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名無しくん、、、好きです。。。:
・参加者一覧
3/3【THE IDOLM@STER】
○高槻やよい/○菊地真/○如月千早
4/5【アカイイト】
○羽籐桂/○千羽烏月/○浅間サクヤ/●若杉葛/○ユメイ
5/5【あやかしびと −幻妖異聞録−】
○如月双七/○一乃谷刀子・一乃谷愁厳/○アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ/○九鬼耀鋼 /○加藤虎太郎
5/5【機神咆哮デモンベイン】
○大十字九郎/○アル・アジフ/●ウィンフィールド/○ドクター・ウェスト/○ティトゥス
2/4【CLANNAD】
●岡崎朋也/●古河渚/○藤林杏/●古河秋生
4/4【CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
○黒須太一/○支倉曜子/○山辺美希/○佐倉霧
2/2【極上生徒会】
○蘭堂りの/○神宮司奏
3/4【シンフォニック=レイン】
○クリス・ヴェルティン/○トルティニタ・フィーネ/○ファルシータ・フォーセット/●リセルシア・チェザリーニ
4/4【School Days L×H】
○伊藤誠/○桂言葉/○西園寺世界/○清浦刹那
1/2【Strawberry Panic!】
●蒼井渚砂/○源千華留
4/6【つよきす -Mighty Heart-】
●対馬レオ/○鉄乙女/○椰子なごみ/○鮫氷新一/●伊達スバル/○橘平蔵
2/3【To Heart2】
○柚原このみ/●小牧愛佳/●向坂雄二
3/3【Phantom -PHANTOM OF INFERNO-】
○アイン/○ドライ/○吾妻玲二
3/4【Fate/stay night[Realta Nua]】
○衛宮士郎/●間桐桜/○葛木宗一郎/○真アサシン
4/4【舞-HiME 運命の系統樹】
○玖我なつき/○深優・グリーア/○杉浦碧/○藤乃静留
5/6【リトルバスターズ!】
○直枝理樹/○棗鈴/○来ヶ谷唯湖/○棗恭介/●宮沢謙吾/○井ノ原真人
【残り51/64名】
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
勝者のみ元の世界に帰ることができる。
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
「地図」 → 舞台である島の地図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
【禁止エリアについて】
放送から2時間後、4時間後に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。
【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。
【舞台】
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/ed/c29ff62d77e5c1acf3d5bc1024fe13f6.png 【作中での時間表記】(0時スタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述する。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。
【首輪】
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。
【デイパック】
魔法のデイパックであるため、支給品がもの凄く大きかったりしても質量を無視して無限に入れることができる。
そこらの石や町で集めた雑貨、形見なども同様に入れることができる。
ただし水・土など不定形のもの、建物や大木など常識はずれのもの、参加者は入らない。
【支給品】
参加作品か、もしくは現実のアイテムの中から選ばれた1〜3つのアイテム。
基本的に通常以上の力を持つものは能力制限がかかり、あまりに強力なアイテムは制限が難しいため出すべきではない。
また、自分の意思を持ち自立行動ができるものはただの参加者の水増しにしかならないので支給品にするのは禁止。
【能力制限】
ユメイの幽体問題→オハシラサマ状態で参戦、不思議パワーで受肉+霊体化禁止
ユメイの回復能力→効果減
舞-HiME勢のエレメントとチャイルド→チャイルド×エレメント○
NYP→非殺傷兵器で物理的破壊力も弱い
ただし、超人、一般人問わず一定のダメージを食らう
NYPパワーを持ってるキャラはその場のノリで決める
リセとクリスの魔力→楽器の魔力消費を微小にする、感情に左右されるのはあくまで威力だけ
ティトゥスの武器召喚→禁止あるいは魔力消費増
士郎の投影→魔力消費増
アルの武器召喚→ニトクリスの鏡とアトラック・ナチャ以外の武器は無し。
または使用不可。バルザイの偃月刀、イタクァ&クトゥグア、ロイガー&ツァールは支給品扱い
またはアル自身、ページを欠落させて参戦
または本人とは別に魔導書アル・アジフを支給品に。本の所持者によってアルの状態が変わる
武器召喚全般→高威力なら制限&初期支給品マイナス1&初期支給品に武器なし
ハサンの妄想心音→使用は不可、または消費大、連発不可。または射程を短くする
ハサンの気配遮断→効果減
虎太郎先生の石化能力→相手を石にできるのは掴んでいる間だけ
その他、ロワの進行に著しく悪影響を及ぼす能力は制限されている可能性があります
【予約について】
書き手は事前に書きたいキャラを予約し、その予約期間中そのキャラを使った話を投下する義務がある。
予約無しの投下は不可。
予約期間は3日間(72時間)で、その期間を過ぎても投下がなかった場合、その予約は無効となり予約キャラはフリーの状態になる。
但し3作以上採用された書き手は、2日間の延長を申請出来る。
また、5作以上採用された書き手は、予約時に予め5日間と申請することが出来る。
この場合、申請すれば更に1日の延長が可能となる。(予め5日間と申請した場合のみ。3日+2日+1日というのは不可)
期限を過ぎた後に同じ書き手が同じキャラを予約することはできない。(期限が六日、九日と延びてしまう為)
予約の際は個人識別、騙り防止のためにトリップをつけて、 したらばで宣言すること。
投下の際には予約スレで投下宣言すること。
死んだ後の世界なんて嘘っぱち。
先に逝ったはずの弟の影すらありはしない。
父も母もいなければ、鈴もいない。言葉もいない。
パートナーの春香もいなければ、プロデューサーもいない。
そして、歌うことすら出来はしない。
信じるものは救われる。
ならば、信じないものは救われないのだ、絶対に。
自分が言葉を信じなかったからなのか。
ないないづくしで何故か笑えてしまう。
「……っ、…………!」
息ではなく、単なる空気の流れでしかないそれを風穴に通しながら。
それでも千早は――――笑った。
狂った、狂いきった笑みで。
焼け爛れ、目も鼻も潰れ、血に塗れた髪の毛を乱しながら。
――――とうとう狂ったセカイに身を委ね、動かなくなった。
しばし後、鴉が舞い降り――――、彼女の体を啄ばみ始めても。
もう二度と動き始めることは無かった。
【如月千早@THE IDOLM@STER 死亡】
※千早の死体はD-3北部森林地帯に放置されています。
※千早の死体は顔が焼けて鼻が潰れている為、服装以外での判別は難しい状態です。
※D-3北部を中心として爆発音が響き渡りました
◇ ◇ ◇
「……爆発音? この音は……」
脳内の爆発物の情報と今聞いた轟音を照合、プラスチック爆弾と判定する。
何か使う事もあろうかと、試射の前に採石場で収集したダイナマイト。
明らかにそれとは別種の爆発物だ。
何か交戦があったのか、建物を破壊でもしたのか。
次にどこに向かうべきか迷っていたツヴァイにとってこれはいい判断材料だと言える。
爆発地点には人が集まるだろう。
早めにその場へ向かい、それなりに距離を置いた高所を確保。
そうすればのこのこ向かってくる連中の一人は仕留められるだろう。
もちろん彼自身は爆発地点そのものには近づかず、狙撃のみ行なった後離脱するのだ。
反面、接敵するリスクを考えると即座にここを離れたほうがいいかもしれないとも考える。
いずれにせよ行動は早い方がいい。
この近辺には居たくない。
自身の狙撃を回避したあの少女が不気味でもあったし、何よりただただ、不快感と罪悪感のみが湧き続ける。
正しいのか否かなんて事は分かりきっている。
しかし、それでも選択に後悔する暇はない。
自身の目的を推し進める、それだけだ。
キャルを救うと言う、たった一つの希望のために。
そして、希望はもう一つある。
放送で主催者の告げた死者蘇生の可能性。
正気の沙汰ではないとはいえ、それが本当ならばアインが生きている理由には十分だ。
仮にキャルがここで死んでしまっても、生き返らせることができるのではないか。
……失笑するも、その考えが脳裏から離れない。
一般人の少女を殺害したその気持ち悪さを押さえ込みながら。
――――吾妻玲二は、合理的な思考だけを頼りに次の行動を決断した。
彼の向かう先には――――、今もなお、黒い鳥が舞い続けている。
【C-4中央/採石場の北東近辺/1日目/午前〜昼】
【吾妻玲二(ツヴァイ)@PHANTOM OF INFERNO】
【装備】:コルトM16A2(11/20)@Phantom-PHANTOM OF INFERNO-、スナイパースコープ(M16に取り付けられている、夜間用電池残量30時間)@現実
【所持品】:支給品一式×3。コンバットナイフ、レザーソー@School Days L×H、おにぎりx30、野球道具一式(18人分、バット2本喪失)コンポジットボウ(2/20)、コルト・ローマンの予備弾(21/36) 、ダイナマイト@現実×10
【状態】:疲労(大)、右手に小さな蚯蚓腫れ、右腕の骨にヒビ、頭部から出血
【思考・行動】
基本:キャルを見つけ出して保護する。不要な交戦は避け、狙撃で安全かつ確実に敵を仕留める。
0:……爆発音? C系列か?
1:爆発音の方へ行って集まる人間を狙撃するか、もしくはこの場から離れるかを考える。
2:アインはなるべく敵にしない。 主催者が本当に蘇生能力を持っているのか問いただす。
3:周囲に人がいなければ、狙撃した参加者の死体から武器を奪う。
4:弾薬の消費は最低限にし、出来る限り1発で確実に仕留める。
【備考】
※身体に微妙な違和感を感じています。
※アインが生きていることに疑問。
※時間軸はキャルBADENDです。
※真アサシン(外見のみ)を強く警戒しています。
※理樹を女だと勘違いしてます。
※静留を警戒しています
※言葉(外観のみ把握)を警戒しています。
※M16A2の癖を完全に把握しました。外的要因がない限り、狙撃の精度は極めて高いものです。
※玲二がどこに行くかは次の書き手氏に任せます。
※ダイナマイトは採石場で調達したものです。
【スナイパースコープ@現実】
銃本体に装着する狙撃用のスコープ。
低倍率モードと高倍率モードを切り替えられる上、電池式の夜間用暗視機能も着いている。
暗視機能の持続時間は連続使用でおよそ30時間。
低倍率モードは望遠鏡代わりにもなる為、索敵などにも使用出来る。
◇ ◇ ◇
「……この音」
――――爆発音は、当然彼女達の元にも届く。
言葉はその音を聞いただけで何が起こったかを察し、即座に思考を巡らせる。
襲撃者に対処すべきか、この爆発音の方に向かうべきか。
前者なら誠の身を守ることに繋がるし、後者なら誠が音を聞きつけて来るかもしれない。
……さて、どちらを選ぶべきか。
または第三の選択肢として――――、
「……あの女の臭いがする」
爆発地点の北から漂ってくる、アレの気配を追うべきか。
もはや人と呼ぶのもおこがましいその存在を肉の一片血の一滴までも抹消する為に動くか。
……それが問題だ。
ふと鈴を見る。
と、彼女は爆発音に対して異常な反応を見せていた。
そう、あたかもそれが親の仇であるかのように。
「……せつな。せつな。せつな。せつな。
せつなせつなせつなせつなせつなせつなせつなせつな。
コロサナキャ、コロサナキャ、コロサナキャ。
……殺さなきゃ」
虚ろな目で鈴はただ呟き続ける。
それも当然だ。
あまりにも聞き覚えのある爆発音。
光るカレーのその光景を、桜が腹を吹き飛ばされたときのその音を、鈴は明確に覚えているのだから。
……しかし、彼女に残る理性の欠片が即座にその場に向かうことを押し留めた。
先刻から、彼女は心配していたのだ。
いつの間にか姿を消した友人の行く先に。
「……ちはや、どこに行ったんだ? 何で何も言わずにいなくなったんだ!?」
混乱する。ただ混乱し――――、悲しそうな顔をする。
彼女には理解できない。
自分たちが正しいと思って行なった行動が、千早に何をもたらしたのかを。
なぜなら既に鈴は、狂ったセカイに飲み込まれてしまったのだから。
少女二人が顔を合わせ、思考する。
未だ鴉に埋め尽くされたままの空の下。
仲間だった少女の成れの果てすら知らないまま。
不吉と狂気に魅入られた少女二人は、己らの行く先を何処に見据えるかを決めかねて立ち尽くす。
――――ただ、立ち尽くす。
【C-4/採石場南西部/1日目/午前〜昼】
【桂言葉@School Days L×H】
【装備】:小鳥丸@あやかしびと−幻妖異聞録−、アーチャーの騎士服@Fate/stay night[Realta Nua]、ハンドブレーカー(電源残量5時間半)@現実
【所持品】:支給品一式×2、Love&Spanner@CLANNAD、、ニューナンブM60(1/5)、ニューナンブM60の予備弾15発、他不明支給品×1(言葉の分)、首輪(杏)
【状態】:健康。言葉様に覚醒中(異常に勘が冴える) 、手が血塗れ
【思考・行動】
基本方針:西園寺世界を最大の苦痛とともに殺す。誠と共に島を脱出する、もしくは二人だけでこの島でずっと一緒に暮らす。主催の万能の力を手に入れる。
0:誠くん、誠くん、誠くん。ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずー……っと、一緒ですよ……。
1:伊藤誠を探す。ずっと一緒に行動。
2:世界の臭いのする西部、爆発音のした南西部、襲撃者の気配のする北東部の何処に行くかを考える。千早も探す。
3:情報収集して移動。誠を探す為に対主催陣と同盟を組む。最終的には殺す。
4:利用出来る人間は利用して、襲撃者や足手纏いは容赦無く排除。ただしリスクは考慮。
5:ただし、利用できる人間や高リスクな相手でも誠を誘惑するそぶりを見せれば即排除。
6:大切な人を失った人間に対しては寛大に接し、自らの持論を説いて仲間に引き入れるつもり。拒否すれば殺す。
7:ただし足手まといになるようなら殺す。
8:千早と鈴に同行、鈴をサポート。千早が鈴を裏切るそぶりを見せたら千早を殺す。
9:千羽烏月を警戒。
10:椰子なごみを自分が生き返ったことのメッセンジャーとして利用。
11:ウエストが生きているなら探し、杏の首輪を『杏に託されたもの』として渡して解析させる。
12:杏と朋也を生き返らせてあげてもいい。
13:鈴のくずかごノートをじっくり読みたい。
【備考】
※参戦時期は『永遠に』エンド、言葉死亡後です。
※殺人にタブーがありません。
※主催者は死んだ人間を生き返らせられると信じています。
※女性だけで行動しているグループとの交流においては、特に攻撃的になります。
ただし、ヤンデレに対しては、そうではないかもしれません
※死者の復活を信じ、大切な人を失った人間に対して自らの持論を説いて回ります。
※勘の冴えは主に戦闘絡みであり、それ以外に関しては万能ではありません。
※杏と情報交換し、彼女の人脈などについて知りました。
※ハンドブレーカーは採石場で調達したものです。
※言葉がどちらへ向かうかは次の書き手さんにお任せします。
【ハンドブレーカー@現実】
砕石業に使われる削岩用の小型機械。発破などで取り出した岩に穴を開け、砕く為に用いる。
先端のアタッチメントを交換することで、ドリル(穿孔)やブレーカー(破砕)などの多用途に対応でき便利。
エアーコンプレッサーにより稼動する為、ホースによって本体と動力部が接続されている。
ホースの長さは10mまで伸張可能。
重量は本体部が10s強、動力部が40s弱あるが、デイパックに入れておけばさほど問題はないと思われる。
連続稼動でおよそ6時間使用可能。
【棗鈴@リトルバスターズ!】
【装備】:ハルバード@現実
【所持品】:支給品一式×2、草壁優季のくずかごノート@To Heart2、コルト M1917(1/6)、秋生のバット、コルトM1917の予備弾28、桂の携帯@アカイイト
【状態】:疲労(中)、背中と四肢の一部に火傷(小)、空腹、刹那への復讐心、精神不安定、言葉への盲目的な信頼、血塗れ
【思考・行動】
基本:理樹を探し出し、守る。『清浦刹那』への復讐。
0:ことのは、ちはやがいない……!
1:刹那を殺す。自分、理樹、千早、言葉を襲う敵は、例外として殺す。
2:理樹を探し、守る。
3:謙吾と桜と杏を生き返らせるため言葉と同行する。
4:言葉の目的を手伝う。
5:リトルバスターズメンバーを探し、同行する。
6:衛宮士郎を探し、同行する。
7:千早を探したい。
8:爆発現場に行って刹那を殺す。
9:服を着替えたい。
【備考】
※参戦時期は謙吾が野球に加入する2周目以降のどこかです。故に、多少は見知らぬ人間とのコミュニケーションに慣れているようです。
※くずかごノートの情報に気付きました。
※衛宮士郎の身体的特徴や性格を把握しました。
※『清浦刹那』に関しては、顔もまともに見ておらず、服装や口調、ピースサイン程度の特徴しか認識していません。
※言葉の話を完全に信用しました。盲目的に信頼しています。
※杏と情報交換し、彼女の人脈などについて知りました。
※くずかごノートには様々な情報が書かれています。現在判明している文は、
『みんなの知ってる博物館。そこには昔の道具さん達がいっぱい住んでいて、夜に人がいなくなると使って欲しいなあと呟いているのです』
『今にも政略結婚が行われようとしたその時、秘密の抜け穴を通って王子様は大聖堂からお姫様を連れ出すことに成功したのでした』
『山里のお寺に住む妖怪さんは物知りだけど一人ぼっち。友達を欲しがっていつもいつも泣いています』
『古い、古い昔の遺跡。そこにはドロボウさんなら誰でも欲しがる神秘のお宝が眠っていたのです』
です。
※採石場には電動工具やダイナマイトが置かれている他、ショベルカー、トラックのような重機が存在しています。
また、近辺には鴉が多く生息しています。
以上、投下終了です。
タイトルは同人ゲーム『禽ノ哭ク刻』と、うみねこのなく頃に作中の曲『Worldend Dominator』より拝借。
投下乙でした
とうとう蔵が全滅しましたか、とことんカワイソスだなー
しかし、杏の最後はグロ死なのにそれほど悲惨じゃないのは「あ、しんだ」のせいか
千早は運が無かったですな。ワールドもいい壊れぶり
あとツヴァイテラ空気w
怖え、怖えええええええっ!!!!!!
登場人物全てが狂いに狂ってやがりますよこれは。
この中でも殺人鬼であるはずのツヴァイが
一番まともに見えるのが嫌すぎます。
狂気てんこもりですかこのロワは!!
もはやGJ程度の評価では
この作品の素晴らしさを表現しきれない。
なんという神作品。
乙です!
スクデイ勢がどっちも怖っ!
そして全滅したCLANAD勢の中でも特に悲惨な最期を遂げた杏に南無〜
一瞬でも救いが見えたと思った俺がマヌケでしたよ・・・
そして九鬼先生に続いてダメっぽかったツヴァイがカッコ良く覚醒!
ドシリアスな展開の中で「身体は蛆で」とか「臭いがする」とかの遊び心忘れてないあたり凄いです
前半の鴉を使った描写も印象的でした!
投下GJ!
なんですかこの鬱グロブームの到来はw
杏の首切りシーンは言葉より鈴のほうが怖かった…
そして千早、だから言葉様の言う事信じていれば良かったのに
世界の言葉回避スキルは異常、この二人はこれからもロワに波乱を呼び込みそうです
投下乙です
とてもよい狂気です、笑いが出るくらいすばらしかったですw
逝った二人の最期もよかった
鴉をつかった描写もすごいうまいなあと感じました、GJでした
投下乙!
ぎゃああああっ、と悲鳴を上げるしかできませんでしたw
杏……千早……なんてグロい最期を。かつて1stですらここまで酷いものがあっただろうか。
間違いなく名作の域に達した作品、改めてGJでした!
時報による爆弾のカウントダウンは凄く上手いと思うんだ。
投下乙でした!
ひぃぃぃぃぃっ!なんていう狂気!!
ホントこのロワのスクイズ勢は自重しないw
ツヴァイが一番格下に見えてしまうのは何故なんだww
世界は言葉様にさっくりとグロ死させられると思っていたので回避したのは意外だったなぁ
最後にグロ死した、杏と千早に合掌…
投下乙です
言葉様さすがです。北西部が恐ろしいまでの危険地帯に
みんな良い具合に狂っていますな
他のリトバスメンバー、鈴見たらどうするんだろ?
素晴らしい、もうその一言に尽きます。
躊躇なきグロ、容赦なき狂人達の宴、これぞロワ!
…と快哉を叫んでしまいました。
良くも悪くも素人の壊れた素人の怖さが出てたな
ツヴァイのような玄人には出せないような肉体破壊描写が怖い
「じ……じゅう……の、音?」
蘭堂りのは肺の中に溜まった空気を押し出すかのような語調で思わず呟いた。
聞こえた、確かに何かが爆発するような特徴的な音がしたのだ。
それは、映画やドラマの中などで見かける『銃』という物体の奏でる発射音と酷似していた。
あくまで作り物の知識としてしか持ち合わせてはいないものの間違ってはいない、りのはそう思った
千華留も、先程小屋から出て行った恭介もトルタも同じ物を持っていた。
つまり、この空間では拳銃という道具は有り触れたアイテムなのかもしれない。
まるで放課後の学校のようにシン、とした空気が保たれている世界だけに、銃の音は不思議なくらいよく響いた。
(あれ?)
そこまで考えて、りのは一つの疑問へとぶち当たる。
涙がポロポロと流れ落ち、未だに両の瞳は真っ赤だ。鼻水も出ているし、瞼の周辺は擦り過ぎて若干赤くなっている。
意識も朦朧として、俊敏な思考など出来る訳もない。
彼女はそれほど頭の回転が速いタイプではないがそれを差し置いて、でもだ。
(なんで、銃が撃たれるんだろう?)
そうだ。銃はむやみやたらに使用される武器ではない。
加えて音が聞こえて来たのは相当近くだ。これらの材料から判断出来る事実、それはすなわち――
「ち……ちかる、さん! こ、これって……!」
目の前で俯いたままの源千華留へと、りのは声を荒げて事の重大性を告げる。
「…………近い、わね」
「もしかして、恭介さん達が……誰かに……ッ!」
「……かもしれないわね」
曖昧に千華留は低い声でりの仮説を肯定した。千華留は目元に袖を当て、流れ出した涙を拭った。
しかし、未だ気分が優れないのだろうか。彼女本来の陽気さがまるで感じられない。
突然の出来事に対応する、という点に関しても、どこか動きが緩慢としている。
が、事態に混乱したりのは千華留のそんな異常に気付く事は出来なかった。
りのの思考は当然の如く、今この場にいない恭介達へと向けられる。
『彼らが誰か殺し合いに乗った人間に襲われたのではないか』という考えが湧き上がる。
彼らが慌ただしく、この空間から退出してから大して時間が経っている訳ではない。
二人は必ず近くにいる……そして、銃の音も近い。導き出される結論はたった一つだけだ。
「た、大変です! 助けにいかないと!!」
「…………」
「千華留……さん?」
ここまで来て、ようやくりのは千華留の反応が妙な事を察知した。
(千華留さん……? どうして、何も言わないんだろう。さっきまでの千華留さんだったら、すぐに行動に移していた筈なのに……。
顔を上げないで下ばかり見て……どうして……?)
千華留は銃声を聞いた後、身体をぴくりと動かさずジッと床を見つめていた。
震えている訳ではない。まるで石の彫像にでもなったかのように、ひたすら彼女は『止まっている』のだ。
何を言う訳でもない。何をする訳でもない。微動だにせず、一切の動きを停止している。
りのはそんな千華留の行動がまるで分からなかった。
彼女は恭介達が襲われている、という可能性を肯定したのだ。つまり、彼らに危険が訪れている事は理解している筈。
ならば、自分達がやらなければならない事は決まっているではないか。
それは『二人を助けるために救助に向かう』事だ。
他の解答はありえない。
「千華留さん! 千華留さん!!」
「…………」
もはや、小さな反応すら返って来なかった。
千華留はりのの声など耳に入っていないかのように、俯き続ける。
通じ合った心も、触れ合った指先さえ記憶から消え去ってしまったかのように。
長い髪で隠され千華留の表情をりのは確認する事が出来ない。
りのは千華留が何を考えているのかまるで分からなかった。
▽
――ゆっくりと終わっていく世界の中で、私は一人きりだった。
――ゆらぐ空、消えていく月。山向こうに沈む遥かなる赤い光。
――理想はクルクルと螺旋を描きながら堕ちていく。鮮明な残像を残しながら。
――月色の花。ぼんやりと光を放つ槐。そして銀色の刃。滴る鮮血。
――蛮勇は消え去り、私は闇の中に沈んでいく。
ガタガタと車体を揺らしながら、ユメイは虚ろな眼で誰も居ない向かい側の席を見つめていた。
深い藍色の髪の毛、そして藍色の着物。
着衣の乱れは何とか正し終わったが、早鐘を打ち鳴らすように身体を揺さぶり続ける心臓の鼓動は今も彼女を蝕み続ける。
誰もいない車内はヒンヤリとしていて、少しだけ冷たい。
とはいえ、空はゆっくりと太陽が顔を出し始めている。おそらく、今日は暑くなるのだろう。
季節も分からない、この騒々しい島を照らす唯一の光源だけが彼女を見ていた。
「……はぁ」
少しずつ天へと近付いていく熱を背に受け、ユメイはただ眼の前の状況を整理する事に満身する。
散らばっていた道具も、ひとまず回収し、デイパックの中に入れた。
流石に大十字九郎を切り付けた刀だけは手付かずのまま、置いてある。
実は自分のデイパックの中に入っていた道具を確認してもみたのだ。
しかし、入っていたのはまたしても重火器。説明書には『RPG-7V1』と書いてあった。
ロシア軍が正式採用している正真正銘のロケットランチャー……である。
が、戦車をも吹き飛ばすような恐ろしい武器を持ち歩く事などユメイには耐えられなかった。
思わずデイパックごと、放り投げてしまったのだ。
しかし、さすがに基本的な支給品がないのは不安だったため、残されていた別のデイパックを今は背負っている。
(胸が……痛い)
途切れる事なく響き続ける不可解なノイズに鼓膜が麻痺してしまいそうだ。
ちらり、と左腕に付けた時計の時間を確認する。
気絶していた男性へと切り掛かる直前に行ったのとまるで同じ行為。胸の奥で何かが軋むように痛んだ。
「もう……こんな時間」
時計の短針は八。長針は丁度十二の位置を差している。
つまり、八時だ。車内のダイヤを確認した所、もう少しで列車はG-4の駅に到着する筈だ。
一度F-7の駅に止まりはしたのだが、どうしても腰を上げる事が出来なかった。
それは、自分が…………臆病だからだ。
『もしも、降りた駅に殺し合いに乗った人間がいたらどうなるだろう?』
泡のように浮かんで来たその不安を押し潰す事が、ユメイにはどうしても出来なかった。
誰かと戦う事が怖い訳ではない。
自分が自分でなくなって……そして、罪のない人間を殺めてしまう事が何よりも恐ろしいのだ。
ほんの数分前、自分はいったい何を考えていたのか。
一片の揺るぎもなく、その解答は溢れ出す。
いかに精神が薄弱になっていても、決して消えない烙印として先ほどの思考はユメイの中に刻まれていたのだから。
眼の前に倒れていた裸の男と髭の老人を――――どうやって、殺せばいいのか必死に頭を捻っていた。
自分は、殺人鬼に進んでなろうとしたのだ。
誰よりも大切に思う相手――羽籐桂を守るためでも何でもなく。
ただ、眼の前の危険を摘み取るため、刀を取ったのだ。
(桂ちゃんは……どうしているのかな。誰か……信頼出来る人と一緒にいるなら……桂ちゃんが無事でありさえすれば……。
私みたいな事に……なっていなければ……いいな……)
ユメイの頭の中に浮かぶの彼女の従妹であり、何を犠牲にしてでも守りたいと思う羽藤桂の笑顔だった。
そして同時に不安な黒い感情も脳裏をチラつく。
桂はこんな殺し合いに乗ってしまう……そんな弱い人間ではない。
彼女は強い人間だ。確かに戦う力はない。だけど、その小さな身に秘めた意志の力は、何よりも力強く自分を後押ししてくれる。
決して諦めない芯の強さ。それこそが桂が持つ最大の魅力なのだから。
(なんで……どうして、私はあんな事を……?)
未だ震えの収まらない両の掌をユメイは虚ろげな瞳で見つめる。
カタカタ、
カタカタ、
と意志とは無関係の振動は収まる気配はまるでなくて。
殺し合いの場が持つ空気、という奴は言葉では言い表す事が出来ない。
人が死ぬ。殺さないと自分が死ぬ。押し殺した息遣い。握り締めた凶器。高鳴る鼓動。
恐怖心が茨のように心を絡めとり、殺人空間が意識を後押しする。
だから彼女は意識を白い靄の掛かった海に投げ捨て、思考を放棄した。
何もない世界にその身を預けたのだ。
殺し合いが始まってから六時間。人が死んでいる、という実感はいまいち湧かない。
確かに妙に話の長い男がクドクドと話し続けていた放送も記憶には残っている。だけどソレだけだ。
スピーカーを通して行われる電気信号など、実際に肉を裂く感触や鮮明な血の赤に比べれば圧倒的に現実味が足りない。
そして、彼が告げた名前の中に聞き覚えのある人間は一人もいなかった。
故に彼女はたゆたい続ける。血と狂気に染まった記憶の中を。
(私は……何をして来たんだろう。何も覚えていない。変な男の人に襲われて……それで……。
何一つ……進んでさえいない。私はずっと足踏みをしていただけ、殺されていないのが不思議なくらい……)
足早に過ぎ去っていく景色を眺めながら、ユメイは小さくため息をついた。
灰色の街に嵌め込まれた硝子が光を反射する。星のように瞬く世界の中で、彼女は孤独だった。
桂……の次に頭に浮かぶのは他の自分の知り合い達の顔だった。
千羽烏月、浅間サクヤ、若杉葛……彼女達はいったい、今何をしているのだろうか。
それほど付き合いが長い訳ではない。だから彼女達がどのような思考で動いているかはいまいち想像が付かない。
だが、少なくとも、彼女たちが生き抜くために必死に戦っている事だけは分かる。
弱い人間なんて自分の仲間達の中には一人もいない。
一人、桂がいなくなってしまう事に誰よりも恐怖を覚えている人間、ユメイ――いや、羽藤柚明だけが震えているのだ。
こんな無様な状態では、桂を守る事など出来る訳がない。
今は自らの心と折り合いを付けるので精一杯だった。
(桂ちゃん……桂ちゃんは……今、どこに……?)
そして、彼女の後悔は募る。
▽
「千華留さん、どうして何もしないんですか!? このままだと恭介さん達が――」
りのが声を荒げて千華留を叱咤する。
千華留はそんな彼女の台詞を聞きながら、内心苦笑いを浮かべていた。
つまり、このような醜態を晒していては彼女に文句を言われるのも仕方がない、と。
渚砂ちゃんの死――それは、心の中で大きな楔となり、心臓を磔にした。
何もかもが分からなくなり、気丈に振舞う事も出来なくて……一瞬、全てがどうでもよくなり掛けた。
もしも、この場所にりのちゃんがいなかったとしたら、自分はどうなっていたか分からない。
『希望はあるんじゃないか』
『精一杯頑張ってみようと思う』
そう黒き神父と直接言葉を交わした筈の自分が、いとも容易く心が折れ掛けた。
やはり、彼らが言っていたようにこの「ゲーム」とやらは一筋縄ではいかない。
血と惨劇の匂いが心を、そして精神を蝕んでいく。時間が導火線となり、少しずつ、参加者の心へと迫るのだ。
――ありがとう、りのちゃん。おかげで……目が醒めた。
「りのちゃん。今から私の言う事をよく聞いて」
「えっ?」
「……ごめんなさいね、しばらく黙り込んでいて」
千華留は立ち上がり、呆然としていたりのを優しく抱き締めた。
先程彼女が自分にやったように、あらん限りの想いを込めて、だ。
数秒間、りのの柔らかな感触を堪能した後、千華留はゆっくりと腕を緩める。そして、
「ねぇ、りのちゃん。私がりのちゃんと初めて会った時、なんて名乗ったか覚えてる?」
「…………え。その『怪盗ル・リム』ですか?」
被った帽子の唾を弄びながら、小さく微笑んだ。
怪盗ル・リム――それは千華留の小さな遊び心から生まれた架空の泥棒の名前だ。
支給品との兼ね合いから誕生した、特に意味のない存在に過ぎない。
とはいえ、皮肉なものだ。
何気ない感慨から生まれたこの"怪盗"という立場が、今の彼女には見事に当て嵌まるのだから。
自分が渚砂ちゃんの死を容易く振り切る事など出来る訳がない。
受け入れる事も忘れ去れるのも不可能だ。
それでは何も出来ず、肩を震わせているだけなのか? 無力なまま死を待つのか?
どちらも間違いだ。自分には決して譲る事の出来ない一線がある。
怪盗とは盗む者――それでは、怪盗が何か大切なものを盗まれた場合は?
「そう。怪盗ル・リムはりのちゃんみたいな可愛い女の子をお持ち帰りするだけじゃないの。もっと……大きな物を盗むわ」
「大きな……もの? それは……?」
「それはね、私がこのふざけた殺し合いを止めて見せる、って事」
「止めるって……! でも、よく分からない力を持った人もいっぱいいますよ!」
決まっている。
断固、その相手に復讐を、いや『仕返し』をする。
渚砂ちゃんの死を無駄にしないためにも……そして、新しい犠牲者を出さないためにも。
例えば――目の前であどけない笑顔を浮かべる少女を守るためにも。
「私達に出来るのは戦う事だけじゃないわ。
同じ意志を持った人達とのパイプになることだって出来るし、情報を集める事だって出来る。
初めから諦めたりしては駄目。いくらでも可能性はあるの。だから――」
千華留は外していたアイマスクをもう一度付け直し、フッと口元を歪ませた。
「まずはさっきの銃声について、ね。私の推理を話そうかな」
▽
「まず、あの銃声は妙……としか言いようがないわ」
「どうして……ですか? あ、そ……それよりも! 千華留さん、早く恭介さん達を助けに行かないと!」
ようやく、千華留が元の千華留に戻ってくれた。
りのはそれだけで嬉しくて踊りだしそうな気分だった。
しかし、現状は切迫している。謎の銃声、出て行ったっきり帰ってこない恭介とトルタ。
二人は助けを求めているのでは……?
「いいえ――ここだけの話、おかしな事だらけなの」
「おかしな……事?」
「そう。疑問点として、まず挙げられるのは……『どうして銃声は一発しか聞こえないのか』という事」
「……あっ」
小さな声がりのの唇から漏れた。
「二人が他の参加者に襲い掛かる訳はないし、銃声がしても帰って来ない。殺し合いに乗った人間と接触した、と考えて間違いはない筈なの。
でも銃声は一発だけ。おそらく襲撃者のもの……ここで次の疑問が発生するの」
「次の疑問、ですか? あ……確かに二人が撃ち返さないのは変です!」
「その通り。恭介さんもトルタちゃんも銃を持っていたわ。
誰かに襲われ、銃で撃たれたのならば確実に反撃する筈……なのに聞こえた銃の音は一回だけ。
未だに、最初の一発目だけ……どう考えても変じゃないかしら」
りのはハッとしながら、つい先ほどまでの千華留の行動を思い出す。
アレはもしかして『次の銃声が聞こえるかどうか、耳を澄ませていた』のではないだろうか。
だとすれば千華留が全く言葉を話さなかった理由も分かる。彼女は一瞬でここまで考えていたという事……?
「考えられる可能性は二つ。まず、一発の弾丸だけで二人は死亡した、というケース。
これは常識的に考えてありえない……だからパスするわね。
つまり、自然と『現れた人間が音の出ない武器に持ち替えた』という仮説が力を持つの。……でも、」
「……やっぱり、恭介さん達が撃ち返さない……ってのはおかしい……です」
「そこなのよね。何故、撃たないのかしら。だから、こうも考えられる――既に二人は死んでいるじゃないか、って」
「……それって!!!」
思わずりのは自分の口元を抑えて、驚きを露にする。
千華留が何気なく呟いた一言は最悪の可能性を示唆していた。
「そりゃあ、二人が銃を撃たない……もしくは『撃てない』ケースなんていくつだって考えられる。襲われたのは他の人間かもしれない。
他に何かアクシデントがあったのかもしれないわ。この推理は所詮、穴だらけの極論に近い」
「……でも、それにしては、遅い……ですよね」
「ええ。二人が出て行ってからもう、何分経つかしら……。それに荷物は持って行ったから、ここに帰って来る必要もない」
千華留が髪を掻き上げ、遠い眼をしながら窓の外を一瞥した。つられてりのも外を見やる。
誰かが近づいて来るような気配はまるで感じられない。
が、それ以上にりのの胸を騒がせるのは、千華留の妙に思わせぶりな一言だった。
「千華留さん」
「どうしたのかしら、りのちゃん。何か分からない事でもあった?」
「いいえ……その、あの……今の、千華留さんの台詞……」
「何、かしら」
「まるで…………恭介さん達を疑っているように聞こえました」
「……あら」
しまった、とでも言いたげな表情で千華留は小さく嗤った。
ジッとこちらの眼を見つめる彼女に、りのは胸が竦むような感覚を覚えた。
自分は、もしや彼女が隠蔽しようとしていた領域に踏み込んでしまったのだろうか……?
「……覚えて、いるかしら。食事をしていた時の恭介さん達の行動を」
「食事…………」
りのは数十分前、放送が始まる直前の光景を脳裏に思い浮かべる。
数秒間の逡巡。しかし、思わせぶりな千華留の言葉を証明するような要素はまるで見つからない。
(何も思いつかない……です。トルタさんのミネストローネがとても美味しくて、恭介さんと凄く仲が良さそうで……それで……)
なにしろ、あの時自分達はただトルタが作った料理を食べていただけなのだ。
怪しむべきポイントが一体何処にあるのか、まるで見当が付かない。
「うーん……分からないです。別に普通だったような……」
「あら、りのちゃん。あったじゃない面白いイベントが。例えば……『あーん』とか」
チッチッチと小さく千華留が指先を振り、淀みの無い動作でビシッとりのの眉間の辺りを指差しながら告げた。
りのは流石に、彼女のあまりにも予想外の一言にきょとん、とした顔で眉を顰めることしか出来なかった。
「確かに『あーん』はありましたけど……アレから何が……!?」
「……りのちゃんは、恭介さん達がどんな関係に思えたかしら?」
「えっと…………その、仲の良いカップルだなぁ……って」
「――あの二人は、恋人でも何でもないわ」
「え……!」
それは、あまりにも意外な一言だった。
まずりのが驚いたのは完全に千華留がその言葉を言い切った事だ。
寸分の躊躇も戸惑いもなく、武士が刀で要らない物を切って捨てるかのように流麗に、だ。
「トルティニタ=ファーネ……多分、ヨーロッパの……イタリア出身の方だと思うのだけれど。
彼女が料理をする時、明らかに不自然な部分がいくつかあったわ。
例えば、電子レンジ、ガスコンロ、ピューラー、冷蔵庫……同じ時代の方とは思えないくらい、彼女は『何かに戸惑っている』ように見えた」
「……言われてみれば」
りのにも確かに、いくつか思い当たる節があった。
慣れない場所で食事を作る場合、料理人が最も苦労するのは必要な調理器具を探索する事である。
特に複雑な行程を経る料理であれば在るほど、その影響は顕著に現れる。
そして、トルタが何故か電気やガスを必要とする道具を使う際に、妙な態度を露にしていた事を。
「……詳しくは言及出来ないわ。時間も無いしね。ただ二人が知り合ったのがおそらく、この"ゲーム"が始まって以降であるのは確か。
吊橋効果、という言葉がどれほどの力を発揮するのか正直、私にはよく分からない。
だけど、一つだけ言える事があるわ……」
千華留は深刻な顔付きのまま、スッと引き締まった顎のラインを白魚のような指先で撫でる。
艶やかな黒い髪が窓から差し込んでくる朝日と反射してとても綺麗だ、りのはぼんやりとそんな事を思った。
「それは、ね。トルタちゃんが無理をしていたって事――まるで『しなくちゃいけない』って感じていたのかしら」
「……無理、ですか?」
「ええ。こう見えても私は母校のル・リムで相当な数『あーん』を経験しているわ。もちろん、して貰うのもする方もね。
赤らんだ頬。プルプルと震えるスプーン……慣れない事はするものじゃないわね。
あまりに初々しくて、思わず私もトルタちゃんに『あーん』してあげたくなってしまったけれど」
「まぁ流石に恭介さんがいる手前、そこは自重したけどね」と千華留は苦笑しながら呟いた。
りのは、あまりに何気なくそう言い切る彼女にツッコミたくなったが、そこは我慢。
そもそも、トルティニタ=ファーネがあんな事をしたのは、彼女が自分の顔の前にスプーンを突き出したからではなかったか……?
まさか嗾けた……? いや、そんな馬鹿な。アレは明らかに千華留がやりたいからやっていた、そうとしか自分には見えなかった。
しかし、千華留の緊張感を欠くような一言を聞いてりのは安心していた。
先程泣きじゃくり、顔を真っ青にしていた頃の彼女ではなく、もはや源千華留は元の姿に戻ったのだ。
気高く、朗らかに笑い、時には冗談を言って周りを和ませる……そんな聖母のような女性に。
「ま、とにかく私達に必要なのはいますぐ行動する事かしらね。ここは危険……二人も戻ってくるとは限らない。
書置きだけ……残しておきましょう。
トルタちゃんの不可解な行動……まぁ、仮説は色々あるけれど安全な場所に行ってから考えましょう」
「あれ……、その、千華留さんは大体の想像が付いているんですか?」
「ん。ああ、一応はね」
そこまで言うと彼女はクッ、と唇の端を持ち上げ不敵な笑みをこぼした。
そして、音もなくりのの耳元に接近し囁くように告げた。
「――トルタちゃん、きっと恭介さんの事が"本当に"好きなのよ」
りのは千華留の言葉に目を丸くする。
吐息が耳元に触れて、少しだけくすぐったかった。唇と耳が触れてしまいそうな、超近距離。
彼女が自分の知る千華留に戻ってくれた事は確かに嬉しいのだが……。
身体の中で火でも焚いているかのように、体温が上昇していくのを感じる。
「そ、それは……ど、どういうことですか!」
「うーん……そうね、要はトルタちゃんは乙女なの。彼女は何らかの原因で恭介さんに好意を持ってしまった。
だけど、それを彼に伝えるのは恥ずかしい……そんなもどかしい状態だった。
あの『あーん』は私達に刺激されたトルタちゃんが勇気を振り絞った結果――そう考えれば辻褄が合わないかしら?」
「な――ッ!!」
まるで予想だにしない言葉。
つまりトルタの行動は恋人同士のソレ――ではなく、恋人同士になるための努力、という事だったのか。
確かに、殺し合いが始まってからこんな短時間で人を好きになる――普通は頭を疑われる思考だ。
だが、彼女は恋をした。
このような状況だからこそ、生まれる感情もあるのではないか、りのにはそんな事を思った。
季節と共に訪れる春風にも似た爽やかで瑞々しい新芽のような胸の高鳴りを覚えたのだろう。
そして、まさか自分達の(仮にも女同士である)さり気ない行為が一人の少女の背中を後押しした結果になったとは。
知らず知らずの内に、他人の恋路へと影響を与えていたのである。
差し詰め、自分はキューピットのような物だろうか。まさに『感激』以外の一言で表す事は出来ない事態だ。
「……す、凄いです千華留さん! 名推理です! 怪盗ル・リムは推理もするんですね!」
「ふふふ……りのちゃん止めてちょうだい。そんなに褒められたら照れちゃうじゃない」
すっと身体をりのから離した千華留が頬を紅潮させながら、思わず髪の毛を弄った。
りのも興奮を抑え切れず、声が大きくなってしまう。
が、そんなりのを宥めながら彼女は優しげな声色で告げる。
「さてと……いいかしら、りのちゃん。こんな――二人が死ぬ訳ないわ。だから今から、私の言う通りに……ね? 心配はいらないから」
▽
「……う」
電車から降りて、G-4の駅から一歩外へ足を踏み出す。燦燦と輝く太陽の光がユメイの皮膚へと突き刺さる。
神木の「オハシラサマ」であるユメイは、本来は実体化するだけで自らの力を大きく消費する。
同様に日光の下で活動する事も彼女に負担を掛ける訳だ。
しかしこの「ゲーム」の盤上において受肉し、羽藤柚明の頃の身体に近い存在へと戻った彼女にそのような誓約は存在しない。
精神体としては生を受けて二十六年になる訳だが、身体は「主」の復活を止めるために山頂の槐へとその身を沈めた時のままである。
少しだけ、妙な感触だった。
が、どちらにしろ、彼女が太陽の光に若干の忌避の感覚を覚えてしまうのも無理はない事。
ここは結界に覆われた聖域などではないのだから。
(どうすれば……いいんだろう。桂ちゃんを探すにしても……また、変な人に会ったら……)
ユメイが自らの状況の悪さを再確認する。
周りの風景はいまいち頭の中に入ってこない。
ある程度舗装された区画を歩いている事だけは確かなのだが……。
(自分の身を守る事は……出来る。でも、ダメ……)
オハシラサマとしての力――月光蝶の行使は問題なく出来るようだが、鬼でない存在に対して進んでこの力を奮うのは難しい。
仮面の男のように、殺し合いに乗っている人間が向かって来ても思う存分力を使う事など不可能だ。
それ以上に、今の自分が他人に敵意を持って攻撃を加える行為など出来る訳がないのだ。
その時、
「――あら、あなた……?」
ユメイの眼の前に二人の少女が突如姿を現した。
「えっ…………!!」
完全に、気付かなかった。
ユメイはハッとして視線を上げるが、なんとコチラとの距離は既に数メートル。
気が抜けている、などという言葉では生温い。まるで――死を望んでいるかのようだ。
「あれ……千華留さん。この方、もしかして……」
「……そう、ね、りのちゃん。多分、りのちゃんの予感で正解だと思うわ」
「あっ……!」
相手は二人。長い黒髪に左右の赤いリボン、黄色をベースにした制服を身に纏った少女。
頭には白いふんわりとした帽子を被り、同じ色のマントを羽織っている。
そして、傍らに寄り添うように茶色い髪色の少女。こちらは何故かメイド服に袖を通し、片手にはドリル?のような物を嵌めている。
……まさか、あれで攻撃するのだろうか。
「ユメイ……さん、でいいのかしら」
千華留、と呼ばれた少女がこちらに向けて言葉を投げ掛けた。
ユメイは怯えた眼で二人を見つめ、小さく身じろぎしながら、一歩後退。
どう見ても彼女達は殺し合いに乗っているようには見えない……だが――――それなのに、恐ろしいのだ。
そして――どうして、こちらの名前を知っているのだろう。
思わず、この場から逃げ出しそうになった時、千華留が小さく笑った。
「あ……ゴメンなさいね。浅間サクヤ、さん……分かるかしら。彼女からあなたの事は聞いているの」
「サクヤさん!?」
「ええ。ちょっと前に……この辺りで出会ったのだけれど」
辺りをキョロキョロと見回しながら、千華留がスッと右手を差し出し、そして、
「そして……出て来たばかりで悪いんですが――」
ユメイの手首をガッチリと掴んだ。
「もう一度、電車に乗って貰ってもよろしいでしょうか」
▽
「え……その、千華留さん!?」
「大丈夫です。痛くしませんから。ここは……私達を信じてください」
ユメイが慌てふためきながら、何かを呟くも千華留の耳にはまるでその言葉は届いていなかった。
――自分達は一刻も早くこの場所を離れなければならない。
りのには冗談を交えて面白おかしく小屋から離脱する事を説明したが、ユメイに対して事情を話している時間はなかった。
(……逃げなくては)
千華留は内心、舌打したい気持ちを必死で押し殺していた。
当然、察している――恭介達が誰かに襲われた事実に。
少し席を外す……と言った人間がアレだけ長い時間帰って来なければ馬鹿でも気付くというものだ。
しかも追い討ちを掛けるように銃声。もはや、疑いようが無い。
自分達の戦力は明らかに脆弱であり、戦列に加わったとしても役に立つ保障は皆無。それ所か足手まといになり兼ねないのだ。
故に千華留は銃声を確認しまるで恭介達が帰って来る様子がなかった時点で小屋からの離脱を決心していた。
しかし、その際問題として立ちはだかったのがりのの存在だ。
そして彼女に混乱を与えないように、納得させるために用いたのが例の推理である。
推理――確かに、アレは半分くらいは本当の事だ。
トルタが恭介に好意を持っているような気がするのは当てずっぽうではあるが、それほど間違っているとは思えない。
が、それ以上に彼らの関係には疑問が残る。
(……やっぱり、こんなに短時間で成立し掛かっているカップルにはちょっと違和感があるわね)
もちろん、二人を信じたいという気持ちが大半を占めている。
自分達の目的地(ひとまずF-2の駅)に関するメモ書きは残して来た。二人を置いて家を離れる謝罪文も添えて、だ。
複数存在する民家……その一つ。虱潰しに探されなければ、他の以外の人間には見つからない筈である。
ユメイに関しては、サクヤからある程度の情報は得ていた。
殺し合いに乗る事はないであろう人物――信用に足る人間であるとのお墨付きで。
考えようによっては……いや、自分達が恭介達を見捨てた事は否定しない。
薄情と罵られても仕方がないと思う。
だけど、自分にはやらなければならない事があるのだ。
絶対に……こんな場所で死ぬ訳にはいかない。
蒼井渚砂――あの子が命を落とす原因となったこのゲームへの反逆だ。
そして、蘭堂りの。戦う力など持たないか弱い存在……でも、それと同じくらい強い、少女。
りのにも大切な相手(確か神宮司奏という名前だ)がいると聞いた。
そして何故か、自分には彼女達の関係が他人のようには思えないのだ。
後輩に慕われる先輩、そして生徒会長という立場。知り合いが一人しか参加していないという環境。そっくりだ。
だから――
(渚砂ちゃんを失った私が……見ず知らずのあなたに共感を覚えている……妙なものね。
でも、あなたの大事な後輩は私が守ってみせる。だって……私と同じような悲しみは誰にだって味わって欲しくはないから……)
渚砂の面影をりのに重ね合わせ、千華留は前へと進んでいく。
太陽は輝き、疎らな白雲と真っ青な空が彼女達を照らす。
大切な少女を失った心の悲しみは消えない。
それでも、彼女の存在を決して忘れないため――千華留は自分に出来る事をやるだけだった。
【G-4/駅/1日目/午前】
【源千華留@Strawberry Panic!】
【装備】:能美クドリャフカの帽子とマント@リトルバスターズ!、スプリングフィールドXD(9mm×19-残弾16/16)
【所持品】:支給品一式、エクスカリバーの鞘@Fate/stay night[Realta Nua]、怪盗のアイマスク@THE IDOLM@STER
【状態】:健康、強い決意
【思考・行動】
基本:殺し合いはしない。りのちゃんを守る。殺し合いからの生還。具体的な行動方針を模索する。
0:ひとまず電車に乗りF-2の駅へと退避。
1:りのちゃんと一緒に行動。何としてでも守る。
2:奏会長、プッチャン、桂ちゃん、クリス、リトルバスターズメンバーを探す。
3:恭介とトルタに若干の違和感。
4:神宮司奏に妙な共感。
【備考】
※浅間サクヤと情報を交換しました。
※第二回放送の頃に、【F-7】の駅に戻ってくる予定。
※恭介からの誤情報で、千羽烏月を信用に足る人物だと誤解しています。
※G-4の民家に千華留とりのがF-2の駅に向かう、というメモが残されています。
【蘭堂りの@極上生徒会】
【装備】:メルヘンメイド(やよいカラー)@THE IDOLM@STER、ドリルアーム@THE IDOLM@STER
【所持品】:支給品一式、ギルガメッシュ叙事詩
【状態】:健康
【思考・行動】
基本:殺し合いはしない。ダメ、絶対。
1:千華留さんと一緒に行動。
2:奏会長、プッチャン、桂ちゃん、クリス、リトルバスターズメンバーを探す。
【備考】
※浅間サクヤと情報を交換しました。
※第二回放送の頃に、【F-7】の駅に戻ってくる予定。
※恭介からの誤情報で、千羽烏月を信用に足る人物だと誤解しています。
【ユメイ@アカイイト】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式x3、地方妖怪マグロのシーツ@つよきす -Mighty Heart-、
不明支給品×2(九郎確認済。一つは不思議な力を感じるもの))
【状態】:健康、強い後悔
【思考・行動】
基本方針:桂を保護する
0:え、ちょ、ま……!?
1:桂を捜索する
2:烏月、サクヤ、葛とも合流したい
3:誰かを傷付けるのが怖い
【備考】
※霊体化はできません、普通の人間の体です。
※月光蝶については問題なく行使できると思っています。
※メガバズーカランチャーを行使できたことから、少なからずNYPに覚醒していると予想されます。
※仮面の男(平蔵)が殺し合いに乗っていると思っています。
※以下の物が車内(モノグラムのEの列車)に落ちています
物干し竿@Fate/stay night[Realta Nua]、
ユメイのデイパック(メガバズーカランチャー@リトルバスターズ!、RPG-7V1(1/1)@現実、OG-7V-対歩兵用弾頭x5、ランダム支給品x1)
※九郎のデイバッグは破壊されました。四次元機能が失われています。
【RPG-7V1@現実】
RPG-7 は、ソ連の開発した歩兵携行用対戦車擲弾(ロケット弾)発射器。
名称は、ロシア語で「対戦車擲弾発射筒」を意味する「ручной противотанковый гранатомёт(ルチノーイ・プラチヴァターンカヴィイ・グラナタミョート)」の頭文字をとった略称から作られた。
英語でRocket-Propelled Grenade(ロケット推進擲弾)と綴られ、対戦車擲弾が砲身から射出後に弾体の固体ロケットに点火し飛翔する。
投下お疲れ様でした!
千華留の推理と駆け引きやりののほほえましさが一服の清涼剤となり、決意も清々しかったです。
そしてユメイさん……、流されっぷりに堂がw
しかもなんて物騒なものをw
投下乙!
ユメイさん、押しに弱すぎるwwwなのに支給品は大当たりじゃないですかw
だが、これで恭介への援軍はなし、か。
それにしても千華留様は素晴らしい考察力の持ち主だなぁw
「んー収穫は無かったね」
僕は葛木さん達と別れた後その後ドームを捜索した。
でも目ぼしい物も無くそのまま駅に向かい現在捜索中なんだけど……。
やっぱり特に目ぼしいなかった……しいて言うならば
『リキ殿、その電車なる物が向かっている後5分もしない内につく』
「了解だよ」
電車がもう暫くで到着するという事だろうか。
取り敢えずはそれを待っている事にしよう。
誰かが乗っているかもしれない。
……謙吾が逝った今は誰が死ぬかわかんない。
恭介、鈴、真人、来ヶ谷さん。
だからこそ早く皆に会いたい。
できることならこの電車に乗ってることを願って。
そうでなくても皆のことを知ってる人が来ることを願って。
『……む? 理樹殿もう直ぐ着くみたいだが……人が乗っている……隠れた方がいい』
「……了解……殺し合いに乗ってるかもしれないしね」
そう、電車に乗ってる人が殺し合いに乗ってる可能性もある。
降りた途端襲撃とかされたら溜まったもんじゃない。
僕はそう思い二つ並んでる自動販売機の内のひとつの陰に隠れて電車が着くのを待つ。
そしてやかましいアナウンスと共に辿り着く電車。
僕はそれを音だけで確認する。
そして扉が開く音がする。
さあどんな人だろう?
どんな人であろうと変わらない僕は。
僕は。
僕がすべき事をやるだけだ。
でも。
現れたのは。
ドゴォオオオオオン!!!
え?
隣の自動販売機が吹っ飛んだ?
え?
何で?
そしてそっと現る人。
……違う。
人なんだけど人じゃない。
滴る血。
ニタアと笑う顔。
皆こう言うと思う。
怪人と。
「リキ殿ォオオオオオオ!!!!」
ハサンさんが僕の名を叫びそして浮く体。
ハサンさんが僕を担いだんだ。
そして僕がいたところに怪人が刀を振るった。
空振りをしたのを確認すると僕のほうを睨みそしてまた笑い追いかけ始める。
「逃げるぞ! リキ殿!」
「うん……」
僕はハサンさんに担がれたまま逃げ出す。
それも凄いスピードで。
だけど怪人は負けず劣らず着いてくる。
速い!
……知らなかった。
いや、知っていたはずだろう。
こんな怪人がいることぐらいは予測できたはずだ。
……どうする。
この状況を。
恭介ならどうする?
僕ならどうする?
考えろ。
直枝理樹。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「くっ……中々しつこい」
ハサンさんがそう洩らす。
追いかけっこは10分以上たっただろうか?
まだ変わらず続いていた。
そして相変わらず僕はつかまれたまま。
あの怪人は未だスピードが落ちないまま追跡してる。
そして僕は未だ最善の策が思いつかないままだ。
どうすればいい、僕。
……未だハサンさんは振り切れない。
……あれ?
おかしいハサンさんだけだったら気配を隠す事ぐらい容易なはずだ。
なのに何故?
あ。
そうか。
そうなのか。
そんな……
「ハサンさん……僕がいるから気配を消さないの!?」
「……」
そう簡単な事だった。
ハサンが担がないで一人だったら撒くのはきっと簡単。
でも僕は恐らく怪人に追いつかれてしまう。
ハサンさんは僕を守るために自分の命の危険すら冒してる。
……そんな。
「そんな……ハサンさん」
「勘違いするな……リキ殿……貴殿はこういった筈だ」
?
何だろう?
僕は何を言ったんだろう?
