もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら13泊目
ドラクソなんかの世界に紛れ込んでしまったら自殺するしかないね
乙!
3ゲトズサーー
4 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/30(水) 11:32:18 ID:jdFhU5hLO
スレ立て乙です。
☆
擦れた手GJ!
前スレの容量まだショート分くらいあるのかな
体が宙に浮いたかと思うと目まぐるしく景色が変わり次の瞬間にはもう町の前に立っていた。
相変わらずすげー呪文だぜ。で、ここで何をするんだ?とねーちゃんに尋ねる。
ここにもオーブがあるわ。王様が保管しているてお父様が言っていたわ。
それとここの酒場の倉庫にはお父様達が旅をした際に使った武器や防具、道具がたくさん残ってるらしいの。
今後旅はさらに熾烈を極めるだろうから必要なものは自由に持って行きなさいだって。
なるほど。まあイケにしては気が利くじゃねーか。そういえば俺今丸腰だしな。
長年の相棒はやまたのおろちと戦った時に昇天したし。確かに武器がいる。
そうして俺達は酒場に向かった。道中勇者が口を開いた。
ねえ!今日はあたしんちにみんなで泊まってよ!わたし先に行ってお母さんにみんなが来るって
話してくる!ルイーダさんの店のすぐ近くだからそれだけ伝えたらわたしもすぐ行くから!
そう言って勇者は走って行ってしまった。
しっかし嬉しそうだったな。勇者って言っても16のガキだもんな。
この町にはしばらく滞在しててもいいだろう。そう頻繁には帰ってこれないだろうしな。
そうしているうちに俺達は酒場に着いた。
ほうほうここが噂に名高いルイーダの酒場ですか…おっさんが得意気にこの酒場に関する薀蓄を話し出す。
無視して中に入る。そういやピエロが仲間に加わったのもここだったよな。
懐かしいな。そうそうあのテーブルの所に見るからに怪しいピエロの格好をした大男が……っておいッ!!!!
そこにはまたしてもピエロがいた。
こっちに気付くと嬉しそうに駆け寄ってくる。
てめーはこんな所で何をしてるんだ!!!!とっとと城に帰れ!!!!!!
と怒鳴りつける。しかしピエロ曰く自分がいないとここに預けてある荷物持ってけないぞとの事だ。
たしかに俺達が預けたわけじゃないし勝手に持っていってしまってはそれはもうただの泥棒だ。
だから賢者に言われて来たのだと偉そうにするピエロ。まあ別にかまわんがあの大臣心労で死ぬぞそのうち。
ピエロがカウンターで話をしてそのまま裏の倉庫へ案内してもらった。
中に入る。これは…すげえ。
そこには所狭しと大小様々な武器や防具、なんだかよくわからない道具が並んでいた。
どれでも好きなもんを持っていっていいとの事なのでみんな片っ端から物色している。
俺はというと当然武器がいる。繰り返すが相棒のドラゴンキラーは折れてしまった。今後やまたのおろちクラス
の敵とはまた対峙する事になるかもしれない。魔王なんてさらに強烈な化け物だろう。
そいつらとやりあうには確実にドラゴンキラー以上の武器が必要なのだ。
………………。
ダメだ。そこそこよさそうなものはあるのだが今一つこう心にグッとくるものには出会えない。
…………?
その時一際異彩を放つ剣を発見した。いや異彩なんて生易しいものではない。
凄まじく禍々しい。そして恐ろしく破壊力がありそうだ。
思わず手を伸ばす。遠くで見ていたピエロとねーちゃんが叫ぶ。
いかん!いかんぞ!!!
ダメ!!!!!その剣を触ってはダメよッ!!!!!
…え…
そんな事言われてももう俺は完全に剣の柄を握ってしまっている。
血相を変えてピエロとねーちゃんが駆け寄ってきた。
マズいわ…よりによってこんな剣を…
…シャナクは使えるかね…
ごめんなさい使えないの…一刻も早く教会で…
何やらヒソヒソ話をしている。何なんだ?なーんか胸糞悪いなチクショウ。
そんなこの剣マズイのか?せっかく強そうだったのに。
俺は無造作に剣を元の場所に戻した。
!!!!!!!!!?????????
ねーちゃんとピエロが目を丸くしている。だからさっきからなんなんだよ!!!!
ねえ…総長さんその剣持って何も変化はなかった?
握ったあと剣が離せなくなったりとか意識が朦朧としたりとか…
ない。
俺はもう一度剣を拾う。そして置く。それを何回か繰り返して見せる。
こんな事って…
ねーちゃんが困惑の表情を見せる。
だから何なんだよ!とねーちゃんに詰め寄った。
呪われた装備品についての知識はある?
呪われた装備…。あるわけねーよ。この世界の事なんてまだまだわからない事だらけだ。
聞いた所によるとこの世界には「呪い」のかかった武器や防具があるらしい。
そういう類のものを手にすると気が狂って仲間を斬りつけたり金縛りにかかって
動けなくなったりしてしまうらしい。しかも一度装備してしまうと本人の意思では外せなくなり
外すには特別な魔法や特別な儀式が必要だそうだ。
まさか…この世界に呪いそのものを受け付けない人間がいるとは…
ピエロが呟く。この世界…。ああそうか。きっと俺は元々この世界の人間ではないから呪いがかからないのでは
ないのだろうか。どういう理屈だかさっぱりわからないしわかりたくもないがとにかく俺は呪われないのだ。
という事はこの剣を持っていっても問題ないだろう。
俺は再度剣を拾い上げた。見れば見るほど妖しいオーラを放っている。
それは「はかいのつるぎ」という剣よ。
絶大な攻撃力があるわ。ただしその呪いが故に普通の人なら動けなくなってしまうものなのだけど…。
ねーちゃんが説明してくれた。一振りしてみる。
軽く振っただけなのに空気を切り裂く鋭い音が室内に響く。こいつはすげえ。
もう二度、三度と振ってみる。ちょっと強めに振ってみる。思いっきり振り回してみる。
すげええええ!気に入ったぜ!俺はこいつを新しい相棒にする事を決めた。
はかいのつるぎ。なかなか素晴らしいネーミングセンスじゃねえか。
なんたって破壊だからな破壊。まさに破壊王たる俺に相応しい剣である。
この剣なら魔王だかなんだか知らねえがズッタズタのボロボロにしてやるぜ!!!ガハハ。
…やっぱり少し精神に異常が…
いやしかしこの程度なら支障はあるまい…
また二人でコソコソ話してやがる。
しかし呪われた武具が問題ないとなるとここには強力な武具なんて山程あるぞい。
なんせ誰も装備できなくてまとめてここに放置してったからな。
とピエロが言った。マジか!?そいつは素敵だ。俺は呪われた武具を片っ端から漁った。
探せばもうほんと沢山あるある。どいつもこいつも不気味な風貌でかっこいいぜ。
「はかいのつるぎ」
「じごくのよろい」
「ふこうのかぶと」
の三つを装備した。体の奥底から力がグングンと湧いてくる。なんだか今の俺なら魔王にもタイマンで
勝てそうだ。
悪魔…悪魔じゃ…
おっさんを始め以下みんなが俺を見て絶句している。こいつらは本当にファッションセンスってもんが
わかっていない。
キャー総長ちゃんかっこいい!!!どうしたのそれ!?
いつのまにか追いついて来た勇者が駆け寄ってくる。え…もしかして今ここでこの俺の格好いいコーディネート
を理解できてるのは勇者だけなんじゃ…それはそれで逆に不安だ。
わたしも新しい服欲しい!うーーーーんっとかわいいやつ!
あーあ、これは長引きそうだ。女ってのは服を買いに行くとあーでもないこうでもないと異常に時間がかかるが
それはこっちの世界でも同じらしい。総長ちゃんもよさそうなのがあったらこっち持ってきて!だと?
ほほう俺のセンスを頼るとはやっぱこいつなかなかわかってるじゃねえか。どれどれ。
俺はさっきまでとは打って変わって女の子目線で使えそうなものを探し始めた。
かわいくてそれでいて強さも兼ね備えた実用的なやつ。うーんこれはこれで意外と難しい。
おお!!!!これは!!!?????
俺はまたまたとんでもない鎧を発見した。いや正確には鎧なんてもんじゃない。
ただのビキニだ。かなり際どい。でへへ…これねーちゃんが装備するべきだな…そうに違いない!
それは「しんぴのビキニ」じゃ。高い防御力と歩くたびに体力が回復するという効果も秘めた
素晴らしい防具じゃ!
近くにいたおっさんが興奮気味に説明してくれた。ほうほうなるほどな…それはつまり体力が低いねーちゃんに
ピッタリじゃないか!これは我が鬼浜爆走愚連隊の戦力アップのためにも是非装備してもらわなくては!
おっさんと目を合わせる。あいつもニヤけてやがる。
いやーん総長ちゃんのエッチ!そんなの着て外歩けないよー
何を勘違いしたのか勇者が言ってくる。てめーじゃねーよボケ。てめーのまな板じゃビキニは似合わん!
これはスタイルのいい大人の女にこそ似合うのだ!
ねーちゃん!ちょっとこれを…
そこまで言いかけただけなのに返事が返ってきた。
殺すよ?
…………。はい。悪乗りが過ぎました。サーセン…。
そんなこんなしているうちにみんなそれぞれ身を固めたようだ。
さてここで俺がみんなをファッションチェックしてやろうと思う。
さてまず勇者からだ。
いなずまのけん
みかがみのたて
ドラゴンメイル
きんのかみかざり
という格好だ。まあこれは俺が選んだんだがな。本当は頭もミスリルヘルムにしようと思ったんだが
重いしかわいくないとの事で却下されてしまった。あんな髪飾りで頭守れるかよと思うがまあ奴も
女の子なのでそのくらいは気を使いたいのだろう。他が重装備なのでよしとするか。
続いてねーちゃん
りりょくのつえ
てんしのローブ
ふしぎなぼうし
いいよいいよー!まさに天使!ねーちゃんにピッタリの衣装だ。
りりょくのつえで精神力を消耗する分ふしぎなぼうしの効果で節約する(ねーちゃん談)
まあ俺には難しい事はさっぱりわからんが相性のいい組み合わせらしい。
うんうんうねーちゃんは頭いいなあ。
そして最後がパンツ
まじんのおの
やいばのよろい
ちからのたて
グレートヘルム
おお!これは強そうだ。もうこいつの人間離れは例えるならモンスターみたいな人間ではなく
人間っぽいモンスターだな。パンツ仮面からパンツモヒカンにレベルアップしやがった。
本来なら重すぎて空振りが多い武器らしいがこいつの糞馬鹿力なら問題なく振り回せる。
まさにこいつピッタリの武器だ。
俺達はもともと持っていたボロボロの装備品を捨て…じゃなくてここに保管しておいて
時間も時間なので勇者宅に向かう事にした。
>>1スレたて乙!
新スレ一発目の投下頂きました!
総長乙でした!
乙でした!
しかしなんという美女と野獣共
パンツはオルテガ的に考えたらそんなにおかしくはない。ギリギリ。
だが総長てめーはダメだ
全身呪い装備とか効果はともかくビジュアル的に酷すぎるwww
総長外道装備杉ワロタwwwwww
そしてねーちゃんに神秘のビキニ装備して欲しかった俺w
何という神秘のビキニ
ねーちゃんの姿を想像しただけでワクワクしてしまった
この俺は間違いなく変態
―○-○―
▽
勇者ちゃんにこそ神秘のビキニ着て欲しいのに…
総長分かってねーなwwww
しかし悪魔総長と魔物パンツではもう二人で町の中歩けないw
呪いをもはねつける、総長TUEEEEE
総長が装備外したとき(入浴(ってあるのかな?)中とか、就寝中とか、他の仲間が間違ってさわらないように気をつけなくては・・・
―憲法は赤口と―
「アマンダさんは天空の花嫁と聞いてどんな人を想像しますか?」
まったく見知らぬ世界から来たような奇妙な男は軽い口調で変な質問をしてくる。
「なあに。ケージさんの知り合いの人?」
「ええ。知り合いの女性が『もし結婚したら天空の花嫁になる。』と言っていましてね。」
「きっと天界に住まう女神のようなお嫁さんなんでしょうね。」
私は自分が花嫁衣裳を着てジョセフの横に並ぶ姿を思い浮かべていた。
「私もそう思いました。しかしそうではないんです。」
あら、あまり綺麗な人じゃないのかしら……
「いえ、美しい女性ですよ。美しいというより可愛らしいと言ったほうが似合うかな。」
私の顔を見て考えを読んだのかケージさんはそんなことを言った。
「この2人は10年ぶりの再開をきっかけにお付き合いを始めたそうなんです。」
「まあ、ロマンチックね。」
「女性が入院している間に男性が引っ越してしまって、思いが伝えられなかったそうです。」
「すれ違いの恋が実ったのね。」
私のジョセフへの想いもすれ違いだった。でも、邪魔する障壁はもうない。
「話がそれました。実は天空の花嫁という言葉で注目すべきは夫のほうだったんですよ。」
「どういうこと?」
「夫が『天空の人』と呼ばれていた。その妻になるから天空の花嫁というわけなんです。」
「あらあら、それは思いもよらなかったわね。」
「もし結婚したら天空の花嫁。ただし天空なのは妻ではなく夫のほうだった。」
ケージさんの口調が変わった。
「そうなんですよ。注目すべき相手が違っていた。この事件もね。」
――この事件。
ペロの餌に毒が入れられた事件。この男はその事件を調べている。
そして少しずつ真相に近づいてきている。
この事件の真犯人である私に……
――
私は一冊の本を胸に抱いていた。
偶然道具屋で見つけた古い本。
ぱらぱらとページをめくるとそこには様々な薬の調合法が載っていた。
私はしおりが挟んであるページで手を止めた。
そして、そこに書いてあった薬を見てある計画を思いついた。
すばらしい未来を手に入れるための計画だ。
私とジョセフ。2人の輝かしい未来のための……
私は本を買うと胸に本を抱えたまま買い物を続けた。
薬の材料を揃えていくためだ。
材料のほかに真っ赤な口紅を買った。
きっとジョセフがも気に入ってくれるだろう。
私は自分の家である宿屋に帰ると自分の部屋にこもる。
そっとしおりの挟んであるページを開いた。
私はそこに載っているレシピのとおりに薬を調合していく。
材料の分量を間違えないよう注意深く文字を追う。
カタ。
小さな物音に私は本から顔を上げた。
あたりを見回したが誰もいない。
少しばかり神経質になっているのかもしれないわ。
だが、この薬を作っているところを誰かに見られるわけにはいかない。
宿泊客が間違ってこの部屋に入ってくることがないわけではない。
こういうとき宿屋の娘という立場が恨めしく思う。
宿屋という商売は父親が人と接することが好きなのでやっている。
いろんな人と出会うのが楽しみだという。
宿屋にはいろんな人がやってくる。
特に今は変な客がいる。妙な格好をした男だ。
目が覚めたとき、まるでここが見知らぬ世界だったかのような反応だった。
何か変なものでも食べたんじゃないかしら。
その考えに私は声を出して笑いそうになってしまった。
私がこんな心配をするのは酷くおかしなことなんだもの。
何しろこれから私は犬のえさに毒を入れようとしているのだから。
「えーっと、あとはこの草を入れればできあがりっと。」
私は薬の完成を報告するような台詞を声に出して言った。
自分がこれからやろうとしていることに、少しばかり気分が高ぶっているのかもしれない。
「うふふっ。サンディの困った顔が目に浮かぶようだわ。」
私は再び心の声を口にする。
こんなことを誰かに聞かれたら大変なのに。
やはり大胆になっているに違いない。
私は悪い女になろうといていることを楽しんでいるのかもしれない。
今鏡を見たら私はどんな顔をしているのかしら。
冷たい目をして口の端だけを少し吊り上げている姿が思い浮かぶ。
そんなことを思いつつ、私はまた悪女らしい台詞を言う。
「見てらっしゃい。私のジョセフに手を出したりして許さないからっ。」
「おお、アマンダ。ちょうどいいところに来た。ちょっと話がある。」
完成した薬を持って家を出ようとしたとき父親に呼び止められた。
「今日からしばらくこの人に家の仕事を手伝ってもらうことにしたんだ。」
そう言って父が紹介してきたのは、例の妙な格好をした男だった。
「どうもよろしくお願いします。」
この男、もうおじさんと呼んでも差し支えなさそうな年齢よね。
帰る方法が見つかるまで家において面倒を見ることにしたという。
こんな得体の知れない人を家におくなんて、父さんも物好きだわ。
それにこの人、宿屋の仕事なんてできるのかしら。
もともと何をしているのか聞くとおじさんはコウムインをやっていると答えた。
何かしらコウムインって。
え、ケイジって言うのが名前なの?
変な名前。本名なのかしら。呼びにくいからケージさんって呼ぶことにするわ。
「ケージさん、しばらくこの宿屋で働くつもりなの?」
「早く帰りたいのは山々ですが、帰る手がかりがまったくない状態でして。」
「町の外から来たってことは旅をしていたんでしょ? 腕に覚えがあるのね。」
「いえ、私のいたところは至って平和なところでして戦いなんて無縁なんですよ。」
「あらまあ、うらやましいわね。」
「法律で軍隊を持つことを禁止されているくらいですからね。」
そんなことしてモンスターが襲ってきたらどうするのかしら?
「この町だってとても平和そうです。」
町の中にいればモンスターが襲ってくることはない。
いたって平穏な毎日が繰り返されている。
「町の中にいる限りはね。確かに今は平和なものよ。」
でも、これからこの町には大事件が起きるのだ。
「こんなときにこの町に来るなんてあなたも災難ね。」
「こんなときと言うと何か良くないタイミングだったのですか?」
そんなこと言える分けないじゃないの。
「今、町の中は平和なものだけどいつ魔王が襲ってくるのか分からないって意味よ。」
うっかり変なことを言ってしまったがうまく誤魔化せたわ。
でもケージさんはきょとんとしたような顔をしていた。
「魔王……そんなものがいるのですか?」
いまどき魔王も知らないなんてずいぶんのんきな人なのね。
「とにかくあなたの身元は分からないわけね。」
「ええ。目が覚めたらこの宿屋にいたとしか言いようがないのですよ。」
本気でそんなことを言っているのかしら。
……まさか本当に何か変なものでも食べたんじゃないでしょうね。
それともこの男、自分が異世界からきたとでも言うのかしら。
どうせ異世界から来るなら世界の救世主となる若くてかっこいい男が良かったのに。
まあ、破壊神だとかそういう恐ろしいものじゃなくてよかったわ。
私は目の前の男を見て私はそんなことを思っていた。
でも、この目の前の男は破壊神よりもはるかにたちの悪いものだった。
今から犯罪を犯そうとする私にとっては……
―続く―
リアルタイム遭遇支援
支援したと思ったら終わりかw
今回は6の話みたいだからかなりwktk
冒険の書シリーズ大好きだ!
今回はサンマリーノのあの事件からから始まるのか
続き楽しみだ
今までの流れからいくと、今回は6章立てでしょうか?
ドラクエにまさかの倒叙探偵小説ktkr!
渋いケージさんの推理が楽しみです!
ケージ=刑事か…確かに公務員だわ
な、なるほど。刑事だったのか。
そりゃ、毒殺の犯人にとってはたち悪いわ・・・(wwwww
>>33 右京さんだとか十津川さんみたいのが相手だったらもうどうしようもないな
のっけから総長と冒険の書のダブル更新とか何のご褒美ですか?
お二方とも乙&GJでした。
ロト紋のキラでさえ避けた呪いの武具を躊躇無く装備w
さすが総長!おれたちに(ry
ニコラス・ケイジが思い浮かんだのは俺だけでいい。
最近更新しないなと思ってたらこっちだったか………。
仕事中にでも読ませてもらうか!
じゃ、行ってきま〜す。
総長の反則装備キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
ドラクエコロンボキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
もうメッチャ期待!
☆
hoshu
保守
保守
―刑法を先勝に―
ケージさんという正体不明の男がうちの宿屋で働くことになった。
彼が自分の家に帰るための方法が見つかるまでまでということだ。
「宿屋と言えば客商売よ。ちゃんとできるのしら?」
「もちろんお世話になる以上、何でもやらせていただきます。」
そう言っているけどどこか頼りないのよね。
父さんは彼が働くための準備をあれこれしていた。
「午後にでも教会行って神父様に彼を紹介しようと思うんだ。」
「教会ですか?」
「何かを始めるときには教会でお祈りをするものなんだ。」
父さんの説明にケージさんはしきりに納得している。
何かを始める前には教会でお祈りをするものだ。
でも、今日の私はそれができない。
犯罪の成功を神様にお祈りするわけにはいかないもの。
「教会へは午前中に行ってしまいなさいよ。」
「早く働いてもらって自分が楽しようって言うんだな、アマンダ。」
そう言って父はワハハと笑った。
「違うわよ。何事も早いほうがいいと思っただけよ。」
そう、早いほうがいい。
サンディとジョセフがこれ以上近づく前に手を打つ必要があるのだ。
余計なやり取りで時間を使ってしまった。
私は瓶に詰めた毒薬を持ってこっそり家を抜け出した。
これから向かうのは町長の家だ。
屋敷に着くと誰にも見つからないように屋敷に忍び込む。
屋敷の中では犬のペロが寝ていた。
ごめんなさい。あんたに恨みはないけど私の未来のために協力してね。
私は心の中でそう呟くと皿に盛られた犬の餌に薬を振りまいた。
それからまたこっそりと屋敷を出る。
大胆な犯行だったが幸いなことに誰にも見られていない。
私はまだ胸の高まりが続いていた。
あの餌を食べるのはペロ。そのペロの面倒を見ているのはサンディだ。
餌を食べてペロが倒れれば誰だってサンディのせいだと思うだろう。
飼い主である町長は犬のペロを可愛がっている。
きっと町長は激怒してサンディを屋敷から追い出すに違いない。
そうなればサンディはもう町長の息子であるジェセフに近づくことさえできまい。
これで私のジョセフへの想いを邪魔するものはいなくなるのだ。
これから起きることを考えて思わず笑みがこぼれる。
帰る途中、毒薬の入っていた瓶を捨てる。
そして何食わぬ顔で自分の家である宿屋に戻った。
「お出かけでしたか?」
うちに帰り着いたときやはりどこからか帰ってきたケージさんが話しかけてきた。
ああ、そうだ。彼は教会へ行くことになっていたのだった。
「ええ、ちょっとね。」
「大方かっこいい旅の剣士の噂を聞いて探して回っていたんだろう。」
父さんが口を挟む。私はそんなところよと答えておいた。
自分の推理が当たっていたことに父さんは満足しているようだ。
まさか自分の娘が犬の餌に毒を入れていたとは夢にも思ってないのだろう。
「ここでは剣士なんてものがうろうろしているんですか?」
ケージさんが妙な質問をしてくる。
「旅をするならそれくらい普通でしょ? 町の外にはモンスターがうろうろしているもの。」
「モンスター……魔王がいるならモンスターがいても不思議はないと言うわけですね。」
「下手に外へ出たらハエ魔導にヒャドされたりバブルスライムに毒を受けたりするわよ。」
なんだか神妙な顔をしている。まさかモンスターすら知らないのかしら。
「そうそう、彼の身元を捜すなら町長のところにも挨拶に行かないといけないな。」
父さんがそんなことを言い出す。
「それならさっそく行ってきます。」
「でも今行っても町長は家にいないわよ。」
「おや、町長の家に行っていたのですか?」
私は内心しまったと思ったがすぐに切り替えした。
「町長の屋敷へは行ってないわよ。」
とっさに思いついた町長が留守だと思った理由を述べる。
「大通りで町長を見たの。だからまだ帰ってないと思っただけ。」
うっかりぼろを出すところだった。もう少し気をつけなければ。
だけど、この男の前ではそれも無駄な努力だったのかもしれない。
「どうやら大変な事件が起きたようです。」
ケージさんがそんなことを言い出した。
彼は午後になって町長のところへ挨拶に行き、たった今帰ってきたばかりだ。
「まあ、何があったの?」
「町長の飼っている犬が突然痺れたように痙攣して動かなくなったらしいです。」
「あら、それは大変ね。神父様がペロを診てくださったのかしら?」
「はい。油断はできないが大事に至らないだろうということです。」
「それは良かった。ペロったらいったい何を食べたのかしらね。」
「何でもいつもどおり餌を食べた後、急に具合が悪くなったようです。」
「ペロの面倒を見ているのはサンディよね。大丈夫かしら……」
ちょっと白々しいとも思ったけど十分自然な演技だろう。
「サンディさんというのはお友達ですか?」
「え、ええ。友達よ。」
確かに友達だった。でも友達だから許せないこともあるのよ。
「サンディさんは町長の怒りを買って地下の納屋に入れられてしまったそうですよ。」
「町長はペロを大切にしていたから何か罰を与えるつもりかもね。」
「……まさか絞首刑と言うことはないでしょうね。」
「コウシュケイ?」
「ああ、私のところでは死刑は首をくくるものと決まっているんですよ。」
「なんだか残酷ね。」
「すみません。もちろんサンディさんはそんなことにならないでしょう。」
さすがにあの町長でもそこまでするわけがない。
そんな会話を交わしたあと、私は自分の部屋に戻った。
町の中は事件の話で持ちきりのようだった。
「うっふっふっ。サンディは 地下の納屋に閉じこめられたし……」
私の狙い通りね。
「これで邪魔者はいなくなったわ。もうジョセフは私のものよ。」
計画がうまくいっていることに私は部屋で悦に入っていた。
サンディがあんなことになって落ち込んでいるジョセフを私が優しい声をかける。
そうすればジョセフは私になびくはずだ。
すぐには難しいかもしれないがもう邪魔者はいない。
ゆっくり時間をかけて落とせばいい。
コンコン。
「誰!」
突然のノックに私は思わず大きな声を上げた。
「驚かせてすみません。」
ケージさんだった。
まさか今の台詞聞かれていないでしょうね。
「何の用かしら?」
「アマンダさんはサンディさんのお友達ですから伝えておいたほうがいいと思いまして。」
なにやらもったいぶったような言い回しだ。
「この事件についておかしなところがあるのですよ。」
「事件ってサンディがペロに毒を盛った事件よね。」
「いえ、まだサンディさんがやったと決まったわけではありませんよ。」
何を言い出すのかしらこの男は。
「ですから少し調査をしてみたいと思っているんです。」
調査? この男いったい何をしようというのかしら……
―続く―
乙でした
古畑風?
乙です。
確かにアマンダさん、いろいろと挙動不審なことをおっしゃってますね。
事件のことを詳しい話を聞く前にやたらよく知っているようですし。
今後の展開が楽しみです。
コロンボも古畑も犯人側に感情移入しちゃうんだよね〜
作者さん乙!続きの捜査篇に期待
ほ
Rです。10時くらいから投下開始します。
慣れてない代替機を使っての投下なので、少々手間取るかもしれません。
ご了承ください。
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。今日は僕の方、ゲームサイドですね。では前回のおさらいです。
レイさんとランシールの試験に挑んだ僕は、魔王さんと話をする機会がありました。
そこでこのゲーム世界には『未来』が無いということを知らされます。
僕なりにちょっと考えがあったんで、勇者試験は土壇場でレイさんに譲りました」
アルス「その後こいつから俺に電話がかかってきて、俺の過去を話したら、なんか散々言われました」
タツミ「別に間違ったことは言ってないだろ? それではサンクスコールです」
アルス「
>>371様、やりこんでるねぇ。同じドラクエ3の主人公としては嬉しいっす。
こないだの雑談でも言ったけど、まったく気にする必要ないぜ」
タツミ「
>>372様、重たい空気のままで終わりたくなかったので、ちょっと構成を変えました。たまには新鮮でしょ?」
アルス「
>>373様、バラモスなぁ……あいつもループしてるうちになんか悟ったのかもな」
タツミ「
>>374様も周回プレイ大丈夫ですよ。
でも、僕も名前や性別を変えてプレイしてたらアルスもループしてなかったのかな?」
アルス「記憶を残したまま別人として繰り返されただけじゃないのか、
>>374様の考察のとおりに」
タツミ「やっぱりそうか。
>>376様、バラモスさんの株、急上昇だね。
僕もちょっと話したけど、なんか魔王って気がしなかったな」
アルス「
>>373様、タツミの過去って、俺が『夢』で見てたのとどう違うんだろうな。
しかしあの正論ラッシュはいじめだよなぁ? いや正論だからなにも言えないが……」
タツミ「
>>378様、↑こんなん言われてますけど、僕もなんとかしたいとは思ってます。一応」
アルス「一応ね」
タツミ「
>>380様、あー……4の主人公さんは、ループしたら大変そうですよねー」
アルス「お前、3以外のドラクエは未プレイじゃなかったっけ?」
タツミ「だったんだけど、中の人もナンバリングは全部やってるので番外では把握してる設定で。
>>381様、5の人だったらキツイですよね〜。もしも僕の親が5を買ってきてたら……」
アルス「入れ替わった時点で本体ごと叩き壊されてたかもなw
>>382様、Stage.9.5のアナザーサイドで出てきた青年社長だっけ」
タツミ「383様のおっしゃる通り、5って親子三代の壮大な物語ですからね」
アルス「
>>384様、5以降は『勇者≠主人公』だもんな。6、7は職業だし。8もはっきりしないし」
タツミ「次は雑談のサンクスコール……なんですけど」
アルス「うちの作者が余計なことを書いてしまって、変に心配かけてすんませんした」
タツミ「詳しくは避難所で。
>>595様、
>>596様、ご心配おかけいたしました。今は元気ですよ〜」
アルス「
>>594様、ご支援サンクスっ。このシリーズはサンクスコールの他に、
たまに雑談や外伝が入るんだ。まとめて『番外』と言ってます」
タツミ「
>>597様、DSのリメ発売、待ち遠しいですよね。リプレイ楽しんでください」
アルス「以上かな? たくさんのレスありがとさん!」
タツミ「いつも本当に励みになってます。今後もよろしくお願いしますっ」
アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』
【Stage.15 喧嘩と恋とエトセトラ(前編)】
ゲームサイド [1]〜[10]
Prev(前スレ)
>>337-368 (Game-Side Prev(前スレ)
>>284-315)
----------------- Game-Side -----------------
「僕のMP、今のでどれくらい減ったのかな」
現実の通話料に換算すると、けっこう減っちゃったかも。これ、もし最近のサービスを
利用してたらタダだったりしたんだろうか。思い出にこだわらないでさっさと新しい携帯
に機種変しておけば良かったかもしれない。
窓の外に目をやった。今夜は満月。石畳の歩道と池を挟んだはす向かいの三角屋根から、
月明かりに照らされて怪しげな煙が立ちのぼっているのが見える。
ここはレーベの村。試験を終えてランシールを出立した僕たちは、アリアハンに戻る前
にこの村に泊まることにした。ここらでちょっと骨休みしようという僕の提案による。最
初はアリアハンに直帰する予定だったのだが、魔王討伐中の勇者一行が地元をうろうろす
るのも気まずいし勝手のわからない街では落ち着けないから、レーベあたりが妥当じゃな
いか――という僕の言い分に、みんなも賛成した。
それは建前で、なんのことはない。サヤお母さんに「絶対に合格するから」なんて大口
たたいちゃった手前、顔を出しづらいだけなのだが。
「ん、どうしたのヘニョ」
ベッドに座っている僕の隣にヘニョがやってきた。なぜてやろうと手をのばしたら、思
い切ったようにピョンとひざに飛び乗ってきた。
まん丸の目が僕を見上げている。なんだかまた心配されているようだ。
「さっきの電話かい? 大丈夫、別にケンカしてたんじゃないよ」
しっかしあのバカ、よくもまあとんでもない勘違いをしてくれたもんだ。「三津原辰巳
のことはなんでも知ってる」とか言っておいて、まさかなにもわかっていなかったとは。
父さんは単身赴任で? 母さんは僕に無関心? 友人やガールフレンドに囲まれてそれ
なりに楽しく暮らしてるって? はあ? 誰のことだよそれ?
