テイルズ オブ バトルロワイアル Part4

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1名無しさん@お腹いっぱい。
テイルズオブシリーズのキャラクターでバトルロワイアルが開催されたら、
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。
参加資格は全員にあります。
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。
これはあくまで二次創作企画であり、ナムコとは一切関係ありません。
それを踏まえて、みんなで盛り上げていきましょう。

詳しい説明は>>2以降。

【過去スレ】
テイルズ オブ バトルロワイアル
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1129562230
テイルズ オブ バトルロワイアル Part2
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1132857754/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part3
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1137053297/

【関連スレ】
テイルズ オブ バトルロワイアル 感想議論用スレ3
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1137926719/
※作品の感想、ルール議論等はこちらのスレでお願いします。

【したらば避難所】
〔PC〕http://jbbs.livedoor.jp/otaku/5639/
〔携帯〕http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/otaku/5639/

【まとめサイト】
http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/index.htm
2名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:03:38 ID:s/Y7d033
3名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:03:39 ID:GZL/pLBF
----基本ルール----
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができ、加えて願いを一つ何でも叶えてもらえる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
 開催場所は異次元世界であり、海上に逃れようと一定以上先は禁止エリアになっている。

----放送について----
 放送は12時間ごとに行われる。放送は各エリアに設置された拡声器により島中に伝達される。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去12時間に死んだキャラ名」
 「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。

----「首輪」と禁止エリアについて----
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
 首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
 主催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
 この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
 24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。
 「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
 下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。 
 プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
 たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止能力が使えるようにもならない。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 禁止エリアは3時間ごとに1エリアづつ増えていく。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:04:13 ID:s/Y7d033









































てs                                                               

5名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:04:23 ID:GZL/pLBF
----スタート時の持ち物----
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を配給され、「ザック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「着火器具、携帯ランタン」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「支給品」

 「ザック」→他の荷物を運ぶための小さいザック。
       四次元構造になっており、参加者以外ならどんな大きさ、量でも入れることができる。
 「地図」 → 舞台となるフィールドの地図。禁止エリアは自分で書き込む必要がある。
 「コンパス」 → 普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「着火器具、携帯ランタン」 →灯り。油は切れない。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
 「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
 「写真付き名簿」→全ての参加キャラの写真と名前がのっている。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「支給品」 → 何かのアイテムが1〜3つ入っている。内容はランダム。

※「ランダムアイテム」は作者が「作品中のアイテム」と
 「現実の日常品もしくは武器、火器」の中から自由に選んでください。
 銃弾や矢玉の残弾は明記するようにしてください。
 必ずしもザックに入るサイズである必要はありません。
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
 ハズレアイテムも多く出しすぎると顰蹙を買います。空気を読んで出しましょう。
6名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:04:59 ID:s/Y7d033




























              
7名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:05:23 ID:GZL/pLBF
----制限について----
 身体能力、攻撃能力については基本的にありません。
 (ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合があります)
 治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法は発動すらしません。
 キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限されます。
 しかしステータス異常回復は普通に行えます。
 その他、時空間移動能力なども使用不可となっています。
 MPを消費するということは精神的に消耗するということです。
 全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内ということでお願いします。

----ボスキャラの能力制限について----
 ラスボスキャラや、ラスボスキャラ相当の実力を持つキャラは、他の悪役キャラと一線を画す、
 いわゆる「ラスボス特権」の強大な特殊能力は使用禁止。
 これに該当するのは
*ダオスの時間転移能力、
*ミトスのエターナルソード&オリジンとの契約、
*シャーリィのメルネス化、
*マウリッツのソウガとの融合、
 など。もちろんいわゆる「第二形態」以降への変身も禁止される。
 ただしこれに該当しない技や魔法は、TPが尽きるまで自由に使える。
 ダオスはダオスレーザーやダオスコレダーなどを自在に操れるし、ミトスは短距離なら瞬間移動も可能。
 シャーリィやマウリッツも爪術は全て使用OK。
8名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:05:51 ID:s/Y7d033






























9名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:06:11 ID:GZL/pLBF
----武器による特技、奥義について----
 格闘系キャラはほぼ制限なし。通常通り使用可能。ティトレイの樹砲閃などは、武器が必要になので使用不能。
 その他の武器を用いて戦う前衛キャラには制限がかかる。

 虎牙破斬や秋沙雨など、闘気を放射しないタイプの技は使用不能。
 魔神剣や獅子戦吼など、闘気を放射するタイプの技は不慣れなため十分な威力は出ないが使用可能。
 (ただし格闘系キャラの使う魔神拳、獅子戦吼などはこの枠から外れ、通常通り使用可能)
 チェスターの屠龍のような、純粋な闘気を射出している(ように見える)技は、威力不十分ながら使用可能。
 P仕様の閃空裂破など、両者の複合型の技の場合、闘気の部分によるダメージのみ有効。
 またチェスターの弓術やモーゼスの爪術のような、闘気をまとわせた物体で射撃を行うタイプの技も使用不能。

 武器は、ロワ会場にあるありあわせの物での代用は可能。
 木の枝を剣として扱えば技は通常通り発動でき、尖った石ころをダーツ(投げ矢)に見立て、投げて弓術を使うことも出来る。
 しかし、ありあわせの代用品の耐久性は低く、本来の技の威力は当然出せない。

----晶術、爪術、フォルスなど魔法について----
 攻撃系魔法は普通に使える、威力も作中程度。ただし当然、TPを消費。
 回復系魔法は作中の1/10程度の効力しかないが、使えるし効果も有る。治癒功なども同じ。
 魔法は丸腰でも発動は可能だが威力はかなり落ちる。治癒功などに関しては制限を受けない格闘系なので問題なく使える。
 (魔力を持つ)武器があった方が威力は上がる。
 当然、上質な武器、得意武器ならば効果、威力もアップ。

----時間停止魔法について----
 ミントのタイムストップ、ミトスのイノセント・ゼロなどの時間停止魔法は通常通り有効。
 効果範囲は普通の全体攻撃魔法と同じく、魔法を用いたキャラの視界内とする。
 本来時間停止魔法に抵抗力を持つボスキャラにも、このロワ中では効果がある。

----TPの自然回復----
 ロワ会場内では、競技の円滑化のために、休息によってTPがかなりの速度で回復する。
 回復スピードは、1時間の休息につき最大TPの10%程度を目安として描写すること。
 なおここでいう休息とは、一カ所でじっと座っていたり横になっていたりする事を指す。
 睡眠を取れば、回復スピードはさらに2倍になる。

----その他----
*秘奥義はよっぽどのピンチのときのみ一度だけ使用可能。使用後はTP大幅消費、加えて疲労が伴う。
 ただし、基本的に作中の条件も満たす必要がある(ロイドはマテリアルブレードを装備していないと使用出来ない等)。

*作中の進め方によって使える魔法、技が異なるキャラ(E、Sキャラ)は、
 初登場時(最初に魔法を使うとき)に断定させておくこと。
 断定させた後は、それ以外の魔法、技は使えない。
10名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:06:52 ID:GZL/pLBF
【参加者一覧】
TOP(ファンタジア)  :5/10名→○クレス・アルベイン/○ミント・アドネード/●チェスター・バークライト/●アーチェ・クライン/●藤林すず
                  ○デミテル/○ダオス/○エドワード・D・モリスン/●ジェストーナ/●アミィ・バークライト
TOD(デスティニー)  :4/8名→○スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/○リオン・マグナス/●マリー・エージェント/●マイティ・コングマン/○ジョニー・シデン
                  ●マリアン・フュステル/○グリッド
TOD2(デスティニー2) :4/6名→○カイル・デュナミス/○リアラ/●ロニ・デュナミス/○ジューダス/○ハロルド・ベルセリオス/●バルバトス・ゲーティア
TOE(エターニア)    :4/6名→○リッド・ハーシェル/●ファラ・エルステッド/○キール・ツァイベル/○メルディ/●ヒアデス/○カトリーヌ
TOS(シンフォニア) :5/11名→○ロイド・アーヴィング/○コレット・ブルーネル/●ジーニアス・セイジ/●クラトス・アウリオン/●藤林しいな/●ゼロス・ワイルダー
                  ○ユアン/●マグニス/○ミトス/○マーテル/●パルマコスタの首コキャ男性
TOR(リバース)    :3/5名→○ヴェイグ・リュングベル/○ティトレイ・クロウ/●サレ/○トーマ/●ポプラおばさん
TOL(レジェンディア)  :3/8名→●セネル・クーリッジ/○シャーリィ・フェンネス/●モーゼス・シャンドル/○ジェイ/○ミミー
                  ●マウリッツ/●ソロン/●カッシェル
TOF(ファンダム)   :1/1名→○プリムラ・ロッソ
●=死亡 ○=生存
合計29/55

【禁止エリア】
現在までのもの
B4 E7 G1 H6

九時:F8
十二時(午後0時):B7
十五時(午後3時):G5
十八時(午後6時):B2

【地図】
〔PC〕http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/858.jpg
〔携帯〕http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/11769.jpg
11名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:08:08 ID:s/Y7d033
----スタート時の持ち物----
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を配給され、「ザック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「着火器具、携帯ランタン」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「支給品」

 「ザック」→他の荷物を運ぶための小さいザック。
       四次元構造になっており、参加者以外ならどんな大きさ、量でも入れることができる。
 「地図」 → 舞台となるフィールドの地図。禁止エリアは自分で書き込む必要がある。
 「コンパス」 → 普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「着火器具、携帯ランタン」 →灯り。油は切れない。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
 「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
 「写真付き名簿」→全ての参加キャラの写真と名前がのっている。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「支給品」 → 何かのアイテムが1〜3つ入っている。内容はランダム。

※「ランダムアイテム」は作者が「作品中のアイテム」と
 「現実の日常品もしくは武器、火器」の中から自由に選んでください。
 銃弾や矢玉の残弾は明記するようにしてください。
 必ずしもザックに入るサイズである必要はありません。
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
 ハズレアイテムも多く出しすぎると顰蹙を買います。空気を読んで出しましょう。
12名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:08:54 ID:s/Y7d033
----武器による特技、奥義について----
 格闘系キャラはほぼ制限なし。通常通り使用可能。ティトレイの樹砲閃などは、武器が必要になので使用不能。
 その他の武器を用いて戦う前衛キャラには制限がかかる。

 虎牙破斬や秋沙雨など、闘気を放射しないタイプの技は使用不能。
 魔神剣や獅子戦吼など、闘気を放射するタイプの技は不慣れなため十分な威力は出ないが使用可能。
 (ただし格闘系キャラの使う魔神拳、獅子戦吼などはこの枠から外れ、通常通り使用可能)
 チェスターの屠龍のような、純粋な闘気を射出している(ように見える)技は、威力不十分ながら使用可能。
 P仕様の閃空裂破など、両者の複合型の技の場合、闘気の部分によるダメージのみ有効。
 またチェスターの弓術やモーゼスの爪術のような、闘気をまとわせた物体で射撃を行うタイプの技も使用不能。

 武器は、ロワ会場にあるありあわせの物での代用は可能。
 木の枝を剣として扱えば技は通常通り発動でき、尖った石ころをダーツ(投げ矢)に見立て、投げて弓術を使うことも出来る。
 しかし、ありあわせの代用品の耐久性は低く、本来の技の威力は当然出せない。

----晶術、爪術、フォルスなど魔法について----
 攻撃系魔法は普通に使える、威力も作中程度。ただし当然、TPを消費。
 回復系魔法は作中の1/10程度の効力しかないが、使えるし効果も有る。治癒功なども同じ。
 魔法は丸腰でも発動は可能だが威力はかなり落ちる。治癒功などに関しては制限を受けない格闘系なので問題なく使える。
 (魔力を持つ)武器があった方が威力は上がる。
 当然、上質な武器、得意武器ならば効果、威力もアップ。

----時間停止魔法について----
 ミントのタイムストップ、ミトスのイノセント・ゼロなどの時間停止魔法は通常通り有効。
 効果範囲は普通の全体攻撃魔法と同じく、魔法を用いたキャラの視界内とする。
 本来時間停止魔法に抵抗力を持つボスキャラにも、このロワ中では効果がある。

----TPの自然回復----
 ロワ会場内では、競技の円滑化のために、休息によってTPがかなりの速度で回復する。
 回復スピードは、1時間の休息につき最大TPの10%程度を目安として描写すること。
 なおここでいう休息とは、一カ所でじっと座っていたり横になっていたりする事を指す。
 睡眠を取れば、回復スピードはさらに2倍になる。

----その他----
*秘奥義はよっぽどのピンチのときのみ一度だけ使用可能。使用後はTP大幅消費、加えて疲労が伴う。
 ただし、基本的に作中の条件も満たす必要がある(ロイドはマテリアルブレードを装備していないと使用出来ない等)。

*作中の進め方によって使える魔法、技が異なるキャラ(E、Sキャラ)は、
 初登場時(最初に魔法を使うとき)に断定させておくこと。
 断定させた後は、それ以外の魔法、技は使えない。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:11:02 ID:s/Y7d033
----制限について----
 身体能力、攻撃能力については基本的にありません。
 (ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合があります)
 治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法は発動すらしません。
 キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限されます。
 しかしステータス異常回復は普通に行えます。
 その他、時空間移動能力なども使用不可となっています。
 MPを消費するということは精神的に消耗するということです。
 全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内ということでお願いします。

----ボスキャラの能力制限について----
 ラスボスキャラや、ラスボスキャラ相当の実力を持つキャラは、他の悪役キャラと一線を画す、
 いわゆる「ラスボス特権」の強大な特殊能力は使用禁止。
 これに該当するのは
*ダオスの時間転移能力、
*ミトスのエターナルソード&オリジンとの契約、
*シャーリィのメルネス化、
*マウリッツのソウガとの融合、
 など。もちろんいわゆる「第二形態」以降への変身も禁止される。
 ただしこれに該当しない技や魔法は、TPが尽きるまで自由に使える。
 ダオスはダオスレーザーやダオスコレダーなどを自在に操れるし、ミトスは短距離なら瞬間移動も可能。
 シャーリィやマウリッツも爪術は全て使用OK。
14名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:12:38 ID:u1MGw5oc
http://fc2bbs.com/m.html

☆☆☆☆運試し☆☆☆☆
開くと2分の1の確立で
可愛い女の子の裸が出ます。
しかしはずれると・・・><
15名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:14:45 ID:8XNalwuA
【書き手の心得】

1、コテは厳禁。
(自作自演で複数人が参加しているように見せるのも、リレーを続ける上では有効なテク)
2、話が破綻しそうになったら即座に修正。
(無茶な展開でバトンを渡されても、焦らず早め早めの辻褄合わせで収拾を図ろう)
3、自分を通しすぎない。
(考えていた伏線、展開がオジャンにされても、それにあまり拘りすぎないこと)
4、リレー小説は度量と寛容。
(例え文章がアレで、内容がアレだとしても簡単にスルーや批判的な発言をしない。注文が多いスレは間違いなく寂れます)
5、流れを無視しない。
(過去レスに一通り目を通すのは、最低限のマナーです)


〔基本〕バトロワSSリレーのガイドライン
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
16名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:15:04 ID:s/Y7d033
----制限について----
 身体能力、攻撃能力については基本的にありません。
 (ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合があります)
 治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法は発動すらしません。
 キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限されます。
 しかしステータス異常回復は普通に行えます。
 その他、時空間移動能力なども使用不可となっています。
 MPを消費するということは精神的に消耗するということです。
 全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内ということでお願いします。

----ボスキャラの能力制限について----
 ラスボスキャラや、ラスボスキャラ相当の実力を持つキャラは、他の悪役キャラと一線を画す、
 いわゆる「ラスボス特権」の強大な特殊能力は使用禁止。
 これに該当するのは
*ダオスの時間転移能力、
*ミトスのエターナルソード&オリジンとの契約、
*シャーリィのメルネス化、
*マウリッツのソウガとの融合、
 など。もちろんいわゆる「第二形態」以降への変身も禁止される。
 ただしこれに該当しない技や魔法は、TPが尽きるまで自由に使える。
 ダオスはダオスレーザーやダオスコレダーなどを自在に操れるし、ミトスは短距離なら瞬間移動も可能。
 シャーリィやマウリッツも爪術は全て使用OK。
17名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:17:02 ID:s/Y7d033
----武器による特技、奥義について----
 格闘系キャラはほぼ制限なし。通常通り使用可能。ティトレイの樹砲閃などは、武器が必要になので使用不能。
 その他の武器を用いて戦う前衛キャラには制限がかかる。

 虎牙破斬や秋沙雨など、闘気を放射しないタイプの技は使用不能。
 魔神剣や獅子戦吼など、闘気を放射するタイプの技は不慣れなため十分な威力は出ないが使用可能。
 (ただし格闘系キャラの使う魔神拳、獅子戦吼などはこの枠から外れ、通常通り使用可能)
 チェスターの屠龍のような、純粋な闘気を射出している(ように見える)技は、威力不十分ながら使用可能。
 P仕様の閃空裂破など、両者の複合型の技の場合、闘気の部分によるダメージのみ有効。
 またチェスターの弓術やモーゼスの爪術のような、闘気をまとわせた物体で射撃を行うタイプの技も使用不能。

 武器は、ロワ会場にあるありあわせの物での代用は可能。
 木の枝を剣として扱えば技は通常通り発動でき、尖った石ころをダーツ(投げ矢)に見立て、投げて弓術を使うことも出来る。
 しかし、ありあわせの代用品の耐久性は低く、本来の技の威力は当然出せない。

----晶術、爪術、フォルスなど魔法について----
 攻撃系魔法は普通に使える、威力も作中程度。ただし当然、TPを消費。
 回復系魔法は作中の1/10程度の効力しかないが、使えるし効果も有る。治癒功なども同じ。
 魔法は丸腰でも発動は可能だが威力はかなり落ちる。治癒功などに関しては制限を受けない格闘系なので問題なく使える。
 (魔力を持つ)武器があった方が威力は上がる。
 当然、上質な武器、得意武器ならば効果、威力もアップ。

----時間停止魔法について----
 ミントのタイムストップ、ミトスのイノセント・ゼロなどの時間停止魔法は通常通り有効。
 効果範囲は普通の全体攻撃魔法と同じく、魔法を用いたキャラの視界内とする。
 本来時間停止魔法に抵抗力を持つボスキャラにも、このロワ中では効果がある。

----TPの自然回復----
 ロワ会場内では、競技の円滑化のために、休息によってTPがかなりの速度で回復する。
 回復スピードは、1時間の休息につき最大TPの10%程度を目安として描写すること。
 なおここでいう休息とは、一カ所でじっと座っていたり横になっていたりする事を指す。
 睡眠を取れば、回復スピードはさらに2倍になる。

----その他----
*秘奥義はよっぽどのピンチのときのみ一度だけ使用可能。使用後はTP大幅消費、加えて疲労が伴う。
 ただし、基本的に作中の条件も満たす必要がある(ロイドはマテリアルブレードを装備していないと使用出来ない等)。

*作中の進め方によって使える魔法、技が異なるキャラ(E、Sキャラ)は、
 初登場時(最初に魔法を使うとき)に断定させておくこと。
 断定させた後は、それ以外の魔法、技は使えない。
18名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 23:07:16 ID:brN0xdPp
19名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/25(水) 01:40:28 ID:mMfY7MAX
客観的に見ると痛いスレだけどみんな頑張れ。
20始まり 1/4:2006/01/25(水) 01:57:05 ID:5gQer4+x
スタンは走っていた。脇目もふらずにシースリの村へと。
拡声器から聞こえてきた少女の演説と、それを支えていたジョニーの声を聞いて。
ミントを探したいところだがその当てはない。ならば自分の思うままに行動するのみだ。
ただ、その真摯なる少女の想いを護るために。
もう数少なくなってしまった彼の仲間を護るために。
「待ってろ、ジョニー。それと誰か知らない人!」
肩に圧し掛かってくる疲労も厭わず、彼は走った。


モリスンは比較的近くにいたせいもあって誰よりも早くシースリ村へと到着していた。
入り口には誰もいなかった。
「静かだ……まさか、もう手遅れなのか……」
村へと入り、不意打ちを警戒しながら歩く。
すると村の中央の広場、そこにある庭園の縁に一人の男が腰掛けていた。
貴族風の衣装に整った顔立ちの青年だ。彼はモリスンを認めると立ち上がった。
「俺はジョニー=シデン。
 人呼んで蒼天の稲妻たぁ、……いや、もう恥ずかしくて言えなくなっちまったな。
 それはさておきあんたが彼女の……ファラの最初の客だ、名前を聞かせてもらえないか」
「私はモリスン。エドワード・D・モリスンという。

 もしかしたら彼女を救えるかも知れぬと思い、馳せ参じた。
 彼女は何処に?」
ジョニーはフッと顔に翳を落とすとフルフルと首をふった。
「死んだよ」
「……そうか」
モリスンは逆に空を仰いだ。
予想されたこととはいえ、善良な少女の命が理不尽にも散ったという事実は重く心に突き刺さる。
「俺は彼女の遺志を継ぎ、ここに現れるであろう参加者たちと交渉をしようと思っている。
 あんたはどうするつもりだい?」
「私は……正直迷っている。私には命を賭して討たねばならぬ敵が存在し、彼奴は今この世界にいる。
 争いを好むわけではないが彼奴、ダオスは必ず討たねばならないのだ。
 だが、彼女の純粋な言葉を聞きその決意が揺らいでいる。果たして今それをすべきかと……」
「迷っているなら、選択肢があるのなら彼女のために選んでもらうことはできないか」
「考える時間が欲しい。願わくば彼女を救い、話をしてみたかったのだが……今はそれも叶わぬ」
「なら、会ってみればいい」
モリスンは虚をつかれ、まじまじとジョニーの顔を見る。
「相手が何も言わなくても話ってのはできるものさ。相手がいれば答えは心の中に返ってくる。
 だから……会ってみればいい」
(答えは……心の中に)
モリスンはしばらく目を閉じ、そして開くと決意した。
「そうさせてもらうことにしよう。彼女は何処に?」
「この村の大鐘楼、その最上階さ。放送はそこから流した。
 その後も彼女にはこの村を見守ってもらおうとその場に安置している。
 あの場所からはこの村の全体を見渡せるからな」
「ありがとう」
モリスンは礼を言うと、大鐘楼に向かって歩き出した。
「願わくば……あんたの出す答えが彼女の遺志に添わんことを……」
ジョニーの言葉は聞こえていたが、それにモリスンは答えなかった。


モリスンが大鐘楼に向かっていくらかもせず、雄叫びが聞こえてきた。
「ファラーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
ジョニーが振り向くと北の入り口から走ってくる赤い髪の少年が見える。
その服装、背格好、髪の色……ファラから聞いていた特徴と一致した。
(彼がリッドか?)
リッドのほうもジョニーを補足したようだ、鬼気迫る表情で彼に近付いてくる。
彼はジョニーの目の前に立つと息も荒く尋ねてきた。
21名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/25(水) 01:58:07 ID:5gQer4+x
「俺はリッド。ここにファラがいるはずだ!
 さっき演説してた女の子だ、アンタ知ってるんだろ? アイツ何処だよ!
 アイツ苦しんでた。早く助けてやらねぇと……」
必死に迫るリッドにジョニーは沈鬱な表情を向け、静かに話し始めた。
「俺はジョニー。リッド、まずは落ち着いてくれ」
「落ち着けるかよ! 仲間がやばいんだぞ? 早く教えてくれ!」
「彼女は死んだ」
「!」
衝撃を受け、リッドは後ずさる。その表情が消え、唇を僅かに震わせた。
「は、ハハ……嘘、だろ……アイツが、そんな……単に死……」
ジョニーは答えない。ただ、黙ってリッドを見つめた。
「ハハ……俺を担ごうなんて、ハハハ、なぁ嘘なんだろ?」
ジョニーは答えない。
「おい、嘘だろ?」
答えない。
「嘘だって言えよ! アイツが死ぬわきゃねぇだろうがぁ!!」
リッドはジョニーの胸倉を掴み上げる。
「クッ…、彼女は……死んだ。殺されたんだ。あの演説が、彼女の最期の言葉だ」
首を締め上げられながらジョニーはそれだけ、声を搾り出した。
リッドはジョニーを突き飛ばすとムメイブレードを突きつけた。
「お前が殺したのか!」
すでに理屈もなく、ただ感情のままにその猛りをジョニーにぶつける。
ジョニーはただ、冷静に答えた。
「違う。彼女はアーチェという少女によって毒殺された」
「そいつは何処だ!」
「俺が殺した」
それを聞くや否やリッドは刃を振り下ろし、地面へと叩きつけた。
「……ひでぇ、そんなのってアリかよ。復讐さえも……俺はできないのか……」
「復讐ならばできるさ。あのミクトランに俺たちでかましてやるんだ。
 ファラは君の事を最期まで信じていた。協力、してほしい」
「俺は……」
その時、空気が弾けた。
感情のままに猛っていたリッドとジョニーは一人の男の接近に気付かなかったのだ。
そしてその事は致命的なまでの悲劇を生んだ。
「ジョニー! 下がれぇ!」
声がするほうを咄嗟に振り向くとそこには、剣を振りかぶったスタンがいた。
「魔神剣!」
その刃から生み出された衝撃波は地を走り、「ジョニーに剣を向けていた」リッドに襲い掛かる。
リッドはすかさず剣を構えて防御するが、はじき飛ばされ建物の外壁にその身を打ちつけられた。
「ぐはッ」
スタンはそのままジョニーのほうへと駆け寄ってくる。
「ジョニー、無事か!?」
「スタン、なんということを! 彼は……」
「話は後だ、後ろに下がれ! 来るぞ!」
「何?」
振り向くとリッドは憎悪の目でこちらを睨んでいた。
「隠れた仲間……罠かよ、じゃあやっぱりファラを殺したのは……」
「違ッ」
ジョニーは弁解しようとするが、それよりも早くリッドは吼えた。
「てめぇらかぁあああああああああああああああ!!!!」
その憤怒のままに襲いくる剣撃をスタンは受け止める。
「俺は、もう仲間を失う訳にはいかない!」
剣を弾き、そのままスタンは連続蹴りを繰り出す。
「飛燕! 連脚!」
リッドはその蹴りを肘と膝でガードし、バックステップで距離を取る。
(これはファラの!?)
それは怒りへと変換され、さらに激しくリッドは剣を振るう。
「テメェが、その技を使うんじゃねぇよ!」
22始まり 3/4:2006/01/25(水) 01:59:04 ID:5gQer4+x
瞬速の突きが電撃を纏い、スタンへと襲い掛かる。
だが、その軌道上にジョニーが立ち塞がった。
「ジョニー!?」
回避行動に移っていたスタンはジョニーの行動に驚き、動きが止まる。
そしてリッドの刃はそのままジョニーの胸を貫き、電撃がその身体を灼いた。
「てめぇ!」
剣を抜き離れようとするリッドだが、ジョニーはそのままリッドに抱きついた。
「ファラは……望んでいない、憎むことを……争うことを……
 止めてくれ、彼と……スタンと話を……」
「な、何を、今さら何を!」
リッドはジョニーを揺さぶる。
しかし彼はその時、既に事切れていた。
「お前……」
「貴様ァアアアアアアアアアアア!!」
斬りかかってきたスタンに気付き、慌ててリッドはジョニーの身体を離してその場から後退する。
スタンはジョニーの傍で立ち止まると、必死に呼びかける。
「おい、ジョニー! しっかりしろ! ジョニーィッ!!」
ジョニーは答えない。ただ、彼の体の下から血だまりが広がるのみである。
スタンはリッドを睨むと力を集中させた。
「待ってろジョニー、すぐに手当てしてやるからな。
 コイツをぶっ倒して!」
リッドもその殺気を受け止め、戦意を最大まで高める。
「貴様なんかにやられるものかよっ!」

二人は同時に大地を蹴る。

「 爪 竜 連 牙 斬 !」
「 猛 虎 連 撃 破 !」

竜と虎の爪牙が互いを引き裂かんと荒れ狂った。
その殺意の嵐の中、一つの声が割って入る。
「何やってるッ、リッド!」
リッドに置いていかれたキールが今ようやく追いついてきたのだ。
その声にリッドは一瞬、注意をキールに向けた。
ほんの、一瞬。そしてその瞬間が勝負の明暗を分ける。
刹那の隙を突いて竜の爪はリッドの腹を裂き、牙は右腕を噛み砕いた。




絶叫が、あがった。
23始まり 4/4:2006/01/25(水) 02:00:11 ID:5gQer4+x
【スタン 生存確認】
状態:疾走による疲労 TP中消費
所持品:ディフェンサー ガーネット
第一行動方針:ジョニーの仇を討つ
第一行動方針:ミントの救出
第二行動方針:仲間との合流
現在地:C3の村 中央広場

【リッド・ハーシェル 生存確認】
状態:背中に刀傷(9割回復) 腹に深い裂傷 右腕切断
所持品:ムメイブレード、エルヴンマント
第一行動方針:ファラの仇を討つ
基本行動方針:仲間との合流
現在位置:C3の村 中央広場

【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:全身打撲(回復中 現在9割回復) 疾走による疲労
所持品:ベレット、ホーリィリング
第一行動方針:絶叫
基本行動方針:リッドと共に行動。ファラ、メルディと合流し、脱出法を探し出す
現在位置:C3の村 中央広場

【エドワード・D・モリスン 生存確認】
状態:TP中消費 全身に裂傷とアザ 背中と左上腕に刺し傷(五割は回復)
所持品:魔杖ケイオスハート 割れたリバースドール 煙玉(残り二つ) クナイ(一枚) 法術に関する辞書
第一行動方針:ファラと対面し、自分の最優先行動方針を決める
第二行動方針:法術取得(まずはファーストエイドから?)
第三行動方針:ミクトラン討伐
基本行動方針:ダオス討伐
現在位置:C3の村 大鐘楼

【ジョニー=シデン死亡】
【残り28名】
24リストカッター中山 ◆2Qa.wFPItE :2006/01/25(水) 05:03:22 ID:XS7qInma
よく分からんスレだが…とりあえずおめーら頑張れよ
25彼女の思索1:2006/01/25(水) 12:35:58 ID:hcJAzXPb
ハロルドは立ち止まり、わずかに顔を上向けた。
聞こえてくるのは女性の声。
拡声器を用いたファラ・エルステッドの必死の呼びかけだった。
ハロルドのいた地点――G3の平原――はC3と直線距離にあり、その音量は内容を聞きとるには十分だった。
しかし内容を聞かないまでも、あの切羽詰った声。呼びかけの意図は想像するに難くない。
「……あちゃぁ」
思わずうめき、ハロルドはごそごそと地図をとりだした。
彼女が目指すF7の森林地帯は、地理的にシースリの村と真逆にあたる。
(今さら目的地を変えたって――)
ハロルドはうなる。
事態はハロルドにとって思わしくない向きに進んでいるようだった。
マグニスたちへの復讐。それに関係しないことにはかかわらない。
そう決めているハロルドだが、このファラの呼びかけは大いに関係があったのだ。
(『ターゲット』がどこにいるかがモンダイなのよね…)
吐いて捨てるほど忌々しい脳みそ筋肉=マグニスと、陰湿な青ワカメ=バルバトスを思いおこす。
ジーニアスを死に至らしめた、殺しを楽しんでいるのが明白なあの二人。
計画性をもって行動しているかも疑わしい彼らが、あの後どちらの方角に向かったのか。
一応、「北上したのではないか」と目算はつけていたハロルドだったが、それも、絶対ではなかった。
なにしろ一時は気を失っていた上、崩落で分断された洞窟では満足な調査もできなかった。
だからこそ罠をしかけるに都合のいい場所に行き、その後、標的をおびき寄せようとしたのだが……。
(こんな呼びかけ、あいつらの絶好のエサじゃない!)
ぎりっ、と奥歯をかみ締める。
だいたい拡声器で寄ってくるのは、血に飢えたハイエナか、さもなくばバカがつくほどのお人よしだ。
殺し合いに乗る気もなく、かつ思慮深い人間は近寄らない。
そしてバカを見るのは、バカがつくほどのお人よしの方だった。
そんなバカが死ぬさまを見たくないから、彼女はあの殺戮者どもを屠ることに決めたのだ。
芝居までしてスタンを追い払ったのも彼を巻き込まないがためである。
だというのに。
たとえ今からシースリ村に向かったとしても。
(間に合わない……?)
ハロルドが絶望にとらわれかけたとき、北の空が白く瞬いた。
巨大なエネルギーを感じたハロルドはそちらを向いた。

イーツ城が消し飛んだこと。
そこに彼女の復讐対象が骸となって転がっていること。
どちらの事実も黒々とした森の影が覆い隠し、ハロルドが感知することはなかった。
だが、何の因果か。
とある天使の命を賭した閃光が、ハロルドに思い出させたのだ。
科学者としての自分を。新たな発見に至った瞬間の、脳髄に走る、閃光を。

そういえば。
――天才ハロルドを出し抜くことはできない。たとえ、ミクトランであろうと――
そう宣言したのは彼女自身であった。
「ふふ……アハハ……!」
ハロルドは笑う。
まんまと出し抜かれているではないか。稀代の科学者ハロルド・ベルセリオスともあろうものが!
うっかりミクトランのお膳立てに乗るところだった。
(私としたことが。復讐するにしたって、殺すぐらいじゃ生ぬるいってもんなのよ、実際)
凶悪な形相でハロルドは天を仰ぐ。
盗聴しているストーカー男が、ついに彼女が狂ったものとみなしてくれるなら好都合だった。
26彼女の思索2:2006/01/25(水) 12:41:03 ID:hcJAzXPb
(――さて)
周囲を確認して近くの茂みに腰を落ち着けてから、ハロルドは地図を広げた。
基本方針は変わらない。
F7森林部に向かい、罠をしかける。しばらくはマーダー…つまり殺し合いに乗ったふりをして、単独行動をとる。
しかし、マグニスとバルバトスをすぐさま罠にかけて殺すような真似はしない。
罠の発動は、最後の最後。
生存者の安全を確保した上で、彼女の華麗な罠で共倒れになってもらう。
(おびきよせる方法も『声』のおかげで思いついたことだし)
『アレ』をうまく利用すればいい。
使い方によってはミクトランすら出し抜けるかもしれない。
首輪と同じだ。状況を監視せざるを得ない主催者、その裏を突くことができれば――。
唯一気がかりな点は、最悪の場合起こるであろうシースリの村での大量虐殺だった。
カイルやスタン、ミントの顔が思い浮かぶ。
お人よしの彼らはシースリの村に向かうだろうか?
知らず知らずハロルドの表情は沈む。そう簡単には死なないことを祈るしかなかった。
どちらにせよ状況を確認するため、いずれはハロルド自身もシースリの村に向かう必要があるだろう。
次に。
ハロルドは首筋をなでて、冷たい感触に顔をしかめた。
かねてからの優先事項だった首輪の調査。これも即急に進めたいところだった。
さすがに己の首輪で試すつもりはない。
だが、この首輪の能力を考えれば、他人――死者のものであろうが、簡単に「データ採取完了」できるとも思えない。
なにぶん盗聴されているおそれがあるのだから。
しかし、これについての対処法も考えがないわけではない。
演技するのだ。ミクトランまでもだますほど巧妙に。
ただ、役者ではないので、できるだけ御免こうむりたい方法ではあった。

(まったく…)
ハロルドは暗く笑う。
マグニスにバルバトス。罠に、シースリの村に、首輪。
仲間も助手も下僕もいないのに、何故こうもやることが山積みなのだろう。
イクシフォスラーとはいかないまでも、もう少し便利な移動手段があればいいのに…。
もっとも、ないものねだりをしても仕方がない。
天才は天才であるがゆえに休む暇もないのだから。
(ま、ひとつひとつ消化していくかっ)
地図をしまいこむとハロルドは立ち上がり、東に向かって歩き始めた。

――彼女はやがて、進行方向からもうもうと立ちのぼる漆黒の煙を目撃することになる。



【ハロルド 生存確認】
状態:全身に軽い火傷 擦り傷 冷徹な復讐心 
所持品:短剣 実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) 釣り糸
現在位置:G3平原
基本行動方針:迂闊なことは言わない 単独行動(たとえ仲間に出会ってもマーダーの振りをして追い払う)
第一行動方針:F7の森林地帯に移動して状況を把握、その後罠を仕掛ける
第二行動方針:首輪のことを調べる
第三行動方針:C3地点の動向を探る
第四行動方針:マーダー(マグニスたち)の始末
27名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/25(水) 19:40:28 ID:5gQer4+x
>>20-23
「始まり」は無効です
28名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/25(水) 20:09:32 ID:mdqePKj8
テンプレ読みにくい。
ちゃんと考えてコピペしろボケ
29永遠と絆:2006/01/25(水) 22:40:14 ID:14SkSUUY
「ファラ、どうやら最初のお客さんだ」
ジョニーはゆっくりと椅子から腰を上げる。
ファラがこの世を発った後、ジョニーはせめて安心して天に召されるようにと彼女の遺体を先程食事をしていた家のベッドに寝かせてあげていた。
目の前には呼吸の仕方を忘れてしまったファラの姿。
それを見るたびにジョニーの顔は悲哀の色を見せる。
だが・・・
「さて、それじゃ迎えにいくよ」
ジョニーはファラのいる部屋から出て行く。途中、別の部屋のベッドにも一人の少女が永遠の眠りについていた。
ジョニーは少し立ち止まり、その少女を横目に見ながら呟いた。
「ごめんよ・・・君には別の生き方をしてほしかったな」
そう言ってジョニーはその部屋の扉を閉め、外へと向かう。
彼の嘆きも、すでにこの世にいない少女の下、アーチェの耳には届かなかった。

ジョニーは玄関から来訪者を待った。
そしてファラの想いをどんな形であれ受け取ったものの最初の来訪者。一目に、魔道士の姿をした男が村の南側の入口からこちらに向かってきている。
その男はジョニーの前に立ち止まり、軽い挨拶を交わした。
「私はエドワード・D・モリスンというものだ。貴方は」
先に名乗ってきたのでジョニーは礼儀を弁える。
「俺の名はジョニー。ジョニー・シデンだ。で、あんたはあの『声』を聴いたのかい」
モリスンは小さくコクっと頷く。
「私は少し回復による術を勉強中でね。まだ拙いものではあるが、彼女の力になれないかと思い訪れたのだが・・・」
モリスンは村をきょろきょろと見回す。どうやらファラの姿を探しているようだった。
その仕草をみてジョニーの心は痛んだ。彼女がもうここにはいないのだと痛感させられた。
モリスンはジョニーの様子に気付き、察してしまったようだ。
「そうか・・・手遅れだったか」
モリスンは一人ごちる。自分にはそんな力が不十分だったとはいえ、助けようと思った少女はすでにこの世からいなくなってしまったのだ。
モリスンはジョニーの目を見据えて言う。
「せめて彼女の姿を一目見たい。会わせてはくれないか」
ジョニーはどうやらこの男の言うことが本気だと確信し、彼をファラの眠っている部屋まで案内した。

30永遠と絆 2:2006/01/25(水) 22:41:21 ID:14SkSUUY
モリスンは部屋に案内されるとファラの姿を確認し、一人、目を瞑って静寂をその間に与えた。
ジョニーはその光景をしばらく眺め、知らずに自分も目を瞑っていることに気がついた。

ファラ、安心して眠っておくれ
  君の想いは確かに届いているよ

モリスンは黙祷を終え、ジョニーの前に立つ。
「すまない無理を言って。彼女には安らかに眠ってほしいものだ」
モリスンの言葉にジョニーは頷く。
「ここではなんだ、居間へ行こう。話がしたい」
ジョニーはモリスンを居間へと促す。椅子のある部屋でゆっくりとモリスンの気持ちを知りたかった。
「そうだな、そうさせてもらおう」
モリスンは去り際の最後にファラを一度見て、ジョニーと共に居間へと向かった。

先の騒動によって零れていたスープはジョニーが綺麗に片しておいたので、別段部屋は醜いものではなくなっていた。
ジョニーが先に椅子に座り、机を挟んで向い側にモリスンが座る。
ジョニーは自分で用意したコーヒーを飲み、話を切り出す。
「それで、ファラの気持ちはアンタにどんな影響を与えたのかな」
モリスンは自分にも用意されたコーヒーを一瞥し、ジョニーに向き合う。
「実はそのことなんだが、私も出来る限りのことはしたい。だが・・・」
少し間を空けてモリスンは口を開く。
「二義的なことで良かったら、という条件でな」
ジョニーは少し眉を寄せた。
「つまりそれは、アンタはやることがあるからそれを優先させろってことか」
「そう解釈してもらって結構。私にはどうしてもやり遂げなければならないことがある」
そう言ってコーヒーカップを手に取り、
「話はそれからになってしまうが、それでいいのなら私も協力しよう」
口に含む。コーヒーはちょうどいい温かさだった。
31永遠と絆 3:2006/01/25(水) 22:41:59 ID:14SkSUUY
ジョニーはというと腕を組み、少し考える仕草をしてモリスンに質問をする。
「そのやり遂げなければならないことってのは、言えないことかい」
モリスンはカップ置き、ゆっくりと返答する。
「ある男を倒すこと。それのみだ」
ジョニーは感じた。その瞳に映る確かな輝きを。
(この男もまた本気なのか)
一人思うジョニーは戸惑う。その倒すべき男にもよるが、それだとファラの想いに矛盾してしまうのではないか。
皆で手を合わせてこんな戦いをやめよう。ただし、一人の男を倒してから。
モリスンの条件とは、つまり、そういうこと。
ジョニーがその矛盾による結論を考えようとしたとき、不意にどこからか迫り来る足音を感じた。
カップを握るモリスンの手が止まる。どうやら彼も気付いたようだ。
「北側・・・か」
「行ってみよう」
二人で外に出て様子を見る。次第に足音の正体がわかった。
赤髪の青年。それだけを視認した。
「敵か・・・?」
言ってモリスンは杖を構える。術の詠唱を開始しようとしたが
「待ってくれ・・・」
ジョニーが制止してモリスンに杖を下げさせた。
「おそらく彼が・・・」
ジョニーはファラの言う幼馴染の特徴を思い出した。その外見的特長から聞いていたものとほぼ一致する。
一番印象に残った特徴は「へそだし」だったのだが・・・
32永遠と絆 4:2006/01/25(水) 22:42:48 ID:14SkSUUY
「ファラ!!ファラ〜!!」
青年はこちらの姿を見つけ、一目散に向かって来た。
息を上がらせて二人の前に立つ青年。その様子からはおそらくここまで全速力で来たのだろうと二人は思った。
「ファラは!?どこにいる!?」
「君がリッド君だな」
ジョニーはとりあえずリッドを宥め、冷静にさせようと思っていたのだが、
「俺のことはどうでもいい!ファラはどこなんだ!?」
どうやらリッドのファラに対する思いは相当なものらしい。ジョニーとモリスンは顔を見合わせたが、モリスンが頷き行動を促した。
「・・・判った、ついておいで。彼女はこの家で眠っている」
ジョニーはゆっくりと家のドアを開き、リッドに入れと促す。
リッドは険しい顔をしたまま家に入り、一目散にファラのいる部屋へと向かった。

「う・・・そだろ・・・」
ファラは確かに眠っている。ただし二度と目は醒まさない。
「ありえねぇ・・・お前が死ぬなんて・・・」
リッドはファラの顔を覗きながら嘆き、
「うそだって言えよ・・・なぁ」
そして叫んだ。
「ファラーーっっ!!!!」

その姿を二人は遠くから痛々しく眺めていた。
「あの青年は何者だ」
「ファラの、彼女の幼馴染だそうだ」
モリスンの疑問にジョニーは答える。それからモリスンは「そうか・・・」と言って黙り込んだ。
(彼にとって彼女の死はとても酷なことだろうけど・・・)
ジョニーは心に思い、踵を返して居間に向う。モリスンもその後を追った。
(ファラの想いに応えてやってくれ・・・)
ファラのいる部屋から流れる一つの叫びは、ファラに対するリッドの気持ちの大きさを表していた。

33永遠と絆 5:2006/01/25(水) 22:43:25 ID:14SkSUUY
「彼はよっぽど彼女のことが大切だったんだろうな」
言ってモリスンは冷めかかったコーヒーを口に含む。
「あぁ。それは彼女も同じことだったろうさ」
ふと、幼馴染のことを話すファラの顔が思い出された。
大事な宝物の話をするような、無邪気な顔。
たしかにファラは幼馴染のことを大切に思っていただろう。
互いが互いに思い合っていたのだ。そこに生まれる絆は大きいものだろう。
「彼には是非とも乗り越えて欲しいよ」
言ってジョニーも自分のコーヒーを飲む。
そしてリッドは居間にやってきた。ジョニーはリッドに声をかける。
「もう、いいのかい」
リッドは落ちこんだ影はあるものの、その顔は何かを決心したようにも見えた。
「あぁ、いつまでもうだうだしてたらファラに怒られちまうからな」
リッドは無理な笑顔をして見せた。
「そうか・・・」
「アンタがファラを看取ってくれたのか」
「あぁ。紹介が遅れたね。俺様の名はジョニー、ジョニー・シデンだ!好きに呼んでくれ」
その様子を見て、モリスンは「座りたまえ」と自分の隣の椅子を指した。
「自分はエドワード・D・モリスン。こっちも好きに呼んでくれて構わない」
二人を見比べてリッドは頷く。
「ジョニーにモリスンだな。わかった」
二人の総称を確認するとリッドは外に出ようとした。
「どこに行くんだ」
ジョニーが不安に思い、リッドを呼び止める。
「少し、外の風に当たってくる・・・」
リッドは振り返らずに扉を開けて外へと出た。
「彼もまた、一人の人間なんだ・・・」
モリスンはその様子を見てから、すっかり覚めたコーヒーを飲み干した。

村の中央にある少し大きな広場でリッドは立ち尽くしていた。
「ファラ、後は俺に任せろ」
握り拳が強くなる。
「こんな戦い許されてたまるか・・・俺はお前の信じた道を進むぜ」
空を見上げる。そこは雲一つない晴天。
「あぁ・・・雨、降らねぇかな・・・」
彼の頬に一粒の雫が零れた。

34永遠と絆 6:2006/01/25(水) 22:44:27 ID:14SkSUUY
【リッド・ハーシェル 生存確認】
状態:背中に刀傷(8割回復)  悲しみ 決意
所持品:ムメイブレード、エルヴンマント
基本行動方針:キール、メルディと合流し、脱出法を探し出す。
第一行動方針:ファラの意志を継ぐ
第二行動方針:できれば危険人物を排除する。
現在位置:C3の村

【ジョニー・シデン 生存確認】
 所持品:メンタルリング 稲刈り鎌 アイフリードの旗 BCロッド サバイバルナイフ 
 状態: 新たな決意
 基本行動方針:ファラの遺志を継ぐ ゲームからの脱出
 第二行動方針:仲間との合流  
 第三行動方針:同志との合流
 現在位置:C3の村

【エドワード・D・モリスン 生存確認】
状態:TP中消費 全身に裂傷とアザ 背中と左上腕に刺し傷(五割は回復)
所持品:魔杖ケイオスハート 割れたリバースドール 煙玉(残り二つ) クナイ(一枚) 法術に関する辞書
基本行動方針:ダオス討伐
第一行動方針:演説少女の意志を継ぐ
第二行動方針:法術取得(まずはファーストエイドから?)
第三行動方針:ミクトラン討伐
現在位置:C3村へ
35名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/26(木) 01:10:34 ID:PEAGgIpj
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
36名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/26(木) 01:12:42 ID:PEAGgIpj
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
37邪なる依代1:2006/01/26(木) 04:02:55 ID:YktiHyeq
「…ロイド、少し、待ってな」
そうロイドを呼び止めたのはメルディだった。
「そうか、疲れたよな、結構急ぎ足だったし」
ロイドはメルディを気遣い、立ち止まる。
やっと橋に差し掛かった所だった。目指すC3村まではまだ距離がある。ここで少し休憩しようとロイドは提案した。
「…はいな、ごめんなロイド」
「あんまり…ほら、色々と無理するなよ」
メルディはロイドと歩いている途中、色々な事が頭を駆け巡っていた。
このゲームが開始されてからは様々な事が起きた。
沢山の人が死んだ。
自分も女の子と戦った。
常に死が隣り合わせにある。
そしてファラは。ファラは無事なのだろうか。
何よりも恐ろしかったのはメルディがまだ実際にその眼で人が死ぬ所を見ていないことにある。
自分の知らぬ、気づかぬ所のどこかで血が流れている。自分が笑っているその瞬間、確実に屍の山が築かれていっている。
そう、今こうして息をしている瞬間にもきっと。
自分は血の入り混じった空気で呼吸をしている。
肺が見えない死の文字に埋め尽くされてゆくようだ。
メルディの中では不安が増大していった。
考え深げにメルディが眼を伏せる。ロイドもその様子に掛ける言葉が見つからなかった。安易に大丈夫だと声を掛けても現実が違っていたら?放送のファラの様子はロイドにも厳しいものだというのが分かったからこそだった。
ロイドはメルディの横に座って口を閉ざすしかなかった。

暫くの時間が過ぎ、ロイドは立ち上がった。
「行こうか、メルディ」
そう言って手を差し出した。
しかし。
38邪なる依代2:2006/01/26(木) 04:08:24 ID:YktiHyeq
「やだあ!!」
メルディはその手を声を上げて振り払った。
「メルディ!?」
いきなりの行動にロイドは驚く。
そしてその目で見た。
メルディの足元から黒い霧の様なものがにじみ出てくるのを。
「ど、どうしたんだ!?」
メルディは立ち上がり、目に涙を溜めて叫んだ。
「やだ、メルディ怖いよ!
もし…もしファラが死…」
「わからないだろ、そんな事!」
ロイドも望まぬ結果を口にしようとするメルディの言葉を遮るように、叫ぶ。
「やだ、怖い、メルディは苦しむファラも見たくないよ!」
メルディの脳裏にアイメンの悲劇がよぎる。
みんな、死んでいった。
交わり自分の胸にダイレクトに響く慟哭。
しかもこのゲームでは自分の知っている人までその手を血に濡らしているのかもしれない。
「だから助けにいくんだろ、ファラって子はお前に呼びかけていたんだ。絶対にファラに会いにいかなきゃ…」
「メルディもそう思たよ!!だけど…」
足元の霧がどんどん濃くなり、メルディの体を上っていった。
まるで負の感情がメルディに迫ってくるかのように。
メルディをそれが喰らい尽くしてゆく。
「ヒアデスも死んだ…ロイドの友達も何人か死んだ。
もうこのゲームおかしいよ!」
悲壮な声。ひどく混乱している。
「ああそうだ!だけどファラはそれを止めようと頑張っている。
だからこそ村まで行かなきゃいけないんだ!」
メルディの目からぼろぼろと涙がこぼれだし、体が次第に震えてくる。
39邪なる依代3:2006/01/26(木) 04:11:26 ID:YktiHyeq
そして黒い霧は更に溢れてきた。
まるで邪悪なものでできたようなそれを、ロイドは直感的にまずいと判断した。今のメルディの状態はこの霧が巻き起こしていると、そう感じた。
「とりあえず、落ち着こう、もう少し休もうか、メルディ」
メルディを落ち着かせようとロイドが頭に手をやろうとしたその時
「触らないでえ!」
再びその手を振り払い、走り出した。
「ど、どうしちゃったんだよ!」
黒い霧はメルディを完全に覆っていた。まるでメルディの嘆きの感情に呼応するように。
「メルディ…苦しいよ。だいぶ、怖いよ。
きっと…みんな死んじゃう。ファラも、メルディも、ロイドも」
「そんなこと言うな!メルディは俺が守る!
ファラだってまだ間に合うかもしれない!」
橋の上で両者が叫び合う。それは吹き抜ける強い風にも浚われることはなかった。
「でも沢山死んでるよ!
あのね、メルディの中でネレイド言ってるよ。もう無駄かもしれないからって。ファラ見たらきっとメルディ駄目になっちゃう。本当だって、分かっちゃう」
「ネレイド…?」
メルディが遠くからでも分かるほどの悲しそうな顔で言う。
「うん…、メルディの中の強くて、怖い力。メルディに沢山酷いこと言ってる」
「そんな声聞いちゃ駄目だ!」
ロイドはメルディに駆け寄ろうとした。
「こないで!」
メルディはロイドを制止した。
いつものにこやかに笑っているメルディとはかけ離れた様子にロイドはそれ以上近付く事は出来なかった。
「すごく、すごく恐ろしいよ。メルディもいつか、殺されちゃう。誰かに、殺されちゃう。
ファラも生きてても、殺されちゃう」
悲痛なメルディの言葉。ロイドは拳を握り締めた。
「俺がそんなことさせない!」
違う。
ロイドだって怖いのだ。
自分のいつもいた仲間は現にこのゲームに殺された。
「だけどっ…!」
握り締めた拳に更に力が入る。
「俺達は生きなきゃいけないんだ!
俺も、死にたくない!元の世界で待っている人が沢山いる!こんなゲームで殺し合いなんて馬鹿馬鹿しいんだ!お前だってそうだろメルディ!!
ファラだってそう思っているからあんな必死に呼びかけたんだ!この会場の奴らにも、メルディ、お前にも生きて欲しいから!!」
「ロイド……」
メルディはその言葉に暫く口を閉ざした。
40邪なる依代4:2006/01/26(木) 04:20:50 ID:YktiHyeq
みんな生きて帰れる?
きっとファラも無事か?
きっと…?
メルディの黒い霧が少しずつおさまってゆく。
「だから…、少し休んだら行くぞ。きっと、ファラも待っていてくれるはずだ」
「…本当に?」
ロイドは少しリッド達に似ていると思った。
きっと自分が苦しんでいたら手を差し伸べてくれる。
こんな自分にも優しくしてくれる。
メルディのなかのあったかいおもいでのひとつ。
必死なロイドに胸が暖かくなっていった。
メルディの表情に明かりが灯しだした。
すると―――

『それはまやかしだ』
「!!?」
メルディの顔が一気に青ざめた。
「メルディ!?」
ロイドはその様子に声を上げる。
「やだ…、こないで…」
内なる声がメルディを唆す様に、甘く、そして残酷に囁きかける。
『我にその身を委ねよ。
誰もが死ぬ。誰もがだ。
お前も分かっているはずだ。
非力な人間は、いずれ死ぬ』
「違う…、違うよ」
メルディが両耳を押さえてうずくまった。
沈静化してきたはずの黒い霧が更に湧き出てくる。
「メルディ…一人で何を…ネレイドって奴か!?」
再びロイドは駆け寄ろうとする。
「駄目!きちゃ駄目!!」
俯いたままメルディは止めた。
『辛いだろう、苦しいだろう。
我ならばお前を救う事ができる』
はあ、はあ、とメルディの息が荒くなる。
寒気が体を支配する。震えが止まらない。心臓がどんどん氷に覆われてゆくようだ。
メルディの繊細な心を、闇が貪る。
『馬鹿なぬくもりに身を預けるのはよせ。それはお前を守ってなどくれない。そうだろう?そうやってそれをあてにしていたが為にお前はまた悲しむ』
ネレイドの言葉ひとつひとつが、メルディに灯ったはずの暖かさをかき消してゆく。
そして心の深淵を執拗に掘り返していった。
怒り、悲しみ、憎しみ、嘆き、絶望
みるみる内にメルディの心までもを霧が覆っていった。
41邪なる依代5:2006/01/26(木) 04:24:16 ID:YktiHyeq
暫しメルディは無言になった。
「大丈夫か、メルディ」
ロイドが駆け寄った。

「あのな、ロイド」
メルディがゆっくり立ち上がりながらロイドに語り掛ける。
随分と落ち着いた声だった。しかし霧は止むところはない。
それでもロイドは一見冷静さを取り戻した様子のメルディに少し安堵を覚える。
「なんだ、メルディ」
メルディが少しだけ笑った。しかしどこか悲しげな笑顔。
メルディは袋からあるものを取り出した。
それは手のひらに収まるほどの石の欠片の様だった。
日の光を乱反射してきらきらと光る、美しい石だった。
「これのせいでメルディの中、変な声するよ。メルディを食べていっちゃう。
でも捨てれなかった。
どうしてかわかるか?」
「どうしてって…」
メルディは手の上の石をそっと両手で握り締めた。
「メルディ、怖かったよ。このゲーム。
ネレイド大きくて、悪いもの。メルディ呑み込んじゃう。
だけどな…、メルディ悪い子だよ。
捨てれなかったのは、それでもネレイドをどこか心強く思ってたよ」
胸元で、石を抱き締めた。
「それって…」
メルディはロイドと目を合わせることなく話を続ける。
「ネレイド、怖い。でもゲームずっとずっと怖い。
メルディ逃げてたよ。ネレイドは悪いけど強いから、この石と一緒にいると守ってくれるみたいで少しほっとした」
42邪なる依代6:2006/01/26(木) 04:29:53 ID:YktiHyeq



『我だけがお前を守ることができる』




メルディは顔を上げた。
ロイドを見た。
霧が顔までも覆い、表情までもは分からなかった。
だが闇の間からはっきりと見えたその眼は

別れを告げているようで。


消え入りそうな声でぽつりと呟く。

「ごめんな…ロイド。
メルディ、ネレイドに…負けちゃったよ」

ドッ!と黒い霧が一気に勢いよく吹き出した。
「メルディ!!」
ロイドはとっさに木刀を構えるが、霧の奔流に吹き飛ばされる。
「うわあ!!!」
そのまま橋の欄干の上を体が越える。
下は、海だ。
「くっ…!」
とっさに左腕をのばし、なんとか橋の床の縁に手を掛けてぶら下がる。
しかし
目の前にはメルディの姿があった。
ロイドを見下げるその目は、残酷な邪神そのものだった。
何がおきた?
何が?
何が?
ロイドには吹き飛ばされ、人が変わったような邪な力を身に纏うメルディを見てもなお、状況が飲み込めなかった。



「なんだ、あれは!?」
丁度その橋に差し掛かった者達がいた。
金髪の青年と少年。萌葱の髪の女性。
黒いまがまがしい気に覆われた少女が映る。
そしてその足元の橋から今にも落ちそうな少年。
端から見るとどの様な状況なのか、理解するには簡単な構図だった。
両者の顔が険しくなる。
「仕方がない。あまり時間はないが…いくぞ、ミトス」
「当然だよ!」
ダオスとミトスは少女に向かって駆けて行った。

43邪なる依代7:2006/01/26(木) 04:36:10 ID:YktiHyeq
【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
状態:TP3/5消費
第一行動方針:メルディを退ける(状況によっては殺す)
第二行動方針:マーテルを守る
第三行動方針:マーテルと行動
第四行動方針:打開策を考える
第五行動方針:敵は殺す
現在位置:B5橋の上
【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード 邪剣ファフニール アトワイト ????
状態:後頭部に打撲、足に軽裂傷、TPを微消費
第一行動方針:ロイドを助ける
第二行動方針:マーテルを守る
第三行動方針:マーテルと行動
第四行動方針:打開策を考える
第五行動方針:クラトスとの合流
現在位置:B5橋の上
【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 アクアマント
状態:悲哀
第一行動方針:ロイドを助ける
第二行動方針:ダオス達と行動
第三行動方針:ユアン、クラトスとの合流
現在位置:B5橋の上

【ロイド:生存確認】
状態:健康
所持品:ウッドブレード(自作)、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆(Sの仲間及び協力してくれる仲間)で生きて帰る
第一行動方針:メルディを説得する
第二行動方針:シースリ村に向かう
第三行動方針:協力してくれる仲間を探す
第四行動方針:メルディと行動
現在地:B5橋の上

【メルディ 生存確認】
状態:ネレイドの干渉
所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱
行動方針:ネレイドに操られている
現在地:B5橋の上
44query→flash,and the will 1:2006/01/26(木) 20:56:25 ID:NfAGJ8Vp
「ヴェイグ…といったか?」
「…何だ?」

二人の人物が、森に隠れていた。
彼らは共に行動していた仲間と別れ、今に至る。
その二人の内の片方、ジューダスは木にもたれ座る青年ヴェイグに声をかけた。
ロイド達のことが気にかかっているのは、隠すまでもない。
しかし、放送のあった村に向かえば、間違いなく死ぬ確率は高くなる。
自分はまだ倒れる訳にはいかない。
ロイド達の安否を極力考えないように、とジューダスは会話を始めたのである。
もとより、先程から感じていた疑問を問い掛けるためでもあった。

「お前が先程使った氷の術、あれは何だ?」

術、という単語を不思議そうな表情で聞くも、ヴェイグは、

「あれはフォルスという…。フォルスといっても色々な種類がある。俺のは氷だ」

と説明する。

「…術、ではないのか?」
「フォルスも術に用いることは出来るが…基本的には違う」

そしてヴェイグは何よりも、自分が術──彼の世界でいう、導術や陣術と呼ばれるものを使えないと付け加えた。
何より、フォルスは「心の力」だからな、とも。

「じゃあお前はマナの流れを感じないのか?」
45query→flash,and the will 2:2006/01/26(木) 20:57:56 ID:NfAGJ8Vp
「フォルスを発動させる直前、少し感じるくらいだ。…もっとも」
「…もっとも?」
「フォルス…というのは、感情が激しくなると暴走する可能性もある…。その時はマナとやらを沢山感じられると思う。それに、マナという本来は必要ないものを必要とするから…能力者に何らかの影響があるかもしれない」
「…なるほど」

今の言葉でジューダスの疑問は晴れた。
先にヴェイグから攻撃された時…あの時、氷を発生させて攻撃してきたのにも関わらず、マナの流れが皆無と言ってもいい程しか感じられなかったのだ。
それをあの時から気にしていた。
ヴェイグの説明によればフォルス自体は厳密に言えば術ではない事と、
元々マナを必要としない事から、比較的使用せずに済むのだろう。
…この世界のマナは複雑だ。恐らく、正しい型ではない。
本来いるべき場所から外れながらも、居場所を探す迷子のようなものだ。
あらゆる異世界の、あらゆる術に対応するために無理矢理織り交ぜたもの。
例えるなら色で、このマナの色彩は様々な色を混ぜた結果、何と表現していいかも分からないような色彩と化してしまったのだろう。
心なしか、不安定さも感じるのである。
46query→flash,and the will 3:2006/01/26(木) 21:00:23 ID:NfAGJ8Vp
しかし、そうでありながら、マナは正常に機能している。
よくもまあ狂ったり暴発したりしないものだ。

──…暴発?

自分の頭に自然と浮かんできた言葉に、更なる疑問を覚える。
暴発はない。それは術を使う上ではのこと。
だが、あるのではないか? 何らかの方法を使えば。
こんな複雑に絡み合ったものが、簡単にほどける訳がない。
では、それは一体?


「ヴェイグ」
「…?」
「もう少し様子を見たら、移動を開始したい」

突然の言葉に、ヴェイグは驚愕と意外を秘めた目で、

「…何故、急に?」

と聞いた。
ジューダスは一息の後、こう告げた。

「会いたい奴がいる」
「会いたい…奴?」

ヴェイグがそう言っている間に、ジューダスは筆記用具を取り出していた。
そして書いた文面をヴェイグに見せる。

『念のため言ってはおくが、何の反応もしないでくれ。首輪の解除法について考えついたことがある』

ヴェイグは目を大きくした。
自分達を束縛するこの首輪を外すことなど、出来ないと思っていた。
自分の命と運命は、ミクトランの手の上で踊らされているのだと思っていた。
それをジューダスは、取り払う考えがあるというのだ。
47query→flash,and the will 4:2006/01/26(木) 21:02:14 ID:NfAGJ8Vp
ジューダスにも、筆談を急にし始めた理由があった。
盗撮の可能性は…と考え、限りなく低いと確信したためである。
まず盗撮されていると考えた場合、どこから見られているか。
首輪の場合、参加者…とりわけ単独で動いている参加者の姿を見ることは叶わず、首輪自体を何かで覆えば視界は封じられる。
よって違うと考える。
次に各地にあるものとして、拡声器。
これは必ずどこかに死角が生じる。全体を把握したいミクトランにとっては、あまり良い場所とは言えない。
よってこれも違う。
最後に考えられるのが、マナ。
これは本当にどこにでもある。だが、故に情報は莫大となり、逆に手が負えなくなる。
仮に参加者の周囲だけ映すようにするとしても、術を使うなどマナの流れに変化を起こせば、恐らく主催者には一瞬でも見えなくなるだろう。
ミクトランの楽しみでもある、殺し合いを見るのを邪魔する訳でもある。
よってこれも違う。
消去法で行くと、身近なもので考えられる要因は全て消えてしまう。
参加者に1番近いのはやはり首輪だが、それに仕込むメリットは大きくはないのだ。
自ずと導き出される答えは──盗撮はない、ということ。
48query→flash,and the will 5:2006/01/26(木) 21:04:21 ID:NfAGJ8Vp
だからジューダスは安心して筆談を始めたのである。
こうなると逆に盗聴されているのは確実であろうが、紙に書かれた文字までは分からない。

「…当てがあるのか?」

どちらの意味ともとれる問いをジューダスにするヴェイグ。

「そいつが何処にいるかは分からない。だが、危険な場所に突っ込むような奴ではないから、放送のあった村には行かないだろう」
『まだ予測の段階ではある。だが、今のままでは予測を越えることはない。誰かに検証してもらう必要がある』

言葉の後に出された紙を見て、

「…では、どうする?」

と少々の沈黙の後に再び問い掛ける。
怪しまれるのではないか、とも思うが、彼は元から口数も少なく物静かな方なので、特に心配することもない。

「そうだな、西はかなりの人数が集まるだろう。危険性も高い…南に向かおう」
『僕は今話している人物に会いに行きたい。奴はかなりの切れ者だからな。首輪や脱出法についても何かヒントを得ているかもしれない』

ジューダスは器用に言葉と筆談を続ける。
それを見聞したヴェイグは立ち上がり、ジューダスを見やる。

「放送があった村は…?」

動きが止まる。
49query→flash,and the will 6:2006/01/26(木) 21:06:33 ID:NfAGJ8Vp
少しして、手が動き今回だけは筆談の方が早く進んだ。ジューダスの口が動いたのは、文章を書き終えた後だった。

『言っただろう? 奴は頭がいい。自ら危険に突っ込む真似はしないはずだ』
「…あまり、こう言いたくはないが…ロイド達を追い掛ける訳にはいかない」

ヴェイグは「だが」と言いそうになって、言葉を喉の奥に追いやった。
きっと、自分よりジューダスの方がもっと辛い。
それを追求するのは、辛さを増させるだけだ。そう思い、ヴェイグは黙った。
今は、彼が提案した首輪解除のことを考えよう。
…しかし。
ジューダスはそう書いたものの、ヴェイグは内容がどこか気になった。
彼の言葉をそのまま信じれば、その人は頭脳明晰で、冷静な性格らしい。
何よりもジューダスはその人物の力を信用している。
…それでも、

「…このゲームで何が起こるのかなんて…誰にも予測はつかない…」

彼は知っていた。このゲームは、人を変える。
何故なら、自分がそうだったから。
目的を達成するためマーダーになっても、今は殺してしまったルーティへの償いをしたいと思っている。
50query→flash,and the will 7:2006/01/26(木) 21:08:27 ID:NfAGJ8Vp
だが、その逆もあるのではないだろうか? 寧ろゲームの性質上、こちらの確率の方が高いのではないだろうか?
ヴェイグはそれを危惧していた。
ジューダスもヴェイグの呟きを聞いていた。しかし、聞き流した。
筆記用具を片付けると、彼は座ったまま辺りを見渡す。

「…今はもう少し様子を見る。そうだな…1時間後出発にしよう」
「…分かった」

ヴェイグは一息おいて返事すると、再び木にもたれ腰かけた。
仰げば、深緑の葉がさあさあと流れ囁いている。
それが聞こえる程、辺りは静かであった。

(…俺は…変わったんだろうか?)

ヴェイグは自分が殺してしまった女性、ルーティ・カトレットのことを思い出していた。

──誰にだって大切なモノくらいあるわよ!!

