テイルズオブバトルロワイアル2nd Part10

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1名無しさん@お腹いっぱい。
テイルズシリーズのキャラクターでバトルロワイアルが開催されたら、
というテーマの参加型リレー小説スレッドの2周目です。
参加資格は全員にあります。
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。
これはあくまで二次創作企画であり、バンダイナムコゲームス等とは一切関係ありません。
それを踏まえて、みんなで盛り上げていきましょう。

詳しい説明は>>2以降。

【前スレ】
テイルズオブバトルロワイアル2nd Part9

http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1227941534/


【過去スレ】
テイルズオブバトルロワイアル2nd 感想議論用スレ
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1217252638/

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part2
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1220284765/

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part3
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1220805590/

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part4
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1221714713/

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part4(実質5)
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1221714971/

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part6
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1223568942/

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part7
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1224680497/l50

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part8
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1225550753/l50

【避難所】
PC ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/5639/
携帯 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/otaku/5639/

【2ndまとめサイト】
PC・携帯両用 http://www.symphonic-net.com/tobr2/mobile/index.html


【1周目のスレ(現在アナザールート進行中)】
テイルズ オブ バトルロワイアル Part16
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1231916923/

【1stまとめサイト】
PC http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/
携帯 http://www.geocities.jp/tobr_1/index.html
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 11:28:05 ID:hqZVJiAT0
----基本ルール----
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができ、加えて願いを一つ何でも叶えてもらえる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
 開催場所は異次元世界であり、海上に逃れようと一定以上先は禁止エリアになっている。

----放送について----
 放送は12時間ごとに行われる。放送は各エリアに設置された拡声器により島中に伝達される。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去12時間に死んだキャラ名」
 「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。

----「首輪」と禁止エリアについて----
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
 首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
 主催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
 この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
 24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。  
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
 下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。
 プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
 なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
 たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止能力が使えるようにもならない。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 禁止エリアは3時間ごとに1エリアづつ増えていく。

----スタート時の持ち物----
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を配給され、「ザック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「着火器具、携帯ランタン」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「支給品」
 「ザック」→他の荷物を運ぶための小さいザック。       
 四次元構造になっており、参加者以外ならどんな大きさ、量でも入れることができる。
 「地図」 → 舞台となるフィールドの地図。禁止エリアは自分で書き込む必要がある。
 「コンパス」 → 普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「着火器具、携帯ランタン」 →灯り。油は切れない。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
 「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
 「写真付き名簿」→全ての参加キャラの写真と名前がのっている。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「支給品」 → 何かのアイテムが1〜3つ入っている。内容はランダム。
※「ランダムアイテム」は作者が「作品中のアイテム」と
 「現実の日常品もしくは武器、火器」、「マスコットキャラ」の中から自由に選んでください。
 銃弾や矢玉の残弾は明記するようにしてください。
 必ずしもザックに入るサイズである必要はありません。
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
 エクスフィアを出す場合は要の紋つきで支給するようお願いします。
 ハズレアイテムも多く出しすぎると顰蹙を買います。空気を読んで出しましょう。

----マスコットキャラの扱い----
 マスコットは「支給品」一つ分相当とカウント。
 なお、ロワでの戦いにおいて全く役に立たないマスコットキャラは、この限りではなく、「支給品」一つ分とは見なさない。
 ミュウを支給する場合はソーサラーリングを剥奪した状態で支給すること。コーダ、ノイシュ、タルロウXの支給は不可。
 マスコットキャラはプレイヤーではありません。あくまでも主役はプレイヤーという事を念頭に置いて支給しましょう。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 11:29:33 ID:hqZVJiAT0
----制限について----
 身体能力、攻撃能力については基本的にありません。
 (ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合があります)
 治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法、即死術は発動すらしません。
 キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限されます。
 しかしステータス異常回復は普通に行えます。
 その他、時空間移動能力なども使用不可となっています。 (短距離のテレポート程度なら可)
 MPを消費するということは精神的に消耗するということです。
 全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内(半径100mほど)ということでお願いします。

----ボスキャラの能力制限について----
 ラスボスキャラや、ラスボスキャラ相当の実力を持つキャラは、他の悪役キャラと一線を画す、
 いわゆる「ラスボス特権」の強大な特殊能力は使用禁止。
 これに該当するのは
*ダオスの時間転移能力、
*ミトスのエターナルソード&オリジンとの契約、
*シャーリィのメルネス化、
 など。もちろんいわゆる「第二形態」以降への変身も禁止される。
 ただしこれに該当しない技や魔法は、TPが尽きるまで自由に使える。
 ダオスはダオスレーザーやダオスコレダーなどを自在に操れるし、ミトスは短距離なら瞬間移動も可能。

----武器による特技、奥義について----
 格闘系キャラはほぼ制限なし。通常通り使用可能。ティトレイの樹砲閃などは、武器が必要なので使用不能。
 その他の武器を用いて戦う前衛キャラには制限がかかる。

 虎牙破斬や秋沙雨など、闘気を放射しないタイプの技は使用不能。
 魔神剣や獅子戦吼など、闘気を放射するタイプの技は不慣れなため十分な威力は出ないが使用可能。
 (ただし格闘系キャラの使う魔神拳、獅子戦吼などはこの枠から外れ、通常通り使用可能)
 チェルシーの死天滅殺弓のような、純粋な闘気を射出している(ように見える)技は、威力不十分ながら使用可能。
 P仕様の閃空裂破など、両者の複合型の技の場合、闘気の部分によるダメージのみ有効。
 またチェルシーの弓術のような、闘気をまとわせた物体で射撃を行うタイプの技も使用不能。

 武器は、ロワ会場にあるありあわせの物での代用は可能。
 木の枝を剣として扱えば技は通常通り発動でき、尖った石ころをダーツ(投げ矢)に見立て、投げて弓術を使うことも出来る。
 しかし、ありあわせの代用品の耐久性は低く、本来の技の威力は当然出せない。

----魔法の使用に関して----
 ロワ会場ではマナが特殊な位相をとっており、魔法使用者の記憶によって指向性を持ち、様々な形態となる。
 すなわち魔法の内容が術者の記憶にあるのならば、
 周囲のマナが晶術・フォルス・爪術など各々に最適な位相を勝手にとってくれる、ということである。
 それゆえ術者は元の世界のものと寸分違わぬ魔法を再現できる。
 召喚術や爪術など、厳密に言えばマナをパワーソースとしないタイプの魔法でも、
 会場のマナが変異して精霊や滄我の代役を務めてくれるため、発動に支障はない。
 ただしこの位相をとったマナは回復魔法とは極めて相性が悪く、回復魔法はもとの一割ほどしか効果がない。
 気功術などによる回復さえマナに妨害されるため、会場内では傷の回復は至難。

----晶術、爪術、フォルスなど魔法について----
 使用する前提条件として、「精神集中が可能」「正しい発声が可能」の条件を満たしていること。
 舌を切り取られているなどして、これらの条件を満たせていない場合、使用は不可能。
 仮に使えても、詠唱時間の延長や威力の低下などのペナルティを負う。
 「サイレンス」などで魔法を封じられた場合、無条件で魔法は使えなくなる。
 攻撃系魔法は普通に使える、威力も作中程度。ただし当然、TPを消費。
 回復系魔法は作中の1/10程度の効力しかないが、使えるし効果も有る。
 魔法は丸腰でも発動は可能だが威力はかなり落ちる。
 (魔力を持つ)武器があった方が威力は上がる。
 当然、上質な武器、得意武器ならば効果、威力もアップ。
 術者が目標の位置をきちんと確認できない場合、当てずっぽうでも魔法を撃つことはできるが、命中精度は低い。
 また広範囲攻撃魔法は、範囲内の目標を選別出来ないため、敵味方を無差別に巻き込む。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 11:31:37 ID:hqZVJiAT0
----時間停止魔法について----
 ミトスのタイムストップ、アワーグラスなどによる時間停止は、通常通り有効。
 効果範囲は普通の全体攻撃魔法と同じく、魔法を用いたキャラの視界内とする。
 本来時間停止魔法に抵抗力を持つボスキャラにも、このロワ中では効果がある。
 ただし、広範囲攻撃魔法と同じく目標の選別は不可であり、発動者自身以外は動くことが出来ない。
 TOLキャラのクライマックスモードも、この裁定に準拠するものとする。

----秘奥義について----
 秘奥義は一度だけ使用可能。その際、発動したキャラが持つ未使用の秘奥義も使用不可となる。
 使用後はTP大幅消費、加えて疲労が伴う。
 また基本的に作中の条件も満たす必要がある(ロイドはマテリアルブレードを装備していないと使用出来ない等)。
 秘奥義に類する強力な術技は秘奥義扱いとする。
 該当するのはシゼルのE・ファイナリティ、レイスの極光、TOLキャラのクライマックスモードなど。
 Iの覚醒はSB・OLと同じ扱い(何度でも使用可)だが、前世の姿に戻ることは秘奥義扱いとする。
 SRの追加秘奥義は2つ合わせて一つの秘奥義とする。TP消費は普通の秘奥義より増える。
 またリヒターのカウンターは秘奥義扱いとする。その前に普通の秘奥義を使っていたならば、当然カウンターは発動不可能である。

----TPの自然回復----
 会場内では、TPは戦闘ではなく時間経過で回復する。
 回復スピードは、1時間の休息につき最大TPの10%程度を目安として描写すること。
 なおここでいう休息とは、一カ所でじっと座っていたり横になっていたりする事を指す。
 睡眠を取れば、回復スピードはさらに2倍になる。
 なお、休息せずに活動している状態でも、TPは微量ながら徐々に回復する。
 回復したTPをすぐさま回復魔法にあてれば、ある程度ダメージの回復は見込める。
 しかし、かなりの集中力を割くためこの作業中は不意打ちに弱くなる。事前に鳴子を張っておくなどの対策は可能。

----状態異常、変化の設定について----
 状態異常並びに変化追加系は発生確率を無視すると有利すぎる効果なので禁止とする。
 Rの潜在能力やフォルスキューブ(マオ)、Dのソーディアンデバイス、D2のスロット、一部のエンチャントが該当する。
 D2のFOEも禁止。ただし術技にデフォルトで付加されている能力は有効とする。例として
●ヴェイグの絶・霧氷装
●ミトスのイノセント・ゼロ
●ダオスのテトラアサルト
●ジルバのシェイドムーン・リベリオン
 等が挙げられる。
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 11:33:51 ID:hqZVJiAT0
----合体技の再現(SのU・アタック、R仕様秘奥義など)----
 ロワを通して仲良くなったキャラや、同作品から来た仲間同士であれば、協力して合体技を使うことも出来る。
 合体技を編み出せる仲間、ならびに魔法・特技の組み合わせは各原作に準拠するが、
 このロワ中では次の条件を満たしている場合でも合体技の発動が可能。

  例1:異なるキャラ同士で、同名の魔法・特技を組み合わせた場合。
   例えばSの複合特技である「プリズミックスターズ」は、リフィルの「レイ」とジーニアスの「グランドダッシャー」などで発動するが、
   同名の魔法を習得しているので、フィリアの「レイ」とシャーリィの「グランドダッシャー」でも、「プリズミックスターズ」は発動する。

  例2:「それっぽい」魔法・特技を組み合わせた場合。
   例えばSの複合特技である「襲爪雷斬」は、本来ロイドの「虎牙破斬」とジーニアスの「サンダーブレード」などで発動するが、
   ジーニアスの「サンダーブレード」をジェイドの「天雷槍」などで代用することも可能。
   また常識の範囲内で考えて、それなら合体技が成立しそうだと考えられるなら、まったく新規の組み合わせも可能。
   例えばシャーリィの「タイダルウェーブ」で発生させた水を、ルビアの「イラプション」で加熱し、高温の蒸気を発生させて、
   もともとはジーニアスの魔法である、高温の蒸気で敵をあぶる魔法「レイジングミスト」を合体技として編み出すことも出来る。

  補則1:なおクレスなどは単体で「襲爪雷斬」を放つことは出来るが、同名の技でも合体技の方が威力は上である。
  補則2:新規のキャラ同士の新規の魔法・特技の組み合わせは自由に考えて構わないが、
       それにより成立する合体技は必ずシリーズのどこかから「本歌取り」すること。
       世界観の維持の観点から、まったく新規の合体技を編み出すことは禁止する。
  補則3:もちろん合体技を繰り出す当事者達は、ある程度以上気心が知れあっている必要がある。
       小説中で「仲良くする」ような描写を予め挟んでおくこと。
  補則4:合体技は当然大技であるため、発動させるためには上手く隙を作らねばならない。
       同じく小説中で「隙を作る」ような描写を予め挟んでおくこと。
  補則5:AのゲームシステムであるFOFを用いた、術技のFOF変化も上記のルールに準拠するものとする。
       FOFの属性と変化する術技の組み合わせは原作に準拠するが、上記のルールに違反しない限り、
       書き手は全く新規の組み合わせを考案してもよい。下記も参照のこと。

ケースバイケース、流れに合った面白い展開でお願いします。

----ゲームシステムのクロスオーバー----
 ロワ参加者は、デフォルトの状態では原作世界の知識しか持たないものの、
 ロワで他世界のキャラと交流を持ったり、何らかの方法で他の世界の知識や技術を得た場合、
 その世界特有のシステムを使いこなすことが出来るようになる。
 例えばリオンが事前にジェイドから説明を受けていれば、ジェイドの「タービュランス」で発生した風属性FOFで、
 自身の「双牙斬」をFOF変化させ、「襲爪雷斬」を放つことも可能。上項も参照のこと。
 ただしRのフォルスやTの獣人化など、その世界の住人の特異体質によるシステムのクロスオーバーは、
 原則として不可とする。
 ただしSのハイエクスフィアを用いた輝石による憑依などで、
 R世界やT世界の出身者の肉体を奪うなどした場合は、この限りではない。
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 11:35:13 ID:hqZVJiAT0
----シリーズ特有の強化スキルやシステムについて----
シリーズのシステムに関わらず、特技・奥義は単独で発動可能とする。ただし連携の順番は原作に倣うこと。

P・・・なし。
D・・・ソーディアンデバイス、リライズは全面禁止とする。
E・・・潜在晶霊術は禁止とする。
D2・・・スロットは全面禁止とする。エンチャントは追加晶術、連携発動、リカバー(D2にはリカバーを使えるキャラがいないため)、
     特技連携、晶術追撃、秘奥義、追加特技、通常技連携、空中発動のみ有効とする。
S・・・EXスキルの「一定確率で」系、ガードステータス、ゲットウェル、スーパーガード、ライフスティル、メンタルスティル、
   グレイス、ステータスキープ、エンジェルコール、レジストマジック、 メンタルサプライ、コンセントレート、オートメディスン、
   スペルコンデンス、サプレスダッシュ、サプレスロウアー、MCディフェンド、ラッシングラン、パフォーマー、グローリー、
   HPリバース、レストアピール、アーマードブロウ、ガードアウェイは禁止とする。
R・・・フォルスキューブのドレインは禁止。潜在能力も禁止とする。
L・・・我流奥義は使用可。ただし副極意による追加効果の付与は禁止とする。
A・・・ペインリフレクト、アクシデンタル、ライフリバース、エンジェルコール、ピコハンリベンジ、オートメディスン、グローリー、グレイス、
    ADスキルの「一定確率で」系は禁止とする。
T・・・なし。
I・・・武器カスタマイズ、アビリティは全面禁止とする。
   (リジェネ、リラックス、悟り、グミの達人、踏ん張り1〜4、封印防御等を除けば能力アップなどしか残らないため)
SR・・・スキルはアビリティのみ有効。例外としてエミルが支給品のコアを入手した場合、アトリビュートの特技変化系を使える

----TOAの設定について----
 会場の音素量が少ないため、ルークの音素乖離は参戦時期に関わらず行われない。
 ただしルークが無茶をして第七音素を大量に使ったときはその範疇に属さないものとする。
 コンタミネーション現象は禁止とする。これはビッグバンの議論を防ぐためである。
 超振動は秘奥義扱いとするが、会場の音素が少ないため威力は半減される。
 それでも一撃必殺級の上、他の物を巻き込んでしまうのでよく考えてリレーしましょう。
 ティアの譜歌ナイトメアは、声に魔力が宿っている訳ではないため拡声器を使っても効果範囲は変わらない。
 また敵がある程度弱ってないと無効とする。
 カースロットは原則有りとする。ただし同じエリアに居ないと使えない、一人しか操れないといった制限を課す。
 勿論操られた者が憎しみを抱いている対象がいなければ効果は現れない。
 また導師の力のためレプリカのイオン、シンクには相応の疲労が襲うものとする。
 第七音素注入で怪物化はロワのバランスを崩してしまう為禁止とする。譜術式レプリカ製造も同様である。
 アンチフォンスロットは有り。ただし効果は一日。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 11:38:21 ID:hqZVJiAT0
----その他----
 *作中の進め方によって使える魔法、技が異なるキャラ(E、Sキャラ)は、 初登場時(最初に術技を使うとき)に断定させておくこと。
  断定させた後は、それ以外の魔法、技は使えない。
 *クラースは精霊(の力)を呼び出せるが、精霊自体は召喚できない仕様とする。
  理由はSのオリジンとロイド等との設定の兼ね合いが複雑なため。
 *Pのディストーションやカメレオン、Dエクステンションはあまりにも強力なため使用不可能な設定とする。
 *スタンの空中魔法変化技は下級は特技、中級と上級は奥義の扱いとする。
 *キールにはフリンジ済みのインフェリア晶霊が入ったCケイジを最初から与える。勿論これは支給品枠の一つとして考える。
 *Rの聖獣の力は参戦時期に関わらず有効とする。
 *アニー、ジルバの陣術は厳密に言うと魔術ではない為詠唱を必要としない。地面に方陣を描くことで発動させる事。その方法は問わない。
 *ジルバの月のフォルスは、対象が限りなく弱っていないと使用できない仕様とする。
  また乗り移っている間は一切のダメージを受けないため確かに無敵だが、
  逆に言うと本体は実に隙だらけ(同時に二人操るのは無理があり、こっちは操られている方が入っている)なため制限対象には入らない。
 *エミルはコア化をもって死亡扱いとする。このコアには莫大な量のマナが含まれている(センチュリオンコアも同様)。破壊も可能。
 *リバイブは危険になったら自動でHP回復大の扱いとする。

━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活はどんな形でも認めません。
※新参加キャラクターの追加は一切認めません。
※書き込みされる方はスレ内を検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。(CTRL+F、Macならコマンド+F)
※参加者の死亡があればレス末に必ず【○○死亡】【残り○○人】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※具体的な時間表記は書く必要はありません。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
※投下宣言は「○○分後に投下します」など時間を指定するのではなく、宣言後すぐに投下するよう心がけて下さい。

※基本的なロワスレ用語集
 マーダー:ゲームに乗って『積極的』に殺人を犯す人物。
 ステルスマーダー:ゲームに乗ってない振りをして仲間になり、隙を突く謀略系マーダー。
 扇動マーダー:自らは手を下さず他者の間に不協和音を振りまく。ステルスマーダーの派生系。
 ジョーカー:ゲームの円滑的進行のために主催者側が用意、もしくは参加者の中からスカウトしたマーダー。
 リピーター:前回のロワに参加していたという設定の人。
 配給品:ゲーム開始時に主催者側から参加者に配られる基本的な配給品。地図や食料など。
 支給品:強力な武器から使えない物までその差は大きい。   
      またデフォルトで武器を持っているキャラはまず没収される。
 放送:主催者側から毎日定時に行われるアナウンス。  
     その間に死んだ参加者や禁止エリアの発表など、ゲーム中に参加者が得られる唯一の情報源。
 禁止エリア:立ち入ると首輪が爆発する主催者側が定めた区域。     
         生存者の減少、時間の経過と共に拡大していくケースが多い。
 主催者:文字通りゲームの主催者。二次ロワの場合、強力な力を持つ場合が多い。
 首輪:首輪ではない場合もある。これがあるから皆逆らえない
 恋愛:死亡フラグ。
 見せしめ:お約束。最初のルール説明の時に主催者に反抗して殺される人。
 拡声器:お約束。主に脱出の為に仲間を募るのに使われるが、大抵はマーダーを呼び寄せて失敗する。
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 11:46:05 ID:hqZVJiAT0
【書き手の心得】

1、コテは厳禁。
(自作自演で複数人が参加しているように見せるのも、リレーを続ける上では有効なテク)
2、話が破綻しそうになったら即座に修正。
(無茶な展開でバトンを渡されても、焦らず早め早めの辻褄合わせで収拾を図ろう)
3、自分を通しすぎない。
(考えていた伏線、展開がオジャンにされても、それにあまり拘りすぎないこと)
4、リレー小説は度量と寛容。
(例え文章がアレで、内容がアレだとしても簡単にスルーや批判的な発言をしない。注文が多いスレは間違いなく寂れます)
5、流れを無視しない。
(過去レスに一通り目を通すのは、最低限のマナーです)

〔基本〕バトロワSSリレーのガイドライン
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)

【地図】
通常:ttp://www.symphonic-net.com/tobr2/img/map0.JPG
禁止エリア(既:赤 予定:水色):ttp://www.symphonic-net.com/tobr2/img/map.JPG

【補足】

同一パートの投下は本文(状態表)投下終了後、24時間置きましょう。

修正がある場合には
誤字脱字レベル、ストーリーに変更が無い場合、最初の投下より24時間。
ストーリーに何か変更がある場合一旦取り下げ、修正作投下から24時間空けるのが望ましい。
また修正の場合、書き手が来ない際の猶予期間ですが、修正依頼から五日間以内に何らかのアクションを願います。アクションが無い場合強制破棄になる可能性もあります。
なお、作品を取り下げる場合は書き手の方で一度宣言する事。
宣言から再投下の間に同一パートの被り作品が投下されたら涙を堪えて避難所へ。

荒れる事が予想される場合には捨てトリップ推奨。
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 11:51:30 ID:hqZVJiAT0
【参加者一覧】 
TOP(ファンタジア)  :1/4名→●クレス・アルベイン/○クラース・F・レスター/●藤林すず/●ダオス
TOD(デスティニー)  :5/7名→○スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/○フィリア・フィリス/●ウッドロウ・ケルヴィン/○チェルシー・トーン/○イレーヌ・レンブラント/○ミクトラン
TOE(エターニア)   :5/6名→●リッド・ハーシェル/○キール・ツァイベル/○チャット/○フォッグ/○レイス(レイシス・フォーマルハウト)/○シゼル                  
TOD2(デスティニー2) :6/8名→○カイル・デュナミス/○リアラ/○ロニ・デュナミス/○ジューダス/○ハロルド・ベルセリオス/●ナナリー・フレッチ/●バルバトス・ゲーティア/○エルレイン   
TOS(シンフォニア)  :3/7名→○ロイド・アーヴィング/●クラトス・アウリオン/○リフィル・セイジ/●リーガル・ブライアン/●プレセア・コンバティール/●マグニス/○ミトス・ユグドラシル
TOR(リバース)   :5/8名→○ヴェイグ・リュングベル/●クレア・ベネット/○マオ/●ユージーン・ガラルド/●アニー・バース/○サレ/○ジルバ・マディガン/○アガーテ・リンドブロム
TOL(レジェンディア) :3/6名→○セネル・クーリッジ/○シャーリィ・フェンネス/○クロエ・ヴァレンス/●ノーマ・ビアッティ/●ワルター・デルクェス/●ステラ・テルメス
TOA(アビス)    :4/8名→○ルーク・フォン・ファブレ/○ティア・グランツ/●ジェイド・カーティス/○アッシュ/●イオン/○シンク/●ディスト/●アリエッタ
TOT(テンペスト)   :1/2名→○カイウス・クオールズ/●ルビア・ナトウィック
TOI(イノセンス)   :2/5名→○ルカ・ミルダ/●イリア・アニーミ/○スパーダ・ベルフォルマ/●リカルド・ソルダート/●ハスタ・エクステルミ
TOSR(ラタトスクの騎士):4/5名→○エミル・キャスタニエ/○マルタ・ルアルディ/○リヒター・アーベント/●アリス/○デクス

●=死亡 ○=生存 合計39/66

禁止エリア
03:00:A1
06:00:F3
09:00:A6
12:00:D6

現在までのもの
B1,F5,G7,C3
【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:HP10% TP20% 度重なる失敗への激しい後悔 冷静を努める意思による自律
   ヴェイグとイクティノスへの畏怖 ロニへの同情・不安 主催者の言葉を信じる事への僅かな恐怖
   腹、胸から著しい出血(応急処置済み) 右足を挫いた チャットを認識
所持品:誰かのクレーメルケイジ(I) グランドセプター リカルドの首輪 情報入り名簿 温石
基本行動方針:殺される気はなく、脱出の道を探す。マルタとの『協力』を果たす
第一行動方針:チャットにしばらく任せたいが、ひとまず状況整理。
第二行動方針:マルタを休ませることが出来る場所へ移動。出来れば城がいい。……というかマルタは?
第三行動方針:首輪についての考察と情報集め
第四行動方針:襲われた場合は応戦よりも全力で逃げる
現在位置:D2・平原

【リフィル・セイジ 生存確認】
状態:HP50% TP46% 頭部と左足に裂傷・打撲・切傷多数 服に焦げ アリエッタへの警戒と思慮
   教師/治癒術士としての無力感 後悔
所持品:リヴァヴィウス鉱 ウイングパック リブガロの角 パナシーアボトル
基本行動方針:殺し合いの打破
第一行動方針:現実と治癒術士(教師)としての心、どちらを優先すべきか考えたい
第二行動方針:キール、アッシュを治療し、チャットを落ち着かせたい
第三行動方針:リーガルを殺した人物が誰か気になる、リーガルを殺した人物、爆発音の発生源を警戒する
第四行動方針:死者に対しては慎重に接する
第五行動方針:ロイド達が心配
第六行動方針:先程のマナのようなもの、爆破のマナが気になる
現在位置:D2・平原

【アッシュ 生存確認】
状態:HP15% TP21% 左腕に大裂傷(縫合済) 背中に大裂傷 後悔 全身に切傷と打撲
   行き場の無い悔しさ 無力さへの葛藤 ロニへの疑問
支給品:デリスエンブレム エナジーブレッド ジェイドの作戦メモ二枚
    イクストリーム アニーの日記 クリスダガー ソウルイーター
基本行動方針:チャットを守り生きる。日記を継ぐ
第一行動方針:状況整理。チャット、リフィルへの対処
第二行動方針:アニーの仲間に会ったら彼女の事を伝える
第三行動方針:先程の魔力と爆発が気になる
現在位置:D2・平原

【チャット 生存確認】
状態:HPTP100% 首絞めの痕跡 ジェイドへの複雑な思い アニー・クレスの死にショック
   守られる事と無力さへの極度葛藤 自分の甘さへの不安
   アリエッタを危険に晒した事に罪悪感 小さな勇気? 混乱
所持品:スタンダードマグ(残り装填4発) 銃弾50 ラジルダの旗 タバサ
    プラズマカノン パナシーアボトル 袋詰め粉砂糖2kg リーガルの首輪 エナジーブレッド×4
基本行動方針:勇気を持つ、アニーの死を乗り越えて生きる
第一行動方針:???
第二行動方針:森の死体らしき何かを確認したい
第三行動方針:セネルが心配
現在位置:D2・平原


※放置アイテム:ジェイドとアリエッタの支給品



【アリエッタ 死亡確認】
【ジェイド・カーティス 死亡確認】

【残り 39人】
11薔薇燃やすジャーマンアイリス  @代理:2009/03/13(金) 12:05:16 ID:hqZVJiAT0
代理投下終了。さるさんになりそうだったんで17と18を合わさせてもらった。

そしてまずはうわああああああああああああ!
毎回毎回なんという予想の斜め上の鬱展開。あんなに人がいたD2大乱戦編が終わってみれば4人かー。大佐、お疲れさん。
アリエッタは最後まで本当に不幸な子だった。救いがまるでない最後に合掌。GJでした。
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 13:20:04 ID:u95z1tH9O
乙。まさかジェイドがお亡くなりになるとは。
キャラ的にも人気的にも、ジェイドは何だかんだで最後のあたりまで生き残る気がしてたんだが……。
そうはならないのはさすがロワってとこか。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 13:57:13 ID:Shc+N8lQO
投下乙!
長らく続いた乱戦もついに決着か
終わってみればウッドロウとジェイドというまとめ役が死亡、サレは逃亡に成功してロニは発狂
残った面々も心身共にボロボロ…
アリエッタはこの上なく場を掻き回したと改めて実感したぜ
しかしアリエッタ…一時期の綺麗さなんて忘れたと言わんばかりの欝死だったな合掌
14名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 16:41:48 ID:0wHdyhXCO
----ジューダスの扱いについて----
ジューダスはHPは一度の話で最大5%しか減ることはない。
ジューダスは発狂したり取り乱すことがなく常にクール
ジューダス側のメンバーはジューダスの加護を受け、精神が安定する。
ジューダスは常にリヴァイヴ状態。
ジューダスの知識は各シリーズの博学キャラの知能を合わせたものとする。
ジューダスは投下の基本ルールから多少はみ出してもよい


----ジューダスの能力について----
ジューダスの攻撃で気絶しないものはいない
ジューダスは常にグローリー状態であり怯むことはない
ジューダスの晶術は最大威力にすると、エリア全てに広げることが可能。
(そのさいジューダス及びジューダスが味方と認めたものは効果を受けない)
15名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/13(金) 23:20:56 ID:fLXf+nec0
 投下乙。

 一瞬嘘だろう、と思った。
 全然死にそうにないあいつが・・・ジェイドがここで死ぬとは。
 
 そしてアリエッタ。理性も愛も失って、最後に残ったのは獣としての本能か。
 本編と違ってずいぶんと救いようがない上に壮絶な最期だった。
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 07:37:44 ID:eL5W2r530
1stの方でマイソロ設定が話題になってたけれど
2ndでは適応されるのかな
結構面白い設定+クロスオーバーに適したものだったが
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 08:50:13 ID:ybYPLroC0
マイソロのなんて続編のためのそれっぽい理由付けだろ
18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 10:13:28 ID:6Za4RpeYO
まーねぇー。
でもまぁ、それが利用できるか否かは別として、此所で話すのはちとアレだぜ。メタ的な話は予想展開スレでってな。

あ、ついでにアリエッタは俺が貰っていきますね。
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 10:40:14 ID:TBXlmVjiO
「アリエッタはクレスにくれっス!」
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 10:44:21 ID:JosX8TYLO
>>15
本編も大概救いが無かったような気がする
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 15:39:33 ID:hx2OCEKr0
よく考えればD2は死体だらけだなあ。
アリエッタは確かに本編もアレだが、今回の鬱ほどじゃあない。


あとクレス、お前死者スレに帰れw
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 15:53:27 ID:GzBa6THW0
>>15

 どうでもいいことだが訂正。「本編と違って」じゃなくて「本編以上に」の方が正しいですね。

 それにしてもAメンバーはなにげに4人中3人が同作品のキャラに殺されてるんですね。
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 16:35:11 ID:JosX8TYLO
>>21
ユージーン、アリス、ウッドロウ、ジェイド、アリエッタの五人らしい
流石呪いの森と言われただけの事はある

それにしても、純対主催チームってこことモリスン邸組、アビスマンだけなんだな
他はステルスやら危険人物やらの不安要素がある
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 17:26:14 ID:GzBa6THW0
 まあ、ウッドロウ、ジェイド、アリエッタは正確には森の外で死んでますけどね。

 森の中で死んだのはイリア、ユージーン、リーガル、クレス、ダオス、アリスだっけ?
 前述三人を入れたら9人、確かに恐ろしいな。全死亡者の3分の1とは・・・
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 17:38:50 ID:JosX8TYLO
他はあまり固まってないからな。
次に多い所で、南西の乱戦で死んだディスト、ノーマ、ルビアの三人。

こうして思うと第三クールになってから対主催涙目の欝展開が増えたよな。
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 17:46:42 ID:nMilvAo4O
>>23
レイスとアガーテさまのこと思い出してやってください
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 19:19:39 ID:JosX8TYLO
忘れてたw
今は森に向かってるんだったよな
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/14(土) 19:52:53 ID:hx2OCEKr0
>>27
睡眠と考察をしてからだけどな。
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 00:49:19 ID:J+9g6IZXO
>>28
まだ誰にも会えそうにないな。
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 02:12:54 ID:9jblcn0BO
ルークフィリアとカイウスチェルシーも空気だけど一応………空気だけど…空気
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 18:42:46 ID:ZWFfvbJH0
       
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/15(日) 19:50:40 ID:VBSSiAyYO
ウッドロウさんなにしてんすか

それはともかく、まとめ見て気付いたんだがアリエッタって登場回数かなり上位だったんだな。
そして一番登場してるのがチャット…だと……?
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 00:03:06 ID:QigodjVTO
あそこの森周辺は投下回数に対して時間が経ってないんだよな。まだ夜が明けてないよな
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/16(月) 07:46:03 ID:Zj0oFDr9O
だな。かなり緊迫した戦闘が続いたから、投下はあるが時間は進まなかったんだろう。
もっとももう戦況は落ち着いたから、次あたり時間経過もありそうだが…。
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 12:45:36 ID:2gfULdZkO
ここで聞くのもアレだが、ルビアに惚れたならTやって損はないかな
調べてもネガティブな噂しか出てこないんだが
ノベライズの評判は良いみたいな話もあるようだけど
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 13:00:46 ID:v0byj7HPO
ストーリーとキャラは良いからな
戦闘とシナリオの短さがネックだが
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 15:13:55 ID:i6eK6qc90
ルビアに惚れたのならば小説だけで良い。
ストーリーが削減されてるどころがたくさん追加されてる。
小説なら主に批判されてる戦闘やグラフィックがないからな。

にしても次の放送の後が少し楽しみだ。
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 15:16:37 ID:d6OdxCQx0
小説だけでいいぞ。ゲームはまあ、少なくとも二周する興味がでるようなものじゃあない。

放送か・・・まだまだ先だなw
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/17(火) 23:21:26 ID:v0byj7HPO
一番進んでるのはマオとリアラの早朝か
マオがディムロス手に入れたらえらい事になるな
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 08:20:30 ID:JSQqSuCUO
スタイレ      放送直後 深夜
神組・デクス    アリス死亡直後≒放送直後 深夜
姫騎士組      深夜
ミトス・二刀流組  深夜
ガオラキア組    夜
ロニ・ハロルド   夜
シゼル       日の出より僅かに前 夜
マーダー三人組   日の出 早朝
子供組       日の出 早朝
黎明の塔組     日の出 早朝
ルーク・フィリア  日の出 早朝
館組        5時7分 早朝
レムの塔組     7時 朝
サレ・マルタ    日が昇っている 朝
マオ・リアラ    日が昇っている 朝



時系列順に纏めてみた。多分これで合ってると思う。
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 14:35:34 ID:LtftlQ/V0
>>40
乙!
ほほう。結構ばらつきがあるんだな。レムの塔組が以外に進んでてびっくり。
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/18(水) 15:08:19 ID:5A0NRZ99O
>>40
まとめ乙
遅れてるのはスタイレとそこへ突撃しそうなデクスの所か
ミトスの所といい、状況やらフラグやらが交錯してるな
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 12:00:51 ID:+Rie+d+XO
今最新話読んだけどクレメンテって女性専用なんだっけ?
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 13:48:22 ID:hjMQYhT0O
クレメンテは本来クレメンテ専用です

神組吹いたwなんちゅう纏め方w
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 15:02:03 ID:LY6OH5nbO
>>43
非力な老人や女性でも扱えるように、見た目よりかなり軽く作られてる
だから女性専用という訳ではないはず
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 16:36:33 ID:pwWysloO0
マスターはフィリアでとしか知らされず
クレメンテ(つかソーディアン)の背景知らなかったら女性専用と思うかも
あのくだりはジェイドの視点での地の文だったし
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 19:55:59 ID:kcwBsE3MO
しかしフィリアは空気王以上に空気だな
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 20:07:05 ID:ldlzW+UtO
テイルズロワ三大空気ことフォッグ・カイウス・フィリア。
…でもフォッグやカイウスには大人会話やら対シゼルやらと見せ場があるのに、フィリアときたらいまだに……




おや?こんな時間に何やら化学品と爆弾の匂いが………………
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/19(木) 23:16:00 ID:LY6OH5nbO
その後、>>48の行方を知る者は誰も居なかった…
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 00:30:36 ID:nHEELZpKO
フォッグとカワイソスは何気にお互い最初に出会った人なんだよな
館組はまだ誰も仲間をモリスン邸に集めるって目的を果たせてないな
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 12:41:27 ID:S4L1CPtQO
そういえばここに書き手ロワ3rd見てる人ってどれだけ居る?
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 14:21:33 ID:VxlmtUtT0
>>51
見てないけど、どうした?
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 14:38:17 ID:S4L1CPtQO
>>52
いや、ここからも何人か出てるってだけ
ふと思ったから聞いてみた
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/20(金) 14:48:52 ID:Gm+DWJAPO
一瞬カワイソスって誰だよって思ったけどカイウスのことか。
カイウス涙目過ぎる…。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 17:13:33 ID:s1IgHjFd0
ふと思った。
このロワのヒロイン・主人公って誰だろう?
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 17:20:23 ID:TeslUxbQO
ロイドとクロエ
カイウスとチェルシー
エミルとマルタ
アッシュとアニー

うーん…
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 18:53:33 ID:q7CqRO9lO
エルレインじゃね? 背景知らなきゃまんまヒロインぽいし。トウがたちすぎか?

58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 19:22:53 ID:phMrx/wbO
えー…、開始直後に己の安全よりも仲間の安否を憂い、
また囚われの身になりながらも決死の秘奥技ぶちかまし状況を打開。
死してなおフラグの関係で物語の重要因子なイオン様はヒロインに分類さても問題ない気がする
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 19:56:56 ID:vhp9WWPsO
主人公的な立場というとアッシュとチャットかな、今のところ。
登場回数が多いうえ、成長の過程やら苦悩の仕方やらが感情移入しやすい。
チャットの今後は特に楽しみ。
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 22:28:35 ID:y8MTbpAtO
おっとアガーテ様も忘れちゃいけねぇな
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 23:38:40 ID:gv/GZ0YiO
ロワ全体を通して考えた場合主人公はアッシュとチャット、ヒロインはクロエとシャーリィ、かなぁ。

ペアで考えた場合はチェルシーとカイウス。
アガーテ様とレイスの活躍しだいじゃこれからヒロインや主人公になるかもしれんなぁ。二人ともなかなかおいしい。
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 00:48:33 ID:CpFSCqbxO
アッシュが主人公ならルークは脇役だ!
……がんばれ信号機ペア
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 11:52:28 ID:Tgkt9+c7O
なあ、今週末チャットなのに、チャットルーム使えなくなってるんだが。
何処かテキトーに借りておこうか?
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 12:43:08 ID:S6gS3zN/O
サービス終了と表示されるな
先に避難所に行ってまとめサイトの管理人さんに連絡した方が良いと思う
65まとめ:2009/03/24(火) 22:21:11 ID:s7/nsH/y0
遅くなりましたがまとめです。ttp://digicha.jp/を借りようかと考えているのですが、docomoやsoftbankからはチャット表示どうですかね。
auからしか動作確認していないので、どなたか確認願います。
サンプルは以下です。
ttp://digicha.jp/sample01/chat_s_view.html
66名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 22:32:04 ID:S6gS3zN/O
docomo問題無しです
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 23:19:05 ID:usrequ4GO
au、昔の機種だがちゃんと見える。フーケみたいにコマンドはないっぽいけど、ログがあるのが便利だね。良いと思います。
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 01:17:08 ID:0+2cPdaq0
今俺の中ではカイウスが主人公。
ルビア、クラトスの死や、仲良くなったマオがマーダー化
これから多分ひどくなるだろうし

と思ってたら三大空気認定されててびびった。

69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 05:01:24 ID:4QiQM5SMO
>>65
SoftBankも問題ないみたいです
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 20:01:25 ID:reERTXjfO
主人公・ヒロインには欠かせない恋愛要素フラグっぽいのがあるのはチェルウスとセネシャリくらいだからな。
ロイクロ?ああ、ロイド様の暇潰しですね、わかります。
スタイレ?ああ、もうあいつらはなんか次元が飛び抜けてます。
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 20:25:40 ID:hcTzTnHIO
恋愛フラグとか思ってても言わないでね
ましてや原作で結ばれてるキャラなら尚更
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 20:37:05 ID:1XoWWGivO
デクスとサレがスパーダとエミルについて何て言ったのか気になって夜しか眠れん
内容と言い方によっちゃルカレインも城組も一波乱ありそう
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 21:59:09 ID:FK5or8axO
>>70
スタイレは恋愛と言うよりも重度の相互依存と言った方がしっくりくるな

ロイドはロイドだから仕方ない
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 22:11:50 ID:j93+xWy90
>>71
いいじゃないか、そんなに怒るなよ。クロス企画では普通の事だろ。

スタイレはまあ、確かに不思議な感じはするねえ。
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 23:19:08 ID:S+LBh+/d0
色々な趣向の人が居る訳だし
カップリングとか恋愛フラグとかの話題には慎重になったほうがいいと思う
それに、そんな事でスレが荒れたりするのもイヤだろ?
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 19:30:19 ID:ak7RpLAF0
じゃあチェルシーは俺が貰っていきますね
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 19:42:57 ID:limFwH0A0
エルレイン様は戴いた
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 23:19:01 ID:/PESPU14O
>>76-77
残念、それは私の紫電さんだ

誰も居ないならリフィルは貰って行きますね
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/27(金) 01:55:14 ID:J3SWTHC+O
てめーらはうまい棒でも抱いてろよ
こういう流れホントいらないから
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/27(金) 08:24:05 ID:l0LwF3UmO
>>79はガープさん
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/27(金) 11:47:09 ID:eeGgeelp0
>>78
> 残念、それは私の紫電さんだ
なんか聞き覚えあると思ってたら1stかw
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/27(金) 19:50:07 ID:LXOowMRVO
>>78
リフィルなら俺の隣で寝てるけど?
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/27(金) 22:28:41 ID:hgjGuVl+O
>>82
ラルゴと二人で何やってんだ?
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 07:31:49 ID:kpKU155VO
もうやだこのスレw


>>81
なんかIDすげー
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 08:05:28 ID:UFz8w95mO
保守
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 00:58:42 ID:0Cz/eplyO
こんなこと心配するのもKYだが
3rdでは一体、何作品が参加することになるのだろうか
新作が発表される度に思うそんなパロロワ脳…
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 06:51:38 ID:rm2QsuPEO
恐らくだが、3rdがあるとしたら参加作品数制限が出るだろう。参加者は大体60人だけど、一作品あたりの参加者数が極端に少なくなるからな。
つまり、ラタ・テンペストあたりの人気がイマイチの作品は今のうちに書くor楽しまなければもう二度とロワでみかけられなry
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 22:34:41 ID:uvNdlrHCO
制限するなら1stに出た作品じゃないか?

既にV、H、Gの三作品が決まってる訳だし、このままだと新作だけで3rdが出来そうだw
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:26:51 ID:Sxs9wKSZO
ファンダムやテンペスト組みたいに
一人二人なら居ても別に手間にはならないんだけどね
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 00:46:39 ID:2UXp+kHrO
>>89
逆に一人二人の為に把握する作品が増えるとも考えられるぜ
ここはシリーズもののロワだから書き手さん達も把握してる作品は多いだろうけど
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:16:56 ID:IIwjmbGd0
どこぞのロワみたいに人数を100人くらいにするとか
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 01:14:37 ID:+z+XbljKO
そんなロワあるのかw
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 02:20:44 ID:uQHPtQQfO
同じゲーム系だと、FFDQロワ3rdは139人いる。
本来は140人だったんだけど、見落としでひとり減ったらしいw
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 03:37:48 ID:IKUjEYTUO
???「そろそろクラースさんに会いたいなぁ…だれか投下してよ」
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 14:37:19 ID:gNO1SNM5O
>>94
ならお前が書け
催促を口に出したらいかんだろ
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 15:00:29 ID:DXRskhCLO
あそこのはFFとDQ合わせて139人だけどな
実際はFFから12作品78人、DQから10作品61人という振り分けになっている
単品で見れば妥当な数だろう
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 19:02:45 ID:XyI5iNnk0
無粋だが、FFとDQ別ければ良いのに。って思ってしまうな
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 23:33:20 ID:JpHTnJA5O
あれじゃね?そりゃFFDQ板でやってるからじゃね?
99名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:55:33 ID:IFKHmv02O
DQ単独ロワは別にあって、
FF単独も企画中なので参加お待ちしてます、
というのは板違いスマソ
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 19:47:53 ID:MChKLlb+O
3rdこそはルーティをD2キャラと絡ませてやりたいが、参加できるかでうかの方が怪しいな
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 22:19:10 ID:IuDEgjDHO
何故か短命なんだよな
妙にブレないからか?
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 22:26:19 ID:MChKLlb+O
美人薄命だからだってルーティさんが言ってた
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 23:00:09 ID:g4e0eFvuO
ルーティさん美人だもんな
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 13:34:42 ID:5COSo3wGO
まとめのキャラ紹介見てると、キャラの身長が想像と全く違うものがあったりしてびっくりする
デフォルメの問題だろうけどカイウスとルカはもうちょい小さいと思っていた
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 14:48:18 ID:EcdcSsKnO
ルカはショタ言われてる割には他の主人公とほぼ変わらないんだよな
ヴェイグは抜きん出てデカイが
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 18:31:47 ID:CDnplxfhO
実年齢と見た目が合ってないのはルークだな。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 20:09:46 ID:DV/7IJInO
実年齢で考えるとイオンとシンク、クラトスとミトスもだな
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 20:38:03 ID:EcdcSsKnO
マオも合ってなかったはず
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 21:14:02 ID:5COSo3wGO
そういやティアやジェイドはキャラ紹介の年齢+2歳なんだっけ?
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 22:55:56 ID:EcdcSsKnO
一年の長さが違うからだっけ?
にしてもティアは+2歳どころじゃ無いような

ん?なんだか眠く…
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 23:09:21 ID:1rzZqxvpO
おっと アビスキャラの年齢の話はそこまでだ
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 00:41:19 ID:6yr+/fgs0
そっちの意味じゃなくて、ED直前からの参戦だからだろ。
113名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 03:17:46 ID:OiZY7+0gO
テイルズから学んだこと。
他人の年齢を見た目だけで判断してはダメ。
114名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 08:23:56 ID:uV2cji+nO
今更だがカイルがテイルズで一番小さい主人公なんだよな。
年齢を考えるとむしろカイルが一番自然な身長の筈なのにすごく低く感じる不思議。

>>106-108
聖女組もああ見えて実は1歳児。なんというエセ熟女。
エミル(ラタトスク)も、エミルとしては半年前に生まれたばかり、ラタトスクに至っては……。
後はクラトス達の影に埋もれて忘れられがちだが、プレセアとマグニスさまも忘れたらいけないぜ豚が!
ギャップって本当に怖いな。
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 18:11:16 ID:PC9g8g5uO
参加者の75%が死んだ人か消えた人のアビスってよく考えたら壮絶だな
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 19:18:01 ID:V7kRCn9XO
ちゃんと生きてる人が8人中3人か
確かになんか凄いな
117名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 23:39:06 ID:rX+4/QfqO
そういえば、アリエッタとティアの年齢って一緒なんだよね。
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 23:55:40 ID:5gOkj3apO
リアラ(外見年齢)とマルタも16だな
やはりティアさんじゅうろくさ…
ちょっとティアさんシアリングソロゥは勘bにゅわにゅわ死ぬtt何だとっ!?
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 00:16:28 ID:iE3A9JT2O
Tに次いで参加者の平均年齢が若いのは、ロリショタ不在のLなのか
つーか17歳多いな、この作品
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 01:34:32 ID:LTV9Yzp/O
テイルズ自体17歳がやたら多かった気がする
クレスチェスターアーチェファラキールロイドティトレイセネルクロエモーゼスルークスパーダ
思い付くだけでこんだけ居た
121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 01:30:04 ID:v01I9ROUO
>>120
ルーク思いついたならアッシュも入れてやってくれ
あとはリリスもだった気がする。ホントに多いな…
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 18:44:28 ID:wdjhSbb+O
ルーク七歳
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 20:00:46 ID:DjBAokItO
まぁテイルズ以外の作品でも、わりと17歳が基本だ
>120は多分パーティーメンバーから挙げてみただけだろう
ワルちんとステ姉様も17歳だし
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 20:56:39 ID:pqyJhNwqO
ワルトゥって17才だったのか・・・
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 07:14:03 ID:vyla2T2+O
絶妙なボケwww
126名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 21:29:55 ID:CYfHht03O
このバトロワを見てマイソロジー2のスタメンがアッシュ アニー チャットになったのは私だけじゃない筈。
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/18(土) 23:49:09 ID:6umIoq/J0
パーティーは気にせず組んでる。
1stネタだけど、闘技場でヴェイグがルーティを凹りだした時には慌ててヴェイグを止めたけどな。
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/19(日) 10:08:32 ID:wDWwxsmgO
マイソロOPのジェイド+チャットにニヤけてしまう俺はもうだめかもわからんね。
いつか叶う夢かと思ってたが鬼畜眼鏡が逝ってしまわれた…。

アビス組は放送で驚きそうな予感がするな。ジェイドが頼みの綱みたいなもんだし。
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/21(火) 07:54:51 ID:q4G8cfH9O
>>120
ティトレイは仲間になってすぐに「もうすぐ18歳になる」って言ってたな
結局ゲーム中に年取ったのかは謎だが
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/21(火) 21:51:08 ID:IK/XZwmCO
最近見始めたんだけど、「このキャラを追えば大体このロワの流れが把握できる」とかある?
あと「この話だけは見とけ」とか。多忙だから流れだけみとこうと思ってさ。
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/21(火) 22:03:39 ID:hjzJx6AfO
一人を追ってると、だんだん人が集まってくるからなぁ…
結局わけわからなくなるので、関わったキャラ全員分読みたくなるハメに

とりあえず>>55からの流れで名前が挙がってるキャラはお勧めかな
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/22(水) 01:19:40 ID:vGeu5zva0
あとカイルは攻略本によるとリオンと同い年らしいので
もうすぐ16になるのだと思われる
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/23(木) 09:05:51 ID:mOYAsqS0O
チャット・ロイド・ヴェイグ・クラトスあたりを追ってればおおまかにこのロワの部隊が把握できる気がする。
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/24(金) 23:58:12 ID:NRujlz3xO
スタンは最初から追ってないと、途中から出てきても意味不明になるな
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/29(水) 07:30:14 ID:eVStoOSpO
保守
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 00:33:13 ID:pEizAr4iO
最近とんと投下が来ないな
忙しいだけだといいんだが……
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 02:51:16 ID:a+7T4N25O
ミトス組が進まないと周りが書きにくい。
近いからスタン、デクスに影響しそうだし
他を時間進めるにしても、あの洞窟は重要だったりするから。
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 17:46:06 ID:HlsEJAJR0
 1stの頃にもこれだけ投下がストップしてた時期ってのはあるんでしょうか?
 
 したらばの書く気になったら気合いを入れるスレに書き込みがあったからこれから投下されることを期待したいとこですが・・・
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/02(土) 23:01:37 ID:pEizAr4iO
1stに比べて状況がややこしいからな
プロット組むだけで時間がかかる
140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/06(水) 22:21:52 ID:YUe0IHsH0
ほっしゅほしゅ
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/10(日) 09:45:24 ID:lY3R1wOyO
保守ッ
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/10(日) 22:25:04 ID:G4WPcvXtO
雑談したいが話題が出尽くした感があるなー……
チャットには来てたから書き手方が居ないって事は無いんだろうけれど
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/12(火) 08:55:15 ID:16UookTLO
それがッ!過疎ロワの宿命だッ!

久し振りの投下を楽しみに待つ…それが俺達にできること!
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/13(水) 04:06:37 ID:JkZGOvyoO
投下を待とうか
145レオン:2009/05/13(水) 19:31:56 ID:2VnxMw6lO
保守
どうかルークは死なないでください…
萌えキャラアリエッタが死んで…私涙目…w
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/13(水) 19:34:06 ID:Ou96wEzT0
>>145
おう、ここはsageなきゃなんねーんだ。折角書いてくれたのにすまんね。あと名前欄には何も書かない方がいいぞ。
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/15(金) 14:53:58 ID:uqPKrFZVO
>>144
地味にクレス乙

生存者で一番移動距離が長いのって誰だろ
スパーダとかデクスは凄い歩いてるよね
最短はハロルドだろうけど
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/15(金) 17:04:53 ID:pW2M7KUoO
サレもよく移動してるな
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/15(金) 22:01:21 ID:MKefE4kwO
サレはどうやってマルタ運んだんだっけ
片手が死んでるから長時間持ち歩きは無理そうだよな
フォルスでずっと運ぶのはチートな気が
人一人を完全に無力化できちゃうなんて一対一じゃサレ圧勝だろ
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/15(金) 22:07:36 ID:FOZX+dvwO
片手+風+相手が気絶してたから運べたんじゃないか?
原作でも大人を一人浮かせる程度は出来たし、制限下でも手を使えば問題無いと思う
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/15(金) 23:40:33 ID:z2vev0OQO
片手でバランス取りつつ丸太を運ぶサレ……想像したら中々可愛いなw
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 01:48:29 ID:llhiASNFO
月報が0だった件について

今じゃ立派な過疎ロワか……
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/16(土) 16:59:33 ID:Sce2iWNW0
保守
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/19(火) 16:36:36 ID:12MBmULTO
保守
155名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 07:36:37 ID:ZA75a/sqO
ところでチャットは23?
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/20(水) 23:06:34 ID:k6dVWlo80
23でいいんじゃない?チャットで書き手さんたちのモチベーションが上がればいいなあ
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 00:04:12 ID:rsE4Rov/0
だのう。チャットって読み手も参加していいのん?
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/21(木) 04:06:57 ID:tzmVFJPuO
もちろん
かく言う俺も二回程参加したw
テイルズをある程度知ってれば楽しいし、参加してみればいいさ
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/22(金) 07:47:43 ID:1duk6jOTO
今読み返していたが、第3クールは第1、2とはうって変わって中々展開や話や心理が複雑だよな。中々投下もこない筈だぜ。
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/22(金) 15:19:42 ID:5GF/EdjBO
マーダーが一局集中してて書き辛そうだ
ミクもサレもスタンも動かないし、マオは時間が進み過ぎてる。
動き回れるのがデクスしか居ないんじゃ無かろうか

あと、館組やハロルドの考察パートもややこしい
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/23(土) 02:08:12 ID:UpY0POMF0
久しぶりにR再プレイしてサイグローグと会ったが
名言ってか純粋にギクリとする台詞ばかり言うな
D2盲目少女といい、このチーム鬱台詞がかなり上手い
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/23(土) 22:46:21 ID:LeyDcMY20
あの辺はチームが凄いってか、多分Gさんの趣味かと
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/24(日) 03:49:10 ID:mAdscOMxO
スレチだがD2盲目少女kwsk
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/24(日) 04:25:00 ID:TdE3z/atO
・盲目の少女がエルレインの奇跡で眼が見えるようになる
・しかし、カイル一行が歴史を修正してしまったため、エルレインと共にそれも無かった事になる
・それについてED中に少女が一言
だった希ガス

今日のチャットをROMってて安心したぜ……。
書き手さん達が居なくなったんじゃなくて、ちょっと筆が遅いだけだったんだな。
それなら気長に待つぜ
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/27(水) 02:09:34 ID:IU+88lbGO
( ^ω^)保守させてもらう!
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/28(木) 14:47:08 ID:IGbZvRrzO
>>163
「私は目が見えません。もし全能の神が私の目を治してくれたのだとしたら、私は神を否定した人を恨みます」
みたいな感じだったと思う
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/05/28(木) 14:48:44 ID:IGbZvRrzO
ごめんなさい、sage忘れた
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/02(火) 09:46:20 ID:W2WTPdN/O
wktk満つる処に保守はあり
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/03(水) 13:25:14 ID:gYnj8eibO
チャットを見るにそろそろ投下がくる頃だな…
そう思ってこまめにこのスレをチェックしてるのは僕だけですか?
170名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/03(水) 20:41:05 ID:+zetiVqgO
>>169
俺も投下が楽しみで
ほぼ毎日チェックしてるぜ
171名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/03(水) 21:30:12 ID:svGTXUJFO
右に同じ
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/04(木) 01:54:43 ID:59H8ww4FO
読み返して気づいたが、イレーヌかリアラのどちらかの不明支給品がケイオスハートの可能性が高いんだよな
Aの魔装備の中で一つだけ出てない

ちなみに
ネビリム:イレーヌ→スタン
ブラッドペイン:イレーヌ
ロストセレスティ:シンク
ケルクアトール:ダオス→アリス→放置→ジェイド→放置
ユニコーンホーン:フォッグ→エルレイン

ついでに
ディムロス:ディスト→リアラ
アトワイト:すず→クロエ
シャルティエ:ハスタ→ミクトラン→ヴェイグ
クレメンテ:リフィル→ジェイド→放置
イクティノス:アリス→サレ→ヴェイグ→ミクトラン
173名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/04(木) 17:33:52 ID:WDwEFgfbO
イレーヌに渡ったら何人死ぬかなぁ
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 01:51:17 ID:aJxPVYLPO
スタンの魔剣がAのネビリムなら参戦時期によってはルークが異変の原因に気付いてたかもしれないんだよな
175名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 01:52:22 ID:P5jqABJi0
シャルってジューダスが先に死んだら
魔王の弟みたいになりそうなイメージがある
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 03:34:13 ID:yrHA0mxTO
魔王か……。
炎撃破か?絶炎煌か?それとも灼滅刃に獄炎波か?
猛襲ライズの首領は出てないな


地顎陣で思い出したが、アッシュ&アニー対バルバトスは燃えたな
初めてFOFが出た記念すべき戦闘でもあるし
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 18:31:30 ID:dBFA//HeO
各自好きなバトル上げてみないか?
書き手さんのモチベも上がるだろうし。

個人的にはサレVSヴェイグ&リカルドが好きだな。
書き手さんのリバース好きが伝わる戦闘描写にリカちゃんの援護射撃がたまらん。
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 21:13:04 ID:yrHA0mxTO
バルバトス戦の一連の流れは神だと思うんだ
リレーなのに全くブレてない
他にはウッドロウ対サレなんか好きだな
その顛末から後の流れも含めて
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 21:43:06 ID:Rt9Gq+mFO
バルバトス戦はハラハラしながら読んでた。なんというか手に汗握るというか、最強クラスの敵を連携して戦う展開に燃えた。

あと好きなのはアリス対アリエッタ。復讐に燃えるアリエッタと仇のアリスのドロドロしたところと最後らへんでアリエッタがやられたと思った時の逆転がよかった。読んでるこっちが書き手にやられたと思ってしまった。
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:00:03 ID:P5jqABJi0
シリーズ再プレイして思ったんだが
エルレインが欲しいのって
自分が人間を救ったという事実であって
対象自体は元から存在した人間だろうが洗脳した人間だろうが自分で作った人間だろうが
何でも良いんだな
あとなりダンとマイソロって世界観同じだったのに今日気づいた
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:02:23 ID:KyLAZuToO
ハロルドVSロニが好きだなー
元が仲間同士なだけに辛いし切ないけど

ロニの今後が気になって仕方がない
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:05:27 ID:P5jqABJi0
>>181
ジューダスもカイルもえらい状態だからな
カイルはロニが来たら生き延びる希望になりそうだが
ジューダスは会ったら却って死亡フラグ
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:05:51 ID:yrHA0mxTO
ジェイドとアッシュが同時に斬りかかる所なんて、その光景が目に浮かんだな……。
あの一連の話は、脳内でアニメーションとして再生出来るぜ!


他には、話題にはならないがジューダス対スタイレも好きだな。
あのカードは美味し過ぎる
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:41:25 ID:yrHA0mxTO
>>182
しかしそのカイルは現在絶賛大ピンチなんだよな。
あの状況から逃げ出すのは至難の業だぜ

そういえば、次の放送で言葉責めされるのは誰だろうな?
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:42:06 ID:pUiIwnoQO
>>180
話題ずれるが世界観の話kwsk
同じ世界観だなんて初めて聞いたよ
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:50:23 ID:P5jqABJi0
>>185
別に大した話じゃないよ
最初の方で村長がこの世界は
世界樹がP・E・Dから集めた記憶・情報で作った種から産まれたものって言ってて
マイソロでの世界樹が新しい世界を作る際のと同じシステムだったってこと
でも世界樹女神=ディセンダーってわけではなく女神ポジ=マイソロ2ダオスなんだと思う
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 22:53:49 ID:P5jqABJi0
>>184
支給品が言葉責めされるってのも面白いんじゃないか?
ディムロス・シャルティエ・クイッキー辺り
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/05(金) 23:08:27 ID:pUiIwnoQO
>>186
あーなるほど。確かになりダン2でも言ってたね
すっかり忘れてた。トン

俺が2ndで好きな戦闘は、やっぱアッシュ・アニーのFOF使ったやつだな
初めて出たし、何よりバルバトスを撃退できると思ってなかったからなおさら印象に残ってる
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 04:16:15 ID:0dkF68ubO
クラトスシゼル戦も読んでて熱かったなー
あの戦いのせいでカイウスとチェルシーが我が子のように思えてしまう
2人とも色々乗り越えて欲しいところだけど丁度ルビアも空気王死んじゃったし如何せん子供だしどう転ぶかわからんね
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/06(土) 13:26:29 ID:T7fV4aAbO
そもそも次の放送を迎えられるかどうかすら怪しいんだよな。
東から最有力マーダーチームが向かってるし、西の塔にはミクが居る。


やっぱりテルクェスの探知能力は便利過ぎるな。
スピードは無いが射程は下手すれば会場全域に及ぶし、外見も接触を誘い易い。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 18:39:18 ID:vZuAcCHmO
なんでジューダスの話は破棄されてるんですか?
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/07(日) 21:05:27 ID:6iSuHF2m0
>>183
いつも思うんだが
ジューダス・リオンは誰かと絡んでこそ魅力がでるという
ある種おいしいキャラ
193名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/08(月) 07:05:48 ID:ZbzTm/JfO
どの戦いも好きなので決めがたいが、やはり一連のバルバトス戦が一番好きだなあ。
後はミクたんvsダジャレ組とか、ミトスvsエミルとかかな。
194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/09(火) 23:37:22 ID:smUToBvnO
忘れられてそうなアイテム
タバサ
流されたクロエの帽子
冷凍保存されたルビアの腕
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/10(水) 07:50:45 ID:ccOdoMn8O
クロエの帽子以外は忘れられてはないだろう。

一番はきっとアイアンメイデンだな
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/11(木) 11:39:46 ID:pMhgywAWO
スケベ本も大半は忘却の彼方だろ
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/12(金) 13:23:26 ID:dqcTAtPIO
まぁクロエの帽子なんて流されても別に支障はないし
誰かが拾っても役には立たないからな…と、クロエヲタの俺は思うのだった
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/17(水) 21:17:36 ID:EX4Al5zfO
ほしゅ
199名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/20(土) 14:57:22 ID:M0hwIS7EO
今日はチャットの日か。
最近読み手が参加してないから、読み手も奮って参加しようぜ
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 12:16:10 ID:ixaDMwGtO
保守してほしゅうございまする
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 15:03:04 ID:sYgrS1QRO
時空剣士はお帰りください。
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/24(水) 20:17:47 ID:aot+dABDO
ワロタ
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/06/27(土) 19:28:20 ID:PeUvHN+yO
ほしゅー、ほしゅー、ほしゅーてぃんぐすたー
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 13:20:44 ID:anUwK6mhO
保守するポン
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/03(金) 06:34:56 ID:cxR2JyJ0O
2nd進行中だと言うのに3rdの妄想ばかり膨らむぜ!
V出したかったなー。原作からしてユーリとフレンの対比はロワ映えしそうだ。
Hもクリードがかなり主催向きなんだよな。もし機会があれば3rdの主催に是非推薦したい。
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/03(金) 09:56:50 ID:yATGCBSLO
3rdやろうぜ
207名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/03(金) 13:35:39 ID:GT9G3j02O
クリードって犬だよな?
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/03(金) 16:05:16 ID:cxR2JyJ0O
>>206
やるにしても、まだ新しい作品がVとHしか無いからな。
Gが発売するまでは待った方が良くないか?


