本当に?
床上約十三センチ。自分に相応しいのはもっと汚い死だ。
こんな結晶に抱かれて死ぬなんて、この僕が。余りにも皮肉過ぎる。
床上約十センチ。ふと視線を逸らすと、憎らしい勝利顔。待て、自分は何を考えてた。
床上約八センチ。なんだその偽善者面は。ふざけるな、調子に乗るなよこん畜生が。
床上約七センチ。渾身の想いでフォルスを練る。
床上約六センチ。お前等の為にこの僕が死ぬだって? 笑わせるなよ。そんな事ッ、



「認めだれ゛るワゲがッ! あるがァァァァ゛ァァァァッ!!!!!!!
 しッ、ジュタイ゛ブェブリィィゼェッ、圧゛力ッ゛ッッ集積!!!
 運べッ――――――――――――――――エ゛アリアル゛ッ!! ボォおおォぉぉォォドッ!!!」



右脚が結晶の贄と化し、余った左脚は七色の破片に削り落とされる。
キール=ツァイベルの技を模して造ったエアリアルボードごと腹の芯を貫くは、最後に現れた極大結晶。
限界の底の底の底、死から薄皮一枚隔てたグロテスクな景色の中で、サレは世界を怨む様に啼いた。
血の涙を迸らせ、サレはフォルスを無理矢理に呼ぶ。
結局何が足りなかった。サレは白目を向きながら自分に問うた。
心か?
心の力が足りないってのか?


あぁ、なら問題ないね―――だって僕は、人の心を否定する強い心を持ってたじゃないか。


爆発。火薬の類は一つとして使われていなかったが、その表現が一番正しかった。
飛んで来た瓦礫を避けながら、ハロルドは目を細める。
590そこから何が見える 29(代理):2010/08/25(水) 21:57:03 ID:tEe0EY040
……あの状況で何を。真逆……いやそんな馬鹿な。

土煙が晴れてゆく。結晶に閉ざされた両足と、夥しい量の血堪り。
そしてその奥の破壊された城壁を見て、ハロルドは言葉を失う。
何という執念。何という自我。何という……憐れな男。
この後に及んで、助かりもしないのに逃げるだなんて。



*************



上空数十メートル。その速度小型機の如し。ジェット気流に乗るサレは、ひたすら東へと翔ぶ。
一瞬で一エリア分。嵐の名に恥じぬ疾さは正に疾風の様だった。
サレは飛び散る血の飛沫の中、必死にフォルスを操る。生きる。生き延びる。
だから逃げる。誰も居ない所へ。僕はまだ死にたくない。
あんな奴等に殺されるワケにはいかない。だから、


逃(ヒ)げ(ュ)る(ウ)ん(ゥ)だ(ン)。



何かが終わる音がした。
執念が、決意が、怨念が心が感情が。全て血と共に果ての無い大空へと流れ落ちてゆく。
がくん、と急激に速度が落ちた。流れる景色が凝固する。
一瞬にして風が霧散し、まるで無防備な状態の身体が上空へと放り出された。

「あ゛、へァあ………ッ!?」

サレは墜落しながら疑問符混じりの悲鳴を上げる。
“精神力涸渇”。運命の女神はサレを嘲笑い、限界をこれでもかと見せ付ける。
因果応報、盛者必衰栄枯盛衰。
幾ら何でも、サレは自身のフォルス能力を乱発し過ぎた。
フォルス暴走は徒に精神力を消費する。
その上フォルス能力を使うとなれば、底が見えるのは必然だった。
精神力がゼロになれば、フォルス能力とて使えなくなる。
暴走状態でもそのルールは不変。フォルス能力者の常識中の常識だった。
もっと精神力に気を配ってさえいれば、精神力が尽きるだろう現実に早く気付いてさえいれば。
今更後悔したところで、未来も過去も現実さえも変わりはしない。
暴走により精神を乱した事による単純な、けれども致命的なミス。
本来サレが間違える筈のない、幼稚園児でも分かる様な至極容易な問題だった。
幾ら祈れど時既に遅し。
祈る神すら否定した者の願いを聞き入れる愚かな神など、何処の世界に居ると言うのか。
サレの鼓膜を風音が乱暴に揺らす。高く叫ぶ音、低く唸る様な音。
その全てが混ざり合い奏でられる悪趣味な交響曲は、さながら愚かな人の子を見捨てた神々の嘲笑のようだった。
591そこから何が見える 30(代理):2010/08/25(水) 21:57:48 ID:tEe0EY040
サレが地面に落下する速度は累乗的に上昇してゆき、そして―――



「やぁ。奇遇だネ」



―――母なる大地に抱擁されるよりも前に、その身は灼熱の業火に包まれた。

「ヒ、ビャあァァぁァあッづ、ゥう、あッ、お、ォォォぉぅふッ!
 ヒャア、ひャあァァァァッ!!?」

両足片腕を無くした身体は、瞬く間に文字通り火達磨と化す。
辺り一面に広がる壮絶な大絶叫が、マオの耳をびりびりと刺した。
何時ものサレならフォルスで火など払えるだろうが、精神力が無い今となってはそれも叶わない。

「上から人が落ちてくるだなんて珍しいから見てみれば……真逆キミだったなんてネ。
 びっくりしたなぁもぅ」

マオは転げ回るサレの腹を何の気無しに蹴り上げ、にこやかな表情で言った。

「なん゛、でッ! お前! マォ゛ッ……!
 ぼイッ、あづ、じぬッ……じねのばッ……ィやッドゥア!!!
 ァァァァあづゥああぁぁぁッ! ィぁッッッだぁァァァァオォァッ!!!」

無表情のまま憐れに這いずり回るヒトを見下す。気分は良くも悪くもない。
汚らわしく血をそこらへと吐き、ヒトは何やら呻いていた。
ほらみた事かリアラ。結局こうなるんだ。
どうせ誰かに会ったところで、ヒトは愚かだと、自分の昔の名を呼ぶなと思うだけだ。
僕は僕の道を進む。世界に生きるマオを根絶やしにしてお母さんに認めて貰う。
リアラ、キミも例外じゃない。今度会ったら殺す。
神じゃなく少女と言い張るなら、キミはヒト。
そしてマオの名を語ったヒトはもれなく処分しなきゃあならない。
順調快調絶好調。さぁさぁマオを無くす旅は断罪二人目。
……そこで惨めに踊ってろ芋虫。
火力が足りないなら幾らでもくれてやる。

「まぁ、何でそんな身体なのかとか興味無いし。取り敢えず、ボクの為に死んでヨ」

あぁ、と身体の芯から生気を絞り出す様にサレは唸る。
滾る紅蓮から覗く炎の主は、自分へとフォルスを浴びせ続けながら……嗤っていた。
サレはなんて悍ましい表情だ、と激痛に痙攣しながら思う。
微笑に中身がないのだ。何の感情も抱いてなさそうな、真っ白な笑み。純粋な狂気。
ただそんな事は今、サレの中では大した問題ではなかったし、正直に言えばどうだって良い事だった。
取り敢えず、今一番に優先すべき事は目前のヒトから如何やって逃れるか考える事だとサレは思うからだ。