あの女性はきっと、大切なモノを守るために戦ってきたのだろう。
自分もそうだ。だからこそ、ゲームに乗ると決意した。
だがその結果、自分の大切なモノを失いかけた。
ルーティはどうか。
…彼女の大切なモノは、その過程で、間違いなく自分が「死」という形で奪ってしまったのだ。
それでいて自分は奪ったモノをどう返すかも分からない。
51query→flash,and the will 8:2006/01/26(木) 21:10:40 ID:NfAGJ8Vp
…どうすれば償える? どうすれば許してもらえる?
石化する前に聞こえた、心の闇とも言える自分の言葉を思い返す。

──死ぬ前に許してほしい? 傲慢だ。
──消した命を忘れて自分だけ救われると思うな。

首を横に振る。
俺は、生きてる。それは揺るぎない現実。
俺は、忘れない。それは揺るがない決意。
既にいない彼女には、直接許してもらうことも、償いを見てもらうことも出来ない。
だがせめて、消してしまった彼女の大切なモノと引き替えになるくらいのことはしたい。
どんなに大きくたって。
それがヴェイグの、心からの思いだった。

(クレア…俺は、逃げない。罪の重さから、人を殺してしまった自分から。だから見ていてくれ、俺のことを。そして、待っていて欲しい…)
52query→flash,and the will 9:2006/01/26(木) 21:13:58 ID:NfAGJ8Vp
【ジューダス:生存確認】
状態:健康 
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、(上記2つ二刀流可)、エリクシール
基本行動方針:ミクトランを倒す
第一行動方針:協力してくれる仲間を探す(特に首輪の解除ができる人物を優先)
第二行動方針:ヴェイグと行動
第三行動方針:ロイド達が気になる
現在位置:B5森林地帯

【ヴェイグ 生存確認】
状態:右肩に裂傷 強い決意
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(パイン、ミラクル)
基本行動方針:生き残る
第一行動方針:ジューダスと行動
第二行動方針:ルーティのための償いをする。
第三行動方針:呼び掛けが気になる
現在位置:B5森林地帯
53名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/27(金) 00:46:25 ID:gtuMn5JX


テイルズはこの板ではとりあつかわないことになりました
今後一切2ちゃんねるでテイルズに関係するスレッドを立てないでください









RPG板自治スレ委員会
54名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/27(金) 00:48:10 ID:JgtvMgnE
まぁこのスレはキャラ板とかゲサロなら受け入れられるだろうな
55Hello,my family1:2006/01/27(金) 21:32:33 ID:bEf5fGTH
「待って!!」
走り出した二人を、マーテルが制した。
マーテル至上主義の二人が従わない訳がなく、二人は反射的に足を止めた。
勿論、少女に対しての警戒は怠らない。
「…二人は、彼をお願い」
ひどく穏やかな声がこれからを指示する。
つまりは、自分がどうにかするという事で。
「大丈夫。きっと解ってくれるわ」
「だが…っ」
根拠も何もない、端的で理解の難しい言葉。
ダオスは素直に眉を寄せて反論しかける。
しかしミトスはそれを信じた。
それは無類の、彼女に対する信用。
それよりも第一にまず、出来るだけ彼女の意思を尊重したかった。
「ダオス早く!」
マーテルを止めようとするダオスを、ミトスは鋭く叫んで促す。
ゆっくりと、一歩ずつ彼女は少女に近付いてゆく。
その間に、二人は少年を引き上げる。
『…近寄るな』
邪を象る黒い靄が、その質量を増してゆく。
一歩。
一歩。
引き上げられた少年はミトスの顔を見て驚きに目を丸くする。
しかしミトス自身の神経はマーテルに集中しており、最早少年は見ていない。
「大丈夫。怖くないわ。
私たちは貴女を傷付けたりしないもの。…ね?」
一歩。
また、一歩。
黒い靄は勢いを増して、牽制するようにマーテルにまで広がる。
ハッとして、少年―ロイド―はその対峙に目を見張る。
見た事がある。あの女性は…
「マーテル!!」
思わず叫ぶ。
しかしメルディの事でいっぱいいっぱいだったロイドには、自分を救った者の事も、メルディに近付く彼女の事も、今はどうでもよかった。
56Hello,my family2:2006/01/27(金) 21:33:54 ID:bEf5fGTH
「マーテル!ネレイド…その黒いののせいでメルディは変になったんだ!!だから…っ」
先程までの流れで、その靄がメルディをおかしくしたというのはロイドでも解る。
しかし叫んだ言葉の本意は、一体何か。マーテルが危険だから、止めたかったのか。
それとも、靄を取り払って、メルディを助けて欲しかったのか。
どちらともつかない叫びに、ロイド自身言葉に詰まる。
どちらかの意味に、あるいは両方の意味にとっただろうマーテルは安堵を促すようににっこりと微笑み、再び近付く。
「落ち着いて?大丈夫。話をしましょう?」
二人の距離、1m弱。
靄が、マーテルの白い肌に触れる。
黒が白を侵食するかのような図。
『…………!』
マーテルが、届かないとは知りつつもそっとその黒に手を伸ばした。
受け止めるように。
靄が、少女が、静かに揺らぎを増す。
「姉さまっ!!」
それに耐えきれなくなって、ミトスは叫ぶ。
尊重はしたい。でもそれは命の保証があってこそだ。
近付いた二人の距離に、メルディ―ネレイド―の殺気が爆発的に強まり、
「…っ!」
考える間もなく、ミトスとダオスは駆け出す。
ダオスが手刀を振り上げながら突進する。
互いの間合いに入り、息を詰め
『ホーリーランス』
「ぐぁっ!?」
「ダオスさんッ!!?」
小さく唱えていたのだろう詠唱がそれを許さない。
光が槍となり、ダオスに振りかかり地を抉る。
とっさに避けたが足場が抉れたダオスは転がるようにして体勢を崩す。
その隙に瞬間移動で背後に回ったミトスが、タイプの違う双剣を振りかざす。
気絶させれば良い。とりあえずは。
峯打ちを狙い、突き出して…
「やめてぇっ!」
「粋護陣っ!!」
マーテルの声に、ロイドの声が重なる。
青味がかった護の力は、再び少女を…否、神を護った。
57Hello,my family3:2006/01/27(金) 21:35:27 ID:bEf5fGTH
「な…っ!
お前、何をするっ!?」
「メルディはその靄のせいで変になったんだ!
だからきっと正気に戻せる!この娘は殺させない!」
ミトスの怒号に、混乱したロイドは理由のない理屈で剣を向ける。
「マーテルに危害を加える者は、誰であっても退ける。
私は彼女を守りたいのだ」
「そんなの…、そんなの俺だって同じだっ!!」
収まった地に何事もなかったように、しかし隙無く立つダオスの冷静な言葉にロイドはそのまま走り出す。
「やめて…!もう誰にも傷を…」
『アイスニードル!』
マーテルの願いを断ち切って、突如現れた氷の刃。
致命傷にこそならないものの、威嚇には十分。
すぐ足元の地に突き刺さる鋭利な刃に怯み、ロイドの足が一瞬止まる。
「きゃぁっ!」
マーテルが驚いて叫び、後ずさるように無意識に距離をつくる。
「姉さまっ!くっ…!」
迂濶。
こちらとて忘れてはいけなかったのだ。
片付けなければならないのは単一ではない。
「お願い!戦いなんてやめて!
…誰かが傷付くなんてもう嫌…っ!」
マーテルの悲痛な叫びは、氷の名残に滲む。
「虎牙破斬!!」
ロイドが双剣を上下から挟むように振り上げ、ミトスに向かう。

そうだ、もともとミトスは自分の敵の筈だ。
人間なんて、虫ケラくらいにしか思っていない。
姉を失った彼は。

ロイドは唇を噛み締める。
余計な事を考えるな。守らなくては。今度こそ。
ミトスは内側からそれを受け、同じく双剣の平らな部分で止める。
木を削っただけのような剣は、圧力にミシ、と小さく音を立てる。
「邪魔するな!」
「メルディに手を出したのはそっちだろ!?もう誰も犠牲にしない!」
ぐ、と声に重なるように剣に力が込もり、ミトスは押される。やはり元々の力の差は大きかった。
ミトスは内心舌打ちする。
彼は混乱状態にある。
となればまずは落ち着かせねば話にすらならない。
ならば。
ふっと押し合う力を急激に緩めれば、ロイドは勢いで体勢を崩す。
そのまま身を屈めると器用にロングソードを回し、
「が…っ!!」
全体重をかけてその柄を彼のみぞおちに突き立てた。
58Hello,my family4:2006/01/27(金) 21:42:45 ID:bEf5fGTH
変な声と唾と、どこか噛んだのか微量の血の混合物を吐き出し、ロイドは軽く気を失った。
「ミトス!?」
「大丈夫。すぐに起きると思うよ。
姉さまはその人の事、お願い。」
不安そうなマーテルにミトスは早口で伝える。
ロイドに駆け寄るマーテルを横目で確認して、援護に向かう。
ダオスは少女と対峙中で。
「テトラアサルト!」
素早く拳が突き出され、少女の首、みぞおち等の急所が狙われる。
『バリアー』
刹那に張られた膜は、それを軽減する。
黒い靄が拳圧で散り、すぐにまた重なる。
再びマナが流動を始める。
身体に染み付いた技能は、例え何かが憑意したとしても大きな支障はきたさない。
ダオスは気付く筈がないのだが、メルディは彼女自身の晶霊術も、ネレイドが用いるそれも使えていた。
元々この会場で彼女が使えるのはセレスティア系晶霊術。
マナの流れが異質なこの地だからこそ、それも可能だった。
少女が掌にマナを収束させ、呟いた。
『天光満つる所に我はあり…』
「――っ!!
させるかぁっ!!」
聞き覚えのある詠唱に、ダオスの身の毛がよだつ。
反射的にそれを途絶えさせようと、力任せに首根っこを引き、地に叩き伏せた。
バキっと音を立てて橋を構成する恐らく木であろう材質が幾らか割れる。
頭蓋が割れなかったのは、バリアーの賜だろうか。
脳震蕩さえ起こさなかった頭を押さえ付け、地面に押し付ける。
『ぐ…っ』
「ダオス!それ以上は…っ!」
「解っている。」
それだけを告げ、少女の口と鼻、そして気道を手で塞いだ。
59Hello,my family5:2006/01/27(金) 21:44:02 ID:bEf5fGTH
ミトスもマーテルも、一気に青冷める。
「ちょ…っ、ダオス…!」
「黙れ!」
目を丸くして制するミトスを鋭く黙らせた。
その気迫に二人は、何か言おうとしていたマーテルさえ黙る。
詠唱が出来なければただの少女。
体格で明らかに有利。
こんなところであんな魔術を使われたら、この橋さえ崩れてしまうだろう。
絞める手に力が増し、少女の顔が苦しそうに歪む。
詠唱も呼吸もさせない。
力は絶対的。
『……っ…ぅ…』
しばしそうした所で、少女の意識は沈んだようだった。
完全に反応がなくなり、身体が弛緩し。
ようやくダオスはその手を離した。
一時的な昏睡だろう。浅い呼吸に少女の胸が微かに上下して、辛うじてまだ生きていると知らしめる。
「生きて…るの?」
ミトスが不安そうに訪ねる。
ダオスは無言で立ち上がりながら頷いた。
マーテルがまだ幾らか青冷めたまま、こちらを見ている。
その膝にはロイドの頭。
俗に言う膝枕というやつ。
それに気付いたミトスがいくらか不服そうな顔をするが、今は気にしていられない。
「姉さま…大丈夫?」
気遣うミトスはマーテルに近付く。
ダオスは気を失った少女を横抱き、それに続いた。
すぐそこに近付いた事によりようやく少女の胸の上下を確認できたマーテルは、肩の力を抜くように安堵を洩らした。
その服の裾は少しだけ破れ、多くはないが戦闘の被害があった事を示す。
怪我のない事にほっとして小さく息を吐き、改めてダオスが少女を見やる。
意識を手放したせいだろうか、その靄は僅かに薄れ、少女の顔が明らかになっていた。
悲痛に、苦しさに歪む表情。
その瞳に、頬に、涙の名残が見えた。

「ん…」
「あ、起きたみたいね。…大丈夫?」
ロイドが目覚め、枕代わりのその柔らかさとすぐ側にある穏やかな笑顔に全神経が一気に覚醒する。
顔を真っ赤にして飛び起き、経路を思い出す。
確か…
「そうだ!メルディは!?」
まず一番は独特な言語を語る小さな少女。
今にも泣き出しそうな程必死になれば、感情に任せてマーテルの細い肩を掴む。
若干痛みを感じただろうが、マーテルはまさに女神の如く優しく微笑んだ。
「彼女は大丈夫よ。ダオスさんが…落ち着かせるために気絶させちゃったけど。」
「え…?」

60Hello,my family6:2006/01/27(金) 21:45:19 ID:bEf5fGTH

気絶。
落ち着かせるため。
殺意は、ない。
何を勘違いしていたのだろう。
その、優しい声、は。
失ったはずのどこか遠い母のように、緩やかな安堵をもたらして。

「そ…か…。よかった…」
急に肩の荷が降りて、その胸にもたれるように身体から力が抜ける。
一先ずは現状は落ち着いたと見て良いのだろうか。

ネレイド。
メルディはそう言った。
あの靄が石が、メルディを蝕む。
あの靄がネレイド?
いや、多分違う。違うけど完全にハズレじゃない。
石。…石?

…………あ。

ロイドは自らの手に填め込まれたエクスフィアを見た。
母を媒体にして生まれ、根拠のない感情論とはいえ母の気持ちを宿すこの石。
使い方によっては使用者をも支配し、無機化する。
キラリ、と光を反射する。
石が、力を貸す代わりに…侵蝕する。
自我をなくして……、コレット…?
いや、違う。操られてて…
………?


「おい、ミト…」
「…そろそろ姉さまから離れてくれないかな?」
ダオスの呼び掛けを綺麗にスルーして、にーっこり笑顔のミトスが黒いオーラでロイドに忠告した。
その途端、思考に没頭していたロイドは顔を勢いよくその少年に向ける。
褐色の瞳は、驚愕に丸い。
「ミトス!!…そうだよ、お前…何で…!
って、マーテル!!」
見知った顔、そして有り得ない光景に一気に混乱する。
いつかの時に敵と認識せざるを得なかった少年と、女神、精霊として自分の前に姿を見せた女性。
女性の姿に僅かな違いはあれども、その雰囲気、容貌はさして変わらない。
自分達の旅の大前提となったその姉弟の顔を見比べ、口をぱくぱくさせる。
だが、
「…何故ボクらの名を…?」
61Hello,my family7:2006/01/27(金) 21:50:30 ID:bEf5fGTH
訝しげに眉を寄せたミトスに、ロイドの頭は一気にフリーズした。
「え…?だってお前…ユグドラシルで…クルシスで…」
「………何故それを?」
急にミトスの雰囲気が冷たいものを孕み、ロイドは息を呑む。
「どういう事だ…?」
食い違う二人の間を微妙な空気が流れる。
耐えかねたマーテルが、控え目に口を挟んだ。
「ミトス?クルシスって…?」
ミトスの瞳が、一瞬氷付く。
ダオスはそれを見逃さなかった。
「……何でもないよ、姉さま。」
すかさずふわりと笑み語る笑顔に、ロイドは初めてあった時の彼を思い出した。
す、とミトスがロイドに顔を近付ける。
「…………、
……何故知ってるか知らないけど、今は…今のボクにクルシスは関係ない。
姉さまを守りたい、それだけだ」
ロイドの耳元に唇を寄せ、小さな小さな声で言外に黙秘を命ずれば。
離れた顔は穏やかな笑顔。
「ね?ロイド」
「あ?…あぁ」
態度の変換振りに思わず頷く。
マーテルが不思議そうに首を傾げたが、友達にでもなったのだろうと微笑んで自己解釈を行い、それ以上追求はしてこなかった。


62Hello,my family8:2006/01/27(金) 21:52:00 ID:bEf5fGTH

ダオスは一人蚊帳の外。
少女を抱えた姿は、まるでどこかのパパ。
いや、このパーティ自体が、
長身の父と優しい母、二刀流の兄弟、そして隠れかんしゃく持ちの可愛らしい妹
という事に気付く第三者すら、今此処にはいない。



ロイドの手の甲で、
メルディの握り締めた手で、
そしてミトスのザック内にある細身の剣で、
曰く付きの結晶体達が小さな光を映した。



広がり始めた黒い靄には、まだ誰も気付かない。




63Hello,my family9:2006/01/27(金) 21:52:59 ID:bEf5fGTH
【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
状態:TP半分消費
第一行動方針:メルディを見張る(状況によっては殺す)
第二行動方針:マーテルを守る
第三行動方針:マーテルと行動
第四行動方針:打開策を考える
第五行動方針:敵は殺す
現在位置:B5橋の上

【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード 邪剣ファフニール アトワイト ????
状態:後頭部に打撲、足に軽裂傷、TPを微消費
第一行動方針:メルディを助ける
第二行動方針:マーテルを守る
第三行動方針:マーテルと行動
第四行動方針:打開策を考える
第五行動方針:クラトスとの合流
現在位置:B5橋の上

【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 アクアマント
状態:普通
第一行動方針:メルディを助ける
第二行動方針:ダオス達と行動
第三行動方針:ユアン、クラトスとの合流
現在位置:B5橋の上

【ロイド:生存確認】
状態:健康
所持品:ウッドブレード(自作)、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆(Sの仲間及び協力してくれる仲間)で生きて帰る
第一行動方針:メルディを助ける
第二行動方針:シースリ村に向かう
第三行動方針:協力してくれる仲間を探す
第四行動方針:メルディと行動
現在地:B5橋の上

【メルディ 生存確認】
状態:ネレイドの干渉(気絶により詳しくは不明)
所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱
行動方針:不明
現在地:B5橋の上
64Re・Birth(修正)1:2006/01/27(金) 22:05:48 ID:sgnketZL
彼女たちが目を覚ましたのはここが魔女の釜の底と化し
その釜が塵と失せてからしばらく後でのことである。
2人は目を見張った。最後に見た景色と真逆だったから。
金髪の少女、コレットはふと上を見上げる。空は高く、何処までも青い。

ここは確か部屋だったはずだ。コレットは記憶を辿る。
襲われた夜、堕とされかけた体、助けに来てくれた剣士、傷付いていく剣士、
守り通してくれた剣士、死の淵の剣士、そして―――
ふと最後の記憶に顔を赤らめる。あの時は彼を助けるため無我夢中だったが
流石に彼女は少女、今思えば気恥ずかしいものだったのだろう。
嫌悪感とかそう言った類のものではなかろうが。
普通なら両の手を頬に当てるのだろうが、後ろに回った手枷の為にそれは叶わない。
そうだ、あの剣士は―――そう思ったところ思考は中断された。
自分の横にいた少女が信じられないものを見ているかのような目をしていたからだ。

彼女は誰なのかを考える前に釣られてそちらを見てしまった。
彼女は目がいい、異常な程に。視界の先で倒れている彼と同様に。

「「クラトスさん!!」」2人が彼の名を呼んだのはほぼ同時だった。

2人は駆け寄る。すでに息絶えた骸の前に。泣きながら声をかけるが返事などあろうはずもない。
耐えられなくなって地下(今はもう地下ではないが)を出た、誰かいないのか、誰か、そうだ
サレさんは?あの人はきっと―――
サレはいた、かろうじてサレと判別できる程度だったが。
2人は恐慌した、特ににリアラの恐れはコレットの比ではない。
彼女の世界の最強の敵、バルバトス・ゲーティアを同時に見つけたからだ。
リアラは自身の理解の限界に達したのか、顔面蒼白になりその場に座り込んでしまった。
一度襲われたことのあるコレットも精神的に限界寸前になっていた。
辺りを見回した。あの時も自分を守ってくれた剣士、クレス・アルベインの姿を見つけようと。
その視力でコレットは見つけた、クレスではない。
バルバトスと共に襲ってきた最凶の敵、五聖刃のマグニスの遺体を見つけたのだ。
コレットは少し遅れてリアラの感情を共有し、脱力、座り込む2人。
もしここに誰か一人でも来たら2人はあっという間に命を失っていただろう。
それ以前に彼女たちが休息の直後でなかったら
心身衰弱した彼女たちにはこの惨状に耐えられなかったはずだ。
心を病まなかっただけ救いだったといえるかもしれない。
65Re・Birth(修正)2:2006/01/27(金) 22:08:15 ID:sgnketZL
しばらくした後、リアラはコレットに話しかけた。名前を、クラトスと行動していたことを、
サレにコレットの話を聞いて助けに来たことを。コレットも話をした。サレと出会ったこと、
、クレスに出会ったこと、暴走した男性、仲間のシルエット、現れる最強の2人、
死んだ仲間、悪漢に襲われこの城に来たこと、命がけでクレスが守ってくれたこと。
恐怖を共有したことがほぼ初対面の2人の距離を縮めた。年端が近いことも一役買っていた。
まるで互いの恐怖を慰めようと夢中で話す、自分の世界のことまでも。
知らない人から見れば2人は十分に友達に見えるだろう。

精神の均衡を取り戻した2人は瓦礫の中を探索する。
手枷つけたコレットはうまく物を持てないため実質リアラが運ぶ。
正確には手伝ったのだが、リアラに遠まわしに遠慮された。無論コレットは気づかない。
(リーガルさんもこんなに不便だったのかな…)
コレットは少し思い出す、本当の手枷の持ち主を、旅をしたあの頃を。
(でも、もうしいなは、クラトスさんは!!!)
もう帰ってこないあの頃。コレットは嫌悪する。無力で何もできない自分に。
更なる事実を彼女はまだ知らない。聞いていない。

見つけたものは5種。
フランヴェルジュ、オーガアクス、ピヨチェック、苦無1本。
そしてすでに弾切れとなった銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲の前にそれらを集めた。
その他のものは食料含めて破損がひどく、とても使用ができるとは思えなかった。
尤も、無事なものも彼女たちの細腕ではどれも使えたものではない、はずだった。

「やっぱり、サレさんも、クラトスさんも、クレスさんも…」
「うん…」
66Re・Birth(修正)3:2006/01/27(金) 22:09:28 ID:sgnketZL
一通り調べて2人がたどり着いた結論。
リアラが眠りについた後マグニスとバルバトスがここを襲撃。
彼女たちを守るためにクラトス、サレが応戦、先に目が覚めたクレスも
剣を取り戦いに身を投じ、戦闘の果てにクラトスを残して相討ちになった。
その後起こった何かから私たちを守るためにクラトスが天使の力を解放した、
というものだった。
クレスの剣や遺体がない事や1本を残して破損した苦無の存在、
クラトスが持っていたはずのもう一振が無いことなど疑問は多々あるのだが。
クレスは一人逃げ出すような人間ではないというコレットの証言と
苦無はマグニスかバルバトスが隠して持っていた 、という推察から
そう結論付けた。リアラはクラトスのもう一振りを使っている
所を見たことが無かったため深く疑問視しなかった。

クラトスはサレを疑っていたのだが、やはりいい人だったのだ。

「いい人も、悪い人も何で亡くなっちゃうんだろう?」
「コレット…」

リアラにかける言葉は見つからなかった。事実だからだ。善人、悪人、強者、弱者
みな等しく、確実にいなくなっている。もはや弱肉強食の形すら成り立ってない。
リアラは目を閉じる。自分の仲間たちを、既に1人は居なくなってしまった。
しかし、まだ心を折るわけにはいかない。ハロルドに、ジューダスに、そして、
カイルに会うのだ。なんとしても生きて、生きて帰るのだと、強く思う。
しかしコレットにかける言葉が見つからない。放送と彼女の仲間の話を聞く限り、
彼女の仲間はもう一人しか残っていない。 言葉に窮したリアラは目を伏せた。
目を伏せたその先に、綺麗な石を見つける。吸い込まれそうなその輝きに導かれ
石を拾い、手にかざし、見つめる。榴弾砲から外れた、エクスフィアを。
67Re・Birth(修正)4:2006/01/27(金) 22:10:32 ID:sgnketZL
「ねえ、これって何かしら?」
リアラはコレットに尋ねる。コレットは気だるそうに彼女の差し出したものを見る。
「それは、エクスフィア…」
コレットは少し驚いてたようにそれを見る。彼女が知るものがここにある。
「知っているの?教えてくれる?」
リアラは新しい話題に飛びつく。自身としてもこの重苦しい雰囲気を脱したかったのだろう。
「んとね、私の友達から聞いた話なんだけどね。」

「エクスフィアっーのは俺たち人間の力を引き出してくれる鉱石なんだ。でも
直接肌につけると毒なんだよ。でも体に直接付けないと 効果が無い。
だから要の紋、抑制鉱石にドワーフの呪紋を彫ったものをセットにして
毒を抑制しながら装備するんだ。要の紋無しで付けちまったら?
別に直ぐ外せばいーよ。 まあ牧場の、ハーフエルフに捕まった人は
体に直接埋め込まれてるらしいけど、そんなのは取り外すだけでも危険だからなー
要の紋のアクセサリを一緒に付けて土台代わりにするしかないんじゃ――ってどうしたの?」

コレットは隣のリアラがやけに嬉しそうな顔をしていることに気付き、講談を止めた。
「あ、ごめんなさい。何でもないの、ただちょっと。「ちょっと?」
「とても楽しそうに喋ってるからつい。」
コレットは自覚した、ロイドのことを思い出して明るくなっている自分を。
そして同時に恥ずかしくなった。自分の置かれてる立場を一時でも忘れ浮かれている自分を。
思考をネガティブにループさせる前に、察したリアラは話題を変えてくれた。
「そ、それじゃ使えないね。その、要の紋っていうのが無いし、残念だね。」
「ん、別に体につけなくても道具とか武器とかなら要の紋無しでも大丈夫なんだけど。」
68Re・Birth(修正)5:2006/01/27(金) 22:11:40 ID:sgnketZL
コレットはリアラの武器を見る。ロリホップ、特大のペロペロキャンディのような
それの何処を見渡しても石を填められそうな部分は見当たらない。
「で、でももしかしたら他の武器にはめられるかも、あっ!!」
忘れていたこと総じて3つ。
剣や斧にはめてもリアラには到底使いこなせないことが1つ。
彼女が手枷を後ろにつけていたことが1つ。
そして、彼女がドジっ娘であったことが1つ。

手に入れた武器に手を出そうとして、結果リアラを巻き込んで
盛大に転んでしまった。倒れる方向に壁があったら問答無用で貫いていただろう。
しかし、先にあったのはロリポップとエクスフィア。
「いたたた…リアラ、大丈夫?怪我は…あ。」
「うん、こちらこそごめん…え?」
ふたりの目が同じものを捕らえる。ロリポップのど真ん中に埋まってしまった、
エクスフィアを。
「くっついてるね。」「うん…」
「取れないね。」「うん…」
「どうしよう?」「えっと…」

数秒の沈黙、そして。
「「フフ…フ…あはっははっはっはははっははは―――」」
大笑。このゲーム始まって以来の、悪意の無い大笑い。
思えばゲームが始まって24時間、あまりにいろんなことがありすぎて
こんな静かな時間は無かったかもしれない。ありえるはずのない安らかな日差し。

「リアラ、励ましてくれてありがとう。元気が出たよ。まだ大丈夫、
ジーニアスにも、ゼロスにも、ロイドにもまだ出会ってないんだもん
まだこんなトコでへこたれてちゃ駄目だよね?うん。
じゃあここから…どうかしたのリアラ?」

活力溢れんばかりといったコレットに対し、リアラの表情はなんとも切羽詰ったような顔つきだ。

「どういうこと?もしかして生き返らせる方法があるの?」

「え?」
69Re・Birth(修正)6:2006/01/27(金) 22:13:02 ID:sgnketZL
リアラはここまで言ってようやく自分の失言を理解し、
コレットも知っていると考えていた自分を恥じた。 コレットは聞いていないのだ。
放送を、禁止エリアを、この12時間の結果を、知らなかった。
しかし、こで口を噤んだ所でその意味を推し量れないほどコレットは鈍感ではない。

「どういうこと…生き返らせるって…」
「…クラトスさんがあなたの治療をしている間に放送が流れたの。」

コレットの気迫にリアラは観念した。なるだけ主観を交えぬよう事実を伝える。
既にいない、彼らの結果。それを聞いた後、コレットは何とも言えない状態になった。
喜怒哀楽、言葉ではいえないようなその顔にリアラは押し黙った。

なんで?なんで?なんで?コレットの頭に疑問が浮かんでは消える。
議題は「なんで彼らが死んで私は生きているのか」
自己犠牲や自虐は彼女の性格ではあるのだが。今回の場合は度合いが違った。
もう仲間残った仲間はロイドしかいないという事実。
(しいなの方が、ジーニアスの方が、ゼロスの方が、クラトスさんの方が、私なんかより)
コレットの思考が、自虐から自害に変わるのは時間の問題だったが、先に状況が動いた。

「!!」
コレットは急に東の方を向いた。目を閉じ、聴覚に集中し、自虐は一時思考から排除する。
「誰か、こっちに来てる?…一人じゃない…2,3人?それに…
それにこの音、誰か走ってる?北に?ほかにも…だめ、ノイズが酷くて分かんない。」
「コレット…」リアラもコレットの表情から警戒を強めた。

2人は短時間で状況を考える。この城の有様を見る限りとても大規模な術、
コレットが言うにはクラトスが天使術を使ったものだという。
城を吹き飛ばすほどの術が発動したのに私たちはこんな時間まで眠っていた。
本来なら術を目撃した人間が来ている筈なのに。つまり、それ以上の何かが
どこかで今、あるいは既に起こっている。情報が無い以上それは置いておき、
そんな中あえてこちらに来ている人間。いい人か、あるいは―――ともかく
かなり知性派のパーティが来ている。
本来の彼女たちなら迷わず人を信じたのだろう。しかし、今の彼女たちは
自分たちにあえて苦言を呈してくれた人たちの死の上に立っている。
その意識が、2人を疑わせていた。マーダーの可能性を。
もしそうならかなり不味い。睡眠を取って大分回復したとはいえ術系の少女と
手枷をつけた少女。もう守ってくれる人はいない。勝敗は火を見るより明らか。
70Re・Birth(修正)7:2006/01/27(金) 22:15:48 ID:sgnketZL
「ロイド…!!」
絶対的な危機を前に彼女は強く彼を思い、そして見つけた。ロイドからの誕生日プレゼント。
心を失った彼女を助けるためにロイドがくれた、要の紋のペンダントを。
そして見つけた。最後に残った、戦う心を。

「ねえ。リアラって、好きな人いる?」
(ごめんロイド、私のせいでいろんな人が傷ついちゃったよ。)
「こんなときに何を言って「いる?」…うん、まだ無事、だと思う。」

「そう、わたしもいるんだ。まだ無事だと思う。」
(しいなも、ジーニアスも、ゼロスも、クラトスさんも護れなかった。)
「…そう。」

「会えるといいね?ううん、絶対会えるよ。保証する。」
(私を護ってくれた人も、みんな護れなかった。)
「ありがとう。でもあなたもきっと会えるよ。」

「…そだね。ひとつお願い聞いてくれるかな?このペンダント、預かって欲しいんだ。」
(力が無いのって、こんなに辛かったんだね。)
「…??うん、いいけど。」
作業開始。

「ありがとう。リアラは地下に隠れてて。あなたは私が護る。絶対に約束する。」
(でも、この子だけは、絶対護ってみせる。)
「コレット?」
味覚停止・生体組織を最適化。

「だから、あなたは、あなたのままでいて。あなたの思うように生きて。」
(でも、このままじゃ、何も護れないから。)
「コレット!!何を!!」
感覚神経、カット。生体時間を極限まで低速した後、停止。

「あ、もう一つお願い…ってもう3個目だよ。図々しいけど最後の一つ聞いてくれるかな?
初めて同い年位の人に会えて、嬉しかったんだ。だ、から… 」
(許してくれるかな?許してくれないだろな。でもね、信じてるよ。)
「あ……ああ…」
発声機能、停止開始。後天性天使翼強制開放。感情停止開始。自我レベルを極限まで減衰。

「嫌いに、な…いで………」
(――ド。)
感情停止完了。天使化全工程、終了。
71Re・Birth(修正)8:2006/01/27(金) 22:18:02 ID:sgnketZL
辺りが、一瞬光に包まれる。終わったとき、光の中心には少女が頭を垂れていた。
「コレット、大丈――」
リアラが慌ててコレットに寄ろうとした時。コレットに異常が起きた。
背中から聞こえる「びき」という音。手枷を外そうと、否、壊そうとしていた。
彼女は大の男を片手で軽々と持ち上げるほどの力持ちである。その彼女が壊せなかった
手枷を今更壊そうとしている。彼女に手枷は壊せない、今までの彼女には。
続いて「みし」、とか「プチ」、などの音が断続的に聞こえる。自身の筋繊維を破壊しながら
手枷に亀裂を走らせる。バキンと 音がして手枷の接合部は壊された。
コレットの手首は骨に損傷は無いものの 内外の出血で真っ赤になっている。
成り行きをただ見ているしかなかったリアラは慌てて治癒を施そうとした、が。
バチッ!!
近づけたその手を無造作に跳ね除ける。いや、殴ると叩くの中間といったところか。
リアラは反射的に手をさする。その顔は驚きを隠せない。
リアラはようやく気付いた。コレットはこうなることが分かっててこうなった。
私ではペンダントを返せないことも、理解したうえでこうなることを決意した。
しかしコレットはそんなこと蚊ほどにも思っていないかの様に
武器に目を向ける。苦無をさっと拾い残りの武器を見る。
剣ではない、斧でもない、銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲に目をつけ、
持ち上げる。持ち上げるだけならまだしも、それを縦横無尽に振ってみせる。どうやら
手枷を壊すよりこちらの方が簡単な様で、これを武器と決めたらしい。

「コレット。私、信じてるから。」
リアラは残りの武器を集め、そう言い残して元地下に入っていった。
コレットに聞こえているかは分からない。それでも言わずにはいられなかった。
72Re・Birth(修正)9:2006/01/27(金) 22:19:21 ID:sgnketZL
まったくのノーリアクションでコレットは北東を、舞台の全景を見据える。
今の彼女なら北の惨劇も、東の地獄も聞こえるのか。
天使としての鋭敏な感覚が何を突いたか、しかしその瞳は赤黒く淀んでいる。
彼女の仲間が見ればどうなったか一目で分かるだろう。
世界の為に己の全てを犠牲にした少女の成れの果て、

マーテルの器、無機生命体、再誕スピリチュア。
天使コレットの覚醒である。


彼には選択肢がある。
ここに、来るか否か。

どちらにしても結果は決まっている。
彼の手の内にその黒き災厄の象徴が佇む限り。

不幸が待っている。
73Re・Birth(修正)10:2006/01/27(金) 22:22:06 ID:sgnketZL
【リアラ 生存確認】
状態: TP1/3まで回復   困惑
所持品:エクスフィア強化ロリポップ 料理大全 フルールポンチ1/2人分 ????
    フランヴェルジュ、オーガアクス、ピヨチェック 、要の紋
第一行動方針:この場をやり過ごす
第二行動方針:カイルを探す
第三行動方針:避けられない戦いは戦う
現在位置:E2の城跡元地下拷問部屋


【コレット 生存確認】
状態: TP3/4 無機生命体化 (疲労感・精神力磨耗無視)
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(残弾0) 、苦無(残り1)
基本行動方針:防衛本能(攻撃意思に対する完全抹殺及び不明瞭な干渉に対する威嚇)     
第一行動方針:非戦闘状態ではリアラに同行する。
第二行動方針:同状態でリアラを完全に見失った場合リアラを捜索する。
第三行動方針:???
現在位置:E2の城跡

無機生命体の解説
・五感のうちの触覚(痛覚含む)、味覚の欠落 。及び残りの感覚の強化。
・発声不可能
・感情(倫理観含む)の欠落
・生体時間の停止により睡眠、食事が不要
・睡眠・休息不可のため非戦闘状態では休憩の2分の1ペースでTP回復。
・必要ならば身体の損傷を無視して限界以上の力(AT、体力)を発揮可能。
・術技は問題なく使用可能(詠唱時間は要るが詠唱は必要ない)
・損傷・回復は通常通りに行われる(HP自動回復やDFが強化されているわけではない)
・ドジっ娘ではない
・自我の状態に関しては原作に準拠
74炎と牛とコック帽 1:2006/01/28(土) 00:05:04 ID:jHZxmuUR
「『マグネティック・フィールド』ォォ!!」
トーマは地面に手を付け、一気に磁のフォルスを周囲に解放させた。
ドオン!という音と共に倒れ掛かってきた壁を破壊した。
何とか危機を逃れられた。
「ミミー!大丈夫か!?」
傍らでオロオロしているミミーに声をかける。
「しょ、小生は大丈夫パン・・・だけど牛さん・・・」
ミミーはトーマの肩口を見る。そこからは少量だが血が出ていた。
「あぁ、さっき擦り剥いちまっただけだ。なんともねぇ」
壊した壁の破片が当たったのだろうか。とにかく本当に何ともない程度の怪我だったのだが、ミミーは過剰に心配をする。
「本当かパン!?本当に大丈夫なのかパン!?」
「本当に大丈夫だ!!それより・・・」
気が付けば町の周りはもう火の海。恐らく取り囲まれているだろう。
トーマは真剣にこの状況を危惧した。このままでは自分とミミー、そしてクィッキーの丸焼きが出来てしまう。
「クィック・・・(どーすんだよぉ)」
トーマの心配を察してしまったのか、クィッキーがか細く鳴いた。
だがトーマは事前に聞いていたヒトの足音を思い出す。今はもうその音は遠ざかってしまい、聞えなくなっている。
75炎と牛とコック帽 2:2006/01/28(土) 00:05:39 ID:9MpPTSPw
つまり、
「誰かが火をばら撒いてトンズラしたって訳だ」
トーマは一人状況の把握をする。おそらくそれは当たっているだろう。
このゲームに則って町一つ潰して誰かを葬る。成る程、作戦としては否の打ち所がない。
実際にトーマ自身、この状況をただ恐れているだけではなかった。
なにより自分がこういう作戦を好む。豪快さが表に流出している。
何とかしてこの状況を打開したい。トーマはその衝動に駆られていた。
「牛さん!もう火が小生らの周りまできてるパン!」
現実、半径約4メートル程の炎による円に取り囲まれてしまった。
「クィックィッキー!(どうするんだ旦那!何か方法は!?)」
「・・・よし、試してみるか」
何か思いついたのか、言うなりトーマはミミーを両手で掲げた。
「う、牛さん!?何をする気パン〜!」
トーマの頭の上でじたばた暴れるミミー。その上にちょこんとクィッキーが乗る。
「いたた、暴れるな!考えがあるからじっとしてろ!」
言われてミミーは暴れるのをやめる。
「ホントかパン?」
「ホントだ!俺を信じろ!」
ミミーはトーマの目を見据え、何かに納得したように頷いた。
「分かったパン。小生は信じるパン」
それを聞き届けたトーマはミミーを持ったまま大きく振りかぶって、
「キッシュってやつを食べるまで俺は死なね〜!!」
ミミーを投げた。

76炎と牛とコック帽 3:2006/01/28(土) 00:06:11 ID:jHZxmuUR
「あた!」
お尻から落ちてしまったが、何とか無事にミミーとクィッキーは炎の外へと逃げることが出来た。
そして炎の中にはトーマ一人。
「牛―――」
牛さんと叫ぼうとした瞬間に背後から気配がした。いや、実際はすぐ後ろに立っている。
後頭部に手を突きつけられているだけなのだが、それがとてつもない何かのような気がしてミミーは動けなかった。
「手を上げろ。そのままゆっくりこちらを向け。抵抗はするな」
男の声、だがどこか危険なにおいも微かだが仄めかされる。
ミミーは言うとおりにして両手を上げゆっくりと顔を後ろの男に振り向ける。
その男と目が合った。
「おんなだと・・・!」
男、ユアンはミミーの顔を見るなり驚愕した。仲間から聞いていた話と違う。
ユアンは突きつけた手、左手をそのままにして空いた右手でミミーの帽子を剥ぐ。
角もない・・・こいつはれっきとした人間。ユアンは顔をしかめた。
「プリムラの奴、何が「牛がやってきた」だ。錯覚か何かでも見たのか」
ユアンは剥いだ帽子をぽいっと後ろに捨てた。
「あぁ!小生の命の次に大事なコック帽を!何するパン!」
怒鳴るミミー。だがそれを無視してユアンは彼女を見据えた。
「貴様、ここへ何しに来た。自殺か」
「野望を抱える小生が自殺なんてするわけないパン。小生たちはただ放送の内容を聞きに来たんだパン。ついでに食料集めもパン」
両手を挙げたままミミーは言う。ユアンは気がかりな言葉を抜粋した。
「放送の内容だと?どういうことだ?・・・まさか」
口だけで「エッヘン」と言ってミミーは、
「寝坊して聞き逃したパン」
威張って見せた。

77炎と牛とコック帽 4:2006/01/28(土) 00:08:07 ID:jHZxmuUR
「・・・・・・・・・・」
ユアンは肩を落とす。この異常な状況下の中、眠りに眠って放送を聞き逃すバカがいたとは・・・。
―――ユアンは呆れて左手が少し下に傾く。
ミミーはその瞬間を見逃さなかった。
瞬時に後ろの腰に携えていた金のフライパンを持ってユアンの手を跳ね除ける。
「ぐっ!」
ミミーは咄嗟に立ち上がりフライパンを両手に抱える。
「フフフ、油断したパンね。小生を甘く見たのが運の尽きパン」
その格好は傍から見ればかなり間抜けなものではあったが、何故か近寄りがたい雰囲気を纏っている。
「確かに、少し見縊っていたようだ・・・」
フライパンによって跳ねられた左手(結構痛い)をさすりながらユアンはミミーと対峙する。
「このままではこの町は崩れる。お前も死にたくはな―――」
言い終わる前にミミーはユアンに殴りかかろうとしていた。
「くっ!」
寸でのところで後ろに跳び回避をする。が、ミミーはそれを追撃した。
「『パン沙雨』!!」
無数のフライパンによる突きの応酬。ユアンは少しだけだが喰らってしまった。
「がはっ!」
態勢が崩れるがすぐに持ち直す。ミミーは再度両手でフライパンを構える。
「何をする・・・死にたくはないのか」
彼女に宥めの言葉をかける。作戦が始まった以上、ここはもうじき崩れ、そして炎の渦に塗れてしまう。このままでは全員死んでしまうのオチだった。

78炎と牛とコック帽 5:2006/01/28(土) 00:09:03 ID:jHZxmuUR
しかし、ユアンには選択肢があった。
この状況下の中、この女を殺してしまうのも手の上に考えていた。だが先程の演説によってユアンの考えが揺らいでいた。
ここで戦って殺すのが常の理か?それとも僅かな希望の為に生き延びるべきか。
だがここで、彼女がただの人間だと分かってしまったのが棒を倒す結果となり、ユアンは後者を選んだ。
だから、マーダーでない限り、希望が残っている限り一緒に生きるのが得策と考えてしまっていた。
(私らしくもない・・・)
確かに現実主義の自分らしくないはない。だがもしかしたら、あいつらと付き合ってきたお陰で自分は変わったのだろうか・・・。そんなことを思う。
「もう直ここも・・・」
「お前は小生の帽子を蔑(ないがし)ろにしたパン!」
ユアンは少し呆れて動きが止まる。彼女の襲ってきた理由も判らないでいたのだが、そうか帽子か。
ユアンは辺りを見回す。ちょこんと立ったコック帽が近くにあった。
「あれを渡せばいいんだな」
ミミーは頷く。ユアンはミミーを落ち着かせるために帽子を拾いに行く。
・・・が
ボゥ
嫌な音と共に帽子は帰らぬモノとなった。
ユアンの手が帽子に伸びる瞬間、周りの火の粉が帽子に燃え移り、一瞬で灰となってしまったのだ。
ユアンは固まる。恐る恐るミミーの方を向く。
彼女はまさに泣く寸前だった。

79炎と牛とコック帽 6:2006/01/28(土) 00:10:13 ID:jHZxmuUR
その瞬間、後方からドオンと激しい音がして一帯にあった炎が飛び散る。
「ミミー!無事・・・か」
それは中に残されたトーマが地面を大きく蹴り潰し、磁のフォルスと小規模の沈下を起こさせて火の勢いを消したものだった。
トーマはミミーが無事かを確認する。が、彼女は今にも泣きそうだった。
その彼女が指を指している。・・・誰に?それはもちろんユアンに。
次第にトーマの表情が険しくなり、握る拳が強くなる。
ミミーは帽子が亡き物になってしまった悲しみに耐えている。
ユアンは固まったまま状況が飲み込めない。ただかろうじて判ることは、プリムラの言っていた事が本当だったと言うこと。
(牛・・・なのか)
そしてミミーの傍らにいたクィッキーは鳴いた。
「クィッククィ・・・(やれやれ、手が付けられないよ)」

「貴様ぁぁぁ!!ミミーを泣かせたなぁぁぁ!!!!」
トーマの怒号が町周辺に響き渡った。




それは、F4の橋にいる彼女にも届いていた。
「うん?なによ今の雄叫びは・・・嫌な響きね」
言って彼女はその声のした方向を見る。そこには黒い煙が立ち昇っていた。
「あんま面倒事にはつっこみたくないんだけどね〜。ま、なるようになるっしょ」
目的地を変えずに彼女は歩き出す。復讐の心は無くなったわけではないが、面倒なことに巻き込まれるのは勘弁というのは本音だった。

80炎と牛とコック帽 7:2006/01/28(土) 00:11:38 ID:jHZxmuUR
【ユアン 生存確認】
状態:健康 TP1/3消費
所持品:占いの本、エナジーブレット、フェアリィリング、ミスティブルーム
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを信用していない。
第一行動方針:目の前の二人への対処
第二行動方針:漆黒の翼を生き残らせる
第三行動方針:漆黒の翼の一員として行動。仲間捜し。
現在位置:G5の町

【ミミー・ブレッド 生存確認】
状態:健康 悲しみ(わりと深い)
所持品:ウィングパック×2 イクストリーム 金のフライパン マジカルポーチ ペルシャブーツ クィッキー
第一行動方針:帽子の弔い
第二行動方針:トーマにキッシュをつくる
現在位置:G5の町

【トーマ 生存確認】
状態:健康 怒り 右肩に擦り傷(軽傷)
所持品:メガグランチャー ライフボトル
基本行動方針:ミミーを守りぬく
第一行動方針:ミミーを泣かせた男を倒す
第二行動方針:ミミーのキッシュを食べる
現在位置:G5の町

【ハロルド 生存確認】
状態:軽い火傷 冷徹な復讐心 
所持品:短剣 実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) 釣り糸
現在位置:F4平原
基本行動方針:迂闊なことは言わない 単独行動(たとえ仲間に出会ってもマーダーの振りをして追い払う)
第一行動方針:F7の森林地帯に移動して状況を把握、その後罠を仕掛ける
第二行動方針:首輪のことを調べる
第三行動方針:C3地点の動向を探る
第四行動方針:マーダー(マグニスたち)の始末
現在位置:F4の橋
81悪夢の中心で慟哭(な)いた少女1:2006/01/28(土) 21:04:17 ID:Xd5AHgxP
 お願い、これが夢なら覚めて。
 シャーリィは確かに、そう発音したつもりだった。
「WRRRRRRR…!」
 だが、意に反してその声は、醜く潰れた唸り声に過ぎなかった。もはやシャーリィの声帯は、人間のものとしては欠陥品も同然だった。
 森の中の小さな泉のほとり。ほんの少しだけ眠ったシャーリィは、一縷の望みをかけて、仮眠後の顔をばしゃばしゃと洗ってみた。
 時刻は、それほど経ってはいない。太陽の位置から察するに、おそらく正午の数時間前というところだろう。
 シャーリィの手によって生み出された泉の波紋は、やがて静まった。鏡のごとくまったき水面が戻るのに、さほどの時間はかからなかった。
 恐る恐る泉を覗き込むシャーリィ。そこにあったのは、のっぺりとした棘のないサボテンに、いくつかの橙色の突起のへばりつく、醜い顔だった。
 シャーリィは改めて絶望する反面、ああやっぱり、というような、どこか諦念の混じった複雑な気持ちに駆られた。
 今まであったことは、悪夢ではなかった。自らが、こんな醜い怪物の姿を得てしまったのは、厳然たる真実なのだ、と。
 水をすくった手も、あちこちが節くれだち怪物のそれになっている。足も同じく。シャーリィはそれを見て、遺跡船の魔物の一種、ギガントを思い出していた。
 腹部を見れば、緑色の液体が傷口を覆い、ぶくぶくと泡立っている。この傷口の痛みも、もうだいぶ鈍くなってきた。
 凄まじい勢いで再生する自身の傷口を見ながら、素直には喜べない複雑な気持ちで、シャーリィは空を見上げた。
 どうして、こんな事になってしまったのだろう。
 頭の形も変形し、おまけに水の民の証である金髪も、もはやぼさぼさの体毛の一部に過ぎない。
 ゆえに意味を成さなくなってしまった、右手の花のカチューシャ。シャーリィはそれを焦点の定まらぬ目で見ながら、物思いに沈んだ。
 この花のカチューシャは、自らが兄と慕う銀髪の少年、セネル・クーリッジが、買い与えてくれたもの。
 大陸にあった、ある水の民の里を攻めたクルザンド軍から逃れ、クルザンドの港町でマリントルーパーとして働き始めたセネルが、その初任給で買ったものだ。
 セネルもそのとき奮発して上質のものを買ってくれたのか、あれから3年以上経っても、このカチューシャは傷む素振りを見せない。
 望まなかったとは言え、今まで経験した遺跡船での戦いや、そして旅の中で、多くの思い出を作ってきた。その思い出は、鮮明に焼きついている。
 怖い思いも何度もしている。あともう少しで取り返しのつかない罪を犯してしまうところまで思い詰め、挫けそうになったこともある。
 それでも、仲間達と、仲間達との絆で紡いだ、あの遺跡船の旅は消えない。消すことなど、出来ない。
 だがその遺跡船の旅の日々も、今現在の圧倒的な現実の前には、あえなく砕けるガラス細工も同然。思い出は、力には変えられないのだ。
 シャーリィの視界が、曇った。水の中で目を見開いたときのように、滲んだ。世界が、ぼやけた。
82悪夢の中心で慟哭(な)いた少女2:2006/01/28(土) 21:05:13 ID:Xd5AHgxP
「OOORWROOO…」
 涙。シャーリィは涙を流していた。泉のほとりにたたずむ一体のエクスフィギュアの頭部の突起から、涙が流れていた。
 こんな理不尽な殺し合いを強要された悲しみ。例え悪人とは言え、1人の人間を残虐に殺めてしまった悲しみ。
 そして、自身が人間とは似つかないような、魔物の姿に転じてしまった悲しみ。
 圧倒的な狂気の荒海の中から、辛うじて頭部を覗かせたシャーリィの理性は、悲しみに打ち震えていた。
「WOOOORRRROOOHHHHH!!!!」
 人間の声帯を失ってしまった、一体のエクスフィギュアには精一杯の慟哭。本当はもっと、人間にあるべき喉を打ち震わせ、身をよじって泣き叫びたかった。
 だが、もはやシャーリィにとって、そんな望みは、ただ詮無いないものねだりに過ぎなかった。
「WWWWWWW…!」
 くしけずる事も出来ないような体毛しか残っていない、ただのっぺりした頭。シャーリィはその頭を抱えながら、自問自答をそれでも止められなかった。
 この姿を見たら、わたしを待ってくれているお兄ちゃんはどう思うだろう。
 この島で命を落としたマウリッツさんは? モーゼスさんは?
 自らの信念を曲げられず、光跡翼で非業の死を遂げた滄我の戦士、ワルターさんは?
 クルザンド軍の囮になり、そして最期には滄我砲を阻み命を散らせたお姉ちゃんは?
 ガドリアの騎士の凶刃を庇って逝った友達、フェニモールは?
 多くの人が死を受け入れてでまで守ってくれたわたしは、今何をしている?
 こんな醜い化け物に成り下がって、こんな涙と言うのもおこがましいギトギトの粘液を目から垂れ流して、こんなところで一人苦しんで…
 無力だ。無力過ぎる。
「…GRRROUWWWW…!」
 どくん。シャーリィの胸の奥で、異形の心臓が跳ねる。
 どくん。腹の奥底から湧き上がる。熱くてどろどろしたものが、吹き上がってくる。
 どくん。体中が熱くなってくる。全身が熱病にかかったように火照り、ぶるぶると震えだす。
 シャーリィの胸にはまった青い球体が、鼓動するように光り輝く。シャーリィの体内から湧き出るそれを、吸い上げる。
83悪夢の中心で慟哭(な)いた少女3:2006/01/28(土) 21:05:57 ID:Xd5AHgxP
 怒り。
 どこまでいってもただ無力なだけの、自分への怒り。本来ならば生きていて良かったはずの人間の命を、背負って歩けぬ自分への怒り。
 自身に醜い怪物になる運命を強要した、主催者ミクトランへの怒り。命をまるで、おもちゃのようにもてあそぶミクトランへの怒り。
 怒り、怒り、怒り、怒り。赤い怒りが胸を駆け上ったその次には、虚無のように暗い憎悪。
 抜けるように爽やかな、午前の太陽に輝く蒼穹。凄惨な殺し合いの場にあるこの島で、唯一穏やかにそよ風に揺れる木々。
 木々の葉は太陽の光を細切れにして、森に美しい木漏れ日を注ぐ。
 そののどかな光景は、けれどもシャーリィの高ぶった神経を逆撫でする事はあれ、慰めることは決してなかった。
 木々のざわめきは、嘲笑のようにさえ聞こえる。化け物に姿を変えてしまった自分の醜さを、罵っているかのようにさえ聞こえる。
 もしもここにもかの虚無の神の力が及んでいれば、シャーリィは確実に黒い霧を呼び込んでいたであろう。
 それほどまでに、彼女の激情は高まっていた。
「OOOHHHHMMM…!」
 壊れろ。全部壊れろ。呪詛の言葉をエクスフィギュアの声帯で吐きながら、シャーリィは深く息を吸い込んだ。
 シャーリィの両の手が、白い輝きに包まれる。滄我と繋がり、滄我の力を借り入れる秘術…爪術の力が、彼女の体内に満ちていく。
 彼女の得意としているブレス系爪術は、使用時により精神を研ぎ澄ますことが重要となる。本来ならば狂気に駆られた状態では、使いこなせるような代物ではない。
 だが、今の彼女の心は、これ以上ないほどに研ぎ澄まされていた。後から後から湧き上がる、狂気じみた怒りと憎悪。
 それが、彼女の心を、極限にまで研ぎ澄ませていたのだ。
「OOOOOAAAAAAHHHHHH!!!!!」
 ぶち砕けろ! 滅びろ!! 全部消えてなくなれ!!!
 醜い自らを罵る世界に、シャーリィは鉄槌を下した。
84悪夢の中心で慟哭(な)いた少女4:2006/01/28(土) 21:07:26 ID:Xd5AHgxP
 放射状に波打つ地面。何も知らない人間が見たなら、円状に畝を作った、風変わりな畑程度にしか思わなかっただろう。
 だが、少しでも観察眼のある人間ならば、これが畑などではない事はすぐさまうかがい知ることが出来るはずだ。畝の中にすき込まれている物を見れば。
 木っ端微塵に爆砕された木の幹。木の葉を無残に剥ぎ取られた枝。ひっくり返って露になった根っこ。
 ブレス系爪術、「グランドダッシャー」。
 シャーリィが叩き付けた両の手は、大地に凄まじい激震を与え、顎(あぎと)と化した岩盤は、地表の木々を粉々に噛み砕いていた。
「QWERRRRR…」
 これで、うざい木は全部吹き飛ばした。静かになった。
 けれども、シャーリィの怒りは、それでもまだ収まることを知らなかった。
 この姿を見て恐れる者への怒り。あざ笑う者への憎しみ。
 否。
 生ある者への憎しみ。シャーリィの激情は、そこまで上り詰めていた。
 どうせこんな姿を見て、もう優しい言葉をかけてくれる人はいない。みな化け物と罵り、剣を向けてくる。
 自分達は違うと。お前のような化け物とは違うと、錦の御旗のように言いながら殺しにかかってくるだろう。
 かつて友の命を奪い去ったガドリアの騎士の顔が、一瞬シャーリィの脳裏をよぎる。水の民だからという理由だけで、剣を向けたあの男の顔が。
 どうせ人間なんて、一皮剥けばみんなあんなもんだ。昨日は仲良くしてくれたあの3人組だって、今日はもう敵ではないか。
 でも、お兄ちゃんだけは違う。お兄ちゃんなら、こんな自分でも受け入れてくれる。どんな姿になったって、妹と思ってくれる。
 みんなみんなみんな、ぶち殺してやる。せいぜい命乞いでもしながら、苦痛に満ちた死を受け取ればいいんだ。
 そう、この島に残るみんな。ジェイだけは見逃してあげようと思ったけど、まあいいや。まとめて殺しちゃお。面倒くさいし。
 そうしたらまた、お兄ちゃんと会える。また一緒に暮らせるもんね。
 シャーリィはエクスフィギュアの瞳で、南の空を見上げた。
85悪夢の中心で慟哭(な)いた少女5:2006/01/28(土) 21:08:08 ID:Xd5AHgxP
「GRWOOOOOOOOWWWW!!!!」
 その雄叫びは、この島に残る全ての人間に対して向けた、死刑宣告。純粋な憎悪を込めた不気味な吼え声が、周囲にこだました。
 彼女の胸に埋まるエクスフィアは、けれどもそんなシャーリィの想いを知ってか知らずか、無邪気ささえ感じられる光を帯び、輝いている。
 エクスフィアは、人間の体に寄生し、そして人間の負の感情を食らって成長する。
 ディザイアンが人間牧場の人間を痛めつけるのも、クルシスがあえて神子を何度も命の危機に瀕させるのも、エクスフィアを育てるため。
 くしくもシャーリィの肉体は、今やエクスフィアの最高の培地となっていたのだ。
 シャーリィは自身の憎悪をエクスフィアに食わせる代わりに、エクスフィアは更なる力を彼女に与える。歪んだ共生関係が、ここには成立していた。
 この共生関係が、果たしてどんな結果を生むのか。それは誰にも分からない。
 ただ1つ明確なのは、シャーリィの胸のうちに満ちた憎悪は、まるで堤防が決壊したかのように、とめどなく溢れているということ。
 ひとまず南に向け進むそのエクスフィギュアは、背後に死神を背負っていた。
 そして、死神を生み出した元凶たる魔の宝珠は、その時一筋だけひび割れた。
 それはまるで、成虫になるための脱皮を迎えようとしている幼虫を思わせたのは、気のせいではないかもしれない。


【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
所持品:UZI SMG(30連マガジン残り2つ) ショートソード(体内に取り込んでいる) 要の紋なしエクスフィア(シャーリィの憎悪を吸収中、ひび割れあり)
状態:エクスフィギュア化 腹部の傷は大方再生
第一行動方針:憎悪のままに殺戮を行う
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
現在地:B6の森
86朝の陰1:2006/01/29(日) 19:35:33 ID:7KpZxmRB
「はあっ、はあっ…。ここまで来れば誰も来ないでしょう。」
小さな影は高台の上に止まり仮初の休息を取る。すでに、城は見えない。
いや、仮に城の近くにいたとしても見ることは叶わないが。

本来なら城の崩壊を確認して動くべきだったのだが
他にも避難し終わった魔術師の男がいたためその場を直ぐ離れた。
一応あの男は自分たちを助けに来てくれたのではあるが、仲間を露骨に敵への当て馬
にしたり漁夫の利を狙うタイミングで乱入してくる辺りに崩壊の前から不信感は
あった。何より奴に似た空気を纏っていた、あのサディスト、悦楽至上主義者に。

しかしそれらは全て建前、後付の理由であることも分かっていた。
城の崩壊を、残った4人を、全て見殺しにした自分を、直視できなかったのだ。
後ろから降り注ぐ光すら、あの時は唯疎ましかった。
夢ならば覚めて欲しい。しかし手に持つ1本の剣がそれを許さない。
「クラトスさん…」
透き通るような蒼、少年の仲間が言った「輝ける青」、有るとするならきっとこんな色だと
思う。そんな剣を託した一人の剣士の言葉、遺言がリフレインする。
(情に弱く、理屈に疎く、どうしようもない奴だが、私の―――)

「自慢の息子だ…か。さぞや馬鹿息子なんでしょうね。」
口では皮肉を言うがその頬を流れるものがある、涙。
「僕にもしも親がいたなら…あんな風に言ってくれるのかな?」
少年は天涯孤独の身だった。物心付いた時にはすでにソロンの下で修行を行っていた。
苛烈な虐待の末、不要になって捨てられ、モフモフ族に拾われて、
冒険の末には沢山の仲間たちが、家族が出来た。
しかしそれでも彼は生みの親を求めていた、その唯一の手がかりである
生まれたときから持っていた鈴を後生大事に持っているのがその証左である。
そんな少年にあの剣士の遺言は思う所があったのだろう。
87朝の陰2:2006/01/29(日) 19:37:49 ID:7KpZxmRB
しばし静かに泣いた後、少年は決意を新たにした。少々目元が赤くなっているが
気迫のようなものが感じられる。
「さて、食事がてらこれからの予定を立て直しますか。」
ジェイはデイバックの中からパンを出し、口に入れる。
ホタテが無いことに少し不満を覚えながら、自分のすべきことを確認する。
「シャーリィさんの保護、ミントさんへの合流、そしてこの剣を…あ。」
ここで彼は気付く。剣を渡すべき剣士の息子の名前を知らないのだ。
「まったく、なんで教えてくれなかったんでしょう?わざわざ
知らせたくない、あるいは聞かせたくない理由でも有ったんでしょうか。」
クラトスが知っていたかどうかは分からないが、確かに盗聴の可能性は極めて高い。
しかし少年は放送2回うち、一回は生きていたミント、2回目は死んでいた
ソロンの事実に驚愕していてまだその可能性に気付いていない。
ましてやこの剣が持つその意味合いに気付けるはずが無い。
「まあいいでしょう。二刀流の剣士なんてそういるはずが無いし、
そういう言い方をするんだからそいつが現在二刀流である確信があるんでしょうし。
ともかくそいつにこの剣を渡す。そしてこのゲームからの脱出、ですね。」

筆記用具に記述をしながら思考を巡らせる、普段ならそんなことはしないが
紙に書いて入念に脳裏に刻み付ける。
「まずシャーリィさんですが、気の毒ですが彼女は後回しにしましょう。
この24時間を無事に生きているということは誰か強い人間に守られているんでしょうし。」
正直な話、少年の仲間の内最初に脱落するのは彼女だと思っていた。
単純なバイタリティの問題である。しかし現実にはセネルやモーゼス、あの不死身の
マウリッツやソロンが脱落する中現在も死亡確認されていない。
考えられるのはかなり強く尚且つ優しい人間たちと最初に出会い、守られている
ということである。実際彼の仮説は当たっていた、12時間前までは。
ともかく多少楽観的ではあるが体が一つしかない以上効率を考えなければならない。
88朝の陰3:2006/01/29(日) 19:40:09 ID:7KpZxmRB
「次にミントさん。絶対謝罪しなくちゃいけないけど…彼女は何処にいるか
分からずに探すにはリスクがでかすぎる。」
自分が殺しかけた少女、ミント。ソロンのせいにすることは出来るが元は自身の心の
弱さが招いた結果。なんとしてもこの手で謝りたい。しかし彼女に出逢ったのは
一日目の朝、一回目の放送で辛うじて生きていたとしても2回目の放送で
死んでいるはずである。
しかし生きているということはあの状況から回復しているということだ。
彼女はヒーラーであり、わりがちありえない話ではない。
しかし2、3時間ならともかく12時間以上あればこの島の何処にでもいける。
捜索範囲が広すぎて打つ手が無いのが現状だ。
それでも彼女の人間的甘さを考えるとあまり悠長にはしていられない。

「次は馬鹿息子。これにいたっては論外ですね、情報が少なすぎる。」
分かっていることはバカな事と二刀流であること、どちらも個人的情報で
場所を特定できない。しかしなぜ彼はこんな言い方をしたのか、時間が無いにせよ
情報を隠匿するにせよもう少し言い方があるはずでは?まさかただの親バカ?
と思ったあたりで考えを停止した。幾らなんでも故人に鞭を打つような真似は慎むべきである。
実際当たらずとも遠からずなのだが。

「結局手がかりは0か…当面は情報集収ですね。
とすると情報の整理…といっても一つしかありませんか。」
一つとはあの声のこと、青い凶戦士と戦っていた際聞こえたあの悲痛な声のことである。
「C3村、声の主を助けたいのは山々ですが、あの声を聞く限り恐らくもう…
ましてやあの声に集った人はマーダーの格好の餌だ。一人で何とかできる問題じゃない。」
少年は己の無力さを痛感した。助けようとして凶戦士に飛び掛ったはいいが結果は
あわや返り討ちになるかと言った所。決して臆病風に吹かれたわけではない、
命を無くしては何も守れないからだ。無謀と勇気は根本的に違う、少年はそれを
シャーリィから教わった。ソロンに家族を人質に取られた、あの事件の時に。
「北を避けて東に行ってみますか。第一、少し頭を働かせればあそこが
危険地帯になることなんて分かりきってるじゃないか。そんな所に行くのは
モーゼスさんのような大バカかセネルさんみたいな大甘…」
そこまで言って少年は口を噤む。あんな危険地帯に行くのは大馬鹿か、大甘…
「まさかクラトスさんが言ってたのはこのことか?!それにミントさんも!!」
彼は慌てて荷物を片付け始める。少し頭を働かせれば分かること、危険地帯だろうが
何だろうが困っている人を放って置けない危険な人種が確実にいることを失念していた。
89朝の陰3:2006/01/29(日) 19:44:37 ID:7KpZxmRB
動揺するも思考は止めない。あの声から時間が経過している。
近い人間ならもう到着しているだろう、迂闊に村に入るわけには行かない。
自分の命を確保しつつ村に近づく参加者の情報を得る…手堅いのは身を潜め村への
出入りを調べること。少年は地図を広げ調べる。村への進入ルートは大別して
北西、東、南。南は移動の最中に把握できる、北西は来るとしたら既に入村
している可能性が大。北西の森から村の情報を素早く探れば9割把握できるだろう。
その後東、東の橋を押さえて参加者の動向を探る。
東側には森がある、潜んで探りを入れるには格好のポイント。ここに潜む。
橋を通るリスクがあるが西端の草原に立っているのは自殺行為だ。最小の手数で切り抜ける。
万が一森に先客が潜んでいる場合は仕方が無い、
交渉して退いてもらえないなら威嚇するしかない。

荷物をデイバックにいれ、メモはクシャクシャにして高台の下に捨てた。
焼却する時間が今は惜しい。少年は素早く走り始めた。少年はさらに急ぐ、忍者の速度で。
北西の森へ、東の橋へ、東の森へ急ぐ。会わねばならない人の無事を祈りながら。

少年は人間で、神ではない。だから知らない。
二刀流の人間が2人いることを、
シャーリィが既に自分の知る彼女ではなくなったことを、
ミントが自分のいた城跡の近くにいたことを、
馬鹿息子が橋にいることを。

そしてこの後何が起こりうるのかなど、誰も知らない。
90朝の陰4:2006/01/29(日) 19:47:33 ID:7KpZxmRB
【ジェイ 生存確認】
状態:頸部に切傷 全身にあざ 
所持品:忍刀・雷電 ダーツセット クナイ(三枚) ヴォーパルソード
第一行動方針:B2の森を経由してB5森へ移動しつつ参加者のチェック
       クラトスの息子・ミントの発見を最優先、B5までは最速で行動
第二行動方針:クラトスの息子に剣を渡す
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
現在位置:D2高台

*メモはD2平野部に放置
91そして、始まり 1:2006/01/29(日) 22:39:38 ID:JMUBik4W
扉が開き、リッドは帰ってきた。
その顔は気のせいではないかもしれないが、どこか清々しい色を帯びていた。
家に入ったリッドは何も言わない。何か深刻な問題にぶつかったような難しい顔をしている。
ジョニーもモリスンもその様子に気付く。モリスンは椅子に座りながらリッドに声をかけた。
「どうした?座らないのか」
するとリッドはふらついた足取りで椅子にストンと腰を降ろす。その姿には流石に声を掛けずにいられなかった。
「どうしたリッド、どこか具合でも悪いのかい」
ジョニーは訝しげにリッドの体調に気をかけた。が、返事をするようにリッドのお腹からひとつの音がした。

ぐ〜

数秒の沈黙。モリスンはその場にいないかのような対応。
机に突っ伏すリッドはかろうじて顔だけをジョニーに向ける。
「は、腹減った・・・何か食わしてくれ〜」
「・・・ぷっ」
その姿を見てジョニーは噴出す。モリスンはやはりその場にいないかのような反応。
「あっはははは!!ひぃ〜!!!」
「な、何だよ・・・そんな笑うこたねぇだろ?」
ジョニーはお腹を抑えて正常を取り戻す。
「いや、これは失敬・・・そうだな、何かご飯でも作ろうか」
「マジか!やったぜ!」
リッドはガッツポーズをするが、すぐに机に突っ伏してしまう。
ジョニーは席を立ち、すぐ近くにある台所へと足を運んだ。
(彼はあわよく彼女の死を乗り越えてくれたか)
ジョニーは台所に向う途中、一人安堵の息を漏らしていた。

92そして、始まり 2:2006/01/29(日) 22:40:49 ID:JMUBik4W
「本当はすぐにでもここを去りたい所なのだが・・・」
リッドの隣に座るモリスンは呟く。
「いや、すまねぇけどもう少し待ってくれねぇか」
机に顔を乗せたままリッドはモリスンに返した。
「どうしてだ」
「俺の仲間が一人こっちに向ってる。俺がここに来る途中に敵の気配はなかったから安全っていやぁ安全なんだけど・・・」
一つの間を置いてリッドが続く。
「もの凄ぇトロい」
それからリッドは喋らなくなった。恐らく食事をするまで余計な体力を抑えるつもりなんだろう。
モリスンはため息をついて椅子にもたれる。

