スパロボキャラと何かスレ6

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1それも名無しだ
このスレのお約束
・オリジナルキャラとスパロボキャラの絡みで何か考えてみよう
・sage進行で
・エロは紳士的にR指定ぐらいまでで
2それも名無しだ:2007/05/18(金) 06:23:28 ID:mXXB8aYS
3それも名無しだ:2007/05/18(金) 08:46:17 ID:6Ugbll+T
>>1
乙。

前スレ埋めないとな
4それも名無しだ:2007/05/18(金) 16:35:49 ID:3hhbpzSL
>>1乙&サンクス(・ω・)/
5それも名無しだ:2007/05/20(日) 17:25:21 ID:U2O+gAG0
新スレ記念に、キャラ紹介をば…↓

◆「俺」
地球連邦軍少尉。
元戦闘機乗りで、DC戦争の終わり頃にPTパイロットに転向。
部隊がDC残党との戦いで全滅した後、バックアップ要員としてSRXチームに転属。
アヤ・コバヤシ命の、不死身の男。
現在の乗機はアシュセイヴァー。

◆アヤ・コバヤシ
当SSのヒロイン。
地球連邦軍大尉。
SRXチームリーダーで、R−3、R−3パワードのパイロット。
普段は気丈な女性を演じているが、「俺」の前では子供っぽい部分を見せる事があるのはご愛嬌。

◆マイ・コバヤシ
アヤの妹でR−GUN、R−GUNパワードのパイロット。
姉と「俺」がいい雰囲気になると、念動力で容赦なく「俺」だけを攻撃する、シスコンロリっ子サイコドライバー。

◆ラトゥーニ・スゥボータ
教導隊所属のゴスロリパイロット。
スレ住人の、ラトの同居人氏の持ちキャラ。

◆ヴィレッタ・バディム
地球連邦軍大尉で、SRXチーム隊長。
責任ある立場故にパイロットに専念出来ないため、バックアップ要員として「俺」をチームに招いた。
同様の理由により、R−GUNは実質的にマイ専用機となっているので、出撃の際は量産型ヒュッケバインmk-Uに搭乗する。

6それも名無しだ:2007/05/20(日) 17:27:34 ID:U2O+gAG0
キャラ紹介その2↓

◆リュウセイ・ダテ
地球連邦軍少尉。
R−1のパイロットで、SRXのメインパイロットも務める。
たまに「俺」やアヤの逆鱗に触れて、簀巻きにされる事もある。

◆レーツェル・ファインシュメッカー
本名はエルザム・V・ブランシュタイン。
ライの兄で、元教導隊。
飼っている愛馬になぞらえてるのか、乗る機体は必ず黒く塗り、トロンベ(竜巻)と名付ける。
それを皮肉られて、「俺」からは本人までトロンベと呼ばれている。
更に、アウセンザイターもダイトロンベ呼ばわりされる始末である。

◆ライディース・F・ブランシュタイン
「ライ」という愛称で呼ばれている、R−2、R−2パワードのパイロット。
典型的な2号機乗りかと思いきや、シスコン・ブラコン・ロリコン・ガチホモの、驚異の四冠王を達成した偉大n


     し
     ば
     ら
     く
     お
     待
     ち
     下
     さ
     い
      ゜
7それも名無しだ:2007/05/20(日) 17:33:18 ID:gvCwlx3m
>>5-6
乙とGJ。ワロタ
前スレまだ書けるよ、と報告
8それも名無しだ:2007/05/20(日) 17:36:57 ID:U2O+gAG0
>>7
報告サンクス(・ω・)/
新スレ一発目に持ってきた方が見付けやすいかなと思ってやってみた。
9それも名無しだ:2007/05/20(日) 17:45:10 ID:U2O+gAG0
今思い付いたんで、キャラ紹介その3↓


◆イルムガルド・カザハラ
地球連邦軍中尉。
グルンガストのパイロットで、愛称はイルム。
なかなかの切れ者だが、悪戯好き&女好きな性格故に、そうは見えない。
ラトゥーニやマイに変な知識を教えたりする困り者。

◆オクト小隊
カチーナ・タラスクを隊長に、ラッセル・バーグマン、タスク・シングウジ、レオナ・ガーシュタインの4名で構成されたPT小隊。
基本的にネタ要員。
特にレオナは、ゼオラ共々、その超絶的な料理の腕前で「俺」を苦しめる強敵である。


他にも色々登場しますが、ほぼOG本編に準拠しますので、割愛しますm(u_u)m

10それも名無しだ:2007/05/21(月) 15:46:33 ID:lHsvj3F9
すんません、前スレ使い切っちゃいましたm(u_u;)m

改めて、投下します。↓
11番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/05/21(月) 15:48:33 ID:lHsvj3F9
初めての月 デート(?)日

以前に約束していたので、今日は新人くんと二人で、お食事に。
でも、それだけじゃつまらないから、早めに基地を出て、買い物に付き合ってもらう事にした。

だって彼ったら、せっかくの休暇でも、どこへも出掛けずに、基地の中にいてばっかりで……そんな事じゃ、気持ちが塞ぎ込んじゃうわ。
多少強引にでも外へ連れ出して、リフレッシュさせてあげるのも、リーダーの務めよね!

――という訳で、新人くんを連れ出して、デパートへ。
服や靴を買う時、彼にも見てもらう。
でも、特に理由がある訳じゃなくて、あくまでも話のキッカケを作るためよ?……って、誰に言い訳してるの?私。

まぁ、それは置いといて。

新人くんはつまらなさそうな顔で、私が何を言っても、この前みたいに「そうですね」の繰り返し。
もう!少しは真面目に答えなさい!
「えぇ〜っ?」
くぅぅっ……ちょっと怒ってみせても、まだ「笑っていいとも!」の観客状態だなんて……私ひょっとして、馬鹿にされてる?

何とかして懲らしめてあげないと、リーダーとしての沽券に関わるわね……何か良い方法はないかしら?

そう考えてると、ある場所が目に入る。
――ピンと来ちゃった。

12番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/05/21(月) 15:50:27 ID:lHsvj3F9
>>11
さぁ、次に行くわよ?
しっかり付き合ってちょーだいね!これはリーダー命令よ?
「イエッサ」
おどけて言う私に、荷物を持って素っ気なく答える彼だけど、次の売り場の入り口で足が止まる。

ふふん、当然よね。何せ私の次の目的地は、ランジェリーショップだもの。
見れば彼は、顔を赤くして、視線を泳がせている。
どうしたの?早くいらっしゃい。
「あ、いや、しかし……」
これはリーダー命令だって言ったでしょう?
それともアナタ、上官命令に逆らうつもり?
わざと意地悪な口調で言うと、彼は言葉に詰まる。

もうちょっと意地悪しちゃおうかな?

まさかアナタ、リュウみたいに逃げ出すつもりなのかしら?
「……リュウセイと、来た事あるんですか?」
ええ。あの子ったら私をほったらかしにして、どこかへ行っちゃったのよね〜。

……なーんてね、嘘だけど。

「……わかりました。お付き合いします」
彼は、まさに苦渋の選択と言わんばかりの表情で答える。
さすがは男の子!潔くて頼もしいわ〜♪
なんて白々しい事を言いながら、私は売り場の中に彼を引きずり込む。

私が買い物をしてる間中、彼はずっと恥ずかしげに目線を伏せたままだった。

……ちょっと可哀想だったかしら?

13番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/05/21(月) 15:51:43 ID:lHsvj3F9
>>12
買い物を一通り済ませると、時間になった。

予約しておいたレストランへ、新人くんを連れて行き、食事。
お店の雰囲気に馴染めないのか、彼ったら始終緊張していた。

食事を終えて、お勘定を済ませると、店を出る。
少しは楽しんでもらえたかしら?
そう思って彼の顔を覗き込むと……彼はやっぱり、つまらなさそうな表情のままだった。

もう!楽しそうな振りくらいしてくれても良いじゃない!

そんな彼の表情に、ついカッとなって私は怒鳴ってしまった。
確かに無理矢理お買い物に付き合わせて、悪かったとは思ってるわ。
だけど、それも私なりに、気分転換させてあげようと思ってやった事なのよ!?

――と、そこまで言って、私は自分のミスに気付いた。
こんな恩着せがましい言い方じゃ、反感を買うだけじゃない……私がそんな事でどうするの?
慌てて謝ろうとしたけれど、その前に彼が口を開いた。

「………すいませんでした、大尉」

悲しそうに目を伏せている。
いけない、やっぱりキツく言い過ぎたんだわ……。
「大尉には、感謝しています。俺なんかのために、時間を割いてくださって」
彼はポツポツと続ける。

14番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/05/21(月) 15:53:22 ID:lHsvj3F9
>>13
「ただ、ずっと最前線で戦い続けて……こういうのに、馴染めなくなってるんです」
彼は寂しそうな声で、そう言った。
「自分のような人間が、こんな所にいて良いのか……大尉のような汚れのない女性と一緒にいて良いのか……自分がこうしてノンビリした時間を過ごす事自体、間違ってるんじゃないかって、そんな風に思えて……」
歩きながら、彼は堰を切ったように話し続けた。
「なんか、テレビの中の映像を見てるみたいに、今という時間に現実味が持てないんです……自分はここにいちゃいけないような、そんな気分になって……」

馬鹿な事言わないで!

私は彼の言葉を遮るように、叫んだ。

ここにいちゃいけないとか、間違ってるとか、そんな事誰が決めたの!?
あなたは今、確かにここにいるの!それは間違いでも何でもないわ!
私はまくし立てながら、彼の手をギュッと握った。
燃えるような、熱い手……私はその熱さを確かめるように力を込める。
この手の温もりは、確かに現実のものよ?
あなたはちゃんとここにいる。
ここにいても良いの。
それを何かの間違いだなんて、私が誰にも言わせないわ……あなた自身にもよ!

私はいつになく強い口調で、ハッキリと言った。

15番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/05/21(月) 15:55:37 ID:lHsvj3F9
>>14
あなたはただ、戦ってばかりいたから、心が疲れているだけなのよ。だからそんな風に感じるだけ。
でも、あなたのその戦いがあったから、今の穏やかな時間があるのよ?
あなたが戦った事で、守られた平和があるの。
だからあなたには、ここにいる権利があるわ。もっと、自分に誇りを持ちなさい?
「…………」
彼は何も答えなかった。
ただ、申し訳なさそうに、目を伏せる。

今は実感が湧かないでしょうけれど、でも私は、心からそう思ってるわ。
あなたの戦いは無駄じゃない。今もチームのために貢献してくれてるでしょう?
だから、もうそんな悲しい事は言わないで……これは命令よ。
「イエッサ」
彼はやっと、ただそれだけ言ってくれた。

――命令。

そんな言葉でしか、彼を納得させる事が出来ない私。
そんな言葉でしか、自分を納得させる事が出来ない彼。

それが悲しくて、気が付くと涙がこぼれていた。
「大尉……泣いてるんですか?」
彼が心配そうに尋ねる。

――誰のせいだと思ってるのよ、馬鹿。
16それも名無しだ:2007/05/21(月) 18:13:34 ID:uiCdjmF9
>>11-15
まずは乙。
前のネタが改変されてこういうふうになると、度々驚かされる。
アヤさんの気遣いと心の強さを感じた。最後辺りの命令の話で命令とは何か?と考えてしまった。
読んで良かったと思う。素晴らしいスタートをありがとうです。何度もだが、日付の書き方好き。
17それも名無しだ:2007/05/22(火) 00:06:18 ID:t/67b6ll
朝、俺はスレイとキスを済ませ駅に向かい電車に乗った。
ガタンゴトン…
「はぁ〜…月曜は辛い…orz」
ライト「お宅さん、その気持ち分かるよ」
「同士よ。今日一日頑張ろうぜ」
ライト「ああ」
「レイはいいよな。入社後すぐにちやほやされて…俺の頃はカルヴィナにしごかれた」
レイ「仕事ですから…」

駅のエレベーター付近
AI-1「わーいわーい」
「ちょw子供が遊ぶなよwww」
ミッテ「遊んではいけません」
AI-1「ママ、ごめんなさい」
ミッテ「良い子ね」
クラウレ「あなた、あれを見て…」
ランバ「あんな子が欲しいのか。任せろ」
「……(おじさん、良いのか?w)」

仕事終わり帰宅
「ただいま…月曜ダリー…」
スレイ「あなた、お帰りなさい。お疲れ様」
「やっと俺の女神ちゃんを見れる」
スレイ「あなた…胸はダメぇ…」
18それも名無しだ:2007/05/22(火) 13:32:08 ID:NA1w0kb5
>>16
サンクス(・ω・)/
何よりも、前の日記を覚えててくれてるのが、一番嬉しかったり('-^*)/

19それも名無しだ:2007/05/22(火) 13:33:35 ID:NA1w0kb5
>>17
クラウレって誰かと思ったら、ハモンさんの事か。
いくら蒼い巨星でも、AI-1みたいな子は無理だろ……w
20それも名無しだ:2007/05/22(火) 18:06:38 ID:t/67b6ll
>>19
ありがとうです。
そうだよねぇ。だがおヒゲのおじさんの気持ちも分かる気がする。あんなに元気で素直な子は珍しい。
言い忘れたことだが、見ない間にAI-1が急成長していた。あれはミッテさんの実験に大切なものらしい…厄介事は御免だから関わらないでおこう。
21それも名無しだ:2007/05/23(水) 13:43:36 ID:Ay0Mx92V
今日のマイは、朝から元気がない。
まぁ無理もねえか……あんだけ可愛がってた猫たちと、離れ離れになっちまったんだからな。

どういう事かというと、実は子猫が生まれた辺りから、マイは咳をするようになっていた。
猫の抜け毛が原因で、喉やら気管支やらを悪くしちまったらしい。
母猫は、一日中じっと寝てるか、外をフラつくかしてるだけだったんで、まだ影響はなかったが、子猫たちはずっと部屋の中にいる上、結構ヤンチャで、パタパタ暴れ回ったりしているから、その影響がモロに現れた訳だ。

マイは平気だと言い張ったが、さすがにこれは見過ごしておく訳にもいかねえ。
幸い、クスハの知り合いが猫を欲しがっていたんで、その人に親子ともども飼ってもらう事にした次第だ。
昨日クスハに猫たちを預ける時は、大変だったぜ。
マイの奴、この世の終わりが来たかのように泣きじゃくってたな。
あと、腹いせに俺目掛けて、テーブルやらロッカーやらを念動力でぶつけたりもしてくれやがったが。

まぁ、これくらいで機嫌直してくれるんなら、我慢するかね。

まったく、男はつらいぜ……。

22それも名無しだ:2007/05/23(水) 17:31:05 ID:0jxs4NKa
>>21
君の心強さに感動。さすが不死身の男だ

報告:ZZを視ると言ったが金溜まりそうにないから諦めますた
23それも名無しだ:2007/05/23(水) 18:38:24 ID:0jxs4NKa
この家に引越した頃
「じゃあ、行ってくるよ」
スレイ「行ってらっしゃい」

午前中
ナナイ「すみません、お願いします」
テンザン「…(うわ気持ち悪い。幼女ばかりの本だっての)」
……
テンザン「ホッちり紙交換してるってのに一つもエロ漫画が集まらないっての」
スレイ「すみません、これお願いします」
テンザン「わっかりました……ホッ!?」
スレイ「何か?」
テンザン「いえ、何でもないです…(エロ漫画ゲットだぜっての)」
夜、自室
「あれ?俺のエロ漫画は?…エロゲ雑誌も…同人誌も…」
「無いーーっ!!」
スレイ「あなた、どうしたの?」
「俺のエログッズどこへやった?」
スレイ「それならちり紙交換に出したわ」
「マジで?」
スレイ「うん」
「……orz」
スレイ「わたしがいれば必要無い物でしょ?」
「それはだねぇ……」
スレイ「ね?」
「ああ……」
24それも名無しだ:2007/05/24(木) 12:38:23 ID:YiFw8htt
良かった……テンザンがニートしてなくて本当に良かった!
25それも名無しだ:2007/05/24(木) 18:04:05 ID:8P7UxCRB
>>24
ありがとうです。ちなみにテンザンは現在メイドカフェの店長をやっている。番外編付けるの忘れてしまった。そこでアイビスも働いているから素敵な出会いがあるといいな。

キャラの設定等はPC直ってから投下する。携帯だと書く気がゼロだから。
26それも名無しだ:2007/05/25(金) 08:13:11 ID:RH/x00jS
久しぶりにきましたお。
ラトと同居人でっす。
おっおっ(キャラ違ってるって

キャラ紹介乙!
イルムは外せないところだーね。

猫とアヤ大尉の話も読ませて頂いた。(レーツェル風に
御馳!
ところで、アヤ大尉が今度の軍の慰安祭でステージで
山本リンダの歌を歌うって本当?
オクト小隊あたりはなにすんのかね。

オーバー?(通信終了
27それも名無しだ:2007/05/25(金) 10:33:14 ID:TI71PJcb
朝からチーム全員が、会議室に呼び出された。

「議題は、来月に行われる慰安祭での……我々SRXチームの出し物についてよ」
出し物って、ヴィレッタの姐さん……文化祭じゃないんスから……。
「うるさいわね。評判が良い部隊には、上層部から特別予算が下りる事になってるの。この特別予算を何が何でも手に入れるわ。隊長命令よ」

……イエッサ。

いつになく気合いの入った姐さんの眼差しに、俺はそう答えざるを得なかった。

「でも、具体的に何をやりゃあ良いんだよ?」
「ん〜……たこ焼きとか焼きそばとか?」
「大尉、それでは本当に文化祭になってしまいます」
「私はクレープ屋さんが良いな」
そうじゃねえだろ、マイ。

まぁ、この場合は……PT使ったアトラクションとか、思い切ってSRX合体を実演とかが妥当だろーな。

「何を言ってるの。内容は既に決めてあるわ」
ヴィレッタの姐さんが、そう言ってプリントを配る。
各人のやる事が書かれてあった。

俺とリュウセイの、PTを使ったアクロバット飛行をバックに、アヤとマイの歌を披露……って、コレじゃただのコンサートじゃねえか!
しかもPTはただの演出装置かい!

28それも名無しだ:2007/05/25(金) 10:35:32 ID:TI71PJcb
>>27
「これなら確実に上からの評判が良くなるわ。バックの演奏は私とライが担当よ」
「了解です……」
ライが苦渋に満ちた顔で答える。

たく、やりゃあ良いんでしょ、やりゃあ。
しかしR−ウイングとアシュセイヴァーのアクロバット飛行ってのはなぁ……飛行機型と人型じゃ、ビジュアル的な統一感に欠ける気が……。
「心配いらないわ。ビルトラプターを用意してあるから、あなたはそれに乗りなさい」

イエッサ。何でこの人、こんな気合い入ってんだろ……。

「それと、アヤとマイが歌うのは、この曲よ」
姐さんが、楽譜を二人に渡す。
どら、どんな歌だ?

…………。

………。

……。

ちょっと待てぇぇぇえええぇぇぇいっ!!!!!!!!!!!
姐さん、これだけは!これだけはやめてぇぇぇぇ!!!!
「私の彼はパイロット」だけはぁぁぁぁぁあああぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!

「その歌だと、何か不都合でもあるの?」
大ありだ!エクセレンの姐さんが、何て言ってからかってくるか知れたものじゃないッスよ!

「つべこべ言わない!とにかくこの内容で行くと決めた以上、口答えは許さないわ。わかったわね……答えは聞いてないわ!」

あんたは鬼だぁぁぁぁぁあああぁぁぁっ!!!!!!!!

29それも名無しだ:2007/05/25(金) 10:37:39 ID:TI71PJcb
>>26
山本リンダは、具体的なイメージが湧かないんだ……スマヌ、切腹。
30それも名無しだ:2007/05/25(金) 10:53:26 ID:TI71PJcb
……てな訳で、こちとら大変だ。

昼休み、俺は食堂で、たまたま席が向かい同士になったラトゥーニに、慰安祭での出し物の事を語った。
「何だか賑やかそうで、楽しそうじゃないですか」
見てる分はな。
しかし、歌の歌詞と、俺とアヤの関係を重ねると、そりゃあもう自殺もんの恥ずかしさだぞ?
旧西暦のアニメの挿入歌らしいが、俺に対する嫌がらせとしか思えねーよ。
「あ……あはは……」
ラトゥーニが笑ってごまかす。
「あ、私たちも、慰安祭で出し物やるんですよ?PTによるアクロバット飛行なんですけど」
ほう……お前やラミア、カイ少佐はともかく、ゼオラとアラドは大丈夫なのか?
実戦とは違うコンビネーションが要求されるんだぞ?何かとすぐに喧嘩になる、あのバカップルじゃ、マジで空中分解したりしてな。
「大丈夫ですよ。これでも特殊戦技教導隊です。甘く見ないでください」
ツンと済ました顔で、ラトゥーニは自慢げに答えた。

ふふん、自信たっぷりだな。
まぁ、せいぜい頑張って、彼氏にご褒美のチューでもしてもらうこった。

――直後、テーブル越しの右ストレートが、俺の顔面にめり込んだ。

31それも名無しだ:2007/05/25(金) 16:59:31 ID:3pvn7it8
>>27-28>>30
ヴィレッタさん可愛いなwアニソンは素晴らしいぞ。俺は大好きだ。まあ、頑張れよ
32それも名無しだ:2007/05/25(金) 18:00:16 ID:fekE7nbd
ふー、ただいま。
>>27-30
おおう、やっぱり山本リンダはガセネタか。
でも私の彼はパイロットでもいいんじゃないかな。
きっと歌う時、絶対ステージからアヤ大尉の目線が来るだろうけどね!w

ラトの敬語が、ちょっと羨マシス。
俺SSだと無理だからなあ。

ルリみたく敬語で嬲られてみあqwせdrftgyふじこ(変態

とにかく、GJと言わせて頂く!(レーツェル
33それも名無しだ:2007/05/25(金) 18:19:08 ID:3pvn7it8
>>32
お帰りなさいです

駅前、俺は会社からセレーナと相合傘で来ちまった…。次は家までセレーナと一緒か…最悪だ。セレーナはその気になってヘタクソな色目を使ってくる。正直萎える。
駅の出口まで来たがやはり雨が降っている。止むと期待を込めて来たが…。
その時、青い髪の美女の姿があった。俺の妻のスレイだ。俺のために来てくれたんだ!俺はスレイに歩み寄り声を掛けた。
「スレイ、ただいま」
スレイ「あっ、お帰りなさい」
やっと来てくれたというようなスレイの表情。長い間待っていてくれたのだろう。
「俺の分の傘が無いな、ということは相合傘したいのかな?」
スレイ「うん♪」
「元気な返事だ。さあ、帰ろう。今晩の飯は何だ?」
スレイ「今日はね。ワカメの味噌汁と野菜サラダよ」
「今日は凄く疲れたから軽い物で良かった。お前は気の効くな」
俺はスレイの頭を撫でてやった。すると、スレイは少女のような可愛らしい笑みを浮かべる。
セレーナ「あの〜…わたしは……」
スレイはセレーナに見せびらかすように俺と腕を組んで、家に向かった。
34それも名無しだ:2007/05/26(土) 14:30:45 ID:HrsOq1sk
>>31
サンクス(・ω・)/
ヴィレッタの姐さんも気合い入ってるし、俺も頑張るよ。

>>32
サンクス(・ω・)/
ラトゥーニは、ブラザーと出会ったばかりの頃は敬語使ってたっぽい印象はあるなぁ。
あくまでも個人的な印象だけど。
またぞろイルムが変な事教えなきゃ良いがw

>>33
取り残されたセレーナに、売れ残ったトコロテンのような哀愁を感じたw
35それも名無しだ:2007/05/26(土) 15:02:05 ID:HrsOq1sk
今日は慰安祭に向けて、アクロバット飛行の練習だ。
久しぶりに座るビルトラプターのコクピットシートの感触に、口元がにやけてしまう。

リュウセイのR−ウイングと共に、早速練習開始だ。
ウォーミングアップ代わりに、簡単な編隊飛行を三つほどこなしていく。
しかしリュウセイは、イマイチこちらとの距離の取り方がわからないのか、ターンを決める度に、近付きすぎたり離れすぎたりしている。

どうした、リュウセイ。
もっと自信持って、思い切ってやれ。
『いや、わかってるんだけどよ……こういうの慣れてねぇもんで……』
通信回線越しの声にも、いつもの元気がねえ。

よし、わかった。
俺が合わせるから、お前は自分のラインをキッチリ取る事に集中しろ。
『わかった。頼んだぜ?』
リュウセイの返事の後で、もう一度フォーメーションに入る。
二機が並んだまま、ジェットコースターみたいに空中で三連ループを描くパターンだ。
R−ウイングは、さっきまでとは打って変わった、思い切りの良い動きで飛んでいく。
たった一言でこうも変わるとは、元々単純な奴ではあるが、俺の事をそれだけ信頼してるって事でもあるよな……。

何だかくすぐったくて、俺はつい笑ってしまった。

36それも名無しだ:2007/05/26(土) 15:04:28 ID:HrsOq1sk
その日の練習を終えて、俺はアヤの部屋に向かう。
フォーメーションの打ち合わせに熱が入っちまって、不覚にも長引いちまった。
アヤが待ちくたびれないよう急がなくてはと、つい足早になった。

部屋の前に着くと、まずは大きく深呼吸。
その後インターホンで呼びかけると、
『もうちょっと待ってて』
と、妙に明るい声で、アヤが返事をする。
そのまま一分ほど待つと、
『いいわよ』
お許しが出たので、ドアを開けて中に入る。
中に入ると……。

そこには、ショートヘアのリン・ミンメイが立っていた。

「本番で着るステージ衣装なんだけど……どう?」
アヤは照れくさそうに笑い、ゆっくりと俺の前で一回転。

か、可愛い……世界征服も可能な愛らしさだ……!
たまらず抱き締めて、キスをする。
アヤも俺の背中に両腕を回し、応じた。
唇と舌を交えながら、彼女の体をゆっくりとベッドに押し倒すと、
「ダメ……シワになっちゃう……それに、汚れちゃうわ」
と、抗議が入った。

どうせ本番まで時間はあるんだし、クリーニングに出しても間に合うだろ?
「ダメよ。ヴィレッタに無理を言って、明日返す約束で借りて来たんだから……あなたに、見てもらいたくて……」
恥ずかしげに目線をそらすアヤ。

くそ、なんて愛らしいんだ……この前は一晩中マウントポジション取ってたくせに。

俺は、アヤの顔をやや強引にこちらへ向けさせると、情熱の限りを込めて口づけした。

37それも名無しだ:2007/05/26(土) 15:47:54 ID:LvoR9ftU
>>34
ありがとうです。セレーナが売れ残ったトコロテンに笑った

>>35-36
リュウセイとの友情を感じた。リュウセイは人と合わせるのが苦手なんだよな。いつも自分だけで突っ走っちゃって
アヤさんは口ではこうだが身体は正直。素晴らしい
38それも名無しだ:2007/05/26(土) 16:43:29 ID:5Bb+YCM0
>>36
ミンメイのコスプレとは!
本格的にあの歌への秒読みが始まってるぞおおw
御馳!

ラトもシャイン王女とWINKを演るみたい。もちろんアクロバット飛行もするけどね。
その話はいずれうp予定。
頑張って慰安祭盛り上げようぜー。

で、それと関係は無いんだけど、宿題仕上げたよー。
前スレ>>239-241の続き。

バーニングPT・後編。
一応読まなくても判るようにしてあるけど、もっと感情移入したい方は
消えてしまう前にご一読を。

↓スタート
39砂塵:2007/05/26(土) 16:44:36 ID:5Bb+YCM0
暑かった。
乾いた灼熱の空気が砂漠の強い風に煽られ、砂を含んだ燃え滾る
質量となって、体の奥底まで強引に熱を捩じ込んでくる。
容赦ない直射日光に炙られ続けた体表面はかさかさに乾燥し、声はしわがれ、
眼は強い陽光に当てられ軽く失明したようになり、行く手さえもよく見えない。
疲弊した角膜にうすぼんやりと映るのは、どこまで進んでも同じ景色。
方角はこれでよし、と見当をつけて進んではいるものの、
正直どうどう巡りしていても全くおかしくは無い。

砂のちょっとした盛り上がりに足を取られ、バランスを崩す。
背中に背負った大事な荷物。大切な人。
―ラトゥーニ・スゥボータ。
庇って、自分だけが前のめりに砂丘に頭から突っ込んだ。
幾度と無く繰り返されたルーチン。
よろよろと起き上がり、口の中に入った砂の塊を吐き出し、唾を吐こうとする・・・
が、そんなものは出やしない。
低く悪態を付きながら震える手で砂をゆっくりと払い、意識の無いラトを
また背負い、煉獄のような歩みを再開する。
のろのろと、かたつむり以下の速度にも感じるが、眼前に聳え立つ何十、
何百個目の丘陵を越えれば目的地だ、と信じて進む。
また絶望するだけだ、と判ってはいても。

俺とラトが砂漠のど真ん中に不時着して、四日が経とうとしていた。

『簡単な偵察任務』
『フェアリオンを使うまでも無い』
カイ司令の言葉が脳裏に木霊する。
連邦軍の戦闘機、メッサーを使ってDCの制空圏内をかすめて飛んで、
異常があるかどうか確認するだけの仕事。
あまりに価値が無い空域とお互いが認識している為、領土としては
放棄されているに近い場所の偵察。
今までこの空域でDCが動いた事は無い。絶対に襲われる危険は無い
…と云う事で、カイ司令がラトと俺に観光旅行代わりにくれた、
9日間というラトの休暇込みでの任務。
その間フェアリオンは完全なオーバーホールを受け、こちらは仕事が
終わり次第、南国でのバカンスになる予定だった。
40砂塵:2007/05/26(土) 16:46:04 ID:5Bb+YCM0

連邦軍基地まであと180km、という所できらり、と何かが砂影から
光ったのに気付いた時は既に遅かった。
左のエルロンから主翼本体をいきなりレーザーのようなもので貫かれ、
成す術無く不時着。
…敵が潜んでいたのだ。

DCの辺境での悪行は一般人の間でさえ周知の事実だ。
捕虜が男なら殺す。女なら辱めて犯してから殺す。
ラトは連邦軍のトップエリートパイロットと言える存在だ。
DCがラトの身元検索をすれば、すぐに素性が
ばれてしまうだろう。
捕まる訳にはいかなかった。

当然、すぐに生存者の確認と抹殺に来ると思ったのだが…
どうせ砂漠に落ちたら助からない、と考えられたのだろうか。
半壊したメッサーから脱出し、急いで連邦軍基地に向けて出発した俺達に、
追っ手が掛かる事は結局のところ無かった。

だが、追っ手を恐れて昼となく夜となく歩き通しだったツケは高くついた。
ラトゥーニは軍人だ。しかも肉体改造まで行うというスクール出身の。
しかし、やはり子供であり、女性であって。
墜落してから三日目の昼、ついに意識を失い倒れてしまったのだ。

俺は訓練などされてはいない。ただの民間人だ。
だが、意識を失い、砂に汚れたラトの横顔を見やる度に、枯れかけた体力に
熱いものが補充されるのを感じる。
その力でよろめく一歩を踏み出すのだ。

絶対に、生還する。
かならず、生きて帰す。
せめて、ラトだけでも。

 * * *
41砂塵:2007/05/26(土) 16:46:59 ID:5Bb+YCM0

五日目。影が出来るほど盛り上がった砂丘の陰で、最後の水をひび割れた
ラトの唇に滲ませていると、ラトはうっすらと瞳を開いた。
「……こふっ」
声帯まで水が回っていないのだろう。声が出ないようだ。
「大丈夫。大分進んだよ。今日中には基地に着くと思う。必ず連れて行く。
ラトは安心しておぶさっていればいい。ほら、飲んで」
水筒を傾けた。こくこくと細い喉を鳴らしてラトは水を飲み干し、ハッとした
顔になる。
「ごふっ…おにいちゃんの分は…?」
「ああ、さっき少し飲んだよ。大丈夫だ」
「そう…よかった…」
嘘だった。
昨日から何も飲んではいない。最初から、ラトに殆どの水を回している。
だが、これでいい。

「さあ、出発するよ。背中におぶさって。」
「うん…」
「あとちょっとだよ。基地に着いたら、シャワーは先に使っていいぜ?」
「ふふ、体、くさいかな?」
「俺も臭いから、判らないな。はは」

イルムのような軽口を叩きつつ、ラトに背を向ける。
よろよろとのしかかって来るラトをよっこらせ、と背負い。
そして、ラトの体温の高さに怯えた。
熱射病なのは間違いない所だ。
水も底をついた。今日でたどり着けなければ…
考えない事にする。

 * * *
42砂塵:2007/05/26(土) 16:47:53 ID:5Bb+YCM0

感覚がとうに失せた両の足を、機械的に動かす。
いち、に。
いち、に。
夢を見ているようだ。
頭の中に思い浮かんだ言葉を端から叫んでいるような気がする。
もしかしたら本当に叫んでいるのかも知れない。
熱い砂が火ぶくれになった俺の足を焦がし、揺らめく大地を突き抜けて
踏みしめ、引き抜き。
道路って、こんなにめり込むんだっけ…整備が悪い…
いや、砂漠。砂、だ。
標識が立ち並んでいる。通行止め。一時停止。
ああ、止まらなきゃ…
幻覚すら混じり始めた思考と風景。
頭を振れば標識は消し飛ぶ。
そして。

何日もの時間、幾百もの砂丘を越えたそこに、忽然と銀色の建物と
人型機械は出現したのだった。

 * * *

「ラト!…ラト!基地だ!」
喜びのあまりその場に膝を突いてガッツポーズ。
「ん…基地…本当に…!」
「ああ。俺達、助かったんだ…!」
「ん…」
だが、ラトは目を擦り。
ぱちぱちとしばたたき。
しばらくそうしていたが、振り返ってばつが悪そうに、言い難そうに微笑む。
「ごめんなさい。眼、見えないみたい…」
「!」
ラトの目の前で手を振る。瞬きすら…しない。
見開いたままの瞳で、手探りで俺を探しながら、ラトは言う。
「失明…しちゃったかな」
「そんな!」
「ごめんなさい…」
ラトは俺の手を探し当て、それが唯一の世界との接点のように大事に抱え込み、
ただ、ごめんなさい、と繰り返した。
一瞬、言葉を失ってしまう。
砂漠の強い陽光のせいなのか。
吹き荒ぶ砂混じりの風のせいなのか。
「と、とにかく医者に見せよう!きっとここにいる筈だ。行こう!」
「うん…」
「もしここに医者がいなくても、そこのリオン辺りに乗せたらきっとすぐに
医者のいる所まで行けるさ…!」
はた、とラトが立ち止まる。
「リ…リオン…?」
「ああ、バレリオンまであるな。BPTでしか見た事無いけど、多分間違いない」
ラトが押し殺すように、囁くように言う。
「リオンって…今はDCしか使ってない筈…」
「なんだって!」
生きているものすら何一つ無い酷暑の砂漠を何日も歩き通してきて。
これ以上無い焦熱の地獄を見た筈なのに。
その一言で、頭から冷水を浴びせられたような気持ちになった。
「じゃあ、あれはDCの基地だって事に…」
「うん…」
「バカな…」
43砂塵:2007/05/26(土) 16:48:46 ID:5Bb+YCM0

背筋に冷たい棒を突き込まれたような感覚が治まると、
徐々に怒りが巻き起こってくる。
激昂の領域まで。
―バカな。
あれ程の時間苦しんで、やっと助かると思ったら敵の基地だと…!
腹が立った。やり場の無い怒りが溢れ、轟々と渦を巻く。
そして。
怒りは頂点に達したと同時に嘘のように消え、そこに一つの決意が
浮かび上がってくる。

ラトのちいさく華奢な手を、ぎゅっと握って話しかける。
「ラト。どうやら一機だけ、量産型ゲシュペンストがあるみたいだ。
鹵獲って奴だと思う」
「うん…」
「奪おう。奪って闘おう」
「え、でも私目が見えないから操縦できない…」
ラトは不安げな顔をする。
「俺がするさ」
ラトの眼が見えないのは判っているが、その端正な顔ににやり、と
笑いかける。
「え…?」
「バーニングPTで、訓練は厭と言う程積んでいるさ。
俺はたかがゲーマーだけど、実戦もイケる口なんだぜ?」
「リュウセイに40連敗もした癖に…?」
「ああ、言っちゃ駄目な事言ってる…!w」
「ふふ」
「はは」

こんなに辛い状況なのに、笑いがこみ上げてくる。
たかがゲーマー。
街で対戦ゲームをやり込んでいる程度の人。
そんな奴に命を預けてくれ、と言っているのだ。
馬鹿らしい事この上ない。

だがラトゥーニは砂の上に座り直し、俺のほうを向いて丁寧にお辞儀をした。
「よろしく、お願いします」
「…え」
自嘲的な気分でいたから、このリアクションは予測していなかった。
「…いいのかい?」
「うん。もう、前から決めてることだから」
「前から?何を…?」
「ずっと、お兄ちゃんについて行くって」
それだけを言って、ラトは光を失った、だが、深い山奥の湖のように蒼く
透明に澄んだ瞳を俺に向けて、花が咲くようににっこりと笑ったのだった。
44砂塵:2007/05/26(土) 16:50:27 ID:5Bb+YCM0
 * * *

砂丘ばかりといってもこの辺は隆起も多く、日陰になる場所は沢山あった。
上空から飛来するかも知れないDCの機体から身を隠す為に、穴を掘って
頭に上着をかぶり、砂を掛けて身を潜める。
最後のレーションをラトと分け合い、齧る。体力が必要になるのは間違いない。
喉は焼けつく様に乾いてはいる。だが、レーションに含まれている水分のお陰で
大分楽になった。
俺とラトは基地の様子を窺い続けた。

半日、偵察して大体の様子は掴めた。
基地の間取り、見張りの配置、人の多い場所、少ない場所。

見張りが交代するのは二時間置き。その時、誰も来ない辺境の基地だから
なのか、すぐに次の見張りが出てこない事が多い。
平均して7分。早い時は2分程で出てくるから、この辺は運だろうが、
賭けるならここしか無いだろう。

俺達は砂影に隠れ、目的のゲシュペンストからかなり近い場所まで這いずって
近寄っておき、見張りが居なくなると同時に砂を巻き上げて走った。
時は既に夕暮れ。
ラトも俺も、体力の限界はとうに超えている。
大体、コクピットにたどり着けた所で動かせるという見込みは無い。
自転車だって使わない時は鍵を掛けておくものだ。
だが、なんとなくカンが働いた。出来そうな気がした。
その可能性に全てのチップをBETだ。
分の悪い賭けどころでは無いが。

そしてなんとか、ゲシュペンストに到着する事が出来た。

―コクピットが、開いている…!

ラトを先に押しやり、その上で先に昇って引き摺り上げる。
…なんとか、見張りに見つかる事無くコクピットに入り込む事が出来た…!
本来一人用のコクピットはぎゅうぎゅう詰めだ。
俺はラトを抱え込むようにして座り、操縦桿の感覚を確かめ、
コントロールパネルに指を滑らせる。
なんと、有り得ないほどの幸運な事に、エンジンには火が入っていた。

だが。
45砂塵:2007/05/26(土) 16:51:06 ID:5Bb+YCM0

「あ…ミッションディスクが、無い…!」
「え…?」
回避、索敵、火器制御などの重要な要素を行うプログラム・ディスクが
抜かれていた。
OS自体は立ち上がっているのだが、これでは何をどうする事も出来ない。
なにかしら障害はあると思ったが、これは…。
だが、ラトが平然と言う。
「OSは立ち上がってるんでしょう…?バージョンは、幾つ…?」
「ええと…5.4」
「わかった。今、作るね」
「!」
とんでもない話だ。
ゲームのものでさえ、ミッションディスク作成は何週間も掛かる。
実際の機体ならさらに難易度は上がるだろう。そんなものをホイホイと
作れてしまうものなのだろうか。
しかもラトは今、目が見えていない状況だ。
ブラインドタッチで全ての作業を行うというのか。

すっ、とラトが光を失った瞳を閉じる。
と、見つめる俺の目の前、というか、俺の膝の上に座ったラトが、ひとつ
大きく深呼吸をした。
パネルの上をラトの指がめまぐるしくひらめく。
空中に幾つも開くウインドウ。
凄い勢いでつむぎ出されていくプログラム群。
新しいアプリケーションが次々と立ち上がり、綺麗に整列された文字達が
下から上に波になって流れていく。
俺はあんぐりと口を開け、呆れ返って見つめるしかなかった。
これは、想像を、超えている。
ラトが『天才』と言われている真の意味が判った気がした。

作業は30分程で終了した。
全てが、だ。
火器管制から機体制御まで大体はインストールしたという。
起動トリガーを引くと、機体は問題なく動作した。

「近接と回避主体にしてあるの。お兄ちゃんの闘い方に合わせて設計したから…」
「…!」
バーニングPTでは、しつこくリュウセイに近接を挑んでは、至近距離で
カウンターのG・リボルヴァーを浴びて負け続けていたというのに。
あの試合をずっと見ていてさえ、俺の闘い方で闘(や)ってくれというのか。
むしろそのスタンスを強化して、『信じる』と言ってくれているのと、これは
同義だ。
体が熱くなる一言だった。

「判った。ここからは任せてくれ!」
と、力強く答え、ラトの頭に手をやり優しく撫でる。
「ありがとう、な」
「ううん。頑張って…」
ラトが振り返り、俺の頭を優しく両手で挟むと、不意に俺の唇にラトの
それを重ねてきた。
お互いの唇はがさがさだったが、それでもラトとのキスは、俺の脳髄を
甘く痺れさせた。

生の実感がこみ上げてくる。俺達は今、生きている。
46砂塵:2007/05/26(土) 16:52:30 ID:5Bb+YCM0
連投規制防止の為にいったん切ります。
続きはまた今夜か、明日にでも。
47それも名無しだ:2007/05/26(土) 17:18:07 ID:HrsOq1sk
>>37
サンクス(・ω・)/
これもひとえに、俺の調k……もとい、愛情のおかげさ!

>>38
サンクス(・ω・)/
おお、シャイン王女まで参加なさるとは!どおりでライが鼻息荒くして、デジカメ買いに行く訳だ!
ライ「デタラメを言うな……」

げぇっ!ライ!ち、違うんだ、これはきっとノイエDCの陰謀に違いn
ライ「俺に出会った不幸を呪えぇぇぇっ!」

     し
     ば
     ら
     く
     お
     待
     ち
     下
     さ
     い
      ゜

48それも名無しだ:2007/05/26(土) 17:24:48 ID:HrsOq1sk
>>39-45
お疲れ様。続き楽しみにしてるよん。

基地までラトゥーニおぶって歩ききったブラザーのド根性と、ミッションディスクを30分で作成したラトゥーニの技量、そして最後のキスシーンにGJ!('-^*)/
49それも名無しだ:2007/05/26(土) 18:47:10 ID:qY0CYzSo
>>48
サンクス!
レスを入れてくれたから、次のを上げても大丈夫…だっけ?
続きいきます。
砕け散ったらごめんなさい。

後、GJあり!
ラトに興味なかった人も、OGでメインにしたくなるような話を書ければいいなあ。

さあて後半。
やっと闘いだ!

↓続き
50砂塵:2007/05/26(土) 18:47:50 ID:qY0CYzSo

 * * *

この鹵獲ゲシュペンストには、テスラ・ドライブが搭載されていた。
普通のMKU−Mタイプなのだが、DCならリオンタイプと同時に行動する
事が多い為なのだろうか。非常に有り難い。
銀色の機体が、砂塵を吹き散らして舞い上がる。
フェアリオンに同乗した時とは段違いの、生の加速圧が俺達を押さえつける。
慣性制御装置が壊れているのか、とも思ったが、機体の差か、と考え直す。

「追っ手は来るだろうけど、出来るだけ最初に距離を取ろう。ラト、
もしかして連邦軍に連絡取れるかい?」
「ううん、連邦のと通信機のタイプが違うみたい。目が見えさえすれば…」
「俺もDCの通信機なんて使い方判らないしな…。まあ、逃げ切れば
済む事だ…!」

テスラ・ドライブの出力を臨界まで上げる。最大戦速…!

そこで、やはり、と言っていいか。何者かから通信が入った。
スクリーンに映し出されたその姿は、予想通り連邦の制服を着ては居ない。
テレビで見た事があるが…DCの戦闘服に間違いない。

「何者だ…!所属部隊と階級、姓名を言え」
「無所属、匿名希望、かな」
「なんだと?!」
「ごめんなさい」

俺が適当に答え、ラトは律儀に謝る。
性格が出るところだ。
俺は、すぐに通信機のスイッチを探しあてて切断した。
だが、こちらの姿はモニターで見られてしまっただろう。

パーソナルデータの照会はもう終わったかも知れない。
よしんば、ラトゥーニの素性が今すぐばれなかったとしても、ぼろぼろの
服を着た、見た事も無い男と女がゲシュペンストを盗んで乗り回しているのだ。
拿捕、または撃墜しに来るのは間違いない。

最高速度で砂漠の地表すれすれをぶっ飛ばす。
あれ程苦しんで通り過ぎた煉獄の上を、今は鳥が飛ぶよりも遥かに早く、
連邦の基地を目指して一直線に飛翔する。
51砂塵:2007/05/26(土) 18:48:38 ID:qY0CYzSo

兵装の確認。

スプリットミサイル。
M950マシンガン。
ネオ・プラズマカッター。
ジェット・マグナム。

余分な武装は何一つ付いていない。空中戦が出来る、という事以外は
BPTで乗り慣れているノーマルなゲシュペンストだ。
オプションにテスラ・ドライブを選択した時と変わらないさ、と、自分に
言って聞かせた。
試しに左右に機体を軽く振ってみる。
思い描いた理想のラインで空中にシュプールを描いた。

回避パターンの一つを無作為に選んで実行してみる。
幾何学的な動きに予測不能なGがあちこちから掛かる。
こちらの方も、切れ味がとてもゲシュペンストのものとは思えない。

素晴らしい反応だ。BPTでもこれ程のチューニングをされている
ゲシュペンストなど動かした事が無い。

「凄いな、この動き…。ミッションディスクのプログラムのせいなのか…」
「お兄ちゃんに合わせてあるの。あのゲームの時、ずっと外のモニターで
見てたもの…。」
「40連敗の時?」
「うん…」
「そっか…。負け試合だったが、無駄じゃあなかったな」
冗談交じりに言うと、ラトは振り返って見えない瞳で俺を見つめ、
真摯な表情で、俺の操縦桿を握った手を探し当てて柔らかく掴んでくる。
「…お兄ちゃんは、弱くなんかなかった。機体がついていっていなかっただけ。
このプログラムで、それを証明出来ると思う。」
「責任重大だな…はは。頑張らないとね」

自分が実は弱くなかった、あれは機体のせいなのだ、と正面切って言われると
やや照れる。
本当に有り難い。ありがとう、とお礼をしたい。だが、それはどうしても
言葉に乗せる事が出来なくて。

しかたがないから、ラトをぎゅっと抱き締めた。
「ラト」
「うん?」
「ええと…」
愛してる、という単語を口に出す前に。

機体が出し抜けにがくん、と揺れた。
52砂塵:2007/05/26(土) 18:49:47 ID:qY0CYzSo

鳴り響く警戒音。
装甲表面をビームが掠めて飛んだのだ。
警告抜きで撃ってきた…!
レーダーを見る。3機。少し離れて1機。
リオン3機と、バレリオン1機…。
追っ手だ!

相対速度を見る限り、このまま逃げ切る事は出来なさそうだ。
大体向こうの射程距離に捕まっているのだから、回避行動を取れば取るだけ
最大速度が落ちる。
やるしかない…!

「ラト、いくよ!」
「うん!」

急速反転。
振り向きざまに一番近いリオンにスプリットミサイルを連射。
マシンガンを構え、弓なりの軌道で突撃した。
敵のリオンの撃ったホーミングミサイルとバルカンが、ゲシュペンストを
掠めていく。
狙った敵のメインカメラの視界外に入ってプラズマカッターを突き出し、
テスラ・ドライブフルブースト…!
普段はテスラ・ドライブの代わりにアフターバーナーやブースターを使うが、
これは俺のバーニングPTで最も得意とする闘い方だ。
初めての実戦だが、まるで昔から繰り返してきた事のように、自然に体が動く。
いける…!

ざくりと敵機体にプラズマカッターが喰い込み、敵装甲の軋む音が直接
ブレードからコクピットまで伝わる。
ぎしり。
だが、いつまでも取り付いていては敵の的になるだけだ。
横向きにGを掛けて回転し、遠心力でプラズマカッターを抜きながら、
回避パターンセレクト、ランダム。
スプリットミサイルを撃ってからここまで、3秒と掛かってはいまい。
そして、今の攻撃は、確実にエンジンブロックを貫いた。このリオンは爆発する。
回避パターンのきついGに上下左右に振り回されながら、爆発する筈のリオンを
大まかに敵群の間に挟む。

視界をカッと白色光が包む。轟く爆発音。
ひとつ!
即座にベクトルを変え、急上昇。
プラズマカッターを真横に構え、軌道を一直線にセット。テスラ・ドライブ全開。
まだ爆発のあった方向を向いているリオンに、斜め上から突撃…!
狙い違わずかっさばき、そのまま振り抜いて加速。
バレリオンの攻撃だろう。今まで居た場所を白色の稲妻が通り過ぎていく。
背後でまたもや起こる爆発と閃光。
ふたつ!
ゲシュペンストの後ろをイオン化した大気が妖精の麟粉のように煌き、渦を巻く。
53砂塵:2007/05/26(土) 18:50:41 ID:qY0CYzSo

ここまででこちらの闘い方は、残りのパイロットに予測されている筈だ。
もう、一直線に突撃して切り刻むのは無理と言っていい。
バレリオンの攻撃に注意しながら最後のリオンにマシンガンを撃ちまくる。
回避の中心はバレリオン。リオンの攻撃は最悪、喰らってもいい。
回避に集中。10秒。回避パターン入力。
機体のあちこちをバレリオンの連装ビームキャノン、ビッグヘッドレールガン、
リオンのホーミングミサイル、レールガンが掠めていく。

俺はラトの華奢な体を抱き締めて、きついGに身を任せる。
腕の中のラトにちら、と視線を投げかけると、まるで闘いなど存在しないかの
ように、安らかな表情で眼を閉じていた。
…信じてくれているのだ。

と、右手の方で爆発音。
インジケータをチェック。マシンガンに直接被弾したらしい。
マシンガンの残骸を投げ捨て、メイン射撃武器をスプリットミサイルに
切り替える。
同時に俺のゲシュペンストのマシンガンを細かく被弾し続けていた、
最後の敵リオンが爆発した。
みっつ!

残りはバレリオン1機のみだ。レーダーをチェック。増援は無し。
ジェット・マグナム、セット…!
充填開始。
避ける。避ける。避ける。
大まかに相手の背後に回りながら、突撃するタイミングを伺う。
敵パイロットの息遣いまで、戦場の雰囲気で伝わってくる気がする。
このパイロットは、弱い。
ビッグヘッド・レールガンを撃つタイミングが単調だ。
こちらの動きのひとつひとつへの追従が遅い。
リュウセイなら、こんなヘマはしない。
リュウセイなら、もっと視界を取る事に神経を使う。
リュウセイなら…と考えて、ちょっと苦笑してしまう。

―奴は、強かったんだな。

ビッグヘッド・レールガンをすり抜けて、発射タイミングに合わせて
溜めに溜めたジェット・マグナムをバレリオンにぶち込んだ。

 * * *
54砂塵:2007/05/26(土) 18:51:42 ID:qY0CYzSo

空はまだまだ快晴だった。
砂漠の雨は珍しいそうだから、明日も明後日も。
その次も、またその次の日も晴れなのだろうけれども。

最初の目的地だった連邦の基地。距離にして、現在残り約50km。
どちらにしても全く見当違いの方向に進んでいた事になる。
あそこでDCの基地にたまたま突き当たらなければ、あの日そのまま
力尽きていただろう。
砂漠の広さを考えれば、信じられない幸運、という事になる。
神に感謝するべきだとは思うが、味わった絶望感を考えれば感謝半分、
呪詛半分といったところか。

レーダーに敵の機影は無い。既に連邦の制空圏内だからだ。
ラトのアドバイスを受けながら通信機をセットし直し、こちらが
連邦の軍人、ラトゥーニ少尉と民間人であることも連絡できた。

後数分もしないうちに迎えのメッサーが来る筈だ。
後は誘導ビーコンに従って着陸すればいいだけだ。
自動操縦に切り替えるのも悪くない。

いまだ光を取り戻さないラトゥーニの眼だけが心配だが、症状を軍医に
通信で伝えた所、多分心配無いとの話だった。
砂漠ではよく有る症例らしい。
治ると良いのだが。

「…ねえ、お兄ちゃん」
「うん?」
「戦闘前に、何か言いかけてた…でしょ。続き…」
「…え!?何か言ったっけ???」

知らない振り知らない振り。
今更そんな恥ずかしい事、とても言えない。

だが、ラトの攻撃は、その後基地に辿り着くまで延々と続いたのだった。


fin
55砂塵:2007/05/26(土) 19:15:01 ID:qY0CYzSo
署名忘れてた。
ラトと同居人でした。(言わなくても判るって?orz

長文にお付き合い頂きまして、感謝!
56それも名無しだ:2007/05/26(土) 20:02:27 ID:LvoR9ftU
>>39-45>>48-54
バーニングPTの戦いが活かされてる所が面白い。ラトと愛の力で生還だな。読みやすくて良い感じ。凄くGJでした。
自分のレベルの低さが身に染みた。
57それも名無しだ:2007/05/26(土) 22:41:13 ID:HrsOq1sk
>>50-54
戦闘シーン、マジでカッコ良かった。
リュウセイとの戦友的な絆(?)も垣間見えたような気もするよ。
BPTの凄さも再認識出来たし、最後のコクピットでのラトゥーニの質問攻撃想像したら和んだ。

GJ&お疲れ('-^*)/
58それも名無しだ:2007/05/27(日) 09:23:21 ID:XTq6ketJ
>>56
愛は地球を救うのだから、二人救うぐらいは造作も無いのです。
なんちってな。(とてもそんな楽々な展開には見えなかったぞ)
GJ、どうもありがとう。

>>34
>敬語
そそそそうだったのか!
敬語ハァハァww
そのままにしとけば良かっt(ラトゥーニブリーカー&ドリルキック
>>47
ライ…w
ライがエロいシャイン見て鼻血出してぶっ倒れる話にしようかな。ライの為に。
きっと喜んでくれそうだ。彼なら。
>>57
戦闘シーン書いてて、なんだかゲシュペンストのプラモ欲しくなってキター
ていうかこれから只の民間人がPT乗る機会なんて無いよね。これが最初で最後か…。
ラトゥーニとか無敵の男とかはいつもこんな死線をかいくぐっているんだねぇ…(嘆息
>戦友
強さに関しては、まだまだリュウセイ>主人公なのかな。
認めていなかったからこそ40回も闘って、結果的にそれで実力を貰って、最後にそれに気付く。
多分帰ってからまた対戦やりまくりでしょー。

GJ、感想、どうもありがとう。
久々に書いたのでとても嬉しい。
頑張って、もっといいSSが書けるようにならねば。

ラトと同居人でした。
59それも名無しだ:2007/05/27(日) 10:37:00 ID:V9FwQMxN
>>58
スレイの夫です。応援してるよ
60それも名無しだ:2007/05/27(日) 15:20:21 ID:U2MYycQW
>>58
ライが鼻血……柴田亜美の漫画みたいな感じになるんだろーなぁ……w

  採  用  !!

……なんてねw
61それも名無しだ:2007/05/27(日) 22:35:05 ID:V9FwQMxN
朝だ。あまり天気は良くない……起きたくないな。
俺はベットの中に顔まで入れて、小さく縮こまる。
「…今日が終われば明日からまた仕事か」
スレイ「あなた、起きてる?」
スレイが部屋に入ってきた。天使の声が聞こえる。なんだか、起きたら時が進みそうで怖い。
だが、その天使は俺の気持ちとは裏腹に起こそうとする。
スレイ「具合でも悪いの?」
今の台詞はキター…だが、起きたくない。俺がいつもの生活リズムを崩さないように起こしてくれよと妻のスレイに頼んではいたが今日は守れそうにない。
目を瞑った時だった。俺の上の掛かっている布団ははぎとられ朝のひんやりとした空気が身体全体を襲う。
俺は体を今よりも縮こませた。
スレイ「呼んでも起きないなんて子供みたいよ?」
分かってるよ、スレイ。だが今は俺を夢の中にいさせてくれ。
その時、俺の額に何かが当たった。少し固さと温かさを感じるそれは上下にゆっくり動作する。
目をゆっくりと開けてみるとスレイが俺にでこすりをしていた。
スレイ「…すりすり」「朝から何をやってるんだ?」
スレイ「あなたとわたしの新しい愛情表現…」
愛情表現かよ…萌えますた。
「スレイ…それだけでいいのか?」
スレイ「ううん、おはようのキス」
「ああ、今してやる…」
俺はそう言うとスレイの口にキスをした。スレイは俺の首に手を巻き付け徐々に激しさを増していく。キスというよりもお互いにかぶりついているようなディープキスだ。
スレイ「ダメ…もっと」
甘えた声がたまらない。この台詞は何度聞いても飽きないのが不思議だ。
俺の心は燃え上がりある毎度の台詞が自然と出た…
「お前は俺の最高の妻だ…」
スレイの愛を受けて今日からまた頑張れそうだ。仕事だけじゃなくて別のことも。
62それも名無しだ:2007/05/27(日) 22:37:50 ID:V9FwQMxN
>>61
ごめん、改行おかしいみたいだ
63それも名無しだ:2007/05/29(火) 06:20:41 ID:Wyp+okC7
ラトゥーニ「アキトさん、この制服が好きなんですか?」
僕「ああ、大好きさ。ルリルリィ!」
ラトゥーニ「アキトさんのえっち。子供にこんな格好させて…変態」
僕「ああ、もっと言ってくれルリルリィ!敬語でなじってくれぇ!」
ラトゥーニ「アキトさんはヘンタイです!ロリコンです!」



…。
……。

ナニコレ。
俺は、今しがた変な原稿を渡してきたイルムをジト目で睨む。
「おいイルム。…なんだ、これは」
「いや、お前ん家の夜の生活想像図」

…。
……。

「ラト、用意はいいか!」
「オウ!…イマガカケヌケルトキ!!」

俺とラトゥーニのラリアートは、逃げようとするイルムの首の前後に綺麗に
クリティカルヒット。
その後、ラトゥーニの必殺ラトゥーニブリーカーから流れるようにフロント
スープレックス。
そして、俺のとどめの流し台最上段からのフライングクロスチョップが
派手にイルムに炸裂したのだった。

>>60
ライは真面目だから、顔に出さないけど内心のリビドーが凄いよ、きっと。
柴田亜美の絵柄はとても良く似合う。絶対。
64それも名無しだ:2007/05/29(火) 08:22:30 ID:yRTEBNG8
>>63
Mな僕を見て幸せな気分になった俺はSです。朝から面白かった。新しい合体攻撃にワロタ

スレイと三回のディープキスを済ませ電車に乗って降りたんだが…相変わらずボン太君は女子高生にちやほやされてた。羨ましいです!…俺には妻がいる、俺には妻がいる…
俺の顔を見てため息をつくルー…そして、妻持ちの俺にひっつこうとするセレーナ…今日も一日頑張ってきますね。
65それも名無しだ:2007/05/29(火) 09:25:36 ID:/Ybz036m
>>63
「……という事があったんです」
朝の食堂で、向かいの席に座るラトゥーニから、俺は話を聞いた。

なるほどね。それでイルム中尉が朝からボロボロだった訳だ。
ラトゥーニ、彼氏にそれとなく伝えとけ。
流し台最上段からの攻撃は非常に危険だから、イルム中尉とリュウセイ以外には使用するなってな。
「ちょ、何で俺が入ってんだよ!」
俺の左隣に座るリュウセイが抗議する。
何故かと聞くなら答えよう。
テメーは昨日、俺がアヤと一緒に食べようと思って取っておいたエクレアを食ったからだ。
「しかも一個だけならともかく、二つとも食べちゃったのよね……」
俺の右隣に座るアヤが付け加える。
「………」
「お、おいラト!何でそんな軽蔑するような目で見るんだよ!」
「軽蔑してるから」
「だって知らなかったんだから、しょうがねえだろ!」
「それでも普通、二個とも食べたりはしない」
「だ、だってよぅ……本当にすげー美味かったから……」
「関係ない」
ラトゥーニの冷たい返答に、リュウセイはすっかり打ちのめされた。

「さっきの伝言、お兄ちゃんにもしっかり伝えておきますね。少尉」
ラトゥーニは俺の方を向くと、楽しそうに敬礼してみせたのだった。
66それも名無しだ:2007/05/29(火) 09:41:26 ID:/Ybz036m
追記
>>64を見たイルム中尉が、ボン太くんスーツに興味津々のようです。
67それも名無しだ:2007/05/29(火) 17:33:55 ID:yRTEBNG8
>>66
それは大変だ。すぐに阻止してください。全世界の女子、女性のために…。私は世界が違うので託すことしか出来ない。

また、小学校と中学校をウロウロするシャアさんを見た。あのダサいサングラスで
68それも名無しだ:2007/05/29(火) 17:43:43 ID:h6c6RQy7
>>65
「流し台最上段からの必殺技は禁止か…」
「とどめが難しくなるな。まあ、俺としては良い意見だと思う」
「いつの間にそこにいる、イルム!!」

その後、イルムを追って町内三周もしてしまったのは秘密にしておこう。

 * * *

あ、ラト、エクレア作ったって?
そうか。
喜ぶだろう。きっと。
明日届けてくるといい。
アヤ大尉と、例の無敵の男に。
69それも名無しだ:2007/05/30(水) 12:01:20 ID:aRGRWUd1
朝、玄関
スレイ「あなた、もう少し…」
「ああ…」
結局、3回もキスしちまった。しかし、愛の証である。

外へ出ると、話し声が聞こえてきた。お隣さんか。
ナナイ「…お願いしますね」
シャア「ナナイ…これではネズミだよ…」
ナナイ「では、あのいやらしい幼女の本はちり紙交換に出してもいいんですね?」
シャア「分かった。だからあの本だけは許してくれ」
ナナイ「結果次第です」
何のことだか分からんが俺は会社に向かった。

シャア「イルイちゃん、おはよう」
イルイ「おはようございます」
シャア「今日からわたしはネズミさんになることになったんだ。だから応援してね?」
イルイ「ネズミ…ですか……?」
シャア「そうだ」
ロリコンニートなおじさんがまたイルイちゃんに声をかけていたが、変な行動はとってないので俺は見逃してやることにした。

会社に着いて皆に挨拶。
「おはよう」
ボン太君「ふもっふ♪」
ルー「おはよう」
レイ「おはようございます……」
アキト「おはようございます」
ラピス「……」
シャア「おはよう、諸君」
「ちょw何であんたがいるんだ!?」
シャア「今日からここで働くことになった。シャア・アズナブルだ」
ミッテ「わたしから説明しましょう」
これはわけありだなw
ミッテ「うちの会社でもニュータイプの研究を積極的に行うことになったの。それで、誰からも必要とされていないロリコンニートのこのおじさんが被験者にふさわしいと思い採用ということになったのよ」

上の決定だから従うしかないよな…。また大変になりそうだ。
70それも名無しだ:2007/05/30(水) 15:00:04 ID:8vQETJp6
>>67
心配するなブラザー。
あの後ヒュッケバインがやって来て、イルム中尉を連行していったからな。

さすがは我等がリン社長!男前な顔グラフィックは伊達じゃない!
そこに痺れる憧れるぅ!
あれ、ヒュッケバインがブラックホールキャノン装備で飛んで来t


     し
     ば
     ら
     く
     お
     待
     ち
     下
     さ
     い
      ゜

71それも名無しだ:2007/05/30(水) 15:21:18 ID:8vQETJp6
>>68
午前中の訓練を終えて、昼飯。

食堂にアヤと肩を並べて入ると、入り口でラトゥーニが待っていた。
よぅ、チビっ子。どうした?
「あの、これを……」
ラトゥーニが手にしている小さなバスケットを差し出す。
中には、小皿に乗ったエクレアが二つ、入っていた。
「私の手作りなんです。良かったら召し上がって……少尉?」
「どうしたの?心臓を鷲掴みにされたみたいな顔になってるわよ?」
……いや、何でもねぇ。
ただ、金髪お嬢様や銀髪巨乳のせいで、手作りという言葉に軽いトラウマが出来ちまってるみたいでな……。
だが、お前が作ったんなら問題なかろ。
ここで立ち食いするのもアレだから、座って食うか。

俺は二人を連れて空いた席に座り、アヤと一緒にエクレアを食べた。
うん、甘くて美味い。
「これなら、お兄ちゃんも喜んでくれるわよ?今度作ってあげたら?」
アヤがそう言うと、ラトゥーニはポォッと頬を赤く染め、嬉しそうにうなずく。

そうしてやれ。
ついでにトロンベに弟子入りして、料理全般マスターすりゃあ、いつでも嫁に行けるだろ。
「よめ……お兄ちゃんの……お嫁さん……」
自分の花嫁姿でも想像したのか、ラトゥーニは完全に夢の世界に旅立っちまったようだ。
おーい、どっち道お前が結婚出来るまで、まだ最低でも4年はかかるぞ、12歳児。
「私はもう14歳です!」
そんな可愛らしい突っ込みと共に、テーブル越しの右ストレートが俺の顔面に突き刺さった。
相変わらず突っ込み強烈すぎだな……。
「自業自得よ。ご愁傷様」
アヤがクスクス笑う。

まぁ、こういうやり取りも悪くないか……。

72それも名無しだ:2007/05/30(水) 15:23:13 ID:8vQETJp6
>>69
ネズミって、モルモットの事か。
赤い彗星ももうダメだなw
73それも名無しだ:2007/05/30(水) 20:19:12 ID:aRGRWUd1
>>70
世界が救われたなw

>>72
ありがとう
74それも名無しだ:2007/05/31(木) 07:59:57 ID:hZkGdLmz
今回はネタでなくレスで返そう。

>>71
見た目12歳に見えるって前言った事、覚えててくれたとは。サンクス!
ラトも御馳。ありがとう。

関係ないけどイルム。
前に無敵の男とイルムが一緒にアヤ大尉に怒られる話があったじゃん。
あの話は面白かったなー。

>>69
かつてシャア・アズナブルと呼ばれた男がそれか。
ララァに呪われるぞw
75それも名無しだ:2007/05/31(木) 08:54:56 ID:uiH3mRKa
>>74
サンクス(・ω・)/
ラトゥーニが夢の世界に旅立つあたりで、ふと思い出してあのオチにつなげた次第。
気に入ってくれて良かった。

>前に無敵の男とイルムが一緒にアヤ大尉に怒られる話があったじゃん。

グルンガスト壱式vs量産型弐式かな?
本当は、ブーストナックル同士の力比べやりたかっただけなのだよね……。

前スレの「南海の妖花」も、俺式クロスターゲットをやりたかっただけで。

……結構行き当たりばったりだな、俺。
76それも名無しだ:2007/05/31(木) 08:56:21 ID:uiH3mRKa
って、前スレ消えちまってますよ、ド畜生……orz
77それも名無しだ:2007/05/31(木) 09:49:23 ID:t4xuKo89
>>74
ありがとう。ロリコンニートの当然の報いw

>>76
報告感謝
78それも名無しだ:2007/05/31(木) 17:50:38 ID:SLhm2Bpq
ふーただいま。出先で携帯で書き込める人はいいなあ。(なら買え

>>75
>グルンガスト壱式vs量産型弐式
それそれ!
あれはハマった。スーパーロボットはああでなくてはね。
イルムとのバトルもGJだったし。

クロスターゲットってあれかな?
ダブルファイアかな。
燃えの部分だよねえ。

そういえばラトと主人公、クロスターゲットした事無いな…

>>76
お、本当だ。消えてる。
まあ、ログは取ってあるよ。いずれサイトでも立ち上げるなら送ろうか。

最近は携帯専門の小説サイトも多いよね。
携帯で書いて携帯で読んだり、ネットの携帯小説が書籍化されてミリオンセラーになる時代だからなあ。
最初兄貴が携帯で書いてるって聞いてすげーとか思ったけど、結構普通らしいよね。
79それも名無しだ:2007/05/31(木) 18:32:31 ID:uiH3mRKa
>>78
>クロスターゲットってあれかな?
ダブルファイアかな。

そう、それ。俺とアヤの合体攻撃。
俺のSSで唯一シュウが出たやつ。

αで、さらわれて洗脳されたアヤたちをリュウセイたちが助け出す「クロスターゲット」って話があって、台詞だけ見たらアヤとリュウセイの間にプチ恋愛フラグが立ってるように見えて、テメーふざけんじゃねーぞリュウセイの分際で

(以下百行ほど削除)

とにかくそういう嫉妬に似た感情から書き上げたのが「南海の妖花」なんだけど、何故かシュウが出て来るし、アヤは自力で脱出しちゃうしで、まぁ何だ。
俗に言うライブ感ってやつでございます。


>最初兄貴が携帯で書いてるって聞いてすげーとか思ったけど、結構普通らしいよね。

そうか、普通なのか。まぁ携帯の普及率を考えれば、当然だわな。
パソコンより安いし、パソコンほどじゃないがネットも出来るし、何より手軽に持ち歩けるし……こうして考えると、結構凄い道具だよね、携帯電話。

80それも名無しだ:2007/05/31(木) 18:33:47 ID:t4xuKo89
>>78
ああ…便利な世の中になったもんだ
81それも名無しだ:2007/05/31(木) 19:14:23 ID:Igf7/jjZ
>>79
むーαってもう五年前?六年前?よく覚えてるなあ。
まあ名作だから今やっても色褪せないだろうけれども。
そっか、元ネタがあったのか。覚えていたらもっと楽しめたのになあ。ちと損した。

>リュウセイ
奴は誰にでもフラグを立てに行きやがるから。
本当、あれ程無節操なキャラいないって。
クスハのモトカレ設定でブリット可哀想だし、ラトの事だってそう。マイもか。
そしてアヤ大尉まで…!
無骨で一途なキョウスケを見習えっての!(テンザン
>ライブ感
細切れのアイデアを一杯キープして、適当に書いて繋がるライブ感が楽しい。
全然違う話になったりしてね。
でもそれもいい。
>携帯
ウムス。
自信を持って邁進してよろしい感じ。
迷いを吹っ切る言葉になってくれれば、と。
82それも名無しだ:2007/05/31(木) 22:24:09 ID:uiH3mRKa
>>80
便利になった分、変な犯罪も横行し出しているのが、何というか悲しいねぇ……。

>>81
実はαはイングラム裏切りで挫折した。
アニキャラ板のアヤスレで、同好の士が立てたサイトがあって、そのサイトの台詞集を読んだだけなんだ。
それでも、アヤは誰にも渡さない派の俺は、嫉妬の炎が燃え上がったけど。

83それも名無しだ:2007/05/31(木) 22:33:08 ID:t4xuKo89
>>82
気持ちは凄く分かる。俺はスレイネタが書かれているだけで気持ち悪くなる。おそらく嫉妬だろう。

スレイ「あなた、早く来て」
「ああ、すまん」
スレイ「もう、わたしを放っておいてPCなんかやらないで頂戴」
「だから、すまんと言っているではないか。一人にしてごめんな」
スレイ「いいの。あなた…好き……」
「コントローラー持って言われると凄く良いなw」

すみません、これからスレイとゲームの続きをします。それでは皆さん、おやすみなさい。
84慰安祭@:2007/06/01(金) 16:06:44 ID:6yHEPGMi
さぁ、今日は待ちに待った慰安祭だ。
誰が待ってたかは聞くな。

基地の近くに設けられた特設会場で、たくさんの出店が並び、人がごった返している。

まず軍からの最初の出し物は、ATX組のチーム内での模擬戦だ。
演習場で行われる試合を、会場のモニターが移す。
ナンブ中尉とクスハ、エクセレンの姐さんとブリットが組んでのタッグマッチだが、中尉も姐さんも、それぞれのパートナーをしっかりリードしていて、見応えのある試合だった。

続いて教導隊。こちらも演習場からの生中継。
ファルケン、ビルガー、量産型ヒュッケバインMk-Uの三機による編隊飛行は、一糸乱れぬ見事な動きだ。
次がカイ少佐の模範演習で、イルム中尉を相手に、ゲシュペンスト同士の格闘戦。
やはりPTX小隊で鳴らしただけあって、イルム中尉もカイ少佐相手に善戦したが、結局試合は少佐の勝ちで終わった。
しかしちょっと見直したぜ、イルム中尉。
最後にラミアのソロ飛行。アンジュルグの外観も手伝って、その動きは神秘的な舞いを思わせるものだった。

だがリュウセイ。頼むから慈しむ眼で見つめるのはやめろ。
端から見ると、ちょっと怖いぞ……。

85慰安祭A:2007/06/01(金) 16:08:55 ID:6yHEPGMi
>>84
さぁ次は、いよいよ俺たちSRX組の出番だ。
アヤたちは既に会場でスタンバってる。

俺とリュウセイは、基地の格納庫で機体の最終チェックと、フォーメーションの簡単な打ち合わせをやった後、発進した。

お互い、機体を飛行形態に変型させて、会場上空に到着。

コクピットに、短いイントロと、それに続いてアヤとマイの歌声が響き渡る。
歌に合わせなきゃならんから、コクピットに通信をつないであるのだ。
『キューンキューン♪キューンキューン♪私の彼はパイロット♪』
特設ステージの上で、二人のリン・ミンメイが声を重ねて歌っている姿が、コクピット内の通信モニターに映っている。

なんだよ。確かに映す必要はないが、別に良いだろ。

『キラリ輝って急降下♪』
『ゴーと噴かして急上昇♪』
マイ、アヤの順に歌う歌詞の通りに、R−ウイングとビルトラプターは動く。
互いの腹をくっつけ合った状態で。

『長く尾を引く飛行機雲で♪』
姉妹が声をハモらせたところで、俺たちは左右に別れる。

『大きなハートが重ねて二つ♪』
アヤの歌声に合わせて、両機が半分ずつ空中にデッカいハートマーク二つを描く。
ちょっとしんどい……。

86慰安祭B:2007/06/01(金) 16:10:18 ID:6yHEPGMi
>>85
『青い大空ラブサイン♪』
マイのパートで、描いたハートマークを貫くように、二機とも真っ直ぐに降下。
『I love you You Love me?♪』
再び姉妹が声をハモらせ、俺たちは左右に別れた後、機体を交差させながら上昇。

『だけど彼ったら私より♪』
『自分の飛行機にお熱なの♪』
……アヤのパートは、俺への当てつけか?