>>207
クリードはHのラスボス。
犬はVのラピード。
209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/03(金) 22:16:38 ID:cDwczWIo0
もちつけ。3rdとか話早すぎだw
210名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 03:58:06 ID:wDw3Gbs8O
俺も一瞬クリードをラピードと読み間違えてびびったw

新作が来ない理由はやっぱ状況が難しいキャラが多いからかね
ここの書き手のみなさんは構成とかも凝っててドラマチックで濃い話が多いから読解力の無い俺は読み返して把握するのが大変だわ
だがそれがいいんだけどねw
211名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 04:03:08 ID:2MRdvO/J0
洞窟の続きにずっとwktkしている
ミトス・スタン・ジューダスの選んだ道の違いも面白い
212名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 22:49:09 ID:xJglFpxtO
確かに長い、というより濃い話が多いよな。
大作が豊富なのは嬉しいんだが、もちろん短文も歓迎なんだぜ?
チャットで確認できる五人が皆長文書きだからな。短文繋ぎが書ける新人さん募集。
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 21:08:30 ID:vU4zNExsO
22時15分頃から投下します。
少し長めなので、支援をお願いします。
214名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 21:36:41 ID:56OmjFJPO
投下来た!これで勝つる!
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 22:03:42 ID:vU4zNExsO
では少し早いですが、ゆったりペースで投下していきます。
七夕なので、星でも眺めながらゆっくり見て下さい。
『ねぇ、アンタの夢って何なの?』
『俺の夢かぁ? そうだなぁ……英雄になる事かなー』
『英雄? あっははは! アンタ本気でそんなものになれると思ってんの!?』
『ええい、言ってみただけだよ! そんなに笑うなって!』














             誰も憎しみ合う事なく、皆が笑い合える世界が欲しい。



最初、四方も分からない砂漠に裸で放り出された様な、そんな理不尽さを女は感じた。
女は当然の如く途方に暮れ、周囲を何度も見渡し重い溜息を吐く。
この砂漠の中から1カラットのダイヤモンドを探す。
その行為は、誰が如何考えても無謀だと理解していたからだ。
難易度はアンノウンを軽く飛び越え、女に嘲笑を浴びせる。
けれども純粋で無垢な想いは、女を走らせるに充分足り得る燃料となった。
最初の内は、それこそ手探りでの迷走に過ぎなかった。
が、しかし次第に女は知恵を身に付けていった。
やがて女は、衣類を纏い身嗜みに気を遣う様になった。
走り回る為には体裁と知恵が必要なのだと理解したからだ。
何かを得る為には、力が必要だ。世界は冷たい。力が無い者には一瞥すらも寄越さない。
ある日女は走り疲れ、ふと目線を上げた。小高い丘の上に、錆びた自転車がぽつんと置いてあった。
女はその自転車へ大いに感謝をした。
相手は無謀なまでの小さな探し物、見付けるには如何しても相応の手段が必要だったからだ。
結果、走り回るスピードと範囲が上がった。作業率の向上だ。女は実に喜んだ。
そして何日かが経過した。
女は、速度の代償に冷たくなった頬を打つ風もにも、随分慣れていた。
走った。走った。何度転んでも貶されても、必死で女は走り続けた。
やがて砂漠を超え、大きな丘に出た。
前方に拓けた景色は大都会、しかしまるで知らない街だ。女は唾を飲み込んだ。
猛スピードで巡る汚らわしくも美しくもある風景の中、女は宝石を探す。
何度も挫けそうになったが、信念は決して折れなかった。
純粋な心は、雑踏の中でも腐らなかった。何度踏まれても、太陽を目指し葉を伸ばした。
やがて女は、充分な地位と金を得た。複雑な街では、何かを探すには力と金が必要だった。
その街は随分な有様で、女には止まる事さえもが許されはしなかった。
道行く人々が常に走っていたからだ。
全く騒がしい街だと女は思ったが、そんな考えは直ぐに何処かへ吹き飛んだ。
走り回らなければならない現実に視野を埋め尽くされていたからだ。
女が立ち止まると、道行く人々からの背中への盛大なタックルを味わされる羽目になった。
なので女は父に頼み車を購入して貰い、常に乗り、二度と降りない事にした。
誰だって怪我はしたくないし、雨に打たれたくない。だから車で走った。
雨の日も雪の日も走った。頂上に昇る為に走り続けた。
轢いてしまった人も居たかも知れないが、最早歯牙にさえ掛けなかった。
女は犠牲を厭わなくなり、遂に犠牲の存在を忘れようとしてしまっていた。
何かを得る為には、犠牲が居る。何かを掴む為には、何かを捨てる必要がある。
人間には、何かを掴める手は、掌は、二つしかないのだ。
理屈で世界は廻らない。必要犠牲と必要悪が、どの時代のどの星にもある。
現実は常に女の尻を叩き続けたので、女は嫌でも走り回らなければならなかった。
走り回る速度は、日を追う毎に雪だるま式に上昇していた。女の意志とは無関係だった。
幾ら季節を巡っただろうか。常に車内なので、向かい風の冷たさも暖かさも、天候も気にはならなかった。
気にする暇もなかったし、何より色々な事情もあったので、到底気にしてはいられなかった。
何年経ったか忘れてしまったある時、ふと女は窓から見える切り取られた風景を見た。
その頃には、既に車は笑えるくらい凄まじい時速で、景色は線でしか表現されていなかった。
空は、滲んでしまって見えない。女は顔を両手で覆い、ひたすらに泣いた。
何時しか走り回る事が仕事になっていた。
1カラットのダイヤモンドを探す暇を見つける方が大切になっていた。
女の口から吐息が漏れる。それこそが世界の真理だと気付いたからだ。


生きる事は、知らぬ間に作業と化していた。







英雄が立っていた。
英雄―――もとい一人の青年が首を後ろに30センチ程下げ、
月を中心に星屑が踊る宏大な空を仰ぎながら、立っていた。

底が見えず吸い込まれそうな藍に染まった夜は、驚く程冷たく、鋭く、それでいて広大で。
青年には急に自らが矮小な存在に思えてしまい、どうにも落ち着く事が出来なかった。
不意に、青年は立っていられなくなるほどまでに激しい眩暈に襲われる。
何の前触れも無く訪れたそれに青年はふらつき、右に根を下ろしていた栗の木の幹に手を着く。
そうして瞼を強く絞り、深い溜息を吐いた。嫌に鈍い頭痛に嫌気が差したからだ。
うんざりする様な眩しい光を喰らい生まれた夜は、こんなにも強大で、ずしりと重い。
何かに横殴りにされた様な感覚が継続的に青年の全身を叩き、青年は胸を擦った。
転げ回りたくなると言っても過言ではないほど、実に堪え難い痛みだった。
心音のボレロを沈める様に鼻から息を吐くと、青年はゆっくりと視線を上に流す。
世界の果てが見えた。
深い闇は空と地平線を一遍にごくりと飲み込み、どこまでも延々とその舌を伸ばしていた。
青年は瞳を閉じてみる。
地を這う根のように複雑に巡る闇の舌が全身に絡み付く幻想が見えた。
青年の肩が小さく跳ねた。
払っても払っても、まるで煉瓦に走る蔓の如く、それは複雑且つ執拗に身体を付き纏う。
耳元を霞める風と水の協奏曲は狂想曲と化し、青年の精神を貪る様に出鱈目に乱し去った。
青年ははっと息を飲み、瞳をかっと開く。つう、と背筋を汗が這う。
文字では書き表せない、酷く嫌な冷たさだった。
青年は倒れ込む様に幹に背を打ち付け、汗で生暖かく濡れた前髪をくしゃりと握った。
自分の肩が震えている事にここで始めて気付き、口元を僅かに歪める。
青年には、自らの背が何時もより一回りも二回りも小さく感じられた。

“きっとそれと同じように、光は闇に喰われかけている”。

……そう、だから自分は夜に畏怖を覚えたんだ。喰われる事が、本当は怖いんだ。
きっと個を残したいんだ。だけれど、
「……もう、」
手袋の中で淡く何かが煌めいた。声がやたらと煩い。頭が、鈍器で殴られたみたく痛い。
幻想の蒼い光の中で金糸が煌めき、紅の炎が立ち昇る。懐かしい色彩だった。

「もう、戻らない」

滝壺から跳ねた水の飛沫は月光を反射し、辺りに幻想的な霧のカーテンを造り出していた。
ふわりと柔らかに冷たく広がったカーテンの向こう側、5メートル前方左に、青年は一人の女を見た。
苔が生えた岩にぽつんと座るその女は、青年にまるで汚い牢獄の中の可憐な淑女の様な、
そんな印象を押し付けて行った。美しさが現実に映え過ぎて、逆に酷く場違いに見えたのだ。
世界から明らかに乖離している女性の背は、驚く程小さい。
その理由を青年は断定出来なかった。
拒絶しているのか拒絶されているのか、或いは自分と彼女が乖離しているのか。
近付き過ぎて違和感を覚えるのか。それとも知らぬ間にすれ違ってしまったのか。
いやいや、二人が世界を許容しないからなのか。
219名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 22:15:32 ID:W1DlnNQuO
支援
この身体にぶよぶよと纏わりつく膜が、嫌な方の自分が、自分にそうしているのか。
はたまた、彼女が見ているものが自分とは違うからなのか……。

青年は口をまごつかせ、足を一歩踏み出そうとした。
目は滑り、口は何かを紡ごうと中途半端に動く。
手は力無く前方に差し出され、指は僅かに上下していた。
一連の動作はまるで無意識だった。
自らがどうするべきかを、青年は本能レベルで知っていたからだ。
三秒後、青年は溜息を一つ吐くと、項垂れながら頭を掻いた。
なんてだらしない、と自己嫌悪。
許される事ではない、何故かそんな気がしたのだ。だから青年には何も出来はしなかった。
何をすべきか知っていた筈なのに。にも関わらず何故自分は許されないと思うのだろうか。
青年は頭を短く左右に振る。理由が分からない。まるで分からない。
ああして背を向けて佇んでいるのだから、相手も望んでいる事なのに。
それが出来ないだなんて、自分は極度の奥手なのだろうか?
それとも彼女が俺からかけ離れているから? ……。……下らない考えはよそう。
俺から進んで彼女からかけ離れても仕方無い。下手の考え休むに似たり、だ。

青年は頭を重そうに上げると、背を幹から離し、目前を見据えた。
現実味のない、嫌に鮮やかな椿の花の向こう側に、一輪挿しと一枚岩に揃えられた靴があった。
一輪挿しにされた蕾はその頭を項垂れている。
小さなその蕾は口を石の様に閉ざし、二度とその標を見せそうにはなかった。
やがて、重力に屈伏した様に垂れた蕾の先に集まっていた雫が落ちた。
恐らくは滝の飛沫が露になったのだろう。
その雫はとても透き通っていた。不思議と、彼女の瞳が思い浮かんだ。
垂れた雫は岩に跳ね、揃えられた靴に染み込んでいった。
最初から、そんなものは世界の何処にも存在していなかったかの様だった。
青年ははっと息を飲み、小さく唸る。脳内を一閃、電流がびりりと走った。
彼女の瞳が怖いのは、きっとその痛い程までの純粋さが原因なんだ―――そう気付いたからだ。
裳抜けの殼になった個を見透かされる気がする(イレーヌさんにとっては俺を見ているだけなのに)から。
がばり、と青年は顔を上げた。前方に座る色白の女性の横顔の美しさに、思わず息を飲む。
滝壺の騒音が消えた。水流を生足で受ける女性の髪が、風に戦ぐ花の様に緩やかに揺れていた。
青年の視界に罅が入る。喧しい金属音を立てながら、視界が端から崩れていった。
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 22:19:00 ID:JeyTaPUQO
支援
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 22:20:17 ID:56OmjFJPO
支援
キャラメルの様に甘ったるい香水の匂いに、小さく身震いをする。
ジェノスの冬の寒さにも勝る様な、強い寒気が青年の四肢を支配した。
青年は微笑む。……詰り、だ。
詰り、つまり、つまり。イレーヌさんはそうしているつもりはないにしても……。



     『心は不完全なのよ。だから迷うの、けれど最終的に道を決めるのはそんな脆くて愚かな心よ』



【スタン君は、私の為に死んでくれるかしら】
あぁそうか。だから、ズレてたんだな。
あの質問に答えられなかったのは、俺が期待されたそれとは違ったからだ。
こんなにも単純な事だったのか。何も、難しい事はないんだ。何も。
【ね】
イレーヌさん。違うんですよ。俺はイレーヌさんの為に死ぬんじゃないんです。
きっと、自分の為に殺すんです。勿論確かに、傍から見たら俺が死ぬだけなんですけどね。
だからイレーヌさんにとっては同じでしょうね。でも、俺にとっては意味が全然違うんです。
同じようで、違い過ぎるんですよ。
……だけれど、多分イレーヌさんは俺と俺とをまだ区別しきれてない。
俺を見ている。見続けている。
【そういうものなのよ、きっと】
だから、俺は俺で居られる。下らなくて汚らわしい、虫みたいなこんな俺でも。
イレーヌさんがそうする限り、俺は本当に“スタン=エルロン”になれる。
……?
……あれ?
でも、もしイレーヌさんが俺と俺を区別したらどうなるんだ?
いや、待て。極論を言うならば、“……もし、もう区別しているとしたら?”
イレーヌさんが疑問を口や仕草に出さないだけだとしたら?
俺達が、本当はお互いに食い違っているとしたら……? 
もしも、完全に対極の位置に立つ存在だとしたら?
―――仮に、鏡映しにされたみたく、“全てが逆で、同じ”だとしたら?



     『だから心は尊く素敵なものでもあるの。心を喪えば、どこにも辿り着けないわ』



イレーヌさんが見ているのは、本当に見たいのは、必要としているのは。
もしかして、気付いてないフリをしてるだけで。俺にはそう見せていないだけで―――、







「ねぇ」







肩が、まるでたった今動く事を思い出したかの様にびくんと跳ねる。
青年は眼球をぐるりと動かした。ブラック・アウトしていた視界が広がり、鮮やかな色彩で満ちる。
青年の前方で川に足を沈めていた筈の女性の顔が、青年の鼻の先10センチの位置にあった。
目が、合う。震える吐息が、一つ。
女性が携えている吸い込まれそうな底無しの紫の瞳は、何時の間に、と唾を飲み込む隙すら青年に与えない。
青年の毛穴からどっと冷たい汗が噴き出した。
馬鹿みたいに脈打つ鼓動は、今にも心臓に胸を破り出させそうだ。
女の髪が風にさらりと靡く。
甘い香水の匂いは、青年の鼻腔をくすぐりすらせず世界を通り抜けた。
目を細め、女は艶やかな唇をゆっくりと歪める。青年の口の端から、ゆっくりと吐息が溢れた。
「ここの季節って」
……季節?
「はい?」
脈絡の無く余りにも唐突な話に、青年は首を小さく傾げる。
季節なんて言葉、何処から如何見ても、この現実とは無縁の言葉だ。間違いないだろう。
しかし青年の目前に立つ女は、さもそれが当然であるかの様に語る。
青年の中を駆け巡る違和感。
“これではまるでこれ<バトル・ロワイアル>が女自身の世界で、今も正常に廻っているかの様だ”。
青年は破れたグローブの隙間から見える魔石を、ゆっくりと優しく撫でた。
そう。気付いてしまったのだ。女にとって、此所は非現実ではなく唯一無二の現実なのだと。
何故なら女には、帰る場所など疾うの昔に在りはしないのだから。
一度地に伏した彼女は、“此所で新たに産まれた”のだ。
だから彼女にとって此所は正常で、彼女自身もある意味では無垢で、とことん一途で。
……怖い程までに純粋で。
それ故に現実と極限までマッチしながらも、
この現実を非現実と捉える人物からは、酷く現実と乖離して見えてしまうのだ。
女にとっては何もかもが当然で正しくて。
それ即ち、ある意味で死ぬ以前の現実に絶望していたからだろう。
とどのつまりが、それは一種の逃避なのだ。
しかし、逃げ込んだ世界は女にとって本当に幸せなのだろうか?
希望もなく、一時の快楽に溺れて、逃げながら生きるのは、死ぬよりも孤独だ。
そして、ランプすら持たずに夜の樹海を歩く事は、死んでいる事とほぼ同義だ。
つまり女にとって、生と死は等価値なのかも知れない。青年はそう思った。

……いや待て。なら、“イレーヌさんを受け入れない現実の否定”って一体何だよ?
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 22:28:18 ID:W1DlnNQuO
支援2
イレーヌさんがこの現実を受け入れているなら、俺は一体何をすればいいんだ?
あっちの現実はイレーヌさんを受け入れない現実で、こっちはイレーヌさんが受け入れた……?
……あ。
違う、逆だったのか……全部……ッ!
“現実がイレーヌさんを受け入れるかどうか”じゃない。
要は、“イレーヌさんが現実を受け入れるかどうか”なんだ。
でも、でも、でも。
そうすると俺には、いずれやる事が何もなくなるかもしれなくて、

「……ここの季節って、いつなのかしら」

溜息混じりに、ぽつりと女はそう呟いた。
子供が純粋な疑問を尋ねる時の様な、無垢で自然な口調だった。
青年は思考を遮断した言葉への驚きを取り繕う様に、咳払いをしつつ、さぁと肩を窄めてみせる。
「分かりませんね」
「そうよね」
「そりゃあそうです」
青年がそう言うと、女も肩を窄めて笑う。青年は頭を掻きながら短く咳払いをした。
「……イレーヌさん、いきなり如何したんですか?」
青年は頬の筋肉を緩め、身を翻した女の背を追った。
「いいえ。別に、」
女は背で手を組み、言った。
「なんとなくよ」
くるり、と女はターンをし、青年に絹の様に柔らかな笑みを向けた。
「そうですか」
「そうよ」
「ただ」
「ただ?」

リズム良く続いていた会話は、そこで一時の休憩タイムに入った。
青年は僅かに眉間に皺を寄せ、女の瞳をじっと見つめる。
女は半秒ほど青年の目を見つめた後、瞼をゆっくりと、眠りに落ちるかのように下げた。
青年は何も言わずに女を見つめる。轟く滝の音が、二人の身体を激しく叩いた。
無言の時間、三秒。
女は瞼を上げ、青年の双眸を再び覗き込む様に見つめた。青年は反射的に目を逸す。
女は小さく笑い、すらりと伸びた青白い指で、耳に髪を掛けた。

「……春だといいわね」

消え入りそうな声で女はそう呟く。
「死ぬなら春がいいわ。今度は綺麗な桜に囲まれて死にたいもの」
ノイシュタット、という単語が電気信号と化し、青年のシナプスを電速で駆け抜けた。
瞬間、口からその七文字が飛び出そうになったが、青年は慌ててそれを飲み込んだ。
―――のいしゅたっと。
肉体の奥深くまで垂下された七文字を、青年は脳内で復唱する。
“考えが間違っていた”。
青年は水銀の様に重く冷たい息を吐くと、ゆっくりと目前の女の瞳を見つめる。
何か、とても大切で致命的な事を、理解してしまった様な気がした。
俺達は、やっぱり鏡映しにされた、標本に飾られるのを待つしか出来ないただの虫螻だ。
まるで置物になってしまったかの様に沈黙してしまった女の沈痛な面持ちを見つつ、青年はそう思った。

二人は空を仰ぐ。
淡い闇が、目まぐるしく騒ぎ回っている薄霧と共に、天から降って来ている。
地に這い蹲う深い闇は、まるで何かに未練があるかの様に、ずっとずっと二人の影に寄り添っていた。



◆◆



時は僅かに遡る。
水浴びをする筈だった青年はバンダナで双眸を覆い、黙したまま剣を握っていた。
女がカナヅチだと忘れていた青年だったが、女の曇った表情を見てそれを思い出したのだ。
やがて暫しの無駄話の後、青年は女を休ませ、朝には西へ行くつもりだという旨を伝え、修行をする事にした。
元はと言えば、片目の喪失を補える様にする為に此所へ来たのだ。
何時までも遊んではいられない。陽が昇れば、何かと複数行動は目立ってしまう。
故に今、青年は一人で剣を握っている、という訳である。

(もっともっと、強くならないと)
青年は滝壺の浅瀬に立ち、紫を基調とした奇抜な色彩を放つ魔剣を強く握っていた。
辺りには薄霧が立ち込めていた。青白く滲んだ世界は、時折月光を浴びて銀色に輝いている。
ずっとこうして立っていたのだろうか、青年の全身には至るところに水の珠が光っていた。
飽和した水分が弾け、束になり針金の如く尖りしなった金髪を滑る。
(片目を補うんじゃなく、片目が最初から無かったくらいに思わないと)
グロテスクな魔剣の表面――表皮と言った方がずっと適切なのかも知れない――は、
青年の呼吸とシンクロし、絢爛な薄霧を貪りつつ、規則的に蠢いていた。
(油断なんてあっちゃいけない)
両目をゆっくりと閉じ、深呼吸。息を吸い、ゆっくりと吐いた後、青年は精神を統一させた。
夜空を映し揺れる水面に、前髪から飛び下りた宝石が還る。刹那の王冠は、彼方に座る双月を歪めた。
(俺がイレーヌさんを守らなきゃいけないんだから)
やがて、周りの音が消失し、鼓動の音だけがやたらと煩く響き出す。
世界は尽く真っ暗で、青年の双眸は何も映さない。何かが有る筈なのに、何も、そこには無い。
虚無。それは本来畏怖の対象であるべきものだが、しかし妙な安心感を青年に与えた。
(そうさ、イレーヌさんは俺が守る。絶対に)
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 22:36:12 ID:W1DlnNQuO
支援3
くすんだ色の水面に精神がぴたりと張り付く幻想を見る。到底気持ちが良いものではない。
ゆっくりと手を底に伸ばすと、黒い水面に同心円状の漆黒の波が広がった。
指が何かに触れた。水底に何かが居る。
掴んで引き上げてみると、随分とごつくてぼろぼろになった、冷えた肉の塊だった。
(狂ったものを直す道を、正解を二人で探すんだ)
ふと、ゆらゆらと僅かな暖かさを右手甲に感じる。
淡い光がそこにあるのだと、青年は見る事が不可能にも関わらず確信出来た。
安心と畏怖が交ざり合った感覚に新鮮さを感じつつ、その不思議な暖かさを触る。
“生”という物理的塊があるとすれば、きっとこの歪な何かなのだろうと青年は思った。
闇の中に小さな炎が立ち上ぼる。青年は静かに剣を振りかぶった。
空気中を右往左往する蒸気が剣の軌跡に吸い込まれ、魔術師に隠されたかの様に不自然に消える。
蠢く剣の表面にも、一切の水分は存在していない。
滝壺を吹き抜ける緩やかな風は、青年の剣が生む凄まじい熱気に依るものだ。
魔剣は、何時の間にか炎の宝玉によって邪悪な熱剣へと変貌を遂げていた。
青年は剣を振りかざしたまま息を吐く。瞬間、軋んだ音を放っていた炎の魔剣が……消えた。
マジックではない。青年は単に勢い良く剣を振り下ろしただけなのだから。
しかし素人の第三者がそれを目撃したとするならば、先ず間違なく息を飲んだ事だろう。
剣を視認する事は愚か、剣を振り下ろした音を耳に入れる事すら叶わないのだから。
青年の立つ浅瀬の水面は、剣を振り下ろしたにも関わらずぴくりとも反応しない。

しかし二秒後、文字通りに水が割れる。しかしそれは“水を斬ったのではない”。
先に割れたと言ったが、語弊があるかも知れない。割れたと言うよりは……そう、消えた。
青年は一瞬の内に、剣の通るだろう道筋にある水を、熱を込めた剣圧で鋭く蒸発させたのだ。
何と、何と恐ろしく柔軟で力強い剣なのだろう。
青年は知る事はないが、力を引き出し肉体と精神の限界を突破する魔石エクスフィアと、
マグマの如く沸くマナを秘めた、灼熱のセンチュリオン、イグニスのコアがそれを可能としたのだ。
そして要因はもう一つ。

青年は、“敢えて最初から全盲での特訓に望んだ”。

敢えて五感の内一つの封印という過多なリスクを負う事で、
他の潜在能力の底上げ(実はその大半がエクスフィアによる効果だが)に成功したのだ。
230名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 22:43:02 ID:u9IL23hh0
支援
231名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 22:50:33 ID:W1DlnNQuO
支援4
青年は剣を再び構え、灼熱の闘気を練った。
生まれた凄まじい熱に、空気は尻尾を巻き火花を迸らせながら逃げる。
次の瞬間、まるで何かに誘われている様に滑らか且つ華麗な動きで、青年は浅瀬を舞った。
足で蹴り上げた石を更に突き上げ、しなやかな動きで剣を振り下ろし噛み砕く―――虎牙破斬。
空気に散った水の飛沫を広げた闘気で感知し、体を捩じらせつつ斬撃に巻き込む―――断空剣。
熱風の刃で霧状になった水を、練った魔力を解放する事で焼失させる―――ボルカニックレイジ。
着地と同時に、頭上から舞い落ちる木の葉を炎柱で焼き尽くす―――屠龍閃。
流れる様な動きで、生まれた灰を正確に蹴り上げ、敵を天に墜とす―――飛燕連脚。
微塵になった灰を、着地地点の水と共に焼き尽くすべく急降下―――熱波旋風陣。

目にも止まらぬ連撃を終え、青年は大きく息を吐こうとした。
が、まるでそれを待ち構えていたかの様に、背後から刺客が飛来する。
空気の流れと僅かな敵意を察知し、青年は口元を僅かに歪ませ、魔剣を地と水平に払った。
確かにバンダナで瞳は塞がっているが、青年の耳と第六感は刺客の位置を正確に捉えていたのだ。
無論、充分な精神統一が成せる業。実戦で使用可能なのかは定かではない。

青年は腰を僅かに下げ、静かに身体を精神に任せる。
飛来した飛礫が間合に入ると同時に振り返り、神速の剣線に依る空気摩擦から炎を放つ―――魔王炎撃波。
斜め右頭上から現れた木片へと炎舞の連劇を見舞う―――空牙昇竜脚。
砕け散った木のヴェールの向こう側から現れた巨大な氷塊へ、着地と同時に炎弾を飛ばす―――ファイアボール。

凄まじい攻撃を決めた青年だが、着地と同時に顔を強張らせる。
余りにも氷塊が巨大過ぎて破壊仕切れなかったのだ。
しかし青年は冷静に剣から左手を放し、虚空に翳す。
拳から迸る白光。次の瞬間、遠く離れ炎に包まれていた筈の氷塊は、青年の手中に収まっていた。
灼熱の闘気は金色に輝き、掌に収束する。
黄金の光線は氷塊の内部を乱反射し、さながらプリズムの様に輝かせた。
そうして、輝く氷塊は乾いた音を上げつつ解体され、四方に飛び散る―――技の名は、灼光拳。
輝く氷雨に身体を預け、青年は溜息を吐いた。
……こんなんじゃ駄目だ。到底敵から彼女を守れない。もっと、もっと強くならないと。

「お疲れ様、スタン君」

小さめの拍手と共に、硝子の様に透き通った声が青年の耳に届いた。
青年は肩を竦め、ゆっくりと息を吐く。
「はぁ……イレーヌさんも人が悪いですよ。氷が飛んで来るなんて聞いてないです」
青年は蠢く魔剣を腰に納めると、笑いながらバンダナを上にずらした。
片方が空洞な目と眩しい笑顔とは、酷く対照的だったが、女はにっこりと笑ってみせた。
肩を竦めた青年を見つつ口に手を当て、小悪魔の様な笑みを浮かべる。
「あら、不測の事態にも冷静に対処出来るのが、ナイト様だと思ったのだけれど?」
「ナイトだなんて……よして下さいよ。
 というかあの氷、ちょっぴり本気だった気がするんですけど、どうなんですかイレーヌさん?」
青年は長く伸びた金髪を左手でくしゃりと握り、照れ隠しをする様に右手をひらひらと動かす。
しかし成程正論だな、と思う。いや、ナイト様の部分ではなく、不測の事態〜の部分がだ。
青年はふわりと伸びた髪を人差し指で遊びつつ、目前の女を見る。ふふん、としたり顔。
「……頼りにしてるんだから」
やれやれ、予告なく本気で氷を投げられた件は流されたな、と青年は苦笑を浮かべる。
女の柔らかな微笑には、何もかもが無力。形無しというものだ。
「いやぁ、はは。……照れますよ?」
「別に照れてもいいのよ?」
ああ、こんな日常がずっと続けばいいのに。いや、違うか。続けるんだ。
その為にはやっぱり、今よりも更に強くならないと。もっと力をつけないと。
そうじゃなきゃ――考えるのも嫌だけど――イレーヌさんが死んでしまうかもしれない。
そんなのは考えられない。イレーヌさんが、彼女が死ぬなんて。
一度守れなかった、だから二度は無い。もう沢山だ。絶対にあんな想いはしたくない。
イレーヌさんが死んだらもう何も見えなくなるんだ、きっと。
…。
……。
………。
…………。
……………?
………………あれ? いや、待てよ……? それって、何か、何かが、おかしくないか?

「つゥッ……!」

視界が急激に歪む。足元が揺れ、全身に衝撃と冷たさを感じた。
ずきりと、まるで栗の毬が頭の奥深くに埋まってしまったかの様な、鈍く鋭い痛みが全身を襲う。
右手の甲が岩漿を垂らされたかの様に熱い。激痛に脳味噌が蕩けてしまいそうだ。
途切れ途切れの会話が、白と黒の砂嵐の奥で聞こえる。
何だろう。何かを、思い出そうとしている、のか?

《そう言えばリーネの村の事は、あまり考えてなかったな……》
それはつまり、俺が完全に記憶を亡くしてしまったという訳で。
つまり、俺は知らぬ内にスタンじゃなくなってるっていう訳で。
(おいおい)
ああ、誰だっけ。
この台詞を言った奴が思い出せない。やたらと肉体馬鹿だったような記憶だけがある。
駄目だ。思い出せない。
【忘れてた訳*ゃないけど。心配な**大事なの*当然だ*ど】
おかしいな。俺が言った台詞の筈なのに、何処かに違和感を感じてしまう。なんでだろう?
脳内で音声は再生されるのに、まるで別人が言っているみたいだ。なんでだろう?
〈何*ろう……*っとこ*……〉
俺がたとえ幾らスタン=エルロンから剥離しても、身体はスタン=エルロンのものだし、
客観視された場合も、俺は矢張りスタン=エルロンに過ぎないと思う。
それに、俺自身も何者かを問われたらスタン=エルロンだと答えるだろう。是非は兎も角。
『そ*か……分かっ*ぞ。リーネの事をあま*考**かっ*理由』
詰まり俺はスタン=エルロンの呪縛からは逃れられない、そういう事だ。
だから。だから根底までは喪わない、今までそう思ってた。
でも、今覚えたこの違和感。俺と俺の意思が、まるで断層みたいに食い違ってる。
おかしな話だよな。俺は俺なのに、俺は俺と意見を違えてる。
<俺**っては***も、それ以外*……全*ひっ**めて、**だか*だ>
……。
……ああ、そうか。だからか。これが引っ掛かってたんだな。漸く解けた。
これがあのスタンと俺との決定的な違い。
穴ボコで詳しくは思い出せないけれど、あのスタンは少なくとも世界と個の関係が俺とは違ったんだ。
{*……や**り*り***。こ*****りた*}
でも、解った途端にこれだ。嫌になるよなぁ。
葛藤と記憶を消そうとする俺と、思い出させようとする俺が喧嘩でもしてるのか?
……なぁ、スタン。スタン=エルロン。お前に一つだけ訊いていいかな?
[*******が居*、****を……****]









―――――――世界は、本当に一人よりも重いのか?









剥落した個が奥底で跳ね、産まれた疑問を、部屋を隔てる壁へと投げつける。
スタン=エルロンとしての純粋な問いが、波紋となり精神の水面を揺さぶる。
脳裏に浮かぶは少年剣士。
嘗ての仲間へと剣を向け、強固な愛に笑うリオン=マグナスが、鮮明に浮かんだ。
土色にくすんだ桃色のマントが、洞窟を吹き抜ける風にばさばさと音を立てて翻る。
全身にソーディアンの斬撃を浴び、矢を刺され、迸る鮮血と共に踊るリオン=マグナス。
一人のメイドの為、肉を裂かれ、傷を抉られ、骨を砕かれ。
それでも尚、全てを凍らせる様な哄笑を響かせながら剣を抜く。
そんな壊れたナイトの声が、青年の頭の中を喧しく駆け回った。
ひたに身体を動かすものは、一切の歪みを感じさせない純粋過ぎる愛。

しかしそれ故に、滲み出る純粋な黒い狂気。

『ヒューゴの為なんかじゃない!大切な人を守る為だ!』
そうだ。今なら、今の俺ならそれは解る。解ってしまえる。
だけれど、“本当に俺達の立場は一緒なのだろうか”?
あいつは、マリアンさんをミクトランに人質に取られた。じゃあ俺は?
あいつは、世界よりも一人を選択せざるを得なかった。その理由があった。じゃあ俺は?
あいつにとって、マリアンさんは全てで、生きている意味だった。口実じゃない。じゃあ俺は?
あいつは全てを分かってても、姉と親友に剣を向けた。結末も分かっていた筈なのに。
じゃあ、俺は?
俺は何を解っている? 俺は如何してこうしてる? 俺とリオンの、何が違うんだ?
【大切な人?】
   ....
……大切な人?
俺にとって大切な人って、本当にイレーヌさんだったっけ? 大切、って何だっけ?
本当にそうしたいんだっけ? 何時までそうするんだっけ? 何でそうするんだっけ?
“意味もなく守る事”自体が意味になっているだけなんじゃないのか?
《薄情だな。さて、優しいお姉さん……それでも僕を殺せるかい?》
俺は何の答えを探すんだっけ?
解答だなんて、そんなに都合の良いモノが、落ちていると本気で思ってるんだっけ?
俺って、イレーヌさんの本当の気持ちを知ってるんだっけ?
根底は、本当に一緒? 俺はイレーヌさんを守って如何するんだ?
それで一体何が救えるっていうんだ? そこに何の意味があるんだ?
リオンは元の世界にマリアンさんを戻したかっただけだ。じゃあ俺は?
イレーヌさんを如何したいんだ?
(ナイト気取りか、格好いいね)
もう面倒臭い。何もかもが馬鹿馬鹿しい。
だって考えてもみろよ。こんな事考えて何になるっていうんだ? 正直、時間の無駄だよ。
一つ言える事は、“リオンと俺は違うかも知れない”という可能性だ。
それが何なのかは分からないけれど、きっと決定的な違いがあると思う。
例えあったとしても、それは驚く程些細なものなのだろうけど。
けれど、絶対に同じじゃあない、と、思う。似ているけれど、どこかが違うんだ。
まるで実像と虚像の様な……俺達はそんな関係なんだ。きっと。
{僕は殺せる。大切なものを守るためならば、たとえ親でも兄弟でも、だ!}
ん、待てよ……?
考えてみれば、俺は如何してリオンに“お前なら分かってくれるよな?”って言ったんだったっけ?
無意識に同じだと思ったから? それとも仲間が欲しかったから?
リオンに同意を求めたって事は、暗に自分はリオンと同じだと思っていたって事だ。
だけど、思えば違和感は最初からあった。でも、それが何なのかは解らなかった。
同情が欲しかったのだろうか?
リオンと会った時嬉しさがあったのは、話をしてみる気分になったのは、だからかもしれない。
でもそうすると、これはもしかしたら、ただの模倣で―――……、

「……ん! …タ…くん、スタン君!」

青年が目を覚ますと、そこはいつも通りの正常な世界が広がっていた。
青年は懸命に自らの名を呼ぶ女の頬へと、ゆっくり手を伸ばす。
ほんのりと暖かな頬は、小さな弾力を以て青年の掌を受け止めた。
「……大丈夫ですよ。ちょっと立眩みがしただけです」
苦笑と共に、青年は応える。折り重なる様に茂った草木がざわざわと風に戦いだ。
「そうなの?」
女が見る目前の川は、何かに急かされているかの様に、沢山の泡を忙しなく産んでいる。
「そうですよ」
青年が見る遥か彼方の双月は、ぽつりと何処か寂しげで、煌々と青白く構えていた。



◆◆◆



反吐が出る程不味いパンも、談笑しながらとなれば話はまた別だった。
行儀の善し悪しは置いておくとして、喋りながら摂る食事は矢張り格別というものだ。
どれ程時間が経過しただろうか。
夜明けはその顔をまだ見せてはいなかったが、その予感自体は充分にある。
青年と女は、とてもそこが戦場とは思えぬ様な微笑みを零し、固いパンを囓っていた。

「……ね! 臭いですよねー! ……ところでイレーヌさん、ソレは?」
青年は右手に水が半分程入ったボトルを持ったまま、女が両手で持つ薬瓶を指差した。
中には薬と思わしき物体が三つ。
そう言えば確認してない支給品があと一つあったな、と青年は思う。
「これ? うーん、何かしら?」
女は首を小さく傾げ、青年が中途半端に掲げたボトルに目線を流した。
「支給品袋に入って……って、そう言えば説明書があるんだったわね。忘れてたわ」
青年が持っているボトルの中の水は揺れ、複雑な曲線を描いている。
暗闇をぐにゃあと捩じ曲げながら、水面はやがて落ち着きを取り戻した。
それを見届けた女は青年に背を向け、サックの中を漁りだす。
やがて見つかった四つ折りの羊皮紙を広げると、女は正面を向き食い入る様に文字を眺めた。

「何て書いてあります?」

僅かな静寂を破壊したのは、青年のその問いだ。
女は目線を変えぬまま、小さく咳払いをして応じる。
「“ちゅうわざい”。……あぁ、あれね」
首を伸ばし懸命に説明書を読もうと試みる青年だったが、
女は説明書を四つ折りにしてサックに戻してしまった。
青年は僅かに頬を膨らましたが、直ぐに気を取り直し感情を垂下する。
「“ちゅうわざい”?」
青年は僅かに上げた腰を下ろし、口からぽつりとそう零す。
女には聞き覚えがある様だったが、青年にはまるでなかったからだ。
鸚鵡返しにされた意味の無い言葉に、けれども女はこくりと頷く。
「ええ、私は詳しくは分からないのだけれど……スタン君、名前だけでも知らない?」
右手でエンボス加工が施された鼈甲色の薬瓶を弄りつつ、女は首を右に傾げた。
からん、と薬瓶が乾いた音を上げる。無機質だが心地良い音だった。
青年は首を小さく左右に振る。そんなものは知らない。俺の記憶には無い筈だ、と。
すると女は意外だ、と言わんばかりに目をぱちくりとさせ、口を開いた。
「あら、知らないのね。
 カルバレイスのバルックには会ったって訊いてたんだけど、ジャンクランドには寄ってない?」
青年は首を振り、いいえ、と応えた。女は髪を耳に掛けながら、話を続ける。
「そう? 確かあそこの有毒ガスに利く“ちゅうわざい”ね。……ホラ」
すっと差し出された薬瓶を、青年は両手で受け取った。中々如何して、意外に重い。
ひんやりとした薬瓶の温度が、グローブを経て掌へと伝わった。
「……。“じゃんくらんど”に“ちゅうわざい”……」

おかしい、と青年は思った。何故なら何処かで確かに聞いた事がある単語の筈なのだ。
にも関わらず、如何しても思い出せないからだ。
バルックとは誰だったのか。カルバレイスは分かっても、分からぬジャンクランドの存在。
同時に、まるで思い出せぬちゅうわざいという薬の存在。
青年の脳内を、もやもやと立ち込める白い濃霧。
それは掴もうとすればする程辺り一面に拡散し、青年を嘲笑うかの如く掌から溢れ出す。
何時かはそうして、全てを喪ってしまうのだろうか。
記憶も、感情も、心も、大切なものも時間も家族も仲間も全部全部、全部。……何もかもを。
これを恐怖と言わず何と形容しようか。
そう考えている内にも、脳を着実に蝕む濃霧。漠然と、しかし確実に何かを喪ってゆくという現実に青年は震えた。
……嫌だ。こんなの望んでない。
こんなの俺は、スタン=エルロンは、望んでない……のにッ……!

「スタン君?」

心配そうに青年の顔を覗き込む女の声が、青年をはっとさせた。
大きな息を、一つ。
身体に溜まっていた白濁とした霧を全て出し切る勢いで吐く。
青年は頬を伝う汗を掌で拭い、苦笑を浮かべながら目前で両手をひらひらと泳がせた。
「あ。……あー、いやぁ、何でも、ない、ですよ?」
孰れにせよ、良くない想像をしないに越した事はないのだ。それだけは間違ない。
「本当に?」
女の不安気な表情へ満面の笑みを向け、こくりと頷く。
ぎこちなさが皆無の、素晴らしい笑みだと自己評価。
愛想笑いも随分と板についたものだ、と思う。
……とことん嫌な人間だよな、お前はさぁ。
「はい。分からないものは幾ら考えても仕方無いですしね」
体温ですっかり温くなってしまった薬瓶を、青年はゆっくりと女に手渡した。
女は受け取った瓶をサックの口に放る。流れる様な無駄のない作業だった。
作業を終えた女は、目前の一輪の花を人指し指で弾く。
萎び、草臥れた蕾から結露した雫が落ちた。
「そう、ね」
女はそう呟くと、瓶から花を取り出す。
瓶の中の水は僅かに濁っていて、青年は眉間に皺を寄せた。
女は空を仰いだ。
淡いネイビーブルーは星のドレスを身に纏い、夜明けが直ぐそこにあるのだと歌っていた。
青年は、右手を覆う手袋の下に装着されたエクスフィアを、手袋の上から左手で撫でる。
僅かに入った罅の感触を確かめた後、青年は手と手を離し口を開いた。
「ところでイレーヌさん、それよ  り 、     も―――」

風が、吹いた。余りにも突然過ぎる旋風だった。

その風は飛び散る鮮血の様に生温く、酷く不快な感触を二人の肌に擦り付けていった。
蒲公英の綿毛の様に柔らかで脆い女の微笑は、細く長い髪の毛によって乱暴に崩されてゆく。
乱れに乱れた紫の間から覗く目は、酷く歪な形に切り取られていた。
青年は揉上げを耳に掛けながら立ち上がり、腰に下げた魔剣に音も無く手を宛行う。
女は乱れた前髪を手櫛で梳かし、何事かと青年を見上げた。
瞬間、眉間に僅かに皺を寄せ、瞬きを二、三回。
“青年の朗らかな笑みが消えている”。
その事実は、この生温く不快な旋風と共に到来した、避けようのない異常事態を意味していた。
「スタン君」
女は馬鹿みたいに青年の名を紡ぐ事しか出来ず、ただただ困惑の表情を浮かべるのみ。
一方青年は既に女を見ていない。暗闇の奥、茂みの向こう側をじいと食い入る様に見ている。
女は青年が見ている方向を見なかった。見る事が出来なかった。
張り詰めた空気が、一向にそれを許そうとはしなかったし、
仮にそれが許されたとしても、振り向く勇気は到底無かったからだ。
冷たく徹した青年の瞳は、何時もの炎の様な暖かさや柔らかな光は無く、まるで氷のよう。
それ故に女は後込みし、ごくりと固く温い唾を飲み込んだ。
毛穴から、嫌な汗がじわりと染み出てくるのが手に取る様に分かる。非常に不快だ。
闇の奥を漠然と見つめる青年は、女を一瞥すると瞳を閉じて溜息を一つ吐いた。

「……出て来い」
「え?」
その口から低く呟かれた言葉は、女にとって全く予想外の言葉だった。
故に女の口を突いて出るのは、間の抜け切った不安定な一文字。
“出て来い”。
そもそもそれを誰に言ったのか、何故そんな言葉が出る必要があったのか。
それすらも理解出来ず、女は目を丸くした。……いや、想像する事は出来ただろうが。
しかし、想像するまでもなかったのだ。
何故ならば、たかだか男が口にしたその四文字の意味を女が理解する前に、青年に意味を問う前に。

「……………………………………………………!!?」

青年は女の目前から、一瞬にして忽然と姿を消してしまったからだ。
女は半開きになった口を閉じる事も忘れ、目を皿の様にし、更に大きく見開く。
同時に気付くのは、飽和して弾けた凄まじい殺気。まるで重く黒く澱んだ煙の様な、殺気。
女の全身の毛は余す事無く総毛立ち、胸は強い圧迫感に襲われた。
燃え上がる闘気と魔力が螺旋を描きつつ拮抗。結果強い突風と化し、水面と地を激しく叩く。
急激に巻き上がる砂埃。女は頭を抱え、目をぎゅうと強く閉じた。……一体、今何が起こってるの?

同刻、風に髪を弄ばれる女の背後十八メートル先。高速で暗闇を駆ける光が、二つ。
光源は二人が装備している、怪しく光る魔石エクスフィアだ。
両者とも肉体の限界を突破しているが為に、光は点ではなく複雑な弧を描く曲線となり叢を走る。
互いが間合いに近付くであろう、1フラット以下の刹那。
息を吐くよりも、瞬きよりもずっと短いその瞬間を計算し、二人は殺気にぎらつく刃を翻す。
星屑と闇夜は固唾を飲んで彼等を見守っていた。
「D……ッ」
「閃空……ッ」
((間合いまで残り3メートル、2、1……))
血塗れた斧、脈打つ魔剣。
枯葉と砂埃を巻き上げる旋風、弾かれる露。
殺気が叢を縫う様に走り、魔力は虚空を紅に焦がす。
漆黒の闇に紛れた剣線が、鋭く虚空を斬り裂かんと、一気に駆け抜ける。
((0ッ!))
同時に膨れ上がる、空を絶つ緑色の晶力、燃え上がる緋色と大地を震撼させる茶色のマナ。
青年は魔剣を下段から空へと突き上げ、紫の髪を靡かせる男は巨大な斧を振り下ろす。
強大な力が衝突する様―――――――――――――――――それは正に、“爆発”ッ!

「シュタイン、ハーゲンッ!!」
「裂破ッ!!」

炸裂する互いの技。空を断つ鋭い一閃、地を抉り破壊する、重い一打。
地響きと共に舞い上がる土煙、産声と呼ぶには余りにも大きすぎる、新たに生まれた大地の咆哮。
衝突し悲鳴を上げる力と業。どちらが優れているのかは、この時点では決して計れはしない。
しかし。
(思ったより疾いなァあの青年。
 流石エクスフィアを使ってるだけはある……ってくそッ、見失っちまったか!?)
しかし、初撃の軍配は業を駆使する青年に上がった。
何故ならば男の強大且つ豪快な一打は、当たれば大きいがその分隙が大きい。
対する青年の一撃は、空を舞いつつ敵の背後を取り、素早く斬り付ける技。
それだけでも初撃の優劣は明らかというものだ。
更に男は皮肉にも、自らの技が生む土煙により視界を奪われてしまっていた。
それ故必然的に出来る、如何しようもない一瞬の、しかし確実な隙。
果たして世界を救った英雄、百戦錬磨の青年がそれを見逃す筈があるだろうか?
答えは、言うまでもなく“否”!

「ちッッ」
紫髪を風に靡かせる男は、舌を打ちつつも目玉を動かし、しきりに辺りを伺った。
しかし辺りは砂埃に包囲された上、深い夜、おまけに魔力拮抗の所為で風も強い。
周りを確認するには、コンディションはこれ以上ない程までに最悪だった。
「貰った……!」
青年は直ぐさま男の背後に着地し、魔剣を素早く握り直した。
右足を僅かに下げそれを軸にする用意をし、刃を一回転させ、下から一気に剣を持ち上げる。
強襲する邪剣、灯る眩い光。血を求め蠢く刃。
金色の焔を纏いし紅の一閃が、天を焦がさんと双月へと起ち昇る。
だがしかしその技は大振り、それも突き上げ薙払いの一太刀。
身体の大半が無防備に晒されるそのモーションは、リスクが余りにも大きい。
もしも反撃をされれば、如何に青年と言えどひとたまりもないだろう。
何せ相手はエクスフィアを装備し(スタン本人こそ知らないが)、斧を振り回し大地を抉る人間だ。

しかし青年は理解していた。
男が斧を振り抜く事は絶対に出来ないのだと、理解していた。
ただでさえ地を破壊する斧の一撃、斧が大地にめり込まない筈がないからだ。
故に刃による反撃は愚か、斧は両手持ちの為に他の反撃も出来ない。そう青年は踏んでいた。
「ふん、ぬゥッ……!」
しかし、だからとて易々と背後を斬られる男ではない。
彼とて軍人、ロイドと渡り合える男、デクス。肩書きはヴァンガード工作班リーダー。
故に青年が生み出した立ち上ぼる焔の剣閃は、空振りに終わる。

「んな、」

目を見開く青年。ぽかん、と開いた口。
(冗談! あの体制で避けられる筈がない! だが、)
そう、だが事実手応えがない。即ち、敵が避けた事は確実。
ならば如何にして男は攻撃を避けたのか?
答えは多少のアウトローはあれど、大方単純明快だ。
凄まじい熱が生む光を目敏く察した男は、青年が刃を振るう瞬間に合わせ、
膝を曲げ勢い良く大地を蹴り上げた。たった、たったそれだけなのだ。
勿論、両手は大地にめり込む斧の柄を確りと掴んでいる。
即ち大地に刺さった斧を中心に、男、デクスは空中を縦に回転し刃を回避したのだ。
「何ィ……!?」
青年は剣を天に突き上げたまま、驚嘆の表情を男に向けた。“型”がない。自由過ぎる!
苦虫を噛み潰した様な表情を覗かせる青年。男はにたぁ、と嫌な笑みを浮かべた。

男の自由奔放さの最たる原因は、嘗てセンチュリオン・ソルムのコアを使用していた事に拠るだろう。
工作班代表として、様々な流派と剣技を学んで来た。その賜物がロイドの剣技のトレースだ。
今の一撃を避けられたのも、咄嗟に“裂空斬”のモーションを思い出したからに他ならない。

「この俺を背後からの一撃で殺ろうなんてなァ……!」
天に立ち、大地に頭を向ける男は不敵に笑った。俺を倒すのは一万“光年”早いぞ、と。
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 00:14:57 ID:be6ziqG40
ここまで代理投下終了です。
続きがwktk過ぎて仕方がない……!
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 00:29:42 ID:hHkFzWIqO
代理投下乙!
続きが気になりすぎる…!明日が楽しみだ
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 04:53:15 ID:ML6KMKlSO
おお…待ちに待った新作が遂に…!
投下・代理投下乙です!
おま、これ…生殺しってレベルでは…!!
明日ってことは、続きは今日の晩かな? 楽しみだ。そわそわするよ…。
245名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 14:15:25 ID:EYUd3xqkO
やっと新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!!

スタン・・・!続きwktkです
246瞬間キャラメルエクスタシー -Looking-glass Insects-:2009/07/08(水) 19:36:59 ID:TaKIDRh0O
お待たせしました、私情でSS投下をブツ切りにした挙句、随分投下が遅くなってすみません。
8時から続きを投下します。出来れば支援をお願いします。
青年は顔を強張らせた。縦に半回転した敵、中途半端に刺さった斧、両手に掴まれた柄。
堪らず第六感が脳内で警鐘を鳴らす。“自分はこの動きによく似た技を知っている”。
(早く逃げろ、何か、何かがヤバいぞ……ッ!)
エクスフィアが闇夜に煌めき、男の筋肉が盛り上がる。
円の頂点、即ち地面から丁度九十度地点に達した男は、斧を一気に“空に向かって振り下ろした”。
「甘いん、ならぉぁァッ!!」
遠心力と梃子の原理を利用しての凄まじい一撃が放たれる。
引き抜かれた斧は、岩石と共に弧を描いて青年を襲う。
白銀の月光を反射するその刃は、正に弧月。正に月閃。

上がる派手な金属音、金色のスパァクリング。砕けた白い合金が月夜に煌めく。
「ちイィッ……!」
予想外の一手に青年は慌ててバックステップをしたが、胸当ての一部を破壊され舌を打った。
衝撃が鎧から身体を突き抜け、背筋をびりびりと揺らす。……嘘だろ、鎧に斧が掠っただけなのにッ!
飛び散る額の冷や汗。舌打ちをしたのはいいものの、反応があと一秒遅れていたら死んでいた。
男の太刀筋は、大味だがそれ程の破壊力。……味な真似を。
だが、と青年は空かさず地面を蹴り上げた。男は今、斧を振り抜いてしまっている。
裂空斬の弱点はここだ。自分の技だ、そこはよく分かってる。
空中で背後を向けている今、着地するまでは明らかな隙が出る。
即ち、この距離なら背後、若しくは横から追  撃、可の、  う―――

「爪竜ッ、」

―――何、だ、 あれ、は……?
魔剣を振り抜こうとするその瞬間、ふと目に止まる闇の奥。
月光を浴びて淡く輝く拳大の何かが、青年の目にはやけにはっきりと映った。
そしてその何かは背を向ける男の右手から見えたもので、
目が亡い方向、それは即ち死角から突然現れたもの。
故に青年はその物体に注目せざるを得なかった。

集中力を欠き僅かに焦った所為か、はたまたまだ修行が足りない為なのか、
右から迫るそれに気付けなかった。
その事実は青年を僅かにだが更に焦らせ、苛立たせた。
(何かの破片? いや刃か? それとも爆弾? いやどれも違うな、何だよアレ?
 ……面倒臭い!)
単純な疑問。しかしその刹那の思考が、青年の集中力を更に一瞬弱める。
集中力の欠如は焦躁へと繋がり、焦躁は油断を生み出す。
次の瞬間、青年は瞳孔を目一杯開いていた。
一瞬にして“目前にそれが飛んできていた”からだ。
「〜〜〜ッ!?」
目前に物体が迫ってきた際、人という生物は半ば反射的にそれを避けようと、又は弾こうと試みる。
するとその瞬間、確実に人の意識は空間全体ではなく、その物体のみに注がれてしまう。
それは肉体を鍛え上げた戦士にも例外無く言える事だ。
それが人間の反射、本能的行動である以上は決して逃れる事は出来ない。
故に青年は剣から左手を離し、投擲された仮面をキャッチしてしまう。

それを確認した男は、青年の視界の外にて表情のみで笑った。
そう、全ては囮だった。男が背を見せたのは誘い、投擲されたロイドの仮面は布石。
攻撃目的では、ない……!
(ミスリード――――――――――!?)
キャッチした物体の正体は悪趣味な仮面だと認識した時、青年はその解まで漸く至った。
同時に拙いと思い意識と目線を無理矢理外へと向けるが、
無論、敵がそれをわざわざ御丁寧に待ってくれている筈はない。
男は仮面を拾い投擲した後、直ぐさま身体を捻り着地、金髪の青年へと駆けていたのだ。

「D、シュトラァァァァァルッッッ!!!」
迫る白刃。翻る青いマント。彼方で微かに上がる女の悲鳴。青年の右手が一際鈍く輝いた。
「ご、ンのオォォ……!」
悪態を吐きつつも、咄嗟に魔剣の腹で受け止める斧の重い一撃。
飛び散る魔力と火花に、青年は堪らず息を吐く。
態勢はお世辞にも良いとは言えず、更に攻撃を受けた魔剣は右手だけで支えている。
最悪この上ない、と青年は目を細めた。同時に口から零れ落ちる自嘲。
嗚呼、最悪過ぎて笑えるな、これは。
青年は火花を散らし拮抗する刃を一瞥すると、歯を食い縛った。しかし何て重い一撃だ、と。
右手の関節と骨が軋み、電流の如く鋭い痛みが走る。
全身から滲み出る生温い汗。筋肉の繊維が、腕の内部でぶちりと弾ける不快な音。
青年とてどちらかと言えばパワーファイターだが、根っからのそれではない。
多種多様な技を駆使しつつ、接近戦は力で切り抜けるタイプ……要するにパワーへ僅かに偏ったバランス型だ。
対して男は根っからのパワーファイター。正直に言って、接近戦は分が悪過ぎると青年は踏んでいた。
目前の男はそれを知ってか知らずか、奇妙な笑い声を上げながら斧を一旦離す。
そして一気に……距離を詰めた。
「んなッ!!?」
そして放たれる第二撃、力に任せた強力な横薙ぎ、同心円状に弾ける衝撃波。
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:15:07 ID:paq5WAgY0
支援!
「ッ剛招来!」
それは助走を味方に付けた重い一閃。
咄嗟に筋力強化を施したところで、万に一つ片手で耐えられる筈がない。
無論、青年もそれは痛い程に理解していたが、敢えて剣を翻し、刃の腹で一撃を受けた。
同時に、思い切り筋力強化をした両足で大地を後ろに蹴り上げる。
“青年は自分から後ろに吹き飛んだ”のだ。
どうせ吹き飛ばされるなら、衝撃を少しでも吸収した方が得策というもの。
咄嗟の判断で、青年は凄まじい衝撃を緩和しようと試みたのだ。
しかし、それでも馬鹿に出来ないのがこの男の一撃。青年は骨の軋みに僅かに唸る。
……剛招来を施してこれか……!
「まだまだァッ!」
まるで突風に吹き飛ばされるゴミの様に、地面を跳ね進む青年。
その見窄らしい背へと、男は奇妙な動きをしつつも力強く叫んだ。
「ッとと……!」
先程の一撃の為、斧の遠心力に身体を持っていかれるが、なんのこの程度。
直ぐに男は足を踏ん張り態勢を整え、大地を蹴り上げた。

一方の青年は、回転し薄汚く乱れた景色の中、冷静に敵の方向を計っていた。
青年の右手には確りと魔剣ネビリムが、左手には悪趣味極まったロイドの仮面が握られている。
十五メートル程身体を弄ばれ、地面に激しく身体を擦られる青年。
上がった濃い土埃が身体に滲む脂汗に纏り付き、眉を顰める。
筋力強化により身体の硬度を上げ、更に受け身を取ってはいるものの、
こう何時までも不快な思いはしたくないというもの。
故に青年は意を決し、転がりつつも魔剣の刃を大地に向け、素早く突き出した。
禍々しく血を求める魔剣は、求めるであろう人肉ではなく大地に深く刺さり、スパイクの役割を青年に差し出す。
裂ける大地は、耳を劈く様な鋭い悲鳴と臓物代わりの小石と土を吐き出す。
立ち込める砂埃、上がる摩擦による火花。
青年は魔剣を軸に地に着地し、流れる様な動きで左手に持つ仮面を正面に放った。

(……何だァ!?)
斧を地に引き摺り走る男は、眉間に皺を寄せて目前を睨んだ。
立ち込める黄塵のベェル、その向こう側から突如現れた何か。
それは、逃げる餌を追う男にとっては余りにも突然過ぎる静止と異変、反撃。
斧は剣と違い、振りかぶらなければ攻撃に出る事が出来ない。それは常識だ。
故に未だ斧を振りかぶってすらいない男にとって、この仮面は対処に困る実に嫌らしい攻撃だった。

相対する青年は、続け様に晶術の詠唱を始める。
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:26:17 ID:n0JFzY5NO
支援
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:28:10 ID:paq5WAgY0
支援
追い討ちを掛けるならば初級でも充分過ぎる、更に詠唱は一瞬だ。
一方の男は、飛来する仮面をサイドステップで避け、目線を急いで正面に戻す。
迸る紅の光と、滾る魔力を視界の端で感じたからだ。
前方二メートル先、高速で迫る炎弾。男は眉間に皺を寄せ、咄嗟に左手で顔面と首を覆い隠す。
回避は不可能、しかし初級術ならば焦る必要もない、という判断だった。

瞬間、弾ける魔力、巻き起こる爆発、吹き荒ぶ爆風。
規模こそ小さいものの、炎弾が放つ金色の閃光と焦げの匂い、黒煙は目眩ましにするには充分だ。
男は斧を強く握り、足を軽く踏み出したまま獲物を構える。ちきり、と柄が音を上げた。
ぎらつく鷹の様な目線は、目まぐるしく動き四方の黒煙の様子を監視している。
男は頬を伝う汗を肩で拭い、赤黒く焦げた左手の甲を一瞥し、不敵に笑った。
……さぁ青年、何処からでも来い。
「…………………………………………………………………………………………!!!」
不意に右側の黒煙の動きが微妙に早くなる。気流の変化だ。
男はこの成りでもヴァンガードの一員、それもリーダー格。
仮にもその様な人間がその変化を見逃すだろうか? 否、見逃す筈が無い。
男の表情に深い影が落ちた。
腕を弦の様に構え、斧を静かに振りかぶる。びきびきと筋肉の筋、一本一本が悲鳴を上げる。
最早、二人の弦が弾かれる瞬間には合図も何も必要はなかった。

瞬間にも満たぬ刹那、目にも止まらぬ一閃が虚空を走り抜ける。
真空の刃に黒煙は切り裂かれ、膨れ上がったマナと晶力に吹き飛ばされた。
焔と焔が激突し合い、炎柱が夜空に輝く双月を焦がさんと、天高く構える北極星へと掛け上がる。

「……強いな、青年」
煙が晴れた先、静寂を乗せた闇夜に抱かれた叢の中。
紫の髪を風に靡かせる男は、力無く笑いそう低く呟いた。
男の脈打つ首筋には、蠢く魔剣の血走った刃が宛行われている。
青年がその気になるならば、男の首を落とすには半秒と必要無いだろう。
男の顎から汗が流れ、魔剣の刃の腹を跳ねる。一寸も動く事を許さない張り詰めた空気。
もしも僅かでも動いてしまったならば、命はないと考えても良いだろう。
「お前もな……」
男と向かい合う片目の青年は、冷たく徹した目線を男に向けそう零す。
その声はよくよく聞かねば分からないが若干震えており、声のトーンは何時もよりも僅かに低い。
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:30:36 ID:hHkFzWIqO
支援
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:31:04 ID:A75EYQPd0
支援
何故なら中腰のまま体制を維持する男が伸ばした腕の先、地面と水平に構えられた斧。
その波の様にうねる刃もまた、青年の首筋に宛行われていたからだ。

震える息、ぴんと張られた糸の様な居心地の悪い空気、互いが放つ鋭い殺気。正に一触即発。
その空気に耐え兼ねたのか、青年と男はほぼ同時に獲物を弾き間合いを取る。
ほっと息吐く間も無く、青年は男へと剣を向け、魔術を唱えながら牽制し口を開いた。

「……さて、用件を言うんだ。速やかにね。
 俺だって、実のとこ出来れば無意味に殺しをしたくはないんだ」
青年は魔剣を目前に翻し、続ける。遠く、水が滝壺にダイブする音が聞こえていた。
「でも。でも、だ。
 流石にこう長い時間監視されてちゃあ、幾ら俺でも痺れを切らしかねない。
 例えば……今さっきみたいに、ね?」
青年がそう言い切ると、空気中を渦巻く殺気がずうと膨れ上がり、二人の髪をふわりと揺らした。
男は苦笑を顔に浮かべ、構えていた斧をだらりと垂らす。
それは即ち、戦いの放棄を意味していた。
青年もそれは理解している。それ故に眉をぴくりと動かす。何故このタイミングで放棄する? と。
青年は魔剣を持つ手を僅かに緩め詠唱を破棄し、男を鋭く睨む。
不意打ちをする気なのか、はたまた単なる馬鹿なのか。それとも……。

「いやいや参った、気配は消していたつもりだったんだけどな?」
「……は?」
男は肩を竦め、やれやれと溜息を吐いてみせた。
青年の怪訝な表情を一瞥すると、男は奇妙な動きをしつつ話を続ける。
「流石は孵化前のセンチュリオンコア持ちといったところだ、青年。
 しかもエクスフィアも使ってる。“まだ気も狂ってないみたいだし”、つまり精神力も高い。
 ……そりゃあ強い筈だなァ」
そう言って気味の悪い笑みを浮かべながら両手を叩く男を、青年は黙したまま凝視する。
逐一癇に触る男だ。けど、“孵化前”って一体何なんだ……?
それに“まだ気も狂ってないみたいだし”、って……?

「しっかし、いきなり斬り掛かってくるとは、驚くじゃないか。いけない子だッ!」
男は前髪を掻き上げ、妙な動きで青年を指差した。青年は顔を顰める。
こう言っちゃあ悪いが、実に、実に気持ち悪い。
「……で、何の用だよ?」
苛立つ声を隠そうともしない青年に、男は慌てて掌を向けて苦笑を浮かべる。
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:33:41 ID:paq5WAgY0
しえん 
「いや待て待て、そんなに構えないでくれ、怖いだろう青年ッ!
 別に青年と殺り合うって訳じゃあないさ!
 タイミングを計ってただけで、ただ尋ねたい事があっただけなんだ!」
「尋ねたい事?」
右足を一歩踏み出しつつ、青年は言葉を繰り返し素早く尋ねる。
対する男は頷きつつ左足を僅かに下げ、地に突き刺さっている斧に手を掛けた。
「そう、つまりだ」
身体を波打つ様に逸らせ、滑らかな動きで左手を前に出す男。
諄い様だが気持ち悪い、と青年は舌を打った。
男はそんな青年を気に掛ける様子もなく続ける。

「俺のアリスちゃん見なかった?」

知らない名だ、と青年は首を傾げる。単に恋人を探していただけだったのか?
逃した獲物の名前とも考えられない事もないが、青年は直ぐにその可能性を考える事を止めた。
男が妙な動きで写真を取り出し、急ににやけだしたからだ。
……うざったい、目障りな事この上ない。正直、今直ぐにでも殺したいくらいだ。
「アリス、ね。ごめん、折角写真も出してくれたみたいだけど、全然知らないなぁ」
青年はけろっとした表情で、さらりとそう述べた。他人の知人など如何でも良い。
男は青年の言葉を耳にするや否や、奇妙な動きを止め肩を落とし、悄気た顔を青年に覗かせた。
その余りにも露骨な動作に青年は、次の放送で“アリス”とやら呼ばれてしまえ、と胸中で呟く。
「そうかァ……。
 アリスちゃんはやっぱり、余りにも格好良過ぎる俺を追いかけているのかも知れないな……。
 罪な漢だ、このデクス様も……お姫様に追いかけさせるなんて……。
 くそッ、だが引き返せばあの熟女と少年に嘘がバレてしまう可能性が高い……!
 ここはやっぱり可能性を考慮して、進むべきなのかッ……!?」
それはない、絶対にな! 青年は胸中でそう叫びつつ、大きな溜息を一つ吐く。
気持ち悪い男だ、本当に。おまけにうんざりする。最悪だ。最早最悪としか言えない。
何が最悪って、こんなふざけた奴が俺と殆ど同等の力を持っている事だ。度し難い!

「……彼女か何かなのか?」
青年は頭を左右に振り、怒りを紛らわす様に適当に思い浮かんだ事を尋ねる。
「俺の愛する人だ!」
即答。青年は眉間を左手で揉む。頭が痛い。
つまり、彼女ではなく愛する人だという事は……まぁ平たく言えばストーカーか。
それもそうだ、と青年は納得する。
こんな男と釣り合う女となれば、相当の変人か超が付く程のドSくらいだろう。
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:38:20 ID:paq5WAgY0
支援
先刻の写真を見る限り、その可能性は限り無くゼロに近いと見ても良い。
無論完全にゼロだとは言い切れないのだが……ま、如何でも良い事だ。
それはそうと、“愛する人”、か。
「愛、ね。……愛」
嘲笑と共に呟かれた言葉。渇き切って皹割れた何かが、蓋から溢れ出す。
「んあン?」
「お前、アリスって奴の何処ら辺を愛してる?」
愛する人を呼び捨てにされた上、自分を見下し吐き捨てられるかの様な声色。
男は拳を強く握り、犬歯を剥き出しにして低く唸った。
「何を言うか青年、決まってるじゃあないか。全部だよッ!」
ふぅん、と青年は口元を歪める。全部、ねぇ。
「愛を謳う割に随分漠然としてるんだな。で? 全部って?
 例えば何処ら辺? 愛する理由とかはあるのか?」
「……例えば、だ? ……そりゃ、青年……」
押し黙る男。斧に掛けていた右手を離し、顎に宛行う。
“愛する理由”。それも改めて問われると、案外難しい問題だった。
しかし、その質問に自分が答えられない事を男は認めなくはなかった。
自分が居る意味は、全てアリスちゃんが為に。
生きる意味は、アリスちゃんそのもの。それらこそが唯一無二の解だ。
何故なら自分はアリスちゃんが居なければ、あの時死んでいた人間なのだから。
アリスちゃんは自分の全てだ。アリスちゃんが言う事は自分の行動に直結する。
アリスちゃんが望むなら、自分は喜んで人を殺そう。喜んで海に身を投げよう。
この世に神は居ない。仮に居たとしても、そいつはアリスちゃんにすら劣る屑だ。
今まで、ずっとそう考えてい。それが間違っているかも知れないと疑いすらしなかった。
そんな自分が初めてブチ当たった巨大な壁。茫漠と天高く聳える、“理由”へのハードル。

“彼女<アリス>を愛する理由とはなんぞや?”

何時までも答えられない自分に歯痒さと底知れぬ怒りを感じ、
男は行き先の分からぬもやもやとした感情を持て余す。

愛、って、そんな、自分はただ、“アリスちゃんが苛められてたから”話をしたくて。
差別なんか嫌いだったし、暴力を振るう奴なんかもっと嫌いだったし。“だから”。
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:44:25 ID:A75EYQPd0
支援
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:45:45 ID:paq5WAgY0
しえん
弱い自分には、彼女と話をする事以外は何一つ出来なかったし。“だから”!
あと、“アリスちゃんに命を救われたから”、決定的な意味になって。
それで、それで。それで……?
「……た……例えば、だな………………それは………………………その…………」
答えられない、か。
青年は胸中で溜息を吐く。同時に、自らにも一つの重大な問題を課した。
“同情”という二文字が回答として浮かんだが、慌てて掻き消す。
そんな言葉、理由になんかなるもんか。
「まぁ、いいよ別に。お前にとっての愛ってのが気になっただけだし、さ」
男は戸惑いつつも返事を飲み込み、自らの胸倉をぎゅうと掴む。
目前の虚ろな瞳が、自らの何もかもを見透かしている気がしてならなかった。
今にも青年に湖底を触られそうな、そんな気さえもがした。

<浅いな>

心臓がびくんと跳ねる。耳元で、確かにそう聞こえた。
慌てて目線をずらすが、勿論隣には誰も居ない。馬鹿な、と思う。
幻聴、しかしはっきりと聞こえたその四文字が水底で谺する。愛する人の顔が、浮かんでは霞んでゆく。
男は遂に考える事を放棄した。だらりと下がった頭を振り、話題を変えようと口を開く。
胸が酷く痛んだ。
「……ところで、そこの洞窟は何故閉まってるんだ青年?」
写真を胸元に滑り込ませ、男は髪を左手で遊ぶ青年へとそう切り出した。
青年は無駄な思考を切り捨て、正しく答えようか否かをしばし考える。
「……。
 ……俺が閉めたからだな」
青年は髪から左手を放し、手汗をパンツで拭きながらそう答えた。
ここで答えを偽っても、大した意味はない。この洞窟を通さない事に変わりはないのだから。
回答を聞いた男は一瞬目を細めるが、直ぐに柔らかな笑み(気持ち悪い笑みとも言う)を浮かべる。
随分とぎこちない笑みだった。
「開けてもいいかな青年? アリスちゃんに会うにはそこを通らないと駄目なんd「駄目だ」
ぴしゃり、と言い切られる言葉。男は眉をぴくりと動かし押し黙る。
殺伐とし、たちまち凍り付く空気。男はゆっくりと息を吸い、じいと青年を見つめた。
変な動きのオプション付きで。
変な動きをされても駄目なものは駄目だ、と青年は首を左右に振る。
「如何しても開けられn「駄目だ」
「アリスちゃんの為d「駄目だって」
「アリスちゃn「駄目」
「アリs「いや駄目だから」
「a「殺すぞお前」

痺れを切らした青年は魔剣に晶力を込め、男へと素早く構えた。
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:48:13 ID:paq5WAgY0
支援 
もううんざり、といった表情だ。
男は首を縦に振り肩を窄めて溜息を吐くと、にやりと嫌な微笑みを青年に向けた。
「そうか。そいつは残念だなァ。が、しかし、まぁつまりが取り敢えずッッッ」
そしてそう呟くと、男は目付きを鋭くし、大地に刺さった斧を勢い良く抜く。
そして凄まじい剣幕で、

「バイバイだ青年!!!」

逃げた。
一目散に、逃げた。
そりゃあもう全力で。

「あぁッ! ま、待て!」
踵を返し走り抜ける男の背に、青年は慌てて叫ぶ。……いや、だってそりゃあ予想外過ぎるって。

男はぴしりと指を伸ばした両手と、すらりと伸びた両足を激しく動かしながら、顔を背後に向ける。
だあぁぁぁぁぁーれが待つものか。馬鹿め!!
ただでさえ厄介な相手、その上青年の後ろで詠唱待機する女まで相手なんかしてられるか!
気付いてないとでも思ったか! ばーかばーか!!
愛だか何だかこのデクス様は知らんが、きっとアリスちゃんに会えば解決する事だ!
結局杞憂なんだよ青年、何も不安になる事などないのだ! フハハハハ!
大方、俺を惑わせる作戦なんだろうが……矢張り温い!
何せ、俺はヴァンガード工作班リーダー、デクス!
そんな甘い罠に引っ掛かる程、俺は人間が出来てないのだよ青年ッ!
俺は一刻も早くアリスちゃんに会いたいんだよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!
「くふふ、ふふふふふ! ふッふふんふふん! 甘い甘ぞォ! 甘過ぎるなァ青年!
 まるでデクス特製フルーツパフェ・ウィズ・チョコレートバナ〜ヌおいしおいしのようにッ!」
何処かで聞き覚えがある台詞。
青年はその妙な既視感を取り敢えず無視し、届かぬと知りながらも突っ走る男に手を伸ばした。
「ちょ、いや、違う! そっちは―――」
「ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁにが違うってえぇェ!?
 何処の世界に待てと言われて待つ奴が居るんだッ!?
 いや居ないね、断じて、あ、断じて居ないッ!」
嬉しそうにそう叫ぶ男。青年は何かを伝えようと口を開くが、男は更に畳み掛ける。
「さあ、今から王子様が迎えに行くからねぇッ!
 待っててね俺の愛しい愛しいアリスちゅわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ん?」
「―――滝壺……………………………………………………………………………………」
男の足を襲う、かくんという気の抜けた感覚。……あれ? 何だっけこれ?
あ? ああ、あれだあれ。足を踏み外した時特有のあれだよな、これは!
ハハッ、俺とした事がおっちょこちょいなんだから☆
だがなぁに、ちょっとした段差を踏み外しただけ………………え、ちょ、滝壺ォ!!?

