テイルズ オブ バトルロワイアル Part4

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313Jamming with Sel-Delqes 5:2006/02/17(金) 00:46:56 ID:pFp5uHC2
「さて諸君、食事も大分進んだところで第49回漆黒の今後について語る会議を
始めたいと思う!!」
グリッドの発言に2人の目がグリッドに向けられる。どうやらユアンの策は的中したようだ。
ただしこんなふざけた会議名にしろとは一言も言っていない。
「では大食らいのユアン、説明を頼む!!」
ため息を付きながらユアンは3人を見据える。
「まず、現状の戦力確認だ。セイファートキー、ソーサラーリング、ナイトメアブーツ
マジックミスト、ジェットブーツ、C・ケイジ、 占いの本、フェアリィリング …以上が我等の所持品。
この中で確実に戦闘に使えるのは2つのブーツとC・ケイジ、フェアリィリングのみだ。
あの戦場を五体満足に生き延びるためだったとはいえ我等の戦力は疲弊している。
次も胡椒が効く相手が来るとも限らんし、今後はより一層厳しい展開を強いられるだろう。」
言葉を止めてユアンはグリッドを見る。そして
「ここで解散といっても納得しない奴が確実に一名いるので却下。
では次の目的地についてだが、現状あと3時間足らずで放送が始まることと
主催者が意図的に我等の拠点を潰してきた可能性を考えると迂闊に拠点を作るわけにもいかん。
そこで一時的にD5の山岳地帯を押さえる。」
314Jamming with Sel-Delqes 6:2006/02/17(金) 00:47:59 ID:pFp5uHC2
「山…ですか?」
カトリーヌは恐る恐る尋ねる。彼女の職業を考えるに登山は心苦しいものがあるだろう。
「案ずるな、あくまで仮の目的地だ。そこで放送を聞いて次の拠点を再検討する。
第二回の放送を聴く限りどうやらあの主催者はかなりのお喋りの様だ。上手くすれば
禁止エリアの傾向と死者の推移から全体の状況を把握することができるかも知れん。
C3の情報もだ。中央ならば全局面的に対応も可能、
最悪、篭城することになった場合水源の確保という点を満たしているしな。
今から出発すれば到着するころに放送が流れるだろう。リーダー、依存は無いか?」
監視のシステムを誤解している漆黒の翼は迷い無く主催者のことまでも口に出す。
そしてユアンは会議の最終プロセスとして形式的に一応聞いてみる。予想通り返ってくる答えは、
「うむ、承認!!」
315Jamming with Sel-Delqes 7:2006/02/17(金) 00:49:22 ID:pFp5uHC2
荷物をまとめ、所持品の分配を行う。上級魔術が使え、そしてその更に上の使用を目指すユアンに
フェアリィリング。下級とはいえ晶霊術を安定して使えるカトリーヌにC・ケイジ。
逃走を円滑に行うためにブーツを女性二人に。護身用としてプリムラにソーサラーリング。
残りの雑貨とマジックミストを全部グリットに。
グリットは「やはりリーダーたるもの仲間より多くのアイテムを管理しなければならんしな!」
とあまり深く考えていないようだ。
安全のためユアンとグリットが先行のため先に出発する。
女性二人が火の始末を完璧に終えると、ふと1つの物が目に留まった。
「これ何?…青い蝶々?」
怪訝そうに「それ」を見るプリムラ。
「かわいいですね〜」
恐れもせずそれに指を近づけるカトリーヌ。指が「それ」に触れたと思った瞬間
「痛ッ!!」
「それ」は音も立てず消えてしまった。
「大丈夫、カトリーヌ?」
近寄るプリムラに安心の笑顔を振りまく。
「大丈夫です。少し指から血が出たくらいで。」
プリムラがもう少し詳しい事を聞こうとしたがグリッドが大声で
こちらを呼ぶ為、慌てて二人の下へ急ぐ。
316Jamming with Sel-Delqes 8:2006/02/17(金) 00:50:27 ID:pFp5uHC2
この怪現象を二人に話すと、
「はっはっは。普段の行いが悪いとそうなるのだ。このグリッド様なぞ…」とグリッド。
「この世界の動植物は極少だろうがどんな生き物がいるか分からん。気を付けろ」とユアン。
などとのたまうものだから女性二人も気にすることを止めた。
ただユアン一人だけが
(…制限されているとはいえ私の聴覚で捉えられない羽音、在り得るのか?)
と自身の疑問の項目に1つ刻んだ。

「それ」が霞と消えた瞬間の同時刻。
4人組から少し離れた所。そこにいた1つの生き物が啼いた。
人の発音でないそれは言語には表せないが、
その漏れる感情はひどく無邪気で、なんとなく言ったことが分かる気がする。
それはかくれんぼが鬼ごっこに変わる合図。


−−見ぃつけた。


317Jamming with Sel-Delqes 9:2006/02/17(金) 00:51:14 ID:pFp5uHC2
【グリッド 生存確認】
状態:異常なし
所持品:セイファートキー 、マジックミスト、占いの本
基本行動方針:生き延びる。
       漆黒の翼のリーダーとして行動。
第一行動方針:D5山岳地帯へ移動
現在地:F5の森

【プリムラ・ロッソ 生存確認】
状態:異常なし 
所持品:ソーサラーリング、ナイトメアブーツ
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを磔にして島流し決定。
第一行動方針:D5山岳地帯へ移動
第二行動方針:出来ればC3行きを提案
現在地:F5の森

【カトリーヌ 生存確認】
状態:TP9/10 
所持品:ジェットブーツ、C・ケイジ
基本行動方針:帰りたい。生き延びる。
第一行動方針:D5山岳地帯へ移動
現在地:F5の森

【ユアン 生存確認】
状態:TP1/2消費 砂鉄が体にくっつく
所持品:フェアリィリング
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを信用していない。
第一行動方針:D5山岳地帯へ移動、放送を聴く。
第二行動方針:漆黒の翼を生き残らせる
第三行動方針:漆黒の翼の一員として行動。仲間捜し。
現在地:F5の森

【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
所持品:UZI SMG(30連マガジン残り2つ) ショートソード(体内に取り込んでいる) 要の紋なしエクスフィア(シャーリィの憎悪を吸収中、ひび割れあり)
状態:エクスフィギュア化 腹部の傷は再生完了 TP30%消費 (強化型テルクェスの使用)
基本行動方針:憎悪のままに殺戮を行う
第一行動方針:放送と同時に4人組に襲撃
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
現在地:F6

318Jamming with Sel-Delqes 2修正:2006/02/17(金) 01:46:26 ID:pFp5uHC2
誤)「いや待て、私も確かにご飯が食べたいとは言ったがこのような食事を設けると言ったのは
ユアンであって…って2人とも私の話を信じて無いだろ。」

正)「いや待て、俺も確かにご飯が食べたいとは言ったがこのような食事を設けると言ったのは
ユアンであって…って2人とも俺の話を信じて無いだろ。」

です。まとめの方で修正をお願いします。
319Jamming with Sel-Delqes 1修正:2006/02/17(金) 01:57:17 ID:pFp5uHC2
誤)「探偵と自負するあたしでも流石に二足歩行の凡用牛型決戦兵器なんて見たこと無いわ。」

正)「探偵と自負するあたしでも流石に二足歩行の汎用牛型決戦兵器なんて見たこと無いわ。」

です。御手数おかけします。
320悲しみの先にあるものは―― 1:2006/02/18(土) 01:10:27 ID:corqBsGA

「う……」

突然鳴った爆発音でトーマは目が覚めた。
身体中が草まみれだったが、トーマは気にしなかった。
その頭にあるのはただひとつ。ミミーのこと。

「ミミー! ミミーはどこだ!?」
「ク……」

その言葉に答える者は1匹の動物……クイッキーだけ。

「クイッキー! ミミーは……ミミーはどこにいるんだ!」
「ク〜〜……」

トーマのその問いにクイッキーはただ首を横に振り答えた。
その様子に違和感を感じ、不安になるトーマ。
辺りを見回しても人らしき姿は見当たらない。
見えるのはクイッキーとG5の町。そして、1体の首がない死体。

――死体?

トーマははっとした。
まさか……あれは……
もう一度その亡骸に目を向ける。それは見覚えのある服を纏っていて――

「ミミー? ウソだろ?」

トーマは体を震わせながらゆっくり首のないミミーへと向かっていった。
そこにクイッキーが止めに入る。

「クイッキ〜〜!!」
「どいてくれ、クイッキー! 俺は……ミミーを!!」
「クイッッッキィィィ〜〜〜!!」

トーマの目に再びミミーの亡骸が映った。
首のない死体。放置されている支給品袋。
決して頭はよくないトーマだったが、それを見て何が起きたかはなんとなく想像できた。

「まさか……ミミーは……?」

トーマはその場で崩れ落ちた。
閉じた目から零れ落ちるのは一滴の水。
ずっと忘れていた悲しみの涙。
321悲しみの先にあるものは―― 2:2006/02/18(土) 01:12:46 ID:corqBsGA


『いらっしゃいパン!アナタは最初のお客様パン。大サービスするパンよ!!』
――こんな俺を温かく迎えてくれたミミー……


『じゃあミミー特製のキッシュを焼くパン!きっと牛さんも驚くパン!』
――まだキッシュとやらを作ってもらってすらいないのに……


『これが終わったら、あまり得意じゃねえが、髪飾りでも作ってやるよ。頭がさびしいだろ?』
――俺も……まだその約束を果たしていないのに……



――――どうして……こんなことに……



「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

トーマは吼えた。ミミーを失った悲しみ、ミミーを守りきれなかった自分への怒りを吐き出すように。
何時間声を出し続けただろう。そんな時、ふとある人物の言葉が頭をよぎり、トーマは吼えるのを止めた。

――望むなら死者でさえ蘇らせてやろう。

それはゲームの勝者は願い事をひとつかなえられるという主催者ミクトランの言葉。
そのときは馬鹿馬鹿しいと思った。だが今は――

「クイッキー。ミミーの持ち物を取りに行ってくれないか?」
「クィ……?」

クイッキーから支給品袋とメガグランチャーを受け取り、トーマはゆっくりと立ち上がった。
その目はまるで獲物を狙う猛獣のように恐ろしく……

(待っていろ、ミミー。俺が必ず……)

トーマは北西の方角へと歩き出した。
ただ一つ残された希望にすがるために――
322悲しみの先にあるものは―― 3:2006/02/18(土) 01:14:03 ID:corqBsGA
【トーマ 生存確認】
状態:深い悲しみ 右肩に擦り傷(軽傷) 軽い火傷 TP小消費
所持品:ミスティブルーム、ロープ数本 、メガグランチャー、ライフボトル、ウィングパック×2 イクストリーム 金のフライパン マジカルポーチ ペルシャブーツ
基本行動方針:ミミーを蘇らせる
第一行動方針:北西へ向かう
現在位置:F5の平原

