もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら14泊目
まだ夕方でもないお昼過ぎ。頭上を鳥が飛び交う。
森の広い道を抜け、大きな平原に出る。足元の草はくるぶしまでしかない。
そして、平原の入口から50mもないところ。左右に広くそそり立つ、灰色の壁!
横幅は、100・・・・200・・・・・なんてもんじゃない。でかすぎる!
壁の中央には、壁から垂直に切り出され、上が開放された入口がある。
入口の横幅もかなり広い。駅前から伸びる、大きな道路くらいある。
壁の中の奥まで、まっすぐ同じくらいの幅の道が続いているようた。
入口左の壁には・・・・入口を塞ぐ引き戸だろうか、石の板らしきものが見える。
僕らは入口に向かってゆく。
・・・・・・入口の両サイドには、甲冑を身に纏った兵士が2人ずつ、合計4人立ち、
こちらに向いている。さっきはわからなかったが、手に槍を持っているようだ。
頭の位置から察するに、壁の高さは4mくらいだろう。
壁の向こうから、屋根の平らな建物が何戸か突き出ている。特に、入口のすぐ上には
見張り台らしき塔が覗いており、兵士が一人こちら見ている。
入口から平原のほうに、少しだけ埋設された石畳の道路が伸びている。
その周辺の草はさらに短く刈られている。
僕らの前に何人かの先客がいたようで、入口で兵士と接触し・・・・・中に入った。
そして、兵士の頭上、左右の壁の入口側最端部の上に、大きく丸い玉があり、
さらにその上に、四本足で立ち、正面を向き、たてがみを揺らせ、吼え猛る様を象った、
獅子の全体像が置かれている。
また、左の壁の引き戸にも、一面を使い獅子の顔が彫られている。
あぁ、そうか。ここが・・・・・キング
そこでジークさんがこちらに向きなおり、僕に話しかける。
ジーク「ようこそ!教育の国、レオ王国へ!
お城の方々も、学校の皆さんも、みなさんきっと、あなたを歓迎してくれます。
さぁ、中へ入りましょう!」
ここが・・・・・・・・・。いよいよ来たのだ。キングレオ城に。
ここで僕は・・・・・・・何と言えばいいのか、いったいどうなるんだろう。
ジークさんと僕は、入口に歩を進めた。
アーシュ
HP 13/13
MP 0/0
<どうぐ>携帯(F9001) E:パジャマ 革のくつ
ジーク=カナッサ
HP 21/21
MP 0/0
<どうぐ>いろいろ E:布の服 聖なるナイフ
今回は文字数と改行のエラーが出たため、保管庫にアップする文と幾分体裁を変更しています。
正式な文は保管庫にアップしますので、もう少々お待ちください。
乙です!
GEMAです。
第19話投下します。
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登校中に曲がり角でぶつかった相手が運命の人でした。
ん〜、たまんねぇなぁ。このシチュエーション。食パンを咥えてないのが実に惜しい。
まぁ、この場合ぶつかってきたのは子犬だけど、あの飼い主の顔。
ホッペをピンク色に染めて、ぼんやりしちゃってさ。
あら…行っちゃった。まぁ、最初の出会いってのはこんなもんか。
さて、ウブでジュンジョーなサトチーはどんな間の抜けた顔をしてるのかな。
「ねぇ、イサミ…」
「ん?どうした?」
ホイ来た。どうした?サトチー。
ドキがムネムネする…か?そりゃあ『恋』って言うんだぜぇ。
ほれ、何でも相談してみ。おにーさんが相談に乗ってやるぜぇ。
「あの娘、急に黙っちゃってたけど…僕の子犬の扱い方そんなに悪かったかな?」
こ…このフラグクラッシャーがぁ!