「対等の仲間……リトルバスターズと……仲間なら助け合うのが当然だろう?」
あ……ハサンさん。
何でだろう凄く泣きたくなってくる。
ああ。
憶えてくれてたんだ。
しっかりと。
僕は……
僕は……
その時唸り音を上げて襲い掛かってくる一つの物体。
グォンと凄まじい音で。
「グガァ!?」
「ハサンさん!? これは鞘!? お、重!?」
飛来したのは凄まじい重量を持つ鞘。
それがハサンさんの太腿に直撃した。
「だ、大丈夫だ……」
「ほ、本当!?」
「だから……逃げろリキ殿!」
え?
なんで?
「どうしてさ!」
「もうリキ殿を背負って逃げる事ができぬ! あの女は私が引き付ける! それまで逃げろ!」
「……無茶な」
無茶だと思う。
あんな自動販売機を吹っ飛ばす怪人。
ハサンさん一人で。
怪人はまたにやりと笑って刀だけを持って走り出す。
こちらに向かって
「リキ殿……信頼しているのだろう……なら任すがいい。このハサン・サッバーハの名は伊達ではない」
「……っ!?」
ああ。
卑怯だ。
信頼とか言われたら。
その通りにするしかないじゃんか。
卑怯だよ。
「卑怯だよ……わかったよ……ハサンさん、頼みます」
「御意」
僕は振り向かず走る。
ただ……。
ただ……ひたすらに。
振り向かず。
無駄にしないために。
走った。
もう声は聞こえない。
どれくらい走ったのだろうか?
分からない。
前を見ようともせず。
ただひたすら。
願うのはハサンさんの無事だけで。
ハサンさん……どうか無……
「いた!?」
「とっ!? 大丈夫か!?」
前を向いてなかったせいか人にぶつかったみたい。
そこにいたのは不思議なローブを被った人と群青色した制服を着た少女だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
行ってしまったかリキ殿。
……それでいいのだ。
貴殿は貴殿のまま進めばいい。
……信頼か。
……もっとも関係ない物であったが。
前の私と。
彼と前のマスターは本当真逆だ。
……どちらが正しいかはわからない。
が。
少なくとも今の私の心は晴れている。
ならば。
今。
この瞬間は。
直枝理樹というものに尽くそう。
怪人が向かってくる。
来られよ。
見るがよい。
我が暗殺術を。
全てに刻め怪人。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
濃はただあの後たださ迷っていた。
思えば何をやっていたのだろうか。
ただひたすら少女を追ったり変な男どもを追い払ったり。
だがその結果は何だ?
少女には逃げられこの様だ。
情けない……
濃は何がしたい?
決まってるあのふざけた2人組を吹っ飛ばすのだ。
……しかし今の濃はただの道化しかない。
……濃は。
……あそこにいるのは乙女?
どうやら戦っているようだ。
変な細長い奴と。
乙女が乗るはずもない。
助太刀に行こう。
「乙女!……ん?」
二タァと笑う。
……乙女?
……違う。
乙女のようで乙女でない。
圧倒的な違和感が濃を襲う。
なんだ? これは?
「気をつけろ! その女は最早怪人だ! 殺し合いにも乗っている!」
怪人だと?
「ばか……ぬぉ!?」
馬鹿なといおうとした瞬間刀が振るわれる。
濃は必死に避け難を去った。
……まさか。
墜ちたのか。
乙女が。
あの乙女が。
こんな怪物に。
ふ。
ふふふ。
この
「馬鹿者があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
吼える。
ただ単純に。
この愚か者に。
いいだろう。
今濃がやるべきことが一つ決まった。
「成敗してくれるわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
乙女。
お前を成敗する!
この橘平蔵の名にかけて!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『つまり……この星をくばればいいんだな……わかった……俺に任せな』
『はい。お任せください』
『ありがとうございます九郎さん、美希さん』
俺はぶつかった少年、理樹と情報交換してその作戦を聞いた。
その作戦に俺は断る事もなく乗った。
情報を得ることは大事だしいつまでも服ばっか探してられない。
しかし……理樹がまだ浮かない顔をしている。
恐らくそれは話に出たアサシンという者。
彼の身代わりになったらしい。
励まさないと……
「り……」
『グガアアアアアアアア!?』
「ハサン……さん!?」
突然トランシーバーから声が聞こえる。
悲痛な叫び。
恐らくその理樹の仲間の声。
理樹はどこか迷って。
迷って。
それ一気に振り払うかのように頭を振って。
こっちを向いた。
その顔を決意に満ち溢れていて。
でも何処が儚げで。
「九郎さん……一生のお願いがあります」
「……なんだい?」
彼がその言葉と共に出したのは沢山のあの星と一枚の紙と沢山の手紙。
それが意味するのはおそらく
「この作戦を……全部貴方に託します。その紙に全容が……お願いできますか?」
「……もしかして?」
「お願いできますか?」
俺は即答できないと思った
……だけど。
彼のその顔をみたら断る事ができなかった。
出来る訳ないだろうが!
そんな死に行く様な顔をして!
「いいぜ……まかせろ!」
「九郎さん!?」
「……ありがとうございます……ありがとう……では」
理樹君が一礼をして去ろうとする。
俺はそれを止めて。
「何処に行くんだ」
「……捨てられませんから……大切な仲間ですから」
彼はそういって足早にさって行く。
……馬鹿野郎が。
俺は彼に加勢しようとついていこうとする。
しかし
「理樹……お……」
「九郎さん……止めたほうがいいですよ」
「どうして!?」
「彼の思いを犠牲にするんですか? 九郎さんに全部託したのに」
足が。
止まった。
動けなかった。
理樹は俺に作戦全部を託した。
自分は死ぬつもりで。
もし俺が行ったらどうなる?
彼の思いを踏みにじる事になる。
でも彼を見殺しにするのかよ、俺は。
俺は。
俺は。
「畜生オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
吼えた。
ただ。
ただ。
どうしようもない選択肢を天秤にかけられて。
ただ
吼えた。
【B-7ドーム付近 1日目 午前】
【大十字九郎@機神咆吼デモンベイン】
【装備】:手ぬぐい(腰巻き状態)、ガイドブック(140ページのB4サイズ) キャスターのローブ@Fate/stay night[Realta Nua]
【所持品】:木彫りのヒトデ12/64@CLANNAD アリエッタの手紙@シンフォニック=レイン
【状態】:背中にかなりのダメージ、股間に重大なダメージ、右手の手のひらに火傷。
【思考・行動】
0:理樹の作戦を継ぐが……畜生!
1:電車に乗って南下し、アルと桂、奏を捜索する
2:蘭堂りのと佐倉霧も捜索
3:サクヤの作戦に乗り、可能な限り交流を広げる
4:人としての威厳を取り戻すため、まともな服の確保
5:アル=アジフと合流する
6:ドクターウエストに会ったら、問答無用で殴る。ぶん殴る
【備考】
※神宮司奏・浅間サクヤ・山辺美希と情報を交換しました。
※第二回放送の頃に、【F-7駅】に戻ってくる予定。
※着物の少女(ユメイ)と仮面の男(平蔵)をあまり警戒していません。
※理樹の作戦を全部聞きました。彼の作戦をつぐ気です。
※理樹を助けに行くかは後継の書き手次第です。
【理樹のミッション】
1:電車を利用して、できる限り広範囲の施設を探索。
2:他の参加者と接触。
3:参加者が対主催メンバー(以下A)であり、平穏な接触が出来たらならAと情報交換に。
4:情報交換後、Aに星(風子のヒトデ)を自分が信頼した証として渡す。
5:12時間ごと(3時、15時)にAを召集し、情報やアイテムの交換会を開催する。第一回は15時に遊園地を予定。
6:接触した相手が危険人物(以下B)であり、襲い掛かってきた場合は危険人物や首輪の情報を開示。興味を引いて交渉に持ち込む。
7:交渉でBに『自分が今後の情報源となる』ことを確約し、こちらを襲わないように協定を結ぶ。
8:Bの中でも今後次第でAに変わりそうな人間にはある程度他の情報も開示。さらに『星を持っている相手はできるかぎり襲わない』協定を結ぶ。
9:上記の2〜8のマニュアルを星を渡す時にAに伝え、実行してもらう。
なお、星を渡す際は複数個渡すことで、自分たちが未接触の対主催メンバーにもねずみ算式に【ミッション】を広めてもらう。
10:これらによって星を身分証明とする、Aに区分される人間の対主催間情報ネットワークを構築する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
全く使えないですね。
九郎さんの絶叫を聞きながら思う。
彼をこのまま行かせてもよかったのですが。
まあとりあえずは引き止めてみました。
正直どっちでもいいです。美希的には。
行くのならさよなら。
行かないならよろしく。
ただそれだけ。
にしても正義馬鹿は本当勘弁して欲しい。
作戦とかいわれてもそんな危険性の高いやつに乗るわけがないです。
まあともかくは九郎さんの選択を待つとしますか。
さてさてお役に立ってくれるとありがたいのですけど……
どうでしょうか?
【B-7ドーム付近 1日目 午前】
【山辺美希@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
【装備】:投げナイフ1本
【所持品】:支給品一式×2、投げナイフ4本、ノートパソコン、MTB
【状態】:健康、呆れ
【思考・行動】
基本方針:とにかく生きて帰る 集団に隠れながら、優勝を目指す
0:九郎が行くなら捨てる。九郎が行かないなら暫く行動。
1:とりあえず九郎と行動を共にする
2:太一、曜子を危険視
3:刀を持った人間が危険だと言う偽情報を、出会った人間に教える
【備考】
※ループ世界から固有状態で参戦。
※つよきす勢のごく簡単な人物説明を受けました。
※理樹の作戦に乗る気はない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ただ走る。
走る。
……もう後悔しない為にも。
ハサンさん。
……絶対諦めない。
僕は。
二度と取りこぼしたくはない!
ハサンさんが見えた。
今怪物に刀を向けられ振り降ろされようとしている。
動け。
走れ!
力を貸して。
謙吾!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
僕は謙吾のバットを怪人に振るった。
バットは怪人の肩に当たりよろめいた。
その瞬間
「はあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
得体の知れないおじさんが拳を怪人に振るう。
怪人は思いっきり吹っ飛び近くの電信柱にぶつかった。
これで一安心。
「リ……リキ殿……なぜ?」
ハサンさんが驚き僕に聞く。
決まってる。
答えなんて。
「仲間だから! 信頼してるから! 捨てられないんだ! 互い協力し合って助け合う! それがリトルバスターズなんだ!」
だから!
宣言する!
「リトルバスターズのリーダーとして命ずる! 皆で協力してあの怪人を倒す! 絶対仲間は殺させない!」
そうだ! ハサンさんもおじさんも皆!
生き延びるんだ!
絶対だ!
「マス……いや、リーダー。御意」
「ふんっ……小僧気に入った……任せろ」
うん。
さあ。
行こう。
いつものあの掛け声で!
「ミッションスタート!」
【B-7駅付近 1日目 午前】
【チーム:ANOTHER BOYS DON'T CRY】
【直枝理樹@リトルバスターズ!】
【装備】:カンフュール@あやかしびと −幻妖異聞録−、生乾きの理樹の制服、トランシーバー 謙吾のバット@リトルバスターズ!、
【所持品】:支給品一式、
聖ミアトル女学院制服@Strawberry Panic!、、女物の下着数枚
【状態】:健康、少し寒気
【思考・行動】
基本:ミッションに基づき対主催間情報ネットワークを構築、仲間と脱出する。殺し合いを止める。
0:怪人を倒す。
1:真アサシンと協力し、リトルバスターズの仲間を探す。 彼を信頼する。
2:ドーム捜索後、駅、大学の順番に捜索
3:葛木宗一郎、高槻やよい、プッチャンと協力する。
4:真アサシンと敵対関係にある人には特に注意して接する。
5:首輪を取得したいが、死体損壊が自分にできるか不安。
6:九郎さんに期待
【備考】
※参戦時期は、現実世界帰還直前です。
※アサシンの真名を知りました。。
※黒須太一を危険視。静留と知り合いについて情報交換しました。
※トランシーバーは半径2キロ以内であれば相互間で無線通信が出来ます。
※棗恭介がステルスマーダーである可能性を懸念しています。
※名簿の名前を全て記憶しました。
※博物館に展示されていた情報をしました獲得しました。
※高槻やよい、プッチャンの知り合いの情報を得ました。
※九郎に作戦を託しました。
【真アサシン(ハサン・サッバーハ)@Fate/stay night[Realta Nua]】
【装備】:バルザイの偃月刀@機神咆哮デモンベイン、木彫りのヒトデ22/64@CLANNAD、トランシーバー
【所持品】:支給品一式
【状態】:右腕(宝具)切断
【思考・行動】
基本:無理せず自己防衛。生存のために協力。
0:怪人を倒す。
1:理樹を信頼し、協力する。
2:ただし理樹の信念が折れた(優勝を目指す)なら殺害。それまでは忠義を尽くす。
3:気配を隠しながら周囲を監視する。他の対主催遭遇時は姿を現す?
4:理樹およびリトルバスターズメンバーに興味。
5:死体を発見したら、理樹の代わりに首をもいで首輪を回収。
【備考】
※参戦時期は、桜ルート本編死亡後です。
※右腕の喪失により、妄想心音が使用不可能です。 制限に気づきました。
※木彫りのヒトデを星だと思っています。説明書には「木彫りのヒトデ。参加者贈呈用」と書かれています。
※トランシーバーは半径2キロ以内であれば相互間で無線通信が出来ます。
【橘平蔵@つよきす -Mighty Heart-】
【装備】:なし
【所持品】:マスク・ザ・斉藤の仮面@リトルバスターズ!
【状態】:粉まみれ、肉体的疲労(大)左腕に二箇所の切り傷
【思考・行動】
基本方針:ゲームの転覆、主催者の打倒
0:怪人を倒す
1:女性(ユメイ)を探す?
2:協力者を増やす
3:生徒会メンバーたちを保護する
4:どうでもいいことだが、斉藤の仮面は個人的に気に入った
【備考】
※自身に掛けられた制限に気づきました。
※遊園地は無人ですが、アトラクションは問題なく動いています。
※スーツの男(加藤虎太郎)と制服の少女(エレン)全裸の男(九郎)をを危険人物と判断、道を正してやりたい。
※乱入者(美希)の姿は見ていません。わかるのは女性だったことのみです。
※第一回放送を聞き逃しました
※真人のプロテイン@リトルバスターズ!が駅のホームにばら撒かれました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ああ、おなかが減った。
さっさと食べたい。
目の前にある料理は。
おいしそうな大きな肉。
小ぶりの締まった肉。
骨ばっかりだけどしゃぶるとおいしそうな肉。
さあ。
食べよう。
ただ。
食べて。
飲んで。
いらない物を。
吐いて。
出して。
泣いて
笑い。
そして。
生きて。
いつか。
死ぬ。
それが弱肉強食。
それがスベテ。
それがオワリ。
さあ少し早いがランチにしようか?
ランチタイムの時間だよ。
【B-7駅周辺1日目 午前】
【鉄乙女@つよきす -Mighty Heart-】
【装備】:斬妖刀文壱@あやかしびと −幻妖異聞録−、干将・莫耶@Fate/stay night[Realta Nua]
【所持品】:真っ赤なレオのデイパック(確認済み支給品0〜1)、ドラゴン花火×1@リトルバスターズ!、霧の手足
【状態】:狂気、鬼、肉体疲労(小)、空腹
【思考・行動】
0:ランチの時間だ
1:自分が強者である事を証明する
【備考】
※アカイイトにおける鬼となりました。
身体能力アップ、五感の強化の他に勘が鋭くなっています。
投下終了しました。
誤字脱字矛盾ありましたらお願いします。
タイトルは
「これより先怪人領域-another-/ランチタイムの時間だよ」です
理樹とハサン先生のカップルが2ndで一番綺麗な恋愛をしているなぁ。
燃える展開…なんだけど
すっげぇ悲壮感漂ってるのはなんでだろ?
ともかくGJ
投下乙です
理樹もハサン先生もカッコイイ!
なんかもうラスボス戦前のテンションだぜ
おまいら、リキは男だってばw
それとも何か?
ハサン先生を肉体改造スキルで女にしようというのかい?
乙女さんの右腕、胸でも移植すればそれっぽくはなるだろうが。
それはともあれGJ。
霧って死んでたんだな。
誰もテンプレ直してないからまだ生きてると勘違いしてた
皆様投下乙です
>Mu氏
投下乙です
単独行動が多かった太一だけど……さてどう出るか
此処で何らかの友好関係を築けなきゃ、もう孤立死しそうだぜ……w
>MY氏
投下乙です
それぞれのキャラの思考が良く伝わってきて良かったです
ってか引きのタイミングが上手くて、続きが気になり過ぎる……w
>WA氏
九鬼先生格好良い
もう空気流なんて呼べない……w
正面から戦えば九鬼先生圧倒的優位っぽいけど、なごみ、禁止エリアの存在が先の展開を不明瞭にしているね
続きの気になる良繋ぎ、GJでした
>wY氏
ワールドw一人称視点描写の地の文の時点で、思考が自己中過ぎて吹く……w
ツヴァイは暗殺者っぽくなってきたなあ
ロワでは貴重なタイプのキャラだし、今後に期待大
そして言葉様……凄過ぎる、怖すぎるw
>aw氏
ユメイさんの流されっぷりが、何となく渚砂を彷彿とさせるなあw
後個人的に、『あーん』についての千華留様の熱弁で吹いた……w
>Uc氏
理樹とハサンコンビの絆が良いなあ……
戦力的に考えれば理樹達圧倒的優位だけど、乙女さんも鬼装備なうえに悪鬼化しつつあるみたいだからね
続きが気になる所
皆様投下乙です!
>aw氏
恭介たちの偽装に気づくとは……華留様の鋭さは以上
そしてあ〜んされることに慣れてるってのに地味に吹いたwル・リムの聖母すげぇw
ユメイさんは支給品の豊富さが異常wメガバズにRPGってどんだけ大艦巨砲主義な支給品だw
>Uc氏
乙女さんの怖さと強さが異常です。ランチタイムの時間てアンタまだ腹ペコなんすかwww
ハサン先生は相変わらずカッコいい、理樹君は理樹君なりに一生懸命頑張ってる、館長はようやく活躍の場を得た
裸王は裸王、ミキミキはリアリスト。次の展開に期待、以上!
もう一度、投下お疲れ様でした!
寝てる間に投下乙です!
支援できんで申し訳ないです
>aw氏
ユメイさん流されすぎ!
はやく桂ちゃんに合流してしっかりして欲しいところですw
1カ所、オハシラ様状態から受肉したユメイさんが腕時計見てる描写に違和感がありました
>Uc氏
ちょwww
九郎にミッション託して強敵に立ち向かっていくってコレ死亡理樹君フラグ!?
いや、先に行けのハサン先生も死亡フラグクリアして援軍2人得てるから大丈夫!?
次の書き手の人、頑張って!
皆様投下乙です
>aw氏
千華留様がいい味出してます、やっぱり頭の回転の良さも持ち味ですね
女の子三人どう流れていくのか楽しみ
>Uc氏
おお、九郎にようやくまともな役割がw
ハイスペックな面子の揃ったバトルに繋がりそうで次に期待です
>aw氏
渚砂が死んでしまったがストパニラス1千華留様が輝いている。
見事な考察そして戦闘力に欠けるのが難ですが
貴重な普通の対主催集団
>Uc氏
このバトルの続きは気になるぅぅぅぅぅ
もう予約入ってるしどうなることやら
……とても綺麗な街ですね」
朝という時間を過ぎ太陽が上り始めた頃、紫色の長髪をした少女、神宮司奏は西洋風の街を歩いていた。
彼女が歩く場所は見ると市場がある広場のような所だろうか。
本来あるべきはずの喝采は面影もなく今はただひっそりと太陽の光を浴びてるだけ。
何か食べ物が売っていそうな屋台、色取り取りの綺麗な花がある花屋さんなどが所狭しと並んでる。
しかし、そこにいるべき人はいない。
これこそ今のこの異常を語っているようだ。
(りの達を探す為、街中に出ましたけど人一人っ子居ませんね)
奏は九郎と合流する為に電車に乗ることも考えた。
なぜなら独りで行動するのも奏のような力がない人間が危険だと思ったから。
だけど少なくとも第二回放送にも慌てなくても合流できる。
そう思い奏は多少のリスクを負うことを覚悟してりの達を探す事にした、少しでも早く会いたいから。
でも今の所誰も見つからずただ歩き回ってるだけだ。
しかし誰かが居たのは確かである事を確認する事ができた、なぜなら
(放置されてた腕……血……きっと戦闘が……)
歩き回っている時、人の腕と血痕を見つけたのだから。
幸い男の腕の様だったからそれがりのではない事が理解できたと同時にそう思った自分に嫌悪感を抱いてしまう。
(りの……どうか無事でいて)
願うのはただ、りのの無事のみ。
あんなか弱いがが生き残る事ができるのかとりのは不安で不安でしかたがない。
奏の頭の中がその不安に埋め尽くされてく時、突然無機質な音が鳴る。
――ピッピッピッ、
「……え?」
何処かで聞いた音。
それはあの時の事。
主催者の2人が広い会場で首輪を爆発させようとした時の事。
あの少女から鳴り響いたもの。
そしてそれは今度は奏の首輪から鳴っているのだ。
(え……? どうして? なんで? 私?……え?)
奏は理解できない。
余りにも突然に襲い掛かる死への誘い。
奏は自分が何をしたか理解できないままただパニックに陥っていく。
その時だった。
――貴方は禁止エリアに進入しました。後30秒後に爆破します。それまでに禁止エリアから退避してください、カウントダウン開始。30……29……28……
また無機質な声が響く。
ここで奏はやっと理解する、禁止エリアに進入した事に。
きっと考えている間に知らずの内に侵入してまったんだろう。
その後のかなの対応は早かった。
「急がなきゃ……!」
直ぐに回れ右。
そして凄まじいスピードで猛ダッシュ。
――ピッピッピッ、
無機質な音が響く。
奏は走る。
目の前に映る家がどんどん変わっていく。
彼女は生きる為に精一杯。
走る。
走る、ただ生きるために。
そして。
――ピッピッピッ………………
止まった、無機質な音が。
死へと誘うあの忌々しい音が。
奏は禁止エリアから脱出する事ができたのだ。
それを理解した瞬間
「ハッ……ハッ……ハァ――――! 良かった……」
盛大に息をついた。
それはまさしく生への安堵。
自らの失態とはいえ少しでも死への階段に登っていたのだから。
奏は生きている事を実感しただ良かったとただそう思う事ができた。
(……気をつけないと……こっちが禁止エリアなら今同じ場所にある大聖堂に行って見ましょうか)
奏は自分のミスを戒め次に行く所を決める。
次に向かうと決めたのは大聖堂。
地図に載るぐらいなのだから何かあるはずと奏が推測したからだ。
そう指針を決めたの事で奏は歩き出す。
正直、未ださっきの死への恐怖は残っている。
だがここでとどまってる訳にはいかないから。
そう思い奏は歩き出す、りのたちを探す為。
(……それにしても……何故あそこが禁止エリアに指定されたのかしら?)
奏は道すがら先程踏んでしまった禁止エリアについて思慮をめぐらす。
指定された場所は二箇所。
そして今回ふんだのは街中の禁止エリア。
何故指定されたのだろうかと。
(考えられるのは二つ、まず一つ目はそこに人がいなかったからかしら)
一つは単純に人が居なかったから。
まず真っ先に人が居る所を指定しても仕方ないと。
主催者にとっては殺し合いをしてほしいのだから、わざわざ沢山集まっている所にすると散ってしまって意味がない。
だから関係ない何処でもいいエリアにした。
そう奏は考えた。
(二つ目は……ズバリそこに隠したい何かがあった)
二つ目はそこに何か隠したいものがあったから。
突飛な案だが考えられるものである。
主催者2人、その2人が参加者に見られたくなくて隠したいもの。それは何かは理解できないがそれがそのエリアにあるとする。
ならどうすれば簡単に隠すことが出来るだろうか?
簡単だ。
禁止エリアに指定すればいい。
こうすれば、参加者は2度とそこにいけなくなる、それを見ることも出来なくなる。
(でも……机上の空論ね……とりあえず頭の隅にでも置いておきましょう)
とりあえず今考えても机上の空論。
そう奏は考えて大聖堂を向かう事を急ぎ始める。
そして20分ぐらい経った頃だろうか。
奏はついにそれを見つけた。
「……なんで半壊してる? ここで戦闘でも?」
ただし半壊の状態で。
恐らくは言葉を絶するほどの建築物だったのだろう。
まだ残っているかなり複雑なステンドグラスからそれは推測できる。
だが今はその一部には大きな穴が開き絶妙なバランスを崩してしまってる。
奏はこれが完璧だったらきっと息を呑んで感動してだろうと思った。
そう思うととても残念で仕方がない。
しょうがないとそう区切りをつけて大聖堂の中に入る。
「……中もひどい、よっぽど激しい戦闘が……」
中もひどいものだった。
壁に穴はあき、椅子は吹き飛び、オルガンも倒れている。
本来なら厳かであっただろう大聖堂のイメージは全く残っていない。
本来禁忌であるはず血ですら流れている。
それを見て奏は溜め息をつく。
「……ここも戦闘が……こんなにも殺し合いに乗っている人が多いのかしら……あら?」
そこで奏に目に付いたものが一つ。
牧師が本来なら説教する場所であろう教壇。
それは今は倒れているのだがそこの床に扉が隠されていた。
奏は不審に思いそれに近づく。
「何でこんなところに扉が?……隠しておいたのかしら」
奏が調べてみよう扉を開けた瞬間の事。
「……え? きゃ!?」
突然扉の先から飛び出す光の奔流。
その光は奏を包みやがて収束していく。
光が収まった瞬間にはもう奏はそこにいなくただ先程と変わらない静かな大聖堂しか残っていない。
奏を包んだもの。
それはくずかごノートに書かれていたヒント。
『今にも政略結婚が行われようとしたその時、秘密の抜け穴を通って王子様は大聖堂からお姫様を連れ出すことに成功したのでした』
そう大聖堂の秘密の抜け穴。
それを奏はみ付けたのだ。
最もは本人は気付いてないのだが。
果てして。
奏が辿り着く先は希望か。
それとも絶望か。
まだそれは誰も分からない。
【F-3 大聖堂/1日目 午前】
【神宮司奏@極上生徒会】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式。スラッグ弾30、ダーク@Fate/stay night[Realta Nua]、
SPAS12ゲージ(6/6)@あやかしびと −幻妖異聞録−、不明支給品×1(確認済み)
【状態】:健康。爪にひび割れ
【思考・行動】
0:きゃあ!?
1:自分にしか出来ない事をしてみる。
2:蘭堂りのを探す。
3:できれば、九郎たちと合流したい。
4:藤野静留を探す。
5:大十字九郎に恩を返す。
【備考】
※加藤虎太郎とエレン(外見のみ)を殺し合いに乗ったと判断。
※浅間サクヤ・大十字九郎と情報を交換しました。
※第二回放送の頃に、駅【F-7】に戻ってくる予定。
※ウィンフィールドの身体的特徴を把握しました。
※主催陣営は何かしらの「組織」。裏に誰かがいるのではと考えています。
※禁止エリアには何か隠されてかもと考えてます
【大聖堂の抜け穴】
教壇の裏に隠されています。
扉をあけると参加者をランダムでどこかの施設に送ります。
何処に行くかは後継の書き手様しだいです。
投下終了しました。
誤字脱字矛盾ありましたらお願いします。
タイトルは
「光の先には?」です。
投下乙
ワープ施設ですか、さて誰がどこにいくことになるのやら
投下乙です
これで奏会長が動きやすくなりましたね
投下乙です!
爆弾付属食料といい、氏ならではぶっとんだナイスアイディアだw
くずかごノートの伏線を活かしつつ、奏がグッと動かしやすくなったよー
投下乙です
奏会長はどこにでますかねえ
今まで影の薄かった会長の今後に期待!
記憶を無くした少女、ファルシータ。向かった先は娼館。火が見えるにも関わらず向かった理由は、単なる興味本位か、それとも人に会いたいが為か。
身体に疲労は残っているが、普通に歩く分には問題ないらしかった。
目的地に近づくにつれて、その全容が見えてくる。同時に、建物だった場所の状態が状態だけに、彼女の警戒心が強くなったのは言うまでもなかった。
「……何よこれ」
目的地に着いた彼女は言葉を失った。確かに何かが建っていた形跡はあるものの、それはすでに焼け落ち、形を成していなかった。
何かを探そうとしても、そこにあるのはガレキの山。それが何かを確かめようとしても、炭化したそれらはすでに意味を持たないゴミにすぎない。
「一体、ここで何があったのよ。何が…どうなってるのよっ!」
動揺。そしてそれを表すかのような震える声。
今この場で何が行われているかを知っている者にとっては、そこで何かがあった事は察しがつくかもしれない。しかし、記憶の無い彼女にとっては、この光景は自身をを混乱させる要因の一つでしかない。
とりあえず彼女は探索を始めた。こういうことが起こった原因がまだ残っているかもしれないから。
具体的に何を探していいかは自分でも分からない。しかし、人間というものは、原因が分からないものに恐怖する。その恐怖を取り除く為に理解しようとする。
通常なら見向きもしなかったかもしれない。だが、彼女も恐怖を取り除こうとするが為に、普段ならしないような行為をしてしまったのかもしれない。
そして。彼女は見つけてしまった。
最初は何かの人形だと思った。いや、そう思いたかった。けど、それは人形の言葉で表せる程簡易なつくりじゃなかった。
ヒトとしての原型はあったけど、あちこちが焼け、それからは肉の焦げた匂いがした。
首から上はなく、その切断面は焼けて血も止まっていたけど、その光景はとても見られたものじゃなかった。胃から嫌なものがこみ上げてくるのを感じ、私は無意識のうちに口に手を置いた。
「女の子…?」
体中黒ずんではいたものの、体つきから見ても多分そう。問題は、何故彼女がこういう状況になっているのか。
私が目覚めた時も、体に何かしらの暴行を受けた様子が見られた。もしかすると、近辺に変質者でもいるのかもしれない。相手を殺す事すら躊躇しないような人間が。
すでにほぼ全てがガレキと化していたので、特に得られた物は無かった。しいて言えば、建物を燃やし、人を殺す事すらなんとも思わないような人間がいるかもしれないと思った事くらい。
「もう用はないわね。…行かなくちゃ。」
言ってから彼女は気づいた。何故こんな事を言えるのか。普通は弔いの言葉でもかけるべきではないのか。
つい先程にも同じような事があったし、その時は別に気にかける事でもないと思っていたが。ふと彼女は考えた。もしかして、記憶を無くす前の自分の性格が関わっているのではないか。
「もしそうだとすると、…私は他者を利用し、価値の無い存在は切り捨てる。そういうタイプの人間かしら。随分と嫌な女ね。それに、彼女の事を言ってられないわ。記憶も無く彷徨うなんて、人形が彷徨うのと同じだもの。早く思い出さないと」
自分の独り言に自嘲気味に笑うと、彼女はその場を去っていった。名も知らない少女に哀悼の意を持ちながら。
【C-2 娼館跡地 昼】
【ファルシータ・フォーセット@シンフォニック=レイン】
【装備:包丁デッキブラシ イリヤの服とコートFate/stay night[Realta Nua] 】
【所持品:リュックサック、救急箱、その他色々な日用品、ピオーヴァ音楽学院の制服(スカートがさけている)@シンフォニック=レイン 】
【状態:重度の記憶喪失、頭に包帯、体力疲労中、精神的疲労中、後頭部出血(処置済み)、頭痛あり】
【思考・行動】
基本:自分の記憶を取り戻したい パパとママを探したい
0:パパ……ママ……
1:東へ向かう。
2:自分のことを知っている人間から自分についての情報を得たい。
3:男性には極力近づかないようにする。
【備考】
※ファルの登場時期は、ファルエンド後からです。
※頭を強く打った衝撃で目が覚める前の記憶を失ってます。
※断片的に気絶前のことを断片的に覚えている可能性もあります(例として“他者を利用する”など)
※当然バトルロワイアルに参加していること自体忘れてます。
※教会に倒れていたこととスカートが裂けてたことから、記憶を失う前は男性に乱暴されてたと思ってます。
※激しい運動をすると立ちくらみがする状態です。
※恋人がいるのと歌を思い出しました。
※少女を殺した相手=娼館を焼いた人間(それが男性だと思っている先入観有)だと思っています。少女=小牧愛佳だとは分かっていません。
投下完了。
誤字や修正等ありましたら、よろしくお願いします。
タイトルは「記憶無き少女、彷徨う」です。
投下乙!
ファル様、徐々に思い出してきてるな……
それにしても、今のファル様は何処か危なくて目が話せないですねwww
209 :
(代理):2008/05/07(水) 15:22:11 ID:qQL/TI8q
往こう、苦難と逆境と熱血と不屈に彩られた王道を ◆CMd1jz6iP2
「なんだったんだよ、この機械……あんな悲鳴聞かれたら危ないじゃねーか」
フカヒレは、悩んだ末に煙の発生元に向かうことに決めた。
その途中で、渚を倒して得た戦利品を確認しようとしたのだ。
最初に出てきたのは玩具の銃。カッコイイからという理由で腰のポケットに刺した。
そして次に、ろくでもない支給品を触ってしまい、フカヒレは支給品の確認をやめてしまった。
変に触って危ないものだと怖い、という理由で。
「君子危うきに近寄らずってな。うん、俺は凄い、俺は頭いい!」
宝を目の前にしての愚行を、正す保護者はもう居ない。
「にしても……こりゃあ、酷いな」
煙を頼りに着いた娼館は、やはり燃えていた。
誰もいない。いたとしたら、もう焼死体になっているだろう。
「勿体無いことしやがって。せっかく俺のテクで女をメロメロに――」
そう思った途端、倒した女の表情が、フカヒレの脳裏を掠めた。
「……そ、それより、こんな場所にいたらヤバイよな?」
この煙に引かれて集まってくるのは自分だけとは限らない。
どこに移動しようか考え――何かを引き摺った跡を見つけた。
「早く行くぞ、怪我の治療したいのはお前なんだろ」
「う、うん。ゴメン、誠さ……痛ッ……!」
ようやく妄想から目覚めた真が、起きて目にしたのは唇が触れ合うほどに近くに寝ている誠だった。
その状況に、驚き、歓び、色々と幸せ一色になった真の感情も、今は暗い。
なにやら、目覚めてから誠の反応が冷たいのだ。
210 :
(代理):2008/05/07(水) 15:23:03 ID:qQL/TI8q
(怒ってるのかなぁ、肝心なときに迷惑かけたから……)
誠とドライを押し飛ばして、真は意識を手放した。
あれからどうなったのか、詳しいことはわからない。
少なくとも、背中の火傷や軽い怪我で済んでいるのは、誠のお陰なのだと真は理解した。
それも、真が二人を救った上でのことなのだが。
(あの女の人は、殺し合いを止めたわけじゃない……だとしたら、あの後酷い目にあったんじゃないかな)
誠のことを良い人だと信じる真は、自分に非があるのだと信じて疑わない。
「おい、早く……あ」
イライラした誠の声が止まる。
足の痛みを堪えて歩こうとする真の姿を見て、一瞬でも悪いと思う気持ちは、誠にもあった。
「……手、貸すよ。その方が、よっぽど早く着くからな」
明らかに伝わる「嫌々」という声に、真は一瞬泣きそうになるが、耐える。
泣いて、誠をこれ以上困らせるわけにはいかないと、感情を押し殺した。
そうして、民家を後にしてほんの数分。
真を引き摺った跡を追いかけてきたフカヒレと、二人は出会った。
「俺の名前は鮫氷新一。仲間には尊敬の念を込めてシャークと呼ばれてんだぜ!」
「シャークって言うか……フカヒレって感じだよな」
「よろしく、フカヒレさん」
「どうなってんだーーー!!」
……などという自己紹介も終え、三人は情報交換を始めた。
211 :
(代理):2008/05/07(水) 15:24:14 ID:qQL/TI8q
「アインとツヴァイって奴を探した女? 間違いなくそいつはドライって奴だ。
俺を襲ったツヴァイって奴もドライって女のこと探してたぜ、追っ払ってやったけどな!」
燃えた娼館での詳細を聞いたフカヒレは、その女がツヴァイの仲間だとすぐに気がついた。
「なら、アインって奴も殺し合いに乗ってるんだろうな。あんなのが、まだ二人も居るのかよ……」
憂鬱そうな誠の声に、真の表情は暗くなる一方だった。
あそこでドライを殺しておけばと批難されている。
そう言っているかのような、トゲのある口調だったから。
「なんだよ、仲悪そうだなぁ。同じマコトなんだから、仲良くしろって」
「たまたまだろ。まこと、なんて名前どこにでも居るって」
「そ、そうだよ、ね……」
フカヒレは、その気まずい様子から目を逸らすように、名簿に目を通した。
「そ、そういえば読み方同じ奴、結構いるかもな。死んだサクラってのもそうだし、それに、」
ナギサ
「……はっ、んなまさか」
一瞬、最悪の回答が過ぎるが、フカヒレはすぐに忘れることにした。
フカヒレは、話題を逸らすようにディバックからある機械を取り出した。
「ちょっとさ、聞いて欲しいものがあるんだ」
「なんだよ、それ……ICレコーダー?」
誠と真の興味を持ったのを確認して、そのスイッチを押した。
212 :
(代理):2008/05/07(水) 15:25:02 ID:qQL/TI8q
『いやああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』(ドサッ)
『うあああああぁぁぁぁぁ!』(ドカッ)『ああぁ!』(バコッ)
『あああぁぁ!』(ゴッ)『ああぁっ!!!』(メキッ)
『……まことくん……いかないで』
『まことくん』
(パンッ)(ビチュ)──
「これって……」
顔を上げた誠の前には冷たい視線を向けるフカヒレがいた。
その向けられる先は、断末魔の声に真っ青になった真。
「この「まこと」が誰かはっきりしたぜ、この人殺しめ!」
ヒトゴロシ。その言葉に抑えていた感情が表に出る。
涙がこぼれ、嗚咽が漏れ……そんな真を以前慰めてくれた誠は
「……ッ」
真から顔を、背けていた。
事の真相を誠は知っている。
だが、真といることが面倒になってきた誠には、ちょうどいい出来事だったのだ。
真は人殺し。間接的にとはいえ、見殺しにしたのだから変わらない。
そう、真の評価を落として一緒にいる価値が無い人間として見ようとしているのだ。
――めんどうなのはごめんだ、つかれるのはいやだ――
――コトノハも、セカイも、けっきょくは付き合うのがめんどうになる――
213 :
(代理):2008/05/07(水) 15:27:45 ID:qQL/TI8q
ごそごそと自分のディパックから何かを探しているフカヒレ
こいつに同行を持ちかけようと誠は決めた。
真は……どうにでもなると、強引に考えるのを止めた。
勝手に病院に行って、怪我を治すだろうと。
「なぁ、フカヒ……」
ディパックから、日の光に反射する何かが取り出された。
教科書や美術館でもお目にかかれないような美しさ。
陽光を受け、黄金に輝く――最強の聖剣、エクスカリバー。
フカヒレに剣を扱う技術か、剣を振るえる腕力か、そのどちらかがあれば真は脳天から両断されていただろう。
だが、フカヒレのスイカ割りでもするかのような大降りは、足を怪我した真の虚をついてもなお回避できるものだった。
しかし、泣いていた真は反応が遅れる。
「あぅッ!」
僅かに足を切り裂かれ、鮮血と共に真は倒れた。
――でも、本当にそうだっただろうか――
「や、やめて!」
「うるせぇ、73のくせに。真死ね!」
倒れた真に剣を振りかざすフカヒレ。
避けることはできない。無駄だと知りつつ両腕で頭を庇う。
――コトノハと一緒にいることは、そんなに疲れただろうか――
214 :
(代理):2008/05/07(水) 15:28:31 ID:qQL/TI8q
「やめろ!」
その凶行を、誠は後ろからフカヒレを押さえつけ阻む。
「なんだよお前! 殺人鬼の味方すんのかよ!」
「そういう問題じゃないだろ! 人殺しなんて……」
「バカヤロー! 殺されそうになってからじゃ遅いんだよ!
あの女だって、先手を打たないと殺されるところだったんだ!」
その言葉に、誠は離せば振り下ろされるだろう聖剣を見る。
その黄金の刃に、ところどころ点在する黒ずんだ物。その正体は答えを求めるまでも無い。
「お前、人を殺して!?」
「とんだ悪女だったぜ。他人の名前を騙って後ろからいきなりクザッ!
俺が本当の古河渚と出会ってたのが運の尽き、バッサリと倒してやったよ」
俺凄いだろ? とでも言って欲しいかのように得意げに語るフカヒレ。
その一言一言が、誠のフカヒレに対する怒りを爆発させる。
「偉そうに言って。お前こそ殺人鬼じゃないか!」
「は……ふっざけんじゃねー……ぞッ!」
誠の顔面に肘撃ちが入り、あっさりとフカヒレを離してしまう。
多少サバゲーの知識があろうと、誠の力はフカヒレにも及ばなかった。
「お、俺は悪党を倒した正義の味方だ! 人殺しと一緒にすんなぁあぁぁ!」
フカヒレは倒れた誠にエクスカリバーを振り降ろした。
215 :
(代理):2008/05/07(水) 15:29:59 ID:qQL/TI8q
「う、うわぁあああ!」
同じ結果に終わった。
真と同じように、無駄な両腕での防御。
菊地真から伊藤誠へと、黄金の刃の餌食が変わっただけだった。
一瞬が、一分にも感じられる幻覚。
その刹那に、誠は自分の選択を悔やんだ。
逃げればよかったのだ、フカヒレの邪魔をしなければよかったのだ。
対して好みでもない、そんな女。
――でも、それとは別に俺と真は――
――――――――――――
――――――――
――――
遅い。
いくら待っても来ない終わりに、いぶかしむ誠。
そして、恐る恐る目を開いた誠の視界には。
伝説の聖剣を、両手で挟み受け止める真の姿があった。
「真!?」
「う……あぁぁ……ッ!」
悲鳴のような真のうめき声。
フカヒレが必死の形相で力を込めるたびに、剣を抑える真の両手から赤い鮮血が腕を伝う。
切られた足から流れる流血が、勢いを増す。
216 :
(代理):2008/05/07(水) 15:30:47 ID:qQL/TI8q
「この野朗……!」
スペツナズナイフ。柄だけとなったそれを、誠は力任せに投げる。
「あがっ!?」
脳天に直撃し、フカヒレの体が揺らぐ。
その瞬間を、真は逃さなかった。
エクスカリバーの軌道をずらし、自らの身を絶好の間合いへと移動させる。
「ちょ、まっ!」
世界一の格闘家――少なくとも真の世界において――を一撃で沈める威力を有する拳。
ドライのようなプロが相手なら別として、本来空手の有段者なら避けるべき、素人への本気の一撃。
その手加減を、真は初弾からやめるッ!
「たわばっ!」
顔面を殴られたフカヒレは、宙をちょうど三回転して地面に落ちた。
黄金の剣も、真の足元近くの地面に刺さり。それとほぼ同時に、真も崩れ落ちた。
「しっかりしろ、真!」
真の体を抱きとめる誠。
「くそ、足の出血が……なんとかしないと」
真を寝かせ、誠が走る。
向かう先は、フカヒレの吹っ飛んだ直線軌道上。
その途中に、空中遊泳中に落としたディパックがあったのだ。
217 :
(代理):2008/05/07(水) 15:31:54 ID:qQL/TI8q
「なんだ、玩具? 他には……よしッ!」
ディパックの最奥にあった支給品を確認し、誠は思わず歓喜の声を上げていた。
捜し求めていた物を見つけて、真の元に戻った。
「真、ちょっと待ってろ。今良い物を……」
「誠さん……ッ!?」
恐怖に固まる真の表情に、引きつりながら誠も後ろを振り向いた。
そこに会ったものとは。
玩具のような銃を持ち、這いつくばったまま睨むフカヒレの姿だった。
とてつもない弱者であるフカヒレ。
しかし、乙女に、館長に、仲間に日頃から愛の暴力を受け続けたフカヒレは、無駄にタフだった。
銃口に光が収束していく様子を見て、玩具ではないと気づいたときには遅すぎた。
引き金が引かれる。
真を担ぐことすら間に合わず、発射された閃光は誠たちに直進し―――
―――ここに。不敗にして無双たる、奇跡の具現によって霧散した。
其の名は
「エクスカリバー!?」
フカヒレがつぶやく。
あれは、俺が正義の味方であるために必要なものなのにと。
あれこそが、俺の勇気の源なのにと。
勝利の剣は、地面に刺さったまま微動だにしない。
絶対不敗の騎士王が持つべき最強の幻想は、主を見限るかのように、ビームライフルの一撃を受け止めきった。
218 :
(代理):2008/05/07(水) 15:33:35 ID:qQL/TI8q
「ま、誠さん!?」
だが、その丈夫さは、神秘的な美しさは、誠の心まで掴んでしまった。
誠は、エクスカリバーを引き抜こうと力を込めるが、抜けない。
その隙は、ビームライフルの二射目を放つのに十分な間だった。
二度目の奇跡はない。
閃光は確実に誠を打ち抜く。
「こん……のおぉぉぉ!!」
真が取り出した、奇妙な機械に阻まれなければ。
あんな玩具のような銃が使えるのだから、これもただの玩具じゃない。
真はその可能性にかけて、誠が拾ってきたディパックから姿を覗かせる、妙な形の機械のスイッチを入れた。
サイバー兵器唯一の迎撃兵器、電磁バリアのスイッチを。
ビームライフルから放たれた閃光が、蚊取り線香のように発生した、螺旋状のバリアに弾き返される。
「うわああああ!?」
フカヒレの頭上を、ビームライフルが通過する。
真もまた、誠と手を重ね合わせ剣を引き抜こうと力を込める。
かつて選定の剣を引き抜いた少女がいた。
彼女ほどの理想を二人は持たない。
何か共通点があるかと言えば、騎士王曰く「ブリテンの名誉の象徴」と同じものを、頭から跳ねさせている程度だろう。
ともあれ、黄金の剣は今度こそすんなりと抜けた。
二人を、新たな主と認めるかのように。
219 :
(代理):2008/05/07(水) 15:34:42 ID:qQL/TI8q
「あっ、あ、あ、ああ!! ま、待てぇぇえ! ドロボー、ドロボー!」
フカヒレが、逃げる二人にビームライフルを構える。
だが、その引き金が引かれることは無かった。
また跳ね返されるのではという恐怖心は、フカヒレに二人を見送る選択肢しか与えなかった。
逃げ延びた二人は、スラム街の路地裏に身を隠した。
「あぐっ、痛……うんん……!」
「悪い、真。でも、痛いのはすぐ収まるから……」
「わ、わかった……ボク、我慢します……ッ!」
「出来るだけゆっくり……いや、さっさとしたほうがいいか?」
「はぅ……早くッ、終わらせて……!」
真のリクエスト通り、誠は素早く動く。
痛みを訴える真の荒い息も、少しずつ小さくなっていった。
真の傷口への軟膏の塗布を、手早く済ませた。
220 :
(代理):2008/05/07(水) 15:36:11 ID:qQL/TI8q
「この薬……本当に凄いな」
「うん、火傷も足の怪我もほとんど痛まない……」
ディパックに入っていた支給品、天狗秘伝の塗り薬。
天狗と聞いて誠が最初に何を連想したかはさておいて、その効き目は絶大だった、
真の背中、足、手のひら。
塗った直後には痛みは治まり、血は止まる。手のひらの傷などほとんど完治してしまった。
「真、ちょっといいか」
「……なんです、誠さん」
真の回復を喜んでくれた誠。これからの話も明るいものだと信じたかった。
「真は……なんで、俺を助けようなんて思ったんだよ。
俺、お前に酷い態度だったの、気がついてただろ。なのに……」
「誠さんだって、ボクが斬られるのを止めてくれたじゃないですか」
「……」
一瞬の間。そして。
「最初は、助ける気なんてなかった」
本音が漏れた。
「少し、疲れた」
「……そういう酷いこと、他の人にも言うんですか」
なんとなく予想していたのか、真は少し悲しげに口を開くだけだった。
「……はっきり言わないと付きまとってくる奴だっているから、さ」
「そういうのを、どちらも傷つけないのが男の仕事ですよ!」
正論に誠も反論する言葉が出ない。
221 :
(代理):2008/05/07(水) 15:37:12 ID:qQL/TI8q
「なんだよ、経験者みたいな発言して……」
「ええ、経験者ですよ。この容姿のせいで、よく女の子に告白されますから。
でも、それを上手くかわして傷つけないのが良い男じゃないんですか?」
「お前本当に女かよ……悪かったよ。キスしたのも、抱きしめたのも含めて、謝る」
「いや、それは……こんな非常識な状況なら何されてもOKかな〜なんて思ってたボクも悪いわけで……」
気まずい空気が流れた。
どちらも押し黙った中、先に口を開いたのは誠だった。
「……そうだよな。俺が悪いから、あんなことにもなったんだよな」
「あんな、こと?」
「真はどんな状況でここに連れてこられたんだ?」
突然の質問に、真は記憶を引っ張り出す。
「……ええと、ボクがアイドルだって言いましたっけ?」
「ア、アイドルって、テレビに出てる!? 初耳だって!」
そこで、真はようやく――まだ、ろくに自己紹介もなにもしていないことに気がついた。
思わず苦笑してしまう。お互いのことも知らないで、半ば恋人気分でいたなんて、と。
「まぁ、その話はおいおいするとして……ボクは、雪歩とトレーニングしてたときですね」
「ゆきほ?」
「ボクの相方です。ユニット組んでいるんですよ。
ボク一人休憩室で休んでいたら意識が遠くなって……どうして、こんなことを聞くんです?」
そう聞くまでもなく、真はなんとなく想像がついた。
誠は、自分が連れてこられたときの状況を話そうとしているのだと。
222 :
(代理):2008/05/07(水) 15:38:13 ID:qQL/TI8q
「桂言葉……西園寺世界、清浦刹那。俺の知り合いはこの三人なんだけどさ。
俺、言葉と付き合ってるんだ」
「へぇ〜……そうなんですか」
何度もキスされ揉まれた真の心境は複雑だ。
だが、その気持ちすら次の発言で吹き飛んだ。
「でも……俺、世界とも付き合ってたんだ」
「……はぁ?」
真の頭の中を持ち歌の「エージェント夜を往く」が再生される。
本当に、今宵だけの夢。
初恋なんてろくなモンじゃない。厳しい現実は真の乙女心を砕ききった。
「言葉より世界の方が好きなんだって、ある時思ってさ。それで……」
「聞いてて気持ちいいものじゃないんで、次に進んでください」
「なんだよそれ……わかったよ。世界と付き合いだしてから言葉とは変な空気になってさ。
それでも、向こうから会いに来てくれて、仲直りしたんだよ」
それで、世界と付き合いつつ言葉ともうまく解決したのか……と真は思ったが、違った。
「どうも……その頃からか言葉がイジメられてたみたいなんだ。
その原因が、俺と会ってたかららしくて……弁当、ひっくり返されたりしたんだよ」
真も、イジメを受けた経験はあるがあくまで子供のイジメ。そこまで陰湿なものではなかった。
業界でよくある、陰湿な嫌がらせの方が近いだろう。
「それを指示してたのが世界でさ。別れて、言葉と付き合いなおすことにしたんだ。
もう絶対に悲しい思いはさせたくないって、本当に思えた」
223 :
(代理):2008/05/07(水) 15:39:12 ID:qQL/TI8q
「……」
真は、どうコメントしていいかわからない。
凄く良いことを言ったと思う。でも、ボクに浮気したよね? と思わずにいられない。
「……俺が連れてこられた時は、事故の直後だった」
「事故?」
伊藤誠。彼が連れてこられた瞬間は、日常が終わった瞬間だった。
「言葉と付き合い直してから、世界のことなんて忘れてた。
駅のホームで、言葉が突き落とされるまで」
誠と談笑していた言葉を、後ろから突き飛ばした世界。
世界もまた、言葉を助けようとした誠と接触しホームから落ちかけた。
言葉を引っ張り上げようとする誠。ホームから半分体を乗り出した世界。
その結末は。
「助けられなかった……!?」
「間に合わなかったんだ。世界はもちろん、言葉を引き上げることだって」
矛盾していると真は思った。
なら、ここにいるはずの世界と言葉は死人ということになってしまう。
「その瞬間までしか、俺の記憶はない。間に合わなかったはず、なんだ」
「でも、こんな凄い薬があるなら……簡単に治したのかも」
そう口にする真自身、本当にそうなのかと疑いを隠せない。
誠の意識は、跳ねられる直前で落ちていたため、最期を覚えてはいない。
だが駅を通過しようとする電車の速度で跳ねられれば、即死どころか原型すら残らないだろう。
即死していたような怪我でも治す。それは死者蘇生の域だ。
224 :
(代理):2008/05/07(水) 15:40:13 ID:qQL/TI8q
「さっきの放送で主催者が言ってたこと、覚えてるか?」
「そういえば……死者がどうとか、褒美だとか……あっ!?」
「……そうなのかもしれない」
死んだ二人は、生き返らせられた。
あの神父の言葉を信じるなら、それが一番可能性としてあるのだ。
「正直……会うのは少し怖い。どうして助けてくれなかったんだって責められるかも。
……そういうこと考えると疲れる。好きなことやって、忘れてたかった」
「だから、ボクに手を出したんですか? 誰でも、良かったんですか」
「ん……そうだよ」
真はテレビで見る「ついカッとなってやった」という心境を理解できそうだった。
「そんなことさせるために、ボクを助けたんですね。
ボク、そんな軽い女じゃありません。恋人がいるなんて知ったら、もう……!」
「わかってるよ。もう、俺も真に……いや、恋人以外に手は出さない」
セカイが凍った。止まった。物理法則や因果律まで狂いが生じたかもしれない。
きっともうすぐ、露店で脳ミソを売り始めるのではないだろうか。
イマ、コノオトコハナントイッタ―――?
225 :
(代理):2008/05/07(水) 15:41:12 ID:qQL/TI8q
誠をよく知る者なら、脳の異常を疑うだろう。
真ですら、誠が女性の体だけで生きている生き物だと気づき始めているのに。
人類最古の英雄王から慢心を。神父からマーボーを取り去るほどに不可能な夢を。
奇跡を信じる100年の魔女でさえ、3回目くらいで諦めかねない幻想を口にした。
「おい真、息してなくないか?」
「ッ……ぷはぁ……! ごめん、しっかりして誠さん。ちょっと疲れてるんだよ、ね?」
「なんでそんな哀れみの目で見るんだよ。違うよ、わかったんだよ」
何をわかったというのだろう。誠なりに考えただろう言葉が紡がれる。
「言葉と付き合って、そのうち疲れた。世界と付き合っても同じだった。
でもさ、言葉をイジメから助けてから……全然疲れなかったんだよ。
イジメから助けた時だってそうだ。疲れるなんて、思いすらしなかった」
その日から、少し面倒なお願いにも、誠は小言をちょっと言うだけで笑い合って付き合えた。
「うまく言えないけど、疲れなくなったのは本当に言葉と彼女になれたからなんだと思う。
他の娘じゃ駄目なんだ。世界でも、誰でも……その時は良くても、きっと疲れて駄目になる」
「……まだ、聞いてないですよ。それなら、どうしてボクを助けてくれたんです!」
「友達だからじゃ、駄目?」
その言葉で。
怒ればいいのか、泣けばいいのかわからない真の感情の波が小さくなった。
「やっぱり変かな、男と女で友達って。仲良くなりすぎると、無理なのか?
世界とも、本当は友達に戻れれば良かった。でも、世界は俺の恋人になりたがってる。
駄目、だよな。どうせ無理だって、離れようとしたのも俺なのに……」
真が、そんなウジウジした誠に拳を突き出す。
226 :
(代理):2008/05/07(水) 15:44:15 ID:qQL/TI8q
殴るのか、と思ったがそうではないらしい。
「へへっ……世界さんとも、きっと仲直りできますよ。
だって、ボクたちっていう前例が出来たじゃない」
「真」
その突き出した拳の意味を知り、誠は自分の拳を真の拳と合わせる。
お互いに笑顔になり、しかし。
「た・だ・し! ボクの乙女心を弄んだ罪は重いですよ! 覚悟してください!」
すぐに真の頭に青筋が浮かんだ。
「うぅ……な、殴るのか?」
「殴ってもいいんですけど、それだと「よし終わり」って同じ間違いしそうなんですよね」
「そんなこと……………………………………………しないっていったろ」
「も、もういいです。殴るかどうかは、ここを無事に脱出してから考えますよ」
不安だ。真は、さっきの奇跡が世界に修正されてるような錯覚さえ覚え始めた。
「よ、よし真。とりあえず病院で薬とか探すぞ。その薬は万が一のために残しておきたいからな」
「はいはい、じゃあ行きましょうか」
真の心に小さな傷を残して、しかし絆を深め、二人は――
「誠君、見つけたでありますよ〜」
進むことを悲しみの悪鬼に妨害された。
「このみ……このみか!?」
「誠君、会いたかったです。さぁ、ファルさんはどこですか?」
誠は、その姿を見て喜びの声を上げた。
このみは、それに笑顔で答えた。
真は、このみに最大限の警戒をした。
227 :
(代理):2008/05/07(水) 15:44:56 ID:qQL/TI8q
その口元は血で染まっていた。
その笑みはドライのそれより危険だった。
その体から放たれる重圧は、ドライのそれよりも黒く重いものだった。
ニヤリと笑いながら、このみは歩み続ける。
動けば殺される。
動かずとも殺される。
この数時間でこのみは、自身の能力の把握をしていた。
どれくらいの力があるのか、どれくらい速く走れるのか。他の能力はないのか。
能力に関しては、傷の再生という嬉しいものがあることを知った。
もっとも深い肩の傷がまだ痛い。大怪我や体の欠損までは救ってくれないだろうと結論付けた。
(でも、このくらいなら大丈夫)
包丁で刺してもいいし、目を潰してもいいかもしれないと、このみは殺害方法を楽しげに悩む。
とにかく、動けなくしてから考えようと歩き出す。
死刑執行者が近づく。
誠に手が届く距離まで、10歩を切る。
9歩、8歩、7歩、6歩、4歩。
「あ、えっ?」
このみが止まる。3歩、2歩、1歩。
「よかった……!」
「誠、君……?」
歩み寄った誠が、このみを抱きしめた。
228 :
(代理):2008/05/07(水) 15:46:02 ID:qQL/TI8q
「食事の後、急にいなくなったから心配してたんだぞ!