クイッキー
状態:不安
基本行動方針:トーマについていく
323Making the Final Strike 1:2006/02/21(火) 14:21:55 ID:h9irQ0un
 ダオスは、悟った。
 もはや自分に残された時間は、そう長くない事を。
 草原の真ん中に、ぽつねんと生えた一本の木。その幹に寄りかかった金色の魔王は、両の手を閉じ、開き、また閉じる。
 肉体も、あちこちが痛い。否、これはもはや痛いなどというレベルではない。十分に激痛といっていいレベルだろう。
 魔術「サイクロン」で刻まれた裂傷。「サンダーブレード」や「イラプション」で受けた火傷。「ロックマウンテン」で被った無数の打撲。
 この世にある、ありとあらゆる怪我の博覧会といった様相。まさにダオスは、満身創痍だった。
 両の手を開閉するたびに、痺れるような痛みが脳天まで駆け上ってくる。だが、その痛みさえも、まだ生きている証と考えれば、愛おしくさえある。
「…………」
 ダオスの双眸には、西の空にかかる太陽が映っていた。あと数時間もすれば、この島にやって来てより、二度目の夕日を見ることになろう。
 それでも、どれほど運命の女神に懇願しようと、次の朝日を拝むことは出来まい。ダオスは自らの肉体が訴える痛みから、その命の終焉を告げられていた。
 シルヴァラントとテセアラ。二界が再び統合されてより、遥かなる未来。ダオスはその未来のデリス・カーラーンの大地にて、生を受けた。
 かつてクルシスが生み出した無機生命体、天使。その血を引くダオスは、アセリアの大地に住まう人間に比べ、霊的な器官が発達している。
 そしてその霊的器官は、すでに根幹をずたずたに寸断されている。体内に溢れるマナの「痛み」から、それを窺い知る事が出来る。
 魔杖ケイオスハートから繰り出されたモリスンの魔術は、ダオスの肉体を物理的に傷付けるだけでは飽き足らず、ダオスの体内の霊的器官までも、破壊していたのだ。
 今すぐ死ぬことはない。だが、この命はもって、あと半日強というところ。半日強の時が過ぎれば、ダオスは確実に死神の鎌にかかる。
 それはすなわち、この事実を示している。
 デミテルの張ったダオス撃破の布石、それは工程こそ違えど、結果的には完璧なものに仕上がっていたことを。
 クレスという騎士(ナイト)は、モリスンという僧正(ビショップ)と共に、ダオスという王(キング)に王手(チェックメイト)をかけたのだ。
 ここから西…午後の太陽に照らされる海。ただその海は、ひたすらに青い。ダオスは彼方の海を見つめながら、1つ溜め息をついた。
 気合、根性、奇跡。
 その手の精神論を信じてみるか? ダオスは一瞬限りそんな思いに駆られたが、すぐさま愚かしいと切り捨てる。
 体内の霊的器官を、ここまで完膚なきまでに破壊されれば、もはや例外はない。
 ダオスは断頭台(ギロチン)にかけられ、刑の執行を待つだけの死刑囚も同然。
 例え人がどれほど肉体を鍛えようと、どれほどの知恵を身につけようと、どれほどの武勲を成そうと。
 水を呼吸することは出来ない。パンと水を摂らずに生き続ける事は出来ない。睡眠を必要としない体にはなれない。
 そこには、「なぜ」も「どうして」もない。不条理なまでの、摂理の押し付けがあるばかり。
 ダオスの今の状況も、それと同じ。何をどうあがこうと、もはや下された天命からは、逃れることなど出来ないのだ。
324Making the Final Strike 2:2006/02/21(火) 14:22:58 ID:h9irQ0un
 守ることの出来なかった聖女、マーテル。彼女の癒しの力がここにあったならば、肉体の傷は消えるだろう。多少の延命は出来るだろう。
 だが、そればかりは覆すことは出来ない。ここまで体内のマナをかき乱され、傷付けられては。待ち構える「死」を覆す事など。
 ダオスは、覆せない死刑宣告をただ、静かに受け止めていた。まるで今、彼が眺める海のように。心静かにダオスは瞳を閉じる。
 思えば、ここまで駆け抜けてきたのは、長い道のりだった。
 デリス・カーラーンの住人として生を受け。デリス・カーラーンの王の座に就き。デリス・カーラーンの大戦争を阻めず。
 デリス・カーラーン全土を巻き込む戦いの後、かの星からはマナが枯渇した。
 マナそのものの大地たるデリス・カーラーンからマナが枯渇するなど、その戦争の凄まじさは推して知るべし。
 終戦後、ダオスはデリス・カーラーンの古文書をひも解き、母なる星の命を救う手段を求めた。狂おしいほどに、来る日も来る日も。
 そして見つけ出した手段はただ一つ。
 かつてデリス・カーラーンの伴星であった、シルヴァラントとテセアラ。そこに残されたマナを生む樹より、「大いなる実り」を得ること。
 遥かなる星辰の海へ旅立ち、ダオスはその星に降り立った。シルヴァラントとテセアラを統合し再誕した、アセリアの大地へ。
 乾きつつある自身の血で彩られた手。ダオスはそれを見やり、今までの所業を思い返す。
 この手で振るった指揮で、あるいはこの手で放った魔術で。私は、どれほどの人間を殺して来たのだろう、と。
 大いなる実りを得るために邪魔になる存在は、全て薙ぎ払って来た。
 魔科学。魔科学を学ぶ者。ミッドガルズ王国。アセリアの大地に降り立ってよりこの方、幾千幾万という単位の命を滅ぼして来た。
 最初は、アセリアの大地の民に、協力を求めようと呼びかけた。世界樹ユグドラシルの大いなる実りを収穫するために、力を貸してくれと。
 だが、ダオスの真摯な懇願は、一蹴された。
 この世界の実相を、遥かなる星デリス・カーラーンを、ダオスの知り得た全ての真実を、アセリアの民に語った。
 果たしてその真実は、アセリアの民に理解されることはなかった。
 たわ言を口にする愚か者となじられ、狂人とそしられ。そこでダオスは、大いなる実りを独力で手にする断を下したのだ。
 いかなダオスとは言え、最初はアセリアの民を虐殺することはためらった。ためらいがなかったといえば嘘だった。
 だが、真実を語っても、なお理解しない愚か者どものために、デリス・カーラーンの十億の民を見殺しにするなど。
 デリス・カーラーンの王としての重責を担うダオスには、出来ない相談であったのだ。
325Making the Final Strike 3:2006/02/21(火) 14:23:58 ID:h9irQ0un
「…私が、間違えたというのか…」
 自らが滅ぼした命に思いを馳せたダオスは、ふとそんな言葉が口をついて出た。
 ダオスが滅びれば、デリス・カーラーンで待つ十億の民の命運は決する。逃れようのない、滅亡への命運が彼らには下るのだ。
 すなわち。
 あと半日で、デリス・カーラーンの命脈は断たれる。マナそのものの豊穣の大地は、星の海に浮かぶ醜い岩塊へと変わるのだ。
 絶望。この満身創痍の身で、このゲームに勝利するなど。
 もはやダオスは、モリスンが奪いきれなかった、命のほんのひとかけらでここにいるに過ぎない。
 ダオスは、両の手でその頭を抱えた。王としての責任を果たせぬ無力感、大切な人を守りきれなかった憤り…濁流のように駆け巡る。
 だが、この気持ちを、無念を、汲み取る者はもはやいない。彼はただ、孤立無援…
 否。
 ダオスは突然、金の髪を振り乱して、その頭を持ち上げた。
 まだ、希望は残されている。残されているはずだ。
 ダオスはそこで、短いながらも行動を共にした、あの少年らを思い出していた。
 例えば、ロイド・アーヴィング。不器用で未熟で浅慮な少年だが、誰かを犠牲にして得る「幸せ」への忌避感は、誰よりも強かった。
 例えば、リッド・ハーシェル。一見は無気力で事なかれ主義の少年だが、その目には弱者への慈しみが満ち溢れていた。
 おそらく彼らなら、このゲームを勝ち残った暁に、この願いをあのミクトランに告げるはずだ。
 「このゲームの参加者全員を蘇生させた上で、各人を故郷に送り返してくれ」、と。
 当初ダオスは、ミクトランのこの言葉を信じてはいなかった。ゲーム終了後に全員を蘇生させるなど、はなはだ馬鹿馬鹿しい話だ。
 おそらくは、ゲームに消極的な人間を揺さぶるためにかけたブラフであろう。ダオスはくだんの言動を、そう解釈していた。
 だが、今の満身創痍の自分には、あの言動がブラフではないことに賭けて、わずかな希望にすがる以外、状況を打破することは出来ない。
 それでも、希望が残されているだけまだましというもの。わずかでも光があれば、人はそこを目指して歩くことが出来る。
326Making the Final Strike 4:2006/02/21(火) 14:24:45 ID:h9irQ0un
 そのために、今ダオスが出来ること。その答えは、容易に浮かんだ。
 残されたわずかな時間を使って、可能な限り多くのマーダーを道連れにすること。
 ロイドやリッドのようなかすかな希望の灯を、私利私欲や狂気に駆られた、マーダー達に吹き消されるわけにはいかない。
 あの異形の怪物と化した少女や、かつて自らの居城で剣を交え、また先ほどマーテルを冥界に送り去った少年…
 可能な限り、彼らをこのゲームから脱落させる。特にかの少年…クレスからは、きな臭いものを感じる。
 過去に一度剣を交えて分かったことだが、彼はあんな虐殺を、平然と行える性格ではない。
 良くも悪くも、クレスの剣は純真な剣だった。汚い打算や欲望抜きに振るわれる、青臭い剣筋だった。
 それが、ああまで人殺しに禁忌を抱かぬ、殺人鬼の剣に変わったとあれば、何者かがよほどの衝撃を彼に与え、手駒にでもしたとしか思えない。
 そして、ダオスが思い当たる筋であり、かつこの島に呼び寄せられた者の中で、その「何者か」に該当する人間は、ただ1人。
「…もしや……デミテルの差し金か!」
 ダオスの軍門に下った人間やハーフエルフの中でも、特に切れ者であったデミテル。
 自分の手を汚すことなく、他者を意のままに踊らせ、自滅させる…
 そんな漁夫の利をさらうような戦略を練ることにかけては、彼はダオスですら時に驚嘆するほどであった。
 無論、犯人をデミテルと断定するには、材料が決定的に不足している。
 だが、仮にもデリス・カーラーンの王である自身が、ただ状況に流される他ない…そんな状況がこうも続いていては、ダオスもそう勘繰りたくもなる。
 この状況と、そしてかつてデミテルが、ダオス軍の参謀として立てた戦略…
 そのとき見知ったデミテルの戦法の「癖」を照合すると、俄然この一件の立役者の筆頭候補に、彼が浮かんでくる。
 この状況は、彼が参謀として立てた戦術論の特徴と、かなりの一致を見ているのだ。
 ダオスがこうまで抵抗を許されない状況に追い込まれたのも、彼の差し金と考えれば、まだ納得いく。
 ダオスの人となりをある程度理解している彼なら、ダオスを手の上で踊らせる事も可能であろう。
 だが、デリス・カーラーンの王たる彼とて、いつまでも彼に踊らされるわけには行かない。
 彼には担うことなど出来まい…デリス・カーラーンの十億の民の命など。下克上などという下らない理由のみで、あの男に勝利を与えるわけにはいかない!
 デミテルを葬り去るために、今のダオスに出来ること。
327Making the Final Strike 5:2006/02/21(火) 14:25:33 ID:h9irQ0un
 ダオスは震える手で、皮袋に手を差し入れた。中から取り出されたのは、羽ペンと、そして羊皮紙。
 羽ペンにインクを浸し、一息ついてから筆を振るう。軽妙洒脱に、一文字一文字を書き込んでゆく。
『この手紙を見る者へ…願わくば貴公が、ロイド・アーヴィングやリッド・ハーシェルのような、他者の幸せを願える優しき者であることを…』
 その一句から始まった羊皮紙。それは、まさしくダオスの遺書であった。
 そこには、今のダオスの心境を、推測を、持ちうる全ての情報が記され、そしてダオスの思いの丈が綴られていた。
 C3の村の悲劇の真相。
 その悲劇の裏から、恐らくは糸を引いていたであろう、デミテルという危険な男の存在への警告。
 ダオスが今までマーテルを守り続けた理由。
 デリス・カーラーンを襲った悲劇と、その救済策。
 ダオスが、アセリアの地に降り立ち、戦った経緯。
 アセリアの地で犯した、償いきれない大罪。
 それらを書き上げながら、ダオスは締めの一文に、こう書き加えた。
『このバトル・ロワイアルというゲームは、狂気という名の猛毒に満ち溢れている』
 それは、ダオスがこの島に降り立ってからこの方、常々思ってきたこと。
『たとえ心優しき者でも、その優しさゆえに毒を受け、怒りに、憎悪に、その身を焼かれることもある。
私もこの目で、その末路を辿った者を見た。いかに聖人君子たれど、彼や彼女もまた人である以上、この猛毒に蝕まれる危険は常にある』
 ダオスの脳裏に、あの少女の姿がよぎる。
 最初マーテルの介抱を受けながらも、兄の死ゆえに、狂気という名の猛毒を受け、果ては異形の怪物と化した、あの少女の姿が。
 それだけではない。この島に呼ばれた人間のうちの、幾人が倒れたのだろう。
 自らを守りたいと。愛する者を守りたいと。自らや他者を愛するという尊い気持ちゆえに、殺人という罪を犯し、そして死んでいった者達。
『自分だけは大丈夫と、狂気などには屈しないなどと油断するなど、ゆめゆめあってはならない。
人が自らを、他者を愛する限り、いつでも人は猛毒を注がれる余地を持つ。
されど、人を愛する気持ちを忘れるべからず。愛なくして、人は刃を握るべからず』
 マーテルがいてこそ、デリス・カーラーンの民がいてこそ、ダオスはここまで戦い続ける事が出来た。
 人を想わずして力を振るう…それこそ、ただの殺人鬼に過ぎないのだ。
『もし貴公が狂気という名の猛毒に屈しようとしたならば、この手紙が…手紙にこもった想いが、猛毒をはねのけるささやかな一助となることを願う。
狂気に屈する事なかれ。その時は思い出せ。この手紙を記した者のことを。使命を果たしうることなく死んだ、この非業の男を』
328Making the Final Strike 6:2006/02/21(火) 14:26:21 ID:h9irQ0un
 最後の文章は、ダオス自身見ていてたまらなくなり、思わず目を背けた。
 ダオスは羊皮紙を小ぎれいにたたみ、封蝋代わりにそれを紐で封じた。
 ダオスに与えられた時はあと半日。泣いても笑っても、半日ばかりなのだ。こうしている間にも、死神は徐々に背後に迫ってくる。
 その後は、鳶色の髪の少年や、赤髪の少年…彼らのような者に遺志を託せることに、一縷の望みを賭けるしかない。
 そのために、恥を忍んでしたためた遺書だ。彼らに仇なす存在は、全て打ち払う!
「覚悟しろ…」
 呟きながら、立ち上がるダオス。
「デミテル…クレス…シャーリィ…この島に残る、多くの忌まわしき殺人鬼ども…!!」
 ダオスが今度見やったのは、南の空。マーテルを殺した殺人剣士クレスは、確か南に向かっていたはず。
 ならば、今後の針路の決定は、拍子抜けするほどに容易だ。
「貴様ら全員…デリス・カーラーンの名の下、この私が葬り去ってくれる! 我が母なる星の命の灯は、貴様らには吹き消させん!!」
 そう叫ぶダオスの脳裏では、クレスを豹変させた黒幕を確実に葬り去るための策が、急速に組み上げられていく。
 豊饒の大地を統べる男は、壮烈な覚悟を背負って、この島の土を再び踏みしめ始めた。