「モンスター達の相手は慣れてるんだけど、子犬の扱いはよく知らないんだよね」
「いや、子犬の扱いは問題ないけどさ。強いて言うなら人間の扱いかな」
きょとんとしているサトチーの背を叩き、今日の宿を探す。
まぁ…な、サトチーにとって今の一番の目標は天空の勇者と母親の事だもんな。
硬派って言うか何て言うか…
「お前のご主人はこれから旅とは別で苦労しそうだなぁ」
ちょこちょこと横を歩くブラウンに話しかける。
ブラウンはブラウンで俺の顔をじーーーっと見つめてきょとんとしている。
西方大陸一の商業都市サラボナ。
周囲を険しい山とそれに連なる活火山、そして入り組んだ水路に囲まれた街。
代々この町を治める富豪の一族は、一国家に匹敵する財産を所有しており、
その富豪一族を相手に商売を目論む商人達が険しい山道を越えて足を運ぶ事で
決して交通の便が良くないこの静かな街は様々な物資で満たされている。
「数百年前、巨山の如き怪物がこの街を襲撃した際、富豪一族の先祖に当たる人物が
その怪物に挑み見事撃退。それ以来、街の東に建設された塔から世界の動きを窺い、
直接の政治的影響力は持たないまでも、代々西方大陸を統治し続けている…か…」
宿のロビーに置かれたタウンガイドをペラペラとめくり、窓の外を見やる。
行き交う商人と町の人達、道沿いには家々と商店に並んで荘厳な聖堂が建つ。
そして、その聖堂さえも小さく見えるような豪邸…あれが例の富豪の住居なのだろう。
反対側に顔を向けると、町の外壁の外側に高くそびえ立つ塔が町に一本の影を落とし、
その背景には火山から絶え間なく吐き出される白い噴煙が見える。
こっちはこっちで奇妙な光景だな。
「で、天空の装備品の一つをその富豪が所有しているんだって?」
「うん、ヘンリーとデール王が調べてくれた事だから間違いはないと思うよ」
「すんなりと貸してくれればいいんだがねぇ」
大事な家宝…しかも、伝説に残る天空の勇者ゆかりの盾。
それを素性の知れない一介の旅人にすんなり貸してくれるお人好しがいるかね。
「難しいかもしれないね…それでも、正直にお願いしてみるしかないだろうね」
「まぁ、それしかないよな」
腕の中で大人しくしているブラウンのフカフカな首筋をそっと撫でる。
見張り塔をゆっくりと見上げたブラウンが、その小さな体をブルッと大きく震わせた。
「ははは…お前は相変わらず高い所がダメか」
今夜の部屋を取ったが、お日様はまだ高い位置から俺達を見下ろしている。
露店の店先から立ち昇る甘く香ばしい焼菓子の香りと、火山地帯特有の微かな硫黄臭が
空気に入り混じったこの街は活気があり、地方の祭りを思わせる賑わいを見せている。
「案内に書いてあったイメージよりも賑やかな街だね。何かのお祭りでもあるのかな?」
「へぇ、祭か。いい所にきたなあ。ん?ブラウンも食うか?おばちゃんもう一本」
フワフワに焼き上げられた生地にドロッと濁った蜜を塗ったサラボナ地方の名物菓子を
露店のおばちゃんから受け取る。
マドルー・バーって菓子らしいが、ネーミングセンスはともかくどっしりした味が
なかなか後を引く…けど、やたら甘いんで喉が渇くなこりゃ。
「あんたらも遠くから来たんだろ?やっぱりルドマンさんとこの花婿候補かい?」
威勢のいい露店のおばちゃんが、ずずぃっとその巨体をカウンターから乗り出す。
花婿?何の事だかわからないけど、とりあえずおばちゃんの巨体にのしかかられて
メリッと嫌な音を立てたカウンターが気になって仕方がない。
「何の話よ?俺達はこの街の富豪さんに用があって来たんだけどさ」
「やっぱりそうかい。競争相手が多いだろうけどあんたらも頑張るんだよ」
そう言ったおばちゃんはブラウンのハンマーみたいなごつい手で俺の肩をパーンと叩き、
露店の奥に引っ込んで菓子を焼き始めた。
「なんか…微妙に話が噛み合ってなかったよな?」
「うん…花婿って何の話だろう?」
「さっぱり掴めねぇ。あ、サトチーちょっとホイミ頼む。肩がビリビリして痛てぇ」
おばちゃんに勢いよく叩かれた肩に、真っ赤な手形がついてる事に気付くのは
その日の夜の風呂の時間。
◇
その辺の民家なら丸ごと収まりそうな巨大な門。
門の左右に鎮座するキラーパンサーの石像。俺の世界の狛犬みたいなもんか?