血まみれじゃないかよ。怪我、してるのか?」
「あ、あの……ファルさん、は?」
「色々あって、はぐれちゃってさ。無事だといいんだけど」
何一つかみ合わない。ファルを心配する誠、狙うこのみ。
誠を殺すために歩みよったこのみ。このみと会えたのを嬉しがる誠。
「ともかく、このみが無事で本当によかった。もう離れたら駄目だぞ。
俺もさ、その……できるだけ、力になれるようがんばるから」
敵ではない。
誠は敵ではないと、このみは思い出した。
何も知らないのだ、誠は。
ファルがいれた毒のことも、その本性も。
この、敵しかいないセカイの中で、誠だけはこのみの――
「バケモノみたいに強いのもいるんだ。もう離れたら――」
「ニンゲン」だった頃の、このみの味方だったのだ。
「……えへ〜、誠君」
「このみ?」
「……サヨウナラですヨ。「このみ」の、ト モ ダ チ」
軽く、このみは誠の体を押した。
それだけで、誠の体は車に跳ねられたかのように吹き飛ばされた。
「誠さん!」
誠の体を、真が身を挺して受け止める。
229 :
(代理):2008/05/07(水) 15:47:56 ID:qQL/TI8q
「くぅ……!」
「こ、このみ……?」
何が起きたかも理解できないまま、誠がこのみの居た場所を見る。
そこにはもう、誰もいなかった。
桜の花びらのようなリボンだけが、柚原このみのいた痕跡として残されていた。
「なんだよ、これ。まるで……」
「……遺品、みたいだね」
「何言ってるんだよ、真! このみは、今居たじゃないか!」
そう言いつつ振り返り、誠は真が震えていることに気がついた。
「愛佳ちゃんと、同じ制服のあの子……本当に、「元の」このみちゃんだったの?
「それは……」
このみは、あんな力持ちだったのだろうか。
服を捲ると、このみに押された場所にくっきりと手形が残っていた。
防刃チョッキ越しでなければ、骨を痛めたか折っていたかも知れない。
「誠さんは気がつかなかったかも知れないけど……彼女、何かが変だった。
まるで……まるで、人間じゃ」
「真、それ以上言うな」
誠が言葉を遮る。
それ以上聞いてしまえば、誠もこのみが変わってしまったことを認めてしまうだろう。
「そうだとしても、このみは俺たちを見逃してくれた……このみはこのみのままだ。
もし、本当に変わったっていうなら……あの時追わなかった、俺のせいなんだ」
あの時、真を追いかけたようにこのみのことを追いかけたなら、もしかしたら結果は変わっていたかもしれない。
それも、ファルと楽しいことになればという理由で追わなかったのだ。
230 :
(代理):2008/05/07(水) 15:48:32 ID:qQL/TI8q
「なら、どうするの」
真の問いに、誠は答えた。
「……すごく疲れそうだ。けど、どれだけ疲れたってこればかりは構わない。
俺を友達だって言ってくれたこのみを、助けたい」
「ボクも助けたいよ。愛佳ちゃんの友達かもしれない彼女を。それに……」
「それに?」
「……似てたんだ。声の感じが、最後の笑顔が……雪歩と、すごく似てた」
本当に小さな理由。それでも、助けたいと真が思うには十分だった。
「助けよう。俺たちだけで無理なら、仲間を増やすだけだ。
ファルを探して、他にも仲間を作って、このみを迎えてやろう」
少しずつ、変わろうとする誠。
そんな誠を見て、真の心にも熱い何かが芽生える。
初恋は破れ、初恋の人は、思い描いたような人ではなかったけれど。
仲間として、彼の助けとなることを胸に誓った。
そして、真自身も誓う。
ろくに聞かずに逃避した、愛佳の末期の言葉を、今度こそ真は一字一句刻んだ。
(ボクは偶像。この場でのボクは、恋する乙女じゃない。弱い女性を守る王子様なんだ)
愛佳の死の間際に外れた王子の仮面。恐怖に外すことは、けしてしないと誓いを立てた。
二人が向かう地は、病院。
そこに、探すべき人が誰もいないことも知らず、二人は今度こそ進んだ。
231 :
(代理):2008/05/07(水) 15:49:02 ID:qQL/TI8q
【B-3 スラム街/一日目 昼】
【伊藤誠@School days L×H】
【装備:エクスカリバー@Fate/stay night[Realta Nua]、防刃チョッキ】
【所持品:支給品一式(水なし)、支給品一式、手榴弾2つ、このみのリボン
天狗秘伝の塗り薬(残り90%)@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【状態:肉体疲労(中)】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いには乗らない
1:病院へ行く。
2:自分の知り合い(桂言葉、西園寺世界、清浦刹那)やファルとその知り合い(クリス、トルタ)を探す
3:このみに何が起きたかわからないけど、助けたい。
4:信頼出来る仲間を集める。
5:主催者達を倒す方法や、この島から脱出する方法を探る。
6:巨漢の男、アイン、ツヴァイ、ドライ、フカヒレに気をつける。
7:言葉以外の女性に如何わしい事はしない?
【備考】
※誠の参戦時期はエピローグ「無邪気な夕日」の後です。
※言葉と世界は、主催者が蘇生させたのではと思っています。
【菊地真@THE IDOLM@STER】
【装備:電磁バリア@リトルバスターズ!】
【所持品:支給品一式(水なし)、金羊の皮(アルゴンコイン)@Fate/stay night[Realta Nua]、レミントンM700(7.62mm NATO弾:4/4+1)、予備弾10発(7.62mm NATO弾)】
【状態:背中付近に軽度の火傷(皮膚移植の必要無し)、左足に切り傷(歩ける程度)、手のひらに軽い怪我、傷治療中、肉体疲労(中)】
【思考・行動】
基本:誠と共に行動する
1:誠さんの行動方針を支える。
2:女性を守る王子様になる。
3:巨漢の男に気をつける
4:誠さん、本当に自重できるのかな?
5:誠さんは駄目な人だけど、それでも……
232 :
(代理):2008/05/07(水) 15:51:43 ID:qQL/TI8q
【備考】
※天狗秘伝の塗り薬によって休息に外傷を治療中です。どの程度回復するかは次以降の書き手に任せます。
※誠への依存心が薄れ、どういう人間か理解しました。
※愛佳の死を見つめなおし、乗り越えました。
※元の世界では雪歩とユニットを組んでいました。一瞬このみに雪歩の面影を見ました。
【二人の共通備考】
※誠も真も、襲ってきた相手が大柄な男性であることしか覚えていません。
※フカヒレからツヴァイの危険性、渚を殺害したことのみ聞きました。
※電磁バリア@リトルバスターズ!
NYPにより攻撃を反射するバリアを展開する。
NYPの数値によって防御力は増減。
防御力を上回った攻撃は貫通する。
※天狗秘伝の塗り薬@あやかしびと −幻妖異聞録−
出血箇所に塗れば皮膜が張って血は止まり、どれだけ酷い打撲や痣も一晩で治る。
(本編中では身動き取れないほどの打撲も一時間で動けるようになった)
病気には効果がなく、骨折ともなると効果は薄くなる。
頭からつま先まで塗りたくっても三度は使える量。ちなみに無味無臭。
成分は鎌鼬の塗り薬に八咫烏の糞。知っても忘れたほうがいい。
233 :
(代理):2008/05/07(水) 15:52:41 ID:qQL/TI8q
そして、スラム街の中心で、怒り狂う男が一人。
「くそったれぇぇぇ!! このシャーク様を本気で怒らせやがっ……イテェ」
怒鳴った途端、鼻が痛み出した。
フカヒレの鼻は、見事に折れ曲がり、いまだ鼻血が出ていた。
そんな痛みの中でも、フカヒレの顔には笑みがあった。
エクスカリバーを失って涙したフカヒレだったが、ビームライフルが有効な武器だとわかった喜びで忘れることにした。
ただの玩具にしか見えないこれなら、相手の隙を突くこともできる。
さらに、それでも心もとないフカヒレはディパックから一丁の銃を見つけ出した。
それでもまだ不満なのか、足元を探り続け、ナイフの柄とICレコーダーを見つけた。
「あれ、これって持っていかれたようなディパックに……」
考え、二人に聞かせた後ディパックに戻していなかったことを思い出す。
何の役にも立たないかもしれないが、ディパックにしまう。
とにかく使えそうな物は何でも欲しかったのだ。
ほっと一息つくと、鼻の痛みが増してきた。
「薬……たしか、薬が!」
先ほど、武器を探していたとき鎮痛剤とラベルの貼った粉薬を見た。
ディパックをひっくり返すように漁るフカヒレ。
その音に、その声に。
234 :
(代理):2008/05/07(水) 15:53:26 ID:qQL/TI8q
「ク ス リ ?」
引かれた悪鬼が、そこにいた。
「チッ、74か。まぁ、72と73よりロリっ娘っぽいから問題ないか」
近づくこのみを、フカヒレは精一杯の威圧をする。
「なんだよお前! 俺の支給品を奪いにきたのか?
近寄んな! お、俺は女でもグーで殴れるんだぞ!」
フカヒレは気がつかない。
目の前の少女が、既に人間の範疇ではないことに。
「クスリ……私に頂戴?」
もしかしたら、解毒剤かもしれない。
その望みが、このみの表情を笑顔に変える。
「な、なんだよお前……?」
フカヒレも、ようやく異常に気がつく。
さっさと追い返すために、ビームライフルではなく普通の銃を取り出す。
「近づくんじゃねぇ! 俺の下半身より危ない銃が火を噴くぜ!」
「――その銃。やっぱり、そうなんだ!」
自分が奪われた銃がここにあるということは、そのディパックは彼女のものに違いない。
235 :
(代理):2008/05/07(水) 15:54:31 ID:qQL/TI8q
ファルは死んだのだろうか。それともこの男がディパックだけを奪ったのか。
だれも傷つけずに解毒剤を得られるのではと、このみは心の底から喜んだ。
しかし同時に、これで見つからなければ解毒剤が手に入らないのではという不安も沸く。
銃を向け、優位に立っているはずのフカヒレの表情が凍る。
なぜ、この少女は銃を見た瞬間、より一層嬉しそうに笑うのか。
なぜ、この少女の笑顔は―――今まで会った誰よりも怖いのだろうか。
(やっべ、どうする。このままじゃ危ないかも)
なんとか、自分に被害が及ばない方法を考える。
(あっ、そうだ。偽名を名乗ればいいんだ)
思いついたのは偽名作戦。
別人の名前を名乗り、攻撃して逃走。
うまく逃げられれば、この女はそいつの名前を聞き込みして探すだろう。
そいつの悪名がドンドン高まるという戦法だ。
偽渚とは違う、俺は正義だから構わないのだと自己弁護も忘れない。
「ちち、近づくんじゃネェ! この伊藤誠様にぶちのめされたくなかったらな!」
このみの笑顔が能面のようになった。
「おお、びびったか? は〜っはっはっは! 当然だよなあ、俺のオーラを感じたんだろ?
まぁ、お前顔いいから、俺の女にしてやるよ。ほら、遠慮しないで服脱げよ」
「…………」
テンパって、趣旨が変わりだしていることに気づく様子もなく。
沈黙を怯えていると受け取ったフカヒレは調子に乗って口を動かす。
「おいおい、何してんだよ。済ました顔して、本当は期待してるんだろ?
しょうがねぇ、そんなに俺の女になりたいってんなら俺も拒むわけには――アレ?」
目の前にいたはずの少女がいない。
嫌な汗が額に浮かぶよりも先に、フカヒレの肩を何かが掴む。
236 :
(代理):2008/05/07(水) 15:55:26 ID:qQL/TI8q
「えへ〜――んなわけ、ないですよ」
このみの悪鬼侵食率は、誠と会ったとき低下傾向にあった。。
大きな怪我の再生は、悪鬼侵食率を一時的に低下させる。
そして、誠の優しさに触れそのまま数値は減少していた。
あのまま誠についていけば、悪夢がら目覚めることもありえたというのに。
自らその権利を、放棄してしまった。
そして、このみはセカイは腐っていることを、再びその目に焼き付けた。
悪鬼の侵食は初期値に還る。誠の頑張りを無為に返すことなど、今のフカヒレには造作もない。
狐、亡霊……二度も逃げた臆病な鮫は、ここに――
三度目にして、悪鬼という最悪の手合いを相手にすることになった。
237 :
(代理):2008/05/07(水) 15:56:19 ID:qQL/TI8q
【B-2 中心部/一日目 昼】
【鮫氷新一@つよきす -Mighty Heart-】
【装備】: イタクァ(5/6)、ビームライフル(残量70%)@リトルバスターズ!、ICレコーダー
【所持品】:支給品一式×2、きんぴかパーカー、シアン化カリウム入りカプセル、スペツナズナイフの柄
未確認アイテム0〜2、銃弾(イタクァ用)×12、銃の取り扱い説明書、鎮痛剤(白い粉が瓶に入っている)
【状態】:疲労(大)、背中に軽い打撲、顔面に怪我、鼻骨折、鼻血
【思考】
基本方針:死にたくない。
1:伊藤誠を名乗って辺りを混乱させ……あれ?
2:鎮痛剤を飲みたい。
3:スラム街で人を探し、誰かに守ってもらう。
4:知り合いを探す
5:清浦刹那、ツヴァイ、ドライ、アイン、菊地真、伊藤誠を警戒
【備考】
※特殊能力「おっぱいスカウター」に制限が掛けられています?
しかし、フカヒレが根性を出せば見えないものなどありません。
※渚砂の苗字を聞いていないので、遺跡で出会った少女が古河渚であると勘違いしています。
また、先程あった少女は殺し合いに乗り、古川渚を名乗る偽者だと思っています。
※混乱していたので渚砂の外見を良く覚えていません。
※パーカーのポケットに入っていたカプセル(シアン化カリウム入りカプセル)が毒だということに気づいていません。
※渚については、殺したというより倒したという認識です。
※誠から娼館での戦闘についてのみ聞きました。
※ICレコーダーの内容から、真を殺人鬼だと認識しています。
238 :
(代理):2008/05/07(水) 15:57:22 ID:qQL/TI8q
【柚原このみ@To Heart2】
【装備:包丁、防弾チョッキ】
【所持品:支給品一式】
【状態:悪鬼侵食率20%、左肩上部に裂傷(回復中)、リボン喪失、右のおさげ部分が不ぞろいに切り裂かれている、
混乱状態緩和、人間不信、疲労(中)
【思考・行動】
0:助けて、よ
1:自称「伊藤誠」からファルの情報を聞き出す。
2:ディパックの中の薬を奪う(解毒剤かもと思っています)
3:憎しみのままに
4:ファルの命令通りに動き、首輪を三つ集める
5:状況しだいではファルだけを狙い、無理やり解毒させる
6:誠さん……
備考】
※制服は土埃と血で汚れています。
※世界の名を“清浦刹那”と認識しています。
※ファルから解毒剤を貰わなければ、二十四時間後に遅効性の毒で死ぬと思い込んでいます(実際には毒など飲まされていません)
※ファルがこのみに命令した内容は以下の通りです
1.三人以上の参加者の殺害(証拠となる首輪も手に入れる事)
2.ファルに脅されたという事を誰にも漏らさない
3.十八時間後に教会へ来る事
※第一回放送内容は、向坂雄二の名前が呼ばれたこと以外ほとんど覚えていません。
※悪鬼に侵食されつつあります。侵食されればされるほど、身体能力と五感が高くなっていきます。
※制限有りの再生能力があります。大怪我であるほど治療に時間を必要とします。
また、大怪我の治療をしたり、精神を揺さぶられると悪鬼侵食率が低下する時があります。
239 :
(代理):2008/05/07(水) 15:58:59 ID:qQL/TI8q
代理投下完了です。
代理投下お疲れ様です。
きれいな誠があたかも固有結界を発動した
かのような描写には笑わせてもらいましたが、
(しかもさっそく世界の修正を受けつつあるし)
シリアス部分はそれ以上に素晴らしい出来でした。
誠の心境変化の自然さは勿論のこと、
小道具としてのエクスカリバーの使い方が非常に上手い、
というか実に読ませてくれます。
今ある主を完全に見限り、なおかつ一人では再び抜けることなく、
二人で手を取り合って初めて抜ける描写には鳥肌が立ちました。
ともあれGJです。
代理投下&投下乙!!
誠が…誠がかっこいい!!!信じられない…
しかもちゃっかりエクスカリバーまで装備してるし
もう股間のエクスカリバーは暴走しないのかな?
…下ネタすいません、何はともあれ乙でした!
紅一点という言葉がある。
元々の意味は、一面の緑の中に一輪の紅色の花が咲いているという意味である。
そこから転じて多くの男性の中にただ一人いる女性のことを意味するようになった。
多くのものの中に、唯一つ異質なものがあれば、それはどうしても目立つものである。
今、ここが森の中であるとする。森には多くの木が茂っており、人工物は、ほとんど存在しない。
この中に、人工的な電化製品やハイテク機材を見つけたら、人はどうするだろうか?
なぜこんなものがあるのか、と手に取ってみたくなるかもしれない。
それでは、木彫りの熊が落ちていたらどうだろうか?
やはり、いったいなぜこんなところに、と手に取りたくなるだろう。
電気機器と同じように、極めて人工的な代物であるからだ。
それでは、熊ではなく木彫りのヒトデが落ちていたら、手に取ってみたくはならないだろうか?
◇ ◇ ◇
おはようございます。陽が照って程よく暖かくて、とても清々しい朝です。
こんな気持ちのいい天気の日は、岡崎さん達でも呼んでヒトデ祭りをやるしかありません。
そうです。そうしましょう。
きっと、いやっほーぅとか、××最高ーっとかいうレベルじゃなく素晴らしいものになるはずです。
ここまでいい日だと、お情けで春原さんも入れてあげないこともないです。
この近くには、なぜだか知りませんが、何匹かヒトデがいるようです。
とてもいい傾向です。この調子で、この辺りをヒトデの楽園にしましょう。
おや、ここに一人、ヒトデの良さに惹かれてきた人がいるようです。
今、一匹のヒトデが、水辺にいます。
やっぱり水の生き物だけあって、活き活きしているように見えます。
ヒトデにとってのホームグラウンドとでも言うべきでしょうか。
すごくいい味出してます。完璧です。すぐにでも手を出したいくらいです。
惹かれてやって来たのは、長い髪をして、制服を着た高校生くらいの方でしょうか。
聞こえてくる独り言は、たぶん京都弁というやつです。
もしかして、舞妓さんとかだったりするんでしょうか。
とか思ってたら、なんかこの人銃なんて持っちゃってます。
しかも、よく見ると、ところどころ怪我をしてますね。
でも大丈夫です。ヒトデを手に取れば、その可愛さに身も心も癒されてしまうに違いないです。
あっと、ヒトデが今まさに引き上げられています。
あぁ、右手に持って、表、裏と、まじまじと観察されています。
難しい顔をしていますが、もしかしてヒトデ鑑定人とかだったりするんでしょうか。
だとすれば、あのヒトデは鑑定人さんに一見の価値ありと認められたんですね。
あのヒトデの良さがわかるとは、物騒な見た目の割りになかなかいいセンスの鑑定人さんです。
あっ、ヒトデが、かばんにしまわれました。きっと持って帰って詳しく見るんでしょう。
かばんにしまうと、そのままどこかへ行ってしまいました。
お疲れのようですが、鑑定がんばってください。鑑定人さん、お疲れ様でした。
女の人がヒトデを連れて帰ってから、随分経ちました。
今度は、なんだか近寄りたくない雰囲気の男の人が、別のヒトデに惹かれてきたようです。
なんだか目つきが悪くて冷たい感じの人です。
こっちのヒトデは、さっき木の上のほうにあったのが落ちてきたものです。
緑の草と茶色のコントラストが見事です。これはお持ち帰りしたくなっても仕方ないです。
完全な陸上にいるヒトデというのもグッドです。なんていうかハングリー精神とかありそうです。
水辺から這い上がり、数々の苦難を越えて辿り着いた場所に立つヒトデ。
なんだか、それだけで一つ長編ができそうな気がします。
あっと、話が逸れてしまいました。
っていうか、来てた男の人、もう行っちゃってます。まったく慌ただしい人ですね。
どこか急いで行くところでもあるんでしょうか。
それにしても、今の男の人もなんだか大きな銃を持ってました。
あ、わかりました。さっきの女の人も含めてサバイバルゲームとかいうやつをやってるんですね。
すごく納得です。やっぱり天気のいい日は外で遊ぶのが一番です。
ばたばたと行ってしまいましたが、あの人ちゃっかりヒトデは連れて行ってます。
早く帰ってゆっくりヒトデと楽しもうというのはわかります。
でも、もう少しヒトデとの出会いというものを大事にするべきです。
ヒトデの繊細な心情というものがわかってないです。いつか直々に教授するべきかもしれません。
まったく、あれじゃ、ヒトデと自己紹介してたかすら怪しいものです。
まあいいです。それもこれもヒトデが魅力的過ぎるのがいけないのかもしれません。
もうだいぶ時間が経ちましたね。それでは、そろそろヒトデ祭りの準備に向かいましょう。
あまり岡崎さんたちを待たせるのも少しだけ可愛そうですから。
ヒトデを手にした人たちは、その魅力で和みながら仲良くしてください。
◇ ◇ ◇
一人より二人。二人より皆で。一つの輪を作るための希望の星。
人の交流を武器にする直枝理樹のミッション。
そのミッションにおいて、木彫りのヒトデは仲間の橋渡しに使われることになっている。
しかし、アサシンがティトゥスに投げた木彫りのヒトデは、全て回収されたわけではなかった。
ゆえに、戦闘跡地付近にはいくつかの木彫りの星型が残されていた。
そして、木彫りのヒトデにより結ばれるミッションにイレギュラーが二つ混じりこむ。
希望の星を手にした蛇と亡霊は、作られようとする輪に対して、どんな影響を与えるか。
【C−4湖付近/朝 一日目】
【藤乃静留@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備:殉逢(じゅんあい)、。コルト・ローマン(3/6)】
【所持品:支給品一式、虎竹刀@Fate/stay night[Realta Nua]、玖我なつきの下着コレクション@舞-HiME 運命の系統樹、木彫りのヒトデ1/64@CLANNAD】
【状態】疲労(中)、左手首に銃創(応急処置済み)、左の太股から出血(布で押さえていますが、血は出続けているが少量に)
【思考・行動】
基本:なつきを探す なつきの為に殺し合いに乗る
1:なつきの為に殺し合いに乗る、しかし殺し合いに乗った人間を優先的に排除
2:殺し合いに乗る事に迷い(特に力なき人間を殺すことにためらい)
3:太股の傷を治療する為の道具を探す
4:なつきに関する情報を集める
【備考】
※下着コレクションは使用可能です。
※理樹を女だと勘違いしてます。
※詳しい登場時系列は後続の書き手さんにお任せします
※死者蘇生に関して否定。
※移動中です。移動先は後続の書き手さんにお任せします。
【C-4中央/採石場の北東近辺/1日目/午前〜昼】
【吾妻玲二(ツヴァイ)@PHANTOM OF INFERNO】
【装備】:コルトM16A2(11/20)@Phantom-PHANTOM OF INFERNO-、スナイパースコープ(M16に取り付けられている、夜間用電池残量30時間)@現実
【所持品】:支給品一式×3。コンバットナイフ、レザーソー@School Days L×H、おにぎりx30、野球道具一式(18人分、バット2本喪失)コンポジットボウ(2/20)、コルト・ローマンの予備弾(21/36) 、ダイナマイト@現実×10、木彫りのヒトデ1/64@CLANNAD
【状態】:疲労(大)、右手に小さな蚯蚓腫れ、右腕の骨にヒビ、頭部から出血
【思考・行動】
基本:キャルを見つけ出して保護する。不要な交戦は避け、狙撃で安全かつ確実に敵を仕留める。
1:爆発音の方へ行って集まる人間を狙撃するか、もしくはこの場から離れるかを考える。
2:アインはなるべく敵にしない。 主催者が本当に蘇生能力を持っているのか問いただす。
3:周囲に人がいなければ、狙撃した参加者の死体から武器を奪う。
4:弾薬の消費は最低限にし、出来る限り1発で確実に仕留める。
【備考】
※身体に微妙な違和感を感じています。
※アインが生きていることに疑問。
※時間軸はキャルBADENDです。
※真アサシン(外見のみ)を強く警戒しています。
※理樹を女だと勘違いしてます。
※静留を警戒しています
※言葉(外観のみ把握)を警戒しています。
※M16A2の癖を完全に把握しました。外的要因がない限り、狙撃の精度は極めて高いものです。
※玲二がどこに行くかは次の書き手氏に任せます。
※ダイナマイトは採石場で調達したものです。
※移動中です。移動先は後続の書き手さんにお任せします。
以上で投下終了です。支援ありがとうございました。
問題点など指摘があればお願いします。
特に今回は、話の本筋や時間が全く進みませんので、遠慮なくお願いします。
タイトルは『希望の星』です。
投下乙
理樹の作戦が早くも破綻
まさか、情報攪乱をしようとする恭介の呪いか!?
MADも乙です!
MADの疾走感が加速する殺し合いを表現してるみたいで素敵でした
MAD見て思いましたが、こいつらなら殺し合いしても何ら不思議はないなw
とにかくGJ!!
…緑
新緑の匂いのかぐわしい美しい森の中においては、緑など探す必要もないほどに溢れている。
だが、それが森の中を走る青い線…川のすぐ傍だとしたらどうだろう。
無論、川の傍とて苔などが生していはいるし、川の内部には海草の類が繁栄していることだろう。
しかし、これはそのどちらとも違う。
何故なら、その緑は…動き出したのだから。
そう、それはモノではなく…
「…う、む…ゲホゲホッ!!
むう…死ぬかと思ったのである。
おのれあの女め、世紀の大天才にして人類の財産であるこの我輩の頭脳の損失を惜しむ気は無いのか!
…む?
いやむしろ我輩の財産は頭脳であるからしてその他の部分など不要とでも考えたか!?
否! 断じて否!!
このセリフは何となく死亡フラグである気もするがそもそも我輩に死亡フラグなど通用するはずも無い以上何の問題も無いのである。
兎に角! 我輩の! この両の手は! ギターを鳴らすのにとても重要である以上! 断じて不要などでは無いのであーーる!!
いや、そもそも我輩の頭脳を刺激するのにこれ以上無いほどに重要なモノである事を考えるとむしろ真の頭脳と言っても過言ではないのである!!
つまり! 我輩の頭脳よりも更に貴重な人類の財産と言ってよいのである!!
……む、だが待つのである。
そもそも我輩の頭脳以上に貴重なモノなど存在するはずが無い!
つまりやはり頭脳の方が貴重であるか!?
…………いや!! 問題ナッシーーーング!!
そもそも、我輩自体が人類の財産であるのだからして悩む必要など無いのである!!
うむ! そもそも最初から結論なぞ出ていたのである以上やはり我輩は天才であった以上証明終わりなのである!」
……この物体が何か、
そう、聞かれると、多くの人はこう答えるであろう。
「キチ○イ」
と。
そのキチ○イ、本人の言によればその名は『ドクターウエスト』
少し前までほぼ土座衛門であった事を考えると、非常に丈夫な生き物であると推測される。
…あるいは、頭の緑で光合成でも行っているのかも知れない。
「うむ! 結論が出た所で話を戻そう!!
そもそもあの女め! この人類史上最大の財産である我輩を!
……む、何時の間にか我輩は歴史上においても最高の天才であると認識されていたのであるか。
当然のこととはいえ少しは照れるのである。
うむ、兎に角歴史上最高の天才という財産である我輩を無慈悲にも突き落とすとは何たる極悪人であるか! 親の顔が見たいである!
ええい親! 出て来い! と言っても出てくるはずも無いのである!
うむ、ならば勝手に想像するのである! 確か『子は親の鏡』ということわざがあったはず。
うむ、先人も中々良い事をいうのである! つまり、あの女の親の顔はあの女の顔を鏡に映せば良いのだ!!
あいにくと鏡はここには存在しないが問題ナッシーーーング!!
そもそも鏡に映るのは自分の顔と相場は決まっているのである!
つまりあの女の顔を鏡に映せば写るのはあの女!! つまりあの女の親の顔はあの女の顔ということである!!
うむ、親! 娘にどんな教育をしているであるか!! この人類最高の天才であるドクターウエストを殺そうとしたのであるぞ!!
全く…凡骨リボンは無事であろうか……
………………………………………………む?
ぼ! 凡骨リボーーーン!!」
一しきり叫んだ後で、更に大きな声で叫ぶキチ○イ。
だが、その声音は先ほどまでのものとは多少異なる。
特に意味の無い(本人には大有りなのだろうが)叫びと違い、多分に驚愕とか心配とかそういった感情を混ぜたものであった。
そう、先ほどまですっかり忘れてはいたが、元々彼は一人では無かった。
凡骨リボンこと『藤林杏』
ウエストに言わせると凡骨である、何処にでもいると言ってよい普通の一般人である。
最も、ウエストの叱咤によって多少なりとも生きることに意義を見出した辺り、少しばかりの根性はあるようだが。
兎に角、その杏であるが、非常に不安定な状況であった事は違いない。
加えてそこにはウエストを川に落とした相手『椰子なごみ』が居たのだ。
最早杏の命は風前のともし火と言って過言では無いのかも知れない。
「ええい! こうしては居られんのである!!
待っていろ凡骨リボン!! 今助けに天才が行くぞ!!
……むう、だがそれにしても何処にいるのであろうか?
そもそも先ほどの所に戻った所で既に手遅れと言う可能性も…否! そんな事ナッシーーーング!!
この超天才に限って間に合わぬなどという事があるはずが無い!
それに凡骨リボンとて凡骨なりに頑張っておる!! いざとなったら川に飛び込んで逃げる事位!
……む、待て、川であると?
そういえばそもそも我輩は川に落とされてこんな所に居るのである以上、凡骨リボンも同じような目に会っているともしれず。
そうなるとむしろ我輩は川を下るべきなのではと思うのが素人の浅はかさ!
そんな事をしても見つかる可能性の低い以上! やはり我輩は先ほどの所に戻るべきなのである!!
うむ、そうと決まれば休んでいる暇など無い! 早速戻るのである!!」
とっくの昔に走り出しながらも、それでも意味不明な事を言い続けていたウエストだが、それでも目的地が定まったのは多少は意味があったらしく、彼は今までよりも早い速度で川の横を駆け上り始めた。
どうでもいいがあれだけの大声で叫びながら走り続けている辺り相当の肺活量と言って良いだろう。
…だが、その肺活量故に、彼の身には危険が迫る事となる。
◇
「ええい!! また進めないであるか!!
この天才の歩みを妨げるとはいい度胸ではあるが相手が自然である以上は度胸も何も会ったものではないわけで…
つまり平たく言うと我輩の手に破壊ロボが無いので命拾いしたな自然!!
今度会ったら覚えておくのである!!」
あれから数十分、ウエストは川の側を登りながら文句を叫んでた。
地図上で見ると平坦なようでも、実際に川を追うというのはかなり大変な作業である。
大地の起伏は人の足では進めず、密集する草木は容易く人の行く手を遮る。
既に三度、ウエストは回り道を余儀なくされていたのだ。
一応、科学者ではあるのだが、ウエストは兎に角タフだ。
それこそ○キブリ並みの生命力と言っても過言では無いのだが、その彼にしてもこうも何度も回り道をさせられては流石に堪える。
元より川に流されて体力を消耗した身では、急な勾配と自然の妨害は十二分に強大な敵であった。
……だが、それでもウエストは歩みを止めない。
元より負けず嫌いな彼のことである。
ここで足を止めては何かに敗北したと考えても不思議は無い。
…だが、それ以前に……要するに、藤林杏の事が心配であったのだろう。
無論、本人が聞いたら確実に否定するのだろうが。
◇
「…湖…か…」
(知らぬ間に北に向かっていたのか…)
目前に広がる光景を目にしながら、片手に鞘に収まった刀を携えた制服姿の少女―千羽烏月は一息ついた。
先ほどの別れ、馴れ合うような中では無いとはいえ、元よりの顔見知りである浅間サクヤとのそれは、どうやら知らずうちに烏月の心に陰を落としていたようだ。
“ふざけるんじゃないよ、この馬鹿!
そんな事をされても、桂は喜ばないよ!
あの子はそんな子じゃない!”
“いいや、あんたはわかっちゃいない。
……あの子は、例え見知らぬ誰かが死のうと心を痛める子だ。
そして、それと同じくらい、誰かが誰かを傷つける事に心を痛める子だよ!
それを……桂のために皆殺しにしよう、だって?
そんなの桂に対する侮辱だ!”
「解っているさ…そんな事くらい…」
そう、誰よりも…烏月自身がその事をよく理解している。
何故なら…桂は烏月の事を誰よりも良く見ていてくれていたのだから…
そう、約束したのだ…
烏月は桂を守る『鬼切り』であり。
桂はその烏月を空より見守る星であると。
(そう、だからこそ…)
桂の為に人を…鬼でないものを殺さなければならない…/桂の笑顔が、声が烏月の覚悟を曇らせる…
相反する意思。
同じ場所から生まれたが故に完全に分かれる事の無いソレは、烏月の心を割る。
無論、その程度で烏月の心は壊れたりはしない。
だが、それでもそれは確実に、烏月の力を奪う。
迷いは、太刀先を鈍らせる。
その程度の事は、思い返す必要すらないほどに刻まれた教え。
その教えに従い、……人を切った事すらある。
今更…何を悩むというのか。
“鬼を切るために、ソレを阻む人を切る”
“桂を生かすために、ソレを阻む人を切る”
たった…
そう、たった、二文字程度の違いでしかないというのに、だ。
何が違う?
何故違う?
そう、違うのは、変わったのはたった一つだけ。
『羽藤桂』
その存在が、烏月を変えたのだ。
いくらその為に、と思い込んだ所で、その底にある想いだけは偽れない。
“桂さんの悲しむ顔を、見たくない”
烏月が人を切れば、桂は嘆き悲しむだろう。
切られた人の為に、そして、切った烏月自身の為に。
ならばこそ、切らねばならない。
大切な人を守る為に、切らねばならない。
たとえ桂が嘆き悲しもうと、切らねばならない。
(何て…矛盾だろう……)
思わず、烏月の顔に自嘲の笑みが浮かぶ。
桂を守る為に、桂を嘆き悲しませる。
桂を守りたいから、桂に会うわけにはいかない。
今の烏月は矛盾の塊でしかない。
いや、元より矛盾の塊であったものが、サクヤとの再会によって矛盾を意識したと言うべきか。
…だが、
(…だから、人を切れる)
矛盾が矛盾であると理解したのであればこそ、それは存在できる。
桂の為に人を切る。
そこに矛盾が存在すると理解出来たのであれば、もう迷う必要などは無い。
迷いが正確に理解出来たのであれば、それ以上迷う必要などないのだから。
(そう…だから……!!)
刀を鞘から抜き放ち、肩に担ぎ上げる。
そして、そのままの流れに従い、背後へと切り流す。
切っ先の向きと共に体を背後に向け、
「貴方は…この殺し合いに乗っているのか?」
先ほどからその方向より聞こえていて、丁度姿を現した声の主に、詰問した。
◇
(……何であるかこの女は)
漸く、先ほど藤林杏と別れた場所までたどり着いたドクターウエストを迎えたのは、刀を構えた女子学生であった。
黒い長い髪に、正面に突き出された切っ先。
明らかに、危険そうな人物であった。
(……むむ、この外見は…)
「お前は…もしや少し前にクリス・ヴェルティンと来々谷唯湖が会ったとかいう女であるか!?」
少し前に別れた二人が、大聖堂にて襲われた相手の内の一人ではないのか?
その疑問が、ウエストの脳裏を過ぎる。
あの二人を襲った、恐らくは殺し合いを肯定している人物。
それが、この場所に居るということは…
「…その二人は「貴様!! 凡骨リボンをどうしたであるか!?
この場所にいるという事は殺したのであるか!?
…いや、凡骨とは言えそう簡単にはやられる筈も無い!!
そうなると逃げられてこの場所に戻って来たという訳か!!
そしてこの我輩がのこのこと現場に戻って着た犯人のようにこの場所に来たという事であるな!!
むう、そうなると次にお前は我輩を襲う気であるな!
構えた刀がその証!!
ならば我輩は一目散にこの場から逃げ………………ノォーーーーーーウ!!!!
逃げる!?
言うに事欠いて逃げるであると!?
この世紀の大天才ドクターウエストに逃走など許される筈が無い!!
つまりこれは敗北ではなく転進である!!
という訳で凡骨リボンを探しに転進するであーーーーーる!!」
…ウエストの言った名前について尋ねようとした烏月の言葉を遮って、ウエストが叫ぶ。
基本的に何から何まで間違っているようでいて、半分くらいは正解な辺り、ある意味天才という名は相応しいのかもしれない。
兎にも角にも逃げ…転進しようとしたウエストではあったが…
「……ドクター…ウエスト…?」
多少の戸惑いと共に発せられた烏月の声に、ピタッ!!と、
それこそポーズボタンでも押されたかの様に停止した。
そして、首だけがコマの様に半回転しながら。
「むむ!?
何故初対面の筈の我輩の名前を知っているのであるか!?
…いや、そもそも世紀の大天才である我輩の顔を知らない者など我が宿敵大十字九郎以外に居る筈もないのであるが!
……むう! さては貴様我輩のファンであるな!!
それならそうと先に言うが良い! 普段はサインはお断りであるが今回に限り特別に…」
「必要ありません」
一気呵成に放たれたウエストの言葉を、埒があかないと判断したか、烏月が遮る。
その声は、あくまで平坦だ。
ウエストを前にして普通にしている辺り、かなりのものであると言えるだろう。
「…とりあえず、順番に放してもらえないか?
まず、先ほど言った二人、そして…凡骨リボン…とは何だ?」
ウエスト相手に駆け引きは不要と判断した為、話を促す方向に持っていく。
果たして、烏月の読み通りに、
「ノォーーーーーー!!
我輩のサインよりもクリス・ヴェルティンに来々谷唯湖に凡骨リボンのほうが価値があると!?
否! 断じて否!!
むう、死亡フラグ二回目のような気がするであるがどうでもいいのである!
まさか大十字九郎以外にもこのような相手が居るなど!!
ええい! 貴様など大馬鹿者の十分である!
やーいこの大馬鹿者!!
うむ、気が済んだのである。
それでクリス・ヴェルティンに来々谷唯湖は先ほど大聖堂にて大馬鹿者に襲われたと言っていたぞ。
黒い制服と長い髪に日本刀とくれば概ね間違いないのである。
ついでに凡骨リボンは本名藤林杏と言うが凡骨リボンで充分である。
そして見た限り周りに凡骨リボンが死んだと思われる証拠はないので問題ナッシングである。
うむ、凡骨リボンごときに逃げられるとはやはり貴様は大馬鹿者なのであろう。
やーい大馬鹿者!!」
いかなかった。
…いや、質問に答えている辺り目的は果たしているのだろうが…
兎に角長すぎる。
肝心の内容よりも無駄話のほうが遥かに長いのだから。
だがそれでも充分ではあるのだろう。
(大聖堂…あの二人組か…?)
何処の国かは不明だが西洋系の少年と、日本人と思わしき少女。
名前から考えると、恐らくは間違い無いのだろう。
そして…
「…私がここに着たのは少し前です。
その藤林杏という人は知りません」
具体的に何があったのかは不明だが、ウエストはその杏という人物と合流する為にここに来たのであろう。
その杏なる人物がどうなったのかは不明だが…兎に角、
(殺し合いには乗っていないという事か…)
あの二人組と共に行動し、他にも仲間がいるということは、そうなる。
つまり、利害の一致によって手の組める相手では無いということだ。
…だが、
「貴方の名は、ドクターウエストなのですね?」
「……我輩の名も知らぬ大馬鹿者に答えてやる理由などないが我輩の名を知らぬ者がいるというのも納得いかないので答えてやろう!
いかにも!! 我輩こそが世紀の大天才! ドクターウエストであーる!!
さあ、わかったからには」
「…では」
ウエストに喋らせていては埒が明かないと充分に理解出来たが故に、烏月は遮って、デイパックに手を入れた。
そして、
「コレに、見覚えは?」
ソレを、取りだした。
恐らく、ウエストを名乗る人物は、偽名では無い。
あそこまで自然に偽名を使える人間が居るとは思えないが故に。
だが、それでも確認の為にそれを見せた。
「ぬおっ!?
それは我輩がエルザ用に作った『我、埋葬にあたわず』ではないであるか!!
何故大馬鹿者がソレを持っておるのだ!?
それはエルザのものひいていえば我輩のものであるぞ! さあさっさと返せ!!」
「…残念ながら返す訳にはいけません」
どうやら、ウエストという男は本物のようだ。
見ただけで烏月の知らない内容まで自分から喋っている以上、間違いないだろう。
「何故であるか!?
我輩のものである以上持ち主に返すのが筋である!!
おのれ、警察!! 何故何時もはしつこい位いるのにこんな時に限っていないのであるか!!
かくなるうえは我輩自らの手で持って取り返すしか無いであるか!?
いやしかし破壊ロボ無しで『我、埋葬にあたわず』と戦うのは…………
……!
ふっ! ふはははははははははははははははゲフッゲフッ!! ハアハア…ふ!
墓穴を掘ったであるな!!
そもそも『我、埋葬にあたわず』は魔道の心得が無くては使えないのである!!
取り返した所で我輩自身にも使えないのであるがそれはそれ!!
兎に角大馬鹿者にはそれは使えぬ!
さあ、さっさと我輩に返すついでに謝るのであー「使えます」る?」
何やら意味不明に叫び続けるウエストを、烏月の声が遮る。
「私はコレが使えます。
確かに説明書にあった『魔力』というものは所持していませんが、私の用いる『霊力』であっても使用可能なようです」
「な…なんであると?」
「…加えて、私にはこの刀もあります。
貴方には私をどうにかすることは「何であるかその『霊力』というものは!!??」
説明とともに、自身の優位を伝え、同時に質問したいことを尋ねようとした烏月を、今度はウエストが遮る。
「『霊力』!?
この世紀の大天才である我輩の知らん力が存在するというのか!?
否! 断じて否!!
むう、三回目であるが二度ある事は三度あるので問題ないのである。
うむ、知らぬのであればこれから知ればよいだけの事!!
まず『我、埋葬にあたわず』を使用可能という事は魔力に近似した力であると推測されるのである!!
加えて大馬鹿者が力と自覚している以上それなりの技術体系が存在しているということになるのである!!
むむむむむむ!! おい大馬鹿者!!
いや霊力女! お前は何と言う名前で何人であるか!?」
「…千羽烏月、日本人だが…」
ぶしつけな質問ではあったが、烏月は答えた。
いい加減、大馬鹿者呼ばわりは我慢出来なかったのであろう。
「……日本人!!
また日本人であるか!!
おのれ大十字九郎といいどこまでも我輩に立ちふさがるか!!
兎に角! 日本には!!
……む、待つのである、我輩の世界の日本とは限らぬのであるが……
いや! どっちにしろ日本には変わらないのである!!
千羽烏月の世界の日本には我輩の知らない技術があるとそういうことである!!」
「…私の…世界?」
いい加減鬱陶しい気もするウエストの叫びを普通に聞きながら、烏月は気になった事を問う。
世界…とはどういう意味なのか。
「む…千羽烏月よ、お前はアーカムシティを知っておるか?」
「…生憎と、知らないな」
「覇道財閥は? ブラックロッジは知らんのであるか?」
「…知らない」
「ふん、やはりであるか」
納得したようにウエストは僅かに嘆息する。
そして、疑問を浮かべたままの烏月に告げた。
◇
「…そんな、事は」
「ある筈無いとでも言うであるか?
凡骨リボン辺りとは違いお前はある程度理解納得できるのではないか?」
「……」
無い…とは言い切れない。
荒唐無稽であることは確かなのだが、それでも逆の意味で納得出来る。
あの双子の鬼は、蘇ったのでは無く死んでいなかった。
少なくとも、死んでいない場所からやって来た。
そういう事だとしたら、あの時の双子の言葉の不可思議さが、理解出来る。
だが、そうだとするならば…
「ふむ、さて千羽烏月よ、我輩は興味を持ったのであるからして……!!」
振るった太刀は、空を切った。
ウエストが、退きながら尻餅を付く。
気が抜けながら振るった為か、かわされたようだ。
「なっ!何をするのであるか!?」
「気が変わった。
ここで死んでもらう」
少しだけ考えていた事は、どうやら最悪の悪手であったようだ。
「どういう事であるか!?」
「…お前は天才と言っていたが…ならこの首輪を外せるのか?」
「当たり前である!! この程度のオモチャを解体するなどこの世紀の天才ドクターウエストにとっては朝飯前のおやつ前である!!」
「……なら、何故まだ外していない?」
「決まっているのである! 構造が判らないもの解体など出来る筈が無いのである!!」
「…そうか」
ウエストの鼻先に、切っ先を突きつける。
つまり、首輪の現物さえあれば、この男は首輪を解体出来るということだ。
それはつまり、まだ出来ないという事だ。
なら
「僥倖というべきか…桂さんの身に危険が及ぶ前に、憂いを絶つことが出来る」
今切っておけば、少なくともこの男によって首輪が解体される事はなくなる。
つまり…『首輪が爆破される可能性も減るということだ』
少し前までは、万が一の時の為に桂さんの首輪を外してもらう事も考えた。
だが、主催者がそこまで強力だというのなら、それはこれ以上無いくらい危険な行為だということだ。
最悪の場合、ウエスト達が首輪を外したとして、その時に未だ首輪の付いた者は皆、首輪を爆破される可能性があるということだ。
そんな事態を、未然に防げた。
「ええい千羽烏月!!
憂いとはどういう事であるか!?
ついでにその計算とはだれであるか!?」
「答える必要は無い」
そう、答える必要なんて無い。
意味も無い上に、もし、彼が桂さんと出合っていたとしたら、決心が鈍りかねないから。
だから、切っ先を突き出そうとして、
「優勝したとしても帰れないのであるぞ!!」
咄嗟に、切っ先を逸らした。
何本か、ウエストの髪が宙を舞う。
「…やはりであるか。
一体何人こんな大馬鹿者がいるのであるか。
よいか千羽烏月よ。
思い出してみるのだ、あの時あの二人は帰すなどとは一言も言っておらぬのだぞ」
何…
「具体的にどうなるのかなど我輩にはわからんが、それでも碌な事にはならないのである。
お前がその計算とやらを優勝させたところで殆ど何の意味も無いのである」
そんな…事
「だから優勝狙いなど意味ナッシーーーーーング!!
ふはははは! 判ったのなら大人しくこの刀を退けてこの我輩の頭脳に頼るがいい!!
今なら霊力に関して知っていることと、ついでに実験に協力すれば許してやらんでもない!!」
だが、
「…だからと言って! どうしろと言うんだ!!
他に桂さんを生き延びさせる道があるとでも言うのか!?」
「だから我輩が首輪を外してやるのだ!!
そしてその後に皆で主催者とか言う奴らをミックミクにしてやるのだ!!」
「そんなこと!」
「出来ないとでも言うのであるか!?」
「お前は! お前たちは出来るとでもいうのか!?」
「出来ないのでは無いのである!!
そもそもこの大天才に不可能のなどナッシーーーーング!!
やるのである!!」
「……!!」
ああ、そうできたらどんなに良いのだろう。
サクヤさんに謝り、共に桂さんを守り、生きて帰る。
それが出来たら、どんなに素晴らしいのだろう。
だけど、そんな事、出来るのか?
こんな事をできる様な相手に、そんな奇跡みたいな事が出来るのか?
「それでも!!
生きて帰れる可能性があるのなら!!」
「こんな事を始めるような相手を信じるであるか!?」
「……!!」
ああ、そうだ。
そもそも、最初から最も信じられない相手を信じなければ、桂さんを生かして帰す事が出来ない。
それでも、約束したんだ。
桂さんを守るって。
サクヤさん言われたって退かなかった。
今更、こんな見ず知らずの相手に言われたからといって何だというのだ。
どんなことがあっても、桂さんを殺させる訳には行かない。
だから…
「小娘! 一つだけ聞いておく事があるのであるのでさっさと答えるのだ!」
思考を、遮られる。
「その、計算とやらが死んだとしたら貴様はどうするのだ!?
さっさと答えい!!」
「……お前に答える理由は無い…」
「そんな答えは必要ナッシーーーーング!!
さっさと答えるのだ! お前「ご・と・き」とてその程度の事が起きるかも知れないという予想ぐらいは出来るであろう!!」
「……その、時は…」
「次にお前は優勝して生き返らせるというのである!!」
「………………違う…」
「…何であると?」
「その…時は…」
そう、その時は…
「私も、桂さんの後を追う…」
それが、私に出来る唯一の事だ。
桂さんを生き返らせるなんて事は出来ない。
何故なら、それは人から外れるという事。
桂さんを『鬼』にするということだ。
そんな事は…出来ない。
人から外れた存在として歩ませる事は、…出来ない。
「……お…」
「大馬鹿者である!」
…そんな事、いまさら言われなくても解ってる。
「とりあえずその計算式とやらに一発ブン殴られてくるのである!!
少しは見所があるかと思ったのであるがお前ごとき大馬鹿者で充分である!!
いや、むしろ『超』大馬鹿者の名が相応しい位の大馬鹿者である!!」
…そうなのかもしれない。
だけど、それだから何だって言うんだ?
「…いや……青い…で、あるな」
(…?)
変わった?
ウエストの表現が?
◇
「…一つだけ教えておくのである。
大天才として…………いや、かつての大馬鹿者の先達として…」
そう、我輩は大馬鹿者だったのである。
天才であろうと、間違いは犯すのである…。
「一人になるのはイカンのである」
……理論は、完璧だった筈なのである。
…いーーーーや!! そもそも完璧でない筈など無い!
この世紀の大天才ドクターウエスト!によりによって計算間違いなど存在しないのである!
だが、それでも、
「人生二足歩行ということわざはお前の国のものなのであろう?
片方の足しかない二人が一人の人間として歩いていくという…
一人では道を間違えても誰も教えてくれないのである…」
恐らく…あの時エルザが居たのならあれは成功していた筈なのである。
そもそもエルザを蘇らせる為の行動であったのだからエルザが居る筈は無いのであるが…
それでも…あの時、エルザが必要だったのである。
「別に同胞でも恋人でも僕でも好敵手でも構わんのである。
一人で居ては、……いずれ間違えるのである…」
我輩には…エルザが必要だったのである。
エルザが居なくなってから…我輩は死者の蘇生を諦めたのだから。
天才に挫折はあり得ないのなら…エルザの居ない我輩は、天才ではなかったのであろう…
「千羽烏月よ…お前はまだ一人ではないのであろう?
ならば…まずはその計算とやらに会っておくのだ…会って…そして…
共に行くのである…」
我輩のような…大馬鹿者にならずに、済むかもしれないのだから……
◇
「…………それを言うなら人生二人三脚だ。
それに後の内容は比翼の鳥のものだ…」
(…いや)
違う…な。
そんなことを言うべきでは無い。
(道を間違えた…か…)
千羽党の鬼切り部として…無辜の人を切るのは間違っている。
そんな事は……
(……違うな)
そう、違う。
鬼切り部は関係無い。
私という、千羽烏月の道が、間違っている。
それは、理解している。
「今更言われなくても…解っている……」
そう、…理解している。
正しい道が何なのか。
私のするべき事は何か。
…だけど、
「それでも…私は…桂さんに死んで欲しくないんだ…」
桂さんの側にいては、私は桂さんを優勝させれられない。
優勝したとしても帰れないとしても、それでも、生きてはいられる。
だから、私は桂さんに会うわけにはいかない。
「何一つ解っておらんであるな」
ああ、
「そうかも、しれないな…」
結局、私は何をしたいのだろう。
「死んで欲しく無いであると!?
そう思うのであるならとっととその計算とやらを見つけだして命に代えても守るのである!!
優勝させるなどという甘い事を言っている場合かこの大馬鹿者!!」
「甘い…か」
そう…だな。
桂さんに死んで欲しくないなら…こんなふざけた催しなどに参加させてはいけなかったのだ。
そもそも、桂さんを守るのなら、桂さんの側から離れてはいけないのだ。
その事を、あの時イヤというほどに思い知らされたというのに。
私は、ただ彷徨っていただけだ。
いや、違う。
「私は…臆病だったのかな…」
桂さんの近くで人を切れば、間違いなく彼女は私を恐れるだろう。
……怖かったのだ。
桂さんに嫌われる事が。
◇
「私は…桂さんを探す。
探して……そして、守る」
「そうであるか」
(そうして…優勝を目指すかもしれない…)
下の句を、烏月は告げなかった。
守る。
桂を守るのならば、その選択肢は捨てられないのだから。
「さて、ではとっとと大聖堂に向かうである!!」
「……は?」
ウエストの答えに、烏月は思わず聞き返した。
言っている内容が、良く解らなかったが故に。
「『は?』ではないである!
そもそもお前の所為で時間を取ったのであるぞ!!
我輩は凡骨リボンを探さねばならぬのであるからして手を貸すのが当然であろう!!
ついでにいえば『我 埋葬にあたわず』は我輩の持ち物であるからして勝手にしようした代金として対価を払うのが当然であろう!!」
「……二手に別れた方が、効率がよいのでは?」
「そうしたいのは山々であるが、お前が会ったティトゥスなどは我輩ではどうにもできないのである!
そして我輩が死んではお前も困るであろう? さあ、さっさと我輩を守りつつ進むのだ!!」
「…………」
一瞬、何故こんなのを守らないといけないのかという疑問が烏月の頭を過ぎるが…
…仕方がないかと思い返す。
「どの道計算とやらが何処にいるのか知っているはずもないのであろう?
ならば人の多い場所を目指すのだ!!」
「私はそちらから来たのですが…」
「ならば丁度良い!!
早速進みやすい道を案内するのだ!!」
「…………」
ゴツンッ!
「あべしっ!!」
とりあえず、いい加減一発殴っておくことにしたらしい。
【D-4 湖周辺/一日目 午前】
【千羽烏月@アカイイト】
【装備:地獄蝶々@つよきす -Mighty Heart-】
【所持品:支給品一式、我 埋葬にあたわず@機神咆哮デモンベイン】
【状態:肉体的疲労小、精神的疲労中、身体の節々に打撲跡、背中に重度の打撲、右足に浅い切り傷(応急処置済み)】
【思考・行動】
基本方針:羽藤桂に会う。
1:桂を守り共に脱出する、不可能な場合桂を優勝させる。
2:トルタ、恭介に対する態度保留。
3:クリス、トルタ、恭介、鈴、理樹は襲わないようにする。
【備考】
※自分の身体能力が弱まっている事に気付いています
※烏月の登場時期は、烏月ルートのTrue end以降です
※クリス・ヴェルティン、棗鈴、直江理樹の細かい特徴を認識しています
※岡崎朋也、桂言葉、椰子なごみの外見的特長のみを認識しています
※恭介・トルタが殺し合いに乗っている事を知りません。
※ドクター・ウェストと情報を交換しました。
【ドクター・ウェスト@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:無し
【所持品】支給品一式 、フカヒレのギター(破損)@つよきす -Mighty Heart-
【状態】気絶、肉体的疲労大、左脇腹に銃創、スタンガンによるダメージ
【思考・行動】
基本方針:我輩の科学力は次元一ィィィィーーーーッ!!!!
1:凡骨リボン(藤林杏)を探しに大聖堂へ
2:ついでに計算とやらも探す
3:霊力に興味
【備考】
※マスター・テリオンと主催者になんらかの関係があるのではないかと思っています。
※ティトゥス、ドライを警戒しています。
※フォルテールをある程度の魔力持ちか魔術師にしか弾けない楽器だと推測しました。
※杏とトーニャと真人と情報交換しました。参加者は異なる世界から連れてこられたと確信しました。
※クリスはなにか精神錯覚、幻覚をみてると判断。今の所危険性はないと見てます
※烏月と情報を交換しました。
以上です、投下完了しました。
誤字、脱字等ございましたら指摘お願いします。
大天才! ドクターーー! ウェストォーーーッ!
乙です!
ウエストは思考型でいてなおかつ勢いで他キャラを巻き込める貴重なコマ!
立った! 立った! クララじゃなくて烏月の対主催化フラグが立ったよ!
サクヤさん死亡の放送聞いたら、桂ちゃん守れるの自分だけだって自覚するよ!
問題は鬼化+片腕ちょんぱな桂ちゃんがどうなるかだぜ……
ウエスト恰好いいよ、ウエスト。
乙でありました!
烏月さんを説得出来るのは桂ちゃんだけだと思ってたけど、まさか西博士が説得してのけるとはw
説得の流れも自然だし、ギャグもシリアスもこなせる博士良いなあ
烏月さんもまだ未殺人だし今なら引き返せるさ
投下乙です
CM氏
成長してるなあ二人とも。誠のヒロイン感化力は超人的
それにしてもフレヒレ…もうおしまいだな
Lx氏
重厚長大なMAD乙です。誠はここでも刺されると
いきなりの死亡フラグ王に吹きましたw
Ck氏
いきなりの風子、この切り口は予想外だったw
理樹作戦に早くも暗雲ですが、果たしてどうなるか
lc氏
ウェスト、ボケを繰り返しながらも烏月を説得、
このロワでは意外なキャラが大活躍するなあ
あと、タイトルお願いします
Az氏
乙です。彼女とは意表を突かれました
AZ氏
ちょw上手杉w
絵も描けてSSも書けるとか反則レベルでっせ…
みなさん投下乙です
>bD氏
ファル様だいぶ思い出してきましたね
これは戻ったときもおもしろそうだ
>CM氏
あ、あれ……誠が綺麗だと……!