『キューンキューン♪キューンキューン♪私の彼はパイロット♪』
最後に二人で声を合わせて歌い上げ、俺たちもPTに変型して空中で決めポーズ。

観客の拍手の音がコクピットにも聞こえてくる。
余韻を残すように、ステージ上空でわずかな時間ホバリングした後、再び飛行形態に戻り、俺とリュウセイは帰投する。

体中がカッカッと熱くなっていた。
出し物が上手くいった興奮もあるだろうが、それだけじゃない……。

通信モニターに映る、あるものを見たからだ。

モニターに映るアヤの視線の角度、ステージとビルトラプターとの位置関係から察するに、間違いねえ。

アヤは空に向かって……いや、俺に向かって、投げキッスをしてくれたのだ。
唇に触れた指先をスゥッと空へ伸ばす、緩やかな仕草だったが、俺はそう確信していた。

畜生、ニヤケが止まらねえ……。

87慰安祭C:2007/06/01(金) 16:12:38 ID:6yHEPGMi
>>86
俺たちの出し物の後、文字通りのサプライズゲストが現れた。

リクセント王国のシャイン王女だ。
ラトゥーニとのコンビネーションで会場は盛り上がり、慰安祭は大盛況のうちに幕を閉じた。



――静まり返った格納庫。
俺はパイロットスーツのまま、ビルトラプターをじっと眺めていた。

短い間だったが、またお前と空を飛ぶ事が出来て、本当に良かったよ……お疲れさん、相棒。

知らず、想いが言葉になって、唇からこぼれる。

「あら、まだ着替えてなかったの?」
会場から戻り、制服に着替えたアヤがやって来た。
俺の隣に、寄り添うように立つと、フワッと香水の香りが鼻をくすぐった。
「そっか……そうよね、名残惜しいわよね」

ああ。

俺はただそれだけ、答えた。

確かに名残惜しい。
だがビルトラプターはもう、その役目を終えているんだ。
コイツから得られたデータは、R−1の開発に生かされただけでなく、他の機体にも何かしらの形で生かされてる筈だ。
コイツは充分頑張った。ゆっくり休ませてやらないとな。
だから、お別れを告げていたのさ。

俺はそう言って、アヤの肩を抱き寄せる。
「きっとビルトラプターも喜んでたと思うわ。アナタと空を飛べて」
アヤは、俺の目をまっすぐに見つめて、そう言った。

ああ……そうだな。

だがそれでも、何とも言えない寂しさを覚え、俺はアヤの胸にすがりつく。

「ほら、元気出して。相棒も頑張ったんだから、アナタも胸を張りなさい?」
アヤはそう言って、最近やっと伸びてきた俺の髪を撫でてくれる。
「まったく……いいわ。どうせ衣装は、返す前にクリーニングに出さなくちゃいけないから……今夜は、あなたの着せ替え人形になってあげる」
アヤは優しく、しかし明らかに濡れた声でささやき、唇を重ねてきた。
舌と舌が絡まり合うのに、時間はかからなかった。

88慰安祭D:2007/06/01(金) 16:14:07 ID:6yHEPGMi
>>87
追記@
会場から戻ったライの胸元が、赤く汚れていた。
出店で買ったホットドッグのケチャップだと本人は言っていたが、真相は定かではない。

追記A
オクト小隊は、何故か出し物をやらなかった。
タスクなんか、この手のイベントはすげー好きそうなのに、珍しい事もあるもんだ。
アヤとそんな事を話しながら廊下を歩いていると、レオナと鉢合わせた。
不参加の理由を聞くと、
「あんな物を着るくらいなら、舌を噛んで死にます!」
そう言って不機嫌そうに去っていく。

訝しみながらロビーを通りかかると、タスクがソファでしょぼくれていた。
四人分のボン太くんスーツを引き連れた奴の背中は、すすけていた。

89それも名無しだ:2007/06/01(金) 16:17:52 ID:6yHEPGMi
早速慰安祭をお届けしましたが、>>84

>演習場で行われる試合を、会場のモニターが移す。

の部分の「移す」を「映す」に脳内変換しといて下さいませm(u_u;)m
90それも名無しだ:2007/06/01(金) 20:21:15 ID:5aSlYth2
>>84-89
おお、慰安祭!
前半はイベント目白押し、中盤はアヤ大尉の歌とアクロバットのシンクロ。
ビルガーとの久しぶりの邂逅にアヤ大尉との絡み、と内容も盛り沢山。
一行一行光景を想像しながら読ませて頂きましたよん。
非常にGJ!

エネルギーが溜まり次第こちらもラトSideをお送りする予定ー。
今日はちょっと寝不足で死にそう。
91それも名無しだ:2007/06/01(金) 20:27:36 ID:5aSlYth2
うは、ビルトラプターをビルガーとか書いてしまった
ごめんorz
92それも名無しだ:2007/06/01(金) 22:18:29 ID:6yHEPGMi
>>90
サンクス(・ω・)/

ゆっくり休んで、どデカい爆弾投下してくれ。
楽しみにしてるよん('-^*)/

93それも名無しだ:2007/06/02(土) 13:38:02 ID:vuapJNgt
>>92
爆弾。
そんなに凄いものはとても出来そうにないし、無理!

でもありがとう。
遅くてごめんorz
いつものようにお先行っていてくだされい。

つ【茶】
94それも名無しだ:2007/06/02(土) 15:53:48 ID:5uBqEhJ+
>>93
おおっと、プレッシャーかけちまったかな?

まぁ焦るこたぁーない。今まで通り、愛という名の欲望の赴くままに書けばいいさ。

住人のみなさんにプレゼント。

つ【トロンベ特製水羊羹】
95ゼアの苦労日記:2007/06/02(土) 21:36:07 ID:R2ZNrk3H
文化祭準備が忙しくて書き込む暇がありませんorz
>>1乙です。

東祉ィ日

???「……めよ」
「う、ううん……」
???「……目覚めよ」
「うう……」
???「目覚めよ、『四皇種子』ゼア=ウィド・エテルナ・フューラよ……」
「………!」

「うわああ!!?……あ、あれ……?」

俺は飛び起きて辺りを見回す。いつもの俺の部屋だ。
フェンとシャナは別室だ。同居人や夫婦でもモラルは大切だと思う。

「…………またかぁ」

最近はこの夢で目を覚ましてばかりだ。
何かよく分からない黒い塊から名前を呼ばれる、そんな薄気味悪い夢だ。

「……まあいいや。かなり早いけど、仕事行くか」

俺は最近忙しくて行けなかった職場に小走りで向かった。が。

「お、見えた見えた……ん?」

そこにいたのは、仕事仲間のオルガと宗介、ヒギンズと耐爬だった。

「よぉ、オルガ」
オルガ「あ、ゼアか……」
「どうしたんだよ、元気ねえじゃん」
宗介「あの張り紙を見てみろ……」
「あ、何々、『当美術館は展示品の九割が盗品であったことが発覚したため、
現館長は退職、当美術館も閉鎖とさせて頂きますご了承ください』……」
ヒギンズ「そういうこと」
「じゃあ…………俺たち…………『失職』かぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
96それも名無しだ:2007/06/02(土) 21:37:48 ID:R2ZNrk3H
お久しぶりです。
新スレだってのにこんなネタですいません。
反省してます。
以上、クラスに早く馴染みたくて劇の脚本役を買って出たぜア=ウィドでした。
97それも名無しだ:2007/06/02(土) 21:54:58 ID:ro6pVMWl
>>96
ひさネタ乙です。来てくれて良かった。
目の前の壁を超えることは大切。応援してるよ。
以上、スレイの夫ですた
98それも名無しだ:2007/06/03(日) 12:01:43 ID:MXUvRZk4
>>96
九割が盗品だったために閉館って、何その怒涛の展開!?

これでも食って元気出せブラザー!
つ【トロンベ特製プリン】
99それも名無しだ:2007/06/03(日) 12:02:48 ID:MXUvRZk4
アンカー微妙にずれた…。
>>95-96って事でm(u_u)m
100彼の名はルゥ。:2007/06/03(日) 20:13:11 ID:uhid9bTW
お久しぶりです。ルゥの中の人です。
前回の続きを投下させて貰います。

コレまでのお話↓
http://www.uploda.org/uporg837920.txt.html
101彼の名はルゥ。:2007/06/03(日) 20:15:22 ID:uhid9bTW
「なあ、頼むから話を聞いてくれよ。きっと俺達は分かりあえる。そうだろ?」
取りあえず両手を上げ、猫なで声を出してみる。
畜生、なんで男相手にこんな声ださにゃあならんのだ。
「黙れ。お前を一旦俺達のセーフ・ハウスへ連れて行く。話ならそこでゆっくりと聞いてやる」
油断無く銃を構える宗介。其処には一部の隙も無い。
「信じてくれ。誓って俺は怪しい者なんかじゃない」
「俺は黙れと言った」
刹那。パン、と乾いた音。
銃声だ。俺の足元からそう離れて居ない位置に弾痕が穿たれる。
―オイオイオイオイ、マジかよ。ホントに発砲するか普通!?サイレンサーも付けずに?
背筋に冷たい物が走る。
といっても殺されるかもしれない、という恐怖ではない。威嚇射撃なのは一目瞭然だからだ。
俺が怖かったのはこんな場所―住宅地のど真ん中にあるマンション―で気軽にパカパカと発砲できるその神経に、だ。
良く見て見ると、そこかしこに同じような弾痕が在った。
後でこれまた統夜に聞いた話だが、彼が発砲するのはわりと日常茶飯事らしい。
付近の住民や同級生は「ああ、またアイツが改造モデルガンで遊んでいるな」位にしか思って居ないのだそうだ。
やれやれ、何て街だ。
俺を撃つなよ!?死んじまう!!」
「まだ殺さん。貴様がどれだけ協力的になれるかどうかで、それは決まる」
「大人しく従えば、名誉ある扱いを保障しよう。暖かい食事と寝床も提供してやる。だが、あくまでも抵抗するというのなら―」
再度、銃声。天井の蛍光灯の1つが粉々に割れた。
それをぼんやりと眺めながら、俺は内心苦笑していた。
―ああ。こいつ勘違いをしてるな。もし撃ったら―
―死ぬのは、お前なのに。
102彼の名はルゥ。:2007/06/03(日) 20:16:04 ID:uhid9bTW
まあいい。男の断末魔なんぞ直に聞いたら一週間位は俺のマイサンが使い物にならなくなっちまいそうだしな。
「わーったよ。大人しく貴方様に従いますとも」
俺は大仰に肩を竦めた。
―それに。殺すのは何時でも、即座に出来る。赤子の手を捻るより簡単だ。
「そうか。ならば俺と同行してもらう。―そっちだ、歩け」
俺の背後に回りこみ、銃を背中に押しつけ歩くよう促す宗介。
「ヘイヘイ。全ては貴方様の思うがままに…ってか」
「黙って歩け」
やっぱ殺そうかなぁ、コイツ。

辿り着いたのは同じマンションの一室だった。
俺の部屋と然程離れて居ない。余りの近さに正直拍子抜けした。
「ドアを開けろ」
宗介の口から紡ぎだされる言葉はあくまでも素っ気無く簡潔だ。
ったく、日本人なんだから「どうぞ汚い所ですが」とかいって謙遜しろよ、くそっ。
心の中で悪態をつき、ドアを開ける。
「入れ」
「いちいち言われなくても―」
再びゴリ、と銃が押し付けられる。
「分かりました分かりましたよ…はぁ」
中に入りリビングに足を踏み入れると。
「ソースケ!遅かったじゃない…ってあれ?貴方…誰?」
きょとんとした顔の少女が俺達を出迎えた。
103彼の名はルゥ。:2007/06/03(日) 20:17:26 ID:uhid9bTW
ほっそりとした、線の薄い整った顔立ち。やや切れ長の綺麗な黒瞳。
長い黒髪を端っこで結わえたその娘(こ)を簡潔に且つ有体に言い表すなら―美少女だった。
まあ、この世の全ての女は何かしらオンリーワンな美しさを持っているもんだが。彼女はその中でもとびきりだ。
くぅ〜良いねぇ。女の子。それもメチャ可愛い女の子。
嗚呼、目と心が洗われる様だぜ。

まあソレは兎も角。彼女今宗介の名前を呼んだな。
彼の部屋に居るって事は顔見知りか。呼び捨てで呼んだとこを見ると…かなり身近で親密な間柄か。
って事は恐らく彼女が千鳥 かなめか。
この子がウィスパードねぇ…。
確かに普通の子と比べて飛びぬけて可愛いとは思うが、それ以外は普通の女の子にしか見えないんだが。

「む。千鳥か。悪いが今日は君の手料理を食べれそうに無い」
「はぁ?なんでよ。もうとっくに完成して、後はあっためるだけなんだけど」
「俺も残念に思う。だが周辺をうろついていた怪しい男を発見したものでな。今から尋問しなければ」
「そんな訳無いでしょ!あのガウルンって人もやっつけたんだし、あたし達を誰が狙うってのよ!」
「どう見たって何の関係も無い通りすがりの一般人じゃない!」
「そんな事は無い。一見自然体に見えて隙の無い身のこなしといい俺から一度は武器を奪った事といい、只者とは思えん」
「まあ俺が只モノではないナイスガイってのは認めるがね。それより」
「君みたいな可愛い子に会えて光栄だよ。初めまして、子猫ちゃん」
彼女の手を取り、ウィンクをする。ふっ…落ちたナ。
宗介が「千鳥から離れろ!」と殺気交じりの怒声を張り上げてるが無視無視。
「…なんかクルツさんに似てるわね。ロンゲだし。ブロンドじゃなくて銀髪だけど」
半目のかなめちゃん。あっれぇ?効果無し?
「…うむ。俺もそう思う」
もしかして宗介との親しげな様子と言い…もしかして。
「君達ひょっとしてカップルってやつ?」
そういった瞬間かなめちゃんが面白いように狼狽した。
「な、なにいきなり変な事言うんですか!」
「あたしとソースケは別にそんなんじゃなくて…」
「ただ近所だし色々あったしコイツロクな食生活して無いから食事くらいご馳走してやろーかなー…って」
「なんですかその『ごちそうさまー』って顔は」
「いやもう見たまんまだよ子猫ちゃん。全く此処最近良い女だと思ったら皆彼氏持ちかよ…やってらんねぇ」
「だからあたしは―」
「あーはいはいツンデレツンデレ」
「…っ!あーもうワケ分かんない事いってんじゃねーわよ!」
スパン、と小気味言い音と共に。
俺の脳天に彼女の手に何時の間にか握られていたハリセンが振り下ろされた。
結構痛い。
104彼の名はルゥ。:2007/06/03(日) 20:18:26 ID:uhid9bTW
「で!?あんたは一体なんなのよ!何処の誰!?」
先ほどの礼儀正しい他人行儀な彼女は何処へやら。仁王立ちし俺に詰め寄る。
「言っとくけど正直に答えないとこの戦争バカ、本当に何しちゃうか分からないからさっさと答えた方が身のためよ!」
「俺はソースケ君にさっきから何度も説明しようと思ったんだけどね」
「問答無用と言うか、なんかしようとするだけで発砲するんだよ。それで俺にどうしろと?」
「ソースケ。銃を下ろしなさい。根拠は無いけどこの人はガウルンとかとは違う様に思えるのよ」
「だが千鳥―」
「黙んなさい!さっさとその銃をしまう!」
「…分かった」
「さ、コレでいいでしょ。アンタ誰よ?」
「助かったよ子猫ちゃん。俺の名はルゥ=ウェン・アーヴィル。俺は―」
俺はここに引っ越す事になった事情。
そしてこの部屋に来る事になった経緯をかいつまんで説明した。
「成る程。よーっく分かったわ。この戦争バカがご迷惑をおかけしたようで」
「まあいいさ。君みたいな子猫ちゃんに会えたから―ってあれ?何を…」
俺の言葉など耳に入っていないのか肩をいからせ宗介につかつかと歩みよる。
「千鳥、待て。俺は」
彼女のただ事ではない様子にだらだらと凄い勢いで冷や汗をかく宗介。
「…やっぱりアンタが悪いんじゃない、このバカー!!!!!」
スパーン!
俺の時より遥かに強烈な勢いで宗介目掛けハリセンを振り下ろした。
「中々痛いぞ、千鳥」
「やかましい!…ルゥ…さんだっけ?ホンッッッットにゴメンナサイ。コレからコイツに良く言っておきますんで」
「…そいつぁ助かる。でもまあ、程々にね。無理して君の肌が荒れでもしたら世界的な損失だ」
俺は踵を返して宗介の部屋を後にした。
背後から聞こえてくる、「アンタってばどうしていつもいつも…くぬっ、くぬっ」「痛い痛い」と言う声に。
「…ごゆっくり」と呟きながら。
105彼の名はルゥ。:2007/06/03(日) 20:20:27 ID:uhid9bTW
「ルゥ!遅かったじゃん。どうしたの?」
家に帰った俺を出迎えたのは、心配顔のテニアちゃんだった。確かに、もう日もとっぷりと暮れている。
「…いろいろあってな」
俺は彼女に先の出来事を説明した。俺今日こんなんばっかだ。
「…ソースケに膝蹴りかましてくる」
眉を吊り上げるテニアちゃんを俺は慌てて制止する。
「まあ勘弁しときな。俺はなんとも無いし…なにより今かなめちゃんにこっぴどく絞られてるから」
「…ルゥはソレで良いの?」
上目遣いで尋ねるテニアちゃん。可愛いなぁ。エ=セルダ殿の忘れ形見じゃなかったらとっくに口説いてるのに。
「粋な男ってのは器がデカイのさ。過ぎた事をクヨクヨと気にしてられるかよ」
「でも。心配してくれてアリガトな、テニアちゃん。俺…スッゲー嬉しいよ」
テニアちゃんを優しく抱き占める。ついでに優しく髪を撫でてやる。
「えへへ…。そ、そう?照れるなぁ」
嬉しそうに相好を崩すテニアちゃん。
「あ、あのね…?あ、あたしね…」
ごにょごにょと何かを言おうとするテニアちゃん。
「ん?どうしたテニアちゃん?」
「ルゥ…事…きなの」
頬をほんのりと赤く染め何か言って居るんだが、いつもの彼女らしからぬか細い声だったから殆ど聞こえない。
「なんだって?良く聞こえないぞテニアちゃん」
「だ、だからぁ―」
じれったそうなテニアちゃん。どうしたんだ一体?だが、その時。
「お帰りなさい、ルゥ。遅かったから皆心配してたのよ」
ドアから新たな人影が。
俺のパートナー、フー=ルー・ムールーだった。
106彼の名はルゥ。:2007/06/03(日) 20:22:00 ID:uhid9bTW
「…何でわざわざ来たの?中で待ってればいいじゃない」
先程とはうって変わった不機嫌そうな顔と声のテニアちゃん。
わだかまりが完全になくなるのはまだ遠い、か。
「そんな言い方無いだろ。仲良くしてくれ。テニアちゃん達がケンカしてると俺、悲しいよ」
「…ルゥ。分かった…ゴメンナサイ、フー=ルー。ちょっとだけ、言い方が悪かった…かもしんない」
『ちょっと』を協調するテニアちゃん。俺はフー=ルーに目で『悪いな』と目配せ。
『分かってるわ』と苦笑しながら視線を返すフー=ルー。
んー。こう言うアイコンタクトでの会話って、いいよなぁ。
いかにも心が通い合ってる、って感じで。
「所で、アレは買ってきた?」
「…アレとは?」
「醤油餅よ。もしかして、忘れたとか言わないでしょうね?」
「…あ!…あ、アハハ。…………………………悪い、忘れた」
「でもな?俺にも色々と事情があってな?それどころじゃ―」
「問答無用。買ってきなさい、今直ぐ」
「…仰せの通りに」
俺は肩を落とすと回れ右をしてスーパーへと駆け出そうとすると、フー=ルーが俺の裾を掴んだ。
「…待って。やっぱり私も行くわ。また忘れられたらかなわないもの。それに―」
「私だって…その。…………………………待ってたんだから」
うあー。真っ赤な顔で顔を逸らしながらそんな事を言わないでおくれ子猫ちゃん。
トキメキ過ぎてどうにかなっちまいそうだ。
107彼の名はルゥ。:2007/06/03(日) 20:22:50 ID:uhid9bTW
「というわけだ。ちょっと2人で近くのスーパーにでも行ってくるよ」
と今度こそ出かけようとしたら。今度はテニアちゃんに裾を掴まれた。
「あたしも行く」
「いやでもスーパーに行くだけだぞ?面白い事も無いし買い食いとかもできないぞ?この時間だと試食コーナーだって」
「うるさいなぁ!あたしも行くったら行くの!いいよね!?」
「オッケーオッケー。両手に花で俺は万々歳さ」
「と言うわけでお邪魔させてもらうからね。なんならあたし達にまかせて家で休んでてもいいよ」
「アタシと違ってオ・ト・ナなんだから。そろそろ疲れとか取れにくかったりするんじゃないの?無理しないほうが良いんじゃない?」
かっちーん、と。そんな音が聞こえたような気がした。隣に居るフー=ルーから。
なんだ?いやな予感がするぞ。
罠に嵌められ生身でリュンピーの群れを相手にする事になった時だって、此処まで嫌な感じはしなかった。
「貴方こそ、部屋に戻って夕食にしたら?お腹をならしながらずっとルゥが来るまで我慢して待ってたんでしょ?」
「無理をしないで、は私の台詞ね」
「面白い事言うね、フー=ルー」
「貴方ほどじゃないわ、テニア」
「あははははは」
「うふふふふふ」
なんだ?目の前の2人を見ていると湧きあがってくるこの得体の知れない悪寒と戦慄は。
「行こう、ルゥ」
テニアちゃんは俺の左手を。
「行くわよ、ルゥ」
フー=ルーは俺の右手を。
それぞれ手にとって歩きだす。…あの、強く手を握りすぎじゃないか?ちっと痛いぞ。
とは思うものの何時もと違う二人の様子に俺は何も言えない。
―どうやら、俺が心休まるのはもうちょっと後みたいだな。
俺は心の中でそっと1人ごちた。
108彼の名はルゥ。:2007/06/03(日) 20:24:53 ID:uhid9bTW
以上です。
やっぱりバトル物よりこう言う話を書いていた方が筆がのるなぁ…
ロボゲー板向きでは無いのかもしれぬ。
まあ書くのは止めませんが。
例の如く続きは忘れた頃に投下すると思います。

ルゥの中の人でした。

109それも名無しだ:2007/06/03(日) 20:46:35 ID:MXUvRZk4
>>101-107
乙&GJ。
さすがに女同士の修羅場は苦手かw

やはり女は魔物だ……。
110それも名無しだ:2007/06/03(日) 20:49:09 ID:MXUvRZk4
補足
女同士の修羅場は苦手ってのは、ルゥに対して言った言葉です……念のため。
111彼の名はルゥ。:2007/06/03(日) 20:52:51 ID:uhid9bTW
>>110
分かってますよw
あとルゥが銀髪ロンゲなのは最初からその設定でした。
…書くのを忘れてたんですorz
あ、プリンごちそうさまです。
実にトロンベな味でした。
112それも名無しだ:2007/06/03(日) 22:13:07 ID:QnHH7ch0
スレイの夫です。ちょいと読みました

>>84-88
アヤさんの唄と機体の動きの合わせ方と書き方が上手い。想像できた

>>92
求められるって羨ましいな。書いても実力の無い俺は誰からも求められない

>>101-107
まずはひさネタ乙です。
醤油餅に愛を感じました。こういった形でネタを返されるのはとても嬉しいです。
上手くは書けないけど演出的に楽しめた。ハリセンのタイミングが素晴らしい。GJです

>>108
気持ちは分かります。書きたいものを書けばいいのさ
113それも名無しだ:2007/06/04(月) 14:13:15 ID:s9bFmMS1
>>111
プリン気に入ってもらえて何より。
好評だったと、トロンベにも伝えておくよん('-^*)/

>>112
サンクス(・ω・)/
アクロバット飛行の動きは、特に脳みそ使った。
満足してもらえて嬉しいよ('-^*)/
114慰安祭(後日談):2007/06/04(月) 14:55:40 ID:s9bFmMS1
>>84-88
今日のヴィレッタの姐さんは、機嫌が悪い。

慰安祭で、あんなアイドルのコンサートまがいの出し物やっといて、結局特別予算は教導隊に与えられる事になっちまったらしいからな。
無理もねえ。

でも訓練で俺らに八つ当たりするのはやめてください……。
俺のアシュセイヴァーがボコボコだよ、コンチクショウ……。

「やはり私も歌うべきだったわね……」
とか言ってたが、それは関係ない気がする。
それに、姐さんがリン・ミンメイの格好して「私の彼はパイロット」を歌うシーンなんて、想像できねぇ……つーか、したくねえ。

115それも名無しだ:2007/06/04(月) 17:22:37 ID:iUzy2scC
>>114
姐さんの唄う姿も見てみたかった。八つ当たりなんて可愛いなw
以上、スレイの夫でした
116それも名無しだ:2007/06/04(月) 22:55:09 ID:iUzy2scC
>>61
これはスルーか。俺が昼間妄想に明け暮れ夜は寝る暇を削って考えて書く意味は無いな。頭の悪い俺のネタは褒めるところが一つも無い。ほかの住人とは違ってなんの成長も見せていないのだろう
117それも名無しだ:2007/06/05(火) 03:19:34 ID:PCMTS016
>>115
サンクス(・ω・)/
でもね、八つ当たりされたこっちの身にもなっとくれw
俺たち頑張ったのに(´・ω・`)

>>116
頑張って書いた話がスルーされる事もあれば、その場の勢いだけで書き上げた物がエラい好評だったりする事もあるだろう。

ネガティブになるのはブラザーの勝手だが、そんな感情をここで吐き出したら、構ってちゃんのレス乞食と思われかねんよ?

118それも名無しだ:2007/06/05(火) 07:56:35 ID:1Fa+v7nQ
>>17
構ってなのは去年から自覚してるよ。自分のネタをどうすればいいか分からない俺は直す気は無い。でもずっとここにいる。何を言われても

暑い…やっと家か…長かった……。
「ただいま」
いつも軽い玄関のドアが重く感じる。気温は見てないがかなり暑い。昼のニュースでは真夏日だと言っていた。
スレイ「あなた、お帰りなさい」
パタパタと小走りで来るスレイ。薔薇が描かれているエレガントなエプロンは大人の色気を感じさせ、俺の心を癒してくれる。しかも、今はピンクのTシャツにジーンズ……最高だなw可愛らしく、それで綺麗。それが俺の妻のスレイだ。
スレイ「キスして?」
「ああ…お前に見とれていて忘れていた。今日も綺麗だよ……」
俺はスレイにただいまのキスをした。軽く済ませるつもりだったが、スレイは俺から口を離さず舌をこれでもかというくらい絡ませてくる。
スレイ「うっ…あ……」
「激しいな…」

首に手を巻かれ徐々にスレイの声と舌が激しく、俺の欲情した心を襲う。
「飯冷めちゃうんじゃないのか?」
スレイ「いいの。今日は冷やし中華だから」
「そうか…お前は甘えん坊ちゃんだなあ」
数分間、ディープキスをした後に台所に向かった。しかし、冷やし中華は伸びていた。
なんてこったーっ!
「伸びてんな……」
俺は席に座り冷やし中華を眺めながら残念そうに言った。
スレイ「ごめんなさい。わたしったら伸びることを忘れて…」
申し訳なさそうに言うスレイ。俺は慰めるように…
「なんだ。味は変わらないじゃないか。伸びて量が増えたし一石二鳥だな。お前も早く食べろ」
スレイ「うん」
元気出たみたいだ。今晩の飯も美味かったし満足。
119それも名無しだ:2007/06/05(火) 10:11:47 ID:PCMTS016
だったら黙ってろ。
愚痴はチラシの裏にでも書き綴って、ゴミと一緒に燃やしちまえ。


それと冷やし中華って数分で伸びるもんか?
本当は数分じゃなくて、数十分はいちゃついてたんじゃないか?w
120それも名無しだ:2007/06/05(火) 11:45:36 ID:1Fa+v7nQ
>>119
ああ、ありがとう。ブログか何かに書いてるよ。愛しあってる時は時間が止まってる感じがするからどのくらい経ったか分からない。
121それも名無しだ:2007/06/05(火) 14:55:18 ID:PCMTS016
さて、今日も1日、張り切っていこうかねっと。

「うっしゃあああ!格納庫に俺、参上!気合い入れていくぜぇっ!」
おお、ずいぶんとハイテンションだな、リュウセイ。
「へへん。俺はいつだって、最初から最後まで徹底的にクライマックスだぜ!」
……何じゃそりゃ。

おい、マイ。
アイツ、何か変な物でも見たんじゃねえか?
「変な物かはわかんないけど、昨日私と一緒に、仮面ラ〇ダー〇王のDVDを見たぞ」
電〇だか電報だか知らんが、やっぱりそっち系からの受け売りか。本当に小学生だな、アイツは。

「……マイ。ひょっとして一晩中、リュウの部屋にいたの?」
「ううん。12時くらいになったら、もう遅いから部屋に戻れって、強引に追い出された」

……ほっほう。
本来なら、「もう遅いから泊まってけ。俺は床で寝るから、マイがベッド使って良いぞ」なんて言いそうな感じだがな……。
「あの子なりに、マイの事を意識し始めてるってところかしら?」
たぶんな。
「う〜ん……姉としては、何だか複雑だわ……」
「……?二人ともどうしたんだ?」
小声で話す俺たちに、マイは首を傾げる。
「な、何でもないわよ?気にしないで?」
アヤが両手をパタパタ振りながら、笑ってごまかした。

122それも名無しだ:2007/06/05(火) 14:59:41 ID:PCMTS016
>>121
「みんな、集まったようね。今日も1日、頑張っていくわよ」
おはようございます、ヴィレッタの姐さん。

「もちろんだぜ、隊長!俺は最初からクライマックスだからな!」
うるせーな、馬鹿の一つ覚えみたいに繰り返しやがって。お前は言葉覚えたばっかりの九官鳥か。
だいたい、オメーの馬鹿っぷりが最高潮(クライマックス)に達してるのは、もはや全宇宙の常識だろーが。今更言わなくてもわかってるよ。
「勝手に変な常識作るんじゃねぇ!しかも全宇宙って、お前の毒舌もクライマックスじゃねーか!普通そこまで言うか!?」

 言 う よ 。

「……醤油?」

……ラー油?

「……アイ・ラブ・ユー?」
気持ち悪っ!
「地獄に落ちろ」
「ひでぇっ!」
ライの追い討ちとリュウセイの反応が、テンポ良く決まる。

「さぁ、軽いコントは放っておいて、ミーティングを始めるわよ」

『コントじゃない!』

ヴィレッタの姐さんのつれない一言に対して、俺たち三人は綺麗に声をハモらせた。

123それも名無しだ:2007/06/05(火) 19:16:43 ID:1Fa+v7nQ
>>121-122
素晴らしいチームワークだな。これでこれからも大丈夫だろう。姐さんの機嫌は良くなったみたいだな。

頼みがある。君から姐さんに伝えてくれないか?ミンメイのコスプレと歌が見たいって…。無理にとは言わない。
124それも名無しだ:2007/06/05(火) 21:58:41 ID:1Fa+v7nQ
良し、これで準備は出来た。
今、俺は愚痴を沢山紙に書き燃やそうと庭で火を灯した。新聞紙と薪を入れなかなか勢いの良い火だ。
時計は9時すぎ、スレイは洗い物の最中だ。さきほどまでは風呂場で愛しあってましたがw
スレイ「あなた、何をしてるの?」
スレイが窓を開け俺に話しかける。いつものエプロン姿がたまらない。
「ああ、愚痴を書いて火で燃やそうと思ったんだ」
スレイ「楽しそうね。わたしもする」
いや…別に楽しくはないんだが…。スレイは上機嫌で紙とペンを庭に持ってきた。

スレイ「出来た♪」
嬉しそうに書くなんて…お前はお絵描きをする少女かwだが、それも良い。
「…で、何を書いたんだ?」
スレイの持っている紙を見てみる。
以下、スレイの持ってる紙の内容↓

・全ての日が日曜日だったらいいのに
・ハサウェイ君のおこずかいを五百円でいいのでアップさせてやってください
・子宝に恵まれますように
・もっと幸せになりたい
・ブライトさんを辛さから解放してやって下さい

以上、スレイの持っている紙の内容終わり

「あのさ、スレイ…これ愚痴じゃないんだけど……」
スレイ「お願い事。あなたとわたしの」
「お願い事ねぇ…てか、始めのやつ明らかに子供だろw」
そんなこんなで紙を火の中に放り投げた。火が先ほどより燃え盛り綺麗だ。
スレイ「あなたは何て書いたの?」
「会社の愚痴さ。ミッテさんや社長のこと」
スレイ「ふーん…」
二人で燃えている火を眺めているとロマンチックだな。なんだか時が止まっているようだ。
俺が気がつくと、スレイに手をギュッと握られていた。温かい手だ。スレイも俺の手の温もりを感じているのだろう。
スレイ「ねぇ、あなた?」
「何だ?」
スレイ「花火してもいい?」
「大きいのは出来ないぞ。それに後片付けが面倒だ」
スレイ「大丈夫」

スレイは家の中から花火を持ってきた。よく見てみると線香花火ばかりだった。
スレイ「えへへ、あなたとしたくて買っちゃったの♪」
凄くやりたそうな笑顔で言うスレイ。久しぶりにドキドキしてしまった。
その後、俺とスレイは線香花火を楽しんだ。短さ故の美しさがそこにはあった…。
125それも名無しだ:2007/06/05(火) 23:46:31 ID:PCMTS016
>>123-124
サンクス(・ω・)/

しかし本当に紙に書いて燃やすとは思わなんだw


あ、それとコレはささやかなプレゼント。
姐さんには内緒だぜ。

つ【ヴィレッタ隊長の、リン・ミンメイのコスプレどきどき体験記〜私の彼はパイロット〜】
126それも名無しだ:2007/06/05(火) 23:51:23 ID:1Fa+v7nQ
>>125
ありがとう。俺、ずっと大切にするよ。
さてと、これからスレイに見つからない場所を探さないとな。
127それも名無しだ:2007/06/07(木) 07:16:29 ID:H//j2zUV
充填完了。ラトと同居人ですお。
おっおっ(二回もやるな

J組のルゥ氏とゼア氏来てたんだね。おひさ。
キャラとかわかんないけど、全部読ませて頂いてますよん。
続きにも超期待。

>>121-122
リュウセイとアヤ大尉になにやらせても、肉声が頭の中でリプレイ
されるんだよねー。
兄貴のそのエミュレーション能力に嫉妬。
全俺が。

しばらくは貰ったネタを小出しにしていこうと思うですよ。
次回はイルムVSカイ少佐あたりで。

今回は、入り口に入ったところ編。(←変なタイトルだ
128それも名無しだ:2007/06/07(木) 07:17:12 ID:H//j2zUV
今日は基地の慰安祭だ。

にこにこ楽しそうに俺の後をついて歩く今日のラトの格好は、
六月らしいちょっと夏をイメージした感じの水色のワンピースに
白いサンダル。
セーラー服みたいな大きめの柔らかそうで白い襟が、ラトの少女らしく
華奢で可愛らしいイメージを引き立てている。

大きな花と原色の風船で派手に彩られたアーチを抜け、基地の中に
一歩足を踏み入れる。と、増えてきた人波に流され、いきなりラトと
はぐれそうになった。

流れに無難に乗ってゆっくり進みながら見渡せば、たこ焼き、お好み焼き、綿飴。
変なお面売りに、りんご飴、金魚すくい。
各種さまざまな出店。

普段はしかめ面をして煙草でもふかしていそうな強面の軍人さん達が、
今日だけはぎこちない笑顔で一生懸命商売に勤しんでいる。

「へい、たこ焼き2つね。お待ち!」
「ちょ〜っと焼けるまで時間掛かっちゃうけど、いい?」

…軍人さんも、今日は慣れない仕事で大変だろう。

ラトは背がちいさいから、油断するとはぐれてしまいそうで、
俺の背中に顔をうずめるようにしてくっついてちょこちょこと歩いている。
背中に当たるちょっと湿った暖かい息。ときおり当たる、柔らかい二つの双球。
感覚がどうしてもそちらの方に集中してしまいがちなのは如何ともし難い。

そして、普通の祭りには有り得ないこの重々しい金属がぶつかり合う音。
プログラムによると、2on2のバトルをしている時間だ。

人波が目に見えて流れていく方向には特設会場があった。
俺もそちらの方へ向かおうとすると、くいくいと袖が引っ張られた。
振り向くと、ラトはちょっと頬を桜色に染めて、小声で言いにくそうに。

「綿飴、欲しい…」

ん?
OKOK。
屋台のおっちゃん(すっかりテキ屋扱い)に声を掛け、一つ買ってあげる。

「お面、欲しい…」

OKOK。
レトロなデザインの狐のお面を買い、ラトの頭のよこちょに被せる。
うん、可愛い。

「りんご飴、欲しい…」

お、OKOK。
どんどん来いや!

 * * * 
129それも名無しだ:2007/06/07(木) 07:18:01 ID:H//j2zUV

30分後。
ラトはヨーヨーを両手に装備してりんご飴と金魚の沢山入った袋を持ち、
狐のお面を頭の横に被って光るバングルを手首に嵌め、綿飴だらけに
なった顔で幸せそうに歩いていた。

事情を知らない人がこれを見れば、ちょっと14歳の少女にしては幼稚め
かな、と思うかも知れない。
だが、ラトの過去を考え合わせればこれは十分納得が行く。
きっと、初めての経験なのだろう。
純粋に楽しんでいるのなら良い事だ。
今日は一緒になってとことん付き合わなくては。

…などと、その時は思っていたのだが。
五分後にそれが大惨事になろうとは。

「業務連絡。教導隊のプログラムが始まります。ラトゥーニ少尉、
中央テントまで至急出頭して下さい」

ラトがハッとして時計を見て、がっかりしたように言う。

「はぁ…。行きたくない…」
「でも、行かなくちゃ。下から見てるよ。ラトの格好良いアクロバット
飛行を、さ」
「ごめんなさい…」
「いいって。早く済ませてきなよ!」
「うん…」

そして、ラトは各種装備を俺に渡してくる。
手ぶらの俺はラトと同じ様に同じ場所にそのアイテム達を装備するしか
無かった訳で。

「頑張って来いよー!」

ラトに手を振って見送り、我に返って自分の姿を自覚する…。
な、なんだこれは!
もしかして、俺ってキモい!?w

ラトが視界に居る内はまだ良かったが、いなくなるやいなや辺りの会話と
視線が突き刺さる。

「ほら、あの人!クスクス」
「うんうん。ねー?w」 
「たった一人で。フフフ」
「お祭り、楽しみだったんだろうねーw」

ぎゃああああああww

どこまで逃げても人の海。
だが、俺は走るしか無かった。

どこへ?

…知るか!!

俺のランニングは、ラトが帰ってきて呪いのアイテムを外してくれるまで
延々と続いたのだった。

次回に続く。
130それも名無しだ:2007/06/07(木) 09:36:50 ID:SAu/lZty
>>126
しっかり隠しておけよ?
ヴィレッタの姐さんに見つからないように撮影するのは、至難の技だったからな。

>>127-129
サンクス(・ω・)/
頭に浮かぶ台詞回しをまんま書いてるだけなんだけどね(^_^;)

祭ではしゃいで、アレ欲しいコレ欲しいって控えめにねだるラトゥーニが可愛かったが……そーか、お面やら綿飴やらハングルやらたくさん持って走り回ってたのは、YOUだったのかw

131それも名無しだ:2007/06/07(木) 09:37:53 ID:SAu/lZty
ハングル→×
バングル→○
132拳と剣@:2007/06/07(木) 16:34:20 ID:SAu/lZty
今日はテストパイロットのアルバイト。
ラミアに呼び出されて格納庫に行ってみると、ヴァイサーガの隣に、髭と見間違いそうなフェイスガードを付けた、青いボディの特機があった。

映像資料で見た事があるぞ……確か、「マスタッシュマン(髭男)」とか呼ばれてた、ステゴロ用の機体だっけか。
「正確にはEG−Xソウルゲイン。今回、少尉にテストしてもらう機体だ」
ラミアがやって来て、説明してくれる。
「ヴァイサーガ同様、MMIにダイレクト・フィードバック・システムを使用している。ただ、素手での攻撃を行うので、ヴァイサーガ以上に接近する必要があるがな」
はいよ、気を付けよう。
「模擬戦で戦闘データを採取する。相手は、私が乗るヴァイサーガだ。よろしく頼む」
拳闘ロボットvs剣劇ロボットか……リュウセイが聞いたら目の色変えそうなシチュエーションだな。

それじゃあ始めるとするか。
ソウルゲインに乗り込み、エンジンとシステムを立ち上げる。
格納庫の扉が開かれると、ヴァイサーガと肩を並べて、演習場へ歩いて出る。

俺は機体を歩かせながら、武装一覧を開いた。
確かに、ほとんどが拳や肘を使った直接攻撃ばかりだ。武装というより、攻撃パターン一覧と言うべきか。

133拳と剣A:2007/06/07(木) 16:35:15 ID:SAu/lZty
>>132
演習場に出ると、お互い向かい合って、機体に軽く一礼をさせた。

大した理由はない。「決闘」という言葉を思い起こさせる、場の空気に促されて、何となくだ。
たぶんラミアも同じ理由だろう。

さて、始めるかね……闘いを!

ヴァイサーガが剣を抜く前に、俺は一気に距離を詰めた。
なかなか強烈な加速だぜ……あっという間に拳撃の間合いに入る。
挨拶代わりのワン・ツーフック。
一打目は頭部、二打目は腹部を狙う。
ヴァイサーガは一打目を腕で、二打目は高く上げた足でガードする。
そして、空いた腕の鉤爪を伸ばし、斬りつけてきた。
すかさずバックステップでかわした……筈だったが、かわしきれなかったようだ。
サブモニターが胸部装甲のダメージを報せる。おそらく、あの鉤爪で胸部装甲を斬り裂かれたんだろう。
こちらが距離を取った隙に、ヴァイサーガは剣を抜き、刃から衝撃波を飛ばす。
地表を切り裂きながら迫る光刃をジャンプしてかわすと同時に、ソウルゲインの手からエネルギー弾を発射する。
ヴァイサーガは真っ赤なマントで防御する。
動きが止まった――!
着地と同時に、左腕部を切り離して射出。
左腕が、錐揉み回転しつつ飛んでいく。
134拳と剣B:2007/06/07(木) 16:36:52 ID:SAu/lZty
>>133
しかし狙いは、攻撃じゃない。
飛ばした左腕が、ヴァイサーガのマントに命中する。
そのまま、左腕にマントをグッと掴ませると、接近して腕部を接続。
右拳をヴァイサーガの顔面に叩き込む。
手応え充分!

ヴァイサーガはバックステップで逃れようとしたが、マントを掴まれていたせいで逃げきれず、モロにくらう。
掴んで殴る。これが喧嘩の基本だ。覚えときな!

更に追い打ちをかけようとすると、ヴァイサーガはマントを切り離す。
そして、そのマントで俺の視界を遮ると、手にした剣でマント越しに突きを入れて来やがった。

なんとぉぉぉおぉぉぉっ!!!!!!

顔面目掛けて伸びる白刃を、両の手のひらで挟んで止める。
いや、止めたというより、たまたま手の中に収まってくれたというべきか……。
次の瞬間、連続した衝撃でコクピットが揺れる。
至近距離から、烈火刃とかいうヒートナイフを数発くらったようだ。

ヴァイサーガは更に、ソウルゲインに前蹴りを入れて、その反動で離れる。
逃がすかよ!
スラスターを噴かして接近、左右から頭部目掛けて、フックを同時に打つ。
ヴァイサーガは両腕でガードした。

かかりやがったな!

135拳と剣C:2007/06/07(木) 16:38:41 ID:SAu/lZty
>>134
機体の全体重をかけて、その腕を強引に下に下ろさせた。

すかさず、ソウルゲインの両掌にエネルギーをまとわせる。

いけぃっ!白虎咬!

青白く輝く双掌打を、がら空きになった胴体に叩き込む。
これも手応え充分!
ヴァイサーガが派手に吹っ飛びやがる。

だが、まだ終わりじゃなかった。
立ち上がったヴァイサーガが、一旦剣を鞘に納める。
そして、居合いの態勢に入った。
確か風刃閃とかいう技だったな……おもしれぇ……。

俺はソウルゲインに、両の拳をグッと握らせた。
来な、ラミア。

『――風・刃・閃!!』

ヴァイサーガが光の粒子をその場に残し、一瞬にして距離を詰めた。
必殺の刃が鞘から抜き放たれる瞬間――俺はソウルゲインの左拳を、抜刀するその腕目掛けて、叩き込んだ。
強烈な衝突音と共に、抜刀が妨げられ、ヴァイサーガの動きが止まった。
コイツでトドメだ!

でぃぃぃぃいいいぃぃぃやぁっ!!!!!!!!!!

知らずコクピット内で吠えながら、俺はソウルゲインの右拳で、渾身のボディアッパーを叩き込んだ。
勢いはそのままに振り抜き、ヴァイサーガを持ち上げる。

一瞬の間を置いて、ヴァイサーガは轟音を立てて、地面に崩れ落ちた。

136拳と剣D:2007/06/07(木) 16:39:45 ID:SAu/lZty
>>135
模擬戦が終わり、ソウルゲインにヴァイサーガを格納庫へ運ばせた。
最後のボディアッパーの衝撃で、ラミアが軽く気絶したらしい。

格納庫に戻り、ヴァイサーガのコクピットハッチを開ける。
おい、ラミア!生きてるか!?
頬をペチペチと叩く。
「少尉……痛いぞ」
目を覚ましたラミアが、つぶやき、微笑む。

相変わらずのポーカーフェイスだが、俺にはそう見えた。

わりぃ、ちょっと熱くなりすぎちまった。
危うくコクピットつぶすとこだったぜ。
「だが、それに気付いたからこそ、ギリギリで拳の軌道をそらしたのだろう?」
まぁ、そうだけど。
「おかげで拳の勢いにブレーキがかかり、ダメージが軽減された。そうでなければ、今頃私は死んでいたか、良くて病院送りだ」
物騒な内容を淡々と語るな。

「で、どうだった?」
ラミアが手短に尋ねる。
ああ、システムは正常に反応してくれた。ほとんど自分の手足を動かすのと変わらねー感じだ。
ただ、加速がちょいとキツいな。
俺はあれくらいが好みだが。
ずっと以前、ナンブ中尉のご好意で、アルトアイゼンにチョロッと乗せてもらったが、ちょうどあんな感じだ。

137拳と剣E:2007/06/07(木) 16:42:54 ID:SAu/lZty
>>136
「アルトアイゼンが接近して高い火力で制圧するのに対して、ソウルゲインは一撃離脱型の強襲用だからな。多少は似てしまうのだろう……一撃入れた後、離脱せずに更に追撃するのは少尉くらいだが」
ラミアがからかうようにそう言って、クスッと笑った…………ように見えた。

――ん?
ふとソウルゲインに目をやると、模擬戦での傷がさっきより若干減っていた。
おかしいな……もうちょっと傷入ってたような気が……。
「ソウルゲインの装甲には、自己修復機能がある。以前ホワイトスターでの戦いで破壊されたのだが、修復機能が生きていたのか、ある程度再生された状態で、巡航中のヒリュウ改が発見したのだ」
で、完全に修理されて、ここ伊豆基地に運ばれたって訳か。
「ああ……決別したとはいえ、私にとってはアンジュルグやヴァイサーガ同様、古巣の思い出となる機体だ……廃棄処分するには、忍びなかった……」
その古巣とやらを思い出したのか、ラミアの顔は、少し悲しげで、寂しげな表情になった……ように見えた。
「それに、異星人の侵略に備え、優秀な機体を一機でも多く確保しなくてはならない。少尉……これからも、それらのテストに協力してくれるか?」
ラミアが真剣な眼差しを送る。

……特別手当ては弾めよ?

そう答えて、ニヤリと笑う。

「了解した」

簡単な返事と共に、ラミアはニコリと笑った……ように見えた。

138それも名無しだ:2007/06/07(木) 22:10:50 ID:AAwQINgl
>>130
ああ、ありがとう。まだスレイには見つかっていないし見てない。会社で見る予定だ。その方が安全だからね。
つ【スレイ特製フルーツゼリー】
お礼にこれ置いとくね。ほかの方々も遠慮せずに食べて下さいな。ちなみに明日には完璧なゼリーになるだろう。

>>128-130
ラトがまた成長したような感じだね。一歩一歩君と全身していくのが良く分かる。
まあ、そんなこともあるさ元気出せ。破廉恥な俺が言っても説得力に欠けるかな。
続き楽しみにしてるよ。

ふー、さっぱりした。風呂は良いな。それと、スレイの体のお手入れは最高に幸せだったぜ。隅から隅まで…ムフフフフw
スレイ「あなた、テレビのリモコンが見つからない」
「え?お前、いつも見つからないだろうが…どれどれ、今手伝ってやるから」
探しても見つからない…どこへやった!?
スレイ「あったー」
「どこに?」
スレイ「わたしの足元♪」
「…そんな元気に言われても……まあ、見つかって良かったな」

スレイ「面白いテレビやってないわね」
「しょうがないさ。夜だもん」
スレイ「暇ねぇ…」
「寝ればいいだろ」
スレイ「眠れないのよ。最近、遅くまでゲームして昼寝してるの」
「お前は子供か。ちゃんと夜寝なさい」
スレイ「はーい」

スレイが生活乱してるようだ。これから様子見かね…。スレイがこうなったのも俺の責任なんだろうな。
139それも名無しだ:2007/06/07(木) 22:23:12 ID:o2qvvBjK
>>130
ああは書いたけど、現実的にずっと走ってるわけは無いよね。
どっかで隠れてるなり荷物を纏めるなりしてたとは思うw

てかこれって結構誰でもやる気がする。
アイテム渡されると恥ずいんだ、これが。
サンクス!

>>132-137
いきなり格闘ネタか!
GJ!
お互いの気合の迸りが伝わってきたですよ。

後、機体の由来とかよく調べられてあって良いねー。
シャドウミラー由縁の機体、しかもアクセル・アルマーの専用機か…
キョウスケが見たら驚くだろうな。

ラミアもたまには故郷に帰りたいと思うんだろうか。ちとせつない。
140それも名無しだ:2007/06/07(木) 22:28:16 ID:o2qvvBjK
>>138
サンクス!
成長、か…。
傷はゆっくりと塞がっていくものなのだなあ、と。

スレイ様との幸せな家庭生活乙!
わたしの足元、と言われてその後の展開に破廉恥なものを想像したのは私だ。
まあR指定板だしぱんつ見えるぐらいか!(言うな
141それも名無しだ:2007/06/07(木) 22:36:45 ID:AAwQINgl
>>140
これからまた少しづつ書いてみようと思ったんだけど、読んでくれる人がいて嬉しい。ありがとう。
他人から見ればスレイは「様」を付けるんだね。俺からして見れば「ちゃん」なんだ。なんていうか、一緒に住んでると可愛いんだよw
これから普通に寝るさ…おそらくだけどw

では、皆さんおやすみなさい。
142それも名無しだ:2007/06/08(金) 14:01:38 ID:3VX3+5yH
>>138
ゼリー美味しく頂きましたm(u_u)m

今気付いたが、そっちの世界にもヴィレッタ隊長がいるんだから、直接頼んでみたら?
十中八九生きて帰れないとは思うがw


>>139
サンクス(・ω・)/
帰りたいとまでは思わなくても、シャドウミラーの愉快な面々を思い出して、ノスタルジックな気分になったりしてるかもね……。
143ベーオウルフは分の悪い賭けがお好き@:2007/06/08(金) 15:55:37 ID:3VX3+5yH
そもそも、何故こんな事になったんだっけ?

五連装チェーンガンの弾幕をかわしつつ、俺はふと胸の内でつぶやく。
ソウルゲインは今日も、俺の反応にしっかりついて来てくれていた。
フットワークとスラスターのこまめな噴射で、前方のズングリムックリした機体との距離を少しずつ縮めていく。

その敵の名はアルトアイゼン・リーゼ。
ナンブ中尉の乗るアルトアイゼンの、強化型だ。


始まりは、朝の食堂での、ナンブ中尉との会話だった。
たまたま席が向かい同士になったのだ。
「機会があれば、一対一でお前と闘ってみたいものだな」
前振りもなしに、中尉はそう切り出した。
急に何です?
「昨日の、ラミアとの模擬戦を見させてもらった。アラドがリュウセイに頼まれて撮影した映像だが」

……何でアイツは、こういう事には手が回るんだか。

「お前の操るソウルゲインがどれほどのものか、この手で確かめてみたくなった」
相変わらずの仏頂面とは裏腹に、ナンブ中尉は熱のこもった声で言う。

ああ……この人も俺も、同じ穴の狢か……一種の職業病だな。

そんな風に考えてると、俺の背中にデカくて柔らかい感触が二つ、のしかかって来た。

エクセレンの姐さんだ。

144ベーオウルフは分の悪い賭けがお好きA:2007/06/08(金) 15:58:14 ID:3VX3+5yH
>>143
「面白そうね〜!んっふふ〜……もしキョウスケに勝てたら、デートしてあげても良いわよ?アヤ大尉には内緒でね☆」
姐さん……今、男同士の話をしてるんで、引っ込んでてもらえませんかね……。
だいたいそんな事したら、アヤに殺されちまうし。
「あらま!聞いた?キョウスケ!この子ってばもうアナタに勝ったつもりになってるわよ〜?コレは問題じゃな〜い?」
姐さんは俺の頭のてっぺんに顎を乗せて、ナンブ中尉を焚き付ける。
「エクセレン、お前は黙って」
「楽しそうね、アナタたち!」
ナンブ中尉の言葉を遮るように、我が麗しの君の、少し苛立ちで震えてる声が響く。
「エクセレンも大変よね〜……恋人の気を引くために、尻軽女を演じなくちゃならないなんて!」
アヤは嫌味たらしい口調で言いながら、姐さんから強奪するように俺の頭を抱き寄せ、胸にうずめる。
「その点、私たちはそんな事しなくたって、いつもお互いを想い合ってるけれどね!」
この子は絶対渡しません!と言わんばかりに、アヤがギュウウッと抱き締めるもんだから、ちょいと苦しい……。

「しりがる……!?」

姐さんの表情が、一瞬引きつる。

145ベーオウルフは分の悪い賭けがお好きB:2007/06/08(金) 16:00:39 ID:3VX3+5yH
>>144
「……そうよね〜☆アヤ大尉ってば毎晩毎晩、愛しの彼氏くんにたっぷりサービスしてあげてるんだし、当然よね〜☆も、まさに発情期って感じ?」
姐さんも負けじと嫌味で返す。

「はつじょ……!?」
アヤの表情も、怒りで引きつった。

「ふ……ふふふふふふ」
「んっふっふっふ〜……☆」
朗らかに笑う二人だったが、その背中には殺意の波動がユラユラとのぼっている。

次いで、エクセレンの姐さんはナンブ中尉の頭を両手で掴み、アヤは指で俺の顎をクイッと持ち上げる。

そして二人は、同時に口を開いた。

『私のために闘いなさい!!!!!!』

――何でそうなるの?

146ベーオウルフは分の悪い賭けがお好きC:2007/06/08(金) 16:02:31 ID:3VX3+5yH
>>145
……で、今に至る訳だが……。

正直アヤもエクセレンの姐さんも、どうでも良くなってきた。
目の前に立ち塞がる鋼鉄の巨人をぶっ倒す事しか、もはや考えられねえ……。

実際の機体のサイズはソウルゲインの方がデカいが、俺にはリーゼの方こそ、やたらデカく見えた。
これだけデカい相手、倒してみせてこそ男ってもんだろ!

手のひらから放つエネルギー弾「青龍鱗」で牽制し、近付こうとすると、左腕のチェーンガンや両肩のアバランチクレイモアが熱烈な歓迎をしてくれやがる。
火力の高さを活かしたカウンターは、ソウルゲインの装甲の自己修復機能が追いつかないほどのダメージを、着実に与えていた。

だが、そこからの追い打ちが来ない。
理由はわかっていた。
俺が焦って、飛び込んで来るのを待っていやがる……。

現にリーゼは、右腕のリボルビング・バンカーをいつでもぶち込めるように、さりげなく身構えている。
まるで銃口を突きつけられてるような気分だぜ……。

だが、このままじゃ埒があかないどころか、ジリ貧だ。
近付いての打ち合いなら、ソウルゲインも得意だしな……。
ここはいっちょ、勝負といきますか!

147ベーオウルフは分の悪い賭けがお好きD:2007/06/08(金) 16:05:52 ID:3VX3+5yH
>>146
俺の意志をダイレクト・フィードバック・システムが感知して、ソウルゲインはググッと右拳を握り締める。

こうなりゃ技もへったくれもねえ。
この一発に全てを込めて、打ち込んでやるぜ!
行くぞ、オラァァァアアアァァァァアッ!!!!!!!!

吠えながらリーゼ目掛けて突撃!
クレイモアの弾幕が迎え撃つが、装甲の厚さと自己修復機能に任せて、構わず進む。
弾幕を抜けて、拳撃の間合いに入った。
同時に、リーゼの右腕が動く。

バンカー!

とっさに、ソウルゲインの左手で、死の鉄杭を受け止めた。
バンカーが左手のひらを貫くが、そのまま左手を握り締め、バンカーが引き戻されるのを封じる。
これで終わりだ!
渾身の右拳をリーゼの頭部目掛けて打ち込む!
だが、リーゼはその右拳を左腕で受け止め、そのまま脇にガッチリと挟み込んだ。
次いで、リーゼの額の角が、紫電を纏い輝き始める。

やっべー……。

俺は自分の迂闊さを呪った。
リーゼの額の角は、プラズマホーンという武器なのだ。
武器なのだが……あんまりデカくて目立ちまくってたんで、それが武器だという事を完璧に忘れてた。

リーゼが、プラズマホーンを叩き込むべく、両腕を捕らえたままジャンプした。

カブトムシみたいな見た目とは裏腹、その様はまるで、獲物の喉笛目掛けて飛びかかる狼のようだった。

148ベーオウルフは分の悪い賭けがお好きE:2007/06/08(金) 16:10:04 ID:3VX3+5yH
>>147
敗北を覚悟した瞬間、勝利の女神は思わぬ形で俺に幸運を授けてくれた。

闘いの場となる演習場。
そこを見渡せる管制室でエクセレンの姐さんやアヤ、他にもラミアやリュウセイやらが観戦していた。
やはりナンブ中尉の勝利を確信したのか、エクセレンの姐さんが無線で黄色い声援を送ってきたのだ。

『キョウスケ〜!ご褒美に今夜はオールナイトよ〜ん☆』

瞬間、リーゼの動きが止まった。
チャンス!
両腕を捕らえられた態勢のまま、ソウルゲインを大きく仰け反らせる。
フロントスープレックスの形で、俺はリーゼを地面に叩き付けた。
雷が百発くらい同時に落ちたような、物凄い轟音を上げて顔面から地面に落ちたリーゼは、そのまま沈黙した。

無線越しに、管制室での会話が聞こえてきた。
『……え〜っと……あたしのせい、じゃないわよね……?』
『エクセ姉様……正直困ります』
まったくだぜ。俺は助かったが。

しかし、かつてない程の虚しい勝利に、俺はコクピットの中で大きくため息をついたのだった。


本当に何やってんだろう、俺たち……。

ナンブ中尉、大丈夫ですか?
リーゼに通信回線を開き、呼びかける。

『大丈夫だ……分の悪い賭けは……嫌いじゃ……ない……』

ナンブ中尉の声は、疲れていた。
そして、何かをこらえるように、震えていた。

149それも名無しだ:2007/06/08(金) 21:06:05 ID:MyzE9t/h
>>142
ゼリー美味しかったんですね。良かった、気に入ってもらえて。スレイに報告したらきっと大喜びするぞ。
今度、機会があったら姐さんに言ってみるかな。

今日仕事終わった後で見てみたら凄かったよ。
誰も使わなそうな会議室で見たけどエツィーラのおばちゃんが掃除をしに入って来た。テキトーに俺が掃除するからって言っておいた。その変わり帰りは遅くなってしまったが…。
帰ったらスレイに色々と言われた。これから愛で返すつもり。

最近は長文読めない。レスは遅くなりそうです。ごめんなさい。
150それも名無しだ:2007/06/08(金) 21:29:50 ID:b8HyLG09
>>143-148
アヤ大尉とエクセレンのライバル関係も面白かったし、バトルのクオリティも
(前回もだけど)高かったですよん。

乙&GJ!
面白かったー。
だけどなんというか、読み終えて放心。

エクセ姉さまって空気読めてるような、読めてないようなお人だよねぇ…
キョウスケも苦労する筈だよ…

後、バンカー相手はヤバすぎる!w
一撃必殺すぎ。
あれは殺人の為の武器と言っても差し支えないからなあ。
151それも名無しだ:2007/06/09(土) 17:40:21 ID:8A8JTNft
>>149
そうか、見たのか……アレを……。
うん、本当に凄かったよね、いろんな意味で。

レスは書ける時で構わないよん('-^*)/
152それも名無しだ:2007/06/09(土) 17:43:46 ID:8A8JTNft
>>150
サンクス(・ω・)/

ナンブ中尉にとっては、エクセレンの姐さんとの関係も分の悪い賭けなのかなぁと思ったりする、今日この頃w

まぁ、姐さんは姐さんで、中尉のマイペースぶりに振り回される事もあるし、おあいこかな?
153それも名無しだ:2007/06/09(土) 20:26:19 ID:NoSLAR7x
暑いしダルい…。休日というのはなんでこうも意地の悪いものなのだ。
俺はソファーの上で大の字になって寄り掛かる。スレイはエプロン姿でせっせと働いているなあ。洗い物を済ませ、次は洗濯か。洗面所のほうに向かうのが見える。
家は風呂の水を洗濯に使うことにしてるから大変なんだ。何がって、バケツで水を運ぶのがきつい。俺が安いポンプを買うかと聞いたらいらないと答えた。水運びはダイエットに良いらしい。
今日は良いではない。なんだか、曇りのような微妙な感じ。

スレイ「あなた〜」

スレイがパタパタと速歩きで俺のいる茶の間に来た。困ったような表情をして何があった?