しかし、サレはそれも直ぐに諦めた。浅はかな思考だと気付いたからだ。
592そこから何が見える 31・32(代理):2010/08/25(水) 21:58:45 ID:tEe0EY040
フォルスも使えないし両足も無くしてしまった。今度こそ逃げられるワケがない。
痛みに形容し難い金切声を上げながら、サレは助けを求め地元をのたうち回った。
情けない。誰かに助けを求めるだなんてこれでも四星だった男かとサレは己の無力さを呪う。
きっと今、自分は汚物を見るかの様な蔑みの視線を向けられているに違いない。
こいつはこんなにも救い様の無い屑だったのかと。
今まで立ち塞がって来た敵が、こんなにも可哀相なヒトだったのかと。

ごきゃり、と鈍く小気味好い音。

電気信号がサレの身体を経て、脳天まで突き抜ける。
ゾゾゾ、と寒気にも似た何かが彼の背筋を走り抜けた。
痛みと熱さが絡み、混沌とした刺激が脳髄をズタズタに痛め付ける。
意味不明な汗に全身を濡らし、それすらも瞬時に蒸発させられながら、
サレは開いた瞳孔を忙しなく動かした。
油断すると逝ってしまいそうな、死と隣合わせの刺激が彼の全身をざくざくと滅多刺しにする。
不意に、踏み砕かれた腕に乗せた足へと思い切り体重を乗せられた。
サレは到底人間のものとは思えない様な奇妙な声を上げる。痛い、痛い、痛い。死にたくない。
ヒヒヒ、と狂った笑みを焼けた鼓膜に感じながら、サレはひゅうと息を吸う。喉が瞬く間に焼けていった。
過呼吸になりかけながらも肩を揺らし呼吸するサレは、やがて鈍く咳込み、
爛れた粘膜を穴という穴から垂らしながら、ゆっくりと顔を上げる。
うっすらと双眸に涙を浮かべ悦楽に浸るマオが、サレの頭をがっ、と掴んだ。
正真正銘終わりだ。サレはそう思った。
後悔と怨嗟が、吐瀉物と共に喉元まで競り上がる。
痺れるような刺激の激流が頭頂部から全身へと流れた。
悦びに震えるマオの手が、恐る恐る輪郭を触ってくる。

―――何て、大きい。

今まで餓鬼だと思っていたヒトは、こんなにも大きな手をしていたのか。
サレは今一度恐怖に全身を震わせる。畜生、畜生畜生。自分は……何てちっぽけな存在なんだ。

血塗れの頭を掴む手に、フォルスが集中される。くるくるからからと立方体が空回り。
何もありはしない。なにもかもここにはありはしない。

煉獄だ。サレはブラックアウトしてゆく意識の淵でそう思った。

「またこれで、ボクはマオを殺せた。キミには感謝しゃなきゃ」

笑い方に自信こそありはしなかったが、それでもマオの感謝の気持ちは本物だった。
満面の笑みでマオが呟く前で、どさりと人型の炭が力無く崩れ落ちる。
指先一つ動かない。焼き加減はウェルダン、豪華な食卓に喜ぶ者はヒト一人居ない。
一礼、焼け野原にて。
屍焦がし、愛願う。炎の子、言葉を望めど母の応答一つ無し。



「――――――――死んでくれて、どうもありがとう」



本日は晴天なり、本日は晴天なり。
聞こえていますかお母さん。愛を下さい、愛を下さい。ハロー、ハロー、ハロー。
593そこから何が見える 32(修正・代理):2010/08/25(水) 21:59:56 ID:tEe0EY040
擦り切れた心では風すら呼べない。サレは炎に肉を崩しながら、呪う様に空を仰いだ。

「じゃあね」

暴走したフォルスが、マオの身体を痛めながらもサレの頭部を包み込んだ。
熱により吹き荒ぶ魔風にマオは目を細め、そして激しく痛む腕に眉を顰めながら笑う。
サレは焦げた白目をマオへと向け、気が狂った様に声を上げた。
ばちばちと髪が焼け縮れ、熱収縮した皮膚が縦に裂けてゆく。
煉獄で罰を受けるかの様に、サレの身体は灼熱に抱かれて死に尽くしていった。
真赤な肉はじゅうと焦げ、頬は剥がれ落ち、炭化した唇が崩れ落ちる。
まるで煉獄だ。サレはブラックアウトしてゆく意識の淵でそう思った。

「またこれで、ボクはマオを殺せた。キミには感謝しゃなきゃ」

笑い方に自信こそありはしなかったが、それでもマオの感謝の気持ちは本物だった。
満面の笑みでマオが呟く前で、どさりと人型の炭が力無く崩れ落ちる。
指先一つ動かない。焼き加減はウェルダン、豪華な食卓に喜ぶ者はヒト一人居ない。
一礼、焼け野原にて。
屍焦がし、愛願う。炎の子、言葉を望めど母の応答一つ無し。



「――――――――死んでくれて、どうもありがとう」



本日は晴天なり、本日は晴天なり。
聞こえていますかお母さん。愛を下さい、愛を下さい。ハロー、ハロー、ハロー。
594そこから何が見える 33(代理):2010/08/25(水) 22:00:58 ID:tEe0EY040
【ルーク・フォン・ファブレ 生存確認】
状態:HP55% TP90% 強い決意 第2回放送の遅れがひっかかる スタン達への不思議な感情
   全身に傷・打撲・痣
所持品:ソウルブラスト ミュウ ミスティブルーム
基本行動方針:今自分に出来る事をする
第一行動方針:サレを追うのは無理なので取り敢えずはマルタの処置。
第二行動方針:イオンの亡骸を探す
第三行動方針:城を探索したらチャットを探しに南へ? アッシュやジェイド達の手かがりを探す?
       マルタの「願い」を叶えるのを手伝う?
第四行動方針:アリスを探してイオンの仇を取る?
第五行動方針:スパーダ・ジューダスが気になる
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・大広間

【フィリア・フィリス 生存確認】
状態:HP60% TP55% 巨大な魔力が少し気になる 打撲や裂傷 髪が梳けている 眼鏡が割れている
所持品:無し
基本行動方針:仲間を探しながら情報収集に徹する。ルークに着いて行く。
第一行動方針:マルタをホウテイバンリで回復させる
第二行動方針:城を探索したらチャットを探しに南へ。クレメンテについて話をしたい
第三行動方針:ハロルドと再会したら時間跳躍について尋ねる
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・大広間

【マルタ・ルアルディ 生存確認】
状態:HP3% TP100% 右肩に傷跡 右の片袖無し デスガロ熱発症
   空腹 死への恐怖 センチュリオン・コアの存在への不安
所持品:エミルのマフラー 鬼包丁 レンズ×29 情報入り名簿 石
    蟻地獄人の人形 外套代わりの毛布×2
基本行動方針:死ぬまでにエミルに会いたい。生きていたい。
第一行動方針:エミルにマフラーの件を謝る
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間

【ハロルド・ベルセリオス 生存確認】
状態:HP75% TP65% 仲間達が心配 巨大な魔力(マナ)が気になる エミルを警戒
所持品:天才ハロルドの杖 スペクタクルズ×82 ローレライの宝珠 紫電 苦無×17
    とうもろこし ミスティシンボル
基本行動方針:面白くないのでゲームには乗らない。但し殺しは認める
第一行動方針:マルタ治療後、G2へ向かいつつ解剖するチャンスを伺う
第二行動方針:スペクタクルズで未知の種族のデータ採取!
第三行動方針:フォルスの特異性について調査、R世界の住民に接触する
第四行動方針:次にロニに会ったら殺す
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間