【ダオス 生存確認】
状態:TP残り70%  HP1/8 死への秒読み(およそ半日後に死亡) 壮烈な覚悟
所持品:エメラルドリング  ダオスの遺書
基本行動方針:死ぬまでになるべく多くのマーダーを殺害する
第一行動方針:C3の件の黒幕を、クレスもろともに断罪する
第二行動方針:遺志を継いでもらえそうな人間は、決して傷付けない
現在位置:C3南部 村の郊外の草原
329黄昏の海 1:2006/02/21(火) 23:21:36 ID:CpaMKu4p
辺りは程無くして夕焼けに染まっている。
その風景からも分かるとおり、時刻は夜へと変わるための準備をしていた。
コレットは無言で夕日を見つめる。
果たしてそれは、睨んでいるようにも見えるし、眺めているようにも見える。
だが今のコレットの前にはそのような情景の概念も無に等しい。
ただ、コレットの向く方向に夕日がある。それだけのこと。

金髪の父親は以前その意識を夢の中に移行させたまま。
この状況下の中、スタンはどんな夢を見ているのか。
その隣で家族は団欒とその時を過ごしていた。
E2の城跡に待機をしている一行はその間、リアラの持っていた最後の所持品の解析をしていた。
「わかんない…説明書とか無いもんなぁ、コレ」
カイルはソレを手にとりマジマジと見つめる。かれこれ一時間以上そうしているのだが、結局分からず終いになっている。
「なんだか属性を記すような絵柄が描かれていますけど…」
ミントも揃えて怪訝に見る。カイルの手にあるソレは自分の世界にも無いものだと認識させる。
「私も最初に確認したときはよく分からなかったんだけど…私たちだけじゃ駄目みたい」
最後にリアラが言葉を添える。
初めてこの袋の中身を確認したときは頭が混乱していて的確に見ることが出来なかった。
しかしこの場所で待機することになってようやく身も落ち着いたことに気が付いたリアラは、未だ正体不明のソレを皆に見てもらうことにした。
一見ソレはただのカードに見える。絵柄形からしてタロットに見えなくも無い。
正しくソレはエターニアの反面世界、セレスティアで大流行しているカードゲーム『ウィス』だった。
だがエターニアの世界に属していないカイルとリアラ、それにミントは当然このカードの用途が分かるはずも無く、
「そうだな…俺たちじゃ太刀打ち出来ないよ…」
結果、得体の知れないモノにただ時間を費やしただけに終わる羽目になった。
気付けば日が沈みかけていることにミントは気付く。
「あら、もうこんな時間ですか」
言葉に反応したカイルは時計を見る。
確かに、もう少しすれば第三回の放送がこの島に響き渡る時刻を指していた。
「なんでこんなに夢中になってたんだ…ただカードを見てただけなのに」
カイルは驚きのあまりそんなことを口にする。
得体の知れないものを観察するのに費やした時間がわからない。カイルはなによりそのことに驚いていた。
それは恐らくカイルだけではなかっただろう。
リアラもミントも、結局はこのカードの正体が分からないままなのに、それだけに経た時間に実感が持てないでいた。

単純な話、このカードゲーム『ウィス』には時間の感覚を無くさせる効果があるだけのこと(気のせい)
それはカードで遊んでいようが遊んでいまいが、『ウィス』の前に人間は時の経つ感覚が早く感じてしまうのだ(気のせい)

330黄昏の海 2:2006/02/21(火) 23:22:17 ID:CpaMKu4p
――コレットが その眼差しの方を変える

それは確実に北を向いている。そのことに真っ先に気が付いたの
はリアラだった。
コレットの様子に気付いたリアラはその傍による。依然として彼女は北を向いたまま。
「コレット、どうかしたの?」
反応が返ってこない事はわかっていたのだが、リアラは声を掛ける。
その向きを変えることなくただ北の方角を見つめるコレットにつられてリアラも見やる。
が、そこには何もないただの草原。
だがリアラには、コレットのその映す目がさっきまで夕日を見ていた目と若干違うことに感じていた。
ただ眺めているわけでは無い。何か。
「リアラ?どうしたの?」
カイルが心配そうに声を掛ける。
リアラは返答に困ってもう一度コレットを見た。
瞬間、リアラの身体が上空に浮かぶ。
「…え?」
いや、正しくはコレットがリアラを片手で持ち上げていた。
「うわ、コレット!? 何する気だよ!?」
慌ててカイルはコレットの行動が何を意味するものなのか理解しようとしたのだが、あまりの突然にやはり把握しきれない。
「コレットさん!? 一体何を…」
口に手をあててミントもその様子に驚く。
コレットはそのままミントの傍まで近づき、同時に
「ひゃっ!」
もう片方の手でミントを持ち上げた。
カイルは何がなんだか益々分からずに事が終わるのを待つしかない。
コレットは二人を抱えたままE2の跡に出来た四方の窪みに投げ下ろす。
そこはかつて拷問部屋だった場所で地下だけがポッカリと開いてしまった穴だ。
少々荒っぽかったが、地下に下ろされたリアラとミントはコレットの行動が分からないのでしばらく言うことを聞くしかない。
二人を地下に降ろすと今度は眠っているスタンを持ち上げて、同じように地下に降ろした。
ミントとリアラに下で支えながら下ろされたとはいえ、それでも起きない父親にカイルは少なからずとも(何故か)尊敬の念を覚えた。
そして、気付く。
ここからなら、カイルのいる地上からはリアラたちの姿が全く見えないことに。
わざわざ地下の窪みまで覗き込まなければ人の姿が確認できない、そこは広い草原の中の唯一の死角となっていた。
地上にはカイルとコレット。地下にはリアラとミント、そしてスタン。
コレットがこの構図を作った意味を、カイルは
「一体何を…?」
やはりまだ理解出来ないでいた。
だが、即座にコレットの視線はまたしてもその方向を向く。
カイルは習って同じ方向を見て、そしてやっと理解した。
「誰かいる…」
そこには確かな一つの人影。

331黄昏の海 3:2006/02/21(火) 23:23:03 ID:CpaMKu4p
「感じるよ…姉さまの器が…」
かつてマーテルだったものにミトスは喋りかける。
だがそこにマーテルの姿は無い。あるのはただ、姉を思うが故に生まれた歪んだ愛のみ。
ミトスはその歩を確実に進めていた。
姉の器となるための少女の元へ  姉を甦らせるという悲願の元へ
ミトスは確かに感じていた。姉と似た、マナの形。
そこには微かな嫉妬も感じる。
姉さまと同じマナの匂いを持った奴がいる。
そのことに対してミトスは少しの不満をもっていた。
この世に姉さまは一人だけでいい。自分の姉さまは一人しかいない。
だが、それは所詮生贄の少々たる抗いに過ぎない。
姉の器になれば、また姉さまは一つになる。一人になる。
今はただそれだけが彼を動かす無二衝動。
それを願とする全ての事を姉のために。
彼の目にはただ、姉の姿しか映っていなかった。
そして遂に、ミトスはその望を垣間見る。
目に映る先に、その少女がいる。器があるのだ。
まるで目の前にご馳走が用意された、そんな感覚をミトスは覚える。
目の前にソレはある 手の届くところまで来ている
躊躇う要素がどこにあろうか。知らずにミトスは足を速めた。
あと何メートルだろう、待ち遠しい、もどかしい。
「姉さま!!」
ミトスは歓喜のあまりに叫んでいた。