巨大な権力と伴う畏怖を彷彿させる2体の石像に護られた門は大きく開かれ、
無言のままの石像はその間を通る俺達に鋭い眼光を向けている。
「ふえ〜…確かに城みたいな家だな」
「さすが、この大陸を実質的に治めている大富豪って言われるだけはあるね」
ラインハットの城に出入りしていた俺も思わず目を円くするその巨大で豪華な屋敷。
これが一個人の住居だってんだから驚くよな…って、サトチーはあまり驚いてない。
権力や権威に無頓着なのもサトチーらしいけど、この辺の反応は常人離れしてるよな。
「いらっしゃいませ。もう他のお客様方は屋敷の中でお待ちでございます。
皆様も応接室でお待ち下さいませ」
玄関の掃除をしていたメイドさんに案内されて通された屋敷の応接室。
部屋の中にいた数人の男達の値踏みするような視線が一斉にこちらに向けられ、
すぐにその視線は思い思いの方向に戻される。
それぞれ目を合わせないが、脇目で互いを窺うような奇妙な沈黙。
はっきり言って気まずい。てか、こいつら何よ?
体格のいい粗暴な風貌の男。荷物を背負った行商人風の男。普通の村人っぽい男。
胸の前で手を組んで何かを必死に祈っている優男。
統一感は全く感じられないが、それぞれが背負っているある種の『欲』とか『必死さ』
みたいな物が共通の意識としてひしひしと伝わってくる。
「なぁ、何?この雰囲気…」
「…まさか、この人達全員が天空の盾を求めてる…のかな?」
「マジかよ。競争率高いなぁ」
言葉はない。ただ、それぞれ無言のままの意識下での牽制の応酬。
時折、優男の口からブツブツと漏れる祈りの言葉。
その張り詰めた空気を断ち割るように、重量感のある足音が応接室に響き渡った。
「ようこそ。街で見知った顔もあるようだが、今一度自己紹介をさせて頂こう。
私がこの地方の領主。ルドマン=ドゥエノ=ディアマンテだ」
広い応接室に設置された巨大なテーブルと多数の椅子。
その中でも特に大きく、豪華な椅子に腰掛けた初老の男がサラボナ領主ルドマン。
その身なり、立ち振る舞い、そしてどっしりとした貫禄…それら全てが権力者特有の
雰囲気を放ち、そのカリスマに若干気押される。
思わず背筋を伸ばした俺達一人一人の顔をぐるりと眺め、ルドマンの言葉が続く。
「今日は我が娘フローラの婿候補として多くの頼もしい男達が名乗りを上げてくれた事。
この家の当主として、そして一人の父親としても誇りに思う」
…
……は?
婿候補?何それ?天空の盾じゃないの?え?
じゃあ、ここの連中みんなその婿候補で集まったってわけ?
状況が把握できずに混乱する俺とサトチーにはお構いなしに、話が進む。
「早速本題の花婿選定方法だが、皆には当家に伝わる婚礼儀式を完遂させてもらう。
当家の婚礼儀式は至極単純。当主が定めた宝を愛の証として花嫁に献上する事だ。
今回、皆に探していただく宝は『炎のリング』と『水のリング』の二つ。
この二つを結婚指輪として花嫁に献上し、その愛が本物であることを証明してもらう」
あ〜、こりゃ今更『間違えましたwwサーセンwww』なんて言える空気じゃねえな。
◇
一通りの婚礼儀式の説明が終わり、我先にと応接室から駆け出す花婿候補者達。
椅子の並びを乱したそのままに、だだっ広い部屋は俺達とルドマンさんだけになった。
最後まで部屋を出ようとしない俺達にルドマンさんが不思議そうな顔を向ける。
「君達も急がなくてもいいのか?それとも説明に不明な点でもあったのかね?