【マオ 生存確認】
状態:HP65% TP95% 精神疲労 エルレインを信頼(not依存) 火傷、炭化 足に裂傷
   リアラが超嫌い アニー以降の放送を聴いてない オルセルグ 封魔の石発動中
所持品:忍刀・東風 ワルターのサック 封魔の石 黒髭ダガー ワルターの首輪の欠片
基本行動方針:お母さんや聖獣達に愛されるため、『マオ』を完全に殺す
第一行動方針:モリスン邸へ向かい、マオを知る者全員を殺す。
第行動方針:R世界のヒトを殺す。フォルス探知があるので、モリスン邸に集った人物を優先する
第四行動方針:マオを殺してもリバウンドが治まらなかったら、聖獣に代わりヒトを滅ぼす。
第五行動方針:隠された神殿の扉を開く鍵を入手する? (意味があるのか?)
現在位置:E7・ナーオス基地前


備考:ハイデルベルグ城が半崩壊しました。
   状態は一階及び二階天井崩落、窓硝子全破壊、床崩壊、南・西側壁半壊、階段半壊。

B2放置アイテム:苦無×1 メロメロコウ(残量二割) マジックミスト ペイルドラグ 
         ルークの日記 メンタルバングル ホウテイバンリ
         サレの荷物(ガーネット ダイヤモンド 基本支給品一式三人分)
595そこから何が見える 35(代理):2010/08/25(水) 22:01:50 ID:tEe0EY040










強大な正義が、遠く遠く醜い世界を嘲る様に吠えた。
極光術士が放った威光が空を雲を、風をも殺して轟かせたのは大気の断末魔。
大地は揺れ、眩い閃光は一瞬にして世界に絶望の黎明を差し出す。
それは正義とは程遠い破滅を思わす光景だったが、サレの目に映る事は無かった。
……何を見ている? サレは霞み行く意識の水底で力無く呻いた。
. ......
今、何を見ている?
黒い闇と紅い焔に抱かれながら、サレは反芻する。何が見えている? 何を見る事が出来る?
“無”。あるいは“死”。
そんな下らない単語達ばかりが、シャボン玉の様に浮かんでは儚く割れていった。

……なら、今まで何を見てきた?
サレは底の見えぬ深い沼に墜ちながら自問する。
澱みつつもやがて浮かんで来たのは、忌々しい氷使いの苛つく程に大きな背だった。
……そうだ。
サレは焦げて動かなくなってしまった表情筋の裏側で、何かを小馬鹿にする様に笑った。
何時もそうだった。何時も誰かが、何かが気に入らなくて、それを壊す為に生きてきた。
その為だけに、生きてきた。他人の苦しむ顔が見たかった。
他人を壊したかった。それが僕にとっての全てだった。
現実を見ず理想を掲げる奴が一番疎ましくて、そいつらには現実を身体に教え歩いてきた。
吐き気がする程温い環境で生きてきて夢と理想を叶えてきた奴に、絶望を突き付けてきた。

“殺せよ”

カレギアで今際の際に呪う様に呟いた言葉が、胸を圧迫する。
あの時最期に見た奴等の姿は、僕を難無く越えてゆく大きな背だった。
同情と失望に満ちた視線の後、奴等は堪え難いくらいの屈辱を自分へと見せつけたのだ。
そう。僕が見てきたのは……常に誰かの腹立だしい背中だった。
必死に追いかけてきたのは、光でも闇でも何でもない、単なる誰かの軌跡だった。
でもそれの何処が悪い。何処が間違っていたって言うんだ。
自分は何も間違ってなんかいない。生き方も、行動も、感情も。全て正解だった。真直ぐだった。
僕の人生は、歴史は誰にも否定させない。
最期まで僕は僕だった。僕はそんな僕が堪らなく好きだった。究極の自己愛だ。
他人が疎ましくて何が悪い。関わりが煩わしくて何が悪い。ヒトを小馬鹿にして何が悪い。
自分だけ信じて何が悪い。現実を突き付けて何が悪い。斜に構えて何が悪い。
弱い者を虐げて何が悪い。心の力を捩じ伏せようとして何が悪い。無力な馬鹿を殺して何が悪い。
596そこから何が見える 36(代理):2010/08/25(水) 22:02:30 ID:tEe0EY040
理想も、仲間も、自信も、家族も、平穏も、約束された安全も、力も、絆も愛も全部持ってへらへら笑ってる屑を潰したくて……何が、悪い。

でも過去る人生の中で、僕は何を見た? 生の到達地点とも言える死の瞬間、僕には何が残っていたんだろうね?
……愚問か。どうせ此所では残せないのか。
誰にも残せないのか? あいつにも、現実を見せられないのか?
僕の死は意味が無いのか? 誰にも見てもらえないのか? 生きた意味は? 価値は?
そんなもの無いって? でもお前は構わないだろうって?

“そんなの嫌に決まってんだろうが……!”

イタイ、怖い! 死にたくない! 痛い、いたい、痛い。嫌だ、まだ、生きて、痛い!
まだ僕は、あいつをッ、ヒトを、苦しみを、絶望をッ痛みをッ! 見ていたい……!
何かを恨んでいたい、誰かを壊して、いたい……まだ、ヒトの心を弄んで、いたい……!
……道化師、そこから何が見えるよ。殺し合いを見物するのはさぞ気分がいいだろうなァ。
マオ坊や、女王サマ、ヴェイグ……君達は今、何を見てる?
けけけ。判ってるよこん畜生が。僕なんか見てないんだろ、誰もさァ。
でもそれなら僕も一緒、僕も何もみちゃいない。“同点”だ。ならば、“まだ負けてない”。
次だ。つぎ次ツギ次次。まだまだ終わらせないよけけひゃひゃひひひひゃははァッ!
僕が勝つまで負けはないのさ、馬鹿がッ……!
だって此所からは、世界も、何も―――





「ざまぁみろ」





―――自分の死さえも、見えないんだからさァ?








【サレ 死亡確認】


【残り 36人】
597名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/25(水) 22:05:05 ID:tEe0EY040
以上、代理投下終了しました。

申し訳ございませんが、一点、投下時に致命的なミスが……。
>>592で仮投下分のレスをまとめた際、32にあたる部分を修正前のものと
取り違えてしまってます。

>何もありはしない。なにもかもここにはありはしない。

これ以降は>>593の32(修正版)の内容のほうにつながります。
ケアレスミスのせいで、読みづらくしてしまって申し訳ありません。
そして作者さん、執筆お疲れ様でした。
598名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/25(水) 22:11:51 ID:8hKlJz6W0
代理投下乙

サレ逝ったか……乾いた風に火が交じれば燃え尽きるか。
GJでした。
599名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/28(土) 22:29:10 ID:p1sG5Bv60
投下します。
600少女と酔いどれと英雄たるの対価 1:2010/08/28(土) 22:29:57 ID:p1sG5Bv60
―――――――諸君、まことに不本意ではあるが、逃れられぬとあらば楽しむより他にない。