332黄昏の海 4:2006/02/21(火) 23:23:35 ID:CpaMKu4p
盲目、その一言に尽きる。
ミトスは喜びのあまりにその姿を確認できないでいた。
確かに目の前にいるのは、名簿でも確認した通り姉の器となる少女。名はコレット。
だがどういうことかその少女は既に心が失くなっていた。
これは確かに好都合だった。器となる身体に二つの心は相容れない存在である。
よって少女の心は強制的に排除して、無理やりマナを詰め込もうとしていたのだが、別段これは手間が省けたといっていい。
だが、問題はここから。
その心無き少女がこちらに刃を向けているのだ。
ミトスは足を止める。行動方針の存在が無い彼女に何故攻撃の意志があるのか。
無機結晶症を塞き止めるために付けられた要の紋。
だが結果的にそれは中途半端な形で外されている。
しかも例には無い自分の力によってで外されたもの。
徐々に味覚、感覚、睡眠を削っていき、最後にその器を完成させる過程を、コレットは別の形で作ってしまっている。
だがやはりそれは、別の形でしかない紛い物。
どこかで綻びが出来るそれは、ミトスに驚きの感情を与えていた。

盲目、この一言に尽きる。
何故自分は安易に近付いてしまったのだろうか。
何故彼女がたった一人と思ってしまったのか。
実際にはコレットの隣に少年が立っているではないか。
その少年は真っ直ぐに自分を見つめている。
ミトスは知らずにその足を後退させていた。

…後退? 何故僕が?
怖れているのか、彼女の不意な出来事に。

…怖れる?一体何に?
器は既にその準備が整っているではないか。跡は姉さまのマナを注入すればいいだけ。

決心は出来た。自分は何のためにここにいるのか。
「全ては姉さまのため…!」
ミトスはゆっくりとその双剣を構えた。

333黄昏の海 5:2006/02/21(火) 23:24:14 ID:CpaMKu4p
その人影は、徐々に距離を詰めてくる。
次第に速度を上げるその人影は真っ直ぐにこちらへと向かって来た。
カイルはコレットのとった行動を今になってようやく理解したのだ。
おそらく、スタンは負傷しているので地下に避難させ、
リアラとミントは近距離を得意としないので戦闘は不向き。
だが二人には二人の戦い方がある。
リアラはレンズを用いた晶術による攻撃。
ミントは法術を用いた補助、そして回復。
それはおそらくこちらがピンチになってからの話。
地下の二人もおそらく気付いただろう、今はおとなしくしている。
そして今戦うことが出来るのは消去法でカイルとコレットの二人だけ。
成程、切り札は最後までってのはよく言ったものだな。
カイルはその人影を見つめながらそんなことを考えていた。
そしてとうとうその人影は姿形を確認できるまでの距離にまで来ていた。
カイルは目をこする。確かに見間違いではない。
やって来るのは自分と幾分か違うであろうだけの少年だったからである。
あんな少年もこのゲームに参加しているのか…。
カイルはまた一つこのゲームの忌々しさを感じる。
そうしてその少年はこちらの元へと辿り着いた。
だが今度は少年が驚愕しているように見える。
コレットを見て驚いているのだろうか。理由はどうあれ何故彼はこんなところまで来たのだろうか。
カイルは声を掛けるタイミングを完全に失ってしばらくその様子を見つめていた。
だがその数秒後、突然に少年は剣を抜く。
その光は二本。二つの刃は完全なる攻撃の意志。
「そんな…」
カイルは少年の意志に悲哀の念を抱くしかなかった。
何故こんな子供とも戦わなければならないのか。
何故このゲームはこうまでも人を狂わせるのか。
知らずに、カイルはその剣を抜く。

戦いの合図はあと少し――
334黄昏の海 6:2006/02/21(火) 23:25:05 ID:CpaMKu4p
「やめろよ!戦うことなんて何もないんだ!」
カイルは叫ぶ。自分に出来る精一杯の説得。
だがミトスの心にその意志は伝わるだろうか。
否。全ては姉さまのため。
「邪魔をするならお前、殺すよ」
その眼光は辺りを凍らせる。
身動きできないカイルは、感じる。
狂気、凶気、それ以外に何と表現しようか。
もうこの少年は手遅れだ。直感的にカイルは感じる。
バルバトスよりも、危険だ。直感的にカイルは感じる。
向けられた刃も、銃口に見える。
彼が気まぐれで引き金を引けば自分の命は消える。
そんな心臓を握られた黒々とした感覚。
思わず顔を背けたくなる。この間の与える一分一秒が死の匂い。

――俺は、そんなに意志の弱い人間なのか?

――こんなところで死んでもいいほど、俺はどうでもいい人間だったのか?

見つけた…私の英雄…

カイルは瞳に光を取り戻し、剣を握る拳に力を入れる。
そしてポケットに入ったままの謎のカードを一枚取り出して上空に弾いた。
ミトスは別段気にする様子も無く、その行為を許す。
ひらひら
心無き人形は銃剣を少年に向ける。
ひらひら
想いの為に動く少年は双剣を構える。
ひらひら
少女と約束を守る為に少年は剣を構える。

カードが地面に落ちた時  戦いは始まった

335黄昏の海 7:2006/02/21(火) 23:25:56 ID:CpaMKu4p
【スタン 生存確認】
状態:アバラ三本損傷  睡眠 
所持品:ディフェンサー ガーネットオーガアクス
第一行動方針:傷が治るのを待つ
第二行動方針:C3村へ向かう
第三行動方針:仲間と合流
第四行動方針:ジョニーが気になる
現在位置:E2城跡  地下

【カイル 生存確認】
状態:健康
所持品:フランヴェルジュ 鍋の蓋 フォースリング ラビッドシンボル(黒)(割れかけ) ウィス
第一行動方針:敵意を向ける少年への対処
第ニ行動方針:C3村へ向かう
第三行動方針:リアラを守る
第四行動方針:クラトスの息子(ロイド)に剣を返す
第五行動方針:ハロルドが気になる
現在位置:E2城跡

【ミント 生存確認】
状態:TP2/3
所持品:ホーリィスタッフ サンダーマント
第一行動方針:地下で待機
第ニ行動方針:C3村に向かう
第三行動方針:仲間と合流第四行動方針:クレスが気になる
現在位置:E2城跡 地下

【リアラ 生存確認】
状態:TP2/3
所持品:エクスフィア強化ロリポップ 料理大全フルールポンチ1/2人分 ピヨチェック、要の紋
第一行動方針:地下で待機
第二行動方針:カイルについて行く
第三行動方針:コレットを信じる
第四行動方針:ハロルドが気になる
現在位置:E2城跡  地下

【コレット 生存確認】
状態:TPほぼ回復 無機生命体化 (疲労感・精神力磨耗無視)
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(残弾0)
苦無(残り1)
基本行動方針:防衛本能(攻撃意思に対する完全抹殺及び不明瞭な干渉に対する威嚇)
第一行動方針:目の前にある明らかな敵意の排除
現在位置:E2城跡

336黄昏の海 8:2006/02/21(火) 23:27:17 ID:CpaMKu4p
【ミトス・ユグドラシル 生存確認】
状態:TP4/5
所持品:ロングソード、邪剣ファフニール、アトワイト、大いなる実り(この世界規模の)
基本行動方針:マーテルの復活
第一行動方針:マーテルの器(コレット)の確保
第二行動方針:魔剣エターナルソードの入手
第三行動方針:弱者として他人を利用する
第四行動方針:蘇生失敗の時は皆殺し
現在位置:D3南下中

337倒錯共生1:2006/02/22(水) 06:14:57 ID:6pAUWWru
彼は本来なら好青年という言葉をまさに体現した様な人物だった。
多くの人々と悲しみを共有し、その口は時には仲間を和ませ、握られた剣は己の思う悪に対して振られた。今までの人生はひたすら一途に歩まれてきた。
が、今の彼は違う。
その顔は悲壮どころか人間に於ける善の感情は全て排され、人々を穏やかにした口からは歪んだ笑みが浮かぶのみ。そして剣や己の纏う衣服には聖女の血が赤黒くこびり付いていた。
本来の彼、クレスアルベインはもういない。傍らの魔術師の男により、本来の彼は失われてしまったのだ。
脳の神経を侵され、彼に残ったのは戦士としての本能、闘争欲のみ。
生暖かい笑みを浮かべる彼は端から見ればかなり頼りない筈なのに、しかし誰もが畏怖するような邪悪さを孕む。
掴み所のないその薄笑いには何処か不安定な精神をごまかしているようにも見えた。
今にも爆発しそうな彼の欲求。
そう、例えば―――

彼を豹変させた張本人、デミテルはそんなクレスに注意を払っていた。例え操られようと、それから本来隠していた裏の人格が引き出されてしまった場合本能に引きずられてしまう事もある。
そう、まさに主に反旗を翻したデミテル自身の様に。
人は脆い。
生きる為にはまず常に本能へのリミッターを掛け、歩む道への地盤を固めねばまともに生きる事すら叶わない。
でなくば人は思い立てば食物を貪っては肥え、自慰に浸り、女、男、種族関係なく交わり合い犯し合い、人を傷つけ殺戮へと、いかれた荷車が坂を転がって行くが如く転落してゆく。
世の中は修羅の統べる地獄の世界へと容易に姿を変えるだろう。
クレスはまさにその世界への扉を開けるよう、ベリアルやベルセバブが招待状を持って耳元で甘美に囁いているような状態だった。欲するなら世界を思うように食らえばよい。それがお前の安息なのだからと。
しかしデミテルという主に仕えている以上、クレスはか細い神経一本でそれを押さえていた。
一見落ち着いては見えるが、実は操られた当初から己を落ち着かせるために片手で二の腕を掻き毟っていた。うっすらと血が滲む。
デミテルは最初からその様子に気づき、クレスへの警戒を緩めることは無かった。
なみなみに液体を注いだ杯を持って歩いている様なクレスの不安定さは危険因子になりかねない。しかし自身の知略に信を持つ彼は、警戒しつつもこの様なクレスをいかに最大限に利用するかに重きを置いていた。
338倒錯共生2:2006/02/22(水) 06:19:07 ID:6pAUWWru


その時だった。
東風が吹き、それが妙な臭いを運んできた。
酸っぱい様な…嗅ぎ慣れた臭いだった。
これは…
それに一番に反応したのがクレスだった。眼の色が変わり、デミテルらを無視して東へと歩き出す。
「何処へ行くのだ、クレス=アルベイン」
今までならばマーテルの一件を除いて基本的にはデミテルの意見を聞いていたクレスだが、その時はデミテルの言葉を聞き入れはしなかった。
無言で行動するクレスにデミテルはやや表情を険しくするが、この臭いにより動かされたクレスの行動が気になった。
十分に思いあたる節があり、危険も無いと判断したためとりあえず後を付ける事にした。金髪の少年の動向も気になるが、この臭いはそう遠くはない。仮に金髪の少年が戦闘という発破を掛けるとすれば、少し寄り道した位がメインデイッシュの時間には丁度良い位になるだろう。
「…お前も付いて来るがいい。ティトレイ=クロウ」
普段は完全に腑抜けの為、戦闘以外では蚊帳の外のティトレイにも呼びかけ、デミテルはクレスの後を追った。



