1 :
クレス:
【基本ルール】
・全員で殺し合いを行い、生き残った最後の一人が勝者。
・勝者には元の世界への帰還と、それとは別の褒美が主催者より与えられる?(未決定)
・参加者間でのやり取りに反則はない。
・参加者全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者無し)となる。
【スタート時の持ち物】
・参加者があらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
(義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない)
・また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される
・ゲーム開始直前に参加者は開催側から以下の物を支給される
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。鞄などの類であればなんでも可
「地図」→ 大まかな地形の記された地図。禁止エリアがあるならば、それを判別するための境界線と座標がひかれている。
「コンパス」→ 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる
「照明器具」→ 着火器具+携帯ランタン(油は2〜3日分or切れない)、または懐中電灯。
「筆記用具」→ 普通の鉛筆と紙、もしくはノートの類。
「水と食料」→ 通常の飲料と食料。目安としては通常の成人男性で二〜三日分。
「名簿」→全ての参加者の名前のみ明記。
「時計」→ 普通の時計。時刻がわかる。主催者側が指定する時刻はこの時計で確認する
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが入っている。作中の道具や武器、銃火器など
【放送関連】
一日四回、六時間毎に放送が入る。(0時、6時、12時、18時)
放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去6時間に死んだキャラ名」
「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等。
【首輪・禁止エリア関連】
ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
主催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。
プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
例え首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止能力が使えるようにもならない。
首輪の材質は「何が起きても首に超フィットする不思議なご都合主義パワーが篭った首輪」。
よって体を巨大化させるなどしても首輪を外すことは出来ない。
主催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
禁止エリアは3時間ごとに1エリアづつ増えていく。
【能力・能力制限関連】
身体能力、攻撃能力については基本的に無し。
(ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合あり)
治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法は「気絶状態を治す」程度。
キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限される。
しかしステータス異常回復は普通に行える。
その他、時空間移動能力なども使用不可。
MPを消費するということは精神的に消耗すること。MPを消費する=疲れる。
全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいると判断された人物。
MPは自然に徐々に回復(通常時なら二時間で10%、睡眠時はその2倍ぐらい)?
【キャラの特殊能力制限で決まっている設定】
・レナス 原子配列変換及びMP変換、世界再生能力の無効、精神集中※後述
・フェイト ディストラクションの弱体化(本編で使える技は特に制限なし)
・マリア アルティネイションの弱体化(本編で使える技は特にry)
・フレイ 空中浮遊の高度制限 空間移動←まだ決まっていない
・ダオス 時間転移能力の無効 空中浮遊の高度制限
・ガブリエル 崩壊紋章の無効、真・ガブリエル化による能力上昇無し(神曲は使用可能)
・ロキ ドラゴンオーブによるパワー解放の無効(支給品のドラゴンオーブを入手すれば可)
・ルシオン 形態変化の無効 再生能力の効果の弱体
・アーチェ 杖浮遊の無効(支給品にアーチェの浮遊杖があるなら別)
・レザード 移送方陣の無効 屍霊術(一人ぐらい)
・エイミ 竜変化(一回だけ)
・ノートン 再生能力の弱体
・シン 空中浮遊の高度制限
※レナスの精神集中について
1.放送毎に1回使用可能
2.使用中は完全に無防備
3.使用するには集中できる環境が必要
4.聞ける声は任意で選べない
5.声は聞こえるが人物を特定できる程鮮明ではない
6.ブラムス探知能力は無し
7.一応レナス一行が介入する事でその人間の死を回避する事は可能(放っておいたり、間に合わない場合は当然死亡)
【アイテム・クリエイション・料理関連】
アイテムによる回復は制限を受けない。
料理は「材料があればつくれるが、回復効果はない」いわゆる空腹を満たす程度。
ボーマンの調合スキルは薬草があればOK
【フェイズガン関連】
フェイズガンは弾丸がなく、エネルギー弾を発射する銃である。
だから弾込めする必要はないが、エネルギーが切れると撃てなくなる。
最大エネルギー量は100%で、銃の残量を(***/100)と示す。
[例] (70/100)とすると,残量が70%残っていることになる。
銃の威力または性能によって、弾を撃ったときの消費量が異なる。
またエネルギーが足りないときは一切撃てない。
[例] 残量が(41/100)の時、パルスショットガン(散弾式のフェイズガン)消費エネ33%は撃てるが、残量が(32/100)の時は撃てない
フェイズガンのエネルギーは放送ごとに50%補充される。
注意)徐々に補充されるわけではなく、一気に補充される。
フェイズガンを所持品と持っているとき〔名前〕〔性能〕〔消費エネルギー〕〔残量〕の順番に書く。
【会場関連】
舞台になるのは原作ロワと同じ沖木島。街並みは現代風の田舎町。
現地調達できるアイテムは『普通に使ったら武器にならない』かつ『類似品が支給されてない』
・悪い例
「押入漁ってたらこんなの出ちゃいました」
「ちょwニュートロンボムwww」
・良い例
「押入漁ってたらこんなの出ちゃいました」
「広辞苑か……まあ役に立つかもなしれないし、貰っておくか」
食料は一軒につき一食分程度?
診療所には医療器具は無い?
【書き手の心得その1(心構え)】
・この物語はリレー小説です。
みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであれば保管庫にうpしてください。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。
【書き手の心得その2(実際に書いてみる)】
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・同じ文末を連続して使用するのはなるべく避けましょう。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
【書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)】
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
(今までの話を平均すると、回復魔法使用+半日費やして6〜8割といったところです)
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
・『展開のための展開』はイクナイ(・A・)!
キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
【作品を書いた時の必要事項】
・作中での時間表記
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
真昼:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
・キャラ表記について
【座標/場所/時間】
【キャラクター名】[MP残量]
[装備]:キャラクターが装備している武器など、すぐに使える(使っている)ものを記入。
[道具]:キャラクターがザックなどにしまっている武器・アイテムなどを記入。
[状態]:キャラクターの肉体的、精神的状態を記入。
[思考]:現在具体的に考えている事・行っている事を記入。
[行動方針]:キャラクターの目的
[備考]:その他何か特記事項。無くても良い。
【名前 死亡】※死亡したキャラが出た場合のみいれる。
【残り○○人】※死亡したキャラが出た場合のみいれる。
以下、人数分。
−例−
【クロード・C・ケニー】[MP残量:50%]
[装備:木刀]
[道具:アップルグミ・フェイスガン・デイバック(支給品一式)]
[状態:頭部裂傷]
[思考:混乱]
[行動方針:主催者を打倒]
【ノートン 死亡】
【残り40人】
【修正に関して】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・NGや修正を申し立てられるのは、
「明らかな矛盾がある」「設定が違う」「時間の進み方が異常」「明らかに荒らす意図の元に書かれている」
「雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)」
以上の要件のうち、一つ以上を満たしている場合のみです。
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。
【読み手の心得】
・このスレは投下・雑談を兼用しています。きたんなく雑談しましょう。
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、バーニィ(ぬいぐるみも可)をふかふかしてマターリしてください。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
・あまりしつこくダジャレを言ってる人がいたら「時空剣士乙」「クレス自重しろ」等で返しましょう。
【参加者&生存状況】
スターオーシャン2(SO2) 12/15
○クロード/○レナ/○セリーヌ/○アシュトン/○プリシス/○ボーマン/○ディアス
○レオン/●オペラ/○エルネスト/●ノエル/○チサト/●シン/○ミカエル/○ガブリエル
スターオーシャン3(SO3) 7/15
○フェイト/○ソフィア/●スフレ/○クリフ/●ネル/●ロジャー/○マリア/○アルベル
●アドレー/○ミラージュ/●クレア/●ノートン/●ビウィグ/●ヴォックス/○IMITATIVEブレア
ヴァルキリープロファイル(VP) 7/13
○レナス/○アリューゼ/○レザード/○ルシオ/●メルティーナ/●ジェラード
●夢瑠/●ロウファ/●エイミ/○ジュン/○ブラムス/○ロキ/●フレイ
ヴァルキリープロファイル2(VP2) 2/2
○アリーシャ/○ルーファス
ラジアータストーリーズ(RS) 5/8
○ジャック/○リドリー/●ガンツ/●エルウェン/○ガウェイン/○ミランダ
○ガルヴァドス/●ルシオン
テイルズオブファンタジア(TOP) 6/9
○クレス/●ミント/○チェスター/○クラース/ ○アーチェ/○すず
●ダオス/●デミテル/○ジェストーナ
合計 39/62
○=生存 ●=死亡(一日目真昼〜夕方、開始から6〜10時間経過)
禁止エリア
13時にC-04、15時にG-03、17時にE-06
主催者:ルシファー(スフィア社)@SO3
【キャラの参加時期】
基本的に本編終了後(原作で死亡しているキャラは死亡した後)
SO2:本編終了後、BS前
VP:レナスとルシオはAエンド後 ロキとフレイはChapter7〜8辺り?
VP2:アリーシャ、ルーファス共にユグドラシルのオーディン戦後
RS:人間編END後?
TOP:チェスターは未来編突入直後
何とか規制されずにいけたか
>>1新スレ乙
>>9テンプレ乙
アルベル「始まるぞクソ虫ども」
クレス「いくでガンツ!」
ブラムス「ふんがー」
ディアス「まともに始めてくれ」
両者乙!
すみません、ルシオと洵を予約していた者ですが、延長お願いします。
>>1 >>2 乙です
>>12 ラジャ、自分のペースでどぞ。
とりあえず、第一回放送後にまだ動きがないキャラのまとめ。
ミカエル(方針…無差別マーダー)
G−2の平瀬村にて獲物を待ち伏せ中。エルネスト&クラースに一杯喰わされてややご立腹。
すず(方針…恐らくアサシンマーダー。ただしTOP勢の殺害には消極的)
D−4の森からどこかへ移動中。装備中のブラッディアーマーの効果には気付いていない。
休憩して夜から行動開始か?
ミラージュ(方針…対主催)
C−4・鎌石村の民家内で絶賛気絶中。第一回放送を聞き逃した可能性が高い。
近くでロキがチャリンコのベル鳴らしながら移動中、ヤバいぞ!
こんなところかな?
遅れましたが、投下します
「ま…も……る」
その呟きと共に、目の前の男女が光の中に消えていく。
「ちッ!」
転移――男の能力なのだろう。先程の攻防では多少驚かされたが、この地に神界の民もいることも考えれば別に珍しい能力ではない。
取り合えず周囲を見渡してみるが、彼等が現れた様子も、現れる様子もない。
その後、一通り境内をみて回ったが、彼等の姿は何処にもなかった。
洵はデイパックから地図を取り出し、その場で広げる。すでに彼等が何処へ行ったのかは分からない。だが、男の傷は深いはずだ。
「治療するための道具・術が無いと仮定。俺なら……」
この神社の近くには、村とホテル跡がある。
村なら治療のための道具が手には入るかも知れない。人も集まりやすい。回復の術を持つ者がいるかも知れない。
だが、やって来る者のなかには自分の様な人間もいるはずだ。重傷の人間を連れ歩くには少々危険だろう。
ホテルはどのようなものかは分からない。『跡』という字がついてるため、受ける印象は良くない。
暫く考えた後、彼は結論を下す。
「俺なら村へ行く」
小一時間後、洵は平瀬村にある茂みに身を隠していた。
先程の戦いで手に入れた支給品。今、それの確認を行っていた所だ。
村には人が集まりやすい。
ヴァルキリーやブラムスといった強者がここに来ているかも知れない。先程の男女が自分より先に村へ来ているかも知れない。
仮に、あの男女が既にヴァルキリーと手を組んでいたら……正攻法では間違いなく勝てないだろう。
神社で支給品を回収した時点で、木刀以外は武器ではなさそうだということは分かっていた。
灰色の小さく薄い板と掌サイズの箱が二つ。どちらも見たことがない道具だ。
それでも、エンジェル・キュリオに似た力があるリバースドールなんて物があったのだ、
もしかしたら、これにもディメンジョン・スリップやタイマーリングの様な非常に役立つ力があるかも知れない。
この道具の力によっては、ヴァルキリーの様な強者さえ出し抜けるかも知れない。
そういう期待も込めて、説明書を読んでみたが、
「…………」
現実は非情であった。
箱の方――コミュニケーターは翻訳機能や通信機能など便利な機能がついているが、戦闘面では役に立たない。
板の方に至っては、これ一つだけでは意味がないようだ。
「むぅ……これがあれば何時でも阿衣と会話が……ゲフンゲフン……まったく、自分以外の全てが敵だと言うのに、
離れた相手と会話できる道具など何の役に立つんだ?」
洵は大きく溜息をついた後、道沿いに歩き出した。
■
平瀬村へ続く一本道を進みながら、ルシオはこれからのことについて考えていた。
彼の取り合えずの行動方針は『知り合いと合流(特にレナス)』なのだが、今頃になってこの行動方針に不安を感じ始めていたのだ。
(アリューゼ、メルティーナ、夢瑠、エイミ、洵、これにプラチナを加えて残り六人か。
プラチナは兎も角、他の五人は信用できるのだろうか……)
彼がレナスの下で仲間達と共に戦った期間はお世辞にも長いとは言えない。
おまけに、その短い期間はレナスのことばかり気に掛けていて、他の仲間とは余り交流を持たなかった。
この島に連れてこられている面々とも、数回言葉を交した程度の関係なのだ。
(ま、まぁ何時までもこんなことで悩んではいられないよな。それに彼女が自ら選んだ仲間達なんだ。多分……いや、きっと大丈夫さ)
そう自分に言い聞かせて、彼は歩を進める。目的地はもうすぐそこまで迫っていた。
この村の雰囲気は、自分の故郷と何となく似ている気がした。
と言っても、風景は民家の数がそれほど多くないことくらいしか似ていない。
人がいないせいか、何とも寂しげな雰囲気をかもし出している……その寂しげな所が似ているのだ。
故郷には思い出したくないことが沢山ある。たが、それ以上にプラチナとの思い出が沢山あった。
そういった思い出に浸りながらも、彼はレナスを求め平瀬村を進む。
「プラチナ……ここにいるといいな」
ただ、注意力は確実に低下していた。
後方から物音が聞こえる。そう気付いた時には、
「動くな」
既に首筋に刀剣が宛てがわれていた。
「持っている荷物を全て前方へ放れ。死にたくないならな」
もし相手が悪かったら既に死んでいたなと、内心苦笑いをする。
直ぐに殺されなかったということは、相手は殺し合いに乗っていない可能性もある。
だから、取り合えず相手の指示に従うことにする。
「これでいいか?」
「お前はこの遊戯の中でどう動く? 答えろ」
相手はこちらの行動方針を聞いてきた。別に隠すようなことではないので、正直に話してやる。
「……知り合いを捜している。できれば皆で一緒にこの島から脱出したい」
「あの男の話を聞いてなかったのか? ここから出られるのは一人だけだ」
「何事もやって見なきゃ分からないだろ。手段はこれから探す」
僅かな沈黙の後、不意に首に宛てがわれていた刀剣から解放される。
「ふん……どうやら目的は俺と同じの様だな」
その言葉を聞いて振り返った先にいたのは、この島に連れてこられた知り合いの一人。
倭国の特徴的な服に身を包んだ男、
「お前……洵じゃないか!」
■
「――そんなわけで、青髪の女と金髪の男の二人組には気をつけろ」
「友好的に近づいて油断した所を不意打ちか……良く無事だったな」
「ふん、俺を誰だと思っている」
ルシオと洵は並んで村を進む。
洵がルシオを殺さなかった理由。それは、決して気まぐれなんかではない。
「ルシオ、お前にこれを渡しておく」
「? なんだこれ?」
ルシオに渡したのはコミュニケーターの片割れ。
「仕組みは分からんが、これを持つ者どうしは離れていても会話ができる。使い方は歩きながら説明してやる」
コミュニケーターには他にも機能はあるが、それを教えてやる義理はない。
「どうしてそれを俺に?」
「この村での詮索が終わったら、一旦別れることを提案する」
それを聞いたルシオは怪訝な顔つきになるが、気にせず続ける。
「俺達の一番の目的は『ヴァルキリーと合流すること』だ。二人で一緒に探すより別々に探す方が効率がいい」
「しかし……」
ルシオが何か言いたげだが、そんなことは気にしない。
「ヴァルキリーと合流できたら、この『こみゅにけいたあ』を使って連絡をする。分かったな」
「あ、ああ」
まだ何か言いたげだが、渋々合意してくれた様だ。
■
――俺はあの時のことを良く憶えている。
ブラムスやレザード・ヴァレスの協力もあって、蘇ったヴァルキリーの様子。
取り乱していた。あのヴァルキリーがだ。原因はルシオにあるらしい。
この二人の関係については興味は無い。
ただ、ルシオの存在はヴァルキリーにとって弱点となるのではないか? そう考えた。
さて、俺達が無事ヴァルキリーと合流できたらどうするか?
ルシオを人質にして、ヴァルキリーを手駒として使ってみるか?
それとも、隙を見て二人とも殺るか?
まぁ、結論はその時になってから出すとしよう。
もし、ヴァルキリーと合流する前にルシオが死んだ場合は?
その時、ヴァルキリーは平静を保っていられるのだろうか。これはこれで興味を引かれる……
「なあ、洵。取り合えずこの道具の使い方を教えてくれよ」
「ん……ああ、そうだな。では、まずはこの突起を――」
二人は、会話しながら一歩一歩着実に村の中を進んでいった。
「と、そうだ、もう一つ見せたい物がある」
「……スターオーシャン? ブルースフィア?」
「説明書によると『げえむぼうい』とやらが無いと意味が無い道具らしい。げえむぼういとは何か分かるか?」
「ごめん、聞いたことも無い言葉だ」
「…………」
「ついでだ、プラ……ヴァルキリーと並行してその『げえむぼうい』ってやつも探しておくよ」
「すまない、そうしてもらえると助かる」
【F-2/午後】
【ルシオ】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:アービトレイター@RS]
[道具:無敵ユニット、コミュニケーター@SO3、確認済み支給品×0〜1、荷物一式]
[行動方針:知り合いと合流(特にレナス)]
[思考1:洵と共に平瀬村で仲間の詮索]
[思考2:ゲームボーイを探す]
[現在地:平瀬村]
[備考]:
※コミュニケーターの機能は通信機能しか把握していません
※マリアとクレスを危険人物と認識(名前は知りません)
【洵】[MP残量:80%]
[状態:腹部の打撲、顔に痣、首の打ち身:戦闘に多少支障をきたす程度]
[装備:ダマスクスソード@TOP、木刀]
[道具:コミュニケーター@SO3、スターオーシャンBS@現実世界、荷物一式]
[行動方針:自殺をする気は起きないので、優勝を狙うことにする]
[思考1:出会った者は殺すが、積極的に獲物を探したりはしない]
[思考2:現時点でルシオを殺すつもりはない]
[思考3:ルシオを使ってレナスを利用もしくは殺害]
[思考4:ゲームボーイを探す]
[現在地:平瀬村]
投下しました
GJ!
ルシオにどんどん死亡フラグが増えている気が…
それにしてもゲームボーイなんて探しても何にもなりませんよ洵さんw
ゲームボーイでゲームやれば、SO2の人達のデータ採取になるんじゃねぇ?
ただそこまで意味があるかは別として。
投下乙!
洵…意外としたたかな奴だったんだなw
ルシオが着実に死亡フラグを積み重ねていってるな
他と比べてけして弱くは無いはずなのに何でこんなにどうしようも無い感が漂ってるんだろう
ルシオはヒーローじゃなくて【悲劇のヒロイン】だからな
>>19GJ!
洵のシスコン描写をみてそういやこんな設定あったなとか思い出した。
ルシオゲーム内でも死んだ後魂まで消滅させられたりと、このロワの中で一番死ぬシーンがイメージされやすいし。
おそらく彼は次の日の出は拝むことは出来ないんじゃないかと…。
まあ死なせてなんぼってキャラもいるからね
シンとかノートンとかジェス何とかとか
そういやミランダってどこ行ったんだ?
>>26 第61話より
【F−3/真昼】
【ミランダ】[MP残量:100%]
[思考1]:チェスターとルシオのどちらかの後を追う
[現在位置]:道を移動中
という感じらしい。
あ、いや。
それは分かってるけど、その後のチェスターの話にもルシ男の話にも出てこなかったからさ
現時点ではまだどっち追ったか分からないって事?
>>28 あ〜、そういうことか…現時点では不明ってことになってるみたい。
まあ、どっちかを尾行していたが見失ったとか警戒して出てこなかったとか色々考えられる。
そこら辺は次の書き手さんにお任せってことじゃないかな。
何気にシスコン侍はVPのサブキャラ勢唯一の生き残りなんだよな
ヅラもロキも変態眼鏡も反主催に転んだし、VP勢からのマーダーとして今後に期待
順調に道を踏み外していってるしな
ヅラはともかく、ロキも変態も対主催とはいえ外道丸出しだけどなw
むしろあいつらは対主催だからこそ厄介な気がするww
正直マーダーよりも会いたくない奴らだよなw
さて、とあるキャラの話を書こうかとも思うが
他のキャラの現在地把握が出来ていないので書くに書けない…
しばらくはwikiのリンクをちょくちょく編集しつつ現状把握に努めるか。
したらばに最新の地図が上がってたよ
前スレ埋めなくていいのか?
今更だが、前スレ
>>733 ディアスがクォドスキャナーもってるぞ
>>36 げっ、マジだ。
支給品一覧しか確認してなかったぜ…
ところで、前スレ埋めるのは適当にでっかいAA貼り付ければおk?
埋めついでなら、個人的に各キャラの状況欄をダーッと集団ごとに区切って張り付けとくとwikiで調べる手間も省けてありがたいかもしれない
あ、集団ってのは地図上で近くにいる奴らってことね
とはいえ地図と状態欄往復すんのが面倒だなんて言うのはたぶん俺だけだし普通にAAでもいい気がしてきた
よし、ちょっくら前スレ埋めてくる。
結局埋めたのは変態かよw
レナスレナス言ってないで早く脱出の方法考えて下さいよw
しかしレナスレナス言わない変態は変態ではないww
ほ
最近のうだるような暑さのせいで、全くネタが出てこないんだぜ。
何とか放送後に動きが無いキャラを動かしたいんだが…
特にミカエルは何とかしたいなw
それと、グールパウダーって全部エイミに飲ませちゃった?
道具欄にないし全部無くなったんじゃない?
保守代わりに質問。
1.ガブリエルってスターフレア撃ってきたっけ?サイト調べてみたり攻略本探したけど載ってなくって。
なんとなく撃たれた記憶があるんだけど曖昧で…。
2.こっちも攻略本漁ったんだけど、ジェストーナってどこで出てくる敵?攻略本のモンスターデータの所に載ってない。
PSのメモカが犬に砕かれたから確認できないorz 書くにもどんなモンスターか分からんと話にならないし。
分かる方教えてください。
>>47 ミッドガルズ空中戦の直後モリスンが死亡するイベントがありますよね?
あの時モリスンに道連れにされた奴がジェストーナ。つまり戦うこと無く逝ってしまう。
なりきりダンジョンでは戦えるらしい。
種族はドラコケンタウロス。確かこいつには公式イラストがあったはず。
ガブリエルはスターフレア撃ってくるよ
ご両名ともサンクスです。
>>48 どうりでモンスターのところに載ってないわけですねw
とりあえず攻撃手段等はドラコケンタウロス系のもので無難なかんじで行きます。
>>49 やっぱり間違っていませんでしたか。
下手したらフィリア憑きの時限定かと思いましたがこれで何とか書けそうです。
バイトとか忙しいので延長を申し出るかもしれませんが、ガブリエル、ジェストーナ、セリーヌ、アリーシャ予約します。
久々に予約キター
期待です
予約ktkr
期待して待っております。
完成しましたので投下します。
「なめんなよ!死ぬ前にこのジェストーナ様の力、とくと目に焼き付けておけ!」
と威勢よく飛び出してはみたものの、やっぱりガブリエル超恐え〜。
もうなんつーの? 身に纏うオーラからして格の違いを感じさせやがる。
だがしかし、男ジェストーナ、一度腹を括ったからには背中は見せねぇ。
こうなりゃ最初からクライマックスだぜ。
この俺様の鋼鉄をも引き裂くこの爪でミンチにしてやらぁー。
ザシュッ!
鋭い刃物で切り裂く音が聞こえた。
だが手応えが無い。確認するとガブリエルは傷一つついてない。
ありゃ?切れたのは服だけですか?
「この程度か?やはり魔物は魔物と言う事か…」
ひどく冷めた目で俺を睨むガブリエル。
「いけない離れて!」
そう叫んでこちらに駆け寄るセリーヌが助けた少女A(俺命名)
肝心のセリーヌは目をつぶって精神を集中なさってるご様子。
相変わらずの早口で詠唱してる。
その足元に無人君がのんきに手を振ってやがる。
やっぱり君は役に立たなかったね。
とか突っ込んでる場合じゃねぇ。
少女Aの援護もセリーヌの呪文もすぐに来そうにない。
つまり俺が、目の前の恐怖から逃れるには、俺自身でどうにかするしかないわけだ。
こうなりゃ奥の手だ。
地獄の業火と恐れられたこの火炎で。
「食らえ!」
放った火球でガブリエルが火だるまに………ならねぇ!?
せいぜいガードに使った左腕の袖を焦がし、軽い火傷を負わした程度。
おいおい? 冗談だろ!? もうあれだよ? 俺のバトルフェイズは終わりだよ?
「多少芸はできる様だな? 他には何ができるんだ?」
だから終わりだっての。
「もう品切れか…。なら死ね!」
そう叫ぶやいなや手をかざすガブリエル。
その刹那。ガブリエルを中心にリング状の力場が広がった。
なにこれ? 痛っ! 超痛い!
その力場に吹き飛ばされる俺「くぅっ!」「ああっ!」と他二名。
無人君だけはしゃがんでその力場をやり過ごしてやがった。あの野郎っ!
しかしこれでわかった。
俺達には万が一にも勝ち目がねぇ。
だから、この二人には悪いがこのまま死んだ振りをしてやり過ごしさせてもらうぜ。
隙を見てとんずらだ。
卑怯者と罵りたければ罵りな。だがこれが、このジェストーナ様の処世術よ!
と、誰に聞かせてるのかわからない言い訳じみたことを考えながら、ジェストーナはそれこそ死ぬ気になって死んだ振りを始めた。
肢閃刀を地面に突き刺し杖代わりに立ち上がるアリーシャ。
ちらりと左右を見る。
左には、先程魔法で自分の危機を救ってくれた、奇抜な服を着た女性が頭を押さえながら立ち上がっている。
(よかった。無事みたいね)
右には、果敢にも男に飛び掛かった一見凶悪な魔物が、身動き一つしないで倒れている。
(まさか? やられてしまったの?)
ふと、死ぬ間際に見た光景が脳裏をよぎる。
オーディンの放った攻撃から、その身を呈し自分を守った深緑を思わせるような色した長髪、少し捻くれたハーフエルフの青年の後姿。
(また、私は誰かに守られてしまった。オーディンと戦った時もルーファスがその身を盾にして私をかばってくれた。
私が弱いから。傷つけたくないからと、泣き言を言っているから、私を守ろうとした人はみんな死んでしまう…)
「ふん、脆弱な。たかが魔物風情が出てくるからこうなるのだ」
燃えるような髪の色をした男が魔物に向かって吐き捨てた。
キッとその男を睨むアリーシャ。
(この人はオーディンと同じだ。強大な力を持ちながら、自分より弱い者達を虐げる事にその力を使う。
この人はこの島で生かしておいてはいけない人だ。今ここで止めないと、もっと多くの人を殺してしまう。
傷つきたくないとか、傷つけたくないとか言っている場合じゃない!)
刀を構え、バックからボーガンを取り出すと矢を装填した。
「詠唱時間は私が何とかします。貴方は魔法に集中してください!」
左にいる女性にそう告げる。
女性は少し驚いたような表情を見せたが力強く頷きすぐさま詠唱を始めた。
それを見てアリーシャはボーガンの照準をガブリエルの頭に向け、矢を放った。
シュッと鋭い風切り音と共に射出された矢だったが、ガブリエルは少し首を反らしただけで回避した。
矢は背後の建物の壁に突き刺さった。
「やあぁぁぁっ!」
すかさず刀の間合いに飛び込むアリーシャ。
戦う事を嫌う彼女だったが、旅の中でそんな事も言って入られない。
不向きながらも自分の能力が活かせる戦い方を習得していた。
小柄な彼女は、持ち前の機敏さを活かした戦い方をする。
一撃は軽いがとにかく手数を入れる。
間髪いれずに攻撃し、その隙に重戦士による一撃か、術師による強力な魔法を見舞ってもらう。
今回も自然とその様な戦闘スタイルとなった。
刀を袈裟懸けに振り下ろす。
その太刀筋を見切りバックステップにてそれをかわすガブリエル。
すかさずアリーシャ目掛けて蹴りを放つ。
が、アリーシャはその蹴りを、体を捻り紙一重でかわしながら刺突を右の肩口に見舞った。
さして深い一撃ではなかったが、その肩口から出た血が肢閃刀を伝った。
「ちぃっ!」
大きく飛び退き間合いを離したガブリエルは、左手をかざしディバインウェーブを放とうとした。
「させないっ!」
身を低くし、地を這うように飛び掛かりガブリエルの足目掛けて刀を横薙ぎに払う。
アリーシャは今までのやり取りの中でフットワークならこの男に勝っていると確信していた。
ここで更に足に傷をつければより有利に戦えると思い、無理な体勢ながら足を狙った。
それに、この低さならこの男の放つ力場もかわせると踏んだ。
ガブリエルはディバインウェーブを中断し、跳躍するとその攻撃をかわした。
足元にはうつ伏せ状態のアリーシャがいる。
その頭目掛けて足を振り下ろす。
アリーシャは転がり攻撃をかわし、立ち上がりざまに刀を振り上げた。
踏みつけようとしたところをかわされ隙が生じたガブリエルは、回避行動がとれず右腿に傷を負った。
そのまま返す刀を上段に構え、左足で踏み込むと共に振り下ろし追撃を加える。
この一撃は身を反らされ空を切った。
アリーシャは、そのままその反動を利用し、体を回転させ右薙ぎに刀を大きく振り切る。
一撃目の振り下ろしは布石で、本命はニ撃目であった。
だがガブリエルも十賢者の頂点に君臨する人物である。
場数もそれなりに踏んできている。
彼女の攻撃を先読みし、その横薙ぎを屈んで避けた。
続けざまに大振りの動作で開いた体に掌打を打ち込む。
「もらった!」
普通の相手なら当たっていただろうし、肋骨の数本はへし折る一撃だったが、かわされていた。
アリーシャはニ撃目をかわされるや否や、振りきった時に柄から離した左手で光子を2連射し、ガブリエルの魔法によって作られた瓦礫に打ち込み転移した。
ガブリエルの掌打はアリーシャの肋骨の代わりに瓦礫を砕いていた。
すかさず間合いをつめるアリーシャ。
動きっぱなしでそろそろ息があがってきている。
(まだなの? このままではいつか反撃を許してしまう)
だが、尚も果敢に攻めるアリーシャ。
鋭い踏み込みと共に無数の突きを浴びせる。
大きな動作を伴う攻撃はもう避けたい。
先程のような転移による回避は少々博打が過ぎる。
だが、この思考がいけなかった。
無数に細かい突きを放ってはいたが、どうしても攻撃のリズムが単調になってしまう。
ガブリエルはその旋律にあわせたステップを踏み、これらをことごとくかわした。
そしてガブリエルはアリーシャの疲れが出てきたその時を狙って刀の鍔元を握った。
刀の鍔元は刀身よりも切れ味に劣る。
「しまったっ!」
がっしりと握られ、押す事も引く事もできず驚愕の表情をするアリーシャ。
「離れてくださいませっ!」
背後で詠唱を続けていた女性から朗報が届いた。
すぐさま柄から手を離し、離れた位置にある瓦礫に光子を当て転移する。
「エクスプロード!」
ガブリエルの目の前に直径が人間の身長ほどありそうな火球が生じ、
それが徐々に大きくなりガブリエルを飲み込むと巨大な爆発を起こした。
それなりに離れた距離にいたものの、その熱風はすさまじく、息を吸えば肺が火傷しそうな程だった。
尚も爆発によって生じた煙が立ち昇る中、アリーシャはセリーヌのすぐ側まで駆け寄った。
「間一髪でした。ありがとうございます」
助けてもらった礼を言い、手を差し出す。
「申し遅れました私…」
だが彼女はこちらを見ようとはしない。
視線は煙に固定したまま、額からは汗がにじみ出ている。
「まだですわ! 残念ですが自己紹介をする余裕はありませんわ!」
風が吹き、煙を払った。
そこにはまだあの男が立っていた。
爆発によるダメージを受けながら、尚も鋭い殺意と眼光をこちらに向けて。
アリーシャは驚いた。
これほどの威力の魔法を放つこの女性にもだが、それに耐え切ったこの男の底の見えない実力と生命力に。
「もう一度…。もう一度だけ、時間を稼いでくれませんこと? 今度はもっと強力な魔法をお見舞いしてやりますわ」
呆然とガブリエルを眺めていたアリーシャにセリーヌが告げた。
そう言った彼女の表情は硬く険しい。
アリーシャは自信が無かった。既にかなり疲弊していたし、扱いになれた刀剣タイプの武器は奪われてしまっている。
手元の武器は近接戦闘ではおよそ役に立ちそうに無いボーガンと、使用者と対峙した事はあるが扱ったことなど無い戦斧だけだ。
(けれど、やるしかない! 相手も疲れているだろうし、ダメージも残っているはず)
「わかりました。私の命を貴女に預けます。そして、貴女の命を預かります!」
バックからしまったセントハルバードを取り出し矛先を少し下げたような構えを取る。
矢を装填したボーガンは咄嗟に抜けるように腰帯に括りつけた。
「一蓮托生ってヤツですわね。よろしいですわ。私も貴女に命を預けますわ。
私は何があっても詠唱を中断いたしません。ですから、貴女も何があっても私の詠唱時間を稼いでくださいませ!」
セリーヌは目を瞑ると、体内の魔力を引き出しながら呪詛の言葉を紡ぎ始めた。
それと共に肌に彫りこんだ紋章が淡い光を放つ。
「わかりました。行きますっ!」
アリーシャは地面を蹴ると真っ直ぐ男に向かって行った。
その動きを見て男は左手をかざした。
(またあの攻撃がくる!)
アリーシャはガブリエルと背後で詠唱をしているセリーヌとの間に立ち彼女の盾となった。
吹き飛ばされそうになるが、戦斧の石突を地面に突き刺し何とか踏ん張った。
力場の余波を受けたらしく、背後の女性は苦悶の表情を浮かべていた。
だが尚も詠唱を続けている。
再度間合いをつめるべく駆け抜けた。
ガブリエルを間合いに入れると、アリーシャは戦斧の柄の中程を持ち攻撃した。
リーチの差による優位は捨てがたいが、非力な自分の腕力ではうまく振り回せそうに無いからだ。
力いっぱい振り下ろしたがガブリエルは難なく手にした刀でそれを受け止め、はじき返した。
体勢を崩したアリーシャの首筋目掛けて刀を逆袈裟に振り下ろす。
アリーシャは何とかそれを柄の部分で捌くと、すかさず左手でボーガンを抜きガブリエル目掛けて引き金を絞る。
額目掛けて飛んできた矢を、ガブリエルは顔を反らし、寸でのところでかわした。
視線をアリーシャに戻した彼だったがその姿は既にそこにはない。
(どこだ?)
地面に突如影が現れた。咄嗟に振り向くと彼女は空中で戦斧に全体重を乗せた一撃を撃ち下ろそうとしていた。
アリーシャは矢を放つと素早くボーガンを捨て、その矢目掛けて光子を放ち転移していたのだった。
「やあああぁぁぁぁっ!!」
彼女の放つ一撃は天を裂く雷光の様に鋭く、激しい。
流石に受けきれないと判断したガブリエルはサイドステップでそれを回避した。
地面を深々と戦斧は切り裂いた。
「獲った!」
アリーシャの頭部目掛けて刀を唐竹に振り下ろす。
またも光子を撃ちだすアリーシャ。
今度の標的は一矢目の壁に突き刺した矢だった。
カブリエルの剣閃は矢を真っ二つにするだけにとどまった。
壁を蹴り一気に間合いをつめたアリーシャは戦斧をフルスイングした。
肢閃刀でそれを受け止めるガブリエル。
キィンッ!と金属同士がぶつかり合う音と共に火花が散る。
ガブリエルはそのまま剣を押し込み鍔迫り合いに持ち込んだ。
腕力と体重の差から見て負ける要素は無いからだ。
思惑通りに徐々に押し込んでいっている。
(そろそろまずい。あの女の詠唱が完了してしまう)
そう判断すると刀を手前に引き、押し込まれまいと力を加えていたアリーシャの体勢を崩した。
すかさず彼女に足払いをかけ転倒させると、セリーヌ目掛けて刀を腰だめに構え突進した。
「まずは貴様からだ!セリーヌ・ジュレス!!」
地に伏せたアリーシャは背筋に冷たいものを感じた。
「いけない!」
この体勢ではガブリエルの行く手を阻めそうに無い。
これだけは最後の手段だったが迷っている暇など無かった。
アリーシャはセリーヌ目掛けて光子を連射した。
確かな手応えを感じたガブリエルだったが、刀で突き刺した相手は先程まで対峙していた少女だった。
「貴様っ!あの女と入れ替わったのか!?」
刀を引き抜こうとするがその手を少女は力強く掴んで離さない。
「はい。もうこうする…しかなかったから…」
口からこぼれる言葉は擦れ始めていたが、手に込めた力は一向に緩くならない。
「人間同士の転移が可能ならば、私と入れ替われば…」
「それだと、ダメです…。あの人の魔法の…照準が定…まらないから」
「クソッ!放せっ!!」
ほぼ密着状態の上、右腕は刀傷によりまともに使えない。必死に体を振り動かすもこの少女は腕を放さない。
「刺し違えてでもこの私を倒したいかっ!?小娘!!」
「ええ…。貴方はこの暴力が支配する…島にいてはいけない…。
貴方の振りかざす拳は…、この殺し合いに…抗う者達の命を奪ってしまう…。私は…この島に来る…前、確かに死にました。
貴方の…様に、この殺し合いの…主催者の様に、強大な力を…己のために使い、弱者を虐げる…暴君を討つ為…戦って死にました…。
でも、気付くと…なぜかこの島にいました…。けどきっと…ここにいるのは意味があるのだ…と思います…。
最初はルーファスと…もう一度会って…ここから抜け出す事だと思って…いました。
けれど、それは間違っていました…。生前…果たす事の出来なかった…事を成す為。弱者を虐げる…者の蛮行を…止める為。
きっと私は…ここにいる! だから…私は貴方を止めるっ! 命を賭してでも…貴方を止めるっ!!」
擦れた声ながらも語気を荒げ、言葉に乗せた意志を瞳に宿しアリーシャはガブリエルを睨みつけた。
離れた位置でルーンを刻みきったセリーヌが少し物悲しそうな目でアリーシャを見つめていた。
キィンッ!と金属同士がぶつかり合う音が前方から聞こえてきた。
(もう少し耐えてくださいませ)
そう思いながらセリーヌは、己の中に秘めた魔力を込めながら自分の習得した最強の呪文『メテオスォーム』の詠唱を続けていた。
続けてどさりと何かが地面に倒れる音が聞こえたかと思うと、何者かがものすごい勢いで近づいてくる気配を感じた。
目を開けて回避したい衝動に駆られたが、その衝動を押しとどめた。
(私が命を預けたあの娘は時間を稼ぐと約束してくれました。それに、私はあの娘の命を預かりました。
あの娘の命を救うにはガブリエルを今一度倒す他ありませんわ。だから私は詠唱をやめるわけにはいきませんの!)
そう思った刹那。
体に何か魔力のかたまりの様な物が触れたかと思うと、離れた位置で刃物が肉を突き刺す嫌な音が聞こえてきた。
「貴様っ!あの女と入れ替わったのか!?」
ガブリエルの叫びが聞こえる。
「はい。もうこうする…しかなかったから…」
あの娘の次第に擦れてくる声が聞こえる。
「人間同士の転移が可能ならば、私と入れ替われば…」
「それだと、ダメです…。あの人の魔法の…照準が定…まらないから」
「クソッ!放せっ!!」
尚も詠唱を続けるセリーヌ。もうまもなく術は完成する。
「刺し違えてでもこの私を倒したいかっ!?小娘!!」
「ええ…。貴方はこの暴力が支配する…島にいてはいけない…。
貴方の振りかざす拳は…、この殺し合いに…抗う者達の命を奪ってしまう…。私は…この島に来る…前、確かに死にました。
貴方の…様に、この殺し合いの…主催者の様に、強大な力を…己のために使い、弱者を虐げる…暴君を討つ為…戦って死にました…。
でも、気付くと…なぜかこの島にいました…。けどきっと…ここにいるのは意味があるのだ…と思います…。
最初はルーファスと…もう一度会って…ここから抜け出す事だと思って…いました。
けれど、それは間違っていました…。生前…果たす事の出来なかった…事を成す為。弱者を虐げる…者の蛮行を…止める為。
きっと私は…ここにいる! だから…私は貴方を止めるっ! 命を賭してでも…貴方を止めるっ!!」
(そこまでの覚悟がおありでしたのね…。ならば私も貴女の想いに応えます!)
最後の呪詛の言葉を紡ぎ術は完成した。
標的の再確認のため目を開く。
少女と一瞬目が合った。
(私に構わずこの男を倒してください!)と瞳が告げている。
体内に溜め込んだ精神力と魔力を解放し呪文を発動させた。
「メテオスォーム!!」
仮想空間のエクスペルの遺跡内部で見つけた呪文書に記されし、失われた太古の呪文にして最強の呪文。
次元を切り裂き無数の隕石を召喚して操る呪文。
隕石の全てを過去最大の敵であったであろう男目掛けて降り注がせた。
辺りにはエクスプロードの時以上に煙が昇っている。
地面には無数のクレーターが出来上がっている。
自身の放った呪文『メテオスォーム』の残した爪跡を見てセリーヌは身震いをした。
(相変わらずとんでもない呪文ですわ)
突如眩暈を感じその場に跪いた。
(いつも以上に堪えますわね。これも制限の影響ですのね)
まだ精神力は枯渇してないが、中級魔法一発も満足に撃てそうにない。
(これでも止めをさせてなければ…)
突然煙がはれた。
強い衝撃波がセリーヌを襲った。
(これは…?ガブリエルのディバインウェーブ!?)
大きく後方に弾き飛ばされるセリーヌ。
頭を振り、頭上を回る星を振り払って前を見据える。
はれた煙の向こうには、やはりガブリエルが立っていた。
その体には『エクスプロード』の時以上のダメージが見て取れたが、ガブリエルは尚も生きている。
少女の死体を自分に覆い被せ直撃を防いでいたらしい。
(実は光子で転移する為の一時的な凍結により詠唱が途絶え、
術が完全な威力を発揮することができなかった事もガブリエルを倒しきれなかった要因となっていた)
ガブリエルは少女を貫いた刀を振り払い無造作に死体をほうった。
セリーヌは歯噛みした。
彼女の死体をゴミ同然に扱ったガブリエルに。
そして、それ以上に自分で任すようにと頼んでおきながら、仕留める事の出来なかった自分の無力さに。
「今の…は、かなり…堪えた…。だが、もう…仕舞いだ…。
いくら今…の私が傷ついて…いようが、壁役の…いない術師を始末…する事は…容易い」
一歩一歩とこちらに近づいてくるガブリエル。
彼の言うとおり前衛のいない術師は大した抵抗も出来ないだろう。
だがそれでもセリーヌは詠唱を始めた。
(私にはこれしかございませんものね。それに、ここで諦めてはあの娘に申し訳が立ちませんわ!
せめてもう一撃。でないと死んでも死に切れませんものっ!)
そう思ったところでセリーヌの目に予想もしなかった光景が映った。
なんと、死んだと思っていたジェストーナが立ち上がり、ガブリエルを羽交い絞めにしているではないか。
羽交い絞めしたガブリエルが叫ぶ。
「貴様っ!!大人しく死んだ振りを続けていれば見逃してやったものを!」
あっ、やっぱばれてたか。
「何故今になってその様な真似を!?」
あぁ、なんでだろうな?
俺はもっと賢しく生きていたはずなんだけどなぁ。
ただ、理由はなんとなく察しがつく。
俺は過去に子供を盾に取り、敵に自害を迫るという鬼畜な事をした。
何故かって?あいつらを止めないと俺がダオス様に殺されちまうからだ。
クレス一行を殺せと命じられれば何としてでも殺さねばならない。
例えどんな汚い手を使おうとな。
きっと草葉の陰で息子も泣いていたに違いない。
まぁ、息子はおろか嫁すらいなかったわけだが。
けどそんな事を本心からしたかったわけじゃなかったんだ。
そう、言うなれば俺もダオス様という強者に虐げられる弱者だったんだ。
生きるためには仕方が無い。ダオス様の命令に逆らったら死が待っている。
イヤだがやるしかない。そんな想いがどこかにあった。
そしてそこに来て少女Aのセリフだ。
(生前…果たす事の出来なかった…事を成す為、弱者を虐げる…者の蛮行を…止める為、
きっと私は…ここにいる! だから…私は貴方を止めるっ! 命を賭してでも…貴方を止めるっ!!)
俺の抱えていた憤りに対して少女Aはそう言った。
もし少女Aと過去に出会っていたら、もしかしたら俺にも、まともな生き方が出来ていたのかもしれない。
それに、窮地を救ったとはいえ(主にセリーヌだが)見ず知らずの俺達(こっちも主にセリーヌだが)を信頼して命を賭けやがる。
こんな年端もいかない少女がだ。
そんな熱い想いを見せられて、このまま死体の振りを続ける程、俺様は腐っちゃいないぜ。
「放せ!この下等魔族が」
俺の戒めを解こうと、ものすごい力で暴れるガブリエル。
あのバカみたいな威力の呪文を食らって、死に掛けなんじゃねぇのかよ?
「へっ、確かに俺はあんたの言うような下等魔族かも知れねぇ。あんたに手も足も出せなかった下等魔族かも知れねぇ。
だがな、そんな俺でも呪文の詠唱時間を稼ぐことぐらいならできる。流石にその傷じゃあもう一発も耐えられねえだろ?
あんたはその下等魔族が稼いだ時間で死ぬんだ!」
「ちっ」
ガブリエルは悪態をつくと呪文の詠唱を始めた。
「無駄だ無駄だ。セリーヌの詠唱速度を侮っちゃあいけねえ。あの人より先に呪文を撃とうなんざ無理だね。
良くて同時発動で相打ち。普通に行けば発動することなくてめえは死ぬ」
呪文を完成させたらしいセリーヌがこちらを見て微笑みを浮かべている。
(ありがとうジェストーナ。あなたは良くやってくれたわ)とでも言いたげな表情だ。
恐らく俺も呪文に巻き込まれて死ぬだろう。
けど死ぬ前に見た光景が、これ程素敵な美女の微笑み(服装がかなり奇抜でぶっ飛んでいるが)
なら俺は地縛霊となる事もなく天に召されるだろうさ。
そう思わせるほど魅力的な微笑みだった。
今目にしている光景を一枚の絵にしてタイトルを付けるなら、俺だったらこう付けるね『勝利の女神の微笑み』ってさ。
「スターライト!」
セリーヌが今唱えられる最大威力の呪文に、極限まで魔力を込め発動させたその次の瞬間。
「スターフレア!」
ガブリエルも呪文を発動させた。
星々の光の奔流が混ざり合い地表に降り注いだ。
その光は術者以外の全ての者をなぎ払った。
辺りに静寂が訪れた。
この場にただ一人立った勝者がつぶやいた。
「危険な…、賭けであった…」
ジェストーナに羽交い絞めにされ、セリーヌの詠唱を阻止できない絶望的な状態においてガブリエルは咄嗟に閃いた。
それは今戦っていた者達が、死を間際にして見せた最後の抗いに似ていた。
アリーシャはガブリエルの攻撃を阻止できないと悟ると、その身を犠牲にしてセリーヌを守った。
あまつさえその傷ついた体のどこに秘めているのか分からないような握力でガブリエルの自由を奪った。
セリーヌは前衛がいない絶望的な状況の中、不屈の闘志を見せガブリエルにせめて一噛み牙を突きたてようと呪文を唱えガブリエルを追い詰めた。
ジェストーナはそんな二人の姿に心を打たれ、自らも決死の覚悟を伴い時間を稼ごうと、
彼の生涯で恐らく最初で最後であったであろう、圧倒的な力の差を持つ者に逆らってみせた。
そんな追い詰められし者達の最後の抵抗が、力の差が歴然としている相手ガブリエルをとうとう追い詰めた。
だが、彼らが見せたようにガブリエルも最後の抵抗をした。
ガブリエルの場合、それはこの窮地を脱する閃きだった。
彼は紋章術同士の干渉を引き起こす事を思い立った。
紋章術の干渉とは、同属性または、それに近い属性。もしくは、対立する属性同士の紋章術がほぼ同時に発動した場合に起こる現象で、
威力の強い術の方が弱い術を飲み込んで、威力まで取り込み標的を襲う。
過去に戦った経験があるが、それでもあの場でセリーヌが放つ呪文の属性は予測する事しかできない。
仮に予測と一致したとしても、術の完成がもう少し遅かったりしたらこの現象は引き起こせなかった。
干渉を起こせても自分の術のほうが飲み込まれるリスクもあった。
そうなれば確実に自分が死んでいただろう。
一種の賭けであったがそれでも、あの状況はそれを狙わねばならぬ程切迫していた。
そして、閃きを実行し、その賭けに勝った。
その賭けの払い戻しとして敵を駆逐する事ができた。
「一寸の虫にも五分の魂とは、よく言ったものだな…。いや、この場合は窮鼠猫を噛むか…。
これからは、何か事を起こされる前に手早く始末すべきだな。」
ガブリエルは3つの死体の持つバックを戦利品として回収すると再び焼き場の建物の中に消えていった。
[現在位置:H-07 焼場建物内部/現在時刻:午後(もうまもなく夕方)]
【ガブリエル(ランティス)】[MP残量:10%]
状態:右の二の腕を貫通する大きい傷。右腕は使えない。右肩口に浅い刺し傷。太ももに軽い切り傷。右太腿に切り傷。
左腕をはじめとする全身いたるところの火傷と打撲傷(ジェストーナの火炎、エクスプロード、メテオスォームによるもの)
装備:肢閃刀@SO3+ゲームボーイ+ス○ースイ○ベーダー@現実世界
道具:荷物一式 *4+セントハルバード@SO3+ボーガン@RS+矢*28本
+暗視機能付き望遠鏡@現実世界+????(0〜2)(セリーヌからの戦利品)
行動方針:フィリアの居ない世界を跡形も無く消し去る
思考1:コンテニュー
思考2:参加者の人数が減るまで行動はしない
思考3:潜伏先に侵入者が現れた場合は排除する。その際は何か手を打たれるような暇も与えず殺す
思考4:体の傷を癒す
備考:3人の死体は焼き場前に放置されています。原形はとどめているので知人なら誰だか識別できるでしょう。
スターネックレス@SO2はセリーヌの首にかかったままです。
無人君は次なる主を求めどこかに逃げました。
特にどこに向かった等は指定しませんので、使えると思った書き手の方使ってください。
【アリーシャ 死亡】
【セリーヌ 死亡】
【ジェストーナ 死亡】
【残り36人】
投下完了です。
TOPはクリアしたんですがジェストーナの存在を全然覚えていなかったんで、正直こんな感じのキャラでいいのか不安です。
いやいやジェストーナは改心するようなヤツじゃねーから。と言う意見が多いようでしたら一応非改心の話も考えているので修正しようと思います。
まぁ、出来れば見せ場を作ってやれたと思うので、このまま死なせてやりたいと思いますが…。
その他修正、指摘ありましたらお願いします。
>>66 GJ
ガブリエルが相手だから死人が出るとは思っていたが、三人共死亡か。
アリーシャは記念すべき最初の主人公からの死者になったなw
ジェストーナはこれで良いと思うよ。
文に関しては、アリーシャの同じ内容の長台詞が別視点で二回出てくるが、個人的に少しくどく感じた。
二回目は、別の一文に差替えるとか、
【必死に体を振り動かすもこの少女は腕を放さない】
の箇所でガブリエル寄り視点を終わらせてセリーヌ寄り視点に移すと、大分スッキリすると思うよ。
(注:あくまで俺の感性の問題なので、参考程度に留めといて下さい)
乙!
三人逝ったか…これで放送後の死者の数が放送前の死者の数と同じになったな
ルーファスもせっかく立ち直ったのに不憫だな
ダオスやデミテルよりも長生きしたジェストーナにも黙祷
あーん!ジェストーナ様が(ry
GJ!
大量死亡は予想してたが、ガブさんは生き残ったか……
ジェストーナの最期は俺はこれで全然いいと思うぜ
>>66 超GJ!
うおぉぉん、ジェストーナァァァ!!
途中で「生き残るか?」と思ったが、やっぱダメだったかw
個人的には無人君の逃亡先が気になるんだぜ。
皆さんご意見、感想サンクスです。
>>67 自分でも長台詞2回(ジェストーナの一部抜粋を含むと3回)はしつこいよなと思ってたんですが、
書いてる時は
>>60か
>>61全撤去しか浮かばなくて、その発想が出ませんでした。
おっしゃる様に腕を放さないあたりで区切ればうまい事繋がりますね。
wikiに載せるにあたりそっちのほうが良さ気ですので、後日修正所にでも修正版を書こうと思います。
wiki編集してて思ったんだが、この三人の直接の死因は
アリーシャ→セリーヌのメテオスォーム
ジェストーナ→ガブリエルのスターフレア
セリーヌ→ガブリエルのスターフレア
でいいのかな?特にジェストーナが自信無い。
>>72毎度編集乙です。
3人の死因はそのとおりでお願いします。
それと修正所のほうに修正verを投下しました。
各作品キャラの平均登場話数(OP、死体登場除く)
SO2−3.4話
SO3−2.9話
VP−2.8話
VP2−3.5話
RS−2.3話
TOP−3.0話
ついでに個人の登場話数上位(OP除く、前後編は1話扱い。※は死亡済み)
1:アシュトン−6
1:オペラ−6※
3:マリア−5
3:クレス−5
3:アーチェ−5
以下、4話登場が13人
改めてアシュトンの人気に嫉妬
薄々感じてたけどやっぱRS勢出番少ないなw
それに引き換え2人しか参加してないのにVP2勢は出番多い。
流石に今ロワ参戦作品の中の最新作って所ですかね?
放送後出番無いのはミカエル、ミラージュ、すずの3人であってる?
特にミラージュとか2話出てるけど2話目は丸々寝てただけだし全然書かれてない。
ラジアータはな。
AAA作品でも地味な作品だから
仕方ないちゃあ、仕方ない
VP2が意外に多いことに驚いた
やっぱりキャラが少ないからか?
後、予約します
ルシオ、ミカエル、ミランダ、洵
VP2は二人しかいないから早期退場で足引っ張るやつがいないんだよね
ま、二人な分平均登場話数の割に存在感は低いがw
>>76 期待。ルシオ頑張れ…他みんなマーダーだけど…
そろそろ死亡数少し抑えた方がいいな
>>76に期待。
ルシオ頑張れルシオ。四面楚歌とはまさにこの事。
ルシオが生き残るところが想像できないwww
>>76 大丈夫、昔から四面楚歌な面子で予約されたキャラは意表をついて生き残るものなのさ……
がんばれルシオ超がんばれ
>>77 今だいたいみんな放送までどのくらいの位置なんだっけ?
別にもっとガンガン殺してもいいとは思うが、絡ませようがない奴は無理して殺さなくても放送までその辺さ迷わせとけばいいかなって気がしてきた
昔のロワじゃ1ターム出番がないとか当たり前だったし
今思ったが、脱出エンド派の書き手さんはそろそろフラグを育て始めた方がいいかもしれない
もうすぐ半分なのにこの状況(変態達やプリシス組はそれぞれ合流したてで、レオンなんざ未だにピン)だとスクロワルート一直線な気が
>>72を見る限り、紋章術・・・というか必殺技とかって自分にとって敵と認識
していなくても攻撃対象になるってこと?
そこはゲームの戦闘とは違う設定?
例えばクロードがコリュウハ放ったとき、うっかり近くにレナがいました
ってなったらレナももれなくあぼーん?
>>82 ヒント:ゲームで味方の攻撃に当たらないのはゲームバランスのため
じゃあ、呪文とかはどうなんの?
レナがスターフレア唱えたらレナもくらう?
あれ戦場全体だよね?
>全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいると判断された人物。
って
>>3に書いてあるだろ?
つまり、全体攻撃に関してはゲームとは別物。
攻撃目標との距離が十分離れていれば術者には当たらないだろうし、逆に密着状態で撃てば術者にも当たるんじゃないか?
保
ルシオ、ミカエル、ミランダ、洵
を予約したものですが
展開に行き詰まり、予約を破棄致します
長いことキャラを拘束したことをお詫び申し上げますOTZ
>>87 報告乙、ドンマイです。
やっぱりあの辺りは難しいよなぁ…
保守
ネタは有るんだが、書く時間がとれない
ほ
保守
1キャラずつでもいいから先に進ませたいな。
もう一度キャラの心理を掴むために読み直してくるか…
忙しすぎて死ねるぜ……
学生時代に戻りたい……
保守代わりに質問なんだが、まだ判明してない支給品と愛用品の出てない生存者っていたっけ?
生存者の不明支給品まとめてみた。愛用品はちょっと分からん。
レナ×2、アシュトン×1、プリシス×1、ディアス×1、ガブリエル×0〜2、アリューゼ×1、
ルシオ×0〜1、ヅラ×1、リドリー×0〜4、ガウェイン×0〜2、すず0〜2
合計7〜18
放置状態
シン×1(破壊された可能性大)、エルウェン×1
ネタはある。放置なあの人とか不明支給品とか使って。
ただお決まりだが時間が無い。言い訳はいかんのだけどなあ。
とりあえず今月中に一本落とすことを目標に頑張らねば。
捕手
出掛ける前に投下
予約破棄してから二ヶ月経過してますがようやく完成した…
96 :
断ち切る思い:2007/09/12(水) 08:53:34 ID:a2YwAp0F0
『さて、次の放送は6時間後の午後6時だ…』
耳障りなルシファーの声でミラージュは目を覚ました。
慌てて放送を聞こうとしたが、もう遅い。
既に死亡者や禁止エリアの発表は終わってしまっていた。
『…では、これで放送は終了する』
「私とした事が…たるんでいましたね」
窓から外を見て辺りを伺った。
恐らくあの時気絶させられてから、ずっと寝ていたのだろう。
ガンツは無事なのだろうか?自分の荷物が無くなっていた事からするに、彼も無事で済んだとは思えない。
ただ自分がこうして生きているのだから、ガンツも生きているかもしれない。
窓から見る限り周囲に危険は無さそうだ。安全を確認したミラージュは外へ出ることにした。
太陽は既に空の真上に来ていた。
荷物を失ったのはともかく、放送を聞き逃したのは大きな痛手だ。
(クリフもマリアも、そしてフェイトさん達も簡単に負けるような人達では無いですが…無事だと信じたいですね)
知り合いの生死は確認できないのは不安だが、目下一番危険なのは自分だ。
禁止エリアが分からないのでは自滅の可能性が出てくる。
もしかしたら今自分がいる所が禁止エリアに指定されているかもしれない。
また、いつ禁止エリアになるのか。それとも既にどこかが禁止エリアとなっているのかそういった事がまるで分からない。
しかしミラージュはこんな窮地でも冷静だ。即座にこの状況の対処法を考える。
地図は今持っていないが、この島の地形及びエリア分けなどは最初に地図を見た時頭に叩き込んでおいた。
前方に郵便局が見える事から、自分が今いるのは「C-04」エリアの筈だ。
そして郵便局の位置から考えるに、ここはC-04内のほぼ中心。
自分の位置を特定したミラージュは、考えを実行に移すべく移動した。
97 :
断ち切る思い:2007/09/12(水) 08:54:16 ID:a2YwAp0F0
彼女が来たのはC-04の北東部付近である。
自分の記憶が正しければ、ここから十数メートル走ればC-05、B-04、B-05と三つのエリアに入ることが出来る。
これなら仮に今いるC-04が禁止エリアに指定されたとしても、どこかしらのエリアに逃げられるという寸法だ。
まさか隣り合う四つのエリアがいきなり禁止エリアにされるという事はないだろう。
恐いのはC-04が禁止エリアに指定され、その瞬間に首輪を爆破される事だが、こればかりは祈るしかない。
ただ禁止エリアで自爆というのは、殺し合いをゲームとするルシファーに取ってはこの上なくつまらない死に方に違いない。
つまりいきなり爆破するのではなく、何らかの形で警告が出され、それに従わなかった場合爆破されるのではないか…そう考えた。
後は誰かがここを通るまで待ち、その人物から情報を仕入れればいい。
そして、待つこと1時間程。
「…いつからそこにいましたか?」
自分の背後に感じる気配にそう言う。
瞬間、気配は殺意に変わった。
振り向くと、剣を持った少女が眼前まで迫り、その剣をミラージュに突き刺さんとしていた。
「くっ!」
体を捻ってその攻撃をかわす。
そして、その小さな体に裏拳を叩き込んだ。
裏拳を受けた少女は空中で一回転してその衝撃を流し、ミラージュから3メートルほど離れた地点に着地した。
その間にミラージュも構えを取る。
相手は少女…スフレより少し下程度の年齢だろう。だが先程の攻撃を見る限り、かなりの実力者だ。油断はできない。
「武器を捨てて投降しなさい。今ならそれで許してあげます」
こんな言葉を聞くとは思えないが、一応忠告しておく。
だが予想通り、その少女はミラージュの言葉など耳にも貸さなかった。
「忍法飯綱落とし!」
飛び上がった少女がミラージュの頭上から剣を振り下ろす。
ミラージュは一歩下がり蹴りで応戦。剣を持った少女の腕を弾き、アッパー気味のパンチを一撃お見舞いすると
もう一度蹴りを決めて少女を吹っ飛ばした。
さらに追撃を決め、一気に仕留めようとミラージュは吹っ飛んだ少女の下へ向かった。
「これで終わりです」
落ちてくる少女にクレッセント・ローカスをぶちかます。
しかし、ミラージュの攻撃は空振りに終わる。
「忍法葉隠!」
彼女の蹴りが少女を捕らえるその瞬間、少女の姿は突如として消え去ってしまった。
「消えた…?」
すぐにミラージュは周辺を見渡した。少なくとも、不意打ちされそうな距離からの気配は無い。
逃げたのだろうか?