急速に身体が傾いてゆく。
滝壺に素晴らしいダイブを決めながら、男は自らの足元不注意を激しく呪った。

「……ったく……何なんだよこいつは……」
青年は中途半端に伸びた手を額に当て、頭をゆっくりと左右に振る。
……やれやれ。本当なら頭を抱えたいくらいだよ。
青年は鈍い頭痛に舌を打ち、足を踏み出す。
馬鹿の相手も疲れるが、いかんせん滝の方向には隠れている女が居た。
それが意味する危険の可能性は、少ないとは言えども流石に無視出来かねる。
鉛の様に重くなってしまった足を進めつつ、青年はこの日一番の深い溜息を吐いた。

「……で? 何してるんだよお前……」
ぼさぼさと茂った金色の髪の毛を左手で掻きつつ、青年は湖を覗き込む。
全身ずぶ濡れとなり情けない容姿に早変わりした男は、酷く頼りなく見えた。
にも関わらず、男は澄ました顔でにやりと微笑んで見せる。
“よくぞ聞いてくれた”と言わんばかりの満面の笑みだ。
まるで汚物か何かを見る様な目で、青年は男を睨む。
「ふ……いや、よく言うだろう? 水も滴る良い男、ってなァ!」
この馬鹿、本当に焼き殺してやろうか、と青年は思う。
だが別に男に害は無さそうで、また青年は女に殺害の一部始終を観賞させる事を潔しとはしていない。
良く良く考えればこの男を殺す事にはさして意味は無く、徒に労力と時間を消費するだけだと言えた。
寧ろこの男を放っておけば、自分達の障害となるだろう人物を切り捨ててくれる可能性だってある訳だ。
詰まる処が、今は休戦が得策。そういう事になる。

青年は剣を納めると頭を乱暴に掻き、怪しい動きの男に手を差し出した。
別にそれくらいはしておいても、損にはならないだろう。
「よくわかんないけど、大丈夫か? ほら」
「お! 青年は優しいなァ……!」
男は差し出された手を躊躇いなくがしりと掴み、話を続ける。
「ところで、アリスちゃん見なかった?」
我慢、と身体に念じる。だが考えと反して震える吐息と拳。
けれども青年は男を陸に引き上げ、にこやかな表情を作った。
しかし如何やら、若干の頬の筋肉の引き吊りは隠せなかった様で。
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:55:21 ID:paq5WAgY0
支援  
268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:58:42 ID:A75EYQPd0
支援
「だからさぁ、な? 俺、さっきも言ったろう? “知らない”ってさぁ。
 馬鹿にしてるのか? やっぱり死ぬか? お前」
苛立ちを隠せそうにもないと判断した青年は、満面の笑みで殺気をぎらつかせる。
流石に身の危険を感じたのか、青年は目を僅かに泳がせ、口をまごつかせた。
「ほ、ほう。ご協力感謝するぞ、青年。………………………ああッ! てか、あれって何だ!?」
吃り気味に切り出した男。その余りにも突拍子過ぎる驚嘆に、青年はぎょっとしてしまった。
口から次いで出る言葉は、僅かに上擦った情けない声。
「へ?」
ずい、と自らの背後を指刺され、青年は反射的に背後を振り向く。
しかし、まぁ当然の如く何も無く。
かあ、と青年の顔に朱みが差す。決して温度の上昇の所為ではない。
してやられた、と青年は歯を軋ませた。羞恥心がこれでもかと刺激される。
馬鹿か俺は。何てザマだ。
こんな単純な引っ掛けにしてやられた自分に嫌悪する前に、背後から男の走り去る音。
「ちょ、お、おい! 待てよコラッ!」
慌てて振り返り叫ぶが、無論後の祭りというやつだ。
今度は丁寧に湖を避けて走り去る男の背は、青年が見た頃には既に闇の彼方だった。
「ふふん……待たないさ!! 逃げるが勝ちって言うじゃあないか、なァ青年ッ!
 それと、“やっぱり死ぬか?”だァ? 死ぬ訳ないだろう、答えは“馬鹿め!”だッ!
 二対一、それもセンチュリオンコア持ちとエクスフィア装備者となれば分が悪いんでね!
 ここは退散させて貰う事にした! 悪く思うなよッ!」
「んな……っ」
捨て台詞にしたって、もうちょっと短く出来るだろう、と青年は唇の端を歪めた。
……しかし、やっぱイレーヌさんの事はバレてたか。
青年は随分小さくなってしまった男の背を凝視しつつ、力無く笑う。
最早追う気にすらならない。もう勝手にしてくれ、全く。
「互いに生きていたならば、またその時にッ! 実に愉しかったぞ片目の青年!!
 ハハハハハ! ハーッハッハッハッハッ!」
これ以上お前と関わって堪るもんか、と青年は頬を掻き目線を宙に泳がせた。
淡く光る銀河の彼方から、薄紫色の朝がその腕を伸ばさんとしているようだった。
青年が再び目線を正面に戻した時、遠く伸びる暗闇の中には、もう疾うに男の姿は無かった。

「……行ってしまったわね」
がさり、と静かな音を立て、叢の奥から女が顔を出す。女は目を白黒させ、肩を竦めていた。
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:01:27 ID:A75EYQPd0
支援
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:06:34 ID:paq5WAgY0
しえん
青年は女の方へ身体を向けると、眉を下げてやれやれです、と零す。
「何だったんでしょうね、あいつ。見てて気持ち悪いったりゃあない」
「さぁ……取り敢えず、変態さんじゃあないのかしら?」
心底疲れた様子の青年に、女はそう言って苦々しく微笑んだ。
「あんなに強いのに……かなり性格で損してますよ、あいつ」
青年はその微笑みに応じる様に、掌を空に泳がせながら苦笑を浮かべる。
「世界って、広いですよねぇ……」
こんだけ広けりゃ、あんな変態で憎めない敵も、そりゃあ居るってもんだ。
「案外、回ってみると狭くて窮屈かも知れないわよ?」
“だから自分はあの選択をして、狭い大地から解放されたかった”。
女はそうは言わなかったが、青年には確かにその言葉が届く。
僅かに暗くなった女の表情を、青年は決して見逃さなかった。
「……なら、見てみましょうよ。この世界を全部見てから決めるのも、悪くないかも知れません。
 西へ、行きましょう。俺達はこの世界を知らなさ過ぎる」
諦観を浮かべる濃い紫色の瞳に、青年は語り掛ける。
女はこくりと頷いたが、ちっとも頷いてはいなかった。



◆◆◆◆



         『「その理由は、その人を同じ運命を辿らせるのが余りにも不憫だったからだ」』



舞台と時刻はがらりと変わり、脚本も何者かに擦り替えられる。
キャストと結末は鮮やかに色を変え、ゲームは再びリセットされる。スタートされるゲームはジジ抜き。地雷が数字の数だけ存在し得る悪魔の遊戯。
さて、此所で質問。
“カードがもしも一枚欠けていて、ジジとして抜かれたカードがその欠けたカードの数と同じなら、
 そのゲームの意義は果たしてあると言えるのか? そのゲームは成立するのか?”
答えは誰にも分からない。無論、出題者の私にも、脚本家にも。
伏せられたカードが何かは分からない。
一枚ではないかも知れないし、そのカードは実は“ジョーカー”かも知れない。
ゲームにジジが存在しない場合もあるし、或いはジジが複数の場合もないとは言い切れない。
プレイヤーが新たにカードを隠せばジジは増えるかも知れない、しかしジジが無くなるかも知れない。
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:10:03 ID:paq5WAgY0
支援 
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:10:20 ID:A75EYQPd0
支援
最初に言った様に、全てのカードがジジである可能性を秘めている。
同時に、全てのカードがジジに“なる”可能性を秘めているのだ。



物語は戻り、とある盆地にある、とある豪邸の前。
山の隙間から太陽は遠慮がちに顔を出し、草木の葉からは露が滑り落ちる。
朝霧が樹々の合間を縫う様に抜け、花々は光に向けてその可憐な顔を見せ。
そして朝を感じた小さな虫達は、大いなる自然に感謝を捧げる。
成程“平和”とは正にこの事を云うのだろう。
……この世界が直面している、殺人を強いる現実を除けばの話、だが。
しかし此所が他と比較して明らかに平和である事に変わりはないし、誰もそれを疑いはしないだろう。

岩山という自然が生み出した極限の城壁。
そのお陰か誰にも邪魔させる事なく、世界は爽やかな朝をモリスン邸にへと届けていた。
しかし幾ら平和とて、此所がこのゲームの舞台である以上、どの道何時かは終止符が打たれるもの。
来訪するはこの世界の真理が生んだ、不幸を運ぶ者。
紫色の髪を揺らし、巨大な斧を背負い、ちょっぴりチキンな死神は緑色の大地を踏み躙る。
そこには閑静な館を血で染め上げんと、足を忍ばせる男が一人居た。
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:14:58 ID:A75EYQPd0
支援
「さぁて、先ずは此所かな」
登山による爽やかな汗を全身から迸らせ、地図を片手に早速拡声器を取り出す。
山の一つや二つ、愛すべき人の為なら何のその。仮眠? 碌に取ってないが何か問題が?
その程度の障害、愛する人を想えば造作もない。
男は腰を捻りつつ髪をゆっくりと掻き上げ、拡声器のスイッチを人指し指で弾く。
さて、もう皆様もお分かりだろう。毎度恒例のあれだ。
ではでは、せーのっ!

『んアリスちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!!』

モリスン邸の奥、離れの客間にて。
寝息を立てていた少年は、ただならぬ騒音にがばりと布団を剥がした。
「……こ、此所は、僕は一体何を……ルーティさんは?
 い、いやそれよりも今の声は確か……いやでも真逆そんな……!」
時刻は午前5時10分5秒。
精霊ラタトスクの奥底で眠りに就いていたエミル=キャスタニエを叩き起こしたのは、



『俺だよ! アリスちゃんの王子様デクスだよ!!
 生憎白馬は用意してないけど、アリスちゃんを迎えに来たよッ!!!
 うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ、アリスちゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!!!』



考え得る中で、最低最悪の目覚まし時計のアラームだった。
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:16:08 ID:paq5WAgY0
支援
【デクス 生存確認】
状態:HP45% TP75% 超疲労 血塗れ 両腕に痺れ 怪しい動き 言い知れぬ悲しみ
所持品:拡声器 グレートアクス(少々のヒビ) ネコ耳 サポートハンド プレセアのザック アリスの写真(盗撮)
基本行動方針:アリスを守る。洞窟経由で北へ、その後南下し城経由で森、南の街へ行く。怪しい動きで。
第一行動方針:アリスを探す。アリス以外の参加者は殺す(死にたくないので無茶はしない)
第二行動方針:取り敢えず館を調べる。
第三行動方針:ロイドはエルレインに任せた、シゼルは厄介なので癪だが後回し。スタンとイレーヌも同様。
現在位置:A4邸前

【イレーヌ・レンブラント 生存確認】
状態:HP70% TP65% 精神不安定 頬に傷 膝から足首にかけて擦り傷 左足小指骨折
   魔剣の声が聞こえる エクスフィア装備 リアラの言葉にショック ルカに怒り スタンに対する違和感
所持品:魔槍ブラッドペイン スターダストリング 要の紋付きエクスフィア マグニスのサック
    ハリエットの花(瓶に生けられている) ちゅうわざい×3
基本行動方針:スタンと共に答えを探す
第一行動方針:西へ
第二行動方針:スタンへの違和感が気になる
第三行動方針:魔剣の指示を遂行するか考える
現在位置:C6滝壷

【スタン・エルロン 生存確認】
状態:HP45% TP75% 右目損失 額から左瞼にかけて裂傷 左腕から手の甲にかけて裂傷
   全身に打ち身 下半身に裂傷多数 現実への絶望 精神不安定 理想崩壊
   エクスフィア(亀裂入り)装備 精神へイグニスの影響(中毒症状の兆し)
   ルカに怒り ルークに妙な感情 甲冑に罅
所持品:魔剣ネビリム 要の紋付きエクスフィア ネクロノミコン センチュリオン・イグニス
    アンチフォンスロット ヒールバングル サファイア
基本行動方針:イレーヌを最後まで守る。イレーヌを許容しない世界を許さない。障害は斬る
第一行動方針:西へ
第二行動方針:ジューダスとスパーダが生きていたら確実に殺す
現在位置:C6滝壷
【エミル@エミル・キャスタニエ 生存確認】
状態:HP40% TP100% マナの希薄さに困惑 マフラー無し 右手骨折 軽度火傷
    マルタと封印の件で焦り気味(現在は非顕在) 西のマナが気になる 強い無力感
    仲間の死に衝撃 クラースをやや尊敬?
所持品:クィッキー セレスティア晶霊石詰め合わせ(青・黄・紫・黒晶石が2個ずつ)
    強力グミセット BCロッド 鎮魂錠 破魔の弓 ルーティのサック
基本行動方針:マルタ、リヒター、イグニスとともに一刻も早く元の世界へ帰還する
第一行動方針:エミルにルーティの事を伝えるべきか考える(ラタトスク)
       訳が分からないので先ずは状況把握(エミル)
第二行動方針:マルタがとても心配
第三行動方針:イグニスが気になる
現在位置:A4邸・寝室



☆未回収アイテム:苦無×1 ロイドの仮面1
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:22:09 ID:paq5WAgY0
支援       
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:23:56 ID:TaKIDRh0O
投下終了です。二日間に渡るだらだらと長ったるい投下に付き合って頂きありがとうございました。支援に感謝です。
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:33:42 ID:n0JFzY5NO
お疲れさまです!
 
デクスほんとトラブルメーカーだなwww
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:57:14 ID:hHkFzWIqO
投下乙です!デクスはモリスン邸のメンバーと衝突か
また逃げ出さないか気になるところだ
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 22:00:38 ID:A75EYQPd0
投下乙!
なんかスタンとジューダスが
1stのヴェイグとティトレイに見えてきた
まあ、かなり違うけど
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 22:20:51 ID:EYUd3xqkO
投下乙です
昨日とのテンションの差がw
ついに館にもマーダーが来たか!
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 23:19:10 ID:xpcZyUgSO
投下乙!
己の愛に迷うスタンに対して、デクスは相変わらず一途というか単純というかww
そして勝負は打ち切りか。スタンも無差別って訳じゃないが、まさかデクスが互角にやり合えるとは思わなかったぜ!
しかしスタンが自身の発狂の可能性を知ったのが気になるな……。
どんどん軸がぶれていくスタンの今後に期待だな。

そして長らく平穏を保っていた館にデクス来襲か!
しかし骨折中のエミルとシルフしか使えないクラースはともかく、リヒター&メガグランチャー持ちフォッグは手強いぞ……
と思ったらおっさん二人は泥酔中、リヒターは絶賛ブチ切れ中じゃねーかww駄目だこいつらwwww
唯一戦えるリヒターが吐瀉物塗れで応戦するしかないのか……w
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 00:58:37 ID:188ok3kS0
リメD技普通に使ってたが今回の話で編み出したってこと?
それとも気にしなくてもいいこと?
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/09(木) 03:09:17 ID:fZFpPENHO
スタイレは普通にリメDから参戦なんだと思ってたぜ
でもそれだと回想のリオンの台詞がオリだな

まあ前避難所で言われてたけどDキャラは細かい事気にしないでオリ・リメの良いとこ取りでもいいんじゃないかな
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/10(金) 00:22:39 ID:CiYiN3N50
だな。大体随分前にオリ設定のイレーヌが晶術撃ってるから気にせずいこうぜ。

つかデクスつええな。流石にロイドの多彩な術技をトレースできるだけのポテンシャルはあるか。
敵わないと分かったら逃げるって行動は一見サラマンダーだが、死者スレでも言われた通りロワにおいてはかなり賢い選択だよなあ。
館組は泥酔二人、混乱してる主人公。まともなのはリヒターさんだけ。デクスはどう判断するやら。
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/10(金) 17:16:42 ID:ASgkXtZv0
投下乙。これからもどんどん投下が増えていけばいいね。応援してるよ
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/10(金) 23:30:41 ID:SAzjko8tO
VSのセネル更新で思い出したが、セネル組ってかなり盤石だよな。
スピード型前衛のセネル、高火力&超探知&水中戦最強のシャーリィ、陣術&チート月のフォルス持ちのジルバ。
さらにインフィニティア・ストライクのフラグも立ってると来たもんだ。
子供組がぶつかりそうだが、反撃出来るんだろうか
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/10(金) 23:39:16 ID:pHqPOMw90
現時点で対抗できそうなのは
スタン・イレーヌ
レイス・アガーテ?
ミク・ヴェイグってとこかな
仮面・スパーダ・ハロ・ミトスが実際に結成されたら凄いことになるだろうが
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/11(土) 00:51:06 ID:aNwTTM6cO
ミクヴェイグは罠無しじゃ厳しそうだがスタイレは互角か?
姫騎士組はなー……。
アガーテがジルバを抑え切れるかが鍵か?
ある程度弱らないと効かないとはいえ、月の精神入れ替えは恐すぎる。
レイスはセネル一人なら確実に押さえられそうだ。


森組はどうか……と思ったが重傷者多過ぎだな。回復が追いつかない。
295名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/11(土) 01:16:47 ID:PoLbgcTr0
子供組は幸い辺りがアースクェイクで岩山になってるから隠れてやり過ごせそうだな。

しかしスタイレが西に向かうってことだったが、橋が壊れてるから泳いでいくのかなあw
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/11(土) 04:16:04 ID:3EplgdxHO
今の所一番遅れてるのは姫騎士・ミトスと生き埋め組・ルカレインになるかな
ジューダススパーダふやけちゃう><
デクスがルカに何て言ったかも気になるしレイスはまだ武器も無いんだっけか
どこも続きが待ち遠しい
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/13(月) 01:52:22 ID:4qXIl7utO
久しぶりの投下乙
途中参加は厳しいだろうし3rdを待つか
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/13(月) 08:57:52 ID:8Rrn9fqeO
棘のある言い方するなぁ。最近やたら3rd3rdって言うが、今やれば確実にコケる。そういう話題は普通2ndが終わってからだろ。書き手さんに失礼だぞ?

それに、途中参加だってすごくしてほしいことなんだぜ?1stだって最終クールで書き手参加した人がいるしさ。
299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/13(月) 10:38:01 ID:CmbRfm52O
2ndも3rdも参加すればいいじゃないか
今はリレー難しい展開だけど書きたいと思った所で書いてみたらいいよ
過疎だし短くてもつなぎでも全然大歓迎だよ
開始直後の頃までとはいわないが盛り返して欲しいな
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/13(月) 12:15:18 ID:P+XW57qaO
投下待ち
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/13(月) 15:26:48 ID:4qXIl7utO
気に障ったらすまない、謝るよ
償いと言っちゃなんだが読み返して、書き手になれるようになってみよう
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/14(火) 21:26:07 ID:f2vJKXvnO
こんな風に人いなくなって風呂敷畳めなくなるから俺が終わらせてやったのに^^;
ジューダス様優勝でさっさと終わらせよう^^
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/14(火) 21:43:38 ID:c5NOe0J/O
最近来た新規なんだけど、一気読みしたら面白かったけど混乱した

誰がいつどうなってるかみたいなまとめない?
304名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/15(水) 00:33:55 ID:sjqr68jE0
>>303
各キャラの現在時間だけだが、最新話までで


神組        アリス死亡直後≒放送直後 深夜
姫騎士組      深夜
ミトス・二刀流組  深夜
ガオラキア組    夜
ロニ・ハロルド   夜
スタイレ      朝方
シゼル       日の出より僅かに前
マーダー三人組   日の出 早朝
子供組       日の出 早朝
黎明の塔組     日の出 早朝
ルーク・フィリア  日の出 早朝
館組・デクス    5時10分5秒 早朝
レムの塔組     7時 朝
サレ・マルタ    日が昇っている 朝
マオ・リアラ    日が昇っている 朝

あと、一気読みしたあと更に何回か流し読みすると分かりやすいぞ。キャラアンカーなどを駆使すればよろし。
305名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/18(土) 01:14:01 ID:OUN0JRpNO
ふと思ったんだが、このロワって参加者間の実力差が少ないよな。
ほとんどが戦闘能力持ちだから、支給品の優劣が勝敗に直結する。
流石にラスボスは一段上だろうけどな
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/18(土) 05:39:50 ID:w9uvKGkKO
あって前衛後衛の差や男女差くらいかな
一般人のステラ、クレア、イオンはヒロインポジションという名の死亡フラグもあって早々に脱落だし
今残ってるのは戦闘能力持ちだけだね
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/18(土) 15:03:38 ID:w/emfJtG0
>>306
一応、イオンは体術もそこそこ出来る設定じゃなかったか?
ひ弱ですぐバテるから使い物にならないってだけで
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/18(土) 16:07:05 ID:w9uvKGkKO
>>307
そうなのか
ステラもイオンも非戦闘員とはいえ特殊能力持ちだし
あとアガーテもいたけどフォルス持ちだし
完全な一般人はクレアだけだったんだな
309名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/18(土) 21:56:02 ID:h/xDL5lG0
>>302
ジューダス厨にはもうウンザリです
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/18(土) 22:05:58 ID:OUN0JRpNO
>>308
ディストも一般人だったはず
首輪解除技能持ちではあったけど
311名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/18(土) 22:28:25 ID:w/emfJtG0
>>310
このロワほど首輪解除技能者が多いロワもないな
312名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/19(日) 00:50:03 ID:w/q9w5UhO
イオンは体力があればシンク並みの体術は余裕だろ
イオンの術+シンクの体術=オリイオンとなる訳だな
アリエッタいらなかっただろうな
313名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/19(日) 01:14:31 ID:EttR64Dh0
>>311
生存者だとかなり大雑把にピックアップして
フィリア・イレーヌ・ミクトラン・キール・チャット・シゼル・ジューダス・ハロルド・エルレイン
リフィル・ミトス・リヒター・イクティノス・クレメンテ
こんなとこか
D・D2・E勢が多いな
考察要員加えたらもう5名は増えるぜきっと
314名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/22(水) 14:12:20 ID:C/AoRRKYO
良く考えると南東の孤立っぷりは異常
ティアぐらいしか南東を目指して無いし、レムの塔組に至ってはじっくり調査を始めそうな気配。
その分フラグやら何やらが熟成されまくってかなりの難所になってるな。
アトワイトの人格封印した書き手さんGJ。
315名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 00:49:52 ID:KtMFOtWk0
イオンの死体ってどうなってましたっけ?
316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 03:58:42 ID:TLePDwXkO
リカルドの死体と一緒にC2城に放置。首が落とされてる。

しかし東にもマーダーが増えて来たなぁ。
C2に満身創痍のサレ、塔にミクヴェイグが居ただけだったのに、今となっては
・中部にマーダー三人組
・少し北からスタイレ
・北端からデクス
・洞窟内に微妙だがロニ

なんか西からのマーダー軍団を東の対主催が迎え撃つ構図になってる気がするww
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 10:10:36 ID:p+huNKm9O
志村ー、東西逆ー!
318名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/23(木) 11:47:24 ID:TLePDwXkO
アッー!脳内で変換しておいてくれorz
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 04:22:59 ID:5a59EA80O
もうチャットの時期かー。
今回はなるべく多くの人が参加してくれると良いな。
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 18:33:25 ID:6E1Z4SnpO
少し前に読み終えたばかりなんですが、読み手もチャットに参加していいんですか?
321名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 21:16:37 ID:xCYq6OH+O
暇だったから登場話数ランキング作ってみた
生存者限定です
 
 
22話 チャット、アッシュ
21話 ロイド
20話 クロエ
19話 シンク
18話 キール
17話 ロニ
16話 リアラ、ジルバ、マルタ
15話 リフィル、サレ、ルーク
14話 セネル、ルカ
13話 クラース、スタン、イレーヌ、カイル、シャーリィ、ティア、エミル
12話 フィリア、チェルシー、ヴェイグ、スパーダ、リヒター
11話 マオ、カイウス、デクス
10話 フォッグ、ジューダス、ハロルド、エルレイン
9話 ミクたん
8話 レイス、シゼル、ミトス、アガーテ
 
 
携帯からです・・・
見にくかったらごめんなさい
322名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 21:55:54 ID:zw1GUz/hO
>>320
全然いいと思うよ。
323名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 01:20:42 ID:LRTTaaOjO
書きたいと思うんだがどこも難所すぎるw
初心者だから、当たり障りのない所から挑戦してみたいんだけどねぇ

ミトス組→複雑な脱出と難易度高杉
エミル組、セネル組、カイウス組、カイル組→バトル前なんで荷が重い
ロイド組、城集結組、ミクトラン組、レイス組→考察?舞台についてはよく分からんので難しい
マオ組、チャット組、ルカ組、ロニ組、スタン組→心情が複雑すぎ
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 02:39:48 ID:nepfCG+LO
どこも難しいよな
自分は何度かチャレンジしてみたけど結局挫折しちゃったよorz
やっぱ書き手さんはすごいわ
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 07:34:39 ID:pKPd9eXiO
書きにくいなら、まんま繋ぎでもええんでない?
例えばクラース達のどんちゃん騒ぎ→デクスが来るまで、とか、シゼルの移動だけ、ルーク達の城詮索→サレを見つけるだけ、とかさ。
読み手側としては投下があるだけで嬉しい。


それはそうと>>321乙。上位はやはりというかなんというか。ただ意外とリアラとルークが多くてびっくりした。
反対に、ミクたんお前全然出てないくせにこの存在感w
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 14:22:39 ID:RD6TmhEIO
自己リレー防止の為にも、間に短い繋ぎを挟むのは有効だしな。
二、三レスの話でも投下してくれるなら大歓迎さ。
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 23:04:08 ID:I3/JUQVO0
そういや作中のジルバってユリスに操られてあそこまでなったってだけで
元はガジュマ至上主義者だけどそれなりに自重してたんだよな
ユリスによって潜在意識下のものをつけ込まれたのがそもそもの始まりな訳で
…改心の余地はあるんだよな
ディセンダーが参戦していたら出来たろうが、他にと言うと…精神干渉が可能な奴って割と多いな
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 00:58:10 ID:Wxc80gDWO
となると会場にもユリスの力が及んでるのかな?
主催がR出展だから、何か知ってそうだ。
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 04:09:50 ID:QEMx7g0w0
ユリスの思念は月のフォルスで祓えるから
アガーテならどうにか出来るだろうね
他は…記憶を封印するとか夢やらを見せるとか
ソーディアンやミクトランが救いという名の精神浸食するとか
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 08:08:54 ID:luWZNyJvO
改心したジルバ様なんて見たくないw
331名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 12:52:29 ID:6fGuIao4O
きれいなジルバなんて
332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 16:20:38 ID:0daF/MvOO
ポイズンッ
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 18:37:42 ID:ivc+0Mko0
>>331-332 ワロタ

それはさておき、投下を待ちつつ余興になんか第3クールのタイトル人気投票とかSS人気投票とかやってみる?書き手さんの士気が上がればうれしいし。
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 22:20:10 ID:N8wAMYmoO
集計してくれる人が居るなら投票はする。
部門としては
・作品部門
・キャラ部門
だけでいいのか?
投票の方式も決めないとな。
335名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 12:55:28 ID:7AEQ29f4O
作品・キャラ・タイトルでどう?タイトルは投票した事ないよな。
一カテゴリに三票ずつ全部で九票、出来れば感想も添えて投票、でどうかな?
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 13:35:24 ID:HV6S81AkO
・作品
命の意味と僕の夜想曲
さよなら。くたばれ、また明日。
Sin -神の産む星屑-

・キャラクター
ノーマ、ハロルド、クロエ

タイトル
慟哭の空
瞬間キャラメルエクスタシー -Looking-glass Insects-
Yellowberry -恋心-

こんな感じか
337名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 16:35:49 ID:0SVHuSHbO
例を挙げる時は特定のタイトルを出すのは良くないよ
タイトルは内容に関係無く好きな「タイトル」に投票する、って事でいいの?
338名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 16:39:44 ID:HV6S81AkO
例じゃなく普通に投票してしまったんだが…
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 20:32:38 ID:0SVHuSHbO
期間とかも決めなきゃならんし、まだ早くないか?
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 22:22:03 ID:HV6S81AkO
先走ってスマソ
341名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 04:19:35 ID:JSTgkr1Z0
昔書いてた矛盾ばっかな没SSを没スレに投下してきた。
本編じゃなくてアレだけど、アレだ、投下くればいいな。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 12:54:43 ID:tzptdV4+O
没とは言え乙。
……何という鬱作品。確かにああなるかもしれないよなー。

投票は来週辺りか?手作業でいいなら集計するが、出来ればPCで出来る人にやって欲しい。
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 12:26:07 ID:2ka/3QmgO
バーサスでまた人が減るなぁ
344名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 10:28:32 ID:8Pg2gfbnO
自分はマザーシップ以外に興味ないから居るがな!

投票は土日でいいのかな?夏休みだし平日でもいい気はするが。
345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/09(日) 20:39:01 ID:7ZOInR/EO
なぜ…誰も投票せん……?不安になって投票できんじゃないか…!
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/10(月) 07:58:26 ID:AaNClPXoO
みんなバーサスしてんだな
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/10(月) 15:46:25 ID:ciy1js6wO
つか、投票ってどこですればいいのかわからん
このスレに書き込めばいいのか?
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/10(月) 16:59:42 ID:LxShkmxg0
>>347
このスレだろう。
俺も不安になって投票できなかったクチだがw
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/10(月) 18:42:32 ID:uRApKT5ZO
過疎にも負けないロワを応援します
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/12(水) 21:33:49 ID:khSwbtx40
バーサスは糞ゲーだったな・・・
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/12(水) 21:36:15 ID:FRTyRBdz0
カイル・リオン・スタンの絡みでずっとニヤニヤしていた自分はもう駄目だな・・・
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/12(水) 21:48:46 ID:08LZ4aDXO
バーサスについては、コケるのは分かってたから何も言うまい。バンナムからしても次作への足掛かり用のβ版なんだろう。



ところで投票の話は流れた?今週土日このスレ、条件は>>335でいいのかな?
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/12(水) 23:46:31 ID:esEOUfzrO
ストーリーと対人戦は中々だったと思う

投票は来週からか?
土日でゆっくり読み返すかな
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/13(木) 02:37:18 ID:gEEjeAqk0
作品超えた絡みは面白かったし対人戦楽しいし個人的には良ゲー
355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/13(木) 02:57:50 ID:tEWfziXUO
あまのじゃくな書き手が居たら得票数上位のキャラから殺されそうw
とか邪推せずに投票していいんだよな…?
356名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/13(木) 09:20:18 ID:LmqvfeuO0
バーサスは機動性が格ゲーとしては・・・うん・・・って感じかな。テイルズっていうネームバリューがあるから許されるレベル。

>>355
それは流石に気にしすぎ、失礼だぞー。

投票は来週ってことでおkだよな。俺も読み返してこよう・・・
357名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/15(土) 18:30:27 ID:KjN7gYrr0
オリDはアタモニ神団が出来たのって第二次天地戦争後だから
上手くすればジューダスとフィリアの会話でパラレル参戦が
わかったのかもしれなかったんだよな
358名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/15(土) 20:37:02 ID:yI1VkDZYO
まだ望みはあるけどなー。ミトスがジューダスを助ければ。

もしかするとSSに書かれてないだけの可能性があるし。
359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/16(日) 19:43:55 ID:SdD9ojfg0
>>356
そりゃ格ゲーじゃないからな
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/19(水) 22:36:37 ID:s9M6KAsuO
ありゃ?投票は今週末だよな?なんか死者スレで三日経ってると書いてあったが。
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/20(木) 01:09:57 ID:pn2zL3JsO
【投票期限】8月22日(土)0時〜8月28日(金)24時
【投票対象】1話の『select』から98話の『第一回放送』までの作品への投票

投票形式
上位3作まで選出可能(必ず3作選出しないと駄目、という訳では無い。一位のみへの投票なども可)
1位を3P、2位を2P、3位を1Pとして計算する

・SS部門(作品名で投票)
・キャラ部門(キャラ名で投票)
・タイトル部門(作品名で投票)

正式な予定が無かったからこんな感じでどうだろう。コピペだけど。
流石に範囲が広過ぎると思ったから、まずは第一クールに絞ったが大丈夫かな?
感想とか書き手への応援も出来れば添えたら良いと思う。
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/20(木) 06:51:19 ID:vTlXikXRO
あれ?第3クール限定じゃなかったっけ?
363名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/20(木) 10:25:00 ID:20IW0zCxO
あれ投票って先週じゃなかったけ?
364名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/20(木) 13:51:06 ID:XyAftNiHO
ナタリアが参加してたらアッシュは奉仕になってたりしたんだろうか
非参加でちょっと安心していたら、まさか公式にズガンされるとは思わなかったぜ
365名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/20(木) 14:48:59 ID:pn2zL3JsO
あれ?第三クールって話出てたっけ?
なら範囲は第三クール始めから最新話まででいいのか?
366名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/20(木) 19:49:41 ID:vTlXikXRO
第3クールオンリーって話だったな。だからep180以降だね。
367名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 12:44:41 ID:eLfk5J/EO
本日21:00から投下します。かなり長いので支援をお願いします。
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 16:15:03 ID:APNEFo6BO
どこがくるのかなー
楽しみに待ってます!!
369名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 21:00:20 ID:eLfk5J/EO
では、投下します。長くなりますがお付き合いお願いします。
370グロリアは誰の亡骸に 1:2009/08/21(金) 21:02:34 ID:eLfk5J/EO
―――この蝶は貴方の場所を私達に知らせる特殊な蝶です。
   だからお願い、早くそこから逃げて。私とお兄ちゃん達に殺されたくなければ。








指先で、まるで線香花火の火花の様に粉々に散り弾けた蝶々は、そう遺した。
コバルト・ブルーの魔力による火花は、瞬く間に少女、チェルシー=トーンの目前で、見知らぬ文字の羅列へと変貌を遂げたのだった。
蝶々の突然過ぎる遺言に、チェルシーは全身を強張らせる。その反応は当然と言えた。
一体何処の誰が、蝶々を触った瞬間にそれが弾け死に、遺言を遺すなぞと思うだろう?
ウッドロウさまでも思いませんよ、とチェルシーは目を白黒させる。これは一体何の冗談だ。
「な、なんですか、これ?」
故に口を突いて出る情けない言葉。
自由の権化であった筈の蝶々は、その問いに応じる事なく儚く虚空に消える。
一方少年カイウスは、不自然な光に咄嗟にサイドステップをし、蝶から距離を取っていた。
カイウスはチェルシーの言葉に小首を傾げ、蝶が消えゆく様を黙って観察する。
何だよコレ。一体全体、何だって言うんだ? ただのヒント? 助言? 有り得なくないか?
言い回しが随分と回り諄いし、意味深過ぎる。余りにも不自然だ。
それにこんな都合の良い話、信用なんか出来るもんか。つまりもしかすると、或いは……、
「……罠、か?」
「罠?」

チェルシーがカイウスへと視線を移し、首を傾げる。
髪飾りからぴょんと伸びた二つの尾が、踊る様に揺れた。
カイウスは隣りに横たわるクラトスの死体に一瞥をくれると――何故かそうしなければならないという使命感に襲われた――、
チェルシーに視線を向ける。
底無し沼を思わせる様な澱んだ双眸が、きめ細かな白い肌にべっとりと張り付いていた。
「あ……あぁ、いやただの憶測だし、よく分かんないんだけれどさ。
 さっきの蝶とメッセージ、あまりにも不自然過ぎないか?
 どうも、怪しい気がするんだ。“私とお兄ちゃん達”って……矛盾してないか?
 オレ達に逃げて欲しいなら、殺し合いには乗ってないスタンスじゃないと不自然だと思う」

気配すら感じなかった蝶々が触った途端に弾けたと思えば、メッセージを遺す。
“普通”は多少のおかしな点があろうと信じるべきなのだろうが、生憎此所は“普通”ではない。
逆転してるんだ。常識は通用しない。正しい事も此所では間違ってるかも知れない。
371グロリアは誰の亡骸に 2:2009/08/21(金) 21:05:33 ID:eLfk5J/EO
カイウスは下唇を甘噛みする。信用なんて出来ない。出来るもんかよ。
己の力すら、信用出来ないのだと知ってしまったんだから。
それなのに、何が信用出来ようか? そう。オレは慢心していた。己を過信していた。
奴を、あの馬鹿馬鹿しいまでの圧倒的力を持った悪魔を、クラトスさんの死体を、見るまでは。
オレはなんて恥ずかしい奴だったんだろう。本当に三対一でなんとかなると?
その結果如何なった? クラトスさんはオレ達を、オレを庇って死んだんだ。ふざけんなよ。
何が三対一だ。何が誰かを守る強さが欲しいだ。何がウソを嘘にするだ。
結局、全て無意味だった。クラトスさんは死んで、シゼルの心を溶かせなくて、理想も壊れた。
けれど、それでも。それでもまだ、あの時のオレは逃げる事が出来た。
誰かに直接的方法で自信を砕かれるまでは、虚構の自信を思う存分張れた。
だって、自信なんか持つ本人にしか分からないものだろ。
他人に黙ってれば、ハリボテの裏は見られない。見透かされない。
でも、それももう終いなんだ。だってオレは、チェルシーの一言に全部砕かれたんだから。
チェルシーは、きっとオレの何もかもを分かってて、不甲斐なさを分かってて、あの言葉を告げた。
それが感情の裏返しであろうと何であろうと、チェルシーにはもう嘘は通用しない、と思う。
だから、チェルシーの言葉を遮ったオレに、もう嘘を吐く権利はない。虚飾する権利はない。
もう後戻りは出来ない。
これ以上、誰にも失望して欲しくないから。これ以上崩されたらもう、オレが保たないから。

「そうですかぁ?」
眉を顰めてそう零したチェルシーに、カイウスは息を飲み狼狽した。
会話中に何考えてんだ、しっかりしろよ俺。
何時何があるかわかんないんだ、此所は今までの世界とは違う。
そう。
そうだよ、この世界が“異常”なんだ。
だから一瞬たりとも気を緩めるな。オレはチェルシーを守らなきゃいけないんだぞ?
選択を一度間違えてしまった俺には、それしかないんだぞ?
チェルシーを喪う訳にはいかない。喪えば全てが終わってしまう。
もう、嘘は吐かないし、誰にもウソを吐かせない。諄い様だが、後には退けないんだ。
「ん……あ、ああ。さっきも言ったけど、逃げて欲しいなら、普通殺し合いには乗らないだろ?
 もう迂闊にものを信用出来ないし、チェルシーも、得体の知れないものに触らないようにしてくれ」
372グロリアは誰の亡骸に 3:2009/08/21(金) 21:10:13 ID:eLfk5J/EO
しまった。言い方がキツくなったか、と反省するがもう遅い。
悄気た様子のチェルシーは手を前で組み、すみません、と項垂れていた。
カイウスは慌てて謝ると、再び横たわっているクラトスに一瞥を投げる。
やたらと目につくそれから視線を離し、カイウスは辺りの様子を伺った。
血飛沫に染まった岩山は酷く閑静で、血腥い色彩と身を刺す寒さが辺りの不気味さを醸し出していた。
ふと己の身の丈程もある、蒼く煌めく大剣が目に止まる。
グレイブの岩柱同士の隙間に刺さっていたのはファルステヴェルン、己の傍らにはグレイブの発動者の屍。
精練されている筈の蒼く透き通った魔金属の刃が、カイウスには酷く草臥れて見えた。
まるで羽をもがれた蜻蛉の様に頼りなく、軸を無くした独楽の様に意味がない。
最強を誇る魔剣も、そう思われてはたちまち形無しというものだろう。
皮肉だな、とカイウスは内心で己を軽蔑するように呟いた。
墓の名を冠する岩に刺さる己の剣、その元には安らかな表情を張り付け眠る天使。
これではまるでこの景色が、オレがクラトスさんに止どめを刺したんだとでも言いたげじゃないか。
カイウスは頭を左右に振った。この世界の神は如何やら、弱者に鞭を打つ様な鬼畜生らしい。
「……。何はともあれ、だ。
 此所から何処かに誘導するのが目的か、や、此所を離れて欲しい理由が何かある、のかな?」
これ以上の考えは止そう、とカイウスは口を開いた。下手に鬱になっても仕方が無い。
だが、黒く澱んだ感情は言葉と乖離し、内と外が、言葉と思考が関係性を無くす。
精神は無情にも、カイウスの考えとは反して、肉体に追い付かんとその存在を誇示するのだ。
不意にチェルシーの目線を感じ、カイウスは目を泳がせた。
何時からオレは、考えてもない言葉を難なく言える様になったんだろうか。
嫌な人間だな、全く。
「全然、分からない、な。罠と決まった訳でもないし……んー、チェルシーはどう思う?」
「私は素直に信じて良いと思いますよ。
 きっと私達に危険を教えてくれた親切な人なんですよぅ」
本当にそうかなぁ、とカイウスは顎に手を当てて唸る。
頭上では、ねっとりと伸びた紫雲が、朝焼けに殺されかけていた双月を攫っていた。
「それに」
腕組みをして悩むカイウスに、腰に手を当てたチェルシーがずい、と近付く。
チェルシーの背から漏れる眩しい日差しは、カイウスの目に深く染みた。
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 21:10:24 ID:APNEFo6BO
支援
374グロリアは誰の亡骸に 4:2009/08/21(金) 21:13:37 ID:eLfk5J/EO
「……それに、きっとさっきの蝶々を飛ばしてくれた人は、お兄さん達に無理矢理殺しをさせられている。
 私には、何だかそう思えて仕方がないんですよぅ」
小さな声でそう呟き、俯いたチェルシーを見ながら、カイウスはそうかもしれない、と思った。
確かに、そう考えればあの文章の不自然さにも説明は付き、合点もいく。
いやむしろそう考えた方が、罠だと思うよりもずっとずっと自然で理に適っている気がした。
「どっちにしたって、何時までも此所に居るのは危険だって事だな」
カイウスは面を上げたチェルシーに笑顔でこくりと頷いてみせ、岩肌に手を掛ける。
「あの蝶の文字を信じるなら、敵は少なくとも3人以上だ」
間違っていない、と正当性を噛み締める様に、先程ポケットに突っ込んだそれを軽く弾く。
「……こう言うのはちょっとだけ納得いかないけど、さ。
 きっとオレ達で敵う様な相手じゃないと思うんだよ。
 だから、出来る限りこの敵との接触は避けないとな」

―――“敵”?

言い終わった後、ぞくり、と身震いするような寒気が背筋を這った。
冷たくなった血液が、喉元から脳内へと、気持ちが悪い程滑らかに運ばれる。
瞬間、頭から爪先まで、録音された自分の声を聞いた時に似た違和感が駆け抜けた。
たかが何気ない一文字、たかが特別な意味も持たない一言、“敵”。
ファルステヴェルンを拾う為、岩肌に足を掛けると同時に、カイウスの心臓は驚く程高く跳ねた。
夜明けに自室のドアを激しく叩かれた様な強い不快感。オレは、誰が“敵”だって?
喉がごくりと音を立てた。唾が異様に固くて不味い。
カイウスは岩柱に這い上がり、瞬きすらも忘れて地平線を凝視した。
明瞭とした景色の中に、顔を出した太陽に、ファルステヴェルンが突き刺さっている。
カイウスには背後を振り返る事が出来なかった。
今は地平線を、ファルステヴェルンを目指す事しか出来なかった。
自分の身体が自分の身体でないような錯覚に陥る。剣が、驚く程遠い。距離が、酷く長い。
くそ、と歯軋りをする。じわりと浮かぶ脂汗が肌を捕らえて一向に離さない。
カイウスは祈る様に唸った。
オレの背を見てるのは分かってる。分かってるんだ。
チェルシー、お願いだ。少しでも優しさがあるなら、オレを憐れむなら、何も言うな。
言わないで、くれ。
……なぁ、頼むよ……。



「救ってあげないんですか」



カイウスの足が、手が、指が、呼吸が、止まる。
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 21:15:18 ID:QnDp3EQvO
支援
376グロリアは誰の亡骸に 5:2009/08/21(金) 21:17:27 ID:eLfk5J/EO
世界はその瞬間、異常な程正常に動いていた。
太陽は熱い日差しを湿った大地に差してしたし、風は血の臭いを海原まで運んでいた。
蒼茫たる空の海は飽きもせず延々と雲を泳がせているし、チェルシーは等間隔で呼吸をしている。
その中でカイウスの世界だけが、まるでその時間をナイフで切り取られたみたく、沈黙していた。
「“敵は少なくとも2人以上だ”、の間違いじゃあないんですか」
ファルステヴェルンの柄を握ろうと延ばした指先が、その言葉にぴくりと動いた。
カイウスは震えを深呼吸と共に飲み込み、まるで何かを諦めたかの如く気怠そうに剣を引き抜く。
「――――――――――――――――――――仕方が無いんだ」

仕方無いんだよ、と己に言い聞かせる様にカイウスは繰り返した。
如何見ても歳半ばの未成年には不釣り合いな大剣を背に差すと、カイウスは空を仰ぐ。
チェルシーは無言でカイウスの背を見つめていた。
無音の譴責と重圧が、カイウスの肩に伸し掛かる。
「分かってるさ。自分でも何を言ってるかなんて、分かってる。分かって、るんだ」
そう。分かってる。怖いくらいに。オレは無意識に、蝶の送り主に対して“諦めてる”。
チェルシーの言う通り、確かに送り主が殺しを強制されている可能性は低くはない。
そしてオレ達は、これからそれを前提に行動を起こすつもりだった。
だが、オレ達を殺そうとするなら。もしそうなら、理由が如何であろうとそいつは敵だ。
あっちの都合は考えてはいけない。この世界は、甘い考えを尽く打ち砕く。

まるで通りすがりの人に挨拶でもするみたく、簡単にブチ壊す。
さもそれが当然であるかの様に。

「でも、オレ達は生きる事を優先すべきなんだ。生きなきゃいけないと思うんだ。
 けれど、オレ達が此所で生きるには、余りにも力が無さすぎる。だからッ」
空は広い。驚く程広い。
カイウスは瞳をゆっくりと閉じる。暗転してゆく世界は、何ともまぁ見事に罅だらけだ。
……はは。オレも、知らない間に随分と変わったもんだな。
なぁ信じられるかルビア? オレ、今自分が生きる為に人を見捨てようとしてるんだぜ?
「無知と勇気は違う。親切と無謀も、違う」
もっとオレに力があればよかったのに。
敵を待構えて、メッセージ主を救って、敵を撃破して、ハッピー・エンド。万事解決。そら見た事か。
377グロリアは誰の亡骸に 6:2009/08/21(金) 21:20:53 ID:eLfk5J/EO
言ってしまえば、こんなにも簡単な事じゃあないか。下らない。(違う)嗚呼、下らない。
でもオレには力が無い。そんな簡単な事すら、出来ない。(違う)
この世界では、正しい事をするには力が必要だ。正義を語るには力が(違う)必要だ。
いざという時何も出来ない正義なんて、ボロ雑巾に等しい。正義を騙ってる(違う……ッ!)だけだ。
だから本当の正義は、此所での正義の本質は―――。


「ごめん」


―――きっと、力だ。

チェルシーを守ると決めて、此所で正義を語るには力が必要不可欠だと知って。
そして、クラトスさんの死で無知と勇気は、無謀と親切は違うと知った。
何度も言うけど、もう嘘は吐かない。ウソも認めない。だから、もう意見は覆さない。
チェルシーを守る為なら、生きる為なら、誰かを見捨てる行為も、厭わない。
仕方無い。仕方が、無いんだ。諦めるしかないんだ。死ぬのは誰だって、イヤなんだ。
「そうですか」
がしゃん、と硝子が割れた様に無機質な音が響いた。固く握られた拳はずっと震えている。
「……何も、何も違わない。オレは間違ってない。そうだろ、ルビア」
チェルシーにさえも届かぬ小さな声は、無論ルビアにも届かない。誰にも届かない。
カイウスは重くなった瞼を上げた。飲み込んだ筈の震える息が、待ってましたと零れ落ちる。
視界の広がりとは反比例して、朝に焼かれた輝かしい景色は、腐る様に褪せていった。



―――――――――――――



「“源を携える者、始まりの地平線へと鎚を。終わりの空より後光を窺え。
 是、真ならば其と名、潜伏先を此処に刻め”……?」
大きな猫目を機材が作り出す影の中で煌めかせながら、
女王アガーテは騎士レイシス=フォーマルハウト、通称レイスにその意味を問い質す。
レイスはその言葉にこくりと頷くと、アガーテに背を向けコックピットを静かに徘徊しだした。
ドレスシューズがカツン、と床を叩き、無機質な鉄の音が部屋の中を反響する。
「“源を携える者、始まりの地平線へと鎚を。終わりの空より後光を窺え。
 是、真ならば其と名、潜伏先を此処に刻め”」
レイスは歌う様に復唱すると、操舵席にもたれ掛かりミント・グリーンのスイッチを押した。
カチリと音を上げたスイッチは、瞬く間にブラッド・レッドへと変貌を遂げる。

がこん、と何かが外れた様な間の抜けた金属音が、コックピット内に低く響いた。
378名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 21:22:28 ID:ZJtepKZJO
支援
379グロリアは誰の亡骸に 7:2009/08/21(金) 21:24:12 ID:eLfk5J/EO
慌ててレイスに近寄ったアガーテがブラッド・レッドに発光するスイッチを覗くと、
何やら己が知らない文字で“一階全扉ロック”と刻まれていた。
如何やら今ので一階の船の扉を全てロックしたらしい。
しかし己が見知らぬ筈の文字が読める、という事実は、相も変わらず薄気味悪いものだ。
アガーテは眉を顰め、愛する人によく似たレイスの横顔へと視線を動かした。
「あぁいや、安心してくれアガーテ。
 外からこの船に出入り出来ない様に一階の扉をロックしただけだ。
 それはさておき、先刻の暗号の話だが」

そこで一度言葉を切ると、レイスは髪を掻き上げアガーテの双眸を見据えた。
ごうん、とクレーメルエンジンが獣の如く低く啼く。アガーテは黙ってレイスの言葉を待った。
未だ雷晶霊のクレーメル・パワーが充分ではないのか、コックピット内のスイッチが不規則に点滅を繰り返す。
希望を乗せる筈の、言わば起死回生の一手を秘めたノアの方舟は、しかし幽霊船の様な不気味さを醸し出していた。
レイスは操舵席から立ち上がると、硝子張りにされ海原を一望出来る前方へと足を進める。
遠く遠く広がる海は漆黒に塗りたくられ、まるで全てを飲み込むブラックホールの様に不気味だった。

「……“源を携える者”、これはこの船の動力源足り得る何かを持つ人物の事だろう。
 つまり、我々の事だ」
レイスは対水圧様の分厚い硝子に指を這わせ、ぽつぽつと話し始めた。
アガーテは静かに頷き、レイスの隣へと足を進める。
「“始まりの地平線”。これは恐らく……この地図上のX座標上の“1”を意味している。
 同様に“終わりの空”、これはX座標上の“7”を意味していると見て間違いないだろう」
恐らくはソナーの結果を示すのであろうライム・グリーンに輝く液晶板の上に、地図を広げたレイスはそう呟いた。
アガーテはその解釈に小首を傾げ、レイスに質す。
「けれどレイス、それではおかしくはないですか?
 “始まり”はX座標上の“1”じゃなくてY座標上の“A”かも知れない。
 それに、“終わり”だってX座標上の“7”じゃなくてY座標上の“G”かも知れないのではないですか?」
「確かに、その通りだ。流石、君は優秀だね」
レイスは柔らかな微笑みを浮かべ、アガーテに顔を向けると、でもね、と続ける。
380グロリアは誰の亡骸に 8:2009/08/21(金) 21:34:06 ID:eLfk5J/EO
「注目して欲しいのは最大の要、“鎚”と“後光”の部分だ。いいかいアガーテ。
 “鎚”、これは恐らく、君にも先程話したクレーメルキャノンを意味している。
 と言うか、それ以外にバンエルティア号に“鎚”と呼べる様な代物は無いからね。
 故にこの解釈には間違いはない、そう考えても良いだろう」
レイスは丸めた地図で左掌をぽんぽんと叩きながら、続ける。
「次に“後光”。これは砲身から放たれる、圧縮されたクレーメルそのものの事だろう。
 即ち、メッセージ主はクレーメルキャノンを地平線に発射しなさい、と言っている訳だ」
うーん、とアガーテは唸った。アガーテはこれでも頴才教育を受けている王女。
決して馬鹿ではない。ないのだが、今一つレイスの言葉を理解しかね、戸惑いながら口を開いた。
「わたくしにはよく、分からないのですけれど……。
 何故発射されたクレーメルキャノンを逆の地平線から窺うのです?
 見える筈がないでしょう。その話は物理的におかしいのではないですか?
 それに、暗号が意味するのはY座標ではなくX座標である理由もイマイチ……」
アガーテの反駁を聞いたレイスは、地図をサックに仕舞い込み腕を組む。
「そこだよ。そこだけが、私にもよく分からないんだ。メッセージ主の意図が掴めない」
アガーテはぴんと尻尾を張り、目を見開いた。その言葉に反し、レイスがにやりと笑っていたからだ。
疑問を持ったアガーテはレイスの名を呼ぼうと口を開きかけるが、
レイスの人指し指に唇を押さえられ、言葉は身体の奥深くへと垂下される。
困惑の表現を浮かべるアガーテへ、レイスはもう片方の手の人指し指を剥いた歯の前へ立て、ウインクを投げた。
アガーテは、己の心臓が弾かれたバネの様に高く跳ねるのを感じ取る。
頬が熱を持っている。似ているのだ、余りにも。
整い過ぎているその顔も、淡く優しいその瞳も、風に靡く柔らかな金色の髪も。
アガーテはごくりと息を飲んだ。そんな人物に唇を触られた上にウインクを投げられるなんて。
……恥ずかしいに決まってるじゃない!
「さ、そろそろ仮眠を取ろう。
 考察も重要な要素だが、敵襲に備えて身体を万全な状態に期しておくのも大切だ」

レイスは手をアガーテの唇から放すと、ズボンのポケットから羊皮紙とペンを取り出し、
ペンを素早く走らせた後、アガーテへとひらりと羊皮紙を裏返してみせた。
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 21:38:49 ID:ZJtepKZJO
支援!
382グロリアは誰の亡骸に 9:2009/08/21(金) 21:40:34 ID:eLfk5J/EO
(先ずは静かに寝室へ向かってくれ。これから話す事は、聞かれたら拙い。
 もしかしたら、あの道化師に盗聴されてるかも知れないんでね。
 万が一があるだろう? 君は適当に会話を合わせてくれ。筆談の続きは寝室に行ってからにしよう)
二、三秒の間を以て、アガーテは漸くレイスの意図を把握し、力強く頷いてみせた。
沸騰しそうな頭を懸命に回転させ、言葉を紡ぐ。
「……。……ええ、確かにレイスの言う通りです。ですが、此所では満足に就寝出来ないでしょう。
 寝室に行きませんか?」
ちかちかと点滅するボタンを押し、レイスはああ、と呟く。
ボタンに応える様にコックピットから廊下に続くドアが開き、闇は大きな口を彼等に空けた。
本来は畏怖すべき漆黒だが、アガーテは確りとその先を見据える。
希望の方舟は、確かに此所に在る。レイスがわたくしの側に居てくれる。
だからきっと、大丈夫。信じていれば絶対に上手くいく。
わたくしは、こんなゲーム如きには決して屈伏しない。抗い続ける。

「君は強いな」
眼光鋭く、確りと背筋を伸ばし廊下を歩くアガーテ。
その横顔を隣でずっと伺っていたレイスが、ぽつりとそう零した。
「へ?」
アガーテは大きな耳をぴくりと動かし、立ち止まる。
「あぁいや、すまない。ついつい口に出てしまった。
 純粋に、アガーテは強いんだな、と思っただけさ」
アガーテは瞼を下ろし静かに首を左右に振ると、ゆっくりと瞼を上げる。
闇の中で輝く金色の双眸が、レイスを貫いていた。
「わたくしは、カレギアの王女アガーテ=リンドブロム。ヒトを導かねばならない存在です。
 そこが例えどれだけ汚れていて、どれだけ理不尽な世界でも、誰かが前を見据えなければなりません。
 先陣を切って暗闇を歩かなければ、その先にある光も、希望も。
 ……きっと、全てを無下にしてしまいます。それは何よりも悲しい事」
彼女が王政に疑問を持つ日は果たして訪れるのだろうか、とレイスは何となく思った。
視線をアガーテの背後に続く廊下へと流す。
黒い予感は、何時でも我々に喜々として手を伸ばしている。
セレスティアを彼女が見たら、どんな風に思うだろうか。
王政がおかしいと言うセレスティアンを、チョーカーを嫌だと言うセレスティアンを、如何見るだろう。
真直ぐ過ぎる視線をレイスは見返す。
レイスからすればアガーテのそれは危険な眼差しだった。
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 21:45:42 ID:0u7hT7V6O
支援
384グロリアは誰の亡骸に 10:2009/08/21(金) 21:46:58 ID:eLfk5J/EO
それは、信じたくはないが、此所はきっとその考えが通用しない世界だ。
レイスが直感的に、生死を左右する戦場に身を置く者としてそう理解していたからに他ならない。

「……だがね。たまには、迷いや辛さを吐露してもいいんだよ、アガーテ」
……そうでなくては、私が死んだ時、君は如何する。
「ヒトは、支え合って生きていくものなんだ。君は確かに王女だが、本質は紛れもなくヒトだ。
 特別な存在なんかじゃない。私も君も、等しくヒトなんだ。平等なんだ」
真の平等とは何なのだろう、とレイスは考える。
実のところ己にもさっぱり分からないのだが、少なくとも王政に不審を抱いていたのは確かだ。
ゾシモスがキール=ツァイベルに取った行動、頑なに絶対悪の存在を崩さない王家。
地位を盾に威張る貴族、国ではなく王の平和の為に動く者達。一切の疑いを持たぬ国民。
平和の礎を築くには確かに王は必要かも知れない。間違っている、とは言えない。
しかし、何処か疑問を抱いてしまう己は確かに此所に居る。
このもやもやとした気持ちの正体は、一体何なのだろう。
「お願いだから無理はしないでくれよ。君が休んだからと言って、誰も君を責めはしない。
 使命感を感じるのは悪くはないが、使命感に縛られるのは……死ぬよりもずっと、辛い。
 そういうものだよ。特に此所ではね。切羽詰まった人間から、順番に破滅していく」
アガーテはその言葉に僅かに俯き、両手の指を胸の前で絡ませる。
そんな事は分かっている。“でも、わたくしがしっかりしなければ”。
「ええ、それは理解しているつもり、です」
捩れた管が絡み合い、螺旋となり廊下を走る。
天井に伸びる数多の鉄パイプとチューブを見ながら、レイスは腰の獲物に手を掛けた。
「……ならいいんだがね。さ、行こうかアガーテ」
武器と呼ぶには余りにも頼りないそれに、心中で呆れた様に唸る。
こんな状態で、ネレイドに……あの悪魔にだけには、会いたくないものだ。



―――――――――――――



目に入る色彩が、さもまるで粘土で作ってあったかの様に、鈍い灰色へと変わる。
まるで己が万華鏡の中にでも放り出されたかの様に、周りの景色がぐにゃりと形を変える。
やがて変形した景色は幾何学的な模様に変貌を遂げ、己が平面世界に降り立ったかの様な幻想を差し出した。
突如、砂嵐が吹き荒れた様な喧しい音が頭を横殴りにする。
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 21:48:45 ID:QnDp3EQvO
支援
386グロリアは誰の亡骸に 11:2009/08/21(金) 21:52:37 ID:eLfk5J/EO
インパクトの瞬間に激しい画像の乱れ。意識が吹き飛びそうになるが何とか理性で抑える。
記憶のフラッシュバック。走馬燈よりも速い、光速の記憶の逆流が巻き起こる。
一生分の痛みが、悲しみが、一瞬の内に身体を締め付けて離そうとしない。
胸が……張り裂けそうだ。
ゆっくりと崩れ落ちてゆく、対極に立つ父親の後ろ姿。
飛び散った天使の羽根が緋色に染まる。具現する深い哀しみと重い後悔。
全身を蜂の巣にされた愛する男。脳漿は部屋に飛び散り、肉片は己の顔を覆い尽くす。
具現する強い憎しみと激しい憤怒。
迸る血が目の前を真紅に染め上げる。不謹慎だが、美しく残酷な紅だった。
嗚呼、と己を心の底から馬鹿にするように、愚母シゼルは唸った。
この景色を、感覚を自分は記憶している。意味する事を知っている。
そう。これを見せるは非物体世界、バテンカイトスの創造神。

……詰まるところが、ネレイドの支配の再来だ。
全てはネレイドが私に見せている幻想だ。この手の感覚も、目の前の景色も。
幻想だ。幻想なんだ。幻想だから、幻想であって、これは幻想で、つまり幻想、だから幻想で、そうだ幻想だッ!
澱んだ血と臓物の底無し沼に沈みながら、シゼルは叫んだ。これはまやかしだ、と。
こんな現実があって堪るものか。私は今、南西へ走っている途中なのだ。

“物質を呪え、さすれば救われん”。
……そうネレイドは、シゼルの耳元へと甘く語り掛ける。
物質が存在する故に、数多の感情は心の中で醜い産声を上げる。
身体を締め付ける哀しみも、胸を焼く怒りも、身を切り裂く寂しさも、全てが平等に。
物質さえ無ければバリルは死ななかっただろう。クラトスを殺してしまう事もなかっただろう。
ヒアデスも裏切りはしなかったし、今回リッドがあの道化師に殺される事も、なかった筈だ。
物質が無ければ世界を憎む呪詛の念も出なかったし、後悔に苛まれる事もなかった。
だが、とシゼルは血肉の海に溺れながら声を裏返し叫ぶ。
物質がなくなれば、男と過ごして得た楽しみも、娘と星を見た喜びも。
何もが等しく無かった事になる。全ては虚無へと帰す。
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 21:53:12 ID:APNEFo6BO
支援!
388グロリアは誰の亡骸に 12:2009/08/21(金) 21:55:44 ID:eLfk5J/EO
確かに辛い思い出はなくなるが、それが一番の哀しみではないのか、と。
“おもいで”は、決して失ってはならないものだ。
シゼルの右手が、ゆっくりと醜く蠢く臓物の隙間に沈みゆく。
底無し沼の遥か上空に浮かぶネレイドはその様を見、愚かなと唇の端を歪めた。
その娘をたかが快楽の為にお前と引き剥がしたのは誰だ。
……“物質世界の”道化師だ。そうであろう?
その男をたかが政治と私欲の為に葬ったのは誰だ。
……“物質世界の”愚かな人間共だ。そうであろう?
家族三人の“おもいで”を砕いたのは一体、何処の誰だ。
……“物質世界”そのものだ。そうであろう?
物質世界がなければお前は何も喪わずに済んだ。何も、嘆かずに済んだ。
馬鹿な、とシゼルは沼の中で強く唸った。物質世界があるから、こうして自分が居るのだと。
そうだ。何を言うかネレイドよ。何も難しい事はないではないか。
お前は、間違っているッ!
何故なら物質世界が無くなれば、一番大切な自分を喪うではないか!
自分自信が死ぬ事に等しい、その様な虚無世界にはッ! 用など、必要性など! 一切がないッ!
消えろ! 貴様とて、物質世界の私が居なければ存在し得ない!
所詮は私をそちら側に落とさなければ力を得られない、醜く儚い存在の悪魔よ、貴様の本質はなッ!
ひゃはははは、と嘲る声が遠く聞こえた。
酸欠により意識が遠のく中、水面の向こう側でぐにゃりと歪んだネレイドが、だからお前は莫迦なのだと嗤う。
ぐらり、とシゼルの眼球が焦点を失った。胸が苦しい。早く、呼吸を。

……まだだ。ネレイドはシゼルの呼吸器官に低く、しかしぴしゃりと素早く命令する。
まだ気を失うなよ戯けが。我が貴様に言いたい事の要は、これからだ。
先ず、だ。“物質世界が無くなれば、一番大切な自分を喪う”ゥ?
大層な御高説だ。実に正論。実に結構。素晴らしい綺麗事。
……ではここらで一つ訊こうか。なァ、シゼルよ。






―――貴様、今自分で“自分を殺して欲しい”と願っているんじゃあなかったのか?






……あ。
間抜けな声がシゼルの口から漏れた。ごぽ、と大きな泡が緋色の水面に揺れながら昇る。
ネレイドは水底に墜ちるシゼルを見下しながら、腹を抱えて哄笑する。
いい顔だ。絶望が見て取れる。気分はどうだ、宿主よ?
それでも物質世界が無くなれば一番大切な自分を喪う、などという戯言を言えるか?
389グロリアは誰の亡骸に 13:2009/08/21(金) 22:03:05 ID:eLfk5J/EO
決して言えはしまいなァ。よもや、それとこれとは話が別、とでもほざくつもりか?
絶望の表情を浮かべるシゼルに、ネレイドは嫌らしい笑みを消して無感情な表情を水面越しに向ける。
……調子に乗るなよ、この不幸の主人公気取りめが。
我が少々貴様を放し飼いにしたのをよい事に、都合の良い様に物事を解釈し、物質世界に拘る。
バリルを殺され、感情に支配され我を呼び出し、同調し。
その癖後出しじゃんけんで勝ったつもりで、のうのうと呆けて物質世界に生きている。
挙句我の力を駆使し優勝を目論み、その策の穴に気付いた途端に自殺を企てる愚かで下衆な女が。
そんな汚らわしい馬鹿女が、自殺をしようとしている癖、矢張り物質世界が良いと言う。
哀しみと恐怖に苛まれ、希望を自殺でしか見出だせない下衆が、バテンカイトスを拒むなどと宣うッ!
たかがフィブリルを持つ男一人の為にッ! さしたる覚悟も無い癖に!
娘の好いている男をッ! 殺すなどとふざけた事を吠えるッ!!

何もかもが砕けてゆく。自信も、希望も。創造神の言葉が、シゼルの何もかもを剥いでゆく。

……大層な自信家だなァ、のぅシゼルよ。
それらの自信は我の力から来ているとも知らずに良い御身分だな。
その間の抜け方は尊敬さえするぞ?
よもや、我が貴様の一部とでも思っているのではあるまいなァ?
自分が選ばれた人間にでもなったつもりなのか? 甘ったれるなよ小娘が。
馬鹿馬鹿しい。嗚呼馬鹿馬鹿しくて反吐が出る。
貴様は自分を正しいと、自分が全てだとッ! 信じて疑わない!!
浅学が恥ずかしくはないのか女、まるっきり世界を知らぬ莫迦の思考をひけらかしてッ!
まるでダークヒーロー気取りの糞餓鬼ッ、見ているだけで虫酸が走る!
自分が英雄や救世主にでもなったつもりか、神にでもなったつもりか? えェ?
実に都合が良い女! 卑しい女だ事よ!
そんな御目出度い頭のお前を馬鹿と言わず、愚かと言わず何と冠する!? 言ってみよ!!

あ、う、とシゼルは震える唇から声にすらならぬ出来損ないの音を漏らす。
満足に回答出来ないシゼルに、ネレイドは目を細めた。
シゼルの荒れに荒れた鼓動は酸素を欲するが、口からは血肉しか入らず、シゼルは刮目する。
くるしい。いやだ。だれか、だれか。たすけて。

良いか莫迦、気をしっかり持て。此所から重要な解だ。ネレイドは冷酷にそう言い放つ。
390グロリアは誰の亡骸に 14:2009/08/21(金) 22:12:40 ID:eLfk5J/EO
貴様が死んだのは何時だった? 答えは言うまでもなく、極光フリンジの最中だ。
では此所で一つ質問だ。何、心配するな。餓鬼でも解る単純な問題だ。
“その時、我はお前の中に居たか”?
シゼルはネレイドから目を離せなかった。恐怖に震える唇から、乾いた笑い声がけらけらと溢れる。
ネレイドは跡形も無く消え失せ、遂にオルバース爆動が始まって。
フィブリル、即ち極光同士でフリンジを試みていた娘達を手伝って。そして死んだ。
あれ? シゼルはけたけたと笑いながら漸く気付く。
そうだ、おかしいぞ。“ネレイドはあの時、私の中には居なかった”じゃあないか。

だが我は此所でお前に宿った。それが何故だか理解出来るか? ネレイドは喜々として質す。

―――貴様が、物質を呪ったからだ。

<別れは終わりではない。とこしえに想う事こそ、共にあるという事なのだ>。
これが貴様の信念だ。そうだなシゼルよ? だが、だ。だがしかし。
貴様は此所で一番最初に何を望んだ? ……ああ、想像の通りだ愚母シゼルよ。
物質世界での死を遂げた極光術士を蘇らせると! 娘にもう一度会わせる為にとッ!
あるか如何かすらも定かではない賞品に縋り! 何ともふざけた事を望んだッ!!
分かるかシゼルよ。貴様は貴様の信念を娘に教授した癖をして、その信念を私情で折ったのだ。
リッドとの別れが終わりだと、娘に聞きもせず! 思い込んで止まなかったッ!!
貴様は大きな間違いを犯した! 別れを終わりとは思わず、心が共にあると信じてさえ居れば!
信念を折らずに、弔い合戦に勤しんでおればッ!
最初から素直にそうしておれば我を呼ばずに、苦しまずに済んだ事だろうなァ!!?
……だが悲しいかな貴様自身は、奴が、リッド=ハーシェルが伏し絶望していた。
終わりだと思っていた。そうであろう違うか? 何も言えないであろう? 図星だからな。
“だから蘇生を願って鬼となる決意を固めた”ッ!!
さァて、莫迦な貴様でももう理解出来るな?
貴様の行動はなァ、単なるちゃちな現実逃避に過ぎなかったのだよ、シゼル。
そして物質世界からの逃避、それは即ち非物質世界、バテンカイトスへの逃避に同義ッ!
これが解だ、真実なのだよ、シゼル。我が貴様の中に最初から居たのではない。
“貴様は、貴様自身で我を再び望んだのだ”。

もう如何にでもなれ。知った事か、とシゼルは絶望の深淵に墜ちてゆく。
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 22:15:48 ID:9ZAPmbQRO
支援支援
392グロリアは誰の亡骸に 15:2009/08/21(金) 22:20:11 ID:eLfk5J/EO
信念を砕いたのは、ネレイドじゃあなかった。真逆、自分自身だったとは。
こいつはとんだ笑い種だ。

……知っているか? シゼルよ。知らぬなら教授してやろうぞ。
お前のような下らない戯言を抜かす人間の事をなァ。
……“無知”と!! そう言うのだッ!!!
許しを乞うたとて止めぬぞ!? 己の痛いまでの恥ずかしさを!
骨の髄まで、存分に知るがよいッ!!