それねー、僕が思い描いていた『夢』なんですよ、アルセッドくん。
アルスが同調(シンクロ)してたのは、現実の僕そのものじゃなくて、僕が「こうだったらい
いなぁ」と思い描いていた理想の自己像だったのだ。
なにせ僕の場合、イメージ力が半端じゃないからね。僕のリアルな妄想を「現実」と勘
違いし、彼は「日本のごく平均的な高校生」と入れ替わったつもりでいたわけだ。ずいぶ
ん混乱したことだろう。
「そっか……知らなかったんだ」
まあ、知らないならその方がいいんだけど。
アルスのさっきの話を聞けば、僕の方がマシか?って気がしないでもないし。
さてと、その辺の処理は後でやるとして――。
レーベには明日いっぱい滞在する予定だ。全員フリーにしておいて、僕はその間にこっ
そり抜け出し、一人で王様のところに行こうと思っている。
あれだけ言えば、アルスも大人しく言うことを聞いてくれるだろう。向こうの時間で明
日の朝まで、最低でもあと数時間は、絶対にモニタリングさせてはならない。
◇
翌日は抜けるような晴天だった。
「――というわけで、かなり綿密なプランの練り直しが必要なんだよ。一日部屋にこもる
から、悪いんだけどみんな邪魔しないでね」
「了解ッス!」
即答で敬礼するサミエルの後ろで、エリスとロダムは微妙な表情を浮かべている。
エリスはわかりやすい。試験に落ちた僕をずっと気にかけているようだから、「今この
人を一人にして大丈夫かしら」とか、女性らしい心配をしているんだろう。うんうん、君
は本当に優しいね。
ロダムはちょっと怖い。どこまで読まれてるのか……この人は勘がいいからな。
そのロダム本人がふうっと息を吐いたことで、ことは進んだ。
「わかりました。では我々も一時解散ということで。私は博士を訪ねておりますので、な
にかございましたら、そちらへいらしてください」
一礼して退室するロダム。昨日の夕食の時に、魔法の玉を作っているおじいちゃんが、
もとはアリアハンお抱えの発明家だと聞いた。若い頃ロダムも少し勉強を見てもらったこ
とがあるそうだ。
「んじゃ俺は、誘(イザナ)いの洞窟まで行ってます。たまにゃ顔見せろってうるさいんスよ」
誘いの洞窟にいるおじいちゃんはサミエルの親戚の人なんだって。人口密度の低いアリ
アハンでは、たいていどっかこっかで血が繋がっているんだろう。
「では、私はアイテムの補充をしておきます。道具屋さんにいますから」
エリスも渋々部屋を出ていった。宿には僕だけが残された。
廊下に人の気配がなくなったことを確認し、ドアに鍵をかける。ベッドの下から隠して
いたキメラの翼を引っ張り出そうとしたら、なにか引っかかった。
「こらヘニョ、なにやってんの」
キメラの翼に噛みついて放さないヘニョごと引っ張り出す。置いていかれると本能的に
理解しているのだろう。行くなと目が訴えている。
「いい子だから放して、ね? 別に大したことじゃない。すぐ戻ってくるから」
現在の膠着した状態を打開するためには必要なことだ。
半透明のとんがりをこちょこちょしてやると、ヘニョは諦めたように口を開けた。
「ありがと。じゃ、ちょっと行ってくるね」
僕は窓を乗り越えて外に飛び降りた。二階の高さから地面に落ちるまでの間に、素早く
アリアハンに飛ぶ。
アルスの実家の前を避け、僕はルイーダの酒場の横から店の裏へ廻り、城の外堀に沿っ
て歩いた。
城門の近くまで来ると、僕に気付いた若い番兵さんがにこやかに声をかけてきた。
「ジュニアじゃないか、どうしたんだい?」
たまにアルスのことを「ジュニア」と呼ぶ人がいる。僕はどうも好きじゃないんだが、
今はかまわずに用件だけを告げた。
「王様に会いたいんだけど、取り次いでもらえるかな」
番兵さんは少し不思議そうな顔をしつつ、奥の詰め所に向かった。そうか、アルスは顔
パスで入城できるんだっけか。
しばらくしてさっきの番兵さんが二人の兵士を連れて出てきた。おろおろしている番兵
さんに構わず、厳めしい顔をした兵士たちは両サイドから僕の腕をグイとつかんだ。
「まさか自ら戻るとはな」
ドスの効いた声だが、なんとなく困惑している。僕がニセ勇者だということと例の「約
束」についてはトップシークレットのはずだから、たぶんこの兵士たちは、サヤさんと王
様が密会していたあの夜、王様の警護に当たっていたSPあたりだろう。
「追っ手を放つ準備をしていたが、手間が省けた」
どういたしまして。税金を無駄遣いさせなくて良かったよ。
すぐに牢屋に連行されるかと思っていたのだが、普通に謁見室に通された。
この部屋の主役である国王はむっつりと押し黙り、ランシールの地下にあった石の人面
より無表情だ。重苦しい雰囲気の中、王様ではなくそばに控えていた大臣が口を開いた。
「……なにか申し開きはあるか」
「すみません」僕はぴょこんと頭を下げた。「落ちました」
大臣が目を丸くする。広い謁見室は再び静まり返った。
「他に言うことはないのか!」
たまりかねたように王様が怒鳴った。大臣が止める間もなくづかづか近づいてきて、僕
の襟首をつかんで無理やり引き立たせる。意外と背が高い人で、僕は爪先立ちになった。
王侯貴族なんてみんな貧弱だと思ってたけど、かなりの腕力だ。大勇者オルテガの親友だ
けあって、この人も実はそこらの冒険者より腕が立つんじゃなかろうか。
なんて考えている僕に、王様は怒声を重ねる。
「この痴れ者が、ようもヌケヌケと現れたものだ! 貴様、よもや自分が吐いた言を忘れ
ておるのではあるまいな?」
「忘れてませんよ。手でも足でも好きに持っていけと言いました。――でも」
僕は正面から王様を見つめた。
「言い訳はありませんが、ひとつ確認していいですか?」
王様が手を離した。僕は再び膝を着くことはせず、立ったまま続けた。
あの不条理な「約束」についての確認を。
「僕も当時は誤解してたんですけど、今回の本試験に落ちたからって『一級討伐士』の資
格が永久剥奪されるわけじゃないんですね。現地で違う討伐士の方から聞いたんですが、
一時的に特典が利用できなくなるだけで、残り9ヶ月で本試験に合格すればいいんだと。
なんであのとき教えてくれなかったんですか。っていうか、試験に落ちたら勇者じゃなく
なるという王様の言葉、あれは嘘だったってことですよね?」
「……」
僕の言葉に周囲の空気がわずかに波立った。
「教えてくれたのはサマンオサの一級討伐士の方でしたが、その人と僕が競争になったの
は、王様のご指示だったんでしょうか」
「余ではない。退魔機構の議会が決めたことだ」
「やっぱりご存知だったんですね」
王様の唇の端がピクリと動いた。
「……なにが言いたい」
「いえ。ずいぶん嫌われたものだなーと、そう思いまして」
世界退魔機構の創設者であるアリアハン国王に、僕とレイさんの試験が重なったことは
すぐに知らされたはずだ。「面白そうだから競争させろ」なんて超法規的措置(ムチャクチャ)
を黙認し、この瞬間まで触れなかったんだから、王様もなかなか意地が悪い。
別にみんながみんな、僕の味方をしてくれるなんて楽観してるわけではない。
ただ――
「正直に言わせてもらいます。僕はあなたの干渉がとても面倒だ。これ以上僕にかまって
欲しくない」
「無礼者が!」
脇にいた兵士が僕を絨毯に引き倒した。やり方を心得ているというか、顔面からいっ
ちゃって痛いのなんの。毛足の長い高級絨毯だというのに、口の中に血の味がする。落ち
着きなさいって君たち。
「ケン…カを売りたい、わけじゃない。前にも言ったように、僕はアルスを元の鞘に戻す
ことしか考えてないし。だから、王様」
目の前のピカピカに磨かれた靴先に、僕は血に濡れた唇を押し付けてやった。
「好きなとこ持っていっていいんで……それで手を打ちませんか? サヤさんにも余計な
ことは伝えなくて結構ですから」
このときの王様がどんな顔をしてるか見てやりたかったんだけど、僕はすぐに兵士に反
対方向に引きずられ強引に退室させられたので、それは叶わなかった。
◇
今度こそ地下牢にブチ込まれた。さて王様はどうする気だろうか。
実際問題、僕にはなにひとつ「罪」はない。
王様<神様 という図式が成り立つこの世界で、ルビス勅命で『アルス』の名を継いだ
僕に詐称罪はあたらない。それはこの国を出立する前に目を通したアリアハン司法全書で
確認している(安易にルビスの遣いを称してるわけじゃないのだよ)。まあアルス本人か
らのご指名だとストレートに言えちゃえばいいんだけど、そうはしたくないからちょっと
ややこしいことになってるんだけどね。
んで焦点は上述の真偽になるわけだが……ぶっちゃけルビスの遣いなんてデタラメなん
だけど、真実か偽りかを立証するにも、これまでの活動記録を洗うしかないわけで。この
時点で僕のしてきたことに問題は無いはずだ。
だがここで、僕と王様はこれらとは無関係に「約束」を交わしている。
その始末の付け方によって、僕の身の振り方も決まる。
「いて――」
口の中が気持ち悪い。初ホイミを試そうかと思ったが、今後のことを考えるとMPの無
駄遣いは避けたいのでやめた。
石作りの素っ気無い牢の中はランシールの地下を思い出す。自然とレイさんのことも。
あの人は別れの間際まで僕のことをずいぶん気にかけていた。世界退魔機構へも、『ど
ちらが合格してもおかしくない接戦だった』と力説していたとか。
「やはり私は、この試験を譲られるべきではなかったように思うよ」
出発前に「少し話さないか」と呼び出された神殿の裏。大理石の柱にすらっとした長身
を寄りかからせているレイさんは、絵画のように様になっていた。
「譲ったわけじゃないよ、僕が最後にハズレを引いただけ。内容的には間違いなくあなた
の方に軍配が上がると思うしね。なるようになったってことだよ」
僕はちょっと大げさな動作で肩をすくめた。レイさんは黙っている。澄んだグレイの瞳
が、なにか物思いにふけるようにじっと地面を見つめている。
なんとなく落ち着かなくて、ちらちらと横目でうかがっていると、ふいにレイさんが顔
を上げた。
「私はね、君のことが心配なんだよ、青少年。君はいつも、自分のことを二の次にしてい
る気がする。最初に会ったときからね」
反論を封じるようにぴっと人差し指を立てたレイさんは、一瞬あたりをうかがうように
すると、僕の耳元に口を寄せてきた。
「私は一度会った人間は忘れない。君は『アルス』じゃないだろう?」
「え? ええと……」
内心焦っている僕に、レイさんは笑みを浮かべた。
「安心したまえ、誰にも言う気はないよ。君が誰だろうと、そんなのはどうでもいい。た
だ私は――『君』が心配なんだ」
真っ直ぐに僕を見つめて繰り返すレイさんの言葉は、胸に響いた。さすが『勇者』って
いうのかな。すべてを打ち明けて、寄りかかってしまいたくなるような。
でも、今この人に言うべきことじゃない。僕には僕の、レイさんにはレイさんの役割が
ある。
「他に隠してることや困ってることはないのかい? 言ってくれ、力になるから」
僕は黙って首を振った。レイさんはもどかしいような表情を浮かべたが、汲み取ってく
れたのだろう。
「わかったよ。じゃあせめて、本当の名前くらいは教えてくれないか」
「タツミ。変わってるだろ?」
「ふむ、タツミか。珍しいが、いい名前だ」
神殿の表の方から、サミエルが僕を呼んでいる声が聞こえた。出発準備が整ったらしい。
「そろそろ戻るか。ま、なにかあったら連絡してくれたまえ。退魔機構に問い合わせれば
すぐわかるようにしておくから」
「うん、ありがとうレイさん」
歩き出した東の二代目の後姿に、一人っ子の僕にもし上がいたら、レイさんのような人が
いいな、と思った。
連投規制って今もあるか?支援
支援!
……牢獄はしんと静まり返っている。
ここにいる人間の気配のすべてが、僕に集中しているのがわかる。事情を知っているの
は牢番だけで、囚人たちは「なぜ勇者が投獄されるんだ?」と興味津々の体で様子を見て
いる状態だ。
やがて入り口が騒がしくなり、とうとう声がかかった。王様がお呼びだそうだ。手枷を
かまされた時点で下った審判を悟ったが、僕はいっさい表情には出さなかった。
◇
連れて行かれたのは、ぐるっと高い石塀に囲まれた直径30メートルくらいの円形の広
場だった。赤茶色の砂をならした地面。ど真ん中にぽつんと設置されている、腰の高さく
らいの平らな石の台。他にはなにもない殺風景な場所だ。
真っ青な空に目を細める。今日は本当に天気がいい。
正面の上段に王様が立っていた。逆光でよく見えないが、先刻より小さくなってしまっ
たように思えた。
「もう一度聞く」
どこか疲れた声で、王様は以前と同じ質問を投げてきた。
「アルセッドはどこにいる」
「言えません」
僕の答えも以前と変わらない。
たっぷり間を置いて。
「……利き腕はどっちだ」
「右、かなぁ?」
実は両利きなのでどっちでもいいんだけど、そんなんで悩ませても時間の無駄なので、
僕はそう答えておいた。普通に応答している僕に、王様はさらに疲れた様子で、
「お前はなにを考えておるのだ」
と大きくため息をついた。
支援
僕が考えてることなんて、大したことじゃないですよ、全然。
これは単なる…………嫌がらせ。
そう、嫌がらせだ。
王様の性格を考えたら悩んだと思うよ、この数時間。もう禿げ上がるくらいね。
だって世界的に慕われている大勇者オルテガの親友だったんだろ? カッとなりやすい
性質(タチ)ではあるけど、冠を盗まれたどこぞの国王みたいに、そこまでテキトーな人間と
は思えない。サヤお母さんも「本当は優しい」みたいなこと言ってたし。
そんな彼が嘘をついた。その場の勢いだったとしても、伝えるべき真実を捻じ曲げて、
僕を追い込んだ。
しかし間違った前提で交わされた「約束」でも、国王直々に申し渡したことをおいそれ
と撤回することはできない。最初から恩赦も考慮にあっただろうが、僕が終始こんな調子
だからね。臣下は全員「容赦するな」って異口同音だったろう。
だから彼はもう、身動きが取れない。彼が決められるのは刑の執行後のことだけだ。
この「約束」には、その後のことは含まれていないから。
この世界で『勇者』の肩書きを背負っていくためには、世界退魔機構と無関係ではいら
れない。仮に今回の試験で合格していたとしても、僕がアルスのことを吐かない限り、王
様からいつまでも陰険な妨害を受けるのは目に見えている。
だからここできっぱり決別を叩きつけてやるために、僕はわざと試験に落ちた。さすが
に決心までは時間がかかったが、アルスの話を聞けば、甘いことも言ってられない。
王様にはご自分の不実にモヤモヤしていただきながら、今後の不干渉を取り付けさせて
もらおう。
これが僕の、喧嘩の買い方だ。
丸く切り取られた青空を、一羽の鳶が横切っていった。その姿が見えなくなるのを見計
らったように、王様がつい、と片手を挙げた。
手枷が外された。目隠しをされ、石の台にうつぶせに肩を押し付けれた。
高々と罪状が読み上げられる。小難しい用語を並べているが、要約すると大事な情報を
隠匿したので罰を与えて国外放逐にするとか、そんな内容だった。だいたい予想通りのと
ころに落ち着いたな。
普通、こういうときに思い浮かぶのはユリコだったりエリスだったり、せめてアルスと
かロダムとかサミエルとか、そのあたりだろう。
なのに、僕が真っ先に脳裏に描いたのは、レイさんだった。
おいおい大丈夫かよ僕、と自分に突っ込んだ瞬間。
それが――来た。
支援
本日はここまでです。
やっぱり手間取りました;
ご支援ありがとうございました。
おっつー
いいところで区切るとは続きが気になるではないか
タツミはどうなるんだろ?
>>70 投下乙!
ちょwこんな気になるとこで終わるなよwww
ここでまさかのパンツ登場
タツミ早まるなww
頭いいくせに一旦キレると見境無く突っ走るタイプだなww
ここで切れるなんてwwwwwwwwww
カンダタより暴れそうだwwww
乙しかし引きがテラ卑怯wwwww
PC早く治るといいな
にょわ〜^。気になって寝られないよ〜〜(wwwwww
Rです。勢いで書きあがったので連投いいですか?
10時ごろから投下予定。カブる場合は避難所にご連絡を。
本日はメ欄もチェックで。
ダメと答える人がいるだろうか
続きが気になっててモヤモヤしてたから嬉しいw
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。なんか僕ってばピーンチ! だけどまぁそういうこともあるさね」
アルス「あるさね、じゃねぇ。結構イチ大事だろ、マジでなに考えてんだお前は?」
タツミ「さあ? たまに自分でもよくわかんないんだよね。ではサンクスコールでーす」
タツミ「
>>71様、僕どうなるんでしょうね。平静そうにしてますが実は心臓バクバクいってます」
アルス「本当かよ?
>>72様、ちょっとわざとらしい切り方だとは思ったんだけど、
投下当日もあそこまでしか書いてなかったんだ。ぎりぎりまで次の展開を悩んでてさ」
タツミ「じゃあ
>>73様の言う通り、このあとパンツさんが登場する可能性もアリってワケ!?」
アルス「あるあrwwwねーよwwwww」
タツミ「それ(・∀・)イイ! 実は僕、ひそかに総長さんとこのパンツさん大ファンなんだっ」
アルス「はぁ〜〜!!!???」
タツミ「名物鬼浜会議のボケボケ〜な発言とか、いつもお腹空かせてたりとか、なんかイイよねっ」
アルス「わからねぇ!! そこは普通に女勇者たんに萌えておこうよ!ねえ!!??」
タツミ「もちろん彼女もいいんだけど、『3の女勇者たん』と聞くと、なんかこう恐怖心が」
アルス「例のベホマ〜☆な彼女か。それにしたって……。
>>74様、俺のプレイヤーはキレてなくてもどっか変な方向に突っ走ってる気がしますorz」
タツミ「なんだよ失礼な。
>>75様、大丈夫です、うちにはカンダタなんてヤツぁいませんので、
きっとパンツさんが大暴れしてくれます!」
アルス「いやカンダタいるから。パンツさんは総長さんとこの人だから勝手に遠征させちゃダメ。
総長さんホントすんませんマジすんません、コイツにはよく言って聞かせますんで」
タツミ「そういえばアルスの性格判断って『くろうにん』だったよね?」
アルス「お前が苦労させてんだ! ……
>>76様、新しいPCが来る前に俺が壊れそうです。
そして
>>77様、俺は別な意味で今後は安眠できなさそうな悪寒がします」
アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』
【Stage.16 喧嘩と恋とエトセトラ(後編)】
続・ゲームサイド [1]〜[11]
私怨
Game-Side Prev
>>56-68 ----------------- Game-Side -----------------
「それ」は――相変わらずの勢いだった。
入り口付近で制止しようとしているらしい兵士たちの情けない悲鳴が聞こえてくる。僕
の肩を掴んでいた執行役も加勢しに行ったので、起き上がって目隠しを外すと、陽光を鮮
やかに反射する黒い甲冑の戦士が、兵士の一人を軽々と投げ飛ばしていた。
……嘘だろオイ。マジで? このタイミングで来ちゃうの?
いくら勇者だからってアンタ……デキすぎじゃね?
「これはどういうことだ!」
レイさんの澄んだアルトの声が場を一喝する。後ろにはエリスたちの姿もあった。
「東の!?」
「いったい彼はなんの罪で裁かれているのだ? 誰にとっても無益だろう、これは!」
出会い頭に世にも正論ブチかまされて、王様もたじたじになっている。引け目があるか
らなおさらだ。
「なぜそなたが……?」
王様が逆に問い返すと、レイさんはふんと鼻を鳴らした。
「世界退魔機構が私と彼の競争を取り決めたときから、ずっと疑問だったんだ。そんな埒
外を、『公明』と名高いあなたが理由も無く看過するはずがない。その上、彼がアルセッ
ド=D=ランバート本人ではないと判明して、もしやと思ってね」
たっぷり嫌味のこもったセリフを投げつけてから、僕には柔らかく笑いかける。
「決め手は君がわざと試験を譲ったことだがね、青少年。神殿の人間に確認したら、最後
の二つの宝箱の中身を変えることなどないと言っていたよ。まんまと騙されたな」
そこチェックされたかー。その場の思いつきだったし、やはり無理があったかな。
「勇者様! あなたはどうしてこう、全部ひとりで片付けようとするんですか!」
我慢できなくなったようにエリスが駆け寄ってきた。
「最初から私たちを頼ってくださったら、もっといい解決方法がいくらだって、い、いく
らだって……もう! もうこのバカ勇者! バカ! バカバカ!」
「うわわ、ごめん泣かないでエリスっ。僕もまさかこんな――いったぁ!」
今度はスパコーンと頭を叩かれた。
「ロダム、杖は痛いよ……」
「じゅーぶん加減しておりますよ。まったく、サミエルが忠義をのけて明かしてくれなけ
れば、我々は知らぬ間に後悔させられるところでしたぞ?」
「宿を出たフリしてすぐ戻ったってのに、部屋はもぬけの殻で俺も焦ったッスよ」
ええっ? 3人のうち誰かが王様から見張りを命じられてるのは察していたが。
「もしかして僕の『監視役』って……」
「俺ッス。試験に落ちたって報告した途端、逃げないように取り押さえろって指令が来て
びっくりッスよ。本人に戻る意思があるからって、様子見に徹してたんスけど」
サミエルは悪びれもせずうなずいた。てっきりロダムが監視役だと思ってたけど、サミ
サミってば意外と役者?
「でも俺はありのままのことしか伝えてないッスよ。『アリアハンの一級討伐士として相
応しい行動をしている』って。なのに、たかが試験に落ちたくらいでなんスかこれ。失礼
ながら王様、俺もうこの役、降ろさせてもらいますね」
最後はキッと主君を睨みつけるサミエル。
「わ、わきまえろレイトルフ!」
目を剥く王様に、サミエルは涼しい顔をしている。その隣にエリスとロダムが「自分も
同意だ」とばかり無言で並ぶ。クビ確定、ヘタをすれば反逆罪で逮捕される可能性だって
あるのに……。
「さて、私も少し格好つけるとしようか」
うるうるしている僕の肩をぽんと叩いて、レイさんが一歩踏み出した。優雅な動作で膝
を着き、「騎士の礼」を取る。
「王よ。ルビス勅命という彼の言葉が信じられぬなら、私が神命に誓って保証する」
堂々と宣言する一級討伐士に、王様は息を呑んだ。しかも――、
「どうしても許されないなら、代わりに私の腕をもげばいい」
「なに言ってんのレイさん!?」
これには王様どころか、エリスたちや周りで成り行きを見守っている兵士たちも驚いた。
当たり前だ、他国の『勇者』が簡単に口にしていいことじゃない。
「レイ=サイモンともあろう者が、この紛い物ごときになぜ……」
「そうだよ! 無関係のあなたがそこまでする義理はないでしょ?」
四円
支援
今回ばかりは僕も王様と同意見だ。慌ててレイさんの腕を引っ張って、撤回してくれと
訴えた。
するとレイさん。ちょっと首をかしげると、僕の両肩に手を置いて、静かに告げた。
「無関係なんて言わないでくれ。惚れた弱みというものだよ、青少年」
……はい?
ブッ飛んだセリフを僕の脳みそが理解する前に、強く抱きしめられた。
「んんっ――!?」
唇に柔らかい感触が重ねられる。最初こそジタバタしたが、剣一本でモンスターの大群
を蹴散らすような相手になんの抵抗ができようか。
「……んん…ん……」
しかもあれだ。大人のチューってやつですか? 何度も角度を変えてついばまれている
うちに、そのせいなのか単に酸素不足なのか、頭がボーっとなってきた。
「ん……っふ…ぁ…」
ようやく解放されたときには、ろくに立っていられなくて。しなやかな長身にすがりつ
くように身体を預けたまま、ぼんやりしている頭を振る。
「すまない。でも好きなんだ。初めて逢った時から、ずっと」
耳元で熱っぽく囁かれ、のろのろと視線を上げると、端正な顔が間近で微笑んでいた。
「レイさん……僕は……」
どうしよう。急にそんなこと言われても。
困った僕が振り返ると。
全員が (OдO) という顔で固まっていた。
「いやぁああ!! うちの勇者様にナニしてくれやがってんのこの人ぉ!?」
「こンの変態が勇者様から離れろぉ! ってスリスリするなぁあ!!」
「だってカワイイんだもん。あ、こら返せ」
サミエルが僕の服をガシッとつかみ、レイさんから一気に10メートルくらいズザザザッ
と引き離した。
「大丈夫ですか勇者様!? ああ可哀相に、びっくりなさったでしょう」
エリスなんか、まるで交通事故に遭いかけた幼い我が子を心配する母親のようだ。さっ
き腕が切られかけていたときより激しくないか? 仲間たちのものすごい剣幕に、僕もど
う反応していいのやら。
「えっと、そ、そりゃびっくりしたけど。変態は言いすぎじゃあ……」
「勇者様!? まままままさか」
「本気ッスか!?」
サーッと青ざめる二人に、ロダムだけはいつもの穏やかな口調で、
「落ち着きなさいエリス、サミエル。混乱してはなりません。ほら、衆道も武士の嗜みと
申しますし??」
「武士ってなんスかー!? あんたが一番混乱しとるわ!」
アリアハン第二近衛隊副長に蹴飛ばされて転がる宮廷司祭殿。散々な言われようにも関
わらず、レイさんは楽しそうに笑っている。
「ははは、厳しいね。私はそんなに不釣合いかな?」
「うがー!! まだ言うか! 叩っ斬るぞ変態勇者!」
ちょっ、そりゃいくらなんでも言いすぎだ。
「やめなってサミエル! た、確かに僕とレイさんは……」
世間一般では受け入れられないのはわかるよ。でも、
「一回りくらいの年の差ならアリだとおm」
「「「そこじゃNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」」」
なにそのツッコミ。
「いや俺らだって、勇者様がその気だってんなら応援してやりたいッスよ?」
「でもここはグッとこらえてください。流されてはいけませんっ」
半泣きで必死に説得する仲間たちは、まるで身分違いの恋をした主君を必死に諌める臣
下のようなぁ〜ってもううまい比喩が見つかんねーよ、なんなんださっきから! お前ら
偏見持ちすぎだっつーの!
しえん
「エリスもサミエルもいい加減にしろよ、あんまり失礼だろ!」
「ですが殿方同士の恋愛なんて宿スレ的にブッチぎりでアウアウじゃないですかっ。巣に
帰れって大荒れするに決まってますでしょう!?」
「確かにビジュアル的にはちょいヤバかもだけど、どうせテキスト表現なんだから設定が
女性ならセフセフじゃないのかよ!?」
「そりゃこいつが女なら……………………………………え?」
全員がいっせいにレイさんを振り返った。
「「「お、女〜!?」」」
本人は腹を抱えてゲラゲラ笑い転げている。
「アーハハハハハ! か、彼らを責めてはいけないよ、青少年。君のその鋭い観察眼が、
他の人間にも備わっていると思わないほうがいい」
◇
なんと、みんなレイさんのこと本当に男だと思い込んでいたらしい。
おいおい、普通わかるだろ? 注射とかで改造してるわけじゃなし、どうしたって違和
感あるじゃん。そんなのマンガとかゲームの話だけで
……ゲームだった orz
「いつから気付いてらっしゃったんですか?」
まだ半信半疑のような口調でエリスが聞いてくる。
「最初から。僕はてっきり公然の秘密なんだと思ってたよ。だからレイさんのことも一度
も『彼』とか『彼女』って言ったことないし」
僕の言葉に3人は「えっ?」と顔を見合わせた。
「前スレ! じゃない、前の前のスレだっけ?」
「とっくにdat落ちしてるわよ。まとめサイトまとめサイト!」
ちなみにレイさんの初登場はStage.11の中盤からですが。
支援
「本当だ……マジで言ってないッスね」
「そのせいでたまに文章が不自然になってますな」
うるさい、仕方ないじゃないか、僕だって気を遣ってたんだ。
原作ではレイさんにあたるNPC(ノンプレイヤー・キャラクター)は、はっきりと「サイモンの息子」
と言っている。にも関わらず女性だったから「また設定がズレてるなー」と思ったのだ。
最初はこんなハンサムなおねーさまが存在していいのかって驚いたもんだよ。
聞けば本名を伏せてるとか、有名人っぽい苦労してるらしいし、僕も曖昧にしておいた
方がいいだろうと判断したんだけどね。
こみ上げる笑いを抑えつつ、その「彼女」はカードサイズの金色のプレートを取り出し
た。アルスも持っていた、一級討伐士の身分証だ。
「いちいち説明するのも面倒で、今は男で通すようにしているが。この通り世界退魔機構
には『レイチェル=サイモン(女)』で登録されているよ」
決定的な証拠を見せられ、サミエルとロダムはようやく安心したようにうなずきあった。
エリスはまだジトーっとレイさんを睨んでいるが、不機嫌な彼女をよそに、サミエルは当
然のごとく次の矛先をこっちに向けてきた。
「そうなると、勇者様はどうなんスか〜?」
ニマニマしつつ僕をヒジで小突く。ロダムも同じ顔だ。
「しっかり見せつけられてしまいましたしなぁ。おや勇者様、耳まで真っ赤ですぞ?」
「あ、当たり前だっつーの……」
さっきは照れる間もなく大騒ぎになったけど、僕だってまだ16なんだぞ、そこまで耐性
できとらんわい。
でも返事はしないとな。マジでどうしよう。ったく、こういう色恋沙汰とか、ドラクエ
らしからぬ部分はやっぱり僕の担当らしい。
正直、レイさんみたいに男顔負けのカッコイイおねーさまがお相手じゃ、どう考えても
恋人ってより弟かツバメがいいとこだ。僕だって男だぜ、そんな年上にいいように翻弄さ
れるなんて…………まあ…………悪くないかな……
「ぬぅあぁにを考えていらっしゃるんですか、勇者様ぁ?」
「もちろんどうお断りしたら角が立たないかなーってことだよははははは」
「当然ですわ。勇者様には重大な使命があるんですもの、女にうつつをぬかしてるヒマな
んざありませんわよねぇ?」
にっこり。
エリス怖いよ。
「あー、ということで……レイさんゴメンなさい」
僕は腰から90度で頭を下げた。
いやまあ、僕の年齢では不純異性交遊になるし、そうなるとやっぱり宿スレ的にヤバイ
気もするし、だからといって成熟した女性にずっとプラトニックでいてくれというのも酷
な話だし、僕だってアレがコレでソレだから、いろいろと……ねえ?