「ああ、洗濯機が壊れたのか」
俺とスレイは洗面所の洗濯機の所にいる。
スレイ「叩いても動かないのよ」
俺が見てやっても良いが生憎洗濯機を見るのは始めてだ。子供の時に壊れたラジコンは直した時があるけど。

「蹴ってみるか」

そう言って蹴りを一発。…洗濯機は動かない。当たり前か。映画やアニメのように直るはずがない。

スレイ「どうしよう。洗濯物溜まってるのに…」

最近は新しいゲームを買ったからスレイは家事をおろそかにしている。だから、洗濯物が溜まった。まあ、ゲームは俺が買ったんじゃないんだけどね。下らない責任逃れをしても意味が無い。俺は考えてある答えを導き出した。

「この際だから買ってしまおう」
スレイ「あなた、いいの?」
「構わないよ。衣替えの季節だから欲しい物をまとめて買った方が速い」

そういうことで買う物をメモして俺とスレイは車で30分くらいに着くデパートに向かった。
買う物は沢山ある。棚に椅子に可愛いちゃぶ台みたいなのに…家電だと洗濯機に大きいテレビ。テレビはスレイがでかい画面でゲームしたいと駄々をこねたから買ってやった。たく、お前は子供か!?そのほかにも買う物があって疲れた。

昼飯はデパートのレストランで食べた。ステーキが美味い。

スレイ「あなた、あ〜んして…」
「あ〜ん…」
スレイ「美味しい?」
「ああ、お前に食べさせてもらったから凄く美味しいよ」
スレイ「わたしにも…」
「今してやるよ」

お互いに食べさせあって楽しかった。周りの目が気になったが、俺達破廉恥夫婦からしてみればどうということはない。

次は地下のコインランドリーに向かった。昼飯前に溜まりきった洗濯物を入れておいたから丁度良い頃合いだろう。
154それも名無しだ:2007/06/09(土) 20:29:21 ID:NoSLAR7x
>>153
「何処だっけ…あっ、ここか」

デパートの駐車場の近くにコインランドリーなんて良く考えたよな。俺なら思いつかない。
俺は洗濯物をでかい洗濯機から取り出した。乾燥もしてくれるから凄く便利…て当たり前か。
「それにしてもあれだな。最近のお前の下着は黒でまとめてあるな」
スレイ「だって、あなたの好きな色が大好きなんだもん」
「二年くらい前にやめとけとは言ったが、凄く似合うと思うぜ」
スレイ「あなた、こんな所で恥ずかしいこと言われるのイヤ」
「しかし、顔は嬉しがってる」
スレイ「分かる?」
「ああ、分かるさ。お前のことが分からないはずないじゃないか」

もう、スレイは嬉しがって俺にひっつくばかり。洗濯物が取りずらいっての。
俺は一枚の下着に目がいってしまった。
「なあ、スレイ。お前、こんな可愛いの穿いてたっけ?」

俺は一枚のクマさんパンツを取り出してスレイに見せた。

スレイ「それ、わたしのじゃない」
「じゃあ、誰のなんだろ?誰かが取り忘れたのかな。だがイイな」
ゼオラ「それ、わたしのー!」

その時俺の頭上に衝撃が走った。気付いたらスレイが俺を膝枕で寝かせていた。

スレイ「あなた、大丈夫?」
「ああ大丈夫だ…。軍人の蹴りより凄かったなあ」
スレイ「あういうのが好きなの?」
「まあね」
スレイ「わたしには何が似合うと思う?」
「そうだな…お前なら苺かウサギちゃんかな」
スレイ「うふふ、分かった♪」

今晩からスレイの下着が可愛いプリントものになりますた。可愛い系も着こなすとは、さすが俺の妻。
155それも名無しだ:2007/06/09(土) 20:36:15 ID:NoSLAR7x
>>153
良いではない×
良い天気ではない○
156それも名無しだ:2007/06/10(日) 16:09:33 ID:3jDvPVbd
>>153-154
さぞ痛かったろうな、ゼオラの踵落とし。

俺も一辺くらったが、精神コマンド「魂」でもかかってんのか?ってくらい痛かった。w
157それも名無しだ:2007/06/10(日) 16:10:46 ID:3jDvPVbd
「コーヒーをお持ちしました、ご主人様」
そう言って、アヤがコーヒーを持って来てくれた。

 メ イ ド 姿 で 。

そして、俺の隣に座り、猫みたいにすり寄ってくる。
俺はコーヒーをこぼさないよう気を付けながら、彼女の肩に手を回した。


今日はデートの予定もないし、一日ゆっくり過ごすつもりだった。
ただ、昨夜冗談半分に交わした約束を、アヤが実行してくれるとは思わなかった。
その約束とは、「今日一日、俺の着せ替え人形になってくれる」というもの。

いつかアヤに着てもらいたくてコッソリ買っておいたコスチュームが、ついにその威力を発揮してくれた。
朝はミニスカチャイナ服で相手をしてくれた。
昼過ぎからはメイド服に着替えて、ご丁寧に俺の事を「ご主人様」と呼んでくれる。
何か、何というか……良い気分だ。

俺はコーヒーを一口口に含むと、そのままアヤに口づけをする。
そして口移しで、彼女が入れてくれたコーヒーを飲ませてあげた。
アヤの白い喉が、コクっと音を立てる。

その後も、俺たちはお互いの唇と舌を味わい合う。

スカートをたくし上げて、真っ白な太ももに手を這わすと、
「んう……」
くぐもった声を上げて、身をよじらせた。

158それも名無しだ:2007/06/10(日) 16:12:01 ID:3jDvPVbd
>>157
相変わらず感じやすい身体だぜ……。

唇を貪りながら、露わになった太ももを、指先でくすぐるように愛撫する。
「ん……うぅん……」
舌を絡ませながら、アヤはお菓子をせがむ子供のように、声を漏らす。

下着の上から、もどかしい程の軽いタッチで、お尻を撫で回す。

「ふぅ……んあ……」
アヤはキスを続けながら、俺の首に両腕を回し、体をくっつけて来る。
服越しに、豊かな胸の膨らみが押し付けられる。俺を挑発するかのように。

……アヤ、最近スイッチ入るの早いな。
まぁ、どーせ俺のせいなんだろーけど。

「ぷふぁ……お願い……焦らさないで……」
唇を離して、アヤはネットリと絡み付くような甘い声で、哀願する。

どうすっか……まだ時間は早いが、火を点けちまったのは俺だし、男子たる者、責任は取らんとな。

俺は顎をしゃくって、ベッドを指し示した。
「……はい、ご主人様」
まだメイド気分のままなのか、アヤはそう答えながら、ポゥッと頬を赤らめる。

ベッドに上がり、いわゆる女の子座りになると、両手でゆっくりと、スカートをめくり上げる。
「ご主人様に……私の全てを捧げます……」
顎を軽く引き、気持ち上目使いになるアヤ。

159それも名無しだ:2007/06/10(日) 16:13:26 ID:3jDvPVbd
>>158
俺はそんな可愛いメイドを優しく押し倒す。
ピチャピチャと音を立てながら唇と舌を絡ませる。

太ももを愛撫して、下着に指をかけると、アヤが不意に尋ねてきた。

「着たまま……するの……?」

当たり前だ。
今日のアヤは、俺の着せ替え人形なんだろ?
着せ替え人形は服を着せて遊ぶもんであって、脱がして遊ぶもんじゃないぜ?

「……恥ずかしい」

――裸より、着たままの方が恥ずかしいってのか?
女ってぇのは、いまいちよくわからん……。
だが、おかげで新鮮なリアクションを拝めるんだから、良しとするか。

「優しく……してね……」
俺の下でかすかに震えながら、アヤは哀願する。

まるで初めての時みたいに、可憐で愛らしい。

「それと、キスして……いつもみたいに」
スゥッと目を閉じるアヤ。
俺はゆっくり優しく、安心させるように唇を重ねてやった。

そして、改めて彼女の下着をずり下ろして、剥き出しの両足を脇に抱える。

俺の背中に回っていたアヤの手に、グッと力が入った。

160それも名無しだ:2007/06/10(日) 20:52:59 ID:/vVjtLr+
>>156
ありがとう。
あれは魂掛かってクリティカル食らったみたいだった。その日の夜はスレイのウサギちゃん黒パンツを拝めたから良かった。

>>157-159
すっかり君好みの女になっちゃて、アヤさんったらwごちそうさまでした。今からスレイウサギちゃんを食べに行きますよw
161それも名無しだ:2007/06/11(月) 20:41:07 ID:uZoGZAvZ
>>160
サンクス(・ω・)/

だが一つだけ言っておく!
女は時として、ウサギの皮を被った獅子と化す事もあるので、気を付けよう('-^*)/

ちょ、アヤさんやめてやめて!せめてあと十分休ませて!
なに?時間がもったいない?
だからマウント・ポジション取らないでったら!
ちょ、マジで勘弁してください、アヤ様アッー!


     し
     ば
     ら
     く
     お
     待
     ち
     下
     さ
     い
      ゜

162番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/11(月) 21:19:43 ID:uZoGZAvZ
キャンプに月 行こう日

R−シリーズのオーバーホールに合わせて、私たちSRXチームに休暇が与えられた。
そこでヴィレッタがチームワーク強化という名目で、キャンプに行く事を提案した。
もちろんみんな大賛成。

……一名を除いて。

「チームワーク強化なら、キャンプなんかやらんでも他に色々と方法があるじゃないですか」
新人くんはそうぼやいてた。
もっとも、ヴィレッタがそれを聞き入れる訳がないんだけどなー……。
案の定、新人くんの意見は鮮やかに黙殺されて、私たちは荷物を持って、いざキャンプへ!

ヴィレッタがレンタルしてきた二台の4WDに、男女に別れて乗り、キャンプ場へ向かう。

キャンプ場に付くと、早速役割分担。
私とヴィレッタが料理を担当。
リュウとライがテントを張る係。
夕飯のおかずの魚を、マイと新人くんに釣って来てもらう事にした。

いや、だって……リュウとマイを組ませると、仕事そっちのけで遊び出しそうじゃない?
って私、誰に言い訳してるの?

――そんなこんなで、男女別のテントを張り終え、夕飯のカレーも出来たし、ちょっと遅れて新人くんとマイも大漁で戻って来た。
さぁ、それじゃあみんなで食事にしましょう。

163番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/11(月) 21:21:17 ID:uZoGZAvZ
>>162
夕食を食べてると、リュウがビデオカメラでみんなを撮影し始める。
「だってコレ、チームワーク強化のための訓練だろ?訓練内容は記録しとかないとな」
「お前にしては、気が利くな」
「リュウセイのくせに、珍しいじゃねーか」
「あーもう、ゴチャゴチャうるせえ!文句言ってっと、お前等の鼻の穴、アップで撮るぞ!」
「本当に撮るな!」
「メシ食ってんだから邪魔すんな!あっち行って一人で食え!そんで川に流されて爺さん婆さんに桃と間違って拾われて、鉈でかち割られろ!」
――新人くんも何だかんだで、楽しんでるみたいね。
ちょっと安心しちゃった。

本当に賑やか過ぎる夕食を済ませると、片付けをして、テントに入って就寝。

でも、ふと隣で寝るマイを見ると、何だか深刻な顔してる……。

どうしたの?マイ。

抱き寄せて、尋ねてみる。
「うん……あいつ、私たちの事嫌いなんじゃないかなって考えてた……」
思わぬ答えに、ちょっと戸惑う。
釣りをしてる時、喧嘩でもしたの?
そう尋ねてると、マイはポツポツと話し出した。

164番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/11(月) 21:24:09 ID:uZoGZAvZ
>>163
二人で、特に会話を交わす事もなく、釣りをしていたらしい。
退屈したマイが裸足になって、浅い所で遊んでいると、

「……ぬるいな」

突然新人くんが、そう呟いたそうだ。
「そうか?冷たくて気持ち良いぞ?」
「そっちじゃねえよ。今のこの空気がぬるいっつったんだ」
「空気?」
「前にいた部隊じゃ、しょっちゅう最前線に飛ばされて……仲間といる時ですら、いつ敵が襲ってくるかわからねえ……そんなピリピリした緊張感があってな……何かこう、ヒリつくような熱さにさらされてるような感じだった……」
そう語る新人くんの顔は、昔を懐かしんでるようで、哀しんでるようでもあったらしい。

「……私は、逆だな」
その顔に釣られて、マイも話し始めたそうだ。
「もう話したと思うけど、私は異星人に操られて、エアロゲイターの指揮官をやってた。でも、その時の事はよく覚えてない」
「…………」
「で、後になって、私やアヤの記憶は後から植え付けられた偽りの物だって言われて……自分は本当は何者なのかって考えても、答えが出なくて、まるで真っ暗闇の中で、冷たい氷の中に閉じ込められたような気分になった」

165番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/11(月) 21:25:42 ID:uZoGZAvZ
>>164
「……なるほど。そんな俺たちが一緒にいりゃあ、そらぬるくもなるわな」
新人くんは、おどけるようにそう言ったらしい。
マイに辛い事を話させたと思ったんでしょうね……。
「でも、私はこういうの、嫌いじゃない……アヤや、リュウたちがいてくれたから、暗い氷の中から出られたような気がする……お前は、イヤか?」
マイがそう聞いても、新人くんは答えなかった。
「引いてるぞ」
そう言って、立てたままのマイの竿を指しただけ。
結局魚を釣り上げるのに夢中で、答えは聞けないままだったそうだ。


「だから、ちょっと不安になって……」
マイは私の胸に顔をうずめる。
マイ。嫌いな相手に、自分の胸の内を明かす人なんていないわ。
「……そう、かな」
ええ、そうよ。
私はマイの髪を撫でてやりながら、安心させるように微笑む。

それと、ちょっと言葉のお勉強。
いい?こういうのは「ぬるい」じゃなくて、「暖かい」って言うの。
「暖かい……?」
マイが子猫のような瞳を向ける。
「……そうだな、私もそっちの方が良い」
マイはそう言って、ニッコリ微笑んでくれた。

166番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/11(月) 21:27:47 ID:uZoGZAvZ
>>165
それにしても、新人くんが自分の胸の内を語るなんて……。
また一歩、彼と私たちとの間の距離感が、なくなったような気がする。
うん、そうよね。焦る事なんてない。
少しずつ、うちとけていけば良いのよ。
マイの話を聞いて、私はそんな希望を感じ取ったのだった。



「リュウセぇぇぇイ!寝入りばなに怪談話なんかしてんじゃねえぇぇぇえ!本物が来たらどうすんだぁぁぁああ!」
「貴様は俺たちに恨みでもあるのか!はしゃぎ過ぎだ、この小学生が!」
「もういい!お前は外で寝ろ!んでもって幽霊にさらわれちまえ!」
「どうせ貴様のような馬鹿は風邪を引かんから、問題ないだろう!」
「ああああああ!すまねえ!俺が悪かった!だから放り出すのは勘弁してくれぇぇぇえ!」
……隣はずいぶん楽しそうね。
やっぱり、これなら大丈夫かも。

167それも名無しだ:2007/06/12(火) 10:39:07 ID:BAvkP/hQ
>>161
勉強になりますた

>>162-166
面白かった。釣りの時にその話とは相性の良い。魚が引っかかった時のタイミングが良い感じ
セバスチャンが言ってた。「人は自然の中で沢山のことを学ぶ」て

さあ、仕事の続きしなきゃな。スレイをセレブにするぞ
168それも名無しだ:2007/06/13(水) 10:14:41 ID:JjmQpizz
>>167
サンクス(・ω・)/
今にして思えば、静かな場所で釣りをしてたから、つい素直な気持ちになれたのかも知れんね。
169それも名無しだ:2007/06/13(水) 21:47:14 ID:fKTMCYFC
食事中
「今日は暑すぎる」
スレイ「バイトきつかった〜」
「お前は暑い中よくやってるよ」
スレイ「嬉しい♪」
「会社ではギジェがミイラ化してボン太君は死にそうな顔をしていた。若い奴は活気が無いし…」
スレイ「そう…大変だったわね。そうだ、テレビ何かやってないかしら」

鉄矢『夏はプロの麦茶だぜ』
『新発売。さあ、皆もプロのようになろ〜♪』

「何だ、このCMは…」
スレイ「鉄矢さん…」
「やばい…あのブーメランパンツが素敵に見えてしまった」
スレイ「あの輝いてる身体はなんだったのかしら」
「あれはサラダ油か何かを塗ってるんだろ」
スレイ「なんか夏っていいわね♪」
「そうだな。早く海へ行ってお前の水着姿が見たい」
スレイ「あなた、そういうことばかり考えて…もっと、わたし痩せなきゃ」
「おいおい、無理はするなよ。今のままが俺は大好きだ」
スレイ「わたしも今のあなたが好き♪」
「美味かった、ごちそうさま」
スレイ「お粗末様。そういえばアイスあるけど、食べる♪」
「いいね、夏だね」
スレイ「ブライト店長に沢山貰っちゃった」
「凄い量だな。しかも、苺味が七割をしめている」
スレイ「好きなんだもん♪」
「苺が好きなんてお前らしいなあ」

こんな変な会話が夫婦で毎日続いています
170それも名無しだ:2007/06/14(木) 20:48:12 ID:hsE6S3l/
>>169
ボン太くんが死にそうな顔してたとは、かなり一大事だな……。
ギジェ?割りとどうでも良いw
171それも名無しだ:2007/06/14(木) 20:49:28 ID:hsE6S3l/
ほら、アヤ。
口に含んだら、歯を立てずに舌を使うんだ。
「ん……」
アヤ、俺の目を見ながらやれ。
「はうあひいわ(恥ずかしいわ)……」
いいからやれって。
……そうそう。可愛いぜ、アヤ。美味しいか?
「ん……甘くて美味しい」
アヤはニッコリと、子供のような笑顔を見せながら、飴玉をしゃぶっていた。


俺の部屋のベッドの上。
シャツと短パン姿で寝そべる俺の上に、タンクトップとパンティ姿のアヤが身体を重ねている。

購買で買って来た黒蜜飴を舐めてたら、アヤが寄り添って来て、キスをせがむもんだから、ついでに口移しで飴玉もくれてやった。
そしてそのまま、ちょっとしたゲームを始めた次第。

「んー……」
十秒くらい飴玉をしゃぶった後、アヤがキスをせがむ。
緑の黒髪を撫でながら、唇を重ねると、差し込まれた舌を伝って、飴玉が口の中に入る。

口移しで飴玉のやり取りをして、先に溶かしちまった方が負け。
我ながらくだらねーゲームだが、アヤは楽しんでくれている。
「あなたの番よ。歯を立てて小さくしたらダメだからね?」
そう言ってアヤは、さっきの幼い面影のまったくない、淫靡な笑みを浮かべたのだった。

172それも名無しだ:2007/06/14(木) 21:09:53 ID:/gujEbDH
>>170
レスありです。
ボン太君、今日も頑張ってた。ちなみにギジェはミイラ化していたが午後の雨で復活した。萎れた雑巾が水を含んだ感じ。お前は蛞蝓なw

>>171
良いゲームを見せてもらった。ちなみに俺とスレイはポッキーキス。試してみるのも良いと思われ
173それも名無しだ:2007/06/15(金) 20:39:34 ID:TIWYvcIG
誰も来ないから浮上
174それも名無しだ:2007/06/15(金) 20:41:15 ID:TIWYvcIG
浮上してなかった
175それも名無しだ:2007/06/16(土) 20:36:46 ID:T72OT2k+
>>172
サンクス(・ω・)/
ポッキーキスなら、既に通過した道ですが何かw
176魔剣烈剣@:2007/06/16(土) 20:38:13 ID:T72OT2k+
ベッドの上に寝転がり、俺は昼間の模擬戦を思い出していた。
膝枕をしてくれながら、アヤが心配そうな顔で、俺の髪を撫でてくれる。
悪いが今は、そんなアヤのために明るく振る舞おうという気には、とてもなれなかった。



朝っぱらからゼンガー少佐に、格納庫へ呼び出された。
ダイゼンガーの整備が終わったので、模擬戦でテストしたい。そこで、俺に相手を務めろとの仰せだ。
アシュセイヴァーで、あのキワモノロボットと戦えってか!
「お前が乗るのは、アレだ」
少佐がそう言って指差したのは、ヴァイサーガだった。
む、アレならまぁ、何とかなるか。
「上官だからとて、遠慮はいらん。全力でかかって来い」
へっ、言われなくてもそのつもりですよーだ。
俺はパイロットスーツに着替え、ヴァイサーガのコクピットに乗り込んだ。

演習場に出て、ダイゼンガーと対峙する。
さしずめ、鎧武者vs騎士って感じか。
管制室の方を見ると、アヤの横でリュウセイがビデオカメラを構えてるのが見えた。
アヤに向けて、ヴァイサーガの右腕を軽く上げる。
アヤが笑顔で、手を振ってくれるのが見えた。

うっし、んじゃ始めましょーかね!
コクピットの中で「うっしゃあっ!」と軽く吠える。
俺の闘志に答えるかのように、ヴァイサーガは剣を抜いた。

177魔剣烈剣A:2007/06/16(土) 20:39:33 ID:T72OT2k+
>>176
ダイゼンガーは斬艦刀を、剣道の試合でよく見る正眼の形に構える。
液体金属製の刃を展開させない、普通の日本刀の状態のままで。

少佐、良いんですか?斬艦刀はそのまんまで。
『テストするのは機体本体だからな。お前は余計な心配などせず、全力で打ち込め』

へいへい、そういう事なら遠慮なく!
俺はヴァイサーガを真っ正面から突撃させる。

ダイゼンガーの刀が、喉元目掛けて稲妻のように伸びてくる。
その突きを右にかわして、腹部目掛けて剣を振った。
――が、その一撃は、ダイゼンガーがとっさに上げた膝と、同時に下ろした肘に挟まれ、捕らえられる。
俺はすかさず剣を離して、両腕の鉤爪で攻撃――しようとしたが、ダイゼンガーが無造作に刀を振る。
とっさに両腕でガードしたものの、それでもヴァイサーガはかなり吹き飛ばされた。
不安定な態勢での一撃だったってのに、何てパワーだよ……。
パイロットもかなりの色物だが、ロボットの方はその三倍以上のキワモノだぜ。
胸の内で毒づいてると、ダイゼンガーがヴァイサーガの剣を、投げてよこした。
そして、自分はゆっくりと刀を振り上げて……天を指す刀の柄尻に、左手を添えた。

178魔剣烈剣B:2007/06/16(土) 20:41:41 ID:T72OT2k+
>>177
早くもケリを付けましょうってか……おもしれぇ。

俺はヴァイサーガに、剣を鞘に収めさせると、居合いの――風刃閃の態勢に入った。

――実はヴァイサーガには、光刃閃という最大攻撃がある。
だがラミアの奴、俺が機体をぶっ壊しちまうとでも思ってんのか、リミッターを付けて、最大攻撃が出せないようにしていやがる……。
まぁ愚痴を言ってもしょうがねえ。今やれる範囲で、全力を出すだけだ!
拝ませてやろうぜ、ヴァイサーガ!

俺は高々と刀を構えるダイゼンガーに向かって、一気に接近した。
光の粒子をその場に残して、瞬時に距離を詰める。

でぃぃぃぃぃいいいぃぃぃぃやっ!!!!!!!!!!!

コクピットの中で、知らず雄叫びを上げていた。
白刃が鞘走り、ダイゼンガーの胴体を逆袈裟に切り裂くのを確信した。

だが――。

「ちぃぃぃえすとぉぉぉおおおぉぉぉぉおおっ!!!!!!!!」
俺の身体にビリビリと響いたそれは、通信回線越しのものではない、生の叫びだった。
向こうのコクピットからこちらまで、肉声が届く筈がない。
少佐の気迫が、声という形で、俺に届いたのだろうか?

そう考える余裕もなく、次の瞬間、ダイゼンガーの振り下ろした一刀が、剣を振るヴァイサーガの右腕を切断していた。

ポーンと小気味良く、切断された右腕が、剣を掴んだまま宙に舞った。

179魔剣烈剣C:2007/06/16(土) 20:42:48 ID:T72OT2k+
>>178
……くそ、思い出したらまたムカついて来たぜ。

ゼンガー少佐は、斬艦刀を展開しなかった。
早い話が手加減してたって訳だ。
負けた事も充分ムカつくが、それもまた、俺を不機嫌にさせる理由だった。
全力で戦ったんならともかく、手加減してもらって、それでも負けるなんてな……。

「まだ気にしてるの?」
アヤが尋ねる。

当たり前だろ。

俺は愛想なく答える。
我ながらガキくせえ態度なのはわかってるが、それでもそういう態度になりたい気分だ。

「ゼンガー少佐に、手加減されたって思ってるんでしょう?」
他に何があるってんだ。最後まで斬艦刀を通常のままで使ってたんだぞ?
「ん……私もそう思って、あの後少佐に尋ねてみたの。何故手加減したのかって……何て答えたと思う?」
知るかよ。
「手加減なんかしてない……ですって」

――はぁ?

俺は間の抜けた声を上げる。
手加減してないだと?だったら何で……。
「斬艦刀を展開しなかったのは、取り回しを良くして、あなたの乗るヴァイサーガの、素早い攻撃に対応する為……そう言っていたわ」
……ホントかよ。
「あら、失礼ね。こんな時に嘘を言うような、そんな空気の読めない女ではないつもりよ?」
アヤはそう言ってクスクスと笑う。

180魔剣烈剣D:2007/06/16(土) 20:45:16 ID:T72OT2k+
>>179
「何より、ゼンガー少佐はああいう事で嘘を言うような人じゃない。それはあなたも、よく知ってるでしょう?」
子供をあやすように、アヤは俺の髪を撫でてくれる。

……確かにそうだな。
負かした相手に気ぃ使って心にもない嘘を言うような、そんな社交的なタイプか?あの色物侍が。
あの人はいつだって、マジな話しかしない。
だいたい、どうでも良いと思ってる相手を、模擬戦で指名したりするか?
ならば――あの人なりに、俺の事を認めてくれているという事、だよな。

――くだらねえ。

思わず、口に出た。

ああ、本当にくだらねえ。
一人で勝手にウジウジして、アヤに心配させちまうなんて、くだらねえったらありゃしねえ。

自分自身が馬鹿馬鹿しくなって、つい笑ってしまう。

「良かった……少しは元気が出たみたいね」
アヤが安心したように笑う。

ああ、お陰様でな。
俺は答えながら身を起こし、アヤを抱き締める。
「じゃあ、お礼に……そのぅ……」
わかってる。今夜はアヤの奴隷になってやるよ。
冗談半分、本気半分で答え、俺は感謝の気持ちと愛情を込めて、口づけをした。

181それも名無しだ:2007/06/16(土) 21:46:15 ID:/H72KFKG
ちーす。
一週間ぶりくらいのご無沙汰ー。
ラトと同居人でっす。

>>157-159
大人の女。コスプレ付き。
…ケモノだ!w
ていうかエロ祭り?
つー事でエロ祭りの作品持ってきたんだけど…もう終わってるんだろーか。

>>162-166
もう六月かぁ。
キャンプ乙!
平和な時こそ辛い思い出が蘇ってきたりするものだ。

>>169
平和だ!
ブライト店長生きてていいよね。いやマジで。

>>171
あるある。
これはある。
とてもよくある。

>>176-180
キョウスケとゼンガーって精神の根っこの部分が結構似てると思ってるんだけど、
ブラザーももそう感じているのかな。
何か彼らは血が騒ぐっぽい。アシュセイバーとかソウルゲイン、そして無敵の男を見ていると。

全部まとめて乙!
182それも名無しだ:2007/06/16(土) 21:49:57 ID:/H72KFKG

フェアリオンの意識連結部分にバグがあり、ラトゥーニの感情がシャイン王女に
上書きされている。
そう基地の博士に説明されたのが一時間ほど前。
シャイン王女の心は俺で一杯に上書きされ、治療法が見つかるまでは王女の
欲望のガス抜きをしてやらなくては壊れてしまう、という。

俺のアパートのドアの外には銃を持った黒ずくめのグラサン軍団。
リクセント公国のボディーガードに固められ、俺は今、シャイン王女と二人きりで
軟禁状態にあった。

 * * *

まっすぐにこちらを射抜いてくる潤んだ瞳は、限りない湖の青。
そして、欲情、と言っても差し支えない程の頬の紅潮。
12歳の少女にはあってはいけない表情。

「失礼…します」
「!!」

椅子に座った俺の前でゆっくりとスカートの中に手をいれ、ぱんつを下ろし始める
彼女。
膝を伸ばしたまま前屈で足首まで下ろし、靴を履いたまま丁寧に汚れないように
ぱんつだけを脱いでしまう。
183それも名無しだ:2007/06/16(土) 21:50:37 ID:/H72KFKG

王女はそれをガラステーブルの上に置き、注視してしまった俺の視線を捕らえて
にこっ、と純粋無垢な少女の笑みで微笑んで見せる。

「おにいさまが、欲しいのです」

そして、椅子に座る俺の上にゆっくりと対面する形で跨り、抱き締めてくる。
ふわりと香る、子供独特のミルクのような匂い。
そして、どこからか漂ってくる、女を思わせるひどく現実的な、この甘い匂い。

俺のジーンズのジッパーの上に王女の柔らかく小さな手が置かれる。
そろそろとまさぐり始めたそれを、俺は優しく制止した。

「俺への愛情は、まがい物だった筈ですよ」

王女は聞かない。聞こうともしない。

「ライディース少尉の事、お好きだったと聞いています」

はた、と止まる王女の手。

「俺は只の治療の為の道具。これは治療の一環です」
「…わかっています!!」

叩きつけるような王女の言葉。

「わかっているのです!だけど…だけど…!」

俺の胸に顔をうずめる。

「辛いのです…。愛してる…愛してる…これがラトゥーニの感情なら、彼女は
なんてすごい精神力でこれを我慢しているのかしら…。偽者とか本物とか、
もうどうでもいいぐらい辛いのです…。
いつも隣にいたい。触りたい。触って欲しい。抱き締めたい。抱き締めて欲しい」

俺はシャイン王女の頬を両手で優しく挟み、上を向かせて青い瞳を覗き込む。

「奇麗事を言うようですが、王女には自分を大事にして欲しい。抱き締めて
あげます。いつまででも、お好きなだけ。だから、頑張って下さい…」

ぎゅっ、と抱き締めた。
王女の体は小刻みにぶるぶると震えていた。

 * * *

R指定板なのでこのぐらいにしておきますね。
てか、ちとはみ出たか。
184それも名無しだ:2007/06/16(土) 22:03:54 ID:T72OT2k+
>>181
感想、まとめてサンクス(・ω・)/

んー、やっぱゼンガー少佐もナンブ中尉も、戦いで飯食ってる訳だし、こだわらずにはおられんのかね?
185それも名無しだ:2007/06/16(土) 22:07:24 ID:T72OT2k+
>>182-183
GJ。ラトゥーニのブラザーへの想いの強さが、思わぬ形でわかっちまったよ。

だがブラザー、安心してくれ。これくらいはまだ許容範囲内の筈だ。
365日エロ祭りで、ついにアヤとレッツ・ボルトインする場面すら書いちまった俺に比べれば、YOUはとっても紳士的だぜ!('-^*)/
186それも名無しだ:2007/06/17(日) 08:35:28 ID:LIVU1mIF
>>185
サンクス!
恋の病っていうか禁断症状か!とか書いてて思ったり。

>ボルトイン
ボルテスかい!w
>紳士
ふふ、当然だよ。英国紳士としてはね。(レイトン教授

…ゴメン、嘘。
安心したよー。ありがとう。
187それも名無しだ:2007/06/17(日) 12:40:26 ID:InTpSRaU
>>186
>ボルテスかい!w

いや、だってさ……俺の股間の「ボルト」がアヤに「イン」しちゃう訳だしw
188それも名無しだ:2007/06/17(日) 17:50:57 ID:LIVU1mIF
>>187
それはそうなんだけどさw

ボルテスって5人乗り…
多人数同時プre(ストライクシールド
189それも名無しだ:2007/06/17(日) 19:26:51 ID:InTpSRaU
>>188
はぅあっ!言われてみればそうじゃねえか!
俺とした事が……これじゃただの鬼畜外道……!

よし、ここは紳士的に、シンメトリカル・ドッキングに脳内訂正しといてくださいw

190番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/17(日) 19:29:46 ID:InTpSRaU
優しさと月 厳しさと日(前編)

新人くんがチームに配属されてからの、今日は初めての合体演習。

正直に言うと、合体の度に私は、物凄い不安とプレッシャーに襲われてしまう。
私のR−3が合体の要となるのに、私のT-LINKコンタクトは未だに安定してるとは言い難い。
それでも、今までは何とか成功させて来れたけど、だからといって次も成功するなんて保証は、どこにもない。
演習場へ向かう輸送艦の中で、私はそんな不安から、つい暗い顔になりがちだった。

「大尉、大丈夫ですか?」
そんな私を心配したのか、新人くんが声を掛けてきた。
「今日の演習の事で、何か悩みでもあるんですか?」
はぁ……まだ出会って1ヶ月も経ってない彼にまで、見抜かれちゃうなんて……何だか自分が情けなくなっちゃう。

私は、自分の素直な気持ちを、新人くんに打ち明けた。
「……失礼ですが、そんな後ろ向きな気持ちじゃあ、出来るものも出来ませんよ。大尉自身が、前向きな強い気持ちでないといけません」
答える彼の口調には、相手を突き放すような、どことなく冷たいものがあった。
191番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/17(日) 19:31:46 ID:InTpSRaU
>>190
「まだコクピットにも乗っていないうちから、もう失敗した時の言い訳を考えてるようじゃ、合体演習なんてやるだけ無駄です」

――言い訳?

彼の物言いに、少しカチンと来た。
私なりに、チームの事を思っていろいろ考えてるのに、それを言い訳と切って捨てられるのは、いくら新人くんでも不愉快だわ……。
あなたにはわからないでしょうけど、SRXの合体は……。
「合体の難しさは、Only-One-Crushなんて物騒な名前で呼ばれてる事から、わかります。ですが、それを今まで何度も成功させて来たんでしょ?」
だからといって、次も成功する保証は……。
「それが言い訳だって言ってるんです。次も成功する保証はない。だから失敗しても仕方がない。そんな気持ちじゃあ、上手くいく筈がない」
彼はキッパリと言い放つ。
こんなにズケズケと物を言う子だとは、思わなかったわ……!

あなたなんかに、私の何がわかるって言うのよ!

ついカッとなって、怒鳴ってしまう。
「わかりませんね。グヂグヂとくだらねえ事考えてる暇があったらどうして、何が何でも成功させてやるって、自分を奮い立たせたりしないんです?本当にチームのためを思うなら、そうするべきでしょ」
彼はあっさりと言い返す。

192番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/17(日) 19:33:29 ID:InTpSRaU
>>191
「……これ、俺の家族です」
彼はそう言って、懐から一枚の写真を取り出して、私に見せた。

新しい軍服を着た新人くんと一緒に、ご両親と、お姉様と思しい女性が映ってる。

「俺はいつだって、絶対に生きて家族の元に帰るんだっていう、強い意志をもって戦って来ました。大切な家族のために、何が何でも生き延びるっていう強い気持ちがあったから、今もこうして生きています。
大尉もチームを大切に思うなら、どうか強い気持ちを持ってください」
彼の口調から、いつの間にか冷たさが消えていた。
真剣な声で、私に訴えかけていた。

でも、気持ちだけで何が出来るの?
「俺に言えるのは、気持ちすらない人間には、何も出来ないって事だけです。大尉、どうか腹をくくってください。チームのためにも、大尉ご自身のためにもね」
新人くんは写真を懐にしまうと、立ち去って行った。


――輸送艦が演習場に到着した。
私は、R−3パワードに乗って、発進する。

新人くんの言葉が、頭から離れない……駄目よ!今は集中しなくちゃ!
合体を成功させて、あの生意気くんを絶対に見返してあげるんだから!
私は自分にそう言い聞かせた。

193番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/17(日) 19:35:36 ID:InTpSRaU
>>192
ヴィレッタが、パターンO.O.C.のプロテクトを解除する。

T-LINK、フルコンタクト!念動フィールド、ON!
『いくぜ!ヴァリアブル・フォーメーション!』
リュウの掛け声と共に、私たちは合体シークエンスに入る。

フライトユニットを装備した新人くんのゲシュペンストが、こちらを見ているのを、モニターの隅に捉えつつ、私もR−3パワードを変型させる。
PT三機を念動フィールドで支えるのは、未だに骨が折れる。だけど、負けられないわ!

変型したR−1とR−2が合体を完了。
それをフィールドで包みながら、私はプラスパーツから切り離したR−3を合体させようとした。

……くううっ!だ、駄目……保たない!

ほんの一瞬、集中力が途切れてしまう。
次いで、機体を物凄い衝撃が襲う。
軸がズレて、R−3がR−2にぶつかってしまったのだ。
展開していた念動フィールドも、一気に消えてしまう。
『アヤ!大丈夫か!』
『いかん、フォーメーションを一時解除する!』
リュウとライの声が聞こえてくる。

ああ……みんな、ごめんなさい……やっぱり私は……。
絶望感、無力感、そして仲間への罪悪感で、目の前が真っ暗になる……。
その時、新人くんの声がした。

194番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/17(日) 19:38:00 ID:InTpSRaU
>>193
『合体は続行だ!そのままでいろ!』
激しく怒鳴りつける新人くん。
『何言ってんだ!だってアヤが……!』
『続行は危険だ!一旦中止してもう一度……!』
『やかましい!合体中止しやがったらぶっ殺すぞ!フォーメーションを続けろ!』
その声と同時に、コントロールを失って落下していたR−3の下から、何かがぶつかるような衝撃が。
新人くんのゲシュペンストが、R−3を支えてくれていた。
『大尉、早く続行してください!リュウセイとライまで落っこっちまいます!』
新人くんはR−3を支えたまま、上昇する。

でも、私は……。
『あんたがやるしかないんだ!腹ぁくくれ!俺があんたを支えてやる!だからチームはあんたが支えろ!』

私が、チームを支える……?

一瞬、みんなの顔が脳裏をよぎる。
ああ……そうよ、みんな私を信じてくれてる。私がここで踏ん張らなくちゃ、みんなの信頼はどうなるの?
みんなのためにも、私がやるしかない!

意を決して、私はもう一度T-LINKコンタクトを行う。
念動フィールドでリュウたちを支え、コントロールを取り戻したR−3を上昇させて、R−2に連結させる。
そして、手足に変型したプラスパーツを連結。
最後に、頭部に変型した、R−1のシールドを連結させて、合体完了。
『天下無敵のスーパーロボット!ここに見参!』
リュウの決め台詞と共に、SRXは大地に降り立つ。
機体越しに、地面を踏みしめる感触を感じ取った瞬間、私は目の前が真っ暗になった。
何とも言えない達成感に包まれながら……。

195それも名無しだ:2007/06/17(日) 19:40:15 ID:InTpSRaU
連投規制が怖いので、ここでちょっと休憩しますm(u_u)m
196番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/17(日) 22:28:55 ID:InTpSRaU
>>190-194
優しさと月 厳しさと日(後編)

「てめぇ、どういうつもりだ!」

――リュウの怒鳴り声で、私は目が覚めた。
ここはどうやら、輸送艦の医務室のベッドの上らしい。
見ると、マイがこちらに背を向け、入り口から廊下の様子を伺っている。
私もベッドを出て、廊下に顔を出す。

廊下では、リュウが新人くんの胸ぐらを掴んで詰め寄っていた。
いつもなら仲裁に入る筈のライも、今日は険しい顔でリュウの側にいた。
「貴様は、自分が何をやったかわかっているのか?」
「てめぇが無理矢理合体を続行させたせいで、アヤはぶっ倒れたんだぞ!」
二人とも、私のために怒っているみたい……。
でも新人くんは、少しも怯む様子はなかった。
「合体は成功しただろうが」
サラリと言い返す新人くん。
「それでアヤが気絶しちゃ、本末転倒だろうが!」
「貴様にはわからんだろうが、合体における大尉の負担はかなりのものだ。あそこは、一旦合体を中止して、改めてもう一度フォーメーションに入るべきだったんだ!」
「……んな事したって、意味ねーだろ。どうせまた失敗するのがオチだ」
新人くんは、また冷たい声に戻っていた。
「なんでわかるんだよ!やってみなきゃわかんねーだろ!」
リュウは今にも殴りかかってきそうな勢いだった。

197番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/17(日) 22:31:01 ID:InTpSRaU
>>196
「わかるさ。大尉は責任感が強くて、しかし、非常に繊細な方だ。一度失敗したら、自信をなくして次に悪影響を及ぼしかねねえ」
新人くんは、淡々と答える。
「今日は駄目だったけど、明日は上手くやろうなんて、そんな楽観的に構えられねえし、簡単に気持ちを切り替えられねえんだよ。お前ら単細胞と違ってな」
「単細胞だと……?」
ライが言われて、眉間のシワを深くする。
「だから、次の成功に繋げるためには、今日も絶対に成功させる必要があったんだ。今日の成功が自信になり、その自信が次の成功に繋がる……だから続行させたし、大尉はご自身の力で、見事やってのけたぜ。何か文句あるか?」
「大ありだ!それでアヤに何かあったら、どうするつもりだったんだよ!」
「そん時は、腹ぁかっさばいて、死んでお詫びするさ。その覚悟の上でやった事だ」
「てめぇ……!」
リュウは新人くんの態度に我慢出来なくなったのか、拳を振り上げる。

やめなさい、リュウ!

私は廊下に出て、新人くんをかばうように、二人の間に割って入った。

「あ、アヤ……」
「大尉……」
リュウもライも、私が新人くんをかばったのが不思議なようだ。

198番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/17(日) 22:32:28 ID:InTpSRaU
>>197
「アヤ、何でそいつの肩を持つんだよ……!」
「大尉が気絶したのは、コイツが合体を続行させたせいで……」
でも、続行を決めたのは私自身の意志よ!?

私は強い口調で答える。

今日の合体で改めてわかったわ。
私は心のどこかで、あなたたちに甘えていた……その甘さが、合体の障害になっていたのよ。
思えばイングラム少佐も、その甘さを断つ為に私を撃った筈……。
だから少佐の意志を無駄にしないためにも、あなたたちも私を甘やかすのはやめてちょうだい。

……リュウもライも、マイも、新人くんも、目を丸くして私を見ていた。
「アヤ……俺たち別に、そんなつもりは……」
リュウが恐る恐るといった感じで、口を開く。
ええ、わかってるわ。
だけど、仲間っていうのはお互い支え合うものでしょう?私一人が、みんなの好意に甘える訳にはいかないわ。
みんなには、これからも私を支えてほしい。その代わり、あなたたちの事は、私に支えさせてほしいの。
リュウとライの手をギュッと握って、私は笑ってみせた。

「わ、わかったよ、アヤ……」
「改めて、これからもよろしくお願いします。大尉」
二人はそう答えてくれた。
「わ、私も頑張る!」
マイも小さな手を、私の手に重ねる。

199番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/17(日) 22:34:09 ID:InTpSRaU
>>198
ありがとう、みんな……。
新人くんも、改めてよろしく……って、アラ?
振り向くと、新人くんの姿がない。

「アヤ、起きて大丈夫なの?」
そこへヴィレッタがやって来たので、新人くんの事を尋ねる。
「彼なら、向こうの方へ行ったわ。早足で歩いてたから、トイレじゃないかしら?」
「いや、そっちは格納庫だし、トイレなら反対側の方が近いだろ……」

――ひょっとして、照れくさくなって逃げたのかしら?

私、ちょっと様子を見てくるわ?

みんなに言い残して、私はヴィレッタが指差した方向へと歩いていった。


格納庫に行くと、彼は自分のゲシュペンストを見上げていた。

もう、どうして逃げたりしたの?

声を掛けると、彼は一瞬こちらを見てから、顔をそむける。

リュウたちに言われた事、気にしてるの?
「理由や結果はどうあれ、大尉の命を賭けのテーブルに乗せたのは事実です」
彼は申し訳なさそうに答える。

――そうね。だけど、おかげでまた一つ、吹っ切れたような気がするわ。
私は笑って、そう言った。
強がりでも、気休めでもない。
私の、素直な気持ちを。

200番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/17(日) 22:35:16 ID:InTpSRaU
>>199
今日の演習で、前より強くなれそうな気がする……あなたのおかげでね。
「俺は何もしてません。全て、大尉ご自身の力です」
そんな事ないわ……私は昔から、みんなに支えられて、やっと一人で歩ける……そんな感じだったもの。
イングラム少佐に撃たれた時も、そうだった……。
「支えられていようがいまいが、大尉が歩く事が出来るという事は、大尉には歩く力があるって事ですよ」
彼は穏やかな声で言ってくれた。

そうね……少なくとも、歩く事は出来る。
なら次は、人の手を借りずに歩けるようになれるし、走る事も出来るわよね?
「もちろんです。大尉にはそれだけの力があります」
うなずく彼の言葉は、力強かった。

ありがとう。その期待に、しっかり応えなくっちゃね。
これからもよろしくね、新人くん!
「イエッサ」
簡潔な答えの後で、私たちはグッと握手をした。

彼の手は、相変わらず燃えるように熱い。
だけどその熱さが、私には頼もしくて、心地良く感じられたのだった。

201それも名無しだ:2007/06/17(日) 22:36:55 ID:InTpSRaU
以上、投下完了。

何でこんな長くしちゃったんだろう……orz
202それも名無しだ:2007/06/18(月) 06:49:52 ID:sBu15CBb
>>190-200
非常にGJ!
内容に、そして長さに。
ゲシュペンストで機体を支える所、ブラザーの荒削りだけど想いに溢れているところ。
それぞれのキャラの感情の動きも説得力がある。
後、この時期だとアヤ大尉もイングラム少佐の影を引き摺っている頃なんだよね。
その辺りの描写もよろしい、と言わせて頂く!(レーツェル

マイの握手参加にちょっと笑ったけど。可愛いw
203それも名無しだ:2007/06/18(月) 10:38:28 ID:xhnOcIoc
>>202
サンクス(・ω・)/

正直、こんなに長くなっちゃって自分でも驚いてる。
頭に浮かんだ場面をドンドン詰め込んでいくと、こうもなるのか、と。

あと、認めたくはないが、アヤにとってイングラムはやはり特別な存在だった訳だし、やはり避けては通れまいと思う。

とりあえず好評で良かった。
204それも名無しだ:2007/06/18(月) 10:40:02 ID:xhnOcIoc
パイロットスーツ姿で、アヤは格納庫へ早足で歩いている。
俺はそれを追いかけながら、再び声をかけた。

なぁ、アヤ。機嫌直してくれよ。

アヤはそこでピタッと足を止めて、肩越しに俺を睨み――プイッとそっぽを向いて、また歩き出す。
俺はため息を一つついて、アヤを追いかけた。


昼休み。
飯食った後、アシュセイヴァーの調整の事で、ラミアにちょいとアドバイスを求めた。
ラミアは相変わらずのポーカーフェイスで答えてくれたが、その様子をアヤに見られちまった。
よっぽど仲睦まじく見えたのか、我が麗しの君はすっかりご機嫌斜めと相成った次第。
たく、女は手間がかかるぜ……。

しかし、こうやってへそ曲げて、ガキみたいな態度になるアヤも可愛い……そもそも、俺の事を愛してくれているからこそ、こうやって機嫌が悪くなる訳だしな。
それに、ここだけの話だが、俺も人の事は言えない。
上官であるアヤを呼び捨てにするリュウセイと、それを咎めたりせず、「リュウ」とあだ名で呼ぶアヤ。
そんな二人のやり取りを端から眺めながら、ひょっとして付き合ってるのか?と、不安と嫉妬に胸をかきむしられる思いに何度もなった。
それをアヤに思い切って打ち明けたら、大爆笑されたが。

205それも名無しだ:2007/06/18(月) 10:42:34 ID:xhnOcIoc
>>204
それはともかく。
俺はアヤの前に回り込み、両肩を掴んだ。
アヤ、頼むから機嫌直してくれ。ラミアとは本当に、ただ話をしてただけなんだ。

アヤは眉間にシワを寄せて、キッと俺を睨む。
「どうかしら?最近は他の女の子たちとも仲が良いみたいだしね!」
いや、確かに仲は良いよ?でもあくまでも、同僚としてであって、俺にとって特別なのは、アヤ一人だ!
頼むから信じてくれ……俺がアヤに嘘をついた事、一回でもあったか?
アヤの、宝石のように汚れのない瞳を、真剣な眼差しで見つめながら、俺は尋ねる。
「それは……ないけど……あっ」
――どうした?
「一度だけ、あったわ」
はぁ?冗談キツいぞ、アヤ!俺がいつお前を……。
「ほら、あなたがチームに来てからの、最初の合体演習(>>190-200)の時よ」
ええっと……俺、何て言ったんだっけ?
「私にご家族の写真を見せて、『俺は家族のために生きて帰るっていう、強い気持ちで戦ってきた』って……あなたのご家族はもう、亡くなっていたのに……」
あー……そんな事言ったな、そういえば。
あの時は、アヤの不安や弱気を払拭しなきゃならんと、必死だったからな。

206それも名無しだ:2007/06/18(月) 10:45:16 ID:xhnOcIoc
>>205
ああ、確かにあの時は、ああ言ったさ。
でも、嘘とはちょっと違う。家族が生きてた時は、本当にそういう気持ちで戦ってたしな。
それが嘘をついた内に入るとしても、それはアヤに、前向きな強い気持ちを持ってほしかったからだ。
あの頃から、俺の気持ちは変わってない。
俺は、アヤを愛してる。アヤのためなら、どんな事だって出来る。
どんな時でも、アヤをこの世のあらゆる残酷さから守ってあげたいんだ。

「…………」
アヤは、頬を赤く染めて、潤んだ眼差しで俺を見る。

「もう……馬鹿」
嬉しそうにつぶやいて、軽く身を屈めて、俺の胸に顔をうずめた。

――ふぅ、機嫌を直してくれたようだな。んじゃ、仲直りのキスでもするか。
「ん……」
アヤはスゥッと、迎えるように目を閉じる。
緑の黒髪を撫でながら、唇を近付けた瞬間――。

「エッチなのはいけないんだぁぁぁぁあああぁぁああっ!!!!!!!!!!!」


――突如響いたマイの叫びと共に、俺は午後の訓練を休む羽目になった。

207それも名無しだ:2007/06/18(月) 19:23:34 ID:nGdY5Nok
>>204-206
>写真
成る程。そういう訳か。
前メッサーに乗ってた頃に、既にあれは起こっていた筈だからねー。

でもまあ、これは良い嘘だ。そこにGJ。
バレなきゃもっと良かったんだろうけど、しょうがない。

そういえば、マイちゃんお誕生日オメ!(何歳かわからんが)

つ【激辛香辛料セット】【映画チケット×3】
郵送だけど送っといたよん。
208それも名無しだ:2007/06/19(火) 01:37:37 ID:8Pmq51Fp
>>207
>マイの誕生日
ぬふぅ……完璧に忘れてたっつーか、ノーマークだったわ……orz

209それも名無しだ:2007/06/19(火) 12:25:50 ID:8Pmq51Fp
いろいろあって、若干日程がズレはしたものの、今日はマイの誕生パーティーをやった。

トロンベに頼んで料理を作ってもらったが、アヤの手作りサンドイッチの方が、マイには最高のご馳走だったようだ。
コイツのこんな幸せそうな顔は、見た事ねえぞ?

料理を食べ終わった後は、誕生日プレゼントを贈呈する。

リュウセイ…フルアクションフィギュア「究極可動バーンブレイド」。

ライ…ムーンストーンとかいう宝石のピアス。6月の誕生石らしい。

ヴィレッタの姐さん…口紅。今から練習しておきなさいとの事。

アヤ…さっきの手作りサンドイッチ+お揃いの浴衣。

俺…紫陽花の花束。



「……お前のプレゼントが、一番手抜きで安上がりだな」
ほっとけ、クソガキ。
つーか、振りでも良いから喜べよ。足りない頭使って、必死に考えたんだぞ?
「ふふん。そういう事なら、その足りない頭に免じてありがたくもらってやる」
口では生意気な事をほざいているが、その子猫みたいな瞳は、紫陽花の鮮やかな色合いに見とれていた。

210それも名無しだ:2007/06/19(火) 12:28:43 ID:8Pmq51Fp
>>209
プレゼントを渡し終えると、カラオケ大会で(主にリュウセイが)盛り上がる。

「元気な女性……だったわよね」

リュウセイとマイのデュエットを眺める俺に、横からアヤがおもむろに声をかける。

な、何の事だ?

「紫陽花の花言葉よ。さしずめ、元気な女性に育ってほしいってとこかしら?」

……へ、へぇ〜……そいつは良い事聞いたぜ。今度テストに出るかも知れねえから、覚えとこうっと。
何となく恥ずかしくなって、俺は目をそらしてしまう。

「出ないわよ。だいたい何のテストなの?」
律儀に突っ込み入れながら、アヤはクスクス笑う。

あー、くそ。何でバレたんだ?まさかこれも念動力か?
そんな事を考えながら、俺は照れ隠しにオレンジジュースを一気にあおるのだった。

211それも名無しだ:2007/06/19(火) 12:31:26 ID:8Pmq51Fp
>>207
ブラザーからの贈り物は、到着次第有効活用させていただきますm(u_u)m
212それも名無しだ:2007/06/19(火) 17:46:14 ID:Kov+LUT7
>>208-211
いや、正直マイに興味はないんだけどねw
でも某スレでその話題だったので、じゃあSRX組は今頃パーティーだなって。

後、プレゼントには拘らなくていいよん。
ネタの予備弾のつもりで投げただけだし。
そろそろ一年だもの。

紫陽花は元気になって欲しい人へ、か。

…プレゼントには人柄が出るなあ(ニヤニヤ
213それも名無しだ:2007/06/19(火) 21:29:33 ID:8Pmq51Fp
>>212
べ、別に花言葉なんか知らなかったんだからね!?
綺麗だし、今の時期にピッタリだと思っただけなんだから!

>後、プレゼントには拘らなくていいよん。
>ネタの予備弾のつもりで投げただけだし。
>そろそろ一年だもの。

それで「郵送」で送った訳ね。
まぁ、こちらもとっさにネタが浮かばなかったので「到着次第」とさせてもらったけどw

それにしても、もうそんなになるのか……。
スレタイが理由でスレストくらったのも、今では良い思い出ですw
214:2007/06/20(水) 00:03:41 ID:Emqbhura
お久しぶりです。
新参者ですよぅ。


人の姿、人のかたち。
式を打つ時に使う紙の人形、丑の刻参りの藁人形。そして、世間を騒がす機動兵器。どれもこれも、人の姿をしている。
なぜこうも人の形なのか…俺は目を伏せて思う。答えはある。が、それは割愛する。聞きたければ水羊羹をもって事務所へ来るがいい。来月の廿日からなら時間がある。
「…全力で現状から目をそらして、先にある休暇に想いをはせとるとこ悪いんやけどな」
いや、待て。廿日はイルイを町内プールに連れて行かねばならん。その次…廿一日からなら時間がある。
最早、本職が探偵である事など声を大にして言えぬところではあるが、これも仕事。働かざる者、食うべから…
「己に無理矢理な言い訳をしてまで、現実から逃避したい気持ちもわからんではないねんけどな…」
いや、待て…えーと…
「…目の前にある事実から逃げ出すネタが切れたとこで申し訳ないんやけどな…」
「…えぇい!」
俺は目を見開いた。俺の視線の先には、金髪釣り目で狐耳の…要するに妖狐の九重がいる。
「何だ、九重。どうしてお主が不機嫌なのだ。昨夜、痛いのを我慢して精をとらせてやったろうに」
俺は二の腕をさする。絆創膏の下には、九重の歯形がついているだろう。
九重は仏頂面のまま、俺を睨んでいる。九重の目の奥で、たまに緑の火がちかっと光っているところを見ると、かなり怒ってはいるようだ。
「藤原家四十二代目宗家ともあろう人が、式神の腹ん中も覗けんでどうすんねん」
「俺はお主の心は読まん。人の心も読まん」
「だから教師の腹ん中も読めへんねんか?何やねん、この中間考査の結果はぁ!」
「九重、それは中間テストといって…」
「じゃかまし!」
「仕方なかろう、仕事も重なっておったし…」
「何が仕事や!ウチを置いてやれイルイのお付きだ、やれクスハの護衛だ…と。そんなん探偵の仕事ちゃうわ。便利屋やっ!」
九重の平手が卓を叩いた。茶碗が舞う。
「ウチは情けないわ!これでも本家を出る時は七瀬や六道に八雲をよろしくって言われとったのに…」
「七瀬や六道は関係なかろう!」
「何でやねん。八雲の幼馴染みやないかい、七瀬は。六道は…ちょっと変わっとるけど…て、そんなんええわ。何て事や…ウチがついていながら、八雲を人生の落伍者にしてしもうた!」
「誰が落伍者かっ!!」
「ん」
「ぬぐ…主を指さすとは…お主には式神としての自覚が…」
「なーにーがー式神やねん。今必要なんは補習や!そこで、ウチが八雲の為に一肌脱いだる!ウチが教えたる!今後、ウチの事を九重先生と呼ぶようにっ!3、2、1、はい!」
「ちょっと待て、そんなに気合を入れんでもな…」
九重、八重歯が出てる出てる。
「あかん!これも、八雲のためなんやで。ウチもつらいんや…あ、授業中は教師に絶対服従やから。…さて、着替えてこよ」
…。今、結構大事な事をサラッと言ったような…。見ればスーツに眼鏡まで用意する完全武装ぶりだ。
いかん。このままでは…
その時、不意に携帯が鳴った。
俺はこの時ほど、携帯の着信をありがたいと思った事はない。
215:2007/06/20(水) 00:04:50 ID:/YoUhu7G
「ブランシュタイン〜?どこのボンボンやねん」
女教師九重作戦が実行寸前で失敗した九重は、妖気を隠す事なく発散させながら俺の横を歩いている。
耳はうまく隠せているが、八重歯はちらり、ちらりと顔を覗かせる。この貌を見れば、やはり九重は妖狐・くだぎつねなのだと思い出す。どうも近くにいすぎて、忘れていたようだ。
話を戻そう。
電話はクスハからだった。
何でも、軍のえすあーるえっくすちぃむとやらに属するブランシュタイン殿の部屋で、正体不明の声が聞こえるのだそうだ。
それも、若い女性の声。最初は侵入者の線で調査がされたが痕跡はなく、ブランシュタイン殿も私物から空調の配管まで調査したが結果は空振り。
しかし、声はその後もたびたび聞かれ、何かしらの原因があるのは避けようもない事だった。
軍は部外者が関わる事をよしとはしなかったが、他でもないクスハの知人という事で、俺の出番となったのである。
「大方、昔フッた女の生き霊でも憑いとんのやろ。この魔削ぎの狐の目はごまかされへん」
…と。自分の思惑がいいところで寸断された九重が毒々しい気炎をあげている。
そんなに女教師九重作戦の阻止が口惜しいというのか…。
ま、こんなでも仕事だ。せめて依頼人の前ではまともになって欲しいものだ。

ブランシュタイン殿は、九重のような金髪の士官であった。白磁のような肌、涼しげな眼差し…およそ美丈夫と言ってよい。
俺たちは勧められるがままに腰かけた。挨拶をすまし、話を聞く。この時、九重の瞳が燐光を帯びる。無論、ブランシュタイン殿は気づかない。
「…貴方のお名前を呼ばれるか」
相槌を打つのに合わせて九重に視線を走らせる。九重が僅かに首を振った。九重の目には何も見えなかったらしい。この者に憑き物はない。ならば。
「…あいわかりました。どうやらこの件、貴方に憑き物がいる訳ではないようです」
「私に…では何が?」
俺は立ち上がった。
「古来より、百聞は一見にしかずと申されば…現場にて怪に尋ねるが上策と思われまする」
「…心当たりでも?」
「無論。では、参りましょう」
俺は微笑んだ。
依頼人の恐れを取り除く笑み。恐れは心に隙を作る。怪異どもは、その隙につけこむ事にかけては生まれながらに熟達している。
とは言っても、今回はそのような事には恐らくなるまい。
心当たり、に嘘を言うつもりはない。
まぁ、それも現場に行ってみればわかる事だ。
216:2007/06/20(水) 00:05:57 ID:Emqbhura
ブランシュタイン殿の部屋は、軍人という職もあってか質素なものだった。
なるほど、これでは私物を調査するにしても、調査するものがない。卓の上の書物、写真立て、クローゼットの服、日用品、そんなものしか見当たらない。
しかし、これで充分だ。
九重は部屋に入るなり不満そうな顔をしている。妖蟲を喰らうつもりでおったのだろうが、陰の気がない。
むしろ、漂うのは陽の気だ。俺の予想は的中した。
「ブランシュタイン殿、わかりました。貴方の名を呼んでいたのはこれです」
「!?」
ブランシュタイン殿の柳眉が曇る。俺が指さしたのは写真立て。無理もない。
「…どういう事か、ご説明いただけますか?」
「勿論。まず貴方は、この回答を馬鹿げた事とお思いですか?」
「…素直に納得できる話ではないと思いますが」
「それは何故?」
「それは…写真は話しません」
「ではお尋ねしましょう。写真には姿が写る。が、気持ちは写らぬと何故お思いになるか?」
「な…」
「これは、『画霊』です」
「が…りょう?」
「思いや念のこめられた絵画が長い年月を経て変ずるものです。こめられた思いや念により、すすり泣くもの、怨み言を吐くものとありまするが…」
「…」
「この写真にこめられた思いは…無垢。それ故に、純粋で強い。それで画霊となったのでしょう」
写真には俺の知らぬ少女が写っている。服装からすれば、どこぞの姫君だろうか。その微笑みは可憐ではあったが、どことなく哀しげでもあった。
「…」
「この写真を貴方に贈った少女の気持ちを、少しでも察する事ははできませぬか。さすれば、この少女の気持ちも少しは安まるでしょう」
「…私は」
「この少女を愛しろとは申しません。ただ…文の一つでも…。思いは、近くなければ伝えられぬものではありますまい」
それから、ブランシュタイン殿はしばし黙りこんだ。ただ、じっと写真の少女に目を向ける。そして、ようやく、
「…シャイン王女」
その時、動かぬはずの写真の少女が、より可憐に微笑んだ気がした。
217:2007/06/20(水) 00:07:11 ID:Emqbhura
「…結局、半分は当たっていたのだな」
ブランシュタイン殿と別れた帰り、俺は独り言のように言った。
「…何がや?」
「お主の言葉だ」
「ん…何か言うた?」
「生き霊」
「あ、あれかいな。でも、画霊は生き霊ちゃうやないか。写真にこめられた思いやもん」
「そうだが…」
俺はそんな事を話したいのではなかった。
離れていても、あれほどまでに相手を想える者もいる。しかし、俺は九重が何故あれほど怒ったのかわからない。
主と式神。それなのに。こんなに近くにいるのに。
「…すまぬ」
「何がや?」
「俺は、お主をわかってやれておらん」
「な、何やの?」
「俺は、お主が何故あれほど怒ったのかわからぬ。それが、悔しいのだ。申し訳ないのだ」
「…八雲」
「すまぬ」
「…なあ、八雲」
「何だ?」
「クスハやイルイでも、八雲は同じように思う?」
俺は九重の顔は見なかった。見てはならない気がした。
「…思わん」
「何でや?」
「クスハもイルイも、言わば他人だ。だが、お主はちがう」
式神だから…式神…。
いや…
「なら、ウチも謝らなあかん」
「…九重?」
九重の言葉に、俺は思考を止められる。
「ウチな…」
「ん?」
「ウチ…」
珍しく九重が口ごもった。釣り目が困ったように伏せられ、紅い瞳が泳ぐ。夕陽のせいか、頬が赤い。
「…九重?」
「あ、あーもぅ、ウチも謝る!だからこれでしまいやっ!」
「…?」
「な、何やねん!ウチも謝る言うとるんや!それでええやんか!」
「そ、それは構わんが…何をそんなに慌てておる」
九重の頬が紅潮した。
「慌ててなんかおらへん!」
「いや、慌てておろう」
「慌ててへん言うとろうが!」
九重はそう言うと、俺を追い越してさっさと歩き出した。いくら呼べども振り返りもしない。
やはり、わからぬ。
わからぬが…俺は九重との距離が、少し縮まったような気がしていた。


藤原八雲の事件簿3
終幕〜
218それも名無しだ:2007/06/20(水) 00:57:16 ID:BNdii/ot
>>214-217
何だ、このベタベタなオチはーっ!w
俗に言う様式美ってやつですか?ツンデレってやつですか?

GJでした。


それとライ、手紙の一つも送らんとは何事か……今度説教してやらねばw
219それも名無しだ:2007/06/20(水) 07:45:36 ID:dwOtILmK
>>214-217
おお、お久しぶり!!
そして、これは…凄まじい。
ありえない程にGJ!!11

キャラの組み立てから動き、台詞回しの自然さ、巧みさ。そして面白さ。
ボキャブラリーの豊かさ。
いつもの事だけど神過ぎ。
もう、さっさとプロデビューしなさいw(もうしてたらすみません

読者としての感想。
九重をアニメで見たい。誰か作ってー。
後、八雲の素直な性格が好きだなぁ。傲慢さが無いし、優しいし。
基本は強力な式神使いだけど、中学生らしく幼く脆い所もあったりして。
ラストもGJ!その為の冒頭の前振りだったのだな、と。

そして。
…ライディース…?
シャイン王女…?

ヤバ。
変なSS書いたばっかりじゃん…w
こここ殺されるっw
でもここまで想いが強いのなら安心だ。
二人の未来に幸あれ(お前が言うな

ラトと同居人でした。
220それも名無しだ:2007/06/20(水) 08:45:01 ID:BNdii/ot
「手紙を書きたいのだが、何と書けば良いだろうか……?」
ライがいきなり部屋にやって来て、質問してくる。

何だよ、いきなり。
手紙って誰にだ?
つーか、何か伝えたい事があるから、手紙を書くんじゃねえのか?
「いや、実は……シャイン王女に手紙の一つも送ってやろうと思ったんだが……思ったんだが、その……」
――シャイン王女?
なるほどな。

俺はその名前を聞いただけで、納得した。
今のライが、妙に歯切れの悪い物言いをしてるのも、手紙の内容が浮かばず俺に助けを求めるのも、全ては恥ずかしさ故というやつか。

しかし、本当に唐突だな。
この前、知らないガキと色っぽいネーチャンを基地の中で見かけたが……あれは関係ないか。

しかし、そういう事はアヤやヴィレッタの姐さんに聞いた方が……。
「隊長は会議で、大尉はマイと食事に出かけている。リュウセイは、こういう時はインクの切れたボールペンよりも役に立たん事はわかるだろう」
確かに。

よっしゃ、そういう事なら、いっちょ俺もない知恵絞って考えてやるか。
とりあえず、立ち話もアレだし、入れや。
「すまん。感謝する」
ライはペコリと軽く礼をして、部屋に入った。

221それも名無しだ:2007/06/20(水) 08:46:50 ID:BNdii/ot
>>220
冷たい麦茶を飲みながら、俺とライはテーブルを挟んで、考え始める。

手紙の文面だが……王女様も色々忙しかろうし、あまり長いのは、読む暇がないからNGだな。
「うむ」
簡潔に内容をまとめれば、王女様も返事の手紙を書こうって気分になりやすいだろうし。
「そういえば携帯のメールも、長い文より短い文の方が、相手も返信しやすいと聞いた事がある……」
まぁ、その辺の調節は、お前自身に任せるが。
「だが俺は、手紙を送りたいだけであって、文通をしたい訳では……」
返信不要ですと言わんばかりの手紙を書いてみろ。
やっぱりライディー様は私の事を疎ましく思ってたのですね〜!とか言って、泣き出しちまうぞ?
「む……だが……」

――よし、わかった。
相手を傷付ける事なく、かつ返信不要な文章を教えてやろう。
「そんな便利な文章があるのか?」
ライが疑わしそうに、眉をひそめる。
ふふん、任せとけ。
ただし、気持ちがしっかりこもってないと効果はねえ。
一字一句じゃ、まだ生ぬるい!一画一画に魂をこめて書け!
魂かけりゃあ攻撃力は一気に三倍だからな!
「攻撃してどうする」
良いから書け!紙持って来てんだろ?
「ああ……」
ライはテーブルに、やたら上等な便箋を出した。

222それも名無しだ:2007/06/20(水) 08:49:31 ID:BNdii/ot
>>221
そして、やたら高そうな万年筆を用意した。
「……で?」
うむ、まずは「いつか」と書け。
「い……つ……か……」
次は「迎えに」。
「むか……え……に……」
最後は、「行きます」だ。
「い……き……ま……す……と。しかしたったの一行で……む?」
どうした?
「――いつか迎えに行きます……貴様、これはある意味プロポーズじゃないのか?」
いや、プロポーズだよ。
こうやって書いときゃあ王女様も、いつか愛しのライディー様が白馬に乗って迎えに来てくださいますわ〜!とか言って、喜ぶぞ?
王女様のハートをキープしたまま、相手に返信の負担も与えない一石二鳥の妙案!
ふっ、自分の策士ぶりが、チョッピリ怖いぜ……って、ライディースくん、何で左拳をググッと握り締めてるのかな?
「一瞬でも貴様を信じた、俺が馬鹿だった……」
ちょ、ちょっと待てライ!麦茶でも飲んで落ち着け!
あ、黒蜜飴舐めるか!?癒される甘さだぞ!?
と、とりあえず落ち着け!左手は!お前の左手はマジでやばいんだって!
「俺に出会った不幸を呪えぇぇぇぇえっ!!!!!!!」


     し
     ば
     ら
     く
     お
     待
     ち
     下
     さ
     い
      ゜

223それも名無しだ:2007/06/20(水) 17:08:51 ID:6j9l0Je8
小さな傷なら舐めればいい。
大きなものならそれなりの手当てをして。
治るべきものはそうやって治っていく。

だが、記憶や想いはどうすれば治るというのか。
二人の想いは、過去には通じ合っていたのだろうが…。

封筒の裏に書かれた名前は、ライディース・F・ブランシュタイン。
シャイン王女が受け取った手紙だ。
「いつか、迎えに行きます」
何故かちょっとよれよれになった便箋。
書いて、迷って。握り締めて。
何度も封を破っては取り出し、意味も無く内容を確認してはまた封筒に突っ込んだ。
そんな風情だ。

ひとつ溜息をついて、膝の上に頭を乗せて眠っている新たな同居人を見下ろす。
シャイン・ハウゼン。
編んだ細い金髪と、額に輝くヘッドティカ。
細いうなじと華奢なからだ。幼いながらも端正な顔立ち。
白を基調にした、まるで中世の絵画から抜け出てきたかのような豪奢なドレス。

シャイン王女は事故でラトの俺への気持ちを刷り込まれた。

俺は、ここ何日もシャイン王女の為を思って心を壊さぬよう細心の注意を
払って一緒に生活してきた。

俺は何もしていない。
正確には、何もしようとしない事に全力を注いでいる。
そして。
この手紙には、ライディース少尉の出せる限りの気持ちが篭っている。

王女を膝に乗せたまま、大の字にひっくり返って天井を仰いだ。
リクセント公国の強大な財力で世界中の研究機関を当たっているらしいが、
まだ王女の回復の目処は全くと言っていい程立っていない。
コンピュータに例えれば、今の王女の脳は悪いウイルスにデータを上書きされた
ハードディスクって所だろうか。

バックアップも無いのにどうやって元の状態に戻せと言うのか。
王女の想いは殺された。
フェアリオンの意識連結システムのバグに。

目を瞑る。
―ライディース少尉は、俺が憎いだろうな。

目を開けると、ラトゥーニが心配そうに覗き込んでいた。

「ラト…」
「うん?」
「シャイン王女、元に戻んないのかな」

ラトは無言のままだった。
224それも名無しだ:2007/06/20(水) 21:55:54 ID:BNdii/ot
なに?結局あの手紙、出しちまったのか?