それに比べてフカヒレのやつはまったく……
>Lx氏
1stから始まっての流れがうまいですね
このみのなく頃にやヤンデレCDに吹いたw
>lc氏
まさか烏月さん説得をこの男がやってのけるとは……!
ようやく対主催の繋がりのきっかけが見えてきましたね
>AZ氏
う、上手い、流石の多才さですね
リセは本編では短かったけど、その分死者スレでがんばってくれw
週刊ギャルゲロワ2nd第8号(5/7)
先週の主な出来事
・CLANNAD、第二放送前にして「 全 滅 」
/\ヽペタン
, '´ '^ ^ヽ/)ノ ^V⌒ ペタン
! リノノ)))〉 (( <( レイ( ! モモモモチツくのよ!!
ノリ(!゚ Д゚ノ!)'))ノテ(゚ヮ ゚!从 お団子の方が良いな…
/ ⌒ノ ( ⌒ヽ⊂⌒ヽ そんな事言っている場合かー!!
く /_l 〉 ) ̄ ̄ ̄(く /_l 〉
)_)_) (;;;;;;;;;;;;;;;;;;;)(_(
oo_ o。
〃リi rr、ヾ! o
!リ/ノリ リ)∩ まだなの! △_
ソノl(l.゚ ロ゚ノ|マ| まだ終わらんよなの!! '´ィi ヽ
((i゙i†i´.r'..ノ 令呪によって命ずる! ! /从从リ)〉 ヒトデ祭りですっ!
l |!.| `ヽ いでよ変なのー!! なの!! ll r1 !|>ヮ从 ll
'ァ_;ー,_l´ lll くリ⊂)丞つ☆lll ズズズ
============================
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●)
. | (__人__) そこは終わっておくべきだろ
| ` ⌒´ノ 常識的に考えて…
. | }
. ヽ }
ヽ ノ
/ 朋也く
・100話突破!! 早いよ! 一日平均二作くらいの計算にならないか!?
・100話記念に様々な支援物資を頂きました。 作者の皆様、感謝しますー。
・誠氏ねが100話目だなんてw 何て面白いw とは言え意外と綺麗な方向に向かっているのか?
・トル恭大ピンチ!! 今度こそ双七君は間に合うのか!?
・乙女さん大暴れ! つーかあれはもう悪鬼なんかよりも恐ろしい何かだ…
・リトルバスターズ! リトルが少ないけどリトルバスターズ! 何気に暗雲? とりあえず風子自重。
・まさかまさかの…ウエストによる烏月改心。 でも一方その頃の桂は…
・言葉教団…もはや怖すぎて何も言えない…。 でもさり気なくかなり有望な対主催?
先週(4/28〜5/07)までの投下数:20作+MAD2作+記念絵1作
死者:5名(浅間サクヤ、吾妻エレン、佐倉霧、藤林杏、如月千早)
現時点での鬼:羽藤桂、西園寺世界、鉄乙女、柚原このみ
現時点(4/28)での予約:5件(◆WAW氏、◆gu氏、◆MY氏、◆Lx氏、◆Diy氏)
むう、AAがずれまくっとる…
oo_ o。
〃リi rr、ヾ! o
!リ/ノリ リ)∩ まだなの! △_
ソノl(l.゚ ロ゚ノ|マ| まだ終わらんよなの!! '´ィi ヽ
((i゙i†i´.r'..ノ 令呪によって命ずる! ! /从从リ)〉 ヒトデ祭りですっ!
l |!.| `ヽ いでよ変なのー!! なの!! ll r1 !|>ヮ从 ll
'ァ_;ー,_l´ lll くリ⊂)丞つ☆lll ズズズ
============================
ゆっくりとした動きで、ボート乗り場にクルーザーが接岸する。
操舵室で舵輪を握っていた少女はそれを確認し、ほうっと息を吐いた。
伊達スバルの身が海中へと消えた後。
クルーザーがあらぬ方向へ流されていることに気付いたなつきは、慌てて船の舵をとった。
少し悩んだ後に船首をG-6へと向ける。
船に居るのが自分だけになってしまった以上、このまま北上するのは危険だろうし、
陸上の監視と操船を一人で行うのは困難だと判断したからだ。
それ以上に、そのままこのクルーザーに乗っているのが嫌だったからでもあるが。
食料や双眼鏡などの備品と共に、操縦機器から抜き取ったカードキーを鞄へと入れる。
計画が頓挫したとはいえ、船自体は脱出に使える可能性もある。
だからこそ、上陸しようとして破損・沈没なんて事がない様、わざわざここまで戻ってきたのだ。
それを他者に譲る事もないだろう。
赤に塗れた甲板から桟橋へ。
そうして、なつきは久しぶりの揺るがない大地に降り立った。
299 :
名無しくん、、、好きです。。。:2008/05/08(木) 23:55:29 ID:aigFgIUJ
(さて、どうする?)
クルーザーの横でしばしの思案。
無論、静留と合流するという当初の目的は変わっていない。
変わってはいないが……
『いずれ……なっちゃんも俺みたいになるぜ。絶対』
伊達スバルが死ぬ間際に言った言葉が、呪いの様になつきに絡み付く。
静留をうまく見つけ出したとして、自分はその後どうする?
合流する以前に静留の死が知らされたら?
自分は伊達スバルのように、ゲームにのるのだろうか……?
そして、考えることはもう一つ。
(桂お姉さんと……フカヒレか)
若杉葛が慕い、会いたいと願っていた少女、羽藤桂。
伊達スバルが探し、聖域とまで言っていた人物、フカヒレ。
二人が探していた彼女等を探したいと、なつきは思っていた。
「感傷だな」
海を見つめながら、小さく呟く。
この広い島で顔も知らない人間二人を探すのは困難な事だろう。
更にフカヒレに至っては本名、性別すらわからない。
そんな二人を探し回って、自分はどうしようというのか?
自分だけが生き残った事に謝る?
死んでしまった二人の代わりに彼女達を守る?
それとも、その二人に自分を断罪してもらおうとでも言うのだろうか?
(……馬鹿げているな)
そんな事は、その時考えればいい。
今はただ、静留を探す事、それだけを考えればいいのだから……
「っ!?」
不意に響いた爆発音に、なつきは思考の波から復帰する。
尋常でない音量のそれは、対岸の街の方角から聞こえていた。
(どうする……?)
爆発物か、砲弾か……何にしてもあれは戦闘音だろう。
そんな場所に自ら近づくのは愚かな行為だ。
が、襲われているのが誰かは、近づかなければ確認は出来ない。
暫しの逡巡の後、なつきは鞄へと手を伸ばし――
◇◇◆◇◇
「桂……」
アル・アジフの発したその言葉に、返答は返らない。
目前の少女はただ蹲り、死した女性の髪を撫で続けていた。
彼女等を襲った先の攻撃。
それは浅間サクヤの命を奪うと同時に、羽藤桂の心すら打ち砕いていた。
そして、茫然自失になったその隙を、先の攻撃を仕掛けてきた相手が見逃すはずがない。
次の瞬間には桂とアルも再び同じ攻撃を受けて、命を落としているはずである。
が……
(攻撃はおろか襲撃もない、か)
蹲る少女に気遣いを向けながら、アルは思考する。
――何故、攻撃がこない?
先に感じたプレッシャーや、辺りに微弱に残る残り香から鑑みるに、
あの攻撃は強大な魔力の塊をぶつけるという物なのだろう。
それもただ押し潰すだけではなく、放出――すなわち魔力塊を破裂させている。
破壊力にかけてはおそらく一級品。
魔力の大きさによっては更なるダメージも受けかねない。
そして、爆発という攻撃の特性からいって、術者は爆心地から離れた位置にいる可能性が高い。
ならば考えられる発動方法は大まかに考えて二つ。
対象がその場所を通った時に発動するトラップのような形か、
もしくは離れた距離――それも攻撃対象が俯瞰できるような高所からの射撃という形。
前者にしろ後者にしろ、こちらに向けて再びあの攻撃が振るわれたならば、二人になす術はないだろう。
だが、攻撃は訪れない。
連発出来ないのか、消耗が激しいのか、そもそも一回しか使えない支給品の能力だったのか……
「……アルちゃん」
不意に掛けられた声にアルは考察をやめる。
見ると、桂がこちらに虚ろな眼差しを向けていた。
「お水、ちょうだい……サクヤさんの顔、汚れ落とさなきゃ……」
サクヤの髪を指で梳きながら、桂は力なく呟く。
アルは無言で近くにあった鞄に手を伸ばし、そのチャックを開いた。
「……?」
と、開かれたその口から食料や刀などと一緒に白い物体が顔を出す。
それは、真っ白な色をした子狐だった。
「汝は……」
アルはそれに看過できないほどの力を感じ、動きを止める。
それは相手も同じだったようで、子狐もまたアルをじっと見つめ返す。
だから、二人は一瞬、それに気付くのに遅れてしまった。
「……なっ!?」
それは突然の事だった。
急に横合いから突き出た手が鞄から何かを引き抜く。
アルがそちらの方向を見ると、そこには刀を持つ一人の少女の姿があった。
少女は残された腕と脚を使い鞘から刃を抜き放つ。
そして――
◇◇◆◇◇
そして、わたしは抜いたその刀を――自分の首に当てた。
「桂、何を……しておるのだ?」
「ごめんね、アルちゃん、わたし、もう、耐えられない」
首輪の上にあたった冷たい感触。
これを引けば、それで終わり。
サクヤさんの所にいける。
「このうつけがっ! 何の為に……何の為にそやつは汝を救ったと思っておるのだ!」
アルちゃんの言いたい事、わかるよ。
もしこのまま死んじゃったら、サクヤさんにすごく怒られるってわかるもん。
でも……
「でも、わたし、サクヤさんがいない世界なんて耐えられない……
サクヤさんがいないのに、わたしだけが生きて……
周りのみんなが……陽子ちゃんも、お凛さんも、葛ちゃんに烏月さんも!
みんな、みんな、死んでいく中で一人ぼっちで生きるなんて、わたしできない!」
ふたりなら。
サクヤさんとふたりなら耐えられた。
どんなに辛くても、寂しくても、ふたりで立ち向かって行けた。
でも、サクヤさんはもういない。
わたしのたいせつなひとは、いなくなってしまった。
わたしを置いて、いってしまった。
それに……
「それにね、わたし、おかしいの」
サクヤさんがいなくなって、胸の中に穴があいて、からっぽになって。
なのに、からっぽなはずのそこから、なにかがあふれ出てきて。
「わたしの中の何かが、にくいって言うの……
わたしからサクヤさんを奪った人がにくい……
わたしのたいせつなひとを傷つけた人がにくい……
わたし達にこんな事をさせるあの二人がにくい……
わたし達をこんな目にあわせる神様がにくいって!」
「桂……」
にくい、にくい、にくい、にくい……
いやな気持ちが胸の奥からあふれてきて、くるしい。
このままだと、わたしはいやな子になってしまう。
そしたら、サクヤさんは誉めてくれない。
きっと、悲しい顔をするに決まってるから、だから。
「もう、終わりにしてもいいよね?」
わたしは腕に力を込めた。
なのに。
何か白い物体が腕にぶつかって、わたしは刀を落としそうになる。
どうして?
どうして、死なせてくれないの?
どうして、わたしの邪魔するの?
それは、わたしの腕に何回もぶつかって。
まとわりついて。
すごく、
すごく邪魔な存在で。
わたしを死なせてくれないそれが、
とても、とても……にくらしい。
「邪魔をするなぁ!」
知ってるけれど知らない声がして、その白い物は遠くに吹き飛んだ。
白くて、四本の脚があるそれはおもしろいほどに地面を跳ねて、転がって……
そして、驚いた顔をしているアルちゃんの前で止まる。
ピクリとも動かなくなったそれに、わたしは見覚えがあった。
「……尾花、ちゃん?」
なんで、尾花ちゃんが倒れてるんだろう?
なんで、あんなに血を流してるんだろう?
なんで、わたしの持ってる刀に血が付いているんだろう?
わたしを見つめるアルちゃんの目が、怖かった。
「あ……い、いやぁあああああああああああああ!!!!!」
目の前のそれを見たくなくて、わたしはそこから逃げ出した。
わたしは、尾花ちゃんを……葛ちゃんの、たいせつなそんざいをうばってしまった。
そして、このままいっしょにいると、わたしはアルちゃんの事も……
だから、わたしは走った。
誰も傷つけないように。
誰からも傷つけられないように。
どうしてこうなったんだろう?
どうしてこうなってしまったんだろう?
そんな事、わからない。
わたしにわかる事はただ一つ。
かみさまなんていない。
いたとしても、それはただ残酷なだけのものなんだ。
◇◇◆◇◇
「桂!」
アルの叫びに返答は返らない。
羽藤桂は絶望の表情を浮かべながら走り去る。
見る間に小さくなる少女の背中。
その速度は、明らかに人のそれを上回っていた。
「くっ……!」
無論、アルも少女の背中を追おうとする。
が、目の前に倒れ付す者に一瞬、躊躇してしまう。
果たして、この子狐をこのままにしていいのか、どうか。
と、よろよろと顔をあげた狐が、まっすぐにアルの目を見つめた。
言葉はない。
しかし、その視線は子狐の思いを雄弁に語っていた。
「汝……すまぬ……!」
謝罪の言葉と共に、アルは駆け出す。
すでに小さくなった少女。
桂の言葉に一瞬気圧されてしまった自分が情けなかった。
彼女の想いを、一人取り残される悲しみを理解してしまい、
少女を止めるのをためらってしまった自分が許せなかった。
だからこそ、彼女を連れ戻すためアルは駆ける。
少女を保護し――憎しみから解放する。
それだけが、浅間サクヤの、そしてあの子狐の想いに答える唯一の方法なのだから。
◇◇◆◇◇
動く者のの消えたその場所で、彼はゆっくりと顔を上げる。
少女の身体能力が上昇している事に気付かなかったのは、失敗だったと自戒する。
結果、彼はけして軽くはない怪我を負ってしまった。
刀は掠った程度なものの、強かに打ちつけた頭部からは血が滲み、足も軽くふらついている。
更に骨が折れてしまったのだろう、右後ろ脚は動かすたびに痛みが走った。
しばらくは動く事も間々ならないだろう。
だが、それでも動かなくてはならない。
彼が思い返すのは、少女の言動と身体能力の異様な上昇。
彼女は鬼に囚われてしまったのだ。
少女を解放してやりたい。
それが彼の率直な願いだった。
無論、あの少女と共にいた鬼――何かの古道具の精のように感じたが――を信用しないわけではない。
だが、自分だけこのままここで倒れているわけにもいかない。
だから、彼は立ちあがろうとする。
あの少女を救う為に……
不意に、風に乗って懐かしい匂いが届き、彼は顔をあげる。
微かな、ほんの微かなそれは、彼の敬愛する少女の匂い。
鬼切り頭筆頭の、あの娘の香り。
彼は震える体を叱咤しながら、匂いの方へと顔を向ける。
しかし……二輪の乗り物に乗って現れたのは、彼の見知らぬ顔。
「お、おい、大丈夫か?」
こちらへと駆け寄ってくるその姿を確認しながら、彼の意識は急速に遠のいていった。
◇◇◆◇◇
「お、おい、大丈夫か?」
乗っていた支給品のMTBを止め、なつきは慌ててその白い物体に駆け寄る。
(子犬……か?)
所々血に塗れたそれは、白い小さな獣。
そして、その場所にはその獣以外、生きている者の姿はなかった。
あるのは黒い鞄と巨大なクレーター、そしてその中心部に倒れる、見知らぬ女の死体。
それだけだった。
(間に合わなかったか)
死んでいる女が何者かはわからない。
もしかしたら、彼女が羽藤桂なのかもしれないが、なつきに確かめる術はない。
わかるのは、彼女が爆発物か何かで下半身が吹き飛ばされ絶命したという事だけだった。
周囲を警戒しながら、女へと近づく。
首がもげ、下半身が消失した無惨な死体。
思わずそれから視線を逸らそうとして……女の身体の側に首輪が落ちていることに気がついた。
無言でそれを回収し、仔細に観察する。
殆ど繋ぎ目の目立たないツルツルとした外殻。
専門的な知識のないなつきにも、それを解除するのは困難であろう事は理解できた。
クレーターの側にある黒い鞄にそれを詰め、なつきは早々にその場を後にする事にする。
この惨状を起こした参加者が、まだ近くにいるかもしれないし、
そうでなくとも、爆発音に引き寄せられてゲームにのった参加者が近づいてくるかもしれない。
生きている人間がいなかった以上、ここにもう用はないだろう。
なつきは止めていたMTBへと足を向け……
◇◇◆◇◇
走って、走って、走って。
何度も転んで、何度も起き上がって。
逃げて、逃げて、逃げて。
アルちゃんから、尾花ちゃんから、嫌な事から逃げ続けて。
「桂!」
なのに、アルちゃんの声はわたしにすぐに追いついてきて。
「……あうっ!」
もっと走る速度を上げようとしたわたしは、足がもつれさせて転んでしまった。
「桂……」
アルちゃんが真後ろに立つ。
わたしは怖くて、振り返ることが出来なかった。
「こないで……!
……わたし……わたし、嫌な子になっちゃった……
わたし、尾花ちゃんの事……」
「案ずるな、あの者は生きておる。
生きて、汝の事を心配しておった! だから……」
アルちゃんの言葉に、少し安心する。
生きててくれて、ほんとうによかったと思う。
でも……
「でも、だめだよ……わたし、尾花ちゃんにひどい事した。
嫌な気持ちをコントロールできないで、尾花ちゃんの事を傷つけた……!
このままだと、わたし、アルちゃんにもひどい事しちゃう!
会う人みんなを傷つけちゃう!」
だから、終わりにしよう。
嫌な子になってしまったわたしは、もうサクヤさんと同じ所にいけないかもしれないけれど。
でも、このまま一人ぼっちで生きていくのは嫌だ。
このまま生き続けて、誰かを傷つけるのは嫌だ。
だから。
「汝の……汝の悲しみはわかる。
妾とて永遠に近き時を生きる魔導書……人ならざる存在。
幾人ものマスターと死に別れてきた」
不意に、遠くを見るような目でアルちゃんが言った言葉。
その言葉にわたしは今朝の事を思い出す。
『皆死んだぞ。正義のため欲望のため復讐のため……あらゆる動機で外道の知識を欲した者共が妾を手に取った
男も女も若者も老人もいた。その数はもはや十や二十で数え切れぬ。だが誰も彼もが悲惨な最期を遂げよったわ』
そうだ。
アルちゃんも同じだったんだ。
なのに、わたしは自分だけが不幸だって顔をして……
やっぱり、わたしは嫌な……
「だがな……その者達は消えてしまったわけではない」
「え……?」
「肉体を失おうと……魂が消滅しようとも……
あやつらは妾の記憶に残っておる! 心に刻み込まれておる!」
アルちゃんは自分の胸を叩きながら言う。
その目はまっすぐにわたしの事をみつめていて……
「汝の心は本当に虚ろとなったのか?
そこにもう、浅間サクヤは存在せんと言うのか!?」
そう言われて、わたしは振り返る。
自分の中を見つめてみる。
からっぽで、何もないはずのそこを覗き込む。
真っ暗な、ほんとうに真っ暗なそこに、小さな光を見つける。
それは……
「いるよ、サクヤさん、ここにいる……」
「ならば」
「でも、やっぱり、もうダメ……
嫌な気持ちが止まらないから……
だから、わたしはいなくなった方が……」
そうだ、このままいなくなってしまえば、きっと楽に……
「この大うつけが!
憎しみに負けそうだから死ぬだと?
自分はいなくなった方がいいだと?」
「そうだよ……だって、わたしが生きてると……」
「汝の意思など関係ない!
浅間サクヤが生きろと願うから!
尾花が生きろと願うから!」
アルちゃんが叫ぶ。
わたしのほうに手を伸ばして叫ぶ。
「汝のたいせつなもの達がそう願うから!
そして、なにより……妾が汝に生きろと願うから!」
ああ、どうしてだろう。
「だから生きよ、桂!
生きて、生きて、生き続けよ!」
このまま生きていてはいけないはずなのに。
いなくなってしまった方がいいはずなのに。
「憎しみなどに負けるな!
強さを……汝の強さを思い出せ、羽藤桂!」
どうして、わたしは……
「わた……し……」
涙があふれて止まらない。
わたしの両目から、ぽろぽろと涙がこぼれる。
そして、それはアルちゃんも同じだった。
「わたし、尾花ちゃんに……謝ら、なきゃ……」
「ああ、きっと、あやつは許してくれるはずだ」
わたしたちは二人で抱き合って泣いた。
泣いて、泣いて、泣き続けた。
どうか、この涙で憎しみが消えますように。
【チーム『天然契約コンビ』】
【G-6歓楽街/1日目 昼】
【羽藤桂@アカイイト】
【装備】:今虎徹@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜
【所持品】:支給品一式、アル・アジフの断片(アトラック=ナチャ)
魔除けの呪符×6@アカイイト、古河パン詰め合わせ27個@CLANNAD
【状態】:深い悲しみ、憎しみ?、右腕切断、全身に擦り傷、鬼、アル・アジフと契約、サクヤの血を摂取
【思考・行動】
0:今はただ泣きたい
1:尾花に謝る
【備考】
※古河パン詰め合わせには様々な古河パンが入っています。もちろん、早苗さんのパンも混じってます。
※魔除けの護符は霊体に効果を発揮する札です。直接叩き付けて攻撃する事も可能ですし、四角形の形に配置して結界を張る事も出来ます。
但し普通の人間相手には全く効果がありません。人外キャラに効果があるのかどうか、また威力の程度は後続任せ。
※マギウススタイル時の桂は、黒いボディコンスーツに歪な翼という格好です。肌の変色等は見られません。
使用可能な魔術がどれだけあるのか、身体能力の向上度合いがどの程度かは、後続の書き手氏にお任せします。
※制限によりデモンベインは召喚できません。
※B-7の駅改札に、桂達の書いたメモが残されています。
※桂はサクヤEDからの参戦です。
※桂は、士郎の名前を知りません(外見的特徴と声のみ認識)
※桂はサクヤの血を摂取したお陰で、生命の危機を乗り越えました。
※サクヤの血を摂取した影響で鬼になりました。身体能力が向上しています。
※憎しみに囚われかけていましたが、今は安定しています。しかし、今後どうなるかはわかりません。
【アル・アジフ@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式、ランダムアイテム×2 、斬り落とされた桂の右腕
【状態】:背中に重度の打撲、全身に擦り傷、魔力消費中、肉体的疲労中、羽藤桂と契約
基本方針:大十字九郎と合流し主催を打倒する
0:桂を慰める
1:桂と協力する
2:九郎と再契約する
3:戦闘時は桂をマギウススタイルにして戦わせ、自身は援護
4:信頼できる仲間を探す
5:時間があれば桂に魔術の鍛錬を行いたい
【備考】
※制限によりデモンベインは召喚できません。
※B-7の駅改札に、桂達の書いたメモが残されています。
※アルは士郎の名前を知りません(外見的特徴と声のみ認識)
※アルからはナイアルラトホテップに関する記述が削除されています。アルは削除されていることも気がついていません。
※アルはサクヤと情報交換を行いました。
※斬り落とされた桂の右腕は、氷の詰まったビニール袋の中に入れられています。
◇◇◆◇◇
「私は何をやっているんだ……」
繁華街から少し離れた民家の一室で、なつきは自嘲気味に呟いた。
静留を探すでもなく、かと言って羽藤桂とフカヒレを探すというわけでもなく……
溜息を吐く少女の視線の先には、いまだ意識のない白い獣の姿。
全身に応急処置がなされたその姿を見つめながら、なつきは再び溜息を吐いた。
【G-5民家/1日目 昼】
【玖我なつき@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:ELER(二丁拳銃)、尾花@アカイイト
【所持品】:支給品一式×2、765プロ所属アイドル候補生用・ステージ衣装セット@THE IDOLM@STER、
『全参加者情報』とかかれたディスク、カードキー(【H-6】クルーザー起動用)
ベレッタM92(9ミリパラベラム弾 15/15+1)、ベレッタM92の予備マガジン(9ミリパラベラム弾 15発入り)×3
七香のMTB@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜、不明支給品(0〜1)、
クルーザーにあった食料、双眼鏡、首輪(サクヤ)
【状態】:健康、迷い
【思考・行動】
基本:静留と合流する
0:私は何をやっているんだ……
1:羽藤桂、フカヒレを探す?
2:ゲームに乗るかどうかは未定だが……
【備考】
※装備品のELERは支給品ではなくなつきのエレメントです。
※チャイルドが呼び出せないことにおそらく気づいています。
※人探しと平行して、ゲームの盲点を探し本当のゲームの参加者になる。
※盗聴の可能性に気付きました。
※『本当の参加者』、もしくは『主催が探す特定の誰か』が存在すると考えています。
※佐倉霧の言いふらす情報に疑問視。
※権利は元の世界に返すや死者蘇生と考えてます
【尾花@アカイイト】
【状態:気絶中、脳震盪、刀によるかすり傷、右後ろ脚骨折(共に応急処置済み)】
【思考】
基本方針:桂を救う。葛を探す
投下完了いたしました、支援ありがとうございます。
タイトルは『Monochrome〜モノクローム〜/続く夜に負けないで 朝の光信じて』
『Monochrome〜モノクローム〜』は同名のPS2ゲームから、
『続く夜に負けないで 朝の光信じて』はアカイイトOP、廻る世界の歌詞からです。
指摘等ございましたら、お願いします。
投下乙です。
アル桂なんとか持ち直したかー。
もうこの二人でデモベに乗っちゃえよw
尾花が活躍しているw
そしてなつきはどこまで空気なのだw
投下乙です
桂ちゃん持ち直したか、サクヤさんの分もがんばって欲しいなあ
そして呪いの支給品尾花はなつきのもとへ……w
投下乙です
桂ちゃんはやっぱりアチャ腕がハサン先生腕を装備して・・・
なつき危ないー、のろいのアイテムから逃げてー!
1カ所気になったのは桂の
「邪魔をするなぁ!」
のセリフ、死にそうになっても敵に「ちゃん」付け忘れない桂ちゃんっぽくないかな
「邪魔しないでよ!」
とかの方がらしいと思う
鬼化の影響ならモーマンタイだけど
脳内で松来未祐ボイスをイメージして
「なぁ!」の部分をちょっと上げ気味に読んだらあんまし違和感なかったかな?
ともかくガチで戦闘力を身に付けた
桂ちゃんはどう行動するのか‥
投下乙です
桂ちゃんが持ち直して本当によかった
人を殺せるような子じゃないから自殺するんじゃないかと冷や冷やしたよ
刀を首に当てたシーンは赤い維斗EDの烏月さんを思い出した
それにしても不幸属性っぽいなつきがその呪われた支給品を持っていても大丈夫なのかww
投下乙!
おお、桂ちゃん、危うく悪鬼になってしまうかと心配したよwww
それにしても辛い位置にいるな……今後の状況しだいじゃ、本当に自殺してしまいかねない。
アルの手腕に期待するしかないか。
それにしても尾花はよく頑張ったw さあ、なつきと共に珍道中だw
「…………」
支倉曜子だった存在はは花畑の一部に身を隠しながら、状況をゆっくりと吟味した。
茶髪の髪の青年―――戦闘続行可能。
その青年と共にいた少女―――戦闘不能。
新たに現れた黒髪の侍の姿をした怪人と、その隣にいるリボンの少女―――戦闘続行可能。
優先順位を人間離れした合理的な思考の元に定める。
最下層にトルタ。いつでも彼女は殺せる、よって無視。次点に侍の隣にいる少女。戦闘力は皆無と判断。
一番撃破したい相手は、やはり自分と同じ領域にいる怪人か。
「…………」
だが、無理に襲撃するのは得策ではなく。
幸いにも標的たちはいがみ合い、殺し合おうとしている。
ならば怪人がすぐに行動を仕掛ける必要性も見当たらない。
彼らが殺し合うのを眺め続けることを選択。
狙うのは漁夫の利、利用する策は二虎共食の計といったところか。
青年と侍が戦い始める。
どうにかして青年は逃げ出したいようだが、どうやら途中で逃亡を諦めた様子だ。
(…………都合が、いい)
よって、恭介たちとティトゥスによる殺陣の唯一の観客となりて、ゆっくりと銃だけを構えて待機する。
確実に、一切の容赦なく、感慨もなく。
ただ一人の大切な人のために。怪人は黒須太一以外の……己も含めた全ての存在を道具にして、殺戮の宴を謳歌する。
それが支倉曜子だった存在の流儀だった。
◇ ◇ ◇ ◇
闘争とは殺し合いのことである。
互角の相手、互角の技量、互角の経験、互角の得物、互角の戦力。
その是非は問わない。
ただどれかひとつでも互角か、相手を上回る要素があれば、それはきっと闘争に相応しい戦いになるだろう。
「ふっ……はっ、あ……!」
棗恭介は二度目の横転を、つまりは絶好の隙を強敵相手に見せてしまう。
一度目は距離を詰められた直後、振るわれた凶器を避けるため後先なく横へスライディングしたとき。
二度目はティトゥスの追撃に耐えられず、鋭い蹴りをガードした際に衝撃で吹っ飛ばされた。
互角ではない。
ティトゥスと渡り合う技量も。
殺し合い、鬩ぎ合う経験も。
洗練された、というほど使い慣れていない得物も。
棗恭介とティトゥスの戦力差は、真正面から戦っても勝率などない。それほどまでに絶望的だ。
(くっ……そッ!)
烏月の不在、それが大きな意味を為している。
ティトゥスの刀を使った接近戦が主要だ。それを抑えておけるほどの剣の技量を持った味方がいない。
剣もなければ、ティトゥスと斬り合える実力もない。
巨大組織の大幹部たる化け物を相手にするには、一介の学園生徒に過ぎない恭介には荷が重すぎたのだ。
「……どうした、棗恭介よ。貴様は拙者が強者と認めた存在なのだぞ、あまり失望させるな」
恭介、トルタ、烏月の本名はティトゥスも名簿を確認して把握している。
屠るべき強者の名前は憶えておきたい、と思ったティトゥス。その彼は恭介の歯ごたえのなさに首をかしげる。
実際、まだ恭介が生きていられるのはティトゥスの気まぐれが大きいのだ。
彼自身が見えない刺客の気配を警戒している、という意味もあるが……それは恭介も同じである。
(くそっ……前門の虎と後門の狼ってのはこう言うんだろうな)
勝つ確立は1%ですらおこがましい。
それでも、恭介は立ち続ける。引き金を引き、己を貫き続けた。
恭介は思考する。甘ったるい自分を心底馬鹿らしいと思う。
――――見捨ててしまえばいいのに。
背後で足を撃ち抜かれたトルタに視線を向ける余裕はない。
もう十分だ、義理は果たした。
トルタ自身も、自分を置いて逃げろと言ってくれた。
そしてまだ、恭介自身にも生き続けなければならない理由がある。大切な二人を護らなければならない。
理樹と鈴、自分の命よりも大切な親友と妹。
まだ情報の欠片すらも手に入らない状態で、この瞬間にも恐ろしい目にあっているのではと思うと気が気でなくなる。
だからこそ、こんなところで命を張って戦っている暇はない。
そもそも恭介のミッションとは、こういった手合いを同士討ちさせることにあったはずだ。
それなのにどうしてこうも、自分が命を張らなければならない状態に陥ってしまうのか。
運が悪い、とティトゥスの刀を紙一重で避けながら呟いた。
苦虫を噛み潰したかのような顔は、真実、今の自分の心理状態に対して不平を漏らしている。
(なんで、俺はこんなところで踏ん張ってんだろうな……)
お互い、恨みっこなしという約束をしたはずだ。
事前にそういう約束を交わしたのは何のためだと思っているのか。
もう、トルティニタ・フィーネに価値はない。
一緒に戦えない足手まといなど捨てて、そんな無価値な女など捨ててしまえと冷静な自分が言っている。
言っているのに。
莫迦な自分はこうして、手を広げて孤高の剣士と戦い続けている。
「はっ……」
乾いた笑みは歓喜か、それとも諦観の笑みか。
要するにこういうことだったのだ。悩むまでもない、考えるまでもない。
棗恭介は仲間を見捨てられない甘ったれだった。
合理的に考えることも、非情になれることも出来るはずだった一人の青年は――――とっくの昔に莫迦だったんだ。
ああ、大いに結構だ。
それが自分の選択、己の流儀。
それが棗恭介の限界だと言うのなら、自分自身はそれを大いに祝福しよう。
―――――良かった。俺はまだ、仲間を大切に思うことができたのか。
それさえ心に留めておければ、まだ自分は戦える。
正しいと信じた道を貫くために、こうして身体を張ることができる。
◇ ◇ ◇ ◇
「恭、介……」
トルタは恭介とティトゥスの戦いを、若干離れたところから座り込んだまま見続けていた。
彼女の足はもう動かない。凄まじい激痛が絶え間なく襲い掛かってきて、意識を保つにも一苦労だ。
それでも、トルタは唇を血が滲むほどに噛み締めて前を見る。
目の前で仲間が戦っている光景を、絶対に一瞬たりとも見逃すものかという瞳で。
「莫迦、だよ、恭……介……」
見捨ててしまえばいいのに。
こんな情けない自分など見捨てて、大切な人たちの下に走ればいいのに。
どうしてこんな無価値な女を捨ててくれないのだろう。
思えば、まったく役に立たない仲間だった、とトルタは独白する。恭介ばかりを当てにして、何もしていない。
せめて彼のために何かしたい。だがそれすらも許されない。
もう十分なんだ。自分はここで切り捨てられるべきなのだ。
それで恭介がこの窮地を脱出できるなら、この命を捧げても構わないとすら思ったのだ。
「逃げて、よ……見捨ててよ、恭介ぇ……」
死んで欲しくない。
自分などを護るために死んで欲しくなんてない。
こんな役立たずなど捨ててしまってくれていい、と思うのに。
どうして、彼はこんなにも満ち足りたような顔のまま、最強の侍へと向かっていくのだろう。
それがますます、死に逝く者の最後の煌きのようにも見えて。
トルタの頬を涙が伝った。悔しさと悲しさと……そして、少しの嬉しさを混ぜた雫がこぼれた。
見捨てないでくれてありがとう、と――――少女として、人間としての喜びがあった。
恭介にとって、役立たずな自分にもそれほどの価値がある、と言ってくれているような気がして。
「ごめん……ごめ、ん……恭介……きょう、すけ……」
感謝してはいけないのに。
謝罪してはいけないのに。
ぽろぽろ、ぽろぽろ、と……いつまでも涙は零れ落ちた。
◇ ◇ ◇ ◇
(つまらん……)
そう、心中で独白するのはティトゥスだ。
彼にとってはある意味で予想外すぎる展開である。何しろ、あの心躍る戦いとは色々と違うところがある。
千羽烏月の不在。自分ともそれなりに斬り合える強者がいないだけでも、戦いに価値がなかった。
恭介の勇気は認めよう。だが、ただ一人でこうして殺し合いをしていても、意味がなかった。
無造作に刀を振るう。
恭介は全力でそれを回避するのが精一杯で、余禄程度に繰り出す打撃で吹っ飛ばされる。
ティトゥスにしてみれば、これは遊びだ。
恭介が全力を持って戦ってくれることを期待して、ギリギリのところで追い詰めているだけに過ぎない。
(つまらんぞ……)
それも限界だ。
そろそろ恭介の道化ぶりにも飽きてきた。
何度目かの銃撃を刀で切り裂き、距離を詰めた。今までとは比べ物にならないほどの速度。
反応すら許さない、とばかりに接近され、恭介の表情が凍りついた。
「つまらん、つまらん、つまらんッ! 失望したぞ、棗恭介ッ!!」
「ぐあっ……!?」
刀の錆にすることすら、勿体無いほどの歯ごたえの無さ。
そんな彼の不甲斐無さにティトゥスは大いに落胆した。いかに強者だったとは言え、策を弄する者の限界か。
思い切り繰り出した脚撃は恭介を十メートル近くも吹っ飛ばした。
まさか、蹴られただけで空が飛べるとは思いもよらなかった恭介は、受身こそ取ったものの苦痛で顔を歪める。
「ここまで歯ごたえがないとは。期待していただけに無念よ」
溜息がひとつ。
もう遊びに使う時間すらも惜しいと思ったのか。
ティトゥスは螺旋に捻じ曲がった刀を、ゆっくりと恭介の心臓を貫くように掲げた。
この一撃で勝負をつけてしまおう、と。
そうした意思が誰にでも理解できるほどの殺意が膨れ上がるなか、一人の少女はゆっくりと黒き侍に問いかけた。
「あなたは、それでいいの?」
なに、とティトゥスの体が膠着した。
若干の驚きと苛立ち、構えた刀は恭介の心臓を狙いすませたまま、背後の少女へと視線を向ける。
そこにいたのは特筆するべきところもない少女だ。
戦いという快楽において、何の役にも立たない清浦刹那が、まるで子猫のように首をかしげながら、問う。
「満足に戦えない人と戦うことに、意味があるの?」
それは、ティトゥスの思いを根元から揺るがす問いかけだ。
それは、ともすれば震え上がったまま動けなくなりそうな清浦刹那の問いかけだ。
それは、恭介とトルタに休息を与えるには十分な時間を稼ぐ問いかけだった。
「つまらないなら……殺す必要はない、と思うし」
「…………」
「満足のいく戦いがしたいなら、万全のほうがいいと思う。例えば、この殺し合いが終わった後、とか」
万全な体勢ならば、満足に殺しあえるだろう。
刹那は言葉をひとつひとつ、選んでティトゥスに相対する。言葉は剣よりも強い、と言わんばかりに。
「あなただって、疑問を感じているはず。誰かに首輪をつけられ、従属を迫られた上での殺し合い」
「………………」
「ウィンフィールドさん、言ってた。身体に制限が掛かってるって。それはあなたも、同じはず」
そんな身体で殺し合いなどして、満足な戦いができるはずがない。
ティトゥス自身とて薄々感じていることだった。
そこを突けば、この戦いは回避できるものかも知れないと刹那は考えたのだ。
黒き侍は無言を貫いている。
現時点で戦っても面白くない。それはたった今、証明されたはず。
こんな首輪を付けられて生殺与奪の権利を相手に握られたまま戦い続けることは、本意でもないと思う。
なら、ここは皆で協力して脱出して、それから改めて。今度は傷もない万全な状態で戦えばいい。
そうすれば、きっと満足のいく戦いができるはずだ。
「なら、まずは手を組んであの二人組を倒して、その後で……」
その行為に、ティトゥスが自分の話に耳を傾けてくれているものと思っていた。
少なくとも勝算は刹那の中ではあったのだ。
彼の性格は把握してるつもりだったし、うまく軌道修正しながら自分の意見を伝えていけば賛同してもらえると思っていた。
多少の願望こそあれど、自分の行動にブレはないと信じていた。
「話は終わりか、小娘」
莫迦だった。
軌道修正するなら、直接今ここで真正面から説得するべきではなかった。
刹那の言葉は何一つ、怪物の心に響いてはいなかった。
「えっ……?」
「誰が再戦を確約してくれるのだ?」
静かに、楽しみを『邪魔』された怪物が問いかける。
恭介に向けられていた凶器は、ゆっくりと少女の胸元へと狙いを変える。
「このような催し物でもない限り、誰が好き好んで殺し合いなどしよう。誰が、再戦を約束するというのだ」
刹那は焦ってしまったのだ。
他人の命を懸けた説得だった。刹那は、目の前で人が殺されることを黙って見ていられなかった。
それが早急な説得に繋がり、そして現在に至ってしまう。
焦った彼女の判断は鈍り、結果として彼女の寿命を縮めてしまうこととなった。
「闘争にも鮮度がある。小娘よ、清浦刹那よ。貴様はまだ見ぬ強者との戦いを前にして、拙者に闘争を耐え忍べ、というのか?」
「それは……」
「拙者は、言ったぞ」
ひとつ、清浦刹那の考えには重大な欠陥があった。
巨大勢力、ブラットロッジの大幹部であるティトゥス。その手綱を、一般人である刹那が引くなど、無理があったのだ。
子供が幻想種の手綱を握っているようなものだ。
それは、どうしようもなく、不可能な願いだった。それほどまでに、この怪物は『怪物』足りえる存在として君臨しているのだから。。
「無駄口を叩くな、小娘」
邪魔をすればどうなるか、既に警告はされていた。
ティトゥスは彼女を殺すことに躊躇しなかった。既にウィンフィールドとの合流の仕方は分かっている。
少女を生かしていたのは気まぐれに過ぎず、そしてもはや用済みなのだ。
刹那はその一撃に反応すらできないだろう。
恭介には止められない、トルタにも目の前の殺人は止められない。
花畑に潜む怪人は止める意思すらなく、そうして一秒もない時間の間に……刹那の身体は切り裂かれる。
「待てッ!!」
切り裂かれるはずだった。
「――――――!? 何奴ッ!?」
ティトゥスの意識の矛先が明後日の方向へと向けられた。
恭介の方角ではないし、トルタでもない。もちろん、曜子の気配を感じ取ったわけでもなかった。
孤高の侍が感じたのは接近してくる足音。
獰猛なまでの大きな足音は、人のものではない。
彼自身もさっきまで感じ取れなかった戦意に、魂が歓喜の悲鳴を上げた。
現れた存在は、刹那にとって白馬の王子様にも見えた。
比喩でもなく、本当に白くて気高そうな馬に乗った少年。
ツンツンの髪は王子のイメージとしてはいまいちではあるし、豪華な服を着ているわけでもない。
それでも、その瞳は本当に頼りになりそうなほどの光を放っていて。
(…………ッ!!)
少女が侍に襲われている。
その事実さえ理解できれば、もはや難しいことを考える必要はない。
ならば全身全霊を持って救わねばならない。
そうすることが、救えなかった命に対する謝罪にもなると信じて、少年は怒号の雄たけびを上げた。
「うおぉぉォォォォォォォォォォオオオオオッ!!!!」
「ぬうっ……!?」
彼は刀を突きつけられる刹那を見て、自分の身を省みることなく突っ込んできてくれた。
白い馬の背中から跳躍し、その手には剣を構えてそのままティトゥスに振り下ろす。
ガキン、と鋼が響く音。
勢いの元に振り下ろされた一撃を殺しきれず、ティトゥスはたたらを踏んで後退した。
「ぐっ……シッ―――――!」
「うあっ……!?」
だが、相手は化け物だった。
返す刀は神速で、恭介を相手にするようなものではなく……真に命を狙った一撃。
現れた少年の剣、クサナギは彼の手から零れて宙を舞う。
だが、それでも少年を止める理由にはならない。
元々は剣士ではないのだから。牽制のために使用した武具の動向に、気を払ってはいられない。
こっそりと、剣に心の中で謝りながらも少年は接近する。
相手の胸に目掛けて、少年―――――如月双七は、円を描く軌道の下に、掌を捻った。
壮絶な音が響く。
双七の放った拳の一撃は、ティトゥスの第四の腕によって受け止められていた。
「戦士よ、お主の名は?」
「っ……九鬼流、如月双七」
両者が距離を取り、様子を見る。
未だに刹那はティトゥスの背後にいたままで、双七は内心で舌打ちした。
このまま背後を振り向くと同時に切り捨てられては、こうして戦いに赴いた意味がないのだ。
もう、誰も死んでほしくない、と双七は思う。
(相手は人妖……いや、これは妖か? とにかく、実力が違う……俺一人じゃ敵わない)
素直に双七はそんな判断をつけた。
手は綺麗に、心は熱く、頭は冷静に――――かつての師の教えのままに、双七はティトゥスと相対する。
そうだ、一人で敵わないなら二人で戦えばいい。
それは卑怯なことではない。誰かに頼るのは間違いではないのだから。
故に、双七の隣に立つ青年を味方と双七は断言した。
「……棗、恭介だ。そっちの自己紹介はいらないぜ」
「よろしく。仲間と……思って、いいんだよな?」
「ああ、頼む。俺一人じゃ、仲間を守れない。だから……力を貸してくれ」
弾かれた双七の支給品、クサナギを恭介は拾って構えた。
背後には泣きそうな顔の……実際には、もう泣いてしまっている少女がいる。彼女を守りたいと恭介は思う。
ティトゥスの背後にも、不安そうに事の次第を見守る少女がいる。彼女を救いたいと双七は思う。
目的が一致したのなら。
彼らは守りたいという理念の下に、こうして強敵を前に手を組める。
「如月、でいいな。こっちに作戦があるんだ、乗らないか?」
「……?」
双七が首をかしげると同時に、恭介はティトゥスの前に一歩出る。
それが甘美なる殺し合いの前兆か、と黒き侍が構える。
そんな彼に向けて、恭介は告げる。
あまりにも不敵で、あまりにも大胆で、あまりにも愚直な挑発と共に棗恭介が告げる。
「作戦会議の時間をくれ。報酬はお前の敗北でどうだ?」
とんでもない言葉を言ってのけた。
◇ ◇ ◇ ◇
「………………」
私、清浦刹那は命の危機に晒されている。
首に突きつけられた刀の切っ先は、残酷なほどに冷たかった。
私の命を担保として、五分の猶予が彼ら三人に与えられている。
黒き侍、ティトゥスは私などを気に留めることもない。ただ、敗北を用意しようという彼らを楽しみに待っている。
助けてくれるだろうか。
そのまま逃げる算段を立ててはいないだろうか。
そんな思いがぐるぐると回ってはしまうが、それでも彼らは決して逃げないだろう、と勝手に思うことにした。
だって、そうじゃなきゃ、助けになんて来ないと思うから。
こんな地獄のような場所で、一番優先しなければいけないのは自分の命なのに。
殺されそうになった私を助けようとしてくれた。
赤の他人のはずの私を助けに来てくれた、お人よしの男の人なんだから。
信じて待ち続けることにした。
怖いと思う心を飲み込んで、私は助けを待ち続ける。
「……楽しみだな」
「…………余裕?」
「いや、戯れよ。このままではつまらん、と思っていたのだからな」
それを余裕と人は言うのだが、それ以上は言わないことにした。
ティトゥスと彼らの実力差は詳しくは分からない。
そもそも四本腕だと知ったのもついさっきで、その時は心臓が飛び出るほど驚いたのだから。
私はこんな化け物を操ろうとしていたのか、と今更ながらに後悔するぐらいに。
私だって生きたい。
でも目の前で人が死ぬことを見捨てることができなかった。
優しくない考えだと自分でも思う。自分は大切なのに、他の人にも一応死んでほしくないと思ってる。
甘い考えだと聞く人が聞けば笑うかもしれない。
(………………だけど)
我が身可愛さに人の死を許容してしまうほどの人間にはなりたくなかった。
世界に逢いたいし、伊藤にも逢いたい。桂さんにも逢いたい。
だけど私が見逃すことが巡り巡って、彼らの迷惑になってしまうかも知れないと思うと、焦ってしまった。
その結果がこの様だから、情けなく思う。
だから待ち続けよう。
私の役割がきっとあるはずだ、と……そう信じて彼らが救ってくれることを待ち続けていよう。
本当は怖いけど。すごく、身体が震えるほど怖いけど。
女にはやらなければいけない時が、あるのだから。
◇ ◇ ◇ ◇
(あんなのが通るとは、思わなかったんだけど……)
(私も……)
(静かに、時間がないんだ。下手なことをすれば、清浦の首が飛んじまうからな)
手に入れた時間は五分。
一秒でも過ぎれば、刹那の首を跳ねるということを条件にティトゥスは作戦会議の時間を受け入れた。
逃げる素振りを見せるだけでも、刹那は殺される。
恭介自身には様々な思惑があるが、それでも刹那を置いて逃げるという選択肢はなかった。
(この作戦はトルタ、お前に掛かっている)
(私……?)
(ああ、まずお前は――――)
残り、三分。
それぞれの役割を決め、それぞれを仲間として認め、信じなければ勝利はない。
互いの支給品も、互いの能力も、その限界も、ほぼ全てを曝け出して最強の怪物と死闘を演じるのだ。
(よし、人妖の力ってのがどれほどかは分からないが……期待してるぜ、如月)
(そちらも。出来れば、全員揃って無事に終わらせよう)
(……ああ。そうだな)
残り、一分。
それぞれ支給品の分担も済んだ。
恭介は己の銃に弾丸を装填し、ほぼ残りの支給品をトルタに預けて対峙する。
その手にはクサナギ。前線に立つためには、刀剣類がなければどうしようもないのだから。
双七は無手のまま、ここまで一緒に来てくれたスターブライトを背後に待機させる。
ボタンが死んだ今、彼まで犠牲になってほしくないという意思だった。
「……拙者を敗北させる相談、とやらは付いたか?」
恭介はその言葉に無言で肯定する。
ティトゥスの口元の端がクッ、と哂った。それは敵に対する嘲りか、それとも殺し合いに対する歓喜か。
首元に刃を突きつけられたまま、人質となっていた刹那を解放する。
彼女を殺す必要はない。要するに、ティトゥスは目の前の二人の戦士を闘争の果てに殺害することに全力を使えばいい。
「さあ、掛かってくるが良い、戦士たちよ」
「ミッション・スタート!」
恭介とティトゥスによる殺し合い開始の合図。
それと同時に恭介と双七は迷うことなく、一直線にティトゥスへと突撃していった。
◇ ◇ ◇ ◇
(ほう……?)
驚きよりも感心のほうが強かった。
策というからどれほどと思いつつも、結果は剣士と拳士による突撃だ。
ティトゥスは口元を歪めた。分かりやすいその行動こそが、ティトゥスの闘争心に火をつけた。
(ならば、存分に楽しもうではない――――か……!?)
同じく駆け出そうとした侍の動きが止まった。
その上空、昼の空、青い青い広大な空間から……接近してくる物体がある。
黒い四角い箱、飛翔するのはラジコンヘリだ。
本来ならデジタルカメラと組み合わせ、偵察に使用するつもりだったそれが、万歳突撃の如くティトゥスへと突っ込んでくる。
ティトゥスの目は、迫り来る恭介や双七ではなく……その向こう側、足を撃ち抜かれた少女へと。
トルタの手にあるのはリモコンだ。動けないトルタが利用した、牽制にもならない手段。
「……愚かな。そのような小細工で拙者を打ち倒そうなどと考えるとは!」
双身螺旋刀を構える。
この刀は幾重にも刀を曲げられて無理やり作られた、異質な大業物。
斬るよりも、貫くこと。そして螺旋を描いて抉り取ることを主な使用方法とする。
彼らの狙いはラジコンヘリに気を取られると同時に、一気に攻撃を仕掛けることなのだろう。
それは、甘い。甘すぎる。
その程度で破られるほど、ブラックロッジは安くない。
「はあッ!!」
一閃、一秒ですら遠い刹那の出来事。
恭介や双七が攻撃を仕掛けるよりも圧倒的に早い斬撃は、狙い外れることなくラジコンヘリを真っ二つに破壊した。
砕けた残骸が彼らの足元に散らばるが、ティトゥスは意にも返さない。
完全に攻撃のタイミングを狂わされた恭介たちに壮絶な笑みを向け、ティトゥスは斬りつけるための一歩を踏み出した。
かちり、と。
侍の足が何かを踏みつける。
それが何かと怪物が疑問を抱く前に。
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「なっ……ッ!?」
大音量による、知らない男の声が響き渡る。
焦燥、混乱が彼の頭を一瞬だけ白く染め上げた。必死に自分を取り戻すと、次に沸いてくるのは謎。
あの声は何だ、何処から聞こえてきた、繁みに隠れた者の声か、それとも。
脳が正常な判断を下させようとする、一瞬の停滞。
上空を見上げてラジコンヘリが撃墜する際に、ティトゥスの足元に放られた『岡崎最高ボタン』の効力は絶大だ。
もしもティトゥスが踏まなかったとしても、恭介の銃弾がボタンへと着弾していただろう。
結果として、怪物は大きな隙を露呈してしまう。
「うぉぉおおおおおおおッ!!!」
「ぬっ……あああッ!!」
恭介の突撃、クサナギが絶妙なタイミングで振り下ろされる。
常人ならあれだけの隙を突かれれば、確実に敗北するほどの鋭い一撃はしかし、ティトゥスの化け物染みた反応に敗れた。
振るったのは螺旋刀、宙を再び舞うのはクサナギだ。
こうして恭介は無手のまま、ティトゥスの一撃を甘んじるしかない。
だが、違和感がティトゥスを襲う。
もう一人、如月双七は恭介の背後に立ち止まっていた。
それと同時に、彼の手の中にある双身螺旋刀に強い圧迫感。まるで綱引きでもしているかのように、引き寄せられていく。
「ぐっ……」
「……うぐっ……」
人妖能力発動。
頭痛に歯を食いしばって、双七はティトゥスの刀を抑えこんだ。
奪えないのは、侍の尋常ではない腕力ゆえに。
並みの相手ならば既に刀を奪い、一気に勝負を決めることもできただろう。
――――悔しい。
――――魔人に良いように使われる我が身が悔しい。
――――我らは人を斬るためではなく、妖を斬るためになったものだというのに。
――――口惜しや。
――――口惜しや。
双七の赤い糸を通して伝わってくるのは、螺旋刀の無念だ。
抑え込むことしかできない双七は、胸の奥で彼らに謝罪をした。
そう、双七は彼の刀をこうして封じるのが関の山。
だが、それで十分。
「―――――ッ!!」
恭介がティトゥスに向けて構えたのはSIG SAUER P226―――距離にして、一メートル。
それでも足りない、と恭介は接近する。相手は常識外の化け物、慎重に慎重を期するのは当然。
かちゃり――――接近により、紡いだ銃口と標的の距離は0、押し付けられた鉄の感触に侍の顔が歪む。
「おのれ―――――!」
恨み言に近い悲鳴はしかし、恭介の引き金を引かせる呼び水となった。
連続射撃、引き金を引く続ける。
ガガガガガガガガッ! 同時に漏れるのは苦痛の悲鳴――――惜しむらくは、それで奪うことができたのは左腕のみというところか。
弾幕、十五の弾丸による連射はティトゥスの左腕を完全に破壊した。
だが、それで恭介の安全な策は全て終了した。
「貴、様ァァァアアアアアアアッ!!!」
「ぐっ……ぉぉおおおおおおおおおおッ!!!」
怒り狂ったティトゥスは右腕一本で螺旋刀を叩きつけてくる。
対して恭介も拾ったクサナギで対抗するが、片手のみによる斬撃だけで恭介はたたらを踏んでしまう。
強すぎる、と唇をかみ締めた。
前の戦いも含めて、二本の腕を奪うことができたが……それ以上を望むには、もう捨て身しかなかった。
破壊される。
破壊される。
破壊される。
ティトゥスの荒れ狂う斬撃は繰り返され、周囲はもちろん、受け止める恭介にも限界が近い。
このままでは、ダメだ。
余力を残してはダメなのだ。
たとえ周囲に狙撃能力を持った暗殺者のような奴がいたとしても。
そいつとの連戦のために戦力を温存などしてはいられなかった。
(トルタ……)
悪い、と心中で謝った。
もはや限界なんだ、と言い訳をひとつだけ。
(理樹、鈴……)
すまない、と。
頼りにならないリーダーで悪かった、と謝罪した。
他にも言い残したいことはあったが、もはや時間もないらしい。
ティトゥスの刀を持つ腕はひとつ。第四の腕を使えばいいのだろうが、保険のために残しているらしい。
ならば勝機はある。双七の人妖能力により、螺旋刀の動きは緩慢なのだから。
恭介は銃を捨てて、駆け出した。
後ろではなく前へと。まるで絡みつく軟体生物のように、ティトゥスの右腕を全身で制圧する。
これで誰も動けない。恭介は右腕を抑え込み、双七は刀を抑え込むことで精一杯なのだから。
―――――トルティニタ・フィーネを除いて。
「やれ」
トルタには何を言われているか、最初は予測できなかった。
だが、作戦会議のときに恭介は彼女を信頼して、確かに言っていた。
この作戦はお前に掛かっている、と―――――そして、合図をしたならすぐに銃を撃てるように待機しておけ、と。
それが合図だと気づくのに数秒。
中々行動に移さないトルタに痺れを切らした恭介が、力の限り叫び倒した。
「俺ごと、やれッ……トルタァァアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
◇ ◇ ◇ ◇
残酷な選択だった。
棗恭介は命の危険も省みず、確実に己が死ぬ作戦を立案した。
ティトゥスがあまりにも強かったから、この方法しか選べなかったのだろう。確実に、一人を犠牲にすることで得る勝利を。
「……あっ……」
構えた。
仲間を殺すために、敵を倒すためにトルタは銃を構えた。
それでいい、と恭介が頷く。
隣では双七が驚愕に目を見開いていることから、これは恭介の独断であることは理解できた。
「あっ……うっ……くっ……」
震える腕、用を為さない頭が考える。
このまま引き金を引き、連射されば恭介とティトゥスの両者を纏めて葬れるだろう。
それは絶対の真実であり、ティトゥスの焦燥に駆られた表情がそれを裏付けている。
なら、後はトルタが撃てば戦いは終わる。
クリスのために全てを切り捨てると誓った。
それは仲間であろうと例外ではなく。
知人であろうと例外ではなく。
己であろうと例外ではない。
なればこそ、銃を撃つことに躊躇いはないはずだ。
「…………だよ」
躊躇いはない、はずなのに。
そんな弱音など、言ってはいけないのに。
「無理、だよ……っ……恭介ぇ……!」
躊躇ってはいけなかったのに。
ぽろり。ぽろり、と軟弱な涙が零れてくる。
「私には、恭介を殺すなんて……できない……できるわけないじゃないッ!」
都合の良い話だった。
彼は彼女を見捨てなかった。
たとえ彼女が見捨ててくれと頼んでも、絶対に見捨てようとはしなかった。
それなのに、自分のときは見捨てろ、などとは都合が良すぎる。
「見捨ててくれなかったのに、見捨てろなんて言われても、できるわけないじゃないッ……!!」
「……っ……バカ、ヤロウ……っ!」
あまりにも脆弱で。
あまりにも軟弱で。
あまりにも優しすぎる、彼女の間違った選択だった。
「愚かな」
その心の迷いの隙をついて。
体勢を立て直したティトゥスは恭介を第四の腕で掴んで引き剥がすと、無造作に刀で薙ぎ払った。
鮮血が黒き侍と茶髪の青年の周囲に飛び散った。
(はは……莫迦だったな、俺は)
薄れ行く意識の中。
最後に感じたのは悔恨と自嘲。己の甘さが招いたこの事態を前にして。
(悪い、トルタ……お前だけでも、逃げ延びてくれると、助かる)
優しすぎた仲間のことを考え続けたまま、その意識は闇の中へと沈んでいった。
◇ ◇ ◇ ◇
「あっ……」
呆然とトルタはその光景を凝視した。
切り裂かれた恭介は地面に、まるでゴミのように捨てられる。
そのままピクリとも彼は動かなくて。
ああ、死んでしまったんだな、ということを頭の中で憎らしいほど冷静な自分が告げていた。
その事実を事実として飲み込んだ瞬間。
結局、自分が選んだ解答が恭介を殺してしまったことを自覚して。
「あっ……あああ……ぁぁああぁぁあぁああああああああああッ!!!!!」
どうしようもなく。
どうしようもなく。
どうしようもなく、目の前の侍を心の底から憎悪した。
「うぁああああッ!!!!」
「愚かだったな、トルティニタ・フィーネよ。くだらん情に絆されなければ、拙者を殺すこともできただろうに」
その言葉が妙に癇に障って。
本来だったらもっと早く撃たなければならなかった銃を、今更ながらに乱射した。
もちろん、効果はない。銃弾は今までどおりに、綺麗に切り刻まれてティトゥスには届かない。
「くそぉおおおおおおおおっ!!!!」
如月双七もまた、恭介が敗れたときに転がった銃を乱射する。
弾丸の装填数は十五発、既に装填が完了されているところからも、恭介は計算していたのかも知れない。
二方向からの射撃をティトゥスは右腕に螺旋刀、左腕にクサナギを持って対処する。
そう、あと一歩が足りないのだ。
どうしようもなく、あと一方向……ティトゥスを銃撃してくれる味方が必要だった。
乱射、全て打ち落とされる。
連射、全て切り裂かれる。
全射、その悉くを叩き落される。
(無駄だ)
ティトゥスは思う。弾丸が尽きたときが彼らの最期だと。
双七は十五発、トルタは六発に補充を加えて合計は二十四……時間にすれば恐らく、数分と掛からず決着がつく。
もう、彼らには冷静さがない。無駄と分かりつつも引き金を引く。
勝敗は決した。リーダーである棗恭介が倒れたことによって、もはや勝負は――――
ダァンッ!!!