まごまごしているうちに他の誰かがリングを持ってきてしまったらそこまでだぞ」
「そうそう、盾の事なんて後で考えなさい。下らない事で悩んでウダウダやってると
あんた達もパパみたいにハゲるわよ」
応接室に繋がる螺旋階段。ちょうどルドマンさんの真後ろに位置する場所。
当のルドマンさんからは姿が全く見えなかったらしく、突然浴びせられたキツイ言葉に
手にしていた上物のワインを取りこぼしそうになる。
「デ…デボラお姉さま。お客様にそんな…」
「あら?これはフローラのために言ってるんだけど?旦那がパパみたいなハゲだったら
私なら耐えられないわ」
階段の中ほどに立ち並んでこちらを見ている二人の女性。
派手な服装の黒髪がデボラ…ルドマンさんにキツイ言葉を投げかけたほうで、
その横に申し訳なさそうに佇む水色の髪のお嬢様がフローラ…あれ?
あのお嬢様は確かさっき街の入り口で…
「まぁ、そちらの方は先程の…あなたも今回立候補して下さったのですね。
ですが、あまり無理はなさらないで下さい。私のために皆様が危険を冒すなんて…」
「さぁ、フローラもデボラも部屋に戻っていなさい。この儀式はディアマンテ家に
伝わる大事な儀式なのだ。中止は絶対にできんのだ」
「パパも毎度毎度よくやるわね。どうせ勝者は最初っから決まってるのに。
まぁ、そのあとに誰が選ばれるかはその時までわからないけどね」
二人の娘を追いやるように階段の上に姿を消したルドマンさん。
今度こそ俺達だけが完全に取り残された形だ。
「結局盾の事は聞けなかったなぁ」
「この家に家宝として代々伝わるって話は確からしいんだけどね」
「家宝ねぇ…」
豪華な調度品に飾られた部屋をぐるりと見渡す。
奇妙な形をした壺。およそ実用的とは思えない装飾が施された剣や鎧が飾られているが
それらしき盾は飾られていないようだ。
さすがに飾って見せ物にしているわけがないよなぁ。
…ん?
他の調度品の煌びやかさにカモフラージュされるように部屋の隅に置かれた宝箱。
サトチーもそれに気付いたようだ。
「これっぽいな。でもどうするよ?」
「うーん…こっそり持って行っちゃう?」
「そうだなぁ…って、ちょっと待て。今何て言った?」
さりげなくヤバい発言をしたサトチーの手が俺の質問に答えるよりも早く箱に伸びる。
そして、例のピッキングでカチャカチャと…
「あ、ダメだ頑丈な鍵がかかってる。タンスや壺に入ってるわけじゃないからなあ。
やっぱりコレは勝手に持って行っちゃマズイみたいだね」
いや、その理屈はおかしい。タンスの中でも壺の中でも勝手に持ってくのはマズイだろ。
…と、思ったがピッキングや不法侵入が公然と行われている世界だ。
今更疑問に思うのも野暮って物かもしれないな。
「あら?あんた達まだいたの?さっき私が言った事聞いてなかったのかしら?」
水差しを片手に階段を下りてきたのはデボラ。
曰く、上の階でルドマンに説教されて『軽く』言い返したら、(恐らく罵声の類)
ルドマンさんの血圧が上がって寝こんでしまったらしい。
片手に持った水差しを俺達にずいっと突き出し、一息にまくしたてる。
「あんた達ってどうしようもないグズね。いいこと?よく考えなさい。
他人にお願いをするなら2つ方法があるでしょ?無理やり言う事を聞かせるか、
その人の信頼を得てからお願いするか。あんた達にできる事はどっちかしら?