まっくらだ。全てが暗転していく。その中でただ一つ、恍惚とした悪魔のかおだけが見える。
その視線が。
なにもかもを砕いてしまいそうな冷徹な言葉が、私のからだをようしゃなくつきさす。

無知は重大な罪なのだ、愚かな宿主よ。
見て知らぬ振りをする事と同じだ。言い訳には決してならぬ。
知らぬだけで、人は皆、同罪なのだ。知らぬが仏とは人も言ったものよなァ。
……余り良い気になるなよ我儘を抜かすメシア気取りの小娘めが。
貴様は罪人だ。理解したなら、物質を憎め! 世界を憎め!
貴様を罪人に仕立て上げたのは、他でもない。
セイファートの造り上げた世界、そのものなのだからな。
バテンカイトスは良い世界だぞ? 罪と罰が存在しない。差別もない。皆等しく平等だ。
さて、如何するシゼル。それでも貴様は死を目論むか? だとすれば此所が貴様の限界だ。
教えてやろうか?
――――――――――貴様に人は救えない。

あぁ、いっこくもはやく、レイシス=フォーマルハウトに会わなければ。
はやくしなければ、私がわたしではなくなる。
ネレイドにしはいされるまでに、一刻もはやく、レイシスにわたしを、殺してもらわなければ。

……そうだ。
早く走れ我が宿主よ。お前が急げば急ぐ程、我が天敵を殺す時間も早まるのだから、な。



―――――――――――――



嫌な予感がした。
何か、これから良くない事が起きようとしている。そんな気が先程からしていた。
根拠のない心配事か、柄にもないなとジルバは思う。
自分は“完璧”という言葉は好きではない。
が、この作戦にこれと言って穴は存在しない、とジルバは踏んでいた。
正直自信があると言っても過言ではないだろう。だからこそ釈然としない感情に腹が立った。
何処か煮え切らない思い、拠所のない不穏な予感。……癪だね、と心の中で呟く。
シャーリィという名の心配の種は、確かにあるにはあるが、シャーリィに行動能力はない。
393グロリアは誰の亡骸に 16:2009/08/21(金) 22:31:40 ID:eLfk5J/EO
徨髪人、メルネス。確かに驚異的な能力ではあるし古の爪術も大したものだ。
その絶大な力を聞いた時には本気で恐怖を隠し得なかった。
驚くべき潜在能力は正に一騎当千、正に人間兵器と言って正解だろう。
だがしかし此所には遺跡船は存在しない上、虚ろな瞳をしたこの少女は兄の言いなりだ。
セネルが決定的一言を言わない限りは、自ずから直接的な行動には出ないだろう。
即ち、危険ではあるが作戦を揺るがし得る脅威にはなり得ない駒。
……いや待て。
直接的行動には出れないのは確かだが、間接的行動には出れるのではないか?
この黒い予感は、よもや―――

「ジルバ」
自分を呼ぶ声に、ジルバは慌てて意識を覚醒させる。
慌てて視線をやると、声の主であるセネルは怪訝そうな表情を自分に向けていた。
一瞬血の気が引くが、この程度で自分の本心が分かる筈はない、と胸を無理矢理撫で下ろす。
「何でしょう?」
朗らかに応じたジルバを一瞥すると、セネルは溜息を吐いて笑ってみせた。
「おいおいそんなので大丈夫かよ? どうも上の空だったみたいだが」
お前の目は節穴か何かかい?
そこの何考えてるか分からない人間兵器の方が、よっぽど上の空で恐ろしいねェ。
本来ならそう返してやりたい気持ちは山々だが……結果が恐ろしくてとてもそうは言えない。
ジルバはすみません、と呟き、笑顔を崩さずに続ける事にした。
忍耐だけは慣れているし、自信がある。
あの糞我儘な恋する姫君に仕えてきたのだから、その程度身に付いていないと困るというものだ。
「ええ、心配なさらず。もしもの時の退路を考えていただけです。
 何分、砂漠の雪の原因が心配なもので」
これは本当だ。あの砂漠の雪、如何考えてもヴェイグ=リュングベルの仕業だろう。
矢張りクレア=べネットを殺されて発狂したか。
しかしこの範囲はフォルス暴走の影響としか考えられない。
巻き込まれるのは勘弁願いたいが……未だ雪が消えてないとなると、現時点では精神が正常ではない。
そう考えて良いだろう。何せこれだけの範囲だ。
大方探知に使用する為に残しているのだろうが、それにしたって余りにも範囲が馬鹿げている。
到底正気の沙汰とは思えない。
ティトレイ=クロウの様に既存の物を利用しての探知は上手く機能するが、雪は話が別だ。
ヴェイグ=リュングベルのそれは新たに生み出さねばならない。制御だけで手一杯だろう。
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 22:32:07 ID:APNEFo6BO
支援だ
395グロリアは誰の亡骸に 17:2009/08/21(金) 22:36:16 ID:eLfk5J/EO
精神力も徒に消費するし、何よりあからさまに怪し過ぎる。
そもそも砂漠に雪、という非現実性が愚かしい。目に付き過ぎて話にもならない。悪い事尽くめだ。
そしてヴェイグ=リュングベルの性格上、この様な悪手は追い詰められた際にしか打たない。
そしてヴェイグ=リュングベルは、追い詰められると周りが見えなくなる事が嘗ての行動から明白だ。
ならば、出会ったとしても高確率でやり込める。
例え己の悪事が奴の口から言われたとて、持ち前の演技力でカバー出来る。問題はない。
相手が暴走しているなら、総じて客観視された場合の発言は、信憑性が欠けて見えるものなのだから。
考えてもみろ。初対面の平静に欠けた人間の悪口、怯える仲間の否定。
例えその状況に置かれるのが自分であろうと、ほぼ確実に後者を信じるだろうよ。

「ならいいんだけどな。……でも、しっかりしてくれよ?」
皮肉の一つでも添えて返してやりたいな、とジルバは笑顔の裏側で頬の筋肉をひくつかせた。
しっかりして欲しいのは、そこに突っ立ってる殺人兵器だ。
こちらに背を向けたまま朝日を拝むシャーリィに、ジルバは徐に目線をやる。
そう、この何とも御目出度い恋する乙姫が、間接的行動を取り得る要素は充分にある。
ジルバは今まで以上に気を引き締め、シャーリィの些細な動作も見逃すまいと決意するのだった。

平原の先には、金色に輝く穏やかな海が広がっている。
シャーリィは事務的に足を進めつつ、テルクェスがまた一つ、島から消えた事を把握していた。
放った蝶は全部で10匹程度。メッセージはランダムにしてある。
西で引っ掛かった人間が、果たしてどのメッセージを見たのか、それはシャーリィの知るところではない。
そして、それは今し方引っ掛かった東の人間にも言える事だ。

これはシャーリィにとって懸けだった。
自分が手を染めるまでは、又は兄が手を染める決定的瞬間を見届けるまでは。
それまではまだ、シャーリィには自分が平静でいられるという確信があった。
即ち逆を言えば、してしまうか見てしまえば、平静を保てる確信はないという事だ。
随分と回り諄いやり口ではあるが、シャーリィは外的要素に助けを求めていた。
同時にシャーリィは、ギリギリの手段でギャンブルをし、“遊んでいた”。
会場を漂う純粋な狂気に僅かながら感染してしまったシャーリィは、
絶望の中にも懸けという楽しみを見出だす事で、希望的観測に興味と期待を委ねていたのだ。
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 22:39:27 ID:QnDp3EQvO
支援!
397グロリアは誰の亡骸に 18:2009/08/21(金) 22:41:46 ID:eLfk5J/EO
その手段が客観的立場から見るゲームであるならば、負けも勝ちも素直に楽しめるというもの。

「セネルさん、これを」
セネルはジルバの声に足を止め、差し出された探知機に視線をやる。
緑色の液晶画面に映る紅の点。……もう随分近い。
うん、とその様子を横目で伺っていたシャーリィは口内で唸る。
狩りが……最初のゲームが、始まる。
「そろそろ、草に身を隠して進もう。シャーリィは俺の側を離れるな。
 もう日も出掛かってるし、此所は余りにも見晴らしが良過ぎる」
ジルバはこくりと頷き、しゃがみながら目を凝らして前方を伺った。
草の間からは、地図にはない謎の岩山が見えた。が、罠……ではないだろう。
身を隠す為か? いやいや、罠の場合も考慮しなければ。
不安要素が居る以上失敗は許されない。
セネルの信頼を更に得る為にも、可能な限り短時間で、出来れば一撃で仕留めなければいけない。
しかし、とジルバは膝を右手で握る。しかし、セネル達に己の実力を見せ過ぎては駄目だ。
あくまでも、それ程強くもない人物として動かなければ。手の内を明かしたくはない。
ジルバは息を潜めつつ、爪を甘噛みする。癪だ、癪だね。殺り辛いったらないよ。
大体何だって、この私がこんな馬鹿兄妹なんかの為に!
……いやいや、分かってはいる。単純に、単独で優勝を目指すのは馬鹿のやる事だ。
弾除けと隠れ蓑は沢山あるに越した事はない。その為には今回の行動は必要不可欠。
ジルバは隣へとちらり、と目線をやる。草に身を潜めるセネルの目は真剣そのものだ。
「じゃあジルバ。先ずはあんたの作戦通りに陣術を……パワー・クラフトの追尾型を俺に」
ジルバは目線だけで頷き、蔓の鞭を葦と葦の隙間へと滑らせる。
シャーリィが無関心そうにそれを見守る中、ジルバは流れる様な動きで陣を描く。
みるみる内に幾何学模様が大地に浮かび上がり、やがて鮮血の様な紅の光が大地から溢れた。

「……パワー・クラフト」
力が、沸き上がる炎の如くセネル達の全身に滾る。
同時に体力が微量ながら回復してゆく感覚。
物理的攻撃力の上昇を確かめる様に両手を開閉すると、セネルは大きく息を吸った。
「よし。
 じゃあシャーリィも、予定通りテルクェス達をあいつらの上空に配置してくれ。
 それからシェルターを俺達に」
シャーリィはその言葉にこくりと頷き、空中にペンを走らせる。
その素直さがジルバには却って不気味に感じられて仕方がなかった。
398名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 22:44:56 ID:APNEFo6BO
しえん
399グロリアは誰の亡骸に 19:2009/08/21(金) 22:48:20 ID:eLfk5J/EO
そうしている間に、辺りの草むらが蒼い蝶に生め尽くされてゆく。
ジルバは眉を顰めた。一匹だけでは綺麗でも、これだけ多いと薄気味悪い。
……まるで死を運ぶ悪魔の蝶だねェ。ジルバは唇の端を吊り上げる。
緋色の朝焼けと反発する様に蒼く輝くテルクェスは、草の合間を素早く走り抜ける。
岩山の後ろ側から空へ飛翔すれば、奴等からは完全な死角だ。

「作戦の最終確認です、セネルさん」
シャーリィがシェルターを詠唱している中、ジルバは小声でそう切り出す。
まるで念を押す様な話し方だ、とシャーリィはシェルターを皆にかけながら思った。
「現在位置はD4。先ず、これから私はD4の塔方向に平原経由で向かいます。
 そうですね、これでも足には相当自信があるので10分以内。10分以内で充分です。
 その頃には奴等の背後の岩山に姿を隠せる。……こちらとしてはあの岩は嬉しい誤算です。
 次にセネルさんとシャーリィさんが、10分後にわざとあの二人へと姿を見せながら直進。
 但しセネルさんはD4の南東から、シャーリィさんはそれよりも僅かに北から。
 奴等がセネルさん方に気付いて警戒を始めた時、私は奴等の背後の岩影から、奇襲を仕掛けます。
 直後、セネルさんとシャーリィさんは全速力でこちらに走って下さい。
 同時に、少し間を置いてシャーリィさんは上空のテルクェスの弾丸を一気に奴等に降らせます。
 此処までは良いですか?」
ジルバは息を静かに吐き、セネルとシャーリィの反応を見る。
叢を駆け抜ける風に身体を預けながら、セネルは力強くジルバに頷いた。
シャーリィも力無く頷くが、何処か上の空な様子はジルバの精神を逆撫でる。
ジルバはそんな自分を叱責するかの様に小さく咳払いをすると、続けた。
「この時点で仕留めるのが一番ですが、仕留められなかった場合に備えて話を進めましょう。
 奴等はその時点で多少なり手傷を負い、パニックに陥るでしょう。
 D4の北側は岩山、東からはシャーリィさん、南東からはセネルさん、西からは私。
 そうなると、奴等の逃げ場は南西しかありません。
 真面な精神の持ち主ならば、朝方の寒い砂漠には逃げない筈です。
 しかし南西に逃げ場は皆無と言っても良いでしょう。これから禁止エリアも増えます。
 詰まり奴等は袋の鼠。無傷の私達は奴等に直ぐに追い付くでしょう。
 そこを三人掛かりで殺ります」
ジルバはそこで一息吐くと、大きく息を吸い続ける。
400グロリアは誰の亡骸に 20:2009/08/21(金) 22:54:12 ID:eLfk5J/EO
「但し、勘違いをされない様に。これはあくまでも最善の場合です。
 極端な話、成功には何の保証もないと言って良いでしょう。
 仮に何らかの問題が生じた場合、随時三人で連携を取り、その場で最善の策を練る。
 分かりましたか?」
「無茶は禁物、って事だな。分かった、もしもの場合作戦はお前に任せるよ」
ふぅ、とジルバは一息吐く。何とか、成功させたいものだ。
ちらり、とシャーリィを見る。大丈夫だ、と願いたい。

「……。ええ、ありがとうございます。では後程」
走り去ったジルバを見届けると、セネルは懐の海中時計を開く。長針は5を刻んでいた。
あと10分だ
401グロリアは誰の亡骸に 21:2009/08/21(金) 22:58:48 ID:eLfk5J/EO
から、長針が15を刺したら行動開始、か。
10分。長い様で短く、短い様で長い時間だな。
セネルは軽く舌を打つと、拳をぎゅうと握った。
相手がチャットでなくて、クロエ達でなくて良かった……そう思ってしまった自分が居る。
まだまだ俺は甘い、って事か。セネルはすうと息を吸い込むと、奥歯を軋ませた。
「……シャーリィ、大丈夫か?」
心配するなら自分だろ、とセネルは思わず吹き出してしまいそうになる。
何の気無しに問うたその言葉に、シャーリィは大丈夫と微笑んでみせた。
……何聞いてんだろうな、俺は。
暫くしてセネルは懐中時計へと視線を落とす。照り付ける日差しが生暖かい。
時計は長針は、セネルの覚悟を確かめるかの様に、丁度15を指し示していた。



―――――――――――――



「クラトスさんの死体は埋めてあげられない、な」
はは、とカイウスは力無く笑う。何とも情けない話だ。
自分を守ってくれた人を、守ったが故に亡くなった人を、埋葬してあげられないだなんて。
息を吸う。朝特有のひんやりと澄んでいる空気が肺に満ちた。
「そうですね。それも仕方無いんですけど」
仕方無い、か。
カイウスは苦々しい笑みを浮かべる。そうやって割り切れれば、どれだけ幸せな事か。
カイウスは膝を折り、もう一度だけクラトスの手を強く握った。
何という仕打ちだろう?
オレはオレの為だけに、これからも色んなものを見捨てて行くのか。卑怯が過ぎる。
「謝って済むもんじゃあないと思ってます。でも、ごめんなさいクラトスさん。
 オレは貴方とは違うから、少しだけ卑怯な道を行く事になると思います」
懺悔? 報告? いや、きっと違う。
カイウスは冷たくなったクラトスの手の感触を確かめる様に、更に強く握る。
チェルシーはエクスカリバーをよろけながら拾い上げると、カイウスの小さな背を見下ろした。
カイウスは己を嘲る様に二、三笑うと、クラトスの両手を優しく胸元で合わせる。
どうか今は、安らかな眠りを。カイウスは心の中でそう呟き、素早く立ち上がる。
……そう、これは決別だ。今までとの決別。だから、許しは要らない。乞わない。

「そんなオレを、貴方を野晒しにして去るオレを、許してくれますか?」

402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:00:40 ID:0u7hT7V6O
支援!
403グロリアは誰の亡骸に 22:2009/08/21(金) 23:03:06 ID:eLfk5J/EO
言い終わって直ぐに、背を向ける。答えは全く期待していなかった。
強いて望んでいた事と言えば、その疑問に対して答えが告げられない事だった。
許されざる道だと確かめる様に、カイウスは力強く息を吐き出す。
これで良い。
「チェルシー、行こう」

そう呟いた直後だった。海まで続く地平線の上に、二人の男女を発見したのは。
まるでその二人は、絵画の中に貼られた写真の様に景色から不自然に浮かんでいた。
思わず身構え、カイウスは目を凝らす。嘘だろ。何時の間に?
冷たい風がカイウスの猫っ毛を撫でた。つう、と塩辛い滴が顎へと伝う。
“来た”。本能が警鐘を鳴らす。あれは、アイツらは、違う。
紛れもない……オレ達を狩りに来た本物の敵なんだ、と。
「チェルシー気を付けろ。奴等、殺る気だ」
隣のチェルシーの斜め前に足を進め、カイウスは静かに呟いた。
その双眸はずっと前方を見据えたままだ。
カイウスは心臓の高鳴りを抑える様に深呼吸を繰り越し、視線のみで素早く辺りを見渡す。
辺りには誰も居ない。つまり敵はあの男と女だけか。嫌にゆっくり歩いて来てるな。
距離は? 500、400……いや違う、目算だけど350かそこらか。
拙いな。如何する。時間が無い。あの距離から走られたら何秒だ? 逃げるか?
……ん?
カイウスは髪を靡かせながら向こうに立つ男女を凝視して思う。待てよ、と。
口を半開きにしたまま、背の大剣の柄に手を掛けたまま、カイウスの視界はセピア色に染まった。
きゅるきゅると映像が時間を逆行する。網膜の裏側に映し出されるのは例の蝶。
おかしい。
おかしい。
何か、おかしい。
カイウスは絶句した。歯車が噛み合わない。これが虫の予感、ってヤツか?
あの蝶のメッセージが正しいなら。いやいや正しいなら何だってんだ?
そうだ。敵はあの二人……二人? あれ? いやいやそれがおかしいんだろう?
だって敵の数は確か、



「最低三人、だったじゃないか」



莫迦みたく口を開け、カイウスは力無くそう零した。脳髄が狂った様に電気信号を送る。
逃げろ。震える喉は瞬間的にそう叫ぶ。上がった声は獣の啼き声に近かった。
焼ける様な痛みを声帯に感じながら、カイウスは思い切り地面を蹴り上げ、チェルシーの肩を抱く。
―――死にたいのはどいつだい?
瞬間、耳元で確かにそう聞こえた。刹那的にカイウスは全身の毛という毛を立てる。
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:09:17 ID:ZJtepKZJO
支援
405グロリアは誰の亡骸に 23:2009/08/21(金) 23:10:45 ID:eLfk5J/EO
誰のだよ、この声。何だよ、その言葉。
待てって。オレ、まだ死にたくなんかねェってば。
「あ……」
まるで自分がそいつの掌の上で踊らされている様な。力の差を一瞬で感じさせる様な。
そんな、何もかもを腐敗させてしまいそうな狂気に染まった甘ったるい声色が、鼓膜を突き刺す。
コンマ一秒にも満たぬ瞬間に、魔力が収束してゆく。その隙間から覗く殺気は圧倒的。
カイウスは制止したまま眼球をぐるりと回した。理解したからだ。“これは手加減だ”と。
こいつの魔力はこんなもんじゃあない。いや、これも確かに充分すごい魔力だ。
けど、こいつの本気はこんなもんじゃない。大体何だよ、その桁違いの殺気と覇気。
ふざけてんなよ、畜生。なんだって毎回毎回、化け物相手に戦わなくちゃいけないんだよ。
眼球がそれを補足する。ねっとりとした嫌らしい笑みが、岩影に浮かぶ様子を。
見た事もない様な笑みを浮かべるそいつに、カイウスは強い既視感を覚えた。
そう、カイウスには見えたのだ。
まるでシゼルの背後に張り付く黒い霧の様に……そいつの身体に纏わり付いて離れない、負の悪魔が。

「―――シャイニングレイ!」
眩い聖光の雨が、地面を蹴り上げたまま静止したカイウスと、その腕に抱かれたチェルシーを打つ。
瞬く間に数十の光柱はカイウス達の姿を閉じ込め、濃い砂埃を平原に巻き上げた。
迸る鮮血と、光熱に焼けた肉がジルバの足元に飛び散る。

「先ず、一人」

ジルバは足元の肉片を踏み潰すと、まるでそれが義務か何かの様に事務的に呟いた。
黄塵万丈たる大地。血液が蒸発する際の生臭さが、辺りを包み込む。
朝焼けで赤く染まった大空を更に濃い赤で上塗りしながら、裁きの光は地を喰らっていた。
「合図だ。行くぞシャーリィッ!」
一方、光の雨の発生源から東、250メートル地点。
セネル=クーリッジは雄叫びを上げながら大地を蹴り上げた。その足元には、緋色の魔陣。
呼ばれた妹、シャーリィ=フェンネスもこの時ばかりは強く頷き、兄に続く。
そう、お兄ちゃんが行くぞと言ったなら行かないと駄目なのだ。
何せこの身体は、お兄ちゃんに捧げたのだから。そう、私はお兄ちゃんのもの。
シャーリィは力強く足を踏み躙り、前へと駆ける。頬を切る風が本当に心地良い。
「お兄ちゃんの為なら、何だってやるんだもん」
殺しに勤しむ兄の背は中途半端な大きさで、
頼りになるのかならないのかシャーリィにはさっぱり区別がつかなかった。
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:14:20 ID:APNEFo6BO
支援
407グロリアは誰の亡骸に 24:2009/08/21(金) 23:15:39 ID:eLfk5J/EO
それでも、導く姿は変わらない。道を切り開く背は変わらない。
それが例え、何処に通じる道であろうとも。

迸る眩い閃光の残滓に目を細め、ジルバは隠そうともせず舌を打った。
衝撃に舞い上がった一人分の血肉は、光の代替と言わんばかりにその場に降り注ぐ。
そう。詰まりそれが意味するのは、確実に一人は仕留めたという現実。
従って本来、ジルバは喜ぶべきなのだ。何せ傷一つ負う事無く人を一人殺めたのだから。
剰え仕留めたその一人は、ジルバさえ知らないものの対主催寄りの前衛型参加者だ。
その功績は策士として、いやマーダーとしても充分に誇って良いものだろう。
しかし、ジルバは現実に苛立ちを禁じ得なかった。
その要因は二つある。
一つ、“本来なら先の一撃で二人仕留めたかった”。
記憶が正しければカイウス=クオールズとチェルシー=トーンだったか、兎に角二人は子供だった。
たかがそんな雑魚二人、仕留め切れないで何としようか。策士の名が廃るだけだ。
ジルバは舞い上がる煙を見つつ眉間に皺を寄せる。真逆仕留め切れないとは思っていなかった。
いや、別にセネル達が居るから良いと言えば良い。
だが、そもそも未だ迷いがあるセネルに人殺しは荷が重いのだ。
セネルが冷たく徹する事が可能な人間かと問われれば、ジルバは迷わずノーと答えるだろう。
セネルは甘い。はっきり言ってマーダーには不向きだ。それが最も現実的な意見だった。
極論を言えば、シャーリィと同じようにセネルも不安定要素なのだ。
故にジルバは、単騎且つ無傷、手加減状態での二人同時撃破を目論んだ。
ところが現実は如何だろうか? ジルバは仕留め損ないを、策の変更を転じ得なかった。
策士であるジルバにとって、それは腸が煮えくり返るにも同義だったのだ。
さて、では次は二つ目。


「――――――――――残念だったな、オレ達が死んでなくてさ。
 で、お前はレイモーンの民なのか? 目的は何だ!?」


“よもや二人とも生きていようとは、少しも思いはしなかった”。
ジルバは右手で掴んだ鞭を左掌に叩き付け、ぬうと唸った。何故生きている、と。
レイモーンの民? そんなものは如何でも良い。
私はお前達が今、此処に立っている事が我慢ならないだけなのだ。

「癪だねェ。癪だよカイウス=クオールズ、チェルシー=トーン」
シャイニングレイの土煙のお陰で、セネル達からジルバは見えない。
408名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:16:19 ID:0u7hT7V6O
支援支援
409グロリアは誰の亡骸に 25:2009/08/21(金) 23:20:28 ID:eLfk5J/EO
丁度良い、とジルバは鼻で笑う。ストレス発散といこうじゃァないか。
ジルバは決してセネル達には見せぬ醜悪な表情を浮かべ、カイウスを鋭い目で睨んだ。
あぁそうか。ジルバは記憶を辿り納得する。何処か見た事があると思ったら。
そうか、こいつがルビア=ナトウィックが言っていた王子様、カイウス=クオールズか。
どうやらお前はとことん私を苛つかせるのが好きみたいだねェ、ルビア?

「真逆、転がる死体を盾にして身体を光線から守るとはねェ。
 一々小賢しいんだよ、糞餓鬼と小娘風情がッ!!」
カイウスはチェルシーを抱き寄せたまま、自らに覆い被さるクラトスの死体を退す。
間一髪だった。あと二秒、いやもしかすると一秒遅ければ蜂の巣だったかも知れない。
カイウスは険しい表情で横たわる骸を見た。損傷が激し過ぎて、最早原型すら止めていない。
全身を蜂の巣にされたクラトスは、クラトスではなく単なる骨に繋がれた肉塊と化していた。
ハハ、信じられるか? これ、オレがやったんだぜ?
嘗ての言葉が脳裏に蘇る。これは死者に鞭を打つどころの話ではない。単なる鬼畜の諸行だ。
だが、こうする他に選択肢はなかった。オレ達が生きるには仕方がなかった。
カイウスはクラトスに向かいすみません、と低く呟くと、苛立ちを隠そうともしないジルバを見据えた。
……マオが言っていた人物に似ているな。
「レイモーンの民か如何かは、この際もう関係ない。
 兎に角だ、お前達があの蝶が言ってた奴等だな」
な、とジルバは不敵な笑みを強張らせた。筋肉が一瞬の内に凍て付いて動こうとしない。
……何? 蝶が何だって? 奴等、とは何だ? 如何いう意味だ?
い、いや俄かには信じ難い。そんな筈はない、と思う。
だがしかし確かに、光速のシャイニングレイに反応など……いや……。
しかし、そう言われれば私に気付くタイミングも異様に早かった。
だが馬鹿な、そんな真逆。有り得ない……ッ!
びちゃり、と血の海に飛び散った脳味噌が着水する。ジルバはゆっくりと目線を地元に這わせた。
自分の顔は酷く強張っている。憂慮していた事態が、起きてしまったのか?
「あの妹が三人目の存在を教えてくれなきゃ、オレはお前に気付けなかったし、術にも反応出来なかった。
 だから感謝はしてやるさ。でも、オレ達を襲った時点でもう妹も兄もお前らも、敵だッ!」
その言葉が決定打だった。今まで積み上げた計画ががらがらと音を立てて崩れ落ちる。
410名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:22:27 ID:QnDp3EQvO
支援
411グロリアは誰の亡骸に 26:2009/08/21(金) 23:25:03 ID:eLfk5J/EO
カイウスの声にジルバは肩をわなわなと震わせた。
おのれ小生意気なメルネスめ、私とした事が。
いや確かに、テルクェスは形状変化が可能だとは聞いていた。しかしながら盲点ッ!
ジルバの中で怒りと焦燥が膨れ上がる。何故そこに目が行かなかった?
少し考えれば分かる事だった。
シャーリィが取れる行動の内、何かを仕掛けられるのはそこしかないだろうに!
糞ッ。そういう事かァ、それこそが“間接的行動”ッ!
待て、それならばテルクェスの配置図は全くアテにならないのではないか!?
忌々しいッ、おのれシャーリィ……シャーリィ=フェンネスゥッ!
貴様ァ……何処まで言いやがったァ? いけ好かないヒューマの小娘めがァ……!
あの屑め、ヒトが黙ってれば勝手に付け上がりやがってえぇぇぇェッ!
……殺すか? 殺すのは簡単だ。後ろから油断したところを刺せば良い。
又は月のフォルスを使えば完璧だろうな。今直ぐ殺してしまうか?
何ならセネルも殺してしまおうか。あの糞憎たらしい馬鹿娘が、余計な真似をッ!
ジルバは震える肩から下がった懐中時計を一瞥しながら、憎しみに拳を握る。
しかし6秒経過している。あと4秒だ。
冷静になれ。此処は冷静になるんだジルバ=マディガン。
怒りに身を任せている場合か? 持ち直せ、全てを喪うには未だ随分と早い。
時間を稼げ。バレたかも知れない情報の事はこいつを殺してから考えればいい。
ジルバは血の海に映るそれから視線と顔を上げる。
晴れゆく土煙の向こう側に、金色の太陽が全身を覗かせていた。あと3秒。

「さァて。お仕置の時間だよ、カイウス=クオールズ。
 貴様もルビア=ナトウィックの元へ……冥土へと送ってやろう」

ルビアの元へ、冥土へ、だと? 何だそれ。嘘だよな? 聞き間違いだよな?
カイウスの全身がびくんと揺れる。硬直する筋肉。開かれる瞳孔。
は、と半笑いの声を零し、カイウスは今にも崩れてしまいそうな表情をジルバに向けた。
冗談だろ、と両手をだらりと下げるカイウス。足元には虹色の脂を浮かべる赤い水面。
カイウスへと右手を向け笑っているジルバ。被弾まであと2秒。
「な……なん、だって?」
歪んだ唇からひゅうと息を吐くジルバ。ゆっくりと右手に収束する光。
動きを止めたカイウスの後ろで項垂れているチェルシー。僅かに肩を動かすが、誰も気付かない。
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:27:19 ID:xTadSjrSO
支援
413グロリアは誰の亡骸に 27:2009/08/21(金) 23:28:55 ID:eLfk5J/EO
ジルバの掌から放たれる、圧縮された魔光。咄嗟にカイウスを押し倒すチェルシー。
鞭の様に滑らかに撓った光線が、チェルシーの肩当てを貫き背後の岩肌を深く抉る。
飛び散る岩石と血飛沫、遠く走る二人。目を細め舌を打つジルバ。
苦悶に顔を歪めるチェルシーの左手にはサックが握られている。
痛みを堪え、横目で赤い水面を確認するチェルシー。右手には弓が握られている。
上空105メートル、重力加速度を見方に付けた秒速、優に97メートル。
真紅の海を求める様に突進む、蒼い弾丸。タイム・リミットまで、残り1秒フラット。
「ルビア=ナトウィックは腕を飛ばされて毒を飲まされた挙句、顔面を抉られ死んださ。
 それはそれは無惨で最高に笑える、憐れな最期だったねェ」
絶望に打ち拉がれ、焦点を合わせられないカイウス。水面に映る光を見つめるチェルシー。
絶妙なタイミングでバックステップをし、冥土の土産にとカイウスに告げるジルバ。

「まァ、勿論この私が直々に消してやったんだけどね」

「う、ぁ」
チェルシーは二人が会話している間、ずっと黙って項垂れていた。
クラトスの亡骸を、飛び散った臓物を、血の海を見ていた。
ジルバは瑕疵に気付かない。上を向かねば分からぬという固定観念があったからだ。
「気分は如何だい? 憎いか? 辛いか苦しいか? 私をそんなに殺したいかッ!?」
カイウスはチェルシーに押された勢いで血の海にダイブさせられながら、牙を剥き出しにする。
怒りが身体を駆け巡る。憎しみが四肢を支配する。悲しみが滴となって溢れ出す。

「うぅ、うおおぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあァァッ!!
 きッさまあぁぁぁぁァァァァァァァァァッ!!」
かっ、と世界が閃光に抱擁される。カカカ、とヒューマの感情を嗤うジルバ。
瞬間、チェルシーは空を仰ぐ。些か早い蒼穹が、誰かを黄昏色に染め上げんと訪れる。



「10秒、フラット。今度こそ蜂の巣になって死ね」



彼方を走るはセネルとシャーリィ。今から語る物語は、チェルシーが空を見上げる少し前のお話。
数値にして上空902メートル。シャーリィは駆けながらテルクェスを手操で大地に急降下させる。
10秒。10秒で可及的高位置からテルクェスを落下させる事。
それがジルバの提示した条件。シャーリィは潔くそれを呑んだ。別段難しい事ではないからだ。
414名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:31:35 ID:xTadSjrSO
しえん
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:33:06 ID:ZJtepKZJO
支援。
416グロリアは誰の亡骸に 28:2009/08/21(金) 23:33:41 ID:eLfk5J/EO
空気抵抗と障害物さえなければ、時速200キロメートル前後は余裕で維持可能だろう、とシャーリィは踏む。
それ故の空気抵抗とテルクェスの同時複数操作、重力加速度等を考慮して約900メートル。
同刻。シャーリィの遥か前方、やや南を走るは魔陣にロック・オンされているセネル。
パワー・クラフトの恩恵に更に剛招来を重ねたセネルの筋力は、最早常識を逸脱していた。
セネルは身体に当たる風の重さに思わず息を吐く。
速度が変化すれば、これだけ空気抵抗も連動して変化するものだったとは。
セネルの一蹴りで、その双眸から認められる景色はがらりと変わる。
ばさばさと激しく流れる髪の毛に目を細め、セネルは不思議な感覚だ、と思った。
本人でさえ困惑を隠し切れない、超スピード。まるでスーパーカーにでもなった気分だ。
あっという間にシャーリィを引き離し、セネルは先ず最初に土煙に突っ込む。
セネルは砂塵に更に目を細めながら爪を輝かせた。準備は疾うに万端だ。
この時、カイウスまでの距離は残り約100メートル。
セネルは覚悟を決める様に、また一歩強く踏み出すのだった。
同刻。シャーリィはテルクェスが地表から3メートル弱の位置にある事を把握していた。
最早迷いさえ通じない、止めようのない距離。テルクェスの速度も疾うに調整不可能だ。
シャーリィは笑っていた。終末の時計は動き出した。もう誰にも止められはしない。
賽は、投げられたのだ。
「ディス<2>、ウィス<1>」
ベットは人間の命。ゲーム内容は鬼ごっこ。
貴方達には、これでも割と期待してるんだからね?
「―――――――――――――――ツィス<0>」


数十のテルクェスが、死を運ぶ蝶達が、蒼い弾丸となって大地に降り注いだ瞬間だった。


速度、数、範囲、威力。チェルシーだけがそれらにはっきりと気付いていた。
血の水面に反射した不自然な光源が、チェルシーに場違いな流星群の存在を教えていたのだ。
それがジルバの誤算だった。カイウスとシャーリィにばかりとらわれた故の瑕疵。
もしもジルバが想定外の、シャーリィ裏切りの可能性を示唆する情報を知らなければ。
或いは、その瑕疵に気付く事が出来たかもしれない。が、今となっては後の祭りだった。
怒りに我を忘れて暴れるカイウスを余所に、立ち上がったチェルシーは弦を天に向けて素早く引く。
肉を削がれた肩がずきりと痛んだが、今はそれどころではない。
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:38:01 ID:xTadSjrSO
乱戦wktk
418グロリアは誰の亡骸に29:2009/08/21(金) 23:38:07 ID:eLfk5J/EO
肩は後から如何とでもなる。しかし全身穴だらけだけは如何にもならない。
チェルシーは歯を食い縛る。流れ出る生暖かい鮮血は、腹まで伝っていた。
しかし泣いてはいられない。
虚ろな瞳は、しかし持ち前の胴体視力を以てテルクェスの銃弾一発一発を補足していた。
全く、クラトスさんにはずっと御世話になってばかりですね、とチェルシーは頬を膨らませる。
生きている時も去る事ながら、死んだ後もなのだから。そうなるともう頭も上がらない。
シャイニングレイなる術から身を呈して守ってくれ、更には血であの流れ星を教えてくれた。
一度ならず二度までも助けてくれたのだ。
これは果たして単なる偶然と言えるのだろうか。チェルシーは目を細め、狙いを定める。
しかし偶然であれ必然であれ、そろそろその想いに応えなければ、幾ら何でも拙いというものだ。

チェルシーは表情を崩さず、天を見据えた。左手から眩い晶力が放出される。
矢は必要ない。極限まで練られた晶力は、自ずと矢を形作り死の螺旋を描くだろう。
チェルシーの中の深く暗い闇が光の結晶として具現する。
本来闇と対極にある筈の純白の光は、しかし本質的な部分が漆黒に酷似している。
全てを染め上げる白、そこには何も存在しない。
全てを染め上げる黒、そこにも何も存在しない。
そこからは色も派生しない。白と黒の前には、全て虚無に等しい存在なのだ。
綺麗な流れ星だ、とチェルシーは思った。あんな流れ星にも御利益はあるのだろうか?
だとすれば、自分は被弾するまでに何を願うだろう。
んー、とチェルシーは考える。しかし何も思い付かない。ロマンが無い女だなぁ、と自嘲。
私の望みって……何だったっけ?

チェルシーはぱちん、と指先を弾いた。額から汗が飛び散る。
びぃん、と弦は情けなく鳴き声を上げた。肩が熱を持った様に痛む。
闇の光を解き放った左手を、弓を握った右手を、チェルシーはゆっくりと下ろした。
生きろ、と間接的に二度も言われたんだ。
ならば一度くらい、醜く生きてやったっていいじゃあないか。



「……螺旋の一撃」



集った純白の魔光が、晶力を吸い取って猛々しい螺旋を生み出す。
迷いと疑問を飲み込み、全てを白く染め上げる光がチェルシーを照らす。
チェルシーは胸裏で苦笑を浮かべた。まるで、自分が白に浮かび上がる黒い染みの様だ。
捩れた四つの白は、真直ぐに突き抜ける真空の衝撃波の周囲を回転し、触れる物全てを粉砕する。
419名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:40:25 ID:0u7hT7V6O
支援
420グロリアは誰の亡骸に 30:2009/08/21(金) 23:41:27 ID:eLfk5J/EO
その螺旋は、一発と呼ぶには余りにも言葉が足りな過ぎるだろう。そう、正にそれは一撃。
全てを砕く、螺旋の一撃だ。

耳を劈く様な高音が世界を裂いた。それはまるで、空を切る蝶の嘆き。
血の海にその美しい命を儚く散らす、蝶の悲しみの声の様だった。
大地を弾丸が貫き抉る爆音。次々に弾け潰れたテルクェスは、魔力の火花を血肉に降らせる。
その内側で、その中心で。螺旋を描く白だけが、終焉の紅から逃げる様に天へ天へと昇っていた。
カイウスは少女の背をぽかんと見る。
それは今までに見たどの少女の背よりも、遥かに大きく見えた背だった。
輝く螺旋が蒼の弾丸を砕き進む。
凛と澄んだ悠久の大空を目指し、その一撃は雲を割り、薄い双月の方へと駆け抜けていた。
まるで今までの騒ぎが嘘だったのではと疑問に感じるくらいに、世界は驚く程静かに構える。
ジルバは、蒼の段幕の中心から驚異的な威力を持つ一閃が立ち上ぼる様に圧倒されていた。
心の闇が生み出す闇の晶力。普段のチェルシーからは想像出来ぬ破壊力を秘めた一撃。
名状し難い怒りがジルバの胃の底からふつふつと沸き上がる。

状況を漸く把握したカイウスは、余りにも大き過ぎる音と余りにも眩し過ぎる光に目を丸くしていた。
荒れ狂う怒りは何時の間にやら収まっている。
これだけ浮き世離れした世界を見させられれば、頭も冷えるというものだ。
カイウスは振動する空気と大地に息を呑むと、ぽつんと立つチェルシーを見上げた。
肩当てが弾け飛び、露になった白い左肩からは血が流れている。
「チェルシー、これって……? い、いやそれよりもその傷はッ」
チェルシーは震える声でそう呟くカイウスに一瞥もくれず、弓を素早く東に向ける。
テルクェスのベールの向こう側、確かに感じる黒い気配を討つ為だ。
痛みに震えているチェルシーの左腕。カイウスは己の心がずきりと痛むのを感じた。
何処かの馬鹿の不甲斐なさには心底胸が詰まりそうになる。カイウスはそいつを軽蔑した。
「チェルシー……」
虚ろな瞳を仕舞う様に瞼が下り、鬱積と共に闇が膨れ上がる。
底を無くした様な漆黒がチェルシーの左手に集う。何時もの紫色ではない。
そんな薄さでは、このベールでさえも貫けはしないだろう。
煮詰まった闇の晶力が、一本の鋭い矢を具現する。
槍にも似た漆黒の矢。それは正に天を滅殺し、全てを煉獄に追いやる死神の一投。

「死天滅殺」
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:43:22 ID:skd1e2VO0
支援
422グロリアは誰の亡骸に 31:2009/08/21(金) 23:44:50 ID:eLfk5J/EO
ぼそりとそう呟き、チェルシーは矢を解き放つ。真直ぐに揃った前髪はふわりと揺れた。
ぎゅる、と周囲の影が漆黒の矢へと吸い寄せられる。
さながら命の躍動を、心臓の鼓動を求める猛獣の如く、それは蒼いカーテンを神速で喰い破った。

「……何だ!?」

テルクェスの滝が、まるで横殴りにされたかの様に弾かれた瞬間、セネルは急ブレーキをかけた。
砕け散ったテルクェスの残滓と土煙が、視界を遮る。セネルは腕を眼前でクロスし、舌を打った。
「お兄ちゃん、危ない!」
「え?」
耳を打つ甲高い悲鳴に近い声。
セネルの前方やや左下から、土煙のカーテンを迷彩にしていた神速の一撃が現われる。
「しまッ」
死角だった。セネルはクロスした腕の隙間から、弧を描きながら迫るそれに気付く。
咄嗟に身体を右に捩るが、悲しいかな対処が遅過ぎた。
皮肉にもジルバのシャイニングレイとシャーリィのテルクェスによる砂塵が、発見の邪魔をしたのだ。
セネルに手を伸ばすシャーリィ。どつん、と鈍い音が耳に入る。
セネルの左太腿に強い衝撃が走った。続け様に二、三の衝撃が左横腹に響く。
苦悶の表情を浮かべるセネル。凄まじい絶叫が轟音の中を谺した。
「お兄ちゃんッ!?」
シャーリィはセネルに駆け寄り、その傷を見て血の気が引いた。
長さ約45センチメートル漆黒の槍がセネルの太腿を深々と貫き、
小さな黒刃は横腹に浅くではあるが食い込んでいる。
シェルターをかけていた筈なのに、とシャーリィは唸った。
それだけこの矢の殺傷能力が高いという証拠だ。もしもシェルターをしていなければ……。
シャーリィは直ぐさまキュアを唱えながら、強い怒りと憎しみを覚えた。
私の所為、いや違う。アイツらの所為だ。アイツらが抵抗なんかするからいけないんだ。
私は悪くないわ。私は悪くない! お兄ちゃんがこうなったのは私のテルクェスのメッセージの所為じゃない!
「キュア!」
だから私は悪くない。私は遊んでただけだもん。なのに何よこの仕打ち。
私を助けもせずにお兄ちゃんを傷付けて。意味わかんないわよ。
お兄ちゃんは何もしてないじゃない。
そう、そうよ。本当に悪いのは私じゃない。悪いのは……!

「―――大人しく殺されないアンタ達の方じゃないッ!」

423名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:44:58 ID:ZJtepKZJO
チェルシーカッコよすぎだろ
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:46:37 ID:APNEFo6BO
うおおおおお!!盛り上がってきたwww
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:46:49 ID:xTadSjrSO
支援
426グロリアは誰の亡骸に 32:2009/08/21(金) 23:48:58 ID:eLfk5J/EO
シャーリィは煙を睨み、怒りに身を任せて術を唱える。震えた指先が怪しく光った。
怒りは大気を紅く染め、シャーリィの周りに陣を描く。
「許さない……ファイアボール!」
数多の古の炎弾が、敵を灰燼に帰すべく空を駆けた。

「……立って下さい。逃げますよカイウスさん」
チェルシーは死天滅殺弓を打ち終えると、カイウスへと視線をシフトさせそう告げた。
チェルシーの力に呆気に取られていたカイウスは言葉を失う。理屈では分かっている。
そうだ。生きる為には逃げなければいけない。だがしかし。
「一緒に、生きるんでしょう? なら早く私を守って下さいよぅ」
守る? チェルシーを? このオレが?
テルクェスの集中豪雨が漸く止む。カイウスは視線だけで辺りを見渡した。
自分達を中心に、リング状の深い溝が出来ている。
喰らえば蜂の巣では済まなかったろう。こんな出鱈目な攻撃を受ければ、跡形も無くなってしまう。
カイウスの顔面が蒼白と化す。チェルシーに助けられなければ死んでいた。確実に。
今だけじゃない、さっきだってそうだったじゃないか。
チェルシーが助けなければ、ジルバの出した光線でオレは死んでいた筈だ。
偉そうに何かを吠える割に、オレって本当はずっと誰かに守られてるだけじゃあないのか?
全部、単なる大言壮語だったんじゃないのか?
何でオレは無傷なんだ? 何でオレだけ何時もこうなんだ?
クラトスさんはオレを守ってで亡くなった。チェルシーはオレを守って傷付いてる。
ルビアはオレが守れず何処かで、アイツにッ……殺されたッ!
なんて格好悪いんだ。本当にこんなオレがチェルシーを守る事が出来るのか?
カイウスはチェルシーの肩を見る。溢れた血は腕を伝い、指先から滴っていた。
思わずカイウスは身震いする。ふざけろよ。何なんだオレは!? 無様過ぎるじゃないか!
でも本当に逃げられるのか? こんな出鱈目な奴等から? 方法は? 策は? 勝算は!?
……そんなものは何処にもないだろうッ!!?
カイウスは立ち上がる。額に浮いた汗が髪を張り付ける。早く、時間がない。でも。
「で、でも……ル、ルビアの敵を、取らないと」
カイウスは、叶わぬと知りながら駄々を捏ねる子供の様に、情け無くそう渋った。
身体が震えている。分からない。オレが何をすべきなのか。オレは何なのか。
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:50:24 ID:QnDp3EQvO
支援!
428グロリアは誰の亡骸に 33:2009/08/21(金) 23:51:42 ID:eLfk5J/EO
チェルシーが眉をぴくりと動かす。カイウスは頼むよ、と懇願する様に苦笑した。

「それは駄目ですね」

「あ?」
おいなんだそりゃ。
お前はオレにルビアの敵を放って行けと、尻尾を巻いて逃げろって、そう言うのかチェルシー?
そんな、あんまりじゃあないか。みすみす見逃すって言うのか?
幾ら生きる事を優先するって言っても、それにしたって他に言い方ってもんが―――

「いい加減にして下さいよ。此所でルビアさんみたいに死にたいんですかカイウスさん?
 ……違うでしょうッ!!?」

怒声にも近い叱責の声がカイウスの鼓膜をびりびりと揺らす。
チェルシーはカイウスの手を引き抜くように掴み上げた。畜生、とカイウスは思う。
此所でさえ無力が邪魔をする。ルビアの敵を取る事さえ、力が無いオレには許されないのか?
力って何だ。そんなに大事なのか? そんなに、正義ってのは振るうのが難しいのか?
無力はそんなにも罪なのか? 無力はそんなにも、悪なのか?
オレは、仲間を殺した奴が目の前に居るのに、尻尾を巻いて逃げるしかないのか?
「う……ッぐ……く、くそ……」
カイウスは下唇をぎりぎりと噛みながら唸り、力強く荒れた大地を蹴り上げる。

「くそったれえがああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァッ!!」

咆哮が上がった瞬間、土煙の向こう側からは数多の炎弾がカイウス達に迫っていた。
カイウスはそれに気付かず、冷静であったチェルシーだけが気付く。
チェルシーは素早くそれを横目で確認すると、弓を構え震える左手で矢を取った。
チェルシーは眉間に皺を寄せる。腕が軋んでいた。肩は馬鹿みたいに痛みを発していた。
まるで傷口が火にでも炙られている様だ。
頬に浮かぶ脂汗をグローブで拭い、チェルシーは目を凝らした。
「くッ」
掌にねっとりと纏わりつく血液に、チェルシーは顔を顰める。
駄目だ。肩が痛い。腕が震える。こっちを追尾する炎弾の数が多くて狙いが定まらない。
雹雨にするか。いや、矢が勿体ないしファイアボールは追尾軌道。十中八九当てられない。
……何だって私はこんなにも必死なんでしょう、とチェルシーは思った。
幾らクラトスさんに助けられたからと言っても、下手な模倣をする必要は全くと言って良い程なかった筈だ。
チェルシーは弓を足元にだらりと下げる。
模倣も、もういいだろう、ここまでやれば。そんな諦観を表したかの様な表情を浮かべて。



429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:55:54 ID:APNEFo6BO
支援
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:56:00 ID:ZJtepKZJO
支援滅殺!
431グロリアは誰の亡骸に 34:2009/08/21(金) 23:56:24 ID:eLfk5J/EO
「仕留めた!?」
シャーリィは煙の向こう側に確かな手応えを感じ、セネルを抱えながら叫んだ。
唾が飛び散るが知ったことか。お兄ちゃんを傷付けたあいつらを殺せればそれで良い。
そして間違いない。古代呪文、ファイアボールは、明らかに全弾命中した!
「く、そ。てこずらせやがってッ」
傷が癒えた――と言ってもまだ完治した訳ではないが――セネルは立ち上がる。
シャーリィはそんなセネルを心配する様に寄り添うと、段々と煙が晴れゆく様子を見守った。
死体を見るまでは、安心なんて出来はしない。

「……セネルさん!」
近くから響く声に、セネルは振り向く。声の元は己の前方、方角で言うと北東だ。
岩山に手を掛けるジルバは、慌てた様子でこちらを見ていた。
セネルはふうと息を吐いた。幾ら利用するとは言え、ジルバは仲間。
自分達のブレーンである彼女を喪う意味は余りにも大きく、今後への損害は計り知れない。
「ジルバ、良かった無事……ッ? ん? お、お前……その傷は!?」
セネルはそう言うや否や、慌ててシャーリィを撥ね除けジルバに駆け寄る。
ジルバが抑える横腹からは血が滴り、身体には血痕が幾つも浮かんでいた。
アイツら、と呟きつつセネルは舌を打った。ジルバもやられていたなんて。
当の本人は肩で息をしながら、大した傷ではない、と笑っている。
馬鹿を言え、とセネルは思った。ジルバは女だ。大した傷じゃないもんか。

「それが大した傷じゃない訳ないだろ! あいつらにやられたのか!?
 そうなんだなジルバ!?」
ジルバは情け無さそうに笑ってみせた。シャーリィは大変、と呟きジルバに詰め寄る。
セネルはそんなジルバの自己犠牲的な一面に呆れると同時に、カイウス達への怒りを感じていた。
……味な真似しやがって。

「私とした事が油断を……すみませ―――ううッ!」
ジルバはセネルの腕の中に抱えられながら、黒い微笑みを必死に皮膚の裏に隠す。
勿論、傷は自分で付けた。少し痛むのは本当だが、ガジュマの身体。
大した痛みではないし、直ぐに治る。行動に支障はない。
それに急所も外している。因みに身体に付着している血液は、あのヒューマの死体から拝借した。
さて、この状況。確かに想定外だが、策はある。
先ずはゆっくりと、シャーリィ=フェンネスに事情を訊こうじゃあないか。
ああ、その前に回復を受けるのが先か。
432グロリアは誰の亡骸に 35:2009/08/21(金) 23:58:29 ID:eLfk5J/EO
ジルバは頭を垂れ、唇の端を歪めた。本当にどいつもこいつもお人好しだよ、ヒューマって奴は。
「お、おいジルバ! しっかりしろ! ……シャーリィ、ジルバにもキュアを頼む」
倒れそうになるジルバを、セネルは抱き抱える。ジルバは大丈夫と言うが、その顔は蒼白だ。
セネルに呼ばれたシャーリィは慌ててキュアを唱えると、晴れた土煙の向こう側を一瞥する。
そこには、ファイアボールを受けて丸焦げになっている筈の子供の死体が―――

「嘘……」

―――何処にも、無かった。



―――――――――――――



「チェルシー、もう少しの辛抱だからな。
 あっちの街に行けば、きっと民家に応急処置の道具なり水なりがある筈だ!」
チェルシーを背負い走るカイウスは、気力だけで全身の筋肉を振るう。
背負われるチェルシーには元気がない。それもその筈だ。
チェルシーは全身に夥しい傷を負っているのだから。

時間は遡る。
チェルシーはシャーリィのファイアボールを目前にした時、咄嗟に矢を地に向け放っていた。
それも単なる攻撃ではない。アルバに習った地を抉り飛礫と岩を突出させる弓技、“衝破”だ。
しかし衝破は本来、空中に一度浮かんでから放つ弓技。それは矢の勢いと安全を期す為だ。
チェルシーが地上で衝破を打ったのは、血迷ったからではない。苦渋の策だった。
飛ぶには時間がなさ過ぎる。しかしかと言って、チェルシーは他に有効な手段を持ち合わせていなかった。
結果として、衝破による岩と瓦礫の壁はファイアボールを全弾防いだ。それは良い。
しかしその壁と瓦礫はあくまでも自然物であり、魔術により具現化した物体ではない。
衝破は確かに地属性だが、地の晶力は全く関係無いのだ。
マーキングは愚か操作さえも利かぬ岩達は、それ故に至近距離に居たチェルシーにも牙を剥いた。
そうして地割れの音に気付いたカイウスは、四肢を岩に裂かれたチェルシーを抱えて今に至る。
カイウスは苦虫を噛み潰した。チェルシーを守る、それが如何に難しいかを理解したからだ。
此所へ来てから、まだ一晩を越したに過ぎない。まだ一日半も経過していないだろう。
第一放送から第二放送に掛けての人数の推移を考えても、脱落者は半分にも満たない筈だ。
にも拘らずこの状況。本当にオレ達はこの先、五体満足のまま生きていけるのか?
オレは果たして、チェルシーを度重なる危機から守り抜く事が出来るのだろうか?

433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/21(金) 23:59:10 ID:ZJtepKZJO
支援
434グロリアは誰の亡骸に 36:2009/08/22(土) 00:01:32 ID:eLfk5J/EO
……誰がどんな風に考えても、どう甘く見積もっても無理だって、そんなの。

カイウスは口元を襟巻きに埋めると、その考えを否定する様に足を速めた。
出来なくたってやるんだよ。最初から無理だって諦めたら、何も出来ないだろうが!
「くそ、くそッ、くそォ……ッ!」
カイウスは恐怖に打ち震える身体へ大丈夫と言い聞かせる様に、瞼を固く閉じる。
瞼の裏側に、顔がひしゃげたルビアの悲しそうな背が浮かび上がった。
止めろ、とカイウスは念じる様に唸る。

“なんで、私の敵を取ってくれなかったの?”

……まるで呪詛の様な声が脳をぐわんと揺さぶる。虫酸が喉まで迫り上がった。
違う。カイウスは酸素を飲み込み、更に足を激しく動かす。
違うんだ。今は、生きなくちゃいけないんだ。あの時は仕方がなかった。
オレだってあいつが憎いさ! でも今は!藁に縋ってでも、生きなくちゃいけない!
だからあの時は逃げる選択肢しかなかったんだ!
カイウスは荒くなった呼吸の途中で唾を飲み込む。
酷く乾いてしまった喉は、唾を相手に大層苦労しているようだった。
“ルビアが死んだ”。
その事実はカイウスの心を激しく揺さぶったが、不思議と冷静さも差し出していた。
それは、カイウスにとっての優先順位の一位が“チェルシーを守る事”であったからかもしれない。
更に言うなら、カイウスはルビアの死について未だ半信半疑だった。
敵から言われた事を鵜呑みにする程、カイウスは馬鹿でも子供でもなかった。
しかし、拭えぬ違和感の魔の手はカイウスの心を鷲掴みしていた。
先ず、ルビアの死亡状況。嘘をその場で吐くには余りにも具体的過ぎる死因だった。
次に、ルビアとカイウスの関係既知。見た事もない他人が、それを何故知っているのか。
その二つはカイウスの背に纏わり、肉体と影の関係の如く決して離れようとはしなかった。
「畜生、まだ確実に死んだって決まった訳じゃないってのに、オレって奴はッ!!」
カイウスは瞼を開き、前を見据える。悪い事ばかり考えても、何も進まない。

何時の間にか街は目前に移動していた。汗だくの身体に鞭を打ち、足を進める。
カイウスは橋に足を掛けると、大きく地面を蹴り上げた。橋を支える柱が軋む。
カイウスは目を丸くし、息を飲んだ。六割方壊れた街は、まるで死んだ都の様だ。
人の気配は全くない。激しく上下に動く肩で息をしながら、カイウスは漸く足を止めた。
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 00:03:17 ID:d9dXWxyeO
しえん
436グロリアは誰の亡骸に 37:2009/08/22(土) 00:04:43 ID:WMPfccC+O
凄まじい量の汗は、全身に纏う衣類を肌にぴったりと吸い付かせている。
1リットルは越えてるかな、と唇の端を上げる。
何なら服を絞って測ってもいい。今は御免だけれど。
カイウスは不快感を露にしつつ、破壊された街を素早く見渡した。
汗で纏まり、針の様に尖った前髪の隙間からは、瓦礫以外には何も見えない。
これでは応急処置用の救急箱は愚か、真水も期待出来そうにないな、と溜息。
カイウスは溜まった乳酸に痙攣する足に鞭を打ち、見知らぬ街を暫く練り歩く事にした。
背に凭れるチェルシーはぐったりとしている。
ちらりと見る分に傷はそこまで深い事はなさそうだ。
が、立て続く襲撃と交戦に疲労が溜まっているのだろう。
ああ、そう言えば回復手段があったか……。クレープ、だっけか?
まぁ何にせよ、安心出来る場所で早く休ませないと。

「な……何とか……アイツらを、撒けてれば……い、良いん……だけど、な……。
 ……いや、さ……流石に……撒いただろ……此所まで来れば……瓦礫に、身を隠せるし……」
カイウスは自嘲気味に呟くと、瓦礫を避けながら道を進む。
元々この街は破壊されていなかったのだろう、とカイウスは踏んだ。
壊れた鉢植えから飛び出た植物は、まだ枯れるどころか萎びもせず真直ぐに伸びている。
最近になって鉢が割られた証拠だ。いや、無論鉢だけが最近壊された可能性もある。
が、しかし鉢から飛び出した腐葉土の“上に”、瓦礫は横たわっているのだ。
即ちこの街が、このゲームが始まってから破壊された事に疑いの余地はない。そういう事になる。
「……この……ゲームは、とんでもない化け物……ばかり……だな……」

街一つを破壊する規模の戦闘だなんて。聞いた事ないぞ、馬鹿馬鹿しい。
カイウスはくつくつと笑うと、瓦礫に付着する血の染みを見た。
一瞬身構えるが、血液はもう黒く乾いてしまっている。交戦はとっくに終わったのだろう。

……どいつもこいつも、オレなんかよりもずっとずっと強い。
これは自惚れてた、って事なんだろうな。
世界を救った人間? 血筋? プリセプツ? レイモーンの民? てんで話にならない。
漸く酸欠による視界のぼやけから解放されると、カイウスは大きな溜息を一つ吐いた。
何でも良い。力が足りない事も認める。
一つ分かるのは、オレがアイツらから逃げ切ったって事だ。それだけ分かればもう良い。
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 00:06:10 ID:qmMc76EYO
支援。
438グロリアは誰の亡骸に 38:2009/08/22(土) 00:08:26 ID:WMPfccC+O
その現実に安堵すると同時に、待構えていたかの様にどっと疲労感が身体に押し寄せる。
カイウスはチェルシーを落とさない様にぐいと背負い直すと、曲がり角を右に曲がった。
カイウスの顔からは緊張感が抜け、口からは緩い笑みが零れ落ちる。
「……良かった……も、もう……大丈夫……。……本当に、良かった……」
角を曲がり、カイウスは余りの眩しさに目を細めた。
蒼穹に浮かぶ太陽が、カイウスを祝福するかの様に出迎える。





そして、真直ぐに続く道の上に―――――――――悪魔はぽつんと立っていた。





カイウスの笑みだけが、そのまま冷凍されたかの如く瞬間的に固まる。
そのままの表現で、ハハハ、と全てを諦めたかの様な自嘲。
爽やかな潮風がサニイタウンを吹き抜ける。運命は何処までも残酷だ。
「何でだよ。此所まで来たってのに。何だってこうなるんだ?」
カイウスは頭をだらりと垂れ、左右に振る。もう何もかも嫌だ。
「何時もこうだ。皆、オレに何か恨みでもあるのか?
 オレがお前に、皆に何したって言うんだ?」
震える声は余りにも弱々しくて、儚くて。柔らかな潮風に壊されてしまいそうだった。
世界は不平等だ。弱者からすれば余りにも不条理過ぎる。カイウスは肩を小刻みに揺らした。
「誰か教えてくれよ。なぁ。別にお前でも神でもなんでもいいから」
カイウスは面を上げた。恐怖と絶望に、諦観に、その表情はくしゃくしゃに歪んでいる。
ネレイドが、天使クラトスを倒した悪魔シゼルが、こちらへとゆっくり視線を向ける。
訳の分からない量の滴が瞳から溢れ出る。恐怖に足が震えていた。
ぼろぼろと情け無く涙を零しながら、カイウスは左へと視線をやる。
近付く足音。訪れる絶望。なぁんだ。ほらみろ、逃げ場なんか何処にもないじゃあないか。
カイウスは泣きながら笑う。頭が如何にかなってしまいそうだった。
曲がり角の向こう側、瓦礫の影から、探知機を手に青年が姿を現す。
妹を優勝させる為戦うマリントルーパー、セネル=クーリッジが。



「……天は、オレ達を見捨てたのか?」



筋力強化されたセネルの拳が、カイウスの顎を真直ぐに貫いた。
カイウスの身体がいとも簡単に宙を舞う。視界に無数の白い星が飛び散る。
嗚呼、と腹の底からカイウスは唸った。オレの力では、こいつらには勝てない。
オレ達の未来に待つものは、“死”一択だ。



―――――――――――――



439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 00:08:45 ID:xg+L/uTVO
しえん
440グロリアは誰の亡骸に 39:2009/08/22(土) 00:10:48 ID:WMPfccC+O
精霊王ゲオルギアス復活儀式を行なった際の、月のフォルスの暴走。
そして、先代カレギア王ラドラス=リンドブロム崩御の際の、月のフォルスの暴走。
または、秘奥義デュアル・ザ・サンから派生する禁じられた導術、ブルーアース。
それが、アガーテが放送前の“爆発”に感じたというものだ。
共通するキーワードは、“凄まじい力と星”。
更にアガーテは、あの主催者が何らかのフォルス能力者であり、それを使用している可能性がある、と言った。
アガーテが又聞きした話によれば、“夢のフォルス”なるものがあるのだと言う。
それが関係していると考えるのは些か早計だが、まんざら無感情であるとも言い切れない。
特異な能力フォルス。確かにそれはゲームを運営する上で非常に便利なものだからだ。
何せ内面的な強さに左右される能力だ。
あの不気味で飄々としている主催者と関係があっても、何ら不自然ではない。

暗がりの中を騎士は歩む。一歩一歩の足取りは大変重く、その眼光は獲物を狙う獣の様に鋭い。
そこに地面があるのを確かめる様に、レイスはごく慎重に廊下を進む。
外には青空が広がり陽光が満ちている頃だろうが、船内はさながら真夜中の様な漆黒に満ちていた。
このフロアの廊下にだけ、たまたま窓がないのか如何かはレイスの知るところではない。
カツン、という軽い足音が廊下を反響し、鼓膜を振動させる。
レイスは覚悟を決める様に、壁から飛び出たアイスブルーのスイッチへと人指し指を伸ばした。
ごうん、と船が唸る。上に伸びた梯子が、寝起きの子供の如く気怠そうに動き出す。
呼応する様に梯子の上の扉が開いた。眩い光がスポットライトと化し、レイスを照らす。
レイスは思わず掌を目前に翻した。視覚を通し、朝の予感がひしひしと身体に伝わってくる。

誰も居ないコックピットの中は、実にひんやりとしていた。
肌寒さに一瞬だけ身震いをし、レイスは窓際に寄る。目を凝らすまでもなかった。

「やはり、ネレイド……!」
嫌な予感がして起きてみればこれか。何とも最悪な眠気覚ましだ。
レイスはその整った顔を苦悶に歪ませる。何という嫌な偶然だろうか。
何時かは邂逅するとは思っていた。だが、それにしたって早過ぎる。
これは本当に偶然なのか? 確かにこちらは眠ったお陰で体調も精神力も万全だ。
だが……
「悔しいが、今の私ではお前に勝てない、か」
441グロリアは誰の亡骸に 40:2009/08/22(土) 00:12:59 ID:WMPfccC+O
セイファートの試練を最後まで終えてない自分では、闇の極光術には堪え切れない。
これは明白だ。レイスは親指の爪を噛む。かと言ってこのまま見逃すと? それは否だ。
ならば如何するのか? 簡単な事だ。答えは此所にある。
最初から分かりきっているじゃあないか。

「臨界トルク28000エストを叩き出す兵器、クレーメルキャノン。
 尤も、今の威力は上級術程度しかないが。
 しかしバンエルティア号が誇るそれを奴に当てる事が出来れば、或いは……ん?」

レイスは異変に目を細め、シゼルの後方を窺った。
曲がり角から突如現れた少年――よく見れば少女を背負っている――がシゼルと対峙している。
何て馬鹿な真似を、とレイスは眉間を揉んだ。
何のつもりかは知らないが、ネレイド相手に一人や二人で勝てる訳がない。
助けてやりたいのは山々だが……いかんせん私にはまだやる事がごまんとある。
命は惜しくない、とはよく言ったものだな。レイスは釈然とない苛立ちに表情を曇らせた。
と、次の瞬間少年が宙を舞う。何事かとレイスが見れば、その背後から男が現れたではないか。
随分と賑やかになってきたな、とレイスは零す。アガーテを起こさずに来たのは正解だった。
此所はもう直に戦場と化すだろう。死人は出ないに越した事はないが、ネレイドが居る。
今のアガーテには少し刺激が強過ぎる景色になるやもしれない。
レイスがふと目線をずらせば、街の入り口には見知らぬ二人の姿。
一人は女に、一人は仮装姿。
此所をパーティ会場か何かと勘違いしてるんじゃないだろうな、とレイスは皮肉を呟く。
現在、この街に居るのは確認出来るだけで8人。第二回放送の時点で生存者が46人だった。
半日で10人死亡のペースだから、時間的に5、6人程度亡くなっていてもおかしくはない。
レイスは卓上の懐中時計に一瞥をやる。直に9時だ。
生存者が残り40人だとすると、5分の1……20%がこの村に居る事になる。
改めて聞くと驚異的な数字だな、とレイスは顎を撫でた。おまけに事態は切迫している。
皆殺しを望むだろうネレイドからすればさぞかし美味しい数値だろう。
だが、これが都合が良く魅力的な数値であるのはこちらも同じ。
レイスはクレーメルキャノンの操作盤を横目で見る。
他人を巻き込む可能性がないとは言い切れないのは気は進まないが、やるしかない。
442グロリアは誰の亡骸に 41:2009/08/22(土) 00:15:41 ID:WMPfccC+O
これ以上ネレイドの横暴を許す訳にはいかない。奴は野放しにするには危険過ぎる。
この際、卑怯などとは言っていられない。どんな手段を用いてでも、奴を始末しなければ。

「すまない、君達には囮になって貰う。もう暫くの辛抱だ。何とか堪え忍んでくれ」
全てはシゼルを、いや、ネレイドを討つ為だけに。我儘なのは分かっている。
「直接助太刀をしない卑怯な私を恨んでくれても良い」
レイスは急ぎ足で窓から離れると、クレーメルキャノンの電源を素早く入れる。
充填量は恐らく三割弱が限界。故にクリーンヒットでもしない限り奴を倒すには至らない。
しかし、やらずに指を銜えて惨劇を待つよりは遥かにマシだ。
みすみす起こしてなるものか。後悔は、絶望は。手を尽くしてからすれば良い。
レイスは素早く船内の晶霊力消費を遮断し、全てのエネルギーをクレーメルキャノンへと回す。
シゼルの居る方向はこの船から北西の位置。
インパクトの際に晶霊力を僅かにホバリングさせなければ、この島に甚大な被害が及ぶ。
私にその責任重大な座標操作が出来るのか? レイスは背筋に強い悪寒が走るのを感じる。
操作盤の冷たさがじわりと指先に伝わった。吐き出される息は白い。

……ミステイク。

それはイコール大量殺人者の汚名を被る事に等しい。この島での肩身は狭くなるだろう。
その覚悟が、今問われているのか。レイスは額に浮かぶ生暖かい珠汗に肩を小さく揺らす。
「良いだろう。私は、甘んじて汚名を被る」

レイスは確固たる意思を宣言する。これが私の信じる道だ。
メッセージ主には悪いが、クレーメルキャノンは西ではなく北に発射させて貰う。
いや、被害やエネルギー不足を考慮するならば、確かに西へ打った方が良い。
会場が“事実上脱出不可能なループ空間”だと確認するにはそれが一番だ。
西に打った場合は東西海上なので被害はないが、北に打った場合、先ず被害の可能性がある。