そう思いながらも隙を見せないよう、ミラージュはしばらくの間警戒態勢を取った。
98 :
断ち切る思い:2007/09/12(水) 08:55:21 ID:a2YwAp0F0
葉隠を使って辛くも戦闘から離脱したというパターンは、先程の戦闘と全く同じような状況だった。
同じような事を繰り返してしまった事を反省しながら、ミラージュと対峙していた少女―藤林すずは今後の方針を練った。
すずが逃げ込んだのはミラージュとやり合った場所のすぐ近くの民家。このまま逃げる事も可能だろう。
だがすずに逃げるつもりは無かった。
(ミントさん…)
一時間前、死亡者の名を伝える定時放送でかつての仲間の名前が呼ばれた。
楽しかった思い出の中に残る、清楚で慈愛に満ちたあの女性の名が。
優勝を目指す以上彼女を始めとする仲間達の死も覚悟はしていたつもりだ。
しかし、やはりどこかで「生きていて欲しい」という思いを捨て切れなかった。
生き残るためにはそんな思いは捨てなければならない。
頭では分かっていたものの、心の中はミントが死んだという事実に押し潰されそうになってしまった。
このままではいけない。
仲間の死に動揺するなど、忍として、次期頭領として以ての外。
自分は非情になりきらなければならない―。
すずがミラージュを見つけたのは、その時だった。
あの金髪と糸目の男の戦闘の疲れも完全には癒えてないし、あるアイテムの副作用で体力も落ち気味だ。
本来ならここは戦いを避けて夜まで休憩するのが最善である。事実午前中はそのつもりでいた。
だがすずは戦う事を選んだ。
自分の甘さや情、様々な感情。
悲しみに沈んだこの状態で人を殺す事で、それらを捨て去ろうとした。
バッグの中に入れておいたブラッディアーマーを再び装着する。
できればここぞという場面のみで使用したかったが、ミラージュを倒すにはこの鎧が無ければ難しい。
鎧を装着した後、少しの間だけミントに黙祷を捧げた。
かつての仲間に思いを馳せるのはこれが最後。
黙祷を終えると、彼女への未練を断ち切るかの如くすずは民家を飛び出した。
99 :
断ち切る思い:2007/09/12(水) 08:56:06 ID:a2YwAp0F0
(来ましたね!)
やはり少女は逃げていなかった。
姿を消して数分、少女は再びミラージュの前に現れた。先程と違い鎧を付けている。
姿を見せると同時に凄まじい速さでミラージュに襲いかかる。
(速い…でも、見切れない速さじゃない!)
少女が放った斬撃をサイドステップでギリギリ回避。
攻撃後の隙を狙い、ミラージュが踏み込む。
「フラッシュチャリオット!」
ミラージュの鉄拳が一発、二発と息吐く間もなく放たれた。
防御態勢を取る間もなく少女にその連撃が叩き込まれていく。
合計十九発。ミラージュの全力を込めたパンチの雨は、全てクリーンヒットした。
(決まった!)
フィニッシュで少女を吹っ飛ばし、ミラージュは勝利を確信した。
十九発全てに手応えがあった。今の技をまともに喰らえば、あの少女もさすがに…。
しかし次の瞬間、ミラージュの顔が驚愕に染まった。
吹っ飛ばされた少女はノックダウンされるどころか、空中で体勢を立て直し、着地と同時に攻撃を仕掛けてきたのである。
反応が遅れたミラージュは回避行動を取るも、左頬を剣がかすった。
見ると少女はダメージを負うばかりか、体に殴られた痕すらも残ってなかった。
(まさか…!あの攻撃をまともに受けてダメージをほとんど受けてないなんて…)
クリフや多くの魔物を沈めてきたミラージュの攻撃が全く効いていない。
「忍法五月雨!」
今度は少女の連撃がミラージュを襲う。
ステップを取る暇はない。一太刀一太刀身を捻って攻撃を避ける。
だが少女の猛攻は止まらず、ミラージュは次第に後ろに下げられていった。
首輪から声が聞こえてきたのは、その時だった。
携帯で連投回避
101 :
断ち切る思い:2007/09/12(水) 08:59:30 ID:a2YwAp0F0
『禁止エリアに抵触しています。首輪爆破まで後30秒』
その声は、自分が禁止エリアに入った事を警告する音声だった。
どうやら後ろに下がる内に隣のエリアに進入してしまったようだ。そしてのエリアは禁止エリアに指定されていた。
少女の方もその音声に気付いたらしく、攻撃を一時中断する。
一旦間合いを取るべきと判断したミラージュは、後方にバックステップ。
さらに禁止エリアに入り込んでしまうが、30秒あるなら大丈夫だ。充分エリアから出ることができる。
(恐らくここはC-05。禁止エリアに進入すると即座に首輪が爆破するのではなく、30秒間猶予が与えられるという事ですね)
バックステップを取りながら得た情報を整理するミラージュ。
さすがにあの少女も禁止エリアの中まで入ってくる事はないだろう。体勢を整えたら、エリアから出て戦闘を再開して…。
が、ここでまたしてもミラージュの思惑は外れる。
少女は禁止エリア内にいる事を全く気にしないかのように間合いを詰めてきたのだ。
予想外の行動に、今度は回避する暇は全くなかった。
繰り出された攻撃を咄嗟にガードして防ぐ。
ミラージュは気付かなかった。
少女の武器がさっきまで使用していた剣ではなく、別の物になっていた事に。
少女の攻撃を受けた瞬間、ミラージュは体に違和感を感じた。
ガードした腕が痺れて動かない。腕だけではない、体全体が動かなくなってしまった。
「し…しまっ…た……」
支えを失い、立つ事もできなくなったミラージュはその場に倒れ込んだ。
倒れながらも前方を見るが、少女は既に禁止エリアの外へと逃げ去っていた。
102 :
断ち切る思い:2007/09/12(水) 09:01:03 ID:a2YwAp0F0
あそこが禁止エリアに近い事は知っていたが、戦っている間にそこへ進入してしまうのは計算外だった。
だが、そのお陰で今の戦いは勝利できたと言えよう。
もう自分がとどめを刺さなくても相手は死ぬだろうと判断したすずは、C-05エリアから脱出してその場を立ち去った。
C-05から充分離れた所で、すずは装備していたブラッディアーマーを脱いだ。
この鎧は自分へのダメージを完全に防ぐ代償として、装備しているだけで体力が減っていくと説明書にあった。
すず自身しばらくの間効果を知らずにこの鎧を装備していた為、副作用の危険性は身を持って知っている。
だから装備するのはできるだけ避けたい。戦ってもない時にまで着ている必要は無い。
首輪から警告音声が発せられた時、ある戦略が思いついた。
30秒後に首輪が爆発する――つまりここで30秒の間相手の動きを止めれば、相手を殺せるということだ。
そう考えたすずは、使っていたアントラーソードを一時的に捨てて別の武器を装備した。
サーペントトゥース。午前中金髪の男を倒すのに使った武器だ。このナックルには、対象を麻痺させる効果がある。
金髪の男を麻痺させた時も30秒以上は動きを止めていた。この武器を当てることができれば、勝てる。
そして作戦は成功した。
既に麻痺させてから30秒以上経っている。あの女性も既に死んでいるだろう。
自分は勝った。
あの女性に対してだけでは無い、自分自身にもだ。
悲しい時、心が挫けそうな時…そんな状況で、参加者を始末する事が出来た。
もう大丈夫だ。二度と決心が鈍ることはない。
この先何があっても自分は戦っていける。
安心すると、疲れがどっと出てきた。
午前中の戦いだけでもかなり疲弊していたし、今の戦いも楽ではなかった。
元々夜までは休息するつもりだった所で戦いブラッディアーマーも着用したのだ。当分の間行動は避けよう。
近くの民家に身を隠し、すずは食事を取って休憩した。
103 :
断ち切る思い:2007/09/12(水) 09:02:37 ID:a2YwAp0F0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『首輪爆破まで後20秒』
首輪から二度目の警告が聞こえる。
ミラージュの体は痺れたまま動かない。このままでは首輪の爆発で自分は死ぬ。状況は絶望的だ。
だが諦めるわけにはいかない。まだ爆発まで20秒ある。
その間にこの危機を乗り越える方法を考えようと、ミラージュは必死で頭をフル回転させた。
ここに人が来て助けてもらうのが一番確実だが、ここに人が来る可能性は限りなく低い。
一発逆転ができそうなアイテムも無い。
自分で何とかするしかない。何か、何かないか。この禁止エリアから脱出する方法は。
…一つだけ思いついた。
幸いにもその方法を行えるように、今自分は仰向けで倒れている。
上手くいくかは分からないし、失敗する可能性の方が高い。
だがやってみるしかない。
『首輪爆破まで後10秒』
痺れながらも全員のエネルギーを一点に―胸の前に集中させた。
「マイト・ディスチャージ」
瞬間、ミラージュの体と地面の間に爆発が起こる。
その衝撃で彼女は空中へ投げ出された。
麻痺しているため受け身も取れず、地面に叩きつけられる。
そして…首輪の警告が止まった。
成功したようだ。
自分と地面の間で爆発を起こし、自分の体を吹っ飛ばす。
運良くC-04エリアの方向へ飛んでくれたおかげで、ギリギリC-05から脱出できた。
ミラージュは安堵の溜息を吐く。
どうやら麻痺が解けたようで、体を動かすことが可能になった。
起きあがろうとするが、体中に激痛が走る。何とか近くの塀まで這っていって寄りかかるが、立てそうにない。
「…無様、ですね」
自分は何をやっているのだろうか。
開始早々油断して気絶させられ、目が覚めたのは放送後。
荷物は無くなり、禁止エリアも、仲間の安否を確認することもできず。
そして殺し合いに乗った者を止める事にも失敗し、残ったのは自身へのダメージだけだ。
ともかく、この状態では何もすることは出来ない。
しばらくは傷の回復に専念するしかない。
「…本当に、無様です」
これまで何もできずにいて、そして今も何も出来ないのが、たまらなく歯痒かった。
104 :
断ち切る思い:2007/09/12(水) 09:03:47 ID:a2YwAp0F0
【C−4/午後】
【ミラージュ・コースト】[MP残量:70%]
[状態:疲労大、全身に傷痕(特に前の上半身に集中、深い傷もあり)、左頬に切り傷、衣服ボロボロ]
[装備:無し]
[道具:無し]
[行動方針:このゲームから脱出してルシファーを倒す]
[思考1:体力の回復]
[思考2:鎌石村で仲間及び参加者を探す]
[思考3:第一放送についての情報を集める]
[思考4:煙の発生場所(G−3平瀬村分校跡)に行く]
[現在位置:C-04北東、C-05との境界線付近]
[備考:第一放送は聞いていません。(C-05が禁止エリアという事は把握)]
【藤林すず】[MP残量:0%]
[状態:疲労極大]
[装備:アントラー・ソード@VP]
[道具:サーペントトゥース@SO2、ブラッディーアーマー@SO2、ノエルの支給品×0〜2(本人確認)、荷物一式×3]
[行動方針:生き残る]
[思考1:次の放送まで休息]
[思考2:暗くなったら行動開始]
[思考3:自分が死んだ場合はクレス、チェスター、アーチェ、クラースの誰かに優勝して欲しい。そのため四人の殺害には消極的]
[現在位置:C-04中心部 民家の一室]
以上です。
麻痺状態で技が使えるのかって辺りに疑問を感じるんで、その辺の判断をお願いします
>>104 GJ!
近くにチャリンコマスターがいるのにこの状況はやばすぎるw
いや、両者とも疲労困憊でろくに動けないことが逆に幸いなのか?
麻痺はSO2だと完全に行動不能だったけど、SO3の場合はどうだったっけ…?
それと、読んでいて気になった点が二つほど。
・ミラージュはフラッシュチャリオットを使えないのでは?
・マイトディスチャージを仰向けで発動したら、身体が地面にめり込む気が…
上記二つ以外は特に問題無いかと。
何はともあれ、投下乙でした。
>>104 超乙!
ミラージュ死ぬかと思ったら、また生き残ったかw
麻痺状態での技使用はどうなんだろ……
SO3の場合も行動不能になってたから正直厳しいかも
>>105 確認したらミラージュはフラッシュチャリオット使えませんでしたね。すいません。
あと仰向けの部分はうつ伏せの間違いでした。恥ずかしいミスばっかだ…。
>>106 麻痺状態でのスキル使用はやっぱ厳しいですかねえ
自分もそこが一番微妙だと思ってたんですが…
>>107 俺は本当はそれぐらい良いと思ってるけど、他の人の意見はどうなんだろうね。
それにしても過疎化が進行してる気がする
と、肝心の理由を書き忘れてた。
やっぱり麻痺の効果が強すぎると、このままいけば麻痺=負けになっちゃうからだな。
麻痺してもまだ反撃の余地があったほうが展開に幅が出ていいかと思って。
>>104GJ!
ガチで戦ってこういう殺し方もあるのかと正直驚きました。
まぁ結果的に仕留め損なっていましたがw
麻痺に関しては自分も特に気にしないけどなぁ。
流石に麻痺ってて体を動かすような技はNGだけど、放出系って言ったら良いのかな?
そのての技は体を動かさなくても気を練れればできそうだし。
何より
>>109さんに同意で展開に幅が出来るってのはいいことだと思いますし。
>>104 GJ
すず、詰めが甘い、甘すぎるぞ。
麻痺に関して、俺は問題ないと思うよ。
ちなみに、ブルースフィアの麻痺は行動不能ではなく動きが遅くなるだけ。勿論麻痺中も技を使用できる。
とりあえず麻痺に関しては「頑張れば少しは動けるが、歩く・物理的な攻撃はほぼ無理」
という感じでいいのかな?
俺は日常でよくある足の痺れが全身に回った状態を想像してるんだがw
113 :
デフォルト名無し変更論議中@専用スレ:2007/09/13(木) 15:06:17 ID:7izAUy2c0
>>104 久しぶりのSSにGJ
ミラージュがやっと活躍したな
不遇だったから本当にミラージュ好きにはたまらんよ
麻痺に関しても特に問題ないと思います
SSでうまく表現するとか
「頑張れば少しは動けるが、歩く・物理的な攻撃はほぼ無理」
見たいな感じだったら
ちなみにこの麻痺ってどれくらい残るの?
次ぎ書く場合気になりそうなところだけど
麻痺については容認して下さる方が多くて良かったです。
多分ダメだったらミラージュには死んで頂く事になってたので…。
とりあえずしたらばに修正版をあげておきました。
修正個所は
・ミラージュの技をフラッシュチャリオット→インフィニティ・アーツへ変更、それに伴い一部の文章を修正
・ミラージュの倒れ方を仰向け→うつ伏せに修正
・すずの状態欄に備考の欄を追加
の三つです。
wikiの方も直しておきます。
>>114 以前ロウファが麻痺になった時は「思ったよりも早く痺れから回復した」という描写があったんで
体が全く動かせない状態はそんなに長くないと思います。んで、自分の場合は「30秒〜1分程度」と考えて書きました。
ただ動かせるようになっても多少は痺れが残ってるとか、そんな感じでしょうか。
>>116了解です。
全快は大体30分から1時間ぐらいを目処でいいですよね?
今書いてる人いる?
初期から書いてる人とかまだどんくらい残ってるんだろ
>>118 一応初期は書いてたけど、最近はさっぱり書けてない。
っていう人がここに一人。
>>118 同上。
最初の頃に1話だけ書いたが、その後はちょっと尻込みしてな…
>>118 ネタはあるけど書く暇がない初期書き手ならここに
大学入ったら余暇たくさん出来るなんて都市伝説だったのね……
初期ではないけど1スレ目の途中から書き始めて、今もたまに書いてる。
今は断片的にやりたいネタはあれど、上手くつなげられなそうで書けてない。
>>118 同上。
今はプロットまでは出来ているが、なかなか筆が進まないでいる。
保守
ラジアータって小説出てたりする?
未プレイでRSのキャラ絡みの話が書けないから読んでみようと思うんだけど…。
複数あったらオススメも教えて欲しいんですが。
申し訳ないが小説は分からぬ
マンガは人間編妖精編両方出てるよな
久々だけどガウェイン、偽ブレア予約
127 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 10:36:37 ID:f9Ravg/u0
>>125 全部で3冊売ってある。
ただ、出番がないキャラがいたりするし、
妖精編は原作と結末が違う。
>>126,
>>127サンクスです。
小説でも出きれてないキャラがいるようでは漫画も厳しそうですね。
やっぱゲームの方やるべきですかね。
>>126久々に予約ktkr!マーダーとジョーカーの絡み期待してます。
>>126 期待してます。
ブレアは今回もうまく立ち回れるのか…?
保守代わりにいくつか質問。
1.会話は普通に別作品の連中とも出来てるけど、別作品の文字は読めるのかな?
SO2とSO3はまぁ、読めるとして問題がないけど、VP世界の文字をRS世界の連中は読めたりするんでしょうか?
2.主催打倒エンドの場合当然ルシファー倒して終わるんだろうけど、ルシファーは今どこにいるの?
やっぱSO3みたく沖木島とは別次元の世界にいるんでしょうか?それとも沖木島と同じ次元世界の別の場所?
今考えてる話でここどうなってるんだろうと思った事なんですが解る方お願いします。
1.その作品固有の古代文字(TOPでアーチェしか読めなかったやつ)とかなら他作品キャラは読めなさそうだけど
道具に添付されてた説明書を全員が読めてるわけだから、基本的に共通で理解できる文字が使われているのでは?
ぶっちゃけ日本語とか英語とか…
2.それは書き手さん任せかと。
最初に描写したもの勝ちとは言わないが、その展開に無理が無ければそれが正式採用されると思う。
二つとも個人的な意見でスマソ
>>125 亀だが、ラジアータは仲間が100人以上仲間になるので
小説や漫画でカバーできるはずがないので、本編をやるのを
おすすめします。中古なら安いし片方のルートを
12時間ぐらいでクリアーできるので。
>>131そうですか。では、考えているのがあるので書いてみようと思います。
というか後は推敲とその案が間違ってないか検討するぐらいなんで明日辺りには投下できそうです。
と言うわけで、クリフ、ルーファス、ミラージュ、すずを予約します。
ちなみに
>>125は自分なんですが
>>132そうですね。思ったより短いみたいだし手を出してみようと思います。
ただ明後日やりたいRPGが出るんで来月以降になりそうです。
>>133 超期待してるんだぜ
あと今更ながらwiki編集してくれてる人超乙
辞典にクレスのダジャレの項目が出来てるのに吹いたんだぜ
予約期限切れてるのに放置して申し訳御座いません。
完成したので投下します。
彼は恐らく生きている。
エイミにグールパウダーを飲ませ襲わせたが、参加者中屈指の実力を持つレザード・ヴァレスがやられるだろうか。
先程見た巨大な電龍、恐らくは彼の魔法。
餌食となったのはエイミだろう。
そういえば一緒にシンとかいう魔物がいたが…まあ、そいつはどうでもいい。
レザードが生きてるとなるとブレアには一つ問題が起こる。
彼は自分が殺し合いに乗っている事を知っている。
できるだけ正体を隠しながら行動したい自分としては非常に都合が悪い。
事の顛末を見ずにその場を脱してしまったのは少々浅はかだったかもしれない。
レザードは自分から情報を得ようとしていたから、こちらが不利になるような事はしないとは思う。
自分が死んだら情報を引き出す事も出来ないのだから、向こうがこちらを殺すならもう一度会ってからにするだろう。
しかしその事も踏まえても、マーダーである事をバラされてしまう危険性もある。
これを避けるにはどうしたらいいだろうか?
ともかく、早い内に他の参加者に会っておきたい。この周辺で人が集まりそうな箇所は…。
鎌石村はまずい。向こうの方角にはまだレザードがいる可能性がある。
となると、ここから南下して鎌石村小学校に向かうのが妥当だろう。
周辺に人が集まりそうな箇所は他に無い。
そう決めて、ブレアは鎌石小中学校へと向かった。
「誰もいないわね…」
鎌石小中学校に到着し、校舎内を一通り見て回ったが参加者は一人もいない。
「ハズレだったかしら?」
地図上でも目立つように記載されている以上、人が集まると予測していたのだが。
すぐ南のエリアが禁止エリアになった事で、この場を去ったのかもしれない。
さて、これからどうするか。
延々とここにいるのはいささか効率が悪い。
これから参加者が来る可能性も決して低くないが、周辺に禁止エリアがある事を考慮すると目指そうとする者も少なくなるかもしれない。
考え込みながらふと窓の外を見ると、校舎の方にやって来る人影が見えた。
しめた。参加者だ。
すかさず外から見つからないような位置に隠れて、参加者の様子を伺う。
剣を持った、赤い髪の壮年の男だ。
(あの風貌…確か、ガウェイン・ロートシルトという男だったかしら?)
情報によれば、なかなかの実力者だったはず。
ここで1対1で勝負を挑んでも、殺すのには骨が折れそうだ。
さらにガウェインはかなり周辺を警戒している様子が見られる。あれでは姿を隠しながら近づいたところで、すぐに気付かれてしまう。
よって、不意打ちも難しい。
(ま、まだ殺すつもりはないけどね)
元々次に会った参加者を殺そうとは考えていなかった。
今は直接参加者を減らす事よりも優先すべき事がある。
それにただひたすら殺すだけでゲームがスムーズに進むとは限らない。
ガウェインが校舎の近くまで来た事を確認すると、ブレアは校舎を出て彼の下へ向かった。
ブレアが姿を現すと同時に、ガウェインは剣を構えた。
さらに殺気を滾らせてこちらを睨んでくる。
(あらあら、随分とやる気ね)
ここでこちらが戦う構えを取れば、即座にガウェインは斬りかかってくるだろう。
ブレアは戦う素振りを見せぬよう、あえて隙だらけに見えるように振る舞った。
「ああ大丈夫ですよ、私はここで殺し合うつもりはありませんから」
まずは非マーダーを装う。だがガウェインは構えを解かず、殺気も全く消えない。
(こっちが非好戦的な態度を見せても殺気は消えない…この男はゲームに乗ったとみてよさそうね)
できればゲームに乗っていない者の方が扱いやすくて良かったのだが仕方ない。
「まあ、貴方がゲームに乗ってようが乗ってまいが関係無いことです。でもよければ、少し私の話を聞くつもりはありませんか?」
「…どういうつもりだ?」
ガウェインが初めて口を開く。
こちらの話を聞くつもりになったようだ。心の中でほくそ笑む。
「私の名はブレアと言います。以後よろしく」
「お前の名前などどうでもいい。用件を手短に話せ」
剣を構えたまま相変わらずブレアを睨み付けるガウェイン。だがほんの少しだけ、先程より警戒心が薄れたように見える。
「せっかちね。ま、私としても長話する気は無いし…」
ブレアは語る。自分の立場、そして目的を。
ブレアがガウェインに話した事柄は3つ。
一つ目は、自分が主催者ルシファーの妹だという事。
二つ目は、自分と面識があり、仲間である(あくまで『本物のブレアは』だが)フェイト達の事。
三つ目は、自分はこの殺し合いを成功させる為に送られた『ジョーカー』だという事。
聞き終わったガウェインは半信半疑だった。
怪訝な表情でブレアを見つめる。
「…仮にお前の言う事が全て真実だったとしよう。何故、それをこちらに話す必要がある?」
ガウェインからしてみれば、ブレアがそんな重要な事を自分に話す意図が掴めない。
真実か、ウソか。どちらかと言えば狂言である可能性が高いとガウェインは考えた。
「信じる信じないはそちらのご自由に。貴方に身分をバラしたのは、少し私に協力してもらおうと思ったからよ」
「協力だと?」
「ええ。協力と言うには、少し大袈裟な表現かもしれないけどね」
「話してみろ」
「簡単な事よ。レザード・ヴァレスという人物が殺し合いに乗っていると、他の参加者に広めて欲しいの。
そして私が殺し合いに乗っていないとも。とりあえずはそれだけよ」
用件は予想外に単純でシンプルなものだった。
協力しろ、などと言うからには共闘させられるか、それに近い事を強要してくると思ったのだが。
「分からんな。お前に、そして何よりこちらに何の得があるという?」
「言ったでしょう。私の目的は殺し合いを円滑に進める事。参加者を混乱させる事ができればいいのよ」
「…」
「こちらの言う事だけを押しつけるつもりはないわ。そうね…貴方は殺し合いに乗っているようだし、
『ガウェイン・ロートシルトは殺し合いに乗っていない』と他の参加者に会ったら言っておくわ。これなら貴方も動きやすくなるでしょ?」
再び黙るガウェイン。
対するブレアは、あくまで余裕の表情を崩さない。
究極な話、ブレアとしてはガウェインがこの話を断っても構わなかった。
『レザードが殺し合いに乗っている』この話をガウェインに聞かせれば充分だったのである。
レザードはブレアが殺し合いに乗っている事を知っている。
このままでは色々な参加者の間にその情報が知れ渡ってしまうだろう。
これを防ぐにはどうしたら良いか?
答えは簡単。
先に「レザードはマーダーだ」という情報を広めてしまえばいい。
レザードがマーダーだと認識していれば、彼の言う事など誰も信じない。
お世辞にもあの男、他人から信用されやすいようには見えない。元々知り合いというエイミがあの態度だったのだから。
対してこちらには自分を『本物のブレア』と思っているであろうフェイト達がいる。
どちらが多くの参加者から信頼されているかは火を見るより明らかだ。
例えガウェインがこちらの申し出を断っても…。
彼がこの情報を他の参加者に広めるであろう事は予想できる。
ゲームに乗っているなら、殺し合いをスムーズにしたいという考えは自分と変わらないだろうから。
「勿論、私にとって優勝はどうでもいいから、もし私と貴方が生き残ったなら貴方に優勝は譲るわよ?」
そう言ったら、ガウェインの表情が一瞬変わった。そして
「…自分が生き残るつもりはない」
と小さく呟く。
(生き残るつもりがない?)
それなら何故殺し合いに乗るのか?…考えられる理由は、他の特定の参加者を生き残らせる為だろうが…。
だが彼の息子であるガンツ・ロートシルトは既に死亡している筈だ。他にガウェインが生き残らせようとする参加者は…。
少し考えるが、さすがにそこまでの情報はブレアには無かった。
「他に生き残って欲しい人物がいるという事?名前を教えてくれれば、その人物が死なないようにこっちも考えるわよ?」
問いかけるが、ガウェインは無言のままだ。
(さすがにそこまでは信用しないって事ね)
引き出せる情報は引き出しておきたかったが、変に深入りして余計警戒される訳にはいかない。
ここらが潮時ね、とブレアは判断した。
数分後、ガウェインはブレアと別れ鎌石小中学校を後にした。
結局、彼はブレアの提案を了承する事にした。
自分はブレアは殺し合いに乗っておらず、レザードという人物は殺し合いに乗っているという情報を広める。
さらにガウェインはこれまで自分が戦ってきた相手の特徴を伝えた。
そして彼らが殺し合いに乗っており、かつ自分が殺し合いに乗っていないという情報をブレアが流す事になった。
ブレアを信用したわけでは無い。
だから自分が生き残らせるべき人物の名前は口にしなかった。
ブレアが約束通り自分が殺し合いに乗っていないと伝える可能性も低いだろう。
それならば何故彼女の案を承諾したのか?
それは例えブレアが先程の情報を広めなくても、それ以上のメリットがあると考えたからである。
ガウェインとしても殺し合いが加速する事は願ったり叶ったり。
特にレザードという男は相当な実力者であるようだし、彼の包囲網が築けば直接相手にしなくて済む。
自分一人で残りの50人余りを相手にするのはどう考えても厳しい。
ならば他の参加者同士で潰し合ってくれた方が遥かに生き残れる可能性は高い。
唯一の不安はリドリーが巻き込まれてしまう可能性がある事だが…彼女の強さもなかなかのものだし、そう簡単には死なないだろう。
しかしガウェインの表情は暗い。一つ大きな後悔をしたからだ。
昼の放送…そこで呼ばれたのは、息子の名前だった。
ガウェインは名簿を見ていなかった。
始めに集められた場所でリドリーの姿を確認し、彼女を生き残らせると決めたガウェインにとって
名簿を読むことなど意味の無い事だったからだ。
だが気付くべきだった。
自分やリドリーが殺し合いに呼ばれたのなら、他にも知り合いがいる可能性があるという事を。
もし最初にガンツがいた事に気付いていれば…もっと、別の道を歩むこともできたかもしれない。
殺し合いに乗るという道以外に、生き残る方法を模索していたかもしれない。
全てにおいて、気付くのが遅すぎた。
――あれも騎士の端くれ。きっと弱い者を助け、その命を散らしたのだろう。
ガンツが参加している事に気付かなかった事は悔やんでも悔やみきれない。
しかし過去は変えられない。
自分に出来ることは、最初の意志を貫き通す事。
ここで止まってしまったら、気付かないまま死なせてしまった息子にも申し訳が立たない。
もう迷うつもりは無い。
親友の息子が参加している事を知っても、ガウェインの決心は揺るがなかった。
鎌石小中学校に残ったブレアは今後の方針を思案していた。
鎌石村の方はガウェインに任せた事だし、自分は他の場所を目指してみよう。
ここから一番近いのはホテル跡。ガウェインの話では、ここで戦闘したという事だが…。
そこへ行ってみるのが面白そうだ。
そう思ったが、時計を見るともう放送まであと僅かとなっていた。
ここは放送を待ってから行動するのが正しい。新たな禁止エリアなどが分かれば作戦も立てやすくなるであろう。
「ガウェインは役に立つかしら?」
彼はゲームの成功には欠かせない『マーダー』。できるだけ多くの参加者を殺してもらいたいものだ。
最も向こうもこちらを完璧に信用してはいないであろうが…。
ガウェインから聞いた、彼と戦った四人の特徴。
恐らくは殺し合いに乗っていない連中だと推測される。
もし彼らが殺人鬼だと言われたらどうなるだろうか?
彼らと会った者は情報の相違に混乱し、疑心暗鬼に陥るだろう。
彼らと親しい者はその所業を聞き、嘆き悲しむだろう。
そんな光景を思い浮かべるだけでブレアの顔には笑みが浮かぶ。
『勿論、私にとって優勝はどうでもいいから、もし私と貴方が生き残ったなら貴方に優勝は譲るわよ?』
ふと、ガウェインに言った言葉を思い出す。
(ルシファー様はどちらを喜ぶかしらね)
自分の優勝と、ガウェインの優勝。
勿論予め仕込んでおいた者より、他の参加者が優勝した方が喜ぶだろうが。
…すると、私は?
さっきは優勝は譲ると言ったが、それは自分が死ぬという事か?
確かに自分は優勝などどうでもいいと思っているが、優勝できない者に待つのは『死』のみ。
…全く問題無い。
私はルシファー様の忠実なる僕。あの方こそが自分の全て。
彼が死ねと言えばすぐに死ぬ覚悟は出来ている。
ルシファー様が作り上げたシナリオで私が死ねるのなら、それで満足なのだ。
そんな事を考える意味など無い。
それよりも早く参加者を殺したい。
エイミにグールパウダーを飲ませる事には成功したが、まだ直接自分で殺した参加者はいない。
放送まで、拷問の方法でも考えようかしら?
教室の中に、小さく不気味な笑い声が響く。
自分の中に渦巻いてくるどす黒い感情が、ブレアには溜まらなく心地良かった。
さるさん食らったんで、状態表はしたらばに投下しておきます
ちょっとロワ用語使いすぎかなとも思ったんですが、まあジョーカーだしいいかなと…
何か矛盾などありましたらよろしくお願いします
>>144新作ktkr!GJ!
そういえば今の段階では参加者間でのガセ情報の流布がされてなかったんですよね。
今後の展開に幅が持たせられるようになったんじゃないでしょうか?
それと予約
>>133なんですが、禁止エリアで行動させてしまうという初歩的なミスが見つかったんで
そこ修正しますんでもう2,3日ください。
>>144 新作乙!
いやー、ブレア殺されなくてよかったよかった(何
思わず手に汗を握っちまったぜ。
>>145 了解、焦らずにどうぞ〜
やっと休みがとれた……
>>144 投下乙!
果してガウェインさんは、ちゃんと誤情報を広められるのだろうか
ガウェインさんは地味に書き難そうなキャラクターだからな…
未だに放送後動いてない、というか動かされないミカエルが悲しくなってきた…
…いや、逆に忘れられているということは生存フラグか?
ミカエルの話も考えてるんだけど、他の奴の話の方が書きたいんだw
そっちの話も全然書けてないけど…
ミカエルは自己リレーになるからパス。
ソフィア、レナス、レザード、ブラムス予約します。
予約お疲れさまです。完成するのを期待しながら待っています。
最強(狂?)パーティktkr
期待してます。
155 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/11(木) 02:12:53 ID:WrPQPolY0
自分より前の人が予約していなかったら。
クロード、チサト、ガルヴァドス、チェスター、ボーマンを予約します。
「予約していなかったら〜」じゃなくて、予約してないかどうかくらいは確認しておくように。
まあその5人は予約されてないけど。
あと予約の時は鳥必須だよ。とりあえずwktkしとくぜ。
予約もそうなんだけど、63話の最後で
クロードは知らなかった。
今逃げてる方向にはそのアシュトンがいて、その彼が相当殺気立っていることを。
ってリレーのための伏線あるのに、伏線放置しちゃうのはよろしくないと思う。
まだ伏線放置すると決まった訳じゃないんじゃない?
方向にいるだけで遭遇すると決まったわけじゃないからな
森ん中ではそう簡単に人と遭遇しないだろう
まあ実際必ずしも伏線回収しなきゃならんってわけでもないしな
そういうのを義務付けたらリレーの展開がかなり限定されることになるし
何にせよ鳥は必須だぞ
ゴメンヌ。
今俺が書いてんのにアシュトンの伏線ねーや。
鳥とはよく解からんがこれで良いのか。
鳥は名前欄に#を打って、その後に適当な単語や文字列を打ち込むんだ
こんな感じか?
OK。
ただ伏線を全て回収する必要は無いが、最低限今までの話とかと矛盾が無いようにな。
「ん?あれは……」
その男は森を歩いている最中だった。前方に三つの人影があるのに気づいた。
「あら?あれは…」
その女性は負傷した仲間を手当てしている最中だった。前方に一つの人影があるのに気付いた。
「チサト!」
「ボーマン!」
二人はほぼ同時にお互いの名前を叫んだ。
二人はかつて生死をともにした仲間だった。
『だった』というのは、一人はすでに後戻りできない道に進んでしまったためだ。
もう昔のように一緒に笑いあえる仲にはなれない道に。
だが、その後戻りできない彼はいきなり襲い掛かるほど馬鹿では無かった。
自分と互角近い格闘技の腕前を持つ女性。
見た限り負傷しているとはいえ、巨大で凶悪そうな化け物。
隙がなく、辺り万遍に殺気を振りまいてる、おそらく相当な使い手であろう男。
この三人と戦えば、自分の勝利が限りなく薄いであろうということを、
ボーマンは瞬時に判断した。
「……良かった。ようやく仲間を見つけたぜ。ま、聞くまでも無いだろうが、
お前はこんなゲームに乗っちゃあいないよな?」
「当ったり前でしょ!!あ、安心して二人とも。この人は味方よ。信頼できるわ。一見胡散臭いけどね。
…………それと、ボーマン、あなたに伝えなきゃならないことがあるわ」
「……俺に伝えなきゃならんこと?」
「ええ……」
# # #
「クロードが!?」
「ええ。信じられないでしょうけど……」
チサトから今までの経過とクロードがこのゲームに乗ったと言う事を聞かされた。
信じられなかった。
クロードはかつての自分たちのリーダーだ。
ボーマン自身も、自分の目でクロードという人物を見て判断し、自らの命を任せるに足る人物だと
思ったからこそ、リーダーと言う座を任せ、一緒に行動をしていたのだ。
その彼がこのゲームに乗った?
信じられない。
だが、チサトが嘘を言ってるとも思えなかった。
「間違いないか?」
「ええ、本当よ」
「しかし、お前はそそっかしいからな。
クロードがただ単に紛らわしい行動をしたから勘違いしただけというのも有り得る」
「そそかっしいって何よ!それにクロードは私達に技をぶつけてきたのよ!勘違いなんかじゃないわ!」
「そうだ!!あの野郎は!学校を燃やしやがった!俺も見たぜ!
あの野郎がその女を殺そうとしてんのを!あの野郎が!娘を殺したのを!」
チサトの勢いの良い剣幕にのって、チェスターも溢れんばかりの大声でクロードのことを罵った。
「……だが、クロードは『誤解だ』みたいなことを言ってたんだろ?」
「バッカねぇ。それはクロードが私達を油断させようとした言葉でしょ?」
「馬鹿はお前だ。クロードがお前達に優しく声をかけて近づいてきたならまだしも、
いきなり技をぶつけて、その相手に向かって、『誤解だ』なんて言っても仕方がないだろう?
仮にクロードがヤル気だとしたら、技をぶつけた瞬間、相手に自分はヤル気だと認識させるわけだからな。
その男の話も同様だ。もしクロードが学校を燃やしたとしたら、それを指摘されて、『誤解だ』なんていうのは
明らかに不自然だ。普通『見てたのか』とか言うはずだろう?
なのに追っても来なかったなんて、やはり不自然だ。
その男に聞く。本当にクロードが学校に火をつけたのか?
チサトに聞く。本当にクロードは殺気を持って向かってきたのか?」
「うっ……で、でも、それだけじゃあクロードがゲームに乗ってないって言い切れるわけじゃないじゃない!」
「もちろんそうだ。だから俺はこれからクロードに会ってみることにする」
「「「!?」」」
この言葉にチサトもチェスターも今まで事の成り行きをみていたガルヴァドスも、驚愕の色を示した。
「もし、次の放送で、俺の名前が呼ばれたら、クロードはやはりゲームに乗ったと断定してくれていい。
だが、俺が『信用できる』と判断したら、ここに連れてくる。それでいいな?」
このボーマンの案に二人、主にチサトは猛反対した。
自分達が隠れながら見ていく、と言ったが、ボーマンは受け入れなかった。
リアルタイム投下ktkr!
支援だ!!
ガルヴァドスの看病と、疲労しきったチェスターを守る存在はお前しかいない、
と言われては断りきれるはずもない。
代わりというか、ボーマンはチェスターにエンプレシアを譲り受けていた
「悪ぃな」
「気にするな。どうせ俺には使い切れん」チェスターはそうはき捨てるように言った。
火傷用に調合した薬をボーマンはチサトに渡した。
「塗り薬だ。痛みも和らぐだろうから二人に使ってやんな」
「わかったわ。………死なないで」
「大丈夫だって。俺の見込みじゃクロードがこのゲームに乗った可能性は半々って所だ。
それに俺は剣技じゃあともかく、格闘技はパーティー最強を自負してんだぜ?
なぁにニーネの顔も見ずに死んでたまるかってんだよ」
「ええ……。そうよね、ニーネさんと、もう一回会わなきゃね」
(さぁて、どうするかな)
森の中を、チサト達に教えられた方角に従い、ボーマンは歩いていた。
(果たして俺が本当にクロードを殺せるかどうか…)
チサト達に言った事はほとんど本当だ。
嘘なのは、クロードがゲームに乗っていよういまいと殺そうという事だけ。
装備等の総合戦力を考えれば、クロードがヤル気だとしても今の自分にそう分は悪くないと思っている。
だが、自分はまだ迷っている。
チサト達三人を見たとき、戦力差の落胆とともに、どこか自分が安堵したのを覚えている。
やはり、自分はまだ怖いのだ。かつての仲間をその手にかけることが。
だが、迷ってばかりもいられない。
クロードがゲームに乗っていなかったらともかく、乗っていたらもはや迷っている暇などない。
だが、一方で。
クロードがヤル気だったら、自分はクロードを殺せる覚悟ができる。
だが、もし乗っていなかったら……果たして自分は彼を殺せるだろうか?
ボーマンは、自分がクロードがどっちの状態を望めば良いのか解からず、悶々としたまま、
森の奥深くへと消えていった。
一時中止です。
時間が遅くなったので、続きは明日か明後日あたりに投下します。
予約はこのままということでお願いします。
もしかして、リアルタイムで書いてる?
基本的に投下する時は完成したものをコピペしてくるのが望ましいんだが。
今のところ誤字はなさそうですけど、次の投下の分とかはワードやメモ帳を使って書いて推敲したほうがいいんじゃないんでしょうか?
予約すればある程度は日を見てくれるから、一旦書いてみたのを見直し、訂正する意味でもそっちをオススメします。
いきなり流れを切って悪いんだが
もう一度リベンジします
ミカエル、洵、ミランダ、ルシオを予約
>>172期待しています。
リベンジ頑張ってください。
結構予約来てるなあ。どの作品にも期待大。
ルシオは果たして生き残れるのか!?
>>172期待しています。wktkで待とうと思います。
長い間放置していてすいませんでした。何とか凡ミスを修正したんで投下します。
176 :
待ち合せ:2007/10/12(金) 19:48:16 ID:hcMkJmpS0
二人の男が地面に座り込み昼食を摂っていた。
一人はすらっとした長身に緑色の長髪、切れ長な瞳が印象的な青年。
もう一人はまばゆい金髪を短く刈り込んだ大男だ。
「で、これからどうするわけ?」
一足先に食べ終えた緑髪の青年ルーファスは、大男の方クリフに尋ねた。
「どうするって嬢ちゃん達はどこに行くか聞いてなかったのか?」
支給されたブロック状のレーションを食べる手を止めクリフは答えた。
「あぁ、あの二人なら鎌石村に行くって言ってたな。凶悪な魔物がいるから止しとけって言っといたんだがな」
午前中に遭遇した魔物の顔を思い出す。
言葉を話す事ができたから高位の魔物であることは間違いない。
「なら、俺たちもそこに行くぞ」
最後の一口を飲み下したクリフはそう告げた。
「正気か?今やばい魔物がいるっつったばかりじゃねぇか」
ある程度そんな返事がくると予測はしていたが、あの魔物とまた遭遇すると思うとあまり気乗りがしない。
「だからだよ。俺の読みだと嬢ちゃんの能力はルシファーを倒すのに不可欠だ」
頭上に?マークを浮かべるルーファス。
「あのソフィアがか?正直ルシファーって野郎を倒す切り札になる力は無さそうだけどな」
と少し前に別れた童顔少女の顔を思い出す。
「まぁ、これも勘の域をでないんだがな。ルシファーは今どこから俺達を監視してると思う?少なくともこの島にはいないだろう。
以前戦った時そうだった様に別の次元世界から監視してるに違いねぇ。
そこで、嬢ちゃんの力『コネクション』の出番だ。あの力は別次元への入り口をこじ開けることができる。
ルシファーの声で放送があったから、少なくとも奴の居場所とこの島は完全に隔離されてねぇ。
この島のどこかに接点となる場所があるはずだ。そこに連れていければ野郎の居場所に行けるわけよ。
だがまだ問題がある。別次元にいるルシファー側からすれば俺たちは紙に書いた絵のようなもの。
その存在次元を合わせるために俺の仲間の一人、マリアの『アルティネイション』の力がいる。
この二つが合わさればルシファーの所に殴り込みに行けるって寸法よ」
確証は無いが、ルシファーの性格を考えるにFD空間の様な所からあれこれ干渉しているのは間違っていないはずだ。
仮に同じ次元世界から監視していたとしても放送用の電波を逆探知すれば、ルシファーの居場所は簡単に判明できる。
通信機とソレを改造できるような工具、然るべき知識を持つ人間が揃えば容易に可能だ。
ここから判明した場所への移動手段に心当たりがないが、まぁ何とかなるだろう。
「いまいちわかんねぇけど、その二人が揃えばこの島から出られるんだな?」
「まぁ、そういうこった。但し、能力を制限しているこの首輪を外さないとな。
ルシファーもバカじゃねぇ。あの二人の力は首輪のせいで発揮出来ねぇはずだ」
自分の首を指差し告げた。
「お前以外と考えてるんだな。勢いに任せて行動するタイプに見えたんだが」
肩をすくめ立ち上がると、ルーファスは体を鎌石村の方向に向けた。
「けっ、言ってろ。とにかくさっさと鎌石村に行くぞ」
クリフも立ち上がり、北へ向かい歩き始めた。
177 :
待ち合せ:2007/10/12(金) 19:51:10 ID:hcMkJmpS0
謎の少女との戦いで負ったマヒが軽くなったミラージュは立ち上がると辺りを見回した。
(とにかく、隠れないといけませんね)
一応身動きはとれるが、戦えるコンディションでないのは明確だ。
先程戦った少女がどこに向かったかはよくわからないが、まだ近くにいることは間違いない。
(狭い建物だと鉢合わせたらやり過ごすのは困難。ならば…)
記憶に焼き付けた地図を思い出す。
(近場に民家以外の建物…。郵便局に、役場がありましたね。少なくとも民家よりは広いでしょう)
どっちにするか思い悩むミラージュ。
(さっきの少女もアレだけ動いたのだから近場で休んでいる可能性の方が高いですね。ならば役場の方に隠れましょう)
太陽の位置と脳内地図を頼りに役場のほうに歩き出した。無論周囲への警戒は怠らずに。
彼女は役場に向かう間に見かけた民家でルーズリーフの束とボールペンを見つけた。
(ただ隠れているだけでは、現状を打開出来ませんね。少しでも手を打っておかないと…)
彼女は目についた民家のドアにクォークで使う暗号文で、自分は行動するには厳しい状況にあって役場に潜伏しているというメモ書きを挟んだ。
共通語で書こうとも思ったが、それだとゲームに乗っている人間もおびき寄せてしまう。
暗号では、わかる人間はマリアとクリフに限られてしまうが、みすみすそういった輩に居場所を晒すわけにはいかなかった。
だが自分の字であることはフェイト達にも伝わるはず。そうすれば村の中を捜してくれる可能性が高い。
皆の安否は不明だが、そう簡単にやられるはずはない。
(やれるだけの事はやりました。後はみんなを信じて待つしかありませんね)
目的地に着くと奥の一室に身を潜めた。西の空は茜色に染まり始めていた。
178 :
待ち合せ:2007/10/12(金) 19:53:00 ID:hcMkJmpS0
太陽が沈み始めてきた。
ミラージュとの交戦の後、近くの民家で仮眠をとっていたすずは目を覚ました。
もうすぐ放送開始の時間だ。今のうちに付近の参加者を補足しておけば、放送時の隙を突いて殺す事も容易いだろう。
朝、そして昼での戦いの疲れは完全ではないがとれている。
これからは闇に生きる者達の時間だ。幼い頃から叩き込まれた殺人技術にとって闇はむしろ味方となる。
当初の予定通り行動に出る事にする。夜陰に乗じて参加者を始末する為に。
(先ずはこの辺りに人がいないかどうか調べよう。見つけ次第隙あらば…)
休んでいた民家のドアを開け、外に出ようとした時カサリと一枚の紙切れが地面に落ちた。
(ここに入った時はこんなもの無かった、となれば休んでいる間に…)
紙片には何か書かれている。それを拾い上げ内容に目を通す。
(なんて書いてあるかは読めないけど、普通に考えれば誰かが仲間に宛てて書いた物。
内容は…、定時放送があるから自分の安否を知らせるものじゃない。
となれば落ち合う場所を記した物。間違いない。近くに誰かいる。場所は…)
更に思考を巡らす。既にその目付きはクレス達に合う以前の冷徹な光を帯びていた。
(何か目印になる施設のはず、この近くには…役場に郵便局、少し離れて学校に
観音堂)
地図を広げ場所を絞る。
(近場から探そう。大丈夫、私はやれる。そう決めたんだ)
一番近い郵便局を目指しすずは駆け出した。
179 :
待ち合せ:2007/10/12(金) 19:56:29 ID:hcMkJmpS0
「おいアレを見ろ!」
神塚山の麓からようやく鎌石村に着いた、クリフとルーファス。
大体C-4とC-5の境目辺り、まだ民家などは見えないが代わりに意外なものを見つけた。
「ひでぇ…」
そこには真っ赤なコートを羽織った首無しの男の遺体があった。
近くにはこの男の物と思われる頭部とデイパックが放置されている。
「こいつはビウィグじゃねえか」
遺体に手を合わせているルーファスの横でクリフが声を上げた。
「知り合いか?」
「ああ、死んだやつを悪く言うのもあれなんだが、ろくなヤツじゃなかったな。
俺の仲間の親父を拉致るわ、俺らを罠に嵌めるわでお友達って間柄じゃねぇ」
よく観察するとその遺体には首輪がない、犯人が持っていったのだろうか。
「鋭利な刃物で一撃って感じだな。これはお前が言ってた魔物の仕業だと思うか?」
「たぶん違うな。鋭い爪を持っていたと思うが、ソレで引き裂いたのならもっと違った痕が残る」
「そうか…なら尚の事さっさと嬢ちゃんたちを探さないとな。こんな殺し方をするようなやつだ、殺る気満々のヤツに違いないだろうからな」
「見つかんねぇなぁ」
周囲の警戒をしながら村を周ってみたが目的の人物は見つからず、ルーファスは不満を漏らした。
「まぁ、そう簡単には行かねえだろ。お前が出くわしたっつう魔物と会わないだけでもよしとしようや。おら、もう一軒行くぞ。このエリアはいいから次はC-3だ」
「へい、へい」
村に着いたのは大体3時か4時頃。
村に踏み入れたと同時に見つけた遺体を放っておくのは忍びなかったので穴を掘って埋めてやった(供養する代わりに近くにあった荷物は貰っていった)。
体感だとこの村に着いてから1,2時間は経っているだろうか。もうすぐ2回目の放送が始まる時間だ。
ソフィアとヴァルキリーから別れて6時間以上経っている。もしかしたらもう別の場所に向かってるのでは?
そう進言しようとしたところでクリフは一軒の民家のドアに挟まっている紙を見つけた。
「これは…」
後ろから覗き込むルーファス。
「なんて書いてあるんだ?」
文字は自分の世界の物ではないのでなんて書いてあるかはさっぱりだ。
「俺の仲間が書いたもんだ…」
クリフの声色がさっきまでとは異なり深刻な様子だ。
「ソフィアが書いたのか?」
「いや、嬢ちゃんじゃねぇ。だがこうしちゃいられねぇ!」
言い終えるや否やクリフは西に向かって走りだした。
「ちょ、おいっ!待てよ!どこに行くんだよ!?」
「役場だ!仲間が、ミラージュがやべえ!」
ずっと共に戦ってきたパートナーの事を想い、更にスピードを上げながらクリフは答えた。
180 :
待ち合せ:2007/10/12(金) 19:58:22 ID:hcMkJmpS0
【C−4/夕方(まもなく第2回放送)】
【ミラージュ・コースト】[MP残量:80%]
[状態:疲労大、全身に傷痕(特に前の上半身に集中、深い傷もあり)、左頬に切り傷、衣服ボロボロ]
[装備:無し]
[道具:ボールペン、ルーズリーフ数枚]
[行動方針:このゲームから脱出してルシファーを倒す]
[思考1:体力の回復]
[思考2:役場内にてメモを見た仲間を待つ]
[思考3:第一放送についての情報を集める]
[思考4:煙の発生場所(G−3平瀬村分校跡)に行く]
[現在位置:C−3鎌石村役場内]
[備考:第一放送は聞いていません。(C-05が禁止エリアという事は把握)]
【藤林すず】[MP残量:20%]
[状態:疲労中程度]
[装備:アントラー・ソード@VP]
[道具:サーペントトゥース@SO2、ブラッディーアーマー@SO2、ノエルの支給品×0〜2(本人確認)、荷物一式×3]
[行動方針:生き残る]
[思考1:メモ書きを書いた人物の捜索及び隙あらば殺害]
[思考2:自分が死んだ場合はクレス、チェスター、アーチェ、クラースの誰かに優勝して欲しい。そのため四人の殺害には消極的]
[現在位置:C-04中心部 民家の一室]
[備考:ミラージュ(名前は知らない)は死んだと思っています]
【クリフ・フィッター】[MP残量:80%]
[状態:手の甲に歯によるケガ(もうカサブタになっているので戦闘に支障なし)]
[装備:ミスリルガーター@SO3・閃光手榴弾@現実・サイレンスカード×2@SO2]
[道具:ドラゴンオーブ・エターナルソード・メルーファ@SO2・バニッシュボム×5@SO3・フレイの首輪・荷物一式×4]
[行動方針:首輪を解除しルシファーを倒す]
[思考1:役場でミラージュと合流]
[思考2:鎌石村でソフィアたちの捜索]
[思考3:脱出の手段を見つける]
[思考4:仲間を集める(マリア、ソフィア優先)]
[思考5:首輪は調べられたら調べる]
[現在位置:C−4北東部西に伸びる道]
【ルーファス】[MP残量:80%]
[状態:右肩が痛み、血を流しすぎたから痺れてる感じ
(多少は和らいだので、傷の再発を考えなければ1発程度なら弓の使用可)]
[装備:連弓ダブルクロス@VP2・矢×34本]
[道具:荷物一式×2]
[行動方針:戦いにのるかのらないかはっきり決めたい。]
[思考1:アリーシャを探しだし、守り抜く]
[思考2:今はクリフと一緒にいる]
[思考3:鎌石村でソフィアたちの捜索]
[思考4:午前中あった魔物(シン)を警戒]
[現在位置:C−4北東部西に伸びる道]
以上で投下終了です。
MPの回復について曖昧なんですがコレでよろしいでしょうか?
あとルシファーの居場所ですが、2通り案を考えました。
1つ目は原作どおりFD空間的な場所に居る。
この場合は最終決戦に持ち込むにはソフィア、マリアの生存は不可欠とします。
沖木島のどこかにタイムゲートのような物があってそこから突入ってことで。
2つ目は1つ目の条件のみだと、ソフィア、マリアが殺される展開が書きにくくなると思いましたので同一空間の別の場所に居るとします。
クリフが触れている通り放送の逆探は『通信機の様な物』+『機械改造用ツール』+『機械知識に長けた者』(例:通信機+ドレメラ工具セット+プリシス)
で行い、乗り込む時は首輪解除レザードや首輪解除クレス+エターナルソードによる長距離転移にて可能という事でどうでしょうか?
まぁ、内容は薄いですが、予約されている方々の分の繋ぎだと思って見てくれたら幸いです。
>>181 志村ー!フェイト!フェイト!
フェイトいなきゃFD空間でダメージは与えれない。
乙。
確かソフィアのコネクションはタイムゲート無いと無意味なんだよな。
まあまだ脱出方法はガチガチに決めることは無いと思うけど。
これから進めていく過程で新しい方法が浮上するかもしれないしな。
かくいう俺もいくつか考えてたりする。
果てさて、クリフとミラージュが会えばかなりの強力コンビ誕生になるな。
けどすずがいるし、アリーシャの死を知ったルーファスもどうでるか楽しみだ。
登場時間が夕方のこの四人+偽ブレア、ガウェイン、レナディアスは放送入れそうだな。
あと動くつもりの無い時空剣士組やガブリエルも無くても平気か。
唯一未登場だったミカエルも予約入ったし、そろそろ禁止エリアとかについても話し合わないか?
>>182フェイトはあくまでも切り札的な存在かと、
無印版の攻略本のスタッフインタビューでそんなニュアンスだったモンで。
ダメージ入れるぐらいならマリアのアルティネイションで事足りそうじゃないかと…。
セフィラ扱うのもソフィアだけだから、神器とか扱うのもコネクションが必要
フェイトは、物理法則をその次元のものに適応させるものだから3次元のものでダメージを与えるのはフェイトが必要
FDに存在するのに必要なのがマリア、その武器が3次元のものなら改変してもFDでは無意味。
>>181 乙
脱出方法はまだ慌てるような時間じゃないさ。ゆっくりじっくり考えていこう。
それにしても、鎌石村人大杉。
>>185そうでしたか。どうやら知識不足だったようですね。お恥ずかしい限りです。
流石に元仲間のクリフが能力に関して誤認してるのはどうかと思うので、
火曜位に(バイトと学校でソレまではちょっと)修正所にて修正ver投下しますね。
ビウィグは斧で殺されたんだっけ
Oh,No!って感じだな
ソフィア、レナス、レザード、ブラムスを予約してた者ですが、前の話との矛盾が見つかったので、現在書き直しています。
そんな訳で、すみませんが延長をお願いします。
>>190どうぞどうぞ。
気長に待ってるので頑張ってくださいね。
修正所に『待ち合せ』の訂正を書いておきました。
それに伴い、クリフ仮説のルシファーが別次元にいた場合において、必要な人間を『フェイト』『マリア』『ソフィア』の三人に変更します。
遅くなりましたが、投下します。
観音堂。ここに集まった四人の情報交換は、面子の割には驚くほどスムーズに行われていた。
「ぬぅ……」
禿げヅラを被った不使者、ブラムスは小さく唸る。
「これは驚きましたね」
眼鏡を掛けた変態、レザードは何やら楽しげに呟く。
この二人が興味を示した情報。それは、当然ソフィアが持つルシファーに関するの情報だった。
フォーディメンションと呼称された世界。その世界の住人――ルシファー達が創り出したエターナルスフィアと呼ばれる仮想現実世界。
エターナルスフィアが起こすであろう反乱。それを阻止するためにルシファー達が送り込んだ執行者。
創造主と戦うために、エターナルスフィアの人間が作り出した生物兵器とその力。
そして、ソフィア達とルシファーの戦いの結末。
「ただ『変態、変態』と騒ぐ煩いだけの娘ではなかったのだな。ここまで有意義な情報を持っているとは、予想外でしたよ。
このような娘を連れてくるとは、流石はレナス・ヴァルキュリア。人をみる目は誰よりも優れていらっしゃる」
と言いながら、レザードは熱のこもった視線を送るが、レナスは「褒めても何も出んぞ」と冷たく言い放つだけであった。
レザードは、一息吐いた後、眼鏡を押し上げ話を続ける。
「さて、そろそろ私の持つ情報も話しておきたいのだが……よろしいですか?」
視線の先にいる三人は無言で頷く。
「結構……この島に来てから、私はエイミとルシファーの妹と名乗るブレアという女と行動してました」
「それは先程聞いたが、奴の妹というのは本当なのか?」
「ええ、私も半信半疑なのだが……ヴァルキュリアよ、貴方が連れてきた娘のおかげで確認が取れそうです」
そう言って目線をソフィアに向ける。
「娘、今から私の会ったブレアの特徴を話す。貴様の知るブレアと同じなのか確認してもらう」
体型、髪型、服装。それらを簡単に説明する。それらは、ソフィアの知る“彼女”のものと一致していた。
「! ブレアさんに間違いないです! あの、ブレアさんは今どこに?」
「さあ? そんなこと私が知るはずないだろ。話を続けさせてもらう。
私達三人は、ここ観音堂までは何事もなくこれました。その後は、ヴァルキュリアよ、先程貴方に話した通りです。
ブレアの手によりグール化したエイミを、この場にいた魔物諸共自衛のために始末。ブレアは騒の最中に逃げられてしまいました。
その後、貴方方がこの場にやって来て今に至ると言う訳です」
「あの……、エイミって人をグールにしたのは本当にブレアさんだったんですか? 何かの間違いじゃ……」
レザードの話が終わったのを確認してから、ソフィアは遠慮がちに聞いた。
「ああ、そういえば言ってなかったな。あの女の目的は、このゲームに参加させられた者の抹殺。あの女本人が認めた事実だ」
薄笑いを浮かべながらレザードは答えた。
「本人が認めただと?」
「ええ。見るからに胡散臭い女だったので、かまをかけてみたのですが……思いの外あっさり認めてくれましたよ」
「貴様、その女が危険人物と知りながら、共に行動していたと言うのか!? そのせいでエイミは……」
レナスの言葉を受けても、レザードは表情を変えない。
「落ち着いて下さいヴァルキュリア。確かにエイミの件については私にも落ち度があります。その点については謝りましょう。
だが、相手はルシファーの妹なのですよ。奴の情報を聞き出さずに殺すのは余りに惜しい。そう思いませんか?