レイさんは一瞬すごく切なそうな顔をしたが(本当にごめんなさーい!)、すぐに笑顔
になった。
「まあそうだろうな。いいさいいさ、悩ませてすまなかった」
が、またもやとんでもないことを言い出した。
「でもせめて、しばらくは一緒に旅をさせてくれないかな?」
え? つい身構えてしまった僕に、黒の剣士はひらひら手を振る。
「諦めは早い方だよ。信じてくれ、誓ってもう手は出さないから」
途端にうちのパーティは祭り状態になった。
「信じられません! 絶対また勇者様になにかするに決まってるわ!」
猛反対するエリスに、さっきまでの拒絶っぷりはどこへやら、女性と判明した途端すっ
かり肯定派に回ってしまったサミエルが反論する。
「そこは信じてやれよエリス、レイさんは嘘をつくような人じゃないだろ。それに東の二
代目が入ってくれりゃあ百人力だぜ。なあロダム」
「そうですな。先ほどのように勇者様個人に私的感情で近づかれては全体の士気に関わる
ので私も賛成しかねるが、あくまでメンバーとして加わっていただけるなら問題ないので
は。レイ殿は呪文についても造詣の深い方だ、我々も学ぶことが多いでしょうし」
しえん
中立だったロダムも今はサミエル側のようだ。確かにアレやコレやを置いとけば、純粋
な『戦力』としては桁外れだからな。
仲間になだめられ、エリスは口を尖らせている。だが彼女も変に意固地になるような子
ではない。ギュッと目を閉じた後、レイさんに向き直った。
「あなたほどの実力者にご協力いただけるなら、我々の方こそ頭を下げるべきだと思いま
す。ですが申し上げた通り、勇者様は重大な使命を背負われています。ですから……その
妨げとなさらぬよう、それだけは気を付けてくださいね」
「もちろんだとも」
わーっと歓声があがり、パチパチパチとサミエルとロダム、さらには成り行きを見守っ
ていた兵士さんたちも盛大な拍手を送る。
「素晴らしい。それでこそエリスですな」
「改めてよろしくッス、レイさん!」
「こちらこそ」
あっという間に和気あいあいムードができあがり、「今夜は歓迎パーティーだ!」とか
はしゃいでいる。とりあえず一件落着のようだね。良かった良かった。
ま、ただ一つ言いたいとすれば。
僕の意見はまったく無視ですかそうですか。
「いいけどさー……」
今後うちのパーティのリーダーは、間違いなくレイさんになるんだろうな。
紫煙
支援
……と、和やかに帰りかけた僕たちの背後から。
「ま、待たんか皆の者おぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!!」
魂の底から搾り出すような絶叫が響いて来た。
「まだこっちの話は終わっておらんぞ! 空気読んでずっと黙っていたというに、最後ま
でシカトとはあんまりではないかぁ!!!」
(OдO)…ア
やべ、王様のことすっかり忘れてた。
----------------- Real-Side -----------------
……何時間経っただろうか。寝ようと思っても、意識は冴える一方だった。
ベッドの中で何度も寝返りをうっていた俺は、我慢できなくなって身体を起こした。
さっきの電話。ヤツが俺に叩きつけてきた言葉のうちの、9割は嘘だった。
ヤツの癖なんだろうが、タツミがわっとまくし立てるのは、本心を隠したいときだ。俺
を責めるその内容はいちいち正論だったが、口に出している方は心にもない言葉を並べて
いるだけで、そんなことは考えてもいない……声から相手の心情を読むのが得意な俺には、
それがはっきりと伝わってきた。
本音は、わずか二箇所。
『僕の存在さえ否定すれば、君はちっとも悪くない』
『友達になりたいって、今でも思ってる』
そこだけだったのだ。
わからない。タツミは俺のことを、まったく恨んでいないのか?
テレビ台の下に押し込んだゲーム機本体の電源ランプが、小さな赤い光を放っている。
ヤツと俺の命綱としてはあまりに頼りない。
ベッドを降りて、投げ出していた携帯とテレビのリモコンを拾う。
もう少しだけ、話してみようか。そう決意して俺は画面に向けてスイッチを入れた。
ブンと音がして、茶を基調とした鮮やかな光彩が部屋を染めた。限界まで絞り込んだ音
は「王宮のロンド」。ほぼ画面いっぱいをうめる砂地の円形の広場の中心に、タツミたち
4人組と、黒装の剣士(レイに違いない)がおり、彼らを挟むように正面に王様、後ろに
数人の兵士が控えている。
どこの城だろう。幼い頃に見た気もするが、実際の風景とゲーム画面は別物なので、はっ
きりとは思い出せない。
まあ本人に聞けば済むことだ、と携帯に目を落とす寸前、「ティロロロ」というテロッ
プの表示音が流れて、俺は反射的に画面を見た。
そこで俺h
試演
※「まあ ほれた弱みと 言うものだよ。っちゅ!」(←ドラクエ的表現)
カシャン!(←携帯を取り落とした音)
……………(←アストロン状態)
※「最初に会ったときから ずっと好きだった」(←ゲーム仕様による会話の簡素化)
……これはなんだ。(←意識の回復)
なにやらヤツとレイがアヤシイことになってるんだが?(←状況分析)
どうも目がおかしくなったかな。(←合理的解釈の模索)
※「勇者様 本気ですか?」(←ゲーム仕様による会話の簡素化)
>はい いいえ(←駄目押し)
しかもOKなの?(←状況理解)
いやいや、まさかな。(←拒絶)
本当は寝ちゃってるらしいな俺。(←現実逃避1)
ったく、変な夢見てるよな俺も。疲れてるんだな。(←現実逃避2)
……俺は再びテレビのスイッチを切った。ごそごそとベッドの中に潜り込む。
とにかく、今はただ眠りたかった。
バラモスの用意してくれたあの石棺が――異っ常ぉに恋しかった。
本日はここまでです。
ちなみにアルス君、翌朝には誤解も解けましたが、
その夜は悪夢にうなされて大変だったようです。
いつもご支援いただいている皆様には感謝を込めて。
楽しんでいただけましたでしょうか。
好評でしたらまたやってみたいです。
【回答】
第1問:キングレオ
第2問:銀の鍵
第3問:雨雲の杖
第4問:ストロスの杖
第5問:ユバール族
うほっだと思ってマジ物凄く焦ったよこんちくしょうGJ!!
>>90 >「ですが殿方同士の恋愛なんて宿スレ的にブッチぎりでアウアウじゃないですかっ。巣に
>帰れって大荒れするに決まってますでしょう!?」
>「確かにビジュアル的にはちょいヤバかもだけど、どうせテキスト表現なんだから設定が
>女性ならセフセフじゃないのかよ!?」
マテ。仲間たちもこれが2ちゃんスレってのが前提なのか?ww
みんなの慌てっぷりにワロタ GJ!!
王様、根が悪い人じゃないと言うのが今回の話でよく分かったw
よくあの騒動の中待っててくれたもんだ
>>102 乙でした
いやー本当にびっくりしたw
R氏壊れたかとw
叙述トリックとはね
ウホッでアッーだと期待した俺に謝れ!
投下乙です。
ぶっちゃけガチでバイか何かだと期待した
俺女なんて認めない
総長こないなー。
多分、朝早く来るよ
早朝なだけに
おもしろくないwwwwでなおっwwでなおしてwwww
まいwwまいれぁヒヒヒァぁああwww
昼になりました
レイさま、かっこいい・・・。ぽっ
>>R氏 乙です
レイさんが女性だったとは、ビックリw
こりゃ他のキャラも性別、再確認しといた方が良いなw
まとめサイト行って来るノシ
3の女勇者は「男の子のように育てた」と母親に言われるからなぁ…
レイさんもたぶんそうなんだろな
でも、考えて見れば、レイさんと結婚したりしても、魔王を倒すと、またリセットされるのね・・・(滝汗
(//▽//)キャァァァーーー(ハート)(ハート)(ハート)
(*´Д`)レイタンタツミタンハァハァ
………( ゚д゚)ナンダオンナカヨ
orz スニカエリマス
o/rz !?
o.......rz …
121 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/29(木) 04:19:15 ID:7gEisxV4O
腐はそのまま死ね
スミスに謝れ
俺もデカい女におんぶされてーなぁ
125 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/30(金) 23:32:07 ID:YX80q9NdO
頑張って書いてるからちょっと待っててね保守
127 :
コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/02(月) 10:03:16 ID:N7f8rMux0
総長マダー?( ゚ д ゚ )
皆様お久し振りでございます。
今、ようやく真理奈の2章ができあがりましたので、テキスト投下しにきました。
もしお暇があれば読んでやってください。
http://www.uploader.jp/dl/ifdqstory/ifdqstory_uljp00019.txt.html さて前回の投下から5ヶ月も空いてしまった訳ですが、
その間に小説版ドラクエ4と精霊ルビス伝説を初めて読みました。
ゲーム内事象の再現度の高さに加えて、
筆者独自の世界観を無理なく組み込むレベルの高さ。
ただただ凄いとしか表現できません。
5と6も同じ筆者さんなので読んでみようと思います。
いつかそんな風に書けたらいいなと夢見つつ、
また次のが出来上がった時はよろしくお願いします。
ではでは暇潰しでした。 ノシ
>>128 更新GJ
王子がひどすぎる
王様ノリノリだな
次章まで気長に待ってます
>>128 更新乙でございます。
今回も楽しめました。
理想(ですらないけど)を振りかざして世間知らずな王子も世界の惨状を目にすれば何かかわるかもしれませんね・・・。
幼馴染ちゃんは、報われることがあるのでしょうか・・・。
能登かわいいよ、能登。
>>128 久美はいいよな。初めて読んだのが5だったせいか、メチャクチャ引き込まれたよ。
8も彼女が書いてくれればいいのにな。いまんとこ小説自体出さない方向だからなー。
>>131 一部じゃ黒歴史と言う人間もいるから話すスレは気を遣うが、自分も久美は好きだな。
8はもちろん久美で不満は無いが、個人的には五代ゆうあたりに書いて欲しい気もする。
あんまりここに出てこないので、お返事を。
>>129 ありがとうございますー
王子がひどくかけていれば嬉しいですねw
個人的にはもっとうざくなってほしいんですけど。
逆に王様は遊ぶのがお好きって感じをしっかり持たせたいですね。
次章は戦闘をバッチリやりたいと思っております!
>>130 ありがとうございますー
王子が好評なようでw
彼に関しては王様の願いが叶えばいいのですが……
後輩ちゃんは今のところ貧乏クジを引いてばかりですね。
まぁそれもアリアハンに帰るまでの辛抱です。
もっと真理奈の可愛さを引き出せるようになりたいです!
>>131 先生の作品僕も好きです。
日常生活のちょっとした出来事が話に出てきて和んだりしますよね。
キャラクターもみんな魅力的ですし。
アリーナのボクっ子は笑ってしまいましたがw
8なんか良い話になりそうな気がしますよねー
ゲームではそこまで盛り上がらなかったラスボスも熱い展開になりそう!
自分宛てではありませんが……
>>132 久美先生黒歴史扱いもされたりしてるんですねw
五代先生の名前は初めて聞きました。
今度探してみよう!
と、でしゃばったところで帰りますノシ
投下があるまでのんびり雑談しながら保守ってのはいいな。
もちろん職人が戻ってきたらすぐ避難所に移動するが。
五代ゆうはオススメ。デビュー作の「はじまりの骨の物語」とか、
現実の神話をしっかり勉強してる上での正統派ファンタジーを書ける作家。
文章力はぶっちゃけ久美より上、久美は手本にすると変なクセがつく。
ただキャラ作りは久美のが上(ライトノベル層にウケる作り方を知ってる)。
それぞれ参考にできる点があるよ。
―刑訴法と友引―
「調査って、あなたがこの事件を調べようって言うの?」
「はい。私はこのままサンディさんが罰を受けるのは納得がいかないんですよ。」
あんたが納得しようとしまいとどうでもいいのよ……
「私のところでは『疑わしきは罰せず』といいまして嫌疑だけでは罰せられないのです。」
「何を言っているのかよく分からないわ。」
「つまりですね、証拠がない限り犯人として扱ってはいけないということです。」
「あなたのところじゃそうかもしれないけど、ここじゃ町長に睨まれたらおしまいなのよ。」
「ええ。ですから何とかして町長にサンディさんの無実を証明したいんです。」
そんなことされたら私の計画が台無しじゃない!
「でもねえ、言いたくないけど、状況を考えたら犯人はサンディしかありえないわ。」
「そうとも言えないんです。サンディさんが犯人だとするとおかしなことがあります。」
「なんなのよ、おかしなことって。」
「いえ、おかしいと言ってもほんの些細なことなんです。」
「それじゃ気にしないことね。」
「でも、どうしても納得ができないことなんです。」
……じれったい男ね。
「実はですね。ペロ君の餌に毒を入れた方法が分からないんですよ。」
「方法って、餌を作るのはサンディの仕事なのよ。いくらでもやりようがあるわよ。」
「はい、確かに餌を用意したのはサンディさんです。彼女もそれは認めています。」
「それじゃ……」
「でも、彼女の用意した餌には毒は入っていなかったんです。」
「どうしてそんなことが分かるのよ?」
「ネズミです。ネズミが餌を食べていたんですよ。」
「ネズミ?」
「そうです。餌は鍋で作られていたのですがその鍋に残った餌をネズミが食べていました。」
「見てきたの?」
「はい。町長の息子さん、ジョセフさんの許可を得て現場を見せていただきました。」
「……それで、そのネズミがどうしたって言うのよ。」
「そのネズミに体調の変化は見られなかった。つまり鍋の餌には毒は入っていないのです。」
「毒が鍋に入っていなくてもペロは餌を食べて倒れたことに間違いはないんでしょ?」
「餌はお鍋からお皿に移されました。毒が入れられたのはその後です。」
確かに私が毒を入れたのは皿に盛られた餌だった。
「でも、それはお皿の餌にサンディが毒を入れたことだってことじゃないの?」
「そう考えるとまたおかしなことが出てくるんです。」
何よ。おかしいのはそんなことを気にしているあんたじゃないの。
「毒を入れていた容器がどこにもないんですよ。」
「それは処分したんでしょ。サンディが。」
「サンディさんはペロ君が餌を食べた後すぐに拘束されています。そんな暇はなかった。」
薬を入れていた瓶は帰り道で捨てたんだった。その場に残しておけばよかった……
「サンディさんがこの事件の犯人だと言うにはどうしても納得できないでしょう。」
「……そうなるのかしら。」
「ええ、そうなります。そしてそうなると次なる問題が出てきます。」
「何よ、問題って……」
「サンディさんとは別にペロ君の餌に毒を盛った真犯人がいるということです。」
真犯人。
それは、つまり私のこと。
「町の中でペロ君が放し飼いにされていることに不満を持つ人は多いようですね。」
ケージさんはサンディ以外にペロの餌に毒を入れそうな容疑者を探すつもりのようだ。
ここは話をあわせておかなければ。
「そうね。誰彼かまわず吠えるんだもの、あれは迷惑だったわね。」
「つまりペロ君に毒を入れようという動機を持つ人間は大勢いたわけですね。」
「でも、迷惑だからって毒を入れるまでするかしら。これはやっぱり……」
「逆にペロ君はサンディさんには懐いていて、彼女に毒を入れる動機はないようです。」
……それはそうでしょうね。
「動機があったとしてもチャンスがあったのはやっぱりサンディだけなんじゃないかしら。」
「毒を入れた容器が見つからない以上まったく別の機会に毒を飲んだのかもしれません。」
「別の機会?」
「たとえばペロ君が毒飲んだのは餌を食べるずっと前だったとかね。」
今度は何を思いついたのよ。
「事前に遅効性の毒を飲んでいて、餌を食べたときその毒が回ったのかもしれません。」
「ちょっとタイミングが良すぎるんじゃないかしら……」
「でもこれなら現場に毒の容器がなかったことの説明がつきます。」
いろいろ面倒なことを考えることが好きな人のようね。
「アマンダさん、サンディさんの無実を証明するため調査をしませんか? 我々で。」
「我々って、私も?」
「はい。アマンダさんはサンディさんの友達です。無実を証明してあげたいでしょう?」
「そ、それはもちろん……」
「決まりですね。これから本格的に調査を開始しましょう。」
「でも……」
「町長の許可は取ってあります。存分に調べましょう。」
犯人である私が事件の調査ですって?
なんだかおかしなことになったわ……
「この町の人間ではない女性を見たと言う話があります。怪しいかもしれませんね。」
はっきり言って今この町で一番怪しいのはあなたなんだけどね。
「その人なら私も見たわ。綺麗な人だったわね。」
この男はサンディがちょっと可愛いもんだから助けてあげようとしているだけに違いない。
だからもっと別のことに興味を持たせることにしよう。
「ケージさんもそういう綺麗な人に会ってみたくない?」
綺麗な人と聞けば飛びつくに違いないわ。
「そうですね。彼女がどこにいるのか知っているんですか?」
「あの神秘的な雰囲気、彼女はきっと占い師よ。」
「占い師ですか……」
「この町からすこし南に高名な占い師が住んでいるの。そこの人じゃないかしら。」
そうよ。美人占い師なんてサンディよりも魅力的よ。
「ケージさんも1度占ってもらうといいわ。」
「いや、私はどうも占いというのは苦手でしてね。」
「占ってもらえば家に帰るヒントをもらえるかもしれないわよ。」
「……家に帰る方法ですか。」
この一言が効いたのかケージさんは占い師のところへ行くことを決めた。
単なるスケベ親父かと思ったけど意外と家族思いなのかもしれないわ。
だったらなおのこと本当に帰る方法を聞いてそのまま帰って欲しいものだ。
「でも、町の外へ出るのは危険なのですよね?」
「戦いができる人間に連れて行ってもらえばいいわ。誰か紹介してあげるわよ。」
私は何とかケージさんを占い師の下へ行かせることに成功した。
ケージさんが占い師のところへ行っている間、私は自分が置かれている状況を省みた。
現状を考えれば私が怪しいと思われる要素はどこにもない。
ケージさん以外の誰もがサンディの犯行だと思っているはずだ。
町長もサンディが犯人であると決め付けている。
それにケージさんが私を犯人探しの仲間に加えたのはチャンスだ。
犯人探しを撹乱してこのままうやむやにしてしまえばいい。
あの男、ケージさんはそのうち諦めるだろう。
状況は私にとって有利だ。
ケージさんは聞き込みをして事件の情報を集めたいようだ。
この事件の犯人は私にとって彼が事件をかぎまわるのは非常にまずい。
ケージさんがはやく諦めるようにサンディに不利な情報を集めておこう。
今の私はサンディにとどめを刺すのに最適な状況なんだわ。
そう思うと、私は悪女のような微笑を浮かべた。
―続く―
投下乙でした。本格的な推理になってきましたね。今回も楽しめました。
アマンダを疑ってカマをかけたんじゃなさそうですね。
もっとも、このままかく乱されるケージさんじゃなさそうですね。
前回の最後でアマンダが「犯人である自分に迫っている」と言ってたし、
結果は見えてる気がするけど、案外とんでもないどんでん返しがあるのか……。
過程がどうなるかが楽しみ。
そういえば前回はトモノリ(リカ)ちゃんとジン君、結婚話が出てましたね。
遅ればせながらおめでとう。
結婚するのはジン君のお姉さんじゃなかったっけ?
違うよ。ジンくんのお姉さんが結婚してて、子どもが生まれるんだよ。
そんなに長くないし面白いんだから、読み直せばいいのに。
―民訴法に先負―
ケージさんが占い師のところから帰ってきた。
「占いの結果はどうだった?」
「驚きましたよ。」
「そんなにすごい結果だったの?」
「綺麗な人だと聞いていたのに占い師は老婆だったんですよ。」
それはびっくりしたでしょうね。
「占いについては、占い師のグランマーズも驚いていました。」
「やっぱり驚くような結果だったのね?」
「いえ、まるで占えなかったそうです。こんなことは今までなかったそうです。」
「不思議なこともあるものね。」
「まるで私がこの世界の人間でないような態度でした。」
それが本当ならますます得体が知れない人だということね。
「そうそう、グランマーズのところへ行く前に教会に寄ったんです。」
ケージさんは楽しそうに語る。
「ここでは町の外へ出る前にも教会でお祈りをするのが常識だそうですね。」
「ええ、そうよ。」
「ついでに教会でお告げを聞きました。」
「何かいいお告げは頂けたのかしら?」
「いや、もっと頑張れば成長できるなんていうありきたりな話でしたよ。」
「ま、お告げなんてそんなものよ。」
「そもそも的確な神のお告げが聞けるなら占い師なんて商売成り立ちませんよね。」
私はお湯を沸かしながらケージさんとの話を続けた。
ケージさんは話を続ける。
「でも面白い話が聞けました。教会では毒の治療も行っているそうですね。」
いったいどこが面白いのかしら。
「毒の治療は神父様が行う。この世界の常識なんですね。」
「そうよ。だからペロも神父さんのところへ連れて行かれたんじゃないの。」
「ええ、そうでした。神父さんがいなかったら大変なことになっていましたね。」
「そういうときは毒消し草を使うのよ。旅の必需品よ。」
「おや、そんな便利な薬もあるのですか。」
「毒には毒消し草、麻痺には満月草よ。」
「麻痺と言うのは?」
「体が痺れて動かなくなるの。ヘルホーネットなんかの攻撃を受けるとなることがあるわ。」
ケージさんはしきりに頷いている。
「いやあ、アマンダさんは薬のことにお詳しいですね。」
「伊達に宿屋の娘なんてやってないわよ。旅人に薬はつきものだからね。」
だからペロに飲ませた毒を調合しようと思ったのよ。
「この世界の人はみんな親の仕事を手伝っているんですか?」
「そうね。いえ、そうでない人もいたわね。」
「親に反抗する子もいるんですか?」
「大工の息子のハッサンが武闘家になるって言って家を飛び出したって話よ。」
「子供が親に反抗することはどこにでもあることなんですね。」
「それ以来行方不明らしいけど、どこでどうしているのかしらね。」
ま、どうでもいいことだけど。
「こうして事件が起きたとき行方不明の人間がいるとなんとなく意味ありげですよね。」
「あなたハッサンがこの事件に関係していると思っているの?」
「いや、さすがにこの事件とは関係ないでしょうね。」
「そうでしょうね。」
どうせなら関係があると思ってハッサンを探し回ってくれたらよかったのに。
「そうそう、私のほうは町の人に事件の起きた日のことを聞いてみたわ。」
「何か分かりましたか?」
「あまりいい結果じゃなかったわ。」
私にとってはいい結果だったけどね。
「あの日ペロはずっと屋敷にいたの。だから外で毒物を食べた可能性はないわ。」
「どうやら毒はあの餌に入っていたと考えるしかないようですね。」
「そのようね。残念だけど。」
これでサンディが犯人ということで決着がつく。
「そもそもこの町では犬に危害を加えるのはどれくらいの罪になるのでしょうか?」
「ただの犬じゃなくて町長が可愛がっていた犬ですもの、大罪じゃなくて?」
「犬によって違うのですか?」
「だってこれがアロードックだったら罪にはならないでしょう。」
「アロードッグというのは?」
「モンスターよ。名前の通り弓を放つ犬のモンスター。」
「その犬ならば危害を加えても罪にならないのですか?」
「だってモンスターですからね。」
私は話しながらティーカップを食器棚から取り出す。
「モンスターと言えばこの世界には腐った死体というモンスターもいるそうですね。」
「いるわね。あまり見たくないモンスターよ。」
「モンスターとはいえ死体を傷つけたら遺族から賠償責任を問われないのですか?」
「だってモンスターが襲ってきたら反撃しなきゃ自分がやられるのよ。」
「うーん、厳しい世界ですね。」
「それに家族だって身内がモンスターになったら止めて欲しいんじゃなくて?」
「……そういう考え方もありますね。」
「きっと倒すほうも止めてあげたいと思っているんじゃないかしら。」
「そうですね。目の前に人の道から外れた人間がいたら止めようとするでしょうね。」
ティースプーンを探しながらそんな話を続けた。
「話がそれました。このままだとサンディさんはどうなるのでしょう?」
「そうね。処遇は町長の一存で決まるでしょうね。」
「前にもそんなことを言っていましたね。刑罰を与える権限も町長にあるのですか。」
「あれでもこの町で一番偉い人間ですからね。」
「私の所ならば損害賠償の請求ができるのがせいぜいでしょうね。」
相変わらず良く分からないことを言う人だ。
「これは一刻も早く真相を突き止めてサンディさんを助けなければなりませんね。」
「え、ええ。そうね。」
突き止められちゃ私が困るのよ……
「ねえ、ケージさんはどうしてサンディが犯人じゃないと思うの?」
「そうですね。まず動機がないことでしょうか。」
「動機……」
「ペロ君の餌に毒を入れる理由ですね。これがサンディさんにはない。」
「でもそれは誰だってそうよ。」
「はい。しかしサンディさんはこんな騒ぎを起こしたくない理由があるんです。」
それって……
「サンディさんとジョセフさんはお互い好意を寄せあっているようです。」
この男いつの間にそんなことまで調べたのかしら……。
「ですから私はサンディさん以外の人間が毒を入れたものだと思っています。」
サンディの奴ジョセフだけじゃなくこの男もたぶらかしたのかしら。
私はティーポットにお湯を注ぎながらそんなことを考えていた。
「次に考えられるのは誰か屋敷に忍び込んで毒を入れたということですね。」
「ちょっと! そんな人いないわよ!」
「分かりませんよ。こんなことならグランマーズに犯人を占ってもらえばよかったですね。」
冗談じゃないわよ……
「占いと言えばアマンダさんは占いのようなことができるんですか?」
「え? そんなことできるわけないじゃない……」
「そうですか。でももしかしたら占い師の才能があるかもしれませんよ。」
「何を根拠にそんなことを言うのよ。」
相変わらず意図の読めないことをいう人だ。
「いや、あれは未来に起こることが分かっているかのようでした。」
「何の話よ。」
「そういう人っているんですよね。私の知り合いもデイトレードでひと財産築きましたよ。」
「何を言っているのかわからないわ。」
話しながら紅茶に砂糖を入れる。
「いえ私がここで働くことになったとき午前中に教会へ行くことを勧めたじゃないですか。」
「そうだったわね。」
「あの日、午後に教会へ行っていたらお祈りどころじゃありませんでしたよ。」
「どうして?」
「神父様はあの日の午後ずっとペロ君の治療にかかりきりでしたからね。」
そうだ。神父様がペロの治療をすることは分かっていた。
だから、つい午前中に行ったほうがいいと言ってしまったんだった。
「まるでそうなることを知っていたかのような見事なアドバイスでしたよ。」
紅茶を口に運ぼうとする手が止まった。
……まさかこの男、私を疑っているの?
―続く―
乙乙!
いよいよクライマックスですな!!
そして私は知っています。
この物語が明日で終わることを!
なぜなら(ry
すげえ面白いwわくわくする
>> 午前中に教会へ行くことを
おお、そこか。
ますま古畑っぽいな。
ラスト楽しみ。
>「そういう人っているんですよね。私の知り合いもデイトレードでひと財産築きましたよ。」
もしかして3の彼?
だとしたら彼はもう……。
3の話が今のよりもだいぶあとの話であれば、まだ健在のはず。
おお、3との接点も作ってたのか。気付かなかったけどすげぇ。
もしかして4でジン君の知り合いが言ってたっていう「嘘をつく覚悟」はケージさんのセリフなのかな。
この話読んでると、ぴったりな気がする。
うう、3の彼・・・(泣
ほんと引き込まれるね。
3ってどんなだっけって読み返してまた鳥肌・・・。
すげえよ
―商法は仏滅へ―
「早く運んでケージさん!」
「はい! ただいま!」
「それが終わったら食事の準備を手伝ってね。」
「夕食は何人前準備すればよろしいでしょうか?」
「そうね。今日は20人分用意しておけばいいわ。」
もともとケージさんはうちの宿屋の仕事を手伝うことになっていたのだ。
彼にはその仕事に集中してもらおう。これで事件の調査はできまい。
私のことを疑っている人間にこれ以上事件をかぎまわされるわけにはいかないのだ。
「おいおいアマンダ、そこまで働かせちゃ悪いよ。」
「父さんは甘いのよ。家においている以上これくらいは当然よ。」
「そんなにこき使ったらそのうち逃げ出してしまうよ。」
むしろそうなってくれたら大助かりだわ。
「アマンダさんの言うとおりです。これくらいのことはお手伝いさせてください。」
「そうよ。やってもらいたいことはいっぱいあるんだからね。」
「かしこまりました。」
ちっ。なかなか音を上げないわ。
思ったよりもずっと丈夫な人のようね。
「働くと言えば町長の家でサンディちゃんの代わりに働く人を募集していたよ。」
父さんがそんなことを言い出す。
どうやら町長はサンディを解雇することにしたようね。
いい気味。これでサンディはジョセフに近づけなくなるわ。
「困りましたね。」
「あら、何が?」
「サンディさんの疑いが晴れずに困りましたねと言ったんです。」
「それは……もちろんそうね。」
いけない。もっとサンディの身を案じる態度をとらなければ。
「町長を説得するのは難しそうですね。」
そうよ。だから早くあきらめなさい。
「そういえばアマンダさん。事件のあった日、大通りで町長を見かけたんですよね。」
「え、そうだったかしら……」
「はい、確かにそうおっしゃってましたよ。」
そうだったわ。あの時とっさにそんな嘘をついてしまった。
「町長は大通りを歩いていた……」
「それがそんなに重要なことなのかしら?」
「ええ、町長が留守だとしたら誰かが屋敷に忍び込むチャンスがあったわけですからね。」
しまった! 私の嘘で真相に近づけちゃったわ!
でも、いまさら嘘だったなんて言えないし……
「このあたりをもう少し調べてみないといけませんね。」
「でも宿屋の仕事はまだまだあるわよ。まずはこっちをしっかりやってね。」
そこにお父さんの声が聞こえてくる。
「おーい、そろそろ休憩とってもいいぞ。」
もう! お父さんたら今は娘のピンチなのよ!
私は自分の部屋で思い悩んでいた。
ケージさんは屋敷に誰か忍び込んでいないのか調べていることだろう。
あの日私は屋敷に近づいていないと言った。
誰にも見られていないと思うけれど、もし見られていたら疑われてしまう。
どうか誰にも見られていませんように……
「ちょっとよろしいですかアマンダさん。」
部屋にケージさんがきた。よろしくないんだけどそうも言えない。
「何かしら?」
「困りますねアマンダさん。いい加減なことを言っちゃいけませんよ。」
血の気が引いていくのが分かる。
いったいどこまでばれたのだろう。
屋敷に近づいたことか、ひょっとしたら忍び込んだことまで……
「今日の宿泊客は予約だけで20人以上います。夕食が足りなくなるところでした。」
ケージさんの言葉に私は脱力した。
「あらごめんなさい。うっかりしていたわ。オホホホ。」
「それからもうひとつよろしいですか?」
「何かしら?」
「あの日町長は大通りを歩いていないそうです。アマンダさんの勘違いですよ。」
「ふざけるんじゃないわよ!」
あの男が部屋から出て行くと私は悪態をついた。
彼をなんとかこの事件から遠ざけなければならない。
そういえば旅の商人が助手を探していたけどあの人を連れて行ってくれないかしら……
「ケージさんてこことはまるで違う世界にいたんでしょう。どんなところだったの?」
今度は事件に関係ないの話をして気をそらすことした。
「衣食住など基本的なところは共通点が多いようですね。」
「食事は口に合っていたのね。でも、あまりお酒は飲まないみたいね。」
「いえ、それは健康のため控えているだけです。」
あら、これだけ丈夫なのにそんなこと気にしていたのね。
「違うところも多いですよ。たとえば魔法の代わりに科学技術が発達しています。」
「それは魔法とどう違うのかしら?」
「……説明が難しいですね。そうだ、魔法と違い誰にでも使うことはできます。」
「誰にでも使えるなら魔法なんていらないのね。」
「そうですね。私のいるところでは法といえば魔法ではなく法律のことです。」
「なんだかよく分からないわ。ケージさんはその法律っていうものが好きなのかしら?」
「昔勉強したものですよ。経済を動かす法律、法律を動かす政治……」
話はますますわけの分からないものになっていく。
「ちょっと難しかったですね。何か面白い話は……」
私がつまらなそうなのを察してか話題を変えようとしていた。
「私の世界には株というものがいます。大学時代に友達だった奴もやってましたよ。」
「どんなものなのかしら?」
「その価値が上がるか下がるかを予測して売買をします。」
「よくわからないわね。」
「イメージがつかめませんか。この世界では基本的に買値も売値も一定ですからね。」
「なんだかケージさんの話ってなんだか難しいのよね。」
「気をつけているつもりなんですけどね。それなら恋愛の話なんてどうです?」
「あら、それは聞いてみたいわね。」
「若い人が恋愛話に興味があるというのはどこの世界でも同じですね。」
ケージさんはこう切り出してきた。
「アマンダさんは天空の花嫁と聞いてどんな人を想像しますか?」
そして……
「もし結婚したら天空の花嫁。ただし天空なのは妻ではなく夫のほうだった。」
ケージさんの口調が変わった。
「そうなんですよ。注目すべき相手が違っていた。この事件もね。」
「この事件……」
「そう、私はこの事件が犬のペロ君か町長に不満がある者が犯人だと思っていました。」
何を言い出すのよこの人は。
「でも、注目すべきところはそこではなかった。この事件にはもう1人被害者がいた。」
もう1人の被害者って……
「この事件で一番の被害を受けたのはサンディさんだったのではないでしょうか?」
何も言わない私を無視してケージさんは続ける。
「解雇されジョセフさんに近づけなくなった。そう考えれば彼女は立派な被害者です。」
まだケージさんは止まらない。
「犯人の狙いははじめからサンディさんを陥れることだったのではないでしょうか。」
そこまで気づいたのね。
やはり私の恋の障壁はまだなくなっていなかったらしい。
なんでみんな私の邪魔ばかりするのよ!