「…………な、に……?」
奇襲、三方向目からの一発の弾丸。
それは侍の背後から飛来し、彼の背中に直撃する。
獰猛な一撃はスパイラル回転しながらそのまま貫通することとなる。
ティトゥスの口元からは、呑み込み損ねた血液が零れた。
ゆっくり、と。緩慢な動きで背後を振り向く。
そこにいたのは少女だった。闘争とは関わり合いの持たない、何の変哲もない少女だった。
トルタと同じく銃を撃つ機会を失い、そしてようやく人を殺す覚悟を決めた清浦刹那の姿がそこにあった。
「小娘、貴様」
「………………」
刹那は無言を貫いたまま、そこに立っている。
不意打ちによる罪悪感はない。
ただ、理不尽な怒りがあった。今の今まで、命惜しさに震えることしかできなかった自分に怒っていた。
その結果として、一人の青年の命が潰えたというのに。
ティトゥスは刹那のほうへと向き直ろうとする。
刹那はトンプソンコンテンダーの弾丸を改めて装填、爆発しそうな心臓を抑えてもう一度構えた。
だが、そうする必要はなかったらしい。
直接身体に穿たれた一撃により、ティトゥスの身体が大きく揺らいだかと思うと、そのまま地面に沈んだ。
「……やっ……た……?」
「やった……の?」
刹那とトルタ、二人の少女が呆然と呟いた。
さっきまでの激戦を思えば、呆気ない幕引きだったような気がする。
だが、決してそんなことはない。
誰もが死力を尽くし、勇気を振り絞って戦いに望んだ。その結果、強大な敵を倒すことに成功したのだ。
「……あっ」
脱力しそうになる刹那の肩を、双七が支えようと手を伸ばした。
とにかく、終わったのだ。犠牲者を出してしまったことは悔いるべきだが、今は生存を喜ぶべきなのだと。
支えた肩、刹那は双七に弱々しい笑みを浮かべながらピースサイン。
それが恐怖に対する精一杯の強がりであることを受け止め、双七はピースを返そうとして、気づく。
地面を這うようにして、倒れた青年の姿を追い求めるトルタの姿に。
熱に浮かされたように、彼女は倒れた恭介の下へと。
「恭介……恭介、恭介……!」
僅かな望みを掛けてトルタは這う。
まだ息があるかも知れないし、実は気絶しているだけで大したことはないのだと信じて。
そんな都合の良いことはない、という結論を導き出しているにも関わらず。
その希望が、想像を上回る形で絶望へと反転する。
「えっ―――――?」
ひゅん、と。
サイレンサーの音と共に銃弾が突如として飛来した。
今度は刹那ではない。もちろん、トルタでも双七でもなかった。
ようやく与えられた出番を祝福するかのように、弾丸を放った者の異名は怪人。名は支倉曜子だった者。
放たれた弾丸は絶望的なまでの正確さで、清浦刹那の胸を貫いた。
「かふっ……!」
「なっ……!?」
目の前の少女が吐いた血液が、双七の頬にまで飛び散った。
がくり、と倒れ伏し、双七の手から零れていく。
双七は助け出した少女と、その名のとおり刹那の時間だけ笑い合い……そして、別れを告げられた。
絶望の足音、絶叫が世界を支配した。
(――――――ッ!?)
そうして、崩れ行く刹那は視界の端にとある光景を捉えて、瞳を見開いた。
絶叫する双七は気づいていない。
彼は刹那を撃った怨敵を探るのに必死で、迫りくる脅威にはまだ気づけていないのだ。
(…………にっ……)
逃げて、と言いたかった。
だが、もうそれすら赦されなかった。
崩れ落ちた身体はもはや言うことを聞かず、穿たれた穴はヒューヒューと虚しい音を奏でるのみ。
そうして、刹那が地面に赤い大輪を咲かせるのと同時に。
黒衣を朱に染めた怪物が、再び大地を踏みしめた。
「問おう……お主、飛ぶ斬撃というものを、見たことはあるか――――?」
「は……?」
直後に放たれた剣圧による衝撃波が、如月双七を切り裂いた。
刹那は地面に倒れたまま、悔しさで歯噛みする。
「……化け物」
トルタが唖然、呆然としたまま呟くのも無理はない。
トンプソンコンテンダーの一撃をもろに受けたはずの侍が立っている。
あの弾丸を受けてなお、黒き侍は立ち上がり、そしてそれほどの奥義を行使して見せたのだ。
双身螺旋刀とクサナギを大きく振るったことによる、衝撃波はまさしく飛来する斬撃だったといえるだろう。
(どこを、間違えたのかな……?)
刹那には、もう思い返すこともできない。
結局、誰も助けることができないという絶望に心を痛めた。
その瞳から光が失われ、暗い暗い死の闇に囚われたまま、清浦刹那は大地を赤く染め上げた。
◇ ◇ ◇ ◇
全て計画通り。
棗恭介、清浦刹那は倒れた。
如月双七、トルティニタ・フィーネは負傷した。
そして一番の難問だった黒き侍、ティトゥスも致命的な傷を負った。
いかに平気そうに装っていたとしても、ティトゥスの身体ももはや死に体であることなど、客観的に鑑みれば明らかだ。
後は支倉曜子だった怪人が殺すのみ。
立ち向かおうが殺す、逃げ出そうとしても殺す。その場にいる全員を太一のために殺す。
そこには何の感慨も抱かない。たった今、この手で殺した少女を見ても何の罪悪感も抱かなかった。
「…………」
チェックメイト、必至。
もはやここからの逆転劇など有り得ない。
先ほどの銃弾の軌跡から、自分の居場所がバレたとしても問題にはならない。
ただ殺すから。向かってくるなら殺すだけなのだから。
「……っ……」
眼前、かつて殺し合った青年が切り裂かれ、そして撃ち殺した少女の死に咆哮した。
助けたいと願った存在が、また掌から零れていく絶望を感じ取った。
感慨はない。
罪悪感はない。
タイチノミカタは揺るがない。
もはや誰一人として生かして帰さない、と絶対の意思が死刑宣告を下した。
◇ ◇ ◇ ◇
「―――――――」
衝撃波で切り裂かれた左肩が熱い。
熱で浮かされた頭が熱い。
怒りで爆発しそうになる身体が、脳が、思考が、如月双七の全てが熱い。
狙撃してきた存在への敵意。
目の前で死に逝く小さな仲間の最期を見届け、目に見えないところでさらに多くの人が死んだことも理解した。
それでも助けることができた、一人の少女がいたはずなのに。
狙撃してきた者は、そんな唯一の救いさえも、双七から奪ってしまった。
「……いい加減に、しろ」
人妖能力、展開。
平伏すのは金属と双七を繋ぐ赤い糸。
この場にある全ての金属を従え、如月双七は見極める。そうだ、どんな金属でも逃すことはない。
それがたとえ、狙撃に使われた銃であろうとも、双七は見逃さない。
「いい加減にしろよ……」
彼女には彼女の日常と、当たり前の生活があったはずなのに。
それを奪う権利などは、絶対にない。
どんな理由も、どんな大儀も、どれほどの言葉を尽くしても――――罪もない少女の命を奪う理由にはなりえない。
「……ねえ、如月。狙撃犯のほう、頼める?」
問いかけたのはトルティニタ・フィーネ。
絶望に浸っていたはずの彼女の瞳も、双七同様に強い決意と覚悟の元に揺れていた。
即ち、黒き侍の存在を許さない、と。
恭介が命を掛けて撃破しようとしたティトゥスは、彼女が倒さなければならない、と言わんばかりに。
「ああ、任せてくれ」
「そっか。それじゃ、お願いね」
怒りと戦意に身を任せたまま、二人は短い作戦会議を終えた。
トルタが何を考えているか、双七には分からない。
ただ、眼前で命を奪い去った怪人の必殺に全力を傾けるため、テンションに身を任せることにした。
そうして一時、数秒にも満たない時間の停止。
周りを見渡した双七は、理性の怪人が埋伏した地点を特定する。
「見つけたぞッ!」
金属に繋がる赤い糸たちの羅列の中。
ただひとつだけ、この周囲ではなく遠い場所へと続く糸がある。
可憐な花畑の中に、怪人の悪意を感じ取った。
そこからの行動はもはや迅速にしない理由がない。
花畑へと向かって突き進む。
地面を蹴る、踏みしめた地面が爆発しそうなほどに強く、強く踏みしめた。
もう、許さない、と。
この手に残った最後の希望さえ奪い去った怪人を、決して許すつもりはないという意思と共に疾駆する。
(こんなときにっ……!)
――――90m
次の弾丸が飛来する。
激痛に顔を顰めながら、双七は弾丸を逸らし続ける。
ダメだ、距離が開きすぎている。
このままでは弾丸を逸らしきれずに、いずれ致命的な傷を負ってしまうことは自明の理だった。
何か手はないか。
相手の銃を奪う――――やっている。
だが、怪人は力の限りで銃を死守し、とても疲労した身では奪えない。
距離を詰めたい。もっと早く走りたい。そんな願いにしか希望を持てなくなった頃。
双七の隣に併走して駆ける何者かの姿があった。
「スター、ブライト……?」
白い毛並み、誇らしげなほどに美しい疾走。
誰に命令されたわけでもなく、誰に強要されたわけでもなく。
如月双七の仲間は、目の前の怪人が危険であることを承知で……ただ、その瞳は『乗れ』と告げていた。
512と517の間
「…………!」
「うぉぉおおおおおおおッ!!!!」
曜子にも僅かな動揺はあった。
狙撃の角度から居場所を算出されたとは思えなかったが、少なくとも潜伏先を特定されたことは理解した。
それでも彼女に焦りはない。太一のために『支倉曜子』という個さえ捨てた彼女に揺らぎはない。
距離にして百メートルほど。
近づいてくることによって徐々に標的が大きくなってくるのなら、たとえ視力が低下していても仕留められる。
――――100m
弾丸が放たれる。
双七とてそれは想定済み。新たに現れた赤い糸を疾走しながら、手で引っ張る。
弾丸は逸れて、双七の右側を擦り抜けていく。
このまま人妖能力を行使していれば、致命的な傷は負わないはずだった。
だが。
「痛っ……!」
頭痛が酷くなってきた。
人妖能力を長く行使し続けたことによる反動だ。
ティトゥスとの戦いから、ほぼずっと行使し続けていることになる。
本来なら使ったところでそれほどの頭痛には襲われなかったのだが、僅かに掛けられた制限が彼を縛った。
「……すまない……いや、ありがとう!」
ボタンの二の舞になってほしくない。
そんな双七の想いのため、スターブライトには待機してもらっていた。
最悪の場合、彼に刹那とトルタを託して逃げてもらうつもりでもあったが、もはやそれは叶わない。
だが、今ならば彼の脚力を存分に行使できる。
――――50m
「…………っ」
スターブライトに騎乗。駆ける必要がなくなったため、双七は弾丸を逸らすことに全力を傾けられる。
曜子は作戦を変えた。将を射止めたければまず馬から、その通りに狙いをスターブライトへと変更した。
賢明な白馬は己に向けられた殺意に気がついたのだろう。
白い鬣は逆立つのを感じ、双七は力の限りに指示を送り続ける。
「右に進めッ!!」
言うとおりにスターブライトが右へと進めば、弾丸は左へと逸れる。
次は左、右、右、左。
距離は詰められていく。どんどん、どんどん詰めていくことができる。
――――10m
「よしっ、ここまでだ、スターブライト!」
双七はそう言うと、白馬の背中を蹴って宙へと。
そのまま怪人の姿を把握する。高いところから、下にいる殺人鬼の姿を見た。
そいつは初めて見たときとは違っていた。
ボロボロの身体と包帯、充血した右目と短く切り取られた髪は、かつて双七が見た少女とは掛け離れていた。
「――――お前か」
「………………」
それなのに、一発でその正体を看破した。
数時間前、師である九鬼曜鋼と共に戦った二人組の男女の片割れ。
そして、双七の小さな仲間だったボタンの仇。
彼女は自分からボタンを奪っただけでは飽き足らず、助けられた少女をも殺した。
―――――殺す覚悟は整えた。
(手は綺麗に)
曜子は無表情、無感情のまま銃を構えた。
空中では弾丸は避けられない。
放たれようとしている弾丸は、間違いなく狙い通りに双七の心臓を貫くのだろう。
「舐めるなぁあああっ!!」
「…………っ!?」
人妖能力、発動。
対象は曜子の持っている銃でも、放たれる弾丸でもない。
彼女の背後にあるデイパック、口を開いた中身から零れる斧もまた鉄であり、金属。
曜子は背後から奇襲を仕掛けてきた己の武器の所業に驚き、回避に時間を費やしてしまう。
――――3m
(心は熱く)
着地と同時に、などと生易しいことは言わない。
掌で円を作り、捻る仕草で準備運動。
九鬼流の動きは円と球を基本とする。円を十重二重に繰り返せば、それは螺旋に通じる。
円転自在にして、球転自在。
どちらでも放てるが、位置的には右腕。よって右腕を螺子りながら引いていく。
対して曜子は一瞬だけ遅れた対処を後悔する。理性の怪人であるからこそ、それは失策だと理解する。
既に彼は戦闘体勢に入っており、曜子にはそれを回避する機会が失われたからだ。
どうすればいい?
どうすれば、太一のためになるのだろうか?
この場で無理をしてでも双七を殺すことか。
それとも退却するべきか。
もちろん、一度退いた後で再び殺す意思は変わらない。
考えを巡らせている間に、如月双七との距離は……当初、あったはずの大きなアドバンテージは消滅していた。
――――1m
(頭は冷静に)
激突の瞬間は間近に迫っているのに、怪人は答えを出せない。
ぐらぐらと揺らぐ天秤の様子は、未だ怪人に成りきれていない『人間』としての曜子の姿を暗示させる。
満足な答えも出ないまま、とりあえずの行動で双七の攻撃を受け止めることに決めた。
回避もできない、となればこその消去法によって導き出された答えだが、それが正しい対応かどうかは曜子も分からない。
対して双七はもはや迷わない。
相手を打ち倒す覚悟も、殺す覚悟も、全てを整えて双七は拳を繰り出すのだから。
―――九鬼流絶招 四式名山 内の壱―――
己の必殺に全てを賭けきった者と、とりあえずの行動を理性で選択した者。
彼我の優劣など、わざわざ語るまでもない。
「焔螺子ッ!!!」
螺旋の一撃は曜子の持つ銃、H&K_MARK23を完全に破壊。
その衝撃の余波が曜子の身体全体に響き、悲鳴を上げることなく何メートルも吹っ飛ばされた。
「痛っ……ぐっ」
だが、取り逃がした。
初めから決定されていたことなのだろう。銃を盾に使われ、衝撃が殺される。
それでも吹き飛ばされたようだが、その結果として距離を取られ……その隙に怪人は逃亡を選択した。
タイチノミカタは死なない。太一の敵を全て屠るまで死ねない。
「くそっ……待て……」
がくり、と双七の膝が折れる。
疲労の限界らしい。もしも曜子がその光景を見たなら、斧を持って襲い掛かってきただろう。
それでも彼女の選択は逃亡、まずは体勢を整えること。
脇目も振らずに逃げ出した彼女は、双七の異変に気づくことはなかった。
(くっ……今度逢ったなら、必ず……)
名前は知らない女だが、その姿はどんな状態になっても忘れないだろう。
薄れ行く意識の中、スターブライトに何とか騎乗した。
そのままトルタたちの下へ向かってほしいと双七は告げる。まだ、もう一人の怪物がそこにいる。
白馬は彼が乗ったことを確認すると、トルタたちの下に走り出した。
もう既に、決着が付いていることは知らずに。
【F-3 花畑、マップ下方/1日目 午前】
547 :
名無しくん、、、好きです。。。:2008/05/09(金) 23:29:54 ID:dYn8A8OX
【支倉曜子@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
【装備】:斧、全身に包帯、トレンチコート(男物)、バカップル反対腕章@CROSS†CHANNEL
【所持品】:なし
【状態】:肉体疲労(大)、右半身大火傷(処置済み)、胸部に激痛(処置済み)、右目が充血(視力低下)、髪を切りました
【思考・行動】
基本方針:太一の為に、太一以外を皆殺し。
0:一時撤退。
1:新しい武装を確保し、改めて皆殺しを敢行する。
2:ゲームの参加者を見つけたら殺す。
3:人間でなくとも生きているなら殺す。
4:動いたら殺す。動かなくとも殺す。
5:話しかけてきても殺す。無言でも殺すし、叫んでも殺す。
6:泣いても殺す。怒っても殺す。笑っても殺す。
7:銃で殺す。なくなったら斧で殺す。殺したら相手の武器を奪ってそれでまた他の人間を殺す。
8:殺す。
10:(…………………………………………太一)
【備考】
※登場時期は、いつかの週末。固定状態ではありません。
※佐倉霧、山辺美希のいずれかが自分の噂を広めていると確信。
※支倉曜子であることをやめました。
※H&K_MARK23は破壊されました。
◇ ◇ ◇ ◇
「………………」
「………………」
双七たちから離れて百メートルほどの場所での沈黙。
トルティニタ・フィーネとティトゥスの両者の距離はほとんどない。
双七を送り出した理由はふたつ。もちろん狙撃した相手を何とかしたいこともあるが、更には邪魔をされないように。
ティトゥスは残された二本の腕で、双身螺旋刀とクサナギを持ったまま、トルタへと接近していた。
それが何のために、など今更聞くまでもないだろう。
ただ唯一、残っているトルタの命を奪うために決まっている。
「…………ぐっ……」
満身創痍の己の身体を見て、ティトゥスは口元を歪めるだけに留めた。
第三の腕は切り落とされ、左腕には銃弾を叩き込まれ、そして背中からは大口径の銃による弾丸の一撃。
それでも生きていられるのは、偏にティトゥス自身が超人の域にあるからと言って過言ない。
先ほどの戦いを思い出す。
楽しくなかった、と言えば嘘になる。己よりも明らかな弱者たちが、知恵を振り絞って向かってきた。
先ほどの刹那の不意打ちにしても、愚かなのは自分だったと独白する。
彼女とて牙を持った者だったというのに、それを見逃して油断し、慢心した己の未熟さの結果だと思っている。
もちろん、最上の戦いは一対一による殺し合い。
もっとも、それはもはや叶わないのであるから、少なくともティトゥスは己の役目だけは果たすことに決めた。
この闘争、己を勝者で締めくくるべく。
最後に残ったトルタの命を奪うことで、この闘争に決着をつけようと考えたのだ。
(殺され、るんだ……)
もはや、諦観にも近い溜息を吐いた。
彼我戦力差は明らかだ。
たとえティトゥスが満身創痍であったとしても、あの衝撃波が繰り出せる以上、まだ余力があるのだろう。
化け物だ、と素直に思う。二度も戦ってしまった不幸を呪うしかない。
「……覚悟は、良いか?」
「いいわけ、ないじゃない」
せめて苦しまずに殺してやろう、とでも言うのだろうか。
馬鹿馬鹿しいとトルタは思う。
何故ならまだトルタの手には銃と、そして使い損ねた弾丸が残っている。
抵抗できる手段がまだ手の中に残っているのだから、諦める要素などないのだ。
「……本気か? 今更、そんなもので拙者が倒せる、と?」
「倒せる、倒せないじゃないの……倒すのよ」
「愚かな。小娘、貴様はやはり愚か者よ。感情に流され、勝機を失ったことをもう忘れたのか」
忘れたはずがない。
迷わなければ恭介の死は無駄にはならなかったのだろう。
目の前に立つのは黒衣の死神だ。
死を運ぶ狂戦士を前にして、トルタはもはや一切怯むことなく、銃を構えた。
「だからといって、ここで死ぬことが最良なはずがないんだから……!」
誰のために、何もしていないのに。
クリスのためにも、恭介のためにも、何一つ役に立っていないのに。
そんな情けない結果の末に死ぬなんて嫌だった。
せめて目の前の侍を止めなければ、もはや自分の生に意味はないとまで己を追い詰めて。
「負けない……負けてやらない、絶対に……!」
実のところ、意識は朦朧とし始めていた。
両足の傷が酷いのだろう。せめて、全てが終わった後に応急処置はしないといけない気がする。
だけど、そんな瑣末事は全て意識の外に追いやった。
(力を……力を貸して……クリス……恭介……!)
ガチガチ、と震える指を強引に押さえ込んで。
ガタガタ、と震えそうな身体に喝を入れて。
そうして、トルタはティトゥスの瞳が大きく見開かれるのを見た。
「……え?」
驚愕、それがティトゥスが現している全ての感情だった。
ティトゥスはトルタを見ていない。完全に自分は意識の外に置かれていて、すごく無防備な姿を晒していた。
どうして、などと首をかしげた。
黒き侍の視線を追った。彼の隙を突くよりも、彼をそこまで驚愕させた存在のほうが気になってしまった。
そうして、ティトゥスと同じ光景を視野に入れて。
彼女は見た。
心の内に秘められた感情が溢れてしまうかと思った。
もちろん、ティトゥスと同じような驚愕が彼女を支配した。
だが、それ以上の歓喜がトルタの心の中を完全に埋め尽くしていた。
「――――――棗、恭介」
呆然と、ティトゥスが呟いたのと時を同じくして。
脇腹を左腕で押さえながらも立ち上がり、不敵に口元を歪ませた恭介が言う。
トルタにも、ティトゥスにも彼が何を言っているのか、分からなかった。
それでも恭介は鉄の凶器を携える。彼の意思を直接伝えるために握られた銃の名前は、トンプソンコンテンダー。
チャンスはたった一度のみ。
一発しか撃てない弾丸に思いを込めて、棗恭介は黒き侍を迎え入れた。
◇ ◇ ◇ ◇
生きている、まずはそれを実感した。
九死に一生とはまさにこのことだろう、と恭介は地面に横たわったまま思った。
あの螺旋刀は、貫き抉ることで真価を発揮する武装だった。斬ることには特化していなかったのだ。
ティトゥスを抑え付けるために接近していた恭介は、貫かれることなく薙ぎ払われた。
だが、そんな細かい理由などに興味はない。
脇腹を深く切り裂かれる激痛に顔をしかめる恭介の目で飛び込んできた光景。
倒れたまま動かない清浦刹那と、この場にはいない双七。
そして刀を突きつけられたトルタと、今にも彼女を殺そうとするティトゥスの姿だった。
「人の仲間に……」
それさえ分かれば十分すぎる。
足に力を入れる理由も。
手を握って戦う意志を示す意味も。
拾った銃を構え、そしてもう一度戦うことを誓うには十分すぎる。
「手を出すんじゃねぇよ、戦闘狂(バーサーカー)」
ミッションはまだ終わっていない。
この作戦は必ず成功させなければならない。
ならば棗恭介が再起する理由は確かにある。こうして、絶対の意志と共に立ち上がる理由がある。
さあ、九回裏、二死満塁だ。
投手(お前)が俺を殺すのが先か。
打者(俺)がお前を撃ち砕くのが先か。
お望みどおりの殺し合い、乗らない理由はないだろう―――――?
◇ ◇ ◇ ◇
「クッ―――――」
それは笑いだった。この瞬間、トルタとティトゥスの二人の感情が一致した。
一人は仲間の無事を喜ぶ歓喜。
一人は戦士の再起を喜ぶ歓喜。
棗恭介は告げている。殺し合いをしようと絶対の自信と共に告げている。
「貴様が、拙者の渇きを癒すかぁああッ!」
剣圧による衝撃波など無粋だ。
ティトゥスの勝ちとは彼の弾丸を撃ち落とし、一気にその身体を切り裂くこと。
恭介の勝ちとは接近される前に、その銃でティトゥスの身体を撃ち貫くことだ。
恭介のチャンスはたった一度だけ。
たった一発の弾丸に全てを賭けなければ勝利は有り得ない。
「――――――」
「――――――」
スローモーションの世界。
一秒すら永遠になりそうな刹那の時間をティトゥスと恭介は感じていた。
勝敗の差はひとつだけ。
ティトゥスが信じるのは己のみ。
恭介が信じたのは己ではなく、地獄に落とされてからずっと一緒だった相棒だ。
空気が破裂した音が『何度も』ティトゥスの耳に届いた。
その音は前方の恭介ではなく『背後』から聞こえてきた。聞き間違えるはずもない、銃声だ。
(…………!?)
何度も、何度もティトゥスはこの予想外の方向からの奇襲を受けた。
そのことを頭に入れていたため、トルタの奇襲には簡単に対応できた。
あまりにも遅い、その程度でティトゥスの反応を抑えようなど温すぎる。
神聖な戦いの邪魔はするな、とティトゥスは二刀を振るって弾丸を撃ち落とそうとして、凍り付いた。
(身体が、動かん……だと……?)
何度目かの驚愕にティトゥスの表情が歪んだ。
ここに来てティトゥスは己の身体に裏切られた。極大な疲労と出血が侍から技量を奪った。
銃弾を切り捨てることなく、空を切る刀。
溜まりに溜まった肉体へのダメージが、蛇のように絡み付いていた。
トルタの弾丸をティトゥスは撃ち落とせない。
もはや身体で守備を固めるしかなく、結果としてクサナギを持っていた第四の腕は蜂の巣となった。
「ぐぁぁぁあああああッ!! おのれぇぇええええっ!!」
何が原因か。
刹那だ、あの小娘の不意打ちによる銃撃だ。
今になってあの一撃が己を蝕む猛毒のように、この肉体を蝕み始めた。
この意味は大きい。弾丸を撃ち落とすことすらできなくなったのは、あまりにも致命的だった。
もはや、恭介が引き金を引く前に恭介を斬り殺さなくてはならない。
あの指が引き金を引くよりも、早く、速く、疾く――――!
「棗、恭介ぇぇぇええええええええええええッ!!!!」
叫びながら地を縫うように距離を詰めた。
視界が揺らぐ、死神が哂う。
死への幻想を強い意志で打ち破りながら、ティトゥスは生きるために必要な血液を撒き散らしながら走る。
早く、速く、疾く。
流星のように、弾丸のようにティトゥスは地面を爆発させるようにして疾走する。
――――5m
――――3m
――――1m
「―――――コールドゲームだ」
空気の破裂した音が響く。
螺旋に回転した弾丸は標的を喰らい尽くすために飛翔した。
ティトゥスは刀を振るって叩き落そうとするが、やはり螺旋刀は空を切った。
結果、螺旋を描いた弾丸は真っ直ぐに、ティトゥスの心臓を貫いた。
◇ ◇ ◇ ◇
「………………終わった、か」
戦いは終わった。
怪物は屠られ、怪人は退却した。
無傷の者は一人もいない。文字通りの死闘を生き残った三人はようやく一息を付くことができた。
「恭介ッ……恭介ぇええ……」
「ただいまってな……無事で何よりだぜ、相棒」
その言葉を引き金にして、トルタの瞳からぽろぽろと涙がこぼれてくる。
足さえ動けば恭介に抱きつくぐらいはするのだろう。
恭介は少しばかり困り顔のまま、トルタを抱きしめてやる。もう、周囲に敵はいないのだから。
訪れた気配にハッとするが、足音の主を見て恭介の表情が緩む。
「……生きてたのか」
「そちらこそ」
お互いの無事を喜び合った恭介とトルタの前に、白馬に乗った双七が到着する。
トルタは恭介に抱きつきながら、言葉にならない嗚咽を漏らして無事を祝っていた。
おいおい、泣くなよ、と恭介も困り顔だったが。
「そっか……無事だったのか、そっか……良かった……」
「って、おい。何でお前まで泣くんだよ」
「いや、別に、何でもないんだ。一人でも無事だったのが、嬉しくて、それで……」
犠牲があった。
助けられない命があった。
双七は瞳から光を失った刹那を抱き上げる。
彼女は何を考えて逝ったんだろう。双七は彼女のことは何も知らない。彼女の名前しか知らない。
どんな女の子だったのか、どんな性格だったのか、どんな風に笑うのか、どんな日常を送ってきたのか。
「ごめん……」
仲間の無事を喜んだことで緩んだ涙腺から、更に涙が零れ落ちる。
泣いてはダメだ、と己を叱咤した。
悲しいときには泣いちゃダメなんだ、と自身に言い聞かせ続けた。それでも、悔しさで涙はこぼれ続けた。
「ごめんな……」
もう、迷わないから。
もう二度と誰も取りこぼしはしないから。
だからゆっくり眠ってほしい。双七は刹那の亡骸を前にして誓う。
必ずあの二人組に後悔させてやる。こんな地獄を作り出した主催者たちに償わせてやる。
もはや、その行動に迷いはない。
それを如月双七の流儀とする、と――――誓った。
「……とりあえず、治療と……それから、埋葬だな」
「ああ……分かった。医療品一式も手に入れたし、まずは処置と……それから情報交換も」
「あ、手当ては私が……」
「まずはトルタ、お前の足からだ」
太陽の下で少年少女が誓い続ける。
この地獄を生き抜くために、大切な人や多くの人を生かして帰すために。
己を貫くことが正しい選択と信じて。
三人の戦士は次なる戦いに備えて傷を癒し、そして再び戦場へと赴く。
それが、死んでいった者たちの分も生きることになると信じて。
【清浦刹那@School Days L×H 死亡】
【ティトゥス@機神咆哮デモンベイン 死亡】
【G-4 市街地/1日目 午前〜昼】
【2人の共通方針】
1:電車の沿線を行動範囲に、線路近郊の施設を探索。
2:他の対主催のメンバーと接触。
3:そこから情報を得る。
4:自分に危害が出ないように、相手のプロファイリングを元に他の対主催の悪評、もしくは真実を伝える。
5:十分な情報を得たらそのメンバーと別れる。もし理樹、クリスがいるメンバーなら合流。その後隠れながら邪魔な対主催メンバーを排除。
6:もし中々合流できない場合、もっとも安全だと思われるチームに合流。(戦力の面で、信頼関係も含め)
7:序盤は積極的には人を殺さない。基本同士討ちを狙う。情報最優先。終盤は対主催の中心になりなるべくマーダー排除。のち疲労した対主催から狙う。
8:最悪クリス、理樹、鈴がどちらかが死亡した場合は片方のサポートに徹する。両方死亡した場合は互いに優勝を狙う。二人になった場合一騎打ち。
9:ただし完璧に脱出ができる状況になったらそのまま対主催に変更。
10:また、主催の動向や信憑性次第でも対主催に変更。
11:列車の沿線を行動範囲にしていることを信頼できる人間に託し、理樹、鈴、クリスに伝えてもらう。
12:脱出や首輪、主催者の目的についても真剣に考察する。
13:羽藤桂を見付けたら保護。但し残り人数が二桁を切った場合や、止むを得ない理由がある場合はその限りで無い。
【棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備】トンプソンコンテンダー(弾数0/1)
【所持品:SIG SAUER P226の予備弾15@現実、コンテンダーの弾45発、デジタルカメラ@リトルバスターズ!
【状態】:脇腹に深い切り傷(処置しなければ手遅れになります)、胸部に軽い打撲、肉体的疲労(極大)
【思考・行動】
基本方針:共通方針の通りに行動し理樹、鈴を優勝させる。ただし慎重に慎重を期す。
1:とにかく治療、埋葬、そして双七と情報交換
2:電車の沿線を徒歩で進み、他の参加者と交流する。近郊の施設を探索する。
3:道中、筆談などを用いて殺し合いや首輪についてトルタと考察する。
4:トルタの過去に興味。
5:『トルタの好意に気付いている』フリをし、親密にしても怪しまれないようにする。
6:トルタを見捨てない。
7:道中の地形を把握する。
【備考】
※トルタを信頼し、共感を抱いてます。
※トルタとの間に符丁をいくつか作りました。
『時間』と『動詞』の組み合わせで意思疎通を行います。
(『分』:名簿の番号の人間、『待つ』:怪しい など。
『秒』や『時間』、その他の動詞の意味については詳細不明です)
※トルタとはぐれた場合の合言葉は『トルタの知り合い全員の名前』です。
※参戦時期は鈴ルートの謙吾との野球対決後、リフレイン以前です。
故に、リトルバスターズメンバー、特に謙吾に申し訳なさを感じています。
※羽藤桂、浅間サクヤ、神宮寺奏、プッチャンの細かい特徴を認識しています。
※黒幕がいると思ってます。
※参加者によっては連れてこられた時代が違うと思ってます。
【トルティニタ=フィーネ@シンフォニック=レイン】
【装備】:Sturm Ruger GP100(6/6)@現実
【所持品】:Sturm Ruger GP100の予備弾4@現実
【状態】:肉体的疲労(大)、右脚に貫通射創、左脚に盲管射創
【思考・行動】
基本方針:共通方針の通りに行動し、クリスを優勝させる。ただし慎重に慎重を期す。
0:とにかく治療、埋葬、そして双七と情報交換
1:電車の沿線を徒歩で進み、他の参加者と交流する。近郊の施設を探索する。
2:道中、筆談などを用いて殺し合いや首輪について恭介と考察する。
3:恭介の過去に興味。
4:『恭介に好意を抱いている』フリをし、親密にしても怪しまれないようにする。
5:恭介を見捨てない。
6:道中の地形を把握する。
【備考】
※恭介を信頼し、共感してます。
※恭介との間に符丁をいくつか作りました。
『時間』と『動詞』の組み合わせで意思疎通を行います。
(『分』:名簿の番号の人間、『待つ』:怪しい など。
『秒』や『時間』、その他の動詞の意味については詳細不明です)
※恭介とはぐれた場合の合言葉は『恭介の知り合い全員の名前』です。
※登場時期はアルルートのアルが復活した頃です。
※羽藤桂、浅間サクヤ、神宮寺奏、プッチャンの細かい特徴を認識しています。
※黒幕がいると思ってます。
※ラジコンヘリ@現実、岡崎最高ボタンは破壊されました。
【如月双七@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備】:スターブライト@Strawberry Panic!
【所持品】:支給品一式×2(食料-1)、予備弾丸18、首輪(リセ)、医療品一式
【状態】:強い決意、肉体疲労(大)、精神疲労(中)、右膝と右肩に貫通射創、左肩裂傷
【思考・行動】
基本方針:仲間の確保と保護
0:もう、迷わない。
1:恭介たちと共に治療。その後に刹那たちを埋葬、そして情報交換
2:九鬼先生と合流する。
3:向かってくる敵は迎撃。必要なら手を血で汚すことにも迷いはない。
【備考】
※双七の能力の制限は使い続けると頭痛がする程度です。
※首輪装着者の行動は主催者に監視されていると思っています。
※周囲に以下の物品が落ちています。
※SIG SAUER P226(3/15)@現実
※双身螺旋刀@あやかしびと −幻妖異聞録−、クサナギ@舞-HiME 運命の系統樹
※ティトゥスのデイパック(不明支給品・刀剣類ではない、アサシンの腕)
※刹那のデイパック(刹那の制服と下着、ファルの首飾り@シンフォニック=レイン、良月@アカイイト)
投下完了です。
タイトルは『Secand Battle/少年少女たちの流儀』
ご指摘、ご感想をお待ちしております。
最高でした!
手に汗握る熱さ、いつ曜子ちゃんが来るかという緊張感。
何よりそれぞれのそれぞれらしい格好良さが凄く光っていました。
ティトゥス刹那死亡と言う幕切れも意外ながら、恭介トルタ生存も意外。
本当にお疲れ様でした。
投下乙です
というか超、超、超GJです
余りにも面白過ぎて、話に集中しっ放しでした
無情な展開も熱血も盛り込んだ、最高の作品
中盤のジェノサイドから終盤の締め方まで見事過ぎる
ブラヴォー。おお、ブラヴォー。作家さん並びに支援の方々、乙でした。
ところでタイトル、「Secand」→「Second」の間違いでしょうか?
間違いです、すみませんorz
604 :
名無しくん、、、好きです。。。:2008/05/09(金) 23:55:45 ID:vqJ77ZAH
うおおおおお!!
GJ! GJ!! GJ!!!!!
恭介、テメエ死んじまったかと思ったじゃねえかぁぁぁぁ!!
奇跡の生還、そして土壇場で出た一発逆転ホームラン!!
デモべ死者二号は侍さん、そしてスクイズ第一号は利用され続けた人でしたか。
彼女が親友の裏切りを知らずに逝けたのは幸か不幸か………
そして恭介&トルタ
あんたらやっぱ対主催だよ。
全てのキャラが格好良すぎます!
刹那をただティトゥスを説得させるだけでなく、
そう活かしてくるとは思いもよりませんでした。
今回の大金星は間違いなく刹那。
理性の怪物と双七の死闘も素晴らしく、
最高のものを読ませていただきました。
最後まで読まないと誰が生き残るかも全く読めないのも素晴らしい。
でも、まだ近くには潜んでいるなごみが…。
投下乙!!
熱い!ひたすら熱い!!
場面が二転三転する所が最高でした!
せっちゃんは残念だったけど、ホント頑張ったよ!!
安らかに眠ってくれ…
あとまさかのティトゥス死亡!!
彼がこんな最期を迎えるなんてロワが始まる当初は思いもしなかった
改めてこのロワの一般人参加者のレベルは高いと実感しましたよ
投下乙!!!!!!!!!!
熱い漢と熱い漢が手を組んだ!!
お前らかっこ良すぎだぜ
特に恭介のセリフ
「作戦会議の時間をくれ。報酬はお前の敗北でどうだ?」
にマジで身震いするほど痺れました
もういいよ恭介、お前このまま熱血対主催になっちゃえよ
>>605 俺も完璧に勘違いしてたけど
なごみが監視してるのは九鬼先生と一乃谷兄だぜ
投下GJ
個人的にはトルタが撃てないシーンが一番痺れた
ふははははっ!!あまりにも素晴らしい作品だったためなんと言っていいのか判らないぜっ!
最後までどう転ぶか判らない展開にはドキドキしながら読ませてもらったし、
恭介の台詞にはなんど痺れさせられたことかッ!
まさにGJ!!
>>607 ああ、俺も同じトコに痺れたさ!
投下乙です。
おおお、凄いなあ。
ティトゥスは強いし曜子は怖いし。
双七と恭介カッコいいなあ。
GJでしたー
ここは、迷える子羊たちが集う聖なる部屋……あやかし懺悔室。
ネタ的には、このお話の主要読者層に合っていないと言いますか、
ボール三つくらいずれてる気がしなくもありませんが。
なお、このお話の主要成分は筋肉で構成されています。
大変お見苦しいとは思いますが、ご了承ください。
――Amen.
◇ ◇ ◇
鬱蒼とした木々が生い茂る、山の中腹。
深緑に溶け込むようなひっそりとした舞台に、
――現在位置『C-5』
――施設名称『寺』
急な勾配を上り詰め、登山の中継地として適当であろうその地点に、彼女らはいた。
庭先は整地された石畳、植木には手入れが行き届いており、建物自体は古めかしくも荘厳な雰囲気を放っている。
様式は中国から定着した堂塔。暑さを避けるために差しかけられた傘は、朝の日差しを和らげる。
「迷える罪深き子羊よ――懺悔を」
寺院内部。山林特有の燦々とした陽気と涼しさが、冷房器具を必要としないほどの居心地の良さを齎している。
ぴかぴか――とは言えないものの、住職が苦言を呈さぬほどには美化された廊下を越えた先にある畳の一室。
経や念仏を唱える声はそこになく、あるのは一人の男の驚嘆の声だけだった。
「やべぇ……こいつぁやばすぎるぜ」
男の名は、井ノ原真人。筋骨隆々な肉体を赤いタンクトップに包み、上から学ランを羽織っている。
乱雑に茂った頭髪は赤い鉢巻きで纏め、肉体とラフな服装から暑苦しいほどの情熱が迸っていた。
「ご遠慮なさらず。万能たる神に全てを告白なさい」
「やべぇな……筋肉が爆発しそうだ!」
外見的印象にそぐい、声量も喧しい。静謐とした山の寺では、なおのこと騒音として際立った。
真人の無駄に熱血した感動は、傍らに佇む小さな女の声などいとも簡単に掻き消してしまう。
「神の代理人として、神罰の地上代行者として命じます。話を聞けこのファッキン筋肉」
「うおおおおおおー! なんだか無性に腹筋が――ごっはぁ!?」
少女の背中から、黄色いロープのようなものが伸びる。
意志を持った蛇のように躍動するロープは、少女の人妖能力『キキーモラ』。
極細の糸を束ね合わせた、触覚を持つ第三の手のようなものだった。
高速で動き回るキキーモラは叫ぶ真人の足を打ち払い、次いで足首を絡め取る。
そのままキキーモラを上に持ち上げればあら不思議、あっという間に逆さ吊りの男が完成だ。
「ってコラ! いったいなにしやがんだ!」
「黙ったほうがいいですよ。逆立ちした状態で喚き散らすと、体の筋肉が脳に移動してしまいますから」
「なんだって……!? 今まで脳みそは鍛えようがねぇと思ってたが、そんな方法で筋肉がつけられたのかよ」
「ええ。まぁ、嘘で虚言で口からでまかせなんですがね。要するに静粛にしろってことです」
語気は強く、しかし静かな声を発し、少女は真人の足首に絡めたキキーモラを解放する。
重力の制御下に戻った真人はそのまま頭から落下し、平然と立ち上がった。
その脇には、なにやら丸っこい形をした茶色の物体が抱えられている。
「ったく……なにがしてぇんだ、テメェはよ」
「それはこっちのセリフです。聞くだけ無駄かとは思いますが、いったいなにがやばいんです?」
「ん? ああ、知りてぇか? なら教えてやるよ……見ろ! この筋肉に勝るとも劣らない立派な――」
「木魚、ですね」
「木魚だ!」
艶のある光沢、見栄えする彫り目、それはそれは見事な木魚だった。
で?
叩けばいい音鳴りそうですね、でもお高いんでしょ、といった一般的な反応は返さない。
少女はただ、凍てついた視線と冷淡な声を持って木魚を翳す真人に接した。
「ええ、木魚ですね」
「ああ、木魚さ!」
「……で、これがなんだっていうんですか?」
「わからねぇか? こいつはやべぇ、やばすぎる武器だぜ……これさえあれば鈴も恭介も敵じゃねぇ」
「やべぇやべぇとなに抽象的表現しかできない現代のチャラついた若者みたいなこと連呼してるんですか。
例のランキング制バトルの話をしているんだったら、その気持ち悪くも恍惚とした笑みと共に今すぐ捨てなさい。
そして悔い改めよ。私はろくに家探しもできない無能な筋肉です。グッピー返上プランクトン確定だー! と」
「へへっ……そこまで言われちゃ仕方がねぇ。黙っているわけにはいかねぇな!」
「あなたがいつ黙ったって言うんですか。休まることを知らない筋肉トークぶっ続けのくせして」
「俺はこの木魚を使いこなし、不可能を可能にする男の称号を欲しいがままにしてやるぜ」
「どうやって木魚を使いこなすっていうんですか?」
「不可能を可能にしてだよ!」
あはは、つき合い切れないわ〜――と、少女は和やかな笑みすら浮かべてキキーモラを再動。
再び真人を宙吊りにし、今度は若干勢いをつけて床に叩きつけた。
体の主成分が筋肉でできている真人には、もちろんダメージなどない。すぐさま立ち上がってくる。
その無駄に屈強な肉体を憮然と眺めつつ、少女は深く溜め息をついた。
トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナ――名簿上ではアントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ。
神沢市で名乗っている偽名のほうではなく、ご丁寧にも本名のほうで記載されていた少女の名。
それでも知り合いの多くは彼女をトーニャと判別できているのだろう、そうでなくても特に問題はなく。
少女はトーニャとして、この地に立つ。
ゲームと称された殺し合いの競技。
その舞台装置の一つである『寺』に、旅先で知り合った筋肉と共に。
◇ ◇ ◇
――コンコン。
どうぞ。罪深き迷える子羊よ、カムイン。
「失礼します。トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナです」
ああ、誰かと思えば、筋肉の妖精マッスル☆トーニャ!……さんでは、あーりませんか。
懺悔ね。ああううん、どうぞ。
「軽いですね……そしてマッスル言うな。自分で自分が嫌いになりそうです」
まぁ私相手にキャラ作っても意味がありませんし。脳内空間みたいなものですし。素で。
それはそうと、ここは誰もが知る告白の場、あやかし懺悔室。
あなたも懺悔をしにここを訪れたのでしょう。ならば懺悔を。
気兼ねする必要はありません。神は遍く子羊全てに文句を開いています。
「はあ。では……ぶっちゃけると、あの筋肉についてなんですが」
惚れましたか? まあ確かに、あの筋肉には見惚れ……
「待てい。ボケにしてもツッコミにしてもネタにしてもそこから先は言ってはいけない。
あんまり迂闊な発言をすると、キャラ的にはおいしいけれど、
いろいろと複雑な気分になれるイロモノ時空に巻き込まれるわよ私」
……失言でした。さっきの部分はディレクターズカットしておきます。
で、あのグッピーもとい筋肉がなんですか? いいかげん縁切りしたくなってきましたか?
筋肉防壁とするには最適な人材ですが、足枷になるようならスパッと切り捨てるのが吉ですよ。
「いえ、切り捨てるほど足手まといというわけではないのですが……
漫才するのにも疲れたと言いますか、いい加減まともな仲間を見つけたいと言いますか、
とりあえずプランクトン確定筋肉の面倒見てくれる人でもいてくれればこれ幸いと言いますか」
懺悔というか、ただの愚痴ですね。まあいいですが。
「寺の中になにか使えるものや怪しい箇所がないか探れと指示すれば、木魚で浮かれる始末ですし……」
というか、どうしていきなりお寺なんですか。筋肉が出家したいとでも言い出したんですか。
「いえ、寺を訪れたのは私の発案です。少し考えがありましてね」
ほう……これまで漫然と会場内を周旋していただけの私が、今さら指針を見つけたと?
「ええ、まあ。っていうか、筋肉が出家ってどんな奇想天外な事態ですか。
坊主と筋肉は馬が合うとでも……とまぁ、あながち間違ってもいませんが。
っていうかさっきから筋肉率高いですよこの会話!
まるで私の脳内が筋肉に汚染されているみたいじゃないですか!」
ふっ、さすがは私。ツッコミどころは逃さない魔性の女番外地。
「棒読み口調で微妙に訳のわからないセリフ吐くのも私ですね。いい加減先に進みましょう。
確かに、これまでの私はあてもなく各地を彷徨っていた真の意味での迷える子羊でした。
まぁ目的地を定めていたわけでもなく、道中で人と遭遇できればそれで良しな方針だったからこそですが」
しかし現実はかくも厳しく。
これまでに邂逅した人物は異常者ばかり……いえ、ある意味では正常な末路を辿った。
とも言えなくはありませんか。特に、柚原このみに関しては……グッピーの様子はどうです?
「あのプランクトンが引きずるタマに見えますか?
見た目の筋肉に反してナイーブな内面を秘めている可能性など考えたくもないです」
……まぁ、現状の適度に離れた距離を保ったほうが、後々幸せかもしれませんね。
何事も入れ込みすぎるのはよくないですし。露骨なツンデレだけは勘弁ですよ?
「……そろそろ自虐ネタに聞こえてきました。自重しろ、脳内の私」
ふむ。どうにも話が脱線してしまいますね。今後は『筋肉』という単語をタブーにしましょう。
一回『筋肉』と発言するたびに、『ミ・ミ・ミラクル☆ ミクルンルン☆』と口ずさむ罰を与えます。
「なんて恐ろしいネタを……これはツッコんだら負けのような気がするのでスルーします」
スルー上等。
「よろしい。では話の続きですが、主催者が開会式……というほどのものでもありませんが、
ルール説明の際に喋っていた内容は覚えていますか? 彼らはこの殺し合いを、『ゲーム』と呼んでいました」
便宜上……との前置きもありましたね。ふざけた便宜です。
人の命をゲーム感覚で奪うなんて、今どきのゲーム脳全開現代っ子じゃあるまいし。
「便利な表現ではありますがね、ゲーム。お遊戯的なニュアンスを含めているのが腹ただしいですが。
さて、ではこのゲームという単語を頭の隅に一旦置いておき、この会場の地図に着目してみましょう」
島、ですね。それ以上でもそれ以下でもなく。でもこの島、考えれば考えるほど不自然です。
東西南北に気色の異なる街々。中央部には天然の山々。
モスクと教会が目と鼻の先って宗教戦争真っ只中? 辺境に置かれた発電所の意味は?
空港の滑走路短くない? 遺跡ってなんの遺跡? ってか娼館って……?
と、それこそ山のようにおかしな部分があるわけですが。
「無人島、ではありません。しかし生活の名残があるわけでもない。
そもそもこんな様々な文化が密集した島が存在し得るはずがない。
考えるまでもなく、この島はゲームのために特設された会場……
殺し合いのために一から作られた、人工島であると推測できます」
島を作る……それがどれだけ困難なことか、もちろんわかって言っていますね?
いえ、返答は結構。今さらなにが飛び出しても驚かない、非日常ドンと来いな気構えでいなければ。
なにせ、『異世界』などという境界線で区分された各人を、一同に介するという時点で……
「主催陣営の保有する力に関しては、考えるだけ無駄というものでしょう。
私では言峰綺礼という神父や神崎黎人という学生の詳細を知りえないのですから。
その裏に潜む黒幕の存在も……現状、妄想の域を出ぬ存在です」
頭脳担当だからといって、一人で抱え込むのはよろしくないですね。
筋肉や軟体生物に相談しても意味のないことではありますが。
「ええ。ですからこうやって脳内懺悔室を開いているわけです。
そろそろ団体行動を視野に入れたほうが良かれ、かもしれません」
とはいっても、あなたはお寺を訪れた。まさかここに出会いがあるなどとは……
「思っていませんよ。私がこのお寺を訪れたのは、先ほど着目した会場マップ。
その不自然すぎる盲点を、この目で確かめるためです」
不自然すぎる盲点……ですか。
「当然至極ですが、これは地図です。地図だからこそ、会場内の全体図と主だった施設の場所が記されている。
ですが、なぜ記すのか? 地図という肩書き上の体面を保つためか、いやいやそんなはずがない。
これが登山家に向けて配られた山岳地図ならともかく、なぜ各施設の名称を記す必要があるのか。
これはあくまでも殺し合い。目的地の定められたピクニックではなく、単純なサバイバル競争。
言ってしまえば、地図なんていらないわけです。どうせ絶海の孤島なんですから、どこに行こうと逃亡は無理。
知らず知らず禁止エリアに引っかかって爆死というのも、悲劇としては十分にアリです」
つまり……どういうことですか?
「配る必要のない地図……それを配り、さらに施設名称まで記してあるということはつまりずばり。
主催者たちは、私たちが漫然と殺し合うだけの結果など望んではいない。
もっとドラマティックなシチュエーションを期待しているということでしょう。
それこそ、先ほど頭の隅に置いておいた『ゲーム』のように――。
様々な舞台装置を用い、主催者自らそれを参加者に悟られぬよう、設定しているとしたら?
この地図に記された施設が、RPGにおけるダンジョンや捕球ポイントの役割を担うとしたら?
これは主催者たちが観戦して楽しむだけの娯楽的な意味合いを持ったゲームではなく、
私たち自身がゲーム感覚で挑むことこそ正解と言える、デス・ゲームだったとしたら……?」
とてつもなく突拍子もない、それでいてぶっ飛んだ仮説ですが、理解してますか?
……愚問でしたね。続けてください。
「本当に殺し合わせることだけが目的だとするならば、まず会場はもっと狭くてもいいはずです。
支給品だって、ダンセイニや筋肉チョッキみたいなものじゃなく、確実に人を殺せるものを入れるべきです。
主催者の真の企みは――」
ストップ。それ以上考察するのはやめておきなさい。じゃないと、ドツボに嵌りますよ。
つまりあなたは、こう言いたいわけです――地図に明記された施設には、なにかしらの意味がある。
「ええ、まあそのとおりです」
そして、柚原このみから逃れ橋を渡った後……あなたは手ごろな目的地としてこのお寺を目指した、と。
あれ。でもこれ、神社のほうが手ごろじゃないですか? どうしてわざわざお寺のほうに?
「ああ、地図で見ると確かに神社のほうが近いですね。けど、私が歩いているのは実際は山道でして。
山頂付近にある神社を目指すより、中腹辺りに位置する寺を目指したほうが早く着くに決まってるでしょう。
山登りなんて実際疲れるだけですよ。まったくファンタジーやメルヘンじゃあるまいし……」
我ながらなんという……いえ、あえてツッコミはよしましょう。
あ、そういえばさっきNGワード言っちゃいましたね。罰を与えます。
「え……? あ、筋肉チョッ――ミ・ミ・ミラクル☆ ミクルンルン☆」
ふふふ……神の天罰ドカンと一発。
「ええい、こっちもこっちでつき合いきれんわ!
ということで、まだ見ぬ明日に向かって逃亡――!」
◇ ◇ ◇
話はぐるりと廻って、再び寺院内部。
地図に記された施設が意味する役割……不確定要素を多分に含む仮説を検証するべく、トーニャたちは家探しを続けていた。
真人が調達した木魚は、もちろんだがトーニャの求めた『答え』ではない。
そもそもこのような平凡な日本式寺院にどのような仕込みができるのかと問われればそれまでだが、
それでもトーニャは粘り強く、畳みの底から襖の奥に至るまで、特異点がないかを探った。
そして数分後。
トーニャが求めていた答えは、ダンセイニの功績によって導き出される。
「てけり・り」
「お、ダンセイニがなんか見つけたみたいだぜ」
「またしょうもないものですか」
「ふっ……ダンセイニは至高の筋肉の持ち主だぜ? 俺なんかと一緒にするなよ」
「その発言、ナチュラルに自分を貶してるってわかってますか?」
「んだとぉ……し、しまったああああああああああああっ!!」
「てけり・り」
「これは……穴、ですか」
ダンセイニが指し示すその場所は、寺の裏庭だった。
整地された石畳ではなく、雑草茂る地面の上にポッカリ空いた大穴。
井戸かなにかとも思えたが、水を貯水しておくには明らかに面積が膨大すぎる。
中を覗けど視界は暗闇に閉ざされ、小石を投げれば落下音は虚無に消えていく。
そしてこの大穴には、ご丁寧にも下降用の鉄梯子が取り付けられていた。
「かなり深いなこりゃ。穴掘って埋まるにしてもやりすぎだぜ」
「……怪しい臭いがぷんぷんしますね。ちょっと降りてみましょう」
「おう、いってらっしゃい」
「……(ジロ)」
「あん? なんだよ、俺の筋肉になんか文句でもあんのか?」
先に行け――という念を込めた睨みは、しかし真人には通じなかった。
この数時間で井ノ原真人という少年の扱い方を熟知してきたトーニャは、焦らず動じず。
筋肉担当を合理的に使う術として、より適切な手段に躍り出た。
「知ってますか? 梯子を上り下りするのって、結構な重労働なんですよ?