残念ながら、拷問に使えそうな道具は持ち合わせていなかったので、情報を聞き出すことは叶いませんでしたが」
「ッ……確に貴様の言う通りかもしれん。だが……」
「だが?」
「……いや、何でもない」
完全に納得した訳ではなかったが、ここは黙ることにした。
「どうしてブレアさんが。あの人は私達の味方だったんだよ」
ソフィアは信じられないといった表情で呟く。
「人間の考えなど容易く変わるものだ」
それまで黙って話を聞いているだけだったブラムスが、静かに言った。
「特にこのような異常な状況ではな」
外では日も沈みだしていたが、ソフィアへの質問はまだ続く。
「では娘。貴様の知り合いに、首輪に使われているような技術を持つ者はいますか?」
自分の首につけられた首輪を摩りながら、レザードは尋ねる。
「外せるかは解らないけど……」
「まて!」
答えようとしたソフィアをレナスの声が遮る。
止めた理由は、勿論『盗聴・盗撮』の可能性を考えたからだ。
奴らに有用な情報をくれてやる訳にはいかない。それに、下手したら首輪が爆発するなんてこともあるはずだ。
そのことを説明するが、
「その心配はいりません」
レザードがそれを否定する。
「いいですか、この娘の仲間は嘗てルシファーを倒した者達ですよ。奴が最も警戒しているのは彼等と言っていいでしょう。
そんな者達の情報を、奴が把握してない訳が無いだろう。
そもそも、この首輪は奴の切り札だ。このゲームに呼ばれた者の中に、現在首輪を外せる技術を持つ者はいないだろう」
「外せる者はいないだと? ならば、先程の問掛けは何の意味があると言うのだ?」
ブラムスの疑問に、待ってましたと言わんばかりの表情で答える。
「ええ、現在はいませんよ。ですが、これから先、首輪を外せる者が出てくる可能性はあります。
例えば、高度な技術を持つ者から私が技術を学べば……。
だから聞いたのだ“首輪に使われているような技術を持つ者はいますか?”とな」
レナスは思わず頭を抱える。
「だから、そういうことは口に出すなと……」
「ヴァルキュリアよ、心配は無用です。この程度、聞かれても痛くも痒くもありませんし、首輪が爆発することもないでしょう
仮に首輪が爆発することがあるとすれば、それは……首輪を外す直前ですかね?
ルシファーはゲームに参加せず、外から眺めて楽しんでいる観客です。観客なら、面白い場面を見たいはずだ。
数多の殺戮者を避け、やっと手にした首輪の解除と言う名の希望。歓喜の瞬間に鳴り響く爆発音、広がる絶望。
クックッ……どうです、面白い場面だと思いませんか? これを見るためなのだ、この程度で首輪が爆破されるなど有り得ない!
…………おや、皆さんどうかしましたか?」
場に微妙な沈黙が流れる。
ソフィアもレナスもブラムスですら、レザードの熱弁に軽く退いていた。
そんなわけで、
ソフィアから高度な機械技術を持つ者の情報を聞き出した後、一行は鎌石村へ向かうこととなった。
機械技術持ちや知り合いを探すなら、多少危険でも人が集まりやすい場所へ行くべきとの判断だ。
これの発案者はレナスである。元々四人とも本来は鎌石村へ向かっていたので、初めは反対意見は出なかった。
だが、早速移動を開始しよう……といった所で、レザードから待ったが掛る。
「ちょっとした提案があるのですが……よろしいですか?」
三人は顔を見合わせ、取り合えず話を聞いてみることにする。
「実は、今のうちにやっておきたいことがありましてね、もう少しこの場所にいようかと考えています。
そこでブラムス、貴方にお願いがあるのですが……貴方には私達に先行して、鎌石村へ行ってもらいたいのです」
三人の顔に疑問の色が浮かぶ。
「あのー……どういうことですか?」
「どうもこうも原因は貴様にあるのだぞ娘。正直言って貴様は戦力外だ。
だが、脱出のためには貴様のコネクションが必要になるかもしれん。だから貴様は死なれては困る。
……この島には侮れない輩が多数いるようだ。中にはあのフレイを倒した者までいるようです。
仮にそのような輩と戦闘になった場合、貴様へのフォローがおろそかになりかねない。そうなれば非常に危険だ。
そこで、非常に不本意だが、この私が貴様に身を守るための魔法を修得させてやろうと言うのだ。有難く思え」
「…………」
ソフィアはちょっと泣きそうな顔をしながら黙りこんだ。
戦力外と言われたのがショックだったのか、それとも変態から魔法を教わるというのが嫌なのか、理由は解らない。
「それで、どんな魔法なのだ?」
「詳細は敢えて伏せておきます。ただ、上手くいけばこのゲームで生き残る上で大きな助けとなる。そう言っておきましょう」
レナスは納得がいかないといった表情だったが、結局この魔法についてそれ以上追求することは無かった。
「……何故我を先行させるのだ?」
「先程言った通り、私はこの娘に授業をしなければなりません。
その間の護衛として、貴方とヴァルキュリアの二人は最上級と言わざるえないでしょう。
ですが、四人全員でここに止まり続けるのも些か問題です。
そこで貴方に先行してもらい、私達の授業時間を利用して情報収集をしてもらいたい。いかがですか?」
少しの間考えた後、ブラムスはこれを承諾。レナスとソフィアからも特に反対意見は出なかった。
「それじゃあブラムスさん、フェイト達に会えたらこれを渡して下さいね」
ブラムスに渡されたメモには、ソフィアから仲間達へのメッセージが書かれていた。
わざわざこんなものを用意した理由は、勿論ブラムスの風貌・雰囲気の問題だ。
「レナス、お前はエインフェリア達への伝言は無いのか?」
「彼等は、お前の実力を、お前がそれほど危険な存在でないことを知っている。心配いらないだろう」
エインフェリア達は、レナスのためにブラムスが協力してくれたことを知っている。
警戒はするだろうが、直ぐに仕掛けてくるようなことは無いだろう。それが彼女の判断だった。
「私達の方も、三回目の放送までには村へ向かうつもりなので、貴方もそのつもりでいてください」
「そうか……では、また後で会おう」
そう言い残し、ブラムスは観音堂を後にした。
赤く染まった空の下、ブラムスは村を目指して歩く。
まだまだ本調子とは言い難いが、日が沈みだしたことにより、真っ昼間と比べれば頗る調子がいい。
これなら相手がフレイやレナスクラスの実力者で無い限り、そうそう遅れはとらないだろう。
多少は警戒を緩めても大丈夫と判断する。
取り合えず、歩きながら情報交換をどう行うかを考え始めた。
(相手がただの人間であるなら、我に恐怖を抱き、警戒する……予想はしていたが、あれほどとはな)
ソフィアが自分の姿を見たときの、取り乱した様子を思い出す。
スムーズに情報交換が出来そうな相手は、レナスのエインフェリア達くらいだろうか?
今になって「レナス達と共に行動すべきだった」と後悔する。
(余りやりたくはないが、物で釣る、というのも考えて置くべきか……?)
懐から何かを取り出す。
それは、見るからに高価そうなダイヤの指輪だった。
【C-06/夕方】
【不死王ブラムス】[MP残量:100%]
[状態:正常、本人は大真面目に支給品を着用]
[装備:波平のヅラ@現実世界、トライエンプレム@SO]
[道具:バブルローション入りイチジク浣腸@現実世界+SO2、!ダイヤモンド@TOP、ソフィアのメモ、荷物一式×2]
[行動方針:情報収集(夜間は積極的に行動)]
[思考1:鎌石村に向かい、他の参加者と情報交換しながらレナス達の到着を待つ]
[思考2:敵対的な参加者は容赦なく殺す]
[思考3:直射日光下での戦闘は出来れば避ける]
[思考4:フレイを倒した者と戦ってみたい(夜間限定)]
[現在地:C-06南西]
※ソフィアのメモには、ソフィアが仲間達に宛てたメッセージが書かれています。
■
観音堂の一室。そこには男が一人。女性二人はここにはいない。彼女達は、何か使える物が無いか建物の中を探し回っている最中だ。
レザードは机に向かい、小難しい術式や用語を書き連ねる。
机の端には、文字が大量に書き込まれた紙が重ねられており、結構な厚さとなっている。
今彼書いているのは、とある魔法の簡単な説明。簡単と言っても、並の術士では到底理解出来ない内容だ。
その魔法の名は――移送方陣。
レザード・ヴァレスは考える。
ルール説明の時、爆死した男が放った攻撃。あれは例え制限下であっても、大魔法クラスの威力があったはずだ。
だが、その攻撃はルシファーに届きすらしなかった。
奴はルール説明と同時に、自らの強さをアピールしたと言える。
それは、レザードですら「正攻法で勝つのは難しいだろう」と思わせたほどだ。
ところが、ソフィア達は正攻法でルシファーに勝利したそうだ。彼女の話では、当時の奴は思った程強くはなかったらしい。
しかも、彼女達が奴を倒したのは割と最近の話とのこと。
つまり、ルシファーはソフィア達と戦った時より強くなっている。それも短い期間で。
どのような手を使ったのだろう?
その解答としての仮説。
【能力“制限”は、本当は能力“変更”なのでらないか?】
ルシファーは“制限”と言う言葉を使っていた。
だから『力が制限により低下している』、『力が制限により使用出来ない』と考えていた。
だが、“制限”を“変更”に変えてみるとどうだろう。
『力が本来のものより弱いものに変更された』、『力が使用出来ないよう変更された』と考えていただろう。
この場合、“制限”と大きく異なる部分は『力が本来のものより強いものに変更した』とも考えられることだ。
ルシファーはこれを利用して、自らの力をより強い力に“変更”したのではないだろうか?
この仮説が正しい場合、更にこんなことが考えられる。
【ルシファーはこの世界のどこかにいる?】
ソフィアの話から、この世界がFD界とうのはまず有り得ないだろう。恐らくルシファーが創った仮想現実世界の一つだ。
奴は仮想現実世界では神に等しい存在で有るが、FD界の神では無い。
自ら創った仮想現実世界でなら、“能力変更”なんて真似が出来ても不思議ではない。だが、FD界ではどうだろう?
もし不可能ならば、ルシファーは自らを強化するために、この世界のどこかにいると考えられる。
ゲームに参加する訳でもないのに、わざわざ自らを強化する理由は……
最後の一人となった者や、首輪を外して反逆を起こした者達を確実に始末するためだろうか?
ルシファーがこの世界にいるのなら、移送方陣のような移動手段でも奴の下へたどり着ける。
元の世界へ帰る手段は、ルシファーを絞め上げて聞き出せばいい。
これなら、使用条件の厳しいコネクションに頼る必要は無い。
問題は、現在レザードは移送方陣を使用出来ないことだ。そこで、彼はソフィアに移送方陣を修得させることにした。
本来移送方陣を使えない者にそれを修得させた場合、問題無く使用出来るのでは? と考えたからだ。
この考えは、“制限または変更”が一人一人個別に設定されていることが前提条件となる。
先の仮説を含め、この考えは間違っている可能性がある。それに、ソフィアが移送方陣を修得出来る可能性は極めて低いだろう。
だが、何事もやってみなければ解らない。特にこのような状況では、手段を選んでいられない。
レザードは立ち上がり、軽く背伸びをする。どうやら、移送方陣のテキストを書き終えたようだ。
その時、丁度良いタイミングで部屋に人が入ってくる。レナス達だ。
「ん……、何かめぼしい物はありましたか?」
「……いや」
「食べ物はいくつか有りましたけど、他には特に有りませんでした」
「そうですか。まぁ予想はしてましたがね」
机に重ねてあったテキストを手に取り、ソフィアに近づく。
「では、早速始めてもらう」
テキストを手渡し、ニッコリと微笑む。
「まずは、ここに書いてあることを全て頭に叩き込んで下さい」
【C-06/夕方】
【ソフィア・エスティード】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:クラップロッド@SO2、フェアリィリング@SO2、アクアリング@SO3]
[道具:レザードのメモ、荷物一式]
[行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める]
[思考1:フェイトに会いたい]
[思考2:レザードの指示に従い魔法(移送方陣)を修得する]
[思考3:三回目の放送までには鎌石村に向かう]
[思考4:自分の知り合いを探す]
[思考5:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい]
[現在地:観音堂]
【レナス・ヴァルキュリア】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:魔剣グラム@RS]
[道具:ダブった魔剣グラム@VP、合成素材×2(ダーククリスタル、スプラッシュスター)@SO3、荷物一式]
[行動方針:大切な人達と自分の世界に還るために行動する]
[思考1:ルシオの保護]
[思考2:ソフィア、レザードと共に行動(但しレザードは警戒)]
[思考3:三回目の放送までには鎌石村に向かう]
[思考4:協力してくれる人物を探す]
[思考5:できる限り殺し合いは避ける。ただ相手がゲームに乗っているようなら殺す]
[現在地:観音堂]
【レザード・ヴァレス】[MP残量:95%]
[状態:正常]
[装備:天使の唇@VP、大いなる経典@VP2]
[道具:神槍パラダイム@RS、アップルグミ×2@TOP、エルブンボウ@TOP、レナス人形・フルカラー@VP2、荷物一式×2]
[行動方針:愛しのヴァルキュリアと共に生き残る]
[思考1:愛しのヴァルキュリアと、二人で一緒に生還できる方法を考える]
[思考2:その一端として、非常に不本意だが、ソフィアに移送方陣を修得させてやる]
[思考3:その他の奴はどうなろうが知ったこっちゃない]
[思考4:三回目の放送までには鎌石村に向かう]
[思考5:ブレアを警戒。ブレアともしまた会ったら主催や殺し合いについての情報を聞き出す]
[備考:ブレアがマーダーだとは気付いていますが、ジョーカーだとまでは気付いていません]
[現在地:観音堂]
※レザードのメモには移送方陣についての詳細が書かれていますが、これを読めば移送方陣が修得出来るという訳ではありません。
投下しました。
【!ダイヤモンド@TOP】
契約の指輪の一つ。精霊オリジンとの契約に必要。
装備すると、様々な力が上昇する。
>>201 投下乙!
脱出方法も雛形が出来てきたのかな?
それにしてもレザード…首輪について語っている姿が目に浮かぶようだw
>>201 GJ!
ようやく変態も(色んな意味で)本領発揮か!?
そしてブラムスヅラ外せw
↓投下します
鎌石村を目指すエルネスト、クラース、フェイトだったがその歩みは遅い。
足を怪我しているフェイトを残りの二人で交代しながら背負っているので仕方がないが、
背負われたフェイトは歯痒い思いだった。
どうせならこんなおっさん連中じゃなく美女に背負われたかった…という訳ではなく。
自分が完全に足手まといになっている事についてだ。
主催者ルシファーと最も深い因縁があり、さらに戦闘経験もある自分は
本来率先して主催者打倒の為に行動しなければならない立場だ。
それがこの様。戦うことはおろか、歩くこともままならない。
既に数人の知り合いが犠牲になっている中、
何も出来ず、エルネストやクラースに負担をかけっぱなしになっている事が申し訳なかった。
平瀬村から随分と歩いてきた。
交代しながらフェイトを背負ってきた二人にもさすがに疲れの色が見えてくる。
「すまない、ここで休憩にしないか?」
現在フェイトを背負っていたクラースがついに力尽きてしまったようだ。汗を流しながら、ゼイゼイと息を切らしている。
「何だクラース、もうバテたか?全くそれで俺より若いのかよ?」
「そういうお前こそ、両目だけでなく額の目からも疲労が訴えられてるようだが?」
「いえ、ここで休憩にしましょう」
意地を張る中年二人をフェイトが制した。
「フェイト、さっきも言ったが俺達に気を使う必要はないんだぞ?」
「大丈夫です。もう自分でも歩けると思いますし…さっきの話の続きもしたいですから」
先程の話…簡単な情報交換の後フェイトから聞かされた、主催者ルシファーについての情報。
この宇宙はエターナルスフィアと呼ばれる『人工』の世界であり、それを作ったのがルシファーというあの男。
先程はこれらの説明、さらにルシファーがそのエターナルスフィアに対して行った所業などを聞いた。
そしてその話を聞いた時から、エルネストには引っかかる箇所があった。
「少し質問があるんだが、いいだろうか?」
「何でしょうか?」
「ルシファーはエクスキューショナーという怪物を送り込んで、宇宙を滅茶苦茶にしたらしいな?
だが俺はそんな事件を聞いた事が無い。それほどの出来事を知らないという事は無いと思うんだが…」
聞けばエクスキューショナーは多くの宇宙基地、そして地球をも破壊してしまったらしい。
歴史に残る大惨事だったと言えるだろう。
しかしエルネストはエクスキューショナーなんて見たこと聞いたことも無い。
まして知り合いも多く住んでいる地球までも襲われているなど寝耳に水だ。
だからといってフェイトがデタラメを言ってるようにも聞こえない。
「ああ、それは知らなくて当然だと思います」
フェイトはしれっと答える。
「エルネストさん、今は宇宙歴何年ですか?」
「宇宙歴?確か366年の筈だ。それがどうした?」
「エクスキューショナーが現れるのは、宇宙歴772年。エルネストさんの時代から、推定400年後の話ですから」
「よ、400年後だと!?」
仰天するエルネスト。
「馬鹿な!それなら、何故君は400年後の事実を知っているというんだ?」
「僕がその時代の人間だからです。僕が生まれたのは753年ですから」
「…つまり、お前達二人は、それぞれ異なる時代の人物だと?」
今まで黙っていたクラースが問いかけた。
「恐らくそういう事でしょう。生きている場所は同じですが、生きていた時代は違う。
宇宙歴が分からない以上時代はハッキリしませんが、クラースさんも僕達と同じエターナルスフィアに存在する、どこかの未開惑星の住人だと考えられます」
「しかし…異なる時代から人間を連れてくるなど、そんな芸当が…」
エルネストはまだ全てに納得がいかないといった様子だ。
「有り得ない話では無いだろう。私の星にも、時空を移動する能力を持った者がいた。
創造主という程の存在ならば、そこから多数の人間を連れてくる事が出来てもおかしくない」
「そうですね。僕達の住んでいる宇宙はルシファーが作った物です。
あいつからすれば、ゲームのセーブデータをロードするような感覚でしょう」
確かにフェイトが言うルシファーの立場からすれば、不可能な芸当では無い。
倒したはずの十賢者を呼び出し、そしてルシフェルを瞬殺したあの力。
ルシファーが本当に創造主という存在ならば…。
「しかし君とその仲間はあいつと戦い、勝利したのだろう?どういう対処をしたんだ?」
次はクラースが疑問をぶつけた。
フェイトの話だけだと、ルシファーを倒すなんて事は絶望的に思える。
だがフェイトはそのルシファーと戦い、そして勝利を収めている。それならば何らかの対処法があったはずだ。
クラースの質問に対し、フェイトもルシファーとの戦いの顛末を語る。
マリアの持つ能力「アルティネイション」。
ソフィアの持つ能力「コネクション」。
自分自身が持つ能力「ディストラクション」。
そしてタイムゲートを通じ、FD空間へ向かい、繰り広げられたルシファーとの死闘。
「ならば、そのマリアとソフィアという人物と合流できれば脱出も可能という事か?」
「いや。ルシファーが一度負けたのなら、そういった能力の対処も当然行っているだろう。すんなり上手くいくとは思えないな」
「うーむ…」
考え込む中年二人。
(これは…想像以上に過酷な状況だな…)
クラースの目的は生き残る事。脱出だろうと優勝だろうと、それこそ手段は問わない。
しかしフェイトの話を聞く以上、ルシファーに対抗するのはかなり苦しく感じる。
勿論クラース自身としても、ゲームに乗らず脱出できるならその方が良いのだが
今の状況を考えると、優勝を目指した方が現実的に思える。
最大の敵と考えていたダオスが既に死亡しているのだから、上手く立ち回れば優勝も不可能では無いだろう。
自分は何としてもミラルドの下へと帰らなければならないのだ。
(愛する女、ねえ…)
今、クレスはどうしているだろうか。
ふとクラースの頭の中に、仲間だった少年少女の顔が浮かぶ。
仲間の中でも人一倍正義感が強く、常に前を向いていたあの少年。
最愛の女性を失った彼は、この状況でも希望を捨てずにいられるのだろうか?
エルネスト、クラースとの話を終えた後、フェイトもまた考え込んだ。
二人に話した事は、自分が考えていた全てでは無い。
だが確実とは言えず、さらに推測に過ぎない情報はまだ話すべきでは無いと判断したのだ。
まず、この『会場』は一体どんな空間に存在するのか。
FD空間で無い事は確かだろう。
本来エターナルスフィアの人物はFD空間には存在できない。
創造主であるルシファーならば自分達がFD空間に存在できるようにする事は可能だろうが、
エターナルスフィアの技術向上を恐れていた者が、わざわざそこの住人をFD空間に連れて来るだろうか?
FD人が創りだした空間なら、ルシファーは自由に干渉できるし、調整、処理もしやすいだろう。
よって推測される会場は、『エターナルスフィア内のどこか』もしくは『このゲームの為に新たに創りだした空間』のどちらかだが…。
ここが『エターナルスフィア』のどこかだとしたら…。
フェイトには一箇所思い当たる場所があった。
空を見上げると、太陽が一つ。
この島に来たのが朝の6時だったが、その時太陽は東に位置していた。
12時の放送の時は丁度真上。
そして今、沈みかけた太陽は西の方へ位置しており、辺りは少しだが暗くなり始めている。
そう、この時間の進み方はフェイトが住んでいた「地球」と全く同じなのだ。
勿論広い宇宙、地球と似たような星があってもおかしくは無いのだが
全く同じ、という星はそうそう無いだろう。
少なくとも、地球を意識して創られた星である可能性が高い。
いずれにせよ、この会場はルシファーにとっては自由に操作できる箱庭のような物だ。
盗聴、盗撮。どんな方法で自分達を監視しているのかは分からない。
自分達の目を通して監視している可能性だってある。
だからこそこういった情報は、少なくとも確証が得られるまでは極力口にしない方がいい。
ならば、この会場から脱出するにはどうしたらいいか。
鍵となるのはソフィアの空間を繋ぐ能力「コネクション」だ。
ただこの能力は特定の場所…エターナルスフィア内ならば「タイムゲート」でしか発動しない。
しかしルシファーがこの島に干渉している以上、絶対にどこかにFD世界、もしくはルシファーのいる場所とのリンクがある筈。
それさえ発見することが出来れば、コネクションの能力を発動する事も可能だろう。
ここで問題になるのが、ルシファーが言っていた「能力制限」。
特に一度はルシファーを倒した要因である自分とマリア、それにソフィアの能力には徹底して制限をかけているはず。
例えリンクを発見しても、この制限を何とかしない限り脱出できる可能性は低い。
となると、この制限をかけている原因を突きとめ、さらに解除する必要がある。
制限をかける方法として、今の所考えついたのは二つ。
一つ目は、参加者に付けられたこの『首輪』に能力制限の力がある場合。
二つ目は、予め自分達をプログラムして能力を制限してある場合。
前者なら首輪を外すことで解除可能だが、後者だとするとかなり厳しい事になる。
こうなると外部からの操作が無い限り、能力制限を解除する方法が思いつかない。
勿論外部と連絡を取る手段など皆無。
それに、最もそれを期待できる人物であるブレアは自分達と一緒にこの島に連れてこられているのだ。
だが、ブレアがゲームに参加しているという事がフェイトには引っかかった。
彼女はルシファーの妹だ。
いくらなんでも、実の妹をこんな殺し合いに放り込むだろうか?
仮にそこまで憎んでいたとしても、彼女をこの殺し合いに参加させるのはあまりにリスクが大きすぎる。
彼女の性格からして積極的にゲームに乗って参加者を殺そうとするとは考えにくい。
そうなるとスフィア社の知識や技術を持つ彼女は、ゲームを失敗させる驚異にしかなりえないのだ。
それなのに、何故?
一つだけ心当たりがある。
これもまだ推測の域を出ないが、もしルシファーが『ブレア』をこのゲームに参加させるなら…。
確実に殺し合いに乗り、ゲームを成功させようとする『ブレア』を参加させるなら…。
フェイトがそこまで考えた時だった。
…チリンチリン
どこからかベルを鳴らすような音が聞こえてくる。
「む、何だ?」
エルネストとクラースもベルの音に気付いて立ち上がった。
武器を持ち、警戒しながら音がする方を睨む。
…チリンチリン
さらに近づいてくるベルの音。どうやら何かが道沿いに進んでいるようだ。
「俺が様子を見てこよう。クラース、すまないがこの剣を借りるぞ」
そう言ってエルネストは道へと向かっていった。
【D−2/夕方】
【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:100%]
[状態:左足火傷(戦闘にやや支障有り。ゆっくり歩く分には問題無し)]
[装備:鉄パイプ-R1@SO3]
[道具:荷物一式]
[行動方針:仲間と合流を目指しつつ、脱出方法を考える]
[思考1:クラース、エルネストと共に鎌石村へ]
[思考2:ルシファーのいる場所とこの島を繋ぐリンクを探す]
[思考3:確証が得られるまで推論は極力口に出さない]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
[備考:参加者のブレアは偽物ではないかと考えています(あくまで予測)]
【クラース・F・レスター】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:無し]
[道具:薬草エキスDX@RS、荷物一式]
[行動方針:生き残る(手段は選ばない)]
[思考1:エルネスト、フェイトと共に鎌石村へ]
[思考2:ゲームから脱出する方法を探す]
[思考3:脱出が無理ならゲームに勝つ]
[思考4:フェイトを何処かで切り捨てる?]
[思考5:鎌石村で医療品捜索]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
【エルネスト・レヴィード】[MP残量:100%]
[状態:両腕に軽い火傷(戦闘に支障無し、治療済み)]
[装備:シウススペシャル@SO1]
[道具:スケベほん@TOP、荷物一式]
[行動方針:打倒主催者]
[思考1:ベルの音のする方へ向かう]
[思考2:クラース、フェイトと共に鎌石村へ]
[思考3:仲間と合流]
[思考4:炎のモンスターを警戒]
[思考5:鎌石村で医療品捜索]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
※ベルの音はロキの自転車です
考察シリーズ第3弾〜。
ちょっとキバヤシ気味かもしんない…orz
>>201 >>210両名とも乙です。
なんかやっと対主催サイドの人間が動き出しましたね。
>>201やっぱ変態はこういった考察系は絵になりますね。
個人的には1人になったブラムスが心配です。未だにヅラつけたままだしwソフィアもはずしてやれよw
>>210久々にこいつらを見た気がする。なによりもチャリンコマスターとの接触はどうなるのか?
そして気付いたんだが鎌石村マジ人いすぎ。今回の話のやつら全員目的地にしてるし。
次回の禁止エリアはやっぱこの辺ですかね?
ついでに南側もだな。過疎っている上にかなり安全圏だし。
マーダーも引き籠もってるガブリエル以外はアストンしかいない。
アストンも透明化が無くなった以上今までほど活躍できないだろうしなー。
>>201>>210 投下に乙です
バトルロワイアルに重要な人物がふつふつと対主催に向かって
次がどうなるか楽しみになってきましたね
チーム的にもスペックが高いですし
……と、そんな自分ですが
実生活があまりに忙しいので予約のほうは破棄します
リベンジならずOTL
アレだけ啖呵を切っていたのに、この体たらく
本当にすいません
>>210乙です。
ちょっと質問なんだけど、コネクションってタイムゲート作動させるだけで
セフィラでソフィアがブレアと通信したあれはコネクションの力ではないの?
>>213 ドンマイ。次に期待してます。
>>214 セフィラも一応コネクションだった気がする。
ただ今ロワに出てるセフィラはSO3じゃなくてTOPのやつなんだよな。
ジャック、プリシス、アリューゼ予約します
>>216期待しています。
ところで
>>169はどうなった?
あの状況では放送にもっていけなくない?
しばらくは作者氏の反応を待って、どうしても音沙汰無いようなら作品ごと破棄、かな…
まあまだ放送直前って訳じゃないし慌てなくてもいいさ
期限過ぎたら何かしらのアクションは欲しいけど
地図そろそろ更新してほしいんだけどな。
全キャラの位置どの場所にいるかわかるとSSが書きやすい。
あ、ビウィグ死んでたわ。名前の方ミスですすいません。
>>200 超GJなんだぜ!
番号にしなかったら鎌石村周辺がカオスになるだろうから、これでいいと思う
225 :
220:2007/10/26(金) 09:05:30 ID:Wd1nNgnI0
げげっ…クロードの位置E−4だった…。
あと生存率68%じゃなくて58%…。
ホントすいません
>>226何気にすることはない。
見たとこ南北に分断されてるからなんとかしたいですね。
ホントに短くて申し訳無いんですが、
あんまり放置しとくのもアレなのでミカエル投下します
放送が流れる。
禁止エリアは13時にC−5、15時にG−3、17時にE−6。
ミカエルは放送内容の内、それだけを頭に入れておいた。
死者の名前なぞ興味は無い。
「ちっ、ムカつくぜ…」
誰に言うわけでもなくミカエルは呟く。
ゲーム開始直後に2人殺した後、久しぶりに見つけた『標的』。
だがあと少しという所で逃してしまった。
しかも一度自分が負けた相手に一杯食わされて、だ。
腹いせにその辺りの民家を殴りつけたが、その程度では収まらない。
獲物を探して平瀬村を歩きながら考える。
死者の数は13人。その内自分で殺したのは2人。
残りの11人は自分以外の参加者が殺したことになる。
どうやら他にも殺し合いに乗った奴が多いようだ。
このペースなら、主催が言っていたようにゲームの終了も早いかもしれない。
村の中を探したが、ミカエルが期待するような防具は見つからなかった。
どうやら武器防具といった物はあらかた淘汰されているようだ。
他の連中が持っていったのか、最初から置かれていなかったのかは分からない。
いずれにせよそういったアイテムを入手するには、他の参加者から奪うしかなさそうだ。
今の所体力には問題無い。
あの青い髪の男にやられた頭の傷は大した物では無いし、それ以外に攻撃はほとんど受けていない。
強いて言えば、魔力を多少消費した程度か。
いつもより魔力の減りが早い気がするが、これが最初に主催者の言っていた制限とかいうやつなんだろう。
だとすると、あまり魔力を使いすぎるとガス欠という事も考えられる。
そういう事がないよう、魔力は少し節約しながら戦った方がいいかもしれない。
まあ自分の技がまともに決まれば、普通の人間なら一撃で殺せる筈。
よほどの強敵では無い限り、無駄遣いするという事は無いだろう。
小一時間ほどエリア内を回ったが、獲物は見つからない。
今からでもエルネスト達を追うか?
…いや、焦る事はない。時間はたっぷりある。
まだ49人もの参加者が生きているのだ。必ず何人かはこの村に集まってくるに違いない。
気を取り直し、ミカエルは再び平瀬村の探索にかかった。
【G−2/真昼】
【ミカエル】[MP残量:80%]
[状態:頭部に傷(戦闘に支障無し)]
[装備:ウッドシールド@SO2、ダークウィップ@SO2(ウッドシールドを体に固定するのに使用)]
[道具:ミックスグミ、魔杖サターンアイズ、荷物一式]
[行動方針:最後まで生き残り、ゲームに勝利]
[思考1:どんな相手でも油断せず確実に殺す]
[思考2:平瀬村で獲物を探す]
[思考3:使える防具が欲しい]
[現在位置:平瀬村]
[備考]:デコッパゲ(チェスター)は死んだと思っています。
乙。これでようやく放送後全員揃ったなー。
ミカエル含め、時間帯が昼間のリドリー、ミランダ、レオンはもう一作くらい欲しいところだけど…。
ところでホテル組+クロードボーマン予約してた人、あれから音沙汰無いけど破棄って事でいいのかな?
そういえば、テイルズロワでとうとうTOP勢が全滅してしまいましたね
こっちではまだまだ頑張ってもらいたいところだ
TOPキャラとか特定のアニメキャラ何回も殺し合いしてるね。
>>233 自分のSSやってみたらお茶吹いたw
ジャック、プリシス、アリューゼ投下します
ジャックが落ち着いた所で、アリューゼとプリシスは事の顛末を詳しく聞きだした。
どういう経緯でここで戦闘が起こったのか。
相手はどんな奴で、どんな能力を持っていたのか。
ジャックの話が終わると、プリシスは体を小刻みに震わせながら俯いた。
背中に二匹の龍を背負った男。
先程から引っかかってはいた。そんな男は、宇宙広しと言えども一人しかいないだろう。
しかもその男は、彼らを襲った理由をこう言ったそうだ。
「プリシスの望みを叶えるためさ」
(やっぱり…あの時の声……アシュトンだったんだ…)
午前中に遭遇した透明人間。その時は似た声の人物だと思っていたけど。
ジャック達の前に現れたのがアシュトンだとしたら、きっとあの透明人間もアシュトンだったに違いない。
彼が殺し合いに乗り、しかもジャック達の仲間を惨殺したという事実にプリシスはショックを受けた。
それだけでは無い。ジャックが言った事が事実なら、アシュトンは自分の為に殺人鬼となった事になる。
間接的にだが、この惨劇の原因には自分が絡んでいる事になる。
あの時、透明人間を追っていれば、その正体がアシュトンだと気付いていれば、彼の凶行を防げていたかもしれない。
「あたしの…せいだ…」
顔を手で覆いながら小さく呟いた。
そんなプリシスを、ジャックはやり切れない気持ちで見ていた。
(クソッ…何でだよ…)
プリシスはアシュトンと知り合いだったらしい。いや、ただ知り合いどころか、共に幾つも死線を潜り抜けた仲だと。
そして彼は気の弱いところもあるが、とても優しい人だったいう。
アシュトンは許せない。ぶっ殺してやりたいと思う。
でも目の前で、アシュトンが殺し合いに乗っている事を悲しんでいるこの少女を見ると、複雑な気持ちになる。
いっそ彼が元々同情の余地も無いゲス人間だったら、こんな気持ちになる事も無いのに。
「おい小僧」
今まで黙っていたアリューゼが、思い立ったようにジャックに声をかけた。
「小僧じゃねえ。俺はジャックだ」
「んな事はどうでもいい。ちょっとその筒を貸しな」
そう言ってアリューゼはジャックの持っていたレーザーウェポンを指差す。
武器を渡すのは不安に思いながらも、この男は殺し合いに乗っているわけでは無いしと考えたジャックは
「貸すだけだぞ」
と言ってレーザーウェポンをアリューゼに渡した。
アリューゼがそれを持った瞬間、レーザーウェポンがその形状を変化させる。それは巨大な大剣の形をとった。
「成る程な…」
「何がナルホドなんだよ」
納得したような表情のアリューゼに対し、事態をよく飲み込めていないジャックが問いかける。
「原理は分からないが、どうやらこの筒は、持ってる奴に応じて色々な武器に変化するようだぜ。
お前が持っていた時は、片手剣や槍になっていたんだろ?」
それだけ言うとアリューゼは立ち上がり、石化したネルの遺体の方へ歩いていく。
そして遺体の側に立ち、大剣を振りかぶった。
「お、おい!何してんだよ!」
その様子を見ていたジャックが慌てて止めに入る。
「お前、ネルに何をしようってんだ!」
「そいつの首を見てみろ」
感情に任せて食ってかかるジャックに、アリューゼはネルの首の辺りを顎でさした。
そこあるのは石化したネルの遺体…その中で、唯一石化していない部分。
主催者によって付けられた首輪が、灰色に染まった遺体の中で不自然なほど色鮮やかに光っていた。
「そいつを頂く。俺達の首輪を外す手掛かりになるかもしれないからな」
「首輪を…?」
「俺は機械ってやつの事はさっぱりだが、プリシスはそれに関してかなりの知識と技術を持っている。
もし首輪が機械でできてるなら調べて何か分かるかもしれねえ」
そう言って立ちふさがったジャックをどけとばかりに押しのける。
「それに、こいつは死んだ後に石化した。石化を解いたとしても、こいつが生き返る事は無い」
「で、でもよお…!」
尚もジャックは食い下がった。確かにアリューゼの言う事は分かる。
首輪を調べれば自分達の首輪を外せるかもしれないし、そうなれば殺し合いなんてしなくてすむ。
しかしそれでも納得できない。
死んでしまっとはいえその体をさらに傷つけるという行為は、死者を冒涜しているように感じた。
ましてネルは、自分達を守ってその命を散らしたのだ。
これ以上彼女を痛みつけたくなかった。
「うるせえんだよ、小僧」
ドスを効かせた低い声を出しながら、アリューゼはジャックをギロリと睨み付けた。
そして左手でジャックの髪を掴み、顔を近づける。
「いいか?死んだ奴はもう何もしない。何も出来ない。こいつが生前どんな奴だったかなんて関係無い。こいつは死んだんだ。
死んだ奴の為に生きてる奴が遠慮する必要は無い。いや、するべきじゃねえ。
脱出の手掛かりを、死人に気を使ってみすみす逃すなんざ愚の骨頂だ。
下らねえ感情や正義感を声高に叫んだところで、何も変わりはしねえ。そんな馬鹿に待っているのは『死』だけだ。ここは戦場なんだよ」
威圧するように睨みを利かせたその表情に、ジャックは身震いする。
目の前の大男の顔には、激しい怒りが宿っていた。静かだが、底が見えぬ位の深い怒り。
アリューゼ自身、元来気が長い方ではない。
ジェラードやロウファといったエインフェリアの中でも特に親しかった二人の死を聞かされ、かつ目の前には仲間の惨殺死体。
決して心中穏やかでは無かった。
一刻も早くルシファーを殺さねばならない。その為には、この首輪を外すことが絶対条件だ。
そして目の前に無傷の首輪がある以上、それを無視することはできない。
「分かったらどきな」
無言になったジャックから手を離し、アリューゼはネルの遺体の方に向き直る。
だが剣を振り下ろそうとした瞬間、またしてもジャックが目の前に立ちふさがった。
「まだ分からねえのか、小僧」
「俺がやる」
「あ?」
アリューゼが何か言い返す間もなく、ジャックは彼からレーザーウェポンを奪い取った。
「…ネルと夢瑠は俺が呼んだ。そして俺を守って死んだ。二人が死んだのは俺の責任だ。だから、俺がその責任を取る。
ネルと夢瑠の死を忘れない為にも、俺がやる!」
ジャックがそう言い切った後、二人共黙り込む。
アリューゼは先程のようにジャックを睨み付けたが、今度はジャックは震えずに、アリューゼから目を逸らさなかった。
その瞳が力強く見える。意志の強さを感じさせる目だ。
「…けっ。勝手にしろ」
ぶっきらぼうにそう言って、アリューゼはそこから離れていった。
(ネル、ごめん…。俺がもっと強ければこんな事には…)
ジャックはネルに心の中で謝罪する。死なせてしまった事を、そしてこれから行う事を。
その手に持つレーザーウェポンは、大剣の形状を維持していた。
(でもあんたの分まで頑張るから。あのルシファーとかいう奴をぶっ飛ばして、必ず仇はとってみせる)
大剣を上段に構える。さすがに頭部を砕くのは気が引けるので、首の付け根に狙いを定めた。
(だから…今は許してくれ!死んだあんたを痛みつけちまう事を!)
渾身の力を込めて大剣を振り下ろす。石化した遺体は、意外なほど簡単に砕けてしまった。
夢瑠の遺体と石化したネルの遺体、及び彼女の切断されてしまった身体を埋葬した後、三人は今後の事を話し合った。
まず転がっているアイテムの整理。
協議の結果、セブンスレイはプリシス達が、スターガードはジャックが持つことになった。
アリューゼとプリシスは最初の予定通り氷川村へ向かうという。
プリシスに一緒に行動しないかと誘われたジャックだったが、彼は首を横に振った。
「俺はアーチェを探しに行く。あいつを放っておくわけにはいかない」
アーチェが走っていったのは西の方向。氷川村へ行くなら方向が違ってしまう。
同行の申し出はありがたかったが、怯えきった様子で逃げていったアーチェが心配だった。
プリシスとアリューゼもそれを分かっていたのか、それ以上無理に誘おうとはしなかった。
「あ、そういえばプリシスって機械に詳しいんだよな?」
「え?ま、まあね」
「んじゃさ、これの使い方分かる?」
そう言ってジャックは自分のバッグからある機械を取り出す。
「これって…首輪探知機?こんな便利な物持ってたんなら、もっと早く出してよ〜!」
「え?そんなスゲーのだった?いやー、俺機械って全然ダメでさ…」
ハハハと笑うジャックに呆れつつ、プリシスは首輪探知機の操作にかかる。
程なくして探知機の画面上にこの島の地図と、参加者の位置を表してるのであろう幾つもの光点が表示された。
G−5とH−5の境界付近に三つの光点。恐らくこれが自分達三人。
そしてそこから西の方にも光点が一つ。きっとこれがアーチェなんだろう。
プリシスに使い方(電源のON/OFFだけだが)を教えられたジャックは、一分一秒も惜しいとばかりに立ち上がった。
「ジャック、無茶はしちゃダメよ。必ずみんなで脱出するんだからね!」
いかにも無茶な行動をしそうなジャックにプリシスは念を押す。
「おう!プリシスとオッサンも気を付けろよ!」
「オッサ…!」
ジャックの言葉にムッとしたアリューゼだったが、既にジャックは十数メートル先を走っていた為言い返す事も出来ず。
やれやれと肩を窄めるしかできなかった。
ジャックは首輪探知機を頼りに、アーチェと思われる光点を目指して走った。
アシュトンとの戦いでかなりの疲労が残っているのだが、一刻でも早く彼女と合流したい。
会って謝りたかった。一瞬でもアーチェを疑い、追いつめてしまった事を。
「アーチェ…無事でいろよ!」
ジャックと別れたプリシスとアリューゼは、今度は迷わないよう道に沿って氷川村を目指した。
地図には首輪探知機で光点が表示された位置や数を記入してある。
それによれば、氷川村には現在4人、周辺に2人の参加者がいるようだ。
できれば会っておきたいが、殺し合いに乗っている可能性もあるので油断は出来ない。
そして、恐らくその中の光点の一つは…。
「プリシス」
道を歩いている途中、アリューゼが唐突に声をかけた。
「…何?」
「俺は殺し合いに乗った奴には容赦しない。例えそれがお前の知り合いでもな」
「………」
アリューゼの言いたい事は分かった。アシュトンと戦う時の事を覚悟しろ、という事だろう。
「…分かってるよ」
ここは戦場。戦場に於いては、油断や躊躇は命取りになる。
プリシス自身幾つもの戦いを経験しているし、その事も充分理解している。
しかし知り合いと戦うという事は未だかつて経験した事は無かった。
(それでも…)
それでも、アシュトンを殺人者にしていまったのには、自分のせいでもある。
何とかして、それを償いたかった。
(アシュトン…)
出来れば説得したい。でも説得は可能なんだろうか?
説得したとしても、それでジャック達は納得してくれるのか?
空はもう日が沈みかけ、暗くなり始めていた。
放送は、近い。
【H-05/夕方】
【プリシス・F・ノイマン】[MP残量:100%]
[状態:不安、アシュトンがゲームに乗った事に対するショック]
[装備:マグナムパンチ]
[道具:ドレメラ工具セット、〔単発・光+星属性〕〔25〕〔0/100〕、???(本人&アリューゼ確認済)、首輪、荷物一式]
[行動方針:惨劇を生ませないために、情報を集め首輪を解除。ルシファー打倒]
[思考1:氷川村へ向かい情報収集]
[思考2:仲間を探す]
[思考3:ヴァルキリーに接触]
[思考4:アシュトンを説得したい]
[思考5:どこかで首輪を調べる]
[現在位置:H−5の道沿い]
【アリューゼ】[MP残量:100%]
[状態:聖上]
[装備:鉄パイプ]
[道具:???←本人&プリシス確認済・荷物一式]
[行動方針:ゲームの破壊。ルシファーは必ず殺す]
[思考1:氷川村へ向かい情報収集]
[思考2:プリシスを守る]
[思考3:ジェラードとロウファの仇を討つ。二人を殺した者を知りたい]
[思考4:必要とあらば殺人は厭わない]
[思考5:ヴァルキリーに接触]
[現在位置:H−5の道沿い]
【H-04/夕方】
【ジャック・ラッセル】[MP残量:60%]
[状態:手にかすり傷 疲労特大]
[装備:レーザーウェポン(形状:初期状態)、スターガード]
[道具:首輪探知機、荷物一式(水分は無し)]
[行動方針:仲間を集めてルシファーをぶっ倒す]
[思考1:アーチェを追う]
[思考2:アシュトンをぶっ殺す]
[思考3:リドリーを探す]
[現在位置:H−4の北部]
[備考:走っていますが、疲労が回復しきってないので多分すぐバテます]
※夢瑠、ネルの死体及び切断された身体は全て埋葬されました。
タイトル忘れてました。
『進め、前へ』です。
あと早速ミス見つけました。アリューゼの状態、聖上ってorz
正しくは「正常」です…。
あ、あとプリシスの道具欄、セブンスレイが抜けてますorz
↓状態欄修正
【プリシス・F・ノイマン】[MP残量:100%]
[状態:不安、アシュトンがゲームに乗った事に対するショック]
[装備:マグナムパンチ]
[道具:ドレメラ工具セット、セブンスレイ〔単発・光+星属性〕〔25〕〔0/100〕、???(本人&アリューゼ確認済)、首輪、荷物一式]
[行動方針:惨劇を生ませないために、情報を集め首輪を解除。ルシファー打倒]
[思考1:氷川村へ向かい情報収集]
[思考2:仲間を探す]
[思考3:ヴァルキリーに接触]
[思考4:アシュトンを説得したい]
[思考5:どこかで首輪を調べる]
[現在位置:H−5の道沿い]
【アリューゼ】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:鉄パイプ]
[道具:???←本人&プリシス確認済・荷物一式]
[行動方針:ゲームの破壊。ルシファーは必ず殺す]
[思考1:氷川村へ向かい情報収集]
[思考2:プリシスを守る]
[思考3:ジェラードとロウファの仇を討つ。二人を殺した者を知りたい]
[思考4:必要とあらば殺人は厭わない]
[思考5:ヴァルキリーに接触]
[現在位置:H−5の道沿い]
>>242GJ!
アリューゼ、プリシスは比較的安全ですね。氷川村はマーダーいませんし。
逆にジャックはアーチェの行方次第ですが近場に強マーダーミカエルがいるから主人公二人目の犠牲者になりそうw
そういやクロードとかの話どうなったの?
>>242 投下乙
首輪探知機がやっと有効活用されたなw
氷川村は対主催だらけになりそうだが、近くにガブリエルがいることを考えるとちょうどいいくらいかもな。
3村の状況()内は周辺にいる人、もしくはその村を目的地にしてる人
鎌石村
リドリー、ミラージュ、すず、クリフ、ルーファス、(ブラムス)、(ガウェイン)
平瀬村
ルシオ、洵、ミカエル、(ミランダ)、(ボーマン)、(クレス)、(マリア)
氷川村
レオン、ディアス、レナ、アルベル、(アシュトン)、(ガブリエル)、(プリシス)、(アリューゼ)
当分動けない時空剣士組以外に対主催が周辺に全くいないルシオ涙目…
しかもルシオ自身は時空剣士組をマーダーと勘違いしてるし
おまけにこのペースだと第三放送までにロキが平瀬村にやって来るぞ
アシュトン、レオン、アルベル予約します。
ミス
>>249期待してます。
レオンピンチ!
アルベルもアシュトン相手に片手はきつい。
>>249 期待。ここでもアシュトンは大暴れするか!?
そしてアルベルはネタキャラ脱出はできるのか!?
ところで
>>169はもう三週間経ってるし、
悪いけど破棄って事でいいかな?
>>249 激しく期待するんだぜ
>>251 さすがに破棄でいいでしょ
せめて何らかの反応ぐらいはしてほしかったが
(まいったな……)
クロードはため息を吐きながら森の中を歩いていた。
(完璧にチサトさん達に誤解されたよなぁ。あの時はとりあえず撤退したけど、考えてみると状況が悪化してるかもしれない。
チサトさん達はこれから会う人会う人に『クロードはこのゲームにのった』って言うわけだよなぁ。
かといってあの時チサトさん達を追ってたら、最悪死人が出てたかもしれないし………どうしたら良かったんだろ?
……ハハッ泣きたくなって来た)
クロードは今来た道を戻ったり進んだりの繰り返しで、ある一定の場所からほとんど動かず、
先ほど起こったことから引き起こされる事象を検討していた。
(今僕にとって一番良い状況は、チサトさん達の誤解が解けることだ。それにはおそらく、第三者を介してが一番だろう。
できればかつての仲間達がいい。欲を言えば、頭が良くて、状況判断が適切で、パーティーでの発言力、信頼度がある人。
そう、ボーマンさんなんかがベスト…)
「クロードか?」
そんな事を考えていたクロードの少し離れた前方に、白衣を着た今クロードが思ったその人、
ボーマン・ジーンが現れた。
クロードの思考は一瞬停止した。
そしてすぐに思考が再起動した。
(え!?え、何で!?何で!?何でボーマンさんがここにいるの!?いや、そんなこと言ってる場合じゃない!
これはチャンスだ、クロード・C・ケニー!!この人に事情を説明して、チサトさん達の誤解を解いてもらえば!!
そうだ、正に最高のタイミングで最適の人選に巡り合えたんだ!珍しく僕は憑いてる!間違った、ついてる!)
「ボーマンさ…」
「それ以上近づくな」
だが、クロードがボーマンに話しかけようとしたのに対し、ボーマンからの返答は、拒絶だった
クロードは一瞬何を言われたが解からなかったが、すぐに気を取り直し、
「ど、どういうことですか?」と訊ねた。
「チサトからお前の事を聞いた」
クロードの目の前が真っ暗になった。
そしてすぐに気を取り戻した。
「ち、違うんです!誤解です!チサトさんは誤解してるんです!」
クロードは誤解を解こうとボーマンに迫った。
ボーマンは近づいてくるクロードに対し一定の距離を保ちながら、言葉を返した。
「だから近づくなと言ってるだろう。安心しろ、チサトから言われた事を全部鵜呑みにしたわけじゃない。
勘違いしてるということもあるからな。だから武器を捨ててあの時何が起こったか説明してみろ。
それ聞いてチサトの話と矛盾した事が無ければ、信用しよう。ただ、お前が嘘をついてると解かった場合、
悪いが殺らせてもらう。それでいいな?」
クロードは心の底から安堵したような顔をして、武器を下に起き、あのとき何があったのか、
事の顛末を話し出した。
「なるほどな」
なるほど、そう言うことだったか。確かに今のクロードの説明ならチサトの証言とも合うし、チサトが何故勘違いしたのかも頷ける。
しかし……俺はやはり今になって覚悟が決め切れてない。一番最初にクロードを見かけた時。
襲い掛からずに声をかけると言うところまでに留めたのも、あの時は『様子をみるため』と言い訳した。
単に怖かったからだ。
クロードが話すために武器を捨てたとき、見送ったのも、『まずは話を聞いてから』と言う見苦しい言い訳に頼ったためだ。
そして今。一思いにやろうと思えばできるはずなのに、『様子を見る』という言い訳に頼っている。
「…解かった。嘘はなさそうだ。信用しよう。これからチサト達のとこに行って、それを言えばいい。
俺も口添えするから十中八九大丈夫だろう。ところで……お前はこのゲームを……どうするか…考えがあるか?」
「ルシファーを倒します」
…ほう、迷わず言ってのけやがった。
「こんなふざけたゲームを行うルシファーを、僕は絶対に許せない。必ず倒して、元いた場所に帰ります!」
「…何か策はあるのか?」
「…ありません。ですが、この島にはまだ仲間がいます。頼りになれる仲間が。皆と一緒なら必ず、必ずルシファーを倒す事ができるはずです!」
…ああ。
思い出した。
この目だ。
俺がクロード達と旅をしようと決意した理由。
大切なニーネを置いてまで、旅をしようと思った理由。
この目だ。
この、クロードの、真っ直ぐな瞳。
これに惹かれた。
この、何者にも染まらず、また、何者にも染まる。
己の意思の堅固さと純粋さを絵に描いたような、この瞳。
これに俺は惹かれた。
と同時に今までの俺の行動がとんでもなく恥ずかしくなってきた。
そうだ、俺は、俺は今まで何を考えていたんだ?
俺が、旅に同行したのは、こんなクロードの様な瞳を持ちたかったからじゃないのか?
この瞳を、傍で見ていたからじゃなかったのか?
俺は、ようやく気づいた。
俺が進む道を
「…………クロード…」
◆ ◆ ◆
「ん?……おい、戻ってきたようだぞ」
「え?ホント!?」
チェスターが言った通り、ボーマンが森の中からホテル焼け跡前に戻ってきた。
独りで。
「どうだった!?ボーマン!?」
チサトが聞いた。
「ああ……。お前らの言った通りだったよ。クロードは…俺を見るなり…攻撃してきた…」
「やっぱり!」
チサトは呻いた。五分五分くらいの気持ちだったが、やはり、直に聞けばショックだった。
「しかし俺は……自分の身を守るためとは言え……クロードを…この手で…」
ボーマンは悲痛な声を出した。
「そんなのアンタが気にすることじゃあない」
「そうよ、ボーマン。クロードのことは気の毒だけど、仕方がないわ」
チェスターとチサトがボーマンを擁護した。
「………そうだな」
そうだったな。
俺には、迷う資格なんて無かったんだ。
アドレーを殺したときから。
なあ、クロード。
俺はお前のようになりたかった。んだ。
純粋で、真っ直ぐで、頑固な。
そんな瞳を持ったお前に。
だが、既に、俺は道を誤った。
俺は地獄に堕ちるだろう。
かまわない。
歩き続けよう。
最後まで。
クロード。
ありがとよ。
気付かせてくれて。
お礼つったら何だが。
楽に逝けたろ?
もう、迷いはしない。
【E-4/午後】
【ボーマン・ジーン】[MP残量:80%]
[状態:迷いが解消された気分(良)]
[装備:エンプレシア@SO2]
[道具:調合セット一式+荷物一式*3+エターナルスフィア@SO2+エネミー・サーチ@VP+昂魔の鏡@VP]
[行動方針:最後まで生き残り家族の下へ帰還]
[思考1:もう迷いは無い]
[思考2:自分が確実に殺せると判断した時のみ、行動に移る(ステルスマーダー?)]
[思考3:チサト達とはこの後別れるかどうか、検討中]
[思考4:調合に使える薬草があるかどうか探してみる]
[備考:調合用薬草の内容はマンドレイク、ローズヒップ、アルテミスリーフ、トリカブトがそれぞれ一枚づつ。
マンドレイクとアルテミスリーフは1/3づつ位消費]
[現在位置:ホテル跡前]
【E−4/午後】
【チサト・マディソン】[MP残量:70%]
[状態:全身に軽度の筋肉痛(大分回復]
[装備:パラライチェック@SO2・フェイトアーマー@RS]
[道具:七色の飴玉×3@VP・荷物一式]
[行動方針:主催者打倒、首輪をどうにかするために味方を集める]
[思考1:仲間を探す(レオン・プリシス優先)]
[思考2:ボーマンとこの後も行動を共にしたい]
[現在位置:ホテル跡前]
【E−4/午後】
【ガルヴァドス】[MP残量:100%]
[状態:左ひざに打撲、上半身に無数の打撲、顔面に中程度の火傷(大分回復)]
[装備:なし]
[道具:パラスアテネ@SO2・ガソリン入りペットボトル×2・荷物一式]
[行動方針:最後まで生き残る?強き者に従う]
[思考1:チサトの言う事に従う]
[思考2:???]
[現在位置:ホテル跡前]
※ ガソリンは合計で4リットルあります。
【E−4/午後】
【チェスター・バークライト】[MP残量:100%]
[状態:全身に火傷(大分回復)、左手の掌に火傷(大分回復)、胸部に浅い切り傷、精神的疲労(軽度)、焦り]
[装備:なし]
[道具:スーパーボール@SO2]
[行動方針:力の無い者を守る(子供最優先) ]
[思考1:ホテルでクレスの捜索]
[思考2: クレス・アーチェ・クラース・力のない者を探す]
[思考3:クレス・アーチェ・クラースと子供を除く炎系の技や支給品を持つ者は警戒する]
※ホテル跡にいるのがクレスだと思っています]
[現在位置:ホテル跡前]
[備考:チサト、ガルヴァドス、チェスターはクロードがマーダーで分校に火を放った人物だと思っています]
※クロードの殺され方・死に方はアドレーと全く同じです。
※2クロードの装備・道具は全てボーマンが回収しました。
【クロード・C・ケニー@SO2 死亡】
【残り 35人】
投下終了です。
本当に遅くなって申し訳ありません。
何度もやろうとしたのですが、いつも『アクセス規制中』になってしまって、
投下ができない状態でした。
遅くなりすぎてしまったので、文を破棄するかは、皆さんの判断にお任せします。
とりあえず乙。
てっきりもう投下無いと思ってたから良かったよ。
ちょっと気になる所だけど
・クロードは南東に逃走したはずだけど、その辺をウロウロしてるって所
・クロードの死に方だけど、できれば死ぬところを(せめて薬飲むところ位まで)書いて欲しかった
・タイトルは?
>>257 そういう時は、したらばに投下すれば幸せになれるよ!
ボーマンがSO2の仲間に会いたくないって言ってたのに自分から会いに行くってのはちょっと疑問だけど
説明不足でした。一応設定は
・クロードは南東に逃走したはずだけど、その辺をウロウロしてるって所
>逃走した後、一息入れていた所を、チサト達にクロードが逃げた方角を
教えられたボーマンと遭遇した(かなり低確率ですが)。
・タイトルは?
>破棄されないのであれば、前回のも含めて『光の勇者の不幸(解決編)』で。
・ボーマンがSO2の仲間に会いたくないって言ってたのに自分から会いに行くってのはちょっと疑問だけど
>一応ボーマンの心情的には
チサト達三人は自分では殺せない
→クロードは聞く所によると一人らしい
→クロードの方が殺しやすい、そっちに行こう(ほぼ自分への言い訳)
→(向かってる途中)クロードに会ったらどうすっかなぁ、殺せるかなぁ
的な感じです。
ホントにご迷惑をお掛けしました。
う〜ん……他の説明不足な箇所は多目にみたとしても、キャラの死亡シーンくらいはちゃんと書いてほしいなぁ
死んだとこが補足のみとかあんまりだろ…
あとクロード死んだってのにチサトあっさりしすぎてないか?
とりあえず乙。ただ、
アドレーと同じ殺され方ってことは、破砕弾を秘仙丹と偽って飲ませたってことだよな。
アドレーなら兎も角、ボーマンの仲間であるクロードに対してこの殺し方は不自然じゃないかな?