人の恋路を邪魔するものはみんな消えてしまえばいいのに!
私は心の中で叫んでいた。
そこへお父さんがあわてながら部屋に入ってきた。
「大変だ! サンディちゃんが町を追い出されてしまったぞ!」
私にはその声がずいぶん遠くから聞こえたような気がした。
―続く―
ケージさん、更新きたー。
乙でございます。
ケージさんの語って聞かせるような口調、ひきこまれるようなものがありますね。
かなり核心に迫った感じですが、サンディちゃんが追い出されるのに間に合わなかったか・・・orz
このじわじわと真相に迫り来る感じが堪らんな…
hoshu
○月×日
目が覚めたら見知らぬ場所にいた
こういう場合のお約束にしたがって頬を抓るも返ってくるのは痛みだけ
しばし周囲を散策、現地住民と交流する事に成功(その際色々あったが長い上に恥ずかしいので割愛)
すったもんだの末、この場所は日本どころか地球ですらない事を知る
なんか恨み買うような事したっけ?
○月△日
異界の地で職も無い、金も無い、人脈も無い
まさに無い無い尽くしの俺を見かねて、村長が仕事を斡旋してくれるという
その場所は俺のような異邦人が稀に来るらしい
なんでも移動魔法や旅の扉の座標事故で世界と時間の位相がずれ、ここに一時的に飛ばされるとの事
本気でチンプンカンプンである
俺も元の場所に帰れるのか、と質問すると
「君は事故でなく必然でここにいる。揺らいでいる彼らと違い、存在が安定している事が何よりの証拠だ」
と言われた。やっぱり意味が分からなかったがとりあえず簡単には帰れないようだ
俺は冷蔵庫の中の高級プリンを思い出し、少しだけ泣いた
○月◇日
仕事先は何を隠そう俺が目覚めた場所だった。宿屋らしい
異世界の住人の隔離施設って所だろうか?
俺がここにいたって事を鑑みるにあながち間違ってない気もする
そうそう、店長さんはナメクジのお化けみたいな風貌だ
しかし、一昨日彼(?)を見て取り乱した俺を笑って迎えてくれた非常にいい人(?)である
迷い人との会合を少しだけ心待ちにしていた俺だが、結局この日は誰も来る事無く一日が終了。店長さんと会話に花を咲かせるだけだった
なんでもランプの魔王とか古代の殺戮兵器とかが村の外には闊歩してるらしい
割と本気で不安に駆られる俺だったが、村の中は最深部に眠る神様の力で安全だという
元の世界に帰る手掛かりを得る為になんとかその神様に会ってみたいものである
でも外に出たら指先一つでダウンってレベルじゃないんだろうな……
乙です。
この世界では、迷い込んでくる人の存在は認知されているのですね。
必然でここにいる・・・ってことは、誰かが呼んだとか。やることがあるのでしょうね・・・。
続きが楽しみです。
hosyu
―民法で大安に―
まさかサンディがこの町を追い出されちゃうなんて。
そこまでするつもりはなかったのになあ……
サンディは旅の商人の助手として連れて行かれてしまったらしい。
町の外に出たらどんなモンスターが襲ってくるかわからない。
最悪の場合サンディは……
私が部屋で落ち込んでいるとケージさんが来て訪ねてきた。
サンディが町を追い出されたことでこの人のことを忘れていたわ。
「何でも帰ってきたそうですよ。」
「サインディが? サンディが帰ってきたの?」
「いえ、大工の息子のハッサンが……」
「少しは空気読みなさいよ!」
「……アマンダさんはサンディさんのことを気にしているのですね?」
「当たり前でしょう……」
サンディは私のせいで危険な目に遭っているかもしれないのだから。
「心配ですよね。私も元の世界では行方不明となっているんでしょうか。」
知らないわよそんなこと。
「あまり長い間帰らないと失踪宣告を受けてしまうかもしれない。」
「失踪宣告?」
「私の世界では行方不明の人間は死んだ人間として扱われるんです。」
帰らない人は死んだ人と一緒。なんて嫌なことを言うんだろう。
「サンディさんはそうなる前に帰っていますよ。ただ、私は……」
ケージさんはしばらくぶつぶつ呟いていた。
「……おや、いろいろな方法の載っている薬草の本がありますね。」
ケージさんは本棚にある本を目ざとく見つけた。本当に抜け目のない人。
「ひょっとしてその本にペロが食べた毒の作り方が載っているとでも思っているの?」
「いえ決してそんなことはありませんよ。」
「この際だからはっきりさせましょう。ケージさん、あなた私を疑っているでしょ?」
「どうしてそう思うのですか?」
「いいからその本を調べてちょうだい。私も疑われていると思うと気分が悪いわ。」
私の言葉でケージさんは本の内容を調べ始めた。
「椅子をお借りしてよろしいですか? ちょっと疲れているもんですから。」
ケージさんは椅子にすわりページをめくる。
でもその本に毒の調合法は載っていない。
毒の薬方が書いてあったのは本ではない。……しおりの方なのだ。
おそらく前の持ち主が毒の調合法のメモをしおりとして使っていたのだろう。
しおりは処分した。もう私が毒を調合したという証拠はない。
ケージさんが本を調べ終わるころを見計らって切り出す。
「どう? 毒の造り方なんて載ってなかったでしょう。」
「そうですね。」
「証拠がなくて残念だったわね。」
「私は残念だなんて思ってませんよ。」
「あなた、私が犯人だと思っているんじゃなくて?」
「……そうですね。いくつか疑問点があるのは確かです。」
やっと本音を言い出したわね。
「ねえ、この前の話の続きしましょうよ。」
「この前の話?」
「そう。この事件を視点を変えて見てみるっていう話よ。」
「ああ、そうですね。」
「この事件の犯人はサンディさんがいなくなって得をする人物だという話よね。」
「……そういう考え方もあると言う話ですよ。」
「サンディがいなくなって都合がいいなら私も容疑者ね。」
自分からこんな話をするなんて、私は少し自暴自棄になっていたのかもしれない。
「アマンダさんはサンディさんがいなくなって欲しいと思っていたんですか?」
「あなたのことだからもうどこかから聞いてるんでしょ。私がジョセフが好きだって。」
「……そのことでしたら聞いていました。本当だったんですね。」
「サンディはジョセフと付き合っていたの。私もジョセフが好き。動機としては十分ね。」
「それではあなたが?」
「私はやったとは言ってないわ。ねえ、疑問点があるなら答えてあげるわ。」
私はまだ自分が犯人だと認めたわけではない。
「疑問点って町長が通りを歩いていなかったってこと?」
「たとえばそれですね。あの日あなたは町長の屋敷に行ったんじゃないですか?」
「私は町長の屋敷に行ってないわ。あれはあなたの言うとおり私の勘違いよ。」
「そうですか。そうなるとまた新たな疑問点が出てくるんです。」
「いいわ。その疑問点に答えてあげる。」
「確認しますがあなたは私に聞くまでペロ君に毒に侵されたことを知らなかったのですよね?」
「ええ、間違いないわ。」
「しかし、それはおかしい。あなたが餌に毒を盛られたことを知っていたはずです。」
「教会へ行くなら午前中にって言ったこと? あれは何事も早いほうがいいと思っただけよ。」
「それではありません。私がペロ君の症状を言ったときの台詞がおかしいんです。」
「私がなんて言ったっていうの?」
「あなたはこう言いました。『ペロったらいったい何を食べたのかしらね』と。」
「別に不自然じゃないでしょ。ペロは餌を食べてそうなったんだから。」
「私が餌を食べて症状が出たと言う前にあなたは何を食べたかを気にしたんです。」
私には彼の言葉の意味がわからないでいた。
「毒を受けたならばモンスターの攻撃によるものと考えるのが普通じゃないですか?」
……確かに普通ならそう考えるでしょうね。
「でも、あなたは食べ物だと分かっていた。この毒は食べ物によるものだと。」
「言いがかりよ!」
「不自然なのはそれだけではありません。」
まだなにかあるの?
「そもそもこの世界の人はこれが毒によるものだと考えるはずがないんです。」
何を言っているんだろうこの男は。
「あなたは私がぺろ君の症状をどのように説明したか覚えていますか?」
「さあ、どうだったかしら?」
「ペロ君は痺れたように痙攣して動かなくなったと私は言いました。」
痺れて……動かなかくなった……
「気が疲れましたね。そう、これは麻痺の症状です。毒ではない。」
麻痺……
「この世界では『毒』と『麻痺』はまったく別のものなんですよね。」
「それは……そうだけど……」
「町長はペロ君が餌を食べたところに行ったので毒を疑いました。でもあなたは?」
私は町長の屋敷には行っていないと言ってしまった。
いまさら実は見ていましたなんてことにはできない。
「麻痺の症状なのに毒物を疑った。私から聞いて初めて知ったはずなのにです。」
「私が疑問に思ったことは以上です。」
説明なんてできるわけない。
「……それは私が……私がペロの餌に毒を入れたからよ。」
終わったわ。何もかも。
「知らなかったわ。あれが麻痺の症状を起こす毒だったなんて。」
「本に載るような確立されている毒物ではなかったと思っていました。」
「……だから毒の造り方が本に載っていなくても残念がらなかったのね。」
「いったいどんな毒物だと紹介されていたんですか?」
「命に別条がないけど派手な症状が起きる毒の作り方よ。」
「……ペロ君に危害を加えるつもりはなかったんですね。」
「そう、誰も傷つけないでサンディがあの屋敷に居辛くなるだけの計画だった。」
私が望んだのはそれだけだったはず……なのに。
「嘘をつくには覚悟が必要なんです。たとえそれが相手のことを思う嘘であっても。」
「それで、ケージさんは私をどうしようって言うの?」
「どうもしませんよ。あなたがやったという証拠は何ひとつないんです。」
「なによそれ……」
「言ったはずですよ。証拠がない限り犯人として扱ってはいけないと。」
「自分がやってって認めているのに?」
「私は何もしません。これからどうするかを決めるのはあなた自身です。」
「そんなこと言ったってどうすればいいのよ! 私のせいでサンディが! サンディが!」
「大丈夫。ジョセフさんがサンディさんを探しに行きました。すぐに見つけてきますよ。」
「私も探しに行く!」
「いえ、ここは彼を信じて待ちましょう。」
私、私は……
「きっと彼ならサンディさんを無事に見つけてきてくれますよ。」
「どうするかは私が決めろってあなたも言ったじゃない!」
「はい。でも、アマンダさんがどうするのか私には見届ける時間がなさそうです?」
「どういうこと?」
「好きで酒を断っているわけではないということです。ちょっと心臓が悪いんです。」
「そんな話聞いてないわよ。」
「薬さえ飲んでいれば大したことないんです。でも、この世界にはそれがない。」
「そんな……」
私が消えてしまえばいいと思った人は、その願いどおりみんないなくなってしまう……
そんなことさせない!
それから幾日か経ち、ジョセフがサンディを連れて戻ってきた。
「これでジョセフさんとサンディさんの仲はますます強まることになるでしょう。」
「そっか。結局私のしたこと、何の意味もなかったのね。」
「良かったじゃないですか。」
「これで良かったのかしら?」
「取り返しのつかないことになるところだったのに何も起きなかったんですよ?」
「……そうね。そサンディが無事でよかった。そしてあなたもね。」
「ええ、おかげで助かりました。」
あの毒薬のしおりがはさんであった本に心臓病の薬の作り方が載っていた。
私はそれを必死に調合しケージさんに飲ませたのだ。
ケージさんを助けたことで私は少しだけ罪滅ぼしができたような気がした。
「ケージさんも無事に帰れるといいわね。」
「そうしたいところですが世界が平和になるまではここで御厄介になります。」
「ええ、そうしてちょうだい。」
「その間に帰った時の妻への言い訳を考えておきます。」
「ケージさんは奥さんのことばかり考えているのね。」
私はちょっと意地悪く言った。
「いや、そんなことないですよ。職場の人間にも迷惑をかけてしまうことも心配です。」
「こんなときまで仕事のことを気にするなんて変わってるわね。」
「そうですか?」
「前に言っていた株っていうのを売り買いするのがお仕事なのかしら?」
「いえ、それは……昔友達だったやつがデイトレードでやっていただけです。」
デイトレード、前に聞いたお金儲けの方法だっけ。
でも、なんとなく照れくさそうな言い方だったのはなぜかしら?
「ねえ、ケージさんってどんな仕事をしているの?」
「教師です。この世界ではまるで刑事のようでしたけれど。」
「え? ケージさんってケージさんじゃなかったの?」
「いえ、名前は啓司に間違いないです。私の世界には刑事という職業があるんですよ。」
本当によくわからない人だわ。
「大学に入ったばかりのころは法律家を目指していたのですけどね。」
「諦めたの?」
「そうなりますね。まあ、思うところがあり教員になることにしたんです。」
よくわからないけれど、この人もいろいろあったのかもしれない。
「教師として子供達に嘘をつくには覚悟が必要だって言っていますよ。」
私に言った言葉。私も子供扱いだったのね。
ケージさんも覚悟をきめて嘘をついたことがあるのかしら?
「アマンダさんはこれから新しい恋を見つければいいんですよ。」
「まあ、ケージさんからそんな言葉が聞けるとは思わなかったわ。」
「あの天空の花嫁の話、覚えていますか?」
10年ぶりに再会した2人の話よね。
「彼らは私の教え子なんです。その当時はこうなるなんて思ってませんでしたよ。」
「出会いなんてどこに転がっているか分からないってことね。」
「そうですとも。あなたにもきっと赤い口紅よりも似合う色が見つかるはずです。」
赤はジョセフが好きな色。この人そんなことまで調べていたんだ……
「ねえ、ケージさん。いまさらだけどひとつ聞いていいかしら?」
「なんでしょうか。」
「あなた、私にペロの症状を説明したときの言い回しなんてよく覚えていたわね。」
「実を言いますとあのセリフははじめから意識してああ言ったんです。」
「まさかあの前から私が妖しいと思っていたの? どうして?」
「いやいや、それは実にアンフェアなことなんですよ。簡単な理由なんです。」
「まさか私が毒を入れるところを見ていたんじゃないでしょうね。」
「同じようなもんです。実は私、ドラクエ6をやったことがあるんです。」
この人の言うことはやっぱり意味が分からないわ。
「なんなのドラ……何んとかって?」
「私の世界でのこの世界の呼び方です。途中まで気付きませんでしたけれど。」
「ここがどこかわかったっていうこと?」
「そうですね。でも、普通は絶対に来られないところです。」
そう言ったあとケージさんはしばらく考え込んだ。
「いや、もしかしたら来た人間がいたのかもしれません。しかもお金好きの人間が。」
「どうしてそう思うの?」
「ドラクエにエンドールという城があるんですが円もドルも私の世界の通貨単位です。」
エンドールなんて聞いたこともない。やっぱりこの人の言うことは分からないわ。
「その国の建国に私の世界の人間が関わったのかもしれません。」
それはちょっと強引な気がするわ。
「私、サンディにきちんと謝らなくっちゃ。許してもらえるかわからないけど……」
「きっと許してくれますよ。友達とは仲直りしたほうがいい。」
「……ねえ、ケージさん今度は私の推理を聞いてもらえるかしら?」
「どんな推理ですか?」
「もしかしてケージさん、あなたにも仲直りしたい友達がいるんじゃないかしら?」
「どうしてそう思うんですか?」
私はふふふと笑うと推理を披露した。
「あなたは『昔友達だったやつがデイトレードでやっていた』って言ったわ。」
ケージさんは驚いたような顔をする。
「昔友達だったってことは今は違うのよね。その人と仲直りしたいんじゃないの?」
何も言わないケージさんに対して私は言葉を続ける。
「デイトレードでひと財産築いた人がいるとも言っていた。きっとその人でしょう?」
お金を持ったことで今までの関係が壊れるなんてありそうなことだわ。
「お見事な推理です。でも、誤解があります。」
「どんなことかしら?」
「デイトレードで大儲けした人と昔の友達というのは別の人間なんです。」
どういうことかしら?
「大儲けした人は為替専門のトレーダーで大学時代の先輩です。彼はすでに故人です。」
「まあ…… 」
「なまじ大金を手に入れてしまったせいか晩年はちょっと歪んでしまっていました。」
「どうしてそんなことに?」
「周りの人間がお金目当てに近づいてくるようにしか見えなくなったのでしょう。」
お金を持つのも考えものね。お金のせいならその人はお財布を落とせば元に戻ったのかしら。
「じゃあ、昔の友達だった人というのは?」
「そっちは株のトレードをしていました。あまり才能はなかったみたいですが。」
「あ! 昔友達だってって、もしかしてその人もすでに……」
「いえいえ、そうじゃないんです。昔はただの友達だったんですが今は……」
「うちのかみさんなんです。」
―完―
>>179 乙かれ
何というか、凄いな。色々と。
毎度期待を裏切らない完成度。
8fpmfOs/7w氏の作品は何となく星新一を思い起こさせる。
もう一度冒険の書1から読み直してくるわ
ケージの台詞は古畑任三郎で脳内再生されていたのだが、
最後の台詞だけコロンボになったw
いやー、今回も楽しくよませていただきました。
一番最後のオチが、びっくりでしたね。
それと、天空の花嫁との関係も意外でした。
連投すいません。
冒険の書4を読み返していました。
嘘をつくには覚悟が必要なんです。たとえそれが相手のことを思う嘘であってもって、その言葉、ジンさんの心にしっかりと根付いてますね。
気づいたとき、正直鳥肌が立った。
すごいよ、すごいよ、8fpmfOs/7wさん。
相も変わらず高い完成度、そして意外な結末、GJです
…って、ケージさんの台詞…
あの二人まさか…!
タイトルやタイトルの文字数とかにまでこだわってるのが凄い
DQ1なら全1話
DQ2なら全2話でタイトルも2文字、前後の2つ
DQ3なら全3話でタイトルも3文字、上中下の3つ
DQ4なら全4話でタイトルも4文字、四字熟語
DQ5なら全5話でタイトルも5文字、五本指
DQ6なら全6話でタイトルも6文字、六曜
それぞれちゃんとタイトルに絡めて話が練りこまれているのは凄いとしか言えない
>>185 ちょwwマジだよw
それに気付いたおまいさんも凄いな
…DQ7が書きにくくなったかも試練な
>>185 DQ6は六曜だけじゃなくて、六法もあるね
DQ7は一体どんなストーリーなるのか…、今から楽しみだw
8fpmfOs/7w氏にはもう、GJしか言えんわ…。
ちなみにDQ4は起承転結だったな。
ただ、本編のDQでもロト編と天空編の間に比べて、7・8は関連性が薄いし
(7の神様と3・6のゼニス、8のレティスと3のラーミアくらいか?)
あまり期待してプレッシャーをかけるのはいくない。と思う。
ほしゅ
勇者宅は倉庫から目と鼻の先にあった。
おかーさーんただいまー
勇者が先頭で家に入る。ねーちゃんが俺とパンツの格好は物騒過ぎるから装備外して入った方がと耳打ちする。
だが時すでに遅し。奥から感じのよい女の人が出できた。
あらあらうちの子と一緒に旅してる方々ね。
まあなんておませさんな格好でしょうふふ。
???????????
さあさあ長旅で疲れてるでしょうしそんなとこで立ってないで奥に入って下さいな。
今腕によりをかけてご馳走を作ってるわようふふ。
あ…どーもッス…失礼します…
おませさん?ん?何を言ってるんだこのおばさんは…ちょっとアブねーぞ…
俺達は圧倒されつつも案内されるがままに奥に連れていかれテーブルを囲んだ。
ご飯ができるまでもうしばらくかかるからお茶でも飲みながらくつろいでいて下さいな!
そう言いながらテーブルにお茶とクッキーを並べる。
俺には紅茶の味の違いなんてさほどわからないがねーちゃんが絶賛していたからいいお茶なのだろう。
クッキーうまい。素朴な手作りの味だ。
腹が減っていた事もあってパンツと奪い合いながら目の前のクッキーを平らげた。
あらあらよっぽどおなかがすいてらしたのねえ。よかったらこれもどうぞ。
そう言ってテーブルの上にドンっと乗ったのは特大のケーキだ。
……でけえ。
小規模なウエディングケーキと言っても過言では無い。
勇者母はテキパキと切り分け俺の目の前にはケーキの塊が出現する。
パクッ。……うめええええええ!!!!!!!!これはうまい!!
何を隠そう俺は実は大の甘党なのだ。前の世界では総長という立場柄甘いものが大好き!などとは言えず
日本男児たるものは黙って醤油一筋などと訳のわからない事を言っていた。
たまらん!うますぎる!俺とパンツとピエロは物凄い勢いで食い出した。
ケーキなど無縁の旅だったからな。クリームの甘さが五臓六腑に染み渡るぜ…
大食漢三人相手にさすがの特大ケーキと言えどもみるみる減っていき最後の一切れになった。
睨み合う三人。
今にも殴り合いが始まりそうな空気だ。総長としてここはいさめなければなるまい。
ジャンケンで決めよう
俺のその一言に場の空気が変わる。
パ:ほう…総長はんどの口がそんな台詞を言えたもんでげすかねえ…
あんたはあっしにじゃんけんで一度敗れている!!!さあルールを説明してもらおうでげすか!
ピ:じゃんけん…ルールを教えてもらおうか。「火達磨ピエロ」と呼ばれるギャンブラーのわしに
勝負を挑むなど片腹痛いわ!
パンツ…覚えているとは思わなかったがなんでそんな偉そうに聞くんだ…
ピエロ…火達磨って褒め言葉じゃねーよ…毎回大火傷って事じゃねーか…ギャンブルの才能の欠片もねーよ…
まあいい。この面子なら負ける気がしない。そして俺には「例の秘策」もある…ククク…
一通り説明した。やはりパンツは理解していなかったが無視して先に進める事にする。
ではいくぞッ!じゃーんけーーーーんッ!ポンッ!!!!
……今だ!俺はタイミングをずらし伝家の宝刀後出しで攻める。この勝負貰ったッ!
まさに今決しようとした瞬間勝負は意外な決着を見た。
あらあらうふふ。まだありますからそんなあわてなさんな!
振り返るとそこにはさらにアホでかいケーキを抱えた勇者母がいた。
百戦練磨、数々の修羅場を潜り抜けた俺達ですら戦慄する。
うふふうふふと笑顔で切り分ける勇者母。チラッとねーちゃんの方に目をやる。
もう無理
声には出さないが唇は確かにそう動いた。
ク…いやだがしかしまだこれだけ食べれるんだ。むしろ好ましい状況じゃないか!
当然の如く10分後には至福の時は地獄の時に変わっていた。
あーもうお腹いっぱい!お母さんわたしも晩御飯の準備手伝うね!と勇者はこの場から消えた。
ねーちゃんも手伝うと言って消えた。残された男衆は目の前の強敵を睨む。
昨日の敵は今日の戦友だ。ここは共同戦線しかない。
まわりのクリームはピエロ、おまえにまかせた!パンツはスポンジを片付けてくれ!
おっさんは二人の援護を頼む!俺は上のイチゴを倒す!…………えっ駄目?
その後死闘を繰り広げた後山のようなケーキはその場からきれいに姿を消した。
勝った…まさか勇者の実家でこのような強敵に出くわすとは思わなかった。
下を向くと大惨事になりそうなので天井を見つめながら俺は思った。
あのおばさんアホだろ。
………。
ー次の日ー
明け方。
悪夢にうなされ目が覚めた。
糞でかいケーキの魔物にうふふうふふと言われながら喰われる世にも恐ろしい夢だ。
……昨日は本当に辛かった。
今後一年は甘いものを断てる。そう思わせるほど辛かった。
大体何が悔しいってちょっとお茶でも…のお茶でダウンしてしまった俺達は結局その後の
メインディナー所ではなかった。ねーちゃん曰くめちゃめちゃうまい肉だったらしい。
肉を食い逃がすとは俺とした事が…。あのおばさんは本当にありえない。
あのありえなさ具合が逆に勇者の母だって事を実感させる。
あの母にしてこの娘アリ…か。ここまでくると勇者の父親はどんな奴だったのだろうか。
興味は尽きない。
その後朝食のテーブルに一同並ぶ。珍しく寝坊したらしい勇者が目を擦りながら席に着いた。
そうか昨日はお母さんと寝るってちょっと照れながら言ってたもんな。
久しぶりに甘えながら熟睡できたのだろう。時々忘れそうになるがコイツは16歳の小娘なのだ。
朝食後勇者が駆け寄ってくる。あのね総長ちゃん出発の事だけど…ああその事か。別に急ぐ理由も無いし
もう2、3日ゆっくりしていってもかまわんだろう。勇者に向かってそう伝えようとした瞬間
今日のお昼前にでも王様の所に挨拶して出発した方がいいと思うんだ!と予想外の言葉が飛び出した。
………。おうわかったそうするか!みんなにそう伝えてきてくれ。
勇者には勇者なりの考えがあるのだろう。もしかして長居すればするほど出発が辛いのかもしれない。
この子は必死に自我を殺して世界のため平和のためと戦ってきた。その必死に堰き止めてきた心が
この世界で一番心の許せる母親と一緒にいる事でプッツリきれてもおかしくない。
おそらく本人もそれを感じていたのだろう。
こうして急ではあるが俺達は直ぐに出発する事にした。
勇者母に呼び止められる。このおばさんは苦手だ。うふふうふふでまた土産だとケーキ渡されたらどうしようか。
恐いもの無しのはずのこの俺様の背中を冷や汗が流れる。
総長さん。
な…なんスか…
あの子は戦いになんか向かない優しい子なんです。
………。
でも戦わなければなりません。「勇者の娘」なんです。
…………。
安心しました!
………?
血生臭い旅を続け心が枯れてしまっていたらどうしようかと心配していましたが
あの子は昔と変わらない笑顔で笑っています。それもこれも総長さんやみなさんのおかげです。
これからも…よろしくお願いします!
支援〜
……。何を言っているんだこのオバサンは。俺は何もしてねーしあのバカがいつも勝手にピーピー笑ってるだけだ。
不思議そうな顔をしている俺を見てオバサンはまたうふふと笑った。
さて。そろそろ本当に出発するか。
じゃーねーおかーさん行ってくるねー!カゼとかに気をつけてねー!
勇者は笑顔で手を振っていた。
……。とっとと魔王の糞馬鹿ぶっ飛ばしてーな。さっ王様の所にでも行ってやるか!
城に着く。
暫くみない間に逞しくなったな勇者の娘よ…。それにその仲間達も。
やはりおぬしは勇者と旅をする選ばれし者だったようだな。
…くそが…どいつもこいつも!なんだその言い草は!逆だ逆!俺がボスで勇者が子分なんだっつの!
がああああああとまくしたてようとしたが次の一言で口が止まった。
魔導師様の事だが…
言葉に詰まる。
いや、何も言わなくてもよい。夢に賢者様出てこられてな。全ての経緯は知っておる。
おぬしらがなぜここに来たのかもな。今のおぬしらにはこれを受け取る資格がある。
そう言って兵士に物々しい宝箱を運ばせた。当然中身はあのオーブだ。
さあ受け取るがよい。戦う力を持たぬ非力な者の代表として頼む事しかできず本当に申し訳ないが
魔王を倒して世界に平和をより戻してくれ。
魔導師様の事だがな、人には天命と言うものがある。魔導師様が蒔いた種が
今こうして活力ある若木に育ちいずれ大樹となるであろう。
おぬしらの顔を見ていると魔導師様の満足気な笑顔が見えてくるわい。
は、当然だな。俺は元々の天才的素質にプラスして超絶性格の歪んだあのじいさんと超弩S野郎の糞イケメンに
ゴリゴリにしごかれてんだ。ここまで強くなってじいさんが満足しないはずがない。
あとは魔王の顔面に右ストレートをブチこんでやるだけだ。
打倒魔王のモチベーションがいきり立った俺たちは城を後にした。
オーブも揃った事だし次はいよいよラーミアの復活だ。
出発を前にねーちゃんが酒を大量に買い込めと支持を出した。
え?いいの!?いつも必要最低限しか認めないねーちゃんが酒を大量に買えだと!?
パンツと俺は大喜びで酒場に走った。ふふふ買ってやったぜ。樽で10樽ほどな。
それらと食料や水を積み込む。出港の準備をしていると人がワラワラ集まってきた。
よく見ると勇者の母や酒場の女マスター、さらに王様やピエロまでいやがる。なんなんだ一体?
勇者様!どうかご無事で! おおあの子がオルテガ様の娘か!
生まれてくるこの子のためにも平和を! おねーちゃんまおうなんかにまけないでね!
ほうほうこいつら俺らを激励する為に集まったのか。まったくこれだから自分じゃ何もできない愚民は困る。
まあおまえらは家で茶でも啜りながらまってるがよい。この俺が魔王なんざ軽くノしてきてやるからよ。
そう言って俺は空に向かってイオナズンを唱えた。
ねーちゃんがまたやりやがったと冷たい目でこっちを見ている。
愚民共は腰を抜かして大騒ぎだ。はっはっはどうだ俺の力は。さて出発するか!
こんな時間に支援ありがとうございました!
今回はここまでです
総長様、執筆と投稿お疲れ様でした。
この時間だと書き込みが少ないから、規制かかりますよね。
うう、なんてあたたかい、いい話なんだ〜〜。
勇者ママンも萌へ〜。
王様の言葉もじ〜んときます。やっぱりふるさとって、あったかいものですね。
みんなの期待と声援を背負った出港(準備)シーンも、うるうるしちゃいました。
次回も楽しみに待ってます。
乙!!