そこには凄惨なる光景があった。
砂漠の入り口。
本来ならば金に輝いているであろう黄砂が、どす黒く染まって乾いている。
そしてその上にはひとつの死体。
強い衝撃を受けたのであろう、体の至る所が欠損し、しかも砂漠の入り口という中途半端な気温もあって腐乱が進み掛けている。どうやら赤い髪の女である事が分かった。
暑さの上、むん、とした死臭が鼻を突いた。
デミテルはこの女とは面識がないので誰かは分からなかったが、それは一日目にバルバトスとマグニスに惨殺された、マリー=エージェントだった。
死骸の前でクレスは無表情に立っていた。ひょっとして、腐り行く死骸を見て彼の本来の感情が微かにでも胸を打っているのかという考えがデミテルの脳裏を掠めた。
死体はよく見ると何か僅かに動いている。腹部などは呼吸でもしているかのように微たる起伏をしていた。
生きているのだろうか。
まさか。
どう見てもこの状態で生命を存続させるなど魔界のネクロマンサーが禁呪を施さぬ限り不可能だ。
そしてクレスの正の感情も自分の技術をもってすればこれ如きでは動くまい。
デミテルがその様な思考をクレスの背後で広げていると、クレスは剣を取り出した。
高々に構える。

そして、振り被ると同時にその顔は邪悪な笑いに歪んだ。
339倒錯共生3:2006/02/22(水) 06:24:47 ID:6pAUWWru

剣を振り下ろした。

グシャ、という音が腹を裂く。

そしてその衝撃で死体が動いていた原因であろう――体の中に入り込んで腐肉を喰い漁っていたおびたたしい数の何かが、ぶあ、と音を立てて溢れだした。
―――ゴキブリだった。
赤黒い遺体の上に黒光りするそれらがざわざわと覆う。
先程まではマリーの内腑を喰い散らかしていたそれら。
衝撃による驚きに腐った血を纏う不浄の虫がガサガサと肉の上を滑る。無数の触覚がパニックにより蠢き、きぃきぃと小さく幾重にも鳴く。おぞましい餓鬼界の様なその光景。
流石の光景にデミテルも眼をやや背けた。潔癖な彼には汚れた害虫は好ましくないものだった。
しかしクレスはそんなものに構うことなく剣を抜く。
再び衝撃に黒い塊がザッと動く。止めどなく食人虫はまだ溢れ、また突き刺す。
「ははは、はははは…!」
クレスのどうしようもない破壊衝動。
それは血の臭いに引き出され、この死体にぶつけられた。
デミテルは視界に入る害虫を忌々しく思いながらも、その様子を静観した。
ティトレイは相変わらず興味も無いのか眼は突き抜ける様に広く美しい青い空に向いている。
幾度も繰り返される衝動に蛆の付いた肉片が散る。それはクレスにも付着し、しかしクレスは手を緩める事はない。

狂人の醜行は暫く続いた。


少し時間が過ぎクレスは見る影も無くなった遺体を一瞥する。多数居たゴキブリは少数になり、その変わりに幾千幾万の米粒の様な蛆が露わになる。そしてまだ浅ましく肉を貪っている。
剣に付いた肉片を振り払い鞘に収めた。

その眼はまだギラギラと光っている。
もっと、もっと、もっと。
足りない。
どうしようもなく乾いた心に反して、欲求の杯はもう飽和状態だ。
出来ればマーテルだってこんな風にしたかった。本来は傷つける事も出来ない中で剣を振るえただけマシだけど。
それでももうリミッターという名の関は崩落しそうだ。
先程の狂行でとりあえず己を保ったものの、また二の腕に手が行く。
クレスはデミテルに仕える建前に懸命にしがみついていた。

「……クレス=アルベイン」
背後で低いミテルの声がする。
「私の言うことを聞くという約束を破るのは二度目だな。
この次があれば容赦しない」
冷たく言い放つデミテルにクレスは相変わらずの笑みを浮かべて答えた。
「はい、すみません」
「……」
デミテルは黙り、西南に向かい歩きだした。
クレスとティトレイもそれに続く。
340倒錯共生4:2006/02/22(水) 06:31:22 ID:6pAUWWru
「どうやら殺しをしたくて仕方がない様だな、クレス=アルベインよ」
歩いたままデミテルは淡々と言葉を紡ぐ。
「これから大きな争いが起きるだろう。うずうずしている様だから華はお前に持たせてやる。だが―――」
デミテルが振り返る。クレスと目が合う。
「共生という言葉を知っているか?」
いきなりの彼らしくない言葉にクレスは眉を僅かに寄せた。
「本来ならば生物同士が助力し合い、相互関係を営む事、そう生きて行く事を言う。蟻とアリマキの様に。
生物学の用語だがこの事は広い意味で人にもあてがわれるだろう。例えば恋人同士、友人関係――」
暫く口にしていない言葉を吐きながらデミテルは続ける。
「そして私とお前だ」
デミテルが指示をし、クレスがマーダーとなる。そしてクレスは乾きを癒し、デミテルは利を得る。この二人の関係はまさに共生だった。
「そうですか、仲良くしていきましょう」
クレスは笑みを崩す事無く答えた。
まさに「嘗めきった」という様子のクレスの眼をデミテルは些か厳しく睨む。
「だが―――」
再びデミテルは背を向けて歩みだした。
「共生の種類には利益を共にする変わりにそれ故に生命としての可能性を最小限に削っているものもいる」
淡々とした言葉は変わらず、クレスはデミテルの背中を睨む。
「私はいわばお前の宿主だ。
宿ったものは共生するが故に宿主に生命を完全に預けるものもいる。不必要な遺伝子は削られ、生殖は出来ず、果ては体を失い単独では行動すらも出来なくなるものも存在する。
つまり宿主の意志により、寄生する者を真の意味で傀儡にする、ないしは命を奪うのは簡単だと言うことだ」
「………」
クレスはデミテルの言葉の真意を理解しようと考えるが今一掴めない。
ミクトランの様に意志一つで首を飛ばせるとでも言うのだろうか。そんなはずはない。自分は今、確かに一人で地を踏み締めているのだから。

歪んだ共生関係。
しかしクレスがいくら暴れようとも、デミテルは彼を掌の上からは逃そうとはしなかった。使い所が難しい駒こそ、巧く利用すれば真価を発揮する。

「覚えておけ」
すると再び生臭い風が音を立てて吹き出し、彼の言葉はうまくクレスには聞き取れなかった。


「元々、毒薬を用い神経を操作するのみで完全に従僕にするなど博打性が高い。
私が何の考えもなく、危険なお前を操るだけで放置しておくと思うか?」

341倒錯共生5:2006/02/22(水) 06:35:18 ID:6pAUWWru
【デミテル 生存確認】
状態:TP25%消費
所持品:ミスティシンボル、ストロー、金属バット 魔杖ケイオスハート
第一行動方針:金髪の少年(ミトス)の後を追い、利用できそうならば利用する
第二行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
現在位置:E3→南西部へ移動中

【ティトレイ・クロウ 生存確認】
状態:感情喪失、TP1/2消費
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック
基本行動方針:かえりたい
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する
現在位置:E3→南西部へ移動中

【クレス・アルベイン 生存確認】
状態:TP1/3消費、善意及び判断能力の喪失
所持品:ダマスクスソード、忍刀血桜
基本行動方針:不明
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する(不安定)
現在位置:E3→南西部へ移動中
342鈍色の休息1:2006/02/22(水) 14:24:20 ID:b0rgd0vB
「…ここで休憩にしましょう。」
黒髪の少年ジェイはそういって足を止めた。
斜陽はまだ緩く、その影はまだ短い。
「なんだよ、だらしねーな。」
といいながら笑うのは鳶色の二刀剣士ロイド。
「休みたいのは山々だが、ここで足を止めると放送までに間に合わないぞ。」
肩を上下させながら意見するのは青髪の晶霊術士キール。
「ええ、すいませんが疲れまして。」
そう述べるジェイはどう見てもキールよりは疲れていない。
その意味を推し量り赤髪の剣士リッドはジェイに言う。
「もしかして俺やキールのこと気を遣ってくれてんのか?
気持ちは有り難ぇけどよ、俺達なら大丈夫だから先を急ごうぜ。」
彼は彼なりに少年の意を汲み取ったつもりらしい。
ジェイは眉間にしわを寄せ、指を当て、溜め息を付き、言葉を漏らす。
「すいません、回りくどい言い方では伝わりませんでしたね。
三人分のお荷物を持って歩くのは疲れるといったんです。」
一瞬で空気が冷える、辺りが加速度的に重苦しくなる。
「どういう意味だ?」
最初に口を開いたのはロイド。その拳は少し硬く握られている。
「キールさん。あなた先ほど言いましたよね?昨日マスクをした
特殊部隊風の男、カッシェルに襲撃されたと。」
突然の名指しに少し硬直しするもキールは肯定する。
「それは僕の世界の敵なんですが、はっきり言って弱小のレベルに入るんですよね。」
ジェイはこういうが実際の所戦闘能力だけで見ればカッシェルも指折りの能力を持つ。
ただジェイとの相対的な隠密能力とメンタル面の弱さが総合的な印象を弱くしているだけ
である。無論ジェイもそのことを理解しているがそれでもなお引き合いに出すのは
理由がある。が、それは別の話。
「結局回りくどいじゃねえか、言いたいことがあるならはっきり言えよ。」
声を荒げリッドが吠える。
343鈍色の休息2:2006/02/22(水) 14:25:32 ID:b0rgd0vB
「そんな人たち3人のお守りをするより、1人で行動した方が楽だと言う話です。」
ジェイは悪びれずに淡々と発言を続ける。
「まあ、僕が万全を期すのだったらここで全員殺してから行きますが。
その方が余計な乱数を、不確定要素を潰せますし。」
そこまで言った所でリッドが剣を出す、その目は強く黙れといっている。
「…先ずですね、リッドさん。」
そこまで言った所でロイドとキールが一瞬の内に凍りつく。
先ほどまで剣先の10cm先、刃渡り合わせて約1m先に居たはずのジェイが
リッドの鳩尾を殴っていた。頭が回転を始めた時には既にリッドは地面に倒れている。
「そんな瀕死の体で何が出来るんですか?子供の拳で倒れるその体で。」
ようやく状況を把握したロイドは剣を構える、が。
「ロイドさん。気付いていると思って今まで何も言いませんでしたが
そんな刀で何が出来るんですか?」
攻撃を見透かされたことに驚き、ジェイの指摘についつい自分の木刀を見る。
そして再度、驚愕。自分の木刀が、半分黒ずんで炭化しかけていることに。
常識的に考えれば分かる話だった。あの用意周到に巡らされた焔の罠を
前に多少の火傷で済んだことが有り得ない奇跡、その奇跡が武器にまで
及ぶのは虫の良過ぎる話であると。すでに彼がこの世界で拵えた剣は
握りを除いて炭化寸前の所まで来ていたのだ。もしこの剣で戦闘が行われたのなら
5分持たずに折れるか崩れるかしていた所であろう。
「とりあえず、現状を認識してもらえましたか?分かったらせめてお荷物にならない程度に
体を回復させて、戦えるようになって下さい。仲間は欲しいんですが足手まといは
御免被りたいもので。リッドさーん、聞こえてますかー。…聞こえてませんね。」