                                     ある狂人の言葉




生い茂った葉の一枚一枚を滑り下りる木漏れ日は温かく、今日も一日が良い天気であろうことを教えている。
そこから立ち上る咽返るほどの水気と植物の匂いは、この場所が生きた土地であることを教えていた。
周囲の迷いの森は未だ闇と死の気配を漂わせていたが、
夜を抜けたこの場所に限って言えば、未だ探せば果物の一つあって不思議ではない生きた森と言えた。

大樹ユグドラシル。殺し合いなどと言う血生臭いモノとは縁遠き、神秘と陽光に包まれた聖地。
その静寂を乱す様に、眩い光が彗星の如く大樹の根元へと落下した。
しかし墜落といった剣呑なものではなく、地面への接触の直前に制動がかかり減速し、光は着地した。
光は自らが包んでいたものが無事なことを確認したかのように、粒子へと霧散する。
そこから現れたるは、竹から生まれたかのように美しい娘子だった。

「……どうやら、無事についたみたいね」

竹取の娘―――――英雄リアラは、こんなこと(空間転移)に慣れた様子でそう呟いた。
周囲を見渡すまでも無い。なるほど、だから「大樹」ユグドラシルか。
これほどの樹がユグドラシルでなければ、本当の大樹は山のように大きな樹なのだろうが、
残念なことに彼女はこの地にてそんなものに御目にかかったことは無い。

『ああ……そのようだな……』
リアラが佩いた剣……ディムロスが呻くように呟く。
大樹に圧巻されたのだろうか、ディムロスが落ち着くまでと思い、リアラはそのまま大樹を見つめていた。
神木に包まれた大地と、温かな日差し、そして中空で見る空とは異なる見上げた青空。
(まるで……ラグナ遺跡みたい……)
カイルと初めて出会い、そして運命を覚悟したあの場所を思い出す。
瞼を閉じれば、そのボサボサの金髪とか細い、でも力強いあの背中があった。
(カイル……)
だがリアラは瞼をきゅうと強く閉じ、縋りたくなるその背中を追い払う。
今の自分は英雄を目指しているのだ。今必要なのは感傷ではなく、思考。これからどうすべきか、自分が何を成すべきか。

「!? そうだわ、ロイドは!?」

そこに来て漸く彼女はそこに思い立った。
最速ではないが、ただの人間であればまだ戸惑いの中にあっただろうから、十分な早さと言える。
リアラは首を振って辺りを見回すが、それらしき人影は見えない。
もっとも、この鬱蒼とした森の中では遮るものが多過ぎてロイドの不在を示す材料としては弱い。

『見渡す限り、他に転移装置も無いか……遠くまでは離れていないだろう。
 どうやら、若干座標がズレたのかもしれんな。……馬鹿者め、仲間を護る為に大切なものを見失ってどうする』
ようやく調子を取り戻したか、ディムロスは悪態をつくように事態をそう分析した。
レムの塔から転移する直前まで、ロイドはエルレイン達を警戒しリアラ達を巻き込まぬよう距離を取っていた。
その僅かな差がこのズレになっているのだろう。ロイドの選択を非とは咎めなかったが、しこりが残らないわけでもない。
601少女と酔いどれと英雄たるの対価 2:2010/08/28(土) 22:32:41 ID:p1sG5Bv60
「ディムロス……」
『ん、すまん。我としたことが少し気負い過ぎたか。
 リアラ、念のため手持ちの道具を確認しておけ。他に零していたら堪ったものではない』
そうよね、とリアラは了解し、手持ちの支給品の有無を確認していく。
それを見ながら、ディムロスは言い知れぬ不快感を覚えていた。彼らをここに導いた、あのレムの塔についてである。
(あの塔は、ディストが基地で見つけた自らの世界の施設だ)
ディムロスを一番初めに手にした参加者、死神ディスト。
彼のこのゲームに対する考察はあの基地より見たあの塔より始まった。
それほどに重要であるが故に、ディムロスも道中で興味本位にあの塔が何なのかを聞いたことがある。

【アレ自体は大したモノではありませんよ。愚か者と気狂いが暇に飽かして立てた墓標です。
 設計思想が美しくないですし、何より作りかけてから諦める辺りがバカバカしい。
 バカは高いところが好きなんでしょうねえ。空を目指すのであれば、私のエレガントな椅子の方がよッぽど…………グチグチグチグチ……】

当然、ディストの主観が混じった評価の為、その目的に関しては大いに疑わなければならない。
だが、1つ確かなのはあの塔が未完成であるということだ。
ディムロス達が辿り着いた頂上は本当の頂上ではない。そこにはある単純な疑問が見え隠れしている。
(本当の高さがどれだけを想定していたかは知らないが、中継点にあんな規模の転移装置を置くとは考えられん。
 アレは、あの塔の建設が諦められて、あそこが頂上になってから置かれたものだ)
つまり、あの転移装置は元のレムの塔に無い。ましてや、元からあった施設を流用して用意されたモノでもない。
更に言えば、ディストはこんな装置があると微塵も思っていなかった。あればあの塔を目指した理由が変わるだろう。

【それもありますが、サイグローグが運んでくる時に残した形跡があるか調べたいです。
 上手く形跡を見つけて、異世界の移動手段をそこから逆算できれば、脱出にも役立つでしょう】

ディストの推測は的を得ていた。ただし、的が大き過ぎた。
…………形跡どころではない。異世界まではどうかはともかく、
一方通行とはいえおよそ会場の殆どに行ける移動手段があった。
しかももとの塔に近しい機能があったからこのゲームに流用したなどと気まぐれではなく、
ご丁寧に、一から作り、そこに用意されていた。

そこには、強い意思がある。それを使って何かをせよと言う禍々しい意思が。
そして自分達はあの装置を使い「何かをした」。
ただより高いものは無い。そんな当たり前のことを疑う気は無い。だが、一体何をさせようと……

「ディムロス、私の持ってたものは一通りそろっているみたい」
『あ、ああ……それは何よりだ』
没頭しすぎてリアラの言葉に虚を突かれたディムロスはそれを表に出さぬよう、努めてゆっくりと言葉にした。
『どうやら忘れ物は無いようだな。ならば、ロイドを探しに――――――――』
その時だった。ぐぐもった声が、少女の背中に響いたのは。




「ロイド……? それは…………ロイド=アーヴィングのことかしら?」
602少女と酔いどれと英雄たるの対価 3:2010/08/28(土) 22:33:33 ID:p1sG5Bv60
リアラ達ははッっとしてとっさにディムロスを構え後ろを振り向くが、あるのは大樹と掠れた血痕だけで、そこに人影は無かった。
「だ、誰かいるんですか……!? 姿を見せてください!」
予想外の出来ごとに生まれた恐怖を払う様にして、リアラは似つかわしくない大声を上げた。
若干の静寂の後、樹の奥にゆっくりと木の葉を踏む音がする。
そして、根と根の間、樹のウロにおさまっていた影が陽光の下に晒される。

「貴方は……」
リアラの瞳が、眼の前の人物を映し出した。美しい白銀の短髪、機能的にまとめられた術師の衣装。
眼前の女性が高い知性を持った人物であったことは一目で理解できた。そう、「あった」。