彼にとってここはメリットとデメリットの塊の場所なので決断に弱っていた。
メリットは、上手くいけばあの演説の内容と共に仲間を増やせ、ダオス討伐への可能性が極めて高くなること。
加えて、あの演説を聴いてダオス自身がこちらに向っているという可能性があること。これはわざわざこちらから出向かなくてもあちらからやって来てくれるのだから探す手間が省ける。
それにこちらには一目見てわかる、この青年。
(かなりの腕前だ・・・未知数すぎて逆に怖い程に)
リッドを見てモリスンは勘巡る。彼にもリッドの内に秘めた極光の輝き、そのフィブリルを少なからずとも感じていた。
この青年と自分、そしておそらくは支援型であろうジョニー、後から増える青年の仲間。
着実に戦力が増えている。メリットの効果は正に今出ていたのだ。
だが、デメリットもある。
あの『声』を聴いてやってくる者が味方ばかりではないということ。
下手をすればいらぬ戦闘を強いられて戦力を削られてしまう恐れがある。
しかももしそこにダオスがやってきたら・・・モリスンが危惧していたのは正にこのシチュエーションだった。
双方の可能性、及び危険性を考えて出したモリスンの答えは、
一先ずここを去り近くの高台から様子を見る。そしてこの村にやってきた者の善悪の判断。後に攻撃または行動を開始。
勿論・・・
ダオス自身、そしてダオスと手を組んでいる者は・・・
「・・・・・」
腕を組みながら思案するモリスン。
取りあえずはこの青年の仲間を待とう。動くのはそれからだ。
それに、実際モリスンも空腹を感じていたので幸いだった。
93そして、始まり 3:2006/01/29(日) 22:42:17 ID:JMUBik4W
「こんな簡単なモノしかなかったけど我慢してくれよ」
ジョニーは両手に皿を持ち、その上には食パンやらコッペパンが並んでいた。
「うっは〜!ありがとよジョニー!いっただきま〜す!!」
皿が置かれるなりリッドは急いで2、3個のパンを両手に持って一つにかぶりつく。
「おいおい、あまり急いで食べると喉に詰めるぞ」
「私もいただこう」
言ってモリスンも一つのパンに手を取る。口にすると香ばしい味がした。
「美味ぇ!!」「美味いな・・・」
「そりゃどうも」
ジョニーも一つ手にとり口にする。
一先ずの少し早い昼食は三人の雰囲気を和ませたのだった。

食事をしてから結構な時間が経った。

今は正午、リッドとジョニーは疲れが溜まっていたのかうたた寝をしていた。(リッドの至ってはほぼ熟睡だった)
モリスンは一人また腕を組んでここに来るであろう者を待っていた。
そして、誰かがやってくる音、やけにたどたどしい足取りが聞こえる。
「・・・相当疲れているようだな」
モリスンは一人席を立ち外に出る。
そこには一人の青髪の青年が村の中央で息を整えている姿があった。
青年はモリスンの姿を見つけると、やはりたどたどしくこちらに向かって来た。
青年は立ち止まり、モリスンに声をかけた。
「ファ、ファラは・・・リッドは・・・?」
呼吸を乱しながら質問するが、モリスンにはそれが痛々しく見えた。
「・・・とりあえず中に入ってくれ」
モリスンは青髪の青年を招き入れた。
青年は中に入るなり眠っている一人の顔見知りを見つけ、声をかける。
「お、いリッド・・・起きろ・・・」
「んぁ?・・・お〜キール、やっと来たか」
「やっとじゃない・・・僕をこんなところまで走らせて・・・」
リッドはのそりと起き上がり、眠気眼をこする。その一連の流れにジョニーも目を醒ました。
「で、ファラは・・・?」
キールのその言葉に、三人は一瞬固まる。誰もすぐに答えを返せなかった。
だが、キールにとってはその反応事態が答えに解釈できた。
「やっぱり・・・もう駄目だったか」
キールは一人俯く。だがリッドはその様子を見て怪訝に思う。
「やっぱり、て何だよ。お前、ファラが死ぬって分かってたのか」
「そうじゃない。だけど、可能性の一つとして考えていた」
「お前・・・ファラがどんな気持ちで・・・!」
「リッド、そこまでにしておきな」
ジョニーが横から割って入る。言われて気付く。リッドは今にもキールに突っかかろうとしているところだった。
キールは俯いたまま口を開いた。
「悲しんでいるのは、お前だけじゃない・・・」
その言葉にリッドは肩を落として頭を掻く。
「・・・すまねぇ」
そう呟いてスッと立ち上がる。ジョニーとモリスンの顔を一瞥してキールに向き合う。
「キール、あいつの『声』を聴いたか?俺はあいつがしようとしたことをやる」
キールは顔を上げてリッドを見据える。
「そのためにはキール、お前の力が必要だ。頼む」
その言葉にキールはため息を漏らす。
「全く、何年お前たちの幼馴染をやってると思っているんだ」
「それじゃあ・・・」
キールは一度頷き、新たな目標を携える。
「当初の目的とは違ったけど、乗りかかった船だ。最後まで二人に振り回されてやるさ」
リッドはガッツポーズをし、ジョニーは安堵の息を漏らす。モリスンは既に次の算段をしていた。
こうしてファラの意志の下、4人の仲間が集まった。

94そして、始まり 4:2006/01/29(日) 22:42:57 ID:JMUBik4W
ジョニーとモリスンとキールは簡単な挨拶を交わし合い、次にやるべき事を決める。
モリスンは先程頭に浮かべていた作戦を提示し、キールとジョニーはそれに賛成した。
「高台にいけば、大方の状況が把握出来る。今ここに向っているのは恐らく少数ではないはずだ」
キールの解説によってひとまずここを離れることに決まった。目指すはD2の高台。
しかし、突然モリスンは何かに気付いた様な表情をする。
「どうしたんだ」
ジョニーは心配になって声を掛けるが、モリスンの顔は玄関に、否、外に向けられていた。
そして小さな声で呟いた。
「来たか・・・」

リッドは頭を使ったことは苦手なので一人外に出て剣の稽古をしていた。
何十回か剣を振り回すが、やはりしっくりこない。
「素振りだとやっぱ稽古してる感じがしねぇな」
ここには猟師の本領を発揮できるエッグベアもモンスターもいない。ましてや向けるのは人。そんなことは御免だった。

―――だがこの数分後、一つの戦闘が始まる。

叢ががさっと揺れる。リッドはそれに反応して剣を構える。
誰かいる・・・。
いくらこの戦いをやめさせるとはいえ自分が死んでは元も子もない。不意打ちに対することだけはしなくてはならなかった。
叢から一人の長身の男が姿を現した。ゆっくりとこちらに近づく。
戦う意志が無いのか、長身の男は近づくだけ。
リッドはその様子を見て少し剣を下げようとした。
その時。背後に気配。
剣先がくる。急いで振り向き、弾き返す。
そこには一人の金髪の少年の姿。その手には二本の剣。
「っ!急に危なぇな!何す・・・」
「『テトラ・・・』」
また背後に気配。咄嗟に横へと身を投げ出す。
転がって態勢を立て直す。すぐさま剣を構えて目の前にいる長身の男と金髪の少年を見据える。
「こいつ、ただものじゃないよ。僕の瞬間移動に反応した」
「うむ。わたしのテトラアサルトも回避された」
二人は言葉を交わす。その姿にリッドは言い知れない何かを感じる。
(こいつら・・・かなり強ぇな)
それもそのはず、リッドは今正に二人の脅威を目の前にしているのだ。
「お前ら!急に何すんだよ!危ねぇじゃねぇか!」
リッドは構えたまま二人に声をかける。だが二人は表情を変えずにリッドへと返す。
95そして、始まり 5:2006/01/29(日) 22:43:29 ID:JMUBik4W
「剣を振り回している奴が安全だと思うバカがどこにいる」
「やるなら先手必勝だよ!」
言うと金髪の少年は迫る。双剣を振ってリッドに攻撃。
リッドはムメイでそれを受け止め、弾きながら少年の胸を蹴る。
少年は後ろによろけた。が、瞬時に長身が迫る。
「『テトラアサルト』!!」
突きと蹴りの応酬。だがしかし、リッドはそれをすべて見切り紙一重で交わす。
「『虎牙破斬』!!」
長身の攻撃か終わる隙を突き、上下の切り。
「ぐっ!」
あまり傷つけたくはないので傷は浅いが長身はよろめく。
更に追撃。
「はぁ!!」
長身に向って突撃。長身はすぐさま防御態勢を取る。
「『空破・・・』」
だが目の前にリッドの姿は無い。素早く後ろに回りこまれたのだ。
「ダオス!後ろ!」
金髪の少年が叫ぶ。だがもう遅い。
「『絶掌撃』!!」
ダオスの背中をもろに強打。ダオスは前方に吹っ飛んだ。
「ぐあぁ!!」
かなりの衝撃を喰らわせたので立ち上がるの困難な筈・・・。
リッドは今の流れを思い返すと冷や汗が出た。
(何だこいつらの攻撃・・・エルヴンマントが無かったらもろに喰らってたぜ・・・)
回避能力を上げるマントを装備していたお陰で難は逃れた。だがこの先もこの展開が続くとは限らない。
(どうする・・・)
リッドは再び剣を構えて二人を見据える。だが、
「マジかよ・・・」
リッドは驚愕する。長身の男、ダオスがゆっくり立ち上がる。
「く・・・やはり全力でいかねばならぬようだな」
ダオスもリッドを睨み返す。そこにはしばしの静寂が流れた。

96そして、始まり 6:2006/01/29(日) 22:44:23 ID:JMUBik4W
金髪の少年、ミトスはリッドを見据えながら先程のことを思い出していた。
仮初の家族一同は橋を渡りきり一つの村を見つけた。マーテルは安心して息を漏らすがダオスはこれからのことを話し出した。
「全員で一度に村に入るのは危険極まりない。ここは二手に別れよう」
そうして出された結論は、危険な正面から入るのはダオスとミトス。叢を掻き分けて進むのがロイド、マーテル、今は眠っているメルディとなった。
「姉さまを危険な目に合わせたら殺すよ」
ミトスはにこやかに笑ってロイドの傍で呟いた。
「お前、全然変わってないのな」
「何が」
「いや、何も」
ロイドはメルディを背負ってマーテルと共に村の裏側から入っていった。後でどこかの家で合流する手はずだったのだが・・・。
(こっちからじゃなくて良かったよ。まさか剣士がいるなんて、姉さまに危害を加えさせるわけにはいかない)
ミトスは思考を戻す。恐らく今ごろはもう村に入っただろう。だが安心するのはこの剣士を倒してからだ。
姉さまがいなくて本当に良かった。姉さまがいればこの戦いでさえ止められるからね。
「やめてください!!二人とも!!」
どこからかマーテルの声がする。
ミトスとダオスは怪訝な顔をした。村の裏側から入ったのに、マーテルがここにいるはずはないと。
だが一つの家の前にマーテルはいた。その横にはロイドがいる。何故だかメルディは背負っていなかった。
更に横には二人の男も姿を現す。
「リッド!無事か!」
ジョニーが叫ぶ。リッドは訳が分からないまま頷く。
キールの姿がない。まだ家の中にいるのか。
「二人とも、手を収めてください・・・」
絶対マーテル主義の二人は逆らえずに戦闘体制を解く。リッドもその姿を確認してから剣を収めた。
「一体なんだってんだ・・・」
リッドはぼやく。
裏側から村に入ったロイドとマーテルはあっさりジョニーたちに見つかってしまった。だが、メルディを見たキールはその状況を把握するため、一度家の中に招き入れたが外から戦闘の音、マーテルが飛び出してきたのだった。
一先ず戦闘を終えたことにマーテルとジョニーは安堵の声を漏らした。

―――一人の男を除いて。

「やっと会えたなダオスよ!!」
マーテルの隣にいたモリスンが叫ぶ。
ダオスはその姿を確認すると露骨に嫌な顔をする。
「奴はまさか・・・」
ジョニーも嫌な予感が脳裏をよぎる。モリスンの条件、それは、
「ある男を倒すこと。それのみだ」
その倒すべき男が今目の前にいるということ。それがジョニーの嫌な予感。
「『天空充るところに我はあり・・・』」
マーテルの隣で、ゆっくりとモリスンは詠唱を開始した。

一度収まった戦いの狼煙が、また上がろうとしていた。

97そして、始まり 7:2006/01/29(日) 22:45:45 ID:JMUBik4W
【リッド・ハーシェル 生存確認】
状態:背中に刀傷(9割回復)
所持品:ムメイブレード、エルヴンマント
基本行動方針:メルディと合流し、脱出法を探し出す。
第一行動方針:ファラの意志を継ぐ
第二行動方針:できれば危険人物を排除する。
現在位置:C3村

【ジョニー・シデン 生存確認】
 所持品:メンタルリング 稲刈り鎌 アイフリードの旗 BCロッド サバイバルナイフ 
 状態:健康
 基本行動方針:ファラの遺志を継ぐ ゲームからの脱出
 第二行動方針:仲間との合流  
 第三行動方針:同志との合流
 現在位置:C3村

【エドワード・D・モリスン 生存確認】
状態:TP2/3消費 全身に裂傷 
所持品:魔杖ケイオスハート 割れたリバースドール 煙玉(残り二つ) クナイ(一枚) 法術に関する辞書
基本行動方針:ダオス討伐
第一行動方針:演説少女の意志を継ぐ
第二行動方針:法術取得(まずはファーストエイドから?)
第三行動方針:ミクトラン討伐
現在位置:C3村

【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:疲労
所持品:ベレット、ホーリィリング
基本行動方針:メルディと合流し、脱出法を探し出す
第一行動方針:メルディの介護
現在位置:C3村

98そして、始まり 8:2006/01/29(日) 22:46:42 ID:JMUBik4W
【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
状態:TP半分消費  背中に打撲
第一行動方針:モリスンのへの対処
第二行動方針:マーテルを守る
第三行動方針:マーテルと行動
第四行動方針:打開策を考える
第五行動方針:敵は殺す
現在位置:C3村

【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード 邪剣ファフニール アトワイト ????
状態:後頭部に打撲、足に軽裂傷、TPを微消費
第一行動方針:状況の把握
第二行動方針:マーテルを守る
第三行動方針:マーテルと行動
第四行動方針:打開策を考える
第五行動方針:クラトスとの合流
現在位置:C3村

【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 アクアマント
状態:普通
第一行動方針:事態を収める
第二行動方針:ダオス達と行動
第三行動方針:ユアン、クラトスとの合流
現在位置:C3村

【ロイド:生存確認】
状態:健康
所持品:ウッドブレード(自作)、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆(Sの仲間及び協力してくれる仲間)で生きて帰る
第一行動方針:事態の把握
第二行動方針: 協力してくれる仲間を探す
第三行動方針:メルディと行動
現在地:C3村

【メルディ 生存確認】
状態:ネレイドの干渉(気絶により詳しくは不明)
所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱
行動方針:不明
現在地:C3村


99それが漆黒クオリティ 1:2006/01/30(月) 02:05:23 ID:IAogMH2L
「何とか離れられたわね……」
「そうですね。私も迷わずに来れて安心です……」
「ぜぇぜぇ……はぁはぁ……そ、そうだな……。無事で何よりだ……。ぜぇぜぇ……」
燃え盛るG5の町を遠巻きに見れる位置にある木陰。
ユアンの指示で北上していた漆黒の翼の面々は、とりあえずここまでたどり着いていた。
ジェットブーツやナイトメアブーツのお陰で、そこまで時間を掛けずにここまで着くことが出来た。
……ブーツを履いている者は、だが。
三人の中で唯一ブーツを履いていなかったグリッドは、彼女達に必死についていこうと走った。
その結果が、今の死にそうな息切れである。
グリッドは、自分のことを考えずにブーツの力で疾走したメンバー達を非難する。
「ぜぇぜぇ……き、君達には、俺を気遣う心はないのか? もう少しペースを合わせてくれても…………」
しかしプリムラ達は心外そうな顔をして答えた。
「だってさ、ユアンが全力で逃げろって言うからさ……」
「私は……プリムラさんについていかないと迷子になりそうだったので…………」
全く罪悪感を感じていない二人に、グリッドは遂にキレた。
「だぁぁ!! 我等が漆黒の翼のリーダーは誰だ!? 思い出してくれ!!」
疲れているはずなのだが、彼はそれを気にせずに、そんな大声を出した。
すると彼女達は即答する。
「ユアンでしょ?」
「ユアンさん……ですよね?」
「ぐはぁぁっ!!」
グリッド にかいしんのいちげき!
こうかはばつぐんだ!
「違ぁぁぁう!! リーダーは俺だ。音速の貴公子グリッド様だ!!」
多大な精神ダメージを受けながらも、グリッドは何とか立て直し、そう叫ぶ。
「知ってるわよ……。でもさ、実際さ……」
「今回の作戦もユアンさんの発案ですし、実質は……」
「うぐぐ…………」
その言葉に反論も出来ないグリッドであったがそんな時だった。
燃え盛る町の方角から野太い雄叫びが聞えてきたのは……。
100それが漆黒クオリティ 2:2006/01/30(月) 02:06:13 ID:IAogMH2L
「な、何だ、あの雄叫び…………?」
「ユアンさん……ではないですよね?」
ユアンではない声が町から聞えてきた、ということはつまり――
「牛よ! あの牛の怪物がきっと叫んだのよ!!」
プリムラの言葉に、二人は息を飲んだ。
恐らく、そうに違いないだろう。
しかし、こうも雄叫びを上げるということはやはり相手は凶暴で手に負えないような敵だったのであろう。
離れて正解だったようだ……。
そう思うと同時に、彼等の脳裏には一つの心配事が浮かぶ。
それは一人で町に残ったユアンの安否。
プリムラがそのことを口にした。
「……ユアンの奴……無事かしらね」
「き、きっと大丈夫ですよ! ユアンさん町を燃やすくらい強い方ですし!」
プリムラの不安をカトリーヌが払拭しようとする。
「あ、あんな強い方がそう簡単にやられるはずありません! そうですよね、グリッドさん!?」
話を振られたグリッドは、うんうんと頷く。
「あ、あぁ。……あいつも漆黒の翼の端くれ。漆黒の翼の名に泥を塗るようなことはしないだろうしな! わははは!!」
といつも通りに笑って見せていると、今度は轟音が聞えてきた。
そう、それはまるで大砲を撃つかのような……。
「や、やっぱりそうよ!! あの音、きっと牛の持っていた大砲の音よ!」
音を聞いて、プリムラはさらに叫んだ。
カトリーヌも不安そうな顔をする。
「じゃ、じゃあ戦闘が始まっているって事ですか?」
「何とか勝つか逃げるか出来ればいいんだけどね…………」
プリムラとカトリーヌは心配そうに町を見ていた。
それ以降も断続的に火の海から聞えてくる連続した轟音。
もし、これがプリムラの予想通りの砲撃(と思われる)音だったら、相手は相当苛烈な攻撃を繰り広げているに違いない。
そして、一向にユアンがこちらに向かってくる気配が無いのを見ると、恐らくユアンはその戦闘に…………。
三人が一様に不安を感じる中、一人の男が立ち上がった。
漆黒の翼のリーダー、グリッドだ。
「ど、どうしたの? いきなり立ち上がって…………」
プリムラが、突然の彼の行動に驚きながら尋ねる。
すると、グリッドはただ一言、燃え盛る町を指差してこう言った…………。
「ユアンを……助けに行く!!」
101それが漆黒クオリティ 3:2006/01/30(月) 02:06:57 ID:IAogMH2L
グリッドの突然の言葉に、方向音痴かつバカップルである事を除けば常識人であるカトリーヌが、反対する。
「しょ、正気ですか!? ひ、火の海ですよ!? 敵もいるみたいですし……どう考えても危険ですよ!!」
だが、そんな言葉で引き下がるようなグリッドでは無い。
「火の海、凶悪牛……確かにユアンが『逃げろ』というのが正しいくらい危険だな……。
 だが! だからといってリーダーであるこの俺が、仲間の危機を救わないわけには行かないだろう!
 リーダーが仲間を見殺しにする決断など下せるはずがない!!」
そう言い切ると、彼は今度は二人に向き直る。
「しかし、仲間までもを危険な目に遭わす訳にもいかないからな。君達には俺がユアンを連れ戻してくるまで、ここで待機して欲しい」
「そ、そんな……」
カトリーヌは、余りに無茶なその提案に、思わず言葉を詰まらせる。
すると、今度は彼女の横に座っていたプリムラが、口を開く。
「待機していてくれ? ……そんなの水臭いじゃない」
そう言って立ち上がると、グリッドと向き合った。
「グリッド……あなたがそこまで仲間思いだったなんて……感動したわ!!」
「プ、プリムラ?」
「私も考えは一緒。ユアンは私にとっても仲間だもの! 仲間なら助けなくちゃ、よね!? 私もグリッドについて行くわ!!」
プリムラは、親指を上に突き立てる。
一方のグリッドは、感極まるという面持ちだ。
「お、おぉおぉお!! プリムラ! 君は漆黒の翼の鑑だ! 君こそ団員に相応しい!!」
「グリッドが仲間思いのリーダーだって事は十分に分かったわ! あんたが大将よ!」
お互い手を握り合いながら、無駄に熱い言葉を交わす。
そして、そんな二人を見て、カトリーヌは戸惑ってしまう。
「あ、あの〜……だけど町は火の海で危険なんですよ? それでも……」
「よし! そうと決まったら、早速出発だ!! 目標G5の町! ミッションはユアン救出! 漆黒の翼、行くぞ!」
「お〜〜!!」
最早、カトリーヌの言葉など聞えぬ二人は、そう言うや否や南へ向けて駆け出していった。

102それが漆黒クオリティ 4:2006/01/30(月) 02:07:31 ID:IAogMH2L
「…………行っちゃった」
一人残されたカトリーヌ。
彼女には一人でここに残って帰りを待っているという選択肢もあったが…………彼女はふと自分が首からぶら下げていた物に気付いた。
「って、あぁっ! クレーメルケイジ!!」
彼女達の数少ない攻撃手段の一つ、晶霊術を使うのに必要なアイテム。
それをプリムラ達はカトリーヌに預けたまま、出て行ってしまっていた。
カトリーヌは慌てて立ち上がると、平原を走っているグリッドとプリムラの姿を確認する。
二人とも、まだ姿がはっきりと分かる距離にいる。
「まったく……これを忘れてどうする気なんだろう……」
ジェットブーツさえあれば、装備の無いグリッドには最低限追いつけるだろう。
それに背中を追っていけば、迷子にもならない。……恐らく。
とりあえずクレーメルケイジを届けよう。
しかし、それからまたここに戻ろうとするのは危険であろう。
何せ、自分は方向音痴なのだから。
だからといって、これを届けないわけにも行かない。
つまり結論は一つ……。
「結局、グリッドさんについていく事になるなんて……。私も……やっぱり漆黒の翼の一員って事かなぁ?」
カトリーヌはそんな事を呟きながら、グリッド達の背中を高速で追いかけていった。
103それが漆黒クオリティ 5:2006/01/30(月) 02:08:05 ID:IAogMH2L
【グリッド 生存確認】
状態:健康 疾走による疲労
所持品:無し
基本行動方針:生き延びる。
       漆黒の翼のリーダーとして行動。
第一行動方針:町へと戻る(ユアン救出)

【プリムラ・ロッソ 生存確認】
状態:健康 
所持品:セイファートキー、ソーサラーリング、チャームボトルの瓶、ナイトメアブーツ、エナジーブレット
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを磔にして島流し決定。
第一行動方針:町へと戻る(ユアン救出)
第二行動方針:出来ればC3行きを提案

【カトリーヌ 生存確認】
状態:健康 
所持品:マジックミスト、ジェットブーツ、エナジーブレット×2、ロープ数本、C・ケイジ
基本行動方針:帰りたい。生き延びる。
第一行動方針:グリットとプリムラを追いかける

現在位置:F5平原→G5の町へ
104そして、始まり【修正版】 1:2006/01/31(火) 22:54:37 ID:plTBEC19
扉が開き、リッドは帰ってきた。
その顔は気のせいではないかもしれないが、どこか清々しい色を帯びていた。
家に入ったリッドは何も言わない。何か深刻な問題にぶつかったような難しい顔をしている。
ジョニーもモリスンもその様子に気付く。モリスンは椅子に座りながらリッドに声をかけた。
「どうした?座らないのか」
するとリッドはふらついた足取りで椅子にストンと腰を降ろす。その姿には流石に声を掛けずにいられなかった。
「どうしたリッド、どこか具合でも悪いのかい」
ジョニーは訝しげにリッドの体調に気をかけた。が、返事をするようにリッドのお腹からひとつの音がした。

ぐ〜

数秒の沈黙。モリスンはその場にいないかのような対応。
机に突っ伏すリッドはかろうじて顔だけをジョニーに向ける。
「は、腹減った・・・何か食わしてくれ〜」
「・・・ぷっ」
その姿を見てジョニーは噴出す。モリスンはやはりその場にいないかのような反応。
「あっはははは!!ひぃ〜!!!」
「な、何だよ・・・そんな笑うこたねぇだろ?」
ジョニーはお腹を抑えて正常を取り戻す。
「いや、これは失敬・・・そうだな、何かご飯でも作ろうか」
「マジか!やったぜ!」
リッドはガッツポーズをするが、すぐに机に突っ伏してしまう。
ジョニーは席を立ち、すぐ近くにある台所へと足を運んだ。
(彼はあわよく彼女の死を乗り越えてくれたか)
ジョニーは台所に向う途中、一人安堵の息を漏らしていた。

105そして、始まり【修正版】 2:2006/01/31(火) 22:56:08 ID:plTBEC19
「本当はすぐにでもここを去りたい所なのだが・・・」
リッドの隣に座るモリスンは呟く。
「いや、すまねぇけどもう少し待ってくれねぇか」
机に顔を乗せたままリッドはモリスンに返した。
「どうしてだ」
「俺の仲間が一人こっちに向ってる。俺がここに来る途中に敵の気配はなかったから安全っていやぁ安全なんだけど・・・」
一つの間を置いてリッドが続く。
「もの凄ぇトロい」
それからリッドは喋らなくなった。恐らく食事をするまで余計な体力を抑えるつもりなんだろう。
モリスンはため息をついて椅子にもたれる。

彼にとってここはメリットとデメリットの塊の場所なので決断に弱っていた。
メリットは、上手くいけばあの演説の内容と共に仲間を増やせ、ダオス討伐への可能性が極めて高くなること。
加えて、あの演説を聴いてダオス自身がこちらに向っているという可能性があること。これはわざわざこちらから出向かなくてもあちらからやって来てくれるのだから探す手間が省ける。
それにこちらには一目見てわかる、この青年。
(かなりの腕前だ・・・未知数すぎて逆に怖い程に)
リッドを見てモリスンは勘巡る。彼にもリッドの内に秘めた極光の輝き、そのフィブリルを少なからずとも感じていた。
この青年と自分、そしておそらくは支援型であろうジョニー、後から増える青年の仲間。
着実に戦力が増えている。メリットの効果は正に今出ていたのだ。
だが、デメリットもある。
あの『声』を聴いてやってくる者が味方ばかりではないということ。
下手をすればいらぬ戦闘を強いられて戦力を削られてしまう恐れがある。
しかももしそこにダオスがやってきたら・・・モリスンが危惧していたのは正にこのシチュエーションだった。
双方の可能性、及び危険性を考えて出したモリスンの答えは、
一先ずここを去り近くの高台から様子を見る。そしてこの村にやってきた者の善悪の判断。後に攻撃または行動を開始。
勿論・・・
ダオス自身、そしてダオスと手を組んでいる者は・・・
「・・・・・」
腕を組みながら思案するモリスン。
取りあえずはこの青年の仲間を待とう。動くのそれからだ。
それに、実際モリスンも空腹を感じていたので幸いだった。

106そして、始まり【修正版】 3:2006/01/31(火) 22:57:16 ID:plTBEC19
「こんな簡単なモノしかなかったけど我慢してくれよ」
ジョニーは両手に皿を持ち、その上には食パンやらコッペパンが並んでいた。
「うっは〜!ありがとよジョニー!いっただきま〜す!!」
皿が置かれるなりリッドは急いで2、3個のパンを両手に持って一つにかぶりつく。
「おいおい、あまり急いで食べると喉に詰めるぞ」
「私もいただこう」
言ってモリスンも一つのパンに手を取る。口にすると香ばしい味がした。
「美味ぇ!!」「美味いな・・・」
「そりゃどうも」
ジョニーも一つ手にとり口にする。
一先ずの少し早い昼食は三人の雰囲気を和ませたのだった。

食事をしてから結構な時間が経った。

今は正午、リッドとジョニーは疲れが溜まっていたのかうたた寝をしていた。(リッドの至ってはほぼ熟睡だった)
モリスンは一人また腕を組んでここに来るであろう者を待っていた。
そして、誰かがやってくる音、やけにたどたどしい足取りが聞こえる。
「・・・相当疲れているようだな」
モリスンは一人席を立ち外に出る。
そこには一人の青髪の青年が村の中央で息を整えている姿があった。
青年はモリスンの姿を見つけると、やはりたどたどしくこちらに向かって来た。
青年は立ち止まり、モリスンに声をかけた。
「ファ、ファラは・・・リッドは・・・?」
呼吸を乱しながら質問するが、モリスンにはそれが痛々しく見えた。
「・・・とりあえず中に入ってくれ」
モリスンは青髪の青年を招き入れた。

青年は中に入るなり眠っている一人の顔見知りを見つけ、声をかける。
「お、いリッド・・・起きろ・・・」
「んぁ?・・・お〜キール、やっと来たか」
「やっとじゃない・・・僕をこんなところまで走らせて・・・」
リッドはのそりと起き上がり、眠気眼をこする。その一連の流れにジョニーも目を醒ました。
「で、ファラは・・・?」
キールのその言葉に、三人は一瞬固まる。誰もすぐに答えを返せなかった。
だが、キールにとってはそん反応事態が答えに解釈できた。
「やっぱり・・・もう駄目だったか」
キールは一人俯く。だがリッドはその様子を見て怪訝に思う。
「やっぱり、て何だよ。お前、ファラが死ぬって分かってたのか」
「そうじゃない。だけど、可能性の一つとして考えていた」
「お前・・・ファラがどんな気持ちで・・・!」
「リッド、そこまでにしておきな」
ジョニーが横から割って入る。言われて気付く。リッドは今にもキールに突っかかろうとしているところだった。
107そして、始まり【修正版】 4:2006/01/31(火) 22:58:14 ID:plTBEC19
キールは俯いたまま口を開いた。
「悲しんでいるのは、お前だけじゃない・・・」
その言葉にリッドは肩を落として頭を掻く。
「・・・すまねぇ」
そう呟いてスッと立ち上がる。ジョニーとモリスンの顔を一瞥してキールに向き合う。
「キール、あいつの『声』を聴いたか?俺はあいつがしようとしたことをやる」
キールは顔を上げてリッドを見据える。
「そのためにはキール、お前の力が必要だ。頼む」
その言葉にキールはため息を漏らす。
「全く、何年お前たちの幼馴染をやってると思っているんだ」
「それじゃあ・・・」
キールは一度頷き、新たな目標を携える。
「当初の目的とは違ったけど、乗りかかった船だ。最後まで二人に振り回されてやるさ」
リッドはガッツポーズをし、ジョニーは安堵の息を漏らす。モリスンは既に次の算段をしていた。
こうしてファラの意志の下、4人の仲間が集まった。

「あれは・・・」
「村のようだな」
一方、仮初の家族一同は橋を渡りきり一つの村を見つけた。
マーテルは安堵の息を漏らし、ロイドも少しだけだが疲れのため息をつく。
「姉さま、大丈夫?」
ここまで休息らしい休息をとっていなかったのでマーテルの安泰を気にするミトス。
だがマーテルは無理な笑顔を作り、ミトスに向ける。
「大丈夫です。一刻も早くあの方にお会いしなければ・・・」
あの子の『声』。その為にマーテルはここまでやってきた。
ここで立ち止まってはいけない。マーテル自身、その理由のために疲れを無理してここまでやってきた。
ミトスもロイドもその姿を見て痛々しくさえ思った。だが「休もう」などという言葉をかけるのは躊躇われた。
マーテルの先を見据える姿に、そんな言葉をかけられるはずがなかったのだ。
ダオスはメルディを抱えながら一つの提案を出した。
「このまま村に入るのは危険極まりないな」
その言葉にロイドは首を傾げる。
「どうしてだ」
「あの少女の『声』を聴いてこの村にやって来る者が、我らがマーテルと同じ意志を持っているとは限らない」
ロイドは少し頷いてその言葉の意味を整理した。
「つまり、このゲームを楽しんでいる奴もこの村にいるかもしれないってことか」
「ふむ、まぁそういうことだ」
「狂乱者もいるかもしれないね」
ミトスがロイドに付け足して言う。ダオスはその言葉にも頷いて肯定の意味を示した。
「ここは二手に別れて様子を見る。ミトス、お前はマーテルを守りながら草を掻き分けて裏側から村に入れ」
ミトスは「お前に言われなくても」と悪態をつきつつもその采配を受け入れ
た。
「俺は?」
「ロイド、お前は私と共に村の正面から入る。危険な奴がいれば排除はやむを得んが・・・」
言ってダオスはマーテルの方を一度見る。マーテルは「それはやめてください」というように瞳を潤していた。
「あー、まぁこれは極力避けたいが万が一ということもある。ここは戦力を特化すべきだ」
ダオスは誤魔化しながらも結論を出す。もし上手くいった場合のために合流場所を決めておく。
「あの赤い屋根の家に集合しよう。もし私たちが遅れても、無闇に外には出るな。あの少女の『声』を探すのはそれからでも遅くは無い」
ロイドとミトスは頷き、マーテルもそれに従う。家族会談はこれにて終了。
108そして、始まり【修正版】 5:2006/01/31(火) 22:59:13 ID:plTBEC19
「あ、そうそう。メルディをよろしくな」
ロイドが去り際にミトスに話し掛ける。
「な、何で僕が!?」
「二人を守れるのはお前しかいないだろ。兎に角よろしく頼んだぜ」
言ってそそくさとダオスの後を追うロイド。ミトスは反論しようとしたが叢に塞がれてその姿はもう見えなくなっていた。
「・・・くそ!」
悪態をつきながらもメルディを背負う。少々無理があるかもしれないが四の五の言ってられなかった。
「大丈夫ミトス?」
「だ、大丈夫だよこれくらい」
さっきと立場が逆転している。笑うところなんだろうけど笑ってられないのも当たり前だ。
「じゃあ、行こう姉さま」
「え、ええ」
少し弟が心配だったがマーテルもその後を追った。

ジョニーとモリスンとキールは簡単な挨拶を交わし合い、次にやるべき事を決める。
モリスンは先程頭に浮かべていた作戦を提示し、キールとジョニーはそれに賛成した。
「高台にいけば、大方の状況が把握出来る。今ここに向っているのは恐らく少数ではないはずだ」
キールの解説によってひとまずここを離れることに決まった。目指すはD2の高台。
しかし、突然モリスンは何かに気付いた様な表情をする。
「どうしたんだ」
ジョニーは心配になって声を掛けるが、モリスンの顔は玄関に、否、外に向けられていた。
そして小さな声で呟いた。
「まさか・・・」

リッドは頭を使ったことは苦手なので一人外に出て剣の稽古をしていた。
何十回か剣を振り回すが、やはりしっくりこない。
「素振りだとやっぱ稽古してる感じがしねぇな」
ここには猟師の本領を発揮できるエッグベアもモンスターもいない。ましてや刃を向けるのは人。そんなことは御免だった。

叢ががさっと揺れる。リッドはそれに反応して剣を構える。
誰かいる・・・。
いくらこの戦いをやめさせるとはいえ自分が死んでは元も子もない。不意打ちに対することだけはしなくてはならなかった。
叢から長身の男とオールバックに一本毛が出ている特長的な鳶色の髪の青年が姿を現した。ゆっくりとこちらに近づく。
109そして、始まり【修正版】 6:2006/01/31(火) 22:59:51 ID:plTBEC19
戦う意志が無いのか、二人の男は近づくだけ。
リッドはその様子を見て少し剣を下げる。
「アンタたちは・・・誰だ」
「人に名前を尋ねる時は、まず自分から名乗るものだろ」
鳶色の青年が言い返す。リッドは少しムッとしたが、それもそうだと一人納得してリッドは親指を自分に向けて自己紹介をした。
「俺はリッド。リッド・ハーシェルだ。アンタ達と戦うつもりはない」
鳶色の青年はその様子を確認して頷き、自分も自己紹介をした。
「俺はロイド・アーヴィング。そんでこっちが・・・」
「ダオス」
一言そう言ってダオスは黙る。リッドはその身長から来る威圧も感じていたが、それ以外の何かも感じていた。
リッドはふと気付く。
「ん・・・?ダオスとか言ったっけ?アンタ前にどっかで・・・」
「気のせいだ」
またも一言で一蹴されるリッド。だがやはり疑問が解けない。
「いや、確か【時の大・・・】」
「気のせいだと言っている」
ダオスはあくまで一蹴。
リッドは何か触れてはいけないことなのかと考えてしまう。なにぶん『時』という人の概念そのものを司る大晶霊だったのだ。俺が考えても仕方が無いか。
後でキールに聞こうと思い、その話題はそこで閉じられた。
そのやりとりが終わるのを感じてロイドは口を開いた。
「えっと、俺たちも戦うつもりは無い。あの『声』の人に会いたいだけなんだ」
その言葉にリッドは固まるが、すぐさま答えを出す。
「あいつは・・・もういない」
「何だって!?」「・・・・・」
ロイドは驚きダオスも表情には出さないがすこしの動揺を見せる。
「拡声器で喋っていた時はすでに猛毒に侵されていたらしい・・・俺が来た頃にはもう・・・」
リッドは俯いて黙る。ロイドも握り拳を作り、無念を吐く。
「くそっ!間に合わなかったのか!」
その様子をみてダオスは口を開いた。
「貴様が来たところで状況は変わらん。悔いることはない」
「でも!」
ロイドはダオスを見上げる。確かに自分には助けるだけの力が無い。だがその想いに賛同するという意志だけでも伝えたかった。
「ありがとよロイド」
リッドは呟いてロイドを見る。ロイドもリッドを見つめる。
「ファラは笑ってたんだ。お前みたいな奴が来てくれただけでもあいつは喜ぶさ」
リッドはロイドに向けた言葉のつもりだった。だけど何故かそれは自分自身にも言い聞かせられた気がした。
「リッド・・・」
しばらく、三人の間に沈黙が流れた。

110そして、始まり【修正版】 7:2006/01/31(火) 23:01:30 ID:plTBEC19
「姉さま、そこに木の枝があるよ。気をつけて」
「えぇ」
ミトスとマーテルは順調に赤い家へと目指していた。そしてその裏口らしき扉が目の前にある。
「よし、入るよ」
ミトスは息を飲んでドアノブに手をかけた。幸いなことに扉は開いていたようだ。
ゆっくりと家の中に入る。目の前には廊下が続いていて右側から声がする。
(誰かいる・・・)
ミトスは戻るべきかどうかを考えていた。しかし後ろにはマーテルがいる。逃げ切れるか・・・いや、この声の主が悪い人ではないかもしれない、がいい人でもないかもしれない。
つくづくこんな異常な状況下を恨んだミトス。だが結局結論は出ずに、
「「あ」」
奥から出てきた一人の青年に見つかってしまった。
「姉さま!逃げ・・・」
「メルディ!?」
青年はミトスの背負っている少女を見ると叫んだ。
ミトスはすぐさま逃走の態勢に入ったが、その一言に足が止まる。
「この子を知っているのですか!」
マーテルが間髪いれずに押し入る。その騒ぎにまた奥から2人の男が出てきた。
「知ってるも何も、そいつは僕たちの知り合いだ・・・貴方は?」
青年はメルディを一度見た後にマーテルとミトスに視線を変えた。
「私たちは・・・」
「ちょいと失礼だが・・・」
マーテルの言葉を遮って金髪のロングヘアーの男が割って入ってきた。
「ここじゃあなんだ。中に入ってゆっくり話を聞こうじゃないか」
踵を返して金髪の男はミトス達を案内する。
「君達も、お客さんなのだから」

111そして、始まり【修正版】 8:2006/01/31(火) 23:02:14 ID:plTBEC19
全員居間にあるテーブルの椅子に座る。
「僕の名はミトス」
「姉のマーテルです」
二人は簡単な自己紹介をする。男たちも見習って自己紹介をする。
「俺の名前はジョニー。ジョニー・シデンだ」
「エドワード・D・モリスン・・・」
「キール・ツァイベルだ。貴方たちはどうしてここに・・・?」
キールの質問にマーテルが答える。
「私たちは、少女の『声』を聴いてやって参りました。是非ともあの方と志を共にしたいのです」
マーテルは両手を組んで胸にまで挙げる。その姿はまるで聖母のそれだった。
「あの声の人は?」
隣のミトスが切り出した、が、やはり返事はすぐには返ってこない。
意を決してキールは口を開いた。
「彼女は、もうこの世にはいません」
「「!?」」
二人は驚愕する。特にマーテルに至ってはかなりの精神的苦痛を伴っている様だった。
「そん、な。やはり、手遅れだったのですか」
あの『声』を聴いた時からの一つの不安が現実に起こってしまった。
声の主には残された時間がないということを。
また助けられなかった。自分は何と無力なことか。
「姉さん!しっかりして!」
マーテルは今にも崩れそうな態勢でいた。ミトスが必死に抱き起こす。
キールもその姿を見て手伝う。何か感じるものがあったのか。
「貴方が、メルディを助けてくれたんですね」
キールのその言葉に、マーテルは我を取り戻す。
「あなた方はファラには会えなかった。間に合わなかった。でも彼女のかけがえの無い仲間、メルディをあなた方は助けてくれた」
そう言ってマーテルを見据え、キールは言葉を放つ。
「それで彼女は、ファラは喜んでくれますよ」
・・・そうだ。私はこんな所で立ち止まるわけにはいかない。
『声』の人に会って、それで終わりだったのか。いえ、断じて違う。
私は、彼女の想いを・・・紡がなくては・・・。
マーテルは瞳に輝きを取り戻し、ミトスに安心の意味の笑みを向ける。
ミトスもその笑顔につられて笑う。やはり二人はかけがえのない姉弟。
「キールさん、ありがとうございます。私は、彼女の意志を継ごうと思います」
キールは誰かさんのセリフと一緒だなと思いながらも、
「えぇ、こちらこそよろしくお願いします」
と言葉を交わし合った。
ジョニーもその傍らで笑いながら拍手を叩いていた。

―――ただモリスンだけは、笑顔も見せずにマーテルをずっと見ているだけだった
勿論、ミトスはその視線に気付いていたわけだが

112そして、始まり【修正版】 9:2006/01/31(火) 23:02:58 ID:plTBEC19
「仲間が後から来るんです。出迎えてもよろしいでしょうか」
「もちろん」
マーテルの要望にジョニーが相槌をうつ。マーテルは正面玄関から外に出た。
その先、ちょうど村の中央付近に長身の男と鳶色の髪の青年、赤髪の青年の三人が立っていた。

「ダオスさん!ロイドさん!」
呼ばれて二人はその方向を向く。マーテルの姿とほか大勢の人を見る限り、どうやら害はなさそうだった。
「マーテルさん!無事だったんですか!」
ロイドは叫んでマーテルとミトスの下へと駆け出した。
「仲間か?」
「あぁ」
リッドの問いにダオスは簡潔に答えてゆっくりとその場へ向かう。
だがリッドは遠目からも気付いていた。
赤い屋根の家の前に一人だけ数が少ないことを。

彼はマーテル達が出て行ったあと急いで裏口から出て叢を掻き分ける。
目標を発見。ゆっくりと叢から出る。

「やっと会えたなダオスよ!!」
突如として家から離れた叢から出て来たモリスンが叫ぶ。
その光景に全員が目を奪われる。
少し距離はあるがダオスはその姿を確認すると露骨に嫌な顔をする。
「奴はまさか・・・」
ジョニーも離れた叢の方を見る。そこにいたモリスンの姿を見ると、嫌な予感が脳裏をよぎる。
モリスンがファラの意志を継ぐ条件、それは・・・
「ある男を倒すこと。それのみだ」
その倒すべき男が今目の前にいるということ。それがジョニーの嫌な予感。
「『天光満るところ、我は在り・・・』」
この時を待っていた。
そう言わんばかりの表情をしてゆっくりとモリスンは詠唱を開始した。
ミトスは一人自分を責める。
「くそっ!あそこでもっと僕が警戒していれば・・・いや」
ミトスに一つの考えが浮かぶ。間に合うかどうかは時間の問題だが・・・
ミトスはキッとモリスンを睨んだ。

手を繋ぎあったばかりの者たち 短い夢が今崩れ去ろうとしていた
113そして、始まり【修正版】 10:2006/01/31(火) 23:03:40 ID:plTBEC19
【リッド・ハーシェル 生存確認】
状態:背中に刀傷(9割回復)
所持品:ムメイブレード、エルヴンマント
基本行動方針:メルディと合流し、脱出法を探し出す。
第一行動方針:ファラの意志を継ぐ
第二行動方針:できれば危険人物を排除する。
現在位置:C3村

【ジョニー・シデン 生存確認】
 所持品:メンタルリング 稲刈り鎌 アイフリードの旗 BCロッド サバイバルナイフ 
 状態:健康
 基本行動方針:ファラの遺志を継ぐ ゲームからの脱出
 第二行動方針:仲間との合流  
 第三行動方針:同志との合流
 現在位置:C3村

【エドワード・D・モリスン 生存確認】
状態:TP7割回復  
所持品:魔杖ケイオスハート 割れたリバースドール 煙玉(残り二つ) クナイ(一枚) 法術に関する辞書
基本行動方針:ダオス討伐
第一行動方針:演説少女の意志を継ぐ
第二行動方針:法術取得(まずはファーストエイドから?)
第三行動方針:ミクトラン討伐
現在位置:C3村

【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:疲労
所持品:ベレット、ホーリィリング
基本行動方針:メルディと合流し、脱出法を探し出す
第一行動方針:メルディの介護
現在位置:C3村

114そして、始まり【修正版】 11:2006/01/31(火) 23:04:49 ID:plTBEC19
【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
状態:TP1/3消費  
第一行動方針:モリスンのへの対処
第二行動方針:マーテルを守る
第三行動方針:マーテルと行動
第四行動方針:打開策を考える
第五行動方針:敵は殺す
現在位置:C3村

【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード 邪剣ファフニール アトワイト ????
状態:後頭部に打撲
第一行動方針:状況の把握
第二行動方針:マーテルを守る
第三行動方針:マーテルと行動
第四行動方針:打開策を考える
第五行動方針:クラトスとの合流
現在位置:C3村

【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 アクアマント
状態:普通
第一行動方針:事態を収める
第二行動方針:ダオス達と行動
第三行動方針:ユアン、クラトスとの合流
現在位置:C3村

【ロイド:生存確認】
状態:健康
所持品:ウッドブレード(自作)、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆(Sの仲間及び協力してくれる仲間)で生きて帰る
第一行動方針:事態の把握
第二行動方針: 協力してくれる仲間を探す
第三行動方針:メルディと行動
現在地:C3村

【メルディ 生存確認】
状態:ネレイドの干渉(気絶により詳しくは不明)
所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱
行動方針:不明
現在地:C3村
115名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/01(水) 09:21:56 ID:IRayIczr
今。C3村が陸の民によって破壊されました。
さよなら皆さん!さよならテイルズ!
116名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/01(水) 10:21:02 ID:UE1eLlTn
こういうのはよその板でやれよ
117名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/01(水) 13:31:38 ID:snsh8j5W
コテハン厨ども、わざわざ2ちゃんで叩かれる事やりにくるな!!!!!
118名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/01(水) 13:41:23 ID:KfZfKb+T
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
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335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
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119名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/01(水) 13:43:51 ID:KfZfKb+T
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
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335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
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120名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/01(水) 13:50:17 ID:KfZfKb+T
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
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335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
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335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
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121それは『希望』という名の 1:2006/02/01(水) 19:50:56 ID:R5nsEa0D
「あの崩れ様…とんでもないなぁ」

スタンは北、正しくは北々東に向かって走っていた。
目指すは少女の放送があった地、シースリ村。
だが消えてしまったミントを捜しながら来ているため、距離としてはさほど大きくは進んでいなかった。
未だ彼女の影も見つからない。
今スタンがいるのはE2エリア、丁度イーツ城の少し先を通り過ぎた辺りであった。


思えば、

「ここにもいない…どこ行っちゃったんだろ、ミント…」

などと呟きながら、隠れやすい森にいる可能性を考え森を通ってきたが、気付けば抜けてしまっていた。
遠くには碧海も見え、微かな潮騒も聞こえる。
地図を広げ現在地を確認する。
F2。なんかイーツ城から遠ざかっているような気がするのは気のせいだろうか?
肝心のイーツ城は、辺りを見回せば見つかったのだが。
──直後、少女の声が響き、彼の瞳に城から昇る光の束が宿った。


背後を振り返る。
彼の前に広がっていたのは、だだっ広い土地だった。
…いや、正しくは「だだっ広くなってしまった土地」だった。
本来なら目の前には、城がそびえ立っていた筈なのだから。
再び前に向き直り、走りながら思慮を巡らせる。
122それは『希望』という名の 2:2006/02/01(水) 19:52:23 ID:R5nsEa0D
休んでいた筈の彼女は一体どこに?
あの眠り様からして簡単に起きるとは考えられないし、第一ひとりだけで動くとは思えない。
ということは、あの洞窟にまだ誰かいた? そいつがミントを?
これしか考えられなかった。
そしてふと思う──今過ぎた城に、ミントがいたとしたら?
心を過ぎる疑問。
あの崩落じゃ、助かる確率は低い。まさか、まさか。
一度胸に浮かび上がった疑念は、瞬く間に膨らんでいく。

…このままじゃミントが危ないんじゃ!

スタンは急ブレーキをかけ、方向転換しイーツ城に一直線に走り出した。
放送のあった村、ジョニーのことが気掛かりなのも確かだ。
あの放送、間違いなくマーダーを呼び込む。
でも、俺みたいにシースリ村に向かう人は、きっと沢山いる。その人達が守ってくれる筈だ。
こうして逆走すれば、後ろにいるかもしれないマーダーの存在に気付けるかもしれない。
それにミントの状態を知ってるのは俺だけ。つまり、ミントを助け出せるのは俺だけなんだ。
スタンはそう自分に言い聞かせた。
放送の少女ファラだってゲームに反対する者の一人。
他にもこのゲームに反対している人はいる。大丈夫、大丈夫だ。
123それは『希望』という名の 3:2006/02/01(水) 19:55:10 ID:R5nsEa0D
根拠のない理由ではあったが、スタンはまだ見ぬ人々を信じた。
信じること、信じ続けること。それが1番の強さ──これが彼の信条なのだから。
イーツ城であった地は、もうすぐ目の前に迫っていた。



「こりゃ酷いな…」

城の惨状を改めて見たスタンの第一声がそれだった。
確かに崩れ始めた城の姿を遠目には見ていたが、ここまで荒れているとは思わなかった。
何というのだろうか、一言で説明すれば「砂に帰した」というような感じだった。
所々、僅かに残った城壁があるくらいで、あとは城であった面影もない。
辺りは煙っぽいというよりは埃っぽく、軽く咳込んだ。
こんな所にミントはいるのか?
あんな光の柱の近くにいたら、流石に…。
胸の疑念は絶望感へと化す。
更に近寄ってみると、そこに何かの塊があった。近寄って見てみる。
亡骸だった。それも──

「マグニス…!」

ジースリ洞窟で戦った、ジーニアスを殺したあのマグニスだった。
切り刻まれたような裂傷が全身にあった。剣の金創とは違う…ということは、術?
一体ここで何があったんだ? 疑問と警戒を胸に秘め、辺りを散策する。
また、何か塊があった。それも2つ。
124それは『希望』という名の 4:2006/02/01(水) 19:57:01 ID:R5nsEa0D
予想はついていた。あとは、誰なのか。
恐る恐る、見てみる。

「違…う」

不本意ながら安堵の息を漏らしてしまった自分が嫌になった。
1人は細身の男で、両目がなかった。
もう1人は、見覚えがあった。

「…バルバトス…!?」

自分達を殺そうとした2人組の内の1人、戦った人物、マグニスと共にいた男、バルバトス=ゲーティア。
あの男はかなりの実力を持っていた。それが、死んだ?
一体誰が? 城を壊すほどの力の持ち主? それは誰? そんな奴に勝てるのか? そんな奴と会ったらミントは?
…ミントは?

「誰か! 誰かいないのか!? ミントっ!!」

気付けば叫んでいた。頼む、答えてくれ。その一心で。
しかし、返ってくるのは静寂だけ。
その静寂が、スタンの心に追い撃ちをかける。
そんな、一体どこに!
確実にスタンの心に焦りが広がり、判断力を失わせていく。
ひょっとして既に手遅れなのでは? そんな考えさえ頭を過ぎる。
焦りは、自然に自責へと変わろうとしていた──その時。
彼の目にまばゆい赤の煌めきが差し込んだ。
光の源を見る。それは、指に嵌めてあるガーネットの輝きであった。
125それは『希望』という名の 5:2006/02/01(水) 19:59:20 ID:R5nsEa0D
たぎる炎のような赤。それはスタンに別の意志をもたらし、そしてその意志は炎の如く燃え照り始めた。
…落ち着け! まだ分からないじゃないか!
そう言わんばかりに首を振る。
何早とちりしてるんだ。ミントがここにいたっていう証拠はない。こんなに不安がる必要もないんだ。
手を握り締める。目を閉じて、一度深呼吸する。
そして目を開ける。そこには、いつものスタンがいた。

「よし! もう少し捜してみよう!」

頬をぱん、と叩き、気持ちを入れ直す。
そう、大切なのは信じること、信じ続けること。さっき思ったばかりじゃないか。
こんなんじゃルーティに怒られても仕方がない。
…挫けたりするもんか。せめて、泣くのは元の世界に帰ってからだ。
そう決めてスタンは再び探索を始めようとした──が。
不意に違和感が襲った。何かが、足りない。
そう、バルバトスの近くにあの兵器がない。
それ以前に、今まで見つけた骸の近くには支給品袋がなかったのだ。
──誰かが通った? それとも、ここに…。

刹那、スタンを影が覆った。

「…!?」

咄嗟に前方へ飛び込むように跳躍する。
126それは『希望』という名の 6:2006/02/01(水) 20:01:37 ID:R5nsEa0D
素早く後ろに振り向けば、そこには白い装束に金髪のロングヘアーの少女が佇んでいた。
最初、スタンは遂にミントを見つけたと思った。しかし彼女と違う点が幾つもあった。
赤い瞳、翼によく似た背の光、小柄な体格からしてとても持てると思えない、榴弾砲の姿。
そして、ひどく冷たい彼女の瞳。




【スタン 生存確認】
状態:軽い損傷
所持品:ディフェンサー ガーネット
第一行動方針:状況の把握
第二行動方針:演説が行われた場所へ移動
第三行動方針:ミントの救出
第四行動方針:仲間との合流
現在位置:E2イーツ城跡


【コレット 生存確認】
状態: TP3/4 無機生命体化 (疲労感・精神力磨耗無視)
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(残弾0) 、苦無(残り1)
基本行動方針:防衛本能(攻撃意思に対する完全抹殺及び不明瞭な干渉に対する威嚇)     
第一行動方針:スタンの戦闘意思確認(相手の行動によっては排除)
第二行動方針:非戦闘状態ではリアラに同行する。
第三行動方針:同状態でリアラを完全に見失った場合リアラを捜索する。
第四行動方針:???
現在位置:E2イーツ城跡
127最後まで、気は抜かないで 1:2006/02/02(木) 02:20:52 ID:URQngnU1
「貴様は絶対に許さん!」
鬼のような形相で迫る牛男。
武器や体格の面から見ても、接近戦での勝ちはあり得ないだろう。遠距離は論外。
おまけに向こうは二人、こっちは一人。
女のほうもかなりの実力者。説得はもはや不可能。逃げるしかあるまい。
見たところ、動きは鈍そうだが、後ろからバンバン大砲を撃たれては無事に逃げ切ることは難しい。

「うらぁ!」
牛男が大砲を振り下ろす。破壊力は凄まじいが、動きはさほど速くはない。攻撃後の隙も大きい。
ならばここは…。

「くらえ!」
攻撃後の隙を狙って、あるものを投げつける。
「フン!」
大砲の砲身を使い、体に届く前に防御する牛男。これは想定の範囲内。
相手に投げたのは胡椒の大量に詰まった瓶。牛男は鼻が大きいからよく効くことだろう。
あたり一面に胡椒が広がる。

「っがぁ! ゴホッゴホッ!」
「くしゅん!」
一瞬だけだが、相手が怯んだ。
その隙に、近くの建物の影に隠れる。
「チィッ、あのヤロウ…ぶぁっくしょん!」
「もう許さなっくしょん! パン! あいつをギッタギッタのメッタメッくしょん! パン!」

あれは、ギッタギッタのメッタメッタというレベルではないだろう。
大砲での打撃にしろ、砲弾にしろ、くらったらあの世行きは決定だ。
女のほうはイクストリームを付けているようだ。フライパンの直撃をくらえばただでは済まないだろう。
今は隠れて、隙を見て脱出するしかない。
128最後まで、気は抜かないで 2:2006/02/02(木) 02:22:29 ID:URQngnU1
「どこに行きやがった!?」
うまく隠れることができたようだが、まだ相手は近い。
かといって、ここを動かなければ、そのうち焼かれてしまう。どうすべきか…。

「ん?」
…足元に違和感。
青い小動物。
「なんだ、お前は…?」
「クイッキー」
「し、静かにしろ…!」
「クイッキー!」
「ここにいたらお前も焼け死ぬぞ。向こうへ行け。しっしっ」
「クイッキー…」
青い小動物は走り去っていった。と思ったが、まだこっちを見ている。
私に何か付いているのか…?
「ク〜〜〜…クイッッッッキィィィ〜〜〜〜!!!!」
あの小動物! プリムラたちが仕掛けていたタライの仕掛けの残りを発動させた!
あたりに大きな音が響き渡る!

「グフフフ…そこか!!」
牛男が大砲を発射した。
幸い、建物が密集していて次の隠れ場所には困らなかったが…。
「なんという威力だ…」
普通の弾ではない。炎そのものだ。
先ほどまで隠れていた家が全壊、しかもごうごうと炎上している。

「まだ遠くには行っていないはずだ…」
牛男は次々と大砲を発射する。だが、逆からは炎。どんどん逃げ場が無くなっていく。
早く何とかしなければ…。
129最後まで、気は抜かないで 3:2006/02/02(木) 02:24:52 ID:URQngnU1
ここで自分が握り締めている支給品袋に気が付いた。
中にあるのは、占いの本、エナジーブレット1個、ミスティブルーム…。
そうだ、この箒で空を飛べば、上手く逃げられるではないか。
スピードもかなりのものだし、フェアリィリングのおかげでマナの消費に関しては心配ない。
それに、向こうもまさか私が空を飛べるとは思うまい。

「クイッキー!」
「クイッキー、いたのかパン!?」
「見つけたぞ!」
またさっきの小動物。どうやら、こいつもやつらの仲間だったらしい
完全に見つかってしまったが、いくらなんでも空までは追って来れまい。さらばだ!

「むん!」
……前に進まん。いや、正確に言えば少しずつ後退している、といったところか? 何故だ?
「手こずらせやがって。このトーマを怒らせたのが貴様の運の尽きだ…」
割合あっけなく捕まってしまった。
130最後まで、気は抜かないで 4:2006/02/02(木) 02:26:30 ID:URQngnU1
「君は漆黒の翼の一員だ、絶対に来てくれると信じていたぞ!」
本当かな…? なんか信憑性が薄い…。まあ、それよりも…
「ホラ! クレーメルケイジ! その他諸々のアイテム! こんなに忘れて、一体どうするつもりだったんですか!」
もし、わざとクレーメル・ケイジを残して私が来るように仕向けたのなら大した人だと思うけど…。
「ははは… いや、助かったよ。今気付いた…」
ほら、やっぱり。

「じゃあ、改めて三人でユアンを救出に行きましょ!」
「うむ、そうだ! 突撃ィ!」
「「ちょっと待って!」」
あ、ハモった。やっぱり、そうですよね。突撃ィなんてマズすぎますよね。
「あいつ、大砲持ってるのよ! 正面から突撃だなんて、いい的だわ!」
…正面とか言ってたかな? まあ、彼ならそんな気もするけれど。
「そうですよ。焦るのは分かりますけれど、せめて相手の後ろから回り込むとか、相手の不意を付く格好じゃないと…」
「よし、ならば相手の後ろから回り込むぞ!」
…さすがです、グリッドさん。
ああ、でも何とかなりそうな気がするから怖いこと。
131最後まで、気は抜かないで 5:2006/02/02(木) 02:29:07 ID:URQngnU1
「牛さん、小生にお仕置きさせて欲しいパン!」
「ああ、気が済むまでやるといい。後始末は俺がしておく」
詠唱も無理、エナジーブレットを使っても動きを止められるのはせいぜい一人。
逃げようとしても、「無駄だ。このトーマの磁のフォルスがある限り、貴様は逃げられん」だそうだ。
女の方はお仕置きでも、牛男の方はそれに留まるまい。万事休す、か。
フライパンが振り上げられる。

「きゃああぁぁぁ!!!!!??」
「どうした、ミミー!? なんだ、この霧は…フギャウッッッ!!!!????」
今のはエナジーブレットに、ファイヤーボール…? 来るなと言ったのに、まさかあいつら…。
いや、今は考えを巡らすよりも、せっかくのチャンスだ。
何やらわけの分からない呪縛は解けた。今のうちにやつらから離れなければ…。

「い、一体、何者パン!?」
「なんだかんだと聞かれたら…」
「馬鹿! 何やってんのよ!」
「口上は今度ですよ、撤退撤退!」

【グリッド 生存確認】
状態:健康 疾走による疲労
所持品:無し
基本行動方針:生き延びる。
       漆黒の翼のリーダーとして行動。
第一行動方針:ユアン救出

【プリムラ・ロッソ 生存確認】
状態:健康 
所持品:セイファートキー、ソーサラーリング、チャームボトルの瓶、ナイトメアブーツ
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを磔にして島流し決定。
第一行動方針:ユアン救出
第二行動方針:出来ればC3行きを提案

【カトリーヌ 生存確認】
状態:健康 
所持品:マジックミスト、ジェットブーツ、エナジーブレット、ロープ数本、C・ケイジ
基本行動方針:帰りたい。生き延びる。
第一行動方針:ユアン救出

【ユアン 生存確認】
状態:健康 TP1/3消費 砂鉄が体にくっつく
所持品:占いの本、エナジーブレット、フェアリィリング、ミスティブルーム
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを信用していない。
第一行動方針:目の前の二人への対処
第二行動方針:漆黒の翼を生き残らせる
第三行動方針:漆黒の翼の一員として行動。仲間捜し。
132最後まで、気は抜かないで 6:2006/02/02(木) 02:30:11 ID:URQngnU1
【ミミー・ブレッド 生存確認】
状態:微妙に痺れてる 悲しみ(わりと深い)
所持品:ウィングパック×2 イクストリーム 金のフライパン マジカルポーチ ペルシャブーツ
第一行動方針:帽子の弔い
第二行動方針:トーマにキッシュをつくる

【トーマ 生存確認】
状態:痺れてる 怒り 右肩に擦り傷(軽傷) 軽い火傷 TP結構消費
所持品:メガグランチャー ライフボトル
基本行動方針:ミミーを守りぬく
第一行動方針:ミミーを泣かせた男を倒す
第二行動方針:ミミーのキッシュを食べる
現在位置:G5の町

クィッキー
基本行動方針:ミミーたちに付いていく。
133聖母と信者達、そして。1:2006/02/02(木) 07:20:59 ID:9umJH2RQ
「いでよ、神の───っ!」
後少しで完成するはずだったモリスンの詠唱は、最後の最後に途切れた。
途切れた集中に、爆発的に高まったマナは耐えきれなくなって弾けて散る。
キラキラと一瞬の名残。
背後に突きつけられた、禍々しい気配。る。
身体に染み付いた技能は、
すぐそばで聞こえる声。
先程まで家の前にいた筈の金髪の少年が、いつの間にか見るからに邪気を孕むファフニールの切っ先を向けて立っていた。
氷のように冷たい碧色の瞳は、睨むように目を細める。
口調だけは穏やかなまま。
「これが私の一番の目的だ。邪魔はしないで貰いたい」
横目で背後を確認しつつ、モリスンは凄む。
高々十四〜五だろう少年に、気迫で負ける気はなかった。
だが。
「こんな所でそんな魔法を使って…。
どうなるか解ってる?被害甚大だよ」
元々高めだろう声は低くしてもまだボーイソプラノ。
なのに何故だろう、モリスンは圧倒的な威圧感を感じた。
それはまさに人である歴史を逸脱した、絶対的で老獪な、神々しささえ放つ支配者のそれ。
天からの…いや、馬鹿馬鹿しい。
冷や汗がじっとりと背を伝い、口の中が乾く。
「お前の都合なんて関係無いんだ。
ただ、姉さまにまで被害が及ぶようなら…」
ぐ、と剣先が突きつけられる。

ミトスはダオスを初期の頃ほど警戒していない。
というのも、彼は中々に強いし、何よりマーテルを守っている。
自分以外がという不満こそあれ、デメリットはなく今の所は協力体勢にもある。
だからこそ、あの合体攻撃も可能だった。
何よりも、こんな事に巻き込みたくない人がいる。
「ミトス、お前には関係」
「あるよ。
ダオス、お前だって解るだろう?
こんな所で戦ったら、彼女の遺志も、姉さまの気持ちも無駄になる」
突然の乱入にダオスも些か驚いたのか、ややきつめに眉を寄せる。
134聖母と信者達、そして。2:2006/02/02(木) 07:22:01 ID:9umJH2RQ
だがミトスはそれすらも斬って棄てる。
ここで全体魔法を使えば、確実に死人が出る。
それは仮に剣撃でも変わらない。
もしここで知り合い同士の、或いは知り合いで無くとも戦いが起きれば、最悪マーテルはその身を投げ打ってでも止めに入るだろうから。
「…そんな事させない。」
「…………」
ダオスはその意思を汲み、緩く戦闘体勢を解く。
マーテルの手前、それにさっきのメルディという少女もある。
あまり騒いで起こしてしまっては、いや、起きたとしても落ち着いていられる状況ならば良いのだ。
だが戦闘の騒音で目覚めたとして、果たして落ち着いていられるか。
答えは決まりきっている。
だがモリスンはその眼光を絶やさない。
ピリピリとした空気が肌を突く。
モリスンの迷いは苦渋の表情となり、
そして。
「ミトス!ダオスさん!」
「モリスン!」
「……っ!?」
マーテルとリッドが同時に叫んだ。
緊張状態においては不意打ちとも言える声という攻撃に肩が跳ね、密かに投げ掛けようとしたクナイを思わず取り落とす。
後ろに軽く反動をつけたそれは、力に素直に従って後ろに落ちる。
「!!」
思わず視線がそれを追い、しかし手を伸ばす前にクナイは既にミトスの足の下。
「こざかしい真似はやめなよ」
「今は退け」
前後からの絶対的な圧力。
慌ててロイドがモリスンの前に駆け、ダオスとの間に立つ。
ロイドにとって、ダオスは敵ではない。
メルディを助けた、いわば恩人。
「頼む、俺何があったか知らないけど…、俺はコイツが悪い奴に思えない。
だからやめてくれ」
「私たちは戦うために此処まで来たのでは無いでしょう?
お願いです、もう誰も血を流して欲しくない…
貴方も、それを望んだのでしょう?
話せば、語り合えば、きっと解り合えるわ…!」
マーテルが声を張り上げる。
135聖母と信者達、そして。3:2006/02/02(木) 07:22:48 ID:9umJH2RQ
その言葉は甘いのかも知れない。
甘過ぎて、現実には難しい夢物語なのかも知れない。
それでもジョニーはその必死な横顔に、一瞬だけファラが重なって見えた気がした。
その新緑の髪は彼女に比べて明るく、風に緩やかになびくのに。
リッドも、キールも、一瞬だけ呆けて、すぐにひどく切なげに彼女を見つめて。
「争いは何も生みません。それを説いた彼女のために、私たちは集まった。…違いますか?」
祈るように手を組み、泣き出しそうに表情を歪める。
「…なぁモリスン、わざわざ今じゃ無くても良いんじゃねぇか?
彼女もあぁ言ってるしよ…」
リッドが一歩踏み出し、歯切れ悪く訴える。
キールさえ、頷く。
「………」
モリスンは失念していた。
ここは確かに戦力が集い、メリットも多かった。
ただ、現れたマドンナの存在は。
自らの目的を阻むという最大のデメリットを連れてきたのだ。
此処にいる者は、今のところ基本的に殺しを拒む者達だ。
そこに絶対平和主義の聖母が現れれば、当然の結果が起きる。
その存在は、この場の殆んどの人間の共感を掴むのに十分すぎる程だったのだ。
今此処でダオスに勝負を挑んだとして、恐らく大多数が止めに入る。
丁度、今のように。
ならば半端な戦いで手の内を晒す必要はない。
今は、まだ。
そう。今はまだ、一度退けば良い。
落ち着いたなら、二人になる機会もある筈だ。
不利な状況を自ら作るほど愚かではない。
136聖母と信者達、そして。4:2006/02/02(木) 07:27:06 ID:9umJH2RQ
「……解った。」
モリスンは小さく呟くと、戦闘体勢を解いて息を吐く。
それを見てようやくミトスも剣を下ろし、ダオスも完全に力を抜いた。
ロイドが表情を緩め、リッドとキールが顔を見合わせる。
「ありがとう、モリスン」
ジョニーが嬉しそうに微笑む。
「良かった…、皆で彼女の遺志を継ぎましょう。きっと出来るわ」
マーテルが満面の微笑みを見せた。

