----基本ルール----
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
勝者のみ元の世界に帰ることができ、加えて願いを一つ何でも叶えてもらえる。
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
開催場所は異次元世界であり、海上に逃れようと一定以上先は禁止エリアになっている。
----放送について----
放送は12時間ごとに行われる。放送は各エリアに設置された拡声器により島中に伝達される。
放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去12時間に死んだキャラ名」
「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。
----「首輪」と禁止エリアについて----
ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
主催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。
プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止能力が使えるようにもならない。
開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
禁止エリアは3時間ごとに1エリアづつ増えていく。
----スタート時の持ち物----
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を配給され、「ザック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「着火器具、携帯ランタン」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「支給品」
「ザック」→他の荷物を運ぶための小さいザック。
四次元構造になっており、参加者以外ならどんな大きさ、量でも入れることができる。
「地図」 → 舞台となるフィールドの地図。禁止エリアは自分で書き込む必要がある。
「コンパス」 → 普通のコンパス。東西南北がわかる。
「着火器具、携帯ランタン」 →灯り。油は切れない。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
「写真付き名簿」→全ての参加キャラの写真と名前がのっている。
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「支給品」 → 何かのアイテムが1〜3つ入っている。内容はランダム。
※「ランダムアイテム」は作者が「作品中のアイテム」と
「現実の日常品もしくは武器、火器」、「マスコットキャラ」の中から自由に選んでください。
銃弾や矢玉の残弾は明記するようにしてください。
必ずしもザックに入るサイズである必要はありません。
また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
エクスフィアを出す場合は要の紋つきで支給するようお願いします。
ハズレアイテムも多く出しすぎると顰蹙を買います。空気を読んで出しましょう。
----マスコットキャラの扱い----
マスコットは「支給品」一つ分相当とカウント。
なお、ロワでの戦いにおいて全く役に立たないマスコットキャラは、この限りではなく、「支給品」一つ分とは見なさない。
ミュウを支給する場合はソーサラーリングを剥奪した状態で支給すること。コーダ、ノイシュ、タルロウXの支給は不可。
マスコットキャラはプレイヤーではありません。あくまでも主役はプレイヤーという事を念頭に置いて支給しましょう。
----制限について----
身体能力、攻撃能力については基本的にありません。
(ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合があります)
治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法、即死術は発動すらしません。
キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限されます。
しかしステータス異常回復は普通に行えます。
その他、時空間移動能力なども使用不可となっています。 (短距離のテレポート程度なら可)
MPを消費するということは精神的に消耗するということです。
全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内(半径100mほど)ということでお願いします。
----ボスキャラの能力制限について----
ラスボスキャラや、ラスボスキャラ相当の実力を持つキャラは、他の悪役キャラと一線を画す、
いわゆる「ラスボス特権」の強大な特殊能力は使用禁止。
これに該当するのは
*ダオスの時間転移能力、
*ミトスのエターナルソード&オリジンとの契約、
*シャーリィのメルネス化、
など。もちろんいわゆる「第二形態」以降への変身も禁止される。
ただしこれに該当しない技や魔法は、TPが尽きるまで自由に使える。
ダオスはダオスレーザーやダオスコレダーなどを自在に操れるし、ミトスは短距離なら瞬間移動も可能。
----武器による特技、奥義について----
格闘系キャラはほぼ制限なし。通常通り使用可能。ティトレイの樹砲閃などは、武器が必要なので使用不能。
その他の武器を用いて戦う前衛キャラには制限がかかる。
虎牙破斬や秋沙雨など、闘気を放射しないタイプの技は使用不能。
魔神剣や獅子戦吼など、闘気を放射するタイプの技は不慣れなため十分な威力は出ないが使用可能。
(ただし格闘系キャラの使う魔神拳、獅子戦吼などはこの枠から外れ、通常通り使用可能)
チェルシーの死天滅殺弓のような、純粋な闘気を射出している(ように見える)技は、威力不十分ながら使用可能。
P仕様の閃空裂破など、両者の複合型の技の場合、闘気の部分によるダメージのみ有効。
またチェルシーの弓術のような、闘気をまとわせた物体で射撃を行うタイプの技も使用不能。
武器は、ロワ会場にあるありあわせの物での代用は可能。
木の枝を剣として扱えば技は通常通り発動でき、尖った石ころをダーツ(投げ矢)に見立て、投げて弓術を使うことも出来る。
しかし、ありあわせの代用品の耐久性は低く、本来の技の威力は当然出せない。
----魔法の使用に関して----
ロワ会場ではマナが特殊な位相をとっており、魔法使用者の記憶によって指向性を持ち、様々な形態となる。
すなわち魔法の内容が術者の記憶にあるのならば、
周囲のマナが晶術・フォルス・爪術など各々に最適な位相を勝手にとってくれる、ということである。
それゆえ術者は元の世界のものと寸分違わぬ魔法を再現できる。
召喚術や爪術など、厳密に言えばマナをパワーソースとしないタイプの魔法でも、
会場のマナが変異して精霊や滄我の代役を務めてくれるため、発動に支障はない。
ただしこの位相をとったマナは回復魔法とは極めて相性が悪く、回復魔法はもとの一割ほどしか効果がない。
気功術などによる回復さえマナに妨害されるため、会場内では傷の回復は至難。
----晶術、爪術、フォルスなど魔法について----
使用する前提条件として、「精神集中が可能」「正しい発声が可能」の条件を満たしていること。
舌を切り取られているなどして、これらの条件を満たせていない場合、使用は不可能。
仮に使えても、詠唱時間の延長や威力の低下などのペナルティを負う。
「サイレンス」などで魔法を封じられた場合、無条件で魔法は使えなくなる。
攻撃系魔法は普通に使える、威力も作中程度。ただし当然、TPを消費。
回復系魔法は作中の1/10程度の効力しかないが、使えるし効果も有る。
魔法は丸腰でも発動は可能だが威力はかなり落ちる。
(魔力を持つ)武器があった方が威力は上がる。
当然、上質な武器、得意武器ならば効果、威力もアップ。
術者が目標の位置をきちんと確認できない場合、当てずっぽうでも魔法を撃つことはできるが、命中精度は低い。
また広範囲攻撃魔法は、範囲内の目標を選別出来ないため、敵味方を無差別に巻き込む。
----時間停止魔法について----
ミトスのタイムストップ、アワーグラスなどによる時間停止は、通常通り有効。
効果範囲は普通の全体攻撃魔法と同じく、魔法を用いたキャラの視界内とする。
本来時間停止魔法に抵抗力を持つボスキャラにも、このロワ中では効果がある。
ただし、広範囲攻撃魔法と同じく目標の選別は不可であり、発動者自身以外は動くことが出来ない。
TOLキャラのクライマックスモードも、この裁定に準拠するものとする。
----秘奥義について----
秘奥義は一度だけ使用可能。その際、発動したキャラが持つ未使用の秘奥義も使用不可となる。
使用後はTP大幅消費、加えて疲労が伴う。
また基本的に作中の条件も満たす必要がある(ロイドはマテリアルブレードを装備していないと使用出来ない等)。
秘奥義に類する強力な術技は秘奥義扱いとする。
該当するのはシゼルのE・ファイナリティ、レイスの極光、TOLキャラのクライマックスモードなど。
Iの覚醒はSB・OLと同じ扱い(何度でも使用可)だが、前世の姿に戻ることは秘奥義扱いとする。
SRの追加秘奥義は2つ合わせて一つの秘奥義とする。TP消費は普通の秘奥義より増える。
またリヒターのカウンターは秘奥義扱いとする。その前に普通の秘奥義を使っていたならば、当然カウンターは発動不可能である。
----TPの自然回復----
会場内では、TPは戦闘ではなく時間経過で回復する。
回復スピードは、1時間の休息につき最大TPの10%程度を目安として描写すること。
なおここでいう休息とは、一カ所でじっと座っていたり横になっていたりする事を指す。
睡眠を取れば、回復スピードはさらに2倍になる。
なお、休息せずに活動している状態でも、TPは微量ながら徐々に回復する。
回復したTPをすぐさま回復魔法にあてれば、ある程度ダメージの回復は見込める。
しかし、かなりの集中力を割くためこの作業中は不意打ちに弱くなる。事前に鳴子を張っておくなどの対策は可能。
----状態異常、変化の設定について----
状態異常並びに変化追加系は発生確率を無視すると有利すぎる効果なので禁止とする。
Rの潜在能力やフォルスキューブ(マオ)、Dのソーディアンデバイス、D2のスロット、一部のエンチャントが該当する。
D2のFOEも禁止。ただし術技にデフォルトで付加されている能力は有効とする。例として
●ヴェイグの絶・霧氷装
●ミトスのイノセント・ゼロ
●ダオスのテトラアサルト
●ジルバのシェイドムーン・リベリオン
等が挙げられる。
----合体技の再現(SのU・アタック、R仕様秘奥義など)----
ロワを通して仲良くなったキャラや、同作品から来た仲間同士であれば、協力して合体技を使うことも出来る。
合体技を編み出せる仲間、ならびに魔法・特技の組み合わせは各原作に準拠するが、
このロワ中では次の条件を満たしている場合でも合体技の発動が可能。
例1:異なるキャラ同士で、同名の魔法・特技を組み合わせた場合。
例えばSの複合特技である「プリズミックスターズ」は、リフィルの「レイ」とジーニアスの「グランドダッシャー」などで発動するが、
同名の魔法を習得しているので、フィリアの「レイ」とシャーリィの「グランドダッシャー」でも、「プリズミックスターズ」は発動する。
例2:「それっぽい」魔法・特技を組み合わせた場合。
例えばSの複合特技である「襲爪雷斬」は、本来ロイドの「虎牙破斬」とジーニアスの「サンダーブレード」などで発動するが、
ジーニアスの「サンダーブレード」をジェイドの「天雷槍」などで代用することも可能。
また常識の範囲内で考えて、それなら合体技が成立しそうだと考えられるなら、まったく新規の組み合わせも可能。
例えばシャーリィの「タイダルウェーブ」で発生させた水を、ルビアの「イラプション」で加熱し、高温の蒸気を発生させて、
もともとはジーニアスの魔法である、高温の蒸気で敵をあぶる魔法「レイジングミスト」を合体技として編み出すことも出来る。
補則1:なおクレスなどは単体で「襲爪雷斬」を放つことは出来るが、同名の技でも合体技の方が威力は上である。
補則2:新規のキャラ同士の新規の魔法・特技の組み合わせは自由に考えて構わないが、
それにより成立する合体技は必ずシリーズのどこかから「本歌取り」すること。
世界観の維持の観点から、まったく新規の合体技を編み出すことは禁止する。
補則3:もちろん合体技を繰り出す当事者達は、ある程度以上気心が知れあっている必要がある。
小説中で「仲良くする」ような描写を予め挟んでおくこと。
補則4:合体技は当然大技であるため、発動させるためには上手く隙を作らねばならない。
同じく小説中で「隙を作る」ような描写を予め挟んでおくこと。
補則5:AのゲームシステムであるFOFを用いた、術技のFOF変化も上記のルールに準拠するものとする。
FOFの属性と変化する術技の組み合わせは原作に準拠するが、上記のルールに違反しない限り、
書き手は全く新規の組み合わせを考案してもよい。下記も参照のこと。
ケースバイケース、流れに合った面白い展開でお願いします。
----ゲームシステムのクロスオーバー----
ロワ参加者は、デフォルトの状態では原作世界の知識しか持たないものの、
ロワで他世界のキャラと交流を持ったり、何らかの方法で他の世界の知識や技術を得た場合、
その世界特有のシステムを使いこなすことが出来るようになる。
例えばリオンが事前にジェイドから説明を受けていれば、ジェイドの「タービュランス」で発生した風属性FOFで、
自身の「双牙斬」をFOF変化させ、「襲爪雷斬」を放つことも可能。上項も参照のこと。
ただしRのフォルスやTの獣人化など、その世界の住人の特異体質によるシステムのクロスオーバーは、
原則として不可とする。
ただしSのハイエクスフィアを用いた輝石による憑依などで、
R世界やT世界の出身者の肉体を奪うなどした場合は、この限りではない。
----シリーズ特有の強化スキルやシステムについて----
シリーズのシステムに関わらず、特技・奥義は単独で発動可能とする。ただし連携の順番は原作に倣うこと。
P・・・なし。
D・・・ソーディアンデバイス、リライズは全面禁止とする。
E・・・潜在晶霊術は禁止とする。
D2・・・スロットは全面禁止とする。エンチャントは追加晶術、連携発動、リカバー(D2にはリカバーを使えるキャラがいないため)、
特技連携、晶術追撃、秘奥義、追加特技、通常技連携、空中発動のみ有効とする。
S・・・EXスキルの「一定確率で」系、ガードステータス、ゲットウェル、スーパーガード、ライフスティル、メンタルスティル、
グレイス、ステータスキープ、エンジェルコール、レジストマジック、 メンタルサプライ、コンセントレート、オートメディスン、
スペルコンデンス、サプレスダッシュ、サプレスロウアー、MCディフェンド、ラッシングラン、パフォーマー、グローリー、
HPリバース、レストアピール、アーマードブロウ、ガードアウェイは禁止とする。
R・・・フォルスキューブのドレインは禁止。潜在能力も禁止とする。
L・・・我流奥義は使用可。ただし副極意による追加効果の付与は禁止とする。
A・・・ペインリフレクト、アクシデンタル、ライフリバース、エンジェルコール、ピコハンリベンジ、オートメディスン、グローリー、グレイス、
ADスキルの「一定確率で」系は禁止とする。
T・・・なし。
I・・・武器カスタマイズ、アビリティは全面禁止とする。
(リジェネ、リラックス、悟り、グミの達人、踏ん張り1〜4、封印防御等を除けば能力アップなどしか残らないため)
SR・・・スキルはアビリティのみ有効。例外としてエミルが支給品のコアを入手した場合、アトリビュートの特技変化系を使える
----TOAの設定について----
会場の音素量が少ないため、ルークの音素乖離は参戦時期に関わらず行われない。
ただしルークが無茶をして第七音素を大量に使ったときはその範疇に属さないものとする。
コンタミネーション現象は禁止とする。これはビッグバンの議論を防ぐためである。
超振動は秘奥義扱いとするが、会場の音素が少ないため威力は半減される。
それでも一撃必殺級の上、他の物を巻き込んでしまうのでよく考えてリレーしましょう。
ティアの譜歌ナイトメアは、声に魔力が宿っている訳ではないため拡声器を使っても効果範囲は変わらない。
また敵がある程度弱ってないと無効とする。
カースロットは原則有りとする。ただし同じエリアに居ないと使えない、一人しか操れないといった制限を課す。
勿論操られた者が憎しみを抱いている対象がいなければ効果は現れない。
また導師の力のためレプリカのイオン、シンクには相応の疲労が襲うものとする。
第七音素注入で怪物化はロワのバランスを崩してしまう為禁止とする。譜術式レプリカ製造も同様である。
アンチフォンスロットは有り。ただし効果は一日。
----その他----
*作中の進め方によって使える魔法、技が異なるキャラ(E、Sキャラ)は、 初登場時(最初に魔法を使うとき)に断定させておくこと。
断定させた後は、それ以外の魔法、技は使えない。
*クラースは精霊(の力)を呼び出せるが、精霊自体は召喚できない仕様とする。
理由はSのオリジンとロイド等との設定の兼ね合いが複雑なため。
*Pのディストーションやカメレオン、Dエクステンションはあまりにも強力なため使用不可能な設定とする。
*スタンの空中魔法変化技は下級は特技、中級と上級は奥義の扱いとする。
*キールにはフリンジ済みのインフェリア晶霊が入ったCケイジを最初から与える。勿論これは支給品枠の一つとして考える。
*Rの聖獣の力は参戦時期に関わらず有効とする。
*アニー、ジルバの陣術は厳密に言うと魔術ではない為詠唱を必要としない。地面に方陣を描くことで発動させる事。その方法は問わない。
*ジルバの月のフォルスは、対象が限りなく弱っていないと使用できない仕様とする。
また乗り移っている間は一切のダメージを受けないため確かに無敵だが、
逆に言うと本体は実に隙だらけ(同時に二人操るのは無理があり、こっちは操られている方が入っている)なため制限対象には入らない。
*エミルはコア化をもって死亡扱いとする。このコアには莫大な量のマナが含まれている(センチュリオンコアも同様)。破壊も可能。
*リバイブは危険になったら自動でHP回復大の扱いとする。
━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活はどんな形でも認めません。
※新参加キャラクターの追加は一切認めません。
※書き込みされる方はスレ内を検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。(CTRL+F、Macならコマンド+F)
※参加者の死亡があればレス末に必ず【○○死亡】【残り○○人】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※具体的な時間表記は書く必要はありません。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
※投下宣言は「○○分後に投下します」など時間を指定するのではなく、宣言後すぐに投下するよう心がけて下さい。
※基本的なロワスレ用語集
マーダー:ゲームに乗って『積極的』に殺人を犯す人物。
ステルスマーダー:ゲームに乗ってない振りをして仲間になり、隙を突く謀略系マーダー。
扇動マーダー:自らは手を下さず他者の間に不協和音を振りまく。ステルスマーダーの派生系。
ジョーカー:ゲームの円滑的進行のために主催者側が用意、もしくは参加者の中からスカウトしたマーダー。
リピーター:前回のロワに参加していたという設定の人。
配給品:ゲーム開始時に主催者側から参加者に配られる基本的な配給品。地図や食料など。
支給品:強力な武器から使えない物までその差は大きい。
またデフォルトで武器を持っているキャラはまず没収される。
放送:主催者側から毎日定時に行われるアナウンス。
その間に死んだ参加者や禁止エリアの発表など、ゲーム中に参加者が得られる唯一の情報源。
禁止エリア:立ち入ると首輪が爆発する主催者側が定めた区域。
生存者の減少、時間の経過と共に拡大していくケースが多い。
主催者:文字通りゲームの主催者。二次ロワの場合、強力な力を持つ場合が多い。
首輪:首輪ではない場合もある。これがあるから皆逆らえない
恋愛:死亡フラグ。
見せしめ:お約束。最初のルール説明の時に主催者に反抗して殺される人。
拡声器:お約束。主に脱出の為に仲間を募るのに使われるが、大抵はマーダーを呼び寄せて失敗する。
【書き手の心得】
1、コテは厳禁。
(自作自演で複数人が参加しているように見せるのも、リレーを続ける上では有効なテク)
2、話が破綻しそうになったら即座に修正。
(無茶な展開でバトンを渡されても、焦らず早め早めの辻褄合わせで収拾を図ろう)
3、自分を通しすぎない。
(考えていた伏線、展開がオジャンにされても、それにあまり拘りすぎないこと)
4、リレー小説は度量と寛容。
(例え文章がアレで、内容がアレだとしても簡単にスルーや批判的な発言をしない。注文が多いスレは間違いなく寂れます)
5、流れを無視しない。
(過去レスに一通り目を通すのは、最低限のマナーです)
〔基本〕バトロワSSリレーのガイドライン
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
【参加者一覧】
TOP(ファンタジア) :1/4名→●クレス・アルベイン/○クラース・F・レスター/●藤林すず/●ダオス
TOD(デスティニー) :5/7名→○スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/○フィリア・フィリス/●ウッドロウ・ケルヴィン/○チェルシー・トーン/○イレーヌ・レンブラント/○ミクトラン
TOE(エターニア) :5/6名→●リッド・ハーシェル/○キール・ツァイベル/○チャット/○フォッグ/○レイス(レイシス・フォーマルハウト)/○シゼル
TOD2(デスティニー2) :6/8名→○カイル・デュナミス/○リアラ/○ロニ・デュナミス/○ジューダス/○ハロルド・ベルセリオス/●ナナリー・フレッチ/●バルバトス・ゲーティア/○エルレイン
TOS(シンフォニア) :3/7名→○ロイド・アーヴィング/●クラトス・アウリオン/○リフィル・セイジ/●リーガル・ブライアン/●プレセア・コンバティール/●マグニス/○ミトス・ユグドラシル
TOR(リバース) :5/8名→○ヴェイグ・リュングベル/●クレア・ベネット/○マオ/●ユージーン・ガラルド/●アニー・バース/○サレ/○ジルバ・マディガン/○アガーテ・リンドブロム
TOL(レジェンディア) :3/6名→○セネル・クーリッジ/○シャーリィ・フェンネス/○クロエ・ヴァレンス/●ノーマ・ビアッティ/●ワルター・デルクェス/●ステラ・テルメス
TOA(アビス) :6/8名→○ルーク・フォン・ファブレ/○ティア・グランツ/○ジェイド・カーティス/○アッシュ/●イオン/○シンク/●ディスト/○アリエッタ
TOT(テンペスト) :1/2名→○カイウス・クオールズ/●ルビア・ナトウィック
TOI(イノセンス) :2/5名→○ルカ・ミルダ/●イリア・アニーミ/○スパーダ・ベルフォルマ/●リカルド・ソルダート/●ハスタ・エクステルミ
TOSR(ラタトスクの騎士):4/5名→○エミル・キャスタニエ/○マルタ・ルアルディ/○リヒター・アーベント/●アリス/○デクス
●=死亡 ○=生存 合計41/66
禁止エリア
03:00:A1
06:00:F3
09:00:A6
12:00:D6
現在までのもの
B1,F5,G7,C3
テンプレ終了です
スレ立て乙です。
あのタイミングで一言もなしの投下とかわざとやってんのかと思うわ
>>1乙
修正作読んでないので皆にまかせるわ…個人的にマナー無視の人の書いたものは通して欲しくないけどね。たとえ矛盾がなくても
投下します
20 :
慟哭の空 1:2008/11/29(土) 18:30:09 ID:e/ZRNM+u0
例えるなら永劫の暗闇の中から一握りの希望を見つけたような気持ちだった。
空は未だ薄暗く血液不足により鈍った視覚は遥か彼方の星さえ映さない。
そんな中に現れた鮮やかな金髪。脳が一瞬機能を停止した。声が彼の名を呼んでいる。
命を繋ぐ液体が、腹から、胸から、全身から溢れ出している。それでも助かるという確信が彼には芽生えていた。
そこにあるのは無条件の信頼。 学士は腕を伸ばし、小さな手を掴んだ。
この場にいる人間は皆、己の求めるものを見つけ対峙する。
ひとつ、愛しい人の仇のために。ひとつ、仲間の仇と行き場のない感情のはけ口を探し求めるままに。
ひとつ、今度こそは助けられる命を救うために。ひとつ、勇気をもってすべてと向き合うために。
普段なら生意気で甘ったるい声が、緊張を帯びている。そして彼はゆっくりと状況を認識した。
全身は痛みやら何やらで動かない。視覚も聴覚もあまりはっきりしていないようだ。
これは意識を狭間に手放す前兆だ。まどろみが彼を襲い、しかし仲間を案じる気持ちが僅かに猶予をもたらす。
キュアを唱えようとした唇は、駆け寄ってきた仲間に遮られたが彼の心は平穏を取り戻していた。
鋭い思慮深さを携えた音色が、詠唱をやめたキールの代わりに治癒の言葉を紡いでいる。
チャット、と普段の聡明さの欠片もない彼の声色に少女は泣きそうに顔を歪め、頷いた。
その時、吹いた風はかつての仲間との再会を害する障害にすらなりえない。
―――暴風とも言えるような風がよこしたのはひとつの『結果』だけ。
風と共に地面に落ちた人影に、未だ誰も気がつかない。
教師と海賊は学士の少年に精いっぱいで、灰の名を冠する少年と復讐に身を焦がす男女の視界にすら掠ることはなかった。
サディスティックな青年が去り際に示した勝利宣言を知るものは、まだいない―――
+ + +
(あ―――)
少女は迫ってくる刃を、ただ息を殺したまま見据えていた。
ここが最初に出会った時のように、森だったら。もしかしたら少女に勝機が見えたのかもしれない。
森はいつだって、少女に優しい。
だが、ここは平原。体格差は歴然。武器の差もある。結果は最初から決まっていたのだろう。
どう見ても食べ物にしか見えない武器だが、その力強さは既に体験済みだ。
だが、譲れない戦いでもあった。こんなにもあの人の匂いを漂わせているのに、肝心のその人はどこにもいない。
湧きあがってくる空虚な思い、苛立ち、ここにはいないあいつへの対抗心。それから、それから―――
優しい穏やかな走馬灯は見えなかった。死が駆け足で近付いてくる。
もちろん簡単に身を委ねるつもりもなかったけれど、体勢も、状態も何もかもが悪すぎる。
ここで少女は、己がいかに冷静でなかったかを自覚した。苦無がなければ、少女はほぼ丸腰だ。
朝とは立場が逆だった。あの時の男みたいに、逃げる術を持っていない少女はここで終わる。
詠唱も間に合わない。体を振りほどく前に、刃は少女を貫くだろう。
どうしてこのように、立場が逆転してしまったのだろう。少なくとも、こうも圧倒されることなどないはずなのに。
どこで、間違ってしまったのだろう。
少女は一度も己の意に背いた行動をとっていない。自らの望むままに動いてきた。
何も間違ってなんかいない。だって、ほら。
暗い喜びを浮かべた男を、少女は唇を釣り上げて見返した。
少女を切り刻むはずのさつまいもは、飛んできた刃への防御へとあてられる。
助走の勢いを付加した斬撃は、少女の上から男を吹き飛ばす。
さらに、突然吹き荒れた大きな風がその攻撃をアシストする。男はあっという間に少女の手の届かない所まで転がった。
そして同時に、怒号を携えた同僚が少女の前に立ちはだかった。
嗚呼、この屑がッ……!
男は悪態をつくのを隠そうともせず、この騒ぎの中心人物であろう少女に視線を向けた。
状況は不明。だから、とりあえず目に見える戦いを終結させようと男はそこに乱入した。
銀髪の男を吹き飛ばす程度に留めたのは、先ほど垣間見た表情による所と獣の少女に寄る所が大きい。
海賊の少女より落ち着いて大局を見据えることが出来た男は、銀髪の男をただの殺人者だと断定しなかった。
野生の少女の性格を知り尽くしているということもあるのかもしれない。
「アリエッタ……ッ!」
男は責めるように声を荒げるか、それに返ってくる少女の反応は酷く曖昧だった。
笑っている? それとも―――?
一瞬虚をつかれたが、それも僅かな間。問いただそうと声を発するその前に、平原に悲鳴が響き渡った。
+ + +
リアル投稿ktkr
支援
+ + +
(あ―――)
少女は迫ってくる刃を、ただ息を殺したまま見据えていた。
ここが最初に出会った時のように、森だったら。もしかしたら少女に勝機が見えたのかもしれない。
森はいつだって、少女に優しい。
だが、ここは平原。体格差は歴然。武器の差もある。結果は最初から決まっていたのだろう。
どう見ても食べ物にしか見えない武器だが、その力強さは既に体験済みだ。
だが、譲れない戦いでもあった。こんなにもあの人の匂いを漂わせているのに、肝心のその人はどこにもいない。
湧きあがってくる空虚な思い、苛立ち、ここにはいないあいつへの対抗心。それから、それから―――
優しい穏やかな走馬灯は見えなかった。死が駆け足で近付いてくる。
もちろん簡単に身を委ねるつもりもなかったけれど、体勢も、状態も何もかもが悪すぎる。
ここで少女は、己がいかに冷静でなかったかを自覚した。苦無がなければ、少女はほぼ丸腰だ。
朝とは立場が逆だった。あの時の男みたいに、逃げる術を持っていない少女はここで終わる。
詠唱も間に合わない。体を振りほどく前に、刃は少女を貫くだろう。
どうしてこのように、立場が逆転してしまったのだろう。少なくとも、こうも圧倒されることなどないはずなのに。
どこで、間違ってしまったのだろう。
少女は一度も己の意に背いた行動をとっていない。自らの望むままに動いてきた。
―――何も間違ってなんかいない。
だって、ほら。
暗い喜びを浮かべた男を、少女は唇を釣り上げて見返した。
足音が聞こえる。援軍の音が、少女を窮地から救ってくれるものが。
それに気がついたのか、少女を切り刻むはずのさつまいもは、飛んできた刃への防御へとあてられる。
援軍もそれを承知の上での攻撃だったのだろう。
武器同士が激しくぶつかりあう。その助走の勢いを付加した斬撃は、少女の上から男を吹き飛ばした。
さらに、突然吹き荒れた大きな風がその攻撃をアシストする。男はあっという間に少女の手の届かない所まで転がった。
そして同時に、怒号を携えた同僚が少女の前に立ちはだかる。
怒鳴り声はお決まりのフレーズだった・
嗚呼、この屑がッ……!
男は悪態をつくのを隠そうともせず、この騒ぎの中心人物であろう少女に視線を向けた。
状況は不明。だから、とりあえず目に見える戦いを終結させようと男はそこに乱入した。
銀髪の男を吹き飛ばす程度に留めたのは、先ほど垣間見た表情による所と獣の少女に寄る所が大きい。
海賊の少女より落ち着いて大局を見据えることが出来た男は、銀髪の男をただの殺人者だと断定しなかった。
野生の少女の性格を知り尽くしているということもあるのかもしれない。
少女は幼い故か、少々融通が利かない。いや、少しどころではない。
「アリエッタ……ッ!」
男は責めるように声を荒げるか。この状況を作り出したことに対する非難、海賊を危機にさらした憤り。
だが、それに返ってくる少女の反応は酷く曖昧だった。
反論はない。少女はいつも無口だ。気になるのは表情だった。
笑っている? それとも―――?
一瞬虚をつかれたが、それも僅かな間。問いただそうと声を発するその前に、平原に悲鳴が響き渡った。
+ + +
男は激情のままに武器を揮っていた。
既に言葉に為りえていない音の応酬。向ける憎しみはどちらが勝っていたのだろうか。
危惧していた平穏の終幕は、いとも簡単に訪れた。
仲間は暗い闇に呑まれ、血を吹き倒れた。男をぎりぎりのラインで保っていた境界線は崩壊する。
男は一度、少女と交戦経験がある。その素早い動き、抉られた脇腹の痛み。それらは未だ遠い記憶とは為りえない。
男は二度と過ちを犯さないと言わんばかりに、少女の一挙一動に刮目する。
そして、勝負は決まる。僅かに見せた隙をついて、男は少女の唯一の武装を引き剥がす。
少女が驚愕に目を見開くのを、男は薄暗い笑みで応じた。そう、それはまるでただの殺人者のような笑顔で。
仇、復讐。それらの言葉を並び立てれば、この行動は正当な行為になりえるのかもしれない。
だが、二人の間に流れるのは殺意のみだった。
殺す。―――殺す。
迷いなど一片も抱かない。平穏の崩壊により男から溢れ出した激情は、理性とはまた別に体を動かす。
男はさつまいもを振り上げた。少女は笑っていた、その意味を男が理解することはない。
その前に、男は青年の咆哮と共に訪れた衝撃により宙を舞った。
受け身を取ろうと身構えるも、その途中訪れた暴風により男はバランスを維持できずみっともなく地面へと着地した。
ごろごろと慣性のままに体が転がる。追撃を警戒したが、男を吹き飛ばした青年は少女へと視線を向けていた。
もちろん男を完全に無視している訳ではないのだろうか。
(あいつだけは、殺す)
戦場に舞い戻ろうとして、男は手元に武器を握っていないことに気がついた。衝撃で手放してしまったのか。
ぐるりと辺りを見回すと、さつまいもという特殊な武器は男から数十センチも離れていない場所で発見した。
だが、その延長線上に見えた景色に男は言葉を失う。
脳が理解を拒否し、男から言語を奪った。
実際に、その目で確認したのは学士の少年だけだったから心のどこかで信じていたのかもしれない。
学士ならまだしも彼なら生きているのではないか、と。
―――意識を一瞬にして奪われる甲高い悲鳴が空を切り裂いた。
ウッドロウさん、と問いかける声は数秒前の哭んだものとは比べモノにならないぐらい弱弱しかった。
頭部を血で真っ赤に濡らし、英雄は―――死んでいた。
なんで、と男はその光景が理解できない。体には致命傷になりえる外傷はない筈だ。
風を操る軍人は、外部の介入によって突如終幕した演劇にそれ以上の手は加えなかった。
彼の目的は興味深い少女の略奪であったし、そもそも死人には興味がない。
彼が好むのは生きている人間が苦しみ、足掻くことなのだから。己から目を逸らすために利用はしたけれどそれだけだ。
五体満足。体からは血が滲んでいる場所もあるが、今にも動き出しそうなのに。―――頭部以外は。
穴、が開いていた。こめかみに、狙ったように、ひとつだけ。小さい穴だが、場所が場所だ。
これだけで致命傷となりえる。実際、英雄の命を奪ったのはこれだ。
―――誰、が?
あの少女の攻撃では、こんな死に方はしないだろう。サレがやった? それはない。
三対一の乱戦の中、不利に陥ってもサレがそのような武器を使うそぶりはなかった。
殺すつもりで襲ってきていたのに、この殺傷力のある武器を温存する理由はない、と思う。
―――誰、が?
眼球が蠢く。答えを求めて、体が勝手に動いた。
怒鳴り声が響く。南から先程の赤い青年、そして、西から―――金髪の、
(……、)
『黒鉛の凶器が男に向けられていた。
男は、そこから発せられる(少女の表情からしてあまり友好的なものではない)物体を避けた』
形状は一致する? 否、そんな細かいこと分かるはずがない。
だが、消去法でいけば残るのは。
ああ、ほら、あの武器を持ってあいつが近づいてくるじゃないか――!
特徴的な金髪が、キールの死体にハイエナのように群がっていたあいつが。吐き気がする。
許さない。
あいつが<あいつを>あの人を<俺が>殺した<殺す>―――!
+ + +
支援
怪我の状態は落ち着いた。否、これはただの応急処置にしかなれない。
完全な治癒にはほど遠い。傷口に薄皮を被せて塞いでいるようなものだ。
安静を崩せば、直ぐに傷は開き――どうなるかは分からない。
衣服がすっかり血に染まっている海賊の仲間だという少年は、教師に礼を述べた。
何度も意識を飛ばしつつも、気力で起き上がってくるのか学士の少年は薄目のまま唇を開こうとする。
――が、がくりと再び意識を手放す。大量の出血はいささか丈夫そうに見えない少年にはとても厳しい。
命だって、教師達が即座に治癒を施さなければどうなっていたか。
海賊は少年が気絶するたびに小さく悲鳴を上げる。教師は安静にしていれば命に別条はないと告げるが、海賊の瞳は不安に揺れたままだ。
そんな時に、響いた悲鳴。
海賊と教師は顔を上げ、その音の発生源を見据えた。学士も大きく空気を震わした声に、辛そうではあったが目を開く。
頭がぐらぐらして普段の百分の一も思考は働かなかった。だが、聞き覚えのある声は学士に声を絞り出させる。
「……ロニだ」
「え?」
弱弱しく聞こえた声に海賊は学士を見た。
「仲間の、声だ……。頼む、助けてやって、くれ」
苦しそうに学士は息を吐いた。困惑の視線に気がつく余裕もなく、少年は言葉を紡ぐ。
「病人もいるんだ……早く、休ませてやらない、と……」
襲い掛かってくる吐き気に学士は目を瞑りながら耐える。もう、限界だ。
「チャット、しばらく……任せて、いいか……?」
答えを確認するまではもたなかった。
「……仲間を、頼む」
一言、学士は仲間に希望を託す。体力のない彼にとって精一杯の行動だったのだろう。
全身を襲っていた緊張から解き放たれたように、彼の体は力を失い崩れ落ちた。
傷は深い。大量の出血による気絶。今度こそ、本当の眠りへと少年は導かれた。
この眠りが何をもたらすかを、少年はまだ知らない。
+ + +
仲間? 声の発生源と学士を交互に眺めながら海賊はその言葉に困惑した。
恐ろしい銀髪の殺人者。海賊の中のイメージが学士の一言で引っくり返る。
仲間、仲間。学士が言うのなら、きっとそうなんだろう。彼はとても頭が良いし、間違ったことはあまり言わない。
勘違いだったのだろう。そうならいい。彼の仲間なら海賊の仲間でもある。
先ほどの悲鳴は尋常なものではない。何かが起こったのなら、助けなければいけない。
自分は、彼から「頼まれた」のだから。顔を上げる。銀髪の――ロニというらしい男の側には誰かが倒れている。
ロニに隠れてその伏している男の姿はよく見えない。
「リフィルさん、キールさんをお願いします」
「ええ、分かったわ」
不幸だったのは教師は、遅れてこの場に参加しロニとアッシュの小競り合い等を見ていないことであった。
教師が目撃したのはアリエッタにやられて倒れる学士の少年、そしてそのアリエッタに襲いかかるロニという男。
仲間が襲われて反撃するという不自然のない構図である。その表情に満ちた不安定なものを教師は見落としていた。
警戒はジェイドがより危惧していたアリエッタの方へと向けられ、怪我人を前にして客観的に物事をみることを放棄した。
治癒術師としての無力感から、今度こそは必ず救ってみせると学士の少年へ全力が注がれてしまっていた。
故に、教師は海賊の行動を容認した。
海賊と学士の友好的関係をその目で見、彼の仲間だという言葉に安心すら抱いていた。
アリエッタの方はアッシュが対処してくれているのも目に入っている。小さなほころびに誰もが気がつかない。
長髪の青年は、悲鳴に反応して背後の光景を視界に入れた。
男と倒れているらしい男、そして―――チャット。
「なッ……!」
あろうことか、戦乱から遠ざけた筈の少女がいかにも尋常ではない場所へ近寄ろうとしているではないか。
獣の少女へ問いかけようとした言葉はどこかに吹き飛び、青年は少女の元へと踵を返した。
赤髪の少女にかまっている場合などではなかった。確かに、あの銀髪の男には攻めきれない妙な違和感がついて回っていた。
だが、それとこれとは話が別だ。海賊は男に敵意を持っていたのではないのか。なのに、何故。
足を踏み出す。退いてろ! 下がれ! 思うままに青年は叫んだ。嫌な予感がするのだ。
近いはずなのにすべてがスローモーションのように感じた。海賊が、遠い。
自分だけ時が止まったような感じさえする。銀髪の男は、体を起こして――海賊を見た。
それと同時に海賊は聞こえた声に、青年へと注意を向けている。前方不注意だ。
馬鹿! 屑が、前を見ろっ―――! 脳で言葉を伝達し、音になるまでが非常に遅く感じた。
早く、早く、早く、早く。
男が何かを喚いた。青年はそれどころではなく内容は頭に入らない。海賊は目を見開いた。
振り下ろされる刃、硬直したままの海賊。
間に合え、間に合え、間に合え。
―――何かが素早く横を通ったことなんて、俺は知らない。
+ + +
ぼとり、と腕が落ちた。
「ああああぁぁぁぁあああああ―――!!」
海賊を突き飛ばした腕は、そのまま海賊の居た場所に振ってきた凶器に切断される。
あいつに与えられた腕で、こいつを守れた。何の因果か。それは誰にもわからない。
痛みなど気にしている場合ではなかった。
妙な感慨に浸っている暇はない。男は海賊を殺すつもりだった。
なんの躊躇もなく吹き飛んだ左腕を見て、青年は確信する。守る、と決めた。
追撃がきたら全身を使ってても海賊を守ろうと思っていたが、その瞬間はいつまでたっても訪れない。
代わりに、青年の全身を血の雨が濡らした。
海賊の悲鳴を背に、青年は小さくその名を呟く。
「……アリエッタ……?」
男の背後から覗くのは鮮やかな長い髪。不機嫌そうに表情を崩した少女が、男の胸を貫いて―――!
男が崩れ落ちる。だが、少女は満足しないようでその苦無を引き抜いた後、再び揮おうと、
「…ゆ……ねぇ……」
苦無は虚空を切り裂いた。
は、と青年は情けない声を漏らしてしまう。
何事かを呟いたと思った男は、どこかに忽然と消えうせた―――?
「また、逃げた」
少女が不満そうに呟くのを、青年はどこか遠い気持ちで聞いていた。
目前の光景に理解が追いつかなかった。男は死んで、消えた? いや、逃げた?
状況を整理するために、呆けていたはずの海賊が言葉を落とした。
それはあまりにも想定外な言葉で、青年は海賊を凝視する。
「僕が殺した……?」
海賊の呟きに、腕の痛みだけではない厳しい表情を青年は浮かべた。
海賊はその視線に気がつかずに、膝を折った。死体により近づく。
震える指で海賊はその原因を探った。信じたくなかった。嘘だと思いたかった。涙を堪えた男が己に向けた言葉を否定する材料を探している。
逃げればよかった。だが、出会いが逃げ場をなくしていた。
死体の前髪をよける。真っ赤な血に染まったそれに、吐き気がする。怖い。だけど止める訳にはいかなかった。
同行者の青年は状況把握できずに海賊の様子を眺めている。
海賊は目を見開く。見えるのは確かに銃弾の貫通した跡。自分の使う武器だから分かる。
―――これは、自分の撃った弾丸だ。
言い知れぬ感情が湧きあがってきて、海賊は先ほどの男が上げた悲鳴と似て異なる叫びをあげた。
「あああああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁ―――!!」
【アリエッタ 生存確認】
状態:HP45% TP75% 腹に銃跡(×2、処置済み) 全身に切り傷 イオン・クレスの死による悲しみ
イオンの血の匂いによる復讐心が先立っている バンダナ装着
所持品:ねこねここねこ クレスのバンダナ リバースドールの欠片 苦無
基本行動方針:ウッドロウ・キール・ロニ・サレを殺す
第一行動方針:殺し損ねたロニを追って、殺したい。
第二行動方針:さっきの“星”、魔力と爆発が気になる
現在位置:D2・平原、砂漠近く
【チャット 生存確認】
状態:HPTP100% 首絞めの痕跡 全身に軽度切り傷 ジェイドへの複雑な思い
アニー・クレスの死にショック 守られる事と無力さへの極度葛藤 アリエッタに共感
自分の甘さへの不安 アリエッタを危険に晒した事に罪悪感 小さな勇気? 大混乱
所持品:スタンダードマグ(残り装填4発) 銃弾50 ラジルダの旗 タバサ
プラズマカノン パナシーアボトル 袋詰め粉砂糖2kg リーガルの首輪 エナジーブレッド×4
基本行動方針:勇気を持つ、アニーの死を乗り越えて生きる
第一行動方針:あああああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁ―――!!
第二行動方針:僕が、この人を?
第三行動方針:森の死体らしき何かを確認したい
第四行動方針:セネルが心配
現在位置:D2・平原、砂漠近く
【アッシュ 生存確認】
状態:HP15% TP21% 左腕切断 後悔 全身に切傷と打撲
行き場の無い悔しさ 無力さへの葛藤 ロニへの疑問
支給品:デリスエンブレム エナジーブレッド ジェイドの作戦メモ二枚
イクストリーム アニーの日記 クリスダガー ソウルイーター
基本行動方針:チャットを守り生きる。日記を継ぐ
第一行動方針:チャットへの対処 アリエッタに事情も聞く
第一行動方針:アニーの仲間に会ったら彼女の事を伝える
第三行動方針:先程の魔力と爆発が気になる
現在位置:D2・平原、砂漠近く
【キール・ツァイベル 生存確認?】
状態:HP15% TP20% 度重なる失敗への激しい後悔 冷静を努める意思による自律
ヴェイグとイクティノスへの畏怖 ロニへの同情 主催者の言葉を信じる事への僅かな恐怖
ロニへの不安 想定外への動揺 腹、胸から著しい出血(応急処置済み) 右目に砂が入っている 右足を挫いた
チャットを認識 貧血等怪我による気絶中
所持品:誰かのクレーメルケイジ(I) グランドセプター リカルドの首輪 情報入り名簿 温石
基本行動方針:殺される気はなく、脱出の道を探す。マルタとの『協力』を果たす
第一行動方針:チャットにしばらく任せる。
第二行動方針:マルタを休ませることが出来る場所へ移動。(第一の候補は最も近い建造物である城)
第三行動方針:首輪についての考察と情報集め
第四行動方針:襲われた場合は応戦よりも全力で逃げる(可能ならばエアリアルボードを使用する)
現在位置:D2・平原
【リフィル・セイジ 生存確認】
状態:HP60% TP0% 頭部と左足に裂傷・打撲・切傷多数 服に焦げ アリエッタへの警戒と思慮
教師/治癒術師としての無力感
所持品:リヴァヴィウス鉱 ウイングパック リブガロの角 パナシーアボトル
基本行動方針:殺し合いの打破
第一行動方針:キールを治療する
第二行動方針:アリエッタへの対処 チャットが気になる
第二行動方針:リーガルを殺した人物が誰か気になる、リーガルを殺した人物、爆発音の発生源を警戒する
第三行動方針:死者に対しては慎重に接する
第四行動方針:ロイド達が心配
第五行動方針:先程のマナのようなもの、爆破のマナが気になる
現在位置:D2・平原
――許さない、許さない、許さない。
ウッドロウさんを、キールを殺した奴らを絶対に許さない。
男がとっさにとった行動はその場からの離脱だった。
勝てない。こんな場所で死ぬわけにはいかない。使ったのがGD脱出用ロープだ。
相変わらず原理は分からないが、どうやらあの場からは逃げることが出来たらしい。
立ち上がろうとして痛みで蹲った。痛い、痛い、痛い。
さつまいもを振り下ろしたことにより、少女の急所を狙った攻撃からは僅かに逃れることができたらしい。
だが、死ななかっただけで状況は厳しい。涙が、どうしようもなく止まらない。
痛いから泣いているのではない。悔しいから、仲間が死んだから。
放送でナナリーやルーティが死んだ時は、どうにか持ち堪えられていたのに、今はどうだ?
実際、死を目の当たりにして、犯人を目の前にして、俺は何が出来た? 何も出来てねえじゃねえか!
「糞ッ……俺は、」
なんで、俺はいつも……!
怪我の処置すら忘れて男はただその場所に伏していた。
―――誰かの声が聞こえた気がした。
聞き覚えがある気がした。もしかしたらあの世から迎えが来たのかもしれない。
だけど、俺は、
【ロニ・デュナミス 生存確認】
状態:HP15% TP55% 脇腹に刺し傷(処置済) 胸付近に刺し傷(命に別状はないです)ヴェイグへの警戒と微かな同情
精神的ダメージ大(半精神崩壊?) 重度混乱 右腕に大裂傷 ウッドロウとキールを殺した奴らへの憎しみ
所持品:さつまいも タフレンズ×1 やや小さくなったシーツ 温石
基本行動方針:???
第一行動方針:???
第二行動方針:???
現在位置:D4のどこか
投下終了です。
3の修正というのは間違いですorzすみませんorz
指摘があったらお願いします。
投下乙
あれだな、チャットは酷い無為式だな今更だけど
投下乙です。ついに森が動いたか…!
全員が全員クライマックスで読んでる自分がいっぱいいっぱいになってしまったぜ
ところでロニの現在位置、GD脱出ロープの効果は隣接したマスに移動だから
D4へは行けなくない?
投下乙です。
チャットォォォォォ!!! アッシュウウウウウ!!! ロニィィィィィ!!!
思わず俺も慟哭した。チャットが遂に空気王に気付いたか……身を呈して庇うアッシュかっけぇな。ロニもこれからどう動くか……
投下乙。ジェイドは次に持ち越しかwktk
ロニはロープ使ったあとに行動足すか位置変えれば問題ないんじゃないかな。
乙。
アッシュにしびれた…唯一まともかもわからんね、今あの場にいる中では。
しかし……なんと恐ろしいサツマイモだ。
携帯から作者です。
ロニについてですが、アッシュ達の居る場所がD2、D3の境目な気持ちで書いていました。
誤解を避けるためにロニの背後にいたアリエッタの現在地をD3に変更します。
今改めて見返すと誤字や主語がおかしいのがいくつもorz
後でまとめさんに修正箇所をメールで送りますすみませんorz
それぞれの動きにハラハラしました。
指摘するなら、リフィルの行動方針。第二方針が2つ書かれてます。
乙!
ちょっと確認したいんだが
アリエッタにロニ接近
↓
アッシュが間に入って吹き飛ばす。同時進行でキールにチャットと先生が近寄る
↓
ロニがウッドロウの死体を発見。甲高い悲鳴を上げる。同時進行でキール回復
↓
チャットがウッドロウ殺したと判断。同時進行でキール気絶
↓
チャットがロニの方に向かう。アッシュ「ちょ、おまwwwwwww」
↓
チャットを突き飛ばしたアッシュの左腕をロニが切断
↓
ロニ逃亡、チャットが自分がウッドロウ殺した事に気付く
で良いんだよな?
んで位置関係が
空気王
チャット
キール ロニ
先生
アッシュ、アリエッタ
で結局、先日逃げた理由も言わずに投下する時間はあるのにチャットには顔出さなかったわけね
もう駄目だろこいつ・・・常識が欠けてるってレベルじゃない
他の書き手を見下してる感も凄いし
はいはい修正すれば文句ないんだろって態度が好かん
投下乙
まさにアッシュのちょwおまwwww状態に吹いた
>>42 ルール守る気無いって言ってるし、ここ見ながらルール守ってる住人がルールに縛られて
何もできないでやんのwwwww
とかニラニラしてんじゃね
>>32 投下乙ー
ドロドロした人間関係になってきて今後が楽しみだ
投稿ミスすみません。作者です。
>>41 はい、だいたいそんな感じです。
私の主観で押しつける気はありませんが、もう少しロニとウッドロウが近いかな?ぐらいです。
思ったよりも修正箇所が少なかったので、したらばの方に修正依頼をしました。
まとめさんにはお手数をかけることになってしまうのですが、よろしくお願いします。
乙!すごく面白かったです。この後先生は大変だな…
チャット参加者です。
まとめさんか、他の方から正式アナウンスをすべきかもしれませんが
チャットで以下の案が出ましたので報告します。
・作品投下時には捨てトリップを必ずつける。
・問題作の修正、破棄について。
修正や破棄が要求されるのは、以下のような場合です。
1:文章そのものが小説の体をなしていない(日本語として意味が通らない・台本形式等)
2:原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている
3:前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている(死んだキャラが普通に登場している等)
4:作品の中に矛盾がある、時間の進行が明らかにおかしい、重要な出来事の描写がない、状態表と本文が一致しないなど、内容的な不備がある
5:全体のバランスをこわしかねない展開やアイテムが含まれている(ただし、あらかじめ相談の上、住人や他書き手の許可を受けている場合を除きます)
6:企画の基本的なルールを逸脱している場合(参加者の追加、制限の無視等)
以上の条件を満たさない修正・破棄要求は無効です。
修正・破棄の要求を出す方は、一行目で明確にそう宣言した後、議論スレへの誘導を行ってください。
自作が議論の対象となった書き手さんは、一定期間内に少なくとも一度、議論スレに説明や解決案などを含めた具体的な回答をお願いします。
期限までに回答がない場合は、作品は自動的に破棄されます。
議論中の作品に出て来るキャラのパートは、結論が出るまで凍結とします。
作品を修正する場合は、該当部分の修正案を仮投下スレに提出し、意見を仰いでください。
修正議論の場所に関しては、本スレ、或は現在の避難所とは別にしたらばを借りるという案が出ています。
書き手が来ない場合の猶予期間ですが、修正依頼から三日間、五日間、一週間と案が出ました。
上二つの案に関してスレの皆さんの意見を聞かせてください。
あと、もう一点、本スレに報告する項目があった気がしましたが、忘れましたorz
誰か覚えてたら報告お願いします。
追記、スタイレ書き手さんへ
この書き込みをご覧になったらトリップを付けた上で
上記
2、5、6の問題点への回答をお願いします。
纏まった時間が取れないというのなら、いつ頃回答出来るかだけでもお願いします。
ご自分の作品への責任を果たして下さい。
繰り返しますが、強制破棄等の措置をとるのはこちらも本意ではありません。
もう一つ追記
この報告は私の独断です。勝手な行動をお詫びします。
>>50 猶予期間3日はちょっと短いから5日がいいんじゃないか
忙しい人は土日を挟むように投下するようにするとか自己責任で
クリスマス期間でケーキ関係の仕事とかじゃないかぎりは大丈夫だろう
するように、が1つ余計に入ってしまったwww
なんとも変な日本語だ
今回はチャットログないのか?
参加出来なかったからどういう経緯を辿ったのか知りたい
しかしルールやマナーが嫌いなアプリたんには、そんなの関係ねぇ状態なのであった
ロワ内のようにルールの穴を突くならまだしも
「ルール全部頭に入ってないんですよね」 「皆さんちゃんとルール読んでるんですね凄い凄い」
とか平気でぬかすから困る
なんかリア厨ぽい、と思うのは俺だけ?<アプリたん
ルール守ろうとはしてるんだけど力及びませんでした><とか言っとけばここまで言われなかっただろうにいらんこと言い過ぎ
にしてもここまで意見ガン無視やらやったらなぁ・・・破棄が順当と思われてもしょうがない
俺はアプリたんだぞ!俺が書くって言ったら書くんだ!俺は悪くねぇー!!
ルークネタに弱いからやめれwwwww
>>50 報告乙です
結局書き手さん来なかったのか
自分は猶予期間は5日に一票
3日は短いけど、投下が多い時期だと7日は長いかもしれない
修正議論はしばらくは本スレで様子見ても良いと思う
>>31 投下乙。予想外な展開でした。
気になったのは、サレの風のタイミングなんだけど、メアの最後で崩したのはアッシュの照準とかってあるのとずれないかな。
一番影響受けたのはロニでなくてアッシュになりそうな気がしたので。
それから距離感。
サレ着地が崩したのは五人の動きだからみんなかなり近い位置にいたな認識であってる?
投下&報告乙!
間取って三日でおkだと思う。
作者が来ない場合は、また考えればいいよな?
>>31 便乗して指摘
アッシュ平然しすぎじゃないか。
クレスやルビアとの対比っていうか、腕落とされたら大出血で観察どころではないような……。
あと空気王はどっかに腹に穴開いて内臓飛び出してる描写あったのに、五体満足って描写はちょっと、って思う。
死因が銃弾だってロニやチャットに認識させたいのはわかるけど、書き込み不足で強引な感じがするよ。
行動方針の数字がおかしいキャラはリフィルだけじゃないし、
もっぺん修正しがてら回答お願いしたいです。
ロニ吹っ飛ばしたのはサレの風だったのか
アッシュの追撃だと思った
>>61 案外、腕とか吹っ飛ばされると人って冷静にそれ見てる事もあるみたいよ
戦争物見てたら普通に自分の腕拾って歩いてる人とかいた
投下乙!
アッシュの腕…!けど、今まで散々頼りない、スパーダのとうもろこしも切れ味微妙だったのに
さつまいもで腕切断はキツくないか?イオンとリカルドの首もさつまいもじゃなくて
スパーダの術で切断したのに、さつまいもの切れ味がいきなり良くなりすぎてると思う
というかさつまいもで切断されるアッシュの腕が可哀想だw
さつまいもで切断は俺もどうかと思ったなwギャグにしては代償があれだし。
いや、でも斧なんだよなぁ。……いや、でもさつまいもだしな……。
でも斧なんだよなぁ…さつまいも…
さつまいもなぁ…
見た感じからして刃ないもんな、さつまいも。
撲殺ならできそうだけど……だめだ、気になってきたorz
でもそれ言い出したらねぎだって弓じゃないしなぁ…
リメDでリオンの松茸短剣もあるからありっちゃありか?
ねぎは弓であって矢じゃないからそれほど違和感ないんだよ…うん
でも「さつまいもで作った矢」の制作にあたり石をさつまいもで割ってたしなぁ…切れ味はそこまで悪くない気もするような…
矢は石器みたいに叩き割ったでも構わないから、切るとはまた違うんじゃない?
最強のさつまいもが支給されたって事でいいじゃん!
指摘ありがとうございます。作者です。
ええとまず
○ウッドロウの死体の状態
これは完全なこちらのミスです。ウッドロウかっこいい先入観で死体状態を美化してしまったみたいです。
すみません。読み込み不足です。修正します。
○行動方針
リフィルの行動方針二が二つあるのは、前からなのでそのままリレーしました。
二番目に気になることが二つあるだけではないのかな?と思い修正は必要ないと判断しました。
まとめてもいいんでしょうが、見づらくなると思い現状維持です。
○サレの風
ロニを吹き飛ばしたのはアッシュです。
吹き飛ばす→ちょっと強い風が吹いたのでふいにバランス崩れて受身失敗→ごろごろ
「メア」でサレの竜巻とあったので、余波もあるかな?と考えてロニとキール達のはそれです。
アッシュの照準がズレた等はこの話では描写してません。アッシュは持ち直したのかな・・。
距離感は上の通り余波的な感じで書いていたので、近くもなければ遠すぎでもない位置だと思っています。
○さつまいも
これは本文に登場するたび力が抜けたwという話は置いといて
本文でも少し触れましたが、アリエッタの攻撃がずれたのはさつまいもを思いっきりふるったからと書いています。
遠心力か何かの勢い的な。かなりの力を込めて、さつまいもをふるったのでアッシュの腕切断はアリだと考えていますが……どうなんでしょう。
ロニは元々力がある+手加減なし本気で攻撃したでさつまいもの切れ味の悪さはどうにかなると思ったのですが、意見ありましたらお願いします。
○腕
ルビアは女の子、クレスは石状態に対してアッシュは場慣れ、経験故かと思います。
痛いでしょうが、チャットが大変なのに痛い痛い言ってたら格好もつかないでしょうし…痩せ我慢?
膝ぐらいはついているのかもしれませんが、後半はチャットに集中したかったので…必要なら少し描写を足したいと思います。
最近、設定無視がよく出るね。
一つ思ったんだが、さつまいもで大丈夫なら、城の決戦の時ウッドロウが武器庫に行かなくてよかったんじゃないかな。
柵を取る必要も無かったよな。そこのとこどう思う?
>>65-66 ここだけ見たら噴く
あんまり関係ないことなんだが、『セネルが心配』してない気がしなくもない
ロニの得意武器(に近い形状)+殺るき満々
で叩き切る程度の威力は出せると思うんだけど。
城の件は、空気王はレイピア使いだからさつまいもを戦闘ではうまく使えない感じで良いんじゃないか?
んー、いや、だったらスパーダにほうきととうもろこしは使わせないんじゃないかなぁと。
とうもろこしはギターだしな。
首切断する気満々のロニと空気王がスパーダの苦無頼ったから
さつまいもで骨は切れなかったんじゃないかなぁ
アッシュの左腕は元々怪我してたけどな
怪我考えればギリギリ?
まさかサツマイモで揉めるとはww
サツマイモで作った矢に、今度はサツマイモで腕ぶった切りか。まったく!
アッシュが持ち直した話は入れた方がよくないかい?
竜巻なら誰か気付いて反応しないと妙な気がするし。
何度もすみません。さつまいも・・・。
個人的にはロニの殺意の本気度を表すためとチャット追い詰めのために腕切断は入れたいのですが・・・
リレー的に矛盾が生じてしまうなら、背中裂傷に変更も考えます。意見お願いします。
あと、竜巻の描写はこの話では必要ないと考えています。
チャット達→キールでいっぱいいっぱい アッシュ→風凄いけど今はアリエッタとロニ
アッシュはサレが風を使うなどは知りませんし、苛立ちはあれど特に描写はいらないかな、と。
>>84 さつまいも切断は面白いと思うけどw
でも
>>76の通り武器庫の一件がカワイソスになってしまうので
作者さんには申し訳ないですが、自分は変更した方がいいんじゃないかと思います…。
しかしこの野菜談義w力抜けるわww
要はぶったぎるにはさつまいもには力不足だからそれ以外ならいいんじゃないかな。
折るでも骨まで至る傷でも動脈切断でもなんでも。
チャットに視覚的なダメージ与えるなら背中裂傷でアッシュが倒れたり
膝ついたりしたほうが効果的じゃないかなとも思うけど
切断できるかどうかが問題であって、
さつまいもでアッシュの腕を再起不能にする事は可能だと思うから、あとは書き手さんの判断だね。
個人的にはアニーに守ってもらった腕で〜ってあたり凄く好きだったので、そこは残ってると嬉しいです
だな。楽しみに修正と作品待ちましょう。
森も少し進んだし、次はどこがくるかなwktk
まあ正直ここまで議論する程でも無い事と思うけれど
いっそのことスパッと切断じゃなく
左腕が跡形もなく木っ端微塵と書いたら良かったのかも
描写上鈍器としての面が強いし本人が結構力任せで戦う奴だから。
修正版をしたらばに投下しました。何度も何度も申し訳ございません。
意見ありがとうございました。アッシュの左腕切断は背中大裂傷に変更しました。
失礼しました。
乙。腕じゃなくなったのか。
ある意味これもアニーのご加護だな
素早い対応乙です。こういう誠意ある書き手さんばかりなら…
2,3日酷いスタイレで荒れたせいか、後に問題なくリアラマオの話を投下した書き手さん、アッシュ達のサツマイモ問題に対する書き手さんの柔軟かつ迅速な対応に感動してしまう。
おかしいな。
しかしさつまいもでここまで議論する日が来るなんて思いもしなかった…w
さつまいもの人乙。
ところでスタンとイレーヌの話は通すの?
まとめさんが混乱しないかな。
まぁあのままでは先ず通らないと思うよ。
修正すればなんとかなるかも知れないけど、作者が来なければ破棄になるね。
…あまり言いたくはないけど、荒らし認定されても仕方無い事をあの作者はしてしまってる。
幾ら寛容さが大事と言っても、限度というものがあると思うんだ。
アプリはまとめ氏の苦労を理解してねーんだろ。ログもわざわざhtmlにして色もつけてくれてるってのによ。
ま、スタイレより投下遅かった方舟がもうまとめに載ってるし、更新順はスルーでいいと思うがな。迷惑な事に変わりはないがな。
日曜日の投下はないか
予約無しだからいつ投下くるかと何回もスレを覗いてしまう
避難所等にパートは伏せて今日中に投下できそうですよみたいに報告するスレ立たないかなw
さつまいもの人乙でした。
何度も出てきて貰ってすみません。迅速な対応に感謝します。
次回作も楽しみにしています。
つ大学芋
避難所のスレ案いいね。
自分も土日は特に、スレを何度も見に来てしまうよw
確かにww
初期ほどの投下速度じゃないのが解っててもつい毎日見てしまうwww
また日付が変わったか…なのにスタイレの人いまだ音沙汰無し…
ここまで無視とはアリスの人より数段タチ悪いな…
というか俺が折角書いた奴なんでいつも勝手に破棄になってるのかな^^;
ちょっとこっちが大人しくしてたらこれだよ^^;
ちゃんと破棄確認しろや 矛盾ないだろうが^^
書くのに時間かかってんだよ^^;簡単に努力を水の泡にしやがって^^;
そのうちこのスレ荒れるかもね^^
そういや、昨日で丁度ロワ開始3ヶ月?