「バカな問答はしたくないから先に言うわね。私はリフィル=セイジ。いつもなら教師と名乗るんだけど――――――――――」

彼女は笑った。その色白な頬を紅に染めて、艶やかな睫毛をとろりとさせて。
何故過去形なのか。それを示す様に、彼女は右手を持ちあげて振った。

「今は、ただの酔っ払いよ。軽蔑していいわ」

本来杖を持つべき手に持っていたのは、空になったパナシーアボトルだった。


朝っぱらから酒瓶を握る妙齢の女性と、身の丈に合わぬ大剣を持った少女。果たしてどちらが妖しいか。
だが、リフィル=セイジと名乗った女性は2割減した知性でも、普通以上のそれを有していた。
結論から言ってしまえば、リアラがこの地に現れた辺りでリフィルは彼女の存在を察知していた。
そのまま樹の陰に隠れ、此方の会話を盗み聞いていたようだ。(曰く、人より耳はいいらしい)
そこから問答無用で襲いかかってくる輩ではないと値踏み、ロイドの名を知る彼女に姿を見せたのだそうだ。

「察するに、ロイドがこちらで出会った仲間かしら………かわいらしい子ね。コレットが知ったら妬くかも」
「べ、別に私達そんなんじゃ……!! そ、それに 私には他に…ぉ…」
からかう様に唇を歪めるリフィルに、リアラは何かを言いかけ、途端に口をすぼめて顔を赤らめた。
その理由は今のところ本人にしか分からない。
「そ、それに! 何で朝から…っていうか、こんな場所でお酒なんて飲んでるんですか! しかも、貴重なパナシーアボトルじゃないですか!!」
「少し、考えごとをね…………それより、誰か怪我人でもいるのかしら?」
反射的に憤慨するリアラの言葉に、リフィルの眼光が鋭く輝いた。その重く暗い意思に、彼女が腕の立つ治癒術師であることが窺い知れる。
「……今は、もういません」
「そう……その場に立ち会えなくてごめんなさい……とは言わないわ。多分、その時の私には……いえ、今の私でも救えなかったでしょうし」
「いえ、それは……それより、どうしてそんな……」
「……ごめんなさい。初対面の貴方にそこまで話す理由を見いだせないわ」
一層、冷たい言葉がリアラに打ちつけられる。反射的に抗弁しようと思ったが、リフィルの淋しげな瞳がそれを押しとどめた。
(この人も、きっと何か辛いことがあったんだ……)
リアラに酒の味は分からない。だが、本来嗜好品としての用途ではないパナシーアボトルのアルコール分にまで何かを求めるほど、
彼女は追いつめられていたのだろう。ひょっとしたら、今も追いつめられている最中なのかも。

「心配しないで? アルコールと一緒に少し眠ったら、大分楽になったし。本当に……ここは…………私達にとって安らぐ……」
リフィルが目を細めて大樹の方を向く。大樹を、正確には大樹と自分の間にある何かを見ているようにリアラには思えた。

もう一度リフィルに声をかけようとしたリアラをディムロスが遮る。
『リフィルと言ったな? 軽薄を振舞うなら他所を当たれ。そう警戒されては、こちらもお前の望む情報など出さんよ』
「ディムロス!?」
「あら、どうしてかしら?」
『その左手がずっとサックの口に向かっているからな。万が一の場合は酒瓶を投げつけてそこから何かを抜き出す腹か?』
リフィルの左手の硬直が増す。ディムロスの言葉が正鵠を射ていた証拠だった。
この女は、賢い。たとえ酒を呑んでいたとて、呑まれることのあり得ぬ賢者だ。故に、この程度の材料で警戒を解くほど甘くは無い……
603少女と酔いどれと英雄たるの対価 4:2010/08/28(土) 22:34:46 ID:p1sG5Bv60
「……なるほど。リアラ、と言ったわね。貴方も優秀なパートナーがいるのね」
「え、ええ……自慢のパートナーです……って、貴方「も」?」

リアラがリフィルの言葉に引っかかりを憶え、そして疑問を掴む。彼女はモノを喋る剣をみても、なんら動揺しなかった。
つまり、ソーディアンを知ってる……というより、むしろ…

『リフィルや、もうその辺にしてやれ。腹の内は大方分かったじゃろ』
「ええ、御免なさいね、老。貴方の云うとおり、最初から見せておけば良かったわ」
そういって、彼女はサックからそれを引き抜いた。人よりは身長のあるリフィルでもなお、身の丈に似つかわしくない大剣が。
「クレメンテさん!?」
『クレメンテ老!?』
リアラ達は全てを理解した。なんとも。最初からこういう訳なのか。

『まったく、老……貴方もお人が悪過ぎる!!』
『んまあ、そうカッカするない。ちょっとしたお茶目じゃよ、お茶目』
そういって可々と笑うクレメンテにディムロスは溜息をついた。口ではああいっているが、
恐らくあそこまで警戒していたのは、ディムロス自身が敵にまわっていないかを確かめるものであったのだろう。
好々爺に見えて、狡猾…………間違いなく正真正銘のクレメンテだ。
『老も老だ……このような殺し合いの中で酒を呑むのを止めるべきであろうに!!』
『カッカッカ。お主もまだまだ青いのう。酒は百薬、肉が危険にさらされようが……心が迷い死んでは、意味も無いんじゃよ……』
「老」
リフィルの声が、クレメンテを窘める。クレメンテはそれに気付き、舌を出す様に話題を切り替えた。
『とりあえず、ディムロス。これまでの経緯は追々聞くが、とりあえず火急の要請は承った。
 要はその小僧を警戒しろという話じゃな。リフィルもそれでええか?』
「ええ、本来なら貴方達がウソつきでロイドと彼を切り離そうとしているという線も考慮すべきでしょうけど……
 その人物が元の世界で何をしていたか、はある程度聞いている……いいわ、この点に関しては貴方達を信じます」
二人の承諾に、リアラは瞳を潤ませ感謝の意を述べた。
リアラ達が互いの情報交換をするよりも早く行ったこと……それはシンクの件についてだった。
自分がシンクが何をやったかを知っている。だが、自分達が離れていた間にシンクはロイドと信頼関係を作っていた。
この事実だけは、ロイドを探す前に伝えておく必要があったのだ。
幸いにも、その願いは思うより早く受理された。それは無論、リフィルがシンクを知る人物と多く接触していたからに他ならない。
この事実を元に、どう立ち回るかはこれから考えなければならないが、一番の障害をクリアした二人の気分は僅かに明るかった。

悪くない、ディムロスはそう思った。有能な治癒術師に、更にソーディアンが一本。今、リアラには流れが来ている。
更にいるというリフィルの仲間とも結託の上合流できれば、ロイドの信頼を得たシンクといえども何処かで強引にことを進めてくるしかない。
当然予断は許さないが、そのボロは、こちらに優位を与えるはずだ。シンクの元にはアトワイトもいる。内外から斬り崩せば、流石の参謀とて。
得るモノは多く、喪ったモノは無い。今を於いて、ロイドからシンクを「落とす」機会は無い。

『リアラ、老、リフィル殿。今は時間が惜しい……先ずはロイドだ』

「うん!」「リフィルで良いわ」
リアラとリフィルが同じタイミングで相槌を打つ。
リフィルの酒もだんだんと抜けてきており、直に全開になるだろう。後はロイドさえいれば戦力としてのバランスも整う。
出会い頭にエルレインのような強力なマーダーに皆殺しにされる無様だけは無いはずだ。盤石、まさに盤石だった。
意気揚々とする3人を愛でるように眺めるクレメンテが、明るい未来を見るかのように言う。

『うむ……駒がそろいつつあるのう…………お主がアトワイトを見つけておるようじゃし、
 アレは味方では無かろうし……イクティノスとシャルティエが見つかる時も、そう遠くないようじゃのう』
604少女と酔いどれと英雄たるの対価 5:2010/08/28(土) 22:36:00 ID:p1sG5Bv60











――――――――――――――――――――――――――――――――――――○○○○○○と■■■■■■?