勇者ママ、17才でぇす♪
総長さん待ってました!勇者の母ちゃん強いwww
お久しぶりです。
やっとこさスランプ脱出できそうです。
勢いに乗って第16話を投下します。
早朝ですので、規制に引っかからぬようまったり投下しようと思います。
甲高い悲鳴のような音をたて、顔が砕けた。
氷雨のように飛び散る冷たい飛沫を前に彼女は居た。
「ゲマ様!いかがなさいましたか!?」
どたどたと足音を荒げて部屋になだれ込む二つの異形。
それには答えず。憎悪に満ちた視線によって打ち砕かれた屑星の中、
主は静かに口を開く。
「お二方に問いましょう。貴方達の働きは誰の為のものなのです?」
主から発せられた脈略のない問いに、不可解な表情を浮かべる二人。
それも一瞬の事。すぐに姿勢を正し、主の前に跪き返答する。
「私とゴンズの役目はゲマ様…しいては魔王様の理想実現のために尽力する事…」
「ジャミの言う通り。あっしらはゲマ様と魔王様のためならいつでも動きますぜ。」
従者として実に模範的な解答。それを聞いた魔女が短く笑った。
「ほほほ…貴方達に聞いた私が愚かでした。良い、下がりなさい。」
「しかしゲマ様…」
「聞こえませんでしたか?二度は言いませんよ?」
魔女はその視線を向けただけ。
ただそれだけで、魔族の中でも高位に位置する二人は慌てたように部屋を後にする。
「ほほほ…愚かな教祖も、三流魔王も…狭い世界で抗っていれば良いでしょう…
まぁ…私の抗いも定めの中では無駄なのでしょうかね…」
誰もいなくなった部屋で自嘲気味に笑う魔女。
毒々しい紫の瘴気が漂う空間に、綺羅星のように鏡の破片が輝く。
◇
さっきまでの凶暴さが嘘のように、喉を鳴らしてサトチーに擦り寄る魔獣。
その行為自体は微笑ましい光景なのだが、如何せん体格に差があり過ぎて、
どう見ても襲われているようにしか見えない。
まあ、当のサトチーが嬉しそうにしているからいいけどね。
「なんと。サトチー様とそちらのキラーパンサーは旧知の仲でありましたか。
知らなんだとは言えとんだ無礼を…」
十年前。当時のサトチーに付き従い、様々な冒険を共にしたモンスター。
天涯孤独の身であるサトチーの幼少期を知る唯一のモンスター
それがこのキラーパンサー。
なるほどね。戦闘スタイルがサトチーに似てたのもその影響かな?
剣を向けた相手が主の戦友であった事を知り、平伏するピエール。
キラーパンサーにもみくちゃにされながら、サトチーが微笑みを向ける。
「最初は僕も気付かなかったよ。あんなに小さかったのに、すっかり大きくなって…
そうだ、改めて皆に紹介しておこう。彼は僕の初めての仲間モンスター。
彼の名前は…………」
そこで、サトチーの言葉が止まる。
言葉を止め、表情を止め、動きを止め、ただその口元が僅かに動く。
「名前…あれ?…プックル…ソロ…チロル?…いや、アンドレ…ボロンゴ?」
じっとキラーパンサーを見つめたまま固まるサトチー。
なぜか、その顔には困惑が浮かぶ。
「…サトチー卿…惑わされるな…正しい記憶は一つだ…」
戸惑い、視線を宙に泳がせるサトチーにスミスが静かに言葉をかけた。
「済まない。少し疲れたのかな…一度に色んな思い出が蘇って混乱してしまったよ。
…そう、彼の名前はゲレゲレ。仲良くしてやってね。」
―ゲ…ゲレゲレ?なんつうか、凄げぇネーミングセンスだな…
「何と素晴らしいお名前!ゲレゲレ…実に気高く優雅な響き。」
―☆☆☆!!―
「ピエールとブラウンもそう思うかい?実はビアンカが考えた名前なんだけどね。」
工工エエェェ(´д`)ェェエエ工工
―何コレ?俺のセンスがおかしいの?それともこれも世界の壁ってヤツ?
仲間との微妙な温度差に凍えそうになる俺。
「…この後はどうするのだ?ゲレゲレが無害な魔物だったとしても…
あの村の人間がすんなりと受け入れるとは到底思えぬ…」
話の流れを変えてくれたのはスミス。マジ感謝。
「大丈夫だよ。あの村の人達も事情を話せばきっとわかってくれるだろうさ。」
相変わらずゴロゴロと喉を鳴らしてサトチーに懐くゲレゲレ。
その豊かな鬣に手を入れ、優しく撫で上げるサトチーは幸せそうだ。
でも、あの村の人間たちにとっては畑を荒らしまわった憎い魔物なわけで…
サトチーには悪いがスミスの言うことも納得できる。
「…やはり無駄か…ならば魔物が現れないうちに脱出するべきだ…」
くるりと踵を返し、洞窟の出口に向かって歩き出すスミス。
その無礼な振る舞いに奥歯を噛み締めるピエールをなだめ、俺達も後を追う。
さて、果たして受け入れてもらえるかね?
「こんの化け物どもが!!」
受け入れてもらえませんでした。
むしろ、殺気立った村の住民に囲まれてピンチ。
まぁ…受け入れてもらえないのも当然と言えば当然なんだが、間の悪い事に
自分達で魔物を討伐しようと、俺達の後から洞窟に入った村人がいたらしく、
さらに、その村人にサトチーがゲレゲレを懐かせた所を見られたらしい。
その場面だけ見たら村を荒らした魔物の一味と勘違いされても当然なんだけど…
「ゲレゲレが村に迷惑をかけたことは許される事ではありません。
ですが、彼は完全に改心しました。これからは村に迷惑をかける事も…」
「お前らと話すことなんかねえ!!」
ごつっ!!
「サトチー!!」
「おのれ!無礼な…」
村長が投げつけた茶碗が額に当たり、サトチーの言葉が強制的に中断される。
周囲からは『化け物』だの『火炙り』だの物騒な罵声が浴びせられ、
鎌やら鋤やらを手にした村人達は、自分達の言葉でヒートアップして暴走寸前。
―なんだよこれ…本当なら村を救った恩人として感謝されてもいい場面じゃねえの?
「駄目だ!手を出すな!!」
額から一筋の血を流したサトチーが片手で俺達を制する。
爆発しそうになる感情と、喉元から漏れ出しそうな怒声をぐっと飲み込む。
同じ様に耐えているブラウンは涙目で全身をわなわなと震わせ、
固く握りこまれたピエールの両拳から滴る緑色の液体が床をわずかに湿らせる。
「駄目だスミス!村の人たちを傷つけては…」
意外…サトチーの制止に従わず、殺気立つ村人達の前に進み出たのはスミス。
相変わらずの無表情からは一切の感情を読み取ることはできないが、
その気になれば息を一つ吐くだけで、この部屋丸ごとガス室にできる。
「スミス…駄目だよ…」
懇願するように搾り出されたサトチーの声。
その声を背に受けたスミスは首を僅かに傾ける。
「…案ずるなサトチー卿…私はこの者達を傷つけるつもりはない…
…そして…この者達も私を傷つけることはできぬ…であろう?村長…」
ゆるりと歩を進めるスミス。見る見る青ざめる村長の顔。
何か、とてつもなく恐ろしい物を目の当たりにしたような強張った表情。
その乾いた唇を呼吸困難の金魚のようにパクパクとさせている。
「…気付いたか?…では選択しろ…私と共に灰と化すか…和平か…」
しん…と静まり返る部屋。
殺気に満ちていた村人達も、村長とスミスの間に漂う異様な雰囲気に飲まれたように
微動だにしない。
「…で………いけ…」
村長の乾いた唇から微かに漏れ出した声は形になっていない。
すぅっと一息、大きく深呼吸をした事で、村長の言葉がようやく形を成す。
「…出て行け!一秒でも早くこの村を去れ!!」
「…ご迷惑をおかけしました。僕達はゲレゲレを連れて村を出ます。」
「この…疫病神ども!二度と村に近付くでねえ!!」
―言われなくてもそのつもりだ。気分悪りぃ。
もし、どっかの魔王に『世界の半分をやる』って言われても、
この村だけは熨斗をつけて返品してやらあ。
「…みんな、行こう…」
額の傷口を押さえるサトチー。赤い鬣をしおれさせたゲレゲレ。
その背に乗るブラウン。怒り心頭のピエールの順で村長の小屋を後にする。
「…貴様等は…何度でも同じ事を繰り返すのだな…」
俺の前を歩いていたスミスが、村長の小屋を出る直前に呟いた。
ゆっくりと殺気立つ村人達へ向きなおり、濁った声を投げかける。
「…新たな流れを模索する道の中…堂々巡りを望むのならそれも良い…
…独楽鼠のように永遠に同じ場所を回っていろ…」
―何を言ってるんだ?
「…行くぞイサミ…変化を拒む愚者にかける時間など無為だ…」
「お…おう。」
スミスの言葉。どんな意味があるんだろう?
聞いたところで曖昧にはぐらかされるか、俺には理解できないかだろうけど…
永遠に同じ流れ…新たな流れ…俺は大事なことを忘れている気がする。
誰も言葉を発しようとはしない。
ただ、それぞれの胸の内に悶々とした物が広がっているのが言葉以外で感じ取れて…
「みんな…辛い思いをさせてしまって…すまない。」
サトチーが静かに…口を開いた。
一番辛そうなのは、他の誰でもなくサトチーなのに。
その横ではゲレゲレが ぐぉん―と力なく喉を鳴らす。
ふさふさの尻尾を足の間に巻いて、叱られた犬のように目を伏せている。
「違うよ。ゲレゲレが悪いんじゃない…少しイタズラが過ぎたかもしれないけど、
ゲレゲレも、あの村の人達も、もちろんみんなも、誰も悪くないんだよ。
みんなに辛い思いをさせたのは僕の不甲斐なさだよね…」
サトチーがそのしおれた鬣の中にふわりと手を入れ、優しく撫でてやると
伏目がちだったゲレゲレがふにゃあと甘えた声を出した。
「サトチー様は我々を愚弄されるのですか?」
荷物を積み込んでいたピエールがその動きを止めた。
その声はいつもの忠臣ピエールの声ではなく、心なしか怒りの色を感じさせる。
「私にとっての誠はサトチー様に身命を賭してお仕えする事。
サトチー様を否定する事は我々の誠を否定する事。それは即ち我々を否定する事。
それが…サトチー様自身によるものだとしてもです。」
…なるほどねぇ。やっぱ、ピエールは忠臣だわ。
当のニブニブサトチーは真意がわからずに混乱してるみたいだ。
「いや…僕はそんなつもりで言ったんじゃあ…」
「さっき自分でピエールに言ったろ?自分自身を否定する事を今後一切禁じる。
信念に従った行動を後悔する事…それも今後一切禁じる。
部下に命令したことは自分でも守らねえとな。」
そこまで言ってやっと意味がわかったのか、サトチーの顔に笑みが戻った。
「言葉が過ぎました。申し訳ありません。」
「いや、ありがとう。ピエール。君達の信念を無碍にするわけにはいかないね…
よし!そろそろ出発しよう。」
「じゃあ、とりあえず一回ポートセルミヘ戻るってことで良いのかな?」
「そうだね、ポートセルミを経由して次は西の街に向かおう。」
ぱちーん!と勢いよく自分の両頬を叩いたサトチーが馬車の手綱を握る。
西日が鋭角に差し込む獣道を走る馬車。
その足取りに迷いはない。
イサミ LV 16
職業:異邦人
HP:77/77
MP:15/15
装備:E天空の剣 E鉄の胸当て
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――
第16話一気に投下完了です。
しばらくは鈍足投下が続きそうですが、じわじわ続けますので
どうぞ最後までお付き合いをお願いします。
復活おめ!
スミスの正体がますます気になるよ
もっと気になるのはDS版で追加される嫁候補?が追加されるかどうかだけどw
だんだんと物語の核心が見えてきそうな展開だな、乙!!
そしてデボラは頼むからピピンとかと同じサブキャラであってくれ…
乙です!
DS版も気になるところだが、GEMAさんには
GEMAさんの物語を書いてもらいたいです
カボチ村の連中、相変わらず胸糞悪いですね。
それにしても、スミスの一言で態度が変わる村長。そして、スミスの言葉。
なにかスミスとこの村の間には因縁がありそうですね。
今後の展開が楽しみです。
>>216 メガンテの腕輪をつけてるスミスを攻撃するとですね、腕輪がドカーンで
村人総砕けちりなわけですよ…
218 :
お呼び出し:2008/07/06(日) 12:13:05 ID:u6X93chk0
アリアハンから出港してはや10日。日に日に肌寒くなっている。
どうやらそのラーミアとやらが封印されている場所は俺の世界で言う北極とか南極とかそんな感じの場所らしい。
まあそれはいいんだよ。今更どんな僻地に行こうがビビッたりはしねえし。ただ問題が一つ
総長さん!あなたはメラやイオ系の呪文の威力には目を見張る所があるわ。
ただヒャド系の呪文に関してはまだまだ修行が足りないわね。大自然の雪と氷を肌で感じる事は
きっとあなたの魔力を飛躍的に伸ばすきっかけになるわ!バシバシいくわよ!
……帰りてえ……
さらに10日ほど航海したのちようやく目的の大陸に着いた。
寒いなんてもんじゃねえ。ねーちゃんが酒を買い込んだ理由がわかったぜ。
パンツと俺は樽を一つずつ担ぐと雪の積もった氷の大地に踏み込んだ。
見渡す限り銀色の世界。
太陽の反射に目が眩む。
さて。どうしたものだろうか。着いたはいいがここからどう進んでいいのかさっぱりだ。
この状況からして遭難=死あるのみ。今は晴れているがいつ吹雪くともわからない。
私にまかせて。
ねーちゃんがそう呟く。………………。しばらく精神を集中させたと思うとスッと指を指した。
あっちの方に強力な霊場があるわ。おそらくそこにラーミアが封印されているはずよ。
ほうほう心眼って奴ですかい。さすがだ。よしこれで迷う事は無さそうだ。
ねーちゃんの指示のもと俺達は歩き出した。
と、突然轟音と共に地面が盛り上る。
敵だ!おまえら構えろッ!
目の前には氷のデカブツと雲の塊が数匹ずつ。フヘへへ。顔がにやける。
ちょっと!総長ちゃんなんでそんな嬉しそうなのよ!
勇者が叫ぶ。当然だ。船の上の戦闘では海上への呪文による遠距離攻撃が多くろくに剣を振るえなかった。
しかしここならこの超強力な新相棒を思う存分振り回せる!
勇者とねーちゃんは雲を魔法で頼む!俺とパンツはあのデカブツをカキ氷にしてやるぜ!
いくぜゴルァアアアアアアア!!!!!!!!
敵の中心に向かって突撃だ。
ッしゃああああおらああああぁぁぁぁァ!!!!!
全身全霊を込めてはかいのつるぎを振り下ろす。
一撃。
一撃で5mはあろう氷の塊がバラバラになった。
なんだろうこの感覚は。このはかいのつるぎもそう、じごくのよろいもそう、ふこうのかぶともそうだ。
身に着けるとそれだけで全身の筋力が強化されたような、そんな錯覚に陥る。
実際腕力は格段に上がっている。
総長殿!後ろですぞ!
おっさんの声と同時に背中に強烈な衝撃を感じる。吹っ飛ぶ俺。
大丈夫!?と勇者とねーちゃんが駆け寄った。
………?
何事も無く立ち上がる。まあ確かに痛いは痛いのだがあのインパクトにしては
ダメージが残って無い。……こいつは凄いぜ…。
どっしゃあああああアアああ!!!!
奇声と共に残りの氷の塊をパンツが砕いていた。こいつのまじんのおのとやらも半端無い。
凄い…。二人とももう人間の域じゃないわ…。
ねーちゃんが息をのむ。
残りの雲を勇者が焼き払う。
うん、今更だが俺達は確実に強くなっている。
ここまで色んな事があった。本当に色んな事があった。
………いくぞ!
ラーミアを復活させたら俺の野望もいよいよクライマックスだ。
ねーちゃんのおかげで迷う事なくラーミアとやらが封印されている祠についた。
まったく霊感みたいなものが無い俺ですら何となくビリビリくる。
こいつは確かに凄い場所…のような気がする。
扉は軽く触れるだけで開いた。
一本道なのでとにかく奥に進む。広い部屋に出る。
おおおおおおおおおおぉおぉォオォ!!!!!
目の前にはバカデカイ卵がある。かろうじて全体像で卵だと認識できるが
もはや卵ってレベルじゃねえ。
一目散にダッシュで近づいてみる。………。俺は俺の中に沸き起こる衝動を必死に抑えた。
叩きたい。思いっきり叩いてみたい。こんなデカイ卵なんて割ってみたいだろうがチクショウが…
誰も見てないのを確認するとちょっとだけ剣で叩いてみた。
鈍い金属音が鳴ったが傷一つついていない。
ゴクリ…さすがは伝説の卵だぜ…
何気に隣を見ると俺以上にヤバイ目つきの男がいる。パンツだ。
総長…この卵だと目玉焼き何個作れるでやんすかね…
いやでどんだけかくても卵一個なら目玉焼きも一個しかできねーだろこいつは本当にどうしようもない馬鹿だな
なんて思ってる間にパンツは目いっぱい振りかぶるとフルパワーでまじんのおのを振り下ろした。
かいしんのいちげき!
ガキィィィィイイインと轟音が響く。が、やはり卵には傷一つ無い。
こいつがすげーぜ!さすが神龍の卵だ。俺たちごときの攻撃など屁でも無い。
期待できる!でき過ぎる!さあとっとと復活させようじゃないか!
…………コラ……
今まで聞いた事の無いドスの聞いた声がする。
凄まじい殺気だ。振り返るとそこには外の吹雪よりも冷たい目をしたねーちゃんがいた。
で、あなたたちは何をしてるの?
いや何って言われても…。ちょっとした破壊衝動に駆られただけで…
このものからは
このものからは
何か不思議な邪気を感じます
何か不思議な邪気を感じます
本当にあなた方は
本当にあなた方は
選ばれしものたちなのでしょうか
選ばれしものたちなのでしょうか
急にステレオで謎の声が聞こえる。
よく見ると勇者の両肩に人形サイズの女の子乗っている。
なんだなんだてめーらどっから沸いてきやがった?
目の前にいたよ!総長ちゃんが無視して走って行っちゃったんでしょ!
と勇者が言う。しらねーよこんなチビ視界に入るかっちゅーの。
ラーミアは神の使い
ラーミアは神の化身
人間程度の力では 傷つける事など できません
くっ…ドちび助の癖に何を偉そうに…
傷つける事などできませんだあ?燃えるぜバカヤロウ!
…やめなさい
ねーちゃんに凄まれてしぶしぶと下がるパンツと俺。
部屋のはじっこに追いやられて復活の儀式とやらを見守る事になった。
勇者とねーちゃんとおっさんが部屋に卵を中心として均等間隔で配置してある祭壇にオーブを置いていく。
全部置き終わった所でさっきのちび二匹が卵の前で光り始めた。
さあ いのりましょう
さあ いのりましょう
時は きたれり 今こそ 再び 目覚める時。
大空は おまえのもの まいあがれ 空高く!
ピキッ…!
おお…!あれだけ硬かった卵にあっさりとヒビが入る。
ヒビは次第に広がってゆき亀裂から光が漏れる。
………ゴクリ…。
そしてついに殻中に亀裂が入ると一気にこそげ落ち破片は消えてしまった。
中心にはまばゆい光の塊がある。
その光が徐々に収まっていくと共に中の物体がうっすら見えてくる。
ピッ…ピィィィィイイ!!!!!!!!ピィ!!
今日はここまでです
まとめの方いつもありがとうございます!
乙であります
おお、ついにラーミア復活。
卵相手に会心の一撃、和良た(wwww
人形サイズの女の子
…小美人か!!
このパーティはどう考えても世界救うために旅してるようには見えないだろ…
総長パンツ的に考えて…
総長今回も乙
人形サイズの女の子ってモスラのあれかよwww
hosyu
保守
勇者は俺の嫁
勇者母は俺の義母
勇者祖父は?
保守といこうか
236 :
名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/17(木) 08:20:06 ID:+vNDXoQRO
ほっしゅるぅ〜
hosyu
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(2)
「とまあボヤいてみたけど品種改良とかやってみたら面白いと思うんだけどな」
コシヒカリとか見てみろ、ありゃもう農家と偉い学者さんの血のにじむような努力の結晶だ。
時間こそ長くかかるが凡人でもやっていける道のりだ。
その間に何度か世代交換があるがその辺は勇者パワーで何とか。
現代に戻るのが無理ぽいなら田畑耕すしかない、この辺を見ればまだ開拓できる土地は有り余ってるし。
つーか、人類未踏の地のほうが多い気がするんだがそこんとこどうよ。
「ぶっちゃけ魔王が居る害ってのが理解できねーしなあ」
飯さえくってりゃ体力無限大だし、幾らでも仕事をこなせるぞ俺、そのためには種モミをかっさらってくる必要があるが……。
しかしモヒカンやろうにも敵は厖大、人類の敵は人類とネルフの偉い人も言ったわけで。
ヤツら魔物にはビビるくせに勇者には冷たいもので、完全に舐められてるぜ。
「あの勢いで魔王のとこまで攻めいりゃ今頃人の世が戻っていたろうに」
まああそこまで軍隊を派兵しようと思ったら兵站が破綻するだろうが……。
中世クラスの、しかも底辺っぽい感じの農業力では辿り着く前に朽ち果てる予感。
「略奪が基本だろこの時代、各自食糧装備集めろじゃ士気最悪の国力ガタ落ちだろうな」
徴兵で主な働き手分捕ったら国傾く、いや余裕で瓦解する。
先にも言ったが品種改良という概念が存在しないし、農業科学も発展していない。
ぶっちゃけ中世と言ったが古代級の生産能力だ、しかもこの大陸は旅の扉まで封鎖しているから物流がない。
定期船は存在するが魔物の襲撃を恐れて大規模な艦隊を組んでるわけでもなし。
「慢性的な飢餓と厭戦感、それに社会不安と鬱憤が溜まれば勇者が希望になるわけか」
四人ほどのパーティーなら動かす余裕があるってことだな、だからこそ俺の裏切りは相当堪えたってことだ。
「海渡れないだろうか、エルフに眠らされたあの村なら人一人隠れて住めそうなんだが……」
呪いを恐れ人も立ち寄らないし荒廃しているとはいえ雨露を凌ぐ屋根に道具が手つかずで残ってるはず。
何となく思ったんだが。
「魔王の目的は『恐怖』なんじゃねえかなあ……いや、もしくはどうしようもない絶望か」
もしくは緩やかな人類の衰退だな、魔王ってシロモノは相当イイ趣味をしているようだ。
「どう考えてもドSに違いない、絶対どこからか俺のこと監視してニヤニヤ笑ってるんだぜバラモスとゾーマの野郎」
そう考えると腸が煮えりそうになるが我慢我慢、こんなところで叫んで木をぶん殴ったら魔物に気づかれる。
俺にとって恐ろしいのは大量のモンスターの襲撃だ、数が多かったらどうしようもない。
幸いにもこの辺の分布を考えればさほど強いのは居ないが昔のエロい人は言った、戦争は数の暴力であると。
未完のビジュアルクイーン……じゃなくて、決戦兵器である俺には微妙すぎる。
広域戦闘魔法でも使えるようになれば「HAHAHAHAHAHA、今までの恨み晴らすべし!!」とでも笑いながら間引きを行うんだけど。
「国王のおっさん土下座して謝って許してくれないだろうか、せめて専門教育だけでもやってくれないとマズい」
なあんて一人トリップ天国に陥ってると何やら悲鳴。
あー、俺バカだは、こんなにも森がざわめいているのに――
「自分の殻に閉じこもって気付かなかった」
己の勘が警鐘を鳴らす、本格的に危険なシグナル、そして俺は聞いてしまった。
人の悲鳴、どうしようもなく絶望的な悲鳴、魂の底からひねり出す悲鳴、人生の末期、ただいちどだけ許された絶叫を。
現代人が失ったのは思いやりの心だとか、だけれども、俺のそばで、今、失われる命があるということは、絶対に、許容、できない。
次の瞬間には俺は風になっていた。
それは暴風だった。勇者とは即ち勇気あるもの、それは自らに向けるに非ず、それはどうしようもなく放射線状に内側から外側に伸びる力。
だからこその勇者、そのためのブレイブ・ハート。最後の武器は自分の勇気ってこと、それは決してケミカルではない。
単眼の巨人が居た。
その足元にはよく分からないが人の影がある。
正体がバレるなんてことはそのとき全く考えもしなかった。
だからこそその勇気はどうしようもなく本物で、怒りの鉄拳が空気の弾ける音ともに放たれた。
(3)に続く
ひたすら短い。
というよりもブランクがありすぎてどこまで書いたか記憶にございません。
キタ━━━ヽ( ゚∀)人(∀゚ )人( ゚∀)人(∀゚ )ノ━━━ !!!
待ってました!
正直めちゃめちゃおもしろい。
言葉の選択がシャープで重くて、いい意味でゾクゾクします。
ゆっくりでいいのでぜひ続けてください。次回も楽しみにしています!
しかし……主人公のバイタリティ半端ないですね。
この極限状態でよくまあこんなクールに考察できるなぁ。
ちょっと方向性は違うと思いますが、村上龍の5分後の世界を思い出しました。
242 :
名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/22(火) 01:40:10 ID:ZQZp1qVIO
保守
保守
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(3)
全てのモンスターに言えることだが一目見ただけで理解した。
あれこそがただ暴力に特化した存在であると、その中でも目前の敵はその更に上を行くことを。
軽く見積もって3m、笑えるまでに逆三角形とそれでぶん殴られたらスイカみたいに弾け跳びそうな棍棒。
俺の鉄拳クリティカルヒットしたはずなのにびくともしない絶対装甲に涙しそう。
あれは無理だ、レベル差が激しすぎる。
「棍棒?嘘だ!!それ電柱だろ常識的に考えて」
風を切る音とともに俺のすぐ横に強烈な音ともに地面が爆散する。
曖昧3cm、人が見ていなかったら漏らしてたぞ多分。
幸い、突然の介入者によってモンスターの意識が削がれたのか悲鳴を上げた人物は無事だった。
ここで俺は落胆した、どうみても気絶したジジィですありがとうございました。
「ちくしょう、ここは美人の姉ちゃんのフラグが立つところだろ、この世界は優しくない!!」
知能が低いとは言え戦闘種族、あまりにも的格な攻撃に怯みながら避ける、避ける、避ける。
この優しくない世界で俺はひたすら逃げまくったせいかレベルアップ時にすばやさだけ極端に上がったようだ。
少なくともあんな大雑把な攻撃当たってたまるものですか!!
軽いことは軽いが追撃がヤバイ、あの体型でありながら愚鈍とは言い難い。
多少地形的に有利であるが何あのブルドーザー、木々へし折って走ってやんの。
後ろを振り返り、何とも言えない形相で追跡を行うモンスターを見る。
「どう考えても弱点はあの目だろうな、あそこだけが筋肉に覆われていないんだし」
石でも拾って投げつければ若干足が止まるかもしれない……が、ピッチャー返しが一番恐ろしい。
あの筋肉で勇者の投げた石が返されたら力積的に考えてどうなの、俺死ぬの?体に穴空くの?
木々の枝をつたいながら忍者気分、こっちがあちらに優位なのって結局機動力だけなんだよね。
しかも石を回収するには下に降りなければならない、となるとヤツの棍棒の攻撃圏内に入るってことだ。
「却下だ、却下、無理ゲーすぎて困る、そんな上手くいくわけがない」
俺にとって最良の選択肢はアレに見つからないこと、でなければ詰む。
この勝負始まる前から勝敗が決していてガチハードモード、つか息が切れそうなんだけど。
なぜアリアハン周辺であんな高レベルモンスターが居るんだ?
ルーラが使えるほど知能があるとは思えないし、かと言ってあんな存在は見たことがない。
というよりも、強力なモンスターの発生はスライムやおおがらす、いっかくうさぎにとっても脅威になるわけで。
モンスターの世界も弱肉強食、共食いなんてざらですよ。
つーか種の根源的に考えて共食いよりもまず自分より立場の低いものから食うわけだろ?
なのにモンスターはわんさか居る、雑魚モンスターすら駆逐できない人類があんなバケモノを間引くなんてことはありえない。
「となると、外来種である可能性が高い、誰が持ち込んだんだよあのバケモノ」
うすら寒い、待てよ、そもそもアレはこの世界に存在して良いものか?
記憶が曖昧だから不確かだが、そもそもVには……
「あぶねっ!!」
爆裂音と共に足元が揺らいだ、雑念俺殺すとか洒落にならない。
逃走時に余計なことは考えたららめー。
しかし、じり貧すぎて困る。装備が布の服って時点でファンタジー舐めてるけど誰か剣プリーズ。
ナイフでもあれば一方通行ブーメランでも作って装備するんだが。
あー、そういやジジィ泡吹いて痙攣しててキメェ。
「おーい、じじー起きろー死ぬぞー、足あるんなら走れー」
まあ、腰抜かして気絶するようなジジィに走れというほうが酷だが。
ぶっちゃけ起きてくれたらうれしい、惚れるとか惚れないとかそんな問題は抜きで。
気絶した人間は重心が安定しないというか、なんというか、こう、違う。
ぐにゃってるわりには硬いし持ちにくい、質量的には俺のほうが小さいわけで、何この10歳児。
「町でも逃げ込んで衛兵やら傭兵を引きずりだすか、却下だな、国家転覆ーとか言って打ち首にされかねん:
そもそも装備の関係上アレに対抗するべき手段がない。
アリアハンは恵まれている、モンスターの驚異度という点で見れば。
銅の剣さえあれば訓練を積んだ兵士なら倒せる敵しか発生しないからだ。
だから……強力な武器が流通しない、王は魔物も恐れるが――
人間も恐れる
過度の装備はそれだけ王政を脅かす、魔法使いの反乱を抑えられなかったのも理由の一つにあがる。
反乱、というが実質的に考えれば革命だ、まだ人間の世の頃、平和を享受している時、革命が起りかけた。
この平和な世界に王は必要ない、むしろ重税を課す王は悪であると。
魔法使いとはすなわち貴族や僧を除けば限られた有識者だ、人による人の支配の否定を行おうとしたのだ。
それがどれだけこの世界に激震を与えただろうか、支配階級にとってその特権を失うことは一番恐ろしいことだ。
はっきりと言えば死よりも恐ろしい、だからこそ驚異度の低い地方では武器の持ち込み制限がある。
身を護るのは当たり前のことで武器は比較的手に入りやすい、これを取り上げては不満は募る。
しかし、それが度を過ぎるのはよくないと考えた。
特権を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは半永久的に道具として使用すれば魔法を行使する魔法使いたちの置き土産、その所持は極刑に値する。
「って、またトリップしちまったじゃないか、思考トラップはマズい」
その罠を自分で仕掛けたとあってはお話にならないとも言う。
「う、うぅぅ……」
胸元でうめき声がした。
あージジィもう少しで覚醒ですか?いまどき眠り姫なんて流行んないからさっさと起きろと。
(4)に続く
>>244 ジジィを背負い、走り出す十の夜。
>>245 と合間に入るはずだった一行が抜けてしまった
あってもなくてもいいけど今書くとほんとマヌケすぎる
ぅぅうお乙うぅぅっ!!!!!!!!!!
なんでアリアハンにザ・痛恨の一撃がwww
しかもシビアな世界観!