3ヶ月で215話とは凄いハイペースだな。
その投下速度に慣れきった俺が物足りなく感じるわけだ。贅沢だったんだなー。
今のアッシュ達といい、結構D地区では死闘が集中してると改めて思う。地図の死体位置を見るとそのカオスっぷりがよくわかるよ。
そういえば、クラトスはプレセアと同じ地区で死んでたのね。
同じ地区と言っても結構広いからな
これから更にカオスになるんだろうな、ほとんどの奴らが同じ方向目指してるわけだし
時間が一番進んでるのがマオリアラか?
森付近もだが東も複雑だ…
マオリアラはもう10時くらいにいってそうなイメージがあるんだが…
ところで新ルールと破棄の問題はどうする?
3日連絡つかなかったら破棄、でおk?
3日間はちょっと早い気もするんだけど…それって書き手さんの意見の意見なんだっけ?
忙しくてスレ覗けなくなりそうだったら、投下後にでも一言あると親切かもしれないね
時間が無くて事後の対応が難しいなら、避難所に一時投下してお墨付き貰ってから
本スレ持って来ればいいんじゃね?
その案チャットでもでたんだけど、避難所IDがでないから自演で擁護したり叩いたりしても
判断ができなくて困るっていう難点があるんだよね…
流れぶった切ってすまん
久々に全作を読み返していたら、46話でリカルドの不明支給品が一つ消えていることに気付いたんだ
そのままにしておくのは流石にまずいよな…?
本当だ。……俺も確認してきたんだが、城パートであと二つミスを見つけてしまった。
スパーダのクナイが10枚増えてるのと、ロニの支給品が四つになってるっての。
GD脱出ロープとタフレンズと蟻地獄にんの人形とGD脱出ロープ…。
スパーダの苦無は後で作者さんが修正してたけど、見落とされてそのままみたいだね
蟻地獄人とタフレンズ初出話、木を切る話の書き手ですが、提案します。
ロニの支給品なのですが、すでに何話かリレーされておりアイテムを削るのは聊か難があるかと思います。
そこで、リカルドの不明支給品を当てて修正を行おうと考えております。
具体的には、リカルドの不明支給品を蟻地獄人に変更し、SS内でその理由について描写を補います。
46話の書き手さんがいるかは不安ですが、ご意見有りましたら、よろしくお願いいたします。
46話書き手です。リカルドの支給品消滅については申し訳ありませんでした。
>>116さんの修正案が今回の問題まとめて解決できて良さそうなので、こちらで書き足しを行います。
こちらの都合で申し訳ないのですが、46話の続きである60話も自分が書いたのですが、
46話でなく60話のリカルド、スパーダ、ウッドロウ、ヴェイグによる
支給品確認のシーンに書き足しという形でもよろしいでしょうか?そちらの方が自然につなげると思いますので。
修正後は避難所に投下してまとめさんに修正依頼したいと思います。意見ありましたらお願いします。
クラトスはエクスフィア持ってたっけ
クラトスさんは多分持ってるよ。
それにしても、参加者に何か伝えるためにマナ打ち上げたのに、それで集まった人達が
殺し合い始めちゃって‥‥ダオスはそこらへんの計算が甘いなぁ‥‥
まさにダオスはマダオッス!プッ!なんちゃって!
>>119 【審議中】
∧,,∧ ∧,,∧
∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U ( ´・) (・` ) と ノ
u-u (l ) ( ノu-u
`u-u'. `u-u'
【採用】
゚・ *: : *・
*・ ゜゚・ * : .。. .。.: *゜
* ・゜ ゚・ *: . .。.: *・ ゜゚ ・ * :..
。. ・ ・*:.。 ∧,,∧ .∧,,∧ .:* ・゜
∧∧(´・ω・`)(´・ω・`)∧∧
(´・ω・`).∧∧) (∧∧(´・ω・`)
| U (´・ω・`)(´・ω・`) と ノ
u-u (l ) ( ノ u-u
`u-u' `u-u'
クレスは死者スレ帰るべきw
クラトスは持ってるというか、体に装置してるよね。
あれ、どちらの拳だっけ?
支給品じゃないし、仮に死体漁りしたとしても使い方にはすぐには思い当たらない気がする。
ただ、形見にはなるかも。
31話『まさか』作者です。
先程ご指摘頂いた通り、スパーダの状態表での苦無の本数を、31話というかなりの初期段階で10本も水増ししてカウント・表記してしまっていました。
なので、発端である自分がまとめて依頼を出そうと思っています。
修正内容は『(31話以降全ての)スパーダの状態表にある苦無の本数−10』です。
31話以降のスパーダ登場回の作者さん方、宜しいでしょうか?
もしも「それでは都合が悪い!」という場合、申し出てくださると有難いです。
また「ここも修正必要じゃないか?」等ありましたらご指摘ください。よろしくお願いします。
ご迷惑をお掛けしてすみません…
ロニの支給品、ロープ×2セット 人形 レンズ という風じゃ駄目なのだろうか
書き手さん方乙です。
素晴らしい連携プレー
見返してみたが、ロニ登場回で状態欄がロープと不明二つだし
二本セットが支給されたことにしたら丸く解決する気がする。
修正より続き書く方に力を割いて欲しいし。
じゃあ古代兵器2つセット支給でも何も問題ないですね!
…ってなるのを避けたんじゃない?
ロープが消耗品ってこと知らないで出しちゃったんじゃないかな
そんなのことスタイレの作者しか指摘しなそうだろ。
つーかそれ言い出したらグミセットとかも、ってなるしロープセットで構わないと思う
どっちにしろロープはもうないからいいじゃん
にしてもえらい今さらだな。
前例は可能な限り作らない方がいいと思うんだが。
スタイレ書き手に指摘されても正当な理由で返せないとだめだろう
何にせよ自分らが修正するんじゃなくて書き手さんが修正するんだから任せるべきじゃね?
書き手間では納得できてるんだから。
作者がこんなに早く何人も出てきてくれた事に感動した…31話とかすげえ前なのにな
その時書き手だった人も、今はもうこのロワから離れてる人も少なくないかな
なんて思ってたんだが、杞憂だったようだ
まだ3ヶ月前だけどなw
じゃあアルビオールとレアバード持たせよう
とうとうアプリコットは三日来なかったな。やれやれ。一件落着だな
今までの態度から考えて来るわけないわなwww
今更のこのこ現れた所で信用は地を突き抜けてるのは言うまでもないが
46話、60話の書き手です。
避難所の一時投下スレに蟻地獄人の人形をリカルドの支給品としたシーンの追加案を
投下してきましたので、◆rl7P85RK6Uさん、いらっしゃいましたらご確認お願いします。
>>134 確認しました。リカルドがウッドロウ達に人形を示してないようですので、
それを前提に自分も修正案を避難所投下します。
31話『まさか』作者です。
修正依頼を出す前に、まとめ氏が本スレの書き込みを受け、先に該当箇所を修正してくださっていたようです。
この場を借りて……まとめ氏、本当にありがとうございます。
皆様にも色々とご迷惑をお掛けしました。以後、気を付けます。
久しぶりに全作品を読み返してみたがフィリアさんの空気っぷりは異常だな。
スタイレパート早く投下して欲しいわ
例のあれは対応の遅さに加えてチャット逃亡の説明無し等、人をナメた態度考慮して破棄以外ないだろもう
どうせ出てこないよ
フィリアフォッグカイウスは三大空気
カイウスは一回輝いただけマシじゃないか!
フィリアはスタンフラグもジューダスに奪われてだな・・・
スタンフラグはDキャラD2キャラで奪い合いだからな
スタン大人気だな
ジューダスが説得無理だったのをフィリアがなんとかできるとは思えないw
でも、フィリアにはまだミクトランフラグがあるよ!
ミクトランフラグもDキャラとD2キャラでry
その上西の森組にもフラグあるから益々…
おまえらそんなに司祭さまを空気にしたいんかww
いや、気持ちは分かるがw
フィリアさんはエルレイン信者&鈍感思い込みキャラにすべきだろうD2的に考えて
>>147 それだと3●歳だから今からはキツいなw
五大空気はフィリア、フォッグ、タバサ、クイッキー、ミュウだな。
熟女ハァハァ
書き手紹介楽しみにしてたんだけど流れちゃったのかな?
前回の定期チャットで話出たんだろうか・・・ロムれなかったから気になる
みんなどうやって書き手の区別と把握してるのかも含めてw
そういえば
協力してやりたいが俺には区別がつかないな
>>138 本当に同一人物かはわからんが避難所に居るらしい
あれが本人となると死者スレにも結構出現してることになるな
避難所に仮投下きてるよ
意見あるなら今のうちに
書き手紹介、誰もやらないなら俺がやってみる!
といってもみんな分かってるであろう書き手氏だけど
他に詳しい人、後を頼む・・・
【HN】名無し氏
【主な作品】137話「行って帰ってこられるさ、足が速くて軽いなら」
202話「カタストロフィ」 212話「楽園 -lovE-」
【書き手紹介】
投下数トップの書き手氏。長文かつ密度が濃いSSを大量に投下してくれている。
文体は特徴的でおそらく1番見分けのつきやすい書き手氏。
タイトルがマザーグースからの引用であることが多いようだ。
内容はギャグ・熱血・鬱・考察・感動と何でもこなせる。
把握作品の多さから来るだろう舞台装置や舞台裏の謎をふんだんにSSに盛り込む。
対主催に偏りがちなロワのバランスを保ってくれている。
傾向としてはクラトスとチェルシー、スタイレ、バーロールドに愛を注いでいる印象がある。
失礼あったらすみません。こんな感じでいいのかな
主な作品はあくまで俺が判断した結果で、正確にその書き手氏かは分からん
けど間違ってたら土下座する。
バーロールドww
じゃあ俺も
あってるかは分からないが…間違ってたら作者さん本人か分かる人指摘してくれ。
2人しか判別できなかったが。
一人目
「おいしい野菜炒めの作り方」「シトラスワルツ」
二人目
「雨上がり・・・」「灰色」
クイズ大会みたいになってきたwあってるかな。
それはやめようよって誰か言ってなかった?
書き手さんが気になるのも分かるが、ここはコテ無しロワだからなあ
もし投下の度に書き手当ての空気になったりしたら微妙だぞ。
定期チャット覗くか尋ねるかすれば大体は把握できそうだし
水差すようで悪いけど、本スレでこの話題は出来ればやめときたい
>>160-161 先走ってしまったようでスマン
書き手氏にも迷惑かけたなコレは。土下座してもし足りない
・・・避難所でもダメかね?
つチラシの裏
>>162 許してクレッス!の一言できっと許してくれるよ!
でも避難所でもやめたほうがいいと思うよ。
該当のタイトルやら話数はあげないならいい気もするがな。
何々に定評があるとかみたいな紹介なら書き手あてには多分ならんでしょう
>>161 同意
コテ無しロワのスタンスは壊しちゃまずいかと…
2,3話なら・・・と思ったけど反対意見多いならやめとくかな
なんでそんなに特定に拘るのかわからん
アリス厨とアプリ特定なら手伝うがな
土日投下に期待
別に特定に拘ってるわけじゃないんだけど
特定したいというよりこの書き手さんのこういうところが好きだから
頑張って欲しい、応援してるって意味で紹介したいんだよ
この話が好きだって感想代わりにすることもできるし
ならさ、感想つけやらないか?
前の人がつけた感想と同じ書き手かなって各々が思う話しは飛ばす感じで。
したらいろんな人に感想つけれるんでないかな。
ジューダス様の人のは特定するまでもないな
俺はジューダス様の人は複数人いるとふんでる。
稀にジューダス様の偽者もでてるしねぇ…
>>173 奇遇だな、俺もジューダス様の人は複数人いると考えてるぜ
ジューダス様を構う奴も荒らしだと思ってる。
マスコットってふざけてんの?
>>176 まあ同意だけど皆好きみたいだから黙ってようぜ…
投下します。
漆黒に塗られた森の中、改めて周りを冷静に見てみると、そこはひどい有様だった。
なにがどう、何の悪意が働いたなら、この少女二人と男一人が、一度に亡くなることを想像できるだろうか。
そして、その死に様のどれもこれもが無惨であることが、ひどくロイドとクロエの胸を痛ませた。
死臭が鼻につくより先に、何より濃い血の匂いにそれが現実なのだと知らされて、それが一層、悲しみを深くした。
「ルビアのディストのサックは…リアラが持っていくのを見たよ。
……ねえ、すごく、申し訳ないんだけど、ディストの埋葬、僕一人でさせてくれない?信用できないなら、いいんだけど…」
月光に僅かに輪を作る緑の髪の少年が静寂をやんわりと破る。
前髪に隠れた口元を苦痛に歪ませて、自重気味にぽつり、ぽつりと一言ずつ呟くシンクに対し、一瞬だけ少し驚いていたロイドは、意味を改めて聞き出すように表情を緩めてみせた。
そんなロイドを一度見て、尚更シンクは苦汁の表情を表し、顔を伏せてしまう。
「………あんまり、ロイド達にディストを見せたくない」
「ーーーどうしてだ?」
「あの死体は…、僕しか知らない、ディストの本性に対しての行動だから、周りからはあまりにも惨たらしい殺し方にしか見えないんだと思う」
シンクは辛そうな表情を顔に浮かべながらも、感づかれぬようにちらりと二人を盗み見た。
ロイドは苦しそうな、辛そうな顔。対してクロエは神妙な面持ちで、シンクの言葉に同情する気配はあまり感じられなかった。
自分から目線が逸らされているのは、気のせいじゃないだろう。
あの時、ノーマには姿を見られることなく気絶なりなんなりさせておけば良かった、とシンクは音もなく舌打ちをする。
まあ、いいや―――周りからは溜め息とも取れないくらいに静かに息を吐き出した。
ここでのクロエはなんの戦略も無ければ、武器もない。絶対の発言力をもつロイドさえ手中ならば、すべてうまく回る。
「ロイド。僕は、自分が怖いんだよ…。自分の殺意を目のあたりにしたまま、二人の側にいたくない。
けど、ディストは、せめてあいつを殺した、僕の手で埋葬してあげたい…」
もちろんこれは、決して必要なことではなかった。
しかしディストの無残な死骸を見せるということは、並行して自分の殺傷能力の高さをさらけ出すに等しいのだった。
シンクの腕は、イオンと同じように細く白い。
そんな腕はきっと、いくら骨と皮だけで出来ていそうな人間でも、自分より一回りも体躯が大きいような成人男性をいとも簡単に貫き刺してはいけないのだ。
「でも、一人で大丈夫か?きっと、楽じゃないぜ。―――いろんな意味で」
人を埋葬、つまりここでは土葬するということは、穴を掘らなければいけない。
そしてそれは、三人掛かりでもけして簡単ではないだろう。
つまりそれだけの労働を、体力を失っている上に、人よりは大分小柄であろうシンク一人には任せられないと、ロイドは思ったのだ。
「僕は大丈夫だよ、ロイド。まあ、ちょっと時間がかかるかもしれないけど…」
「ー…待ってくれ」
凛とした声が、ロイドとシンクを振り返らせる。
二人の視線の続く先には、輪郭の影が濃くなったような印象を感じさせるクロエが、その姿を夜の色に紛らわせながらも、二人をじっと見据えていた。
「ー…火葬にすることは出来ないか?」
しかし、少女は火を持って弔いをしよう、と言うべき顔ではなかった。
その様子から連想させるのは、懺悔をする罪人そのもの。
哀れみの目をして、悲しみに取り憑かれて、しかしそれでも気丈にふるまおうとするような、必死さが滲み見える。
「…ノーマや、ルビアとディストに、火をかけ、ゲームに乗っている奴らを誘き寄せたい」
「な…っ」
ロイドの信じられないと言った声に、クロエは改めてしっかりと正面へと向き直った。
その顔には、さっきよりかは幾分か力のある、意志を持った瞳が宿っていた。
ーーーとある理由があっての発言。
そしてその選択を優先するが故の己の非情さに悲しみを抱えている様子が、目線の俯き方一つが、クロエの気持ちを痛いほどにロイドにも伝える。
クロエはまさに今、後悔を振り切って、その決断を口にしたのだ。
火葬などと言っても、「それ」は決して火葬にはならないだろう。
クロエは弔いではなく、火種として彼らを必要としたのだ。
ここは森の中。死体が燃えれば、草木が茂る周囲に火が移るだろう事は、想像に容易い。それはつまり、この森を燃やす、と言っているにも等しいものがある。
そして、クロエの目的はまさにそうだった。
口先で「火葬」だとそう言っても、そんなものは言い訳以外の何者でもないことは、三人ともよくわかっていた。
ただ単に、火を起こし、騒ぎを広めるという目的の為だけに、再度彼らの亡骸を痛めつけるという行為。
死者を冒涜するそれは、普段の彼女からなら、考えもしないであろうくらい、有り得ない思想である。
時間的には短い付き合いだが、その密接した関わりから、ロイドは彼女がらしくない考えをしているのことがわかっていた。
「なんでそんな…、クロエ?いきなりどうしたんだよ?」
何時の間にか、正義感が強く、分別のある凛々しい少女、クロエ・ヴァレンスの思考回路は危険とも取れるものになっていた。
戸惑いを隠せないロイドは、困ったような、理解に苦しむように顔を向ける。
まっすぐに見つめられて、息をするのも苦しそうな彼女は、顔を深く伏せて、その色を分からせないように、瞳を閉じた。
「…この状態では満足に戦えない事もわかっている」
「なら、なんでそんな無茶苦茶な事…」
「―――ロイドには話したな。この舞台には私の仲間である、シャーリィという少女も連れてこられている」
シャーリィ・フェンネス。
ロイドは思い出した。彼女と一番最初に出会った時にした情報交換の際に見せられた、金髪の白い顔の少女の事を。
その風貌から見て取れる、戦闘能力の有無を。
確かにもしゲームに乗った人間と出会ってしまえば、いとも簡単にその命を散らしてしまいそうな線の細さを持っていた。
そしていまだに、そのか弱い少女の名前は呼ばれていない。
「シャーリィ、って子を、探すためか?」
「………そうだ。だから今は、時間が惜しい」
ロイドは理解した。
クロエはつい先程、シンクから又聞きした放送でシャーリィ・フェンネスの名前が呼ばれなかったことに、強く希望を抱いたのだ。
支援
(…クーリッジは、アーツ系爪術士。最悪、一人でも大丈夫だろう。しかしシャーリィはブレス系、前衛がいなくてはろくに詠唱も出来ない…)
クロエの中で冷静に、優先順位が正される。
信頼ある強い絆を持ったノーマを失い、深い悲しみに捕らわれた。
しかし、まだ守るべき存在である、シャーリィは生きている。
ーーーならば、シャーリィだけでも守らなければ。
傷付いて万全でない自分は、あとどれだけの力があるだろうと、クロエはそう思いながら、着火器具を手にする。
シャーリィは今、無事だろうか。
もし目を付けられていても、せめて火事に、他の奴らが釣れてくれれば、シャーリィの安全が図れる。
驚くほど冷静に冷えきった頭で、急がなければ、と思った。
事を起こすのなら、数秒でも早いほうが良い。その数秒が貴重だ。
うかうかしている間に彼女が危険に晒されるような事があったら、ノーマに、ここには居ない仲間達に、そしてなによりクーリッジに、申し訳が立たないではないか。
クロエは守るべき人間の為に存在する騎士だ。
そして今、この戦場で守らなければいけない存在は、心優しき少女、シャーリィ。
ならばするべきことは、もう分かっている。
「意義があっても、今は言わないでくれ。後で幾らでも軽蔑してもらおう。罵られても構わないし、殴られても良い。だからーーー」
クロエは知っていた。彼女は臆病だから、火事が起きている森には近付いたりしない。
カチッと音がして、着火器具に灯りがともる。
視界を覆い尽くす森は暗く、冷たく、そして怪しい。
空を仰ごうにも草木が邪魔をして、星の一つも見えなかった。淀んだ闇が、無情に滲む。
そこに灯るものは、一縷の光となるのだろうか。
「私はいつだって、愚か者なんだ」
守るべき人を失った、騎士の少女の悲しい道だった。
支援
【シンク 生存確認】
状態:HP55% TP50% 居心地が悪い 服がボロボロ 左足に傷 右足に噛み痕
支給品:すず 未完のローレライの鍵 リコーダー 聖剣ロストセレスティ
シンクの仮面 クレーメルケイジ(C)
ソーディアン・アトワイト(シンクを警戒、ディムロスと接触したい)
基本行動方針:ルーク達を引っ掻き回して楽しむ
第一行動方針:ロイドを利用し信頼を得る。リアラは放置したい
第二行動方針:クロエの提案に少し困惑、ロイドの思惑を窺う。
第三行動方針:レムの塔の探索
現在位置:E7森・南
【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:HP80% TP60% 疲労 左肩に浅い切り傷 右足に切り傷 強い決意
カースロットで汚染 デクスへの怒りと憎悪?
所持品:オブシディアン 木刀セット ソーサラーリング ダガーナイフ
基本行動方針:打倒サイグローグ。死んだ仲間の為にも反ゲームのスタンスを貫く
第一行動方針:クロエの火葬の提案に困惑。
第二行動方針:レムの塔へ行く。
第三行動方針:仲間を集める。リフィルとクラトス等のブレーンであれば尚良し
現在位置:E7森・南
【クロエ・ヴァレンス 生存確認】
状態:HP45% TP100% 帽子紛失 打撲 軽い貧血 胸に止血済中裂傷
シンクへの複雑な心境
所持品:安全ヘルメット
基本行動方針:打倒サイグローグ?シャーリィだけでも守りたい
第二行動方針:ルビア・ディスト・ノーマを火葬する
第三行動方針:シンクと二人で話したい。一緒には行動するが許す気はあまりない?
第四行動方針:セネル、特にシャーリィと合流したい
現在位置:E7森・南
投下終了します。
投下乙です
クロエ……決心するのは大変だっただろうにな
しかしシャーリィやセネルを呼び寄せると、ステルスマーダーがおまけで付いてくるぞw
ん?
火事にするのは別の参加者引きつけて火事には近寄らないと踏んでるシャーリーから遠ざけるためだろ?
投下乙です。クロエ、悲しみで我を忘れない様にな…!
投下乙。
着火器具の細い火で燃やせると思ったあたり来てるなクロエ……。
かちりというならライターぽいし。
あ、でもランタンには油があるのか。
ランタンの無限油と落ちてる枯れ枝使ったとしても厳しいだろうな
術使わないと森燃やすどころか生焼けがせいぜいだろ
投下乙です。
クロエの不安定さが出ててこっちまで不安&怖くなってくる
そして全然冷静じゃないぞクロエ。落ち着くんだクロエ。
年末だからか誰もいないな…
ねんまつまんね
クロエ、ここまで追い詰められてたんだな
シンクも順調なようでおもしろかったです!
投下乙ー
どこも難しい所だから書けないのかな。
スタン達 水浴び描写必要。あとこのままじゃ確実にデクスと鉢合わせ。
それに洞窟塞がって目的地不明に。
ミトス達 水責め五秒前。要素が複雑。
ジルバ達 ロイド達に火事フラグが立ったのでロイド達が動くまで動かせない。
チャット達 人数が多いのと何とかしなければならない問題大杉。
ミクトラン達 では、考察開始だ。
そういやミクトランってハロルドの知識を吸収しているんだよな
それを考えるとなんて厨設定なんだミクトラン
さすがは豚に真珠の体現者
ミクトランは実験用の首輪もあるしフォルスもあるし、頭脳は足りてるしで首輪解除できちゃいそうなんだよなww
萌えキャラの癖に有能なんて完璧ww
ミクトランは動かなくても周りが塔に来てくれそうだから大丈夫そうでもあるな
でも塔に来ても倒せなきゃ意味がないな……
ミクトランはむしろ誰かが来る前に考察しないと…
投稿しようと思って半分くらい書いたんですが失禁表現(女キャラ)って大丈夫ですかね?もし駄目な様なら書き直します。
エログロがやりたいだけならやめとけ。
不安なら避難所の一時投下に仮投下。場所がわからないならテンプレ嫁。
鳥も推奨。誘いうけは非推奨。
あとはとにかく空気嫁。
エロとか18禁がダメってことが他の作品から見てわかるでしょ?
1stでは男だがグリッドが失禁したけれど
当然のように通っていたし
魔法元少年なんかも有るからな
エロは厳しいがグロなら話の展開によるだろうね
>>204 ここは全年齢板ですのでそれを念頭に、自己判断(not独善)してください。
あえて女キャラと書いてあるので疑ってしまいますが、
エロチックなものが主目的ならやめた方がいいと個人的には思います。
それにしても投下ないですね。
リレーの概念無視した件の投下のせいでなく、師走だからと信じたいものです。
学生の書き手さんだとテストやら受験やらあるだろうしね
無理せず頑張って下さい、気長に待ってます
>>204です。
エロ目的じゃないです全く。
あまり詳しく言えませんがショック?受けて思わず的な…
女キャラと書いたのは女の子だからこそ不味いかな…と思っただけで。
とりあえず書きけたら仮投稿場所に投稿します。
ゆったりと投下します。支援があると嬉しいです。
私はスタンさん達と一緒に、復活した天上王ミクトランを倒しました。
けれどその一連の行為、即ちミクトランを討ち神の眼を破戒した事は、
こんな事を言うのもおかしな話ですが、どちらかと言えば私自信の意思では無かった様に思えます。
ウッドロウ様がソーディアンチームだったので、その成り行きと言った方が良いと思うんです。
でも、私に世界を救うと云う意思が無かったと云う訳でもありません。
私は私の世界を守りたかった。その想いは決して間違いではないです。
けれども、世界を担う事。それは明らかに私にとって荷が勝ち過ぎていた問題でした。
何の脈絡も無い話ですが、私は子供扱いされる事が一番嫌いです。
だからこう言ったら矛盾してるし、非難を浴びそうなのですが。
……“私は、子供です”。
本当は知ってたんです。私は如何しようも無い程に子供だって事。
私は政治について知りません。私は権力とかお金とかもよく分かりません。
大人と云う生き物もあまり知りませんし、世界情勢についても詳しくないです。
私、14歳のチェルシー=トーンにとっての世界は、途方も無い程までに宏大で。
だから到底把握だなんて、出来る筈もありませんでした。万に一つも。
その世界を救うとか、滅びるとか、剰え統治や平和とか。
そんな事、私には当然分かりっこすらない問題でした。
私の視界はこんなにも狭い。私は、如何しようも無く世界を知りませんでした。
けれど、だからこそ私には天井は見えませんでした。それ故に私は背伸びを必死にしたんです。
私はある意味で独りぼっちでした。ウッドロウ様達が考えてる事が、あまり分からなかったから。
グレバム、バティスタ、ヒューゴ、ミクトラン、神の眼、外郭、オベロン社幹部達の思考。
リオンさん、マリアンさん、天上人、ジャンクランド、カルバレイス人への差別。
スケープゴートにされたオベロン社、そして……余りにも膨大な、ダイクロフト破壊による地上人の犠牲。
度重なる問題は唯漠然と私の目前に高楼となり聳えました。
取り留めの無い現実。巨大過ぎる世界に、私の心は猥雑としていました。
私は矮小な人間です。けれど、皆と居れば怖くはありませんでした。
私一人で出来ない事でも、皆なら出来る。そんな確信が私の何処かに在ったからです。
私が理解出来なくても、皆なら正しい道を進んでくれる。
私達なら、出来ない事はきっと無い。だから、間接的に私にも出来ない事なんか無い。
投下待ってましたー支援
そう思っていました。私の空はとても広くて、そう、怖い程に広くて。
あの鳥とか、雲の種類とか、星の名前とか。分からない事も確かに沢山ある。
天候だってそう。予想出来ない、だから怖い。
……けれど、そんな私にも一つだけ分かった事がありました。
朝日に焦げた空の下、一匹の淡く煌めく蝶が飛んでいた。
有限を知ってしまった私は、きっと私自身に展翅されていたんだと思う。
だから、それだけは本物の輝きだと思えた。これだけは信用出来ると思えた。
今だけは、私を解放してくれる確信をそれに持てた。そう、それはきっと自由の権化。
だから私は、小さな手を届け届けと必死に伸ばす。
その選択の果てに待っているものを、私はまだ知らない。
立ち尽くす少女の双眸は底が見えぬ程までに深く、澱んだ木賊色で満ちている。
少女、チェルシーはさながら風前の灯の様に弱々しい動きで足を運び、
両手を地に突き嗚咽を零す少年の側に寄る。
途中、僅かな岩の段差に足を引っ掛けてしまい、チェルシーは体勢を僅かに崩した。
こつりと半分程磨り減ったソールが音を上げる。右側の靴の下に小石を二つ感じた。
チェルシーは己の口から出された白く色付いた吐息を目線だけで追い、一度だけ瞬きをする。
白煙は空へと舞い上がる。白の向こう側に見える星屑は僅かに霞んで見えた。
やがて、吐息は文字通り霧散する。虚空で蕩け薄れ行く白を見届けると、
チェルシーはそのままピントを調節しようと試みた。
白く色吐いた息にそれを合わせていた為に、白銀の星影は滲んでいたのだ。
雲の隙間から覗いた双月は、悠然と夜空に構えていた。
すう、と脳の端から意識が覚醒して行く幻想にチェルシーは瞼を閉じる。
意識の深淵に浸透する思考。完全な覚醒を確認すると、チェルシーはゆっくりと首を後ろに下げた。
桃色の前髪が風に乗せられ僅かに揺れる。血の残香が鼻腔の奥をつんと刺す。
チェルシーは重い瞼をゆっくりと上げた。ピントは合っている筈だが、酷く星が滲んで見えた。
その虚ろな目は眩いばかりに鏤められた星屑への感動を少しも映さない。
空を仰ぐ作業を中断し、チェルシーは首を前に垂れた。足元の二人に焦点を合わせる。
チェルシーは一度だけ目を細め、無残な骸と呻く少年、カイウスを見比べた。
カイウスの身体は小刻みに震えている。実寸大よりも肩が小さく見え、酷く見窄らしく思えた。
支援
チェルシーは下唇を噛み、静かに膝を折った。ぎしりと関節が音を上げる。
生温い吐息が、腰を曲げた瞬間に唇の隙間から漏れた。
少し遅れて、誰かの嗚咽。チェルシーの表情は前髪に隠れて窺えない。
「クラトスさん」
震える指先でクラトスの輪郭をなぞりながら、カイウスは何かに縋る様に呟く。
声は掠れていて、岩柱同士の僅かな隙間を通り抜ける風に、今にも掻き消されそうだった。
カイウスは震える喉から漏れ出ようとする嗚咽を必死に耐え、クラトスの胸に顔を埋める。
熱くなる眉間を左手の親指と人差し指で摘み、カイウスは涙を堪えた。
「クラトスさん…」
大きく切り裂かれた傷跡は痛々しかった。肩から胸を経て脇腹へ。
普通ならば充分に死に至れる傷。カイウスから見てもそれは致命傷だった。
左側の胸から腹に掛けての傷は背部までの貫通傷。左顔面から左脛に掛けての大裂傷。
右胸に貫通傷。眼球喪失、心臓喪失、大腸は損傷どころか腹部から溢れ、千切れている。
到底人が経験して良い傷ではない。カイウスは咳き込み、クラトスの頬を手で撫でた。
「クラトスさん……!」
クラトスは何も応えない。カイウスは脇腹から岩肌に崩れ落ち、クラトスの胸に拳を添えた。
ぎりぎりと音を上げる程までに強く握られたその拳を、チェルシーは一瞥する。
……震えていた。我慢、悲しみ、後悔、憤り。その理由は幾らか想定出来る。
が、チェルシーの目には怒りの権化としか映らなかった。
高々一瞥で疑いの余地を許さない程までに純粋な拳。
それ程までに強固な意思が、彼の両拳には宿っていたのだ。
「クラトスさん………!」
ズタ袋を引き摺る様な音がチェルシーの耳に届く。
クラトスの肩に縋り、必死に自分の身体ごと揺らす少年の体裁は、とても痛々しい。
嗚咽と水っぽい咳が混じった声は、チェルシーを掻き暮れさせた。
高く見下ろす空へとチェルシーは目線を移す。黒い空と黒い大地が地平線で混ざり合っていた。
「クラトスさん…………ッ!」
眠る様に墜ちた天使、クラトスの名を震える唇から零すカイウス。
カイウスは思う。あんまりだ、と。これがオレへの仕打ちだとするなら、あんまりじゃないか。
「……なぁ、応えてくれよクラトスさん。何か言ってくれよクラトスさん!」
チェルシーは立ち上がり、カイウスの焦げ茶と僅かな白が混じった後頭部を見下ろした。
支援
「起きてくれよクラトスさん! じゃなきゃ俺は何の為に此所に来たんだよッ!?」
温い涙がカイウスの頬から散った。白銀の月明かりが反射する。
一言叫ぶごとにカイウスは全身を揺らした。身体の芯から搾り出す様な悲痛な声だった。
「貴方に生きて貰わなきゃ意味が無いだろ!? なぁ! これじゃあ全部“嘘”じゃないか!」
チェルシーは口を半開きにしたまま、無関心にカイウスを見下ろす。
「なあ、冗談ならやめて下さいよ! 俺は貴方の死に顔を見たかったんじゃないッ!!」
吹き抜けた風がカイウスの白いストールを靡かせる。ぱたぱたと僅かな布の擦音が上がった。
チェルシーは目を擦る。眼球は既に濡れていない。頬に纏わり付く涙跡が心底不快だった。
「貴方、言ったじゃあないですか、約束したじゃないですか……ッ!」
チェルシーはもう一度だけ、父を重ねたクラトスに視線を投げる。
チェルシーが知る彼の相貌とは到底掛け離れた表情は、しかしとても安らかだった。
チェルシーは釈然と悟る。出来たのだ、と。
「心配するなって言ったでしょう!? 貴方が死んだら、約束破った事も怒れないじゃないですか!」
その瞬間、チェルシーは己の中、心に得も言われぬ不快さを感じた。
何かにぽっかりと穴が空いてしまった様な、何かに皹が入った様な、そんな不快感だ。
それは敵に止どめを刺したいのにも拘らず、
手持ちの矢がベルベーヌの汁を鏃に縫って作ったお呪いを掛けた矢しか無い……そんな煩わしさにも似ていた。
「貴方の息子さんの事も聞けないじゃないですかッ! 嫌だ! オレはまだ貴方と居たい!」
チェルシーの脳裏を満たすクラトスが出来たのだと云う安心。
同時に一抹の、しかし底知れぬ歪んだ怒りがチェルシーの胸中を渦巻く。
「だから! だから……お願いです。起きて下さいよ、クラトスさん……ッ!」
チェルシーは瞳を閉じ、ゆっくりと息を吸い、同じ様にゆっくりと吐き出した。
瞳を開けた先に在るものは、最早クラトス本人では無く唯のグロテスクな死体だった。
少しだけ吐き気を覚える。不謹慎だとは全く思わなかった。
「クラトスさあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!!!!!!!!」
チェルシーには、死体の嘗ての名を叫ぶカイウスの背が、酷く小さく見えた。
チェルシーは貧相なカイウスの両肩から視線を外す。見上げた空を星が流れた。
チェルシーは片方のグローブをもう片方で握った。今だけは何も願う気になれない。
支援
漆黒を流れた金色の輝きは非常に疎ましく、チェルシーは眉間に皺を寄せた。
カイウスの嗚咽と鼻を啜る音だけが岩の原を包み込む。チェルシーはカイウスを見ない。
今見れば、見てしまえば、傷になる確信が何処かしらに存在したからだ。
だから、チェルシーは様々な憎悪を抱き締める様に空を仰ぐ。
甘えては、きっと壊れてしまう。
「カイウスさん」
カイウスの頭が、チェルシーの視界の左下でびくりと動いた。
二、三度空を掴む様に掌の開閉を繰り返した後、チェルシーは強く拳を作る。
重い口を喉から溢れた呪詛の言葉が割いたのは、それと同時だった。
「私、止めましたよね」
……嗚呼、何ででしょうね。私、何で今まで気付かなかったんでしょう。
全部勘違いだったんです。世界は無限なんかじゃない。
私の視野はこんなにも狭いのに、何を思い上がっていたんでしょう。
私の空はこの空じゃあない。私の小さな手じゃあ、星は掴めない。
「“あの時”、言いましたよね」
目を閉じて見る私の空は、酷く低くて、狭い。
「クラトスさんが言う通り、素直に逃げましょうって言いましたよね」
カイウスは息を呑んだ。ちくりと何処かが痛む。心の奥底が静かに、けれども確かな悲鳴を上げた。
カイウスの鼓膜を打つチェルシーの声は何時もよりも幾分か低く、淡泊なものだった。
その一言一言はセファイド鉱製の鎖と化し、カイウスの身体を巻き付けて離さない。
原因不明の息苦しさを覚え、カイウスは左胸を服ごと握った。胸の奥が痛みに軋む。
目前のクラトスの抉られた胸板を焦点の合わない目で見つめながら、カイウスは思い出す。
そう、クラトスがシゼルに一撃を浴びせられた後、チェルシーは目を覚ました。
そして確かにカイウスに言ったのだ。逃げた方が良い、と。
鮮明に網膜の裏側に焼き付いた映像が脳裏に蘇る。チェルシーは必死にカイウスに訴えていた。
クラトスの残したメモを手に、涙ぐんだ目でカイウスに訴えていた。
「でもカイウスさんは、嫌だって言いましたよね。力に成れなくても行くんだ、って」
カイウスはクラトスの胸から目を離さないまま、渇いた下唇を甘噛みする。
胸を掴む右手は震えていた。違う、とカイウスは思う。
そう、違うのだ。クラトスの胸から目を離せないんじゃない。
“チェルシーを見る事が出来ない”のだ。
カイウスは僅かに荒くなった息を自らの耳に感じつつ、瞬きすら忘れたままクラトスの胸を凝視する。
しえん
支援
「何があったかは私には分かりません。……でも」
チェルシーはそんなカイウスの心情を知ってか知らずか、尚も口を休める事無く続ける。
生じてしまった隙間を埋める様に、或いは更に隙間を深く抉る様に。
そうしている内に、チェルシーは気付くのだ。
カイウスに抱いた気持ちの正体は同情や悲しみではなく―――純粋な失望なのだ、と。
行き場を失った静かな怒りは、少し前までの自分に重なる少年へと白羽の矢を立てたのだ。
チェルシーは目の奥に僅かな痛みを感じる。それが悲しみなのか怒りなのかすら分からない。
八つ当たりに過ぎないのかも知れない。こんな事を言った処で、何の意味にもならない。
そんな事、チェルシーは当然分かっている。けれども、するとこの気持ちは。
この年にして天井を理解してしまった痛みは。思う通りに成らない苦しみは。
半ば自己中心的な哀しみは。そんな自分に感じる憤りは。
……一体、何処に撒けば良いと言うのだろうか?
故にチェルシーは震える拳を見ない様に、貧弱で見苦しいカイウスの背を見ない様に、
中途半端な位置に足を降ろしたまま口を開く。
「カイウスさんを庇ってクラトスさんはこうなったんですよね」
わなわなと震える肩を自分で抱き締める様に、カイウスは瞳をぎゅうと強く閉じた。
ぎりりと食い縛られた歯が口内で軋む。クラトスの返り血が付いたストールに顔を埋め、
カイウスはがくりと両手を地に着ける。黒い予感が背に伸し掛かって離れない。
「カイウスさんが私と逃げてれば」
やめろ、と震える唇から情けない言葉が零れ落ちる。けれどもその声は声に成らない。
腑抜けた表情のまま、カイウスは立ち上がろうと試みた。……が、動かないのだ。ぴくりとも。
全身が鋼になってしまった様で、けれども表面は嫌な熱を帯びていた。
不意に動悸を感じ、カイウスは眉間に皺を寄せた。身体の内側から激しく半鐘が鳴る。
それだけは駄目なのだと、崩れてしまうんだと、止めろと、カイウスの中身が告げる。
「こんな事にはならなかったかも知れないんですよね」
言うな、とカイウスは発音を試みた。しかし“ぁ”とか“う”とか、
喉から溢れる音はその程度の呻く様な掠れた声だけだ。
……一番の獲物は、きっと言葉だ。何を言われるか理解していても、何が悪いか理解していても。
言われるまでは、現実じゃないから。幾らでも逃げられるから。言い訳が出来るから。
支援
支援滅焦陣
だから、言葉のナイフは何よりも鋭い。言葉は人と心を切り離す最後の一撃だ。
拳銃、大剣、戦斧、片刃剣、レイピア、槍、鎚、鎌、ライフル、短剣、弓矢。
どんな武器であろうと、言葉の横には決して並ぶ事は出来ない。形の骸なのだ。
「カイウスさん」
その低い声に、びくんと肩が揺れる。
己の名が呼ばれた。それだけにも拘らず、カイウスは心が鷲掴みにされた様な錯覚を見た。
カイウスの唇の端が引き攣る。冷たい汗が背筋を這った。
どろりとしたそれから冷気が感染し、血液を凍て付かせる。
シャーベットの様になった体内の鮮血は、血管を通り頭へと昇る。
震える身体を両手で抱き、せめて自分だけは失わない様にと、カイウスは祈った。
「貴方が」
けれども。けれども矢張り、言葉は残酷だ。カイウスはゆっくりと眼球を動かす。
かさかさに渇いた舌根を唾で濡らし、ゆっくりとチェルシーの足元に一瞥を投げる。
チェルシーはそんなカイウスへと視線すら向けず、ぽつりと呟いた。
「――――――――――――――クラトスさんの代わりに、貴方が死ねば良かったのに」
がらがらと音を立てながら、カイウスの足元から地面が崩れて行く。
かくん、と全身の力が抜けた様に思え、カイウスは地に着いた腕に力を入れる。
嘘だよな、と。冗談だよな、と縋る様にカイウスはチェルシーを見上げる。
チェルシーは真直ぐに地平線を顔を向けたまま、カイウスへと目線だけを合わせた。
冷たい風が二人の間を走り抜ける。明確な境界線を示された様で、カイウスは唾を飲み込んだ。
夜のドレスを纏う少女の眼が、カイウスを見下す。
「チェルシー、おま何、言って。……冗談は、止め」
チェルシーはがたがたと震えるカイウスを見て溜息を一つ吐いた。
今にも崩れそうな表情を無表情として維持する為、チェルシーはカイウスから目を逸す。
後悔を捨てる様に、悲しみを埋める様に、チェルシーは喉から出る言葉に感情を任せた。
「私達が逃げてれば良かったんです。クラトスさんだってあの人に勝ってたかも知れません」
なんでも出来ると思っていた。世界には天井なんか無いと思っていた。
けれど、知ってしまった。世界には天井がある。私達は、余りにもちっぽけだった。
「……こんな事になるなら」
チェルシーの視界が滲む。喉から溢れた声は震えていた。
本音と建前とが混沌として、触れると壊れてしまいそうな表情が浮かび上がる。
支援
支援
現実は理想と化し、現実は変わらず現実のまま存在し続ける。
色褪せてしまった世界は、きっともう元には戻らない。何故ならこれが答えだからだ。
けれど、チェルシーが抱く気持ちはこのゲームに否定されているだけで決して嘘では、ない。
カイウスはその声色にはっとし、チェルシーを勢い良く見上げた。
ズタズタに切り裂かれた精神を、けれども必死に身体に重ね、カイウスは立ち上がる。
「チェルシー」
よろけながらも、カイウスは無意識に少女の名を呼ぶ。
何かが違うと思ったからだ。何かがきっと、間違っている。
落ちた二人だからこそ、分かる希望がそこに在る。手を伸ばせる位置に確かに在る。
「私達」
伏せ目がちなチェルシーの口からぽつりと呟かれたそれは、容易に先が推測出来るもので、
「言うな、チェルシー、ダメだ。戻れなくなる」
反射的にカイウスは首を左右に振り、チェルシーの言葉を遮る様に呟く。
どくりと高鳴る鼓動を胸の奥に感じつつ、カイウスはゆっくりとチェルシーに近付く。
暗く澱んだ目はカイウスを写さない。けれどもカイウスはチェルシーの瞳を見た。
濡れた瞳を、確かな叫びを聞いた。
諦観と言う深い沼に少女が沈む前に、自分は何が出来るだろう?
他人を傷付ける事でしか絶望に飛び込む勇気を持てない少女に、
果たして自分は何が出来るのだろう?
「……私達、出合わない方が、」
チェルシーの瞳から一筋の涙が溢れた。つうと頬を伝い、それは顎から滴る。
カイウスはそれを見て項垂れる。自分がチェルシーに出来る事は何一つとして無い。
分からないのだ。こんな時に何をすべきなのか、カイウスは知らない。
不甲斐なさと無力さがカイウスの胸を締め付ける。
朝が地平線から顔を出す。金色に焼けた空の下、カイウスは唯咎める事しか出来なかった。
「言うな……。言うなよ……!」
チェルシーはぼろぼろと涙を零しながらカイウスを見つめる。
……永遠の前に、現実の前に、自分達は余りにも脆くて。余りにも儚くて。
苦しい想いをするなら、何時か理不尽な別れが来るなら、悲しみや怒りを覚えるなら。
こんな出会いなんて、無かった方が、
「良か「やめろよッ!!!」
カイウスはチェルシーを無理矢理抱き寄せる。言葉で言い表すにはカイウスは子供だった。
現実と云う壁の前に、彼等は余りにも幼過ぎる。
その小さな身体を寄せ合い、温かさを分かち合う以外に、救いの道を彼等は知らない。
支援
ハグー!支援
死者スレでルビアがキレそうだ支援
「やめてくれ……やめてくれよ……!」
疲れきった様な顔で泣くチェルシーの表情を隠す様に、カイウスは強く強くチェルシーを抱き寄せる。
カイウスは抱き寄せて初めて理解した。こんなにもチェルシーの身体は小さい。
擦り切れた様なチェルシーの表情を思い出す。
居た堪れなくなり、カイウスはチェルシーを更に強く腕の中で抱いた。
チェルシーの震えが腕から伝わる。触れ合わなければ決して分からぬ感触だった。
「……俺達は、きっと、それでも進まなくちゃならないんだ。
こんなとこで折れる訳にはいかない。
何の為に戦うのか、何の意味があるのかとか、良いとか悪いとか……そんなの関係無い!
知ったこっちゃないッ! オレ達に分かる問題じゃないんだ!」
カイウスは小さな両肩に手を添え、ゆっくりと腕の中からチェルシーを解放する。
戸惑いを見せるチェルシーに一度だけ表情を曇らせたが、カイウスは直ぐに微笑んだ。
「……オレだって、もうズタズタなんだ。クラトスさんは、オレが殺した様なものだから」
カイウスは項垂れ、静かに呟いた後顔を上げる。
チェルシーには同じような笑顔を何処かで見た事がある気がした。
チェルシーは悲しそうに笑うカイウスを感情の無い双眸で見つめる。
揺れ動く黒い感情と、胸に残る温かさとが彼女の中身を揺さぶる。
そんなチェルシーを元気付ける様にカイウスは微笑み、チェルシーの肩から両手を離す。
三秒程瞳を下げ、カイウスは吹き付ける風に身体を預ける。
二色の前髪が冷たい風に揺らめいた。チェルシーの鼓膜を鼻を啜る音が揺らす。
瞳を上げたカイウスは何かに疲れた様に笑い、口を開いた。
「ごめん、何て言えば良いのか分からないんだ。オレですら気持ちをまだ掴めてない」
首を左右に振り、カイウスは続ける。チェルシーは目を細めた。
「……けど、オレ達は生きなきゃならないんだ。チェルシーにも、生きていて欲しいんだ」
ぎゅうとチェルシーの手が握り締められる。
確かな温かさは、自分達が此所に存在する事を証明する心地良い温度だ。
まだ、チェルシーもカイウスも此所に居る。それは間違いじゃない。
まだ、チェルシーもカイウスも生きている。それも間違いじゃない。
支援
支援
触れ合う事でしか、依存する事でしか彼等は安定出来ない。
無論、それが未来に何を齎すかは彼等は知らない。
しかし、カイウスにとってのその今は何よりも大切な今だった。
理由も分からない、けれど、生きる事が大切なんだと。そうカイウスは思う。
「だからもう、そんな事言わないでくれ」
今度言ったらこうしてやるからな、とカイウスはチェルシーの頬を左手で抓る。
「あぅっ!?」
チェルシーは驚いた様な表情で目をぱちくりとさせ、少しだけぎこちなく微笑む。
大切な温もりを確認する様に、
チェルシーはゆっくりと自らの右手に添えられたその手を左手で覆い、握り返す。
頬を僅かに染め、恍惚とした表情のままチェルシーは目を地面に滑らせた。
それは、時に頼りなくもある温もり。儚い理由、一つの脆い居場所。
けれども、それを全力で守りたいと思う事は我儘なのだろうか。
「きっと我儘、なんでしょうね」
ふと呟かれた言葉に、カイウスは首を傾げる。
チェルシーは紛らわす様に笑い、俯く。光を映さぬ虚ろな目をカイウスは知らない。
「……何でもないですよ」
神様、私達が楽園を望む事は罪なのでしょうか。
私達にとっての楽園は、生きる場所です。生きたいと思う心は、悪でしょうか。
神様。私達は此所で生きる事すら、赦されないのでしょうか。
私達は生きたいだけです。死にたくないんです。死ぬのをもう見たくないんです。
それだけです。それがこのゲームの答えと違う事も理解しています。
けれども、そんな人として当然の願いを祈る事すら、叶わないのでしょうか?
朝日に焦げた空の下、一匹の淡く煌めく蝶が飛んでいた。
有限を知ってしまった私は、きっと私自身に展翅されていたんだと思う。
だから、それだけは本物の輝きだと思えた。これだけは信用出来ると思えた。
今だけは、私を解放してくれる確信をそれに持てた。そう、それはきっと自由の権化。
だから私は、小さな手を届け届けと必死に伸ばす。
その選択の果てに待っているものを、私はまだ知らない。
天は何も語らない。唯、少女が手を伸ばした先に、ゆらりと死を運ぶ蒼い魔蝶が漂っていただけ。
それだけだ。
『そうやって、アナタはまた逃げるんですね』
少女は喉に詰まったその言葉を、何時までも紡げなかった。
――――――――――――――――Then,which is caught butterfly?
テルクェスktkr支援
【チェルシー・トーン 生存確認】
状態:HP100% TP100% クラトスの死への大きなショック 色々な事象への失望 死への達観
所持品:包丁 レッドランタン 手作りの弓 手作りの矢×30 チェスターの矢 食べ掛けのアマンゴ
フォーク 模造刀 マジカルポット バスケット(ストロベリークレープ リンゴ トマト×3)
基本行動方針:仲間に会う・ウッドロウ様を守る。これ以上の人死は許さない?
第一行動方針:D3の塔を目的地に、他の参加者を探す? 朝に行動開始?
第二行動方針:情報収集。信頼できそうな人物には館のことを教える
現在位置:D4・砂漠(岩石地帯化)
【カイウス・クオールズ 生存確認】
状態:HP80% TP90% 無力さ、臆病さへの葛藤 強い自責の念
クラトスの死への大きなショック チェルシーの変化への動揺 砕けた理想
所持品:サック一式(ランタン無し) スタンドファーム マゴノテ 食べ掛けのキルマフルーツ クラトスのメモ
基本行動方針:サイグローグを倒す。他人を助けられる強さが欲しい
第一行動方針:チェルシーを守り、一緒に生きる
第二行動方針:シゼルを止めたい。それでも殺したくはない
第三行動方針:クラトスの息子、ロイドに会いたい
第四行動方針:D3の塔を目的地に、他の参加者を探す? 朝に行動開始?
第五行動方針:情報収集。信頼できそうな人物には館のことを教える
第六行動方針:ルビアを探したい
現在位置:D4・砂漠(岩石地帯化)
投下終了。支援ありがとうございました。
投下乙でした。前の話までのチェルシーとのギャップに驚いた…
その蝶触っちゃ駄目だー!カイウスはまたクライマックスか!
投下乙です
チェルシー…クラトスの死でこれだけ揺さぶられているとなると、空気王の事知ったら…
カイウス、お前が頼りだ。支えてやってくれ。
しかし…テルクェス…だと…?
乙乙
Lやってない俺にテルクェスについて詳しく三行
乙。
テルクェスは高性能レーダーだ。
とにかく、東も進まざるを得ないな。
>>242 シャーリィの特殊能力
飛ばせる探知能力ある蒼い蝶
触ると場所を把握されます。フォルスの雪みたいなもんです
サンクス!
投下乙
テルクェスはまずいww
マーダーチームが到着するにはまだ少しかかるが…どうなるか分からん
乙です。
誤字発見したので指摘。
冒頭の「神の目を破戒した」の“破戒”は“破壊”ではないでしょうか?
投下乙!
チェルシーキッツイなあ…。代わりに死ねば良かったってのは禁句だ…。
カイウスも反論出来ない分相当来てるな…。
>>242 ついでに言うと、1stでは射程が最低でも50kmあると考察されてたな。
(論拠は遺跡船の全長と各ダンジョン間の距離の比較らしい)
さらにシャーリィがメルネスとして覚醒すれば、テルクェスを泡状に変形させて相手を包み込み、
動きを封じられるという素敵オプションも追加される。
なんという厨設定
投下乙
これはきっつー
凄まじいドS
そういや尿の人の投下まだかな
そんな過激なパートあったっけ?と楽しみにしてるんだけど
投下します。
ティア・グランツは歩いていた。できるだけ速足で、できるだけコンパスを広くして。
その隣を歩くカイル・デュナミスは、ティアがそこまで急ぐ理由を推測することはしない。
少年特有の元気と体力を、大切な人の死に因って崩されかけた信念と心の中から奮い立たせるように歩いていただけだ。
その結果、たまたまティアとペースが合致したため、何の違和感も覚えなかったのだ。
ティアは首を僅かに動かし風の流れる方へ視線を送る。
マロンペーストの色をした長髪が靡く向こうに見えるのは夜闇の漆黒だけ。
(……失敗したかしら)
先ほどカイルに告げた己の行動方針。ティアはそれに後悔していた。
視界を遮る髪を手で耳にかけ、溜め息を吐く。
それで決してもカイルや他の誰かに気付かれまいとギリギリまで息を潜めてだ。
『どちらに向かうとしても、……そうね、まず、E3ぐらいまで行きましょう』
それはティアの発言。カイルはそれに従ってくれているというのに、ティア自身がその提案に本心では従いたくなかったのだ。
ティアの心を惹いて仕方ないのは、西に感じた何かの力ではない。
地図の中心に聳える塔でもない。
橋の東側に居た時に見た、天を貫かんばかりの塔。――レムの塔だ。
放送により告げられたカイルの母親と仲間の死、そして兄同然に育ったという親友への残酷な呼びかけ。
それはカイルだけでなく、ティアの心にも大きな影響を与えていた。
(私がもし、カイルのような立場に立たされたら――)
ティアはゆっくりと首を振る。冷たい夜風が頬を撫でていく。
ぞくりと悪寒でも奔ったかのように、ティアは両腕で己の身体を抱いた。
(……考えたくない)
そうして彼女の中で膨れ上がる思いはたったひとつ。
(……今すぐ会いたい、ルーク……)
二年の間、待ち続けた焔の名を持つ彼。「必ず帰ってくる」と約束したのに、ティアは二年も待たされたままだ。
日課のようになったタタル渓谷で彼を待つ夜。
その日もティアはエルドラントの残骸をずっとずっと見つめていた。
――彼はもう帰ってこない。
――彼とはもう二度と会えない。
脳裏に響くそんな声から必死に逃げるように。
セレニアの花が閉じかけようとする時間。
それは今日も現れなかった愛しい人を思いながら踵を返しかけた瞬間だった。
《ならば、再会の舞踏会<チャンス>への招待状を……哀れな大譜歌の詠い手よ》
(そう、そんな声が頭の中に聞こえて……そして)
待ち望んだ彼の名と顔を見ることができたのは、生と死の隣り合わせの、戦場よりも残酷で理不尽な舞台の中。
機械的に支給された、名簿の紙の束の中だったのだ。
――カイルの母親のように、カイルの仲間のように。
この場所では愚かな選択をした者の手に因って、いつ大切な存在を失うかなんて分からない。
再びルークを失うことが、恋を知ったばかりのまま、待ち続けた18歳の少女に耐え切れるだろうか。
――だからこそティアはレムの塔に行きたかった。
遠目に見ても惑星オールドラントから持ってきたとしか思えない外観。
ルーク・フォン・ファブレと縁の深い場所。
それだけではない。ティアは、己と同じ考えをする者が必ず存在すると考えていた。
見ず知らずの土地に送り込まれた不安の中、見慣れた施設があれば人は必然的にそこに惹かれるに違いない。
ルークやジェイド、アッシュもまたレムの塔を目指す可能性が高いだろうとティアは踏んだのだ。
それに、放送で告げられた禁止エリア。東のD6が禁止エリアになるのは次の放送だ。
しかしその後になってしまえば、橋を渡った後の東大陸の進路は限られる。
人と会う可能性が高いのはともかく、襲われた場合を考えると逃げ道が少なくなる。
できれば次の放送の前までに東の大陸に渡ってしまいたかった。
濃紺の全身タイツという服装の特異性を考えるならば、朝になる前に。
(今すぐにでも踵を返して、東へ向かって駆け出してしまいたい……でも)
しかしティアを躊躇わせるのはカイルの存在。
大切な人を失って尚強さを保とうとするカイルを無視することは、ティアにはできなかった。
彼の涙のあたたかさと、彼のボサボサの金髪のくすぐったさ。
それが、一度は反発しあったはずのカイルの側に、僅かながらもティアの心を寄せていたからだ。
謎の力の爆発を感じた西の森と、人が集まるだろう地図の中心に聳える塔。
その二つをどうしても確認したいという意志が、カイルの涙を堪えた瞳から滲み出ていた。
だからこそティアはレムの塔に直行せず、E3に向かうという妥協案を提示したのだ。
文字通り西風に後ろ髪を引かれながらも、ティアは短くやわらかな草を踏みしめていく。
音は立てぬように、姿は宵闇に紛れるように慎重に。
ときには派手な音を立てるカイルに注意を促しながら。
深緑色の草原は、どこまでも続くかのような錯覚をティアに与えた。
支援
ぼんやりとだが、確実に視界が明るくなっていく。
それは時間が経過して、朝が近くなったからではない。
「何だろ、アレ……?」
カイルの高い声が零したのと同時に、ティアの唇もまた「嘘」、という言葉を無意識のうちに紡いでいた。
――草原の向こうに広がるのは、銀世界。
白銀の雪原が確かにそこに存在していたのだ。
カイルが駆け寄っていくが、しかしティアはそれを追う事はせずまずはザックの中から地図を取り出す。
未だ距離はある、しかしレムの塔に勝るほどの高さを持つ塔。
地図を広げ、コンパスで方角を確認する。
その位置と距離、周りの風景を考えても、間違いなく今ティアとカイルが立っているのは目的地、E3の草原に間違いない。
ならば、目の前に広がるべきは雪原とは正反対の性質を持つ砂漠でなければおかしいはず。
しかし、晴れた夜空に浮かぶ月や星は輝きをしっかりと雪に反射している。
高すぎる塔の頂上は目が霞んでよく見えないが、月を貫くように聳えている。
ティアは暫く、開いた口が塞がらなかった。
「ティア」
カイルに名を呼ばれ、ようやく呼吸を思い出したティアは彼が無防備に手を振る方へ走った。
「カイル、止めなさい。……雪明りのせいで目立つわ」
「本当に雪だよコレ。地図じゃ砂漠だったよね?」
カイルが掌いっぱいに掴み挙げた雪は指の隙間からさらさらと零れていく。
その下に僅かに覗くのは間違いなく乾いた砂。
「……ええ。――信じられない」
ティアもまた雪を摘む。月明かりを浴びて煌く、美しすぎるほどの六花。
カイルは寧ろ疑いよりも好奇の念を以って雪と戯れていたが、ティアは違う。
ティアがその雪に抱いたのは、底知れぬ恐怖だ。
「……この雪……音素を感じられない」
万物は音素と元素に拠って構成されている。どちらが欠けても存在することはできない。
それがティアの世界、惑星オールドラントの常識だ。
ルークが音素乖離に因る消滅の危機に瀕したのも、その世界の理があったからこそ。
雪――即ち氷は元素として酸素と水素、音素として第四音素で構成されている。
譜術で作り出す氷は元素と音素の比率が通常より音素側に傾くが、構成内容は同じのはず。
しかし万物の根源、音素がティアの目の前に広がる雪原には感じられなかったのだ。微塵も。
在り得ない存在というものは、人に莫大な恐怖を齎す。
ティアの頬に、つうと一筋汗が流れた。
「オンソ? オンソって確か、フィールド・オブ・フォニムスで使うやつ……だよね」
ようやく雪遊びを止めたカイルはティアから受けた説明を思い出しながら呟く。
「ええ、そう……私たちの世界では、何が存在するにしても必要なものよ。なのに、この雪にはそれがない……」
「ふーん……オレには普通の雪と同じように見えるけどなあ」
支援
英雄王ウッドロウの治めるファンダリアや、1000年前の天地戦争時代。
そこで見、踏みしめ、雪合戦までしたそれとの違いがカイルには分からなかった。
もし今も雪が降り続けていたままだったら、カイルは雪を運んでいた風の違和感に気付けたかもしれない。
雪がここまで広く降り積もった原因のひとつは、彼に馴染み深いソーディアンのコアクリスタルの力に因るからだ。
だが吹雪はもう止んで何時間も経つ。僅かに残る晶力を感じ取るにはカイルの素養では適わない。
「オレとティアがここに連れてこられる前の世界は『違う世界』なんだよね? だったら、この雪も『ティアの世界の雪』と違うだけなんじゃないかな」
しかしカイルの言うことは尤なものだった。
ティアがフィールド・オブ・フォニムスの説明を行った際、カイルは音素についての一切の知識も持っていなかった。
だからカイルの世界では、雪に第四音素は必要ない。全てのものに音素は必要ない。ティアはそう結論付ける。
道化師の用意した、この世界でも同じ理屈で――そう考えれば確かに、目の前の雪の辻褄は合う。
(でも、何か引っかかる……あらゆる世界の、それぞれの理屈が別個に存在する世界なんてあるのかしら?