例えば、遠く見える霊峰ファロース。直撃すれば二次被害も出るだろう。
次にエネルギー不足の可能性だ。
会場をループ空間だと仮定すると、ループ境界に至るまでのマス目が重要になる。
今のところ、ループ境界は(0,0)、(0,7)、(7,7)、(7,0)で形成される、
正方形の枠、若しくはその何エリアか外側の正方形の枠であるという仮説が濃厚だ。
即ち、クレーメルキャノンを放った方角がより境界線に近い方が、対角線上から“後光”を確認しやすい。
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 00:18:05 ID:RVi4Z7cn0
支援
444名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 00:18:11 ID:xg+L/uTVO
カイウスー
445グロリアは誰の亡骸に 42:2009/08/22(土) 00:20:06 ID:WMPfccC+O
しかし、それはメッセージ主がエネルギー不足を考慮しての事。
恐らく現在の総クレーメルエネルギー量ならば、北に放ったとて南から確認は可能だ。
「後は、私の操作に掛かっている。そういう事か」
レイスは海底の様子を映していた液晶板、その隣のメモを見る。確認出来たのは二つの建物。
成程故障ではなかった。セイファートキーはそこを指し示していただけだったのだ。
レイスは真っ赤なレバーへ手を掛ける。これを動かせば、もう後には引けない。
顎から汗が滴る。晶霊力の収束に気付かれる可能性は大きい。
それでも、やらねば。レイスは覚悟を決め、みしりと軋むレバーを思い切り両手で引く。

「―――エネルギー充填、開始」



―――――――――――――



『羽虫が増えたな。二匹でも五匹でも、払う手間はさして変わらぬが。
 さて、あちらからは並々ならぬ晶霊力。気付いてないとでも思っているのか、憐れな男よな。
 こちらは疾うにフィブリルを感じていると言うのに。相も変わらず未熟な奴よ。
 ……で、どれから潰そうな?』
シゼルの背に具現したネレイドは、さぞ愉しそうに宿主の耳元で尋ねる。
身体の主導権は既にネレイドが六割方握っていた。先の言葉責めが余程堪えたらしい。
しかしそれもそうか、とネレイドは一人ごちる。別にハッタリをかました訳ではない。
あの言葉責めには確かに悪意はあったものの、その80%が真実だ。
『ん? 黙っていては分からぬわ。好みはどれだ、言うてみよ我が宿主よ?』
ネレイドはひゃは、と小さく肩を揺らした。嫌らしい質問だったか、と思う。
何せ今の主導権は我。女の身体の自由は利かない。
シゼルの好む好まざるに関係なく、選択権と殺害権はネレイドの方にあるのだ。
『そうだな……ではこうしようか。
 先ずお前が惑わされた、あの餓鬼を殺すとしよう。四肢をもぎ、達磨にしてなァ?』
少し思案する様子をわざとらしく見せ、ネレイドは嫌らしい提案をする。
尤も、提案された人物が意見を言えないのでは、それは最早提案の定義から逸脱している。
詰まりこれは単なる一方的且つ純粋な、殺戮宣言なのだ。

「ッか……は!」
なンだコレ。唯のパンチにしちゃあ、ヘビー過ぎるだろ。無茶苦茶だよ、此所の奴等は皆。
何なんだ。オレに無力さを味わわせてそんなに楽しいのかお前らは。悪趣味だよ、全くさァ。
投げ捨てられたゴミか何かの様に、情けなくカイウスは転がる。
446グロリアは誰の亡骸に 43:2009/08/22(土) 00:22:25 ID:WMPfccC+O
やがて瓦礫に背を思い切り打ち、短く呻きながらカイウスは具足虫の様に身体を丸めた。
朧気な視線が銀髪の殺人鬼を認める。そいつは無表情で己を見下していた。
「シャーリィの為に、お前は死ね」
セネルは顔は動かさず視線だけでカイウスを凝視し、そう言い切った。
迷いを断ち切るかの様な、きっぱりとした一言だった。
「ぁ」
べきゃり。
非情に徹した青年の足が、強化された踵が、カイウスの掌を容赦無く踏み潰す。
乾いた木材を割る様な音が鼓膜の内側から聞こえた。一、二……いや、三だ。
親指と人指し指を残して、残りの骨は全て砕け散った。
「ァ、お、お″、ォをおォォォッ……!」
全身に電流が走った。穴という穴から迸る、汁。感覚神経がオーバーヒートする。
手先から火花が散ったかの様な、激しい熱が神経内をのたうち回る。
摂氏1200℃オーバーの岩漿にも似た激痛が、カイウスの左手から胴体に逆流する。
「お、あづッ! いだァあばぁがッ、オッのがッ、ゆ、ゆびゆびぃッ」
激痛と熱さ、痺れに痙攣、過呼吸に発汗、挙句は失禁。
カイウスという巨大なコンピュータがエントロピーに異常を来たす。
到底正気とは思えぬ喚き声に、チェルシーは肩を抑えながら起き上がった。
目前には目を覆いたくなる程に壮絶な景色。
チェルシーは一瞬倒れそうになるが、何とか足を踏ん張った。
向こう側には、鼻水と砂埃に顔をぐちゃぐちゃにしたカイウス。
その背中を蹴られる様子を見ながら、何て惨めなんだとチェルシーは素直に思った。
「私刑は好みじゃないんだけどな……なまじそっちが中途半端に防御出来るから苦しむんだ。
 俺だって、好きでこんな事やってるんじゃない。悪く思うなよ」
襟巻きを掴み上げられ、カイウスは焦点が合わぬ目でセネルの顔を無理矢理確認させられる。
勘弁してくれ、とセネルは笑った。殺すなら早く殺せよ。もう良いよ、生きるのは疲れた。

「死に際にへらへら笑いやがって。気持ち悪い奴だな―――迫撃掌」
横腹に拳がめり込む。肋骨の内側に入り込むクリティカルヒット。
横隔膜を上へ圧迫され、胃が激しく揺れる。カイウスの顔が苦悶に歪んだ。
「ぷべゃッ」
ボロ雑巾の様に宙を舞うカイウス。その内側では凄まじいスピードで虫酸が食道を迫り上がっていた。
鼻の粘膜を吐瀉物で灼きつつ、カイウスは飛び掛ける意識を寸で堪える。
(待てよ)
瓦礫にダイブし傷付く身体。セネルはカイウスを殴った拳を見つめ眉を顰める。
447名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 00:26:28 ID:YAVR3nqQO
支援!
448名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 00:27:04 ID:xg+L/uTVO
しえん
449グロリアは誰の亡骸に 44:2009/08/22(土) 00:27:55 ID:WMPfccC+O
もう、一度人を殺めている。殺めているのに、躊躇する自分にセネルは気付いていた。
インパクトの瞬間、セネルの拳は僅かに失速していた。
本来なら内臓破裂まで持ち込めただろう。
早いところが、セネルはこの一撃でカイウスを殺すつもりだった。
(もしかして、まだ生きる希望はあるんじゃないか?
 オレじゃなくて……チェルシーにだ)
セネルはポケットの中のジェミニシェルを弄る。ジルバはこれが光れば撤退の合図だと言った。
撤退だなんて、“余程の事”が起こらない限り有り得ないと思うが。

セネルは震える左足に気付くと舌を打つ。厄介な部分に傷を付けてくれたものだ。
(そうだ。オレが何とか死ぬまで時間を稼げば、まだチェルシーは何とかなるかもしれない)
「か、ひゃ……うぇぅッ、おッぶ、うォぇッ……!」
出るものを全て出し切ると、カイウスは背に差した大剣の柄に震える手を掛けた。
喉がまるで栗の毬を飲まされた様に痛い。目に染みる塩分が頭の中心に鈍く響く。
左手は、さながら心臓がそこへ移動したみたく脈を打っていた。
カイウスは酸素を可能な限り肺に満たす。

「ち、ヂェルジー、逃げろぉ……だれも居ない所べ……ばやぐッ……」
口から黄色い胃液をだらりと垂らしながら、カイウスは何処に居るかも分からぬチェルシーに呼び掛ける。
立ち上がろうとすると、左足が酷く痛んだ。何時の間にか捻った様だ。
カイウスはファルステヴェルンを杖代わりに身体を立てた。まだ、動ける。
肉体も死んじゃいないし、精神力も充分にある。なら、まだ終わりじゃない。
まだゲームオーバーじゃない。せめて時間稼ぎにはなる筈だ。
ほら、よく言うだろ? 家に帰るまでが遠足ですよ、って。同じようなモンだよ、きっと。

「ぶおらがああぁぁぁぁあァァァ、らがぉあッ!!」

最早意味すら持たぬ叫び声を上げながら、怒り狂った猪の様にカイウスは駆ける。
「くッ……しつこいぞお前!」
セネルは迫り来るカイウスに一瞬だけ躊躇するが、直ぐに歯を食い縛り拳を構えた。
セネルから見てカイウスは死に際にトチ狂った雑魚だ。守りは穴だらけ、構えも出鱈目。
「……ァ?」
パッシング・スルー。
赤児の手を捻るよりもずっと容易く、セネルはカイウスの懐にするりと拳を飛び込ませた。
衝撃派を纏ったアッパーがカイウスの胸を正確に補足する。
胸を一直線に食い破り、衝撃の波はカイウスの背へと、空へと突き抜けた。
450グロリアは誰の亡骸に 45:2009/08/22(土) 00:31:12 ID:WMPfccC+O
魔神拳・竜牙の一撃に、カイウスの身体はくの字に曲げられ、ふわりと空中を漂う。
肋骨を粉砕する音が聞こえた。圧迫された肺から生温い空気が上がり、口が開く。
透き通った粘液がカイウスの口から大量に溢れ出た。セネルは顔を苛立ちに歪める。
(逃げろ、チェルシー)
嫌に水っぽい咳が出た。何処かしら内臓が傷付いたのかもしれない。
カイウスの視界が白く滲む。ゆっくりと、しかし確実に訪れる限界の足音が耳元で聞こえた。
カイウスは開いた瞳孔で必死に存在理由たる少女を探す。剣を取る理由は、一つしかない。
鼻腔に匂いを感じた。幻想か吐瀉物か、ペスカトーレの甘酸っぱい匂いを感じた。
(逃げろ、チェルシー……!)
荒廃した街の中を、ぽつんと寂しそうに桃色が浮かぶ。
少女の虚ろな双眸は、少年を認めていた。このままでは如何にもならない。
思っているだけでは、回転を止めてしまったメリー・ゴーランドの様に無意味だ。
手を伸ばした。少女は伸ばさないが、視線が交差する。
今しかないと、カイウスは思った。




「逃げろおォォォォォォッ! チェルシィィィィィィィィィィィィッ!!!!!!!!!」




天からの一閃。
雷がチェルシーの脳天を打った。
その声にチェルシーは肩を、心を震わせる。断末魔の様なそれは願いではなく、命令にさえ感じられた。
チェルシーは痛む身体に堪え、踵を返す。
“逃げなきゃ”。そう決断するまでに時間はちっとも要らなかった。
しかしチェルシーは振り向いて唖然とする。こんな事を忘れていたなんて。

「――――――――――――――――あ」

槍を構えた女がの目の前に聳え立つ。強大な力を前にチェルシーは膝をかくんと折った。
純粋な恐怖はチェルシーの四肢を支配し、まるで標本に展翅された蝶の様に動きを封じられる。
「あ、あ、あぁぁ……!」
身体の芯からチェルシーは震え上がった。クラトスの血に染まったイブニング・ドレスが風に揺れる。
黒い霧に包まれたシゼルの左手が、ゆっくりとチェルシーの頭へと伸びてゆく。
チェルシーは荒々しく呼吸をする事しか出来ない。圧倒的力は些細な抵抗すら許さない。
全身の毛穴という毛穴から汗が絶え間なく吹き出す。目が、離せない。瞬きすら出来ない。
むんず、とまるで果物か何かを持つ様にチェルシーの頭を掴むシゼル。
ひ、と歪んだチェルシーの口から短い悲鳴が漏れる。みしりみしりと頭蓋が叫ぶ。
走る激痛。目玉が飛び出そうになる。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 00:32:06 ID:RVi4Z7cn0
支援
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 00:35:17 ID:xg+L/uTVO
支援
453グロリアは誰の亡骸に 46(代理):2009/08/22(土) 01:12:01 ID:RVi4Z7cn0
何もかも終わった、とチェルシーは心底思った。
このまま豆腐でも潰すみたいに頭蓋を砕かれ、脳髄を晒して己は憐れに死ぬのだ。


『邪魔だ。死「死にたくなければ退け、娘」……ね!?』


チェルシーの頭を掴み上げ、シゼルは背後へ力の限り放り投げる。
その行為に最も驚いたのは、殺されずに済むとは夢にも見ていなかったチェルシーではなく。
……他でもないネレイド本人だった。
シゼルの背後で呆けた表情を浮かべるネレイド。
何だ今のは? 何だこれは? 何のジョークだ?
足元から音にならない音が広がる。ふと見れば己の身体が崩れ、朽ち果てているではないか。
馬鹿な。ネレイドは怒りに震え唸った。有り得ない。一度主権を握った筈の我が消える?
何故身体が動いている? 我は命じていない。
何故こやつは走っている? 我は命じていない!
何故、あの餓鬼にではなくそっちの男に斬り掛かっている? 我は命じていない!!

『さてはシゼル、お前ェ……餓鬼を前に醜く母性を思い出しよったかァ「……」!!』
迫り来る血塗れの槍。
突然の奇襲にセネルはタッチの差で避ける。槍はセネルの髪を裂くのみに止まった。
マリントルーパーとしての直感がセネルの心臓を跳ねさせる。こいつはヤバい。
セネルは刈られた前髪を弄りながら距離を取る。唯の観戦人じゃあなかったのか。

『あの天使を殺した負い目か!
 おのれえぇ「喧しい。黙れと言っているのが分からんのかこの愚神めが」―――!?』
母は槍を手に神に一喝する。肩の下まで壊死した神は苦しそうに唸った。
シゼルは青空を仰ぎ、息を深く吸う。
その背には黒い霧こそあるものの、ネレイドとして具現はしていない。
残されたただ一つの理由を胸に、そのしなやかな腕は、足は。浅ましく動いていた。

「シ、ゼル……?」
尻餅を着いて自分の名を呼ぶカイウスに、シゼルは舌を打つ。
「勘違いするな小僧。貴様を助けに来た訳ではない。
 こやつを殺したら、次は貴様だ。覚悟しておけ。
 いいか、“絶対に逃げるなよ”。分かったな?」
分かったなら退け、邪魔だ……そう続けて背を向けたシゼルにカイウスは小さく頷く。
詰まり“逃げろ”と。理由は知らないがそう言っているのだ、シゼルは。
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 01:15:36 ID:YAVR3nqQO
支援
455グロリアは誰の亡骸に 46(代理):2009/08/22(土) 01:16:19 ID:RVi4Z7cn0
セネルはふらつきながらも、やっとの事で起き上がり、チェルシーと手を繋ぎその場を去る。
「あ……ありが、とう」
別れ際にカイウスが言った一言に、シゼルは無言の背で応じる。
何故、助けるのか? 別に馴れ合いをするつもりはないし、多分助けたかった訳でもない。
この男に何か恨みがあって訳でもなく、恐らく使命感もない。
理由はシゼルにも分からなかった。
一つ言えるのは、あの餓鬼共を憐れだと思った事と、
余りに寂しそうに佇む少女の背に、母として感じるものがあったという事だ。
その背にメルディを、非力で憐れな少年にキールを投影してしまった、自分だからこそ。
言えばそれはシゼルなりの、精一杯の贖罪だったのかもしれない。
いや、或いはそれは言い方を変えれば、クラトスが零したあの言葉の様に―――。

「人の獲物を……アンタ、やってくれたな。何者だ」
シゼルの背で膨れ上がる黒い煙を警戒し、セネルは声のトーンを下げた。
シゼルは答える必要が無いとばかりににやりと笑い……セネルへと身の丈程もある魔弾を飛ばす。
紫の魔弾へと螺旋状に巻き込まれる風が気流を生み出し、セネルの身体を打った。
反射的に突風へ目を閉じ、直ぐに開ける―――もう弾が目の前ッ!? 速い!
避ける? 否、不可能! 受ける? この大きさを? 馬鹿言え、無理に決まってる!

「こンのッ」
咄嗟に魔力障壁を張る。魔力が弾け、波紋に揺れる緑色の膜に罅が入る。
たかが詠唱も無しに放った魔弾一発が……信じ難い威力!
セネルは素直に恐怖を覚え、前方に一瞥を投げた。奴の姿が消えている。
と、背後に身の毛も弥立つ殺気。
「やらせるかよ!」
咄嗟に裏拳で振り降ろされた槍を弾く。上がる高らかな金属音。
身を捩じらせ振り降ろされる二撃目を避けると、セネルはバックステップで距離を取った。

「ッ問答無用かよ、そんなに死にたきゃ殺ってやらあッ!」
こちらに迫る際のフェイントのステップと、間合いの取り方。
それらを見るにインファイターなのだろう、とシゼルは解析した。それも超が付く程の、だ。
即ち恐らく武器は拳。ファラ=エルステッドと同列、いや、若干あの娘より間合いが広いか。
……しかし先程の一撃、何か“違和感”を感じた。
己の槍の一撃なのに、まるで他人の槍の一撃の様な。そう、あれは錯覚に近かった。
もしや、あの謎の魔方陣の影響か?
真逆、あれだけ大層な外見の癖に単なる飾りの訳ではあるまいて。
456グロリアは誰の亡骸に 48(代理):2009/08/22(土) 01:19:10 ID:RVi4Z7cn0
シゼルは槍を真直ぐに構えると、迫り来るセネルの足元に広がる魔方陣を見る。
私の槍を不安定な体制にも拘らず裏拳で弾く、そんな芸当があの少年の華奢な身体で出来るだろうか?
いや、出来はしないだろう。この少年があのクラトスよりも力があるとは、俄かには信じ難い。
そもそも槍を拳で捌くなんて事自体が論外だ。
俊敏性は別として、相当の筋力と防御力がない限りは、そんな事出来る訳がない。
迫る青年の拳を、幻竜拳を右手の槍と空を掴む左手で捌きながら、シゼルはそう予想した。
みしり、と槍の柄から悲鳴が上がった。拳を捌いた左手は赤く腫れ痺れている。
有り得ない。シゼルは唸りながら神速の突きによる一撃をセネルに繰り出す。
「喰らうかよ! 輪舞旋風ッ!」
……まただ。またこの違和感。
手を抜いてなんかない筈なのに、まるで手を抜いた時の様な弱々しい一撃になっている。
シゼルは槍を回し蹴りで弾かれ、体制を大きく崩す。
心無しかこちらの攻撃が弱体化している、それは先ず間違いない。
攻撃が弾かれてしまうのは、単純にあちらの攻撃力が勝っているからだけではない。
詰まり。

「さてはその陣、内側に踏み込んだ人間の攻撃力を上下させる能力だな?
 対象者の攻撃力を上げるだけでは飽きたらず、こちらの攻撃力を低下させている。
 随分姑息な手を使うじゃないか」
シゼルは足元に視線を移動させ、陣外へと足をずらし距離を取る。
ならば、魔方陣の内部へ侵入しなければ良い話だ。間合いを開ければ恐るるに足らない。
絶え間なく動いていたセネルの動きが一瞬だけ鈍る。シゼルはその瞬間を見逃さなかった。
動揺しているのか、それともそう見せる為の罠か。

「……答える義務はない―――魔神拳・双牙ッ!」
広場に散らばる数多の瓦礫を砕き進む、二連の衝撃波。
石畳を下から食い破る様に進むそれらをシゼルはグレイブで防ぐと、近付くセネル、
もとい近付く魔方陣から逃げる様にサイドステップを踏む。
『底知れぬ黒い魔力を感じる。さてはその陣の使い手、貴様ではないな」
背に伝う汗。セネルは拳に力を込めた。

いや、勿論図星だ。真逆こんな短時間で言い当てられるとは思ってもいなかった。
セネルは挑発によるどつぼに嵌まっていると理解していながらも、シゼルへの攻撃の手を休めない。
セネルは焦っていた。
攻撃力も防御力も己が勝っている筈だ。にも拘らず何故決定的一打が与えられないのか。


457グロリアは誰の亡骸に 48(代理):2009/08/22(土) 01:27:14 ID:RVi4Z7cn0
焦燥の原因はその一点にあったと言って良いだろう。

「答える必要はないって言ってるッ! 輪舞噴竜連撃ッ!」
回し蹴りから繰り出される渾身の連撃。これならイケるという自信がセネルにはあった。
背後に回らない程度のパッシング・スルーから繰り出される回し蹴り。それを防ぐグレイブ。
振り返り様の拳。差し出される槍の柄。畳み掛ける様な連撃。繰り出される槍の突き。
下方から迫る拳。最後の振り上げが漸くシゼルの槍を弾き飛ばす。
遥か上空、回転しながら緩やかな放物線を描く槍。シゼルは驚きに目を丸くした。
「……成程』
シゼルの視界が右端から黒く滲み出す。
ネレイドは兎も角、シゼルは別にセネルを殺したい訳ではない。
意識が歪む。激しい虚無感が身体を打ち付ける。内側から抑え切れない感情が沸き上がる。
「強化された貴様の拳と退化した私の槍、僅かに力で貴様の方が勝っている様だ。
 これは困ッた』
何故だ。
セネルは腹の底から吠える様に唸った。相手を押しているのは己の筈だ。
なのに何故、拳が当たらない? 届かない? 何故、こんなにも奴との距離が遠い……!?
セネルは雄叫びを上げながら大地を蹴り上げた。度重なる技に息は上がっている。
シゼルの息は上がっていない。ふざけろ、そんな筈あるかよ。体力はこっちのがある。
見ろ、奴は今無防備だ。槍だって空を舞ってる。構わないから、畳み掛けちまえ―――!
『確かに厄介だが、正体はタカが魔力の陣。目には目を、歯には歯を、魔力には魔力を。
 具現化したものは正体が何であろうが所詮は物質要素。具現化した氷も、岩も。物質だ。
 ナァに、タネが解れば何という事はない。そういうコトよなァ」
「何が言いたい!!」
息を荒げたセネルが叫ぶ。二度目のパッシング・スルー。
詰め寄るセネルを見て、芸が無いなとシゼルは表情だけで笑った。
確かに便利な技術だ。魔方陣も有効活用出来るだろう。が、もう三回目。悪いが使い過ぎだ。
これが一回目なら少しは効果があっただろうよ。まだまだ甘いな、雛めが。
シゼルの視界の右側がセピア色に染まる。景色が二重になる幻覚。流石にもう限界か。
「ブチ抜けええぇぇッ! 鳳凰天駆ゥッ!」
不死鳥を纏い、一筋の天駆ける流星と化したセネルがシゼルへと降下する。
当たれば確実に首の骨が折れる一撃だ。相手は無防備、残り60センチハーフ。
「分別が無いガキだ』
458グロリアは誰の亡骸に 50(代理):2009/08/22(土) 01:33:38 ID:RVi4Z7cn0
確実に決まるッ!

『「“私に斬れぬものはない”、そう言ッテイる』」

幻聴。
いや違う。これは……声が二重になっている?
セネルは急降下しながらシゼルの背を凝視した。距離は盆の窪まで残り30センチ。
立ち上ぼっていた黒い霧が、瞬く間に邪神を、化け物を形造る。
「な」
何だこれは。セネルの全身に光速で鳥肌が駆け抜けた。ぞくり、と背筋に寒気が走る。
シュバルツ? いや違う。コイツの臭いは完全にあっち側だ。奴よりもずっと。
それよりもコイツ、何時―――?

『ウインドカッター』

“敗北”。その二文字がセネルの網膜の裏側に焼き付く。
ああ、土台無理だ。俺じゃ役不足ってか。理解したよ。
俺はこいつに勝てない。

風の刃が、セネルを守る不死鳥を一撃で吹き消し、体躯に迫る。
一つ目。右肩に深々と刃が刺さり、そのまま肉を縦に裂く。
みちみち、とまるで糞でも絞り出す時の様な音が内側から跳ねた。
二つ目。右胸の肉にめり込み、肋と肋骨の隙間に侵入する。肉を削ぐ様な音。
三つ目。太腿を深々と斜めに切る。軌道上にたまたまあったポケットの中で、砕け散る音。
ジェミニシェルの破片が裂かれたポケットから溢れ、まるで砕けたステンドグラスの様に美しい光を放つ。
愛と希望を思わせる薄い桃色の破片は、絶望を届ける漆黒の邪神に良く栄える。
「サンダーブレード」
ぱちん、とシゼルの指が鳴る。その乾いた音だけが、やたらと大きくセネルの耳に入った。
電速のエネルギィが右腕から伸びる。
瞬く間に形成された雷刃が、無防備なセネルの身体を真一文に切り裂くべく振り降ろされた。
セネルの胸を縦に雷が走った。肉と衣類の焦げた臭いが鼻腔をつんと刺激する。
ずん、と身体の芯まで震撼させる一撃が大地へと振り降ろされる。
何もかもを両断するかの様な一撃だった。

『「魔力で描かレタ魔方陣。それが視認可能ナらバ、魔力が具現していル証拠』

山吹色の刃が陣に食い込む。七色のスパークが上がり、みしみしと終焉への崩壊が始まる。

「物体は何時シか壊れル。セイファートは愚かだ。
 バテンカイトスには永遠があると言ウノに』」

ぱりぃん、と小気味良い音が地面の方向から上がった。セネルの視界が真っ黒に染まる。

『「まァ、故に魔力の刃デ斬る事が出来るノガ道理よ」

緋色の魔方陣に罅が入り、砕けてゆく。緋色の硝子片が悪魔の黒に蕩け、霧散してゆく。
大地へと一直線に落ちながらセネルは震えた。
459グロリアは誰の亡骸に 51(代理):2009/08/22(土) 01:44:03 ID:RVi4Z7cn0
嘘だろ。拮抗を保ってたそれが壊されたなら、もう望みがないじゃないか。
『ん。漸く主導権が戻ったか。全く忌々しい女よ、シゼル。無駄な抵抗をしよって』
血を撒き散らしながら瓦礫に墜ちるセネルへと、ネレイドが笑う。
まるで墓標の様に瓦礫の山の頂上を貫く槍を引き抜き、そして遠く大文字を描くセネルを睨んだ。
シゼルの指輪が主を守るべく輝く。
『……さて、男。私はお前を殺すつもりだが、その前にやらねばならん事が幾つかある』

希望を乗せた砲身が、遠く低く、北北東の空に啼いた。



―――――――――――――



左舷に5度舵を切る。最終微調整だ。船が僅かに動き、その反動で砲身の角度が僅かにずれる。
潮風による些細な揺れさえ許されない。レイスは頬を流れる辛い汗を拭うと、息を止めた。
海面と水平に2度、12時の方角へ砲身を移動させる。
今のシゼルの位置ならば、此所がベストポジションだった。
レイスはシゼルと砲身を結ぶ直線上に建つそれを見る。矢張り、直撃は免れないだろう。
くぅ、と腹の底から唸る様に苦虫を噛み潰す。油断していた。
確かにあの塔を破壊したとて、後光は確認可能だろう。だが、あの塔にもし、誰かが居たら?
破壊された塔の下敷きになれば? 無論、私は単なる殺人者に成り果てるだろう。
しかもこの一撃がもしもシゼルを倒せなければ……私は絶望するやもしれない。
しかし。しかし撃たねば。チャンスはもうない。撃たねばッ!
だがそうすると塔は? 犠牲になるかもしれない人々は? いやしかし今撃たねば。
ネレイドを放置は出来ない。生かしておく訳にはいかない。チャンスはもう無いぞ!?
あの男はもう直ぐ死ぬだろう。そうすればチャンスは完璧に無くなる。
ネレイドが男と戦闘をしている間でなければ、隙は出来ない!
男の死を見過ごす訳にもいかない。今しかないのだッ! しかし!
しかし、しかしッ―――!!!
レイスは歯を食いしばり、壁を渾身の力で殴る。血が滲んだ拳は震えていた。
レイスは荒くなった息を落ち着ける様にボトルを手に取り、口に水を流し込む。
別段喉が渇いた訳でもないのだが、心が冷たい水を欲していた。
レイスは水をがぶがぶと飲み干すと、空になったボトルを机に勢いよく置く。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 01:48:01 ID:d9ZX6RZEO
支援ー
461グロリアは誰の亡骸に 52(代理):2009/08/22(土) 01:50:35 ID:RVi4Z7cn0
金属音が右に左に伸びてゆく中、力無く口を開く。

「何故、来てしまったんだ」

項垂れるレイスの後方に、アガーテは佇んでいた。レイスは繰り返す様に問う。
「何故此所に来てしまった? 君は極めて聡明な方だ。何故何も言わない?
 私がシゼルの危険性とセイファートとネレイドの確執を伝えた時、
 私が何を企んでいるのか、僅かでも理解出来た筈だろう?
 そうでなくとも! この状況を見れば! 一目瞭然だろうにッ!!」
全身を使って、魂を絞り出す様にレイスは叫んだ。
言霊は室内を満たし、やがて冷たい金属に虚しく吸い込まれてゆく。
沈黙を決め込むアガーテに、レイスは項垂れた頭を左右に振り、続けた。
「止めても無駄だよアガーテ、私は撃つ。
 非難を浴びてでも撃たねばならない理由が、標準の先に在る。
 異世界の君には到底分からないかもしれない。
 傍から見れば私が気が触れてしまったのかと疑う人間も居るだろう。
 が、ネレイドとセイファートの関係は、それ程までに深い。こうして私が取り乱すまでにね」
アガーテはレイスの背から覚悟と使命感を感じ取る。……お前を縛ってでも私は撃つ。
冷やかな背は無言でそう語っていた。アガーテは悲しそうに俯く。
窓の外からは戦闘の音が僅かに聞こえていた。何故、争いは止まないのか。
アガーテは顔を上げ、静かに足を前へと進める。その顔には覚悟の念が浮かんでいた。
苦痛と悲しみを負う覚悟、現実と理想に線を引く覚悟だ。
「如何してもそれが必要ならば、わたくしは貴方を止めないつもりです。
 貴方はわたくしよりも遥かに良識もあり、強く賢い。そんな貴方が取り乱すのです。
 ならば貴方の言う通り、本当に止めても無駄なのでしょうね。
 ……ですが、これ以上犠牲を出したくないという想いは、一緒だと信じております。
 せめて、撃つ前にわたくしに相談をして欲しかった。それがわたくしの本音」
レイスは発射レバーに縋る様に、強く強く握る。
どんな叱責も覚悟していた。私を見捨てる権利だって、貴女にはあった筈だ。貴女ならば別の選択も出来た筈だ。
アガーテ、君は何て優しいんだ。優し過ぎるよ。甘いとさえ言っても良い。
君はこれを知れば止める……そう考えていた自分が、馬鹿みたいじゃないか。
その優しさに、甘さに、私は身を委ねていいのか?
レイスはいや、と胸中で頭を振る。他世界の住民を巻き込む訳にはいかない。
462グロリアは誰の亡骸に 53(代理):2009/08/22(土) 01:56:45 ID:RVi4Z7cn0
「お願いですレイス。どうか、一人で全てを背負うなどと考えないで。
 貴方は一人ではないのです。わたくしと貴方は他人ではありません。
 楽しい事も辛い事も、哀しい事も分かち合うのが仲間、そうだと思いませんか?
 お願いです……わたくしを信じて」
レイスの震える手を、操作盤のレバーを握る震える手を、アガーテの両手が優しく包み込む。
「アガーテ……」
レイスが驚いた様な顔をアガーテに向けた。皿の様になった目に、こくりと頷くアガーテ。
レイスは中途半端に開けられた口を間一文に噤むと、標準を真直ぐに見据える。
信頼、決意。しかしレイスはその顔の裏に嘘を一つ仕込んでいた。
シゼルがクレーメルキャノンを受けても防いでも、黎明の塔破壊の事実が変わらないという事だ。
殺人鬼の汚名を被るのは、己だけで充分。
「いくぞ」
「ええ」
瞬間、アガーテは窓の外を見、その影に気付いてしまう。
ああ、何で、ガジュマの眼はこんなにも良いのだろう。気付かない方が良かったのに。
アガーテは顔から血の気が引くのを感じながら、ガジュマの身体能力を呪った。

……ジルバ。どうして貴女が、そこに居るの。

アブソーバー、最大。リアクター起動、出力上昇。圧縮空気冷却装置、圧力最大。
臨界トルク手前、問題無し。801、2525、4649、7256エスト突破。
9765地点でクレーメル・エネルギー完全安定。グラフ沈黙、一定値を維持。
照準補助装置稼動、座標安定。ターゲットロックオン。システム・オールグリーン。

―――クレーメルキャノン発射準備、完了。



―――――――――――――



カイウスは横腹に手を当て、足を引き摺りながら街を行く。
身体のそこら中が痛む。左足が痛い。左手も痛い。胸が、痛い。
息を吸うと、身体の内側からびゅう、と隙間風が吹いた様な不自然な音が響いてくる。
恐らく肺が痛んでいるのだろう。右手を口に当て咳込むと、掌にぼたぼたと血が滴った。
目の前の景色が白く霞む。自分の右手がブレて二つに見える。
これはヤバい兆候だ。それぐらいはカイウスにだって理解出来た。
いや、体力はまだある。身体も寒くはないし、きちんと痛覚も通っている。
仮にも此所まで五体満足で来れた人間。いざとなればアレもある。
この程度で死にはしないだろう。
しかし、とカイウスは杖代わりのファルステヴェルンを身体の支えにし深い息を吐く。
463グロリアは誰の亡骸に 54(代理):2009/08/22(土) 02:04:26 ID:RVi4Z7cn0
……疲労困憊。正にその表現が的を射ているだろう。
数時間に渡ってチェルシーを背負い全力失踪した後、この仕打ちだ。
肉体も精神もとっくの昔から悲鳴を上げている。
……もう限界だ。カイウスは呻く様に声を絞り出す。

「大丈夫ですか、カイウスさん」
チェルシーがカイウスの横顔を覗き込む。肩を貸して貰っている挙句心配されるとは。
大丈夫じゃないな。カイウスは冗談まじりにチェルシーに呟く。
というか大丈夫に見えないだろコレ。
カイウスは余りにも余裕のない自分の身体に腹が立ち、項垂れつつチェルシーの容態を横目で窺った。
オレよりかは随分マシ。それでもチェルシーも疲れている筈だし、何より傷だらけだ。
余りにも痛々しい体躯。表情に影を落とすと、カイウスは嗄れた声で唸る。
そろそろ大丈夫だろう。危険地帯は過ぎた筈だ。本気で回復しなきゃヤバい。
シゼルの行動も、ルビアの敵もあの兄弟も後回しだ。今はそれよりも優先する事がある。
「く……チェルシー……。そろそろ、ここらで……きゅうけ、」

正に青天の霹靂、という表現が正しいだろう。
ぱん、と渇いた音に鼓膜を横殴りにされ、カイウスは体勢を崩す。
二の句が継げないとはこの事だ。続け様に二撃目がカイウス達を襲う。
足元に蒼い弾丸が弾け、飛礫が踊った。カイウスは咄嗟に空を見上げる。
同時に腹の底から滲む、焦燥と怒り、諦観の念。
「お、お前らあぁ……ッ」

「お兄ちゃんを傷付けておいて逃げようだなんて、虫が良過ぎる。そう思わない?」
輝く太陽を背に、半壊した住宅の屋根に立つはシャーリィ=フェンネスとジルバ=マディガン。
カイウスは牙を剥き、現実への苛立ちを露にする。一難去ってまた一難。
鼻の下にじわりと滲む脂汗。退路は、希望は、今度こそ絶たれた。そういう事か。
こんな状況打開出来る訳ないだろ。何だってんだよ本当に。
「お兄ちゃんを如何したの? 此所には居ないみたいだけど」
ざっと周辺を見渡しセネルが居ない事に気付くと、シャーリィは無表情のままカイウスを見下した。
カイウスはファルステヴェルンに身体を支えられながら唾を飲み込む。
無言。
その事実が示唆する最悪の可能性にシャーリィの目付きは鋭くなり、
苛立ちを隠そうともせず眉をひくつかせる。すうと伸びた右腕が、虚空にペンを走らせた。
素早く走るペン先からは、瞬く間に死の蝶テルクェスが13匹産み出される。

「答えなさいよ。お兄ちゃんは何処なの?」
464グロリアは誰の亡骸に 55(代理):2009/08/22(土) 02:09:39 ID:RVi4Z7cn0
ぶっきらぼうに吐き捨てるシャーリィを余所に、ジルバは辺りを警戒していた。
勿論、シャーリィには分からずともジルバは分かっていた。セネルはまだ生きている。
現在はこのゴーストタウンの東地区で交戦中だ。
聴覚を信じるなら相手は一人。……強い。馬鹿げている強さだ。
セネルがカイウス達を放置してでも、奴と一対一になるのは仕方がない、か。
それにしても、とジルバはテルクェスを何の気なしに見ながら鼻の頭を掻く。
セネルとした事が、作戦とカイウス達を放置して他人と戦うとは思えない。
何せ立て直した策は、セネル自身が率先してカイウス達を仕留める事。
尤も、足の速さがある為にセネルが仕掛けるのは仕方無い面もあるのだが。
それにしたって、セネルもカイウス達を仕留めるのが目的、というのは重々理解している筈。
詰まるところが、敵に余程の私怨があるか、挑発されたか……若しくはカイウス達をそいつが庇ったか。
ジルバは鞭を掌に打ち付ける。これはどうも雲行きが怪しくなってきた。
しかしこれは嬉しい誤算かもしれない。セネルの安否を心配するシャーリィを利用出来る。
最早虫の息のカイウス達は、此所で何とかシャーリィに殺して貰うとして……ッ!?

ばつん、とジルバの中に張っていた糸が弾ける。“パワー・クラフトが解除された”。
ジルバは激しく動揺した。如何いう事だ。自分はダメージを喰らっていない。
詰まり強制的な解除? 真逆、セネルが死んだ?
「……お前の兄の事なら、今の状況は……知らない」
シャーリィの舌打ちを聞きながら、ジルバは考察の海に沈む。
いや、セネルは生きている。東から感じる気配は二つだ。
ならば敵に解除させられたのか?
ジルバは舌を口内で転がす。正直に言って、ジルバには陣術に関しての絶対の自信があった。
それを破壊されるとは、敵が並大抵の使い手ではない証拠だ。
セネルが心配だが、あろうことか自分らしくない失言でカイウス達に正体がバレている。
此所はカイウス達をシャーリィに確実に始末させるのが優先か。
ジルバは東の方角から顔を南の方角へと戻す。
遠く広がる海原は大層静かで、その中に浮かぶ戦艦の砲台が実に景色から乖離して見えた。
……ちょっと待て。
今、何の中に何があったって?
「知らない? はっ、そんな訳ないじゃない!
 真逆とは思うけど貴方達。もしかして卑怯な手でも使って、お兄ちゃんを―――」




こちらを向く、戦艦の、砲台?
465名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 02:11:08 ID:d9ZX6RZEO
支援
466グロリアは誰の亡骸に 56(代理):2009/08/22(土) 02:17:13 ID:RVi4Z7cn0
「――――――――――――――――――!!!」
ジルバの全身の毛が、文字通り“総毛立つ”。
ガジュマの視覚が、砲身の中の光を、硝子の奥の女王を、見知らぬ男を認める。
アガーテだ。間違いない。そして恐らくあれはコックピット。
砲身は間違いなくこちらを向いている。
真逆とは思うが、あの糞王女め大砲を自分達に向けて……!?
いやあの王女に限ってそれは……だがそこに第三者が居る時点で絶対に有り得ないとは言い切れない!!

「〜〜〜撤退ッ!!! シャーリィさんッ、ここは一時撤退ですッ!!!!!」
その場の雰囲気を思い切り崩され、きょとんとするシャーリィとカイウス、チェルシー。
「え?」
振り向いたシャーリィは目を丸くし、馬鹿みたくぽかんと口を開けている。
当然の反応だが、気が気ではないジルバは眉間に皺を寄せる。
呆けている場合か糞ヒューマ、いやしかし馬鹿に逐一講釈を垂れている暇はない!
理屈はいいから逃げるのさ、呑気に突っ立ってんじゃないよ役に立たないヒューマの小娘だねェッ!!
「ひゃっ!?」
苛立ちに地団駄を踏むや否や、ジルバはシャーリィの首根っこを掴み上げ、細い腰を咄嗟に抱き抱える。
何でも良い、今は遠くへ逃げる事を考えねば!
こんな所で死ぬなんて、それもあの糞女王の所為で死ぬだなんて馬鹿げている!
「ちょ、待ッ……!」
屋根から飛び下り、一目散に走り去るジルバ。
その背にカイウスは手を延ばすが、余りの速さに茫然と立ち竦む。
「何だったんでしょうか……?」
純粋な疑問に頭を傾げるチェルシーに、カイウスはさぁ、と肩を竦める事しか出来なかった。
説明されるまでもなく、数秒後に理解させられる羽目になるとは知らずに。


「一体何なんですかジルバさん!?」
簀巻きにされた人間を抱えられる様にして、シャーリィはジルバの腕に収まっている。
その言葉には多少の怒りが見て取れた。折角の尋問とチャンスを邪魔されたのだ、当然だった。
ジルバは答えるのも馬鹿らしいと思ったが、シャーリィを納得させる為に口を割る事にする。
此所でシャーリィに余計な抵抗でもされたら、殺したくなる。堪ったものではない。
467グロリアは誰の亡骸に 57(代理):2009/08/22(土) 02:23:08 ID:RVi4Z7cn0
「この街を南から大砲で狙っている輩が居るんですッ!!
 取り敢えず逃げます! 早くセネルさんにも伝えて下さいッ!!」
「あ、は……はい!」
何時もの余裕が見えず、尋常ではないジルバの様子に圧倒され、
シャーリィは反射的に了承の意を返した。
その身を抱えられたままジェミニシェルの片割れをサックから取り出す。
もしも撤退する時は、D3の塔を目指す。
もしもチームがバラバラになっていたら、ジェミニシェルの発光が撤退の合図……確かそうだった。
シャーリィは祈る様にジェミニシェルを握り力を込めた。
それに応じる様に、ジェミニシェルは淡い光を両手の中へ満たす。
シャーリィはほっと溜息を吐いた。……セネルのジェミニシェルが壊れているとも知らずに。

「あんなもので狙われた日には……生きた心地がしないね! 冗談じゃあないよッ!!」
思わず何時もの口調が出るが何、この状況だ。シャーリィにも不審に思われはしないだろう。
ジルバは得体の知れない恐怖に背を向け、瓦礫の山を足蹴にする。
ひとっ飛びで10メートル後半。ガジュマの脚力を舐めて貰っては困る。
ジルバは底知れぬエネルギーをぴりぴりと肌に感じ、がばりと顔を上げた。
血走った眼球が確りと未知の恐怖を見届ける。
まるで空が化学反応でも起こしたかの如く、がらりと色を変えた。
目が眩む程の白に世界が染まり上がる。続けざまにどう、と大気が震撼した。
衝撃に瓦礫は宙を舞い、雲は円形に裂ける。
大地には大きな亀裂が走り、海は狂った様にその身体を捩っていた。
大木はその幹を折り、草花は虚空に舞い上がる。
巻き起こる凄まじい突風の大口に、ジルバ達は紙屑か何かの様に簡単に呑まれた。






悪魔へと、黎明の名を頂く塔へと、島全体を揺るがす閃光が―――今、放たれる。
468グロリアは誰の亡骸に 58(代理):2009/08/22(土) 02:28:18 ID:RVi4Z7cn0
【シゼル 生存確認】
状態:HP20% TP45%  カイウスへの複雑な心境 クラトスの行動への敬意 激しい葛藤
   ネレイドの干渉(大。意識の混同、言語並びに肉体操作)
所持品:ロンギヌス ジーピーエス リングシールド トマト
基本行動方針(シゼル):ネレイドに完全に支配される前に、自分を殺してくれる者を探す
基本行動方針(ネレイド):主催者含め皆殺し
第一行動方針(シゼル):カイウスらを逃がす。その後レイスに殺して貰う?
第一行動方針(ネレイド):クレーメルキャノンを防ぐ。
            シゼルがうざいのでカイウスと離れる為その後一時撤退?
現在位置:F2

【レイシス・フォーマルハウト 生存確認】
状態:HP90% TP100% 帽子に花飾り無し 頭部に止血済擦り傷 焦り
所持品:セイファートキー フェアリィリング ホーリーリング デッキブラシ
基本行動方針:アガーテを守り、サイグローグを倒す。命はあまり惜しくは無い
第一行動方針:回りの人物が気にはなるが、クレーメルキャノンをシゼルに撃つ
第二行動方針:一段落ついたら結果を記し北上する
第三行動方針:同士との合流。合流優先順位は、        チャット>リフィル≧メッセージ主>キール>フォッグ>その他対主催
現在位置:G2・バンエルティア号内部・コックピット

【チェルシー・トーン 生存確認】
状態:HP55% TP90% クラトスの死へショック大 色々な事象への失望 死への達観
   左肩に怪我 全身裂傷
所持品:包丁 レッドランタン 手作りの弓 手作りの矢×29 チェスターの矢 食べ掛けのアマンゴ
    フォーク 模造刀 マジカルポット バスケット(ストロベリークレープ リンゴ トマト×3) エクスカリバー
基本行動方針:仲間に会う・ウッドロウ様を守る。これ以上の死は許さない?
第一行動方針:身を守る
第二行動方針:D3の塔を目的地に、他の参加者を探す
第三行動方針:情報収集。信頼できそうな人物には館のことを教える
現在位置:F2
469グロリアは誰の亡骸に 59(代理):2009/08/22(土) 02:36:25 ID:RVi4Z7cn0
【カイウス・クオールズ 生存確認】
状態:HP15% TP100% 無力さ、臆病さへの葛藤 強い自責の念 肋骨一本骨折 左足捻挫 左指三本骨折
   クラトスの死への大きなショック チェルシーの変化への動揺 砕けた理想 疲労大 肺に小さな傷
所持品:サック一式(ランタン無し) スタンドファーム  マゴノテ
    食べ掛けのキルマフルーツ クラトスのメモ ファルステヴェルン
基本行動方針:サイグローグを倒す。他人を助けられる、正義を語る強さが欲しい
第一行動方針:なにがなんでもチェルシーを守り、一緒に生きる。生きる為ならなんでもする
第二行動方針:シャーリィ達からどうにかして逃げる。早く回復もしたい
第三行動方針:シゼルを止めたい。それでも殺したくはない
第四行動方針:クラトスの息子、ロイドに会いたい
第五行動方針:D3の塔を目的地に、他の参加者を探す
第六行動方針:情報収集。信頼できそうな人物には館のことを教える
第七行動方針:ルビアが生きていると願い、探したい
現在位置:F2

【アガーテ・リンドブロム 生存確認】
状態:HP80% TP100% 死に対する深い悲しみ 軽い擦り傷
   『選択』を貫く覚悟 焦燥感 犠牲を出す事への嫌悪 胸の造花無し ドレスは裂いて短い
所持品:メンタルリング クローナシンボル ペルシャブーツ アニーの腕輪の欠片 ハヌマンシャフト
基本行動方針:殺し合いを否定し打開する道を先陣を切って探す
第一行動方針:本当はレイスを止めたい気持ちが強い。ジルバが気になる
第二行動方針:事態終息後北へ行く
第三行動方針:自分の思いを他の参加者達に伝える
第四行動方針:ヴェイグの選択を信じる
現在位置:G2・バンエルティア号内部・コックピット

【セネル・クーリッジ 生存確認】
状態:HP25% TP50% 全身に傷 強い決意 ジルバを信頼 左太腿、左横腹刺傷 右腕、右足、右胸裂傷
   胸に火傷 身体が痺れている 攻撃力、防御力上昇中
所持品:シルバーガントレット(TOR) 草刈鎌 首輪探知機
    時を駆ける少年の人形 すずのサック ウイングドブーツ(GDロープと同じ効果)
基本行動方針:シャーリィを優勝させる
第一行動方針:ジルバを利用し、参加者を慎重且つ確実に殺す
第二行動方針:シゼルを倒す? それとも逃げる?
第三行動方針:クロエやノーマとの接触は出来れば避けたい
現在位置:F2
470グロリアは誰の亡骸に 60(代理):2009/08/22(土) 02:46:14 ID:RVi4Z7cn0
【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
状態:HP100% TP35% 仲間の死によるショック 精神的に疲労大 ベスト無し
   罪の意識 自分の意思で行動することに躊躇 防御力上昇中
所持品:クライマックスボトル ジェミニシェルの片割れ
基本行動方針:セネルの望むままに行動。
第一行動方針:黎明の塔へ撤退?
現在位置:F2

【ジルバ・マディガン 生存確認】
状態:HP70% TP90% 身体中に裂傷 背中に軽度の火傷 全身打撲 シャーリィに不安大
   腹部刺傷 防御力上昇中 アガーテが気になる 晶霊砲への恐怖
所持品:ステラのサック シャーリィのベスト 睡眠薬 遅効性の毒薬(回りきるまで3、4時間程度)
    毒薬入りの水 鞭代わりの蔦
基本行動方針:ステルスマーダーとして行動。上手く立ち回る
第一行動方針:セネルとシャーリィを利用する
第二行動方針:本性を知られたカイウス達を始末したいが黎明の塔へ撤退。
第四行動方針:己を知る者とクロエとの接触は避け、セネルたちを誘導する
第五行動方針:シャーリィをどうにかしたい
現在位置:F2


D4放置アイテム:矢一本 チェルシーの肩当て


※カイウス達と出会うまでにシャーリィとジルバが何をしていたかは今後のSSにお任せします。
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 03:03:55 ID:RVi4Z7cn0
代理投下終了。

まさかの晶霊砲!? 黎明の塔逃げてえぇぇぇ
ネレイドに殆ど乗っ取られてるシゼルもどうなるんだろうか
とにかくGJです!
472名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 03:22:10 ID:sFqN2F3u0
乙です

チェルシー達がどうなるか期待
473名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 13:41:22 ID:I9ATrD1vO
乙です
こんな良いところで終わりだなんてなんという焦らし
カイウスチェルシーは前途多難と言うべきかむしろここまで生き残れたのは強運と言うべきか
チェルシーが冷静な分カイウスのモノローグが痛々しくて辛かった
姫騎士も大きく動き出したね
カイウス達の戦闘でハラハラした後ってのもあってアガーテの台詞には心温まった
キャノンまで出てきて大規模混戦だし塔組含め誰が死んでもおかしくない状況、本当に続きが楽しみだ
1stのシャーリィの台詞をセネルが言ったのには吹いた
474名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 15:24:01 ID:xg+L/uTVO
タイトルからして誰かしら死ぬんじゃないかとハラハラして読みましたw
子供組不運すぎw
475名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 15:36:29 ID:Nl8PsT8MO
乙でした!
カイウスかチェルシーが死んじゃうんじゃないかと
読み終わるまでずっとハラハラしてた
476名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 16:33:04 ID:YAVR3nqQO
投下乙!
乱戦で熱くなった所でまさかのマップ攻撃に吹いたww
しかしネレイドは1stでもマップ攻撃を防いでるからな……。嫌な予感がする。
477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 16:57:10 ID:xg+L/uTVO
>>455の最初、セネルじゃなくてカイウスですよね?
478名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/22(土) 17:36:56 ID:WMPfccC+O
作者です。
どうやら読み直していると>>477さんが指摘された様なミス等がもう至るトコにばら蒔かれてるようなんで、収録の際に直して貰いますね。
479名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 11:09:27 ID:q9r9cgR0O
祝!テイルズロワ2ndラジオ出演決定記念!
てなわけで投票するよー。

・SS
202.「カタストロフィ」
いややっぱりこれは外せないだろー。ウッドロウのかっこよさは異常。熱血に笑いに鬱に乱戦とカオス、だがそれがいい。

222.「玉鋼の記憶」
なんでだろう、あっさりしてるけど好きなんだよな。気持ちが伝わってくるような綺麗な描写、伝わってくる書き手のIスキー度にお手上げ。
しかしスパーダ、最初は話の渦中に居たのにな…w

230.「グロリアは誰の亡骸に」
最後はノルンとか堕落する翼とかさよならくたばれとか夜想曲とか愛をくださいとか、色々迷ったけど最新話で。
チェルシーかっこよすぎだろJK。内容も考察や熱血に鬱とめっちゃ濃いし、乱戦が熱かった。あとボリュームやばいのに退屈することなく読めた。
つか三つの枠とか無理wいい作品ばっかで決められねーよw

・キャラ
◆チャット
これからに期待大のキャラ。最多登場だけあって積み上げてきた経験もはんぱないし、期待してるぞ少年主人k……ヒロイン!

◆カイウス
ここにきて自分の中でのカブが大上昇。チェルシーとのコンビがいい味だしてるよ。というかカイウス落ち込むな。
お前が無力なんじゃない、出会うやつらがみんなバケモノ級なだけだ。

◆デクス
超トラブルメーカーヘタレサラマンダー。この手のギャグキャラ要員がテイルズ2の唯一の癒しだよ。1stでいうグリッドポジかな?なんにせよデクス節を期待してる。

・タイトル
185.「10秒間戦争」
タイトルだけでwktk出来るってすごくないか。どストレートなネーミングだけど好きだな。

201.「ノルンは嘲笑う」
まさに運命が嘲笑った話だった。絶望感がもうタイトルから滲みでてる。そんな訳で好きだ。

227.「さよなら。くたばれ、また明日。」
語呂がよくて内容と即してるタイトルっていいと思うんだわ。タンパクさも展開とハロルドの思考をしっかりあらわせてると思う。
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 19:40:23 ID:AsbRk+C70
投下します
481鮪の一生 1:2009/08/23(日) 19:42:26 ID:AsbRk+C70
それは、灰色の世界だった。
打ち捨てられた古い音機関のモニタのようにざあざあと波打つノイズ。その向こうに見える灰色の空と、大地と、森の木々。
深々と降りゆく雪の様はケテルブルクを思い起こさせる。
暗く重い雲を突き刺すように聳える、尖塔を頂いた荘厳な城。
時計塔の鐘が鳴り響く。
ノイズの混じった反響が、灰色の世界に染み渡る。



少女の嗚咽が、傷の走る背中を擽る。小さく軽いはずの、生きている少女の躯が、鉛のように、死体のように重く重くのし掛かる。
じくじくと抉られるような熱っぽい痛みを感じるのは、きっと大きく走った裂傷のせいだけではない。
あれほど「追う」と、「止める」と、彼女の「生」を望んだ少女は、顔を黒と血色に染まった布にうずめたまま、鉄のにおいに溺れている。
彼女に向き合うことを拒み、小さな躯を痙攣させている。
少女は、彼女を見ようとはしない。
少女の瞼の裏側にこびりついて離れないであろう、生臭く無慈悲なまでに現実的な「死」という姿が――
――それは、たとえば赤黒い血の色、硝煙のにおい、引き金を引いた指先から伝わった振動といったものをはじめとする、
少女の五感を支配した至極リアルなものたちが――少女のこころをすっかり閉ざしてしまったのだ。
鮮血の異名を持つ青年は、そう思ってしまった。
乾ききった唇を噛みしめる。叫びすぎた喉からは短く掠れきった力無い呪詛しか漏れない。そしてそれは勿論、少女のこころを守れなかった己自身へ向けたもの。

地に伏す死体が、ふたつ。
生きた人間がたぶん、四人。
むっつの躯が、ぼろぼろの、砂混じりの草原の上で、それぞれの夜を見つめる。
482鮪の一生 2:2009/08/23(日) 19:45:04 ID:AsbRk+C70
死体のひとつ――ジェイド・カーティスの最期に放った特別製のドレイン・マジックがもたらした恩恵により、四人の足元には既にハートレスサークルの陣が描かれている。
あたたかく身体を癒す光の色は、つい数時間前に描かれたものと同じはずなのに。
共に戦った仲間の、命を落とした瞬間に立ち会ったのも同じはずなのに。
当事者である癒し手リフィル・セイジの表情も、心を閉ざした少女チャットの息づかいも、何もかもがあのときと異なって。恐ろしいまでに澱み、沈んでいた。
しかしそれは、よくよく考えるまでもなく当然のことなのだ。
人を殺し、人が殺された。その事実は等しくとも、それ以外の事象が、条件が、完全に異なるのだから。
じわじわと癒えていく傷。ゆっくりと勢いをなくしていく出血。だがしかし背中の痛みは、身体全体を重い重い海のそこ深くに沈みこまされているようなそれは、青年の躯に残り続ける。
空気が重い。
酸素が薄い。
無意識のうちに、乾いた唇がぱくぱくと小さく微かに開閉を繰り返す。
それはまるで漆黒の海に生きる魚のよう。
「……何が起こった」
かり、と乾いた音が鼓膜を揺らす。すべてのはじまりの部屋で、勇敢な青年の死体の横にずっとずっと立ち尽くしていた青髪の青年キール・ツァイベルが親指の爪を噛んでいる。
言葉を向けられて、鮮血の青年――アッシュは、短く吐き捨てた。
「俺が訊きてェよ、屑が」
自分でも信じられないほどに掠れた、弱々しい声だった。
「お前、少しはこの状況をどうにかしようとか考えないのか?」
キールは呆れたように語気を強める。けれどそれが怒声になれないのは、重く沈んだこの場の空気のせいだ。
キールはアッシュの背中で泣きじゃくるのみの少女――チャットの仲間だという。対してチャットはキールの存在などすっかり忘れてしまったかのように、ただただ嗚咽を漏らすだけ。
口をきこうとも胸に抱きつこうともしない。きっと今のチャットには、アッシュすら「見えて」いないだろう。
アッシュは舌を打つ。
「どうにかしたいに決まってるだろうが、こんな馬鹿げた殺し合い」
「だったら少しは情報交換を――」
「さっきも言っただろ、この屑。俺だって何が起こりやがったのかさっぱりわかんねェんだよ!!」
アッシュがかぶりを振ると、チャットの躯がおびえたようにびくりと震えたのが伝わった。
その様子にキールも舌を打つと、もうひとりの生きた人間――ハートレスサークルの詠唱を続けるリフィルを見る。少なからずの期待を籠めただろう眼差しは、しかし次の瞬間落胆の色に染まる。
リフィルもまた、長い銀色の睫を伏せて、ただただマナを籠めた言霊をひび割れた唇から紡ぐだけだったのだ。
畜生、と小さくキールが吐き捨てる。膝を抱えて唇を噛むキールは、ハートレスサークルの恩恵を受けても万全にはほど遠い様子だった。
傷自体はアッシュよりは軽かったが、身なりからして術師であり、それほど身体が丈夫ではないのだろうことが見て取れる。
重い溜め息がひとつ、夜の闇にとけていく。
何が起きたのか、何をしてしまったのか。すべてを把握して咀嚼することが、果たしてこの残された四人に可能なのか。アッシュには何一つとしてわからなかった。
視線を少しばかり横にずらせば、長身の男と小さな女の死体が仲良く横たわっていた。
死霊使いジェイド。こいつが死ぬなんて考えもしなかった。考えられなかった。
妖獣のアリエッタ。アッシュと同じくオールドラントで一度命を落としたもの。アッシュと同じくこの馬鹿らしいゲームで再び目覚めたもの。それがぼろ雑巾のように地面に投げ捨てられている。
アッシュも、ジェイドも、アリエッタも、軍人だ。
いつか死ぬときがくることを、誰もが知っていただろうし覚悟もしていただろう。
その手が血で汚れることも、すぐそばで剣を振るっていた味方が血をまき散らして死んでいくことも、何度も何度もイヤになるほど繰り返してきたはずなのに。
今まで見てきたどんな死よりも、このふたつの死体は空しく、どうしようもなく腹立たしかった。
ローレライ教団の詠師服の裾がぎゅ、と引っ張られる。自分の背中越しに、チャットがアリエッタの死体をじっと見ていた。
震えるばかりの唇から、「ごめんなさい、ごめんなさい」と小さな声が漏れ続ける。ごめんなさい。僕が、僕が全部悪いんです。
――違う。
アッシュは首を横に振った。
眉間にぎゅうと力が籠もる。同時に胸が締め付けられるような、喉がひりつくような感覚がアッシュを襲う。
この小さな子供はアリエッタの死体を見つめている。
アリエッタの死体を見つめてはいるけれど、アリエッタの「死」を見てはいない。
483鮪の一生 3:2009/08/23(日) 19:48:02 ID:AsbRk+C70
「おい」
大きな瞳からこぼれる涙が砂の中に消えていく。
「おい、ガキ」
呼びかけても、チャットは動かない。壊れたねじ巻き人形のように「ごめんなさい」と繰り返すだけ。アッシュの背中にしがみついて、涙と洟を垂らすだけ。
「聞いてんのか!」
いくら空気が澱み沈んでいるからといって、アッシュの声がチャットに聞こえないはずがない。
チャットの襟首を掴み、背中から強引に引き剥がす。キールが驚いたように口を丸く開けていた。リフィルはハートレスサークルをまだ唱えている。
畜生。
今日何度目か解らない呪詛が、頭の中にまた過ぎる。
いやいやをするようにチャットはアッシュの腕の中で暴れる。この数時間で、勇ましかった一日前の彼女の面影はきれいさっぱり吹き飛んでしまったようだ。
アッシュの腕に抱かれているのはただの臆病な子供。誰かに助けを求めるだけの、無力な存在。
「逃げるんじゃねェよ」
アリエッタの死を突きつけるように、ぐいとチャットの頭を掴んで前に突き出す。死の色に支配されたアリエッタの表情が、ガラス玉のような瞳に写り込む。
や、あ、と言葉にならない声が小さな喉から引き絞られる。
――子供相手にどれだけ残酷なことをしているのか、貴方、分かっているの?
凛々しい女教師の声が聞こえた気がして振り返る。けれどそれも幻聴だったらしい。リフィルは未だに陣を描き続けている。
もうアッシュもチャットも陣の外に出てしまっているというのにちっとも気づいていない。
畜生。畜生。
チャットの頭を掴んだ手に力が籠もりそうになるのをアッシュは必死で堪えて、代わりに強く歯を軋らせた。ぎり、という音が神経に障る。
「逃げるんじゃ、ねぇよ!!」
いっそう大きな声で、生きている人間全員に伝わるように、アッシュは叫んだ。
なんとか目をそらそうと首を動かそうと必死になるチャットの意志を、痛む背と、こころを無視して手に力を籠める。
このまま力を籠め続けたら、小さな頭蓋骨にはあっさりと皹が入ってしまいそうだ。果実を握り潰すときのように、真っ赤な血と一緒に脳漿すら弾け飛ぶかもしれない。
そんな突拍子もない不安にアッシュが駆られていることなど当然知る由もなく、チャットはどうにか束縛から逃れようと身を捩る。
涙も、洟も、唇から延々と紡がれ続ける呪詛めいた謝罪の言葉も、止まらない。
彼女はそれを一生繰り返し続けるのではないだろうか。
そうアッシュに思わせるほどに、止まらないのだ。
「ちゃんと聞きやがれっ! いいか、ちゃんと見ろっ!! アリエッタは死んだんだ。ジェイドが殺した! ジェイドも死んだ! その事実くらい、ちゃんと見れば餓鬼でも分かるだろ!」
「……なさい、ごめんなざい、ごめん、なっ、ざいっ、ごめんなさい」
「何てめぇは勘違いしてんだよっ! 誰に何を謝ってるんだよ!!」
アッシュの絞るような叫びに、チャットはひっ、と喉をひきつらせる。そしてまた再会される嗚咽混じりの謝罪。
重い雲がすべてを飲み込み、まだ足りないとばかりに夜の色を濃くしチャットのこころを深い奈落へと付き落とす。何度アッシュが叫んでも、アリエッタの方を向かせようとしても、状況は全く変わらない。
「……それくらいにしておけ」
がしりと肩を掴まれる。はっと振り返った先、初対面にも等しい状態のキールの瞳に写った己の姿は、あまりにも鬼気迫る形相であった。アッシュは愕然とする。
「これ以上騒げば、誰かを引き寄せる可能性も無くはない」
キールが触れたことで、肩に籠もっていた異様なまでの力がゆっくりと、風船がしぼむように抜けていったのがアッシュには分かった。
チャットを抱くことはやめず、頭を固定していた手だけを離す。泣きじゃくる少女はすぐさま逃げ出すかと思ったが、アッシュの予想に反して、大人しすぎるほどに大人しかった。
「…こんな状態で、殺し合いに乗った馬鹿に襲われたら、どうしようもない」
苦々しく、アッシュと視線を合わせずに言うキール。彼が先ほどまでいた場所には、もう癒しのマナは紡がれていない。一振りの大剣を、縋るように抱えた銀髪の女がひとり、うなだれているだけ。
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 19:48:18 ID:hQzigO5vO
支援
485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 19:48:26 ID:q9r9cgR0O
支援
486鮪の一生 4:2009/08/23(日) 19:51:09 ID:AsbRk+C70
灰色の世界は、呼吸ひとつするにも息苦しすぎる。
時の流れはすっかり止まって、ずっと灰色のままなのではないのだろうか?
アッシュは背筋が凍り付く思いだった。
「……声なんて出さなくても、こんな状態じゃ、どうしようもねぇ……この屑みてぇなゲームに乗った奴がいなくても、だ」
「………」
黙り込んで言い返してこないキールにアッシュは多少の苛立ちと同時に同情を覚える。キールもこの沈黙に耐えかねているのだろう。この事件の事情を最も知らないのは、気絶していたキールなのだ。
だからといってキールにことの一部始終を淡々と話す気もさらさら起きない。アッシュの第一優先事項はとっくに決まっている。
アリエッタの死体を見ようとしないチャットの身体を抱えてアッシュは踵を返す。何か言いたげなキールの手が宙をさまよう。アッシュはそれに目もくれず、足を前に進めることだけに専念した。
柔らかい砂漠の砂がブーツをからめとる。夜の砂漠は肌を刺すように冷える。その上に真白の雪が積もっていれば尚更だ。
風花のように舞う雪片はきめ細かく軽い。雪には大した思い出なんかないというのに、何処か、そのあたたかい冷たさをいつか感じたことのあるような、懐かしい雰囲気のする雪だった。
もう少し東に進めばまとまった降雪に遭遇できそうだったが、アッシュが今歩んでいる場所はまだ砂の色の方が圧倒的に濃い。
草の色と砂の色と雪の色、足下に広がる色を映していたチャットの瞳が突然に揺らぐ。彼女は視界の中に入れてしまったのだ。
砂にまみれた銀色の髪を。青色の鎧を。セレスティアンと似た褐色の肌を。
チャットの持っていた一丁の拳銃。そこから撃たれた弾丸と一致する弾痕を額に刻みつけた、ひとりの死体。
思えば先ほど、チャットが自責の念に駆られ叫ぶまでもなく、すべてが真実を伝えていたのだ。99パーセント以上の確率で、チャットがこの男を殺したことを。
おそらくは誤殺だろう。見ず知らずの男をチャットが殺す理由がない。理由があって殺したというのなら、これほどまでにチャットが憔悴することもない。
いつかどこかで、彼女と同じように誤って人を殺めた、アッシュと同じ顔の男を思い出す。そいつの怯えきった情けない瞳の色と、今のチャットの瞳の色は同じだった。
しかし今のアッシュに、あのときのように厳しくチャットを突き放せる訳がない。チャットを見捨てる訳には断じていかない。
だから、アッシュは震えるチャットの肩を抱いた。ひとつの死を、チャットと共に目をそらすことなく見つめることにした。
「逃げるんじゃねぇよ」
チャットは目をそらし続ける。飛び出た腸や滲んだ脳漿は決して正視に耐えうるものではない。
けれども、死体を見ることは叶わなくても、その“死”だけは見つめてほしい。
「逃げるんじゃねぇ! 前、見ろよ! そうやって……そうやってアニーの言葉からも逃げる気かよ」
アニーの名に、チャットの躯がびくりと跳ねた。
アッシュはただ、チャットに今を、現実を見てほしかった。今をその瞳に映せないものに待つのは残酷な「死」のみだ。例えば、少し離れた場所にある、死という過去に執着しすぎた少女のように。
それでもチャットは、男の死体から目をそらし続ける。薄く開いたままの死体の瞳がチャットの瞳を呆と見つめ続けていても、その視線が絡まることはいつまで経ってもなかった。
それほどまでに人を殺すということは、チャットにとって嫌悪の対象であり悪そのものだったのだ。アッシュは胸が締め付けられるようだった。
487鮪の一生 5:2009/08/23(日) 19:52:59 ID:AsbRk+C70



水の満ちた町、サニイタウン。ワカメ男の二度目の襲撃に会う前の、ほんのわずかの時間。
情報交換を兼ねてお互いのこのふざけたゲームに対するスタンスを確認し合ったあの時。
「おじいさんの名にかけて、人殺しなんて断じて許しませんね!」
得意げに海賊帽の鍔を持ち上げながらチャットは勇ましい声でそう言った。
「おじいさん……? お前のじいさんは海賊なんじゃなかったか?」
「そうです! 偉大なる海賊王、アイフリードこそ、このボクのおじいさんなんです!」
「海賊の孫のくせに人殺しは反対? 賊なんぞ、人殺しなんてしょっちゅうやってるもんだろ。王と言われるような奴ならば尚更な」
「なっ……失礼なっ! おじいさんをそんじょそこらの海賊と一緒にしないでください!! おじいさんは人殺しなんてしてません! 絶対に!!」
まるで人殺しイコール絶対悪と言わんばかりのチャットに、アッシュはため息を喉の奥で押し殺す。
アッシュの機嫌がにわかに悪くなったのを察してか、アニーがなだめに入り、チャットに笑いかける。
「まあまあ、ふたりとも落ち着いて下さい。……チャットは、いいおじいさんを持ったのね」
アニーの笑顔につられて、チャットも弾けたような笑みをこぼす。
「はい!」
「私のいた、カレギアっていう国にもアイフリードという海賊がいたって聞いているわ。素晴らしい義賊だったって。
 その子孫って人にも会ったけれど、その人を見ても、話を聞いても、人を殺すような人には思えなかった。
 だから、チャットのおじいさんも本当に、人を殺してないと思う。だって、チャットがこんなにも信じているんだから」
「その通りです!」
ほら見ろと言わんばかりに、アッシュはチャットに睨まれる。
「……そうですよね、アッシュさん?」
同時にアニーにそう言われてしまえば、アッシュは渋々と頷くことくらいしか出来なかった。
「だから、人殺しは絶対に許せません。こんな殺し合いに乗ってしまったら、ご先祖様に顔向けできませんから!」
勇ましい少女の声には、固い決意が秘められていた。
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 19:53:34 ID:q9r9cgR0O
支援 
489鮪の一生 6:2009/08/23(日) 19:55:15 ID:AsbRk+C70