クロードが、冒険中ボーマンが破砕弾と秘仙丹を使う所を一度も見たことが無いってなら有りだが、それも不自然だし。
>>257乙です。補足部分とかはやっぱ作中でやってほしかったかな?
>>263一応クロード午前中に負った傷が開いてるからそれの治療って事で飲ませれば警戒しないんじゃない?
活人剣で自己治癒しろよとか言われるとあれですが。
>>264 いや、そうじゃなくて、破砕弾を秘仙丹と見間違えて飲むのか? ってこと。
仲間なんだから、この二つがどんなもの(見た目)なのかくらいは知ってるんじゃないかな?
主役を補足のみで死亡はどうかと思ったけど、
破砕弾を秘仙丹と見間違えて飲むってのは、
外見と臭いが秘仙丹だったら普通に飲むんじゃね?
>>266 ああ、素人目には見分けがつかないものって可能性もあったか。
ところで、この話の扱いはどうする? このまま通しになるのか?
個人的には一部説明不足な箇所や死亡描写を加筆してくれると嬉しいのだが。
描写不足とかは要修正対象になるかってとこだな。
これといった矛盾は見当たらないし最悪通しでも問題ないのでは。
勿論俺としてももうちょい直してくれるといいと思うけどね。
問題は描写不足のせいで、補足説明が無いと前の話と矛盾しているように見えてしまうことかな
(上で出ているボーマンの行動やクロードの位置など)
アドレーなら兎も角、ボーマンの仲間であるクロードに対してこの殺し方は不自然じゃないかな?
クロードが、冒険中ボーマンが破砕弾と秘仙丹を使う所を一度も見たことが無いってなら有りだが、それも不自然だし。
>これは戦闘中のボーマンの破砕弾と秘仙丹を知ってるクロードだからこそ、
ある意味アドレーより引っ掛かりやすかったのではないかと自分は思ってます。
クロードが警戒心バリバリならばともかく、疑われたのが晴れた、気の弛みの中、
体の怪我を治せる秘仙丹を渡されれば、ほぼ何の疑いも無く口に含むのではないかと思いました。
破砕弾の秘仙丹への偽装にしても、一見見ただけですぐに解かる程度の偽装ですませる程、
ボーマンも馬鹿ではなさそうですし。
死んだとこが補足のみとかあんまりだろ…
>これは自分のエゴでして、クロードの最期の台詞は「ルシファーを倒します」といった感じの物で
あって欲しいという完全な自己満足です。すいません。
色々説明不足があるようなので、ちゃんとした物はまとめサイトに書きたいところですが、
これまたやり方が解からんので、一通り補足した物をこのスレに投下してみます。
故にご足労ですが、ここを治して欲しいと言うものをか書いていただけますか?
全部は無理かもしれませんが、可能な限り治して見たいと思いますので。
>>270 >これは戦闘中のボーマンの破砕弾と秘仙丹を知ってるクロードだからこそ、
>ある意味アドレーより引っ掛かりやすかったのではないかと自分は思ってます。
>クロードが警戒心バリバリならばともかく、疑われたのが晴れた、気の弛みの中、
>体の怪我を治せる秘仙丹を渡されれば、ほぼ何の疑いも無く口に含むのではないかと思いました。
いや「何故引っかかったか」じゃなくて「何故破砕弾と秘仙丹の区別が出来なかったか」ってのを
>>263は言いたかったんじゃ?
まあその後の偽装ってのがその答えになってるけど。
破砕弾を秘仙丹に偽造する事ができるかどうかって疑問もあるけど、元の形状も分からんしなあ。
とりあえず
・死んだところの描写
・
>>260とかに挙げられた説明不足なところ
・クロードが破砕弾と気付かず丸薬を飲んだ理由
この位か?あと
>>262のチサトあっさりし杉ってのも追加して欲しいかな。
あと、修正したのは
>>1にあるしたらばに投下するのがいいと思う。
とりあえず、死亡描写無しで補足のみで済ますことの理由として、最期の台詞をそれにするためというのは適切ではない。
殺害方法を喋る暇を与えずに殺せる方法(隙をついて首コキャなど)に変えるとか、
爆殺時の描写を省く代わりに、爆殺後の描写(死体の状態や殺害方法の説明など)を入れるなど、
補足だけで済ます以外の方法はいくらでもあるはずなんだ。
>隙をついて首コキャ
マグニスさま乙です
修正しました。
271>の通り、したらばに投下しました。
どうしてもこれは納得できないというのがあれば、言ってください。
>>274修正お疲れ様です。要修正箇所はなんとかなってると思いますよ。
違和感は無いんですが、地の文で描写を細かく書いたほうが良くなると思いますよ。
そうすれば補足とか無しで書きたいことが伝わったんじゃないかと。
あまり上手い書き手ではない自分が言うのもなんですがね。
>>274 修正乙。これなら問題無いと思うよ。
余談だが、レスアンカーは
>>(半角)の後ろに数字
覚えておくと幸せになれますよ。
修正乙。
できれば、前半部分も
>>260を加筆して修正して欲しいんだけど…。
あと、チェスターの状態欄の「炎の技を持つ奴を警戒する〜」ってのは
クロード死んだと知ったらもういらないんじゃないか?
あ、それからクロードの死体の位置も補足してほしい。
クロードのフラグは全部折られたか…ま、別にいいけどさ
ごめん、今の発言は撤回する
新作乙!
だがちょっと待ってくれ。
クロードはエネミーサーチを装備してたはずだ。
だったら、ボーマンがクロードに対して殺意を持った時点でエネミーサーチが何らかの警告を起こすんじゃないか?
修正の後にイチャモン付けるのは申し訳ないが…
俺も一つ言わせてもらうよ。
言わせてもらうと言っても修正依頼じゃないよ。俺のワガママや主観が多分に含まれてるから聞き流してもらって構わない。
丸薬って某ラッパのマークのような薬の事だよね?
そんでもってアドレーが死んだ話の中で、破砕弾の大きさはピンポン球を一回り小さくしたものってなってるんだ。
破砕弾はぶっちゃけ手榴弾と同じようなもの、口に入れるものじゃないからこのサイズでも問題は無いはず。
(むしろでかい方が色々な面で都合が良いくらい)
一方、秘仙丹は口に入れて使用する普通の薬。ピンポン球を一回り小さくしたものじゃ大きすぎると思うんだ。常識的に考えて。
つまり、破砕弾を秘仙丹に偽造すると元のサイズよりだいぶ小さくなる=威力が落ちると思うんだ。
そうなると、クロードの死体状況はアドレーのものとは違うものになる可能性が出てくるってわけよ。ボンドサとか腸四散とかに。
>>282 うーん…でも実際本編で大きさとかが明言されてる訳じゃないからなあ…
とは言え
>>281はちょっと問題かもしれないな。
てかエネミーサーチの存在とか効果すっかり忘れてたw
>>283 解ってる。だから聞き流しておkなのさ。
エネミー・サーチ効果って
敵意を持つやつが近くにいると赤い球体が出る
だっけ?
エネミーサーチ……そういやそんなのあったね……
クロード空気すぎて忘れてた……
最初の方はボーマンが迷ってたからいいとしても、食わせる段階になったら反応するよな。
反応しても、それがボーマンによる反応だと思うかは別だが。
ボーマンに信用してもらって安心して警告する赤い発光体を見逃してたって線しかないんじゃない?
ちょっと無理があるかもだけど。
VPやっててもうっかり見逃してエンカウントってのも俺はやったことあるし。
ボ「ところでクロード怪我……」
ク「大変ですボーマンさん、敵が近くにいます」
ボ「な、なんだってー!どういう事だクロード」
ク「これはエネミーサーチといって(中略)というわけです」
ボ「なるほど(ここはクロードと共闘するべきだな)」
ク「あれ?反応が消えた」
ボ「それはよかった。ところでクロード怪我……」
の無限ループ
確か前スレでは、
「クロードが何らかの形で察知している人物(視覚、嗅覚など)がクロードに対して敵意を持っている」と反応するとかじゃなかったっけ?
前スレ見れないから誰か確認できないか?
その話の作者です。
wikiだと作者欄名無しなんで信用度低いですけど、前スレの投下後タイトルとトリを書いたはずです。
とりあえず残っていた原稿から抜粋します。
いまいち近くに敵がいた場合ってのが曖昧なので草案を書きます。
どうなの?と思った方は意見を下さい。
1.装備者の位置を何らかの感覚(視覚や嗅覚など)である程度把握している人物が敵意を向けてきている時に反応する。
例;仮に今ミカエルやシンがクロードを殺してやると思っても反応しない。
2.装備者に同行者がいてその同行者のみに敵意が向けられた場合は反応しない。
例:今回の話で仮にチサトがエネミー・サーチを装備していたのなら、ガルヴァドスがクロードにソードボンバーをぶつけられた時には反応していない。
なので、
>>289さんのだとちょっと違ってて、クロードが気付いていなくても敵意を向けてくる相手がクロードの位置を知覚していれば反応します。
今回の場合ボーマンは当然クロードの位置を把握しているわけですので、殺すつもりなら反応していないといけなくなります。
要するにクロードが気付いていなくても、彼を察知している人物が敵意を持てば反応するって事か。
うーん…そう考えるとやっぱスムーズには進まないかなあ…。
クロードエネミーサーチの説明書も読んでたし、反応見逃したってのもちょっと苦しい気がする。
どうしたもんかねえ?
素で忘れてました……エネミーサーチ…。
(あれ、エネミーサーチが反応してる。近くに敵の気配はないし……まさか、ボーマンさんが!?
……なわきゃないよな……ボーマンさんがヤル気の筈がないし、万が一そうでも、
ボーマンさんと会った瞬間反応してるはずだし。……今この瞬間ヤル気になったなんて、
どう考えても不自然すぎるし…。コレの誤作動か、さもなきゃルシファーの罠だな。
うん、間違いない)
ボーン
とコレでどうでしょうか?
少なくともクロードが、生死を共にした仲間より、少し前に効果を知ったアイテムの方を
信じるとは思えないんで。
まあ、第三者的に見れば、クロードどんだけ馬鹿なんだよって感じですが。
さすがにそれは無理があるだろ…
ちなみにその赤い光って装備してる人しか見えない?
>>293すみません。そこまで考えてなかったです。
書いた話でも第三者に見えてる見えてないの描写は入ってないのでなんとも…。
今決めて良いなら都合の良いように決めてもらっても構わないと思いますよ。
クロードもああ見えて一応軍人だぜ?
いくらボーマンとはいえ、エネミーサーチが反応すればもっと疑うだろ
エネミーサーチの赤い光は、装備者にしか見えないって方が俺はいいかな
他人にも見えたらちょっと万能すぎる感じがするし
流れを切って悪いが、予約期限が切れてしまうので投下させてもらいます。
>>296どぞどぞ。
リアルタイムktkr!ついでに支援だ!
【I-06】氷川村
民家の一室で、レオンは歓喜の表情を浮かべていた。彼が散策を開始してから約二時間後のことだ。
ここまでに調べた民家の数は二桁に上り、諦めかけてたとこで、ついに探していた物が手に入ったのだ。
ケースに収納された小型のドライバーが数種類。
当たり前のことだが、首輪を詳しく調べるにはドライバー以外にも必要となる道具があるだろう。
だが、ドライバーだけでも大きな収穫と言える。何故なら、これのお陰で民家に工具があることを証明出来たからだ。
(良し、取り敢えず道具探しては中断だ。次はプリシスや信頼出来る人を探して……いや、首輪のサンプルも必要だ)
レオンはデイパックから一降りの剣を取り出す。
そうなのだ、首輪を外すには、その仕組みを調べるために使うサンプルが必要なのだ。
流石にプリシスも、どのような仕組みになっているかも解らない首輪を、いきなり外すことは出来ないだろう。
入手するには、他参加者の首と胴を切り離す必要があるが、少年はそれを行う覚悟をとうに済ませてある。
(誰かがやらなきゃ駄目なんだ)
そう自分に言い聞かせながら立ち上がり、剣を持ったまま玄関へ向かう。
ここにはもう用はない。次の目的地は『二時間前に少女が呼び掛けを行った場所』だ。
あれから二時間も経っている。もう危険ではないだろう。そこなら高確率で死体が転がっているはずだ。
運が良ければ、道中又は『呼び掛けの場所』で信頼出来る人に出会えるかもしれない。
(プリシスに会えるのがベストだけど……そんなうまくはいかないだろうなぁ)
自らの甘い考えに苦笑しながら、少年はドアノブを回して、外へ一歩踏み出す。
ちょうどそのとき――
「着るか! 着ねえよ! 絶対着ねえからなっ!」
割りと近くから、妙な声が聞こえてきた。
意味はよく解らないが、レオンには誰かに向かって不満を述べているように聞こえた。
(同行者がいるなら危険じゃない……かな?)
レオンはここまで、他の参加者と一切遭遇していない。出来れば、他の参加者と情報交換を行っておきたかった。
それに、
(もしかしたら、僕の知り合いがいる可能性も有るかもね)
少年は、声のした方へ向かい歩き出す。この判断が間違いだと気付かずに。
(あれ? 一人だけ?)
数分後、レオンが見つけたのはプリンのような髪色の男。
曲がり角の向こう側にいるその男は、レオンの存在に気付いていないのか、こちらに背を向けた状態で立ち止まっている。
(どうしようかなぁ)
脱出のためには、自分は絶対に死ぬわけにはいかない。危険は避けるべきだ。
だけど、情報交換は行っておきたい。だが、あの男は明らかに自分の知り合いではない。
レオンが考え込んでいると、
「おい」
不意に声を掛けられる。その声に反応して顔を向けると同時に、レオンの表情が凍りつく。
目に飛込んできたのは、いつの間にか自分の直ぐ側まで近寄っていた男の姿。だが、レオンが驚愕した理由はそこではない。
男の表情。どことなく不自然で、気味の悪い笑みを浮かべていたのだ。
「あ……あ……」
(やばい、やばい、やばい、この人はやばい)
レオンは思わず後退る。
「餓鬼」
男は喋りながら一歩踏み出す。
「その剣なんだ……」
レオンは男の言葉を最後まで聞かない内に、回れ右して一目散に走り出す。
僅か一言で理解出来た。あの男の狙いは自分の持つ剣――セイクリッドティアだ。
これはクロードの剣だ。絶対に渡すわけにはいかない。何より、渡したら最後、真っ先に斬られるのは自分だろう。
だから少年は逃げ出した。脇目も振らず。がむしゃらに。
■
【I-06】数分前 氷川村
(ふん……また阿呆が来やがったか)
アルベルがその気配に気付いたねは、ちょうどメイド服をしまい終えたときだった。
出所は自身の背後。距離は近い。メイド服に気を取られていたので、何時からそこにいたのかは解らない。
(まあいい……退屈しなくて済むってのはいいことだ)
木材を直ぐにデイパックから出せるようにしてから、気配のする方へゆっくりと近づく。
気配の主は、予想道理直ぐ近くにいた。そいつの姿を確認した瞬間、アルベルは内心歓喜の声を上げる。
(!? 最高だ、俺にもやっと運が回ってきたな!)
気配の主は、ローブを纏った猫耳の少年。少年の手には一降りの長剣。
武器を探している最中に、自分が得意とする得物を持った奴が現れたのだ。これは喜ばずにはいられない。
この少年、体格や服装から判断して、理系で肉体労働は得意ではないタイプと見た。
そんな奴に剣は必要ないだろうし、襲ってきても難無く返り討ちに出来るだろう。まさに鴨が葱を背負ってきた。
逸る気持ちをそのままに、少年に声を掛けようとするが、すんでのところで思い止まる。
――――ここでアルベルを見た人達の反応を思い出してもらいたい。
殺人者と認識して逃走。顔を見るなり短剣を構え出す。何もしてないのに脅え出す。
彼は必要以上に警戒される運命にあるようだ。最初のは近くに死体があったから仕方がないとはいえ、後の二つは弁解出来ない。
今回も、ただ声を掛けただけで警戒されてしまうだろう――――
(ちッ……コイツがゲームに乗った阿呆ってなら、何の問題もねえんだが。そうじゃねえとすると面倒だな)
自分に脅えて逃げられでもしたら困る。剣はここで確実に入手しておきたい。
ゲームに乗ってようがいまいが、奪い取るのが一番手っ取り早いが、それは何と無く気が引ける。
(……閃いた)
時間にして二秒ほど悩んだ後、アルベルの表情が突然笑顔になる。
答えは実に簡単なものだった。ようは脅えさせないように接すればいいだけの話だ。
アルベルは笑顔のまま少年に歩み寄り、声を掛ける。
「おい」
少年が振り向く。アルベルの出した答え、それは、
「餓鬼」
決して笑顔を絶やさず、フレンドリーに接すること。
「その剣なんだが、少し見せてく……あん?」
ここで想定外の自体が起きた。剣のことを口にした瞬間、目の前の少年は凄い勢いで逃げていったのだ。
「何故だ? ……って、まてコラクソむしぃぃぃぃ!」
アルベルは、少しの間呆然と立ち尽くしていたが、直ぐに気を取りなおして少年を追い掛ける。
結論を言うと、彼の作り笑いは怪しい人以外の何者でもなかった。
■
【I-06】北部 氷川村付近の草原
氷川村の目と鼻の先で、一人の青年が荒い息をしながら立ち止まっている。
「はぁ、はぁ……やぁっと着いたぁ」
彼の名はアシュトン、安息の地を求めてここまで走ってきたのだ。
彼が安息の地として選んだのが氷川村。選んだ理由は、こういう場所ならば、休憩後直ぐに獲物を見付けられる可能性が高いから。
そして、どうせならその辺の地べたより、ベットで休みたかったからだ。
疲労した状態で村へ行くのは危険ではあるが、そこは“保険”があるから大丈夫との判断だ。
「ギャフー(まったく! 休むなら先程の場所ども良かっただろ。無駄な体力使いやがって)」
「フギャ?(まあまあ、落ち着きなよギョロ。お前だって、ふかふかなベットで休みたいと思わないか?)」
「ギャフン……(それは確にそうだけど……)」
「フギャア(なら、今更ぐだぐだ言うなよ。それより、早く村へ行こうぜアシュトン)」
ある程度呼吸を整え、再び村に向かって歩き出す。が、
「フギャッ(おい、アシュトン)」
「何? 敵かい?」
その歩みは直ぐに止まった。双龍が敵の気配を察知したのだ。
「ギャッ!(気配の数は二つ。気を付けろ!)」
「えー、二人は厳しいなぁ。仕方がない、逃げるよ二人と「ギャ!(待て!)」え?」
ギョロに言われるまま暫くその場で待っていると、アシュトンも相手が誰なのか確認出来た。
「……レオンか」
こちらに向かってくる者の一人は、紛れもなく彼の仲間である猫耳の少年だった。
「アシュトンお兄ちゃゃぁあん!」
「やあ! 無事だったんだねレオン」
必死の形相で駆け寄ってくるレオンに対し、アシュトンは静かに微笑んだ。
レオンはそんなアシュトンの後ろに回り込む。
「どうしたんだいレオン? ……ああ、追われてたのか」
アシュトンはレオンより僅かに遅れてやってきた男――アルベルに剣を向ける。
(しくじった……こいつらあの二人がいってた奴らじゃねえか)
目の前の二人を、主にアシュトンを眺めながら、アルベルは思わず頭を抱えたい衝動に駆られた。
猫耳の少年と双龍を背負った青年――レオンとアシュトン。
この二人のことは聞いている。そう、数十分前に彼と情報交換を行った男女――ディアスとレナが探していた仲間の内二人だ。
なんということだろう。猫耳の少年を見たときに気付いていれば、こんな状況にはならなかったかもしれないのだ。
(まぁ今更悔やんでも仕方ない。まずはこの状況を何とかしねえとな。取り敢えずあの二人の名前を出して……)
「そんなことよりレオン、君に伝えなきゃならないことがあるんだ」
「え?」
(ん?)
剣先はアルベルに向けられたままだが、アシュトンはアルベルの対処よりレオンとの会話を優先させるようだ。
(一体なんだってんだ)
この状況で、不審者の対処より優先させる話。アルベルはそれに興味を持ち、取り敢えず静観することにする。
「僕ね、プリシスに会ったよ」
「!? 本当なのアシュトンお兄ちゃん!」
この言葉を聞いた少年は、一瞬驚いた後、凄くいい笑顔を浮かべた。
(プリシス……ああ、その名前も聞いてたな。で、そいつはそんなに重要なのか?)
そんな疑問が浮かぶが、口にはせず静観を続ける。
「それで! お姉ちゃんは!」
「プリシスは……生き残るために、僕達を皆殺しにするつもりなんだって」
「えっ……う、嘘、だ」
今度は、少年の顔から絶望が伺える。
「ごめんねレオン、本当のことなんだ。だから僕はプリシスを……」
(ふん、殺したってわけか。よくある話じゃねえか。くだらねぇ)
「僕はプリシスを……手伝わなければならないんだ」
その言葉を口にすると同時に、アシュトンはアルベルに背を向けていた。勿論剣先も、すでに彼に向けられていない。
さらにほぼ同時に、レオンの体がアルベルから見て左の方向へ吹き飛んでいく。
いや、吹き飛んだのは体だけではない。少年のデイパック、少年の持っていた剣、そして――――
少年から吹き出た血飛沫、少年の体から切り離された左腕。
「おかしいなぁ、首を狙ったつもりなんだけどなぁ。う〜ん、疲れてるから手元が狂ったのかな?」
アシュトンはアルベルの方へ向き直る。
「あれ、まだいたんだ。実は、僕は今すっごく疲れてるんだ。だから、退いてくれると有り難いんだけど……駄目かな?」
(ちっ、こいつもゲームに乗った阿呆か)
アルベルは、デイパックから木材を三本取りだすと、その内二本を足下に落とし、残った一本を正眼に構える。
「駄目だな。ちょうど暴れたかったところなんだ……相手をしてくれよクソ虫」
相手が構えるのを見ると、アシュトンは溜め息を吐き、
「しょうがないなぁ」
「フギャア!」
「大丈夫だよ。見たところ大した武器持ってないようだし、僕も無理をするつもりはないからね」
構えを取る。
一瞬の沈黙の後、先に動いたのはアルベル。手にした木材を、力任せに上空へぶん投げる。恐らく牽制だろう。
直ぐに足下の木材を拾い上げ、次の動作へ移る。
「空破斬ッ!」
木材を振るって衝撃波を飛ばす。間髪入れずに木材を取り替え、アシュトンに向かって駆ける。
「そんな子ども騙しな手に引っ掛かるとでも?」
「思っちゃいねえよそんなこと」
アシュトンは空破斬を軽く避けると、アルベルの姿を目で追う。牽制の木材など初めから見ていない。
迫り来るアルベルを、横へなぎ払うように斬りつける。アルベルは姿勢を低くしてこれを避ける。
それを見て、今度は縦に斬りつける。
もしアシュトンの体調が万全であり、扱いなれた得物による二刀流であれば、ここで勝負は決まっていたかもしれない。
だが、今の彼は激しく疲労し、得物も使いなれたものではない。今度も避けられてしまう。
「おせぇよ阿呆!」
アルベルは、空振りによって発生した隙をついて木材を打ち込む。
「痛っ」
とっさに出した右腕で木材による一撃を防ぐ。右腕に痛みが走るが、骨は折れていないようだ。
「このっ!」
直ぐに左腕一本で剣を振るい、牽制を行う。だが、片腕で振るうには、アヴクールは些か大きすぎた。スウィングスピードが遅い。
それを見逃すアルベルではない。すかさず相手の懐へ潜り込み、木材を叩き込もうとして……先程の攻撃で折れていたことに気付く。
だが、そんなことは問題にならない。
(得物は無くても、攻撃は出来んだよぉッ!)
「ぐぅ……がっ!」
ボディブローを一発、続けて頭突きをお見舞い。よろけるアシュトンに更に攻撃を加えようとするが、
「ギャフゥッ!」
赤き龍がそれを許さない。アシュトンの背から身を乗り出したギョロは、アルベルの喉を咬み千切らんと迫り来る。
タイミング、スピード共に良し。予め来ることを予測していない限り、避けられるはずのない攻撃だった。だった。
鮮血が舞う。
しかし、ギョロが噛みついた場所は喉ではなかった。左肩。では、アルベルはこの攻撃を読んでいたのだろうか? いや、違った。
今彼の右手には、先程まで持っていなかったはずの木材が握られている。初めに放り投げた木材だ。
攻撃を避けるためではなく、落下してきたそれをキャッチするために右へ移動していたのだ。それが勝負を分けることとなった。
「吹き飛べッ!」
至近距離から放たれた衝撃波が、アシュトンを言葉道理吹き飛ばす。
「ギャッフ!」
「いてて……。ああ、大丈夫だよ二人共。それより敵は?」
アルベルの姿を探す。てっきり追撃してくると思っていたが、それはなかった。では何処へ行ったのだろうか?
その姿を見つけたとき、一人と二匹は突然焦り出す。
「ギャフ!」
「フギャ!」
「っ……! い、言われなくても分かってるよ!」
アルベルが立っている場所。それはレオンの直ぐ側。そして、彼の右手にはセイクリッドティアが握られていた。
(この光沢、この重量感、やはり得物はこえでないとな)
数回素振りを行い、感触を確かめた後、
(これで思う存分、ぶった斬れる!)
その切っ先をアシュトンに向けながら叫ぶ。
「行くぜクソ虫……お楽しみはこれからだッ!」
支援
「……って、なんだこりゃ!」
アルベルが剣を向けた先、そこは人影すら確認出来ない状況だった。
目の前には、いつの間に発生したのだろうか、真っ白な霧が立ち込めていた。
「盛り上がってるところを悪いね。悔しいけど、ここは退かせてもらうよ」
霧の中から声が聞こえてくる。アシュトンの声だ。
「ふざけるな! 逃げるのかこのクソ虫ッ!」
「残念だけどね。でも安心して、次に会ったときはちゃんと殺してあげるから」
その言葉を最後に、アシュトンの声は聞こえなくなる。
そして霧が晴れた頃には、すでにアシュトンの姿は何処にもなかった。
「ちッ……どいつもこいつも逃げ足だけは立派だな」
敵がいなくなったのを確認すると、悪態を吐きながら剣を鞘に納める。
そのまま振り替えって、足下に目をやる。その目には、横たわったまま動かない少年の姿が映った。
「悪いな餓鬼。お前の剣は俺が有効活用させてもらう。だから安心して眠……!?」
勝手なことを言いながら少年を見下ろしていると、あることに気が付いた。
少年の胸が僅かに動いていることに。
■
【I-06】H-06との境界付近の木陰
「ぜぇ…はぁ、ぜぇ、はぁ…お、追っ…てきて…な…いよね?」
「フギャァ(大丈夫だ。取り敢えず水でも飲んで落ち着け)」
言われた通り、デイパックから水を取り出して、一気に飲み干す。
まとも武器を手にしてしまったあの敵には、今の自分のコンディションでは勝てない。
そう判断したアシュトンは、マジックミストを利用してここまで逃げて来たのだ。無論全力疾走で。
マジックミスト――もともとノートンに支給された逃走補助の道具。これこそアシュトンの持つ“保険”の正体だ。
「ギャフフン(しかし、ウルルンの言った通り、早く逃げておくべきだったな)」
「そうだね。疲れたし、右腕は痛いし、レオンの首輪は手に入らないし、もう散々だよ」
「フギャ(これに懲りたら、こんな無謀な戦いに応じるのはこれっきりにしてくれよ)」
「ごめんね、本当に悪かったと思ってるよ」
アシュトンは心から申し訳なさそうに謝る。
「ギャフ(解ればいい。それと、休息はもうこの場所で取れ。村には先程の男がいる可能性が高いからな)」
「うん、残念だけど仕方ないか。僕が寝てる間、見張りは頼んだよ」
「ギャフン(任せておけ。何かあったら直ぐに叩き起こしてやるさ)」
【I-6/夕方】
【アシュトン・アンカース】[MP残量:50%(最大130%)]
[状態:睡眠中、疲労特大、体のところどころに傷・左腕に軽い火傷・右腕にかすり傷(応急処置済み)、右腕打撲]
[装備:アヴクール@RS、ルナタブレット、マジックミスト]
[道具:無稼働銃、???←もともとネルの支給品一つ、首輪×3、荷物一式×2]
[行動方針:プリシスの望むまま首輪を狩り集める]
[思考1:ZZz...]
[思考2:敵との交戦は今のところ控える]
[思考3:回復しだい目的に移る]
[現在地:H-06との境界付近の木陰]
■
【I-06】町中
アルベルは氷川村内を駆ける。肩に少年を担ぎながら駆け抜ける。
「三つ目の女に龍を背負った阿呆、プリシスって奴もか? お前のお仲間はホント頼もしい奴ばかりだな」
レオンに皮肉の混じった言葉を掛けるが、答えは返ってこない。
少年の胴と左腕があった場所には、先程まで彼が着ていた白衣が、包帯の代わりに巻き付けられている。
「いいか餓鬼。お前を治療してやったのは、俺の治療のついでだ」
そう言うアルベルの左肩には、レオン同様白衣が少々荒っぽく巻かれている。
「今運んでやってんのは、この剣の礼だ」
アルベルは、ディアス達が向かった方へ移動している。ただのお荷物でしかないレオンを彼等に押し付けるために。
「だから勘違いするなよ。俺は別に、お前に同情してるわけじゃねえからなッ!」
アルベルの叫びは虚しく響き渡る。
彼の目に映る夕日は、何故か妙に眩しかった。
【I-6/夕方】
【アルベル・ノックス】[MP残量:80%]
[状態:疲労、左腕(義手部分)切断、左肩に咬み傷(応急処置済み)、レオンを担いでいる]
[装備:セイクリッドティア@SO2]
[道具:木材×2、メイド服(スフレ4Pver)、切断された義手(腕部+手首)、荷物一式
レオンのデイパック(幻衣ミラージュ・ローブ、どーじん、裏に考察の書かれた地図、ボールペン、小型ドライバーセット、荷物一式)]
[行動方針:ルシファーの野郎をぶちのめす! 方法? 知るか!]
[思考1:レオンをレナとディアスに押し付ける]
[思考2:左腕の代用品の調達または修理]
[現在地:I-06 町中]
※木材は本体1.5m程の細い物です。耐久力は低く、負荷がかかる技などを使うと折れます。
【レオン・D・S・ゲーステ】[MP残量:100%]
[状態:気絶、左腕切断・左脇腹裂傷(応急処置済み)、アルベルに担がれている]
[装備:無し]
[道具:無し]
[行動方針:首輪を解除しルシファーを倒す]
[思考:?]
[備考1:首輪に関する複数の考察をしていますが、いずれも確信が持ててないうえ、ひとつに絞り込めていません]
[備考2:白衣は包帯の代わりとして使用したので着ていません]
[現在地:I-06 町中]
※一応止血はしてありますが、早くちゃんとした治療を受けないと死に至る可能性があります。
※レオンの左腕はI-06(北部)に放置されています。
投下しました
>>305GJ!
アルベルの見事なツンデレっぷりにワロタ。
まぁ、レオンヤバ気だが目的地にレナいるからなんとかなるべ。
仮に死んでも首輪解析は北部の連中がやってるしなw
新作GJ。アルベルツンデレすぎw
レオンもようやく会った参加者がアルベルアストンなんてついてないな
しっかし反主催はホントすぐボロボロになるなあ
>>305乙!
アシュトンは相変わらす頑張ってるねw
アルベルもマーダー二人退けてるのに相変わらずギャグキャラを脱出できないな〜。
あんま引っ張るのもあれだから、エネミーサーチ関連さっさと決めちゃわない?
とりあえずボーマンに対してエネミーサーチが反応するのは確実として、
エネミーサーチが反応しててもボーマンを疑わずに秘仙丹(破砕弾)を飲むかってとこか。
個人的には全く無警戒でホイホイ丸薬飲むのはあまりにアホすぎる気がする。
ついでに、エネミーサーチの反応で出現する赤い玉が装備者以外に見えるかどうかもか。
いっその事投票で決める?
投票するならついでに禁止エリアも決めちゃわない?
光の勇者の不幸(解決編)の諸問題が解決したら放送行けるでしょ?
放送前の話を構想してる書き手がまだいるかもしれないから、放送はまだちょっと待った方が良くない?
ついでに言えば、「優勝者のご褒美」も明らかにしとくか話し合う必要があるな。
とりあえず禁止エリアの候補として、H-7を挙げておく。
留まってるマーダーを動かしたいって意味ならGかFの2あたりもいいかもね。
禁止エリアといえば、
□■
■◇
■:禁止エリア
◇:現在地
のような配置で、現在地から左斜め上へ移動する場合、4つのエリアが交わる箇所で禁止エリアに引っ掛かることになるのかな?
エネミーサーチに関しては、赤い玉は装備者のみ見える&ボーマンを一切疑わないのはおかしくね派。
このまま自分の意見を淡々と列挙するより、part1でやってたみたいに投票日決めてその日に一斉にやらない?
その前日までに決める項目をリストアップしておいて投票用のテンプレみたいなの作っておけば投票もスムーズじゃない?
現在は1.エネミーサーチの赤球が見える対象は?a.装備者のみ b.周囲の人間も見える
2.禁止エリアは?
3.これは仮だけどクロード警戒しなさ過ぎでおかしくね?
ちょうど週末だし、明日か明後日一日使ってやるか
あとご褒美放送も
>>313に加えてくれんか?
結果しだいで、◆pLCc.qkfzw氏は話をどう修正するかが変わるだろうから、決めるなら早めにやった方がいいだろうね
んじゃ、明日一日使って
1:エネミーサーチの赤球が見える対象は?a.装備者のみ b.周囲の人間も見える
2:クロード警戒しなさ過ぎでおかしくね?
3:禁止エリア決めようぜ(一人三つ位まで)
4:ご褒美放送する?
以上でFAでいいかな?
何だ、誰も投票せんのか?
1:装備者のみ
2:クロード警戒心無さ杉
3:E−2(時空剣士組を焦らせられる)
H−7(ガブリエルの引き籠もり対策)
I−7(氷川村の連中を北上させる)
4:どちらかと言えば放送して欲しいが、無理にとは言わない
>>312 首輪が禁止エリアに入ったら反応するだろうから、引っかかるんじゃない?
まあ警告出るしすぐ抜けられるだろうけど
んじゃ俺も。
1.装備者のみ(なんとなく警戒を促す感じの色したものが標的の周りを浮いてたら仕掛けにくそう)
2.ぎりぎり許容範囲内(実際午前中に無警戒で声掛けた奴に殺されかけてるし)
3.H-07(
>>317に同意)・C-03(放送後即バトル会場になりそうだし、そこに時間制限が加わるとおもしろそう)
G-2(ミカエル北上による、空気キャラ脱出のため)
4.ご褒美放送あり(マーダー補充のため。内容まで決めるんだったら願いを一つ叶えるで)
>>318 サンクス
1.装備者のみ(その方が面白い使い方が出来そう)
2.多少は警戒
3.
D-04(レナス達が村へ到着するのを難しくする)
H-07(動け、動けガブリエル)
G-08(あまり拠点になりそうな場所を潰したくないので、適当な過疎地)
4.入れても構わない(褒美の内容は指定しない方が俺が嬉しい)
1.装備者のみ
2.無警戒って事は無いかと。むしろ午前中それで死にかけてたからこそ警戒すると思う
3.H-07 言わずもなが
C-02 鎌石村への出入り口を狭める感じで
I-07 参加者を分断しないように
4.褒美は放送
1・装備者のみ
2・ボーマン先生の年の功をいかした話術をつかって懐柔するしかないんじゃね
3・携帯で手元に地図ないからパス。
武器なしで戦える奴が多いし、マーダーが空気になる分には『疲労少ない』ってアドバンテージがつくからいいんだけど、反主催がバラけてると色々厄介な気がする。
つーわけで村の近くとか指定して島の中央の方に参加者を誘導した方がいいんじゃなかろうか
4・放送してほしい
1:装備者のみ
2:正直、ここで破砕弾を飲ませるのは厳しいかと
3:ガブリエルのいる所、氷川村と鎌石村のどこか
4:放送あり
投票したの6人だけかい。まあ一応まとめてみよう。
・エネミーサーチについて
満場一致で「球体が見えるのは装備者のみ」に決定
・クロードの警戒について
許容1票、多少の警戒2票、もっと警戒しろ3票
・禁止エリアについて
H−7:5票 I−7:2票 C−2、C−3、D−4、E−2、G−2、G−8各1票
他に村の何処か、鎌石村と氷川村の何処かという意見あり。
・褒美放送
満場一致で放送。ただし内容は指定しないという意見あり。
禁止エリア割れすぎ…。
複数表得た禁止エリアは隣接してるしな……
まぁ、決定から投票まで短かったしこんなんだろ。
隣接も別にいいんじゃね?
で残った候補地を投票で良くね?
て事は
H−7、I−7…決定
もう一つをC−2、C−3、D−4、E−2、G−2、G−8の中から決めるって事にする?
氷川村大移動か
あとの一個は放送書く書き手さんが決めちゃっていいんでない?
もう放送に入れるのって誰がいたっけ?
とりあえず全員行けるんじゃないか?
他の書き手氏達が放送までに書きたい話があるならまだ待った方がいいと思うけど。
あと、以前話題に出てた「得意武器の有無」を調べてみた。
ただVPとかラジアータやった事無いんでその辺り間違ってるかと…。
ラジアータキャラって何でも装備できるんだっけ?
得意な武器を既に装備してる人
クロード(刀剣):エターナルスフィア
プリシス(機械?):マグナムパンチ
フェイト(刀剣):鉄パイプ−R1
クリフ(籠手):ミスリルガーター
アルベル(刀剣、籠手):セイクリッドティア
レナス(刀剣):魔剣グラム
アリューゼ(刀剣):鉄パイプ
ルシオ(刀剣):アービトレイター
洵(刀剣、双剣):ダマスクスソード、木刀
ブラムス(ヅラ):波平のヅラ
ルーファス(弓):連弓ダブルクロス
ジャック(刀剣、槍、斧?):レーザーウェポン
リドリー(斧、刀剣?):イグニートソード
ガウェイン(刀剣?):グランスティング
得意ではないが一応武器を装備してる人
アシュトン(双剣):アヴクール(刀剣)
ディアス(刀剣):護身刀“竜穿”(短剣)
エルネスト(武器):シウススペシャル(刀剣)
ミカエル(?):ダークウィップ(鞭)
ガブリエル(?):肢閃刀(刀剣)
マリア(銃):サイキックガン(スタンガン)
すず(短剣):アントラー・ソード(刀剣)
余っている武器
無稼動銃(銃):アシュトン
セブンスレイ(ランチャー):プリシス
スケベほん(本):エルネスト
魔杖サターンアイズ(杖):ミカエル
セントハルバード(斧):ガブリエル
ボーガン(弓?):ガブリエル
エターナルソード(刀剣?):クリフ
メルーファ(双剣):クリフ
パラライズボルト(銃):ブレア
魔剣グラム(刀剣):レナス
神槍パラダイム(槍):レザード
エルヴンボウ(弓):レザード
ファルシオン(刀剣):ロキ
ストライクアクス(斧):ロキ
グーングニル(槍):ロキ
スタンガン(スタンガン):ロキ
デッキブラシ(箒):ロキ
クラップロッド(杖):ルーファス
グラビティレイザー(銃):リドリー
忍刀菖蒲(短剣):リドリー
アーチェの箒(箒):リドリー
エンプレシア(籠手):チェスター
サーペントトゥース(籠手):すず
咎人の剣“神を斬獲せし者”(刀剣):放置
武器を装備してない人
レナ(籠手)、ボーマン(籠手)、レオン(本)、チサト(スタンガン)、ソフィア(杖)、
ミラージュ(籠手)、ブレア(籠手?)、レザード(杖?)、ロキ(?)、ミランダ(?)、ガルヴァドス(?)、
クレス(刀剣、槍、斧)、チェスター(弓)、クラース(本)、アーチェ(箒)
>>330ちょwおまw
ブラムスは得意武器じゃなかろうよw
ってか武器ですらないw
一つ気になったんだが、クロードの警戒云々は投票したけど、どうしたいんだ?
やっぱ作者氏にその辺の再修正をお願いする感じか?
ま、そういう事じゃね?
あのままだと破砕弾爆死難しそうだし…ちなみに修正期限とかあったっけ?
放送近いと聞いてあせった
ルシオ、洵、ミカエル、ミランダ予約
>>334に期待。
別に焦らなくても良いですよ。
修正期限とかは聞いたことが無いですね。
てか初期の頃の作品の誤字、脱字訂正とか冬休み使ってやろうとしてたんですが、期限あると困っちゃいます。
焦って放送入られたら遅筆な俺は困るんだぜ……
書き溜めしとかなきゃ投下すらできないわけだからな!
そいや今書き手さん何人くらいいるんだろ?
なんとなく五人くらいなイメージなんだが。
最終作品投下後4、5日(もっととるべき?)みて、名乗りが無かったら確認後に放送みたいな感じでいいでしょ?
特に現状出番がいまいち無い奴いるし。
そいつらの話が出たら、ネタが浮かぶ書き手だっているだろうし。
個人的に土日を執筆に当てる書き手のことを考えて一週間は欲しい所
んじゃ、それぐらいで。
ってかあくまで目安だし。
投下をしろってわけじゃなくて、まだ構想中な話があるって宣言があればまったり待つ方向で。
>>331 レザードは大いなる教書、ソフィアはクラップロッド装備してます
現時点で三作以上投下している書き手毎の感想を書いてみました。
お節介ながらアドバイスとかもしてますが、不快に感じたらごめんなさい。
◆ZhOaCEIpb2氏:6作(1、14、19、30、51、71)6
記念すべき第一回を執筆した書き手氏。
バトルに定評があり、神塚山包囲網の「HEAT−灼熱−」や拡声器の結末「絶望の笛」等山場のバトルも担当、
長編を見事に書き切ってみせた。ダオスやルシオンなどの強キャラも早期退場させるなど、大胆な展開も。
また、何気に殺したキャラの数もトップだったり。
他にも多くのアイテム解説を載せてくれるなどの支援もしてくれる心の広い人。
個人的には、台詞がやや説明口調っぽい所があると思うのでその辺りを自然にしたら
もっと良くなると思います。
◆wKs3a28q6Q氏:6作(5、17、22、41、53、62)3
拡声器を発動させた書き手氏。
心理描写が非常に丁寧で、特に悲壮な決意や思いを表現するのが上手い。
繋ぎが主だが、すずVSノエルロウファなどバトルもいける。
また、大学入試を控えてるにもかかわらず執筆を続けるガッツマンでもある。
多忙なのかここしばらくは投下が無い。古参書き手なだけに、復活期待してます。
◆wNjp7OZc.s氏:3作(8、76、81)
序盤に一作執筆したきりだったが、最近復活。
アーチェにド根性バーニィを持たせた、ある意味彼女の不幸ロードの先駆けを作った人。
最近では書きにくいと評判のガウェインと、ジョーカー偽ブレアという
難しい組み合わせを書き切ったのがGJです。
◆MJv.H0/MJQ氏:12作(9、11、15、21、26、34、48、59、68、73、78、83?)4
このロワに於ける主力書き手の中でも、ぶっちぎりの投下数を誇る。
選択肢の多いバトンを渡すのが上手く、また自身も渡されたバトンをしっかりと受け取る事ができる等
リレーSSを非常に熟知している事が見受けられる。
バトル、繋ぎ、ギャグ、考察と何でもござれなお方。
また、氏を語る上で外せないのがアシュトンだろう。最凶マーダーの土台を築いた、彼の生みの親と言える。
◆Zp1p5F0JNw氏:6作(13、25、52、58、66、75)3
第一回放送を担当、禁止エリアの順番等も決めた方。
バトルに繋ぎ、マーダーに対主催と非常にバランス良く執筆されている。
66話では、ロワの空気No1だったディアスレナを、75話では放送後出番の無かった
ミラージュとすずのバトルを書き上げる等、目立たないキャラに愛を与える。
◆yHjSlOJmms氏:7作(32、54、56、60、69、74、77)5
第一回放送後から本格参戦した書き手氏。
こういう企画に参加するのは初めてとの事だったが、ここまで上手く順応している。
バトル物が多いが、69話や77話など後に繋げやすい話も書かれている。
また、玉手箱システムというユニークなシステムを採用し、ランダムアイテムを使って見事自己リレーを完成させた。
気になる部分としては、同じ文末が連続が連続で続く箇所が多いので、そこを気を付けるといいと思います(最新話ではかなり良くなってました)
それと、場面転換が少し唐突。その辺りをもう少し丁寧にすればもっと良くなるかと。
>>335 既に通った物の誤字訂正とかは無期限でいいだろうが、
通ってない話の修正を無期限にするわけにはいかないだろう。
予約期限と同じく一週間ってとこか?
>>341 SUGEEEEE
超乙なんだぜ!
これはむずがゆくなるな、いい意味でwww
ていうか過疎過疎言われつつも書き手はしっかりいるんだよな
>>341励みになりますわ。
丁度放送後投下用に作ってたんで、もう一回注意してもらったとこ確認してみますね。
>>333 投票の結果がどうだろうと、爆死させる方法だけなら簡単に思いつく。
ただ、トレジャーコールがあると、最後の言葉を「ルシファーを許しふぁしない」にするのが難しいんだよなぁ。
>>341 おお、これはやる気でる。
さてと、早くラジアータを終わらせないとな。
×トレジャーコール
○エネミーサーチ
なんでこんな間違いを…orz
>>345 いや爆死させるのが難しいって言ってるんじゃなくて、エネミーサーチが反応したとしたら破砕弾飲ませるのが難しいんじゃないか?って事。
元仲間だとしても敵かもしれない奴が出してきた薬を飲むか普通?しかも前は無警戒だったせいで死にかけたのに。
普通に爆死させるなら簡単だろうけど、騙して飲ますのはボーマン先生が余程の話術師でないと無理だろ。
それに、クロードの最後の台詞が絶対に打倒ルシファーである必要も無いだろうし。
あ、それとクレス乙。
あー、あとこれは完全に勝手な考えてだから聞き流していいんだけど、
せっかくステルス見破れそうなアイテムなのに何も活かされないのも勿体ないかなー、と思ったり…。
あ、先に断っておくけど、別に話が嫌な訳じゃなくて流れがちょっと…って思うだけです
>>347 ごめん。その通りだ。
一応、俺が思い付く飲ます展開は……間違いなくブーイングの嵐w
クロードが空気だったから見落としてたけど、エネミーサーチってかなりおいしい道具だな。
一応クロードに飲ますネタは考えてみたけど時間と場所考えるとボーマン先生が放送までにホテルに帰れなくなっちまうんだよなぁ……
まあ修正するのは作者さん自身だし、俺らが考えても仕方無いわな。
逆に考えろ、破砕弾と見せかけて秘仙丹なんだと……!
結局修正期限は一週間?
てか作者氏はこれを見てるのだろうか?
見ています。
すいません、自分がエネミーサーチ忘れたばかりに…。
修正作業は一応していますが、どうなるかは自分にもわかりません。
放送までにはやりたいと思いますが、完成できるかは五分五分です。
完成するにしろ破棄にしろ、は週末辺りには報告したいと思います。
何の報告もなければ再び『アクセス規制中』に引っかかったと思ってください。
ところで確認しておきたいのですが、
エネミーサーチが発動した→クロードが警戒しないのはおかしい(先刻殺されかけたのに)
→ボーマンを疑う
この疑いの度合いですが…自分が判断しても良いのですが、また批難がありそうなんで
@ボーマンを完璧に疑う(破砕弾は絶対飲まず臨戦態勢 10:0)
Aボーマンを疑う(破砕弾は手をつけず、様子を見る 7:3)
B疑心暗鬼になる(エネミーサーチの効果と、ボーマン、どちらを信じれば良いか解からない 5:5)
Cエネミーサーチに驚くが、それとなく疑うだけ(破砕弾は一応受け取るが、口には含まず 3:7)
の、どれがいいですか?
投票ではないので、多いからといって必ずそれにはなりませんが、参考までに。
ども、乙。修正大変だろうけど頑張って下さいね。
もしアクセス規制されたら、したらば(修正投下したとこ)に報告してくれればいいよ。
多分クロードが全くの無警戒だったから修正要望が上がったんだと思うんだけど、
滅茶苦茶警戒しなくちゃいけないってわけじゃない。
だから今回挙げられてる意見の中ならどれも問題無いと思う。
後言っておくけど、別にクロードが絶対破砕弾飲んじゃだめって訳でもないからね。
そこに至るまでの描写とか理由がしっかりしてればいい。
>>354頑張ってくださいね。応援してます。
個人的にはAぐらいでしょうか。
一応前の話でクロードは効果を体験しているわけですので、どっち信じようか?ってなりにくいかと思います。
ただ、事情説明後もボーマンがチサトの話のほうを信じているのではないか?
とクロードが誤解すれば、信用してもらおうと様子を見ながらの行動にでるんじゃないかなと思います。
>>354 好きなように書いておk
どうしても決められない場合や筆が進まない場合は、結末まで書かずにバトンを渡すって手もあるんだぜ
ただ、これをやる場合は選択肢を多くしとかないと叩かれる原因になるから注意
ルシオの一人称って、「僕」と「俺」のどっちが正しいんでしょう?
実はVPやった事がなく、マンガ程度の把握しかしてないんですけど
マンガだと俺だったり僕だったり安定しないもので…。
(以前ルシオ書いた時は意図的に一人称使わせないようにしてたんですが)
他の方の話だと「僕」で統一されてるみたいなので「僕」でいいですかね?
>>358 本編では俺しか使ってなかったと思うけど、統一はすべきだと思う。
本編中は俺だよね。
決め技発動時は「ヴァルキリー今一度俺に力を!」ってなってるし。
ぶっちゃけルシ男は速攻送り飛ばしてたから覚えてなかったわ……
どうしよう、73話のルシオは一人称俺になってる。
個人的には「俺」で通してほしいかな。
お坊ちゃん的な外見だけど、性格上「僕」って使われると何か違和感が。
まぁ、スラム街のスリグループのリーダー格?が僕って言ってるのはおかしいわな。
61話の作者ですが、すいません。
ルシオの一人称、直した方が良さそうなら修正しておきますがその方がいいですかね?
>>365今wikiいけないから確認できないんだけど、61話はルシオとチェスターのヤツだよね?
個人的な意見だけどチェスターとの会話の中なら相手を警戒させないために、丁寧な口調になってると考えても問題ないんじゃない?
一人になってるところで一人称使ってるなら修正していただいたほうが良いかもしれませんが。
何とか投下はできそうです。
ただ、時間はかかると思いますので、一応修正予約ということでお願いします。
投下、修正に期待保守
少し遅れてしまいました。すいません。
ミランダ、ミカエル、ルシオ、洵します
370 :
逆転協奏曲:2007/11/20(火) 12:16:14 ID:wUsMZo650
青髪の少年と金髪の青年の様子を見ていたミランダは、二人が別れた後、金髪の青年の方を尾行していた。
少年が向かった北方面よりは青年の向かう平瀬村の方が他の参加者を集めやすそうだというのが理由だ。
幸いにも彼に気付かれる事も無く、二人は無事平瀬村へと辿り着いた。
しかし村に着いてから問題が起こった。
ミランダがどうやって青年と接触しようかと考えていると、青年が突然現れた黒髪の男に剣を突きつけられたのである。
(ここで死なれてしまっては…わざわざ尾行してきた意味が無くなってしまいますね…)
内心焦りながらも、二人の行動を物陰から観察する。
よく見れば二人は何やら言葉を交わしているようだ。やがて黒髪の男はその剣を下ろし、金髪の青年も彼の方を向く。
会話の内容はよく聞こえないが、青年の対応はどう見ても殺人者に対するものには見えない。
その内に二人は丸いアイテムを取り出し、それをいじりながら歩き始めた。
(ふう…)
その様子を見てミランダは安堵の息を吐く。
どうやらあの黒髪の男も殺し合いをするつもりでは無かったようだ。殺し合いに乗らない者同士、二人で行動する事にしたのだろう。
青年が殺されるかもという不安は杞憂に終わったようだ。
ただ、接触の方法は練り直さなくてはならない。
あの黒髪の男、お世辞にも人が良さそうな顔には見えない。変に近づけば怪しまれてしまうのではないか。
二人を慎重に尾行しながらそんな事を考えていると、ミランダは突然背後に気配を感じた。
嫌な予感がして振り向くと、
「よう」
そこには、仮面を付けた大男が立っていた。
371 :
逆転協奏曲:2007/11/20(火) 12:17:12 ID:wUsMZo650
背後から響いた女の悲鳴と轟音に、ルシオと洵は異常を感じてその方向へ振り向く。
同時に、茶髪の少女が倒れ込むようにして二人の前に転がり込んできた。
「どうしたんだ!?」
ルシオがその少女、ミランダに問いかけるが、何があったかはすぐに理解する。
そこに炎の塊が襲ってきたからだ。
素早くミランダの手を引いてたぐり寄せ、その炎から何とか彼女を守る。
「洵!」
洵を見ると、彼は既に両手に剣を持って臨戦態勢を取っていた。
ルシオもミランダの前に立ちふさがるように立ち、遅れてまだ見えぬ敵に対して備える。
「三人か…」
やがて聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
しかしその声の持ち主は、ルシオ達の知る人物では無かった。
「十賢者が一人、ミカエル様がまとめて始末してやろうじゃねえか!」
ミカエルと名乗る襲撃者の姿を見て、洵は自分一人で勝てる相手では無いと悟る。
そして自分の取るべき行動を考えた。
相手の強さはこちらより上。加えて自分達に明確な殺意を持っている。
ここで向こう側に寝返って交渉する手もあるが、そんな物に応じるような奴にも見えない。
本来殺し合いに乗っている人物との戦いは避けるべきだが、自分が狙われているなら別だ。
ここはルシオと共闘するしかないだろう。
既にミカエルは両手に炎を纏わせ、やる気満々といった様子だ。
「まずはロン毛、てめぇからだ!」
ミカエルは洵に向かい、左手を振り上げて殴りかかった。
炎を纏ったその左腕を見て、洵は右手で持ったダマスクスソードでその攻撃を受け止める。
「ぐっ!」
防御しても剣を通してその熱さが伝わってきた。木刀で受けなくて正解だ。
ミカエルはそのまま空いた右腕で洵を殴ろうとしたが、その攻撃は割り込んできたルシオが弾き返す。
すかさず洵が左手の木刀で攻撃するが、ミカエルが後ろに跳んだためこの攻撃は空を切った。
372 :
逆転協奏曲:2007/11/20(火) 12:18:14 ID:wUsMZo650
「面白れえ!」
距離を取ったミカエルは紋章術を放つべく詠唱を開始。
詠唱を止めるべく洵はミカエルへ追撃、ルシオはミランダを守るべく彼女の下へと走った。
だが洵の追撃は一歩及ばず、ミカエルの紋章術「イラプション」が発動。
標的は――ルシオ達!
洵の背後で炎が吹き出す音が聞こえたが、洵は構わずミカエルに向かった。
詠唱直後、無防備になったところを狙うためだ。
(狙ったのはルシオ達…俺の攻撃なぞ無視しても構わないという訳か。随分と舐めてくれる)
心の中で舌打ちして、二本の剣を振るった。
「閃光斬!」
二発の斬撃がミカエルを襲う。
一瞬の隙を突かれたミカエルは、何とか片方の斬撃を回避。
だがそれは洵の狙い通りだった。ミカエルが避けた斬撃は左手の木刀によるもの。
例え攻撃が当たったとしても大したダメージにはならない。最初の一撃は囮。
本命は、右手に持ったダマスクスソード!
そして繰り出された斬撃が、ミカエルの腹部へと吸い込まれていった。
(よし!)
今の一撃は完全に決まった。さすがに無傷では無いだろう。
この機を逃すまいと、洵はさらに追い打ちをかけるべく斬りかかろうとしたが、
「危なかったぜ!」
洵の攻撃は強制終了せざるを得なくなる。
ダメージなど全く受けていないかのように、ミカエルが攻撃に転じてきたのである。
その時目に入った。ミカエルの腹部に盾が括り付けてあるのが。
どうやら自分の攻撃は、この盾により防がれてしまったようだ。
「ちいっ!」
振ろうとしたダマスクスソードを止め、洵はミカエルの拳をその剣で受け止めた。
刀身に火花が散る。
こいつの攻撃は長く受け止めるわけにはいかない。
何とか空いた木刀で衝撃波を放って、ミカエルを遠ざける。
同時に洵自身も下がってその場から離れた。
「ルシオ!無事か!」
振り向かずに背後に問いかける。
「ああ、こっちは二人共大丈夫だ!」
声と共にルシオが現れ、洵の隣へと並んだ。
373 :
逆転協奏曲:2007/11/20(火) 12:19:21 ID:wUsMZo650
しかしどうしたものか。
ミカエルの強さは、自分達を予想以上に上回っている。加えて、先程の戦闘の影響で首の打ち身も痛む。
逃げてきた女は戦力になりそうに無いし、このまま戦っても勝てる見込みは薄い。
かといって逃げ切れるかといえば、それも難しそうだ。
「むう…」
どうすればこの場を凌げるか洵が思案していると、ルシオが洵の一歩前に出た。
「…三手に別れて逃げよう。俺があいつを惹きつけるから、その間にあの少女と離れてくれ」
「何だと…?」
ルシオの提案に洵は驚く。
二人がかりでも歯が立たないというのに、ルシオ一人でミカエルを相手にするのはさすがに無謀すぎる。
「勝算はあるのか?」
「勝てるかは分からないけど…出し抜く策ならある」
「…」
確かに、このまま戦えば自分の命が危ない。
しかしルシオの作戦に乗れば自分は生き残れる可能性は高いだろう。
ルシオの身はかなり危険になるだろうが…彼の命で自分が逃げられるなら、こちらとしては大助かりだ。
もし彼が死んだ場合ヴァルキリーへの対抗手段が減ることになるが、四の五の言ってる場合で無い。
「分かった。お前に任せよう」
「大丈夫?走れるかい?」
ルシオが座ったままのミランダに声をかけ、作戦を説明した。
「いいか?俺があのミカエルって奴を惹きつける。その間に君は逃げて、ミカエルから十分離れたら洵と合流してくれ」
その言葉にミランダは頷いた。
「作戦タイムは終わったか?」
数メートル向こうでは、余裕綽々といった表情でミカエルがこちらを見つめている。
ミランダも立ち上がり、全員走り出す体勢は整った。
「彼女の事を頼む。落ち着いたら連絡を入れるよ」
「分かった…死ぬなよ」
洵がルシオに答える。
お前はまだ利用できそうだからな、という言葉は心の中でのみ呟いた。
「……1……2……3!」
合図と同時に、三人は地面を蹴って散っていった。
374 :
逆転協奏曲:2007/11/20(火) 12:20:16 ID:wUsMZo650
野郎!逃がさねえぞ!」
逃げ出した三人を逃すまいと、遅れてミカエルも彼らを追う。
バラバラに逃げた三人の内、ミカエルは他の二人に比べてスタートが遅かった金髪の優男、ルシオを追った。
(よし、付いてきたな!)
ルシオがスタートを遅らせたのは意図的なものだ。こうすればミカエルは自分を追ってくるだろうと考えた。
建物を背にしながらとにかく走る。振り切らない程度に、追いつかれないように。
幸いここは建物が密集している村。
ミカエルのように大柄な男は、建物と建物の間のような狭い道を走るのに苦労する筈だ。
対してルシオは町中での逃走は馴れたもの。普通に逃げても追いつかれない自信があった。
(全く、何が幸いするかなんて分からないもんだよな)
窃盗団での経験がこんな風に役立つとは思わなかった。苦笑しつつもルシオは走り続けた。
眼前に広がった海を見て洵は足を止めた。
追っ手の気配は無い。上手くルシオが惹きつけてくれたようだ。
走り続けて少し疲れた。次の放送までは、適当な民家にでも入って休んでいよう。
「あ、あの…」
不意にかけられた声に振り返ると、そこには息を切らした少女が立っていた。
(…ああ。こいつがいたのだな)
先程自分達の所に逃げ込んできた少女。
考えてみれば、ミカエルに襲われたのはこの少女のせいでもある。
ルシオからはこの少女の事を頼まれていたが、そんな事を聞いてやる義理は無い。
どうする?ルシオと違って戦力にもなりそうにないし、ここで殺してしまおうか?