それほどの力をあの道化師は持っている……? ううん、違う。違和感はそこじゃない。
……砂漠に積もった雪。第四音素。元素。音素。フィールド・オブ・フォニムス。カイルの世界。私の世界、オールドラント……)
ティアの心に存在する、何かの引っかかり。
(レムの塔――私の世界に存在する建造物。それがここに存在する性質や理屈を確かめれば或いは――?)
「そういえばさ」
ティアの思考を中断させたのはカイルの声だ。
身体についた雪を払いながら、考えるように額に右手をあてている。
「北西から感じたなんかの力……アレ、オレはもうさっぱり感じなくなっちゃったんだけど、ティアは感じる?」
雪原と化した砂漠や、そのもっと西にある森を見回しながらカイルは言う。
ティアは少しばかり瞼を下ろし神経を集中させた後、ゆっくりと首を横に振った。
「……ごめんなさい。私ももう、何も感じないわ。放送の少し前もほんの一瞬だったし……
継続的な力でないということは、何か強大な攻撃術の可能性もあるわね」
そう、例えば、ティアに死の恐怖を味わわせたシゼルが使った術のように。
「あれもさ、レンズの力でもなかったし、ティアの言うオンソの力でもなかった……んだよね」
「そうよ」
「もしかしたらさ、あの力がこの雪を降らせたのかもしれなくない?」
雪を見つめるカイルの眼差しは真剣そのものだ。
理解力は少々足りないが、閃く力は十分に持っているのがカイルだ。
砂漠という環境を無視して雪を積もらせるに余りある力が確かにあの時、二人には感じられたのだ。
「でも、あの力とこの雪……感じが違いすぎる気がするわ。北西に感じた力はむしろ、シゼルの使った術に似ていた……そんな気がする」
「じゃあシゼルが……あの人が森に行ったってこと?」
「可能性はあるわね」
シゼルの力ならば、あれほど強大な力を発することが出来ても不思議ではない。
ティアがそう考えたのは、ダオスに力を貸し与えたエターニアの時の晶霊ゼクンドゥスの力に因る。
もちろんティアもカイルも知らぬ真実では、主に西の森で爆発したものはマナと云う名の力だ。
しかしお互い同士ロクに交流を持たぬ二人がマナという言葉を知るはずもない。
そんな中で僅かなヒントになり得たのは、シゼルの行使した晶霊術のみだった。
ティアがシゼルの力と爆発した力を関係付けた理由はそれだけではない。
ティアの中に深く残るシゼルへの恐怖と、そしてもう一つ。
『これ以上西に行きたくない』。
その思いがそう結論付けていた。
「だから西の森に行くのは危険が伴うわ。私たちには武器がない。出来るだけ早く武器を見つけて、信頼できる仲間と合流する。それを優先すべきよ」
カイルは表情を悔しそうに歪める。
父親のように英雄となり、誰かを守る力が欲しいと覚えた剣術。しかしそれは武器がなければ何の役にも立たない。
「そうだわ……きっとハスタはこの雪につられて北へ進路を取ったんだわ。
私たち、無我夢中で逃げていたから忘れていたけど、昼からずっと、北の空が曇っていたの覚えている?」
そのティアの台詞は、彼女にとっては誘導を目的とするものだった。
私たちには武器がない。
殺し合いに乗ったハスタは武器を持っている。
そのハスタを殺したものが付近にいる可能性が高い。
それをやんわりと伝えることによって、カイルの興味を名も知らぬ塔から逸らし、レムの塔へ彼の機嫌を損なわせることなく向かうための。
(……少し、自己中心的すぎるわね、私)
ティアは自嘲するように眉尻を下げる。
カイルの気持ちを無視し、レムの塔に向かうことばかり考えている自身がとても卑怯で姑息な存在に思えた。
しかしカイルは――ティアの思うとおりには動いてくれなかった。
――というか、ティアの真意を読めるほどの能力が、カイルにはなかった。
「そうだ、シャルティエ」
息を呑んだカイルが真っ直ぐに見据えた先は……あろうことか、北方向一面に広がる砂漠だったのだ。
「シャルティエがいたんだ。ハスタが持ってた剣! オレの仲間の大切な剣なんだよ」
「剣……」
僅かな思案の後にティアの記憶から掘り起こされるは、ハスタと出会った一場面。
突きつけられた剣にカイルが悲鳴のような声を上げたのだ。「シャルティエ」と。
「ハスタが持っていたもの……?」
「そう、ソレ! ハスタが死んだなら、ハスタの死んだ場所に落ちてるかもしれない!!
もしかしたら別の誰かが持っているかもしれない。だからこっち方面探してみる価値はあると思うんだ。
武器を入手するにしても、誰か殺し合いに乗ってない人と合流するにしても!」
強い意志の篭められたカイルの言葉に、ティアは動揺を隠せなかった。
もうカイルは完全に決断を下していた。
雪原の上を進むことを。当初の目的どおり、人が集まるであろう建造物、砂漠の中心の塔へ向かうことを。
「まっ、待ちなさいカイル! 砂漠をこんな軽装で越えるのは危険よ。それに得体の知れない雪まで積もってる……」
「でもさ」
ぐっと拳を握り締め、ティアの瞳を見据えるカイルの少年らしい大きな瞳。
そこには一切の迷いや疑い、そして――私欲なんて見えなかった。
「誰かがオレたちを待ってるかもしれない。この雪はその目印かもしれない。
もしかしたら、雪のせいで動けなくなってしまっているのかもしれない。
そんな人がいるって可能性を考えたら、ここで見捨てるわけにはいかないと思うんだ。
そんなことしたら英雄じゃない。オレやティアの、大切な仲間がこの先にいるかもしれないんだ」
そこに存在するのは、純粋な正義感。
理想論に過ぎないと一笑に伏せられる程度のそれなのに、ティアの胸中に渦巻く罪悪感が邪魔をして反論をすることができなかった。
しばしの沈黙。西風は相変わらずティアの長い髪を美しく東へと靡かせる。
「……分かったわ」
前髪を押さえながら、ティアは呼気とともに声を吐き出した。
「ただし……人がいるか確認して、安全を確かめてからよ。
私の予想が正しければ、この雪は昼から積もってる。人がいるなら足跡や、なんらかの痕跡が残っているはず。
それで人がいなかったら……直ぐに東へ行くわよ。出来れば朝が来る前に、最低でも橋は渡ってしまいたいの」
「ありがとう……ティア」
ティアの言葉にカイルは輝かんばかりの笑顔を浮かべる。
その後紡がれた、「ティアの仲間に会えるといいね」という言葉に、またティアの中で罪の意識にも似た感情が頭をもたげるのだった。
ヴァイオリンやチェロにも似たデザインの、こげ茶を基調とした信託の盾騎士団の音律士の制服。
ティアは再びその服に身を包む。
大きく入ったスリットから覗く、うら若き乙女特有の柔らかい太腿は……濃紺に染まっている。
ノースリーブのためむき出しの小さな肩の滑らかな肌も……濃紺だ。
もちろん、夜の闇の暗さのせいではない。
カイルもまた、羽模様のワッペンのついた赤い上着を身に着ける。
いわゆる『別の世界』ではロニカイルの服やらロニカイルークの服として悪名高いヘソ出しファッション。
しかしカイルのある種魅惑的なヘソや腹筋は赤い布の下に隠れてしまっている。
その手の人にはたまらないだろうワキの下も……ティアと同じく、濃紺色に染まっている。
「……ちょっと、ヘン、じゃないかしら、流石にこれは」
「そうかな、結構あったかいよオレは」
雪の積もった夜の砂漠を歩くことに決めたカイルとティアは、アビスマンスーツでは心許ないと考え着替えることを選択した。
しかし、彼らの服装は、過酷な砂漠且つ雪原を越えるにはあまりにも――露出度が高すぎたのである。
防寒と肌の保護を優先して考え付いた結果がこの奇妙な格好、即ち――
着替えだと。支援
――アビスマンの全身タイツの上から、元々着ていた服を着るということ。
(たっ、確かにそりゃあ、肌が露出しない分あたたかいけど……)
どうにも落ち着かない感覚がティアの全身を支配する。
ぴっちりと身体を包むアビスピンクのコスチュームの上から着た軍服はごわごわして気持ちが悪い。
ティアの服より更にぴっちりとしたカイルの服なら、その不快感は遥かに上を行くだろう。
しかしカイルは持ち前の順応力の高さと無頓着、無神経さでそれを克服していた。
あちこちがヘンな風に皺の寄っている服を着る二人の姿。
それは例えば――あくまでもたとえ話だが、彼らの目指す塔の上から双眼鏡か何かで覗いていたりすればよほど滑稽なものに見えるだろう。
しかし文句を言っては居られない状況に置かれているのがティア・グランツ、本名メシュティアリカ・アウラ・フェンデ18歳である。
ここで足を踏み出すのを躊躇っていればレムの塔に着く時間はどんどん遅くなる一方なのだ。
意を決して、ティアは未だ慣れぬ服の着心地を我慢しながら雪原へと足を踏み入れる。
念には念を入れ、カイルの風の術を用い足跡を粉雪で上書きしながら。
そうして塔目掛けて真っ直ぐに進んで暫く。
ティアとカイルは見つけてしまうのだ。
塔の入り口に続く、自分たちのものではない二揃いの足跡を。
「足跡だ」
しっかりと残された足跡は北の方角から続いているように見えた。
塔の向こうの北方向には、広がる雪原と朝霧にぼやける城の尖塔らしきものが窺えるだけ。
「塔に入ってくときの足跡だけ残ってる……ってことは、誰かいるんだ、中に!」
ぐっと拳を握るカイルの表情に、ティアは複雑な思いを抱く。
「でも……この二人、無防備すぎるわ。大きさから考えて男性のものでしょうけど……
足跡を残したままなんて、殺し合いに乗った人を呼び寄せかねない」
「じゃあ、オレたちが危ないってこと、教えてあげないと!」
「あっ、カイル!!」
入り口へ向かい一直線に駆け出したカイルを、ティアは止められなかった。
――誰か人がいたら、塔に入る。いなかったら、レムの塔へ向かう。
それもまた、ティアの出した提案であり、カイルとの約束なのだ。
ティアは詰まるような息苦しさすら感じる胸を掴みながら、それでもカイルの後を追うことを選んだ。
服についた粉雪を払う。雪はきれいに払い落とすことができた。
(――そういえば、服が全然濡れてない……?)
ロニール雪山を登ったときは確か、靴の中に雪が入って、タイツが濡れて濡れて仕方なかったはずなのに。
しかし今とあの時では服装が違う。第一全身タイツの上ロングブーツで、積もっているだけの雪が足まで濡らすわけがない。
冷静な彼女がそう考えてしまったのは、16年間障気に満たされた魔界で過ごし、外界に出たことが殆どなかった環境故。
(それに……もしかしたら、ルークが中にいるかもしれない。そう考えた方が楽になるわ)
ティアは己を奮い立たせ、カイルの背中を追う。
支援は夢を叶える魔法
ここでティアとカイルが塔の周囲をもっと入念に調べていれば、少なくとも無謀な突入をせずに済んだかもしれない。
何故なら、二揃いの足跡の歩んできた先には、彼らを襲った、
そしてソーディアン・シャルティエを手にしていたハスタ・エクステルミの惨殺死体が横たわっていたからだ。
しかし悲しいかな、遠目からではその場所はただ雪が積もっているかのようにしか見えなかったのだ。
原因は皮肉にも、数時間前にキール・ツァイベルが展開し、カイルの探し人の一人であるロニ・デュナミスも同乗したエアリアルボード。
風晶霊の巻き起こした力はハスタの死体に巻き上げた粉雪の化粧を施した。
その周囲に舞う血色の雪やピンク色の髪やら肉やらを覆い隠すように。
目の前に聳える天を貫く塔の名は、東の山々から覗き始めた眩しい光の象徴。
――黎明の名を冠する塔。
しかしその名を、そこに待つものを、彼らは知らない。
【カイル・デュナミス 生存確認】
状態:HP100% TP85% 焦燥感 小さな反発心 ナナリーとルーティの死にショック 強くあろうとする大きな正義感
所持品:アビスレッドのコスチューム(仮面は外してます) カイルの服(アビスレッドの上から重ね着)
他アビスマンのコスチューム ブリザードマグ
基本行動方針:殺し合いをやめさせる。仲間にもアビススーツを着させたい(強制はしない)
第一行動方針:塔の中を確かめる。殺し合いに乗っていない人がいれば仲間になってもらう
第二行動方針:仲間が気になる
第三行動方針:シャルティエの安否が心配。
第四行動方針:FOF!(略)輝いてるぜ!
現在位置:D3黎明の塔入り口
【ティア・グランツ 生存確認】
状態:HP100% TP95% 緊張 強い焦燥感 小さな反発心と罪悪感
所持品:アビスピンクのコスチューム(仮面は外してます) ティアの服(アビスピンクの上から重ね着) ロリポップ
基本行動方針:ルーク達と殺し合いに乗っていない人を探す
第一行動方針:黎明の塔の中の様子を確かめる。危険を感じたら即退避。
第二行動方針:レムの塔へ出来るだけ早く向かいたい
第三行動方針:「それぞれの世界の理」と「会場の理」と「雪」に対する疑問、違和感の原因に答えを出したい
現在位置:D3黎明の塔入り口
投下終了です。支援ありがとうございました
投下乙です。
カイルはやっぱりバカイルなのかw
投下乙!
アビスマンそこ入っちゃらめえええ
そして遂にふて寝ミクたんに出番か?
投下乙でした
二人ともだめぇぇぇ!その塔危険すぎる!
しかし着替え……アビスマンのままみっくんと会うよりは、緊張感が保てる…かな?
投下乙
これは服が破けるフラグですね。
ミクトランおめでとう!
アビスマンはシゼルといいミクトランといい幸運値が異常だな。
塔周りが色々怪しくなってきて不穏すぎる。
投下乙です!
その塔らめえぇぇ!!逃げてー!
ティアの歳が18になってるのが気になる
>>270 エンディングの最後のシーンが本編の2年後で、それの直前みたいだから問題なし
最近投下ないと思ってたら一気に二つ来てた。
書き手さん投下乙
チェルシーえぐいよチェルシー。
テイルズのプロデューサーに見えたよ。
……カイウス黒歴史的な意味で。
冗談は置いといて14歳の女の子がグロ死体見て責任感じちゃえばこうなるかもな。
カイウスとチェルシーは想い人も死んでるし、ヤバいぞ。持ち直せるのか。
トマト和みトリオの急落に衝撃を隠せない。
アビスマンキターー(・∀・)!!
アビスマンの地雷踏み率は尊敬せざる得ない。
でも罠だらけだからね。危険を感じても逃げられなさそうな予感。むしろ待ちぼうけミクトランが逃がさんw
武器もないしアビスマンピンチ!
シャルティエの空回り具合に涙するしかない。
援軍誰か来てえええええええ
投下乙です。
んぎゃぁぁぁぁ!!
アビスマン大ピンチ!!
そっちにいっちゃ、らめぇぇぇぇぇ!!
と、それはさておき、一点だけ気になった事が
アビスの「音素」は「オンソ」ではなく「フォニム」と発音するのでは?
表記を「オンソ」にすることで、カイルの知識の理解しきれていない曖昧さを
表現したかったのなら、「フォニム」ではなく「ふぉにむ」にすれば
何とかそのあたりも表現できるとおもうんだけど…
余計な御世話だったら、この書き込みは無視してくれ。
投下乙。
シャルティエ拾えなかったのは痛かったな……ロクな武装が無い。
これでは遭遇しても瞬殺フラグだな
乙です。
カイルの台詞ナチュラルすぎていちいち脳内再生されたwしかしヴェイグサーンとカイルが出会うのか…ゴクリ
ファーストとは真逆の感じか
アビスレッド カイル
アビスピンク ティア
アビスシルバー ヴェイグ
アビスイエロー(カレー) ミクトラン
完璧じゃないか
投下乙
人は違えどなんだかんだでミクトランの思惑通り朝に人が来たな
考察も進んでるだろうかね。シャルがカイルに気付けばなんとか…
>>277 アビスマンはイエローがなくてオレンジなんだぜ
アビスマンにはオレンジがあるのかw
俺の知る限り過去のスーパー戦隊シリーズにオレンジが出ていた記憶はないが、
アビスマンはなかなか斬新なカラーリングをしてるんだな。
(一応今年のスーパー戦隊には、6号ロボにオレンジのカラーリングの奴はいるが)
カイティア書き手です。
>>273 ご指摘の通りですorz 投下直後に気付いて避難所に修正依頼お願いして来ました。
「おんそ」ってタイピングして「音素」って変換してるもんなんでうっかり。
今後は気をつけます。ご迷惑おかけしました。
シャーリィの蝶便利だな。
他にもジルバの超獣能力と首輪探知機もあるから、限りなく優位に立てる。
やっぱフォルス持ちとかシャーリーとか能力持ちは有利だなぁ
蝶だけに超便利!なんてね!
クレス、キール、アーリア自重w
いや死んだのはクレスだけだから全部クレスだろw
早く死者スレに連れ戻せw
ゆるしてクレッス
アーリアってギャグ言うんだ…
アーリア「ヤスカに行きヤスカ」
クレス「アルベイン流究極奥義!僕は絶対にダオスをダオす!」
この一連の流れに吹いたwwwwwww
でもそろそろ自重汁!
一応チェスターも偶に親父ギャグ言うんだが
ほとんど忘れ去られてるな
ミクトランの家の周りに人たくさんだな。
アビスマンといいルーク達も森目指すなら、家は素通りしないだろうし
シャーリィの蝶や混乱中のチャット達、gdgdなカイウス組、北上中のアガーテ達・・・
ミクトラン良かったね
それ全部一気に押しかけてきたらミクトラン大ピンチなような気もするが
なに、気にすることはない
世界の中心ミクトランさんだから大丈夫だよ!
ひぐらしを思い出すんだ・・・トラップマスターの幼女が軍人を大量に倒していたことを。
ミクトランさんちょっと一センチぐらい浮けるし、逃げるとき雪に阻まれなくて有利
ミクトラン=幼女ですね、わかります。
いちいち話題にのぼるミクトランに嫉妬。
そういやこのミクトランは手羽先かダンスマンか確定してたっけ?
金髪三つ編みって書いてあった気がする。
容姿はリメだね。塔の上は三つ編みコンビだったのか…
三つ編み同士引かれるモンでもあったんだろうか
名前でなんとなくツインテールの青い髪の某歌ロイドを連想してた
ネギはミクトランのために出てきた食材だと思っていたのは良い思い出
ミクトランは金髪なのでヴェイグさんにはクレアに見えてます。
ヴェイグ「クレアッー!」
ミクトラン「よさんかああぁぁー!」
ですねわかります
投下します。
後ろから温かい風が吹き抜ける。私は振り向いて、後ろに広がる空を仰いだ。
直径一メートル半程度の鉄球が岩盤に直撃する様な音が、断続して辺りに轟いていた。
いや、微妙なニュアンスの違いがあるかも知れない。
或いは撃ち出された碇が岸壁に突き刺さる音か……いやいや、それもまた分かり辛いか。
孰れにせよ、とんでもない轟音が何度か響いていた。けれども私は耳を塞がない。
そうする事すら億劫だったし、私は星を見る事に夢中だったから。
土煙のカーテンが私の視界の隅から浸食して行く。
ベージュと黄とが入り混じった様な、形容し難い色彩が私の足元を貪る。
寂しさの胃の中に私は浸る。天翔る星が彼方にかげろう。
あの星影を、この島に居る誰かも見たのだろうか。
刹那の幻に儚い想いを寄せつつ、私は瞼をゆっくりと閉じる。
私が赦免を請うべき人が瞼の裏側に立っていた。私はそれを引いて瞼を開く。
頭の中から轢かれる音、心の中で歪む個、結局取り残されるのは私なのかも知れない。
胸の奥がちくりと痛んだ気がした。次に瞳を閉じた時、その人は何処かに消えてしまっていた。
私は敢えて忘れる事にする。忘れない事も出来たけれど、ね。
時間が波の様に、全部を向こう側に流しさってくれれば、いいのにな。
「そうすれば、全部簡単なのに」
私は静かにそう呟いて、右手の指先で前髪を押さえながら身を翻す。
土煙の中心に深紫の影が見えた。一度蒼い光が煌めいて、粒子の雪が私の肌を掠める。
衝撃の波が私の全身を打ち付けた。私は息苦しさを感じる。圧迫感はあまり好きじゃない。
滄我の力と未知の力が周囲に満ちて行く。煌めく蒼の拳と紅の陣が紫を織り成した。
お兄ちゃんが渾身の掌底を繰り出す。
ジルバさんの術で強化された拳、あれを身体に食らうと堪ったものではないんだろうな。
―――迫撃戦吼。
それは敵の身体の外部と内部を破壊する事だけに特化した、とっておきの重い一撃だ。
ゼロ距離で放たれたそれが止どめを刺す。皹が蜘蛛の巣状に石畳を走った。
途端に崩れ落ちる全長十数メートルの石橋。
お湯が沸騰する音をうんと低くし、うんと“硬く”した様な音が私の全身を包んだ。
轟音はびりびりと私の肌を刺す。谷底で濁流が荒れる音がした。
私は瞬きも忘れてぼんやりとお兄ちゃんの背中を見つめた。
穴を開けてしまいかねない程熱心に見つめた。
何か大切な事を忘れている気がする。けれど、何を忘れたのかを忘れてしまったから。
だから、それが本当に大切なものだったのか。それをよく思い出せない。
孰れ私は、忘れた事すら忘れてしまうのだろうか。そうなんだろうなと漠然と思う。
多分その時、忘れた事は忘れた事で無くなる。記憶が消えた時、私の背後の現実は死ぬ。
私の前に広がる現実だけが、きっと私の現実になる。
ふと私は目線を上げた。ジルバさんとお兄ちゃんが煙を破って私の方へと足を進めている。
声が聞こえる。陣術とか爪術とか、フォルスやクライマックスモードやら秘奥義やら。
そんな事を動作を交えて説明し合いながら、二人はこっちに近付いていた。
「……て、事だよな。それで確かあれがフォルスじゃなく陣術か」
未知の力についてジルバさんと盛り上がるお兄ちゃん。
……こんな短時間で打ち解けられるジルバさんにちょっとだけ嫉妬した。
はっ! ま、真逆お兄ちゃんは熟女趣味のケモn……い、いや、違う。断じて違うってば!
ち、違う……よね? だ、だよね!?
「なるほどな。描くから詠唱が要らないのか。でも、陣術、か。不思議な気分だったよ」
私は少しだけの懐疑心と嫉妬に胸の奥を焦がしてしまい、唇を尖らせる。
少しだけ、ジルバさんにまで嫉妬してしまう自分が嫌になった。
「支援魔法とはまた違った、こう、中からじゃなく外部から力を沸き上げられた様な」
……ジルバさんの不思議な雰囲気は、人を引き付ける。私にもそんな力があればいいのにな。
嫌になった途端に今度はそんな風に思ってしまい、
私は頭を左右に振って気を紛らわせる様に、お兄ちゃん、と呼ぶ。
「あれならお前が言う“インフィニティア・ストライク”……或いは、確かに可能かも知れないな」
反応無し。ちょっと頭に来た。私は腰に両拳を当て、強めにお兄ちゃん、と呼ぶ。
お兄ちゃんは肩を跳ねさせ、はっとした様に私の元へ駆けて来た。
「悪い、待たせたなシャーリィ。……何怒ってんだ?」
そう言って首を傾げるお兄ちゃん。私はわざとらしく頬を膨らませてみる。
「……何でもないです」
お兄ちゃんの方からは見えないけれど、奥でジルバさんが笑いを堪えている。
何もかもを見透かされた気分になって、私は目を地面に滑らせた。
……頬がちょっとだけ熱い。
「? そうか? ……あ。だいぶ騒がしくやったけど、敵は大丈夫だったか?」
私は瞳を閉じて掌を翳す。淡い海色の光が瞳を閉じていても目前に在る事が分かった。
橋を落とすのはお兄ちゃんの提案だった。
何でも東の大陸との分断だとか、戦闘中の乱入を避けるとか何とか。
ジルバさんは少しだけ思案する様子を見せて同意した。実験したい事もあったらしい。
兎も角、そうして私は見張りを任された。作業には如何しても音や煙が出るから。
と言っても、視線だけでは如何しようもない。
だから私は、橋を中心に球状に無数のテルクェスを配置した。
「どうですシャーリィさん?」
ジルバさんの声が聞こえる。テルクェスについて余り知らないから心配なのかも知れない。
だから私は瞼を上げ、優しく微笑みながら口を開いた。
「うん。ダイジョウブ」
うん、大丈夫。
「そうか、良かった。……じゃあ早速でシャーリィには凄く悪いんだが。
先に言った通りそれをこの地図の場所に探索用にして送って欲しいんだが、大丈夫か?
あ、取り敢えず行き先の塔は中に配置を頼む」
私は頷き、任せて、と笑う。お兄ちゃんも微笑んでくれた。
私は爪を煌めかせ、蝶を操る。これが中々、難しかったり。
不意に後ろから冷たい風が吹き抜ける。私はもう振り向かなかったし、空も仰がなかった。
私の背筋はぴりぴりと痛んだ。何処かに埋もれた何かが、疼く。
けれど、と私は一歩踏み出す。
「行こうか、ジルバ、シャーリィ」
微笑みと共に漏れたお兄ちゃんのその声を聞いて、
「……うん」
引き返せる訳がない。
「そうだね」
私は両手を合わせて、遠く見える海と空が混ざる地平線に祈る。
おかしな話だと思った。何に何故祈っているのかも、きっと忘れてしまったのにね。
私はそうして、また一歩を踏み出す。
「それでも私は、幸せになりたい」
ジルバさんとお兄ちゃんの大きな背を見ながら呟いたその一言は、私の耳にも届かない。
ジルバさんの耳がぴくりと動いた気がした。
……そうして暫く歩いた時、私の指先と心臓が少しだけ跳ねる。
どうか触らない様に。そう祈れば触る人が出てしまう。
半ば世界の理に近いのかも知れない。如何にも人の願いは成就しない傾向にある様だ。
足を止めた私を心配して、ジルバさんがお兄ちゃんを止めた。ジルバさんは優しい。
如何した、と訊かれて私は咄嗟に何でもないよ、と微笑む。
きっとこれは伝えてはいけない。だからこれで良かったんだと自分に言い聞かせた。
そんな事普通の人間だったら分かる事。だから私は見逃そうと思った。
私を吊るしたサスペンダー。一個が外れて、何処かに噛み付いている。
歩数を重ねれば重ねる程に、確かに遠くはなるけれど。引っ張られる力も増して行く。
(御免なさい)
(大丈夫)
(もう)
(諦めた)
(正しいとか)
(違うとか)
(仕方無いんじゃないの)
(救いたい) (けど)
(駄目だから) (多分)
(妬ましくて)
(まぁ) (遅いか)
(早いかでしょ)
(戻れる)
(きっと) (だけど)
(ううん)
(だから) (選択が)
(怖いから。だから、)
(賭けてみよう)
「お兄ちゃん」
再び立ち止まって、お兄ちゃんを呼ぶ。お兄ちゃんとジルバさんは同時に振り向いた。
笑って振り向けた。だから、半分は私の負け。
ねぇ、お兄ちゃんにはどんな景色が見えてるんだろうね。私はまだ怖くて見れないよ。
でも、お兄ちゃんが見てる景色なら、きっと綺麗なんだろうなと思う。
私はお兄ちゃんの肩の向こう側を眺めてみる。
焼かれた金色に揺れる遥か彼方の水面は、ちっとも私を迎えない。
薄汚れた灰の空を仰ぐ。けれども私は構わないと思ったから。
私、お兄ちゃんの事が好きだから。お兄ちゃんと一緒に居たいだけなんだよ。
お兄ちゃんを近くに感じたいだけだから。お兄ちゃんが居ればもう何も求めないから。
だから、例え偶像が愚像だったとしても、私は構わないよ。
だって貴方が居る場所、そこが私の楽園だもの。
「テルクェスが反応したよ」
―――目の前に広がるのは深淵だけど、ね。
【セネル・クーリッジ 生存確認】
状態:HP80% TP80% 全身に擦り傷、切り傷 強い決意 ジルバを信頼
所持品:シルバーガントレット(TOR) 草刈鎌 ジェミニシェルの片割れ
時を駆ける少年の人形 すずのザック ウインドブーツ(GDロープと同じ効果)
基本行動方針:シャーリィを優勝させる
第一行動方針:ジルバを“利用”し、参加者を慎重且つ確実に殺す
第二行動方針:テルクェスが反応したD4へ向かう。その後片を付けて黎明の塔へ
第三行動方針:クロエやノーマとの接触は出来れば避けたい
現在位置:D5→D4へ
【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
状態:HP100% TP90% 仲間の死によるショック 精神的に疲労強大 ベスト無し
罪の意識 自分の意思で行動することに躊躇 賭けた
所持品:クライマックスボトル 首輪探知機 ジェミニシェルの片割れ
基本行動方針:セネルの望むままに行動
第一行動方針:テルクェスが反応したD4へ向かう。その後片を付けて黎明の塔へ
現在位置:D5→D4へ
【ジルバ・マディガン 生存確認】
状態:HP70% TP95% 身体中に裂傷 背中に軽度の火傷 全身打撲 シャーリィに僅かな不安
所持品:ステラのサック シャーリィのベスト 睡眠薬 遅効性の毒薬(回りきるまで3、4時間程度)
毒薬入りの水 鞭代わりの蔦
基本行動方針:ステルスマーダーとして行動。上手く立ち回る
第一行動方針:セネルとシャーリィを利用する
第二行動方針:セネルは訊いたので、移動しながらシャーリィの戦闘能力について詳しく訊きたい
第三行動方針:テルクェスが反応したD4へ向かう。その後片を付けて黎明の塔へ
第四行動方針:己を知る者とクロエとの接触は避け、セネルたちを誘導する
現在位置:D5→D4へ
Notice:シャーリィによりテルクェスが放たれました。場所、数は未知数です。
ジルバの地図に配置は印してありますが、シャーリィが従っていないかもしれません。
尚、セネルとジルバは戦闘スキルや情報を詳しく交換しました。
シャーリィはテルクェス以外は情報未交換です。
またD5橋が完全に崩落しました。渓谷になっているので河を泳いで渡るか、
上を飛んで行かなければ向こう岸には渡れません。
【セネル・クーリッジ 生存確認】
状態:HP80% TP80% 全身に傷 強い決意 ジルバを信頼
所持品:シルバーガントレット(TOR) 草刈鎌 ジェミニシェルの片割れ
時を駆ける少年の人形 すずのザック ウイングドブーツ(GDロープと同じ効果)
基本行動方針:シャーリィを優勝させる
第一行動方針:ジルバを“利用”し、参加者を慎重且つ確実に殺す
第二行動方針:テルクェスが反応したD4へ向かう。その後片を付けて黎明の塔へ
第三行動方針:クロエやノーマとの接触は出来れば避けたい
現在位置:D5→D4へ
【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
状態:HP100% TP90% 仲間の死によるショック 精神的に疲労強大 ベスト無し
罪の意識 自分の意思で行動することに躊躇 賭けた
所持品:クライマックスボトル 首輪探知機 ジェミニシェルの片割れ
基本行動方針:セネルの望むままに行動
第一行動方針:テルクェスが反応したD4へ向かう。その後片を付けて黎明の塔へ
現在位置:D5→D4へ
【ジルバ・マディガン 生存確認】
状態:HP70% TP95% 身体中に裂傷 背中に軽度の火傷 全身打撲 シャーリィに僅かな不安
所持品:ステラのサック シャーリィのベスト 睡眠薬 遅効性の毒薬(回りきるまで3、4時間程度)
毒薬入りの水 鞭代わりの蔦
基本行動方針:ステルスマーダーとして行動。上手く立ち回る
第一行動方針:セネルとシャーリィを利用する
第二行動方針:セネルは訊いたので、移動しながらシャーリィの戦闘能力について詳しく訊きたい
第三行動方針:テルクェスが反応したD4へ向かう。その後片を付けて黎明の塔へ
第四行動方針:己を知る者とクロエとの接触は避け、セネルたちを誘導する
現在位置:D5→D4へ
Notice:シャーリィによりテルクェスが放たれました。場所、数は未知数です。
ジルバの地図に配置は印してありますが、シャーリィが従っていないかもしれません。
尚、セネルとジルバは戦闘スキルや情報を詳しく交換しました。
シャーリィはテルクェス以外は情報未交換です。
またD5橋が完全に崩落しました。渓谷になっているので河を泳いで渡るか、
上を飛んで行かなければ向こう岸には渡れません。
投下終了。
分裂!これからどうなるのやら・・・。
乙です。
【橋 死亡確認】
投下乙。橋お疲れ様。
お前を利用したのはデクス、アビスマン、エミルぐらいだったな。
シャーリィに最近萌えてきた。
投下乙
テルクェス厄介すぎる…
とにかくチェルシーとカイウス逃げろ!
そして橋お疲れ様。死者スレで安らかに…?
乙。
なんていうか塔付近はセンサー地獄だな。
水さすみたいだが橋って石橋?
和風な奴イメージしてたんだが…
投下乙
これで北からしか東西の行き来が出来ない訳か…
そしてお兄ちゃん秘奥義フラグww
投下乙。
ジルバとセネルTP減ってないのはあえてかい?
なんかシャーリィ可愛いなw
これがお兄ちゃん効果か
投下乙!
軽く嫉妬するシャーリィかわいいよシャーリィ
そして捕捉されたカイウス達がどうなるか…
これは必ずしもカイウス固定な訳?
同じエリアのロニかも知れないな。
>>319 TPは±0なんじゃないか?朝の描写があるから、回復分と消費分が一致したんだと思うぜ。
ぶるぁぁぁぁぁぁぁ!!
テルクェスなんか使ってんじゃねぇ!!
>>322 そうじゃない?
チェルシーが目の前飛んでた蝶に触っちゃったんだろ
いくつも探索に出したらしいから後付けは可能
だな。斜め上にぶっ飛んだ展開期待。
明日は土曜だしな。ここんとこ寡作だからすごいの来たらいいな。
テルクェスに手をのばした、みたいに書かれてたけど、
完全に触れてたのか?
わからんな。まぁ何にせよ、あまりメタ的な事話すのはよそうぜ。書き手さん方が書き辛くなっちまうよ。
もしかしたらジルバから塔の内部の捜索も指示されてて、ミクトランが触った可能性もあるということだ。
蝶を追い掛ける天井王見たいです。
>>330 反応したのはD4って書いてある
D4にいるのはシゼル カイウス チェルシー ロニ
あとは…わかるな
シゼルが触った可能性も無きにしもあらずだが
そういえばセネルが塔の内部にも指示してたな。
ギアス組と蝶と三つ編み組、ロニと蝶とショタロリ組とセネル組、おまけに西の森の大家族が絡むとなれば黎明の塔周辺は大混戦だな。
深夜の塔周辺の様子が嘘のようだ。
もしかしたら洞窟組もぎりぎりあるかもじゃまいか。
時間差ならロニや森と夜明け組くらい違うみたいだしさ。
もしもテルクェス反応したのがカイウスとチェルシーだったらちょっと怖い。
チャットのセネルが心配行動方針が生かされるかもな。
そうしてもチャットにセネル忘れてたフォローさせないといけないが。
…それどころじゃないか。
あれ?チャットって実は疫病神じゃね?
まあ、最初らへんで足手まとい扱いされたしね。
しっかし、D地区はよく混戦になるね。今もそうだし、この先もこうなりそう。それにこの辺は死体が多い。
D4に二つほど転がってるエクスフィアとかな!
チャットはあの技が使えれば強キャラになるんだけどな…
パラライボールですね
わかります
チャットのピコハンはアレどういう位置づけなんだ
アレは晶霊物質的なにかなのかそれともバッグに秘密があるのか
魔法的な物だったらシャルティエ使えばエタ−ナルスロー出来そうだが
あ、でもチャットがこれは技術だ的なこと習得時言ってたな
超シリアスな局面で起死回生の秘奥義がエンドレスピコハンとか癒されるなw
マイソロで新しく秘奥義追加されたキャラもいるよね。
スパーダはあのシュールさが良かったのにまともになりやがって・・・
投下は…まだなのだろうか…
続きが気になるんだぜ
年末だからねぇ
気長に待とうぜ。作者さん達も難しいんだろ、キャラによって時系列がずれまくってるから
だな。根詰めすぎて風邪ひいたとかになられてもアレだし。
筆が進む都市伝説に従って全裸とか…はないよな、さすがに。
密集してるから周りが書かれないと書けないキャラも多そうだ。
特に東の火事?と水浴びとデスク。
そういえば今日はチャットの日?
書き手氏諸兄に現況尋ねるってありなん?
クリスマス投下に期待
サンタさんが来るんですね、わかります
聖夜の悲劇ね… ある意味じゃ嫌なサンタだな
年賀状のノルマ終わった人から投下ですね、わかります。
年賀状を書く予定がないのは自分だけですね、わかります。
喪中に年賀状なんて書いちゃいけない
さてさて、今年もクリスマスがやってきましたね。
何々? 今年もテイルズロワ恒例記念日投下があるかって?
え え 勿 論 で す と も よ 。
……では一足早いですが、聖なる夜に皆様に些細なプレゼントをば。出来れば支援を願います。
21:20分から、ゆったり投下なのでケーキ片手に支援してやって下さいませ。
354 :
1枚目 1:2008/12/24(水) 21:22:33 ID:JHDFfm4VO
召喚士クラース=F=レスターは頭をゆっくりと後ろに下げ、深呼吸を二、三繰り返した。
バスケットの中に置いたランタンの淡い光が、風呂上がりの彼の瞳を煌めかせる。
暗闇は度々畏怖の対象として挙げられる。
それは、何もかもを同一にしてしまう危険性を孕んでいるからだ。
闇は全てを黒く塗りつぶしてしまう。輪郭も、血飛沫も、希望も絶望も、命さえもだ。
クラースは目線と共に頭を元の在るべき位置に戻す。
左に揺れる仄かな灯はほんの僅かな暖かさを肌に差し出した。
吹けば消えてしまいそうな焔。儚くも懸命に照らそうと努めるそれをクラースは一瞥する。
暗闇を前に、焔はこんなにも脆弱な存在だ。けれども、照らす事で物質を、個を確立出来る。
だからこそ光は、灯は。そこに在るだけで希望の象徴として機能するのだろうから。
首に掛けたタオルから匂う柔軟剤の香りを鼻腔に感じつつ、クラースはそう思った。
けれども、とクラースはヘアゴムを口に咥え、両手で胸まで垂れたタオルの両端を掴む。
……けれども、あらゆる個が光で確立される中、唯一確立<安定>出来ないものがある。
―――自分自身だ。
自分を自分で見る事は出来ない。完全に把握する事は出来ない。
定める事も出来なければ認める事は出来ない。ましてや裁くなんて烏滸がましい事だ。
或いは人が孤独を感じるのは、そこに鍵があるのかも知れないな、とクラースは思う。
それはそれで面白い研究テーマだったが、クラースはその題目を追究する気にはなれなかった。
心理分野は心理学者に任せておけば良いのだ。人には、それぞれに役割があるのだから。
不意に水滴の音がした。クラースは開いた引き戸の向こう側を振り向く。
纏まった前髪が右側に十三ミリ動いた。水晶の珠の様になった水滴がその先から虚空に弾ける。
そうして、柔らかな橙から漆黒へと呑まれるのだ。
目前には延々と暗闇が続いていた。
申し分ばかりの光しか発しないランタンでは、流石に隣の小部屋までは照らせない。
濡れた頭にタオルを被せ、クラースはバスケットの中のランタンに手を伸ばした。
僅かな金属音が部屋を反響した。音の反響具合から、この部屋がそこまで広く無い事が分かる。
バスルームなのだから当然と言えば当然だった。
消え入りそうな橙が、クラースの手の動きと呼応してゆらゆらと揺らめく。
球状に広がる明かりが、ぽっかりと開いた地獄を彷彿とさせる漆黒の向こう側を照らした。
355 :
1枚目 2:2008/12/24(水) 21:26:01 ID:JHDFfm4VO
遠近感を取り戻したクラースは、目を細めてランタンを目前まで掲げる。
クラースの右半分を強い光が覆う。とぷん、と内部で油が揺れる音を聞いた。
濡れた白壁の向こう側に、音源は存在した。シャワーの噴出口から水滴が落ちていたのだ。
クラースは唇の端から溜息を零し、左手で蛇口を強く閉める。何を期待していた訳でも無いのだが。
クラースは踵を返し、洗面所に戻った。すっかり冷めた身体を思い出し、僅かに身震いする。
もう己は若くは無い。湯冷めの結果、翌日風邪……何て下らない。
そんなものは勘弁願いたいものだが、冗談では済まされないのが何とも齢を感じてしまう。
白いタオルで濡れた身体を拭きながら、クラースは何気なく目前の鏡へと一瞥をやった。
漆黒の中、鏡面に僅かに映るものはペインティングが浮かんだ中年の顔だった。
当然だろう、とクラースは自嘲する。何故なら己が見ているのだから。
もう一度だけ、クラースは何かを確認する様に目を凝らし、鏡を見る。
皺の一本一本が深かった。私はこんな顔をしていたのだろうか、とクラースは眉を顰める。
誰が如何見ても、鏡の中のクラース=F=レスターは酷く疲れた表情をしていた。
クラースは表情を曇らせる。一層暗く深い影が顔に落ちた気がした。
それが理由なのか口実なのかは甚だ疑問ではあるのだが、“無意識に”目線を逸す。
クラースは親指と人差し指で髪の水分を絞り、咥えていたヘアゴムを手に取った。
後ろに手を回し、半乾きの髪を結わえる。男性の割には慣れた手付きだった。
そうしてふとクラースが前を見やると、矢張りクラースはその曇った目でクラースを見ているのである。
クラースは少しだけ不思議な気分に襲われた。
確かに目の前の人物はクラース=F=レスターに相違無い。
けれども映し出された姿は虚像。その本質は“真”ではなく“偽”なのだ。
認識する己は、あくまでも歪んだ表面の一つを模倣した姿に過ぎない。
言ってしまえば、光子が及ぼす一瞬の科学現象。単なる光のいたずらなのである。
そこに真実は毛程も存在し得ないのだ。
クラースは虚像側の自分の肌に指先をつうと這わせた。
近い様で遠く、触っている様で触れない。
人差し指をして感じたものは、人肌とは似ても似つかぬ硝子の温度そのものだった。
「人は不完全なんだろうな、きっと」
呟いた言葉は、誰に向けたものだったのだろう。
「完全に感じる事が出来るのは、恐らく他人だけだ」
支援
>>353 こういう前ふりいらねぇ…
あともう書けるだろう
>>353 ねちねち文句言って悪いが
プレゼント
ってどれだけ自分のに自信あるんだよ…
だったらねちねち言うな
気分が墜ちるわ
wktk
未だ終われない。クラースは漠然とそう思う。
ゆっくりと瞼を降ろしてみた。今でも網膜に焼き付いている、色褪せぬ日々。
たかがゴキブリ退治の為に仲間と技を使い騒いだ事。
船の中で浴びる程酒を飲んだ事。
鍾乳洞の前で××料理人の殺人料理を食べさせられた事。
下らないダジャレを言い出したり妙なナレーションを入れ出す仲間と過ごした事。
熱さの余りウンディーネを呼び出した事。
寒さの余りイフリートを呼び出した事。
暗さの余りアスカを呼び出した事。
超古大都市で時空を越える装置に出会った事。
何故か罠に嵌まっていた忍者の少女と出会った事。
欲を言ってオリジンに彼女の様子を見せて貰った事。
皆でダオスを倒し、その後彼の壮絶な歴史を知った事。
惜しみつつも、皆と今生の別れを遂げた事。
それから、それから。それから―――……、、、 、 、 、 、不意に覚えた圧迫感に息が詰まりそうになった。
仲間との数々の輝かしい思い出も、今となっては過去の産物だ。
人一人が生きて行くには“此所”は狭過ぎて、光は儚過ぎて。
けれども茫漠と目前に横たわる闇は、余りにも広く、深く、強大だった。
「……本当に良い奴だった。クレスも、すずも。本当に、良い奴等だったよ」
そう呟き、クラースは鏡の中に映った懐中時計を一瞥する。
「ミラルド。私はそれでも、真実を知るべきなのだろうか」
虚像の中の時計は、何かを思い出した様に慌てて午前二時を指し示した。
支援
【the ace of spades】
寝転がっていた若草色のソファーからゆっくりと起き上がり、左腕を低い天井に伸ばす。
右手を頭の後ろに回り込ませ二の腕を掴み、両腕に外側へと力を入れる。俗に言われる“伸び”と云うヤツだ。
伸びと云うものは本当に不思議なもので、身体の芯が得も言われぬ快感で刺激される。
誰に教わった訳でも無いのだが、人も犬も猫も、剰えブッシュベイビーですら伸びを知っている。
本能とでも言うべきなのだろうか。
成程、これはこれで下らない研究テーマに成りそうだ。私は強く閉じた目を開く。
少しだけ指先やあらゆる身体の関節を曲げてみるが思った様に動かない。
確かに、随分前に流れた趣味の悪い目覚まし時計の音で眠気は吹き飛んでしまった。
だが、どうやら限界まで私の底に堪った疲労が綺麗さっぱり取れた訳では無いらしい。
所詮は睡眠だ。時間さえ割けば大した苦労もせずに得られる回復手段。
支援。
その程度にそこまでの癒しを期待する方が、野暮と云うものだろう。
……ましてや精神的回復をそこに求めるなど愚の極みだ。
他力本願は好きではないのでな。
その上、私はもう世辞にも若いとは言えない身体をしている。
何せマッハ中年と言われる始末だ。
おっさんと言われてはさしもの私もプライドがあるので一応訂正はするが、自らの身体の衰えを一番自覚しているのは、他ならぬ私なのだ。
だから或いは時さえくれば。
その時は……、…………。
私は鼻で老体を笑うと、髪を手櫛で梳く。
どうやらもう乾いたらしい。
私は自らの鳴子の音を聴きながら、帽子を頭に被せた。
矢張りこれが無いと落ち着かない。
欠伸を一つ、暗闇の中で浮かべる。
目の奥が少しだけ熱を帯びた。
勿論、感情的な理由ではなく生理的な理由だ。
私は余り涙に脆い方ではない。
老いると涙腺が緩くなるとは誰が言った言葉だったか。
あれは実は都市伝説なのかも知れない。
私は少しだけ苦笑を浮かべると天井を仰いだ。
何時からだろうか。
天井の染みまで、怖い程までにはっきりと見える様になってしまったのは。
私は机の上の白いカップを手に取る。
風呂上がりに入れたコーヒーは冷たくなっていた。
モリスン邸の台所から拝借したコーヒーだ。
調味料一式の中に紛れていたのを偶然発見した。
揺れる黒い水面に映る自分の顔は、表面張力により少しだけふくよかで、笑える。
私はカップを口元に運んだ。余り進まなかったが、私はそれを一気に飲み干す。
程よい苦みが口の中に広がり、その内喉がごくり、と音を上げた。
私以外に誰も居ない台所は、まるで生気を何処かに置き忘れて来てしまったかの様にしんとしていた。
フォッグから漠然とだが聞いていた昼の盛り上がりを考えると、きっとこれは嘘の様な静けさなのだろう。
それでも耳を澄ませば時折聞こえる水の音。
滴り弾けるそれは私を安心させた。
私がまだ此所で生きている事を、存在している事を確りと教えてくれるからだ。
我ながら不器用で間接的な安定証明だった。
生憎、直接的な証明手段を持ち合わせていないので当然と言えば当然なのだが。
蛇口から二十六秒毎に垂れ、ステンレスに弾ける滴の音は、故に心地良い。
しかし、同時にそれは私に不安を擦り付けるのも、また確かだった。
私が未だにこの悪魔の脚本<ゲーム>の駒なのだ、と嫌でも再認識させられてしまうからだ。
酷い話だった。
私が安定と存在、生存を求めれば求める程に、裏側の安定と存在が証明される。
そして、私の例の仮説もまた、確固たるものに近付いて行くのだ。
それは傷口を抉られる以上に堪え難い程の苦痛であり、同時にこの上無い皮肉だった。
私は僅かな月明りを頼りに羊皮紙を捲る。
ランタンの灯は既に消してしまった。
シルヴァラントとテセアラ。
私の世界の夜を照らす威光よりも、こちらの世界のそれはやや明るい。
モリスン邸のキッチンから繋がる居間には窓が多く、その上大きかった。
月明りが窓を介して部屋に充分に入って来る以上は、ランタンには特に必要性が無いのだ。
実を言うと最初は、暗さもあり眠気に負けてしまうのではなかろうかと不安を抱いていた。
コーヒーを入れたのも、その為に拠る部分も在ると言えば在る。
が、不思議と眠気は無かった。それこそ驚く程に。
無論疲れは確かに在るのだが。
私は埃っぽいソファーに深く腰を落とすと、帽子の鍔を僅かに指で上げる。
揮発性のインク特有の臭いが鼻腔をついた。
私は机に放り出されたペンにキャップをする。ことり、とペンを木製の机に置く。
ペンは少しだけ手前に転がり、やがて静止した。如何やらこの家か机は手前側に傾いているらしい。
私は溜息を吐き目線を少しだけずらす。
羊皮紙に綴られたメモ、五十四枚目。
そこに印された六文字が私の網膜に焼き付いて離れない。“何故私なのか”。
それは予てからの疑問だった。
何故アーチェやチェスターではなく、私なのだろうか。単純な疑問だった。
単に殺し合いをさせるなら、私を呼ぶ必要性は薄い。
苦悩を見たいなら、尚の事だ。
私の様な腰がある程度座った者では愉しくもないだろう。
若い人物の方が、迷いも揺らぎも見られる筈だ。にも関わらず、サイグローグは何故私を呼んだのだろうか。
最初はさほど気にも掛けなかった疑問だ。
世界、人物をアトランダムに呼び寄せたとも考えられる。
確かにそうだ。
しかし。
……しかし、精霊が呼べなかった。
指輪も一つを除いて手元には無かった。
おまけに死者が復活していた。
更に他世界の者と会話を通じさせられている。
極め付けにはマナを私に認識させている。
これらは一体全体、何故なのだろう。
そんな芸当が可能なら、私を呼ばない事も当然可能な筈だ。
そもそも私が居る所為で精霊と指輪を消さなければならないのだ。
常識的に考えて二度手間が過ぎる。
私を呼ばなければならなかったのか、それとも私を呼ばざるを得なかったのか。
はたまた、単なる偶然か。
或いはこの思考をあの忌々しい道化師が愉しむ為か。
そもそも、御丁寧に私へと指輪を一つだけ渡す時点で奇妙だった。
指輪を奪取した理由は、それが支給品と成り得るからだろう。
想像に容易だ。
しかし、サックの中の私の支給品は幸か不幸か“三つ”だった。
それが情けにしても、“指輪を入れて三つ”にならなければルールと矛盾してしまう。
そして、そうまでしてサイグローグが私にオパールの指輪を寄越した理由は一つだ。
私に精霊を召喚させ、シルフが出ない事を証明させたかったからに他ならない。
しかし、私にそうさせる事で奴にどんな利益があると言うのだろうか。
客観的に見ても、私だけが異質なのは確かだ。
マナの件も、オパールの指輪の件も然り。
だが解せない。忌わしき道化師サイグローグよ、お前の目的は何だ?
私を使って貴様は一体、何を成そうとしている?
このふざけた殺戮ゲーム<バトル・ロワイアル>を開催した理由とは、いや。
「バトル・ロワイアルとは、そもそも何だ?」
部屋を反響して耳に入って来た声が震えている事に気付く。
し え ん
簡単な事だった。
……私は、恐れているのだ。
これ以上の真実を知る事に。
予想出来る最悪のケェスが真実なのだと知ってしまう事が、如何しようもなく怖いのだ。
全てを知ってしまったその時、きっと楽園は奈落へと反転する。
相対しているのだ、背中合わせなのだ。
私が見ているこの景色と、影に埋もれた血塗れた世界は、きっと。
全てを知ったその時、私は私としてこの舞台に存在出来ていないのかも、知れない。
息を吐きつつ、ゆっくりと瞼を降ろす。
細やかな光が閉ざされて行く。
ブラックアウトして行く視界の先、澱んだ水底には、私が求めた筈の歪んだ実像があった。
私はそうして、まどろみの焔に深く深く墜ちて行く。
ぱちりと揺らいだ黒炎、その燻る闇の深淵に仮面を携えた道化師が見えた気がした。
支援。
373 :
@代理:2008/12/24(水) 23:33:50 ID:8++J/qV5O
まず初めに、作者さん申し訳ありませんでした。
題名間違えた上に、勝手に改行や区切りを変えてしまって
すみません。
あと申し訳無いのですが、用事があるので、誰か続き投下お願いします
【the queen of hearts】
うっすらと、暗闇を世界が満たして行く。最初は亀裂、少し楕円形になりやがて覚醒。
クラースは僅かに唸り、とびきり大きな欠伸を一つだけ零した。
何か、とてつもなく悪い夢を見ていた気がする。
ぐっしょりと濡れた両手と背中に顔を顰めつつ、クラースはそう思った。
「折角シャワーを浴びたのに、これでは台無しも良いところだな、全く」
自嘲と共に悪態を小さく吐きつつ、クラースは首の関節をぽきりと鳴らす。
悪夢からクラースを浮上させたものは、廊下が軋む音だった。
ぼやけた思考を直す為、頭を左右に振り、クラースは傍らの時計を見る。
未だ二時四十九分だ。クラースはソファーに腰を沈めたまま揺れた暖簾の方へと首を回す。
「……何だ、もう起きたのか。まだ二時間も経ってないぞ? 真逆、一時間間違えたのか?」
暖簾から顔を出したのは大柄な男だった。派手なブロンドの髪は暗闇でも良く目立つ。
「何が起きるか分からない。しっかりと寝ておくべきだと私は思うがね」
額のエラーラをランタン代わりに僅かに淡く光らせ、
自由軍シルエシカの首領フォッグは軽く会釈をする。
「おぅ、ちとアレをな」
身体に似合わず嗄れた情けない声を上げるフォッグに、クラースは些か微笑ましさを覚えた。
付き合いはまだ御世辞にも長いとは言えないが、
フォッグの大体の人間性をクラースは把握しているつもりだった。
極度のボキャブラリー貧困、それでいて大らかで物腰も座っている。
何より力に満ち溢れていた。クラースが疎ましく感じる程までに。
けれどもそれはクラースの主観だ。
フォッグは憂いを感じさせない良い人間だと云う事実に変わりはない。
「……小便か?」
クラースは腕を組み少しだけ思案する様子を見せ、やがて柔らかな口調でそう零した。
フォッグは暗闇でも眩しい程の白い歯をクラースに見せ、にかっと笑う。
「そう、ソレ!」
がはは、と全身を揺らしながら高笑いするフォッグに、クラースは肩の力を抜いた。
いや。抜かされた、と表現する方が正しいのかも知れない。
見ているだけで不安や悩みを如何でも良く感じさせてしまう人間とは、中々如何して珍しい。
「で、アレを探してんだがよ、何処に在るか分かるか?」
アレ、とは恐らくトイレの事だろう。
眉を斜め下に下げながら呟くフォッグに、手振りを交えながらクラースは説明する。
「あぁ、トイレならそっちの扉を抜けて廊下の突き当たりだ。
暗いから気を付け……いや、貴方にはソレがあるから大丈夫か」
フォッグの額から発せられる淡い光を見てクラースはそう朗らかに笑う。
ああ、それと鍵が壊れていたから気をつけろよ、と付け加え、クラースは帽子の鍔を上げた。
あんがとよ、と言い踵を返すフォッグの礼に頷くと、クラースは揺れる暖簾をぼうっと見つめる。
―――……色々な事を考えた。これからの為にも、もし最悪の局面に出会した対処とか。
自分が犠牲になる方法とか、殺人鬼へのシフトのタイミングとか。
首輪解除の方法とか、サイグローグと対峙した時に問い質すべき内容とか。
呪縛から逃れる方法とか、楽な自殺の方法とか、ミラルドの事とか。
脱出する方法とか、した場合とか、望む下らない日常とか。本当に、色々な事を考えた。
分かった事は、“失いたくない”。こんな些細な一時を、私が私で居られる今を。
愛する人の幸せを、大切な仲間達を、その笑顔を、希望と可能性に溢れた他者の未来を……―――
クラースは縁を金色で装飾された空のコーヒーカップに目線を移す。
底に渇いたコーヒーが三日月状に黒く溜まっていた。
……そうクラースが思えたのは、ある種の達観が存在するから、なのかも知れない。
他を大切に思えるのは、他の未来を思えるのは、誰かを想えるのは、今を思えるのは。
きっとクラース=F=レスター本人が何処かで己を諦めているからだ。
クラースの中では、恐らく自分自身の未来の道は既に閉ざされている。
人は、人無しでは生きていけない。
殺人鬼でもそうだ。殺す相手が居なければ殺人鬼として機能せず、生きられない。
孤独を感じるのは、満たされた他人が居るからだ。幸せを感じるのは、不幸な他人が居るからだ。
人と云う生命体はありとあらゆる他者の存在で成立している。世は人の連関で廻っている。
故にそれは宇宙の真理。生命体として生まれ落ちた瞬間から持つ宿命。
現在のクラースの場合、限られた今を生きる為に、他の幸せを願う。
今を生きたいから、今居たいから、他を失いたくないと願う。
無論、奪う事にシフトしないだけ未だマシだ。
が、それは故に誰にも気付けないクラースの抱え込む闇だった。
他と相対すべき個のベクトルが水平から僅か上にズレてしまっているだけなのだ。
孰れ遠く離れると知りながらも、クラースは語らない。これは彼の最大の我儘だった。
クラースが今を笑っている為には、他者が笑わなければならない必要性があった。
クラースがクラースとして生きるには、
他者が他者として生きていなければならない必要性があった。
「おう、目ェ冴えちまったな」
その図太い声にクラースは現実に引き戻される。見上げると目前にフォッグが立っていた。
再びあのにかっとした笑顔をクラースに見せつつ、
フォッグは濡れた両手をぶらぶらさせながら周りを見渡した。
「……ん。まぁ、二時間寝れば充分だろうな。お互いそういう年齢だろう。
……掛けたらどうだろう、フォッグ殿?」
机を挟んで向かい側のソファーを掌で勧める。
おぅとだけフォッグは呟き、どかっとソファーに腰を下ろした。
僅かに机の上のコーヒーカップが揺れ、クラースは慌てて両手で押さえる。
ふう、と一息吐き、やれやれと一言。
埃は舞い上がり、差し込む月明りに白銀の衣装を与えられ、漆黒の舞台で踊る。
如何して今まで気付かなかったのか、クラースは急に肌寒さを感じて身震いをした。
「少し……寒くなったな」
二の腕を手で擦りつつ、クラースは口を開いた。
「アレをアレすりゃいいんじゃねェのか?」
フォッグは唸り、顎でストーブを指し示して応える。
クラースは呼応する様にそうだな、と頷いた。
「よっこらせっと……歳を取ると寒さに弱くなっていかんな、全く」
ソファーから起き上がり、クラースはストーブの銀色の金網を開ける。
きい、と金属の関節部分が細い音を上げた。
灯油は未だ中に有るらしいとメーターが告げている。
サックを漁ろうとクラースがソファーへと振り返ると、
ライターが宙を舞っていて僅かに焦る。
フォッグが寄越したのだと理解し、クラースは慌てて両手でライターを受け取った。
「っと、すまないね。
……しかしエミルの様な若さが欲しいものだ。切実な願いだよ」
右手の弾きに呼応して、かちりとライターが石を打つ。
気化した灯油の臭いがストーブと至近距離で接するクラースの鼻腔を刺激した。
ぼう、と一気に広がる焔を確認し、金網を下ろしながら、クラースは立ち上がった。
ライターをフォッグに放る。綺麗な放物線を描きながら進むライターをフォッグは見上げた。
「貴方はそうは思わないかい?」
ぱしりとフォッグの右手に収まったライターを認めると、クラースはそう投げ掛けた。
ポケットにライターを仕舞い、フォッグはソファーに腰掛けるクラースへと顔を向ける。
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「おう? あー、俺様はまだまだ若いつもりだかんな。歳なんざアレだ!」
豪快な笑い声に、クラースはストーブに翳していた両手を上げてやれやれと呟く。
「私には無理だな。フォッグ殿の様な考え方は、到底出来ないよ」
クラースは机上の羊皮紙の束を手に取り、縦と横をとんとんと揃える。
それらを丸めてサックに入れた処で、あ、と間抜けな声が口から転げ落ちた。
フォッグが何事かと片眉を吊り上げる。
「そうだった。フォッグ殿、調味料を漁っていて“良い物”を見つけたんだが。
……どうだい?」
クラースの炯々とした眼光は悪巧みに満ちている。
フォッグは思い当たる節があるのかにたりと笑った。
大人にだけ通じる素敵な素敵な嗜好品の暗号だ。
手で小さな杯を形作り、クラースはくいとそれを動かす。フォッグが理解するには充分だった。
「フォッグ殿……一応貴方に」
「おう、まぁアレだぞ兄ちゃん! 堅苦しいのは止めにしようぜ。アレで行こう!」
低く、しかし強い口調でフォッグはクラースの言葉を遮る。
クラースにとってもそ有り難い言葉であり、無礼講か、と首を僅かに後ろに下げ微笑んだ。
「じゃあ、フォッグ。一応訊くが。あんた、アルコールは?」
ソファーから立上がり、台所へと足を進めながらクラースは言う。
がはは、と派手な哄笑をフォッグは漏らし、その厚い胸板をどんと叩いた。
「おぅ、ドンと任せとけ。アレには自信があるぜェ?」
クラースはその言葉に笑うと、台所の小窓を僅かに開ける。換気の為だ。
「私もさ。オーケイ、そう来なくちゃあ面白くないからな」
クラースは声のトーンを上げ、フォッグに背を向けたままそう言った。
どうせ下らないゲームの中。ならば今、この大人の時間を楽しまないのは野暮と云うものだ。
何せ、もう二度と楽しめないかも知れないのだから。
命の殺り取りをする戦場に於いて酒は非常識極まりないのだが。
まぁ、この際だ。さして気に掛ける事もないだろう、とクラースは前髪を弄りつつ思う。
「どうせもう使う事もない。拝借してもバチは当たらんだろうよ」
流し台の下の小さな扉を開け、クラースは奥に手を突っ込んだ。
放置しておくには随分勿体無い。破壊されるよりは飲まれた方がこいつらも喜ぶだろうさ。
「おぅ、アレは俺が用意しとくからな」
クラースの耳に床が軋む音と硝子同士がぶつかる音が聞こえた。
恐らくグラスの事だろうなとクラースは踏む。
「すまないね」
クラースは瓶の飲み口を右手で握り、それらを取り出してゆっくりと立ち上がった。
瓶同士が軽く衝突し、小気味好い音が鼓膜を揺らす。
全く、食いしん坊なのは子供も大人も変わらない。むしろ隠しているだけ大人の方が質が悪い。
瓶に映った苦笑いを浮かべる己の顔から目を逸らすと、クラースはフォッグへと振り向いた。
ブロンドの髪、その右側を揺れる橙が照らし、髪の隙間は揺れ動く闇の亀裂に見える。
クラースは不吉な想像に顔を顰め、気持ちを切り替える様に切り出した。
「よっと……ほぅら、ブランデーだ。ワインとどっちが良い?」
掲げられた右手には三本の瓶。ブランデーが二本にワインが一本だ。
淡い白銀の光に照らされたそれは、フォッグには大層旨そうに見えた。
舌根がじんわりと潤って行く様を感じる。フォッグは喜々として白い歯をクラースに見せた。
「おぅ? 三つもあんのか? そりゃあいい。漢なら全部いっちまおうぜ!」
足早にソファーまで帰り、机にことりと瓶を置くクラースはそれを聞き呆れた様に溜息を吐く。
けれども、悪い気はしなかった。むしろ心地良いのは何故だろうかとクラースは思う。
「両方とはまた……豪快な事だねぇフォッグ。だが呑み過ぎは注意しろよ?