これだけの深さです。一往復するだけでも、相当筋肉が鍛えられることでしょう」
「なに……マジかよ。おい、ちょっくら降りてみようぜ」
「イエス単純脳細胞。さすがは私、言葉の魔術師」
トーニャの口車にあっさり乗せられた真人は、先行して梯子を伝い降りていく。
続いてトーニャ、最後にダンセイニが軟体を器用に操り、三人連なって下降していった。
「しっかし本当に深いな。まだ底が見えねぇぞ」
「手元くらいは見えるでしょう。真っ直ぐ梯子を降りていけばいずれは底に辿り着きます」
「んだとぉ………………あ」
「――ッ!? う、上を見るな!」
「グハッ!?」
「くっ……迂闊。私としたことが、なんたる迂闊……!」
「てけり・り」
周囲が壁で囲まれているためか、トーニャたちの会話は反響して聞こえた。
とはいえここは山の中。耳にする者など誰もおらず、ビックリドッキリ青春ハプニングは闇に消える。
何十メートルか下降して、やっと踏み締めた大地の感触。
固い土の上に降り立ったトーニャは、そこが井戸の底などではないということを改めて実感する。
「井戸の底に照明灯なんてものが……つけられているはずはありませんからね」
穴倉の最下層は、暗闇の空間などではなかった。
円形の壁際には、東西南北に分かれて設置された四つの燭台があり、微かな火が灯っている。
足元の確認はもちろん容易。
そして目の前の壁に、さらなる奥地へと続き洞穴の入り口があることも――容易に目視できた。
「先へ進みましょう。行きますよプランクトン」
「おいちょっと待て。プランクトンってなんだよ」
「言ったでしょう。次で活躍できなかったら改名すると」
「いつ俺が活躍しなかったってんだよ!?」
「この穴を発見したのはダンセイニ。その頃あなたは木魚で大はしゃぎ」
「なんだとぉ……木魚なんて筋肉に比べればただの木屑ですよ、
っていうか真人には立派な筋肉があるから木魚なんて無用の動物ですよ……とでも言いたげだなぁ!?」
「全然言いたげではないです。ついでに言うなら無用の動物ではなく無用の長物です。
なんですか無用の動物って。全世界の動物に喧嘩売ってますか。
仮にこの世で無用の動物なんて存在がいるとすれば、それはどこぞのフォックスビッチのみです」
「なに言ってるかよくわからねぇが……とりあえず叫ぶぜ。
うおおおおお! しまっ――って、なんじゃこりゃあああ!?」
横に続く小さなトンネルを越えた先には、大きな空洞が広がっていた。
形状はドーム状。野球の試合が執り行えるほどの面積が広がっており、照明灯の数も先ほどの比ではない。
地下にこれほど広大な空間が形成されていたという驚きもあるが、真人が叫び、トーニャが瞠目したのには別の理由がある。
「てけり・り」
「……特別、日本の寺院に詳しいわけではありませんが……さすがにこれはないでしょう」
ダンセイニとトーニャが視線を上に仰ぎ、唖然とする。
真人が興奮のあまり周囲を走り回ろうとし、うるさいのでキキーモラを使って転ばせておく。
「あれ、なにに見えますか?」
「なにって、んなもん決まってるだろ。だ」
「いえ、答えてくれなくても結構。あれは、大仏≠ナす。間違いなく」
苦笑気味の声で、トーニャは事実を受け入れた。
会場内の、少なくとも地図に記された各施設には、なにかしらの意味がある。
そう、あたりをつけたトーニャが立ち寄った先……寺の裏庭には、奇妙な大穴がポカリ。
降りてみれば、怪しげな地下通路。そしてさらに奥へと進んだ結果……トーニャが発見した答え。
それは、お寺には付き物の巨大な巨大な大仏様だった。
「って、なんでわざわざ寺の地下に大仏なんて置くんですかー!?
これが日本の文化ですか、仏教の真髄ってやつですか、ロシア人なめんな!
だいたい――」
「てけり・り!」
トーニャの怒涛のツッコミがスタートする……と思われた刹那、ダンセイニの齎す音が彼女の憤怒を沈静化させた。
あれを見ろ、と言わんばかりにスライム状の体を蠢動させられ、トーニャと真人は大仏の足元に目をやった。
大仏が置かれる土色のカーペットの上に、見知らぬ少女が一人、横たわっている。
「まさか……仏陀ですか!?」
「ブタ? いやいや、ありゃどう見ても人間だろ」
「ええいそんなことはわかっとるわ! そういう問題ではなく、誰ですかあなたー!?」
「……ん…………っ、ん……え?」
極光の眩しさから解放されたような面持ちで、その少女はゆっくりと身を起こす。
ストレートのロングヘアが際立つ、大人びた風貌の女性は、衣服から察するに学生だろうか。
地下空洞に置かれた大仏の安座で眠るなど、あまりにも不似合いに思える美貌を晒し、ことんと首を垂れる。
まるで彼女自身、まったく事情が飲み込めていないといった風に。
「えぇと……ここは、どこでしょう」
トーニャと真人とダンセイニは即答を返すことができず、棒立ちのまま少女を見つめていた。
――これが、極上生徒会会長、神宮寺奏とのファースト・コンタクトである。
◇ ◇ ◇
光の先には――――深い深い穴倉へと繋がる抜け道があった。
この穴倉になにが眠っているのかは、まだ誰にもわからない。
……ただ、トーニャはこの深い穴倉に漠然としたなにか……光明のようなものを感じ取っていた。
キーワードは『ゲーム』……主催者等の言う便宜がなにを意味するのか、答えはどこぞにあるのかもしれない。
【C-5 寺の地下/一日目/午前】
【井ノ原真人@リトルバスターズ!】
【装備:木魚、マッチョスーツ型防弾チョッキ@現実【INダンセイニ@機神咆哮デモンベイン】】
【所持品:なし】
【状態:胸に刺し傷、左脇腹に蹴りによる打撲】
【思考・行動】
基本方針:リトルバスターズメンバーの捜索、及びロワからの脱出
0:ボス狸と行動。筋肉担当
1:目の前の少女に対処。
2:理樹や鈴らリトルバスターズのメンバーや来ヶ谷を探す。
3:主催への反抗のために仲間を集める。
4:ティトゥス、クリス、ドライを警戒。
5:柚原このみが救いを求めたなら、必ず助ける
【備考】
※防弾チョッキはマッチョスーツ型です。首から腕まで、上半身は余すところなくカバーします。
※現在、マッチョスーツ型防弾チョッキを、中にいるダンセイニごと抱えています。
※真と誠の特徴を覚えていません。見れば、筋肉でわかるかもしれません。
※真人のディパックの中はダンセイニが入っていたため湿っています。
※杏、ドクターウェストと情報交換をしました
【ダンセイニの説明】
アル・アジフのペット兼ベッド。柔軟に変形できる、ショゴスという種族。
言葉は「てけり・り」しか口にしないが毎回声が違う。
持ち主から、極端に離れることはないようです。
どうやら杏のことを気に入ったようです
【アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備:ゲイボルク@Fate/stay night[Realta Nua]】
【所持品:支給品一式、不明支給品0〜2、スペツナズナイフの刃、智天使薬(濃)@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:打倒主催
0:たまご風味のグッピーと行動。頭脳担当。
1:目の前の少女に対処。
2:寺の地下を探索。
3:神沢学園の知り合いを探す。強い人優先。
4:主催者への反抗のための仲間を集める。
5:地図に記された各施設を廻り、仮説を検証する。
6:ティトゥス、クリス、ドライ、このみを警戒。アイン、ツヴァイも念のため警戒
7:状況しだいでは真人も切り捨てる
【備考】
※制限によりトーニャの能力『キキーモラ』は10m程度までしか伸ばせません。先端の金属錘は鉛製です。
※真人を襲った相手についてはまったく知りません。
※八咫烏のような大妖怪が神父達の裏に居ると睨んでいます。ドクターウェストと情報交換をしたことで確信を深めました
※杏、ドクターウエストと情報交換をしました
【トーニャの仮説】
・地図に明記された各施設は、なにかしらの意味を持っている。
【神宮司奏@極上生徒会】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式。スラッグ弾30、ダーク@Fate/stay night[Realta Nua]、
SPAS12ゲージ(6/6)@あやかしびと −幻妖異聞録−、不明支給品×1(確認済み)
【状態】:健康。爪にひび割れ
【思考・行動】
0:ここは……どこでしょうか?
1:自分にしか出来ない事をしてみる。
2:蘭堂りのを探す。
3:できれば、九郎たちと合流したい。
4:藤野静留を探す。
5:大十字九郎に恩を返す。
【備考】
※加藤虎太郎とエレン(外見のみ)を殺し合いに乗ったと判断。
※浅間サクヤ・大十字九郎と情報を交換しました。
※第二回放送の頃に、駅【F-7】に戻ってくる予定。
※ウィンフィールドの身体的特徴を把握しました。
※主催陣営は何かしらの「組織」。裏に誰かがいるのではと考えています。
※禁止エリアには何か隠されてかもと考えてます。
【寺の地下】
寺の裏庭に、地下へと通じる大穴が開いています。
地下の空洞には大仏が安置されており、その他の詳細は一切不明。
投下終了。支援感謝です。
タイトルは、
「トーニャの不思議なダンジョン及びあやかし懺悔室」
投下乙。
脳内の懺悔室とは、なんて斬新な発想wwwww
トーニャの突っ込み役としての魅力が余すことなくw そして真人の愉快さが嬉しいw
奏会長とも合流か。ようやく、この筋肉コンビを第三者の目で見れる人がwww
そして大仏、いったいどんなフラグが仕込めるんだwwwww
投下乙です
脳内懺悔室吹いたw
それ以外にも面白いシーンが多くて、凄く楽しい作品でした
氏の作品は本当に展開が幅広くて、毎回毎回新鮮な気分で読めるなあ
投下乙です!
この二人のコンビはやっぱり良いです
トーニャは突っ込み役だと思ってたけどひとりでボケも担当するとは
それにしてもガードが固いと評判のトーニャのスカートの中を見るとは真人もやるなあw
「まさか、こんなので気絶するとは……」
私は倒れてるウェストを見て溜め息をつく。
今は豪快にいびきをかいて寝ている。
まさかあんな軽い一撃で気絶するとは。
疲れていたのだろう。
ウェストの話を聞くとそうだと思う。
置いて行こうかとも考えた。
しかし私はその選択は選ばなかった、何故か。
だから私も休憩をとる事にした。
この殺し合いに連れてこられから私は戦いばっかだった。
ただし、それはいつもの鬼との戦いじゃない。
人間との。
何の罪もない人間との。
私はただ桂さんの為に。
愛しい桂さんに生きてほしかった、ただそれだけの為に。
修羅に落ちようと思った。
そのために沢山の一般人と戦った。
そしてサクヤさんに出会って。
私は迷いを持って。
ウェストと出会って。
私は桂さんを見つけ出す事を決めた。
まず人を斬る事より桂さんを見つけそして守ることが大切。
そう思ったから。
あの優しい人を。
傍で。
守り通す。
どんな時でも。
どんな事でも。
どの選択が正しいかは分からない。
ただ。
ただ言えるのなら。
守る。
それだけは。
千羽烏月として。
正しい。
そう言い切れると思ったから。
だから。
進む。
その信念1本の元に。
が。
「っ!?」
「外してしもたか……殺し合いに乗ってる人間なら容赦はせえへんよ」
唐突に背後から風を薙ぎ迫りくるものを感じを咄嗟に横に跳び避けた。
振り返るとそこにはブレザーに長い茶髪の少女。
その少女は鞭を持ちこちらを睨んでいる。
殺し合いに乗ってる?
たしかにそうだったが……
少なくとも今はそうとは言い切れない。
「私は乗ってない……」
「おや? そない訳へんんせやかて。クリスはんと唯湖はんから聞おいやしたのとピッタリなんやけど」
クリスと唯湖。
またその名前か……何かと縁があるようだね。
ウェストからも同じような事言っていったしおそらくあの2人組だ。
それなら誤解されても仕方ないか。
だがしかしこのまま誤解されたままという訳にも行かない。
「今は違う……わけ合って降りた」
「へえ……? ほなこの倒れてる男は?」
「それはちがっ……」
「ぐがーー!……我輩は次元一の大天才なのである!……すぴー」
「……」
「……」
……ウェスト。
ありがたいの……だが。
だが……
「くっくっくっ……おもろいわ、ほな取り敢えずは信用しまひょか。こないな寝言聞おいやしたら……くっくっ……乗っておるんやったらとっくの昔に殺したはるやろうし……くっくっ」
「……ありがたいのだが……こんな信用の仕方は……」
ふう、と。
もう一回溜め息をついてしまった。
兎も角も信用を得たし情報交換をしようか。
「こちらは千羽烏月……そちらは?」
「藤乃静留と申しまんねん、よろしゅうな」
静留と名乗った少女はそっと微笑みそして何処か遠くを尋ねた。
とても儚い顔で。
「……なつきって子知りまへんか?」
「……残念だけど知らないね……羽藤桂は知ってるかい?」
「残念せやかて知りまへんわ……ほうか」
なつき、そういった彼女はどこか儚げで。
とても残念そうに、そして何処か安心そうで。
そして一回目を瞑って祈りをしたかのように。
そして目を開け私に問いかける。
「烏月はん……あんさん乗ったというとりましたよな……その桂はんという言う人の為に?」
「……」
私は押し黙った。
無言は肯定を意味させる為に。
それは消せない事実。
私は桂さんの為にならそれでもいいと。
でも知ったから。
まずはこの手で守り通すことだと。
だから。
守りたいんだ。
「ほうか……それで止めたと。あんさん死者蘇生は?」
「知っている……だけどそれは絶対懸けてはいけない物だ……桂さんは喜ばない」
「同意見やね……なんなら何故止めた?」
それは……まだ確定じゃない。
でも言うならば。
私は。
決して許される事じゃない。
でも。
でも。
「守りたい……この手で、私の手で……怖がられるかもしれない……でも! 守りたい! 会いたい! 桂さんを! 守りたい! 会いたいんだ!」
その一念だった。
軽蔑されるかもしれない。
怖がられるかもしれない。
でも。
でも!
守りたい!
ただ。
ただ。
会いたい!
それだけ……
それだけなんだ……
「ほうか……立派やな……立派。だけどあんさん。人殺したことはあるか?」
「まだ……ないよ」
これはある意味の幸福。
人を殺してないという事実。
これがあるからまだ戻れたかもしれない。
会えることを願えたのかもしれない。
それを告げた時笑った。
静留さんは。
とても。
とても。
悔しそうに。
羨ましそうに。
「くっくっ……あはははは……いいなあ……あんさんは……いいなあ」
「……なにがだい?」
「戻れて……会えて……うちは無理やさかいに」
無理?
何故?
「何故だい?」
「……殺した。うちは。人を。事故やったと言い訳できるかもしれへん……でも……事実」
「……え? そんな?……本当なのかい?」
「クリスはん達も見てる……藤林杏やったかな……」
藤林杏!?
……それは。
ウェストが探してた人だ。
……そんな。
「せやから……うちは乗った。殺し合いに」
え?
乗っているだと……
な……
「だって戻れへんもんもう……会いたい!……守りたい!……この手で!……でもできへん……できへんのや」
「そんな……事故ならまだ戻れる……」
「じゃああんさんだったら血塗れた手で桂はんの手を握れる?」
「……それは」
……それはできない。
怖い。
桂さんにどう見られるか。
怖い。
「できへんやろ……せやから乗った……少しでもなつきが生きてくれる可能性を増やす為に……戻れへんから」
ああ。
この人は私の過去だ。
もしかしたら私もこのままだったかもしれない。
そしてこの人の過去は私の今だ。
なんて。
なんて。
悲しい事。
私と貴方は鏡写しのようだ。
まるでもう一人の『私』
ああ。
ああ。
悲しい事だ。
「いいなあ……羨ましい……羨ましい……いいなあ」
静留さんはその言葉を繰り返す。
ただ。
ただ。
自分を突き放すように。
「…………あんさんは見つけなさいな……過ちを犯す前に……守り通しなさいな……傍で……うちにはできんことを」
「ああ……絶対守り通す! 私の信念にかけて!」
「ほうか……はよう見つけな……うちが屠る前に……それとお願いやけど……なつきをみたら頼みます……」
「ああ……わかった」
彼女はそう悲しく微笑んで立ち去ろうとする。
何処か吹っ切るように。
何とか頑張って歩くとするように。
「今回は……見逃したる……さよなら『過去』のうち」
そういって歩いてく彼女は。
その背に私は誓う。
「ああ! 絶対会う! 守り通す! さよなら『過去』の私」
その言葉に反応するかのように。
「ああ……羨ましい」
ああ。
絶対。
絶対。
守ろう。
私は。
もう。
迷わない。
桂さん。
桂さんの隣で守る。
これは誓いだ。
もう一人の『私』に。
負けないようにと。
ずっと。
ずっと。
誓う。
【D-4 湖周辺/一日目 昼】
【千羽烏月@アカイイト】
【装備:地獄蝶々@つよきす -Mighty Heart-】
【所持品:支給品一式、我 埋葬にあたわず@機神咆哮デモンベイン】
【状態:、身体の節々に打撲跡、背中に重度の打撲、右足に浅い切り傷(応急処置済み)】
【思考・行動】
基本方針:羽藤桂に会う。守り通す。
1:桂を守り共に脱出する、不可能な場合桂を優勝させる。
2:トルタ、恭介に対する態度保留。
3:クリス、トルタ、恭介、鈴、理樹は襲わないようにする。
4:なつきを探す
【備考】
※自分の身体能力が弱まっている事に気付いています
※烏月の登場時期は、烏月ルートのTrue end以降です
※クリス・ヴェルティン、棗鈴、直枝理樹の細かい特徴を認識しています
※岡崎朋也、桂言葉、椰子なごみの外見的特長のみを認識しています
※恭介・トルタが殺し合いに乗っている事を知りません。
※ドクター・ウェストと情報を交換しました。
※杏が死んだと思ってます。
【ドクター・ウェスト@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:無し
【所持品】支給品一式 、フカヒレのギター(破損)@つよきす -Mighty Heart-
【状態】睡眠中、肉体的疲労大、左脇腹に銃創、スタンガンによるダメージ
【思考・行動】
基本方針:我輩の科学力は次元一ィィィィーーーーッ!!!!
0:睡眠中
1:凡骨リボン(藤林杏)を探しに大聖堂へ
2:ついでに計算とやらも探す
3:霊力に興味
【備考】
※マスター・テリオンと主催者になんらかの関係があるのではないかと思っています。
※ティトゥス、ドライを警戒しています。
※フォルテールをある程度の魔力持ちか魔術師にしか弾けない楽器だと推測しました。
※杏とトーニャと真人と情報交換しました。参加者は異なる世界から連れてこられたと確信しました。
※クリスはなにか精神錯覚、幻覚をみてると判断。今の所危険性はないと見てます
※烏月と情報を交換しました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ああ。
なんて羨ましい。
珍しくうちが嫉妬しとる。
似すぎ。
似すぎやわ。
羨ましい。
彼女が。
ただ。
ただ。
守り通す、そう言い切りおった彼女が。
うちもしたいなあ。
羨ましいなあ。
羨ましい。
あって。
手を握って。
守りたい。
でもできへん事。
殺した。
ただその事実が私を苦しめる。
戻れへん。
似すぎてる彼女との明確な違い。
それは。
大切な人の為に殺人という過ちを犯したかという事。
彼女は犯せず。
私は犯した。
ただそれだけ。
それがとても羨ましい。
だからうちはちがう方法でなつきに尽くすしかあらへん。
堕ちて。
堕ちて。
修羅になって。
なつきの見えないところで守る。
これは誓いや。
もう一人の『うち』に。
負けないようにと。
ずっと。
ずっと。
誓う。
【D-5 川周辺/一日目 昼】
【藤乃静留@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備:殉逢(じゅんあい)、。コルト・ローマン(3/6)】
【所持品:支給品一式、虎竹刀@Fate/stay night[Realta Nua]、玖我なつきの下着コレクション@舞-HiME 運命の系統樹、木彫りのヒトデ1/64@CLANNAD】
【状態】疲労(中)、左手首に銃創(応急処置済み)、左の太股から出血(布で押さえていますが、血は出続けているが少量に)
【思考・行動】
基本:なつきを探す なつきの為に殺し合いに乗る
1:なつきの為に殺し合いに乗る、しかし殺し合いに乗った人間を優先的に排除
2:殺し合いに乗る事に迷い(特に力なき人間を殺すことにためらい)
3:太股の傷を治療する為の道具を探す
4:なつきに関する情報を集める
【備考】
※下着コレクションは使用可能です。
※理樹を女だと勘違いしてます。
※詳しい登場時系列は後続の書き手さんにお任せします
※死者蘇生に関して否定。
※移動中です。移動先は後続の書き手さんにお任せします。
投下終了しました。
原作のうちで烏月ひところしてましたね、忘れてしまいました。
後日訂正して直したいと思います。
他にも誤字脱字矛盾ありましたらお願いします。
タイトルは
「もう一人の『自分』」です。
投下乙。
うーむ、確かに似ているようで対照的な両者。
烏月も誓いを新たにし、静留も順調にマーダーキラーを目指して。
そして西博士はぐっすり、とwwww
起きろ対主催の希望wwww そうしている間に周囲は酷い状態なんだぞwwww
投下乙です
なんて綺麗な元マーダーとマーダーw
両者の対比が良かったです
胎児よ 胎児よ なぜ踊る 母親の心がわかって恐ろしいのか
飢えが満たされない。
渇きが満たされない。
水分がほとんど失われたパンなんかとても食べられた物じゃない。
生ぬるい水なんてとても飲めた物じゃない。
でも身体の欲求は正直で、脳は空腹のシグナルを送り出す。
痣だらけの身体に人差し指の失った右手。
今の彼女は何かを食べようなんて考えられるような状態には程遠い。
しかし彼女は痛みに動じず食物を探し森を徘徊する。
「だめだよ……こんなパンじゃ赤ちゃんの栄養にならないよぉ……」
下腹部をさすり我が子を慈しむ彼女――西園寺世界は支給されたカチカチの固いパンを投げ捨てた。
投げ捨てたパンが木にこん、と当たり地面に落ちる。
世界は地面に落ちたパンをぼうっと見つめる。
どこでそれを嗅ぎ付けたのか、小さな蟻がパンの周りに集まりいつしか行列を成していた。
せっせとパンの欠片を巣に運ぶ蟻の列。
黒い列が世界の傍らにまで延びていた。
「………………」
蟻の列に左手人差し指を押し当てるとぷちっ、と蟻が数匹押し潰された。
蟻は仲間が死んだことに気づいているのか気づいていないのか、
世界の指を迂回して列を作りパンと巣穴に一本の黒い線を結ぶ。
ぷち。
ぷち。
ぷち。
世界は無表情のまま蟻の群れを潰していく。
「……飽きた」
蟻を潰すことに興味が失せた世界は膝を抱え頭を垂れた。
ふと脳裏に一人の少女の姿が浮かび上がる。
世界と同じく誠の子を授かった少女、桂言葉。
もし、我が子が流れてしまうような事になってしまったら彼女の子を返してもらう。
言葉の胎内の赤子は誠の子。故に世界の子であり、世界に返されて当然の存在だ。
言葉自身に恨みは無い、良き友人である。
だけど彼女に預けた子を返してもらうのは母として当たり前の行為である。
正しい行いをするのだから世界にとってそれに罪悪感など一欠けらも存在しない。
「おなかすいた……」
この島に来てから何も食べていない。
食料は乾いたパンと水のみで温かいお茶も熱々のご飯なんかあるはずもない。
肉汁の滴るステーキも、
シャキシャキとした生野菜に彩られたサラダも、
甘く熟れた果物も、
普段当たり前のように食べてきた物は何も存在しない。
「なんでよ……なんで私ばっかりこんな目に……」
柚原このみには滅茶苦茶に殴られた上、指を食いちぎられた。
見知らぬ女から名指しで狂っていると言われた。
柚原このみには逃げられたけど、世界を狂ってると罵った女にはその髪にたっぷりと爆弾を塗りつけてやった。
そして聞こえる爆発音。時限信管が炸裂した音だった。
「アハハ、いい気味」
ぐぅ、とお腹が鳴る。
水を飲んでも飢えは満たされない。
「何か……何かないの……」
もしかしたらパン以外にも何かあるかもしれない、世界はデイパックをの中身を漁る。
ランタン、コンパス、地図、食べるような物は見つからない。
「何かあるでしょ! こんだけ中に入っているんだから何か食べ物出てきなさいよッ!」
理不尽な怒りを八つ当たりをデイパックにぶつける。
しまいにはデイパックを逆さにひっくり返し激しく振る。
すると、からんと音を立てて小さな瓶が三つ転がり落ちた。
瓶は茶色く色づけされたガラス製の物、未開封の金属製の蓋が付いており、
一見すると栄養ドリンク剤の瓶に見える。
「なによこれ……」
世界は転がった瓶の一つを拾い上げる。
どうも中には液体が入っているらしい、だが水よりもずっと粘性の高そうな液体のように見える。
白のラベルに黒いペンで文字が書いていた。
『贄の血』
「ニエノチ……」
書かれている文字を呟く世界。
キャップを捻りおもむろに瓶を封を開ける。
「――――っ!?」
甘酸っぱい匂いが瓶からあふれ出す。
中身は赤く粘ついた血液、鉄臭い厭な臭いのはずなのにそれがとてつもなく世界の心を悦びに誘う。
「あっ」
思わず手から瓶が滑り落ちた。
ころんと転がった瓶からとくとくと血がこぼれ土の上に小さな血溜まりを作り上げる。
どくん。
世界の心臓が一際強く鼓動する。
舐めたい、啜りたい、飲み干したい。
赤い、赤い、赤い、甘い血を――
「ん……っ」
両手を地面に突き、顔を赤い水溜りに近づける。
恍惚の表情でその赤く小さな舌を伸ばす。
「ふ……ぁ……」
ぴちゃぴちゃと子犬のように舌を伸ばし地面にこぼれた血を舐める。
口の中に砂利が混じっても気にすることなく舐め続ける。
だけどその血液の半分以上はすでに地面に染み込み世界の口に入ったのは僅かな量。
「これだけじゃ足りない……もっと……欲しいの」
世界の手が残り二つの瓶の一方にかけられる。
蓋を開け一気に呷る。
鉄の味しかしないのに形容しがたい甘い味が口の中いっぱいに広がる。
そして全身に電気が走ったかのように広がる快感。
「あ……んっ……何……この味……」
飲み干してもなお瓶の内側にこびりつく血液。
世界は指を瓶の口に差し込んで血液を掬い取りその指にしゃぶり付く。
ちゅぱちゅぱと音を立てながら一心不乱に左手の人差し指を嘗め回す。
二本目を飲み終え三本目を手に取る世界。
それもまた一気に飲もうとしたが止めた。
理由はただ勿体ないから。こんな美味な物をここで全部飲んでしまうのは勿体ない。
それに身体の疲れが取れた気がする。
もしかしてこの血には何かの効用があるのだろうか?
世界は瓶をデイパックに戻して立ち上がり哂う、哂う。
とても満足そうな笑みを浮かべていた。
「あはは、そっかこれがあったんだ。ほかほかのご飯もあったかいお味噌汁も何にもいらない。
私にはこれがあれば大丈夫。お腹の赤ちゃんもこれで満足してくれる。鉄分もたんぱく質もビタミンも補える。
あっははははははははははははははははははははははははははははは」
彼女に支給された小瓶、それは妖の力を高める贄の血。
ただの人間には何ら効果はない存在。
だが彼女はゆっくりと、そして確実に人でないモノに変容しつつある。
どこまでも肥大化する自らのエゴに彼女の心は蝕まれ堕落する。
人を喰らう悪鬼へと己を変貌させてゆく。
ぼとりと足元に白く蠢く蛆虫が落ちた。
◆ ◆ ◆
「……この臭い」
森を歩く世界の鼻を異臭が突いた。
かすかに臭う物……放置された生ゴミをもっと薄めたようなほのかな腐敗臭。
腐りゆく肉の臭い、鉄臭い血の臭い。
さっき飲んだ贄の血とは比べ物にならない不味そうな臭いであるが、
あれっぽっちの血では世界は満足できない。
――――あの先に※※がある。
世界はその方角に足を進める。
鋭敏となった嗅覚は臭いの発生源をはっきりと捉えている。
さらに臭いが強くなる。
あと少し、もう少しでそこに辿り着く。
――――赤ちゃんのためにちゃんと栄養を取らないと。
禁忌を犯す。
生まれてくる赤子のために、自らの愉悦のために。
「――――見ぃ〜つけた」
世界が見つめる視線の先にそれらは横たわっていた。
赤みがかった茶髪の男の亡骸と、その横で寄り添うように息を引き取っている少女の亡骸の影二つ。
茶褐色に固まった大量の血が男の腹部に付着しているが、どうやらそれは致命傷ではないらしい。
胸に穿たれた大きな傷が彼の命を奪った直接の原因だった。
世界は少女に視線を移す。全身を無残に切り裂かれていた。
腕、脚、腹、肩、浅い傷から深い傷まで様々な裂傷。
元の色が分からないほど彼女の制服はべっとりと血に汚れていた。
そんな無残な殺され方をしたのに彼女の表情は、血で汚れているものの傷の付いていない綺麗な顔は
とても安らぎに満ちた物だった。
「――して」
世界は小声で呟く。
彼女は何でこうも安らぎに満ちた表情で死んでいるのか?
それが世界を激しく苛立たせる物だった。
「どうして……私がこんな酷い目に遭ってるのにアンタはなんでそんな幸せそうなのッ!」
世界は少女の襟首を掴み揺さぶる。
「答えなさいよ……私こんな痣だらけで指も千切れてそれでもまだ生きてるのに……アンタはぁッ!
はは、何その顔?『私、幸せでした』とでも言いたいわけ!? ふざけんじゃないわよぉぉッ!」
完全な八つ当たりを少女の亡骸にぶつける世界。
理不尽、あまりに理不尽で自分勝手な怒り。
少女を揺さぶるたびに何も語らない彼女の頭がカクカクと揺れる。
世界はそのまま少女を突き放した。
どさりと彼女の身体が横たえられる。糸の切れたマリオネットのように無造作に手足を投げ出して。
「その顔で死なせるものか……あっはははは、――――あんたを壊してやる」
少女の死を踏みにじってやる。
少女の死を犯してやる。
少女の死を冒涜してやる。
少女の死を喰らってやる。
「幸せな死なんて与えない、あんたはねぇ……私の赤ちゃんの一部分となるの」
世界は少女の亡骸に馬乗りになり――――その喉元に喰らい付いた。
みちみちと歯が喉に食い込んでゆくが、硬直し始めた彼女の喉肉は硬くなかなかちぎれない。
それでもさらに世界は歯を肉に突きたてる。
ぎちぎち。
ぎちぎち。
ぎちぎち、ぶちん。
歯の力に耐えられなくなった肉は筋肉繊維がぶちぶちとちぎれる音を発しながら剥離した。
黄色い皮下脂肪がてろんとのった赤黒い肉塊を世界は咀嚼し、嚥下する。
「あは、あはは、ひひっひひひひひひ」
食べた。食べてやった。
私は人の死肉を食べてやった。世界は歓喜に打ち震える。
――――お前の死なんか私の食料にしか過ぎない。
彼女にとって世界の行為はこれ以上ない冒涜。
こんなものでは済まさない、済ますものか。
世界はさらに少女の首に喰らい付く。
ぴちぴち、ぼと。
ぴちぴち、ぼとり。
蠢く白い蛆虫。
一心不乱で少女を喰らう世界に異変が起きた。
馬乗りになって歯を少女の喉に突き立てる世界の身体。
その腕からその脚から無数の蛆があふれ出し少女の亡骸にぼとりぼとりと付着する。
丸々と太った蛆はもぞもぞとその身をくねらせ少女の傷口に潜り込む。
脚の傷、腕の傷、肩の傷、胴の傷に収まらない、
少女の可愛らしい顔の耳に、鼻に、口に。
全身の穴という穴に無数の蛆虫が潜り込んでゆく。
何千何万数え切れないほどの蛆の群れが少女の体内に入り込む。
体内で蛆が蠢く度にぼこんぼこんと奇妙に波打つ少女の腹部。
その異様な光景に世界は少女に喰らい付くの忘れうっとりとした表情で見つめている。
それでもなお世界からあふれ出る蛆の大群は少女の亡骸に入り込む。
やがて少女の腹部が妊婦のように膨れ上がる、その先に待ち受ける光景を世界は楽しみにして見つめている。
「あっはははは! 何その姿!? まるで妊娠してるみたい!
でもあんたのお腹にいるのは赤ちゃんじゃなくて、
蛆虫の群れ残念でした! あっはははははははははいい気味〜〜〜〜〜!!!
さらにさらに膨れ上がる腹部。
限界はもうすぐここに。
背徳と冒涜が産声を上げた。
ぼんっという音とともに少女の腹が爆ぜた。
血と肉と内臓と蛆の混合物が世界に降りかかりその全身をどろどろに汚す。
びちゃびちゃと土の上に汚物が撒き散らされる。
これでもかというほどどうしようもなく冒涜的な光景。
人の死の尊厳などこの場所には全く存在しえない。
降り注ぐ冒涜の雨に世界はびくんびくんと身体を痙攣させ絶頂に達する。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははは」
ケタケタと森に木霊する世界の哄笑。
世界は爆ぜた少女の腹に顔を突っ込ませ内容物をずるずると啜る。
スパイスにガラムマサラをふりかけるとほどよい辛味と香りが口に広がっていった。
いままで食べたどんなものよりもおいしい料理。
歓喜と興奮と快楽が鉄と脂肪と蛆と溶け合い口の中を至福に満たす。
―――世界は少女を壊す。
―――世界は少女を汚す。
―――世界は少女を犯す。
―――世界は古河渚を喰らう。
◆ ◆ ◆
「やはり内臓は新鮮な物に限るわね……」
食餌を終えた世界はゆらりと立ち上がる。
足元には古河渚の亡骸だったモノが散乱していた。
齧りかけの手足と頬骨が露出した頭部が転がっている。
肉は硬くてあまりおいしくなかった。だから世界は柔らかい内臓を優先して食べた。
獣は狩った得物の内臓から食べるというが自らそれを実践した世界。
内臓と言っても味は様々、一番好みだったのは肝臓だった。
しかし、死んでから数時間が経過してしまい鮮度が落ちてしまっているのが残念だった。
「レバ刺しは鮮度が良いうちに……っと」
腸は牛のそれと似たような味だった。
噛んだ感触こそ柔らかいがなかなか噛み切れない。脂肪分多め。
胃はあまり味がしない、硬くてガムを噛んでいるみたい。
心臓は肉と内臓を足して二で割ったような食感と香り。
子宮は出産に耐えられる様にできているためか、分厚い筋繊維がとても硬く顎が疲れた。
脳は頭蓋骨を割る道具が見つからなかったため食べなかった。
男の死体には一切手を付けていない。
もうお腹が一杯でこれ以上は食べきれない。
それに、男の死体を綺麗なまま残すことで喰らった少女に対して意趣返しをしたような気分だったからだ。
――――この人はこんなキレイなまま死んでいるのにあなたは何て汚らしいの?
――――ぐちゃぐちゃなその姿を彼が見たらどんな顔をするのかな、あははっ。
「あれ? あれれ……?」
ふと、世界は右手に違和感があることに気がついた。
食餌の最中には全く気がつかなかったのだが、人差し指の感覚がいつの間にか戻っていた。
失ったはずの指が再び生えたことに喜びを露ににする。
世界はその指をしげしげと見つめる。だがその指を良く見てみると―――
無数の蛆の群体が一つの場所に集まり指を形作っていた。
うねうねと動く小さな蛆がお互い絡まりあって―――
「あはは、凄いよ私! 指が生えた!」
世界はその辺に落ちた木の枝を拾って折り、尖った部分をおもむろに腕に突き刺した。
本来なら飛び上がるほどの痛みはほとんど無く、鈍い痛みがじんわりと広がるだけ。
世界は枝を更に突き入れて捻る。
ぐりぐり、ぐりぐりと。
抜いた枝にこびり付く赤い血と白い蛆。
傷口の中では蛆が蠢きその傷を塞ぎつつあった。
「えへへ……凄いよ傷が治っていくよ、これなら柚原さんなんか怖くない!」
世界は哂う、血と蛆にまみれた祝福を受け。ただひたすらに哂う。
我が子を想う果てに人を喰らう鬼と化した少女は森を彷徨う。
胎児よ 胎児よ なぜ踊る 母親の心がわかって恐ろしいのか
【C-3北部/森/1日目/昼】
【西園寺世界@School Days】
【装備】:89式小銃(11/30)
【所持品】:支給品一式*2、時限信管@現実×3、BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C4(残り約0.75kg)@現実、交換マガジン(30x2)、妖蛆の秘密、贄の血入りの小瓶×1
【状態】:妊娠中(流産の可能性アリ)、精神錯乱、思考回路破綻(自分は正常だと思い込んでいます)、悪鬼侵食率40%
【思考・行動】
基本:桂言葉から赤ちゃんを取り戻す。元の場所に帰還して子供を産む。島にいる全員を自分と同じ目に遭わせる。
1:柚原このみを殺すために北へ向かう。
2:言葉が追ってくるなら『桂言葉の中を確かめる』、そして『桂言葉の中身を取り戻す』。
3:新鮮な内臓が食べたい。
【備考】
※参戦時期は『二人の恋人』ED直後です。従って、桂言葉への感情や関係は良好です。
※下着や靴の中などにC4を仕込んでいます。デイパック内部にC4は存在しません。
※時限信管はポケットに入っています。デイパック内部に時限信管は存在しません。
※衛宮士郎、リトルバスターズ!勢の身体的特徴や性格を把握しました。
※このみから、このみの知り合い(雄二、ドライ)とファルについて聞きました。
※第一回放送内容については、死者の名前くらいしか覚えていません。
※妖蛆の秘密と悪鬼の影響により治癒能力が活性化されています。
※欠損した右手人差し指を蛆の群れで再構成しています
※悪鬼に侵食されつつあります。侵食されればされるほど、身体能力と五感が高くなっていきます。
※悪鬼の侵食率が高ければ高いほど贄の血の効果が高まります。
※言葉の気配らしきものを感じ取っています。
※C-3に古河秋生の遺体と食い散らかされた古河渚の遺体が散乱しています。
代理投下終了しました。
投下and代理投下お疲れ様です
こえー、何だこのクリーチャーw
世界らしさを保ちつつも、見事な怪物化……上手いなあ
おおなんというクリ―チャ―w
ティトゥスが抜けた事によってできた穴を、
はたして世界は埋めることができるか?
この悪鬼と化したクリ―チャ―と言葉様の
二大怪獣決戦の時が待ち遠しくて仕方ありません。
投下乙です。
一体どこまで人間やめたら気が済むんだこの人?はw
この怪物にもう目がはなせそうにないです
何だか凄いグロなロワだな。
世界もう元ネタの原型止めてないんじゃね。
言葉は世界とであっても下手すると本人とわからねーぞ
760 :
名無しくん、、、好きです。。。:2008/05/10(土) 09:24:15 ID:xNhYgbHn
渚は死んでもカワイソスなのか・・
投下乙。
あわわわ、どうするんだこのクリーチャーwwwww
真面目に中ボスっぽい雰囲気が漂うっていうか、これは怖すぎるww
そして渚……世界め、死体に鞭打つようなことするなんて。
それでも安らかそうに死んでいたことが分かっただけ、良しとするべきかなぁ……
直枝理樹の話を聞けて元気になっていた高槻やよいだったが、身体の疲労は完全に抜け切れていなかった。
元気が売りのアイドルではあるものの、それだけではどうにもならない事もある。
単純に島を横断するというのも、徒歩ではなかなかに厳しいものがあるだろう。
一緒にお喋りの相手をしていた右手のプッチャンが、わざとらしく欠伸をして葛木宗一郎に手を伸ばす。
「相棒〜。俺ぁちょいと歩き疲れちまったぜぇ」
「ふぇ!? プっチャンさんお疲れなんですか?」
「おう。この速さで歩くと、ちぃ〜とばかし呼吸が荒っぽくなるのさ」
「大変ですね。じゃ、じゃあお休みしないと!」
「そうしてくれるとありがたいぜ……と言う訳で、どっかで休んでいこうぜ相棒」
「……」
宗一郎は、真正面からプっチャンとやよいを見据えた。
確かに道は長い。ここで無理して大切な糸が切れたら、修復しようがない。
それは自身の身体にも言える事だ。鍛えているとはいえ、休息が得られるうちは足を休めるべきだ。
「いいだろう」
てっきり断られると思っていたが、宗一郎としてもそれは問題ないらしい。
三人は街に入ると、本道から少し外れた一軒家に靴を脱いで入り込む。
なお、見つけた一軒家が『居住者募集中』と張り紙が張られていたのも幸いした。
「よっしゃ、少し遅くなっちまったが朝食だ! いくぞやよい!」
「は、はい!」
「目指すはあの放送野郎に負けない朝食だぁ〜!」
「うっうー! 私、頑張りますね!」
どたばたと台所に走っていくやよいとプッチャン。
座布団に座りながら、宗一郎はそんな二人の姿をただ無言で見送った。
【A-3 病院近くの空き家 /1日目 昼】
『先生と生徒とマスコット』
方針:教会に向かう。
【葛木宗一郎@Fate/stay night[Realta Nua]】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 、ルールブレイカー@Fate/stay night[Realta Nua]、弾丸全種セット(100発入り)、木彫りのヒトデ8/64
【状態】:疲労(小)。右肩に切り傷
【思考・行動】
基本:帰る
0:休息中
1:教会に向かう。
2:直枝理樹の作戦に乗る。
3:高槻やよいを守る?
4:蘭堂りのと如月千早と菊地真を探す?
5:衛宮士郎に関しては保留。可能なら保護
【備考】
※自身の体が思うように動かない事には気付きました。
※博物館に展示されていた情報を記憶しました。
※直枝理樹の知り合いについて情報を得ました。
※黒須太一、ティトゥス(外見的特徴のみ)を危険視。
※黒須太一、藤乃静留が直枝理樹を女と勘違いしている、という情報を得ました。
【高槻やよい@THE IDOLM@STER】
【装備】:プッチャン(右手)
【所持品】:木彫りのヒトデ2/64
【状態】:肉体疲労(中)、精神疲労(小)
【思考・行動】
0:ご飯に納豆〜お味噌汁、のり、玉子〜♪
1:葛木先生と一緒に行動。
2:うっう〜。千早さんと真さんに会いたいです。
【備考】
※博物館に展示されていた情報をうろ覚えながら覚えています。
※直枝理樹の知り合いについて情報を得ました。
投下終了。ありがとうございました。
誤字脱字がありましたら、ご連絡下さい。
では、失礼致します。
>>762 投下乙です
ロワ中にきちんと休憩を取るキャラって意外と少ないから、見てて新鮮な気分でした
クライマックスなキャラが多い中、宗一郎達の休憩がどんな差となって現れるのか、楽しみかも
投下乙!
最近はクライマックスが多かったから、こういうのを見るとホッとしますw
このチームって初期からまだそのままの数少ないチームなんですよねw
ていうかマーボーは目指さなくていいと思うw
投下乙です!
>UcWYhusQhw氏
破滅的思考を持ち始めた静留と、脱却を果たそうとする中で揺れ動く烏月。
照らし合わせてみたらなんともおもしろい二人の邂逅、GJです。
しかしウエスト……気絶状態で寝言が言えるとはなんと器用なw
>DiyZPZG5M6氏
あわわ……なんですかこのクリーチャー、世界氏ねとかそういうレベルを超越しちゃったよw
粗蟲とかストレートすぎる描写がとってもステキ。狂人っぽさが出てました。
「新鮮な内臓が食べたい」って、もうどこまでいくんだろうねこの娘w
>eQMGd/VdJY氏
ホッ……としたー! なんだかすっごいホッ……としたー!
短いながらにも、それぞれのキャラの行動心理が的確且つ無駄なく描写できてる。
「ふぇ!? プっチャンさんお疲れなんですか?」←このセリフに素晴らしいくらいのやよいらしさを感じたのも私だ。
こういうのを待っていたんです! こういうのが欲しかったんです! 乙!
「私は何をしているのだろうな……」
ガタンゴトンと電車が走る音が響く。
私から見える風景は瞬時に移り変わっていって。
私の呟きは誰にも聞こえる事もなく。
その問いに答えるものなんて居なく。
ただ虚空に消えた。
私はもう一度溜め息をつき寄りかかっている扉から外を見る。
憎たらしいほどの青い空。
太陽の光に照らせられる深緑の木々。
どれも殺し合いの場から剥離したような美しい風景。
なのに。
私は今殺し合いの場にいる。
嘘だといいたい。
でも現実。
死体をこの目で見て。
人が目の前で殺されて。
そして。
私が殺した。
……伊達、若杉。
……何をやってるんだろうな。
……私は。
スバルと出会って、若杉とも合流しボートに乗り込んだ。
あの時は確かに楽しかった。
……でもそれはとても儚くて。
伊達の暴走。
若杉も死に伊達もこの手で殺した。
……呪いの様な言葉を受けて。
……私は迷って。
そして流されて女の死体を見つけ小動物を保護した。
その後は……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ここが……劇場か」
私は小動物みたいなのを保護した後MTBにまたがり周辺を見てまわることにした。
小動物は肩に乗って大人しくしている。
見つけたのは地図に載ってある劇場。
こじんまりとした少し洒落た感じだった。
私は少し警戒したまま中に入る。
「誰も……いないか」
そこにはやはり誰も居なかった。
ロビーが広がっているのだががらんとしてある。
本来ならば開演前で客が集まってたり開演中だと演劇の声が漏れたりしてるのだろう。
しかし今はそんなものはなくただアイドルらしい少女のポスターがあるだけ。
ただ無機質な笑顔が存在するだけだった。
私はそれを一瞥しただけでオフィスと書かれた部屋に入る。
そこにはいくつかの机と一台のパソコン。
壁には沢山のポスターが。
わたしはそのままパソコンのスイッチを入れてみる。
何か情報があるかもしれない。
そう思って付けてみたのだが……
「ん?……なんだ?……IDとパスワード? 知らんぞ、そんなの」
残念だがそんなもの知るわけがなかった。
私は溜め息を付いた。
だけどこれはきっと何か隠されてるかもしれない。
そう思い私は一旦パソコンを落とし劇場から離れることにした。
「とりあえず駅に行こう。ここら辺はあまりいたくない」
そうなんか嫌なのだ。
……伊達達とまだ歩いてた頃の記憶を思い出しそうで。
それが何処か悲しくて。
「……感傷だな」
私はそれ振り切るかのようにMTBに跨り出発することにした。
胸に残るざわつきを残しながら。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして電車に乗り北を目指すことにしたのだが……
「……どうなるかなんて分からないのに脱出できるかもしれない手がかりに喜ぶとは私も……」
何をしてるんだろうな。
結局何がしたい?
私は。
約半日ものの間動きまわって。
その結果こうも揺れている。
弱い
弱いな……。
『もし……なっちゃんに帰って会いたい人がいたのならそのままでいられるのねぇ?』
唐突に伊達の言葉が蘇る。
私は……。
静留……
もし……
そうなったら。
私は狂うのだろうか?
伊達みたいに。
私は……
私は……
ドゴッ!!!!!
「違うっ! 私は私だっ!!」
扉に拳を打ち付ける。
違うと。
私は私だと。
何も変わらない普通の私だと。
……でも。
……普通って何だ?
誰かの為に人を殺すのも私じゃないのか?
ちがっ……
わからない。
何が普通なのか。
でも。
でも。
でも私は。
普通でいたい。
私は代わらないまま私でいたい。
それは願望だった。
不変なんてないのに。
それでも願う。
私が私でいられるために。
私は私だと。
ただ願いたい。
「私は……私だ……」
力なく呟く。
そんな私を乗せて電車は走る。
私は。
私は。
「私でいさせてくれ……お願いだ」
その願いに応える物はもういなく。
私は海の孤島で独り。
空にはイラつく位の太陽の輝き。
すんだ蒼。
森は静かで。
深い緑。
そしてその青と似た緑に囲まれて。
私はそこにいた。
ただ願い続けたまま。
【G-6電車内/1日目 昼(放送直前)】
【玖我なつき@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:ELER(二丁拳銃)、尾花@アカイイト
【所持品】:支給品一式×2、765プロ所属アイドル候補生用・ステージ衣装セット@THE IDOLM@STER、
『全参加者情報』とかかれたディスク、カードキー(【H-6】クルーザー起動用)
ベレッタM92(9ミリパラベラム弾 15/15+1)、ベレッタM92の予備マガジン(9ミリパラベラム弾 15発入り)×3
七香のMTB@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜、不明支給品(0〜1)、
クルーザーにあった食料、双眼鏡、首輪(サクヤ)
【状態】:健康、迷い
【思考・行動】
基本:静留と合流する
0:私は私だ……
1:羽藤桂、フカヒレを探す?
2:ゲームに乗るかどうかは未定だが……
【備考】
※装備品のELERは支給品ではなくなつきのエレメントです。
※チャイルドが呼び出せないことにおそらく気づいています。
※人探しと平行して、ゲームの盲点を探し本当のゲームの参加者になる。
※盗聴の可能性に気付きました。
※『本当の参加者』、もしくは『主催が探す特定の誰か』が存在すると考えています。
※佐倉霧の言いふらす情報に疑問視。
※権利は元の世界に返すや死者蘇生と考えてます
※劇場にてパソコンを発見しました。何か情報が隠されているようです。見るにはIDとパスワードが必要です。
※電車で移動中。B−7の駅かF−7駅で降りるかは後継の書き手次第です。
【尾花@アカイイト】
【状態:刀によるかすり傷、右後ろ脚骨折(共に応急処置済み)】
【思考】
基本方針:桂を救う。葛を探す
投下終了しました。
誤字脱字矛盾ありましたらお願いします。
タイトルは
「I am me 」です。
投下乙です
なつきが悩んでいる様子がらしかった
揺れている感じがGoodJobでした
さてさてどうなるやらw
投下乙。
なつきも揺れてるなぁ、もしも静留が先に倒れた場合、どうなるかが楽しみだ。
そしてやっぱり尾花は話題にもならずwwww
しかしまぁ、放送直前のキャラがこうしてぽつぽつと出始めたかぁ……凄まじいペースだなw
情報とは武器である。
事前情報も知らないまま行動することと、最初に情報を仕入れて行動することの違いは大きいのだ。
例えば暗闇の洞窟に落とし穴がある、と知っているかいないか。
前者はまず間違いなく穴の中へと飲み込まれるが、落とし穴を知っている後者なら警戒心があるので回避できる。
まあ、要するに。
力のない人間は情報を利用しましょう、ということで。
源千華留、蘭堂りの、ユメイ。三人の少女はこうして一堂に会すことになったのだ。
「まずは自己紹介から始めましょうか。私は源千華留、この子は蘭堂りのちゃん」
「よろしくお願いします!」
「えっと……はい、よろしくお願いします。ユメイと申します」
揺れる電車の中で三人は自己紹介。
かなり強引に乗せられたユメイには分けも分からず、といったところなのだが、どうやら害意はない様子。
安心した、というのが正直なユメイの感想ではあった。
それと同時に、自分はこんなところで何をやっているのだろう、という自己嫌悪にも近い何かが彼女の心を締め付ける。
恐ろしいのは何だろう?
人を傷つけることか、人に傷つけられることか?
人を殺すことか、人に殺されることか?
それとも、自分の命よりも大切な存在に死なれてしまうことなのだろうか?
「あの……サクヤさんのお知り合い、と言ってましたね」
「ええ。この島で出逢ったわ。あの人は仲間を集めながら、羽藤桂という子を捜しているらしいの」
「ユメイさんのことも、サクヤさんから聞いたんですよー。信頼できる人だって」
「……そう」
信頼できる、と言えるだろうか。
桂のために、という免罪符を手に入れて誰かを傷つけようとして。
その結果、彼らに誤解させられるようなことをして……しかも、自分自身は何をするのにも恐怖している。
いっそ、どちらかの方向に吹っ切れてしまえば楽なのかもしれない。
だけど、それはどの方向へ?