今日の訓練を終え、部屋でアヤを待ちわびながら、一人ノンビリしてたところへ訪ねて来たライ。
彼の口から、昨日のあの冗談半分に書かせた手紙(>>220-222)を送ったと聞かされて、マジで驚いた。
俺を義手でぶん殴った後、自分でクシャクシャに握り潰したってのに。
「俺にもわからん……ただ、出しておかなくては、後悔しそうな……そんな気がした」
ライは軽く目を伏せ、真剣な顔で答える。

何じゃそりゃ。
お前、あの文章はプロポーズみたいだってゴネてたじゃねーか。
「だから、俺にもわからんと言っている……そうだ。俺には、自分の気持ちも、王女の気持ちもわからん」
王女様はお前が好きで、お前だって王女様の事は嫌いじゃねえんだろ?
「ああ……俺も、王女には好意を抱いている。彼女が俺を必要としている時には、いつでも駆けつけてやりたい」
何だ、わかってんじゃねーか。
「そうじゃない。その気持ちは、どういう意味なのか。それがわからない……」
――なるほどね。
例えばアヤに、俺とマイの事をどう思ってるかって聞けば、愛してるって答えるだろうな。
でもその「愛してる」は、それぞれで意味が違う。
そういう事か?
「そういう事だ」
ライは簡潔に答える。

225それも名無しだ:2007/06/20(水) 21:58:04 ID:BNdii/ot
>>224
「王女の好意も、単に周囲の人間と毛色の違う男に対する好奇心なのか、それとも亡くなられたお父上を重ねているだけなのか……それとも、俺を純粋に、一人の男性として見ているのか……時々わからなくなる」
まったくお前も難儀な性格してるな。

だが、何となくわかる。
俺も、時々アヤの気持ちが見えなくなりそうに感じる。
俺の知らない間に、気持ちが俺から離れちゃあいないかと不安になる。
それはアヤも同じらしくて、だからこそ触れ合う事で、お互いの気持ちを確かめ合ってる訳だが。

しかし、ロクに会えず、話も出来ないコイツはそうもいかんしなぁ……。


――そうだ、良い事思い付いた。
「猛烈に嫌な予感がするんだが……何だ?」
ほれ、王女様がラトゥーニと一緒に乗ってた二機のロボットがあったろ。ゴスロリオンとかいう……。
「フェアリオンだ……で?」
あれにお前と王女様が乗って、お互いの精神をリンクさせりゃあ良いんじゃねえ?
そうすりゃお互いの気持ちが一発でわかるってもんだ。
「……馬鹿馬鹿しい。そんな事で理解出来れば、苦労はしない」
とか言って、今一瞬考えたろ。
「からかうな」
まぁ、冗談は置いといて。

226それも名無しだ:2007/06/20(水) 21:59:32 ID:BNdii/ot
>>225
少なくとも、王女様をこの世のあらゆる残酷さから守ってあげたい。その気持ちには、嘘偽りはねえんだろ?
「ああ」
なら、今はそれで良いだろ。
あとは、今度会った時にでも直接話をして、確かめりゃあ良い。
別にお前も王女様も、明日になったらこの世から消えてなくなる訳じゃなし。
「……そうだな。今お前とくだらん話をしたところで、何の解決にもならん。今は、それで良しとしよう」
ライは晴れやかな微笑を浮かべる。
「やはり、王女と文通でもしてみよう。少なくとも、お喜びにはなろうからな」
おう、そうしてやれ。
俺はライを廊下まで見送る。
「わざわざすまなかった……ありがとう」
そう言ってライは左手を差し出す。
俺は軽く握手に応じてやった。

あ、ちょっと待て。

自分の部屋に戻ろうとするライの背中に、呼びかける。
「何だ?」
振り向いたライに、俺はポケットに入ってた黒蜜飴を投げてよこす。

疲れてるから、ゴチャゴチャくだらねー事考えちまうんだ。
それ食って、ゆっくり休め。

「そうだな……そうさせてもらう」
ライは笑って、飴玉を左手で受け取った。

227それも名無しだ:2007/06/20(水) 22:05:07 ID:BNdii/ot
>>223とリンクしてるかしてないかは、各人のお好きなように解釈してくださいm(u_u)m

いや、ブラザーの今後の展開が読めないもんで(^_^;)

余計な事だったらマジでごめんなさいm(u_u)m
228それも名無しだ:2007/06/20(水) 23:26:04 ID:6j9l0Je8
>>227
いや、単に鬱展開書きたかっただけ…って言ったら怒られそうだけど。
幾つかまだやり残した事があるんだよね。
その為にブレーキ掛けた。
せっかくエロシャイン導入した事だし。(やりたい事ってエロかよ!

次回、どうにもならない状況に追いつめられる主人公。
エロシャインの魔の手が迫る!
ラトはどうなる?!

なんちってね。サービスサービスゥ(古
229それも名無しだ:2007/06/20(水) 23:41:54 ID:/YoUhu7G
新参者ですよぅ。
お久しぶりでした。
皆さま、お元気なようでよかったです。

>>218
いやー…ベタベタでしたねぃ…
先読み可能な展開でごめんなさいです。
しかも、今回は黒天狐も黒烏も出撃せず…
手抜き感バレバレ?
うひゃあ、平にご容赦を。

>>219
こんばんはです。
お誉めにあずかり、大感謝です。
楽しんでいただけたなら、よかったぁ…

そ・れ・と。
ププププロデビュー!?
こんな凡才にチャンスをくれる、神な出版社ありませんよぅ。
言っていただけただけ、嬉しゅうございます。

その後の展開を投下してくださった皆さま、すばらしいです。
楽しんで読ませていただきました。
GJです!
230それも名無しだ:2007/06/21(木) 00:22:06 ID:mID2A8/k
スレイの夫です。少し開けていたのと、読んでなくて申し訳ない
今回は顔出しだけなんでレスは付ける気は無いです
同居人さんと不死身の男さん、感想ありがとうございます

結果が出る人が羨ましい
231それも名無しだ:2007/06/21(木) 08:50:09 ID:1Es3l4OD
>>228
なるほどね。
次回は エ ロ 祭 り という事になる訳ですな?w

>>229
いやいや、安心して読めたよん('-^*)/
俗に言う様式美ってやつですな。

>>230
お帰り。
読みたい時に読んで、書きたい時に書けば良いじゃないか(´∀`)
無理しちゃダメよん('-^*)/
232それも名無しだ:2007/06/21(木) 17:50:59 ID:7voYp/a/
>>229
また!そんな!ご謙遜を!(ビシビシ
あ、痛かったですか…?
うーむ力が入りすぎたか。

とにかくGJでした!

>>231
強調すんな!!w
コーラ噴いた。

>>230
押忍!!
233君の夫は、もういない:2007/06/21(木) 21:20:17 ID:7YNvrdRv

ユーラシア連邦宇宙要塞アルテミス。
その一室に、紫の髪をした一人の青年が寝かされていた。

男「…………う、うう……」

男は目を覚まし、辺りを見渡す。

男「…………ここは……?それに、『俺は』……?」
メリオル「お目覚めですか、クレーズ特務兵」
男「クレーズ……それが俺の名か……って、あんたは誰だ?ここは一体どこだ?」
メリオル「ここはユーラシア連邦宇宙要塞アルテミスの医療室です。
    私はアルテミス所属のアガメムノン級戦艦オルテュギア管制担当のメリオル・ピスティスです」
男「…………教えてくれ、俺は何故ここにいる?そして何故俺は以前のことが思い出せない?」
メリオル「あなたはアルテミスで開発されたMS『ハイペリオン三号機』のテストパイロットだったのですが、
    機動実験中に後頭部を強打、それ以前の記憶を失ったものであると思われます……失礼」

通信が入り、メリオルはパネルに向かった。
その男に遠目に見えたのは、禿頭に帽子をかぶったこの要塞の指揮官らしい男だった。
男には二人の会話までは聞こえなかった。

一方、地上では、複数の人間が話をしていた。
その中の青髪の女性は悲鳴にも似た驚きの声を上げた。

青髪の女性「行方不明!?」
緑髪の青年「ああ、あの後俺たちは大西洋連邦の新型『105ダガー』のテストパイロットをやったんだが……」
黒髪の青年「途中でザフトに遭遇、彼の機体が撃墜された」
茶髪の女性「あたしのブレンが脱出ポッドを確認したって言ってるんだけど……」
中華風の男「なにぶん厳しい戦闘でな……ポッドを追う余裕がなかった」
青髪の女性「そんな…………」

男「なあ、メリオル…だっけ?」
メリオル「はい、何でしょうか?」
男「そろそろ俺のファーストネームを聞かせてほしいんだが……」

メリオル「ああ、そうでしたね。あなたの名は……」

青髪の女性「……もう、会えないの……?」

メリオル&シャナ=ミア「「ゼア=ウィド」」
234君の夫は、もういない:2007/06/21(木) 21:21:41 ID:7YNvrdRv
お久しぶりです、ゼア=ウィドシリーズ新章突入です。
これからも楽しんで呼んでいただければ幸いです。
今後ともよろしくお願いします。
235それも名無しだ:2007/06/22(金) 11:45:15 ID:T6fPgA8y
>>233-234
美術館閉鎖の次は記憶喪失かよ!
何だ、その怒涛の展開はーっ!w

236それも名無しだ:2007/06/22(金) 11:48:04 ID:T6fPgA8y
>>232
>強調すんな!!w
>コーラ噴いた。


すまん、俺の中の野獣の血が反応しちまったようだ。
噴いたコーラはこれで拭いとき。
つ◇【←懐紙】
237それも名無しだ:2007/06/22(金) 16:18:28 ID:ycR8qwLf
>>231
ありがとう、そうなんだよね。だけど、面白いものを書かないと誉められないと思ってしまってその考えが頭の中で毎日ループしてしまうんだよ

>>232
押忍!!

>>233
話が見えないのはこれからパズル形式で色々と出てくるのかな。少し期待してしまいそうだ
238それも名無しだ:2007/06/22(金) 20:06:19 ID:ycR8qwLf
昼休み 実験室
オペ子A「あら、いたの?いたならいたって言ってくれればいいのに」
ラピス「・・・交代です」
オペ子A「じゃあ、後は頼むわよん♪」
・・・。
ラピス「それでは実験を始めます」
シャア「了解した・・・(ラピスたんハァハァ・・・)」
「調子どうだ?」
ラピス「・・・」
「・・・(相変わらずしゃべらんな)」
ラピス「・・・」
「まずまずの数値だな。果たしてあのロリコンニートのおじさんがどこまで行くのか」
ミッテ「あら、来ていたの?」
「ああ、ミッテさん」
ミッテ「困るわよ。関係者以外入っちゃ」
「まあまあ、いいじゃないですかちょっとくらい」
ラピス「・・・ここは関係者以外立ち入り禁止です」
「ラピスちゃん・・・君まで・・・分かった帰ることにするよ」
シャア「ラピスたんハァハァ!」
ラピス「?」
ミッテ「凄い数値ね。ラピス、もう少し何かしゃべりなさい」
ラピス「え・・・あの・・・」
シャア「ハァハァ・・・!」
ミッテ「凄い!予想以上の数値ね。これなら次の学会で1間違い無しよ♪」

通路
「さっきは追い出されちまった」
ルー「無理ないわ。どうせ、ラピス目当てでしょ?」
「違うやいっ。俺にはスレイという妻がいるんだ」
239それも名無しだ:2007/06/22(金) 20:38:01 ID:T6fPgA8y
>>238
あのまま放置したら、シャアが暴走したりせんだろーなw

まぁ、ララァの背後霊が何とかしてくれるだろw
240それも名無しだ:2007/06/23(土) 12:17:12 ID:naw6xri5
「ん……あん……」
アヤの悩ましい声が、部屋に響く。
彼女の上で、俺が覚えたツボを刺激する度に、アヤは声を漏らして、くすぐったそうに身をよじる。
その度にベッドはギシギシと音を立てて軋んだ。

この上で、何度も何度もアヤと濃密な時間を過ごしたが、一人用にしちゃエラい頑丈だなと感心する。

それはともかく、俺はアヤの身体のツボを、うつ伏せた背中を眺めながら、ゆっくりと丹念に責め続けた。
「あっ……いい……!」
俺の動きに合わせるように、アヤの可憐な唇から快感の声がこぼれる。
「そこ……もっと、して……」
――ここか?
言われるままに、刺激を与える。
ここが良いのか?
「んっ……良い……」
いちいち確認しなくても、その声色から、アヤが気持ち良くなってくれてるのがわかる。
「もう……こんな事、どこで覚えたの?」
アヤが俺のために色々と努力しているように、俺も色々と勉強してるのさ。
何せ俺は、アヤを心から愛してるからな。
「んっ……馬鹿……うぅんっ!」
俺がここはと思う場所を突くと、アヤはまた切ない声を上げる。
どうだ、アヤ。気持ち良いか?
「んんっ……気持ち良い……きもちいい〜〜〜〜っ!!」
我を忘れた至福の声に、俺は何とも言えない喜びと達成感を感じた。

241それも名無しだ:2007/06/23(土) 12:20:55 ID:naw6xri5
>>240
全てが終わると、俺はアヤの上から離れて、ソファに座った。

ふぅ、ちょいと飛ばしすぎたかな。手が疲れちまった。
「でも、おかげで体中がほぐれちゃったわ。何だか、体が軽くなったみたい」
アヤが俺の隣に座り、子猫のようにすり寄ってくる。
「これなら、プロのマッサージ師としてもやっていけるかもよ?」
そうか?
もしそうだったとしても、俺はアヤ以外の客を取るつもりはないけどな。
答えながら、アヤを抱き寄せて、髪を撫でる。

しかしチームリーダーってのは、本当に疲れる役回りなんだな。
肩だけじゃなくて、他にもあちこちこってたぞ?
「そうねぇ……特に、どこかの誰かさんがすぐに無茶をするから、余計にストレスたまるのかも」
あぁ、だからその誰かさんにストレスぶつけてる訳だ。

昨夜みたいに。

「もう!わかってるんならもう少し慎重にやりなさい!」
アヤがプゥーッと膨れっ面して、頬をつねる。
「本当に心配ばっかりかけさせるんだから……馬鹿」
言うなり、俺の胸にすがりつくアヤは、まるでちっちゃな女の子だ。
「罰として、これからもちょくちょく、マッサージしてもらいますからね?これは命令よ!?」
イエッサ。
俺はそう答えると、おもむろに唇を重ねた。

「んっ……んふ……」

明らかに濡れた声を漏らすアヤが、俺の首に両腕を回して舌を絡ませて来るのに、時間はかからなかった。

242それも名無しだ:2007/06/23(土) 13:05:15 ID:ECBo5XBI
>>239
読んでくれたのか、サンクス。あれ以降あの場所に行ってないから分からないなあ

>>240-241
素晴らしいw
243君の夫は、もういない:2007/06/23(土) 18:20:15 ID:Ln+ge5sj

宇宙要塞アルテミス。
そのパイロット待機室で、三人の男が会話をしていた。

カナード「貴様が三号機のパイロットか?」
ゼア=ウィド「ああ、どうもそうらしい」
バルサム「ま、仲良くやろうや。俺はバルサム・アーレンド。
    人は俺を『アルテミスの荒鷲』と呼ぶ」
ゼア=ウィド「へえ、凄いな。荒鷲か……」

感心しているゼア=ウィドに、隣の長髪の男がこう言い放った。

カナード「と言っても、こいつの撃墜マークはシミュレーションのもの、
    異名も自分で名乗っているだけだ。俺はカナード・パルスだ」
ゼア=ウィド「そうか、俺はゼア=ウィド・クレーズ。よろしくな」

地上。
軍の施設に一人の青髪の女性が怒鳴り込んできた。

シャナ=ミア「お願いです!私が祭典で使用したラフトクランズを出してください!」
ちずる「落ち着いてくださいシャナ=ミアさん!一体何があったって言うんですか!?」
シャナ=ミア「ゼアがっ…ゼアが行方不明に……!」

シャナ=ミアはかろうじてそう言うとその場に泣き崩れた。

ちずる「シャナ=ミアさん……オルガ君、説明してくれる?」
オルガ「ああ、実は……」

アルテミス司令室。
メリオルと指揮官であるガルシアが会話をしている。

ガルシア「では、全ては順調なのだな?」
メリオル「はい。…偶然この要塞付近に漂流していた脱出ポッドを一人の情ある兵士が回収、
    それに乗っていたのはフューリーの女王シャナ=ミア・エテルナ・フューラの伴侶
    ゼア=ウィドだった。我々は彼に精神操作を行い以前の記憶を抹消し、彼は我々の同志だという
    偽の真実を突きつけ彼を味方につける……あの兵士がポッドを拾ったのはラッキーでしたね」
ガルシア「ああ、これで三人のハイペリオンパイロットが揃った。もう我々ユーラシアに敵はいないぞ……」

ガルシア「全ては!我々ユーラシア連邦のために!ふふふ……ふはははははは!!」
244それも名無しだ:2007/06/24(日) 04:39:07 ID:ih3RD4/j
>>243
記憶喪失自体は、事故じゃなかったのね……先が楽しみ。

245それも名無しだ:2007/06/24(日) 04:40:13 ID:ih3RD4/j
朝の7時。
今日が日曜日である事を考えると、早い時間と言える。

俺はアヤの部屋の前にいた。
目の前のドアが、今はやたら分厚く、そして重く感じる。
それでも俺は、思い切ってインターホンの呼び出しボタンを押した。



――きっかけは、ほんの1時間前の事だ。
俺は自室のベッドの上で、まどろんでいた。
そこへ、アヤが真っ白な裸身を重ねながら、いつにない真剣な表情で、質問してきたのだ。

「もしも私が死んだら……どうする?」

突然すぎて、言葉が出なかった。
身を起こして、何故そんな事を聞くのかと尋ねると、夢を見たらしい。
異星人の総攻撃を受けてSRXが大破し、R−3の部分に直撃を受けて死ぬ夢。
その夢では、何故か俺はSRX組には入ってなかったらしい。

――馬鹿げた質問だ。
俺は絶対にアヤを死なせない。
どんな敵からだろうとアヤを守ってみせる。
俺は迷わず答えた。

「――もしもの話よ?嬉しいけど、ちょっと答えになってないわね」
アヤは表情も変えずに、そう返す。

もしもアヤが死んだら、か。
――その時は、どんな方法だろうと、必ず生き返らせる。
我ながら馬鹿げた答えだが、俺は真剣に答えた。

246それも名無しだ:2007/06/24(日) 04:41:56 ID:ih3RD4/j
>>245
俺にとって、アヤは掛け替えのない女性だ。
それを失う事は、死よりも恐ろしい。

例え悪魔と契約して、この肉体と魂をグラム10円で安売りする事になったとしても、アヤを生き返らせる。
イカレた答えなのは百も承知で、俺は言い切った。

――だが、アヤは悲しそうな顔をするだけだった。

「それも嬉しいけど……私は、あなたの重荷にはなりたくない。その時は、私の事なんか忘れて、他にもっと良い人を」

パァンッ!

アヤの言葉を、乾いた音が遮った。
一瞬の間を置いて、俺は自分がアヤの頬をぶった事に気付いた。
「………」
アヤが頬を押さえ、信じられない物を見るかのような視線を俺に向ける。

「ごめんなさい」

小さく呟くと、彼女はベッドを出て、服を着る。
引き止めようとしたが、上手い言葉が思い付かない。
そんな俺から逃げるように、アヤは部屋を出た。


私の事なんか忘れて、もっと良い人を見つけてほしい。
アヤは多分、そう言いたかったんだろう。
それは純粋に、俺の幸福を願ったからだ。
俺だって、死後もアヤの中で美しい思い出として残るならともかく、亡霊のようにアヤの心を縛り付けたくはない。
だから、立場が逆なら同じ事を言った筈だ。

247それも名無しだ:2007/06/24(日) 04:45:15 ID:ih3RD4/j
>>246
だが俺は、自分の想いが軽い物に見られてるように感じて、そんな自分勝手な思い込みから、アヤに手を上げてしまった……。
アヤがどんな気持ちで、あんな質問をしたのか……どんな気持ちで、あんな事を言ったのか、知ろうともせずに。

――どうしよう。

頭を抱えた。
これからどうするべきか、足りない頭を使って考えた。

あんな質問をしたアヤが悪い。
そうささやく声もあったが、それは無視した。
変な夢を見れば、変な質問の一つもしたくなるだろう。
いずれにせよ、手を上げた時点で、100%俺が悪い。
ならば答えは一つしかない――謝ろう。
そう決意して、俺はアヤの部屋の前に立った。

来る途中も、いろんな考えが頭をよぎった。
この行動もまた、自分勝手な感情を優先してるだけなんじゃないか?
今は、一人そっとしておいてやるべきじゃないのか?

だが、ある可能性を考えると、足を止め、部屋に戻る事など出来なかった。
何故なら、今アヤは、俺に嫌われたのではないかと不安に震えてるかも知れないからだ。
俺を傷付けてしまったのではないかと思い込み、泣いているかも知れない。

その不安や悲しみを取り除けるのは、俺だけだ。

嫌ってなんかいない。
傷付いてもいない。

そう言って、安心させてやりたい。
初めて逢った時から、俺はアヤを、この世のあらゆる残酷さから守ってあげたいと、心に決めていたのだから。

248それも名無しだ:2007/06/24(日) 04:47:25 ID:ih3RD4/j
>>247
インターホンのボタンを押して、呼びかける。

アヤ、俺だ。
話がしたい。顔を見せてくれ。

――少しの間を置いて、ドアが開いた。
アヤの端正な顔には、涙の痕があった。
やはり泣いていたのか――いや、俺が泣かせっちまったんだ。

罪悪感に胸をえぐられながら、俺は部屋の中に逃げ帰ろうとするアヤを、優しく抱き締めた。

ぶったりして、悪かった。許してくれ。
耳元でささやく。

「お……怒って、ない?」
恐る恐るアヤが尋ねる。
怒ってなんかない。
アヤは俺の事を思って、ああ言ってくれたんだろ?
それを俺が勘違いして、カッとなっただけだ。
もう怒ってない。
穏やかな声で答え、さっきひっぱたいちまった頬を、優しく撫でる。

本当にごめん。
痛かっただろ?
「叩かれた事より、あなたを怒らせたんじゃないか、傷付けて、嫌われたんじゃないかって……そっちの方が怖かった……」
ああ、やっぱり……それで、こんなに泣いていたんだな。

目尻に浮かぶ涙の粒を、指でそっと拭ってやる。

大丈夫。俺はアヤを嫌ったりなんかしてない。
心から愛してるよ、アヤ。

そう言って、俺はゆっくりと唇を重ねた。
唇を離して、真っ直ぐにアヤの顔を見つめる。
「よ、良かった……あたし……あたしね……あたし……」
安心からか、アヤの目からはポロポロと涙がこぼれ落ちる。
そのままアヤは、小さな子供のように泣き出した。

俺はアヤを部屋の中に連れ込む。
抱き締めて、口づけをして、思い付く限りの愛の言葉をささやいて、慰めてやった。

249それも名無しだ:2007/06/24(日) 04:49:07 ID:ih3RD4/j
>>248
「ん〜っ!お腹いっぱい!」
レストランを出て、アヤは満足そうな声を上げる。

このランチで盛大に飛び去って行った、我が財布のお札たちを思うと、俺はため息が出そうになるが。

「さぁ、それじゃあ次は〇〇でブーツを買って、△△で水着も買わなくっちゃね!もうすぐ夏だもの!あ、あと夏物の服も欲しいわね〜……□□で良いわよね?」
マジかよ……全部アヤと付き合い始めてから耳にするようになった、高級店ばっかじゃねえか。
勘弁してくれと言いたくなるが、今日1日アヤの奴隷になる事で、ひっぱたいた事をチャラにしてもらう約束だから、仕方がねえ。

「ほら!早く行くわよ!」
イエッサ。
答えながらも、やっと見せてくれた弾けるような笑顔に、俺も口元が緩む。
給料日前にスッカラカンになるだけでこの笑顔が見れるなら、安い買い物だ。

俺の前を楽しそうに歩くアヤに、道行く男どもが揃って視線を向ける。

今のアヤはヘソ丸出しのチューブトップに、パッツンパッツンのミニスカートとハイヒール。
小脇にはバッグと一緒に、着用の意志0の薄いジャケットを抱えている。

こんなイケイケな格好した美人が、初めて遊園地に来た子供のようにはしゃいでるんだ。
男なら、そらぁ気になるわな。
ふふん、良いだろ良いだろ!

 俺 の 女 だ !

全宇宙に宣言してやりたくなるような、優越感がこみ上げる。

「ちょっと!何をボサッとしてるの!」
アヤが両手を腰に当てて、こちらを向く。
な、何でしょう?
「ほらっ、早く手を繋ぎなさい♪」
……イエッサ。
差し出された白く優しいその手を、俺は暖かな気持ちで、しっかりと握ったのだった。

250それも名無しだ:2007/06/24(日) 14:33:39 ID:UZ50QYVT
>>245-249
乙&GJ
感動した。仲直りできて良かったね。うん、本当に
最近、文章を読むのが嫌だったが最後まで勢い良く読めたのが不思議。興味を引ける文章なのかな、と
> 俺 の 女 だ !
素晴らしい、言い切ったなw俺も言い切れるが尊敬するよ
それにしてもアヤさんは飛んだ子悪魔ちゃんだなw財布、やばいんだろ?頑張るしかない

なんだか俺だけ置いてけぼりのように感じてしまった。ネタ書かないとなあ
251それも名無しだ:2007/06/24(日) 15:37:54 ID:UZ50QYVT
休日の午前中、ソファーでゴロゴロして麦茶を飲む。この前CMでやっていた『プロの麦茶』なんだが……今もブーメランパンツ姿の鉄也さんが頭から離れないのは呪いのようだ。
良い天気だ。空は雲一つもない。外から子供たちがはしゃぐ声が聞こえてくる。これが俺達が護ってきた平和なのかなと感じられて幸せだ。
スレイは外で洗濯物を干している。ここからはスレイの後姿が見える。

うむ、なかなか良い尻だな。上下する二つのお肉がたまらんw尻とか脚とかを見る人はおっさんだと聞くが、俺は自覚している。

スレイの後姿に見惚れていると、俺はあるおかしいことに気づいた。
手の動きが止まっている。ここからだとあまりよくは見えないが遠くの方を見ている様子だ。

何かあったんだろうか?

心配して外へ出てみるとスレイはまだ遠くを眺めていた。1メートルほど近づいたがスレイは俺の姿に気づかない。
そうか……向こうの子供達を見ていたのか。しかも物欲しそうに……。
なんだか勝手に見ている自分の胸が苦しくなってしまった。分かっている、誰のせいでもない。だけど、スレイは毎回病院科行く度に自分を責める。とにかく、慰めないと。
俺は後ろから優しくスレイの首周りに手腕をまわし抱きしめてやった。

スレイ「ひゃっ……!?」
しゃっくりが勢い良く出てきたような可愛い驚き方だ。
スレイ「いたの?」
「ああ、少し前からな。お前がぼーっとしてたから心配してやってきた」
スレイ「ごめんなさい」
申し訳なさそうに謝るスレイ。後ろからも悲しんでいると感じられる。
「謝らなくてもいい。また、子供のことでも心配してたんだろ?」
スレイ「うん、実はそうなの……」
下を向いて俯くスレイ。
「何度も言ってるじゃないか。天才とオタクの子なんだから時間が掛かるんだって……だから焦らず頑張らず気の向くままにやればいいさ」
スレイ「そうね……ごめんなさい」
「だから謝るなって」
俺はスレイを抱きしめる力を強くした。するとスレイも答えるように俺の手の上に自分の手を重ねてきた。
熱い手だ。あの戦争の最中、海のように……。
スレイ「あなた、覚えてる?婚約した日のこと」
何を言い出すかと思ったら、俺が考えていたことだった。お互い心が通じ合っていると思うと頬の辺りがくすぐったくなる。
「ああ、覚えてるさ。お前が最高に綺麗だったあの日を……今でも最高に綺麗だがな」
スレイ「うふふ、幸せ♪」
元気出したみたいだ。俺も凄く嬉しくてスレイの首筋を後ろからキスしてやった。
スレイ「ひゃん……、あなたムード壊した」
少し意地悪をされた少女のような、怒った声だった。しかし、実際は凄く喜んでいる。旦那の俺なら確実に分かる。
「何を今更w俺を興奮させたのはお前だろうに。それにお前を見ていると凄く嬉しそうだ」
スレイ「分かる?」
嬉しそうに質問する。
「分かるに決まっているだろう。お前と俺は夫婦なんだから」

この後はその場で少しいちゃいちゃしてしまった。ちょっと外で行っていることを忘れて先へと進んでしまった俺は破廉恥な男かもしれん。

スレイ「あなた、あんな元気な子が欲しい」
なんて可愛くねだるんだw俺のスレイちゃんはwwwのーぷろぐれむ、任せなさい。

ハザル「ルリアよ、この格好は格好良いだろう?」
ルリア「その辺の子供と大差はないと思われますが……」
ハザル「そうか。俺はこの子供の中で一番格好良いのだぞ、ルリア。さあ、今から虫取りだ」
ルリア「かしこまりました」
なんだか大きな子供だな。スレイが指を指した子供は……
「って子供じゃねぇしwwwwww」

ハザル「ルリア、大変だ!体が何故か、かゆくなってしまった!!」
ルリア「ハザル様、それはこの星の蚊という虫だと思われます」
ハザル「蚊という虫だと!?俺のヴァイクランで消滅させてくれるは!!見ていろよ、蚊め。今こそ、俺の編み出した新技を見せてやる!!」

俺とスレイはそのTシャツハーパンで虫取り網を持った男と虫取り籠を持った女を見届けた。
後から気づいたことだがあれは家のお向かいさんだった。最近は姿を見ず声だけが聞こえていたから忘れていたんだろうな、きっと。
252それも名無しだ:2007/06/25(月) 16:01:20 ID:kwo8tUXD
>>250
サンクス(・ω・)/
なぁに、アヤの笑顔に比べりゃ屁の突っ張りにもならんぜよw

>>251
ちょ、ハザル坊w
根性入れ直してやらにゃならんから、誰か大雷凰持ってこいw
253それも名無しだ:2007/06/25(月) 21:51:47 ID:lrH6CRNt
>>252
ありがとう、アヤさんはブランド物とか好きなんだな。
スレイは可愛い系や腐女子系が大好きなんだよ。まあ、腐女子系は一緒に住んでからだけど……。
俺がね。スレイにお前をセレブにしたいって言ったんだ。だけど、スレイは可愛いので満足だって、豪華な物は好まないらしい。うん、俺好みの女になったもんだ。
>根性入れ直してやらにゃならんから、誰か大雷凰持ってこいw
うん、大雷凰なら間違いなく勝てるよ。そして地球は平和になる。
254番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/26(火) 16:09:36 ID:ccQtU5bK
眠れない月 夜日

昼間のDC残党との戦闘のせいか、何だか寝付けない……。
お酒でも買って飲もうと思い、部屋を出るが、今夜に限って購買は閉まっていた。

どうしよう?
このまま部屋に戻るのも何だか癪だけど、かと言ってする事もないし……。
そこへ、新人くんがやって来た。
あなたも眠れないの?
「えぇ、まぁ……購買、閉まってるんですね……」
そうなのよ。
私も眠れなくて、お酒でも買って飲もうかと思ったんだけど……って、どこに行くの?
「コンビニ行ってきます」
この時間だと、外出の手続きも普段より時間かかるわよ?
「別にいいです。このまま部屋に戻るのも、何か癪だし」
……考える事は一緒なのね。

じゃあせっかくだし、私も行くわ。
そう言って、私は新人くんについて行く。
あ、でも勘違いしないでね?
あくまでもリーダーとして、あなたを監督するだけなんですからね?
――って、何を言い訳してるんだろ、私。
でも新人くんは、
「ええ、わかってますよ」
と優しく言ってくれた。

基地の守衛さんは、いつも以上に時間をかけて手続きを済ませて、外出許可を出してくれた。

やっぱり深夜の基地周辺は、暗くて静かね……。
夜間訓練を行う別の部隊も、今は演習場に出払ってるから、本当に静か……何だか、怖いくらい。
で、こういう時に限って、怖い話を思い出したりしちゃうものだから、何だか本当に怖くなって来ちゃった……。

255番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/06/26(火) 16:12:46 ID:ccQtU5bK
>>254
――ねぇ、手を繋いでも良いかしら?

気が付くと、そんな事を口走っていた。
「……は?」
新人くんもビックリしてる。
それもそうよね……恋人でもないのに、手を繋いでだなんて……でも正直言って、本当に怖くなって来ちゃって、誰かと手を繋いでないと、不安になってしまう。

――だ、だって、こんなに暗いとはぐれちゃうでしょう?二人一緒に出たんだから、戻る時も二人一緒の方が良いじゃない?
それに私は、リーダーとしてあなたを監督してるんだから、あなたに逃げられると面倒なの!

……ああ、私は何を言ってるんだろう?
自分から手を繋いでって言ってるのに、何で「仕方なくやってます」と言わんばかりに言い訳しなきゃならないの?
彼と手を繋ぐのが、恥ずかしいから?
恥ずかしいなら、何故手を繋いでなんて言い出す訳?
何だか自分でもよくわからなくなってくる……。

「イエッサ」

だけど新人くんは素っ気なく答えると、あの燃えるように熱い手で、私の手をキュッと優しく握ってくれた。
彼の手を通して、熱いものが伝わってくる。
さっきまでの、暗闇や静寂への怯えや不安は、もう消えていた。

「ありがとうございます、大尉」
彼がおもむろに口を開く。
「実は俺、暗い所は苦手で……大尉が一緒にいてくれて、こうやって手を繋いでくれて、本当に助かります」
そう言って、穏やかに笑う。
何故かちょっと嬉しそうにも見える。

――嘘よ。
本当は平気なくせに、わざと臆病者を装って、私の顔を立ててくれている。
気を遣われる自分を情けなく思う一方で、だけどそんな彼の心配りが嬉しくって、私は繋いだ手にキュッと力を込めたのだった。

256それも名無しだ:2007/06/28(木) 12:10:04 ID:g5dCRg7T
今日の訓練は、チーム内での一対一での模擬戦。
くじ引きで組み合わせを決めて、早速開始だ。

俺の最初の相手は、アヤだった。
「よろしくね。手加減なんかしたら、タダじゃおかないわよ?」
具体的に、どうタダじゃおかないんだ?

「 別 れ る 」

命捨ててかからせてもらいます、アヤ様!

「……何かお前、完璧に尻に敷かれてるな」
黙れリュウセイ。
尻に敷かれてやる度量がなくっちゃあ、男はやっていけねーんだよ。
俺はそう答えて、アシュセイヴァーに乗り込んだ。


R−3は、今日はノーマル形態だ。
――細身のボディにそこはかとなく色気を感じるが、あくまでもパイロットのアヤを重ねて見ているからだ。
決してリュウセイ菌に侵されてる訳ではない。
試合開始早々、R−3はレーザーキャノンを連発する。
T-LINKシステムでこっちの攻撃の意志を感知して、反撃のタイミングを的確に潰していきやがるから、手が出ねえ……。
ここは多少強引でも、一発かましてやらんとな。

ソードブレイカー!行ってこい!

俺はレーザーキャノンをかわしながら、機体の両肩に備え付けられた、計六基のビットを射出した。
257それも名無しだ:2007/06/28(木) 12:11:28 ID:g5dCRg7T
>>256
ソードブレイカーはビームを撃ちながら、R−3目掛けて飛んでいく。
俺もアシュセイヴァー本体にガンレイピアを連射させて、ソードブレイカーたちの援護をする。

『くっ!このっ!』
接近してきたビットに、R−3はビームソードを振るうが、的が小さく素早いからなかなか墜とせない。
すぐにアヤはソードブレイカーに気を取られて、隙を見せた。
いただき!
その隙を逃さずガンレイピアを撃つ。
しかしその光弾を、細長い物が盾のように防いだ。
ストライクシールドが、いつの間にか射出されていた。
『ストライクシールド……いきなさい!』
ビームソードでソードブレイカーを牽制しながら、その動きを読んでいたのか、ストライクシールドは稲妻のような勢いで、ソードブレイカーを六基とも叩き落とした。
更にそのまま、こちらに向かって飛んでくる。
いくら愛しのアヤとはいえ、こいつまで受け取る気はねえ。
俺はアシュセイヴァーをジャンプさせる。
そして、飛来するストライクシールドその物を足場にして、空中高くに駆け上がった。
R−3がレーザーキャノンを構えるが、ちょいと遅かったな!
ガンレイピアで、レーザーキャノンを保持する腕の関節を狙い撃った。

レーザーキャノンを落っことしたR−3の前に着地して、喉元にレーザーブレードを突きつける。

はい、お疲れさん。
『……参りました』
そう言う通信回線越しのアヤの声は、何故か嬉しそうだった。

258それも名無しだ:2007/06/28(木) 12:13:29 ID:g5dCRg7T
>>257
その後残りの試合が消化され、再びくじ引き。
俺の今度の相手は、マイだ。
「頑張ってね、マイ」
「任せろ!アヤの仇は私が討つ!」
俺は悪者かよ。


しかし試合が始まると、さっきの気合いはどこへやら、R−GUNは全く動かねえ。
何やってんだ、コイツ……。
不覚にも対応が取れず、棒立ちになった。

と、そこへおもむろに、R−GUNは左手を開いて、勢い良く前に突き出す。
『T-LINKフルコンタクト!サイキック・ウェイイイィィィイブっ!!!!』
訳のわからん雄叫びが上がり、R−GUNの左手から、緑色の輝きが放たれる。T-LINKソードみたいなもんか?
しかし機体にこれと言ったダメージはねえ。
コケおどしか、驚かせやがって!
接近して攻撃しようとした俺だったが……あれれ?どうなってんだ?
アシュセイヴァーが動かねえ。

R−GUNが左手をググッと上げると、アシュセイヴァーも宙に浮いた。

何これ!?
ひょっとして、R−GUNが念動フィールドでアシュセイヴァーを捕らえてんのか!?
気付いた時には、もう遅かった。

R−GUNがビームカタールソードを手に、飛んでくる。

『サイキック・斬!!!!!!』


――その日、俺は午後の訓練を休む羽目になったのだった。
259それも名無しだ:2007/06/28(木) 12:16:27 ID:g5dCRg7T
>>258
――その日の夜。



    ||
  , -__ヽ|ノ
 <;;;;;;;ノノハヽ
  .ヾ T∀ノ<オレハ タダ 「ダ0ガ0オー」ヲ ミセタダケナノニ…
  ミ‖‖‖j   
  ミ‖‖‖j
  ミ‖‖‖j
   ヽ)ヽ)
260それも名無しだ:2007/06/28(木) 16:50:03 ID:g5dCRg7T
今読み返して気付いたが、R−GUNには念動フィールド発生器付いてなかったな……念動力に脳内訂正しておいてくださいm(u_u;)m
261それも名無しだ:2007/06/28(木) 17:46:19 ID:3gr9cYou
おひさー。
いつも不時着寸前!
ラトと同居人ですぜ。

サイキック斬、笑わせて頂いた。GJ!
サイキックウェェェイブの所で既にあれあれ?って思ったら、やっぱりかよ!ってw

上の方のアヤ大尉も乙!

ところで…!
OGs買った?
いやはや。

今届いたのさ。
フフ。
262それも名無しだ:2007/06/28(木) 18:51:14 ID:g5dCRg7T
>>261
サンクス(・ω・)/

OGsは休日にでも買いに行くつもり。
一緒にPS2も買わにゃあならんがね(^_^;)
263それも名無しだ:2007/06/28(木) 21:39:21 ID:w2Oo/bCc
少しだが休んでしまった分を読んでみた。低脳な俺は読まないと本当に要らない人間になってしまうからなあ。貴方方のように面白いネタが書けていないからねぇ。どうせ面白くないさ、俺は

>>175
そうか。通過していたのか。さすがだ

>>182-183
面白かった。だけどこの板でエロ書いても削除人が来ないから大丈夫だと思うんだ。どうせここは邪魔だから隔離した板だから

>>214-217
君の才能には毎回驚かされる。GJだ
自分の力の無さが身に染みた。俺は居ても意味無いんだなあ、と

面白いネタを書ける人とOGsで盛り上がれる人が羨ましい
264それも名無しだ:2007/06/28(木) 22:05:34 ID:w2Oo/bCc
>>263
スレイの夫っていうの忘れてた。ごめんなさい。ついでネタ↓

夜 寝室
「スレイ、今日も綺麗だ」
スレイ「あなたも素敵よ」
↑こんな掛け合いが小1時間

「なんだか寝られないなあ」
スレイ「じゃあ、もう一回する?」
「いや……チャージしとくよ。今日は風呂で一回、寝室で一回だからな」
スレイ「チャージなどさせるか♪」
ばたんっ……

朝 会社
セレーナ「今日はどうしちゃったの?凄く機嫌良さそう」
「当たり前だ。妻に沢山愛されちゃったんだからな」
セレーナ「あらん、スレイは強欲ねぇ」
「まあね」
ヒューゴ「しょぼーん……orz」
「どんしたんだ?ヒューゴ」
ヒューゴ「彼女を駅で待っていたら、いたの?って言われました」
「可哀想に……ただでさえ影が薄いのにそんなに言うことないのに」
ヒューゴ「俺はこれからどうすれば……」
キョウスケ「俺は昨日の晩飯出前でした」
「なんだ、たまにはいいじゃないか」
キョウスケ「たまにじゃないんです。月一で出前のペースだったんですが周一になってしまって……妻の手作りといったらサラダしか食べてません」
セレーナ「サラダって手作りじゃないんじゃ……」
キョウスケ「でもね…たまに作ってくれると嬉しいんだ。たとえサラダでも」
「夏だからねぇ。色々あるさ……うん、きっと」
カルヴィナ「はぁ〜暑い暑い。さあ、仕事仕事♪」
「カルヴィナも元気そうで良かった」
カルヴィナ「あっ、レンさん。おはようございます」
「ああ、おはよう」
カルヴィナ「これから会議ですよ。時間には遅れずに」
「ああ、分かっているさ」
セレーナ「会議頑張ってね」
「今日は最悪だ。忘れていたんだが午前午後みっちりと会議だった。カルヴィナに言われて思い出したのが不幸中の幸い」
セレーナ「だらしないわねぇ。男でしょ、しっかりしなさいよ♪」

俺はセレーナにばしんと尻を叩かれ会議室に向かった。軽くセクハラされた気分だった。
265それも名無しだ:2007/06/29(金) 17:17:55 ID:nvryBEzP
昼 街中 ミッテさんの好きな饅頭を買いに行く途中

ビラ配りのハニワ「ハニワちわ。これお願いします」
「いらねーよ。ただでさえ、ジメジメしてんのにイライラしてくるぜ」
ビラ配りのハニワ「しょぼーん……orz」

ビラ配りのハニワ「ハニワちわ。宜しくお願いしまーす」
宙「ハニワちわと挨拶した理由だけで十分だ。死ねぇーっ!!」
ごきっ……!!
ビラ配りのハニワ「これおねがいぢまず……」
宙「くどい!ティッシュじゃなくてビラじゃねーか……だから、もっと死ねぇ!!」
ごきごき……!!
「またやってんのかあいつらはw」

プルルル……
「もしもし」
スレイ『あなた、わたしよ』
「ああ、お前か。どうかしたのか?」
スレイ『寂しいからかけちゃった』
「そうか」
スレイ『今、何してるの?』
「今はミッテさんに言われた饅頭を買いに行ってるんだ。お前の分も買ってやろうか?」
スレイ『えっ、いいの?嬉しい♪』
「じゃあ、俺は急がなくてはいけないからな」
スレイ『うん、じゃあね……ちゅっ』
ツーツー……

この後、俺はミッテさんに遅いと説教された。
266それも名無しだ:2007/06/29(金) 19:30:51 ID:mDJ6g852
267それも名無しだ:2007/06/30(土) 00:17:14 ID:WbWe68kI
>>263
精神病患者乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
268それも名無しだ:2007/06/30(土) 00:19:01 ID:WbWe68kI
>>263
精神病患者乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
269それも名無しだ:2007/06/30(土) 11:03:23 ID:WbWe68kI
>>261-262
OGsで盛り上がる信者ウザすぎwwwwwwwwwwwww該当のスレでやれよwwwwwwwwwwww
270それも名無しだ:2007/06/30(土) 11:44:01 ID:Ft/6ikrE
>>269
自分から乗り込んどいて何言ってんだかw
271それも名無しだ:2007/06/30(土) 11:55:53 ID:d6PNQi+E
272それも名無しだ:2007/06/30(土) 12:19:48 ID:foPmif7K
>>270
>自分から乗り込んどいて何言ってんだかw
余所者かもしれないがまるで信者っぽい発言だな。ここは版権ネタもOKだぞ。俺が何個か投下した。まあ、つまらんけどさw
ここは信者スレではない。そうしたい場合は次スレ名に『信者専用』とでも書くべき

>>261
>ところで…!OGs買った?いやはや。今届いたのさ。フフ。
>>262
>OGsは休日にでも買いに行くつもり。一緒にPS2も買わにゃあならんがね(^_^;)
このような会話は該当のスレでやるべきなのは当たっている。ここはネタスレであり買っただの買いに行くだのを書き込むスレではない。まあ、版権オリ関わらずキャラ信者スレだろう。
まあ、こんなこと書いたって実際ネタ投下した奴は俺含め六人しかいないがねw
273それも名無しだ:2007/06/30(土) 12:52:05 ID:Ft/6ikrE
>>272
> ここは信者スレではない。そうしたい場合は次スレ名に『信者専用』とでも書くべき

だから信者スレでもないのにわざわざ乗り込んで信者ウザすぎも何もないだろって話だ。

> このような会話は該当のスレでやるべきなのは当たっている。ここはネタスレであり買っただの買いに行くだのを書き込むスレではない。

何レスもその話に費やすならともかく、こんな挨拶程度の会話もダメって事はないだろ。
274それも名無しだ:2007/06/30(土) 13:02:38 ID:foPmif7K
>>273
悪かったね。ごめんなさい

さて、ネタでも考えるかね。貴方方のように誉められるネタは書けないんだろうけどさ。最近は自慰にもなんなくてね。色々と大変だw
275それも名無しだ:2007/06/30(土) 13:41:37 ID:Mw2S0kp2
俺は叩いてなかったが、一言言わせて貰うとあまりに不快。コイツ(>>274)
以後、完全スルー徹底ヨロ
276それも名無しだ:2007/06/30(土) 13:48:24 ID:foPmif7K
かなり昔のネタを改変しましたので投下させて頂きます↓
番外編、ニルファの終盤辺り(時間軸は適当です)

ある非番の朝。艦を降りて俺とスレイは海へ向かった。
 
鼻をつーんと刺激するような海の香りはたまらない。それだけで俺の気持ちが癒される。下を見ると貝殻が落ちていてゴミ一つ無く、とても綺麗な海岸だ。
「いい天気だな。神々しい空と海だ」
「ええ、そうね」
「自然を見ていると心が落ち着く……空気がうまい」
俺はこの海の空気を大きく吸ってみせた。
「こんな景色久しぶりかな」
風が来る度にスレイの髪が揺れる。線の細くとても綺麗だ……。
「ああ、いつも忙しいから自然なんてゆっくり見てる暇がない」
ぎゅっ……
「ひゃっ…それは……」
スレイは俺に後ろから優しく腕を首周りに回すように抱かれ顔を真っ赤に染めた。俺の中で縮こまる感じがまた一つ可愛くなったようだ。
「いつもは自信たっぷりなのに俺に抱かれるくらいで驚くなんてますます可愛いな」
「急にはずるいよ……誰かが見ていたら……」周りを確かめ誰もいないことを確認し落ち着く。
「嫌ならやめるが……」
「……嫌じゃない。……恥ずかしい」
真っ赤に染まったうなじ、そして動揺する声。男として少し理性を忘れてしまいそうだ。
俺は自分の中の悪魔のような気持ちを押し殺して、
「スレイの体温を感じる……」
「……わたしも」
「……座ろうか?」
「……うん」
後ろからスレイを再び包み込むように座る。肩の辺りから腕で包み込み優しく俺の方へと少し寄せた。
ぎゅっ……
「体温が上昇してるみたいだな」
「また、いじわるした」ぷいっと怒ったような表情で後ろを振り向く。
「スレイの髪……さらさらだ・・・。また赤くなった」
後ろからスレイの耳が赤くなっているのは、はっきりと判る。
「嬉しいんだもん♪」笑顔で俺の方へと振り向く。
いじわるをしてみたがスレイも乗ってきたようだ。喜んでくれると遣り甲斐を感じるというものだ。
「ついに本音が出たか……。なんにしても早くこの戦争を終わらせたい」
俺は遠くを眺める。そこには何も見えないが今までしてきたことがぼんやりと映るような感じがした。
「そうね……そのために亡くなった人たちがいる……」
スレイは少し涙ぐむ。こんな良い所に連れて来ておいてしんみりさせちまった。俺のせいだ。
「泣くな。俺がスレイを守る。バックアップだけ続けていろ」
俺はスレイを慰めるように涙を指で拭ってやった。後ろからは難しいが大体の目の位置は分かる。
「ごめんなさい。兄様のことを思い出してしまったの……」
「あまり気負いはするな。楽に行け……それと何かあったら俺のところへ来い」
「クスン……ありがとう。あなたは強いのね」
俺は強くなんかない。強くなるために筋肉増強剤で体を強化し、そして父さんの遺産を自分の機体を強くするためだけに使ってきた。これを強いと言うはずがない。己の力に頼りきっている。
今の俺は自分だけの力で存在してるわけではない。頭の中でうっとうしいくらい自分の弱い所が交差する。そして、ある昔の出来事が浮かび上がった。
「小さい時……親や仲間に感情が欠けていると言われたことがある。両親が死んでも仲間が死んでも泣いたことが無い」
「そんなふうには見えないよ。いつもはみんなと笑ってるのに」
「ああ、だがここへ来て俺は変わった。スレイも変わってきている気がするよ」
「あまり実感わかないな。でも、あなたと居ると凄く幸せ……」
「俺も幸せだ。時が経つのは早い……気持ちに余裕が持てるようになった」
「ずっとこうしていたい……」
「スレイ……お前を愛してる」
俺はスレイを失いたくない。すると無意識のうちに抱いている力が強まった。スレイも同じでぎゅっと俺の手の裏に自分の手を重ねているのが分かる。とても熱い手だった。
「わたしも愛してる……この戦争が終わったら一緒に住もうね」
ちょいと婚約のような感じがしたが、今更スレイとここまで来て迷いはない。自然と答えは出た。
「ああ、約束だ……。もう少し近くで海を見ないか?」
「うん」
大きな波が来る所から4、5メートル離れて立ったまま見る。
277それも名無しだ:2007/06/30(土) 13:49:06 ID:foPmif7K
>>276
海と空が区別がつかないくらい綺麗だ。神々しく偉大なそれは何億年も経ったって人の手では絶対に作れないだろう。そんな偉大な景色全てを俺は護りたい。
「スレイ……」
どうしてもはっきり言いたい。俺はスレイの肩に手を置き真剣な眼差しになる。スレイは今から何が起こるのかと本能的に感じ取ってくれたようだ。
「……」じっと俺を見つめる。何時もは厳しそうな目であるが俺と目を合わせる時は真っ直ぐで強い意志と女性であるからこその美しさを感じさせる。
「お前とずっと一緒に居たい。だから、俺と結婚してくれ」
何時ものように俺はストレートに言った。また、涙ぐむスレイ。気持ちを抑えきれないのか、少し震えているようだ。それをぐっと堪え、いつもの笑顔を見せる。
「……はい……わたしもお願いします」
お互いに迷いは無かった。時間が止まっているようで最高に幸せだ。俺は嬉しさのあまりスレイをいきなり自分の方へと抱き寄せた。
「ひゃ……!?でも、来ると思った……」
スレイは驚きの表情を一瞬見せる。そして、俺の顔を下から覗くように眺めた。ちょっと太陽が眩しいのか、少し目をシパシパさせている。
太陽の光を浴びるスレイは俺だけの女神のような気がしてならなかった。これなら、どんな敵だって倒せる。俺はそう決心した。
「眩しいね……」
「すまんかった。俺がお前より背が高いからなあ・・・。でも、目をシパシパさせてるお前って凄く可愛いよ」
「嬉しい♪もう、わたしはあなたの妻よ。今みたいに『お前』って呼んで?」
なんだこの大胆発言は……。でもそういうのって大好きだ。
「ああ、分かった・・・」
「わたしも『あなた』と呼ぶことにするわ」
「それは時期として早すぎる呼びかただ・・・艦内でそう呼ばれるのはちょっと抵抗がある……」
「ダメなの?」
可愛い子猫の連れて行ってというような目で俺を見つめるスレイ。何故、そんな目で俺を見つめる。お前という奴は……。仕方がない、俺も男だ。人肌脱ごう。
「いいよ。思う存分俺を『あなた』と呼びなさい。お前は俺の妻になったんだから」
スレイ「やった〜♪」
俺の首に手を回し大喜び。てか、激しすぎだろ。胸擦りがたまらん!
「おいおい、そんなに激しく興奮しないでくれ。今日はまだ長いんだ。だから一日を尻上がりな気分で過ごしたい」
「うん、分かったわ。あなた、凄く素敵よ……」
スレイは俺の心臓の鼓動を聞いて目を瞑る。俺も目を瞑りぎゅっと抱く力を強くした。何も見えないがスレイの存在を確認するかのように……。
 
名残惜しい感じもしたが丁度良い時間を見て俺はスレイと手を繋いで艦に戻った。
278それも名無しだ:2007/06/30(土) 13:50:27 ID:foPmif7K
>>276-277
点間違えました。すみません
279それも名無しだ:2007/06/30(土) 14:13:40 ID:foPmif7K
亀だが読みました
>>254-255
乙。アヤさん……少女のようだ。素晴らしい
軍は外出の時の手続き面倒なんだよね。早く世を平和にして結婚しちまえ、アヤさんと!早い話だったらごめんね

>>256-259
>「 別 れ る 」
ここまで言えるアヤさんは強いなあ。尊敬する
ダンガイオーとネタのクロスが良い。面白かった。純粋にそれをやるマイも子供なんだなあ、と。微笑ましくなってきた
280それも名無しだ:2007/06/30(土) 16:36:03 ID:foPmif7K
>>276-277
今頃だけど名前付いてました。間違いが多すぎる。申し訳ないです
281それも名無しだ:2007/07/01(日) 00:29:39 ID:mVJH67B5
寝室
スレイ「さてと、次は洗濯物を干さなきゃ……あっ、ちり紙交換だ」

茶の間
「なかなか良い尻だ。もう少し角度をだなあ……こっちはスレイより良い尻をしている」
スレイ「あなた、何を見ているの?」
「いやっ……何でもないよ。お前の体を見て興奮してただけだから……(汗)」
スレイ「ニヤリ……」
ばさっ……!
「俺のエロ本が……」
スレイ「ダメよぅ?いやらしいもの見ちゃ。あなたにはわたしがいるんだから」
「……orz」

自宅周辺
ギムレット「ちり紙交換は上手くいきますな〜」
スレイ「すみません、これお願いします」
ギムレット「は〜い……これはっ!?」
スレイ「どうかされましたか?」
ギムレット「あ、いやぁ〜、こういう本は初めてでして……」
スレイ「そうですか。夫が好きでしょうがないんです。もうわたしのことをちっとも見てくれなくて」
ギムレット「それはいけませんな〜。バイオネットのトップでもそのようなことはしませ〜ん」
スレイ「バイオネット…ですか?」
ギムレット「はい〜、色々な商品を取り扱ってる企業でございます〜。あっ良かったら。雑誌を無料で送りますよ」
スレイ「えっ、いいんですか?」
ギムレット「あなたのような綺麗な奥さんには当然のことで〜す」
ルネ「ギムレット!またあんた、変なことしてんのね!?」
ギムレット「はひ〜、近づかないで下さ〜い。わたしは社会に貢献するために……(汗)」
ルネ「何が社会の貢献よ!もう、許さないから!!」
ギムレット「では奥さん、さようなら〜」
ブーン……!
ルネ「こらーっ!待ちなさ〜い!!」
だだだだだだだーーーーんっ!!!!
スレイ「何だったのかしら……」

数日後、変な通販の雑誌が届いた。それにスレイは夢中で俺の小遣いは減らされた。そして……

台所
スレイ「この洗剤面白〜い」
「洗剤で遊ぶんじゃありません」
スレイ「分かってるわよ。だからこうしてキッチンを綺麗にしてるんじゃない」
「通販で洗剤買ったからってそんなに掃除せんでも……」
スレイ「さあ、次は床拭きよ〜♪」
「大晦日でもないのに……」
ゴステロ「おい、お前ら!アイス買って来たぞ!!」
「あんた、また勝手に入ってきたな!?」
ゴステロ「ほれ、アイスだ食え!」
ぐい、ぐいぐい……!!
「…………アーーーーーーーっ!!!!!」

時が見える……

ゴステロ「掃除やってんのか。俺にも手伝わせろ!」
スレイ「じゃあ、向こうの床からお願い」
ゴステロ「了解だ!」

なんだ、この日は……最悪だ。
282それも名無しだ:2007/07/01(日) 14:20:55 ID:mVJH67B5
最近はコンピューターゲームにはまっている。アキトから貰った物なんだが……自分でキャラクターやステージを登録して作っていくフリーソフトでこれが面白くてたまらなくい、二週間もやっちまった。

今は寝室でゲームをやってる。ゲームクリエイターを気取って作るとなんだか頬の辺りがくすぐったい。
昔、ゲームを作りたいと親に言って殴られたのが懐かしい。あの時はセバスチャンが父さんを抑えて一時は助かった。
ちょっと昔の事を思い出して胸が苦しくなっちまったなあ。これからキャラの登録をして……それからそれから。そうやって頭の中で考えて具現化していくのが神様にでもなった気分。ゲームクリエイターの次は神ですよw
気づいたら日は暮れていた。窓から見える赤い夕日が美しいなあ……。そして周りを見渡してみるとベットの上にある物に気づいた。

「これは……?」
スレイがおやつに持ってきてくれたホットケーキがそこにはあった。
俺はそのホットケーキをフォークで突き刺し食べ始めた。腹が減っているかどうか分からないくらいゲームに集中していたから冷めているのは当然のこと。
「あなた、まだやっているの?」
スレイが扉を開けホットケーキを食べている俺を見つめる。
「……まだ食べていなかったんだ……」
「あ、いや…その……すまない」
「いいの……」
残念そうなスレイの顔。悪気はなかったんだが、これは全て俺のせいだ。
「お風呂沸いてるから先に入ったら?」
「ああ、そうだな。先に入ってその後飯を食うよ」
がちゃんと扉は閉まりこの部屋には沈黙が漂った。

その後はだらだらと風呂場へ向かった。
体を洗い湯に浸かる。なかなか良い湯だ。夏だから温度は低めに設定されている。これもスレイの気配りだと思うとなんだかさっきした事が物凄い悪い事のように思えてくる。
「いつ頃だったかなあ。こんな風になったのは……」
そうだ。薄々と気づいてはいたがスレイと俺の距離は離れていくばっかりで……。
俺は湯を手にすくい自分の顔にかけ、
「俺が夫してしっかりしなきゃなあ。スレイは弱い女だからずっと支えてやらないと悲しんでしまう」
言うだかなら簡単だ。しかし、俺とスレイの距離を縮めることなんて出来るだろうか?俺だけが距離を取ったのならまだしも、スレイも俺から距離を取っている。

風呂に入って飯を食う。今日はなめこの味噌汁にサラダと豚肉の生姜焼きだった。サラダは多めでヘルシーな感じが良い。
食いながらスレイに話しかけてみる。
「なあ、スレイ。お前、最近風呂に来ないな。いつもなら笑顔で俺の体を洗っているのに」
こんな時は下ネタが一番だと子供の頃に聞いたことがある。うろ覚えだが……。
「うん、あなたが疲れているから迷惑だと思って……ほら、最近遅いでしょう?」
「ああ、会議が入った分スケジュールがズレていくんだよ。たく、ミッテさんは無理な事ばかりを押し付ける。新婚だってのによー」
気づいたら俺の愚痴になっちまった。そんなつもりで話しかけたんじゃないのに。でも、迷惑って何で?
「というか、何で迷惑だと思うんだ?」
「ごめんなさい。わたし、いけないこと言って……」
ちょっと起こり気味に言った俺を見てスレイは早々に飯を食ってこの場を去ろうと椅子から立ち上がった俺はスレイの腕をギリギリの所でキャッチ。
「ごめんなさい…」
スレイは立ったままうつむき、俺に目を会わせようとしない。どうすればいい?どうすればいいんだ?俺は焦った。引き止めてその後は?引き止めなかった方が正解だと俺は思う。頭の中で混乱して、俺は「ごめん」と言った。
するとスレイは俺の顔を窺い再び目を逸らした。
「座ってくれよ。これからも事も話したいしさ。無理にとは言わない」
「うん……」
スレイは少し涙目になっていた。恐がらせたと思うと再び胸が痛い。
「お前には心配を掛けたと思っている。ゲームにはまっちまって、別の事はそっちのけで」
「別に心配だなんて、そんな……」
「正直になってくれよ。お前の事は昔から分かるんだからさ。言いたいこと言えって」
スレイは少し黙り込み俺に本当の気持ちを話した。
「本当はね。ずっと、寂しかったの。あなたがご飯食べ終わるの早くなって、それからお風呂はすぐに上がっちゃうし」
「それで?」
「それからね……」
スレイと久しぶりに沢山話した。こうやって長く悩みを言うとお互いの心が晴れた気分だ。言って良かったなあと思えるのがとても幸せだ。
283それも名無しだ:2007/07/01(日) 14:22:24 ID:mVJH67B5
>>282
俺は今、ベットに寝転がっている。スレイは洗い物を済ませ風呂に入っている最中。
主婦って大変だよな。だって、休みが無いんだもん。それを支えてやるのが夫の役目だ。こんな台詞はこの年で言うもんじゃないかな?
考えているうちにスレイはやってきた。あの、黒Tシャツにウサギちゃん黒パンツでw黒いパンツのお尻の辺りに可愛い白ウサギちゃんの顔がプリントされている。俺が好きだと言ったら一目散にスレイが買いに行って手に入れたものだ。
「あなた、可愛いでしょう?」
スレイが部屋に入ってきた。俺は起きてベットに座り、
「そんなの当たり前じゃないか」
「うふふ、幸せ♪」
スレイは俺の隣りに座りべったりと肌を付けてくる。風呂上りだからサラサラして気持ちの良い。
「あなた、抱いて?」
「ああ、分かった……」
俺はスレイをベットの上に優しく押し倒しディープキスをした。下を絡ませ歯茎を刺激させるとスレイは声を漏らす。
「あぁ……あなたのコレ大好きぃ……」
「可愛いよ」

次の日、月曜日はだるいものだが今日はだるさを感じなくて不思議だ。スレイからとっておきの燃料を貰ったのだろう。
「おはよう」
会社に行った時はまずこれを言うのが基本だ。俺は部下から挨拶され自分のデスクに座った。
「今日は機嫌がいいですね。どうかされたんですか?」
隣りに座るアキトが話しかけてくる。前会ったときは無愛想だったのにこんなに変わるなんて、人の力とは恐ろしい。
「いやねぇ。俺って最近職場で荒れてたじゃない?妻と距離が出来たからと気づいて、昨日ようやく妻と分かり合えたんだよ」
「それは良かったですね」
「ああ、ありがとう。ゲームしすぎちゃった自分が情けないよ」
「もしかして私が進めたゲームですか?だとしたら申し訳ないです」
「いや、そんなに改まらなくてもいいよ。悪いのは俺なんだから、ゲームは少し休憩ってことだ。でお前の妻はどうなの?俺は毎日だぜ?」
「家のはその……知らないんです。子供はキャベツの中から生まれてくると思ってるらしく……このままだと、私…」
「は?もしかして童貞か?」
黙ってうなずくアキト。俺は言葉を失った。しかし、結婚してからやるなんて良い根性をしている。昔の日本人の考え方だ。

昼休みになった。ラピスから休憩と通信が入って俺は機体から早々に降り自分のデスクのある部屋に向かう。
食堂に走りこむ独身男性群、そして息子?に会うために急ぐミッテさん。いつも黙り込んでいる綾波にラピス。

デスクにやっと座れた。疲れたな……。まあ、寝るからいいけどさ。俺が急いだ事は特に意味の無い。ただ、スレイが頑張って作った弁当を早く見たいからだった。
「うはっwこれは凄いwww」
俺は弁当箱を空けたら微笑ましくなった。
ハート型の海苔がご飯の上に置かれ、そして蛸さんウィンナーとウサギちゃんりんごがあった。大きなハンバーグの上には『好き』とケチャップで書かれている。
「素晴らしい、芸術作品だ」
俺は我慢できなくてほかの者に自慢してしまった。後から聞くと大きな幼稚園児に見えたらしい。いやはや、破廉恥で申し訳ない。