少しだけなら良いだろうがな。口が五月蠅そうなリヒターも居ない事だし」
話を分かっているんだか分かっていないんだか、コルクを抜くフォッグの目は、
既に赤ワイン特有の澄んだ緋色で満たされていた。
「あ、エミルには黙っておいてくれよ。あいつはまだ未成年だからな。
ダメな大人の例を見せるべきじゃない」
帽子をソファーの傍らに放り投げ、クラースは腰を若草色のそれに沈ませる。
因みにエミルの本当の年齢はそれこそ数千年で、フォッグ達よりも遥か先輩なのだが、
それを酒に浮かれた彼等が知る事は、恐らく未だ当分無いだろう。
「おぅ、任せとけェ!」
ふとやたら上機嫌なフォッグを見ると、如何やら自分のグラスだけでなく、
己のグラスにもなみなみと赤ワインを注いでくれるつもりらしい。
クラースはすまないなと呟き頬杖を付く。左側にストーブの仄かな温かさを感じつつ、
クラースはとくんとくんと自らのグラスに注がれる赤ワインを見た。
ストーブの中で揺れる弱々しい焔を映し出すグラスは金色に輝いている。
ジャズやクラシック辺りの小洒落たBGMが欲しいな、とクラースは頭の片隅で思った。
酒は味も勿論の事だが、グラスから雰囲気まで蔑ろには出来ない。こだわりの様なものだ。
ふと目線を逸らし窓の外を見る。クラースの傍らではぱちぱちとストーブが音を上げていた。
揺れる黄なりのカーテンの向こう側には、聳える峻嶺に食われた二枚の月が構えている。
木製の鳴子が揺れ、乾いた音が空気に吸い込まれた。
戦いの予感など、何処を見ても微塵も感じさせない。紛れも無い平和な大人の夜だ。
それこそ、此所が殺し合いの舞台なのだと忘れてしまいそうな程までに。
「おぅ、注いだぞ」
クラースを現実へと引き戻すのは、皮肉にもそんな平和なやりとりだった。
歯茎を見せ笑うフォッグは、クラースの目には心底楽しそうに映る。
何故、フォッグはこんなにも楽しそうなのだろうとクラースは疑問に思った。
一歩間違えば鉄面皮なのだが、不思議とそうは思えない。
もしや無理をしているのではとも思った。
が、フォッグの無邪気で一片の曇りさえ見えない笑みは紛れも無い“本物”だ。
少なくとも、疑いの目を向けて掛かって良いものではなかった。
良くも悪くも純粋過ぎるのだ、この笑顔は。それでいて無垢だった。
だからこそ、つい邪推をしてしまう己をクラースは到底許せそうにはなかった。
得も言われぬ罪悪感がクラースの全身に伸し掛かり、苛む。
ぱちり、とストーブの内部から音がした。びくんとクラースは肩を揺らす。
クラースにはそれが自分を責めている音にしか聞こえなかったからだ。
続け様に、遠くから忘れ掛けていた水滴の音がクラースの耳に入る。
続く静寂よりも、滴が弾ける時の物悲しい音の方が、
ひしひしと強い孤独を感じさせる事にクラースははっと気付いた。
それは、水滴に拠りそこが静寂なのだと証明されるからに他ならない。
「……どうしたよ?」
対面のソファーに座るフォッグが、眉を下げつつクラースの顔を覗き込む。
激しい動悸を気取られまいと、クラースは手で口を隠し首を振る。
「何でもないさ。じゃあ、乾杯といこう」
おう、とフォッグが笑う。クラースはその度に痛む心を隠す様に、苦笑いを浮かべた。
「肴はこの糞くらえな世界の双月だがね」
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クラースは微笑混じりに皮肉を吐き、グラスを静かに掲げた。
ワイングラスではない辺り、フォッグの豪快さ加減が表れてるな、とクラースは思う。
無論、それを決して口には出さないのだが。
「んなもん関係ねェさ!」
皮肉にも動じず、フォッグはグラスを勢い良く掲げる。
その際僅かにワインが飛び散ったのだが、それはフォッグの御愛嬌だ。
「「乾杯……!」」
ちりん、とグラスが心地良い音を奏でる。
交わした酌は、少しだけクラースの心と、そこに刻まれた深い傷に染みた。
それはお互い、想い人とゆっくり交わすワインには到底及ばないだろうけれど。
語る小洒落た話題も無ければ、酔うべきものも無い、けれど。
それでも確かに、確かに特別な温かさを互いはこの瞬間に感じる事が出来た。
【the Jack of clubs】
クラースの僅かに染まった頬をフォッグは見つめる。
酒は少しだけだ、と困った様に宣ったのは一体全体何処の誰だったか。
最早その面影をクラースに望む事は出来ない。進んで呑んでいるのは彼なのだから。
酒を呑みたかったのではない。きっとクラースは縋りたかったのだろう。
時には酒を呑むのではなく、呑まれたい時だってある。恐らくクラースの場合、それが今だ。
フォッグは黒胡椒を振った硬いパンを摘み代わりに囓りながらそう思った。
言葉にするのは苦手だから、自分に出来る事はこの程度しかない。
しかしこれでクラースの元気が出るならば、とフォッグはクラースのグラスにブランデーを注ぐ。
無論フォッグは知らない。それがクラースの傷に塩を擦り込む事にも成っている事を。
しかし傷を癒しているのも確かであり。
それを実感しているクラースは、動揺を酔いで紛らわす術しか持ち合わせていなかった。
「そういやぁこれ、あんたが?」
クラースは台所に飾ってあったテーブルクロスを親指と人差し指の間で摘み、フォッグに見せる。
「おう? あぁ、ソレはその……アレだ。アレがアレだからよ」
とろんと座り掛けた目を寄越すクラースに、フォッグは頬を人差し指で掻きながら言い淀む。
頬の紅は照れに拠るものなのか、酒に拠るものなのか。
また、目が座っているのは酔っている為なのか、眠い為なのか。
クラースから見て、それは定かではなかった。
「そうか。しかし中々これは……はは」
クラースは身を翻しつつテーブルクロスを掲げ、窓辺の光に翳した。
からから、と鳴子がBGMの代わりとばかりに唄を歌う。
淡い白銀の光に照らされるは、名前が添えられた短い文章だ。
“寄せ書き”と云うヤツか、とクラースは目を凝らす。
モリスン邸に有ったペンで彩られたそれには、六人の想いが鏤められていた。
こんな子供染みた熱血直球っぷりは、
フォッグの所為に間違いは無いのだろうな、とクラースは笑う。
此所から別れる前、フォッグに急かされてこの文章を書いたであろう五人。
彼等は今、何処で何をしているのだろうか。この空の続く場所に足を立てて居るだろうか。
揺れるテーブルクロスの両端をぴんと張り、クラースは目を細める。
そうか、と思った。軌跡を遺す事で、人はそこに生きる事が出来る。
時としてそれは悲しい事だが、私には嬉しい事だ、とクラースは思った。
指先で弛んだテーブルクロスの皺を伸ばす様に、クラースは文字を、彼女らの軌跡をなぞる。
『―――必ずやウッドロウ様に会ってサイグローグを倒してみせます!
チェルシー=トーン』
ピンク色の丸い文字は、筆主が少女なのだと伺わせる。
彼女の願いが天に通じれば良いのだがな、とクラースは切に思う。
大切な人への想いは、性別の壁を易々と越えるものだ。
『―――――ルビアと会って必ず俺が守る! そして皆と一緒にサイグローグを倒すんだ!
カイウス=クォールズ』
緑色のマジックでそう綴った筆主の少年の願いは、果たして叶ったのだろうか。
私に出来る事は、祈る事以外には残念だが何もないな、とクラースは弱々しく笑う。
『―――――――人々が幸福であれば私は満足です。
エルレイン
↑硬い! 硬い、硬過ぎるヨエルレイン! もっとこうさ、あるでしょ!?』
偉く達筆な青い文字は、如何やら大人の女性が書いたものらしく、クラースは目を丸くした。
随分スケールが大きくなったな、と純粋にクラースは驚く。
このゲームの中その想いを貫けるのは、ある意味尊敬に値する。
『――――サイグローグをブッ潰せ!!
俺様!!』
筆ペンで中心に馬鹿みたいに大きく、
おまけに荒々しく書き殴られたそれは、如何にもフォッグらしい。
本気でそれだけを目標にしているのだろう。素直と言うか何と言うか。
クラースは表情だけで柔らかな笑みを浮かべる。
耳を澄ませば、純朴な高笑いが文字から聞こえて来る様だった。
『――――――――えと、ボクは……正直に言ってまだよく分からない。
だけど、ユージーンやクレアさんの為にも頑張るヨ! くよくよしてられない!
マオ』
滾る焔を彷彿とさせる真紅の文字に、私と同じだな、とクラースは呟いた。
彼は既に行くべき道を見つけているのだろうか。
出来ればそれが、勇敢な道である事を祈る。険しい道だが、若い人間には未来があるのだ。
クラースは少しだけ視線を上に上げ、鼻を啜る。
『――――――特に書く事も無いのだが……。敢えて書くならば、望む未来を諦めない事程度か。
クラトス=アウリオン
↑ちょっとぅ! 何良い人ぶってるんですかぁ!?』
はは、と思わず笑ってしまった。それでも、“諦めない”と云う言葉が胸に強く響く。
私も諦めはしないが、しかしそれは何処かで諦めている事にも同義なのだろうな。
そうクラースは考える。人は何かを棄てられるから、何かに縋り付く事が出来るのだ。
この紫の文字の主も、何かを棄てているのだろうか、とクラースは思った。
クラースは瞼を下ろし、すうと僅かに暖かくなった空気を肺に満たす。
<……分からない。だけどこれだけは言える。
アンタは『自分が出来ることをする』ためにこの屋敷まで来たんだ。そう言ってただろ>
そうだ、とクラースは思う。自分には出来る事が有る。だが、言葉で遊ぶなら逆も然りだ。
出来ない事も有る。それこそ出来る事よりも遥かに多く、星の数程存在する。
クラースは瞼を上げる。台所の天井は、座っている時に見るよりもずっと低く感じられた。
そう、幾ら試行錯誤しようと、無理な事はこの世に幾らでもある。理屈ではないのだ。
そして、それが不可能なのだと誰かに証明されるのを待つくらいならば。
最初から切り捨ててしまった方が、ずっとずっと楽な事も在る。
だから、真実を知り過ぎると碌な事には成らない。人生は追剥ぎだ。
進めば進む程棄てる物や奪われるものも増え、やがて得る物は無くなる。
限界を知るからだ。大人は嫌でも何時か成長を止める。滅びに向かう以上それは天命だ。
色々なものを破壊し、殺し、縋った最後の糸を偽者だと宣告される事程残酷な事は無い。
それでも、縋った最後の糸の先に在る真実を見たいのだ、とクラースは身を翻す。
勿論恐怖は絶えない。黒い予感があるからだ。犠牲も出るだろう事も想像に容易だった。
複雑な心境のままクラースは広がったテーブルクロスを四つ折りにし、ソファーに腰掛ける。
他に影響を及ぼさないまま出来る事がその程度しか残されていないならば。
「……。……しかし、青春時代を思い出すね。どれ、私も書こうか」
そう低く呟いたクラースへフォッグは何も言わず、自分の顎鬚を撫でている。
フォッグの目線は空になったワインの瓶を捉えていた。
クラースはテーブルの上に転がっていたペンを手に取り、器用にくるくると回す。
ワインの瓶越しに見えるクラースの右手を凝視しつつ、
フォッグは口に密着したグラスをくいと傾けた。
強いアルコールの風味と、丁度良い渋みがフォッグの口内に広がる。
キュッ、とマジックとテーブルクロスとが擦れる音。すらすらと動くクラースの右手。
フォッグはぼんやりと輝く己のグラスを机に置き、無言でブランデーを注いだ。
クラースは左手に持ったグラスになみなみと注がれているブランデーを鯨飲する。
「……っと、よし! 出来たぞ」
グラスが勢い良く机に叩き付けられる音と共に、クラースの軽快な声が台所を反響した。
はは、と笑いながら目を擦るクラースを、フォッグは神妙な面持ちで見つめる。
太いマーカーで存在を叫ぶ様に印されたそれは、きっと、彼に出来る最大の強がりに違いない。
「これで七つ目、だな。ラッキーセブンだ」
そう言って笑う焔に照されたクラースの横顔には、僅かな物悲しさが漂っていた。
【the king of diamonds】
フォッグは前屈みになっていた身体をソファーの背凭れに預ける。
ぎしり、とソファーの脚がフォッグの重さに悲鳴を上げた。
それに意をも介さず、フォッグは閑話に口を開く。隙間風が金髪を右に靡かせた。
「お前はアレはいるのか、その、アレだよアレ。大切な人……って奴だ」
酌を交わし合って暫く経った時、不意にストーブを見つめたままフォッグはそう切り出した。
思わず窓辺に立っていたクラースは噴き出してしまう。
大柄な男からセンチメンタルな話題が出るとは思ってもみなかったからだ。
唇の端を上げ、クラースは半笑いのままフォッグの横顔を一瞥する。
橙が反射した瞳はきらきらと白く輝いていた。
「どうしたんだ、いきなり」
笑いを含んだ声でクラースは訊く。此所で女性の話題は彼らしくもないと思った。
支援
フォッグは目玉だけをぐるりと回し、クラースの顔を見る。
「お前の目はアレな目だ。なんとなく分かんだよ、アレがな」
クラースは静かに三分の一程ブランデーが入ったグラスを机に置き、肩を窄めた。
その拍子に鳴子がからん、と音を上げる。
「相変わらず良く分からないな、あんたって人は」
クラースはソファーの背凭れ部分に置かれた帽子を頭に被せると、少しだけ笑みを浮かべた。
おう、と良く通る声で応えるフォッグの笑顔は矢張り純粋無垢だ。
クラースの良心が再びずきりと痛み出す。胸の奥、錆びた関節が僅かに軋んだ。
ある種で、クラースは己の身の保全の為に彼の笑顔を犠牲にしている。
もっと悪く言えば利用しているのだ。
だが、とクラースは瞼を閉じ、思考を切り替える様に畳み掛けた。
「で……フォッグ、あんたは如何なんだ?」
半分程空になったグラスの上に、逆さにしたブランデーの瓶を上下させながら、フォッグは笑った。
最後の一滴が落ちるのを確認した後、フォッグはおう、と胸を張りつつグラスを掲げる。
「居るぜ、自慢のかみさんだ」
くい、とグラスを口に預け、フォッグは目を細めた。
クラースは首の後ろに手を当て、天井を仰ぐ。
「そうか」
ミラルドは今、私が居ない家で如何しているだろう。
私が居なくなって心配はしていないだろうか。生徒達に手を焼いていないだろうか。
いやそれは無いな、と私は内心苦笑いを浮かべる。
アーリィでオリジンに頼み見せて貰った時も、彼女は何時もと変わらず元気にやっていた。
その内ひょっこり帰って来る、と笑い飛ばしていたくらいなのだ。
あの時の私は嬉しいやら悲しいやらで複雑な気分だったが、けれども、今は。
今だけは私にとって、それはこの上無く有り難い事だった。
彼女には、何時もと変わらず過ごして欲しい。我儘でも何でもなく、それは純粋な私の願いだ。
「私は……そう、だな。厳密には違うかも知れん。結婚も、その、していないしな」
二本目のブランデーをグラスに注ごうとしていたフォッグの手が止まる。
バツが悪そうに眉毛を下げて笑うクラースを、驚きに満ちた丸い目が貫いた。
「おおぅ? 結婚しねェのか? 馬鹿だなお前はよ! 早くしとくべきだぜ!?」
クラースはむっとした表情を浮かべる。クラースだって結婚がしたくない訳ではない。
「ば、馬鹿とは何だ馬鹿とは! 結婚だけが全てじゃないさ!」
言われなくとも分かっているのだ。もうこの歳だ。善は急げとも言う。
それでも、とクラースは拳を強く握り思う。
自分は如何しようもなく不器用で情けない男なのだ。だから結婚の一言も告げられない。
それを知らぬ他人に、ずかずかと土足で私情に入られるのは余り気分が良いものではなかった。
結果、クラースはフォッグに無神経さを感じてしまい、ついかっとなり口を開く。
「あんたは結婚だけで満足しているかも知れないが私は……私はだな……!」
酒が入っている事も相俟ってか、クラースの口から少し尖った言葉が発せられる。
クラースが気付いた時には後の祭りだった。
しゅんとしてしまったフォッグを見て、クラースも言葉を言い淀む。
眉を下げたフォッグの表情に、クラースの煮え滾っていた薬缶の水は温度を下げた様だった。
冷静になってみれば無神経なのは自分なのだ、とクラースは溜息を吐く。
「……悪かった、言い過ぎたよ。結婚への各々の価値観は主観で比較出来ない」
クラースは目線を逸らし、頭を掻きながら帽子の鍔を下げる。如何にもバツが悪い。
「お、おう……。いや俺こそアレだったな、悪ィ」
フォッグが頭を左右に振り、申し訳無さそうに零す。
気不味い空気がクラース達の間を流れた。クラースは窓の外へと視線を滑らせる。
如何やらこう云う場合はフォッグはとことん弱く成るらしい。
クラースは溜息を吐くと、帽子の鍔を少しだけ上げ、
上が切り取られた視界の中のフォッグを一瞥する。
その表情にとてもでは無いが居た堪れなくなり、咳払いを一つ零すクラース。
身体に纏われた鳴子の軽快な音が、咳払いと共に部屋の静寂を切り裂いた。
「あー……フォッグの片翼は、一体どんな人なんだい?」
出来れば教えて欲しい、とクラースはソファーに腰を下ろしながら続けた。
最初は、単なる澱んだ空気の緩和目的だった。そこに大した意味も無かったのだ。
「おう、アレで、絵が上手くて、綺麗でアレな奴だ。今は……行方不明だがな」
「……行方、な、何だって?」
一瞬、クラースは我が耳を疑い、勢い良くフォッグへと振り向く。
聞いた事に間違いが無ければ、重くてシリアス極まりない内容だ。
しかし、フォッグは肩を揺らして笑いながら、クラースの視線を迎え入れる。
「何も言わずに俺の元を飛び出しちまった。消息もアレも分からねェ」
空になった瓶を両手を弄りつつ、フォッグは唸る様にそう言い放った。
支援
クラースは目を白黒させる。何故笑顔でそんな事を言えるのだろう、と純粋に疑問に思った。
どう考えても悲しくない筈は無いのだ。フォッグだって心配な筈だ。
暖色に右を照されたフォッグの左側、影になっている部分を見ながらクラースはそう思った。
「すまないな。悪い事を訊いてしまった様だ……謝るよ」
慌てて手を訳も無く動かし取り繕うが、無駄な事だ。
今度はしょんぼりするのはクラースの番だった。フォッグに要らぬ心配を掛けてしまった。
その負い目から何とも情けない気分になってしまい、クラースは肩を大きく落とす。
「……おう? 気にする事ぁねェよ!」
フォッグはそんなクラースを見兼ねてか、豪快に憂いを笑い飛ばす様に声を張り上げた。
フォッグはゆっくりと全身を預けていた背凭れから身体を前に出す。
親指を飛び出させた握り拳を胸にどんと当て、フォッグは高らかに笑った。
「俺様はそれにアレよ、信じてるからな。
あいつは、リシテアの奴は絶対に俺様の元に帰ってくるってよ!」
クラースはそのフォッグの態度に言葉を失う。度肝を抜かれたのだ。
不動の精神力で如何にか成るレベルの話ではなかった。故にクラースは動揺を隠せない。
しかし何故ここまで自分が乱されるのか、それがクラースには分からなかった。
荒れた呼吸を整える様に、ブランデーが入ったグラスを口に運ぶ。
渇いた喉を潤す様に、天井を仰いで一気に飲み干すと、クラースは腕で粗暴に口元を拭う。
「……フォッグ、あんたは自分の元から居なくなった妻を信じられるのか?」
「おう! 勿論よ!」
間髪を入れない即答だった。自信に満ちた満面の笑みにクラースは唇を尖らせる。
何故断言が出来るのかが分からない。全くだ。理解が出来ない。
「不安は無いのか? 不満は?」
身を乗り出し、クラースは両手を目前に掲げ訴える様に疑問を投げ付けた。
無い、と頷くフォッグ。クラースは頭を左右に振る。
「……何、故」
くらぁ、と目前が陽炎の如く揺らぐ。全身の力が抜ける様な感覚にクラースは襲われた。
固くなった生唾を飲み込み、クラースは口を開く。
「何故だフォッグ、生死も分からないんだぞ? おまけにあんたに黙って飛び出したんだぞ?
怒りも何も無いのか? 何故笑って居られる? 理由は!?」
畳み掛ける様に疑問符を並べ、クラースはそれを丸ごとフォッグに放った。
唾が机に飛ぶも、まるで構わずぶち撒けた。途中に声が裏返った気がしなくもない。
体裁も気にせず口に任せた為か、全身の鳴子が喧しく不協和音を奏で出す。
しかしフォッグは嫌な顔一つせず、クラースの眼差しに向き合った。
そして、笑うのだ。それが如何したと言わんばかりの白い歯を見せ付けるのだ。
「おう、無ェな! ……あー、理由?
おう、よく分からねェが、“愛してるから”じゃ何か足りねェのか?」
そうして、さも当然そうにフォッグはそう言った。それが世界の真理であるかの様に。
クラースの全身を頭が殴られた様な衝撃が駆け巡る。それ程までの解だった。
反論も何も、常識も論理さえも。全てを拒絶する意思と想いの強さ。
彼の前には全ては形無しだろう、とクラースは思う。自分の様な頭の固い人物は特に、だ。
風格、器の大きさ。見ろクラース、これが自由を掲げる軍、シルエシカの首領フォッグだ。
クラースはか細い笑いを漏らし、帽子の天辺を掌で押さえる。
……見極めたよ、フォッグ。貴方の強さ。成程、私には無理な筈だった。
「……だが私には、到底理解出来ないな」
諦めた様にクラースはそう呟き、机の上のグラスを見つめる。
「おぅ? そうか?」
くい、と帽子を更に深く下げる。ブランデーの匂いが酷く間怠っこしく感じられた。
「そうさ」
静かに零されたそれは、クラース自身驚く程の弱々しい声だった。
此所は戦場だ。そんな事は分かっているだろう。クラースも、フォッグも。
しかし決定的な違いが存在した。フォッグは“天井を見ながらも何一つ諦めていない”。
全てを受け止めているのだ。理屈を理解しながらも、ゲーム<殺し合い>を理解しながらも。
既に人が死んでいる事も正面から受け止めている筈だ。
実際、クラースはフォッグからリッドの事を聞いている。リッドはフォッグの仲間だった。
それでもフォッグは屈していない。屈する素振りすら見せていない。
何かを棄てて何かを得るのではなく、全てを手中に収めようとしているのだ。
そしてそれが可能だと信じている、本気で。
でなければ如何して、ゲームの中に駒として参加しながらも、妻が自分の元へ帰るのだと。
信じているのだと、断言する事が出来ようか? 否、出来はしまい。
クラースから見れば、それは傲慢以外の何物でもなかった。
故にクラースは、帽子を下げる。堪え難い怒りを見せない為に。爆発させない為に。
しえん
クラースは確実にフォッグに嫉妬していた。胸の奥が痛む程までに。
しかしそこから生まれる怒りは、心地良くもあった。
無論情けなくもあれば、恨めしくもあし、怒りも有り余る程存在する。
しかしクラースはこの責め苦の中、心の何処かで、
「こんな時間が、永遠に続けばいいんだがな」
そう、思ってしまっていたのだ。それは我儘を超えた願いだ。
利用する為でもなく、隠匿する為でもなければ、身の保全の為でもない。
極限まで還元された純粋な願いの権化としての言葉だった。
「おぅ、続けてみせればいい。その気になりゃあ出来るだろうよ、幾らでもなァ!」
フォッグはそう言い、クラースのグラスにブランデーを注ぐ。
クラースは帽子に切り取られた視界の中、フォッグを見る事は出来なかった。
見たくなかった。
「……永遠なんて存在しないさ」
項垂れたまま、ついついそう呟いてしまう自分がクラースには呪わしく感じられた。
とくんとくん、とクラースの頭の向こう側から音が響いて来る。
音源はフォッグの持つ二本目のブランデーの瓶であろう事は想像に容易い。
……悩んだ挙げ句棄てたものは、諦めたものは、一朝一夕で取り戻せるものではない。
ましてやクラースはクラース=F=レスターだ。フォッグとは世界も違えば名前も違う。
体格も違えば仕事も違うし、人種も違う。喋る言語だって全く異なるものだ。
「故に私達は必死になって生きる。傷だらけになりながらも生きる。誰かに惹かれて、生きる。
だから今がこんなにも大切で、こんなにも悲しくて、こんなにも……切ないんだ」
震える声でクラースはぽつぽつと呟く。そう、自分はフォッグとは違う。
永遠を信じられる程強くなければ、今を生きるには他人が必要だ。
例えばこうしてフォッグと自分が話している様に。利用している様に。
「おう、でもよ。俺様は存在すると思うぜ、永遠ってヤツがな。
ま、よくわかんねェんだけどよ?」
私の視界に辛うじて入る様に、フォッグはグラスを机の上へと滑らせた。
揺れる茶色の水面を見ながら、クラースは何故そう言える、と呟いた。
フォッグは僅かに唸り、言葉を慎重に選ぶ様にゆっくりと切り出す。
「俺は永遠ってのは、アレよ。瞬間だと思ってんだよ。だからアレだし、存在すんだ」
この時のフォッグの声色は、少しだけ切なさを秘めていた様にクラースには思えた。
不意にクラースの隣で袋を叩く様な妙な音が跳ねる。
支 援
視界に入る橙が不自然に点滅し、ふらふらと挙動不審にしか見えない揺れ方で揺らいだ。
まるで速度の遅い走馬灯の様だな、とクラースは思う。
そう言えば余り灯油は入っていなかった。ならばそろそろ切れるのだろう。
「瞬間に在る可能性を諦めた時が、その“永遠”ってヤツの終わりなんじゃねェのか?」
クラースはフォッグの言葉に黙したまま、グラスを両手で包む様に握った。
ぎゅうと強く握った。
「なぁ、兄ちゃんよォ? なら、アレを信じてみるのも一つの手なんじゃねェのか。
諦めるのは、アレしてからでも遅かねェよ」
クラースは肩を僅かに揺らす。目を凝らさねば分からぬ揺れ幅だった。
けれどもフォッグは確りと分かっていた、言われなくとも。
クラースは力無く微笑んでみせた。他でもない自分に。
水面に映る自分の顔は偽物にしても、風が吹くと崩れそうな表情を良く真似ている。
「―――――あんたには、敵わないな」
クラースは震える唇を必死に歪め、自嘲しつつそう口にする。
クラースは項垂れたまま参ったよ、と続け、ゆっくりとグラスから両手を放す。
水面が僅かに揺れた。歪んだ虚像を見て、矢張り偽者だとクラースは表情だけで笑った。
「だが、フォッグみたく私は強くない。受け止められない。笑えないのさ。
だから、そうは思えないんだよ、残念ながらね」
拳を強く握る。爪が肉に食い込んで、肌色が白く変色して行く。
「正直羨ましいよ。嫉妬しているんだ、私はフォッグにね。妬ましくて仕方が無い。
いっそ恨みたくなる程に、ね」
フォッグはおう、と相槌を打ちつつクラースの言葉に耳を傾ける。
けれども顔を上げろ、とは絶対に言わなかった。
クラースは鼻を啜り、唇を甘く噛む。帽子が在って良かった。
「でも」
そう、でも、でもだ。
クラースはすう、と顔を上げる。醜い笑顔にもフォッグは眉一つ動かさなかった。
「僅かでも“そうかも知れない”。そう思わさせるあんたは、やっぱり凄い」
フォッグはにか、とクラースに笑って見せる。何時もの様に、眩しい笑顔で。
リッド達と出会った時から今の際まで何一つ変わらぬ、爽快さ溢れる哄笑が部屋を反響した。
「まぁ、アレだ。お前ェが何に悩んでるから知らねェ、でも漢なら諦めんじゃねェぞ。
アレが逃げちまうぜ? 俺達にだって……譲れねェ馬鹿でかい夢を持つ権利はあんだからよ」
しえん
そうだな、とクラースは微笑み、グラスを口元で傾ける。隣の焔が消えた瞬間だった。
口内で広がるほろ苦さは、むしろ清々しくもある。クラースはもう一度だけ鼻を啜った。
「人の夢は、終わらねェ」
終わらせる事は出来るがな、と笑うフォッグから、クラースはしばし目を離せなかった。
本来ならば此所でフォッグに何かしらを言うべきだったのだろう。
が、しかしクラースには何も言う事が出来なかった。言える言葉を持ち合わせていない。
クラースに出来た事は、落としてしまった言葉を探す様に、床に目を滑らせる事だけだった。
【Which is real?】
差し込む朝日に、青年リヒター=アーベントはあり得ない程急激に目を覚ました。
上半身だけ起こしたリヒターは数秒呆然自失状態に陥り、掛け布団の柄を凝視する。
全身で息をしつつ、リヒターははっとし辺りを見渡した。
実に趣味の悪い夢を見てしまったからだ。
手と足が生えた紙幣に裸磔の刑に処せられる夢だ。
説明するだけでも何が何だか意味が分からない。
自分には紙幣を墓場で燃やした覚えは無いのだがな、とリヒターは顎に手を当て首を傾げる。
と、隣に居る筈の大男が消えている事に気付き、リヒターは辺りをもう一度見渡した。
「エミルは居る、のか。……ん? そう言えば今は……? ……?? ……!? ……!!!」
クラースは壁へと目を凝らす。が、どう見ても時計は午前五時七分五秒を示していた。
どう見てもだ。リヒターは激怒した。
「ッちぃ! 何をしているんだクラースの奴はッ! 三時間経ったら起こせとあれ程!」
悪態を吐きながら、リヒターは慌てて布団から起き上がる。
眼鏡を掛け、頭を掻きつつ隣を見る。隣で涎を垂らしながらだらしなく寝ているのはエミルだ。
起こそうとも考えたが、リヒターはずれた布団を掛け直すだけに止めた。
疲れているだろうと思った事と……それに、涎が大量過ぎて汚かった。
欠伸をしつつ、リヒターは寝室の鏡を覗き込む。
―――瞬間、心響き合い言葉失うッ!!
それは得も言われぬ酷い寝癖が付いていたからだッ!
どのくらい酷いかと言うと、何か怪しい電波を受信しているのではと疑うくらいだ。
二秒弱で。
取り敢えず舌を打つと、リヒターは指の関節を鳴らしながら寝室の扉を開く。
支援
因みに、ラタトスクよりもエミルが先に起きてしまうのは、これから三分後の事だ。
「ぬッぅ!? んな……さ、酒臭ッ!?」
台所に続く廊下に入った瞬間、先ずリヒターの口から飛び出た言葉はそれだった。
思わず後退りしてしまう程の臭さだ。下手をすれば鼻が曲がりかねない。
誰が如何見ても普通ではない。酒で戦争でもしたのか。
いや意味が分からないが、そのくらいの驚きの臭いだ。
リヒターは慌てて台所まで走り、暖簾を手で掻き分ける。
瞬間、血の気が引いた。非常に残念だが当分の間帰って来そうにもない。
「バミューダトライアングルッ! 私にポイント三千バミュー!」
「おうぅ? ッがははは! おめェそりゃあ……っぶはぁッ!」
上半身裸のクラースとフォッグを見てリヒターは危うく気を失い掛けた。
何の遊びだそれは、と突っ込む気すら起きない。リヒターは大きな溜息を一つ吐く。
「まるで惨劇だな……これは……酷過ぎる」
吸うだけで酔ってしまいそうな濃厚なアルコールの臭いが立ち込める中、
リヒターは床に転がるブランデーと思わしき酒瓶を恐る恐る手に取った。
その合間にもクラース達の笑い声が耳に障る。ウザい。とても。
「なん……だと……」
リヒターはその言葉を最後に絶句した。
ラベルには度数50°、と表記してある。リヒターは慌ててテーブルの上を見た。
ワイン一本にブランデー一本。無論、空ッ!
そして水が無い。更に此所には冷蔵庫は無い、即ち氷も無い。
つまりフォッグとクラースはブランデーをストレートで二瓶飲んだと云う事だ。
リヒターは己の顔から一キロ程血の気が引いて行くを感じ、寝癖の付いた頭を抱える。
どう見ても馬鹿だ。度し難い馬鹿だこいつらは。おまけにワインと来ましたか。
そうですかそうですか。はいはい、そりゃあ酔うと云うものですよ。
「皆ー! クラースろパーフェクトしょうかん教室、始らるよ〜!」
びき、とリヒターの額に青筋が浮かぶ。しかしここでキレては逆効果。
瓶をマイク替わりに何やら電波な曲を歌い出したクラースを睨み付け、リヒターは拳を握った。
そう、相手は高が酔っ払いだ。如何と云う事はない。そうさ落ち着け。
ここで怒れば敵の術中、笑止千万だ。
今日こそ、密かに夢見た素数を数えてKOOLになる時が来たぞリヒター=アーベントッ!!
「何をしている……お前ら。今が何時だと思っている……」
努めて冷静にリヒターはフォッグの肩を鷲掴みにする。
エラーラをやたらとストロボみたいにチカチカさせているフォッグは、
偉く上機嫌な表情でリヒターを迎えた。
だがオメガウザい。そして額が眩しい。
「おぅ? お前も入んら! 楽しもうぜェ!?」
微妙に呂律が回っていない。リヒターはフォッグに激しい殺意を覚えた。
と、言うかそれ以上に。
「う、貴さ、息臭ぁッ……近、酒臭ァッ!」
急いで鼻を摘もうと試みるが、フォッグが肩を掴んでいる所為か叶わない。
後ろでは相変わらずクラースが支離滅裂な歌を歌っていた。
因みにやたらとコブシが利いている。
リヒターは額に更に青筋を浮かべながらも歯を食いしばった。此所で堪えねば何とするッ!
と、不意に筋肉隆々な上半身を見せつけていたフォッグの表情が沈む。
眉が垂れ下がり、心無しか口も尖んがっていた。
リヒターは震える声で何だ、と訊く。そして早く解放してくれと切に願った。
「おう、ウイスキー分がアレしてきたな」
フォッグは嗄れた声でぽつりと呟く。誠に残念だがもれなく意味不明だ。
「は? ウイスキーぶん?」
リヒターが間の抜けた声で訊き返すと、フォッグは激しく頷き、繰り返す様に呟いた。
「おう、ウイスキー分だ」
シュール過ぎて吹きそうになるのをリヒターは堪えた。
もしかするとウイスキー分とやらは本当に存在するのかも知れない。
「それは…糖分とか塩分とかみたいなものか?」
と、タイミングを見計らった様に上半身裸の泥酔状態のクラースがリヒターの肩を掴む。
マイク代わりの赤ワインの空瓶を持ったまま。
「その通ぉぉぉぉぉりだッリヒター君! 生活していると減ってくるッ!」
左肩をフォッグに掴まれ、右肩をクラースに掴まれ、
リヒターの怒りのボルテージはそろそろ限界に近くなって来ていた。
だがリヒターは屈しない。生憎とハーフエルフは我慢には定評があるのだ。
こんな処で役立つとはな、とリヒターは拳をぎりぎりと握りつつ経験に感謝した。
「ウイスキー分が足りなくなると疲労や集中力・思考力の低下等の症状が現れる。
またもれなく“よろしくお願いします”を“よろしくお願いしまう”と噛んでしまうおまけ付きだ」
リヒターはもういっそ開き直ってみようと天井を仰ぐ。
最悪だ。想像の斜め上を突き抜ける最悪の板挟みだ、これは。
「尚、ごくまれに喉を掻き毟る」
よく分からないが、リヒターは全てを聞き流す方向で溜息を一つ吐く。
これで落ち着くなら、とリヒターはクラースの方を振り向いた。
近い近い近い、顔が異常に近い。
殴っていいか、と訊きたい衝動をリヒターは死に物狂いで抑えた。
ちょっとしたハラハラものである。
「……。ウイスキー分は……ウイスキーに含まれているのか?」
その瞬間、何かがリヒターの中を光速で駆け巡る。
嫌な予感がした。それは何か、例えば小指を箪笥の角に打ってしまう前兆と云うか。
これを虫の知らせと云うのだろうな、とリヒターはクラースを見ながら思う。
しかしもうリヒターは動けない。如何にでも成れば良いとすら思っていた。
「はっはっは 当たり前だろう"……ッ!?」
そしてこう云う場合の嫌な予感とは、何時も当たるものであり。
―――ッおごぶぇ、と蛙が潰れる様な不吉な音がした。当然と言えば当然だ。
酒を浴びる程飲んだ朝と言えば頭痛に気怠さに、アレですから。
「……。そうか……如何やら俺を本気にさせた様だな……」
無言のまま、吐瀉まみれのリヒターは蒼雷を纏った吐瀉まみれの魔斧を抜く。
吐瀉まみれの額には青筋を浮かべ、奥歯を軋ませながら、
吐瀉まみれのリヒターはふふふ、と満面の笑みで嗤った。
さぁ、とフォッグとクラースの紅く染まった顔から血の気が引いてゆく。
酔いも一瞬で覚ます夢を(あの世で)叶える魔法……ッ!
そう、M(マジで)K(【クラース達が】くたばる)5(五秒前)とか云うヤツだッ!
「貴ッ様らああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァッ!!!
そこに直れえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇェェェッ!!!!」
―――――――その後、彼等の行方を知る者は、多分、誰も居なかった。
【クラース・F・レスター 生存確認】
状態:HP100% TP100% 未来への黒い予感(今は非顕在) 仲間の死による悲しみ エミル(ラタトスク)へ僅かな共感
生き延びていることへの罪悪感(非顕在) サイグローグと戦う覚悟 マナを認識できる 酔い フォッグへの憧れ
所持品:ピヨノン グミセット 本(武器用の厚く頑丈な物) オパールの指輪
クラースの考察メモ(書きかけ) 拝借した使えそうな道具
基本行動方針:ゲームには乗らず仲間を集め打開策を図る
第一行動方針:くぁwせdrftgyふじこlp
第二行動方針:三時間後にリヒターを起こす……筈だったよな……あ、もう五時だよヤバイヤバイ
第三行動方針:自分に出来る事をする
第四行動方針:屋敷に居る者と行動を共にする
現在位置:A4邸・台所(修羅場とも言う)
【リヒター・アーベント 生存確認】
状態:HP100% TP100% 放送に対しての違和感と困惑 この世のものとは思えぬ寝癖 大激怒 吐瀉まみれ
支給品:ストライクアクス エバーライト 手紙
基本行動方針:ゲームに乗る気はない。ギンヌンガ・ガップの封印に戻りたい
第一行動方針:苦しむのは一瞬ですぅ……ッ!
第二行動方針:風呂……入るか……
第三行動方針:放送内容とクラース、ラタトスクにどう対応するか考える
第四行動方針:ラタトスクの行いについてエミルに知らせたくない
第五行動方針:転移術について更に調べ、元の世界に帰る方法を探す
第六行動方針:イグニスをどうにかしたい
現在位置:A4邸・台所(修羅場とも言う)
【フォッグ 生存確認】
状態:HP100% TP100% 不屈の強い意志 酔い
所持品:パナシーアボトル メガグランチャー
基本行動方針:リッドの仇を取る。キールやチャットが心配
第一行動方針:くぁwせdrftgyふじこlp
第二行動方針:邸の中の皆が心配。自分も少し心配、無論リヒター的な意味で
第二行動方針:拠点で待機
現在位置:A4邸・台所(修羅場とも言う)
【エミル(?)@エミル・キャスタニエ 生存確認】
状態:HP40% TP100% マナの希薄さに困惑 マフラー無し 右手骨折 軽度火傷
マルタと封印の件で焦り気味(現在は非顕在) 西のマナが気になる 強い無力感
仲間の死に衝撃 クラースをやや尊敬?
所持品:クィッキー セレスティア晶霊石詰め合わせ(青・黄・紫・黒晶石が2個ずつ)
強力グミセット BCロッド 鎮魂錠 破魔の弓 ルーティのサック
基本行動方針:マルタ、リヒター、イグニスとともに一刻も早く元の世界へ帰還する
第一行動方針:エミルにルーティの事を伝えるべきか考える(ラタトスク) ???(エミル)
第二行動方針:マルタがとても心配
第三行動方針:イグニスが気になる
現在位置:A4邸・寝室?
※今回の件はラタトスクより早くエミルが起床した為の特例。
ラタトスクが起き次第、命令は復活するので支配権はラタトスクへ戻ります
『生きている内に見つけ出す。例え何処に在ろうとね。
そして――――……
長くなりましたが投下終了です。疑問点等あらば、なんなりと。
そして二作連続の大作投下乙です!
ようやく活躍の場がフォッグに来たと思ったら、最後wwよみ自重してくれw
クリスマス投下乙!
イイハナシダナーと思ったら良い意味でぶち壊しw
そして随所にパロネタがww
クリスマス投下乙。
笑えたんだけど、最後は冷笑になりかけた。
ギャグも加減とやりようだと思うわ…。
投下乙
なんだけど…ネタを入れすぎて序盤の話が台無しになってる気がする。
後半は最早死者スレのノリだよね…
投下乙 まぁたしかにやり過ぎ感は大ですな。
マオが来たらアボンするしかないなこりゃ・・・
ところで途中で状態欄なしに題名換えて良いのか?アナザーがおkだからってのは無しだぜ
やりすぎと思わない俺は異端なのかなあ。まあそれはともかく、もうやめようぜ、こう変に言われると俺も皆も気分があまり良くないだろう。
……まあ、概ね同意。
ただ、マンセーじゃないからって発言留めるのは書き手のためにならないと思うが。
屋台骨の力ある書き手さんだから余計に心配になるわ。
どうした、なんか題名にまでツッコミが来るとは何時にもなくえらく厳しいな…。楽しくいこうぜ。ちなみに1stでも本編で題名代えは普通にいくつもあるし他ロワでもある。
そう細く言うことでもないだろ?
題名変えは他ロワでも普通の創作でもよくあることだし目くじらたてることでもw
そりゃ三レスぐらいの話でタイトルが二転三転したらあれだけどさ、これはいいじゃんか
つかさすがに読み手様頭に乗りすぎだろ
ある程度の寛容さが無ければロワの完遂なんて夢のまた夢だぞ
なんか定期的に荒れるな
>>414 ある程度はたしかに。
ただ、火のないところに煙は立たないとも言う。
あ読み手を叩く書き手様なら「図」に乗るくらい正しい字で、な。
つか書き手読み手のレッテル貼りはイクナイ
中には俺みたいな兼もいるんだぜ
正しい字で、と書いてるときに文章を間違えると説得力が落ちるぞ
バカみたいっ☆
バカみたいっ☆
バカみたいっ☆
バカみたいっ☆
バッカみた〜い☆
キャハハハハハハハハッ☆
以上アリスちゃんでした
なあ。真面目な話なんだが、こうやって荒れる度に俺思うんだが、テイルズロワの住民は見聞が狭過ぎないか?パロロワってことと、その形を理解してるか?
もうちょっとパロロワ自体に対する視野を広げるべきだぜ?死者スレも合わせてそろそろな。
このロワのガチガチっぷりはちょっと全体的に見て異常だと思う。
自分だけが正しいって思うのは構わんが、発言の前に全体を見ようぜ。
>>421 お前こそ他のパロロワも見て来いよ。
ニコ厨みたいなノリのSSなんてここでしか見た事ない。
何も真面目に書けって言ってるんじゃなく、矛盾点と悪ふざけは無しにしようって事。
でもま、定期的に荒れても何だかんだ言って結構持ち直してるよね。
そうは言えど、パロロワが読みたいんでなくテイルズキャラのロワが読みたい書きたい連中もおるだろうよ。
キャラ把握がローコストだしな。
フォローしようぜ、じゃなくて、絶対になしにしようぜ、だから堅苦しいんだと思う。
1stは前者だったから余計に。
投下乙です
フォッグがカッコ良かった。
そして最後はいい意味で裏切られましたね。
投下乙〜
渋さの効いた大人な夜っていいなあ
大物なフォッグと揺れるも己が願いを定めたクラースがかっちょいい
ってか、ほんと、いいな、こういう話
さて、俺は余韻にひた……って、おいいい!?
し、しっかりしろ、りひたー!
今頼りになるのはお前だけだw
ってわけでいいんじゃね、こういうのでも?
ここ最近クラースは哀愁やら渋いの多かったしさ
羽目を外せることは幸せじゃないか
ほれ、アレだ、みんな
そんなぎすぎすしてもつまらねえぜ?
取って付けたような乙うざいな。
ぎすぎすするから面白くないんでなく、
面白くないから指摘なんだろ……
とってつけたとはどういう事よ。面白いと感じた人が乙してて、面白くなかった人が指摘してるだけじゃないか。
ネガティブな感想=多数派という決め付けはよくないと思うが
本当だよ。
面白いと思ったやつが乙してるんだからいいじゃないか。
自分もフォローの流れでいきたいな。もちろん
>>422は前提として。
投下されてから経った時間を見るとあからさまな感想の水増しにしか感じられない
いやいや。年末、ましてやクリスマスにスレをしょっちゅう見る奴なんて滅多にいないだろ?最近投下なかったし、そこまで暇人なのは冬休みの中高生くらいだけだ。
今の時期は仕事も大量にあるし、むしろ忙しいくらいだぜ。
そして感想がすぐつくものだという偏見もどうかと思うぜ。他ロワを見ると良い。
ここは中高大生の巣窟だし。
ネガティブ感想が大量に来た後にマンセー感想が大量に来るのが嘘くさい。
なんかもういいや。愛想が尽きた。
勝手にしろよ。良いと思って感想書いたらマンセーかよ。
そうやって自分のネガティブ感想が正しいと思ってれば良い。破棄にでもなんでも追い込めば?
もう沢山だよこんなロワ
まあレスがついて数分以内に反論するくらいの暇人は何人かいるんだろ自分もだが。
仕事忙しいって24時間まるっとたったどころか、3日だ
何ローテあとだよJK
ネガティブ感想がそんなに目障りかね
436 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/27(土) 12:17:20 ID:vEFfzFryO
うぜぇwwwwwwwwww
437 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/27(土) 12:18:47 ID:vEFfzFryO
ついてくんなwwwwwwwwwww
438 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/27(土) 14:52:28 ID:vEFfzFryO
桑野も少し性格変わったね
自分から来るあたり
どこに書いてんだよ…
そりゃこんな糞ロワ
1stのクオリティが高すぎて見劣りするのは仕方ない。
ネガティブな感想を書くより、面白い所を見つけて褒める方が楽しいよ。
でかい矛盾点があったり死者スレのノリを持ってきたような作品は別だけど。
投下された作品自体よりも感想の書き方が気持ち悪かった。
んな事言ってたらキリないぞ?
もっと広い心を持たないと楽しめんじゃないか
正直気取った書き方しなくていい
文章を書く力ありますよ みたいな
445 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/27(土) 23:00:56 ID:L4MU+StDO
取り敢えず落ち着いちゃどうだお前ら。
……1stの濃さは確かに大したもんだし、アナザーも厚みのある作品揃いだが
そういう風に比べられちゃこっちの書き手は堪らんのでは?
見てるだけの完全に読み手の自分も堪らん気持ちになるここ最近の流れじゃ特に。
まぁ、
>>441に批判の意思はないんだろうが。
まとめようとしてくれているしなぁ。
それに、1stも揉める時には随分揉めた。
けど、ちゃんと書き手連と読み手が話し合って落としどころを見つけてきたから、
あの完成度とラスト、引いては今のアナザーがあるんじゃないか?
つーか今怒ってる奴らは、とりあえず「どこ」の「どんな記述」が「どう問題」なのか分かりやすく提示してくれ。
でなきゃ作者だって対応しづらくね?
これまではそうして喧嘩したりしながらも、どうにかやってきたじゃないか。
アリス厨の時だって、ちゃんとそうやって有志が対応したじゃないか。
それが、テイロワ全体の完成度や作者のための批判ってやつなんじゃね?
すまん下げ忘れたorz
駄目だな、俺も落ち着くべきだ…
作品に死者スレの悪ノリを持ってこないように言いながら、
感想のほうでそのノリ+腐女子みたいな文体で書いてて、
目に入れたときゾッとした。
ここは痛い腐女子の同人小説サイトではないのに・・・。
…感想が気持ち悪いとか感想が嘘っぽいとか、感想が腐女子っぽいとか…今度は感想に対する不満かよ…いい加減にしてくれないか、頼むから…。
というかこの間から騒いでる奴らより腐女子の方が正直マシだろ
腐女子が読んでても実害無いし
腐女子乙とか言われそうだが
読者層に突っ込み入れて誰が得するんだろ。
確かにウザいと思う事はあるけど、作品になんの影響もないんだしさ。
でも腐女子のノリのお陰でキモい作品が現れ始めたら怖いね。
少し空気を読んで控え目な感想にして欲しいかな、腐女子の皆様には。
仮想敵って怖い…
いるかも分からない相手を想定するなんて
確かに頭に血が上り過ぎたな
わざわざ煽るような言い方して悪かった
書き手さん方には頑張って欲しかったんだよ
投下します
「僕がルーティを殺した」
「そうか…」
ミトスの言うことにジューダスはとくに反応を示すようすもなかった。
「怒らないのか」
「…このような舞台だ…。死ぬこともしょうがないだろう…ゴフッ…ハァハァ」
ミトスは無言でジューダスにエリクシールを差しだした。
「…なんの真似だ?」
「お前の仲間にお前を連れてこいと言われてるんだ。来い」
ジューダスはエリクシールを受け取りスパーダに少量を飲ませた。
「これでこいつは大丈夫だろう…ハァハァ…あとは…」
グビッグビッグビッ!
「ふぅ…これで大丈夫だ。お前について行く前にすることがある。着いてこい。」
「僕に指図するな」
ジューダスはスパーダを壁に寝かせ、その場をあとにした。
「ふぅ…リオン…次は殺してやる!」
「次こそはやってやりましょう」
そんな時!
「スタァァン!」
暗闇から走りくる鬼神!
「なっ…あれはリオン!痛め付けたはずじゃ…」
「うおぉぉぉぉ!」
ジューダスはスタン切る斬る切る斬る切る斬る切る斬る切る斬る切る。
「うわぁぁぁぁぁ」
気づけばスタンは木っ端微塵になっていた。
ジューダスはイレーヌを睨む。
「…お前もこうなりたいのか…?」
「う…う…ひぃぃい!」
イレーヌは失禁して逃げたした。
「……終わったか…?」
「…ああ…」
ジューダスの目は少し潤んでいた。
【ジューダス】
状態:HP90% TP100% 所持品:レーザーブレイド ロイドの仮面セット×3 スタンへの悲しみ
基本行動方針:本気を出す
第一行動方針:ミトスについていく
第二行動方針:考えをまとめる
第三行動方針:弱きものを助ける
現在位置:C6 滝壺
【ミスト・ユグドラシル】
所持品:色々 ジューダスへの憧れ
基本行動方針:?
第一行動方針:?
現在位置:C6 滝壺
【スパーダ・ベルフォルマ】
所持品:色々
基本行動方針:?
第一行動方針:?
現在位置:C6 アラミス湧水洞内
【スタン・エルロン死亡】
投下終了です^^
矛盾はないと思いますし破棄はないですね^^
乙 ジューダスの悲しみが伝わってきた よかった
スタンを切る斬るというシーンで爆笑。何、笑ってるこっちがおかしいから気にすることはない。
あとケガ人は壁ではなく床とか安全なところに寝かせるべきだと思うが、何、これも気にすることではない。
他にもスタンは木っ端微塵ではなく、むしろみじん切りされた野菜みたいになってるだろとか、どうやらイレーヌを失禁させたいようだなとツッコミどころありますが、おかげでなんとなく落ち着きました。
乙ですと言いたいけど・・・。
とりあえず、ジューダスの哀愁が伝わりました。
はいはい男も女もオタクはみんな一緒
キモイ作品なんて書く奴によって決まるだろ?人の観点なんてみんな様々なんだから自分も周りも納得できる作品なんて期待しちゃ駄目じゃないのか?それこそ何様って話だしさ
読み手は矛盾は指摘、書き手は書き手なりの最善の修正をするでいいじゃん
てかテイルズもバトロアも所詮他から見たらキモオタの集まる厨二ジャンルなのに腐女子感想がどーたらとか言ってもねぇ
腐への餌をまいておいて今更じゃないの?
こりゃあマジで矛盾ないな^^:
破棄できないぞ^^
ちょっと力入れたらこんなもんよ^^
落盤どうした?
エリクシールの分飲はありなのか。
ミトスがジューダスを尊敬もキャラ違いすぎ
……割りとまじめに疑問点だ
言っておくが通させるつもりは自分にはない。
駄犬の口塞ぎたいだけだ。
いやコレは笑って破棄されるべき作品だろ
マジメにつっかかるなよ
文句言ってる奴より、ジューダス様の人の方がネタ扱いできる分マシだな
ネタ扱い?ふざけてんの
笑って流してるカコイイ俺のつもりだろうが、構ってるおまえ等も同様に荒らしだ。
消えてくれ
真・スルー 何もレスせず本当にスルーする。簡単なようで一番難しい。
偽・スルー みんなにスルーを呼びかける。実はスルーできてない。
予告スルー レスしないと予告してからスルーする。
完全スルー スレに参加すること自体を放棄する。
無理スルー 元の話題がないのに必死でスルーを推奨する。滑稽。
失敗スルー 我慢できずにレスしてしまう。後から「暇だから遊んでやった」などと負け惜しみ。
願いスルー 失敗したレスに対してスルーをお願いする。ある意味3匹目。
激突スルー 話題自体がスルーの話に移行してまう。泥沼状態。
疎開スルー 本スレではスルーできたが、誤爆スレ等でその話題を出してしまう。見つかると滑稽。
乞食スルー 情報だけもらって雑談はスルーする。
質問スルー 質問をスルーして雑談を続ける。
思い出スルー 攻撃中はスルーして、後日その思い出を語る。
真・自演スルー 議論に負けそうな時、ファビョった後に自演でスルーを呼びかける。
偽・自演スルー 誰も釣られないので、願いスルーのふりをする。狙うは4匹目。
3匹目のスルー 直接的にはスルーしてるが、反応した人に反応してしまう。
4匹目のスルー 3匹目に反応する。以降5匹6匹と続き、激突スルーへ。
いや、いや、いやぁぁぁっ!
あのSSに関して言いたいことは自演及び二番煎じ乙ってことだ。
とっとと破棄されて消えろ。
まだまだだけど、次スレのテンプレにこれ追加する方がいいんじゃ・・・。
状態確認、行動方針の悪ノリ禁止。次の小説の書き手、読み手にとって貴重な情報なのにふざけるのは迷惑行為です。真面目に書いて下さい。
ソーディアンズがなくなかるのは残念だが、もうこんなに荒れるなら。
書き手はSSを読み込むから状態表の行動方針や確認はあまり必要なく、
読み専は状態表だけ読むかSSを読み込むかの二択だからやっぱり必要としてないと聞いたことがある。
状態表でさけぶのとかも無しか?
しかし本当に今更だな、ソーディアンズは喜々として受け入れてたくせに・・・。
態度がころっと変わるロワだね!
目の前で人が殺されたとか仇に会って「おまえがぁぁぁ」とかで叫ぶのはアリかと思う。ほどほどなら。それなら真面目は言いすぎか。
でも、あくまでもこれは提案。
状態表のお遊びぐらい許してやれよ。なんつーか硬いロワだな。
そこを治すより、まずこの妙に堅苦しくて可笑しい空気をどうにかするべきだと思うが。
冬休みだからか知らんが、馬鹿が多すぎ。
自分の気に入らない展開だからって文句いってんだろ。
所詮馬鹿だよ、自分は。
まあ、パロだし、遊びくらい悪くないと思うけど。こうも苦情が出たら…ね。
>>474同意
必要なのは書き手のテンプレじゃなく読み手のテンプレだろ
個人的な好みで作品に難癖を付けるなっていう
今回のSSなら、大きな矛盾がある訳でも、
終始ネタに走って展開が進んでない訳でも無い
修正・破棄要求なんて横暴だよ
苦情というかいちゃもんだけどな
俺が気にいらないっていう
いちゃもんも数集まれば立派な苦情
479 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/28(日) 21:14:19 ID:VPzlkI7OO
難癖つけるのと苦情は違うだろ
みっともなくあげあし取ってるのを正当化してんじゃねーよ
数が集まりゃって子供か
そんな苦情がまかり通るようなら、誰も書かなくなるだろうな。
現に投下減ってるしな。
難度上昇と時季のせいだよね…?
時期のせいなワケないでしょうに。第三クールに入ってからでしょ?
だからただ単に書き手さんが減ったんだよ。そりゃあ、こんな事が何度もあれば廃れるって。当然だね。
実質第三クールは書き手さん三人で回ってるようなものらしいしね。
そりゃあ他の書き手さん達に失礼だろ…
あんた、随分都合良いなぁ。これだけやって今更失礼とか言いますか…?
まぁいいや、悪かったよ。
どれだけ一生懸命書いても破棄されます!
どうしたらいいですか!?^^;
ここで書かない
別のとこならネタとして楽しんでくれるところもある
死者スレの住人 0人w
こんなロワで書きたい書き手いるの?
板の問題もあるかもな
低年齢板だから
前のチャット見た感じ書き手さんたち皆ハーツプレイ中ぽかったし、投下ないとか廃れたとか言うの止めようぜ
書き手さんたちも人間であってSS製造機じゃないんだからさ
ハーツか。
このロワが終わるまでいくつ新作がでるのだろう?
さあねぇ
でも今は折り返し地点くらいじゃないの?
でもまだ40人くらい残ってるや
マーダーも減ったしなあ…
年2本新作出すと仮定したなら6本くらいになりそうだな
正確には41人。細かく分けると対主催は23人、マーダー8人、スタンス不明が10人。
確かにマーダーが減ったが、他の誰かがマーダーになるかもしれない。3クール目で死者が出てきたし、次の放送次第かも。
また展開を狭めるようなマーダー優遇にしろしろか
誰もそんな事言ってないし
そう思いたいなら思えばいいけどさ
空気のせいかね。なんて言うか、見解が狭いんだよ
発言しづらいわ
誰もそんなことは言ってないっていう返しは、
図星突かれたときの言い訳の典型らしいよ。
結局みんな自分の望んでる展開以外は認めないって事でおk?
そうらしいね
人に突っ掛かって何が楽しいのさ
円満な感じでいこうぜ!
元旦投下で俺カッコイイ
が1日には沸いてくるしばらく来なさそうだな
楽しい話題でもするか。
期待してるキャラベスト3
一位 サレ
凍傷の腕が放送前から気になってる。
二位 ジルバ
マーダートリオといい面白い。
三位 キール
気絶していた方が幸せな人ナンバーワン。
ロニといいウッドロウといいそれを殺したのがチャットといい、マルタはあの熱のまま行方不明だし、死にかけだし、近くには学者魂をくすぐるダオス死体もあるしまず何をやるか気になる
確かにキールは寝てた方が幸せな気がするw
では俺も
一位 ミクトラン
放送越しの引きこもりを経て遂に参加者達が塔に集まり出したので
二位 アガーテ
覚醒後からの参戦&一般人最後の砦
しかし全く人に会えないw三位 シンク
ステルス(笑)からようやくまともなステルスへ昇格
目の付け所が良かったか?
しかし西の森はカオスだな
銀髪が離れた&死亡したことにより銀髪のジンクスを背負い込んだ感が>キール
そういえば最近は聞かないな<銀髪のジンクス
キールの傍に銀髪女教師がいるのを忘れちゃいけないぞ
銀髪のジンクスは…セネルはジルバとヴェイグはミクとルカはエルレインと、全員熟女熟年と一緒にいるなw
確かにリフィルも銀髪。
大事な人が死ぬわ、精神的に不安定になるわ、マーダーになるわ(またはなりかける)、恐ろしい熟女熟年が傍にいるわで銀髪は大変だね。
忘却されてるロニカワイソス…w
主人公とラスボスクラスが一緒に行動してるの多いんだな
セネルジルバにヴェイグミクトランにルカレインにエミルリヒターに…
一応シンクもヴァンの直前だからロイドシンクも入るかな
カイウスもシゼルと因縁できたし
一緒に行動か…
そういや騎士と姫が真っ先でてくるイメージだけど
レイスとアガーテって本編退場組だったな
実は死後参加で対主催やってるのって珍しいかもな>レイスアガーテ
死後参加キャラ
エルレイン→フォルトォナ様のご加護だよ。取りあえずカイルは抹殺するよ。
でもマオとの触れ合いでマーダーやサイクローグもむかつくよ。
サレ→2回目の生を楽しむよ。今はマルタで遊ぶよ。
シゼル→私は死人だから、生きているリッド達を娘の元に返すために鬼になるよ。でもネレイド出てきたから死にたいよ。
シンク→死にたくないけど優勝までして生きるのも面倒だよ。皆が苦しむのを楽しむよ。
ミクトラン→やっと私のターン!!