そう言うとジェイはリッドのエルヴンマントを剥ぎ取り、
半ば呆然としているロイドを尻目にキールに近づく。
「とりあえず周囲の警戒をしておきますからあの2人をよろしくお願いします。
放送の前後に戻ってきますからその後の行動はその時決めましょう。
あ、この外套はお借りしますよ。迷彩が欲しかったもので。
こんなものでもないと城の赤鬼と青鬼に気付かれますから。」
小声でキールにしか分からないように伝える。
「そういう意味か…分かった。しかし何故あのような強引な手段を?
それにあれほどな力なら本当に1人のほうが都合がいいんじゃないか?」
小声で返答、ジェイはやれやれというように再度伝える。
「正直、彼らは僕よりずっと強いですよ。ただ今の余裕のない貴方達相手なら十分勝てる
というだけの話です。それに、汚れ役は慣れているもので。」
そういうとジェイはするりと高台の上に登りすぐに見えなくなった。
344鈍色の休息3:2006/02/22(水) 14:27:00 ID:b0rgd0vB
「…ガハッ!!」
リッドが目が覚めたとき、すでに斜陽は深く、その影は高く伸びていた。
目が覚めたか、とキールが言い、手に持ったペンで沸いたお湯を指す。
「あいつはどうした!!」
リッドは寝起きとは思えない様相で、すぐさまキールに尋ねる。
「ジェイは周囲の偵察に出てる。分かったらとりあえず飲んで、食べて落ち着け。
ロイドには説明はした。お前にも順に説明する。」
そういいながらキールは羊皮紙に何かを懸命に書いている。
ロイドはひたすら木刀とヴォーパルソードを持って何かをしようとしている。
しばらくして簡易な食事を済ませた後、キールは彼が知る限りのジェイの意図を伝える。
「つまりE2にはバルバトスやマグニスが居るってことか!?」
リッドは声を荒げる。
「奴の話を信じるなら少なくともファラの声が響いた時にはE2の城に居たことになる。
ロイドたちが遭遇していないことを考えると、奴らは南側から北上して城に攻め込んだのだから
無事なら北上してきたはずだ。それが来ていない、つまり怪我で動けずに留まっている
可能性がある。その場合満身創痍のお前や武器が磨耗したロイドを守りきれない
ということだ。」
キールが出した答えはほぼ正確にジェイの心中を射抜いていた。さすがに頭脳労働担当である。
「守りきれねえのはお前も含めてだろ…でもよ?城が崩れたんなら
それに巻き込まれて死んだのかも知れねえだろ?」
少しキールの揚げ足を取った後、再度質問した。
「それを見極める為にここで放送を待っているんだ。
この内容次第では、僕達が城に向かう意味すら消滅する。」
ロイドの手がピタッと止まる。先ほどキールから聞いてはいたが、
それでもこみ上げる不快感は止まらない。
クラトスとコレットの生死の結果しだいでは城に向かう理由さえ無くなってしまうのだ。
「あ〜!!やっぱりこんな大剣じゃ上手く加工出来ねー!!
やっぱジューダスから短刀返してもらえばよかった…。」
ロイドは大声で愚痴る。少し不自然な気がしないでもない。
「悪ぃ。んで、なにやってんだお前?」
リッドはロイドの行為を怪訝に見つめる。どうやら木刀を削っているようだ。
345鈍色の休息4:2006/02/22(水) 14:28:00 ID:b0rgd0vB
ロイドがいうには炭化した部分を削って使えるようにしているとのこと。
しかし大剣での加工は困難を極め、鳳凰天駆によって纏った炎は彼の剣を満遍なく焦がしている。
ヴォーパルソードを使えばいいのではとキールは提案したのだが。
二刀を扱うには絶妙な剣のバランスが必要であり、
特にこのヴォーパルソードは二刀流で扱うには対の剣が不可欠とのこと。
苦闘するロイドにリッドは自分のデイバックを漁り剣を取り出す。彼が扱う剣とまったく
同じ剣が、もう1本。リッドが言うにはもともとこの「ムメイブレード」は2本セットで
支給されたものだったのだ。しかし自分が普通の剣士であった為、
もう1本は剣が壊れた時の保険としてデイバックの中に入れていたというわけである。
ロイドの話ではそれは自分の世界の武器で、やはり二刀一対で存在していたとのことだ。
「代わりといっちゃなんなんだけどよ、その剣貸してくんねえ?」
リッドが提案した取引、それがムメイブレードとヴォーパルソードの一時的交換である。
メルディとの闘いで分かったことが一つ。この世界で極光を使うことは命をすり減らす
ほどリスクの高い行為であるということ。そしてそれは恐らくメルディも同様、
いや極光の使い手として不完全であるメルディの方がその危険が高い。
もうメルディに極光を使わせるわけにはいかない。つまり自分の剣技でネレイドを止めなくては
ならない。その為の力として、この魔剣に目を付けたという訳である。
「分かった、大事に使ってくれよ。」
そう付け加えてロイドは取引に応じる、この剣を他人に使わせるのは気が引けるが
獲物が無くてはこれからの事も立ち行かない。C3でのリッドの人となりを
信じた上での結論だった。
346鈍色の休息5:2006/02/22(水) 14:29:06 ID:b0rgd0vB
「で、お前はさっきから何書いてんだよ?」
このやり取りの間ひたすら羊皮紙に何かを書き込んでいたキールにリッドは尋ねる。
その手を止めずにキールはリッドに聞き返す。
「…なんでジェイは僕を襲わなかったと思う?」
質問の要旨を理解できずにリッドは答える。
「それは、お前が一番後回しでも良かったからじゃねえのか?お前ヒョロいし。」
リッドの回答にキールは筆を止め、リッドを見る。
いつものように怒鳴られるかと思い警戒をしたリッドだが
キールは「そうか。」といっただけで怒りはしなかった。寧ろその顔はどこか物悲しく見える。
羊皮紙に書く作業は終わったらしく、それを折りたたんでリッドに渡す。
リッドが何だこれ?と尋ねても
「唯の保険だ。僕が良いと言うまでそれは見るなよ。」
そういってそっぽを向くのでリッドも言及はしなかった。
リッド自身も気になることがあったため思考を始める。
ジェイによって間合いを潰されたという事実に不自然を覚えたからだ。
(あれは少なくとも速さじゃねえ…なんだったんだ?)

キールもまた思考の海を泳ぐ、リッドよりも深く、遠く、溺れていく。
(魔剣エターナルソード、ロイドが言うには空間と時間すら操るという剣。
僕達の世界にも存在はしていたがそこまでの力があったとは思わなかったな。
しかしそれが事実だとしてもこの世界の制限下では何処まで力が発揮できるか?
この異空間を破壊するのは不可能だろう。だがもしこの世界に亀裂、鍵穴という
存在があるのならば、鍵の役割はその剣が握っているのかもしれない。
ならば鍵を持つ資格はロイド?いやそれでは足りない。鍵を持つことが出来ても回す力が
足りない。レンズ、魔剣…まだピースが足りない。)
いかんせん全ては机上の空論。あるかどうか分からない鍵を求めるのは早計というもの。
ましてやこの首輪をどうにかしなければこんな推論は無意味だ。
なんとしても考察を他の賢者に検証してもらう必要がある。
(だが、一番足手まといになるこの僕が生き延びる可能性は…)
一番恐れる事態を想像して体が震える。震える体を手で抑え、リッドを見る。
(何としても足手まといになるわけには行かない。リッド、お前だけは、
メルディを助けられる可能性の高いお前だけは、死なせるわけにはいかない。)

その悲壮な覚悟は2人に気付かれる道理は無く、懐かしい武器を振るロイドは
「ジェイの奴遅いな。」と
この後のことを考えながら言った。もう直ぐ夜の時間である。
347鈍色の休息6:2006/02/22(水) 14:30:20 ID:b0rgd0vB
ジェイはリッドたちと反対側の高台から双眼鏡で辺りを見回す。
(ようやく痺れが完全に取れましたか。たった一瞬、1m進むだけでこの
痺れ…クライマックス、迂闊に使えませんね。
何時間動けなくなるのか分かったもんじゃない。それに
完全停止というわけではないようだ…今回はリッドさん達が不安定だったから
良かったけど熟練者相手には付け入る隙があるかもしれない。
第一、本格的に使ったら1回で使用不可でしょうね。
主催者が仮発動なんてことをこれ以上許すとも思えないですし。)
双眼鏡が人影を捉える、それは金髪の魔王。
(今回のC3の一件、首謀者が居るのは間違いない。手がかりは
異能で作られた植物の燃えカス、それを燃やしたであろう魔術、
そして存在しないはずの剣士が居た事実。…条件を満たす人物、あるいはその集団を
1つ知っている。だが確証がない。情報が不足している…ならば。)
ジェイは立ち上がって双眼鏡をしまう。
「手っ取り早く、生存者に聞くのが近道ですね。」
あの傷ならば少なくともこちらが死ぬことは無いという確信と共に。
跳躍、ジェイは大地に降り立つ。金色の魔王、ダオスの元に。
「お会いするのはこれで2度目…いや、3度目ですか。『お父さん』。」
3回目の接触でついに2人は対面することになった。

マーテルを初めて傷つけたソロンはダオスに言った。
私には弟子が居ると、その弟子がマーテルを狙っていると。
結局それは嘘ではあったが、奇しくも
その弟子はマーテルの最後を看取る結果となる。

あの時も結局ソロンの虚言によって2人の闘いは中断された。
ここに師を弟子へと変えて、虚言の交渉の続きが、虚言の夜が始まる。
348鈍色の休息7:2006/02/22(水) 14:31:45 ID:b0rgd0vB
【リッド 生存確認】
状態:精神力かなり低下 体力の低下
所持品:ヴォーパルソード、ホーリィリング、キールのメモ
基本行動方針:ファラの意志を継ぎ、脱出法を探し出す
第一行動方針:キール、ロイド、ジェイと行動、体力回復
第二行動方針:放送を聞いた後、E2の城に行く
第三行動方針:襲ってくる敵は排除
第四行動方針:メルディを捜す
現在位置:D2西

【キール 生存確認】
状態:後頭部打撲(回復中)、決意
所持品:ベレット
基本行動方針:脱出法を探し出す 、リッドの死守
第一行動方針:リッド、ロイド、ジェイと行動
第二行動方針:放送を聞いて状況の整理
第三行動方針:情報収集
第四行動方針:メルディを助ける
現在位置:D2西

【ロイド 生存確認】
状態:普通
所持品:ムメイブレード(二刀流)、トレカ、カードキー  
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:放送を聞いた後、E2の城へ向かう
第二行動方針:リッド、キール、ジェイと行動
第三行動方針:協力者を探す
現在位置:D2西

【ジェイ 生存確認】
状態:緊張 全身にあざ TP2/3
所持品:忍刀・紫電 ダーツセット クナイ(三枚) 双眼鏡
基本行動方針:目的とする人を捜す
第一行動方針:出来る限り戦闘を回避して目の前の人物からマーテル殺害の真相を知る。
第二行動方針:放送を聴いて状況を把握、3人との合流
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
第五行動方針:ミトス・ユアンを発見する
現在位置:D3崖下