ただいま昼寝中。腕を組み自分のデスクで寝る。
「だ〜れだ?」
俺は驚いた。自分の目の辺りに何かが当たった。声を聞くと聞き覚えのある。セレーナか。
「おいおい、セレーナ。悪ふざけがすぎるぞ」
「えへへ、分かっちゃったのね。ごめんなさい」
「で、俺に何か用か?」
「何か用じゃないわよ〜。スレイに起こされちゃったんだからね」
「スレイに起こされた?何で?お前の寝起きが悪いからスレイにまで頼んだか?」
「そうじゃないの。スレイから6時に電話来て、『レンがね。わたしの事愛してるって〜。そしてね、抱いてくれたの〜』って言ったのよ!」
「そんなわざわざスレイ声真似んでも……。6時って普通じゃん。しかもそれ俺に言われてもなあ」
「ってことはスレイを悲しませていたって事じゃない?ちゃんと謝ったんでしょうね?」
疑わしく話しかけてくるセレーナ。セレーナもスレイの事を考えてくれていると思うとなんだか幸せになってくるのとあっち(女同士)の方を想像してしまう。
「ちゃんと謝ったさ。スレイがそんなに喜んでいれば分かる事だろ?」
「そう、ならいいわ。じゃあ、帰りにチーズケーキ奢って頂戴」
安心した表情を見せるセレーナ。というか、何故そうなる?
「しょうがないねぇ。帰りに買ってやるから、でも家にまで押しかけちゃだめだぞ」
「やった〜♪」
俺の首周りに手を回し喜ぶセレーナ。というか……妻持ちに何をしてるんだ、この野郎!
変な目で見る部下達……最悪だ。
284それも名無しだ:2007/07/01(日) 14:29:37 ID:mVJH67B5
>>283
帰宅途中に駅のコンビニでチーズケーキを買って迎えに来てくれたスレイにセレーナと二人きりでいる所を見られた。
スレイは必殺技『バットムーン』を食らわしてセレーナをぴよらせた。セレーナはエルマに運ばれる。その時のエルマの背中が悲しげでとても印象的だった。

※区切れよくいかなくて申し訳ないです。スペースがありありなので少し色々と説明↓
アキトから貰ったゲームはフリーソフト『MUGEN』俺が最近始めたもので書いてあるとおり凄く面白い。皆さんもやってみてはどうでしょう。
スレイの必殺技『バットムーン』これはGGXXのミリア・レイジの必殺技。なんとなく二人は似ているからネタにしてみました。こんなネタしかできないで申し訳ないです。
285それも名無しだ:2007/07/01(日) 18:34:59 ID:AZSu9tW4
>>279
>早く世を平和にして結婚しちまえ、アヤさんと!早い話だったらごめんね

いや、それやったらOG3に繋がらないしw
アヤ「身も蓋もない事を言わないの!」
ごめんなさぁぁぁいっ!(ストライクシールド直撃)


>純粋にそれをやるマイも子供なんだなあ、と。微笑ましくなってきた

マイ「私はもう子供じゃなぁぁぁいっ!」
言ったのは俺じゃねえぇぇーっ!(スラッシュブーメラン直撃)
286それも名無しだ:2007/07/01(日) 18:37:37 ID:AZSu9tW4
「お待たせ」
基地の正面玄関に立つ俺に、アヤが声をかける。
黒い色をしたノースリーブのミニスカワンピースが、肌の白さと相まって、目に鮮やかだ。

「悪いわね、デートに割り込んじゃって」
アヤの後ろからヴィレッタの姐さんが続く。
白い半袖ブラウスに、ピッチリした茶色のレザーパンツという出で立ちは、クールビューティを地で行く姐さんによく似合う。
「いいのよ、ヴィレッタ。私たちの方から誘ったんだし、気にしないで?」
アヤがそう言って、朗らかに笑う。
「普段からお世話になってる隊長さんに、少しでもお礼がしたかったし……それに」
アヤはそこで、俺の傍らに寄り添うように立った。
「私たちが付き合ってるからって、あなたと一緒に映画を見に行っちゃダメなんて事はないでしょう?私たちは仲間なんだから」
「……そうね。ありがとう」
アヤの言葉に、ヴィレッタの姐さんはかすかな微笑で答えた。



事の起こりは、俺がアヤとのデートに備えて、映画のチケットの懸賞に応募した事だ。
ペアチケットかと思ったら、三枚一組……要するに懸賞の記事を読み違えた訳だ。
で、余った一枚をどうしようかと考えてたら、アヤが姐さんも誘おうと提案してきた。

287それも名無しだ:2007/07/01(日) 18:39:49 ID:AZSu9tW4
>>286
俺も異存はなかった。
これが男だったら 絶 対 に 断ってたが、姐さんなら問題ない。
それに、姐さんは休日も執務室でパソコンとにらめっこして、デスクワークに勤しんでいる。
たまには外に連れ出してリフレッシュさせてやるのが、部下として、男として、そして仲間としての気配りってもんだろ。

そういう訳で、渋る姐さんを強引にアヤが説得して、今に至る。

映画は、暑くなってくる今の時期にはありがたいホラー映画だ。
映画館に入り、三人並んで席に座る。
座ったのは良いが……何、この文字通りの両手に花状態。
危うく口元がニヤケそうになったのは、やはり俺が男だからか。

映画の内容は、ハッキリ言ってクソ以下だ。
見る者を怖がらせようという、制作者の歪んだ情熱と自己満足が透けて見える。
話も、まったく救いがなくて、散々怖がらせといてコレかよ、と言いたくなる。
だが、上映されてる間、姐さんは時々「ふむ」「なるほどね」「そう来るか」とかつぶやいていた。
ストーリー展開に、姐さんなりに感心するものがあったという事か。

アヤの方は、時々俺の手をギュッと握って、「ヒッ!」と息を飲むような声を上げる。
怖がりすぎだろ。

何か映画より、二人のリアクションの方がよっぽど面白かったぜ。

288それも名無しだ:2007/07/01(日) 18:42:04 ID:AZSu9tW4
>>287
映画館を出ると、ファミレスで昼食。

店内にいた野郎どもの視線が、アヤと姐さんに集中した。

……クックック。
良い女を連れて歩くってのは、本当に気分が良いな。
しかも二人の内一人とは、恋人同士と来たもんだ。

席に座り、店員を呼んで料理を注文する。
俺はカツカレーと卵サンドを頼む。
「私はシーフードパスタとサラダをお願いします」
「ミートソーススパゲティとクリームシチュー、オムライスを。ハンバーグセットもお願いね」
「ヴィレッタ……意外と食べるのね」
アヤが呆れ顔で呟きながら、他にも何か言いたそうに姐さんをジロジロ眺める。
大方、「そんなに大食らいなのに、その体型を維持できるなんてズルい!」って感じの、女のジェラシーなんだろうが。

――もっとも、アヤはアヤで、食後のデザートにジャンボチョコレートパフェを頼んだりしたんだがね。

飯食った後、二人を外で待たせて、俺は勘定を済ませる。
月の始めから思わぬ出費だが、まぁこれくらいは安いもんだ。

外に出ると、待ち構えていたかのように、アヤが買い物に行こうと言い出す。
「もう7月だし、水着を買わなくっちゃならないでしょう?」
そういやこの前の買い物じゃ、結局決まらなかったんだっけか。

289それも名無しだ:2007/07/01(日) 18:43:58 ID:AZSu9tW4
>>288
と言う訳で、デパートへ。
しかし俺は、アッサリと売り場から締め出された。
「本番までのお楽しみよ♪」
と、アヤに無邪気な笑顔を見せられながら。

しゃーないから他の売り場をうろついてると、オモチャ売り場でラトゥーニを発見した。
知らない男と一緒にゲームソフトを物色している。
普段めったに見せない幸せそうな表情から察するに、あれが例の彼氏か。
邪魔しちゃ悪いし、俺の興味を引く物もなかったので、早々に退散した。

水着売り場に戻ると、二人とも買い物を済ませて俺を待っていた。
満足の行く買い物が出来たようで、アヤは元より、姐さんもどこか嬉しそうだった。

その後、幾つかの売り場を見て回ってから、俺たちは基地に戻る。
「今日は本当にありがとう。何だか、気持ちだけじゃなくて、体まで軽くなったような気分だわ」
それだけ楽しんで頂けて、光栄です。
「本当に良かった。ひょっとしたら迷惑だったかもって思ってたけど」
「そんな事ないわ……感謝してる」
姐さんはそう言って、確かに笑ってくれた。
「それじゃあまた明日ね。明日はATXチームとの模擬戦だから、二人とも程々にね」
「なっ……!」
言われてアヤは、火が点いたように赤くなる。

290それも名無しだ:2007/07/01(日) 18:46:04 ID:AZSu9tW4
>>289
姐さん、それはセクハラです……。
「何の事?私は、夜更かしは程々にって意味で言ったんだけど」
姐さんはクスクスとからかうように笑う。

ぬぅ……結構性格悪いな、この人。

「それじゃあ、今日は本当にありがとう。おやすみなさい」
そう言って姐さんは、軽い足取りで基地の中へ戻る。

……とりあえず、姐さんのリフレッシュ作戦は成功みたいだな。
「ひょっとしたら迷惑だったかもって思ってたけど、あの様子だとそうでもなかったみたいね」

ちょっとした満足感と達成感を抱きつつ、俺たちも手を繋いで、部屋に戻るのだった。
291それも名無しだ:2007/07/01(日) 20:56:05 ID:AZSu9tW4
今読み返したら、「ひょっとしたら迷惑だったかも〜」のくだりを二回も入れちまった……orz

どっちかを脳内削除しといてくださいm(u_u)m
292それも名無しだ:2007/07/01(日) 22:21:29 ID:mVJH67B5
>>285
すまない、これは全部俺のせいだ。お詫びにこれをどうぞ
つ【プロの麦茶】
永遠のプロ、鉄也さんが海パン姿で麦茶をぐびぐびと垂らしながら飲んでいるパッケージが売り。これで夏を越してくれ
マイが腐女子になったら大変かもしれない。でも、それでマイが幸せだったら……俺、何も言えない。まあ、その辺はほかの仲間がカバーしてくれるのかな

>>286-290
文章はもう少しまとめられるだろう
>>286=21行>>287=25行>>288=26行>>289=23行>>290=15行
と、このように行数が少ないんだ。だからまとめると110行。1レスが60行だから2レスで収まる。これを次に活かすと良い。一応チェックはしたが計算が間違ったらすまない
ヴィレッタさんはいつもクールビューティーなんだなあ。惚れてしまいそうだwいかんいかん、俺にはスレイという最愛の妻が居る
三人がリフレッシュできて良かった。明日のATXチームとの模擬戦頑張れよ
293番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/07/03(火) 14:43:24 ID:nGVXyNJT
可愛い月 寝顔日

はぁ、今日の戦闘は散々だったわ……。
まんまと敵の策にはまってフォーメーションを分断されて、バレリオン部隊の空襲を受けてしまうなんて。
新人くんがゲシュペンストで空中戦を仕掛けて、敵のフォーメーションを崩した隙を突いて、私たちは何とか態勢を立て直して勝つ事が出来たけど、新人くんのゲシュペンストはボロボロだった。

私がもっとしっかり、敵の動きに気を配っていれば……ライやヴィレッタに頼んでフォーメーションや戦術の勉強に付き合ってもらってるのに、これじゃ何の意味もないじゃない!

重い気分のまま、私は夕食を食べようと食堂に向かう。
その途中、ロビーで新人くんを見つけた。
まだパイロットスーツのままで、ソファの上で横になってる。
きっと、ちょっと休むつもりがそのまま眠ってしまったのね。
安らかな寝息を立てる彼の顔は、昼間の奮闘ぶりからは想像も出来ないくらい穏やかで、無防備ですらあった。
ここまで彼を疲れさせたのも、リーダーである私がしっかりしてないからよね……何だか、罪悪感を覚えちゃう。

本当にごめんなさい、新人くん……。

心の中で謝りながら、私は彼の前髪を撫でてあげた。

294番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/07/03(火) 14:51:41 ID:nGVXyNJT
>>293
それにしても、本当に無防備な寝顔ね……ちょっと悪戯しちゃおっと。

指先で頬をツンツンつついたり、耳たぶをコチョコチョくすぐってみる。
「姉ちゃん……くすぐってぇよ……」
そう言って新人くんは背もたれの方へ寝返りを打つ。
ふふ、お姉様の夢でも見てるのかしら。
この前彼の部屋で見たご家族の写真でも、お姉様は仲良さそうに彼の肩に手を置いてたものね。

でも……私たちが至らなかったばかりに、彼のご家族を……。

そう考えると、胸が締め付けられる。

私は起こさないように注意しながら、彼の頭をそっと持ち上げ、その下に足を滑り込ませるようにして、ソファに座った。
膝枕くらいじゃ、償いにはならないのはわかってるけど……でも、何かをしてあげたかった。

……ううん、違うわね。
ただこの、きっと誰にも見せた事のない無防備な寝顔を、もっと見ていたいだけ……彼の安らかな寝顔を、独り占めしたいだけなのかも。

今だけ、あなたのお姉様になってあげるわね。

私がそうささやくと、彼はポツリと寝言でつぶやく。
「姉ちゃん……父ちゃん……母ちゃん……本当に、ごめん……」
目尻に、涙の粒が浮かんでいる。
ご家族を守れなかった事、気にしてるのね……。

あなたは悪くないわ。
いつもみんなのために頑張ってる事、ちゃんと知ってるから。
だから自分を責めちゃ駄目。
私たちはいつも、あなたを見守ってるわ。

涙を拭ってあげながら、ご家族になったつもりでささやいてあげる。

大丈夫よ、あなたは私が支えてあげるから。

心の中で、そう繰り返しながら。

295それも名無しだ:2007/07/03(火) 15:02:47 ID:n2kPxLl6
なんで>>293-234>>292のアドバイスをスルーするんだ?ちゃんと考えてくれただろうに
296それも名無しだ:2007/07/03(火) 16:57:00 ID:COYZck97
>>295
テンプレにsageろって書いてあるだろ

ちょっと自演見逃してやりゃあ調子に乗ってんな
ちょっと上のも、今回のもバレバレなんだよ

匿名で叩きが許されるならお前なんて袋叩きだぜ?
スレイのネタ書きさんよ?




スレイ「あなた〜」wwwwwwwwwwww

馬鹿か
才能無いにも程がある
297それも名無しだ:2007/07/03(火) 16:58:55 ID:COYZck97
人の口の中に糞を詰め込んで、嬉しそうに感想を聞くスレイネタ書きバロスwwwww






邪神スレ逝け
298それも名無しだ:2007/07/03(火) 17:02:47 ID:n2kPxLl6
自演すみませんでした
299それも名無しだ:2007/07/03(火) 17:21:33 ID:n2kPxLl6
連書きすまん。それと才能なくてすみませんでした
300それも名無しだ:2007/07/03(火) 17:43:44 ID:COYZck97
スレイのネタ書きの才能?

糞以下だ

多分2chでも屈指のキモい文章
日本語でおkwwwww

邪神スレで晒されないのが不思議
読んだ奴皆すぐ透明あぼ〜ん入りだから感想も来なくて当たり前wwwwwwww

その上煽るわ
拗ねるわ
脅すわ
自演するわ
開き直るわ





人間的にも最低だな
氏ねよ
301それも名無しだ:2007/07/03(火) 18:13:55 ID:n2kPxLl6
遊び半分でこんなことをしてすみませんでした
302それも名無しだ:2007/07/03(火) 18:29:50 ID:COYZck97
いいから氏ねよ
303それも名無しだ:2007/07/03(火) 18:34:04 ID:n2kPxLl6
続けたいです
304それも名無しだ:2007/07/03(火) 18:44:20 ID:nGVXyNJT
>>295に対して返答する。

1レス毎の分量は携帯のメモ帳1ページを目安にしてる。
あまり長文だとかえって読む気なくすんじゃないかとも思ってる。
「文章がおかしい」、「キャラが崩れすぎてて、最早別人じゃねーか」などの指摘ならまだしも、文章の量に関しては問題ないと思ってた。

スルーしたのは、返答したら場が荒れるんじゃないかと思ったから。
スルーした結果、今ちょいと雰囲気悪くなってる事については謝る。
ごめんなさい。

305それも名無しだ:2007/07/03(火) 18:48:30 ID:n2kPxLl6
>>304
気分を悪くさせてすみませんでした
306それも名無しだ:2007/07/03(火) 18:49:30 ID:COYZck97
>>303
邪神はみんなそうなのな
どこから出てくるんだ?
その蛆の生えた糞みたいな文章はwwwww



ネタは書きたいなら邪神スレにコピペしといてやるよ

思う存分嘲笑われてろ
307それも名無しだ:2007/07/04(水) 13:38:01 ID:9SR29UPW
なんだこの糞スレは
308それも名無しだ:2007/07/05(木) 14:22:38 ID:5PLVLMbA
『ハートを狙い撃ち!……なんちゃって☆』
ふざけた台詞と共に、上空からビームが降ってくる。
アシュセイヴァーを左右に振ってかわした俺は、頭上の狙撃手目掛けて、ガンレイピアを三連射した。
『いやん☆そんな乱暴なアプローチはノーサンキューよん☆』
狙撃手――ヴァイスリッターはクルクルと、踊るようにガンレイピアの光弾をかわす。
『女の子はデリケートなんだから……ね☆』
最後の「ね☆」に合わせて、オクスタンランチャーから実体弾が放たれる。
かわしたつもりだったが、弾丸はアシュセイヴァーの脚の装甲をかすめて、地面をえぐった。

お互いの動きを計算して撃ち込んで来やがる……聞いた話じゃ、DC戦争以前には、弾道ミサイル撃ち落とした事もあるらしい。
あの無駄に軽いノリに惑わされてっと、マジで心臓(ハート)を撃ち抜かれ兼ねねえぞ!

俺は心の中で自分に怒鳴り散らしながら、上空にハルバードランチャーをぶっ放した。
あっさりかわされたが。
『わぉ☆本気になってきたみたいね〜!オネーサンも燃えて来ちゃうわん☆』

…………。

なぁ〜にがオネーサンだ。色ボケが進みすぎて、テメーの年も忘れちまったか?
309それも名無しだ:2007/07/05(木) 14:25:30 ID:5PLVLMbA
>>308
『なっ……!?失礼ね!私はまだ23歳よ!』
ムキになって答えるエクセレンの姐さん。

23歳ね〜……で、それは人間の年齢に換算すると、何十歳になるんで?
アシュセイヴァーを上昇させながら、言い返す。

『だから人間の年齢で23歳なんだってば!』
ヴァイスリッターはオクスタンランチャーEモードを連射して、迎撃を試みるが、射撃の精度が目に見えて落ちていた。
かわしつつ、レーザーブレードを起動させて、距離を詰める。
『だ〜か〜ら!乱暴なのはイヤなんだってば☆』
細いビームが連続して、撒き散らされた。出力絞って、連射性を上げたようだ。
ビームを撃ちまくりながら距離を詰めるヴァイスリッター。

勝負に出る気か!?

ガンレイピアを連射。
しかし当たらねえ。
もっとよく狙え、この馬鹿!
『蝶のように舞い、蜂のように刺すってね!』
オクスタンランチャーから実体弾が放たれる。
ビームの速さに慣れてきたところへ、弾速の遅いこの一発は、完全に回避のタイミングを外された。

何とぉぉぉっ!

とっさにレーザーブレードを振って、その実体弾を何とか切り払った。
レーザーブレードに弾丸が当たってくれたって感じだが。

310それも名無しだ:2007/07/05(木) 14:26:37 ID:5PLVLMbA
>>309
『わぉ!やるじゃな〜い!さすがはサムライのお国柄ね!』
さっきとは逆に、距離を取るヴァイスリッター。
俺はガンレイピアを撃ちながら、追いかける。

しかしエクセレンの姐さんは、雲に隠れたり、太陽の逆光を利用してこちらに隙を作り出し、ビームと実体弾を巧みに撃ち分けて攻撃してくる。
くそっ、舐めやがって!
元戦闘機乗りの意地にかけても、空中戦じゃ負けられねえ!
ファイアダガー・ミサイルを発射して牽制、予測回避先にハルバードランチャーを撃ち込んでおく。
しかし、肩アーマーを破損させただけで終わった。

『そんなんじゃあ、ヴァイスちゃんの蝶の舞いには追い付けないわよ〜ん☆』
何が蝶だ。
あんたはどっちかっつぅーと、アマゾンのジャングルで百年以上生きてる毒蛾の妖怪とかそっち系だろ!

『そこまで言う!?も〜、頭来た!エクセレン先生がお仕置きしてあげるわ!』

へっ!返り討ちにしてやるよ!
ソードブレイカー!行ってこい!

機体の両肩に設置された六基のビットを射出する。
ソードブレイカーは、二基がビームを撃って牽制、四基が格闘戦を仕掛けた。

311それも名無しだ:2007/07/05(木) 14:29:17 ID:5PLVLMbA
>>310
ヴァイスリッターはオクスタンランチャーのWモードで、ソードブレイカーを迎撃する。

ガンレイピアを撃ち込んでそれを牽制し、ソードブレイカーにも、射撃係と突撃係を交互に入れ替えて攻撃を続行させた。

『一度に大勢ってのは、好みじゃないのよね!』
ヴァイスリッターは真上に向かって一直線に急上昇。
ソードブレイカーに追わせるが、これがまずかった。
最短距離で追い付かせようとしたため、六基が一つに固まる形となったのだ。
次の瞬間、オクスタンランチャーEモードの連射で、六基はあっという間に撃ち落とされた。

――直後、模擬戦の終了を告げる信号弾が上がる。
こうして、俺と姐さんの模擬戦は引き分けに終わった。



「お疲れ〜☆かなりあつぅ〜い一時だったわね〜☆」
アシュセイヴァーのコクピットから下りた俺に、エクセレンの姐さんが朗らかに声をかける。

お疲れ様ッス。
姐さん、前にも増して射撃の精度上がってたッスね。
「ふっふ〜ん!当然当然!女の子は愛しのダーリンのために、毎日陰で努力してるのよん☆」
エッヘン!と胸を張る姐さん。
一瞬だが、舶来物の胸がユサッと揺れたように見えて、不覚にも目を奪われた……。

「あなたもボ〜ッとしてると、アヤ大尉やマイちゃんに差を付けられちゃうわよん☆」
へっ、上等ですよ。
差を付けられたら、そん時はそん時。
またすぐに抜き返してやりまさぁ。
「わぉ☆強気な発言!やっぱり男の子はそうでないとね〜☆」
エクセレンの姐さんは楽しそうに、俺の頭を撫で撫でする。

――んごっ!
不意に、俺の後頭部に握り拳大の石が直撃する。
「あら、ごめんなさい。頭にハエが止まってたの」
両手を腰に当てたアヤが、眉間にシワを寄せて立っていた。

312それも名無しだ:2007/07/06(金) 07:03:10 ID:uPB7C0ZR
おひさー。
ラトと同居人ですよ。

>>308-311
乙&GJ。
エクセ姐さまらしいっつかなんつーか。
毒蛾の妖怪ひどっw
後、雲に隠れる辺りのビジュアルもいいね。

こんだけではアレなので、前に書いてつまんなくてほっぽり出した
カイ少佐VSイルム中尉投下してみる。
途中までしか出来てないけどね…。

↓スタート

イルムの乗る、蒼いゲシュペンストの左ジャブが先制だった。
高い金属音が円形の直径100m程のすり鉢状のリングに響き渡る。
最初の一発、ただの牽制とも言える攻撃だが、リングの周りに
群れた観客達はそれだけで熱狂し、足を踏み鳴らす。
相手方のカイ少佐の乗る紅いゲシュペンストが、延々と一分程もイルムの
攻撃を避け続け、やっと当たった最初の一撃だからだった。

完全マニュアルモードで起動している、と試合開始前にアナウンス
があった。
それはつまり人間の反応速度、操作速度のみで闘い、一切の
補助プログラムを使っていないと言う事だ。
スタビライザーも禁止。姿勢制御は完全にパイロット任せ。
センサーからの情報を全て己の目で視、音で聞く。
有り得ない程に原始的な闘い。
銃火器の使用も無い、狭いリングの中での格闘縛り。
実際の戦闘とは全く違う、競技としてのセオリー。
熟達のPT乗りが訓練としてこなすメニューと聞いた事があるが、
ここまでレベルが高いとは思ってもみなかった。
まるで巨大な二人のボクサーだ。
人間をそのままスケールアップさせて対峙させているかのようだ。
そしてよく見ればそら、命の無い筈のPTがステップに合わせて
呼吸をしているかのようではないか。

イルムの乗る蒼いゲシュペンストの構えは、ボクシングで言うなら
オーソドックスな右構えスタイル。
スタビライザーを切ってあるというのに、やや前傾した、アウトボクサーの
マニュアルを地で行くような綺麗なファイトスタイルを維持しつつ、
カイ少佐のゲシュペンストを中心に緩やかな円を描いて軽やかに
ステップを踏む。

イルムの動きは緩やかなようには見えるが、其の実疾い。
カイ少佐のちょっとした動きにさえ細やかに反応し、一瞬たりとも
同じ場所に留まる事は無い。
観客席にいる俺達の所まで、蒼いゲシュペンストが巻き起こす砂混じりの旋風が
吹き上がってくるようだ。

対してカイ中佐の乗る紅いゲシュペンストは、タイソンばりの
ピーカブースタイル。
ヒットポイントである、センサーが集中している顔面を両腕を
立てて固くガードしたまま、イルム以上の操縦技術でイルムの
ゲシュペンストに肉薄する。
距離を取るイルム。避けながら迫るカイ少佐。
313それも名無しだ:2007/07/06(金) 07:04:57 ID:uPB7C0ZR

カイ少佐が、またもや機体重心をかなり下げて力を溜めて突進した。
迎え撃つイルム。

カイ少佐は、イルムのコンビネーションを読んでいたかのように
一発目のジャブを右にスライドしてかわし、二発目のフックを
更に機体高を地面すれすれまで降着させて避ける。

イルムは驚いたろうか。
まさか、あの体勢でカイ少佐のゲシュペンストのスピードが全く落ちないとは。

風を巻き込み、一瞬視界から消える程の強烈な稲妻のような踏み込み。
そしてそのまま足先から膝関節、腰部から腕部へと力を掻き集め、
紅いゲシュペンストは、渾身の左ボディをイルムの乗る蒼いゲシュペンストの
コクピット付近に叩き込む…!

轟音と共に吹き飛ぶ蒼いゲシュペンスト。

ゲシュペンストのパンチは、乗り手次第でここまで破壊力が上がるものなのか。
まるで映画か何かのワンシーンの様に、スローモーションに見える程に衝撃的に。
蒼い機体が宙を舞う。
一拍置いて凄まじい地響き。

その機体が地面に落ちるのを見届けようともせず、紅いゲシュペンストは、
勝ち、とばかりに蒼いゲシュペンストにゆっくりと背を向け、両手を挙げた。
314それも名無しだ:2007/07/06(金) 07:06:00 ID:uPB7C0ZR

だが。
その数瞬後。

観客に手を挙げて割れんばかりの声援に応えるカイ少佐の後ろで、
もう動けない、と思われた蒼いゲシュペンストがぎしりと身動きをし、
膝を立てる。
紫電を機体のあちこちにスパークさせながら、ゆらり、と立ち上がる。

観客がどよめく。足を踏み鳴らす音で会場が揺れるようだ。
カイ少佐のゲシュペンストが振り返った。
設置されたスピーカーからカイ少佐の声が聞こえて来る。

「ほほう、まだ立ち上がれるか。やる気だけは一人前だな」

言って、掌を上に向けてアームを前に突き出し、くいくい、と挑発のポーズ。
そして苦しげなイルムの声。

「エキシビジョンだってのに本気でやりゃあがって。年寄りってのは
空気が読めないらしいな…?」

「若僧は、腕の未熟なのを本気じゃなかったから、と抜かすのか?」

もう一度、くいくい、と挑発。

「高くつくぜ…!」

イルムの乗る蒼いゲシュペンストが、猛然とダッシュする。
その姿は、もはやクレバーなボクサースタイルではない。
殺気と闘気を隠す事無く発散させ、大気がびりびりと振動するかのようだ。

その、溢れる程の殺気。
しかし、カイ少佐はそれを一歩も引く事無く。
むしろ前に出てイルムと相対する。

突進するイルム。
迎え撃つカイ少佐。

試合開始後のスタンスとは全く逆の立場で、彼我の距離が零になった。

そして。

-continue?
315それも名無しだ:2007/07/06(金) 07:17:05 ID:uPB7C0ZR
ぶは、カイ少佐を中佐とか書いてるとこ発見。
少佐です少佐。
切腹。
316それも名無しだ:2007/07/06(金) 10:19:36 ID:Jn1kSjJF
>>312-314
サンクス&GJ(・ω・)/

想像したら、ゲシュペンストがすげーカッコ良く見えた。
そしてヒゲ、あんた渋すぎだよヒゲw
317それも名無しだ:2007/07/06(金) 18:07:38 ID:uPB7C0ZR
>>316
ありッス♪(タスク風に
本来なら、ゲシュってパンチ打っていいものやら。
今回のコレは競技用にマニピュレータの先っぽやらなんやらを強化したものらしいですぜ。

後、ヒゲ最高。
318それも名無しだ:2007/07/07(土) 14:59:30 ID:di7dwBZq
>>317
良いんじゃね?
パットも究極ゲシュペンストパンチなんて必殺技使ってたし(byスパロボF)。

通常のPT戦闘なんて、素手で敵殴るくらいなら一辺補給に戻れって感じじゃないかなと思うんだな、これが。
319それも名無しだ:2007/07/07(土) 15:00:57 ID:di7dwBZq
食堂で昼飯を食ってたら、リュウセイがやって来た。

「なぁ、さっき第三演習場で、教導隊が胸を黄色に塗ったゲシュペンストと模擬戦やってたんだけど、何だありゃ?」
胸の黄色いゲシュペンスト……ああ、そりゃあ訓練用のイエロージャケットだな。
俺もあれに乗って訓練したもんだ。
「へぇ〜、そんなのがあるのか……でもよ、黄色ってちょっとダサくねぇか?」
良いんだよ、それで。
『このダサい機体から卒業したけりゃ、早く腕を磨いて強くなれ』って意味なんだから。
それと、『お前等PT舐めてっとマジで死ぬぞ。気合い入れろ』っていう、警告の意味もある。

「な、なるほど……なぁ、もう一つ聞いて良いか?」
何だよ。
「この前の慰安祭で、カイ少佐とイルム中尉が乗ってたやつ。あれは何なんだ?」
ありゃあ、レギュラーゲーム用にカスタマイズしたタイプLGだ。
マニピュレーターやら脚部のショックアブソーバーやら、各関節やらをいじって、ステゴロに特化させてあんだよ。
「なるほど〜!お前詳しいな……そうか、お前もやっとスーパーロボットの素晴らしさに目覚め」

お前と一緒にするな。

俺はリュウセイの言葉を遮るように返す。

320それも名無しだ:2007/07/07(土) 15:02:41 ID:di7dwBZq
>>319
単に、商売道具に関する事だから覚えただけだ。
ゲシュペンストに乗ってた時間は、お前等よりも長かったしな。
「そっか……俺たちがR−シリーズに乗ってる頃も、お前はゲシュペンストに乗ってたんだっけか」
ああ、最前線の鉄砲玉部隊に、わざわざ新型回すようなもったいない事する司令官はいなかったからな。
だがお陰で、使い慣れた機体に乗り続ける事が出来たし、ラッキーと言えばラッキーか。

「あ、わかるぜ。俺もやっとタイプTTに慣れたかと思ったらビルトラプターに乗り換えになって、苦労したからな」
当時を思い出して、リュウセイはしみじみとつぶやく。

……そういや、アヤから聞いた話じゃ、お前はその頃から勝手な事してたみてぇだな。
今度つまらん事しやがったら、イエロージャケットに押し込んで、カイ少佐にしばき倒してもらうか。
「げげ、そいつはご勘弁……!」
答えるリュウセイの顔は、かなりビビってた。

321君の夫は、もういない:2007/07/07(土) 21:44:07 ID:AEknubpa

宇宙要塞アルテミス。
そのパイロット待機室で、三人の青年が会話をしていた。

バルサム「なあ、ゼア?」
ゼア=ウィド「どうした、バルサム?」
バルサム「ずっと気になってたんだけどよ、そのペンダントって何なんだ?」
カナード「そういえば、戦闘中もずっと握って放さなかったな」
ゼア=ウィド「ああ、俺の記憶の手掛かりっていったらこれくらいしかねえからな」
カナード「そうか……む?何か、文字が彫ってあるぞ」
バルサム「ん?そうか?模様か傷だろ?とても文字にゃあ見えねえぜ?」
ゼア=ウィド「……読める」
カナード「何?」
ゼア=ウィド「なぜか分からないけど……読めるんだ。これは……! 呼び出し?」

オルガ「シャナ=ミア。気をつけてな」
シャナ=ミア「馬鹿にしないで下さい。式典ではちゃんとラフトクランズの操縦してたんですから」
ヒギンズ「久しぶりに運動できて、ブレンも喜んでるみたい」
宗介「しかし、ここを訓練の場とするのは、どうもな……」
耐爬「同感だな」

ゼア=ウィド「哨戒任務ですか?」
ガルシア「うむ。カナード・パルス特務兵はコロニーメンデル、
    バルサム・アーレンド少尉はヘリオポリスにて紹介を行え。
    そしてゼア=ウィド・クレーズ特務兵は…………」

オルガ「コズミック・イラ70、2月14日……」
ヒギンズ「連合によって核を打ち込まれ廃墟と化した農業生産プラント……」
宗介「このことは後に『血のバレンタイン』と呼ばれ……」
耐爬「連合、プラント間の関係をより悪化させた。そのプラントこそここ……」

シャナ=ミア&ガルシア「ユニウスセブン」
322君の夫は、もういない:2007/07/07(土) 21:46:34 ID:AEknubpa
どうも、お久しぶりです。
皆様への感想を書く暇がなく申し訳ありません。
なにせパソコン技能検定の試験が近いこともあり……とにかくすいません。
以上、オチがぼんやりとしかできてないゼア=ウィドでした。
323それも名無しだ:2007/07/07(土) 23:25:16 ID:lzOc2qT/
>>318-320
>パンチ
きゅうきょくぅう!げしゅぺんすとぱぁーんち☆
…なつかしw
そうか、あれがあったか。
>素手で殴るくらいなら
火力が違いすぎるもんねぇ。
特化してない限り普通にマシンガンとか撃った方が強いよねw

タイプLG。いいね!後で使わせてもらおうっと。
そういえば少尉は昔ゲシュばっかり乗ってたねー。
量産機の強み。覚えてるよん。
いつもの事だけど大リーグキャッチサンクス&乙!

>>321-322
お、ゼア氏だ。
博物館にいる頃より楽しそうだ!

感想、かぁ。
謝るぐらいなんだから本当に書きにくいんだろうなぁ。
うーん。
もっと、気楽に?
別に褒めなくてもいいんだし。

するとほら、お互いのレスも増えて楽しくなったじゃまいか!
324それも名無しだ:2007/07/08(日) 14:48:06 ID:BMCkYkOr
>>321-322
おや、早速クライマックス?

無理せず自分のペースでやるのが一番だよん('-^*)/


>>322
ソウルゲインみたいなステゴロ専用機でない限りは、まず殴り合いになる時点で負けだろうしねぇ……。

量産機の強みは、やっぱり数だよね。
たくさん作られてるから、パーツを入手しやすい。

だから修理しやすい。

いつでも安定した状態で戦える。

こういう事ではないかと思う。
ボトムズとか見てると、つくづくそう思うんだな、これが。
325それも名無しだ:2007/07/08(日) 14:49:20 ID:BMCkYkOr
アンカーミス……。

後半は>>323宛てです。念の為。
326それも名無しだ:2007/07/08(日) 18:19:14 ID:BMCkYkOr
おい、早くしてくれよ。

俺は目の前のアヤの背中に呼びかける。

「んー、もう少し待って?」
アヤは振り向きもしないで答える。
彼女がジッと見てるのは、アイドルのトレーディングカードが並ぶ棚。

ここはデパートのオモチャ売り場。
そんな場所のカード棚の前に立つ、若干露出過多の美女ってのは、何というか……非常にシュールだ。

早くしろよ。どうせ買わなきゃ中身わかんねーんだろ?
運任せでパッパッと買っちまえ。
「イヤよ。最近ダブったカードが溜まり始めちゃって……だから、出来ればダブりは避けたいの」
アヤはやっと肩越しに振り向いたかと思うと、子供みたいに口を尖らせる。

いーじゃねえか、ダブりは予備とか保存用とかだと思えば。
「それって、意味は同じな気がするんだけど……」
え?だってリュウセイの奴が言ってたぜ?漫画とかゲームとかは、鑑賞用・保存用・予備で同じ物3つ買うって。
「あの子は無駄使いばかりして……!」
アヤは眉間にシワを寄せて、こめかみを押さえる。
本当にあの阿呆には苦労させられてんだな……帰ったらたっぷり慰めてやるか。


「とにかく!私はダブりは避けたいの。選んでるんだから邪魔しないで」
アヤのその言い回しに、ムッと不愉快さを覚える。

……んじゃ、俺は広場で時間潰してるからな。
そう言うと、俺は返事も待たずにオモチャ売り場を出た。

327それも名無しだ:2007/07/08(日) 18:21:49 ID:BMCkYkOr
>>326
はぁ……何やってんだか。

広場で缶コーヒーを飲みながら、俺は一人ぼやく。

アヤはアイドルのブロマイド集めが趣味で、それが高じて最近は、トレーディングカードにも手を出してる。
一緒にテレビを見てる時でも、画面の中の歌手や俳優を見ては「あ、可愛い」とか「この人ハンサムよね」とか言っては、俺にコメントを求めてくる。

非常にくだらねー事だが、その度に俺は軽い嫉妬に、胸の内を焼かれてしまうのだ。
テレビや写真の中のアイドルが、実際にアヤに手を出してる訳でもない。
アヤが本気でアイドルと付き合いたいと思ってる訳でもない。
なのに、彼女が俺以外の男を見てるってだけで、俺は機嫌が悪くなっちまう……。

そーいやガキの頃も、お袋や姉貴が飼い犬の世話に夢中になってると、何かすげー悔しくなったっけ。
で、つい飼い犬にその悔しさをぶつけちまったりして、親父にぶん殴られたもんだ。

……本当に進歩してねーな、俺。

ハァ……と、ため息をつかずにはいられなかった。

やっぱアヤのそばにいるか。
そう思い、空き缶を捨ててオモチャ売り場へ戻ろうとしたら、アヤがやって来た。

328それも名無しだ:2007/07/08(日) 18:23:40 ID:BMCkYkOr
>>327
「お待たせ」
アヤはパタパタと小走りに駆け寄る。

もう買ってきたのか?何か時間かかりそうだったが。
「ん……なかなか決まらないから、また今度買う事にするわ」

……気ぃ使わせちまったかな。
俺が勝手に機嫌悪くしただけなのに。
「気にしないで?焼き餅焼きはお互い様でしょう?」
アヤは朗らかな笑顔で答えてくれる。
「それに、カードはいつでも買えるけど、あなたの気持ちは、一度逃がしちゃうとなかなか取り戻せそうにないしね」
そう言ってアヤは、俺の手を握る。
「だったら、あなたを優先するのは当然じゃない。恋人同士でしょう?私たち」
子供のように、腕にキュッとしがみつくアヤ。

……ごめん、アヤ。
何か、ガキみてーにスネたりして。
「だから、お互い様なんだから気にしないでったら」
アヤはクスクス笑う。
「それに、スネた顔も、今のバツの悪そうな顔も子供みたいで可愛いし……何より、私の事を愛してるからそうやって、スネちゃうんでしょう?」
んー……まぁ、な。
そう答えると、アヤは満足げに笑う。
「だから、許してあげる☆」
ありがとう、アヤ。

「さ、食事に行きましょう?早くしないとお店が混んじゃうわ」
アヤはそう言うと、俺の腕を引っ張って歩き出す。

同い年の筈なのに、アヤが妙に大人に見えて、逆に自分はガキっぽく思えて……でも、アヤの楽しそうな笑顔を見てたら、どうでも良くなって来る。
俺たちはお互いを愛し合ってんだから、今はそれで充分だろ。それ以上は贅沢だ。

俺は自分にそう言い聞かせたのだった。

329君の夫は、もういない:2007/07/08(日) 21:33:48 ID:n33JdBzY

ユニウスセブン跡地。
ノーマルスーツを着込んだ五人の男女が会話をしていた。

オルガ「確かに、ここでやるのはちょっとな……」
ヒギンズ「そうね、ちょっと居心地悪い感じ……」
シャナ=ミア「……あ、耐爬さん。さっき確か花持ってくるよう頼みましたよね?」
耐爬「ええ、何故花を?と思いつつですが……」
シャナ=ミア「それ、ゼアの花なんです」
宗介「で、その花をどうすると?」
シャナ=ミア「ここで亡くなられた人の鎮魂のために周囲に撒こうかと思いまして」
オルガ「お、いい考えだな」
ヒギンズ「でもゼアの花なんでしょう?」
シャナ=ミア「いいんです。また買えばいいんだから……」
宗介「そうと決まれば早速はじめよう。誰かに見つからんとも限らない」
シャナ=ミア「そうですね」

ユニウスセブン周辺宙域。
ゼア=ウィド「ここがユニウスセブン……ッ!…何だ…?今何か思い出せそうな……」
メリオル『クレーズ特務兵』
ゼア=ウィド「どうした?」
メリオル『周辺に敵機が潜んでいる可能性があります。充分に注意してください』
ゼア=ウィド「了解……ん?」
メリオル『どうしました?』
ゼア=ウィド「花だ。花が流れてきた。……ユニウスセブンの方からだ」
メリオル『気をつけて。敵味方両方の可能性があります』
ゼア=ウィド「ああ、一旦切るぞ。……あれか」

宗介「…! 所属不明機が接近中だ!」
シャナ=ミア「え!?」
オルガ「こっちでも確認した!数一機、サイズからしてMSだ!」
ヒギンズ「落ち着いて、まだ敵だと決まったわけじゃないわ」
耐爬「目視確認可能距離に入るぞ! ……な…!?」
シャナ=ミア「ガン……ダム……!?」
ゼア=ウィド「……(なるほど、オルガ・サブナックにヒギンズ・サス。
      相良宗介に耐爬、おまけにシャナ=ミア・エテルナ・フューラか…)
      こちらはユーラシア連邦所属、ゼア=ウィド・クレーズ特務兵だ」
オルガ「!?」
ヒギンズ「い、今…!?」
シャナ=ミア「ゼ……ゼア…!?」
ゼア=ウィド「何だこいつら…俺を知っているのか?メリオル」
メリオル『どうしました、クレーズ特務兵』
ゼア=ウィド「ガルシア司令が言ってた五人を見つけた。どうする?」
メリオル『司令からの命令は変わりません。抹殺してください』
ゼア=ウィド「了解だ。……っつうことで、たった今お前らの殺戮許可が下りた」
シャナ=ミア「え……何言ってんの、ゼア…?冗談、きついよ……?」
ゼア=ウィド「あいにく俺は冗談は嫌いだ!初っ端から本気で行くぜぇ!!」
シャナ=ミア「っ!?」
330君の夫は、もういない:2007/07/08(日) 21:40:53 ID:n33JdBzY
どうも、あまり感想を書けないので書ける時に書きます。

>>326-328
おもちゃ屋で真剣に悩んでるアヤさんw
お前さんのアヤさんへの愛っつうもんがヒシヒシ伝わってきますよ。GJです。

>>323-324
お優しいお言葉、ありがとうございます。
自分にはそのお言葉こそが何よりの励みであります。
今後も精進いたします。

以上、タイピングが70点いってしまって(50点で準二級相当)
正直自分でもひいてるゼア=ウィドでした。
331それも名無しだ:2007/07/09(月) 17:42:25 ID:ypzZZm/+
>>326-328
欲しいものが目の前にある時に、恋人を選ぶのって簡単そうで難しいよね。
アヤ大尉の判断は正しいが難しいって事で乙!
>>330
励みかー。
良かった。
J判らないので、こちらもレスは出来る時にするよん。
332それも名無しだ:2007/07/09(月) 17:44:06 ID:ypzZZm/+
↓スタート

「勝手知ったる他人の家♪…基地?」
連邦軍基地の緑色のリノリウムの張られた廊下を、鼻歌を歌いながらずんずんと進んでいく。
三歩ほど後ろをラトがとことこと付いて来る。
さすがに基地の中でいつもの雰囲気でいる訳にも行かず、説得して少し離れて貰った。
目的は、ラトの外泊許可だ。
一ヶ月置きにカイ少佐に許可を貰う決まりになっている。
振り返ると、ラトはおずおずと微笑んだ。

「カイ少佐は、この部屋?」
「うん…」

将校用の高級キャビン。
プレートにはカイ・キタムラと書いてある。間違いないだろう。
ノックしようとすると、少しドアが開いている事に気がついた。
別に覗き込むつもりは無かったのだが、何とはなしに目が室内に行ってしまう。

―そこには、異形の光景があった。

綺麗に整頓された、軍人らしい清潔さを感じさせるキャビンの中。
カイ少佐がこちらに背を向け、妙な踊りを踊っている。
腰をくねっくねっ。
お手々をふりっふりっ。
小首を可愛らしく傾げ、足は微妙に内股。
右手だけ妙にあちこち振り回している。

……なんだ、これは。
333それも名無しだ:2007/07/09(月) 17:45:20 ID:ypzZZm/+

ごす、と俺の顎にラトの頭がぶつかった。ふわふわの白いリボンが鼻をくすぐる。
ラトは、俺と同じ様にカイ少佐の部屋を覗き込んで。
そして。

「ブフッw」
「ぷっ…あはははw」

二人同時に噴き出してしまう。
笑いが止まらない。
カイ少佐が凄い速さでびくっ、とこちらを振り返り、その表情が驚き、羞恥、絶望ところころと変わっていく。

真っ赤な顔をしたカイ少佐は、早足で入り口まで歩いてくると、床にしゃがみ込んで笑いの発作に襲われている
俺とラトの腕を掴み、強引に私室に引っ張り込んだ。

―五分後。

「ようやく判ってくれたか。あれは、新機体のモーション作成の為にしかたなく、だな。」
「はい。女性をモチーフにした機た…ぶふっw」
「笑うな!」

ラトは顔を手で隠し、笑いを堪えるのに必死だ。

「女性機体のモーションデータなら…私が…作成しても…」
「男性から見た女性らしさ、というものが必要なんだそうだ!俺だってやりたくは無いが任務だから仕方なく!」
「ああ、女形みたいなものですね…?」

助け舟を出してあげると、カイ少佐は首をがくがくと凄い勢いで縦に振る。

「そうそう、女形、女形!」

一拍、謎の間。
静寂がいたたまれなさを浮き彫りにする。

「そそ、それよりも。書類だろう…?もう出来てるぞ。持って行け!」
「あ、ありがとうございます」

受け取って、ラトと二人で深々とお辞儀して。

「ぷっw」(ハモリ
「笑うなぁぁぁあああああ!!!」

怒りで拳をぷるぷると震わせるカイ少佐を背に、俺とラトは全速力で部屋を後にしたのだった。

おしまい
334それも名無しだ:2007/07/09(月) 17:50:24 ID:ypzZZm/+
ラトと同居人でした。(言い忘れ
335それも名無しだ:2007/07/09(月) 17:56:43 ID:cADpRKq6
>>329
うおぅ!ゼアが殺る気満々ですYO!?
続きが楽しみ('-^*)/

>>330
サンクス(・ω・)/
検定とかよくわからんが、とにかくドンマイ。
336それも名無しだ:2007/07/09(月) 18:00:35 ID:cADpRKq6
>>331
サンクス(・ω・)/
その難しい選択をやってくれたのかと思うと、マジで嬉しかったり。

>>332-333
誰だ、ヒゲに頼んだ命知らずはw
少なくとも、イルム中尉が推薦したのは間違いない。慰安祭の仕返しにw
337それも名無しだ:2007/07/10(火) 07:40:21 ID:V0aDGwhX
>>336
ありー。
マオ社(リン=イルム)が絡んでいるのか、それともショーン辺りの拘りなのか。
イルムはあの後ほぼ互角にカイ少佐と殴り合っているから、遺恨は無い筈なんだけど…
意外と男らしいしね。

多分、一番腕が立つ人物、とか上層部から指令が来たんじゃないかな?
まあ、ちょっと可哀想な話書いちゃったかなと自分でも思ってる。
前回渋かったので反動っつーかなんつーか。
338それも名無しだ:2007/07/10(火) 10:33:33 ID:uZKNBzJM
>>337
たまには良いんじゃね?
あのイングラムですら、クスハ汁飲んで悶えるギャグシーンがあったくらいだし。

>一番腕が立つ人物
たぶんそれだ。だから遺恨抜きにイルム中尉が推薦したに違いないw
イルムじゃなくても良いけどw
339それも名無しだ:2007/07/10(火) 18:49:23 ID:V0aDGwhX
>>338
ちょw
結局イルムかい!w
なんかイルムがやったんじゃないかって気にどんどんなって来たじゃまいか。
イルムめー。酷い奴だ。

>イングラム
後、ラーダさんにヨガ習うところとか。
結構親しみ易いキャラだよねw
340それも名無しだ:2007/07/11(水) 13:37:47 ID:X46MlXPK
>>339
イングラムはクスハ汁然り、ラーダさんのヨガ然り、真面目にやったらギャグになってしまうタイプなんだろうな。

個人的にはアヤ絡みで、リュウセイともども複雑なキャラだが。
341それも名無しだ:2007/07/11(水) 13:40:42 ID:X46MlXPK
「よう、アンデッドマン!」
食堂で朝飯食ってたら、イルム中尉に声をかけられる。

おはようございます、イルム中尉。
「ちょっと、お前に聞きたい事があるんだがな……」
中尉はそう言って隣に座り、俺の肩に腕を回してくる。

「逃がさないぜ」と言わんばかりに。

朝から何です?
「お前、カイ少佐にまた何か吹き込んだりしてないだろうな?」
言ってませんよ。
だいたい吹き込むたぁ何ですか。俺は事実をありのままに報告してるだけです。
報告されちゃあ困るような事を、あんたがやってんでしょーが。
「ぐっ……それを言われると……!」
自覚はしてるのか、中尉は言葉に詰まる。

「しかしな……昨日少佐と模擬戦やったんだが、いつも以上に厳しかったっつうか、激しかったっつうか……で、てっきりお前さんが何かある事ない事吹き込んだんじゃないかと思ったんだが……」
それなら呼び出してお説教がいつもの流れでしょ。
ひょっとしたら、娘さんと喧嘩しちまって機嫌悪かったとかじゃないですか?
「馬鹿言ってんなよ。あの人は鬼だが、八つ当たりするようなガキでも卑怯者でもないだろう」
それもそうですね……ん〜?じゃあ他に、何があったんだろ?

本当にわからなくなって、首をひねる。
「とりあえず、お前が何かタレ込んだ訳じゃあなかったみたいだな……疑ってすまなかった。じゃ、今日も頑張れよ!アンデッドマン!」
イルム中尉は俺の背中をバン!と叩いて、席を立ち、食堂を出た。

何だったんだ?いったい……。

ん?見ると向かいのテーブルに座るラトゥーニが、クスクス笑ってる。
どうした、チビっ子。
「いえ……何でも……ちょっと、思い出し笑いが……」
笑いをこらえながら、ラトゥーニは答える。
ふん、どうせ彼氏とのデートでも振り返ってたんだろ。
俺は飯を食い終えて席を立つ。

「そっか……イルム中尉が推薦したんだ……」

ラトゥーニは何やらぶつくさ言いながら、まだクスクス笑っていた。

342それも名無しだ:2007/07/11(水) 17:49:16 ID:sWxsFJNz
>>341
アンデッドマン。
変な仇名ついてるし!

恐る恐る探りを入れてくるイルム。
思い出し笑いしてしまうラト。

萌えたぜGJ。
343それも名無しだ:2007/07/12(木) 09:55:36 ID:coGDWCYS
>>342
サンクス(・ω・)/

単に不死身の男を英語にしただけなんだけどね。

344それも名無しだ:2007/07/12(木) 17:46:57 ID:HlAiOUNK
>>343
不死身。
undeadっていうとヴァンパイヤとか无(ウー)みたいなイメージががが。

とりあえずスタート↓
345それも名無しだ:2007/07/12(木) 17:47:40 ID:HlAiOUNK

『キューンキューン♪キューンキューン♪私の彼はパイロット♪』
美女と美少女。二人のリン・ミンメイが歌い、踊る。
振り付けは赤い髪の美少女――マイちゃん、の方が少し大きめだろうか。
幼い手足を大きく広げ、振り回し、元気良くステージを歩き回る。

控えめな仕草で踊る緑の髪のショートカットの美女は、アヤ大尉。
レーザーが乱れ飛び、端正な顔と伸びやかで瑞々しい肢体を鮮やかに際立たせる。
サーモンピンクのブーツと白いミニスカートが眩しい。
『キラリ輝って急降下♪』
『ゴーと噴かして急上昇♪』
マイちゃんとアヤ大尉が交互に歌う。
空には二機の戦闘機。
抜けるような綺麗な青空に、歌詞通りに急上昇しながら、飛行機雲が垂直に伸び上がっていく。
『大きなハートが重ねて二つ♪』
青空に大きな二つのハートマークが重なって描き出された。
アヤ大尉は歌いながらもちらりとそれを確認するかのように見上げる。

と、大尉の微笑みが優しく、深くなったような気がした。

「ふむ。ラト。あの戦闘機に乗ってるのって…例の不死身の人?」
「うん。やっぱり、わかる…?」
「ん。なんか、ね。アヤ大尉の表情が、ね」
「わかるんだ…そういう所だけ、敏感…」
「悪かったな。鈍感でw」
「いいの。しょうがないから…」

ラトは苦笑して、さっきよりもほんのちょっと俺に身を寄せ、なんとなく寂しそうにステージを見やる。

『キューンキューン♪キューンキューン♪私の彼はパイロット♪』

歌が終わり、アヤ大尉が大観衆に向けて柔らかく礼をして空をまた見上げ、戦闘機に向けてさりげなく投げキスをした。

つられて上を見上げると、まるでアヤ大尉の投げキスに挨拶を返すかのように。
手前のハートマークを描いた方の戦闘機が、太陽の光を反射してきらり、と光ったのだった。
346それも名無しだ:2007/07/12(木) 22:50:34 ID:coGDWCYS
>>344
自分でも少し違うかな?と思ったけど、まぁ「死なない」という点では同じやしねw

>>345
GJ!
姉妹での振り付けの違いを書いてくれるたぁ、ニクいねブラザー!
楽しそうに歌うマイと、何だかんだでちょっと恥ずかしがってるアヤが想像出来ました(*´∀`)

でも戦闘機、か……民間人がパッと見ただけじゃ、R−ウイングやビルトラプターFMは戦闘機に見えちゃうもんなんかね?
まぁいいや、最後にもう一度、GJ!
347それも名無しだ:2007/07/13(金) 06:28:00 ID:TyxX0iIo
>>346
いや、その違いがイルムらしいっていうか。
逆にそれらしく感じたよ。大丈夫。(なら突っ込むな

そしてサンクス。
アヤ大尉萌えはやった事無いので不安だったけど、気に入って貰えて何よりですぜ。
もちょっと膨らませば良かったかな。
実力無くて膨らまんかった。ですぜ。

後、戦闘機はそう。
民間人視点を強調したかったんだけど、ちと筆足らず。

この直後に変形したビルトラプターとR−1が会場上空で決めポーズ取るんだよね。
ぶった切り方が不自然だったなー。
死んでお詫び。
切腹。ズサ。
348それも名無しだ:2007/07/13(金) 08:53:48 ID:LIQpUvmq
>>347
>レーザーが乱れ飛び、端正な顔と伸びやかで瑞々しい肢体を鮮やかに際立たせる。
>サーモンピンクのブーツと白いミニスカートが眩しい。

この部分なんてアンタ、恥ずかしい話だけど、ちょいとニヤケちまったよ?
改めてGJなんだな、これが。

>民間人視点
あ、やっぱり。
最後の決めポーズまでやって、それを見て驚くシーンとか入れたら更にわかりやすかったかも、と今思った。
でもああいう締め方も俺は好きかな。


最後に一つ。
介錯人呼ぶ前に腹を切る奴があるかw
349それも名無しだ:2007/07/13(金) 15:26:46 ID:LIQpUvmq
ゴーストタウンのくすんだ景色が、高速で後ろへと流れていく。
ビルとビルの隙間から、一瞬だけ見える赤いゲシュペンスト目掛けて、マシンガンのトリガーを引く。
照準?
合わせてる暇なんかねーよ。
軽快な発射音と共に弾丸がばらまかれるが、相手にはかすりもしない。
舌打ちする間もなく、アラームがコクピットに響く。
ビルを越えて、上空から三枚刃の付いた戦輪スラッシュリッパーが、弧を描いて飛んできた。
マシンガンで撃ち落とすが、そこで弾丸切れとなる。
ビルの陰で足を止めて、マガジン交換。空になった方を、試しにビル越しに放り投げてみた。
ヒュン!という風切り音と共に、スラッシュリッパーがそれを切り裂いた。
リッパーはそのまま、青く塗られた俺のゲシュペンストの近くに落下した。

――ライの野郎、相変わらず結構なお手前だぜ。
あれ?でもアイツ、マシンガンじゃなくてスラッシュリッパー使ったよな?
フリスビーやブーメランのように軌道をコントロール出来るスラッシュリッパーで、ビル越しに俺を狙うならまだわかるが、ビルの上に飛び出した何かを撃つなら、弾丸をばらまくマシンガンの方が確実だと思うが……アイツもしかして、弾丸切れ?
350それも名無しだ:2007/07/13(金) 15:28:46 ID:LIQpUvmq
>>349
ここまでの銃撃戦で、お互い相当数の弾丸をぶちまけて来たからな……こっちもマガジンは今取り付けた物でラストだし、ライが既に弾丸切れを起こしてる可能性も、なくはない。
もしもそうなら、勝負に出るべきか。
スラッシュリッパーは弧を描いて飛ぶ分、マシンガンに比べて標的に当たるのが遅い。
ビルの陰から飛び出して、マシンガンを撃ち、飛び出した勢いそのままにスラッシュリッパーをかわすって手もあるが……。

問題は、俺がそう考えてるのをライが見越していた場合だ。
わざと弾丸切れを起こしたように見せかけて、俺を誘っているのだとすれば、ここで勝負に出るのは自分から虎の穴に飛び込むようなもんだ。
さて、どうしたもんか。
ライのゲシュペンストから追撃が来ないのは、誘ってるからか、はたまたスラッシュリッパーがもったいなくて追撃出来ないからか……。

改めて状況を整理しよう。
俺のゲシュペンストはスプリットミサイル装備だが、もう使い切っちまった。飛び道具はマシンガンのみ。

対してライはスラッシュリッパーと、弾丸切れを起こしてないとすれば、マシンガンもある。

…………。

――スラッシュリッパー?

351それも名無しだ:2007/07/13(金) 15:30:59 ID:LIQpUvmq
>>350
――うし、一か八か、やってみるか!
俺は意を決して、武器を構えてビルから飛び出す。

ライの赤いゲシュペンストが、マシンガンの銃口をこちらに向けていた。
やっぱり弾丸切れはフェイクか!

互いのマシンガンが、ほぼ同時に火を噴いた。
コクピットの左側から振動が来る。
左肩に被弾したようだ。
バランスを崩し、動きが止まる。
こっちが撃った弾丸は、足下の道路を吹っ飛ばして、足止めさせただけだった。
『もらった!』
ライのゲシュペンストが、トドメを刺すべくマシンガンを構え直す。

――阿呆が。「もらった!」はこちらの台詞だぜ。

次の瞬間、上空から降ってきた一基のスラッシュリッパーが、ライのゲシュペンストの肩口を深々と切り裂いた。
さっき空っぽのマガジンを破壊して、そのまま落っこちたやつだ。
あれを回収し、飛び出すと同時に投げた。
マシンガンで足下を撃ったのは、ライの注意をそいつから逸らすためだ。

ライのゲシュペンストが、ガクリと膝を付いた。

モニターに、「状況終了」の文字が表示される。
シミュレーターを停止させて、俺はフゥーッと大きく息をついた。

352それも名無しだ:2007/07/13(金) 15:34:55 ID:LIQpUvmq
>>351
シミュレーターから出ると、ライが待っていた。

「してやられたな」

言ってる割りには、あんまし悔しそうじゃないな。
「良い勉強をさせてもらったからな」
素っ気なく答えて、かすかに微笑む。

ま、こっちもリュウセイ相手よりは、やりごたえのある試合だったよ。
「アイツは突っ込むしか能がないからな」
まるで猪だよな。R−1じゃなくてビルトシュバインに乗った方が良いんじゃねえか?

 猪 だ け に 。

「――上手いな」
「上手くねえ!黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって!」

なんだ、いたのかリュウセイ。

「最初からいたじゃねえか!どんだけ俺を馬鹿にしてんだ、お前等!」
「失礼な事を言うな。馬鹿になどしてはいない」
「え……そうなのか?」

ああ、もちろんだ。

「俺たちはお前を正当に評価しているだけだからな」
「やっぱ馬鹿にしてんじゃねえか!もう頭来た!ライ、シミュレーターに入れ!まずはてめえからギャフンと言わせてやる!」
「フ、良いだろう」
二人は早速シミュレーターに入る。


「もう、あまりからかっちゃダメよ?」
俺の隣に寄り添うように立ちながら、アヤがたしなめた。

おいおい、これでも評価はしてるんだぜ?ここぞという時の爆発力はな。
俺は答えながら肩をすくめる。

あ〜あ、しかし頭使ったせいか、肩がこるなぁ〜……知恵熱も出るかも。
わざとらしく肩を回したり、こめかみを押さえながら、アヤの方をチラチラ見る。
アヤは俺の考えを察したのか、クスクス笑った。
「じゃあ、後でマッサージしてあげる。熱が出たら、添い寝もしてあげるわね。甘えん坊さん」
本当か?約束だぜ?
俺は言いながら、アヤの腰にゆっくりと手を回したのだった。
353それも名無しだ:2007/07/13(金) 18:33:12 ID:r91YmCTD
>>348
>民間人視点
うん、そうなんだよねー。
どんどん大きくなって頭上すぐの所までやって来て変形して、会場がジェットの奔流にさらされる所まで頭にはあったんだけど。
でもそれやると少尉とリュウセイ、また始末書だろうなってw
あんまりダイレクトパスすると疲れるかな、と思ってこっちにしてみたのですぜ。(日本語変

>介錯
ぐは。くくくくるしぃーw

>>349-352
GJ。
そういえばゲリラ戦の状況モードって我々少ないね。
イングリィ…じゃなかった新参者さんがラミアで書いたぐらいじゃね?
掩体を利用した射撃戦。新鮮に感じたよー。
緊張感あったしね。

後、ライとかリュウセイとかアヤ大尉とかの生き生きした会話がよろしい、と言わせて頂く!
354それも名無しだ:2007/07/14(土) 14:35:07 ID:EduUvlON
>>353
> でもそれやると少尉とリュウセイ、また始末書だろうなってw

なるほど、ブラザーなりの心配りってやつか。
しかしヴィレッタの姐さんは、始末書よりも、翌日のスペシャル特訓メニューの方が怖かったりするんだぜw


> そういえばゲリラ戦の状況モードって我々少ないね。

そもそも全長20メートルのPTじゃ、身を隠せる状況がマジで限定されるからなぁ……。
ゲームじゃ地形効果狙いで、平気で市街地のド真ん中に陣取ったりするけど。
355それも名無しだ:2007/07/15(日) 10:43:06 ID:rw6Qz4/q
>>354
>ヴィレッタ大尉
容赦ないだろうなーw
>身を隠せる状況が限定
そういえばそうか。
大き過ぎるってのはシチュエーション削るもんなんだねぇ。
ビルに隠れるダイターン3。ガンバスター。
ちとありえない。

ちょい時期を外したけど、スタート↓
356それも名無しだ:2007/07/15(日) 10:43:46 ID:rw6Qz4/q

空も地上も、陰鬱な灰色。それ一色。
そして、キャノピーを弾丸のように叩き続けるこの大粒の雨。
ラトゥーニとフェアリオンに搭乗するのは、これで何度目だろうか。

結構慣れてはきている。
だが、今回はいつもとは決定的に違っていた。
それは、他でもないこの俺がフェアリオンを操縦している、という事実だ。

時刻は夕方。6時過ぎ。
天候は、嵐、だった。

俺達は静かに。しかし、かなりの速度で雨風をものともせず上昇していく。
フェアリオンはとんでもなく機動性が高い。
そろそろとスロットルを開けてさえ、驚くような速さになる。
だが、加速圧は全くと言って良い程感じられなかった。
多少の旋回動作を合わせてさえ、普通に地上にいてその辺の椅子に座っているのと大差ないのだ。
コーヒーを入れたカップを無造作にその辺に置いておいたとしても、一滴も溢す事は無いのではないか。
そんな気がした。
多分、慣性、重力制御が普通のPTとは次元が違っている。
これに慣れてしまったら、ゲシュペンストには乗れないな、と頭の中でひとりごちた。

と、膝の上に乗せたラトゥーニが身じろぎをする。
成長途上の少女の体は信じられない程華奢で、薄い肉付きに俺の太い骨が食い込みそうで。
痛くはないのか、と心配になってしまう。

「大丈夫かい?」
「うん。何が…?」
「いや、大丈夫ならいいんだけど」

至近距離で不思議そうに覗き込んでくる蒼い瞳にどぎまぎしてしまう。
さっき調べたばかりのインジケータをもう一度チェックして気を散らした。

「もう、高度は10km地点に差し掛かる…ね。そろそろ雲を抜けそうだ」

俺がそう言うと、ラトは折り紙が沢山付いた笹の葉に視線を落とし、そっと微笑んだ。

 * * *
357それも名無しだ:2007/07/15(日) 10:45:15 ID:rw6Qz4/q

―1時間程前。

「七夕?」
「うん。雨…降っちゃったね…」

ラトは残念そうに笹の葉を見やった。
俺が昨日近所で切ってきて、花瓶に生けておいたものだ。
既に飾りつけはほぼ終わっており、後は短冊に願い事を書いて吊り下げるだけの状態。

「織姫と彦星って…一年に一回しか会えないんでしょ…?」

ラトがまるで幼児が両親に問うような質問を、いきなり俺にぶつけてくる。
いつもの事だ。
スクール、という単語が頭をよぎる。

「話によると、そうらしいね」
「今日は雨だから…また、来年?」
「うーん…」

確か、子供の頃に聞かされた話では…。

「いや、確か雲の上では会えてる、と思ったよ。地上で雨が降っていても、必ず」
「一杯、雨が降っても?」
「ああ。例え、今日みたいな嵐の日でも」
「そうなんだ…」

安心したような表情。
おとぎ話の中で引き裂かれ、一年に一度しか会えない恋人達に、ラトは何を感じたのだろうか。

俺は、ラトの頭にそっと手を伸ばし、ふわふわリボンごと頭を撫でながら、
「不安だった?」
と、優しく問う。

「会えなかったら、可哀想だし…」
「そうか…。う〜ん。せっかくだし、織姫と彦星、見に行こうか?」
「…え?」
「雲の上まで、さ」

一拍置いて、ラトの表情がぱっと明るくなる。

もちろん答えは、YESだった。

 * * *
358それも名無しだ:2007/07/15(日) 10:46:04 ID:rw6Qz4/q

いきなり視界が開けた。
照りつける太陽。
白く輝く、まばゆいばかりの眼下の雲海。
ざばあ、と音を立てて深海から空中に躍り出たような感覚。

「まだ、昼間…!?」
「みたいだね。ちょっと早すぎたかな?」

推力を落とし、雲の中に入る。
また、ざん、と雲から飛び出し、フェアリオンをくるくるとフィギュアの選手のように回転させた。
モニターに映る映像、センサー各種は機体の回転を知らせるが、コクピットにはGの影響は何も無い。

「へへ。イルカみたいだろ?」

雲が、空が、世界が回る。
俺達を中心にして。

少しだけスロットルを開けた。
フェアリオンは急速に雲海を後にし、急上昇して宇宙に近づいていく。
高度10km…12km…15km…。
ここは既に成層圏だ。空の色が変わり始める。
南国の海のような、混じり気無しのサファイヤブルーから藍色へ。そして、虚無の黒へ。
真上に目をやれば、そこはもう空ではない。
漆黒の宇宙だ。
視線を下げていけば、眼下の雲海の水平線に近づくにつれて宇宙は深く鮮やかな青い空へと色調と様相を変えていく。
黒い宇宙と透明な美しい青い空。遙か眼下に雄大に広がる白い地平。大雪原のような雲の海。
雲の水平線近くの空は、太く青いレーザーのように自ら光を放っているように見える。

「綺麗…」

ラトが呟く。
同感だった。
ここまで澄んだ空は見た事はないし、黒い宇宙がグラデーションして青く光る空に変化していく様は圧倒的だ。
見渡す限りどこまでも続く雲海も、質量をもっているかのように存在感があり、その上今までに見た何よりも白い。
そう、感じる。

「…ラト」
「うん…?」
「イルカってさ。野生のものでも、海面から高くジャンプするらしいんだよ。なんでなのか、分かる気がしないか?」
「…」
「多分、今の俺達みたいな気持ちなんじゃないかな」
「うん…。きっと、そう…かも…」
359それも名無しだ:2007/07/15(日) 10:46:49 ID:rw6Qz4/q

ラトがそっと振り返る。
右手をコンソール、左手をスロットルに置いたまま、俺は動けない。
ラトが片手をコンソールに滑らせ、一瞬でフェアリオンを自動運転―待機モードにセットする。

「キスして…いい…?」

ラトが小声で訊いてくる。

「キキキ、キスって…むぐ」

華奢な躯が俺に覆い被さり、14歳の少女の腕が俺の首に回される。
紫色のウェーブがかった細い髪が俺の首筋をくすぐる。
熱く、柔らかい少女の舌が俺の唇を割って入ってくる。
ラトゥーニの、舌。
俺の舌を捉え、たどたどしくねぶる。

理性の糸が切れそうだ。
震える手をラトの背中に回し、最初は弱く。
だが、我慢できなくなって強く抱きしめてしまう。
その間もラトの舌はゆるゆると動き続けて。

「…ぷは」

キスを止めたら、もっとラトが欲しくなった。
ラトの首筋に顔をうずめ、唇を当てて強く吸う。
ミルクの匂いと、柑橘系の香水とシャンプーの匂いが、ないまぜになって俺の頭の中をぐるぐると掻き回す。

ラトがぴくり、とのけぞった。

「ぁ…」

ラトのちいさな手が俺の手を誘う。
ウエストの部分から、熱くほのかに汗に蒸れた少女のドレスの中へ。
手のひらに感じるラトの素肌。
驚いて抜こうとするが、ラトはそれを許さない。
両手で押さえ込んで抜けないようにし、潤んだ瞳でかぶりを振る。

「触って…」

ブラは、していなかった。
必要が無いのかも知れないが、だがそこには確実に女としての隆起があって。

手が溶けて沈み込んでしまうのではないか、と思える程柔らかくて。
ラトの体の中心を触っている、と感じる程に熱くて。

何よりも、ラトと一つになった感覚があった。
そのまま、もう一度キスをする。

脳髄が痺れる程に幸せだった。
手をラトの中心に置いて、見つめあう。これ以上の幸せがあるだろうか。

 * * *
360それも名無しだ:2007/07/15(日) 10:47:29 ID:rw6Qz4/q

夕暮れに差し掛かる。
雲海に沈む夕陽は、地上で見るよりも薄いオレンジ色で、横にぼんやりと伸びて霞んでいる。
残照に雲海が山脈のように、砂漠のように照り映える。

そして、宇宙がどんどんと降りてくる。

星が、出た。
最初はうすぼんやりと一つ、二つと数えられる程度だったのが、気付くと視界一杯に広がっていた。

星はどんどん増えていく。
地上にいる時の夕闇とは比べ物にならない。
満天の星空。撒かれた銀の煌く砂達。
その真下を、俺とラトはフェアリオンでゆるやかに漂っていた。

「お兄ちゃん…」

夢見るような表情でラトが言う。

「私、どうしてお兄ちゃんの事が大好きなのか、少し分かったかも知れない…」
「ん?好きって…。どうして?」
「今までに、PTをこんな風に使う人、いなかったもの…」

そうか、と思う。
スクールでは。
PTを只の戦闘機械としてしか使う人は居らず、全てが任務でしかなく。
ラトも、己の存在価値をどこに捉えてよいか判らず。
ずっと縛り付けられていたのだろうか。
凍てつき、傷ついたラトの心には、俺の力の抜け具合がぴったり嵌るのかも知れない。

「もちろん、それ以外も。寝ている時のお兄ちゃんも。食事してる時のお兄ちゃんも。歯を磨いている時のお兄ちゃんも。」

にこっと、みずみずしい朝顔がそっと花を咲かせるように笑って。

「全部、愛しています…。大好き…!」

そしてラトは、もう一度、今度は小鳥が餌をついばむように俺にキスをしたのだった。

* * *

短冊に願い事を書く。
地球上で、こんなに空に近い所で願う奴は、多分今年は俺達だけだろう。

「ラト、なんて書いたの?」

お約束のように、ささっとラトが慌てて後ろ手に短冊を隠す。

「しょうがないな、俺が先に吊り下げるか」

願い事を書いた短冊を笹の葉に結びつける。

「あ…」

ラトが嬉しそうに、はにかむように笑う。
いそいそと後ろから出してきたその短冊には、俺と同じ願い事が書かれてあった。


fin
361それも名無しだ:2007/07/15(日) 14:52:45 ID:0Jj+5r9S
>>356-360
GJ。
蒸し暑くなるこの時期にアツアツラブラブな話書きやがってw
しかも狭いコクピット内でお触りですかw
最後の、短冊に書いた願いが同じだったって締めもナイス。
様式美ですな。

362それも名無しだ:2007/07/16(月) 06:20:40 ID:Oda5w7Mw
>>361
サンクスハ汁。(つまらん

>アツアツラブラブ
羨ましそうだな!おい!w(失礼
アヤ大尉でやんなさいw

>お触り
今回、R指定を越えてるって話ですぜ?(小声
ヤバイね。

>様式美
いや、様式美取ったらこの世の中の著作物、99%絶滅するからw
まあ様式美マニアの私にかかればこんなもんですわ。(意味不明

つーわけでラトと同居人ですた。
朝はテンションたけーぜ。
363それも名無しだ:2007/07/16(月) 21:36:04 ID:KkBglsaW
>>362
> 羨ましそうだな!おい!w(失礼
> アヤ大尉でやんなさいw

ふっ、ならばそうさせて頂こうか!
もっとも、書かないだけで、俺たちはいつもアツアツラブラブだがな!
べ、別に悔しい訳じゃないんだからね!