ミトス→お話ししましょ
ジューダス→いいからとっとと助けろこのシスコン
死後参加後再び死亡
ダオス→大樹を見たいな→対主催参加者あとは頼む
バルバトス→ぶち殺す!→ぶち殺された!
マグニス様→有力マーダー!→サラマンダー
マグニスはサラマンダーとは違うくないか?デクスはまさにサラマンダーだがw
つーかマグニスは相手が悪かったな。ルークは横槍がなければ殺せていたかもしれんのに。
思えば、マグニスの失言さえなければルークは死んでたんだよな。
デクスは初っ端プレセアぶっ殺してるからサラマンダーじゃないだろ
その後が
シゼルは厄介だから置いとこう→シゼルとロイドは厄介だから置いとこう
→厄介なロイドとエルレインには潰し合って貰おう
と、全く戦果を上げて無いからな
アリスちゃんの死を知れば変化があるかもしれんが
あけましておめでとうございます。今年もいい作品を。
あけおめ。今年も色々あるでしょうが頑張っていきましょう。
あけましておめでとう
荒れても荒らされてもロワが続くのを願っております
丸3日間も放置だなんて…
話題もないしね
しかしさびしいっす
完
不覚にもわろた
こんな時間ですが、投下します。
体が、冷たい。
その心地、産湯の様に幾度も浸された水減しよりも冷徹で。
その感覚、灼熱の世界で伏した銀髪への悔恨と無力を彷彿と。
誰が己をこの地に突き立てたのか。
意識を覚醒した彼が映したのはやたら暗く赤い夕暮れの地。幾千幾万もの武器を墓標に見立て朽ちた戦場。
痛みなど感じぬ身なのに、意識を何処ともなく巡らせば心の臓が悲鳴を上げる。臓物が存在する疑問すら、その悲鳴が風に乗り木霊し散らしゆく。
上げた声を聞きつけるものはなく、どいつもこいつもお構いなしに笑う。鈍く光る刀身に赤い日の煌きを反射させ、せせら笑う。その様を。お前は武器なのにと。その戦果を誇らしげに流して。
胸糞悪さと痛みに耐えかね膝をつく。体を曲げ、押し潰さんばかりに胸の辺りを押さえつける。服越しにすら分かる指先の冷たさに。足元にまとわりつく液体の冷たさに。
頑なに閉じた閉じていた閉じてしまっていた目は、ようやくその赤い赤い水鏡に映した彼を捉え虜にする。
地表を覆い、天も地も等しく対に存在せしめるその水の湧き出る先に、白い法衣に包まれた少年がいる。黒いコートを着込んだ男がいる。
幾千幾万の武器がその刀身に切っ先に穂先に銃身に、一斉に映りこんだその記憶を再生させる。首を落とされた少年を。落とした彼を。断頭された男を。手をその湧き水と同じ色に染めた彼を。
やめろと叫ぶ。痛みにどうにもならないこの身を疎ましく思う。眼前の映像を反映させるだけの目を、己が刃を。
這い蹲り惨めったらしく転げ回る。もう手だけでなく全身が濡れて染まって冷えて動かない。
耳障りな歓声の中に侮蔑と嘲り混じりの音が混じる。どこかへ何かを置いてきた音が混じる。今だ鳴り止まない嘲笑のコーラスが新たな歌詞を紡いだ。
聖剣デュランダル、斬れぬものは己のみ。
だからか。だから関わる者をことごとく傷つけ、自分はいまだそこに在るのか。
兄ともいえる槍を友の命をその恋人の命を。出会うもの触れ合うもの全てを斬り裂いて。
そんな忌むべき剣、兄達はおろか助けようとした相手も豹変しへし折ろうとして当然か。疫病神だもんな、俺。
世界を包む声にかすかに加わった自嘲。その囁きを際立たせるように声がする。
耳障りな女と男の、虐めて傷つけて血を流して泣き叫ばせて浮かぶ絶望の色がどれだけ素晴らしいかを謳う声が。
背筋があわ立つ気色悪い男の、薙いで刺して貫いて潰して斬り付けるこの上ない喜びの賛歌が。
お前もこちら側だろう、だって武器じゃないかと多重音声が彼を包む。
そうかやっぱり。だったら俺たちの為に折れてくれ。
いずれの歌い手のどの声よりも冷たく響く音がした。全ての音を消し去った剣士の声が目が手が、倒れ痛み冷たい全身を抱えたままの彼に迫る。このまま廃棄された方がいいかとやけくそ気味に思い武器の墓標に緞帳を降ろした。
いつまでたっても訪れない終わりに視界を広げれば、先程首を落としたはずの少年がその背で自分を庇っていた。
彼の血塗れたはずの法衣は出会った時と同じく真っ白で。なのに最期に浮かべたあの穏やかな顔で、ありがとうと言ってきた。
次いで、耳が痛くなるくらい静かな夜空をうざったい動物の声が彩る。それを拾い上げた主人もやはり、ありがとうと言ってきた。唱和するように鳴き声も重なった。ああ、うざい。
疫病神の上剣である自分に礼を言うなんて、お前ら馬鹿だろうと罵った。
罵っているのに、傷つけてるのに、あいつらニコニコしたままだよ。
武器という武器が穏やかな笑顔を映しこんで、見渡す限り笑顔の反射かよ。何なんだよこれ。きめぇよおかしいよこっちまでつられて笑えてくる。あー、なんだこれ。くっそ。
それだけ元気ならさっさと立て。
違う手が彼を掴んで引っ張り上げた。意志と無関係に起こされ、おまけに肩を叩かれた。なんらいつもと変わらぬ態度に泣きたくなる。
誤魔化して悪態でもつこうかと振り向いた時には、リカルドは、黒衣のコートを翻してさっさと歩き出していた。その進行方向にある銃剣が、男の口元の笑みをしっかり映していたのを彼は見た。
ああ、そうだった。
全身のどこもかしこも動かないのは己が剣の身故。支えられ掲げられたその記憶が次々に墓標の鏡に煌いていく。
堅く引き締まった大きな赤い手は願いを込めて送り出した。
細く暖かで皺の刻まれた手は騎士の心得と愛情を教え育んでくれた。
未来を創り出す為に共に戦った手は絶大な信頼と道をくれた。
輪廻の先で出会った戦い慣れしてない手は、その手は――
ルカ。
ああ、そうだ。まだ俺は折られる訳にいかなかった。お前見つけなきゃ駄目だったもんな。
やあっと気付いたぁ? このお坊ちゃんが!
完全な不意打ち。起き上がった端から地面にダイブした彼の背中には見事な靴跡。盛大に散る透明な水しぶきは朝日に煌き、強かに体を打ち付けた彼の上に振り注ぎ再び全身を濡らした。
息苦しさと共に、蹴られた部分から発するじんわりとした痛みに熱と、全身に色々広がるその暖かさのなんと心地良いことか。
まるで想像で楽しむアンジュのハグだ。実際にそれを知るエルマーナが味わった心地より断然上だな。だって想像ならいくらでも俺の好みに出来るし。いや、けどこれ痛いなー、しかし。
コーダの真似をしている内にさらに追撃を喰らいそうなので、そろそろ起き上がる。
手を付き地面の抱擁から解放。水鏡を境に手を触れ合わせた虚像と目が合う。徐々に明るくなる空を背景に映るはスパーダ・ベルフォルマ。
前髪についた水滴を振り払う。服は濡れ肌に引っ付き気持ち悪い。全身の痛みも後悔も不信感も、いまだ忘れることをしらない。全部抱え込んだままだ。たくさんの荷物に埋もれ忘れそうだった何かを、見せ付けていった彼らのおかげで彼は立ち上がってしまった。
だったら、後は行くしかねぇよな。イリア。
彼の後ろから前へ歩き出た小さな背中は、後ろ手を軽く振る。大剣が映した彼女はちょっと悔しそうに口をへの字に結んでいる。
お前の言付け、しっかりルカの野郎に伝えてやる。
背中の直撃食らった箇所に腕を回して指先で叩く。そしてお気に入りの帽子をかぶり直す。仕切り直しだ。
イリアは後ろ手をまっすぐに伸ばし、指先をこちらに、いやその向こう側へと示している。頭を出し始めた朝日が眩しい方へ。
動かすたびに痛かったり気持ち悪かったりする四肢を引き連れて、彼は暖かな方へ歩き出す。彼女の反対方向に。
「あいつ、頼んだ」
「頼まれんでも、頼まれてやった」
最後に交わした言葉を皮切りに、彼は光を浴びた。
前から迎えくる光源に。それらを反射し背からも降り注ぐ武器たちの煌きに包まれて、感じた。
幾度も槌を打ち付けられ、玉鋼が剣へと転生する過程で宿したあの灼熱を。
体が、熱い。
【スパーダ・ベルフォルマ 生存確認】
状態:HP10% TP95% 身体中に裂傷 擦り傷 凍傷(全て応急処置済み) 首に鬱血痕 気絶
右頬に腫れ ウッドロウとヴェイグに対する複雑な心境 軽度の人間不信 自己嫌悪 軽度酸欠
所持品:苦無×18 ミスティブルーム とうもろこし イオンの首輪
基本行動方針:打倒サイグローグ
第一行動方針:目を覚ます
第二行動方針:ルカを探す
第三行動方針:出来る限り他の参加者と接触しない
第四行動方針:アリス、サレは見つけたら必ず殺す
現在位置:C6・アラミス湧水洞内
以上で投下終了いたします。
指摘・修正等ございましたら、おねがいします。
返事は夜ぐらいになりそうですが。
避難所でレスを下さった方々ありがとうございます。
乙
久々の投下乙であります。
乙
新年初の投下乙です
スパーダ復活!Iの良心として頑張って欲しいところ…
でも起きても水責め&生き埋めとか可哀相w
投下乙です!!
スパーダが復活したよ…
この調子でルカを立ち直らせることができるのか今後が楽しみです
投下乙
スパーダ頑張れマジ頑張れ
イリアがまともにしゃべってくれたー!
スパーダやイオンもらしくてグーですw
スパーダがんばれ、お前がIの最初で最後の砦だ!
大変な事に気づいたぞ!
ep111で、ルークの『胎盤の記憶』だろ?んで、今回の話がep222で『玉鋼の記憶』
つまりep333になる話は記憶シリーズ(勝手に命名)になるんだよ!
偶然だろうけどな…。そこまでロワが持てばいいけど…
逆にそこまでにロワが完結するという可能性が…ないかw
残ってる場所が全部難易度高くてヘタレ書き手の俺には無理だ・・・
上手い人カモン
なんとなく死亡者一覧読んできたけど
クラトスの過労死にふいた
ごめんよ、クラとっつぁん…
暇だったので、第三クール各グループ行動まとめみたいなものを作ってみた。
●W三つ編み
ミクトランは放送で揺れるヴェイグへと再び洗脳を。ヴェイグは自覚がある模様、だがどうにもならない。
朝まで暇なので首輪を使って考察…?
朝方にカイル達が来た様だが…?
●神トリオ&サラマンダー
放送でマオの精神がやられる。ルカの事もあり、分裂。
ルカはマオレインを静観。間接的にマオに止どめを刺す。その後マオの自殺に激しく戸惑う。
マオの自殺を受け、エルレインは対主催への思いを強める事に。
そこへ拡声器で愛を叫んだデクスが怪しい動きで来襲。エルレインにびびり、ロイド嘘情報を流し漁夫の利を狙い、北上。
スパーダの情報次第でルカの状態が左右される?
一方マオは海流に流され南へ。死ねない事からマオが死んだのだと結論付けるが、死体を目の当たりにして動揺。
生への執着心をオルセルグ化により放置、リバウンドを受けマーダー化、北上。
●スタイレ&二刀流組
ルーティの死にスタンが動揺するも、精神汚染により克服(?)。
たまたま通り掛かったスパーダが溺れたスタンを救うが、ルカの話題を出したため、逆鱗に触れる。
気絶したスパーダを庇い、ジューダスVSスタイレ。しかし力及ばず瀕死&閉じ込めに。遺書まがいのものを書き始める。
スタイレの間に僅かな食い違いが生じる?
夢の中で疫病神ことスパーダが決意を固める。
●ハロルド軍
ハロルドがミトスに意地悪をする。ミトスはハロルドに宝珠を託し、お使いへ。
東で囚われのエミリオ(ジューダス)に出会う。助けるかはジューダスの人柄次第?
一方ルーク組は西の出口の確認へ。確認次第、ハロルド以外はアッシュとクレメンテを求め西へ行く模様。
●姫騎士
レイスが目を覚ます。
アニーの死を乗り切ったアガーテとしばし別れ、レイスは船内へ。
ジェイドの指示に従い船を起動。ジェイドの暗号文(?)を実行or考察?
●家族
VSシゼル。皮肉にも決意したカイウスが原因でクラトス死亡。ネレイドに支配されつつあるシゼルは西へ逃亡。
クラトスに縋り泣くカイウス。チェルシーの鋭い言葉がカイウスを追い詰める。
カイウスは無理矢理チェルシーを黙らせるがチェルシーの心境は…?
その後、チェルシーがテルクェスに手を伸ばしたようだが……?
●アビスマン
母や友が呼ばれ落ち込むカイル。ティアが一喝し、持ち直させる。
その後カイルの純粋さにティアは折れ、黎明の塔へ。内部の雪に不思議がるかが別れ道か…?
●マーダートリオ
実は東の森の惨劇を偵察していたジルバ。混乱に乗じてフォルスをルビアに発動し、要であったエリクシールを破壊させる。
一方、セネルは起床し、ジルバを心配しつつも決意を固める。
朝方、帰ってきたジルバと一問答。セネルは自らの甘さに気付き、ステルスを一時断念?
その後、西に渡るついでに橋を破壊。シャーリィはテルクェスを各地へ放つ。
その後、シャーリィはセネル達に西でテルクェスが反応したのだと告げる。が、真相やいかに…?
●館組
取り出したルーティの手紙にラタトスクは自責の念に駆られる。
一方、クラースは単身起床。複雑な心境のところをラタトスクに励まされ持ちこたえる。
その後クラースは他を寝かせシャワー。リビングで考察し、自分が特別ではと疑う。
途中フォッグと大人の会話。考えの違いを知る。が、泥酔のまま朝へ。危機感の無さにリヒターブチギレ。
一方寝室ではラタトスクではなくエミルが起きたようだが…?
●ロイド組
ノーマがエリクシールを持ちルビアの元へ急ぐも、シンクに殺される。
ディストの死により自失状態だったリアラは、ジルバが入ったルビアの行動により大混乱、ルビアを殺害。
運悪く駆け付けたロイドに失望の目を向けられ、リアラは逃走。
シンクは巧みに言葉を使いロイドから許しを得る。アトワイトが真実に気付くが誰にも言えず。
ロイドは決意を固める。その後クロエとの間に一問答。クロエは火葬を提案するが…?
一方精神が危うくなったリアラはマオと遭遇。マオは放送情報とディムロスを狙うが…?
●病人と青トリオ
放送によりロニの精神が静かに崩れ出す。考察の後、サレの奇襲。VSサレ突入。
キールの頭脳戦によりサレ撃墜。しかしそこへアリエッタ達が乱入。ロニ発狂。
泥沼状態のロニ達をよそに、ウッドロウVSサレ。風とねぎを駆使しサレを追い詰めるが、流れ弾でウッドロウ死亡。サレは病気のマルタをさらい城でおしゃべり。
一方キールはアリエッタに刺され気絶。ロニは南へ逃亡、この時何かを聞く?テルクェスが反応したのは、もしかすると……?
●ガオラキア組
アリエッタ、DMを起爆剤に10秒で散り散りになってしまう。アッシュがダオスの遺体を発見。
リフィルとジェイドは仕方なしにアリエッタを探す事に。この時クレメンテが何かに気付く?
チャットとアリエッタはアリスに遭遇。VSアリス、アリス死亡。アッシュが到着するも、アリエッタが東の匂いに疾走。
遅れて、ジェイドとリフィルがアリス死体を発見。リフィルがジェイドとアリエッタの間の問題を危惧し単独行動。
一方アリエッタは青トリオVSサレに乱入。どさくさに紛れキールを刺す。動揺したチャットがロニに発砲、流れ弾がウッドロウへ。
リフィルが現場に到着。アッシュ達はロニを退けるが、チャットがウッドロウ殺害に気付いてしまい…?
●総評
何処も緊迫した状況過ぎて笑った。
一触即発な状況や考察のターンが止まってるのかな?
おお!
まとめとはありがたい!
しかし
>風とねぎを駆使しサレを追い詰めるが
すまん、ウッドロウw
お前の雄姿は覚えているが、ついつ笑ってしまったw
分かりやすいまとめ乙!
確かにどこも状況がややこしいなww時間軸もかなりズレてるし…
そりゃペースも落ちるな
そしてねぎw
相変わらずのシリアスブレイカーだな
今一番時間が進んでないのは、洞窟チーム?
ミトスが動かないと付近のスタンや向かってるデクスが書けない。
ルーク達も動かしておかないと取り残されそうだ。
人が多い所に向かうみたいだし、介入できなくなりそう。
こりゃ難しい状況すぎw
強いて書きやすいのなら、アガーテ単体でレイスとの合流付近までかねぇ
一番進んでないのは塔のてっぺんじゃないか
放送後の投下一回しかないし…考察だから難しいと思うけど
このままじゃアビスマン突入してきてしまう
ミクトランは何かに気がついた?と状態表に書いておけば考察飛ばしても良いんじゃ・・・
ミクトランが首輪外しても、人がたくさん集まるなら丁度いいよな。戦力的に。
壮大な死亡フラグが立つが
避難所に投下きてるね
毎回思うんだが、避難所に投下する時は本スレに宣言してほしいわ。普段避難所は見ないから。
本スレに投下できないから避難所に投下するんじゃないの?
被ったw
だが作品投下は嬉しいな
規制で宣言すらできないこともあるしな。
避難所に投下したものです。誤字脱字修正と描写の書き足ししたので投下します。
――俺は一体何なんだろう?
ふとそんな疑問が降り落ちる。塩っぽい味の液体が頬を伝って口の中に入っていく。鉄の味まで滲んで、その不協和音に胃液が逆流しそうだった。
俺はいつだってこうなのだ。守りたいものがあっても守れずに、誰かを守れるようにと鍛えた身体のくせに肝心なときには動かなくて、こうして地面に這い蹲って。
そうして目の前で殺されていく大切な、守れたはずの命。守らなければならなかったはずの命。
目を閉じる。瞼の裏側にこびり付いている。殺意を秘めた少女の眼差し。それは初めて会ったときと再び会ったときで一分も違いがない。同じ色をした瞳。
けれど俺の瞳はきっと、一日前と今では全然違う。
何もかも違いすぎる、はず、なのに。
俺のとった行動は一日前と何ら変わりなかった。少女の殺意の前に恐怖し敗北し、惨めに道具に縋って逃げただけ。
復讐を謳っておきながら。鮮血を自ら撒き散らしておきながら。
俺はそこで少しばかり安堵の念を覚えた。
沈着冷静な判断能力を失うほど、俺は未だ狂っていないのだ、と。
けれど胸の奥に濁った憎悪という名の感情は決して消えない。否、消してはならない気がした。
身体じゅうから血が溢れていく。こんなところで死んでたまるか。身体を包む冷たい雪を払いながら、必死になって匍匐前進をする。
手の中に握り締められたままの得物。食欲さえそそる綺麗な赤紫色をしていたはずのそれはいつの間にか赤黒く変色していた。
ひっ、と喉の奥から情けない音が出る。
何でこんなにも自分が恐怖するのかなんて分からなかった。筋肉が引き千切れるのではないかというほど力が篭っていた手が、急激に緊張を緩める。
それは小さくバウンドして雪の中に沈む。弛緩した己の腕の先についているものを眺めてみる。赤黒く染まった武器を握っていた手も赤黒く染まっていた。それが自分の血じゃないことなんてすぐに理解できた。
フラッシュバックする、手と得物を穢した血を浴びた瞬間の記憶。こんなもので何が切れるのだろう?
あまりにも頼りなく思ったはずの武器は、そのとき、間違いなく人の皮を、肉を、引き裂いたのだ。
俺は頭を抱えてその場に蹲る。得物が怖くなったのではない。
憎悪に任せて、それを振るい、信じられないほどの力を以って血を撒き散らせた自分自身が恐ろしかったのだ。
そのとき俺はどんな顔をしていたのだろう? 刃を持たぬ得物に己の顔が映らなかったのは幸いか、それとも。
ただ一つだけ明確に覚えているのは、そのときも、そして今も、確実に俺の中に殺意という名の感情があるということだ。
平穏を奪い去ったサレを殺したい。キールを殺し俺を刺したアリエッタを殺したい。ウッドロウさんを殺した金髪の餓鬼を殺したい。
ルーティさんを殺したやつを、ナナリーを殺したやつを、俺たちをこんな目に合わせたあのピエロ野郎を! 全員殺してやりたい!
その激情に身を委ねられればどんなに幸せだろう。こんなふざけた武器からあれだけの威力を引き出せるほどの力を、それだけで無力な俺は得られるのだ!
なのに俺は恐怖している。怯えている。殺意に身を任せることを。
――俺は一体何なんだろう。
復讐を謳っておきながら、殺意に身を任せることも出来ずに、俺の中のどこかは仇討ちを否定し続ける。人殺しを否定し続ける。
“ゲームに乗る”ことを拒み続けている。当然だ、こんなアホみたいなゲームに乗ってたまるか。ゲームに乗ることはやつの思う壺。ゲームに乗ったら、俺は誰かを殺した奴らと何ら変わりない――。
――あれ、なんか、おかしくね?
長い間雪の中に顔を突っ込んでいたからか、脳内がすうと冷めていった気がした。
俺はどうしてこんなに“ゲームに乗る、乗らない”に拘っているんだろう。思考の何もかもが、この“バトルロワイアル”を前提に展開されている。
キールやウッドロウさんはむやみに人を殺さない。だってゲームに乗っていないから。
キールやウッドロウさんを殺したあいつらは人を殺した。だってゲームに乗っているから。
俺はウッドロウさんに「ゲームに乗っていないんですよね?」と訊いた。だって彼が人を殺すと言ったから。
俺は人を殺したいと思っているくせに人を殺したくないと思っている。だってゲームに乗りたくないから。
気付いてしまえば、あまりにも馬鹿げた事態に乾いた笑いが込み上げてきた。
俺の目は最早このゲームに乗っている乗っていないで全てのモノを判断していたのだ。その瞬間俺は今までの俺が馬鹿らしくなった。
殺し合いゲームに縛られたくないとあんなに願ったはずなのに、俺の思考は完全にゲームに支配されていた。あの道化師の囁きは俺の魂を完全にこのゲームに縛り付けていったのだ。
冷えた頭はやたらと良く回った。じゃあ今考えるべきは何かと訊かれれば、本当の俺が今やりたいこと。この胸に渦巻く殺意は間違いなく本物だ。けれど守りたいものは未だたくさんこの島の中に在る。
単純なことだ。俺が守りたかったのは大切な人たちとの平穏な日々、ただそれだけだ。それを守るのに、ゲームに乗るとか、乗らないとかは全くもって下らないこと。
俺はせめて未だここに残っている大切なものを守らなければならない。それが俺の償いだから。スタンさんを殺してしまった俺が、遺されたカイルを守ったように。
仲間は未だ生きている。カイルも、ジューダスも、リアラも、ハロルドも。以前俺が殺してしまったスタンさんも生きている。
なら俺はそれらをなんとしてでも守らなければならない。守れなかったルーティさん、ナナリー、キール、ウッドロウさん、皆の分まで。
ゲームに乗ってしまった馬鹿野郎に傷つけられる前に。俺は俺の正義を以って、守らなくちゃいけない。大切な人をこれ以上失いたくないから。
俺が守りたいから守る。それでいいじゃないか。それが今の俺の正義であり、今の俺がやりたいことなのだ。
大切な人を傷つける奴は許さない。サレもアリエッタも金髪の餓鬼も、俺が殺さなきゃならない。ルーティさんを殺した奴もナナリーを殺した奴も殺さなきゃならない。――誰かをまた殺される前に。誰かの平穏を奪い去られる前に。
そう、俺はゲームに乗っていない。俺は大丈夫。俺は正常なんだ。こんなアホなゲームに付き合ってやる気は一切ないのだ。
あの道化師の囁きから関係のないところで俺は、きっと俺の意志で動いているのだ。俺はゲームに乗っていない。俺は大丈夫。
平穏な日々を取り戻すために、必要だから障害となる者を排除するだけだ。そうしないと生きていけないことを知っている。
ウッドロウさんだって言ったじゃないか。ヴェイグを討つと。――ああ、あいつはきっとゲームに乗ったんだろうな。だって人をあんなにも無残に殺したから。
あいつも放っておけない。ウッドロウさんがそうしようとしたように殺さないと、また誰かに危害を加えるかもしれない。
俺? 俺はゲームに乗ってない。ゲームとか殺し合いとか、そんなのとは一切関係のない場所でこの決意(殺意)は蠢いているのだから。
そうだ、俺はゲームに乗っていない。乗ってたまるか。俺が殺したいと思うから殺す。ただそれだけだ。
血塗れの俺は赤黒いさつまいもを再び握り締めて立ち上がった。笑いが止まらない。顔の筋肉は引き攣って仕方ないのに、流れ込んでくる涙は何故か止まらない。決意を固めたはずなのに胸に流れ込んでくるのは虚無感だ。
どうして、何故、そう思いながら必死に俺は自分を鼓舞するために笑おうとする。
小さく込み上げる笑い声の中に、俺はそうして聞き慣れた、大切な人の声を聴く。
過敏になった神経が伝えてくれたその音の元に、俺は“何故か”縋るように足を向けた。その声は俺が守らなくちゃいけないもののはずなのに。
人影は何処にも見えなくて、それでも俺は前進し続ける。声が聞こえたような気がしたから。俺の大切な誰かの声が。
そうして、最初に飛ばされた場所からはかなり離れた、絶対に声なんか聞こえないだろう所まで歩いたときに、俺はようやくその声の持ち主の小さなシルエットを発見するのだ。
――俺は一体何なんだろう?
* * *
洞窟の西側は落盤のひとつもなく、空気の流れの通りしっかりと外へ繋がっていた。薄雲に隠れた朧月が確かに見える。至って正常。問題なし。しかし地面に目を向ければ、異常としか言い様のない光景が広がっている。
「すっげ……」
ルーク・フォン・ファブレは一面の銀世界に息を呑んだ。まるでケテルブルクをそのまま持ってきたような雪原が目の前に在ったからだ。
「さて、西側は異常ナシね」
そう口笛を吹くように言ったハロルド・ベルセリオスに、フィリア・フィリスは目を丸くする。
「え、ハロルドさん、地図ではこっちは確か砂漠……でしたように思うんですが」
「ああ、あたしがしたのは洞窟の話ね。特に異常なし、地盤の脆くなってる場所もなかった。上級晶術2、3回撃ってもま、気をつければ閉じ込められることもないでしょ。
これでじっくりアレと対面することが出来るわ。……んで、アンタらはおつかいに行ってもらいたいワケだけど」
そこでようやくハロルドの視線は洞窟の外に向けられる。睨むようにそれを見て、ハロルドは呟いた。
「丁度一日前くらいには雪降ってなかったわ。ちゃーんと砂漠だったわよ?
乙女心と山の天気は変わりやすいとは言うけど、降りそうな気配も全くなかったしね。あんたたち外から来たんでしょ? 天気どうだった?」
「私達は島の東側しか行ってませんが……綺麗に晴れていましたわ。こんなに雪が降るような雲もどこにも見当たりませんでしたし」
足元に手を伸ばして雪を撫でてみる。さらさらと零れる粉雪は降ったばかりなのか、解けずに綺麗に残っている。
「すげえなこの雪……全然解けない」
ルークがフィリアに続いて雪に触れる。掌に乗った氷晶は皮膚に触れても解けなかった。
「ケテルブルクで降った雪は、手に乗ったらすぐに解けちまったのに」
フィリアはハロルドが大きな目を細めたのを見逃さなかった。いつかクレメンテから話を聞いた、天地戦争時代の稀代の天才学者――ハロルド・ベルセリオス博士と同じ名を持つ彼女。
この短時間の触れ合いの中で、彼女がフィリアの所属していた神殿のどの研究者よりも明晰な頭脳を持っていることは明白だった。
「もしかして……何かありますか? この異常現象は」
「いいセンいってるわねアンタ。そこの七歳児とは大違いよ?」
「だから七歳って言うんじゃねぇよ!」
ハロルドは洞窟から一歩も足を踏み出さなかった。洞窟の出口付近は砂漠らしき砂が覗いていて、雪は降りていない。なのに、彼女は何かを警戒するが如く洞窟の湿った石の上に足を張り付かせている。
「ルーク、あんた冷え性とか低体温症とかじゃあないわよね?」
「え……ああ、多分」
「ハロルドさん、私の手で触れても……解けませんわ」
ハロルドの言わんとするところを察し、フィリアは雪を手にとって見る。両手でどんなに摺り寄せても、粉雪の形は崩れない。
ライターを取り出して、雪に近づけてみる。手にしているフィリアの皮膚にもその熱はしっかりと届いていたのに、翳された雪は決して解けなかった。
「なんだコレ……流石にコレはおかしい……んだよな、フィリア?」
眉を寄せるルークの肩の上で、ミュウが不安そうな鳴き声を上げる。その小動物の見つめる先を見れば、そこには洞窟へ入ったような足跡が一対残されていた。
「これは……きっとスパーダさんの足跡、ですわね」
ハロルドは頷く。彼女が洞窟へと篭ってからの来訪者は、フィリアとルーク、そしてスパーダしかいなかったはずだ、と。綺麗すぎる雪に、フィリアはそれを降ったばかりのものだと予測した。
しかしスパーダの足跡がくっきりと残っているということは、少なくとも、第二回放送よりも2〜3時間以上前に降雪が完了したということである。
「足跡がそんなにくっきり残ってる、ってことは雪が止んでからになるのかしらね、そのスパーダってコがここに入ってきたのは。
ま、そんなにこの雪ばっかり気にしてても仕方ないわ。おつかいはできるだけ早くこなさないと、制限時間までに返ってこられなくなるわよ?」
しかしフィリアの疑問を断ち切るようにハロルドは別の話題に切り替えた。
そうだった、とルークは慌てて地図を取り出す。アッシュとジェイド。カーティスをここに連れてこなければならないのだ。
「最後にアッシュから通信があったのは……結構前だよな。G2の街にいるって言ってたけど、『これから移動する』とも言ってたし。……くそ、アッシュのやつ、定期的に連絡くれるって言ったクセに全然通信してくんねえじゃねえかよ!」
「もしかしたら、もう死んでる……なーんてこともありえるかもね?」
意地悪く艶やかな唇を吊り上げながらハロルドが言うのに、ルークの喉がごくりと上下するのがフィリアにも窺えた。
「ハ、ハロルドさん、そんなこと……」
「でもね実際、そういうことがありえるワケよ。このゲームの中ではね」
ぴしゃりと突き放した物言いに、ルーティが死んだことをフィリアは思い出す。彼女の笑顔が脳裏を過ぎる。もういない、いつの間にか死んだと告げられた、大切な仲間の姿。堪えていたはずの涙が溢れそうになる。
「あいつが死んだら……」
ルークもまた俯き、何かを考え込むように拳を握り締めた。重い沈黙が洞窟の出口を支配しかける。しかしそれを許さなかったのは、沈黙を齎したのと同一人物だ。
「……だから、生きてるうちにさっさとやれることやっちゃわなきゃ。あんたとアッシュてのと違ってあたしたちは一切連絡手段を持ってないわ。今のうちに進路計画教えて。何かあったときの参考にするから」
ばん、とばかりに広げた地図をつきつけられて、フィリアとルークは己の内に訪れた暗い風を吹き飛ばされてしまう。
厳しすぎる物言いや冷静すぎる思考に明晰すぎる頭脳。しかしそんなハロルド・ベルセリオスの中には確かなあたたかさが存在しているのだとフィリアは心が落ち着くのを感じた。
「それと……できればこの雪は避けて進んで。こんな寒い中進んだらヘソ出しのルークなんかすぐ凍死しちゃうっしょ?」
「ばっ、しねえよ!!」
「やはり……何かあるんですね? ハロルドさん」
月明かりの届かない洞窟の入り口にいるハロルドの表情は良く窺えない。しかしふさけたような、何でもないような声色の中に強い警戒心が見え隠れしている。
不躾にハロルドの顔を凝視してしまっていたフィリアに、ハロルドはこちらにも分かるように、ぐふふ、と声を出して笑ってみせてくれた。
「ま、21通りくらい理由はあるけど、一番は『女のカン』、かしらねえ?」
* * *
「大丈夫か、フィリア?」
ルークに手を取られながら、長いローブを引きずって歩く山道は思いの他厳しいものだった。
「今頃ジューダスのやつ、何してっかな……」
「……信じましょう、彼ならきっと無事ですわ。それに、ミトスさんもハロルドさんも頼れる方々です」
正体不明の解けない雪を避けながら、山沿いにC2の城を目指して進路をとることを望んだのはフィリアだった。スパーダから伝え聞いた、大切な仲間のひとり、ウッドロウ・ケルヴィンの足跡を訪ねるために。
ハロルドもルークも笑って頷いてくれた。目立つ建物だから人が多く集まるだろうしその分目的の人物がいる可能性も高くなるだろう、と。もしそこにウッドロウがいなくても、用意周到な彼のこと、何らかのメッセージを残してくれているだろうと。
足を滑らせて転びかけたフィリアをルークは優しく支えてくれた。レンズが無いため術も使えず、ミトスやハロルドの前では神殿で得た知識も役に立たず。
そんなフィリアを責めることなく、ルークはそれでもフィリアを信頼し、守り、立ててくれている。初めて彼に会ったときは怯えた形相で血塗れで倒れていたのに。
ルークの強さにフィリアはスタンの――密かに恋した男の面影を見る。フィリア・フィリスをフィリア・フィリスとして認めてくれた男。それがスタン・エルロンだ。
彼がいたから、フィリアは神殿の外へ出て、ルーティや、ウッドロウといった仲間を得ることができた。今もこうして、そのウッドロウの足跡を頼るべく彼のいたという場所へ足を向けている。
クレメンテのいない己に何が出来るかと考えれば、こうして危険を避け情報収集に努めることのみだ。
途方もない無力感が肩を押し潰さんと襲い来る。けれど止まるわけにはいかないのだとハロルドは教えてくれた。そうして自分を支えてくれる人たちのためにもと、フィリアはルークの歩幅について行こうと懸命に両足を動かす。
背後から日が昇るのを感じるのと同じ頃、ようやく見えてきた城の形。その雪の積もった尖塔はあまりにも見慣れた姿をしていて、フィリアは驚きに口元を手で覆う。
「あれは……ハイデルベルグ城、ですわ」
「知ってる建物、だったのか?」
足を止め、フィリアは森の向こうに建つ城の影を見据える。
「私の仲間……ウッドロウさんの治める城ですわ。間違いなく……」
「え、ウッドロウさん、って王様だったのか!」
「どうしてこんな場所に……」
見当違いなところで驚くルークをよそに、フィリアは胸が苦しくなるのを感じた。見知らぬ土地に存在する、見知った建造物。フィリアたちの世界から、そのまま持ってきたとしか考えられない外観。
それはフィリアに恐怖を与えると同時に安堵をも齎した。――そこに辿り着ければウッドロウが笑顔で迎えてくれるような、元の世界に戻れるような、そんな思いを。
「……アブソーブゲートみたいに、何かの手がかりになるかもしれないよな。俺は頭悪いけど、フィリアは頭いいし」
「……そんなことありませんわ。ただ、探索の役には立てるかと思います。ようやく……ようやく、役に立てる」
励ましてくれるようにルークがフィリアの肩をぽんと叩く。この殺し合いの舞台に連れて来られてから、守られるばかりで殆ど何も出来ていないフィリア・フィリスが始めて役に立てるかもしれない可能性。
それがあそこ――ハイデルベルク城には存在する。あの城を調べれば、何か分かるかもしれない。大切な誰が待っているかもしれない。彼の笑顔に後押しされるように頷くと、二人は西へと向かう足を速めた。
( ^ω^)<支援させてもらう!
* * *
ルークとフィリアの背中が完全に見えなくなってから、ハロルド・ベルセリオスはようやく洞窟の入り口から一歩外に足を踏み出した。積もる雪には決して触れぬよう、ギリギリの位置でつま先を停止させる。
人間の体温でも、そしてライターの火でも解けない雪は何らかの力が篭められているに違いない。しかしその力の正体は掴みどころがなく、ハロルドの頭脳を持ってしても今すぐ答えを出すことは不可能だ。神経を研ぎ澄まし、力の流れを探る。
僅かに漂う、レンズの力。晶力。風の力。ソーディアン・イクティノスに取り付けたコアクリスタルのそれを思わせる。しかし肝心の雪からは、それらしき力が感じられない。
晶術の雪も体温や通常の火では解けないが、しかし一面に積もった雪はどう考えても晶術で作られたものではない。
ソーディアン・アトワイトを最大出力したとしてもここまで大規模な降雪を長時間維持することは不可能だろう。
晶術で解かせるものなのか、ためしにひとつ術を打ってみることにする。得体の知れないものに攻撃を加えるのは危険と隣り合わせだが、ハロルドを突き動かすものは常に未知のものに対する好奇心だ。
最低限に威力を抑えたエンシェントノヴァ。愛用の杖をくるくると回し、精神を集中させる呪を紡ぐ。
「古より伝わりし浄化の炎……消えろ」
詠唱文句自体は通常と変わらないが、術の名と共に落ちた火の玉はファイヤーボールレベルの小規模なものに落ち着かせてある。降り注いだ熱に、雪はじゅっ、と音をたてて消える。――どうやら晶力やそれに準ずる力を加えれば、この雪はちゃんと解けてくれるようだ。
ならばその正体も、ミトスの言うマナやルークの言う音素のようなものだと推測できる。この会場に満ちる何らかの力は全てが互換性を持っている。そう考えるのが自然だから――。
「どうせならあの子達の行く先の雪、ぜーんぶぶっ飛ばしてあげれば良かったかしら。――あら」
ハロルドはつうと己の頬に汗が一筋奔るのを感じた。最低限に抑えたとはいえ術の発動は迂闊だったか。ミトスに言われた実験や舞台裏の解明のためこの場――アラミス湧水洞及びアブソーブゲートには出来るだけ人を入れたくない。
そう考えていたのだが、どこかの御馬鹿さんが言っていた通り、運命は時に厳しいもの――。
そう思うのと同時に目の前に現れた人影にハロルドは苦虫を噛み潰す。
本来なら再会を喜ばなければならない人物なのかもしれない。けれど今の状況と情報を総合的に考えると、この邂逅は至極不都合で不具合なものなのだ。
雪の中、赤黒いさつまいもを手にして、それより鮮やかな赤で全身を染めた男は――ロニ・デュナミスは、笑いながら泣きながら、何かに濁った瞳でハロルド・ベルセリオスを真っ直ぐ見つめていた。
――Can stay with me? Or just go away.
You see my tears, it's doomed reunion....
【一枚の札が抜き取られ、“それ”の手に残るは道化師の描かれた札。仮面の奥で嗤う、“それ”の眼差しの先に在るものは――】
【ルーク・フォン・ファブレ 生存確認】
状態:HP60% TP100% 強い決意 第2回放送の遅れがひっかかる
全身に傷・打撲・痣 イレーヌとスタンへの不思議な感情 イオンの死にショック
所持品:メロメロコウ ミスティシンボル ソウルブラスト ミュウ
基本行動方針:今自分に出来る事をする
第一行動方針:フィリアと一緒にC2の城へ向かう
第二行動方針:アッシュ達やティアと合流する
第三行動方針:アリスを探してイオンの仇を取る?
第四行動方針:スパーダ・ジューダスが気になる
現在位置:B3
【フィリア・フィリス 生存確認】
状態:HP100% TP100% 深い悲しみ 若干空元気 巨大な魔力(マナ)がちょっと気になる
所持品:マジックミスト メンタルバングル ホウテイバンリ
基本行動方針:仲間を探しながら情報収集に徹する
第一行動方針:ルークと一緒にC2の城へ。何かの役に立ちたい
第二行動方針:クレメンテの所へ行きたい
第三行動方針:スパーダ・ジューダスが気になる
現在位置:B3
【ハロルド・ベルセリオス 生存確認】
状態:HP100% TP85% 悲しみと元の世界の仲間達への心配 巨大な魔力(マナ)が気になる
支給品:天才ハロルドの杖 スペクタクルズ×85 ローレライの宝珠
基本行動方針:面白くないのでゲームには乗らない。但し殺しは認める
第一行動方針:ロニに対処
第二行動方針:スペクタクルズで未知の種族のデータ採取! 首輪と謎の魔力は取り敢えずミトスに任せた。
第三行動方針:ロニに対処後、パッセージリングを再調査。ルークに聴いた内容を交え考察に専念。
第四行動方針:宝珠関連の謎を調査。名簿のエミルという少年には注意する
第五行動方針:ああっミトスとルークを解剖したいいいい!
現在位置:C4・アラミス湧水洞入り口
【ロニ・デュナミス 生存確認】
状態:HP15% TP60% 脇腹に刺し傷(処置済) 胸付近に刺し傷 ヴェイグへの警戒と微かな同情
精神的ダメージ大(半精神崩壊?) 重度混乱 右腕に大裂傷 ウッドロウとキールを殺した奴らへの憎しみ
所持品:さつまいも タフレンズ×1 やや小さくなったシーツ 温石
基本行動方針:自分と大切な人の平穏を守る。脅かす者は殺す
第一行動方針:???
第二行動方針:サレ、アリエッタ、チャット、ルーティを殺した奴、ナナリーを殺した奴は絶対に殺す
第三行動方針:ゲームのことは深く考えたくない
現在位置:C4・アラミス湧水洞入り口
投下終了です。タイトルスペルミスしてて恥ずかしい…orz
2以降のスペルが正しいです。
指摘ありましたらお願いします。
東京は初雪らしいですね。ちゃんと解ける雪ならいいですね
投下乙です
怖いこと言うなよw
実はリオンだったり実はあのハロルド博士だったり色々凄い人物に遭遇してるのに
気付きそうでも深入りしないところが良くも悪くもフィリアらしいな
これまた厄介な所に向かってるし続きが気になる
ハロルドもまたセフィロト警備員に戻ると思いきやロニと会っちゃうしどうなることやら
投下乙
そういやフォルスの雪って溶けないんだよな。
たしか城にはサレが居たな
ルーク達逃げ…いや満身創痍のサレ逃げてー
暴走した雪だから溶けないんじゃないんだっけ?
今回の話のせいではないが、フィリアがハロルドの術みてスルーは妙だよな。
レンズ無いからなんて断言するならなおのこと。
すみません。フィリアの前でハロルドに術使わせてスルーさせてた者です。
今回の話に影響が出ないよう、ご指摘部分の修正をしたいと思います。
ですがその前に修正の方向で相談させてください。
ハロルドの杖がレンズ代わりだと思ってます。
ゲーム本編では配膳の景品ですが、イラストで持っているので
ハロルド自身が作った杖…みたいな感じにしたいと思います。
この案でよろしければ、フィリアの反応を追加で書かせていただきたいと思います。
みなさまのご意見お願い致します。
該当SSはep193:華をたむける為にです。
落ち着け自分…。
再度、ご意見お願い致します。
指摘しといてアレだが、自分には妙案がないです。
ただ、レンズ回りは謎多いから熟考というかいろんな意見募られた方がよいかと存じます。
投下乙であります。
このSSのタイトルをみて思わずニヤニヤしてしまったwwwwwww
そしてこの展開もまたニヤニヤ。
次回も楽しみにしております。
疑問を抱かない、気付かないってこともあるから修正しなくていいと思う
それこそリレーで補完すればいいんだし。レンズ=ソーディアンがあるから術が使えるっていう先入観もあるだろうし
俺も修正しなくてもリレーで補完できると思うよ
何らかの理由で疑問に思わなかったかもしれないし、疑問に思ったが敢えて言わなかったかもしれないし、そこまで気が回らなかったのかもしれない
フィリアの続きを書く人がちょっとその辺の描写を入れてくれればいいんでない
天才ハロルドの杖は天地戦争後しばらくしてからハロルドが造ったんだと思う。
まあ、晶術に関してはメディアによって解釈が違うしオリかリメかでも違う
リメが元のマ王で連載している漫画じゃ普通の人間が晶術を使えるのは神の眼の影響とされているし
オリだと物語が始まる前にダリスが記憶封印魔法等晶術に値するものを使用しており、ミクトランも神の眼による晶力を用いて戦っていた
D2晶術は公式でソーディアンの晶術とは別物で
ロワ内でのジューダス曰く第二次天地戦争後に発達(ハロルドについての記述からフィリアが理論づけた?)
したものとされている
フィリアがどっちルートから来たのかはまだ明言されていないから
D2晶術をどう判断させるかは作者の自由かと
すみません。それでは皆様のお言葉に甘えさせていただいて、該当SSはそのままにします。
書き手の皆様、デリケートな問題スルーさせてて本当申し訳ありませんでした。
うっわああ、ロニやんでるなあw
ハロルドともあっちまったしw
おもしろかったです、GJ!
ハロルドとロニはルーク達が出かけてすぐに会ったの?
中央付近は時間の経過がわからない。
ハロルドとロニが会ったのはまだ深夜のイメージだな
中央付近で朝が来てるのってアビスマン、ルークとフィリア、サレとマルタで
カイウスとチェルシーは夜明け前って感じ
ロニの移動速度がイマイチ謎だが、全力疾走なら夜明け前につくかもしれんね。
ロニの飛ばされたところはD4のどこかなんだから、C4に限りなく近いD4なら
夜明け前どころか夜2時くらいには全力疾走しなくても余裕でつけるんじゃね?
南にはまじで人いなすぎだろjk
投下します
少女の身体は限界が近かった。
野性のままに行動した、第二回放送後からの時間。けれど少女の本来の性質は素早い動きを得意とする戦士でもなく、暗殺者でもない。
少女は魔獣使いであり、譜術士である。身体じゅうの筋肉がはち切れるかのように悲鳴を上げている。しかしその痛みを無視してでも尚、少女には守りたいものが在った。
家族を失った自分に優しくしてくれた導師イオン。
人間の言葉を教えてくれた。譜術も教えてくれた。服をくれた。仕事をくれた。傍に置いてくれた。アリエッタの話を聞いてくれた。
アリエッタと一緒にいてくれた。アリエッタを“ひとり”から救ってくれた、大切なひと。
そして、イオンと同じように、アリエッタを守ってくれた優しい戦士、クレス・アルベイン。
夢の中、イオンから託され、アリエッタはクレスを守ると決めた。
けれどアリエッタはクレスを守れなかった。死なせてしまった。石化した彼を治す術を知らなかった。彼の腕からとめどなく流れる血を止めることができなかった。彼の顔から生気が失われていくのを、ただただ、見ていることしかできなかった。
守るべき大切な人を二人も、アリエッタは死なせてしまったのだ。
それでもアリエッタはイオンを、クレスを守りたかった。けれどもう死んでしまった二人を守ることは、アリエッタにはできない。――だからせめて、せめて仇だけは討ちたかった。イオン様を、クレスを殺した奴らに復讐を。アリエッタを“ひとり”にした奴らに報復を。
クレスを笑い、クレスの血の匂いを染み付かせた女はこの手で殺した。彼女の心臓を貫いた感覚は今でも未だ掌に残っている。苦無と共に握る拳に、ぎゅっと力を篭める。クレスを殺したアリスを殺しても、満たされなかった心。
ならばイオンの仇を討てば、この心は少しでも満たされるだろうか? ――孤独の闇が晴れるだろうか?
だからアリエッタは、大切な人が残してくれたものを頼りに小さな身体を精一杯に動かして、彼女の正義を守るために行動した。
イオンとクレスが残してくれた血の匂いだけが、アリエッタの道標。アリエッタの信念。
イオンの血の匂いが濃く、アリエッタに襲い掛かってきた男――ロニ・デュナミスはまるで一日前の再現のように目の前から消えていった。逃げられた、と思った瞬間にはもう彼の姿はどこにも見えない。
イオン様のために、アイツを殺す。殺したい! 仇を討たなきゃならない!
アリエッタの柔らかい唇が噛み締められ、ぷくりと血の珠が浮かぶ。ロニの匂いは、アリエッタの嗅覚の及ばないところまで完全に逃げ去ってしまった。
このまま走って追いかけたい衝動に駆られる。けれどアリエッタは足を踏み出すのを堪える。
夜の闇、砂漠、雪、見失った匂い。そして悲鳴を上げる全身の筋肉。全ての要素がアリエッタに告げている。ロニ・デュナミスを追いかけ殺すことは不可能である、と。
足を踏み入れかけた雪原から、ひんやりとした冷気が流れて血に汚れた肌を撫でていく。白すぎる大地が夜のくせに眩しくて、闇を求めて森の方へ首を動かす。
――そうして目に入ったのは、優秀な治癒術士であるリフィルが魔力を集め、今まさにキールに術をかけんとしている姿。
――どうして!?
アリエッタは目を見開いた。キールは他の三人よりは薄かったもののイオンの血の匂いをさせていた。間違いなくイオンの仇である。なのにどうして、リフィルはキールを救おうとしているのか!
キールは群青色の睫毛を伏せ目を閉じていた。アリエッタが与えた傷は彼を死へ追いやっていてもおかしくない。けれどキールからは――死の匂いを、感じられなかった。
リフィルは知っている筈なのだ。レイズデッドがこのゲーム中では効果がないことを。なのにわざわざなけなしの力を振り絞って治癒術をかけようとしているのは――やはりキール・ツァイベルが生きているから!
「どうしてっ……」
硬い苦無に、食い込んだ皮膚がぎりりと悲鳴を上げた。
「どうしてどうしてどうしてどうしてどうして――――!!」
アリエッタの靴は柔らかな地面を蹴る。一直線に目指すはリフィルとキールの元。
――リフィルはクレスを助けようとしてくれた。なのにどうして、どうしてイオン様を殺したキールを助けようとするの!?
リフィルの治療行為はアリエッタにとって裏切りに他ならなかった。イオンの仇をとるために加勢に来てくれたはずの皆。しかしそのうちの一人、リフィル・セイジがとった行動は敵を治療するというもの。
何としててでも阻止しなければ! イオン様の仇を生かしてなるものか!
握り締めた苦無に力を篭めながらも、アリエッタは彼女本来の武器である譜術の詠唱を開始する。この距離からでも間に合う、初級譜術、リミテッド。――導師守護役に就くことになったアリエッタに、イオンが最初に教えてくれた術。
苦無を持っていない方の手で譜陣を描く。地面に描けない代わりに、空中に描く。精度や威力は落ちるが、リフィルに当たりさえすれば――詠唱を中断させることができさえすれば十分なのだ。
リフィルの魔力が収束しきる直前、光の鉄槌は振り下ろされる。
* * *
治癒術として昇華できるようなマナは既にリフィルの身体に残されていなかった。しかし応急処置で済むほど、青髪の青年の傷は浅くない。
薄いマナをそれでも外界から体内に取り込むべく、リフィルは銀の長い睫毛を下ろし神経を集中させる。そう――せめて、ファーストエイド一回だけでも唱えられれば良い。そう願って。
――しかし残酷な現実はリフィルの心をかき乱す。
キールをリフィルに託していったチャットの悲鳴が、耳を劈く。思わず目を開けばそこに広がっていた光景は、赤い色をしていた。
鮮血を思わせるアッシュの赤い髪。それが異様なまでに広がっている。そう始めは思った。しかし瞬きをもう一度してみれば、リフィルの目に映った赤の大半が、アッシュの背中から飛び散った血であることが分かったのだ。
「なっ」
リフィルは唾を飲み込む。何人もの人が入り混じり、悲鳴が飛び交う中でアッシュの血の軌跡だけがリフィルにはスローモーションのようにくっきりと見えた。拙い、とリフィルは奥歯を軋らせる。あの出血量は今すぐにでも治癒術をかけなければ――!
そう考えたリフィルの足がキールの傍を離れようとした瞬間、視界が唐突に開け蹲ったままのアッシュと視線がかち合う。
――俺に構ってねぇでそいつから助けやがれ。
そう、彼の眉間に寄せられた皺が語っていた。彼の翠色の瞳は強い意思に輝き、生きる意志に満ちていた。ロイドのそれとは異なるが――信頼して良い瞳の色だとリフィルは判断する。
踵を返しかけた足を元に戻す。再び神経を集中させる。もう少し――もう少しで、マナが収束してくれる。
回復しかけた、体内のマナ。十分な量が満ちるまで待機してなどいられない。力が回復し次第、
術への昇華へ充てていく。
「あああああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁ―――!!」
チャットの悲鳴が聞こえた。尋常でない叫びだった。今すぐにでも集中を解き彼女の元へ駆け寄りたい。そんな衝動を引き起こさずにはいられない絶叫。
けれどリフィルの足元で眠るキールは、他でもないチャットから託された人物。もしここでキールを放置してしまえば、彼女の元に駆け寄ったとしても会わせる顔などない。大人として、教師として、優先すべきはどちらかなんて答えは、既に出ている。
「――今助けますっ!!」
それは心の底からの叫び。キールも。チャットも。アッシュも。治癒術を使える自分が助けなければならない。その責任を果たすべく、リフィルは手を翳す。
「――して、どうしてえええええええぇぇぇぇ!!!」
――瞬間、リフィルの周囲に集まりかけていたマナが霧散する。
リフィルは背筋を震わせたのだ。己に向けられてた、一途な殺気に。
次の瞬間足元に描かれる光の陣。上空が煌めき、光の鉄槌が降り落ちる!
眩い閃光が、リフィルを、そしてキールを包み込む。
* * *
泣き叫ぶチャットの傍まで身体を引きずって、アッシュはようやく砂に塗れた一つの死体を発見する。
鼓膜を破るような少女の絶叫。それすらも納得せざるを得ない、むごたらしい穴だらけの死体。恐らく美しかったであろう銀髪は砂に塗れ、雪明りも月明かりも反射しない。身体のあちらこちらから飛び出た内蔵はアッシュにさえ吐き気を催させる。
とりわけ一番アッシュの精神を揺さぶったのは、その額に丸々と空いた風穴だ。譜銃で出来る弾痕に良く似ている――そう連想して、アッシュは喉の奥を引き攣らせた。
ゆっくりと、おそるおそる見やる、泣き叫ぶチャットの掌の中。握り締められているのは一丁の拳銃。――先ほど発砲されたばかりの、だ。
絶叫と嗚咽に混じる、チャットの声。
「僕が、ぼぐが、ぼぐが、ころっ……ごろじだっ……ぁ、ああああああ!!」
――僕が殺したのだ、と。
少女はそう悟ってしまったのだろう。
アッシュは否定してやりたかった。けれど正確な状況を把握しかねている以上、下手なことは言えなかったし――何よりかける言葉が見つからなかった。
背中がどくどくと脈打つように痛む。
巨大なさつまいもを持った、“違和感”をその目に宿した男はどこかへ消えてしまった。とりあえずの脅威は去っただろう。そう思った瞬間――アッシュの傷口を再び抉るような鋭い殺気が背後に奔ったのだ。
咄嗟に振り返る。視界に入ったのは、苦無を手に、譜術を詠唱しながら駆けるアリエッタの姿。その表情ははっきりと伺えなかったが、はち切れんばかりの殺気をその胸の中に秘めている。それだけは確かに分かった。
「逃げろっ! リフィルっ!!!」
アッシュの叫びはチャットの声に掻き消される。チャットを守ったようにリフィルの元に駆け寄りたい。そう頭は思っても、身体がついていかない。思う通りに動かない。チャットの傍に縛り付けられてしまったように足は一歩も踏み出してくれない。
アリエッタの手が光る。譜術発動の譜陣が煌めく。初級譜術、リミテッド。その光はリフィルともうひとり、彼女の足元にいた男を包み込み――。
――光が晴れた直後、目を凝らしたアッシュは息を呑んだ。
寝転んだの青髪の男の上に、リフィルが覆いかぶさるように倒れていた。リフィルの服は焼け焦げていたが、すぐに彼女は顔を上げ、状況を把握しようと努める。
しかしチャットの叫びが止まることがないように――アリエッタの攻撃も休まらなかった。
とん、とアリエッタの小さな身体が宙に舞う。鈍く光る、金属の刃――苦無の輝きに、アッシュは無意識のうちに叫ぶ。
「この馬鹿野郎があああああぁぁぁ!!!!」
今度はチャットの悲鳴さえ掻き消すほどの叫びも虚しく、アリエッタは落下の勢いと共に苦無をリフィルと男めがけて振り下ろす――。
その瞬間は、アッシュの瞳に映ることはなかった。
彼の視界に移ったのは、雷雲の刃が導師守護役の装束に身を包んだ少女の身体を貫いた際の閃光。
雷の剣の突き刺さった先から展開した譜陣より迸る、稲光のみ。
支援
* * *
「何を……」
薄雲が晴れ現れた巨大な双月の光に照らされ映える、現れた男の死人の様に白い肌と銀縁の眼鏡。
その奥のピジョンブラッドの瞳は撒き散らされた血よりも鮮やかな赤。
「お前は何をしているんだ!!」
低い叫びが、アリエッタの鼓膜を揺らす。同時に崩れ落ちる身体は柔らかな草の上に沈む。
金髪の少女の泣き叫ぶ声は未だ響き続けて、止まない。
本当は知っていた。
――例えば、イオン様の血の匂いが、クレスの血の匂いが、全て復讐の対象だとするならば。
ここに居る全員を殺さなければならないことを。
そう、自分自身さえも、殺さなければいけないことを。
それでも身体の奥底から迸る熱が、激情が、アリエッタの身体を突き動かすのだ。
――それがアリエッタの進んだ道。それが彼女の、盲目的な正義。
――Torn my heart, my friend, that's you wanted to?
No can make my faiths illusions....
「アリエッタは……イオン様の、クレスの、仇、絶対に、討つんだからぁぁぁぁ――――!!!」
赤い瞳が地に臥せった己を冷酷に見下ろす。死霊使いのふたつ名を持つ冷酷な軍人は、きっとアリエッタを殺すのに微塵も躊躇しないだろう。
だからアリエッタは最期まで己の正義を貫くべく、守るべき人のために、瞬間的に全身のフォンスロットを開き、ありったけの音素を取り込んだのだ。
「――始まりの刻を再び刻めっ!!」
痺れの残る舌を動かし、詰まる喉から声を絞り出す。嗚咽に混じった叫びは酷く不鮮明だ。――それでも。
例えこの身が朽ち果てようと、例えこの身が使い捨ての存在であっても。
アリエッタから守るべきものを奪った全てから、守るべきものを守るために。
【アリエッタ 生存確認】
状態:HP15% TP70% 腹に銃跡(×2、処置済み) 全身に切り傷 イオン・クレスの死による悲しみ、復讐心 バンダナ装着 サンダーブレードが直撃 ビッグバン詠唱中
所持品:ねこねここねこ クレスのバンダナ リバースドールの欠片 苦無
基本行動方針:イオン様とクレスの仇を全員殺す
第一行動方針:キールを最優先で確実に殺す。全員巻き込んでも構わないからビッグバンを発動させる
第二行動方針:さっきの“星”、魔力と爆発が気になる
現在位置:D2・平原
【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:HP??% TP20% 度重なる失敗への激しい後悔 冷静を努める意思による自律
ヴェイグとイクティノスへの畏怖 ロニへの同情・不安 主催者の言葉を信じる事への僅かな恐怖
腹、胸から著しい出血(応急処置済み) 右目に砂が入っている 右足を挫いた チャットを認識 貧血等怪我による気絶中
所持品:誰かのクレーメルケイジ(I) グランドセプター リカルドの首輪 情報入り名簿 温石
基本行動方針:殺される気はなく、脱出の道を探す。マルタとの『協力』を果たす
第一行動方針:チャットにしばらく任せる。
第二行動方針:マルタを休ませることが出来る場所へ移動。(第一の候補は最も近い建造物である城)
第三行動方針:首輪についての考察と情報集め
第四行動方針:襲われた場合は応戦よりも全力で逃げる(可能ならばエアリアルボードを使用する)
現在位置:D2・平原
【リフィル・セイジ 生存確認】
状態:HP??% TP0% 頭部と左足に裂傷・打撲・切傷多数 服に焦げ アリエッタへの警戒と思慮
教師/治癒術師としての無力感
所持品:リヴァヴィウス鉱 ウイングパック リブガロの角 パナシーアボトル
基本行動方針:殺し合いの打破
第一行動方針:アリエッタに対処
第二行動方針:キール、アッシュを治療し、チャットを落ち着かせたい
第三行動方針:リーガルを殺した人物が誰か気になる、リーガルを殺した人物、爆発音の発生源を警戒する
第四行動方針:死者に対しては慎重に接する
第五行動方針:ロイド達が心配
第六行動方針:先程のマナのようなもの、爆破のマナが気になる
現在位置:D2・平原
【ジェイド・カーティス 生存確認】
状態:HP80% TP45% 打撲 アリエッタへの警戒・怒り 僅かな弱気
所持品:ヴォーパルソード セレスティアルマント ダーツセット 知り合いと死者についてのメモ等
バルバトスの首輪 リーガルのザック スコップ デュナミス 絆転生石 聖弓ケルクアトール 矢×1 ソーディアン・クレメンテ
基本行動方針:この島について調査。ゲームの打破
第一行動方針:アリエッタのビッグバンを阻止。殺すのも厭わない
第二行動方針:情報を整理する。
第三行動方針:リーガルを殺した人物、爆発音の発生源を警戒する
第四行動方針:死者に対しては慎重に(アッシュが本物だと分かり多少緩和)
第五行動方針:放送の遅れ、魔力、爆発の関連性を考察したい
現在位置:D2・平原
【アッシュ 生存確認】
状態:HP15% TP21% 左腕に大裂傷(縫合済) 背中に大裂傷 後悔 全身に切傷と打撲
行き場の無い悔しさ 無力さへの葛藤 ロニへの疑問
支給品:デリスエンブレム エナジーブレッド ジェイドの作戦メモ二枚
イクストリーム アニーの日記 クリスダガー ソウルイーター
基本行動方針:チャットを守り生きる。日記を継ぐ
第一行動方針:とにかく状況把握。チャットとアリエッタへの対処
第二行動方針:アニーの仲間に会ったら彼女の事を伝える
第三行動方針:先程の魔力と爆発が気になる
現在位置:D2・平原、砂漠近く
【チャット 生存確認】
状態:HPTP100% 首絞めの痕跡 全身に軽度切り傷 ジェイドへの複雑な思い
アニー・クレスの死にショック 守られる事と無力さへの極度葛藤 アリエッタに共感
自分の甘さへの不安 アリエッタを危険に晒した事に罪悪感 小さな勇気? 大混乱
所持品:スタンダードマグ(残り装填4発) 銃弾50 ラジルダの旗 タバサ
プラズマカノン パナシーアボトル 袋詰め粉砂糖2kg リーガルの首輪 エナジーブレッド×4
基本行動方針:勇気を持つ、アニーの死を乗り越えて生きる
第一行動方針:あああああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁ???!!