その時から、薄々と気がかりではあった。
チャットの「人殺し」に対する嫌悪が、いつかこのふざけたゲームで悪い方向に転んでしまうことになるのではないのかと。
嫌な予感ほど的中するものだ、ということをアッシュは肌で感じていた。
チャットが決意を向けたアニーは遺書を残し死んでしまった。瓦礫に埋もれながら、それでも笑顔を残して、死んでいった。
そしてチャットは人を殺した。銃という武器のお陰で、返り血にこそまみれなかったものの、ひとりの命を無惨にも奪った。
誓いを覆してしまったことによる、アニーへの羞恥。そして、あんなにも、いっそ盲目的と言って良いほどまでに敬愛していた「ご先祖様」の顔に泥を塗るような行為をしてしまった後悔。
アッシュに想像できる限りでも重いそれは、チャットの小さな肩にとってはあまりにも重すぎるだろう。
逃げたくなるのも分かる。背負いきれないのも分かる。目を逸らしてしまうのも、仕方ない!
「ちゃんと見やがれ! チャット! 前を見ねぇと……今を見ねぇと……進めねぇんだよ!」
後悔の念を抱いているのは何もチャットだけではない。チャットに殺人という禁忌を犯させてしまった、己への無力感。アッシュを付き動かす感情の一端は間違いなくそれだった。
それでもアッシュは、死体から目を逸らさない。神託の盾六神将の一員であり、鮮血の異名まで取ったアッシュからすれば、この程度の死体を目撃することなど日常茶飯事であった。
銃などという間接的な凶器でなく、己の手に直に肉を斬り裂く剣を以て、誰かの命を奪ったことなど数知れない。
だからその分だけは、少なくともチャットよりもアッシュの方が強いと言えた。死に対する耐性だけは。
ならば、少女が背負いきれない分の罪や、羞恥や、後悔を背負ってやらずに、この耐性をどう活かす。
アッシュは背負いたかった。チャットと共に、人の死の重さを。アニーの意志を継ぎ、チャットを守るといったくせにそれを成し得なかった己への羞恥と後悔のために。
なのに、なのにチャットは背負うどころか、現実さえも受け入れようとすらしてくれないのだ!
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 19:55:37 ID:q9r9cgR0O
支援
491鮪の一生 7:2009/08/23(日) 19:58:46 ID:AsbRk+C70
途方もない無力感がアッシュを襲う。
このまま、淀み沈み時を止めてしまったチャットと共に居て、自分に何が出来る。どうしてチャットは動こうとはしない。
子供の気持ちも、女の気持ちも、どちらもアッシュとは疎遠なものでありすぎて、どうしたらいいかなんて全く分からなかった。
「おじいさんは人殺しなんてしない!」と言い張ったチャットに対しても、アッシュはロクな対応が出来ていなかった。
こんなとき、アニーや――運良くこの場呼ばれることのなかった、ナタリアだったならば、うまくやれたのかもしれない。
遠く感傷に浸っても、現状は変わらない。空しさが胸を容赦なく貫く。
「……っ!?」
見つめ続けた、男の凄惨な死体。その傍らが、きらりと眩しく輝いたのだ。ようやく晴れてきた雲の隙間から覗いた、沈みかけの双月に照らされて。
男の手からこぼれ落ちているのは透き通った一枚の水晶。譜石のそれにも似た輝きはどこかで見た――そうだ、あの物言う剣、クレメンテにはめ込まれた「レンズ」という名の石と同じものだ。
「なっ――!?」
レンズはもう一度強く輝いた。白い光はアッシュを、そしてチャットを飲み込み――自身に籠められた「想い」を再生する。



それは、灰色の世界だった。
打ち捨てられた古い音機関のモニタのようにざあざあと波打つノイズ。その向こうに見える灰色の空と、大地と、森の木々。
深々と降りゆく雪の様はケテルブルクを思い起こさせる。
暗く重い雲を突き刺すように聳える、尖塔を頂いた荘厳な城。
――ここから北に見えた城のものと同じだ。
時計塔の鐘が鳴り響く。
――時計塔なんて、北の城にはあっただろうか? まだ遠すぎて、アッシュには分からなかった。
ノイズの混じった反響が、灰色の世界に染み渡る。
――場面がざあと切り替わる。城下町の人々は皆穏やかで生き生きとした表情を浮かべている。まるでナタリアと己が過去に理想とした国のようにうかがえた。
町を行き交う人の波の中に、アッシュとその腕に抱かれたチャットは呆然と立ち尽くしていた。

銀髪の髪を雪風に靡かせ、褐色の肌の男が城の門をくぐって現れる。その面差しは額を射抜かれ、臓物を散らばらせて命をなくした死体のそれに似ていた。
『ウッドロウ王!』
王とたたえられた男は気さくな笑みをその端正な顔に浮かべる。死体は、民を愛し、愛された王だったのだ。アッシュはそう直感した。
深紅のガウンを身に纏った彼の横に寄り添うのは桃色の髪を結わえた少女。どこかで顔を見たことがあるような気がする。
王たる彼がわざわざ城門まで歩いて出迎えたのは、気の強そうな黒髪の女。白衣に身を包んだ緑髪を編んだ女。そして、金の長髪の、白い鎧に身を包んだ男。
そうだ、とアッシュは息を飲んだ。ジェイドとの情報交換の際に名簿で確認した顔だ。
物言う剣、クレメンテの仲間。ウッドロウ・ケルヴィン、チェルシー・トーン、ルーティ・カトレット、フィリア・フィリス、そしてスタン・エルロン。
戦いを共に乗り越えた仲間特有の、打ち解けた表情を全員が浮かべ談笑する。その様を見せつけられながら、また壊れた音機関のノイズが世界を包み込んだ。
492鮪の一生 8:2009/08/23(日) 20:03:00 ID:AsbRk+C70

今度は城の中だった。ウッドロウは走っていた。ただひたすらに。なぜか暖炉の柵をひっぺがしたようなものを持って、城の中を奔走していた。
間に合ってくれ、という強い思いが彼の横顔からひしひしと感じられる。
そうして彼がたどり着いた先にあったのは、イオンの亡骸。黒衣に身を包んだ男の死体。苦痛に顔をゆがめた満身創痍の男。
次に見えた男の顔は、先ほどアッシュを襲撃した、さつまいもの男だった。まだその瞳は真っ直ぐと前を見ていて、狂気に歪んではいなかった。
情報が、断片的に怒濤の如くノイズの中を流れていく。甲高い女のサディスティックな笑い声。狂気に満ち満ちた紫髪の男のつり上がった唇。
薄氷の張った剣を見たウッドロウが、イクティノス、と小さく呟く。その剣を持つのは、何かにおびえたような、憔悴しきった様子の銀髪の青年。
追わなければ。
討たなければ。
倒さなければ。
救わなければ。
ウッドロウの声が頭の中に響く。ノイズが一段と濃くなり、画面はまた移り変わった。

高い塔の見える、雪にまみれた砂漠。この砂漠だ、とアッシュは断定した。キールの冷静な横顔。だいだい色の長い髪の、気絶した少女。襲いくる風の刃。
走馬燈のように流れていく光景はアッシュに断片的な情報しかもたらさなかった。しかし、男の強い思いが、はっきりとレンズの光を通して伝わってくる。
飛び出た内蔵。吹き出す鮮血。王の周りに永劫なる風が集う。その紺碧の瞳は真っ直ぐに紫髪の男を見据えていた。
『貴様、を―――――――――――倒せるッ!!!!!!!』
そう、強い意志を籠めて。
もう一度走馬燈のような光景が奔る。今まで見せられた映像の登場人物たちがめまぐるしく現れる。
  ――去らば、キールくん。
(術を紡ぐ、キールの姿。あの野郎、こんな戦いをしてやがったのか)
  ――去らば、ロニくん。
(ウッドロウを慕うような安心した笑顔を見せるロニ。なんでこいつ、あんな風になっちまったんだ?)
  ――去らば、マルタくん。
(熱に浮かされ気絶したままの女。こいつの姿は――見ていない。今、どこだ?)
  ――もし私のわがままが赦されるならば、イクティノスを、ヴェイグくんを、救ってやってはくれないだろうか。
(高い塔が見えた。ウッドロウたちはそこを目指して歩いていた。そこに、あの剣とヴェイグがいる? ヴェイグ?
 確か、確かそう、アニーの仲間――!! 救うってどういうことだ? あの塔の中でなにが起こっている?)
  ――私らしくもない願いだが、すまないな。私はもう無理だ。
(諦めるんじゃねえよ、屑! 王が諦めたら、民は誰についていけばいい!!)
  ――ルーティくん、今から私もそちらに逝こう。
  ――スタンくん、フィリアくん、チェルシー。後は、任せたぞ。
(仲間なんだろ、てめえがそっちに逝ったって、後を任されたって、誰も喜ぶわけねぇだろうが)
  ――ファンダリアに、
灰色の国が。
  ――我が民に、
民の笑顔が、彼の愛した国の姿が。
  ――イクティノスに、
先ほどは薄氷を纏っていた剣は、今度はウッドロウの手に握られていた。銀の刀身の細剣にねぎらいの言葉をかける王の姿は至極しっくりと画面に収まる。

  ――……そして出会った全てに、幸あれ。



ぶつん。と電源の切れる音がした、気がした。
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 20:04:31 ID:q9r9cgR0O
支援   
494鮪の一生 9:2009/08/23(日) 20:07:56 ID:AsbRk+C70
気づけばアッシュとチャットは、砂と雪にまみれた男の死体の前で立ち尽くしていた。
レンズの輝きは、今やすっかり収まって、鈍く星明かりを映すのみ。
アッシュはチャットの様子を見る。間違いなく共にあの光景を見たはずのチャットは、驚きからか声をあげることはやめていたものの、未だ死体から目を逸らしていた。
ウッドロウという名の死体のそばに座り込み、落ちたレンズを一枚、アッシュは手に取る。
レンズが見せてくれただろう幻影は、しかし現実に起こった出来事にしか、アッシュには思えなかった。手のひらの中に、堅く握りしめる。
チャットの肩をもう片方の手で抱きながらも、視線は東の、天高く聳える塔を捉えていた。



「お前、正気か?!」
キールの怒声が、夜明け前の森に響く。
「何もしねぇでここに蹲ってる奴よりは、十分正気だ」
「なっ、何もしない?! 僕だって、この剣――クレメンテから話を聞いたり体力を回復したり、いろいろやってるんだ!」
成程、確かに大剣クレメンテは死体の傍らでうなだれたままのリフィルのもとを離れ、キールの手に握られている。
「それにあの塔は嫌な予感しかしない! こんな状態だからこそ慎重に行くべきだ。死ににいくようなマネ、僕はしたくない」
「誰もてめぇに一緒に来いなんて言ってねぇよ屑!」
自身の声量を遙かに凌ぐ声でぴしゃりと言い捨てられ、キールは目を円くする。
「俺が動くのは、てめぇには関係ねぇことだろ!」
「だから、無闇やたらと動くなと言ってるだろう?! 動かずに待つことも、考えることもできないのか? 動かなければ死ぬとでも? お前は鮪かなんかなのかッ?!」
「ああそうだよ、俺は動かなければ死んじまう! 動き続けることしか出来ねえんだよ!!」
チャットのように思考を止め、時を止める自分の様など想像したくもなかった。動き続けていたかった。生きるために。
約束を、誓いを守るために。がむしゃらに動きまわって、生きていることを実感したかった。
「チャット」
アッシュが想像していた以上に、名を呼んだ声は低く重いものだった。
「てめぇも見ただろ。どうする」
かたかたと小さく震えたチャットは怯えきっていた。アッシュからも視線を逸らし、何もない地面を見つめている。
アッシュと同じ光景を見てきた筈なのに。あまりにも彼女は、アッシュの理想とは食い違ってしまった。
チャットと一緒に生きたいという気持ちは今も変わらない。しかし――変わらないからこそ、道を違える必要があることも、アッシュは知っている。
キールが、チャットを庇うようにふたりの間に躍り出た。裾を踏みかけ、転びかけた、情けない動きだったが、その瞳はしっかりとしていた。ジェイドと同じ類の冷静さを、この男は持っている。
「怯えさせるな。彼女も――僕の仲間だ」
アッシュは舌を打つ。そしてキールの身体越しに、チャットを見つめた。否、睨んだ。
「……分かった。お前が何もしないなら、お前の分まで俺が背負ってやる。アニーの意志を継いでやる。お前はここで待ってろ。
 しっかり前向けるようになってろ。そうしたら――また俺と一緒に来い。分かったな、ガキ」
チャットの喉が、動いたのが見えた。ぽたりとひとつ、大粒の涙が落ち、草原に染み込む。
踵を返しかけたアッシュの視界の隅に、クレメンテのコアクリスタルが輝くのが映った。
『アッシュや。そう焦らんでも良いのではないか? 儂にはお前が――』
「クレメンテ。あんたとキールと、リフィルがいれば、そのガキは大丈夫だろ。いくら止めたって無駄だ。俺は行く。
 そのガキのためにも、俺のためにも。ここで行かなかったら、俺はきっと死んじまう」
そうしてアッシュは、薄く明かりの差し始めた空の方を目指して歩き始める。
ようやく顔を上げて見つめてくるチャットの視線に、後ろ髪を引かれながら。
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 20:10:27 ID:q9r9cgR0O
支援
496鮪の一生 10:2009/08/23(日) 20:11:30 ID:AsbRk+C70



雪の混じった砂の上をひとりで歩くのは想像以上に酷だった。いつの間にかぼろぼろになっていたザックに手を突っ込み、名簿をぱらぱらとめくる。
写真を見て照会すれば、銀髪の死体は間違いなくウッドロウ・ケルヴィンという名であった。
手のひらの中の小さなレンズ。それが見せてくれた光景に、アッシュは実のところ縋っていたのかもしれない。
守り切れず、手を汚させてしまったチャット。チャットが殺してしまった銀髪の王。その王が死に際に請うた願いは、アニーの仲間を救ってくれというもの。
死を以て男からその願いを奪ってしまったのは、チャットとそしてアッシュだ。ならばその罪から逃れるのに、その願いを叶えてやるのが一番ではないか。
我ながら安っぽい考えだ、と苦笑しながらアッシュは名簿の頁をめくる。
死んだ王の走馬燈で見た男の写真の横、ヴェイグという名の隣にはチャットの文字が刻まれていた。
“アニーさんの仲間!”。
彼に何が起きたのかは分からない。分からないが、レンズが見せた光景の中での男の表情は、仲間の死を知り、暴風雨を起こし泣き叫んでいたアニーのそれと似すぎていた。
ウッドロウの亡骸に別れを告げ、アッシュは東を目指す。ザックに名簿を仕舞うときに、それとは違う紙の束を見つけた。一冊の日記だった。アニーの遺書が書かれた日記。
歩みを止めないまま、ぱらぱらと頁をめくる。そこには女らしい文字がびっしりと敷き詰められていて、遺書以外にもたくさんのことが書かれていた。
ユージーンという男のことも、ヴェイグという男のことも。後でゆっくり読んでみたいと思った。
それと同時に、アッシュはようやくひとつのことを思い出す。思い出して、アッシュはぴたりと足を止めた。ペンを取り出す。日記の、白い頁をめくる。
しばしの思案の後、紙に向かったまま何も出来ない自分に気づいて舌打ちをした。頭を抱えたアッシュは、眉間の皺を一層深くした。
このまま何も書かなくてもいいはずなのだが、今書かなければだめなような気がして仕方がなかった。そうしてぐるぐると考え込んだ後、最後の手段に出ることにする。
神経を集中させる。己のものと全く同じ、音素の振動。この島のどこかに存在するだろうそれを捉える。前に通信したときよりもそれはどこか近くにあるように感じられた。
497鮪の一生 11:2009/08/23(日) 20:15:21 ID:AsbRk+C70

「……おい、屑」
『うわっ、びっくりさせるなよアッシュ!! どうしたんだ? 俺、今――』
「日記、お前つけてやがったよな」
『はぁ!? いきなり何言って……それより』
「つけてるのか、つけてねえのか!」
『うっ……つけて、ます』
「どう書けばいい」
『え?』
「日記っていうのは、何を書けばいいんだって聞いてるんだ屑が!」
『日記の書き方って……なんかティアと同じようなこと言うな』
「……いいから早く教えろ」
『……ええと、報告書みたいに書くのとは違うんだぞ。その時、何があったのか、それを見たら思い出せるように。
 今自分が何を思っているのか忘れないように。そういう風に、日記は書くんだ』
「そうか……」
『で、アッシュ、今』
「今てめぇはどこにいる?」
『えっ……と、C2の、城の傍。ハイデルベルグ城って言う名前だってフィリアが言ってる。今からそこに俺たち行くから、アッシュは』
「いいか屑、良く聞けよ。そこに行った後で良い。今、チャットって奴がD2の森にいる。その城での用事が済んだら、チャットを探せ。俺もそこに戻る。
 放送入るくらいになると思うが……時間的には、ちょうど良いだろ。分かったな。チャットだぞ!」
『おいアッシュ、お前今ど』

ぶつりと一方的に回線を切ってしまってから、アッシュはしまったと舌打ちをした。ウッドロウの件について、フィリアという女に伝える必要があったかもしれない。
ルークはアッシュの居場所を知りたがっていたが、教えなかったのはわざとだった。お人好しの劣化レプリカは、教えればきっとアッシュのところにやってくるだろうから。
これはそう、アッシュとチャットの問題であり、他の人間は介入するべきではないのだ。

閉じていた日記の頁を適当に開き、ペンを奔らせる。
殴り書きにも近い文字は、アニーのものとは似ても似つかなく、日記に記されるにふさわしいかは分からなかった。



“チャットを置いてきた。アニー、お前は怒るかもしれないな。でも俺にはそうするしかできなかった。
 どうも俺はお前みたいに優しくなれないらしい。やっぱり、餓鬼の考えてることはよく分からない。

 チャットの背負うものを少しでも軽くするために。アニーの仲間のために。アニーの意志を継ぐために。
 そう言い聞かせながら、結局俺は俺の自己満足のために動いているのかもしれない。
 それでも俺は行く。動けば何か変わるかもしれない。何もせずに死を待つのだけは、死んでもゴメンだ。”



朝日とともに、鮮血のアッシュは黎明の塔へと到着する。そこに彼の望むものがあるのかどうかは、誰も知らない。
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 20:15:42 ID:hQzigO5vO
支援。
499鮪の一生 12:2009/08/23(日) 20:18:20 ID:AsbRk+C70
【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:HP50% TP20% 度重なる失敗への激しい後悔 冷静を努める意思による自律
   ヴェイグとイクティノスへの畏怖 ロニへの同情・不安 主催者の言葉を信じる事への僅かな恐怖
   腹、胸から著しい出血(応急処置済み) 右足を挫いた チャットが心配
所持品:誰かのクレーメルケイジ(I) グランドセプター 
    リカルドの首輪 情報入り名簿 温石  ソーディアン・クレメンテ(生き急ぐアッシュが心配)
基本行動方針:殺される気はなく、脱出の道を探す。マルタとの『協力』を果たす
第一行動方針:状況整理。チャットにアッシュとの関係を中心にいろいろ聞きたい。
第二行動方針:マルタはどこだ?
第三行動方針:首輪についての考察と情報集め
第四行動方針:襲われた場合は応戦よりも全力で逃げる
現在位置:D2・平原

【リフィル・セイジ 生存確認】
状態:HP80% TP30% 頭部と左足に裂傷・打撲・切傷多数 服に焦げ
   教師/治癒術士としての無力感 後悔 茫然自失
所持品:リヴァヴィウス鉱 ウイングパック リブガロの角 パナシーアボトル
基本行動方針:殺し合いの打破
第一行動方針:現実と治癒術士(教師)としての心、どちらを優先すべきか考えたい
第二行動方針:リーガルを殺した人物が誰か気になる、リーガルを殺した人物、爆発音の発生源を警戒する
第三行動方針:死者に対しては慎重に接する
第四行動方針:ロイド達が心配
第五行動方針:先程のマナのようなもの、爆破のマナが気になる
現在位置:D2・平原

【アッシュ 生存確認】
状態:HP40% TP21% 左腕に大裂傷(縫合済) 背中に大裂傷 全身に切傷と打撲
   後悔、羞恥、焦り 止まることへの恐怖 無力さへの葛藤 ロニへの疑問
支給品:デリスエンブレム エナジーブレッド ジェイドの作戦メモ二枚
    イクストリーム アニーの日記 クリスダガー ソウルイーター ウッドロウのレンズ
基本行動方針:チャットを守り生きる。日記を継ぐ
第一行動方針:ウッドロウの意志に沿い、塔の中のイクティノスとヴェイグを救う
第二行動方針:事が終わったらチャットを迎えに行く。ルークと合流。
第三行動方針:アニーの仲間に会ったら彼女の事を伝える
第四行動方針:先程の魔力と爆発が気になる
現在位置:D3・黎明の塔入口

【チャット 生存確認】
状態:HPTP100% 首絞めの痕跡 さまざまな死と殺人行為への恐怖と罪悪感
   守られる事と無力さへの極度葛藤 自分の甘さへの不安 急性的なストレスによる鬱症状
所持品:スタンダードマグ(残り装填4発) 銃弾50 ラジルダの旗 タバサ
    プラズマカノン パナシーアボトル 袋詰め粉砂糖2kg リーガルの首輪 エナジーブレッド×4
基本行動方針:勇気を持つ?アニーの死を乗り越えて生きる?
第一行動方針:アッシュの言葉について考えたい
第二行動方針:森の死体らしき何かを確認したい
第三行動方針:セネルが心配
現在位置:D2・平原
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 20:20:41 ID:AsbRk+C70
投下終了です。
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 21:16:37 ID:5Dm+tVTtO
乙。
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 21:24:43 ID:9CEU1ZAmO
投下乙!
チャットが立ち直るのはもう少し先になりそうだな。
しかしアッシュがやばげだな。塔には知った顔も居るとはいえ、万全のミクが待ち構えてるし。
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 21:25:39 ID:hxzPPttTO
投下乙!
やばいアッシュ格好いいなあ…遂に日記も書きはじめたね
そしてまさかこう来るとは思わなかった。レンズを使ってくるとは上手いなあ。
ウッドロウのためにも頑張れアッシュ!でもその内MAP兵器が来るぞ!
504名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 21:38:45 ID:wLvwEoPRO
ハイデルベルク城、サニイタウン、ガオラキアの森にベクトル収集率急上昇の黎明の塔…
西は恵まれてるな…戦場的な意味で

なにはともあれ乙!
アッシュは本編でも止まることなく動き続けて生きてたなぁと思ったら、ちょっとじんわりきたよ
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 21:52:24 ID:q+2Y8MWrO
乙です!アッシュがすごくいい感じ!
でもミクとか晶霊砲のこともあるからなあ…
塔組は一体どうなっちゃうんだろう
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/23(日) 21:59:52 ID:6DtwD4WuO
投下乙です!
城にはマルタがいるから上手くいったらキール達と合流できるかもしれないな
 
デスガロ熱とサレがヤバいがwww
507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/24(月) 02:10:33 ID:0Yh0/QbL0
上の方でD・リメDパラレル参戦についての話があったが
シャルティエ、イクティノスはまず気づいているだろうな
ディパックという密室の中であれほどの長時間、いい男が二人きりでいるんだ
相当量の情報交換をしていなければおかしい
だがどちらも超エリート軍人なのに、あの二人の考察に何の希望も見いだせないのは何故だろう
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/24(月) 05:00:19 ID:CvROXgx8O
>>507
ロワじゃマスターじゃなくても声聞こえるようだしバッグの中で喋ってたらミクたんにも聞かれるんじゃね
ソーディアン同士ならテレパシーできる設定とかあったっけ?
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/24(月) 07:55:50 ID:F3lcwduRO
投下乙ー。いやー2連続で投下なんてうれしいねぇ。
>>508
あったよ。
510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/24(月) 14:08:34 ID:htVOypX0O
そういや投票はまだ続行中?
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/24(月) 14:24:06 ID:F3lcwduRO
続行中でしょう。過疎だし今週末まででいいんじゃないか?
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/24(月) 22:12:49 ID:9+SG9oSk0
日付またいで行われる投票に何の意味があるのか判らないが
投票自体に深い意味はないんだったら投票形式はやめた方がよさげ
数決めて絞るとなると参加しにくい人もいるだろうしね
好きなタイトル・ストーリー・キャラを感想付きで好きなだけ挙げるだけでいいんじゃないか?
513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/25(火) 19:34:48 ID:NDYj+mztO
ミクたんに、屑がッ!とか言ったら殺されそうだなw
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/25(火) 21:40:05 ID:Ct9UgbheO
むしろ言わなくてもやばくないか?w
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/26(水) 08:09:23 ID:eDs/6kIWO
そういえばチェルシーってソーディアンと会話した事ないんだよな
 
原作では声聞こえなかったみたいだし
516名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/27(木) 20:33:44 ID:pRGnGtSm0
>>515
ジューダスと会話したことあったっけ?
コングマンとは会話している可能性もあるがどうでもいいな
517名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/27(木) 20:35:07 ID:pRGnGtSm0
あれ。そもそもチェルシーってどっち参戦か明言されてないな
連投ごめん
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/27(木) 23:51:41 ID:vMv9o1B6O
散々少女と表されてるからD2ではないと思うw

今の所特殊な参戦が確定してるのって
シャルティエ:D2
プレセア:ラタ
くらいかな
ミトスってエミルの事知ってたけどSで死んだ後からの参戦?ラタやってないからミトスがエミル知ってるのがおかしいのかおかしくないのかわからん
519名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/27(木) 23:55:12 ID:pRGnGtSm0
>>518
いや、オリかリメかの話だよw
520名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 01:40:25 ID:ZJuy8BVx0
>>518
ミトスが精霊のラタトスクに会ったのは4000年前だから知ってる
521名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 14:53:30 ID:xKOfCQG50
プレイしてないんで判らないんだが
オリジナル出典かリメイク出典かでそんなに大きな違いがあるものなの?
ストーリーは同じな筈じゃあ…
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 18:25:52 ID:Uj4yaZlcO
それが違うんだな。大筋は同じだけど、性格や経歴、設定、参戦時期とかもろもろが全然違う。
例えばまだオリリメどっちか曖昧なチェルシーだと、親の死関連とか参戦時期とかウッドロウとアルバどっちを最初嫌ってたかとか…。キャラに深く突っ込むほど全然違う。
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 19:06:16 ID:xKOfCQG50
なるほど
ていうかそういうのって、開始前に統一しとくのが絶対という訳ではないのか・・・
524名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 19:57:09 ID:fq/3fGUs0
ルーティ、スタン、は性格が丸ごと違ってると言ってもいいし
オリだとルーティが
リメだとスタンがリオンと仲がよい
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 22:33:35 ID:PpaZwpZC0
避難所から

341 名前:戦え名無しさん 投稿日: 2008/11/25(火) 21:31:05
D2はオリDを前提としたD2ワールドからだろ。

Dメンバーは、
スタン:オリ
ルーティ:サイグローグを知ってるからリメ?
フィリア:?
ウッドロウ:リメ
チェルシー:多分オリ
イレーヌ:オリ
ミクトラン:外見描写はリメ

ソーディアンは
ディムロス:オリ
アトワイト:オリ
クレメンテ:オリ
イクティノス:口調はリメ
シャルティエ:D2
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 22:56:23 ID:csh4WjTDO
タイトル部門は書いて無いけど駆け込みで投票するぜ!


・作品部門

一位:カタストロフィ
これは文句なしの一位。二転三転する戦況から、まさかの結末。熱い頭脳戦の後な分、最後の鬱が際立つというか。
ウッドロウ、あんたは空気王なんかじゃない、本物の男だよ……。

二位:悪夢はいつも、ここから始まる。
原作と真逆のジューダスとスタンの対比に思わずニヤリとさせられたなー。地形を利用した戦闘も面白かった。
最近空気なジューダスだけど、今後に期待するぜ!

三位:Flare -愛を下さい-
痛々しいまでのマオの心理描写に圧倒された。母に愛されたいが為にマーダー化とかもうね。
火だけでなく、水、風、地、光、闇にまで否定されたって下りが堪らなく好き。
グロリアとかノルンとか親と子の天秤も入れたかったけど枠が足りないw


・キャラ部門

一位:アッシュ
チャットと迷ったが、やっぱりバトルでも活躍出来るってのが大きいな。
サニイタウン戦で泣かせてくれたと思ったら、ガオラキア戦でも格好良い所を見せてくれた。
最近死亡フラグが立ったけど頑張れ。

二位:デクス
こいつの所だけ空気が違う気がするww
貴重なギャグキャラ兼無差別マーダーとして頑張って欲しい。

三位:フォッグ
正直空気だったが、221話での渋さでシンクを抜いてランクイン。
見てて安心出来るキャラという点でも好きだ。

このランクが変動するようないい作品がくると良いな。
527名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/28(金) 23:21:53 ID:PpaZwpZC0
そういや投票し忘れてた! 自分も投票。第3クール限定なんだよね?

作品-------
 【202話 カタストロフィ】
 空気王のカッコよさが異常すぎて自分の中では最早伝説。

 【219話 Yellowbelly -恋心-】
 シャーリィの複雑な心境に期待させられた。1stとは違う道を歩んでほしいな。
 あとセネルとジルバ様のやりとりがなぜかハマってて好きだ

 【230話 グロリアは誰の亡骸に】
 サウブレの再来ktkr! 1stとどう変えてくるか今後が楽しみ。
 各パートがそれぞれ生き生きしてて長いのに飽きない不思議。

キャラ------
 【ウッドロウ・ケルヴィン】
 未だに第3クールでのMVP維持してると思う。死体が埋葬されてくれるのを祈ってるw
 
 【アッシュ】
 主人公ポジをキープしてるオイシイ人。正直ロワ開始前はここまで目立つとは思わなかった。

 3人目は選べないなあ。カイウス、セネシャリジルバ組、レイスが同じくらい好き。
 上のキャラたちは3クールになって目立ち始めてうれしい。

タイトル------
 【191話 シュバルツバルトの底の、少し上】
 【201話 ノルンは嘲笑う】
 【227話 さよなら。くたばれ、また明日。】
 語呂が良くて、お洒落で、内容を的確に表しているタイトルに本気で憧れる。
 書き手の方々ネーミングセンス分けてくれ。
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 00:07:46 ID:2OQXCyYVO
>>523
開始前にオリとリメに関して質問したんだけどその時の回答は「どっちにするかは書き手さんに任せる」ってのが多数だった
それが序盤の怒涛の投下合戦もあって両方の要素が出たまま進行しちゃって、
「書き分けるのも大変だろうからオイシイ設定つまみ食いでいいんじゃない?」って事になった
スタンとかイレーヌとかいい感じにいいとこ取りされてて、俺は今のままでさほど問題はないと思うよ
キャラの性格の違いはDに限らず人によって感じ方はそれぞれだし
ただ完全に変更された設定があるからそこから妙な事態にならないようには気をつけないといけないけどね
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 22:24:48 ID:jsgC/MIR0
DC漫画でウッドロウがドマイナードの直系子孫だと言われていたが
これって公式設定だっけか
530名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 23:48:02 ID:V5m4+CtfO
ドマイナー言うなww

そんな設定があるのか?少なくともリメでは言及されて無いと思うが
531名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 10:23:16 ID:uNA8c7QbO
別に否定されてないなら
「今回はそういう設定」て事でいいんじゃね
532名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 11:02:47 ID:1kMC7JpVO
先走った>>336です。
投票し直します

作品
【グロリアは誰の亡骸に】
【ノルンは嘲笑う】
【慟哭の空】

キャラクター
【ハロルド・ベルセリオス】
【ノーマ・ビアッティ】
【カイウス・クォールズ】

作品名
【瞬間キャラメルエクスタシー -Looking-glass Insects-】
【Yellowberry -恋心-】
【命の意味と僕の夜想曲】

533名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 12:37:45 ID:yfDMECcz0
避難所の投下スレの方に1本、仮投下させて頂きました。
今ひとつ本投下に踏み切る自信がない内容なので、ワンクッション置きました。
よろしければ指摘や感想などお願いします。
534名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 14:55:22 ID:vTYqiFhmO
>>531
一応言っておくと小説設定は全面禁止だぜー。
小説設定のせいで一度アリス対ダオスが没になってる。テイルズは認知度的にラノベじゃなくゲームだしな。
535名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 15:01:39 ID:/xgjJ8Im0
>>534
実は小説設定がなくても
ドラマCDやコミカライズネタは見え隠れしていたりする
まあ、 の設定話は把握が面倒ってわけでもなく
ただそういう設定があるってのを知ればいいだけだしな
要は話の根幹に関わるネタを把握が困難すぎる所から持ち出すなって話だし
個人的にはリメでタメ口になったのはその設定のせいかと納得しないでもない
536533:2009/08/30(日) 20:06:12 ID:yfDMECcz0
避難所の方でGOサインを頂いたのでこれから投下したいと思います。
537与えられてしまった世界の片隅で 1:2009/08/30(日) 20:07:22 ID:yfDMECcz0
 一歩一歩踏み出すごとに徐々に荘厳かつ雄大な姿が現れる。
 柔らかな朝日に包まれ眼前に広がるハイデルベルグ城。記憶の中と違い、雪花の街並みと時計塔を失ったその姿はどこか儚げに見えた。
 守るべき民を失い所在無く佇むそれは、まるで子をなくし呆然としている親の様だと。ハルデルベルグの子。それはすなわち――
 フィリアはそこまで思考したところで、豊なおさげを小さく揺らした。
 ……いけない。
 まるでウッドロウが本当の意味でいなくなってしまったかのような考えに、自らを諫める。
 洞窟ですれ違ったスパーダの情報にすがり、彼が先日の昼までは確実にいた彼の城にようやくたどり着いたのだ。
 賢明なウッドロウのこと。おそらくは既に別の場所へ移動しているだろうけれど、その軌跡やこれからの行動指針について、きっとなんらかのメッセージを残していてくれているに違いない。
 自然と高鳴る気持ちに背を押される。足を急がせ、小走りに。速くなる心拍数は気持ちか、体の反応か、或いは両方からなのかフィリアにはわからなかった。
 と、そこで半歩後ろからうわっと驚く声と強くたたらを踏む音がした。

「びっくりさせるなよアッシュ!! どうしたんだ?」

 驚き振り返れば、急く足で追い越してしまっていたルークが、痛みに耐える表情で額を押さえていた。
 彼の完全同位体、アッシュからの通信。数時間前――あの時はジューダスと見た――同じ光景にフィリアはルークを支えるように手を伸ばす。
 フィリアの気遣いに彼は若干の戸惑いを見せたが、すぐにそれも感謝の意を込めた頷きで返してくれる。
 ルークにとって大切な者と。いやフィリアにとっても、大切な仲間であるクレメンテへ繋がる待望の通信である。
 通信で聞くべきポイントを強行軍中、ミュウと指折り数えて確認していたルークであったが――

「……ええと、報告書みたいに書くのとは違うんだぞ。その時、何があったのか、それを見たら思い出せるように。
 今自分が何を思っているのか忘れないように。そういう風に、日記は書くんだ」
538与えられてしまった世界の片隅で 2:2009/08/30(日) 20:08:30 ID:yfDMECcz0

 何故か日記の書き方をアッシュに教えている。当然ながら彼らの折った指にその内容は含まれてはいない。
 ルークの反応しか窺えないので、二人の間でどんなやりとりが為されているのかフィリアにはさっぱり掴めない。
 静かに様子を見ているとルークが城のほうを見据えた。恐らく現在位置についての話になったのだろう。
 頭上に疑問符をこれでもかと浮かべはじめたルークから、なんて名前だっけあの城と、聞こえないヘルプが聞こえた気がしたので、フィリアはそっと助け舟を出す。
 サンキュと口パクでフィリアに伝え、アッシュには続けてこれからそこへ行く旨をルークが伝えると、少し長い沈黙が訪れた。
 重要なことなのだろうか。ルークは時折、何かを刻み込むようにゆっくりと目を瞬かせている。と、唐突に彼が慌てた声を上げる。

「おいアッシュ、お前今どこに……っ! アッシュ!? ……あいつ、自分だけ、言うだけ言って切っちまいやがった」

 も〜、何なんだよ! と額に押さえていた手をそのままずらし、赤い髪を苛立だし気にくしゃくしゃと掻き毟る。
 その様子だけで、どうやらこちらが得たいと思っている情報は何一つ聞けなかったことがわかり、フィリアの目線が自然と落ちてしまう。

「ごめん、フィリア。……クレメンテってヤツの事、何にも聞けなかった」

 しゅんとした声に慌てて顔を上げると、今度は逆にルークが俯いている。フィリアが気落ちした様子を見せてしまったので、逆にルークに気を使わせてしまった。
 ただただ受け身なだけの自分がこんな調子では駄目なのだ。

「いいえ。アッシュさんは無事でいらしたのでしょう? それだけでもわかって良かったですわ」

 だから、偽らざる本心を告げた。これまでの道中、そして先ほどの紡がれなかった言葉の続きからも、ルークがアッシュを気に懸けていたのはわかりきっている。
 クレメンテへと繋がる期待に、落胆の色が影を少し、ほんの少しだけ落としていってしまったのは確かだが、ソーディアンは頑丈だしマスター以外には扱えない。けれど何よりアッシュらと共にあるのだ。
 初めてクレメンテの名前が出た通信の際、喋る剣と向こうが認識していたのは気がかりだったが、彼の元なら、決して悪用はされてないと何故か信じられた。
 それはきっと、ルークのおかげでもある。
 フィリアは勿論アッシュの事を直接は知らない。が、知り合え少しずつ分かってきたルークの人となりが教えてくれている。彼がここまで心配をかけている人は、きっと悪い人ではないのだろうと。
539与えられてしまった世界の片隅で 3:2009/08/30(日) 20:09:51 ID:yfDMECcz0

「……ありがとう。でも、本当ごめんな。俺がもっとちゃんと聞けてれば」
「本当にいいんです。大丈夫ですわ。それよりも、アッシュさんは何て……?」
「うん、それが日記の書き方とさ……。ああもう、ミュウそろそろ起きろよ、朝だぞ」

 ルークは不自然に膨らんだ自分の懐を探りミュウを引っ張り出す。
 乱暴な扱いでもまだ起きず静かな寝息を立てている幼いチーグルをフィリアに手渡すと、彼は肩にかけていたサックを開いた。

*** 

 以下余談。
 深夜の山道強行軍中、途中途中で挟んだ僅かな休息の時間。
 ミュウの火――リングが無いので火力の加減が出来ず、危うく火傷しかけた――で暖をとり、第五音素にかざし炙ることで多少は食えるものになったパンを腹に収めた時の事。
 ミュウがとても眠そうにしていたので、サックの中で寝てなとルークが言ったのだ。
 元の世界ではよくそうしていたし、元々ここに連れてこられたときはサックの中だったので、ミュウは素直に頷いた。
 しかしルークのサックの中に入るやいなや、甲高い悲鳴を上げて飛び出し、そのまま主人の懐にもぐりこんでしまったのだ。

「おぅわっ!? ミュウなんだよ、どうした!?」
「……あの、ミュウさんどうされたのです?」
「みゅぅぅぅ……」

 2人の問いかけにミュウは顔を出し、鼻と思われる場所を手で抑えなんとも情けない声を出す。
 その様子にルークがようやく合点がいったらしく、気まずく頬をかきだした。

「……あー、わるいミュウ。俺が全面的に悪かった」
「あの……ルークさん?」
「いや、何でか俺の荷物に香水が入ってたんだよ。で、それの匂いがキツくて」
「それで……」

 完全に瞳を潤ませたミュウが全力で頷いている。それほどまでに強烈な匂いなのだろうか。
 フィリア自身もあまり臭気には強くないので、彼のサックに手を伸ばす真似はしなかったが、注がれる視線を好奇心と受け取ったのか、ルークが慌てて補足を付け足した。

「か、嗅がない方がいいぞ! 既製品っぽいけど、香水に失礼ってくらいすっげぇ匂いだから!!」

 何かあったら、迷うことなく俺はあれをぶん投げる! そう鼻息荒く結んでその話題は終った。
 そんな顛末でミュウは結局ルークの胸元に潜り込んだまま寝てしまい今に至る。
 以上、余談終了。

***
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 20:11:03 ID:BIVHOLrsO
支援
541与えられてしまった世界の片隅で 4:2009/08/30(日) 20:11:16 ID:yfDMECcz0

 彼の参加者名簿の終わりには、何枚か追加で紙が挟まれ冊子から少しはみでていた。
 それは、休憩中僅かな時間を惜しむように書かれたルークの日記。
 フィリアはミュウを抱えなおしながら、習慣なんだとルークが少し照れながら言っていたのをぼんやり思い出した。

「アッシュさんは何故日記の書き方を」
「わっかんねぇ。あいつ、日記書くような性格じゃないし……まあ、だから聞いてきたんだろうけど。やっぱアッシュのヤツ、いつもと違う感じが……あ、こいつだ」

 ようやく目当ての人物を見つけた彼の指先が、ある子供を示す。
 名前はチャット。短く整えられた金髪と大きな瞳。そして何よりも額に大きく飾られた装飾品が特徴的だった。
 フィリアにとっては2度目の、ルークにとっては3度目の通信でアッシュが共にいると言っていた何人かのひとり。
 とはいえ、印刷された写真からでは、チャットが顔立ちの綺麗な男の子なのかボーイッシュな女の子なのか、今ひとつわからなかった。

「こいつが、D2の森にいるって。城に行った後でいいからチャットを探せって」
「D2……ここからですと、南の方ですわね。他には?」

 フィリアの問いかけにルークは静かに頭を振った。

「そんだけだった。アッシュのヤツ、戻るって言ってたし、多分今からこのチャットって子と別れてどっか行くつもりだ」
「……そう、ですわね。探せ、という言葉からもきっとそうでしょう。お一人でなければいいのですが。でも、こんな状況で一体何処に……」

 わっかんねぇ……と二度目の言葉がルークから漏れる。

「ジェイドやアリエッタの事とか、聞きたいこと山ほどあるってーのに。あいつ前からそうだ。聞くだけ聞いて自分だけ納得して、いっつもどっか行っちまう!」
「ルークさん?」

 フィリアの見ている前で、段々不機嫌な色に染まっていくルーク。
 彼に握り締められた参加者名簿から紙がつぶされる音がした。

「大体みんなして一方的にこっち来いあっち行け誰それ探せ連れて来いって! これじゃっ、まるで……!」

 怒声に変わるかと思い少し身構えたフィリアの予想に反してルークの威勢は失速していく。
 再び俯むいた彼の表情は赤い前髪に邪魔されて、強く引き結んだ唇しかフィリアには見えなかった。
542与えられてしまった世界の片隅で 5:2009/08/30(日) 20:12:15 ID:yfDMECcz0


 馬っ鹿だな、俺。……自爆した。
 苛立ちのまま自ら紡ぎそうになった言葉に、ルークの鼓動が速度を上げた。
 アッシュやハロルドの言う事がこの殺戮の舞台でいかに大事かわかっている。
 その言葉を信じ、動くことで新たな光明を見出す結果に繋がる事もわかってはいる。
 彼らに反発したいとか、そんなつもりは一切ない。けれど。
 
 ――なら貴方は兄がいなければ何も出来ない、ただのお人形さんね――

 いつかもっと自分が大馬鹿だった時、ティアに言われた言葉が蘇る。
 今の自分は何なんだ。師匠の部分がアッシュやハロルドに代わっただけじゃないか。
 雪降る街でティアは変わったと言ってくれたけど、このまま彼らの言葉にただ従うだけなら、あの頃と何にも変わらない。それだけは。

「……嫌だ」
「ルーク……さん?」

 思わず出てしまった情けない自分の声に驚いてはっと顔を上げる。
 今の呟きを聞き取ったのかどうかわからないが、フィリアが眠ったままのミュウを抱え心配そうに見つめている。

「あっ、ああ。……ごめん、ちょっとぼーっとしてた」
「……無理、なさらないで下さいね。何かありましたら、遠慮せずに仰ってください」

 嘘だとわかりきっている答えにも、フィリアはちゃんと丁寧に言葉を返してくれる。

「今の私は、それくらいしかお役に立てそうにありませんから」

 フィリアのどこか儚げな笑顔に、ルークはますます情けなくなった。
 こんな状況下でもフィリアは優しい。初めて会った時も血塗れで得体の知れない自分を迷わず支えようとしてくれた。
 自分がこんな調子では、この優しい人にもっと心配をかけてしまう。それは駄目だ。
 ルークは少し折ってしまった参加者名簿の皺をわざと音を立てて伸ばして、空気を切り替えようとした。
 名簿からはみ出ている紙に目がつく。合間合間をみて書き綴ってきたこの島に来てからの日記。
 元はその必要の無かった記憶障害に備えて付け始めたものだが、長年続けてきた習慣は頭の中や気持ちの整理をつけるのに役立っていた。
543与えられてしまった世界の片隅で 6:2009/08/30(日) 20:13:36 ID:yfDMECcz0

「……フィリア」
「はい」

 休憩中、日記に書いたそれはただの思い付き。
 その思いつきは結局文章として繋がることなく、ただのメモの走り書きのようになってしまったが、今なら上手く説明できるかもしれない。
 想いが明確に色付く前に、言葉はとうに走っていた。

「もうすぐ城に着くって時になんだけど、俺の話聞いてくれるか?」



 風に乗って飛んできたのだろうか、高い木々の頂点や、枝の間から窺えるハイデルベルグ城の尖塔には雪がうっすらと積もっていた。その雪は明るさの増す柔らかな光を吸収し、ほのかな眩しさを湛えている。
 幸いにもこの辺りの地面は枝葉に邪魔され雪のヴェールが降りなかったらしい。森の木々の中から座りやすそうな根を生やしたものを選ぶと、彼らはそこに腰を落ち着けた。
 もしかしたら余計に混乱するだけかもしれないけどと断り、ルークは話を始める。

「あのハイデルベルグって城、本当にフィリアの知ってる城、そのまんまなのか?」

 まず彼の質問からそれは始まった。
 ミュウを膝にそっと下ろし、転げ落ちないよう支えながらフィリアは改めて森の奥を眼鏡のレンズ越しに見つめると、ゆっくりと答えた。

「ええ。時計塔や、城壁。それに城を囲んでいた街並みが無い事を除けばそのままですわ」
「……そっか。その時計塔ってのは、どれぐらいの大きさだったんだ?」
「かなりの。……少なくとも、ここより離れた位置からでも真っ先に目に飛び込むぐらいの大きさでしたわ」

 フィリアの答えに彼は慎重に言葉を選んでいるのだろう。
 眉間に普段はない皺を寄せ――そこだけ見れば写真だけで知る彼のオリジナルのようだ――ルークは口を開く。

「……俺馬鹿だからさ、きっとジェイドが聞いたら的外れだって言いそうなぐらいの考えなんだけど……俺の知っている場所がもう2つもあった。フィリアの知っている場所もここに。もしかしたら、この島自体が色んな世界のレプリカの寄せ集めで出来てるのかもって思った」

 レプリカと、小さくフィリアは繰り返す。
 アブソーブゲートで会ったハロルドからの矢継ぎ早の質問の中で、真っ先に議題に上った単語だ。
 重箱の隅をつつく様なハロルドの着眼点と彼なりのわかりやすい説明のおかげで、フィリアも難なく話についていける。
544与えられてしまった世界の片隅で 7:2009/08/30(日) 20:15:34 ID:yfDMECcz0

「続けてください」
「うん。俺達が通ってきた湧水洞やアブソーブゲートはあのまんま俺の世界にあった。でも湧水洞からアブソーブゲートに続く道なんてなかった」

 そもそも海を挟んであった場所同士だし。と一度区切ったところでルークは人差し指を折る。
 彼なりの考察にフィリアは真剣な面持ちで聞き手に徹する。

「それに俺がここに来る前に、俺達はアブソーブゲートを起動させている。それももう割と前の話なんだけど、あのゲートは起動前の状態だった」

 二本の目の指を折りそこまで言って、ルークはサックから水を取り出すと一口分だけ含む。
 飲み込んだ水の代わりに絞り出した声はどこか辛そうな響きを孕んでいたものだった。

「レプリカは、そんな何週間も前の状態では……生み出せないし、パッセージリングだってティアや師匠がいないと何も出来ない。
 だから、あのサイグなんとかってヤツは、結構前からこの島を作ってて、起動前のゲートや湧水洞のレプリカをそのままそっくりあそこに置いたのかなって」
「……つまり、あのハイデルベルグ城は私の知るよりもずっと前の、時計塔が建設される以前の状態で……生み出されたレプリカ、と」

 先ほどの質問と会話の内容を結びつけてフィリアが答えると、自信なさ気にルークが頷いた。
 ミュウが小さく寝返りをうちフィリアの法衣がわずかに衣擦れの音をたてた。

「まだ城の中を見てないから確証も自信も全然無いけど、さ。でもただこれだと、サイ……あのピエロが一体何歳なのかって話になるんだよなぁ」

 完全に主催者の名前すら丸ごと吐き出すようにルークは深いため息をつく。
 そんな彼とは対照的に、フィリアの目には光が増す。島に来て以来、不安や悲しみで縁取られがちだった瞳が、彼女本来の色を徐々に取り戻していく。

「ええ。でも考える価値はありますわ」

 フィリアの反応が予想外だったのか、ルークは目を白黒させる。
 フィリアはルークに感心をしていたのだ。
 これまで状況に流され、立て続く出来事や情報、彼女よりも頭の回転に優れた者を目の当たりにし、考えることをすっかり放棄していたような気がする。
 フィリアより優れた解を導き出せる者がいるとしても、思考を停止してしまった言い訳にしてはならない。フィリアなりの生き抜くための戦いをしなければ、何も変わらない。大神殿でただ職務に没頭していたあの頃と。
545与えられてしまった世界の片隅で 8:2009/08/30(日) 20:17:55 ID:yfDMECcz0
 
「時計塔が何時建設されたのか正確にはわかりませんが、確かに一朝一夕で建設できる大きさではありませんでした。そして、仮にあの城を過去の建設物とします。
 けれど私はハイデルベルグ城のことを知っています。ということは、あの城は本物ではなくレプリカを持ってきたと考えるほうが、確かに辻褄は合います」
「う、うん?」

 突然雄弁になったフィリアに押されてか、ルークが戸惑いつつ相槌をうつ。
 フィリアは頭上の枝を見やるとルークにもそれを見るよう誘う。右の人差し指で枝の根元のほうを指し示し、いいですかと前置きを置いた。

「この木を私の世界とします。今、指してる枝をハイデルベルク城と思ってください。根元が過去、そして枝先の方が現在。
 もし過去に……この枝がまだ若いうちに、私の世界からそのままそっくりここに持ってきてしまっていたら、枝は無くなってしまいます」
「うん。木から枝が、フィリアの世界から城がひとつ消えたことになる」
「ええ。でも私はこの枝の葉先を……城の現在の姿を知っています。ということは、枝は無事に成長を続けていることになります。
 けれどもし若い枝の内にレプリカをつくり、それを別の、ここに移しているのだとしたら……」
「フィリアの記憶の中の城と、あそこにある城に違いがあってもおかしくないってことか」

 単純にハイデルベルグ城を丸ごとレプリカに出来なくて、時計塔を省いたという可能性もありますけど、と補足してフィリアは説明を終えた。

「彼が何歳なのかはわかりませんが、でもそうまでして会場……というと語弊があるように聞こえますが、設備条件を整えてサイグローグに一体何の益があるのか……」
「嫌がらせなんじゃねぇの? 俺達に対する」

 ああそうかもしれないと、あっけらかんとしたルークの明瞭簡潔な言にフィリアは頷きかけた。
 主催者の悪趣味さ加減は最初からこれまで、余すことなくみせつけられている。納得しかけても仕方ないというものだ。
 と、フィリアの中で突然、漠然と抱えていた疑問と今の話題が結びつく。

「……もしかしたら、時間に対する認識はあまり気にしなくてもいいのかもしれません」
「へ? 何か思い当たることでもあるのか、フィリア」
「ええ。無いわけではないのですが……すみません。まだ、上手に言葉に出来そうにありませんわ」
「うん、いいよ。俺も考えまとめるのに随分かかるしさ」

 まだまだ夢の中のミュウを撫でながらフィリアは独りの女性を脳裏に浮かべる。
 死んだはずの人間が参加しているのもある。けれどフィリアの中でより重点を置かれたのはハロルド・ベルセリオスだ。
 もしも彼女が天地戦争時代の英雄とイコールの存在ならば……。
 フィリアと同じ年代を生きるジューダスと知り合いの彼女が、かの博士ならば、ハロルド、あるいはジューダスの方が時を越えている証明になる。
 参加者内で時を超越出来る者がいるとすれば、そんな人間を召還(?)した道化師もまた時間を超越する術をもっているのかもしれない。
 少し飛躍しすぎかしらとフィリアは思うが、そう外れていない予感もまた感じていた。
 疑問が胸を掠めたときにハロルドに尋ねておけば話は早かった。振り返ると見事にそんな状況ではなかったとは思うが、つくづく流されすぎていた自分を恥じる。
 戻ったら真っ先に尋ねようと密かに決心するフィリアだった。
546与えられてしまった世界の片隅で 9:2009/08/30(日) 20:19:19 ID:yfDMECcz0
 
「あ、ごめんなさい。話の腰をすっかり折ってしまいましたわ。どうぞルークさん。まだ途中でしょう」
「ああ……っても、もうほとんどないけどな。あいつ、最初に8日間っていっただろ。それって何でなんだろうなーって」
「……改めて言われると、難しいですわね……禁止エリアで埋まるから? いえ、でも……」
「言っておいてなんだけど、俺もわかんねぇ。でももし、この島全部がレプリカだったら……なんか納得できる気がしたんだ」

 ルークの手の中のペットボトルがかしっと乾いた音を立てる。水がボトル内を跳ね、ゆらゆらと揺れた。

「……レプリカは第七音素だけで出来てる。でも、第七音素は互いに惹かれあい、いつかは乖離する。そうなれば……後はただ、消えるだけ」
「え?」

 彼の幾分かすれた声にフィリアは息を呑む。
 それはほんの刹那に過ぎなかったが、瞬間流れた空気はこれまでの彼らを包んでいたものと、明らかに異なっていた。

「あの、それは」
「えっと、アブソーブゲートは音素が集まる場所で、音素は星の真ん中の地殻を通って、反対側のラジエイトゲートって出る場所から出発して、星の周りを巡って、アブソーブゲートに帰ってくる」

 フィリアの問いかけには答えずルークはそこらに落ちていた枝を拾い、わざと音を立てて地面に丸を二重に描く。
 外側の円の頂点にR、その反対側にAとフィリアの知らない、けれどわかる流麗なフォニック文字を沿える。
 Aから真下のRに向かって、円の中を分断するように一本線を引く。Rを越したあたりで外側の円に沿うように土を軽くえぐり続け、線はぐるりと回ってAの元に戻った。
 一度ハロルドに説明したおかげか、ルークの口からはすらすらと彼の星の成り立ちが流れる。まるで何かから逃げるように。

「だけどもしラジエイトゲートがなくて、音素が集まるだけだったら」

 Rの文字に大きく×を刻む。続いて内側の円の中身を塗りつぶすように枝を走らせる。

「そのうち第七音素もどんどんたまっていって、島を構成している第七音素がそれに引かれて乖離を始める。そしたら……島は消える」
「その期限が8日間……。けれどサイグローグは首輪を爆破させると言ってましたわ。島そのものが消えてしまうのならば、そんな手間は……」
「多分、さ。サイグローグってやつ多分、玩具の箱が壊れて中身全部駄目になるくらいなら、自分で玩具壊しそうな気がすんだ」

 んで丸ごと綺麗に捨てちまう、とそこでルークは持っていた枝を放った。
 重なり合う葉の合間を縫いわずかに落ちる光の中で、枝は放物線を描き少し離れた距離で軽い音を立てた。
547与えられてしまった世界の片隅で@代理:2009/08/30(日) 20:28:28 ID:qjlQYzEg0
「でも、本当。ここまで全部、ただの勘なんだけどな」

 ことさら明るい声をルークが出す。困り笑顔でフィリアに向き合いながら。

「たまるって言ったけど、集中しても音素の気配いつもより全然感じねーし。ゲートだって起動させれば、他のセフィロト……ラジエイトゲートの位置も表示されるから、それを見てからの方がきっと良かったんだけど……やっぱ思いつきだけで喋るもんじゃないなー」

 サックに水のボトルを放り込み、次いで出しっぱなしにしていた参加者名簿をルークは手にとる。

「大体、色んな世界のやつが集められてるっぽいし、何も俺の世界の技術だけで全部説明しようってことに無理があるよな」
「……考古学は、未知の出土品や遺跡の状態を見て、何故そうなったか一番矛盾しないよう、辻褄があうよう考える学問です」

 急な話題の転調と眼鏡のレンズ越しのまなざしに、自信のなさを笑って茶化していたルークの動きが止まる。

「少なくとも私の世界には、洞窟や城をそのまま移したりレプリカのような技術はありませんでした。他の方の世界にだって無いのかもしれません。色んな観点から見て、少しでも辻褄が合うよう情報を突きつけていけば、きっと見えてくるものがあるはずですわ」

 確かにルークの話は、彼の言うとおり、何一つとしてそれを裏付ける証拠がない。そもそも彼の世界以外の物質を、根源では違う成り立ちかもしれないものを、第七音素で構成するレプリカとして転写出来るのかも甚だ怪しい。
 けれどフィリアにはそれほど的外れな意見には思えなかった。無論、全てが彼の勘通りではないだろう。
 違っているならそれ以上に矛盾のない手がかりを探せばいい。最も辻褄が合うよう情報をより合わせればいい。その為にルークとミュウと、連れ立ってここまで来たのだ。
 全てを卑下する必要はないのだと、フィリアは主張したかった。分野外の学問の基本姿勢すら持ち出して。

「ですから、その」  
「……ありがとなフィリア。フィリアに話して、よかったよ」

 滑稽な励ましにようやくどちらかでなく、双方が笑みを浮かべた。
 それは血なまぐさい島の片隅で咲くにはこのうえなく不似合いで相応しい優しくか細いものだった。
548与えられてしまった世界の片隅で11@代理:2009/08/30(日) 20:29:57 ID:qjlQYzEg0

「……みゅ?」
「あ、やっと起きたかミュウ。もう着いたぞ」

 フィリアの膝の上でようやく目覚めたチーグルが寝ぼけ眼を辺りを見渡し、城の尖塔に頭を向けた時だ。
 とろんとした目が一気に見開かれ、ルークとフィリアに何かを訴えるように声を荒立てる。
 
「みゅっ! みゅーみゅー!!」
「どうされたのですか? ミュウさん」
「落ち着けってミュウ。なんだ、誰かこの近くにいるのか?」

 主人の警戒をミュウは大きな耳を振って否定した。
 その目がルークの手にまだある参加者名簿を認めると、ミュウはフィリアの膝から飛び降りせがむように短い腕を伸ばす。

「みゅう、みゅう!!」

 その慌てた様子にルークは嫌な予感を覚えながらも、名簿をミュウに手渡した。
 洞窟でスパーダに掴み掛かった時、あの時はフィリアの名簿を借りてミュウは真実を伝えた。
 そして今回も。チーグルの子はうざったい鳴き声で訴えるのだ。 

「イオン、さん……」
 
 フィリアの小さな声に、ルークの心臓が一際大きく跳ね上がる。
 ミュウの小さな手が交互に城と開かれた名簿に印刷されたイオンを示す。
 内側のほうから響く小さな心音に追い立てられるかのように、ルークは今や友の棺と化したハイデルベルグ城を振り仰いだ。

「あの城に……イオンがいるのか、ミュウ?」
「みゅううう!!」

 視界に張り付く堅牢なカタコンベ。煩いまでにつんざく鼓動。いつも耳につくミュウの高い声ですら自身に渦巻く命の声に邪魔された。
 息をすることすら出来ずに固まったルークの世界の前で白い法衣がふわりと揺れた。
549与えられてしまった世界の片隅で12@代理:2009/08/30(日) 20:33:17 ID:qjlQYzEg0

「ルークさん」

 毅然としたフィリアの声に強張りが溶ける。
 フィリアにわかる様はっきりと頷くとルークは子チーグルを拾い上げ、名簿はサックへミュウは肩へとそれぞれを定位置に収めた。
 急くように動く足に幾分短い歩幅の足が連なるのが振り返らずともわかった。

「フィリア。城の中一通り見て……イオンに会ったら、すぐにチャットって子を探しに行こう」

 若干硬さを増した自らの声音に違和感を覚えつつ二人と一匹は城へと再び向かい始める。

「ずっとアッシュと一緒だったんだ。あいつやクレメンテの事、何かちっとは知ってるだろ」

 肩のミュウが、頬に体を摺り寄せるのがうざったい。眉間や口元に力が入るのは絶対そのせいだ。

「もう、時間までにハロルドさんの所へ戻れそうにありませんね」
「手ぶらで帰るよりマシだろ? 向こうだって何にもないなんて思ってねぇって」

 軽口を言えるよう、平気な振りが出来るよう、選んで言葉を紡いでくれるフィリアの優しさに甘え、おどける。

「どうせ俺が解剖されるだけなんだし、平気だと思っとこうぜ」
「みゅみゅうううううう!!!!」
「人の耳元でうるせぇブタザル! 言っとくけどお前も道連れだからな!!」
「みゅっ!?」

 じたじたするミュウを意識の外に押しやり、ふと目指す尖塔の上の空を見れば思っていたより日は昇っていなかった。
 時間がずいぶんゆっくりと感じるのはまだ日の出の時分だからだろう。

「ひとつだけ、よろしいでしょうか?」

 静けさに似合う静かな声は、その声量に反してはっきり届いた。まるで雑踏の中で己の名前を呼ばれたかのごとく。

「ん?」
「どうにも……ならない事、なのですか?」
550与えられてしまった世界の片隅で13@代理:2009/08/30(日) 20:37:10 ID:qjlQYzEg0

 一瞬止まりかけたものの、それでも動き続けてくれているこの足に感謝を。振り返らない理由になったミュウにもついでにお裾分けだ。
 ああ、やっぱりフィリアは聡い。
 ルークが濁した言葉を。ようやく見つけた意味の対価を。自らも礎となる覚悟で築いた屍の国の代償に気付いていた。
 
「……ずっと、支えてくれた人たちがいるんだ」

 皆にそうと知られたら、そうと分かって接せられてしまったら。
 いつ迫るかわからない死の恐怖をより自覚して、引き篭ってしまいそうだった。

「一瞬先にはどうなるかもわからないのに、明日も明後日もその先も、ずっと俺のこと見てるって言ってくれたヤツも」

 逃げ帰りそうになる鳥篭の部屋で、まったく同じ言葉でティアに尋ねられた。
 あの時と同じように告げたら、フィリアはそう接してきてしまうだろうか。

「けど、俺は俺自身のためにも」

 死を間近に臨んでいると言葉にする事が未だ怖い。だからまだ、いつか終るその時まで強がれるよう願いをこめて。

「いくよ。最後まで」
「……その答えを聞いて、ほんの少し安心しましたわ」

 白い法衣を翻し、いつの間にか追い越していたフィリアが緑のおさげを揺らして振り返る。
 早朝の光の中で見る彼女は、そのか細い印象からは考え付かないほど凛とした声をたてた。
 
「いきましょう」
「……ああ!」

 この島に来てすとんと落っこちた意識の底。漠然とした赤の記憶の中で、再び生れ落ちた決意を恐怖で裏切らないために。
 死地と称されるその場所に。与えられてしまったこの世界の片隅で、いきる。
551与えられてしまった世界の片隅で14@代理:2009/08/30(日) 20:40:05 ID:qjlQYzEg0



【ルーク・フォン・ファブレ 生存確認】
状態:HP60% TP100% 強い決意 第2回放送の遅れがひっかかる
   全身に傷・打撲・痣 イレーヌとスタンへの不思議な感情 イオンの死にショック
所持品:メロメロコウ ミスティシンボル ソウルブラスト ミュウ  ルークの日記
基本行動方針:今自分に出来る事をする
第一行動方針:城の中にいるイオンに会いに行く
第二行動方針:城を探索したらチャットを探しに南へ。アッシュやジェイド達の手かがりを探す
第三行動方針:アッシュやティアと合流したい
第四行動方針:アリスを探してイオンの仇を取る?
第五行動方針:スパーダ・ジューダスが気になる
現在位置:C2・ハイデルベルグ城前

※ルークの音素乖離はルール規定通り現在は安定状態です。ですが、当人はその事に気付いていません。


【フィリア・フィリス 生存確認】
状態:HP100% TP100% 深い悲しみ(多少持ち直し) 若干空元気 巨大な魔力(マナ)がちょっと気になる
所持品:マジックミスト メンタルバングル ホウテイバンリ
基本行動方針:仲間を探しながら情報収集に徹する
第一行動方針:ハイデルベルク城へ。何かの役に立ちたい
第二行動方針:城を探索したらチャットを探しに南へ。クレメンテについて話をしたい
第三行動方針:ハロルドと再会したら時間跳躍について尋ねる
第四行動方針:スパーダ・ジューダスが気になる
現在位置:C2・ハイデルベルグ城前

※ルークの身体についてと、彼がそう長く生きられないと自覚している事に薄々気付きました。
552与えられてしまった世界の片隅で15@代理:2009/08/30(日) 20:44:15 ID:qjlQYzEg0



 城の外観をきちんと見ておきたいというフィリアの意見に、ルークは逸る気持ちを抑え頷いた。
 先ほど自分のわがままに付き合ってくれた彼女の意思を尊重する為だ。
 自然と早足で城の周りを巡る。と、ある地点に差し掛かったところで二人は足を止めた。

「なんでここだけ崩れてるんだ?」
 
 ルークの疑問は誰にも答えられることなく霧散し消えた。
 彼らの前にはかつて城壁を構成していた元石組みが、ある一定方向に対して大小様々に崩れ横たわっている光景が広がっていた。
 崩壊は落ち着いたようだが、城の外観を著しく損なう壁の損傷部分は、チーグルがようやく通れるかどうかの穴を構築しており、その穴に興味を惹かれたルークは無秩序に積み上がった瓦礫の上を、バランスを崩さぬよう慎重に足を運ぶ。
 伺うようにそっと顔を小さな空洞に近づけると、ほんの僅かな空気の流れが彼の頬を撫でた。城内とは繋がっているものの、この穴がのぞき穴としては到底機能していない事を確認すると、ルークは首を振りつつフィリアの元に戻った。

「……ハイデルベルグ城は豪雪地帯に築かれた城です。堅固さは勿論、気象条件からも、他の地域に比べ城壁は幾分厚く組まれているはずなのですが……」
「それが、こんなんなっちまうほどの戦いに巻き込まれたのか……イオン……」
「みゅうぅ……」

 まさかその損壊を起こした張本人こそが導師イオンとは露知らず、三者三様にかの少年を思い、後ろ髪惹かれるように歩を進めるのだった。
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 20:46:14 ID:qjlQYzEg0
代理投下終了です。

投下乙です。考察がアツくてwktkしますた。GJ。
さりげなく頭がいいのがルークだよな。
554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 20:57:35 ID:FAYtVo+sO
投下乙!
ルークが考察とはちょっと意外に思ったけどよかったです

今月は投下が多くて嬉しいなあ
555名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 21:15:10 ID:BLzLYsBC0
投下乙です!
ルークの口を介してるからか、自分にも判りやすい考察で良かった
そいでもってこの信号機カラーな二人の纏う雰囲気が独特で凄く好きだ
出来うるならばこのままの二人でいてほしいけど……そうも言ってられないのがロワですなw
ルーク生`
556名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 23:58:26 ID:sOVVD33VO
投下乙です!
まさかこのペアで考察が進むとはww
意外と色々考えてるルークが格好良いし、フィリアも自分の役割を見つけられた様で何より。
イオンを見つけたらすぐに出るという事は、サレ達には会わずに終わるか?