『老、それは…………一体』
「おーーーーーい!!!! リアラーーーー!!!!!」

ディムロスの声をかき消すのは若く、力強い呼び声。誰もが識る、誰もが忘れぬ音だった。
「ロイド…! ロイドー、ここよーーー!!」
「…………ロイド…………!」
リアラとリフィルが振り向いた先には、まだ小さくしかし確かに輝く蒼の翼があった。
こちらの声に気付いたか、だんだんと近づいてきている。
リアラ達が翼へ目を向ける中、ディムロスはそれを口の中で転がした。


(――――――――――――いく、てぃ、のす……しゃる、てぃ、え……………)



銀紙を噛むような、プラスチックを転がすような異物感しか残らない。
探すよりも早く、向こうから来るなんて。なんという僥倖、何と言う天運。ああ、星に愛されるとはこういうことを言うのか。



(―――――――――――――――――――――――――――――――――“誰だ、それは”?)

思い出せぬ。何も思い出せぬ。そこだけが「抉り取られたかのように」思い出せぬ。

(ソーディアンは6本だ。そう憶えている。なのに、何故残り2本が何なのか、誰なのか分からない?)

そこにそれが「あった」ことは分かるのに……削られた傷はくっきりと残っているのに。

(彼女達の“ちから”は、レンズの力が要る。多くの多くの力が。我の力を必要とする我が力は、我が力の源は、我が意思)

それを思い出せぬ中、ディムロスは思い出す。
リアラが肉体の力を望んだ時、リアラが転移装置を願う時、自らが強く強く輝いたことを。

(力を使えば、減るは道理。だが、まさか…………まさか、まさか………【我<ソーディアン>の記憶を】とはな………)

なんと素晴らしきや英雄よ。その未来への道のなんと輝いていることよ。

605少女と酔いどれと英雄たるの対価 6:2010/08/28(土) 22:37:04 ID:p1sG5Bv60
風がざわめく。僅かに熱を持った風が森を抜ける。今日は少し暑くなるだろう。





ククククク…………クックック……………クハハハハハハハハ………………カカカカカカカ…………





その暑さの向こうに、得も知れぬ悪感さえなければさぞや心地よかっただろうに……ッ!!
「……? ディムロス、どうしたの?」
自らを握るリアラが、その身をいいぶかしみ、心配そうに声をかける。
ディムロスは暫く、言葉を返せなかった。返せるわけも無かった。
『―――――――――――――なんでもない。お前は気にするな』
「へんなディムロス」
リアラはさして気にもせず、再びロイドの方を向いた。それでいい。それこそがディムロスの望んだ反応だ。





ああ、なのに、どうしてか。過去への道の、なんと腐って墜ち行くことよ。



もう戻れない。後は読み進めるだけ。少女が主役の英雄譚を。



狂った道化が、終ぞ読み飽かすまで。



606名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/28(土) 22:41:57 ID:8WzJ4WtE0
支援
607少女と酔いどれと英雄たるの対価 7@代理:2010/08/28(土) 22:47:41 ID:8WzJ4WtE0
【リフィル・セイジ 生存確認】
状態:HP80% TP60% 頭部と左足に裂傷・打撲・切傷多数 服に焦げ
   教師/治癒術士としての無力感 後悔 微酔
所持品:リヴァヴィウス鉱 ウイングパック リブガロの角 ソーディアン・クレメンテ
基本行動方針:殺し合いの打破
第一行動方針:ロイド、リアラと今後のことを話し合う
第二行動方針:現実と治癒術士(教師)としての心、どちらを優先すべきか考えたい
第三行動方針:リーガルを殺した人物が誰か気になる、リーガルを殺した人物、爆発音の発生源を警戒する
第四行動方針:死者に対しては慎重に接する
第五行動方針:先程のマナのようなもの、爆破のマナが気になる
現在位置:D1:大樹ユグドラシル

*適度なアルコールと休息及び睡眠、マナ豊富な土地力によって通常以上の回復を得ました
 酔いの中で何を考えていたのかは、後続の書き手にお任せします。

【リアラ 生存確認】
状態:HP30% TP5% 聖女だった自分を過去のものとしました  カイルへの依存から完全に脱却 称号『ソーディアンマスター』
不屈の魂 リアラ=デュナミス 全身に裂傷、軽度の火傷、服が一部焼け焦げている 精神疲労大
所持品:南国の蝶 レンタルビューティー ソーディアン・ディムロス 考察メモ 工具箱 ???
    ホイッスル フリーズリング 左腕 ポイズンパウダー アビシオンのフィギュア  ナナリー、ディスト、ノーマ、ルビアのサック
基本行動方針:英雄になる。殺し合いの打破
第一行動方針:ロイドの治療後、ロイド・リフィルと話し合う。
第二行動方針:ロイドの治療後、ロイドと話し合う。
第三行動方針:カイル達を探す。同士を集める。
現在位置:D1:大樹ユグドラシル

【ソーディアン・ディムロス】
状態:記憶<記録>消失(現在シャルティエ・イクティノスの存在を消失)
基本行動方針:殺し合いの打破。リアラと共に戦う
第一行動方針:放送内容を教える。その後ロイド・リフィルと今後の方針の話し合い
第二行動方針:シンク攻略の準備を進める
第三行動方針:カイル達を探す。同士を集める。
第四行動方針:自身の以上に関しては今のところ誰にも口外しない

*聖女が奇跡を使うたびソーディアン・コアレンズの力を消耗し、源である人格、それを構成する記憶を消耗していきます。
 通常の晶術レベルでは消耗しないようですが、奇跡に匹敵する消耗であればその限りではありません。
 喪われる量は、奇跡の規模に比例するようです。忘れるのではなく「無くなる」為、回復はありません。
608少女と酔いどれと英雄たるの対価 8@代理:2010/08/28(土) 22:51:15 ID:8WzJ4WtE0
【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:HP45% TP35%(0%でEND) 左肩に浅い切り傷 右足に切り傷 強い決意
   右胸貫通傷 常時天使化(解除すれば失血多量で死亡) 精神疲労大
所持品:木刀セット ソーサラーリング 聖剣ロストセレスティ ???
基本行動方針:打倒サイグローグ。死んだ仲間の為にも対主催を貫く
第一行動方針:リアラ・リフィルと今後の方針を話し合う。
第二行動方針:クロエ達と合流する
第三行動方針:仲間を集める。クラトス等のブレーンであれば尚良し
現在位置:D1:大樹ユグドラシル