【ダオス 生存確認】
状態:TP残り70%  HP1/8 死への秒読み(およそ半日後に死亡) 壮烈な覚悟
所持品:エメラルドリング  ダオスの遺書
基本行動方針:死ぬまでになるべく多くのマーダーを殺害する
第一行動方針:目の前の人物に対処
第二行動方針:C3の件の黒幕を、クレスもろともに断罪する
第三行動方針:遺志を継いでもらえそうな人間は、決して傷付けない
現在位置:D3崖下
349鈍色の休息 修正:2006/02/23(木) 09:28:20 ID:QDwvYUlk
【ジェイ 生存確認】
状態:緊張 全身にあざ TP2/3
所持品:忍刀・紫電 ダーツセット クナイ(三枚) 双眼鏡 エルヴンマント
基本行動方針:目的とする人を捜す
第一行動方針:出来る限り戦闘を回避して目の前の人物からマーテル殺害の真相を知る。
第二行動方針:放送を聴いて状況を把握、3人との合流
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
第五行動方針:ミトス・ユアンを発見する
現在位置:D3崖下

350走る人たち1:2006/02/25(土) 00:02:42 ID:vCHCT0G/
此処に2人の青年がいる。仮面の剣士ジューダスと氷の剣士ヴェイグである。
彼らは橋の惨劇をその眼で見て己の感傷に1つの節目を打ち、
南下を始めた。昼より間断無く歩を進め、日が傾いてもうすぐ夜の帳が落ちようかという
時分には既に、E6の北西部にまで辿り着いていた。

「大分南下したはずだが…此処に来るまで1人も遭遇しないとはな。」
そう言ってジューダスは歩みを止め、そして同時に橋を出発して以来初めて声を発した。
足を止めた理由はもうすぐ放送の時間であると同時に、隣の禁止エリアに対して
の進路再設定を行うためである。
ジューダスはここまでの誰一人にも会わなかったことを少々不思議に思っていた。
確かに南西のエリアはC3から一番遠くあの声の影響が少ないはずだ。
北上する人間が少ないのも分かる。
しかも自分達は一度橋まで行ってから南下したのだから放送を聴いてすぐに南下した
人と出会う可能性が少ないのも分かる。
「それでもここまで人間がいないとは…わざわざG5を封鎖するのだから
少なくとも朝までそこには人間がいたはずだ。この周囲の者がほぼ全滅したか、
あるいはリスクを覚悟して橋を渡って西へ?旨みがある選択肢とも思えんが。」
そこまでの思考を終えて、ふと南東の空を見上げる。見上げた先に細々と
上るのは黒い煙。
(G5からか?かなり細いが距離を考えるとそれなりに大きな火災が発生したようだが。)
焼き討ちか、或いは自ら焼いたのか、何にしても今後の行動を改める必要がある。
「ヴェイグ、少し話が…」
この一件に対し打ち合わせをしようと思い、現在の同道者に声をかけた。
しかし声をかけられたヴェイグは何やら大層難しい面持ちで
何かを考え込んでいるような節である。
(もっとも、いつも小難しい顔だと言われればそれまでであるが。)
351走る人たち2:2006/02/25(土) 00:03:37 ID:vCHCT0G/
「ヴェイグ、何を考えている?もうすぐ放送の時間だが。」
その真剣さに同調したのか、ジューダスも重々しく尋ねる。
「ああ、済まない。1つ気になっていることがあってな。
…あまりにも根拠の無い、想像のような話と捕らえて構わない。」
そう言って前置きをするヴェイグ。辺りの空気が重くなる。
「何だ、勿体付けずに言ってみろ。」
と言うジューダスの了承を得、ヴェイグはその口を開く。
「そのお前が会おうとしている人物はどんな風体なんだ?」
「一口に言うのは難しいが…まず小柄な少女だ。そして赤、どちらかと言えば赤紫の髪を
している。服装は…」
「赤と薄緑、紫基調の服か?」
「貴様、何故知っている?」
ジューダスは眼を細める。確かに4人で行動していた際に
同士討ちの危険を回避するため互いの仲間の顔と名前を名簿で確認した。
唯1人、リオン=マグナスのことと
自分とルーティの関係だけはどうにも伝えることが出来なかったが。
兎も角、その際名簿でハロルドの顔は見せた、
しかし奴はその時点で奴は会ったと言わなかったし会った素振りも見せていない。
そもそも目指す人物の服装についてなどはまだ一言も言っていない。

ジューダスは警戒して半信半疑でヴェイグを見る。
「いや、いるとしたらあんな風体なのかと思ってな。」
そういってヴェイグは南方を指差す。
ジューダスはその方角に顔を向け眼を凝らす。なるほど、ヴェイグが
どうやってハロルドを知ったかは別にして奴の認識は間違いなさそうだ。
352走る人たち3:2006/02/25(土) 00:05:31 ID:vCHCT0G/
「何時から気付いていた?」
「お前が南東を向いた辺りからだ。」
「どうして言わなかった?」
「砂煙を揚げながら全力疾走する奴が探し人とは思わん。」
ジューダスの体が小刻みに震え、感情が爆発した。
「〜〜〜クソ!!追うぞヴェイグ!ともかく話を聞かないと埒が開かん!!」
「ああ、所で奴の持つあの剣…」
「話は奴を確保してからだ!!」
ジューダス、ヴェイグ追跡開始。残り-150m

(やっぱ追ってくるか…唯のマーダーならジューダスを
囮に使うけど流石に相手が相手だしあいつ使うわけにはいかないわ。
むしろ出逢ったら何おっぱじめるか少し見てみたいけど我慢!!
とにかく能力なり道具なり奴がこちらを捕捉する術があるとすれば
人のいない場所では逆にすぐに見つかる。ならば少しでも人気の多い場所で
相手を混乱させて乱戦に持ち込んで一気に離脱するしかない!!
あんだけ景気良く村を燃やしたんだから
生き残りの瀕死マーダー位いてよ、お願いだから!!)

そう思考して先頭を走るのはハロルド(&ディムロス)。

(何故逃げる必要がある!!しかも人がいない地域を避けて!?
南に何があるというんだ…推測だけではファジーすぎる!
ともかく捕まえないとこの首輪もどうにか出来ん!!)

などと考えながら走る2番手はジューダス。

(あの大剣があればまともに戦えるかも知れん、欲しい所だ。
しかし何故俺は警戒もせずにあの少女の突進を見ていたのだろうか…
俺も未だこのゲームの狂気に意識を狂わされているなのか、クレア…)

と思いながら走る3番手はヴェイグ。


そして、4番手はレーダーを携え南から猛追をかけている。
向かう先のゴールには何があるのか。
353走る人たち4:2006/02/25(土) 00:06:28 ID:vCHCT0G/
【ジューダス:生存確認】
状態:健康 
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、(上記2つ二刀流可)、エリクシール、首輪
基本行動方針:ミクトランを倒す
第一行動方針:ハロルドを捕まえて首輪解除の方法を模索する
第二行動方針:協力してくれる仲間を探す(特に首輪の解除ができる人物を優先)
第三行動方針:ヴェイグと行動
現在位置:E6から東へ

【ヴェイグ 生存確認】
状態:右肩に裂傷 強い決意
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(パイン、ミラクル)首輪
基本行動方針:生き残る
第一行動方針:ジューダスと行動 、ハロルドを捕まえる
第二行動方針:ルーティのための償いをする。
第三行動方針:可能ならハロルドの剣(=ディムロス)を手に入れる
現在位置:E6から東へ

【ハロルド 生存確認】
状態:冷徹な復讐心 
所持品:短剣 実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) ソーディアン・ディムロス
基本行動方針:迂闊なことは言わない 単独行動(たとえ仲間に出会ってもマーダーの振りをして追い払う)
第一行動方針:リオンの追跡からの完全離脱、ジューダスをリオンから遠ざける
第二行動方針:首輪のことを調べる
第三行動方針:C3地点の動向を探る
第四行動方針:マーダー(マグニスたち)の始末
現在位置:E6から東へ
354走る人たち(修正版)1:2006/02/25(土) 00:42:41 ID:vCHCT0G/
此処に2人の青年がいる。仮面の剣士ジューダスと氷の剣士ヴェイグである。
彼らは橋の惨劇をその眼で見て己の感傷に1つの節目を打ち、
南下を始めた。昼より間断無く歩を進め、日が傾いてもうすぐ夜の帳が落ちようかという
時分には既に、E6の北西部にまで辿り着いていた。

「大分南下したはずだが…此処に来るまで1人も遭遇しないとはな。」
そう言ってジューダスは歩みを止め、そして同時に橋を出発して以来初めて声を発した。
足を止めた理由はもうすぐ放送の時間であると同時に、隣の禁止エリアに対して
の進路再設定を行うためである。
ジューダスはここまでの誰一人にも会わなかったことを少々不思議に思っていた。
確かに南東のエリアはC3から一番遠くあの声の影響が少ないはずだ。
北上する人間が少ないのも分かる。
しかも自分達は一度橋まで行ってから南下したのだから放送を聴いてすぐに南下した
人と出会う可能性が少ないのも分かる。
「それでもここまで人間がいないとは…わざわざG5を封鎖するのだから
少なくとも朝までそこには人間がいたはずだ。この周囲の者がほぼ全滅したか、
あるいはリスクを覚悟して橋を渡って西へ?旨みがある選択肢とも思えんが。」
そこまでの思考を終えて、ふと南西の空を見上げる。見上げた先に細々と
上るのは黒い煙。
(G5からか?かなり細いが距離を考えるとそれなりに大きな火災が発生したようだが。)
焼き討ちか、或いは自ら焼いたのか、何にしても今後の行動を改める必要がある。
「ヴェイグ、少し話が…」
この一件に対し打ち合わせをしようと思い、現在の同道者に声をかけた。
しかし声をかけられたヴェイグは何やら大層難しい面持ちで
何かを考え込んでいるような節である。
(もっとも、いつも小難しい顔だと言われればそれまでであるが。)
355走る人たち(修正版)2:2006/02/25(土) 00:43:43 ID:vCHCT0G/
「ヴェイグ、何を考えている?もうすぐ放送の時間だが。」
その真剣さに同調したのか、ジューダスも重々しく尋ねる。
「ああ、済まない。1つ気になっていることがあってな。
…あまりにも根拠の無い、想像のような話と捕らえて構わない。」
そう言って前置きをするヴェイグ。辺りの空気が重くなる。
「何だ、勿体付けずに言ってみろ。」
と言うジューダスの了承を得、ヴェイグはその口を開く。
「そのお前が会おうとしている人物はどんな風体なんだ?」
「一口に言うのは難しいが…まず小柄な少女だ。そして赤、どちらかと言えば赤紫の髪を
している。服装は…」
「赤と薄緑、紫基調の服か?」
「貴様、何故知っている?」
ジューダスは眼を細める。確かに4人で行動していた際に
同士討ちの危険を回避するため互いの仲間の顔と名前を名簿で確認した。
唯1人、リオン=マグナスのことと
自分とルーティの関係だけはどうにも伝えることが出来なかったが。
兎も角、その際名簿でハロルドの顔は見せた、
しかし奴はその時点で奴は会ったと言わなかったし会った素振りも見せていない。
そもそも目指す人物の服装についてなどはまだ一言も言っていない。
356走る人たち(修正版)3:2006/02/25(土) 00:44:35 ID:vCHCT0G/
ジューダスは警戒して半信半疑でヴェイグを見る。
「いや、いるとしたらあんな風体なのかと思ってな。」
そういってヴェイグは南方を指差す。
ジューダスはその方角に顔を向け眼を凝らす。なるほど、ヴェイグが
どうやってハロルドを知ったかは別にして奴の認識は間違いなさそうだ。
ドドドドドドドドドドド 残り100m
「確かにそんな感じだ。だからそいつをどうやって…
ドドドドドドドドドドド 残り50m
探すか…今から…
ドドドドドドドドドドド 残り25m
話をしようと、と言うか…
ダダダダダダダダダダダ 残り10m