> いや、様式美取ったらこの世の中の著作物、99%絶滅するからw

伝統芸能にいたっては完全に全滅ですなw
様式美万歳w
364それも名無しだ:2007/07/16(月) 21:37:48 ID:KkBglsaW
最初に言っておく!

スレスト食らったらごめんなさい。いやマジで。
大丈夫だとは思うが……では投下↓
365それも名無しだ:2007/07/16(月) 21:39:03 ID:KkBglsaW
ベッドに横たわる俺の耳に、アヤのクスクスと笑う声が響く。
俺以外の人間は絶対に聞く事はないだろう、淫靡な声。

「愛してる……」

俺の上に覆い被さり、下着姿のアヤは、俺の顔を濡れた瞳で覗き込み、ささやく。
そして、口づけ。
貪るように激しく、唇を吸われる。
舌が、何かを求めるようにせわしなく口の中に侵入し、動き回った。
俺も舌を動かして、それに応じる。
ピチャピチャと舌を絡ませていると、その舌を伝って、唾液が流れ込んできた。

俺はそれを、ゴクリと飲み下す。
いつもアヤにそうさせているように。

再び唇と舌のやり取り。
その間、アヤのたおやかな両手がシャツの下に入り込み、怪しい生き物の触手のように俺の肌をまさぐる。

「ぷはぁっ……」
息苦しさを覚え始める頃、唾液の糸を引きながら、アヤがようやく唇を離してくれた。

「ふふ……可愛い……」
シャツの下から抜いた両手で、俺の髪を撫で、頬と言わず額と言わず、顔中にキスの雨を降らせる。
舌先でチロチロと、耳たぶをくすぐる。
思わず首をすくめると、両手で頭を掴まれた。

「ダメ。じっとしてなさい?今夜のあなたは、私だけの可愛いお人形さんなんだから……」
狩る者の眼で俺を見つめるアヤ。

――そう、今夜は俺が攻められる側だった。
もっとも、最後までそうなのかは、俺にもアヤにもわからんが。

366それも名無しだ:2007/07/16(月) 21:41:31 ID:KkBglsaW
>>365
そうこうしてる内に、アヤは俺のシャツを脱がし始める。
露わになった上半身に豊かな胸の膨らみを押し付け、こすりつけた後、アヤは俺のうなじに吸い付き始めた。
「誰かに横取りされないように、ちゃんとマーキングしておかないとね……あなたは、私だけのものだって……」
そう言って、痕が付きそうなくらい強く吸う。
唇はゆっくりと下方へ移動し、胸板の辺りを吸い始めた。
キスだけじゃなく、唾液を塗りたくるように丹念に、舌で舐め回す。
その度に、体中をゾワゾワした感覚がほとばしる。
要するに、アヤの攻めに感じてる訳だ。
「どう?あなたはいつもこうやって、私をいじめているのよ?」

脇腹を両手でさすりながら、アヤは意地の悪い声でささやく。
「上官をこうやっていたぶるなんて、許される事じゃないわ……だから今夜は、私がタップリと罰を与えてあげますからね?」
軽く唇を重ね合った後、アヤは俺をうつ伏せにして、背中にも唇と舌を這い回らせる。
1ミリの隙間も残さない勢いで、しかし優しく、丹念に愛撫する。

いつも俺がしてやってるように。

「――どう?」
愛撫を中断して、アヤが尋ねる。
ちゃっかり胸を背中に押し付けながら。

どうって?

「そろそろ、欲しくなって来たんじゃない?」
耳元でささやくアヤの両手は、むしろそっちが欲しくなってんじゃないかってくらい情熱的な動きで、ズボンの上から股間をまさぐっている。

――ああ、欲しいよ。アヤが凄く欲しい。

俺も体の奥から湧き上がる熱に突き動かされるように、答える。

「ふふ、素直で良い子ね……」
アヤは起き上がり、再び俺を仰向けにする。
「それじゃあ、いつものように……まずはお口で……ご奉仕をしてあげるわね……」
アヤはかすかに息を荒げながら、俺のズボンに白魚のような指をかけたのだった。
367それも名無しだ:2007/07/17(火) 06:54:26 ID:uaHuoCVZ
>>363
おお、いけいけ!
>いつもアツアツラブラブ
いや、わかってるってw
>伝統芸能にいたっては完全に全滅ですなw
相撲編。
マワシは禁止。全裸で。
>>364-366
コラアアアアw
何書いてんの!(ブライトさん風に

GJw

まーアレだ。
たまに、だからね。
流れ的に多少はみ出す時もあるさ。
368それも名無しだ:2007/07/18(水) 13:31:26 ID:tDbEYblT
>>367
サンクス(・ω・)/
そうだよね。ごくたまになら、ほとばしる熱いパトスに身を任せても良いよね。

>相撲編
甘いなブラザー。伝統打破ならばこれしかない!
つ【女人禁制解除】
369それも名無しだ:2007/07/18(水) 13:32:35 ID:tDbEYblT
今日もコクピット内で、アシュセイヴァーの調整。
機体に慣れていくほどに、こうすれば良いんじゃないか、こうするべきではないかと、あれこれ自分なりの改善案が出てきて、キリがない。

しかしこいつは、自分の命を、そして仲間の命をも預けるマシンなのだ。
そう考えると、妥協は出来ない。

OSの調整の後、ソードブレイカーの新しい自動攻撃パターンの作成もやる。

「ずいぶん熱心ね」
そこへアヤがやって来て、声をかけて来た。

ああ、まぁな。
コイツで飯を食ってるんだし、当然さ。
俺はそう答えて、ニッと軽く笑う。

今はソードブレイカーの自動攻撃パターンを作ってるんだが、ちょっと手伝ってくれないか?
R−3のストライクシールドを参考にしたいんだが……。
「それは構わないけど、せっかくビーム砲が付いてるのに、ストライクシールドを参考にしたら無駄にならないかしら?」
アヤは言いながらコクピットに入り、適当なスペースに、ムッチリした張りのあるお尻をねじ込む。
見えそうで見えない、絶妙な位置にまでめくれ上がったミニスカートから伸びる、真っ白な太ももが、俺の目を慰めてくれた。

いや、そうでもないぜ。
太ももから視線を離せないまま、俺は答える。

370それも名無しだ:2007/07/18(水) 13:36:06 ID:tDbEYblT
>>369
ビームを撃つ時はどうしても、射線を安定させるために動きが直線的になったり、下手をすれば動きを止めにゃならん。
反面、勢いを殺す事なく、軌道を自在にコントロールしながら突撃するストライクシールドは、実はかなり強力な武器なんだ。
「そ、そうなの……?」
そうだよ。
しかもレーザーキャノンによる長距離射撃、テレキネシスミサイルによる広範囲爆撃で射程に穴がない。
念動フィールドのおかげで防御力はあるし、プラスパーツを付ければT-LINKフライトシステムで機動力も上がる。
単純な攻撃力では、元がHTBキャノンのR−GUNに負けるが、R−3は本来、前に出て戦えるだけの戦闘力を持った機体なんだよ。
「そ、そうなんだ……」
アヤは照れ笑いを浮かべるが、まんざらでもない様子だ。
争い事は好まないとは言え、やはり自分の乗る機体を誉められるのは嬉しいんだろう。
その機体を開発したのが自分の父親ともなれば、尚更だ。

ただ、アヤは大事なリーダーだからな。
やっぱり後方支援に徹してもらいたいね。
それに、アヤにおいしいとこを総取りされたら、俺たち男は立場がねえや。
おどけた調子で言うと、アヤはクスクスと笑い、
「それもそうねぇ。男女平等な世の中だし、男の子にも頑張ってもらわなくっちゃね」
そう言って、青い手袋に包まれたたおやかな指で、俺の頬をツンとつついたのだった。
371それも名無しだ:2007/07/19(木) 07:39:50 ID:updXocxG
>>368-370
>女人禁制解除

そりゃある意味様式美では?w

>しかしこいつは、自分の命を、そして仲間の命をも預けるマシンなのだ。

少尉とラトは立場が違うからねえ。
強制されて闘うか、納得して闘うか。
過去、ラトは強制されてPTに乗っていた訳だから。
ラトがそこにいたら、それはもっともな意見だとは思いながらも、
トラウマに心をえぐられる一言だ、と感じたよ。

今は自分や仲間を守る為だとしても、問題の傷は過去のものだから。
任務の為に薬物投与、人格改造、危険なテストを延々と受けさせれられたスクール出身の人間に正論は言えないと思う。
半身不随の人間に走れよ!と健常者が叩きつけるように言うのと一緒かと。

前にも書いたけど、言いたいことがまるっきりすれ違っているので主張をSSに書く事はしないけどね。
後、これに関しては悪いけどSSは控えて欲しいかな。
俺SSでの、ラトの価値観と主人公の否定に繋がるので。

機体の考察は良い感じ。
またひとつ進化したなあ、と思ったよ。
372それも名無しだ:2007/07/19(木) 13:15:15 ID:yQsvIW+t
>>371
サンクス(・ω・)/

ブラザーの感想読んで、「俺」とラトゥーニの違いが改めてわかったよ。

つー訳で、
>SSは控えてほしいかな。
↑この件は了解したよん。
373それも名無しだ:2007/07/19(木) 17:57:48 ID:2/rpTZme
>>372
うん。かたじけない。
でも少尉の軍人としての気持ちもよくわかるので。
374それも名無しだ:2007/07/19(木) 22:49:37 ID:yQsvIW+t
>>373
わかってるよ、ブラザー。
気にすんなって('-^*)/
375それも名無しだ:2007/07/21(土) 13:34:06 ID:5dIRy9GB
「なぁ、試作機は本当に量産機より弱いのか?」

――分隊室でライと新しいフォーメーションを考えてたら、マイがいきなりやって来て尋ねた。

どうした、いきなり。
「うん、レイオスプランの事、隊長からいろいろ聞かせてもらったんだけど、やっぱりSRXがそんなに弱いとは思えなくて……」
レイオスプラン?
ああ、「第一回チキチキ!EOTをもっと使いやすくしよう大作戦」か。

「 意 訳 し す ぎ だ 」

ライが芸術的なタイミングで突っ込んでくれた。

まぁ、それはともかく。
SRXは別に弱くねえよ。戦闘力だけを見れば、間違いなく人型機動兵器の中では最強クラスだ。あれとタイマン張れるのはグランゾンくらいなもんだろ。
「ただ、以前にも話したが、兵器に第一に求められるのは信頼性だ。残念ながらその点においては、SRXは不安が残る」
その不安を根本的に取り除くのがレイオスプランであって、別に弱くなる訳じゃねーぞ?
無駄な部分がなくなる、と言えばわかるか?
「無駄な部分って?」
そうさなぁ……例えば、合体後に自分で天下無敵とか言っちゃうパイロットとか。
「いちいち武器の名前を叫ぶパイロットもだ」
あと、技の名前を叫ぶパイロットに……。
「武器の名前をいちいち天上天下とか勝手に変更するパイロットも、だな」

「――って、全部俺じゃねーか!」

いきなりドアが開いて、リュウセイが入ってくる。
「黙って聞いてりゃ二人して好き放題言いやがって!お前らにはスーパーロボット魂ってもんがねえのか!」

『 な い 』

俺とライは、声を揃えて答える。
「な、なんだと!こういう時だけは抜群なコンビネーション発揮しやがって!さてはお前らデキてんだろ!このホモ兄弟!薔薇族!」

――ブチッ!

俺とライの中で、何かが切れる。

直後、俺の三角固めとライのアキレス腱固めがリュウセイに炸裂した。

その後リュウセイが反撃に出るわ、マイが俺だけをポカポカ殴るわで大騒ぎになったところを、アヤとヴィレッタの姐さんに見られて、俺たちは四人揃ってお説教されたのだった。
376君の夫は、もういない:2007/07/21(土) 21:24:16 ID:S5KMNY2g

ヒギンズ「待って、ゼア!一体どうしたっていうの!?」
ゼア=ウィド「問答無用だ。喰らえっ!」

ゼア=ウィドのハイペリオン三号機の構えたビームマシンガンから放たれる光がヒギンズのブレンに襲い掛かる。
と、突如その間に白い影が割り込み、バリアのようなものでビームマシンガンを弾き返す。

宗介「迂闊だぞ、ヒギンズ・サス」
ヒギンズ「ご、ごめん、宗介さん……」
ゼア=ウィド「ちっ、ラムダ・ドライバか…!」
宗介「恐らくゼア=ウィドはならかの精神操作を受けているのだろう。それによって
  俺たちを敵として認識して……」
ゼア=ウィド「ごちゃごちゃと五月蠅いぞ!てめえが死ぬか!」

今度はハイペリオン三号機がビームナイフを構えアーバレストに襲い掛かる。
しかし、ハイペリオン三号機の体は次の瞬間大きく吹き飛ばされていた。

ゼア=ウィド「なっ……!?」
耐爬「目を覚ませ、ゼア=ウィド!」
ゼア=ウィド「八卦ロボ……厄介だな、後回しとするか。次のターゲットは……てめえだ!!」
シャナ=ミア「!」

ゼア=ウィドはビームナイフを持ち直しシャナ=ミアのラフトクランズに斬りかかる。
シャナ=ミアは矛を操りこれをかわした。

シャナ=ミア「どうしたの、ゼア!?私がわからないの!?」
ゼア=ウィド「知っているとも!フューリーの皇女、そしてガルシア司令のために
      消すべき人物の一人だ!」
シャナ=ミア「! そんな……!」
オルガ「どけ、シャナ=ミア!」

オルガのカラミティガンダムの胸部から放たれたスキュラでハイペリオン三号機は体勢を崩す。

ゼア=ウィド「がっ!?連合が使用したブーステッドマン唯一の生き残りか……」
シャナ=ミア「オルガさん!余計な……」
オルガ「辛いんだろうが!知らないとはいえあんたの夫だろう!そんな奴と斬りあうなんて、辛いに決まってる!
   ここは俺に任せろ!」
シャナ=ミア「オルガさん……」
ゼア=ウィド「戦闘中に余所見とは余裕だな!もらったぞ!」

ゼア=ウィドの放ったビームマシンガンによりカラミティはシュラークとスキュラを、
投げたビームナイフにより両腕を破壊された。

オルガ「がぁぁっ!?」
ゼア=ウィド「ふん、この程度か。さて、資料が正しければそろそろのはずだが…?」
オルガ「グッ!?…ハァ……ハァ…ウ、グァア………!」
シャナ=ミア「オルガさん!?」
宗介「まずい!γ−グリフェプタンの副作用が現れ始めたか!」
耐爬「これ以上の戦闘は得策ではないな……しかし逃げ道もなし……」
ヒギンズ「私に……考えがあります」
377君の夫は、もういない:2007/07/21(土) 21:42:51 ID:S5KMNY2g
シャナ=ミア「本当ですか!?」
ヒギンズ「いいですか、皆さん。私の言うとおりに動いてください」

しばらくすると四機はカラミティを囲むように動き出した。

ゼア=ウィド「……? 一箇所に固まっているだと?何をするつもりだ?
      …まあいい、好都合だ!まとめて吹き飛べぇっ!!」

ゼアの雄叫びと共にハイペリオン三号機がビームキャノン『フォルファントリー』を
噴き出した。

ヒギンズ「……今っ!」
シャナ=ミア「…っ!」

直後、小規模の爆発が起こった。
しかし、ゼア=ウィドはその位置を訝しげに睨んでいる。

ゼア=ウィド「…………」
バルサム「いよぉ、やったじゃねえか、ゼア=ウィド」
ゼア=ウィド「バルサムにカナードか。何時からいた?」
バルサム「お前が緑のガンダムボコボコにするとこからさ。なぁカナード?」
カナード「……キラ・ヤマト……キラ・ヤマト……キラ・ヤマトッ……!」
バルサム「あーあ、メンデルから戻ってきてからずっとこれだぜ」
ゼア=ウィド「奴らは死んでいないぞ」
バルサム「あ?」
ゼア=ウィド「爆発が小さすぎる。それに――」

ゼア=ウィドは近くに浮いていた残骸を拾いバルサムに見せた。

ゼア=ウィド「これはMSのものでも八卦ロボのものでもASのものでもない。
      ましてフューリーの機体はシステムが違いすぎるしブレンから残骸がでようはずもない。
      出るとすれば…………携帯しているミサイルランチャーだ」
バルサム「なるほど、バイタルジャンプのカモフラージュってわけか」
ゼア=ウィド「そうなるな。さあ、帰還しよう。今回の任務はあくまで哨戒。討ち損じてもガルシア司令も
      そこまでお怒りになることはなかろう」

ヒギンズ「……みなさん、大丈夫ですか?」
耐爬「右の翼を少し掠めたが、問題はない」
宗介「それより、ここはどこだ?」
ヒギンズ「跳ぶことを優先したから正確な位置までは……あ、近くに要塞らしき物があります。
    そこに救援を求めましょう」

その要塞内部では――――。

???「…失礼します」
???「どうした?」
???「救難信号が出ております」
???「どこからだ?」
???「要塞付近のブレンパワードからです」
???「何? …よし、回収しろ」
???「ハッ、……追加情報。パイロットの一人がγ−グリフェプタンを要求しています」
???「用意してやれ」
???「了解」
???「さて……一体このアメノミハシラに何用かな……?」
378君の夫は、もういない:2007/07/21(土) 21:45:02 ID:S5KMNY2g
本日はここまでです。
補習のせいで夏休みも暇じゃないです。
今日も皆様への感想を書く時間がないことをお許し下さい。
以上、オチをどうしよう、ゼア=ウィドでした。
379それも名無しだ:2007/07/22(日) 18:11:33 ID:xiSk6R6M
>>376-377
ちょ、ゼアinハイペリオン強すぎw

補習頑張ってちょ。
体だけは壊さないようにね('-^*)/
380それも名無しだ:2007/07/23(月) 20:02:18 ID:bXnHW0KB
>>375
面白かったですぜ。
こういうの超上手いよね。
GJ!

レイオスプランについてはよくわからんなー。
なんだっけ。

SRXの強さ…。
火力だ!w
一撃必殺砲はOG最強だよね。

>>378
補習か…。
夏休みの学校って結構好きだったな。
独特の雰囲気があるんだな。これがな。
381それも名無しだ:2007/07/24(火) 10:12:39 ID:sdQeCo6j
>>380
サンクス(・ω・)/

レイオスプランは「俺」が言った通り、色々と不都合や不具合も多いEOTをもっと安全かつ効率的に使いやすくするものだったはず。
とあるサイトの、OG2.5の台詞集でそんな風にライたちが話してた。

382それも名無しだ:2007/07/24(火) 10:13:33 ID:sdQeCo6j
『おはようございます!こんにちは!失礼します!』

分隊室で、朝っぱらからリュウセイとマイが声を揃えて、敬語を繰り返している。
その傍らで、アヤとヴィレッタの姐さんが二人を見張っていた。
「だいぶ言えるようになったわね。本番もその調子で頼むわよ、リュウセイ」
「任せとけ、隊長!バッチリ決めてy」

――スパァンッ!

姐さんの手にしているデッカいハリセンが、軽快な音を立ててリュウセイの脳天に一撃をくらわせる。
音が軽快だったのは、或いはコイツの頭が空っぽだからかも知れないが。
「早速敬語を忘れてどうするの?もう一回やり直し」
「いって〜……り、了解……」
「隊長、何もそんなに思いっきり叩かなくても良いじゃないか!」

――スパァンッ!

抗議したマイの脳天にも、ハリセンが炸裂した。
「あなたは流れを読みなさい」
「うぅ〜……あ、アヤ〜……!」
「甘えてもダメよ。今日はとても大切なお客様がいらっしゃるんだから」
今日ばかりは、アヤも心を鬼にしてマイを突き放す。

「あら、おはよう。今日も頑張りましょうね?」
俺の視線に気付いたのか、不意にアヤが声をかけた。

おはようございます、コバヤシ大尉。
今日もよろしくお願いします。
俺はかかとを揃えて背筋を伸ばし、敬礼して答えた。

「さすがにあなたは、この辺の教育が行き届いてるようね」
姐さんが満足げにうなずく。

ありがとうございます、バディム隊長。

「さ、この子を見習って、あなた達も頑張りなさい。挨拶5セット、始め!」
姐さんが手を叩くと、リュウセイとマイは再び敬語での挨拶の練習を再開した。

383それも名無しだ:2007/07/24(火) 10:15:24 ID:sdQeCo6j
「あの〜、何をしてるんですか?」
廊下から、ゼオラが声をかける。
珍しく、連邦軍の制服を着てやがる。

ほれ、今日は昼から、本部の監察官が査察に来るだろ?
あの二人、敬語が出来ねえから、それに備えて特訓中なんだよ。
「ど、どこも同じなんですね……うちも、アラドが今カイ少佐にミッチリしごかれてるところなんですよ?」
アイツは、最低限の敬語は喋れた筈だが……。
「だってアラドったら、着任挨拶で、私の後に堂々と『以下同文です』なんて言っちゃうような奴なんですよ?」
あー……なら仕方ねえな。

「本当に大変ですよ。私たちも、今日だけで良いから制服を着ろってカイ少佐に言われて……」
んじゃラトゥーニも、今頃制服引っ張り出してお着替え中か。
「ええ。でも、やっぱりちょっと馴染めないですね」
そう言ってゼオラは苦笑する。
確かに、ちょいと窮屈そうだな……。
「きゅうくつ……?」
オウム返しにつぶやいたゼオラが、途端にカァーッと赤くなる。

――ゴスッ!

直後、ゼオラのかかと落としが俺の脳天にめり込んだ。
「せ、セクハラですよ、少尉!私の胸はそんなに大きくありません!」
ゼオラは怒鳴りつけると、パタパタと走り去っていった。

胸の事を言った訳じゃないんだが……。

「アラアラどうしたの?大丈夫?」
そこへ投げかけられる優しい言葉に、俺は背筋が凍りつく。
「何があったのか、詳しく聞かせてくれるわよねぇ?」
振り向くと、アヤがイカした笑顔を浮かべていた。
「二人っきりで、じっくりと……ね☆」
俺の頬を撫でるアヤは、狩る者の眼になっていた。

非・性的な意味で。
384それも名無しだ:2007/07/24(火) 20:21:48 ID:8VaQdX/P
マイ可愛いわーw
敬語は無理。彼女には。
ハリセンで叩かれて、涙目になって口を尖らしてるマイ想像して萌えたよん。

>ラトの軍服
ここでも一瞬、OGsに変化?

そういえばOGsのラト。
もう何時でも眼鏡軍服だしジオン軍のパイロットスーツだし声はパヤパヤしてるしリュウセイ萌えが悪化してるし。
誰ですかアレは。
GBAラトカムバック。

アヤ大尉はむしろグレードアップしてる感じでいいねえ。
385それも名無しだ:2007/07/24(火) 20:23:40 ID:8VaQdX/P
言い忘れたけど。






GJ!!
386それも名無しだ:2007/07/24(火) 22:44:56 ID:sdQeCo6j
>>384-385
サンクス(・ω・)/
あの後、ゼオラへのセクハラ疑惑でアヤに「尋問」されて大変だったよ(*´∀`)

OGsの戦闘シーンを、YouTubeでいくつか入手したけど……コバヤシ姉妹のゲシュペンストキックに牛乳吹いた。
あと、アヤのカットインは非常にけしからんので、今夜はその件についてじっくりと「尋問」するつもりですw
387それも名無しだ:2007/07/27(金) 11:21:53 ID:OqsAOWxL
背中に、じっとりと濡れた柔らかい物体の感触。
次いで、まどろみを優しく払う声がする。

「起きて……ねぇ……」

耳元に絡み付くような、甘い声。
すぐに頭はハッキリしてくるが、もう少しこの声を聞いていたいので、寝た振りをしてみる。
「そろそろ時間よ?起ーきーて」
そう言ってアヤは、俺の耳に息を吹きかける。
くすぐったくてつい首をすくめると、アヤは面白そうにクスクス笑った。
「早く起きて、シャワー浴びなきゃ……昨夜はいっぱい頑張っちゃって、汗かいてるんだから……」
アヤのたおやかな指が、汗ばんだ俺の肌を優しく愛撫する。
チュッチュッと唇も、汗を吸い取るように這い回った。
「早く起きないと、してあげないわよ?朝のア・レ・☆」

――それは困る。
もう少しアヤに愛撫されたかったが、俺はゆっくり身を起こした。

アヤも起き上がり、タオルケットで自分の裸体を隠す。
「おはよう、お寝坊さん」
ニッコリと笑うと、アヤは朝のアレを――おはようのキスをしてくれた。

その後一緒にシャワーを浴びて、ベッドの上でかいた汗を洗い流す。
アヤに体を隅々まで拭いてもらったら、制服を着て、手をつないで食堂へ。

しかし途中の廊下で、俺は大事な忘れ物に気付いた。
「じゃあ、取りに戻る?」
いや、その必要はねえ。
俺はアヤの剥き出しになっている白い両肩を掴み、壁際へやる。
一瞬不安げな顔になるアヤの前髪を撫でてやり、俺はささやいた。

おはよう、アヤ。愛してる。

そして、彼女の可憐な唇にゆっくりと自分の唇を重ねた。

「んっ……もう……こんな大事な事を忘れるなんて……」
ごめん、アヤ。
怒ってるどころか、むしろ嬉しそうなアヤの言葉に、俺も合わせる。
「謝っても駄目よ?もっと……燃えるような熱いのをくれないと、許さないんだから……」

お腹を空かせた子犬のような眼で俺を見つめ、アヤはおねだりする。

仰せのままに、ご主人様。
おどけるように答えて、俺はアヤのリクエストに応えてやったのだった。
388それも名無しだ:2007/07/28(土) 07:01:21 ID:Mzx6zlJz
>>387
アレってキスか!w
ちと焦ったわ。
御馳と言わせて頂く!

しかしそろそろアレだね。
夏だ。

水着とか海とかその辺のネタ書かにゃーだよねえ。
389それも名無しだ:2007/07/28(土) 14:44:47 ID:zNLIgsW6
>>388
サンクス(・ω・)/

ハハハ、何の事だと思ったんだい、ブラザー。

しかし、確かにアレだね。海とか水着とか水着とか水着とか水着とか、男として避けて通れぬネタが待ち構えてるねw
あとは怪談ネタもか。
390それも名無しだ:2007/07/30(月) 15:02:26 ID:FMEx6Y7C
今日の食堂のスペシャルメニューは、トロンベ特製のうな重だった。
和食もこなせるとは、さすが食通!マジでうまかったぜ!

「ホント、トロンベさんって料理が上手よね。時々、悔しくなっちゃうわ」
とか言いながら、アヤもかなりご満悦のようだ。

「大尉……兄の名前はトロンベではありません」
向かいの席のライが抗議する。
そういやぁそうだったな。トロンベトロンベうるせーから、つい本人もトロンベって呼んじまうが。
で、本名って何だったっけ?
「いやぁねぇ、レーツェルさんでしょう?」
「それは偽名です」
あれ?そうだっけ?
じゃあ何て言うんだ?
「う〜ん……」
アヤも思い出せないようだ。
じゃあ面倒くさいから、トロンベ・ブランシュタインって事で。

「  断  る  」

トロンベがいつの間にか俺の後ろに立っていた。
「君にはつくづく困ったものだな。君が私をトロンベよばわりするおかげで、最近はレオナまで私をトロンベと呼ぶ始末だ……」
つまり俺が、トロンベブームの火付け役って事か……照れるぜ。
「誰も褒めてはいない。いいか、トロンベは我が愛馬及び愛機の名、私の名前はエルザムだ」
あー……そういやぁそんな名前だったな。すまんすまん。
「すまんじゃない。良い機会だからちゃんと覚えておけ」
自分の兄貴の事だからか、ライも口うるさい。

「兄の名はエルザム。エルザム・ ト ロ ン ベ ・ブランシュタインだ」

――直後、トロンベは泣きながら食堂の外へと駆け抜けていった。
391それも名無しだ:2007/07/31(火) 07:22:31 ID:X99pn3Wr
>>390
言ってはいけない、と思うと口に出るもんだよね。
てかわざと?
兄弟間の溝、更に深まったな…w
392それも名無しだ:2007/08/01(水) 11:51:21 ID:sj1v6tzX
>てかわざと?
何を言ってるんだい、ブラザー。

 当 た り 前 じ ゃ な い か !

そうやって、なかなか兄貴を超えられないフラストレーションを解消してるのさw
393着せてみました。@:2007/08/01(水) 18:11:26 ID:sj1v6tzX
今日の訓練が終わった後、俺はチームのみんなを分隊室に呼び出した。
「お前が俺たちを呼び出すとは、珍しいな」
「ははぁ、さてはついに、アヤとの婚約発表か!?」
リュウセイが冷やかしの口笛を吹くと、マイが背中から殺意の波動を漂わせる。

そんなんじゃねーよ、俺は芸能人か。

「ところで、そのアヤが見当たらないんだけど……」
ああ、アヤなら今準備中です。
「準備?」
ヴィレッタの姐さんが、珍しく首を傾げた。

そろそろだな。
おい、アヤ。出て来いよ。
俺は分隊室の端にある、更衣室のドアに向かって呼びかける。

「……いや」

だがドアの向こうからは、子供のような口調で拒む声。

おい、わざわざみんなに集まってもらったんだぞ。良いから来いって。
「いやったらいや!恥ずかしいわ……みんなきっと、笑うに決まってるもの……!」
そんな事ないって!
つーかここまで来ておいて、今更いやもクソもあるか!さっさと来い!

俺はドアを開けて更衣室に入り、ぐずるアヤを力ずくでみんなの前に引っ張り出した。

『……おお〜っ!』

異口同音に、みんなの口から感嘆の声がこぼれた。

アヤはフリルの付いたドレスを纏い、緑の黒髪に大きめリボンを飾っていた。
ラトゥーニが着ているアレの、大人サイズだと思ってくれれば良い。

394着せてみました。A:2007/08/01(水) 18:13:31 ID:sj1v6tzX
>>393
よっぽど恥ずかしいのか、アヤは顔を真っ赤にして、俺の後ろに隠れたがるかのように、俺の腕をキュッと掴んでくっついた。
まるで人見知りする子供だ。

「それ、ラトが着てるのと同じやつじゃねえか」
「実にお似合いですよ、大尉」
「アヤ、可愛い……私も、着たいな」
「みんなの言う通りよ?恥ずかしがる事はないわ」

みんなそうやって、誉めてくれる。

そうだろそうだろ。
だからわざわざみんなを集めて、御披露目する気になったんだ。

「本当……?」
アヤが上目遣いにみんなを見て、尋ねる。
もちろん全員、ウンウンと力強くうなずいてくれた。

「じゃあ……もうちょっとだけ……着ていようかしら……」

ああ、是非そうしてくれよ。
「で、でも!本当にちょっとだけよ!?今だって、恥ずかしくて死んじゃいそうなんだから!」

わかったわかった。
アヤをなだめすかして、御披露目会もお開きにした。

みんなが出て行った後、俺は更衣室に戻ろうとするアヤの腕を掴んで、引き止める。

「……?」
不安げな眼差しを向けるアヤを抱き寄せて、俺は耳元でささやいた。

――どうせだから、部屋までこの格好で行こうぜ?

395着せてみました。B:2007/08/01(水) 18:14:53 ID:sj1v6tzX
>>394
「なっ……!?」

アヤの顔が、更に赤みを増した。
驚きで、目を大きく見開いている。

「い、いや!いやったらいや!絶対にいやぁ!」

子供のように言い張るアヤ。

みんな褒めてくれただろ?大丈夫、誰も笑わないって。
「それでもいや!あなたがどうしてもって言うから着てあげただけなのよ!?なのに……うむぅっ!?」
アヤの抗議を、俺はキスで強引に塞ぐ。

クチュクチュと舌を絡ませると、アヤはほとんど条件反射で俺の背中に腕を回して、応じてくれた。

しばらくの間、唇と舌を味わった後、俺はゆっくりと唇を離す。

大丈夫だって。
今頃はどこの部隊も食堂で晩飯食ってるから、誰もいないよ。
それに、何かあっても、俺が守ってやるから。

髪を撫でながらささやく。

「……本当に、守ってくれる?」
俺の肩に顔をうずめながら、アヤが尋ねる。

ああ、もちろんだ。

「……お部屋に着いたら、いっぱいしてくれる?」
アヤが望むなら、朝までぶっ続けで体を張るぜ?

「……じゃあ、私、頑張る」
アヤは自分を励ますように、キュッと俺の軍服の袖を掴んだ。

396着せてみました。C:2007/08/01(水) 18:19:33 ID:sj1v6tzX
>>395
俺とアヤは手をつないで廊下に出た。

アヤのもう片方の手には、軍服の入ったバッグが握られていた。


宿舎へ続く廊下はガランとしてて、案の定誰もいない。

な?言った通りだろ?

「う、うん……」
ゴスロリファッションの影響か、アヤは幼い仕草でコクンとうなずく。
顔にも少し、安堵の色が浮かんでいた。

そこへ、廊下の向こうからパタパタと走ってくる、やたらヒラヒラした影が。
元祖ゴスロリパイロットのラトゥーニ様だ。

「………!」
ラトゥーニは俺たちを――というより、アヤを見て、ビックリしたように立ち止まる。

「ら、ラト……!あ、あのね!違うの、違うのよ!これは……!」
アヤがしどろもどろに弁解しようとしたが、次のラトゥーニの言葉がそれを遮った。

「アヤ大尉……綺麗……」

「……え?」
「まるでフランス人形みたいです。凄く似合ってますよ?」
「そ、そう……?」
「はい。デザインは同じみたいだけど、やっぱり着る人によって変わるんですね」
ラトゥーニはウットリと見とれている。

褒められてるのはアヤだけど、何か俺も、すげー良い気分だぜ……。

「あ!私、お兄ちゃんを待たせてるので、失礼します!」
ラトゥーニは元気良く敬礼して、パタパタと走り去っていった。

ホテルに寄り道しねーで、真っ直ぐ帰れよー。

冗談半分で言うと、ラトゥーニが顔を真っ赤にしながら戻ってきて、みぞおちへの強烈な跳び蹴りで答えてくれた。

くそ、突っ込みがますますキツくなってやがる……。
「この前ゼオラにかかと落としされたばかりなのに、懲りないわねぇ……良い気味よ」
うずくまる俺にツンとそっぽを向いて、アヤは一人でスタスタ歩き出したのだった。

397それも名無しだ:2007/08/02(木) 06:15:44 ID:Jhc1HjVB
>>392
ライ、性格わるっw

>>393-396
乙!
羞恥プレイ&コスチュームプレイだ!
コスプレっていう語感よりはコスチュームプレイ。
よりいかがわしい方向で。

まったく、いかがわしいw

ラトの飛び蹴りイイヨイイヨー
なんで萌えるのかわからんけど飛び蹴り萌えた。
398それも名無しだ:2007/08/02(木) 10:12:45 ID:N5XEr6B+
>>397
サンクス(・ω・)/

でも、そんなにいかがわしいかな(´・ω・`)

いかがわしいか(*´∀`)

だが、それが良い!(`・ω・´)


>なんで萌えるのかわからんけど飛び蹴り萌えた。

ヒント:魔法の呪文「あるてぃめっと☆ごーすと☆あたっく」
399それも名無しだ:2007/08/03(金) 06:01:17 ID:ph/2RCpq
>>398
うむw

>ヒント
そ れ だ !
400プールに行こう@:2007/08/05(日) 17:34:29 ID:TsykfWf1
ここは、よくアヤと二人で行く、スポーツクラブのプール。
今日はアラドとゼオラも誘って、ちょっとしたダブルデートの形になっちまったが。
二人はラトゥーニも誘いたがっていたが、あいつは彼氏とよろしく決めてるとこだろうからそっとしておけと言ったら、諦めてくれた。



今、俺はプールサイドのベンチに座って、アヤとゼオラが競争して泳いでるのをボンヤリと眺めていた。

……ゼオラの奴、思ったより速いな。
胸のせいで水の抵抗が増えて、泳ぎにくいんじゃねーかと心配してたが。
それとも、あの胸が浮き袋の役割になって、速く泳げるんだろーか?
尋ねてみたいところだが、どうせかかと落としの餌食になるだけだから、やめておこう。

「少尉、お待たせしました」
アラドが四人分の缶コーヒーを買って、戻って来た。
俺は自分のコーヒーを受け取り、ゴクゴクと飲み始める。
「しっかし、デカいプールって良いッスよね〜!泳ぎ甲斐があって!」
アラドも俺の隣に座って、自分の分を飲み始める。

……あれは、泳いでたのか。
水面を手足でバタバタぶっ叩いて、なるべく高く水柱を上げる、ナウなヤングの間で大流行の遊びかと思ってたが。
「いや流行ってないし!ていうか、ナウなヤングって言い方も流行ってないし!つーか俺ちゃんと泳いでたじゃないッスか!前に進んでたし!」
あれはただの、水面ぶっ叩いた副作用じゃなかったのか?
てか突っ込み多すぎだ。
「ひ、ひでぇ……!」
落ち込むアラドを尻目に、俺はサッサと缶コーヒーを飲み干した。

401プールに行こうA:2007/08/05(日) 17:36:24 ID:TsykfWf1
>>400
そこへ、アヤとゼオラがプールから上がって、こちらへやって来た。

ゼオラは白のビキニ、アヤは赤地に白いラインの入った、どことなくR−3をイメージさせる競泳用水着だった。

「少尉は泳がないんですか?」
ベンチの端に置かれた缶コーヒーを拾いながら、ゼオラが尋ねる。

もう少し休んだら泳ぐよ。

ゼオラの胸の谷間に一瞬目を奪われたが、女王様のお仕置きが怖いので、意識して目を逸らしつつ答える。

「ところで、アラドは元気がないみたいだけど……」
同じく缶コーヒーを拾いながら、アヤが尋ねる。

ああ、自分が金槌だって気付いて、ショック受けてんのさ。

「えぇ!?違いますよ、アヤ大尉!少尉が」
「しょーがないわね。じゃあ後で私が、泳ぎを教えてあげるわ」
アラドの反論を、ゼオラが遮る。
「へっ、お前が人様に泳ぎ教えられるタマかよ。その胸が邪魔で、スピード出ないんじゃねえのか?」

――グシャッ!

ゼオラの手の中のスチール缶が、見事に握りつぶされた。
「アぁぁぁぁラぁぁぁぁドぉぉぉぉっ!!!!!!」
怒れる鬼神と化したゼオラと、悲鳴を上げて逃げるアラド。

まったく相変わらずだな、バカップルめ。

402プールに行こうB:2007/08/05(日) 17:40:27 ID:TsykfWf1
>>401
二人のドタバタコントを見物してると、アヤが隣に座って、頭を撫でてきた。

……何だよ。

「さっき、ゼオラの胸をジロジロ見たりしないで、すぐに目を逸らしたでしょう?そのご褒美」
ご褒美って、そんな大した事かね。
「ええ……あの子、胸が大きいのを、かなり真面目に気にしてるみたいだから……」
んじゃ、今アラド追いかけ回してんのも、マジ切れしてるからか。

……しっかし、結構見てるんだな。そーいう細かいとこ。
「当たり前でしょう?私はいつだってあなたを見てるし、あなたを見守っているわ」
アヤが濡れた体をくっつけてきた。
「だって、私たちは恋人同士なんだもの……」
そう言うと、アヤはスゥッと目を閉じた。
良いのか?ガキどもが見てるぜ?
プールの向こう側から、バカップルが喧嘩も忘れてこちらを見ているのを確かめ、尋ねる。
「構う事ないわ。見せてあげましょう?大人の恋愛のお・て・ほ・ん☆」
何か、むしろ悪い手本になりそうな気もするが……まぁいいか。

俺はアヤの肩を抱き、見せつけるようにゆっくりと、唇を重ねてやった。

アラドもゼオラも興味津々で見てやがる。

舌を絡ませると、アヤの両腕が首に回った。

……やっべー、癖になったらどないしょ。
403それも名無しだ:2007/08/08(水) 11:58:34 ID:qaDPoFdG
「あん……ダメよ、こんな所で……」
バレねーから大丈夫だって。
外には誰もいないし。
背後から、膝の上に座るアヤの豊かな胸に手を這わせながら、俺は答えた。

一日の訓練を終えた後、俺は静かになった格納庫で、アシュセイヴァーの調整に精を出していた。
そこへアヤがやって来たので、俺は彼女をコクピット内に引きずり込んで、欲望の赴くままにその肉体をまさぐっている次第。

軍服の上から胸を揉みしだき、太ももを愛撫しながら、剥き出しの肩に唇を這わせる。
「だ、ダメだったら……あぁ……許して……お願いです……」
抗議するアヤだが、その割りには何の抵抗もしない。
むしろその悩ましい声は、俺の中の加虐心を燃え上がらせるだけだ。

軍服をはだけさせて、直に乳房を弄ぶ。
ミニスカートをめくり上げて、下着の下に指を這わせた。

「だ、だめぇ……!」
アヤはイヤイヤをする子供のように、腕の中でもがく。

「こんな……こんな所じゃイヤ……ベッドの上で……したいのに……」
そうだなぁ……じゃあ、その可愛い口で満足させてくれたら、お望み通りベッドの上で好きなだけ抱いてやるぜ?

うなじを吸いながら、俺は意地悪く答える。

「おくち……ここで……?」
アヤは肩越しに俺を見ながら、子供のようなたどたどしい口調で聞き返す。

ああ、そうだよ。それとも、外でしたいのか?
「あぅ……わ、わかりました……ここでします……いえ、ここで、ご奉仕をさせてください……」
濡れた声で答えるアヤ。
完全にスイッチが入ったようだ。

それじゃあ頼むとするか。
俺はコクピットシートを後ろにスライドさせて、余裕を作る。
アヤはもぞもぞと俺の足下に座り込み、慣れた手つきで、ズボンのジッパーを下ろした。
「失礼いたします、ご主人様……」
俺の顔を見上げ、淫靡な笑顔を向けると、アヤはその可憐な唇で、俺を優しく包んでくれた。
404それも名無しだ:2007/08/08(水) 11:59:51 ID:qaDPoFdG
暑さにやられて、エラいもん書いてしもた……。

切腹。
405それも名無しだ:2007/08/08(水) 13:46:04 ID:oJOyTLeV
>>404
新参者です。
お久しぶりです。
よかったら介錯しましょうか?
乙ですよぅ。

手を怪我してしばらくぶりでした。
みなさん、お元気そうで何よりですぅ。
406それも名無しだ:2007/08/08(水) 14:15:50 ID:qaDPoFdG
>>405
お久しぶり(・ω・)/

手の怪我は大丈夫かい?
何か俺、お腹から血がダラダラ盛大に流れ出てるんで、介錯はお早めにw

407それも名無しだ:2007/08/08(水) 17:25:29 ID:oJOyTLeV
>>406
新参者です。
ならさっそく…
ゼンガー「我が名はゼンガー!悪(深読み禁止)を断つ剣なり!」

チェストォォォォォ!

ついでに投下します。

地球を震撼させたステーションコロニー、ルナ占拠事件の後、俺たち戦略空母ハミングバードのクルーは久しぶりの休暇を過ごしていた。
事件を無事解決させた功績を買われての有給休暇で、アラドは『大和は漢のロマン』との言葉を残して横浜基地へカレーを堪能しに出かけ、俺はゼオラと昨日までテスラ研にいた。
事件解決に助言をくれたオオミヤ博士にお礼を言いにだ。
しかし、オオミヤ博士も忙しい身で、この後も新型パーツの調整があるらしい。そして、今は…
「先輩、富士山が見えてきましたよ!」
軍の輸送機に便乗して、俺たちは伊豆基地に到着しようとしている。
俺の隣ではしゃいだ声をあげるのは、ゼオラ。今回の休暇は、ゼオラに付き合う約束だった。
『アテンションプリーズ。…お客さん方、そろそろ着陸体勢に入るぜ。シートベルトしないと舌噛むかも知れないからよろしくな』
気取った機長のアナウンスが入る。
「えー…もっと見たいのにぃ」
ゼオラは不満そうに口を尖らせる。が、瞳はこれからの事をあれこれ考えているのだろう、キラキラ輝いていた。
「先輩、占拠事件解決のヒントをくれた探偵さんにもお礼を言わないとね」
「そうだね…何てったかな、あの中学生?」
「藤原君!…先輩、中学生って言ったら怒られますよ。小っちゃい、も禁句ですからね」
「そうかな?九重さん…は笑ってたけど…」
「あ、九重さんは覚えてるんですね…!」
「いや…金髪で関西弁だったからインパクトあって…て、何怒ってるんだ?」
「怒ってません!」
「怒ってるだろ。そんなにほっぺ膨らまして…」
「怒ってませんったら!」
『…お客さん、じゃれるのはそれくらいにしてくれよ。本機はこれより着陸シーケンスに入るからな』
…こっちの会話は筒抜けか。これじゃ滅多な事は言えん。
申し遅れた。俺はクラウド・ファウスト。『スクール』の耐G・高速強襲課程被検者だ。今では戦略空母ハミングバードでテスラ研の新システム『ゼロ・ドライブ』搭載PTビルトアドラーの専属パイロットをしている。以前は二度とPTに乗るまいとしていたが…
と、その時、窓の向こうが白く曇った。輸送機は雲の中に飛込んだ。徐々に高度が下がり、空の蒼さが薄くなり、木々の緑が濃くなっていく。流れるように移り変わる窓の外は、やがてアスファルトを敷き詰めた滑走路に変わっていた。
『…タッチ・ダァウン!』
機長の雄叫びと同時に、輸送機は滑るように着陸する。舌の噛みようがない。
「わぁ…」
ゼオラは、まるで伊豆基地に初めて来たように窓から外を眺めている。
「…あら?」
輸送機がようやく止まった時、ゼオラはすっとんきょうな声をあげた。
つられて、俺も窓の外に目を向ける。
ゼオラと俺の視線の先にいたもの。それは、ATXチームのキョウスケ・ナンブ中尉だった。
408:2007/08/08(水) 17:27:42 ID:oJOyTLeV
「ご苦労様です、クラウド大尉」
キョウスケは堅そうな口調で敬礼した。
「そちらも。キョウスケ・ナンブ中尉。…で?」
「…で?とは?」
「質実剛健が売りのキョウスケ・ナンブ中尉が、わざわざあいさつのために滑走路まで出張るとは思えなくてさ」
はあ、とキョウスケが珍しく曖昧な答え方をした。どう切り出したらいいものか、と判断に迷っているのか。
「…」
わずかな沈黙。やがてそれを縫って、もう1人のATXチームのメンバーが金髪を揺らせて現れた。
「いやん、2人は隠し事ができない仲って訳ねん。ようこそ、伊豆基地へ。クラウド大尉、ゼオラちゃん」
「こんにちは、エクセレン少尉」
「そちらも元気そうだね、エクセレン少尉」
「そうでもないんですよ、寝不足でぇ。毎晩毎晩、キョウスケったら…」
「演習後のミーティングをな。…エクセレン、あれを頼む」
エクセレンが巧いこと思案の時間を作ったようだ。キョウスケは意を決したように俺とゼオラに目を向ける。
エクセレンが封筒を差し出す。封筒には何も書かれていない。中には紙が一枚あるきりだ。そこでその紙を引っ張り出した俺とゼオラは、絶句した。
「…大尉たちもご存知とは思いますが」
キョウスケが言い難そうに口を開く。
「ああ、知っている。確かにね。…だが、説明がいるとは思わないか?」
「必要ですか?」
キョウスケは真顔で答える。
「…少なくとも、俺には映画のチラシ一枚わたされただけでは何の用事かさっぱりわからん」
映画のチラシ。そう、エクセレンがもったいぶって手渡した封筒の中に入っていたのは、去年公開された映画『ワンデイ・フリー』のチラシだった。
とある王国の姫君が親善大使として日本に来る。しかし若い姫君は堅苦しい公務に飽き、ドレスをミニスカートにはきかえ、東京の街へ飛び出した。
その途中、護衛に捕まりそうになった姫君を、暴漢に襲われていると勘違いした冴えない青年が助けた事で運命は動き出す。
追っ手をかわし、東京の街を駆け抜ける2人。その中で青年と姫君は自分でも知らぬうちに恋に落ちる。
しかし、姫君は告げる。
「私の自由は今日1日。明日になったら、遠くへ行ってしまうの」
やがて2人の時間の終わりを告げる朝日が昇る。彼らは朝日とともに別れた。
青年はやるせない気持ちで部屋に戻ってテレビをつける。と、そこに映っていたのは朝日の中で別れたあの娘。
驚愕する青年がテレビから目を離せずにいると、娘は自分がとある王国の姫である事を話し、青年の名を呼び、恋をした事を告げる。
「あなたに恋をしたのは一瞬。ここは日本で、私の国は遠いですが、それでもこの想いを抑える事はできません。恋する気持ちに、時間も距離も関係ない。そうでしょう?」
この台詞の恋する〜からの部分は、流行語にもなったはずだ。確かゼオラが以前、そんな事を言っていた…気がする。
「それをご理解いただいたところでこれを見ていただきたいのです」
そう言いながら、キョウスケが取り出したのは一枚の写真。
「!?」
「驚くのも無理はありませんが…イクシス家の令嬢、アリシアが現在、テロリストに狙われているのです」
「アリシア・ノーベンバウム・イクシス…ごく親しい友人は頭文字をとってアニィって呼んでるらしいわ。親しい者同士だけの呼び方って、素敵だわん」
「茶化すな、エクセレン。…で、そのイクシス家令嬢が今、日本に向かっているのです。5日後の…」
「EOT技術拡散防止会議にね。イクシス家って、テスラ研のスポンサーでしょ?」
「だから、異星人に対抗するためとはいえ、EOTを使った機動兵器は許さんという連中からすれば、少女とはいえ標的です」
「…なるほどな。状況はわかったよ。俺たちがやるべき事もね」
「…恐縮です」
キョウスケは深々と頭を下げた。イクシス家令嬢、アリシアの写真を見た今、どうして俺たちがここに呼ばれたのか理解できた。
写真のアリシアは、シルバーブロンドの髪から白い肌まで、ゼオラにそっくりだったからだ。
「…了解した。そういうことなら人手がいるだろう。横浜にウチのアラドが…」
「あらん…彼、無理っぽいわよん?」
「…なぜ?」
「大和は、荷が重すぎたみたいよん」
409:2007/08/08(水) 17:29:16 ID:oJOyTLeV
作戦の概要はこうだ。
情報によれば、テロリスト集団の名は『地球原理主義教導団』。完全な排異星人主義思想を掲げる過激派だ。
アリシアの来日の前に、地球原理主義教導団のメンバーの日本潜入が確認されているらしい。
この潜入メンバーに、にせのアリシアの情報を意図的にリークする。
リークされた情報をもとに出てきたところを、根刮ぎ刈り取る、というのが作戦の目的だ。
リークの内容は、来日してホテルに缶詰にされるのを嫌がったアリシアが、ごく親しい者…護衛の1人を伴ってホテルを抜け出した、といったところだろう。
後は適切に、しかも人目につきすぎずに、街をうろつけばいい。
護衛と冴えない青年のちがいはあれど、なるほど、映画のチラシにはこんな意味があったのか。
だが、今回の場合は逃避行ではなくて要するに囮だ。
「…すまないな、ゼオラ」
先に着替え終えた俺は、ドアを軽くノックしてからゼオラに話しかけた。
「せ、先輩!?な、何がです!?」
着替えているところで話しかけられたのだ、慌てたゼオラの声が返ってくる。
「任務のことさ。今回は、お前を付き合う予定だったのに…」
「い、いいえ…任務ですから、仕方ないですよ」
「いや、そうもいかない。俺は約束は破りたくないからな。ゼオラ、この任務をさっさと終わらせよう。その後はゼオラの行きたいとこ、やりたいことを全部やろう!約束だ」
「え…ホントですか!?」
「先輩に任せなさい」
「嬉しいっ!」
ドアの向こうから聞こえるゼオラの声に、喜色が浮かぶ。俺は正直、ほっとした。しかし…
「…先輩」
次の瞬間、ドアの隙間からゼオラの憂鬱そうな声が漏れてきた。
「どうした、ゼオラ?」
「先輩は、約束は破らないんですよね…?」
「ああ、もちろんだ」
「じゃ…もう1つ、約束してください」
想い詰めたようなゼオラの声。俺は固唾を飲む。実は、俺はこの時、何て答えたか覚えていない。
だが、ゼオラは俺の返答を聞いて、決意したように言葉を続けた。
「あの…笑わないでください」
…わら?
「…………なに?」
「じ…実は…着替えは終わったんですけど…わ、わた…こんな服、着たことなくって…」
「…う、うむ」
「ににに似合ってないかも…いえ、きっと似合ってないとおもうんですけどせんぱいにわらわれたらどうしようとおもったらでられなくなってそれで」
そこまで一気にまくしたてたゼオラは不意に黙った。
返事を待っているらしい。
「あ…あー…うん、約束する、うん。約束するよゼオラ」
「……」
返事はしたものの、ゼオラからは返答なし。答え方がまずかったか…と思ったら、俺の目の前でドアノブが動いた。
ゆっくりと開くドア。そこから見えるゼオラの姿は…
「…」
純白のシンプルなワンピースがゼオラを包んでいた。
それに合わせるようにつばの広い白い帽子。軍服やパイロットスーツでしかゼオラを見たことがない俺には、鮮烈で優雅で…今だから言う。言葉を失った。
「…へ、変…ですか?」
ゼオラは顔を伏せ、つばの広い帽子で隠しているが、首もとまで真っ赤になっている。
「いや…ごめん。綺麗だったから…声が出なかった」
「…え?」
「あ、いやその…変じゃないよ!似合ってるよ、ゼオラ!」
「ホントですかぁ!?」
ゼオラの顔が花が咲いたように明るくなる。
「あ、2人とも、準備できたみたいね。…て、いやん、ゼオラちゃん可愛いわん!苦労してチョイスした甲斐があったってものよ!ちなみに、クラウド大尉のはキョウスケなんだけどね」
そこへ様子を見に来たエクセレンは、着替えたゼオラを見るなり、抱きつかんばかりに喜んだ。
「これ、エクセレン少尉が選んでくれたんですか?ありがとうございます」
「うふん、そういうことはヴァイスリッターのエクセレンお姉さんにおまかせよん!」
…なるほど。
あの白いワンピースは、ヴァイスリッターのエクセレンが選んだものか。
ちなみに俺は黒いスーツ姿だが、キョウスケがアルトアイゼンに過剰な思い入れをもってなくて本当によかったと、俺はゼオラとエクセレンの様子を見て実感した。
410:2007/08/08(水) 17:32:26 ID:oJOyTLeV
人目について、つきすぎないというのはなんと言うか…難しいものだ。
よくよく考えてみれば、純白ワンピースの少女に黒服の男。目立つなという方が無理だ。
「♪」
それでも、ゼオラは嬉しそうに歩いている。
さっきも、車道側は車に拉致される可能性があるので自分から車道側に入れば、
「先輩…優しいんですね」
とゼオラは小声で囁いた。
まあ、確かに拉致される危険性があるのに放置するよりは優しいだろう。
「で、でもさゼオラ…これはやらなきゃいけないのか?」
「ダメですよ先輩!みんなやってるじゃないですか」
「しかしだな…」
「…浮いちゃいますよ?任務失敗するかも」
「うぬ…それはよくない」
「なら、決まりです」
ゼオラがそっと手を差し出した。
確かに、確かに周りはよくもこれだけ集めたものだと賞賛に値するほどのカップルでごったがえしている。
しかも、揃いも揃って手を繋ぐわ腕を組むわ。
ここはそうでもしないと歩く事すら許されんのか?と勘ぐりたくなる程だ。
向こうではテレビ局が、わざわざ取材などしている。頼むから日本中すべてをここと同じにはしないでくれ。
「もう、先輩…」
ゼオラが上目使いで俺を見る。サングラス越しでも俺の眼が泳いでいるのがゼオラにはわかったかも知れない。
相変わらず俺は臆病だ。だから二度とPTに乗るまいと誓った。それでも自分の気持ちには向き合えた。だからゼオラとここにいる。
だがしかしそれでも、いざ行動に移すというのは、ある種PTに乗るより気合がいるものだ。
イルム、お前凄いよ。
俺には…。だが、男にはやらなきゃいけない時があるって言ってたな。
そして、俺は男だったりするわけで…
411:2007/08/08(水) 17:34:08 ID:oJOyTLeV
「…先ぱ…きゃ!」
一瞬。
俺はゼオラを抱き締めた。
「せ、先輩…」
俺の胸に顔を埋めてゼオラが甘く囁く。動けない。
俺はゼオラの顎に指を当てる。ゼオラは少しだけ強張って、でも抵抗せずに顔を上げた。潤んだ瞳が俺を見る。
近づく唇。目を閉じるゼオラ。そして俺は…
「…聞こえたか、ゼオラ?」
「…え!?」
そうだ。恋人たちの雑踏にまぎれ、一瞬俺の耳に飛込んだ音。 あれは間違いなく、拳銃の撃鉄を上げる音だ。だから、俺は反射的にゼオラをかばった。
この雑踏では刃物や狙撃はかえって暗殺には不向きだ。そこでテロリストは片手で扱える小型拳銃を用意したらしい。
しかも、ジャムるのを恐れてか、回転式の拳銃を。確かに回転式なら自動式とちがって弾丸が拳銃内で詰まる心配はない。
撃鉄を上げる音も、この雑踏なら誤魔化せると踏んだのだろう。…俺以外なら誤魔化せたかも知れない。
だが、甘くみたな。俺はスクールの被験者だ。そして、ゼオラも。
「…」
ゼオラは俺の肩越しに周りを探る。すでに狙撃者の眼になっていた。
「…いました。4時の方向…距離6m」
「なら6ミリだな。よほど狙わないと致命傷にならない」
俺はわざとゼオラを強く抱き締め、ジャケット下の防弾チョッキを浮きだたせている。防弾チョッキの前では6ミリなど豆鉄砲だ。
そして、俺がゼオラを抱き締めていれば、標的であるゼオラを撃つ事はできない。
「…行きました」
やがてゼオラが注意深げに囁いた。テロリストは諦めて去ったらしい。
俺はそっとゼオラを離した。改めて見たゼオラは、それでも顔を真っ赤にしている。
「…先輩」
「わかってる、ゼオラ」
さっきからやたら周りがうるさい。
「私、我慢できません」
「…俺もだよ、ゼオラ」
やたらとシャッターを切る音と、でかいレンズが無遠慮にこちらを見ている。
「…先輩」
「…ゼオラ」
『おーっと、堅く抱き合った2人が見つめあって…今日のベストカップルは…』
マイクをもったレポーター。その時、俺とゼオラはうなずきあった。そして…
『今日のベストカップルはぁぁ〜…君たちだぁぁあっ…て、何で逃げるの!?』
俺たちは走った。
本気で。
412:2007/08/08(水) 17:35:38 ID:oJOyTLeV
「はぁ…はぁ…」
恋人たちの雑踏を駆け抜け、俺たちは倉庫が建ち並ぶ一角で一息ついた。
周囲を埋め尽すシャッター音、どでかいレンズ…ついさっきあった事ながら、思い出すだけで血の温度が上がる気がする。
それはゼオラも同じなんだろうか。息は荒いが顔は伏せたままだ。
「大丈夫か、ゼオラ…」
「……」
ゼオラはうつむいて手を胸に当て、息を整えようとしている。無理もない。かなり走った。
「……先輩」
「…どうした?」
ようやくゼオラが口を開いた。
「先輩…私、変です」
「ど、どうした?…まさか!?」
ゼオラの訴えに、俺は思わず彼女を振り返る。
「……」
「黙ってたらわからない!何だ!?どうした!?」
「…私…胸が…」
「苦しいのか!?」
「はい…ドキドキが…止まらなくて…」
「…っ!?」
「…先輩…」
顔をあげたゼオラの瞳は、艶やかに潤んでいた。ゼオラの甘い吐息が頬をなでる。俺はその瞬間、電撃を浴びたかのように硬直した。
視界はやたらに鮮明で、皮膚の感覚もいつもよりかなり敏感になっている。
しかし耳には早鐘を打つ心臓の音しか聞こえない。そして何より、頭の芯がぼうっとして、地に足をつけている感じがしない。
何だこれは…。酔っているのか? 俺の目も耳も体全体も、頭の芯までも、酔っているのか? この…ゼオラに。
が、その考えがまとまる事はなかった。一発の銃声が耳を、飛び散る荷台用の木枠が目を現実にたち戻らせる。
俺は反射的に射線を追った。俺の目がその先にいる、1人の男を捉える。
「噂は本当だったようだな、アリシア嬢がSPとできてるってのはよ」
「貴様…地球原理主義教導団の者か!」
「答える義務はないな」
テロリストは冷静だ。恐らく、教導団のメンバーではあるまい。金で雇われた暗殺のプロだ。
「…ちぃっ」
テロリストは悠然とした歩調で寄ってくる。俺はゼオラを守るように体を動かした。ゼオラを背後で身を縮めさせる。
俺はそこで状況を確認した。
殺し屋との距離は約10m。武器はさっき木枠を吹き飛ばしたところから見てもかなりの大口径。つまり俺の防弾チョッキは紙同然。
しかも、この距離では銃声を聞いた後では弾をよけるのはほぼ不可能。
加えて、こちらの武器は護身用スタンガンのみ。
作戦開始時から俺たちの行き先はモニターされているはずだが、ATXチームはおろか、バックアップ要員の姿すら見えない。
孤立無援、武器なし。最悪だ。
「さて、幕だ。アリシア嬢、あんたに恨みはないが、これも仕事でな。あんたが寂しくないように、先にこのSPをあの世に送ってやるぜ!」
413:2007/08/08(水) 17:37:12 ID:oJOyTLeV
「待って!」
その時、ゼオラが叫んだ。
「…何だよ、お嬢さん。命乞いは聞けないぜ?」
「そんな事はしません。…あなたに言われなくても、この状況を好転させるのが難しい事はわかります」
「じゃあ何だよ?」
「…最期の別れを」
「ああん?」
「愛する者との、最期の別れを…あなたも人なら、最後に慈悲を…」
「フン…なるほどな。ああ、いいぜ。ただし、3分だけだ」
圧倒的有利にある立場への奢りか、殺し屋はいとも簡単に許可をだした。
それよりも、ゼオラの口調がアリシアを演じたままな点が気になる。何か策があるのか?
ゼオラは殺し屋に礼を言うと、俺を振り返らせた。そして、芝居がかった言い回しで、演技を続けた。
「現世で実らない愛なら、せめて来世で結ばれましょう」
そこでゼオラが俺の胸にもたれかかる。
「アリシア様…」
俺はゼオラに合わせる。合わせるしかない。ゼオラは俺の右手をとって自分の頬に当てた。殺し屋から見れば、悲哀にむせぶ恋人同士に見えるだろう。
そこで、ゼオラは小声で言った。ここまで近付かねば聞き取れない程の小ささだ。
「先輩、私が合図をしたら、飛び退いて下さい」
「…策があるのか?」
ゼオラがそっとワンピースの裾をたぐる。ぎょっとした俺の目に映ったのは、白い太股とゼオラの趣味とは思えない、ガーターベルト。そしてそこに納められた、護身用の小型拳銃。
「…私を信じて下さい」
「う、うん…。ま、この状況なら、何にだってすがるさ。任せる、ゼオラ」
「先輩…ありがとう」
ゼオラは顔を伏せた。俺はゼオラを包む腕にそっと力をこめる。願わくば、ゼオラの決意の力となれ…
「…そろそろ時間だ」
殺し屋の冷徹な声が乾燥した倉庫に響く。俺は殺し屋に向き直り、ゼオラを守るように両手を広げた。
「…いい覚悟だ、SP。だが、あんたを殺った後は、愛しのアリシア様の番だぜ?」
殺し屋はゆっくりと銃を構える。奴の視線と銃口。これは外れる。
銃声。
やはり弾は俺の髪をかすって行った。
「大した度胸だ、かっこいいよ、あんた」
殺し屋が嘲り笑う。おのれ、なぶる気か。
「三流の殺し屋風情に俺を恐れさせる事などできん。殺す気なら、よく狙う事だ」
「…何だと?」
「獲物を前に余裕を見せるのは三流の仕事だと言ったんだ。もう一度チャンスをやる。よく狙え」
「てめえ!」
殺し屋は激怒した。間違いなく、俺の眉間を狙っている。
「もう少し遊んでやろうと思ったが…いいぜ、お望み通り、ブッ殺してやる!」
殺し屋の目に殺意が宿る。殺意が目から腕を伝い、弾金にかけた指にこもる瞬間…
「先輩、よけてッ!」
ゼオラの叫びと銃声はほとんど同時だった。身を躍らせた瞬間、何かがそこを走り抜けたのがわかる。
「ぐあっ!」
甲高い衝撃音の後に悲鳴をあげたのは殺し屋だった。ゼオラの弾丸が、殺し屋の銃を直撃したのだ。
しかし、殺し屋は銃を落とさなかった。俺を殺すつもりで銃を握り締めた力が、ゼオラの弾丸に勝ったのだ。
「ざァんねんだったなぁぁあ!!」
殺し屋が嘲笑で顔を歪める。つきつけられる銃口。殺し屋が弾金をひく…
「…?」
しかし、殺し屋の銃は主の怒りに応える事なく、沈黙したままだった。
「畜生!何だってん…なぁあ!?」
殺し屋の顔が今度は驚愕に歪んだ。ゼオラの弾丸は、殺し屋から銃を奪うために轟いたのではない。彼女は、殺し屋の銃のセーフティを撃っていたのだ。
「ば…馬鹿な!」
当然、セーフティを解除しなければ銃は撃てない。焦った殺し屋がセーフティに気を取られた瞬間。
その一瞬の隙があれば十分だった。俺はスクールの耐G・高速強襲課程被験者。俺には超高速機動時のあらゆる事象に対応する反射神経がある。
「糞ッ…味なま…」
殺し屋がセーフティを解除し、再び殺意をこめた目に映ったのは、眼前につきつけられたスタンガンだった。
「獲物を前に、獲物から目をそらすとはな。…お前は四流だ」
殺し屋は何か言いかけたが、俺は迷いなくスタンガンの弾金を弾いた。
414ラスト:2007/08/08(水) 17:38:40 ID:oJOyTLeV
『いやん、途中で大尉たちをロストしちゃってねぇ。無事でよかったわー』
基地に連絡を入れた俺を迎えてくれたのは、エクセレンの緊張感のない声だった。
「よかったわー、じゃないだろエクセレン!こっちは大変だったんだぞ!」
『それについては反省しています、大尉。しかし、ゼオラと大尉ならば任務遂行は不可能ではないと信じ、お2人に賭けました』
「キョウスケ…お前が分の悪い方に賭けたがるのは知ってるぞ…」
『…光栄です』
「ちぇっ…」
任務は完了した。捕えた殺し屋から、テロリストのメンバーの情報も得られるだろう。尋問にはキタムラ少佐が当たるそうだ。お気の毒に。
ゼオラはバックアップが不十分だった事に対する不満よりも、任務をやり遂げた事への喜びが勝っているようだ。
エクセレンやキョウスケと話す声も弾んでいる。
「…そういえばゼオラ、どうして拳銃をもってる事を教えてくれなかった?」
「え!?」
「え、じゃないだろ。あればあるで、あんなに危ない橋を渡ることもなかったのに」
「そ…それはぁ…」
『おほほほ…』
ゼオラとエクセレンの歯切れが悪い。
「か、可憐な白いバラにも棘はあるって…」
「何だって?」
『だって、任務とはいえ、ゼオラちゃんと2人きりですものん。それは、ゼオラちゃんの護身用♪』
「な…どどどどういう意味だエクセレン!」
『大尉だって男でしょ。男は狼ですからん♪ね、ベーオウルフさん』
「何だとー!」
『何故そこで俺に振る。…しかし大尉、自分は賭けに負けました。大尉を少し見損ないました』
「キョウスケ!お前は何の賭けをしていた!?」
『チャンスを見つけたら、撃ち貫くべきです』
「だから何の!?お前ら、俺はゼオラのせせ、先輩であってだな…」
『あらん、この映像を見てもそんな事が言えるのかしら?』
エクセレンの笑顔とともに画面が切り替わる。映っているのは、腕を組んだ恋人たち。そして…
『固く抱き合った2人が今、見つめ合い…今日のベストカップルは…君たちだぁぁぁあ!』
「ぎゃあああああ!!」
こ、これはぁぁぁ!さ、さっきの…
『申し訳ありません大尉、生放送だったので番組最初から録画できませんでした』
『でも、大尉たちのバックアップはできなかった分、こっちのバックアップは万全よん。じゃ、気をつけて帰ってきてね』
通信は切れた。
ななな何てこった、あんな映像が…
ふとゼオラを見れば、恥ずかしそうに顔を伏せている。
「ま…まあ、その…何だ。ゼオラ…」
俺は任務を終えて、しょげているゼオラを見て思った。
エクセレンに言われたからからではないが。
「…はい?」
約束。そう、約束だ。
「任務も終えたし、あれだな…」
「…?」
「約束。俺は守るから」
きょとんとしていたゼオラの顔が、ぱっと明るくなる。基地に戻るまでの間くらい、任務も、スクールの事も、パイロットである事も忘れていいだろう。
「さあてゼオラ、まず、どこへ行きたい?」
「はいっ!まず最初は…」
俺たちの休暇は、今から始まる。
嬉しそうにはしゃぐゼオラ。
これから、この顔を何度見れるだろう。
この話は、いずれ…
機会があったら。

〜Fin
415それも名無しだ:2007/08/08(水) 22:54:54 ID:qaDPoFdG
>>407-414
投下乙&GJ。
クラウドも知らなかった隠し玉が勝利の鍵ってのが面白かった。
その隠し玉の本当の意味を知って、笑わせてもろたけど。



ところで、俺の足下に転がってる俺自身の首なし死体を見てくれ。
こいつをどう思う?
416それも名無しだ:2007/08/09(木) 23:30:15 ID:vDCF906k
死ねと呼ばれた邪神が帰ってきましたよ
417それも名無しだ:2007/08/11(土) 15:25:14 ID:szOhBbo3
保守
418それも名無しだ:2007/08/12(日) 18:33:14 ID:ZudedWbn
基地の近くの砂浜に、SRX組全員が集合した。

今夜はささやかながら、みんなで花火大会をやるのだ。

しかし花火も良いが、浴衣姿の女性陣もなかなか良い目の保養になるな……日本の夏よ、ありがとう。

「よぉーし!んじゃ派手に始めるかぁ!」
早速リュウセイがロケット花火を打ち上げる。
それを皮切りに、みんな持参して来た花火を楽しんだ。

「いっくぜぇーっ!ハイゾルランチャー、シューッ!」
リュウセイがR−2パワードの真似をして、花火を肩にかつぐように持って火を点ける。

あぶねぇな!火花が目に入ったらどうすんだ!