※リアラは奇跡の行使により、自分の身体能力を上げる事が可能ですが、
精神力の消費が大きいため、使用時間や回数がある点を超えるとリバウンドを引き起こす恐れがあります。
※ロイドはシンクから聖剣ロストセレスティを借りました。その時の経緯は不明です。
他にシンクから所持品を借りた可能性がありますが、現時点では不明です。
ロイドもまた、聖剣ロストセレスティに自分の生命力(マナ)を込めることで攻撃力を向上させる事が可能ですが、
生命力の減少や、精神疲労を引き起こす恐れがあります。
※ロイド、リアラがレムの塔からこの世界の主要エリアに移動出来る事を知りました(一方通行です)。
ただし、現時点ではリアラの奇跡によって起動しただけなので、誰もが起動出来る訳ではありません。




―――――――まことに申し訳ない。しかしながら、それこそが英雄たるの対価なのだ。

                                   ある狂人、嗤いながら。
609名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/28(土) 22:57:13 ID:8WzJ4WtE0
代理投下終了

奇跡の代償をここに持ってくるとは思わなかったな……これからが楽しくなりそうだ
そして三人目の酔っぱらい…w まあこっちはすぐ覚めるっぽいが
610名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/31(火) 14:54:33 ID:q4TrRhPV0
代理投下します。
誤字らしき部分は辞書を引きながら勝手に修正してしまっています・・・すいません。
611レゾン・デートルは檻の中 1@代理:2010/08/31(火) 14:57:07 ID:q4TrRhPV0
少しだけ考えた末に、それへと触れる事にした。
ふざけた降雪範囲的に殺傷能力のある罠とは考え難いが、何かしら意図があるのは確かだと思った。
が、洞窟から僅かに続く足跡を見て僅かに警戒心が緩んだのも確かだ。
少しだけ翅を震わせ、着地地点の粉雪を風圧で払う。
感知目的だろうが何だろうが、別に構わないし関係無いと思った。
不自然に盛り上がった白と茜の斑模様を目線だけで見下ろす。
夕焼け空を彷彿とさせる様な、何とも綺麗な染められ具合だった。
その光景にふと、憐れな人間の逸話を思い出し口の端を吊り上げる。
フラノールで母の血に滲んだ雪を見て、あの神子は一体何を思ったのだろうか。
怨みか哀しみか、それとも怒りか、安堵か、はたまた諦めだろうか。
望まれない命。傲慢な戯言を吐くには、受け止めるには、人間の一生はあまりにも短過ぎ脆過ぎる。
人の身で生を否定された神子の受難は計り知れないが、それでもあの最期は余りにも自己満足が過ぎた。
寄らば大樹の陰。確かに狡猾だが、いけ好かない言葉だ。
ただ済んだ話に興味はなし、されど到底納得もゆく筈なし。

足が雪原に着く。ぎゅむ、と雪の粒子が潰れる音。足を折り、光り輝く雪の結晶を触ってみる。
溶けない雪は、冷たさを感じる事のない身体にとっては塵か屑程度にしか感じない。
丁寧に手で払い進めていくと、やがて桃色の毛髪が雪を押し退け情けなく覗いた。
少しだけ、眉を動かす。捜し人の可能性は低いだろうとは思ってはいたが、
真逆知り合いが出るとは寸分も思っていなかった。
スペクタクルズを使おうとポケットに手を突っ込むが、天使でもないのに生きている筈もなかったと気付き自嘲。
乱れた髪を耳に掛け、刈るか少しだけ迷う。
だが結局その小さな身体をぐいと持ち上げ、死に様を確認する事にした。
まじまじと身体の節々に刻まれた裂傷を見る。如何やら一撃ではなかった様だ。
エンジェルス計画の犠牲となった薄倖の少女は、雪の柩に抱かれて疾うに事切れていた。
世界を救った英雄様の末路の何と孤独で寂しい事よ。
こんな浅ましい世界では英霊にすらなれはしないだろうに。

背から神の創造せし聖剣デュランダルを抜き、猫の腕の様に細い首にぴたりと当てる。
腰に差すレーザーブレードよりは、こちらの方が無礼にはならないだろうと思った。
生前の敵とは言え恨みは失せていたし、死者を愚弄するのは趣味ではなかったからだ。
612レゾン・デートルは檻の中 2@代理:2010/08/31(火) 14:58:02 ID:q4TrRhPV0
同じ世界の住民なら、構造の比較をし易い筈だ。刈る価値はあると思った。
精神を研ぎ澄まし、出来るだけ素早く剣を入れる。礼に拘る癖に、一切の躊躇は無かった。
中途半端に凍った首は落とすのに少々骨を折ったが、血や脂まで凍っていたのは死者を汚す事無く幸いだった。
七色の翅を散らし、アイシクルを一発。
氷に閉ざされた頭部と首輪を優しくサックに放り込む。
袋の中で勝手に解凍、腐敗されては敵わない。
死臭と血濡れのコンボを喰らった道具なんて真っ平御免だ。

粗方の用は済んだ。発っても良かったが、ぼんやりと首無し死体を眺めてみる。
差別、孤独、止まった時間、唯一の妹、裏切り……この娘の闇は、自分に似ていると生前から思ってはいた。
輝石による一時的な乗っ取り、そしてデリスエンブレムにて触れたプレセア=コンバティールの心の奥底。
それを思い出しながら、聖剣を背に仕舞う。
深い深い漆黒に濡れていた心は、むしろこちら側だとさえ思えた。
少女が何故あちら側に居るのか。その理由は、結局最期まで良く分からなかった。

そこまで考えて、景色の変化に気付く。気付けば周囲に音も無く光が満ちていた。
陽光とは種類が異なる、何処か神秘的な光で、暖かさを感じる。
見覚えはあったし、身覚えもあった。少しだけ、肩を揺らして苦笑を零してみる。
可能性を失念してはいたが、目前に紡がれた虚ろな像に驚く事こそしなかった。

「妹とは会えたかい」

此所にあの世があるとは思えないけど、と皮肉を言おうとしたが、気分が乗らないので止めた。
わざわざ生前の敵の前に出て来たのは何かしらの理由がある筈だ。
とても死者へと水を差す気にはなれなかった。
目前のアストラル体は、目を伏せて哀しそうに首を振る。
それはそうだ。僕はさぞ興味なさそうに肩を竦めてみせた。
挑発しても意味がない事は知っていたが、残念そうにしてみせるのは何やら癪だったからだ。

「……で、壊す? 一緒に来る?」

随分簡潔な質問だと、自分でも思った。
プレセア=コンバティールのエクスフィアはロディルのエンジェルス計画に使われたもので、随分特殊だ。
サイグローグの目的が進化なら――僕はそんな馬鹿げた話そもそも信じないし、
ハロルドも本当の事は隠してるだろうから可能性は低いと思っているのかもしれない――コレが輝石になる可能性だって充分にある訳だ。
613レゾン・デートルは檻の中 3@代理:2010/08/31(火) 14:59:01 ID:q4TrRhPV0
それが万に一つの可能性だろうが成られちゃ敵わない。
それに、単に誰かに拾われても強化に繋がるからどの道困りの種だ。
故に回収か破壊かをしておくべきかと思った。

『私にはロイドさん達やアガーテさん、エミルさん達に伝えたい事が、あります。
 同行をお願いしても良いでしょうか』

“エミル”。
破壊を選択するかと思っていた事への裏切りよりも、その名が出た衝撃の方が遥かに強烈だった。
僅かに腕が硬直する。人間になったラタトスクの事を如何して、こいつが。
動揺を悟られまいと何か言おうと試みたが、無理だと思い中途半端に開いた口を閉口する。
……そう言えば目の前の女の身長、些か前よりも伸びてはいないか?