ファラの遺志を受け継いだ女神を中心に、細い細い糸が信頼として繋がった。
悪夢のような現状で唯一見れる、夢のように甘い、けれど決して崩れないだろう信念。

「マーテル教…」
その光景が記憶に連なる名前と一致した時、ロイドがぽつりと洩らす台詞は空気に溶けた。
ただ、聞こえたのか否か、ミトスはマーテルを見つめる瞳を少しだけ細めた。


染まりきれない信者が僅かに俯き、鈍い葛藤にそれと解らぬよう密かに唇を噛み締める時。
取り残された不安定な妹が僅かに寝返りを打ち、滲むような黒い霧を纏いながら小さく唸る時。



どちらも、ほぼ同時に訪れた事象。



137聖母と信者達、そして。5:2006/02/02(木) 07:27:55 ID:9umJH2RQ
【リッド・ハーシェル 生存確認】
状態:背中に刀傷(9割回復)
所持品:ムメイブレード、エルヴンマント
基本行動方針:メルディと合流し、脱出法を探し出す。
第一行動方針:ファラの意志を継ぐ
第二行動方針:できれば危険人物を排除する。
現在位置:C3村
【ジョニー・シデン 生存確認】  
所持品:メンタルリング 稲刈り鎌 アイフリードの旗 BCロッド サバイバルナイフ   
状態:健康  
基本行動方針:ファラの遺志を継ぐ ゲームからの脱出  
第二行動方針:仲間との合流    
第三行動方針:同志との合流
現在位置:C3森
【エドワード・D・モリスン 生存確認】
状態:TP7割回復  
所持品:魔杖ケイオスハート 割れたリバースドール 煙玉(残り二つ) クナイ(足元に一つ) 法術に関する辞書
基本行動方針:ダオス討伐
第一行動方針:演説少女の意志を継ぐ
現在位置:C3森
【エドワード・D・モリスン 生存確認】
状態:TP7割回復  
所持品:魔杖ケイオスハート 割れたリバースドール 煙玉(残り二つ) クナイ(足元に一つ) 法術に関する辞書
基本行動方針:ダオス討伐
第一行動方針:演説少女の意志を継ぐ
第二行動方針:法術取得(まずはファーストエイドから?)
第三行動方針:ミクトラン討伐
現在位置:C3村
【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:疲労
所持品:ベレット、ホーリィリング
基本行動方針:メルディと合流し、脱出法を探し出す
第一行動方針:メルディの介護
現在位置 C3村
138聖母と信者達、そして。6:2006/02/02(木) 07:28:59 ID:9umJH2RQ
【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
状態:TP1/3消費  
第一行動方針:モリスンのへの対処
第二行動方針:マーテルを守る
第三行動方針:マーテルと行動
第四行動方針:打開策を考える
第五行動方針:敵は殺す
現在位置:C3村
【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード 邪剣ファフニール アトワイト ????
状態:後頭部に打撲
第一行動方針:状況の把握
第二行動方針:マーテルを守る
第三行動方針:マーテルと行動
第四行動方針:打開策を考える
第五行動方針:クラトスとの合流
現在位置:C3村
【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 アクアマント
状態:普通
第一行動方針:ファラの遺志を継ぐ
第二行動方針:ダオス達と行動
第三行動方針:ユアン、クラトスとの合流
現在位置:C3村
【ロイド:生存確認】
状態:健康
所持品:ウッドブレード(自作)、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆(Sの仲間及び協力してくれる仲間)で生きて帰る
第一行動方針:事態の把握
第二行動方針: 協力してくれる仲間を探す
第三行動方針:メルディと行動
現在地:C3村
【メルディ 生存確認】
状態:ネレイドの干渉(気絶により詳しくは不明)
所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱
行動方針:不明
現在地:C3村
139聖母と信者達、そして。:2006/02/02(木) 07:32:43 ID:9umJH2RQ
聖母と信者達、そして。1より
×→る。 身体に染み付いた技能は、
○→「突然何だって言うのかな?」
です。軽くバグっていました…
失礼しましたorz
140蠢く闇 1:2006/02/03(金) 19:35:18 ID:yusuEUIp
「奴は一先ず手を退いた、か」
木陰の小さな闇に溶け込むように気配を消し、魔術師はほくそ笑む。
恐らく現状に措いて最大規模の群衆であろう、聖母率いる一団。
その中には、この手で葬った筈の死に損ない、そして、『嘗ての』主の姿があった。
「魔人と畏れられたダオスも腑抜けたものだ。
自らを陥れた男との同盟を甘んじようとは」
一連の騒動から、大凡の力関係は見えた。
ダオスの弱味は、間違い無くあの女の存在であろう。
「あ、あいつ、でみてるを殺そうとした、わるいやつ。
……おれ、あいつやっつける!」
「鎮まれ、ティトレイ・クロウ……
お前は、私の指示通り動いていれば良いのだ」
熱立つ下僕を低く一喝し、一人練り上げた策を更に纏め上げる。
傍らの時空剣士……否、もう一つの手駒が、早速役に立つだろう。
彼の者が身に付けていた再生能力を以てしても、その体力は未だ戦闘には不充分である。
しかし、その欠陥すらも利用するのが、策士としてのプライド。
僅かの手勢で、莫大な効果を発揮する。
それこそが、真の強者の証であると言えよう。
「血塗れた手の貴方に、安息など訪れはしないのですよ……ダオス『様』」
魔術師の下克上の幕は静かに、そして、厳かに開いていった。
141蠢く闇 2:2006/02/03(金) 19:38:20 ID:yusuEUIp
「……おい、大丈夫か。顔色が優れないが」
意気消沈のモリスンに、金髪の優男ジョニーが肩を並べる。
ミトスの妨害、ロイドの献身、そしてマーテルの強い願いに因り、未然に防がれた復讐劇。
それは彼、モリスンにとってこの上無く歯痒い逃避であり、同時に、望んだ結託でもあった。
しかし、彼の男を伐つ使命、それだけは譲る訳にはいかない。
何れは訪れる魔人ダオスとの決着は、唯一無二の前提にして、背徳を意味する。
その時こそ、純朴なる少女に導かれた者達との、信頼の終わりとなるだろう。
「……ああ、問題ない。
我々の今後の行動について、少しばかり考えを巡らせていただけだ」
モリスンは平静を装い、ニヒルな微笑を見せる。
「そうか。なら、良いんだが……」
ジョニーの表情に、暗い影が落ちる。
「……早まるな。独りで気負うな。
アンタの気持ち、俺には良く解る」
ジョニーは、モリスンの決意の固さを知っていた。
そして、所詮他人である自分が、彼の感情に取り入る術など、有りはしない事も。
どんな環境であれ、憎しみの対象が目の前に現れて、平然と手を組む事など出来る筈が無い。
自分とて、もしティベリウスが……ミクトランが姿を見せようものなら、一刻も早い排除を望んだであろう。
「そう……痛いほどに……」
一時の感傷などでは無い。
彼は、その身を以て、復讐心を深く理解していたのだから。
142蠢く闇 3:2006/02/03(金) 19:41:13 ID:yusuEUIp
「まったく。お前のせいで、とんだ疫病神が憑いたもんだよ。
姉さまに怪我でも負わせてみろ。バラバラになるまで滅多切りにしてやるからな」
魔術師の強襲を赦し、そしてあまつさえ同行する嵌めになるという失態に、
静かな激昂をぶちまけるミトス。
ダオスは眉間に皺を寄せ、不機嫌に彼を睨み付けた。
ところが、表情を曇らせたかと思えば、そのまま俯いてしまう。
「……すまない。彼女の御身は、我が命に賭けて護り通す」
不可抗力とは言え、危険人物を呼び寄せた不手際を悔いる。
マーテルの手前手荒い手段に及ぶ訳にも行かず、正直なところ困惑していたのだ。
いつに無く気弱なダオスの様子に、背筋に悪寒を走らせるミトス。
「い、いいよ。姉さまを護るのは、どのみちこの僕なんだから。
それに、お前に素直に謝られたんじゃ、対応に困る」
棘のある反応を予想していたミトスは、過ぎた発言を心中で恥じた。
「……そうか」
ゆっくりと頭を擡げ、ミトスに微笑み掛けるダオス。
憂いを残したその顔に、ミトスは彼の葛藤を僅かながら理解させられた気がした。
「……ならば、私もひとつ、お前に忠告しておこう」
陽の高い空を仰ぎ、一転爽やかな気色でダオスが続けた。
「……何だよ」
勿体振るように、二、三のらりくらり歩を進めるダオス。
そして少年に背を向ける形となり、さらりと言い放った。
「……年長者に対しその物言いは、いただけんな」
薄ら笑いを響かせながら、彼はマドンナの下へと歩み去った。
大口を開け、遠ざかるその広い背を呆然と見詰めるミトス。
「な、何だってんだ。突然手のひら返してエラそうにしちゃってさ。
あーあ、心配してやって損した!」
抱いていた感慨に化かされた悔しさに見舞われ、顔を赤らめ地団太を踏む。
背後に少年の癇癪を感じ、ダオスは小さく苦笑い、溜め息を吐いた。
「フ……やはり子供は子供、か」
彼は、気付いていた。
少年と自分との間には、近くて遠い距離がある。
二人の理想は、いつか道を違えるだろう、と。
少年は知らなかった。
笑顔に繕われた、男の不安定な心情を。
男の顔に浮かぶ、孤独に満ちた苦悶の歪みを。
143蠢く闇 4:2006/02/03(金) 19:42:59 ID:yusuEUIp
「ふぃー、一時はどうなるかとヒヤヒヤしたぜ」
「まったくだ。今後モリスンの動向には、常に注意しておかなければいけないな」
出会い頭の衝突が何とか鎮静し、安堵を浮かべる幼馴染み二人。
「まぁ、そんなカリカリすんなよ。あいつも納得してるみてぇだし
……って、おいキール。お前聞いてんのか」
それも束の間、キールは訝しく眉を顰め、何やら考え事をしている様子だった。
彼はリッドに向かい、小声で話し始めた。
「なあリッド」
「何だよ、怪しいやつだな」
「あの長身の男……確か」
「ダオスだろ」
「そうダオスだ。彼は……」
「ん、どうしたんだよリッド。それに……」
「うわっ!」
密談を交わす二人に興味を示し、鳶髪の少年ロイドがやって来た。
突然の訪問者に驚き、キールが思わず尻餅を衝く。
「いたた……」
リッドが差し伸べた手をやんわり遮り、キールは自力で立ち上がった。
なんだよもう、と膨れるリッドを余所に、ロイドが頭を掻きながら会話に割って入る。
「悪い悪い、脅かすつもりじゃ無かったんだけどな」
「当たり前だ。初対面の相手を脅かす馬鹿がどこにいる。
……僕の名はキール。キール・ツァイベルだ」
キールの突っ慳貪な反応にロイドもまた腹を立て掛けたが、同時に何処と無い懐かしさに安心感を覚えた。
ジューダスは無事でやっているだろうか、と一瞬上の空を見るが、すぐに気を取り直す。
「俺はロイド・アーヴィングだ。キール、よろしくな」
軽い握手を交わし、キールは溜め息を吐いた。
リッドが一人増えた、と。
「で、何の話をしてたんだよ」
「いや、何でも……」
「ダオスのことがちょっと気になって、さ」
「おいリッド! 勝手に話を広めるなよ!」
「いいだろ、困った時は助け合い。
皆で知恵を出し合ってこそ、大物が仕留められるんだぜ」
「馬鹿、狩りと一緒な訳無いだろうが!」
「ダオスがどうしたんだよ」
「あいつ、俺達の知り合い……っつっても、人じゃ無ぇんだけど、
そいつにすげぇ似てんだよ」
「ああ、もう! 勝手にしろ!」
リッドの先走りに因り結局ロイドに話題を波及させてしまったキールは、
遂に観念せざるを得なくなった。
144蠢く闇 5:2006/02/03(金) 19:45:18 ID:yusuEUIp
「成る程、時空を司る精霊……ねぇ」
「晶霊、だ」
ロイドの発言に茶々を入れ、キールは不機嫌に鼻を鳴らす。
「一緒に居る間、なんかそれらしい事したりしてなかったか?
時間止めて無抵抗の相手をボコボコに殴りまくるとか、
バビューンと瞬間移動して闇討ち、とか」
「大晶霊がそんな狡い事するか!」
リッドは身振り手振りで話を盛り上げ、キールはひたすら突っ込みに右往左往する。
漫才とも見える二人の様子に笑いを殺しつつ、ロイドは記憶を辿る。
「時間を止めたりはしてないし、瞬間移動と言えば、寧ろミトスの十八番だよなぁ……」
モリスンとの小競り合いで見た通り、ミトスは短距離ならば空間を無視出来る能力の持ち主らしい。
それが超高速での移動に因るものか、狭間の空間を完全に飛び越えて座標移動を果たしているのか。
その議論はさしものキールも今は保留する。
「あとは聞いた話だけど、すっげえ威力の光線を撃てるんだってさ」
「「……光線!?」」
「どわっ」
実際に見た訳でも無いためさり気なく言った一言に、二人が食い付いた。
「……ん?」
騒ぎに気付いたダオスに睨まれ、そっぽを向くリッドとキール。
「お前達、何の話をしている」
「いや、何でも……」
あからさまに怪しい彼等に、その巨体を迫らせるダオス。
「この非常時に秘め事とは……よかろう、お前達の体にじかに訊いてやる」
「ちょ、タンマタンマ!」
ロイドの必死の弁明空しく、ダオスの剣幕は止まらない。
広げた掌を怪しく煌めかせ、三人の若者を脅迫する。
145蠢く闇 6:2006/02/03(金) 19:49:59 ID:yusuEUIp
その時だった。
「……あああっ!」
マーテルの突然の悲鳴に、ミトス、ダオスは言わずもがな、場の全てが凍り付く。
「どうしたのさ、姉さま!?」
いち早く反応する、愛姉至上主義者ミトス。
「あ……あそこ……」
震える指先に示された、何の変哲無い路地。
……一人の若者が俯せている事実を除いて。
「クレス君ッ!!」
声を上げたのは、モリスン。
すぐさま駆け寄る彼に、さらにリッドとロイドが続く。
流れに乗るように駆け出そうとするマーテルを、ミトス……否、彼女へ素早く駆け戻ったダオスが制した。
「待て。あの者は、我々に仇為すやも知れぬ。
貴女に近付ける訳には、いかない」
「でも、彼は怪我を……」
「……駄目だ!!」
懇願するマーテルは、初めて自分に向けられたダオスの気迫に怯む。
ミトスもまた、姉に絶対の忠誠を捧げていると考えていた彼の態度に驚きの色を見せた。
あのダオスがここまで取り乱し、さらにはモリスンの知人とあらば、警戒を要する対象であろう。
彼もまた、姉を宥めつつその場に留まった。
「おい、クレス君。しっかりしたまえ!」
全身は黒ずんだ血に汚れ、顔面は蜂の群に滅多に刺されたかのように腫れ上がっている。
傷に響かぬよう細心の注意を払い、身を揺さぶり呼び掛ける。
すると彼は目を開き、むくりと半身を起こした。
「モリスンさん……お久し振りです」
「あ、あぁ……久しいな」
突拍子の無い挨拶に肝を抜かれたが、取り敢えず安堵に胸を撫で下ろすモリスン。
クレスは何の不自由無く立ち上がり、身体に付いた砂埃を払っていた。
「なんだよ……脅かしやがって」
倒れていた理由は不明瞭だが、存外元気な彼の様子に一安心するリッドとロイド。
146蠢く闇 7:2006/02/03(金) 19:51:31 ID:yusuEUIp
歳近い三人は、モリスンの仲介の甲斐あってかすぐに打ち解け始めた。
遠巻きにはジョニーとキールが、マーテルに同調して微笑み合っていた。
「ダオス。あいつもお前の知り合いだと言ったね。それも、歓迎されざる相手。
……また厄介を起こさなければ良いんだけど」
ミトスの嫌味に舌打ちをしつつ、時空剣士を睨み付ける。
「……ダオスさん」
彼の視界に、聖母が割って入った。
「彼との間にどのような因縁があるのか、私には分かりませんが、どうか……」
念を押すように、ぐいと距離を縮めるマーテル。
今更言われずとも、彼女の願いは知れた事。
ダオスは平静を示し、彼女にただ一言を告げる。
「……分かっている」
一点の曇り無いその瞳に押され、ダオスは否定の意を押し隠した。
「……ありがとうございます」
柔らかな笑みを浮かべ、マーテルは彼の隣に直る。
時空剣士クレス・アルベイン、そして魔術師エドワード・D・モリスン。
二人の宿敵の姿を見据え、彼は密かに胸を傷めた。
彼の守るべくは、ミトスが望むマーテルの『感情』などという、生温いそれでは無い。
彼女の安全の為を想えば、自分を好く思わない輩は、可能な限り早急に消さねばならない。
もしも抗うならば、たとえ彼女の弟といえども、排除する他有るまい。
……彼の決意は、それ程までに堅固なものであった。
彼女を護り通すという、何物にも代えられぬ目的の為に。
147蠢く闇 8:2006/02/03(金) 19:53:21 ID:yusuEUIp
ダオス、そしてクレスを共に認めるロイドを仲介に、時を超えて集った敵同士が対峙する。
その模様を、些か心配気に見守る十二の瞳。
中でも、ミトスはかなりの警戒に身を強ばらせている。
対照的に、先程まで不機嫌だったモリスンが動じる気配は無い。
寧ろ不可解な余裕すら見て取れるが、それに気付く者は無かった。
「ダオス……」
クレスが静寂を破った。
二人は真っ直ぐに視線を絡ませ、場の緊迫感はさらに増していく。
しかし、その緊張も彼の次なる一言に杞憂と消えた。
「憎むべくは、ミクトランただ一人……敵の敵は、即ち味方同士だ」
友好を意味する、右手による握手を求めるクレス。
予測し得た展開ではあるものの、ダオスは内心驚き、そして淡々と応える。
「よかろう……最早、今の我々に選択の余地は他に有るまい」
訝しさは拭い切れないが、今この状況で否定を述べるメリットは皆無である。
……行動するにしても、もっと相応しい機を待つべきだろう。
彼もまた手を差し伸べ、堅く契りを交わす。
「皆、力を合わせ共に脱出を目指そう。
この理不尽なゲームに呑まれて、無念に散った仲間達の為に。
僕達が、在るべき姿を取り戻す為に!」
間髪を入れる事無く、さらに場に居る全ての者へ向け熱弁を振うクレス。
新参者を感じさせないその心意気に共感し、沸き立つ熱血青年達。
「ファラさん……安心して見ていてください。
彼等と共に、必ずや貴女の遺志を成就させて見せますから」
聖母は安堵し、未来への希望を取り戻した。
「まったく……これじゃ、まるで含みのない青春ドラマだな」
呆れ顔のキールが、他人事のようにぼやきを零した。
蚊帳の外を主張する彼の腕を、鳶髪ロイドが目ざとく引き入れる。
「あはは、確かにそうだな……それじゃ、キールも主役の一人ってワケだ!」
「お、おい。僕はそんな稚拙な馬鹿騒ぎに興味は……」
「いよぉし、それじゃあ景気付けに円陣でも組もうぜ!
みんな、集まってくれ」
悪乗りしたリッドに促され、一部では「馬鹿馬鹿しい」と呟きながらも全員が集う。
協調を確かめるため。
或いは暗い感情を紛らすため。
様々な想いを胸に秘めた九人の迷い人は、白日の下に共闘を誓い合う。
友好の梯の中心で、歴戦の英雄はただ邪にほくそ笑んだ。
148蠢く闇 9:2006/02/03(金) 19:54:53 ID:yusuEUIp
続々と集結する共鳴者達を、心安らかに見渡すジョニー。
新たな仲間クレスは、マーテルの手厚い介抱を受けている。
彼女の法術により、顔に浮かぶ痛々しい腫れは徐々に消えていく。
隣には、分厚い辞書を抱えたモリスンが実技を交え懸命に治療術を学び取っていた。
その熱意の甲斐あって、最低限の回復術は操ることが出来るようになったらしい。
さらにそれを取り巻く聖母の護衛、膨れ面の少年と腕を組むノッポが睨み合い、
出来損ないオールバックの少年がその仲裁に勤しんでいる。
「……なんか、ついさっきまでみんなが殺し合いのゲームに怯えてたなんて
嘘みてぇに思えてきたぜ……」
頭の後ろで腕を組み、束の間の安息を噛み締めるリッド。
「言うなよ、ブラザー。
この場所に、物騒な言葉(フレーズ)は要らない……そうだろう?」
ポロロン、と弦を弾く真似事をするジョニー。
「まだまだやるべき事は山積みだが、な」
相変わらずのマイペース振りで、楽天思考の会話に水を差すキール。
本気で否定を述べる意図などは、さらさら無かった。
寧ろ、空元気で励まし合う二人に、暢気に構えて同調でもしていたかった。
しかしこれが、愚直を嫌う彼なりの自分の励まし方なのだ。
「そうか……そうだよな。これがゴールじゃない。
最後に笑うその時まで、気を抜いてなんていられねえ」
熱血青年特有のガッツポーズを見せ、意気込みを語るリッド。
幼馴染みの遺した果てしない理想の第一歩を踏み出し、彼はさらなる決意を固めた。
健気な青年の姿が先立った少女に重なり、ジョニーは思わず目頭を熱くする。
「……よっしゃ。俺達の行く先に祈りを込めて、
一曲プレゼントしようじゃないか」
咳払いで取り繕い、音取りを始める。
「お、いいじゃん」
「フン、ハメを外さない程度にしておけよ」
正反対の反応を示す二人。
しかし、ジョニーを含め三人の願いは唯一つであった。
……彼等をはじめとする場の誰もが予感しもしない悪夢は、すぐ目と鼻の先に迫っていた。
何も知らぬ彼等は、ただひたすらに純粋な祈りだけを想う。
少女に捧ぐ鎮魂詩は、昼下がりの空に呑まれ儚く消えた。
149蠢く闇 10:2006/02/03(金) 19:56:13 ID:yusuEUIp
『ゼクンドゥスめ……一晶霊風情が我に邪魔立てをするとは、小賢しい』
節々の痛む華奢な身体を起こし、メルディ……ことネレイドが低く呟く。
辺りを窺うが、人の気配は無い。
……否、狂おしい程の猛烈な邪気を感じる。
『ほう、面白い。折角のゲームだ……愉しまねば、損というもの』
ベッドの下整然と並んだ小さな靴を履き、髪を一応整える。
漆黒に染まったエラーラに響く、人間の強い殺意。
それに応えるように、建物の出口を指し歩みを進めた。
『間も無く、宴が始まる……
この上なく愉快な、血祭りという名の宴がな……
ククク……フハハハハハ!!!』
少女の纏う不気味な黒い霧は見る見るその色濃さを増し、
この後必ずやもたらされるであろう悲劇の深さを明確に物語っていた。
150蠢く闇 11:2006/02/03(金) 19:58:42 ID:yusuEUIp
「……さて、ではそろそろ行動を開始するとしようか」
彼等の死角に潜むデミテルが、作戦の決行を言い渡す。
「この計画は、連携こそがその鍵を握る……」
紛れ込ませた下僕……クレス・アルベインの確かな働きにより、
弛緩し切った彼等の中には既にもう一つの手駒が仕組まれている。
山吹の装束に身を包む男を見詰め、デミテルの高揚は激しさを増す。
「……敵の敵は、最早同志……」
デミテルの視線の先。
会得した法術を披露しながら、モリスンは彼が最も信用を置く青年と何かを確かめ合うように頷く。
「……そうであろう? エドワード・D・モリスン……」
【デミテル 生存確認】
状態:TP1/4消費
所持品:ミスティシンボル、ストロー、金属バット
第一行動方針:ダオス打倒計画の決行
第二行動方針:可能な限り戦力を削ぐ
第三行動方針:危険と見れば逃走する
現在位置:C3村
【ティトレイ・クロウ 生存確認】
状態:感情喪失、TP中消費
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック
基本行動方針:かえりたい
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する
現在位置:C3村
【クレス・アルベイン 生存確認】
状態:TP中消費、善意及び判断能力の喪失
所持品:ダマスクスソード、忍刀血桜
基本行動方針:不明
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する
現在位置:C3村
151蠢く闇 12:2006/02/03(金) 20:00:24 ID:yusuEUIp
【リッド・ハーシェル 生存確認】
状態:背中に刀傷(ほぼ回復)
所持品:ムメイブレード、エルヴンマント
基本行動方針:ファラの志を継ぎ、脱出法を探し出す
第一行動方針:出来れば危険人物を排除する
現在位置:C3村
【ジョニー・シデン 生存確認】
状態:健康
所持品:メンタルリング、稲刈り鎌、アイフリードの旗
BCロッド、サバイバルナイフ
基本行動方針:ファラの遺志を継ぐ
第一行動方針:仲間との合流
第二行動方針:同志との合流
現在位置:C3村
【エドワード・D・モリスン 生存確認】
状態:TP2/3消費、全身に裂傷
所持品:魔杖ケイオスハート、割れたリバースドール
煙玉×2、クナイ、法術辞書
基本行動方針:演説少女の共鳴者との共闘
第一行動方針:機を見てのダオス討伐
第二行動方針:さらなる高位法術の修得
第三行動方針:ミクトランの討伐
現在位置:C3村
【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:健康
所持品:ベレット、ホーリィリング
基本行動方針:脱出法を探し出す
第一行動方針:メルディの介護
現在位置:C3村
【ダオス 生存確認】
状態:TP半減、背中に打撲
所持品:エメラルドリング
基本行動方針:何としてもマーテルを護る
第一行動方針:機を見ての危険分子排除
第二行動方針:打開策を考える
現在位置:C3村
【ミトス・ユグドラシル 生存確認】
状態:後頭部に打撲、足に軽い裂傷、TP微消費
所持品:ロングソード、邪剣ファフニール、アトワイト、???
基本行動方針:マーテルを護る
第一行動方針:打開策を考える
第二行動方針:クラトスとの合流
現在位置:C3村
【マーテル・ユグドラシル 生存確認】
状態:健康
所持品:双眼鏡、アクアマント
基本行動方針:共鳴者を募り、敵対者は説得
第一行動方針:ユアン、クラトスとの合流
現在位置:C3村
【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:健康
所持品:ウッドブレード、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:仲間との合流
第二行動方針:協力者を探す
現在位置:C3村
152蠢く闇 13:2006/02/03(金) 20:01:13 ID:yusuEUIp
【メルディ 生存確認】
状態:ネレイドの干渉
所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱、C・ケイジ
基本行動方針:不明
第一行動方針:邪気を放つ者(デミテル)の行動に乗じて殺戮
現在位置:C3村
153再会 進展1:2006/02/05(日) 23:15:49 ID:7VsHVLEl
城の残骸、瓦礫の中に二つの人影。
青年と少女が、緊張の空気を周りに纏わせて対峙していた。
青年、スタンは少女、コレットを見つめる。
その瞳は虚ろ。するべきことを探している、そう思わせる姿。
スタンは剣を構えて息を飲む。あいにく自分はこのゲームにのるつもりは無いし、ましてやこんな少女を傷つけるつもりも更々無い。
だが彼女はとりあえず目の前の生物、善悪を見極めようとしているのではないか。
だが少女の瞳に映るはスタンの剣。明らかな攻撃対象。
今の彼女にはその程度の判断しか出来ないでいた。
何か手は無いか、思考を巡らす。だがそんな暇も与えられない。
コレットは大きくその場を蹴り、一瞬にしてその間合いを縮めた。
スタンの目の前に、その姿がある。
コレットは銃剣を振るう。スタンは咄嗟に剣でガードするが、
「くっ!」
容易に弾かれてしまった。
何だこの子の力は・・・今まで会った誰よりも強い・・・
ふとスタンはそんな感想を頭に思い浮かべた。
が、間髪に入れずに追撃が来る。思い切り横に体を逸らして横転し、何とか回避した。
あの大きな銃剣を振るっても隙が出来ない・・・それは彼女の力の強さを物語っていた。
(あんな大きなものを軽々と・・・どうなってるんだ)
見た目で判断したのがまずかったのか、コレットの体は華奢な方だと
スタンは一目見て判断してしまった。
だがそんな概念は捨ててしまわねば。現に彼女は自分よりもパワーがあるのだから。
コレットがじりじりと寄ってくる。その間合いはもはや十メートルも無い。

154再会 進展2:2006/02/05(日) 23:17:02 ID:7VsHVLEl
城の跡地にポッカリと空いた四角形の空間に、一人の少女は蹲っていた。
「コレット・・・一体どこに・・・」
急にコレットは立ち上がったかと思うと武器を拝借してスタスタと歩いていってしまった。隠れてと言われたので隠れてはいるのだが、やはり一人は心細かった。
そういえばさっき誰かが近くで叫んでた気がしたけど・・・
スタンの最初の叫びはくしくもその少女、リアラの耳には届かなかった。
今は武器のようで武器なのか分からないロリポップを力弱く握りながら、コレットのこと、そして
「カイル・・・」
一人の想うべき青年のことを考えていた。

―――その時、本当に気のせいかもしれないのだが

リアラはハッと顔を上げる。結構近い・・・なんだかスグそこに、ここは地下なのでおそらく地上ではあるが彼の姿が見えてきた気がした。
隠れてと言われていたが、この衝動はどうしようもない。リアラは知らずに近くにいるであろうその少年の名を叫んでいた。
「カイル!!」



スタンは迫り来るコレットに対して何が出来るかを考えていた。
―みねうちで気絶させる・・・これしか方法は無い
剣を横にしてコレットを見据える。後ろに回りこんで後頭部に一撃、このビジョンが脳裏に浮かび上がる。
「はぁっ!」
スタンはコレットに向かって走り寄る。見計らってコレットはその銃剣を振りかぶっていた。
ありがたい。自ら隙を作ってくれた。
振り下ろされる銃剣をかわしてコレットの横を通り抜ける。
背後に回れた。あとは柄で少女の後頭・・・
瞬間、スタンの体が宙を舞った。
「な・・・に・・・」
スタンが柄で後頭部に打撃を与えようとする刹那、コレットは回し蹴りでスタンの胸を蹴っていた。
とんでもない力による蹴り、スタンは背中からもろに落ちてしまった。
「がはっ!!」
やばい・・・息が出来ない・・・立たないと・・・やられる・・・。
コレットは息一つ乱さずにゆっくりこちらに近づいてくる。
スタンは顔も上げられずに手探りでどこかに飛んでしまった県を探す。
が、見つからない。正に万事休すとはこのことか。
コレットがスタンを見下す。今からしようとするその行為に対しても、感情が無いのか。
コレットはゆっくりと銃剣を振りかぶる。

155再会 進展3:2006/02/05(日) 23:17:56 ID:7VsHVLEl
だが、次の瞬間

コレットは飛んでくる物体を銃剣で弾いた。
スタンは何が起こったか分からずに弾かれた物体を見やった。
・・・なべのふた?
益々分からない・・・が、次に飛んできた方を顔だけ上げて見る。
そこには一人の少年。
その手にはさっきまで自分が持っていた剣、ディフェンダーが握られていた。
やっと呼吸を再開できたスタンはゆっくりと上体を起こしてその状況を確認する。
改めて見ると、少年の後ろに二人の女性がいた。
その姿を見て、スタンは目を丸くした。
ミントがそこにいたからである。
「と・・・スタンさん!大丈夫ですか!」
少年が叫ぶ。何故自分の名前を知っているのかは分からないが、どうやら危機は寸でのところで回避したらしい。
コレットも今はその少年の方を向いていた。
「コレット!もうやめて!」
もう一人の少女が叫ぶ。スタンは目の前にいる銃剣の少女の名がコレットだということが分かった。
コレットは一度ピクっとしてその銃剣を下げる。もう攻撃の意志はなくしたらしい。
スタンはもう一度上体を倒す。蹴られた胸がかなり痛い。
「何本かイッてるな、こりゃ」
そんな愚痴を零してスタンは片目に走り寄ってくる三人の姿を眺めていた。

156再会 進展4:2006/02/05(日) 23:18:50 ID:7VsHVLEl
「スタンさん、怪我は」
「いや、大丈夫・・・と言いたい所だけれど」
カイルはスタンの傍に座ってその容態を心配した。
ミントはすぐさまスタンに治癒術を施したのだが、折れた骨は時間が経つまで治らないらしい。
「ミント・・・君はどうしてここに」
第一に聞きたかったことをスタンは口にする。
ミントはゆっくりとそのときの状況を話した。
「実は、私が眠っていた洞窟が崩れそうだったところを、カイルさんに助けていただいたのです」
「君が・・・」
「えぇ、まぁ」
そっかそっかとスタンは一人頷いた。一番に安堵するべきはミントが無事だったということ。そして次に安堵すべきはミントが消えた理由が誘拐でもなんでもなかったってこと。
「君には感謝しなきゃ」
「いいですって。俺は当たり前のことをしたまでです」
スタンだけが知らない親子の会話を二人で交わす。
ミントはその様子を眺めていた。事前に二人の関係はカイルから聞いていたのだが、目の前にして今カイルの姿を見ていると少し哀しさが感じられた。
子が子と知らない親・・・時間の流れで仕方ないと言うものの、やはりミントはそういう状況には少し抵抗があった。
だがカイルは一時の親子の会話を楽しんでいる。今はそれでいいとミントは目を閉じてそう思った。



「コレット・・・?」
リアラは恐る恐るコレットに呼びかけたが返事は無い。
その姿はまるで人形のようだが、リアラは決してそんなことを想いたくは無かった。
「嫌いにならないよ・・・約束だからね」
リアラはコレットの小指を絡ませて指切りをした。
虚ろな少女は何を見るでもなく、何を感じるでもなく、ただその視線は空を見上げていた。

157再会 進展 5:2006/02/05(日) 23:20:10 ID:7VsHVLEl
「君達はどうしてここに?」
スタンの質問に一同はまとめて整理して説明した。
『声』を聞いてC3に向かおうとしたこと。
途中に建物の崩れた後を見つけて近寄ると、少女の声がしたこと。
声の主がリアラだと分かるとカイルは急いで地下らしき跡地に向かったこと。
リアラをそこから引っ張り出してコレットの話を聞き、近くで対峙する二つの人影を目撃したこと。
「なるほど・・・君達もC3村に」
「ハイ、私たちも気になっていたのです」
スタンとミントが話している傍らでカイルとリアラは互いに手を握り合っていた。
「リアラ、君に会えて本当に良かった」
「私もよカイル・・・怖かった」
「リアラ!」
「カイル!」
言い合い二人は抱き合う。その光景を見てミントは一人の青年の姿を思い浮かべた。
彼は何をしているのだろうか、そんなことを考える。
スタンは先程まで戦っていた少女を見やる。
今はこうして立っているだけだが、あの力は尋常ではなかった。一体なんだったのか。
そして分かったことが一つ。
コレットはリアラという少女の言葉にだけ反応すると言うこと。
理由は不明だが二人の間に何かあったのだろうか・・・。
そこまで思考を巡らすと胸の痛みが響いてきた。
「イテテ・・・参ったなこりゃ」
ミントはその様子を見ると力なく首を横に振った。
「今は下手に動いてはなりません。症状が悪化してしまいます。しばらくは安静にしていただきます」
「いやでも、いそいで村に向かわないと・・・」
スタンの気配りもミントには通用しない。
「駄目です。こんな怪我ではまともに動くこともできないでしょう」
確かなミントの言葉にスタンは反論できない。だがスタンは一つの提案をする。
「俺のことは放っておいていいからさ、君たちだけで・・・」
「駄目だよスタンさん。アナタを置いて行けるわけないじゃないですか」
それはカイルに却下された。
・・・ここでふと疑問が甦る。
「カイル君。君はどうして僕の事を知っていたんだ」
ギクッという擬音が出るくらい露骨にびっくりするカイルだったが、事前に用意していた言い訳で誤魔化す。
「ほ、ほら、名簿があるじゃないですか。それで知ってたんですよ」
あ〜なるほど、とスタンは頷く。どうやら納得してくれたようだ。
我が父ながら単純で良かったと微妙な面持ちでリアラに向き直る。
「あの、カイル・・・」
「うん、どうしたの?」
リアラは何か言いにくそうに目を泳がせている。カイルはただリアラの口が開くのを待った。
そして、その事実を耳にして叫ぶ。
「バルバトスが!?」
その叫びにスタンのミントはビックリしたが、リアラはコクンと頷く。
最大にして最凶の敵がこのゲームによって葬り去られた。
その事実にカイルは驚愕の色を隠せないでいた。
カイルは空を仰ぐ。彼はまた一つ、このゲームの脅威を知ってしまったのだ。


158再会 進展 6:2006/02/05(日) 23:22:08 ID:7VsHVLEl
【スタン・エルロン 生存確認】
状態:アバラ三本損傷(完治までにかなり時間がかかる)
所持品:ディフェンサー ガーネット
第一行動方針:傷が治るのを待つ
第二行動方針:演説が行われた場所へ移動
第三行動方針:仲間との合流
現在位置:E2城跡

【カイル・デュナミス 生存確認】
状態:健康
所持品:鍋の蓋、フォースリング、ラビッドシンボル(黒)(割れかけ )
第一行動方針: 父の傷がある程度治るまで待機
第ニ行動方針: 声の主のところに行く
第三行動方針:リアラを守る
第四行動方針:仲間との合流
現在位置:E2城跡

【ミント・アドネード 生存確認】
状態:健康 TP2/3
所持品:ホーリースタッフ サンダーマント
第一行動方針:スタンの傷がある程度治るまで待機
第二行動方針:シースリ村に向かう
第三行動方針:仲間と合流
現在位置:E2城跡

【コレット・ブルーネル 生存確認】
状態: TP3/4 無機生命体化 (疲労感・精神力磨耗無視)
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(残弾0) 、苦無(残り1)
基本行動方針:防衛本能(攻撃意思に対する完全抹殺及び不明瞭な干渉に対する威嚇)     
第一行動方針:リアラの言うことを聞く
現在位置:E2の城跡

【リアラ 生存確認】
状態: TP2/3まで回復   
所持品:エクスフィア強化ロリポップ 料理大全 フルールポンチ1/2人分 ????  フランヴェルジュ、オーガアクス、ピヨチェック、要の紋
第一行動方針:スタンの傷がある程度治るまで待機
第二行動方針:カイルについて行く
第三行動方針:コレットを信じる
現在位置:E2の城跡

159名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/06(月) 09:08:26 ID:SSEmEIkR
>>158
糞みたいな文章だな。
よく恥ずかしげもなく公表できるよね。
頭大丈夫?
160中山 悟 ◆2DumU/eorw :2006/02/06(月) 09:33:16 ID:pYXdN4pS
っつーか何なの このウンポコインターネイションは?wwwww
161一条 ◆kfL.GI00q. :2006/02/06(月) 22:13:02 ID:GUrkRcjW
なんて程度の低い文なんだ!
こんな駄文は目に当てられん。
さっさと首吊って死ねよ童貞ニートヒキコモリ野郎。
162宴 1:2006/02/06(月) 23:39:24 ID:26OCG+LK
新たに集った九人は、皆で行った決意表明の元、仮初めの平和に心を落ち着かせていた。
このままずっと平和であってほしい。そんな気さえ起こった。
「そろそろメルディの様子を見に行った方がいいんじゃないか?」
ロイドが言った。リッドが顔を上げ、賛成の意を示す。
「そうだな。もう目が覚めてもいいころだ。
 せっかくこうやってみんな集ったんだし、
 メルディだけ除け者にするのもかわいそうだからな」
リッドがそう言い、青髪の男に視線を向ける。
「じゃあ、キール頼む」
続けてそう言った。
「・・・なんで僕が」
キールは顔を赤髪の男に向け、怪訝な口調で言う。
「いや、別に理由はねぇけどよ」
淡々とした口ぶりで話すリッドと、妙に冷淡なキール。そして黙って二人を見てるロイド。
その時、ジョニーが三人の輪に入り込んできた。
「おいおい、眠りのお姫様を起こすのは王子様の役目だと昔から決まってるじゃないか、なぁ」
ジョニーもここにきてだいぶ心持ちに平穏が戻ってきているのか、
これまでよりも幾分か軽みを帯びた声を発する。
「どういう意味ですか、それは」
キールが立ち上がり、ジョニーに向かって憤慨した様子で声を荒げる。
ジョニーはハハっと笑い、キールの眼前で指を振って見せ、
「なぁに、あの子が運ばれてきた時のアンタの様子を見りゃ、一目瞭然ってね」
「な・・・!」
顔を赤らめるキールに、笑うジョニー、離れた所に居るモリスンとマーテル達。
リッドとロイドはぽかんとして二人のやりとりを見つめていた。
163宴 2:2006/02/06(月) 23:40:11 ID:26OCG+LK
『ようやく落ち着けたみたいね』
唐突に、ミトスの懐に収められていたアトワイトが喋った。
「お前、ずっと黙ってるけどさ、いいの?」
金髪の少年は手元の剣に向かって小さく囁く。
傍らに居たマーテルとダオスも、意思を持つ剣・ソーディアンの発言に耳を傾けた。
『メルディという少女がここに来てから私は名乗ることにしましょう。
 全員で話し合いの席を設けたいわね』
「そこで、これからの行動と対策を話し合うのですね」
マーテルが言った。
『ええ。これだけの数の想いを持った人たちが集ったんだから、
 かなり具体的に動けると思う。うまくいけば本当にミクトランへ対抗できることが・・・』
その言葉に三人は否応無しに緊張する。
武力や知力と様々な方面に優れた人物がこれだけ集ったのだ、
主催者への反抗は一気に現実的なものとなっていた。
それがゲームからの脱出か、主催者の討伐という形か、
全く別の形になるかは分からなかったが、とにかく何かがやれそうな気がした。
皆の意思が同じものであるなら、必ずやその願いは身を結ぶだろうと思われた。
そう、このまま何事も無くうまくいけば。
そしてその光景を、クレスとモリスンは離れた場所で黙って見つめていた。
164宴 3:2006/02/06(月) 23:41:01 ID:26OCG+LK
キール・ツァイベルは、リッドたちの居る部屋を出て階段を上り、メルディの様子を見に行った。
しばらく歩いて、メルディが寝ていたはずの部屋を覗き込むも、そこには誰も居なかった。
不審に思い、部屋を出て廊下の奥まで進む。突き当たりにある大きな窓から、外の景色が見えた。
「・・・」
振り向くと、いつの間にかそこに誰かが立って居た。
突然沸いて出たようにそこに佇む、一人の少女が居た。
紫髪の、二つ結びの少女、メルディは廊下に立っていた。
キールは、メルディが部屋で寝ているか、
起きていても迂闊に部屋から出ることは無いだろうと思っていたので、少々意外だった。
その眼光は、平常の彼女とはまるで想像も付かないほど暗くよどんでいた。
しかし何よりも目を引いたのは、少女の体から溢れ出る黒い光。

「メルディ」
キールはいつの間にか少女が目を覚ましたことに喜びつつ、
勝手にベッドを抜け出したこと、そしてその様子が少々異常であることを気にしつつ、声をかけた。
少女は彼をちらりと見て、そのままじっと見つめた。
その禍々しい気力に、キールは気圧されて、戸惑った表情でメルディを見やった。
「メルディ?」
「・・・・・・」
黒い光、或いは霧はまるでドライアイスを水に突っ込んだ時の様に、次々と湧き出てきた。
その黒い光に、キールは思い当たる節があった。
まるでこれは、そう、シゼル、いやネレイドの、闇の・・・
「メルディ!」
キールは頭の中で結論が出る前に早歩きでメルディに近寄って言った。
今の彼女の状態は危険だと、とにかく落ち着けなければと、そう思った。
彼にしては少々冷静さに欠けていた行動だったかもしれないが、
少女に関してはこの状況であまり深く考えても居られなかった。
少女は顔を俯け、陽炎の様にゆらゆらと黒い霧が揺れた。
「駄目だ、メルディ!それは・・・!!」
そう叫びつつ、右手をメルディの体に伸ばし、触れるかと思われたその瞬間、
少女がすっと手を前に出し、黒い光が一気に噴き出して彼の体を吹き飛ばした。
キールは派手に吹き飛び、背中から窓ガラスに突っ込んだ。
そしてそのまま窓を突き破り、外に投げ出された。

『我に触れるな』
その声は確かに少女から発せられたものだった。
しかし明らかに別の誰かの声が混じって、二重に聞こえた。
倒れたキールは後頭部を押さえながら、
ぐらぐらする意識の中、両手にあらん限りの力を込めて立ち上がろうとした。
「メル・・・ディ・・・」
頭を打ったせいで平衡感覚を失っていたので、また派手に倒れこんだ。
そしてそのまま気を失った。

少女、否、ネレイドはキールの姿が消えたのを見届けると、
下の部屋に大勢人が居ることを確認し、更に歩を進めた。
165宴 4:2006/02/06(月) 23:41:53 ID:26OCG+LK
「なんだ?何が起こった?」
「爆発?」
「メルディの居る部屋辺りからだ!」
「敵襲か!?」

口々に騒ぎ立てる参加者達。
特に音が聞こえた場所から近くに立っていたリッド等三人は、キールの安否もあり激しく動揺していた。
「みんな、落ちつくんだ。冷静に、状況を確認しよう」
クレスが声高らかに言った。
モリスンやジョニーは頷き、警戒して辺りを見回した。

そしてクレスは何気ない様子でマーテル達に近付いた。
「マーテルさん、あなたは戦う術を持っていない。
 万一に備えて、入り口近くに待機しておいたほうがいい」
突然のことにマーテルは驚き、しかしとりあえず頷くと、
音の聞こえた方とは反対側、すなわち入り口側に移動した。
それに続いてダオスとミトスも移動した。
モリスンは一人、他の者より離れた、裏口側に立っていた。

「みんな待っててくれ、俺が見に行こう」
ジョニーが言ったが、すぐ傍に居たリッドとロイドに否定された。
「駄目だジョニー、危険だ。俺が様子を見てくる」
リッドが言った。
「キールと、それにメルディが心配だ。俺も見に・・・」
ロイドがそう言いかけた、その時。
彼らの視線の奥から、ゆっくりと誰かが歩いてくるのが分かった。
それはメルディだった。ようやく目を覚ました少女。
しかし、その場に居た何人が気付いただろう、少女が少女で無くなっている事に。
166宴 5:2006/02/06(月) 23:42:40 ID:26OCG+LK
『有象無象どもが群れおって・・・』
ネレイドはそう呟くと、右手を上げた。
それを合図としたように、屋内であるにもかかわらず中空から火の玉が連続して現れ、降り注いだ。
恐慌たる炎は木造の床、家具を砕き、焼き、破壊していった。
屋内に居る八人は、突然の攻撃に戸惑った。
比較的少女から距離の離れていたダオス・ミトス・マーテル等と、
クレス、モリスンは物陰に隠れたり冷静に回避する余裕があった。
しかし少女のすぐ近くに居たリッド、ロイドとジョニーは、
迫りくる火球への対応が間に合うかどうかギリギリだった。
リッドは持ち前の運動神経で咄嗟に飛び退いて回避しようとしたが、右足に一発炎を喰らってしまった。
ロイドはその場で防御技を発動させ、急襲する火球の威力を殺した。
しかしジョニーは、抗うすべなく、張り付いた表情を少女に向けたまま、降り注ぐ火球が彼の右肩に落ちた。
その部分の衣服が破れ、その下の肌が焼けて赤っぽくなった。
体勢が崩れたジョニーに、更に火球が左脚、胴に当たり彼の体を焼け焦がしていった。
「ぐっ・・・ぁ」
呻き、後ろによろめくジョニー。

「ジョニー!」
モリスンが叫び、杖を構えて詠唱しようとしたが、迫り来る火球に邪魔されて叶わなかった。
炎を防ぎつつ、ロイドは顔を苦悶に歪めながら前方の少女を見やった。
どうして、また、こんなことに・・・
あの時、橋の上で少女に起こったそれは収まったのだと思っていた。
いや、そう思い込みたかった。
まさか目覚めてすぐに再発するとは、そこまで少女の体は蝕まれていたのだ。
そしてそれに気付けなかった自分を恨めしくさえ思った。
絶え間なく降り注ぐフィアフルフレアにより、離れているダオス達やモリスンも、
接近することも詠唱することも叶わずになかなか反撃の機会が掴めないで居るようだった。
167宴 6:2006/02/06(月) 23:43:49 ID:26OCG+LK
と、その時、一瞬の隙を突いて少女がロイドに急接近した。
上半身も下半身もほとんど動かずに、まるでローラースケートでも装着しているように、地を滑走しての移動だった。
恐ろしいことに少女、ネレイドは術を発動させている最中に、移動して別の攻撃に移行してみせた。
「!」
驚愕して目を見張るロイド。
その時間近で見た少女の目は、あの橋で見たのと同じ。残酷な邪神のそれだった。
『サンダーブレード!』
二重の声が響き、雷閃の刃が垂直にロイド目掛けて倒れこんだ。
避けようとして、しかし間に合わず、上半身だけ右に反らせた奇妙な体勢でロイドは雷を喰らった。
低く呻き、床に倒れこむ。
気を失うほどではなかったが、一時的に筋肉が痺れて身動きが取れなくなった。

「どうして・・・おいどうしたんだよメルディ!」
リッドが叫んだ。しかし少女は応える事無く、更に連続して火球を打ち出した。
そのまま赤髪の青年を中心として四、五発落ちた。
床が焦げ破れ、粉塵が舞った。
体勢を崩したリッドに、少女は更に接近し、両手を前に出して魔力を溜めだした。
その時絶え間なく降り注いでいた火の玉が止み、
新たに少女の両手に闇の魔力が結集し、黒い塊を作った。
かつて彼女がこの島でも一度放ったことのある、血の咆哮、ブラッディハウリング。
168宴 7:2006/02/06(月) 23:44:41 ID:26OCG+LK
殺されるのか。メルディに。かつて仲間として行動していた少女に。
そんなこと・・・
そんなことは・・・
正に血の咆哮がこの場に響くかと思われたその時、
ジョニーが立ち上がって横向きの少女に突っかかり組みかかった。
「お願いだ、メルディ。撃ってはいけない。ファラの遺志を、想いを・・・
 彼女の声に導かれて集った俺達が殺しあっては、絶対にいけないんだ」
その声は必死に戦いをやめることを訴えかけていた。
彼が受け継いだファラの遺志を、無下にはできなかった。

・・・ファラの遺志。殺しあってはいけない。皆で協力して、脱出する。
・・・その想いの元に集った十人の人々。
・・・その彼らが、自分達が争ってはいけない、絶対に。
・・・ファラの想いを継ぐために。

『貴様は一つ、勘違いをしている』
少女の手が密着した状態ですっと動き、ジョニーの腹の当たりに置かれた。
少女は表情一つ変える事無く、両手の魔力を解放した。
少女の発した闇の魔力がジョニーの体の中に直接叩き込まれ、
血の咆哮を上げながら彼の体を侵食していった。
『我は既にネレイドであって、メルディという少女ではない』
ジョニーの体が崩れ落ちた。
・・・ファラの、想いを、継ぐ・・・

時間にすればネレイドがリッドに接近してからほんの数秒の出来事だったが、
その場に居た殆ど全員の動きが止まった。
ジョニーの体はピクリとも動かない。
死んでしまったのだ。死んだ。
ファラの呼びかけにより集った者達の一人が、死んでしまった。
彼女の意思を継ぎ、皆で力を合わせようと願っていた彼が、死んでしまったのだ。
しかもあろうことか手を下したのが、同じく呼びかけに応えたファラの仲間だったのだ。
場を支配する静寂はほんの一瞬だった。
しかし誰もが感じ取っていた。
この同志の集いも、崩壊の時が近付いていると。
169宴 8:2006/02/06(月) 23:45:52 ID:26OCG+LK
「・・・間に合わなかったか」
ダオスは極めて冷静にそう呟いた。
連続して降り注ぐ火球の攻撃が止んだ後、急ぎ反撃を放とうとしたが、
マーテルの身の安全の確保に、思わぬ時間がかかってしまった。
その一瞬の遅れが、彼の者を見殺しにする結果になってしまった。

ネレイドは再度リッドに攻撃を仕掛けようとしたが、
不意を突いて襲い掛かった地を這う衝撃波に邪魔された。
ダオスと並んで立つ、クレスが魔神剣を放っていた。

その一撃で注意を惹き付けたのか、少女はそちらを攻撃対象にしたようだった。
また詠唱を始める。
一瞬の間を置いて、彼等四人の頭上に巨大な雷の球体が現れた。
「伏せろ!」
ダオスが叫び、マーテルの身を抱えて床に伏せた。
巨大な雷球から電流が波打ち、大気を震わせた。
そうして雷が止んだあと、ミトスはがばっと立ち上がり、姉の安否を確認した。
「姉さま!姉さま!」
「だ、大丈夫よ、ミトス。ちょっと痺れただけだから・・・」
たった今目の前で起こった出来事に大きく動揺しつつも、
身体的な怪我は目立っては無いようだった。
しかしそれでも彼女の衣服の端や、長く美しい髪の数本が、焼かれて黒くなっていた。
美しく神々しい彼女の姿が、少し汚されたことは、少年の神経を大きく逆撫でした。
「くそっ!あいつ!!」
ミトスは激昂し、双剣を構えて少女に向かって走っていった。
「ミトス、駄目!まちなさい!」
そう言うマーテルの声は既に届いていなかった。
彼女は悲痛な表情をし、その背中を見た。
ダオスはマーテルを抱えたまま立ち上がらせ、
彼女が迂闊に飛び出したりしない様に注意し、周囲に警戒の視線を送った。
そしてダオス達と並んで立ったクレスは、視線をずらし、室内の奥を見やった。
先程までそこに居たはずの人間は居なかった。
170宴 9:2006/02/06(月) 23:46:41 ID:26OCG+LK
少女、ネレイドは走り寄る少年の姿を認めると、
床に散乱したジョニーの荷物から青く輝く杖を拾うと、再度詠唱を開始した。
ミトスは焼けて燃えカスとなったりした椅子やらなんやらを避けながら、少女に接近していった。
『ダークフォース!』
ミトスの足元から闇の魔法陣が生まれ、
砕かれた木片や床の一部ごと上空に打ち上げ、消滅させた。
しかしミトスは直撃する直前に瞬間移動し、少女の脇に現れた。
少女は一瞬目を見開き、しかし即座に左手を掲げ、防御障壁・バリアーを張った。
ミトスの繰り出したロングソードの一閃は、大幅に威力を削がれて杖で受け止められた。
直後、ミトスの頭上より小規模の落雷が起き、彼の体を痺れさせた。
その隙に少女は滑るように素早く後退し、距離を取った。
彼女が手にした杖・ブルークリスタルロッドの働きにより、
ライトニングといえどもそのダメージ量は侮れないものだった。

「お、おいミトス!」
ロイドが叫んだ。
「メルディ!」
リッドも叫び、走り出す。
171宴 10:2006/02/06(月) 23:47:34 ID:26OCG+LK
ダオスは苦い表情で前方で繰り広げられる光景を見つめていた。
比較的距離が離れ、安全圏にいる彼等は、落ち着いて戦況をみることができた。
そして腕を前に出し、魔力を溜めようとする。
「ダオスさん!待って!あの少女は・・・」
マーテルがダオスに詰め寄り懇願する。
ダオスもまた苦渋の表情で、金髪の女性にちらりと目線を送る。
「分かってはいる。しかし、既にあれは・・・」
あの少女がああなってしまっては、最早言葉では止まらないだろう。
それは身をもってあの橋の上で分かったことだった。
今はあの橋の時と違って人も多い上に場所も悪い。
誰にも被害を出さずに動くことは不可能に近かった。
事実既に一人絶えてしまった。
これ以上動き回られては、尋常でない被害が出るだろう。
最悪建物が崩落し、全員生き埋めにすらなりかねない(この家の規模から考えて即死は無いと思うが)。
更にマーテル、ミトスのこともある。
このまま長引けば、マーテルは何としてもあの少女を止めようとするだろう。
それがどれだけ危険なことか、彼の者が身をもって示した。
とにかく、この場に長居することは危険だった。
172宴 11:2006/02/06(月) 23:48:29 ID:26OCG+LK
「ここは一旦退いた方がいいんじゃないか?」
不意に二人の背後から声が聞こえた。
振り向けば、ダオスやマーテルと同じ、金髪の青年・クレス・アルベインが居た。
マーテルは驚き、ダオスは無表情に青年の言葉を聞いた。
「ここに居ては危険だ。この場は彼らに任せて、僕等はひとまず外に避難すべきだと思う」
「でも、私達だけで彼等を見捨てることはできません。もちろん、メルディも」
マーテルが強い口調で言った。
「そういうことでは無いんだ。マーテルさん、あなたは戦う術が無い。
 ここに居てもただ身の危険を晒すだけだ。そうだろう、ダオス?」
クレスがダオスに同意を求めた。彼はちょっと戸惑いがちに、
「・・・ああ」
とだけ言った。
「ひとまず彼女を安全な場所に置いて、それからあの子をどうにかした方がいい」
マーテルもダオスも黙ってしまった。
この青年の言葉を、どう受け止めていいものか迷っているようだった。
「でも、ミトスやロイドさん達は・・・」
「彼等は強い。すぐにはやられたりはしないと思う。
 マーテルさん、あなたは多分誰よりも殺し合いを望まない筈だ。
 だからあなたまで死んでは、本当にあの呼び掛けをした少女の遺志が無駄になってしまう」
マーテルは黙りこんだ。
クレスは続けてダオスの顔を見た。
「・・・そう、だな。マーテルだけは失ってはならない」
ダオスの頭の中には様々な不安要素があったが、
目の前の大いなる邪の存在が、目下対応すべきだと判断した。
何よりもまず彼女の身の安全の確保が最優先事項だった。

「じゃあ、ここから出ようか?」
クレスが率先して言った。
「うむ・・・」
「・・・・・・」
マーテルはまだ悲哀を含んだ視線で前方の四人を見つめていた。
「逃げるぞ、マーテル」
ダオスが言った。
「私は・・・あの少女を・・・」
「マーテル、残念だがあなたではどうすることも出来ない」
「・・・・・・」
まだ立ちすくむ彼女を、ダオスは引張って外に出た。
その直後、流れ弾が彼女等の居た場所に落ち、砕いた。
外に出て振り向き様、マーテルは残った者達の無事を祈った。
無力な自分が、辛かった。
無念に死したあの青年が、悲しかった。
仲間に刃を向けるあの少女が、どうか正気に戻って欲しいと願った。
・・・その祈りが悲劇を生むとは、誰も気づかないまま。
何者かが、物陰に隠れながら、その様子を黙って見ていた。
173宴 12:2006/02/06(月) 23:49:22 ID:26OCG+LK
「姉さま?」
双剣を構えたまま、ミトスは正面玄関から外に出る姉の姿を確認した。
ダオスと、新参の金髪の剣士が一緒だった。
「姉さま!」
少女に背を向け、走るミトス。
そこ目掛けてネレイドが火球を放ったが、割り込んだロイドにより防がれた。

すぐに入り口にたどり着き、扉に手をかける。
しかし、開かなかった。
「?」
たった今、彼の姉等はここから外に出たはずだった。
それがいきなり開かなくなるはずは無い。
「くそっ!どうなってる!」
焦りから強く扉に力を入れる。
ふと、足元からそろそろと蔦が伸びてきた。
屋内だというのに、緑色の草色のそれは、数を増して扉を覆っていった。
「な、なんだよ、これ・・・」
剣で振り払うも、次々と伸びてくる蔦はきりが無かった。
ミトスは振り向いて少女を強く睨んだ。
「・・・これも、お前の仕業か!?」
その声に反応した少女が彼を見て、細長い氷柱を放った。
咄嗟に横跳びに避ける。
氷柱が三つ、足元近くに刺さった。
ミトスはそれを答えと受け取ったらしく、再度双剣を構えて駆け出した。
174宴 13:2006/02/06(月) 23:50:34 ID:26OCG+LK
ミトスとネレイドの距離が縮まっていき、ミトスが斬りかかろうとした。
が、その時、ミトスの振り上げた剣先が別の何者かによって受け止められた。
リッドがムメイブレードを振り上げ、ミトスを止めていた。
「!?」
「やめろ!」
リッドが叫んだ。
「邪魔するな!奴はここで倒す!」
「あいつは・・・メルディだ!俺達の仲間なんだ!」
ミトスは強く顔をしかめて、赤髪の青年を睨みつけた。
「何を言ってるんだよ!それにあいつはもうお前の言う人間とは別人じゃないのか!」
「違う!きっと元に戻れるはずだ!何か方法が・・・」
「そんなことは無いさ!僕はあいつと橋の上でも戦ったけど、あいつは聞く耳すら持ってなかった!」
「だけどよ!だからといって戦ってこれ以上被害が出たら・・・」
「あいつを止めるには気絶程度じゃ無駄なんだ!
 起きたらまた暴れるから、ここで息の根を止めないといけない!」

あの時の橋での戦いはミトスに鮮明な印象を与えた。
恐ろしい力、そしてマーテルの必死の懇願虚しく攻撃を続ける少女。
あの時ダオスが気絶という強行手段を用いなければ、無事では済まなかっただろう。
しかし気絶から目覚めた少女は再び破壊を再開した。
となれば・・・と、ミトスは考える。
もう姉を危険な目に遭わせないためにも、あの少女の排除は必然となっていた。

「ふざけるな!」
「放っておけば奴は姉さますら傷つける!それに何より、奴はもうあの男を殺してるんだぞ!」
「・・・!!」
リッドの目が見開かれた。
ミトスは手にする双剣に力を入れ、リッドを弾いた。
「・・・邪魔するというなら、お前も!!」
そう言い、ミトスは双剣を構えて正面のリッドに向けて走り出した。

「ミトス!?」
ネレイドと向き合っていたロイドが顔を向け、叫んだ。
175宴 14:2006/02/06(月) 23:51:50 ID:26OCG+LK
「・・・ここまでくれば大丈夫だろう」
クレスが言った。
ダオスは油断無く周囲に目を光らせ、マーテルの傍から離れないようにしている。
すっかり見慣れた村の光景のはずなのに、どこか歪んで見えた。
何かよからぬものが潜んでそうな、不気味な気配を醸し出していた。
「ダオスさん、私・・・」
「今は何も言わなくていい。こうしてあなたが無事だったのだから、それで」
「駄目、私、何も出来なくて・・・早く、早くあの人達を助けに・・・!」
マーテルの表情は思いつめたように強張っていた。
ダオスはそんな彼女の様子に心を痛めながら、
今すぐ戻っては危険だと思い、とりあえず安全な場所へ移動をすることにした。

そしてダオスが先頭に立ち歩を進めようとした時、彼の体にぎりっと緊張が走った。
マーテルも気付き、手を口に当てる。
クレスは静かにその人物を見つめていた。
「何の用だ、モリスン」
ダオスが言った。
いつの間にか彼らと同じように裏口から脱出していたモリスンは、ダオス達を尾行していた。
三人の見つめる先に、山吹色の装束に身を包んだ男は杖を構えて立っていた。
まるで決闘に向かう剣士の様だった。
「・・・私は卑怯な男だ。始めはジョニーの心配をしていたのに、
 ジョニーが死んだ時、彼を助けることよりも、仇を討つことよりも、
 貴様に隙が無いかどうか窺っていた」
モリスンは続けて言った。
「そして今、リッド君やロイド君達を見捨てて、こうして貴様を倒す為にここに居る」
手にした杖をダオスに向け、静かに声を出す。
ダオスも身構え、背後の二人に視線を送る。
「クレス君。すまないが、私の愚行を見逃して欲しい。君なら多少は私の気持ちを分かってくれるはずだ」
そう言うモリスンに、クレスは黙っていた。黙って、ダオスとモリスンを見比べた。
「止めてください、モリスンさん!」
マーテルが言った。
「君にも悪いが、これだけは私の中でも譲れぬことなのだ」
モリスンの言葉は、確固たる意思の元、口にされていた。
最早何人たりとも、彼を止めることは不可能だった。
176宴 15:2006/02/06(月) 23:53:14 ID:26OCG+LK
「離れましょう、マーテルさん」
そう言うと同時に、クレスがマーテルの手を握り、ダオスの後ろへ引っ張った。
マーテルはほとんど泣きそうな顔で、ダオス等を見やった。
ダオスはクレスに戒めるような視線を送ったが、モリスンの殺気が増したので向き直った。

「悪いな、クレス君」
ダオス達から五、六メートル離れて、クレスはモリスンの言葉に苦笑した。

「いえ、そんなことはありません。あなた一人ではダオスを倒せるかどうか怪しいものだったので」

えっ、とマーテルとモリスンが呟いたようだった。
次の瞬間、クレスは素早くマーテルの腕をひねり、背後に回って拘束した。
そして忍刀血桜を左手に持ち、彼女の首筋へ突きつけた。
「!?」
「マーテルっ!!」
ダオスが激しく激昂し、走り寄ろうとしたその時、
「動くなダオス。動けばこの人を殺す」
クレスがきっぱりと言った。
「ク、クレス君!何を・・・!?」
クレスは驚愕を隠し切れない三人に対して不気味なほど冷静に、口を開いた。
「モリスンさん、僕もあなたの考えに同感です。ダオスは早く倒すべきだ。
 先程は皆の手前ああ言いましたが、やはりダオスの存在は危険だ。
 彼が居る限り、望まぬ抗争は起きると思う」
モリスンは青年のあまりの豹変振りに戸惑い、固まっているようだった。
「やめて・・・お願い・・・これ以上・・・」
マーテルが首を回してクレスの目を間近に見て言った。
「心配はいらない。とりあえずダオスさえ倒せれば、
 後はまた皆で力を合わせてミクトランに対抗するつもりでいる」
そしてクレスはモリスンに視線をやり、
「モリスンさんも、それでいいですよね?」
「ああ・・・」
モリスンは多少戸惑いはしたが、何にせよダオス討伐の絶好の機会には違いなかった。
177宴 16:2006/02/06(月) 23:54:55 ID:26OCG+LK
なぜクレス・アルベインがこうも従順なる人形になってしまったか、答えは彼自身にあった。
彼は若かった。そして多く悩んだ。
クレスが獅子心の巨漢に倒された時、彼の中の闘争心以外は一時眠ってしまった。
あの後立ち上がったのは、戦士としての本能、闘争心以外の何者でもなかった。
そう、あの時クレスは、限りなく純粋な戦士であり、兵士であったのだ。
それはクレス自身思い悩んでいた、生き残るためには戦いも辞さないという、
すなわちゲームへの参加の意思が僅かにあってこそだった。
一旦は振り切ったと思われたものの、彼の深層心理では、
知らぬ間にその疑問、殺し合いに乗るか否かの疑問は燻っていた。
そしてそのまま気絶した。
やがて目覚めれば、守りたかった仲間の姿に安堵し、
バランサーが働き再び精神は落ち着いただろう。
しかし彼の場合、不安定な状態のままでデミテルに毒を飲まされてしまった。
彼の脳は侵され、神経が乱された。
結果、彼から正義感やら仲間への信頼、信念、美学といったものが排除された。
そして残ったのは、戦士としての本能、主に従う従順なる駒だった。

「クレス・アルベイン・・・貴様、最初から・・・!」
ダオスが怒りに満ちた顔でクレスを睨み付けた。
「さっきも言ったけど、動かないでくれ。・・・それじゃあモリスンさん、やってください」
「!」
「あなたなら、やれるはずです」
「・・・承知した」
モリスンは魔杖ケイオスハートを構え、詠唱を始めた。
ダオスは全身から嫌な汗を掻きつつ、前後をゆっくりと見渡した。
その顔は、諦めとも、悲痛とも、憤怒とも違う何かが現れていた。
・・・マーテル、私は・・・
魔王崩御の時が、ゆっくりと近付いていた。
178宴 17:2006/02/06(月) 23:56:20 ID:26OCG+LK
「さて・・・クレス・アルベインとティトレイ・クロウは上手く働いているようだな・・・」
デミテルは一人死角となる物陰から、聖母率いる一団の狂騒を眺めていた。
・・・しかし、とデミテルは考え込む。
扉や窓がほとんど蔦で覆われ、まるきり町外れの廃墟といった風貌と化した家を見やって、考える。
どうやら自分の予定外に、何者かが暴れているようだった。
あの家の様子を見るに、恐らくあの面々の誰かが反抗したようだったが、
そのせいで計画に些か狂いが生じた。
だが結果論としては、当初の目論見通りダオス、そして女の引き離しに成功したのでよしとした。
このまま上手くいけば、ダオスは敵を目の当たりにしながらも、無抵抗のまま死ぬ。
「頼むぞ、エドワード・D・モリスン」
デミテルは微かに笑んだ。
従順なる駒の一人クレス・アルベインの予想以上の働きにより、ダオス討伐は確実なものとなりつつあった。
クレスには自分自身の代弁者としての役割もこなしてもらってる。
しかし当然彼の言う言葉は、デミテル自身が用意した彼等を信用させるための戯言だったが。

・・・だが、当然、油断はならない。
最後の最後まで、気は緩められない。何が起こるか分からないのがこのゲームの常なのだ。
理不尽は、どこまでも付いてくるものだった。
念の為ティトレイ・クロウには邪魔者の封印と、
もう一つ別の指令を与えているが、それでも不覚を取ってはならない。
そしていざとなれば、自ら戦渦に一石投じるという考えもあった。
何にせよ、ダオス討伐は確実に遂行しなければならない。
その後に、利用価値の無くなる奴等も、早急に始末すべきだ。
そしてまだ見ぬ未知の敵。
奴等が拠点としてる家で暴れてるようだが、遅かれ早かれあそこから出てくるだろう。
それまでに計画を終わらせ、対応せねばならない。
戦うか否かは状況次第だ。当然利用できそうなら利用する。
デミテルはもう一度ダオスたちの方へ目をやった。

転がりだした運命は、悲劇へ向けて急速に進んでいった。
179宴 18:2006/02/06(月) 23:57:35 ID:26OCG+LK
【ダオス 生存確認】
状態:TP半減、背中に打撲
所持品:エメラルドリング
基本行動方針:何としてもマーテルを護る
第一行動方針:マーテルの身の安全の確保
第二行動方針:機を見ての危険分子排除
第三行動方針:打開策を考える
現在位置:C3村 屋外

【マーテル・ユグドラシル 生存確認】
状態:悲哀 恐怖 腕を掴まれ刀を首に突きつけられ拘束されている
所持品:双眼鏡 アクアマント
基本行動方針:共鳴者を募り、敵対者は説得
第一行動方針:戦いをやめさせる
現在位置:C3村 屋外

【エドワード・D・モリスン 生存確認】
状態:TP2/3消費、全身に裂傷
所持品:魔杖ケイオスハート、割れたリバースドール 煙玉×2、クナイ、法術辞書
基本行動方針:演説少女の共鳴者との共闘
第一行動方針:ダオス討伐
第二行動方針:さらなる高位法術の修得
第三行動方針:ミクトランの討伐
現在位置:C3村 屋外

【クレス・アルベイン 生存確認】
状態:TP中消費、善意及び判断能力の喪失
所持品:ダマスクスソード、忍刀血桜
基本行動方針:不明
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する
現在位置:C3村 屋外

180宴 19:2006/02/06(月) 23:58:25 ID:26OCG+LK
【リッド・ハーシェル 生存確認】
状態:背中に刀傷(ほぼ回復) 右足に火傷
所持品:ムメイブレード、エルヴンマント
基本行動方針:ファラの志を継ぎ、脱出法を探し出す
第一行動方針:メルディを止める
第二行動方針:ミトスを止める
第三行動方針:キールの安否の確認
現在位置:C3村 屋内

【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:全身に痺れ
所持品:ウッドブレード、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:メルディを止める
第二行動方針:ミトスを止める
第三行動方針:協力者を探す
現在位置:C3村 屋内

【ミトス・ユグドラシル 生存確認】
状態:後頭部に打撲、足に軽い裂傷、TP微消費
所持品:ロングソード、邪剣ファフニール、アトワイト、???
基本行動方針:マーテルを護る
第一行動方針:メルディの排除
第二行動方針:邪魔する者の排除
第三行動方針:マーテル、ダオスとの合流
第四行動方針:クラトスとの合流
現在位置:C3村 屋内

【メルディ 生存確認】
状態:ネレイドの干渉
所持品:BCロッド スカウトオーブ、リバヴィウス鉱、C・ケイジ
基本行動方針:不明
第一行動方針:目の前に居るものの排除
第二行動方針:邪気を放つ者(デミテル)の行動に乗じて殺戮
現在位置:C3村 屋内

181宴 20:2006/02/06(月) 23:59:28 ID:26OCG+LK
【デミテル 生存確認】
状態:TP1/4消費
所持品:ミスティシンボル、ストロー、金属バット
第一行動方針:ダオス打倒計画の決行
第二行動方針:可能な限り戦力を削ぐ
第三行動方針:危険と見れば逃走する
現在位置:C3村 屋外


【ティトレイ・クロウ 生存確認】
状態:感情喪失、TP中消費
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック
基本行動方針:かえりたい
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する
現在位置:C3村 具体的な位置不明


【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:気絶中 後頭部打撲
所持品:ベレット、ホーリィリング
基本行動方針:脱出法を探し出す
第一行動方針:メルディを探す
現在位置:C3村 屋外


【ジョニー・シデン 死亡】
【残り28人】
182おとりロケット作戦 1:2006/02/07(火) 00:23:04 ID:vwvxEJJM
エナジーブレットの電撃で、トーマの磁場から開放されたユアン。
かろうじてトーマ達から逃れ、近くの建物に隠れていた四人と合流する。
そして、すぐに別の建物に移動する。

「お前たち、迷惑をかけて済まない」
生き残る自信があると言っておきながら、結局相手のことを見縊り、命の危険にさらされてしまった。
結局、足を引っ張ったのは自分ではないかとも考えてしまう。

「迷惑だなんて、そんなことはないですよ」
「そうよ、私たちはずっとユアンに頼りっぱなしだったんだから」
それでも、三人とも自分を信頼してくれている。
「ユアン。自分ひとりでやるのを前提にすることはやめろ。俺たちは四に…」

ドオォォォォォン!!!