…だが、この後ルシオと合流するような事があった場合、彼女がいないと色々面倒が起こりそうだ。
害は無さそうだし、とりあえず彼からの連絡が入るまでは生かしておこう。
放送が流れればルシオの生死も分かる。
「…女、名は何という?」
「えーと…。ミランダ、です」
洵と合流して、ミランダはとりあえず安堵の溜息を漏らす。
ミカエルとかいう大男に襲われた時は驚いたが、おかげで上手くルシオ達に入り込むことが出来た。
さらにこうして生きているのだから万々歳というものだ。
この幸運もきっと、自分の信仰心に対する神からの褒美だろう。
ただこの洵という男、ルシオに比べるとお人好しには見えないし、あまり安心はできそうに無い。
出来ればルシオには生きて帰ってもらって、早い内に合流したいところだ。
「放送まではこの建物で休息を取る。構わんな?」
近くの民家に入り、洵が言った。
「ええ、分かりました」
それに答えるミランダ。
端から見れば何の事もない二人組だが、お互いその腹の中は見えなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
375 :
逆転協奏曲:2007/11/20(火) 12:20:56 ID:wUsMZo650
(そろそろいいか…?)
洵やミランダと別れ、相変わらずミカエルから逃げ続けているルシオ。
もう十分に彼らとも離れただろうと感じたルシオは、近くの建物の中へと身を隠した。
そしてバッグの中からある支給品を取り出す。
その支給品こそが、彼が立てた作戦の文字通りキーアイテム。
アイテムを握りしめ、気配殺してミカエルが近づいてくるのを待った。
ルシオを追って、すぐにミカエルも現れる。
「どこに行きやがった…この辺りにいるのは確かなんだが」
追いかける最中相手を見失う事は無かったのだが、ここに来て姿が見えなくなった。
辺りを見回しながら人影を探す。
建物の中に隠れたか?なら、その辺の建物をかったぱしから燃やして…。
ミカエルがそこまで考えた時だった。
近くの建物の中から、何かが飛んでくるが見える。
(何だありゃ?)
こちらに向かって来るその物体を見て、ミカエルは大きく目を見開いた。
(爆弾だと!?)
しまった、とミカエルは舌打ちする。今から逃げても間に合わない。
いかに炎に強いミカエルでも、爆発による衝撃をまともに喰らえば無事では済まないだろう。
その場で身を伏せて防御態勢を取る。
爆弾は、ミカエルの眼前で爆発した。
「…?」
爆発音が響く。だが、それによる衝撃が来ない。
足下を見ると、爆弾の物と思われる残骸が転がっていた。
「けっ、コケ脅しかよ!」
ミカエルは毒づくが、内心安心していた。
爆弾が不発だったのか、それとも偽物だったのかは分からない。とにかく自分は無傷だ。
そう思ったのだが。
「ぐ…!?」
突然、凄まじい疲労がミカエルの身体を襲った。
思わず地面に膝を着いてしまう。
(どうなってやがる…!?)
すぐに疲労の正体に気付いた。
魔力だ。
自身の紋章術に必要な魔力が、急激に減少して枯渇しているのだ。
376 :
逆転協奏曲:2007/11/20(火) 12:21:34 ID:wUsMZo650
ミカエルが膝を着いたのを見て、ルシオはアービトレイターを持って建物から飛び出した。
「この野郎…」
ミカエルが忌々しげにルシオを見やる。
ミカエルの驚異は、自身から発する炎による攻撃と紋章術。
それらの攻撃を魔法によるものだと考えたルシオは、何とかしてその魔法を封じる事はできないかと考えた。
そこで使用したのが、支給品の中にあった「キラーマインドボム」。
説明書によれば、相手の魔法の源となる力を急速に奪う力を持っている物だという。
これを使えば、ミカエルの炎魔法を封じる事ができる。
魔法さえなければ、互角の戦いに持ち込めるとルシオは踏んだのだ。
作戦通り、相手は魔力を失ったようだ。
(今の内だ…!)
魔法を封じたといっても安心できない。一気に勝負を決める!
ルシオが剣を振り上げ、ミカエルへ向かって駆け抜ける。
ミカエルは――下を向いたまま動かない。
その無防備さが、ルシオの心に疑問をもたらした。
おかしい。いくらなんでも無防備すぎる。
ミカエルの手元を見ると、バッグの中を漁っていた。
何かアイテムを使う気なのか?
疑問が警戒に変わる。
バッグから何かを取りだした。そのまま、それを口に持っていく。
ミカエルが顔を上げる。
そして―――ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
ほとんど勘だった。
即座に攻撃を中止し、回避行動を取る。
数秒前までルシオがいた場所に炎が吹き出した。
(魔力が戻っている!?そんな馬鹿な!?)
驚愕の表情でミカエルを見る。ミカエルは相変わらずにやけていた。
「成る程な…ま、よく考えたようだが、運が無かったな」
先程ミカエルが口に含んだ物、それは体力と魔力を同時に回復するミックスグミ。
キラーマインドボムで一度はゼロになったミカエルの魔力は、このグミにより再び回復していたのだ。
「骨まであっためてやるよ!!」
ルシオの周りに熱気が集まる。逃げようとするが、その範囲は余りに広すぎた。
「スピキュール!」
降り注ぐ炎弾はあっという間にルシオを飲み込む。
勝利を確信したミカエルは歓喜の声をあげた。
「うおぉぉーー!あっちぃー!!」
377 :
逆転協奏曲:2007/11/20(火) 12:22:57 ID:wUsMZo650
「さて、どうすっかな」
ルシオを文字通り骨まで温めて、死体までも燃やし尽くし満足げなミカエル。
一緒に逃げた二人を探しに行くか?
だが身体に大分疲労が溜まっているのも事実。
ミックスグミで回復したとはいえ、魔力は残り少ないままだ。
「ま、歩きながらでも回復すんだろ」
自身が放った炎が消えるのを待つ事なく、ミカエルはその場を去った。
だから気付かなかった。
燃え盛る炎の中から、人影が飛び出していった事を。
人影は、ミカエルとは反対の方向へと駆け出し建物の影へと隠れた。
その正体はルシオ。
スピキュールの炎に飲まれたにも関わらず、ルシオは生きていたのだ。
彼の最後の支給品…無敵ユニット。
30秒間攻撃を封じられる代わりに、その間無敵状態となるアイテム。
ミカエルの魔法から逃げられないと判断したルシオは、咄嗟にこの無敵ユニットを使い
炎を隠れ蓑にしてその場から脱出したのである。
「ふう…」
何とか助かったが、結局ミカエルを倒す事はできなかった。
そればかりか、貴重な支給品も使い果たしてしまった。
戦果としては最悪だが、とりあえず洵とあの少女が逃げる時間は稼げただろう。
早く合流したいところだが、まだ周辺をミカエルがうろついている可能性がある。
しばらくはここで身を潜めた方が良さそうだ。
「とにかく、洵達に連絡を取ろう」
少なくとも自分が生きている事、そしてミカエルを倒せなかった事は知らせておかなければいけない。
…だが、急いで伝える事も無いかな、と思った。
空にルシファーの姿が浮かび上がってきた。
二回目の放送が始まるのだろう。
自分の無事も、ミカエルが健在な事も、この放送で明らかになるだろう。
378 :
逆転協奏曲:2007/11/20(火) 12:23:27 ID:wUsMZo650
【F-2/夕方(放送直前)】
【ルシオ】[MP残量:100%]
[状態:軽い疲労]
[装備:アービトレイター@RS]
[道具:コミュニケーター@SO3、荷物一式]
[行動方針:知り合いと合流(特にレナス)]
[思考1:放送を聞いた後、洵達に連絡を入れる]
[思考2:洵、少女(ミランダ)と合流]
[思考3:平瀬村で仲間の詮索]
[思考4:ゲームボーイを探す]
[現在地:F-2南東部、平瀬村]
[備考]:※コミュニケーターの機能は通信機能しか把握していません
※マリアとクレスを危険人物と認識(名前は知りません)
【ミカエル】[MP残量:20%]
[状態:頭部に傷(戦闘に支障無し)、軽い疲労]
[装備:ウッドシールド@SO2、ダークウィップ@SO2(ウッドシールドを体に固定するのに使用)]
[道具:魔杖サターンアイズ、荷物一式]
[行動方針:最後まで生き残り、ゲームに勝利]
[思考1:どんな相手でも油断せず確実に殺す]
[思考2:ロン毛野郎と女(洵とミランダ)を探し出して殺す]
[思考3:平瀬村で獲物を探す]
[思考4:使える防具が欲しい]
[現在位置:F-2南東部、平瀬村]
[備考]:デコッパゲ(チェスター)と金髪優男(ルシオ)は死んだと思っています。
【F-1/夕方】
【洵】[MP残量:70%]
[状態:腹部の打撲、顔に痣、首の打ち身:戦闘に多少支障をきたす程度]
[装備:ダマスクスソード@TOP、木刀]
[道具:コミュニケーター@SO3、スターオーシャンBS@現実世界、荷物一式]
[行動方針:自殺をする気は起きないので、優勝を狙うことにする]
[思考1:出会った者は殺すが、積極的に獲物を探したりはしない]
[思考2:放送までルシオの連絡を待ちつつ休憩。その後ミランダをどうするか考える]
[思考3:現時点でルシオとミランダを殺すつもりはない]
[思考4:ルシオを使ってレナスを利用もしくは殺害]
[思考5:ゲームボーイを探す]
[現在地:平瀬村の民家内]
【ミランダ】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:無し]
[道具:時限爆弾@現実、パニックパウダー@RS、荷物一式]
[行動方針:神の御心のままに]
[思考1:洵を警戒しつつ休憩]
[思考2:洵やルシオを利用して参加者を集める]
[思考3:直接的な行動はなるべく控える]
[思考4:参加者を一箇所に集め一網打尽にする]
[現在位置:平瀬村の民家内]
ついに来た!
>>369GJ!
スピキュールでた時さよならルシオと思いましたが、なんとか生き延びましたね。
合流しようとしている相手がマーダー二人となおも絶望的な状況ですが。
ガンバレ!ルシオ。
些細な事だけどルシオって金髪?茶髪じゃない?
あー、確かにゲーム中だと茶髪なんですよね。
公式絵だと金髪に見えたんでそうしたんですが、何かよく見たら公式絵も茶髪っぽい…。
修正しておきます。
>>378 GJ!
ルシオはマーダーに大人気ですね。
ミカエルは何だか迂濶で残念な人になってきたなw
これで放送入れるかな?まだ放送前な話書いてる人いる?
俺はないけど、クロードの話は修正待たないとダメじゃない?
多分通ると思うけど、仮に通らないと死亡者数が変わっちゃう。
>>378 遅れたが、投下乙!
お人よしだから長生きできないと思ってたけど、ルシオ粘るなぁw
あとミカエル、強さは本物だしインパクトもあるのに
殺せたのはおにゃのこ一人…何故だ。
ミカエルのまとめ
1話:火耐性がなければ即死だった…
17話:やった! デコッパゲを仕留めたぞ!(死んでません)
48話:お札フラッシュ→目がー目がー
80話:待ち惚けー
83話:やった! 優男を骨まで温めたぜ!(死んでません)
386 :
ラメBOX:2007/11/22(木) 22:14:21 ID:0HxRCQeH0
>>>>>>>>>これはただのチェーンレスじゃないよ!
>>試してみて!絶対本当!
>>>びっくりするよ!当たっちゃうから!
★☆友情☆★
今の友情、満足ですか?
上手くいってるあなたにぴったり!
友達との、友情最高!良かったね!ずっとずっと仲良しこよし!でも、このレス信じてないならもうすぐあなた、イジメられるよ!可哀想!一生仲良くなれないよ!
上手くいかないあなたにぴったり!
友達できるよ、親友できるよ!良かったね!深い友情、できちゃうね!でもこのレス信じてないなら一生みじめなままですよ!寂しい人生満喫してね。
★☆恋☆★
今、恋してる〜?その恋順調?
片想いのあなたにぴったり!
絶対叶うよ!この恋!だってこのレス見たんだもん!どんなに複雑な恋愛でも、絶対絶対大丈夫!信じてみて!信じないなら叶わないよ!どんだけどんだけ頑張っても無望のままでオワリだよ!サラっと断られちゃうよ!
両想いのあなたにぴったり!
結婚できるよ!おめでとう!だってこのレス見たんだもん!ずっとラブラブ、良かったね!でも…このレス信じてる?信じてないならつぶれるよ!どんなラブラブもオワリだよ!もうすぐあなたは捨てられちゃうよ!サラっと「嫌い」って言われちゃうよ!可哀想!
やってみたら良いじゃんか!もしも当たったらラッキーでしょ?100l当たるから!やってみるって言うのはね…とっても簡単な話だよ!このメールを7つの掲示板に張り付けるだけ!2日以内に貼らなければ全部の最悪訪れる。。。魔法のレス☆んじゃばいばい
したらばにも書きましたが一応こっちにも。
wiki編集してくださった方、ありがとうございました。
83話の「逆転協奏曲」にて、ルシオの髪の色を金→茶に、あと一部の文章を直しました。
色々すいませんでした。
また何かミスがありましたら遠慮無くどうぞ。
乙!
なんだかんだで順調だなこのロワw
>>385 (´・ω・`)………
誰か放送書いてやるって勇者はいる?
ルシファーが書けね('A`)
頑張って書いてみようと思いますが、禁止エリアのラストはこっちが指定して良いのですか?
それと、クロードの扱いは死亡?生存?
とりあえず今規制中でパソコンから書けないのですが、いつ頃投下すれば良いでしょうか?
>>391 期待
3つ目の禁止エリアは好きな場所を指定しておk
クロードは書き手氏が修正版投下か破棄宣言をするまで結論は出せない。修正宣言してから大分時間がたっているので、今日中に何らかの反応が欲しいところ。
投下時期は、クロードの問題が片付き、他に放送前の話を書いている人がいないことを確認してからかな?
了解です。
聞き忘れてましたが、ご褒美があるよって事だけ触れればいいんですよね?
まぁ、なんとか形にしてみます。
何とか終わりました……。
したらばに投下しました。
重ね重ね、遅くなってすいません。
修正乙。
今気付いたけど、エンプレシアは女用だからボーマン装備できないぞ
あとチェスターがいつまでもホテルを捜索しないのは何故?
それといくら首枷使ったとしても空中にいる最中に首絞められるか普通?
>>364修正お疲れさまでした。
>>365さんの指摘の中で気になるのはやはりチェスターのクレス捜索についてでしょうか。
エンプレシア装備は既に前の話でチェスターも装着して殴りかかってますので俺は気にならなかったです。
どうしてもダメなら借りる時のやりとりに、少しきついが無いよりましだろ的な台詞を言わせればいいんじゃないですか?
首枷は逆立ちしたような格好で空から降ってくる技でしたっけ?
こっちは空中にいる間に首をへし折ってるのでそこが突っ込みどころでしょうか?
そんな長く飛んでるのか?ってな感じで。
逆立ちみたいに降ってきた気がするので、体を回転させつつ降ってきて首をねじ切る(スティーブン・セガールみたいな)感じにかえればいいんじゃないでしょうか?
>>364 修正乙。
エンプレシアは俺は別に気にならなかったな。
首枷に関してはボーマン使ったことないのでノーコメント。
それから、貴方に重要な話があります。が、時間的に今その話は出来ません。
日付が変わったらトリップをつけて何か書き込んでくれると助かります。
398 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/26(月) 00:10:28 ID:vAEElKPL0
兜割り中の首枷は問題ない筈。
飛翔してるフェニックスやバークに首枷仕掛けられるほど高度出るし。
エンプレシアはゲーム中の道具の説明欄にきっちり「女性用」と書かれてしまってるのが
痛いが、別にロワでボーマンが装備していても問題無いと思う。
>>364GJ!このまま採用でOKだと思います。
しかし、魔王を素手で殴り殺した(半公式設定)母の影響で
一応クロードは体術も専門家並に出来る筈なのに、
ゲーム外では剣しか使わせて貰えないんだよな・・・
ゲーム内でも流星掌位しか使えないし、クロードマジカワイソス。
>>398 つブルースフィア
剣を使えよと言いたくなるぞ。
>>397 ?
作者ですが……何か不手際がありましたか?
>>401 貴方のトリップについてです。
このレスの名前欄見てもらえば分かると思いますが、鳥バレしてるので変えた方がいいですよ。
これでは鳥をつける意味がないですから。
エンプシレアは脳内変換でもいいと思うけど、チェスターのホテル捜索は追加して欲しいな
あとボーマンが近づいた素振りが無いのに足下の剣をいつの間に蹴り飛ばしたかも
それとただの間違いだと思うが「ホテル焼け跡前に戻ってきた」ってホテルは焼けてないぞw
鳥ばれしてるなら鳥も変えた方がいいね
修正…するのか?
もし修正が必要なのならば、悪いんだけど一回破棄宣言をしてからにしてほしい。
少しキャラを独占しすぎている。
まずあなたが最初に予約してから三週間音沙汰無かった。
規制されてたのだから仕方ないと言えばそうなのだが、携帯なりしたらばなりを使えば何らかの報告はできたはず。
その間そのキャラの予約とかは無かったけど、はっきりと延長宣言や破棄宣言などが無ければ
他の書き手達が予約しづらくなってしまうというのもある。
その後の修正も、修正期限は一週間と決めたのにあなたは修正期限が終わってから修正予約なるものをして、修正に二週間を費やした。
誰も何も言わなかったが、本来これはあまり褒められた行為とは言えない。
結局、あなたは一ヶ月半以上もキャラを独占している事になる。
その間、他の書き手はそのキャラを動かそうとできないし、放送に入れそうでも入れることはできない。
書いてくれるのはありがたいし、これからも積極的に参加して欲しいと思っている。
でも期限などのルールは極力守らなければならないという事を知っておいてくれ。
勿論今破棄宣言をしたからって投下するなという訳じゃない。
修正作業が終わった時点で誰も投下や予約をしていなければ投下してもらって構わない。
だけどその間に予約や投下があったり、放送を流すタイミングになったら(最終作品投下後一週間だっけ?)今回は諦めてほしい。
キツイ言い方かも知れないが、それがリレーというものなんだ。
話の腰折ってすまんが、ちょい質問
したらばに没スレ立ててもいいかしら?
>>391です。放送予約したみたいになってますが、トリ付け忘れてたんで改めて。
>>405いいんじゃないでしょうか?今後需要もあるかもですし。
自分も最後に書いた話は期限守れなかったんで、でかい事言えないんですが、時間掛かってしまったけど、
修正点をその都度踏まえてしっかり書ききってくれたから次回から気をつけてもらう方向でもいいんじゃないかと思います。
>>404さんの言ってる事はまさに正論だとは思いますが、
>>394さん多分初めて書いたんだと思うんですよ。
自分もここで初めて書いたんで、同じような境遇の
>>394さんを応援したいんですよね。
それにこの修正を破棄扱いすると今日が最終作品投下から1週間たった日になってるんで、他の書き手の方の確認も曖昧になりそうですし。
>>405 いいんじゃね。
>>404についてですが、初めてだからってのは言い訳にできないと思います。
ルールというのは作品の出来以上に重要な事ですし。
それに破棄したからってこの作品をもう投下するなって訳じゃないですから。
すぐに修正しなくてもいいですから、何かしらの報告だけはすぐにでもしてもらいたいです。
>>406 正確には今日じゃなくて、作者から正式に破棄宣言があってから一週間じゃないでしょうか。
俺も修正するなら一旦破棄してほしいけどな。
やっぱ独占期間が長くなちゃうから。過疎ロワだしその間誰も投下せんとは思うけどw
ただ宣言するなら修正作業始める前にしてくれよ。見て見ぬふりは反則だからな。
初心者だからルールを破ってもいい、って訳じゃないからさ…。
でも、修正するとこってどこ?
エンプレシアや首枷はOKみたいだけど、チェスターのホテル捜索云々?
>>404 そうですね。
ただ、言い訳になるんですが、したらばの存在を知ったのは、『アクセス規制中』が解けた後だったんですw
まあ、正直な話後半部分を1か月経って投下したのは、ほとんど一旦予約したケジメみたいなものだったんで、
ほぼ破棄されるのを覚悟していました。
だというのに誰一人として『破棄』と言わないので、軽い戸惑いを覚えましたw
えっと、よく解からないんですが、とりあえず『破棄宣言』をすればいいんですね?
では、『光の勇者の受難(解決編)』は『破棄』します。
……で、いいんでしょうか?
>>409 破棄か…残念な気もするけど、これもルールだし。
ただ展開や内容にダメ出しがあった訳じゃないし、作品の投下が駄目になったわけじゃないので、そのキャラの投下や予約、放送があるまでに
修正(チェスター関連の描写の追加?)が完了したら是非投下して下さい。
…あと、疑いたくないけど作者本人ですよね?
>>402にある通り、そのトリップは割れているらしいので、できればもう一度新しいトリップで書き込んで下さると幸いです。
こんな感じですか?
>>411 うん、それでいいと思う。
今後はそのトリップ使って下さい。
>>411それで大丈夫だと思います。修正稿を書いてくださるのなら頑張ってください。
では、取り敢えず今日から1週間様子見しますので、作品を構想中の方はご一報下さい。
来週の火曜は予定があるので、このまま何もなければ大体12月4日の午前1時前後に投下しようと思います。
>>411氏には大変申し訳ないんですが…。
破棄されたって事で、キャラが被って一回没にした作品を投下しようと思います。
一応したらばに試験投下しておいたので、問題有ったら言って下さい。
おぉ、GJ!
クロードの誤解フラグもだけどアーチェの暴走フラグも着実に増えていってますなw
>>414 GJ
エネミーサーチはホントおいしい道具だなぁ。
>>411 クロード登場より前の部分は、ボーマンとチサトたちが別れる、もしくは別れた後の事を加筆すれば一つの話に出来そうですが……やってみますか?
返事は出来るだけ早くお願いします。
その場合光の勇者は出てこないから、タイトル変更しなきゃなw
冗談はともかく、せっかく書いてもらったのに勿体ないし
>>416案はいいかも。
無理にとは言わないけどもし良かったら。
>>414GJ!っす。
どんな話でも結局悲惨な目にしか遭わないクロードカワイソス
ところで試験投下ってことだったみたいですけど、こっちには投下しないんですか?
>>416 ?
えっと、チサト達とボーマンが、『別れた時』、の部分で終わらせると言う事でしょうか?
>>419 そういうこと。
ただし、今のまま後半を切ると色々問題点(チェスター関連やボーマンの思考と行動の矛盾に説明がないなど)が出来てしまうので、加筆の必要があるってこと。
勿論これは修正要求ではないので、無理にやらなくてもいいです。
いえ、これ以上伸ばすと放送書いてる人も大変でしょうし、今回は諦めます。
正直に言うと、いつまでも迷っているボーマンを見ていたくなかったから、
書いた様な物ですし。
保守代わりに確認ですが、現時点で第1回放送から第2回放送の時点で13人が死亡で残り36人
死亡者が
SO2:セリーヌ、オペラ、シン
SO3:ネル、ロジャー、ノートン、ビウィグ、ヴォックス
VP:メルティーナ、夢留、エイミ
VP2:アリーシャ
TOP:ジェストーナ
RS:なし
でおk?
後前回の禁止エリアは順番だったけど、同時にしたらまずいんでしょうか?
>>421まぁ、こっちの事はあまり気になさらずに気が向いたら書いちゃってください。
もう文書いちゃったし、死者が増えようが大した修正じゃないし、待つだけみたいなモンですから。
したらばに投下があったんで、放送予定日を繰り下げて、12月5日の午前1時ぐらいに投下しようと思います。
>>423 死亡者、禁止エリアに関してはそれでおkだと思う。
禁止エリアについては、テンプレに「禁止エリアは3時間ごとに1エリアづつ増えていく」とあるから、同時はまずいんじゃない?
ただこれも間違いで、本来は3時間ごとじゃなくて2時間ごとだと思うんだけど…。
それと、予約はともかく投下があったから放送を繰り下げる必要は無いと思われ。
ついでに俺も質問。
クリア後に修得する特技(例えばSO3の試練の遺跡とかスフィア211とかに落ちてるやつ)って使っちゃマズイ?
>>414テンプレ読んだ限りだと微妙ですよね。
まぁ、SO2の連中はSO2本編後のBSの特技を使ってたりするからいいんじゃない?
>>424 アシュトンがトライエースを修得しているようなので、大丈夫だと思う。
>>425-426 d。使用してもいいって事ね。
あと、wikiの参加者名簿とかを表組みにしようと思うんだけどいいかな?
すっかり忘れてたが、ロワが始まってから(OPが投下されてから)一年経ったんだな。
早いようで短い。
>>427 マジか、早いなぁ……
さすがにジョジョ並のスピードは無理だったか……
でもこのままのペースで行けば完結も不可能じゃないな!
ついでに「死者スレが動き出したね」と宣伝してみる
ボーマン、チサト、ガルヴァドス、チェスター予約。
放送をあまり先伸ばしするのも悪いので、6日0時までに投下できない場合は予約破棄ってことでお願いします。
>>429に期待。
確認ですが放送前の話ですよね?
でしたら、放送は6日の1時前後にずらしたほうがいいですよね?
ついでに放送後第1話目をいただきたいと思います。
アルベル、レオン、ディアス、レナを予約。
>>429-430 物凄い期待しますが構いませんねッ!
放送後の話の予約ってもう始まったの?
>>431やっぱ放送後からじゃないとまずいですかね?
実は放送投下後即投下しようとしてたのですが、被っちゃったら悪いかと思い早めに予約しただけでして…。
ダメなら一旦破棄ってことにしますけど。
ぶっちゃけ俺も即等かは狙って(ry
個人的には『放送後即予約→予約が先に取られてなければ畳み掛けるように投下』でも全然ありだと思う
>>430 勿論放送前。
そうですね、一時ごろになったら、俺の投下や破棄宣言がない場合でも遠慮なく投下しちゃってくれ。
>>434了解っす。
>>433やっぱ放送後の即を狙ってた人がいましたかw
フェアじゃないし、よく考えたら放送に修正する必要が出るかも知れないし放送投下後予約して放送にOKもらったら投下します。
てな訳で一旦
>>430でやった予約は破棄します。
放送後即予約狙ってるのがこんなにいるとは…
負けねーぜ!
放送直後は投下ラッシュの予感……!
俺なんだかワクワクしてきた!
えーっと、ちょっと確認したいんだけど
6日の1時頃って事は、5日(水曜)25時という解釈でいいのかな?
あと、したらばの「光の勇者の不幸(連鎖編)」特に問題ないようなら転載しても大丈夫?
>>439どうぞどうぞやっちゃってください。
放送はその時間に投下するつもりです。
ただ、どうやらまた規制されてるみたいで…。
当日までに解除されてなければ、したらばに投下後こちらに報告に来ます。
441 :
435:2007/12/03(月) 01:32:11 ID:s/IZlpEYO
携帯だと同じ文字列でもトリ変わっちゃうんですね。
全然関係ないのになってるorz
それともただの入力ミス?
入力ミスだと思う
少なくとも俺が投下してた頃は携帯からでも変わらなかった
これでどうでしょ?
orz
今は学校行かないといかんので確認できない。
スレ汚しすみません。
445 :
439:2007/12/03(月) 19:18:30 ID:Vy16z+3m0
したらばの「光の勇者の不幸(連鎖編)」代行転載しますね。
「ハア…ハア…」
ジャック達から逃げ出したアーチェは、一人森の中を彷徨っていた。
もうどこに向かって進んでいるのかも、どこにいるのかも分からない。
彼女の頭にあるのは仲間に会いたいという一心のみ。
それだけが、今のアーチェを動かしていた。
今どこにいるんだろう?
既に彼女は走っておらず、その歩みは疲労のためか遅い。
さっきまで全力疾走を続けていた為に、彼女の疲労は既に限界の所まで来ていた。
それでも仲間を探し、アーチェは進む。
やがて前方に道が見えてきた。
どこへ通じているか分からないが、ここを進めばどこかの村へ出れるかもしれない。
村に行けばきっと誰かがいるはず。
クレスか、クラースか、チェスターか、すずか、ミン…
ミントの名が浮かんだところでアーチェは気付く。
もうミントはいないという事を。
彼女は死んだ。もう二度と会えない。
放送で知らされた死亡者13人の中に、彼女が含まれていた。
きっと次の放送では、目の前で死んだ夢瑠とネルの名前も呼ばれる。
夢瑠は自分が呼び寄せてしまった男によって殺された。
ネルはその男と戦って致命傷を負い、自分がとどめを刺して…。
ふとその時の光景が思い浮かぶ。
石化しながら、自分を睨み付けてきたネル。冷たい目でこちらを見つめるジャック。
二人の顔が、アーチェの精神を蝕んでいく。
(ごめんなさい…ごめんなさい…)
殺すつもりは無かった。あの薬は確かにエリクシールだと思ったのに。
だがいくら言い訳しても謝っても、ネルを死に追いやったのは事実。
きっとネルは自分を恨み憎んでいる。最後に見せたあの表情こそその証。
罪の意識に思考を奪われているその時、突然アーチェを現実に呼び戻す事が起こった。
『禁止エリアに抵触しています。首輪爆破まで後30秒』
え、何?何!?
この声、首輪から?
爆発?首輪が?あたしの?
爆発したら?死ぬの?あたしが?
「いやあああっ!」
突然首輪から伝えられた警告に、アーチェは我を失って混乱する。
とにかく逃げなければと反射的に走り出す。
嫌だ、嫌だ。死にたくない。死にたくない!
『首輪爆破まで後20秒』
首輪からは相変わらず警告が流れる。
アーチェはさらに混乱し、錯乱したかのように走り続けた。
どこでもいい。首輪が爆発しない場所まで、疲労も忘れてひた走る。
ひたすら走った後、アーチェはようやく首輪からの警告が終わっていたと気付く。
いや、実際はもっと前に禁止エリアからは出ていた。
そもそも爆発まで30秒しかないのに、それ以上経過しても爆発しない時点で安全な場所まで移動できていた事になるのだ。
「はは…何やってんのよ…」
そんな事も考えずに走りまくった自分に対して、馬鹿らしくなったアーチェは自虐的に呟く。
同時に再び疲労が身体を襲い、彼女はその場に倒れ込んで意識を失った。
ガサガサ…
(…何の音?)
ガサガサ…
(そういえばあたし、どうしたんだっけ?)
ガサガサ…
(首輪から声が聞こえて…走って逃げて…それから…!)
はっとアーチェの意識が覚醒する。疲労で眠り込んでしまったようだ。
辺りは既に暗くなり始めている。
(そっか…あたし…寝ちゃったんだ…)
何て無防備極まりないんだと思いながらも目を覚まそうと頭を振る。
幸か不幸か、眠ったことで多少体力は回復したようだった。
(そういえば…何か音が聞こえたような…)
そんな事を考えた時だった。
ガサガサ…
近くの茂みが動く。
そうだ。この音で自分は起きたんだ。
などと呑気な事を考えている暇は無い。
誰かが近くいるんだ。
「だ、誰よ!」
声を荒げて、音のする方へ叫ぶ。
やがて茂みの中から、その人物が姿を現した。
「君は…」
アーチェははっとする。
金髪で、何となく頼りなさげな外見。
だがどこか意志の強さのような物を感じさせるその雰囲気。
それは、彼女の知るある人物に酷似していた。
会えた。ようやく会えたんだ。心を許しあえる仲間に。
「クレス…!」
「え?」
クレスと呼ばれた青年は目を丸くする。
何を驚いているのかアーチェには分からなかったが、すぐその理由に気付いた。
「違う…」
よく見ると違う。
確かに少し似ているが、格好も、声も全然違う。
クレスじゃ、無い。
だったら誰?
この人は誰?
ふと彼の全身を見る。
その手には剣を持ち、身体のあちこちに血が付いていた。
血。
真っ赤な血。
その血が記憶を蘇えらせる。
歓喜の笑みを浮かべながら血の海を作りだした、あの男の。
全身に血を付けたこの男は何?
剣を持って、こっちに近づいてきて。
何をする気?
決まってるじゃないか。
「嫌…」
怯えながらアーチェは後ずさる。
青年は疑問に思ったのか、もう一歩アーチェに近づいた。
「ねえ、君…」
「来ないでっ!」
青年を拒絶するように叫ぶ。
叫ばれた青年は一瞬表情が曇ったかと思うと――
一歩アーチェから離れ、持っていた剣を構えた。
「ひっ……」
剣を向けられたアーチェは震えながら青年を見る。
その眼は双龍の男と同じ、酷く歪んで見えた。
「な、何なんだよ…」
悲鳴を上げて走り去った少女ポカンと見つめ、クロードは愚痴る。
ホテル跡からある程度離れたながら、クロードはどうするべきかを考えていた。
時間を確認すると既に正午過ぎ。ルシファーが言っていた定時放送は終わっている。
誰か知り合いが死んでしまったかもしれないという不安がよぎるが、それより自分自身が一番危ない。
放送で発表される禁止エリアを聞き逃してしまった。
加えて、自分自身の状態も決して良好とは言えない。
何よりホテルにいた三人にからは殺人鬼と誤認されている。
彼らに自分を殺人鬼だと広められたら非常に厄介だ。
まずすべき事は二つ。
放送で発表された死亡者、禁止エリアを把握する事。
そしてチサト達の誤解を解くことだ。
(どっちも、他の参加者に会わないと実行できないな)
とにかく誰か、他の参加者に会わなければならない。
だがこの島に来た直後は、何も考えずに参加者と接触してしまったせいで酷い目に遭っている。
先程もあの化け物を攻撃したせで殺人鬼と間違われてしまった。
今度参加者を見つけた時は冷静にいこうと固く心に誓う。
ホテルのように目立つ施設に行けば高確率で誰かに会えるだろう。
そう考えたクロードは、現時点でホテル以外に一番近い建物である分校跡とやらへ行って参加者を捜し、
誰もいなければ平瀬村へと向かうことにした。
誰か殺し合いに乗っていない人物を見つけたら、一緒にホテルへ行って誤解を解いて貰おう。
分校を目指すうちに日が暮れてきた。
早く誰かに会わないと禁止エリアに進入してしまうかもしれない。
それにチサト達がいつまでもホテルにいるとは限らないのだ。
そしてようやく、彼は参加者を発見することが出来た。
森を移動中に、座り込んだピンク色の髪をした少女が目に入ったのだ。
とりあえず茂みに身を隠して様子を伺おうとしたが。
「だ、誰よ!」
どうやら気付かれてしまったらしい。
(気付かれた以上、様子を探るのは難しいな…)
また変に警戒されて殺人鬼と勘違いされてはたまらない。
こっちに声をかけてきたという事は、とりあえず襲う気は無いのだろう。
そう判断し、クロードは少女の前に姿を現すことにした。
「クレス…!」
「え?」
姿を現したと同時に、少女が声をかけてきた。
少し驚くが冷静に考える。自分の名前はクロードだ。クレスでは無い。そんな名前の参加者がいたような気もするが…。
辺りは暗くなってきているし、多分誰かと勘違いしているのだろう。
間違いを訂正して、早く情報交換をしよう。
だが、その少女は人違いに気付いたのか、こちらを見ながらガクガク震えて始めた。
クロードの頬に冷や汗が流れる。
待て待て。
また嫌な予感がしてきた。
OK、落ち着こう。うん、落ち着け僕。
僕は何もしてないぞ。
脅かすような事もしていないし、別に見た目で怖がられるような姿格好もしていない筈だ。
大丈夫大丈夫。何も問題は無い…多分。
「ねえ、君…」
「来ないでっ!」
相手をなだめようとすると、今度は拒絶されてしまう。
その時だった。
クロードの視界に、突然赤い光を放つ球体が現れたのは。
(これは…確かエネミー・サーチの警告!?)
説明書によれば、「エネミーサーチは、自分に敵意を持っている人物に反応する」と書かれていた。
周囲には自分と少女以外誰もいない。そしてエネミーサーチが反応しているという事は…。
何てこった。彼女はこちらを殺そうとしているというのか。
(仕方が無い…!)
一歩下がって、クロードはエターナルスフィアを構えた。この怪我でどこまで戦えるか分からないが、ここで死ぬわけにはいかない。
少女は丁度レナと同じ位の歳だろうか。そんな少女と戦うのは心苦しい。
何とか殺さずに済ませたいけど…。
だが、クロードが剣を構えると。
「キャアアアッー!」
少女は突然悲鳴を発して、クロードから逃げていったのだ。
呆気に取られたクロードだったが、気を取り直してすぐに少女を追った。
もうエネミーサーチの反応は出ていない。反応したのは、あの時だけだった。
エネミーサーチの説明を思い出す。
「自分に『敵意』を持っている人物に反応する」
(つまり…反応したからって必ずしも『殺そうとしている』と思っている訳じゃないという事か…?)
もし彼女が、自分を殺人鬼だと思わなくても『敵』と思っていたとしたら…それを『敵意』と解釈されてもおかしくは無い。
(また僕の判断が甘かって言うのかよ!)
しかも剣を構えてしまった。向こうからしてみれば、どう考えたって殺されると思ってしまうだろう。
冗談じゃない。
これ以上殺人鬼に間違えられるのはごめんだ。
どうしようか。
彼女を追いかけて弁解するか、それとも予定通り分校へ行くか?
それにしても、本当についていないと思う。
やることが何から何まで全て裏目に出てしまっている。
自分は殺し合いなんてするつもりは無いのに、何故こうも状況が悪い方向ばかりに向かってしまうんだ。
「全く…ホントこういうのはアシュトンの役目だよな…」
愚痴っても始まらない。
少女を追うべきか追わないべきか、クロードは決断を下した。
「ねえ、君…」
「来ないでっ!」
相手をなだめようとすると、今度は拒絶されてしまう。
その時だった。
クロードの視界に、突然赤い光を放つ球体が現れたのは。
(これは…確かエネミー・サーチの警告!?)
説明書によれば、「エネミーサーチは、自分に敵意を持っている人物に反応する」と書かれていた。
周囲には自分と少女以外誰もいない。そしてエネミーサーチが反応しているという事は…。
何てこった。彼女はこちらを殺そうとしているというのか。
(仕方が無い…!)
一歩下がって、クロードはエターナルスフィアを構えた。この怪我でどこまで戦えるか分からないが、ここで死ぬわけにはいかない。
少女は丁度レナと同じ位の歳だろうか。そんな少女と戦うのは心苦しい。
何とか殺さずに済ませたいけど…。
だが、クロードが剣を構えると。
「キャアアアッー!」
少女は突然悲鳴を発して、クロードから逃げていったのだ。
呆気に取られたクロードだったが、気を取り直してすぐに少女を追った。
もうエネミーサーチの反応は出ていない。反応したのは、あの時だけだった。
エネミーサーチの説明を思い出す。
「自分に『敵意』を持っている人物に反応する」
(つまり…反応したからって必ずしも『殺そうとしている』と思っている訳じゃないという事か…?)
もし彼女が、自分を殺人鬼だと思わなくても『敵』と思っていたとしたら…それを『敵意』と解釈されてもおかしくは無い。
(また僕の判断が甘かって言うのかよ!)
しかも剣を構えてしまった。向こうからしてみれば、どう考えたって殺されると思ってしまうだろう。
冗談じゃない。
これ以上殺人鬼に間違えられるのはごめんだ。
どうしようか。
彼女を追いかけて弁解するか、それとも予定通り分校へ行くか?
それにしても、本当についていないと思う。
やることが何から何まで全て裏目に出てしまっている。
自分は殺し合いなんてするつもりは無いのに、何故こうも状況が悪い方向ばかりに向かってしまうんだ。
「全く…ホントこういうのはアシュトンの役目だよな…」
愚痴っても始まらない。
少女を追うべきか追わないべきか、クロードは決断を下した。
【G−4/夕方(まもなく放送)】
【クロード・C・ケニー】[MP残量:70%]
[状態:右肩に裂傷(応急処置済み、武器を振り回すには難あり)背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(チェスターによって殴られ傷が再発)]
[装備:エターナルスフィア@SO2+エネミー・サーチ@VP]
[道具:荷物一式、昂魔の鏡@VP]
[行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す]
[思考1:ピンク髪の少女(アーチェ)を追って誤解を解くか、すぐに平瀬村分校跡へ向かうか決める]
[思考2:分校跡へ行き、参加者と接触できなければ平瀬村へ向かう]
[思考3:自分の潔白を証明してくれる人か仲間を探す(懐柔できればアーチェでもいい)]
[思考4:思考2で見つけた人と共にホテル跡に戻り、チサト達の誤解を解きたい]
[思考5:第一回放送の内容の把握]
[現在位置:G−4、F−4の境界付近]
[備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません]
[備考2:目覚めたのが放送後なので放送内容は把握していません]
【アーチェ・クライン】[MP残量:95%]
[状態:絶望感 罪悪感 重度の疑心暗鬼]
[装備:無し]
[道具:ボーリング球・拡声器]
[行動方針:仲間を探す]
[思考1:クロードから逃げる]
[思考2:チェスターに会いたい]
[思考3:みんなに会いたい]
[現在位置:G−4、F−4の境界付近]
※クロードは怪我の痛み、アーチェは疲労の為二人の走る速度はかなり遅めです。
だああ、同じ箇所連投してしまった!
>>452は無しで…orz
一年経った事だし、月別の投下数を調べてみた
2006/12 22話
2007/1 15話
2007/2 9話(1スレ目終了)
2007/3 7話(第一回放送)
2007/4 5話
2007/5 2話
2007/6 10話
2007/7 2話(2スレ目終了)
2007/8 2話
2007/9 1話
2007/10 6話
2007/11 4話
大体二週間に3本の割合で新作が来てる計算になる。…あれ?意外と多い?
見れば分かるけど、年度が変わった瞬間一気に過疎った。
何故か6月だけやたら投下が多いのはラジオがあったせいだろうか。
ちなみに投下が無かった最長期間は4/8〜5/16にかけて。
最近は少し持ち直してきた…かも。放送後の投下ラッシュに期待しちゃうぞ!
>>455 超乙!
思ったよりも順調なんだなw
そういえば1マスの大きさってどんなもんだっけ……?
エリア内の人間に遭遇させずに通らせるのは厳しい狭さ?
そこまで狭くないんじゃない?
歩いて1〜2時間で通過できる距離だと思う
放送まであと二時間?
危ねえ、ぎりぎり間に合った。
そんなわけで投下します。
クロード退却後、彼らはホテル跡の中にいた。
「コンナ場所で油を売ッテイテイイノカ? アノニンゲンに追イ付ケナクナルゾ」
エントランスの床に腰を落としたガルヴァドスは、顔面に濡れタオルを押し付けながらチサトに話しかける。
「無駄よ、無駄。クロードの逃げ足があんなに速いなんて思わなかったわ」
古びたソファーに腰掛けたチサトが答える。
「それに、チェスター君と情報交換をして置きたいしね」
不意に近くの扉が開き、チェスターが姿を見せる。彼はチサトの前まで来ると、大きな溜め息を吐いた。
「どうだった……って、その様子じゃ見つからなかったようね」
「ここにいるって話だったんだが……くそっ!」
チェスターが探していたのは勿論クレスである。断じてクロードではない。
だが、クロードも金髪に赤いバンダナという事実は彼の頭から抜け落ちていた。
「そんな気を落とさないで。別に遺体があったって訳じゃないんでしょう? なら、まだ無事ってことじゃない」
「……そうだな」
チェスターはそう呟くと、ゆっくりと建物の出口に向かって歩き出しす。
「ちょっと! どこ行くのよ! まだ話は……」
それを見たチサトは、慌てて引き留めにかかる。
声をかけられたチェスターは、立ち止まり、振り返ってから口を開く。
「時間が惜しい。俺の仲間の名はクレス、アーチェ、クラース。それと、道中ルシオという男と会った。アンタらは?」
「あ、えっと、ちょっと待って」
チサトは急いでデイパックから名簿と鉛筆、メモ用紙を取り出す。
名簿には先程チェスターが言った名前に印をつけ、メモ用紙には自分の仲間の名前を書き込む。
その作業を終えると、ガルヴァドスに顔を向ける。
「ガルヴァドス、あんたも探してる人がいたりする?」
「……イヤ」
その返答に「そう」と短く答えると、メモ用紙をチェスターに手渡しに向かう。
「私の仲間の名前を書いて置いたから、目を通しといて。それと、さっき戦ったのがクロード。彼も私の仲間だった……」
「……そうか、わざわざすまない」
メモを受け取ったチェスターは、再び背を向けて歩き出す。
「じゃあな。取り敢えず俺は平瀬村に行ってみる。“あいつ”もまだこの近くにいるはずだしな」
チェスターの言う“あいつ”が彼の捜し人のことなのか、クロードのことなのかは分からなかった。だけど、彼女はこの言葉で見送る。
「会えるといいわね」
彼は背を向けたまま片腕を上げて答えると、そのままホテルを後にした。
「イイノカ、一人デ行かセテ?」
「ええ、一緒に行動するっていうのは必ずしも正しい判断とは限らないわ。例えば、人捜しなら別々に行動した方が効率がいいでしょ?」
「マアイイ。ソレデ、お前ハコレカラドウスルツモリダ? 俺とシテハアノ金髪ヲ追いタイガ……」
「そうねぇ」
デイパックから地図を取り出して睨めっこを始める。
「今からじゃ追いつけないだろうけど、確に無視は出来ないわね。逃げた方角は南だから、行き先は特定しずらいのよねぇ。
平瀬村はチェスター君に任せるとして、それ以外の場所だと山と神社と氷川村……う〜ん、どうしよう」
考え込んでいると、突然『ぐぅ〜』という大きな音が聞こえてきた。
音の発信源はガルヴァドス。ただでさえ赤い顔がいつも以外に赤くなっている気がする。
そこで彼女は思い出す。色々あったせいで自分たちが昼食を食べてないことを。
「……少し早いけど夕食の準備を始める?」
「……俺ハお前の指示ニ従ウ」
二人は台所に向かって歩き出した。
【E-04/午後】
【チサト・マディソン】[MP残量:70%]
[状態:全身に軽度の筋肉痛]
[装備:パラライチェック@SO2、フェイトアーマー@RS]
[道具:七色の飴玉×3@VP、荷物一式]
[行動方針:主催者打倒、首輪をどうにかするために味方を集める]
[思考1:仲間を探す(レオン・プリシス優先)]
[思考2:クロードのマーダー化を知り合いに知らせる]
[現在位置:ホテル跡の台所]
【ガルヴァドス】[MP残量:100%]
[状態:左ひざに打撲、上半身に無数の打撲、顔面に中程度の火傷]
[装備:なし]
[道具:パラスアテネ@SO2、ガソリン入りペットボトル×2、荷物一式]
[行動方針:最後まで生き残る? 強き者に従う]
[思考1:チサトの言う事に従う]
[思考2:あの金髪(クロード)に逆襲したい]
[現在位置:ホテル跡の台所]
※ガソリンは合計で4リットルあります。
■
E-03とE-04の境界付近の森。ボーマンは一人の青年と対峙していた。
「……どうして荷物を2つ持ってんだ?」
青年――チェスターの足下にはデイパックが2つ転がっている。接触直後「戦う気はない」と言ってから放り投げたのだ。
「この島に飛ばされてすぐに、仏さんを見つけてね。申し訳ないが拝借させてもらったのさ」
「本当か?」
「事実だ。だいたい俺がやる気になってたら、既にお前を攻撃している。何せ相手は手負いなんだからな」
「…………」
ボーマンは軽口を言いながら、相手の状態を観察する。
火傷の状態は余りよくないようだ。今は青年自身に隙はない。相手の実力が分からない以上、迂濶に手は出せない。
(どうする?)そう考えていると、青年の舌打ちが聞こえてきた。
「ちっ、それもそうだな。……アンタはこの島に来てから人に会ったか?」
今だ青年は此方に厳しい視線を向けたままだが、正直に答えてやることにする。
「たしか、マリアって名前の青髪のお嬢さんと……あー、名前は何て言ったかな? お嬢さんの連れの金髪の男。この二人だけだ」
『金髪の男』その言葉に青年が反応する。
「その男、もしかして赤いバンダナを巻いてなかったか?」
「ん……ああ、巻いてた――」
瞬間、弾かれたように青年が飛び出し、ボーマンの両肩に掴みかかる。
「どこだ! アイツを、クレスをどこで見たんだ!」
「お、おい落ち着け」
チェスターの体を引き離すと、地面のデイパックに向かって歩きながら話し出す。
「地図でいうとE-02エリア、ここからまっすぐ西へ向かった辺りだ。
金髪の彼は怪我が酷くてね……ああ酷いと言っても命に別状はないぞ。兎に角、安静にするよう言ってある。まだ近くにいるはずさ」
喋りながらデイパックを一つ手に取ると、青年に渡す。
「あ?」
「持ってけ。お前荷物持ってないだろ? 基本的な道具しか入ってないが、ないよりマシだろ。それと……」
懐からピンポン玉より一回り小さいサイズの丸薬を取り出し、これもチェスターに渡す。
「秘仙丹といって、体力回復の効果がある。お前にやるよ」
「……いいのか?」
「遠慮すんな。ただ、一つだけだからな。よく考えて使え」
チェスターは暫く丸薬を眺めていたが、何かを決心したように一回頷くとそれを渡されたデイパックにしまった。
「何か悪いなこんなものまで貰っちまって。……そういえばお互い名乗ってなかったな。俺の名はチェスターだ。アンタは?」
「ボーマン・ジーン。マリアに会ったら俺の名前を出せ。それで信用してくれるはずだ」
「そうか、ありがとよボーマン!」
チェスターはデイパックを背負うと、勢いよく駆け出す。その姿は直ぐにボーマンから見えなくなった。
「……これでよかったんだよな」
チェスターの姿が見えなくなった後、ボーマンは気の抜けた声でそう呟く。
結局チェスターを殺せなかった。いや、殺さなかった。
金髪の男のことを口にした瞬間、彼は隙だらけになった。そのときに殺すことが出来たはずだ。
さらに、初めこそ不振に思われていたが、最終的に何の疑いも持たずに丸薬を受け取った彼のことだ、
もう一つ丸薬を渡していれば、それを口に含んでいただろう。
「まったく、酷い奴だな俺は。そんなに自分の手を汚したくないのかねぇ」
口元に自嘲の笑みを浮かべる。
チェスターの捜している人物がマリアの同行者であるなら、彼は今瀕死とまではいかないが重傷だ。きっと一つでも多くの薬が必要だろう。
「金髪の兄ちゃんに会えるといいな、チェスター」
【E-03/夕方】
【ボーマン・ジーン】[MP残量:80%]
[状態:自己嫌悪、殺人に対する疑問]
[装備:なし]
[道具:調合セット一式、荷物一式]
[行動方針:最後まで生き残り家族の下へ帰還]
[思考1:人を殺すことに躊躇しないように心がける]
[思考2:なるべく他人との接触は避ける(特にSO2の仲間たちとは会いたくない)]
[思考3:人を殺したことを気に病んでいる]
[思考4:調合に使える薬草があるかどうか探してみる]
[備考:調合用薬草の内容はマンドレイク、ローズヒップ、アルテミスリーフ、トリカブトがそれぞれ一枚づつ。
マンドレイクとアルテミスリーフは1/3づつ位消費]
[現在位置:南東部]
【チェスター・バークライト】[MP残量:100%]
[状態:全身に火傷、左手の掌に火傷、胸部に浅い切り傷、精神的疲労(軽度)、焦り]
[装備:なし]
[道具:エンプレシア@SO2、スーパーボール@SO2、チサトのメモ、破砕弾、荷物一式]
[行動方針:力の無い者を守る(子供最優先)]
[思考1:E-02でクレスの捜索]
[思考2:クレス・アーチェ・クラース・力のない者を探す]
[思考3:分校に火を放った者(今はクロードだと思ってます)を探し、殺す]
[思考4:クレス・アーチェ・クラースと子供を除く炎系の技や支給品を持つ者は警戒する]
[備考1:チサトのメモにはまだ目を通してません]
[備考2:破砕弾を秘仙丹だと思ってます]
[現在位置:南東部]
投下しました。
これでついに放送だ。
>>461-462 超GJ!
チェスターは単独行動か……
クロードの悪い噂が広まるのが先か、殺されるのが先か……
地味にアーチェが近いのが怖いw
まだ続いてた/(^O^)\よく見ろよ俺
改めて乙なんだぜ
>>464GJ!っした。
しかしボーマンさんマジ外道。
この後の展開がかなり夢広がりますね。
では、投下もいただいたので少し早いですが放送行きます↓
乙!
また厄介な物持たされたなチェスターw
チサト達やボーマンのこれからにも期待だ!
確認しときたい事があるけど、破砕弾って着弾すると爆発するって事でいいんだよね?
469 :
第2回放送:2007/12/06(木) 00:27:28 ID:I6WaKweI0
暮れ行く世界。空と大地を染め上げる朱の色は、まるでこの地の惨劇によって流れた血の様な赤だった。
黄昏時の静寂を破る男の声と共に、茜色の空は一瞬にして暗転した。
まるでその者が抱く復讐心を象徴したかの様な漆黒の中に、ルシファーの姿が浮かび上がる。
「フフン…、こんばんは諸君…。この会が始まってようやく半日が経過したわけだが、いかがお過ごしかね?
今回の定時放送には、ちょっとした耳寄りな情報も含めてある。是非耳を傾けて欲しい…。
それではまずは死亡者の名前から発表しよう。
『セリーヌ・ジュレス』
『オペラ・ベクトラ』
『シン』
『ネル・ゼルファー』
『ロジャー・S・ハクスリー』
『ノートン』
『ビウィグ』
『ヴォックス』
『メルティーナ』
『夢留』
『エイミ』
『アリーシャ』
『ジェストーナ』
以上の13名だ。相変わらずのハイペースで嬉しく思うぞ。
続いて禁止エリアの発表だ。
今回も時間の進行に応じて増やしていくので用心するのだな。
19時にH-07、21時にI-07、23時にD-04の三箇所だ。
アレだけ警告しておいたというのに既に何人か足を踏み入れているようだが…全く、愚かな事だ。
さて次の放送は0時。今から6時間後に行おうと思う。それまで精々殺し合ってくれ。
何度も言うがここから出られるのは最後まで生き延びた一人だけなのだからな!
そうそうすっかり忘れていたが、その生き延びた一人には素敵なご褒美を用意してある。
内容はまだ秘密にしておこうか…。だが安心しろ、誰もがきっと気に入ってくれる。
残った36人で張り切って殺し合ってくれたまえ…。フフッ、フハハハハハッ!」
ルシファーの下卑た笑い声が響き渡る中、声の主の姿が次第に消えていく。
真っ暗だった空もいつの間にか元の夕焼け空に戻っていた。
静寂を取り戻した沖木島で狂気の宴はまだまだ続く。
主催者・ルシファーの思惑通りに。
【第2回放送終了】
【19時H-07、21時I-07、23時D-04が禁止エリアになります】
放送投下完了。
何度も確認してみたりしたので多分大丈夫だと思いますが、修正点や指摘などあればお願いいたします。
最後の禁止エリアは迷いましたが、D-04を選んだ理由は南北禁止エリアの数を半々にしたかったのと、
女神+ロリ巨乳+変態のPTがヅラムスとの合流をしにくくする為に選びました。
やっぱあのPT強すぎですから。近所にいるマーダーではフルボッコされるのがオチでしょうし。
取り敢えずアルベル、レオン、レナ、ディアスを予約します。
何レスか様子見て放送に問題なさそうなら投下しようかと思います。
放送乙!
最後の禁止エリアはD−4か…。レナス達が鎌石村に行くのが難しくなるのかな。
これでいよいよ中盤戦に入っていく訳か…。
ルシファーらしさもよく出てたと思います!
>>464 こちらも乙!
クレスにとっては疫病神にもなりかねないなチェスターw
チサト達はホテルで夜を明かす事になるんだろうか…。
あと、もう予約ってしてもいいのかな…?
今Wiki見て気づいたんだが、リドリーの最終状況が真昼のままな件。
居場所が居場所なだけに、放送前までの何らかの描写が欲しいかも。
>>470 放送乙!
確かにヴァルキリーご一行様は強すぎるかもなぁ。
その力を他の対主催に分けてあげてw
ただ気になったことが一点。
第一回放送では『名簿順』でなく『死亡順』だったと思います。
後は問題ないかと。
予約はもうOK?
オーケーなら、即投下出来ないくせに空気を読まずに予約したいんだが
予約しても良いのかなあ…?
クリフ、ルーファス、リドリー、ミラージュ予約。問題あったら一旦取り消します。
>>473そうでしたか…。
前回放送を確認した時はそこまで見てなかったです。
修正はしたらばに投下しておきます。
放送の文を作品でつかって投下されようとしている職人の方々しばしお待ちを
>>472 /(^O^)\
放送予定だった1時を回ったし、もう予約してもいい、よね……?
クロード&アストンを予約します
放送来たら予約OKだったし、放送投下の予定時間も過ぎたし予約解禁していいんじゃない?
と、予約しない自分が言ってみる
皆さーん、期待してますよ!
大丈夫みたいなんで、正式にクリフ、ルーファス、リドリー、ミラージュ予約します。
>>472 あー…頑張ってみます。
つかリドリー最初に書いたの自分なんだよなあ…。
>>473 修正すいません。(前回死亡順に書いちゃったのが俺)
新作の方もwktkしてます。
>>476 お久しぶりです!超期待させてもらいます。
>>476 >>478両者ともバトルメインの作品になりそう。期待して待ってますぜ!
放送の修正はしておきました。
予約も始まってますし、死亡順以外問題なさげなので早速投下行こうかと思います。
放送乙!
やった、D-04って俺の希望した禁止エリアじゃん。
予約した方々も頑張ってください。期待してます。
私の手から放たれる光。
癒しの力を持つ光がゆっくりと消えていった。
ここは氷川村近くの診療所前。
少し前にオペラさんと戦った場所。
西の空は茜色に染まり始めています。
彼女は力の無駄遣いはするなって言っていたけれど、メンバーの中でもとびっきりの美人なオペラさん。
情熱的な性格ながらもどこか気品が溢れていたオペラさん。
そんな彼女を傷が残ったままになんてしたくなかったから、私はこの身に宿す癒しの力を彼女に使いました。
彼女の体を穿った傷も完全に塞ぎ、今のオペラさんはまるで眠っているみたい…。
「レナ、もう気は済んだか?」
傍らで私のする事を見守っていたディアスが尋ねてきます。
「ちょっと待って…」
私はそう言うと、オペラさんが付けている左耳側のピアスを外しました。
「これをエルネストさんに…。そうすればオペラさんもきっと彼を近くに感じる事が出来ると思うから…」
大事な宝物のように握り締め、それからポケットにしまいました。
「そうか…。では埋めよう。このまま野晒しにしておくわけにもいかん」
オペラさんを弔おうと提案した私に、ディアスは快く同意してくれました。
彼は幼い頃に両親と仲の良かった妹を目の前で殺されてしまっています。
だからこそ彼も、親しい人の死に何かしたかったのではないかと思います。
ディアスは彼女の遺体を抱き抱えると、あらかじめ掘っておいた穴にやさしく降ろしました。
最後にエルネストさんの事を私たちに託し、望んでいた答えを得た彼女はとても安らかな表情をしています。
声を掛ければ今にも起きてくれるんじゃないかとさえ錯覚する死に顔。
でも、これでお別れなんですよね?
「エルネストさん…だけじゃなくて…っ、みんなと…一緒に…っ、生きてここからっ…帰りますから…!」
抑えることが出来なくなった涙が頬を伝うのを無視して、土の山から一すくいオペラさんにかけました。
ディアスもそれに倣って土を被せていきます。
オペラさんに被せる土の量に比例して私の涙も溢れてきました。
そんな私を見てディアスが、
「辛いのならあとは俺に任せて休んでいた方がいい」
と言ってくれましたが、しっかりお別れをしたかったから私は首を横に振りました。
涙を袖で拭い、顔を泥だらけにしながら一すくい、また一すくいと土をかけ、とうとうオペラさんの姿は見えなくなりました。
最後に近くの木を伐って作った十字架と、摘んできた花を供えて黙祷を捧げます。
(約束は必ず守りますから…私達を見守ってください…)
近くの木を伐って作った十字架を地面に刺し、黙祷を捧げるレナと一緒に俺も祈りと別れの言葉をオペラに告げた。
(さっきの問い掛けの答えは俺の中の真実だ。家族を目の前で殺された俺はすべてを恨んだ。
手にした絶望と後悔は筆舌に尽くしがたい。
そんな俺にずっと救いの手を差し伸べてくれていたのがレナだ。
もう俺は大事なものを失うのも、レナにあんな想いをさせるのもごめんだ。
だが理由はどうあれ、俺はエルネストを同じ目に合わせてしまった。
かつての俺があの野盗共を恨んだ様に、エルネストも俺を恨むかもしれない。
奴と合ったらお前を手に掛けたことを告げようと思う。
その時、あいつが俺に刄を向けるならば、お前との約束は違えることになる。
だが、それでも俺達と共に歩む事を選んでくれるのならば―――)
穴を掘るのに使ったオペラの剣を地面から引き抜く。
抜いた剣の刀身を眼前に掲げ、誓いの言葉を紡ぐ。
(お前の大切な人を守ると誓おう。お前が使ったこの剣で。お前がこの剣に込めた想いと共に。俺はお前の大切な仲間達を護り抜く!俺なりのやり方でな!)