『本当は、消えてしまいたい。
 でも、このまま肉体が死んだからと言ってその選択を取るは自分勝手だと思います。
 まだ時間はある。なら、私はこの子<エクスフィア>の悲しみを聞きながら生きます。
 恐らくまだ24時間程度なら保つと思われるので』

―――壊されるのは、皆さんにお別れを言ってからでも遅くはありません。
そう締められた言葉に、へぇと唸って再び肩を竦めてみせる。
「随分口が達者になったね、プレセア=コンバティール。
 信用出来るかも分からない僕に頼るだなんて、死ぬ前のお前とはまるで別人だ」
『時が経てば人は変わります。……貴方も、そう見えたから』

変わった? 僕が?

一瞬、感じる筈のない冷や汗を背に感じた。
未来の情報への期待よりも、その無自覚だった事実への恐怖に唾をごくりと飲む。
恨み、妬み、殺気、後悔。確かに今はその類はない。だからこの劣悪種は僕に懸けたのか。
悪意が無く、あの馴れ合ってた頃に似ていると思ったから、もしかしてと……?
進化、という言葉が一瞬だけ脳裏に浮かんで消えていった。
ふざけるな馬鹿馬鹿しい。そんなのある訳が、ないじゃないか。

「…………。冗談はさておき、取引だ。
 お前の持ってる未来の情報と此所での情報を全部寄越すなら、その願い訊いてやっても良い。
 但し、僕はやる事が多いから優先順位はあるけどね。
 それに一日で会えるかは正直、運だ。保証出来ない。
 お前が石に同化すれば僕は石を壊すしね。それでも頼む?」

言い終わって、随分甘くなったなと思う。こんなにも何時丸くなったのか。
本当は問答無用で壊しても良かった筈だった。
むしろそっちの方がミトス=ユグドラシルとして正解だった。
614レゾン・デートルは檻の中 4@代理:2010/08/31(火) 15:00:27 ID:q4TrRhPV0
なのにそうしなかったのは、認めたくはないが心境の変化なのだろうか。
目線の先では覚悟を決めた様に、目前のアストラル体がこくりと頷いている。

「契約成立だね」

何処までも白く簡素な世界の中、こうして孤独な僕達の奇妙な共同生活が始まった。



/////////////



プレセア本人切っての希望で契約上仕方無く身体を埋葬してから、直ぐにそこを発った。
飛びながら暇潰しに話してみると、何ともまぁ未来は情けない事になっていた。
ヴァンガードに二重人格ラタトスク、紛争に偽ロイド、防人ユアンにコアを利用したデクスによる血の粛清。
挙句がギンヌンガ・ガップの封印を解こうとした馬鹿リヒター=アーベント。
そう簡単に世界が統一出来る訳がないのはある程度予想していたとは言え、想像以上に陳腐な未来だ。
驚いた事も多々あった。ゼロスが生きていた事、クラトスが孤独を選んだ事。
ロイドのエクスフィアが僕の輝石で進化した事、リヒターの正体。
そして僕の乗っ取った相手がプレセアでなくコレットだった事。
……未来。それもパラレルワールド、か。あの道化が益々怪しくなってきた。
ヒントがヒントですらない。ワザと違いに気付かせようとしているとしか思えない。
与えられた情報を整理してるだけでは、未だ道化の掌の上という事か。
大樹だってそうだ。実際本物か確かめてみないと例の可能性は検証すら出来ない。
……そう言えば大樹の名前を言うのを餓鬼は渋ってはいたが、恐らくアレだろう。
ロイドめ、何処まで僕を馬鹿にする気だ。全く舐め腐った奴だ。
そんな事を思いながら飛んでいると、視線の隅に不自然な岩山が見えた。
地図には無かった筈だがと試しに降りてみれば、どうしたらこうなるのか、壮絶な景色。
血の毛の引く様な惨状に思わず顔を顰める。天使に嗅覚がなかったのは実に運が良かった。
少々抵抗はあったが、悪趣味な挽き肉の中心に降り立つ。
ぴちゃり、と脂の浮いた血肉溜まりが音を立てた。
肉の繊維に汚れた首輪をサックに放り込み、詰まらなさそうに散らばる肉片を見やる。
そうして、気付くのだ。焼け焦げた衣服への僅かな既視感に。
目を見開いて現実を咀嚼し、思わず苦虫を噛み殺す様な表情。
それが何なのかを理解したくはなかったが、直ぐに理解してしまった。
壊す為に輝石と要の紋をくまなく探すが、一向に見付かる様子はない。
615レゾン・デートルは檻の中 5@代理
地面が蜂の巣にされているところから見て、恐らく壊れてしまったのだろう。手間が省けた。

『何て、酷い』

これが誰なのかを理解しているのか、してないのか。

「酷いのはルールを強いる世界なのか、仕方無いと則る人なのか。どっちなんだろうね?」
『それは……』
「ま、少なくとも、他人の命を食って出来た石に頼りきりのお前が言えた科白じゃないよ」

どちらにせよ絶句するエクスフィアをポケットに入れ、笑えない現実に無理矢理口を歪める。
血液は未だ固まっていない。どうやらよっぽどの化物が少し前まで近くに居たらしい。
大それた意味も無い検分が済むと両手を広げ、天を仰ぎながら詠唱する。
手向けの華をやるつもりはまるでなかったが、挽き肉を放置するのは余りにやるせない。
散る七色の羽根、真赤な焔に包まれる肉片。
上がる火柱は、何処までも無慈悲に白く輝く陽に伸びていった。
少し遅れて黒く汚い煤が、それよりも高く天に昇ってゆく。
この世界で一、二を争う気の利かない墓標に違いなかった。
死を焦がす大地を見ながら、虚ろな陽に向かって静かに飛び立つ。これ以上は時間の無駄だ。
冷めきった風が頬を掠めていく。火がちゃんと消えているのか確認すらしない。
後ろを振り返る事は億劫だった。
涙一滴出ない身体を怨んだ事は、悪いが今を含め一度も無い。



/////////////



入るか、それとも入らざるべきだろうか。

顎に手を当てうぅんと唸り、しばし考える。下手な考え休むに似たり、とはこの事かと自嘲。
天高く聳える塔を見やる。強化された視力を以てしても頂を全く伺わせようとしない。
純粋に、高度が高いと思った。人工物にしては大したものだ。
とは言っても宇宙空間へと続く救いの塔よりは遥かに劣るだろうが。
……ふと、アルタミラの海の様に碧い空を仰ぐ。
見事な層積雲が、昇り掛かった陽を隠し光芒を輝かせていた。
これを人間共は“天使の階段”なぞとほざくらしい。
天使の仕組みを知る身からすれば、何とも間が抜けた愚かな喩えだ。正直笑える。
……地面に降りる前に頂上を見ておこうかとも思ったが、取り敢えず今はやめておく事にした。
下を見ると、幾つかの足跡があったからだ。
仮にこの塔に入るならば、正面からよりは頂上からの方が思考を欺けるし便利ではあるが、
別段急いでいる訳でもなし。この足跡を検証してからでも遅くはない。