ハロルドッ!!??」
「げえっ、ジューダス!?」
残り0m

「おい、いったい…」 
ドドドドドドドドドドド 残り-10m

「マーダーだからあんたに構っているわけにいかないの!!
あんたらどっちから来たの?人いた?!」
ドドドドドドドドドドド 残り-20m

「北からだ!人はいなかった!お前がマーダーだと!?と言うか人の話を聞け!!」
ドドドドドドドドドドド 残り-50m

「あーりーがーとー!!じゃーねー!!」
西に方向転換、直線距離で残り-65m
357走る人たち(修正版)4:2006/02/25(土) 00:47:13 ID:vCHCT0G/
「何時から気付いていた?」
「お前が南西を向いた辺りからだ。」
「どうして言わなかった?」
「砂煙を揚げながら全力疾走する奴が探し人とは思わん。」
ジューダスの体が小刻みに震え、感情が爆発した。
「〜〜〜クソ!!追うぞヴェイグ!ともかく話を聞かないと埒が開かん!!」
「ああ、所で奴の持つあの剣…」
「話は奴を確保してからだ!!」
ジューダス、ヴェイグ追跡開始。残り-150m

(やっぱ追ってくるか…唯のマーダーならジューダスを
囮に使うけど流石に相手が相手だしあいつ使うわけにはいかないわ。
むしろ出逢ったら何おっぱじめるか少し見てみたいけど我慢!!
とにかく能力なり道具なり奴がこちらを捕捉する術があるとすれば
人のいない場所では逆にすぐに見つかる。ならば少しでも人気の多い場所で
相手を混乱させて乱戦に持ち込んで一気に離脱するしかない!!
あんだけ景気良く村を燃やしたんだから
生き残りの瀕死マーダー位いてよ、お願いだから!!)

そう思考して先頭を走るのはハロルド(&ディムロス)。

(何故逃げる必要がある!!しかも人がいない北を避けて!?
南で何があったというんだ…推測だけではファジーすぎる!
ともかく捕まえないとこの首輪もどうにか出来ん!!)

などと考えながら走る2番手はジューダス。

(あの剣があればまともに戦えるかも知れん、欲しい所だ。
しかし何故俺は警戒もせずにあの少女の突進を見ていたのだろうか…
俺も未だこのゲームの狂気に意識を狂わされているなのか、クレア…)

と思いながら走る3番手はヴェイグ。


そして、4番手はレーダーを携え南から猛追をかけている。
向かう先のゴールには何があるのか。
358走る人たち(修正版)4:2006/02/25(土) 00:48:52 ID:vCHCT0G/
【ジューダス:生存確認】
状態:健康 少々混乱
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、(上記2つ二刀流可)、エリクシール、首輪
基本行動方針:ミクトランを倒す
第一行動方針:ハロルドを捕まえて首輪解除の方法を模索する
第二行動方針:協力してくれる仲間を探す(特に首輪の解除ができる人物を優先)
第三行動方針:ヴェイグと行動
現在位置:E6から西へ

【ヴェイグ 生存確認】
状態:右肩に裂傷 強い決意
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(パイン、ミラクル)首輪
基本行動方針:生き残る
第一行動方針:ジューダスと行動 、ハロルドを捕まえる
第二行動方針:ルーティのための償いをする。
第三行動方針:可能ならハロルドの剣(=ディムロス)を手に入れる
現在位置:E6から西へ

【ハロルド 生存確認】
状態:冷徹な復讐心 
所持品:短剣 実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) ソーディアン・ディムロス
基本行動方針:迂闊なことは言わない 単独行動(たとえ仲間に出会ってもマーダーの振りをして追い払う)
第一行動方針:リオンの追跡からの完全離脱、ジューダスをリオンから遠ざける
第二行動方針:首輪のことを調べる
第三行動方針:C3地点の動向を探る
第四行動方針:マーダー(マグニスたち)の始末
現在位置:E6から西へ
359現実1:2006/02/26(日) 01:58:45 ID:WSPfyqtz
薄暗い森の中。
体のいたる箇所に傷をつけ、なおかつ精神力が底を尽きかけている状況にもかかわらず、少女は息一つ切らさず歩いていた。
その体からはうっすらと黒い霧のような物がにじみ出ている。
(お願い、もうやめて・・・)
不意に聞えた声に少女は立ち止まる。
無論辺りに誰かが居るわけではない。
泣きじゃくる子供の様な声に少女は口元を歪める。
笑みと呼ぶにはあまりに禍々しいその表情。もし少女を知る者がこの場に居たなら、確実に別人だと言い切ることが出来たであろう。
少女――否、少女だったモノは空を見上げ、ゆっくりと口を開いた。
「悲しいか?メルディ。だが、これはお前が望んだことだ」
(違う、メルディ、そんな事望んでないよ・・・)
メルディ、と呼ばれた人物の姿はどこにも見えない。第三者から見れば異様な光景な事に間違いないだろう。
独り言の様にしか見えないそれは確かに会話として成り立っている。
「ならば、何故我はここにいる?」
(っ!!)
引きつったような、声にならない声がソレの頭に響く。
それを最後に泣き声しか響かなくなったことに満足したのか、再度笑みと呼べぬ笑みをつくり、近くの適当な場所に腰を下ろした。
そして再度、空を見上げる。

バテン・カイトス。我が唯一望むもの。
偶然出来てしまったセイファートごときに奪われた我の居場所。
我が創り出した、何も存在せぬ世界。
人も晶霊も植物も、大地も存在しない場所。
取り戻すためならどんな苦痛も厭わない。
例えこんな力無き少女の体を借りなければ存在する事が出来なくとも。
例え2000年という年月封印されようとも。
我が故郷を、我が居場所を、我が存在を、取り戻すためなら。
どの様な苦痛があろうと、どの様な怒り憎しみがあろうと。
達成すれば、全てが消え去るのだから。

―――必ず取り戻す。我の全てを。
360現実2:2006/02/26(日) 01:59:34 ID:WSPfyqtz
「その為には、協力してもらうぞ。メルディ・・・」
少なくとも、次の器が見つかるまで。
あわよくばこの器をもっと強くする方法を見つける。
せめて、シゼル並みの強度が必要だ。アレも結局最後には使い物にならなかったが。
少なくとも今のままではあの真の極光術士どころか、下手をすればただの人間にもやられてしまうかもしれない。
それに、この体――・・・。
一向に回復する兆しを見せないメルディの体にソレは――ネレイドは苛立つ。
やはり実験により無理やり引き出した所為か、メルディの極光はシゼルの物に比べ明らかに薄い。
いや、薄いと言う表現は間違っているのかも知れないが、それ以外に表しようが無い。
彼女の力が純粋な極光であったなら、回復力・威力共にシゼル程度にはなるのであろう。
素質なら母親と同等だ。だが、メルディにはシゼルに比べ圧倒的に足りないものがあった。

世界を、全てを、恨む心。憎しみ。絶望。

ネレイドの力を最大に引き出すには、ネレイドと気持ちを同調させなくてはならない。
その為に必要なのが、『全てを無くしたい』と思う心だ。
だが、過去も今も、メルディにあるのは『恐怖』だけだ。
過去は母に捨てられる恐怖、今は純粋なる死への恐怖。
そんな物じゃ足りない。無くしたいと思う心、憎しみの心。世界を恨む心。
闇の極光を使うに最も必要なモノ。
(やだ、よぉ・・・・怖いよぉ・・・・もう、やだぁ・・・)
内側から聞える声。相変わらず泣き続けるメルディ。
シゼルが、世界に憎しみを抱いた理由。ネレイドと同調しえた理由。
ネレイドの脳裏に何かが浮かび上がった。
「メルディ・・・」
(っ、ひっく、もうやだっ!聞きたくない!)
必死に耳を閉じるも、『自分』との会話でそんな行為は無駄に終わる。
どれだけ耳をふさごうと聞こえる声に逆らうすべは無かった。
「お前は何人殺した?」
(え?)
突然の言葉にメルディの声が硬くなる。
ネレイドは笑みを浮かべたまま更に問い詰める。
「シゼルは誰が殺した?ヒアデスは?お前の町の人々は誰の所為で死んだ?極光術士も一人いたな・・・」
(や、やめてぇ!!)
メルディが叫んだ。ネレイドにだけ聞こえる声で。
「お前が仲間と呼ぶ者達は何度危険な目にあった?先程の金髪の男は?誰が殺した?」
(や、やだ、やだやだやだやだ!!!)
必死に叫び続けるメルディ。
その時、一瞬少女の体を闇の霧が取り巻いた。
それすぐに消え去ったが、それでもメルディ自身の極光が出たことにネレイドは満足した。
だが反対にその事に恐怖したメルディは無意識に彼を思い浮かべる。
極光術をフリンジする時、強いちからで抱きしめてくれたやさしい彼を。
(キー・・ル、やだよぉ!!キール!!助けて、キール!!!)
361現実3:2006/02/26(日) 02:01:48 ID:WSPfyqtz
脳裏に響く声が一際大きく響き、また泣き声だけ響きだす。
彼女の叫んだ名前に心当たりはあった。
「キール=ツァイベル、か。あいつを消せば、使い物になるかもしらんな」
先程の一瞬のお陰で少しだけ楽になった体を動かす。あのだるさは、無い。
「しかし、周りが邪魔だな・・・」
この体では勝ち目が無いだろう。
あいつと共にいたもう一人の男も危険だ。
「他の誰かが消すのを待つか、それとも・・・」
少なくとも、その男さえ消せばこの体も使い物になるかもしれない。
ならば一瞬の隙さえつければこちらのものだ。
隙をつきさえしれば――。
「ふふ、そんな事をしなくともあの男ならこの少女を救う為命をかけるだろう。向こうから来るのならば我は何もせずともよい」
そして、最後は賭けだ。
その結果この少女の体が使い物になるかは神である自分にも分からない。
「キール=ツァイベル・・・・・・バテン・カイトスは貴様にかかっているぞ?」
そう呟き、ネレイドは笑う。
それに重なるように、少女の泣き声が森に響いた。

【メルディ 生存確認】
状態:ネレイドの干渉
所持品:BCロッド スカウトオーブ、リバヴィウス鉱、C・ケイジ
基本行動方針:新たなる世界の創造
第一行動方針:器(メルディ)の精神力回復の為しばらく一時行動停止(多少回復/回復速度普通)
第二行動方針:器(メルディ)が世界を恨むため、キールを殺す
第三行動方針: 器(メルディ)を壊さないようにする
現在位置:B3の森の中
362名無しさん@お腹いっぱい。
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テイルズ オブ バトルロワイアル Part5                      
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