少し長めの別れを告げ俺はレナを見た。
閉じていた目がゆっくりと開かれ、真っ赤に泣き濡らした目と視線がぶつかる。
「行こう。辺りが暗くなり始めている。まだ昼頃見かけた連中をやった奴が近くにいるかもしれない」
レナは名残惜しそうな目をオペラの墓に向けていたが、ゆっくりと立ち上がって、
「行きましょう…」
と力なく言った。
もうレナは限界に近いだろう。一刻も早く休ませないと…。
だが、ここでこいつを気遣う事を言うと『ううん、私はまだ頑張れるから…』と返してきて申し出を断るだろう。
だから俺は、
「すまんレナ。さすがに今回の事は俺も堪えた。どこかで休もう」
と言った。
「うん…。じゃあ、あの中で朝になるまで休みましょう」
俺の申し出に診療所を指しそう答えたレナだが、あそこはまずい。
オペラがやった男の死体がある。
俺達の知り合いではないが、オペラがやったであろう男の姿を見たらまたレナが悲しむだろう。
「いや、村までは近い。人も集まりやすいし明日以降捜索もしやすいだろうから村まで戻ろう」
俺はそう応えることでそれを回避した。
オペラの荷物を貰い受け歩みを西へ、日の沈み行く方角へ向けた俺達。
その目的地で更なる出来事が待ち受けていようとは想像すらしていなかった。
(あれからどれくらい経ったのだろう?)
オペラさんとお別れを済ませ、沈んだ気分のまま住宅地に戻ってきました。
地図上の距離だと大した距離ではありませんが、かなりの距離を歩いてきた気がします。
丁度その時です。ここに来て2回目の放送が始まったのは。
「フフン…、こんばんは諸君…。この会が始まってようやく半日が経過したわけだが、いかがお過ごしかね?
今回の定時放送には、ちょっとした耳寄りな情報も含めてある。是非耳を傾けて欲しい…。
それではまずは死亡者の名前から発表しよう。
『ヴォックス』『ノートン』『メルティーナ』『ロジャー・S・ハクスリー』
『ビウィグ』『エイミ』『シン』『夢留』『ネル・ゼルファー』『アリーシャ』
『ジェストーナ』『セリーヌ・ジュレス』『オペラ・ベクトラ』
以上の13名だ。相変わらずのハ―――
セ…リーヌ…さん?
今セリーヌさんが呼ばれたの?
視界と思考は真っ白になり、早鐘の様な心臓の音が頭の奥で響いています。
アーリア村でお母さんと二人で暮らしていた私にとって本当のお姉さんみたいな存在だったセリーヌさん。
セリーヌさんと戦った日々、共に過ごした日々の思い出が次々と溢れてくる。
「嫌…」
力なくその場に膝をつく私。
「いや……」
オペラさんとの事で枯れ果てたと思っていた涙が次から次と溢れてくる。
「イヤァァァァァァァッ!!」
ルシファーの放送が終わり、静寂を取り戻した夕焼け空。
その中に私の叫びが消えていった。
俺はこの放送で、オペラ以外の仲間の死を知った。
セリーヌ…。あいつの紋章術には何度も世話になった。
長い間一人で戦っていた俺に背中を守ってもらえるという頼もしさを教えてくれたのはオペラやセリーヌだった。
散っていった仲間を憂いていた俺をレナの悲痛な叫びが現実に引き戻した。
顔を向ければレナは、その場に跪き涙を流していた。
無理も無い。レナはセリーヌの事を姉のように慕っていたからな…。
今のレナはかつての俺と同じだ。
大切な人を失い、その事実に嘆き、絶望する事しか出来なかった俺と。
だが俺にはその時レナがいた。
俺に救いの手を差し伸べてくれたレナが…。
だから今度は俺がレナを支える番だ。
せめてこいつが落ち着くまで抱き締めて、頭を撫でてやる。
かつて妹に…セシルにしてやった様に…。
俺が今日3回目になるあのクソ虫の声を聞いたのは、このガキを担いで走りだしてしばらくしての事だった。
本来なら立ち止まって、不様にも殺されたカス共の名前を名簿から消しつつ、禁止エリアをメモる所だが、何故かそうしなかった。
胸中に渦巻く焦燥感にかられて依然として走り続けていた。
俺はどうしちまったんだ?
こんなガキほっぽっといて、自分が有利になるかもしれない情報に耳を傾けるべきじゃないのか?
何故俺はネルとロジャーの名前が死亡者として挙げられた時憤りを感じたんだ?
答えは出ない。
ただ、今感じているイライラや焦りは、このガキをあいつらに押しつけることで解消するかもしれない。
(確かさっきの青髪の女は治癒の紋章術が使えるとか言っていたな。
あいつに会えばこのガキは助かる。ん? 違う。俺の傷が治せる。こいつは俺のついでだ)
そんなことを考えていた時だ、割と近い位置から女の叫び声が聞こえてきたのは。
俺の耳にレナの嗚咽以外入らない時間が続いた。
そんな時間を打ち破ったのは意外な第三者だった。
「見つけた! おい! お前等こいつをどうにかしやがれ!!」
この声の主はアルベル。
氷川村で少し前に出会った男だ。
その男が肩にレオンを担いで現れた。
「お前? レオンに何をした!?」
よく見ると、レオンのトレードマークである白衣は左肩に巻き付けられ所々を赤黒く染めている。
「俺じゃねぇ! 説明は後回しだ。おいっ女! いつまで泣いてやがる!
今はお前の力でこいつを治してやるのが先決だろうが! 死んじまった奴らにいつまでも引きずられてんじゃねぇ!」
そう怒鳴られレナは漸くアルベルとレオンに気が付いた。
「レオン!?」
血の気の引いた顔でレオンに歩み寄るレナ。
「とっ、とにかく治療を!」
そう言い肩に巻き付けた白衣を取ったレナと俺は愕然とした。
肩から先が無いのだ。鋭利な刃物で一閃。そんな感じの切断面だ。
「ついさっきだ。背中に龍を生やした男がこいつに会うなりプリシスを手伝うとか抜かしていきなり…。
ったくてめぇらの仲間は何で不意打ちばかり好みやがる? 気に入らねえ!」
悪態を吐くアルベル。
「斬られた腕は? まだそんな時間が経ってないなら、まだ元に戻せます!」
レナの頭からはセリーヌ達の事は一時的に消えた様だ。
今はアルベルが言っていたように、救えるかもしれない命に集中している。
「あぁ? 腕? 置いてきた」
レナの問い掛けに、まさかの答えを寄越すアルベル。
「ちょっ!? おまっ!? 置いてきたって? 急いで取りに…いや時間が惜しい。レナ、走れるな?」
「行きましょう!」
レナは力強く頷いた。
レオンが斬られた場所は意外と近くでした。
斬り落とされた腕もすぐに見つかり、さっそく治療に移ります。
「ディアスは傷口を水で洗って。アルベルさんは切断面に合わせて腕を支えていて下さい」
二人に指示を出し処置を急ぎます。
まだ腕の体温は失われておらず、傷さえ塞げば元に戻るはず。
『フェアリーヒール』
最上級の癒しの呪紋をかけました。
私の手の平から癒しの力を持つ光が放たれます。
(やっぱりいつもより治りが悪い? それに疲れるのが早い)
私は首を左右に振りました。
(でも、疲れたなんて言ってられない! 絶対にレオンを助けるんだ!)
その後も懸命にかけた紋章術のおかげでレオンの腕は元に戻りました。
言い表せない程の疲労感が私を包んでいます。
けれども、まだ終わりじゃありません。
「つ…次はお腹の傷です…。大事な臓器に…傷が付いていたら危険です」
応急処置はアルベルさんがしてくれていましたが、治療しておかないと危険な事には変わりません。
額に滲む汗を拭い、今度はレオンの左脇腹に手をかざします。
『フェアリーヒール』
………。
光が出ません。
『フェアリーヒール』
………………。
(どうして? 普段ならまだ使えるのに!?)
この時始めてルシファーが話していた能力制限の意味がわかりました。
『キュアライト』
何も起きません。
『ヒール』
不意にオペラさんの言葉が頭を過ぎります。
(「紋章術の無駄遣いをする事はないわ」)
あれは決して無駄遣いなんかじゃない。けどもし、さっき使ってなければ…。
「どうした? さっさと治してやれよ!」
アルベルさんが怒った様な声をあげます。
(私だってそうしたいの! けど精神力が…)
何度呪紋を唱えても発動しません。
傷口からの出血量が徐々に少なくなってきています。
傷が塞がったからではなく、体内の血の量が減っているからです。
このままでは出血多量で死んでしまう。
「(ここで諦めるの? レナ…)」
それは、私の中に響いた誰かの声。
「いやよっ! もう誰にも死んで欲しくないっ! 私はもう力が使えなくてもいいっ! どうなっても構わないっ!
だから、お願いっ! 私に宿る癒しの力よ、レオンの傷を治してぇっ!!」
響いた声の問いかけに、私は精一杯の想いを以って応えます。
「(本当に…、仕方ない子ね…)」
呆れた様な、しかしどこか思いやりの篭もった声がポケットから聞こえてきた気がしました。
その声が導いてくれたのかわかりませんが、ありました。
私の中に眠る、まだ使っていない呪紋の源となる精神力の泉が。
『フェアリーヒール』
私の手はまばゆい光を放ちレオンの傷を塞いでいきました。
出血は完全に止まり、顔色も良くなっていきます。
「よかっ…た…」
精神力を使い果たし、薄れていく意識の中で私は良く知る3つの影を見た気がした。
俺とアルベルはいきなり倒れたレナと、治療の済んだレオンを近くの民家へ運び込んだ。
「済まない。色々と助かった。礼を言わせてくれ」
運び込んだ二人は布団に寝かせている。
「ふんっ!べっ別にお前等のためにやったんじゃねぇよ。
そのガキを運んだのはこの剣の礼だ。ったく、面倒くせえ事この上ねぇぜ!」
そっぽを向いて、その様に返答を寄越すアルベル。
「そうか…。悪いが、面倒ついでにもう一つ頼まれてくれないか?」
「あぁっ? なんだよ? とりあえず言ってみろ」
「この二人が目覚めるまで用心棒を頼みたい。無論タダでとは言わん。
報酬としてその肩口の傷を治すようにレナに頼んでやろう。
それに、これからの時間一人で寝るにしてもこの島はいささか物騒だ。
常時警戒していては休めるものも休めはしないだろう。
俺も今晩は二人を守るため寝ずの番をしなければならないが、明日以降の事を考えると望ましくない。
加えて言うならさっきの放送で言っていた禁止エリアがこの辺りだという事で、そこに潜伏していた人物がここに来る恐れがある。
その人物がゲームに乗っていたら正直俺一人でこの二人を護りきれるかどうか…。
お前の方にもデメリットは無いはずだし、是非頼まれて欲しいのだが」
アルベルは俺の申し出に少し悩む素振りを見せてから、
「ちっ、仕方ねぇ。面倒くさいがやってやる」
拗ねた様にそう答えた。
「済まないな。最初は俺が番をしよう。適当に休んでくれ。何かあったら起こす」
「待ちな。先にてめえが休め」
俺の言葉を遮り、ぶっきらぼうにアルベルは告げた。
「いや、しかし頼んだのはこちらだ。俺への気遣いは無用だ」
「ちっちげぇよ! おっお前の事が心配なんじゃねぇよ!
休んでない事を理由にサボられたら、たまったもんじゃねぇからな! いいからてめえから休みな!」
なぜか慌てたようにまくし立てるアルベル。
「? まぁ、そういう事なら先に休ませてもらおう。トラブルがあったら起こせ」
近くのソファーに寝転がり毛布に包まる。
そこでふと思い出した。
レオンの衣服が血塗れだった為、脱がしたままで上半身裸だった事を。
(このままでは風邪を引いてしまう)
起き上がり、部屋のタンスやクローゼットを物色する。
だが、丁度いいサイズの物が中々見つからない。
「何やってんだ?」
「レオンに服を着せてなかったから探しているのだが、いいのが見当たらん」
「丁度いいのを持ってるぜ。待ってな」
アルベルは自分のデイパックを漁りだした。
「ほらよ」
…。
……。
………。
アルベルが取り出した物を見て俺は3秒程時が止まった。
「なんだこれは?」
「メイド服だ」
「これをレオンに?」
「着れりゃあなんでもいいだろ」
「着たのか?」
「きっ着てねぇよ!」
「なぜこんなものを?」
「聞くな」
アルベルは目を伏せそう答えた。
(やれやれ、どうやらとんでもない奴に協力を仰いでしまったみたいだ)
だが今更断るわけにもいかない。
「そうか、なら着せてやってくれ」
これ以上この男の趣味にとやかく言う気にもなれなかったので、俺は再びソファーに寝転んだ。
支援入りまーす
(あの野郎。これ見せた途端にドン引きしやがって、俺だってこんなの持ち歩いている意味がわかんねぇよ)
アルベルは頼まれた通り、レオンにメイド服を着せてやることにした。
このメイド服はワンピースタイプだ。
フリル付きのスカートに体を通した後、腕を袖に通せば着せることが出来る。
片手しかないから多少手間取ったが、無事作業は完了した。
(ちっ、めんどくせえ。大体服なんてモンは着れれば…)
ふとレオンの姿を見たアルベルの背筋に電撃が奔った(気がした)。
なぜならそこには、完璧なまでの猫耳メイドが静かに寝息をたてていたからだ。
(なっなんだ…これは…。かっ可愛いじゃnゲフン! ゲフン!)
もともと幼い顔立ちのレオン。
女の子に間違えられてもおかしくない容姿の彼がメイド服を纏って無防備に寝ているのだ。
しかもデフォで猫耳とフサフサしっぽを完備!
特殊な趣味をお持ちの方はもちろん、そうでない人もハァハァしてしまうのは致し方ない事なのかも知れない。
太陽は完全に沈み、外は闇に包まれていた。
長き夜の始まりに、アルベルは特殊な趣味に目覚め始めていた………のかもしれない。
【I-6/夜】
【アルベル・ノックス】[MP残量:100%]
[状態:疲労、左腕(義手部分)切断、左肩に咬み傷(応急処置済み)]
[装備:セイクリッドティア@SO2]
[道具:木材×2、切断された義手(腕部+手首)、荷物一式]
[行動方針:ルシファーの野郎をぶちのめす! 方法? 知るか!]
[思考1:傷を治してもらうまでディアス達の用心棒をする]
[思考2:左腕の代用品の調達または修理]
[思考3:龍を背負った男(アシュトン)とプリシスなる人物の警戒]
[現在地:I-06 民家]
※木材は本体1.5m程の細い物です。耐久力は低く、負荷がかかる技などを使うと折れます。
【レオン・D・S・ゲーステ】[MP残量:100%]
[状態:外傷のショックが原因で気絶中]
[装備:メイド服(スフレ4Pver)]
[道具:幻衣ミラージュ・ローブ、どーじん、裏に考察の書かれた地図、ボールペン、小型ドライバーセット、荷物一式]
[行動方針:首輪を解除しルシファーを倒す]
[思考:?]
[備考1:首輪に関する複数の考察をしていますが、いずれも確信が持ててないうえ、ひとつに絞り込めていません]
[備考2:白衣、上着は血塗れの為破棄]
[現在地:I-06 民家]
【ディアス・フラック】[MP残量:100%]
[状態:仮眠]
[装備:咎人の剣“神を斬獲せし者”@VP+護身刀“竜穿”@SO3]
[道具:クォッドスキャナー@SO3、どーじん@SO2、どーじん♀@SO2、ミトラの聖水@VP、
????←本人確認済み、荷物一式*4(照明用ランタンの油は2人分、水は未開封が3本)]
[行動方針:ゲームに乗った参加者の始末、ゲームからの脱出]
[思考1:レナを最優先に保護]
[思考2:仲間を探しレナを託す]
[思考3:しばし休息(3〜4時間後に交代)]
[思考4:アシュトンとプリシスの警戒]
[現在地:I-06 民家]
【レナ・ランフォード】[MP残量:0%]
[状態:精神力枯渇が原因で気絶中]
[装備:無し]
[道具:????×2←本人確認済み、魔眼のピアス(左耳用)@RS荷物一式]
[行動方針:仲間と一緒に生きて脱出]
[思考:?]
[現在地:I-06 民家]
投下終了です。
今回はジェストーナを書いた時に意外と筆が進んだので、一人称スタイルで作ってみました。
慣れない作成だったので文末とか怪しいかもしれません。
また以前みたいに死んだ人の声を聞いて逆転みたいな展開になっちゃいましたが、こんな感じの話が好きなんで勘弁してください。
あとツンデレ書くの難しすぎ…。こんなんで良いでしょうか?
3パート目の登場キャラそれぞれの放送前後のキャラを出す順番ですが、アドバイスをいただきたいです。
作成時はレナ→アルベル→ディアス→4パート目(ディアス視点)とする予定でしたが、
場所があっち行ったりこっち行ったりで場面転換が唐突ってところが相変わらずだと思い順番を変更しました。
それでもやっぱりアルベルの出現がいきなりすぎるかな?などと思っています。
このままで大丈夫ならいいのですが、もう一つ考えていたのが3パート目でアルベル部分を全カットする事です。
これだと4パート目に突然アルベルが出てきてしまいますが、前の話でアルベルは二人を探して走っているわけですので
叫びを聞いて駆けつけるって事にできるからいきなり出現ってことにはならないかと思いました。
まぁ、結局折角書いたんだしって事で投下のスタイルになりましたが…。
投下の順番のままでよかったのか、作成時の順番でよかったのか、アルベルの文を3パート目からカットがよかったのか、
もしくはもっと別の書き方があったのか自分だと判断しかねたのでアドバイスをいただきたいです。
他にも修正箇所などあれば指摘をお願いいたします。
GJ!
なんだこの投下ラッシュw
かつて「唯一のまともな脱出派」と言われながらも空気だったレオンがようやくパーティを組めたのか……
レナはこの先MP回復アイテムを得るまで足手まとい担当になりそうだ……
それでも何とかやってけそうな強パーティーだけど
ていうかアルベル\(^O^)/オワタ(人として)
新作GJ!
構成に問題は無いと思います。
武器も相当な物が揃ってるし、術師に回復役とかなりの強パーティーですな。
レナはしばらく術使えそうにないけど…。
レオンの左腕はくっついたって事で良いのかな?
>>491 いや、レナって意外と通常攻撃強いぜ?
ナックル系の装備があれば術が無くても前衛を張れるはずだ。ディアスが許さないだろうけど…。
残念ですがアルベルについては弁解できません><
今日の教訓:書き込む前にリロードするって大事だね
まだ実践してない私がこんなこというのもなんですが、場面転換については“◆”や“+”といった記号を挟むと分かりやすくなるって話を聞いたことがあるような……
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
こんな感じで
個人的には視点が変わる際もうちょい改行増やしてくれたら投下版で十分読みやすいかと
……本当なら批評スレの住人のようなアドバイスが得意な人の意見を聞くのが一番なんでしょうが、あそこまだ機能してるんだろうか
新作乙です!
アルベル覚醒しちゃった\(^o^)/
それとやっつけ仕事ではありますが、放送直前の地図でも。
ttp://kossie.net/up/src/kos1437.png.html (パスはメ欄
間違っている箇所があったら後日修正します。
投下ラッシュですぐに使い物にならなくなる恐れがあるけど、節目という事で気にしない。
ちなみにロキが?とあるのは、状態欄では確定していないものの作品中に描写がありそこから推測した為です。
ディアスの「ちょっ!?おまっ!?」に吹いたw
レオンのメイド服でさらに吹いたw
今頃あの世じゃ、ネルが冷笑を浮かべているに違いないw
みなさん感想、アドバイスサンクスです。
>>492 はいレオンは完治した事にしてます。
学校で見たんですが、思った以上に人がいてびっくりしました。
最初はレオンの治療が済んだあとで終わりにしようとしていたのですが、
82話を読み返していたら【レオンのメイド服姿に萌えるアルベル】なる電波を受信したもので書いちゃいましたw
正直アルベルはやりすぎたかと思っていましたが、そんな事なかったみたいですね。
クリフ、ルーファス、リドリー、ミラージュ投下します。
こんな時間じゃ誰もいないと思いますが、規制されるかもしれないので
見てる方いたら支援お願いします
「アリー…シャ…」
放送された二回目の死亡者発表。
呼ばれた名前の中には、求め続けた少女の名前があった。
その名を聞いた瞬間ルーファスは地面に膝を着き、そのまま崩れ落ちた。
「ルーファス…」
そんなルーファスを見て、クリフは何とか彼を励まそうと言葉を探す。
自分の仲間の名前も呼ばれている。本来短気であるクリフも激情を爆発させたかった。
だが、今はそれ以上にルーファスが心配だ。
彼が言っていた「どうしても死んで欲しくない仲間」、それがアリーシャという名だった筈。
「なあ、ルーファス」
しゃがみ込んでルーファスの肩に手を置き、何とか立ち直らせようとする。
「仲間が死んで悲しいのは分かる。けどよ、死んだ奴は生きてる奴がいつまでも悲しんでいて欲しいなんて思っちゃいねえぜ?
…きっと、そのアリーシャって奴だって同じだ。お前が苦しむ姿なんて、見たい筈はねえ」
ルーファスは下を向いたままだ。答えは返ってこない。
それでもクリフは何とか彼を立ち上がらせる為に呼びかける。
「俺達が死んだ奴に出来る供養は、これ以上死ぬ奴を増やさないように努力する事だ。俺はそう思う。
今は俺達に出来ることをやろうぜ、悲しむのはその後でも遅くないだろ?」
ミラージュは行動が厳しい状態にあるとメモにあった。早く行かないと取り返しのつかない事になるかもしれない。
しかしルーファスをこのまま置いていくわけにもいかなかった。
頼む。立ち上がってくれ。懇願にも近い思いでクリフは語りかける。
「…俺の仲間が危ないんだ。頼む、役場までは一緒に来てくれ」
願いが通じたのか。クリフがそう言うと、ルーファスは無言で立ち上がった。
相変わらす顔は俯いたままだが、それでも「ああ…」と小さな声で答える。
良かった。クリフは心の底から安堵し、拳をパシッと合わせた。
「ありがとよ。死んだ奴の為にも、俺達で必ずルシファーをブチのめしてやろうぜ」
リドリーが鎌石村に辿り着いてから数時間。空は既に赤から黒へと色を変えようとしていた。
この島に来て早々に戦った二人以外、未だ彼女ら以外の人物とは会えていない。
途中何かベルが鳴るような参加者が出していたと思われる音を聞いたのだが、嫌な予感がしてスルーしてしまった。
すなわち最初の放送から、彼女は一人も殺せていないという事だ。
だがそれが幸いし、ここまでリドリーは完璧に近いコンディションを維持する事が出来ている。
空飛ぶホウキとやらのエネルギーも満タンだ。
支給品に入っていた食料を食べた後、潜んでいた民家を出る。
本当は放送まで休むつもりだったのだが、現在の自分の状態なら休む必要は無いと判断した。
標的を探すべく、リドリーは鎌石村を歩き始めた。
二人の男を見つけたのは、ちょうど空にルシファーの姿が浮かび上がった時だった。
死亡者、そして禁止エリアが次々と発表される。
死者の数は午前中と同じ、13人。これで生存者は残り36人。
予想以上に速いペースだ。どこか別な場所で大規模な乱戦があったのかもしれない。
死亡者の中に自分の知る名前は無かった。幸か不幸か、ジャックやガウェインもまだ生きているようだ。
男達の方に向き直る。一人の男が地面に崩れ落ち、もう一人の男が何かを言っている。
落ち込んでいる男をもう一人の男が励ましているように見えた。
誰か知り合いでも亡くなったのだろうか?
だがやがて崩れ落ちていた男は立ち上がり、二人は再び走り出していった。
リドリーも気付かれないように二人を追っていく。
二人を追いながら、放送にあったルシファーの『耳寄りな情報』が気になった。
優勝者に与えられる、素敵なご褒美…。
まあ今は深く考える必要は無い。自分の目的は最後の一人になる事だ。
褒美などは副産物のような物。その時考えればいいだろう。
辿り着いた先の役場に男達は入っていったようだ。リドリーは様子を探ろうと、慎重に役場へと近づいた。
第二回放送が終わり、ルシファーの姿は空から消えた。
その様子を窓越しに見ていたミラージュはルーズリーフを取り出し、放送内容をメモしていく。
正午からの六時間での死者は13人。生存者が36人と言っていた事から、最初の六時間でも13人亡くなっている計算だ。
死亡数こそ同じだが、生存者の数を考えれば明らかに殺し合いは加速している。
早急に何らかの対処をしなければ事態は悪化する一方だ。
次にミラージュは自分で書いた参加者名簿を見る。最初に見た名簿にあった名前を覚えていた限り書いたものだ。
これによると、自分が聞いたことがある名前、もしくは同じ『時代』の人物は直接面識の無い者を入れても15名。
その内5人の名前は今の放送で呼ばれてしまった。
ネルやロジャーもは共に行動した時間こそ短いものの、一緒にルシファーと戦った仲間だ。
冷静なミラージュでも彼らを失った怒りが沸いてくる。
他にも知った名前はあった。例えばレオン・D・S・ゲースケなどがそうだがこれは400年前の学者の名前だ。
本人なのかどうかは不明だが、ルシファーなら時間の壁を越えて参加者を集めることもできるだろう。
いずれにせよ、参加者はブレア以外は全てエターナルスフィアの人物である可能性が高い。
自前の名簿の名前の内、死亡した者の箇所に線を引いていった。最初に死亡した13人の中にも知り合いがいる可能性は高い。
ガンツの名前も呼ばれていないが、彼はどうなってしまったのだろうか?
それにクリフ達も…。
次に禁止エリアのメモを取る。
今から一時間後の19時にH−7、21時にI−7、23時にD−4。
(成る程…二時間ずつ禁止エリアが増えていくシステムになっているんですね)
という事は、第一回放送後の禁止エリアは13時、15時、17時になる。
確か少女と戦った時――自分がC−5に足を踏み入れて首輪が爆発しそうになった時は、放送から3時間も経っていなかった。
つまりC−5は13時に禁止エリアになっているという事だ。
ここまで自分のいるC−3に特に問題が無い事を考えれば、ここは禁止エリアに指定されなかったのだろう。
あと6時間はここで身を潜めていても大丈夫だ。
それまでに誰かが来てくれるといいのだが…。
一つ気になるのが、島の南側の隣り合うエリアが同時に禁止エリアになった事だ。
ルシファーがこの禁止エリアというシステムを作ったのは、
『参加者が一箇所にずっと留まるのを防ぐため』
『殺し合いをしない意志を持つ参加者が一箇所に集まるのを防ぐため』
『参加者が減ってきた時、互いに遭遇しやすくするため』
などが推測される。
ルシファーの事だ。意味も無く禁止エリアを選んでいくとは思えない。とすると…。
(南に参加者が集まっている可能性が高い?)
そう考えると、禁止エリアに囲まれた形に近いこの村の周辺も…。
ミラージュはその後もこの殺し合いを止める手段を考え続けた。
(いずれにせよ、誰か信頼の置ける同行者を捜したい所ですね)
民家に残して来た手紙には役場にいると書いておいた。だが誰かが気付くまでここにいるという訳にもいかない。
六時間もすれば体力も回復するだろうし、次の放送までに誰も来なければ役場を出てもいいだろう。
痺れも取れたし、もう少し役場の中を調べてみよう。そう思った時。
派手にドアが開く音がすると同時に、聞き慣れた大声が役場に響いた。
「ミラージュ!!無事かあっ!?」
役場に入ると同時に開口一番叫ぶクリフ。
ロビーを見渡すがミラージュの姿は無い。とりあえず片っ端から部屋を探そうとするが、すぐにその必要は無くなった。
「クリフ!」
「おっ、ミラージュ!」
奥から出てきたミラージュの声を聞き、そちらの方向を振り向く。
安堵の笑みを浮かべて二人は合流を果たした。
「無事だったか。ま、お前がそう簡単にくたばる訳ないわな」
「それは貴方にも言えますよ、クリフ」
当たり前だろ、といつも通り拳を合わせるクリフ。
「すみませんが早急に聞きたいことがあります。実は、最初の放送の事なのですが…」
沖木島に連れてこられて半日、既に26人の人間が命を落としている。
この過酷な状況の最中、クリフとミラージュの二人は怪我こそしているものの、お互い無事のまま再会できた。
待望の瞬間に、クリフも、ミラージュですらも心の底から安心感を覚えていた。
だから、気付かなかった。
クリフの背後から二人を見つめる、一つの殺意に。
一瞬だった。
ヒュンという風を切るような短い音がしたかと思うと、目の前いたミラージュが膝を着く。
膝を着いた彼女の胸部に突き刺さっていたのは………一本の弓矢。
「な…何だ!?」
クリフが弓矢が飛んできた方向を振り向く。
目に入ったのは、殺意を込めた目でこちらを見つめ、弓を構えるルーファスだった。
「おおおおおっっっ!」
コンマ一秒待たず今度は自らに飛んできた弓矢を、並はずれた反射神経で回避。
だがその弓矢は方向を変え、再びクリフの方へと向かってきた。
「誘導弾か!畜生!」
ミラージュの腕を掴んで、転がり込むようにカウンター内へ進入してカウンターを盾にする。
避けた弓矢はカウンターに突き刺さった。
「てめぇルーファス!どういうつもりだ!」
後続の弓矢が飛んでこない事を確認し、クリフはカウンターから顔を出した。
なおもこちらに向けて弓を構えるルーファスを睨み付ける。
「決まってんだろ!お前らを…いや!この島にいる全員を、殺す!」
ルーファスの口から飛び出したのは、自分に対する明確な殺意だった。
「んだとぉ…!?」
言い返そうとしようとすると同時に再び弓矢が放たれる。それを避けてクリフは再びカウンター内に身を隠した。
「馬鹿かてめえは!んな事して何になる!」
「俺はこのゲームで優勝する!そして、アリーシャを生き返らせるんだ!」
「ああん!?」
死人を生き返らせるだと?そんな事、出来るわけが無い。
そもそもゲームで優勝する事と、死人を蘇生する事と何の関係があるというんだ?
何とか思考を整理しようとするクリフの脳裏に、先程の放送でルシファーが語った言葉が浮かぶ。
『生き延びた一人には素敵なご褒美を用意してある』
「おいルーファス!まさかとは思うが、ルシファーが言っていた褒美ってのをアテにしてんじゃねえだろうな!」
「………」
ルーファスからの返事は無い。
「冷静に考えろ!あんな奴が約束を守るわけがねえ!万一あれが真実だとしても、死んだ奴を生き返らせるなんて出来るわきゃねえだろ!」
「…言っていなかったな。俺は一度死んでるんだ。この殺し合いに連れてこられる前に…な」
ルーファスの言葉にクリフは絶句する。
そんな馬鹿な。幾らルシファーが俺達の宇宙を創った男だとしても、死者を生き返らすなんて芸当出来るわけ…。
…いや、一つだけ心当たりがあった。
名簿に示されていた、ヴォックスという名前。バンデーンの攻撃に飲み込まれて死んだ男の名だ。
てっきり同名の違う奴だと思っていたが、もしそのヴォックスが、自分の知る男と同一人物だとしたら…。
(冗談キツイぜ、死者蘇生なんてよ!)
そんな事まで可能なのかよ。科学が限界近く発展したこの世の中でも、それはタブーとされてきたってのに。
例えそれが可能だとしても、関係ない連中の命を奪ってまでしていい事じゃねえ!
「でもなあ…もし生き返らせる事が可能だとしても、他の奴を殺していいのかよ!
お前言ってただろ!アリーシャって奴は、他人を犠牲にしてまで自分が助かりたいと思うような奴じゃないって!」
「そんな事関係無い!」
「落ち着け!自暴自棄になるな!仲間が死んで悲しいのは分かる!けど…」
「知った風な口を聞くな!お前に何が分かる!」
そこまで言葉を交わしたところで、ルーファスの声が涙混じりになっている事に気付いた。
一呼吸置いて、ルーファスは続ける。
「お前には分からねえよ…。無事に恋人と再会できたお前には!再会を果たせなかった俺の気持ちなんて、分かる筈ねえ!」
「っ…!」
正確に言えば、クリフとミラージュは恋人同士という間柄では無い。
だが二人は並の恋人以上に共に長い時間を過ごし、お互いを大切にしている事は事実。
そんな二人の再会の光景は、アリーシャを失ったばかりのルーファスにはあまりに残酷すぎた。
「アリーシャが俺の全てなんだよ…」
彼女は全てだった。それこそ、自分の命なんてどうでもいいほどに。
「俺にはアリーシャしかいないんだよ…!」
だが、アリーシャはもういない。
確かにルシファーが本当に約束を守るかどうかは疑わしい。
しかし自分やアリーシャが生き返ったという事実がある以上、彼女に再び命を与えるにはこの方法しか思い浮かばなかった。
ルーファスの放った「フレームクラップ」がカウンターの一部を大破させた。
クリフは舌打ちする。このままでは自分とミラージュが弓矢の餌食になるのは時間の問題。
とりあえずルーファスを鎮圧したいが、こう絶え間なく弓矢を発射されてはルーファスへ近づくことすら難しい。
だったら、こっちも遠距離から攻撃するしかない!
危険を承知でカウンターから身を乗り出して気合いを溜める。
そのクリフに向けてルーファスが狙いを付ける。
弓矢が放たれると同時に、溜めた気を一気に放出した。
「マックス・エクステンション!」
クリフの左腕から放たれた波動が、飛んできた弓矢を飲み込んでルーファスを襲った。
「ちぃ!」
その波動を辛くも避けるルーファスだが、そこにクリフが飛び込んでくる。
「頭を冷やしやがれっ!!」
回避行動中の無防備なルーファスの顔面に、クリフの上段回し蹴りがヒット。
防御する事もできすに蹴りをモロに喰らい、ル−ファスは衝撃に耐えられず吹っ飛ぶ。
「へへ、どーよ、俺の一撃は?」
「こ、この野郎…」
口内を切ったようだ。ペッと血を吐きながら立ち上がるルーファスだが、足下が少しふらついている。
駄目だ。接近戦でクリフに勝てる訳がない。ここまで近づかれてはこのまま戦うのは厳しい。
無理は出来ない。自分は死ねないのだ。絶対に最後まで生き残らなければ、アリーシャを救う事は叶わない。
「こ、今回は見逃してやる!けど覚えとけよ、生き残るのは俺だ!」
捨て台詞を吐いて、ルーファスは役場を飛び出した。
「待ちやがれ!」
ワンテンポ遅れてクリフもルーファスを追おうとして…止まった。
彼を追う前に、しなければならない事がある。
支援だ!
「ミラージュ!」
クリフはカウンターの後ろに戻り、ミラージュの手当てをしようとする。
ミラージュは既に刺さっていた矢を抜き、傷痕を手で押さえていた。
「クリフ…あの人は…?」
「ああ、逃げちまったよ。んな事よりお前の手当てが先だ」
「私は大丈夫ですよ。この矢も急所は外れてましたし…」
胸部に突き刺さった矢だが、心臓や肺には当たっていなかった。致命傷にはなっていない。
しかし元々多くの傷を負っていたミラージュは、どう見ても満身創痍だ。
「待ってろ、今治療に使えそうな物を探して…」
「ですから大丈夫です。それよりクリフは、さっきの方を追って下さい」
「あ?今はんな事言ってる場合じゃねーだろ!」
「聞いて下さい」
捲し立てるクリフに対し、ミラージュはあくまで静かに彼を制する。
「私とクリフが再会した時、恥ずかしながら私達は完全に無防備でした。
先程の方…ルーファスさんでしたか。彼ほどの腕があれば、急所を逃さず、一発で私を殺せる箇所へ矢を打ち込む事は可能だったはずです。
でも…彼はそこへ打ちませんでした。きっと無意識の内に急所を避けてしまったんだと思います。
本人に自覚はあるか分かりませんが…まだ殺人を犯す事に迷っているんだと推測されます」
「だから何だってんだよ?」
「今なら止められる、という事ですよ。彼が完全に殺し合いに乗ってしまう前に、被害が多くなる前に。
今は彼を止める事を最優先にすべきです。だからクリフ、彼を追って下さい」
迷いのない、いつも通りの冷静な口調で言うミラージュ。
だがクリフには疑問が沸いた。
初対面で会話も交わしていない男の事が、どうしてそこまで分かるのかと。
「何で、そこまで分かるんだよ?」
クリフの問いかけに、ミラージュは軽く笑みを浮かべて言った。
「勘、ですよ。貴方の得意な…ね」
その言葉に、クリフもつられて笑う。
「ハハハ、勘か!だったらしゃーねえな!」
言うが早いが、善は急げとばかりにカウンターを飛び越えるクリフ。
支給品を持たないミラージュにバッグを一つ渡し、伝えるべき事を簡潔に話す。
「…俺達の知り合いで無事なのは、フェイトにマリア、ソフィアの嬢ちゃん、それにアルベルの野郎とブレアだ。
禁止エリアは、C−5、E−6、G−3」
それだけ言ってクリフは走り出そうとして…最後に一回だけ振り向いた。
「すぐにルーファスの奴を連れて戻る。それまで無事でいてくれよ」
「クリフこそ、無茶はしないようにお願いしますね」
「おうよ!」
今度こそクリフは走り出す。役場を出て、ルーファスが走り去った方へと向かった。
彼に比べて遅れてしまったが、自分なら全力で走れば追いつける。
手負いのミラージュを置いていくのは心配だが、これまで何度も修羅場を潜り抜けてきた仲間だ。
自分の勘を、いつも彼女は信じてくれた。なら今度は自分が彼女を信じる番だ。
今すべき事は、さっさとルーファスを捕まえる事!
ルーファスの野郎は自分達に攻撃を仕掛け、ミラージュに怪我を負わせた。
それに関しては腹が立つ。
それでも、自分にもルーファスは悪人には見えない。僅かの間行動しただけだがそれだけは確信していた。
ま、一発殴らないと気は済みそうにないが、それで水に流してやろう。
「待ってろよ…ルーファス!ミラージュ!」
役場の方から自分を呼ぶ声が聞こえる。
すぐに分かった。あれはクリフの声だ。
「馬鹿かあいつ…あんなに大声出して、近くに危ない奴がいたらどうするんだ?」
けど、どう考えても俺の方が馬鹿野郎だ。
クリフにも馬鹿だと言われたがその通りだと思う。こんな事、アリーシャが望むはず無いのに。
分かっていても、心の激情を止めることは出来なかった。
恐らくクリフは自分を追ってくるだろう。だが追いつかれるわけにはいかなかった。
あいつに追いつかれたら、自分はアリーシャの蘇生を諦めてしまうかもしれない。そんな気がするから。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
支援
クリフが去った後、役場には静寂が戻った。
ミラージュはクリフから貰った支給品の中から水を取りだし、傷口の周りを洗い流す。
そして一息吐いて、カウンターを越えてロビーへと出た。
見つめる先には、ミラージュと同じ金色の髪をした少女、リドリーが立っている。
「覗き見はあまり良い趣味とは言えませんよ」
「気付いていらしたんですか」
「ええ」
クリフがルーファスと言い争いながら戦っていた最中、ミラージュはカウンターの陰からずっと様子を伺っていた。
役場の入り口付近に身を隠し、同じように自分達の様子を伺っていたリドリーを。
そしてその手にいつでも不意打ちできるよう、銃を握っていた事も分かっていた。
「分かっていながら、何故ここに一人で残ったんですか?」
「私では彼ら二人に追いつけませんから。それに、貴方を放っておく訳にもいきませんからね。
貴方が彼らを追わないよう、足止めしなければなりません」
言って、ミラージュはファイティングポーズを取った。
不意打ちをしようとしていた人物が友好的な筈がない。
ここで無力化させる必要がある。
「成る程。自分を犠牲にして、彼らを行かせた訳ですか」
「そうですね…半分正解で、半分不正解です」
リドリーもまた、自身の持つ武器を抜いて構えた。
「私は、自分を犠牲にするつもりはありませんよ」
その言葉と共にミラージュが仕掛ける。
リドリーはミラージュに向かってグラビティレイザーを放つが当たらない。
決して万全とはいえない状態のミラージュだったが、それでも彼女は身体能力に優れたクラウストロ人。
マリアには遠く及ばないリドリーの射撃を避ける位造作も無かった。
リドリーはすかさずグラビティレイザーをしまい、左手に持っていたイグニートソードを両手に持ち替える。
既に懐へ潜り込まんとするミラージュに向けて一閃。
しかしミラージュはそれをジャンプで避け、そのまま拳を振り下ろしてくる。
「マイトハンマー!」
放たれた炎の衝撃波を、リドリーはバックステップで避けた。
着地と同時に、ミラージュは息吐く間も無くリドリーへと迫ってくる。
牽制の意味も込めてイグニートソードを振るう。剣から発射された炎弾がミラージュの進路を阻んだ。
しばし睨み合って対峙する二人。
支援!
もいっちょっ
(強い…!)
相手はただ者では無いとリドリーは感じる。
スピードもさることながら、銃撃を避け、着地と同時に攻撃へと転じる身体能力。
どう見ても満身創痍の状態なのに、あれだけの動きができるとは。
相手を怪我人だと思わない方が良い。少しでも油断すれば―――殺られる。
一方でミラージュも、リドリーの強さを肌で感じていた。
元よりこちらの状態は最悪。長期戦になればなるほど自分が負ける可能性が高い。
現にこうして立っているだけでも、ルーファスに負わされた傷からは血が流れダメージが刻一刻と蓄積されていく。
一分一秒でも早く決着を付ける必要がある。
沈黙を破り、ミラージュが疾風の如くリドリーへ向かう。
対するリドリーは剣を大きく後ろに構えた。自分の得意とする斧技の構え。
今現在装備してる武器は剣ではあるが、同じ要領でやれば技として機能するはず。
「カーレント・ナックル!」
「裂地斬!」
二人の技が放たれる。
拳と剣が、重なり合った。
「ミラージュ……!?」
ルーファスを追っていたクリフは、突然全身に寒気を感じた。
思わず足を止めて役場の方を振り返る。
第六感というやつだろうか、一瞬だが、とてつもなく嫌な予感がクリフの体を走った。
が、すぐに踵を返して走り出す。
(大丈夫だ。ミラージュは自分なんかよりずっと強い。俺が信じねーでどうすんだ)
勘はよく当たる方だと自負するクリフだったが、今度ばかりは外れる事を祈った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
支援
更に支援。
「…ぐぅ」
戦場と化した役場のロビー。
リドリーは痛む腹部を手で押さえながら、剣を杖代わりに起き上がった。
眼前には、うつ伏せで倒れたまま動かないミラージュ。
勝敗を分けたのは、武器のリーチの差だった。
リドリーが振り下ろしたイグニートソードが、ミラージュの拳がこちらを捕らえるよりも一瞬早く彼女を切り裂いたのだ。
しかしミラージュは止まらなかった。
切り裂かれたにも関わらず、彼女は拳をリドリーの腹部へと突き刺したのだ。
もし剣がミラージュを捕らえていなかったら、リドリーは良くて気絶、当たり所次第では命も危険だったかもしれない。
振り下ろすと同時に発射された炎弾も、ミラージュの技の威力を落とすのをアシストしてくれた。
要するに、運も良かったと言える。
最後に手痛い置き土産を喰らってしまったが、勝ちは勝ちだ。
最も、少し体を休める必要はあるだろうが…。
このまま役場にいれば、先程の男達が戻って来るかもしれない。
とりあえず役場は出ていった方が得策だろう。
重い足取りで、リドリーは役場を後にした。
渾身の力を込めてカーレントナックルを放った瞬間、稲妻に撃たれたような痛みが走った。
すぐに切り裂かれたのだろうと分かった。
剣を振り下ろされる前に決めてやろうと思ったのだが、間に合わなかったようだ。
しかし、拳を止めるわけにはいかない。
ここで痛みに負けて技を中断してしまっては、自分は犬死にしてしまう。
全身の力を全て右拳に手中して、その腕を最後まで振り抜いた。
感触はあった。命中したのだろう。
自分の渾身の力を込めた一発だ、ただで済むとは思えない。
ふと顔を上げると、吹っ飛んでいく相手の姿が確認できた。
これで少なくともすぐにクリフ達を追うことは出来ない筈。足止めには成功したのだ。
その安心感からか、全身から力が一気に抜けて、ミラージュは倒れ伏した。
倒れながらふと思う。
クリフは大丈夫だろうか?
これまでは自分が猪突猛進な彼を上手くコントロールしてきたつもりだが、この後クリフを支えられる人物はいるだろうか?
(…大丈夫、ですね)
そうだ、まだフェイトやマリアがいる。元の世界に戻ればクォークの面々も健在だろう。
彼らなら安心してクリフのパートナーを任せられる。
ルシファーを倒す事に協力できなかったのが心残りではあった。だがクリフがルーファスを止めて、
その結果新たな犠牲者を減らし、ルシファーを打倒する事に繋がっていけば自分も少しは尽力できた事になる。
そうなれば、少しだけでも報われるというものだ。
リドリーが立ち去っていく足音は、既に彼女の耳には届いていなかった。
最後に脳裏に浮かぶのは、これまで生きてきた27年間の人生。
その中には常に彼の姿があった。
いつまで経っても精神年齢が成長しないままで、短気で喧嘩っ早く、女に弱くてどうしようもない。
けれどとても頼りになって、心の底から信頼できる、大切なパートナーの姿が。
【C−3/夜】
【リドリー・ティンバーレイク】[MP残量:90%]
[状態:疲労、腹部に激しい痛み、肋骨にヒビ]
[装備:イグニートソード@SO3]
[道具:グラビティレイザー(エネルギー残量[90/100])@SO3、忍刀菖蒲@TO
P、アーチェのホウキ@TOP
他クレアとスフレの支給品幾つか(0〜4)、荷物一式×3]
[行動方針:ゲームに勝ち残る。自身の生存を最優先]
[思考:役場から離れて体を休める]
[現在位置:鎌石村役場付近]
※ミラージュの荷物(支給品一式、ルーズリーフ、及びそれに記したメモ)は役場内に放置されています
【クリフ・フィッター】[MP残量:70%]
[状態:健康]
[装備:ミスリルガーター@SO3・閃光手榴弾@現実・サイレンスカード×2@SO2]
[道具:ドラゴンオーブ・エターナルソード・メルーファ@SO2・バニッシュボム×5@SO3・フレイの首輪・荷物一式×3]
[行動方針:首輪を解除してルシファーを倒す]
[思考1:ぶん殴ってでもルーファスを止める]
[思考2:引きずってでもルーファスを連れて役場へ戻る]
[思考3:脱出の手段を見つける]
[思考4:仲間を集める(マリア、ソフィア優先)]
[思考5:首輪は調べられたら調べる]
[現在位置:C−3鎌石村内]
【ルーファス】[MP残量:60%]
[状態:右肩の痛み、出血多量による痺れ(幾分和らいだので弓の使用可能)]
[装備:連弓ダブルクロス@VP2・矢×29本]
[道具:荷物一式×2]
[行動方針:最後まで生き残り、アリーシャを蘇生する]
[思考1:クリフから逃げる]
[思考2:他の参加者を見つけ次第殺害する]
[思考3:午前中あった魔物(シン)を警戒]
[現在位置:C−3鎌石村内]
※ルーファスの逃げた方向、及びクリフが追った方向は次の方に任せます
【ミラージュ・コースト 死亡】
【残り35人】
以上です。
さるさん喰らったんですが、むかついたので携帯から投下しました。
支援して下さった皆さん、ありがとうございます。
>>517 GJ!
ルーファスは相変わらず駄目男だなぁ。
そしてSO3勢の死亡率は異常。
>>497 おいおい、レオンにメイド服着させやがって。自重した俺が馬鹿みたいじゃないか。
いいぞ、もっとやれ!
>>517超GJ!
うおおぉぉんミラージュさん(つд`)
対照的な二人を描くと見せかけて、結局同じ境遇にするなんて、いい仕事しますなぁ。
この後も進んだ方角次第で展開も変わってくるし。夢が広がりますね。
リドリーこのまま上手く隠れたらまた空気になるぞw
あーん!ミラ様が死んだ〜!
やっぱり空k……もとい無傷なマーダーじゃ相手が悪かったか……
そしてルーファスは未だヘタレかw
生存者の中で未だにうだうだやってるのって彼くらいだよなぁw
ボーマンはきっちり殺してるし
行き詰まってしまったので申し訳ありませんが予約を破棄させて頂きます
勢いぶった切ってすいません
>>521 そうですか、残念。でもまた期待してます。
では、自分の方も予約を。レナス、レザード、ソフィアで。
何この投下&予約ラッシュ。皆さん期待してますよ!
で、第一放送以前の被害者で止まってるwikiの死亡者の墓を作ろうと思ってるんだけど、VP以外のAAが全然見つからない。
んな訳で知ってるAAとかあったら欲しいんだけど、そういうスレをしたらばに立ててもいいかな?
つか、みんなもっとwiki更新しようぜ。このままだと俺が好き勝手いじっちゃうよ!
>>524wiki更新毎度乙です。
残念ながら手持ちはないですがスレは作っちゃって良いんじゃないでしょうか。
>>521あの二人やれそうなことありすぎてまとまりにくいですよね。
>>522 また変態が大活躍する予感。
>>523 ガブ大分疲弊してるからなぁ…。下手なとこ行くと狩られますよw
二人に期待。
>>524 昔は暇な時いじってたんだが、何故か最近編集すら出来なくなったんだよなぁ……
AAは無きゃ無いで何かを改変してもいいかも
スクランやジョジョもそうだし
首輪探知機の性能ってどんなもん?
ここまでの描写からすると
「表示されるのは生存者のみ、死亡者は非表示」
「個別に参加者の区別は出来ない」
って感じだと思うんだけど、こんなもんでいいのかな。
あと、ずっと電源入れてたりすると電池切れとか起こすのかな?電池かどうかわからんけど
他ロワだとどうなってんの?
>>527 性能はそれでいいんじゃないかな?
電池は別に設定しなくてもいいと思うよ
>>528 他ロワと原作では“誰か”までは分からないうえに死体にも反応した
射程距離が不明確だけど……だいたい『自分を中心に1エリア分の広さ』でOK?
>>530そうなんですか。
とりあえず機能はそんな感じで良いんじゃないんですか?
今それ持ってるのジャックだし不自由を感じたらジャックが気づけなかったってことにできるし。
機能が足りなければプリシス辺りにいじってもらえれば違和感なくある程度の機能拡張できるでしょ。
交流所で定期的に出てるから提案してみる
wikiに書き手紹介追加しないか?
俺携帯だから追加出来ないけど、あれあるだけでかなりモチベーションが上がるらしいし
「俺書かれないかも……」との不安も
>>341のおかげで解決さ
>>532 いいんじゃないですかね。
もし追加されたら、自分以外の人には感想書こうと思います。
それとレザード組完成したので投下します。
「うう…グスッ、ヒック………ロジャーちゃん…ネルさん……」
二回目の放送が終わった後、観音堂ではソフィアの嗚咽が続いていた。
「おい小娘、いつまで泣いているつもりだ」
いつまで経っても泣くのを止めないソフィアに苛立ったのか、レザードは冷たく言い放つ。
「泣き続けたところで自体は好転しない。そんな暇があったら、さっさとその魔法を覚えてもらいたいんだがな」
「レザード!」
「………」
容赦の無いレザードの言葉にレナスが怒鳴る。
一言で意味を察したのか、レザードは不満そうながらもそれ以上文句を言わずに黙った。
「ソフィア、少し休もう。大丈夫。貴方は私が守るわ」
そう言ってレナスはソフィアを連れて隣の部屋へと入っていった。
時折レナスの声とソフィアの嗚咽が聞こえる。何を話しているのかは分からないが、恐らくレナスがソフィアを励ましているのだろう。
やれやれといった感じでレザードは溜息を吐き、自身の作成したテキストを整理した。
ソフィアとかいうあの小娘、想像以上に物覚えが悪い。頭に行く筈の栄養が全部胸に行ってしまったのだろうか。
移送方陣を修得するしない以前に、テキストに書いてある内容をほとんど理解できないようなのだ。
元々修得できる可能性は低いだろうとは予想していたが、これではさらに可能性を低く見積もらなければならない。
まあだからといってレザードの教え方に全く非が無いという訳では無かった。
学生時代から稀代の天才と名高かったレザードにとっては、テキスト内容を把握するなど造作も無い事ではあるが
それ故教える時も「この程度は理解できるだろう」と自分の頭を基準に考えてしまっている。
対してソフィアは紋章術の使い手とはいえ、表面上はただの女子高生である。
レザードが簡単に理解できる内容も、ソフィアにとっては難しすぎた。
(全く、もう少し基礎的な事から教えるしかないか…)
ふとテキストから顔を上げると、レナスが隣の部屋から出てきた。ソフィアはいない。
「レザード、話がある。今後の事についてだ」
「…いいでしょう。丁度、私も話し合おうと思っていたところです」
「まず先程の放送の内容を確認しておきましょう。ルシファーの発表によると死亡者は13人。
ヴォックス、ノートン、メルティーナ、ロジャー・S・ハクスリー、ビウィグ、エイミ、シン、夢留、ネル・ゼルファー、
アリーシャ、ジェストーナ、セリーヌ・ジュレス、オペラ・ベクトラ、以上です。
禁止エリアは19時にH-07、21時にI-07、23時にD-04。間違いありませんね?」
「…ああ。しかし人数が減ったにも関わらず、午前中と同数の死者が出るとはな…」
「そうですね。正直な話、私もこれだけ死者が多いとは思いませんでした」
自分自身も二人殺したとはいえ、レザードもここまで死者が多いというのは予想外だった。
このままではそう遠くない内に参加者の数は半数を切ってしまうだろう。
自分とレナス以外はどうでもいいと考えているレザードだが、殺し合いのペースは落としておきたかった。
参加者が減り続ければ主催への対抗手段を考える時間が少なくなってしまうし、ルシファーと戦う事になった場合の戦力も減ってしまう。
現にソフィアと共にルシファーと戦ったという者の名前も数名呼ばれている。
それに、レザードにとってさらに意外だったのは魔術学園の同門メルティーナの死だった。
フレイやブラムス程の実力者では無いが、それでもそこらの冒険者よりはるかに強い。
何より敵対する人物には容赦はしないだろうし、危ない橋は渡らず、自身の安全を最優先するような性格だ。
こうした状況でのサイバイバリティはかなり高いと思われるのだが、そんな彼女も既に脱落している。
(一応戦力としては期待していたんだがな)
レナスのエインフェリアも残り半分以下である。戦力面では、やや不利になりつつあると認めざるを得ない。
(メルティーナ…エイミ…夢瑠…守れなくてすまない。これではヴァルキリーの名が泣くな…)
自分の為に戦ってくれたエインフェリア達がまた消えた事に、レナスは深い悲しみを抱いた。
エイミは目の前にいるこの男、レザードによって殺されたそうだが、レザードの言う事が真実なら彼を責める事は出来ない。
…いや、真実なのだ。実際に自分は精神集中によって、断片的にだがその現場を目撃している。
(ルシオ…大丈夫だろうか…?)
放送でルシオの名前は呼ばれていない。4割以上の参加者が死亡したこの半日間を、彼もまた乗り越えられたようだ。
その事だけはレナスにとって朗報だったと言える。
しかし安心は出来ない。自分にもルシオにも、いつ危険がやって来るかは分からないのだ。
「さて、これからの行動予定なんですが…これは少々変更せざるを得ません」
レザードの言葉にレナスも頷く。
「ああ…。D-04が禁止エリアに指定されている。これでは鎌石村へ行くのに、かなりの遠回りをしなければならない」
そう。今回の禁止エリアには、鎌石村へ行くのに通る予定だったD-04が指定されてしまったのだ。
既にC-05も禁止エリアとなっている為、鎌石村へ行くには禁止エリアを大きく回り込まなければならない。
「そうですね。既に出発しているブラムスはともかく、我々は今すぐ出発しても、23時までにD-04を突破するのは難しいでしょう」
少なくとも、「第三放送までに鎌石村へ行く」という目的は断念するしかない。
連絡手段がないためブラムスにはその事を伝えられないのが不安だが、彼は別段心配するような性格でもないだろう。
「ではどうする?鎌石村は諦めるのか?」
地図を見ると、現時点では鎌石村に行くよりも平瀬村に行く方が距離的には近い。
参加者が集まるという点では、どちらの村でも大差は無いと思われる。目的地を変更するというのも一つの手だった。
だがレザードは変更するつもりは無い。
「いえ、このまま鎌石村を目指しましょう。既にブラムスが向かっていますし、それを考えれば鎌石村の方が安全ですからね」
ここで目的地を変えてしまっては、ブラムスを先に行かせた意味が無い。
何より貴重な戦力であるブラムスとこのまま別れるのはあまりに勿体なかった。
「では予定を少し遅らせて、『明日の朝までに鎌石村へ到着する』これでいいでしょう」
結局明日の朝、つまり12時間後の第四放送までに鎌石村へ行くという事で方針は決まった。
(12時間後か…)
26人もの死者が出たこの半日間。果たしてもう半日、自分達が生きられるだろうか?