続きにwktk〜。ジジィはよ起きろw
特権を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは半永久的に道具として使用すれば魔法を行使する魔法使いたちの置き土産、その所持は極刑に値する。
置き換え→
特例を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは道具として使用すれ半永久的にば魔法を行使することできる魔法使いたちの残した最高の置き土産、その所持は極刑に値する。
魔法とは生物の内部エネルギーたる魔力を燃焼しこの世界に働きかけ、特異な物理現象を引き起こす。
エンチャント装備はその法則を覆し、魔法を使えないものたちとの垣根を破壊する。
もっとも、それらを造るには遺失技術と希少価値の高い物質が必要らしいが……。
保守
保守
保守
保守
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(4)
おめめをパチクリ、とろーんとした目をしたジジィの体に徐々に力が入る。
いや、それはあまりにも急速に引き締まる筋肉、まるでロボットみたいな動きで開こうとした口を俺は押さえつけた。
「むぐぇあぃ……」
声ならぬ声、さすがに耳元で絶叫されるのは御免こうむる。
「ジジィよく聞け、今あのバケモノから逃走中おk?」
そう言ってジジィの顔を下の方へと向けてやる。俺達は今山上を目指して木々の枝を渡っていた。
その後ろには道ができていた。無論、あの巨人が整地としかいいようのない走りで拓いたものだ。
未だ俺はあのバケモノを巻くことができていなかった。硬直するジジィに俺は優しく声をかける。
「ひとまず深呼吸だ深呼吸、ひっひっ、ふー」
何か間違ってそうな気もするが、それにならってジジィも一呼吸、ここで若干の冷静さを取り戻したのか表情が変わった。
「お主、なぜワシを助けた?」
助けるのに理由は要るか?と俺は返し、そろそろ脚がヤバそうだと思った。
ここまでは50m走の速度でかるくマラソンやってるわけだ、たとえ勇者とは言え乳酸は溜まる。
むしろこれはやせ我慢だ、男の子にはやらなきゃいけない時はあるが、もう限界かも知れない。
畜生、アイツは何で疲れないんだよ、粘着質なのは嫌われるぜ……とため息をついた。
「気づいちまったんだからしょうがないだろ、常識的に考えて」
何か変なものを見る目の老人いっちょ出来上がりってか。
「あのなー、ジジィよ、悲鳴上げてるの無視できるほど俺冷血じゃないんだは、最近人にも餓えてたしな」
まあ普通はあそこで介入するべきではなかったとは思うが、それに話し相手が欲しいってのは割と切実。
もう何日も人と会話を交わした記憶がない、人間に必要なのはコミュニケーションだ、単独で成立しねーよ、会話は。
この世界に飛ばされて何度も気が狂いそうになったが今こうしていられるのは勇者の心があるからだ。
勇者は単独行動を行うことが多々あるため精神的な加護は一般人よりも多い。
けれども――それには限界がある。
人は結局のところ独りでは生きてはいけないのだ。
「そんな理由でワシを助けただと?」
やはり半信半疑のジジィ、それ以外に何が理由だってんだ。むしろ俺が聞きたい。
「まあ、悠長に会話してる場合じゃないんだが……下ヤベーことになってんし、ジジィ、一瞬で良いからアイツに隙作れないか?」
半ば諦め気味に俺はジジィに言った。そんなことができるなら苦労はしないってのに。
「ううむ……少し寝たから魔力には余裕はあるが……閃光を数秒間出すぐらいしかできんぞ」
魔力!?
「魔法使いだったのかジジィ!?」
なら何でアイツから逃げ切れない!?いや、アイツが規格外ってのは分かるが逃走ぐらいなら何とかできるだろう!!
「いや、アレは倒さねばならん……我が集落はアレによって潰され、あの脅威を取り除かねばこの国が滅ぶ……」
それはきっと比喩ではないだろう、合点がいった、ジジィの悲鳴は魔力が底をつき、打つ手がなくなった最後の絶望だったのだろう。
「おーけ、サクッと俺の言うタイミングで魔法を使ってくれ、その一瞬を突く」
うむ、と頷くジジィ、どうやら恐怖の色が若干薄れたのか血色がよくなってきた。もう、後がないという達観なのかもしれないが。
「よしっ……今だ!!」
速度を早めトップスピードに乗り、木から飛び降りジジィを単眼の巨人へと向ける。
何やら呟きがジジィの口元から漏れるのを塞いだ目越しに聞く、そして魔法が成った。
さすがに薄暗い森の中の中で光を喰らったアイツは怯み、その瞬間待ち望んだ隙が生まれた。
迷うことは何もない、残された力を全て振り絞り、眼に拳を目指す。
全身のバネを使い、飛び上りながらのアッパー、ジジィは邪魔になるのでその辺に落とした。
魔物より早い悲鳴と、抗議の声が聞こえるがそれを軽く流し、突き上げる。
直撃――硬い感触が拳に伝わる――拳の砕ける感覚と奥へと確かに陥没する眼球――そのままクリティカルヒットで突き上げる。
声にならない悲鳴が上がった。己の眼球によって破壊された頭蓋骨が脳をそのまま粉砕する。
破片が基幹に突き刺さり、さらには全身を司る機能を犯す、が……
ここで誤算が起きた。
脳が砕けたというのに、剛腕が俺の身体を薙ぎ払った。それと同時に俺の意識が刈り取られ、死が身体に貫く。
最後の思考はモンスターを侮りすぎた、ということだろう、脊髄にプログラムされた基本動作を嘗めていた。
遠いジジィの声、ああ、俺は最後の最後で勇者に――
(5)に続く
今回も微妙回、書きたいことが余り書けなかった
戦闘シーンが凄く淡泊です・・・
かっこいいよ。その勇気ある行動、勇者に値するよ。
でも、運命はいかに・・・。続きが気になる終わり方だなぁ(wwwwwww
ちょwwwww
最初はメルヘンなヘタレDQNだと思ってたのに!
ヤバイ惚れるマジパネェっすかっけーwwうぇwww
ふう……。いやいや、本当にすごいです。
>「〜最近人にも餓えてたしな」
特にこのセリフが秀逸。これまでの過酷な状況が凝縮されてる気がする。
相手の事情を察せられる賢さだけじゃ抑えきれない負の感情もあるだろうに……。
この主人公、本当の意味で強い。
続きを心から楽しみにしてます。
保守
262 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/07(木) 03:52:55 ID:zcKbyfKf0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(5)
天の方舟システムに深刻なエラー発生――転送中に記憶領域に欠損を発見
修復プログラム起動
失われたドキュメントの復元率……99%
アリアハン王家天空回廊の接続を解除、転送を中断します。
「目を覚ましたのか?」
ぼんやりとした目をじょじょに%
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(5)
天の方舟システムに深刻なエラー発生――転送中に記憶領域に欠損を発見
修復プログラム起動
失われたドキュメントの復元率……99%
アリアハン王家天空回廊の接続を解除、転送を中断します。
「目を覚ましたのか?」
ぼんやりとした目をじょじょに開いた俺の前にジジィが立っていた。
「あ」
ジジィ?ああ、ジジィ……。
「ああ!!俺の助けたジジィか!?すると俺生きてるんだな!?ふー、ビビったぜほんと
あんときゃ絶対死んだと思ったのに、あー勇者パワーすげー、普通死ぬはあのパンチ。
痛恨の一撃だったからな、ほんと、まあ何はともあれ二人生き残って良かったぜほんと」
一気にしゃべり終え、俺は大きくため息をついた。そりゃ人間だもの、ビビることは多い。
「貴様は一度死んだよ、よりにもよってワシを助けたのは王家の狗とは……」
そう言って俺の睨みつけたジジィの目は敵意の色に染まっていた。
あーよくよく見てみると俺拘束されてんじゃん、しかもどう力を入れても抜け出せないような方法で。
「勇者とは言え脊髄にストッパーをかけては動けまい、貴様の命は我ら未登録の魔法使いの排除か?」
魔法が使えないことは分かっているよ、と歪な笑いでジジィは言った。
魔法が使えるなら発声機能なんて残すわけがないといったような様だ。
「ちげーよ、王家?そんなファッキン野郎に俺は放逐されたんだよ、風の噂で聞いてないか?ジジィ」
諸王連合に“よる”勇者の資格を俺は失った、“神授として”の資格は残っているみたいだが。
「ふむ、それが真実と言えるのか貴様は……あの狡猾な者共がワシらを罠にかけようとしてないとどう証明できる」
どうしようもなく疑心暗鬼、駄目だ、完全に聞く耳をもってくれそうにない。
「信じてくれとは言わない……なあ、俺何で生きてるんだ?死んだ、って言ったよな?」
それぐらいは教えてやってもいいだろう、そうジジィは言った。
「貴様は確かに死んだ、瀕死の魔物の放つ強力な一撃によって挽肉のように飛び散った」
新幹線に衝突したような感じだったし、ありえなくはないが、ミンチ?悪い冗談だろ……。
「それなのに貴様は生き返った、生命の法則を完全に無視してな。
認めよう、貴様は真に勇者のようだな、棺桶がどこからともなく落ちてきた……あれこそが天に祝福された証拠だろう。
絶対的な死から至極安全な地へと勇者をいざなう神の魔法、神?そん者をワシは認めたくはないがアレを前に認めざるをえん。
開かれた棺桶に肉片が収束したかと思うと一瞬、それが消えた。
次の瞬間にはワシの目の前に戻っておったがな、唖然とするワシの前で柩はかき消え貴様の姿だけが残った。
神官共の使うザオリクとは一線を課す、そうしてワシは思い出したのだ、あの常識外の力を。
そんな特権が許されるのは人の共同幻想“勇者”のみであると、忌々しい、そんなものがあるから王たちの愚かさが治らんのだ」
間を入れず、早口でジジィは喋った、それを認めてたまるかと、そんな勢いで。
つーか、俺だって腹が立つ、何でこの世界で生かす、俺の世界に戻せとあれほど。
「ワシには貴様を殺すことは出来ぬだろう」
ズキリ、とその言葉が胸の奥に突き刺さる、久々に会った人間の言葉にしては残酷すぎる。
ああ、残酷、途方にくれるぐらいに。この世界はなかなか俺に甘くないようだ。
「なあ、勇者ってそんなに嫌われるものなのか?」
多分、その声は震えていて、泣きそうな声だった。
俺だってたまには泣きたくなることがあるのだ。
「好き、嫌いではない。力を持たぬ者と勇者では歩む道が違いすぎる……それも王の側につくとあるなら憎しみしかない。
貴様が生まれてからどれだけの民草が重荷を背負ったか、勇者を養うということはそれだけで重税を課す理由になる。
王は勇者を縛るためにありとあらゆるものを与える、いつか自らの脅威となるものを排除させるためにな。
民も例外ではない、王に害をもたらす者は勇者をもって排除する、それは決して少ない話ではないだよ坊主」
(6)に続く
何か書き込みエラーが起きてageてしまって申し訳ない
そして毎度のことだけれど話が短い・・・
分割して頻繁に書き込んでないとモチベーションを維持できないんでそのへんはよろしく
乙!
まさかの忌避される勇者!
ジジィが黒っぽくみえたと思ったら、巷に響く黒勇者の設定は面白いかも
ほしゅ
保守
保守・・・したほうがいいかな?
ほしゅ
保守
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(6)
だが……とジジィは若干表情を崩して言葉を続けた。
「あの魔物を倒してくれたことは感謝する、ワシにはどうすることもできなかったからな。
そして、坊主があの瞬間死んだお陰でワシと坊主に還元されるはずだった力がワシだけに注ぎ込まれた」
お主、貴様、坊主、俺に対する呼称が転々とし、言葉を切った。
あー、つまり、俺に入るはずだった経験値が……。
「今になって精神と身体を拡張することになるとは、うむ、喜ばしいことだ。
ああ、そう、これは坊主に対する妬みと奴当たりだよ、ワシは衰える肉体を抑えきれず今回の出来事を起こした。
贖罪、というべきか、ワシは死ぬよ、魔法使いの里は滅んだ、あの魔物を呼びだしたおかげでねな」
自分語りが激しいなジジィ、何で、何でそんな遠い目してんだよ。
「ルーラとは即ち、点と点を結び移動する魔法、通常は巨大な都市に目印を刻んで行うべき危険な魔法。
なぜルーラは空間移動魔法であるのに一度宙を舞うと思う?」
そんなものは簡単だ、地上で展開すれば根こそぎ質量を動かすことになる。
都市にマーカーをするのも、空高くに現れるのも……。
「物質と物質が同軸上に存在する場合、最悪の被害が巻き起こる、そして、ルーラは何もこの世界にだけ作用する魔法ではない」
薄々とは感じた、そうだ、アレがこの世界に存在してはいけないのだ。
誰が持ち込んだ、目の前のジジィだ、どうやって?ルーラで。
「別概念の魔法知識をこちら側に持ち込もうとした結果があの大惨事、もはやワシが残すべき言葉はない」
年相応の、枯れた声だった。どうしようもなく生きる気力がなく、死以外のことをもはや見るすべを知らない。
ああっ、俺は、なぜこんなに淡々としているんだろうか。
裏切られたから?いや、そもそも信頼関係を築いていない、何なのだろうか、この感情は。
人が死ぬのは見たくない、見たくないのだが、目の前のジジィを救う方法が見当たらない。
勇者はこんなに脆いものなのか。
精神強化、肉体強化、どんなに強くなっても心に亀裂が入ってしまえば決壊してしまう。
ひねり出すように俺が漏らした言葉は貧弱だった。
「なあ、ジジィ……死ぬぐらいだったら、俺に魔法を、授けてはくれないか?
俺は世界を救う存在なんだと思う、アンタを救うことはできなくても」
間幕
どうやら僕はとてつもない田舎に紛れ込んだのではなく、不思議なところに来てしまったようだ。
「言語は日本語なのに日本という国が存在しないなんて、はて、ここはどこなのだろうか」
あまり考えたくないけれどここはどうやら異世界なのかもしれない。
紙幣は珍しがられるけどそれだけで使い物にならないし、小銭も金じゃないから役に立たないから困った。
この世界では物々交換か金による取引しか成立しないらしい。
「困ったなー困ったなー、そろそろ家に帰りたいなー」
言葉に出してみるとあまり困った風には見えないけど僕は心底困っていた。
生活面ではいわゆる紐生活を送っているためそこまで困らないけど、さすがにずっとこうしているわけにもいかない。
だけど、他にすることが見つからない。
どうやら男のする仕事は肉体労働ばっかりで僕には向いてない。
兵士なんて冗談、自慢じゃないけど僕は運動が苦手。
かと言ってそんなに頭が良いわけじゃない、みんなが褒めてくれるのは声と顔ぐらい。
「でも、それのおかげ今も平穏な生活がおくれてるわけで、僕も捨てたものじゃないかも」
今僕を飼ってくれてる人はお金持ちの奥さまで僕を芸術品の一部として飾ってる節がある。
だから僕の美しさを損ねないように良いものを食べさせてくれるけど僕にはどうも口に合わない。
もちろん出されたものをマズそう食べるほど僕は愚行ではないから美味しくいただくけど半ば演技としかいえない。
奥さまも一日中僕にべったりしてるわけじゃないからある程度暇な時間はあるけど琴の練習に忙しい。
とりあえず飼ってくれてる間はいいけど、あの手の女性は飽きたらほっぽり出すから怖い。
そのためには詩を謳い、音色を奏でなければならないのだ。
僕がこの世界で生きていくには吟遊詩人に成りきるしかない。
手先はわりと器用なほうだと思うけど、二つの作業を同時にこなすのは一苦労。
正直もう投げ出したい気分でいっぱいだけど生きていくにはしょうがない。
「はあ、退屈だなぁ、テレビ見たいなぁ」
携帯の電波ももちろん入らないから救助も求められないし、何で目が覚めたら異国の宿屋なんだろう。
もう、知らない。
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話 END
NEXT すりりんぐぶれいぶはーと・第二話
本来(5)と(6)は一緒に書き込むべきだったんだろうけどそんな気力がなかった
間幕は多分、区切りごとの更新になると思われ
今更DSのDQ5をプレイしてて書き込みが遅れ気味なのはどうしたものか
このまま行くと完結は何年後だろう
とりあえずカジノのハイアンドローはすりりんぐでぶれいぶはーとが必要だと思う
あとエースが来た時嬉々としてロウ!と言ったらジョーカーとかやめて
やっと規制明け!
>>274 乙!
ルーラにそんな秘密が!ルラムーン草がいるわけだなぁ
ハイ&ローでエースにジョーカーが来たこと過去に2回あるw
この理不尽さはなんともいえないw
えとえと、保守いたしますわね・・・。
星
干し
幕間の短編一話のみですが投下します。
ちょっと時期が遅くなりましたが、イサミの世界の行事ネタです。
「イサミ殿、野菜に棒きれなど刺して…食べ物で遊ぶとサトチー様に叱られますぞ。」
「遊んでるわけじゃねえよ。これは『お盆』って、俺の世界の伝統行事。
一年に一回だけ先祖に会える日でさ。野菜の馬と牛を飾って先祖を迎えるんだよ。」
「故人を召喚する降霊儀式のようなものですな。いや、死霊を使役する術式とは…
そのような難解な呪法を容易に操るとは、イサミ殿の世界の住人も侮れませんな。」
「…死霊の召喚儀式とは禍々しい…それなりの代償は覚悟しているのであろうな…」
「なんか…勘違いしてねえか?特にスミス。お前が言うとシャレになんねえ。」
「…なぜ私だけ名指しでツッ込まれるのだ…」
「これは、そんなヤバい行事じゃなくってさぁ。死んだ後でも会いたい大事な人と、
一年に一回だけでも近くで過ごせるようにって…そんな祭りなんだよ。」
「なるほど、そう言われるとこの妙な儀式にも人の温かみを感じられますな。」
「…ふむ…儀式の思惑には納得したが…イサミにも今一度会いたい故人がいるのか?」
「ん?…あぁ、今回は俺の先祖の為にコレを作ったわけじゃないんだ。」
「はて?では、何の為に?」
「まぁ、もう夜も遅いし寝とこうや。あとはコレを飾っておしまいだからさ。」
「う〜む…異世界の文化は実に奥が深いですな。」
そして、夜が明けた。
「♪〜 あ、おはようイサミ。よく眠れたかい?」
「ふぁ…おぅ、サトチーおはよ。鼻歌なんか歌ってご機嫌だなあ。」
「まぁね、久しぶりに楽しい夢を見れたんだ。」
「ずいぶん楽しい夢だったんだろうな。…で、どんなんよ?」
「うん、夢の中に父さんが出てきてね。平和だったころのサンタローズで
一緒に釣りをしたり、いろいろ話したり…うん、そんな夢。
…おや?ねぇイサミ。この野菜はなんだい?」
「あぁ…それは…ただのおまじないみたいなもんだよ。
ほら、スミスが馬車で待ってるぞ。早く準備しちまおうや。」
―お前にはずいぶんさみしい思いをさせたな―
『父さん、僕は大丈夫。僕の傍にはいつでも素晴らしい仲間がいます。
そして、父さんから受け継いだ志がいつでも僕を鼓舞してくれます。』
イサミGJすぎる(つД`)
乙でした
サトチー良かったな!
イサミも儀式wをした甲斐があったw
目から汁が出た(´д⊂・゚・。
GEMAさん乙です
降霊儀式ww確かにその通りだww
言い方は間違ってないがなんか違うwww
保守
職人の皆様超GJ!!
ほしゅ
hosyu
ほす
アルス「ちーっす……」
タツミ「どうもー! すっかりご無沙汰しておりますぅ♪ 残暑も厳しい今日この頃、皆様い・か・が・お過ごしでしょ〜かぁ?☆」
アルス「なにその♪とか☆とかキモ! なんでそんなテンション高いんだ?」
タツミ「バカ空気読め! お騒がせ状態のまま数ヶ月も放置してたんだからもはやテンションで誤魔化すしかないじゃないか!」
アルス「思いっきりホンネ口走っとるがな。前回は本当にお騒がせだったよな、俺も焦ったっつーの」
タツミ「そういえば君もレイさんのこと男だと誤解してたんだっけww」
アルス「笑い事じゃねえよ。それでは遅くなりましてすみません。恒例サンクスコールです」
アルス「
>>103様、いや〜俺もマジ物凄く焦りましたよこんちくしょう」
タツミ「
>>105様、ほんとエリスもサミエルもあんまり大騒ぎするから僕の方がビビりましたw」
アルス「
>>105様、うちの国王も悪い人間じゃないんだが、変なとこが熱血なんだよな。そこがうちの親父と気が合ってたみたいだが」
タツミ「
>>106様、驚かせてすいません。Rに関してはすでに壊れ気味な気がしないでもありませんね」
アルス「
>>107様ごめんなさい謝ります! ところで……なにを期待したんでしょう? ガチで、えーと??」
タツミ「あー覚えなくてイイよああいう特殊な現実用語は。
>>116様、レイさん確かにカッコイイですけど、近くで見たら結構な美人さんですよ。ああいうの宝塚系っていうのかな」
アルス「へえ、そうだったのか? 俺は数年前に一度会ったキリだから顔とかあんまり覚えてねえんだよな」
タツミ「向こうはちゃんと覚えてたってのに……。
>>117様、Rのことだからどこでなに仕掛けてるかわかんないですからね。
あちこちに伏線はってたりするんで、たまにまとめ読み返していただけると嬉しいです」
アルス「
>>118様、レイの家も幼少時から勇者の英才教育してたって聞いてるから、そうなのかもしれないな」
タツミ「
>>119様、そこなんですよ〜! エリちゃんとかレイさんとかサヤお母さんとか魅力的な女性が多いのに
そこがネックで手が出せn……OK悪かった冗談だよアルス。剣をしまおう、ね?」
アルス「俺のおふくろまで範疇なのかお前は!? ユリコに言いつけていいか?」
タツミ「だから冗談だってば、蹴り殺されるからやめて。
あ、
>>120様、僕自身はその手の話題ゼンゼン平気ですよ〜。女子に混じって下着からBLまで平気で語れるタイプなんで」
アルス「うわ、たまーにクラスにいるよなそういう男子。それって男として見られてないからだと思うが。
>>124様、なにか不思議なロマンを感じる願望ですがそのココロは?」
タツミ「あれじゃない、小さい頃お母さんにおんぶされた思い出が蘇って〜とか?(超憶測)」
アルス「憶測で語るなよ。でもまあ、そういうことならなんとなく覚えてる。懐かしいなぁ」
タツミ「その割りにはサヤお母さんへの態度悪いよね君」
アルス「しつけーな、またそれを言うか。反抗期ってことにしとけもう」
タツミ「ちなみに今回のようにアンカー(>>)があったり明らかに他の読者様へのメッセージに対しては、
読者様同士の会話に割り込まないという配慮からコールを控えております。ご了承ください」
アルス「お待たせしました、それでは本編スター……」
タツミ「あー待って待って。今回は僕らが語りじゃないから、スタートも彼らにお願いしたいんだけど」
アルス「そうなのか? 俺はかまわないが、お前、本当にそういうとこマメだよな」
タツミ「つねに周囲への気遣いは怠りませんからw」
エリス・サミエル・ロダム『というわけで、俺(私)たちが、本編スタートいたします(ッス)!!』
アルス「お前らもう少し息合わせろ……」
【Stage.17 うちの勇者様】
続・ゲームサイド [1]〜[14]
Prev
>>83-101 ----------------- Game-Side Another -----------------
【サミエル=レイトルフの場合】
勇者様について? タツミのことッスか。あー……、確かにあいつは得体の知れないや
つッスよ。自分は異世界の人間だ、とか言い出したときは、こいつアタマおかしいんじゃ
ねえかと思ったし。
んで、いざ一緒に行動してみたらマジでこの世界の習慣を知らないみたいで、「トイレ
の男性用マークはどっちだ」とか聞いてくるから焦ったぜ。「革靴」が男用で「扇子」が
女用のマークだって、世界共通の常識じゃないスか?
あとほら、よく宿屋でメシの後にサービスでニームの枝がついてくるっしょ。なんとあ
れをポリポリ食っちまったりとか。
「……勇者様、それ噛んで柔らかくして、歯を磨くんスよ」
と俺が呆れ半分で教えてやったら、えらく感心してたっけ。
あげくに、パーティの金銭管理はリーダーの仕事だからって俺たちの所持金を預けた時
は、「ええ! ゴールドって銀貨や銅貨もあるの!?」なんてこれまた当たり前のことに驚
いてたし。本当にこいつがリーダーで大丈夫なのかって、俺も不安になったもんッスね。
だけどタツミって、すごく熱心なんスよね。行く先々の街や城で片っ端から本を読み漁っ
て、暇さえあればロダムやエリスに、呪文や世界の歴史について習ったりしてる。俺にも
魔物との戦いの注意点とか、しょっちゅう質問してくるし。
今でこそあいつも慣れたもんで、旅のプランニングや経費の計算、売買の交渉とか、冒
険に関する雑務も一通りこなしてるけどさ。もともと記憶力はすこぶるいいヤツだったけ
ど、こんな短期間で覚えたのは、やっぱ努力の賜物ってんじゃないんスかね。
まあ厳しいことを言えば、この程度はどのパーティでも当たり前にやってることで、冒
険者としてはまだ全っ然なっちゃいないッスけどね。
まして「勇者」が魔物と戦えないなんざ、よそには絶対に知られたくない話だし……。
それでもなぁ。
血がダメなのはかなりマジだろうに、あいつは吐いても吐いても逃げ出さずに俺たちの
戦いを見守ってるんスよ。俺自身が知らないうちに負っていたケガに気付いてくれたり、
エリスもほら、女ゆえのサイクルってのがあるっしょ? それで体調が悪いのを見抜いて、
俺らに「フォローしてあげてね」ってさり気なく頼んできたりとか。
マメっちゅうかなんちゅうか、いつも俺たちを気遣ってて……自分の方こそ、戦闘のた
びに顔が真っ青になってるってのにな。
だから、あいつが戦えないなら俺が二人分戦えばいいや、なんて。
いろいろ頼りないヤツだけど、今の俺たちのリーダーは、やっぱタツミなんスよね。
そういうことで、王様。
あいつが理不尽に罰せられるのは許せないッスよ、俺は。
◇
なーんて意気込んでアリアハンの刑場に乗り込んだ俺たちだったんスけどねぇ。
現在、その王様はひとり壇上でイジけてますよ。先刻の騒動ですっかり存在を忘れられ
ていたのがよっぽど悲しかったらしいッスね。執行役の兵士たちも「どうするよオイ」と
かマゴついてるし、なんかもうすっかりgdgdになってる。
ピーヒョロロ〜と鳶が暢気に青空に円を描いてて、なーんかマの抜けた空気が漂う中。
レイさんだけは妙にニコニコしてる。
「王よ、ここはいったん腰を据えて、じっくり話し合うべきではありませんか?」
まあ無難な提案だわな。王様も渋々壇上から降りてきたんスけど、なんか情けない顔し
てるわ。
タツミの方も同じように肩を落としてて、俺と目が合うと苦笑いした。
「今の王様の気持ち、僕もよくわかるよ。なんかこうして落ち着いちゃうと、結局のとこ
ろ、『吐け!』『言うもんか!』『じゃあ痛めつけてやる!』『やるならやれよ!』とお
互いに意地を張り合ってただけ――って感じだもんね〜」
「っぷ」
思わず吹き出した。本当にその通りだもんなぁ。
タツミはそれで吹っ切れたらしく、一歩前に出ると、王様に思いっきり頭を下げた。
「あの、王様。いろいろ失礼なこと言っちゃって申し訳ありませんでした!」
そうそう、うちのリーダーは本来、自分が悪いと思ったらすぐにちゃんと謝る人間だも
んな。今回みたいにわざと反感買うような真似してるのは、全然らしくないんスよ。
王様もしばらーく黙っていたけど、やがて降参とばかりに両手を挙げた。
「わかったもうよい。不問とする。貴様ではないが、だんだん余も面倒になってきたわ。
お前たちも下がってよいぞ」
どこかスッキリしたように笑いながら、王様は兵士たちに退席を命じた。兵士たちはサッ
と敬礼すると、物騒な道具をかかえてそそくさと刑場を出て行く。あいつらも本当は嫌々
従事していたんだろうな。
アリアハンはもともと平和ってゆーか、ノンビリした国ッスからね。魔物ガラみの暗い
事件はたびたび起きてるけど、それがなきゃこんな陰気な話は滅多に無い。いつだったか、
王様が自分の息子みたいに大事に思ってるオルテガ様のご子息に不埒な真似をしようとし
たアホな女パーティがいたけど、そいつらも表向きは極刑とされたが、秘密裏に国外に追
放するだけで済まされたし。
「まったく、本当に虫の好かんヤツだ貴様は。余の力量を試すなど、侮辱罪で打ち首にさ
れても文句は言えんのだぞ?」
王様がチョンと首に手を当てるマネをすると、タツミは胸の前で手を組みつつブンブン
首を振った。
「いやだなー王様、僕そんな恐れ多いことコレっぽっちも思ってませんよ? 偉大にして
神聖なる御国王陛下より直々に賜りし罪なればここは粛々と甘受すべきかとですね」
「だーまーれ、少しは物怖じせんかこのクソガキが。……まあ確かに、余も少しばかり頭
に血が昇っていたかもしれんが」
ありゃ? なんかこの二人、かえって仲良くなってないか?
「ふむ。やはりアリアハン国王は立派な方だな」
とか言いつつレイさんはニタニタしてるし。この人も最初から結末が読めてたっぽいな。
「さて、余は譲歩したぞ。次は貴様の番であろう?」
王様の言葉に、タツミは少し困ったような顔でうなずいた。
「――わかってます、アルス君のことですよね」
アルセッド=D=ランバート。
本来、俺たちがともに旅をするはずだった、真の勇者たる少年。
タツミは間違いなく「彼」の身に起きたことを偽っている。それは王様が疑問に思うま
でもなく、俺たち3人も薄々察していたことだ……が。
けど実は、「とりあえず向こうが言い出すまではそっとしておこう」って俺たちの中で
話し合いは済んでたりする。実際あいつはマジメに勇者として人助けの旅を続けてるんだ
し、たとえ隠し事をしていようとそれなりの事情があるんだろう、ってさ。
だいたい、王様がタツミに「アルスの名声を横取りしようとしている不逞の輩」って猜
疑の目を向けるのも、仕方ないっちゃそうだが、現場を知る俺たちから言わせてもらえば、
こんなクソ面倒な大役をわざわざ買って出るくらいなら、一般人でいるほうがよっぽど楽ッ
スからねぇ。
でもまあ、そろそろ真実を聞いておきたいところではあるなぁ。
エリスやロダムも同じ考えなのか、じっとタツミの方を見つめてる。
うちの勇者様もそれに気付いたのか、軽く肩をすくめてうなずいた。
「わかりました。僕にわかる範囲のことはお話します。ひとまず腰を落ち着ける場所を貸
していただけますか、王様?」
【エリス=ダートリーの場合】
タツミ様のこと、ですか?
そうですね。実はその……今だから言える話ですが、最初の頃、私は彼をまったく信じ
ていませんでした。
タツミ様は一見すると、温和で人当たりが良くて会話上手、他人とすぐに打ち解けられ
る方ですが――その笑顔の裏でいつもクールに場の空気を読み、先を計算しているような
ところがあります。
私だって、ついついアルス様と比較してしまうからこそ、そういう性質に気付きました
が、普通の人は彼の表面的な笑顔に簡単に騙されるでしょうね。
あ、ごめんなさい、騙されるというのは言い方が悪いわ。それが彼なりの気遣いや優し
さなんだって、今はもうわかっていますから。
まあロマリアにいた頃までは私もそんな感じで、
(このニセモノがアルス様の命を握っているのかしら)
と本気で不安に思っていました。王様が疑っていたように、私も彼が、アルス様に成り
代わろうとしている魔王の手先かなにかでは……と考えていたんです。
だからモンスター格闘場での八百長じみた大勝にも大げさに感心してみせましたし、お
となしく彼の指示に従って金の冠を取り返しにも行きました。
どういういきさつなのか一時的にロマリアの国王代理を務めることになった彼から、
「僕、王様してる間にちょっとやっときたいことがあるんだ。そんなにかからないから、
しばらく宿屋でのんびりしててよ」
そう言われましたが、私は彼に秘書役として手伝いを申し出ました。だって、こんな怪
しい人間にロマリアのような大国の権力を渡すなんて危険じゃないですか。
「ありがとうエリス、本当に助かるよ。ごめんね、疲れてるのに」
少し照れたように言う彼に、
「いいえ、お気になさらずに。タツミ様の方こそずっと働きづめではないですか、少しは
休まれたほうがいいですよ?」
なんて白々しく心配するフリをしながら、私は彼の動向を探っていたんです。
結局、タツミ様は約束どおりすぐに王位を返還し、一日も経たずにロマリアを出立する
ことになりましたけど。
――それから、初の魔物との戦闘に至り。
タツミ様が血に弱いということが、ここで初めてわかりました。
冒険者の中にも苦手という人はいますよ。ロダムのような僧侶など、基本的に殺生ごと
は好みませんし。でも彼の……血液恐怖症というのでしょうか、あれは半端じゃないです
ね。木陰で吐いているのを見かねて水筒を持って行きましたが、とても演技とは思えない
くらい参っていました。
なのに、
「ごめんね〜、血はどうも苦手なんだよねw 近いうちに必ずなんとかするからさ」
と、必死に笑顔を作ろうとするんですもの。
この人、悪い人じゃないのかしら……?