第二行動方針:僕が、この人を?
第三行動方針:森の死体らしき何かを確認したい
第四行動方針:セネルが心配
現在位置:D2・平原、砂漠近く
投下終了です。指摘ありましたらお願いします。
投下乙
うおおおおおお
クライマックスきたあああああああ燃えた
アリエッタは悲しい子だな
投下お疲れ様です。
一点だけ。譜陣は別に書く必要ないですよー。術発動時に勝手に出るもんだから。
しかしこのジェイド、悪役ばりの登場である。
「〜Torn souls, Hurt Faiths」書き手です。
>>592 指摘ありがとうございます。譜陣は演出のつもりで描かせましたが、
誤解を招くような表現をしてしまい申し訳ありません。
誤字脱字修正と一緒に該当部分の修正依頼を後日避難所の方に出したいと思います。
待ってました! 投下乙!
これはどう転んでも元には戻れないのよ私たち展開ですね。
ジェイドの内心を想像したら震えが来そう。
改めて乙でした。
西の森の混戦もクライマックスか…
しかし、ビッグバン発動したらアッシュとキールは確実に死ぬな
殺るときは殺るジェイドに期待すると共にアリエッタにも頑張って欲しい
投下乙でした
援護もなしに発動とか無理じゃね?
え?秘奥義?
投下乙
なんというバトル五秒前
続きが早くみたい展開
投下乙です。
リフィル先生…(´;ω;`)
投下乙です
協力してバルバトスを倒したメンバーもここに来てバラバラだな
投下乙!
チャット何してるwまた目の前で人が死ぬぞ
やけに皆ボロボロだと思ったらバルバトス戦のメンバーだっけ。
キール→まず戦力外
先生→術士なのにTPないってオワタ
チャット→アリエッタなんか見てない
アッシュ→怪我のせいで戦力半減。
ジェイドとクレメントさん→期待の星
アリエッタ→捨て身なんで怖いものなし。傷ついた獣の抵抗は恐ろしい
乙!
しかし何度見てもさつまいもで吹く
そうなんだよなあ……。
アリエッタって、イオン死んで、その仇も(知らずとはいえ)討っちゃった時点で手詰まりなんだよな。
せっかく絆を育めそうだったクレスも死んじゃったし。
切ないぜ。
投下乙!
おもしろかったです!
あいかわらずいいとこで来るな、ネクロマンサーw
しっかしビックバン発動とは、まだまだ予断を許さない状況だ!
続き気になっぜ!
唐突だけど殺害数数えてみた。クレスとダオスの扱いが解らない。
2人
☆サイグロ【リッド ダオス?】
○ミクトラン【イリア リーガル】
○シンク【ディスト ノーマ】
1人
○イレーヌ【クレア】
○デクス【プレセア】
●ハスタ【ユージーン】
●アリス【イオン】
○サレ【リカルド】
○ジルバ【ステラ】
○ルーク【マグニス】
○セネル【すず】
○スタン【ナナリー】
○ヴェイグ【ハスタ】
○ミトス【ルーティ】
○ジェイド【バルバトス】
●バルバトス【アニー】
○シャーリィ【ワルター】
○リフィル【クレス?】
○アリエッタ【アリス】
○リアラ【ルビア】
○チャット【ウッドロウ】
○シゼル【クラトス】
リフィルはちょっと違うだろ
クレスもダオスも実質殺害したのはアリスでは?
クレス→石化した右腕を破壊され、それが致命傷となり死亡
ダオス→人質とられて数時間拷問、その時の大量出血が原因で死亡
しかしダオスかわいそうだな…折角大樹までたどり着いたのに
一方的に殺されて(アリスに与えたダメージ考えれば勝ったとも言えるが)、でも大切な何か
に気付いたよ!後の参加者、気付いてみんなでサイグロ倒してね!と願って死亡
ところが望みを託した参加者達は
アッシュ→なんか遺体があったな。でも今はアリエッタ達が先
アリエッタ→あの星は何?でも今はイオン様の敵討ち優先。
リフィル→マナ気になるけど治療が先?
ジェイド→アリエッタを止めなくては!
チャット→うわああああ!
誰も調査どころじゃないよ……
何かに気付いた、って便利な言葉だよな
何かに気付いたらしいキャラはたくさんいるよね。
何かってなんだよという。
俺は何か見当もつかないが、後の唐突なひらめきをフォローするための伏線ということでいいのか?
前の方の書き込みにあったけど
「何かに気付いた」って書いておけば考察飛ばしても平気って考えてる人がいるのが信じられん
リレーで積み上げた前提や、明確なヴィジョンがあって「何かに気付いた」ならいいんだけど
考察書くの面倒くさいからとか考察書けないからとかで「何かに気付いた」で済まそうとするのは
どうかしてるとしか思えない…
どうであれそんな事態になったとしたらリレーで補完すればいいんだけどね。スレ汚しスマン
確かにそうだけどまあ、あのレスは新作を待ち焦がれた人のちょっとした思いつきだろう
俺も続きが気になる展開ばかりだから気持ちは分かる
>>605 そうなるとアリスが殺害数トップか・・・他の人も色々意外だ
○チャット【ウッドロウ】とか開始前に誰が想像できただろうw
ダオス死体は忘れられそうだな。
忘れられても自分達で気がつけばいいんだが。
エターニア組の疫病神っぷりがやべぇ。
ママ→暴走しそうだから誰か止めて
チャット→周りがどんどん不幸になります
キール→実は騒ぎの中心にいたりする(チャットが気づいた原因、アリエッタの標的)
リフィルがマルタ治療アイテム持ってることに今さらながら気づいた。(遅!)
でも角のこと知ってるのはヴェイグとマオで、マルタの病気がなんなのか知ってるのはサレって状況じゃ厳しいですね。
むしろ舘組の方が期待できるかも・・・
考察は避難所だっけか?
フィリアが実は万能薬持ってるし生存フラグは結構あるんだよね>マルタ
まあサレが放っとかないだろうけど
万能薬では治らないだろうけど、少しぐらいは楽になるかな
前から思ってたんだが、「治らないだろうけど」とか「確実に死ぬな」とか、そーいう書き方はその、やめないかい?
そうだそうだ!
書き手さんが書きにくいだろうに
書きにくいのはその書き手が読み手を意識しすぎてるだけ
まあカリカリしなさるな。
次はどこが来るかな。
個人的には姫騎士が楽しみなんだがね。
完
熟
そういえばビックバンじゃ、とどめ刺せないんだな
>>621 そういうシステム的な仕様は関係ないと思う。
アリにしたらラタキャラはみんなry
大技放ってもゲーム仕様だと倒せないから(ry
で攻撃くらった相手がピンピンしてても嫌だろw
個人的にロワは治癒技は大幅減だが攻撃技はやや増しな威力になってる気がする
わざわざ治癒系を調節するんだからこれぐらいやるだろう
というかそうだよね。そうじゃないとSSじゃ描写しようがないからなぁ。しょうがないっちゃしょうがない。
ゲーム内じゃ上級術連発や奥義連発&命中してるが、こっちでは通常攻撃でも打ち所がわるけりゃ死ぬレベル。というか現に死んでるからね。
ふと思ったが、シンクの基本方針、ってなんとなくあわれな気がする。
ルーク達(つまりはAメンバー)を引っかき回すのが目的なのにAキャラの中で一人だけ孤立してる。
アリエッタのビッグバンは殺せなくてもいいじゃん
殺すならイービルライト使えばいいし、HPをギリギリにする呪文ってことで
ラタの秘奥義はさすがに一撃にするべきだけど
その辺りは書き手のさじ加減だな
しかしアリエッタに対処できるのがジェイドだけという
だーかーら、俺らが決める事じゃないってばさー。
絶対死ぬ、とか断言出来ないし絶対生存する、とか一撃死、も同様だぜ?全くもう。
今の流れはクラトスやリカルドやイオンが涙目だな
設定的なことは書き手に一任しろよ
基本的に書いたもん勝ち
嫌なら自分で書けあほ
投下します
「こいつがほしいか?」
「………」
ミトスはエリクシールを手にちらつかせジューダスに問う。
「…………俺はいい…それよりそこの寝ている奴に飲ませてやれ…」
ジューダスは視線をスパーダに向ける。
「…お前の方が瀕死に見えるけどね。自分の命が惜しくないのか?」
「俺は……まだ当てがある…ハァハァ…」
ジューダスは見るからに痛々しい姿を持ち上げ地面を掘り出した。
「やはり…か…最初の支給品だけじゃ8日も乗りきれるはずがないからな…ゼィッ…」
ジューダスが地面を掘った中にはエリクシールや食料、そして小型の飛行船のようなものが埋まっていた。
ジューダスはエリクシールを手に取り、
グビッグビグビ
それを飲み干した。
「なるほどね……!?コイツはレアバード!」
「お前は…これを知っているのか…?」
ジューダスは驚いた様子を見せるミトスに問う。
「これは…僕の世界の乗り物だ…脱出出来るぞ!」
「なんと…」
ジューダスとミトスはレアバードに乗り込んだ。
※
「さて…そろそろ死者が倍増するころですね」
サイグローグはほくそ笑みながらこの状況を楽しんでいた。
「フフフ……おや…ジューダス、ミトスの反応がありませんね…死にましたか…ククク」
そんなサイグローグに迫る影。
「サイグロォォオオグゥウ!」
そこには鬼のような形相をしたジューダスがいた。
「な…お前はジューダス!……目を話した隙にどうやって…そうか!…間違ってレアバードを埋めてしまっていた…あれで……くそ!」
サイグローグはポケットからスイッチを取り出した。
「さっさと爆発して死ねぇえ!」
サイグローグがスイッチを押す瞬間、
「ファイアボール!」
ミトスがファイアボールを発射し、スイッチを吹き飛ばした。
「くそぉぉぉ!ミトス…ユグドラシルゥウウ!」
そう叫んだサイグローグの目の前にはジューダスがいた。
「終わりだ……シャッ」
切る斬る切る斬る切る斬る切る斬る切る斬る!
気づけばサイグローグは木端微塵の肉体と化していた。
「終わったな…あと僕はルーティを殺した…すまなかった…」
「この戦いに参加した以上覚悟はしていただろう…謝る必要はない……」
その後、参加していた生存者はジューダスにより助けられ皆感謝して世界に帰って行った。
戦いは決着したがジューダスの心は傷ついたままだった。
【テイルズオブバトルロワイヤル2nd 優勝者ジューダス】
完
投下終了です
自分が最後を締めくくるのは申し訳ないと思いますが終わりました^^
3rdでもみなさん頑張って書きましょう!
お疲れさまでした!
乙!
よかった 次は3rdか ヴェスペリアハーツも参加だな
えーとですね、優勝者というのはないでしょう。
ゲームぶっ壊してるじゃん。
それはある意味サイグロに負けた者の称号です。
>>632 ジューダスの一人称が『俺』になっていますが、彼の一人称は『僕』ですよ
あとレアバードはあきらかにチートなんで無理でしょう
サイグローグは空中にいたのかw
しっかし、スパーダは6日間よく生き延びたな。
ギャグ漫画日和の「〜だと思っていたがそんなことなかったぜ」を
思い出すんだよな…毎度
やけに締めたがるのはVとH参戦させたかったからか
ま た お 前 か ! ! !
やる気が削がれるな
全くだ。消えてくれ
わ、わかったぞ…!
ジューダス様の人はいとも簡単にサイグロを倒す例を示して
俺たちに「ビッグバンでトドメをさせるかどうかなんて書き手に任せろ。通常攻撃だろうが初級魔法だろうが死ぬときは死ぬのがロワだ。」ということを教えたかったんだよ!!!!11
な、なんだっ(ry
645 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/19(月) 13:57:11 ID:mCOKkpQz0
いちいち荒らしに餌を与えないでくれ。
わざとやっただろ
なんというw不覚にも笑ってしまったwソードマスターすぎるw
投下乙!
>>648 問題は、これを彼がギャグのつもりで書いた訳ではないということだ
いや、これ荒らしを装ったギャグだろ
そういやユフィの方はロワ内で死んだら投下されなくなったはずだが
こっちはどうなるんだろうな
ユフィのあれよりキャプテンに見える
ルイズなきところにキャプテン現れず…じゃなかったっけ?
パロロワwikiにジューダス殺したら荒れるよって書いてあるけど、奴を黙らせるにはジューダスを死なせるしかないんじゃねーの?
ギャグにしては寒すぎて笑えないって。
>>650 あの人はスランプ気味で面白くないって空気になったから投下がなくなっただけ
避難所に投下しました。
意見お願いします。
連投すみません。
一端仮投下さげますね。
やっぱり自分で納得いかない作品なので。
お騒がせしました!
もうすぐマイソロ2が発売だね
あたまとロイドとクロエとノーマのパーティを組んでやりたかったが
マイソロ2自体ににノーマが居なかった…
(´;ω;`)
>>652 そんな理由でジューダス殺したら人気のあるキャラが不利って事になりかねんだろ…
スルーしとけば良いだけなんだからそう構うなよ
>>657 代わりにルカを(ry
OPの元気そうなチャットを見て安心した
そういや今回エルレインとソーディアンが参加しているが
死者蘇生にはどれ位のレンズが必要なんだろうな
時空剣士にレンズに超振動とか設定が増えた分今回対主催夢が広がりんぐだよね
学者系も多いしかなり後半まで希望が持ててしまうんじゃない
学者系はクラース、ミクトラン、キール、ハロルド、リフィル、ジェイドか?
ミトスとかリヒター辺りもある程度考察は出来そうだ
しかし投下来ないな……
難しい状況の上に試験シーズンだから気長に待つか
まあ、ジューダスもミクトランからある程度機械関係の知識は叩き込まれてるだろう
前にも話題に登ったけどフォッg
そういやセレスティアって教育レベルがやたら高いんだっけ
つかこのロワに出てるキャラ何だかんだいって頭良い人多いな
書き手の頭がいいんだよ
いや1stだと世界観と首輪の考察要員キール、ハロルド、ジューダス位だったけど
今回10人以上いるぞ
みなさんあまり書く暇がないようですね^^
よろしければ私が締めましょうか?^^
へー10人以上いるのか
密度が高くて読み直すのも一苦労なわけだ
把握してるタイトルが少ない自分の頭じゃ追いつかない
いきなり何人も沸くのに投下ないのがうらさびしいな。
明後日チャットだから期待してる。
この状態は始まったころから予想出来たろ
どこでも通る道だ
投下します。
「おい」
あることに気づいたヴェイグは少し離れた場所で腕を組み何事かを考えている男に声をかけようとした。
そこで別のことに気づく。俺はこの男をどう呼ぶべきだろうか。
この数時間一言も会話をしなかったせいだと片づけてしまうにはこの問題は小さくない。
この男と自分の関係をある程度に決定してしまうであろう。外側が、ではなく内側が。
尊敬の意志など欠片もないが、殺される訳にもいかない。ここは「ミクトラン様」「王」とでも言うべきか。
それともいっそ徹底的に馬鹿にするか。「ミクたん」「ランしゃま」くらいで。
「………すきに呼べ。お前の活路を握っているのが誰か、忘れていないのならそれでいい」
ヴェイグの心中を読んだみたいなタイミングで男は答えた。
「ミクト、ラン……」
ヴェイグは男を、ミクトランの名を呼んだ。そして改めて再確認する。
自分の道は自分の足で歩く。だが、今その道は明りのない山奥ほどに真っ暗だ。
それを照らす唯一の灯火がこの王を名乗る男であり、その灯りは奴の気分しだいで容易く揺らいでしまう。
そういう存在なのだと、目蓋を擦り欠伸をする男を認識した。は? あくび?
「まて。お前、眠っていたのか?」
「衆愚に一々睡眠の許しを乞わねばならんのか?」
「いや、だが……」
ヴェイグは口をもごもごさせる。うまく説明できないが、これだけの時間を遊ばせておいて眠っていたなど許されるのだろうか。
まさか、雪の網にかかった4人が何処かに消え去ったからか。
「勘違いするなよ、お前に言われた情報から当てが外れての不貞寝などではない。
私の知識に基づく仮説は幾つか立て、首輪も弄りはした。が、私はそれを敢えて今は捨てる。
単一の情報で動いたところで推測は憶測の域を出んし、一つしかない首輪を下手に弄って壊したくはない。
今はまだ足りん。時も、利も。これでは奴の思惑を抜け出せぬ……だからこそ、今は臥龍と化す。
24時間後に全てが満ち足りたときに我が脳がそれらを最大限に生かせるように、この3時間を捨てた。これで満足か?」
ヴェイグはミクトランに納得した。ミクトランの考えはこの島での戦いではなく、既にサイグローグとのものに移っている。
あの愉快犯のことだ。人間一人が考え込んで解けるものを用意するとは思えない。それがどんな天才であろうとも。
「して何用だ。私を起こしたとなれば相応の理由はあるだろうな?」
「ああ、二人こちらに近づいてくる」
ヴェイグの報を聞いて、ミクトランはほうと安堵の吐息を少し洩らした。
立ち上がり双眼鏡を構えるミクトランにヴェイグが尋ねる。
「どうする?」
「無論、丁重にもてなす。中層と上層の間までは罠を動かすな」
そういってミクトランは空を見上げた。時正に黎明とは清々しい。
「待たせたなサイグローグ。ここからは私の時間だ」
目に見えぬ観客に囁くように、一言そう呟いた。
カイルとティアは階段を上っていた。
途中の渡り道と外側環状を除けばひたすら長い長い螺旋の階段。
本当に、このまま登って行けば天国にさえたどり着けてしまえそう。そんな風にさえ思わせる塔だった。
「ちょ、待ちなさいカイル!」
「何言ってるんだよティア、足跡が続いてる。上に誰かがいるんだ!」
二段飛びでぴょんぴょんと上っていくカイルを、ティアが制するがカイルは聞かない。
降りた足跡がないということは、ここから動くに動けないということだ。ならこちらから助けに行くしかない。
明快すぎる思考でそう結論したカイルと、微妙な違和感を覚えるティアの歩調には差が出る。
ティアはそれを言葉に説明できなかった。太陽へと続く塔は、彼女にレムの塔を思い出させる。
中に入って今まで登ってきた中で、敵の気配も痕跡もないあるのはただの雪化粧だけ。襲ってくる意思がないのだろうか。
だとするならば、カイルの言う通りの可能性も否定しきれない。
この違和感を疑い、大切な人を見逃してしまったらという危惧が彼女の心を御しきれなかった。
しかし彼女は無能ではない。二度外に出て三度目の内部に入ったところで、ティアはついに声を上げた。
「やっぱりこの雪、おかしいわ! いくらなんでも、砂漠にしかなくて塔の中にまで積もってるなんて!!」
今までで一番大きく張り上げられた言葉にさすがのカイルも足を止めた。
敵意もない違和感とはいえ、ここまで続けば流石に疑いの方が強くなるしかない。
「え…ど、どういうこと?」
「気づいてなかったのね……私もさっき外に出たときに、高さがあったから気づけただけだけど……
この雪、この周囲にしか積もってないわ。途中で不自然に区切れてる。雨が降らないから砂漠ができるのに、ここはその逆なのよ。
それも、ただ積もったんじゃない。空から降って積もるならこの塔の中がこんなに雪まみれになるはずがない。どういう意味かわかる?」
「って、ことは………」
捲し立てるティアの言葉をカイルはすぐにはのみこめなかった。
足跡はこの雪のおかげでついてるわけで、その雪が普通は中にまであるわけがなくて、だから……
「そうだ。それは俺が降らせた」
カイルが自分で答えを見つける前に冷えた空気の中を声が走った。
上から降ってきたその声のほうに向くと、じゃりじゃりと雪を踏むかすかな音が聞こえる。
「二人のうちの一人……?」
朝とはいえ暗い塔内の誰かを照らすのは、青い灯。
そしてそれを持って降りてきた一人の男は、その雪のような髪を持っていた。
「あなたは…………ウッドロウさん?」
「……ここでその名前を聞くとはな……」
上背と顔つきから一瞬そう思ってしまったことを恥じる前に、目の前の男の反応がカイルを驚かせた。
「!! ウッドロウさんを、知ってるんですか!?」
思わぬところで得た知人の情報に、カイルが警戒を怠って彼のそばに寄ってしまう。
そこに剣があれば射程内であろう場所へと。
「ちょ、カイル、不用意に近づいたら!!」
ティアがカイルを制そうと、近づく。私たちを殺したいという明確な敵意は感じられないが、
当人の言うとおり雪の主が彼だとするならまだ警戒は解けない。だからこそカイルを呼び戻そうと近づいた。
「十分だな」
ヴェイグが指を弾く。その音に気を取られた瞬間、ぼふりと雪の崩れ去る音がした。
ティアが先に後ろを振り向く。先ほどまで階段があった場所は消えていた。階下で氷の砕ける音がする。
「雪? 違う……氷使い!?」
ティアとて完全に理解するしかなかった。ここは、この雪原はこそが彼のテリトリーなのだと。
2メートル以上崩れてしまっている。一足飛びでは到底渡れる穴ではない。
ましてやコスチュームを重ね着して動きが鈍った状態では。
そして退路を断ったということは、彼は少なくとも友好的ではない……!
「お前!!」
カイルも遅れて目の前の男の敵性に気づき、ブリザードマグを構え放つ。
それに氷の発生レベルで気づいたヴェイグが手にした剣を抜き、標準もたいして定まっていない弾を斬り弾いた。
「シャルティエ?!」
その剣を一目見てこの塔に入ったわずかな時間で何度目かもわからぬ驚きをカイルは見せた。
ソーディアン・シャルティエ。あの北にわたった狂殺人者の手にあったはずのものが何故この男の手にあるのか。
『ああ、カイル! 無事でよかった……ってそんな場合じゃない! 逃げろ、早く逃げるんだ!!』
別れ方が別れ方だったから、本来ならば生きてこの島で再会できたことを喜ぶべきだっただろう。
だがシャルティエは知っている。この塔に待ち構えている人物がどれほどおそろしい存在かを肌で知っている。
『僕もイクティノスもいいから、早く逃げて! ミクトランが来る前に!!』
「イクティノスもいるの!? それに、ミクトランって……あの!?」
カイルとて名前を知る存在。千年前の戦いでソーディアンチームと戦い、
18年前に父親たち四英雄と戦ったあの天上王が、この男の後ろの最上階で待ち構えているというのか。
ヴェイグは叫ぶシャルティエを振り回すことはせず、ただぼうっと二人を見るだけで妨害も何もしなかった。
あの王に言われたことは、ただ退路を断って時間を稼げとだけだ。
それ以外の場所で別にミクトランに不都合があろうが、それそのものは大して気にもならない。ささやかな反抗だった。
無鉄砲そうな所に、少しだけ仲間だった少年を思い出していた。
「ミクトランって、確か名簿にあった……何か知ってるのカイル!?」
カイルの取り乱しようにティアもその尋常のなさだけは理解する。
ハスタに持たれていた時よりもシャルティエの反応が過敏であることも含めて、
彼らの世界の中でミクトランがどれほど恐ろしい存在なのかだけは分かる。
だとするならば、益々猶予はない。ただでさえ武器も心もとない今、さらに一人増えればどうしようもなくなる。
ここは手足を骨折する覚悟をしてでも、この塔から逃げなければ。
「誰が逃げていいといった? ここは私の領域。逃げられはせんし、逃がしもせん」
突如現れた声にティアが反射的に首を振り向く。その途中でおかしなことに気づく。
どうして無い道のほうから、声がするのか?
完全に振り向いたところで、その答えだけを知る。
『逃げろ、お前たち! 早く!!』
まだ踏み固められていない雪が風に煽られて飛ぶ。その奥より影が近づく。
金の髪とマントをなびかせて、さっそうと跳躍する男の手には風の力を持った剣と、銃器一丁。
いくらその剣に逃げろと言われても、ならばどちらに逃げればいいのか彼女には分からない。
やられたとだけは理解する。目の前の男もあの剣もただのオトリ。本命が上にいると思い込ませるための。
「ミクトラン!!」
カイルが空飛ぶ王の名前を宣誓する。だが、それが王の逆鱗に微かに触れた。
「様をつけろ駄犬が。ヴェイグ、生きたいなら防御しろ」
着地するや否や銃撃。漠然と撃たれた5発のうち2発が空を切り、1発がヴェイグの氷にあたり、残る2発がカイルの肩と腿を貫いた。
「ぐああああああ!!!!!」
「! カイ……うぐぅ!!」
カイルが銃の威力に吹き飛び、空いた穴より出た血が雪を汚す。
駆け寄ろうとしたティアの足がミクトランにかすめとられ、白雪の中に顔をうずめる。
立ち上がるよりも先に、首筋に雪よりも冷たい刃の温度が伝わる。
「……聞いていたのと異なるが」
「欺くならばなんとやら、だ。ああ、お前のことではない。そこの無能な刃のことだ。
女、私はお前が聡明であることを期待しない。杖を握り抵抗することを許可する。
ヴェイグ、ついでにお前にも許そう。気が変わるのならば」
「くぅ…………」
「…………俺は、別に」
イクティノスを首筋に、肩を足で踏みつけて抑え、心にもないことをヴェイグに言い放つミクトラン。
その銃口をカイルに向けたまま、何をどう抵抗しろというのか。
砕かれた退路を渡る王。砂漠に塔を張る人形。そこに飛び込んだのは寄る辺なき蝶々二匹。
「さて、女。設問の時間だ。私を楽しませてくれる答えを期待している」
【貴方がその時、個人的感情で自分、又は私を危険に晒したら。 私は貴方を赦さないわよ。絶対に。死んでも赦さない】
もう人間は生きて帰らない。
【カイル・デュナミス 生存確認】
状態:HP50% TP85% 焦燥感 右腿、左肩にデザートイーグル銃創 出血中
ナナリーとルーティの死にショック 強くあろうとする大きな正義感
所持品:アビスレッドのコスチューム(仮面は外してます) カイルの服(アビスレッドの上から重ね着)
他アビスマンのコスチューム ブリザードマグ
基本行動方針:殺し合いをやめさせる。仲間にもアビススーツを着させたい(強制はしない)
第一行動方針:!?!?!?
第二行動方針:仲間が気になる
第三行動方針:シャルティエの安否が心配。
第四行動方針:FOF!(略)輝いてるぜ!
現在位置:D3黎明の塔上層と中層の間
【ティア・グランツ 生存確認】
状態:HP100% TP95% 緊張 強い焦燥感 小さな反発心と大きな罪悪感
所持品:アビスピンクのコスチューム(仮面は外してます) ティアの服(アビスピンクの上から重ね着) ロリポップ
基本行動方針:ルーク達と殺し合いに乗っていない人を探す
第一行動方針:どうすれば……
第二行動方針:レムの塔へ出来るだけ早く向かいたい
第三行動方針:「それぞれの世界の理」と「会場の理」と「雪」に対する疑問、違和感の原因に答えを出したい
現在位置:D3黎明の塔上層と中層の間
【ヴェイグ・リュングベル 生存確認】
状態:HP70% TP40% 右手に切り傷、身体中に切り傷(凍結済) 疲労
仲間の死とハスタを惨殺したことへのショック フォルス半暴走 微かに理性有 半洗脳(自覚有?)ミクトランへの微かな反抗心
所持品:ソーディアン・イクティノス ブルーキャンドル
基本行動方針:自分で選んだ道を自分の足で歩いて、生きたい
第一行動方針:ミクトランに従う
現在位置:D3黎明の塔上層と中層の間
【ミクトラン 生存確認】
状態:HPTP100% 血塗れ 雪塗れ 頬に止血済み掠り傷 不安定な要素(=ヴェイグ)への不安(僅かに緩和) 食料や生活難、寒さへの苛立ち
所持品:フランヴェルジュ イリア、ハスタ、ヴェイグのサック ??? ???
デザートイーグル 銃弾×15 双眼鏡 サードニクス 金のフォーク ハスタの首輪 ソーディアン・シャルティエ
基本行動方針:ピエロ含め皆殺し
第一行動方針:目の前の女から絞りとれるだけ絞りとる
第二行動方針:考察の確度をあげるため、更なる首輪を得て首輪について考察する。
第三行動方針:籠城しウッドロウ達を誘う
第四行動方針:サイグローグとの腹の探り合いを楽しむ
第五行動方針:魔力に拠る首輪爆発の事実を証明したい
第六行動方針:あの森(ガオラキアの森)には二度と足を踏み入れたくない
現在位置:D3黎明の塔上層と中層の間
*中層と上層の間の階段を作っていた氷が崩壊しました。通常のジャンプでは届きそうもありません。
投下終了。難易度simple。お好みで。
作者です。ヴェイグとミクトランのソーディアンの所持を間違えていました。
ミクトランがイクティノス、ヴェイグがシャルティエです。
投下乙です。
カイルとティア大ピンチ!
今回は逃げられるのか!?がんばれー!
そしてイクティノス、シャルティエ久しぶり!
しかし、カイルとヴェイグ・・・1stのこと考えると違和感があるなあ。
ミクたんが!ミクトランが久しぶりに威厳を!
投下乙!
どうする、カイル、ティア!?
投下乙です。全員のやりとりやミクたんの奇策、ネタなど面白かった!
この場の誰が鍵を握るのかを想像するだけでも楽しい
そういやミクトランは死体をゾンビ化出来るんだろうか
リメDでは描写が無いが
出来ないんじゃないかな
説得力あんならゾンビ化もありじゃね。
考察飛ばされたのな。
寂しいねえ。
そういやフォルスのことをヴェイグに聞くって行動方針がなくなってるけどわざとかな?
先ずは投下乙。
で、まぁ…考察飛ばしたいのは分かったけど、行動方針は守ってほしいな。
いや、得手不得手があるからさ、飛ばすのはいいけど。でも上手く誤魔化すにしても説得力ある描写入れなきゃ。
考察の途中で聞くなりしたからなくなったんじゃないの?
俺はそう思ってたけど
ヴェイグが全然ミクの行動を分かってないからフォルス考察は手付かずに見えるけどな
ミクのセリフのアテにならない情報も放送前の話のことらしいし
そのままふて寝したように思った
まあがやるのはほどほどにしようぜ。
スルーするもレスするも書き手さんの判断だし。
前の話の第一行動方針がふて寝だったし別にいいんじゃないか?考察なくても
ふて寝しても朝までに考察するって行動方針はどうなったよ
ミクトランのことだからうっかり寝過ごしてしまったんだな、きっとw
ゲーテを次回ロワに出したいと思った。
負が強くなるほど手がつけられなくなるってロワ向けすぎる。
主催でもいいな。
マイソロ買ってるやつってテイルズ人口の何割くらいだろ。
俺買ってない。
シリアスとギャグは住み分けをしろとあれほど…
マイソロはクロエが出たから買った
かぁーいいなぁ〜本当にたまらん!
マイソロでようやくアッシュ使用可、アニー参戦したので、これでゆっくり
アッシュ、アニー、チャットのパーティを組ませられるぞ。
正直ここの影響を受けたパーティ組んでる人ってどれくらいいるんだろうか?
マイソロをダオス目当てで買った俺が通りますよ…
ダオスが死の間際に気が付いた『何か』はいつ解明されるんだろう…
それ以前に森が常にクライマックスで困る
マイソロ2はなんか惜しくなるんだよなー
・空気王、キールまたはスパーダ→ロニが足りない
・フィリア、ルーク→ジューダスが足りない
・カイウス、クラトス→チェルシーが足りない
・カイル、ティア→元から一人足りない
みたいな感じでw1stで揃えようとしてもたいていこうなるorz
シャーリィはぶられて涙目w
ヒロインだよ
マイソロ2でリフィルとジェイドの絡みとか結構あるから、
ついここのロワを思い出してしまう俺がいる。
>>703 とりあえず、ルーク、フィリア、ハロルドでよくね?
>>705 わかるわかるw>フィリアとジェイド
キールが天才組からハブられてるのがロワの未来を預言してる気がしてならない
キールは努力の秀才だからな。
チート天才共とは違うだろw
キールは性能優遇されてるからいいじゃん
ロワでもリッドチャットロニマルタと因縁マシーンだから羨ましいな
>>700 あれ?俺がいる…
正確にはロイドとクロエのコンビに心奪われてしまったんだよなぁ
主人公とロイド、クロエを組ませると、ノーマがいないのがロワと繋がって胸が痛くなる
チラ裏だがクロエとイリアとリフィルのスキットがたまらん
たぶん見てると思うが、まだならぜひ
>>700にオススメしたい
カイルとティアとヴェイグサーンで組んでみたら
2周目は主人公をミクたんにすればいいんじゃないかという電波を受信した
フランヴェルジュ持たせてさ…夢がひろがりんぐ
妙に感動したのはアニーとチャットでダンジョン行ったらスキット出たことだな
あとクレスが全身タイツを落としたのにもっと感動したw
711 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/10(火) 08:15:22 ID:h/s898WN0
ここって終了したのか?
終わらせても支障ないとおもう
いやいや投下あってから一週間だろ
ジューダス様の人投下まだかな・・・密かに楽しみにしているんだが
自演乙
マイソロ2のライフ・マテリアを使ってると、ロワでのアニーの気持ちがよくわかる。
あれじゃ焼け石に水だよな。
そもそもリバースにはTPやHP回復術といった要素がないからな
ライフ・マテリアの効果はああするしかなかったと思う。ロワでもバランス難しいだろうなと思う
そしてヒール・レーゲンはマイソロで出世しすぎw
マイソロ2ではヴェイグとルカが異様に強すぎるwあいつら相手にしたくねぇ
特にルカは秘奥義いらんだろjk
イリアがマーダーになってて銃があったら影からちくちく撃たれてうざいだろうと思った
5分後に投下します。出来れば支援お願いします。
wktk
そも、
寄せては返す茜の小波、水面へ上がる灯は、遥か彼方を翻る白帆への順風。
方舟を死した楽園の麓に運ぶ為、彼方へ咲くは極光の造花。
石に躓き転ぶなら、忽ち船と舟は泥船に。
道化師の影から抜く贋作、忍ぶ切り札と睨めっこ。
盤から飛び出た星屑幾つ、朝焼け向かい罪を啼く。好く見りゃ盤外も檻の中。
一つ、神は居ないと嘆く魔女。楽園を乞うべき神が無い。
二つ、至上の幸福を望む少女。楽園を信じる拠所が無い。
三つ、臆病者の恋する姫君。楽園へ踏み出す勇気が無い。
四つ、舞台裏に近付く踊り子。楽園を模索する術が無い。
五つ、罪と思慕の狭間に溺れる騎士。楽園へ誘う人が無い。
舵取り碇に気付くまで、盤覆す一手、何処に無し。
さて。
「……もしかして、アンタも感化された?」
人を見下すような汚い笑みが混ざった言葉にアトワイトは驚き、視線を上げる。
尤も、コアクリスタルに眼球が在る訳ではないのだが。
アトワイトは、シンクの左手に掲げられた仄かに浮かぶランタンの光に目線を映す。
物置一つしない森は心底不気味だった。
が、柔らかな暖色の光はアトワイトに想うべき人の背を思い出させ、暗闇の不快感を和らげてくれる。
シンクの表情を覗く筈だったのだが、アトワイトは止める事にした。
彼、ディムロスの大きな背を思い描いた時、そんな事は些細な問題に成り下がったからだ。
「何に?」
アトワイトは落ち着いた様子で、至極当然な疑問の雫を深い森の海にぽたりと垂らす。
闇の水底に滲み流れるそれを、シンクは嘲笑を交えながら掬う。
「あの馬鹿の言う“進化”とやらにさ」
シンクの右手が、獲物を締め殺す蛇のようにアトワイトの柄に掛かる。
瞬間、完全に油断していたアトワイトの全身に、ぞくりと寒気が駆け巡った。
今、シンクは何て言った?
「ば、か……え……? あ、貴方、いきなり何を……?」
無い筈の心臓がどくんと跳ねる。その細い身を翻されたアトワイトは息を飲んだ。
剣の蒼く輝く軌跡を目線で追い、シンクは表情だけで笑う。
ランタンが、不吉な音を立てて地面に落ちる。何かが終わる時の音は、きっとこんな音なのだろう。
「いやだな、聞こえなかった筈はないだろ? 実に陳腐な台詞だと思わない? アトワイト=エックス」
アトワイトの死角からシンクの左手が伸びる。
妖しい紅の光を放ちながら、それは暗闇で小さく弧を描いた。
―――――――――――――
「クロエ、それは駄目よ」
言い淀むロイドを尻目に、その身を使う事なく先ず静寂を切り裂いたのは、ソーディアン・アトワイトだった。
シンクは内心でほくそ笑む。
ロイドの様なお人好しは兎も角、あからさまな誘蛾灯にあの死霊使いや総長の妹が来るとはとてもではないが思えない。
面倒事は出来る限り裂けたい。見え見えの誘いに乗る人間となれば、真性の馬鹿かマーダーだ。
これ以上馬鹿の相手は苛々するだけであり、マーダーとなればもっての他だった。
尤も、ルークならば来る可能性も確かに有ったが、パーセンテージ的に限り無く低い。
馬鹿<ルーク>個人で行動しているなら兎も角、二人組以上ならば普通の神経の人間は来ない。
更にこの舞台の大きさを考えた場合。
初期配置が一マス一人と計算しても、少なくとも33%以上の確率で二人組だ。
無論出会う事前提の単純計算。
そして仮に炎を出したとして、視認可能な位置にルークが一人で居る、
且つ誰とも出会わず此所に来る確率ともなれば。
……とてもではないが馬鹿げている、とシンクは思う。有り得ない。天文学的確率だ。
シンクは腕を組み、腰に下がったアトワイトへと目線を下げた。
願ってもみなかった助け船。シンクはヒントを与えた分のお礼と考える事にした。
「幾ら何でも危険過ぎるわ。
貴女が言った様に、私達の状態だって正直芳しくない。むしろ悪いわ」
アトワイトは冷徹とも言い変えられる程ストレートに、そう言い放った。
クロエは着火具に灯ったの火を消し、眉を下げる。アトワイトの言葉は正論以外の何物でもない。
ロイドはそんなクロエの悄気た表情と、蒼く輝くコアクリスタルとを困惑した表情で見比べる。
しかし実を言うと、そんなロイドも内心ではクロエの提案には反対であった。
この三人でマーダーを相手にするには如何しても不安が残る。
それに、魔法なら未だしも着火具如きで死体は燃やせないし、森も燃やせはしない。
ロイドは自らの頭の程度を自覚している。
故に、それすら考えられていないクロエの動揺は手に取る様に理解出来た。
現状のクロエが、外面からは予想出来ない程までに不安定な要素であろう事も、同様にだ。
だが、故にロイドは迷う。
此所でクロエを否定した場合、それがクロエの内面を掻き回してしまう原因にはならないだろうか。
「……だが私は! 私は仲間が心配でっ」
「クロエ!」
支援
金切声を上げるクロエの肩にロイドは手を掛ける。取った選択は、安全の確保だった。
シンクは揺れる前髪の隙間から、神妙な面持ちのロイドを見つめる。
鬼が出るか蛇が出るか。はたまた。
こいつの一言に掛かっているな、とシンクは思い、目を細める。
クロエとロイドの心の距離は、先の茶番のお蔭でかなり近付いたと言っても良い。
ロイドの方はそうでもないが、クロエの方は確実にロイドを意識している。表情を見れば分かる。
(……ウブな奴等。下らないね。この女の程度も知れたもんだよ)
シンクは笑いを堪えつつ、側に横たわるノーマに一瞥を投げた。
此所で出合うのは単純馬鹿で厄介なな女ばかりだ。張り合いもまるでない。
シンクは小さく息を吐くと、ロイドとクロエに視線を戻す。如何やらまた茶番開始らしい。
「悪いが俺も同じ意見だ。それにこんなちっぽけな炎じゃ何も燃やせないさ。
冷静になれば、クロエにだって分かるだろ? 馬鹿な俺にですら分かるんだ」
へェ、とシンクは目を丸くする。
見た目は馬鹿っぽいが、言っている事は慎重且つ説得力に長けている台詞だ。
頭の回転は早いのか、とシンクは舌で頬の裏側を撫でながらロイドの評価を上げた。
「仲間を心配するのは分かるけどさ、言えば何処に居るか分からない仲間より、先ずは自分や目の前に居る仲間だ。
……そうだろう?」
ロイドはクロエの肩を手を添えたまま、言葉を続ける。
クロエの目に僅かに光が灯ったのを、シンクは見逃さなかった。
「俺は昔、目の前の仲間を救えなかった事があるんだよ。あんなのはもう二度と御免だ。
目の前の人間も救えないで、仲間を助けるなんてほざけるかよって事さ」
ロイドが語る一方で、アトワイトはコアクリスタルの中、思考の海に溺れていた。
アトワイトがクロエの行動を否定したのは、何も先に述べた意味だけではない。
表面上の理由では正しいが、深層での理由は異なる。
仮に何らかの方法で火事を起こしたとして、ディムロスはアトワイトを甘んじて迎えに来るだろうか?
答えは限り無く否。むしろ遠ざかるであろう事は想像に容易だった。
理由は幾つかある。先ず、ディムロスはアトワイトと恋仲だった。互いが互いの性格を熟知している。
故にディムロスは疑わない。アトワイトが火事を起こす筈がない事を。
それはアトワイトも同様だった。
そもそもアトワイトの性格上ではなくとも、サバイバル<バトルロワイアル>での焚火は致命的だ。
剰え元地上軍ソーディアンメンバー。幾らディムロスと逢いたいとて、斯様なミステイクは冒さない。
となればディムロスは火事を軍人の観点から如何見るだろうか? ……十中八九罠だと見るに違いない。
第二に、今のディムロスのマスターはあのリアラである。
これ即ち、ディムロスはリアラ無しでは動けない事を意味する。
如何にあの核弾頭と言えども、精神が半壊している少女を我儘で振り回す等と云った危険は冒さないだろう。
第三に、アトワイトはハロルド=ベルセリオスの技術を余す事なく受けたレンズ兵器、ソーディアンだ。
地下深くの熔岩の中、高温・高圧の条件下で長時間放置されるなら兎も角、高々山火事。
ソーディアンはその程度では100%壊せない。地上軍の最終兵器がヤワでは話にならない。
彼の鬼才、ハロルド=ベルセリオスの折り紙付きなのだ。
故に、火の影響でマーダーが集合すると思われる森に、ディムロスがわざわざ赴く理由は皆無。
以上の三点から、シンクの手に落ちたアトワイトはクロエの意見を却下した。
アトワイトが現状で取るべき(取る事が可能な)行動は、言ってしまえばひたすら待つのみ。
精々が電波暗号を送り続けるだけだ。
「俺達は成長しなきゃならない。まだまだ弱いから。その為には守れるものから守らなきゃならないんだ。
進化していかなくちゃならない。でも、俺達ならきっとそれも出来る。俺が断言してやる!」
シンクはクロエの瞳から困惑が消えて行く様を見届けると、顔を静かに下げた。
地面は飛沫で汚れていて、木と木の間のくぼみには血液が溜まっている。
「だからさ、俺は今目の前に居るクロエが先ず心配だし、クロエを守りたいよ」
そんな舞台での茶番は果てしなく場違いで、シンクは唇の端を僅かに歪めた。
木々の隙間から差す僅かな金色の光は、小さな生命の湖を照らしている。
水面は虹色だ。人間の脂も虹色なのか、とシンクは木に凭れながら感心した。
視線を更に落とす。靴に付着した紅は、最早誰のものか判断が付かなくなっていた。
「うん」
恍惚に塗れた短い返事が聞こえる。シンクは髪の隙間からアトワイトのコアクリスタルを睨んだ。
そしてシンクは確信する。詰まる処、これが狙いなのだ、と。
「すまない、皆。私がどうかしていた」
クロエはそう言い放ち、マントを翻しながらシンクの方へと身体を向けた。
涙の跡が浮かぶ頬は、僅かに紅潮している。
「気にしないでいいさ、クロエ」
支援
暖かい陽は、血で汚れた地面を柔らかく照らしていた。
夜は、何時も知らない内に明けている。
―――――――――――――
「陳腐な……? ロイドの言葉が……? それに馬鹿って、はは、いきなり、何を」
残った闇をその一身に浴び横たわる岩と株は、さながら数多の屍。
月の威光に滅ぼされた跡。生命の営みを意味する緑が赤で濡れた様は、成程確かに骸だった。
濃紫と黒で影を踊らせ、興廃した景色を屍は凹凸でトッピングする。
中々良い趣味をしてるな、とアトワイトの言葉を尻目に、シンクは朝焼けを高く評価した。
幾千の影、競って伸びるは天を頂く光の塔。
在るべき世界では救世主が登り詰めた筈の塔の麓が惨劇のパーティー会場とは、何ともまぁ皮肉なものだ。
けれど悪趣味な肉のディナーの新鮮さだけは評価しても良いかもしれない、とシンクは唇の端をつり上げた。
尤も、余りにカットが乱雑過ぎた。そこにテーブルマナーの欠片も在りはしないのだ。
シンクは溜息を漏らしつつ、音素を込めた左手をアトワイトのコアクリスタルから離し、視線を上げた。
彼方に沈むは迸る鮮血の様な濃紅。しかし、或いは人形劇には相応しい混沌とした絵がそこには広がっていた。
「……ふぅ〜ん……怪しいねェ。何で動揺してるかボクにはよく分からないけどさ?
……まぁ、先ずアンタは落ち着きなよ。見てられない狼狽っぷりだよ?」
シンクはディストの死体を一瞥すると、白々しくにやりと笑い、アトワイトをくるくると手中で回す。
さて。今頃、ロイド達はノーマやルビアの埋葬をしている頃だろうか。
ディストの埋葬は見られたくないからと理由を付けて誤魔化した。
ロイドの信頼を得た今、此所に奴等が来る事はないだろう。二重の意味で好都合だ。
こっちはディスト殺害の手段湮滅も出来、尚且つゆっくりとコイツを追い詰められる。
全く、ロイドのお人好しっぷりには本当に感謝しなきゃあならないねェ。
「さっきの話は後からまたボクがじっくり話すからさ。
今、大事な用事を思い出したんだ。先ずそっちからにしても良いかい?」
とん、と小気味好い音が森に響く。アトワイトの細い刀身は、シンクの目前の木の幹に刺さっていた。
アトワイトは深層意識の中でごくりと生唾を飲んだ。
それは目前の少年の態度や口調が、あからさまに先程までとは異なっていたからだ。
動揺している間にも、シンクの顔はみるみるうちにアトワイトのコアクリスタルに近付く。
自らに吹き掛かる生暖かいであろう吐息を想像し、アトワイトは確かな寒気を覚えた。
冷や汗が毛穴から吹き出る感覚を思い出すなんて、何年振りだろうか。
アトワイトはシンクの真意を探るべく、暗い表情をじいと見つめる。
血液と臓物が織り成す不快な臭い、しかしアトワイトはそれを感じる事は決してないのだが、
その中で笑うシンクは明らかに異端だった。
「何。アンタには幾つか訊く事があるんだよね。ちょっと確認しなきゃあならないんだ」
放たれたその言葉にアトワイトはコアクリスタルを鈍く光らせ、押し黙る。
低く呟かれたその言葉には、表情が全く無かった。声色と言うべきものがまるで無いのだ。
アトワイトは逆光で窺えぬシンクの表情を覗き、思わずコアクリスタルの中で身震いをした。
なんて、冷徹な表情なのだろう。なんて虚ろな瞳を、なんて奇妙な微笑をするのだろう。
疑問は尽きないが、解を想像する事は千年を生きたアトワイトにさえ不可能だった。
シンクの顔に浮かび上がる全て。
それらが、アトワイトの人生経験上のあらゆるサンプルとも合致しないものばかりだったからだ。
これは、最早人間と称すには不適切だろう、とアトワイトは思った。
そう、言うならば限り無く本物に近い人形。中が空っぽの生物。
「……ぁ、」
思わず口から不抜けた声が出てしまい、アトワイトは更に動揺をした。
血液など千年前に棄てて有りはしない。にも関わらず、確かな血の気が引く感覚。
シンクはアトワイトの動揺を感じ取るや否や、ねとりとした笑みを浮かべ確信した。
最早アトワイトが彼女自身のペースに持って行く事は不可能だ、と。
冷静で居ようと努める程に、激しい動揺が巡っているのだろう。所詮は女だ。
反応とその表情を見れない事は非常に悔やまれる。
が、もしもアトワイトに身体らしい身体が存在したならば。
それはそれは病み付きになる程、素晴らしい反応を見る事が出来ただろうに。
シンクはその唇を更に歪める。アトワイトの動揺が手に取る様に理解出来たからだ。
「おかしいねェ。何を動揺してるんだいアトワイト? 何やら不自然だけど……?」
馬鹿な……! 【馬鹿な……ッ!】
(何故?)何故だ? 【何故、何時? (何故よッ!!?)】
【冷静になれ。これは罠だ。きっとシンクの巧妙な罠だ!】そうに違いない!
(で、でも罠なら、シンクのリスクは如何なる?)
それにだ。い、何時気付かれてしまったと? 【完璧だった筈……ッ】
(そう、気付かれる要素は無かった。私に問題は皆無だった!)でも、ならこれは一体?
【だが】……だが、シンクの口調は明らかに変わっている?
(有り得ない。何で?)でも有り得てる。だけど、【あれから私は何も喋っていないッ!】
でも、即ち何処かで勘付かれてしまった事に疑いの余地は無い……?
(い、いや違う、私は完璧だった筈!?)【筈、なのに】
何時? 何時から読まれていた?
(【嘘だッ!】これはハッタリに決まっている。【だけどハッタリを言う意味は?】)
冷静になれ。【クールになれアトワイト=エックス】ここで冷静にならなくて如何する?
そう、これは誘導尋問かもしれない。その可能性が有る限り、此所からの失言は命取り。
クールに―――……
「あァ。“ボクがさっき幾つか吐いた嘘を、アンタが勘付いた事”?」
……―――は?
「……ん、なッ、え、ッ……? な、何で……!!?」
アトワイトがしまった、と思った瞬間にはもう遅い。時は戻らないのだ。
目前のシンクはとても満足そうに息を吐き、にやりと笑みを浮かべている。
木々の合間を縫う様に駆ける一陣の風。
それが酷く冷たい風に思え、アトワイトはコアクリスタルの中で身震いをした。
「何時気付いたのか、って? 甘い、甘いね。何時も何も、最初からだよアトワイト。
アンタは最初からボクの掌の上で踊ってたって事。無駄な考察、ゴクロウサマ」
幹に刺さったアトワイトに背を向け、シンクは肩を竦めて淡泊に言い放つ。
「隙を見てボクに分からない方法でアレコレするつもりだったんだろうけど、残念だったね?」
今までの努力は何だったのだろう。私は、一人で勝手に神経を磨り減らしていただけだと言うのか。
アトワイトはコアクリスタルの中で舌を打ち、怒りを露にする。
今の己に顔があるなら、きっと苦虫を噛み潰した様な表情になっている事だろう、とアトワイトは小さく唸った。
「くッ……。あ、あのノーマを殺した説明……。
……いや、失言は、私に汲み取れるレベルまで上げて言った罠だった、と……?」
―――予想通りッ!
シンクはアトワイトに背を向けたまま、気付かれぬ様に表情のみで笑う。
矢張りアトワイトはボクのヒントに気付いていた! 馬鹿女め、まんまとカマに引っ掛かるとは!
真逆此所まで馬鹿だとはね。ボクなら此所は惚けて誤魔化す。
今のコイツの発言は、自分からボクに分からない方法でアレコレしますと認めている様なものだ。
そして、それは物理的方法ではないと云う証左。
やたらと焦っているのは、未だにそれが出来ていないからに他ならない。
ならばまだ安全だと断言しても良いだろう。
コイツの今の言葉から、ロイドとクロエは完全にシロだと汲み取れるからだ。
そして他の人物も同様。何故ならば、干渉に成功しているなら、此所でボクに強気に出るに違いないからだ。
少なくとも“何で”なんかは言わない。無論罠と考える事も出来るが、それは先ず無いだろう。
罠ならば、ボクに更にボロを出させたい。故にコイツから積極的に舌戦を仕掛けて来る筈だからだ。
更に言うならば、ボクのヒントからボクがクロだと導き出し、それを黙っていたと云う事実。
詰まりは、アトワイトもロイドを邪魔だと思っていると云う事になる。
ならばこのやりとりもアトワイトはロイドには言えない。
イチかバチかの賭けだったが、なまじアトワイトの頭が良いお蔭で助かった……!
「……あぁ、そうだよ。御名答さアトワイト」
そして、以上はある事実を示唆する。即ち、
“物理的方法でない何らかの方法で、アトワイトは他者と連絡が取れる”。
但し、
●今現在それは成功していない。
アトワイトがロイドに黙っていた事実から、それは恐らく確実性を持った手段であり安定している。
●ロイドとクロエに対しては現時点では不可能な手段である。
同世界の人間若しくはソーディアン間のみ有効な手段である可能性が高い。
又は、複雑な条件下でないと発動出来ない手段。
一番目の条件から考えるに、二番目の条件は前者である可能性が極めて高い。
何故ならば、今の際までアトワイトは悠長に構えていた事実がある。
手段を選んでいられないならば、否定を承知でロイドに打ち明けるであろうからだ。
そうしないのは、アトワイトに充分な自信と余裕があるからと見て先ず間違いはないだろう。
支援
「……なまじ軍人の頭脳を持ってる事が仇になったね?」
シンクは肩を揺らしながら呟き、背を向けたアトワイトに嘲笑を浴びせた。
此所からは口上の一本勝負。
「そら、どうした? アイツに連絡は取らないのかい?
……あぁゴメンゴメン、取らないんじゃなく取れないんだっけ?」
「!! く、誰から聞いたのか知らないけれど、そうやって調子に乗っていられるのも今のうちよ!」
温過ぎる! やっぱりコイツ、本物の馬鹿だ……!
シンクは心中で腹を抱えてのた打ち回る。
笑いを我慢する事で精一杯だったが、もっと情報を搾取する必要がある、とシンクは二の腕を抓った。
……正直、こんなにも上手く事が運ぶとは思ってもみなかった。
コイツ、相当焦っているとは言え、あまりにも馬鹿過ぎる。
下手をすれば今の状態一般人じゃあロイド達と同等かそれ以下。相当焦りに弱いと見た。
こんなもの、あからさまな誘導尋問じゃないか。詰めが甘いと言うか、何と言うか……。
欠伸が出るよ。如何に軍人と言えど所詮は衛生兵程度。ボクの足元にも及ばないと云う訳か。
「……へぇ? 大層な自信だね。それは何でだい?」
シンクはコアクリスタルを輝かせるアトワイトの方へと振り返る。
勿論、喋る言葉は挑発口調だ。扱い易い性格の人間を利用するなら、それが舌戦の定石なのだ。
「貴方、馬鹿ね。ディムロスが来ればこちらのものよ。
首を洗って待ってなさい。必ず貴方を追い詰めてみせる……!」
なァるほど、とシンクは肩を小刻みに震わせる。
詰まる処が、ソーディアン間の通信機能か何かか。合点が行く。
どおりでノーマを殺した時、ロイドの到着がやたらと早かった訳だ。
あの時の条件は視界と方向感覚を邪魔する暗闇、且つ足場の悪い森。
にも関わらずロイドはコンパスすら出していなかった。
不自然だとは思っていたが……そう云う事だったとはねェ。矢張りコイツ、温い。
詰まり別段難しい条件は無い、と。そしてコイツは今、暗にそれが成功していないと言っている。
即ち、距離制限か。一定範囲でないと使用出来ない訳だ。
あの状態のリアラが戻って来るとも考え難いし、暫くは安泰と見て間違いなさそうだね。
しッかし、コイツは本当におめでたい奴だな。これが軍人? 奴隷レベルの頭脳で好く言うね。
……く、くく、だ、駄目だ。堪えられない……!
「……く、ふ……。アハハ……! だ、駄目だ……堪えられないなコレは……! とんだお笑い種だね!」
アトワイトは呆気に取られ、コアクリスタルの内部で目を白黒させた。
今まで淡泊に話していたシンクは、突拍子も無く声を張り上げて笑うのだ。それは当然だった。
全身を揺らし腹を抱えるシンクを見て、アトワイトは箍でも外れたのかと疑問に思う。
「く、くくく、あはは……あッは、あッははははははははははははははははははははははは!」
しかしそこまで笑い上戸になられても、アトワイトまで愉快になる筈がない。
何が可笑しい、と逆上し金切声を上げるアトワイトを幹から引き抜き、シンクは腹を抱えて地面に座り込んだ。
「……はぁ、はぁ……! こんな単純な誘導尋問に引っ掛かるなんてさ……!
あ、アンタ、真性の馬鹿か何かだろ。おめでたい頭してるね。ふ、くくく」
上頬に溜まった涙を左手で拭い、シンクは心底苦しそうにそう呟く。
当然の様にアトワイトは烈火の如く激怒の声を上げた。単純に自分への羞恥も乗せた声だ。
シンクはそれすらも嗤い、ゆっくりと立ち上がる。
踏まれた小枝がぱきりと乾いた悲鳴を上げた。
「落ち着きなよお姫様。ウザいったらありゃしない。
ボクにはグランドダッシャーがあるからロイド達より早く終わるだろうけどさ、一応コレが仕事だ。
なら、悠長に何時までも話してる訳にもいかないのが道理。
コイツの顔を見るなんてウンザリだし、早いトコ終わらせたいからさ、アンタにも“手伝って貰う”よ?」
そう告げると、尻に付いた腐葉土や土を左手で払い、シンクはアトワイトを振り上げる。
鋭く風を切る音が、短く森に谺した。
(“手伝って貰う”……?)
アトワイトはその言葉の真意を咀嚼する前に、我が身に不快な何かを感じ取った。
水々しく柔らかい、腐った果物を斬る様な、それでいて芯には固い何かがある。
即ち、人肉を斬る感触だ。そうアトワイトが理解するまでに、時間は然程掛からなかった。
それがソーディアンとしてのアトワイトの本職なのだ。間違える筈もなければ理解出来ない訳もない。
血肉を切り裂き臓物を掻き分ける作業は、何千何万とその身に味わって来た感覚である故にだ。
しかし、とアトワイトは思う。此所に在る人肉と為れば二択。
シンクが自身を傷物にする理由がない。即ち、ディスト?
「あ、貴方、何をッ……!」
真意を計り損ねたアトワイトは、激しい動揺に声を張り上げた。
嘗て、ディストと云う個であった人間の右腕の内側。
支援
その温度を我が身で感じつつ、アトワイトはコアクリスタルの内部で歯を軋ませる。
シンクは肩を揺らして笑い、アトワイトの刀身を勢い好く手前に引いた。
数千の桜色の筋が、本来見せる事のない外気相手に露になり、活動を止めた筈の筋肉が僅かに痙攣する。
ベーコンの断面図を更に悪趣味にした様な絵に、アトワイトは少なからず嫌悪感を覚えた。
乱雑に削がれた筋繊維の内側から、スパゲティの麺に似たものが露になる。
尤も、ぶくぶくと細かい気泡を上げるそれは、食糧と同列にするには余りにもセンスがない。
シンクはそのままディストの右腕を手首まで乱雑に裂きつつ、アトワイトへと嫌らしい笑みを浮かべた。
「さて……どうだい? 自らの身体で仲間の死体を弄ぶ気分は? お姫サマ」
醜悪なまでに鮮やかな紅が、アトワイトのコアクリスタルへと飛び散り、染める。
狂ってる、とアトワイトは強い怒りと共に素直な感想を抱いた。
下手をすればあのミクトランよりも、よっぽどだ。
「この、卑劣漢ッ!!!!!」
シンクは半泣き状態のアトワイトの低俗な文句に応える様に、にやりと笑みを浮かべる。
ぐりん、と刃が柘榴の様にグロテスクな肉の中で踊った。鮮血が派手に飛び散る。
トマトを潰す様な不快な音をアトワイトは聞いた。催されるリアルな吐気。
人間だったアトワイトもルーティも、こんなにも執拗に屍を辱めはしなかった。
そうしている内にも死体の解体作業は続く。
二の腕の内側に溜まった脂肪が、裂けた皮の隙間からぷるんと溢れ出る。
シンクはそれを踏み潰すと、刃をぐるりと一回転させ、関節を無理矢理外す作業に移行した。
ごきゅり、と固いのか柔らかいのか分からない物を砕いた様な音が上がる。恐らく軟骨だ。
露になった骨を競う様に伸びる毛細血管、コアクリスタルに飛び散る肉汁。
本来曲がらぬ方向に曲がってしまった腕は、肌色と紅の表裏が逆転してしまっている。
シンクはアトワイトの刃を地面と平行にしたまま、勢い良く空に向かって突き上げた。
「……さっきの言葉、流石に堪えるねェアトワイト。回復役が使う言葉じゃあないよ?」
みぢり、と到底生きている人間が奏でられそうにもない音がアトワイトのコアクリスタルに届く。
肩の断面からだらしなく垂れた数本の糸は、悪趣味な腕のオブジェに繋がっていた。
「黙れッ!!!!!!!!!」
アトワイトは再びヒステリックな金切声を上げる。
支 援
これは到底真面な人間が行えるものではない。鬼畜の諸行だ。
「ハハ。マスターに向かって黙れとは随分だね、アトワイト。何だか寂しい気分だよ」
シンクは血塗れたアトワイトをディストの右腕から引き抜き、眉を窄めて見せる。
その様子がアトワイトの神経を尽く逆撫でてしまうのだ。
「白々しい真似をッ!! 誰がマスターだバケモノッ!!!