最近は投下が多くて嬉しいなー。
557名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 06:34:44 ID:iybpF9jgO
投下乙です
フィリアがハロルドの事知らない訳ないんだよなーと思ってたのでフォロー乙です
ルークの考察もアビス世界の特殊な場所をロワで既に2つも見てるルークならではだしGJ
しかし何ヶ月も投下無かったのが嘘みたいだw
558名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 00:35:00 ID:eL+9/JnDO
投下乙
考察に唸った
そういえばイオンの死体ってどうなってるんだっけ
サレ組とはニアミスかな?ミュウがいるから色々問題はありそうだけど
559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 00:59:47 ID:vq1d2lkp0
>>539
フィリアはメロメロ香をジューダスと一緒に匂いをかいだはず
560名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 02:47:00 ID:vq1d2lkp0
連投すまん。D2攻略本でアタモニ神団はエルレインが作ったって記述を見て
ホントかよと思い、試しにざっとED後の世界を回ってみたらば本当にアタモニ神団が無くなっていた
アタモニ神信仰はあるようだけど、そもそもストレイライズ神殿は本質が研究機関で教義はハリボテ程度のものだから
アタモニ神自体、都合のいい何にでも使える複合型神なんだろうね
だからこそエルレインも安易に新興宗教を建てたりせずに利用できたわけだ
ざっと見回っただけなので矛盾があったら指摘してくれ
561名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 02:59:53 ID:vq1d2lkp0
また追記、EDでホープタウンの婆ちゃんが
アタモニ神は自分で努力する者を助けるって言っていたことから
エルレイン介入アタモニ神団と正史のアタモニ神は教義や存在として別物なことは確実
とまあここまでやっておいて実はD2データがEDと6週目序盤しかないので
この考察が正確か分からないんだ
オナニー長文ごめん。誰かもっと詳しい検証が出来たらしてみて
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 03:20:56 ID:xNwhk+HxO
>>558
首が斬られた状態で城内に放置
リカルドの死体が隣にある
563名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 04:31:13 ID:xNwhk+HxO
ヴェスペリアの新PV格好良いなー。映画の予告みたいだ
ゲーム内容はともかく、最近のテイルズのPVは正直上手いと思う
564名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 06:34:07 ID:qSmyG7I80
>>559
今回書いた者です。
回復アイテムないかと荷物漁ってたの忘れてた……。
修正出来次第、避難所の方に該当部分投下しておきます。指摘どうもです。

他の皆様も、ありがとうございました。
565名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 14:09:56 ID:7vI5x7wuO
少々内容に不安があるので、避難所に投下してきます。意見を頂けたら幸いです。
566名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 15:02:54 ID:SeqDsLzP0
考察乙です
ハロルドがベルセリオス・世界征服ルートを選ぶ可能性があること
時空間の歪み(パラレルワールドも?)に関する研究を行っていたのはD2で描写されていましたし
特に文句の付けどころがないかと思います
後は上でも書かれていたようにアタモニ神団のズレが本当なら
もっと突き詰めた考察が二人に出来たかも
でも二人とも神殿関係は興味なさそうだしなあ
567名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 15:11:37 ID:SeqDsLzP0
追記ですが
天地戦争が後世にどれだけ詳しく伝わっているかも重要な分岐点だと思います
オリDだと少し教養がある人なら誰でも詳しいことを知っているレベルだったりしますし
ナナリー(と言ってもホープタウンは活気がある町ですが)でも終戦演説やらを知っているくらいですから
こうして見るとリメDってベルセリオスの……
568名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 21:13:46 ID:7vI5x7wuO
意見ありがとです。特に問題もないみたいなので、改めて今から投下させて頂きます。
569黎明に沈む、英雄の金字塔 1:2009/09/03(木) 21:16:23 ID:7vI5x7wuO
   これより始まり喜劇の余興。没台本の一頁。語られなかった歴史、単なる無意味な日常。
   しかし願わくば、これが物語を紐解く鍵にならん事を。










闇。

一面に広がるのは、深海を思わせる様な不気味な闇だった。
周りには一切の物質が存在しない。そこは生気すらをも拒絶する、死んだ空間だった。
何処までも続く深い黒の前には、時間も方向も感情すらも、重力さえもが等しく平伏す。
“無”。そう表現するのが一番正しいのかもしれない。
しかし、何処か覚えがある空間に感じるのは何故だろうか。
“無”―――それは死の瞬間。今まで生きた証、思念、価値、それら全てが虚無に帰す瞬間。
“無”―――或いは生の瞬間。命の灯が、正真正銘のゼロが産声を上げる瞬間。
闇に落ちる剣はその刃を震わせる。小さな核に、届いた。

清冽たる刃が誕生する瞬間の、熱が。終焉を齎す濁流に呑まれる瞬間の、衝撃が。
その二極に位置した極限の記憶に躍動する、感情の雪崩が。


『シャルティエ』


寝耳に水だった。
シャルティエは慌てて思考を現実に呼び戻し、中途半端な咳払いをする。
『情けない奴め。サックの中で安全とは言え、こんな状況でも上の空か?
 全くお前という剣は……』
呆れた様に呟くイクティノスへ、シャルティエは気不味そうに愛想笑いで応じた。
『はは。いやぁ、懐かしいなぁと思ってさ。
 だって、こうしてるとあの頃思い出さない?』
シャルティエがコアクリスタルを山吹色に輝かせる。
イクティノスは呑気な男だ、と言わんばかりの不服そうな溜息を吐いた。
『何をだ?』
『何って、イクティノスと僕がルームシェアしてた時の事に決まってるでしょー!』
ルームシェアとな。この状況でルームシェアとな!
イクティノスはシャルティエの楽観的思考に言葉を失う。
少なくとも、自分の知るシャルティエはこんな御目出度い男ではなかった筈だ。
イクティノスはコアクリスタルを鈍い緑色に光らせ、低く唸った。
さてはシャルティエの奴、そこらを漂う支給品の角にでもコアクリスタルでも打ったに違いない。

『しかしシャルティエ……お前、性格がオリジナルから随分と変わったな』
『そうかなあ?』
当の本人はおもしろおかしく即答する。
その様子に、本当に何処か回路が故障したのか、とイクティノスは本気で心配になった。
シャルティエはもっと卑屈で無口で、皮肉屋で陰湿な駄目人間だった筈だが。
570黎明に沈む、英雄の金字塔 2:2009/09/03(木) 21:18:06 ID:7vI5x7wuO
『……あ、ああ。というか、呑気だな。
 俺達は今殺人ゲームの道具でしかなく、しかもミクトランの手に落ちていると言うのに』
殺人ゲーム、ミクトラン。それらの言葉に流石のシャルティエも一時黙らざるを得なかった。
シャルティエもイクティノスも、共に一度だけ放送を聴いている。
ゲーム、死者、禁止エリア。舞台を把握してなくとも、それらの単語はぞっとするものではない。
おまけにシャルティエに至ってはハスタ=エクステルミからおおまかな情報を得ていた。
具体的には此所が孤島であり、ゲームとはバトル・ロワイアルを意味するという事だ。
そして、ミクトラン。
ソーディアンチームでも苦戦したミクトランの手に、自分達は落ちている。
それが意味するのは“ソーディアンチーム、ひいては地上軍、人類の敗北”だ。

『いやー、だって僕らには現状を、このバトル・ロワイアルを如何する事も出来ないし……。
 考察も僕の専門じゃあないしね! イマイチ要領を得ないけど、ミクトランも暫く動かないなら考えても無駄かなーって』
シャルティエは一度言葉を切り無言のイクティノスを確認すると、話を続けた。
『確かに絶望的状況だけど、此所にはベルクラントも何もないし、僕らの世界でもないしさ。
 ウッドロウが居たのは確かに心配だけど、今の僕らには何も出来ないしねぇ』
思念波としてコアから零れた言葉は、シャルティエが思案に暮れているかの様に歯切れが悪い。
『情報処理や考察が専門の俺には実に耳が痛い言葉だな……』
イクティノスは鈍くコアを輝かせ、一つ一つの単語を咀嚼するように口を開いた。
『まあ、確かにお前の言う事にも一理あるにはあるんだが……』
『でしょー? だったら思い出話にでも花を咲かせましょうよ!』
やれやれ、とイクティノスはやたらハイテンションなシャルティエに降参した様に呟く。

しかし、思い出話、か。
忘れかけていた人間時代を追憶しながら、イクティノスはそれも案外悪くはない、と思うのだった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



長きに渡った天地戦争が遂に終止符を打った。
激戦の末、天上王ミクトランがソーディアンチームの輝かしい活躍によって終焉を迎えたのだ。
未だ外では浮かれた兵士が羽目を外している。だが、騒がしい宴の音は心地良くもあった。
午前二時半。小さな部屋の隅に、まるで何かに遠慮をするかの様に張られた窓は、外にこんこんと降る雪を見せている。
571黎明に沈む、英雄の金字塔 3:2009/09/03(木) 21:20:06 ID:7vI5x7wuO
心無しか何時もよりも明るい月明りが、ふわりと窓辺に積もった雪を一層青白く輝かせていた。
地上軍拠点。此所がそんな大層な名で呼ばれるのは、恐らく今日が最期だろう。
温度差に結露した硝子に指を這わせながら、シャルティエはそう思った。
まるでその長さを競う様に大地に伸びた氷柱から目を離し、部屋をぐるりと見渡す。
のんびり酒を嗜むには、余りにも大きく落ち着かない。
ワイングラスを片手に、シャルティエは一人で使うには少々大き過ぎるソファに腰を降ろす。
部屋を照らすナトリウム灯は不規則に点滅していた。その所為か淡い橙は何処か寂しげだ。
シャルティエは口をぽかんと開き、ぼんやりと視線を天井に泳がせた。

『らしくないよ、懐古趣味なんてさぁ。ハタから見てて実に笑えるね』

間が抜け、呆けていたシャルティエへと掛けられた声は、半笑いで嫌に皮肉じみている。
シャルティエは心底うんざりした。馬鹿の所為で雰囲気ブチ壊しだ。
「五月蠅い、なまくら」
シャルティエは眉を顰め、むっとした表情を机上に向ける。
『おお、怖っ!』
横たわるカトラス、もといソーディアン・シャルティエのコアクリスタルは黄に発光していた。

『どうせ最後なんだから皆に混ざって飲めば良かったのに……って言っても無駄か。
 僕、人込みや人付き合いは大ッッ嫌いだしね』
シャルティエはワイングラスをサイドテーブルに置くと、舌を打ち傍らのボトルを鷲掴みにする。
セピア色に日焼けしたラベルの向こう側で、とぷんとワインの海が波打った。
戦争に勝ったからなのか、やたらと上機嫌なリトラー総司令がソーディアンチームに配ったものだ。
しかも何と、驚きの67年物。全く、総指令ともあろう者が聞いて呆れる。
こんな無駄な高級嗜好品を、総本部の何処に隠し持っていたのやら。
『嫌だなぁ、そんな怖い目しないでくれよ。僕はシャルティエなんだよ?
 争っても意味が―――って、一気飲みィ!!? やめときなよ!
 あんたアルコール強くないでしょうに!!』
ソーディアン・シャルティエがコアクリスタルを一際輝かせてるが、何処吹く風。
ごきゅごきゅ、とシャルティエの喉は音を上げて動く。
ボトルはあれよあれよという間に空になってしまった。
あーあ、と呆れた様に呟くソーディアンに、シャルティエはとろんと据わった双眸を向ける。

「最近、会話する度に思うんだよ……お前と居ると何時か人格が崩壊しそうだ、ってね」
572黎明に沈む、英雄の金字塔 4:2009/09/03(木) 21:22:20 ID:7vI5x7wuO
ソーディアンはその言葉を鼻で笑ってあしらう。それはこっちの台詞だ。
『同族嫌悪? 情けないなぁシャルティエ少佐』
「黙れよ、たかが武器のクセして偉そうに」
『あれれ〜? 僕が居なきゃ戦えない臆病者が何を偉そうに』
シャルティエは額に青筋を浮かべ、剣の口上に唇の端をひくつかせた。
「あまり……いい気になるな、剣風情が。黙ってろよ」
『おや、図星を突かれて興奮しているんですかシャルティエ少佐?
 何やら顔が赤いですが?』
「黙れって言ってるのが分かんないのかッ!!!」

シャルティエは興奮をその整った顔へ顕にしながら、乱暴に立ち上がる。
部屋の隅の煖炉がぱちり、と音を上げた。
真っ赤な炎が揺れ動き、肩で息をしていたシャルティエの顔に深い影を落とす。
外は騒がしくも楽しげな宴会の音で満たされていたが、この部屋は緊張で満たされていた。
どさ、と野外で屋根に積もった雪が落ちる音。シャルティエは大きな溜息を一つ吐く。
剣相手に金切声を上げても仕方無い。
アルコールにふらつく身体をソファに埋め、シャルティエは後ろのベッドから毛布をひったくった。
『喚いた挙句不貞寝ですか。子供じゃあるまいし』
皮肉を無視して毛布に包まり目を閉じる。
すると、不思議と兵士の馬鹿騒ぎも、剣の勝ち誇った高笑いも聞こえてはこなかった。
圧雪の上へと、綿飴の様に柔らかな新雪がしんしんと積もってゆく音だけが、鼓膜を心地良く刺激していた。
静かだ、とシャルティエは厚い毛布に火照った顔を沈めながら思った。
五月蠅いのは苦手だ。人付き合いも、世辞も得意じゃない。だから宴からも抜けてきた。
クレメンテ元帥達の心配そうな視線が背に焼き付いている。小心者の自分には過ぎた宴だ。
こうして一人の時間を過ごすのは好きだ。孤独は嫌いじゃない。
日々への不平や上司への不満、他人への劣等感を覚える事もないからだ。

そこまで思ってふと、物音に気付く。誰だ。シャルティエは毛布の隙間から部屋の入口を盗み見る。
酔った部下か? 冗談じゃない。全く僕の睡眠を邪魔するな。


「……って、イクティノス少将」


赤茶色の髪を揺らし、イクティノスはシャルティエへと手を泳がせ挨拶する。
シャルティエは毛布をがばりと剥がすと、素早くソファから起き上がった。
「す、すみません少将! 酒臭くしちゃって!」
ハン、と笑うKYソーディアンへと覚束無い足取りで近付くと、シャルティエは刃を腰に差す。
573黎明に沈む、英雄の金字塔 5:2009/09/03(木) 21:24:07 ID:7vI5x7wuO
イクティノスは酔っているのか酔っていないのか、何時もと変わらぬ表情をシャルティエに向けた。
「は? あぁ、指令自慢の秘蔵ワインか。
 いやいいんだよシャルティエ少佐、気にせずとも。
 私だって今しがた総指令達と飲んできたところですし。……まぁ、抜け出して来たんですがね」
「はぁ……」
イクティノスは左手に持った酒瓶を机に置くと、朗らかに笑いながらシャルティエのベッドに腰を掛ける。
勝利に浮かれてるか、若しくは少し酔ってるな、とシャルティエは苦笑した。
イクティノスは普段、意味もなく軟らかな笑みを浮かべる様な人物ではない。
「しかし、クレメンテ老も言っておられたが相変わらずディムロス中将の悪酔いには呆れる。
 幾ら中将と大佐が恋仲だからとは言え、あれでは介抱するアトワイト大佐が可哀相ですよ」
イクティノスはマントを右手で翻すと、やれやれと肩を竦めて見せた。
「確かに、あれじゃ中将の名が泣きますね」
シャルティエは口の端を歪めて皮肉混じりに呟いた。

思えば確かに今日のディムロスの悪酔いは半端ではなかった。
シャルティエは熱くなった頬を擦りながら思い出す。

「全く。これだから熱血核弾頭はいけない。
 何が“インテリは頭が堅くて一緒に飲んでも盛り上がらない”、ですか」
イクティノス少将の愚痴とは珍しい。明日は空からベルクラントでも降るんじゃなかろうか。
……我ながら笑えない冗談だ。
シャルティエは愛想笑いをしつつ、皮肉を飲み込みソファに腰を降ろした。

“私から、皆に一つだけ言っておく事がある。
 死力を尽くす事と、死ぬ事は別だ。
 …………必ず生きて帰るぞ!!”

ディムロスの言葉が、脳の内側から鼓膜を揺らす。
確かにその言葉通り、指令も元帥も、少将も中将も大佐も生きている。
しかし……カーレル中将だけは死んだ。
ディムロスの酔いは、彼なりの弔いと自責の意味があるのかもしれない。シャルティエはそう思った。
ふう、と溜息を吐くと、横目でイクティノスを見る。
その手にはソーディアン・イクティノスがぶら下がっていた。

「イクティノス少将」
頬をアルコールに紅潮させたシャルティエが言った。ん、とイクティノスは返す。
574黎明に沈む、英雄の金字塔 6:2009/09/03(木) 21:26:05 ID:7vI5x7wuO
「ソーディアンは……その……使えましたか?」
瞬間、イクティノスの指先が僅かに跳ねたのを、シャルティエは見逃さなかった。
しかしイクティノスは何時もと変わらぬ様子で首を振り、溜息を吐く。
「いや、無理でした。
 実は、シャルティエが自室に戻った30分後に、私も宴を抜けてね。
 先程まで、愚妻とハロルドと共にラボに籠って試行錯誤したものの、うんともすんとも。
 尤も、ハロルドは直せると豪語してたけども、天地戦争が終わった今無理に直す必要もないでしょう」
イクティノスはそう言うと、背をベッドにぼふんと沈める。
僕のベッド、とシャルティエは唇を尖らせた。
イクティノスはそんなシャルティエを尻目に言葉を続ける。
「同様の理由でソーディアン・ベルセリオスも放置。
 ……いや、終止ハロルドが持っていたから何とも言えないけどもね。
 まぁハロルドに限って悪用もしないと思いますよ。多分」
イクティノスは伸びをしながらそう締めると、側に置かれた枕を頭の下に移動させる。
僕のベッド、とシャルティエは胸中で再び呟いた。だがまぁ、今日くらいは皮肉もよそう。
シャルティエは諦める様にイクティノスから顔を背け、ソファに後頭部を沈めた。
かちかちと点滅するナトリウム灯が、机上の自己啓発本達を照らす。
シャルティエは目を細めた。自分が気圧される事がなければ、力を発揮出来ていれば。
そうすれば、もしかするとカーレル中将はミクトランに殺られずに済んだのかもしれない。
シャルティエは無言のまま自虐的な笑みを浮かべた。
そういえば暫く忙しくて、まるで日記を付けていない。久し振りに後から書くとしよう。

「それはそうと、シャルティエ少佐」

室内に突然響いたイクティノスの声に、シャルティエは肩を小さく跳ねた。
「な、何ですか、急に改まって?」
シャルティエは顔をベッドに寝そべるイクティノスに向ける。
声が若干裏返ってしまい、シャルティエは紅色の頬を更に鮮やかに染め上げた。
慌てたシャルティエに微苦笑を浴びせると、イクティノスは口をゆっくりと開く。

「カーレル中将の殉職にあたって、老と司令が話し合い、一階級の昇格を決定したそうで。
 恐らくは明日か明後日、最終会議がありますからその際発表されると思いますが、
 これからは故カーレル中将、ではなく、故カーレル大将、になる線が濃厚かと」
「た、大将ゥ!?」
575黎明に沈む、英雄の金字塔 7:2009/09/03(木) 21:27:42 ID:7vI5x7wuO
シャルティエは咄嗟に立ち上がり、イクティノスを訝しげにまじまじと見た。
殉職とは言え、敵将を討ち取った地上軍の英雄中の英雄が、昇格たったの一階級?
馬鹿を言え。常識的に考えて有り得ない。上からの圧力でもない限り。
「いや、流石に嘘でしょ……冗談か何かです? らしくないですよイクティノス少将」
すっかり出来上がってしまい、ふらつく身体を何とか支え、シャルティエは半笑いで呟く。
「ところが冗談じゃないんですよ、これが」
揺れる金色の前髪を見ながら、イクティノスはベッドから立上がる。
木製の脚がぎいと軋んだ。シャルティエの脳裏に過ぎる、嫌な予感。
地上軍の不安定要素、そんなものは一つしかない。
「……じゃあ真逆」
溜息を吐き頭を抱えるシャルティエを尻目に、側の棚を漁りながらイクティノスは続けた。

「無論想像の通り、圧力です。当初はその勇気と名誉ある功績を讃え二段階昇進。
 即ちクレメンテ老と同じ元帥までの昇格を認める予定でしたが……。
 まぁ、いかんせんハロルド大佐がこの昇格に大層御立腹のようで」
やっぱりハロルドか、とシャルティエは呆れた様にソファに腰を降ろした。
イクティノスは金細工が施されたグラスを二つ取り出し、自らの机に向かう。
「“死んだら名誉も昇格もへったくれもダークナスビもケ・ティ・ディーチェ・ラ・パートリアもないじゃない。
 私は嫌よ、そんな施し”。
 ……だそうですよ。困った人だ」
「はぁ。よくハロルド大佐はあんなので軍人やってられますよ。
 少佐の僕が言うのもなんですが、彼女の階級はあくまでも大佐ですよ?
 普通なら、リトラー総司令やクレメンテ元帥閣下に、口出し出来る様な立場の人じゃないのに」
まるでお手上げ、と言わんばかりに諸手を上げ、シャルティエは頭を左右に振る。
馬鹿にしたような言葉を窘める様に笑うと、イクティノスはワインを手にベッドの縁に腰を降ろした。
「“普通”じゃないのがハロルドですから、仕方無いんですがね。
 彼女にとっての常識は、私達の非常識なのですよ。それも遥か斜め上の、ね」
「ま、確かに、ハロルド博士の思考は僕達の斜め上です。……主に悪い意味で」
シャルティエは窓の外を見ながら、馬鹿にする様な口調で同意する。
何時しか雪は止んでいた。日付が代わり、弔いも必要無いと天が踏んだのかもしれない。
シャルティエは頬杖を突き、遥か彼方の星影を見る。
576黎明に沈む、英雄の金字塔 8:2009/09/03(木) 21:29:55 ID:7vI5x7wuO
儚くも眩い灯は、目に染み入るようだった。

「ハロルドの奴、酔っていたのも相俟ってか、司令にロケットランチャーを向けて暴れ出す始末でね。
 慌てて昇格を一階級にするから、と皆で交渉しましたよ。
 何とかその条件に同意してくれたものの、明日になったらまた暴れないか非常に不安です」
コルクを抜き、イクティノスはグラスにワインを並々と注いだ。
少々、跳ねた雫がシーツに滴っている。
僕のベッド、と一連の動作を横目で窺っていたシャルティエは、眉間に皺を寄せた。

「全く、司令にロケットランチャーを向けて軍法会議沙汰にならないのは、ハロルドくらいです。
 地上軍は彼女が居なければ敗北してましたから、我儘を許すのは仕方無いんですが」
す、と差し出されたグラスを両手で受け取ると、シャルティエは意地悪く笑ってみせた。
「軍法会議になるかイクティノス少将も試してみます?
 但しロケラン向ける相手は、司令ではなくハロルドで」
キン、とグラスとグラスが交わり、透き通った音を上げる。
揺れる水面に映る幻想的な光を見つめながら、イクティノスは肩を竦めた。
「気持ちは有り難いがやめておきます。
 謹慎処分や降格はまだしも、投薬や解剖、改造はされたくないものでね。
 私には妻もいますし」
「そう遠慮しないで。何なら、ディムロス中将が相手でも良いんですよ?」
「冗談ッ!」
注がれたワインを舌の上で転がし充分に味わった後、イクティノスはフン、と鼻で笑った。
シャルティエは唇の端を歪め、グラスの縁に口付けする。今日は何だか皆が上機嫌だ。
もし友達と呼べる人が自分に居るのなら、それはイクティノス少将なのかもしれない。
シャルティエは再び窓の外を見る。月が雲から顔を出していた。十六夜だ。
室外からは相変わらず兵士のどんちゃん騒ぎ。
カーレルの為にも、今日だけは皆して羽目を外しているのだろう。



「そうそう、シャルティエ少佐。これは大事な話なんだけども」
二人とも出来上がってきた頃に、イクティノスは突然声を低くし、そう切り出した。
シャルティエは怪訝な顔を音源へ向ける。
机を挟んで向かい合う様に座ったイクティノスの表情を、シャルティエはワイン瓶越しに窺った。
「ミクトランとの戦闘の前後で、ソーディアンに“何かしらの違和感”を感じませんでしたか?」
違和感、とシャルティエはイクティノスに鸚鵡返しをする。
577黎明に沈む、英雄の金字塔 9:2009/09/03(木) 21:31:55 ID:7vI5x7wuO
イクティノスの表情は真剣そのものだった。何か深刻な問題でもあったのだろうか。
シャルティエは顎を擦り、視線を天井へと泳がせる。……違和感、ねぇ。
イクティノスはそんなシャルティエの様子に眉をぴくりと動かすと、ふぅと軽く息を吐いた。
「ああ、感じていないなら良いんです。単に私の杞憂でしょう」
「? はぁ……何かあったんですか?」
「いや、今のは忘れて下さい。特に何もないので」
シャルティエの表情を見るや否や、イクティノスは満面の笑みを浮かべた。
……嘘だ。
シャルティエはイクティノスに、そうですかと笑みを返しながらも、裏ではそう確信した。
しかし嘘だとすれば、一体イクティノスは何を言いたかったのだろう。
一体、何に気付いてしまったのだろう。

「さ。そろそろ寝ましょうか。もう直ぐ夜が明ける」
イクティノスはシャルティエの椅子から立ち上がると、ローブをぽんぽんと叩きながらシャルティエに背を向けた。
「あ、はい。おやすみなさいイクティノス少将」
じきに新たな朝がやってくる。扉の向こう側から聞こえる兵士の声も、もう微々たるものだ。
イクティノスは背中にシャルティエの視線を感じながら、己のベッドにゆっくりと潜り込む。
「あぁ。おやすみ」
……シャルティエは違和感を感じていないようだった。
ソーディアンによって違いがあるのか、或いは、シャルティエ本人が気付いていないだけなのか。
あの違和感は何時からだっただろう。確か、ミクトランを倒す数日前からだったか?

イクティノスは腰に差した剣を枕元に置くと、死んだ様に沈黙を決めるコアクリスタルを凝視する。
そもそも、イクティノスはソーディアンに対して元々僅かな疑問を持っていた。
ソーディアンには避けようのない決定的な穴があるのでは、と。
穴。
それは即ち、人格相互干渉による精神崩壊、並びにシンクロ率低下の事だ。
人格投射が行われた時点では、確かに精神は同一人物。
しかし、後に僅かなズレが生じてしまい、同一人物ではなくなってしまうのではないか?
全く同じ精神が、その場に二つ存在する事になるのだ。相互干渉過多は目に見えている。
しかし、それはイクティノスにとっての一番の問題ではなかった。
最も重要な問題は、その可能性をたかが情報将校の自分が気付いて、
ソーディアンを開発した博士である、奇才ハロルド工兵隊隊長が気付かない筈が無い、という点だった。
578名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 21:33:38 ID:xA4AhA3h0
リアル投下ktkr
支援
579黎明に沈む、英雄の金字塔 10 @代理:2009/09/03(木) 21:47:03 ID:xA4AhA3h0
元天上陣営、ベルクラント開発チームが言った中枢回路の応用を提起したのはイクティノスだ。
しかし、レンズへの人格投射並びに心理同調理論の提起をしたのは他でもない、ハロルドだった。
その天才ハロルド=ベルセリオスが、果たしてこの最終兵器の致命的ミスを許す様な真似をするだろうか。
いいや、しないだろう。イクティノスはその答えに確信を持っていた。
あの完璧主義者が、中途半端な兵器を完成品として提出する筈がないのだ。
ハロルドならば、モノが期日までに完成しなければ、期日自体を無理矢理変えてしまうだろう。
そういう人物だ。



だが。もし、もしもだ。仮にこれが、“誰かに仕組まれた展開”だったのだとしたら?
そしてその誰かが、我々の中に居たとすれば?
ベルセリオス……。
何故あのソーディアンだけ、名前がファーストネームだった?
カーレル。お前は、本当にソーディアン・ベルセリオスとシンクロしていたのか?
いや……疑念は良くない。現に天上王は死んだ。確かに死体を見た。地上軍は勝利した。
ハロルドの悲しみは本物だろう。嘘を吐いているとは到底思えない。
人格投射のミスだって、ハロルドの計算内に違いない。
なにせ何度も言うが、我々は勝っているのだから。

イクティノスは瞳を閉じ、まどろみの中へと落ちてゆく。深く、深く。
意思疎通機能が破壊されたソーディアン・イクティノスは、マスターの考えを知る由もない。
夢の世界の水底に、イクティノスは沈んでゆく。千年後の騒乱など、彼は予想だにしない。
だから、今だけは幸せな眠りへ。深く、深く。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『パラレルワールド。つまりそういう事か』

にわかには信じ難いな。イクティノスはそう続けると、深い溜息を吐いた。
事の発端はシャルティエの一言だ。
“ていうかイクティノスも、知らない間に口調変えたねー。
 多分神の眼を壊してからこっちに来たんだろうし、心機一転なの?”
最初はその危機感皆無の発言に呆れたが、直ぐにイクティノスは発言の矛盾に気付いた。
何せ、神の眼を壊した事をシャルティエが知っている筈はなく、歴史的パラドックスが生じてしまうのだから。
故にイクティノスはシャルティエに質した。何故神の眼を破壊した事を知っているのか、と。
その後、シャルティエが語ったのは途方もない話だった。
何かの冗談か、出鱈目か。
580名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 21:48:03 ID:XE0/+zky0
支援
581黎明に沈む、英雄の金字塔 11@代理:2009/09/03(木) 21:50:11 ID:xA4AhA3h0
常に冷静を心掛ける事をポリシーとするイクティノスでさえ、最初は目を白黒させそう思ったのだ。
歴史改竄、神、死者復活、時空転移……余りにもスケールが壮大過ぎる。
到底、はいそうですか、とすんなり受け入れられる事実ではなかった。
しかし、受け入れねば説明がつかない点が数多く存在するのもまた事実。
従って、イクティノスはシャルティエの話を黙して聴く他なかった。
そうしてシャルティエの話から導き出されたのは、少なくとも三つ、時空間が存在するという事実。

一つ、ソーディアン・イクティノスの一人称が“俺”である世界。
この世界において、シャルティエの性格は卑屈でも皮肉屋でもなく、リオンは海底洞窟で死亡。
以降ミクトランにゾンビとして利用され現れる事もない。
また、ソーディアンに第二形態、ディスクシステムがなく、
あの放送の主、サイグローグと皆が出会っている。
ソーディアン・イクティノスのコアクリスタルは、グレバムが神の眼の力を無理に利用した事により損傷。
“この”ソーディアン・イクティノスはこの世界から来た。

二つ、ソーディアン・イクティノスの一人称が“私”である世界。
この世界において、シャルティエの性格は極度の卑屈、皮肉屋であり、リオンは海底洞窟で死亡。
しかしその後ミクトランにゾンビにされ、ソーディアンチームに襲い掛かってきている。
また、ソーディアンには、第二形態もディスクシステムもあり、
あの放送の主、サイグローグと皆は出会っていない。
ソーディアン・イクティノスのコアクリスタルは、天地戦争時代に損傷。
恐らく、此所のコア損傷が一つ目と二つ目の世界におけるイクティノスの一人称の変化と、密接な関係を持っている。
他にも一つ目の世界との違いは多く見受けられる。
“この”ソーディアン・シャルティエはこの世界を経験していた。

そして最後に三つ、ソーディアン・イクティノスの一人称が“私”であり、
且つエルレインなる“神”の介入があった世界。
この世界においては、細部は違えど基本的にケース2の場合をベースとして継承している。
しかし決定的な違いはバルバトスの復活、シャルティエ周りの状況、“カイル”なる一行との記憶。
そして、恐らくハロルドが行なったソーディアンによる時空転移の弊害で生じた、神の眼を破壊する際の状況変化。
因みに、“この”ソーディアン・シャルティエはこの世界から来た。
582名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 21:52:40 ID:XE0/+zky0
支援
583黎明に沈む、英雄の金字塔 12@代理:2009/09/03(木) 21:53:02 ID:xA4AhA3h0
『そういう事だね。どうりで、お互いに話が噛み合わなかった訳だよ』
シャルティエは、何処に居るかも分からぬイクティノスへと、コアクリスタルを光らせた。
妙に陽気な口調にも慣れたのか、イクティノスは適当にああ、と相槌を返す。
その微々たる光は濃闇を微かに照らすだけで、相変わらず“この場所”の広さも分からない。
『……しかし、だとすればこの舞台、もしやその“神”なる存在が創ったのかもしれないな』
『ええーっ!?』
シャルティエはコアの中で目を白黒させた。
真逆、ここでイクティノスの口からその単語が出てこようとは。
ソーディアンチームで一番“神”を信じなさそうな、イクティノスの口から。

『イクティノスは、そのサイグローグとかいう道化師がエルレインと同じ“神”だって言うの?』
“神”。その単語をイクティノスは、確かめる様にコアクリスタルの中で転がした。
正直、未知や恐怖を、その都合の良い言葉で処理してしまうのは、我ながら如何なものかとも思う。
非科学的甚だしい。

『断言はしない。だが、その可能性がない訳じゃあ、ない。
 過去に干渉して、神の眼を利用すれば……恐ろしい話だが、こんな島一つ訳はないだろう。
 俺達やミクトランの復活も、もしもサイグローグが死者蘇生が出来るという“神”ならば、説明可能だ』
シャルティエはその言葉に唸った。
確かに説明は可能だが、それにしたって都合が良い解釈だ。
元情報将校でもあったイクティノスらしからぬ解釈とも言える。
それに、何より理由がない。そうまでしてこのゲームを開催する、理由が。
『でもさイクティノス。
 僕ら―――つまり歴史の改竄を許さない人物を始末するにも、この方法は回り諄過ぎない?
 それに、仮にそうでもミクトランをゲームに参加させる理由もないし、納得いかないなぁ。
 時空を越えるにはレンズのエネルギーが要るのに、
 わざわざ僕達をパラレルワールドから呼ぶ理由も分からないし、さ』
今度はイクティノスが唸る番だった。シャルティエの反駁は全く以て正論だ。
そもそもサイグローグの正体も曖昧なままでの考察。
到底、これが正解だとは言えないだろう。
何か、理由が要る筈……いや、敢えて非効率な事をして煙に撒いている可能性もある。
それに、“本当は理由なんて初めから無いのかもしれない”。

『……ベルセリオス』
『へ?』
584黎明に沈む、英雄の金字塔 13@代理:2009/09/03(木) 21:56:17 ID:xA4AhA3h0
それは何の気なしに呟かれた言葉。特にシャルティエに聞かせたい言葉でもなかった。
さして意味も根拠もない、がらんどうな独り言。
『いや、ソーディアン・ベルセリオスが関与しているかもしれないな……と』
まぁ、それは流石にないか。考え過ぎだな。
そうイクティノスは続けようとするが、シャルティエが血相を変えて話に割って入る。
『は、ハロルドがぁ!? それは有り得ないよ!
 言ったと思うけど、僕らはハロルドと一緒に神を倒そうとしてたしさあ!』
『い、いや、ただの冗談だ。すまない』
イクティノスは慌てて取り繕う。そこまで本気になられるとは。
そう、これは単なるブラックジョーク。ハロルドが主催側に回る筈がないのだ。
幾ら何でもそれはない。あのハロルドとて軍人。分別は―――ん?

“ハロルド”?

『待てシャルティエ、ハロルドの名前が何故出てくるんだ?
 俺はハロルドではなく、ベルセリオスの……カーレルの話をしてるんだが』
ソーディアン・ベルセリオスに投射された人格はカーレル=ベルセリオス。
イクティノスの中での事実と、歴史上での事実はそうなのだ。疑問が出るのは当然だった。
『え? あぁ、そうか。イクティノスは知らないんだったね』
シャルティエはそう言って納得し、話を続ける。
『ソーディアン・ベルセリオスに投射された人格は、実はカーレルじゃなくてハロルドなんだよ』
驚いた? そう締めたシャルティエは、何の色も言葉に乗せず、けろりとしている。
しかし、イクティノスにとってその発言は、それはそれは、驚愕の新事実だ。
なにせ今までカーレルだと思っていた人物がハロルドだったのだ。
動揺しない方がおかしい。
『なッ、何だって!?
 だからベルセリオスだけ名前がファーストネームだったのかッ!』

瞬間、どくん、とコアクリスタルの中枢で、失った筈の心臓が跳ねた。
嫌な予感が、イクティノスのコアを過ぎる。
ざわざわと生暖かい微風が、イクティノスのコアの内部を走り抜けた。
内包された湿気の熱が、まるで甘ったるいガムシロップの如く変化し、イクティノスを丸飲みする。
やがて第六感が総動員で警鐘に群がり、ガンガンと目茶苦茶に鳴らし出す。
“おかしい”。
情報将校・イクティノス=マイナード少将としてのブレーンが疑問を持つまで、時間は微塵も掛からなかった。

『――――――――――――――――――――いや、待て……有り得ない』
585黎明に沈む、英雄の金字塔 14@代理:2009/09/03(木) 21:58:27 ID:xA4AhA3h0
え、とシャルティエが間抜けな声を零す。何が有り得ないのか分からない、といった声色だった。
イクティノスはコアクリスタルを激しく輝かせ、強く舌を打つ。
……くそッ、もっと早く気付いていれば。
『シャルティエ、それではお前の発言に矛盾が出る。今まで気付かなかったのか?
 思い出せ。お前は言ったな?
 ゾンビにされてしまったリオンの屍の傍らで、神の眼が壊されるまでの全てを見たのだ、と』
イクティノスは一旦そこで言葉を切ると、シャルティエの肯定を仰いだ。
シャルティエはそんなイクティノスの様子に圧倒され、訳も分からず相槌を打つ。
『その時、ソーディアン・ベルセリオスはこう言った。
 “久し振りだな、諸君”。
 “そう、死んだ筈なのだよ。だが、私は此所に居る。さて、これは如何いう事かな?”。
 そしてこれは紛れもなくカーレルの声だった……これでは、お前の話と矛盾する』
シャルティエの中でぴんと張られていた糸が、ぷつんと切れる。
漸く筋を理解したのか、シャルティエはコアクリスタルを一層輝かせて息を飲んだ。
『た……確かに……そう、だね。
 で、でもハロルドが坊ちゃん達に人格投射したって言ってたし、間違いない筈だよ!?
 そうだ。ハロルドの事だから、皆に怪しまれない様に音声変更していたのかも……!』
シャルティエは必死にコアを輝かせ、イクティノスを説得するかの様な口調で述べる。
ハロルドは決して嘘を吐かない人間ではない。寧ろどちらかと言うと、嘘付きの部類だ。
しかし、ハロルドは意味の無い嘘は絶対に吐かないタイプだ。
第一、この嘘はハロルドにとって面白くも何ともない。利益がないからだ。
物事を面白いか面白くないか、の二つで判断するハロルドには、余りにも似合わぬ嘘。
兄妹揃って戦う……その言葉には故に間違いはない。そうシャルティエは踏んでいた。
そしてイクティノスもまた、ハロルドとシャルティエの言葉を嘘だと思っていた訳ではない。
嘘を吐く意味もなく、またソーディアンの名がベルセリオス……真実だと思わせるだけの理由もある。
それにシャルティエが言う通り、音声変換機能の搭載程度、ハロルドにとっては訳もないだろう。
しかし、だ。それを真だとするならば、数々の問題点が浮上する。
586黎明に沈む、英雄の金字塔 15@代理:2009/09/03(木) 22:01:06 ID:xA4AhA3h0
『……忘れたか、シャルティエ。
 “ソーディアンは、基本的に人格が完全に一致していなければ100%の力を発揮しない”。
 尤も極限の信頼により、それ以上の数値を叩き出す事もあるが……。
 しかしその場合とて、ソーディアン研究所でオリジナルに打ち勝つ必要がある。
 天地戦争当時、そんな時間はなかった。人格投射して直ぐに拠点を発ったからな。
 この意味が分かるか?』
ソーディアンの製作者でもあるハロルドは、それを分かっていて人格を投射した。
即ち、カーレルの死は彼女の所為である可能性がある……イクティノスが言わんとしている事は、そういう事だ。
『でもでも! カーレルの方から人格投射を言い出したのかもしれない!
 だから当時の僕達に黙っていたのかもしれないしさ!
 それにッ、ハロルドはカーレルの死に本気で悲しんでたよ! それは間違いない!
 ハロルドはあれでもカーレルに懐いてたし! 確信犯なんかじゃないよッ!!』
『それは分かってる。俺だってそう思っている。だが思い出せ、シャルティエ。
 天地戦争時代、一度でも“ベルセリオス”が喋った事があるか? ないだろう。
 戦後間も無く、人格相互干渉問題を提起したのは誰だ? オリジナルのイクティノスだ。
 ……俺だって、あのハロルドの涙は本物だったと信じたいのは山々だ。
 カーレルとて、血迷ってはいなかった筈、そう信じたい』
シャルティエはコアの発光を鈍らせ、沈黙する。
ソーディアンに血は通ってはいないが、もし通っていたならば、血の気が引いていただろう。
イクティノスの考察に穴は無かった。
つまりカーレルは、ソーディアンの力を“完全に発揮出来ないと知っていて”、戦争に臨んだ事になる。
あの兄妹に限ってそんな馬鹿な話、ある訳がない。シャルティエはそう思った。
しかし、現実はそれを否定している。
ソーディアン・ベルセリオスだけシンクロ率調整機能が付いていた……もう、そう考える他なかった。


『だから――――――――――俺はハロルドとカーレルを信じ、一つの可能性に懸ける』


『え』
コアクリスタルの中で、シャルティエは中途半端に口を開く。予想外の一言だった。
『シャルティエ、覚えているか。
 コアに身を潜めていたミクトランが、ヒューゴを操っていた事を。
 即ち、コアからの多干渉による人格汚染、操作は可能だという事を』
587黎明に沈む、英雄の金字塔 16@代理:2009/09/03(木) 22:04:01 ID:xA4AhA3h0
黙りを決め込むシャルティエへ、イクティノスは単語単語をぽつぽつと零す様に語り掛ける。
それはイクティノスなりの、シャルティエへの最大の譲歩。
同時に、地上軍少将・イクティノス=マイナード個人としての、強い願望でもあった。

『ベルセリオスにも当て嵌まる……そういう事?』
全てはベルセリオスの仕業、ハロルドとカーレルの埒外で仕組まれた罠なのだ、と。
そう考えるのが一番ダメージが少なくて済む。
尤も今のむすっとした声を聞く限り、シャルティエはその可能性すら否定したい様だが。
『ああ。
 マスターであるカーレルと、製作者であるハロルドの意思とは関係なく、それは行えただろうな。
 そして、人格を投射した時点とミクトランを討った時点では、僅かに時間の経過がある。
 つまり、“コアの中のハロルド=ベルセリオス”が人格変化を起こす可能性があるという事だ。
 現に、お前や俺も性格が変化している。オリジナルからは程遠いくらいな』
シャルティエは焦躁を募らせながらイクティノスの話に耳を傾けた。
カーレルを操り、殺したのはベルセリオスで、それはミクトランと協力する為だった。
イクティノスの言葉の意味は、そういう事だ。確かにその理論なら、全ての辻褄が合う。

『そんな……。
 でもイクティノスや僕は1000年近く時間があったから性格が変わっただけで……!』
イクティノスは深い溜息を吐く。確かにシャルティエの言う通り、普通ならそうだ。
常識的に考えて、そう短期間に性格は変化するものではない。
しかし、いかんせん相手は奇才ハロルド=ベルセリオス博士。
『シャルティエ。お前は真逆、ハロルドに常識が通用するとでも思っているのか?
 それに、お前の話じゃミクトランはこうも言ったそうじゃないか。
 “だが……これがベルセリオスの答えなのだよ”、と』
ベルセリオスの答え。それはつまり、ハロルドがそれを望んだという事。
『でも……それはミクトランの口上だったかもしれないよ! 動揺を誘う為の!』
けれども、それだけは絶対に信じたくない。
幾らオリジナルハロルドではなくコアクリスタルの人格、ベルセリオスだとは言え、
シャルティエはイクティノスの言葉を信じたくはなかった。
ハロルドが、同僚であった彼女が、自分達と旅をしたあの彼女が、諸悪の根源だなんて。
冗談も休み休みに言え。
588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 22:04:31 ID:XE0/+zky0
支援
589黎明に沈む、英雄の金字塔 17@代理:2009/09/03(木) 22:06:12 ID:xA4AhA3h0
自分の今までの行動や苦労が、全部、全部、全部……。

『動揺を誘うつもりなら、ミクトランは別の方法を選ぶだろう。
 お世辞にも良い挑発とは言えない。即ち、あの発言は事実であった可能性が高い。
 ……もしかすると、ハロルドとカーレルが予想しないところで、ベルセリオスは―――』
『イクティノス、それ以上は駄目だ! 今、言おうとした事の重大さが分かってるのかい!?
 僕らは推測だけで、とんでもない事を考えてるんだよ!!?』
シャルティエはイクティノスの言葉を遮り、金切声を上げた。
功績と勝利、歴史の否定。それは己のオリジナルをも含む、過去に散った人々への屈辱に等しい。
シャルティエの悲痛な叫び声に、イクティノスは口を一度だけつぐむ。
イクティノスは馬鹿ではない。シャルティエの気持ちは、彼にも充分理解出来たからだ。
しかし、それでも鉄面皮なイクティノスは冷酷に、あくまでも軍人として徹する。
可能性がゼロでないなら、ゼロになるまで追及すべきなのだから。

『―――ベルセリオスは、“天地戦争のシナリオの脚本家であり、結末を知っていたのかも知れない”』

そう、運命の延長線上にある、このゲームの事だって。
『……ッ』
シャルティエはたじろぎ、コアクリスタルの中で息を飲んだ。
イクティノスはつまり、歴史がハロルド―――いや、ベルセリオスにより創られたのだと、
自分達は逃れられぬ運命に翻弄されただけなのだと……そう言っているのだ。
『ベルセリオスが黒幕なら、ミクトランが人形なら……あの程度で終わる訳がない』
それが本当だとすれば、自分達は二人の“神”を相手にする事になる。
『迂闊だった。思い返せばあの時、ソーディアン・ベルセリオスを破壊しておくべきだった。
 神の眼を破壊する事で精一杯だったからな……』
“運命を創る”。最早その領域は神の諸行。
そんな出鱈目な相手に、一体如何にして抗うと言うのか。無理だ。勝てる訳がない。

『運命の……物語……』

シャルティエは苦痛に歪んだ声を漏らす。何という皮肉なのだろうか。
全ての変遷は、事変は、生死は……運命という名のシナリオに沿ったに過ぎないとでも言うのか?
自分は運命に泳がされた駒だ、と?
590名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 22:07:15 ID:XE0/+zky0
支援
591黎明に沈む、英雄の金字塔 18@代理:2009/09/03(木) 22:08:22 ID:xA4AhA3h0
『これが現実なら、ぞっとしない話だ。
 それはある意味での全知全能。人間に許されぬ“世界の運命を決める禁忌の力”を意味しているからな。
 もしも、“神”がそこに……最も“神”に近い人間、ソーディアン・ベルセリオスに、目を着けたならば』
イクティノスは闇に満ちた空を見上げた。
空間に入った罅からは、白く淡い光が差し込んでいる。
その白光に吸い込まれる様に、二振りの剣は漆黒の濁流に呑まれた。
次に見る景色はきっと、一面に広がる、傲慢ちきな天上王の憎らしい笑みだ。



『……この戦争<バトル・ロワイアル>、一筋縄ではいかないぞ』



天上王、意思を持つ剣、英雄、神……そして存在するかも知れない“第二の神”。
二つの運命の物語を経験した役者は、この地に揃いつつある。
終末の歯車は未だ止まらず、紡ぎ出されるは新たな運命。
黎明に染まる、天を頂く朱色の塔。遠く轟く、魔を滅す来迎の雷。
やがて沈み行く、高き栄光。邂逅する煤と歌姫、天を統べる覇者と英雄、氷結の死徒。
さぁ、その火蓋を切る時だ。運命に殺された憐れな亡霊よ。


「やぁ、ソーディアン諸君。待望の出番だ」


始めよう――――――――――――――第三次天地戦争を。
592黎明に沈む、英雄の金字塔 19@代理:2009/09/03(木) 22:11:14 ID:xA4AhA3h0
【ミクトラン 生存確認】
状態:HPTP100% 血塗れ 雪塗れ 頬に止血済み掠り傷 不安定要素への不安(僅かに緩和)
   食料や生活難、寒さへの苛立ち
所持品:フランヴェルジュ イリア、ハスタ、ヴェイグのサック ??? ???
    デザートイーグル 銃弾×20 双眼鏡 サードニクス 金のフォーク ハスタの首輪
    ソーディアン・イクティノス ソーディアン・シャルティエ
基本行動方針:ピエロ含め皆殺し
第一行動方針:出撃開始
第二行動方針:考察の確度をあげるため、更なる首輪を得て首輪について考察する。
第三行動方針:籠城しウッドロウ達を誘う
第四行動方針:サイグローグとの腹の探り合いを楽しむ
第五行動方針:魔力に拠る首輪爆発の事実を証明したい
第六行動方針:あの森(ガオラキアの森)には二度と足を踏み入れたくない
現在位置:D3黎明の塔・屋上

【ソーディアン・イクティノス】
状態:ウッドロウが心配 第一回放送しか聞いていない ベルセリオスの関与を疑っている
基本行動方針:D、D2世界の仲間を探しつつ、舞台を把握する
第一行動方針:考察に専念する。どうにかしてミクトランからベルセリオスの話やゲームの情報を聞く

【ソーディアン・シャルティエ】
状態:ウッドロウが心配 第一回放送しか聞いていない ベルセリオスを信じたい
基本行動方針:D、D2世界の仲間を探しつつ、舞台を把握する
第一行動方針:考察はイクティノスに任せる。随時イクティノスと水面下で連絡し合う


備考:これはミクトランが塔でソーディアン達をサックに入れてから、カイル達が入塔し、サックから出されるまでの話です。
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 22:24:40 ID:xA4AhA3h0
代理投下終了です
終了宣言遅れて申し訳ない

投下乙です
考察進むなあ。頑張れソーディアンチーム
塔にフラグ集まり始めてるからいろいろ楽しみだ
引きこもり始めた時の過疎は何だったのかw
出撃開始とか最後のくだりも格好いいな
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 23:56:23 ID:IZIMNo/PO
投下乙です
D2シャルティエの三時代に渡る情報はパラレル考察だと恐ろしく有用だね
ところで気になったんだけどファーストネームは姓に対する名だからベルセリオスってファミリーネームだよね?
595名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/04(金) 17:50:36 ID:bgnXwutR0
お、投下乙
連続考察かー。確かにベルセリオスって怪しいもんなあ。第三次天地戦争とは言い得て妙だな。
塔周辺も盛り上がってきたし、続きwktk。
つか、最近投下たくさんでうれしいw
596名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/07(月) 13:34:10 ID:qgScNrRcO
まとめサイトの管理人さん更新お疲れ様です。
自分携帯からしか見れないので早い更新ありがたいです!

で、更新分読みかえししたんだけどルークフィリア組の話、途中文章抜けてるみたいです。
時間考察をフィリアがしてる(?)とこ、少し前後文おかしかったんで。
念の為報告しました。
597名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/07(月) 18:13:13 ID:3XQqi3LA0
ロワ内で印象に残ってるフレーズってある?
自分はジューダスの
――カイル達は必ずこの殺し合いに乗らないと信じている――
って独白が妙に切なくて好きだ
598名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/07(月) 19:39:00 ID:1+D5tMWwO
>>597
ロニとリアラの状態を考えると余計に切ないな…

自分はウッドロウとヴェイグが出会った回の
――白くて長く、美しくしなった…ねぎ
だな。想像するとめちゃくちゃシュールで笑えた
599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/07(月) 20:39:13 ID:g+/UUJFDO
俺からも管理人さん乙です
時刻表、見やすくて良いと思います

フレーズと言うにはちと長いが、ウッドロウの最期の回想は印象に残ってるな
600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/08(火) 17:43:02 ID:3ixcwO5x0
クラトスの「愛だ」とか、アニーの『――――だって、ヒトの心に色は、無いんですから――――』 とか、好きなフレーズはたくさんあって書ききれないw
ちょっと長いけれど、リアラとマオの話の最後の人と神の下りは好きだな。
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/09(水) 02:16:04 ID:CuYmrYc10
カイウスの獣化は秘奥義扱いじゃないんだよな?
それとミトスのタイムストップって使用できるの時空剣士時限定だっけ?
時空転移術ってモリスンやダオスが使ったのは法術だよな?
602名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/09(水) 09:08:31 ID:CuYmrYc10
>>601
すまん、調べたらすぐ分かることだよな
ミトスのタイムストップって法術なんだな
603名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/09(水) 15:36:04 ID:UkASWNHSO
ベリセリオスだけじゃなくてシャルティエとクレメンテもファミリーネームなんじゃ…?
604名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/09(水) 18:22:59 ID:QC2Rna2v0
そうだけど、ベルセリオスみたいにその場に複数人いるわけじゃないし
605名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/09(水) 19:16:59 ID:vxHuTik2O
いずれにせよ、「ベルセリオスだけが仲間から呼ばれる名じゃないから不自然」って事実はかわんないしな。
でも「ファミリーネームがベルセリオスだけ」ってとこは修正がいるのかな。厳密には違うから。
606名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/10(木) 16:00:49 ID:m0nNkRnwO
D2キャラ全体的に危ないなw
カイルとジューダス死にそうだしロニとリアラは精神が…w
607名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/11(金) 05:51:19 ID:LrCXJtX50
>>606
ジューダスはミトス・エリクシール等のでっかい生存フラグがあるが
同時にロニという死亡フラグがあるんだよな
ハロルドの言葉でロニがどうなるかだな
608名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/11(金) 07:38:59 ID:h943wiRwO
ジューダスもだかスパーダが死にそうだよな…
609名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/11(金) 13:07:08 ID:Kv3+KJX1O
>>604
>>605
ああそっか、なるほど
答えてくれてどうもです
610名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/11(金) 21:15:14 ID:Iku0ma0zO
ソーディアンズ話、このまま書き手さんのリアクションないと削除にならないか?大丈夫か?
5日間ルール出来たんだよな?
611名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/11(金) 21:39:28 ID:FY+C7QJE0
5日ルールは流れに変更ある場合だろ?この場合は違うんじゃないのか
612名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/12(土) 23:49:45 ID:bT4LCvI8O
「黎明に沈む、英雄の金字塔」の作者です。反応が遅くなりすみません。
現在多忙なので、該当ヵ所の修正は完成していませんが、>>605さんの意見を参考に検討しています。
流れに支障がない小さな修正なので、完成次第こちらではなく避難所のスレに書き込みたいと思います。
613名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/16(水) 03:52:15 ID:03rkd1flO
次の大乱戦はやはり塔周辺になるのかな
かなり目立つランドマークだし、何故かターゲットになってるし
一気に人数が減りそうだ
614名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/16(水) 17:12:04 ID:dRNxWgpfO
次の放送までにかなり死にそうだよなwww
615名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/16(水) 18:31:49 ID:R1We6x3kO
まだまだわからないがな。死にそうでもあるが、誰も死ななさそうな気もまたある。
だがこれから楽しみなのは確か。塔にはまだミトスとかロニとか、エルレイン組とかスタン組の要素が加わる可能性が、十分にあるからな。
616名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/17(木) 15:58:56 ID:2ok4yct00
塔の他にも、サニイタウンも重要になりそう。
晶霊砲にチャット組が反応するだろうし、なにせフラグの塊だからな、バンエルがさ。
なんにせよ、これからが重要な局面だな。館・船・塔・森、それぞれ参加者があつまりつつある。
617名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/22(火) 12:55:20 ID:GOjpznFl0
>>529
オリDでウッドロウがファンダリア王家の人間であるとクレメンテが知った際
ならばお前もソーディアンマスターなんだなと言い
それに対し川´_ゝ`)が自分が受け継いだのは資質だけだと答えている
ファンダリア王家の人間は全員ソーディアンマスターの資質を受け継ぎ
破損したイクティノスを所有していることから空気王=ドマイナーは確定かもしれない
618名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/22(火) 16:53:53 ID:m3kbBODKO
確かに資質は受け継いでいるな、うん
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/25(金) 00:10:54 ID:E3Slqbry0
そういえば1stと違い2ndでは銃火器がかなり弱体化しているな
銃火器使いこなしている強キャラってミクたんくらいだ
この人って楽をしたいから使ってるだけで銃を使わない方が強いだろうし
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/25(金) 03:34:25 ID:c9ImbWmcO
と言ってもウージーと榴弾砲ぐらいしか活躍して無いと思うぜ
メガグランチャーあたりに期待するか
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/29(火) 07:41:24 ID:4rvY52s90
とは言っても、2ndのほうが1stより重火器多いんだけどなー。
622名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/29(火) 17:06:40 ID:3qJDj332O
なんかあんま目立ってないんだよね、銃
イリアはズガン、フォッグは空気
623名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/29(火) 17:27:22 ID:nROzJ7090
>>622
リカルド氏も序盤で才を魅せる事無く亡くなったしな。

銃を使うキャラがもうフォッグ以外居ない。フォッグがもし使ったならかっこいい事になりそうだが。
624名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/29(火) 19:32:36 ID:y+zKfBrbO
またシャーリィがエクス(ry
今回は魔改造キャラいないな。それに越した事は無いけど
625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/29(火) 19:49:01 ID:nROzJ7090
暗に「魔改造すんなよ」って言ってる様な気がしてならん。そこらへんは書き手さんに任せようぜ
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/29(火) 21:08:54 ID:vmOkLTmu0
スタンはある意味、歩くチートアイテム
支給品の恵まれっぷりが半端じゃない
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/30(水) 00:05:54 ID:HirTOR0k0
何気にミクトランもチートだな。そもそも本人が天才科学者&ラスボスってチートなのに、支給品が拍車をかけてる。
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/30(水) 00:08:40 ID:vVOs9lpWO
1stでああなったのはマーダー不足のせいでもあったけどな

にしてもスタイレの装備の充実振りは異常だなw
斧一本で頑張ってるデクスが哀れに思えてくる……
629名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/30(水) 00:11:10 ID:YReRWMSV0
>>627
有り余るほどのスペックを帳消しにするドジッ子ぶりがミクたんクオリティ
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/02(金) 09:39:14 ID:IDpNc+WIO
シンクやリアラも支給品が充実してるな。シンクに至っては、もはや武器庫と化してる。
631名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/02(金) 19:27:11 ID:G9eVtGBnO
現在生存してるメンバーの中にジョーカーがいる気がしてならん。
いないと信じたいが。
632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/02(金) 19:39:18 ID:FpqdABSG0
なんだかんだで1stジョーカーのリオンは
マーダー・対主催両方で優秀な働きをしたな
2ndは主催者が何でもありなやつだから
疑い出せば誰でも怪しいしキリが無いな
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/02(金) 20:22:47 ID:VLte+57C0
ジョーカーらしき描写は所々にあるよな。どれがブラフかは分からんが、ジョーカーは最低一名いると思ってる。
634名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/02(金) 20:34:22 ID:FpqdABSG0
対主催でもお前、実は……? って奴は多い
つか全員にジョーカーフラグがたってるんだよなあ
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/04(日) 12:27:38 ID:9ZunCL9oO
>>627
そしてソーディアンチーム6人とたった1人で渡り合う剣の達人でもある
636名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/04(日) 14:09:59 ID:W9CtDUmU0
ネクロマンサーよりはるかにネクロマンサー
637名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/05(月) 00:41:49 ID:wcPHSzgf0
>>635
スタン達の時代に至っては、ソーディアンチーム4人とそれ以外のメンバー4人(リリス入れるなら5人)と渡り合ってるしな。
638名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/06(火) 19:02:56 ID:lWeKA/3D0
そう考えるとミクトランすげーな
639名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/07(水) 21:14:49 ID:RX+JuPO00
ディバックの中で支給品達がだべり兼、考察話をするという内容で
一話丸々濃いものが出来るのは改めて凄いな
640名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/07(水) 21:23:42 ID:bg0toA1B0
そうだな。ロワ的に見てもなかなか珍しいものではある。ミクトランが出てきたのは、登場人物を出すって都合だけだろうしねえ。
641名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/08(木) 07:57:35 ID:4Algn0Og0
つかあの二人の考察内容って重要度がハンパないよな
同じことが出来そうなのって現状じゃいない気がする
仮面と司祭が実は気づいてましたってなっても驚かないが
仮にフィリアがオリ出典ならもうチェルシーしか望みは無いし、でもこの子グレーだしで
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/08(木) 08:00:05 ID:4Algn0Og0
しまった、そう言えばラタとSもパラレルだったのを忘れていた
何故かプレセアだけラタ参戦だったが
643名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/08(木) 08:18:26 ID:FVQ1Fd4I0
重要度もハンパないが、ソーディアンは通信があるからいつでも考察出来る便利さがあるからこれからに期待できる。中盤で核心に迫るってやり口は普通はミスリードフラグだが・・・現時点では何とも言えないな。
つかバトロワ関係無しに考察通りベルセリオスが戦争に関わってたなら、「運命の物語」ってすっげえ皮肉だよなあ。
644名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/08(木) 08:20:31 ID:FVQ1Fd4I0
>>642
そういやロイドがゼロス死亡ルートだから確かにパラレルだな。
ゼロスがいないラタ世界か。絶望しか見えねー。
645名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/09(金) 10:24:28 ID:lT8PBsVdO
まとめさん更新乙!
あのリストは便利で分かりやすい、ご苦労様です
646名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/09(金) 16:01:15 ID:4E70lyzGO
何かと思ったらあんなのがw
まとめさん乙です!
647名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/09(金) 17:31:53 ID:pHq9FuDEO
ほぉ。こりゃすげぇ。乙ですー。
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/10(土) 01:21:15 ID:oqx2nxpV0
何を指して言ってるのか分からん……
まとめサイトになんか増えてるってことは何となく分かるんだが
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/10(土) 02:57:45 ID:VlycIe420
俺もだ
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/10(土) 07:53:42 ID:KmpeKf6RO
参加者の動向まとめが追加されたんだよ
ロワを振り返る意味でも読んで来てみれば?
651名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/10(土) 16:24:14 ID:VlycIe420
おお、これは凄い
まとめさんは俺の英雄だ
652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/12(月) 05:28:34 ID:RQb9jPGi0
リメやってないんだがスペック的には
シャルティエ<<<<<他ソーディアンなんだよな
シャルティエもオベロン社ん技術で1,3倍のスペックはあるそうだが
1stではミクトランが2ndでのジューダス所持のものはエルレインが改造したのかな?
653名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/12(月) 16:49:38 ID:HgzwNXLiO
>>652
シャルティエってオベロン社が技術で改造したんだっけ?忘れちまったよ。
654名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/16(金) 00:03:34 ID:MxpTUgcT0
お、ラジオが延長になったのか。
655名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 23:10:14 ID:ER+wmVc9O
保守してほしゅいっす!
656名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 23:45:17 ID:xEsIZF8BO
時空剣士さん死者スレにお帰り下さい
657R-0109 ◆eVB8arcato :2009/10/21(水) 00:15:27 ID:HdPGoUfz0
どうも、こんばんは。遅れて申し訳ございません
「バトルロワイアルパロディ企画スレ交流雑談所(以下交流所)」の方でラジオをしているR-0109と申します。
現在、交流所のほうで「第二回パロロワ企画巡回ラジオツアー」というのをやっていまして。
そこで来る10/24(土)の21:00から、ここを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?

ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。

交流所を知らない人のために交流所のアドレスも張っておきます。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1243687397/ (したらば)
ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html (日程表等)
658名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 00:18:59 ID:DaMvZSDbO
もちろんおkです!
659名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 07:38:27 ID:N60aV016O
かまわん、やれ
660名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/24(土) 14:39:23 ID:0LrFMzyd0
いまから正座で待機しておく

できれば凸したいなあ
661R-0109 ◆eVB8arcato :2009/10/24(土) 21:18:57 ID:A46iF1mO0
662名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 03:28:50 ID:MrAgtRip0
>>661
お疲れ様でしたー!
663名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/30(金) 01:08:17 ID:MC0El+v4O
ほしゅーん
664名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 23:52:38 ID:7KsK1oelO
保守ァ!
665名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 11:10:46 ID:TCeGm13nO
もうすぐ投下があるはず……!
666名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 22:00:56 ID:vo26Ji8kO
1と2読んで、自分も書こうかと思ったんですけど…グロ表現はどこまで大丈夫ですかね?いまいち線引きがわからないので

それと失禁とかOKですか?
1でカイルが一応してるけど、あれは潰されたからですし…あまりの恐怖や痛みから、でも大丈夫でしょうか?
667名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 23:03:02 ID:XfrlCya7O
やり過ぎなければ問題無いと思いますよ。そういう描写を入れた方が良い場合もありますし。
投下期待してます。頑張って下さい!
668名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 00:23:51 ID:styIv+MrO
1stはやりすぎても問題なかったけどな
669名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 00:42:29 ID:ASVT50WOO
キール死亡話は修正入ってたような
ここはグロには寛容なロワだから、グロも失禁も思いっきりやっても構わないと思うが
670名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:14:51 ID:glwL2TjiO
あまり好きではない方だからストレートにやって欲しくはないがな…
まあオブラートに包むっていうか、やり過ぎなければいいと思う
671名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 02:21:15 ID:4eCUUj0aO
あ、オブラートには包みますよ!露骨な表現あまり好きじゃないので…

とりあえず最初はグロ等抑え目に書いてみます。
それと長さ規制ありますか?滅茶苦茶長くなりそうなんで…
672名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 07:59:40 ID:eaAYC29tO
別にグロい場面じゃないけど、1stでグリッドも失禁してるからいいんじゃないの?
673名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 11:24:35 ID:vGRipdKB0
長さで言えば1stアナザーのある愛の話シリーズが1スレ使い切るレベルで1番か
まぁあれはアナザーの終盤戦という事情もあるけど、長いなら分割投下すれば大丈夫だと思う
674名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 12:12:40 ID:UgHrxhTZO
最近の2ndでは、グロリアが一番長いな。130kくらいか? あれより長くなるなら相当だぞ
675名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 01:09:40 ID:JqKwxZDJO
婆さんや、投下はまだかのう
676名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 14:25:10 ID:dBeQyC3VO
そんな一日二日じゃ書けないだろ
投下急かすならお前が書けよ
677名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 17:03:52 ID:gmbvRh8vO
おとなしく投下を待とうか
678名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 21:43:16 ID:RldTxqGrO
貴様…アルベイン流だな!?
679名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 23:27:38 ID:dMo4uxNh0
オレはアーヴィング流だ!
680名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 03:48:46 ID:mTmkpJ0FO
そういや空気王一周忌を迎えたな
あれはこのロワでも屈指の死に様だった。熱血でも鬱でも
681名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 21:20:55 ID:zIbrhoAFO
一年で約30話か
多いのか少ないのか
682名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 11:04:28 ID:nujPZ4kOO
それでもこの話数は全体的に見れば1日一話計算だからな、最初のハイパー即投下タイムがあったからよかった。
683 ◆6uh/ZSSY.E :2009/11/14(土) 20:24:26 ID:3NIDrPnS0
避難所にて仮投下しました
皆さんのご意見をお聞かせ下さい
684名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 21:30:25 ID:XQoRjP1a0
こんばんは、ナッシュという者です。
今晩、突発的ではありますが、テイルズロワ1st・2ndを題材としたラジオの
テスト放送をしています。
日付が変わる頃くらいまで流しておりますので、
お時間のある方、よろしければご参加・ご協力ください。

ラジオのアドレス…… http://nash-tobr.ddo.jp:8000/
ラジオ掲示板…… http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13268/

それでは、失礼しました。
仮投下作品にwktkしながら流してます。
685名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 21:57:14 ID:dG2bMtv4O
仮投下乙です!
通信機能の事なら特に問題無いと思います。
感想は本投下の際に。
686 ◆6uh/ZSSY.E :2009/11/14(土) 22:17:24 ID:3NIDrPnS0
これよりラジオを聞きながらまったり投下していきます
687Master of Puppets 1:2009/11/14(土) 22:19:05 ID:3NIDrPnS0
今デナイトキ。
ココデナイ場所。
コノ物語ハ、一ツノParallel worldヲ舞台ニシテイル。
ソノKilling zoneデハ憐レナ子羊達ガ、
取捨選択スル己ノ思考ニ悩ミ、希望ト絶望ノ狭間ニ藻掻イテイル。
アル子羊ハ、母ノ愛ヲ得ンガタメ、己ヲ殺ス旅ニ出タ。
アル子羊ハ、異国ノ女王ヲ守ル力ヲ得ント船ニ乗リ込ンダ。
アル子羊ハ、己ノ在リ方ヲ問ウベク、自身ニ仕掛ケラレタ謎ニ挑ミダシタ。
ワタシハコレカラ、アル子羊達ノ話ヲシタイト思ッテイル。
彼ラノ目的ハ一見アルヨウデイテ…マダ、ナイ。





【反逆ヲ企テルハ驕レル王】

「安心しまたえ、殺すつもりはない。…少なくとも現時点ではな」
さて、二人から持ちうる情報を搾り取りたいところだが…餓鬼(カイルとか言ったか)の方は見た目からして馬鹿そうだ。
それに私を知っている様子から同世界の者のようだし、こちらが望む物は碌に得られないだろう。
対する女は私の事を知らないらしい。十中八九、ヴェイグと同様に異世界の─彼の属する世界とも異なる─住人と考えられる。
「…私達から何を聞き出そうと言うの」
どうやらこの女、頭はそれなりに廻るらしい。纏う雰囲気から察するに何処ぞの軍の関係者といったところか。
場合によっては先にこちら側へ引き込んでからの方が有益な情報を得られるやもしれん。
臆病者ならば甘い言葉で惑わし、自ら轡を嵌めるように仕向ける。
誇り高き者ならばその心を折り、モノ言う傀儡へと仕立てる。
思うように操るためにも、まずはこの女の気性を知りたいところだ。
「なかなか察しが良いではないか、女。…見ての通り、このような場所では情報に乏しくてな。
 あのピエロに歯向かう為にも、持てる情報量は多いに越した事はないと思わんかね?」
この二人、恐らくは成り行き上で結成された即席コンビだろう。
自身の命を選ぶか、はたまた赤の他人の命を選ぶか…見させて貰うぞ、女。
「誰がお前なんかに…があァッ!」
「カイル! …くッ」
『二人とも! …ミクトラン……っ!!』
挑発ですらない言葉に餓鬼が噛み付いてくるのは想定済み。
左肩を再び撃ち抜く事で黙らせると同時に、女に『答えなければ餓鬼を殺す事も厭わない』事を暗に示す。無論、これはブラフだ。
本当ならば今すぐにでも殺し、首輪を得たいところなのだが…情報を得ると云う目的がある以上、それは愚策以外の何物でもない。
例え餓鬼を殺したところで、軍属らしき女が口を開くとは到底考えられないからだ。それどころか更に口を堅くするに違いない。
餓鬼の方へ駆け寄ろうとしたのだろう。女は身じろいだが、改めて肩口を踏みつけるまでもなく直ぐに大人しくなる。
助けようと動こうとしたものの、己が置かれている状況を思い出し自制した…といったところか。
「誰が貴様に回答の自由を与えた? 私が問いかけたのは女にであって貴様ではない。そこのお喋りカトラス、貴様もだ。
 …ヴェイグ、そいつ等の相手はお前に任せる。ただしまだ殺すな。それ以外は好きにして構わん」
五月蠅い餓鬼共はあれで暫くの間黙らせることが出来る。出来ればその間にこの女を籠絡したいものだ。
こいつ等の持つ情報次第では仮眠前に軽く行った考察の幅も広がることだろう。
「さて、まずは名を聞こうか。いつまでも"女"呼ばわりでは具合が悪かろう?」
688Master of Puppets 2:2009/11/14(土) 22:23:25 ID:3NIDrPnS0



=Come crawling faster=

曰く「反応が消え」てから暫く経った頃。私はヴェイグからそれまでに得た情報を頭で整理していた。
(それにしても先程の放送…定時丁度に行われなかったのは単なる偶然か?)
6秒。普段ならただの誤差として深く気にすることはない、その程度の時間。
しかしその6秒前に起きた、一瞬だけ感じた晶術とは似て否なる力の凝縮及び拡散─ここは爆発と言うべきか。
何かが歪に絡み合っている感覚が不愉快極まりない。
(あの晶術然とした力…あれもまた異世界での晶力にあたる物、と考えるべきだろうな)
さて、ここで問の番外3だ。命題は『魔力の爆発と6秒遅れた放送、この二つが関連している可能性の有無を述べよ』。
…まずは魔力のことからだな。
1秒、いや半秒もしない内に膨大なエネルギーを一点に凝縮させるだけなら兎も角、加えて爆発させるなど只事ではない。
常ならば例え大規模な装置を使用したとしても、それこそ神の眼の力を以てしても実現出来るかどうか…という厳しいものだ。
ましてやこの会場はあのピエロによって準備された物。こちら側がそのようなものを調達する事を奴は望むだろうか?
仮に参加者の誰かが何らかの手段でそのような芸当をやってのけたとしよう。
それが"ゲーム"の進行に支障をきたす可能性を少しでも有している場合、それは運営側にとって脅威となる。
理由は至極単純にして明快。
下手をすれば首輪を外され、こちらに歯向かって来るような事態を引き起こしかねないからだ。
もしも私が奴の立場にいたならば。そのような者はゲームを潤滑に運営する為にも直ぐさま排除する…首輪を爆破する事でな。

…ふむ。論点からずれるが、そもそも首輪を爆破する─爆発する条件は何か? と云う点についても少し触れておくか。
一つは禁止エリアに進入、及び禁止予定エリアに予定時刻を過ぎても居続ける事。
首輪を身につけている限り、これはどのような例外も有り得ないだろう。そうでなければこの死亡遊戯そのものが破綻する。
例えどれ程外道な内容の遊戯だとしても、それが遊戯たるには絶対不可侵のルールが必要だからだ。
二つは24時間内に死者が一人も出なかった場合。
この時は参加者全員の首輪が対象になるとは、なかなかどうして絶妙ではないか。
ゲームに消極的、且つ自信の保身を第一に考えるような者に「殺さなければ死ぬかもしれない」と云う、恐怖という名の強迫概念を植え付けるのだから。
そして三つ。
首輪を"無理矢理"外そうとした場合。これが最も重要だ。
あのピエロは同時に"正しい手順で"外すならその限りではない、とも説明している。まるで「外して下さい」とでも言わんばかりに、だ。
そこから導き出せる論が一つ。それは首輪"そのもの"が持つ拘束力は極めて小さい、若しくは無いも同然という事。
奴にとって首輪は『運営に支障が出ない』程度の物でしかないのだろう。でなければあのような発言をする筈が無い。
だとすれば、『首輪』は別に存在する…? それならば首輪にどのような機能が付いているのかが問題か。
頭部と胴体の形が残る程度の爆発物、及び遠隔操作式の起爆装置が入っている事はまず間違いない。
その起爆装置は一種の魔力を起動条件としていると私は読んでいるが、これ自体の根拠はまだ皆無に等しい。
それと放送での死者の発表が虚偽でもない限り、装着者の生死判定も行っている事も考えられる。
あとは…首輪を分解して内部構造を知れば考察をさらに進められるのだが、一つしかない今は無碍に扱う訳にいかない。
見分する限り分解には通常の工具類で事足りそうだが、下手に弄る事で壊すような真似はしたくない…誤って爆発させるなど以ての外だ。
現時点だと首輪に関しては保留せざるを得んな。
689Master of Puppets 3:2009/11/14(土) 22:28:41 ID:3NIDrPnS0

話を元に戻すとしよう。
では、サイグローグが先述のような参加者を排除するタイミングはいつか?
過去二回の放送を聞く限り、奴は我々が思考し決断するまでの過程を求めている節がある。
だから『ゲームの運営に支障が出ない』ギリギリの線までは許容する可能性が秘められている。
尤も私は奴本人ではないから、その境界線がどこに引かれているのかを知る術は無いが。
勿論、このように想定する根拠はある。
『脳内の回路を経て……そしてどのような答えを出すか……それこそが……私の楽しみ……』
『貴方は今考えた……そして恐らく根拠も無く否定した……即ちそれは……。
 …………迷い……。
 ……それこそが……私の喜び……』
"それこそが"。
これだ。現時点で判断する限り、奴が重視しているのはあくまで『その人物の心の動き』であり、それ故の『行動』そのものに関しては気にする様子が見受けられない。
問題はこれをどう受け取るか─いかな『行動』にも対処し得るからこそ気にしないのか、はたまたそれさえ奴が求めているであろう『心の動き』の一部に過ぎぬのか─なのだが…。
そもそも奴が何を目的としてこの遊戯を開催したのかが判らない以上、こちらがその点を見極めるのはどうしても後手後手に廻らざるを得ない。…気に喰わんな。
まあ、それはどうでもいい。後手に廻るのはあくまでも見極めなのだから、こちらが数多くの想定パターンを予め準備しておけば良いだけの事。
そうすればそれだけ素早い対応が出来ると云うものだ…と、命題から離れていってしまっているな。

兎も角、あの魔力の爆発。
あれは個人が引き起こすにしては過ぎたものであることに変わりはない。運営システム上でのトラブルと考えるのが妥当だろう。
一見しただけでもここまで特殊な閉鎖空間なのだ、それを維持するだけでも大掛かりな舞台装置が必須だろう事は想像に容易い。
装置というのは大掛かりになればなる程、精密になればなる程、えてして単純なミスが原因で重大なエラーをはじき出すものだ。
あの爆発が舞台装置のエラーに因るものだと仮定すれば、結論は自ずと見えてくる。
まさかエラーをそのまま捨て置くわけにもいくまい。そして、その対処に要した時間が6秒だったのだろう。
導き出した解は『爆発の正体が何であれサイグローグはその対処に追われ、結果的に放送が遅れた』。
無論これはあくまでも現時点で私が持てる知識と経験、そして多くの推察を基に組み立てた机上の空論に過ぎず、今後入手する情報如何で覆る事は十分あり得る。
現段階でこれ以上の考察を進めるには手持ちの札があまりにも少なすぎるか…。

(…さて、一体どうしたものか)
思考の海から一旦意識を浮上させ、我々がいる最上階へと続く階段の傍で小さくうずくまる影を一瞥する。
(心の力、"フォルス"…か)
ヴェイグ=リュングベル。
彼の存在こそが私に私の事を知らぬ異世界の存在を証明し、私が預かり知らぬ力や技術の存在を提示する。
それは同時に複数種類の世界が存在する可能性を肯定する事とほぼ同義だ。
つまり私や彼の世界とも異なる世界が存在している可能性を示唆している。
私は、私が知り得ぬものの存在を認める他に術は無い。
("汝、己の無知なるを知れ"…ということか)
ヴェイグから得た情報によれば、彼が行動を共にした者のうちスパーダ=ベルフォルマ、死亡したリカルド=ソルダートは我々とはまた違う世界の住人であり「天術」なる力を扱うという。
(…足りんな)
一種の籠城戦とも言えるこの状況を作り出した私にとって、所持する情報の薄弱さは重大な問題だ。
首輪の事もあり、当初の予定ではこの塔に入る者は容赦なく殺すつもりだったが…変更するのが吉だろう。
今は少しでも多くの情報が欲しい。そのためならば、私は敢えて愚者にもなろうではないか。
尤も、暫くの間この場に人が来る可能性は低い。ならばこの空白ともいえる時間を最も有効に使うにはどうするべきか?
ここまで考えた時、私はここに連れて来られて(受動態! 何と癪に障る響きだ)から一睡もしていない事を思い出す。
このままでは思考能力に支障が出るのは必至。今は来るべき時に備え、せめて仮眠を取る事にしよう。
少しは風を凌げる壁際に身を寄せて腕を組み、目を閉じる。
何か動きがあればヴェイグが私を起こすなりなんなりするだろう。今は埋伏の時だ。
690Master of Puppets 4:2009/11/14(土) 22:35:05 ID:3NIDrPnS0





【其ノ手ニ持ツハ籠ト繰リ糸】

「う、ぁ……」
あまりの痛みに身動きが取れない。
はく、はく、とまるで陸に揚げられた魚のように情けない呼吸をするのが今のオレには精一杯で。
「あ……ッぐ…」
左肩が、右足が…燃えるように、熱い。
そのくせ身体は震える程に寒くて…まぁ雪の上に倒れ込んでいるんだから当たり前なんだろうけれど。
まるで撃たれた所に身体中の熱が集まって、そこから抜け出していってるみたいだ。
「…、……聞…。………ま…………?」
「………ア、…」
ティアとミクトランが何か会話しているのは分かるけど、それを聞き取る事ができない。
ううん、声そのものは聞こえるんだけど言葉として頭に入ってこない、っていうのが正しいのかな。
(…マズい)
自分の意識がどこか遠い所へ行きそうになるのをぐっとこらえる。
こんな状況で気を失うワケにはいかない。ミクトランが何をするつもりなのか…だいたいは想像できる。

オレ達を殺すつもりだ。それも、じわじわと。

(くそッ、このままじゃあ…ッ!)
動け、オレの身体! 動いてどうにかしてティアを助けて、せめてここから逃げ出すんだ!
…頭ではそう考えてるのに、身体は痛みに縮こまるばかりで。
ティアを踏み付けて、その首にイクティノスを突き付けて。父さん達が倒したはずの天上王は確かにここにいて。
オレの傍にいるウッドロウさん似の─確かミクトランにヴェイグと呼ばれてた─男の人は何をするでもなくオレを見下ろしている。
ふいに、その人がオレに向けて右手を翳した。
「な…に、を……」
頭はその手から逃れろと必死で命令してるのに、身体はちっとも思うように動いてくれない。
(ダメだ…ッ! 気を失う、ワケ…には……)
それに加えて視界がだんだんとボヤけてきた。
(ちく、しょう………)
まるでオレの全てがオモリになって底なし沼に沈んでいくみたいに、自分の身体が…意識が重たくなってくる。
(そういや……この人…名前、…どこ、かで………)
燃えてるように熱かった肩と足が急に冷たく感じられたのを最後に、オレは深く暗い場所へと引きずられていった。
691Master of Puppets 5:2009/11/14(土) 22:42:12 ID:3NIDrPnS0





【籠ニ籠メラレシ天使ト蝶】

(なんてことだ…っ!)
コアクリスタルの限られた視界に写るのは痛みに呻くカイルと、ミクトランに踏みつけられイクティノスを首元に突き立てられた…確かティアという名の女性。
「…まずは名を聞こうか。いつまでも"女"呼ばわりでは具合が悪かろう?」
ミクトランは口調こそ穏やかだがその目は冷たく研ぎ澄まされ、有無を言わさぬ威圧感がこの場を支配している。
腐っても天上"王"、支配者としての風格は本物だぞって? …冗談じゃない。
「…ティア、よ」
今の二人は互いが互いの人質になっているも同然。
彼女が下手に行動すればカイルの身に更なる危険が迫るのは目に見えているし、その逆も同じ。
そして。
僕とイクティノスは、その二人を脅かす凶器(ドウグ)になっている…。
「ティア、か。ではティア、改めて質問…いや、これは提案だ」
「提案、と言う割には随分と乱暴なやり方ね。あなた達の所では人を踏みつけて刃物を突き付けるのが礼儀なのかしら」
「そう手厳しい事を言ってくれるな。
 己のペースに持ち込もうとアラ探しをするのは構わんが、果たしてあの餓…少年はいつまで保つかな?」
「…ッ」
しまった!
もしこの時の僕にヒトの身体があったなら、言葉通り弾かれたようにカイルを改めて見ていたか駆け寄っていたことだろう。
〔シャルティエ、少年の様子が!〕
ソーディアン同士にしか聞き取れない遠距離回線を通してイクティノスが僕に話しかけた時、小柄な身体は既にぐったりとしていた。
『カイル! しっかりするんだ、カイル!!』
必死に呼びかけてみても反応する様子がない。まさか…!?
〔落ち着けシャルティエ! 今はまだ気を失っているだけだ〕
僕を手にしているヴェイグの陰に隠れて少し見えづらいけれど、どうやらカイルは撃たれた箇所を氷で覆われているようだった。
(これは…応急処置?)
荒療治には違いないけれど、少なくともあれ以上の失血を防ぐ事は出来る。
〔イクティノス、この子の傷口を覆っている氷って…〕
でも、晶術などが使用される際の反応は全く感知されなかった。いったいどうやって…?
〔そう言えばまだ話していなかったな。どうやらヴェイグは、氷…冷気を操る事が出来るようだ〕
〔そうなのか…それじゃあ、僕らが出会うきっかけになったあの吹雪も?〕
〔ああ。どういう理屈かは分からんが、俺のコアクリスタルを媒介にして増幅された結果だ。…いや、少し語弊があるな〕
晶力とは全く違う、僕らの知らない謎のエネルギー。
イクティノスが言うには、コアクリスタル…レンズと共鳴する形でこちらの意志と関係なく増幅されていったらしい。
その感覚には心当たりがあった。
頭のネジが765本ほど抜けているイカレた奴が僕の所有者だった時─黒豹の獣人の命をこの身体が奪った時の事だ。
僕が望まなかったにも関わらず発動したストーンウォール。あれも似たようなものなのかもしれない。
(…あ)
よくよく思い返してみるとそれだけじゃないぞ?
雪原となった砂漠でイクティノスを手にしたヴェイグが僕を手にしていた奴を殺した時。
あの時の吹雪は彼を覆っていた薄蒼い光が一際強く輝いた時─彼が感情を爆発させた時に最も強く吹き荒れていたじゃないか。
偶然と言うには状況があまりにも整いすぎてる。
もしかすると今の僕らは……
692Master of Puppets 6:2009/11/14(土) 22:47:37 ID:3NIDrPnS0

「…質問の仕方を変えよう。『何がお前を生に駆り立てている』?」
不意に響いたミクトランの声で我に返る。くそっ、いつのまにか話が進んでる…!
僕たちが普段使っている会話機能と違って、遠距離回線を使った通信だと僕らのコアクリスタルは明滅しない。
つまりソーディアン同士"ひそひそ話"が出来るわけ。それでさっきまでソレを使ってイクティノスと話してたんだけど…。
名前の通り本来は遠距離間通信用の回線を強引に近距離で使っていたもんだから、その処理に気を取られ過ぎていた。
「…私は、ただ………」
「只…何を望んでいるのだ?」
はっきり言って、状況はかなりマズい。カイルは気を失ったまま、ティアはミクトランのペースに飲み込まれている。
そのミクトランに従っているらしいヴェイグには期待できないし、まして僕やイクティノスは自分の意志で動く事なんて出来ない。

───えっと、シャル何とかさん? お前、武器のクセに命の遣り取りを楽しめないってのは立派な病気だな〜───

悔しいけれど、奴の言葉を改めて痛感する。
人間(オリジナル)から転写されたものとはいえ、例え人格を…ココロを持っていても、僕らは武器(ドウグ)でしかないのか。

「ミクトラン。話している最中に悪いが…西から一人、ここに向かってきている」

……人間(ヒト)にしか、人間(ヒト)は救えないのか。






【繰リ糸ニ縋ルハ氷ノ蜘蛛】

「…ヴェイグ、そいつ等の相手はお前に任せる。ただしまだ殺すな。それ以外は好きにして構わん」
男はそう言い捨てると、栗色の髪の女と話し始める。
まだ"殺すな"、か…あんたがそれを言うのか。オレに「殺して英雄となれ」と言った、他でもないあんたが。
「ティア、か。ではティア、改めて質問を…いや、これは提案だ」
視線をずらし、足下で蹲っている金髪の少年を見る。
ミクトランに撃たれた場所から流れ出る紅(アカ)。
(……ッ)
それが視界に写ってからたっぷり5秒間。そのアカが目に焼き付いて離れない間、オレの思考は停止していた…んだと思う。
気付けば、フォルスで傷口を凍結させているオレがいた。
気力も限界だったのだろう、少年は患部が氷で覆われた頃には気を失っていた。
『カイル! しっかりするんだ、カイル!!』
手にしている喋る剣(…なんだか妙な気分だ)が少年のものらしき名を呼ぶ。この剣は少年─カイルと知り合いなのか。
そういえば、この子はこの子でウッドロウの事を知っているようだったな…。
「"殺し"てはならないんだろう? …ミクトラン」
だから応急処置をした、と皮肉を言外に匂わせながらの物言いになったのは、男へのささやかな反抗心からだろうか。
「良かったではないか、ティアよ。奴の機転のお陰で時間の猶予が延びたぞ? 
 ああそうだ、ヴェイグ。言い忘れていたがフォルスによる感知だけは怠るな。この塔へ近づく者があったら知らせろ」
「…分かった」
男に言われるがままに意識を集中させる。
正直な話、オレはフォルスを使った感知などの分野は苦手だ。だからいつも以上に意識して心を、フォルスを研ぎ澄ませる必要がある。
元から感知能力に優れているマオや導術の扱いに長けているヒルダなら話は別なんだろうが…。
(……西方面から………一人…? ここへ向かっているのかは……判断するにはまだ微妙な位置にいるな…)
693Master of Puppets 7:2009/11/14(土) 22:53:39 ID:3NIDrPnS0

現時点ではこんなものだろうと判断し、集中していた意識を解放する。
喋る剣(確かシャルティエという名だったか)はミクトランに釘を刺された事を思い出したのだろうか、今は沈黙を守っている。
当のミクトランは女(ティア、と名乗っていたな)と会話を続けていた。会話の内容から察するに彼女を手駒に加えたいんだろう。
「大方、己にとって大切な者に逢うまでは死ねない…と云ったところなのだろう?」
耳に入ってくる男の言葉がオレを鞭打つ。
大切な者……大切なヒト。
ユージーンが死に、アニーが死に………クレアが、死んだ。
その死体を、死に様を直接目にしたわけじゃない。でも…オレは、オレの心は……それを信じることしか出来ないんだ。
「沈黙は肯定と受け取るが、構わんな? 図星をつかれて言葉を失ったか」
きっと、彼女にとっての"大切な人"は幸か不幸かまだ生きているんだろう。
「……それを聞いてどうするの」
もしかすると、オレと彼女は立場こそ違えど似たもの同士なのかもしれない。
お互いに大切な者がいる。違うのはそれを既に失ったか、まだ失わずにいるか。…それだけだ。
だがしかし。その違いが広くて深い溝を作りだし、オレ達はそれぞれの対岸に立ち竦むことになる。
まだ"向こう側"にいる彼女を、オレは少し羨ましく…どこか懐かしくさえ感じながら見ているんだ。
「どうする、と? ティアよ、それは愚問だな…質問の仕方を変えよう。
 『何がお前を生に駆り立てている』?」
優勝して、サイグローグにクレア達の蘇生を願う。
それが、今のオレを生に駆り立てるもの。
「…私は、ただ………」
「只…何を望んでいるのだ?」
彼女を生に駆り立てているのは何なのだろうか。…"こちら側"へ来た時に、一体何を思うのだろうか。
一粒だけ涙を流すと、彼女は…ティアは静かに口を開く。
こちらには聞こえない程度の声で男の問いに答えたのだろう。剣を退け、彼女に自由を与えたその顔は満足げに歪んでいた。

(…そうだ、西から来た人物は今どこにいる?)
慌てて精神を研ぎ澄ます。雪原と化した砂漠を東へと歩んでいる人物。先程は分からなかったが…その進む先には、この塔。
「ミクトラン。話している最中に悪いが…西から一人、ここに向かってきている」
「そうか…都合が良いな。二人共、良く聞け」
694Master of Puppets 8:2009/11/14(土) 22:57:07 ID:3NIDrPnS0



=Your life burns faster=

「…二人、か」
迎え撃つ算段をしているのだろう。ミクトランはそう言うと、オレに言葉の続きを促した。
「ああ。南側からここへ来て、…今ちょうど階段を上り始めた。…ウッドロウ達なのかは判らない」
そこまで言い、彼でなければと願っている自分に気付く。
ウッドロウ。あんたは…あんた達は、いま何処にいるんだ。
まるで空を飛んでいる、とでもいうようにして消えた4つの反応。どうしてかその行方にひどく胸騒ぎを覚えて。
まるで。
砂漠のきめ細かい砂や雪原に降り積もる粉雪が、
荒々しい風に情け容赦なく巻き上げられるような、
「それでお前はどうしたいのだ? 我が同胞ヴェイグ=リュングベルよ」
男の声がオレの鼓膜を打つ。その時漸く、オレは体の震えが塔の頂上に吹き荒ぶ風の所為だけではない事を思い知<らされ>った。
「…恐れているのか。一時的とはいえ共に行動した者もその手に掛けることになるのか、と」
男の視線が俺を貫く。そしてオレは蛇に睨まれた蛙のように指一本動かせなくなるのだ。
「何を恐れる事がある? これはお前の奪われたものを奪い返す為の道程、その第一歩なのだぞ?」
「オレ、は…」
ミクトランに付けられた首筋の傷<刻印>がちりちりと痛む。
自分自身、どうしたいのかが分からない。考える事が出来ない。男の指摘を肯定したいのか否定したいのかさえ。

──俺が望んでいるのは、何だ?
簡単だ。これだけは何があっても変わらないのだから。
<<生きる>>。
生きて、クレア達を<殺した奴等を>生き返らせる<殺す>んだ。
<…殺す?>その為にもオレは<誰であっても?>最後の一人になって<例え命請いをされたとしても>
優勝して、<殺すのか?>奴に…サイグローグに願うんだ。<あの男…ハスタ=エクステルミを殺した時のように?>
そして、オレは<まだ生きているマオやアガーテも、>…オレの手は汚れてしまったから。<殺す事になるというのに?>

「既に汚れている手をさらに汚すことに、何を躊躇う事があるというのだ?」
思考に割り込んできた男の声に顔を上げる。視界に飛び込んできたのは、あのハスタが持っていた剣。
首の左側からの感覚に身体が侵蝕されていく。受け取れ、と男の眼が命令していた。
その眼、だ。
眼だけじゃない。先ほどまで手にしていた炎の剣が如く、凍り付かせているオレの心を容赦無く溶かそうとする言葉の一音一音が。
「お前は階下に降りて獲物を充分におびき寄せた後、頃合いを見計らって氷の階段を外し奴等の退路を断て」
オレを…いや、あんた自身以外の全てを嗤っているんだ。
「あとは…そうだな、ここに来させない程度に相手をしていろ。ついでにこれも持って行け。餌は派手な方が食い付きが良い」

泣き叫ぶのに疲れてしまったオレの心を、嘲笑っているんだ。

「……分かった」
しかしそれに逆らう理由は無く<逆らえず>、オレは差し出された力の象徴と青い光を放つ燭台を手にする。
それが意味するのは、もう後には戻れないという事だけではなかったのかもしれない。

皆と一緒にいられるなんて思っちゃいない。
<…赦して貰おうとは思わない>
だって、<こんな事を考えている時点で>
<<サイグローグが言っていたように>>

<<オレはこのゲームに"乗って"いるのだから>>
695Master of Puppets 9:2009/11/14(土) 23:02:45 ID:3NIDrPnS0





【囚ワレタ天使ノ歌声ニ蝶ハ惑イ】

(……外道め)
『この塔に向かって来ている者を襲い、首輪を入手しろ』。それが、俺を手にする千年来の宿敵が二人へ語った内容の大筋。
この場にいる人間全員が─ミクトランも例外ではない─身につけている銀色の首輪。
細部まで見たわけではないが、そう簡単に外せそうな代物には見えない…ただし、首を斬り落としでもしない限りは。
「オレ一人で行くのか?」
そう問うヴェイグ(肌の色を除けば髪を伸ばしたウッドロウに見えなくもないな…)は今、心の内で何を思っているのだろうか。

─クレア………─
─コロセ、クレアヲコロシタヤツヲ─
─ダメダ、コロシテハイケナイ─
─コロセ! ダメダ! コロセ!! イヤダ!!─
─…クレア……ッ!!!─

狂気を孕んだ笑みをする紫髪の男から俺を(男の右手の皮ごと)奪い取り、それ以上の狂気を隠すことなく振りまいていた桃色髪の男と出会うまで。
同調するつもりなど毛頭無かったにも関わらず、雪崩のように流れ込んできたノイズ<青年の感情>。
クレアなる人物は青年にとって余程大切な存在だったのだろう。
主催者を名乗る道化師に名指しされ、精神を揺さぶる問い掛けをされたとは云えあのように錯乱していた程なのだから。

「いや、お前とそこの餓鬼…カイルとか言ったか、二人で行ってもらう。
 ティアは私と共に居ろ。お前には聞きたい事がいろいろとあるのでな」
「なら、彼に回復を…せめて目覚めさせないと」
「それもあるか…良いだろう」
回復術を扱うのか、というミクトランの言に「…ある程度は」と答えると、娘は未だ気を失ったままの少年へ歩み寄る。その表情は…硬い。
改めて青年を見やる。少なくとも今の彼の眼に錯乱の色は見えないが、その瞳に映るもの全てが昏かった。
俺とシャルティエがサックの中に詰め込まれていた間に何があったとしても可笑しくはない。
恐らくは奴に兎や角言われ…堕ちたのだろう。


「そんな…ティア、どうして……ッ!?」
目を覚ました少年…カイルはそれまでの経緯とこれからの動きについて聞かされると、表情を驚愕の色に染めた。
父譲りの(シャルティエ曰くスタンとルーティの子らしいが…母譲りの要素が何一つ見あたらないな)青い瞳が悲しみに揺れている。
「どうしても何も無いわ。私もあなたも、今ここで死ぬわけにはいかない。…私が言おうとしている事、分かるわよね?」
「分からないよ! だって、あいつは…ッ!!」

「王たる私を『あいつ』呼ばわりか…まあいい。ヴェイグ、耳を貸せ。話がある」
少年と少女が言い争うのを冷ややかに眺めていたミクトランは、不意に青年を呼ぶとなにやら耳打ちをする。
「…! ……分かった」
…嫌な予感しかしない。

「それにカイル、私は言った筈よ。
 『貴方がその時、個人的感情で自分、又は私を危険に晒したら。 私は貴方を赦さない』…と」
「!! …そ、それは……」
見たところ軍属らしき娘の言葉は一理ある。
個ではなく集団であるべき一兵卒が個人的感情で動いてしまえば、それが元で部隊は窮地に陥りかねない…最悪、軍ごと全滅する。
確かにこの『ゲーム』の会場はある種の戦場だと言える。俺自身、この場を第三次天地戦争の舞台だと捉えているぐらいだ。
しかし…
696Master of Puppets 10:2009/11/14(土) 23:08:38 ID:3NIDrPnS0
(なんと惨い事を…)
それは多感な年頃の少年が受け入れるにはあまりにも荷が重い現実。それでいてこの『世界』を取り巻いているであろう理。
「ティア、それぐらいにしておけ。時間が惜しい…カイル、行くぞ」
「…本当に、こうするしかないの……?」
「現実はそう甘くないわ」
「……分かった、行ってくるよ…」
唇を噛み締めることで様々なものを飲み込んだのだろう。少年はそう言うと、青年に促されながら下り階段へと歩き出した。
娘はあくまでも少年を突き放すつもりらしい。しかし、ここまで冷酷にする必要があるだろうか?
(まさか、彼女は……)

〔シャルティエ、頼みがある〕
遠距離回線を通して再びシャルティエに話しかける。しかし反応がない。
〔おい、シャルティエ…シャル、どうした?〕
〔…あ、あぁごめんごめん、少しぼーっとしてたよ。なんだい?〕
〔全く、心配したぞ…お前に頼みたい事がある。
 この様子だと俺とミクトラン、お前とヴェイグというように二手に分かれるだろう?
 奴の眼が届かない隙を狙って、奴に従っている青年の目を覚まさせて欲しいんだ〕
〔そりゃまたムチャな事を言うなぁ…まあ出来るだけの事はやってみるよ〕
〔すまないな。それと、これは憶測なんだが…。
 ティアという娘、もしかするとミクトランの手の内から逃げ出そうと画策しているのかもしれん〕
〔え? じゃあ、今さっきまでの彼女の言動って演技だったの?〕 
〔あくまでもその可能性がある、というだけで楽観視は出来んがな。
 あと俺の杞憂に済めばいいんだが、ヴェイグの言動には注意してくれ。
 奴に耳打ちされていたんだが聞き取る事はできなかった…それが気がかりだ〕
〔あぁ、あの時の…りょーかい。じゃあ、そっちはアイツから情報を聞き出すの頑張ってね〕
〔お互い、な〕

階段を下りだして一、二…三段目。少年はそこで足を止めると、娘の方へ振り返る。
「確かにティアが言ってることは正しいのかもしれない。でも…。
 それでも、オレは戦闘するだけのロボットにはなりたくないよ」
そしてそう言い終えると、今度こそ階下へと姿を消したのだった。





【蜘蛛ハ蝶ノ羽越シ二灰色ノ空ヲ睨ム】

高い高い塔の長い長い階段を降りていく。
血を止めてもらったとは言っても痛みはまだ残ってるから、右足を少し庇いながらのぎこちない歩き方しかできない。
ヴェイグはそんなオレの数段上…つまり、オレより少し後ろの位置をキープしながら階段を降りている。
見たところの身長はロニと同じくらいだから、普通に歩いていたらオレなんかとっくに追い越して先の方へ進んでるはずなのに。
オレが逃げたりしないように見張るためなのか単なる気遣いからなのかは分からないけど、降りるペースをオレに合わせてる。
(ティア…)
ミクトランに捕らえられたままのティアとイクティノス、シャルティエ。そしてミクトランの言いなりなヴェイグ。
みんなをアイツの魔の手から助けたい。けれど、どうすれば助けられるのかが全然頭に浮かんでこない。

『貴方がその時、個人的感情で自分、又は私を危険に晒したら。 私は貴方を赦さない』

(……オレのせいだ)
そしてなにより。今、オレはこの言葉にがんじがらめにされてる。
あの時、オレが不用意にヴェイグに近づかなければ。少なくとも今とは違う状況になっていたハズだから。
…分かってるよ、こんなコトを考えてても仕方がないって事くらい。母さんも『反省はしても後悔はするな』って言ってたし。
だから、どうすればいいのか分からないんだ。
オレは会えるならリアラに会いたいし、ティアはルークさんに会いたがってる。だからこんなところで死ぬワケにはいかない。
だけれども。
今のオレが感じるままに─コジンテキカンジョウで動いたとしたら、オレだけじゃなくティアまで危ない目に遭ってしまう。
それじゃあダメなんだ。
アトワイトさんがバルバトスに誘拐された時、ディムロスさんもこんな気持ちだったのかな…。
697Master of Puppets 11:2009/11/14(土) 23:15:21 ID:3NIDrPnS0

「カイル。…お前には大切な人がいるか?」
もうすぐ塔の出入り口に着くという頃、ヴェイグが突然話しかけてきた。
「大切な? もちろんいるさ。父さんに母さん、孤児院のチビ達にロニやジューダス…」
「…違う」
「え?」
違うんだ、とオレの言葉を遮ったあとにもう一度呟くと、ヴェイグは軽く頭を振ってこう聞いてきたんだ。
「お前にとって一番"大切な人"がこのゲームに連れて来られていて…そして自分の知らない所で殺されていたら、お前はどうする」

まるでバルバトスに目には見えない巨大なピコピコハンマーで頭を思いっきり殴られたような衝撃は、オレが脚を止めるのに充分だった。
それに併せてヴェイグも立ち止まる。
「え、それって……」
普段以上に回らなくなった頭で必死に考える。
考えろ、考えるんだカイル=デュナミス!
オレにとって一番大切な人…つまりリアラはこのふざけたゲームに連れて来られてて…オレが知らない内に、殺される?

そんなことさせない!! って叫びたかった。でも気付いてしまったんだ。
この殺し合いに連れてこられてから丸一日。その間に20人も…母さんとナナリーも死んだと放送で告げられていたことに。
「で、でも…ッ! あの放送はオレ達を都合の良いように動かすためのウソかもしれないじゃないか!」
『イクティノスとヴェイグは目の前で死んだ人の名前が呼ばれていたのを聞いてる…あの放送はウソじゃないんだよ、カイル』
「そん、な……」
どうか生きていて欲しい、嘘であって欲しい…心の片隅でくすぶっていた思い。
その儚い希望を打ち砕いたのはシャルティエだった。
「シャルティエの言う通りだ。オレの目の前で殺されたリカルドも、オレが手を下してしまったハスタも…放送で名を呼ばれた。
 だからオレは、ユージーンやアニー…クレアが死んだ事を信じるしかない」
追い打ちをかけるように告げられたヴェイグの言葉で、オレはある事をようやく思い出した。
(そうだ、ヴェイグは一回目の放送であのピエロに名指しされてたんだ)
その時に呼ばれていた名前は確か…そう、クレア=ベネット。きっと、ヴェイグの"大切な人"がこの人だったんだ。
ロニが名指しされた時には母さんとナナリーの名前が呼ばれてたから、多分間違いない。

『貴方の目の前には今、白い道と、黒い道があります……貴方はどちらかを選択しなければならない……』

ピエロ─サイグローグはこうも言ってた。あの時はこの言葉の意味をイマイチ分かってなかったけど、今ならなんとなく分かる。
「もしかして、ヴェイグはサイグローグの言う"贈り物"のために…"大切な人"を生き返らせるために人殺しになるっていうの?」
「人殺しになる、か…。…オレは既に人殺しだ。今更元に戻ることなんて出来るわけがない」
"大切な人"のために"ゲーム"に乗る。それが、ヴェイグの答えだった。
「そんな事ない! 過去に大きな罪を犯したけれど、その罪滅ぼしのために闘った人を…オレは知ってる」
『…! カイル、その人ってもしかして』
それでも、オレは踏みとどまって欲しいと思ったんだ。
だってそう言った時のヴェイグの顔、父さん達の事が話題に上った時のあの人の表情と凄く似ていたから。
「うん。シャルティエにとっての"大切な人"のことだよ」
かつて父さん達と戦い『裏切り者』の烙印を歴史に押されたリオン=マグナス…オレ達の大切な仲間、ジューダス。
思い浮かぶのは、ダイクロフトの入口でバルバトスの襲撃を受けていた父さん達を助けた時のこと。
あの時ジューダスはいつもの調子を装ってたけど、仮面越しに見えたその顔は何か大きな使命をやり遂げたような…とてもすっきりした表情だったのが印象に残っているんだ。

「…そりゃあ、一度起こった事を無かったコトにするなんてできないよ。しちゃいけないんだと思う。
 だからヴェイグの言う"元通り"にはならないのかもしれない。でも、近づくことはできると思うんだ」
『そうだよヴェイグ! ミクトランとの間に何があったのかは知らないけれど、だからってあんなヤツに従う義理なんてないよ。
 …道は他にも沢山あるんだ』
そうシャルティエが言い終えたとたん、ヴェイグの表情が固まった。
698Master of Puppets 12:2009/11/14(土) 23:21:03 ID:3NIDrPnS0
「『道は他にもある』…だと?」
静かにそう呟いた声には怒りが混じっていて。
「だったら教えてくれ。『"優勝"することなくクレア達を蘇らせる事が出来る道』を。
 ……答えられないだろう? それもそうだ。そんな道など"ありはしない"…ッ!」
オレはこの先、この時のヴェイグの顔を忘れる事は無いんだろうな…そう思わせる程の気迫が辺りを包み込んだ。
「何もこれだけに限った話じゃない。
 いつだって選べる道は少なかった。時には一本しか無かった!
 しかし、その数少ない中から考えて、悩んで、選んで…そうやって歩いてきたんだ。
 だからこそオレは、オレが歩んできた道を…選択してきた道を、選ぶしかなかった道を大切にしたい!」
『あ……』
「確かにオレが踏み出した道は、ミクトランによって開拓され微かな明かりを掲げられた物だ。それは認める。
 …だが、その道を進むと決めたのは他ならぬオレ自身だ」
だからそう易々と鞍替えする事は出来ない、と言葉を締めくくったヴェイグにオレは何も言い返せなかった。
自分が選んだ道を否定したくない。その気持ちは、悔しいぐらいにオレと全く一緒だったから。
…それを否定するのは自分自身を否定する事と同じだって分かっていたから。

「ヴェイグはその道を進むって決めたんだね…わかった。だったら、オレは反対しない」
『ちょっと、カイル!?』
「…何だと」
ちょっとシャルティエ、そんなにビックリする事はないだろ? ああッ、ヴェイグもそこまで目を丸くしなくたって。
「オレが言うのもなんだが…お前、自分が言っている事の意味が分かってて言ったか?」
「分かってて言ってるに決まってるさ!
 オレ達が進もうとしてる道とヴェイグが進もうとしてる道は違う。そしてヴェイグはその道を進むことを選んだ。
 …母さんが言ってたんだ。『最終的に決定するのは自分自身。ただし、それを選んだ事を反省はしても後悔はするな』って。
 だから、部外者でしかないオレがヴェイグ自身が決めた事に対してアレコレ言う事はできないよ」

それを言われたのは世界とリアラ、二つとも大切なモノなのにどっちか一つを捨てなきゃいけなくてグルグル悩んでた時のこと。
オレが最終的に世界を選んだように、きっとヴェイグは殺し合いに乗るかどうかを天秤にかけて、乗ることを選んだんだ。
「オレはこの殺し合いを止めたい。そしてヴェイグが"選んだ"道を否定したくない。
 …言ってることが矛盾してるのは分かってる。それでも、この二つの気持ちは間違いなくオレのホンネだよ」
『カイル……』
「でもヴェイグ、これだけは聞いて欲しい。
 母さん達が言ってたんだけど、アイツは…ミクトランは自分さえ良ければ人の命を何とも思わないようなヤツなんだ。
 今だってティアを人質にしてオレ達に首輪を取らせようとしてる…サイテーなヤツだよ」
「ティアを人質に…か」
ヴェイグがそれまで自分の首輪の辺りをさすっていた右手をのど元から離してそう呟いた時。突然、オレは寒気に襲われた。
そして次の瞬間、オレの頭の中はペンキをぶっかけられたように真っ白になったんだ。

「それは違う。人質なのは彼女じゃない…カイル、お前だ」
699Master of Puppets 13:2009/11/14(土) 23:25:34 ID:3NIDrPnS0

『なんだって…?!』
「それ…どういう、意味」
のどに舌が張り付いて思うように喋れない。
ミクトランの所に残されてるのはティアで、オレはヴェイグと一緒にアイツの所から離れていて。
なのに、人質なのはティアじゃなくて、オレ…?
「あの男は鋭い。その上頭がキレる…そして容赦ない。
 オレ達はあの男から…ミクトランの手の内から逃れる事はできないんだ」
オレの方へ向き直り、絞り出すように言うヴェイグの顔を見る余裕なんてぜんぜん無かった。
頭がそれを理解する事を拒否していたし、声の主から目を逸らすように階下の塔の出入り口へ視線をさまよわせていたから、ってのもあるんだけど。
そこから差し込んでいる光に、人の形をした黒い影が広がってくるのが見えたんだ。
黒ずくめの服を着たその人の真っ赤な髪の毛は、朝日を受けて炎のように燃えさかっていて。
「その話、詳しく聞かせて貰おうか」
そう言いながら塔の中に入ってきたのはティアの"大切な人"、ルークさんにとてもよく似た…
(アッシュさん…?)
『っ…! 今すぐここを立ち去るんだ! 殺されるぞ!!』
シャルティエが地上にいる─といっても、その高低差は十数段もないんだけどね─アッシュさんに向かって叫ぶ。
「どこの誰が喋ってるのかは知らんが、悪いな。その忠告には従えねぇ」
俺はここにいる奴に用があんだよと言いながら、アッシュさんは刃が波打っている短剣を取り出して構える。
そしてオレ達の方…正確にはオレより二つ上の段にいるヴェイグを睨みながら口を開いた。
「…てめぇがヴェイグ=リュングベルだな?」
どうしてヴェイグを探してたんだろう? と不思議に思いはしたけれど。
アッシュさんはただ名前を確認しているだけなのに…何故かオレには、その言葉がまるで死刑執行の合図のように聞こえたんだ。





【ソシテ王ハ何ヲ得ル】

「…それでも、オレは戦闘するだけのロボットにはなりたくないよ」

(ごめんなさい、カイル…)
階段を降りゆく彼に、表情にも出さぬよう胸の内で謝る。
軍人『ティア=グランツ』としての私は、あの子の軽率な行動を許す事が出来ない。
だからこそ、あのように厳しい言葉を投げ掛けた…けれど。
一人の女『メシュティアリカ=アウラ=フェンデ』としての私が問い掛けてくる。
ならばどうしてあの少年を未だ見捨てずに守ろうとしているの? と。

それはきっと、二回目の放送が終わって互いの情報を交換していた時の事が原因なのかもしれない。
カイルがリアラという名の少女について語っていた時、私は見てしまった。
少女への愛しさを、見ているこっちが恥ずかしくなる位に溢れさせていたあの子の瞳が。
一瞬だけ、哀しみと後悔に包まれていたまさにその瞬間を。
その時は大して深く気にも留めなかったわ。月明かりに照らされていたとはいえ時間は深夜、只の見間違いだろうと思ったから。
でも、それに対する違和感、とでも言うのかしら。その瞳に心当たりがある自分に気付いてしまったの。
ルークが『死んで』から二年間…私は毎晩あの場所であの人の帰りを待っていた。
その時に私がしていたであろう表情とカイルのあの瞳が、重なった。
私が抱いている想いを、ひょっとしたらあの子も持っているんじゃないかと、ほんの僅かにでも考えてしまったの。
(…最低ね、私)
私の方がよっぽど個人的感情で動いているじゃない。
700Master of Puppets 14:2009/11/14(土) 23:34:43 ID:3NIDrPnS0

「…さて、ここは吹きさらしで冷える。少しは風を凌げる最上階で情報交換といこうではないか」
それまで何をするでもなく私達三人の動向を見ていたミクトランが口を開き、先に階段を上がるように促していた。
「レディファーストだ、先に進むがいい。…ああ、この先にも罠があるのではなどと疑っているのかね? 
 安心したまえ。私に従う限りその命は保証しよう。"約束する"」
("約束"、ね…これ程信用できない約束なんてそうそうないわ)
少なくとも現時点でのこの男の目的は、私から情報を聞き出す事と首輪を手に入れる事。
つまり裏を返せば、私が全ての情報を提示したと男が判断した時点で男の言う『命の保証』は無くなると考えていい。

それ迄にこの男の魔手から逃れない限り、私達の命はない…男に従っているヴェイグという青年も、恐らくは例外なく。
だからといって武器に恵まれていない私達が大立ち回りを仕掛けたところで、返り討ちに遭うのが関の山。
ならば向こうの隙を誘って逃げ出すしか方法はない。
幸か不幸か、ミクトランはヴェイグに首輪を取りに行かせた。それもカイルを連れさせて。
その時に落とされていた氷の階段も作り直されているし、一対一というこの状況は絶好のチャンス。
あとは如何にして隙を作り出すかだけ。そしてそれは私が持つ情報の出し方次第。
第七音素に関わる情報…特に譜歌は私がもつ最大の切り札。出来ればこれを出さない内に切り抜けたいけれど…。
「…その言葉、信じるわ」
あくまでも男に気付かれないように、捕虜として従順に従っているように。私は最上階へと続く階段を上り始める。
薄弱な装備、援軍は無し。一手誤れば一巻の終わり。
これが今の私の戦況。
剣と剣ではなく、頭脳と頭脳。
それが今の私の戦場。

賽は投げられた。もう、後には退けない。





=Obey your master=




【ミクトラン 生存確認】
状態:HPTP100% 血塗れ 頬に止血済み掠り傷  不安定要素(=ヴェイグ、カイル)への不安 
   食料や生活難、寒さへの苛立ち 「無知の知」を自覚
所持品:フランヴェルジュ イリア、ハスタ、ヴェイグのサック ??? ???
    デザートイーグル 銃弾×15 双眼鏡 サードニクス 金のフォーク ハスタの首輪 ソーディアン・イクティノス
基本行動方針:ピエロ含め皆殺し
第一行動方針:ティアが持つ情報を絞りとれるだけ絞りとる
第二行動方針:考察の確度をあげるため、更なる首輪を得て首輪について考察する。
第三行動方針:籠城しウッドロウ達を誘う
第四行動方針:サイグローグとの腹の探り合いを楽しむ
第五行動方針:魔力に拠る首輪爆発の事実を証明したい
第六行動方針:あの森(ガオラキアの森)には二度と足を踏み入れたくない
現在位置:D3黎明の塔最上階
701Master of Puppets 15:2009/11/14(土) 23:39:16 ID:3NIDrPnS0


【ティア・グランツ 生存確認】
状態:HP100% TP95% 心の内をミクトランに読まれた動揺 強い焦燥感 カイルへの小さな反発心と大きな罪悪感 
所持品:アビスピンクのコスチューム(仮面は外してます) ティアの服(アビスピンクの上から重ね着) ロリポップ
基本行動方針:ルーク達と殺し合いに乗っていない人を探す
第一行動方針:この状況から脱出しないと…!
第二行動方針:ルークに会いたい
第三行動方針:レムの塔へ出来るだけ早く向かいたい
第四行動方針:「それぞれの世界の理」と「会場の理」に対する疑問、違和感の原因に答えを出したい
現在位置:D3黎明の塔最上階


【ヴェイグ・リュングベル 生存確認】
状態:HP70% TP40% 右手に切り傷、身体中に切り傷(凍結済) 疲労 半洗脳(自覚有り) ゲームに乗る覚悟
   仲間の死とハスタを惨殺したことへのショック ミクトランへの複雑な感情 ティアへの共感と少しの羨望
所持品:ソーディアン・シャルティエ ブルーキャンドル 
基本行動方針:自分で選んだ道を自分の足で歩いて生きる。優勝してクレア達の蘇生を願う
第一行動方針:ミクトランに従う
第二行動方針:目の前の男(アッシュ)を殺し、首輪を手に入れる
第三行動方針:あの男、何故オレを…?
第四行動方針:いつまでもミクトランに従っていたくない
現在位置:D3黎明の塔入口


【カイル・デュナミス 生存確認】
状態:HP50% TP85% 焦燥感 右腿、左肩(×2)に銃創(凍結による止血済み) ナナリーとルーティの死にショック
   強くあろうとする大きな正義感と現実との差へのジレンマ
所持品:アビスレッドのコスチューム(仮面は外してます) カイルの服(アビスレッドの上から重ね着)
    他アビスマンのコスチューム ブリザードマグ
基本行動方針:殺し合いをやめさせる。仲間にもアビススーツを着させたい(強制はしない)
第一行動方針:ティア、イクティノスの安否が心配
第二行動方針:ティア達、ミクトランに操られているヴェイグを助けたい
第三行動方針:仲間に会いたい
第四行動方針:殺し合いは止めたいけど、ヴェイグが選んだ道は否定したくない
現在位置:D3黎明の塔入口
702Master of Puppets 16:2009/11/14(土) 23:43:17 ID:3NIDrPnS0


【アッシュ 生存確認】
状態:HP40% TP21% 左腕に大裂傷(縫合済) 背中に大裂傷 全身に切傷と打撲
   後悔、羞恥、焦り 止まることへの恐怖 無力さへの葛藤 ロニへの疑問
支給品:デリスエンブレム エナジーブレッド ジェイドの作戦メモ二枚
    イクストリーム アニーの日記 クリスダガー ソウルイーター ウッドロウのレンズ
基本行動方針:チャットを守り生きる。日記を継ぐ
第一行動方針:ウッドロウの意志に沿い、塔の中のイクティノスとヴェイグを救う
第二行動方針:あいつがヴェイグか? アニーに聞いた印象と何か違うな…
第三行動方針:事が終わったらチャットを迎えに行く。ルークと合流
第四行動方針:アニーの仲間に会ったら彼女の事を伝える
第五行動方針:先程の魔力と爆発が気になる
現在位置:D3黎明の塔入口


【ソーディアン・イクティノス】
状態:ウッドロウが心配 第一回放送しか聞いていない ベルセリオスの関与を疑っている
基本行動方針:D、D2世界の仲間を探しつつ、舞台を把握する
第一行動方針:考察に専念する。どうにかしてミクトランからベルセリオスの話やゲームの情報を聞く

【ソーディアン・シャルティエ】
状態:ウッドロウ、カイル達が心配 第一回放送しか聞いていない ベルセリオスを信じたい 『道具』であることへの無力感
基本行動方針:D、D2世界の仲間を探しつつ、舞台を把握する
第一行動方針:考察はイクティノスに任せる。随時イクティノスと水面下で連絡し合う

※ 遠距離回線を使用したソーディアン同士の会話は、互いが同エリア内に存在している時に使用可能です
703 ◆6uh/ZSSY.E :2009/11/14(土) 23:46:35 ID:3NIDrPnS0
投下終了です
お付き合いいただきありがとうございました
704名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/15(日) 02:43:26 ID:4xNnanfUO
投下乙ー

全てはミクの掌の上か。ティアは反逆を狙ってるが、勝ちの目がまるで見えないw
ヴェイグに関してはカイルの説得が仇になったな。マーダー方面に一気に傾いちまった
さて、今のアッシュでヴェイグに勝てるかどうか……
705名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/15(日) 08:57:20 ID:jRzZZFq0O
投下乙です!
 
ヴェイグとカイルっつったら1stを思い出してしまうw
でもカイル逃げてー
 
そして急がないとマップ攻撃がw
706名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/15(日) 14:09:13 ID:Dayk+mmjO
おお、投下乙!やはりミクトランは手強いね。そして此処でアッシュ到着か。さて、どうなる事やら、だ。
707名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/15(日) 18:37:30 ID:mTP+7Y2H0
おお、ついに投下が!乙です!!
ミクたんがまともにラスボスっぽくて燃えるなあ
アッシュも満身創痍なんだよね…アニーとアッシュの交流が吉と出るか凶と出るか

あと某アーヴァインのセリフが違和感なくハマりすぎててすげえw
708名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/15(日) 21:45:42 ID:2gcBMvXD0
投下乙!
ソーディアン含め全員の感情がうまく書かれてて面白かった
ミクトランも絶賛ラスボス級だが、ティアの頭のキレもなかなかだと思う
そしてヴェイグ…大変だなお前も……
アッシュ頑張れアッシュ
709名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/16(月) 07:30:24 ID:eyTaJBtIO
投下乙!月報0は免れたか。それなしても予想外の展開。来訪者がアッシュで終わりとは限らないし、まだまだ油断は出来ないな。
しかし、まだこれだけ感想があるんだ、ここも捨てたもんじゃないな…


ところでラジオ録音ファイルある?
710名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/16(月) 14:53:20 ID:yEJzWhJy0
>>709
ラジオ掲示板の方に録音ファイルの方を上げておきました。
初めてなのもあってgdgdですがご了承を…本番では頑張ります。
711名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/16(月) 16:08:22 ID:Kf4Y0apcO
>>709
更新は無いかと毎日スレを覗く俺みたいなのも居るんだぜ
712名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/16(月) 23:46:48 ID:C9LCbN0L0
基本ROMだけどオレも毎日いるぜ
713名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/17(火) 17:19:15 ID:krrn/hEm0
俺だっている!!
714名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/17(火) 18:25:01 ID:KDhMqflIO
お前らだけに良いカッコさせるかよ。俺も居るぜ!
715名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/17(火) 18:48:20 ID:W6pHXBpCO
1ヶ月ぶりに覗いたらちょうど投下がきてて、わっほーい!な俺もいるんだぜ!!
716名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 02:48:21 ID:mMg5j0jzO
10日から少しずつミク話書いてたけど先越されましたよわっほーい!
word12P処分してきます…
早く書かなかった自分が悪いんですが…何か寂しい…
ここって書く話の予約とかおkですか?(セネル達の続き書きます、とか)
717名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 03:17:52 ID:H9gMWNq5O
>>716
予約は今までなかったよ
避難所に没になった話を供養するスレがあるので差し支えなければ是非投下してくれ!
718名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 03:33:22 ID:KWYylrSMO
予約はない、先に投下したものが優先される
そういう世界だから諦めろ
みんなそうやって涙を呑んできたんだろうから
次は頑張れ
719名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 07:01:48 ID:QTsUjdGOO
予約制度が無かったからこその初期のあの速度だしな。
今は大分遅くなったし、ルール変えて予約も有りにしても良いとは思うけど。
720名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 07:17:26 ID:R+bZidJV0
予約制にしたら、このいつどこに投下がくるか分からないわくわく感がなくなってしまうではないか!
721名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 08:12:45 ID:7RPv2sXZO
予約制はよくわからんが議論するにしろ3nd支度でやればいいじゃんよ
まあ、まだやるかはわからんが

それにしてもいい天上王。乙です。
722名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 08:12:53 ID:ciEHNXg6O
>>716
処分の前に避難所に投下して貰おうか

予約はなしのがいいなあ。キャラの動きが縛られないから書きやすいし、
予想外の組み合わせができるのは予約なしの特性だよ
723名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 13:34:21 ID:mMg5j0jzO
そうですね…予約はなしの方がいいですよね…
投下はすみませんがしません。比較されたりするとこっちも嫌だし、先に書いた作者さんも迷惑でしょうし…

書くスピード的に向いてないのかな…。去ります。スレ汚し失礼しました
724名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 14:28:54 ID:KWYylrSMO
まあ今はゆっくりペースだけどな、被って運が悪かったとしか
725名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 16:07:31 ID:H9gMWNq5O
前回投下から2ヶ月もたってるんだし10日から書き始めたんなはら遅いってことはないさ
今回は運が悪かったけどまた書きたいパートがあったら頑張ってみてくれ
書き手の数だけ可能性が広がる
726名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/21(土) 20:04:16 ID:vGtXOdyZ0
>>723
ネタがかぶって襤褸切れみたいに速さで負けるのと、一度も書かないで勝ち続けた気でいるのと、どっちが不幸なんだろう?
って誰だっけかも言ってたよ。励ましの言葉としてはなんかずれている気がするのは否めないが
めげずにもう一度書いてほしいな
727哀れな少女に救済を ◆FY07Y1/rCo :2009/11/22(日) 17:35:29 ID:YXxGnkOB0
「こんにちは」

王座に体を横たえつつ、顔には小さな笑みを浮かべて、男はそう来訪者に告げた。
ルーク達を先導して歩いていたミュウは、男の顔を見るなり騒ぎ立てるようになき喚く。
全身で警戒を表すミュウに、ルーク達は武器を構えた。
しかし、男は動かない。どこか余裕すら感じさせる振る舞いで来訪者たるルーク達を見つめる。

「みゅう!みゅぅぅぅうううう!みゅうう!」
「……分かったから、黙ってろ!」
「ルークさん、彼は」

ミュウが騒ぎ立てる理由。そしてこの城。
あまりにもあり得ない遭遇に、ルークの呼吸は荒くなる。
城を訪れる前にミュウに聞いておいた、イオン達を襲った人物。
名簿に載っていた写真とはやや違うような気もするが、ミュウがこれだけ騒ぐのだから間違いないだろう。

「―――デクス!」
「…………」

返事はない。男は笑顔のまま固まっているようだった。

「うん? 何やら情報が間違ってるみたいだね」
「間違ってる?」

現場に居たミュウを前にしらばっくれるつもりか、とルークが思ったところで男は口を開く。

「僕はサレ。お察しの通り、ここでの惨劇の役者の一人だった」
「……あなたがイオンさんを殺したのですか?」
「イオン? …ああ、あの緑の。 僕は殺していないよ」

―――僕が殺したのはもう一人の方さ。

彼らの死体ならここから向かって右の奥の部屋に寝かせてあるよ。

そうあっけらかんと述べる男に、ルーク達は茫然とサレを見る。

なんだこいつは。イオンの仇ではない。ではどうする?
こいつは殺し合いにのった奴だ。殺す?
向こうには今のところ殺意は感じられない。
こちらは二人。おそらく、殺せる。イオンを殺した奴の仲間だ。イオンの仇と同義ではないか。

「ルークさん……」
「俺は」
728哀れな少女に救済を2 ◆FY07Y1/rCo :2009/11/22(日) 17:40:50 ID:YXxGnkOB0
「―――ねぇ、どうしたの……? エミル?」

ルークの思考を中断させたのは、玉座の影から現れた少女だった。
ぼんやりと焦点が定まらない瞳を据えたまま、少女はルーク達を一瞥した。赤と緑。

エミル、エミルじゃない。

それを確認すると、力が抜けたように床へと倒れこんだ。
息は荒く、顔色は悪く、とてもじゃないが正常な状態とは言い辛い。
駆け寄ろうとしたフィリアだが、先にサレが動いたことによって足は止まった。

「おやおや。 駄目じゃないか、安静にしていないと」
「……エミル、エミルは……?」
「そのことなら大丈夫。彼らが協力してくれる」
「ほんとうに……?」

話が見えないルーク達に、サレはゆっくりと体を向ける。
その余裕のある雰囲気から意識しなかったが、サレは満身創痍だった。
右腕の損傷がひどい。あれは……おそらく、もう駄目だ。

「……生きるために、僕は彼を殺した。そうするしかなかったから。
 君たちが僕を恨むのは仕方ない。
 だけど、彼女は関係ないだろう? どうか、彼女の願いを聞いてやってほしい」

サレは瞳を伏せた。

「願い?」
「そう。彼女は発症すれば24時間以内に死ぬという病気にかかってしまった。
 死ぬまでに『エミル』に会いたい。それが、彼女の願いだよ」

フィリアは床に蹲る少女を見た。真っ青な顔で、小さく震える唇が唱えるのはたったひとつの言葉だけ。

「エミル、エミル、どこ、会いたいよ、エミル」



「―――なんで」

少女の声が室内のすべてのものへと伝わっていく。
絞り出すようにルークは言った。
なんで、少女の願いを叶えてやろうとするような男がイオン達を殺した。

「彼女のおかげで思い出したんだよ。大切なものを、さ」

サレは答える。少女を見つめるその表情は長い前髪に隠れて伺うことはできなかった。
729名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/22(日) 17:56:39 ID:eUlc3NUSO
すみません、携帯からです。
家族が回線を切ってしまって、つなぎ直すのにしばらくかかりそうです
短いたいしたことのない話ですし、この後は状態表ぐらいしかありませんが続き投下は日付越えてしまいそうです
本文9割は投下したので、駄目な点があったら指摘してください
730名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/22(日) 20:29:14 ID:yvO6RL94O
おつおつ
サレと会ったルーク達はどうすんのかね
ところで全部投下されてない中聞くのもアレだが、サレがやけにいい人なのはやっぱ演技?
奴は改心なんかしないだろうしなあww
731名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/22(日) 20:31:57 ID:kJj8k+Ra0
わからんぞ
クジャみたいなことがサレにも起k起きるわけねえな
とにかく投下乙
732名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/22(日) 21:10:11 ID:d2HgnK/3O
途中までらしいが投下乙ー
サレは上手く戦闘を回避したかな?しかし胡散臭えw
そしてマルタはかなり病状が進行してるな……。
733名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/22(日) 22:44:08 ID:u3IKYxYEO
投下乙です!
全部投下されてない内にいうのもなんだけど、時間帯が…
まとめさんとこ見ると、ルーク達が早朝(アッシュの通信〜塔到着描写にあわせたんだろうけど)で、サレ達は5時以降7時の間。ここは是非にでも会って欲しいけど、流石にルーク達に城でもう少し時間潰してもらわないと、サレ側のやりとり時間も含めて不自然な気がする…
本当に、すまん
734哀れな少女に救済を3 ◆FY07Y1/rCo :2009/11/23(月) 00:12:03 ID:woAqXdJX0


ミュウを連れていたことで、来訪者がゲームに乗っていない人間達だという確信はあった。
ウッドロウ、ヴェイグ、ロニ、そしてイオンとリカルドといったメンツをサレは思い返した。
もちろん賭けに失敗したら、いつでも逃げれるようにと準備はしていたが。
大切なもの、と言ったのはマルタを――ヴェイグを知っているからだ。
―――大切な人のために人を殺した。大切な人に会うために人を殺した。
ほら、自らの娯楽のために人を殺したというより幾分と同情できる。
もちろんサレにそんなものはいないが、ヴェイグやマルタを観察して身に付けたものだ。

『クレアクレアクレア』
『エミルエミルエミル』

馬鹿みたい。
ああ、大切な人の作り話でも考えておこうか。

サレは沈黙するルーク達を前に、心の中で笑みを浮かべる。
サレは変装のプロである。これぐらいは朝飯前だ。

マルタにエミルの生存を伝えた後、サレはとにかく回復を優先した。
その最中に城を訪れたのがルーク達だった。
現実問題、サレは片腕しか使えない。フォルスを使えばマルタぐらい運べるが、常時の能力使用はやりたくない。
そして、マルタやエミルだけではなく、もっと他人の心を弄びたい。サイグローグが握る操り糸をすべて我が物にしてしまいたい。
サレがルーク達に声をかけたのはそんな理由からだ。
罪悪感を抱いている、反省しているようにみせかければ、協力して脱出するなどと甘いことをぬかす奴らは強く出ることはできないだろう。
完璧な信頼は得られないだろうが、それは仕方がない。むしろそんなものいらない。サレはもう何度もゲームに乗った人間としての姿を見られている。
接近し、心の隙間を見つけ、弄ぶ。サイグローグの思い通りではなく、己の思うがままに。
サレの目的は保身ではない。ヒトの心を否定することだ。サレの存在でお人よしどもに亀裂が入っても面白い。
人を殺すのではなく、脱出派に協力しつつ――もし、脱出法が見つかったらそれを台無しにしてやってもいい。
サイグロークではなく、己によって人を狂わせ疑わせ、弄ぶ。

さあ、どうする? 彼らは哀れな少女に救済の手を差し伸べてくれるだろうか。


【ルーク・フォン・ファブレ 生存確認】
状態:HP60% TP100% 強い決意 第2回放送の遅れがひっかかる
   全身に傷・打撲・痣 イレーヌとスタンへの不思議な感情 イオンの死にショック
所持品:メロメロコウ ミスティシンボル ソウルブラスト ミュウ  ルークの日記
基本行動方針:今自分に出来る事をする
第一行動方針:城の中にいるイオンに会いに行く
第二行動方針:城を探索したらチャットを探しに南へ?アッシュやジェイド達の手かがりを探す?マルタの「願い」を叶えるのを手伝う? サレを殺す?
第三行動方針:アッシュやティアと合流したい
第四行動方針:アリスを探してイオンの仇を取る?
第五行動方針:スパーダ・ジューダスが気になる
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間

※ルークの音素乖離はルール規定通り現在は安定状態です。ですが、当人はその事に気付いていません。


【フィリア・フィリス 生存確認】
状態:HP100% TP100% 深い悲しみ(多少持ち直し) 若干空元気 巨大な魔力(マナ)がちょっと気になる
所持品:マジックミスト メンタルバングル ホウテイバンリ
基本行動方針:仲間を探しながら情報収集に徹する
第一行動方針:マルタの「願い」を叶えるのを手伝う?サレはどうする?
第二行動方針:城を探索したらチャットを探しに南へ。クレメンテについて話をしたい
第三行動方針:ハロルドと再会したら時間跳躍について尋ねる
第四行動方針:スパーダ・ジューダスが気になる
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間

※ルークの身体についてと、彼がそう長く生きられないと自覚している事に薄々気付きました。
735名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/23(月) 00:16:30 ID:nyn2VKxBO
C
736 ◆FY07Y1/rCo :2009/11/23(月) 00:17:41 ID:woAqXdJX0
【マルタ・ルアルディ 生存確認】
状態:HP40% TP100% 右肩に傷跡 右の片袖無し デスガロ熱発症
   軽度凍傷(処置済み) 空腹 迫り来る死への恐怖 センチュリオン・コアの存在への不安
所持品:エミルのマフラー 鬼包丁 レンズ×29 情報入り名簿 温石 蟻地獄人の人形 外套代わりの毛布×2
基本行動方針:死ぬまでにエミルに会いたい
第一行動方針:エミルに会いたい。
第二行動方針:エミルに会えたら、マフラーの件を謝りたい
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間

【サレ 生存確認】
状態:HP30% TP25% 全身に中裂傷や刺傷(治療済)右腕凍傷(肘上まで) アリスへの失望 ウッドロウへの恐怖
所持品:ペイルドラグ ガーネット 水や食料三人分 ダイヤモンド〔TOP〕 壊れたジャム瓶 ユージーンのザック
基本行動方針:ゲームに乗り、ヒトの心を否定する
第一行動方針:サイグローグから糸を奪うため、マルタの心を弄ぶ。エミルでも遊びたい。ルークやフィリアも弄びたい。
第二行動方針:休憩、なんとか体力、精神力ともに回復したい
第三行動方針:ヴェイグらへの復讐。マオには会っておきたい
現在位置:B2・ハイデルベルグ城・玉座の間


投下終了です。お待たせしまして、申し訳ありません。
>>733
ご指摘どうもです。時間ですか……
先にフィリア達に城の外側を調べさせれば、と思いましたがまずはイオン優先しそうですよね。
城内を軽く調査しつつ、みたいな文を追加するような形では不十分でしょうか?

皆様の意見お待ちしております。
737名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/23(月) 09:23:33 ID:9MH5KssGO
乙ー。読者からしてみればなんて白々しいサレ!ですがよかったよー。
時間は本文中に逃げる算段したとか
マルタに生存告げたとかあるからそのあたりの描写と
ミュウの騒ぎ立てをからめたらとか埋まるんじゃとか思った。
風邪使いなら音拾いそうだし


まあ、とにかく乙。次は投下宣言するといいよー
738名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/23(月) 21:09:42 ID:hic1B+30O
いやぁ、これでこそサレだw乙!
739名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 02:58:30 ID:FAQtjf+FO
そろそろ次スレか?
740名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 08:45:22 ID:NbbboTdm0
次スレ

テイルズオブバトルロワイアル2nd Part11
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1259019852/
741名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 10:14:10 ID:X5N7x9Z3O
スレ立て乙

とりあえず今回の作品は作者さんが言うようにちょっと城内調べて時間経過があった、って感じの修正でおkかな?
742 ◆FY07Y1/rCo :2009/11/24(火) 16:53:17 ID:t8HX+5gS0
作者です。
修正は軽く城の外観を調べるルークたち→サレが気がつく
みたいな感じの文を冒頭に追加したいと思います
修正部分投下は日曜日ぐらいになってしまいそうです
743名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 18:21:16 ID:FAQtjf+FO
>>740
スレ立て乙
>>742
修正頑張って下さい
744名無しさん@お腹いっぱい。
>>740
次スレ乙です

サレ

                ,,-v----i、,,、
             _,,,,_,,,i´      `'ヘx,、
        ,/″ `~゙'''-,,,、      .\
       ,,i´          ゚ヽ       ゙\
      ./                   \
     /                     i、  ゙'i、
    ,r″                  ゙l、  \
  .,,i´               ,i         |    ヽ
 〆/            ,i´.l、       .│ .l.\,\
  /      r‐ァ    │  ゙l,   i     ゙l  \"!」
 ,/ .,,   .| .]    .,i´   L   |   |  |  .,, X
..///    〔 |  .,  ,l|,゙‐'-,,,、 i、  |ヽ .i .〕 .ヽヽ|
,レ  /     ゙l, |  .| ./.|.l二l.ア'  ゙ヽ :l,,l i、.l.| _ )
  ,i´.,     [ .,< ト        ゙l,|.゙l,l′.″,|゙l, l
  .|.,/l/|    :llv".〔ノ           l  ]    l .J
  l/  |.,/゙l,    |          | .,i″  ,, ,!
    .ノ ,从r /`\    ,,,,,,ニ',フ°  ,/゙|l゙
      ゙l .~゙'''ーi、,,_.\   ―‐,,i´ .,/'i、 /
       |       ゙゙̄.\,,、.,r广''/  v
       `           | |~ .|
                   ゙l,.|  ゙l

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  |  |            ヽ;;/  ̄  /;;;;;;;;;;;|;;/ l::::/   \
    |             |/    /;;;;;;;;;;;;;;;;|  |::/
ヽ                 |   /;;;;;;;;;/|/|/  |/  その必死な目……キライだな。
   ヽ..              |  /;;;;;;;;;;;/
\_ ヽ .             _|/;;;;;;;/|;;;;;/
    ̄ ヽ_  丶..::::     /;;;;;;;;;;/ ..V
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