すさまじい音が起こる。最初に三人が潜んでいた建物に、大砲が撃たれたのだ。
何を撃ったのか、建物がぺちゃんこになっている。
「ほら、言った通りでしょ。ああいう単純牛は、絶対撃ってくるんだって。マネキンとかケチャップがあればよかったんだけど…」
「生きてること、バレてますよね」
(せっかく俺がいいセリフ言おうとしていたのに…。ひどい)

決め台詞を途中で妨害されたグリッドはちょっと不機嫌だ。
横にいた生物に話しかける。
「お前もそう思うだろ?」
「クイッキー!」
「あれ? 何ですか、そのポットラビッチヌス?」
「そいつはあの牛の仲間だ!」
「クイッキー!」
183おとりロケット作戦 2:2006/02/07(火) 00:24:07 ID:vwvxEJJM
ユアンがさっとクイッキーをつかみ、遠くへ放り投げる。
だが、クイッキーはくるりと回って着地し、大声で鳴く。
「逃げるぞ!」
見ればトーマはすでに大砲を構えている。
プリムラがチャームボトルの瓶を逃げるほうとは反対側の、死角へ投げる。
チャリン!という明らかに不自然な音。
「そこか!」
メガグランチャーを発射するトーマ。自身のフォルスを使用した、重力弾。
やはり撃たれた場所は、クレーターと化していた。

改めてその威力に驚愕する一同。
「あたれば、ぺらぺらにされてしまうな…」
「まともに食らえば命は無いな。ブーツで逃げようとしても、あいつに見つかると引き寄せられる。
 建物に隠れながら移動しないといけないだろう。
 あいつがいうには、あの能力は磁のフォルスというらしいが…」
(時?)
(地?)
(痔?)
『アラシ』や『オト』と違って、『ジ』だけでは意味が分かりにくいのがこのフォルスの特徴である。
三人とも勘違いした。ミクトランも調べていなければ勘違いすることだろう。
「その能力を使われると、こういう体質になる」
ユアンが落ちていた鉄製の釘を近づける。見事にくっ付いた。
(((磁!)))

「それにしても、これじゃ逃げられませんね…」
確かに、磁力という目に見えない強力なものからは逃げられない。
しかも、相手がどのようにその能力を使っているのかすら分からないのだ。
「いっそのこと、自分からどこかへ行ってくれればいいんだがな」
「それよ、それ!」
プリムラのアホ毛がピーンと立…ったりはしないが、彼女に名案が閃く。
「こっちが逃げられないなら、向こうをどっかにやっちゃえばいいのよ!」

プリムラが箒を手に取る。
「これにあの牛を結びつけて、そのまま追放してしまいましょうよ」
「いいのか、ユアン?」
「どのみち、あいつをどうにかしなければ、ここで全員死ぬ。やってみればいい」
「まだ中央の教会には火はまわっていないわよね。そこでやりましょ」
184おとりロケット作戦 3:2006/02/07(火) 00:25:40 ID:vwvxEJJM
「やつら、どこへ行った?」
G5の町は、通りによって区分されている。
南区、東区、北区、西区。そして、教会のそびえる中央区とその広場。
そのうち、トーマたちが初めにやってきた南区は燃えており、行けば焼け死ぬだろう。
東区は風下、しかもやはり燃えている。よって、除外。
西区は自分たちがいた場所。ここも結構炎以外の要因で壊れてしまっている。
北区は東区からの飛び火で、やはり燃えている。
つまり、中央区しか行く場所はないわけだ。炎避けとなる広場もある。
で、中央の広場に行ってみると、やはり一人いた。

「わははは、俺はグリッド! 漆黒の翼のリーダー、グリッド様だ!」
広場には水がまいてある。正確には、噴水を壊して中の水を周りに漏らしている。火の流れを遮る為か。
「手前がさんざん邪魔してくれたやつか。他はどうした?」
「俺の『転』のフォルスで移動させた! もうここにはいない!」
聞いたことのないフォルスだ。だが、無いとも言い切れない。
もちろん、そんなものはないのだが。
「なぜお前はこんなところにいる?」
「自分は転送できないからだ!」
堂々と告白するグリッド。
不思議と説得力があるのは気のせいだ。
「牛、勝負だ! このグリッド様がお前を完膚なきまでに叩きのめしてやる!」
グリッドが、支給品を投げ捨て、素手で構える。

「グフフフ、いってくれる。ヒューマごときがこのトーマ相手に素手で勝てると思うな」
大砲を持つ自分に素手で向かってくるとは、ただの馬鹿か、それとも何か隠し玉があるのか。
ただ、ミミーの前で勝負を挑まれて断れば、男が廃る。
「大丈夫かパン?」
「俺があんな軟弱そうなやつに負けると思うか? ギタギタにぶちのめしてやるさ。
 罠だったときに備えて、ミミーは後ろで待機してくれ」
ミミーは後ろで見学。素手で勝負。
「これが終わったら、あまり得意じゃねえが、髪飾りでも作ってやるよ。頭がさびしいだろ?」
「……」

メガグランチャーを置き、グリッドに向かって駆け出すトーマ。
相手はたかがヒューマ。しかも自分から武器を投げ捨てて、こちらを挑発してくる。
そんな相手に武器を使うのは四星のプライドが許さない。サレなら使うかもしれないが。
185おとりロケット作戦 4:2006/02/07(火) 00:26:46 ID:vwvxEJJM
だが、これは罠。トーマに武器を使わせないための、一種の挑発。
つるり。
「!??」
地面には水に混じえて、炎を広めるために使った油の残りや、昨晩の戦いで使った石鹸水など、よく滑る物を撒いてあった。
トーマはその場所を踏むも、なんとかバランスをとって踏みとどまる。しかし。
「うおおおおお!!!」
「牛さん!」
そこにグリッドがタックル。受け止めるものの、足場が悪すぎる。
二人とも、転んでしまった。

「今だ!」
グリッドの声で教会の扉が開く。
罠だと確信したミミーとクイッキーがトーマに向かって駆け出す。
これも計算のうち。むしろ、飛び出してくれないと困る。
教会から、一斉にユアン、カトリーヌ、プリムラの三人が飛び出す。
二人はすでに詠唱済み。プリムラもロープを構え、準備は万端。
ユアンが昨夜と同じような要領で、ユアンがチャージしていた電気玉を水の撒かれた地面へと発射する。
電撃は、グリッド、トーマ、ミミーを襲う。もちろん、死には至らないように加減はしてあるが。

プリムラとカトリーヌはブーツでいちはやく三人の下へ到達。箒をトーマに結び付ける。
「く、そ…」
「…パン」
体がしびれて力が入らないトーマ。ガジュマと比べれば丈夫ではないグリッドは気絶。
ミミーは、ペルシャブーツの効果で、なんとか動けるものの。
「ファイアーボール!」
カトリーヌが牽制する。

「ううっ」
最後の手段。プリムラに向かって、フライパンを投げる。が、それすらもユアンの手刀で叩き落されてしまった。
ユアンがミミーの動きを封じ、カトリーヌはトーマの手をロープで縛る。
その間にも、プリムラは手際よく箒を縛り付けていく。
方位磁針で方角を確認。
プリムラがエナジーブレットをすべて箒に使う。
箒はバチバチっと大きな音を立てて、トーマを結びつけたまま、箒は空へと飛んでいった。
箒はドリルのように回転し、そのまま勢いを無くして北西の方角へ落下していった。

「牛さん!」
クイッキーを抱き、急いでトーマを追うミミー。しかし、体が上手く動かないためか、転んでしまう。
それでもトーマを追う。
三人は追わない。
「私たちはどうします?」
「予定通り、F5の森へ向かおう。グリッドは私が背負う。こいつの怪我は私のせいだからな」
グリッドは自らおとりを買って出た。仲間を信頼していないとできないだろう。
そして、自分は信頼にこたえることができただろうか。グリッドは答えない。
三人は、予定地、F5の森へと向かう。
186おとりロケット作戦 5:2006/02/07(火) 00:28:00 ID:vwvxEJJM
「わっ、何よ、この牛! 空から降ってくるなんて危ないわね」
突然トーマに降られたハロルド。さすがの天才も、空から牛が降ってくるとは思わなかった。
しかも丸焼きにでもしてくださいと言わんばかりに縛られている。
ハロルドはトーマの様子を見る。マーダーに容赦はしないつもりだが、この場合はどちらか分からない。
このまま放っておくと死ぬかもしれないし、かといって治療すれば襲ってこないとも限らない。悪人面だし。
「ん〜、しょうがないわね…」
実験のための草をごそごそ漁るハロルド。
薬草を出し、貼り付ける。
場所はF5。G5との境あたりだ。運ぶ必要は無い。良かった。
「ま、気を失ってるけど、死ぬことはないでしょ。おっと。誰か来た、退散退散〜」


【グリッド 生存確認】
状態:電撃による気絶
所持品:なし
基本行動方針:生き延びる。
       漆黒の翼のリーダーとして行動。

【プリムラ・ロッソ 生存確認】
状態:健康 
所持品:セイファートキー、ソーサラーリング、ナイトメアブーツ
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを磔にして島流し決定。
第一行動方針:グリッドの手当て
第二行動方針:出来ればC3行きを提案

【カトリーヌ 生存確認】
状態:健康 
所持品:マジックミスト、ジェットブーツ、C・ケイジ
基本行動方針:帰りたい。生き延びる。
第一行動方針:グリッドの手当て

【ユアン 生存確認】
状態:TP1/3消費 砂鉄が体にくっつく
所持品:占いの本、フェアリィリング
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを信用していない。
第一行動方針:グリッドの手当て
第二行動方針:漆黒の翼を生き残らせる
第三行動方針:漆黒の翼の一員として行動。仲間捜し。
現在位置:G5の町→森へ


【ハロルド 生存確認】
状態:軽い火傷 冷徹な復讐心 
所持品:短剣 実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) 釣り糸
現在位置:F5平原
基本行動方針:迂闊なことは言わない 単独行動(たとえ仲間に出会ってもマーダーの振りをして追い払う)
第一行動方針:F7の森林地帯に移動して状況を把握、その後罠を仕掛ける
第二行動方針:首輪のことを調べる
第三行動方針:C3地点の動向を探る
第四行動方針:マーダー(マグニスたち)の始末
187名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/07(火) 00:28:57 ID:Pr+6m6UE
テイルズ信者どもはウザいんでどっか行ってシコシコオナニーでもしていて下さい。
幸いにもテイルズシリーズは粗製乱造されまくっているから話題には事欠かないだろうし。
さっさとテイルズ板作ってここから消え失せろ?な?
188凄惨なる運命 1:2006/02/07(火) 00:30:35 ID:vwvxEJJM
ミミーがトーマの元へ到達する。
「牛さん!」
反応は無い。しかも何故か草まみれ。誰かが治療したのだろうか?
「う〜し〜さん!」
叩いてもうんともすんとも言わない。
「牛さ〜〜〜ん!!」
香ばしい木の実を近づけてもやっぱりなんにも反応してくれない。
胸に手を当ててみる。心臓の鼓動は感じ取れる。ちょっとホッとする。
さっきの四人が後ろから追ってくる気配は無い。
1800。

「クイッキー、小生はどうすればいいパン?」
元気が無いなら料理を食べさせることで元気を付けさせることは出来る。
美味しい料理なら、感情を高ぶらせたり、鎮めたりすることもできる。
でも、料理を食べてくれず、匂いにも反応しないとなると、一体どうすればいいのやら、見当が付かない。
1500。

色々と考えてみる。
「う〜〜ん、そういえば、眠っているお姫様は王子様の口付けで起きるという話を聞いたことがあるパン。
 でも、小生は王子様ではないパン…。牛さんもお姫様ではないパン…。
 クイッキー、何かいい方法はないかパン?」
1320。

「ク〜〜〜…」
突然振られて困るクイッキー。だが、いい方法を思いついたらしい。
「クイッキー!」
マジカルポーチを持ってくる。何かいいアイテムが出ないか、賭けてみるのだ。
ぽんっと飛び出てきたもの。いちご。
「これじゃ、ダメパン…」
クイッキーにイチゴを与え、また考え始める。
1200。

そのとき、思い出した。ライフボトルの存在。
だが支給品袋が無い。トーマのまわりを探す。無い。メガグランチャーが無いのは当然だが、他の支給品は?
支給品袋はメガグランチャーに引っ掛けていた? 相手が支給品を全部投げたとき、一緒に投げた?
900。

「クイッキー、小生は町で探し物をしてくるパン。すぐ戻るパン。
 でも、もしかすると牛さんの目が覚めるかもしれないから、ここで待っていて欲しいパン」
イクストリームをクイッキーに着ける。
「悪いやつが来たら…これでなんとかできるパン?」
「クイッキー」
「じゃあ、頼むパン」
600。
189名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/07(火) 00:31:05 ID:Pr+6m6UE
テイルズ信者どもはウザいんでどっか行ってシコシコオナニーでもしていて下さい。
幸いにもテイルズシリーズは粗製乱造されまくっているから話題には事欠かないだろうし。
さっさとテイルズ板作ってここから消え失せろ?な?
190名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/07(火) 00:31:46 ID:Pr+6m6UE
テイルズ信者どもはウザいんでどっか行ってシコシコオナニーでもしていて下さい。
幸いにもテイルズシリーズは粗製乱造されまくっているから話題には事欠かないだろうし。
さっさとテイルズ板作ってここから消え失せろ?な?
191名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/07(火) 00:32:46 ID:Pr+6m6UE
テイルズ信者どもはウザいんでどっか行ってシコシコオナニーでもしていて下さい。
幸いにもテイルズシリーズは粗製乱造されまくっているから話題には事欠かないだろうし。
さっさとテイルズ板作ってここから消え失せろ?な?
192凄惨なる運命 2:2006/02/07(火) 00:33:15 ID:vwvxEJJM
ミミーは急いで町に戻る。
戦いが起こったのが広場であり、
またメガグランチャーが目立つのもあって、探し物はすぐに見つかった。
支給品袋は焼けてはいない。
急いでウィングパックにメガグランチャーとライフボトルを収納するミミー。
330。

「これを使えば牛さんもきっとすぐに元気になるパン」
目的のものを回収したミミーは、急いでトーマのところへ戻る。
さほど時間はかからない。ほかの参加者も来ていないだろう。
260。

トーマが視認できる。クイッキーの様子からして、どうやら無事のようだ。
60。

ちょっと安心したミミー。
ふと、トーマに会ってから、今まで起きたことを思い巡らす。
30。

トーマが店の初めのお客さんだったこと。
植物に襲われて、殺されそうになったところを救ってもらったこと。
20。

教会で、結婚式の真似事をしてみたこと。
火の手から自分を守ってくれたこと。
10。

まだ自分たちは生きている。
キッシュを作って食べさせる約束もある。
そして、髪飾りのお約束。
193凄惨なる運命 3:2006/02/07(火) 00:34:26 ID:vwvxEJJM
3。
「クイッキー!
2。ピーーーーーー…
 今帰ったパン!
1。ーーーーーーーー…
 これで牛さんも…




    ぽん




「………。
 クイッッッッキィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」



【トーマ 生存確認】
状態:電撃による気絶 ミスティブルームにくくりつけられている 右肩に擦り傷(軽傷) 軽い火傷 TP結構消費
所持品:ミスティブルーム、ロープ数本
基本行動方針:ミミーを守りぬく
第一行動方針: ミミーのキッシュを食べる
現在位置:F5の平原の木の根元

クィッキー
状態:電撃をくらっている
基本行動方針:錯乱
第一行動方針:トーマを起こす

【ミミー・ブレッド 死亡】

メガグランチャー、ライフボトル、その他ミミーの支給品は放置
194名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/07(火) 00:35:09 ID:Pr+6m6UE
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
195名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/07(火) 00:38:33 ID:Pr+6m6UE
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこ
196名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/07(火) 01:47:10 ID:7vzVAo9b
残りは27人です。
これを忘れるとは…
197幻影回想録1:2006/02/07(火) 03:31:19 ID:1n0ygbgQ
「一体、ここで何が起こったんだ…。」
少年は其処を見て感嘆を洩らした。
ただ、海だけが静かだった。


少年が第一の偵察地にたどり着いた時、そこは少年だけの森だった。
一人の青年を除いて。
少年の推測では既にこの森には誰も居ないはずだったのだが、
推測は所詮推測で、例外が紛れ込むことなどよくある話である。
例外たる当の青年――見るからにブレス系の出で立ちの青年は
ぬかるみに片足を絡め取られ四苦八苦していた。
(最近のブレス系は皆あんなに貧弱なんでしょうか…)
不正解。青年が一般晶霊術士以上に貧弱で、
少年の知るブレス系爪術士達があまりに屈強で尚且つ特殊だから。
(まあいいでしょう。あの様子じゃ村にたどり着けるか妖しいし、
危険な村にエスコートする理由も時間もありません。)
少年は音も無く先ほどまで居た木の枝から消えうせた。
聞こえるのはただ青年の情けない声ばかり。

「ファラ〜、リッドぉ〜、無事で、いてくれ〜。」


森の境目、村を一望できる予定観測点にたどり着いた時、少年は首を傾げた。
少年の予定では既に何らかのハプニングが繰り広げられているはずだったからだ。
しかし見ての通り其処にあるのは静寂の村、少年は疑問を禁じえない。
しかもハプニングならここから観測すれば十分だったはずだが、
ここまで静かだと距離がありすぎて情報が得られない。
かろうじて気配から人のいる家屋の目星は付けることが出来た。
(予定外ですが、ギリギリまで近づいてみますか。)
再び少年は走り出す、無論無音で。
198幻影回想録2:2006/02/07(火) 03:33:12 ID:1n0ygbgQ
家屋まであと十数米といった所で少年は足を止める。これ以上は向こうに気付かれる
限界線、若い身空でありながら忍者としてほぼ完成した少年の感覚が警戒を強める。
手近な無人の家を障害物とし窓を覗き見る。顔は分からないが中に居たのは2人だとは
分かった。死角の関係で顔は判別できないが服装から一人は判別できた。
(モリスンさん、来てたのか。あっちの人は男性みたいだし…声の女性は何処に?
外か、或いは、もう…)
数秒、少年は目を閉じ、見知らぬ彼女のために黙祷を捧げる。何も知らない人間の
ささやかな自己満足。
(此方からじゃ食卓しか見えないな…裏から回って…ッ!!)
瞬時に少年は身を隠す。そして慎重に、確認をする。村の広場に来るまで気付かなかった
赤毛の青年を。自分の存在を悟られたかと、少年は苦無を取り出す。
しかし青年は面妖な面構えで少年のことなど知ったことかと言ったところだ。
誰に言うわけでもなく、青年は呟く。
「ファラ、済まねえな、間に合わなくて。折角お前が呼んでくれたってのに。」
少年はこの青年と声の少女の関係に確信する。理由などない。
「キールに会えたんだ。アイツももう直ぐこっちに…は無理か、アイツすっげえトロいし。」
このゲームによって引き裂かれた関係に少年は自身の知る兄妹をダブらせる。
「メルディはまだ見つかってねえけどよ、キールにもお前にも会えたんだ。
絶対見つかる。いや、ゼッテェ見つけ出す。だからよ…」
どうやらここにはまだ3人しかいないようだ。目的は達したと、無理矢理結論付ける。
「ファラ、後は俺に任せろ。」
青年の握り拳が強くなる。 何より青年の時間を侵してはならないを思う。
「こんな戦い許されてたまるか…俺はお前の信じた道を進むぜ。」
青年は空を見上げる。そこは雲一つない晴天。 その晴天に、少年は消えていった。
「あぁ…雨、降らねぇかな…」
青年の頬に一粒の雫が零れた。その雫だけは、青年だけの物だった。
199幻影回想録3:2006/02/07(火) 03:34:27 ID:1n0ygbgQ
ナーバスになる気持ちを抑えつつ、北から入る形で少年は橋へ向かった。
万が一橋から人が来た場合直進するより気付かれにくいと判断したからだ。
出来れば大回りしたかったが禁止エリアのためC4ギリギリ北側を進むしかない。
(橋で遭遇したらどうするか…通り抜けるだけなら何とかなるか……ん!?)
橋が見えたところで少年は急ブレーキをかけ、足元の草むらに体を屈める。
少年が見たのは、とても不思議な一団。なんと言うのか、そう、家族のような
構成の一団。少年も仲間達の家族ごっこの輪に巻き込まれているからか
其処にいる集団をそのように見ていた。
(何処の世界でも弟が利発で兄の方は馬鹿っぽいものなんですね。それにしても…)
少年は目を父親と思しき男に向ける。そしてこの男は危険だと結論付けた。
一応鞘には収まっているようだが切れ味はあの青い凶戦士と互角、あるいはそれ以上だと
値踏みする。仮にあの男と戦った場合、万に一つも勝ち目は無いと認識する。
ましてやその他のものも一癖二癖ありそうな連中ばかり、過ぎ去ってくれるなら
それに越したことは無いと息を潜めてやり過ごすはずだった。

――――キィィィィィン―――

突如響いた高音。音は微かな上一瞬だったが、予定外の自体に少年の緊張は一気に高まる。
内心パニックになりながら少年は音源を探す。どうやらデイバックの中、
剣士の形見の青い剣が出所だったようだ。何故この剣が?そもそもこれは本当に音なのか?
と考える暇は無かった。すかさず一団を再確認する。此方を見ていたのは2人、父親と、長兄。
特にオールバックの長兄の視線は此方を正確に射抜いている、ような気がする。
そして真正面から見て、初めて彼の武器が2本の木刀であることに気付いた。
しかしそれを探し人の可能性に直結させる余裕はその時の少年には無かった。
沈黙と静寂が空間を支配する。耳を澄まさなくとも心音が聞こえるかのような、
何秒とも何時間とも取れる均衡は、向こうから崩れた。どうやら次男が2人を急かしたようだ。
その後一団が安全圏に行くまで彼は動けなかった。
ようやく立ち上がったときは少年の顔は冷汗に濡れていた。心臓の鼓動を聞きながら
走ったらまた彼らに見つかると思ったのか、少年はトボトボと歩いていく。
200幻影回想録4:2006/02/07(火) 03:37:00 ID:1n0ygbgQ
「やっぱ気のせいだったか。聞こえたような気がしたんだけどなあ。ダオスもそう思うだろ?」
「いや…何も聞こえはしなかったな。(しかしあの微かに湧き上がったマナ、あれは?)」
「そっか、残念だな。」
「そういう割にはやけに嬉しそうではないか。男がそのような装飾品を見てニヤつくのは
あまり良い趣味とは言えんな。娘が背中から落ちそうだぞ。」
「おっとっと…うっせーな、この指輪は特別なんだよ。さっき親父達の声を聞いた気がしたから、
父さんから貰ったこれを思い出しちまってさ。あ、ひょっとしたら父さんなら
あんたと良い勝負できるかもしんねーな。性格も少し似てるし。」
「もしその男がマーテルに徒なすなら、私も全力で「ああ、それはないない。」
「…なぜだ。」
「俺の父さんだから、って言うのは冗談で、マーテルとは知り合いなんだよ。
あそこのミトスも「僕が何?」おうわッ!!ビックリさせんじゃねーよ!!」
「あんた達がノロノロ歩いてるから呼びに来たんだよ。姉さまを先に行かせるなんて
何考えてんの?」
「おっ、そりゃ悪い。ダオス、続きは村に着いてからにしようぜ。」
「…フン。」

そんな家族の団欒。村に着くのはもう少し先のこと。


「一体、ここで何が起こったんだ…。」
少年は其処を見て感嘆を洩らす。
ただ、海だけが静かにそこに存在する。
橋の中程に穴、正確には窪みがある。その周りには崩れた手摺。
ここもあの城のように崩れるのかと一瞬心配したが、見た限り支柱はしっかり生きているので
崩れる危険性は無いようだ。しかし見た目には派手に壊れている。
あの一団がやったのか、戦ったのは父親か、それなら相手は?死体は?
疑問はあるが分からない事だらけだ。早くここを立ち去るべきなのだが
思考が状況の整理を優先する。考えること数分、そして行動に移す。

「鏡殺。」

爪が光ったと思った瞬間に少年は影も形も消え失せる。
何処に向かったかも分からない。
時刻はもう直ぐ、正午になろうとしていた。

201幻影回想録5:2006/02/07(火) 03:39:05 ID:1n0ygbgQ
【ジェイ 生存確認】
状態:頸部に切傷 全身にあざ 
所持品:忍刀・雷電 ダーツセット クナイ(三枚) ヴォーパルソード
第一行動方針:目的地に迅速に辿り着く
第二行動方針:クラトスの息子に剣を渡す
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
現在位置:C4橋→???
202名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/07(火) 14:22:34 ID:Pr+6m6UE
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

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これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

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…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
203名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/07(火) 14:23:55 ID:Pr+6m6UE
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
335:名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/01/16(月) 20:20:36 ID:yMJqli/F
Dで感動して泣きまくり、更にキャラ萌えした腐女子が通りますよ。

D2…ジューダスに対するキャラ萌えとロニの発言中心にはびこるホモ要素、語られなかったスタンとリオン(のホモ臭いシーン)そして声優陣のフルボイス仕様(主にソーディアン)にウハウハwktkするしかなかったよ。

…と、さんざんガイシュツかもだがこのゲームは99%腐女子向けかとw
これが言いたかっただけ。豚キリすまそ
204Invitation to the inferno 1:2006/02/07(火) 22:08:10 ID:FAMPwIGV
 かえりたい。
 ティトレイ・クロウはその一心で、自らの主から受け取った袋の中身を蒔いた。
 かえりたい。
 その種は、ファラ・エルステッドの遺志のもと集った、戦士達の家の周りに蒔かれた。
 かえりたい。
 主の命ずるがままに、ティトレイは蒔いた種に、自らの「樹」のフォルスを施す。
 かえりたい。
 ティトレイの「樹」のフォルスを受けた種は、たちまちのうちに発芽する。伸び始めた芽はあっという間に家の外壁に絡みつき、扉を、窓を、封じ込める。
 かえりたい。
 誰かが内側から扉を叩いたらしい。けれども、伸びた芽は蔓のように扉を十重二十重に食い込み、生半の攻撃では扉を破ることを許さない。
 フォルスによって生み出されたものは、フォルスによってしか壊すことは出来ない。フォルス使いにとっては、常識である。
 すなわち、フォルスの火で炙りでもしなければ、この蔓を切ることは不可能。さもなくば、ティトレイの主人たる男の放つ、魔術の火か。
 家自体が崩壊しかねないほどの、強大な術技を放つのも手かもしれない。
 だが、内側の人間は、よほど切羽詰らねば、そんな乾坤一擲の手は用いるまい。どの道、これで中の人間は、事実上幽閉したも同然。
 育ち切った芽は、今や家全体に絡みつき、亡霊屋敷のような様相さえ呈している。だがその蔓の強靭さを思えば、この家は巨木の幹に埋め込まれたようなもの。
 内側からでも外側からでも、この蔓のヴェールを破ることは、巨木を切り倒すに等しい力を要する。
 それも、フォルスや魔術という名の鋸を使わねば、傷つけることさえ厳しい巨木である。
 仕事を終えたティトレイは、ゆっくりとその建物に背を向ける。これが終わったら帰って来い。それが、主人から命じられた用事であった。
 家に背を向けたティトレイの後ろで、ぴちゃりという音が響いた。それは、繁茂した蔓から垂れた、液体の音。
 若干黄色がかっていて、しかもギトギトしている。これを地面に撒いて誰かをその上で歩かせれば、転ばせることも可能だろう。
 今は亡き緑髪の少女、ファラがそれを見たなら、しばらくは買い出しの必要がないと大喜びしていたかもしれない。
 その黄色い液体は、油であった。
 家からゆっくりと離れるティトレイの鼻先を、いくつかの火球がかすめて飛ぶ。
 魔術「ファイアボール」。若干拡散気味に放たれた火球は、家の何箇所かにに命中し、そこから火の手が上がる。
 地面に垂れた油にも「ファイアボール」の炎は飛び火し、油の水溜りの上では、1つの炎が不気味に揺らめいていた。
205Invitation to the inferno 2:2006/02/07(火) 22:09:07 ID:FAMPwIGV
「…予定通りだ」
 デミテルは、「ファイアボール」が宿らせた火を見て、どこか事務的に呟いた。
 デミテルは左手の中で、ティトレイにも持たせた、とある植物の種をもてあそんでいる。この種の表面も、少し油っこい。
 その種はすなわち、アブラナの仲間に属する、とある植物のもの。
 この島には、見たこともないような植物も多く自生しているが、一部はデミテルが西の孤島での暮らしのさなか、本草学の書物で見たものもある。
 おそらくこの島は、多くの世界から切り取られた、世界のかけらのようなものを集め、何らかの方法でそれらを混ぜ合わせて作ったのだろう。
 明らかにアセリアの地にはありえない植物と、そしてアセリアの植物があわせて自生しているところから、デミテルはそんな説明を打ち立てていた。
 だが、今は別にこの島の成り立ちなど重要な事項ではない。
 重要なのは、こうしてアブラナの種子を手にし、そして自らの手駒には、植物を操る力を持つ者がいたということ。
 それこそが、この作戦を成り立たせているのだ。
 ティトレイの力…「樹」のフォルスでこのアブラナの種子を繁茂させ、そしてその芽で屋敷を覆う。それが、デミテルの立てた作戦。
 彼の本草学の知識と、ティトレイの力への洞察に誤りはなく、繁茂したアブラナには、油がぎっちりと詰まっていた。
 あとはその油に火を点ければ、家の中の人間を閉じ込めて焼き殺せる、即席の猛火の牢屋が出来上がる。
 獲物を確実に、しかも少ない労力と危険で葬れる策だ。
 だが、デミテルはそこに、更なる駄目押しを放つことを決めていた。
 低い声で魔術を詠唱するデミテル。魔術の心得があるものならば、その魔術は風を司る韻律を、多く含んでいることに気付けたはずだ。
 デミテルが今度引き出していた知識は、錬金術。錬金術もまた、彼が西の孤島で独学していた学問であったのだ。
 錬金術師の間では、次のことは常識とされている。
 通常の火は、大気の中に含まれる不可視の粒子を吸収し、あのように熱く燃え上がる。
 その粒子の名は「燃素」…すなわち「フロギストン」とも言うが、火は大気のフロギストンを吸収することで、燃え上がるのである。
 デミテルが今紡いでいる魔術は、その大気のフロギストンを凝縮する魔術。これを屋敷に向け、放つのだ。
 デミテルも暇を見て、以下の実験を行ったことがある。すなわち、大気中のフロギストンを凝縮し、それを燃えている火に放つ実験を。
 フロギストンを過剰に供給された火は、普段のそれを遥かに越える勢いで燃え上がるのだ。
 錬金術の先達の記述に間違いはなく、デミテルが暖炉にくべていた薪は、爆発的に燃え上がりたちどころに消し炭と化してしまった。
 しかもその時の炎は高温で、それにさらされれば打ち上げられた鋼鉄でさえ、どろどろに融かしてしまう。
 数日の実験を通じて得られたその結果を自らの書に記したことを、デミテルは今も正確に覚えている。
206Invitation to the inferno 3:2006/02/07(火) 22:09:57 ID:FAMPwIGV
 ちょうどそのとき、デミテルは大気のフロギストンを凝縮し終えた。いける。この量ならば。
 デミテルは両の手をかざし、フロギストンの風を吹かせる。風とは言っても、そよ風よりわずかに強いという程度。
 だが、家に放たれた弱い火を、煉獄の業火に育て上げるには十分過ぎるほどには、その風は「強烈」であった。
 フロギストンの風が火に達した瞬間、ちっぽけな火はたちどころに膨れ上がった。
 ぼうん! 空気が一気に膨らみ上がる音と共に、放たれた火はたちまちに家を囲む。
 フロギストンの風に後押しされた猛火…魔術により生み出された炎は、ティトレイの繁茂させた蔓を…蔓の含む油を火種とし、赤々と燃える。
 これで、中の人間の運命は決したも同然。火が回り始めていることに気付いたとしても、気付いた頃にはもう遅い。
 すでに火は、消火できないほどに広がっているのだ。
 もちろん、魔術「タイダルウェーブ」あたりを用いれば、崩れる家の瓦礫ごと炎を吹き飛ばし、強引に消火することも不可能ではないかもしれない。
 だが、家の中の空気のもとで、そんな真似は出来るまい。
 家の中の空気もやがて高熱を帯びる。おまけに家の中には、熱の逃げ場もない。
 そして、魔術の行使には、発声を伴う呼吸が必要となる。
 肺が火傷するほどの高熱の空気を呼吸するなど、進んで行おうとする愚か者はいるまい。
 おまけに、この火事を消火できるほどの高等魔術にはかなり長時間の詠唱がいる。
 詠唱を終えるまで、何度呼吸で肺を高熱の空気にさらさねばならないか、想像するだに馬鹿馬鹿しいだろう。
 更に。時間が経てば、家の中には「死の空気」が充満する。
 錬金術で「死の空気」と言えば、炎の燃焼でフロギストンを奪われた空気を指す。
 この空気は呼吸には適さず、逆にその中に長時間さらされれば、生き物は息が詰まって窒息死する。
 デミテルの推測では、あの家の中の空気から、フロギストンが失せるまであと数分。
 そしていかな歴戦の勇者でも、「死の空気」に耐えられる時間は、5分もあるまい。
 結論としては、あの中にいる人間に与えられた時間は、どんなに長く見積もっても10分。
 10分を過ぎてもこの家からの脱出に成功せねば、中の人間は確実に灼熱地獄の中で絶命する。そのときにはすでに絶命している。
207Invitation to the inferno 4:2006/02/07(火) 22:10:40 ID:FAMPwIGV
 中で第三勢力の何者かが暴れているようだが、この策にまとめて嵌める事が出来た以上、そいつもまとめて葬り去れるはず。
 葬り去れなければ、また何らかの策を講ずればいい。
 例え万が一、この場にいる全員が生還したとしても、団結しつつあった一同に、疑心暗鬼の火種を撒けた事。それだけでも、この策に意味はある。
 デミテルは、家全体に炎が回ったことを確かめてから、その場を立った。ティトレイもまた、それに倣う。
 とりあえずデミテルは、この村を去ることに決めた。自らの策のための布石を完遂させた以上、ここにこれ以上いる意味はあるまい。
 ダオスにけしかけたクレスの様子を見たのち、素早くこの村を離脱する。
 だが、もし自ら窮地に陥らず、利だけをさらえる目算が立ったのであれば、少しばかり手助けをしていくのもいいだろう。
 一応クレスには落ち合う地点を事前に知らせてある。無事生還できれば、そこで落ち合えるだろう。
 クレスは拾ったとき、ボロボロの状態だった。
 もとより傷だらけのクレスは、ダオスを潰すための捨て駒と割り切ってけしかけてみたが、回収できればそれもまたよし。
 問題は、どれだけ安全に漁夫の利をさらうことが出来るか。デミテルの判断基準は、全てその一点に集約されていた。
 黒い外套を舞わせながら、デミテルは言う。
「…行くぞ、ティトレイ」
「…うん、わかった」
 ティトレイの返事を受けるが早いか、デミテルは可能な限り物陰に隠れながら、村の南側に向かう。
 ちょうど南側からなら、ダオスとクレスの様子も見ることが出来るし、何より南側のルートは、脱出の最短経路だからだ。
 デミテルと、そしてティトレイが去ったとき。
 そこには煉獄と化した家のみが残された。
 煉獄への招待状。それが、デミテルが中の4名に知られざる内に差し出した、一通の手紙であった。
208Invitation to the inferno 5:2006/02/07(火) 22:11:19 ID:FAMPwIGV
【デミテル 生存確認】
状態:TP30%消費
所持品:ミスティシンボル、ストロー、金属バット
第一行動方針:ダオス打倒計画の決行
第二行動方針:可能な限り戦力を削ぐ
第三行動方針:危険と見れば逃走する
現在位置:C3村 屋外。南部へ移動中


【ティトレイ・クロウ 生存確認】
状態:感情喪失、TP中消費
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック
基本行動方針:かえりたい
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する
現在位置:C3村 屋外。南部へ移動中
209名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/08(水) 01:49:48 ID:FNCecnLr
「どう思う?ジューダス。」
青髪の青年ヴェイグは向かいで佇む仮面の剣士ジューダスに尋ねる。
「どうもこうも無い。東の森から奇声が上がり、西から爆発音、
恐らく上級晶術発動の音が聞こえた、それだけの事だ。予定は変わらん。」
ジューダスは至って冷静に返答を返す。
無論ヴェイグが言おうとしている事は分かっていた。
はるか西のC3村に向かったロイドとメルディこと、及び
東から発した異様な奇声が南に向かったことに対する自分達の進路の再考である。
要するにヴェイグはC3村のことが気になっているのだ。

そしてそれはジューダスもまた同じ心情なのである。しかし、感情のまま
行動して結果命を散らすなどという無様な真似は出来ない。
すこしばかり意地になってるのかもしれない、と自身を分析した。
今思えばあの時、ロイド達と袂を分かったあの時が村に行く
最後のチャンスだったのかもしれない。もしこの場に
スタンが、カイルがいたなら、仕方ないと諦めたフリをして
彼らの感情に身を委ねることが出来たかもしれない。
(結局、僕はロイドもメルディも信じていなかったということか。)
あの2人の情熱を、優しさを、真っ直ぐに受け止められなかったということなのか。
そして彼らが感情で行動するのなら、自分は論理的であろうと、
自己の感情を論理で拘束し、封殺する。なんとも卑屈な性分である、とジューダスは少し
自嘲した。僕は、彼らのようには成れないと。
210彼らの変拍子 2:2006/02/08(水) 01:51:06 ID:FNCecnLr
(俺は、どうしたらいいんだ、クレア…)
ヴェイグはその自嘲を不思議な物と思いつつも再び自身の思考の中に潜る。
声の主がもう息絶えているであろうことは間違いない。
今あの村に行かない理由は思いつくだけでざっと10はある。
理屈でいえばそうなのだ。自分は死なない、死ぬわけにはいかない。
その大前提は今も揺るがない。しかしあの声がどうしても頭で反響する。
(どうにも、心を込めた声に弱いな、俺は)
「生きたいと思う心に、マーダーも反主催も無い。」
クレアならこう言うだろうか、と考える。
演説という事態に、すこし声の主とクレアを重ねているのかもしれない。
なんとも女々しい話である、とヴェイグは少し自嘲した。
そして少しだけ自分中のクレア像に従ってみることにする。

ジューダスはその自嘲を奇怪なことだと眺めているとヴェイグは手でペンを走らせる
様に動かす。意味を理解し、ジューダスはヴェイグに近づく。
ジューダスほど器用には筆言を同時にこなすことは難しく、ヴェイグの
筆運びは少したどたどしい。

「お前の武器はその2本の武器のみか?」
(件の話に出てきた女性だが、本当にあの村にいる可能性は無いのか?)
「そうだ、一つはロイドに貰った物だが。」
(有り得ん。まともな思考をしている人間があの村に近づく理由がない。)
「俺の武器もこの2本のみだ。正直な話フォルスを発動させるのが精一杯で格闘戦には
正直心もとない。」
(このゲームは人を狂わせる。その事実は俺が証明している。その人物が現在も
正常である保障は何処にもない。違うか?)
211彼らの変拍子 3:2006/02/08(水) 01:52:29 ID:FNCecnLr
ジューダスはしばし考える。そして、再度筆を走らせる。

「言っておくが僕の剣は貸さんぞ。自分の剣ぐらい自分で何とかしろ。」
(だがあの話は彼女が正常であるということを前提とした話だ。
その危険性が否定できない以上、尚のこと合流を急がなくてはならない。)

「それは分かっている。ここまでは前提の話だ。」
村には行けない、だが村が気になる。そんなヴェイグが「落とし処」を用意した。

「先ほどの西の爆発音の地点、恐らく橋かその近くで戦闘があったはずだ。
そこに行き少し探索をしたい。もしかしたら武器を調達できるかもしれない。」
(出来る限り正確な情報が欲しい。橋で何か起こった後こちらに誰も来ていないのだから
生存者は村に行ったのだろう。せめて、橋の一件によるあの2人の安否だけは確認したい。)

ジューダスは再度考える。いつもよりかなり時間をかけた後、また筆を走らせる。

「なるほど、たしかにこのまますぐに南下すればあの奇声の主に出会う可能性も
無くはない。危険を避けて一拍子置いてから南下するのも悪くは無い。」
(存外甘いやつだな。少々買いかぶりすぎていたか。)
「済まない、助かる。」
(見損なったか?)
「フン、貴様の長い話のせいで大分予定が遅れた。出発するぞ。」
(いや、不快ではないさ。)
212彼らの変拍子 4:2006/02/08(水) 01:53:33 ID:FNCecnLr
2人は腰を上げ、武器を確認し、歩を進める。
村が気になるのは2人とも同じ。村には行けないと分かっているのも二人は同じ。
自分だけでは心のままに動けないのも同じ。
そこに現れた「落とし処」に飛びつかない理由はない。

彼らの足取りは、少しだけ軽い。
213彼らの変拍子 5:2006/02/08(水) 01:54:44 ID:FNCecnLr
【ジューダス:生存確認】
状態:健康 
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、(上記2つ二刀流可)、エリクシール
基本行動方針:ミクトランを倒す
第一行動方針:C4でロイドたちの安否を確認、その後南下
第ニ行動方針:協力してくれる仲間を探す(特に首輪の解除ができる人物を優先)
第三行動方針:ヴェイグと行動
現在位置:B5森林地帯 →C4橋

【ヴェイグ 生存確認】
状態:右肩に裂傷 強い決意
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(パイン、ミラクル)
基本行動方針:生き残る
第一行動方針:C4でロイドたちの安否を確認、その後南下
第二行動方針:ジューダスと行動
第三行動方針:ルーティのための償いをする。
現在位置:B5森林地帯 →C4橋
214続く世界は永久(とこしえ)に 1:2006/02/09(木) 00:47:57 ID:ScvqxRv0
サンダーブレイドを喰らっていたロイドはダメージを残し、ほぼ痺れが治っている状態にまでもってこれた。
だが依然として室内の状態は最悪のものだ。
ミトスはリッドを睨み、リッドは困惑している。先程の様子からどうやら今は外に出られなくなっているらしい。
つまり、密室。
たまらず状況を打開するためにロイドは叫んだ。
「おいお前ら!今はそんなことやってる場合じゃ…」
「うぁ…」
その時、不意にリッドとミトスの対峙している反対側からうめき声がした、紛れも無いそれは、メルディの自身の声。
「メルディ!?」
たまらずリッドが叫ぶ。もしかして正気に戻ったのかと言う淡い希望を含めた呼びかけだったのだが。
『なんだこの娘…器としては未完成ではないか』
すぐさま二重の声にしてその希望は崩れた。
器が未完成というのは、確かにメルディには闇の極光術の資質はあったのだが、肉体的な問題で闇の力を受けきれないと言う点にあった。
リッドは苦虫を潰したような顔でメルディを見据える。
「くそ…やっぱり駄目なのか!?どうにもならないのかよ!」
叫ぶリッドをよそに一歩前に出るミトス。
その両手には剣。明らかな戦闘の構え。
「ごちゃごちゃうるさいよ。こいつを黙らせるには最初から一つしか方法はないのさ」
メルディを睨むミトス。その瞳には確かに相手への敵意が感じられた。
『貴様も愚かだな…この不完全な世界に放り込まれてのうのうと生きておる。絶対的な力があるというのに』
ネレイドは自分を睨む少年に話し掛ける。
ミトスは少し眉を動かし、睨む眼光を一層強くした。
こいつはどうやら僕の力に気付いているようだな…。確かにこの世界じゃまともに姿を変えられないし、ましてや変える為の力や条件すら揃っていない。
だがその気になれば本当の力を出すことだって出来るんだ。だが、
「お前に言われる筋合いはないよ。この力は姉さまだけのものだからね」
『ふん…創造の源もこの異様な世界ではまともに出せぬ』
言ってネレイドは天井に届くように、そう錯覚させるオーラを手に纏って
頭上に掲げた。
『不快だ』
「あああぁああ!!」
メルディが叫ぶ。その声は明らかな苦しみの訴え。
そう、メルディは苦しんでいるのである。
215続く世界は永久(とこしえ)に 2:2006/02/09(木) 00:48:51 ID:ScvqxRv0
「「メルディ!?」」
リッドとロイドが同時に叫ぶ。
メルディの様子がおかしい。ただそれだけは二人にも理解できた。
『この器も直使い物にならなくなる…そうなる前に闇の力をとくと見せてやろう』
ネレイドの遥か頭上に、闇が広がる。
天井のハズだった二回との隔たりは闇によってその役割を無にしていた。
「この力は…!」
リッドは一人驚愕の色を顔に浮かべる。ミトスとロイドは未だに状況が掴めないでいた。
「なんだ!?天井が無くなってる!?」
「お前、一体何をする気だ!」
二人は己の思うままに叫ぶ。
だがネレイドはその返答のつもりで一つの剣を出現させた。
その闇の剣は、頭上に表れし闇の中から。
その力は絶対の闇。その力は全てへの無。
『今すぐ楽にしてやる。私が新たな世界を作ろうぞ!』
頭上の剣がゆっくりと落ちてくる。
『開け、時空の扉…』
「やらせない!」
ミトスが瞬間移動でネレイドに近づく。
が、移動して真っ先に目に映ったのはメルディの手。
そこから冷気の力が収束されるのを感じる。
『フリーズランサー!!』
氷の刃が乱弾としてミトスに襲い掛かる。
「な、に!?」
咄嗟に双剣で弾いたが、数弾命中してしまった。
その一つは左肩を貫通した。
「二段階の同時マナ収束!?そんなバカな!!」
傷を追った左肩を押えてミトスもその顔色を変える。異なる属性を瞬時に、それも同時にマナを収束させて発動させるなどという芸当は、ミトスにとって稀にみる力だったのだ。
こんなことが出来るのは、一つの器に二つの心を持っている者、すなわち、
「メルディ…」
リッドは呟く。もう、あの頃には戻れないのか。
ここまで頑張ってきたのに、ファラの思いを無駄にはしたくないのに。
「ううううぁあああああ!!!」
メルディが叫ぶ。その限界も、恐らくは僅かなものだろう。
それに増してネレイドは闇の極光術を放とうとしている。メルディの体が耐えられるかどうかは、すでに明白だろう。
闇の巨大な剣はゆっくりと剣先を地上にめがけて落ちてきた。
『エターナル・ファイナリティ!!!!』
波動が近づく。闇の力が牙をむく。
リッドは咄嗟に一歩前に出てその闇の剣を迎える。
「リッド!?」
ロイドが叫ぶ。だがその声がリッドの耳に届いたかどうかさえ疑わしい。
リッドは内なる力を解放する。
「メルディーーッ!!!!」
叫び、己の剣を振り上げて『真』の力を展開。
『はああぁぁぁぁぁっ!!!!』
真の極光を纏うその技は『エターナル・インフィニティ―』。
その力を、絶対の『闇』へとぶつけた。
瞬間、淡く、だが確かに強い力をロイドとミトスは感じた。
ロイドのサンダーブレイドによる傷、及びしびれは完全に回復。
ミトスのフリーズランサーによる肩の損傷も、ゆっくりと塞がっていく。
「な。なんだ?」
「傷が…」
二人は同時に呟き、同時に驚く。
対照的にリッドはその場で力弱く倒れてしまった。
「リッド!?」
急いでロイドはリッドの傍へと駆け寄る。
上体を起こしてみる。どうやら息はあるが意識がないらしい。
リッドの真の極光術は過大な精神力を消する。
闇の反動を切り返す唯一の手段とはいえ、その過多な精神力を消費したリッドは僅かな余力を残して倒れてしまったのだった。
216続く世界は永久(とこしえ)に 3:2006/02/09(木) 00:49:50 ID:ScvqxRv0
「どうなってるんだ…」
だがその事態が分からないロイドは一人呟いてまだそこにある危機に目を向ける。
メルディ、もといネレイドはどうやら少し驚いているようだった。
『ぬぅ…まさか真の極光術を使うとはな。計算が狂ったようだ。だが』
ネレイドはメルディの手を握ったり開いたりさせる。どうやら感覚を確かめているらしい。
『ふむ、まだ使えるな。少し力を押えたのが功を相したか』
見ると既に頭上に広がった闇はない。
ミトスはもう一度ネレイドを睨み、双剣を構える。
「何なんだお前は。出鱈目すぎるよ」
『バテンカイトスを織り成すにはまだまだ力が足りぬ。ここはひとまず退却するのが妥当か』
「ふん、僕が逃がすとでも…」
ミトスの言葉が途切れる。
ミトスだけではない。その場にいる全員が固まる。
外から大きな何かの音。いや、これは紛れも無く燃焼の、焼却の音だ。
「燃えてる…?まさかこの家が!?」
ロイドが叫ぶ。急激に炎の温度を感じる。どうやら速攻発火性の何かが燃やされたようだ。
『我を葬ろうとは…愚かな奴らよ』
メルディに微笑を浮かべさせてネレイドは術の詠唱を開始した。
「ミトス!ここは俺たちも逃げよう!」
「何言ってるんだ!あの化け物を逃がすって言うのか!」
「あいつの力を見ただろ!?今ここで戦っても、メルディが苦しむだけだ!」
「お前はまだそんな甘いことを…!」
ゴォっと近くで何かが崩れ落ちる音がした。
それを聞いてロイドの訴えが一層強まる。
「何か方法があるハズだ!それまでここから一緒に逃げた方がいい!ここは今にも崩れそうなんだぞ!」
気迫迫るロイドにミトスは今のこの状況を思い返す。
確かに今の状況はかなり悪い。
火の、いや炎のまわりは異常なまでに早い。にもうじきここも崩れるだろう。
そうなっては元も子もない。マーテルを助けるためにはまず自分がこの場から脱出しなければとミトスは思った。
一人で頭を整理してしぶしぶ納得した。
「わかったよ。今だけだぞ」
その言葉を聞いてロイドは「あぁ!」と返事をした。
「だけどここを脱出するにはこの家ごと崩壊させるしかない。そのためには…」
言って術を詠唱しているネレイドを一度見る。
「分かってるって」
ロイドは意味を理解したのか、リッドを背負いだす。
「準備はOKだ」
ロイドの合図にミトスは頷き、両手を天井に翳してゆっくりと力を解放する。
『プルート!!!!』
「『ユグドラシル・レーザー』!!!!」
メルディの足元から黒い異様な物体が湧き上がり、周囲無法にその物体が光弾を撒き散らす。
その光弾は天井を、そして家の柱を事あるごとに崩していく。
ミトスの掲げた両手からは白く強い光線が天へと駆け上がる。
その二つの衝撃を得て、赤い屋根の家は崩落に近づいてゆく。
217続く世界は永久(とこしえ)に 4:2006/02/09(木) 00:51:41 ID:ScvqxRv0
「ハァァァ!!」
ロイドはリッドを背負って駆け出す。
ちょうどネレイドの技によって壁に穿たれた穴がある。
そこからは確かに炎が見える。どうやら家全体を取り巻いているようだった。
その炎にめがけてロイドは飛び込む。
否、それは華麗なる飛翔。
「『鳳凰天駆』!!」
鳶色をした青年の飛翔は炎を纏いて鳳凰の身を飾り、その外界へと姿を現す。
倒れこむようにしてしばらく地面に擦れながら止まる。
無事灼熱の家から脱出できたらしい。
今目の前に広がるのは燃え盛る炎の渦。そこから伸びる一筋の光。
飲み込まれていくようにしてその家は崩れていく。
リッドを横に寝かせてロイドはしばらくその光景を見つめた。
次第に白い光は縮まり、姿を消す。それと同時に家は崩壊を迎え始めた。
ミトスがロイドの横に現れる。瞬間移動でギリギリ抜け出せたらしい。
「メルディは!?」
ロイドはミトスに質問したが、ミトスは首を横に振る。
「僕が技を止めた時にはもういなかった」
ロイドは怒りでもなく悲しみでもない微妙な心境に包まれながら、メルディの安否を願った。

――そしてとうとうその家は ファラとアーチェを残して崩れ去った

【リッド・ハーシェル 生存確認】
状態:精神力著しく低下  気絶
所持品:ムメイブレード、エルヴンマント
基本行動方針:ファラの志を継ぎ、脱出法を探し出す
第一行動方針:不明
現在位置:C3村 家跡

【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:全快
所持品:ウッドブレード、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:状況の把握
第二行動方針:これからの行動を考える
第三行動方針:協力者を探す
現在位置:C3村 家跡

【ミトス・ユグドラシル 生存確認】
状態:全快
所持品:ロングソード、邪剣ファフニール、アトワイト、???
基本行動方針:マーテルを護る
第一行動方針:状況の把握
第二行動方針:マーテル、ダオスとの合流
第三行動方針:クラトスとの合流
現在位置:C3村 家跡

【メルディ 生存確認】
状態:ネレイドの干渉
所持品:BCロッド スカウトオーブ、リバヴィウス鉱、C・ケイジ
基本行動方針:新たなる世界の創造
第一行動方針:器(メルディ)の精神力回復の場所を見つける
第二行動方針:目の前に居るものの排除
第三行動方針: 器(メルディ)を壊さないようにする
現在位置:不明

218WALPLGIS 1:2006/02/09(木) 20:01:00 ID:SikPvYLt
「何故なのですか?」
聖母は剣士に問う。
「先ほども言いましたが、彼は危険なのです。目的のためには手段を選ばない、
そんな男を野放しにすれば必ず害になります。その為にはこちらも手段を選んでいられない。
言わばこれは必要悪なんですよ。」
剣士は淀みなく回答を述べる。まるで最初から回答を用意していたかのように。
「今のあなたに善悪が理解できているとは思えません。その短刀を持つ意味すら
理解できていないのでしょう?」
聖母は剣士を責めるように文言を紡ぐ。
「あなたの御高説は痛み入りますが、続きは彼が死んでからにしましょう。」
剣士クレスはその目を聖母マーテルから2人の男に向けた。
しかしその瞳は何を見ているのか見当がつかない。

向かった先では2人の男が戦っていた。いや一方的な嬲り殺しと
言った方が正しいか。金髪の魔王は五体何処を見ても傷の無い所は無いと
いう風体だ。そして今、新たな傷が上書きされた。エドワード・D・モリスンの手によって。
「何故抵抗しない、お前はこんな所で死ぬことをよしとする男ではないだろう。」
術を練りながらモリスンは金髪の魔王、ダオスに問う。
「…貴様の詠唱中は黙って見守ってやるのが礼儀だろう?」
ダオスは表情を変えずに皮肉を述べる。そこに更なる魔術。
「ふざけるなよ、魔王ダオス。その気になれば直にでも殺せるのだ。
抵抗したらどうだ?それとも…」
モリスンは拘束されたマーテルを一瞥する。
「それほどまでに同族が大事か。魔王とあろうものが。」
ダオスもまたマーテルを一瞥するが、クレスの短刀がマーテルに更に接近する。
「余計なことは考えないほうがいい。あんたが黙って死んでしまえば
全部丸く収まるんだから。ねえ?」
クレスの唇が少し歪む。しかしその瞳からはとても笑っているようには見えない。
「ダオス…」
後悔、無力感、焦燥、そんなものが渾然一体となったような表情で
マーテルはダオスを心配そうに見る。
「案ずるな、マーテル。あなたさえ守れれば、私はそれで構わない。」
ダオスは微笑んだ。マーテルを落ち着けるためか、自分の意思を再確認するためかは分からないが、
それは悲壮なまでの決意と覚悟。
思えば彼の笑顔など出会って一度も見たことは無かったかも知れない。
そして自分の覚悟の無さをマーテルは痛感した。彼は命がけで私を守ってくれているのに
私は彼に何もしてあげられない。
「茶番はそこまでにしてもらおうかダオス。モリスンさん、お願いします。」
クレスの言葉にモリスンは術の構成を再開する。
クレスへの不信感は最大限に高まっていたが、ここでダオスを逃すわけにはいかない。
この一件が終わってから詰問すればよいと、モリスンは判断した。
「あなたは」
マーテルはクレスに再度問う。
「本当に何も感じないのですか。あなたにも守りたい人は居るでしょう?
それすらも忘れてしまったのですか?」
「失礼ですね。僕にだって居ますよ、守りたい人が。そう…」
そこでクレスの言葉は詰まった。守りたい人は確かに居る。誰だった?
どんな人だった?本当に居たのか?思い浮かべる守りたい人たちの姿は霞にかかってよく見えない。
「悲しい人、でも私は信じています。本当のあなたは…」
マーテルの声にクレスは思考を止める。そして、不快そうに腕を動かす。
短刀がマーテルの皮膚に触れた。
219WALPLGIS 2:2006/02/09(木) 20:02:30 ID:SikPvYLt
「姉さま!!」
北から声とともに現れたのは一人、ミトス。リッドを放って置く訳にはいかないので
ロイドは残してきた。正確には甘い連中とつるんでいてはいざ敵を殺す時に邪魔になるからだ。
その場に居たすべての人間が未だ遥か遠くの少年を見る、マーテル一人を除いて。
(いまなら!!)
クレスの拘束が弱まった一瞬の隙を突いて抜け出す。彼女もまた古代大戦の四英雄の一人、
ある程度の護身術はミトスの師匠から教わっていた。
次に反応したのはモリスン。自分のするべきことを再確認し、ダオスに杖を向ける。
しかしその目に映ったのはマーテル、自分とダオスの間に立ちふさがっている。
「邪魔をするな!!」
「もうやめて下さい!こんな戦いに意味などありません!!」
マーテルに術が飛ぶ。しかしそれは彼女に当たらなかった。本来の攻撃対象、ダオスがマーテルを
庇ったからだ。モリスンは再度詠唱を試みる。しかしその前にダオスの腕がモリスンの杖を持つ腕を掴む。
コキャ、と小気味良い音を出してモリスンの腕が折れた。
杖を落とし、慌てて杖を拾おうとするが、
「何!!」
突如現れた蔓が杖を奪い、何処かに去っていく。まだ誰か居るのか、と考えたがそんな暇は無い。
モリスンは激痛を堪え術の詠唱を行う。あの法術書に書かれた治癒呪文を試みる。
できる、今ならできる。ここで唱えられなければ意味が無い。モリスンの覚悟が
未知なる術を確固たる物に変えていく。
「まだ終わらんぞ魔王ダオス!!ファーストエイ、ガッ」
後一歩のところで詠唱は止められた、ダオスの手がモリスンの顎を潰す形で止められた。
そのまま魔王は頭を持ち上げモリスンの体を宙に浮かす。
「マーテルを傷つけようとした罪、万死に値する。ここで塵も残さず滅べ。」
持ち上げた頭を地面に叩きつける。否、相手を持ったまま零距離で技を放つ。
「ダオスコレダァァァァァァ!!!!」
(私は、まだ…お前、を…)
崩れ行く意識とともに、エドワード・D・モリスンは文字通り「消失」した。
ダオスは呼吸を整える。大量に血を失ってしまったその体はを支えるがやっとと言った所。
しかしまだ倒れるわけにはいかない。まだ敵は残っている、マーテルの目の前で人間を屠るのは
心苦しいが最早止むを得ない。
「マーテル、あなたはどこかに隠れていろ。ここは私とミトスが…」
ようやくダオスは自分の背後に居たマーテルを目で捉えた。彼女の腹部に、深々と剣が
突き刺さっていることを理解する。そしてその奥には、剣士クレス=アルベインの姿。

「僕の言うことを聞かなかった罰だ、マーテル。斬刑に処す。」
220WALPLGIS 3:2006/02/09(木) 20:03:19 ID:SikPvYLt
そこから強引に横に剣を凪ぎ、夥しい血と共にマーテルの体は地面に落ちる。
その血を浴びながらクレスはなおも笑う。まるでかつて彼が行動を共にしたあの男のように。
何が起きたのか、ダオスにはしばらく理解ができなかった。彼女が死の淵に落ちるのは
これで二度目だ。あの時は白蛇の男が自分の居ない隙を狙って彼女を傷つけた。
そのとき私は怒りに身を焦がした。
私はその時誓ったはずだ。もう二度と、彼女を傷つけさせまいと、私の命に誓ったはずだ。
しかし現実にあるのは横たわる瀕死のマーテル。その事実をダオスは未だ受け入れられない。
「姉さま!!姉さま!!」
ようやくミトスが戦場にたどり着く。すでにクレスのことなど眼中に無い様子で
彼を通り過ぎてマーテルの元に駆け寄る。
そして泣き叫ぶ子供と茫然自失する大人を尻目にクレスはマントを翻し去っていく。
「現実はこんなものだよ、マーテル。だから僕は…」
ボソリと呟いたその言葉は誰にも聞き取られぬまま風に消えた。

「予定が狂ったな。」
遥か遠くから静観する影が1つ、魔術師の影。
狂った点は大別して2つ。
1つ、途中より乱入してきた少年の存在。これは即ち先ほどの火計が最上の形で成功しなかった
ことを意味している。必然的に未知の第三勢力の生存の可能性も否定できず、邪魔者の
始末と言う観点から見れば完全な失敗である。しかし火計の主目的はあくまで足止めであり
その点ではなんら問題は無い。
問題は次の1点、クレスの命令違反である。デミテルはダオスの死亡を確認するまでは
あの女を生かすように命じていた。最悪モリスンが死んでも人質さえ存命ならダオス殺害は可能だったからだ。
そのはずがダオスが死ぬ前にマーテルは死に、ましてや自分から殺すという暴挙。
いくら乱入者の存在があっても殺す理由が無い。つまりこれはクレスの自発的な独断専行ということである。
「洗脳が甘かったか、それとも…」
理由を推察しようかとも思ったが、やめた。要はクレスはティトレイより不確定要素が強い
ということだ。捨て駒として使い続けるには現時点で十分。ダオス討伐は叶わなかったが
ダオスにかなりの傷を負わせた。
確認する限りあの女以外ヒーラーは居ないようだから放って置けばいずれ自滅する。
それまでせいぜい他の人間を殺してくれれば勿怪の幸いといったところか。
直接この手で止めを刺すことも考えたがノーリスクハイリターンを心がけるデミテルとしては
不用意に手を出して馬鹿を見るわけには行かない。
「なにより、思わぬ釣果が手に入った。なあティトレイ=クロウ。」
いつの間にか増えた影、その手に持つは先ほどモリスンから奪った杖。
「55点といったところか、行くぞ、ティトレイ=クロウ。」
デミテルは踵を返し、南へ進む。
ティトレイは少しだけ村を長く見てから動き出した。
(あのかげ、いったいなんだろう?)
221WALPLGIS 4:2006/02/09(木) 20:04:39 ID:SikPvYLt
「姉さま!!姉さま!!目を開けてよ姉さま!!」
少年の声が響く。しかし応えるべき姉は一向に応えない。
尚も血がどくどくと流れる。
叫びつかれたのか、少年は頭を垂れる。しかし姉を助ける為の思考は止めない。
もう姉の体がもたない、魔術・道具、兎も角回復する手段が無い。
まず必要なのは時間だ。「姉」をもたせる必要がある。姉の自我をを保存する必要がある。
ミトスは姉のエクスフィア、クルシスの輝石に目を付けた。これさえ無事ならば少なくとも
姉の「意識」は保てる。しかしこの世界でのマナの消費量を考えると意識の劣化も早いはず。
しかし手が無いわけではない。ミトスには最後の切り札があった。
「歴史ってのはやっぱり繰り返すんだね。人を信じて、裏切られて、大切な人を失って。」
ミトスが取り出したのは「種」。彼が良く知る「実り」
「そして僕は禁忌に手を伸ばす。」
それは彼が知るものよりだいぶ小さい。おそらくシルヴァランドとテセアラ二つ分と
この異世界の必要マナの相対比からこのサイズに収まるのだろう。
だが、このゲームの間姉の意識を持たせるには十二分。
ミトスはその大いなる実りに姉のエクスフィアを寄生させる。
オリジナルの実りの規模ならば魔剣が必要だろうが、このサイズならば天使の力で事足りる。
「姉さま、少しだけ眠っていてね?すぐに代わりの体を用意するからさ。」
名簿で知っていた人物はミトスの仲間を除いて二人。
忠誠と引き換えに神子からの開放を望んだ男、ゼロス。
そして、今まで使い捨ててきた数多の神子の中で最も姉と固有マナが近いとされている
神子コレット。マーテルの器が、このゲームに参加している。
無論、姉の器の最有力候補に気づかないわけは無い。
ただ気にする必要が無かったからだ、姉が存命している間ならば。
ミトスは立ち上がり、ダオスに近づく。
「姉さまを復活させる。ダオス、力を貸せ。」
ダオスは向こうを向いたまま呟く。
「私には彼女を守れなかった、それは私の罪だ。
例え彼女が甦ったとしても、その事実になんら変わりは無い。」
そしてそれはエクスフィアを知らないダオスには復活を信じられないということでもある。
ミトスの拳がダオスの腰を打つ。
「見損なったね。あんたが腑抜けになるのは構わないよ、でもね。」
ミトスは一呼吸おいてダオスに宣戦布告する。
「あんたは、最後に必ず殺す。甦った姉さまの目の前で殺す。
だから、それまでは必ず生きていろ。」
そう言い残してミトスは去った。
ミトスが居なくなった後、暫くしてダオスも動き出した。
どこに行くのかも、何をするのかも分からないまま、あてどない空を行く。
222WALPLGIS 5:2006/02/09(木) 20:08:13 ID:SikPvYLt
少年は歩く、ただ姉さまのことだけを考えながら。
すでに行動を共にした仲間のことなど頭に入っていない。考えるのは姉を甦らせるプロセスのみ。
器は確実に手に入れる。手に入れてから天使化を処置すれば問題ない。
姉の意識はここにある。この世界のマナの異常性を考えると何が起こるかわからないが
発芽さえさせなければ危険は無いだろう。
そしてもう1つ必要なもの、魔剣エターナルソード。本来なら意識を器に
注ぎ込むには救いの塔の大規模な設備が居る。しかしそれはあの剣を使いたくなかったからだ。
世界を裏切ると決めたとき、ミトスは世界維持以外にエターナルソードを
使わないと決めた。故に4000年の間、彼は術と素手で戦ってきたのである。
しかしこの際手段は選ばない。あの魔剣の力さえあれば機材など必要ない。
まずは器の確保、そしてどこかにあるであろう魔剣を支給された者から奪うこと。
無論、魔剣が無いことも考えていない訳ではない、もとより4000年で培ってきた
システムとはまったく違う方法で行おうとしているのだから失敗の可能性はある。だが、
「失敗したら、全員皆殺しにしてゲームを終わらせればいい。あんな糞見たいな
奴に頼み込むのはムカつくけどさ。そうだよね?アトワイト。」
『…ミトス、あなたは…』
アトワイトはそういったきり黙ってしまった。
狂気の堕天使は、青空の下進んでいく。

もう傷を負ってどれだけの時間がたっただろうか。マーテルは微かに残った意識の中で
思った。あの子は、ミトスはとても恐ろしいことをしようとしている。あの子が
私のエクスフィアを取ったときに止めたかった。しかし声が出なかったのだ。
誰か、あの子を…ダオス、ユアン、…!!
「クラ、トス…?」
マーテルは驚きながら目を開く。あまりの出血に姿は分からないが確かにそこには人が居た。
見えはしないが微かに香るは見知った人物の懐かしいマナ。
クラトスは何かしゃべっているようだがもう何も聞こえない。
最後の力を振り絞り、マーテルは言葉を残す。言葉と共に血を失いながら。
「クラトス…あの子を…ミト、スを止めて。
私には、あの子も、シャーリィちゃんも、止められなかった。」
クラトスは何か叫んでいるように見える、でも何も聞こえない。
「貴方と、ユアンならきっと…」
そこで、彼女の意識は途切れた。
その死に顔はどこか微笑んでいるように見える。
まさしく、聖母の微笑だった。
223WALPLGIS 6:2006/02/09(木) 20:09:44 ID:SikPvYLt
姿の主は彼女が完全に息を引き取ったのを確認すると。
立ち上がる。彼が数時間前に来たときとは天と地ほどの差。
「思わぬところでシャーリィさんの手がかりですか。
五分の可能性に危険を冒して確認に来て正解ですね。」
少年は彼女を見回すと、彼女のデイバックから落ちた双眼鏡を拾う。
「…形見とかに縁があるのでしょうか。」
彼は手近な屋根にスルスルと上り、双眼鏡であたりを見渡す。
「どこの誰かは知りませんが、覚えておきますよ。でも今は…。」
跳躍。彼、ジェイは更なる屋根に飛ぶ。
「確認するまで生きててくださいよ、お兄さん。」
昼下がりの空に、ツバメが一羽舞う。


町一つを陣に、聖母の血と焔を贄に、
得られたもの、失ったもの、
それが彼女の、声の主の望んだものだったのかは、誰にも分からない。
224WALPLGIS 7:2006/02/09(木) 20:11:00 ID:SikPvYLt
【ミトス・ユグドラシル 生存確認】
状態:TP4/5
所持品:ロングソード、邪剣ファフニール、アトワイト、大いなる実り(この世界規模の)
基本行動方針:マーテルの復活
第一行動方針:マーテルの器(コレット)の確保
第二行動方針:魔剣エターナルソードの入手
第三行動方針:蘇生失敗の時は皆殺し
現在位置:C3→???