まぁ、私なら相手をぶん殴って無理やり言う事聞かせるけどね」
あとはあんた達で考えなさい。とだけ言い残し、デボラは台所へ消えた。
「ルドマンさんの信頼を得る…か…」
「まず、炎のリングは火山にあるって言ってたね…」
胸の前で組んだ指をボキッと鳴らし気合を入れる。
対になったキラーパンサー像の間をくぐった俺達の足が自然に止まり、
もう一度門から巨大な屋敷を見やる。
二階の窓の一つが開け放たれ、その窓から夕陽に向かって手を組み、祈りを捧げる女性。
風にあおられた浅葱色の髪が茜色の光に照らされ、その部分だけが本来の空色に染まる。
乱れる髪を意にも留めず、一心に祈るのは恐らく己の身を危険に冒す男達の安否。
「フローラさんにとっても辛い儀式なんだろうなぁ」
「…きっと本当に優しい人なんだろうね。優しい人はああして一人で胸を痛める…」
一面に広がる茜色に墨を一滴ずつ垂らすように、徐々に空を埋める夜色。
気を利かせた風が白い噴煙を吹き流し、満天の星々が一人の乙女を見守っていた。
イサミ LV 17
職業:異邦人
HP:80/80
MP:15/15
装備:E天空の剣 E鉄の胸当て
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――
〜〜〜〜〜
やっとこさ一大イベントまでたどり着きました。
デボラ姉の髪型は一体どうなってるんだろう?
まさかのデボラ登場!!
そういや原作だと人間は主人公一人だけだけど、
今回はイサミがいるから二人。これは…。
だが、ビアンカさんも忘れちゃなんねぇ
>531
ポルナレフにワラタw
GEMAさんの情景描写が大好きだ
最後のフローラの髪の毛を夕日が照らす表現に惚れた
うん、惚れた・・・。結婚してください〜〜〜。
でも、炎のリングと水のリングとってこないといけないのか・・・。
スレ容量が480KBを超えてますから次スレを立ててきます。
じゃあ埋め代わりに
冒険の書氏の続き、アイラはキーファと同じ感じがすると妹に言われていたから、一旦退場してアイラになって再登場かと予想してたが流石に違ったか
GEMA氏のはこれからデボラがどう絡んでくるかが非常に楽しみだ
541 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/09/05(土) 08:30:12 ID:IWaiznWXO
ぬるぽ
がっ!
>>495-499 ―憤怒なさい布袋―
「気分はどうかな?」
僕を診てくれた病院の先生が話しかけてくる。
「検査の結果も異常なしだ。すぐにでも退院できるよ」
先生はやさしい笑顔で僕に接する。
僕はそんな笑顔を向けられているとは思えないほど沈んだ顔をしていることだろう。
「どこか痛むとか体調が悪いとかあったら遠慮なく言ってね」
僕が無反応なものだから先生はそんなことを言い出した。
「どこも悪くないよ。僕は……」
それだけ言ってまた黙りこんでしまった。
目を覚ましたとき、僕は病院のベッドの上にいた。
僕と兄ちゃんは火事に巻き込まれ、煙を吸って倒れていたそうだ。
そして、病院に運ばれ、ずっと眠っていたらしい。
現実世界で僕が眠っていたのは一週間ほどだった。
僕が兄ちゃんと体験したドラクエ7の世界。
あれは夢だったのだろうか。
目が覚めてすぐ、そう思った。
夢じゃなかったとしたら兄ちゃんはどうなったのだろうか。
僕がゲームをクリアしたことでこの世界に戻れたのかもしれない。
あるいはゲームの出番が終わった時点で先に帰っている可能性もある。
でも、そのどちらでもなかった。
兄ちゃんは僕と同じように眠り続け、未だ目を覚ましていなかった。