「私もやる!ハイ・ツインランチャー発射!」
マイもリュウセイの真似をして、花火を肩にかつぐ。
えぇい!いちいち張り合うんじゃねぇ!
「うるさい!いけ、T-LINKブーメラン!」
うおっ!今度はネズミ花火をこっちに放りやがった!
こんのガキャアアアッ!俺のハルバード・ランチャー叩き込んだろかい!
「あなたも張り合ってどうするの!」
別の花火を手にして叫ぶ俺の頭を、アヤが絶妙なタイミングで叩いた。

そんなこんなで、最後はみんなで線香花火をして、花火大会はお開きとなった。
みんなで後片付けをしたら、解散する。

俺はアヤを連れて、もう少し夜の浜辺を歩く事にした。

月明かりが、少し先を歩くアヤの、襟口から覗く白いうなじを照らし出す。
格好が格好なだけに、いつも以上に色っぽかった。

419それも名無しだ:2007/08/12(日) 18:36:16 ID:ZudedWbn
>>418
「本当に静かね……まるで世界中に、私たち二人しかいないみたい……」
詩でも詠むかのように、アヤはつぶやく。

――実際そうならないだろうかと、俺は時々物騒な事を考える。
誰も邪魔する者のいない世界で、思う存分アヤと愛し合いたい……そう夢想する事がある。

「綺麗な夜空……お月様があんなにくっきり出てるわ」
足を止めて、満月を眺めるアヤ。
だが俺は、月を見たりはせず、明かりに引き寄せられる蛾のように、フラフラとアヤに近付き、抱き締めた。
「な……なに……?」
いきなりだったから、驚いたようだ。
子猫のように目を見開くアヤの頬は、ポゥッと赤らんでいた。

アヤが可愛いから、抱き締めたい。
ダメか?

「ダメも何も……もう抱き締めてるじゃない、甘えん坊さん」
アヤは左腕を俺の腰に回し、右手で後ろ髪を撫でてくれた。

俺も同じように、アヤの髪を撫でる。
次いで両手を、アヤの顔を挟むように添えた。

「恥ずかしい……」

俺の意図を察して、アヤが濡れた視線を向けながらつぶやく。
誰も見てないから、良いだろ?
「でも……月が……見てる……」
言われて、ふいっと月を見上げる。
確かに、俺たちをじっと見てるかのようだ。

――見せてやろうぜ。

俺は意地悪く答える。
お月様に、俺たちがどれだけ深く愛し合ってるか、見せ付けてやろうぜ。

「あ……もう……馬鹿」
アヤは満更でもなさそうだ。
何かを受け入れるように、スウッと目を閉じる。

俺も目を閉じて、ゆっくりと唇を重ねる。

すぐに、アヤの両腕が首に回り、俺も彼女の腰に腕を回したのだった。

420それも名無しだ:2007/08/13(月) 09:16:14 ID:SNuFSLbF
とりゃー。
ラトと同居人ですぜ。
最近近所の美少女に勉強教えてます。脳内で。

>>400-402
プールネタ来たー。
しっとり濡れたアヤ大尉に密着して座られたら、どんな男でもそりゃとろけるってばよ。
>>403-404
ゴルァw
全く、大尉はもう。

>>407-414
おお、おひさしー。
敵に焦点がきちんと合ってるし、センスいい文章で小気味良く話が進むので読んでいて楽しいし。
クラウドについても考察が進んでよりリアルになってる感じが。
ちょっと残念なのはビジュアル的に盛り上がりが少なかったかなーと。
トリプルバードストライクみたいな。(←この話でどうやってそれを出すんだ
流れ的に無理な事言うな!と怒らないで下されw

ともあれGJ!

>>418-419
花火大会で騒ぎ、二人きりの時の落ち着いた雰囲気を落差で強調したのがいいねー。
とてもほんわかしたよ。
その場にいる気になった。
GJ!

>>415
ブザマね。(赤木リツコ

いや、嘘です嘘!そんなアヤ大尉、いきなりR-3に乗り込んでどうしようと(スラッシュブーメラン
421それも名無しだ:2007/08/13(月) 09:19:17 ID:SNuFSLbF
ストライクシールドだった!
422それも名無しだ:2007/08/13(月) 09:52:41 ID:Cx13WB0a
>>420
>最近近所の美少女に勉強教えてます。脳内で。

ああ、それでラトゥーニが、アルティメット・ゴースト・アタックの練習してたのか。


ん?どうした、マイ。
なに?R−GUNのスラッシュブーメランがなくなってる?

お、見ろ。R−3の所に置いてあるじゃねーか。整備班が間違えてあっちに持ってっちまったんだろーな。
……血が付いてるよーに見えるのは、たぶん気のせいだ。


ん?なんだ?
なに、俺の首に縫い目があるって?
はっはっは、何言ってんだ。そんな訳な……(首筋に手をやる)

何じゃ、こりゃああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!














……ふぅ、夢か。
何はともあれ、感想サンクス(・ω・)/
423帰って来た男@:2007/08/14(火) 19:41:36 ID:2031cVKt
――訓練が終わった後、俺たちSRX組はブリーフィングルームに集まった。

今夜はリュウセイの提案で、いわゆる百物語をやる予定だ。
と言っても、六人で百話はちょいとキツいので、一人五話ずつという事になったが。

室内の灯りを消し、持ち寄った蝋燭に火を点ける。
後は、順番に怪談話をしていく度に、一本ずつ火を消していけば良い。

「そういえば、こういう催しは、最後に何かしらの怪異に見舞われると聞いた事があるな」
蝋燭の灯りを眺めながら、ライがポツリと漏らす。
「百話語り終えた後、そういう事があるって話らしいわね……」
「そ、そうなのか?アヤ……」
「大丈夫よ、マイ。もう旧西暦の頃から行われてるけど、本当に何かあるんなら、みんな怖がってやらなくなるでしょう?今も伝わってる催しって事は、結局何も起こらないって事よ」
そう答えながら、アヤは怖がってしがみつくマイの頭を、優しく撫でてやった。

――場合によっては、九十九話目を話し終えた時点で起こる事もあるがな。
「そうなの?」
ヴィレッタの姐さんが尋ねる。

「あ、俺も聞いた事あるぜ?最後の百話目が一番怖くて、でも後から思い出しても、誰もその百話目は話してなかったってやつだろ?」
お、知ってたか、リュウセイ。
「ふむ……確かに九十九話目を終えた時点で、いる筈のない人間が百話目を語るという怪異が起きてるが……」
「百話全て語り終えた後、『最後の一話を語った者が誰かわからない』という怪異が起きた……とも取れるわね」
「もう!隊長もライもそこまで!まだ一話も話さないうちから、マイが怖がってるじゃない!」
アヤがマイを抱き締めながら、二人を強い口調でたしなめる。

すまんすまん。
んじゃ、マイが泣きべそかいて小便漏らさないうちに、始めるか。
「わ、私はそんなに子供じゃない!」
マイが顔を真っ赤にして反論する。
ふふん、それだけの元気があれば大丈夫だな。

424帰って来た男A:2007/08/14(火) 19:44:48 ID:2031cVKt
>>423
という訳で、順番に怪談話を語り出す。
一つ話し終える度に、蝋燭を一本ずつ消していく。
徐々に闇が濃くなっていき、少しずつ怪しい雰囲気に――ならないんだな、これが。
今夜も月が明るい。
窓から差し込む月明かりが、部屋全体を青白く照らしてくれていた。
カーテン閉めた方が良くね?と誰も指摘しなかったのは、結局俺も含めて、みんな怖かったって事だ。

最初は好調に進んでいたが、段々ネタ被りが出て来た。
おかげで全員が話し終えた後も、まだ蝋燭が残っていた。

仕方がないので、被ったネタも、語った物として消していく。
が、誰か余分に用意したのか、はたまたカウントを間違えたのか、蝋燭がまだ一本残っていた。

どうする?これも消してお開きにするか?

「では、俺が締め括りに実体験を話そう」
おお、やれやれ。

「うむ、あれは俺がPTX小隊に所属していた頃の事だ」
早速スタンダードな語り出しで、最後の一話が始まった。



「――基地の格納庫にあるトイレに、血まみれの男の幽霊が出る。そんな噂をイルムが聞きつけ、本当かどうか確かめに行こうと言い出した」
へっ、あの人らしいぜ。
「寝苦しい熱帯夜の、暑気払いの余興にはちょうど良かろうと、俺も付き合う事にした。リンは馬鹿馬鹿しいと言って取り合わなかったが、イルムに上手く挑発され、同行する事になった」
リンってぇと、イルム中尉の恋人で、マオ・インダストリーの社長さんだっけか。
「そうだ。俺たち三人は、深夜の二時に件のトイレに一緒に入った。言い出した本人のイルムが及び腰だったのが、今にして思うと微笑ましいな」
何やってんだか。
その様を想像して、思わず吹き出しそうになる。
「幽霊は、手前から三つ目の個室に出るらしい。だが、イルムは個室のドアを開けようとしない。どうやらここまで来て、本当に怖くなったらしい。リンに開けてくれと頼む始末だ。
だがリンはリンで、馬鹿馬鹿しいだの興味ないだのと言って開けようとしない。これでは埒が開かないので、俺が開ける事にした」
みんな声も立てずに、じっと聞き入っている。
「二人を押しのけ、ガタが来ているのか、少々キツくなっているドアを開けた瞬間――絶叫が走った」
425帰って来た男B:2007/08/14(火) 19:47:55 ID:2031cVKt
>>424
絶叫って、誰の悲鳴だよ。
「誰のものでもない。叫び声は個室の中――洋式便器に腰掛けた血まみれの男の口からほとばしっていたのだ。
目は虚ろで、どこかを見てるようで、どこも見ていない。
顎が外れてるんじゃないかと思うほど大きく開かれた口から、基地全体に響き渡るような大声で叫んでいた」
――その様子がまざまざと想像出来て、俺は不覚にも、背筋にゾワゾワしたものを感じた。
「俺たちは火が点いたように、逃げ出した。俺もあの時だけは、恥も外聞も捨てて全力で走った。
そして、三人で朝になるまで、俺の部屋で寝ずに過ごしたのだ。恐怖で眠気など、完全に消し飛んでいた」
あのイルム中尉が、恐怖で眠れず、じっと朝を待つなんて、ちょっと想像付かねえな……。
「だが事実だ。そして朝になり――昼になってから、俺たちはもう一度あのトイレに行く事にした。
トイレに入り、もう一度三つ目の個室を開けようとして、俺はその時、また別の恐怖に包まれた。
――個室は、二つしかなかったのだ」
じゃあ、掃除用具入れも間違えて数えたんじゃね?
「いや、掃除用具入れはトイレの外に設けられている。つまりそのトイレには、どう考えても個室は二つしかない事になる」
えーっと、それじゃあ……。
「だが、俺はあの夜、確かに三つ目の個室を開けたのだ。ある筈のない、三つ目の個室をな……」

そして、最後の蝋燭の火が、ふっとかき消された。

――以上で、百物語終了、と。
しかし、最後の話は、怖い上にスッキリしねえな。
「しかしライ、お前案外物真似上手いな」
「……いや、俺は話してないが」
「え?そんじゃあ……」
「違うわよ。彼は相槌打ってたじゃない。だいたい、会った事もないのに、物真似なんて……」
「じゃ、隊長か?」
「失礼ね、リュウセイ。私の声は、そんなに低くないわよ」

みんな、自分じゃないと否定する。
426帰って来た男C:2007/08/14(火) 19:50:32 ID:2031cVKt
>>425
――いや、つーかね諸君。
さっきから俺の隣にいる、ロングヘアのお兄さんは誰なんですかい?
何か普通に相槌打っちゃったけど、うちにこんな背の高い奴いたか?
「……って事は」
リュウセイの声が震えている。
「まさか……」
ライも声がうわずっていた。
「本当に……」
アヤも信じられないようだ。
「帰って……来たの……?」
ヴィレッタの姐さんも、珍しく声が震えている。

『出たぁぁぁぁああああぁぁああっ!!!!!!!!!!!!!』

異口同音に悲鳴を上げて、みんな一斉にブリーフィングルームを飛び出す。
マイも釣られるように、一瞬遅れて逃げ出していた。

「何も……そこまで怖がる事もないと思うが……」
いや、まぁ時期が時期だし。
不覚にも逃げ出すタイミングを失った俺は、そう答えた。
「夢枕に立つくらいにとどめるべきだったか……」
「もう気は済んだだろう。帰るぞ」
月明かりがロン毛の脇にもう一つの人影を照らし出す。
「うむ、そうするか」
ロン毛はそいつにそう答えた後、俺の方に向き直る。
「驚かせてすまなかった。みんなにも、よろしく伝えておいてくれ……SRXチームを、頼む」
次の瞬間、蝙蝠の翼を生やした悪魔のような影が、部屋全体を覆う。
影が消えると、二人の姿も消えていた。

――誰もいなくなった、ブリーフィングルーム。
俺は蝋燭をかき集めて、ゴミ箱に捨てた。
そして、乱れた机や椅子を元通りに並べる。

後片付けが終わると、窓際に立ち、月を見上げた。

――まぁ、お盆だしな。

何となく、それで納得した。

427それも名無しだ:2007/08/15(水) 06:40:23 ID:I1DCHHbd
>>423-426
お盆になんてもの投下してくれやがりますか。
怖くておトイレ行けなくなるっての。
GJ!

後、幽霊の正体。
…イングラムでいいんだよね?
もう一人は悪魔?
とするとイングラム少佐……地獄に堕ちたのか!

死んでからもSRXチームの事を考えている少佐が、ちょっと微笑ましく見えたりしたり
しなかったりいたしましたですのことよ。
428それも名無しだ:2007/08/15(水) 07:52:19 ID:96PDH0RF
>>427
もう一人=クォヴレー

悪魔みたいな影=ディス・アストラナガン


アニメに出てたとは言え、一応GBA版OG準拠だから、敢えて明記は避けたんだが、わかりにくかったか……orz
429それも名無しだ:2007/08/15(水) 08:08:37 ID:I1DCHHbd
ごめん。実はアニメ見てない。
冒頭でPTX所属だったって言ってたからさ。
思いつくメンバーがそれしかいなかった。

よく判らんものに憶測でコメント入れるもんじゃないなー。
430それも名無しだ:2007/08/15(水) 08:46:04 ID:96PDH0RF
>>429
ドンマイ(・ω・)/

それにイングラムは、リュウセイともども地g


     し
     ば
     ら
     く
     お
     待
     ち
     下
     さ
     い
      ゜

431それも名無しだ:2007/08/15(水) 18:23:33 ID:sgsJ2sN8
新参者です。

タイムリーなネタ投下GJですよぅ。

やっぱりお盆ですからね。
他の方々も出てきたら怖いやら懐かしいやらw

おもしろかったです♪
432それも名無しだ:2007/08/15(水) 18:39:46 ID:96PDH0RF
>>431
サンクス(・ω・)/

みんな戦争で亡くした仲間や知人を思って、しんみりしてるかも。

>>429
遅ればせながら、感想サンクス(・ω・)/

ラトゥーニも、オウカ姉さんのお迎え準備してたりするんだろうかと、ふと思った。
433それも名無しだ:2007/08/17(金) 16:51:40 ID:+OrYRLVr
>>432

新参者ですが、こんなのを想像しちゃいました。

リューネ:「ねぇ、マサキ。あの提灯もってる人たち、何してんの?」
マサキ:「あぁ、今はお盆だからな。ご先祖さんを送りに行ってんだろ」
リューネ:「へぇ…ならさ、うちの親父も…」
ビアン:「親父ではない!いつも『お父様』と呼びなさいと言ってるだろう!!」
リューネ:「おおお親父っ!?」

マサキ:「馬鹿な!あんたは死んだはずだろーっ!?」
ビアン:「リューネ!お前はまたそんなはしたない格好で!
それからマサキ・アンドー!いくらリューネが可愛いからと言っても、わしの眼の黒いうちは許さんっ!許さんぞ!!」
リューネ:「可愛いなんて…親父ったら正直なんだから…」
マサキ:「死人が『眼の黒いうちは』とか、突っ込むとこ満載だがとにかく、何故ここに!?」
???:「フフフ…お困りのようですね、マサキ・アンドー!」
マサキ:「あっ!てめえはイングリィ!」
イングリィ:「貴方たち日本人が裸足で逃げ出す怖いもの、それは『地震』『雷』『火事』そして『親父』!
…貴方の親父はちょっと見付からなかったので付き合っている彼女の親父を呼んでみました。
…ククク…恐ろしいでしょう、マサキ!」
マサキ:「『付き合っている』とか、てめえの発言にも突っ込み所満載だが、死んだ人間をどうやって!?」
イングリィ:「フッ…私の開発した全自動イタコマシン『もってけ!死装束』があれば、この程度は造作もない事です。…それに、付き合ってないふりをしても無駄無駄無駄ァ!なのです」
リューネ:「付き合ってる…ば、馬鹿ぁ!そんな大きい声で…いやん」
マサキ:「この状況でどーしてお前はそんなに嬉しそうなんかなあ!?」
ビアン:「何と…すでにリューネには…父として悲しいが、これもいつか通る道!マサキ君!娘をよろしく頼むよ!」
マサキ:「あ…あんたさっき、『眼の黒いうちは』とか言ってなかったか!?」
ビアン:「はっはっは、死人のわしの眼が黒いわけがなかろう。なかなかおもしろい青年だな、マサキ君は!」
マサキ:「その初対面みたいな話し方はやめいっ!」
ビアン:「…しかし、娘の元気な姿が見られて良かった…これでわしも…」
マサキ:「!…おっさん…」
ビアン:「これでわしも、DCから足を洗えるというもんじゃ!」
マサキ:「だから問いたい!死人のあんたに足があるのか、小一時間程問いつめたいッ!」
ビアン:「おっと、時間だ。わしは今は消えてしまうが、お前たちの事はいつも見ているぞ」
リューネ:「…親父」
マサキ:「おっさん…」
ビアン:「来年の盆には、孫の顔が見られるのを楽しみにしておるぞー♪さもなくば三族までもれなく祟っとくからそのつもりで。ではさらばッ!」
リューネ:「や、やだ親父ったら!」
マサキ:「な、なんであんたはそう消え際にまで突っ込むとこ満載にしていくかなー!イングリィ!もう一回呼べ!このままじゃマジで孫を…て、いねぇぇぇ!?」

フフフ…どうやらうまく撒けたようです。今回はマサキを精神的に追い詰める計画でしたが…
ここまで完璧に追い詰める私の天才ぶりが恐ろしい。
そう、私は天才。
フフフ、今回は私の完全勝利ですね。

マサキ:「な、何だよリューネ…そんなにくっつくな!」

…釈然としないものもありますが、まあいいでしょう。
とにかく、私は天才!
天才なのです!
今回、活動が地味だったのは暑さでテスカ・ロッサがオーバーヒートしたからじゃありません!
ところでそこの貴方。現在、私は魔装機神テスカ・ロッサの操者を探していますが…
いいからだしてますね。
イングリィ・チームに入りませんか?
もし「モングリィ・チーム」と書いて応募してきたら「もってけ!死装束」で怖い人を枕元に立たせますのでお気を付け下さい。
434それも名無しだ:2007/08/18(土) 10:47:16 ID:PF7a9i4m
モングリィのくせに、何気に凄そうな物発明してんじゃねええええっ!

 G  J  !!

しかし、あれだな。
プラーナ増幅機とか作りゃいいのに。
やはりイングリィはモングリィかw



む?どーした、ライ。
なに、兄嫁にもう一度逢いたい?
リクセント公国を敵に回したくないからやめとけ。
435それも名無しだ:2007/08/19(日) 06:43:30 ID:yoMQOLTs
愛は深まるわビアンに取り付かれるわ。
なんというか、カオス増大?

GJ!

ラト、ステッキなんてどうして振り回してんの?
時空因果律の変換?なんだ、それ。

うわわわわ、黒髪の変なお姉ちゃんが出てきた!
しかも足無いし!浮いてるし!透けてるし!
た〜すけて〜!
436君の夫は、もういない:2007/08/19(日) 20:57:23 ID:n3VbNlXC

オーブ宇宙要塞、アメノミハシラのミナ自室。
ソキウスに連れて来られた五人がそこに立っていた。

ミナ「…なるほど、フューリーの皇女シャナ=ミア・エテルナ・フューラにミスリルのエキスパート相良宗介、
  ブレン乗りのヒギンズ・サスと八卦衆が一人耐爬、そして連合ブーステッドマン最後の生き残りオルガ・サブナックか」
オルガ「…ん?ちょっと待ってくれよ」

ミナの言葉にγ‐グリフェプタンを摂取し落ち着きを取り戻したオルガが口を挟む。

オルガ「ゼアも言ってたが、最後の生き残りってどういうことだよ?クロトもシャニもまだ生きて……」
ミナ「死んだよ。私の依頼で彼らはヘリオポリスへ向かっていたのだがね、途中でユーラシアのMSに撃墜された」
オルガ「……!!……あいつらが……!?」

オルガはその場に力なくへたりこんだ。

シャナ=ミア「オルガさん……」
ミナ「さて、シャナ=ミア殿、よろしいかな?」
シャナ=ミア「あ、はい……」
ミナ「話を聞く限り、君の夫、ゼア=ウィド・クレーズにかかっているのは精神操作の類ではない。奴ら独自の医療技術で記憶を消され、
  別の人物を通して新たな記憶を教え込まれた。ある意味精神操作より最悪だな。戻る確立は限りなく0に近い」
シャナ=ミア「……!」
ミナ「それでも、取り戻したいか、彼を?」
シャナ=ミア「……はい」

ユーラシア連邦宇宙要塞アルテミス、ゼア=ウィド自室。

ゼア=ウィド(結局あの後ガルシア司令に有り得ないくらいしぼられた。今回の任務はあくまで哨戒。敵の殲滅ではないというのに……)
メリオル「クレーズ特務兵、よろしいですか?」

一言断ってからメリオルが部屋に入ってきた。
その顔は何時になく神妙であった。
その後からカナードも入ってくる。

ゼア=ウィド「どうした、メリオル?カナードまで」
メリオル「今日は、あなたに真実を伝えにきました。とりあえず、オルテギュアまで来てください」
カナード「…………」
ゼア=ウィド「?ああ……」

ガルシア「何!?メリオルとカナードがゼア=ウィドをオルテギュアに!?」
兵士「はっ」
ガルシア「ええい、奴らを取り押さえろ!急げ!」
兵士「了解!」
ガルシア「早くしろ……ゼア=ウィドが本来の記憶を知っては手遅れだ……!」
437君の夫は、もういない:2007/08/19(日) 20:59:42 ID:n3VbNlXC
お久しぶりです。
鯖落ちで手も足も出なかったところへ友人の助言でなんとかなりました。
話はここからクライマックスへと直行の予定ですが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
以上、24時間テレビ実は見てないゼア=ウィドでした。
438それも名無しだ:2007/08/21(火) 12:27:54 ID:FZ9xGc4L
>>327
GJ。
さぁ盛り上がってまいりました。
続き楽しみにしてるよん('-^*)/
439それも名無しだ:2007/08/23(木) 13:10:07 ID:Quk7jPFW
着替えを無造作にバッグに詰め込み、部屋を出る。
廊下で待っていたアヤと一緒に第二飛行場へ向かい、そこで待機している輸送機に乗り込んだ。
機内には、既にケンゾウ博士が乗り込んでいた。
俺は軽く頭を下げるだけの簡単な――というより愛想のない挨拶を済ませる。

このジジイがアヤにした事を思うと、未だに怒りが湧いてくる。
顔を合わせる度に、ぶん殴ってやりたい衝動に駆られる。
とはいえ、肝心のアヤがジジイのやった事を許しちまってるんだから、今更俺なんかがどうこう出来る訳がない。

このジジイを許すつもりはないが、アヤの為に、責めるような事もすまい。

とりあえず、今はそういう方針でいく事にしていた。



輸送機が、滑走路へ移動を始める。
俺は博士から離れた席に座った。
アヤがその隣に腰を下ろす。
少しして、輸送機が離陸した。
窓を覗くと、チームのみんなが機体に乗り込んで演習場に出ているのが見える。
みんなもこちらを確認したらしい。
R−1とR−GUNが、大きく何度も手を振っていた。
R−2や姐さんのヒュッケバインmk-U・Mも、軽く手を挙げて、俺たちを見送ってくれた。

それを見て、アヤも手を振り返す。

今生の別れでもないのに、大袈裟な連中だぜ。

苦笑しながら、俺もつい、彼等の方へ向けて手を振ってしまっていた。

440それも名無しだ:2007/08/23(木) 13:13:03 ID:Quk7jPFW
>>439
その後俺は、機内格納庫の方へと移動した。
そこには、R−3パワードとアシュセイヴァーが搬入されている。

二つの機体を見上げながら、俺は事の経緯を思い出していた。



――T-LINKシステムを利用した新型レーダーがテスラ・ライヒ研究所略してテスラ研で開発される事となり、システムの開発者であるケンゾウ博士と、オペレーターとしてアヤが、テスラ研に行く事になった。
寂しくなるなーなんてガキっぽい感傷にとらわれた俺の胸の内を見透かしたように、姐さんは俺に、二人に同行するよう命じた。

しかし俺は、この都合の良い展開が素直に喜べなかった。
聞けば、テスラ研の方で、俺を指名しているらしい。
向こうに、俺に用事のある相手なんていない筈なんだがな……。
だいたい、アシュセイヴァーまで運ぶ理由がよくわからん。
R−3は、まだわかる。
アヤに必要不可欠だし、T-LINKシステムのサンプルも兼ねているんだろうからな。
しかし、アシュセイヴァーはいらねーだろ。それとも、テスラ研が俺を指名したのと、何か関係があるのか?

……何とな〜く、嫌な予感がするぜ。

アシュセイヴァーを見上げながら、俺は朝っぱらから疲れた笑みを浮かべてしまった。

441それも名無しだ:2007/08/23(木) 19:21:29 ID:uuvahSR2
>>439-440
お、新展開?連載形式?
嵐の前の静けさな感じ。

レーダーのテストに護衛はいらないよなあ。
額面通りの命令では無さそうだ。

ん?ラト、言いたい事があるって?基地で言えなかったから?
なになに。
……ケンゾウ博士に怒らないであげて?

うーん、怒る時は怒る人らしいからなぁw
多分、だけど。大丈夫じゃないかな?

そいじゃ、通信終了。OVER?
442それも名無しだ:2007/08/23(木) 22:53:49 ID:Quk7jPFW
>>441
サンクス(・ω・)/

ちょいと長めのお話を書こうかと思い、やってみた。

ケンゾウ博士については、怒ったりはしないよ。
ただ、許す気はないが、何かチョッカイかけるような事はしない。
だから安心しろとラトゥーニに伝えといてちょ('-^*)/

443それも名無しだ:2007/08/25(土) 15:53:06 ID:Njvt6Bfd
「よう、アンデッドマン!」
テスラ研に到着した俺たちを、イルム中尉が出迎えてくれた。
最近伊豆基地に姿を見せないと思ってたら、こっちに帰ってきてたのか。
俺はてっきり、社長さんに浮気がバレて、簀巻きにされて、ヒュッケバインのブラックホール・キャノンの砲口に吊されてるものだとばかり思ってたが。
「相変わらずの毒舌だな、おい……しかもリンはマジでそういう事やりかねないってのが、何とも……」
中尉は引きつった笑顔で、そう答えた。

――あんたですか、俺を指名したのは。

ケンゾウ博士とジョナサン博士が挨拶を交わす横で、俺は尋ねる。
「おいおい、俺にそんな趣味はないぜ?俺は有能なホストを一人、推薦しただけさ」
誰がホストだ。
「という訳で紹介しよう。お前さんを指名したゲスト、マリオン・ラドム博士だ!」
イルム中尉が大袈裟な身振りで示した先に、癇癪の激しそうな女性がいた。

――マリオン・ラドム博士というと確か、ヴァイスリッターやアルトアイゼンを造った……。
「ゲシュペンストmk-Vです!」
ズイッ!と近付いて、ラドム博士が訂正する。

はい、ゲシュペンストmk-Vね、はい。

不覚にもその迫力に気圧され、俺は言い直してしまった。

444それも名無しだ:2007/08/25(土) 15:54:44 ID:Njvt6Bfd
>>443
「じゃあ、私たちはジョナサン博士と打ち合わせをしてくるわね?」
そこへいきなり、アヤがそう知らせてきた。
そして、ケンゾウ博士やジョナサン博士と一緒に去っていく。

「あなたはこちらですわ、少尉」
ラドム博士は言うなり、俺の首根っこを引っ張り、格納庫へと連れて行く。
「あなたの戦闘データはイルム中尉から拝見させて頂きましたわ。あなたなら、必ずあの機体をのりこなせます!」
あの、話が全然見えて来ないんですけど……。
「実は、彼女が開発した新型のテスト・パイロットがいなくてな。で、俺がお前さんを推薦したんだよ」
そーいう事かい。
「ついでに、あのアシュセイヴァーなる機体のデータも取らせて頂きますわ。今後の参考のために」
ラドム博士が事も無げに続ける。

とりあえず、俺の意見は最初からガン無視なのは、よくわかった。

何やら面倒な事になりそうだぜ……その新型とやらも、アルトアイゼンやヴァイスリッターよろしく、極端なコンセプトなんだろーなぁ……。

まったく、イヤな予感に限ってよく当たる。
俺はため息をつかずにはいられなかった。
「おいおい、幸せすぎてため息が出ちまったか?いやぁ〜、お前も好き者だなぁ〜!」
イルム中尉が朗らかに、そして嘲笑うように、俺の頭をポンポンと叩いた。

445それも名無しだ:2007/08/25(土) 15:57:48 ID:Njvt6Bfd
>>444
格納庫に入ると、その新型とやらが出迎えてくれる。

下半身や肩周りのシルエットから、かろうじて、ゲシュペンスト系列の機体だと判断できた。
が、後はほとんど面影がねえ。

額からは、アルトアイゼンのようなブレード状の角が伸びている。
後頭部からも、前方へ向かってカーブを描くように、ブレードが伸びていた。
右腕にはビルトビルガー同様のデッカい鋏。その鋏には、ロケットブースターっぽい物が付いている。
左腕には、ドリル状に螺旋を切った鉄杭、パイルバンカーと、三連装マシンキャノンが取り付けられていた。
そして両腕の肘からも、やはりブレードが伸びていた。
胸部には四門のバルカン砲らしき物が見えるし、背部のスタビライザーは大型化され、更に二枚のテールスタビライザーが追加されていた。
よく見ると、機体各部には、必要性を疑うくらいにブースターが増設されている。

――機動力と格闘戦能力の、両方を兼ね備えた機体ってとこだな。
いや、兼ね備えるというよりは、ゲシュペンストという器に、それらを無理矢理詰め込んだというべきか……。

「これがあなたにテストしてもらう機体、ゲシュペンストmk-W!コードネーム『ビルトイェーガー』です!」

あの……mk-Wじゃなくてmk-Vでは?
「mk-Vは既にキョウスケ中尉が運用中です。従って、この機体が当然mk-Wになりますわ。何故なら3の次は4!小学生でもわかる事でしてよ?」

……ごめんなさい。

何となく謝ってしまう俺だった。

「テスラドライブと各部ブースターの併用に加え、機体全体を徹底的に軽量化させた事により、機動力はmk-Uカスタムを30%上回っています」
あの、軽量化って事は、装甲は……。
「要所要所に最低限の防御力は残してますが、基本的に空力(くうりき)カウルだと思っていただきます。当たらなければどうという事はありませんし、mk-Wの機動力ならば、そう簡単には当たりませんわ」

あんたの頭の中じゃあな。
被弾率0%なんて、トロンベでも無理だっつーの。
俺は胸の内で毒づいた。

446それも名無しだ:2007/08/25(土) 16:00:34 ID:Njvt6Bfd
>>445
「武装は全て、近距離戦を想定した物に統一しております。高機動力による、一撃離脱型の強襲用機体。それがゲシュペンストmk-Wなのです」

一撃離脱?強襲用?
あの、イルム中尉……中尉が見せたデータってまさか……。
「ああ、お前が見事にソウルゲインやヴァイサーガを乗りこなしてたんでな。こいつならやれる!と思って、博士に紹介させてもらった」

やっぱりか!

俺は頭を抱えた。
機動力の高い機体は確かに好きだ。
一撃離脱も、戦闘機乗りだった頃から得意だった。
いや、得意にならざるを得なかったと言うべきか。
戦闘機にはPTや戦車のような重装甲を施せないからな。被弾率を下げるには、一撃離脱しかない。

しかし、だからってこんな偏った機体はちょっと、なぁ……特機なら、最初からそういう物だからと諦めもつくが、PTの売りである汎用性をここまで殺す事もないような……。

「ちなみに、機体の軽量化によってジェネレータ出力に余裕が生まれたので、機体各部にハードポイントを設けてますわ。状況次第では、ミサイルランチャーなどを後付けする事も可能でしてよ?」
あ、そうなんですか。
「状況に応じて武装を変更するのは、イェーガー(狩猟者)ならば当然でしょう?」
――なるほど。
ラドム博士の言葉に、俺は思わず笑ってしまった。

まぁ、これもお仕事だ。
どうせ今の俺に出来る事はこれしかないし、ヴァイスリッターの30%増しの機動力がどれほどのものかという興味が湧いてきた。

諦め半分、そして、このビルトイェーガーなる機体に対する期待半分で、俺は早速コクピットに乗り込むのだった。

447それも名無しだ:2007/08/26(日) 05:21:21 ID:OFnRh6CI
>>443-446
新機体、登場か!
マリオン博士のしかめ面が想像出来て面白かったよん。
博士、軍で制式採用とかそういう事は既に考えていなさそうw
ゲシュは特化機体のフレームとしては使いやすいのかな。
448それも名無しだ:2007/08/26(日) 11:45:49 ID:rQQPT5XX
新参者です。

うわぁ…乗り手ガン無視の鬼機体ですねぇ…
さすがマリオン博士のマ改造。
もう全身あますところなく近接武装。しかも紙装甲。
故に死にたくなかったら避けれ、という星一徹も裸足で逃げ出すスパルタコンセプト。
そしてそれを可能にするのが、ヴァイスリッター3割増の超高機動性能…

すすすすごすぎるー!
乗り物酔いしそうですががんばれ〜♪
449それも名無しだ:2007/08/26(日) 19:22:45 ID:6qOV0z1B
>>447
サンクス(・ω・)/
マリオン博士は、いつか書いてみたいキャラだった。
ゲシュペンストは、ヒュッケバインmk-Uにもパーツ流用されてるくらいだし、信頼性の高い機体なんだと思うよ。

>>448
サンクス(・ω・)/
「当たらなければどうという事はない」とは、ヴァイスリッターの時点でも言ってたからなぁ。
パイロットを信頼してると言えば、信頼してるんだろーか?
>星一徹ばりの〜
つまりアヤが、近くの木とか電信柱の陰で見守ってるのかwよし、俺頑張るわw
450君の夫は、もういない:2007/08/26(日) 21:22:51 ID:DUuVG7XL

宇宙要塞アルテミスドック内部戦艦オルテュギアブリッジ。

ゼア=ウィド「メリオル。いい加減教えてくれ。真実ってのは一体どういうことなんだ?」
メリオル「では、お話ししましょう。貴方は……ユーラシア連邦の人間ではありません」
ゼア=ウィド「ッ!?」
メリオル「貴方はフューリーと呼ばれる民族の騎士でありエリート育成機関『アーリア』のトップ『四皇種子』の一人。そして…」
カナード「前回お前が襲ったフューリー皇女シャナ=ミアの夫、ゼア=ウィド・エテルナ・フューラだ」
ゼア=ウィド「……!じゃあ俺は……自分の妻に刃を、銃口を向けていたっていうのかよ……!?」
メリオル「はい。貴方は脱出ポッドでこの周囲に流れ着き、ガルシア司令の命であなたの記憶を抹消、ユーラシアの兵士として
     育て上げた、というわけです」
ゼア=ウィド「…………」
カナード「信じがたいことだろうが、事実だ」
メリオル「私は、知らぬとはいえ実の妻に攻撃する貴方を見ていると……とても、真実を伝えずには……!?」

メリオルは頭を抱えるゼア=ウィドから悲しそうに目をそむけた。が、その先には目を疑う光景が広がっていた。

カナード「兵士?……まずい!オルテュギアを包囲する気か!」
ゼア=ウィド「何っ!?」
メリオル「こうなることは予想がついていました。ガルシア司令」
ガルシア『よくもやってくれたな裏切り者が!』
メリオル「いえ、私も、そしてカナードもあなたを裏切ってなどいません。デスクの引き出しをご覧下さい」
ガルシア『何……?……!これは……辞表!?』
メリオル「ええ。ゼア=ウィドに真実を伝える前に私とカナード、ゼア=ウィドと同士数名の分十通を入れておきました」
ガルシア『おのれ……!殺せ!生かして帰すな!!』

ガルシアは怒りに任せて帽子を床に叩きつけ叫んだ。
それに動じることなくメリオルは近くのクルーに話しかけた。
メリオル「クルーは位置について。オルテュギア、出港します」
クルーA「ゲートが閉じていますが」
メリオル「ゴットフリートで吹き飛ばして!」
クルーA「了解!」
ゼア=ウィド「……俺は……」
451君の夫は、もういない:2007/08/26(日) 21:35:47 ID:DUuVG7XL

オーブ宇宙要塞、アメノミハシラ。

ソキウス「ロンド様、補給物資が到着しました」
ミナ「ん?少し遅かったな」
ソキウス「補給艦が損傷したため、途中で護衛艦に物資を積み替えたとのことです」
ミナ「護衛艦?」
ソキウス「リ・ホームです。あと、傭兵部隊サーペントテールにマルキオ導師の使いのものもいると」
ミナ「ほう、あいつらか……よし、通せ」

ミナが命じるとソキウスは部屋を出て行った。

シャナ=ミア「補給物資…ですか?」
ミナ「ああ。そなたらの機体も傷ついているだろう、代替機や修理パーツを取り寄せてもらった」
シャナ=ミア「それは……すいません、何から何まで」
ミナ「いや、貴女が気にすることではない。しかし…一体だけ、微妙な機体がいる…」
シャナ=ミア「カラミティ……ですか?」
ミナ「まあな、あのやられ方は尋常ではない。果たして届いた補給物資だけで修復できるか……」
シャナ=ミア「オルガさんには…酷でしょうね」

シャナ=ミアがつぶやくと同時に、ソキウスが部屋に戻ってきた。

ソキウス「ロンド様、客人をドックに待たせてあります」
ミナ「そうか。シャナ=ミア殿。参るぞ」
シャナ=ミア「あ、はい」

シャナ=ミアは少し早足でミナとソキウスの後をついて行った。
452君の夫は、もういない:2007/08/26(日) 21:40:25 ID:DUuVG7XL
今日はここまでです。
今日は滅多にかけない人様への感想を書かせていただきます。

>>443-446
これこそ真のマ改造……接近戦仕様なのに紙装甲か……ぜっっってえ乗りたくねえw
それを乗りこなすて……あんた男だわ。

もうすぐ夏休みも終わりですね、こんなマジ展開やらないで夏ネタやっときゃよかった。
以上、心のそこから後悔しているゼア=ウィドでした。
453それも名無しだ:2007/08/27(月) 17:09:05 ID:tLvY6L0B
>>450-452
カラミティは好きな機体なんで、暴れてほしぃなぁーなんて思ったり。

感想サンクス(・ω・)/
乗りこなせるように頑張るよ('-^*)/
454それも名無しだ:2007/08/27(月) 17:09:43 ID:tLvY6L0B
前方のリオンに狙いを定め、左腕のマシンキャノンを撃つ。ギリギリ射程外だったようで、届きはしたが、ダメージはない。
俺は構わずアクセルを踏み込んだ。
グッと体がシートにめり込むのが感じられる。

――次の瞬間、回避に移ろうとするリオンが、正面モニターいっぱいに映っていた。
慌てて機体を上昇させて、衝突を避ける。
左腕のドリルステークを叩き込むつもりだったが、余りの加速に、トリガーを引くタイミングを外しちまった。

仕切り直そうとすると、アラーム。
上空から、リオンが三機。
そのまま上昇し、すれ違い様に両腕のエルボーブレードで斬り裂き、撃墜。

さっきの一機の方へと、機体を向けた。

敵もこちらにまだアプローチをかけるつもりらしい。

俺は機体右腕に付いてる、ロケットシザースのトリガーを引いた。
ブースターが点火し、一直線に飛んでいく。
シザースと右腕はワイヤーで繋がれており、こいつを介して、ブースターノズルを動かして方向転換させる事も可能だ。
ロケットシザースはリオンの左腕にガッチリと噛みついた。
ワイヤーを巻き取りながら、こちらも接近。

そして俺は、当初の予定通りに、ドリルステークを打ち込んだのだった。

だが、安心したのも束の間、バレリオンが二機、遠くから砲撃をかける。
ビルトイェーガーは、それらを軽々とかわしてくれた。

むしろ、ヴァイスリッターの三割増しの機動力に、俺の方が振り回され気味だ。
ちょっとでもアクセルの踏み込み加減を間違うと、さっきのように、あっという間に正面衝突しかねない。

しかし、今の敵との間合いにはちょうど良い。
砲撃の隙間を縫ってアクセルを踏む。
強烈なGが俺の体を打ち、機体はあっという間にバレリオンの懐にまで飛び込んだ。

勢いそのままに、額のヒートホーンで、名前の由来になったであろう巨大な砲身を切り裂き、ドリルステークでトドメ。
残りの一機に胸部バルカン砲を浴びせて、動きが止まったところを、ロケットシザースをブレードを閉じたまま打ち込み、撃墜した。

455それも名無しだ:2007/08/27(月) 17:13:37 ID:tLvY6L0B
>>454
「実に見事でしたわ、少尉!」
帰投して、ビルトイェーガーのコクピットから下りた俺を、ラドム博士が迎えてくれた。
興奮のあまりか、声が気持ち裏返ってる。
「ぶっつけ本番でmk-Wの特性を理解し、武装もキッチリ使いこなして…やはり私の目に狂いはありませんでしたわ!あなたこそ、mk-Wのパイロットに相応しい!」

あ、ありがとうございます、ラドム博士…。

俺はとりあえず、そう答えておいた。

夕方、いきなり襲撃してきたDC残党相手に、まだロクなデータ取りもしてないビルトイェーガーで戦えなんて無茶を言う……。
もし途中でエンスト起こしたり、武器が動作不良起こしたら、どうするつもりだったんだ?それをどうにかするのが俺の仕事なのは、わかってるが。
そしてこちらを気遣う訳でもなく、このはしゃぎよう……。
なんでハミル博士がこの人と離婚したのか、わかるような気がするぜ。いや、実際の理由は知らんがね。

はぁ……。

俺はつい、ため息をついちまった。
     ・
     ・
     ・
その後、ミーティングを夜までやった。
与えられた部屋に戻ると、アヤが待ってくれていた。
「お疲れ様」
汚れのない笑顔で、俺を迎えてくれる。

本当に疲れたよ。

そう答えながら、アヤの胸に顔をうずめる。
「そうね……データ取りもしてない機体で戦ったんだもの……精神的にキツいわよね」
アヤは俺をギュッと抱き締め、髪を撫でてくれた。

その優しい手つきに、癒されるものを感じる。

「さ、横になって……ゆっくり休んでちょうだい?」
アヤは俺を抱き締めたまま、一緒にベッドに横たわる。
「私が添い寝してあげるから、ね?」
チュッとアヤの唇が、額に触れた。
アヤの温もりと匂いに包まれ、俺はゆっくりと目を閉じた。
456それも名無しだ:2007/08/29(水) 16:35:35 ID:M4kr6H83
今日もテスラ研で、ビルトイェーガーのテストだ。
ラドム博士に指示されるまま、機体を飛び回らせる。

ビルトイェーガーは、テスラ・ドライブと機体各部のスラスターにより、無茶と思える急旋回も難なくこなしてくれた。
その分、俺の体に加わるGもなかなかの物だが。

アヤからの通信がコクピットに入ったのは、テスト飛行を切り上げようとした、ちょうどその時だった。
『疲れてるところを悪いんだけど、北西10km地点で、敵性反応を三つ捉えたの。様子を見てきてもらえる?』
イエッサ。
俺はそう答えると、言われた方角へとビルトイェーガーを飛ばした。

ほんの1分も飛ぶと、レーダーが反応を三つ捉える。
識別信号は、連邦軍の物じゃない。
直後、モニターに映し出されたのは、三機のリオンだった。
DC残党の皆さんか。
その数と動きから察するに偵察に来たようだが、先にこちらに見つかっちまうとは思ってなかったみたいだ。

俺はアクセルを踏み込み、一気に間合いを詰める。
回避する暇も与えず、すれ違い様に二機を、エルボーブレードでぶった斬った。
その隙に残りの一機が逃げようとするが、ビルトイェーガーの機動力がそれを許さない。
わずかなアクセルの踏み込みで、あっという間に懐に飛び込み、左腕部のドリルステークを打ち込んだ。

――が、そこでトラブル発生。
打ち込んだステークが、戻らねえ。敵機に深く食い込んで、抜けなくなっちまった。
リオンが最後の悪あがきで、バルカン砲の照準をこちらに合わせる。
俺は構わず、左腕部のもう一つの武器、三連装マシンキャノンのトリガーを引く。
ステークを打ち込んだ部分が、弾丸によって更に吹き飛ばされる。
傷口が広がった事でステークを引き抜く事が出来た。
しかし次の瞬間、撃ち込んだ弾丸が機関部にまで届いたのか、リオンが爆散した。
とっさに後方へ飛び退いたつもりだったが、機体の破片が少なからず、ビルトイェーガーにダメージを与えた。
特に右腕の関節部分が、破片の直撃で、千切れる寸前だ。
大事をとって、テスラ研に迎えをよこすよう、連絡した。

まったく、紙装甲どころか、これじゃあ濡れた和紙装甲だぜ……。
機体を手近な場所に着陸させながら、俺は思わず毒づいていた。

457それも名無しだ:2007/08/29(水) 16:40:33 ID:M4kr6H83
>>456
しばらくして、迎えが来た。
イルム中尉の乗るグルンガスト、その飛行形態ウイングガストだ。
『おいおい、昨日六機の敵を瞬殺したお前さんが、今日はどうしたんだ?愛しの彼女と頑張りすぎて、調子が出なかったのか?』
通信回線越しに、ここぞとばかりにイルム中尉が嫌みを飛ばしてくれやがる。

ええ、どっかの誰かさんと違って、いつも一緒なもんでね。

『さっさと乗れ!』
回線越しに響くイルム中尉の声は、悔しそうに震えていた。
ちょっとした満足を覚えつつ、俺はウイングガストの上にビルトイェーガーを乗せたのだった。
     ・
     ・
     ・
あ〜、疲れた。
帰投した後、ラドム博士に散々怒られちまったからな。
戦闘より、あの人の相手の方が疲れっちまうぜ……。

部屋に戻り、シャツとパンツだけになってベッドにダイブ。
ビルトイェーガーの機動力が生み出すGも、わずかながらこたえる……。
ありゃあ、明らかにオーバースペックだ。
今日の戦闘でドリルステークが抜けなくなったのも、接近するスピードが速すぎたせいで、勢いが付きすぎたせいだ。
それを何とかするのが俺の役目なんだろうが、何と言うか、欠点をパイロットに丸投げしてるような感じがするぜ……。
過剰な機動力と、脆弱極まる防御力をどうするかが、ビルトイェーガーの今後の課題だな。

そんな事を考えてたら、不意にドアが開いて、アヤが入ってきた。
「大丈夫……?」
ベッドに上がり、俺の髪を撫でてくれる。

ああ。アヤの顔見たら、何か疲れが飛んじまったよ。

そう答えながら、彼女を抱き寄せる。
「そう言ってもらえると、嬉しいわ……んっ」
おもむろに、アヤが唇を重ねてくる。
クチュクチュと舌を絡ませ、はしたない音を立てて唾液をすすり合った。

「んはぁっ……」
唾液の糸を引きながら、アヤが唇を離した。

そういえば、アヤ。
T-LINKシステムを使った新型レーダーってのはんんっ……!?
俺の言葉を、アヤがキスで遮る。
「今は、二人きりなのよ?お仕事の事は忘れて、私だけを見て。私の事だけを考えて。私の事を、思う存分可愛がって……!」
熱を帯びた声で言い、再び激しいキス。

昼間離れ離れになるのが、そんなに寂しかったんだろうか?

俺は彼女の気持ちに応えるように舌を絡ませながら、ギュッと抱き締めてやるのだった。

458それも名無しだ:2007/08/30(木) 22:19:37 ID:Z87R/+/Y
ゼア氏見てて思いついた

シャナ=ミア「あらあら、それは大変だったわね。で、私のことは覚えてるわよね?」
ゼア=ウィド「すまん」
シャナ=ミア「…私のことは覚えてるわよね?」
オルガ「いや今『すまん』って言ったじゃねえか」
シャナ=ミア「冗談じゃないわ私だけゼアのこと覚えてるなんて胸くそ悪いわ。オルガさん、
       これ(金槌)で私の頭を殴ってゼアの記憶だけ取り除いてください」
オルガ「シャナ=ミア、俺エスパー?」

ごめんなさいorz
459それも名無しだ:2007/08/31(金) 15:52:34 ID:sPi2SOQg
>>458
胸くそ悪いって、シャナ様どんだけキレてんだよw
460それも名無しだ:2007/08/31(金) 15:54:58 ID:sPi2SOQg
「ねぇ……起きて……ねぇったら……」
耳元に響く甘い声で、俺は目を覚ました。
時計を見ると、もう朝の7時だった。

――俺、寝ちまってたのか。

アヤとベッドの上で抱き合いながら、他愛もないお喋りをしていたのは覚えてるが、その最中に眠りこけちまったようだ。
何だかんだで、ビルトイェーガーのテストの疲れが溜まっていたのか……?

「もう。私をほったらかしにして寝ちゃうんだもの……寂しかったわ」
アヤが下着姿で寄り添いながら、プウッと頬を膨らませる。
まるで小さな女の子だ。

――ごめん、アヤ。

俺は謝りながら、彼女の髪を撫でてやる。
「もう良いわ。おかげで、可愛い寝顔をじっくりと眺める事が出来たもの……許してあげる」
アヤはニッコリと笑って、額に口づけをしてくれたのだった。

461それも名無しだ:2007/09/01(土) 19:34:27 ID:FmekJUmQ
ラトと同居人ですぜ。
つか>>458って少尉が書いたのかと思ってた。
誰が書いたのだろう?

>>454-460
あえて苦言を。
機体制御も上手く出来ない内からリオン三体の至近距離を高速ですり抜けながら
連続して近接武器で斬って即死させるって、かなり難しいんじゃないか?と思った。

少尉の戦闘スタイル的には重装甲突撃機体の方が合っているかな?
喰らってもコロス!みたいな。
マスタッシュマンが一番似合ってる感じ。後、当然アシュセイヴァーも。

今回は厳しい事書いたけど御免。
実力があるからこそこういう事言うわけで。

長さに乙!そしてアヤ大尉に御馳!
こまやかな表現がさらに進歩したのは保証するでございますですわ。
上手くなったよね。
462それも名無しだ:2007/09/01(土) 21:02:06 ID:C5+RucEB
>>461
アドバイスサンクス(・ω・)/

>機体制御も上手く出来ないうちから〜
言われてから読み返してみて、俺も「ん?」と思った。失敗失敗。


>重装甲突撃機体
ソウルゲインの他に、スレードゲルミルもそうかな。
敵の攻撃を物ともせずに突進して、斬艦刀で一刀両断!みたいな。
463君の夫は、もういない:2007/09/01(土) 21:33:01 ID:LJQN5elc

オルテュギアブリッジ。

カナード「振り切ったか?」
メリオル「まだ油断は出来ません、警戒を」
クルーA「了解。……!そんな…バカな!?」
ゼア=ウィド「どうした?」
クルーA「ハイペリオンです!量産型のハイペリオンが五機追いかけてきます!アーレンド少尉機が率いています!」
ゼア=ウィド「量産型!?ロールアウトしたというのか!?早すぎるぞ!」
メリオル「数が少ないところを見ると恐らく先行量産型でしょう。ですが、量産型とはいえハイペリオン二機と六機では
     戦力差がありすぎます。ここは逃げましょう。全速前進!」
クルーA「了解!」
クルーB「……敵部隊の後続を確認!量産型グレートマジンガーとネオゲッターロボです!数は各五機!」
カナード「また先行量産型か!あのタコハゲ急ぎすぎだ、糞が!」
ゼア=ウィド「逃げられるのか!?」

宇宙要塞アメノミハシラドック。

ミナ「来たか、ロウ・ギュール。そして叢雲劾にプレア・レヴェリー」
ロウ「久しぶりだな、ロンド・ミナ・サハク。…ん?その人は?」
シャナ=ミア「あ、シャナ=ミア・エテルナ・フューラです。この度は私達の機体の代替機や補給物資を運んできていただいたそうで……」
劾「そうかたくならずともいい。夫をユーラシアから取り戻したいのだったな。その依頼、引き受けよう」
オルガ「あんたは……」
劾「……どこかで、会ったか?」
オルガ「いや……少し雰囲気が似てるなって思ってよ……俺と」
プレア「ユーラシア連邦……ということはあの人も……?」
ロウ「ま、ほかにもいろいろな。まずシャナ=ミアさん」
シャナ=ミア「はい」
ロウ「あんたにはゼア=ウィドの使ってたラフトパラディンを持ってきた」
シャナ=ミア「……ありがとう、ございます」
ロウ「物資も持ってきたから機体の修復も出来るぜ。ただ……カラミティは……な」
オルガ「やはり……ダメージが?」
ロウ「ああ……」
オルガ「…………」
シャナ=ミア「オルガさん……」
464君の夫は、もういない:2007/09/01(土) 21:36:49 ID:LJQN5elc
今日はここまでです。

>>458
www
あやまるこたねえよ、面白い。

>>462
確かに髭男は少尉にぴったりかもしれんな。
まさに切り込み隊長?

以上、特にコメントが思いつかなくなり焦るゼア=ウィドでした。
つかアメノミハシラ来てから牛歩だな俺……。
465それも名無しだ:2007/09/04(火) 13:10:18 ID:fGHZXoPd
>>464
むむ、YOUもそう思うかね?
ソウルゲイン、ちょっと考えてみようかしらん。
466それも名無しだ:2007/09/04(火) 13:12:12 ID:fGHZXoPd
テスラ研で開発中のT-LINKレーダーとは、T-LINKシステムを使って、敵の殺意・敵意の類を探知する物だ。
念動力者がいなくても、機械でそれを行う事が理論上は可能らしい。
人間の脳波ってのは、脳みそから出てる電波だ。
その脳みそ特有の電波をキャッチするレーダーを、T-LINKシステムを応用して作っている。

アヤの説明だと、そういう事らしい。
専門用語ばっかりでよくわからんが、多分そういう事だと思う……。
「ん〜、まぁだいたい、そんな感じかしら……」
アヤはそう言って、苦笑した。





――修理が終わったばかりのビルトイェーガーに乗って、俺は夕焼けに染まる空をかっ飛んでいた。

T-LINKレーダーのテスト中に、接近してくる敵意の群れをシステムがキャッチしたのだ。
その数は、十個。
またDC残党が仕掛けて来たんだろうって事で、俺は出撃した。
『おい、くれぐれも無茶はするなよ?お前に何かあったら、俺がアヤ大尉に殺されちまうからな』
後ろを飛ぶウイングガストから、通信が入る。
イルム中尉は、アヤに言われて、俺の援護を任されたのだ。

敵の部隊が見えてきた。
リオンが十機。

ウイングガストのオメガレーザーで援護してもらいながら、俺はビルトイェーガーを突撃させる。

――が、接近する前に、機体を急上昇させた。
さっきまでビルトイェーガーがいた位置を、無数の弾丸が通り過ぎる。
敵は散弾砲を装備していたのだ。
他にもスプリットミサイルやショットガンなど、弾幕を張る武装で固めてある。

嫌な感じの汗が、背中を伝う。
濡れた和紙装甲のビルトイェーガーじゃ、かすめただけでも大ダメージになりかねん。

別方向からスプリットミサイルが発射される。
巣から飛び出す蜂のように、マザーミサイルからチルドミサイルの群れが放たれた。
胸部バルカン砲と左腕マシンキャノンで撃ち落とす。
そこへ二機のリオンが、ショットガンをぶっ放した。
急降下してかわし、そのまま下から接近して、近い方の一機にドリルステークを打ち込む。
位置はそのままに、もう一機にロケットシザースを発射して撃墜した。

安心したのも束の間、他の敵がミサイルと弾丸を撒き散らす。
ビルトイェーガーはことごとくかわしたが、そのたびに俺はコクピット内で、四方八方からくるGに弄ばれた。

467それも名無しだ:2007/09/04(火) 13:14:39 ID:fGHZXoPd
>>466
こりゃあやべえぞ……。

ビルトイェーガーの高機動力なら、かわすのは容易だが、俺はそうはいかない。
Gには強い方だが、だからっていつまでも耐えられる訳じゃねえ。その内反応が鈍ったりしたら、終わりだ。
敵さんは、素早く動く相手に広範囲の飽和攻撃で対処しようと考えただけかも知れんが、図らずも最良の対抗手段になった訳だ。

連続して放たれる弾幕に、だんだん回避がキツくなってきやがった。
スプリットミサイルをかわした直後、正面のリオンがショットガンを構える。

――かわせねえ!

瞬間、何やら巨大な物が飛来して、盾になってくれた。

それは、巨大な鉄拳。
グルンガストのブーストナックルだった。
『もう一丁!』
地上からグルンガストが、左側のブーストナックルを発射する。
二つの鉄拳が、縦横無尽に飛び回り、一気に五機のリオンを撃墜する。
『離れろ、アンデッドマン!』
通信が入り、直後、グルンガストの胸部が変型した。
俺はとっさに機体を離脱させる。
『ファイナル……ビィィィーーム!』
イルム中尉の雄叫びと共に、グルンガストの胸部から放たれた熱線が、残りのリオンを焼き払った。
助かりました、イルム中尉。
『なぁに、良いって事よ。いずれ利子を付けて返してもらうぜ』
中尉の減らず口が、俺の気分を軽くしてくれた。

――そこへ、テスラ研から通信が入る。
ジョナサン博士からだ。
『DC残党に襲撃されている!大至急戻ってきてくれ!』
ちぃっ!こっちは陽動って事か!
中尉!先に行きます!
俺はアクセルをグッと踏み込んだ。
体がシートにめり込むような、強烈なGが襲う。
ビルトイェーガーはテスラ研目掛けて一直線に飛んでいった。

468それも名無しだ:2007/09/04(火) 13:18:43 ID:fGHZXoPd
>>467
テスラ研が見えてくると、俺はアクセルを緩め、機体を減速させる。

状況は、ちょうど空を飛びかうリオン部隊が、R−3のストライクシールドに撃ち落とされているところだった。
だが、安心できない。
敵の本命が、未だに健在だった。
グルンガスト零式(乗ってるのは多分、リシュウ先生だろう)のハイパーブラスターを、バリアで平然と受け止める化け物、ヴァルシオン。
量産型のバリアを強化しているのか、R−3のレーザーキャノンも焼け石に水だった。

ヴァルシオンが、こちらに気付いて、クロスマッシャーを撃ってきた。
かわすと同時に、飛び込む。
が、懐に入る前に、手にした刀で斬りつけてきやがる。

かろうじて回避。

デカい図体のくせに、反応が良いじゃねーか。

遅れてやって来たグルンガストが、ブーストナックルを撃つ。
しかし、これもバリアに弾かれた。

『だったら、こいつはどうだ!ファイナルビーム!』
『ハイパーブラスター!』
壱式と零式(やはりリシュウ先生が乗ってるようだ)が、同時に熱線を放射する。
が、これもダメだ。

くそ、どーしたもんかね……。
思案していると、ジョナサン博士から通信が入った。
『時間がないので、手短に伝えるぞ。今分析してみたら、奴のバリアは質量攻撃を防ぐ時だけ、負荷が大きくなっている。
恐らく、対ビーム防御を重視しているんだろう。
そこで、グルンガスト壱式と零式、そしてR−3の質量攻撃で、奴のバリアを打ち消してくれ』
『バリアはすぐにまた展開されるでしょうが、その前に少尉、あなたが仕留めてください』
ラドム博士が割り込んできた。
『私のmk-Wのスピードをもってすれば、バリア展開前に必ず懐に飛び込めます!』
……まぁ、奴さんも自慢のバリアが破られた直後は隙だらけだろーしな。
いっちょやってみるか!