気安く私の名前を呼ぶなッ!!!!」
……バケモノ、ね。強ち間違っちゃあいないよ。
シンクはアトワイトを鼻で笑い一蹴すると、刃を空中で翻した。
その笑みには微かな自嘲も混ざっていた事に、シンクは気付いていない。
木々の隙間から漏れる陽は、いつの間にか黄金から白銀に変化していた。
どうやら朝日が地平線から完全に顔を出したらしい。
「ねぇアンタ、それでも一応剣なんでしょ?」
光により肉片と肉汁をぎらつかせている刃を振り上げ、シンクはぼそりと呟いた。
「人肉を斬るのがアンタの仕事なんだからさァ、黙ってな、よッ!」
振り落とされた刃はディストの頭部を綺麗に割る。
飛び散った脳漿は弱く淡い光を反射し、しかし酷く鈍く輝いた。
シンクはディストの頭部を右足で踏み付け、刃を引き抜く。
精神的ダメージと動揺を狙うなら、頭部よりも腹部の方がより効果的だろうと考えたからだ。
それに、頭蓋は思いの外固い物なのだ。骨は斬る物ではなく砕く物。
唯でさえ細身、カトラス状のソーディアンであるアトワイトには少々荷が勝ち過ぎる代物。
今、この場に鎚が無い事をシンクは強く呪った。
大きな溜息を零すと、シンクはアトワイトのコアクリスタルを一瞥する。
……反応が薄くなってきたか。
この作業に慣れ、心が砕けては失敗だ。今のうちに揺すりを掛けておくか。
「……アイツの切り刻まれた死体も、アンタに見せてやりたかったよ」
つぷりと屍の腹に刃を入れ、横に素早く走らせながら、シンクはぼそりとそう零した。
アトワイトのコアクリスタルが、その言葉に応える様に鈍く煌めく。
「何ですって!? 真逆、ディストとノーマ以外にも!」
ディストの中身が露になる。人の内臓は何時見ても気分が良い代物ではない。
シンクは無表情を維持したまま、淡泊に言葉を続けた。
「ルーティ=カトレット」
道行く人に挨拶をする様に、息を吸って吐く様に、極めて自然な形で。
しかし確かに狂気を孕んだ声色で、シンクはそう言った。
シンクはちらりとアトワイトを一瞥する。コアクリスタルの発光が止んでいた。
へぇ、ソーディアンでも頭が真っ白になるんだな、とシンクは顔に三日月を浮かべる。
「な、に、」
アトワイトとルーティの関係は事前にリアラから世界観を訊いた際に搾取済みだ。
不抜けた弱々しい声を肴に、シンクは喜々としてソーディアンに血酒を啜らせた。
「ん? いや、ルーティの死体もアンタに見せてやりたかったよ、ってね?」
アトワイトの反応に満足げに笑いつつ、シンクは死体の内臓を切っ先で掻き分ける。
元同僚の中身を見る機会なんてもう二度と無いのだろうな、とシンクは自嘲を零した。
絡み付いた粘液を飛び出た乳白色の肋骨のアーチで拭いつつ、シンクは音素を編む。
血は洗い流せるとは言え、この状況を見られては拙い。咄嗟に隠せる墓穴が必要だった。
「な、な……ん、ですっ、て」
譜術の発生音でロイドとクロエに気取られる訳にもいかない。
今更そんなヘマは許されない。
動揺を隠せず吃るアトワイトを尻目に、シンクは譜術グランドダッシャーを編み上げた。
範囲・威力を最小限に抑制したグランドダッシャーは、
少ない精神力消費で、いとも簡単に人一人は入るであろう墓穴を造り上げた。
……思ったよりも音はしなかったな。此所が柔らかい地面で助かった。
シンクは安堵の溜息を一つ吐くと、血塗れたアトワイトを取り上げる。
「……だァから、“ボクが殺った”ルーティ=カトレットの死体だよ。
アンタで斬り刻み辱めてやりたかったなあ。
道具が元主を殺すなんて、最高の喜劇だったろうにね。とても残念だよ」
やたらと堅い横隔膜を貫き、胃を縦にゆっくりと裂く。
消化不良のパンが薄い黄土色のペーストと共に、肝臓の周囲を満たした。
悪臭に思わずシンクは顔を歪める。
「貴方、それ、って、どういう……こと」
下では死体解体、上では衝撃的な発言。アトワイトは気が気ではなかった。
アトワイトはルーティの死を失念した訳ではないが、乗り越えていたつもりでいた。
しかし、シンクの罠と誘導尋問、ディストの死体と口上を巧みに使った精神攻撃。
唯でさえ慣れぬ考察とバトルロワイアルと云う現実。
それらはアトワイトの精神を極度に追い詰める原因に直結していた。
そしてそれらはシンクの作戦であり即ち想定の範囲内であった。
アトワイトを自らの元に置いた事も、煽り口上も。
これは誘導尋問だ、とわざわざネタをバラした事も。
全てがアトワイトを逆上させ、精神を追い詰め、冷静な判断をさせなくする為の策。
「……アンタ馬鹿だな。まだ分からない?」
以上を踏まえた上、この状況下でのこの発言。
「“ルーティ=カトレットを殺したのはこのボクだ”」
アトワイトの冷静さは尽く削られ、この言葉を疑う余裕など在る筈がなかった。
「な、き、さま……貴様ッ、貴様ぁぁぁぁァ……ッ!
シンクッ、お前えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」
女三人寄れば姦しいとは誰が言った言葉だったのだろうか。
一人でも充分過ぎる程姦しいじゃないか、とシンクは女と云う生物を呪った。
これだから女とガキは嫌いだ。煩いったりゃあない。
同時に憐憫を抱く。コイツは何て単純な生物なのだろうと。
多少揺さぶってから刺せばこれだ。殺害を疑いすらしない。これが軍人か、情けない。
ボクなら絶対こうはならないな、とシンクは小さく鼻で笑った。
シンクには、他人の為にそこまで憤怒する理由が理解出来ないからだ。
そんな事に逐一腹を立ててるようでは、己はディストを殺害する事は愚か弄ぶ事も出来ない。
「怖い怖い。女の何とやらは犬も喰わない、ってね。
……ま、良い断末魔だったよ、ルーティはさ」
死ぬのが遅いか早いか、殺されるのが遅いか早いか。
「ん? 悔しいかい? ルーティを殺した僕を殺したいかい? ハハ、ほら如何したよ?
早く斬りかかって来なよ。アンタはソーディアンチームだったんだろう?」
それが真理だ。人の命なんて、それだけだろうに。
「ほらほら如何した!? 殺してみなよォッ!!」
結局は、どうせ皆死ぬんだよ。
「ん? ……あぁ、そういやアンタには無理だったね。
アンタ、剣だもんねェ。ザンネンデシタ」
「地獄に落ちろおぉぉぉぉッ!!!!!!」
舌を出して笑うシンクにアトワイトはヒステリックに喚き散らす。
身体があればその糞憎たらしい顔面を思う存分殴れるのに、とアトワイトは牙を剥く。
「落としてみろよ。お・姫・サ・マ」
「貴ッ様あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
シンクの煽りは実に順調であったが、此所で当然の如く疑問が残る。
“して、シンクがアトワイトに逆上させる理由とは何ぞや?”
――――――計 画 通 り!
シンクは内心でほくそ笑む。これでアトワイトは己が懐柔したも同然だ、と。
支援
さて、では此所で一つ種明かしをば。
“冒頭でシンクはアトワイトにカースロットを仕掛けている”。
突然の態度の急変と巧みな話術、死角からの攻撃に拠りアトワイトはその事実に気付いていない。
ソーディアンは高濃度のエネルギー体を浴びない限り痛みを感じない。
故にカースロットを容易に仕掛けられたのだ。
尤もシンクはそれを知らないが、自ら動けぬソーディアン。万が一気付かれても問題は皆無である。
さて、しかし無機物にカースロットが利くのか否かは定かではない。
シンクもそれを試みた事はないし、何よりオールドラントには高性能な人工知能を持った無機物は存在しない。
故にそれは試験的な試みだった。だがシンクは十中八九有効だと予想していた。
カースロットは意識の中枢を支配(厳密には違うが)する能力。
コアクリスタルが人格を生むレンズならば、その内部には必ず意識の中枢が存在する。
故にシンクは賭けに出た。此所までの会話は時間稼ぎに過ぎない。
そうしてシンクはアトワイトの激しい動揺を隠れ蓑にし、遂に至る。
コアクリスタルの内部、意識を司る中枢に。
そこからのシンクの策は一本道だった。アトワイトの精神を削り、煽り、揺さぶり、憤怒させる。
目的は他でもない、シンク自身に対する憎悪の増大だ。
万に一つ目的がバレても、それがシンクへの恨みに繋がるように出来ている。策は万全だった。
更に、カースロットは術者の近くに居れば居る程作用する仕組みだ。
常に手元に置ける武器と云う名目がソーディアンにある以上、アトワイトに逃げ道は無い。
仮に、ロイド達にソーディアンを取り上げられそうになったとしても。
罪滅ぼしと負い目からと理由を付け、
『お願いだ。回復役になりたいんだよ』とでも涙を交えて一芝居打てば良い話だ。
あのお人好しのロイドが居る限り、先ず問題はない。
そうすれば何時でも手元にソーディアンを置ける。仮にその策で通用しなくとも、行動は常に三人。
ソーディアンを持つ人間から然程離れない限り、カースロットは上手く作用する。
手元に在り憎悪がこれだけあるならば、大概は操作出来てしまうだろう事は想像に容易だ。
ソーディアン同士の密談も、最早恐れる事はないとシンクは踏んでいる。
ガイラルディア=ガランにやった様に、シンクへの憎悪を刺激すれば防ぐ事が出来るからだ。
それは何故か?
ソーディアンは自ら術を唱えられないし、動けない。
支 援
此所でその制約が上手く作用するからだ。
シンクへの憎悪を糧に操作し、アトワイトのそれ以外の思考を一切遮断させる。
そうすればアトワイトは物言わぬ剣に成り下がるのだ。
更に、燃える憎悪と反し動けぬ身体は更に憎悪を肥大させる。素敵な悪循環だ。
そんな憎悪に満ちたアトワイトが冷静にディムロスに連絡を取れるだろうか? 答えは否。
ルークを襲ったガイが仲間の掛ける言葉に耳を傾けなかったケースと同じである。
さて、前述した様にソーディアンは自らの身体を動かせない。
すると憎悪の捌け口は如何なるだろうか? 選択肢は一つ。口だ。
即ち極端な話、シンクへの脈絡も無い悪口を喋らせる事も可能。
言い換えれば、ロイド達からのアトワイトへの信頼を無くす事も可能。
現時点でのシンクの策は正に完璧の名を与えるに相応しい代物であった。
唯、瑕疵を上げるとすれば一つ。現時点でシンクはカースロットの制限を知らない。
故にシンクは気付いていない。ロイドに掛けたカースロットが解除されている事を。
それが幸となるか不幸となるかは、我々も彼等も知らない。
―――――――――――――
「これでもボクはね、元居た世界では六神将、烈風のシンクって肩書きがあった。
アンタと同じ軍人だよ。一応師団長だったし、兼参謀総長だったしね。
コレも同僚だった。ボクと同じくらい非人道的な奴だったんだけど……アンタは知らないだろうね」
墓穴に入れられた肉片に、足で蹴った土を被せつつ、シンクは呟いた。
想像し辛いかも知れないが、結構これが重労働なのだ。
「……それはそれは御丁寧に、参謀総長サマ。
でも、今はもうその御大層な肩書きも尽く形骸だと思うけれど、どうかしら?」
ディストを埋める作業にシンクが移行してから無言で数十分。
久し振りの言葉に驚きはしたものの、アトワイトは皮肉混じりにそう応えた。
「はは。全くだね。アンタお笑いの才能あるよ。転職すれば?」
騙されたアンタが良く言うよ、と口にさえ出さないが、シンクは嫌らしく笑う。
「鄭重にお断りして、その言葉リボン付きで貴方に返すわ」
コアクリスタルの中ではそっぽを向いてるんだろうな、とシンクは思った。
……想像すると笑える。
「そりゃどうも。
まぁ尤も、肩書きが形骸でなかったとして、周りの奴等はアンタみたいに頭がおめでたい馬鹿ばかりだし。
剰え他世界の住民だ。
とどのつまり、どちらにせよ大した変わりはないって事。
まぁ、厳密に言えば変わるんだけどさ、この際だし。細かい事は気にする事ないよ」
相変わらずの吐気がする臭いが辺りを立ち込めていたが、シンクは意も返さず黙々と土を蹴る。
慣れとは恐ろしいものだ、とシンクは再認識した。
意識さえしなければ酸味を含む臭いも如何と云う事はなくなってしまっていたのだ。
しかし、矢張りこの様な場合だけはソーディアンが羨ましくもあるもので、シンクは溜息を吐く。
「お褒めの言葉アリガトウ」
そんなシンクの意識を浮上させたその言葉に、シンクはにやにやと満足そうに笑った。
「拗ねるなよ。子供だなぁ。アンタ軍人だろ? それ、欠点になるよ?
……ま、人って生物は不思議なもんでさぁ、何処かしら瑕疵があるもんなんだけどね」
「いきなり何の話よ」
不機嫌そうに低い声色で呟くアトワイト。
シンクは殆ど血肉が見えなくなった墓穴を一度覗くと、腰に下げたアトワイトへと視線を向けた。
「まァ、聴いてなよ。どうせ暇だろ?」
アトワイトはその言葉をハン、と鼻で笑う。
「お喋りね。柄じゃないわよ。引き籠もってる方がお似合いだわ」
アンタもね、と言いかけたが、シンクはその言葉を黙殺した。
「無意味な挑発はよしなよね。折角、今はすごく機嫌が良いんだ。
こんなボクでもたまには饒舌になるさ」
しかし、てっきりもっと拗ねるかと思って無視されると思ってたんだけど、とシンクは肩を竦めながら思った。
感情的になるのも早いが、冷静になるのも早い、詰まりがそういう訳か。
「明日は雪が降りそうね。じゃあ一応訊くけど、例えば?」
こうして話を聞いてる間もディムロスに連絡を取ろうか、カマを掛けようか虎視眈々。
大方、そんなトコだろう。操るまでの最後の会話になるかも知れないのにさァ。
相変わらず中途半端というか何というか。扱い易い奴。
「……それ、皮肉のつもり? 笑えないねェ。
ボクの存在そのものが証明にならないとでも言うつもりなのかい?」
シンクはすっかり埋まってしまった穴の表面を足蹴で固めつつ、自嘲混じりに呟く。
思いの他埋葬が早く終わっな、と溜息。念の為首輪も回収したし、不備は無い。
「……言ってる事が何の事かさっぱり分からないわ」
しえん
「いいかい? 言ったと思うけど僕はレプリカだ。
唯の導師の代替でしかないし、一度は破棄されたゴミ。
鼠に囓られたチーズみたいに穴だらけさ。ついでに中身は空っぽときてる。
虫に喰われた林檎に似て、がらんどうなのさ」
ディストを埋葬を開始する前、シンクはアトワイトを少しでも冷静にさせる為、
簡単に自らの境遇等を説明していた。
冷静さを欠いたアトワイトには、少々馬鹿をし易い質が在るからだ。
興奮したままロイド達に出会えば、何をしでかすか分からない。
無論カースロットで操れば万事解決なのだが、シンクは完璧主義者だった。
そして僅かでも策が崩れるパーセンテージを下げるには、ありとあらゆる面で万全を期する必要性がある。
シンクが参謀総長として機能する理由はそこにも存在した。
ヴァンは機動力だけではなく、狡猾且つ慎重な面をも併せ持つシンクを買っていたのだ。
「……あら、チーズや林檎が貴方と同等だなんて、食材に失礼だと思わない?」
シンクはアトワイトの輝くコアクリスタルを見下し、唇を歪める。
皮肉る事だけは得意のようだ。
「賞味期限が切れたどっかの剣に言われたくないね。塩漬けにされたい? もれなく錆まみれだよ」
けれど、皮肉なら負けないだろうな、とシンクは指の骨を鳴らす。
―――だけど案外、似た者同士だったりするのかも知れない。
一瞬でもそう感じてしまった自分を、シンクは心の底から殺してやりたいと思った。
「……。それはどうも。でも、遠慮しておくわ。女は肌が命なのよ、世間知らずの坊や」
剣に肌も糞もあるか、とシンクは思った。
「それはそれは残念だ。勉強になったよアトワイト。
見せる相手も碌に居ない女にもプライドがあるなんて知らなかったねェ。
……まぁ、けどさ。何も穴だらけなのは僕だけって云う訳でもないよ。
それでも僕よりは全然少ないだろうけどさ」
シンクはふとアトワイトの刃を見て僅かに焦った。
乾燥して黒くこびり付いた血や脂を思い出したからだ。
……馬鹿かボクは。ロイド達に見られたら如何説明するつもりで居たんだろう。
呑気に構えてる場合じゃないぞ畜生。危ないところだった。
「貴方、案外卑屈なのね。……だけど如何いう意味?」
疑問の声を聞くや否や、シンクは腰からアトワイトを素早く抜く。
支援
「そうだね、例えば……邪魔がられる程お人好し過ぎて自滅しそうな馬鹿とか。
半分精神が崩壊してるおめでたい女とか、剣のくせして恋するクソババアとか、色々あるよね?」
シンクの目前に翻されたアトワイトはコアクリスタルを輝かせ、口上に御立腹の様子。
「貴方、礼儀を覚えた方が良いわね。今度小一時間掛けて教えてあげる」
シンクは涼しい顔をしてアトワイトの言葉を流す。
「生憎だけどババアの講釈は嫌いでね? 一人でやってなよ。
まぁ……性格的なものだったり、潜在的なものだったり、気付いてなかったり気付いていたりとまちまちだけどね。
だけど、どれも還元すればウイークポイント。即ち瑕疵さ。生物は何処もかしこも穴だらけ」
アトワイトのコアに僅かばかり音素を分け与え、命令を下す。
詠唱されたのは局地集中型のネイルシュトローム。
その水流に拠り、アトワイトにべっとりと付着した血肉と脂は瞬く間に取り払われた。
「同列に語るのはどうかと思うわ。人は最も複雑な生物なのよ。
そんな生物の想いの還元は無謀以外の何物でもないわ」
アトワイトは水流の渦に舌を打ちつつ、苛立ちながらも言葉を発する。
この少年シンクは、矢張り抜かりない。
ミステイクは愚か付け入る僅かな隙さえも垣間見せる事すらもない。
ハロルドまでとは行かなくともカーレルと同等かそれ以上。
流石に参謀総長を名乗っていただけはある。
「それを剣であるあんたが宣う? 身体がない武器が好く言うね。あんたらは、還元すれば人殺しの道具だろ?」
アトワイトに睨みを利かせるシンク。切り込む部分は鋭い。
アトワイトは反論する術を持ち合わせておらず、押し黙る。
だが、沈黙は金とも言う。黙殺で悟られる事は少ない。
「……だんまりか。それとも言い返せない?
もしかしたら一番穴だらけなのは、アンタかもよ? 悠長に人に噛み付いてる場合かな? お・姫・サ・マ」
尤もアトワイトの場合、それが僅かに遅過ぎた。今更の沈黙は金どころか糸屑以下だ。
「黙りなさいッ! 貴方なんかに指摘される筋合いは無いわ!!!」
挑発に乗るしかないのかコイツは。単純な女だな、とシンクは心中で呆れ返った。
こうしてたまに神経を逆撫でておけば、適当な精神状態に相手を置く事が出来る。
余計な考えを起こせぬ様に、憎悪を抑えぬ様に。
「はは、怒るなよこれくらいでさァ。血圧上がるよ?
アンタももうババアなんだ。動悸で倒れたりしないでくれよ?
しかし下らないね……まるで此所だ。
人をどん底まで突き落とす悪質極まった落とし穴ばかりの舞台<バトル・ロワイアル>と一緒だよ。
まぁ、何だかんだ言って結局は嵌まる奴が悪いんだけどね。
最初から奈落に居るボクからすれば、滑稽で面白いけどさァ」
されど、とシンクは自分の言葉を咀嚼する。
そんな自分がこの馬鹿げたゲームの一員として組み込まれたと云う現実。
「大層な身分ね。上から見る分には、滑稽なのは貴方よ。馬鹿みたい」
ならば確かにアトワイトが今言った通りかも知れない、とシンクは苦笑を浮かべた。
「はは。褒め言葉として受け取っておくよ」
例えば、そう。この言い争い。
聴いているであろうサイグローグにとってすれば、或いはこれさえも滑稽だとでも云うのだろうか。
……気に入らないな。
シンクは素直にそう思った。いや、別に他人に何を思われようが如何でも良いのだ。
が、サイグローグが“上”から見て笑って、いや嗤っている事が気に入らない。
ならば、とシンクは顎に手を当て思案する。
「ねェ、いきなりだけどアンタ、神って信じるかい? ……信じられる、かい?」
どうせ暫くは暇だ。ならばサイグローグに喧嘩を売るのも悪くはない。
追い詰めるのは他の奴がやれば良いとして、高みの見物が何時まで続くか見物ではある。
「……? 突拍子も無いわね。いきなり何が言いたいの?」
お前に話をしているんじゃないよ、と無性に言いたくなったが、抑える。
馬鹿女に当たっても仕方無いし、コイツの程度なら汲取れないのは無理もないだろう。
「別に? 単なる好奇心を含む閑話だよ。で、信じる?」
もう一発、ネイルシュトロームを発動しつつシンクは訊く。
細心の注意を払ったが、衣類にも黒い染みが出来ていたからだ。
死体を埋葬するならば血液の染みは出来ても不自然でも何でもないのだが、念の為だ。
「信じる時もあるし信じない時もあるわね。時と場合に拠るわ」
……曖昧な奴め。餓鬼じゃないんだから。
シンクは目を細め辺りを見渡す。白銀の斜陽は、半透明な光の刃となって幾重にも地を刺していた。
目当ての一枚岩は、割と直ぐに見つかった。シンクは気怠そうに身体を右斜め前に運ぶ。
しえん
「ふぅん。まぁ少なくともボクは信じられないね。
神って存在自体がいけ好かないし。響きも全然好きじゃない。
そもそも神が居ればこんな馬鹿な生き物は作ったりはしない。ボクが神なら先ず人を滅ぼすね」
シンクはそう零すと、岩の上の落ち葉と苔を適当に二、三回払い腰掛ける。
「一理あるのは認めるわ。
けれど、それは神側に人に手を出さない、又は出せない理由があるのかも知れない。
根拠としてはかなり弱いわね」
サイグローグがどれ程の者なのかは計り知れないが、馬鹿ではないだろう。
少なくともコイツよりは。ならば、この話が向けられた相手も、真意も理解出来る筈。
「そうだね。だけど宗教は統治の為の方便だろう?
神教の本質は偶像崇拝じゃない。“愚”像崇拝だ。神性は崇拝数に比例するしね」
シンクは足を組むと、アトワイトを自らの隣に立て掛け、服の袖をぎゅうと絞った。
血を吸った影響でほんのりと橙掛かった雫が滴る。
「随分勿体ぶるのね。しつこい男は嫌われるわよ。はっきり言ったらどう?」
アトワイトは実にぶっきらぼうに応じた。
しかし相変わらずの短気っぷりに呆れ返る事もなく、
シンクはこめかみをトントンと人指し指で叩き、笑う。不機嫌さは何時もの事だ。
「ア〜ト〜ワ〜イ〜ト〜、アンタは馬鹿か何かかい? 何も難しい事はない。
詰まる処が、“逆”なんだよ。オーケイ?
神は何も創っちゃいない。創っているのは、何時の時代も人間なのさ。
屑が寄せ集めたエゴの権化。水面の月。楽園の虚像。鏡に映った星屑。
……それが神の正体。分かるかい?」
ばつん、とアトワイトのコアクリスタルが突然発光を止める。
さしものアトワイトも、此所まで言われれば理解する。理解してしまうのだ。
アトワイトは、はっと飲んだ息をゆっくりと吐き出し、口内で転がしていた言葉を放つ。
「真逆」
シンクが表情をこれでもかと歪める。
恐らく今まで見て来た中で一番不愉快な笑みだろう、とアトワイトは感じた。
「そうさ。神はね―――人間なんだよ」
予想はしていたものの、とアトワイトは大きな溜息を一つ吐く。
そんな事は馬鹿げている話だ。この少年は神にでも至ったつもりなのだろうか? 下らない。
「話が飛躍し過ぎね。神と人が同等と言う訳? 呆れた。貴方、神にでもなるつもりなの?
馬鹿げてるわね。人は神とは違うわ」
支援
ま、それが当然の切り替えしだよね、とシンクは頬を爪で掻きながらアトワイトを凝視する。
「あぁそうだね、人は神にはなれない。
何故なら人の幸福は他人の不幸を代償にしているから。そうだろう?」
人を小馬鹿にしたような態度で言うシンクへ、アトワイトは嫌悪の表情を浮かべたまま睨む。
尤も、その表情がシンクへと伝わる事はないのだが。
アトワイトは恨めしさに負け会話を止めてやろうかとも思ったが、口を開く。
「分かってるじゃない。“神は人を幸福にする”。それは必要条件だけど十分条件じゃあない。
神は、全知全能でなければ成らない。だから神は神なのよ。
……断っておくけど、私は別に神を信じてる訳じゃないわよ。
勘違いしないでよ。これはあくまでも一般論での話の展開なんだから」
口が重いとは正にこの事を言うのだろうなと、アトワイトはコアクリスタルの中で苦笑を浮かべた。
別に無理をして言う事もないし、強制をされてもいなければルールも無い。
だが、押し黙ってしまうとプライドが許さないのだ。
我ながら小さな女だとアトワイトは呆れた。
……尤も、それすらもがシンクの思惑通りである事をアトワイトは知らないのだが。
「ウザいね。分かってるよそれくらいさ。ボクは誘導尋問に引っ掛かる誰かさんみたいに馬鹿じゃあないんだ。
でもねェアトワイト、人は全知全能が何を指すのかと云う問いにはざっくばらんにしか答えられない。
それはその問いが宇宙が問う永久の命題であると共に、人としての限界を超越している疑問だからだ」
間髪を入れず、シンクは尚も続ける。
「生物は、未知や差異へと半ば本能的に強大な畏怖を覚える。
そしてそれが理解出来るものならば限り無くベクトルは嫌悪へ、理解の範疇を超越しているならば、崇敬へとシフトする」
そう言い終えると、シンクはアトワイトを手に取り二、三回回した後、大地に突き刺した。
銀光の刃はアトワイトの刃を反射し、シンクの左胸を照らす。
……せめて光だけでも憎い相手に突き刺すと云う算段か。中々笑わせてくれる。
シンクはヤケに気の利いた光にくつくつと肩を震わせて笑う。
「……言ってる事は理解出来るけど、全てのケースがそうであるとは一概には言えないわ」
理解してはいるものの、苛立つものは苛立つ。
シンクはアトワイトに聞こえぬ様に舌を短く打った。
“当たり前だろう、そう言われるようにしてやってんだからさァ”。
そう言ってやりたい衝動に駆られたが、自らの始めた暇潰しに苛立っては意味が無い。
やれやれとだけ呟くと、シンクはその口を開いた。
「それは認める。だけどね、そうして崇められた“神”。
それは、人が設定した全知全能の存在。だけど、その神は決して神ではないのさ」
「詰まり?」
飲み込みが悪い奴だとシンクは苛立つ。
コイツ、逐一訊かないと言いたい事が理解出来ないのか。
「詰まり。人が認識する神は唯一無二の存在には成り得ない。結局は突き詰めれば紛い物。
どれだけ高価なネームプレートを下げようと、それは神への近似値に過ぎない」
シンクはそう言うと、開いた股の膝の上に肘を乗せ、指を組んだ。
目前の腐葉土から、墓標と言わん許りに伸びたアトワイトの位置からは、
丁度組まれた両手がシンクの口元を隠していた。
「でも、神が神らしい事をすれば良いんじゃないかしら?
例えば死者蘇生とか、願い事を叶えてくれるとか、ね」
此所まで来ればしめたものだ。シンクは目を細め、ぐにゃりと口元を歪ませた。
「アンタ嫌に突っ掛かるね。もしかしてあの道化師の事かい?
……そうだねェ。実を言うとボクは一度死んでいるし、リアラから聞いたけどアンタもだっけ?」
「そうよ。奴は、サイグローグはどう見ても人間には不可能な事をやっているわ。
あのような存在を見ても、近似値だと? 驕ってると何時か足元を掬われるわよ?
言っておくけど、人が想像出来る事は、全てが有り得るのよ」
……それをアンタがボクに向かって言いますかァ?
シンクは組んだ指を解き、高らかに笑い声を上げた。
さぁどうだサイグローグ。何時もアンタが大層にやっている事とは全てが真逆だ。
アンタなら如何出る? 何を想う? アンタは何を、何故選択する?
し え ん
「くく……くくくくく……あッはははははははははははははははははははァッ!
何を言い出すかと思えば下らない! あぁ実に下らないねェアトワイト=エックス!
正直ボクはアンタに失望したよ。さっき、アンタ自慢気に言ったね?
“人が想像出来る事は、全てが有り得る”のだと。
そうだよ、その通りだ。でも、それを言うならば、故に神は存在しないと言える。
仮に、これからあの道化師が“人間には不可能な事”を幾つもやったとしても。
それが本当に人間には不可能な事なのか証明する事の方が難しい。なァアトワイト?
繰り返す様だが、“人が想像出来る事は、全てが有り得る”んだったな?
それを言った時点でアンタの論理はボクにとって無意味なんだよ。ゴクロウサマ。
悪魔の証明って知ってる? アンタには高度過ぎるかなァ、アトワイト?」
アトワイトは畳み掛ける様な勢いに後込みをしたのか、押し黙る。
それを見たシンクは、しめたとばかりに更に勢いを上げて畳み掛けた。
「それにボクはそういう事を言ってるんじゃないんだ。人にとって、と云う限定条件付きの神の話だ。
人にとっての神は限り無く都合の良い幻想の塊。それも極めて自己中心的なね。
ま、でもそれは至極当然だよ。人の想像能力には限界があるし。だけどそれ故、個々の想う神にも限界がある」
シンクは此所でアトワイトに付け入らせるタイミングを置く。
三拍程置くと、シンクの予想通りアトワイトは口を開いた。
「限界が生じる以上、“人の言う”神は存在しないに同義だ、と?
確かに全知全能と言う前提とは矛盾するけれど」
そうだ、とシンクは頷く。
「……人は他人の価値観を掴めない。茫漠と空想の海を漂う他人の像は、他人の知らない“他人”だ。
個が想う他は、掴めるようで、決して掴めない。指の間をするりと抜ける。
だから、この広大な空よりも、ずっと大きいと錯覚する」
何もカード<参加者>を想像し、配る事が出来るのはホスト<主催者>だけではない。
無論確かに、予め決まった数<何枚目なのか>は存在するかも知れない。
が、シャッフル次第で戦況も勝者も変化する。それこそ万華鏡の様に、だ。
そして完璧でないホスト<“神”>相手ならば、極端な話我々はイカサマをする事も可能なのだ。
「実際の大きさを秤りかねるから、人は無意識に巨大と思い込む、と?
それを形容するに妥当な言葉が“神”って訳?」
そう。
即ちホスト<主催者>が干渉出来る範囲が分からないから、カード<参加者>は並んでしまう。
「そうさアトワイト。故に人が理解出来る神は、神としての存在が破綻している。
何処かしら瑕疵があるのは人間でもあるが、詰まり一方では、神だってそうなんだ」
皆が皆過大評価し過ぎなんだよ、とシンクは締めくくり、大きな欠伸をする。
アトワイトは暫く黙っていたが、木々の合間から落ちた葉を見届けると、大きく鼻で笑った。
「……フン。何を言うかと思って聴いていれば。……詭弁だわ。下らない。
結局貴方は肝心な部分を誤魔化しているだけに過ぎない。
悪魔の証明を引き合いに持ち出すなら、貴方の論だってそうじゃない!」
アトワイトの言葉を右から左に流しつつ、深緑に覆われた向こう側をシンクは覗く。
「おお怖い怖い。だが、お前もだよアトワイト」
「……子供の水掛け論ね。お話にならないわよボウヤ」
シンクは目を細め、何の気無しに奥の“点”を見つめる。本の退屈凌ぎ、の筈だった。
最初は、僅かな疑問だ。朝とは言えど暗闇、幽邃境と言っても過言ではない程深い森。
その向こう側に“点”がはっきりと見える事なんて、有り得るだろうか。
……いや、有り得はしない。
だが何という事もない、とシンクは目を擦った。己も疲れているだけなのだろう。
シンクは目が悪い方ではなかった。にも関わらず幻覚とは、とシンクは項垂れつつ、口を開く。
「……。否定はしない。でも所詮閑話だから別に良いんだ。正直答えも何だっていい。
ボクにはまるで関係のない事だ。唯ね、最初から勝敗が分かるババ抜きなんて成立しない。
ジョーカーが分からないから、ゲームは面白い。黒い箱の中が分からないから、プレゼントはプレゼントなんだ。
……ボクやアンタ等のゲームの意義、それが破綻する時は、きっと神の存在が証明された時だよ」
そうだ、とシンクは自分に言い聞かせる様に口調を強くした。
シンクとて本当は恐れているのだ。神が居る事を。故に否定をする。
いや、自覚がないだけで本当はシンクは神を信じているのやも知れない。
だから“どうせ”と言うのか、或いは―――。
支援
「それによく言うじゃないか、“馬鹿と天才は紙一重”ってさ」
シンクは立ち上がり、柔らかな微笑みを零す。
その微笑みは、シンクにとって“こうであって欲しい”と云う理想の権化そのものだった。
その表情に面を喰らってしまい、無言を維持していたアトワイト。
その柄を、シンクもまた無言のまま引き抜き、ヒールを二、三回。
その後腰に下げられたアトワイトは、もしやと思いシンクを見上げた。
が、そこには先程の表情の名残さえもが存在しないのだ。あるのは冷酷に徹した表情。
―――シンクの仮面だけだ。
あの微笑みは刹那の夢か。誰かが見せた幻だったのだろうか。
「きっと、箱を開けてみれば神と人の関係も、そんなものさ」
サイグローグを惑わすつもりが、惑わされたのは己の方だったのかも知れない。
そんな事をふと思ったが、シンクは瞳を閉じて思いを掻き消した。
「……そうそう、進化の話、まだだったね」
けれど、神なんて、ボクは絶対に認めない。
「ボクは思うんだよ。進化とは……」
運命という巨大な敵。それに翻弄された過去とは矛盾した信念のまま、シンクは左手を翳す。
「滅亡だってね」
後はお前が壊れた事にするだけだ。お疲れ様、アトワイト。
そして、サヨウナラ。
最後に見た景色は、ディムロスの炎よりも紅い光と、明け方の森に浮かぶ三つ目の月。
「おやすみ、お姫サマ。残念だけど、王子様のキスは永遠に無いよ」
アトワイトの意識は、その言葉を最後に途切れた。
―――――――――――――
「シンクを呼んで来る」
ロイドと大半が静寂で構成された埋葬作業を終えたクロエは、ロイドの元を直ぐに離れた。
ロイドに甘えてしまいそうな自分に底知れぬ強い嫌悪感を抱いた事と、
シンクと共に話を、ケジメを付けたかった事がその理由だ。
自分は何故こんなにも弱いのだろうか。何時まで甘え縋ってばかりなのだろうか。
クロエは下唇を強く噛みつつ、樹々を黙々と掻き分ける。
自分すら守れぬ馬鹿が、男の包容力に頼る馬鹿が、何を守れると言うのだろうか。
……何も守れないに決まっている。
オルコット殿、とクロエは呟く。頭の中にはぼんやりと、だが確実に行き交う罪の意識と黒い感情。
シンクを赦さぬなら、何故私はオルコット殿を赦した?
シンクをノーマの敵と見るなら、何故私は敵討ちをやめたいとクーリッジに漏らした?
シンクを殺すつもりなら、何故私は剣を棄てた?
仮にクーリッジやアーヴィングが殺されても、果たして私はその敵を討たないと言えるのか?
どちらが本当なんだ? 私は、何をしたいんだ?
「私は今、幸せなのか……?」
ぽつりと零れた疑問には、クロエが望む答えも、望まない答えも、紡がれない。
誰も紡がない。紡ぐ事が出来るのは、クロエ本人だけだ。
クロエは立ち止まり、空を仰いだ。切り取られた空は雫に滲んでいる。
「……クロエ」
不意に、聞き慣れた申し訳なさそうな声が聞こえ、クロエは慌てて涙を袖で擦る。
求めていた人間の筈なのに、如何してこんなにも恨めしい気分なのだろうか。
これでは選択をするのではなく、選択を強いられている様なものじゃないか。
クロエは僅かばかり自嘲を零すと、気弱そうな声の主の方へと振り返る。
瞬間、シンクはクロエの瞳孔の勢い良く広がる様を見逃さなかった。
クロエの視界、揺れる若草色、その向こう側。
輝き揺れる見慣れた蒼光の翅を、
「………………テル、クェス…………?」
見間違う筈が、ない。
蝶は翻る。
陽は昇る。
選択肢は迫る。
それでも空は、唯延々と青く構えていた。
しえん
【シンク 生存確認】
状態:HP85% TP30% 居心地が悪い 服がボロボロ 右足に噛み痕
支給品:すず 未完のローレライの鍵 リコーダー 聖剣ロストセレスティ
シンクの仮面 クレーメルケイジ(C) ディストの首輪
ソーディアン・アトワイト(カースロット発動中。意識無し)
基本行動方針:ルーク達を引っ掻き回して楽しむ
第一行動方針:ロイドを利用し信頼を得る。リアラは放置したい
第二行動方針:……テルクェス…って?
第三行動方針:レムの塔の探索
現在位置:E7森・西
【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:HP80% TP70% 疲労 左肩に浅い切り傷 右足に切り傷 強い決意
所持品:オブシディアン 木刀セット ソーサラーリング ダガーナイフ
基本行動方針:打倒サイグローグ。死んだ仲間の為にも反ゲームのスタンスを貫く
第一行動方針:仕方無いのでクロエを待つ
第二行動方針:レムの塔へ行く
第三行動方針:仲間を集める。リフィルとクラトス等のブレーンであれば尚良し
現在位置:E7森・南
【クロエ・ヴァレンス 生存確認】
状態:HP45% TP100% 帽子紛失 打撲 軽い貧血 胸に止血済中裂傷
シンクへの複雑な心境 迷い
所持品:安全ヘルメット
基本行動方針:打倒サイグローグ? シャーリィだけでも守りたい
第二行動方針:???
第三行動方針:シンクと二人で話したい。一緒には行動するが許す気はあまりない?
第四行動方針:セネル、特にシャーリィと合流したい
現在位置:E7森・西
※ロイドのカースロットが解除されました。シンクは気付いていません
お疲れ
投下&代理乙
シンクが本領発揮だな
アトワイトすら相手にならないとか半端ない
にしてもテルクェスの探知範囲はヤバいな……
ただ橋が壊されてるからすぐには向かえないか
投下&代理乙です。
とりあえず、シンクがマーダーらしくなったような気がする。
クロエの行動方針の数字ズレてる気がする。
投下乙です
カースロット発動ktkr
シンクを最低だと思って読んでてもふと大谷ボイスだと意識すると緩和される不思議
色々アトワイトがカワイソス…
768 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/13(金) 03:02:52 ID:ui1LqqBO0
シンクえげつねええええ!!
それでいて神を否定したがってるとこもいいw
しっかしアトワイトにカースロットとは思いもしなかったぜ
ロイドのが解除された影響も含めてあとがきになるなー
久しぶりに来たら投下されてた!投下乙です。
アトワイトにカースロットとはなあ・・・しっかしアトワイト、シンクに思いっきりペース乱されてたなあ。
そしてここにきてテルクェスか!Lの3人の命運はいかに・・・
後誤字の指摘。
ネイルシュトロームじゃなくてメイルシュトロームです。
おお、大作投下乙!
神談義が深いな。調教されたアトワイトとクロエが気になる。
投下乙
シンクは流石参謀総長といった感じだな
アトワイトも頭脳派だが完全に手玉に取られてる
後半の神談議はシンクが段々ムキになってるよな
そりゃ生まれた事が憎いぐらいだし、神を信じるってのも変な話だが
乙です!
ついにABYSSが揃ったな!
すげぇ…確かにABYSSだ…
今気付いた。SUGEEEEEEEEEEEEEEEEE
ええ?何がABYSSなのかkwsk教えてくれorz
タイトルの全角頭文字だな。
気付かなかったひとが大半なのか?
今気づいたぁぁぁ
最近サンホラネタ多いから気付いてた奴は最初の2文字くらいから気付いてただろw
サンホラやりたい人はサンホラロワでも始めりゃいいのに
>>780 おまえさん、タイトルの元ネタに一々そう言うとなると、パロディネタも一々つっこまなきゃならなくなるぞ?w
そのくらいいいじゃないか。肩の力抜こうぜ?
お前ら早漏だな!
俺はちゃんとABYSSIONが完成したらネタバレしようと思ってたのに!
>>782 ちくしょう・・・こんなので吹いちまった
俺はきっといつかアビシオンフィギュアが活躍すると信じている…!
アビシオンフィギュアw
テイルズ1に帰れw
しかし全然気付かなかったぜ!
しかしクロエはあのピッチリ衣装で胸に傷を負ったのか。
ポロリもあるな、こりゃ。
テイルズオブバトルロワイアル2nd〜ポロリもあるよ〜
>>781 しかしタイトルだけに留まってないから困る。
最初の文の雰囲気ですぐにわかるんだよな。
1、2回程度ならまだしも、何回も使われるとさすがに失笑もの。なにカッコつけてんのってた感じ。
お前の好き嫌いなど知るか
中二病で名高いテイルズのスレ、それもバトロワパロといった自己満オサレSSスレで格好付けるだの云々ってw
おまえさん、パロディやネタって言葉を覚えたらどうかな?
>>786-787 何だよこの流れww
吹かざるをえないじゃないか
言われてみればそうだな…
イリアいわくエロ過ぎるボディでそんなことになってるのか……ゴクリ
ちょっとロイド場所変わらないか?
これパロディだから勝手に不快にならないでねっていうことか。
あざといのはネタじゃなくてKYでしかないからな。
そろそろ読み手様自重。万人受けのものなんて何処にもない。
というか、タイトルにまで文句が付くようになるのは正直色々と終わってるぞ。
確かにサンホラ1、2回ならいいけどこう何回も来るとなんだかなーと…
最初は爆笑したネタも数回聞くともう笑えない、って感覚に似てる
もういいからポロリの話をしようぜ
文句言うなら自分が書けばいいじゃん。
その作品が酷評でも知らんが
チェスター「
>>796」
ゼロス「
>>786」
死者スレまでポロリの話になってるw
みんなどんだけポロリ期待してるんだw俺はクロエのよりも、もっと貧乳キャラのポロリをry
じゃあこれからはクロエのポロリを重要視しとかなきゃな!
しかし俺はあくまでポロリを守る側で動かせてもらおう
おまえらの好きにはさせない
>>798 つるぺたポロリはちょっと難しいだろ
リアラが水着の時とかチャンスだったのにな
おまえら脱ぐしかないとまで言われた絶賛ステルス中のあの人を忘れてやるなよ
伸びてると思ったらポロリの話かよ。
じゃじゃ丸とでも戯れてろよお前ら。
>>802 ピッコロさんも忘れないでやって下さい
投下あるまで話題でも振るか、折角タイトルの話になってるから
好きなタイトル挙げてくとかどうよ
投票にするにはスレの残りが75KBと多めだが
203話のタイトルが1stとリンクしてると知った時は驚いたなw
マザーグースとかがタイトルの話ではよく挙がるかな
タイトルといえばクレスとリーガル初出の話はダジャレうまかったw
投下します。
<問>
未開の地にて心身共に極限まで追い詰められた人間(知り合いと思われる)に出会った場合、
先ずすべき事は何か、以下の選択肢から選べ。
なお、出くわされた人物が生命の危機を感じている事を前提とする。
A)問答無用で攻撃する。
B)取り敢えず話をする。
C)全力で逃走する。
D)死んだふりをする。
E)何でもするからと命乞いをする。
ぽたりぽたりと、数多の雫が寸劇唄う湧水洞。
玄武岩と石灰岩の硬度を確かめるようにこつりこつりとピンクのヒール。
横目でちらりと右後ろ。天然の桟橋の下、水流織り成す狂詩曲。
真直ぐ見つめる前方約5メートル半。
切り取られた真夜中のゲレンデ、星の海から白銀受け取り蒼白く。
髪をくしゃりと握る天才、惨劇回避値χは如何求める?
「ハロー、ご機嫌いかが? 随分な有様ね」
温度で溶けぬ雪となればスキーに便利そうだなとハロルドは思った。
地上軍拠点であれだけ見た雪も、これで見納めになるかもと思えば実に感慨深い。
ハロルドは額を突撃訪問した身勝手な汗を袖口で拭う。
黒い起毛がべたりと額に付き、ゴシック・ロリータ調の袖に心底嫌気が差した。
余計な装飾を、と自分の少女趣味を呪いつつ、ハロルドは杖を握る右手へ僅かに力を込める。
馴染んだ杖と掌の間は生暖かい汗で湿っている。
……何時から多汗症になったのよ、私。
更年期障害? 真逆。悪いけどそこまで歳喰ってないわよ。
逆に大人になりたいくらいだわ。だから化粧も通常の三倍厚くしてんのに。
返事が無い事実に目を細め、ハロルドは僅かに顔を上げた。
ただのしかばねのようだ、とか軽く冗談を飛ばしても良いのだが、状況が状況だ。
とてもではないが笑えないので、ハロルドは小粋なジョークタイムを黙殺する。
位置関係を再確認。相変わらず5メートル半。襲われてもギリ可避範囲。
相手の顔は逆光で窺えはしない。自らは洞窟内部、相手は入口付近。
唯でさえ暗闇の条件。当然と言えば当然だ。
ハロルドは左手で胸を指示し、再度ロニに向かって会話を試みる事にした。
他人と比べて一際大きな唇が小刻みに揺れる。
「……それ、ケチャップでも零した? 洞窟で仮装パーティーって、中々斬新で私は好きよ」
この現状は、特にハロルドの想像の範囲を超えた事態と云う訳でもなかった。
放送からある程度の予想は出来た状況であったからだ。
ロニ=デュナミスの精神はそれ程強靱ではない。元々短気な性格で思慮深くもない。
単純一途、熱血馬鹿、過保護、フられマンは折り紙付きでフォーエバー称号。
ロニ=デュナミスの個としての核は、傍から見れば一次方程式並に分かり易い構成だ。
それ故にウイルスに弱い。HDDの容量もなければ(≒お馬鹿)、ソフト(≒教養とか)も無い。
一度感染すれば、後の道は限られて来る、が。あくまでも内的要因レベルでの話だ。
外的要因を用いるならば、或いは―――。
「……ひ、っぐ、は……ふ、ふひゅふ、ふぅ」
……未だ笑うだけで反応ナシ、か。いやぁ参った参った。
仮面ストーカーが使うレベルの簡単な言葉で皮肉ったつもりだったけど、現実は厳しいわね。
でも、笑いながら泣くなんて中々如何して器用じゃない。きっと、この私には無理ね。
ふぁ……しかし眠ッ。そういやぁ何日寝てないっけ?
「……ふぁ……ッふぅ」
大きな欠伸を一つ零し、ハロルドは首の骨をぽきりと鳴らす。
睡眠状態のコアクリスタルの様に白濁としたロニの双眸を細目で確認。
ハロルドは素早く左手を懐に潜り込ませた。
実に驚く程自分の指先はスムーズに動いた。軟体動物かこの指は。
一瞬、エニグマの宿の中、螺旋状の胴かと思った程だ。
こんな局面でも冷静なハロルドを九割のハロルドが拍手喝采。そりゃそうだ。
そうでもなければ私は務まらないし。それに、だって私これでも軍人なんだから。
「お互い何時までも人形みたいに突っ立ってる訳にもいかないでしょ。
……折角だから先ず“答え合わせ”ね」
ロニに警戒心を与えない様に、ハロルドはやんわりとした表情で呟く。
うん、我ながら素晴らしく敵意の無い微笑み。実に良い人っぽい。98点の評価。
「答えは――――――――――――――(F)の『データ採取』ッ!」
素早い動きで胸元から抜かれたレンズを、ハロルドはロニへと翳す。
何故なら本当に目前の男がロニ=デュナミスなのか確かめる必要があったからだ。
此所が種類問わず魔力を変換する妙な舞台である以上、容姿は然したる根拠にならない。
この場合考えられるケースはざっと、
A)敵が見せている幻影。
B)敵が成り済ましている。
C)敵に操られている。
D)この雪に触れた事によるトラップ。
E)正真正銘ロニ=デュナミス本人。
の五つだ。
「……ふむ」
ロニの情報が視界に刻まれると同時に、覗いていたレンズは粉々に砕け散る。
ハロルドは舌で前歯の裏側を舐めながら情報を整理した。
「【ロニ=デュナミス。23歳、男、180センチの75キロ。HP15%、TP60%】
……か」
これで可能性としては(C)か(E)のみになるわけだ。
肉体は死滅している場合もあったけど、体力が0じゃないし問題はない。
しかし、私の唐突かつ破天荒なデータ採取にも動じないとは中々ね。
てっきり攻撃してくるかと思ったんだけど……って、まぁーた笑ってるし。
あー、こりゃ早いとこワクチン打たなきゃ本当に手遅れになるかも知んない。主に頭が。
「ま、色々訊きたい事もあるけど、先ず」
ま、返答次第じゃワクチンじゃなくて毒を打つけど、ね。
「アンタ、“ゲームに乗ってる”の?」
声のトーンを幾分か低くし、冷酷にそう言い放ったハロルドの眼光はムーンファルクスの様に鋭く。
しかし、鉛の様に重いその言葉はロニが嫌と云う程自身に訊いて来た言葉でもあり。
無論そこまで予想していた節が少なからずハロルドにはあった様だが、ロニは気付けない。
凍った、とハロルドは感じた。水や空気がではない。時間がだ。それもロニだけの。
マグナディウエスにFOEでも掛けられたのか、と思う。我ながら馬鹿馬鹿しい話だ。
ハロルドは足音を立てぬ様に摺り足で後退する。ゆっくりと、細心の注意を払いつつ。
同時にしまった、と苦虫を噛み潰した表情を一瞬だけ。
いざと云う時の己の退路が無い事に気付いたからだ。
こちらが崩れてないならばミトスの方面が通行止め。入口にロニ、自分は袋小路に入った猫だ。
口内で小さく舌を弾き、ハロルドはロニの表情をじいと見る。
笑い声と嗚咽が止んでいる。表情の変化も感情の起伏も見られない。
まるで店頭に並んだ量産型の蝋人形ね、と笑えない比喩。本当に笑えない。
いや、ブラックジョークにしては或いは中々の出来かも知れない。
ロニが僅かに足を前に出す。依然として右手に握られた鈍器のようなものは震えていた。
混ざり合った水彩絵の具の様に混沌とした沈黙が、湧水洞をぎこちなく抱擁した。
沈黙を忙しなく滲ませる水音と隙間風こそあれど、感じる静寂は酷く精神に鈍痛を与える。
「……時間が惜しいわ。もう一度訊くわよロニ。『アンタ、“ゲームに乗ってる”の?』」
鉛と化した沈黙の重圧に痺れを切らして口を割ったのは、他でもないハロルドだった。
ハロルドは杖をロニに向け、自らの視界からロニの頭を潰す様に杖を払い、言葉を続ける。
「十秒以内に答えて。答えられなきゃ乗ってると見なすわ」
また、汗だ。ハロルドは漸く左掌にじわりと浮かんだ珠に気付く。
何があったハロルド=ベルセリオス? ハロルドらしくもない。
脳内に致命的な一閃、エルドラントの発射。
「10」
微笑と嘲笑と自嘲が三割ずつ。あとの一割は多分理由の無い純粋な笑み。
ところで“ハロルドらしい”って何だろう?
その不明瞭さは地上軍拠点を尽く食べた吹雪に似ている。視認出来ないダイクロフト。
「9」
答えられない自分に微笑みの花束を贈呈。十割が嘲笑。
何故、此所まで自分は焦っているのだろう。別に時間はたっぷり有るのに。
人格照射で増殖する名前と身体。私の本物はどれ?
「8」
……焦っている? そう、そうか。焦っているのか。歪む数を数えていた唇の端。
きっと分かっていたからだろう。
『兄ちゃんが守ってやるからな』兄貴が、そう言った。兄貴はきっと私を分かってた。
「7」
思えばコイツらにつるんだのも大した理由じゃなかった、と感想。
見た目ちょっと面白そうだったからで、外的要因欲しさとパトロン程度。
欲しかったのは、鏡面バリアに映らない方。
「6」
旅を経て、カイルは随分成長した。大馬鹿が馬鹿になった程度だけど。
ロニはスタンの死の負い目を克服したし、ジューダスはリオンの呪縛を断ち切った。
目前の短い銀髪が揺れる。耳を掠める哀しそうに啼く隙間風。
「5」
ナナリーも弟が死んだ現実を本当の意味で受け止めて、リアラは何よりも辛い現実を受け止めた。
皆凄いじゃない。
この言葉は皮肉じゃない。凄いと思ったから。純粋に。化学変化って素敵。これは皮肉。
「4」
私は、何をしたんだっけ? 歪んだ口元から溢れる苦笑。何もしてないと気付く。
外的要因……それが欲しかったのは、きっと私。
ディムロスを動かす為でも何でもない。
一つの物質だけでは化学変化は起きない。この世の摂理。
「3」
分かっていた。最初から全部。分かり過ぎて辛いくらいに。
天才って案外辛い。感情に呼応する様にだらりと下がる紫色の杖。
「2」
だからこんな事してる。分かってるから。アンタの考えてる事も、きっと分かってる。
で、きっとアンタは私に期待してる。そりゃそうだ、仲間だったんだし。
支援
別にソーサラースコープを使って当ててる訳じゃない。根拠もよくわからないけど。
「1」
外的要因になるのは、私には無理よ。
「0「………………………………………………………………………………乗ってない」」
ぴくり、とロニの肩が僅かに上に上がった。ハロルドはゆっくりと下がっていた杖を上げる。
酷く掠れて生気が無い声だった。ナナリーとルーティの死体でも見たのか。
ハロルドは特にその発言に感想を抱かなかった。別段驚くべき言葉でもない。
「……誰か殺した?」
使い込まれた食用油のようにぎらぎらとしたロニの眼球がハロルドの言葉を舐める。
数拍置いて小さく頭を左右に振ると、ロニはぎこちなく足を前に進めた。
ハロルドは後ろに下がらない。距離にして5メートル20センチ前方。
背中にブリキの捩子でも巻いてあるのでは、と疑う程のぎこちない動きにハロルドは鼻で笑う。
関節に油でも注そうか、と皮肉ってみるが、期待する反応は返って来ず肩透かしを食らった。
普段なら『うるせェ!』とか『俺は機械じゃねーよ!』とか言って来そうなものを、と溜息。
「……今まで誰と出会ったか、言える範囲で良いから言いなさい。生死、スタンスも詳しく」
距離にして5メートル丁度。俯いたロニの持つ獲物が鈍器でなく野菜だと気付く。
実にシュールな絵だが、あの巨大なさつまいもは中々鋭そうだ。
斬り付ける事も可能だろう。何度も言うが実にシュールな絵だが。
「……ウッドロウさんとキールは……死んで……それからイオンとリカルドも死んだ……。
サレと金髪のガキとアリエッタが何もかも……こ、壊した……!
……あ、あいつら早く殺さないとッ! み、皆あいつらに殺される……ッ!
殺られる前に殺らないとッ!!」
荒れる呼吸。震える拳。瞬きも忘れて見開かれた目には、外郭の様な網目が紅く広がっていた。
距離にして3メートル30センチ。ハロルドは尚も言葉を続けるロニを遮る形で大きく発音する。
「オッケー、もういいわ」
このまま暴発されちゃ予定が狂う。
「な、なぁ……ハロルド」
2メートル弱前方でロニはだらりと項垂れ、続ける。
「俺は……俺は……何だ?」
ありゃま。お早い展開だ事。ハロルドは自身の表情の強張りを察知する。
「俺は何なんだ……?」
ハロルドは語らない。
分かっているからだ。
「教えてくれよ……」
ハロルドは語らない。
分かっているだろうからだ。
「なァッ………!!!!」
支援
ハロルドは騙らない。
意味が無いからだ。
「ハロルドッ……!」
ハロルドはかたる事にした。
分かってしまったからだ。
「良く聴きなさい馬鹿。答えは人よ。アンタは人間。そんだけなの。たったそれだけ」
私に尋ねたところで、碌な解はないって分かってるでしょ、アンタなら。
「アンタが思ってる程、人は単純じゃないの。
今までそれを考える事がなかったから、アンタは葛藤してるだけ。
無駄に答えを出そうと思うからどつぼに嵌まんのよ」
でも期待してたんでしょ。もしかしたらって。でも生憎だけどね、私はかたらない。
アンタを安心させるだけの解なんて、想像するだけでその偽善っぷりに反吐が出る。
「人は人という個だけど、個は安定とは限らない。水だって分子は自由に動いてる。それと一緒。
あんたは、それを意地でも固定しようとしてるだけよ。完璧なんてこの世には無いのに」
私、優しくないし馬鹿じゃないから。
どうせなら油圧メーター振り切った方が機械は楽だって事知ってるから。
「でもアンタは、決めたんでしょ。もう、腹括っちゃったんでしょ?
敢えて訊くのは、本当は分かっているから。そうよね?
悪いけど、アンタは如何見ても“ゲームに乗ってる”んだから。
私にとってはそんな事どうでもいいけど、アンタは無意識に色々と考えてんのよ。
ぶっちゃけもう負の方向を選択してんのよ? アンタは。迷ったのが証拠ね。ここ重要。
迷うって如何云う事か、アンタ理解出来る?」
がばり、とロニが項垂れていた顔を上げる。凄まじい勢いだった。
何かを見透かされてしまった様な、瑕疵を認めてしまった様な不抜けた表情。
怯え縋る様な目がコルセスカに変わり、ハロルドの心を深く抉った。
しかしちっとも痛くはない。そっちはハロルド=ベルセリオスのだから、フェイクだ。
「ちッが、違うッ、俺は、俺……は! それでも、ま、まだゲームには乗ってないッ……!」
やっぱり、とハロルドは思う。手術不成功率が90%から95%に上昇。
黒い確信とは裏腹に、神子の様な微笑み。
血塗れた男と会話するには酷く不相応な表情だとハロルドは内心で笑う。
手を組んで懺悔する罪人と教会の壇上に立つ神官……或いはそんなところだろうか。
「でも大丈夫。人は何かの為に生きてるんだから。何かの為にしか生きられないんだから。
自己完結するには、何かが必要なの。人生は平行線じゃない」
何が大丈夫なんだ。
「だって、生まれた意味なんてないんですもの。働き蟻は餌を運ぶ為に生きてんの。
女王蟻を生かす為に生きてんの。それだけ。平方完成並に単純明快」
眩しい微笑みを維持。私は何時から神の遣いになったんだ。
「人生は交わりの連鎖。線が交わる事は事実だけど、意味は無い。
アンタは割切りが足りないのよ。というか、恐れてる」
でも、私は如何なの。足りてるの? 恐れてないの?
『うん』
……本当に?
「殺される前に殺す、良い意見ね。全部の殺しを正当化出来るんだもん。
でもね、他人から見たらそうじゃない」
「……そんな事……そんな事を聴きたいんじゃ、ない……ッ!」
哀れみが九割。見下す私。どちらかと言えばサディストだけれど気持ち良くはない。
「アンタ、その獲物で人斬ったんでしょ? 鮮血付いてるし。
それってナナリー達の敵打ちなの? ねぇ? 殺されると思ったから斬ったの?」
「ちが、これは、ウッドロウさんの、あ……アイツを守ろうとしてアイツの仲間が……!
だ……だから、これは、ち、違う……ッ! 俺はまだ……まだ違うんだッ!」
「そのアイツってのが、殺される前に殺したって言ったらアンタは如何にするの?
……無意味なのよ、そんな理屈。殺すなら“殺す”。はっきりしなさい。
ぶっちゃけね、ゲームに乗っている事と殺しは別要素なの。
アンタの場合直結してるからそうなるの」
ずい、と足を進める。近い。杖を掲げる。とん、とロニの胸に先が当たる。
「さて。死ぬ為に生きるのか、生かす為に生きるのか、殺す為に生きるのか。
大方、もう答え出てんでしょ?」
頭を抱えるロニ。喚き散らされた声が実に煩い。
「嫌だ! 助、け、たすげッ」
99%。ほぼ決定打。致命的。私は医療ミスなんかしたくない。
「今のアンタは、如何足掻いても三番目」
微笑みが崩れる。声のトーンが五段階下がった。
これからもね、と付け加えて杖を勢い良く突く。土嚢が投げ捨てられたかの様な情けない音。
うん、外的要因は私の役目じゃない。今はっきり分かった。私には向いてない。
残念、カイルかジューダスなら良かったのにね、と呟いた。聞こえる嗚咽が耳に痛い。
ばつん、と杖の先に紫電の閃光。黄色い火花を散らせ、倒れたロニの胸を打つ。
何も壊れてなんかいないのに、何かが壊れた音がした。
それがごく僅かな間だけ聞こえた笑い声だと気付くまでに、大凡半秒。
同時にけたたましい咆哮。グリズリーの呻き声に極めて似ていた気がする。
更に半秒遅れて、飛んで来た裏拳が右頬にクリティカルヒット。それはそれは素晴らしく痛い。
空中に伸びの格好で停滞しつつ、やられた、と思う。電気はお互いに目眩ましになる。
何故雷牙招を使う前に気付けなかったんだ自分は。動揺してたと? 真逆。有り得ないっしょ。
自嘲を零した瞬間、目の前に星が散る。背中から蒼い闘気を纏った掌底の追撃。
この馬鹿、加減を知らない。私は後衛の術者よ? 馬あぁぁぁぁッ鹿じゃないのッ!?