(…いかんいかん、弱気になるな)
頭に浮かんだ弱い考えをレナスは否定する。戦乙女である自分が弱気では、エインフェリア達だってついて来ない。
消えたエインフェリア達の無念を晴らすためにも絶対にルシファーを倒してみせる。そう決意を新たにした。
すると、レザードが唐突に立ち上がる。
「どこに行く?」
「いえ、ちょっと散歩にでもと思いまして。ご一緒しますか?」
こんなのと散歩とは冗談では無い。ほざけ、と一言だけ返しておいた。
レザードは眼鏡を上げる動作をして肩を竦め、続ける。
「ではヴァルキュリア、もう一本剣をお持ちでしたよね?」
「ああ。それがどうした?」
「護身用に少し貸していただけないでしょうか?戻ったら速やかに返却致しますので」
「しかしお前は剣など使えないだろう」
「別に戦う訳ではありませんよ。ただ、『こちらは剣を持っている』という脅しには使えるでしょう?」
「……」
レナスはしばし考える。この剣はできればルシオに、そうで無くても信頼できる人間への賄賂として使おうと思っていた物だ。
レザードに預けるのは少々不安や不満がある。
だが少しの間だけだし、万が一レザードが剣で襲って来ても返り討ちにすれば良いと考えて貸す事にした。
「すぐに返せよ」
「勿論。ありがとうございます」
レザードはその剣を手に、観音堂から出ていった。
観音堂を出たレザードは、まずエイミとシンの死体が埋葬されている場所に向かった。
ソフィアに魔法を教えている最中にレナスが埋葬しておいたらしい。埋葬といっても、死体の上から土を被せただけの簡素なものだが。
その為土をどけるだけで死体が出てくるので、レザード一人でも作業は難なく進んだ。
二つの死体を掘り起こし、その内シンの首を剣で切断して首輪を外す。
シンに再び土を被せた後、次はエイミの死体を引き吊って西へと少し歩く。
「…この辺りだな」
目的の場所まで来るとレザードは足を止めた。
そこはC-5とC-4の境界付近。あと数歩西へ進めば、禁止エリアの区域内に入る。
シンから外した首輪をC-5へと投げ入れる。―――反応は無い。
その事を確認すると槍を使ってその首輪を回収する。
次に、エイミの体を上半身のみC-5へと入れる。エイミの首に付けられた首輪からも特に反応は無い。
腕以外の体全体を区域内に入れるがやはり異常は無かった。
(ふむ…死体に付けられた、もしくは外した首輪の爆破機能は発動しない、と…)
さて、後は生きたまま禁止エリアに入るとどうなるか、という事を確かめたいのだが…。
こればかりは自分で行うのはあまりに危険だ。
禁止エリアに入った瞬間首輪が爆破、という事は恐らく無いとは思うが。
本当ならソフィア辺りを禁止エリアに入れて検証したいのだが、そんな事をレナスが許すとは思えない。
「まあ、後で適当な連中を捕まえて試せばいいでしょう」
そう呟くと、レザードは禁止エリアに入らないようにエイミの腕を引っ張って死体を回収する
そのまま彼女が埋葬してあった場所まで戻り、再び土を被せて埋葬しようとする。
レザード本人にすれば埋葬なぞ面倒なだけだが、後でレナスに見つかった場合何を言われるか分からない。
だが、埋葬し直す前に。
「…サンプルが多いに越した事は無いな」
レザードはシンと同じく、エイミの首を切って彼女の首輪を回収した。
「遅くなりましたね。ありがとうございました」
観音堂に戻り、レザードは魔剣グラムをレナスに返却した。
無論、エイミ達の首輪を切った事がばれないように念入りに血を拭いた後。
レナスは疑い深げに剣とレザードを交互に見つめるが、やがてそれをデイパックにしまった。
彼女の隣では、ソフィアがレザードのテキストを一生懸命読んでいる。
(ふん。一応意欲はあるようだな…)
もう少しソフィアへの指導を続けるか、とレザードは考えた。
鎌石村への出発はそれからでも遅くはないだろう。
【C-06/夜】
【レザード・ヴァレス】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:天使の唇@VP、大いなる経典@VP2]
[道具:神槍パラダイム@RS、アップルグミ×2@TOP、エルブンボウ@TOP、レナス人形・フルカラー@VP2、荷物一式×2]
[行動方針:愛しのヴァルキュリアと共に生き残る]
[思考1:愛しのヴァルキュリアと、二人で一緒に生還できる方法を考える]
[思考2:その一端として、非常に不本意だが、ソフィアに移送方陣を修得させてやる]
[思考3:その他の奴はどうなろうが知ったこっちゃない]
[思考4:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流]
[思考5:ブレアを警戒。ブレアともしまた会ったら主催や殺し合いについての情報を聞き出す]
[備考:ブレアがマーダーだとは気付いていますが、ジョーカーだとまでは気付いていません]
[現在地:観音堂]
【ソフィア・エスティード】[MP残量:100%]
[状態:仲間の死亡によるショックで、精神的にやや疲労]
[装備:クラップロッド@SO2、フェアリィリング@SO2、アクアリング@SO3]
[道具:レザードのメモ、荷物一式]
[行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める]
[思考1:フェイトに会いたい]
[思考2:レザードの指示に従い魔法(移送方陣)を修得する]
[思考3:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流]
[思考4:自分の知り合いを探す]
[思考5:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい]
[現在地:観音堂]
【レナス・ヴァルキュリア】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:魔剣グラム@RS]
[道具:ダブった魔剣グラム@VP、合成素材×2(ダーククリスタル、スプラッシュスター)@SO3、荷物一式]
[行動方針:大切な人達と自分の世界に還るために行動する]
[思考1:ルシオの保護]
[思考2:ソフィア、レザードと共に行動(但しレザードは警戒)]
[思考3:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流]
[思考4:協力してくれる人物を探す]
[思考5:できる限り殺し合いは避ける。ただ相手がゲームに乗っているようなら殺す]
[現在地:観音堂]
※レザードのメモには移送方陣についての詳細が書かれていますが、これを読めば移送方陣が修得出来るという訳ではありません。
>>533乙っす。
やっぱブラムス合流できそうにないなぁ…。
変体さんはちゃくちゃくと脱出準備すすめてるし、北側の脱出考察は順調ですな。
まぁ、変体さんの事だからすんなり行く訳ないんだが。
全生存者入場!!
竜殺しは生きていた!! 更なる研鑚を積み英雄の息子が甦った!!!
よっしゃ!! ジャック・ラッセルだァ――――!!!
回復紋章術はすでに私が完成している!!
ネーデの生き残りレナ・ランフォードだァ――――!!!
組み付きしだい焼きまくってやる!!
十賢者代表 ミカエルだァッ!!!
死亡フラグなら私の拡声器がものを言う!!!
ド根性バーニィとスーパーボトル 拾い物クイーン アーチェ・クライン!!!
真の萌えを知らしめたい!! 猫耳ショタメイド服 レオン・D・S・ゲーステだァ!!!
本編はパーティーだけだがロワなら全参加者私の部下だ!!
クォークの女王 マリア・トレイターだ!!!
暇潰し対策は完璧だ!! 引き籠もり ガブリエル!!!!
全女キャラのベスト・プロポーションは私の中にある!!
ロリ巨乳の神様が来たッ ソフィア・エスティード!!!
暗い過去なら絶対に敗けん!!
クールな空破斬見せたる 最強剣士 ディアス・フラックだ!!!
バーリ・トゥード(対主催でもマーダーでもなんでもあり)ならこいつが怖い!!
神族のピュア・ステルス ロキだ!!!
クラウストロ星から炎の男が上陸だ!! オヤジ番長 クリフ・フィッター!!!
クロードが攻撃したからマーダー(早とちり)だと思ったのだ!!
記者の魂を見せてやる!!チサト・マディソン!!!
冥土の土産にメイド服とはよく言ったもの!!
達人のヘソ出しが今 実戦でバクハツする!! 触手プリン アルベル・ノックスだ―――!!!
鉄パイプこそが宇宙最強の代名詞だ!!
まさかこの男がきてくれるとはッッ フェイト・ラインゴッド!!!
生き残りたいから召喚したッ スタンス一切不明!!!!
魔術研究所のマッハ(音速)中年 クラース・F・レスターだ!!!
僕たちは単独最強ではない一人と二匹で最強なのだ!!
御存知反則マーダー アシュトン・アンカース!!!
誤解の本場は今やエネミーサーチにある!! 僕の話を聞く奴はいないのか!!
クロード・C・ケニーだ!!!
さむぅぅぅぅぅいッ説明不要!! ダオスをだおす!!! ルシファーをゆルシファーしない!!!
クレス・アルベインだ!!!
無人くんは実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦機械技術!!
リンガの町からプリシス・F・ノイマンの登場だ!!!
最強はオレのもの 邪魔するやつは思いきり殴り思いきり蹴るだけ!!
ブラッドオーク統一王者 ガルヴァドス!!
妖精を救いにマーダーになったッ!!
ラジアータ全ツンデレチャンプ リドリー・ティンバーレイク!!!
死亡フラグに更なる磨きをかけ ”悲劇のヒロイン”ルシオが帰ってきたァ!!!
今の自分にハズレアイテムは無いッッ!! 三つ目の考古学者 エルネスト・レヴィード!!!
戦乙女の実力が今ベールを脱ぐ!! 神界から レナス・ヴァルキュリアだ!!!
ヴァルキュリアの前でなら私はいつでも変態だ!!
燃えるストーカー レザード・ヴァレス 対主催で登場だ!!!
薬剤師の仕事はどーしたッ 迷う心 未だ消えずッ!!
治すも殺すも思いのまま!! ボーマン・ジーンだ!!!
特に理由はないッ 忍が非情なのは当たりまえ!!
他の仲間にはないしょだ!!! 次期頭領!
藤林すずがきてくれた―――!!!
覗きで磨いた実戦スケベ!!
元祖親友キャラのシスター・コンプレックス チェスター・バークライトだ!!!
シスコンだったらこの人を外せない!! 超A級ポニーテール 洵だ!!!
超一流傭兵の超一流の大剣技だ!! 生で拝んでオドロキやがれッ
アルトリアの死神!! アリューゼ!!!
ジョーカーはこの女が完成させた!!
ルシファーの切り札!! IMITATIVEブレアだ!!!
不死の王者が帰ってきたッ
どこへ行っていたンだッ 最狂変態ッッ
俺達は君を待っていたッッッヅラムスの登場だ――――――――ッ
加えてマーダー不足に備え超豪華なサラマンダーを御用意致しました!
猛将 ガウェイン・ロートシルト!!
格闘僧侶 ミランダ!!
ヘタレのハーフエルフ!ルーファス!
……ッッ どーやらもう二名は不殺のまま殺されている様ですが、確認でき次第ッ皆様にご紹介致しますッッ
>>533 新作乙!
栄養が胸に思わず笑ってしまったw
先行しているブラムスと無事に合流できればいいのだが……。
>>539-541 こうして見てみると、
元祖変態、スケベだいまおう、シスコン、何かに目覚め始めたヘソ出し戦士、浣腸ヅラキングと、
案外変態っぽいキャラが多いのに吹いたw
すみません。一週間経過したのでガブリエルの予約を破棄します。
忘年会シーズンに予約するんじゃなかったorz
それでは代わりにこちらはヅラムスを予約します。
今日から一週間経過して、完成のメドが立たなければ予約を破棄しに来ます。
>>539-541 一言だけ言わせてください。バブルローション吹いたwww
>>539-541 全キャラがプラカード持った女の後ろを行進で入場する様が目に浮かぶようだw
保守代わりにくだらないことを聞いちゃおう
ガンツの服装ってもしかしてクロードのコスプレだったのか?
え?何で?
死者スレじゃね?
おかげでラジアータ未プレイな俺の中でガンツのイメージはピザクロードだ
いや、あれノエルが馬鹿なだけだろw
いつもは人少ないのに今日はやたらレスつくの早いですね^^
('A`)
ばっかお前、ロワほっといて浮かれられるわけねーだろ!
('A`)
メリークレスマス
>>553 分かったからいい加減さっさと目を覚ませ
このままだとお前爆死だぞ
それはさすがにこマリアァ(困るなぁ)
時空剣士自重!
年越し準備+バイト+リメイクSO1のおかげで、執筆時間が……
数日前にラジアータの人間編を終わらせたんだが、ガルヴァドスが一言も喋らずに退場……妖精編もやるべきなのか?
ガルが仲間になるのは妖精編だからな…
嘘だと言ってよバーニィorz
wikiに各キャラの仲間の仕方でも載せるか?
SO2なんか最低二週必要だし……
ぶっちゃけた話、妖精編やってもそんな濃い描写あるわけじゃないしなあ
ラジアータ組ほとんど人間編だしやらんでもいいかも…
ガウェインについては人間編より詳しくなってるけど
そうなのか……
ある程度オリキャラ化もやむなし、か?
今年の投下はもう無いのかなぁ……
結構難しいパートばかりだからなぁ、今
ネタ浮かんでも自然な流れでねじ込めなかったりするから困るが、厄介なパートだらけになるほど本編は進んだんだなぁと感慨深くもなる
集団の混戦は中盤の華よ!
>>562 一週間たったからなぁ……
報告にこれなかったぐらいだからあまり期待しない方がいいかと
「誰かバトン取ってくんねーかなー」との無謀な欲を込めてAAA唯一の書き手紹介に安価しとくぜ
>>341
皆さん書き手ロワ出たりして忙しいんですね^^
いいえ、スフィアです
新年だな
新年だね。
今年の目標、一ヶ月に最低一本書く。
取り敢えずリメSO1とSO3を早く終わらせないとな。
俺は早くPS2買わないと(ry
PS2持ってないだなんて珍しいですな。
でも、ゲームに依存とかなさそうでいいな。
>>569 兄弟や友達とやる64の中毒性をナメちゃいけないよ
PS2はPS3出たら中古で馬鹿みたいに値下がりするかと思い待ち続けてたのに3が不振だからか2があんまり出回ってねぇ
PS2はど〜しても某ロボゲーが欲しかったから去年購入。現在SO3DCプレイ中断中。
PSPは、
「終わったらこのソフト只でやるから、一ヶ月程貸してくれ」
でSO1プレイ中。PSP高いよPSP。
俺は今TOPプレイ中。終わったらラジアータ始めます
大変すいません。ヅラムスの予約を取った作者です。
年末年始の忙しさにかまけて遅筆になったことを深くお詫びしたいと思います。
遅くなりましたが、投下いきます。
太陽が、西の地平線に触れた。
それと時を同じくして、始まったあの放送。
次々と読み上げられてゆく、死者の数。
そしてこれより立ち入りを禁止される領域の発表。
最後に、優勝者に図られる便宜。
それは、聞く者が聞けばまさに死神の鎌の峰で、首筋を撫で上げられるかのごとき恐怖と悲哀をもたらすだろう。
思わず耳を塞ぎたくなる。けれども、聞かずにいることはまず出来ない。
その地獄のような時間は、ちょうど太陽が完全に地平線に没する瞬間まで続いた。
後に残るは、ただ静寂のみ。
そう、それは陳腐な表現ながら、葬儀を終えた後の墓場に残されるかのような――。
誰もがそう思うだろう。
雑木林の茂みの中に安置された、白い棺桶を見たならば。
木漏れ日の切り取る夕焼けの残照も、やがて西の空に引きずられ消え行く中。
その棺桶は、震え出した。
おそらくは葬儀屋にある既製品のものでも、一番大きなサイズであろうと思われる、大振りなその棺桶が。
気の弱い人間や怪談の類を苦手とする人間ならば、それだけで恐怖のあまり悲鳴を上げかねない、唐突な鳴動。
だが、それだけでは終わらなかった。
棺桶の蓋が、実際に開けられたのだ。
それも外側からではなく、内側から。
がたん、と木製の器具が打ち合わされる音が響く。
持ち上げられた棺桶の蓋は、やがて引きずられるようにして横にずらされた。
棺桶の中に、2つの赤い光が現れる。
それに付随して、まばゆい閃光すらも棺桶から漏れ出していた。
あたりは夕焼けの橙も消え、ほとんど暗黒に近い藍色が満ちている。
その生まれたての夜の帳の中に、その2つの赤い光とまばゆい閃光は、残光の尾を引いて浮かび上がる。
棺桶の蓋は、すでに全開となっていた。
赤い眼光は、しばらくの間あらぬ方へと向けられてはいるもの、やがてその方角を向く。
彼がこれから向かうべき、西の方へと。
ノーライフキングの異名をいただく暗黒の王、ブラムスこそが棺桶の中にいた者の正体であった。
彼はごきりごきりと首の骨を鳴らし、やにわに拳を握る。
全力で、それを叩き付けた。何もない虚空へ。
一刹那の間を置いて、彼の眼前およそ十歩弱先にあった一本の樹木が、幹の半ばから粉微塵に爆砕される。
彼が拳から放った、血のようにつややかな緋色の拳風のみで。
宙に舞った木屑の全てが、地面に舞い落ちるまでの間、彼はたたずむ。
そして、満足そうに1つ頷き、心の中呟く。
(……よし、調子は上々。やはり、夜はいい)
ブラムスは格闘の構えを解き、再び棒立ちの姿勢となる。
ここから先、半日の間はこの闇が己の味方となる。
すなわち夜。すなわち不死者の徘徊する魔の時間。
更に、先ほどそのあたりで見つけた適当な糸を通し、ペンダントとして彼の着衣の下に揺れる指輪の力も大きい。
ダイヤモンドの嵌まったその指輪は、ブラムスの筋力を、闘気を、魔力を、全ての力を高ぶらせる。
俗言で表現するなら、「最高にハイ」ってやつである。
正直な感想を言えば、今やブラムスはその場で小躍りしたいほどの上機嫌で満たされていた。
それを阻んでいたのは、ほかならぬ彼の不死者の王としての矜持。
そのような浮付いた行動は、例え誰も見ておらぬにせよ王にふさわしくないと、ブラムスは己に言い聞かせ自制する。
ブラムスはそして、傍らにあった棺桶を――先ほど出立した観音堂で手に入れた、即席のベッドに手をかける。
歪められた生を生きる不死者……その中でも高位のヴァンパイアなどにとっては、
棺桶は遺体の安置先ではなく、日中の太陽の光を避けるためのベッドに過ぎないのだ。
そんなブラムスは、几帳面にも開けた蓋をもう一度閉め直すことを忘れずに棺桶を持ち上げた。
そしてそのままこの島に招かれた際渡された、あの皮袋に棺桶を突っ込む。
まるで吸い込まれるようにして、ブラムスが入れるほどに大きな棺桶は皮袋の中に消えていった。
念のため、棺桶を皮袋に収納した直後、棺桶がちゃんと中に入っていることを確かめるべく、皮袋をまさぐる。
そして自身の手が棺桶の角に触れて事を確かめて、ブラムスは満足げに首を縦に振る。
ブラムスは続けて、皮袋の中に入った別の物を求める。
やがて彼は、陶器製と思しき器の縁に、手をかけた。
(さて、これ以降どうしたものであるかだが……)
ブラムスは、コルクのされた陶器から蓋を抜きつつ、沈思黙考に取り掛かる。
中には、喧嘩や戦に慣れた人間なら、まず同じく嗅ぎ慣れているあの臭いが一気に立ち込めた。
(ご丁寧にも、私の元に配られた飲み物は、『水』ではなく『血』とはな)
しかも、陶器には保存のルーン……内容物の腐敗を防ぐ魔術文字まで刻まれているという、気の利きよう。
ブラムスはそれをいぶかしむも、別に不満の声を漏らすことはなかった。
一口含み、聖水やその類の、不死者に対する「毒」が含まれていないことを確認し、彼は残りの血を喉に流し込んだ。
(ひとまず、目下のところ対処せねばならぬ問題は、このまま西へ強行軍を行うか否かだが――)
観音堂を出発してよりしばらく、やや駆け足気味にここまでを走破して、
距離を稼いだ後、棺桶の中で日光を避けて休憩しつつ放送を待っていた彼ではあるが、その放送の中身が問題であった。
倭国の土着信仰を司る神殿「寺院」によく似た観音堂で、密かに入手した倭国式棺桶の寝心地は案外良かったが、
その心地良さを払拭してしまうほどの大問題である。
このまま当初の予定通り鎌石村への行軍を続行すれば、この西のD−04は午後11時に禁止エリアとなり、
レナス達と分断され合流の難度は上昇してしまう。
そうなればレザードの立てた計画である、鎌石村の偵察も無意味なものと化す可能性が極めて大だが……。
(――このまま行軍を続行すべきであろう。
鎌石村で合流すると計画した以上、今更予定を変えてしまっては、本当にレザードらと別れる羽目になりかねん)
近くの木の幹に寄りかかりながら、その血を澱まで飲み干したブラムス。彼の逡巡は、実に短かった。
頭では今後の計画を練りつつも、瞳は夜空の星を眺める。
ミッドガルドでは決して見ることの出来ない異常な星の配置であると、ブラムスは頭の片隅のみで判断できた。
(それにしても、まさかアリーシャまでがこの島の中に倒れようとはな)
血の入っていた陶器を再び皮袋にしまい、血の後味を舌に感じながら、ブラムスは僅かに嘆息を漏らす。
(これは思った以上に、今後の戦いは過酷なものとなろう。
更にルシファーなる男が最後に語った『ご褒美』も、実に危うい要素と言わねばなるまい)
ブラムスとて、伊達に幾星霜もの年月を不死者として送ってきたわけではない。
ルシファーが本当に『ご褒美』とやらを用意しているのであれ、単に虚言を弄しただけであれ、
あの一言がじわじわと他の参加者を蝕むであろう猛毒になることは、容易に想定できる。
この疑心暗鬼の渦巻く沖木島の中で、限界寸前の狂気を必死で押さえ込む者が、
『ご褒美』という言葉をきっかけに、狂気に屈する危険も十分にあろう。
更に、最初から戦いに狂っているような手合いもまた、輪をかけて容赦のない暴虐ぶりを示すことも十分に想定できる。
(おそらくは、『ご褒美』とやらはこの殺し合いを煽るために、やつが弄した虚言であろう。
そして、その虚言で正気を失うような手合いも、いない方がおかしかろうな。
……のんびりと考え事をしている暇は、あまりないやも知れん)
ミッドガルドのものとは異なる、見たこともない模様と色の月が、ブラムスの瞳に眩しい。
おそらく彼が頭部に装備した、老年男性のカツラほどではあるまいが。
ヅラム……もといブラムスは、強いて言うなら「一本残し電球ハゲ」とでも言うべき奇怪な髪形に手をやり、
その頭頂部に存在するファイナル・ヘアーをさもいとおしげに撫でた。
過剰なまでに減殺されたカツラ表面の摩擦係数ゆえに、彼の指とカツラの頭皮部分が触れ合いツルンツルンと鳴る。
(……やはりこれ以降、観音堂から失敬してきた『あれ』をまとって行動するのが一番良かろう)
肉体が腐敗したり変質したりしているような手合いの多い不死者だが、けれどもブラムスの脳は腐ってはいない。
先ほど観音堂で、この島で初対面ながらまともに話をした相手である少女、ソフィア・エスティードの怯えぶり……
あれが、正常な人間が自身と対面した時の反応なのだと、ブラムスは改めて実感する。
彼女は最初己の姿を見たとき激しい恐慌状態に陥り、あまつさえ混乱のあまり「変態」などと口を極めて叫んだのだ。
(確かに私のこの異様な外見は、敵に恐怖をもたらし混乱という隙を生むことも出来よう。
だが、常にそのようなやり方で他者と接していては、やがて不必要な敵を生むことにもなりかねん)
考えるブラムスは、皮袋から一着の墨色の衣を取り出した。
長きにわたる抗争の末、不死者の王の地位を得たブラムスは、それなりに他者との駆け引きの心得もある。
このような万全の補給線を見込むことの出来ない戦いでは、言うまでもなく無駄な消耗は厳禁。
戦いを避けられぬのであっても、不意打ちや罠などで消耗を最小限に抑え、一撃のもとに敵を葬るのが理想形である。
たとえ夜という、不死者にとっては天の機と地の利を同時に得られる戦場にあっても、である。
だからこそ、可能な限り味方……せめて取り引きの通じうる相手は、いきなり敵対するのは愚行以外の何物でもない。
確かにブラムスとて戦いの高揚と血の滾りを求めはするが、それら二者への渇望の奴隷ではないのだ。
(もう少しまともな補給線があれば、この不死者の王たる私が人間ごときを相手に、取り入る必要もないのだがな)
この墨色の衣は、確か倭国の司祭の着用するローブであったはず。
脳裏に叩き込んであった、倭国の文化史の書物を胸中で開き、その着用方法を参照する。
元々がゆったりしている作りなので、筋骨隆々たるブラムスにもそこまで着用は苦にならない。
ブラムスがこのような行為に出た理由は、ただそれ一点。
(だが誰彼構わず喧嘩を売るわけには行かぬ以上、私は可能な限りこの肉体を直接晒すような真似は避けるべきだろう)
すなわち、己の不死者の肉体の隠蔽。
とりあえず素肌を隠しさえすれば、遠目には十分人間として通じるはずである。
近くに寄れば肉体の放つ死臭で異常を察知されるかも分からないが、それまでに事情を説明する時間は稼げる。
事前に己がゾンビやその類の仲間――ブラムスにしてみれば甚だ不本意な説明法だが――であることを話せば、
いきなり相手が剣を向けたりするようなこともあるまい。
それを期待しての、この「ローブ」による「変装」である。
(更に、この格好はいざという時、敵の恐怖を倍増させる役にも立とう)
考えるブラムスは、「ローブ」に続けてもう1つの装備を取り出した。
同じく観音堂にあった、作りかけの偶像の頭部を流用して作った「仮面」である。
無論、本来穴など開いていなかった偶像の眼球部は、ブラムスの瘴気を帯びた指を差し込み穴を穿ってある。
それとそのあたりにあった紐を上手い事組み合わせて出来たのが、これ。
倭国風の神像から作り出された、木製の「仮面」である。
(もし私を迂闊にも人間と思い込み、近付いてきたところでこの扮装を解けばどうなるであろうな?)
「仮面」を顔面につけ、そして後頭部で紐を結わえ付けて固定するブラムスの脳裏では、その光景が鮮やかに浮かぶ。
この扮装をした己に、にこやかな態度を装って迫ってくる殺人鬼。
相手はたかが人間だろうと高をくくろうものなら、その次の瞬間肝を潰すはずである。
この「ローブ」と「仮面」の下から出てきたものは、ゾンビのような姿をした巨躯の男。
恐怖は特に、不意を打って相手にもたらした際最大の効果を発揮するが、これほどまでに強烈な不意打ちもなかろう。
恐怖で錯乱した相手は冷静な判断力を失い、例え戦わざるを得ずともくみしやすい事この上あるまい。
本音を言えば、相手を脅かして楽しむような、下級の不死者のような真似は己のプライドが許しがたい。
だが、この状況ではそのような姑息な手段もまた止むを得ない事を、理解できないほどブラムスは愚かではない。
(さて、そろそろ行くとしようか)
変装を終えたブラムスは、改めて西にその目を向けた。
「仮面」の両眼部から漏れる、赤い光が未だ更けざる夜に灯る。
ブラムスはその中に凶暴なゆらめきを僅かに宿らせ、刹那。
まとった「ローブ」をはためかせながら、一陣の漆黒の夜風と化す。
雑木林の枝々を、さながら忍びの者のように縫いつつ跳躍するブラムスは、
しかしその「ローブ」の裾を木々の枝に引っ掛けるような間抜けな行為をやらかす兆候は一切なかった。
むしろ迫り来る存在のあまりの偉大さに、木々の方が畏怖を覚え、その枝を退かせているかのようにすら思える。
身を切る夜風。
その心地良さに、ブラムスの不死者の本能が僅かに鎌首をもたげたようだ。
誰も見ていないという安心感が、ほんのしばらくの間だけ己の矜持に打ち勝つ。
ブラムスはやがて、墨色の布地に包まれたその両腕を、地面と水平に広げた。
夜風が更に袖を叩き、はためかせる。それが彼の内なる本能に充足感をもたらす。
このほんのりと湿った、冷たい風。
太陽に比べればいかほどのものとも思えぬ、はかない月光と星明り。
光の全く差さぬ闇夜も良いが、この程度に微かに明るいのもまた乙なもの。
ブラムスはそんな雅やかな趣を噛み締めつつ、西を目指す。
レザードらと約束した、鎌石村に入村するために。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ソフィアの怯える姿を見て、考えるところがあったのだろうか。
ヅラム……じゃなくってブラムスは、確かにソフィアの怯えを見てその原因が己にあると察したまでは正解だった。
だがこれではいくら何でも、小学生が良く出す「フルーツポンチを逆さまにするとどうなる?」というなぞなぞに、
真顔で「チンポツールフ」という答えを出す事に匹敵するほどに、糞真面目さも度を越してその斜め上をカッ飛んでいる。
ソフィアのように、友好的になりうる参加者を怯えさせないためにこんな真似をやるのは、
ぶっちゃけた話火を消すために水ではなく、ガソリンをぶっかけて消火を試みるも同然の行い。
今、鎌石村に向かう、一人の不死者が居る。
彼は、頭に老年男性の禿げ鬘を着け、片手に握り締めるは浣腸。
それまでなら、まだいい。譲歩も何とかできよう……そういうことにしておこう。
だが読者諸氏はもう少し想像力を働かせて欲しい。
そんな変質者が身にまとっているのは、よりにもよって寺の住職がまとうような袈裟。
おまけにその顔面につけているのは、仮面の固い表情がそこはかとない恐怖を演出するアルカイックスマイルを
彫り込まれた仏像の仮面。
仏像をぶっ壊してそんな仮面を作るなんて、それだけで罰当たりにも程がある。
だがそれだけではない。
そんな20世紀後半から地球の日曜の朝にやっている、
原色のスーツをまとった5人の戦士の物語で、彼らが悪役として対峙しそうな、
坊さんのコスプレをした「大仏仮面」とでも評すべきガタイのいい男が、木々の間を忍者のように飛び移りながら、
なんだか少し満足げな様子で「ブーーーーーーーーン!!!!」のポーズをとって高速移動をカマしているのだ。
そりゃあもう、ビビンバだかフジヤマゲイシャだか知らないが、
とにかくその手の地球のアミューズメント施設の筆頭人気アトラクションである絶叫マシンに乗って、
終盤クライマックスの下り坂で撮ったライドフォトのベストショットにも勝るとも劣らぬくらいの勢いで、
頬の肉がビロンビロンしそうなほどの超高速である。
夜は墓場で運動会をおっ始めるのが、一説によると不死者の正しいあり方であるようだが、
こんな格好の不死者が1人かけっこで墓場の爆走族状態になっているのを見たら、
多分筆者なら一生もののトラウマになること間違いなしである。
まあつまりなんだ、簡単に言うとこういうことである。
おめでとう! ヅラムス は へんたいかめんヅラムス に しんかした!!
【ブラムス】[MP残量:100%]
[状態:変態仮面ヅラムスに進化。本人はこの上なく真剣に扮装を敢行中]
[装備:波平のヅラ@現実世界、トライエンプレム@SO、袈裟@沖木島、仏像の仮面@沖木島]
[道具:バブルローション入りイチジク浣腸@現実世界+SO2、ダイヤモンド@TOP、ソフィアのメモ、荷物一式×
2、和式の棺桶@沖木島]
[行動方針:情報収集(夜間は積極的に行動)]
[思考1:鎌石村に向かい、他の参加者と情報交換しながらレナス達の到着を待つ]
[思考2:敵対的な参加者は容赦なく殺す]
[思考3:直射日光下での戦闘は出来れば避ける]
[思考4:フレイを倒した者と戦ってみたい(夜間限定)]
[現在地:D-05某所・雑木林→鎌石村方面]
以上です。
それでは、感想や意見などをお待ちしております。
>>581アンタは天才か!?
十分ネタキャラとして完成していたヅラムスを更に昇華させるなんて…凡人たる俺にはできない仕事だぜ。
しかも地の文に所々ちりばめた小ネタの数々。
こんな時間に携帯眺めながらニヤニヤしちまったじゃないか。
GJだけでは語り尽くせんだろうけど言わせてくれGJと。
新作乙!
ま た ヅ ラ ム ス か !
VPの人達は本当に愉快ですね^^
新作乙!
そしてヅラムス改め変態仮面自重www
レナス組と合流できたら、変態ツートップで恐ろしい事になるな
今気付いたけどVPの生き残りがほとんど男な件
これは華が無い…
んな事言ったらSO2勢もオペラ、セリーヌがいなくなって色気が無くn…。
おっとこんな時間なのに来客みたいだ。
ほっとけほっとけ、どうせ頭のわいた知ったかぶりの夏厨だろ
まぁ、夏休みは時間の感覚狂うからおかしくなるのも分からんではないが
学祭でもそうだったけど、やたらゆっくりに感じる日もあれば一気に終わる日もあるからな
どっかの学者がなんたらかんたらって名前付けてたヤツかしら
まぁ、何が言いたいかっつーと、ヒッキーの俺のためにTOMYはさっさとブレステ3を発売しろってこった
誤爆してた、すまない……
何言ってんだ、SO2にはまだチサトがいるじゃないか
なあ?
それはチサトのシャワーシーンと見せかけたガルヴァドスのシャワーシーンが投下されるフラグと見てよろしいか
正直チサトには露出が足りな(ry
>>592 チサトさんの麗しい生足が見えぬと申すか。
生足はほら、すでに『レ』から始まるあの子が……
>>594 生足ならオペラさんのスリットから覗く生足の方が…。
まぁ、セリーヌのフンドシよりましだけど。
VPにも「レ」から始まる生足魅惑の女神様が!
スライディングでチラッと覗く様子がまた魅力的な……
あれ、こんな時間に変態たちの気配が……
レザードさんお疲れ様です^^
こんな時ばっかレスがたくさん付きやがって
このスレほんとに変態ばかりだな
変態じゃない
ただちょっと進んでるだけだッ!
変態じゃない、探求者だ!
ふと思ったんだが
>>595はレナのこと言ってんのか?レオンのこと言ってんのか?
>>602 女性陣的流れでずっとレナだと思ってた
でも、言われてみればどっちも「レ」から始まる生足の子だな……
その流れを無視して真っ先にレオンを連想した俺はもうダメかもしれない。
したらばに試作品を投下しました。
微妙なんでこっちに投下する前に審議していただきたいと思います。
まずはGJ!
おま、この流れでシャワーシーンとか狙ってるとしか(ry
とりあえずガルヴァドスの入浴シーンじゃなくて良かった…。
パッと読んだ所、問題は無いと思うよ。
あ、ちょっと問題っていうより気になるところだけど。
>>61の
「まな板には腐ったニンジン」→何故今から食べようとしてる物に腐った物を?
>>65の
「盛ろうとしたんだ」→既に「盛った」では?
些細な事かも知れないけど一応。
>>607 >>61はすいません。一番最初に作った時の名残です。
最初はチサトがキッチン離れる理由を人参が腐ってるから代わりを探してこようにしてたんですが、消し忘れてたみたいです。
>>65は最終的にマンドレイク入れたのはチサトだから、ボーマンは盛ろうとしていただけで、盛ってはいないからそれでいいかなって思いました。
いずれにせよ、修正し足りない部分がまだありますね。
今PCからは規制されてて書き込めないので、もう少し様子見てから最終稿を投下しようかと思います。
クロード、ジャック、アーチェ予約します。
期待
クロードは今度こそ信頼を築けるのか、それともまた…
ところでガルが堕ちたとなると、ラジアータって対主催がジャックしかいなくなるんだな。
他はみんな空気マーダーだし、今ロワ一の不遇作品かもね。
これから化けるかもしれないけど
VP2……
>>611あれはまだ通しって決まってないですよね?
現時点で否定意見出てないですけど
VP2?…ああ、あのサラマンダーか
>>613 否定意見がないってことは本投下待ちってことさ
まあ間接的にはミラージュ殺しをアシストしてるけどな
しかしアリーシャは報われんな。
これ以上犠牲者を出さないためにとガブリエルと戦って、自爆しても仲間みんな死んで犬死にだし
しかも自らの死によってルーファスはサラマーダー化と。
登場できただけでもいいじゃん。
シルメリアなんてタイトルに書いてるのにルシファーに出場スルーされたんだぜ?
そういやいないね汁。
今までマジでいないの気付かなかった。
俺的にはヘタレの長女にも出てほしかった。
ルシファー「戦乙女三人も呼んだら、正直勝てる気がしなかった」
ルシファー「今は反省している」
ルシファー「だが、後悔はしていない」
それじゃあ、反省の言葉を聞こうかい?
シルメリア・アーリィ「またレナスの癖に目立ってる」
話を豚切って悪いんだけど、誰かwiki編集してくれんか?
先月まで俺がやってたんだけど今パソ使えなくてさ。
一か月以上更新無いし、すまんが頼む
このような感じでよろしいのでしょう、ヴァルキュリア様……
という冗談はさておいて、レナス組とヅラムスの話と関連の細部を編集しました。
Wikiの編集は不慣れなもので、間違いがあったらごめんなさい。
余力があったら参加者名簿に掲載されていないキャラの中で追加できそうなキャラも追加してみようかと思います。
一応この1ヶ月の間にも履歴には残っていなかったものの編集はされていた模様です。
編集した方、乙です。
で、編集がてら気付きを……。
名選手〜(
>>534-537)の話でレザードはシンとエイミの首輪を回収した模様(
>>536)ですが、
2人の首輪は所持している道具に入るのでしょうか?
後、旧レナス組が恐ろしかったのはその変態っぷりと実力だけではなく、
無傷に近い事と戦力を温存できている事だと個人的に思います。
特にレナスとヅラムスはここまで交戦していないような……。
>>624 おおGJ!俺もこれから少しは手伝うよ…
首輪は書き手氏本人に確認しなきゃ分からないけど、多分書き忘れかなあ。
そういやレナスとブラムスくらいだよな、生存者で戦闘を経験したり遭遇したりしてないのって。
他の連中はちょっとしたものでも戦闘してるし
参加者名簿のTOP勢とVP2勢を攻略本片手に何とか編集完了。
補足・訂正がありましたら編集してやってください。
ちなみにTOPはPS版の資料を基に書きましたので、SFC版とかGBA版とかPSP版とかでは違うかもしれません。
ラジアータは未プレイにつき、当方では追加できませんでしたorz
一部現在状況が最新でないキャラもいるため、いずれは更新しないとな……。
支給品の解説ページも気になるところ。
そーいやしたらばのボーマン達の話の本投下まだかな。
作者氏もしまだ規制が解けないんだったら、したらばに完成品とタイトル書いてくれれば代行投下するよ。
>>627規制はまだみたいです。バイトがあるんで家帰ったらもう一回試してみます。
それでもダメだったらお願い致します。
今の生存者で一番活躍してるのって誰だろ?マーダーならアストンだろうけど。
目立ってる奴は大抵ギャグの方で目立ってるから困るw
個人的には対主催ではジャックを推したい
今まで目立ってるっていうか、これから目立てそうという期待込みで。
主人公らしいフラグ立ってると思うんだよね。
まあ、予約されてるから次の話でいきなり死ぬかもしれないけどw
対主催ならアルベルかな?
ネタ方面は勿論、ネタ抜きでも戦闘では負け無しだからな。
遅くなってすみません。
相変わらずの規制中ですのでしたらばに投下しました。
本投下用に微妙に修正してます。
申し訳ありませんがどなたかこちらの方に代理でお願いいたします。
ガルヴァドスの腹の虫が盛大に鳴いたので、二人は少し早いが夕食にする事にした。
支給品の食料で済ませようかとも考えたのだが、現在位置は跡地と言っても元ホテルだ。
それなりのキッチンを備えているだろうと踏んだチサトは料理の腕を振るう事にした。
キッチンに着いたのはいいのだが、肝心の食材を蓄えているであろう冷蔵庫が見当たらない。
しばし捜し歩いた後に、食材備蓄庫なる場所を見つけたチサト達。
食材一種類の量は大した事ない上に、賞味期限が怪しい物も目立ったが、種類だけはたくさんある。
「何か、リクエストとかある?」
何を作ろうか迷ったチサトは、ガルヴァドスに尋ねた。
「何デモ、構わナイ。オ前が食べたい物デイイ」
「そうねぇ、じゃあ、ニンジンが少ないけどカレーにしましょう。キッチンはあっちだから材料運ぶの手伝って」
「心得タ」
ガルヴァドスを引き連れ食料庫を出たチサトの耳に、この場にはいない、だが聞き覚えのある声が入ってきた。
「フフン…、こんばんは諸君…。この会が始まってようやく半日が経過したわけだが、いかがお過ごしかね?―――
どうやらもう2回目の放送みたいだ。
ホテル跡に着いてからいろいろな出来事があったので、時間の経過に気付かなかった。
何やら耳寄りな情報があると言っているが、そんな事に興味はない。
それよりもかつての仲間達や、さっき別れたチェスターの安否の方が気になった。
「それではまずは死亡者の名前から発表しよう」
そんな彼女の心情を察したわけではないだろうが、最初に死亡者の名前が挙げられるようだ。
(みんな…無事でいてよ!)
仲間達の無事を祈りながらルシファーの声に耳を傾ける。
『ヴォックス』
『ノートン』
『メルティーナ』
『ロジャー・S・ハクスリー』
『ビウィグ』
一人、また一人と読み上げられる犠牲者達。
10人目の名前が呼ばれる。
『アリーシャ』
まだ仲間の名前は呼ばれてはいない。
『ジェストーナ』
11人目。
(まだ呼ばれるの?)
この名前も知らない人物だ。
(このまま誰も呼ばれないで…)
しかし、そんな彼女の願いは叶わなかった。
『セリーヌ・ジュレス』
『オペラ・ベクトラ』
12人目の犠牲者と、13人目の犠牲者に彼女の仲間の名があった。
呆然とした彼女は、抱えていた食材を落としてしまう。
セリーヌとオペラは同じ性別で、かつ年齢が近い事もあり、特に仲が良かった。
そんな二人がネーデ人の同胞ノエルに続き、この地で何者かの凶刃によって倒れたのだ。
チサトはしばらくそのまま立ち尽くしたまま、仲間達のことを考えていた。
いつの間にか放送は終わっていた。
「ドウシタ?」
背後に立っているガルヴァドスが尋ねてきた。
「えっ? ええっと、仲間が呼ばれたからちょっとビックリしちゃって…」
慌てて落とした食材を拾い集める。
「大丈夫カ?」
「えっ?」
意外なガルヴァドスの一言に目を丸くし、チサトは振り向いた。
「我ラ、ブラッドオークモ同胞の死ヲ嘆くトイウ事はスル。ダカラ、オマエノ今の感情ハ理解デキル」
「フフッ、見た目は怖いけど、意外と優しいじゃない?」
チサトのそんな言葉を聞いて、ガルヴァドスは赤い色の顔をよりいっそう赤くした。
「でも、ほんとに大丈夫よ! それに腹が減ってはってねっ! 晩御飯食べながらこれからの方針を改めて決めましょう!」
本当はまだ、二人の死がチサトの胸を痛めていたが、ガルヴァドスを心配させないようにと明るく振舞った。
キッチンは意外と狭くかつ、少し一人でいたかったから、ガルヴァドスにはロビーで待つように言った。
やはりと言うべきか、このキッチンには包丁やナイフといった刃物類は存在しなかった。
棚を漁って、なんとかピーラーを見つける。
野菜の皮はこれで剥き、形はしょうがないので砕いたり割いたりして整えた。
淡々と調理を進めながらも、やはり彼女の心を支配していたのは仲間の死という事実。
(くっ、今度は2人…。さっきのクロードはなんとか退ける事ができたけど、まだ私はこの殺し合いを止める為何も出来ていない…。
もしかしたらさっき呼ばれた人の中に、クロードが手にかけた人物が含まれているかもしれない…。
今度こそ誰であろうと殺し合いに乗っている人間を止めてみせる! それが殺された人達へ、今私が出来る事!)
彼女は改めて決意を固めた。
後はカレーを煮詰めるのと、米が炊けるのを待つだけだ。
(少し気分を変えてこようかしら…。ここで火が使えるって事はお湯も出るわよね?)
外で動き回ったせいか、体に汗とホコリが纏わりついている。
彼女は客室のシャワールームを利用しようと、キッチンを後にした。
浴室に入り、身に付けているものを脱ぎ去る。
鎧は料理の邪魔になるだろうし、パラライチェックも今すぐ必要になる事は無いだろうと思い、二つともデイパックにしまった。
シャワーを浴びて、ホコリや汗を洗い流すべく頭と体を洗う。
シャンプーやらボディーソープは備え付けてあったものを使った。
神宮流体術免許皆伝の豪傑である彼女でも女性だ。
そのボディーラインは女性特有の曲線で彩られていた。
ショートカットの髪の下から覗くうなじ。
細くともすらりと引き締まった腕と太腿が、彼女の健康美を更に強調していた。
同時に鍛え抜かれた彼女の脚線は、えもいわれぬような緊張感をかもしており、まさしくネコ科の野生動物のごとき美しさを誇っている。
そんな彼女の体の曲線を、泡が撫でるように伝い落ちる。
体の汚れやホコリは洗い流せたものの、彼女の悲しみは洗い流される事はなかった。
むしろ、浴室という閉塞的な空間にいる事で、先程抱いた陰鬱な感情が呼び起こされる。
立ち昇る湯気の中、壁に手をつき項垂れる。
彼女の頬を伝い落ちる液体はシャワーのお湯か、はたまた彼女の涙か…。
一頻りそうしていた後に浴室を出る。
脱衣所の鏡が自分の裸身を映した。
鏡に映った自分の顔は、普段の活力に満ちた自分とは遠くかけ離れていた。
(なんて顔をしているのかしら? こんなの、らしくないじゃないか。
そう、今は仲間の死に捕らわれ立ち止まっている場合じゃない! 前へ、前へ進む事が私のすべき事!)
頬を両の手で思いっきりはたき、自らに喝を入れた。
着替えを済まし脱衣所を出る。
(もう、完成している頃かしら?)
調理を再開すべく、再びキッチンへ向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「また13人…か」
チェスターを見送ったボーマンは、西に進んでいた最中に2回目の放送を聞いた。
予想以上に多い。自分は昼から夕方にかけては、誰も手にかけていない。
それなのに13人の死亡者がでたという事は、返り討ちにあったゲームに乗った人物もいるだろうが、自分も含めて6,7人ぐらいはいるのではないだろうか?
(現在の生存者は俺を除いて35名。内殺し合いに乗った人数を7人と仮定すると大体5人に1人か…。
このまま外で夜を迎えるのは、いささか危険かも知れんな)
彼は安全な場所を確保すべく、現在位置から目と鼻の先にあるホテル跡を目指し歩き始めた。
狩る側にとってはそういった場所に集まるだろうと目星を付けやすいだろう。
それでも、外で全周囲を警戒しながら一夜を過ごすよりは遥かにましだろう。
それにホテルの部屋ならば、出入り口に破砕弾によるトラップを仕掛けておけば、寝込みを襲われる心配も少ない。
(そういえば、さっきチェスターに渡した破砕弾でストックが切れていたな)
ボーマンは新たに3個の破砕弾と2個の毒気弾、1個の秘仙丹を生成した。
ついでに、戦闘時の調合は不可能だと思いつき、戦闘時に補助的な役割を果たしそうな物も作って懐にしまっておく。
そうこうしているうちにホテル跡が見えてきた。
そのホテルの一室からは、なぜかカレーの臭いが漂ってきていた。
不審に思い、窓からその部屋の様子を伺うと部屋の中は無人だ。
火が点いたガス台の上にはカレールーで満たされた鍋と、その横で米を炊いている鍋があるだけだった。
改めて誰もいない事を確認し、ボーマンは窓から部屋に侵入した。
(誰かがここで料理をしているんだろうな…。
どうやら先客がいたらしい。どうする? 殺し合いに乗った人間だと厄介だな…)
だが、彼はその可能性が薄いことに気付く。
(いや、この米とルーの量は明らかに1人で食べる量じゃない。という事は複数人いるわけか…。
その場合はアドレーやマリアのように主催者の打倒を目指している連中の可能性が高いな…。
このゲームの勝者は1人だけというルールがある以上、殺しに乗った人物は基本的に一人で行動するはずだからな)
鍋の中を覗き込む。
(このカレー、やけにニンジンが少ないな、それに野菜の形が歪だ)
理由はすぐにわかった。まな板にはピーラー、それと細かく砕かれた野菜の破片。
包丁等がここにはなかったのだろう、仕方なくこの料理人は叩くなり潰すなりして大きさを調整したと思われる。
そこで彼の中の悪魔がボーマンに囁いた。
(今自分の持っている物にニンジンに酷似しているイイ物があるじゃないか)
「マンドレイク…」
彼は呟くと同時に、デイパックの中からそれを取り出した。
クレスの治療の際1/3使ってしまっているが、コイツ単体ならばかじっただけで人を死に至らしめる事が可能だ。
自分の手を直接汚さずに人を殺せる。
尚も人を直接殺す事に抵抗があった彼には、それがとても魅力的な行為に思えた。
自然と手は動き、マンドレイクの皮をピーラーで剥き始めていた。
マンドレイクの皮を全て剥き終えたその時、
「誰っ!? 両手を上げてこちらにゆっくり振り向き…って、あなた、ボーマンじゃない!」
キッチンに戻ってきた人物――チサトと鉢合わせてしまった。
ボーマンは焦った。よりにもよって、ここで料理をしていたのが、かつての仲間だったなんて。
「何してたの?」
こちらに歩み寄りながら質問してくるチサト。
「ん? ああ」
あやふやな返事をするボーマン。
(さて、どうしたものか?)
「あれ? これニンジン? 丁度少なくて困ってたの。食料庫にはもう無くってさ」
まな板の上のマンドレイクを覗き込んで、チサトは見事にニンジンと勘違いをしたようだ。
根元に特徴的な二股がある植物だが、その部位はクレス治療の際に使っている。
こうなってしまえば、素人目にはニンジンにしか映らないだろう。
「あ? ああ。丁度ここを通りかかったらカレーの匂いがしてな。
失礼して覗いてみたらニンジンが異様に少ないのに気付いてな…。
丁度支給品に紛れていたから使おうかと思ったんだが…皮を剥き終えた後包丁が無くて、どうしたものかと考えていたんだ」
我ながら苦しい言い訳だな、と思ったがチサトは、
「そう。助かったわ。サイズは見てくれがアレになるけど…」
と言いマンドレイクをへし折る。それでも尚大きな部分は、引き裂いてドバドバッとマンドレイク片を鍋に入れた。
「まぁ、なにより無事でよかったわ。ロビーに同行者を待たしているの。
話したいこともあるし、一緒に食べましょう。そっちの鍋運んでくれる?」
少し煮詰めた後に、鍋を抱えてチサトはボーマンを促した。
(まずい事になった…。だがここで断っても怪しまれる。一先ずは同意するしかないな)
「わかった」
動揺を表情に出さないように気を遣いながら、彼はチサトの後についていった。
ロビーまで連れてこられたボーマンは再び驚く事となる。
今まで見たことのない化け物が、ソファーに腰を掛けていたからだ。
(なんだ? あれは?)
思わず怪訝顔をしてしまっていたのだろう。
そんな彼の顔を見て、チサトはガルヴァドスの事をボーマンに紹介した。
「見た目はかなり凶悪な魔物って感じだけどいい奴よ。ガルヴァドスっていうの」
ガルヴァドスと呼ばれた化け物が、こちらを見て何やら考え込むような表情をした。
「ガルヴァドス、心配しなくていいわ。彼はボーマン、私の仲間よ。信頼できる人間だわ」
化け物に笑顔で自分の事を説明するチサト。
(おいおい…、こんな簡単に信頼していいのかよ?)
だが、その信頼が心地よかった。
かつての仲間というだけで、無条件で自分を受け入れてくれたチサトが眩しく見える。
チサト自信も、もう少し警戒すべきなのかも知れないが、仲間の死や裏切り(これは彼女の勘違いだが)という出来事が立て続けに起こった中での仲間との再会。
自然と彼女はボーマンを疑うという事はしなかった。
これ以上、仲間達との繋がりが絶たれるのが嫌だったのかもしれない。
「さあ、ご飯にしましょう!」
チサトがそれぞれの皿にカレーライスを盛り始める。
(どうする? このままでいいのか?)
数瞬の迷いの後、
「待て!」
ボーマンは自分の声が予想以上に大きくなってしまった事に驚きながらも続けた。
「飯の前にちょっと…」
「あぁ、いいわよ。いってらっしゃい」
「?」
いきなり訳のわからないことを口走るチサトに困惑する。
「ご飯の前に中座なんて、行き先は一つしかないでしょ?」
(こいつ…、俺が便所に行きたがってると思っているのか?)
一先ずその勘違いに乗ることにする。
「ああ、行って来る」
「戻ってくるまで待っているから早くしてよね?」
ボーマンは彼女の呼びかけに手をひらひらと振り無言で答え、ロビーを離れた。
改めて考えをまとめようと洗面台に手をつく。
(このまま、悩み続けていてはならない…。ここでチサトを殺したら俺は二度と戻れない。
今決断するんだ! 俺がこれから取るべき行動を! そして、その決意を二度と曲げるな!)
かつての仲間達の姿。殺されてしまった3人を含めて11人との思い出を蘇らせる。
楽しい事ばかりではなかった。辛く、何度となく死にかけもした。
そんな状況を共に生き抜いた仲間達。
(やはり、あいつらはかけがえのない俺の仲間だ。殺したくなんて、死んで欲しくなんてない。だけど…)
この島に来てからの自分の行動を振り返る。
エクスペルに戻れる可能性が高い方を選び、自分と同じく父親であるアドレーを手にかけた。
その後、今度は脅迫に近かったとはいえ瀕死の人間の命を救った。
人を1人殺したという罪が軽くなった気がしたのは事実だ。
だが今度は、救った人物の親友を名乗る男に、治療薬と偽り破砕弾を渡した。
彼らが上手く再開したら、おそらくクレスと呼ばれた少年は死ぬだろう。
チェスターもその事実に絶望し気が狂うかもしれない。
マリアが彼を放っておくわけもないだろう。
我ながら鬼畜な事をしたものだ。
(そんな俺が今更…)
葛藤をしていた彼の脳裏に、ニーネとエリスの笑顔がちらついた。
(俺は…、もう一度二人に会いたい! それに…)
エリアルタワーで十賢者との初遭遇後、訳のわからぬまま辿り着いたネーデのセントラルシティ。
そこの市長ナールから告げられた母星エクスペルの崩壊。
それとともに悟ったニーネの死。
(もし、俺がここで死んだら、あの時感じた絶望をニーネとエリスに与える事になる。
それだけは絶対にさせるわけにはいかない! そうだ! もう俺は迷わない! 例え誰であってもこの手にかけてやる!)
彼もまた、決意を固める事となった。
(おそらくロビーに戻れば食事になる。何とかマンドレイクを避け二人が口にするのを待つしかないか…)
ボーマンはその決意をより強固な物にするため、仲間殺しをする覚悟を決めたのであった。
洗面台で顔を洗い、気を引き締める。
なんとか自然体な表情を装ってトイレから出ようとした時、ズシィーンと巨大な何かが倒れる音がした。
外からは、なにやら叫び声を上げているチサトの声が聞こえてくる。
ボーマンは意を決して、ロビーへと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
チサトは何が起きたかわからなかった。
もう待ちきれない様子だったガルヴァドスに、先に食べていていいわよと声を掛けた矢先の出来事である。
カレーを口にしたガルヴァドスが、白目をむき卒倒したのだ。
(えっ? なになに? そんなに私のカレーがまずかったの?)
いや、だが明らかに様子がおかしい。
いくら口に合わないものを食べても、こうはならないだろう。
(とにかくボーマンを呼ぼう。素人の私よりこういったものには詳しいはずだ)
そう思いトイレの方に振り向いた時、丁度ボーマンが出てきた。
「聞いてよ! カレー食べたらいきなり倒れたの! 食中毒とかでもないと思うけど、お願い! 診てあげて!」
「いや、原因はわかっている」
どこかいつもと違う、冷え冷えとしたボーマンの声。
「マンドレイク毒の症状だ。俺が用意して、お前がカレーに入れた」
「なっ、何を言ってるの?」
「カレーに毒を盛ろうとしたんだ…俺が」
突如として向けられた本気の殺意。
直観的にやばいと悟り、後方に大きく跳び退く。
今までいた場所が爆発で包まれていた。
爆風が頬をなぶり、飛ばされた破片が雨のように降り注ぐ。
立ち昇る爆煙を振り払い、ボーマンが迫る。
鋭い踏み込みと共に、矢の様に鋭い拳が打ち出された。
正面からそれをガードするチサト。
ガードした体勢のまま押し返し、開いた間合いを利用して胴に蹴りを見舞う。
大きく距離が開く二人。
(まさか、彼まで…)
チサトは未だにボーマンが言っている事を理解できなかった。
いや、したくなかった。
だが、それは彼の口から告げられた。
「俺は、ニーネとエリスの下に帰るため優勝を狙うことにしたんだ…。恨むなとは言わない。だが、俺の目的の為に…死んでくれ!」
白衣の内ポケットより取り出した丸薬を炸裂させる。
チサトの周囲に毒素を孕んだ霧が生じる。
直接的な殺傷力は乏しいが、長時間吸っていては悪影響が出るだろう。
なにより、このままこの場にとどまれば、更なる丸薬のいい的だ。
裏を掻くためあえて霧の先、ボーマンがいると思われる方向へと突進する。
立ち込める毒霧の中でボーマンを捉える。
チサトのこの行動を予期していなかったボーマンは、彼女に先手を許す事となった。
チサトは突進のスピードを活かして、拳打、肘打ち、掌打と流れるような連打を放った。
神宮流体術奥義『昇龍』だ。
ボーマンは防御に徹することで、なんとか痛撃を受けるのを免れた。
攻防によって巻き起こる風で霧が晴れ、ボーマンを見つめる。
彼の表情には憂いに似た何かが浮かんでいた。
「あなたもなのね? ボーマン…」
ボーマンに向けて呟くチサト。
信じられなかった…。信じたくなかった…。クロードに続いて彼まで…。
確かに、この二人の目的は理解できる。
だけど、自分達の絆はこんな簡単に断たれてしまう物なのか?
何故彼らは、自分と同じように皆と力を合わせて、ルシファーに立ち向かおうとしないのか?
「も? 他にも誰か殺し合いに乗ってるのか?」
「クロードもよ…。直接聞いたわけではないけれど、いきなり襲ってきたわ。
きっとレナを生き残らせる為に、他の人間を皆殺しにするつもりなんだわ」
「そうか…」
クロードの事を聞いたボーマンは、一瞬だけその表情に哀しみの影をよぎらした。
そんなボーマンの表情の変化を捉えたチサトは、まだボーマンは迷っているのかもしれないと思った。
「考え直すつもりはないの?」
決めたはずだった。殺し合いに乗った者は誰だろうと止めると。
もしここで彼が考えを改めてくれるなら、まだやり直せると思った。
だから、これは彼に対しての最終勧告。
しかし、ボーマンの決意は固かった。
「俺は既に一人殺している…。今更…後戻りなんぞ…できん!」
叫ぶや否やボーマンが一気に間合いを詰め、突きを繰り出してきた。
チサトも素早くこれに応戦。
突きを腕で受け流し、ボーマンの延髄目掛けて回し蹴りを見舞う。
ボーマンも空いてる方の腕でこれをガード。
チサトはそのガードごと脚を振りぬき、間合いを離す。
陣宮流体術は足技主体の流派だ、対してボーマンは拳打主体の格闘スタイル。
当然、懐に入られたらチサトは不利になる。
だが、ボーマンには遠距離攻撃の手段がある。
『気功撃!』
拳にオーラを纏わせ打ち出す技。
向かって左にそれを回避。
離しすぎた間合いを詰めようとしたが、こちらの出鼻を挫く様にもう一発飛んできた。
それも左に回避。だがこれはボーマンの誘いだった。
左側には迫る壁と、その近くには朽ちかけた円柱。
しまったと思った時には遅かった。
爆発音とともに彼女の頭上に円柱の瓦礫が倒れてきていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「済まない…」
巻き上がる粉塵に向かって呟く。
恐らくチサトは、あの瓦礫に押し潰されて死んだだろう。
だが、見つめる粉塵の中に拳を突き上げたようなシルエットが浮かんできた。
「一日に二回もこれを使うなんてね…」
よく見たらチサトの腕がおかしな事になっている。
(俺の知らない技? 恐らく肉体強化系の気功の類だろう)
チサトの分析をしていたボーマンの視界から彼女が消えた。
刹那。チサトはボーマンに肉迫していた。
そのまま自分に放たれた膝蹴りをなんとかガードする。
その蹴りは強力で、ガードの上からでもダメージを受ける程だった。
「くっ!」
思わず苦悶の声を洩らしてしまう。
「一気に決めるわ! 神宮千裂拳!」
怯んだボーマン目掛け、ガルヴァドスの巨体おも吹き飛ばす強力な連撃を見舞う。
ガードを抜かれ、連打を浴びるボーマン。
フィニッシュブローで大きく吹き飛ばされたボーマンは、壁に激突してようやく止まった。
体があちこち痛み、意識が混濁する。
(ここまで、なのか…)
だが彼にも意地がある。仲間を殺してでも帰ることを選んだボーマンは、心に湧いた弱気を振り払った。
(そうだ…。決めたんだろ? なんとしても生きて帰るんだと。なら、死ぬその瞬間まであきらめるものか!)
飛びそうになる意識を、気迫でなんとか繋ぎとめる。
(まだ…戦える! それにチサトのあの技。あの手の強化系の気功なら、そんな長時間効果が続くものでもないだろう。
それどころかあれだけの爆発力を発揮する技なら反動も物凄いはずだ…。まだ勝機はある)
壁にすがる様に立ち上がった彼は、一先ず時間を稼ぐべく、最後の毒気弾をチサトと自分の間に放った。
再びロビー内が毒気を帯びた霧で満たされる。
チサト自身も先刻この技を使用して持続時間の短さと、反動の大きさは把握している。
見るからに毒々しい色をした霧を無視し、ボーマンに詰め寄る。
(くそっ! 速さまで増してやがんのか?)