サクヤのように桂を捜しながら仲間を集うか。
さっきまでのユメイのように人を殺してまで桂の生を肯定してみせるか。
(サクヤさんはこうして、私のフォローをしてくれるまで頑張っているのに……私は何をしているのかしらね)
恐らく、今のユメイにはできないのだろう。
生来の彼女は慈愛に満ちた優しい性格なのだから。自己犠牲の強い少女だったのだから。
確かに桂のためになら、鬼にでも悪魔にでもなろう。
だけど、それが結果として桂を悲しませてしまうことになると知っているからこそ、ユメイは修羅になることができない。
「ねえ、ユメイさん……電車の中、待っているのもなんだから、情報交換でもしない?」
「あ、私も知りたいです、ユメイさんのこれまでのこと!」
「……え、えっと……そうですね。あまり、聞かせられるようなものでもないんですけど……」
今までの自分の行動を思い返してみた。
遊園地、そこがスタート地点。
桂を捜すために夜の歓楽街を歩いていた。暗闇が不安を助長させていくのを感じていた。
そうだ、あの時から予兆はあったのだ、と今更ながらにユメイは思う。
キーワードは『変質者』
その他は『仮面』『諸行無常』『うぅまうぅー』『逞しいナニカ』と続いていく。
ユメイの瞳に何かが映った。
白いスーツに刳り貫かれた跡、筆で呪いのように刻まれた諸行無常の文字にビクリと震えてしまう。
あのシーツの中から、仮面に髭のあの男がにょろり、と出てきそうな気がしてきた。
「……………………」
「あ、ああっ、千華留さん! ユメイさんが生まれたての子羊のように震えています!」
「あらあら。よほど怖い目にあったかしらね……」
臆病者と笑うなかれ。
誰だって殺し合いに放り込まれ、夜の歓楽街で背後から巨漢の男に立たれては気絶もするだろう。
しかもその上、ターミネーターの如く追い掛け回され、死んだと思った人から『出たぞーーーっ』などと言われればトドメなのだ。
そもそも、出逢う人出逢う人が仮面の男に全裸の男と色物パーティーを繰り広げている。
「……で、どんな人と逢ったのですか?」
「み、未開地民族の仮面を被った二mぐらいの巨漢の大男と、は、裸のまま気絶していた男の人と……」
「…………それは、トラウマにもなるでしょうね」
変質者は全世界の女の敵である。
女には負けると分かっていても、相手の急所を蹴り上げねばならないときがあるのである、まる。
◇ ◇ ◇ ◇
電車は進む、がたんごとん。
ユメイのこれまでの行動と、千華留とりののこれまでの行動を内容をまとめて語っていく。
内容は共通の知り合いである浅間サクヤの話題から、棗恭介、トルティニタ・フィーネ、そして全裸の男の件にも移っていく。
「その、裸の男の人、には心当たりがあるわね……」
「大十字九郎さん、ですよね……あれ? あれれ? あのあの、ユメイさん、ちょっとお聞きしたいのですけど」
「……? はい、なんでしょう?」
「神宮寺奏……奏会長は、その人の傍にはいませんでしたか?」
サクヤの情報によれば、りのの捜し人である神宮寺奏は大十字九郎と一緒にいるらしい。
それなら、彼と出逢ったはずのユメイも、奏のことは目撃しているはずだ。
なのに、ユメイが出逢ったというのは二人の男性のみ。一人は話を聞く限り、殺し合いに乗っている可能性が高い。
ならば、奏は何処に消えてしまったのか。
「……ごめんなさい。私が見たのは、その二人だけなんです」
「っ……そ、そんな……」
「落ち着いて、りのちゃん。まだ何が決まったわけでもないわ。とりあえず、情報を整理してみましょう」
千華留は電車に備え付けられたシートに優雅に腰掛ける。
考えなければならないのは、今まで手に入れた情報を総合的に纏めることだ。
それが誰からの情報かどうかにも着目しながら、一人一人を考えなければならない。
「じゃあ、集めた情報から、参加者たちについて考えてみましょうか」
まずは神宮寺奏。
蘭堂りのと親しい間柄にある少女。千華留自身にも共感を覚えている。
殺し合い否定者。情報はりの自身による太鼓判と、実際に見たサクヤの情報から限りなく白と思われる。
無事の確認はできていないが、途中で別れたと考えるのが一番妥当だろう。
続いて大十字九郎。
神宮寺奏と行動を共にしていたはずの男性。特徴は全裸以外にないのはご愛嬌か。
殺し合い否定者。情報はこれまたサクヤと、更には目の前のユメイから。
ユメイが出逢った時点では仮面の男と共に気絶していた。奏の姿を見ていない以上、それよりも前に奏とは別れている。
仮面の男に襲われたまま、電車から飛び出したようだが……大怪我を負っていなければいい、と切に思う。
次は仮面の男。
ユメイに不気味な笑みを向けたり、奇声をあげて九郎に襲い掛かったり、と衝撃的な人物だ。
殺し合い肯定者の可能性が高い。気絶したユメイを攫うだけで殺さないのには、何か分けがあるのかも知れないが。
単純に殺し合いを肯定しているわけではない、と考えるのは甘いかも知れない。
とりあえずは要警戒対象ということで、限りなく黒に近いグレーに判断しておくことにした。
「あの仮面の人は、黒じゃない、と……?」
「判断しづらいわね。もしも彼が殺し合いに単純に乗っているのなら、今頃あなたは放送で名前を呼ばれているわ」
「あっ、あの……奏会長については……」
「落ち着いて、りのちゃん。サクヤさんからの情報を考えれば、第二回放送に合流することになってるのだから」
「あ、はい……」
続けよう、次は浅間サクヤ。
彼女のプロポーションは実に悔しいと言わざるを得ない……こほん、それは置いておいて。
彼女は積極的に仲間を集うと同時に、一人の少女を捜しているらしい。
羽藤桂、とても優しい少女らしい。ユメイの捜し人も彼女であることを踏まえれば、積極的に合流したい人物だろう。
彼女は当然、白。殺し合い否定者だ。
羽藤桂。
ユメイとサクヤの話を総合するに、何の変哲もない女の子らしい。
ただひとつ、贄の血と呼ばれる特異体質であることを除いて。
人外の者全ての力を増幅させる、ドーピングのような効力を発揮するらしい。もちろん、千華留たち人間には効力はないが。
これもまた、二人の話によれば白。人を殺すぐらいなら、自分の命を絶ってしまうほど優しい子らしい。
ふと、ここまで考えて。
聞き覚えのあるキーワードを聞きつけ、千華留が疑問の声を上げた。
「……贄の血? それじゃ、あの子が羽藤桂ちゃんなのかしら?」
「あれ、千華留さん、憶えがあるんですか?」
「ど、何処にいるんですか、桂ちゃんはっ!?」
「お、落ち着いて聞いて。私が逢ったのは会場なの……まだこの島に訪れる前のことよ、覚えてる?」
ノゾミとミカゲ、双子の鬼が主催者へと挑み……そして、アッサリと敗れた。
受肉、と彼らは言っていたが、それは置いておく。
とにかく、その彼女たちはツインテールの少女に向かって、確かに『贄の血』という固有名称を使っていたのだ。
彼女たちも人外、そして自分たちは人間。
生き延びる可能性は低い、と主催者に告げたが……改めてその通りだろう、と思ってしまう。
「そこでね、確かに可愛い子がいたの。多分あの子ね、姿を見れば分かるわ」
「……桂ちゃん、何処にいるのかしら……」
「ううーっ、奏会長も心配です……」
「焦らなくてもいいわ。大丈夫、きっと逢わせて見せるから……ね?」
それが、渚砂を助けられなかった自分の責務だと思うから。
彼女たちには、あんな苦しい思いをして欲しくない。
胸の奥がジクリと痛むほどの思いを……殴られる痛みなど、比べ物にもならないほどの悲しみを。
これが失う痛みだと知って……もう、誰にもそんな思いをしてほしくないと思った。
そのために必要なのは情報だ。
自分の身の安全を守るための情報と、捜し人をスムーズに捜しだすための情報。
このふたつが両立しなければ、きっと再会は有り得ないのだろう。
「さあ、後は恭介さんたちのことね」
「恭介さんとトルタさん……大丈夫でしょうか」
「…………大丈夫よ、きっと」
最後に、棗恭介とトルティニタ・フィーネ。
彼らを白とするか黒とするか、未だに千華留自身も判断がつかない。よってグレーとしておくが。
最後に彼らと別れてから、少し時間が経ってしまった。
一発の弾丸がどれほどの意味を持つのか、千華留でさえ見てないのだから分からない。
恐らく二人で組んでいることと、千華留たちと接触の際に襲い掛かってこなかったことを考えれば白に近いとは思う。
逆に『自分たちが生き延びるためなら誰でも切り捨てる』という方針のほうが納得がいく。
あれから民家に襲撃がなかったことを考えれば、そこまで深刻的なものではないかも知れない。
恭介たちの方がどうであれ、結果として千華留たちは危険人物に遭うことなく、こうしてユメイと合流できたのだから。
「……その、棗恭介さんとトルティニタ・フィーネさんは、危険なのですか?」
「少なくとも、直接的な害意はないはずよ。私もりのちゃんも、一緒にご飯を美味しくいただいて、この通りだもの」
「結局、恭介さんとトルタさんの不自然な行動、については?」
「うーん……特筆するべきは、短時間でのカップル成立は無理やり感があるかな、くらいで……っと」
がたんごとん、と進んでいた電車が停車する。
終点、F-2の駅へと到着の様子。
粗野な男のアナウンスが数分の停止後、改めて駅を出発することを告げた。
◇ ◇ ◇ ◇
「どうしますか、千華留さん?」
「一度降りましょう。……あ、ユメイさん。とりあえず落ちているものは回収しましょうね」
「……ええ、そうですね。中には危険なものもありますから、気をつけてください」
まずは一つ目、地方妖怪マグロのシーツ。
これは元々ユメイが所持していたのだが、りのが欲しがったために譲渡することにした。
「出ーたーぞー!」
「あらあら、りのちゃん、可愛いわ」
「……………………」
「ああっ、ユメイさんが猫を前にしたハムスターのように震えてますっ!?」
「……よっぽどのことがあったのね。トラウマになっちゃってる」
続いて電車に落ちているものを回収していく。
物干し竿と呼ばれる、異様に刀身の長い刀。先端には若干の血が……九郎の血が付着している。
自分がやったことを思い出してしまい、ユメイは俯きながらこの刀を千華留に渡した。
千華留自身、撃つつもりはないが銃がある。
よって、この刀は使える人が現れるまでデイパックの中へ入れておくことにする。
「次は、次は……あわわ、大砲ですよ大砲!?」
「バズーカ、かしら……しかも二挺も。危険といえば危険ね……ひとつはユメイさんに持ってて貰おうかしら?」
「なら、こっちのほうを。……こちらのランチャーは使える人と使えない人に分かれているそうです」
メガバズーカランチャーはユメイが預かることにする。
NYPに覚醒しているのがユメイだけだとは限らない。もしかしたら、千華留やりのも使用できる可能性はある。
ただ、ここで試し撃ちをするようなことは(りのはやりたかったらしいが)馬鹿げてるので却下。
轟音で人が寄ってくる可能性があるからだ。
自分たちはあくまで戦闘などは不得手な少女三人。銃を持った殺し合い肯定者が現れれば、どうなるかなど分からない。
もうひとつの取り扱い危険物、RPG-7は大事に千華留が封印することにした。
バランス的にりのにも、何か護身用を渡してやりたいのだが、生憎と長刀にバズーカなど自分たちでも扱えるかどうか。
少なくとも小柄な彼女では使いこなせないと判断し、自分たちで分担することにする。
「うう、ドッちゃん……なんだか私、蚊帳の外だよ……」
「ドッちゃん……?」
「あのドリルの名前よ、ユメイさん。……と、ごめんね、りのちゃん。後でたっぷりお相手してあげるから……」
その他、九郎のデイパックから零れたドッチボールの処遇を巡っての会議。
正直、どうでもいい気が心の底からするので、これをりのに渡すべきか、などと考えてみたりする。
もちろん、りのがどうでもいいのではなく、出来ればスタンガンなど女性でも扱える武器があれば、りのに所持してもらいたい。
「ひ、暇ですー。そうだ、ユメイさん! 九郎さんってどんな人だったんですか? もちろん裸以外で!」
「は、裸以外で……?」
裸以外の彼の印象を、ユメイは必死に手繰り寄せようとする。
りのは、彼女は何処か羽藤桂に雰囲気が似ていて、ユメイ自身も何故か拒みきれなかったのだ。
そうして、一生懸命に彼女の期待に答えるべく、思い返してみる。
裸。
黒髪。
裸。
逞しい筋肉。
裸。
そして蹴り上げてしまった、男の人の急所。
「…………………………きゅう」
「あ、あああっ!? ユメイさんが茹で上げられたタコさんのように真っ赤に!」
「りのちゃん、話が進まないからもう勘弁してあげなさいね」
くすくす、と微笑みなが千華留の興味は次に移る。
続いては壊れているデイパックとその中身についてだ。一体何があったのかは知らないが、中身が零れている。
とりあえずデイパックそのものは破棄せざるを得ないだろう、と考えてまずひとつ。
「…………手綱?」
「……手綱ですね……」
「…………光る手綱、なんてあるんですねぇ」
神秘的な何かが放置されていた。
説明書と共に壊れたデイパックから出てきたそれは、馬などを操るために使う手綱だ。
魔術に詳しい者ならば、そこから溢れ出す魔力と秘められた力に嫌な予感すら憶えるだろう。
一般人の千華留には分からなかったが、霊力を持つユメイや神宮寺の力を持つりのには、何となく理解した。
「……これは、バズーカやランチャーよりも危険かも知れません」
「あの、私も……なんだろう。凄く危ない気がします」
「……そうなのかしら?」
説明書を拾い上げる。
『騎英の手綱(ベルレフォーン)』という名を付けられた手綱は一種の魔術武装だというらしい。
効果は魔獣、神獣を強化させ、操るというものらしい。
ユメイは首をかしげた。ここに集められたのは人間と人外、あわせて63名だ。その中に獣がいるとは思えない。
なら、これは主催者側の嫌がらせか何かだろうか。
あの地方妖怪マグロのシーツだって、殺し合いには何の役にも立たない代物。なら、これもそのひとつなのだろうか。
それとも、何か抜け道があると考えるべきなのかも知れない。
例えば参加者以外に自立的に行動するような存在。
それは馬であったり……もしくは猫や猪、果てはスライムまで『獣』と評されるものなら一時的な強化が見込めるのでは。
それがどの程度のものかは分からない以上、あくまで仮説程度に留めておくべきだろうが。
「千華留さーん、人外って言うのはあの双子の鬼さんも入るんですよね?」
「? ええ、恐らく。サクヤさんとユメイさんの情報から考えても、私たち以外に人を超えた存在がいることは間違いないわ」
「じゃあ、じゃあ、その人たちにこの手綱をビシッ! ってやったら、どうなるんでしょうか!」
「…………つまり、人以外の存在に対する可能性、ってことでしょうか?」
超人たる存在を操る武装……有り得る、のだろうか?
確かにそれができるのなら、一般人の自分たちにとっては大きなアドバンテージになるかも知れない。
だが、その超人とは『魔獣』や『神獣』にあたるか否か、ここは大きな焦点となってくると考える。
この手綱は、獣の因子を持つ存在を操り、そして強化させる武装と書いてある。よって、その超人に『獣』の要素がなければならない。
もちろん、全てが仮説の粋を出ない。
実際に使ってみなければ効果は期待できないし、もしかしたら全ての仮説が間違いである可能性もあるのだ。
「……とにかく、保留ね。これはりのちゃんに預けておくわ」
「わ、私ですか!? はわわわ、大切なものだからしっかりお預かりしておきますね!」
「…………っ、千華留さん。そろそろ電車が出てしまうようです」
「あら、本当ね。とりあえず最後の支給品を確認しながら、降りるとしましょうか」
最後はユメイのもうひとつの支給品だったので、電車から回収するまでもなく降りながらのお披露目だ。
ランチャーやら物騒なものを仕舞い込んでいるため、少し取り出すのに苦労しているらしい。
ユメイが悪戦苦闘している間に、千華留とりので今後のことを相談する。
「千華留さん。これから、どうするんですか?」
「そうね……もうすぐ第二回放送が始まる時間よ。サクヤさんとの約束、憶えてる?」
「えっと、それぐらいの時にF-7の駅でおちあう、です!」
「ええ、そうよ。そこにはサクヤさんが召集をかけた人たちが集まってくるわ。もちろん九郎さんや奏さんも」
生きていれば、などという無粋な言葉は飲み込んだ。
サクヤとも約束したのだ。『死なないで』と約束したのだから、自分たちも生きてそこに辿り着かないといけない。
とりあえず電車は行ってしまったのだから、次の電車を持ってから駅へと行くべきだろう。
今後の方針は決まった。
自分たちはこのゲームに向かって反逆しよう。数多くの同士を連れて、必ず後悔させてやろう。
蒼井渚砂を奪ったこの島で、私たちは結束する、と。
「……ユメイさん? 最後の支給品って何だったのですか?」
「ええと、制服です。光坂高校という高校の制服らしいのですが……やはり、あまり意味のないもので」
「…………ねえ、ユメイさん? 和服もいいのだけど、他の服にも興味はないかしら?」
「えっ……と?」
ずささ、っとユメイが本能的な危機を察知して退却。
それを前進することで距離をつめ、口元を優雅に歪ませながら千華留は笑う。
りのが妙なデジャヴを憶えながら、自分が着ているメイド服へと視線を向けるのだった。
「け、結構です……遠慮しておくます……!」
「大丈夫、痛くはしないから一瞬よ? さあ、その制服を渡して、そして私に委ねてしまいなさい……」
「せ、性格が妙にさっきと違うのは気のせいでしょうか……!」
どたんばたん、と駅の中で少女たちは騒ぐ。
こんなことわざがあるのであげておこう。女は三人寄れば姦しいものである、まる。
【F-2/駅/1日目/昼】
【源千華留@Strawberry Panic!】
【装備】:能美クドリャフカの帽子とマント@リトルバスターズ!、スプリングフィールドXD(9mm×19-残弾16/16)
【所持品】:支給品一式、エクスカリバーの鞘@Fate/stay night[Realta Nua]、怪盗のアイマスク@THE IDOLM@STER、
物干し竿@Fate/stay night[Realta Nua]、RPG-7V1(1/1)@現実、OG-7V-対歩兵用弾頭x5
【状態】:健康、強い決意
【思考・行動】
基本:殺し合いはしない。りのちゃんを守る。殺し合いからの生還。具体的な行動方針を模索する。
0:さあ、大人しく着替えさせられなさい!
1:りのちゃんと一緒に行動。何としてでも守る。
2:奏会長、プッチャン、桂ちゃん、クリス、リトルバスターズメンバーを探す。
3:恭介とトルタに若干の違和感。
4:神宮司奏に妙な共感。
5:とりあえず次の電車を待って、【F-7】の駅へ向かう。
【備考】
※浅間サクヤと情報を交換しました。
※恭介からの誤情報で、千羽烏月を信用に足る人物だと誤解しています。
※G-4の民家に千華留とりのがF-2の駅に向かう、というメモが残されています。
【蘭堂りの@極上生徒会】
【装備】:メルヘンメイド(やよいカラー)@THE IDOLM@STER、ドリルアーム@THE IDOLM@STER
【所持品】:支給品一式、ギルガメッシュ叙事詩、地方妖怪マグロのシーツ@つよきす -Mighty Heart-
騎英の手綱@Fate/stay night[Realta Nua]、ドッジボール@つよきす -Mighty Heart-
【状態】:健康
【思考・行動】
基本:殺し合いはしない。ダメ、絶対。
1:千華留さん、ユメイさんと一緒に行動。
2:奏会長、プッチャン、桂ちゃん、クリス、リトルバスターズメンバーを探す。
3:とりあえず次の電車を待って、【F-7】の駅へ向かう。
【備考】
※浅間サクヤと情報を交換しました。
※恭介からの誤情報で、千羽烏月を信用に足る人物だと誤解しています。
※騎英の手綱の効力については、後続の書き手氏にお任せします。
【ユメイ@アカイイト】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式×3、メガバズーカランチャー@リトルバスターズ!、光坂学園の制服@CLANNAD
【状態】:健康
【思考・行動】
基本方針:桂を保護する
0:ち、千華留さん、ちょっと落ち着いて……!
1:桂を捜索する
2:烏月、サクヤ、葛とも合流したい
3:誰かを傷付けるのが怖い
4:とりあえず千華留たちに付いていき、桂やサクヤと合流する
【備考】
※霊体化はできません、普通の人間の体です。
※月光蝶については問題なく行使できると思っています。
※メガバズーカランチャーを行使できたことから、少なからずNYPに覚醒していると予想されます。
※仮面の男(平蔵)が殺し合いに乗っていると思っています。
【RPG-7V1@現実】
RPG-7 は、ソ連の開発した歩兵携行用対戦車擲弾(ロケット弾)発射器。
名称は、ロシア語で「対戦車擲弾発射筒」を意味する「ручной противотанковый гранатомёт(ルチノーイ・プラチヴァターンカヴィイ・グラナタミョート)」の頭文字をとった略称から作られた。
英語でRocket-Propelled Grenade(ロケット推進擲弾)と綴られ、対戦車擲弾が砲身から射出後に弾体の固体ロケットに点火し飛翔する。
投下完了です。
タイトルは『騎英の手綱』
ご指摘、ご感想をお待ちしております。
投下乙です
ユメイさん可愛すぎるよユメイさん
べルレフォーン……スターブライトォォォォ!!
投下乙です
ユメイさぁああああああん、かぁあいいよぉおお!
結局、バズーカ類は戻ってきたのか。
装備だけ見ればここは恐ろしいよな……。
べルレフォーン、アヴァロン、RPG、メガバズーカランチャー……。
投下乙です
Uc氏(静留)
二人が対照的で切なくなるな
なつき編とセットで読むとなかなか面白い
Di氏
世界がどんどん人から離れていく…
渚が更に追い討ちを掛けられるとは予想外
eQ氏
こういうショートはなんかほっとします
各キャラの個性が上手く引き立っているなあ
Uc氏(なつき)
お互いが思い人の死を強く意識している展開ってのは珍しいかも
パソコンの中は…やはりあの人の一問一答か
WA氏
ユメイさん、純情すぎますw
見事に百合百合な空間が作られてますな。なかなか的確な考察も良し
aa氏
桂ちゃんは何とか踏ん張りましたね。アルがいてくれて良かった
呪いのアイテムはなつきに移ったがどうなるか
WA氏(セカンドバトル)
ティトゥスがここで敗れるとは。まさに連携の勝利。
せっちゃん頑張った、と思った瞬間に曜子の殺される展開も強烈
Lx氏
冒頭からの注意書きから吹きましたw
いくら相手が筋肉だからって、脳内考察で済ませますかw
>>295 乙です。ここで全滅は予想外
――ちはやはあたしが自分だけで作った友達だ。あたしはせつながとても憎い、すぐに殺したい。
だけど、ちはやがいなくなる方が大もんだいだ。ちはやはどこだ。もっと遠くを探さないといけないのか。
でも、ことのはと別れるのはこわい。また、遠くからテッポウだまが飛んできて殺される。
鈴は杏の死体に駆け寄って叫んだ。
「ことのは、きょうのおはかを作ってもいいか。シーツを被せただけだと、カラスがイタズラしそうだ」
「そうですね。しっかりと埋葬しましょう。どうせ後で生き返るとは言え、誰かに誤解されたら困りますものね」
――ここの地面は岩だらけで、シャベルで穴をほるのはたいへんだ。
だから、大きいくぼみにきょうをしまって、近くの土をかぶせた。
そこに板きれをさして、おはかの完成だ。まだ、ちはやは戻ってこない。
あっちのほうにも、こっちのほうにも、ちはやはいない。
鈴は落ち着き無く動き回り、言葉に聞こえるように呟く。
「そうだ、おはかに花もかざろう。でも、この辺りには良いのがないな」
「…棗さん、本当は如月さんのことを待っているのでしょう?
あの人が自分から戻ってくれば、裏切り者として断罪されずにすむと考えませんでしたか」
鈴はその言葉を聞いて、ビクッと硬直した。
まるで子供が隠した子猫にこっそり餌をやりにいくのがばれたかのように。
「ち、ちはやはきっと長いトイレだ。アイドルだから言うのがはずかしかったんだ」
言葉は厳しい口調で更に言葉を続ける
「理由はどうであれ、如月さんは棗さんを見捨てて逃げ出しました。
彼女は私たちと共にくびきを負う資格を自ら捨ててしまったのです。
もちろん、棗さんの如月さんを想う気持ちは分かっています。ですから、私が直接、彼女に手を掛けるような事はしません。それに、彼女が死んでいたとしても生き返らせてあげます。
ただ、如月さんが私たちと同行することは許されません。足手まといを抱え込んでいたら、皆さんを生き返らせるという目的を果たせなくなるでしょう」
――こういう時のことのはは苦手だ。言ってる意味は良くわからんのに、
なにか説得力あるような気がしてくる。あたしはバカだから、きっとことのはの方が正しいんだな、うん。
そういえば、バッグの中にケータイがあったな。
あたしもリキに教えてもらってるから、ちょっとだけ使える。あたしがちはやを守れないなら、
誰かにちはやを任せよう。きょーすけたちなら、喜んで迎えてくれるはずだ。
◇ ◇ ◇ ◇
鈴がそう思考した刹那、今まで押さえ込んできた疑問が膨れ上がってしまった。
「ことのは、ひとつ聞いてもいいか…。きょうは他の世界からやって来たと言っていた。
ことのはもあたしとは違う世界から来たみたいだ。じゃあ、他のリトルバスターズの
メンバーも、違う世界から来たってことはあるのか?」
言葉は軽く目を閉じて質問に答えた。
「ええと、多元宇宙論でしたっけ。その可能性はあると思います。ここの清浦さんが間桐さんを殺したのは、私の知っている清浦さんとは別人だからかもしれませんね。
ですけど、西園寺さんはどの世界でも邪悪でしょう。ここでも嫌な臭いがします。私には全多元宇宙の秩序を保つため、あらゆる世界の西園寺さんを断罪する聖なる義務があります」
その時、鈴の持っていた疑念が強い不安へと変わる。
「…じゃあ、ここのくるがやは悪いくるがやなのか? ここにいる馬鹿兄貴やリキや筋肉馬鹿もみんな悪いやつなのか?
こわっ! くちゃくちゃこわっ!」
――どうして、くるがやは謙吾を生き返らせたくないんだ? あんなにつらそうなきょうをいじめたんだ?
あいつは前から変わっていたけど、今度はさっぱりわからん。きっと、あたしの知らないくるがやなんだ。
言葉は混乱する鈴の手をぎゅっと握り、努めて穏やかに語りかけた。
「大丈夫です。たかが、世界が変わったくらいで何だって言うんです。
私はどの世界の誠くんも格好よくて、優しくて、ユーモアのセンスのある人だと確信しています。
だから、貴女も仲間を信じてください。彼らの本質が変わるはずがないと。
来ヶ谷さんは兎も角、3人のことは、昔からよく知ってるんでしょう?
変わったしまったみんなを本当に想像できますか?」
「うーん、なんかメチャクチャな理由だな。下半身魔人な真人や無愛想な兄貴は想像…」
――切ないんだ、鈴っ!
――人を殺したのは、これで二人目だが、やはり、何の感慨も浮かばないな。
――やっておしまい!
「きしょいわ! そうだ、バカどもはどこから来てもバカに違いない。リキはどんなリキも想像できたけど、そんなに悪いやつじゃなさそうだ」
「ふふ、それに来ヶ谷さんだって大丈夫ですよ。単に藤林さんの説明の仕方に問題があっただけだと思います。私が直接説明すれば、きっと理解してくれます。
万が一、誰かが異世界の悪人だったとしても、その際は私が始末するので安心してください。さすがに、棗さんが仲間そっくりの相手を殺すのは躊躇われるでしょうし」
それを聞いて鈴の表情が柔らかくなった。
「うん、そうか…くるがやも大丈夫なんだな。安心したぞ」
――ことのははしっかりしてるな。年上のあたしの方がいもうとみたいで、ちょっと複雑だ。でも、ウチのバカ兄貴は変態だから、あたしよりもっと駄目だけどな。
鈴はデイバックから携帯電話を取り出し、期待と不安の入り混じった声で懇願した。
「ことのは、ちはやといっしょに行くのはあきらめた。でも、ちはやを見つけたときにあんぜんな場所に届けたり、それから、誰かにちはやを守ってくれとお願いするのは良い、よな」
言葉は千早の死を知ってか知らでか、南西の方角を一瞥し、ゆっくりと口を開いた。
「…ええ、仕方ありませんね。誰かを救いたいと言う気持ち、それは誰も汚してはならない素晴らしいものですから」
鈴はそれを聞いて、食いつくように携帯のふたを開いた。
「そうかいいんだな? お前は良いやつだ、ことのは」
◇ ◇ ◇ ◇
「なあぁぁああーーーっ! また、『この番号はげんざいつかわれておりません?』だぞ。 うっさい、ぼけー!」
鈴はアドレス帳を見ながら、手当たりしだい電話をかけたのだが、どれも通じなかった。
彼女は精神を集中しすぎて疲れてしまい、仰向けに寝転んでぐったりとしている。
言葉は腰を下ろして語りかけてきた。
「棗さん、ちょっと貸していただけますか。私も携帯はあまり詳しくないんですが…」
そして、彼女は携帯を拾い上げ、アドレス帳のメールを送信してみた。だが、やはりアドレス不在として送り返されてしまった。
鈴はその様子を見て、ポツリとつぶやく。
「やっぱ、駄目なのか…きょーすけなら、メンバーの番号を知ってると思うんだが、あたしはわすれた」
言葉は嬉しそうに自分の拳を握りしめた。
「棗さん、冴えていますよ。そうです、その方法がありましたね。
これは『羽藤さん』の携帯ですから、他の参加者の携帯が支給されていてもおかしくありません。試してみる価値はあります」
「そうなのか? ことのはの役に立てて、ちょっと嬉しいぞ」
もちろん、言葉が真っ先にかけるのは最愛の男の番号。
しばらくすると、彼女から顔から笑みがこぼれた。
「繋がりましたね」
「ことのは、つうじたのか、つうじたのか!?」
鈴は少し興奮しながら、彼女に近づいて携帯に耳をそばだてた。すると、受話器から我様とか雑種とか、謎の単語が漏れてくる。
「…この偉そうなヤツが、いとうまことなのか?」
「誠くんはこんな下品な人じゃありません! これは留守番電話サービスです」
留守録サービスにはメールを見るようにとだけ伝言しておき、メールで下記の内容の文章を送っておいた。送信相手が不明なので、情報の開示は最小限に留めてある。
1.桂言葉は死者の中から生き返ったこと
2.皆と団結して、主催者から生き返りの力を奪おうと考えていること
3.死人から取った首輪を持っていること
4.伊藤誠、西園寺世界、清浦刹那、如月千早を探していること
5.参加者が元の世界で使っていた電話番号、メルアドを知りたいこと
6.魔術、特に魔道書の詳しい情報を求めていること
「ことのは、魔道書ってちはやが持っていた、きしょい本のことか?」
「ええ、『妖蛭の秘密』ですね。私も『ネクロノミコン』の紙片を持っています。私は良くホラー映画や小説を楽しむんですけど、こういう書物がたまに出てくるんですよ。でも、使い手がその力を扱いきれずに自滅する、って展開が多いんです」
「ことのは…そういう話が好きだったな。でも、ちはやは使っていないから安心だ」
「でも、私、ある程度知識が集まったら、思い切って使ってみようと思うんです。誠くんを守るためには、それくらい努力しなきゃ駄目かなって」
「そうか…ことのはならきっと大丈夫だ。それで、頑張ると魔法少女になれるのか? あのバカが喜びそうだな」
「いえ、そういうのとはちょっと違うと思いますが…」
言葉は続いて、自分と世界の番号にも掛けてみたが、それらの携帯は存在しないようだ。言葉は鈴に携帯を返しながら言った。
「そうそう、この島の誠くんに、私が死んでいたかを聞く必要がありますね。もし、私が他の世界の誠くんと付き合ったら、私の世界にいる誠くんを裏切りになってしまいます。
もちろん、他の誠くんであっても、私の誠くんと同じように尽くすつもりですよ。それでここの誠くんが喜んでくれたら、私の誠くんも取り戻せるかなって…あら?」
鈴は欠伸をし、眠たげに目をこすっている
「スマン、聞いてなかった。緊張の糸が切れてなんか眠い…」
言葉は幼子を見つめる母親のように優しく微笑む。
これまでと同じように目の光を失ったまま…
「でしたら、しばらく仮眠をとっても構いませんよ。
正午になれば収穫の鐘が鳴り響きます。きっと、迷える多くの子羊が私の元に集まってくるはずです。その時のために精気を養ってください」
「じゃあ寝る。放送前になったら起こしてくれ」
――ちはやはこれでひと安心だな。ちはやは覚悟がないから、あたしがその分頑張って、せつなやあのふたりを殺さないと。あとはリキだ、アイツに覚悟が出来ているかちょっと心配だぞ。
言葉は肝心なことを見落としている。自分が死んだ世界はひとつでないこと。そして、誠が来た世界でも言葉が死んでいることを。
◇ ◇ ◇ ◇
この島ではたくさんの人が思い人のために頑張っています。それはとても素晴らしくて、心が揺さぶられました。
私、あの時は飛び降りるしか方法がないと思ったけど、それじゃいけなかったんだなあ、と反省しています。
私は伝説の魔法使いでも、龍殺しの英雄でもないけれど、もういちど頑張りたいんです、誠くんの笑顔を見たいから。
だから、誠くんを助ける方法をいっぱいいっぱい考えて、それで誠くんと会うのが遅れちゃっています。
誠くんのことを考えるだけで身体が熱くなってきます。本当はすぐに誠くんに会いたい、少しでもお話したい。
でも、今はほんの少し、我慢しなくちゃいけないんです。愛と夢に満たされた美しい物語を作るために…
【C-4/採石場南西部/1日目/昼】
【桂言葉@School Days L×H】
【装備】:小鳥丸@あやかしびと−幻妖異聞録−、アーチャーの騎士服@Fate/stay night[Realta Nua]
【所持品】:支給品一式×2、Love&Spanner@CLANNAD、、ニューナンブM60(1/5)、ニューナンブM60の予備弾15発、アルのページ断片(シャンタク)@機神咆哮デモンベイン、首輪(杏)、ハンドブレーカー(電源残量5時間半)@現実
【状態】:健康。言葉様に覚醒中(異常に勘が冴える) 、手が血塗れ
【思考・行動】
基本方針:西園寺世界を最大の苦痛とともに殺す。あらゆる平行世界の西園寺世界も断罪する。誠と共に島を脱出する、もしくは二人だけでこの島でずっと一緒に暮らす。主催の万能の力を手に入れる。誠が別の世界の誠なら、元の世界に帰還した後、世界から誠を奪い返す。
0:誠くん、誠くん、誠くん。ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずー……っと、一緒ですよ……。
1:伊藤誠を探す。ずっと一緒に行動。仮に別の世界の誠でも、自分の世界の誠と全く同じように大切に扱う。
2:世界の臭いのする西部、爆発音のした南西部、襲撃者の気配のする北東部の何処に行くかを考える。
3:情報収集して移動。誠を探す為に対主催陣と同盟を組む。最終的には殺す。
4:利用出来る人間は利用して、襲撃者や足手纏いは容赦無く排除。ただしリスクは考慮。
5:ただし、利用できる人間や高リスクな相手でも誠を誘惑するそぶりを見せれば即排除。
6:大切な人を失った人間に対しては寛大に接し、自らの持論を説いて仲間に引き入れるつもり。拒否すれば殺す。また、足手まといになるようなら殺す。
7:鈴をサポート。裏切り者の千早は生きていたら誰かに押し付ける。
8:千羽烏月を警戒。
9:椰子なごみを自分が生き返ったことのメッセンジャーとして利用。
10:ウエストが生きているなら探し、杏の首輪を『杏に託されたもの』として渡して解析させる。
11:謙吾と杏と朋也と千早を生き返らせてあげてもいい。
12:鈴のくずかごノートをじっくり読みたい。
13:携帯電話の持ち主と連絡を取る。新たな電話番号やメルアドを手に入れる。
14:魔道書などの魔術の知識を得たい。
【備考】
※参戦時期は『永遠に』エンド、言葉死亡後です。
※殺人にタブーがありません。
※主催者は死んだ人間を生き返らせられると信じています。
※女性だけで行動しているグループとの交流においては、特に攻撃的になります。
ただし、ヤンデレに対しては、そうではないかもしれません
※死者の復活を信じ、大切な人を失った人間に対して自らの持論を説いて回ります。
※勘の冴えは主に戦闘絡みであり、それ以外に関しては万能ではありません。
※杏と情報交換し、彼女の人脈などについて知りました。
※ハンドブレーカーは採石場で調達したものです。
※伊藤誠の携帯(所持者不明)にメールと伝言を送りました。
※言葉に魔力があるかは今のところ不明です。
※言葉がどちらへ向かうかは次の書き手さんにお任せします。
【アルのページ断片(シャンタク)@機神咆哮デモンベイン】
魔道書アル・アジフの抜け落ちたページで、シャンタクについて記されている。
魔術として使用すると、翼で空を飛ぶなどの効力が現れる。
【棗鈴@リトルバスターズ!】
【装備】:ハルバード@現実
【所持品】:支給品一式×2、草壁優季のくずかごノート@To Heart2、コルト M1917(1/6)、秋生のバット、コルトM1917の予備弾28、桂の携帯@アカイイト
【状態】:疲労(中)、背中と四肢の一部に火傷(小)、空腹、刹那への復讐心、精神不安定、言葉への盲目的な信頼、血塗れ
【思考・行動】
基本:理樹を探し出し、守る。『清浦刹那』への復讐。
0:安全そうな場所でちょっとだけ休む。
1:刹那を殺す。自分、理樹、千早、言葉を襲う敵は、例外として殺す。
2:理樹を探し、守る。
3:謙吾と桜と杏を生き返らせるため言葉と同行する。
4:言葉の目的を手伝う。
5:リトルバスターズメンバーを探し、同行する。
ただし、来ヶ谷に対してはやや警戒。
6:衛宮士郎を探し、同行する。
7:千早を誰かに預けたい。
8:爆発現場に行って刹那を殺す。
9:服を着替えたい。
【備考】
※参戦時期は謙吾が野球に加入する2周目以降のどこかです。故に、多少は見知らぬ人間とのコミュニケーションに慣れているようです。
※くずかごノートの情報に気付きました。
※衛宮士郎の身体的特徴や性格を把握しました。
※『清浦刹那』に関しては、顔もまともに見ておらず、服装や口調、ピースサイン程度の特徴しか認識していません。
※言葉の話を完全に信用しました。盲目的に信頼しています。
※杏と情報交換し、彼女の人脈などについて知りました。
※くずかごノートには様々な情報が書かれています。現在判明している文は、
『みんなの知ってる博物館。そこには昔の道具さん達がいっぱい住んでいて、夜に人がいなくなると使って欲しいなあと呟いているのです』
『今にも政略結婚が行われようとしたその時、秘密の抜け穴を通って王子様は大聖堂からお姫様を連れ出すことに成功したのでした』
『山里のお寺に住む妖怪さんは物知りだけど一人ぼっち。友達を欲しがっていつもいつも泣いています』
『古い、古い昔の遺跡。そこにはドロボウさんなら誰でも欲しがる神秘のお宝が眠っていたのです』
です。
※採石場には電動工具やダイナマイトが置かれている他、ショベルカー、トラックのような重機が存在しています。
また、近辺には鴉が多く生息しています。
少しトリ抜けている場所がありますが、これで完了です
支援ありがとうございます。
何か問題がありましたら、指摘をお願いします。
タイトルは『増えては困る猫ばかり拾ってた』
元ネタはKey+Liaの『Hanabi』の一節です
「ないッ!!!」
一乃谷愁厳の返事はこれ以上ないくらい簡潔だった。
九鬼耀鋼の聞きたいことは分かる。 主催者の言葉の真意を探りたいのであろう。
死者を生き返らせる力が本当にあるのかどうか、愁厳とて気にはなる。
生あるものに例外なく課せられた終焉の理、それは死。 誰もが恐れ、誰もが逃れたいと思っている摂理。
それを覆す力があると、放送をした言峰は事も無げに言ったのだ。
その言葉を聞いて、ある人はその言葉を信じて、大切な誰かを生き返らせるためにその手を血に塗れさせる道を選んだかもしれない。
またある人は、あまりに突拍子もなさすぎる言葉に不信感を覚え、やはりこの殺し合いに反旗を翻す決意を深めたかもしれない。
しかし、一乃谷愁厳の守りたい人間は、今も世界で一番安全な場所で眠っている。
だったら、主催者の言葉に惑わされる必要はない。
それが真実であろうと、虚言であろうと、一乃谷愁厳は他の全ての参加者を殺しつくして優勝するだけだ。
ただ前進、制圧あるのみ。 愁厳は黒いコートを纏った男、九鬼耀鋼へと古青江を振りかぶる。
「せっかちな男だ。 そんなに血に飢えてるのか?」
色素の抜け落ちた白髪に、右目に眼帯を着けた大柄の男――九鬼耀鋼は腰を落としながらも、余裕の口調で迎え撃つ。
しかし、そこに油断は一切見当たらない。 飄々とした雰囲気ではあるが、九鬼耀鋼に唯一残された左の瞳は、愁厳の一挙手一投足を見逃さない。
愁厳の大降りの一撃を、九鬼耀鋼はなんと無手――即ち素手で捌いたのだ。 愁厳が息を呑み驚愕する。
九鬼は愁厳の全力の一撃である刀の腹にそっと手を触れ、わずかにその軌道を逸らしたのだ。
手加減はしてない。 九鬼は無手でこちらは剣を持っているが、そのことに対して、愁厳は卑怯だとかフェアじゃないとかいった感情は抱いていない。
支給品や装備品の差もまた、この世界の生死を分ける重要なファクターの一つだ。 武器を支給されなかったのなら、己の不運を嘆くしかない。
そして、武器が支給されなかったからといって、愁厳が同情をする義理もない。 間違いなく、愁厳の一撃は眼前の敵を打ち倒すべく放たれた渾身の一刀だった。
だが、目の前の男、九鬼耀鋼に武器はいらない。 彼は世界にたった二人しかいない九鬼流を操る闘士なのだから。
全力の一撃、そう言うのだから、剣速もそれに見合った確かなものだ。 それを、九鬼耀鋼は捌いた。
この事実だけで、愁厳は男の実力を理解する。 同時に、彼我の戦力差をも。 目の前の男、九鬼耀鋼は明らかに一乃谷愁厳より強い。
ドミニオンの戦闘部隊所属、しかも副隊長の肩書きは伊達ではないということか。
しかし、愁厳が驚愕した理由はそれだけではない。 強い相手に会っただけで驚愕するのなら、愁厳はとうの昔に死んでいる。
その驚愕の理由は、例えるなら既視感。 ただし、何にその既視感を覚えたのかは分からず仕舞いだが。
もうその喉元までその答えはきているのに、ギリギリのところで止まっていて、愁厳は既視感の正体を掴めないでいる。
その感覚が酷く不快だった。
「……ッ!?」
「どうした? まさか一撃だけで終わりか?」
九鬼は余裕の表情で、愁厳を挑発する。
それに触発されたのか、愁厳はもう一度、九鬼に踏み込み、先の一撃と同等の膂力を込めて打ち込む。
結果は同じ。 水のように滑らかな動きで、九鬼は愁厳の一撃をその掌で、機械のような速さと正確さで捌く。 やはり、マグレではない。
そして、男の強さは本物。 だが、愁厳は自分より明らかに強い男を目にしても、退却を選択することはなかった。
愁厳は理解した。 いや、させられた。
この島の参加者には、明らかに愁厳より強い人間がそれこそ山のようにいる。
ツシマレオを殺害したときに現れた女子高生、アオイナギサを殺したときに相対した人妖らしき女性、そして九鬼耀鋼。
殺した人物こそ、人妖でもないただの一般人のようだが、この三人は明らかに愁厳と同等、もしくはそれ以上の強さを秘めていた。
正攻法で戦っても勝てるとは思えない。 しかし、咄嗟の逆転劇を思いついたり、周到に罠を用意できたりするほど、愁厳は機転の利いた性格でもない。
唯一、ラジコンカーを使った作戦だけは上手くいったが、それが今後、何度も通用すると考えるほど楽観的な考えもしてない。
ならばどうすればいいか? 優勝して、妹を元の日常へ帰還させるという至上命題を果たすためにはどうするか。
どこか人目につかないところに隠れて、最後の一人になるまで沈黙を保ち、残った一人を闇討ちするか。
馬鹿な。 最後まで残った一人には、最後まで残るにふさわしき実力があると考えてしかるべきだ。
最後の一人になった存在。 それが強者ではなく無力な人間だと、どうして考えることができようか。
ならば、どうすれば生き残れるか。 自分よりも強い刀子に体を譲って戦ってもらうか。
却下だ。 本末転倒も甚だしい。 ならば、愁厳が強くなるしかない。
強者を目にして逃げるのではなく、より積極的に戦い、刃を重ね合わせ、自分の糧とするのだ。
命のかかった真剣勝負なら、それは日常に行う訓練の十倍も百倍も得られるものが大きい。
相対した敵との刹那のやり取りを己の血肉とし、付けられた傷は己に対する戒めとして受け取れ。
そうすれば、強くなれる。 どんな荒波も、どんなに険しい山も乗り越えることができるほどに。
答えは得られた。 進め、一乃谷愁厳。 己が手を朱に染め、万人の屍の上に立つのだ。
「一つ聞こうか。 お前は何のために戦う?」
九鬼耀鋼が構えを崩さぬままに愁厳に問う。
愁厳の身に纏った空気が、あまりにも似つかわしくないからだ。
九鬼はその空気――雰囲気と言い換えてもいい――に違和感を覚えた。
人を殺し、修羅になることを選んだのだろうということは九鬼も理解できる。
しかし、それを決意するには、愁厳の瞳はあまりにも高潔すぎた。
愁厳の瞳には、確かな正義感と今やっていることに対する罪悪感、そしてその二つの感情を押さえ込む強い決意の光が見て取れた。
利己的な人間では到底こんな目はできない。 数々の実戦を潜り抜けた九鬼は直感でそれを悟っていた。
同時に、愁厳が進んで殺しをやっていることに何らかの理由があることも。
「…………妹のためだ」
口を僅かに開き、愁厳が戦う理由を語る。
その答えに九鬼も口元をニヤリと吊り上げ、満足する。
妹のため、肉親のため、これ以上ないくらい正当な理由だ。
こんな話はきっと、この島には吐き気がするくらいありふれたことなのだろう。
それで愁厳はこれ以上語ることはないと言わんばかりに、果敢に踏み込んでくる。
今度はもう手で捌かせなどしない。 九鬼が刀の腹を狙って捌いてくるのなら、その直前に手首を捻り、九鬼の素手を研ぎ澄まされた刃で迎え撃てばいい。
しかし、九鬼の手にはいつの間にかデイパックから武器を取り出していた。
その手に携えしは刺突用の剣、エストック。 鋭く鍛えられたその切っ先が日の光を反射する。
「さすがにこれ以上無手でやると捌けるかは分からんからな。 ちょっとしたカンフュールというわけだ」
九鬼も愁厳の技量を見抜いていた。
一度や二度は捌くことも可能だろうが、これ以上やるとさすがに手筋が読まれて斬られる可能性があった。
そこで、丁度よく支給されたこの剣の出番というわけだ。
傘に偽装したカンフュールとは違い、相手の虚をつくこともできなければ、防弾、防刃性能もない。
だが、それで十分。 相手は剛力無双の人妖。 刺し穿ち、相手の攻撃を捌くためだけの機能さえあれば問題はない。
「さて、行くぞ。 お前に死を告げるとしよう」
その言葉に愁厳は相手に不足なし、とばかりに一気呵成に刀を振り下ろす。
一撃、
二撃、
三撃、
四撃、
二人の男の武器の、金属の打突音が響く。
並みの相手なら一撃一撃が殺されるほどの鋭さ。
それを九鬼は確実に、一分の狂いもなくエストックで受け流す。
牛鬼の怪力を操る愁厳の一撃を真っ向から受けるなど、無謀にも等しい。
しかし、こうして受け流せばいくら相手が強力な力を持っていようと無意味。
要は、当たらなければ真剣も竹光も同じということだ。
九鬼流とは対人妖用の戦闘法。
源流は中国の北派、円華拳にあるという。
九鬼耀鋼が中国に渡り、長年の修行の元に生み出した我流の闘法だ。
人妖の中には、岩のように体が固くなるものもいれば、水のように捉えどころのないものもいる。
そういった異形のものと闘うために、九鬼流は拳を使わず、掌による攻撃を基本とする。
人妖を倒せるのは、人妖だけ。 その概念を打ち破ったものこそ九鬼耀鋼その人であり、九鬼流なのだ。
九鬼流の動きの基本は後の先。 そして相手の攻撃を捌くことを骨子にしている。
全ての基本は円にあり。 円転自在。 球転自在。 脚が、腕が、幾重にも円運動を繰り返せば、それは球となる。
もちろんエストックを使う場合でも、足運びは円を意識させたものになる。
無駄のない九鬼の動きは愁厳に球を意識させる。 しかし、そこに優雅さは感じられない。
例えるなら、その動きは剣舞のように雄々しく激しい、相手を殺すためだけの荒々しい動き。
「妹のためか……結構結構、殊勝な心がけだ。 だが、それは俺の目的とは相反するな」
愁厳の横凪の一撃、九鬼を黙らせるために、胴を狙った白刃が九鬼の腹に襲い掛かる。
それを九鬼はエストックで受け流すことなく、膝と足首を折り、下半身を極限まで落とすことによって回避。
九鬼の足腰の強さとバランス感覚のよさを証明するかのように、上半身はまったくぶれていない。
数瞬の後に、九鬼の頭の上を愁厳の刃が通り抜けた。
チャンス!
両者が判断する。
極限まで研ぎ澄まされた二人の脳が、目の前の男を打ち砕くための最善の行動を選び出す
愁厳は九鬼の頭部の上を通過しようとする刀の軌道を、手首の捻りのみで強引に変更。
そのベクトルを90°変えることによって、九鬼を頭部から一刀両断せんとする。
取った! 愁厳が勝ちを確信する。
「甘いぞ!」
ギィン!
済んでのところで、九鬼の片腕のみで掴まれたエストックが、またもや愁厳の刀を阻む。
だが、牛鬼の膂力に単なる人間が片手のみで対抗しようなどとは愚かしい。
「ンンッ……ハアッ!」
愁厳はさらに両手に力を篭め、九鬼を断裁せんとする。
九鬼が押される。 単純な力で言うなら、確かに愁厳の方が勝っていた。
例え、総合的な力では九鬼が勝っていても、力の一点においては愁厳の方が上。
自分の得意とする舞台で勝負すれば、格上の相手にも勝利できる。
ギリギリと、少しずつ押される九鬼。 顔にも苦悶の表情が浮かぶ。 もう一息で決着はつく。
大地に真っ直ぐと、両足を立て、愁厳は全力で眼下の敵を粉砕しようとした瞬間、愁厳に嫌な予感が走る。
見ると、九鬼には足が一本しかないではないか。
いや、違う。 正確には地に付けている足が左足一つしかないのだ。
ならば右足はどこにあるか。 愁厳がそれを考えるまでもなく答えは見つかった。
九鬼の右足は宙にあった。 いや、『ある』のではない。 右足は『動いて』いる。
九鬼は左足を軸にして、思い切り上半身を捻り気味に、ありったけの威力をこめて稲妻のような電光石火の蹴りが放つ。
狙いは愁厳の胸。 鋼をも断ち切ることが可能なほど鋭い蹴りが愁厳に向かった。
愁厳は本能のままに後退を選択。 僅かに九鬼の脚に触れた衣服がたやすく裂けた。
愁厳の熱くなっていた汗が一気に冷水のごとく冷える。
マトモに命中していれば、間違いなく命を奪われていた。
油断はしてはいけない。 力で勝ろうとも、総合力は圧倒的に九鬼が勝っているのだ。
「……」
「避けたか……上出来だ」
一度間合いを取り直して、お互いが体勢と息を整える。
九鬼は満足げな表情で愁厳の反射能力を褒めた。
九鬼が攻撃に転じたのはこれが初めてだ。
その一撃はやはり、これまでのどの敵よりも鋭く、強烈であった。
愁厳の見積もりどおり、九鬼耀鋼は人間の範疇を超える強さの持ち主。
だからこそ、九鬼耀鋼を倒せば、愁厳はもっと高みに昇れる。
しかし、九鬼は今まで愁厳に攻撃できるチャンスはいくらでもあったはずだ。
それなのにしなかったとは、その余裕とも取れる行動に愁厳は屈辱を覚える。
「今まで攻撃してこなかったのは……愚弄しているのか?」
「愚弄はしてないさ。 少し、考え事をしていただけだ。 じゃあ、期待に答えてこれからは本格的にいくとするか」
九鬼の宣言に、愁厳は身を引き締める。 これからはさっきよりも苛烈な戦いになることは間違いない。
刀を持っていた両手を握りなおし、表情は無機質なままで。 ただ相手を倒すにはどうすればいいのかだけを考える。
方法は、やはり正攻法しか思いつかない。 だが、それでいい。 強くなりたいのなら、ただひたすらに敵に向かっていくだけだ。
自らが越えるべき第一の壁、九鬼耀鋼に一乃谷愁厳が挑む。
しかし、愁厳が攻撃を再開する前に、九鬼が口を開いた。
「お前、一乃谷愁厳か?」
九鬼の鋭く切り込むような口調に、思わず愁厳は息を呑んだ。
あまりにも唐突過ぎる言葉に頭が一瞬真っ白になり、愁厳は違うと否定する時間を奪われた。
そして、愁厳の沈黙を九鬼は肯定と受け取る。
「……何故……?」
自分の名前を知ったのか? 愁厳は口には出さずに九鬼に聞く。
九鬼も愁厳の言外に含んだ意図を悟ったのか、軽く手のひらを浮かべ説明をした。
「お前、妹のために戦っているんだろう?」
「……そうだ」
「なら簡単だ。 俺の単なる当てずっぽうさ」
「当てずっぽうだと……」
当てずっぽう。
九鬼の言うとおりなら、愁厳はまだ本名を特定されてなかったのだ。
言わば、九鬼は愁厳にカマをかけただけ。 愁厳が違うと即座に否定すれば、まだ本名はばれなかったのだ。
これは完全に愁厳のミス。 愁厳は歯噛みして、己のミスを叱責した。 そして、さらに九鬼は説明を続ける。
「ああ、名簿には苗字が同じ人間が一組しかいなかったのでな。 妹のために戦うのは一乃谷愁厳しかいないわけだ。
もちろん、妹がここに参加してない可能性もあったし、二人の苗字が違うというケースも考えていた。
そういう意味で当てずっぽうだったんだがな」
「参加者の名簿を全て覚えているのか?」
「いや、生憎とそこまで記憶力はない。 だが、やはりお前の名前は覚えやすくてな」
「? ……どういうことだ?」
「名簿上には一人一人の名前が斜線で区切られて書かれていたが、お前の名前だけは一乃谷刀子と一緒に書かれていた。
一乃谷愁厳・一乃谷刀子、という具合にな。 誤植の可能性もあったが、やはり覚えておくに越したことはないというわけだ。
まぁ、クリス・ヴェルティンのような明らかに外国人と思われる人物と同じように、一乃谷愁厳・一乃谷刀子で一つの名前ということも考えてはいたがね」
「……なるほどな」
「ドミニオンの戦闘隊とはいえ、副隊長ともなると簡単なデスクワークもこなさねばいけなくてな。
人妖犯罪者の逃走ルートを割り出すのに、こういった頭を使うことも必要とされる」
そこまでで九鬼は説明を打ち切った。
これは九鬼の考えていたことの一つでしかない。
そこから先にある更なる憶測はいまだ確証が得られてない故、今は言う必要はない。
九鬼はエストックの先端を愁厳に向け、無言で戦闘の再開を申し出る。
愁厳もまたそれ対して無言で答えを返す。
愁厳は本名を見破られてたことに対して、特に取り乱しはしていない。
名前を知られようと知られてなかろうと、敵は殺すことに変わりはない。
ここで九鬼を倒せば、新たな偽名を考える必要もなくなる。
まぁ、愁厳自身もほんの少し九鬼に感謝していたのだが。
「そうか、ならば……一乃谷流、一乃谷愁厳――参る!」
今このときだけは、偽名を名乗らずに正々堂々と戦う。
開き直りに近い感情が愁厳の胸を埋め尽くしていた。
黒須太一ではなく一乃谷愁厳として、一人の剣士として正々堂々と戦えることが、愁厳の心を幾分か軽くした。
「応、来い!」
名乗られたのだから、九鬼も正々堂々と名乗り返す。
猟犬、ドミニオンの副隊長としてではなく、ただ九鬼流を操る戦士として迎え撃つために。
荒れ狂う暴風と化した愁厳の一撃が九鬼耀鋼を襲う。
◇ ◇ ◇ ◇
二人の男の常人の理解を超えた戦いを、開始時から冷めた目で見続けていた女がため息をつく。
戦いを見ていた女――椰子なごみの感想は、バカバカしいの一語に尽きる。
なごみとて、普通の女の平均よりも高い身体能力を持っているという自覚と自負がある。
もしかしたら平均的な男性よりも身体能力は高いかもしれない。 そんななごみでさえも、空いた口がふさがらないほどの壮絶な戦いだった。
戦いの趨勢こそ、眼帯をつけた長身の男の方が押している。 激しく攻め立てるなごみと同年代くらいの男性の攻撃を、九鬼は涼しい顔で捌き、時に反撃する。
それの繰り返しが多い。 しかし、注目すべきは戦いの勝敗の行方ではなく、二人の身体能力の高さにある。
なごみでさえも二人の戦いを目で追うのがやっと。 時には目にも止まらぬほどの速さで二人は斬り合う。
また、二人の外れた攻撃が、易々と地面のアスファルトを抉り取るのをなごみの目はハッキリと捉える。
力もスピードも桁違いだ。 技量にいたっては、まるであらかじめ打ち合わせでもしていたかのように速く、鋭く、力強い。
尤も、鉄乙女や橘平蔵という規格外の相手を目にしてきたなごみにとって、それは人生で初めて体験した恐怖と言う程ではない。
問題は、なごみと今戦っている二人の男の間には全く面識がないことだ。 西洋の騎士のように、やぁやぁ我こそはと真正面からこういった連中と戦うのは自殺行為。
鉄乙女や橘平蔵は勤勉実直な人柄であり、基本的に正義感溢れる人間だ。
その馬鹿正直さを利用して、後ろから刺すか撃つかして、葬り去ればいいと考えていた。
しかし、新たな問題がここで発生した。 なごみの見立てでは、線路の向こうで戦っている二人は乙女や館長と互角くらいの強さを持っている。
さすがに、こういう連中も乙女や橘平蔵と同じように後ろから、というのはかなり難しい。
乙女とは同じ生徒会仲間、平蔵とは竜鳴館の生徒と館長という間柄ゆえ、信用も得られやすい。
しかし、赤の他人の信用を得るのは相当難しい。 なごみも自身もあまり他人を寄せ付けない性格なので、その難しさはよく知っている。
ここは運良く禁止エリアのルールに抵触して、二人の首輪が爆発する事を望むとする。
「……そろそろ放送か」
地図で言うところのF-6エリアが、禁止エリアとして機能するまであと数分。
できれば、このまま二人の首輪がボカンといってほしいところだ。
そうでなくとも、禁止エリアから慌てて抜け出そうと躍起になっているところを待ち伏せすれば、虚をつけるかもしれない。
もちろん、ベストは禁止エリアに指定される前に二人が相打ちになること。
そして、死体の首輪が禁止エリア首輪のルールでどうやって爆発するのかを余さず見せてくれること。
そうなってほしいと思う。 レオが死んでできたなごみの心の空っぽの部分に、寒い風が吹き込む。
今までなごみの心のレオが占めていた部分に、ポッカリと穴ができた。
椰子なごみという人物は極端に心理的な『領域』が狭い。
例えば、平均的な人の心理的『領域』が、その人を中心とした半径5メートルの円を描いているとする。
その人の心理的『領域』の中に入っていいのは、その人が認めた人、大切だと思った人のみ。
例えば家族。 例えば恋人。 例えば友人。 半径5メートルもあれば、ギュウギュウに詰めてもそれなりの人数が入る。
仮にここで半径5メートルに入る人数の限界を50人としよう。
対して、椰子なごみの心理的『領域』は半径50p程度しかない。 直径に換算して、ようやく1メートルだ。
入るのは精々5人程度だろう。 普通の人に比べて極端に狭すぎる。
しかし、なごみは心理的『領域』が狭い代わりにその世界内にあるもの、つまりなごみが認めた数少ない人間には無償の愛を惜しみなく与える。
例えば今は亡きなごみの父、今も存命中の母、そして恐れずになごみの領域に入ってきたレオという具合に。
また、だからこそその狭い『領域』を侵すものには最大級の敵意で迎える。
なごみがよく口にする『居場所』という言葉からもそれが伺える。
「私の居場所を……対馬先輩を奪われたこの苦しみを……」
だから、奪うことを選択する。
この島の誰かがレオの命を奪ったというのなら、全員を殺せばいずれレオの仇にめぐり合う。
レオの死で心の中にできた空洞。 それを埋めるためには焼けるような復讐心に身を任せるしかなかった。
それは自暴自棄とも言えるかも知れない。 彼女が冷静であったなら、もう少し賢い方法も選べたかもしれない。
だが、それでもなごみは止まらない。 今の彼女が必要としているのは誰かの優しさではなく、黒く染められた憎悪。
◇ ◇ ◇ ◇
「一乃谷流、“地蜂乱刀”!!!」
愁厳が一乃谷流に伝わる技の一つ、乱撃技である地蜂乱刀を放つ。
狙うは九鬼の首筋、心臓、鳩尾。 その一つ一つの狙いが正確無比。 一つでも当たれば致命傷は必至。
敵が捌きを骨子にした戦法で来るのなら、捌きれないほどの攻撃を一呼吸でこなせばいい。
単純な考えだが真理だ。
「それで俺に勝てると思ったか!」
九鬼が刺突に特化した剣、エストックで愁厳の攻撃のベクトルを僅かにずらす。
それを一瞬で三回繰り返した。 九鬼には未だに傷一つない。
十の力をそのまま受けるには、こちらも十の力が必要とされる。
だが、受け流すだけなら出すのは一か二程度の力で問題ない。
もちろん受け流すにはそれなりの技量が必要だが、使いこなせばこれ以上なく効率がいい戦いができる。
「俺みたいなやつが言うのもなんだが……他者の屍の上に立つ人生なんてロクなモンじゃないぞ」
愁厳の攻撃を捌くと同時に、エストックの切っ先を愁厳の肩口目掛けて放つ。
半身を捻り避けようとするが、愁厳の肩に薄い切り傷が刻まれる。
まだ終わらない。 愁厳が痛みに耐えて次なる攻撃に移る前に、九鬼は容赦なく攻めていく。
愁厳はそれを持っている古青江で受け、反撃に転じる。
「他人の言うことを聞く耳などもっていない!」
怒涛のような愁厳の攻め。 前に、前に。 敵が強いからこそ前に。 後ろに下がるのは下策だ。
身体能力で負けてるのに、気持ちまで負けては意味がない。
少し九鬼と距離をとった後、真っ直ぐに九鬼のもとへ肉薄。
同時に渾身の突きを放つ。 それはまさに神速。 だが、九鬼は九鬼流の基本の円運動でかわしきる。
愁厳の脳裏に先ほど感じた違和感が再び生じて、一瞬脚を止める。 やはり、愁厳は九鬼に対して何かを感じている。
愁厳がその違和感の正体を掴み損ねていると、九鬼はそれを好機と見たのか、エストックで一直線に心臓を狙おうとする。
しかし、その行為は中断せざるを得ない。 とうとう悪魔の時刻がやってきたのだから。
「!?」
「!?」
今まで金属のぶつかり合う音と、男二人の会話しか存在しなかった空間に無粋にも突如響き渡る音。
ピッピッピという、耳障りな電子音。
それがあろうことか、九鬼と愁厳の首輪から鳴り響いているのだ。
――貴方は禁止エリアに進入しました。後30秒後に爆破します。それまでに禁止エリアから退避してください、カウントダウン開始。30……29……28……
無機質な警告音とカウントダウンが始まった。
九鬼が驚きのあまり首輪に手をかけるが、乱暴に扱って爆発する可能性に思い当たり、すぐに手を離す。
戦いに熱中するあまり、現在位置と現在時刻の把握を完全に放棄していたのが失敗だ。
とにかく今必要なのは、敵を撃破することではなく、一刻も早く安全なエリアへ出ること。
愁厳も九鬼も互いの存在など忘れたかのように走り出し、一番禁止エリア外に近いと思われる方向へ駆けた。
九鬼が走ってきたのは駅のある東の方角。 そして今回禁止エリアになるのは駅のあるF-7エリアの西隣のF-6エリア。
ならば、東に戻るのが正解だ。 九鬼と愁厳が線路を挟んでにらみ合いながら、線路沿いに走る。
結果的に、愁厳も九鬼も間に合った。
電子音と爆発までの時間を告げるカウントダウンが鳴り止んだ。
安心した九鬼と愁厳は、用心のためにさらに東に移動した後、再び対峙した。
〜
椰子なごみは動かない。 今動くのは好機ではないから。
禁止エリアのルールは最初に聞いたときと何も変わらなかった。
つまり、最初にどこか薄暗い広間で行われたルールに間違いはないということだ。
ならば、放送で言っていた『権利』や死者を生き返らせるという言葉も鵜呑みするわけにはいかないが、一考の価値はある。
動くなら全ての決着がついたあとでもいいのだから。
空っぽの少女、椰子なごみは雌伏を続ける。
レオを殺された怒りにとらわれながらも、椰子なごみの頭脳は極めて冷静に働いていた。
そして、ついになごみは動くべき好機を見つけた。
線路沿いのこの場所だからできること、そして二人が線路の向こう側にいるからこそできることがある。
ただし、チャンスは一度きり。 そのチャンスを掴もうが逃そうが、一度撤退しなければならない。
だが、追っ手がくる心配はほとんどない。 成功すれば得るものは大きいが、リスクはゼロ。
この考えの欠点を一つだけ挙げるとすれば、極端に成功率が低いこと。 距離が二人の男と離れ過ぎているので、命中率は極端に低い。
しかし、それを鑑みても比較的好条件な作戦だ。 距離が離れているということは、二人に気取られることもないということである。
なごみは銃を取り出し、残り一発のみになっていたコルト・パイソンの引き金に指をかける。
撃って結果を確認したら迅速にここを離れて、コルト・パイソンに弾丸を補充。 それだけでいい。
時間が近づいてきた。 地面を震わせ、大きな音を立てて。
〜
舞台を安全な場所に移して、戦闘は再開される。
二人の男の戦いの周囲は、荒れ狂う台風の如く何者も近づく事を許さない。
台風の目に立つ九鬼と愁厳がただひたすらに剣と剣を重ね合わせる。
一乃谷愁厳。 戦力差を承知しながらもむしろ果敢に戦う剣士。
九鬼耀鋼。 圧倒的な強さで、人妖である愁厳すらも凌駕する闘士。
「なぁ、こんなことは終わらせるべきだと思わんか?」
感傷に浸るように九鬼が呟く。
愁厳はそれに対して無言で斬撃を肩口に奔らせた。 九鬼はまたもや蛇のように体を捻らせ回避。
気落ちすることなく、愁厳はさらに鋭さを増して踏み込んでいく。
まるで、九鬼の口を塞ぐかのように。
「今回、運良くお前が優勝できたとして、またこんな催しごとが起こらないと誰が断定できる?」
その時に妹も参加させられないと、誰が保証できる?」
そこをつかれると愁厳も反論できない。
このバトルロワイアルが何度も起こっている出来事だという可能性も高い。
優勝者を無事に元の日常へ帰してもらえる保証もない。
そもそも、帰してもらっても次回の殺し合いに呼ばれる可能性さえも否定できない。
考えれば考えるほど、主催者の言葉に従うのが馬鹿らしくなってくる。
だとしても、だったらどうすればいいのか。 人妖をあっさりと拉致できる強さ、愁厳と刀子の精神体にまで首輪をかける技術。
こうして一つの島をまるまる殺し合いの舞台にまで整えるほどの財力。 人妖の能力に制限を課す摩訶不思議な力。
認めよう。 愁厳は確かに主催者の言葉を信用などしていない。
しかし、それでも主催者の言葉に踊らされるしかない。 本気で生きて帰る事を目指すのなら、愚かともいえる選択肢を選ばなければならないときもある。
例え妹に軽蔑されようと、正義は必ず勝つというお約束に縋れるほど愁厳は夢想家でもない。
まもなく、愁厳の命は消える。 牛鬼の運命に従って。 だったら、残り少ない命は妹のために使いたい。
これは兄として、妹のことを精一杯考えた上で選んだ方法だ。
「分かっている。 奴らの言っていることがどれだけ確証のないあやふやなものか」
ならば、後悔するな一乃谷愁厳。
「それでも、俺は妹のために生きる!」
愁厳が咆哮する。
たとえ畜生道に落ちようと、兄は妹のために生きるものなのだから。
「それでも生きるだと?」
九鬼が応える。 九鬼もまた咆哮で。
「それは、一人前の男だけが言っていい台詞だ!!!」
この勝負ももう少しで決着がつく。
勝つのは妹のために修羅になることを選んだ兄か、悲劇の繰り返しを防ぐために戦う人妖を越えし人か、はたまたそれ以外の人物か。
攻撃の一手一手が小手先の技巧を凝らしたものではなく、急所を狙った必殺のものに変わっていく。
互いが互いの命を奪うことも目的とした、この島ではありふれた光景の一つ。
愁厳と九鬼の体に薄い切り傷と衣服の裂けた部分が増えていく。
もはや、何人たりともこの場に入っていける者は皆無だった。
そう――人ならば。
人でないものならばそこに入っていける。
意志も意思もなく、ただただ与えられた役割を果たす巨大な鉄の塊なら二人の世界に無粋に入っていけることも可能だ。
線路沿いの道路に現れたのは線路を走る鉄の怪物、電車。
時刻表通りに走行しており、その速度と時間への妥協を許さない姿勢には高い評価を与えたいところだ。
そして、線路を挟んで九鬼と愁厳の反対側に位置するなごみにとって、これこそが唯一無二の勝機に他ならない。
(行けッ!)