【デミテル 生存確認】
状態:TP30%消費
所持品:ミスティシンボル、ストロー、金属バット  魔杖ケイオスハート
第一行動方針:C3からの撤収
第二行動方針:クレスとの合流
現在位置:C3→南部へ移動中

【ティトレイ・クロウ 生存確認】
状態:感情喪失、TP2/3消費
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック
基本行動方針:かえりたい
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する
現在位置:C3→南部へ移動中
225WALPLGIS 8:2006/02/09(木) 20:11:58 ID:SikPvYLt
【ダオス 生存確認】
状態:TP半減、背中に打撲  HP1/8 虚無感
所持品:エメラルドリング
基本行動方針:???
第一行動方針:ミトスとの約束の為とりあえず死なない
現在位置:C3村 屋外

【クレス・アルベイン 生存確認】
状態:TP中消費、善意及び判断能力の喪失
所持品:ダマスクスソード、忍刀血桜
基本行動方針:不明
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する(不安定)
現在位置:C3→南下

【ジェイ 生存確認】
状態:頸部に切傷 全身にあざ  TP3/4
所持品:忍刀・雷電 ダーツセット クナイ(三枚) ヴォーパルソード  双眼鏡
第一行動方針:オールバックの少年を見極める
第二行動方針:クラトスの息子に剣を渡す
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
第五行動方針:ミトス・ユアンを発見する
現在位置:C3村

【マーテル・ユグドラシル 死亡確認】

【エドワード・D・モリスン 死亡確認】

残り25人
226WALPLGIS 補記:2006/02/09(木) 20:13:30 ID:SikPvYLt
*マーテルについては死亡確定です。具体的には考えていませんが
個人的にはミトスの計画は現時点では失敗の線が濃厚だと考えています。
仮に成功したとしてもそれはあくまでコレット、ということでお願いします。
大いなる実りも現時点では漏れ出すマナなどを受けてTPが自動回復するアイテムです。
227WALPLGIS 補記:2006/02/09(木) 20:15:08 ID:SikPvYLt
*マーテルについては死亡確定です。具体的には考えていませんが
ミトスの計画は現時点では失敗の線が濃厚だと考えています。
仮に成功したとしてもそれはあくまでコレット、ということでお願いします。
大いなる実りも現時点では実りから漏れ出すマナなどを受けて
TPが自動回復するアイテムです。
無論、マーテルが輝石の状態で喋ることは基本的にありません。
228業務連絡:2006/02/10(金) 00:02:34 ID:iAxt96w9
修正です
『続く世界は永久(とこしえ)に』にて
――そしてとうとうその家は ファラとアーチェを残して崩れ去った ×
――そしてとうとうその家は ファラとアーチェ そしてジョニーを残して崩れ去った ○
まとめサイトの方へお手数おかけして申し訳ありません
よろしくお願いします
229仲間達の行方 1:2006/02/10(金) 14:50:17 ID:1jq9wflE
スタンの回復を待つ間、リアラはE2城での出来事を知っている限りのことを話した

「ここに…クレスさんがいたんですね…」
ミントは持っている杖をにぎりしめる
「ごめんなさい…私ずっと眠ってて…」
「いえ、いいんです。それよりも、ケガをしていたクレスさんを治療してくれて感謝しているぐらいですから。」
ミントはそっとリアラの手を握る
「ありがとう…ございます。あの…城が壊れた後、クレスさんの姿は無かったからきっと無事なんだと思います!」
「ええ、私もそう信じています」
ミントはそう言うと静かに笑った
230仲間達の行方 2:2006/02/10(金) 14:51:08 ID:1jq9wflE
「カイル!」
スタンが突然カイルを呼ぶ
「は、はいっ!」
「君がミントを運んでってくれてたんだろ!ありがとな!」
今はもういないはずの父さん…その父さんが、自分を褒めてくれている…!
「ありがとうございます!」
カイルは全力で言った
「おぉ、ずいぶん威勢がいいな。君みたいなのがいるとこっちも頼もしいよ」
「スタンさんこそ、ケガしてるわりには元気ですね」
「ははっ、まあな」
二人はお互い笑いあった
それは今まで果たせなかった、父と子の当たり前の幸せな光景…
231仲間達の行方 3:2006/02/10(金) 14:51:56 ID:1jq9wflE
「ところでスタンさん、ハロルドさんは?一緒じゃなかったんですか?」
ミントがスタンにそう問うと、
「ハロルド!?」
と、カイルとリアラがハモった
「二人とも、ハロルドと一緒にいたんですか!?」
カイルは語勢を強くして言う
「あ、あぁ…」
スタンは微妙な表情をしている
「ハロルドは私達の仲間なんです!」
「それで…ハロルドはどこに…?」
「あの…その…ちょ、ちょっと途中ではぐれちゃって、あはは…」
スタンは苦笑いで言う
「そうですか…」
気落ちするカイルとリアラ。
ハロルド…か…
スタンは複雑な気持ちだった…
232仲間達の行方 4:2006/02/10(金) 14:55:16 ID:1jq9wflE
「スタンさん、ケガは?」
「ん…だいぶマシにはなってきてる…かな?」
「ごめんなさい。コレットが…」
「いいっていいって。よくわからないけど…そのコレットって子は君を守るためにこうなったんだろ?」
コレットは今はずっとおとなしくしている
「…はい」
ミントさんもスタンさんも、自分をなぐさめてくれる。
私は守られてばかり…
強くなりたい…
「コレット…私も、強くなれるかな…」
コレットはほとんど反応を示さない
「私も…私にできることを力いっぱいやってみるよ。ね?コレット…」
233仲間達の行方 5:2006/02/10(金) 14:56:30 ID:1jq9wflE
「オレのケガが治ったらすぐにC3村に向かうけど、いいよな?」
三人はそれぞれうなずいた
スタンはC3村の方角を見つめ、
「無事でいてくれよ…ジョニー…」
と、小さくささやいた…

【リアラ 生存確認】
状態:TPほぼ回復
所持品:エクスフィア強化ロリポップ 料理大全 フルールポンチ1/2人分 ???? フランヴェルジュ、オーガアクス、ピヨチェック、要の紋
第一行動方針:スタンの傷が治るまで待機
第二行動方針:カイルについて行く
第三行動方針:コレットを信じる
第四行動方針:ハロルドが気になる
現在位置:E2城跡
234仲間達の行方 6:2006/02/10(金) 14:57:44 ID:1jq9wflE
【コレット 生存確認】
状態:TPほぼ回復 無機生命体化 (疲労感・精神力 磨耗無視)
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(残弾0)
苦無(残り1)
基本行動方針:防衛本能(攻撃意思に対する完全抹殺及び不明瞭な干渉に対する威嚇)
第一行動方針:リアラの言うことを聞く
現在位置:E2城跡

【ミント 生存確認】
状態:健康 TPほぼ回復
所持品:ホーリィスタッフ サンダーマント
第一行動方針:スタンの傷が治るまで待機
第ニ行動方針:C3村に向かう
第三行動方針:仲間と合流第四行動方針:クレスが気になる
現在位置:E2城跡
235仲間達の行方 7:2006/02/10(金) 15:00:33 ID:1jq9wflE
【スタン 生存確認】
状態:アバラ三本損傷(治るまで後少し)
所持品:ディフェンサー ガーネット
第一行動方針:傷が治るのを待つ
第二行動方針:C3村へ向かう
第三行動方針:仲間と合流
第四行動方針:ジョニーが気になる
現在位置:E2城跡

【カイル 生存確認】
状態:健康
所持品:鍋の蓋、フォースリング、ラビッドシンボル(黒)(割れかけ)
第一行動方針: 父の傷が治るまで待機
第ニ行動方針:C3村へ向かう
第三行動方針:リアラを守る
第四行動方針:仲間と合流
第五行動方針:ハロルドが気になる
現在位置:E2城跡
236地に堕ちる翼。そして―― 1:2006/02/11(土) 02:59:46 ID:5F7b16hd
 太陽がそろそろ、天頂から滑り落ち始めようかという時刻。
 一同は、戦々恐々とながら、支給されたパンをかじっていた。
 何とかあの牛人間の撃退に成功し、ほっと一息の漆黒の翼の面々。遅まきの昼食を取る一同の顔には、安堵と緊張がない交ぜになっている。
「…まったく、何でミノタウロスがこんなところにまで出てこなきゃならないのよ…はむ」
 プリムラはちぎったパンを口に放り込みながら、G5の村で回収出来た砂糖と、自生していた果実を煮詰めて作った即席のジャムを味わっていた。
「いや、あれは伝承に聞くミノタウロスではあるまい。奴は粗暴ながら、全うな人間として通じる自我があった。獣人、とでも言うべきか」
 ユアンは先刻の牛人間…トーマとの交戦時の記憶から、プリムラの説を否定していた。その時、鍋を暖める焚き火が、わずかばかり身を震わせる。
 一座の中心で燃えるのは、魔法の火。地面に魔法陣を描き、刻み込まれたルーンの力で周囲のマナを吸引し魔法の火を起こす、はなはだしく原始的な魔術である。
 ユアンも伊達に天使と化し、4000年の時を生きてきたわけではない。この手の原始的な魔術に対しても、十分な造詣を備えているのだ。
 例え原始的とはいえ、これが魔法の火であることに変わりはない。
 今はまだ夜ではないとは言え、焚き火は危険な行為だ。下手に通常の薪を燃やせば、立ち上る煙で他の参加者に居場所を教えかねない。
 だが、この魔法の火ならば煙は立ち上らない。こんな環境下で焚き火をするならば、これくらいしか選択肢はないのだ。
 幸いこの魔術による精神力の消耗は大したことはなく、その消耗は一度の食事で十分に補える。
 焚き火を使わない料理では、あまり滋養に富んだ献立は作れない。
 それに、万一火を通し忘れた食事を摂ったがために、他の参加者の手にかかるより先に食中毒で死んだら、もはや悲劇などという表現すら生ぬるいだろう。
 一同を戒めるような発言をこれまで繰り返してきたユアンだが、よってさすがに暖かい食事を取ることを禁じることはしなかった。
「まったく、危ないところだったぜ。この俺の体を張ったハッタリがなきゃ、今頃俺達は…」
「今もまだまだ『危ないところ』だ。このゲームが終了する瞬間までが、『危ないところ』であることを認識しておけ」
 先ほどトーマの撃退に成功し、浮かれたような物言いになるグリッドだが、それはもちろん戒めておくことにする。
「あ…すいません、ユアンさん。スープがそろそろ出来たみたいです」
 そんなユアンに、鍋の火加減を見ていたカトリーヌが声をかける。この鍋も、G5の村で調達してきたものだ。
 鍋の中身は、煮込んで灰汁を取った食用の野草に、千切ったパンを加えて煮溶かした、即席のスープ。
 適度に塩胡椒も振られており、もう少し材料が揃っていれば、オニオンスープに見えなくもないだろう。
237地に堕ちる翼。そして―― 2:2006/02/11(土) 03:00:29 ID:5F7b16hd
「…よし。ならそのスープを飲みながらでいい。私の話を聞いてくれ、みんな」
 スープの完成に小躍りするグリッド、スープをかき混ぜながら各々の椀にスープを注ぐカトリーヌ、水を飲みながら椀を受け取るプリムラ。
 ユアンも自分の分を受け取りながら、一同に呼びかけた。
「これから我々の行くべきところについて、私から1つ提案がある」
「…と言いますと?」
 カトリーヌは首を傾げながら、ユアンを促した。
「現時点で分かる限りでは、島の北東部は危険だ。朝方に北東部で、凄まじい炸裂があったのを見ただろう、諸君?」
 グリッドは頷く。その拍子に口の中のパンを喉に詰まらせかけ、水をがぶ飲みするはめになっていたが、それはこの際重要ではない。
「何者かが集結を呼びかけた、C3の村のある北西部も却下。今頃あそこにはマーダーも集まり、相当混沌とした情勢となっているだろう。
そもそも島の西に向かうには、F4とG4の間にかかる橋を渡らねばならない。橋は交通の要所…すなわち、C3に向かわなかったマーダーが待ち構えている危険もある。
そしてこの南東部も、あの牛人間がいる。辛うじて撃退には成功したものの、まだあいつがこの辺りをうろついている可能性もある」
「それじゃあ、あたし達はどこへ行けって…」
「島の中央部だ」
 たずねるプリムラに、ユアンは即答する。
「厳密には、D5の山岳地帯。今から出発しても、日没までには到達できるだろう。そこに行けば、ひとまず危険地帯からは逃れられる。
D5の山岳地帯なら、潜伏に適する岩肌の地面が広がっている。それにあそこは、この島唯一の大規模な水源だ。
万一絶食を強いられるような事態になったときでも、最悪水さえ確保できれば、このゲームの制限時間の間くらいなら、何とか命を繋いでいられる。
ミクトランからの諜報の手を封じた今なら、あそこが禁止エリアに指定されるまでの間、D5でかなり長時間粘れるはずだ」
「ふむ…なるほど」
「この提案を承認するか、リーダー?」
 ミクトランの諜報手段を誤解しているユアンは、しかしながらはっきりと言い切る。リーダーと呼ばれたグリッドは難しい顔をして、たっぷり間を取ってから、
「よし、その案でいこう!」
 結局ユアンの提案を受け入れた。
238地に堕ちる翼。そして―― 3:2006/02/11(土) 03:01:02 ID:5F7b16hd
「さすがはわが漆黒の翼の一員だな」
 鷹揚に頷くグリッド。ユアンは軽くため息をついたが、そろそろこの男に調子を合わせるのにも慣れてきた。
(…単純と言うか何と言うか…)
 ユアンは心中で呟いた。
(だが、ひょっとしたらボータも、今の私と同じことを思っていたことも、あるのかも知れないな)
 そう思うと、一瞬の油断も出来ないこのバトル・ロワイアルの渦中にありながら、ユアンは何故か、少しだけ笑いが込み上げてくるようにさえ感じてしまった。
(まあ、今はゆっくり食事としようか)
 このゲームという異常な環境、それにもともとのユアンの気性を合わせて考えると、彼がこんな気分になるなどまず絶無の機会であろう。
 そんなユアンの心を優しく解きほぐしてくれるのが、この食卓なのかもしれない。
 生まれも育ちも違う人間が、団結して1つの困難に立ち向かう。その団結を成し遂げた結果が、この昼食。
 確かに自分達は今、血みどろの嵐の渦中にもまれている。けれども今だけ、今だけは…。
 だが。
 そんな淡く柔らかい気持ちが、再びやってきた嵐に浸食されるのは、そう遠い未来のことではなかった。
 スープを暖める焚き火が、忽然と消えた。
「? …あら?」
「消えちゃいましたね…」
 いぶかしげな様子で言う女性陣。ユアンの目元は、彼自身の青い髪に阻まれて、うかがう事は出来ない。
「おい、ユアン! お前の術はこの食事の間もつって…」
「お前達…」
 刹那。
 ユアンはきっと一同の顔を睨み付けた。
「手元の荷物をすぐ持って、北に向かって走れ!!」
239地に堕ちる翼。そして―― 4:2006/02/11(土) 03:01:33 ID:5F7b16hd
 ユアン自身、滅多に上げる事のない大音声。その剣幕に押されてか、残る3人は飛び上がった。
「一体何が起きたと…?」
「何者かが魔術をここに用いた! ぐずぐずしていると死ぬぞ!!」
 言うが早いか、ユアンは自分の皮袋を乱暴につかみ、立ち上がった。
 あの地面に描いた魔法陣が無効化された。それはすなわち、周囲のマナの律動が乱されたことを意味している。
 ユアンが用いた術は、周囲のマナを吸引して、それを炎の形にして発現させるのは承知の通り。よって、周囲のマナが乱れれば、炎もまた乱れるのだ。
 ユアンの用いた炎の魔術は、もちろんなまじっかなマナの変化で消えるような代物ではない。
 彼自身の技量も手伝って、例え原始的とは言え、十分にマナの乱れへの耐性があるのだ。
 そんな炎の魔術が無効化されこと。それはすなわち、この結論を必然的に導き出す。
 「なまじっか」ではないマナの変化が、周囲に起きている。何者かが、強大な魔術を解き放った。
 走り出した一同。しかし、ユアンの檄も甲斐なく、警告は遅過ぎた。
 一同の疾走。だが慌てて地面を蹴りつけ走り出そうとした、その時。
 一同の足の裏には、何の手応えもなかった。
 地面が、ない。
 一同は驚愕と恐怖に顔を歪めた。いかにあがこうと、翼を持たざる人間の身では大地の束縛に抗うことなど、かなわぬ行為なのだ。
 陥没した大地のはざまに、4人の男女の悲鳴が吸い込まれていった。
240地に堕ちる翼。そして―― 5:2006/02/11(土) 03:02:08 ID:5F7b16hd
 やった。
 丸く地盤沈下を起こした地面。その中に落っこちた4人。その光景をしかと確かめながら、森の地面に手を突く一体のエクスフィギュアは、歓喜に打ち震えていた。
 体が…そして何より心が、もはや完全な怪物と化したシャーリィは、一片のためらいもなく、爪術「グランドダッシャー」を放っていたのだ。
 彼女が用いた手法は、以下の通り。
 「グランドダッシャー」の地殻破壊エネルギー…すなわち地震波を、漆黒の翼の面々の足元へ向け解き放ち、彼らの足元の地下部分を瞬時に破砕。
 そして上部の土壌が、自重と4人の体重を支えきれなくなったところで崩落し、彼らを奈落の底に導いたのだ。
 本来ならば、ブレス系爪術は術者の視界内にあるものしか、攻撃ないし破壊の目標に定めることは出来ない。地下の岩盤を直接狙うことは出来ないのだ。
 だが、漆黒の翼のいた地面の地下部分を破砕するだけであれば、そこまで精密な照準は必要ない。
 そして何より、地震波を地面に伝わらせながら、その「手応え」でもって、二次的に照準を定めることも出来る。
 爪術への知見の浅い人間であれば、地属性の爪術など鈍重で、こんな速撃速攻での岩盤破砕を旨とする作戦など、不可能だと言うかも知れない。
 だが、地震波の速度を侮るのは浅慮の証拠。地震波は地面にしか伝わらないとは言え、その速度は音速の軽く数十倍を誇るのである。
 とにもかくにも、シャーリィの姦計は、こうして成立した。成立してしまった。
「OOOOOOHHHHHHH!!!!」
 歓喜に打ち震えるシャーリィ。全身が文字通り、がくがくと打ち震えている。
 これで、あいつらを殺りたい放題殺れるわ。このまま生き埋めにしちゃってもいいけど、それじゃ楽しくないわよね。
 あいつらが怖い怖いって泣き叫びながら、全身の骨をへし折られたり、自分の内臓を見たりしながら死んでくれないと、面白くないもの。
 うふふふ…気持ちいいわ…気持ちいい…気持ちいい気持ちいい気持ちいいッ!!!
 …そういえば、わたしが水の民の里にいた頃、フェニモールがバナナをくれたことがあったっけ。
 別段わたしはバナナは好きじゃなかったけど、すぐにいい「使い方」を思いついたの。
 お兄ちゃんに抱かれたくてしょうがない夜なんか、お兄ちゃんのことを考えながら、バナナであそこをかき回すの。すごく気持ちよかったわ。
 でも、今の方が、それの何倍も気持ちいい。あいつらをぐちゃぐちゃの肉団子にするところなんか、想像するだけでもうイッちゃいそうになる。
241地に堕ちる翼。そして―― 6:2006/02/11(土) 03:03:13 ID:5F7b16hd
「WROOOOOOOOOHHHHWWW!!!!」
 シャーリィは煮えたぎる欲望を、存分に発散させるかのように、凄絶な咆哮を上げた。
 俗に、快楽殺人犯と呼ばれる人種がいる。その名の通り、殺人という行為そのものに快感を感じるような、ねじくれた心性を持つ者達だ。
 その快楽殺人犯の中でも極め付けの者には、もはや殺人行為に対し、性的エクスタシーを感じるほどの狂人もいる。
 彼らは性交や自慰のみならず、殺人を完遂することで絶頂に達し、射精するほどの快感を得ているのだ。
 女ながらに、今のシャーリィもまた同じ。虐殺に性的快感を覚えるほどに、彼女の心はエクスフィアの毒に侵食されてしまっていたのだ。
 獲物を捕らえ、この世の天国とばかりに快哉を上げるシャーリィ…
 いや、すでに「彼女」は、かつてのシャーリィ・フェンネスという名の少女とは、似ても似つかぬ狂獣と言ってもいいかもしれない。
 彼女は雄叫びを放ち終えたなら、すかさず次の呪文を紡ぎ、滄我の力をその両の手の爪に満たす。
 ブレス系爪術、「ブリザード」。これは獲物を絶対に逃さないために必要な処置。穴から絶対に這い出て来れない、真の奈落を作るための。
 水の民の古代呪文が発動し、周囲には恐ろしいほどの冷気が発生する。
 シャーリィは、その冷気を自らの掘った奈落の落とし穴の壁面に収束させる。霜を結ばせた地面は、次の瞬間白い結晶に包まれた。
 そして、これが仕上げ。
 ブレス系爪術、「タイダルウェーブ」。発動地点は、もちろん落とし穴の真上。
 通常の「タイダルウェーブ」は、地面から大量の出水を発生させるが、今回は空中から。そして、威力はわざと人を殺傷しない程度に絞ってある。
 何もない空中から、突然ほとばしった大量の水。それは豪雨と落とし穴の中に流れ込み、内部を水浸しに…やがてはそれを通り越して、水牢にする。
 「タイダルウェーブ」の雨を見ながら、シャーリィはほくそ笑んだ。陰鬱な、凄惨なエクスフィギュアの唸り声を上げながら。
242地に堕ちる翼。そして―― 7:2006/02/11(土) 03:05:43 ID:5F7b16hd
 「グランドダッシャー」、「ブリザード」、「タイダルウェーブ」。
 強大なブレス系爪術を連発しておきながらも、シャーリィの内には、ほとんど疲労が残っていない。
 シャーリィが憎悪を、歪んだ快楽を、心の中に育てる。それがエクスフィアに吸収され、エクスフィアはその見返りに、彼女に底なしの魔力を与えているのだ。
 シャーリィの胸の中央部で光り輝くエクスフィア。もしそれを間近で見ることが出来たなら、みながみなそれに気付くことが出来たはずだ。
 シャーリィの負の想念が育て上げたエクスフィア。その青い殻の内側に目を凝らすと、赤い菱形の宝石が存在していることに。
 本来ならば、長時間の「栽培」を必要とするエクスフィアの進化。
 だがシャーリィの桁外れの憎悪が、メルネスとしての資質が、そしてこの島の異常なマナの位相が、エクスフィアの進化速度を、猛烈に加速していたのだ。
 エクスフィアの内部に存在する赤い宝石。その正体はもはや言及には至るまい。エクスフィアという「殻」が破られたとき、何が起こるかもまた然り。
「GROWWWAAAAHHHH!!!!」
 シャーリィはもはや、名状するのも困難な原始的欲求に突き動かされ、雨の降り注ぐ落とし穴に跳躍し、飛び込んでいった。
 この落とし穴の深さは、およそ10m。半径もまた、10mというところか。土質が柔らかかったから、4人はそれほどひどい怪我ではなかっただろう。
 だが、その壁面はすでに全面が氷に覆われ、上によじ登る足がかりは存在しない。そして中は、時間が経てば水浸しになる。
 水中でも呼吸でき、自在な活動を可能とする、水の民。彼女はそのアドバンテージを、極限まで活かせるフィールドを作り出そうとしているのだ。
 もちろん、水浸しにしてから飛び込んでもいいが、それでは犠牲者らの恐怖の叫びを存分に聞くことは出来まい。
 極限の恐怖を演出するためには、じわじわと逃れられない死が迫ってくるのが、一番の手法なのだ。
 地に墜ちる翼。そして舞い降りた少女。
 漆黒の翼を踏みにじらんとする影は、もうそこまで迫っている。
243地に堕ちる翼。そして―― 8:2006/02/11(土) 03:07:23 ID:5F7b16hd
【グリッド 生存確認】
状態:落下による軽度の打撲
所持品:無し
基本行動方針:生き延びる。
       漆黒の翼のリーダーとして行動。
第一行動方針:現状に対処する
現在地:F5の森

【プリムラ・ロッソ 生存確認】
状態:落下による軽度の打撲 
所持品:セイファートキー、ソーサラーリング、チャームボトルの瓶、ナイトメアブーツ
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを磔にして島流し決定。
第一行動方針:現状に対処する
第二行動方針:出来ればC3行きを提案
現在地:F5の森

【カトリーヌ 生存確認】
状態:落下による軽度の打撲 
所持品:マジックミスト、ジェットブーツ、エナジーブレット、ロープ数本、C・ケイジ
基本行動方針:帰りたい。生き延びる。
第一行動方針:現状に対処する
現在地:F5の森

【ユアン 生存確認】
状態:落下による軽度の打撲 TP1/3消費 砂鉄が体にくっつく
所持品:占いの本、エナジーブレット、フェアリィリング
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを信用していない。
第一行動方針:現状に対処する
第二行動方針:漆黒の翼を生き残らせる
第三行動方針:漆黒の翼の一員として行動。仲間捜し。
現在地:F5の森

【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
所持品:UZI SMG(30連マガジン残り2つ) ショートソード(体内に取り込んでいる) 要の紋なしエクスフィア(シャーリィの憎悪を吸収中、ひび割れあり)
状態:エクスフィギュア化 腹部の傷は再生完了 TP10%消費
基本行動方針:憎悪のままに殺戮を行う
第一行動方針:漆黒の翼の一同に、たっぷり恐怖を与えてから惨殺する
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
現在地:F5の森
244ターニング・ポイント 1:2006/02/11(土) 20:30:26 ID:pJeKCRmv

「…っ」
「こんな近くに死体があったのか…」

移動して間もなくのことだった。
C4の橋へ向かう途中、2人がまず森で見つけたのは亡骸であった。
片や火傷の酷い淡い青の髪の男性。
片や狂喜に歪み血に染まった男性。
どちらも血の気は失せ、土色の肌がある程度の時を経ていることを証明していた。
双方傷は酷く、至る所に血が付着している。
大地も同じだった。黒褐色と化した血痕が弛にこびり付いている。
相討ち。その短い言葉がぱっと頭を過ぎった。

「ヴェイグ」
「何だ…」
「後ろを向いていろ。見ない方がいい」

その言葉で、今から彼が何を成そうとしているのか直ぐに理解できた。
首を左右に振り、否定の意を表す。
そして一言、「…大丈夫だ」と。

「…そうか」

黒衣に輝く冷たき刃。
それは金属特有の冷たさでもあり、彼の心の冷たさでもある。
だがどこか不完全な、冷たさ。

(すまない…僕の愚かしい行為を…許せ…!)

彼は振り下ろす。
紺碧の空の下、躊躇いと悲哀の中で鈍く煌めく刃を。
彼は祈る。
深緑の森の中、死に行く者に安らぎが有らんことを。
決して形式ではなく、本物の行為。





ごとん
245ターニング・ポイント 2:2006/02/11(土) 20:32:31 ID:pJeKCRmv
橋というものは、流れというものに遮られた2つを、1つに結ぶものであって。
その上では様々な人が行き交い、出会い、擦れ違い、別れる。
向こう側に広がる世界は新しくて、
云うなれば、ひとつのターニング・ポイント。




「これは…!?」

目の前の光景は、土で汚れた手の2人が予想していたより余程凄まじかった。
木造の橋は損傷し、真ん中にはぽっかりと穴が開いている。
縁も所々壊れ、下手をすれば海に落下してしまう程だった。
組立てと支柱がしっかりしているため、橋としての役割は機能しているのはまだ不幸中の幸いという所か。
ここで何が起きたのか。この場に居なかった2人には知る由も分かる訳もなく、ただ取り残された惨状を見つめる。
ただし、先程とは別。惨状という名の切り離された風景画の中には、明らかに足りないパーツがあり、不自然だった。
さあさあと波の優しくも無常な音はそれを教えてはくれず、ただ世界が無音の領域にならぬようにと必死にその身を揺らめかせている。
その切り離された世界に入り込む、黒と青の2人の剣士。
剣士の存在は、世界を埋めるパーツとしては不適な存在であったが、それも知らない2人はずかずかと足を進めていった。
246ターニング・ポイント 3:2006/02/11(土) 20:34:05 ID:pJeKCRmv
恐らく先程の音源はここだろう。2人はこれを見て直感する。
しかし、人影はない。それは生ある者も死す者も同じだった。
不揃いのパーツの第1。

「…まさか、海に落ちたのか?」
「! ここはB4の近くだ、もし禁止エリアに流れついたら…!」

黒衣の剣士は躊躇いもせず言い放つ。
青髪の剣士は狼狽えて低音を荒げる。

「だが、禁止エリアに行き着いたとしても、確認出来ないのも事実だ。それにこの話はあくまで仮定…証拠はない」

それをまた黒衣の剣士は冷静に言い返す。
その視線の先は傷つけられながらも無言で佇む痛々しい橋。
それに釣られ見た青髪の剣士は、足りないパーツの2つ目に気付く。
歩を進め、彼が止まった箇所は橋の少し奥であった。
そして碧眼を亜麻色の足元に向ける。俯いた顔に広がるは微かな笑み。

「…血痕が全くないな」

そこには、少量の血。

「ああ。戦いが起きたのならもう少し血が残る。ロイドやメルディも無事の可能性は高いと考えていいだろう」

貫かれたような穴から、何者かの熾烈な抗争があったのは分かる。
しかし、その大きな傷痕と比例する筈の、流れたであろう血は全くと言ってもいい程に無い。
247ターニング・ポイント 4:2006/02/11(土) 20:36:08 ID:pJeKCRmv
あるのは軽く吐血したような一箇所に広がる血痕のみ。
これが違和感、不揃いのパーツの第2。
そして、

「何より、武器がなくて残念だったなヴェイグ」
「…残念だと言っているように聞こえないのは気のせいか?」

偽りの目的であった武器の存在、不揃いのパーツの第3。
まあ、これに限っては無くても構わない。何せ虚言。
だがこの場に武器がないということは、他の状況と共に考えれば無事の証拠となる。
青の剣士──ヴェイグ・リュングベルは顔を向ける。
黒の剣士──ジューダスへ。
ヴェイグの表情は安堵に染まっており、心なしか向けられているジューダスも同じように見える。
未完成の惨事の世界。
即ち、別離した2人の平安を意味していた。



一瞬、空気が澄み渡る。
汚れた手と纏う青い光からは冷気が溢れ、研ぎ澄まされた鋭い音と共に氷が張っていく。
広げられた手の先は、術でえぐられた橋の穴。
海への口は氷により閉じられ、その奥で反抗するかのように波が荒れていた。

「…相変わらず、不思議な術だな」
「…不思議という感覚はないんだがな」

ジューダスはヴェイグが用いる氷のフォルスを見て呟く。
ヴェイグは訝るような表情で手を戻し答える。
248ターニング・ポイント 5:2006/02/11(土) 20:37:23 ID:pJeKCRmv
(マナを感じさせないフォルス。
 晶術はレンズから引き出す晶力…メルディが使った晶霊術とやらは、確か晶霊という存在をケイジに取り入れ、力を行使する…だが、それもこの世界ではマナと同意義とされているようだ)

軽く両腕を重ね思考に潜る。
この世界の構造。
まず、ここは自分がいた世界でないのは確実だ。そうでなければマナなど要らない。
だからと言って、参加者の誰かの世界とも考えにくい。
今まで殆ど森に居たが、かつて自分が見たことのある植物も、全く知らない植物も存在していた。
単純に考えればジグソーパズルのように、様々な世界の、上手くはまる欠片を繋ぎ合わせたようなものだろう。
つまり、誰の世界でもなくミクトランが作り出した世界。それが複雑なマナの示す事実だ。
──だが、それぞれのパズルから少しずつ拝借したピースで、1つの絵が完成するのか?
否、出来上がるのは表現し難い絵。不明瞭なモザイク。非・完璧。
未完の絵となるように、ここも未完の世界なのである。
そして未完である以上、必ず穴がある。

「? どうした、ジューダス…」
「いや、何でもない」
249ターニング・ポイント 6:2006/02/11(土) 20:39:10 ID:pJeKCRmv
声をかけられて、やっと自分が深く思考に潜っていたことに気付く。
いつの間にか近くにいたヴェイグが心配そうな顔で見ていた。
ひらひらと小さく手を振る。が、その行動とは裏腹に思考は止まる余地を知らない。

(…何故だ。どうして引っ掛かっている? この違和感は一体…)

それは前々からあった。
明らかに自分の中に疑念が生まれていた。
複雑な世界に生まれる欠陥。
複雑な世界と同じ、複雑なマナ。

(…マナを感じさせない? ……。…他は…? ……。
 …似て…否なるもの?)

疑念が、正体を現す。

「…頭でも痛いのか?」
「何故だ」
「…眉間に皴が寄っていた」

再び思考から呼び覚ます声が聞こえた。ヴェイグの声だ。だが、今の発言はジューダスとしては聞き捨てならない。
一度思考を捨て、ふぅ、と一息つき斜に構えた顔で声の主を見下す。
いや、身長差を考えて仰ぐと言った方が正しいのか。

「…僕はそんな風に言われるほど年を食ってないと思うがな」
「意外と苦労性なのか?」
「いい加減その口を閉じないと命がないぞ」

そこまで言って、ふっと笑う。
つい数日前までにはあった、不思議な懐かしさ。ちょっとしたホームシック。
250ターニング・ポイント 7:2006/02/11(土) 20:40:35 ID:pJeKCRmv
共に行動し旅をしていた仲間達と、何となく重なったような気がした。
その内の1人は欠けてしまった。もう、戻りはしない日々。
だからと言って、いつまでも悲しみはしない。
1人足りない時は、いつも自分がもう1人分の力を出してきた。
それは今でも、こんなゲームでも変わらない。変わるのは、どこに力を出すか。

(…まだ独りよがりの予測の範囲だ。抜けはしない。だが…)

彼は仮面の紐のような飾りを揺らし、怪訝そうな表情の青年を見る。

(ヴェイグの存在は、ミクトランにとって予想だにしなかった「誤算」なのかもしれない…)

その先に見えたのは、彼の仮定が見出だした「希望」の1つだったのかもしれない。
勿論、本人は知る由もなくて。

「…そろそろ良いんじゃないか?」

沈黙に思わず問い掛ける青髪の剣士。
問い掛けに頷く黒衣の剣士。
そして歩き始める。
離れ離れになった少年少女の無事を信じて。
橋の向こうは新世界、引き返して見える見慣れた世界もまた、以前と変わって見えて新しい。



橋は再び、手の加えられた未完成の風景画へと化す。
2人の剣士が去り無人になった後、誰かの手によって、奥の草原のまた奥に黒い煙が描き加えられた。
251ターニング・ポイント 8:2006/02/11(土) 20:41:36 ID:pJeKCRmv
 
【ジューダス:生存確認】
状態:健康 
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、(上記2つ二刀流可)、エリクシール、首輪
基本行動方針:ミクトランを倒す
第一行動方針:協力してくれる仲間を探す(特に首輪の解除ができる人物を優先)
第ニ行動方針:ヴェイグと行動
現在位置:C4橋→東側から南下

【ヴェイグ 生存確認】
状態:右肩に裂傷 強い決意
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(パイン、ミラクル) 首輪
基本行動方針:生き残る
第一行動方針:ジューダスと行動
第二行動方針:ルーティのための償いをする。
現在位置:C4橋→東側から南下

※チェスターとヒアデスの死体はC5の橋近くの森に埋められています。
252継ぐ者 継がれる物 1:2006/02/11(土) 22:40:37 ID:k56SzjEp
「うっ…痛っ!」
傷、骨の損傷が治りかけたと思ったスタンはゆっくりと立ち上がろうとする。
だが、敢え無くしてその体を崩して座り込んでしまう。
その様をコレットは別段何も感じずにただ見つめていた。
「駄目だ立てない…じっとしてたら痛くないのに…」
「それが骨折と言うものです。ですから安静にしていてくださらないと…」
スタンのぼやきにミントが返す。
先程まで治りかけていたと思っていた傷は、体勢を変えるごとに痛みを伴うということにスタンは気付いた。いや、気付かされた。
「いいですか?骨というものは人間の身体を支えるための役割の大部分を担っています」
スタンにこれ以上動いてもらわないようにミントは事の重大さを説明し出す。
その時確かに、スタンは嫌な予感がした。
「切り傷などは一般の人間において避けては通れない怪我です。ですから治癒方法も傷を治すために分泌される細胞は、比較的分泌されやすい細胞を使っています」
ミントは人差し指を一本立てて目を瞑る。
「ですから傷を治癒させる段階は僅か二段階しかありません。カサブタ、そして完治という過程がコレです。しかし骨を治すとなるとそうする為の身体のはたらきはまた違ってきます」

253ターニング・ポイント 修正:2006/02/11(土) 22:42:35 ID:pJeKCRmv
申し訳ありませんが、議論感想スレでヴェイグの髪の色についての指摘がありましたので、修正させて頂きます。

2…「黒と青の2人の剣士」→「黒と銀の2人の剣士」
3・7…「青髪」→「銀髪」
4…「青の剣士」→「銀の剣士」


お手数かけます。失礼致しました。
254継ぐ者 継がれる物 2:2006/02/11(土) 22:44:28 ID:k56SzjEp

一息吸って今度は立てる指を二本にした。
「骨の怪我と言っても骨折や脱臼とその種類は様々です。確かにスタンさんの怪我は骨折はしているものの比較的軽い部類に入るでしょう。
ですから痛みもそんなに辛いほど感じるわけではないはずです。
ですが骨折という症状を一まとめにすると治癒過程は同じです。その段階は大きくわけて四つ。
一つは形状修正。膝なら膝、腕なら腕といった本来の形である骨の形状を細胞が形成していきます。
これのおかげで関節が逆に曲がったりすると言う異常なことは起きません。
二つ目は骨移防止。コレは複雑骨折の場合は除かれますが、欠けたりした微小な骨を外に逃がさない役割を持っています。
稀に治りかけてくると骨がくっつききれずにおかしな所に残っていたりする場合がありますが、ほとんどの人は綺麗に骨がくっついてくれます。
第三は再構成。つまり骨を治すまでの過程のことを指します。
また、骨に耐性を持たせるために丈夫にしてくれるのもこの段階での役割です。
この時点でギプスなどの固定具を装着していないと、たとえ第一段階の形状修正をもってしても微妙におかしなままくっついてしまうことになります。
スタンさんの場合はアバラで、それに症状も軽いほうなので特別な固定はいりません。ただ安静にしてくれれば。
そして最後に完治です。これでやっと人間の骨というものが治ってくれるんです」
ミントはハァとため息をついて目を開き、スタンを見る。
「解ってもらえましたでしょうか?ですからスタンさんには安静にしていてもらわない…」
と、言いかけて目を見開く。
そこにはうとうとと、今にも夢の中へと誘われそうなスタンの姿があった。


255継ぐ者 継がれる物 3:2006/02/11(土) 22:45:07 ID:k56SzjEp
これには流石に温厚なミントも思わず叫んでしまう。
「スタンさん! 聞いているんですか!」
「うぁハイっ! …あ、ゴメン、え? 何が?」
ミントは額に手をあてて嘆く。流石のミントもスタンのこの緊張のなさには少し呆れを通り越して羨ましささえ覚えた。
「…第二段階までの治りは早いんです。ですからスタンさんが治ってきたと感じているのは勘違いであり、実際はそこからが骨の治癒の本番、といったところでしょう」
ミントはこれでようやく彼にも解ってくれただろうと再び目を瞑る。
スタンはうんうん成る程と骨に響かないよう首をゆっくりと縦に振る。その反応にも少し疑わしいものを感じた。
「ゴメン、ミント。どうやら心配かけちゃったみたいだ」
実際はそうなのだがミントは「いえ、そんなことないです」と謙遜する。
「そうだな。足手まといになるのは嫌だ。ちゃんと骨が治るまで、安静にしとくよ」
そう言ってスタンは睡眠をとるために目を閉じる。
その様子を見てミントは少しだけ微笑み、しばらくスタンの寝顔を眺めることにした。
本当にこの人は無茶なんだからと、失礼にも心の中で思ってしまう。
だけどこれがこの人のいいところなのかもしれない。
ミントはそう思い、今度は自分の傍らにずっと立ち尽くしている少女を見やる。
「アナタも早く本来の姿に戻れるといいですね」
笑顔を投げかける。
だが虚ろなる少女コレットは、やはり何を思うわけでもなくただ空を見つめるばかり。
しかしその少女は突拍子も無く視線の先を変える。
やはりその先は空なのだが、方角が違う。ミントはその様子に少し驚き、自分もその方角を向く。
方角の空には確かな黒い煙。
「あれは、C3の村でしょうか…」
ちょうどそれは今、赤い屋根の下で起こった一つの悲劇と同じ時間。
「一体何が起きているのでしょう…」
ミントは一人不安になりその煙を見つめる。
一人の想うべき青年を心に抱きながら。

256継ぐ者 継がれる物 4:2006/02/11(土) 22:46:02 ID:k56SzjEp
リアラに連れられて、カイルはかつてE2の城があった場所、その瓦礫の中にいる三人の力尽きた姿を見る。
一人は、このゲームが始まる前に参加の意を強く、その行動を示した赤いドレッドの髪の男。マグニス。
カイルにとってこの男はいずれ脅威になるだろうと思っていた。この世界でこのゲームをし続ける限り、自分から打って出たマグニスは必ずしも拳を交えるだろうと思っていたのだ。
二人目は、歴史改変に加担し、英雄抹殺を企てた最凶の敵。バルバトス。
参加前に一斉に集められた部屋の中、確かにカイルはその瞳に青髪の男の姿を映していた。
一番危惧すべきはこの男。縁なんてものは嫌だがそれすらも感じさせられてしまったカイルは、リアラを見つけることの次にはバルバトスをどうするか考えていたものだ。
そんな危険ばかりを、だけどその二人はもうここにはいない。
彼らは死んでしまった。これは喜ぶべきなのか、カイルは真剣に悩んだ。
今まで脅威と感じた二人がこの世から去ったのだ。カイルにとってはその事実だけが、また新たな脅威を生んだ。
このゲームの忌々しさを胸に受ける。そして一層あの声の主に会いたい気持ちが増した。
そして三人目。リアラの話によるとクラトスと言う名前らしいその人は、経緯は分からないがどうやら守るべきものの為に命を削り、その力を行使したらしい。
そしてカイルにはその姿が一段と輝かしいものに見えた。
カイルは一度クラトスと会っている。偶然とはいえこの人を「父さん」と呼んでしまったのだ。
257継ぐ者 継がれる物 5:2006/02/11(土) 22:46:41 ID:k56SzjEp
あの時は頭もろくに働かずに間違えてしまい、失礼な印象を与えてしまっただろう。
だけど何故かカイルは、命の光を失ったこのクラトスの姿がひどく「親」という感情を抱いてしまう。
リアラから話は聞いていたが、彼にも子がいて、更にこのゲームに参加しているらしい。
そして納得する。この姿には確かに、親が子に向ける愛情らしきものが感じられた。
カイルは静かにその場で目を瞑り、黙祷した。

「カイル…」
背後からリアラの声を受ける。振り向くと一つの剣がリアラの両手に乗っていた。
リアラはスッとカイルに差し出す。
「これは…」
「クラトスさんの剣…彼の姿を見つけた時、落ちていたの」
カイルはゆっくりとその剣を手にする。
炎の意志を司りし剣 フランベルジュ
カイルはそれを一度、二度振って感覚を確かめる。
そして頷き、再びクラトスに向き直り剣を掲げる。
「クラトスさん…あなたの剣をお借りします。そして必ず生きて、この剣をあなたの子供に返しに行きます」

カイルは見つめる 自らを犠牲にして命を落としたその男の姿を
リアラは見つめる 新たな決意を胸に抱き、また一つ成長した自分の英雄の姿を

そうしてカイルとリアラは二人の元へ戻るために歩き出す。
その途中にカイルはリアラの持つもう一つの武器、オーガアクスをスタンに渡すよう促した。
なんでも昔は斧も振り回していたらしい。まぁこれも母さんから聞いた話なんだけど。
「俺が持っても仕方ないし、父さんに渡した方がいいよ」
そう言って更に足を進める。
258継ぐ者 継がれる物 6:2006/02/11(土) 22:47:22 ID:k56SzjEp
そうして長くも歩かずにミントとスタンの元へと辿り着いた。
だがミントはあらぬ方角を見ている。釣られて二人も見るもその黒い煙に気がついた。
「ミントさん、あれって…」
「えぇ、おそらくはC3の村でしょう」
その返答にカイルはしばらく煙を見つめる。
すでにあの村で何かが起こっているのだ。それがマーダーによる殺戮であれ、同志たちの宴であれ。
だがしかし、あそこで何が起こっているのか分からないのもまた事実、カイルはそれを受け止めることにした。
「今はスタンさんの怪我が治るまで待ちましょう。今の俺たちに出来ることは、多分それぐらいしかないから」
「カイル…」
リアラはカイルの横顔を見つめる。その顔はおそらく、初めてこの世界に落とされた頃とは別段のものになっているだろう。
「スタンさんは…寝てるのか」
スタンの様子を見るとカイルは少し安堵する。その寝顔は幼い頃に見た記憶と一緒のものだ。
リアラはカイルと顔を合わせて頷き、スタンのザックにオーガアクスを入れた。
そしてリアラはミントに振り向いて質問。
「あの、ミントさん。スタンさんの怪我は、どのくらいで治りますか」
その質問を受けてミントはリアラの方を振り向き、少し難しい面持ちで答える。
「おそらく早くて半日、通常なら丸一日を費やすでしょう」
「そんなにかかるんですか…」
ミントの返答にカイルは少し肩を落とす。リアラはさりげなくカイルの手を握っていた。
「私の法術やリアラさんの晶術でも施せる最大の治癒をしてきましたが、内部の、しかも鉄分の損傷となるとあとは自己再生能力に頼るしかないんです」
人間の骨は鉄分とカルシウムの大半で構成されている。傷などの外部の損傷は同じく外部から治癒を施せるのだが、逆もまた然り。内部の損傷は内部の治癒能力でないと回復しないらしい。
カイルはミントの言葉に頷いて敬意を表す。
「リアラとミントさんは頑張ってくれたんです。だから今度は、俺と父さんが頑張ります」
ぐっと拳を握る。その姿にミントは「期待していますよ」と微笑んだ。
ふとリアラは事態の張本人である少女を見る。
何を思っているのか、彼女は北の空を見続けるばかり。
彼女が元に戻る手段はあるのだろうか。リアラは知らずにそんな事を考えていた。


259継ぐ者 継がれる物 7:2006/02/11(土) 22:47:54 ID:k56SzjEp
【スタン 生存確認】
状態:アバラ三本損傷
所持品:ディフェンサー ガーネット オーガアクス
第一行動方針:傷が治るのを待つ
第二行動方針:C3村へ向かう
第三行動方針:仲間と合流
第四行動方針:ジョニーが気になる
現在位置:E2城跡

【カイル 生存確認】
状態:健康
所持品:フランヴェルジュ 鍋の蓋 フォースリング ラビッドシンボル(黒)(割れかけ)
第一行動方針: 父の傷が治るまで待機
第ニ行動方針:C3村へ向かう
第三行動方針:リアラを守る
第四行動方針:クラトスの息子(ロイド)に剣を返す
第五行動方針:ハロルドが気になる
現在位置:E2城跡

【ミント 生存確認】
状態:TP2/3
所持品:ホーリィスタッフ サンダーマント
第一行動方針:スタンの傷が治るまで待機
第ニ行動方針:C3村に向かう
第三行動方針:仲間と合流第四行動方針:クレスが気になる
現在位置:E2城跡

【リアラ 生存確認】
状態:TP2/3
所持品:エクスフィア強化ロリポップ 料理大全 フルールポンチ1/2人分 ???? ピヨチェック、要の紋
第一行動方針:スタンの傷が治るまで待機
第二行動方針:カイルについて行く
第三行動方針:コレットを信じる
第四行動方針:ハロルドが気になる
現在位置:E2城跡

【コレット 生存確認】
状態:TPほぼ回復 無機生命体化 (疲労感・精神力 磨耗無視)
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(残弾0)
苦無(残り1)
基本行動方針:防衛本能(攻撃意思に対する完全抹殺及び不明瞭な干渉に対する威嚇)
第一行動方針:リアラの言うことを聞く
現在位置:E2城跡

260業務連絡:2006/02/11(土) 22:50:06 ID:k56SzjEp
継ぐ者 継がれる物5にて
「フランベルジュ」と表記されていますが正しくは「フランヴェルジュ」です
訂正お願いします
261繰り返す歴史1:2006/02/12(日) 21:25:55 ID:gt7v0S48
───姉さまが、死んだ。


───死んだ?


───ううん、そんな事ない。


───だって、こうして輝石に宿ってる。



───こうして、生きてる。






262繰り返す歴史2:2006/02/12(日) 21:26:41 ID:gt7v0S48
ミトスは歩いていた。
空を見上げながら、忌々しい眩しさに緩く眼を細めて。
でも涙が出なかった。
出てはいない。
そう思い込もうとしていた。
雨なんだ。
この頬を伝う鬱陶しい雫は。
無感動に映る空色が妙に滲む。
ぼやけて映るのは、雨のせい。

だって、姉さまは生きている。



ミトスは自分の事を知っているらしき者との遭遇を避けつつ、C3を後にした。
ふらふらと歩く先は南下する形を取る事になり、現在はD3辺りだろうか。
「………」
歩を進める内に冷えてゆく思考は、姉の蘇生への策略をより具体的なものに纏めてゆく。
同時に沸き上がるのは怒りと虚無。
姉を殺した張本人と、姉を守りきれずあまつさえ生き延びた男。
殺さなかったのは自分ではあるのだが。
263繰り返す歴史4:2006/02/12(日) 21:27:54 ID:gt7v0S48

やはり、他人なんか信じてはいけなかったのだ。
自分には姉しか、姉には自分しかいなかったのだ。

内側では沸騰する程の激しい怒り。
なのに虚無はそれを外側から包み、表へは出す事を許してはくれない。
脳裏を過ぎ、胸中に滞るのは重い靄。
遥かな過去にも、自分はこうして姉を失ったのだ。
守りきれずに。
眼の前で明らかに血の気を失っていく様を見ながら、冷たくなっていく身体をただ抱き締めるしか出来なかった自分。
無力、だった。
ただそれが口惜しかった。
あれから呆れ返るだけの永い時間を生きてきて、こんな忌まわしいゲームの中で出会えたのは唯一の、奇跡にすら近い希望。
今度こそ、失わないと決めた筈だったのに。
守り通す、と。
それなのに。


「待っててね、姉さま。器なんてすぐに見付かるから。」


呟きは空気に溶け、吹き抜けた風が空へ散らす。



264繰り返す歴史5:2006/02/12(日) 21:29:00 ID:gt7v0S48
ほんの少し未来のミトスは、ある策略を用いて敵を欺く。
無知で愚かな敵を、親友だと違わせる程の二面性をもってして。

歴史は繰り返す。

時間軸は違えど、同一人物だ。
それが思い付かない訳もない。
橋での一件等から解るように、力勝負で一人きりというものは到底敵わない。
ならば。


まずは自他共に見ず知らずの他人に会わなければならない。あの鳶色の頭の彼のように、自分を見て何らかの反応を示す奴はアウト。

見付けたらその者を信用させる為に、差し支えぬ程度に傷を作って、服を汚して、疲弊したフリをして。

今まで共に行動し、守って貰っていた者が殺められたと偽り、非力で無力なハーフエルフを装う。

手持ちの剣はこの際、形見だとでも言えば良い。事実ファフニールは、此処での姉さまからの形見。

巧く信じたならば甘言で欺き、器と魔剣の探索を協力させて。

器と魔剣が見付かれば後は用もない。仮にその者達が団体ならば、内側から皹をいれて壊してやればいい。

仮に何人か、極少数にバレてしまっても、全員に悟られない限りは誤魔化せる自信もある。



歪んだ策略はくしくも未来のそれと同一。
ミトスの口許に知らず笑みが浮かぶ。
「ボクは…」
吐き出した声音は、気弱な少年のそれ。
続く言葉は声にならずに、ただ唇の動きが内容を知らしめる。



───どんな犠牲だって厭はないさ。



幸か不幸か、その策略に気付ける者は現在たった一人。
それをミトスが知る術はないのだが。

265繰り返す歴史6:2006/02/12(日) 21:30:05 ID:gt7v0S48


小さな大いなる実りが僅かに震え、
彼方では無機の天使が硝子玉の眼を細め。


運命か否か。
マナは、引き合う。





【ミトス・ユグドラシル 生存確認】
状態:TP4/5
所持品:ロングソード、邪剣ファフニール、アトワイト、大いなる実り(この世界規模の)
基本行動方針:マーテルの復活
第一行動方針:マーテルの器(コレット)の確保
第二行動方針:魔剣エターナルソードの入手
第三行動方針:弱者として他人を利用する
第四行動方針:蘇生失敗の時は皆殺し
現在位置:D3南下中
266Legend of the Eternal Synpohny 1:2006/02/12(日) 22:31:57 ID:mOCrl/5B
家が崩れてどれほど経っただろうか。
実際は数分だっただろう。しかしロイドはその間、あの信じたくも無い光景を思い出していた。
「もう、駄目なのかよ…メルディ」
呟いて傍らで気を失っているリッドを見る。しばらく目を覚ましそうに無いようだった。
最初にあいつと…メルディと出会った頃、確かにあいつは様子が変だった。思えばあれがこの惨劇の兆候だったのかもしれない。
その兆しが確実に露呈したのはあの橋での出来事。あいつの周りに黒い靄(もや)が出だしたとき、俺は直感的に思った。
――こいつは危険だと
不覚にも思ってしまったのだ。行動したのは少しの間だけだったけど、仲間には変わりないのに…。
信じようと思ったのに、俺はメルディに脅威の感情を抱いてしまっていた。
だけどあそこでミトスたちが来てくれたのは実際に幸いだった。
あそこでメルディに刃を向けていたのを見て俺はかろうじてやるべきことを、メルディを助けようとすることが出来た。
本当はあの時にも恐れはあった。怖れもあった。
でもどうしても、俺はメルディを信じたかったんだ。
それなのに…。
「ごめんメルディ…助けてやれなくて…」
嘆き、地面を叩く。そこには後悔の念でいっぱいだった。
「…なら、それで終わりか?」
「え!?」
どこからか声がする。辺りを見回すと一人、その青年はこちらに向かってくる。
たどたどしい足取りで歩いてくる青年は、正しくこの世界で一番にメルディを想う者。
そして一番にメルディから想われている者。
「あいつはそんなにやわじゃない。僕が保障する」
ようやくロイドの下へと辿りついた青年 キールは燃えきった家を眺める。
肩に怪我でもしたのだろうか、左肩を抑えていた。
「お前…」
ロイドはキールを見て感じる。彼と彼女の大きな絆を。
その顔は一つの揺るぎのない信用の輝き。
そうか…こいつはメルディのことを信じているんだ。
なら、ここで俺も信じずにいてどうする。
ロイドはキールを見据えて声を掛ける。
「あいつが元に戻る方法があるのか!?」
キールは頷く。何か打算でもあるのだろうか。
いや、メルディのことはこいつに任せていたほうがいいのかもしれない。
メルディにとっても、キールにとっても…。

267Legend of the Eternal Synhpohny 2:2006/02/12(日) 22:33:11 ID:mOCrl/5B
「どこに行ってたんだ?家の中にはいなかったみたいだけど」
ふと疑問がわいてキールにぶつける。
キールは何か言いにくそうな顔をして渋々答えた。
「メルディに吹っ飛ばされたんだ」
流石に好きな子に吹っ飛ばされたなんて堂々と言えないキールは少し俯く。
あぁ、そうと返事をしてその件を終わりにする。なんとなくそうした方がいい気がした。
キールはリッドの様子を見て気付く。その衰弱振りを。
「こいつ…何で寝ているんだ」
ロイドはキールがリッドに対して言っているのを感じてすぐさまあの家で起こった状況を説明した。
急に闇が天井に広がり、そこから剣が出てきたこと。
リッドがそれに対して未知な力をぶつけ、自分の傷が回復したこと。
家が急に燃え始め、脱出困難の中命からがら抜け出せたこと。
そしてメルディが行方をくらました事。
「なるほど…」
キールは一通り事情を聞き終えると自らその様子を整理した。
「闇の極光術を使ったってことは、どうやら完全にネレイドに乗っ取られているみたいだな、あいつ」
それは認めざるを得ない事実。その事実を純然として受け入れる。
ロイドはやはり苦い顔をしたが、それを前提にしなければおそらく話は出来ないだろう。ロイドも仕方なく受け入れた。
「闇の極光術に対抗できるのは真の極光術だけだ。つまりリッドはそれで迎え撃ったんだろう。
この技は闇に対するカウンターで発動する。どうやらこの世界では発動者の精神力と引き換えに闇の極光術の無効化、及び味方の精神力、体力の回復といったところだろう」
キールはあたかもその場面に出くわしていたかのような状況を創り出す。
だがそれは創造でもなく想像でもない、事実そのものだった。
ロイドはその様子を見て感嘆してしまう。先生くらいの頭の切れなんじゃないかと。

268Legend of the Eternal Synhpohny 3:2006/02/12(日) 22:33:59 ID:mOCrl/5B
キールは続けた。
「僕が目覚めたのは白い光が家を突き破って空に向かっていくところでだが、家が燃えているのを見て慌てて避難した。そこに遠くでお前たちが出てきたのが見えたんだ。そこで確かに僕も見た…」
一度息を吐いて事実を告げる。
「メルディが走り去って行くのを」

どこに向かって行ったのかは分からないがキールはそれでもいいと思った。
あわよく生きていた。それさえ確認できれば、後は対処が出来る。
家でメルディを見たとき、あいつが纏わりつく靄の起源をキールはかろうじて観測出来た。
「おそらくはあいつ、メルディの持っていた何か、それがネレイドを引き寄せる引き金となったもの」
一人推測を立てるキール。それは着々と真実へと近づいていた。
ロイドはその間ミトスとマーテルの行方を気にしていた。
脱出するなり姉の下へと駆け出したミトスのその後が分からない。
どうやらマーテルはクレスって奴がダオスと一緒に避難させてたみたいだったけど…。
ロイドに新たな気がかりが生まれる。
辺りにミトスやマーテルの姿が無いのだ。ここにいるのはおそらくもう俺たちだけだろう。
無事にいてくれとロイドは心の中で思った。

269Legend of the Eternal Synhpohny 4:2006/02/12(日) 22:34:56 ID:mOCrl/5B
「どうする? このままここにいても仕方がない気がするけど」
ロイドが口を開き、キールは一先ず次の行動を考えることにした。
「そうだな、とりあえずリッドを背負ってくれないか。僕には無理だ」
ロイドは目を見開いて肩を落とす。
「また俺か…」
愚痴を零して仕方なくリッドを背負おうとする。なんだがこの世界に来て自分は背負ってばっかりだと思った。
その瞬間、微かにロイドの指輪が反応する。
ロイドは眉を寄せ、少し遠くに位置する叢を凝視する。
なんだこの感じ…もしかして…
ロイドはたまらずその叢に声を投げかけた。
「誰だ!?出て来いよ!」
キールはロイドの様子を訝しげに見ていたが、すぐその様を理解する。
叢から一人の少年が姿を現した。
ロイドはびっくりしてその少年を見据える。
少年はその身体に似つかわしく無い剣を持っていた。それにロイドは反応する。
「ヴォーパルソード!!」
その叫び声にキールはおののくが、少年はすぐさまその意味を理解した。
「…あなた、この剣を知っているんですか」
「知ってるも何も、それは俺の剣だよ!」
少年は安堵の息を吐いて近づく。まずは一つ目の約束が果たせそうだったからである。
「もう少し叢で様子を見ようかと思いましたが、どうやらこの剣の意志のようです。間違いではなかった」
少年は一人呟く。どうやら今まで隠れて様子を見ていたらしいその少年は一種の賭けに出たようだった。
安易に姿を見せない影役は約束のため、その姿を現す。
姿を現していいと判断した理由は三つ。
一つはロイドの腰に携えられた二本の木刀。
実は少年は一度ロイドの姿を目撃している。あの時は近くに到底叶わないような畏怖なる存在が二つ(実際は三つ)あったために容易に近づくことが出来ず、その判断も見誤った。
だが今あの二人はいない。長身の男と小さい少年は。
二つ目は軟弱な青髪の青年の存在。この男も少年は一度目撃している。
ブレス系と思われる人物、ましてや真っ先に殺されそうな人がこの村に残っていて、尚且つ馬鹿息子と行動を共にしている。
これで大体の安全性は確認できた。
もちろん襲われるということも否めなかったのだが、その場合はすぐさま退散をすればいいだろうと算段を立て、ロイドに姿を明かしたのである。
そして最後に確信を得た。サックの中にある剣が反応したのだ。今度は勘違いなどではない。
ロイドもそれに反応していたようだったし、これは決定的だった。
270Legend of the Eternal Synphony 5:2006/02/12(日) 22:35:47 ID:mOCrl/5B
「良かった、ようやく見つけることが出来ました。実はあなたのお父さんに事を伝えられましてね」
少年はゆっくりとこちらに向かってくる。ロイドは少年の言葉に驚きを感じた。
「クラトスに…」
「ええ、アナタにこれを」
少年はその剣をロイドに渡す。ロイドはそれを手に取り掲げる。
確かな手ごたえ。確かな感触。
紛れも無くそれは時空剣の片割れ。
ロイドは礼を言って少年に質問をする。
「で、クラトスは?」
それに返答を遅らせて少年は言う。
「実は、僕も彼が今どうなっているのか分かりません。急いでこちらに来たものですから。ですがおそらく、E2の城にいると思います」
それだけ言って少年は俯く。ロイドはそれを聞いて少し顔を喜ばせた。
「そっか!E2の城か!」
ヴォーパルソードを腰に携えてロイドは一つの案をキールに呈した。
「キール。E2の城に向かってくれないか?」
キールは少し考える仕草をする。
今ここにいても仕方が無いの事実、ましてやここに来るマーダーはもういないという証拠もない。
それに僕達に今必要なのは情報だ。ここは移動して情報を集めるか…。
無闇に動いて狂乱者や積極的参加者に遭遇してしまった場合、その場を乗り切れるかどうか。
B2の塔にいた頃は戦力がまるで無かった。だから待機をして様子を見ていたのだが。
今はこの場に留まるほうがリスクは大きいだろう。そして万が一敵に遭遇してしまった場合にも、今のこの面子なら…。
思考を巡らせてキールは顔を上げた。
「うん。今はここを離れたほうがよさそうだし、移動するにしても当てが無い。取りあえずはそこに向かおう」
ロイドは再び喜び、キールに礼を言った。
行き先は決まった。とりあえずは南下だ。

271Legend of the Eternal Synphony 6:2006/02/12(日) 22:36:40 ID:mOCrl/5B
「俺はロイド。ロイド・アーヴィングだ」
「僕はキール・ツァイベル。で、こいつがリッドだ」
キールはロイドが背負っている青年を指差して言った。
「僕はジェイと言います。よろしくお願いします」
ジェイはこのメンバーについて行くことにした。自分にもやるべきことはあるのだが、なにぶん彼にも当ては無い。
それに一番難解とされていた約束を一番初めに果たしてしまったのだ。
後は情報を収集してミントとシャーリィを見つけるだけとなった。
ここは一人で行動するよりパーティを組んだほうが安全で有利だと踏んでいたのだ。
だがパーティの面々は…
馬鹿息子
軟弱術士
気絶青年
真剣、ジェイは自分がしっかりしなければと考えていた。
「よし!じゃあ行こうぜ!」
ロイドは先陣切って歩き出す。まるで背中にある重みも忘れているようだった。

何よりジェイは、あの城の末路を、そして逃げてきた真実に向き合いたかったのだ。
この人たちと行動を共にしようと決めたのは、その理由が大半だった。
だがジェイはあの時気付いていた。
走る背に届く崩壊の音。瓦礫と瓦礫が擦れ合う破壊の音。
おそらく、城は崩れ去ってしまっただろう。
何が待っているかわからないけれど、それを見極めなければ。
ジェイはクラトスが生きていることを静かに願った。

ロイドは思う この世界に来てまだ見ぬ父のことを
キールは思う 変わり果ててしまった愛すべき少女のことを
ジェイは思う 謝りたい気持ちを伝えるべき女性のことを

そして眠るリッドは今 何を思うのか

272Legend of the Eternal Synphony 7:2006/02/12(日) 22:37:20 ID:mOCrl/5B
【リッド・ハーシェル 生存確認】
状態:精神力著しく低下  気絶
所持品:ムメイブレード、エルヴンマント
基本行動方針:ファラの意志を継ぎ、脱出法を探し出す
第一行動方針:不明
現在位置:C3村 家跡

【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:全快
所持品:ウッドブレード、トレカ、カードキー ヴォーパルソード  
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:状況の把握
第二行動方針:これからの行動を考える
第三行動方針:協力者を探す
現在位置:C3村 家跡

【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:後頭部打撲
所持品:ベレット、ホーリィリング
基本行動方針:脱出法を探し出す
第一行動方針:E2の城に向かう
第二行動方針:情報収集
第三行動方針:メルディを助ける
現在位置:C3村 家跡

【ジェイ 生存確認】
状態: 全身にあざ  TP3/4
所持品:忍刀・雷電 ダーツセット クナイ(三枚) 双眼鏡
第一行動方針:E2の城へ
第二行動方針:ミントへの謝罪
第三行動方針:シャーリィと合流
第四行動方針:ミトス・ユアンを発見する
現在位置:C3村 家跡

273作者:2006/02/12(日) 22:39:22 ID:mOCrl/5B
タイトルは「Legend of the Eternal Synphony」です
ばらばらですいませんでした
274地に堕ちる翼。そして―― 5:2006/02/13(月) 02:18:54 ID:dwY6/Nec
…そういえば、わたしが水の民の里にいた頃、フェニモールがバナナをくれたことがあったっけ。
 別段わたしはバナナは好きじゃなかったけど、すぐにいい「使い方」を思いついたの。
 お兄ちゃんに抱かれたくてしょうがない夜なんか、お兄ちゃんのことを考えながら、バナナであそこをかき回すの。すごく気持ちよかったわ。
 でも、今の方が、それの何倍も気持ちいい。

ここだけ部分消去します。迷惑かけて本当に失礼しました。
275【業務連絡】:2006/02/13(月) 21:20:42 ID:l8jbcqss
「地に堕ちる翼。そして――」は感想スレでの議論の末、破棄となりました。
尚、この話をベースとした物語の作成、または新たな展開にするかなどの選択は次の作者に委ねられます。
ご理解の程を宜しくお願い致します。
276名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/13(月) 23:02:04 ID:8SMc4Mcr
>>275、別に話全て破棄にせんでもいいんじゃないの?
277名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/13(月) 23:18:55 ID:b/yLX3DD
>>276
作者からの破棄要請がありました
278ターニング・ポイント 1〔修正1〕:2006/02/13(月) 23:43:32 ID:1ez9fRfj
2度目でありますが、再び感想議論スレにて指摘があったため、修正させて頂きます。
本当に申し訳ありません…。







「…こんな近くに死体があったのか…」

移動して間もなくのことだった。
C4の橋へ向かう途中の森で、2人が見つけたのは亡骸であった。
後方を歩いていたヴェイグは発見した途端、驚愕と苦痛に顔を歪める。
前方を歩いていたジューダスは予め分かっていたかのように、淡々と息をつく。
彼の表情は別段変わりはしなかった。後ろ姿しか見えないヴェイグにもそれは分かった。
理由は明快、ジューダスは昨夜ロイドと共にこの亡骸を見ているのだ。
ましてや常に冷静なジューダスのこと、以前見つけた死体を発見して取り乱す訳もない。
ただ、1つ反応が変わった点を示すとすれば、一帯に漂う鼻につく異臭だろうか。
彼らの名が呼ばれたのは第1回の放送。
大きく見て、死亡してから丸1日経過していることになる。少しでも腐敗が始まっていてもおかしくはない。
鼻を覆いたくなるような臭いに、自然と吐き気と咳が込み上げてくる。しかし、2人はそれを抑える。
片や火傷の酷い淡い青の髪の男性。
片や狂喜に歪み血に染まった男性。
279ターニング・ポイント 1〔修正2〕:2006/02/13(月) 23:49:17 ID:1ez9fRfj
面影は変わっていない。
どちらも血の気は失せ、本来なら温もりの色の根源である自身の血に塗れながらも、土色の肌がやけにはっきりと映えている。
リアルな「死」が見えたような気がした。
双方傷は酷い。余程の死闘だったのだろう。
至る所に血が付着しているのは、大地も同じだった。黒褐色と化した大量の血痕が地にこびり付いている。
相討ち。
その短い言葉がぱっと頭を過ぎり、留まった。

「ヴェイグ」
「何だ…」
「後ろを向いていろ。見ない方がいい」

後ろのヴェイグを見ないまま、ジューダスは機械のように呟いた。
感情は極力排除されている。
その言葉で、ヴェイグは今から彼が何を成そうとしているのか直ぐに理解できた。
一度は沈痛な表情を落とすものの、直ぐに首を左右に振り、否定の意を表す。
自分も目を背ける訳にはいかないのだ。過去と、現在と、未来から。
そして彼は深く息を吸い一言紡ぐ、「…大丈夫だ」と。

「…そうか」

一言の返答の後、鞘を掠る音が鳴る。
黒衣に輝く冷たき刃。
それは金属特有の冷たさでもあり、彼の心の冷たさでもある。
だがどこか不完全な、冷たさ。
280ターニング・ポイント 1〔修正3〕:2006/02/13(月) 23:50:57 ID:1ez9fRfj
(すまない…僕の愚かしい行為を…許せ…!)