あれが夢かどうかわからないまま、僕は現実を突きつけられた。
僕の態度に先生は困ったような顔をしている。
「……貴一君のことかな?」
先生はさっきよりもトーンを落として、それでもやっぱり優しい声で話しかけてくる。
僕は頷いて、そのままうつむいてしまっていた。
「君が目を覚ましたんだ。貴一君も目を覚ますことを信じよう」
先生は励ますように力強く言う。
でも、そんなこと言っても無駄だ。兄ちゃんが帰ってこないことを僕は知っている。
「……夢を見ていたんだ。眠っているとき、夢とは思えないような夢を見た」
僕はあの出来事のことを話すことにした。
こんなことを言っても仕方のないことだけど誰かに聞いてほしかったのかもしれない。
「どんな夢?」
「夢の中で僕と兄ちゃんは冒険をしていたんだ。長い長い冒険だった」
本当に長い冒険だった。
あれが夢だったらどんなにいいことだろう。
「冒険の中で兄ちゃんが僕を助けてくれたんだ。自分を犠牲にして」
先生は少し驚いたような顔をしたけれど、すぐにやさしい顔に戻った。
「それで君はどうしたのかな?」
「冒険を続けて、続けるしかなくって、その冒険が終わったときに目を覚ましたんだ」
「君が目を覚ましたのはお兄さんのおかげなんだね」
はっきりと言ってくれる。
僕は兄ちゃんのおかげで、兄ちゃんの犠牲の上で生かされている。
「君の中でお兄さんは大きな存在なんだね」
そう。大きな存在だ。
大きすぎる存在。
「僕だけ助かって、兄ちゃんは助からなかったんだから」
「だけど、それはあくまでも君の見た夢の話だよ」
僕の話を聞いても先生はまだやさしい口調だった。
「夢と現実は違うものだ」
そうだよね。誰もあんなことが本当にあっただなんて思わないさ。
「先生はね、君だけ助けて貴一君を助けないつもりはないんだ」
「でも……」
「君のお兄さんは生きている。今も必死に戦っているんだ」
ああ、そうだ。兄ちゃんは死んだわけじゃないんだ。
それなのにどうして僕は諦めようとしているだろう。
「夢の中で兄ちゃんが言っていた。生きていることだって奇跡みたいなものだって」
「奇跡か。そうだ、君たちが火事現場から助け出されたことにも運命を感じるよ」
「運命?」
「君たちを助け出した消防士なんだけど彼のことを知っているからそう思うんだろうね」
火事の現場から助けてくれた消防士さんがいたんだ。
「先生は消防士さんと知り合いなの?」
「正確にいえば知っているのは彼の母親の方なんだけどね」
消防士さんのお母さんとどういう知り合いなんだろう。
「彼のお母さんは息子が消防士になることをずっと反対していたんだ」
「うん」
「だけど急に許したんだ。君と同じように長い夢を見て考えを変えたって言っていたよ」
どんな夢だったんだろう。
「君がこうしていることにはいろんな幸運が重なっている。生きていることは奇跡だね」
先生の笑顔に僕は少しだけ口の端を緩めた。
僕の知らないところでもっといろんな運命のめぐりあわせがあるのかもしれない。
「僕は、僕は何ができるかな。兄ちゃんのために何ができるかな」
何かをしなきゃいけない気がした。
どんなことでもいいから。
「お見舞いに来るといい。貴一君に会いに来てあげるんだ」
先生はそう答えた。
「君が夢の中で戦っていたように貴一君も戦っているのかもしれない」
兄ちゃんはまだ戦っている。
「一人では心細くて諦めそうになるかもしれない。悪い誘惑に負けるかもしれない」
僕は……僕は一人になっても兄ちゃんが支えてくれた。
「今度は君が貴一君の支えになってあげるんだ」
「うん、僕、会いにくるよ」
僕は退院後も病院へ通った。