469それも名無しだ:2007/09/04(火) 13:24:47 ID:fGHZXoPd
>>468
ヴァルシオンはかかって来いと言わんばかりに、仁王立ちしている。
すぐに吠え面かかせてやるぜ!
リシュウ先生!やっちゃってください!
『斬艦刀・疾風怒涛!』
零式斬艦刀をかまえて、零式が突撃!ブースターを全開して強烈な一撃を叩き込む!
本来ならその名の通り戦艦すらぶった斬る一撃も、バリアに食い止められる。
『まだ終わりじゃないぜ!』
すかさず、壱式が剣を手に突撃した。
『計都羅コウ剣!暗剣殺!』
横薙の一刀が、バリアに叩きつけられる。
衝突面から、激しい火花が飛び散り、紫電が狂ったように踊る。
『T-LINKフル・コンタクト!ストライクシールド発射!』
続けてR−3が、六基のストライクシールドを全て、その衝突面に叩き込む。
スパーク光が更に激しさを増し、そして、不意に消滅した。

――今だ!

俺は一気にアクセルを踏み込む。
強烈なGに体をぶっ叩かれて、肺の中の空気をゲフッと吐いちまう。
体がシートの背もたれに埋もれっちまいそうだ。
が、俺は構わず突撃する。
ヴァルシオンは、手にした刀を振り上げようともしない。

バリアを破られたショックで呆けたか、はたまたビルトイェーガーが速すぎて反応出来ねえのか。

いずれにせよ、チャンスは今しかねえ!
機体に急激な抵抗を感じたが、それを突き抜けて、俺はフルスピードで接近した。

撃ち抜けぃっ!
でぃぃいぃぃいぃぃぃいやっ!

雄叫びを上げて、勢いそのままにドリルステークを巨体に撃ち込む。
一瞬、コクピットが尋常じゃない衝撃で揺れた。

――次の瞬間、正面モニターいっぱいに、真っ赤な夕焼け空が広がっていた。
勢い余って、機体もろともヴァルシオンをぶち抜いちまったらしい。

着地しようとしたら、いきなり地面が吹っ飛んだ。
バランスを崩して、ビルトイェーガーはド派手な土煙を上げて、ぶっ倒れた。

気のせいだろうか?
何か、コクピットにその墜落音が遅れて響いたように感じられた。

機体を起こして、背後を見る。
どてっ腹に風穴を空けたヴァルシオンが、ゆっくりと倒れ込んだ。

はは……やったぜ……。

だが、勝利の余韻に浸る間もなく、ビルトイェーガーはあちこちから火花を噴いて、ぶっ倒れた。

「いやぁぁぁぁぁっ!私のmk-Wがぁぁぁぁぁっ!」

ラドム博士の悲鳴が、聞こえたような気がした。

470それも名無しだ:2007/09/04(火) 13:28:33 ID:fGHZXoPd
>>469
あ〜……まだ体中がミシミシ言ってるみてえだ……。

ベッドの上で大の字になって、俺はボンヤリと天井を眺める。

なんでも、ヴァルシオンを貫いた瞬間、ビルトイェーガーは超音速に達していたらしい。
つまりヴァルシオンをぶち抜く寸前に感じた抵抗は、音速の壁って奴か。
で、着地の際に地面が吹っ飛んだのは、超音速時に発生する衝撃波(ソニックブーム)だったみたいだ。
通りで音が遅れて聞こえた訳だ。

そんなスピードでヴァルシオンを貫通したんだ。
いくら俺でも、衝撃でへたばるっつーの。
なのにラドム博士は、かれこれ5時間以上もお説教しやがって……解放された時には、夜の11時になっていた。
腹は減ったが、飯食う気力もねぇ……。
飯食う気力はないのに、腹の虫が抗議してきやがって、どうしたもんか……。

そこへドアが開き、アヤが入って来た。
「起きてる……?」
ああ、疲れすぎて、かえって眠れねーよ。
答えながら起き上がる。
「お夜食、持ってきたわ。一緒に食べましょう?」
オニギリの乗った皿を手に、アヤはベッドの端に腰を下ろした。

……これ、アヤが作ったのか?
「ええ。食堂の厨房を借りてね」
なんか、すまねえな。アヤも戦闘で疲れてるだろうに。
「あなたほどじゃないわよ」
アヤはそう言って、笑ってくれた。
「はい、アーンして?」
アヤがオニギリを一つ取って、差し出す。
……いや、自分で食えるよ。
顔が熱くなるのを感じながら、俺は苦笑する。
「いいから、アーンして?」
アヤはお構いなしに催促する。
抵抗するだけ時間の無駄なのは、今までの付き合いでわかってる。
俺は観念して、口を開けた。
そして、一口で半分ほどを食べる。
熱々のご飯とパリパリの海苔が、何故か妙に懐かしい。
それに、アヤの手作りかと思うと、それだけで疲れが取れていくかのようだ。

「私にも食べさせて?」
アヤがおねだりするんで、俺も皿の上から一つ取って、差し出す。
ほれ、アーンしてみ。
「アーン……」
アヤは目を閉じて、控え目に一口食べる。
「んふふ……美味しい……」
つぶやくアヤの顔は、子供みたいなあどけない表情だ。

まったく、良い年して何やってんだか。
……でも、悪くないかも。

そう思いながら、俺は二口目をアヤに食べさせてもらうのだった。

471それも名無しだ:2007/09/04(火) 21:39:26 ID:icymtNlY
ラトと同居人ですぜ。

>>466-470
うむ。言いたい事が伝わってくれたようで、ツボを非常に的確に捉えたな、と。
あれしか言ってないのによく汲み取れるね。

ビジュアルも綺麗だしイルムの援護の入り方もいい感じ。
音速の壁をぶち抜いたってのも予想できなかったし、バリア貫通も面白かった。
そしてラストもね。
素晴らしくGJ!
472それも名無しだ:2007/09/05(水) 07:44:53 ID:knNBIUlE
ああ、でもちょっと『砂塵』 (>>39-54) に似てるねw
473それも名無しだ:2007/09/05(水) 11:25:48 ID:n75THvwf
>>471-472
パイロットが振り回されがちの高機動力なのに、すれ違い様に斬り捨てる難易度の高い攻撃……などといった矛盾に気を付けて書いたつもりだったけど、どうやら満足していただけたようで何より。
だが、対ヴァルシオン戦は、バリア突破→バリアすぐに復活な流れを入れとけば良かったかなと思った。

>『砂塵』に似てる
バトルの後の甘々なオチとか特にな!w
毎度のGJ本当にサンクス(・ω・)/
474それも名無しだ:2007/09/07(金) 17:41:40 ID:JrmIReBp
輸送機からアシュセイヴァーとR−3パワードを下ろして、格納庫へと移動させる。
そして、コクピットから下りた俺とアヤは、伊豆基地の潮の香り漂う空気を胸一杯に吸い込んだ。
何だか妙に懐かしいぜ。まるで何年も離れてたかのようだ。

パイロットスーツから制服に着替え、荷物をそれぞれの部屋に放り込んだ後、俺たちは早速、帰還の挨拶とお土産配りに向かった。

SRX組はちょうど訓練で出払っているので、他の部隊を回る事にした。

まずは教導隊だ。
分隊室に入ると、ラトゥーニが迎えてくれる。
「お二人とも、出向お疲れ様でした」
愛らしい仕草で敬礼するラトゥーニ。
「ただいま、ラト。これ、みんなで食べてちょうだい?」
そう言ってアヤが、土産の「テスラ研饅頭」を渡す。
「……アメリカなのに?」
そばにいたゼオラが的確なタイミングで突っ込んだ。

それと、アラド。
お前の底なし胃袋にはこれだけじゃ足りないだろうから、これも買ってきてやったぞ。
俺はそう言って、物欲しそうな顔で饅頭の箱を見つめるアラドに、「マルセイバターサンド」を渡す。
「少尉……俺、一生着いて行きます!」
オメーの一生はマルセイバターサンド一箱分かい。

おっと、忘れるとこだった。
ラトゥーニ。こいつは彼氏宛てだ。帰ったら二人で食べな。
俺はそう言って、テスラ研饅頭の小箱を渡す。
「あ、ありがとうございます……!」
ラトゥーニはポゥッと頬を染めながら、笑顔で受け取ってくれた。

ラミアはアンジュルグの調整でもやっているのか、姿が見えなかった。

「よく戻ってきてくれたな」
カイ少佐が、俺の肩をポンと叩く。
「やはりこの伊豆基地は、お前がいないと駄目だ。いなくなってから初めて、お前という存在の大きさを思い知った」
い、いきなり何です?
いつものカイ少佐らしからぬ態度に、気味の悪いものを覚える。
「ゼオラが、な……その……アラドのために努力しているのは、わかるんだが……やはり、あいつの料理は、その、な……」
ボソボソと、奥歯に物が挟まったような物言いをするカイ少佐。

――毒味させられたな。
全てを悟った俺は、魂を込めた敬礼を贈る。

ヒゲ、あんた漢(おとこ)だよヒゲ。

475それも名無しだ:2007/09/07(金) 17:44:28 ID:JrmIReBp
>>474
さて、次はオクト小隊だな。

分隊室に入ると、カチーナ中尉が一人、何やら深刻な顔をしていた。
が、俺の顔を見た途端、パァッと表情が明るくなる。
「おお!帰ってきてたのか!いや〜助かったぜ!ちょうどお前の事を考えてたとこでよぉ!」
……はぁ?
「あ、あのぅ……これ、お土産……」
アヤがやや強引に割り込んで、テスラ研饅頭を渡す。
「お、サンキュ!よし、今夜はコイツで一杯やるか!」

一人で食う気かよ。

それより、俺に何か用があったんじゃないんですか?
「おう、そうだった。たく、ラッセルもタスクもいざって時に逃げ出しやがって、頼りにならねえ。やっぱこういう時は、お前が一番頼りになるぜ」
な、何かやけに持ち上げるな……。
妙な不安を覚えたところへ、背後でドアが開き、入室してきた者がいた。
「あら、お二人とも戻られたのですね?テスラ研への出向、お疲れ様でした。よろしければ、私が作ったパエリアを召し上がりませんこと?」
レオナお嬢様が朗らかに、パエリアと称する異物を差し出す。
「……じゃあ私、ATXチームにお土産渡してくるわね!」
「さーて、ゲシュペンストの調整でもやるとすっかな!」
アヤとカチーナ中尉がそそくさと出て行く。
「あら、それではお二人にはまたの機会という事で」
レオナは疑う風もなく、二人を見送る。
そして、クルリとこちらに向き直る。
「さぁ少尉。今日こそは今までの雪辱を晴らさせていただきますわよ?トロンベ、もとい、エルザム様に徹底指導していただいた私の実力、とくと味わってくださいませ」
――皿の上の異物がトロンベプロデュースの結果かと思うと、恐怖すら覚えるぜ。
つーかトロンベ……。
もしや俺に食わす物と知って、わざと手抜き指導しやがったか?

そんな邪推にとらわれつつ、進退極まった俺は、レオナお嬢様の手料理を頂戴する羽目になったのだった。

476それも名無しだ:2007/09/07(金) 17:46:42 ID:JrmIReBp
>>475
ふぅ、死ぬかと思ったぜ。
試練を乗り越えた自分を誉めてやりたい気分だ。

とにもかくにも、俺はアヤの後を追うように、ATX組の分隊室を訪れた。
ちょうどアヤがエクセレンの姐さんとお喋りをしている。
「あらん☆お帰り〜♪」
姐さんが相変わらずのノリで、手を振ってくれた。
ただいま戻りました、エクセレンの姐さん。
「ご苦労だったな」
ナンブ中尉も声をかけてくれる。
ただいま戻りました、ナンブ中尉。
俺は敬礼で返す。
「向こうでラドム博士に、新型のテストをやらされたそうだな」
ええ、作り手にそっくりの、メチャクチャな機体でしたよ。
そう言うと、ナンブ中尉は珍しく、柔らかい微笑を浮かべる。
あの、何か?
「いや……俺がアルトアイゼンを任されたばかりの頃を思い出してな。予想以上の加速に驚いて、ステークのトリガーを引き損ねたりしたものだ……変わらんようだな、あの人は」
中尉の顔は、その頃を思い出したのか、とても穏やかな表情になっていた。

「あ、少尉。帰ってきてたんですね」
そこへクスハがやって来た。
アヤとも軽く挨拶を交わす。

よう、ブリットはどうした?
見当たらねーから、お前と一緒かと思ってたが。
「ブリットくんなら、ゼンガー少佐とお稽古してますよ?」
師弟揃って、相変わらず暑苦しい事で。
からかい半分につぶやく俺に、クスハはクスクスと笑った。

「ところで少尉、顔色が優れないようですけど……」
ん?そうか?

――さっきのレオナお嬢様のパエリアのせいか?

胸の内でつぶやく。
「お疲れのようでしたら、ちょうど疲労回復に効く栄養ドリンクを作ったので飲んでみますか?」
そう言ってクスハは、小さな水筒を差し出す。

「そうだ、キョウスケ〜☆一緒に潮風に当たりに行かない?ね?ね?」
「……そうだな」
「そ、そろそろみんな戻ってくる頃ね。先に分隊室に行ってるわよ?」
腕を組んで、逃げるように退室する姐さんとナンブ中尉。
そして、あたふたと立ち去るアヤ。
とばっちりはゴメンだと言わんばかりの勢いだ。

クスハはじーっと、いたいけな瞳で俺を見つめる。

――飲めばいいんだろ、飲めば。
ヤケクソな気持ちで、俺は水筒の中身をあおるのだった。

477それも名無しだ:2007/09/07(金) 17:50:34 ID:JrmIReBp
>>476
ふぅ、マジで死ぬかと思ったぜ。
更なる苦難を乗り越えた俺は、SRX組分隊室へと向かった。

ドアを開けると、既にみんなテスラ研饅頭を食べ始めている。
「よう、お疲れ!」
「話は聞いたぞ。無事に戻って来れて、何よりだ」
饅頭を頬張りながら、リュウセイとライが声をかける。
マイは、椅子に座ったアヤの膝の上で、パクパクと幸せそうに饅頭を食べていた。
「……お帰りっ」
そして、俺の姿を見ると、プイッとそっぽを向きながらも、挨拶してくれた。
「駄目でしょうマイ。ちゃんとお兄ちゃんの顔を見て挨拶なさい?」
「あんなの、お兄ちゃんじゃないっ」
膨れっ面でアヤに答えるマイ。
ホンットに可愛くねーガキだな。
俺が笑いながら言うと、マイは食べかすを口元に付けたまま、ベーッ!と舌を突き出した。

――本当にみんな相変わらずで、何よりだぜ。
つっても、何年も離れてた訳じゃないんだし、当然か。

安心する一方で、そんな当たり前の事にいちいち思いを馳せる自分が可笑しくて、俺は苦笑してしまった。

「本当にご苦労様。今日はゆっくり休んでちょうだいね」
そんな俺に、ヴィレッタの姐さんが、労いの言葉をかけてくれる。

……姐さん。ちょっと大事な話があるんですがね。
「何かしら?」
まぁ、今日は帰ってきたばっかだし、また明日、話させてもらいますよ。
「それもそうね。じゃあ明日、執務室で」
姐さんは落ち着いた態度だった。
俺の話の内容を、既に察しているかのように。


とりあえず、口直しに俺も饅頭食べようかな。
そう思い、アヤの隣りに座ろうとしたら、マイがアヤの膝の上から下りて、間に小さなお尻を割り込ませてくる。
「アヤ!私が食べさせてあげる!」
「ありがとう、マイ。あ〜ん☆」
アヤが嬉しそうに開けた口に、マイは饅頭を運ぶ。
「じゃあ今度はお姉ちゃんの番ね。あ〜んして?」
「あーん☆」
仲睦まじい姉妹の様を眺めながら、俺は早くもラスト1となった饅頭に手を伸ばす。

――と、その饅頭がひとりでに浮いて、マイの手の中へ。

マイは俺を見ると、ベーッ!と舌を出した後、勝ち誇ったような表情で、見せつけるように最後の一個を食べたのだった。

――自分の分、買っときゃ良かったぜ……。
478それも名無しだ:2007/09/10(月) 15:42:57 ID:5vc/npED
「で、話って?」
執務室に入った俺を迎えたヴィレッタの姐さんは、前振りもなしに本題を尋ねた。

俺としても、その方が話を切り出しやすいので、助かる。

――テスラ研が何度かDC残党に襲撃された事は、もう知ってますよね。
「ええ、アヤから聞いてるわ」
で、その襲撃なんですが……あいつら、T-LINKレーダーを開発してた第3セクターばっか狙ってたんですよね……テスラ研で開発中だったビルトイェーガーじゃなくて。

「――何が言いたいのかしら?」

姐さん、それが狙いで俺を向こうへ寄越したんじゃあないんですか?
「言ってる意味が、イマイチわからないわね。あなたを出向させたのは、あくまでもテスラ研からの要請よ」
それも含めて、全部が計画の内だったんじゃあないんですか?

俺はデスクに手をついて、ズイッと姐さんに詰め寄った。

鼻先を、香水の匂いがくすぐる。
この人も化粧はするんだな、と変に感心してしまった。

「計画って?」
向こうに潜伏してるDC残党を、T-LINKレーダーシステムを餌に誘き出して叩くって寸法だったんじゃあないんですか?
だいたい、つい最近になって開発を始めたレーダーの事を、あいつらがそう簡単に知る事が出来るたぁ思えねえ。
わざと情報を流して、俺に退治させるつもりで、テストパイロットという名目でテスラ研に行かせたんじゃないんですか?
だからデータ収集って名目でアシュセイヴァーも持って行かせたんでしょ?
結局アシュセイヴァーはほとんど使わなかったけど。

……って、何笑ってんです?

クスクスと笑うヴィレッタの姐さんに、俺は少々不愉快な気持ちになった。

「もしもあなたの言う通りだとしたら、どうする?」

――姐さんの事は好きですが、俺はともかくアヤまで利用したのは許さねえ。
骨の二、三本は覚悟してもらわにゃならん。
「怖い顔ね。本当に今にも噛みついてきそうだわ」
姐さんは笑みを解き、真面目な顔で、俺の眼をジッと見る。

「あなたの考えすぎよ。もしあなたの疑ってた通りなら、あなただけでなくチーム全員を出向させるわ。そっちの方が確実でしょう?」
……いや、確かにそうですが。
「ただ、私個人はテロの可能性を考えて、護衛も兼ねてもらったけれど、実際は名目通りで裏なんて何もないわ」
姐さんはキッパリと言い切った。

479それも名無しだ:2007/09/10(月) 15:47:41 ID:5vc/npED
>>478
真っ直ぐにこちらの眼を見て返答されて、俺は言い返せなくなった。

実際、根拠と言えるほどの物はなく、ただの疑惑でしかない。

「それに、どんな事があろうと、私はあなた達を駒や餌にしたりはしないわ。月並みな台詞だけど、あなた達は大切な仲間だしね」
そう言って姐さんは柔らかな笑みを浮かべる。

室内の照明のせいか、若干頬に赤みが差してるように見えて、それが照れているみたいで、ちょっと可笑しかった。

――やっぱり俺の考えすぎか。

そんな姐さんの顔を見て、俺はそう思った。

「ただ――情報漏洩そのものは、決して有り得ない事ではないわね」
姐さんはすぐに真面目な顔に戻った。
「上層部には未だに、敵の宇宙人の怪しい技術など信用出来ないと考えてるお堅い方々がいらっしゃるからね……そういう連中にとって、私たちSRXチームはいささか目障りな存在かも知れないわ」
で、そいつらがDC残党にT-LINKレーダーの事を教えた、と?
「可能性がある、という程度でしかないけれどね……そういう連中にしてみれば、EOTI機関を前身とするDC残党も目障りだし、どちらが消えても損はないといった考えがあったのかも……」
姐さんが真面目な顔で淡々と語ると、何となく信じそうになっちまうから困る。
「中には、地球原理主義教導団と繋がってる者もいるかも知れないし……」
姐さんは声のトーンを一段落としてそう続けた。

「……という風に、疑い出したらキリがないわよ?」
かと思ったら、いきなり明るい声に戻る。
「いろんな状況を想定しておくのに越した事はないけど、それにばかり気を取られていては、疑心暗鬼でかえって何も出来なくなるわ。
あなたは、あなたの役目に集中しなさい」
何だか俺を励ますような声色だ。
「それに、あなたが暗い顔してると、アヤが心配するわよ?」

むむ、アヤの事を出されると、反論できねぇ……。
俺はそうですね、と素っ気なく答えるしか出来なかった。

「とりあえず、あなたはあなたなりに、色々考えてるのはわかったわ」
そう言って姐さんは笑う。

「とにかく、話はこれで終わりよ。戻って、ゆっくり休みなさい。明日からも、訓練があるのだからね」
姐さんはそう言って、デスクワークに専念し始めた。

俺も失礼しますと敬礼して、退室する。
何となく、胸のツカエが取れたような気分だった。
480それも名無しだ:2007/09/12(水) 07:08:16 ID:77Voxztf
>>474-477
それぞれのキャラと話して、決意を秘めてヴィレッタ隊長と話するからENDフラグかと思ったよw
饅頭サンクス!
おいしく頂きました。
>>478-479
隊長疑われやすいタイプだから…w
杞憂で良かった良かった。
二つともGJだったよん。面白かった。

さて。
…言いにくいんだけど、引退、しようと思う。
理由はOGsラトへの違和感。
常時軍服メガネでジオン軍パイスー。RHBの時のゴスロリも只のイメージ映像。
声優もイメージと違ったし、リュウセイへのフラグもGBAの時より酷くなっていてほぼ別人。

なんというか、特別なものは本当何も感じなくなってしまった。

かといって他のキャラでそれ程書きたいキャラが居る訳でも無し。
いろいろ投げ出しっぱなしのまま去るのは不本意だけど、このままフェイドアウトするよりはいいかな、と。

いろいろサンクス。
さらば。
481それも名無しだ:2007/09/12(水) 10:15:43 ID:s91j7sHY
>>480
サンクス(・ω・)/

>引退
ぬぅ、GBA版を再プレイしても燃料補給にならぬほど、イメージ崩されてしまったか?
YOUの書くラトゥーニは好きだったんだがなぁー……寂しいけど今までサンクス。
気が向いたらまた書いてちょ('-^*)/
482それも名無しだ:2007/09/13(木) 22:10:42 ID:TP/lcR7F
新参者です。

おろろん、ちょいと来れない間にGJですよ。
お疲れ様でした。

うーん、触発されますね、いい作品には…

とにかく、おもしろかったです♪
GJ☆
483それも名無しだ:2007/09/13(木) 22:14:14 ID:TP/lcR7F
>>480
新参者です。

キャラへの思い入れがエネルギーになるスレですからね、ここ…

でも、またいつでも戻ってきてくださいね。
あなたが心を踊らせる誰かさんと一緒に。

待ってますよぅ。
484それも名無しだ(ゼア):2007/09/13(木) 22:15:02 ID:2L7kOqmw
>>480
引退ですか……。
感想は書けなかったけど、毎回楽しく読ませて頂いていました。
少し、寂しくなりますね。
でも、また気楽に来て下さい。
感想だけでも書いてる人たちの励みになりますから。
485それも名無しだ:2007/09/14(金) 03:32:51 ID:5Bh0f+dK
最下層到達age
486番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/09/16(日) 20:35:12 ID:EGAGHu15
可愛い月 新人くん日

廊下を歩いてたら、ロビーの方からマイとラトが走ってきた。
二人とも手に猫じゃらしを持って、何かから逃げているようだったけど、何だか楽しそうでもある。

そしてその後ろから、新人くんが物凄い勢いで二人を追いかけていた。
「待たんか、ガキどもおおおおおっ!」
「ごめんなさぁぁぁい!」
「少尉の寝言は誰にも言いませぇぇぇん!」
「良いから止まれぇい!こういう時だけ精神コマンド『加速』使いやがってぇぇぇっ!」
何が何だかわからず立ち尽くす私。
マイとラトはそんな私の後ろに、その小さな体を隠す。
「た、大尉……!失礼しました!」
追い付いた新人くんは、まず私に敬礼した。
「アヤ〜、シスコンがいじめる〜っ!」
「お嫁に行けない体にされます〜っ!」
……あなたたち、そういう言葉どこで覚えたの?
「誰がシスコンだ!だいたいテメー等みてぇなチンチクリンになぞ、川が逆さに流れたって欲情せんわ!」
あなたもムキになって答えるのはやめなさいね。
「す、すいません……とにかく、その二人を引き渡してください!大人として、説教してやらにゃあなりません!」

……ああ、この二人に、何か悪戯をされたのね。

でも顔が耳まで真っ赤になってて、怒ってるというよりは、恥ずかしがってるような……?

「大人があんな事言っちゃうんですか?」
「ふふん、ずいぶん立派な大人だな」
マイとラトは彼に向かって、揃ってベーッ!と舌を出して、また逃げ出した。

「ぐぬっ……!ガぁぁぁキぃぃぃどぉぉぉもぉぉぉっ!」
ああん、もう!大人ならもっと落ち着きなさい!
追いかけようとする新人くんを制止させて、私はたしなめる。
何があったか知らないけど、あの二人には、私から良く言って聞かせておくから、ね?
「た、大尉がそう仰るんでしたら……」
新人くんは、渋々ながらも従ってくれた。

487番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/09/16(日) 20:38:15 ID:EGAGHu15
>>486
――で、何があったの?
私が尋ねると、新人くんはムスッとしたまま話し始める。
「その……さっきロビーのソファで昼寝してたんですが、アイツ等が猫じゃらしで顔をくすぐってきて……」
まさか、それだけであんなに怒ってたの?
「いや、その時俺、寝言を言っちまったみたいで……自分じゃわかりませんが、子供の頃の……姉貴と遊んでた時の夢見てたんで、多分……」
お姉様の名前を呼んじゃった、と。
「はい、多分」
それでマイがシスコンなんて言ってたのね。

でも良いじゃない。
あの子たちがそういう悪戯をするって事は、あなたの事を憎からず思っている証拠よ?
あなたは大人なんだから、悪戯の一つや二つ、させてあげても良いんじゃないかなぁって、私は思うんだけど。
「そ、そうですか?」
えぇ、そうよ。
それにあなたの寝顔って、本当に悪戯したくなるくらい無防備で可愛いもの。

私はこの前見た彼の寝顔を思い出して、クスクス笑ってしまった。

「…………」
彼は恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしながらムスッと仏頂面になる。

そういえば、ちょくちょくロビーのソファで寝てるみたいだけど?

あまりからかってはいけないと思い、話題を変えてあげる。
「あ……あそこは日当たりが良くて、ポカポカ暖かいんで、つい……」

やだ、まるで猫みたい。

私がそう言うと、
「放っといてください」
彼はそう答えていじけてしまう。

ごめんなさい。
ほら、元気出して!男の子でしょう?

彼が本当に愛らしく見えて、私はつい頭を撫でてしまった。

「…………」

彼は特に反抗もせず、大人しくなる。
撫で撫でされるの、好きなのかしら?

何だか本当に猫みたいで、ますます彼を可愛く思う私だった。

488それも名無しだ:2007/09/19(水) 14:46:36 ID:vXv3ZjzK
保守
489それも名無しだ:2007/09/22(土) 10:12:46 ID:MXT+6nH/
「アヤ大尉、チョーカー変えたんですか?」
アヤと一緒に食堂で朝飯食ってたら、クスハが声をかけてきた。

そう、今日のアヤが付けているのは、いつものやつではなく、黒い革製のチョーカーだった。
白い肌とチョーカーの黒が、お互いを引き立てている。

「ええ。彼がプレゼントしてくれたの」
アヤは少女のように頬を赤らめて、俺の手をキュッと握りながら答えた。
「良いなぁ……大尉は肌が白くて綺麗だから、黒系とか凄く似合ってますよ?」
「そ、そう?」
「ええ。何だかセクシーな感じです」
「や、やだ!セクシーだなんて!もう!そんなにおだてたって、何も出ないわよ!?」
アヤは耳まで真っ赤になって、何故か俺の背中をバンバン叩く。

舞い上がりすぎだ、馬鹿。

口に入れた焼き魚を危うく吹き出しそうになり、俺は思わず胸の内で毒づいた。

『おはよーございまーす』
間延びした挨拶をしながら、ラトゥーニ・ゼオラ・アラドの三人が食堂に入ってきた。
お前ら、だらけた声出してんじゃねえ。
そんなヌルい事じゃ、教導隊の看板に泥が付くぞ。
「うへぇ、朝から説教は勘弁ッスよ……」
アラドが情けない声を出す。
「まぁまぁ、良いじゃない。この子たちも、やる時はやるんだから」
アヤがそう言って俺をなだめる。

「それより見て?昨日買ってもらったのよ♪」
嬉しそうに、三人にも新しいチョーカーを見せるアヤ。

ゼオラがそれを見た瞬間、いきなり真っ赤になった。

―― ゴ ス ッ !

次いで、必殺の踵落としが俺の脳天を打ち抜いた。

490それも名無しだ:2007/09/22(土) 10:15:05 ID:MXT+6nH/
>>489
て……てめぇ……いきなり何しやがる……!

「せ、せ、セクハラですよ少尉!いくら恋人同士とは言え、首輪を付けさせた上、外を歩かせるなんて!」

――はぁ?

言われてアヤを見る。
……確かに、黒革のチョーカーは、犬や猫に付ける首輪に見えなくもない。

「少尉……そーいう趣味だったんスか」
「か、過激……」
アラドとクスハも気が付いて、顔を赤くする。

いやいや待て待て!
違う!誤解だ!
本当に単純に似合うと思っただけで、別にそういうプレイを想定してた訳じゃねぇ!

「ば、馬鹿……!言ってくれれば……私はいつでも、あなたのペットに……なってあげるのに……」
アヤぁぁぁぁっ!
お前まで本気にするなぁぁぁぁっ!

「…………」
おい、チビっ子……何だ、その冷ややかな目線は……。
「軽蔑の眼差しです」
即答すな!
だから誤解だって言ってんだろ!

「やっぱあれッスか?これが男のロマンってやつッスか?」
「何がロマンよ!最低だわ!少尉の事、見損ないました!」
「でも、少尉らしいと言えば、らしいですよね……」
「…………」
お前ら、俺をどういう目で見とるんじゃあああああっ!
そうじゃねえっつってんだろがぁぁぁぁっ!
俺の叫びはむなしく食堂に響くだけだった。



――翌日から、俺は「エロスの竜巻」略して「エロンベ」と呼ばれるようになってしまったのだった。

誰かいっそ殺してくれ……。

491君の夫は、もういない:2007/09/23(日) 12:39:53 ID:ZfMXwkAk

アメノミハシラ格納庫。

ロウ「んじゃあ、早速出発するか、シャナ=ミアさんよ」
シャナ=ミア「……少し待ってください」
ロウ「おお、じゃあ俺らは先にリ・ホームで待ってるぜ」
シャナ=ミア「……オルガさん」
オルガ「…どうした?乗れる機体の無い俺は留守番だろう?早く行けよ」
シャナ=ミア「貴方にお願いがあります。私の……ラフトパラディンのサブパイロットを務めてください」
オルガ「……どういうことだ?」
シャナ=ミア「本来ラフトパラディンは副座式なんです。サイトロン調整担当の。ですから、私の……」
オルガ「断る」
シャナ=ミア「え?」
オルガ「俺にだって意地の一つくらいある。サブになってまで戦場に出たいとは思わない」
シャナ=ミア「オルガさん……でも、仲間だったって言うお二人の仇を討ちたいんじゃ……」
オルガ「!」
シャナ=ミア「クロト・ブエルさんにシャニ・アンドラスさんでしたっけ?どれほどの仲だったのか私は分かりませんけど…
       そのお二人の仇が討ちたいんじゃ……」
オルガ「うるせえ!お前は、人の弱みに付け込んでまで俺を乗せたいのかよ!?」
シャナ=ミア「!弱みなんて……私はそんなつもりは……」
オルガ「とにかく、俺は乗らねえ。ついて行くのはリ・ホームまでだ」
シャナ=ミア「…………」
ロウ「お、シャナ=ミアさん。用事は済んだのかい?」
シャナ=ミア「ええ……」
ロウ「じゃあ行こうぜ。プロフェッサー、OKだ、出してくれ」
プロフェッサー「了解、じゃあ行きましょうか」

オルテュギアブリッジ。

カナード「くそ、取り囲まれたか」
メリオル「万事休す…か。仕方ありません、降伏します」
ゼア=ウィド「……俺が出る」
カナード「!?奴らの狙いはお前だぞ!死ぬ気か!?」
メリオル「いえ、連合を抜けた時点で私達もガルシアのターゲットとなっています。ここまでくればゼア=ウィドが出ても
     出なくても同じでしょう」
カナード「……なら、俺が出ても問題ないな」
ゼア=ウィド「悪いな、損な役回りさせちまって」
カナード「気にするな」
メリオル「手が開いているものはメビウスで出撃して」
クルーA「現在出撃できるのは三機のみです!」
メリオル「構わないわ、二人の援護に回して!」
ゼア=ウィド「すまないな、メリオル」
メリオル「いえ、あなたにしてあげられるのはコレくらいですから」
ゼア=ウィド「ありがとうよ。じゃあ、ゼア=ウィド・エテルナ・フューラ、ハイペリオン三号機出るぞ!」
カナード「カナード・パルス、ハイペリオン一号機。同じく出る!」
492君の夫は、もういない:2007/09/23(日) 12:48:22 ID:ZfMXwkAk
今日はここまでです。

>>489-490
エロンベさーんwww
苦労してますね、俺とは別の方向で……
少尉は本当に苦難が絶えませんね、お大事に

以上、今年中にはアルテミス篇を終わらせたいゼア=ウィドでした。
493それも名無しだ:2007/09/25(火) 17:35:17 ID:vOpN23CB
>>891
オルガのパイロットとしての意地が格好良いね。
焦らずマイペースで頑張れ('-^*)/

>>892
エロンベって言うなぁぁぁぁっ!

なんてねw
感想サンクス。本当に男は辛いよw
494それも名無しだ:2007/09/25(火) 17:36:24 ID:vOpN23CB
凄いロングパスかましてしもた……orz

>>491-492宛てです、ごめんなさい。
切腹。
495それも名無しだ:2007/09/28(金) 15:17:51 ID:LdkToWx7
頬の絆創膏に顔が引っ張られてるみたいで、どうも落ち着かん。
しかし剥がしたら医者とアヤがうるさいんで、我慢するしかない。

それにどちらかというと、右腕を三角巾で吊ってる事の方が面倒だ。
利き腕が使えないってのは、意外と不便なもんなんだな。
そんな事を考えながら、俺は昨日から修理ドックに搬入されたまんまのアシュセイヴァーの残骸を、ボンヤリと眺めていた。

「やっぱりここにいたのね」
そこへアヤがやって来る。
「もう。お昼食べたと思ったら、プイッてどこかに行っちゃうんだから……あまり心配させないで?」
アヤはピットリと寄り添いながら、子供みたいに膨れっ面になる。
ごめん、アヤ。
俺はただ、そう返すしか出来なかった。

「あ、そうそう。さっきキョウスケから文句言われちゃったわ。毎回アルトの角に吊すのはやめてくれって」
んじゃあ、次からはビルトビルガーの角に吊すか。
俺はかなりマジに答える。

何せアシュセイヴァーが無残な屍を晒す羽目になったのは、みんなリュウセイのせいなんだからな……。
昨日の演習を思い出すと、また頭が痛くなってきた。

496それも名無しだ:2007/09/28(金) 15:21:06 ID:LdkToWx7
>>495
昨日はSRXの合体演習が行われた。
ただし、合体のための念動フィールドをリュウセイに担当させる。
合体が必要で、しかもR−3が消耗しているという、追い詰められた状況を想定した演習だった。

しかし、リュウセイの阿呆の強い念動力が、今回は仇になった。
念動フィールドは合体した機体同士を包み込んで、合体状態を維持する役割を果たす。
早い話がSRXは、サランラップか何かでグルグル巻きに固められてるようなもんだ。
ところがリュウセイの奴、念動フィールドを張るのが早過ぎる上に、フィールドの強度もガッチガチに固くしちまったから、合体しようとした機体同士が弾かれちまった。

空中で衝突したRシリーズ三機は、そのまま落下していく。
R−1はR−ウイングに変型して体勢を立て直そうとしたが、結局胴体着陸。
R−3は、T-LINKフライトシステムを積んだ自分のプラスパーツにとっさに捕まって、難を逃れた。

俺は残るR−2の救助に向かっていた。
俺のアシュセイヴァーは、テスラドライブを積んでるおかげで飛行可能だ。
空中でR−2をキャッチした後、ブースターを噴かす。
ずっと以前、同じようにR−3パワードをビルトラプターで支えようとして、結局落っこっちまった事がある。
今回はプラスパーツを切り離したR−2本体のみだったが、やはりキツかった。

アヤがとっさに、念動フィールドを張って俺たちの機体を空中に固定してくれた。
ほんの数秒の間だったが、それでも落下スピードがかなり相殺された。
加えてライが、R−2を合体形態からPTに戻してアシュセイヴァーから離れ、自分で体勢を立て直してくれた。
おかげでR−2は両足が破損しただけで済んだが、俺のアシュセイヴァーはバランスを取り損ねて地面に激突。
俺も右腕の骨にヒビが入る怪我を負った次第。

その夜、腹いせにリュウセイを簀巻きにして、アルトアイゼンの角に吊しておいた。
その時のリュウセイはやたら大人しかったが、アイツなりに反省してるんだろう。
夕方には回収してやるか。

497それも名無しだ:2007/09/28(金) 15:22:56 ID:LdkToWx7
>>496
しかしアシュセイヴァーの損傷は、見れば見るほどヒドいもんだった。
オオミヤ博士も、
「やるだけやってみるが、あまり期待はしないでくれ」
と景気の良くない返事。

修理出来る・出来ないは別にして、当座の機体をどうにかせんとな……。

「ラミアに頼んで、ヴァイサーガかソウルゲインを貸してもらったら?あなたとは相性が良いみたいだし」
確かに悪くはないが、正直な話、あいつ等に乗ると一騎駈けしたくなるんだよな……みんなをほったらかして。
俺の役目はチーム全体のバックアップだから、オールマイティに戦える機体がベストだ。
「じゃあ、量産型ヒュッケバインとか?だけど、うちに回せる余分な機体があるかわからないし……あったとしても、昨日のアレの後じゃあ、ねぇ……」
まず無理だな。
となると、やはりラミアに頼んで、ヴァイサーガかソウルゲインを借りるしかねえか。
いつスクランブルがかかるかわからねえし、贅沢は言ってられん。

はぁ……。

思わずため息が出る。
「元気出して?」
そんな俺を励ますように、アヤが左手をキュッと握ってくれた。
「乗れる機体が全くない訳じゃないし、アシュセイヴァーだって、修理出来ない訳ではないんでしょう?オオミヤ博士だって、最初からサジを投げてはいないんだし」
……まぁ、そうだけど。
「私たちがここでクヨクヨしたって、アシュセイヴァーもあなたの怪我もなおらないわ。機体の方は私とヴィレッタでどうにかするから、あなたは一日も早く、怪我を治す事に専念してちょうだい?」
汚れのない宝石のような瞳が、真っ直ぐに俺を見つめる。
その視線に秘められた慈愛と、そして芯の強さが、暗くなりがちな心を癒やしてくれるかのようだった。

アヤと一緒にいると、どんな時でも勇気が湧いてくる。

俺は思わず、左腕で彼女を抱き寄せた。
「大丈夫。きっと何とかなるわ」
アヤは明るい声で励まし、髪を撫でてくれる。
――そうだな、きっと何とかなるさ。
前向きな気持ちになれた俺は、感謝の気持ちを込めて口づけをした。

「ん……」
アヤは俺の両肩に手を添えると、すぐに舌を絡ませてきたのだった。

498君の夫は、もういない:2007/09/30(日) 21:33:32 ID:R87R65mj

ゼア=ウィド「来るなら来てみろ!うらぁ!」
カナード「パイロットは素人のようだな。貴様にハイペリオンを扱えると思っているのか!?」
敵兵士「う、うわああああ!!」

戦場に二人の怒号と兵士の悲鳴が響く。
オルテュギアは完全に囲まれている。
量産型ハイペリオン、グレート、ネオゲッターも一向に数が減らず、気付けば最初の五倍近くいた。

ゼア=ウィド「くそっ、きりが無い!」
バルサム「悪いな、ゼア=ウィド。こっちも任務なんでな!」
カナード「っ! エリック、避けろ!」
エリック「えっ…うわああああー!!」
バルサム「撃墜スコア三機……まだまだ行くぜ!」
クルーA「エリック少尉機撃墜を確認!また、別方向で戦闘していたスラッグ中尉も撃墜されました!」
メリオル「! あの『陽炎』スラッグ中尉が!?」
クルーA「量産型グレートのブレストバーンの一斉放火を受け溶解したとクララ少尉から…」
メリオル「これ以上の被害はまずいわ、クララ少尉を帰還させて!」
クルーB「了解。クララ少尉、戦闘行動を中止し、帰還せよ。繰り返す……」
クララ「はぁ!?冗談じゃないわよ!私はまだいけるわ!狙うは大将の首ただ一つ!」

クララはそう吐き捨て通信を切ると、ミサイルを振り撒きながらバルサムに突撃していった。
しかし、バルサムはアルミューレ・リュミエールを展開しつつビームマシンガンでクララ機を狙っていた。

バルサム「撃墜スコア四機目……いただきだぜぇ!!」
クララ「! きゃああああ!!!」
ゼア=ウィド「クララ!?」
クルーB「クララ少尉!応答せよ!クララ少尉!おい答えろよ!クララ!聞いてんのかよ!」
メリオル「落ち着いて!…これでメビウス隊は全滅。敵は恐らく無尽蔵…覚悟を決める必要がありそうね……!」

メリオルが顔を上げると、モニターにハイペリオン二号機の顔が映っていた。
ハイペリオンはビームマシンガンを構えている。照準は、オルテュギアのブリッジである。

バルサム「五機目は戦艦にすっかぁ…」
メリオル「か、回避!」
クルーA「間に合いません!」
バルサム「消し飛びな………グアッ!?」

突然ハイペリオン二号機が仰け反る。強力な竜巻によって巻き上げられたと思われる。

ゼア=ウィド「これは……デッドロンフーン……!ということは…!」

ゼア=ウィドの言葉に合わせるようにリ・ホームが現れ、その中から多数の機動兵器が飛び出した。

シャナ=ミア「ゼア!生きてる!?」
ゼア=ウィド「シャナ=ミア……」
499君の夫は、もういない:2007/09/30(日) 21:36:54 ID:R87R65mj
今日はここまでです。

>>493
ありがとうございます。

ですよねーw
多分男より辛い生き物地上に存在しませんよw

>>495-497
うおっと、マスタッシュマン乗り換えフラグ発生?楽しみにしてますよ。

以上、エリック、クララ、スラッグをもっと早く出せばよかったと後悔しているゼア=ウィドでした。
500それも名無しだ:2007/10/02(火) 16:38:42 ID:zJzK19/x
>>498
数の暴力って怖いね……(´・ω・`)
再びシャナ様と再会したけど、ゼア、ソッコーでボコられたりして……w



ところで、誰か新スレ立ててくれないかな?
オイラ携帯だから立てられないんだ……orz
501それも名無しだ:2007/10/04(木) 13:50:09 ID:TTCFuEmn
保守上げ
502番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/10/05(金) 15:34:23 ID:8+8ncWJy
二人きりの月 晩御飯日

今夜は新人くんを私の部屋に誘って、二人きりで食事。
レーツェルさんのご指導によって磨きのかかった、私の手料理をご馳走してあげた。

……とは言っても、本当は自信がないのよね。
みんなに食べてもらっても、当たり障りのない評価かお世辞しか返ってこない気がして、何となく誘いにくい。
その点新人くんは、ゼオラやレオナの手料理にもきちんとした感想を言ってるし、ちゃんとした評価をしてくれそうな気がした。

メニューは、白御飯に豚汁、肉じゃがに玉子焼き。

新人くんは手を合わせて軽く頭を下げてから、食べ始めた。
ちゃんと「いただきます」をするなんて、結構お行儀が良いのね……それに、凄く嬉しそうにパクパク食べて、何だか見てるこっちも嬉しくなっちゃう。
目の前でひたむきに料理を食べる新人くんは、戦場での荒々しさや激しさがすっかり影を潜めて、まるで子供みたいで、私は何だか微笑ましくなった。

肉じゃがも豚汁も、おかわりはあるから、遠慮しないで食べてね?
「うん……あ、いや……ありがとうございます、大尉」
慌てて言い直す様子がおかしくて、つい笑ってしまう。
「すいません……何か、家に帰ってきたような気分になっちまって……」
新人くんはバツの悪そうな顔で、謝ってくる。
ううん、気にしないで。
今の、ちょっと可愛かったし。
からかい半分に言うと、新人くんはいきなり豚汁をかきこみ出す。
「すいません、おかわりお願いします」
お椀を差し出す新人くんは、頬がちょっと赤くなっていた。

――豚汁を二杯、肉じゃがを三杯おかわりして、新人くんは満足したみたい。
食べ始めと同じように、手を合わせて無言で頭を下げる、おとなしい「ごちそうさま」だった。

お粗末様でした。
どうだった?今後の参考にしたいから、正直に言ってちょうだい?
「凄く美味かったです……ただ、肉じゃがは、イモをもうちょっと柔らかくしたのが、俺は好きですね」
思った通り、彼は具体的な評価を返してくれた。
503番外編「アヤ・コバヤシの日記」:2007/10/05(金) 15:37:22 ID:8+8ncWJy
>>502
もっと色々聞きたくて、私は思いきって尋ねてみる。

あなたのお母様は、どんな料理を作ってたの?

――ご家族の事は知ってるけど、悲しい死別より、楽しかった思い出を振り返るきっかけになれば……という計算もあった。

新人くんは、一瞬暗い顔になったけど、すぐに話し始めた。
「お袋は……俺の弁当には、いっつも玉子焼きを入れてくれました。ちょっと甘い味付けだったけど、凄く好きでした」
話し出すと、とても穏やかな顔へと変わっていった。
「それに、いっつもいろんな具を入れるんです。細かく切ったキャベツだったり、カニかまだったり、ヒジキだったり……チーズが入ってた時もありました。
おかげで、姉貴も真似をして、いろんな具の入った玉子焼きを俺に食わせたもんです。チョコレート入りの玉子焼きを食わされた時は、ちょっと泣きたくなったけど」
……大変ユニークなお姉様だったのね。
さすがに笑うしかなかった。

「でも、もし出来るならもう一回くらいは食ってやっても良いかな……姉ちゃんのチョコレート入り玉子焼き……」
かすかに声が震えていた。

ごめんなさい、辛い事を思い出させてしまったわね……。
謝りながら、テーブル越しに手を握ってあげる。
「いえ……大尉のおかげで、久しぶりに楽しかった時の事を思い出せた気がします……」
彼はそう言って笑ってくれた。
「それに、大尉の手料理が食えて、本当に嬉しかったです」
そう答えて、手を握り返してくれた。

――それから、しばらくの間あれこれお喋りをして、就寝のきっかり一時間前に、彼は自分の部屋へと戻った。
最後に、彼はおずおずと尋ねてきた。
「その……大尉の気が向いた時で良いです。また、料理食わせてもらえますか?」
ええ、もちろんよ。
私は明るく答える。
今度はもっと美味しいものを食べさせてあげるわ。期待しててね?
「ありがとうございます、大尉」
彼は嬉しそうに答え、部屋を出て行った。
あんな子供みたいな明るい笑顔は、初めてかも……。

何故か私まで、口元がにやけてくる。
何だろう?
何で私、こんなに喜んでるんだろう?

自分でもよくわからなくて、モヤモヤするものがあるにはあるけど……でも、何となく幸せな気持ちで、私は少し早めにベッドに入ったのだった。
504それも名無しだ:2007/10/06(土) 12:30:23 ID:70Di7V74
コクピット内でコンパネに目を走らせ、手早く機体のコンディションをチェックする。
ソウルゲインは全く問題ない。いつでも戦える状態にあった。

俺は右拳をググッと握り締める。
二の腕に、鈍い痛みが走った。
最初、痛み止めの注射を打とうかとも思ったが、それで右腕の感覚が鈍るのは良くないと思い、結局打たなかった。
その代わり、包帯をグルングルンに巻いてガッチリ固めてある。一回の戦闘の間くらいは、保ってくれるだろう。

だいたい、こうしてる間も、SRX組のみんなが、基地に襲撃をかけてきたDC残党と戦ってるんだ。
なのに、この程度の怪我でおとなしくお留守番してられるほど、俺は聞き分けは良くないぜ。

俺は自分を鼓舞するように、うっしゃあ!と吠え、ソウルゲインと共に格納庫の外へと躍り出た。

外では、リオンシリーズの大安売りだった。
各種リオンが、SRX組を始めとする迎撃部隊を相手に、空と地上でドンパチやらかしてやがる。
テメー等、いつまでも調子に乗ってんなよ!
俺は上空のリオン部隊目掛けて、突撃をかけた。

両手に意識を集中させる。
機体の両手が青白い光を帯び始める。
エネルギーが充分に高まったところで、俺はリオン部隊へとそのエネルギーを放射した。

吠えろ!青龍鱗!

両手から放たれた二条の閃光が、見事にリオンに命中した。
まずは二機!

次いで、ソウルゲインの両の二の腕を、螺旋回転させながら発射する。

撃ち抜け!玄武剛弾!

撃ち出された二の腕は巨大な弾丸となって、リオン三機とバレリオン二機を撃墜する。
この武器、思ってたより、射程と貫通力があるな。
機体の空戦能力も、格闘戦に特化したとは思えないくらい高い……結構使えるじゃねーか。

それに、ダイレクト・フィードバック・システムのせいか、機体との一体感が俺の全身を心地良く包み込んでいる。
胸の奥から久しぶりに、燃えるような高揚感が湧き上がる。
戦闘機に初めて乗った時や、戦場で初めて敵を撃墜した時の、あの感覚……これならイケるぜ!

俺はソウルゲインと共に、また別の敵群へと飛びかかっていった。

505それも名無しだ:2007/10/06(土) 12:32:38 ID:70Di7V74
>>504
十機目のリオンをパンチで撃ち落とした時、R−3パワードが機体を寄せて来た。
アヤから通信が入る。
『やっぱりあなたね!戦い方を見てすぐにわかったわ!』
あの……なんで怒ってんの?
『当たり前でしょう!怪我も治らないうちから、もう無茶ばっかりして!後でお説教よ!』
へいへい。んじゃあ大尉殿のお説教を受けるためにも、チャッチャとDC残党の皆さんにはご退場願おうかね。
そう返した直後、レーダーに反応。
バレリオンが、ビッグヘッド・レールガンをこちらに向けていた。

――やべぇ!

瞬間、ソウルゲインは両腕でコクピットをかばいつつ、R−3パワードの前に出る。

強烈な衝撃が走った。

が、俺もアヤも無事だ。

『念動集中……ストライクシールド発射!』
ソウルゲインの巨体をブラインドに、R−3パワードがストライクシールドでバレリオンを撃ち落とした。
『大丈夫!?』
ああ、ちょいと揺れたが、どうって事はねえ。
ソウルゲインをぶち抜くには、まだまだ火力不足だったようだな。
『良かった……その機体はひょっとして、本当に相性バッチリなのかもね。すぐに突っ込む誰かさんとは』
そう言って、アヤは通信画面越しに笑ってくれた。

アヤに他の連中の援護を頼み、俺は再び敵群に突撃をかける。
俺が暴れ回って敵を引きつければ、それだけ仲間の負担も減る。
これはこれで、チームのバックアップになる筈だ。

そーいえばSRX組に配属されたばかりの頃も、改造したゲシュペンストで突撃かけて囮になってたっけ。

ふとそんな事を思い出した瞬間、巨大な影が突っ込んできた。

かろうじてかわす。

敵は、全長50メートルは越えてる、巨大な騎士だった。
複数のガーリオンを継ぎ接ぎしたような巨体に、鎧のような装甲。
手にはランスと盾。

そいつはそのランスで俺を指差した。
どうやら一騎打ちをお望みらしい。
上等だ!やってやるぜ!
俺はソウルゲインに拳を握らせて接近、右ストレートを打ち込んだ。

が、盾に防がれる。
――何か、感触が変だぞ?
違和感を覚えつつも、次いで二打、三打と拳撃を打ち込む。

理由がわかった。
拳が盾に届いてねえ。
盾の手前で、見えない力場に止められている。

ナイトリオン(仮名)が、ランスを突き出した。
左の裏拳ではねのけるが、これもランスその物には届いてなかった。

506それも名無しだ:2007/10/06(土) 12:34:53 ID:70Di7V74
>>505
よく見ると、敵の両肩は、ガーリオンの胴体部分を使って構成してある。
それで、ピンときた。
こいつ、両肩にもテスラ・ドライブを積んでやがるな。
そこから発生させるブレイク・フィールドで、ランスと盾を補強してやがるのか。

右腕がズキズキと痛み出してきた。
生半可な攻撃は効かない事もわかったし、いつまでも遊んではいられねえ。サッサと終わらせるか!

――ソウルゲイン、フルドライブ!

音声入力で、ソウルゲインに施されていたリミッターを解除する。
両拳にエネルギーをまとわせて、俺はナイトリオン(仮名)に接近した。

でぇい!

敵は盾で防御するが、俺は構わず拳打を打ち込む。
一発、二発、三発……両腕をブンブン振り回して、最大パワーでラッシュをかける。
盾と、それを補強するブレイク・フィールドを打ち抜くまで、ひたすらぶん殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る!!!!

うぉぉぉぉぉっ!

知らず、コクピットの中で吠えていた。
右腕の痛みもどこかへぶっ飛んでいた。

不意に、今までとは違う、硬い手応え。
ブレイク・フィールドをぶち抜いて、盾を直接ぶっ叩いたのだ。
更に連打を打ち込むと、衝撃に耐えきれなくなったのか、ナイトリオン(仮名)の左腕が盾ごと吹っ飛んだ。

でやぁっ!

がら空きになった胴体に、エネルギーをまとった双掌打「白虎咬」を打ち込む。
ナイトリオン(仮名)は派手に吹っ飛んだ。
が、すぐに体勢を立て直し、ランスを前に突き出す。
その先端に、目に見えるほど強力なブレイク・フィールドをまとう。

真っ向勝負だ!コード・麒麟!

ソウルゲインは顔の前で交差した両腕を、大きく後ろへ引く。
エルボーブレードが最大限に伸び、そこに青白い炎を宿す。

ナイトリオン(仮名)が、ランスを突き出して突撃してくる。
俺も迎え撃つように突撃した。

でぃぃぃいいぃぃいやっ!!!!!!

雄叫びを上げ、エルボーブレードで横薙ぎに斬りつける。
ナイトリオン(仮名)のランスが右肩をかすめた。
ブレイク・フィールドに巻き込まれて、肩周りの装甲が派手に吹っ飛ぶ。

だが、ソウルゲインのエルボーブレードは、ナイトリオン(仮名)の胴体を見事真っ二つに両断していた。

ナイトリオン(仮名)はそのまま、二つに別れて海岸の方へと落下していった。

507それも名無しだ:2007/10/06(土) 12:37:00 ID:70Di7V74
>>506
ベッドに腰掛けたアヤの白いたおやかな手が、床に正座している俺の頬をムニ〜ッと引っ張る。
そして、上下にムニムニと引っ張り、パッと離す。

次にアヤは、鼻を思いっきりつまんでくる。
前後にガクガクと動かして、突き放すように指を離した。

――大変申し訳ありませんでした、アヤ様。

謝る俺の右腕は、三角巾で吊られている。
医者に見てもらったら、あの戦闘で、右腕の骨のヒビが更に広がったらしい。
という訳で、ヴィレッタの姐さん直々に、怪我が治るまで出撃禁止の命令をくらっちまった。
こんな阿呆らしい命令されるのって、俺だけだろうなぁ……。

おかげで我が麗しの君もすっかりご機嫌斜めだ。

「反省してる?」
はい、心から。
「――あなたは誰のもの?」
はい、アヤ様のものでございます。
「――あなたの役目は何だったかしら?」
はい、アヤ様を守る事でございます。
「――で、そんな状態で、どうやって私を守るつもりなのかしらねえ?」
……ひたすら申し訳ありません。
もうとにかく謝るしかなかった。
「あなたは私のもの……心も体も、全て私のもの……だから、私の許可もなしに怪我をする事も、ましてや死ぬ事なんて、絶対に許されない事なのよ?」
俺の髪を撫でながら、アヤは小さな子供に言い聞かせるように、語りかける。

ベッドから下りて膝立ちになり、俺をキュッと優しく抱き締める。
「お願いだから、心配させないで……」
優しい声だった。
深い愛情のこもった声だった。
アヤの体は暖かくて、抱き締める腕は、俺をこの世のあらゆる残酷さから守るかのように、力強かった。

ふと、お袋の事を思い出す。
小さい頃、俺が怪我して帰って来る度に、お袋は真っ青な顔になった。
手当てをしてくれた後、今のアヤのように俺を抱き締めて、
「お願いだから、お母さんに心配させないで……」
と、泣きそうな声で言っていた。

――本当にごめん、アヤ。
俺は左手で、アヤの髪を撫でる。
俺、もう怪我しないから、泣かないで。
あの時お袋に言ったのと同じ返事を、アヤにも返す。
「泣いてなんかないわよ――馬鹿」
アヤは震える声で答えながら、更に強く俺を抱き締める。
俺はそんなアヤの背中を、優しくさすってやるのだった。

508君の夫は、もういない:2007/10/07(日) 21:02:43 ID:haSm8xfU

ゼア=ウィド「シャナ=ミア……」
宗介「無事か、ゼア=ウィド?」
ヒギンズ「無茶しないでくださいね、私達がついているんですから」
耐爬「そうとも。お前が死んで泣く人間がいることを覚えておけよ」
ゼア=ウィド「お前ら……」

かつての仲間から通信がいくつも入ってくる。
ゼア=ウィドにはその頃の記憶はない。しかし、ゼア=ウィドはこう呟いた。

ゼア=ウィド「……すまない」
ロウ「おっ!あいつぁハイペリオンの量産型か!」
劾「ここまで量産されているとはな。裏でどこかと手を組んだか」
プレア「カナードさん!」
カナード「プレアか……安心しろ。俺はもうキラ・ヤマトは狙わん」
プレア「え…?」
カナード「あいつを見ていると、キラ・ヤマトに固執していた自分が馬鹿らしくなってな」
プレア「カナードさん……!」
バルサム「がぁぁぁぁぁ!!!」

突然、バルサムがフォルファントリーやビームマシンガンを乱射しながら飛び込んできた。

バルサム「どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも俺を俺をこのアルテミスススススの荒ら鷲をを
      こけにしししししやがってぇぇぇぇぇ!!!潰す!徹底的決定的圧倒的に皆殺し潰すぅぅぅ!!!!」
ゼア=ウィド「なんだ!?動きが今までのバルサムとはまるで別人じゃないか!」
カナード「それに言ってることが支離滅裂だぞ!」
劾「……もしや、ゲイム・システムか!?だとするとバックの組織はDC……!?」
ロウ「世も末だな。連合の一部がDCと手ぇ組むなんざ」

二人はそう言いつつガーベラストレートとタクティカルアームズを構える。
そして各々オルテュギア周辺の敵機を破壊していく。ふと、ゼア=ウィドの手が止まった。

ゼア=ウィド「…………」
カナード「どうした、ゼア=ウィド?」
ゼア=ウィド「カナード……ここは頼んだ」
カナード「は?頼んだって……っておい!ゼア=ウィド!」

ゼア=ウィドはそう言ってアルテミスの方向へ向かっていった。

シャナ=ミア「待って、ゼア!耐爬さん、宗介さん、ヒギンズさん。ここは頼みます!」
耐爬「任せろ!」

ゼア=ウィドを追い、シャナ=ミアもアルテミスへ向かう。

オルガ「…………あの野郎、まさか!?おいイライジャっつったな!余ってるMSねえか!?」
イライジャ「あ、バスターソード整備中の俺のジンならあるけど……」
オルガ「それでいい!借りるぞ!」
イライジャ「お、おいちょっと待てよ!」

そしてオルガもジンでアルテミスを目指す。
509君の夫は、もういない:2007/10/07(日) 21:23:37 ID:haSm8xfU

ガルシア「……もしやゼア=ウィドめ、ここまで突っ込んでくる気か!?
     ……ふん。だが、残念だったな。このアルテミスの傘がある限り、貴様は私に指一本……」
兵士「司令!未確認の機動兵器が一機接近しています!ありえない速度です!」
ガルシア「放っておけ。速いだけではこのアルテミスの傘は……」

ガルシアが言い終える前に要塞全体が大きく揺れた。

ガルシア「何だ!何が起こった!」
兵士「あ、アンノウンがアルテミスの傘出力装置を破壊しました!」
ガルシア「馬鹿な!傘が破られたとでも言うのか!?」
兵士「いえ、アンノウン周辺にボース粒子の増大を確認!ボソンジャンプです!」
ガルシア「な、何ィ!?」

モニターには、不敵に佇む黒い機体が映っていた。

???「…………」
兵士「アンノウン周辺、再びボース粒子増大!ロストします!」
ガルシア「ぐぬう……許さん!ゼア=ウィドを殺した後で奴も地獄に葬ってくれる!」
兵士「司令!先ほどの三機がダメージ箇所から侵入しました!」
ガルシア「兵士を向かわせろ!三人まとめて始末しろ!」
兵士「はっ!」

バルサム「荒鷲ししししをなめるるるるとなぁぁぁぁ!!!こえぇええぇんだぜぇえええええ!!!!」

バルサムが狂い叫びつつナイフを投げ続け、耐爬はそれを辛うじてかわしつづける。

耐爬「くっ!最早避けるだけで精一杯か……!」
宗介「こんなことならかなめに遺言でも残しておけばよかったか……」
ヒギンズ「縁起でもないことを言わないで!なんとかここを突破しなきゃ!」
ガルシア「ひっひはははぁっぁあ!!!背ぇ中がががががら空きだっぜぇえぇぇぇっぇぇええ!!?」
耐爬「!!」
宗介「!」
ヒギンズ「!?」

そのとき、宗介とヒギンズは信じられない、いや、信じたくない光景を目にし、また耐爬はその
信じたくない瞬間を実際に体験していた。
バルサムのナイフが、ランスターの胴体に深々と突き刺さっていた。
510それも名無しだ:2007/10/10(水) 14:44:55 ID:YlAGAmaX
保守
511それも名無しだ:2007/10/11(木) 12:52:19 ID:gCmFFOxI
J世界なのにDCってありかなーとふと思った。
黒い機体はブラックサレナか?

続きが楽しみな不死身の男でした('-^*)/
512それも名無しだ:2007/10/14(日) 15:50:42 ID:eVzikIib
保守
513それも名無しだ:2007/10/17(水) 14:31:09 ID:FF2r99Av
俺の新しい機体が完成した。
テスラ・ドライブを標準装備したRPT-007TDに装甲強化を施した、ゲシュペンストMk-Uアサルトカスタム。
基本的には、SRX組に転属される前に乗ってた機体とほぼ同じ仕様だ。
当時の機体は、ブースターを増設して、機動力を無理矢理引き上げてたもんだ(おかげで燃費が悪かったが)。
だが、この新しい機体はテスラ・ドライブのおかげで、重装甲化しても尚、通常の機体よりも機動性が高い。
とにかく高機動の機体をという俺の注文と、なるべく防御力の高い機体をというアヤの注文に対する、オオミヤ博士の答えだった。

「武装の方も、注文通りにしておいた。後でチェックしておいてくれ」
後でと言わず、今やりますよ。いつスクランブルがかかるかわからねーし。
オオミヤ博士にそう答えて、俺はコクピットに乗り込む。
システムを立ち上げ、武装一覧を開く。
M950マシンガンが二丁。
スプリットミサイルが四基。
プラズマカッターにジェットマグナム。
これも昔の機体と同じだ。

右腕の怪我も完治したし、不謹慎ではあるが、コイツに乗って出撃するのがちょっと楽しみになってくる俺だった。

514それも名無しだ:2007/10/17(水) 14:33:22 ID:FF2r99Av
>>513
「やっぱりここにいたのね」
その他の項目もチェックしていると、アヤがやって来た。
「まったく、新しい機体が出来たって聞いた途端、もういなくなるんだから……!」
アヤは呆れ顔で、コクピットに入ってくる。
「そもそも、どうしてソウルゲインに乗らないの?あなたも気に入ってたじゃない」
いや、確かに悪くはないんだが……あんなどこかの星の戦闘民族みたいな戦い方してたんじゃあ、ぶっちゃけ俺の身が保たん。
やっぱ俺には、PTの方が合ってるよ。
「あなたがそう言うのなら、私は構わないけど……この機体、防御力は大丈夫なの?」
ああ、耐久性は通常の二割増しだとさ。
「なら良いんだけど。あなたはすぐに突っ込んでいくから、本当に心配なのよ?」
だから、わざわざ防御力の高い機体をリクエストしてくれたのか。
ありがとう、アヤ。
このアサルトカスタムで、これからもアヤのために頑張るよ。
「私は、あなたが無事でいてくれたらそれで良い……それだけで良いの……」
アヤはそう答えて、子猫のようにすり寄ってくる。

俺はそんなアヤの髪を撫でてやり、そして、ゆっくりと口づけをしてやった。
彼女を安心させるように、そして、俺への純粋な想いに応えるように。

515それも名無しだ:2007/10/23(火) 14:16:54 ID:rF+BO71L
あげあげ
516それも名無しだ:2007/10/23(火) 14:35:57 ID:HvHLdoAl
その時、イデは発動した
517それも名無しだ:2007/10/28(日) 16:36:22 ID:WWkMu8ug
俺は格納庫で、ビルトビルガーを眺めていた。

ジャケットアーマーを装着して防御力を高めつつ、テスラ・ドライブによる高機動化を実現した機体。
――意外と俺向きの機体かも知れんな。

「そうっスね〜。何か少尉って、突撃戦とか得意な印象ッスからね。どんだけ攻撃くらおうが絶対殺す!みたいな」
人をアブねー奴みたいに言うな。
いつの間にか隣に来ていたアラドの頭に、俺は軽く拳骨をくらわした。
「いって〜……でも実際そうじゃないッスか。ずっと前だって、ソウルゲインでキョウスケ中尉のリーゼと戦った時、攻撃くらいながら突進して投げ飛ばしたでしょ?」
エクセレンの姐さんの横槍がなかったら、俺が負けてたがな。
思い出して、ちょっと複雑な気分になる。

「でも、少尉の方がビルガーを使いこなせると思いますよ〜。誰かさんよりは」
そこへゼオラもやって来る。
「……何でだよ。俺だって接近戦は得意だぜ?」
「あなたのはただ突っ込んでるだけでしょ?操縦だって、突撃ボタンと攻撃ボタンの二つだけあれば事足りそうだし」
「そういうお前は、実弾ボタンとビームボタンさえありゃ充分だよな」
「失礼ね!私はあなたと違っていろいろ考えて戦ってるのよ!」
――お前等、痴話喧嘩ならよそでやれ。
「し、失礼しました!」
「すんませんでした……」
俺が少し強い口調で言うと、二人はすぐに謝った。

「まぁ、それはそれとして……実際乗ってみたらどうですか?確かもう一機、マオ社に保管されてる筈ですし」
そうなのか?
「あそこは試作機は二機作って、形式番号にもLとRを付けてるんです。アラドが乗ってるのはR型ですから、L型がある筈ですよ」
518それも名無しだ
>>517
「ファルケンにもL型があって、あれは赤く塗られてたんスよね。異星人にぶっ壊されたけど」
んじゃ、ビルトビルガーのL型も赤く塗られてんのか。
……想像すると、なかなか格好良さげだ。ちょっと興味が湧いてくる。
乗りたいっつって乗れたら、苦労はしねーがな。

せっかく赤く塗られてんなら、もうちょいアレンジして、アルトアイゼンと同じ色にしてみるのも良いかもな。
だいぶ有名になってるっぽいし、示威効果くらいはあるだろ。
「じい……?」
ポツリとゼオラがつぶやく。
直後、かかと落としが稲妻の如く、俺の脳天に叩き込まれた。
「せ、セクハラですよ少尉!こんな昼間から女の子の前で『じい』だなんて!」
そっちじゃねえ!
「威」を「示」すと書いて示威だ!戦闘中に「自」らで「慰」める奴なんぞいるか!
つーかいい加減、人の台詞を勝手にセクハラ認定すんのはやめろ!その後の武力行使は尚更だ!
「ゔ……ご、ごめんなさぁぁぁい!」
ゼオラは自分の勘違いを指摘されて、真っ赤になって逃げ出した。

たく、あのオッパイ娘にゃ本当に困ったもんだ……。
「すんません、本当にすんません」
ペコペコ謝るアラド。

カイ少佐の心労を思い、俺はため息をついた。