彼は振り下ろす。
紺碧の空の下、躊躇いと悲哀の中で鈍く煌めく刃を。
彼は祈る。
深緑の森の中、死に行く者に安らぎが有らんことを。
決して形式ではなく、本物の行為。







ごとん
281再び会議、そして疑惑 1:2006/02/15(水) 00:20:43 ID:aH2Fyny3
鳶、黒、青、赤髪の少年青年等四人は、歩きながらに話し合っていた。
村を出ようとして、焼け落ちた家から離れた後、
黒髪の少年は自身が目撃したこの村の惨状について語ったのだった。
それから鳶髪の少年と黒髪の少年、そして青髪の青年は、
この村での出来事について簡潔に話し合った。

やがてジェイがロイド達に出会う前に見た一人の女性の遺体について語ると、
ロイドは血相を変えて、少年を問い詰めた。
「マーテルが・・・!?」
「はい、そうです。確かに女性が一人、倒れてましたよ」
「そ、それ以外に人は居なかったか?」
「いえ、彼女だけです。ただ、すぐ近くに何人か居たようですが」
ロイドの頭の中がぐるぐると回り始めた。
キールの提案もあり、確認だけならそんなに時間はかからないと踏んだので、ジェイに案内されてそこへ向かった。
282再び会議、そして疑惑 2:2006/02/15(水) 00:21:44 ID:aH2Fyny3
それからロイド達はジェイに導かれてマーテルの死体を見つけた。
女神の死に顔は、幾分安らかに見えなくもなかった。
安らかな聖母の微笑みは、ロイドに哀しげな感情を起こさせた。
「くそっ・・・。誰がやったか分かるか?」
「僕では無いとしか言えませんね。詳しいことはここに居たはずの誰かが知ってると思いますが」
「誰かって、誰だよ」
「勝手ながら彼女の持っていた双眼鏡を使わせてもらったんです。
 そしたら、金髪の男が一人、歩いてるのが見えたんです」
それは黒髪の少年がロイドを発見してからすぐ後のこと。
彼に会おうとする途中に気付いたのだった。
虚無感を漂わせて歩くその男に、距離が近かったので一応接近してみたのだった。
ジェイの言葉を聞いて、ロイドはハッとした。
金髪の男。誰だ?ミトスか、クレスか、ダオスか・・・
三人が三人とも姿を消してしまった今、それを確かめるのは困難と思われた。

「一応近付いて話しかけたら、無視されましたけどね」
軽く笑い、そう言うジェイに対し、ロイドはその問題をひとまず置いといて、改めてマーテルを見やった。
今度は致命傷になったであろう、腹部の刺し傷を見る。
刺し傷。
283再び会議、そして疑惑 3:2006/02/15(水) 00:23:03 ID:aH2Fyny3
「ジェイ。他に何か見たものはないんだな?」
キールが言った。ジェイは頷き、
「残念ながら。ただ、この辺にはかなりの数の人間が潜んでいたと思いますがね」
「・・・・・・」
そんな二人のやりとりを聞きながら、ロイドは黙り込んでいた。
何かが頭に引っかかる気がした。
「ならこれで現場の確認は終わりだ。行こう」
キールが冷静に言った。
確かな惨劇を目の当たりにしておきながらの彼の落ち着きは、多少の無理をしていたかもしれないが。
「そうですね。僕としても早く情報を仕入れて次に行きたいですし」
そう言い、ジェイはもと来た道を戻り始める。

そしてロイドも帰ろうとして、ちょっと思いとどまる。
「キール。ちょっとこいつを頼む」
そう言って、背負ったリッドの体をキールに預けようとした。
しかし当然キールの体力では持ち上げることなど不可能だったので、赤髪の青年は哀れ地面に墜落した。
それからロイドはマーテルに近付き、仰向けに寝ている女神の両手を胸の前で組んでおいた。
その時、彼女のエクスフィアが外されていることに気付いたが、その時はあまり深くそのことについて考えなかった。
284再び会議、そして疑惑 4:2006/02/15(水) 00:24:32 ID:aH2Fyny3
それから四人は村を出て歩き始めた。
先程の衝撃で目を覚ましたリッドは、疲れの抜けきらない体を引きずりながら、
三人から状況説明を受け、E2行きに同意した。

その後彼らは、再び燃え落ちた家の前を通り、瓦礫に埋もれた三人をどうにかしてやりたかったが、
実際埋もれた彼らを運び出すのは困難だったので、遺憾ながらそのままにすることにした。
「ごめんな、ファラ」
リッドが寂しげに、しかし落ち着いた声で言った。
「リッド・・・」
「分かってるよ。今は、他にやるべきことがある。そうだろ?」
「ああ・・・」
キールはそう呟き、黙祷した。
並んでリッドも、目を瞑って想いを届けた。
どこかそれは、幼いころ目にした惨状に似ていた。
あの村が焼けた時も、こうして自分はその跡を眺めていた様な気がする。
285再び会議、そして疑惑 5:2006/02/15(水) 00:26:35 ID:aH2Fyny3
四人はこの村で起こったことについて、それぞれが知りうる情報を出し合い、検討した。
特に不可解なミトス、ダオス、クレス、モリスンの蒸発については、キールも首を傾けた。
「マーテルを殺したのが誰かが重要だな。ジェイ、お前では無いんだな?」
「さっきも言いましたが、僕がそんなことをする理由がありませんよ」
ジェイがそう言い、ロイドがキールに顔を向けた。
「それにさ、キール。こいつの持ってる刀じゃないと思うぜ。結構な刃渡りが無いと、できないと思う」

今目の前にいる黒髪の少年の持つ刀では、
ここまで大きな傷は負わせられないと思われた。
ここに集っていたメンバーの中で、
このような傷を負わせられそうな獲物を持っていた者を、ロイド達は三人しか知らなかった。
ムメイブレードを持つリッド。
ロングソードと邪剣ファフニールを持つミトス。
そして、ダマスクスソードを持つクレス。
ロイドの頭はますます混乱した。
何者かに刺されたマーテル、蒸発したミトス、クレス、モリスン、ダオス。
286再び会議、そして疑惑 6:2006/02/15(水) 00:28:06 ID:aH2Fyny3
「・・・確かに、誰かの武器を奪ってやったにしても、それの処理に手間がかかるな」
青髪の青年は言う。
そこまで黙って聞いていたリッドが顔を上げ、口を開いた。
「じゃあ、誰がやったって言うんだ?」
キールは目を瞑り、静かに語りだす。
「リッドとロイドは屋内に居たから時間的に無理。
モリスンとダオス、メルディは刺突できる武器を持っていない。
僕はまぁ・・・気絶していたから・・・」
「どの道、体力的にも無理だろうけどな」
リッドが言った。キールは彼を軽く睨みつけ、再度口を開いた。
「残るは途中で家を離れたというミトスとクレス・・・」
「ミトスはありえないと思うぜ。あいつがマーテルを刺すなんて、絶対にありえない」
ロイドの言葉は強く、明確に響いた。
三人は彼の顔を見つめ、それからまたキールに視線が集った。
「となれば、クレスか・・・?」
「或いは全く別の第三者」
ロイドとリッドの言により、外部から何者かがこの家に干渉していたのは明らかなことだった。
ジェイが来る前に、確かに別の第三者がこの村に干渉を行っていたはずだった。
結局四人がそれぞれこの村について知りうることを話し合ったが、肝心な部分は分からずじまいだった。

「なあ、このことについてはこれ以上話しても仕方が無いんじゃないか?」
ロイドが言った。キールとジェイは彼を見つめた。
「ある程度の仮説を立てることはできそうだが・・・まあそうだろうな」
キールが言った。
「そうだな。
 とにかく、姿を消しちまったダオス、ミトス、クレス、モリスンについてはこれから先、警戒しておく必要がありそうだな」
リッドが続いた。
ジェイはその中の一人、かつて直接出会ったことのあるその人物について、考察を巡らせた。
「せめてその四人と、メルディがここからどこへ行ったか分かればいいんだが・・・」
キールがそう言い、ため息を付いた。
ジェイが目撃したダオス(詳しい容姿を聞いて判別した)は、
足取りもどこか腑抜けていて、明確な目的地は持っていないようだった。
ダオスが村から出るのを完全に目撃したわけではないので、
もしかしたらまだこの村に居る可能性すらあるとジェイが言った。
287再び会議、そして疑惑 7:2006/02/15(水) 00:28:57 ID:aH2Fyny3
この村での出来事についてとりあえず一段落ついたので、リッド達はジェイに話を聞くことにした。
ジェイは三人に、ミントとシャーリィについて尋ねたが、リッドとキールは知らないと言った。
ロイドは名簿に示された金髪の少女を見て、どこかで見たことがある様な気がしたが、どうしても思いだせなかった。
「そうですか・・・」
ジェイは残念そうに呟き、しかしすぐに語気を戻して、話を続けた。
ついでに女神の遺言のあったユアンという人物について尋ねてみたが、
ロイドはその人物を知ってはいるがこの島においてはまだ見ていないと言った。

初日における洞窟での出来事や、少年の師匠については彼らに話しても無意味と判断したので、
主にE2の城での出来事について話した。
というより、馬鹿息子に話をせがまれたからなのだが。
それからロイドは、ジェイから更に詳しい話を聞いた。
クラトスと一緒に居た内の一人が、ロイドのよく知り、大切な人、コレットだということも、
そして彼女達が居た城が、崩壊してしまったことも。

それまでジェイはクラトス等について、ただそこに居るはずだとしか言っていなかったので、
嬉々として聞いていたロイドは急激に表情が険しくなっていった。
「崩れた・・・?お、おい、それで、クラトスやコレットは・・・!?」
黒髪の少年は黙っている。ロイドはその肩を掴み、揺さぶった。
「おい!お前そこに居たんだろ!なんでコレットや、クラトス・・・父さんを助けてやらなかったんだ!」
「どの道あのままでは全員が脱出するのは不可能でした。僕は頼まれたんです、あなたにその剣を届けるように」
「だからって・・・!」
ロイドの視線は一瞬宙をさまよい、そしてうなだれた。
そしてジェイはそんな彼の様子に心を痛めた。
理由はどうあれ、少年が城の四人を置き去りにしてしまったのは事実だった。
288再び会議、そして疑惑 8:2006/02/15(水) 00:29:54 ID:aH2Fyny3
そんな二人の様子を黙って見ていたキールが、静かに口を開いた。
「一ついいか?ジェイ、お前の話だと、その場にクレスも居たようだが?」
ジェイは黙って頷いた。
「確かにあそこには、この名簿にあるクレス・アルベインと思われる人も居ました。
 最も、その時彼は殆ど顔が腫れてて見分けが付きづらかったですけどね」
「僕達の目の前にクレスが姿を見せた時も彼は顔が腫れていた。多分、いや、間違いなく同一人物だ」
「ど、どういうことだ?」
理解できないというようにリッドが言った。ロイドも同じ様子である。
「ジェイが城から離れて崩れた後、そこで寝ていたクレスはそこから抜け出してここまで来たと言う事になる。
 つまり、あそこに残った人物は少なくとも全員は死んでいないことになる」
「・・・確かにそうなりますね」
キールの論に、ジェイが賛同した。
「じゃあ、みんながみんな死んじまったわけじゃねぇんだな?」
リッドも細かい理論は理解しきれてないが何となく意味は分かったので、そう言った。

「・・・・・・」
ロイドはしばらく黙り込み、それから顔を上げてジェイを見た。
「悪かった・・・」
「いいんですよ、僕が一人で逃げ出したことに変わりはないんですから」
両手を挙げて見せる少年に、ロイドは微かに笑んで小さく頷いた。
289再び会議、そして疑惑 9:2006/02/15(水) 00:31:28 ID:aH2Fyny3
それから、改めてE2へ進みだした。
「今からだと、城に着くのは次の放送がかかるかどうかギリギリになりそうだな」
キールが言った。

ジェイは内心ほっとしていた。
あの状況では、クラトスや他の者が全員死んでも全く不思議では無かったからだ。
希望的観測でしかないが、これで何とか、約束の一つは果たせそうだ。
親馬鹿と馬鹿息子については、これで一段落着きそうだった。
これでやるべきことは後二つ。
・・・ミントさん、シャーリィさんを捜す。
ファラ・エルステッドが呼びかけを行ってから、かなりの時間が経過した今、
彼女等がC3村に姿を現す気配がまるで無いことから、村に行くのを諦めたのだろう、そう判断した。
まさかあれだけの騒ぎがあってから崩壊した城に居るはずが無い。
赤髪の剣士と、金髪の少女等の安否を確認したらまた一人で行動することに決めた。
もうあまり時間は無い。
しかし、あの崩落で自分以外に生存者が居ることは喜ぶべきことだったか。
クレス・アルベインという青年が何故単独でC3村まで移動していたかは疑問だが、
とりあえず全員死亡した訳では無いだけマシと考えるべきか、そう思った。

・・・全員死亡した訳では無い?
ジェイの頭に、黒い影が覆った気がした。
全員って、誰だ?
クラトスさん、コレットという少女、黒髪の少女、クレス・アルベイン、紫髪の剣士、
あの魔術師と男、まあその二人は崩落前に逃げ出したみたいだけど、それと後二人・・・
最後に思い浮かんだその姿に、彼は心底冷えあがった。
・・・まさか。まさかあの二人が・・・!?
崩落で全員死んだわけではない。
ということは、当然あの二人、マグニスとバルバトスも生きている可能性があるわけだった。
もしそうだとしたら、それこそクラトスさん達は生きているはずが無い。
それどころかこのまま行けば、奴等が居るかもしれない場所に自ら赴くことにもなる。

ジェイの頭に様々な仮説、憶測、推測が乱れ飛んだ。
彼は動揺し、三人から遅れて足が止まった。
幸か不幸か、彼のそんな様子に、その時誰も気づかなかった。
290再び会議、そして疑惑 10:2006/02/15(水) 00:32:56 ID:aH2Fyny3
【リッド 生存確認】
状態:精神力著しく低下 体力の低下
所持品:ムメイブレード、エルヴンマント
基本行動方針:ファラの意志を継ぎ、脱出法を探し出す
第一行動方針:キール、ロイド、ジェイと行動
第二行動方針:E2の城に行く
第三行動方針:襲ってくる敵は排除
第四行動方針:メルディを捜す
現在位置:C3 平原地帯

【キール 生存確認】
状態:後頭部打撲(回復中)
所持品:ベレット、ホーリィリング
基本行動方針:脱出法を探し出す
第一行動方針:リッド、ロイド、ジェイと行動
第二行動方針:E2の城に向かう
第三行動方針:情報収集
第四行動方針:メルディを助ける
現在位置:C3 平原地帯

【ロイド 生存確認】
状態:普通
所持品:ウッドブレード、トレカ、カードキー ヴォーパルソード  
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:E2の城へ向かう
第二行動方針:リッド、キール、ジェイと行動
第三行動方針:協力者を探す
現在位置:C3 平原地帯

【ジェイ 生存確認】
状態:迷い 不安 全身にあざ TP3/4
所持品:忍刀・紫電 ダーツセット クナイ(三枚) 双眼鏡
基本行動方針:目的とする人を捜す
第一行動方針:E2の城に行き、クラトス等の安否の確認
第二行動方針:ミントへの謝罪
第三行動方針:シャーリィと合流
第四行動方針:ミトス・ユアンを発見する
現在位置:C3 平原地帯
291天才旋律 1:2006/02/15(水) 01:13:09 ID:c/5B00XX
唐突に彼は目を覚ました。
何時間眠っただろうか…いや、実際は何分くらいかもしれない。それほどまでに少年、リオンの時間間隔が狂っていた。
この教会に来ることが第一の目的にしていたため、眠る頃が何時頃だったかリオンの記憶には無かった。
時計を取り出して見る。時刻はちょうど夕方の四時。
おそらく、三時間以上は寝ていたであろう彼の思考回路は、その働きを徐々に取り戻していく。
「シャル、何か問題は無かったか」
『これといって特にありませんでしたよ』
自分の相棒であるシャルティエに声を掛ける。その返答に少なからずともリオンは安堵した。
もし実際に何か事が起こっていればリオンが悠々と眠っていられずはずがないのではあるが、彼は年の為に聞いた。
それほどまでに彼の「生」への執着心、そしてある一つの「野望」の達成心は凄まじい。
一つ一つの選択を、常に自分に有利な方へ。
一つ一つの決断を、常に自分の「生」の為に。
リオンはペットポトルを取り出す。
そこに眠っているのは彼女。変わり果ててしまった彼女。
だがリオンはソレに微笑みかける。
やるべきことは全てこの人の為に。捧げるものは全てこの人の元に。
そうしてリオンは気付く。簡易レーダーに映った一つの光を。

―知らずに、リオンは笑っていた。

身体全体を見回す。服はまだ乾ききってはいないものの、不快感だけはどうにか消えてくれた。
血の匂いもほとんど消えている。
傷はまだ残ってはいるが痛みを感じない。動きに支障はない。
火傷と凍傷もほぼ治ってきている。
人間の睡眠による体力回復には改めて関心させられる。
リオンは荷物をザックに入れて二本の剣を抜く。
レーダーの捕らえた印は北に約一キロメートル。
気配を消して、ゆっくり近づき。
そして…
「まずは一人目」
リオンは歓喜の顔を保ちながら教会を後にした。

292天才旋律 2:2006/02/15(水) 01:13:51 ID:c/5B00XX
ここからは、鼻歌など歌ってはいられない。
とうとう作戦開始の場所へと辿り着いた。
一人の天才、ハロルドはその森林の真っ只中に立ち尽くしていた。
「磁針が無かったら確実に迷っているところだわ…」
辺りは時刻も時刻、光は背の高い木々に阻まれてその色を鬱蒼としている。
四方八方は同じ風景。少し読み誤れば禁止区域のF8へと足を踏み入れることになる。
この状況を手に使わずにしてどうする。天才ハロルドはここに来る途中あらゆる算段を考えていた。
だがここでどうしても出てくる問題がある。それは、
「やっぱ釣り糸と周りの環境だけでは難しいわね…明らかに資材不足だわ」
常に最高の作品を作り上げたいハロルドにとってこれは少しの痛手になった。
だが天才の前にそんな不安は通用しない。
「やることやって隠れますか」
言って釣り糸を取り出して早速近くの木に巻きつけ始める。
それは、リオンが起きる三十分前の出来事。

北を歩く。そこに見えるのは大きな森。
自分が歩く度にレーダーの反応が段々と中心に近づいていく。
つまりこれはターゲットへと接近していることを意味していた。
距離にしておよそ半キロ。次第にリオンはその歩を早める。
刻々近づいていく危険。
はたしてそれはどちらのものなのか。
リオンは大きな森に足を踏み入れる。
地図で見た限りこの森の広さは半径一キロ程しかない。
このレーダーの捕獲範囲に十分達している。
相手が動かないのを見てここに隠れていることは確実だった。
だが、そこで一つの思考が巡り、リオンの足が止まる。
…隠れる?何故こんなところに?
北から南下して来たにせよ西側からやって来たにせよ、まず目がいくのは間違いなく先程まで睡眠を取っていた教会のはずだ。
もし一度教会に訪れたとしても、自分自身気が付かなかったし、なによりシャルが証言している通り何も事は起こっていなかったはずだ。
では何故教会ではなくこんな森深く、しかも禁止指定区域のすぐ近くで足を休めているのか。
リオンは気付く。ここに潜む目的が、休憩ではないことを。
そしてこれが罠であることも。
「…どうやら甘かったようだな」
リオンは森に入る。もちろん近くまでは行かない。
少ししてから足を止め、静かにシャルティエを掲げた。

293天才旋律 3:2006/02/15(水) 01:14:55 ID:c/5B00XX
大体の作業を終えたハロルドはこの場所が見えるような位置へと身を隠す。
磁針が示す東側にもう少し歩けば、一転そこは地獄と化す。
確かに残酷ではあるにせよ、あの男に向ける復讐心に比べれは比では無い。
例えその後に残る感情がどれほど酷でも。
自分は自分の戒めをしっかりと報いなければならないのだ。
あの若くして命を落とした少年のためにも…。

ズンと、どこかで音がする。
ハロルドは眉を寄せて叢にかがみこむ。そこから自分だけが辺りを見舞わせる視野確保用の穴を開ける。
これでこちらからは周りの様子が見える上に相手からはこちらの姿が見えなくなっている。
少し目を凝らして見てみると、森の中なのにそこには大きな壁が出来ていた。
「…誰か来たみたいね」
まずは相手の姿を確認して力量を測る。これがハロルドの考えていた一人で戦うための最重要条件。
だが相手の姿はまだ見えない。変わりに聞えるのは無気味で静かな轟の音。
そしてまた遠くで大きな壁が形成される。
「…不味い!」
直感的に感じる。天才の察しと言うべきか。
それは明らかに物理ではない力で壁は作られている。
つまりは晶術、あるいはその類の力。
確かにハロルドは森の中に罠を張った。それは重量級の(マグニスとバルバトスを想定して作られたので)敵でもおそらくは成功するであろう。
だがしかし見誤った。もしここに来る連中があの男たち以外の場合。
そしてそいつは頭の切れる奴でこの罠に気が付いた場合。
瞬間的に立場は逆転する。自分は袋の鼠になるのだ。
しかしここから自ずと違う真実が見えてくる。
一つは、ここに来ずして罠だと気付いたこと。
つまりこれは予め森に誰かいるとした前提で事は進められる。
相手は自分が森の中に潜んでいることを知っていたのだ。
だが森に入るところを見られた訳ではない。念入りに確認したのでこれは間違いない。
つまり相手は今さっきここにやってきて森の中に誰かいると判断したと言うことになる。
姿も見ずに相手の位置が分かる…他の世界の者の力か、支給品に属された電波感知系の道具。
ハロルドは両方を思惑に入れて考える。
前者の場合、その能力の特性を見極め、根本を見つけて打開。もしくは逃走。
後者の場合、その道具が本当であるかを見極め、奪回、もしくは破壊、それか逃走。
何にせよ相手の姿が見えない。これでは計画を練るも全ては憶測、推測になってしまう。
あまり確実性の無い結論は出したくない。それが天才である所以でもあった。
294天才旋律 4:2006/02/15(水) 01:15:26 ID:c/5B00XX
思考を切り替えよう。今度は相手が何をしているのか。
おそらく相手は何らかの力を用いて壁を作り、大きな、それも森全体を範囲とした囲いを作ろうとしているのだろう。
ハロルドは走り出す。早くこの森から出なければ敵はあっという間に自分を追い詰めて殺される。
「ったく、厄介なのを釣っちゃったみたいね…!」
一人悪態を付き森の北側の出口へと向かう。
轟なる音は南からしている。つまり開いているのは北。
ここは一先ず退散した方がいいだろう。
戦闘で一番必要とされるのは力でもなくスキルでもない、情報だ。
人は「知らない」だけでそれに恐怖を感じる。
まず相手が何なのかを知らない限り、こちらに勝ち目は無い。
木々の終わりが見える。もうすぐ出口だ。
ハロルドは走りきり、外の空気を吸う。
これで最悪の事態は免れた。あとは北上を開始して距離をとればいい。
だが、危険は常に隣り合っている。
ハロルドに向けて横から一つの剣戟が向かってくる。
それに気付いて咄嗟に身を投げ出し回避する。
顔を上げるとそこには一人の少年が立っていた。
少年はこちらに剣を向けている。
ハロルドはその剣を見て思わず息を飲んだ。
「…はは〜ん、アンタだったわけね」

295天才旋律 5:2006/02/15(水) 01:16:03 ID:c/5B00XX
リオンは森の外を「ストーンウォール」で囲い始める。
中で罠を張っているのなら外からそれを包み込めばいい。
一つ一つ、多少粗はあるもののこれは二義的なものに過ぎない。
この行為の本当の意味は、中から鼠を誘き寄せるためのモノだ。
わざわざ中に入って行かずとも、あちらから出てくるよう仕向ければ話は早い。
リオンは森の中に潜むものが頭の切れる者だと踏んでいた。
でなければこんな森を選びはしないし、まず教会に寄るべきが寄らないとなると、
教会に誰かが潜んでいると考えてこの森で行動を開始したと考えるのが普通だ。
そしてなによりC3のあの放送。おそらくは相手も聞いていただろう。
だがそこには向かわずにこんなところで罠を張っている。
つまりC3の村が危険になることを予想出来ていて、そこに向かわなかった。もちろんお人好しでは無い。
これらから森の中にいる者は少なくともこの作戦で今自分の立場が危ういと答えを出すはず。
そうなれば外に出ざるを得なくなる。これこそがリオンの作戦だった。
案の定、レーダーに映った森の中の反応は動き出す。
実はリオンが今いる場所は南側ではなかった。
森の東側に立っているリオンは、そこからなら南側の入口も北側の入口も見える。
南側よりに壁を発生させれば敵は自然と北へと逃げていくだろう。
そうして反応は北へと進む。リオンもそれを追いかける。
スピードでは森の中を走る相手より地上を走る自分の方が遥かに速い。
直線で走る相手には十分間に合うだろう。
そしてようやく、その敵は姿を現す。
外に出たことで安堵しているだろう。狙うなら今。
少し長距離ではあったが、リオンはそれに向けて魔神剣を放つ。やはり距離によって威力は衰えた。間一髪にして敵に避けられた。
その敵の元に辿り着き、シャルティエを向ける。
「…はは〜ん、アンタだったわけね」
敵はこちらを見据えて喋りだす。何故かその顔には余裕が感じられた。
「死んで貰う」
リオンは躊躇い無くシャルティエを振り下ろした。

296天才旋律 6:2006/02/15(水) 01:16:40 ID:c/5B00XX
『雷牙衝!』
咄嗟に短剣でシャルティエを弾いてハロルドは後ろに跳ぶ。
なにぶん杖ではないので威力は皆無。せいぜい目くらましが限度か。
リオンはシャルティエを弾かれて少し眉を寄せる。小さな子犬に吠えられた、そんな感じ。
するとリオンの腰から別の声が響きだす。
『リオン、こいつは…』
声を発したのはディムロスだったのだが、そこで言葉は途切られる。
ハロルドは指を鼻に当てて「黙ってなさい」のポーズをしていた。
設計者であるハロルド。共に旅をした仲間であるリオン。
自分の知る者同士が殺し合いをすなど黙って見ていられなかったディムロスは思わず声を出してしまっていたのだ。
だがディムロスはハロルドの考えていることが(昔から)分からないのでここはとりあえず従っておくことにした。
リオンはもちろんその様子を訝しげに見る。
何故この女がソーディアンの事を知っているのか。
それが気になったのは事実だが、今はそんなことより。
「大人しく僕らの為に死んでくれ」
リオンは再度シャルティエを掲げる。
ハロルドは気付く。設計者のみぞ知る晶術の輝き方で。
出る技が何なのかが分かれば対処は容易い。これが情報の、「知っている」ことの力だ。
ハロルドはバックステップでその場を飛ぶ。そこに一本の岩が飛び出してきた。
「なに…」
リオンは少しばかり驚く。シャルティエの晶術である『グレイブ』が回避された。
魔神剣の時は仕方なかったが、今回ばかりはまぐれでは済まされない。
リオンは相手に何らかの能力があると踏んだ。
慎重に近づく。だが次の瞬間、

ズボ

リオンの下半身が消えた。ように見える。
実際はただの落とし穴だったのだがそこには釣り糸が至るところに張り巡らされていた。
一度絡まると抜け出すのが困難な構造になっていた。
「なに!?貴様!!」
リオンは上半身だけの姿でハロルドを見上げる。もちろんハロルドはリオンを見下している。
「森の中だけに罠が張ってあると思ったら大間違いよ。外も中も、あたしの領域(テリトリー)なわけ」
リオンは必死に抜け出そうとするが両手が縛られている形になっている。
釣り糸だけでこうも複雑な仕上がりが出来るとは、これも才たる所以か。
ハロルドは近づいて何本か穴から出ている釣り糸を見る。
それを見極めて一本だけ引き抜く。
そこから次第に絡まっていく糸はリオンの持っていた一本の剣を縛り、それを外へと放り出した。
ハロルドはそれをキャッチする。
そして一言言って、
「あたしの方が一枚、いや三枚ほど上手だったみたいだわ」
すぐさま逃走を開始した。

297天才旋律 7:2006/02/15(水) 01:17:14 ID:c/5B00XX
今のあの状態のリオンなら短剣で色んなことが出来ただろうが、致命傷になるかどうかは疑わしいところ。
それにあの様子だとすぐに詠唱して脱出してくるはず。
なら今するべき事はこの場を引き、距離を取って相手からの危険を遠ざけること。
「逃げるが勝ちとはよく言ったものよね。勝ち目がまるで見当たらないわ。引き分けなだけ良しとしましょうか」
彼女は常に最善の選択をする。
ハロルドがリオンから奪った剣はその代償。
タダでやるほどあの作戦に命を賭けたわけではない。しっかりとそれ相応の報酬を頂かなければ。
「アンタが手に入ったのはボーナスものだわディムロス」
言って手に持った剣に喋りかける。
やれやれといった感じでディムロスはハロルドに賞賛を与えた。
『破天荒なところは相変わらずだなハロルド』
皮肉も交えて言ったつもりのそれは、彼女にとっては最高の褒め言葉だった。

298天才旋律 8:2006/02/15(水) 01:17:49 ID:c/5B00XX
リオンは静かにその晶術を発動させる。
最小限の『デモンズランス』をリオンごと穴に命中させる。
マーキングはしているので見事に釣り糸だけを切り刻んでくれた。
両手を使って這い上がるリオンは、敵が去っていた方角を見つめる。
レーダーの反応はまだある。だがかなり距離をとられてしまった。
どうやら北東に向かったのは間違いなさそうだ。
彼女は常に最善の選択をする。
北東に向かったのもおそらく東側のG5の町が禁止区域になっているからだろう。
そして近くのE7も禁止区域になっている。
つまり彼女はE7を避けて北上したと言うことになる。
「シャル…行くぞ」
「はい坊ちゃん」
リオンは一人北を歩く。
思うものはマリアンのこと。
想う人はマリアンのこと。
それだけを信念に、リオンは生き続ける。
リオンとシャルティエ。一人と一本。
それはかつてあった、自然な姿。

【ハロルド 生存確認】
状態:冷徹な復讐心 
所持品:短剣 実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) ソーディアン・ディムロス
基本行動方針:迂闊なことは言わない 単独行動(たとえ仲間に出会ってもマーダーの振りをして追い払う)
第一行動方針:北上して危険を回避
第二行動方針:首輪のことを調べる
第三行動方針:C3地点の動向を探る
第四行動方針:マーダー(マグニスたち)の始末

現在位置:F6平原→北上

【リオン 生存確認】
所持品:ソーディアン・シャルティエ 手榴弾×1 簡易レーダー マリアンの肉片(ペットボトル入り)
状態:腹部に痛み(軽め) 極めて冷静 眠気なし
基本行動方針:マリアンを生き返らせる
第一行動方針:ハロルドを追いかける
第二行動方針:ジューダスという男に会う
第三行動方針:目的を阻む者の排除

現在位置:F7草原北側


299業務連絡:2006/02/15(水) 01:21:19 ID:c/5B00XX
「東」と表記されているものは全て「西」です。
例:「北東」→「北西」
また、最後のリオンの「北を歩く」というのはE7を避けてということです。
すいませんでした。
300再び会議、そして疑惑 4 【修正】:2006/02/15(水) 21:44:19 ID:yNHU23P8
それから四人は村を出て歩き始める。
先程の衝撃がきっかけになったか否か、しばらくしてリッドは目を覚ました。
家を出る際に青髪の青年から装着されたホーリィリングの治癒能力により、
彼は何とか意識を取り戻す程度まで回復していた。
この世界において極光術の使用は発動者を疲弊させる様だと、キールが説いた。
リッドはまだしばらくは満足には動けない様子で、疲れの抜けきらない体を引きずりながらも、
三人から状況説明を受け、E2行きに同意した。

その後彼らは、再び燃え落ちた家の前を通り、瓦礫に埋もれた三人をどうにかしてやりたかったが、
実際埋もれた彼らを運び出すのは困難だったので、遺憾ながらそのままにすることにした。
「ごめんな、ファラ」
リッドが寂しげに、しかし落ち着いた声で言った。
「リッド・・・」
「分かってるよ。今は、他にやるべきことがある。そうだろ?」
「ああ・・・」
キールはそう呟き、黙祷した。
並んでリッドも、目を瞑って想いを届けた。
どこかそれは、幼いころ目にした惨状に似ていた。
あの村が焼けた時も、こうして自分はその跡を眺めていた様な気がする。
301再び会議、そして疑惑 10 【修正】:2006/02/15(水) 21:49:05 ID:yNHU23P8
【リッド 生存確認】
状態:精神力著しく低下 体力の低下
所持品:ムメイブレード、エルヴンマント、ホーリィリング
基本行動方針:ファラの意志を継ぎ、脱出法を探し出す
第一行動方針:キール、ロイド、ジェイと行動
第二行動方針:E2の城に行く
第三行動方針:メルディを捜す
第四行動方針:襲ってくる敵は排除
現在位置:C3 平原地帯

【キール 生存確認】
状態:後頭部打撲
所持品:ベレット
基本行動方針:脱出法を探し出す
第一行動方針:リッド、ロイド、ジェイと行動
第二行動方針:E2の城に向かう
第三行動方針:情報収集
第四行動方針:メルディを助ける
現在位置:C3 平原地帯

【ロイド 生存確認】
状態:普通
所持品:ウッドブレード、トレカ、カードキー ヴォーパルソード  
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:E2の城へ向かう
第二行動方針:リッド、キール、ジェイと行動
第三行動方針:協力者を探す
現在位置:C3 平原地帯

【ジェイ 生存確認】
状態:迷い 不安 全身にあざ TP3/4
所持品:忍刀・紫電 ダーツセット クナイ(三枚) 双眼鏡
基本行動方針:目的とする人を捜す
第一行動方針:E2の城に行き、クラトス等の安否の確認
第二行動方針:ミントへの謝罪
第三行動方針:シャーリィと合流
第四行動方針:ミトス・ユアンを発見する
現在位置:C3 平原地帯
302再び会議、そして疑惑 作者:2006/02/15(水) 21:52:13 ID:yNHU23P8
感想議論スレにて描写に指摘があったので修正しました。
申し訳ありませんでした。
303名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/15(水) 22:18:14 ID:2uqeKlsE
 │    _、_
 │  ヽ( ,_ノ`)ノ 残念 私のおいなりさんだ
 │ へノ   /  
 └→ ω ノ
       >
304箍 1:2006/02/16(木) 20:42:14 ID:9+J667yZ
C3より少し南下した、D3の北の端にて。デミテルはクレスを待ちながら、あたりを観察していた。
無論こちらの気配は消してある。なるべくどの位置から見ても死角になるような場所になるよう、計算もしている。

そして、視界の端に金髪の少年を捉えた。そっと周囲を見回して、それから再び少年の方へと視線を向ける。
もしこちらの視線が気付かれたとしても、向こうの位置からは死角になっていて、こちらは見えない。派手に物音を立てなければ見つからないだろう。

傍らのティトレイをちらりと見やるが、デミテルの従順なる下僕は、おとなしく彼のあとについているだけであった。

さて、彼の視界内を少年は南の方角に向かって歩き去って行った。
確か彼は、先程クレスがマーテルを殺した際に、瀕死の彼女にとりすがっていた少年だったはずである。

あの泣き喚きようを見るにさぞかし精神的な打撃をこうむったと思われるが、多少ふらついてはいるものの彼の足取りはしっかりとしていた。
ただ単に府抜けている訳ではなさそうだ。
305箍 2:2006/02/16(木) 20:43:39 ID:9+J667yZ
そこまで思考を巡らせたところで、背後にもう一つ人の気配を感じる。ある程度の確信を持って、デミテルは振り返った。彼のもう一人の下僕、剣士クレスである。

「申し訳ありません、ダオスにとどめをさせませんでした」

言葉は内容とは裏腹に淡々と発せられた。彼自身も薄笑いに近い表情を浮かべている。
少なくとも本気で済まないと思っていないことは明白であった。


「ダオスに関しては構わない。…放っていてもそのうち死ぬだろう。…しかし、クレス=アルベイン」

「何ですか?」
「何故マーテルを殺した?私は生かしておけと言っておいたはずだが」

「ああ…」クレスは軽く首を傾げ、それから事も無げに続けた。「でもあの時は仕方ありませんでした。あの場ではああする以外に切り抜けようがなかったので」

これでいいですか、とでも言いたげな表情で、彼は口を閉じた。言い訳にしてはいささか陳腐すぎるが(実際あの場でマーテルを殺す以外にやりようがなかったとは思えない)、デミテルは一つ溜息を吐き、「…まあいい」と頷いた。

まったく厄介なものを抱えこんでしまったかもしれないとデミテルは思った。
彼の中の正義感を消してしまえば操るのは容易いと思っていたが、そう簡単にはいかないようである。
正義感や信念が無い以上、クレスの中に残るのは戦士としての本能だけなのだが、それは主に従う従順な駒であると同時に、血を好み人をあやめることを全く何も思わない狂いでもあるのかもしれなかった。

306箍 3:2006/02/16(木) 20:45:54 ID:9+J667yZ
(判断力を消しておいたことがある意味で幸いだったということか…。もっとも、そちらも怪しいものだが)

相変わらずクレスは無表情とも薄笑いともいえない表情を浮かべてデミテルを見ている。

(まあいい、こちらにとって不利益となるようなら、処分するまでだ)

「それでデミテル様、これからはどちらに向かわれるのですか?」
「………」
そこでやっと彼は中断せざるを得なかった先程の思考を再開することが出来た。
あの金髪の少年の動向が気になった。

親しい人を他者の手によって亡くしたとき、大抵人は府抜けるか殺した者を憎むか、どちらかだ。特にこのような状況の中では。
そして少年は彼の目の前で親しい人を殺されている。

あの少年のマーテルへの執着具合は尋常ではなかったから、ひょっとしたら彼は…。
307箍 4:2006/02/16(木) 20:48:07 ID:9+J667yZ
「南下する」


デミテルは並び立つ二人の下僕へと声をかけた。 もしもあの少年が殺戮者となって惨劇を起こすとするのならば、自分にも機会が巡ってくる。
表だって派手に行動してくれる輩がいると、その影にかくれて動きやすい。
それに、あの少年が彼女の死によって狂いと化したとしたら。


「箍の外れた人間はただ突き進むだけだ…。つけこむ隙はいくらでもあるということに気付きもせず、な」


うまく利用すれば自ら手を下さずとも、大幅に戦力を削く事が出来るかもしれない。
あの少年が期待に沿った働きをせずとも、行動の指針にはなるだろう。
万が一、厄介な事態に陥ったとしても…。

「ついてこい、クレス=アルベイン、ティトレイ=クロウ」

今この手には武器がある。魔杖ケイオスハートが。




彼が踏むのは先行く者が築いた死体。しかし彼はその死体から常に大きな拾い物をしてきた。


今度も、きっと、また。

斜陽が彼等を照らす。魔術師は長く伸びた自身の影を一瞥すると、南へ向かって歩き出した。
308箍 5:2006/02/16(木) 20:50:13 ID:9+J667yZ
【デミテル 生存確認】
状態:TP30%消費
所持品:ミスティシンボル、ストロー、金属バット 魔杖ケイオスハート
第一行動方針:金髪の少年(ミトス)の後を追い、利用できそうならば利用する
第二行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
現在位置:D3→南部へ移動中

【ティトレイ・クロウ 生存確認】
状態:感情喪失、TP2/3消費
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック
基本行動方針:かえりたい
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する
現在位置:D3→南部へ移動中

【クレス・アルベイン 生存確認】
状態:TP中消費、善意及び判断能力の喪失
所持品:ダマスクスソード、忍刀血桜
基本行動方針:不明
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する(不安定)
現在位置:D3→南部へ移動中
309Jamming with Sel-Delqes 1:2006/02/17(金) 00:41:15 ID:pFp5uHC2
「探偵と自負するあたしでも流石に二足歩行の凡用牛型決戦兵器なんて見たこと無いわ。」
微妙に訳の分からない事を嘯きながらパンを齧るのはプリムラ、称号はまだ無い(いらない)。
「まさかあんなグラビティでグランゾンな大砲を持ってるなんて思いませんでしたものね。」
更に超兵器的で意味不明な発言と共にスープを啜るのはカトリーヌ、称号は疾風(本人非公認)。
「存外、呪いか何かではないか?バラが枯れる前にあの少女を愛せなければ一生牛のままと言う…」
物凄い危険なことを口走りながら術の構築を試みるのはユアン、称号は大食r(断固拒否)。
「しかぁーし!!全てはこのグリッド様の迫真の演技でこの絶望の境地から脱兎の如く
八面六臂の大盤振る舞い…って皆聞いてる?」
大声で自分の功績を称えるのはこの4人組のリーダー、音速の貴公子(自称)グリッド。
「凄かった凄かった、確かにあれは真似できないわ。あ、そこの塩取って。」
「余り大声を出すのは良くないのでは…お水お願いします。」
「言葉の中に漢字を多く使ったとて知性の証明には成らんぞ。やはり神雷の裁きは構築に時間を要するか。」
スルー+指摘+ツッコミでユニゾンアタック成立、グリッド精神的に死亡確認。
310Jamming with Sel-Delqes 2:2006/02/17(金) 00:42:24 ID:pFp5uHC2
「所でさ、あたしら呑気にご飯食べてていいの?つーか焚き火なんかして大丈夫なの?」
プリムラのもっともな指摘、彼らが使っている火種は魔術のそれであるが
その燃料は唯の木枝であり、立ちのぼる煙は微かであるが確実に存在している。
「確かに…グリッドさん、いくら温かいご飯が食べたかったからってこれは軽率だったのでは?」
カトリーヌは控えめにグリットを責める。
「いや待て、私も確かにご飯が食べたいとは言ったがこのような食事を設けると言ったのは
ユアンであって…って2人とも私の話を信じて無いだろ。」
憤慨したグリッドは声を荒げ反論するが2人の猜疑の目に調子を落とす。
「またユアンのせいにしてるよこのドンキホーテが」と言わんばかりの目の玉四つに
グリッドは泣きそうになりながらユアンを見る。
「2人とも、グリッドの言う通りこの食事を指示したのは私だ。余り責めるな。」
やれやれといった感じでユアンはグリッドに助け船を出す。
無論それを聞いた2人が驚いたことは言うまでも無い。
「いくらユアンさんの発案でも焚き火は危険すぎるのでは?」
カトリーヌは恐る恐る尋ねてみる。
311Jamming with Sel-Delqes 3:2006/02/17(金) 00:43:13 ID:pFp5uHC2
「確かに、私も普通なら火は使わない。しかし後ろで大きな焚き火をやっているのだ。
多少の貰い火も不思議ではあるまい?」
ユアンが食卓を用意した理由の1、それがG5の焔の存在である。
あそこから轟々と広がる煙の前には少なくとも遠目にはこの小さな燻りは捉えられないだろう。
「まあ、私を助けに来てくれたのだから、これ位の労はねぎらわねばなるまい?
周囲は気にするな。こう見えても私は人より少しだけ耳がいい。」
ユアンの発言に2人は感動した。いつも口を酸っぱくして注意やら小言やらを
まくし立てる人間がこのような発言をするなんて、夢のような話だった。
「おい「やっぱりいい人ですね、ユアンさん。」
カトリーヌは小声でプリムラに言う。
「うぉい「異性としてはともかく人徳者よね。最近流行のツン○レって奴?」
プリムラも小声で返す。
「人を勝手に世俗の蒙昧な区分に押し込めないでもらおうか…どうしたリーダー。」
ユアンは2人に釘を刺した後、グリットに、何故か四つんばいでうなだれている彼に声をかける。
「ユアン先生…威厳が欲しいです。」
まるでミンツの不良学生が更生する瞬間のようである。
312Jamming with Sel-Delqes 4:2006/02/17(金) 00:44:50 ID:pFp5uHC2
やれやれといった様子でユアンはグリッドに何かを吹き込むと、グリッドは途端に
元の調子を取り戻し改めて食事に取り掛かった。
扱いやすいと思った所でユアンは思考を再開した。
(間違いないな。どうやらこの世界でのエクスフィアの使用には精神力を対価として
支払わねばならない。そして恐らく天使化も同様…)
ユアンはこのゲームが開始してから疑問に思っていたことがひとつあった。
武器を奪われ、天使化を制限され、回復を抑えられたこの世界でなぜこの輝石が
没収されていないのかを。身体を強化するエクスフィアを封じていないのかを。
(最悪私たちの世界の人間がエクスフィア無しでは別世界の人間に敵わないほど
弱いのかとも考えたが、そうではないようだ。現に聴力は確実に大きくなっている。問題は…)
ユアンはさり気なく目頭を押さえる。
(このマナを奪われる感覚。聴力を少し上げただけで確実に精神力を消耗している。
これでは完全天使化やエクスフィアの機能を通常通り発揮させた場合
どれだけ精神が持つか?まともな精神では一戦闘持つかどうか…)
ユアンが更に思考を進めようとしたとき、グリッドの大声が響いた。
313Jamming with Sel-Delqes 5:2006/02/17(金) 00:46:56 ID:pFp5uHC2
「さて諸君、食事も大分進んだところで第49回漆黒の今後について語る会議を
始めたいと思う!!」
グリッドの発言に2人の目がグリッドに向けられる。どうやらユアンの策は的中したようだ。
ただしこんなふざけた会議名にしろとは一言も言っていない。
「では大食らいのユアン、説明を頼む!!」
ため息を付きながらユアンは3人を見据える。
「まず、現状の戦力確認だ。セイファートキー、ソーサラーリング、ナイトメアブーツ
マジックミスト、ジェットブーツ、C・ケイジ、 占いの本、フェアリィリング …以上が我等の所持品。
この中で確実に戦闘に使えるのは2つのブーツとC・ケイジ、フェアリィリングのみだ。
あの戦場を五体満足に生き延びるためだったとはいえ我等の戦力は疲弊している。
次も胡椒が効く相手が来るとも限らんし、今後はより一層厳しい展開を強いられるだろう。」
言葉を止めてユアンはグリッドを見る。そして
「ここで解散といっても納得しない奴が確実に一名いるので却下。
では次の目的地についてだが、現状あと3時間足らずで放送が始まることと
主催者が意図的に我等の拠点を潰してきた可能性を考えると迂闊に拠点を作るわけにもいかん。
そこで一時的にD5の山岳地帯を押さえる。」
314Jamming with Sel-Delqes 6:2006/02/17(金) 00:47:59 ID:pFp5uHC2
「山…ですか?」
カトリーヌは恐る恐る尋ねる。彼女の職業を考えるに登山は心苦しいものがあるだろう。
「案ずるな、あくまで仮の目的地だ。そこで放送を聞いて次の拠点を再検討する。
第二回の放送を聴く限りどうやらあの主催者はかなりのお喋りの様だ。上手くすれば
禁止エリアの傾向と死者の推移から全体の状況を把握することができるかも知れん。
C3の情報もだ。中央ならば全局面的に対応も可能、
最悪、篭城することになった場合水源の確保という点を満たしているしな。
今から出発すれば到着するころに放送が流れるだろう。リーダー、依存は無いか?」
監視のシステムを誤解している漆黒の翼は迷い無く主催者のことまでも口に出す。
そしてユアンは会議の最終プロセスとして形式的に一応聞いてみる。予想通り返ってくる答えは、
「うむ、承認!!」
315Jamming with Sel-Delqes 7:2006/02/17(金) 00:49:22 ID:pFp5uHC2
荷物をまとめ、所持品の分配を行う。上級魔術が使え、そしてその更に上の使用を目指すユアンに
フェアリィリング。下級とはいえ晶霊術を安定して使えるカトリーヌにC・ケイジ。
逃走を円滑に行うためにブーツを女性二人に。護身用としてプリムラにソーサラーリング。
残りの雑貨とマジックミストを全部グリットに。
グリットは「やはりリーダーたるもの仲間より多くのアイテムを管理しなければならんしな!」
とあまり深く考えていないようだ。
安全のためユアンとグリットが先行のため先に出発する。
女性二人が火の始末を完璧に終えると、ふと1つの物が目に留まった。
「これ何?…青い蝶々?」
怪訝そうに「それ」を見るプリムラ。
「かわいいですね〜」
恐れもせずそれに指を近づけるカトリーヌ。指が「それ」に触れたと思った瞬間
「痛ッ!!」
「それ」は音も立てず消えてしまった。
「大丈夫、カトリーヌ?」
近寄るプリムラに安心の笑顔を振りまく。
「大丈夫です。少し指から血が出たくらいで。」
プリムラがもう少し詳しい事を聞こうとしたがグリッドが大声で
こちらを呼ぶ為、慌てて二人の下へ急ぐ。
316Jamming with Sel-Delqes 8:2006/02/17(金) 00:50:27 ID:pFp5uHC2
この怪現象を二人に話すと、
「はっはっは。普段の行いが悪いとそうなるのだ。このグリッド様なぞ…」とグリッド。
「この世界の動植物は極少だろうがどんな生き物がいるか分からん。気を付けろ」とユアン。
などとのたまうものだから女性二人も気にすることを止めた。
ただユアン一人だけが
(…制限されているとはいえ私の聴覚で捉えられない羽音、在り得るのか?)
と自身の疑問の項目に1つ刻んだ。

「それ」が霞と消えた瞬間の同時刻。
4人組から少し離れた所。そこにいた1つの生き物が啼いた。
人の発音でないそれは言語には表せないが、
その漏れる感情はひどく無邪気で、なんとなく言ったことが分かる気がする。
それはかくれんぼが鬼ごっこに変わる合図。


−−見ぃつけた。


317Jamming with Sel-Delqes 9:2006/02/17(金) 00:51:14 ID:pFp5uHC2
【グリッド 生存確認】
状態:異常なし
所持品:セイファートキー 、マジックミスト、占いの本
基本行動方針:生き延びる。
       漆黒の翼のリーダーとして行動。
第一行動方針:D5山岳地帯へ移動
現在地:F5の森

【プリムラ・ロッソ 生存確認】
状態:異常なし 
所持品:ソーサラーリング、ナイトメアブーツ
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを磔にして島流し決定。
第一行動方針:D5山岳地帯へ移動
第二行動方針:出来ればC3行きを提案
現在地:F5の森

【カトリーヌ 生存確認】
状態:TP9/10 
所持品:ジェットブーツ、C・ケイジ
基本行動方針:帰りたい。生き延びる。
第一行動方針:D5山岳地帯へ移動
現在地:F5の森

【ユアン 生存確認】
状態:TP1/2消費 砂鉄が体にくっつく
所持品:フェアリィリング
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを信用していない。
第一行動方針:D5山岳地帯へ移動、放送を聴く。
第二行動方針:漆黒の翼を生き残らせる
第三行動方針:漆黒の翼の一員として行動。仲間捜し。
現在地:F5の森

【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
所持品:UZI SMG(30連マガジン残り2つ) ショートソード(体内に取り込んでいる) 要の紋なしエクスフィア(シャーリィの憎悪を吸収中、ひび割れあり)
状態:エクスフィギュア化 腹部の傷は再生完了 TP30%消費 (強化型テルクェスの使用)
基本行動方針:憎悪のままに殺戮を行う
第一行動方針:放送と同時に4人組に襲撃
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
現在地:F6

318Jamming with Sel-Delqes 2修正:2006/02/17(金) 01:46:26 ID:pFp5uHC2
誤)「いや待て、私も確かにご飯が食べたいとは言ったがこのような食事を設けると言ったのは
ユアンであって…って2人とも私の話を信じて無いだろ。」

正)「いや待て、俺も確かにご飯が食べたいとは言ったがこのような食事を設けると言ったのは
ユアンであって…って2人とも俺の話を信じて無いだろ。」

です。まとめの方で修正をお願いします。
319Jamming with Sel-Delqes 1修正:2006/02/17(金) 01:57:17 ID:pFp5uHC2
誤)「探偵と自負するあたしでも流石に二足歩行の凡用牛型決戦兵器なんて見たこと無いわ。」

正)「探偵と自負するあたしでも流石に二足歩行の汎用牛型決戦兵器なんて見たこと無いわ。」

です。御手数おかけします。
320悲しみの先にあるものは―― 1:2006/02/18(土) 01:10:27 ID:corqBsGA

「う……」

突然鳴った爆発音でトーマは目が覚めた。
身体中が草まみれだったが、トーマは気にしなかった。
その頭にあるのはただひとつ。ミミーのこと。

「ミミー! ミミーはどこだ!?」
「ク……」

その言葉に答える者は1匹の動物……クイッキーだけ。

「クイッキー! ミミーは……ミミーはどこにいるんだ!」
「ク〜〜……」

トーマのその問いにクイッキーはただ首を横に振り答えた。
その様子に違和感を感じ、不安になるトーマ。
辺りを見回しても人らしき姿は見当たらない。
見えるのはクイッキーとG5の町。そして、1体の首がない死体。

――死体?

トーマははっとした。
まさか……あれは……
もう一度その亡骸に目を向ける。それは見覚えのある服を纏っていて――

「ミミー? ウソだろ?」

トーマは体を震わせながらゆっくり首のないミミーへと向かっていった。
そこにクイッキーが止めに入る。

「クイッキ〜〜!!」
「どいてくれ、クイッキー! 俺は……ミミーを!!」
「クイッッッキィィィ〜〜〜!!」

トーマの目に再びミミーの亡骸が映った。
首のない死体。放置されている支給品袋。
決して頭はよくないトーマだったが、それを見て何が起きたかはなんとなく想像できた。

「まさか……ミミーは……?」

トーマはその場で崩れ落ちた。
閉じた目から零れ落ちるのは一滴の水。
ずっと忘れていた悲しみの涙。
321悲しみの先にあるものは―― 2:2006/02/18(土) 01:12:46 ID:corqBsGA


『いらっしゃいパン!アナタは最初のお客様パン。大サービスするパンよ!!』
――こんな俺を温かく迎えてくれたミミー……


『じゃあミミー特製のキッシュを焼くパン!きっと牛さんも驚くパン!』
――まだキッシュとやらを作ってもらってすらいないのに……


『これが終わったら、あまり得意じゃねえが、髪飾りでも作ってやるよ。頭がさびしいだろ?』
――俺も……まだその約束を果たしていないのに……



――――どうして……こんなことに……



「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

トーマは吼えた。ミミーを失った悲しみ、ミミーを守りきれなかった自分への怒りを吐き出すように。
何時間声を出し続けただろう。そんな時、ふとある人物の言葉が頭をよぎり、トーマは吼えるのを止めた。

――望むなら死者でさえ蘇らせてやろう。

それはゲームの勝者は願い事をひとつかなえられるという主催者ミクトランの言葉。
そのときは馬鹿馬鹿しいと思った。だが今は――

「クイッキー。ミミーの持ち物を取りに行ってくれないか?」
「クィ……?」

クイッキーから支給品袋とメガグランチャーを受け取り、トーマはゆっくりと立ち上がった。
その目はまるで獲物を狙う猛獣のように恐ろしく……

(待っていろ、ミミー。俺が必ず……)

トーマは北西の方角へと歩き出した。
ただ一つ残された希望にすがるために――
322悲しみの先にあるものは―― 3:2006/02/18(土) 01:14:03 ID:corqBsGA
【トーマ 生存確認】
状態:深い悲しみ 右肩に擦り傷(軽傷) 軽い火傷 TP小消費
所持品:ミスティブルーム、ロープ数本 、メガグランチャー、ライフボトル、ウィングパック×2 イクストリーム 金のフライパン マジカルポーチ ペルシャブーツ
基本行動方針:ミミーを蘇らせる
第一行動方針:北西へ向かう
現在位置:F5の平原

クイッキー
状態:不安
基本行動方針:トーマについていく
323Making the Final Strike 1:2006/02/21(火) 14:21:55 ID:h9irQ0un
 ダオスは、悟った。
 もはや自分に残された時間は、そう長くない事を。
 草原の真ん中に、ぽつねんと生えた一本の木。その幹に寄りかかった金色の魔王は、両の手を閉じ、開き、また閉じる。
 肉体も、あちこちが痛い。否、これはもはや痛いなどというレベルではない。十分に激痛といっていいレベルだろう。
 魔術「サイクロン」で刻まれた裂傷。「サンダーブレード」や「イラプション」で受けた火傷。「ロックマウンテン」で被った無数の打撲。
 この世にある、ありとあらゆる怪我の博覧会といった様相。まさにダオスは、満身創痍だった。
 両の手を開閉するたびに、痺れるような痛みが脳天まで駆け上ってくる。だが、その痛みさえも、まだ生きている証と考えれば、愛おしくさえある。
「…………」
 ダオスの双眸には、西の空にかかる太陽が映っていた。あと数時間もすれば、この島にやって来てより、二度目の夕日を見ることになろう。
 それでも、どれほど運命の女神に懇願しようと、次の朝日を拝むことは出来まい。ダオスは自らの肉体が訴える痛みから、その命の終焉を告げられていた。
 シルヴァラントとテセアラ。二界が再び統合されてより、遥かなる未来。ダオスはその未来のデリス・カーラーンの大地にて、生を受けた。
 かつてクルシスが生み出した無機生命体、天使。その血を引くダオスは、アセリアの大地に住まう人間に比べ、霊的な器官が発達している。
 そしてその霊的器官は、すでに根幹をずたずたに寸断されている。体内に溢れるマナの「痛み」から、それを窺い知る事が出来る。
 魔杖ケイオスハートから繰り出されたモリスンの魔術は、ダオスの肉体を物理的に傷付けるだけでは飽き足らず、ダオスの体内の霊的器官までも、破壊していたのだ。
 今すぐ死ぬことはない。だが、この命はもって、あと半日強というところ。半日強の時が過ぎれば、ダオスは確実に死神の鎌にかかる。
 それはすなわち、この事実を示している。
 デミテルの張ったダオス撃破の布石、それは工程こそ違えど、結果的には完璧なものに仕上がっていたことを。
 クレスという騎士(ナイト)は、モリスンという僧正(ビショップ)と共に、ダオスという王(キング)に王手(チェックメイト)をかけたのだ。
 ここから西…午後の太陽に照らされる海。ただその海は、ひたすらに青い。ダオスは彼方の海を見つめながら、1つ溜め息をついた。
 気合、根性、奇跡。
 その手の精神論を信じてみるか? ダオスは一瞬限りそんな思いに駆られたが、すぐさま愚かしいと切り捨てる。
 体内の霊的器官を、ここまで完膚なきまでに破壊されれば、もはや例外はない。
 ダオスは断頭台(ギロチン)にかけられ、刑の執行を待つだけの死刑囚も同然。
 例え人がどれほど肉体を鍛えようと、どれほどの知恵を身につけようと、どれほどの武勲を成そうと。
 水を呼吸することは出来ない。パンと水を摂らずに生き続ける事は出来ない。睡眠を必要としない体にはなれない。
 そこには、「なぜ」も「どうして」もない。不条理なまでの、摂理の押し付けがあるばかり。
 ダオスの今の状況も、それと同じ。何をどうあがこうと、もはや下された天命からは、逃れることなど出来ないのだ。
324Making the Final Strike 2:2006/02/21(火) 14:22:58 ID:h9irQ0un
 守ることの出来なかった聖女、マーテル。彼女の癒しの力がここにあったならば、肉体の傷は消えるだろう。多少の延命は出来るだろう。
 だが、そればかりは覆すことは出来ない。ここまで体内のマナをかき乱され、傷付けられては。待ち構える「死」を覆す事など。
 ダオスは、覆せない死刑宣告をただ、静かに受け止めていた。まるで今、彼が眺める海のように。心静かにダオスは瞳を閉じる。
 思えば、ここまで駆け抜けてきたのは、長い道のりだった。
 デリス・カーラーンの住人として生を受け。デリス・カーラーンの王の座に就き。デリス・カーラーンの大戦争を阻めず。
 デリス・カーラーン全土を巻き込む戦いの後、かの星からはマナが枯渇した。
 マナそのものの大地たるデリス・カーラーンからマナが枯渇するなど、その戦争の凄まじさは推して知るべし。
 終戦後、ダオスはデリス・カーラーンの古文書をひも解き、母なる星の命を救う手段を求めた。狂おしいほどに、来る日も来る日も。
 そして見つけ出した手段はただ一つ。
 かつてデリス・カーラーンの伴星であった、シルヴァラントとテセアラ。そこに残されたマナを生む樹より、「大いなる実り」を得ること。
 遥かなる星辰の海へ旅立ち、ダオスはその星に降り立った。シルヴァラントとテセアラを統合し再誕した、アセリアの大地へ。
 乾きつつある自身の血で彩られた手。ダオスはそれを見やり、今までの所業を思い返す。
 この手で振るった指揮で、あるいはこの手で放った魔術で。私は、どれほどの人間を殺して来たのだろう、と。
 大いなる実りを得るために邪魔になる存在は、全て薙ぎ払って来た。
 魔科学。魔科学を学ぶ者。ミッドガルズ王国。アセリアの大地に降り立ってよりこの方、幾千幾万という単位の命を滅ぼして来た。
 最初は、アセリアの大地の民に、協力を求めようと呼びかけた。世界樹ユグドラシルの大いなる実りを収穫するために、力を貸してくれと。
 だが、ダオスの真摯な懇願は、一蹴された。
 この世界の実相を、遥かなる星デリス・カーラーンを、ダオスの知り得た全ての真実を、アセリアの民に語った。
 果たしてその真実は、アセリアの民に理解されることはなかった。
 たわ言を口にする愚か者となじられ、狂人とそしられ。そこでダオスは、大いなる実りを独力で手にする断を下したのだ。
 いかなダオスとは言え、最初はアセリアの民を虐殺することはためらった。ためらいがなかったといえば嘘だった。
 だが、真実を語っても、なお理解しない愚か者どものために、デリス・カーラーンの十億の民を見殺しにするなど。
 デリス・カーラーンの王としての重責を担うダオスには、出来ない相談であったのだ。
325Making the Final Strike 3:2006/02/21(火) 14:23:58 ID:h9irQ0un
「…私が、間違えたというのか…」
 自らが滅ぼした命に思いを馳せたダオスは、ふとそんな言葉が口をついて出た。
 ダオスが滅びれば、デリス・カーラーンで待つ十億の民の命運は決する。逃れようのない、滅亡への命運が彼らには下るのだ。
 すなわち。
 あと半日で、デリス・カーラーンの命脈は断たれる。マナそのものの豊穣の大地は、星の海に浮かぶ醜い岩塊へと変わるのだ。
 絶望。この満身創痍の身で、このゲームに勝利するなど。
 もはやダオスは、モリスンが奪いきれなかった、命のほんのひとかけらでここにいるに過ぎない。
 ダオスは、両の手でその頭を抱えた。王としての責任を果たせぬ無力感、大切な人を守りきれなかった憤り…濁流のように駆け巡る。
 だが、この気持ちを、無念を、汲み取る者はもはやいない。彼はただ、孤立無援…
 否。
 ダオスは突然、金の髪を振り乱して、その頭を持ち上げた。
 まだ、希望は残されている。残されているはずだ。
 ダオスはそこで、短いながらも行動を共にした、あの少年らを思い出していた。
 例えば、ロイド・アーヴィング。不器用で未熟で浅慮な少年だが、誰かを犠牲にして得る「幸せ」への忌避感は、誰よりも強かった。
 例えば、リッド・ハーシェル。一見は無気力で事なかれ主義の少年だが、その目には弱者への慈しみが満ち溢れていた。
 おそらく彼らなら、このゲームを勝ち残った暁に、この願いをあのミクトランに告げるはずだ。
 「このゲームの参加者全員を蘇生させた上で、各人を故郷に送り返してくれ」、と。
 当初ダオスは、ミクトランのこの言葉を信じてはいなかった。ゲーム終了後に全員を蘇生させるなど、はなはだ馬鹿馬鹿しい話だ。
 おそらくは、ゲームに消極的な人間を揺さぶるためにかけたブラフであろう。ダオスはくだんの言動を、そう解釈していた。
 だが、今の満身創痍の自分には、あの言動がブラフではないことに賭けて、わずかな希望にすがる以外、状況を打破することは出来ない。
 それでも、希望が残されているだけまだましというもの。わずかでも光があれば、人はそこを目指して歩くことが出来る。
326Making the Final Strike 4:2006/02/21(火) 14:24:45 ID:h9irQ0un
 そのために、今ダオスが出来ること。その答えは、容易に浮かんだ。
 残されたわずかな時間を使って、可能な限り多くのマーダーを道連れにすること。
 ロイドやリッドのようなかすかな希望の灯を、私利私欲や狂気に駆られた、マーダー達に吹き消されるわけにはいかない。
 あの異形の怪物と化した少女や、かつて自らの居城で剣を交え、また先ほどマーテルを冥界に送り去った少年…
 可能な限り、彼らをこのゲームから脱落させる。特にかの少年…クレスからは、きな臭いものを感じる。
 過去に一度剣を交えて分かったことだが、彼はあんな虐殺を、平然と行える性格ではない。
 良くも悪くも、クレスの剣は純真な剣だった。汚い打算や欲望抜きに振るわれる、青臭い剣筋だった。
 それが、ああまで人殺しに禁忌を抱かぬ、殺人鬼の剣に変わったとあれば、何者かがよほどの衝撃を彼に与え、手駒にでもしたとしか思えない。
 そして、ダオスが思い当たる筋であり、かつこの島に呼び寄せられた者の中で、その「何者か」に該当する人間は、ただ1人。
「…もしや……デミテルの差し金か!」
 ダオスの軍門に下った人間やハーフエルフの中でも、特に切れ者であったデミテル。
 自分の手を汚すことなく、他者を意のままに踊らせ、自滅させる…
 そんな漁夫の利をさらうような戦略を練ることにかけては、彼はダオスですら時に驚嘆するほどであった。
 無論、犯人をデミテルと断定するには、材料が決定的に不足している。
 だが、仮にもデリス・カーラーンの王である自身が、ただ状況に流される他ない…そんな状況がこうも続いていては、ダオスもそう勘繰りたくもなる。
 この状況と、そしてかつてデミテルが、ダオス軍の参謀として立てた戦略…
 そのとき見知ったデミテルの戦法の「癖」を照合すると、俄然この一件の立役者の筆頭候補に、彼が浮かんでくる。
 この状況は、彼が参謀として立てた戦術論の特徴と、かなりの一致を見ているのだ。
 ダオスがこうまで抵抗を許されない状況に追い込まれたのも、彼の差し金と考えれば、まだ納得いく。
 ダオスの人となりをある程度理解している彼なら、ダオスを手の上で踊らせる事も可能であろう。
 だが、デリス・カーラーンの王たる彼とて、いつまでも彼に踊らされるわけには行かない。
 彼には担うことなど出来まい…デリス・カーラーンの十億の民の命など。下克上などという下らない理由のみで、あの男に勝利を与えるわけにはいかない!
 デミテルを葬り去るために、今のダオスに出来ること。
327Making the Final Strike 5:2006/02/21(火) 14:25:33 ID:h9irQ0un
 ダオスは震える手で、皮袋に手を差し入れた。中から取り出されたのは、羽ペンと、そして羊皮紙。
 羽ペンにインクを浸し、一息ついてから筆を振るう。軽妙洒脱に、一文字一文字を書き込んでゆく。
『この手紙を見る者へ…願わくば貴公が、ロイド・アーヴィングやリッド・ハーシェルのような、他者の幸せを願える優しき者であることを…』
 その一句から始まった羊皮紙。それは、まさしくダオスの遺書であった。
 そこには、今のダオスの心境を、推測を、持ちうる全ての情報が記され、そしてダオスの思いの丈が綴られていた。
 C3の村の悲劇の真相。
 その悲劇の裏から、恐らくは糸を引いていたであろう、デミテルという危険な男の存在への警告。
 ダオスが今までマーテルを守り続けた理由。
 デリス・カーラーンを襲った悲劇と、その救済策。
 ダオスが、アセリアの地に降り立ち、戦った経緯。
 アセリアの地で犯した、償いきれない大罪。
 それらを書き上げながら、ダオスは締めの一文に、こう書き加えた。
『このバトル・ロワイアルというゲームは、狂気という名の猛毒に満ち溢れている』
 それは、ダオスがこの島に降り立ってからこの方、常々思ってきたこと。
『たとえ心優しき者でも、その優しさゆえに毒を受け、怒りに、憎悪に、その身を焼かれることもある。
私もこの目で、その末路を辿った者を見た。いかに聖人君子たれど、彼や彼女もまた人である以上、この猛毒に蝕まれる危険は常にある』
 ダオスの脳裏に、あの少女の姿がよぎる。
 最初マーテルの介抱を受けながらも、兄の死ゆえに、狂気という名の猛毒を受け、果ては異形の怪物と化した、あの少女の姿が。
 それだけではない。この島に呼ばれた人間のうちの、幾人が倒れたのだろう。
 自らを守りたいと。愛する者を守りたいと。自らや他者を愛するという尊い気持ちゆえに、殺人という罪を犯し、そして死んでいった者達。
『自分だけは大丈夫と、狂気などには屈しないなどと油断するなど、ゆめゆめあってはならない。
人が自らを、他者を愛する限り、いつでも人は猛毒を注がれる余地を持つ。
されど、人を愛する気持ちを忘れるべからず。愛なくして、人は刃を握るべからず』
 マーテルがいてこそ、デリス・カーラーンの民がいてこそ、ダオスはここまで戦い続ける事が出来た。
 人を想わずして力を振るう…それこそ、ただの殺人鬼に過ぎないのだ。
『もし貴公が狂気という名の猛毒に屈しようとしたならば、この手紙が…手紙にこもった想いが、猛毒をはねのけるささやかな一助となることを願う。
狂気に屈する事なかれ。その時は思い出せ。この手紙を記した者のことを。使命を果たしうることなく死んだ、この非業の男を』
328Making the Final Strike 6:2006/02/21(火) 14:26:21 ID:h9irQ0un
 最後の文章は、ダオス自身見ていてたまらなくなり、思わず目を背けた。
 ダオスは羊皮紙を小ぎれいにたたみ、封蝋代わりにそれを紐で封じた。
 ダオスに与えられた時はあと半日。泣いても笑っても、半日ばかりなのだ。こうしている間にも、死神は徐々に背後に迫ってくる。
 その後は、鳶色の髪の少年や、赤髪の少年…彼らのような者に遺志を託せることに、一縷の望みを賭けるしかない。
 そのために、恥を忍んでしたためた遺書だ。彼らに仇なす存在は、全て打ち払う!
「覚悟しろ…」
 呟きながら、立ち上がるダオス。
「デミテル…クレス…シャーリィ…この島に残る、多くの忌まわしき殺人鬼ども…!!」
 ダオスが今度見やったのは、南の空。マーテルを殺した殺人剣士クレスは、確か南に向かっていたはず。
 ならば、今後の針路の決定は、拍子抜けするほどに容易だ。
「貴様ら全員…デリス・カーラーンの名の下、この私が葬り去ってくれる! 我が母なる星の命の灯は、貴様らには吹き消させん!!」
 そう叫ぶダオスの脳裏では、クレスを豹変させた黒幕を確実に葬り去るための策が、急速に組み上げられていく。
 豊饒の大地を統べる男は、壮烈な覚悟を背負って、この島の土を再び踏みしめ始めた。