先生の言った通り兄ちゃんのお見舞いに来ている。
兄ちゃんはずっと眠ったままだった。
僕がお見舞いに来て三日目、兄ちゃんのベッドが空になっていた。
兄ちゃんは目を覚ましたのだろうか。それとも……
「よ、おはよ」
病室の前で突っ立ていた僕の耳に、聞き慣れた声が聞こえてくる。
「俺のお見舞いか?」
僕が振り返ると、そこに兄ちゃんがいた。
「さすがに十日も寝てると体がだるいな。寝すぎて眠いぞ」
兄ちゃんは帰ってこれたんだ。
「帰ってこれたんだね」
もっと喜んでいいのにうまく言葉が出てこない。
「おうよ。恥ずかしながら帰ってまいりましたってやつだな」
あんな別れ方をしたのに兄ちゃんはいつもと変わらない。
「あ。今、帰ってこれたって言ったよな。じゃあ、あれはやっぱ夢じゃなかったんだ」
「うん」
それはしっかりと二人の記憶に刻まれている。
僕と兄ちゃんがドラクエ7の世界で冒険したという事実。
「貴重な体験だよな。まさに体感型ゲームだ」
「命がけの冒険だったじゃないか」
「あれはゲームにすぎないよ。俺たちはゲームを攻略しただけさ」
「だって……」
「俺たちはゲームをしていただけだ。ロールプレイングゲームをな」
命がけの冒険を、どうしてそこまでゲームだって言い張るんだろう。
「そのゲーム攻略のために俺は最善の手を打っただけだ」
攻略って、ゲームのキャラになりきって話を進めたことを言っているのだろうか。
キーファとしての役目をまっとうしたのはすべて攻略のためだと言いたいのだろうか。
「俺ゲームをしただけ。だからお前は俺の行動に負い目や責任を感じる必要はない」
ああ。僕が気にしていたことに気づいていたんだ。だからあんなことを言ったんだね。
兄ちゃんには一生勝てる気がしない。
「兄ちゃんは帰ってくるつもりだったんだよね」
「当たり前だろ。石板読まなかったのか?」
石板。
あの神様が読んでくれた兄ちゃんの伝言だ。
「父さんと母さんを頼むって……」
あの文面だと帰ってこられないと思っていたんじゃないの?
「万が一の時はな。万が一、つまり一万分の一だ。これって0.01%だぞ」
「え」
「要するに俺は99.99%帰ってくるつもりでいたって事だ」
どうしてこの人はここまで余裕があるんだろう。
「石板で思い出しだけど、俺たちがあの世界言ったのは間違いだったんじゃないかな」
「どうしてそう思うの?」
「ゲームでの文面は『どんなにはなれていても俺たちは友達だよな!』だったんだ」
「うん……」
「兄弟に直す必要があったあたり発注ミスだと思うわけだよ」
「発注って」
「ドラクエ世界に適当な二人送り込むっていう発注」
「いったいどこからどこに発注してるんだよ」
「知らん。だけど、あそこは友達二人って注文すべきだったと思うわけよ」
すさまじい発想だ。
兄ちゃんらしいといえばらしいんだけど、喜んでいいのかわからない。
「まったくさ。人がどれだけ心配したと思ってんだよ」
「落ち着け。キレそうなときでも我慢することが大切だ」
別にキレたいわけじゃないんだけど……
「我慢すべきといえばこんな話を知っているか? ドラクエには大切な三つの袋がある」
「それって結婚式のスピーチなんかで言うやつじゃないの?」
「一つ目はアイテムを入れる大きな袋。二つ目はおふくろ。三つ目は魔物の笑い袋だ」
「堪忍袋は?」
すっかりペースを乱されている。
いや、いつもどおりに戻ったと言うべきか。
「でもさ、帰ってくるのにどうして僕と兄ちゃんでタイムラグがあったんだろうね」
「ああ、それな。俺ちょっとロトの子孫のいた世界にいたんだわ」
「ロトの子孫?」
確か、ドラクエの1から3がロトシリーズなんだっけ?