先のダメージもあり、満足に動けない彼は防御に徹せざるを得なかった。
回し蹴りが死角から迫る。回避は不可能と判断し、腕を使ってガードする。
だが尚も、彼女の攻撃の勢いは止まらない。
回し蹴りの余勢を活かし、そのまま下段、中段と回し蹴りによるコンビネーションを繋げる。
神宮流奥義『旋風』
容赦なく迫る嵐のような脚技。
その一撃一撃は重く、正面から受け止める事も容易ではない。
堪らず攻撃の切れ目に合わせて空中に退避。
しかし、チサトの執拗なまでの攻めは続く。後を追う様に跳躍しボーマンに追いすがる。
苦し紛れに放ったボーマンの蹴りを掴むと、その勢いを利用しカウンター目掛けて投げ飛ばす。
「っ!」
あまりの衝撃に肺の中の空気が漏れる。ぼやける視界に捕らえたのは空中より迫り来るチサトの姿。
獲物を狩る猛禽類さながら、降下と共に振り下ろされる一撃。
だが、顔面に打ち込まれた拳は、予想していた物よりも遥かに軽かった。
チサトの表情が強張る。どうやら時間切れのようだ。
『気功撃!』
ゼロ距離で闘気を纏わせた拳をチサトに叩き込む。
拳の衝撃と、放った闘気の衝撃とで彼女を吹き飛ばす。
(今の一撃、チサトに俺を殺す余力はなさそうだな。俺も満身創痍だが、こちらにはこれがある)
最後の一個。切り札として取っておいた破砕弾の感触を白衣の上から確かめた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(肝心な時に時間切れなんて…)
全身にのしかかる鉛のように重たい疲労感。とてもじゃないが今までのようには動けない。
ボーマンを見る限り、かなりのダメージは見て取れるが、こちらにはもう致命打を入れる余力は無い。
状況は明らかに不利だと培ってきた勘が告げていた。
だが、ここで諦めるわけにはいかない。ここで彼を止めなければ更なる被害者が出る。
じりじりと距離を詰めてくるボーマン。
(なんとか対抗する手立ては?)
彼女はまだ諦めずに反撃の手段を求めた。周囲を見回すと床に転がるデイパックを捕らえる。
誰の物かはわからないが、もし自分のものならあの中に鎧をしまった筈だ。
紐を掴み、振りまわす事で強力な武器に成り得る。
最後の希望を込めて拾い上げると、ズシリと重い。
迫り来るボーマン目掛け、思いっきり振り上げる。
アゴに強力な一撃を叩き込まれた衝撃にたたらを踏むボーマン。
その衝撃により、撒き散らされる内容物。
地図、筆記用具、食料、水、そしてこの鼻を突く臭いは、
(ガソリン?)
確かガルヴァドスの荷物にガソリンがあったはずだ。このデイパックはガルヴァドスの物だったらしい。
それらを頭から被ったボーマンの体は、ガソリン塗れになった。
最後に見せたチサトの足掻きが彼女に勝機をもたらした。
特製の名刺は武器として認識されたらしく『バーニングカーズ』用の名刺は無くなっていた。
ただ一枚だけを残して。
その一枚は、クロード達を隠れて取材していた最中に紅水晶の洞窟で落とした物だった。それがきっかけとなり、彼女も彼らの旅に同行することになった。
この名刺が自分とクロード達を引き合わせたのだ。
だから、この一枚だけは例え古くなって武器として機能しなくなってしまっても、肌身離さず持っていた。
その一枚の名刺を取り出す。
名刺に気を送り込み、纏わせた闘気を炎へと変化させる。
前述の通り、古くなったこの名刺の攻撃力は無に等しい。だが彼女が掴んだ勝機を活かすにはこれで十分であった。
「バーニング…」
(自分とクロード達とを繋いでくれたこの名刺で、仲間の命を絶つことになるなんて)
カードを振りかぶるチサトの目が微かに滲む。
(それでも誓ったんだ。この地で散った仲間達に。殺し合いに乗った人間を止めると。
例え相手が誰であっても! その相手が、かつての仲間であろうと!)
決意を胸に、仲間との絆を築いた代物で、その仲間の命を絶つべく名刺を放とうとした。
そう、放とうとしたのだが、
(体が、動かない?)
チサトは困惑を胸に抱きながら、正面で立ち尽くすボーマンを見つめる。
彼の手には、見覚えのある丸薬が乗せられていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
彼は被った液体がガソリンだと理解していた。
そして、霞む視界の中で炎を纏った名刺を持つチサトの姿を捉えた。
その光景から導き出される結末は一つ。だから、今しかないと思った。
ホテルに向かう道中、調合しておいた霧状の薬品を散布させる。
その霧を吸った彼女の体はたちまち硬直を始める。
ローズヒップとトリカブトを調合する事で生成される『パラライズミスト』
霧を吸った者を一時的に麻痺させる代物だ。
ふと思い立った二人の行動が彼らの明暗を分けた。
麻痺したチサトを見つめる。
(今から俺はコイツを殺す…。忘れるな、この光景を! 心に刻み付けろ、今抱いた感情を!
俺はこれからこいつの屍の上に立ち、生き続けて行かねばならないのだから!)
懐から破砕弾を取り出すと、チサト目掛けて投げつけた。
思い描いたとおりの軌跡を描き彼女に命中した破砕弾は、チサトの体をバラバラに吹き飛ばした。
爆発によって生じた火の粉が、床を濡らしたガソリンに燃え移る。
ボーマンは自信の身の危険を感じ、その場を退避する。
出掛けに自分の荷物と、側においてあったチサトの荷物を抱えると、外に飛び出した。
(亡骸を弔うぐらいの事はしたかったんだがな…。この状態ではそれもままならないか…。いや、今の俺にはかつての仲間を弔う資格すら無いんだよな…)
ロビーに上がった火柱は彼女達の遺体を焼き、ホテルの壁にまで浸食し始めた。
ボーマンはその光景をしばらく見つめ続けていた。
どれくらいの間見つめていただろうか。
このままここに居続ける訳にもいかないので、彼は北の方角へと歩き始めた。
【E-04/夜】
【ボーマン・ジーン】[MP残量:40%]
[状態:全身に打身や打撲 ガソリン塗れ(気化するまで火気厳禁)]
[装備:なし]
[道具:調合セット一式、七色の飴玉*3@VP、フェイトアーマー@RS、パラライチェック@SO2、荷物一式*2]
[行動方針:最後まで生き残り家族の下へ帰還]
[思考1:完全に殺しを行う事を決意。もう躊躇はしない]
[思考2:安全な寝床の確保]
[思考3:調合に使える薬草があるかどうか探してみる]
[備考1:調合用薬草の内容はアルテミスリーフ(2/3)のみになってます]
[備考2:秘仙丹のストックが1個あります]
[備考3:ホテル跡は次回放送までには焼け落ちるでしょう]
[現在位置:ホテル跡周辺。やや北寄り]
【ガルヴァドス 死亡】
【チサト 死亡】
【残り33人】
代理投下完了
作者さんに乙であります
ついにボーマンは決意を固めたか……
さて、あのヘタレはどうなるだろう
ルーファス「ヘタレ?誰の事だ?」
>>645代理投下ありがとうございました。
携帯からですが、お礼を言わせてください。
乙です。
えっと、さっきマーダーの人数を数えたら11人に…
アレ、三割どころか三分の一になってないか?
ごめんなさい。延長お願いします。
ここ最近、延長したり破棄したりで駄目だな俺。
作者氏&
>>645乙です。
650 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 01:02:58 ID:y72VUiu90
>>629 クリフなんかも結構活躍してないか?
何度も戦闘してる上最強クラスのマーダー撃墜したし、脱出フラグも持ってる
遅くなって申し訳ない。
投下します。
653 :
CROSS:2008/01/30(水) 01:16:03 ID:QPBTjeslO
アーチェがその放送を聞いた後、最初に感じたものは安堵だった。
クロードから逃げ出したアーチェは、適当な木陰に座り込んでいた。走り出してからまだ十分も経っていないにも関わらず。
これでは逃げ切れたかどうか怪しいとこだが、彼女の体力ではこの辺りが限界だった。
そうして座り込んでから五分もしない内に、突然異変が起こった。茜色だった空が一瞬で黒く染めあげられたのだ。
「っ……」
それと同時に、アーチェの表情も暗い脅えの色に染めあげられる。
別にこの異変に驚いたのではない。この現象は数時間前に経験している。そう、これから何が行われるかを理解しての脅えだ。
『フフン……、こんばんは諸君』
放送を聞き終えたアーチェは静かに呟いた。
「……ごめんなさい」
確かに最初に感じたものは安堵であった。当然だ。クレスもクラースもすずも、そしてチェスターも無事だったのだ。
だが、次の瞬間には安堵は消え去り、代わりに罪悪感に支配された。
『ネル・ゼルファー』
自分の所為で石になってしまった人。
目の前で頭を潰された夢瑠と違って、彼女は重傷であったがまだ生きていた。そして、本来石化では死に至るようなことはない。
だから、可能性は限りなく0に近いと知りながら、もしかしたらまだ生きているかもしれないと、僅かな期待を抱いていた。
しかし、彼女の名前は放送で読みあげられた。あのままアーチェが何もしなくても、ネルが死んでいたことは間違いない。
だが、自分の所為で死に行くネルに石化する苦しみを――そのまま死ぬこと以外の苦しみを与えてしまったことがハッキリした。
「ごめんなさい」
最後に見たネルの顔を、鬼のような形相を思い出しながら、アーチェはその場で泣き崩れた。
■
死者は13名。
初めに会った男のように、やる気になっている者は想像以上に多いのだろうか?
――くそ。
「相変わらずのハイペース」と言っていた。前の6時間でも同じくらい人が死んだのだろうか?
――くそ、くそ。
今回の放送で仲間が、オペラとセリーヌの名前が呼ばれた。前の放送でも呼ばれた人がいたのだろうか?
――畜生。
このゲームが始まってから二度目となる放送。だが、彼にとっては初めて聞く放送だった。
放送を聞いたクロードは、その場でガクリと膝を着く。
「……冗談だろ?」
最初に口から出てきたのはそんな疑問の言葉。勿論彼の疑問には誰も答えてはくれない。
ただ、彼を嘲笑うかのように、あの男の笑い声だけが響き渡る。
「なあ」
項垂れていると、突然声をかけられた。相手はいつの間に現れたのだろうか?
取り敢えず無視する訳にもいかないので、慌てて立ち上がり、声のした方向へ首を向けるが、
「あれ?」
そこには誰もいなかった。だが、「気のせいか?」考えた直後に、今度は足下の方から声が聞こえてきた。
「み…ずを」
声の主は黄色いベストを着た少年。
「お、おい、大丈夫か!」
少年はうつぶせに倒れていた。
支援
655 :
CROSS:2008/01/30(水) 01:32:38 ID:QPBTjeslO
■
「ぷは。サンキュー、生き返ったぜ」
中身が残り僅かとなったボトルを返却されたクロードは、相手の少年――ジャックに話しかける。
「もしかして喉が乾いてただけなのか?」
「そうだけど? いや、体力的にも限界だったぞ。水でも飲んで休もうと思ったら、もう殆どなくてさ。近くにあんたがいてたすかったよ」
「……どういたしまして」
クロードは思わず頭を抱えたくなったが、ここはグッと我慢。
兎に角、初めて出会ったまともに会話が出来る人なのだ。一回目の放送のことを聞きたいし、出来れば仲間にもしたい。
まずは放送のことを聞いてみよう。そう考えたのだが、
「ところで「ってこんなゆっくりしてる場合じゃねー!」」
思い切り出鼻を挫かれる。
「なあ、お前アーチェに会った筈だよな? あいつどうしてた?」
「アーチェ?」
知らない名前に首を傾げる。
「ピンク色の髪の女の子だよ。もしかして会ってないのか?」
「ん……ああ、あの子か。って、何でそんなこと知ってるんだよ!?」
その言葉に対し、探知機を取り出してから答える。
「ジャーン! この機械のお陰だぜ。名前はタン……炭?」
「探知機?」
「そうそう、それそれ! 知ってるなら話は早い。これを使ってアーチェを追ってたんだけど、別の光点と接触した後、
どっちがアーチェのものか解らなくなって……っと、そんなことより、アーチェの様子はどうだった?」
ジャックは、少し恥ずかしそうに右手で後頭部を掻きむしる。
さて、困ったのはクロードだ。先程の仲間に「剣を向けたら逃げられた」なんて言ったら話がややこしくなる。
「あー、実は顔を合わせただけで会話すらしてないんだ」
だから、当たり障りのないことを話した。実際嘘は言ってない。
「そっか。じゃ、急がなくちゃな」
そう言って、ジャックは荷物を背負って立ち上がった。それを見たクロードは慌てて声をかける。
「ちょっと待ってくれ。僕からも聞きたいことがあるんだけど」
「続きは、移動しながらやろうぜ」
「は?」
クロードは一瞬言葉の意味が解らなかった。
「俺と一緒にこないか? ルシファーの野郎をぶっ飛ばすなら、仲間は多い方がいいだろ? それに、お前いい奴だしな」
確かにその通りだ。仲間は多い方がいい。実際クロードも協力者を探しているのだ。だけど、彼と共に行くということは――
「さあ急ごう。兎に角やることは沢山有るんだ。あずはアーチェに会う。
そしたらリドリーを見付けないとな。それからあのアシュ「すまない。一緒には行けない」……え?」
戸惑うジャックにクロードは告げた。
自分がアーチェに会った時、彼女にどんな反応をされたのかを。その彼女に、早まって剣を向けてしまったことを。
「……だから僕は一緒に行けない。黙っていて悪かった」
クロードはそう言って頭を下げた。ジャックはそれを見て、暫く考えてから口を開く。
「なら、俺と一緒にアーチェに謝りに行くってのはどうだ?」
何を言ってるのか理解出来なかった。黙って続きを待っていると、ジャックは自嘲気味な笑みを浮かべながら喋り出す。
「実は、俺の方も色々あってな。あいつを傷つけちゃったんだ。だから、その、俺の方もあいつに謝らなくちゃならないって訳だ。
その時、お前が悪い奴じゃないってことを説明してやるからさ、お前もあいつに謝っちゃえよ」
話を聞いたクロードは、顎に手を添えながら思案する。説得に成功すれば、一度に二人も仲間が増えることになる。
自分もジャックも説得に失敗しま場合でも、ジャック一人は確実に仲間になってくれるだろう。
最悪なケースは、彼女がジャックを許して自分を許さなかった場合だ。
それでも、ジャックがその場にいるならば、こちらの身の安全はある程度保証されるだろう。結論、この提案は非常に有難い。
「そうだな、君が口添えしてくれるなら何とかなると思う。言い遅れたが、僕の名はクロード、クロード・C・ケニーだ。よろしく頼む」
クロードは右手を差し出す。
「よっしゃ! そうこなくちゃ。俺はジャック・ラッセル。今後ともよろしく!」
同じように右手を差し出して握手を交すと、彼等は並んで歩き出した。
「ジャック、悪いんだけど、一回目の放送の内容を教えてくれないか?」
「放送か……その為にも早くアーチェと合流しよう」
「え? もしかしてジャックも聞き逃したのか?」
「いや、聞いたぞ。ただ、途中までしか聞いてなかっただけだ」
「…………」
支援DA!
■
「それで、そのリドリーって子とは結局どうなったんだ?」
「それが、この後直ぐこれに巻き込まれたから、まだまともに話すら出来てないんだ」
二人は現在、北西の方向へ進んでいる。勿論、目指すは探知機に示されたアーチェの居場所。
出発直後は割と急いで進んでいたが、探知機を見ていて『アーチェの位置が先程からずっと変わっていない』ことと、
『自分達の位置から思ったより近い』ことが解った為、今は雑談を交えながら歩いている。
「へー。だけどジャック。いくら敵陣についてしまったからといって、恋人を後回しにして別の子を追い掛けるのはどうかと思うぞ。
ぶっちゃけ二股はよくない!」
「っな、お、俺とリドリーはそんな関係じゃねぇ! アーチェもだ!」
ジャックは顔を真っ赤にして怒鳴りつける。その右手は斧状になったレーザーウェポンを掲げ、今にも振り下ろさんとしている。
それを見た途端、クロードは慌てて両手を挙げて降参のポーズをとる。但し、その顔は明らかに笑っていたりする。
「ちょ、ジャック、冗談だよ冗談。落ち着けって。おい、そろそろ目的地に着くんじゃないか?」
そう言って探知機を指差す。確かにそこに示されたアーチェの反応は、もう目の前までせまっていた。
「おお、本当だ」
それを確認すると、再び歩き出そうとしたが、クロードから思わぬ待ったがかかる。
「なあジャック。ここから先は君一人で進んでくれないか?」
ジャックは、思わずクロードの方へ振り向き「何を言ってるんだ」と言わんばかりの視線を送る。
当然だ。彼は自分と一緒に謝りに行く為に行動していた筈なのだから。
「いいかジャック。僕は彼女に剣を向けてしまったと説明しただろ? つまり、彼女は僕を敵と認識している可能性が極めて高い。
その僕がいきなり現れたらどうなると思う? 僕が彼女の立場なら、話も聞かずに逃げるだろうね」
話を聞いたジャックは納得したように一回頷くが、直ぐに首を傾げる。
「じゃあどうすんだよ?」
「その為の君だ。ジャックが彼女を説得し、その上で僕のことを説明してくれればいいんだよ。って言うかこれ君が言ったことだぞ。
取り敢えず、僕はここで君の帰りを待つつもりなんだが……納得してくれたかい?」
今度は納得できたのか、何度も首を上下に動かす。
「オッケー! そういうことなら先に行かせてもらうぜ」
言うが早いかジャックはクロードを置いて駆け出した。が、ある程度進んだところで一旦振り替える。
「くれぐれも、俺より先にアーチェに見付かるなよ!」
その後、ジャックが再び背を向け走り出したのを確認すると、クロードはゆっくり腰を下ろす。
「おーい! アーチェ! いるんだろ! 返事してくれー!」
前方から聞こえてくる叫び声は、非常に頼もしく感じられると共に、何故か強い不安を覚えた。
■
アーチェは赤く腫れた瞼を擦りながら、漸く立ち上がったところだった。
今もネル達に対する罪悪感は消えない。彼女達の最期を思い出す度に、その場に崩れ落ちそうになる。
それでも彼女は自らの足で前へ進む。それは、ジャックやクロードといった恐怖の対象から逃げる為である。
そして、それ以上に彼女の仲間達に会いたいという思いが、ゆっくりだが確実に前へ進ませる。
ところが、彼女の歩みは僅か数歩で終わってしまう。
声が聞こえたからだ。恐怖の対象の。ジャック・ラッセルの。
「おーい! アーチェ! いるんだろ! 返事してくれー!」
この声を聞いた途端、彼女の恐怖は大きく膨れ上がる。そして、歩みは走りに変化した。
アーチェは走る。近くに迫っているであろう恐怖から逃げるために。
ジャックの眼差しを思い出す。氷のように冷たい、自分を疑うあの眼差しを。
それを思い出すことで恐怖はますます大きくなる。あの時、ジャックは自分を疑ったのだ。それは見間違いではない。
では、そのジャックは何故自分を探しているのだろうか? 自分など放って置けばいいのに、何故そうしなかったのか?
答えは容易に想像出来た。
――わたしが敵だからだ……ネルを殺したわたしを……殺しに来たの?
「〜〜〜ッッ!!」
今のアーチェは、自分が何処を走っているのかを、何処を走って来たのかを、
ジャックの声が何処から聞こえて来たのかすら解らなくなっていた。そしてそのことが、
「アーチェ!」
彼等を引き合わせることになった。
658 :
CROSS:2008/01/30(水) 01:52:00 ID:QPBTjeslO
「よっしゃ! やっぱりアーチェだ」
今、アーチェの前方にはジャック・ラッセルがいた。数時間と同じ声で、同じ調子で喋っている。
アーチェは、名前を呼ばれた時にジャックの方へ顔を向けてしまったが、それでも彼の目だけは見ないようにした。
あの時と同じ目をしているかもしれなかったからだ。あの目を二度と見たくなかったからだ。あの氷のような冷たい目を。
「やっと見つけた」
先程自分が想像したことを思いだし、全身に震えが走る。歯がカチカチと音を鳴らす。
「おい、どうした!?」
その姿を見たジャックは、前へ一歩踏み出す。勿論これはアーチェを心配しての行動だが、それが逆に彼女を追い詰める。
『キ』
「いやあぁぁぁああ!!」
悲鳴を上げて逃げ出そうとするが、直ぐに転倒してしまった。
只でさえ疲労が溜っていたのに、ここまで全力疾走して来たのだ。彼女の足は既に限界だった。
「あああぁぁああぁあぁぁぁぁあ!!」
「アーチェ……」
『ウ』
アーチェは、もう逃げられないことを悟ったのだろうか。両手で耳を塞ぎ、悲鳴を上げながら蹲った。
ジャックは、こういう反応をされることも想定していたのだろう。この反応を見ても余り動揺を見せなかった。
ただ、さらにもう一歩前へ踏み出し、
『ビワ』
「俺の話を聞いてくれッ!」
耳を塞いでいるアーチェにも聞こえるように大声で叫んだ。アーチェは相変わらず耳を塞いだままだが、悲鳴は止まっていた。
それだけを確認すると、ジャックは話を続ける。
『アト』
「ごめんアーチェ! 疑ったりして悪かった! お前がそんな奴じゃないことくらい解ってたつもりだったのに、本当ごめんなッ!
それに、誰だって間違えることくらいあるもんな! 俺だって、サイネリアのクイズを四日連続で間違えたり、
間違えて副長の脛を蹴りつけて半殺しにされたり…『テ』…って今それ関係ないだろッ!」
自分で自分にツッコミを入れた後、続きを話す前に大きな溜息を吐いた。
「ふぅ」
『ワバクハ』
「兎に角、俺が言いたいのは、アーチェは悪く……あ〜、いや、ネル達のことは! ことは……、えっと、その、気にす……、
あああ、違う違う違う! そうだ、俺の言いたいことは、どれもこれもルシファーが悪いってことだッ!
ネル達と一緒に話しただろ? ルシファーがこのゲームを始めたのが全ての元凶なんだ!
こんなクソゲームさえ無ければ、俺もお前も、クロードも、団長に大隊長、リドリー達みんながこんな思いをしなくて済んだんだッ!
そうだろ! 違うか! 俺達の所為でネルと夢瑠が死んじまったことを忘れろとは言わねえ! むしろ忘れさせねえ!
だから、あの二人の為にもルシファーを打ちのめしてやろうぜ! 死んじまった人達の分も二人で一緒にぶん殴ってやろうぜッ! だから、
一緒に行こうアーチェッ!」
アーチェは、この話を途中から耳を塞ぐことなく聞いていた。顔を上げてジャックの方を見る。
今のアーチェは、ジャックがもうあの冷たい目をしていないことを理解出来ていた。
ジャックは少し緊張した面持ちでアーチェを見ていた。自分の言いたかったことがちゃんと彼女に伝わったのか確かめる為に。
659 :
CROSS:2008/01/30(水) 01:54:35 ID:QPBTjeslO
だが、彼等が視線を交すことは無かった。
『首和爆破まで後1秒――――』
その代わりとして小さな爆発音が、少し遅れて少女の悲鳴が辺りに響き渡った。
【G−4/夜】
【クロード・C・ケニー】[MP残量:80%]
[状態:右肩に裂傷(応急処置済み、武器を振り回すには難あり)背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(チェスターによって殴られ傷が再発)]
[装備:エターナルスフィア@SO2+エネミー・サーチ@VP]
[道具:昂魔の鏡@VP、荷物一式(水残り僅か)]
[行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す]
[思考1:ジャックの帰りを待つ。ジャックがアーチェの説得に成功した場合は、自分も彼女の誤解を解く]
[思考2:分校跡へ行き、参加者と接触できなければ平瀬村へ向かう]
[思考3:自分の潔白を証明してくれる人か仲間を探し、チサト達の誤解を解きたい]
[思考4:第一回放送の内容の把握]
[現在位置:F-03、F-04、G-03、G-04の4つのエリアが交わる場所の手前]
[備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません]
[備考2:目覚めたのが第一回放送後なので第一回放送内容は把握していません]
【F-03/夜】
【アーチェ・クライン】[MP残量:100%]
[状態:絶望感 罪悪感 重度の疑心暗鬼]
[装備:無し]
[道具:ボーリング球・拡声器]
[行動方針:仲間を探す]
[思考1:!?!?]
[思考2:チェスターに会いたい]
[思考3:みんなに会いたい]
[現在位置:F-03、F-04、G-03、G-04の4つのエリアが交わる場所の手前]
【G-03/夜】
【ジャック・ラッセル@RS 死亡】
【残り32人】
投下完了。
行数計算間違えた。
長々延長するし、書いてる途中さ行を入力しようとして電源ボタンを間違って押すことが3回もあったし、今回の俺駄目すぎるな。
新作GJ!
クロードがようやくまともなコミュニケーション取れたー!
主人公コンビキター!
…と思ったら(泣)
しっかし死亡ペースだけはホント落ちないなこのロワw
アーチェは相変わらず不幸まっしぐらだし、クロードは意志疎通した仲間失うしで
これからどうなるか楽しみだ。
乙!
あと数歩前に出ればセーフだったのになぁ…
投下乙!
え…ジャックーーー!!!!
新作乙
なんと言う不幸の連鎖!
意思疎通失敗するわ、誤解を解こうにも相手はすでに死亡してる(しかもかつての仲間に殺される)わ、
光の勇者様の不幸はいつになったら終わるんだ……
アーチェもアーチェでトラウマが更に増えるわで悲惨すぎる……
そして順調(?)に減っていく対主催、大丈夫なのか対主催!?
>>630が予言を的中させてる件
でもよ…冗談だぜ…ちょっと怪我しただけさ…
首が飛んだ?それがどうしたよ?こいつなら脅かす為にそれくらいするだろ…
どうせリバースドールかなんか持ってんだろ?いつまで死んだふりしてんだよ…立てよ…
なあ…おい、いい加減にしろよ?お前が死んだらラジアータ勢はどうなるんだよ…立てよ…早く立てよ…
ジャックーーーーー!!!
>>660GJ
嘘だといってよバーニィー!
じゃなかった…ジャック!
折角誤解を解くフラグが立ちかけたのにクロードが不幸すぎるw
ジャックの唐突な死で何故かナデシコのガイが死ぬ回を思い出したんだぜ。
もはや優勝EDの予感しかしない
今の脱出フラグ持ちって
・アシュトン(首輪多数所持)
・プリシス(首輪解析技術、工具と首輪所持)
・レオン(解析技術、もしくは考察可能)
・フェイト(首輪解析技術持ち?、脱出策考察中、ディストラクション)
・ソフィア(移送方陣修練中、コネクション)
・クリフ(首輪所持、エターナルソード所持)
・マリア(アルティネイション)
・偽ブレア(FD技術持ち?)
・レザード(首輪所持、移送方陣など脱出策考察中)
・クレス(時空剣技応用すれば何とかなるかも?)
こんな感じか?まだどれも決定打にはなりそうもないな。
つーか一番期待できそうなのがレザードな時点でやばそうな予感がプンプンするw
ところでエターナルソードってクレス以外でも使用可能なのか?
>>669 もしクレス以外の人間がエターナルソードの力を使おうと思ったら、
・何らかの方法でオリジンと交信する
・その上でオリジンに力を認めさせ、時空剣士として契約を結ぶ
の二段階のステップが必要。
このロワではTOSがクロスオーバーに使われてない以上、時空剣士が同時に複数いることも可能かも知れん。
ただ問題は、主催者側がエターナルソードの力に対して何らかのカウンターを用意している可能性が濃厚って点だがな。
そういや変態仮面がオリジンと契約するためのダイヤモンドの指輪を持っていたっけ
あれも場合によってはフラグになりうるな
つまり
・クラース(オリジン)
・ブラムス(!ダイヤモンド@クレスやクラースが死んだ時の保険)
が脱出フラグ持ちに追加か。
まあクラースに関しては、参戦時期によってはオリジンを修得していない可能性もあるけど。
ジャックってこれ首輪からの宣告聞いて無かったってことか?
そう
アーチェが喚いていた事と、アーチェに聞こえるように大声で喋っていたため首輪からの宣告が聞こえなかった
アーチェは耳を塞いでいて聞こえなかった
ジャックは自分が大声出してたせで聞こえなかったって事
そういや、カップルで男の方が先に死ぬのって初めてじゃね?
ミント、オペラ、アリーシャ、ミラージュとみんな女が先に死んでる
>>675やめてそんな事言うとクロードとかフェイトとかがあっという間に死んでくから。
クロードの苦労度は半端ないな
>>678 今もっとも死に近い場所にいるんだから自重しろ
>>676 むしろクロードは死ぬより大変な状況だと思うに1票
クロードは死ぬまでに何人に誤解されるかなぁwktk
そういや今更で修正とかできないだろうし、投下時に言われたと思うけど矛盾良い?
アルベルの左手、義手って事になってるけど、義手じゃなくて火傷した腕なのが公式設定の件について
>>682 なっ、なんだってー!
SO3は最近やったけど、その設定知らなかったよ。
さて、どーする?
1.アルベル書いた人で話し合って修正する。
2.その設定を見なかったことにする。
3.どーにもならない。現実は非情である。
ま じ で ?
いやSO3持ってないから知らんのだが、そうなのかっ!?
……何で誰も気付かなかったんだろw
マジ
SO3のファンでも義手だって思ってる人いるから、偶然義手だって思ってる人ばっかりだったのかも…
ゲーム中に左腕の説明は無かった(聞き逃した?)し、ここで義手って書いてあったからそういうもんだと思ってた。
攻略本とかに書いてあるのかな? そういうの買わないんだよ俺。
設定資料集に書いてある
どうしようね、これ…
うーん…アルベルが腕を義手だと言ってた話ってもう一年前だし、
その作者氏がまだ見てるか分からないしなあ。
今さら変えるとアルベルの戦闘描写や台詞もかなり変えなきゃならないし、正直修正は厳しいんじゃないだろうか。
てか俺SO3何回もやったのに全然分からなかった…。
どうでもいいが、クロードが「二股は良くない」と言ったとき
「お前が言うな…」と思ったのは俺だけじゃないはず
よく考えたらエリクールに義手作る技術なさそうだもんな。
設定資料集か。ゲーム中で明かされなかった設定なら、みんな気付かないのも納得かな。
で、マジでどうするよ。
後一週間くらい義手の話の書き手氏が現れるのを待つ。現れたらそこで話し合い。現れなかったら仕方ないけどこのまま義手の方向で。
ってところか?
変更点は
・左手のガントレット無し
・ネルに怪しまれたときの扉引っ掻きシーンをカット
・左手を切り落とされた後の行動
・オペラ戦
・戦闘後の行動
か?
ネルまではともかく、左手切断後が厄介だなぁ
別に切断しなくても「左腕を斬りつけられた」&「状態:左腕負傷(戦闘に支障大有り)」でいいんじゃないかな?
自分の書いたのが偉いことになってるみたいなんで来ました。
修正を書かせてもらえるならやらして下さい。
>>691さんが挙げた所の修正でいいでしょうか?
それとトリが必要になりそうなんでこれで行きます。
>>693 降臨乙です。
基本的には
>>691氏のものでお願い致します。
個人的には、鉄甲に関してはレナスの鎧の例もあるので、無しかレプリカかは好きな方でいいと思うけど。
今回の事態は、間違いを早期に発見・指摘できなかった俺達にも責任がありますので、行き詰まったり疑問点等がある場合は何なりと申し出てください。出来る限り協力します。
修正よろしくお願いします。
おお、書き手氏来た!!!!!!
アシュトン戦〜レナ達と合流した後はどうしようか?
>>695 当方に修正の用意あり。
後、オペラ死亡の話にもアルベルが出てますよ。
うい、オペラ死亡話作者です。こっちも修正しますよ。
すいません。
この場合の投下はしたらばにすればいいですよね?
一応該当ヶ所には修正を加えましたが、ザーッとやったんで寝た後に確認してから投下します。
うん、修正はしたらばでいいと思うよ。
したらばに修正を書いておきました。
確認してください。
確認して感想書いておきました
あと、wikiのアルベルの欄、「義手」を「ガントレット」に変更しました
>>700 乙です。
もしかしたらここからまた内容が変更される可能性もあるけど取り敢えず、
今回の変更ならば、俺が書いたやつは本文に影響はなさそうなので、82話のアルベルの状態表を↓に差し替えて下さい。お願いします。
【I-6/夕方】
【アルベル・ノックス】[MP残量:80%]
[状態:疲労、左手首に深い切り傷(応急処置済みだが戦闘に支障があり)、左肩に咬み傷(応急処置済み)、レオンを担いでいる]
[装備:セイクリッドティア@SO2]
[道具:木材×2、メイド服(スフレ4Pver)、荷物一式
レオンのデイパック(幻衣ミラージュ・ローブ、どーじん、裏に考察の書かれた地図、ボールペン、小型ドライバーセット、荷物一式)]
[行動方針:ルシファーの野郎をぶちのめす! 方法? 知るか!]
[思考1:レオンをレナとディアスに押し付ける]
[現在地:I-06 町中]
※木材は本体1.5m程の細い物です。耐久力は低く、負荷がかかる技などを使うと折れます。
40話の修正はこれでOKなのかな?
OKなら後は
>>702と66話、87話を修正すればアルベルの左手関係は終了だよな
82話のアシュトン戦は今のところ左腕関係ないけど、書き手さんはこのまま修正しないで良いのかな?
>>704 はい。66話の修正内容によっては変わる可能性もありますが、現状ではこのままで問題ないと思ったのですが……
どこかに左腕の怪我に関連したことを加えた方がいいですかね?
>>705いえ、書き手さんがこのままで良いと思うなら書き加えなくても良いと思います
応答が遅れてスミマセンでした。
卒研が忙しくてここに来るのも久々で…。
とりあえず66話でレナたちがアルベルの傷をどうするかで微妙に変わってくるのでその時に修正を投下します。
その頃には暇になってるといいな…。
>>689 遅レスだが、あの星には自立型ロボがあったりフェイズガン作れる連中がいるから義手くらい余裕なんじゃないの
遅れてしまい申し訳有りません。66話の作者です。
その時のディアスがアルベルを発見したときの状況を
こちらに向かって歩いてくる人影。
遠目からはよく分からないが、背丈の高さからして男のようだ。
やがて男は姿がはっきりと分かる位置にまで歩いてきた。
左腕には、肩まで届こうとかという位のガントレットを装着している。まるで義手のようだ。
重要なのはこの男がゲームに乗っているか否か。
ゲームに乗っているなら始末し、そうでないなら信頼できる人間かどうか見極める必要が…。
と修正。
それから状態表を
【I-06/午後】
【アルベル・ノックス】[MP残量:90%]
[状態:左手首に深い切り傷(応急処置済みだが戦闘に支障があり)]
[装備:木材]
[道具:木材×4、メイド服(スフレ4Pver、濃縮自在の為万人着用OK)、荷物一式]
[行動方針:ルシファーの野郎をぶちのめす!方法?知るか!]
[思考1:もっとマシな武器が無いか探す]
[思考2:左腕の代用品の調達または修理]
[思考3:しばらく氷川村での散策を続ける]
[現在位置:I-06、町中]
※木材は大体1.5m程の細い物です。耐久力は低く、負担がかかる技などを使うと折れます。
以上のように修正します。問題がなければwikiの方も自分で修正しておきます。
>>709 修正乙でした
>>708 そういう技術が優れてるのってグリーテンだけじゃない?
アルベルのいたアーリグリフは技術的にはシランドよりも劣るって設定だった気が
グリーテンの技術で作られた義手を輸入、って可能性も考えられなくはないが、あの情勢じゃ無さそう
流れ切ってちょっと質問します。
・時刻【夜】では既に辺りは真っ暗でいいのか?
・レオンの腕は完全に治ったのか?
夜の方は別に詳しく描写しなくてもよさそうだが一応。
多分真っ暗にはなってんじゃない?
レオンの腕はどうだろ?完全に治るには時間かかりそうな気もするが。
その辺りは作者氏本人に聞きたい所だな。
>太陽は完全に沈み、外は闇に包まれていた。
この文からすると、真っ暗っぽいな
月明かりがあると結構明るいが、月はどの状態なんだっけ?
>>712 腕の傷は完全に完治で、接合も出来ています。
元の傷が傷なので、感覚が戻って思い通り動かすのは次の放送まで出来ないって事でどうでしょう。
茜空だったから月は出てると思うよ
>>715 今は思い通り動かせないは賛成。いつ元通りになるかは書いた人勝ちで良くないかな
いや、月は出てる(曇ってない)と言っても、満月と新月じゃ違うでしょうと
719 :
712:2008/02/17(日) 01:39:59 ID:3uSbv8eCO
皆さんサンクス。
取り敢えず、
・【夜】では辺りは暗くなっている。
・レオンの左腕は完治したが、うまく動かせるようになるには時間が必要。
は確定ってことでいいんですよね。
後、アルベルを予約するのは今は止めた方がいいですかね?
アルベルだけって事?別に構わないんじゃないかな。他の連中休んでるみたいだし
どうなんでしょ?
個人的に問題の箇所に触れなきゃアルベルやってもいいかなとは思う
ていうか村周辺密集しすぎて難易度高ぇ\(^O^)/
これが中盤というものか……
氷川村はアルベルチームとプリシスアリューゼ
平瀬村や鎌石村なんてマーダーだらけだしなw
そしてそこに単身突っ込むヅラムス
良さそうなので、
プリシス、アリューゼ、レナ、ディアス、レオン、アルベル、ガブリエル
を予約します。
これは期待せざるを得ない
wktkが止まらない
予約ッ!期待せずにはいられないッ!
「ッ!!」を見るとワイルドアームズ連想する
誰か……携帯厨に成り下がった俺の代わりにwikiを……
時間無くて一話分しか編集できなかった。メンゴ。
で、時間が無いんじゃなかったのかとか、同じパートばっか進めやがって、というツッコミは無しで…。
クロード、アーチェ、クレス、マリア、チェスターを予約します。
あ、すいません。
クロードは第一回放送の事をジャックからどんくらい聞いてるんでしょうか?
内容的に禁止エリアとかは聞いて無さそうですが、ノエルの生死などは知ったんでしょうか。
>>730 その辺りはめんど……ゲフンゲフン、敢えて書かなかったので、お好きなようにどうぞ。
一応、ジャックは途中までだが放送のメモを取っていたようだけど。
予約しにきたら面子丸被りで吹いたww
応援してるぜっ
放送うんぬんは好きに決めるがいい!
そろそろ予約期間を決めちゃわないか?
ずるずる自動延長するようじゃ締め切り効果もやってこないし
このロワは予約から投下まで空くことが多いから長めに1〜2週間がいいと思うんだが
個人的には10日を推す
嗚呼、間違いなく俺のことだなorz
遅筆な俺としては10日だと有難い。
wikiめっちゃ更新されてる!
更新してくれた人乙!
つか、そろそろ次スレだね。あと一作くらいは大丈夫かな?
作品のサイズによるからなんとも……
つーか次スレテンプレには予約期限を入れたいんだが10日でいいんだろうか?
あ、今推敲中なんだが、22KBある。次スレ立てたなきゃ駄目だな。
予約期限は10日でいいと思うけど、他に何かテンプレに付け足すものってあるかな?
ちょっとテンプレ直してみた。
過去スレの追加、褒美の「?」の消去、生存者、禁止エリアの修正。
他にある?
>>739 取り敢えずそれでおkじゃないかな?
後、予約していたものをしたらばに投下しておきました。
感想遅れてすまん。乙!
おいおい…ただでさえ対主催ピンチなのに仲間同士で争ってる場合じゃないだろw
ディアスとガブリエルの一騎打ちもどうなるかwktk
氷川村は大集団できかかったけどうまい具合にばらけさせられてGJ!
しかしレナレオン、そんな方向行くとまた空気になるぞw
今気付いたぜすまん
氷川村はどんどんカオスになっていくなw
下手すりゃここにアシュトン混ざるんだぜ……
なあ、結局次スレはどうするんだ?
頼めるかな?
現在久々にPC触れれてるから書き手紹介書いてんだけど、何かつけて欲しい細くとかある?
すいません、色々あって遅れてしまいました。
投下終わったら新スレ立ててみます。
訳が分からなかった。
ジャックがあたしの所へ来て。
最初はあたしを殺すつもりで来たのかと思ったけど。
ジャックはそんなつもりは全然無かったみたいで。
私に、一緒にルシファーを倒そうと言ってくれた。
でも…。
いきなりだった。
ボンって音がしたと思ったら、ジャックが突然倒れて。
そしてジャックの首から上が無くなってることに気付いて。
叫ばずにはいられなかった。
その直後に、誰かの声がして。
あたしはその場から逃げ出した。
何でジャックが死んだのか。何で逃げ出したのか。
全部分からない。
もう自分が何をしてるのか、何を考えているのかも分からなかった。
遅い。遅すぎる。
クロードは木々の枝の隙間から暗くなった空を見上げ、ジャックを待っていた。
しかし彼がアーチェの所へ向かってから既に二十分近く経っている。
探知機で見たアーチェの位置は決して遠くなかったし、そろそろ何らかの反応があってもいいはずだ。
まさか道に迷ったって事は…いやさすがにそれは無いだろう。…多分。
それでもジャックと別れた時に感じた不安がどうしても消えない。
(ジャックは自分より先に見つかるなって言っていたけど…)
やはり心配だ。自分も行ってみることにしよう。
説得中でも、見つからないように遠くから様子を見ていれば大丈夫だろう。
物音を立てないよう、注意深く歩きながらジャック達(がいると思われる)方向へ向かった。
(そろそろだよな?)
月明かりを頼りにクロードは地図を見る。
アーチェと思われる光点があったのは、F-03、F-04、G-03、G-04と4つのエリアの境界が交差する位置だった。
かなり近づいてきている筈だが話し声や物音も一向に聞こえてこない。
あれだけ大声で喋っていたジャックの事だ、説得の際も大声を上げていると思っていたが…。
ここなら彼らと合流後、分校に行く事も容易だ。いや、彼らが仲間になってくれるなら分校よりホテルへ向かうべきか。
そんな事を考えながら歩いていた時だった。
「きゃああーっ!」
突如、クロードの耳に女性と思われる悲鳴が飛び込んできた。
(い、今のは…!?)
「ジャック?」
悲鳴がした方に問いかける。だが返事は来ない。
その代わりにと言わんばかりに人が走っていくような足音がした。
そしてその音は遠ざかっていく。
(まさか!?)
嫌な予感が膨れあがる。クロードはすぐに声がした方向へと走った。
そこで彼が見たのは、うつ伏せに倒れていた死体だった。
「ジャ、ジャック――――!?」
その死体は首から上が吹き飛んでいたが、着ている服からジャックだと分かる。
クロードが慌てて駆けつける。だが死体に近づいた時、クロードの付けている首輪から音声が発せられた。
『禁止エリアに抵触しています。首輪爆破まで後30秒』
「な、何だって!?」
聞こえてきた声に思わず後ずさる。ほんの少し下がった所で音はやんだ。
すぐにコンパスと地図を取りだして現在位置を確認する。
(さっきまで僕がいたのはG-04…ここがさっきまでアーチェがいた場所だとするとF-03、F-04、G-03、G-04の交点近くか…。
て事は、G-03が禁止エリアって事か?)
だとすると、ジャックは禁止エリアに入った事で首輪が爆発して死に至ったのだろうか?
いや、今自分自身が禁止エリアに進入したが、首輪からは警告音声が発せられていた。
三十秒以内にエリアから脱出できなかったのか?しかし警告はエリアに入ってすぐに出されるのだからそれも無いか…。
それよりここにいた筈のアーチェはどこに行った?さっき聞こえた人の声は彼女のものなのだろうか?
もしかしたら、ジャックを殺したのは…。
…ダメだ。状況に混乱して冷静な思考ができない。
とにかくハッキリしているのはジャックが死んでしまった事。そして、アーチェはここにはいない事。
自分の誤解が解けたかどうかも分からない。
(ジャック…)
改めてジャックの遺体を見る。ほんの僅かな間だけだったが、この殺し合いで初めてまともにコミュニケーションを取れた相手だ。
少し抜けた所もあるが、正義感の強い頼りになりそうな人間だった。
そんな彼の遺体をこのままにしておくのは気が引ける。
クロードは再度ジャックの遺体の下へ向かった。
首輪から警告音が出るが気にしない。三十秒間は大丈夫なんだ。
遺体とジャックの荷物を担いで禁止エリア外に出る。
吹き飛んだ首から上の部分はあまり見ないようにして、上から土を被せた。
「ジャック…君の無念は僕が晴らす。アーチェも、リドリーって子も助けてみせるから…」
遺品となってしまった首輪探知機を見てみると、自分の付近に光点がある。
恐らくこれがアーチェだろう。
(だけど一人で行って、僕の話を聞いてくれるのか…?)
頼みの綱だったジャックを失い、あんなに怯えた様子だったアーチェを自分一人で説得できるだろうか?
だがこのまま彼女を放っておく訳にもいかない。自分の為にも、ジャックの為にも。
どの道分校へ行くという手段は無くなったんだ。
クロードがアーチェを追おうと一歩を踏み出した、その時。
「あれは…!?」
北の夜空に、地面から煙のようなものが立ち上っているのが見えた。
あの方向には確かホテルがあったはず。
ホテルの方角から煙…。嫌な思考がクロードの頭の中を支配する。
まだあそこにはチサト達がいるかもしれないのだ。もし彼女に何かあったら…。
こうしてはいられない、すぐにホテルへ戻らなければ。
クロードは走り出すが、しかしまた一歩を踏み出した所で足を止めてしまう。
今自分がホテルへ行ったらどうなる?
まだチサト達の誤解を解ける人も見つけていない。例え駆けつけたところで話がこじれるだけではないのか?
それに、アーチェを放っておいたらまた誤情報が広まるかもしれない。
これ以上自分に無実の罪を着せられるわけには…。
バシッ!とクロードは自分の両頬を叩いた。
(しっかりしろクロード・C・ケニー!お前はこの期に及んで、自分の保身を一番に考えるのか!?)
仲間が危ないかもしれないのだ。自分が疑われる?危険になる?そんなの関係無いだろ!
既に三人の仲間を失っている。これ以上仲間を失わずにすむなら、自分の事なんてどうでもいいんだ!
クロードは後ろを振り返り、ジャックを埋葬した場所に頭を下げる。
「ごめんジャック。でも、僕の仲間が危ないかもしれないんだ。チサトさん達を助けたら、絶対アーチェも助けに向かうから」
一礼をすると、クロードはホテルへと真っ直ぐに走り出した。
【F-04/夜】
【クロード・C・ケニー】[MP残量:85%]
[状態:右肩に裂傷(応急処置済み、武器を振り回すには難あり)背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(多少回復)]
[装備:エターナルスフィア@SO2+エネミー・サーチ@VP、スターガード]
[道具:昂魔の鏡@VP、レーザーウェポン(形状:初期状態)、首輪探知機、荷物一式×2(水残り僅か)]
[行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す]
[思考1:ホテル跡へ向かい、チサト達を助けて誤解を解く]
[思考2:チサト達の安否を確認した後、アーチェを追って誤解を解く]
[思考3:第一回放送の禁止エリアの把握]
[思考4:リドリーを探してみる]
[思考5:アーチェの行動に疑問]
[現在位置:F-04、森]
[備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません]
[備考2:第一回放送の内容の内、死亡者とG-03が禁止エリアという事は把握]
PCおかしくなったからwiki更新途中で投げちゃったよ支援
すいません…
何かこっちもおかしくなって書き込めなくなりました…
続き、したらばに投下します
PCが完全に死んだから代理投下はできないが乙!
嗚呼、何故だろう……命を失ったのに「カワイソス」より「解放されてよかったね」って気持ちの方が強いや………
投下GJなんだぜ
また対主催が一人逝ったんだな……
最後は仲間に会えて、少しだけ救われただけマシかもしれないが
そしてクロードの包囲網が何気に拡大してて吹いたw
GJ
まともな精神状態で逝けてよかったなアーチェ……全然よくないか。
ところで、書き込めなくなった原因は『一行目を空白にしたから』だな。
空白を削れば書き込まれると思うけど、それでも駄目なら言ってくれ。代理投下するから。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「う、ううん…」
体が痛い。頭の中が朦朧としている。
だがこうして意識を保っているという事は、僕は無事なのだろうか?
「目が覚めた?」
マリアさんの声がする。
そうか。マリアさん、無事だったのか。
僕もこうして生きているって事は、あの男から逃げることが出来たのか…。
痛む頭を抑えながらクレスは起き上がった。
どうやら森の中のようだ。あの男に襲われた時、最後に力を振り絞って空間翔転移を放ったのは覚えているのだが…。
その後の記憶は全く無い。
既に周囲は暗くなり始めている。随分長い時間気を失っていたようだ。
「マリアさん、大丈夫でしたか?」
近くにいたマリアに話しかける。
「ええ、私は大丈夫。クレス君の方が遙かに重傷よ。自分の体を心配しなさい」
「あ、すいません」
「別に謝る事じゃないんだけど」
マリアはそう言うが、クレスは歯痒い思いだった。
ミントの死に動揺して、マリアを危険な目に合わせて。
結局襲ってきたあの男を倒すことも叶わず、離脱できたのはいいがここまでずっと気を失っていたなんて…。
(情けないな…)
自分は何をやっているのだろう。何がアルベイン流剣術師範代だ。何が時空剣士だ。
女性一人も、愛する人も守れずに。
「クレス君」
俯くクレスにマリアが話しかける。
「あまり自分を責めるのは止めなさい。少なくとも、私は貴方に命を助けられたわ。貴方もまだ生きている以上、出来ることがある筈よ。
今は落ち込んでる暇なんて無いわ。後悔するのはルシファーを倒してからにしなさい」
ピシャリとそう言い切るマリア。
クレスは無意識の内に思わず「は、はい」と返事をしてしまった。
どうもこの人には逆らえない。彼女が自分の母親と同じ名前である事も原因かもしれないが。
「ところで…僕はどの位気を失っていたんですか?もう結構遅い時間のようなんですけど…」
「大体4時間程度かしら?クレス君が目を覚ます少し前に二回目の放送があったから」
「放送が…!?」
クレスの顔に動揺の色が浮かぶ。
また誰か仲間の名前が呼ばれたのではないか。そう考えると気が気でない。
「安心して。クレス君の仲間の名前は呼ばれていないわ」
そんなクレスの心情を察したのか、マリアはそう前置きした。
そしてこれまでの経緯…自分達が転移した後、ボーマンという薬剤師に助けられた事などを話した後、放送内容を語った。
「これで26人…もうそんなに…」
確かに死亡者の中にクレスの仲間の名前は無かった。むしろ敵であるジェストーナの名前が呼ばれたのは朗報だ。
人質を取ったりと卑怯な手を使う奴だ、この殺し合いにも乗っていたに違いない。
実際は強敵を倒すために自ら犠牲になったなど思いもしないだろう。
しかしチェスター達が無事なのは良かったが、命を落としてしまった13人の人達の事を考えると手放して喜ぶことはできない。
それに…。
「マリアさん…」
「どうしたの?」
「その…ロジャー君って子とネルさんという人は…」
そう、ロジャーとネル。放送で呼ばれたという彼らはマリアの仲間だったはずだ。
だがマリアには悲しんでいる様子はほとんど無い。
「私の事は心配しなくてもいいわ。それにお互い敵対していた人物も死んだようだし、悪い事ばかりじゃないわよ」
「…」
悲しくないんだろうか?
いや、仲間が死んだのだ。幾らなんでも全く平気という訳では無いだろう。
そこまで冷酷な人とも思えないし、きっと心の中では――。
「もし自分の仲間が命を落としたとしても、それに耐える事ができる?」
マリアと会った時に聞かれた質問を思い出す。
あの時自分は「耐えてみせる」と言った。それなのにこのザマだ。
恐らく耐えているであろうマリアに申し訳が立たない。
あの時自分が言った事を思い出し、クレスは今一度決意を固めた。
ルシファーを倒すまで、絶対に自分は挫けないと。
「それじゃ悪いけど、すぐに移動を開始するわ」
「今からですか?」
「ええ、平瀬村へ向かうわよ。これから夜になって見通しが悪くなるし、いつまでも森の中へいるのは危険だわ」
「分かりました」
こうして二人は歩き出した。
森の中は見通しが悪く危険なため、注意深く辺りを見渡しながら進んでいく。
程なくして、二人は平瀬村まで到達した。
「どこか村内で拠点になりそうな所を探しましょうか」
「そうね。でも村は他の参加者に会える可能性も高いけど、敵も多く集まってくる可能性もあるわ。今まで以上に警戒するつもりでね」
特にクレス君は怪我もしてて武器も無いから特に用心する事」
「大丈夫ですよ。これでも少しは体術もできますし、武器が無くても多少は戦えます」
「そう。でも怪我をしてるのは変わらないのだから無理は禁物よ」
周辺は完全に闇に包まれている。ランタンなどを使えば多少明るくなるが、それではマーダーなどがいたら格好の獲物にされてしまう。
道を歩いていけば迷う事はないし、このままでいるのが得策だろう。
そして歩き始めて数分。
「クレ、ス…?」
背後からした少女の声にクレスは振り向く。
そこにいたのは、共に旅をした頼もしい仲間の一人。
底抜けに明るくて、パーティーのムードーメーカーだった少女。
アーチェ・クラインだった。
「アーチェ!無事だ…」
「クレス!クレスゥゥーー!!」
クレスが何かを言おうとする間も無く、アーチェは彼の下へと飛び込んできた。
「ちょ、ちょっと、アーチェ…」
「クレス…あ、あたし…ああ、あたし……!」
狼狽えるクレスだが、アーチェはそれをお構いなしといった風にクレスに抱きついたまま泣きじゃくった。
「…知り合い?」
背後からマリアが聞く。
「は、はい。僕の仲間です。アーチェといって…」
クレスはしどろもどろになりながら答えた。
そしてその最中、立て続けに再会が訪れる。
「クレス!」
聞こえた声の主は、頼もしい親友のものだった。
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『残った36人で張り切って殺し合ってくれたまえ…。フフッ、フハハハハハッ!』
ルシファーがそう言って二回目の放送は終わった。
午前中と同じく13人もの死者が出るなか、自分の知る名前が出なかったのは幸運だ。
だが喜べるわけがない。
犠牲者の中には子供や、戦う力の無い者がいたかもしれない。
そして今こうしている間にも命の危機に瀕している者がいるかもしれないのだ。
現にボーマンの話によると、クレスは怪我が酷いらしい。誰か、殺し合いに乗った奴と戦ったのだろうか?
「あのオッサンの話だと、この辺にいる筈なんだけどな…」
E−2の森までやって来てクレス達の姿を探すが、彼らを発見する事は出来ない。
その内に周囲は暗くなって、数m先も見るのが困難になってきた。
「もしかしたら、もう移動した後なのか?」
有り得ない話ではない。ボーマンは彼らと会ったと言ったがいつ会ったかは言っていない。
もしかしたら怪我も多少回復してどこかへ移動したという可能性も否めない。
チェスターは地図を広げ、もう僅かになった空の明かりを頼りにそれを見る。
「この周辺で移動しやすい箇所っていうと…やっぱ平瀬村だよな」
もし二人が移動済みだとしたら、やはりすぐ近くの村へ向かったと考えるのが妥当だろう。
元々平瀬村へ向かう予定だったのだ。それに運が良ければ昼間会ったルシオという男に再会できるかもしれない。
放送で名前が呼ばれてないのなら、彼もまだ生きている筈だ。
そしてやって来た平瀬村で、チェスターはクレスと再会する事となる。
しかも、彼だけでなく。
「アーチェ…お前も無事だったか!」
もう一人の大事な仲間とも。
良かった、本当に良かった。
ダオスを倒してから、一体どれほどこの時を待っていただろう。
ここまで色々な事があったけど。
例え今が殺し合いゲームの真っ直中だったとしても。
みんなに会えただけで、今までボロボロだったあたしの心は安心感に満たされていく。
あたしはこれまでの事を正直にみんなに話した。
最初にジャックに会ったこと。
得体の知れない男に襲われたこと。
ネルさんを誤って石化させてしまったこと。
そして金髪の男に襲われ…ジャックが目の前で死んでしまったこと。
全て話した。
ネルさんを石化させた話をした時、マリアという人の表情が一瞬変わったような気がしたけど、何も言わなかった。
「あの野郎、アーチェまで襲ってたのかよ!」
チェスターが何やら激高している。
こいつの話だとその金髪の男はクロードという名前で、分校で女の子を殺して燃やし、さらにホテルでも人を襲っていたみたい。
そんな奴に襲われて、よくあたしは無事でいられたなあ。
「大丈夫だよアーチェ。ミントの分まで僕達が頑張ってルシファーを倒してやろう」
クレスが励ましてくれる。
ミントが死んじゃって、一番悲しいのはクレスのはずなのに…。
「ネルは私の仲間だった人よ。でも、彼女は助けようとした人を恨むような人間じゃない事は保障するわ。安心しなさい」
やっぱりそうか。ネルさんとマリアは知り合いだったんだ。
彼女を殺しちゃったのはあたしなのに、マリアはあたしを許してくれるのだろうか?
…ううん、許してくれなくてもいい。でもそういう言葉をかけてくれるのが嬉しかった。
「おいおいどうしたよ、何かいつものアーチェらしくないじゃねえか」
チェスターが軽口を叩く。
いつもなら速攻で言い返す所だけど、もう体がクタクタで言い返す気力が無い。
とりあえず休みたいなあ。
「はは、アーチェも疲れてるんだろ。ここまでずっと走りっぱなしだったんだから」
クレスがあたしとチェスターの間に入る。こんな光景も久しぶりね。
全く、チェスターも少しはクレスを見習って他人への気配りってのを考えてよね。
「何だ、だらしねえな。…あ、疲れてんなら、これ食うか?」
そう言ってチェスターが何やら薬のような物を取り出す。
「チェスター、それは?」
「秘仙丹だっけな?体力回復の効果があるらしい。ボーマンって薬剤師に会った時貰ったんだが、お前らも知ってんだろ?」
「ボーマンって…確か僕を助けてくれた人ですよね、マリアさん?」
「ええ、そうね。彼が渡した物なら信頼できるわ」
「ホントはクレスに渡そうと思ったんだけどさ…、何かアーチェの方がヤバそうだし。べ、別にお前の為に貰ってきたわけじゃないんだからな」
何故か目を逸らしながら薬を渡してくるチェスター。
全く、こいつホントに素直じゃないんだから。ま、あたしも人の事言えないんだけどさ。
「ま、チェスターがそこまであたしの事を心配してるんなら仕方ないわね。もらっとくわ」
そう言って秘仙丹を受け取る。チェスターは心配なんてしてねーよ!と騒いでいるが放っておこう。
今はあたしも疲れてて、あんまりチェスターの相手をしている余裕がない。
ま、疲れが取れたらあたしだって本気を出してやるわ。
ミントやネルさん、…ジャックの分まで。
あのルシファーって奴をぶっ飛ばして、みんなで元の世界に戻るんだ。
そんな事を考えながら、アーチェはチェスターの渡した『秘仙丹』を飲み込んだ。
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どうなってんだよ。
これは体力が回復する薬じゃないのか?
何でだよ…何でだよ!どうなってるんだよ!
どうして、どうしてだ!どうしてこんな事になっちまったんだ!
「あああああああああーーーーーーーーっっっっっっ!」
爆散したアーチェの遺体を前に、チェスターの慟哭が響き渡った。
【F-02/夜中】
【クレス・アルベイン】[MP残量:30%]
[状態:右胸に刺し傷・腹部に刺し傷・背中に袈裟懸けの切り傷(いずれも塞がっています)、HPおよそ15%程度、混乱]
[装備:ポイズンチェック]
[道具:なし]
[行動方針:ルシファーを倒してゲームを終了させる]
[思考1:一体何が!?]
[思考2:平瀬村を捜索]
[思考3:武器を探す(できれば剣がいい)]
[現在位置:平瀬村内北東部]
【マリア・トレイター】[MP残量:60%]
[状態:右肩口裂傷・右上腕部打撲・左脇腹打撲・右腿打撲:戦闘にやや難有、混乱]
[装備:サイキックガン:エネルギー残量[100/100]@SO2]
[道具:荷物一式]
[行動方針:ルシファーを倒してゲームを終了させる]
[思考1:状況の把握]
[思考2:平瀬村の捜索]
[思考3:他の仲間達と合流]
[現在位置:平瀬村内北東部]
【チェスター・バークライト】[MP残量:100%]
[状態:全身に火傷、左手の掌に火傷、胸部に浅い切り傷、肉体的、精神的疲労(重度)、混乱]
[装備:なし]
[道具:エンプレシア@SO2、スーパーボール@SO2、チサトのメモ、荷物一式]
[行動方針:力の無い者を守る(子供最優先)]
[思考:不明]
[備考:チサトのメモにはまだ目を通してません]
[現在位置:平瀬村内北東部]
【アーチェ・クライン 死亡】
【残り31人】