【ダオス 生存確認】
状態:TP残り70%  HP1/8 死への秒読み(およそ半日後に死亡) 壮烈な覚悟
所持品:エメラルドリング  ダオスの遺書
基本行動方針:死ぬまでになるべく多くのマーダーを殺害する
第一行動方針:C3の件の黒幕を、クレスもろともに断罪する
第二行動方針:遺志を継いでもらえそうな人間は、決して傷付けない
現在位置:C3南部 村の郊外の草原
329黄昏の海 1:2006/02/21(火) 23:21:36 ID:CpaMKu4p
辺りは程無くして夕焼けに染まっている。
その風景からも分かるとおり、時刻は夜へと変わるための準備をしていた。
コレットは無言で夕日を見つめる。
果たしてそれは、睨んでいるようにも見えるし、眺めているようにも見える。
だが今のコレットの前にはそのような情景の概念も無に等しい。
ただ、コレットの向く方向に夕日がある。それだけのこと。

金髪の父親は以前その意識を夢の中に移行させたまま。
この状況下の中、スタンはどんな夢を見ているのか。
その隣で家族は団欒とその時を過ごしていた。
E2の城跡に待機をしている一行はその間、リアラの持っていた最後の所持品の解析をしていた。
「わかんない…説明書とか無いもんなぁ、コレ」
カイルはソレを手にとりマジマジと見つめる。かれこれ一時間以上そうしているのだが、結局分からず終いになっている。
「なんだか属性を記すような絵柄が描かれていますけど…」
ミントも揃えて怪訝に見る。カイルの手にあるソレは自分の世界にも無いものだと認識させる。
「私も最初に確認したときはよく分からなかったんだけど…私たちだけじゃ駄目みたい」
最後にリアラが言葉を添える。
初めてこの袋の中身を確認したときは頭が混乱していて的確に見ることが出来なかった。
しかしこの場所で待機することになってようやく身も落ち着いたことに気が付いたリアラは、未だ正体不明のソレを皆に見てもらうことにした。
一見ソレはただのカードに見える。絵柄形からしてタロットに見えなくも無い。
正しくソレはエターニアの反面世界、セレスティアで大流行しているカードゲーム『ウィス』だった。
だがエターニアの世界に属していないカイルとリアラ、それにミントは当然このカードの用途が分かるはずも無く、
「そうだな…俺たちじゃ太刀打ち出来ないよ…」
結果、得体の知れないモノにただ時間を費やしただけに終わる羽目になった。
気付けば日が沈みかけていることにミントは気付く。
「あら、もうこんな時間ですか」
言葉に反応したカイルは時計を見る。
確かに、もう少しすれば第三回の放送がこの島に響き渡る時刻を指していた。
「なんでこんなに夢中になってたんだ…ただカードを見てただけなのに」
カイルは驚きのあまりそんなことを口にする。
得体の知れないものを観察するのに費やした時間がわからない。カイルはなによりそのことに驚いていた。
それは恐らくカイルだけではなかっただろう。
リアラもミントも、結局はこのカードの正体が分からないままなのに、それだけに経た時間に実感が持てないでいた。

単純な話、このカードゲーム『ウィス』には時間の感覚を無くさせる効果があるだけのこと(気のせい)
それはカードで遊んでいようが遊んでいまいが、『ウィス』の前に人間は時の経つ感覚が早く感じてしまうのだ(気のせい)

330黄昏の海 2:2006/02/21(火) 23:22:17 ID:CpaMKu4p
――コレットが その眼差しの方を変える

それは確実に北を向いている。そのことに真っ先に気が付いたの
はリアラだった。
コレットの様子に気付いたリアラはその傍による。依然として彼女は北を向いたまま。
「コレット、どうかしたの?」
反応が返ってこない事はわかっていたのだが、リアラは声を掛ける。
その向きを変えることなくただ北の方角を見つめるコレットにつられてリアラも見やる。
が、そこには何もないただの草原。
だがリアラには、コレットのその映す目がさっきまで夕日を見ていた目と若干違うことに感じていた。
ただ眺めているわけでは無い。何か。
「リアラ?どうしたの?」
カイルが心配そうに声を掛ける。
リアラは返答に困ってもう一度コレットを見た。
瞬間、リアラの身体が上空に浮かぶ。
「…え?」
いや、正しくはコレットがリアラを片手で持ち上げていた。
「うわ、コレット!? 何する気だよ!?」
慌ててカイルはコレットの行動が何を意味するものなのか理解しようとしたのだが、あまりの突然にやはり把握しきれない。
「コレットさん!? 一体何を…」
口に手をあててミントもその様子に驚く。
コレットはそのままミントの傍まで近づき、同時に
「ひゃっ!」
もう片方の手でミントを持ち上げた。
カイルは何がなんだか益々分からずに事が終わるのを待つしかない。
コレットは二人を抱えたままE2の跡に出来た四方の窪みに投げ下ろす。
そこはかつて拷問部屋だった場所で地下だけがポッカリと開いてしまった穴だ。
少々荒っぽかったが、地下に下ろされたリアラとミントはコレットの行動が分からないのでしばらく言うことを聞くしかない。
二人を地下に降ろすと今度は眠っているスタンを持ち上げて、同じように地下に降ろした。
ミントとリアラに下で支えながら下ろされたとはいえ、それでも起きない父親にカイルは少なからずとも(何故か)尊敬の念を覚えた。
そして、気付く。
ここからなら、カイルのいる地上からはリアラたちの姿が全く見えないことに。
わざわざ地下の窪みまで覗き込まなければ人の姿が確認できない、そこは広い草原の中の唯一の死角となっていた。
地上にはカイルとコレット。地下にはリアラとミント、そしてスタン。
コレットがこの構図を作った意味を、カイルは
「一体何を…?」
やはりまだ理解出来ないでいた。
だが、即座にコレットの視線はまたしてもその方向を向く。
カイルは習って同じ方向を見て、そしてやっと理解した。
「誰かいる…」
そこには確かな一つの人影。

331黄昏の海 3:2006/02/21(火) 23:23:03 ID:CpaMKu4p
「感じるよ…姉さまの器が…」
かつてマーテルだったものにミトスは喋りかける。
だがそこにマーテルの姿は無い。あるのはただ、姉を思うが故に生まれた歪んだ愛のみ。
ミトスはその歩を確実に進めていた。
姉の器となるための少女の元へ  姉を甦らせるという悲願の元へ
ミトスは確かに感じていた。姉と似た、マナの形。
そこには微かな嫉妬も感じる。
姉さまと同じマナの匂いを持った奴がいる。
そのことに対してミトスは少しの不満をもっていた。
この世に姉さまは一人だけでいい。自分の姉さまは一人しかいない。
だが、それは所詮生贄の少々たる抗いに過ぎない。
姉の器になれば、また姉さまは一つになる。一人になる。
今はただそれだけが彼を動かす無二衝動。
それを願とする全ての事を姉のために。
彼の目にはただ、姉の姿しか映っていなかった。
そして遂に、ミトスはその望を垣間見る。
目に映る先に、その少女がいる。器があるのだ。
まるで目の前にご馳走が用意された、そんな感覚をミトスは覚える。
目の前にソレはある 手の届くところまで来ている
躊躇う要素がどこにあろうか。知らずにミトスは足を速めた。
あと何メートルだろう、待ち遠しい、もどかしい。
「姉さま!!」
ミトスは歓喜のあまりに叫んでいた。

332黄昏の海 4:2006/02/21(火) 23:23:35 ID:CpaMKu4p
盲目、その一言に尽きる。
ミトスは喜びのあまりにその姿を確認できないでいた。
確かに目の前にいるのは、名簿でも確認した通り姉の器となる少女。名はコレット。
だがどういうことかその少女は既に心が失くなっていた。
これは確かに好都合だった。器となる身体に二つの心は相容れない存在である。
よって少女の心は強制的に排除して、無理やりマナを詰め込もうとしていたのだが、別段これは手間が省けたといっていい。
だが、問題はここから。
その心無き少女がこちらに刃を向けているのだ。
ミトスは足を止める。行動方針の存在が無い彼女に何故攻撃の意志があるのか。
無機結晶症を塞き止めるために付けられた要の紋。
だが結果的にそれは中途半端な形で外されている。
しかも例には無い自分の力によってで外されたもの。
徐々に味覚、感覚、睡眠を削っていき、最後にその器を完成させる過程を、コレットは別の形で作ってしまっている。
だがやはりそれは、別の形でしかない紛い物。
どこかで綻びが出来るそれは、ミトスに驚きの感情を与えていた。

盲目、この一言に尽きる。
何故自分は安易に近付いてしまったのだろうか。
何故彼女がたった一人と思ってしまったのか。
実際にはコレットの隣に少年が立っているではないか。
その少年は真っ直ぐに自分を見つめている。
ミトスは知らずにその足を後退させていた。

…後退? 何故僕が?
怖れているのか、彼女の不意な出来事に。

…怖れる?一体何に?
器は既にその準備が整っているではないか。跡は姉さまのマナを注入すればいいだけ。

決心は出来た。自分は何のためにここにいるのか。
「全ては姉さまのため…!」
ミトスはゆっくりとその双剣を構えた。

333黄昏の海 5:2006/02/21(火) 23:24:14 ID:CpaMKu4p
その人影は、徐々に距離を詰めてくる。
次第に速度を上げるその人影は真っ直ぐにこちらへと向かって来た。
カイルはコレットのとった行動を今になってようやく理解したのだ。
おそらく、スタンは負傷しているので地下に避難させ、
リアラとミントは近距離を得意としないので戦闘は不向き。
だが二人には二人の戦い方がある。
リアラはレンズを用いた晶術による攻撃。
ミントは法術を用いた補助、そして回復。
それはおそらくこちらがピンチになってからの話。
地下の二人もおそらく気付いただろう、今はおとなしくしている。
そして今戦うことが出来るのは消去法でカイルとコレットの二人だけ。
成程、切り札は最後までってのはよく言ったものだな。
カイルはその人影を見つめながらそんなことを考えていた。
そしてとうとうその人影は姿形を確認できるまでの距離にまで来ていた。
カイルは目をこする。確かに見間違いではない。
やって来るのは自分と幾分か違うであろうだけの少年だったからである。
あんな少年もこのゲームに参加しているのか…。
カイルはまた一つこのゲームの忌々しさを感じる。
そうしてその少年はこちらの元へと辿り着いた。
だが今度は少年が驚愕しているように見える。
コレットを見て驚いているのだろうか。理由はどうあれ何故彼はこんなところまで来たのだろうか。
カイルは声を掛けるタイミングを完全に失ってしばらくその様子を見つめていた。
だがその数秒後、突然に少年は剣を抜く。
その光は二本。二つの刃は完全なる攻撃の意志。
「そんな…」
カイルは少年の意志に悲哀の念を抱くしかなかった。
何故こんな子供とも戦わなければならないのか。
何故このゲームはこうまでも人を狂わせるのか。
知らずに、カイルはその剣を抜く。

戦いの合図はあと少し――
334黄昏の海 6:2006/02/21(火) 23:25:05 ID:CpaMKu4p
「やめろよ!戦うことなんて何もないんだ!」
カイルは叫ぶ。自分に出来る精一杯の説得。
だがミトスの心にその意志は伝わるだろうか。
否。全ては姉さまのため。
「邪魔をするならお前、殺すよ」
その眼光は辺りを凍らせる。
身動きできないカイルは、感じる。
狂気、凶気、それ以外に何と表現しようか。
もうこの少年は手遅れだ。直感的にカイルは感じる。
バルバトスよりも、危険だ。直感的にカイルは感じる。
向けられた刃も、銃口に見える。
彼が気まぐれで引き金を引けば自分の命は消える。
そんな心臓を握られた黒々とした感覚。
思わず顔を背けたくなる。この間の与える一分一秒が死の匂い。

――俺は、そんなに意志の弱い人間なのか?

――こんなところで死んでもいいほど、俺はどうでもいい人間だったのか?

見つけた…私の英雄…

カイルは瞳に光を取り戻し、剣を握る拳に力を入れる。
そしてポケットに入ったままの謎のカードを一枚取り出して上空に弾いた。
ミトスは別段気にする様子も無く、その行為を許す。
ひらひら
心無き人形は銃剣を少年に向ける。
ひらひら
想いの為に動く少年は双剣を構える。
ひらひら
少女と約束を守る為に少年は剣を構える。

カードが地面に落ちた時  戦いは始まった

335黄昏の海 7:2006/02/21(火) 23:25:56 ID:CpaMKu4p
【スタン 生存確認】
状態:アバラ三本損傷  睡眠 
所持品:ディフェンサー ガーネットオーガアクス
第一行動方針:傷が治るのを待つ
第二行動方針:C3村へ向かう
第三行動方針:仲間と合流
第四行動方針:ジョニーが気になる
現在位置:E2城跡  地下

【カイル 生存確認】
状態:健康
所持品:フランヴェルジュ 鍋の蓋 フォースリング ラビッドシンボル(黒)(割れかけ) ウィス
第一行動方針:敵意を向ける少年への対処
第ニ行動方針:C3村へ向かう
第三行動方針:リアラを守る
第四行動方針:クラトスの息子(ロイド)に剣を返す
第五行動方針:ハロルドが気になる
現在位置:E2城跡

【ミント 生存確認】
状態:TP2/3
所持品:ホーリィスタッフ サンダーマント
第一行動方針:地下で待機
第ニ行動方針:C3村に向かう
第三行動方針:仲間と合流第四行動方針:クレスが気になる
現在位置:E2城跡 地下

【リアラ 生存確認】
状態:TP2/3
所持品:エクスフィア強化ロリポップ 料理大全フルールポンチ1/2人分 ピヨチェック、要の紋
第一行動方針:地下で待機
第二行動方針:カイルについて行く
第三行動方針:コレットを信じる
第四行動方針:ハロルドが気になる
現在位置:E2城跡  地下

【コレット 生存確認】
状態:TPほぼ回復 無機生命体化 (疲労感・精神力磨耗無視)
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(残弾0)
苦無(残り1)
基本行動方針:防衛本能(攻撃意思に対する完全抹殺及び不明瞭な干渉に対する威嚇)
第一行動方針:目の前にある明らかな敵意の排除
現在位置:E2城跡

336黄昏の海 8:2006/02/21(火) 23:27:17 ID:CpaMKu4p
【ミトス・ユグドラシル 生存確認】
状態:TP4/5
所持品:ロングソード、邪剣ファフニール、アトワイト、大いなる実り(この世界規模の)
基本行動方針:マーテルの復活
第一行動方針:マーテルの器(コレット)の確保
第二行動方針:魔剣エターナルソードの入手
第三行動方針:弱者として他人を利用する
第四行動方針:蘇生失敗の時は皆殺し
現在位置:D3南下中

337倒錯共生1:2006/02/22(水) 06:14:57 ID:6pAUWWru
彼は本来なら好青年という言葉をまさに体現した様な人物だった。
多くの人々と悲しみを共有し、その口は時には仲間を和ませ、握られた剣は己の思う悪に対して振られた。今までの人生はひたすら一途に歩まれてきた。
が、今の彼は違う。
その顔は悲壮どころか人間に於ける善の感情は全て排され、人々を穏やかにした口からは歪んだ笑みが浮かぶのみ。そして剣や己の纏う衣服には聖女の血が赤黒くこびり付いていた。
本来の彼、クレスアルベインはもういない。傍らの魔術師の男により、本来の彼は失われてしまったのだ。
脳の神経を侵され、彼に残ったのは戦士としての本能、闘争欲のみ。
生暖かい笑みを浮かべる彼は端から見ればかなり頼りない筈なのに、しかし誰もが畏怖するような邪悪さを孕む。
掴み所のないその薄笑いには何処か不安定な精神をごまかしているようにも見えた。
今にも爆発しそうな彼の欲求。
そう、例えば―――

彼を豹変させた張本人、デミテルはそんなクレスに注意を払っていた。例え操られようと、それから本来隠していた裏の人格が引き出されてしまった場合本能に引きずられてしまう事もある。
そう、まさに主に反旗を翻したデミテル自身の様に。
人は脆い。
生きる為にはまず常に本能へのリミッターを掛け、歩む道への地盤を固めねばまともに生きる事すら叶わない。
でなくば人は思い立てば食物を貪っては肥え、自慰に浸り、女、男、種族関係なく交わり合い犯し合い、人を傷つけ殺戮へと、いかれた荷車が坂を転がって行くが如く転落してゆく。
世の中は修羅の統べる地獄の世界へと容易に姿を変えるだろう。
クレスはまさにその世界への扉を開けるよう、ベリアルやベルセバブが招待状を持って耳元で甘美に囁いているような状態だった。欲するなら世界を思うように食らえばよい。それがお前の安息なのだからと。
しかしデミテルという主に仕えている以上、クレスはか細い神経一本でそれを押さえていた。
一見落ち着いては見えるが、実は操られた当初から己を落ち着かせるために片手で二の腕を掻き毟っていた。うっすらと血が滲む。
デミテルは最初からその様子に気づき、クレスへの警戒を緩めることは無かった。
なみなみに液体を注いだ杯を持って歩いている様なクレスの不安定さは危険因子になりかねない。しかし自身の知略に信を持つ彼は、警戒しつつもこの様なクレスをいかに最大限に利用するかに重きを置いていた。
338倒錯共生2:2006/02/22(水) 06:19:07 ID:6pAUWWru


その時だった。
東風が吹き、それが妙な臭いを運んできた。
酸っぱい様な…嗅ぎ慣れた臭いだった。
これは…
それに一番に反応したのがクレスだった。眼の色が変わり、デミテルらを無視して東へと歩き出す。
「何処へ行くのだ、クレス=アルベイン」
今までならばマーテルの一件を除いて基本的にはデミテルの意見を聞いていたクレスだが、その時はデミテルの言葉を聞き入れはしなかった。
無言で行動するクレスにデミテルはやや表情を険しくするが、この臭いにより動かされたクレスの行動が気になった。
十分に思いあたる節があり、危険も無いと判断したためとりあえず後を付ける事にした。金髪の少年の動向も気になるが、この臭いはそう遠くはない。仮に金髪の少年が戦闘という発破を掛けるとすれば、少し寄り道した位がメインデイッシュの時間には丁度良い位になるだろう。
「…お前も付いて来るがいい。ティトレイ=クロウ」
普段は完全に腑抜けの為、戦闘以外では蚊帳の外のティトレイにも呼びかけ、デミテルはクレスの後を追った。



そこには凄惨なる光景があった。
砂漠の入り口。
本来ならば金に輝いているであろう黄砂が、どす黒く染まって乾いている。
そしてその上にはひとつの死体。
強い衝撃を受けたのであろう、体の至る所が欠損し、しかも砂漠の入り口という中途半端な気温もあって腐乱が進み掛けている。どうやら赤い髪の女である事が分かった。
暑さの上、むん、とした死臭が鼻を突いた。
デミテルはこの女とは面識がないので誰かは分からなかったが、それは一日目にバルバトスとマグニスに惨殺された、マリー=エージェントだった。
死骸の前でクレスは無表情に立っていた。ひょっとして、腐り行く死骸を見て彼の本来の感情が微かにでも胸を打っているのかという考えがデミテルの脳裏を掠めた。
死体はよく見ると何か僅かに動いている。腹部などは呼吸でもしているかのように微たる起伏をしていた。
生きているのだろうか。
まさか。
どう見てもこの状態で生命を存続させるなど魔界のネクロマンサーが禁呪を施さぬ限り不可能だ。
そしてクレスの正の感情も自分の技術をもってすればこれ如きでは動くまい。
デミテルがその様な思考をクレスの背後で広げていると、クレスは剣を取り出した。
高々に構える。

そして、振り被ると同時にその顔は邪悪な笑いに歪んだ。
339倒錯共生3:2006/02/22(水) 06:24:47 ID:6pAUWWru

剣を振り下ろした。

グシャ、という音が腹を裂く。

そしてその衝撃で死体が動いていた原因であろう――体の中に入り込んで腐肉を喰い漁っていたおびたたしい数の何かが、ぶあ、と音を立てて溢れだした。
―――ゴキブリだった。
赤黒い遺体の上に黒光りするそれらがざわざわと覆う。
先程まではマリーの内腑を喰い散らかしていたそれら。
衝撃による驚きに腐った血を纏う不浄の虫がガサガサと肉の上を滑る。無数の触覚がパニックにより蠢き、きぃきぃと小さく幾重にも鳴く。おぞましい餓鬼界の様なその光景。
流石の光景にデミテルも眼をやや背けた。潔癖な彼には汚れた害虫は好ましくないものだった。
しかしクレスはそんなものに構うことなく剣を抜く。
再び衝撃に黒い塊がザッと動く。止めどなく食人虫はまだ溢れ、また突き刺す。
「ははは、はははは…!」
クレスのどうしようもない破壊衝動。
それは血の臭いに引き出され、この死体にぶつけられた。
デミテルは視界に入る害虫を忌々しく思いながらも、その様子を静観した。
ティトレイは相変わらず興味も無いのか眼は突き抜ける様に広く美しい青い空に向いている。
幾度も繰り返される衝動に蛆の付いた肉片が散る。それはクレスにも付着し、しかしクレスは手を緩める事はない。

狂人の醜行は暫く続いた。


少し時間が過ぎクレスは見る影も無くなった遺体を一瞥する。多数居たゴキブリは少数になり、その変わりに幾千幾万の米粒の様な蛆が露わになる。そしてまだ浅ましく肉を貪っている。
剣に付いた肉片を振り払い鞘に収めた。

その眼はまだギラギラと光っている。
もっと、もっと、もっと。
足りない。
どうしようもなく乾いた心に反して、欲求の杯はもう飽和状態だ。
出来ればマーテルだってこんな風にしたかった。本来は傷つける事も出来ない中で剣を振るえただけマシだけど。
それでももうリミッターという名の関は崩落しそうだ。
先程の狂行でとりあえず己を保ったものの、また二の腕に手が行く。
クレスはデミテルに仕える建前に懸命にしがみついていた。

「……クレス=アルベイン」
背後で低いミテルの声がする。
「私の言うことを聞くという約束を破るのは二度目だな。
この次があれば容赦しない」
冷たく言い放つデミテルにクレスは相変わらずの笑みを浮かべて答えた。
「はい、すみません」
「……」
デミテルは黙り、西南に向かい歩きだした。
クレスとティトレイもそれに続く。
340倒錯共生4:2006/02/22(水) 06:31:22 ID:6pAUWWru
「どうやら殺しをしたくて仕方がない様だな、クレス=アルベインよ」
歩いたままデミテルは淡々と言葉を紡ぐ。
「これから大きな争いが起きるだろう。うずうずしている様だから華はお前に持たせてやる。だが―――」
デミテルが振り返る。クレスと目が合う。
「共生という言葉を知っているか?」
いきなりの彼らしくない言葉にクレスは眉を僅かに寄せた。
「本来ならば生物同士が助力し合い、相互関係を営む事、そう生きて行く事を言う。蟻とアリマキの様に。
生物学の用語だがこの事は広い意味で人にもあてがわれるだろう。例えば恋人同士、友人関係――」
暫く口にしていない言葉を吐きながらデミテルは続ける。
「そして私とお前だ」
デミテルが指示をし、クレスがマーダーとなる。そしてクレスは乾きを癒し、デミテルは利を得る。この二人の関係はまさに共生だった。
「そうですか、仲良くしていきましょう」
クレスは笑みを崩す事無く答えた。
まさに「嘗めきった」という様子のクレスの眼をデミテルは些か厳しく睨む。
「だが―――」
再びデミテルは背を向けて歩みだした。
「共生の種類には利益を共にする変わりにそれ故に生命としての可能性を最小限に削っているものもいる」
淡々とした言葉は変わらず、クレスはデミテルの背中を睨む。
「私はいわばお前の宿主だ。
宿ったものは共生するが故に宿主に生命を完全に預けるものもいる。不必要な遺伝子は削られ、生殖は出来ず、果ては体を失い単独では行動すらも出来なくなるものも存在する。
つまり宿主の意志により、寄生する者を真の意味で傀儡にする、ないしは命を奪うのは簡単だと言うことだ」
「………」
クレスはデミテルの言葉の真意を理解しようと考えるが今一掴めない。
ミクトランの様に意志一つで首を飛ばせるとでも言うのだろうか。そんなはずはない。自分は今、確かに一人で地を踏み締めているのだから。

歪んだ共生関係。
しかしクレスがいくら暴れようとも、デミテルは彼を掌の上からは逃そうとはしなかった。使い所が難しい駒こそ、巧く利用すれば真価を発揮する。

「覚えておけ」
すると再び生臭い風が音を立てて吹き出し、彼の言葉はうまくクレスには聞き取れなかった。


「元々、毒薬を用い神経を操作するのみで完全に従僕にするなど博打性が高い。
私が何の考えもなく、危険なお前を操るだけで放置しておくと思うか?」

341倒錯共生5:2006/02/22(水) 06:35:18 ID:6pAUWWru
【デミテル 生存確認】
状態:TP25%消費
所持品:ミスティシンボル、ストロー、金属バット 魔杖ケイオスハート
第一行動方針:金髪の少年(ミトス)の後を追い、利用できそうならば利用する
第二行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
現在位置:E3→南西部へ移動中

【ティトレイ・クロウ 生存確認】
状態:感情喪失、TP1/2消費
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック
基本行動方針:かえりたい
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する
現在位置:E3→南西部へ移動中

【クレス・アルベイン 生存確認】
状態:TP1/3消費、善意及び判断能力の喪失
所持品:ダマスクスソード、忍刀血桜
基本行動方針:不明
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する(不安定)
現在位置:E3→南西部へ移動中
342鈍色の休息1:2006/02/22(水) 14:24:20 ID:b0rgd0vB
「…ここで休憩にしましょう。」
黒髪の少年ジェイはそういって足を止めた。
斜陽はまだ緩く、その影はまだ短い。
「なんだよ、だらしねーな。」
といいながら笑うのは鳶色の二刀剣士ロイド。
「休みたいのは山々だが、ここで足を止めると放送までに間に合わないぞ。」
肩を上下させながら意見するのは青髪の晶霊術士キール。
「ええ、すいませんが疲れまして。」
そう述べるジェイはどう見てもキールよりは疲れていない。
その意味を推し量り赤髪の剣士リッドはジェイに言う。
「もしかして俺やキールのこと気を遣ってくれてんのか?
気持ちは有り難ぇけどよ、俺達なら大丈夫だから先を急ごうぜ。」
彼は彼なりに少年の意を汲み取ったつもりらしい。
ジェイは眉間にしわを寄せ、指を当て、溜め息を付き、言葉を漏らす。
「すいません、回りくどい言い方では伝わりませんでしたね。
三人分のお荷物を持って歩くのは疲れるといったんです。」
一瞬で空気が冷える、辺りが加速度的に重苦しくなる。
「どういう意味だ?」
最初に口を開いたのはロイド。その拳は少し硬く握られている。
「キールさん。あなた先ほど言いましたよね?昨日マスクをした
特殊部隊風の男、カッシェルに襲撃されたと。」
突然の名指しに少し硬直しするもキールは肯定する。
「それは僕の世界の敵なんですが、はっきり言って弱小のレベルに入るんですよね。」
ジェイはこういうが実際の所戦闘能力だけで見ればカッシェルも指折りの能力を持つ。
ただジェイとの相対的な隠密能力とメンタル面の弱さが総合的な印象を弱くしているだけ
である。無論ジェイもそのことを理解しているがそれでもなお引き合いに出すのは
理由がある。が、それは別の話。
「結局回りくどいじゃねえか、言いたいことがあるならはっきり言えよ。」
声を荒げリッドが吠える。
343鈍色の休息2:2006/02/22(水) 14:25:32 ID:b0rgd0vB
「そんな人たち3人のお守りをするより、1人で行動した方が楽だと言う話です。」
ジェイは悪びれずに淡々と発言を続ける。
「まあ、僕が万全を期すのだったらここで全員殺してから行きますが。
その方が余計な乱数を、不確定要素を潰せますし。」
そこまで言った所でリッドが剣を出す、その目は強く黙れといっている。
「…先ずですね、リッドさん。」
そこまで言った所でロイドとキールが一瞬の内に凍りつく。
先ほどまで剣先の10cm先、刃渡り合わせて約1m先に居たはずのジェイが
リッドの鳩尾を殴っていた。頭が回転を始めた時には既にリッドは地面に倒れている。
「そんな瀕死の体で何が出来るんですか?子供の拳で倒れるその体で。」
ようやく状況を把握したロイドは剣を構える、が。
「ロイドさん。気付いていると思って今まで何も言いませんでしたが
そんな刀で何が出来るんですか?」
攻撃を見透かされたことに驚き、ジェイの指摘についつい自分の木刀を見る。
そして再度、驚愕。自分の木刀が、半分黒ずんで炭化しかけていることに。
常識的に考えれば分かる話だった。あの用意周到に巡らされた焔の罠を
前に多少の火傷で済んだことが有り得ない奇跡、その奇跡が武器にまで
及ぶのは虫の良過ぎる話であると。すでに彼がこの世界で拵えた剣は
握りを除いて炭化寸前の所まで来ていたのだ。もしこの剣で戦闘が行われたのなら
5分持たずに折れるか崩れるかしていた所であろう。
「とりあえず、現状を認識してもらえましたか?分かったらせめてお荷物にならない程度に
体を回復させて、戦えるようになって下さい。仲間は欲しいんですが足手まといは
御免被りたいもので。リッドさーん、聞こえてますかー。…聞こえてませんね。」

そう言うとジェイはリッドのエルヴンマントを剥ぎ取り、
半ば呆然としているロイドを尻目にキールに近づく。
「とりあえず周囲の警戒をしておきますからあの2人をよろしくお願いします。
放送の前後に戻ってきますからその後の行動はその時決めましょう。
あ、この外套はお借りしますよ。迷彩が欲しかったもので。
こんなものでもないと城の赤鬼と青鬼に気付かれますから。」
小声でキールにしか分からないように伝える。
「そういう意味か…分かった。しかし何故あのような強引な手段を?
それにあれほどな力なら本当に1人のほうが都合がいいんじゃないか?」
小声で返答、ジェイはやれやれというように再度伝える。
「正直、彼らは僕よりずっと強いですよ。ただ今の余裕のない貴方達相手なら十分勝てる
というだけの話です。それに、汚れ役は慣れているもので。」
そういうとジェイはするりと高台の上に登りすぐに見えなくなった。
344鈍色の休息3:2006/02/22(水) 14:27:00 ID:b0rgd0vB
「…ガハッ!!」
リッドが目が覚めたとき、すでに斜陽は深く、その影は高く伸びていた。
目が覚めたか、とキールが言い、手に持ったペンで沸いたお湯を指す。
「あいつはどうした!!」
リッドは寝起きとは思えない様相で、すぐさまキールに尋ねる。
「ジェイは周囲の偵察に出てる。分かったらとりあえず飲んで、食べて落ち着け。
ロイドには説明はした。お前にも順に説明する。」
そういいながらキールは羊皮紙に何かを懸命に書いている。
ロイドはひたすら木刀とヴォーパルソードを持って何かをしようとしている。
しばらくして簡易な食事を済ませた後、キールは彼が知る限りのジェイの意図を伝える。
「つまりE2にはバルバトスやマグニスが居るってことか!?」
リッドは声を荒げる。
「奴の話を信じるなら少なくともファラの声が響いた時にはE2の城に居たことになる。
ロイドたちが遭遇していないことを考えると、奴らは南側から北上して城に攻め込んだのだから
無事なら北上してきたはずだ。それが来ていない、つまり怪我で動けずに留まっている
可能性がある。その場合満身創痍のお前や武器が磨耗したロイドを守りきれない
ということだ。」
キールが出した答えはほぼ正確にジェイの心中を射抜いていた。さすがに頭脳労働担当である。
「守りきれねえのはお前も含めてだろ…でもよ?城が崩れたんなら
それに巻き込まれて死んだのかも知れねえだろ?」
少しキールの揚げ足を取った後、再度質問した。
「それを見極める為にここで放送を待っているんだ。
この内容次第では、僕達が城に向かう意味すら消滅する。」
ロイドの手がピタッと止まる。先ほどキールから聞いてはいたが、
それでもこみ上げる不快感は止まらない。
クラトスとコレットの生死の結果しだいでは城に向かう理由さえ無くなってしまうのだ。
「あ〜!!やっぱりこんな大剣じゃ上手く加工出来ねー!!
やっぱジューダスから短刀返してもらえばよかった…。」
ロイドは大声で愚痴る。少し不自然な気がしないでもない。
「悪ぃ。んで、なにやってんだお前?」
リッドはロイドの行為を怪訝に見つめる。どうやら木刀を削っているようだ。
345鈍色の休息4:2006/02/22(水) 14:28:00 ID:b0rgd0vB
ロイドがいうには炭化した部分を削って使えるようにしているとのこと。
しかし大剣での加工は困難を極め、鳳凰天駆によって纏った炎は彼の剣を満遍なく焦がしている。
ヴォーパルソードを使えばいいのではとキールは提案したのだが。
二刀を扱うには絶妙な剣のバランスが必要であり、
特にこのヴォーパルソードは二刀流で扱うには対の剣が不可欠とのこと。
苦闘するロイドにリッドは自分のデイバックを漁り剣を取り出す。彼が扱う剣とまったく
同じ剣が、もう1本。リッドが言うにはもともとこの「ムメイブレード」は2本セットで
支給されたものだったのだ。しかし自分が普通の剣士であった為、
もう1本は剣が壊れた時の保険としてデイバックの中に入れていたというわけである。
ロイドの話ではそれは自分の世界の武器で、やはり二刀一対で存在していたとのことだ。
「代わりといっちゃなんなんだけどよ、その剣貸してくんねえ?」
リッドが提案した取引、それがムメイブレードとヴォーパルソードの一時的交換である。
メルディとの闘いで分かったことが一つ。この世界で極光を使うことは命をすり減らす
ほどリスクの高い行為であるということ。そしてそれは恐らくメルディも同様、
いや極光の使い手として不完全であるメルディの方がその危険が高い。
もうメルディに極光を使わせるわけにはいかない。つまり自分の剣技でネレイドを止めなくては
ならない。その為の力として、この魔剣に目を付けたという訳である。
「分かった、大事に使ってくれよ。」
そう付け加えてロイドは取引に応じる、この剣を他人に使わせるのは気が引けるが
獲物が無くてはこれからの事も立ち行かない。C3でのリッドの人となりを
信じた上での結論だった。
346鈍色の休息5:2006/02/22(水) 14:29:06 ID:b0rgd0vB
「で、お前はさっきから何書いてんだよ?」
このやり取りの間ひたすら羊皮紙に何かを書き込んでいたキールにリッドは尋ねる。
その手を止めずにキールはリッドに聞き返す。
「…なんでジェイは僕を襲わなかったと思う?」
質問の要旨を理解できずにリッドは答える。
「それは、お前が一番後回しでも良かったからじゃねえのか?お前ヒョロいし。」
リッドの回答にキールは筆を止め、リッドを見る。
いつものように怒鳴られるかと思い警戒をしたリッドだが
キールは「そうか。」といっただけで怒りはしなかった。寧ろその顔はどこか物悲しく見える。
羊皮紙に書く作業は終わったらしく、それを折りたたんでリッドに渡す。
リッドが何だこれ?と尋ねても
「唯の保険だ。僕が良いと言うまでそれは見るなよ。」
そういってそっぽを向くのでリッドも言及はしなかった。
リッド自身も気になることがあったため思考を始める。
ジェイによって間合いを潰されたという事実に不自然を覚えたからだ。
(あれは少なくとも速さじゃねえ…なんだったんだ?)

キールもまた思考の海を泳ぐ、リッドよりも深く、遠く、溺れていく。
(魔剣エターナルソード、ロイドが言うには空間と時間すら操るという剣。
僕達の世界にも存在はしていたがそこまでの力があったとは思わなかったな。
しかしそれが事実だとしてもこの世界の制限下では何処まで力が発揮できるか?
この異空間を破壊するのは不可能だろう。だがもしこの世界に亀裂、鍵穴という
存在があるのならば、鍵の役割はその剣が握っているのかもしれない。
ならば鍵を持つ資格はロイド?いやそれでは足りない。鍵を持つことが出来ても回す力が
足りない。レンズ、魔剣…まだピースが足りない。)
いかんせん全ては机上の空論。あるかどうか分からない鍵を求めるのは早計というもの。
ましてやこの首輪をどうにかしなければこんな推論は無意味だ。
なんとしても考察を他の賢者に検証してもらう必要がある。
(だが、一番足手まといになるこの僕が生き延びる可能性は…)
一番恐れる事態を想像して体が震える。震える体を手で抑え、リッドを見る。
(何としても足手まといになるわけには行かない。リッド、お前だけは、
メルディを助けられる可能性の高いお前だけは、死なせるわけにはいかない。)

その悲壮な覚悟は2人に気付かれる道理は無く、懐かしい武器を振るロイドは
「ジェイの奴遅いな。」と
この後のことを考えながら言った。もう直ぐ夜の時間である。
347鈍色の休息6:2006/02/22(水) 14:30:20 ID:b0rgd0vB
ジェイはリッドたちと反対側の高台から双眼鏡で辺りを見回す。
(ようやく痺れが完全に取れましたか。たった一瞬、1m進むだけでこの
痺れ…クライマックス、迂闊に使えませんね。
何時間動けなくなるのか分かったもんじゃない。それに
完全停止というわけではないようだ…今回はリッドさん達が不安定だったから
良かったけど熟練者相手には付け入る隙があるかもしれない。
第一、本格的に使ったら1回で使用不可でしょうね。
主催者が仮発動なんてことをこれ以上許すとも思えないですし。)
双眼鏡が人影を捉える、それは金髪の魔王。
(今回のC3の一件、首謀者が居るのは間違いない。手がかりは
異能で作られた植物の燃えカス、それを燃やしたであろう魔術、
そして存在しないはずの剣士が居た事実。…条件を満たす人物、あるいはその集団を
1つ知っている。だが確証がない。情報が不足している…ならば。)
ジェイは立ち上がって双眼鏡をしまう。
「手っ取り早く、生存者に聞くのが近道ですね。」
あの傷ならば少なくともこちらが死ぬことは無いという確信と共に。
跳躍、ジェイは大地に降り立つ。金色の魔王、ダオスの元に。
「お会いするのはこれで2度目…いや、3度目ですか。『お父さん』。」
3回目の接触でついに2人は対面することになった。

マーテルを初めて傷つけたソロンはダオスに言った。
私には弟子が居ると、その弟子がマーテルを狙っていると。
結局それは嘘ではあったが、奇しくも
その弟子はマーテルの最後を看取る結果となる。

あの時も結局ソロンの虚言によって2人の闘いは中断された。
ここに師を弟子へと変えて、虚言の交渉の続きが、虚言の夜が始まる。
348鈍色の休息7:2006/02/22(水) 14:31:45 ID:b0rgd0vB
【リッド 生存確認】
状態:精神力かなり低下 体力の低下
所持品:ヴォーパルソード、ホーリィリング、キールのメモ
基本行動方針:ファラの意志を継ぎ、脱出法を探し出す
第一行動方針:キール、ロイド、ジェイと行動、体力回復
第二行動方針:放送を聞いた後、E2の城に行く
第三行動方針:襲ってくる敵は排除
第四行動方針:メルディを捜す
現在位置:D2西

【キール 生存確認】
状態:後頭部打撲(回復中)、決意
所持品:ベレット
基本行動方針:脱出法を探し出す 、リッドの死守
第一行動方針:リッド、ロイド、ジェイと行動
第二行動方針:放送を聞いて状況の整理
第三行動方針:情報収集
第四行動方針:メルディを助ける
現在位置:D2西

【ロイド 生存確認】
状態:普通
所持品:ムメイブレード(二刀流)、トレカ、カードキー  
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:放送を聞いた後、E2の城へ向かう
第二行動方針:リッド、キール、ジェイと行動
第三行動方針:協力者を探す
現在位置:D2西

【ジェイ 生存確認】
状態:緊張 全身にあざ TP2/3
所持品:忍刀・紫電 ダーツセット クナイ(三枚) 双眼鏡
基本行動方針:目的とする人を捜す
第一行動方針:出来る限り戦闘を回避して目の前の人物からマーテル殺害の真相を知る。
第二行動方針:放送を聴いて状況を把握、3人との合流
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
第五行動方針:ミトス・ユアンを発見する
現在位置:D3崖下

【ダオス 生存確認】
状態:TP残り70%  HP1/8 死への秒読み(およそ半日後に死亡) 壮烈な覚悟
所持品:エメラルドリング  ダオスの遺書
基本行動方針:死ぬまでになるべく多くのマーダーを殺害する
第一行動方針:目の前の人物に対処
第二行動方針:C3の件の黒幕を、クレスもろともに断罪する
第三行動方針:遺志を継いでもらえそうな人間は、決して傷付けない
現在位置:D3崖下
349鈍色の休息 修正:2006/02/23(木) 09:28:20 ID:QDwvYUlk
【ジェイ 生存確認】
状態:緊張 全身にあざ TP2/3
所持品:忍刀・紫電 ダーツセット クナイ(三枚) 双眼鏡 エルヴンマント
基本行動方針:目的とする人を捜す
第一行動方針:出来る限り戦闘を回避して目の前の人物からマーテル殺害の真相を知る。
第二行動方針:放送を聴いて状況を把握、3人との合流
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
第五行動方針:ミトス・ユアンを発見する
現在位置:D3崖下

350走る人たち1:2006/02/25(土) 00:02:42 ID:vCHCT0G/
此処に2人の青年がいる。仮面の剣士ジューダスと氷の剣士ヴェイグである。
彼らは橋の惨劇をその眼で見て己の感傷に1つの節目を打ち、
南下を始めた。昼より間断無く歩を進め、日が傾いてもうすぐ夜の帳が落ちようかという
時分には既に、E6の北西部にまで辿り着いていた。

「大分南下したはずだが…此処に来るまで1人も遭遇しないとはな。」
そう言ってジューダスは歩みを止め、そして同時に橋を出発して以来初めて声を発した。
足を止めた理由はもうすぐ放送の時間であると同時に、隣の禁止エリアに対して
の進路再設定を行うためである。
ジューダスはここまでの誰一人にも会わなかったことを少々不思議に思っていた。
確かに南西のエリアはC3から一番遠くあの声の影響が少ないはずだ。
北上する人間が少ないのも分かる。
しかも自分達は一度橋まで行ってから南下したのだから放送を聴いてすぐに南下した
人と出会う可能性が少ないのも分かる。
「それでもここまで人間がいないとは…わざわざG5を封鎖するのだから
少なくとも朝までそこには人間がいたはずだ。この周囲の者がほぼ全滅したか、
あるいはリスクを覚悟して橋を渡って西へ?旨みがある選択肢とも思えんが。」
そこまでの思考を終えて、ふと南東の空を見上げる。見上げた先に細々と
上るのは黒い煙。
(G5からか?かなり細いが距離を考えるとそれなりに大きな火災が発生したようだが。)
焼き討ちか、或いは自ら焼いたのか、何にしても今後の行動を改める必要がある。
「ヴェイグ、少し話が…」
この一件に対し打ち合わせをしようと思い、現在の同道者に声をかけた。
しかし声をかけられたヴェイグは何やら大層難しい面持ちで
何かを考え込んでいるような節である。
(もっとも、いつも小難しい顔だと言われればそれまでであるが。)
351走る人たち2:2006/02/25(土) 00:03:37 ID:vCHCT0G/
「ヴェイグ、何を考えている?もうすぐ放送の時間だが。」
その真剣さに同調したのか、ジューダスも重々しく尋ねる。
「ああ、済まない。1つ気になっていることがあってな。
…あまりにも根拠の無い、想像のような話と捕らえて構わない。」
そう言って前置きをするヴェイグ。辺りの空気が重くなる。
「何だ、勿体付けずに言ってみろ。」
と言うジューダスの了承を得、ヴェイグはその口を開く。
「そのお前が会おうとしている人物はどんな風体なんだ?」
「一口に言うのは難しいが…まず小柄な少女だ。そして赤、どちらかと言えば赤紫の髪を
している。服装は…」
「赤と薄緑、紫基調の服か?」
「貴様、何故知っている?」
ジューダスは眼を細める。確かに4人で行動していた際に
同士討ちの危険を回避するため互いの仲間の顔と名前を名簿で確認した。
唯1人、リオン=マグナスのことと
自分とルーティの関係だけはどうにも伝えることが出来なかったが。
兎も角、その際名簿でハロルドの顔は見せた、
しかし奴はその時点で奴は会ったと言わなかったし会った素振りも見せていない。
そもそも目指す人物の服装についてなどはまだ一言も言っていない。

ジューダスは警戒して半信半疑でヴェイグを見る。
「いや、いるとしたらあんな風体なのかと思ってな。」
そういってヴェイグは南方を指差す。
ジューダスはその方角に顔を向け眼を凝らす。なるほど、ヴェイグが
どうやってハロルドを知ったかは別にして奴の認識は間違いなさそうだ。
352走る人たち3:2006/02/25(土) 00:05:31 ID:vCHCT0G/
「何時から気付いていた?」
「お前が南東を向いた辺りからだ。」
「どうして言わなかった?」
「砂煙を揚げながら全力疾走する奴が探し人とは思わん。」
ジューダスの体が小刻みに震え、感情が爆発した。
「〜〜〜クソ!!追うぞヴェイグ!ともかく話を聞かないと埒が開かん!!」
「ああ、所で奴の持つあの剣…」
「話は奴を確保してからだ!!」
ジューダス、ヴェイグ追跡開始。残り-150m

(やっぱ追ってくるか…唯のマーダーならジューダスを
囮に使うけど流石に相手が相手だしあいつ使うわけにはいかないわ。
むしろ出逢ったら何おっぱじめるか少し見てみたいけど我慢!!
とにかく能力なり道具なり奴がこちらを捕捉する術があるとすれば
人のいない場所では逆にすぐに見つかる。ならば少しでも人気の多い場所で
相手を混乱させて乱戦に持ち込んで一気に離脱するしかない!!
あんだけ景気良く村を燃やしたんだから
生き残りの瀕死マーダー位いてよ、お願いだから!!)

そう思考して先頭を走るのはハロルド(&ディムロス)。

(何故逃げる必要がある!!しかも人がいない地域を避けて!?
南に何があるというんだ…推測だけではファジーすぎる!
ともかく捕まえないとこの首輪もどうにか出来ん!!)

などと考えながら走る2番手はジューダス。

(あの大剣があればまともに戦えるかも知れん、欲しい所だ。
しかし何故俺は警戒もせずにあの少女の突進を見ていたのだろうか…
俺も未だこのゲームの狂気に意識を狂わされているなのか、クレア…)

と思いながら走る3番手はヴェイグ。


そして、4番手はレーダーを携え南から猛追をかけている。
向かう先のゴールには何があるのか。
353走る人たち4:2006/02/25(土) 00:06:28 ID:vCHCT0G/
【ジューダス:生存確認】
状態:健康 
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、(上記2つ二刀流可)、エリクシール、首輪
基本行動方針:ミクトランを倒す
第一行動方針:ハロルドを捕まえて首輪解除の方法を模索する
第二行動方針:協力してくれる仲間を探す(特に首輪の解除ができる人物を優先)
第三行動方針:ヴェイグと行動
現在位置:E6から東へ

【ヴェイグ 生存確認】
状態:右肩に裂傷 強い決意
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(パイン、ミラクル)首輪
基本行動方針:生き残る
第一行動方針:ジューダスと行動 、ハロルドを捕まえる
第二行動方針:ルーティのための償いをする。
第三行動方針:可能ならハロルドの剣(=ディムロス)を手に入れる
現在位置:E6から東へ

【ハロルド 生存確認】
状態:冷徹な復讐心 
所持品:短剣 実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) ソーディアン・ディムロス
基本行動方針:迂闊なことは言わない 単独行動(たとえ仲間に出会ってもマーダーの振りをして追い払う)
第一行動方針:リオンの追跡からの完全離脱、ジューダスをリオンから遠ざける
第二行動方針:首輪のことを調べる
第三行動方針:C3地点の動向を探る
第四行動方針:マーダー(マグニスたち)の始末
現在位置:E6から東へ
354走る人たち(修正版)1:2006/02/25(土) 00:42:41 ID:vCHCT0G/
此処に2人の青年がいる。仮面の剣士ジューダスと氷の剣士ヴェイグである。
彼らは橋の惨劇をその眼で見て己の感傷に1つの節目を打ち、
南下を始めた。昼より間断無く歩を進め、日が傾いてもうすぐ夜の帳が落ちようかという
時分には既に、E6の北西部にまで辿り着いていた。

「大分南下したはずだが…此処に来るまで1人も遭遇しないとはな。」
そう言ってジューダスは歩みを止め、そして同時に橋を出発して以来初めて声を発した。
足を止めた理由はもうすぐ放送の時間であると同時に、隣の禁止エリアに対して
の進路再設定を行うためである。
ジューダスはここまでの誰一人にも会わなかったことを少々不思議に思っていた。
確かに南東のエリアはC3から一番遠くあの声の影響が少ないはずだ。
北上する人間が少ないのも分かる。
しかも自分達は一度橋まで行ってから南下したのだから放送を聴いてすぐに南下した
人と出会う可能性が少ないのも分かる。
「それでもここまで人間がいないとは…わざわざG5を封鎖するのだから
少なくとも朝までそこには人間がいたはずだ。この周囲の者がほぼ全滅したか、
あるいはリスクを覚悟して橋を渡って西へ?旨みがある選択肢とも思えんが。」
そこまでの思考を終えて、ふと南西の空を見上げる。見上げた先に細々と
上るのは黒い煙。
(G5からか?かなり細いが距離を考えるとそれなりに大きな火災が発生したようだが。)
焼き討ちか、或いは自ら焼いたのか、何にしても今後の行動を改める必要がある。
「ヴェイグ、少し話が…」
この一件に対し打ち合わせをしようと思い、現在の同道者に声をかけた。
しかし声をかけられたヴェイグは何やら大層難しい面持ちで
何かを考え込んでいるような節である。
(もっとも、いつも小難しい顔だと言われればそれまでであるが。)
355走る人たち(修正版)2:2006/02/25(土) 00:43:43 ID:vCHCT0G/
「ヴェイグ、何を考えている?もうすぐ放送の時間だが。」
その真剣さに同調したのか、ジューダスも重々しく尋ねる。
「ああ、済まない。1つ気になっていることがあってな。
…あまりにも根拠の無い、想像のような話と捕らえて構わない。」
そう言って前置きをするヴェイグ。辺りの空気が重くなる。
「何だ、勿体付けずに言ってみろ。」
と言うジューダスの了承を得、ヴェイグはその口を開く。
「そのお前が会おうとしている人物はどんな風体なんだ?」
「一口に言うのは難しいが…まず小柄な少女だ。そして赤、どちらかと言えば赤紫の髪を
している。服装は…」
「赤と薄緑、紫基調の服か?」
「貴様、何故知っている?」
ジューダスは眼を細める。確かに4人で行動していた際に
同士討ちの危険を回避するため互いの仲間の顔と名前を名簿で確認した。
唯1人、リオン=マグナスのことと
自分とルーティの関係だけはどうにも伝えることが出来なかったが。
兎も角、その際名簿でハロルドの顔は見せた、
しかし奴はその時点で奴は会ったと言わなかったし会った素振りも見せていない。
そもそも目指す人物の服装についてなどはまだ一言も言っていない。
356走る人たち(修正版)3:2006/02/25(土) 00:44:35 ID:vCHCT0G/
ジューダスは警戒して半信半疑でヴェイグを見る。
「いや、いるとしたらあんな風体なのかと思ってな。」
そういってヴェイグは南方を指差す。
ジューダスはその方角に顔を向け眼を凝らす。なるほど、ヴェイグが
どうやってハロルドを知ったかは別にして奴の認識は間違いなさそうだ。
ドドドドドドドドドドド 残り100m
「確かにそんな感じだ。だからそいつをどうやって…
ドドドドドドドドドドド 残り50m
探すか…今から…
ドドドドドドドドドドド 残り25m
話をしようと、と言うか…
ダダダダダダダダダダダ 残り10m

ハロルドッ!!??」
「げえっ、ジューダス!?」
残り0m

「おい、いったい…」 
ドドドドドドドドドドド 残り-10m

「マーダーだからあんたに構っているわけにいかないの!!
あんたらどっちから来たの?人いた?!」
ドドドドドドドドドドド 残り-20m

「北からだ!人はいなかった!お前がマーダーだと!?と言うか人の話を聞け!!」
ドドドドドドドドドドド 残り-50m

「あーりーがーとー!!じゃーねー!!」
西に方向転換、直線距離で残り-65m
357走る人たち(修正版)4:2006/02/25(土) 00:47:13 ID:vCHCT0G/
「何時から気付いていた?」
「お前が南西を向いた辺りからだ。」
「どうして言わなかった?」
「砂煙を揚げながら全力疾走する奴が探し人とは思わん。」
ジューダスの体が小刻みに震え、感情が爆発した。
「〜〜〜クソ!!追うぞヴェイグ!ともかく話を聞かないと埒が開かん!!」
「ああ、所で奴の持つあの剣…」
「話は奴を確保してからだ!!」
ジューダス、ヴェイグ追跡開始。残り-150m

(やっぱ追ってくるか…唯のマーダーならジューダスを
囮に使うけど流石に相手が相手だしあいつ使うわけにはいかないわ。
むしろ出逢ったら何おっぱじめるか少し見てみたいけど我慢!!
とにかく能力なり道具なり奴がこちらを捕捉する術があるとすれば
人のいない場所では逆にすぐに見つかる。ならば少しでも人気の多い場所で
相手を混乱させて乱戦に持ち込んで一気に離脱するしかない!!
あんだけ景気良く村を燃やしたんだから
生き残りの瀕死マーダー位いてよ、お願いだから!!)

そう思考して先頭を走るのはハロルド(&ディムロス)。

(何故逃げる必要がある!!しかも人がいない北を避けて!?
南で何があったというんだ…推測だけではファジーすぎる!
ともかく捕まえないとこの首輪もどうにか出来ん!!)

などと考えながら走る2番手はジューダス。

(あの剣があればまともに戦えるかも知れん、欲しい所だ。
しかし何故俺は警戒もせずにあの少女の突進を見ていたのだろうか…
俺も未だこのゲームの狂気に意識を狂わされているなのか、クレア…)

と思いながら走る3番手はヴェイグ。


そして、4番手はレーダーを携え南から猛追をかけている。
向かう先のゴールには何があるのか。
358走る人たち(修正版)4:2006/02/25(土) 00:48:52 ID:vCHCT0G/
【ジューダス:生存確認】
状態:健康 少々混乱
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、(上記2つ二刀流可)、エリクシール、首輪
基本行動方針:ミクトランを倒す
第一行動方針:ハロルドを捕まえて首輪解除の方法を模索する
第二行動方針:協力してくれる仲間を探す(特に首輪の解除ができる人物を優先)
第三行動方針:ヴェイグと行動
現在位置:E6から西へ

【ヴェイグ 生存確認】
状態:右肩に裂傷 強い決意
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(パイン、ミラクル)首輪
基本行動方針:生き残る
第一行動方針:ジューダスと行動 、ハロルドを捕まえる
第二行動方針:ルーティのための償いをする。
第三行動方針:可能ならハロルドの剣(=ディムロス)を手に入れる
現在位置:E6から西へ

【ハロルド 生存確認】
状態:冷徹な復讐心 
所持品:短剣 実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) ソーディアン・ディムロス
基本行動方針:迂闊なことは言わない 単独行動(たとえ仲間に出会ってもマーダーの振りをして追い払う)
第一行動方針:リオンの追跡からの完全離脱、ジューダスをリオンから遠ざける
第二行動方針:首輪のことを調べる
第三行動方針:C3地点の動向を探る
第四行動方針:マーダー(マグニスたち)の始末
現在位置:E6から西へ
359現実1:2006/02/26(日) 01:58:45 ID:WSPfyqtz
薄暗い森の中。
体のいたる箇所に傷をつけ、なおかつ精神力が底を尽きかけている状況にもかかわらず、少女は息一つ切らさず歩いていた。
その体からはうっすらと黒い霧のような物がにじみ出ている。
(お願い、もうやめて・・・)
不意に聞えた声に少女は立ち止まる。
無論辺りに誰かが居るわけではない。
泣きじゃくる子供の様な声に少女は口元を歪める。
笑みと呼ぶにはあまりに禍々しいその表情。もし少女を知る者がこの場に居たなら、確実に別人だと言い切ることが出来たであろう。
少女――否、少女だったモノは空を見上げ、ゆっくりと口を開いた。
「悲しいか?メルディ。だが、これはお前が望んだことだ」
(違う、メルディ、そんな事望んでないよ・・・)
メルディ、と呼ばれた人物の姿はどこにも見えない。第三者から見れば異様な光景な事に間違いないだろう。
独り言の様にしか見えないそれは確かに会話として成り立っている。
「ならば、何故我はここにいる?」
(っ!!)
引きつったような、声にならない声がソレの頭に響く。
それを最後に泣き声しか響かなくなったことに満足したのか、再度笑みと呼べぬ笑みをつくり、近くの適当な場所に腰を下ろした。
そして再度、空を見上げる。

バテン・カイトス。我が唯一望むもの。
偶然出来てしまったセイファートごときに奪われた我の居場所。
我が創り出した、何も存在せぬ世界。
人も晶霊も植物も、大地も存在しない場所。
取り戻すためならどんな苦痛も厭わない。
例えこんな力無き少女の体を借りなければ存在する事が出来なくとも。
例え2000年という年月封印されようとも。
我が故郷を、我が居場所を、我が存在を、取り戻すためなら。
どの様な苦痛があろうと、どの様な怒り憎しみがあろうと。
達成すれば、全てが消え去るのだから。

―――必ず取り戻す。我の全てを。
360現実2:2006/02/26(日) 01:59:34 ID:WSPfyqtz
「その為には、協力してもらうぞ。メルディ・・・」
少なくとも、次の器が見つかるまで。
あわよくばこの器をもっと強くする方法を見つける。
せめて、シゼル並みの強度が必要だ。アレも結局最後には使い物にならなかったが。
少なくとも今のままではあの真の極光術士どころか、下手をすればただの人間にもやられてしまうかもしれない。
それに、この体――・・・。
一向に回復する兆しを見せないメルディの体にソレは――ネレイドは苛立つ。
やはり実験により無理やり引き出した所為か、メルディの極光はシゼルの物に比べ明らかに薄い。
いや、薄いと言う表現は間違っているのかも知れないが、それ以外に表しようが無い。
彼女の力が純粋な極光であったなら、回復力・威力共にシゼル程度にはなるのであろう。
素質なら母親と同等だ。だが、メルディにはシゼルに比べ圧倒的に足りないものがあった。

世界を、全てを、恨む心。憎しみ。絶望。

ネレイドの力を最大に引き出すには、ネレイドと気持ちを同調させなくてはならない。
その為に必要なのが、『全てを無くしたい』と思う心だ。
だが、過去も今も、メルディにあるのは『恐怖』だけだ。
過去は母に捨てられる恐怖、今は純粋なる死への恐怖。
そんな物じゃ足りない。無くしたいと思う心、憎しみの心。世界を恨む心。
闇の極光を使うに最も必要なモノ。
(やだ、よぉ・・・・怖いよぉ・・・・もう、やだぁ・・・)
内側から聞える声。相変わらず泣き続けるメルディ。
シゼルが、世界に憎しみを抱いた理由。ネレイドと同調しえた理由。
ネレイドの脳裏に何かが浮かび上がった。
「メルディ・・・」
(っ、ひっく、もうやだっ!聞きたくない!)
必死に耳を閉じるも、『自分』との会話でそんな行為は無駄に終わる。
どれだけ耳をふさごうと聞こえる声に逆らうすべは無かった。
「お前は何人殺した?」
(え?)
突然の言葉にメルディの声が硬くなる。
ネレイドは笑みを浮かべたまま更に問い詰める。
「シゼルは誰が殺した?ヒアデスは?お前の町の人々は誰の所為で死んだ?極光術士も一人いたな・・・」
(や、やめてぇ!!)
メルディが叫んだ。ネレイドにだけ聞こえる声で。
「お前が仲間と呼ぶ者達は何度危険な目にあった?先程の金髪の男は?誰が殺した?」
(や、やだ、やだやだやだやだ!!!)
必死に叫び続けるメルディ。
その時、一瞬少女の体を闇の霧が取り巻いた。
それすぐに消え去ったが、それでもメルディ自身の極光が出たことにネレイドは満足した。
だが反対にその事に恐怖したメルディは無意識に彼を思い浮かべる。
極光術をフリンジする時、強いちからで抱きしめてくれたやさしい彼を。
(キー・・ル、やだよぉ!!キール!!助けて、キール!!!)
361現実3:2006/02/26(日) 02:01:48 ID:WSPfyqtz
脳裏に響く声が一際大きく響き、また泣き声だけ響きだす。
彼女の叫んだ名前に心当たりはあった。
「キール=ツァイベル、か。あいつを消せば、使い物になるかもしらんな」
先程の一瞬のお陰で少しだけ楽になった体を動かす。あのだるさは、無い。
「しかし、周りが邪魔だな・・・」
この体では勝ち目が無いだろう。
あいつと共にいたもう一人の男も危険だ。
「他の誰かが消すのを待つか、それとも・・・」
少なくとも、その男さえ消せばこの体も使い物になるかもしれない。
ならば一瞬の隙さえつければこちらのものだ。
隙をつきさえしれば――。
「ふふ、そんな事をしなくともあの男ならこの少女を救う為命をかけるだろう。向こうから来るのならば我は何もせずともよい」
そして、最後は賭けだ。
その結果この少女の体が使い物になるかは神である自分にも分からない。
「キール=ツァイベル・・・・・・バテン・カイトスは貴様にかかっているぞ?」
そう呟き、ネレイドは笑う。
それに重なるように、少女の泣き声が森に響いた。

【メルディ 生存確認】
状態:ネレイドの干渉
所持品:BCロッド スカウトオーブ、リバヴィウス鉱、C・ケイジ
基本行動方針:新たなる世界の創造
第一行動方針:器(メルディ)の精神力回復の為しばらく一時行動停止(多少回復/回復速度普通)
第二行動方針:器(メルディ)が世界を恨むため、キールを殺す
第三行動方針: 器(メルディ)を壊さないようにする
現在位置:B3の森の中
362名無しさん@お腹いっぱい。
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テイルズ オブ バトルロワイアル Part5                      
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