ふとよぎったその思いは、ピラミッドで確信に変わりました。
タツミ様と2人で落とし穴にはまり、魔法が使えない地下道を彷徨い歩き、どうにもな
らなくなって通路の隅に隠れて休んでいた時です。
気を紛らわせようと雑談をしていたんですけれど。
その会話の方向性が、私に囮になれと暗に促していることには、最初から気付いていま
した。そういう作戦自体は別に彼じゃなくとも冒険者のパーティなら一度や二度は経験す
ることですから、それについては特にヒドイとは思いませんでしたよ。これまでの経緯を
鑑(カンガ)みて、本当にこのまま見捨てられることはまず無いだろうという計算はありまし
たし。
むしろ遠回しに誤魔化さないではっきり言ってくれた方が良かったんですが、男の彼か
ら女の私に「身代わりになれ」とはさすがに言い辛いのでしょう。そう思って、親切心で
私の方から言ってあげたんですよ。
私を置いていけ、と。
抱きしめてあげたのは、まあちょっとしたサービスで。
……すぐに後悔しましたけどね。
その時のタツミ様の表情は、今でも忘れられません。
悔恨とか自己嫌悪とか、なにかそういった、自分に刃を向けるような負の感情に一気に
支配されてしまったかのような。
うまく言えないんですが、たとえば、大切な人をどうしようもない理由で殺してしまっ
た、その直後みたいな。もう他人にはどうすることもできないくらい自分を追い込んでし
まった人を、目の前でただ見ているしかない状態というのか……。
しかも驚いたのは、彼は次の瞬間には、スッといつもの笑顔でそれらすべてを覆い隠し
てしまったことです。
「じゃあ、ちょっと様子を見てくるから、君はここで待っててくれる?」
まるでなにごともなかったかのように。正直、私はほっとしました。私には、さっきの
状態の彼にどう対処していいかわからないもの。
だから、あの時の私の言葉の、本当の意味は。
「なるべく早く、帰ってきてくださいね」
そしてさっさとどこかの街に戻って、宿を取って、この人に暖かくしておいしいものを
食べさせて、ゆっくり眠らせてあげたい。
そう思ったんです。
キスをしたのは……よくわかりません。
私の方こそごめんなさい、って、そんな気持ちの表れだったような気がします。
◇
刑場から応接間に移動した私たちは、そこでタツミ様のお話を聞くことになりました。
「まず謝ります。僕、嘘をついてました。アルス君がいなくなったことに関して、魔王が
直接なにかしたわけじゃないんです」
アルス様は魔王に封じ込められたのではなく、タツミ様の異世界に飛ばされ、替わりに
タツミ様がこの世界に送られたというのです。
つまりお二人は入れ替わってしまったのだ、と。
「ではアルセッドはどうしてるのだ? 無事なのか」
王様の問いかけに、タツミ様は自信が無さそうにうなずきました。
「たぶん。僕が住んでいた世界に魔物はいませんし、アルス君ほどの戦闘技術を持つ人間
もほとんどいません。まず危険はないと思います」
私も少しですが、タツミ様が住んでいらした世界について聞いたことがありました。魔
術の類はいっさい存在せず、まったく異なる文明を持つタツミ様の故郷。そこは魔王も魔
物もいない平和な世界であると。
タツミ様はそこで溜息をつきました。
「正直、僕もなにが起こってるのかわかってないんです。この世界に来る直前に、神様だ
かなんだかに簡単な説明をされただけで……。僕がアルス君の代わりに魔王を倒さなけれ
ばいけないらしいんで、やっぱり魔王が間接的に関わっているのかもしれませんけど、そ
れも僕には答えようがありません」
「なるほどな。君も大変だったね、青少年」
レイさんがしみじみと言いました。
「いきなり見知らぬ世界で『勇者』をやれなんて言われて。よくやってるじゃないか」
「まあなんとか。――ただ、アルス君の方はどうも以前から、僕や、あっちの世界のこと
を知っていたみたいです。『夢を通して見ていた』と言っていました」
え、夢で見ていた……?
(――聞いてくれよエリス、また例の『夢』を見たんだ。ほんと不思議な世界だよ、ヒコ
ウキってわかるか? 何百人も人を乗せて空を飛ぶんだぜ。ラーミアよりすげえよな!)
どうしてでしょうか。嬉しそうに語るアルス様の姿が浮かびます。
そんなこと、過去に一度もなかったはずなのに。
「なんだか貴様はアルセッドを知らぬような口ぶりだな。以前、余に『アルセッドは自分
にとっても大切な存在だ』と言い切ったではないか」
王様がややキツイ口調で聞きました。タツミ様はそれにも困った顔になりました。
「それは間違いありませんが……。当時は彼がアルスという名で、しかも僕とそっくりだ
なんて知りもしませんでしたけど」
「知らないけれど大切な存在? タツミ殿、どういうことですかな?」
ロダムが首をひねります。
「えーと、なんて言えばいいのかな。僕の世界では、彼の冒険譚が絵本みたいな形で残さ
れているんだよ。この世界にも古い伝説や神話を描いた子供向けの絵本はあるだろ? 僕
もそういうのを読んで育ったというか……だから、勇者アルスは僕にとって憧れの英雄と
いうか、なんかそんな感じなんだ」
「すでに伝説になってるって? じゃあタツミさんトコの世界って、未来の世界なんスか?
これからどうなるかも知ってるとか」
興味津々で身を乗り出すサミエルに、タツミ様は微笑みました。
「もしかしたらそうかもね。僕が知ってる話では、勇者は魔王を倒して世界を平和にする
よ。登場人物の名前はハッキリしないんだけど、戦士や僧侶や魔法使いが仲間だったから、
きっと君たちのことなんじゃないかな?」
おっしゃぁ〜!と嬉しそうにガッツポーズをするサミエルを、王様は呆れたように見て
います。
「まあそれはわかった。で、アルセッドのことだが……まさかと思いたいが、自らの意思
で貴様の世界に行ったのか?」
王様がそう問いかけると、タツミ様は申し訳なさそうに首を振りました。
「だと思います。でも、なんだかつらそうに見えました。皆さんからこんなに頼りにされ
て、心配されてるんですから、きっとよほどの事情があったんじゃないかな……」
その後もいくつか質問が出ましたが、タツミ様にもはっきりしないことばかりでした。
「貴様をアルセッドの後継と認めよう。余に報告を怠らぬように」
最後に王様から正式な許可が下りました。わけもわからず勇者を押しつけられた彼の苦
労が、王様にも察していただけたのでしょう。
そこでひとまず、私たちは解散したのでした。
【ロダム=J=W=シャンメールの場合】
アリアハン城を出た我々は、その足でルイーダの店に向かいました。タツミ殿が、すぐ
にもレイ殿の歓迎パーティーをしたいと言い出したのです。
「僕のせいで変なことになっちゃったし。……それと、なんと言いますか、このままじゃ
サヤさんところに顔を出しづらいし。もちろん、落ち着いたらちゃんと行くけどさ」
勢いをつけるために先に一杯ひっかけたい、というところでしょうか。気持ちはわから
ないでもありませんが、そこはまずサヤ殿に謝りに帰る方が先では――。
と思ったのですが、
「ねえねえ、ダメかな〜?」
タツミ殿の「お ね が い♪ ウルウル瞳攻撃」にレイ殿とサミエルがあっという間
に陥落したため、多数決で即決されました。
その後、ルイーダの店の2階の一室を借り切って、大いに盛り上がりました。
2時間くらい盛り上がったでしょうか。
そろそろドンチャン騒ぎも一通り落ち着いた頃、私はふと、店内にタツミ殿の姿がない
ことに気が付きました。
彼はあれでなかなかの酒豪で、少々のお酒では参りませんが、酔って絡んできたレイ殿
をあしらったり、それでまたいきり立ったエリスをなだめたり、調子に乗って脱ぎだした
サミエルを酒瓶でドついておとなしくさせたりと忙しく立ち回っていたので、息抜きをし
に行ったのかもしれません。
私もそっと席を離れ、外へ出ました。少々気になっていたことがあり、この機会にタツ
ミ殿に確かめられればと思ったのです。
彼は店の横を流れる城の外堀のふちに座っていました。すっかりお気に入りとなったス
ライムのヘニョを抱き、空中に投げ出した足をまるで子供のようにぶらぶらさせながら、
水面に映った月を見つめています。
「疲れましたか」
私が声をかけると、気配には気づいていたのでしょう、彼は微笑んで片手をあげました。
拒む様子はなく、隣に立った私に彼の方から話かけてきました。
「ごめんねロダム、嫌な思いをさせたね」
「それは、王様との約束のことですか? それともレイ殿のことですか?」
私の言葉に、彼はあう〜っと情けない声を出しました。
「どっちもだけど――。レイさんのアレさ、やっぱり本気だよね。年下をからかってると
かじゃないよね」
「まあ冗談ではなさそうですな。私も女性の気持ちはよくわかりませんが、少なくともレ
イ殿の人となりからして、ふざけてあのような言動はなさらないでしょう」
「だよねー……。いや確かにレイさんの戦力は欲しかったから、ちょっとは『仕掛け』た
さ。でも別に女心をもてあそぶとか、そんなつもりはまったく無かったんだよ」
水面の月から上空の月へと仰ぎ見て、またうあ〜っとうなっています。
私はわざと澄ました顔を作って言いました。
「ほほぉ。わざわざ私に『自分が血に弱いことはレイさんに決して話さないで』と念を押
してから、いかにも話してくれとばかりにサミエルと連れ立って武器屋に行ったり。洞窟
内でも、我々にもまだ話していない悩みをレイ殿だけにはこっそり打ち明けたとか、いや
はや勇者様もなかなかやり手だなと感心しておりましたが?」
そもそも、普段のタツミ殿はご自分がアルス殿の偽者だとバレないよう第三者への態度
にはかなり気を使っています。しかしレイ殿に限っては妙に適当だったり、わざと弱みを
見せていたりところが、ずっと気になっていたのです。
「だーからー! 『なんか頼りない後輩君をちょっと助けてやろうか』なんて思ってくれ
ればいいなぁ、程度だったの! 王様に実力を計られてる状況でこっちから助力を仰ぐわ
けにもいかないし、でもこんなチャンスは逃したくなかったし。だいたいあんなスゴイ人
が僕みたいなガキに惚れるとか、あり得ないだろ? 普通は思わないってば!」
レイ殿のことは本当に予想外だったのでしょう。いつもどこか冷静に構えている彼が、
すっかり弱りきった顔で言い訳しています。
リアルタイム遭遇きたーー、
支援
なんだか私は、ようやく年相応の勇者様を見られたような気がして、ついつい笑顔になっ
てしまいました。
「ではそういうことにしておきましょう。なに、レイ殿も立派な大人だ、自分の恋はきち
んと自身で責任を取りますよ。あなたを悪く思ったりはしないでしょう」
「う〜……。僕ももう一回、ちゃんと謝るつもりだけどさぁ……」
「そうですね。――まあ、ひとまずレイ殿のことはそれとして」
それよりも問題は。
さきほどから、彼がなんとか話題を逸らそうとしている、もう一つの方です。
「……なぜ、我々に黙って国王とあのような約束をなさったんです。しかも、わざと国王
を煽ったでしょう? あなたならもっと穏便に済ませることもできたはずです」
ヘニョをなぜていたタツミ殿の手が止まりました。
「どうしてですか。理由があるのでしょう?」
私はなるべく声に棘がないように問いを重ねました。
アリアハン城でのさっきの話も、私は彼がすべてを語ったとは思っていません。まだな
にか隠しているのは間違いありません。
ですが、タツミ殿はそこらの15、6歳の子供とは訳が違う。彼が自分の身が可愛くて嘘
や隠し事をするような子ではないことは、これまでの旅でわかっています。この少年がな
にを一人で抱え込んでいるのか、少しでもその重荷を分け持ってあげたいと、そう思うの
です。
「話してはくれませんか? そんなに、我々が信用できませんか」
スッと月が雲に隠れ、当たりが暗くなりました。
「……このゲームは本当に良くできてるよ」
ようやく、押し殺したような声が彼の口から漏れました。
「ゲーム?」
聞き返した私に、彼は独り言のように続けます。
「本気でクリアを目指すなら、どうしたって心の通い合った仲間が必要になる。利害関係
だけのパーティでエンディングに到達できるほど甘くはなさそうだもんね。でもそうして
絆を深めて、一緒に困難を乗り越えて、その先の最後の選択まで到達できた時、果たして
それを全部捨ててまで『あっち』を選べるものなのかな?」
月が雲の陰から再び姿を現しました。
タツミ殿が私を見上げます。そして。
「帰りたくないって……思っちゃうのが、普通じゃないのかな?」
それは、ぐっとなにかに耐えているような。
私たちには入り込めない深いところで、ひとり孤独な戦いを強いられているような。
そんな胸が痛くなるような、笑顔でした。
「ここらでちょっと痛い目に遭わないとダメかなぁ、なんてバカなこと考えちゃったんだ。
本当にごめんね、心配かけて。もうあんな無茶はしないよ」
なんと言っていいのかわからず立ちつくしている私に、タツミ殿はもう、いつもの飄々
とした調子に戻っていました。「寒くなってきたネー」なんて腕をさすりながら、店に向
かいます。
その後ろ姿が今にもフッと消えてしまいそうな気がして、私も急いで後を追いました。
彼の言ったことは、私にはよく理解できません。
ただ、「ゲーム」というからには勝敗がある。
そしてその負けというのが、先ほどの言葉の通り、「この世界を好きになり、元の世界
に帰りたくなくなってしまうこと」――なのであれば。
私たちがこうしていっしょに泣いたり笑ったり、心を通い合わせて旅をしていることの
すべてが、彼にとっては重荷にしかならないと、そういうことになるのでしょうか。
それはひどく悲しい話だと……私は思いました。
本日はここまでです。
お久しぶりです。今回はあまり話が進まなくてすみません。
読み返してみてタツミの行動がいまいち説明不足かなぁと思いまして、
胸の内を少し打ち明けてもらいました。
>>308 久しぶり乙です。
なんていうか、深い、ですね。
ロダムの立場に立つと色々と考えさせられます。
貴方のSSは読んでていつも頭の中に映像が浮かびます。
完結までじっくりゆっくり頑張ってください。
続きを楽しみにしてます。
すりりんぐぶれいぶはーと・第二話(1)
魔法を行使するには幾つかの手順が必要となる。
ひとつ、魔法を心に刻む。
ふたつ、脳裏に魔法を思い浮かべる。
みっつ、魔法の呪文を唱える。
魔法特性があるなら特に難しいことはない、一度心に刻み、その魔法を使えるレベルに到達すれば後は自動的に行使できるようになる。
そして脳裏に思い浮かべる、これが俺にとって一番の難関だった。
魔法基盤の存在しない世界に生まれたがために魔法を理解することが容易ではなく、ジジィには才能がないと言われながらも本気で努力した。
そうせざるをえなかった、魔法が使えないとほんとに不便すぎて困るわけで、それはつくづく身に染みていたから朝から晩まで頑張った。
ようやくそれを体得したら後は簡単、魔法の呪文なんて覚えることがない、つーか、呪文というより魔法の名前を告げるだけで良いからだ。
まあ、ある意味呪文は安全装置で、ぶっちゃければ魔法を使うと認識さえできればそれすら必要ない。
だから厄介なもので、百兵をもって魔法使いに挑んでも下手をすると魔法を使えない戦士が全滅することになる。
今、魔法を公式に教わることができるのは王家直属の魔法技師とダーマ神殿ぐらいのものだ、庶民は魔法を刻むなんてことはできない。
ダーマ神殿……無料でその人に合った適正を調べ、さらにそのための肉体改造すら行ってくれる、なんと親切な機関だろうか。
やはりそんなことはなく内情はどす黒い、体面上は職の神を祭るが、実際は諸王連合の利権争いの末に生まれたものだ。
王家にとって王国にとって、兵隊はのどから手が出るほど欲しい、さらにそれが優秀であるならなお良い。
しかし、優秀すぎるのは困るわけで、いつの間にか優秀な兵士が王になっていたんてのは目も当てられない。
だから肉体改造を行う時、従属の印を刻む、それは真実を知るもの以外には悟られていないし、王が死ねと命じれば死すらも拒否することができない。
現実とはかくも恐ろしいものなり、古代叡智の結集であるダーマだが今だかつて勇者を輩出していないのが救いか……。
「いかんいかん、そろそろ晩飯を作らんとジジィのどやされる」
レベルの上がったジジィはあの後何度か自殺を試みたようだが今も元気で他にすることもなく魔法理論の構築に励んでいる。
いやー、あの頃は酷かったね、俺の前でジジィが自らに消滅の魔法をかけて粒子に還元されてんの。
しかもそれが復活すんだから勇者のパーティの呪いって恐ろしいは、人間が骨から内臓、筋肉に包まれていく様はほんと気持ち悪い。
もう二度と勘弁と思う俺が居るわけで、そんなジジィだが魔法そのものに対してはぞっこんラブなんで俺がほっとくとほんと一日中部屋に籠って何かしらやってるわけ。
まあパーティの一員であるから一か月ぐらい食わなくても良いわけだが、どうやらジジィは人間の一員だと思ってる節があるらしく人間っぽい生活から外れると俺に対してキレる。
俺だって人間だっつーの、と思うがそれ以前に勇者に組み込まれたからにはどうしようもない。
なんか最近吹っ切れた、というか、もう諦めた、もう人間駄目だは、俺人間じゃないもの、職業勇者じゃなくて種族勇者みたいな。
ジジィが言うには記憶の書き換えらしいが、もう良い、ここまで深層心理が侵されたらもう後戻りができない。
使命としては魔王討伐だけど、顧みれば特に脅威ってわけでもないからこのままダラダラと生活していても良い気がする。
何度か王軍の追手がちらほらと見えたけどあちら側としては不干渉らしいし。
殺せない相手なんだからしょうがない、殺せないことはないけど魔王級のバケモノでもなければ無理ってあたりが微妙。
獄中死した勇者も居なくはないが、あれは勇者としての密度が低かったんだろうなあと俺は思う。
どこぞのオルテガも下の世界で生きてるんだろうし、まあ、焦る必要もない。
このなんとも言えないバランスをいたずらにつつくのもどうかなと。
むしろバラモスを潰してその後に出てくるヤツが厄介すぎる、アイツは本気で世界を潰しにかかってくるだろうからな。
ここ二年の動向を考えると十中八九、バラモスと王家の連中の間では協定が結ばれてやがる。
あんだけ大げさに言ってやがったのに国は滅びる気配はないし、多少の人口の推移もあるが許容内だ。
逆に人口増加に歯止めをかけて良い感じに間引きしてんじゃねえかな。
農耕地は無限ではないし、上手くコントロールできるよ、この世界。
こう楽観的に考えるのはよくないが、ぶっちゃけこのまま百年経っても今まで通りだと思う。
312 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/09(火) 02:37:00 ID:3B9GOb7n0
「だが、俺のゲームクリアは脅威の除去なわけで、それまで俺はこのままなんだろうな」
真っ当な生活ができないのは素敵なまでに約束されてるし、結局エンディングは一つしか用意されていない。
これが現実が覚めてしまったら……俺は元の日本に帰ることを恐れているのか。
もはや俺?%
「だが、俺のゲームクリアは脅威の除去なわけで、それまで俺はこのままなんだろうな」
真っ当な生活ができないのは素敵なまでに約束されてるし、結局エンディングは一つしか用意されていない。
これが現実が覚めてしまったら……俺は元の日本に帰ることを恐れているのか。
もはや俺の現実はここで、いや、現代への望郷の思いが覚めたわけではない。
やり残したことはいくらでもあるが、ここに来てからあのまま時が流れているのなら俺の席はあそこにはない。
考えてみればなぜ俺がここにいるのか、これは長い夢なのかもしれない。
本当の俺はチューブに繋がれ、脳死状態……
「おーっとマズイ、またトリップしちまった、あー何すっかなー、調味料をどうにかして手に入れればレパートリーも増えるんだが」
(2)に続く
間が空いてしまった
上げてしまってもうしわけない
書き込み失敗これで二度目、何が原因だろうか
ここ二日で新作が二つも
うp乙です!!マジで面白い
久々に除いたら新作が!
楽しませていただきました乙です
>>308 R様乙です!
待ちに待った新作だぜコンチクショウ!!
自分もサミサミ同様タツミに惚れ込んでるッス!深みのあるキャラで最高ッス!
今後もご自分のペースで書き進めていってください。楽しみに待っております。
ほしゅ
移転ほしゅ
おおやっと書き込めた
ついでに>314
たぶん「1行に書ける最大文字数」の制限にひっかかってるんじゃね?
レス番〜IDまでの長さ(全角35文字ぐらい?)を目安に改行入れてみたらどうだろ
スレの作品、いつも楽しませて貰ってます。
行数32、1行文字数255、容量2KB、名前欄は(トリ含めて)全角24(半角48)文字分、
1行目が空欄の投稿を連続2回以上
移転後も同じかは分からないけど、上の条件に引っ掛かると投稿エラーになるよ。
何かの参考になれば。
ほしゅ
ほ
私は夢も希望もない人間です。
何の才能もないため毎日遅くまで仕事をしなければなりません。
つまらない仕事を繰り返すだけのつまらない毎日です。
でも生きていくためには働かねばなりません。
どこかに何もしないで暮らせるところはないものなのでしょうか。
目が覚めると私はトルネコと呼ばれる男になっていました。
トルネコにはきれいな奥さんと可愛い子供がいます。
彼は商売人として武器屋というところで雇われています。
仕事は単調ですがそれまでの私からすれば考えられないような恵まれた職場環境です。
でも贅沢を言えば結婚前の恋愛というものも経験してみたかったものです。
次に目が覚めると元の世界に戻っていました。
あれは一時の夢だったのでしょうか。
私はいつものように部屋の中で何もしない日々が待っています。
いえ今日は久しぶりに古い友人と会う約束がありました。
現実世界でも夢のように何かいい出会いがあればよいのですが。
友人と会いましたが特に何もないまま終わり家に戻り就寝しました。
目が覚めるとまたトルネコになっていました。
そこで仕事を捨てて放浪の旅に出ることになりました。
労働者として経営者からから搾取されるだけの生活に耐えられなかったのです。
旅先で妙な村に迷い込みました。そこでは一人の男が彼女ができたと喜んでいます。
目が覚めるとまた元の世界です。
どうやら眠るたびにあちらの世界とこちらの世界を行き来するみたいです。
ところでこの前会った友人から女の子を紹介してもらえるということになりました。
私にもようやく春がめぐってきたようです。
それともまだ夢を見ているのでしょうか。
狐を追い払い男が正気に戻ったことでエンドールへ向かう橋が修復されました。
ボンモールの王子様の手紙をエンドールのお姫様に届けることになりました。
私の活躍で二つの国は戦争を回避することができました。
この二人は結婚することになりそうです。
どうやら春を迎えるのは私だけではないようです。
紹介されたのは思っていたよりもずっと可愛い女の子でした。
夢の中で勇気を出して冒険を始めたようにちょっと勇気を出して告白しました。
なんとこの女の子とお付き合いすることになりました。
これから現実でも楽しい日々が始まることでしょう。
もう夢を見ることはないかもしれません。
夢は見ました。夢の中で店を持つことができました。これで私も経営者です。
国王にコネクションがあるため仕事も発注してもらえました。
そのうち店を大きくして従業員を雇えるようになりたいものです。
けれども経営者と言うのは労働者の敵です。私も敵が増えて行きそうです。
気をつけることにしましょう。敵はどこに潜んでいるか分かりません。
些細なことで彼女と喧嘩してしまいました。彼女は恐ろしい言葉を口にします。
何ともおぞましいことです。夢の世界で言うところの魔王のようなものです。
奴らは平和に生活する善良な市民の生活を脅かす敵なのです。滅ぶべきなのです。
彼女は邪な存在です。性根が腐っていると言っていいでしょう。
腐ったものを放置すると害にしかなりません。どうにかしなければいけません。
仕事は順調で王さまからの依頼品を納めかなりのお金を手に入れることができました。
このお金でトンネルを掘り新たな商売の可能性を広げることにしました。
そうそう久しぶりにレイクナバへ戻った時に破邪の剣というものを手に入れました。
この武器があれば文字通り邪なものを破ることができるのです。
私はどんな邪悪なものでもうち払える力を手に入れたのです。
彼女はもう二度と邪な考えを抱くことはないでしょう。
私はそばに横たわる彼女の顔を覗き込みます。
なぜか前に見たときよりも可愛いものではないように思えました。
でも恐ろしい言葉は言いません。
今度は腐らないようにちゃんと防腐処理をしておきましょう。
私の店は順調です。奥さんが商才を発揮してくれています。
それなのに私は天空の剣を探す旅に出ることになりました。
強力な敵と戦うために力を持った人とコネクションを作る必要もあります。
でもこれは私の意志ではないような気がします。まるで何かに導かれるようです。
私は危険を冒さず簡単な仕事をして細々とした生活を送りたかった。
魔王を倒せば平和を愛する人々から賞賛されます。
でもこの世界ではそうはいかないようです。
相手が人間ならば罰せられ刑務所に入れられてしまいます。
私はそこで単調な作業を繰り返しています。
この私と馬車の中にいるだけの私、はたしてどっちが夢だったのでしょうか。
>>326 うぉぉぉ!
キレイに纏まった短編お見事。
冒険の書の人っぽいな。
…でも怖かったよ。
彼女のセリフ
「みなのもの ひきあげじゃあ!」
荘子…
ほしゅ
保守
保守ついでに
心に残った名シーンをあげてみる
総長さんのじいさんメガンテは衝撃だった
割とギャグっぽいノリだったからシリアスに徹底した展開にビックリした
冒険の書シリーズで4のジン君と5のトモノリの関係がわかったとき
読んでて目がカッてなった
保守
hoshu
ほしゅ
◇ ミ ◇
◇◇ / ̄| ◇◇
◇◇ \ |__| ◇◇
彡 O(,,゚Д゚) /<捕手
( C `O
/彡#_|ミ\
</」_|凵_ゝ
`´ `´
337 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/04(土) 18:02:58 ID:Ph/Q5Izc0
たまにはあげてみる
338 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/07(火) 12:08:05 ID:Gk8gexYE0
職人さん達、最近こないな・・・
GEMAさんや総長さんや他の職人さん達の小説楽しみにしてます。
早く続きがみてぇ。
332みたいに感想とか書くのが燃料になるんじゃないかな?
自分は今「すりりんぐぶれいぶはーと」が楽しみで仕方ない。
急かすとかじゃなくて、 マイペースで続けてもらいたい。
いなかった。
そこには魔王を焼き尽くすような恐怖の怪物はいなかった。
願いを叶えてくれるような龍はいなかった。
俺ら全員を乗せて縦横無尽に飛び回るような巨大な蛾はいなかった。
いたのは………ひよこ?
きゃあああああ!!!!!かわいいいいいぃいいい!!!!!!
勇者が物凄い勢いで突撃していった。
気持ちいぃいい!!モフモフしてる!!!
終わった。
終了だ。完全に終了だ。
……これが…これが俺たちの旅の結末なのか…
生き埋めになりかけて…規格外のデカブツと死闘を繰り広げて…
世界中を駆けずり回ってついに復活させたラーミア…
クソが…
その場にガックリとうな垂れてしまった。
ああ これは
なんということでしょう
なんということでしょう
ラーミアは 先の働きで 力を使い果たしてしまったのです
このままでは あなた方を乗せて飛ぶなどということは できません なんということでしょう
……。その力はいつ回復するのかしら。
ねーちゃんがこれ以上ない的確な質問を入れる。
そしてその答えが仮に聞く前を絶望の崖に立っていたとするならそこから完全に突き落とすようなものだった。
50年
ああそうか50年かなるほどな。つまりあと50年ほど心身共に鍛えまくって
準備万端でさあいざ魔王をブチのめしにっておい…
俺はゆっくりとチビ助2匹に近寄ると軽くデコぴんをお見舞いしてやった。
ポテっと倒れるチビ助。
はああああぁぁああああ?????
50年!?50年も待てと!?50年待たなきゃ魔王と闘えないと????
ふざけんなボケッ!50年後なんてもうジジイじゃねーかよタイマン所じゃねーよアホか!!
おまえらは今すぐこのデカひよこを何とかしろ!魔王のとこ攻め込めるくらいの鳥にしろ!!!!
………。
………。
痛いです。
痛いです。
私たちの力では どうすることも できません。
どうする事もできません…か。ああ確かにこんなチビ助共にどうする事もできねーだろうよ。
もはや怒る気さえ失せてしまった。
復活の間隔が短か過ぎたようね…。
ねーちゃんがため息をつく。伝説の神の鳥はそれに見合うだけの充電期間が必要だってか。
クソ…これじゃまるで詐欺じゃねーか。まったくどこのどいつだこんな飛ぶ飛ぶ詐欺に俺をハメやがった奴は!
………。クソイケか。脳裏にあの人を小馬鹿にしたような笑みが浮かぶ。
……。そういやあいつ私にわからない事などは無いなんて事を偉そうに自慢していたよな。
…。なあねーちゃんと声をかける。ねーちゃんが私も今それを考えていた所よと返してきた。
さすがねーちゃんだ何もかもお見通しというわけか。それならば早速出発だ!!
いざゆかん!!!俺達をよくも騙し腐ってくれたイケをボコボコに!!!!………え?…違うとな?
………。
ねーちゃんの提案で賢者様(笑)に知恵を貸してもらう事になった。
認めねえ!俺こんな展開認めないぞ!だってオーブ集めろっつったのあいつじゃん!!!!
しかし怒りが再燃した所でどうしようもなるわけではなくしぶしぶ、本当にしぶしぶイケの元に向かう事になった。
もちろんこのヒヨコを連れて。
…おい、とっとと行くぞ役立たずが。こい。
なんだその目は。おまえみたいのが睨んでも怖くねーんだよ行くぞオラ
ぐいっと羽を引っ張ったその瞬間
イテッ…!痛いって!!いやつつくな痛いから!!やめろ!!!…ッイテ
敵意むき出しの俺に向かって攻撃してくるヒヨコ。
ちょっと!!!総長ちゃんがいじめるから怒ってるんだよ!!!!もう!!!
…いじめる?まあいい。勇者の言う事を聞くならそれでいい。もうどうでもいい。
外に出るとルーラを使いイケの元へ向かった。
目まぐるしく変わる景色共に見覚えのある塔の前にやってきた。
イケは当然来るのを察知していたかのように腕を組んでそこに立っていた。
糞ヒヨコに近づくと何か考え込んでいる。
…おい
イケ:…ああすまんちょっと考え事をな。
しかしこのような展開になるとはさすがに予測できなかったな。
そりゃそうだろ。で、どうすりゃいいんだと皆がイケに詰め寄る。
イケ:……。方法は無い事も無い。……。いやもうそれしかないだろう。
これは非常事態だ。今のラーミアには圧倒的に力が足りない。全てにおいてだ。
解決方法は二つ。力を蓄えるまで待つか、もしくは外部から力を与えてやるかだ。
外部から力を与える?おいおいそんな事ができるのかよ。くやしいがさすがはイケだ。
よしよしこれでなんとかなりそうだ。
イケ:ただし外部から力を与えると言っても簡単では無い。並大抵の魔力では無理だ。
……まさか今度はそのためのスーパーオーブとかそんなものを集めて来いとは言わないだろうな。
イケ:ならば方法は一つ。私がラーミアと融合しよう。
ねーちゃん:!!!????