咄嗟に受身を取り、着地をする。口の中は何時の間にやら鉄の味が広がっていた。
「ったく、少しは手加減してよね。私、こんなでも一応か弱い後衛女術士なのよ?
お嫁に行けない身体になったら如何責任取ってくれんのよ!?」
捲し立てた言葉にロニは反応すらせず、変わりとばかりに頭を掻き毟り譫言を呟いている。
動揺と安心、自己否定と自己防衛……全部がカオスってんのね。
ハロルドは鈍痛に軋む腰を擦りつつ苦笑を浮かべる。こうなっては手加減も期待出来ない。
岩壁へ近付き、強度を計る。思ったより柔らかい。
「お手柔らかに頼むわよ―――デルタレイ!」
正三角を模した陣をハロルドの杖が描く。
流れる様に飛翔した琥珀色の光弾は、ロニに向かって綺麗な弧を描いた。
対するロニは僅かに後退。ハロルドは舌を打ちバックステップ。
あの予備動作は間違いなく……。
「空破特攻弾ッ!」
ほら言わんこっちゃない。やっぱりぐるぐる迷惑奥義だ。
しかし成程、光弾の焦点を後ろにずらすのは簡単だが前の場合は難しい。
更に相手が術者ならば間合いの詰めは嫌がる。実に利に適った戦術だ。
理性が半分吹っ飛んでコレか。伊達に戦闘経験は積んでいない、って事ね。
ハロルドは小さく唸り更にバックステップをしようと試みる、が。
「……あら」
がくん、と下がる右足。軍人が後方不注意とは情けない、とディムロスに一喝されそうだ。
此所は複雑な地形の湧水洞。足を踏み外す最中でちらりと後ろを見れば、なんとまぁ見事に道が無い。
3メートル下には滝壺。滝から考えて深さはあるだろうから死ぬ事はない、けど……。
「……ま、迷惑奥義食らうよりは化粧が落ちる方が幾分かマシね」
足場に別れを告げつつ、そう笑ってみせた。我ながら呑気なものだ、と思う。
ついでにアイツが逃げてくれれば助かるんだけどとも思ったが、
数秒後、同じく足場から回転しながら落下するロニを見たハロルドは顔を顰める事になる。
水圧も馬鹿に出来ないわね、と背に滝壺を感じた時に先ず思った。
ごぽり、と口から泡が漏れている。洞内の滝壺に入った経験は初めてだった。
水底に沈みながらハロルドは水の綺麗さに驚いた。恐ろしい程綺麗だ。
サファイアの様な青。それはまるで蒼穹を泳いでいる様で、不思議な感覚を抱かせられた。
白く細かい泡が、絶え間なく踊っている。けたけたと笑われているようで、気分は良くない。
激しい水流を感じた。身体が吸い寄せられている。成程、そう言えば此所は滝壺だったか。
幻想的な世界に別れを告げ、ハロルドは揺らめく髪の隙間から辺りを見渡す。
岸は左側に在った。ハロルドは杖を咥え、水を掻いて泳いでゆく。
何かを責め立てる様な泡が、煩い。
「っぷは! はぁ、はぁ……ッ! んッ、あ、アイツは……?」
水面から顔を出すが、暗くて好く分からない。
ハロルドは岸に上がると、杖で岩壁を砕き大型犬の様に身体をぶるぶると震わせた。
飛沫が水面を激しく打つ。犬に生まれ変わるならピンクのプードルかしら、と自嘲。
手頃な岩の破片を懐に仕舞う。ナイフの代替になれば何だって良い。
「……って、もう居たんだ。お早い登場で」
隠そうともしない混沌とした気配を感じ、ハロルドは水面を見たまま呟いた。
一応確認の為懐からランタンを取り出す。律義に待ってくれているらしい。
レディーファーストって訳? ロニらしいと言えばロニらしい行動だ。
カチリ、と小さな音がするが、滝壺の前では無意味だ。
例えるならディバインセイバーにデルタレイで対抗するくらいの無意味さだ。
柔らかに灯った炎が、二人の顔を照らした。揺れ動く影は一瞬で姿を大きく変える。
ハロルドはランタンを置くと、広い道に移動した。身体が濡れていて動き辛い。
「あ。でも悪いけど、もう勝負ついてるから」
さつまいもを構えたロニは肩を僅かに反応させた。意識があるのだろうか。
ハロルドはにやりと笑いゆっくりと膝を曲げると、足元で何かを弄った。
「私の勝ちね―――鏡影槍」
ロニの時間がびしりと止まる。本日二回目の硬直だ。
「ほら、よく言うでしょ」
ハロルドの足元、地面に刺さっているのは……ペンだ。支給されたペン。
「“ペンはベルクラントより強し”、って」
#支援
ハロルドの鏡影槍は、対象者の影を居抜く事により、短時間対象者の物理的運動を止める事が出来る技だ。
さて、しかしハロルドはロニと随分離れている。では何故鏡影槍が利いたのだろうか。
この場合、ハロルドはランタンと云う強力な光源を計算された場所に起き、
岩影とロニの影が重なる場所へとロニをおびき寄せた。
後は目前の岩影にペンを刺した、とまぁそれだけだ。
影同士が繋がりさえすれば、その影を生む物体の動きをまるごと制限する事が可能。
一対一の状況下に於いて、鏡影槍は実に応用が利く技となるのだ。
「勝負アリね」
ケロリとした表情でハロルドは淡泊に言った。
カツカツカツリとヒールの音。揺れる影は、まるで水流の歌声を聴きに来て盛り上がる観客のよう。
「勘違いしないで欲しいんだけど」
反響する声。ロニの裏拳で擦れたルージュを左袖で拭いながら、ハロルドは杖をロニに向けた。
早足で近付く。目前まで来ると、静止しているロニの足の甲をヒールで潰した。
ごきり、と鈍い音が靴越しに伝わる。
轟く派手な悲鳴。滲む血液、痙攣する筋肉。別に叫ばなくても痛いのは分かる。
「私、正義の味方じゃないから」
鏡影槍の効果時間が切れる。物理的運動が始まると同時に、
ハロルドはロニの足の傷口を更に深く抉った。蹲るロニの顎を思い切り蹴飛ばす。
殴っても良かったが、足の方が頑丈に出来ているらしいので足にした。
「不安定要素は早い内に潰す。それが仲間でも、容赦なく消す。これ定石ね」
今日の私は何故か饒舌だ。
「なまじ仲間だから、今のアンタを泳がせるのも不安だし。単騎撃破可能なら消すが良し」
転がる身体に間髪を入れず伸し掛かる。マウントポジションと云うやつだ。
ロニの表情は窺えない。いや、意図的に“窺わない様にしていた”。
「こっちはね、戦争やってたから慣れっこなの。謀反だって何度もあったし」
手際良くサックとさつまいもを取り上げ、杖で右手の関節を押さえ付ける。
「だから平気。全然、全く、まるで、素晴らしく気にならない」
左手で懐を探る。お目当ての鋭利な玄武岩のナイフは直ぐに見つかった。
長さも充分だ。ハロルドは目を細めて左胸に切っ先を当てた。
本当にそう? 胸中で一割のハロルドが言う。
「アイツらには悪いけど」
本当、悪いとは思ってる。
「死んで」
肉を切り裂いて、岩片は進む。これでよかったのだと、反響する滝の音を聞きながら九割が思った。
支援
ふと思い出したのはダイクロフトの内部、天上人保存部屋前、結晶体フロア。
あれは見事だった。実に貴重なデータ。透き通った二酸化ケイ素の結晶、巨大な六角柱。
それが余す事なく敷き詰められていたから。あれはきっと電気を流して利用していたのだろう。
純粋な水晶は、電流を流されると振動を一定に保つ性質があるからだ。
そして今、私の目の前にそれがある。曇ったそれでなく、透き通った水晶の様な瞳が。
不規則に揺れる炎は私の鼓動の具現だ。私は瞬きすら忘れてしまっていた。
ねぇ私、何で今更見てしまったの? 見ない様にしてたのに。
幾ら呪っても、それが自分ならば意味が無い。
「――――――――――」
口が、動いたのが見える。明日辺り神のたまごでも降ってきそう。
コイツにはびっくりするくらい似合わない言葉だったから。
イクシフォスラーにアンカーをぶち込まれた様な衝撃が、私の胸中を駆け巡った。
私は馬鹿みたいに口をぱくぱくさせた。魚か何かか私は。
何から何まで色々と信じられない。
ちょっと、と言おうと試みた。口が上手く動かない。
手が上手く動かない。刃が心臓に届かない。未だ大して進んでないに。
自分に鏡影槍でも掛けてしまったのだろうか。馬鹿を言え。
ロニの左手が私の左手に添えられる。何のつもりなのかは最早言うまでもない。
で? 何で、そんな目で私を見るの。ねぇ、如何してよロニ。説明しなさいよ。
何でよ。何でアンタが同じ目ぇしてんのよ。
もっと苦しみなさいよ、もっと私を呪って死になさいよ。何で、これでよかったって顔なのよ。
何で、満足そうににやけてんのよ気持ち悪い。馬鹿なのアンタ? 何なの? 死ぬの?
自己満足? 虚栄? 何よそれ。私が馬鹿みたいじゃないのよ。
滝壺に落ちるまでの『絶賛マーダー中!』って表情は何だったのよロニ=デュナミス。
「……馬鹿ね」
それじゃあまるで、まるで―――
「………………そんなムカつく目で見られたら、」
―――兄さんの死んだ時と一緒じゃない。
「無理に決まってんでしょ」
鋭利な岩片を左胸から抜き、ゆっくりと立ち上がる。一番動揺しているのは私自信だ。
大の字に倒れている馬鹿に背を向ける。どう見ても現実逃避。
私、何してんのかしら。
「“いきなさい”。私の気が変わらない内に」
「……俺は、皆を、守りた「御託はいいからいけって言ってんの!!!!!!!!」」
支援。
肩を揺らして何をムキになってる、ハロルド=ベルセリオス。
「こっちは解剖したくて仕方無いのを我慢してやってんのッ! 有り難いと思いなさい!
……でも、次は無いから。次が有ったらだけど!」
ぶっきらぼうに喚く。後ろで馬鹿が無言で立ち上がる音。
左手が妙に生暖かい。自分の手ではないみたいで気持ち悪い。
「東は仮面ストーカーがいる。西は知らない。アンタの方が詳しいでしょ。
どっちを選ぶかはアンタ次第ね」
足音は滝壺に飲まれ、消えてゆく。
「あぁ、あと一つ良いかしら?」
水面に飛沫が弾けてゆく。
「どうせあんたはもうアレだから、此所かあの世、何処で会うかは分かんないけど」
もう二度と目を背けない様に。
「今度会った時は、ちゃんとそのムカつく目直しときなさい」
怖いくらいに漂白されてしまった漆黒の静寂が、酷く心に染みた。
……。
結果は、そう云う事。私の計算ミスって訳。これはお手上げだ。
とことん舐めた真似をしてくれる。なーにが皆を守りたい、だ。不器用な男ってこれだから。
危害を与えぬ内に仲間の手で退場するのが一番の守護って魂胆? はっ、馬鹿馬鹿しい。
本当に馬鹿過ぎて如何しようもない。今度有ったら直ぐに解剖ね。
しかし、傑作と言わずして何と言おう。逆だったのだから、全部が全部。
外的要因に仕立て上げられたって訳。利用された訳だ。このハロルド=ベルセリオス様が。
アンタは最初から望んでなかったと。甘えてなかったと。詰まりがそう云う事。
こうして欲しかったと。
欠点を付いて、ボロクソに言って、断定して、決意を固めて欲しかった、と。
仲間だから、ハロルド=ベルセリオスだからこそ安心して委ねられると。
ロニ=デュナミスを袋小路から躊躇無く一瞬で救える<殺せる>のは……。
「今回だけは、私の負けだわ」
ハロルド=ベルセリオスだけなのね。
支援
【ハロルド・ベルセリオス 生存確認】
状態:HP90% TP80% 悲しみと元の世界の仲間達への心配 巨大な魔力(マナ)が気になる ずぶ濡れ
所持品:天才ハロルドの杖 スペクタクルズ×84 ローレライの宝珠
基本行動方針:面白くないのでゲームには乗らない。但し殺しは認める
第一行動方針:???
第二行動方針:スペクタクルズで未知の種族のデータ採取! 首輪と謎の魔力は取り敢えずミトスに任せた。
第三行動方針:パッセージリングを再調査? ルークに聴いた内容を交え考察に専念?
第四行動方針:宝珠関連の謎を調査。名簿のエミルという少年には注意する
第五行動方針:次にロニに会ったら殺す
現在位置:B5・アラミス湧水洞内部滝壺前
【ロニ・デュナミス 生存確認】
状態:HP10%以下 TP55% 脇腹に刺し傷(処置済) 胸付近に刺し傷 ヴェイグへの警戒と微かな同情
精神的ダメージ大(半精神崩壊?) 右腕に大裂傷 ウッドロウとキールを殺した奴らへの憎しみ
右足甲骨折 ずぶ濡れ 左胸に刺傷
所持品:さつまいも タフレンズ×1 やや小さくなったシーツ 温石
基本行動方針:???
第一行動方針:???
第二行動方針:サレ、アリエッタ、チャット、ルーティを殺した奴、ナナリーを殺した奴は絶対に殺す?
第三行動方針:ゲームのことは深く考えたくない
現在位置:B5・アラミス湧水洞内部滝壺前→???
※ハロルドが中途半端にロニ周辺の情報を得ました。
が、正確性に欠けている事をハロルドは理解しているので、情報を信頼するかは分かりません。
投下終了です。意見などあらばどうぞ。
おお、投下乙!
ハラハラしながら読ませてもらった。
ハロルドこえええと思ったけど、殺さず終わって良かった…。
投下乙
流石のハロルドもロニの胸中までは読みきれなかったか…
結果的にさらに不安定になったロニが何処へ向かうのかに期待
投下乙。
最初、「ヒール」を昌術の方と勘違いして「ヒールで足の甲を潰すだと!?」となったのは内緒
頑張れカイル、ジューダス
お前達がD勢の良心だ
多分良心組
P:クラース
D:フィリア
E:フォッグ・レイス
D2:カイル・ジューダス
S:ロイド・リフィル
R:アガーテ
L:…クロエ?
A:ルーク・ティア・アッシュ
T:カイウス
I:スパーダ
SR:エミル(ラタトクス)・リヒター
異論は認める
>>832 どうでもいいツッコミだが
×ラタトクス
〇ラタトスク
エルレインも…と言いたいが、あのお方は灰色か…。
エルレインは元々過激思考だからなあ
相手が望むものを全て与えて幸せかと問いかける
YESなら際限無しに与え続ける
NOなら殺すか人体造りかえか洗脳
合理的であろうと言い聞かせても見逃しちゃったハロルドが悲しい。
ってかすんごくらしく書けてるなーw
にやりとする比ゆ満載だし
どうなる、エニ!?
投下乙!
誰やねん…エニ…
エニwwww
>>835の冷静なツッコミに吹かざるをえなかったw
そういや制作者曰くロニは大人で思慮深い奴らしいが…
思い人と義母殺されて目の前で世界救った英雄殺されたら
こうなるのも無理は無いんだろうな
スパーダと別れた辺りではまだマトモだったし
まあ、一番の切っ掛けはサイグロの言葉だろうけれど
でも主催者の言葉にああも振り回されている時点で既に詰んでいたのかな
言動と技のせいでそう見えないなぁ…<思慮深い
ロニがどこに行くか気になる
行動によっては仮面ストーカーの運命が変わる…のか?いやみっくみくにされそうなカイル助けてやれw
助けて!僕らのふられマン!!
>>834 そうやってみると、エルレインってえげつねぇのな。
さすがD2のボスだな…。
エルレインって飛べるのかな?原作じゃくらげみたいに浮遊してるけど。
原作通り少し浮く程度じゃないか?
サレみたいに飛べるなら使わない事は無いだろうし
でもリアラがえらく飛んでたからな
能力自体はエルレイン>>>>リアラだから飛んでもおかしくはない
あれ、どのSSかでなんにもできないみたいな独白してなかったっけ。<エルレイン
リアラって飛んだっけ?原作の話?ロワ?
リアラ「あたし、飛べんじゃん!」
こうですか?
飛ぶ前提が空なのか場所なのか…思いだせん
船を一艘浮かせたのは覚えてるが
カイルと喧嘩した後だな
海超えてるし相当の速度だったはず
それは瞬間移動とかそういう類のものなのでは?
いや、兵士が目の前で飛ぶ姿を目撃している
一瞬ゴキブリの話をしてるかと思った
リアラたんごめん
サイグローグ「フフ…最強の生存者を見たいですか………?」
観客「オーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
サイグローグ「私もです 私もですよみなさん……」
サイグローグ「それでは選手入場……全選手入場です………!」
全選手入場!!
女神殺しは生きていた!! 更なる研鑽を積み英雄馬鹿が甦った!!!
英雄の息子!! カイル・デュナミスだァ――――!!!
人体損壊はすでに僕が完成している!!
医者志望ルカ・ミルダだァ――――!!!
興味を持ちしだいデータ採取しまくってやる!!
地上軍代表 ハロルド・ベルセリオスだァッ!!!
精霊の召喚なら私の研究がものを言う!!
中年の召喚魔法 サモンマスター クラース・F・レスター!!!
真の死亡フラグを知らしめたい!! リブガロ熱 マルタ・ルアルディだァ!!!
原作では8人斬りだがロワなら全員オレの嫁だ!!
すけべ大魔王 ロイド・アーヴィングだ!!!
トラップ対策は完璧じゃない!! 神託の楯騎士団 ティア・グランツ!!!!
全参加者のベスト・パシリは僕の中にある!!
クルシスの天使が来たッ ミトス・ユグドラシル!!!
ヒロインの名前を呼んだ回数なら絶対に敗けん!!
フォルス使いの宿命見せたる 人形マーダー ヴェイグ・リュングベルだ!!!
セブンス・フォニム(超振動)ならこいつが怖い!!
キムラスカのレプリカ・ファイター ルーク・フォン・ファブレだ!!!
マルクトから鬼畜眼鏡が上陸だ!! 死霊使い ジェイド・カーティス!!!
アステルの仇が討ちたいからラスボス(魔族)になったのだ!!
高二病な技名を見せてやる!!リヒター・アーベント!!!
イオン様の仇にクナイとはよく言ったもの!!
妖獣の秘奥義が今 実戦でバクハツする!! 六神将 アリエッタだ―――!!!
シルエシカのボスこそが地上最強の代名詞だ!!
まさかこの男がきてくれるとはッッ フォッグ!!!
ルーク達で遊びたいからここまできたッ キャリア一切不明!!!!
ダアトのマスクド(空っぽ)ファイター シンクだ!!!
オレは一刀流で最強ではない二刀流で最強なのだ!!
御存知デュランダル スパーダ・ベルフォルマ!!!
極光術の本場は今やバテンカイトスにある!! 私を殺してくれる奴はいないのか!!
シゼルだ!!!
アリスちゃあぁぁぁぁぁんッ説明不要!! キモい!!! クサい!!! キショい!!!
3Kデクスだ!!!
弓術は実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦弓術!!
本家ファンダリアからチェルシー・トーンの登場だ!!!
イレーヌさんはオレが守る 邪魔するやつは思いきり焼き思いきり斬るだけ!!
剣術・晶術統一王者 スタン・エルロン
人々を救いにロワに来たッ!!
フォルトゥナ神の生んだ聖女 エルレイン!!!
フォルスに更なる磨きをかけ ”穢れ無き瞳”マオが帰ってきたァ!!!
今の自分に救いはないッッ!! 聖女リアラ!!!
神託の楯騎士団の剣技が今ベールを脱ぐ!! ダアトから アッシュだ!!!
スタンの前でならオレはいつでも熱血キャラだ!!
仮面ストーカー ジューダス 偽名で登場だ!!!
アニーの遺言はどーしたッ 後悔の炎 未だ消えずッ!!
上がるも堕ちるも思いのまま!! チャットだ!!!
特に理由はないッ 学士がひ弱なのは当たりまえ!!
大学にはないしょだ!!! ヘタレツンデレ!
キール・ツァイベルがきてくれた―――!!!
旅で磨いた実戦獣人化!!
レイモーンのデンジャラス・クマー カイウス・クオールズだ!!!
ステルスだったらこの人を外せない!! 超A級ガジュマ ジルバ・マディガンだ!!!
超一流ヒーラーの超一流の治癒術だ!! 生で拝んでオドロキやがれッ
イセリアの教師!! リフィル・セイジ!!!
広域探知はこの女が完成させた!!
水の民の切り札!! シャーリィ・フェンネスだ!!!
天上王が帰ってきたッ
どこへ行っていたンだッ みっくみくッッ
俺達は君を待っていたッッッミクトランの登場だ――――――――ッ
加えて死亡者発生に備え超豪華な空気キャラを4名御用意致しました!
空気司祭 フィリア・フィリス!!
空気騎士 レイシス・フォーマルハウト!!
空気王女 アガーテ・リンドブロム!
……ッッ どーやらもう一名は空気のくせに参加者投票を一位で通過した様ですが、存在を忘れられ次第ッ皆様にご紹介致しますッッ
ネタでやった
反論は受け付ける
おまえというやつはこれだから…w
セネルとクロエが…
そういえば死者スレでも不幸自慢大会の時に選手入場あったなw
これでセネル、クロエ、クラトス以外のロワ参加者全員の紹介が終わったな
召還術使えるのってクラースとミトスだけだよな
シャルのデモンズランスやジューダスの義聖剣も召還に分類されるけど
こっちは異世界からの召還って意味合いだろうし
あれ、ミトスって全精霊にそっぽ向かれたんだっけか
オリジンだけと勘違いしていた
>>861 しいなが契約してるじゃないか。多重契約は不可能だから無理になる。
あ、そうか。
何故か多重契約禁止なのオリジンだけと思ってた。
そういやダリスが使っていた記憶封印の術って誰か使えないのかな
ハロルド、ミクトラン(リメD準拠だから微妙か?)なら出来そうだけど
「ダリスってダリ(誰)っす?」
さぁ、死者スレに帰ろうか。
>>863 マリーさんの旦那か。考えてみると凄い術だな。どういう設定で使えてたかは忘れたが…
マリーは崖から落ちたショックで記憶無くしたんじゃなかったっけか?
>>857 それはリメイク版。
PS版では夫のダリスが記憶を封印する術を使って
マリーに被害が行かないようにしたんだよ。
PS版は時間軸がよくわからん
イザークのどこが賢王やねんとは思った
あれ、平和になったのってイザーク即位後だっけか
ならけっこう即位期間短かったんだな
考えに考え、更に考えたんだが、アンカー先を違えてしまったぜorz
何、気にする事はない
投下します。
首が、弾け飛んだ。
もっと不吉な音がして、見るに堪えない散々なものなのかと思っていが、現実は違う。
首が爆発した瞬間の絵は、想像よりもずっとずっと単純で、可笑しくて。
それはそれは誰もが持っているだろう印象と異なり、遥かに陳腐なものだった。
まるで生った林檎を毟り取る様に、玩具を弄ぶ様に……そんなごくごく一般的な絵。
けれどもそれは紛れもないリアルであり、一個人の死という名の極限だった。
唯、理解の範疇を超越した事象だったから。だからそこに“歪み”が生じたのだと思う。
その“歪み”は、例えるならまるで断層の様なものだった。
接しているのに決して噛み合わさっていない、又は刃一枚隔てた距離……そんな歯痒さ。
首が飛んで、血管が伸びた骨が弾けて、顎から下の肉片が弧を描く。
裂けた頬肉は飛沫をその一身に受け、皆の呆けた表情を肴に水々しく空を舞う。
数拍遅れて、畏怖と混乱の叫び声。実に煩い。
下半分がフランボワーズジャムをブチ撒けた様になっている頭蓋が、僕の双眸に映った。
成程それは確かに極限のリアルだ。にも関わらず、僕には冗談か絵空事にしか思えなかった。
僕の精神はその刹那、ある種の“歪み”を、時間の断層を造り出していたんだと思う。
子供が生命を理解出来ず蜻蛉の翅を毟る様な、昆虫の四肢をもぎ取る様な青く純白な残酷さ。
漠然とそんなものを感じた。つまり、現実を直視出来なかった。
そう、直視しているのに直視出来ない。だから子供は純粋で残酷だ。
けれども誠に残念な事に、僕は子供じゃァ、ない。
だから“歪み”や断層はあくまでも口実に過ぎないし、
直視出来ないのではなく、僕は唯直視しなかっただけなのだと瞬時に理解出来てしまう。
即ち、この“歪み”の正体とは―――単なる逃避に過ぎないのだ、と。
そうして、親友は死んだ。
殺された。
誰も彼もが思っている以上に、本当に簡単に、人は死ぬ。
本当に簡単に、人は殺せる。呼吸をする様に、葦を踏み付ける様に。
そんな当たり前の事、知っていたつもりだった。アイメンで嫌という程見たからだ。
ハミルトも、ロッテも……ククロルも。簡単に死んだ。最初から何も無かったかの様に。
度重なる人体実験の末、気が触れてしまったヒアデスが紙屑みたいに殺した。
それが、現実。
けれども。けれども僕は楽観していた。リッドならと思っていたし、真逆リッドがと思っていた。
愚かにもあいつならと思ってしまっていた。本来なら、最初からリッドを制止すべきだったのに。
それが僕の役目の筈だったのに。だが、このザマだ。結果リッドは死んだ。何たる失態。
しかし幾ら嘆いたとて、結果は変わらない。3の次は4だ。時計の針は戻せない。
だから何時でも、結果はあっけないものだ。起こるまでの過程が恐ろしいだけだ。
何でもそうだと思う。人生でも、数式でも証明でも。
地面に転がった汚い頭蓋を見つつ、僕は無表情のままそんな事を思っていた。
周りには、項垂れて拳を握り締める僕以外に、この糞下らないゲームの参加者は誰もいない。
思えばフォッグが僕の肩を叩いて何かを言っていた気がするが、覚えてはいなかった。
紅いカーペットには、血液と赤髪は全く映えない。底無しに明るい音楽も空気を読めていなかった。
ぽかんと口を開けた僕の五体は、如何しようもない現実を前にフリーズしてしまっていた。
ぼんやりと、リッドの顔から飛び出た眼球を見つめてみる。
激しい虚無感が僕の全身をこれでもかと責め立てた。胸が痛い。
「……リッド。僕は、」
あの時奴に歯向かうべきだったのか? そう呟こうとしたが、止めた。
気付いたからだ。
死の恐怖に動けなかった僕を、その問いに対する解が赦してくれるのかと期待していた事に。
死人に口無し。解は出る筈がないし、それは見当違いの考えだ。
解は解でしかない。決して、免罪符にはならない。
だから、僕は正しい判断をしたと思う事にした。なのに身体は鉛のように重かった。
目を細める。死体は人ではない。死体は死体だ。死体は一般的にグロテスクなものだ。
口から溜息が零れる。何をしているんだ僕は。
心中には、“だからやめろと言ったのに”という下賤で卑怯で最悪な考えが僅かにあった。
僕は、そんな僕を心底軽蔑した。
静かにと顔を上げる。恨めしい道化師が僕にゆっくりとお辞儀をした。
漸く一対一。僕達の会話を聞いた者は、僕達以外に誰も居ない。
……おまえは、それを僕に信じろと?
ずしりと、まるで土嚢の様に重い何かが身体に伸し掛かってきた。
恐らくクィッキー六個分はかたいだろうと思われる。メルディよりも少し重い気もした。
幸か不幸か、そのお陰で僕は意識を悪夢から浮上させられる羽目になった。
実は未だ寝ていたいのだが、流石にこの衝撃で起きない程僕はインフェリアンが出来ていない。
目をゆっくりと開ければ、とろりと差し込む虚ろな月明り。朧月夜に酔った気分だ。
僕は僅かに重い頭を右に動かした。まるで景色が自ら退いた様に、視界の中で揺れ動く。
世界に色彩が戻り意識が覚醒する中、ふと僕の視界に一人の少女が映り込んだ。
鮮血に染まった少女は何処かしら必死そうな表情だったが、しかし酷く寂しそうな目をしていた。
押し潰されそうな何かを、衝動で抑えている、そんな気がした。
―――お前は何をしているんだ!
知らない誰かが譴責の声を飛ばした。まぁ、実に定型文だ。
僕はその言葉を、何よりも身体に覆い被さる人に贈呈してやりたかった。
息がし辛くて敵わない。重いし。常識的に考えて怪我人にこんな仕打ちってない。
ほんのりと漂う鉄の香りが僕の鼻腔をちりちりと痛めた。鼻を火に炙られている気分だ。
こうして漸く怪我を思い出すのだから、人と云う生物がどれ程間が抜けた生物か思い知らされる。
思い出した途端に胸と腹がきりきりと痛んだ。実に堪え難い。
二度目の比喩は面白みがないのだが、身体の中を火に炙られている気分だ。
抉られるような痛みの悪魔が全身を支配するまで、然程時間は掛からなかった。
悪魔は随分焦っているらしい。それでも、ネレイドに比べればこんな悪魔は屁でもない。
ふと全身に滲んだ脂汗に気付き、僕は眉間に皺を寄せた。なんだってんだ。
なんだって僕が刺されなきゃならない? 少女から恨みを買った覚えなんてまるでない。
全く以て意味不明だ。ああそうだ。実に意味不明だ。畜生、やってられないぞこんなの。
大体、支給品からしてふざけているとしか思えなかった。何だあの鉄の像は?
アイアンメイデンで如何やって戦えって言うんだ? 馬鹿かあの主宰は?
若しくは寝場所にでもしろってのか? 馬鹿言え。ネレイドでもあんな悪趣味な空間で寝ないぞ。
―――始まりの時を再び刻めっ!!
瞬間、その言葉の釣針に、運良く一人コントをしていた僕の意識は引っ掛かった。
これは詠唱だ。そう理解するまでの時間は半秒も掛からなかった。
如何やら、覚醒をしている様で僕の意識は覚醒してはいなかったらしい。
そうだ。声の主の少女はアリエッタだ。僕はあいつに刺されたんだった。畜生が……!
僕は瞼にだらりと襲いかかった汗を袖口で拭い、奥歯を軋ませた。
明瞭とした視界の中、僕は悪態を吐く。白銀の光が明確な悪意を持って僕の眼球を痛め付けた。
まるでレムが降臨した時の様な眩い光が辺りを包んだ。
僕は一瞬だけ訳が分からなくなり、目玉をぐるりと回す。次から次へと、なんだってんだ。
「……宇、宙……?」
しかし、反射的に口を突いて出る言葉は、景色から読み取れる現実を如実に物語っていた。
夢でも見たのか僕は? 最初はそう思った。眩い星々と銀河が、世界を装飾していたからだ。
しかし僕は直ぐに思い直す。鏤められた恒星も彗星も、よくよく考えれば見覚えがある。
そう、例の禁術。
「ブ、ルー……ア……ス………………?」
痛む胸に圧迫感を感じつつ、はっとした。だとすれば到底人間に向けて良い晶霊術ではない。
いや、完全にブルーアースとは一致しないし、威力もかなり違う。
だが、並の術ではない事に変わりはない。だとすればかなり不味いぞ。
「ちッ、く……しょうッ」
身体に伸し掛かる何者かが急に起き上がったその瞬間、僕の視界は真っ白に染まった。
まるで世界から何もかもが無くなってしまった様な、酷く寂しい純白だった。
*****
餓鬼が綿飴を千切り、辺りに散らかしたような巻積雲が空に渦巻いていた気がする。
が、それを美味しそうだとか、その餓鬼共が面倒臭い状況だとか。
そんな事を思う暇は一切なかった。現実に降り注いだ妖艶な光は、一刻を争う事態の権化だ。
「あンの屑がッ!」
アッシュは咄嗟に蹲るチャットの手首を乱暴に掴んだ。チャットが僅かに悲鳴を上げる。
一体俺は何をしているんだ。
アッシュは眼球を剥き出しにしそう思った。コイツを守って生きるんだろ俺は。
奥歯がぎりりと軋んだ。自問している内にも手が勝手に動く。
待て、と脳内に命令を飛ばす。しかし悲しいかな、アッシュの脳は命令を尽く無視した。
喚くチャットを無理矢理押し倒す。アッシュは口を半開きにし、半ば己の行動に茫然とした。
全てがスローモーションに感じられた。浮かぶ砂煙が止まって見える。
仕方がないのだ。一体全体この距離でアリエッタに何が出来ると? ……だが……。
伝う冷たい汗が伝う背に絶望の影を感じつつ、アッシュは思い出した様に呟いた。
「馬鹿野郎」
これじゃあ、守っても俺が生きられないじゃねェか。死んでどうすんだよ。
こんな状態の餓鬼を遺して、満足に死ねる訳ねェだろうが。
俺は死にたくねェんだよ。
まだ死にたくねェ。生きなきゃなんねェんだ。生きたいんだ。ふざけんじゃねェぞ俺の身体。
支援
コイツには生きてる俺が付いてなきゃ駄目なんだよ。あの女から頼まれたんだ。
確かにもう後はねェ。レプリカの野郎にもあの時伝え損ねた。最期まで守れるか解らねェ。
だが俺が死んだら、誰がコイツを抱いてやれるんだ。誰が守ってやれんだよ。
なぁ、てめェもそう思うだろ、アニー?
「……!」
瞬間、何かがアッシュの中を駆け巡る。理解を超越した、本能の様な何かをアッシュは悟った。
どさりとチャットに覆い被さり、アッシュは心中で苦笑を浮かべる。背の傷が熱い。
……嫌でも理解させやがるな。そうか、そういう事か畜生。
「“だから”死ぬ訳にはいかねェって事かよ……畜生が」
俺の代わりは、何処探しても居やしねェんだ。
「畜生がァああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
宇宙に抱かれた朧月夜を焦がした汚い咆哮は、それでも聖なる焔を纏っていた。
ゆっくりと流れていたアッシュの時間が戻る。ごとりと大きな歯車が回る音。
それは丁度一晩前の物語。瓦礫を漁った少女の話。
少女一人では決して星は掴めなかった。声も星には届かぬと嘆いた。
けれども二人なら如何だろう。
少女に大切な何かを教わった焔の声は、確かに宇宙に届いた。空を焦がした。
声は確かに焔のものでも、きっかけは少女のもので相違ない。
*****
―――例えばこの一撃が決まった場合、これからアリエッタはイオン様の為に何をすれば良いの?
「始まりの時を再び刻めっ!!」
全身のフォンスロットを解放し、無我夢中で音素を編む。掠れた声は嗚咽混じりだ。
関節が軋む。肌を撫でる風は、ロニール雪山の吹雪よりも遥かに冷たかった。
焦点が定まらぬ程までに動揺した双眸が、死霊使いの胸元を朧気に捉えた。
アリエッタは震える肩を隠す様に、情けなく萎んだ猫の縫いぐるみを強く強く抱き寄せる。
縋った縫いぐるみの中身は、驚くほどまでに空っぽだ。
相対するジェイドは、険しい顔のままゆっくりと右手と右足を後ろに引く。
勢いを付ける為……引いては一撃で敵を屠る為だ。相手は少女、難しい事ではない。
地元と水平に構えられたクレメンテは、そのコアクリスタルを鈍く光らせ押し黙っている。
アリエッタに恐怖は無かった。その代替に、虚しさが心の奥底でちくりと存在を叫んでいた。
様々な想いが錯綜して、混ざり合って、絡まり合って。蜘蛛の巣状に張り巡らされてゆく。
そんな混沌とした部屋の中に、アリエッタは蹲る。縫いぐるみを顔に押し当て、必死に守る。
浸蝕する盲目的な正義。目を瞑って見た夢の先に、自分自信に落とされた理性がある。
アリエッタの足を現に繋ぎ止める最期の糸は、懐かしい導師の匂いと微笑みだった。
祈る様に音素を紡ぐ。世界は正義の様な何かに応える様に、銀河を煌めかせた。
無音。
アリエッタが瞬きをする刹那に、確かに無音が世界の扉をノックした。
目を見開くアリエッタ。血走った双眸から、理由を亡くした雫が溢れ出す。
濁った雫は絹の様な頬をゆっくりと走った。丸く伸びた顎へと、歪んだ軌跡を描き進む。
やがて雫は少女から放たれる。星々を映す涙が、黄土の大地に呑まれてゆく。
猫の縫いぐるみがゆっくりと両手から落ちる。震える呼吸。自らの鼓動が聞こえない。
迫る紅の瞳が乱れた栗色の髪に隠れた。アリエッタにもジェイドにも、結果は最初から分かっていた。
その結末が互いの好む好まざるに関わらず、理解していた。何せ最上位譜術詠唱対接近攻撃。
常識的に考えて……“間に合う筈がない”。
縫いぐるみがアリエッタの足元を跳ねる。情けなく首を垂れた猫の頬に、零れ落ちた涙が弾けた。
大気を劈く鋭い一閃。光を反射しないクレメンテの厚い刃が、アリエッタの胸元へと走る。
切り裂かれる虚空。膨張する銀河。アリエッタの桃色の髪がゆらりと靡く。
無音。黒い線と白い色彩。風さえも、流れる時間さえもが、アリエッタには数多の黒い線に見えた。
「―――――」
アリエッタの小さな唇が愛しそうに五文字を紡ぐ。ジェイドにはそのか細い声は届かない。
しかし音が無くとも、ジェイドはそれが何なのかを理解した。腐っても術技の名ではない。
刻まれなかった時の狭間、刃が右肩を貫く。少し遅れて、遥か上空へと競う様に上がる飛沫。
アリエッタの表情が醜く歪んだ。小さな身体が衝撃に跳ねる。
華奢な身体をぬるりと突き抜けた刃が、てらてらと星々の光を反射する。
ジェイドは殺人兵器と化したその刃を、ソーディアン・クレメンテを。
一切の躊躇もなく、ばっさりと一気に振り下ろした。
訪れる色彩と音。銀河は弾け、最初から何も無かったかの様に、朧月は呑気に構えていた。
鮮血のアーチに空が切り取られる。深い赤はアリエッタに底知れぬ恐怖を連想させた。
音素で造られた惑星が砕け散る音がした。大切なものも、何もかもが砕けた様な音だった。
終わる世界。
刃はアリエッタの身体の内部をひたすら進む。鎖骨を砕き、肺を抉り、肋骨を破壊し、筋肉を剥がす。
アリエッタの身体が一度だけびくんと跳ねた。背骨にびしりと罅が走り、下半身が痙攣を起こす。
大動脈は弾け、アリエッタの小さな口からは一見信じられない様な量の血液と気泡が飛び散った。
導師守護役時代の白と桃色を基調とした制服が、みるみる内にグロテスクな緋色に滲んでゆく。
左斜めに振り下ろされたクレメンテが自らの腹部に到達した時、アリエッタは空を仰いでいた。
月が、血飛沫の放物線に隠れて見えない。
*****
教師という名が示す通り、リフィル=セイジは教えを説き、子供を導く人物である。
同時に、こう言うのも何だが、彼女はハーフエルフの血を引く優れた治癒術士でもある。
となれば彼女のこの殺し合いでの立ち位置は決まっている様なものだった。
ところで、リフィルは勿論大人だ。ある程度現実を知っているし、実際彼女はリアリズムだ。
そうしている方が楽という理由もあるが、大人は総じて何時かそうなるものである。
けれど、人はそう単純な生物ではないのは周知の事実だ。
子供時代を懐かしみ、戻りたいと思うのは、子供に惹かれる部分があるから。
大人も夢を見る。子供との違いは、それが本気で出来ると信じているか否かだ。
大人の夢は願いだ。後悔を秘めた希望だ。確信とは違う。けれども、間違いなく夢は夢だ。
叶える為に向かって行動する理由は、子供も大人も変わらない。
気付いた時、リフィルは走っていた。距離こそ短いものの、疾走も疾走、全力疾走だ。
漸く自らの意識と自制心が身体に追い付いた時、既にリフィルの筋肉は反応した後だった。
冷静に考えて、ジェイドとアリエッタ、そのどちらが正しいかは明らかだった。
論じるまでもない。客観的にも主観的にも、この場合ジェイドが十割正しかった。
ならば、とリフィルは己の身体に問うた。ならば何故この足は、身体は、腕は必死に動いている?
矛盾と現実、理想と役割。正義と悪、願望と体裁。虚栄に畏怖、自尊に期待。
要素、性質すら異なる何もかもが混ざり合った底無し沼の中に、リフィルの意識は沈んでゆく。
硬直してしまい真っ白く染まった脳内に、リフィルは困惑した。それでも何故身体は動く?
じくじくと背が痛んだ。真っ白な脳内には、脈打つ灼熱の痛みを表す紅がよく映える。
極限状態に置かれた時、人は体感時間が実際よりぐっと伸びるのだと、リフィルは聞いた事があった。
今がそれなのかしら、と漠然と思う。ぽっかりと穴が空いてしまった様な気分にリフィルは笑う。
不意に背をゆっくりと、冷たい汗が這った。
やがて汗は火傷と裂傷の部位に触れ、リフィルは鈍痛に顔を顰めようとした。
それすらもが“遅い”。反応までもが、オーバーフローした意識に置いてけぼりにされていた。
三歩走り、前方に大きく手を広げる。五割の自分が、心中でやめなさいと悲痛な叫び声を上げた。
ふとアリエッタから上がる派手な血飛沫が視界に入る。
リフィルは全身の血液がゆっくりと凍り付いた様な、そんな感覚に襲われた。
あの小さな身体からあんな血液の量ではもう、とは思うが、何しろ身体が命令を聞かない。
むしろ何を今更と嘲る様に、リフィルの両腕はジェイドの両腕を背後からがっちりと捉えた。
ジェイドの身体が予期せぬ死角からの攻撃にバランスを崩す。
酷く不抜けた黄色く姦しい声が、リフィルの喉から溢れ出た。
「……やめなさいッ!!!!」
口をぽかんと開け、リフィルは自らの行動と言動に心の底から失望した。
驚嘆と後悔の二枚刃がミキサーとなり、胸中を掻き回す。自らに嘲笑を送る暇すらなかった。
どの口がやめなさいと宣う? どちらがやめるべきなのかは明白なのに。私は何をしてるの?
「な!? リフィル、貴女は何をッ」
さしものジェイドも動揺の声を張り上げ、首を後ろに回す。
僅かに裏返った声を聞くに、完全に倒れたリフィルは埒外だったのだろう。
「何も殺す事はないでしょう大佐、相手はまだ子供なのよ!?」
降り注ぐ血の雨の中、もう如何にでもなれとリフィルは金切声を上げる。
クレメンテに支えられぐったりとしたアリエッタの身体が振動に揺れる。
傷付いた人を救いたいという心は、善悪の尺度では決して計れない。
しかしそれは、紛れもなく正義の一種。
だが、それ故に救った結果がどちらに転ぶかは分からない。心は、何者にも裁けない。
白目を剥いていた少女の眼球が、何かを思い出したかの様にぐるり、と回る。
跳ねる身体。アリエッタの口元がゆっくりと歪む。微かな音素が収束してゆく。
アリエッタの異変に気付いていたのは、身体を起こした赤毛の青年一人のみ。
「何遊んでやがるんだッ! ジェイド! リフィルッ!!!」
狂おしい程の愛を孕んだ双眸は、深い真紅の涙に滲んでいた。
正義の皮を被った殺戮の紅い灯は、未だ消える事を知らない。
*****
沈む意識。暗幕が降りる世界。血の涙に頬を濡らしながら、アリエッタは空を仰ぐ。
崩壊してゆく物語。巡る愛しい人の記憶。覚めぬ夢が鮮血の幕に幻想を見せる。
走る走馬燈。欠落してゆく感情と理性。白濁した海の中、黒く塗りつぶされた正義が一際輝く。
盲目さを増す正義。紅のバンダナが頭を軽くしてゆく。これは折れぬ事無き純粋な気持ち。
生が渦巻き、死神が手招きを繰り返す中でアリエッタは確信する。
自分は間違っていないのだと、確信する。
その瞬間にふわりと視界が広がり、迷いが消える幻想。鐘の音が聞こえる。
正義に応える様に、再び世界が黒く滲み出す。白い理性が沸騰する愛に蕩けてゆく。
アリエッタは静かに瞳を閉じ、精神の中に潜む何かを探る様に身体の力を抜いた。
ゆっくりと愛に沈みながら見る景色は、蕩けてしまった様々な記憶があった。
一面が漆黒に染まる。愛しい人の記憶が巡る。腕の温度も、匂いも、表情も。
何もかもが蕩けて、身体に密着する。何時しか自らの身体も蕩けていた。
コールタールの様にどろりとした感覚の刹那に、アリエッタはイオンの全てを感じられた。
弾けてゆく葛藤。壊死してゆく理性。血液と共に何もかもが流されてゆく。
そう。この気持ちに委ねれば、この水流に身体を預ければ良い。
死神が冥府の向こう側で微笑む。全てが混ざり、やがて輪郭が無くなり、亡くなってゆく。
遺るのは強固な意志の結晶のみ。だがそれもやがて消失の道を辿るだろう。
澱み澱んで、全てが虚無に帰す。そう。
それが“死”だ。
―――死ぬって、何だっけ?
まけてしまっ■ごめ■なさい、イオン様。カタキ、取れなくてごめんなさい。
……ねぇイオン様、■リエッタは、何だったんだろ■。
なんのため■いままで戦って■たんだろう。アリ■ッ■、誰と戦っ■きたんだろう。
じ分を■してまで、なにをせいぎと■■■てたかった■だっ■?
ちからがあればよかった。も■と、■■■■■に■■■があれば■■った。
―――生きるって、何だっけ?
全ぶ■ろ■て■ま■ちからがあれ■良かっ■■■。■うす■ば、あんな奴さ■さと■■■■■れた。
支援
イオン様のかた■を、と■た。
■れ? ■■って、■■■け? おか■いな、■く思■だせ■■。イオン様、■■■■■。
―――復讐って、何だっけ?
■■■■こう■うのっ■、なんて言■んだ■け?
■■■■イオン様。痛■、痛い■たす■■■■■■■■■■■■■■イオン様。
■れ、■■■■■って、だれ■っけ? ■■■のなま■って、■■■■■?
痛■よ■■■■■■イオン様■■■■イオン様■
苦■い■イオン様、■■■よイオン様、■■■■■イオン様ぁ。
■■■■■ぁ■■■■■■■■けて■イオン様■■■■■■■■■■■■お■がい。
ど■■■■■? ■ぇ■イオン様■■■■■■■■くれ■■■?
―――正義って、何だっけ?
イオン様■■■イオン様■■■■
■■■■■■イオン様。
イオン様■■■■■■■■イオン様■■■■■■イオン様■■■■■イオン様イオン様
■■■■■■■■■■■■イオン様■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■イおン■■■■■■■■■■■■■■■■■いおんさま■■■■■オん様■■
いオん様イオンさま■■■■■■■■■ま■■■んさま■■■■■■■■■■■■■■■ん■。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
いおんさま■■■■■■■イ■■■ま■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ま。
■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■おん■■■■■■
■■■■■■■■■■■■
■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■お■さ■■■■ま■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■オ■■
■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■様■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■イ■ん■■■■■■■■■■■
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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
―――イオン様って、だれだっけ?
アリエッタの視界が急激に暗転する。
理性も理由も亡くし、最期に残ったものは、獣としての本能と僅かな正義の塊。
言葉も、記憶も、何もかもが黒く蕩ける。痛覚、視覚、聴覚、触覚。失血の代償は大きい。
忘れかけていた獣としての咆哮が、アリエッタの喉を裂かんばかりに高らかに轟いた。
これこそが正義。何もかもを破壊する力こそ、野生の中では至高の正義ッ!
血液を含み、嗄れた不気味な声が夜空を割る。死の縁から這い上がった妖獣は、この瞬間。
確かに、覚醒したのだ。
「ヴォオォらぉWRiaaAAああァびゃあぁグヴぉAラァァあガアぁぅおおォォッオおッグおォォッ!!!!!!」
“死”。
百戦錬磨のマルクト軍が誇る死霊使いは、確かにその一文字を感じ、剣を握る力を弱めてしまう。
瞬間、見計らったかの様に、ジェイドの右手はばちんとアリエッタの足に弾かれた。
敵の隙を見逃す程、獣としてのアリエッタの闘争本能は鈍ってはいない。
驚嘆に硬直するジェイドの身体。剰え両腕は、同じく硬直しているリフィルの腕に固められている。
ジェイドの脳内に危機を知らせる半鐘の音が響き渡る。
人、少女ならば確実に死に到るまでに充分な傷の筈だった。
馬鹿な、と間が抜けた声で呟く。何故動く。何故動ける。人ならば痛みで動けぬ筈。
……この化け物め……!
『馬鹿者ジェイド! リフィル! 呆けておる場合かッ! 死ぬぞッ!!!!!!』
クレメンテのそれは正に鶴の一声。
耳に水を打たれたかの如く、ジェイドは肩をびくんと揺らし我に返った。
失血性のショック死、幾ら化け物とて身体は人間の少女、あの傷は色々な意味で痛い筈。
死は確実に不変だ。が。
私とした事がスケベ爺に助けられるとは、とジェイドは苦笑を浮かべつつ奥歯を軋ませた。
咄嗟に身体を揺さぶり、リフィルを無理矢理弾き飛ばす。後ろでリフィルが尻餅を付く音。
此所は冷静に対処しなければならない。油断は大敵。
ジェイドは敵を見ぬまま、弾かれる様にバックステップをし、
前髪の隙間から別人の様になってしまったアリエッタの様子を確認―――
『逃げるんじゃジェイドオォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!』
―――何故、もう目の前に居るッ……!??
衝撃。
冷や汗と驚嘆に竦むジェイドの胸元に衝撃が走った。文字通りの、物理的衝撃。
身体を突き抜ける、串刺しにするソーディアンの一撃に拠る、凄まじい……衝撃ッ!!
(速い……想像よりも遥かに……! これがあの手負いのアリエッタの本来の脚力……?
いや違う、そうか……血液を失って痛覚を失って……私とした事が、油断したッ!!)
さながら百舌鳥の早贄の様に、アリエッタの口に咥えられたクレメンテは、
「ぬ、く、ゥう、ぅぅ……ッ!」
ジェイドの胸の中心を深々と……貫いていた。リフィルは訳も分からず息を飲む。
ジェイドの肩が激痛に小刻みに揺れた。アッシュの叫び声が鼓膜を打つ。
全身で息をしつつ、ジェイドは自らを小さく鼻で笑った。死に損ないの少女相手に何なるザマだ。
油断し過ぎにも程があるでしょうに。クレメンテは女性用の剣、アリエッタに扱えぬ筈がない。
何かの冗談の様な凄まじい量の血液にジェイドは噎せ、紅の気泡混じりの咳を何度か零した。
やたらと震える右腕を重たそうに持ち上げる。
同じくやたらと震える口から溜息を漏らすと、ジェイドは人差し指で汚れた眼鏡をくいと上げた。
嫌にどろりとした脂汗のお陰で、眼鏡がズレて仕方無い。
アリエッタは荒い息を吐き、ゆらりとクレメンテから口を離した。
柄から糸を引く唾液は、血液に赤く染まっていた。
『ジェイド! しっかりせい、ジェイドッ!』
クレメンテのコアクリスタルが紫色に発光する。
「聞こえて……ます。……余り、大きい声を出…すと……血管が……切れますよ……?」
ジェイドは叫ぶクレメンテにそう答え、目前で苦しそうに唸るアリエッタを見据えた。
ふらつきながらも牙を剥き、腹の底から唸る少女は、まるで鬼神の様だった。
しかしその鬼神も最早一分保てば良いといった挙動で、ジェイドは弱々しく笑う。
所詮は鬼神も化け物も、命あるものだ。孰れ死ぬ。それが早いか遅いか、それだけだ。
そしてそれは自らにも当て嵌まる。人の命は刹那よりも遥かに軽い。
「ぐ、んン……ッ」
ジェイドはクレメンテの柄を弱々しく掴み、ゆっくりと手前に引く。
ずるり、と澱んだ赤に濡れた刃がジェイドの胸から溢れた。膠状な体液が糸を引く。
ごぽりと胸の穴から血肉が溢れた。信じられない量だった。嗚呼、とジェイドは唸る。
アリエッタは二、三歩ゆっくりと後退り、痙攣しながら地面に崩れ落ちた。
これ以上目前の敵を責めようにも、五感、身体、思考、その全てが言う事を聞かないのだろう。
どくりどくりと脈打つ傷にジェイドは数歩ふらつくが、膝を付き倒れる事を何とか免れる。
ゆっくりと頭を後ろに下げ、ぽっかりと空いた胸の穴を左手で擦ってみた。
ぐちゃり、と妙な感触に生暖かい温度。そうか、これが死か。これが死の感覚なのか。
生の感覚と、一緒じゃあないですか。
「……まァた……盛大、に、やって……ぐれ、ま……しだ……ねぇ……」
ジェイドは表情だけで笑った。世界から、色彩がゆっくりと抜けてゆく。
漸く、理解出来た気がしますよ。
*****
「おいジェイド! しっかりしやがれてめェらしくもねェぞ!」
煩い、とジェイドは素直に感じた。人が死について考えている時に。無粋過ぎる。
特にアッシュ、貴方の声はやたらと低く通って煩い。やけに身体に響いて仕方無い。
出来れば貴方には黙っていて欲しいものだ。切に願います。
「……大佐……」
リフィルの声にジェイドは目を細める。全く、誰の所為でこうなったんでしょうねぇ。
まぁ、そんな不毛な事は言いませんし、元はと言えば私の油断が原因ですからねぇ。
確かにリフィルがあんな真似をしなければ、腕一本で済んだかも知れませんが、ね。
ジェイドは眉間に皺を寄せ、溜息を一つ吐いた。傷は深い。というか貫通しているのだ。
深いどころの騒ぎではない。この状況から考えて、助かる術は、まぁ、皆無だ。
全く、損な役回りは昔から何時も私だ。これだから人生は。本当に嫌になる。
ジェイドは苦しそうに蠢くアリエッタを見下ろす。縫いぐるみが下敷きになっていた。
貴女は結局、最期まで盲目的だった。
放っておけばアリエッタは死ぬだろう。だが、殺られっぱなしもそれはそれで気に食わない。
しかし、わざわざ止めを刺すとそれもそれで苦しみを与えない事になる。
そう易々と引導を渡してやる程、私は鬼畜が出来ていない。残念でしたねアリエッタ。
ジェイドは軋む身体に鞭を打ち、音素を紡ぎ詠唱を開始した。
狭まった上に曇った視界にアッシュの靴が入る。やれやれと苦笑。
「おい! それ以上動くんじゃねェよ! 何詠唱してやがんだ、屑がッ!!」
乱れた前髪を垂らしたまま、アッシュは慌てて片膝を地に付け、ジェイドの肩を支えた。
ジェイドが咳をする際に、アッシュはちらりと横目にチャットを確認する。
チャットは嗚咽を零し喚きながら、自らの背に縋り付いていた。
「……ドレイン、マジック……対象、吸収量、共に……変更を……命令……する」
と、不意に苦しそうにジェイドは呟き音素を解放した。
ジェイドは一息吐く様に唾を飲み込む。このドレインマジックは特別製だ。
突然現れた柔らかな光にアッシュは目を細めた。何をする気なのかと。
ジェイドの身体から光に保存された魔力が抜け、瞬間、それはリフィルへと弧を描き飛翔した。
「お、おいジェイド、そりゃ一体……?」
唖然とするアッシュを尻目に、ジェイドは眉間に皺を深く刻みつつ、口を開く。
「……アッシュ、は……暫く、黙っ、ていて……下さい。
貴方の……嫌に、図太い声を聞くと……死期、が……早まります、ので」
アッシュは相変わらずの毒舌ぶりに舌を打ち、茫然と立ち竦んでいたリフィルを見上げた。
自責の念に顔を曇らせ唇を噛むリフィル。別の意味の陰りをアッシュは感じ取り、目を細める。
リフィルの表情は、残酷な現実を如実に物語っていた。
即ち、“ジェイドが助からない”という事実を。
アッシュにもそれは分かっていた。そう、理屈では分かっているのだ。
音素が少ないこの状況、強力な回復アイテムも無ければ治癒術士の精神力も足りない。
足りたところで蘇生術は発動すらしない。
だが、それでも。それでも、とアッシュは顔を顰め、リフィルの足を小突く。
リフィルははっとした様に目を開くが、直ぐにまた俯いてしまい、アッシュは再び舌を打った。
「おい、鬼畜眼鏡! お前には悪いが喋らせて貰う! 大体まだ助かるかも知れねェだろう!
死期だのって、やってみなきゃ分からないだろうがッ!
何勝手に死ぬつもりで……「……無理です」……ッ!?」
ジェイドは首を上げ、その緋色の瞳で真直ぐにアッシュを見つめる。
可能性を完全に否定されたアッシュは、唾を飲み込む以外に何も出来はしなかった。
ジェイドは汗だくにも関わらず涼しそうに笑い、
自分の身体ですし、貴方と違い私は頭が良いですから……と続ける。
「ば、馬鹿言えッ! てめェが諦めてんじゃ世話ねェだろうが! この陰険ロン毛眼鏡!」
「はは、光栄…です」
アッシュに支えられたまま、ジェイドはリフィルへと視線と首を動かす。
リフィルの頬には涙が伝っていた。おや、とジェイドは意外に思う。
「おいジェイドしっかりしやがれ! リフィル、お前も何突っ立ってんだよ屑がッ!
お前は治癒術士だろうが! 後悔は後からしやがれ! 今は早く治癒術を―――……」
しかし、何時の時代も、どの土地も。
何故もこうして、身近な教師は全員銀髪の女性なんですかねぇ。運命ってヤツでしょうか。
まぁ、何でも良い話です。そろそろ馬鹿の相手も疲れていたところだ。
そう言えば、クレメンテが言うにはサフィールも死んだらしいですね。
ま、恐らく二日目までには死ぬだろうとは思ってましたが。
やれやれ。しかし、こうなるとあの世でもあの鼻垂れの相手ですか。
いい加減にして欲しいですね。私だって自由が欲しい。あんな馬鹿を相手にはしたくない。
……おぉ?
おやおや、そんなこんなで色々な記憶が流れてきましたね。あることないこと。
これが噂の走馬燈ですか? これはこれは。いよいよ私もお終いという訳ですね?
しかし中々興味深いですねぇ、死というものも。まぁ、案外普通で肩透かし食らいましたが。
……おや。走馬燈かと思ったんですが、違うものも見えますね。
あぁ、なるほど。そういう事でしたか。ま、もう去り逝く私には関係ない話ですけど。
さて、では行きましょうか。
何も見えない。崩れてゆく現実の景色。風の音色と熱い鼓動が消えてゆく。
遠く聞こえる子供の笑い声と、肌に感じる暖かい煖炉の温度。
鼻腔を擽るスープの匂い。雪に反射する藍色の淡く儚い光。幼き日々の下らない約束。
窓の外、雪景色の中には嘗ての友且つ奴隷が居て、遊ぼう、と扉を叩いてくる。
……喧しい、死ね。
銀世界の中で雪合戦。最も、勿論二対一だが。
ぱちりぱちりと、燃える木材の音。赤煉瓦の家、羊皮紙と万年筆が転がっている。
戯れる三人に、師が笑いながら声を掛ける。そんな平和な夢が続く。
ずっとずっと、続く。レプリカ技術なんてそこにはなくて、あの事故もなくて。
何一つとして後悔する事もない。……まぁ、そんな世界も、悪くはない。
やれやれと微笑み、ゆっくりと背を向け離れる。そう。
それも“死”だ。
まぁ、後は、それなりに頼みますよ。面倒な事は御免なので、貴方達に任せます。
では、失礼。
「……―――って、おい? ジェイド!? てめェ俺の話聴いてんのか?
無視してんなら眼鏡壊すぞ陰険ロン毛野郎ッ!」
アッシュの平手がジェイドの頬を打った。
瞬間、何かを悟った様に、アッシュは半開きの口を閉じる。
彼の身体は、ぴくりとも動かなかった。
アッシュは罵倒をやめ、ゆっくりと抱えていた彼の肩を地に下ろす。
もう、聞こえないのだ。
口上も、皮肉も、彼の口からは二度と出る事はない。
二度と、出ないのだ。
*****
ぱたぱたと、大切な何かが指の隙間から零れ落ちてゆく。正義を囲った黒い塗装が剥がれてゆく。
花弁が剥がれて、壊死して、全てが死に向かい平等に蕩けてゆく。
沸騰した愛は蒸発してしまった。そこに溶けた理由も、自分も、消えてしまった。
獣としての心も、何かがきっかけで砕けてしまった。何もない。此所にはもう何もない。
白と黒の砂嵐が、世界を断ち切る様に断続的に現れる。ごわごわとした正義が削られてゆく。
最期の感情が色褪せてゆく。本能さえもが流されてゆく。身体が朽ちてゆく。死んでゆく。
死ぬって、何だっけ?
理由って、何だっけ?
私って、誰だっけ?
愛って、何だっけ?
哀しいって、何だっけ?
楽しいって、何だっけ?
綺麗って、何だっけ?
嬉しいって、何だっけ?
寂しいって、何だっけ?
大切な人って、誰だっけ?
一体、今までって何だったんだろう?
獣も人も、結局やる事はさして変わらなかったんだと、画面に結露した雫が言う。
結露した雫の中に、夢の続きを見た。逆さまに映し出された少女の身体は、細く華奢だった。
真っ黒に染まった底無し沼の様な瞳が殻を射抜く。中身がない。
やがて、正義の核がことりと落ちた。盲目的だったそれには、個が尽く欠落していた。
私は、私じゃなくても良かった。その真理に気付いた瞬間、砂嵐に灯が消されてゆく。
全てが闇に包まれて、全てが蒸発してゆく。酷く冷たい風が吹き付ける。
世界が、終わる。そう。
それが、“死”。
信じていた正義って、なんだったっけ?