電車がなごみの目の前を通過するその瞬間。 今までのなごみの雌伏は、全てこの時のみにためにのみあった。
万感の思いを篭めて、なごみが電車の通過音に紛れさせた銃弾を放つ。
そして、戦果を確認して一目散に離脱。 結果は、それなりの成果をあげた。
「――ッ!?」
背後で電車が通過するその刹那の瞬間、九鬼はわずかな殺気を背後に感じた。
その殺気に対処しようとした瞬間、手に持つエストックに銃弾らしきものが当たる。
あまりの衝撃に思わずエストックを手放しそうになるが、なんとか手放さずに済んだ。
そして、愁厳がそれを好機と見る。
今度の攻撃の目的は九鬼本人ではない。 目的は九鬼の持つ武器。
愁厳はエストックに対して、最も効果的な攻撃法を選択!
「一乃谷流“鋼獅子”!!!」
比類なき剛剣である一乃谷流の中でも、単純な破壊力なら最強の部類に入る技だ。
上段に振りかぶった剣を、そのまま牛鬼の怪力の全力で振り下ろすだけの技。
銃弾を剣に受けて、衝撃でよろめいたの九鬼には真っ向からエスットクで対抗するしかない。
十の力をそのまま十で受け止めてしまったエストックは中途半端なところで折れ、飛んだ切っ先がかすかに九鬼の頬を掠める。
初めて九鬼の表情に驚愕が浮かんだ。 同時にエストックを放棄。 音を立ててエストックが地面に転がった。
背後から撃ってきた人物は、姿は電車そのものの姿で覆い隠され、音は電車の通過音で掻き消される。
九鬼は余計な介入者の存在を後回しにして、愁厳への対応を最優先する。
愁厳もまた、謎の介入者の存在を置いといて、目の前の敵を討つことに全力を尽くす。
◇ ◇ ◇ ◇
なごみは電車の音に紛れて二人の男から離れるべく移動していた。
結果はなごみが見た限り、眼帯の男の方の持つ剣に当たった。
これ以上の深入りは危険だと判断して離脱。 もっと強力な武器を手に入れるために今は撤退を選択する。
戦っている男の一人が愛しいレオの敵だと知ることなく、出会うこともなく別れていった。
それが幸福なのか、不幸なのか、それはまだ分からない。
【椰子なごみ@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:S&W M37 エアーウェイト(5/5)、スタンガン】
【所持品:支給品一式、S&W M37 エアーウェイトの予備弾24
コルト・パイソン(0/6)、357マグナム弾19】
【状態:軽度の肉体的疲労、右腕に深い切り傷(応急処置済み)、全身に細かい傷】
【思考・行動】
基本方針:他の参加者を皆殺しにして、レオの仇を討つ
1:殺せる相手は生徒会メンバーであろうと排除する
2:状況さえ許せば死者蘇生の話を利用して、他の参加者達を扇動する
3:クリスは次に会ったら絶対に殺す
4:赤毛の男(士郎)とブレザー姿の女(唯湖)、日本刀を持った女(烏月)も殺す
5:伊藤誠を殺してから、桂言葉を殺す
6:出来るだけ早く強力な武器を奪い取る
7:死者の復活は信じないようにするが、若干の期待
【備考】
※なごみルートからの参戦です。
※どこに行くかは次の書き手に任せます。
◇ ◇ ◇ ◇
両者の距離、わずか2メートル。
このチャンスを、愁厳は逃さない。
九鬼もまた、後退を選ばずに前進を選択。
その剣に乗せるのは意地と誇りと殺意。
その拳に乗せるのは意地と誇りと信念。
「行くぞ、九鬼耀鋼!」
「来い、一乃谷愁厳!」
今、二人の戦いがクライマックスを迎える。
愁厳が斬る。 九鬼が捌く。
斬る、斬る、斬る。 捌く、捌く、捌く。
斬る、斬る、斬る、斬る。 捌く、捌く、捌く、捌く。
斬る斬る斬る斬る斬る斬る。 捌く捌く捌く捌く捌く捌く。
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る! 捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く!
遅い遅いぞ一乃谷愁厳もっと速くなれ! 九鬼耀鋼よ眼前の敵を打ち砕け己が強さ示せ!
奴よりも速く強く重く鋭く時にしなやかに! 九鬼耀鋼の拳は人ならざる者を打ち砕くための拳!
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る! 捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く!
百の斬を以って剣の幕とし、 このような悲劇を繰り返させぬため、
千の撃を以って剣の壁を作り上げろ! 例え死者を生き返らせることができようと、
点の攻撃ならかわせても面の攻撃なら不可能。 死は死である以上受け入れ泣けられならないのだ!
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る! 捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く!
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る! 捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く!
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る! 捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く!
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る! 捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く!
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る! 捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く!
まだだまだいけるもっと上へもっと高みへ。 息子の俊介は確かに無残極まりない死を遂げた。
ただひたすらに斬と刺と突と薙の組み合わせ! だが起きた過去を変えることは誰にも許されない!
愛する妹のためにただこの身は刀子のために! 自然の摂理に逆らって生きるなど息子は望まない!
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る! 捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く!
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る! 捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く!
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斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る! 捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く!
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る! 捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く!
ならば! ならば!
最強の攻撃を持って敵を殲滅せよ!
一乃谷愁厳が最後の一撃を最高の気迫で放つ。
選んだ技はやはり怪力を最大限に活かす剛剣の技。
一乃谷流“鋼獅子”。
裂帛の気合と不退転の決意で、愁厳が九鬼に生涯最高とも言える一撃を振り下ろす。
(この気迫……)
九鬼の眉がピクリと動く。
愁厳が一気に決着をつける狙いであることを看破した。
(迂闊な技では迎撃不可能か――!)
ならば、今こそ見せようか。
持って生まれた才能と、人を捨てるほどのたゆまぬ訓練で得られたこの奥義。
―――手は綺麗に。
才能の無い如月双七とは、速さも動きも何もかもがレベルが違う。
右腕を後ろに引き、弓のようにギリギリと引き絞る。
―――心は熱く。
一乃谷愁厳の技に対抗するは、円運動が基本の九鬼流において数少ない直線のベクトルを持つ技。
九鬼流の絶招には全て大工道具の名を冠してある。これはその名の通り、手刀を相手に突き刺す技だ。
―――頭は冷静に。
戦う理由は人それぞれ。
例え九鬼に一見正当性があろうとも、愁厳にも愁厳なりの戦う理由がある。
故に、今このとき彼らに共通する言語は剣と拳のみ。
だから、両者が咆哮するのはある意味当然のこと。
「切り裂け! 奴よりも速く!」
「貫け。 奴の心を信念ごと」
九鬼が後ろに引いていた右手を、放たれた矢の如く敵に穿つ!
愁厳の“鋼獅子”を迎え撃つは九鬼流絶招 肆式名山 内の弐!
「“焔錐”!」
「なッ!」
愁厳の端正な顔が驚愕に彩られる。
九鬼が言っていた言葉に引っかかるものを感じた。
そして、一瞬の驚愕は一瞬の躊躇に繋がる。
本来、若干愁厳の方が発動タイミングが早かったはずの“鋼獅子”の速度が僅かに鈍った。
それでも振り下ろされる古青江。
躊躇無く真っ直ぐ愁厳の心臓へと向かう九鬼の手刀。
そして、その愁厳の差が勝負の明暗を分けた。
ドシュッ!
肉を抉るいびつな音。
愁厳の左肩を九鬼の手刀が抉る。鍛えられた九鬼の手刀は下手な刃物よりも鋭い。
手刀が突き刺さった愁厳の肩から血が吹き出る。 愁厳の顔が苦痛に歪み、古青江を手放してしまった
古青江は皮肉にも九鬼には触れていない。 そして、九鬼は追撃することをやめない。
「“焔螺子”!」
“焔錐”を放った右手とは別に、今度は左で螺旋を描いた掌を水月に叩き込む。
「――ッ!」
声を出す暇も無かった。 空気が喉から漏らすことしかできなかった。 それほど強烈な一撃だった。
愁厳は吹き飛ばされながら、ようやくずっと感じていた違和感の正体に気づく。
ひょっとしたら、無意識のうちに気づきたくなかったかもしれない。
妹のためという目的のために、その可能性を無意識のうちに頭から除外していたのかもしれない。
九鬼耀鋼が放った一撃は焔錐と焔螺子。 二つとも、親友である如月双七の使う技ではないか。
そして、如月双七はこうも言っていたではないか。 九鬼流は世界でたった二人しか使い手がいないと。
つまり、九鬼耀鋼は親友如月双七の師匠だったのだ。 ということは、如月双七もここにいる可能性が高い。
如月双七がいれば、今までやってきたことは刀子を幸せにするという目的と完全に矛盾する。
(ああ、俺はなんということを……)
後悔がさざなみのように愁厳の胸を打つ。 脳だけでなく体全体が揺さぶられる。
その思考を最後に、愁厳の意識は途絶えた。
◇ ◇ ◇ ◇
最後に愁厳の体に焔螺子を打ち込んだ姿勢のまま、九鬼は止まっていた。
終わった戦いの余韻を感じ、同時に周りにいるやもしれない第三者の存在がいないか気配を探る。
電車の通過と同時に撃ってきた女ももういない。
武道において最も大事な行為、残心を終了して、九鬼はようやく構えをといた。
一息ついてから九鬼は倒れている愁厳の元へ歩いていった。
殺すことはできなかった。 心臓を狙っていたが、回避されてしまった。
それはそれでいい。 聞きたいこともあったからだ。 愁厳は違和感の正体を得ることができたが、九鬼は最後まで違和感の正体をつかめなかった。
縛り付けて聞き出すか、動けない程度に半殺しにして聞くか、物騒な考えが次々と浮かんでくる。
愁厳の近くまできて気絶中と思われる愁厳の体を睥睨して、ようやく九鬼は愁厳の体の異変に気づいた。
いや、そもそもそれは一乃谷愁厳ではなかった。
服装こそ愁厳が着ていたものと全く同じだが、そこにいたのは愁厳と同じくらいの年頃のの女性だった。
絹糸のような漆黒の髪、愛らしい唇、閉じられた瞼からも深い母性を感じ取れる人形のような顔立ち。
白魚のような肌も合わさって、ハッキリ言って間違いなく美女に分類されるだろう。
愁厳の服はサイズが大きすぎるのか、ブカブカだった。 まぁ、ある一点だけは激しく自己主張してて窮屈そうではあるが。
九鬼が驚いたのはそれだけではない。
手品のように一瞬で人が入れ替わったことも驚嘆に値するが、それ以上に驚いたのが、その美女の顔に九鬼は見覚えがあるということだった。
さて、どうしたものかと九鬼が首を傾げていると、突然美女が目を覚まし、九鬼に向かってお辞儀した。
「お初にお目にかかります。 私、一乃谷刀子と申します。 この度は兄がご迷惑をかけました」
一乃谷刀子、実にゲーム開始から10時間経過して、ようやく手に入れた自由である。
九鬼もまた合点がいったかのようにニヤリと笑みを零した。
「……なるほど、お嬢さんが妹だったのか。 一つの体に二つの精神でも共有しているのか? そうすると名簿の不自然さも納得いく。
しかもその際精神だけならず肉体さえも入れ替わりができるとは……全く神沢市は珍しい人妖が勢ぞろいだな。
そしてそうだ、確かにお嬢さんも一乃谷流とか言っていたな……忘れていたよ。 久しぶりだな」
「久しぶり? 失礼ですが、どこかでお会いになりましたか?」
九鬼が眉を寄せる。
たしか自分はこの怪物のような少女とたしかにカンフュールを使って戦ったはず。
結果は、刀子に人を殺す意志がないために退屈すぎる茶番になってしまった。
いずれ人を殺せるようになったらまた相手をしてやると勝負を預けたはずである。
しかし、ことの仔細を事細かに説明しても刀子は知らないの一言しか返さなかった。
「お嬢さんは一乃谷流で、刀と鞘の二つを使って戦うのだろう?」
「……ええ」
そこで、愁厳に遅れること数分。 ようやく九鬼は違和感の正体を掴めた。
愁厳の剣筋が、かつて戦った刀子の剣筋にあまりにも似ていたのだ。
最も、刀と鞘を使って戦う刀子と刀のみしか使わなかった愁厳では、最後まで確証を得られなかったが。
九鬼が黙りこくって考え事をしている間は刀子も困惑していた。
ようやく外に出られて兄の罪の償いをしようとしていたら、ナンパとは違うだろうが、以前会ってないかと聞かれた。
事情を兄に聞こうにも、兄は九鬼耀鋼との戦闘で気絶したまま。
外に出られたのはうれしいが、今までの時間の大半を気絶していた刀子には圧倒的に情報量不足しているのだ。
「つまり、お嬢さんも双七と同じで俺と出会ってない世界から来た、ということか」
さらに追い討ちでこんな飛躍した理論を聞かされれば、刀子の頭が混乱するのも仕方なかろう。
刀子は聞き返さずにいられなかった。
「あの、一体どういう……」
「ん? ああ、説明したほうがいいか。 まずどこまで知ってる?」
「どこまでとは……?」
「ここにきてから知っている限りのことだ」
「ルールというか……最後の一人になるまで殺しあえというのは知っています。 一回目の放送も聞きました」
「大体のことは知っているということか。 それなら話は早い。 それじゃ、核心だけを話すか。
双七はお前と会ったか?
「そ、双七さんがいるのですか!? ど、どこに――!?」
「落ち着け、衣服が脱げるぞ」
ブカブカの衣服を纏った刀子から艶かしい脚線が覗く。
上半身はなんとか愁厳の衣服で間に合っているが、さすがにウエストの問題はどうしようもない。
今の刀子は上半身はブカブカ、下半身は何もつけてないという非常に男心をくすぐるものである。
最も、こんな場で女に欲情するほど九鬼は若くもないからあまり意味は無いのだが。
あまりにも恥ずかしそうだから九鬼もとりあえずコートを貸してやっている。
「で、だ。 双七と出会ったのは良いが、あの莫迦弟子は俺の容姿に驚いていた。 5年前とは髪の色が違う、眼帯もつけてなかった、とな。
たしかに5年前とは容姿は変わったが、俺はちゃんとこの姿であいつに会ったことがあるのにな。
おかしいと思わんか? お嬢さんも俺と会ったことがないらしいし」
「……何がいいたいのでしょう?」
「簡単なことだ、要するに俺とお嬢さん、双七はそれぞれ違う時間軸から連れてこられたんだ。 平行世界と言ってもいいかもれん。
ここまで来るともはやSFの世界だな。 笑ってくれても構わんぞ」
「……いえ、そのようなことは」
「なに、お嬢さんの兄のやっていることもあながち間違いではないんだよ。
こんなことをできる存在に立ち向かうことの方が無謀だ。 まさに狂気の沙汰というやつだからな」
「あの、一つ質問してよろしいでしょうか?」
今まで頷くことしかしなかった刀子の、初めての積極的な質問に九鬼も快く刀子の質問を承諾する。
「あの、そのようなことをする理由は?」
「理由?」
「平行世界とか、違う時間軸からつれてこられた、というのは了解しました。
しかし、一人一人違う時間軸から拉致するメリットはなんでしょうか?
例えば、私、双七さん、九鬼さんは人妖が存在する同じ世界だから、一つの世界から一度に連れて来た方が手間がかからないのでは?
わざわざ3つ、私と双七さんが同じ世界からかもしれないのでもしくは2つの世界から別々に連れてくるメリットはなんでしょう?」
九鬼もその点はずっと考察していた。
アル・アジフという魔術の知識を持つ存在がいる以上、異世界に干渉できるという能力が主催者に備わっていることは間違いない。
その考えを広げていくと、平行世界への干渉能力を持っていてもおかしくはない。
それくらい人智を超えた現象の数々を主催者は披露しているのだから。 死者の蘇生ができるというのもその膨大な力の片鱗なのだろう。
まぁ、平行世界と異世界を同じ観点で考えると、SFマニアは怒りそうだが。
とにかく、平行世界へ自由に干渉できるという推理が当たったとして、何故そのような面倒なことをしているのかが問題だ。
これに関しては九鬼は最悪の展開を考慮していた。
「そうだな……違う時間軸から連れてくることで知り合い同士に疑心暗鬼を発生させる、というのはどうだ。
言わば、同郷の士だからと簡単に信用させないために、だな。 出身世界が同じなら信用もできるだろうという考えでつるむ奴もいるかもしれん。
同郷の士といえど簡単に信用はさせないし、上手くいけば疑心暗鬼も発生させることができる。
あいつは俺の知っているやつとは違う。 ひょっとして、あいつこそが放送で言っていた主催者の息のかかった人間ではないかと、ね」
「……全く趣味の悪い人間達ですね」
「まぁ、俺の話はここまでだ。 お嬢さんはどうする?」
「……私は、償いたいと思います。 兄の侵した罪を」
「双七には会わなくてもいいのか?」
双七に会う。
双七に好意を抱いている刀子にはこれ以上ない申し出だ。
刀子は一も二もなく頷いた。
「はい、もちろんです」
「なら、双七に会うのはお嬢さんに任せた。 俺は野暮用があるんでな」
九鬼は戦いの最中で別れてしまったアル・アジフの元まで行かねばならない。
アル・アジフにはまだ聞きたいこともあるのだ。
戦闘はさすがに終わっているだろう。 しかし、生き残っている可能性もある。
電車に乗せられるという間抜けな醜態を晒してしまったことに対する礼はいつか必ずしなくてはならない。
「では私は双七さんに会いに行きます。 途中までは一緒でよろしいんですね。
でも、その前に……」
刀子が体をモジモジとさせる。
九鬼も刀子が何故そんなことをやっているのかすぐに気がついた。
服がないのだ。 兄、一乃谷愁厳の服はサイズが大きすぎて入らない。
しかも、嫌がらせなのか主催者は精神体に首輪をつけることはしても、刀子用の服は支給していなかった。
このままでは薄布一枚で戦うとんだ痴女が爆誕してしまう。 それだけは断固阻止せねばならない。
……まぁ、ここには生まれたままの姿で呼び出された男もいるのだからまだマシな方ではあるのだが、そんなこと刀子には知る由もない。
「お嬢さんの支給品になにか衣服はないのか?」
「ブ、ブルマなら……」
刀子の手にあるのはその筋の方々には高い人気を誇るブルマだった。
色は濃紺。 ポリエステル100%が肌に抜群にフィットする。 数年前まで、女子の体操着といえばこれだ、という時代もあったものだ。
時代に波に呑まれ世間からは消えていったが、それでも人々の心からブルマが消え去ることは無いだろう。
さて、このブルマ、十年に一つの逸材とも言えるナイスなブルマだ。
「ナイスブ……いや何でもない」
男子なら、おもわずいい笑顔でナイスブルマ!と言ってしまうところだが、大人の九鬼はそれを根性で乗り切った。
もし九鬼の年齢があと10若かったら親指を立ててナイスブルマ!と叫んでしまうところだっただろう。
げに恐るべきはナイスブルマの魅力なり。
とりあえずブルマーだけでも穿いておけばいいのではないかという言葉が九鬼の口から出そうになったが、セクハラのような気がするので自重した。
あのコートは気に入っているので、ぜひとも返して欲しいところなのだが。
と、その代わりに九鬼の支給品になにか入っていたのを思い出す。
「ああ、俺の支給品になにか服があったはずだ。 サイズはあうか分からんが、それでも着るか?」
「とりあえず、服ならなんでもいいです……」
さて、なにか女物の衣服があったのは覚えているが、それが何か忘れていた九鬼はデイパックに手を突っ込み、それを掴みだす。
九鬼が掴み出した衣服、それは――次の話のお楽しみ。
【F-7 線路沿い/1日目 昼】
【九鬼耀鋼@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品1〜2、日本酒数本
【状態】:健康、肉体的疲労中
【思考・行動】
基本:このゲームを二度と開催させない。
0:アルたちと合流。方角が一緒なので途中までは刀子と同行
1:首輪を無効化する方法と、それが可能な人間を探す。
2:制限の解除の方法を探しつつ、戦力を集める。
3:自分同様の死人、もしくはリピーターを探し、空論の裏づけをしたい。
4:如月双七に自身の事を聞く。
5:主催者の意図に乗る者を、場合によっては殺す。
【備考】
※すずルート終了後から参戦です。
双七も同様だと思っていますが、仮説にもとづき、数十年後または、自分同様死後からという可能性も考えています。
※自身の仮説にかなり自信を持ちました。
※今のところ、悪鬼は消滅しています。
※主催者の中に、死者を受肉させる人妖能力者がいると思っています。
その能力を使って、何度もゲームを開催して殺し合わせているのではないかと考察しています。
※黒須太一、支倉曜子の話を聞きました。が、それほど気にしてはいません。
※アルとの情報交換により、『贄の血』、『魔術師』、『魔術』、『魔導書』の存在を知りました。
情報交換の時間は僅かだった為、詳細までは聞いていません。
※首輪には『工学専門』と『魔術専門』の両方の知識が必要ではないか、と考えています。
※折れたエストックが転がっています。回収するかは任せます。次の話を書くときにはここは削除してください
※九鬼が取り出した衣服が何かは次の書き手氏に任せます。
【一乃谷刀子@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備:古青江@現実】
【所持品:、支給品一式×2、ラジコンカー@リトルバスターズ!、ランダム不明支給品×1(渚砂)、ナイスブルマ@つよきす -Mighty Heart-】
【状態】:健康
【思考・行動】
基本方針:刀子を神沢市の日常に帰す
1:双七に会いに行く。方角が一緒なので途中まで九鬼と同行
2:主催者に反抗し、皆で助かる手段を模索する
3:兄の犯した罪を償いたい
4:服を着たい
【備考1】
【一乃谷愁厳@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【状態:疲労(中)、右肩に裂傷、腹部に痣、白い制服は捨てた状態 精神体、気絶中】
【思考】
0:気絶中
1:生き残りの座を賭けて他者とより積極的に争う
2:今後、誰かに名を尋ねられたら「黒須太一」を名乗る
【備考2】
※一乃谷刀子・一乃谷愁厳@あやかしびと −幻妖異聞録−は刀子ルート内からの参戦です。 しかし、少なくとも九鬼耀鋼に出会う前です。
※サクヤを人妖、尾花を妖と警戒しています。
投下終了しました、
支援ありがとうございます
乙です!
ひゃっほーーぅ!ナイスブ・・・チッ阻止か!!
投下乙!
言葉様、本当に怖いなwww そして鈴が着々と洗脳されていく、と。
どの世界も邪悪ってのには吹いたけど、確かに今の世界は邪悪ってレベルじゃないwwww
刹那と千早の死を知った鈴の反応が気になるところだ。
こちらも投下乙!
すげえ、愁厳と九鬼の戦いも激しいし、捌くと斬るの表現の仕方には脱帽した。
そしてようやく本格的に登場の刀子さん。ひとつの身体にふたつの魂って本当に美味しいなw
ていうか九鬼wwwwww お前もか、と言わざるを得ないぞwwwww
投下GJです
言葉教の不気味な怖さは異常w
そして空気皇に目覚めの時が来てしまった
喜んでいいのか判らない自分がアフォすぎる
>>WA氏
投下乙です
これはユメイさんに心の底から萌える話ですね、わかります
それにしてもこの人たち装備が凶悪すぎる
早くバトルしてくれw
>>Mu氏
こちらも投下乙です
この姉妹は本当に和むなあ
私の脳内ではもちろん姉が言葉様で鈴が妹です
なんだか言葉様も段々と対主催してるように見えてきました
え?最初から対主催?ははは、ご冗談をw
>>MY氏
こちらも投下乙です
九鬼先生が強くてかっこいいです。なごみがいつ茶々いれるのかひやひやしてましたが
強くてかっこいい九鬼先生がクールに回避した時は痺れました
とりあえず最後だけセクハラ自重ww
投下乙
MY氏
ついに刀子登場、待ってました。なごみの策士っぷりが結構怖い
そして、九鬼先生、強くて切れ者でちょっとだけ天然も入っていて素敵だw
投下乙であります
言葉教団、狂っているけど和気藹々で素敵です。次は誰を飲み込むのw
そして九鬼先生対愁厳、戦闘描写が秀逸で脳内で劇中BGM「蛟」が掛かりっぱなし。
あと根性でネタキャラフラグを飲み込む先生にワロタ
両氏共GJ
投下乙です。
ナイスブルマに耐えるとはさすが九鬼先生!
王子様になりかけた双七といい、九鬼流はもう空気流卒業ですね!
そして目覚めた我らが空気皇!
どんな服が出てくるか楽しみですよ。
ところで名簿上の同じ名字は古河さんとこの父娘もいると思うのですが。
したらばのほうにwiki収録時に対応と報告が来てる
ちなみに全部でこれだけの組み合わせがある
同姓 一乃谷・如月・古河・棗・(吾妻)
同名 マコト・ナギサ
姓名 サクラ
今クロスチャンネルプレイしたけど……凄い余韻残るな。
個人的には太一には「人間」になってから参加してほしかったが。
でも太一いいキャラだな。
ここまで癖が強い主人公ってメジャーギャルゲじゃ少数かも
雑居ビルの一室の中、違和感が残る右手を羽藤桂はゆっくりと握り締め、再び開く。
その動作を何回か繰り返す。鈍い痛みが右腕を覆う。
まだ握力は全然戻っていない。何とか動かせる、物を掴む程度にしかすぎない。
いまだ右腕に感覚は戻ってきてはいない。
自分の腕なのにまるで他人の物のようだった。
いや、比喩でも何でもなくその腕はつい先刻ほど前まで自分の腕ではなかったのだから。
「桂……右腕の調子はどうだ?」
「う〜ん……まだうまく動かせないよ」
「まあ当然であろうな、と言うかこの短時間で体組織の結合が
行われている事のほうが驚きだな。さすが贄の血の効果と言った所であろうか
その腕がなじむにはまだ時間が掛かるだろう」
「わたしだけじゃないよ……サクヤさんのおかげだよ」
桂は鏡に映る自らの姿を見て言った。
鏡に映るはまだあどけなさが残る年頃の少女。
血に汚れていることを除けばそれまでの羽藤桂と何ら変わりはないように見える。
その両眼の瞳を除いて――
「わたしの目……サクヤさんと同じだね」
かつてその目にあった茶色の瞳はそこにはなく、
代わりに肉食獣のように爛々と輝く金色の瞳がそこに宿っていた。
それこそが彼女が人でなくなった事の証だった。
◆ ◆ ◆
衛宮士郎によって右腕を切断される重症を負った桂。
適切な処置を行わなければ失血死の危険があるほどの大怪我だった。
だが浅間サクヤの血を投与することによって彼女は一命を取り止めた。
千年以上の時を生きる観月の民、浅間サクヤ。
人にあらず者の、鬼と呼ばれる種族の血を与えられることによって桂は瀕死の状態から蘇った。
――人としての人生を引き換えにして。
鬼の血を与えられた人もまた鬼となる。
永遠の時を生きるという呪いを与えてしまう。
己の知人が皆老いで天寿を全うしたとしても、自分は老いることもなく時の牢獄に繋がれてしまう。
だからサクヤは一度、死にゆく蒼井渚砂を前にして自らの血を与えることをしなかった。いや、出来なかった。
だが、桂は願った。
愛する人となら永遠の時を過ごすことにもなってもいい。
人としての人生を捨ててしまってもいい。
サクヤと共に生きられるのであれば――
そうして桂は鬼となった。
だがその直後、桂とアルとサクヤは再び衛宮士郎の襲撃にあう。
士郎の超長距離射撃。否、その威力は砲撃と言っても過言ではないだろう。
士郎の命を削った必殺の一撃、カラドボルグ。
ミサイルに匹敵する威力の攻撃からサクヤは桂を庇い死んだ。
桂の目に飛び込んだのは愛した人の無残な姿。
吹き飛んだ下半身、落ちる最愛の人の首。
桂の心に悪鬼が鎌首をもたげる。
サクヤのいない世界に一体何の意味があるのか?
サクヤを奪ったこの世界が憎い。
憎しみが桂の心を塗りつぶしてゆく。
自らの心が悪鬼に囚われる前に命を断とうとする桂にアルの言葉が響く。
千年以上に渡って悪と戦い続けた魔導書の精アル・アジフ。
彼女は何度もマスターを失いながらも己の道を見失うことはなかった。
桂はその彼女が見込んだマスターなのだ。その程度の憎しみに囚われ果てるような者ではない。
『汝のたいせつなもの達がそう願うから!
そして、なにより……妾が汝に生きろと願うから!』
彼女を想う人はひとりだけじゃないのだから―――
◆ ◆ ◆
「しかし……そのようなお粗末な外科処置で本当に大丈夫なのか?」
アルは桂の右腕の縫合面に視線を移す。
黄色っぽい硬質の糸の様なもので切断箇所と腕を強引に繋ぎとめているだけである。
「んー……普通の人なら絶対ダメだと思うけど今のわたしなら、ね」
「だからと言って釣り糸と裁縫針で傷口を縫う発想は無かったぞ」
専門的な医療知識も技術もない桂とアルが取った応急処置。
無理矢理糸と針で右腕を繋ぐ。
医療用の縫合糸と針は近くの商店で調達した釣り糸と裁縫針で代用した。
その後繋いだ腕に、贄の血を飲ませたアルが治癒魔法をかけ続ける事によって、
何とか動かせる程度には回復したのである。
「ねえねえ、わたしの血どんな味だった?」
「そうだな……前に比べると味がややくどくなった感が……って何を言わせるか!」
アルは恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「やっぱり味が変わったのはサクヤさんの血が混ざったからなんだよね……」
この島を覆う正体不明の力場は特殊な能力を持った者の力を大幅に減衰させる。
それはサクヤの血とて本来はその例外ではない。
仮に蒼井渚砂にその血を投与したとしても、彼女は鬼として蘇ることはなかったのだ。
だが桂は贄の血という特殊な体質を持った人間。その血液はあらゆる人外の者の力を増幅させる。
贄の血はサクヤの鬼の血を活性化させ、その傷を癒す結果と至ったのだ。
◆ ◆ ◆
ここで少し時間を戻そう。
絶望の淵に立たされるも希望の光を見出した桂は生きる決意を固めた。
その後彼女は再びクレーターの残る爆心地へ戻って来た。
何のためか?
重症を負った子狐の尾花を保護するため。
そして最愛の人の埋葬をするため――
クレーターとなった道路はアスファルトごと地面が抉れ、土がむき出しになっている。
桂とアルは結局そこにサクヤの遺体を埋めることにした。
残念なことにこの周囲はビルが立ち並ぶ繁華街となっており土の出てるところは見つからない。
土のあるところまで移動したいところだが、
死体を担いで移動する姿を他人に見られでもしたらあらぬ誤解を招いてしまうかもしれない。
だからこの場所にサクヤを埋葬することにした。
半分になってしまったサクヤはとても軽かった。
サクヤがその身を犠牲にしてまで救った自らの命、
その彼女の想いを忘れ後を追おうと自ら命を断とうとした己の浅はかさを痛感し、桂は泣いた。
泣き崩れ、眠るサクヤに『ごめんなさい』と謝る桂ををアルはやさしく抱きとめた。
サクヤを埋める前に桂は一つの決心をする。
桂がサクヤと共に生きた証、そして自らの業を忘れないための印を刻むため、
失った自らの右腕にサクヤの右腕を移植すると。
桂は保存してあった自分の右腕をサクヤと共に埋めた。
アルはそれで良いのかと彼女に問うた。
桂は黄金色の瞳をまっすぐにアルの翡翠色の瞳に向け静かに頷いた。
桂の想いはサクヤと共に、
サクヤの想いは桂と共に、
絡み合うアカイイトは永遠に。
◆ ◆ ◆
「しかし……その両腕のアンバランスさは何とかならんのか……」
「うー……だってサクヤさんとわたしじゃ体格が全然違うもん」
長くしなやかでそれでいて力強さを兼ね備えた右腕に比べどうしても見劣りする桂の左腕。
身長157cmの桂の身体に身長175cmのサクヤの右腕を移植したため、
その長さはどうしても左右で違って見えてしまっている。
一見すると異様な姿だ。
「あった人間にどうやって説明するかが悩みどころだ……」
「えっとね右腕に包帯でぐるぐる巻きにすれば誤魔化せるかも」
「余計に怪しまれるだけと思うのだがな……」
腕に巻かれた包帯の言葉にアルは赤毛の少年の姿を思い出していた。
左腕を肩口から覆う赤い布を纏った少年。
彼の放った正体不明の砲撃。
そして追撃を行う様子がない奇妙な行動。
今はまだ彼についての情報が少なすぎた。
「ねえアルちゃん……」
「どうした桂よ」
「尾花ちゃんどこ行っちゃったんだろう……」
桂とアルが戻った時にはすでに尾花の姿は忽然と消えていた。
あの怪我でそう遠くは行けないはず。しかし、周囲を探しても尾花の姿は見つからなかった。
そしてもう一つ不審な点。
サクヤの首輪がデイパックとともに何者かによって持ち去られていたのだ。
「単純に考えるとサクヤの荷物を持って行った者が連れて行ったと考えるのが自然であるが……」
「わたし尾花ちゃんにひどいことして……尾花ちゃんに謝りたいのに……」
「桂……」
沈む桂の表情。アルは半ば話題を変えるように言った。
「あの尾花という子狐……あやつは何者なのだ?」
尾花は怪我をしても全く声を発することが奇妙な白狐。
「わからない……葛ちゃんが連れていた子狐ぐらいしか……」
尾花……その正体は一言主と呼ばれかつて葛城山を根城にしていた言霊の神。
「吾は悪事も一言、善事も一言、言い離つ神。葛城の一言主の大神なり」と古事記にも
その名を連ねる有名な神であった。
だが今は言霊を封じられ無力な一匹の子狐へと身を変えられてしまっている。
「まあ心配するな。傷を負った子狐をわざわざ連れて行く者だ。
そう無碍には扱わぬだろう。サクヤの荷物だけしか興味ないものが尾花を連れて行くとは考えにくいからな」
「そうだね……」
桂は少しほっとしたような表情でアルを見つめる。
(なぜ桂のような心優しい少女が、このような目に遭わなければならぬのだ?
人としての人生を失い、大切な人をも目の前で失った。なぜこの世界は彼女に過酷な運命を背負わせる?
そのような運命なぞ、この妾だけで十分だ……!)
アルは元より人類に仇名す存在と戦うために生み出された存在である。
故に自らに課せられた運命と使命はとうの昔に受け入れているし、その覚悟もできている。
だが桂は……そんな自分とは違う。平和な日常を、闇に属する自分とは正反対の、
光差す世界の人間。なのに運命は桂を弄ぶ。
それでも懸命に生きようとする桂の姿に歯がゆさを覚える。
自分はなんて無力なのだと―――それでも最強の魔導書なのかと。
「桂よ、これだけは忘れるな。汝は決して一人ではない。汝の心はサクヤと共にある。
死してなおサクヤの想いは汝に受け継がれておる。そして妾もいる。
だから……決して己の道を見誤るな。汝は一人で生きているのではない」
「うん……」
アルの問いに桂はこくんと頷く。
真っ直ぐな瞳をアルに向けて。
「わたしの命ははサクヤさんに貰った物。サクヤさんの想いを無駄にしないためにもわたしは生きる。
時には迷う事もあるけれど……それでも自分の命を粗末にしない。――――この右腕にかけて!」
右腕をぐっと握り締め前に突き出す桂。
誇りと思い出を胸に彼女は決意する。
その時だった。
『かなーしーみのーむーこーうーへとー』
「「!?」」
突然鳴り響く歌声。
その歌声はアルのデイパックから聞こえている。
桂とアルは顔を見合わせ恐る恐るデイパックに近づく。
歌は今もなおデイパックから聞こえている。
「アルちゃん……?」
「開けるぞ……いいな……?」
響く歌声をBGMにしてアルはゆっくりとデイパックを開ける。
すると光を明滅させながら震え、歌声を発する携帯電話が中に入っていた。
「携帯……電話……だと?」
アルはそっと携帯電話を手に取る。
その瞬間、音と震動が止んだ。電話を掛けた主が切ったからなのだろう。
アルはそっと携帯電話を開く。
『着信 1件』
とディスプレイに表示されていた。
いまいち携帯電話の扱い方が分からないのかまごまごするアルに桂が声をかけた。
「アルちゃん、ちょっとその携帯電話見せて」
「あ、ああ……」
桂はアルから桂帯電話を渡され操作する。
しかし、勝手のわからない他人の携帯電話というものは中々操作し辛い上、
利き腕が満足に動かない桂は左手で携帯電話を操作してるためやたら時間が掛かっていた。
「何をやっておるのだ桂」
「だって……右手がちゃんと動かないんだよっ、左手で操作するのは難しいんだもん」
ぶすっとした表情のまま携帯電話の着信履歴のページを開く。
そこに載っていた数字の羅列は桂がよく知る電話番号だった。
「これって……わたしの携帯の番号……」
「何……?」
「うん、間違いないよ。これはわたしの番号……でもどうして?」
着信履歴を見ると留守番電話サービスからの伝言もあった。
その瞬間再び携帯電話が震え、音を発した。
「メール受信中……発信者はこれもわたしの携帯からだよ」
正体不明の人間から届いた着信とメール。
しかもその送り主は自分の携帯電話からと来ている。
まるで恐怖映画のワンシーンのような状況に桂は身体を震わせる。
「ど、どうしよう……」
「どうにもこうにも……まずは伝言を聞くべきだろうな」
「そうだよね……」
桂は震える指で伝言サービスに繋がるボタンを押す。
数回の呼び出し音のあと留守番電話サービスに繋がった。
『AUO(英雄王)留守番電話サービスだ! 貴様ら雑種のために我が伝言を預かってやっているぞ!』
「ちょっ……何これ……」
聞き覚えのある男の声が電話から聞こえる。
この声は紛れもなく電車のアナウンスを行っている男に間違いはない。
一体この人は何をやっているのだろうとため息をつく。
『メッセージは1件だ心して聞け!』
『メールを送りましたので見てください』
と、女の声が一言だけ入っていた。
「……なんだろう」
「まあメールを見ないことにはわからんな」
桂は受信ボックスを開きメールの有無を確かめる。
受信ボックスの中には一通だけメールが入っており、それ以外のメールは見当たらない。
桂はメールを開いてみた。
Date:イヘガ檸ッ鬱`*アヴォ纏{?
from:祀コ<羅ギジュゥ爛ソ
Sub:
――――――――――――――――――――――――――――――――
1.桂言葉は死者の中から生き返った
2.皆と団結して、主催者から生き返りの力を奪おうと考えている
3.死人から取った首輪を持っている
4.伊藤誠、西園寺世界、清浦刹那、如月千早を探している
5.参加者が元の世界で使っていた電話番号、メルアドを知りたい
6.魔術、特に魔道書の詳しい情報を求めている
―――――――――――――――END――――――――――――――――
日付と送信元アドレスは文字化けしており件名は何も無し。
本文には簡潔に以上のことが書かれていた。
「これどう思う?」
「一番ありうる線は主催側の情報撹乱工作だが……それと決め付けるのは思考停止だ」
「ならこれは本物だと思ってもいいのかな……」
「桂、この携帯の持ち主は分からぬか?」
「ちょっと待って、調べてみるよ」
桂は携帯電話を操作してこの携帯の所持者を調べてみる。
大抵の携帯電話はプロフィールを見れば誰のものかわかるはず。
桂はプロフィールのページを開くとそこには『伊藤誠』の名前が書かれていた。
それと同時にアドレス帳を開いてみる。
桂言葉……西園寺世界……清浦刹那……黒田光……澤永泰介……
何人かの電話番号とメールアドレスが登録されていた。
「この携帯のプロフィールから持ち主が『伊藤誠』というのはほぼ間違いないだろう。
メールの文面と参加者名簿を照らし合わせると、『伊藤誠』『桂言葉』『西園寺世界』『清浦刹那』が
この島に連れて来られている。まあ名簿に載っていない人間の名前は除外して良いだろう。
そうなるとこのメールは『伊藤誠』を知るものが桂の携帯を使って送信されたのであろう。
送信者は『伊藤誠』『西園寺世界』『清浦刹那』を探している。『如月千早』はこの島で出会った人間なのだろう。
つまりこのメールの送信者は――」
「『桂言葉』が送信者なんだね」
「ああ、何者かが『桂言葉』騙っている可能性もなくはないが……」
「メールの内容はどうかな……」
「見る限りでは妾達と同じく仲間を集めてこの島からの脱出を願っている者だと思うのだが……
1と2の文面が少し引っかかる」
送信者である桂言葉は死者の中から生き返った。
普通ならこんな与太話信じるはずはないのだが、桂は知っている。
一度滅びたはずの双子の鬼が再び現れたことを。
「1については桂の話からその可能性が十分ありえるのだが……2がちょっとな
主催が死者の復活を行える、だからその力を奪うなんていう思考は飛躍しすぎるような気がしてな」
「うーん確かに……でもこの人は首輪を持ってるんだよね? もしかしたら首輪を外せるかもしれないよ。
それに魔術に詳しい人を探してるって……」
「ま、世界最強の魔導書たる妾に知らない魔術は無いと言っても過言ではないがな」
「だから、電話をかけてみようよこの人に。何もしないよりはずっとマシだよ!」
「……わかった。やってみようぞ」
「うん!」
桂は思い切って着信履歴から送信先の電話番号をリダイヤルすることにした。
死者からの電話は彼女達に何をもたらすのだろうか?
【チーム『天然契約コンビ』】
【G-6歓楽街・雑居ビルの一室/1日目 昼】
【羽藤桂@アカイイト】
【装備】:今虎徹@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜
【所持品】:支給品一式、アル・アジフの断片(アトラック=ナチャ)
魔除けの呪符×6@アカイイト、古河パン詰め合わせ27個@CLANNAD、誠の携帯電話@School Days L×H
【状態】:強い決意、全身に擦り傷、鬼、アル・アジフと契約、サクヤの血を摂取
【思考・行動】
0:まずは桂言葉?に電話する
1:尾花の行方が心配
【備考】
※古河パン詰め合わせには様々な古河パンが入っています。もちろん、早苗さんのパンも混じってます。
※魔除けの護符は霊体に効果を発揮する札です。直接叩き付けて攻撃する事も可能ですし、四角形の形に配置して結界を張る事も出来ます。
但し普通の人間相手には全く効果がありません。人外キャラに効果があるのかどうか、また威力の程度は後続任せ。
※マギウススタイル時の桂は、黒いボディコンスーツに歪な翼という格好です。肌の変色等は見られません。
使用可能な魔術がどれだけあるのか、身体能力の向上度合いがどの程度かは、後続の書き手氏にお任せします。
※制限によりデモンベインは召喚できません。
※B-7の駅改札に、桂達の書いたメモが残されています。
※桂はサクヤEDからの参戦です。
※桂は、士郎の名前を知りません(外見的特徴と声のみ認識)
※桂はサクヤの血を摂取したお陰で、生命の危機を乗り越えました。
※サクヤの血を摂取した影響で鬼になりました。身体能力が向上しています。
※失った右腕にサクヤの右腕を移植しましたが、まだ満足に動かせる状態ではありません。
※憎しみに囚われかけていましたが、今は安定しています。しかし、今後どうなるかはわかりません。
【アル・アジフ@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式、ランダムアイテム×1
【状態】:魔力消費小、肉体的疲労小、羽藤桂と契約
基本方針:大十字九郎と合流し主催を打倒する
0:電話の内容を聞く
1:桂と協力する
2:九郎と再契約する
3:戦闘時は桂をマギウススタイルにして戦わせ、自身は援護
4:信頼できる仲間を探す
5:時間があれば桂に魔術の鍛錬を行いたい
【備考】
※制限によりデモンベインは召喚できません。
※B-7の駅改札に、桂達の書いたメモが残されています。
※アルは士郎の名前を知りません(外見的特徴と声のみ認識)
※アルからはナイアルラトホテップに関する記述が削除されています。アルは削除されていることも気がついていません。
※アルはサクヤと情報交換を行いました。
※桂の右腕はサクヤと遺体とともにG-6に埋められています。
代理投下終わりました。
支援ありがとうございます。
そして感想です
とうかGJです。
このコンビは助け合っていいなあ。
誠の電話は桂の手に。
さあ電話をかけたかどうなる?
GJでした
投下乙です
この二人は言葉教団の軍門に下ってしまうのか!?
そして桂はサクヤさんの右腕を移植…長さがアンバランス…
妄想心音とか使うわけですね、わかります
投下乙です
再び天然契約コンビの2人旅が始まるな
とはいえ、九鬼先生もこちらに向かってるし、言葉教ともコンタクトをとるからどうなるか分からないが…
2人とも自分をしっかり持ってるから洗脳されはしない………ハズ
言葉様が桂を洗脳するのか
桂が言葉様を百合世界へ引きずり込んでしまうのか…
色んな意味で目が離せない二人の対談、どうなる?
GJです
投下乙。
おお、桂ちゃんの右腕が不思議な方向にwww これで宝具とか発動したら笑うwww
そして言葉様との対談か……死者蘇生の可能性やらなんやら、このままでは桂ちゃんが言葉教に入信してしまうw
そして英雄王留守番電話サービスセンターwwwwwwwwwwwなにやってるんだギルガメッシユwwwwwwww
ハサンの肉体改造スキルだけど、
ティトゥスみたいに手を増やすことはできるのかな?
後ろに二つみたいな。この辺りはグレーっぽいが。
元ブラコンで堅物な烏月さんを約三日で桂の服を脱がそうとしたり
プロポーズしたり一緒に自殺しようとしたりする
ガチrに開発してしまった桂ちゃんを侮ってはいけません。
投下乙です
お留守番サービスは巧いw
敢えてアンバランスな移植をする桂ちゃんに萌え
電話と百合フラグは残念になっちゃいましたが、果たして
羽藤桂たちを爆撃した後、衛宮士郎はカジノへと退避していた。
あの三人を一撃でまとめて葬り去った自信はある。
投影魔術を利用すれば必殺を約束されなければならない。
アーチャーの宝具である『偽・螺旋剣(カラドボルク)』による爆撃を防がれたとは思えない。
だが、もしもの可能性を考えて狙撃を行ったビルから退去。
投影魔術を使った衝動で爆発しそうになる体を強引に押さえ込みながら、士郎は近場の建物へと転がり込む。
そこがカジノだったわけだが、今の体調では戦えない。落ち着くまで身を隠すことにした。
「ギ……ぐっ、あ……!」
爆散しそうな意識を繋ぎ止める。
身体の内側から侵食される悪寒と恐怖と違和感が、際限なく衛宮士郎の身体を貪る。
人間としての細胞が作りかえられていく。
消えそうになる自分を必死に繋ぎ止めながら、士郎は歯を食いしばって耐え続ける。
喰われていく。
衛宮士郎という存在そのものが、内側から食い散らかされていく。
「くっ……そっ……!」
かつて、確かに言峰綺礼に警告された。
使えば時限爆弾のスイッチが入る――――使えば、確実に破滅への道を歩くことになる。
どう足掻こうと後戻りできない、容赦無用の自殺衝動(アポトーシス)。
それを承知の上で、衛宮士郎はそれを行使した。
桜は、どうしているだろうか。
怖い目にはあっていないだろうか。
痛い目にはあっていないだろうか。
苦しい、と。助けて先輩、と泣いてなどはいないだろうか。
あー、すいません。容量の関係で投下できないようですので、やはり新スレのほうで投下させていただきます。
ご迷惑をおかけしました。
照りつける陽光の下、コンサートホールは静寂に包まれていた。
100人単位の人数が入りそうな巨大な客席に、無数に存在する控え室などの小部屋。
常ならば、そこは美しい演奏や歌声、もしくは上演を待ちわびる客達の喧騒が満ちているはずなのだろう。
だが今、ここに音はない。
音楽を奏でる奏者も出番を待つ役者も、演奏を心待ちにする客達もいない。
その場には無音、ただそれだけが広がっていた。
ならば、ここには何者も存在しないのか?
否。
そこには、一つの影があった。
まるで幻影のように、水銀のように動くそれには名前はない。
いや、かつてはあったと表した方がいいかもしれない。
ともかく、ここでは便宜上、怪人と呼ぼう。
その怪人は音もなく、気配もなく、まるで空間をわたるようにホールの中を移動している。
ある時は、主演女優の控え室に現れ、クローゼット内にあったドレスを持ち去った。
ある時は、大道具用の作業所に現れ、そこに保管されていた缶や石材数個を懐に入れた。
ある時は、昼でも暗い舞台裏に現れ、その場に放置されていた麻縄を手にして消えた。
ある時は、手狭な小道具倉庫に現れ、棚から数個のガラス瓶やハサミを持ち出した。
それは、実態のない亡霊のように劇場内を徘徊する。
やがて……ホールの静寂を引き裂き、破砕音が一度だけ響く。
破壊されたのは小さな植木鉢。
破壊したのは無論、怪人だった。
怪人が手にするのは、麻縄とドレスを切り裂いた布切れとで作った奇妙な物体。
袋状になった布切れ部分に石材をいれ、無言で回転運動をかける。
それは手の動きにあわせて動きを加速してゆき……やがて、それから放たれた石が植木鉢をさらに破壊した。
◇◇◆◇◇
スリング。
日本では印地とも呼ばれるそれは、弓が登場するまで戦争の主力として使用されていた技術である。
手に片端を括りつけた投石器に石を入れ回転させ、石に遠心力をかけて放つ。
高速の回転から放たれたそれはまさに弾丸であり、当たり所が悪ければ即死は免れない。
投石の手だれである少年が大男を倒したという伝説もある事から、その威力は推して知ることが出来るだろう。
◇◇◆◇◇
腕につけた投石器を回転させ、三度、植木鉢を砲撃。
全弾が鉢に命中したにも関わらず、怪人には感慨がある様子もない。
ただ無言で石を拾い集め、懐に。
続いて取り出した、もう一つの弾丸――小さなガラス瓶を投石器にセット。
大道具部屋にあったシンナーが入ったそれに回転運動をかけて、植木鉢を四度目の攻撃を加えた。
容器の割れる音と共に何とも言えない臭いが広がるが、怪人はそれを気にも留めない。
ただ確認は終わったとばかりに踵を返し、そこから姿を消した。
無音。
ホールは再び静寂に包まれる。
残されたのは破壊された植木鉢のみ。
今度こそ、ここには何者も存在しなかった。
【F-3 コンサートホール付近/1日目 昼】
【支倉曜子@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
【装備】:斧、投石器、全身に包帯、トレンチコート(男物)、バカップル反対腕章@CROSS†CHANNEL
【所持品】:石材3個、シンナー入りガラス瓶3個
【状態】:肉体疲労(大)、右半身大火傷(処置済み)、胸部に激痛(処置済み)、右目が充血(視力低下)、髪を切りました
【思考・行動】
基本方針:太一の為に、太一以外を皆殺し。
1:ゲームの参加者を見つけたら殺す。
2:人間でなくとも生きているなら殺す。
3:動いたら殺す。動かなくとも殺す。
4:話しかけてきても殺す。無言でも殺すし、叫んでも殺す。
5:泣いても殺す。怒っても殺す。笑っても殺す。
6:投石器で殺す。なくなったら斧で殺す。殺したら相手の武器を奪ってそれでまた他の人間を殺す。
7:殺す。
8:(…………………………………………太一)
【備考】
※登場時期は、いつかの週末。固定状態ではありません。
※佐倉霧、山辺美希のいずれかが自分の噂を広めていると確信。
※支倉曜子であることをやめました。
※H&K_MARK23は破壊されました。
投下完了です。
投下乙。
おお、曜子ちゃんが投石器をwww
銃を失ったら迷わず別の武器を作り出すとは、さすがは理性の怪人だw