「キャラバンハートって言ってな、ドラクエ2の未来の世界だ。キーファが主人公のな」
そんなものがあったんだ。
「お前と別れた後に意識が薄くなって、これで帰れるかなと思ったらそれだよ」
「目が覚めたら今度はキャラバンハートの世界にいたんだ」
「あれってキーファが子供の頃の話なんだ。順番違うっての。やっぱ発注ミスだな」
なんでこんな緊張感がないんだ。
「それで、その世界を平和にして帰ってこれたってわけ?」
「ああ。未プレイだったからちょっと時間かかっちまったけどな」
なかなか目を覚まさないのがそんな理由だったなんて……
「あ、そうだ。お前にひとつ文句がある」
「え……」
何だろう。
わがままな性格のことかな。
「お前先に家に帰ったんだから攻略本を持って来てくれよ」
「はい?」
「言っただろ。帰って攻略本とって来いって」
どうしてこの兄はこんな時までこんなことを言うんだ。
「本当にさ、僕がどんな思いでいたと思ってるんだよ……」
「泣いているのか?」
「泣いてないよ」
「お前、普通ここは泣くとこだろ?」
「泣きたいのはやまやまだけどさ、泣くタイミングを失ったよ!」
―完―
おおお…続きが来てたぞ。兄ちゃんも帰ってこれたんだ。
これでラストのように見えるが、果たしてそうなのかな。
投下乙&GJでした。
おお、よかった^^
消防士さんはメグミさんの御子息かな。先生の話もいいな〜。感動した^^
前の話の登場人物が出てくるとなんか嬉しいですよね。
この二人が助かったのは、メグミさんが思い直すきっかけをくれたサマルのおかげだったんだね…
まさかこっちに来てるとは。
乙でした。
キャラバンハートに行ってたとはね。
このシリーズは毎度驚かされるわ。
もうスレは満タンでしょうか。
新スレにはすでに引っ越しています。
今495KBで、510KBまで書き込めます
∞0∞ |ヾ, ''⌒ヽ./|
〃/ハ)ヽ) r-、ヽ| [三三]/
⊂二二Jハ’∀’ル二⊃ ヾヽ|_|;´∀`)つ
| /. ) /
( ヽノ 三三 (/⌒l/
ノ>ノ 三三 r' (_)
三 レレ . 三三 し'
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| いまよ!ミナデインーーーッ!!
\ \
 ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
\ ,.、 /
〃゙ミ'彡ヽ) ト
(ソ(リ-Oリゞ) オ
 ̄  ̄ (从*゚σ゚ノソ__  ̄ ォ ̄  ̄
《二=||とメ⌒)⊃;;)) ォ
´ 人( ⌒)゙ \
/ /ソ`し" ォ
/ :´ ォ \
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_,,..-―'"⌒"~⌒"~ ゙゙̄"'''ョ
゙~,,,....-=-‐√"゙゙T"~ ̄Y"゙=ミ
T | l,_,,/\ ,,/l |
r'ニニニ二二二ニニニ、ヽ
| | .@ | | ト、____, へ
rー┤| |├、 ヽ }
| | | Π | | | ≡三ーーーーァ /
l l l lニ コ .| | | ≡ / /
| l l |_| | | | ≡三 ./ /
l__l_l______|_|__| っ .≡ / /
| / ,イ,へ 丶、 ヘ ≡三./ / ノ|
| ,' / // \| \ ト、 ヽ ', つ ≡{ 丶ーーーー' }
!j./l / ` ヽト、ヽ } ゝ、_______丿
. | | .!/.! ○ ○ l l |ヽ,' ⊃
l | | .l/////////////! | !.|
.| ! | ト、 ,-ー¬ .ィ| .| l こ、これは
>>1乙じゃなくてバギクロスなんだから
|
500kまであと1.44kB
書き込んだら残余ビット数が変化しました(当たり前)。
うめ
ume2
やばい、559のそーりょがかわいすぎる。日記よみたい。
Thanks. じゃこのスレは埋めですね。
___ _,. _
\`ヽ''⌒`'´/ (E)どんどん埋めるわよ!
ヽ「\D/l| / / ._ __ _
(__<ム.゚/ヮ゚ノ!>'∨ \7´__B_ヾ/
_,/^)、==∧ (ヨ)'ノ,,,)ノ,)/ .(_)[ヘnヘ(^>、アラホラサッサー!
/(/),[o ,,o].__ /,'∨〉卒{ヽ丶. 、_ゞ_,.(n_>> 〉
( ヾ{ ...:::::::::::::.} ヽ (( / (,ゝ<} ヽ )) /\屮'´/
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(⌒_」 .L⌒) (,ノ ト、) と,ノ.(つ
アラホラサッサー!