融合…?話が見えてこねーぞどういう事だ?
イケ:私は厳密にはもう生命ではない。大精霊ルビスの力によって魔力を得た霊体のようなものだ。
大分消費されたとは言えまだこの体には莫大な力が蓄えられている。それをそのままラーミアに託す。
ねーちゃん:お父様!!それってつまり…
イケ:……そういう事だ。
ねーちゃん:………。
そういう事ってどういう事だ。つまりイケがこのヒヨコと合体してそしたらヒヨコは本来の力取り戻して
ってそういう事なのか?じゃあイケはどうなるんだ?
イケ:悲しむ事は無い。今お前たちが目にしている個としての私が消えるだけであって私自身が無に帰るわけではない。
ねーちゃん:でも…でも!!もう今までようにお話はできないの!?
お父様の作ったワインを片手に語り合ったり天気のいい日は私が焼いたクッキーでピクニックにいったり…
そんな…そんな…
ねーちゃんが号泣するとこなんて初めてだ。
………。
イケ:総長。この子の事は頼んだ。そして世界の事も。
勇者は確かに勇者だ。勇者の存在が力となり世界を救うだろう。
ただ…いまお前たちが立ち向かおうとしている敵は普通では無い。
先代勇者が行方不明になっている事といい今回のラーミアの件といい確実に
大精霊ルビスですら予測し得ない“何か”が起こっている。
そんな異常事態の中世界を救う救世主と呼ぶにはまだ幼い勇者やうちの娘が心を保って旅を続けられているのは
総長、おまえのおかげだ。礼を言う。
本当に長く自我を保った存在としてこの世界にいたが最後におまえのような弟子を持てて幸せだったぞ。
…………。
他に方法があるかも知れない!考えようよ!と言う勇者を止める。
男には例え自分を賭してでも進まなければ行けない道がる。イケにとってはこれがその男道なんだ。
それを止めるなんて無粋な事はできない。一人の男として認めた相手だから。
………気持ちは受け取った。
ただ一言そう伝えた。それに対してフッといつも通りのキザな笑みを浮かべる。
今度こそこれを持っていけ、とイケはいつかのあの分厚くてデカイ本を俺に渡してきた。
イケ:我が奥義は全てそこに残せり。汝らの力となり魔を滅ぼさん。
そう言うとイケはヒヨコの前に、
もはや誰も止めようとする者はいない。
勇者も、ねーちゃんも力強い目でイケを見つめている。
さよなら…お父様…。
ねーちゃんがそう呟いたと同時にイケとヒヨコが光に包まれた。
球体状の閃光が晴れた後、そこには目を奪われるような雄雄しく美しい一匹の巨鳥がいた。
……きれい…
勇者が手を触れる。俺ですら目を奪われたくらいだ。七色に光る羽。
戦いなんて忘れさせてしまうような色合いをしている。
ねーちゃんが鳥の背中の一部に一段と輝く金色の羽が生えている場所を見つける。
……まるでお父様の髪のよう…
そっと優しく何本か抜くとこっちへ持ってきた。
みんな…これをどこか体に身につけるというのはどうかしら?
ねーちゃんの提案。断る理由などあるはずがない。
賛成!私たちってほんといろんな人に助けられてここまでこれたよね…
その羽根つけよう!
こうして俺たちは各々自分の好きな場所に金色に輝く羽根をつけた。
なんだろう。気のせいだろうが心の底から力が沸いてくる。
…みんなに助けられて…か…。
まあ俺は当然最強なのだが確かにここに至るまでは色々世話になったな。
負けられねえ。負けるつもりなんてさらさらないが絶対に負けられねえな今回の喧嘩だけはよ。
さっそくラーミアの背中に乗り船の届いた場所まで戻る。
はええ。高けえ。伊達に伝説の鳥だけあってその飛ぶ姿は何者をも寄せ付けない雄大さがあった。
船に戻るとお馴染みの鬼浜会議だ。
イケの件もあってか驚く程にまともに話は進んだ。
相変わらずパンツと勇者はズレまくりだがまあそれなりに真剣なんだろうというのは伝わってくる。
ええ…では魔王の所にカチ込みかける前に最後にするべき事は
イケのくれた本をみんなで読む事と装備の最終チェックを入念にする事と
あとラーミア復活をチビ助共に報告する、この三つでいいんだな?
ちょっと待ってくだされ。
おっさんが口を開いた。
……。実はずっと考えていた事なんじゃが魔王と対峙するに当たりわしは明らかに足手まといですじゃ。
なのでラーミアで送ってくれないだろうか……ノアニールへ。
固まる空気。ノアニール…あの魔王に滅ぼされた村。じいさんの墓のある村。
わしなりに考えてました。いやはや戦闘においてはまったく戦力にならないもんで
何が自分なりに勇者殿の力になれる事…世界のためにできる事…
そこで閃いたんです。あの村を復興させようと!何年かかるかはわかりませんがね。
あの村でわしはわしなりの戦いを始めてみようかと思います。
…………。
あそこにはおっさんの家族の墓もある。
復興なんて言うがあの状態は生易しい覚悟ではできない。
もちろんおっさんは直で見た事ないだろうが馬鹿じゃないし俺たちの表情から十分過ぎるほど察してるはずだ。
強いな。本当に強い。人として。
総長ちゃん泣いてる…?
やべっ
泣いてねーよアホッ
ポコ
いったー叩かなくでもいーじゃんもう!
私は賛成だわ。
とねーちゃん。
あっしもでやんす!魔王を倒したらすぐにかけつけて手伝うでやんすよ!力仕事は得意なんで!
とパンツ。
ちょっと寂しそうな勇者も賛成のようだ。
決まりだな。
おし!!!!!!今日はもう遅い!!!!出発は明日だ!!!!
イケの所から持ってきたワインやらビールやら色々あるんで今日は宴会だ!!!!!
おっさん新たな門出とイケへの感謝を込めて乾杯するぞコラァ!!!!!!!!!
なんと6レスに収まるというすごいや60行規制!
てなわけで久しぶりに投下しました
いろいろプライベートでゴタついてなかなか投下できずすみません…
今後はもっとちょくちょく投下していきたいのでよろしくお願いします
うおおおおおおおおお!!!!!!!!!!
総長おおおおおおおおおおお!!!!!
総長さん、乙です
>>346 ラーミアひよこwwwwクソワラタwwwwww
でも、イケが…。・゚・(ノД`)・゚・。
相変わらずシナリオ喜怒哀楽うめー。乙でした。
待ってましたあああ!!!!!!!!!!
総長おおおおお!!!!!!!!
かっこいいいいいいいいいい!!!!!!!!!
351 :
338:2008/10/08(水) 13:55:19 ID:BACJ4ahT0
総長さん、キター
さすがですね!こんなすごい話をかけるなんてマジで尊敬します!
総長さんの話に出てくるキャラ全員惚れたw
イケorz・・・…
総長はつくづく面白いな
ほしゅ
○心の変化○
タケ「149・・・150・・・はあっ!!はあっ!!」
俺達は今ベラヌールの街に来ている。ムーンペタで水の紋章とラダトームで月の紋章を見つけた後、
航海しているうちに新たな町を発見した。
結果的にはサマルとムーンと行動を起す事になったのだが、やはりもょもとと俺の実力の差は明確である。
あいつらに大口を切った以上は隠れてでも今まで以上にトレーニングをして実力をつけなければならない。
自分自身の誇りと誓いを守るため・・・・・・
しかし最近どうも気分的に優れない。焦り、不安、恐怖・・・・・・・・
そして俺が消滅する可能性・・・・・・・・・・
俺にはこの不安を無くす為に闇雲に剣を振ることでまぎわらす事しか出来なかった。
翌朝、サマルが病気で寝込んでしまった。何でもハーゴンの呪縛とかが関係があるらしい。
嘘か真かはともかく現実問題、上薬草やムーンのべホイミ、キアリーでも効果がない。
ムーン「だめだわ・・・・全く効果がないのだわ。」
リア「そんな・・・・・」
もょ「サマル、よわきになるな。しっかりしろ!」
サマル「ぼ、ぼくに構わずみんなは先に行ってくれ・・・・・・」
こんな状況を見ていると流石に俺も何か助太刀したくなる。・・・・・・・まてよ、そういえば・・
タケ「みんな。一つ提案があるんやけどええか?」
リア「どうしたの?」
タケ「一旦ルプガナに行こうと思うねん。シャールさんなら解決の糸口がみつかるはずやで。」
ムーン「・・・・確かに呪文が効果がない以上は薬剤師であるシャールさんに何か情報を貰うのが一番なのだわ。」
タケ「それなら、俺ともょで行って来るわ。二人はサマルの看護を頼むで。」
ムーン「待ちなさいよ!何で貴方は後先を考えずにいつも直に行動をとるわけ!?」
タケ「時間があらへん。それに長引いたら最悪死に至る可能性もあるで。急がへんと・・・」
ムーン「焦らないで。あなた達には回復呪文が使えない。ここは私も一緒に行くわ。」
タケ「・・・・・・わかった。よろしく頼むわ。リアちゃん留守を頼むで。」
リア「うん。気をつけて行ってきてね・・・・・・・はぁ・・・・・」
もょ「ん?どうしたんだ。リアちゃん。」
リア「な、何でもないよ!そ、それじゃあ!」
その後ルプガナに寄り、シャールの話ではザハンの村に呪いを解く手がかりを知る人物がいるらしい。
しかしシャールが訪れたときにはその人物に会えなかったそうだ。名前はラゴスと言う。
シャールは一ヶ月近くラゴスを待ち続けたのだが漁に出ていたらしく
風の噂では嵐に巻き込まれ消息不明と言う話だ。
今度の目的地はザハンという村か。船で大体一週間近くかかるそうだ。
タケ「一週間か。かなりの長旅になりそうやな。」
もょ「ああ。みずとしょくりょうがたくさんひつようになるぞ。」
ムーン「しかしラゴスっていう人が消息不明だったら無駄足になると思うのだわ。」
タケ「無駄足と思っていても行くしかないやろ。今の俺らじゃ情報が少なすぎるしさ。」
ムーン「仕方がないわね…それなら行きましょ。」
一週間の航海が始まった。
昼はもょもと、夜は俺の担当で役割分担で決まったのだがムーンが全く眠らない。
やはりもょもとや俺を信用していないらしい。
特にあんな事言っちまった俺を信用しろって言うのも無理な話だが。
更に三日後の夜………
俺はもょもとを寝かせて航海しながら周りを警戒していた。
それよりもムーンが寝不足で相当ヤバイ。
ウトウトしながら警戒しているのだが目の焦点が合っていない。流石にもう限界だろう。
タケ「ムーン。いい加減に早く寝ろ。もう体の限界ちゃうのん?」
ムーン「う、うるさいわね……貴方には関係ないことでしょ!」
タケ「俺もこれ以上何にもいわへんけど無理すんなや…」
やれやれ、水と油の関係じゃお互いの意見が通じ合うわけがないか。
だが―――その時!!
魔物達が近づくいてきた。ガーゴイルとホークマン2体、更にパピラスが二匹…
ムーンは完全に絶不調。まともに戦えない。もょもとも昼間頑張ってくれた御陰で熟睡中。
ここは俺一人でやるしかない!
タケ「ムーン!ここは俺一人でやるわ。無理すんな!!」
ムーン「貴方だけじゃ悲惨な結果しかならないわ!」
タケ「ちっ…それなら足ひっぱるなよ!仮に死んでも文句はいわさへんで!」
ムーン「わ、分かっているわよ!!これでもくらいなさい!イオ!!」
しかしムーンの呪文はホークマンしか命中していない。パピラス達は速攻でムーンに襲い掛かる。
ムーンの判断能力が高いおかげか難なく回避する。−−−−−−が、やはりよろめいたため体制を崩した。
更にガーゴイルがムーンに突っ込んでくる!
ガキィン!!
タケ「ふん。おまいさんの相手は俺や。ムーン!大丈夫か?」
ムーン「うっとうしいわね!私の事を心配する必要なんか無いでしょ!」
タケ「あっそ。とりあえずはこいつらを蹴散らすで!」
この状況ではガーゴイルを倒してムーンのフォローを回るのが一番最善。
火炎斬りで始末しようとしたのだが、ガーゴイルはすぐに上空にへ逃げた。
その瞬間、虚を付かれた俺はホークマン達の同時斬撃―――――ツインスラッシュをまともに喰らったのだ。
パピラス達も更に俺に攻撃を仕掛けたのだが咄嗟に大防御をして難なく防げた。
ここで安心している場合じゃない。格下の敵に虚を付かれた自分自身に怒りが立ってきた。
タケ「いつまでもちょうしにのってんじゃねぇ!!」
まずは屈辱を与えたホークマン達から始末するために全力で向かい斬りつけた。
それが信じられない事だが特別な剣技を使った訳でもないにも拘らずホークマンをやっつけた。
もう一体のホークマンは畏縮して動く事ができずあっさりと倒した。
残るはガーゴイルとパピラス二体のみ。
ムーンがパピラス達と応戦しているがパピラス達はヒットアンドウェイで確実にムーンにダメージを与えている。
ガーゴイルもムーンに攻撃を仕掛けに行こうとしたのだが俺に背中を斬りつけられた。
確かに戦いでは弱者から攻めるのは正しいのだが、周りの状況判断をしなければあっさり背をとられる訳だ。
小ざかしい罠を張ったツケとしてガーゴイルを火葬処分にした。
ムーンは立っているのがやっとだった。呪文は当たらない。パピラス達の攻撃はほぼ確実に喰らう。
おまけに睡眠不足で戦いに集中するのは相当難しい。
しかも現状で唱えられる呪文は限られている。彼女はそれでも戦わなければいけない状況なのだ。
もょもとや俺に負けたくないという意地の一方で一人で立ち向かっている。
ムーン「なぜ全く呪文が命中しないの・・・・?あんなやつ(タケ)に比べたら私の方が優れているのに!」
ムーンは焦っていた。
自分が負けるはずがない。
あんなやつの決闘から更に実力をつけるため、ほぼ毎晩夜遅くまで呪文の勉強したり練習もした。
それにも係わらず追い込まれている。
嘘だ!嘘だ!嘘だ!私がこんな所でつまずいている場合じゃないのに!!
うろたえている時にパピラス達が攻撃を仕掛けてくる体制になった。
その時あんなやつが私の前に立ちパピラス達の攻撃を捌き、更に1体に対して反撃した。
あんなやつが更に斬り付けられたパピラスを倒しもう一体のパピラスとの戦闘をしているのだが私に言ってきた。
『お前の呪文が必要や。俺にバギを唱えてくれ。疾風斬りで一気にケリをつけるで!』
私はあんなやつの言う通りにした。その方が楽だったから。正直立っているのが限界だったのだもの。
結果的に一瞬にしてパピラスを倒し敵を全てやっつける事ができた。
しかし私は疲労の限界で倒れこんでしまった。その後の事は覚えていない――――――
―――――3時間後
タケ「よう、ムーン。起きたか?」
ムーン「え、ええ・・・・・・」
タケ「しんどそうやったから簡単なスープ作ったからもって来たで。味は保障できんがな。熱いからふーふーするんやで。」
ムーン「こんなものいらないわよ!!」
ガシャン!!
タケ「あーっ!お前何すんねん!」
ムーン「誰もスープなんか頼んでいないのだわ!」
タケ「ムーン・・・・」
パァン!!
ムーン「い、いきなり何するのよ!!誰にも殴られたことないのに!」
タケ「食べ物がもったいない!」
ムーン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」
タケ「しかもお前はロクに飯とってないやろが。飯を食べなきゃ体調も悪いやろ。スープが一番喉に通りやすいんよ。もう一度持ってくるわ。待ってろ。」
ムーン「・・・・・・・・・・ひっく・・・・ひっく・・・・うぇぇぇぇぇん・・・・・」
タケ「お、おい!どないしたんや!?大丈夫か?」
ムーン「だ・・・・だって・・・・何でそんなに優しくしてくれるの・・・・・?
タケに対して冷たくしたのに・・・・・・ひっく・・・・・・・・・」
タケ「んー・・・・・あんまり気にすんな。とりあえずスープ飲んで落ち着け。な!」
ムーン「うん・・・・・・・」
この変化には流石に俺もびっくりした。とりあえず早くスープを持っていく事にするか。
タケ「持ってきたどー。自分で飲めるか?」
ムーン「(ぶんぶん)」
タケ「そっか。もう少し後にするか?」
ムーン「ううん。あ、あのね・・・タケ。」
タケ「どしたん?」
ムーン「し、しんどいから飲ませて欲しい。」
タケ「ん?ああ。わ、わかった。はい、ムーン。あーん・・・・・味はどうや?」
ムーン「・・・・・おいしい。」
タケ「そ、そりゃー良かったわ。男冥利につくで。」
ムーン「タケ、聞きたい事があるの。」
タケ「どうしたん?」
ムーン「その・・・・上手くは言えないけど、どうして自己犠牲をしてまで私やもょもと達を助けてくれたの?」
タケ「あんまり答えたくねいけど・・・・答えんとアカン?」
ムーン「(コクリ)」
タケ「やっぱそんなん言えへんわ。かなり私情が入ってるしさ。」
ムーン「だめ・・・・・?」
ムーンが悲しそうな目で見つめてきた。流石にノーとは言えない雰囲気だ。
タケ「しゃ、しゃーないのう。今から話す事は絶対に誰にも話さず秘密にしてくれるんならええで。」
ムーン「本当!?」
タケ「ああ。じゃあ話すで。結論から言うともょ、いやもょもとは俺にとって可愛い弟なんよ。」
ムーン「ど、どういう事なの?」
タケ「俺がチビの時やけどさ、元の世界にいるかーちゃんが妊娠したんよ。
その時ごっつぅ喜んだのを覚えているわ。僕がお兄ちゃんになるんだ!って。
けどその喜びも4ヵ月後には辛い現実になんたんや。」
ムーン「辛い現実って・・・・まさか?」
タケ「そう、流産したんよ。かーちゃんは何とか生き延びたけど妊娠した赤ちゃんは死んじまった・・・」
ムーン「そんな・・・・・・・・・・・・・・・」
タケ「流石にその現実をガキの頃は受け入れるのが出来なかった。ある時学校の先生が言ってくれたんよ。
『くよくよしてはだめ。あなたはお兄ちゃんだからしっかりしないと。
天国の赤ちゃんは死んだんじゃなくあなたをの心と共に生きているの。だから悲しむことはないよ。』ってさ。」
ムーン「・・・・・・・・・・・・・・・」
タケ「そしてこの世界に来たときもょもとをみて思ったんよ。
もし赤ちゃんが無事生まれて成長してならもょもとみたいになっていたんだろうな。って思ったりしてさ。
例え血が繋がって無くても可愛い弟がピンチの時に守るのが兄貴の責務と決めた訳や。」
ムーン「・・・・・・・・ご、ごめんなさい。辛い事言わせて・・・」
タケ「ううん。気にせんでえーよ。伊達に25年は生きとらん。」
ムーン「うそ!?本当にその年齢なの信じられない。おっさんのくせに。」
タケ「うるせー!!やかましいわ!アホ!!誰がおっさんや!」
ムーン「ふふっ……ムキになるのはだめよ☆オ・ジ・サ・ン。」
険悪なムードが確実に和やかな雰囲気に変わりつつあった。
タケ「しかし話は変わるけどムーン。お前に謝らないとあかんのよ。ほら、竜王の城でさ・・・・」
ムーン「あの事はいいの・・・・事実私達が悪かったんだから。タケが謝る事はないわ。」
タケ「それは違うで。もょもとを守るためとは言え侮辱したのは事実やから。ホンマに悪かった!ごめん!」
ムーン「済んだ話だから気にしなくていいわ。それにしても、もょもとが羨ましい・・・・・・」
タケ「何でよ?」
ムーン「もょもとには頼りになる立派なお兄さんがついてるし、リアには何だかんだ言ってサマルがいる。
私にはお父様やお母様がいないから一人だもん・・・・・・」
タケ「心配せんでえーよ。ムーン。お前は一人やない。」
ムーン「えっ!?」
タケ「今日からから俺がムーンの兄貴代わりになるわ。今更一人妹が増えても別にかまへんし。」
ムーン「な、何言っているのよ!」
タケ「よーし、お兄ちゃん可愛いお穣ちゃんの頭なでなでしちゃうぞー!」
ムーン「バ、バカぁ!おっさんのくせに!可愛いお穣ちゃんって言うのは10年早いわよ!(///////)」
タケ「アッハッハ・・・・・・・おおきにな。ムーン。」
ムーン「どうして?」
タケ「最近夜寝るのが怖かったんよ。もしかしたら俺は明日死んでいるかもしれないって思うんよ。」
ムーン「そうなの・・・・・・やはり魂の消滅すること?」
タケ「ああ。翌朝の太陽を見た時は安心するんやけど夜を迎えるのが不安になるんよ。
寝たら二度と起きれない感じがしてさ。寝ない為にもここ最近ずっと闇雲に剣を振っていたんや。
けど今夜、ムーンと理解しあえて良かったで。そんな不安が一気に吹っ飛んだわ。」
ムーン「それは良かったわ。早く紋章を集めて魂の消滅をさせないようにしなくっちゃ。」
話し込んでいる内に夜明けを迎えた。その日の日の出はとても美しく黄金色の光を照らしていた。
その光に照らされているムーンは見とれるくらい美しかった。
ムーン「綺麗な太陽ね・・・・・・」
タケ「ああ・・・・やはり生きてるって感じがするで!」
ムーン「本当にそうね。」
タケ「そうそう。ムーン、今思ったんやけど、今の話しかたの方が好印象あるで!」
ムーン「ええっ!・・・・あ、しまったなのだわ!」
タケ「そんなことあらへんで。自然体が一番や。」
ムーン「今後からそうするね!!それにしても眠くなっちゃった・・・・・」
タケ「全く寝てへんから無理もないわな。ゆっくり休みや。」
ムーン「うん。今日はありがとう。タケ。じゃあ先に休むね。」
もょもと&タケ
Lv.19 Level up!!
HP: 112/141
MP: 6/ 12
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜 錆びた剣
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:隼斬り・魔人斬り・ドラゴン斬り
タケ専用:かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ
火炎斬り
更新が相当遅くなってすみません。
今後もよろしくお願い致します。
乙です
仲直りできてよかったよかった
おかえり!待ってたよ!
これからも頑張ってくれ!
懐かしい作者が降臨か。
待ってたぜ!!
べ、別にレッドマンなんか戻って来なくても良かったんだからね!
遅すぎじゃない…バカぁ…
保守しておく
総長!レッドマン!投下乙でした!
ゆっくりでいいんでまたお願いします。
保守
保守〜
ほしゅ
377 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/31(金) 13:06:44 ID:DzMjhu6o0
あげ
おちるぅ
保守
ほしゅ
ぬるぽ
がっ
ぬるぽぬるぽ
蛾!牙!
┌ ┐
____________________________.| | ミ
___________________________ |._____
久杉 `i |,.-ァニ=`=ー-、.,_
.| |>'´ / . `〉
・・・・・・・・・・・・・・・ . | | /、/i / / i
・・・・・・・・・・・・・・・ . | |イ.ォ-!、ハ /_i/'! 〉
・・・・・・・・・・・・・・・ . | |'〈ヒ_ノ`レ',!、i./ /
・・・・・・・・・・・・・・・ . | |" 〈ンi/イ
・・・・・・・・・・・・・・・ . | |ヽ. - ,"イ/ 職人さん達はまだでありますか?
・・・・・・・・・・・・・・・ . | |/_7`T、´ヽ!/
・・・・・・・・・・・・・・・ . | r-ヽ. //i
・・・・・・・・・・・・・・・ . | !、 `| lヽ. !
・・・・・・・・・・・・・・・ . | |:`´| | Y
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・・・・・・・・・・・・・・・ . | |:// /
_____________________________! |'ァ-'´
_____________________________. |i
./::::/ :::::::::::::| | ',
/::::/ :::::::| |ハ
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。今回は久々にリアルサイドだけど、どんな話になってたっけ?」
アルス「前回はひたすら電話でしゃべってただけだからな。その前は、玄関に猫の死骸が置かれてて、
お前の伯母さんに出て行け!とか言われて、そこにショウが来て……」
タツミ「なんかそっちもゴタゴタしてるねー」
アルス「もう何度も言ってるが、俺、平穏な生活がしたくて現実に来たのにorz」
タツミ「絶対に無理だと思うよ。それではサンクスコールですっ」
アルス「
>>309様、お久しぶりっす! 俺もロダムには世話になったな。
後ろで見守っててくれると安心感があるっつーか、保護者みたいな感じで」
タツミ「僕もロダムは内心頼りにしてる。ちょっとジジ臭すぎないかと思う時もあるけどw
そ し て
>>317様!
最高ですか!? 僕が!? そんな風に言ってもらえるなんてスッッッッゴイ嬉しいですぅ♪♪」
アルス「はいはい良かったね。あんまり有頂天になんなよ」
タツミ「参ったな〜照れるな〜なんかサービスしないとな〜どうしよ〜……脱ぐ?」
アルス「キモイだけだ!っつうか映像出ねーし!って聞けよ!」
タツミ「いや〜ホント主人公冥利に尽きるっていうかも〜〜〜♪」
アルス「ダメだこりゃ。勝手に始めるか」
アルス「それでは本編スタートです」
【Stage.18 SAKURA MEMORY -Part2-】
リアルサイド [1]〜[5]
Prev
>>293-307 (Real-Side Prev 前スレ
>>337-368)
----------------- Real-Side -----------------
繋がらない。
何度リダイアルしても、タツミは一向に携帯に出る気配はない。
(とうとう面倒になったのかね……)
テレビ画面には、青い海原と船だけがドットで映し出されていた。船の名前は、俺が最
初に旅をした時と同じ「リリーシェ号」だと前に聞いたことがある。白百合の名を冠する
船はタツミの旅にこそふさわしい気もするが、それにしても、時々表示される会話ウィン
ドウの中身はとてつもなく変だ。
※「いいじゃないか 少しくらい うわきしても」
はい
>いいえ
※「せめて チューくらい いいだろ?」
はい
>いいえッ
※「そうは言っても 君の年なら たまってたりしない?」
はい
>い い え!!!
※「どんな プレイでも 応じるけど」
はい
> ……………………イイエ
「なに迷ってんだお前は」
どうやらタツミ君ってば、レイおねーさまにモーションかけられまくってるらしい。さっ
きからずっとこんな調子だ。
※「私だって女だ 恋のひとつやふたつは したいじゃないか」
という決定的なセリフがあったお陰で、レイが実は女だったということがわかって俺も
ホッとしてはいるんだが(あいつ女だったのか)、しっかし勇者同士でなんつー会話をし
とるんじゃ。
「とりあえず、命に関わるような大事にはなってないみたいだな……」
試験で合格をレイに譲った時は妙に胸騒ぎがしたんだが、なにごとも無く済んだみたい
だ。まあ試験は所詮ただの試験だし、落ちたところで死にやしないが。
――実際はアリアハン国王によってあやうく腕を切り落とされるところでした、という
話を俺が聞いたのは、ずっと後になってからだ。
もしこの時、俺がそのことを知っていたら……どうしたんだろう。
俺が現実に来てから、今日で3日目を迎える。
起きてからとりあえず顔を洗って、それからずっと、俺はベッドに寝っ転がったままぼ
んやりテレビを見つめていた。携帯を片手に、延々とリダイアル操作を繰り返している。
タツミの方は大きな戦力となるレイを仲間に引き入れ、なんだかんだで順調に旅を進め
ている。このまま放っておけばまさかの強制送還もアリ。以前ショウに忠告されたように、
俺もヤツをうまく誘導して向こうに永住させるよう仕向けるとか、なんらかの手を打たな
きゃいけないんだろうが……。
こうも予想外のゴタゴタが続くと、あまり動く気になれなかった。まったく、俺はなに
をやってんだか。
なんとはなしに部屋の中を見回した。向こうにある俺の部屋と比べると物の数も色彩も
格段に豊かではあるが、面白みがない感じがする。オーディオ機器だとかマンガや雑誌と
か、そういった道楽に関するものが、この部屋にはまるで見あたらないのだ。
ゲームもドラクエ3だけ。他のソフトは一本もなかった。ユリコやカズヒロは、タツミ
はあまり外出しないと言ってたが、アイツは普段どういう休日を過ごしているんだろう。
「エロ本くらいねえのかよ」
起き上がってベッドの下をのぞき込んでみても期待するようなものはなにもなく、片手
に収まるくらいの透明な空のビンがひとつ無造作に転がっているだけだった。拾ったビン
を机の上に置く。今までは「移行が完了するまでは」と遠慮していたが、あいつの過去に
通じるものがなにかないかと、机の引き出しを開けてみた。筆記用具やファイルの類など
が整然と収まっているだけで、見事になんにもない。日記でもあれば助かるんだがな。
プルルルルルル! プルルルルルル!
「お、タツミか?」
てっきりヤツが折り返しかけてきたと思っだんだが、相手はユリコだった。
『もしもし、アル君? あれから身体の具合はどう』
心配そうな声だ。考えてみれば、謎のサイコ野郎に襲われて意識不明になったのって、
つい昨日の話だもんな。しかもユリコパパとも真剣勝負しちゃってるし、彼女が不安に思
うのも当然か。
「大丈夫だよ。傷もほとんど治りかけてるし」
そう答えつつ、サイコさんに斬られた左手の甲に目をやると、うっすらと赤く線が見え
る程度にまで回復していた。俺としては普通のことなんだが、
『本当に一晩で回復しちゃったの!? ゲームの人ってすごいのね』
ユリコは心底驚いている様子だ。現実ではありえないらしい。
それなら、と彼女の声が明るくなった。
『昨日頼まれてたやつ、いくつかいいの出てきたんだけど。良かったらついでに、あたし
とデートしない?』
◇
公園で待ち合わせた俺たちは、ユリコの案内で街に行くことになった。「街」とは言っ
ても、向こうでルーラ座標に登録されてるような大きな単位のことじゃなく、おもに駅前
や繁華街といった中心部を指す言葉だそうだ。
そして「地下鉄」初体験。
昨日乗った「電車」と似たようなものだが、なんだか落ち着かない。真っ暗な中を高速
ですっ飛んで行く体感だけがあって、まるで明かりの無いダンジョンをなすすべも無く延々
と滑る床に運ばれているような、妙な気分だ。
次の駅で降り、地上に出たところで、今度は正面の大きなビルに目が釘付けになった。
高さだけなら神竜の塔の方が遥かにあるが、全面に鮮やかに空が映り込んでいるのだ。
「ああ、あれね。イグリス・グループの本社ビルよ。ミラーガラスっていうのを使ってて、
外から中が見えないようになってるの」
「あれじゃ鳥が間違ってぶつかったりしないのか?」
「よくあるわ。だからってわけじゃないけど、あたしはあんまり好きじゃないわね」
ふと、ラーミアが激突してしまうシーンが頭に浮かんだ。大量のガラス片とともに墜落
していく奇跡の鳥を、俺はただ見ているしかなくて……。
「アル君?」
ハッとして首を振った。つい後ろ向きな想像をしてしまうのは、自分が異端者という負
い目があるからだろうか。
二人とも朝メシはまだだったんで、手近なファーストフード店で食べながら話すことに
した。席に着き、オーダーが出来るまでの間に、ユリコはいくつかの書類を狭いテーブル
に広げた。
本題に入りますか。
「アル君が帰ったあと、お父さんの会社の人に聞いてみたら、うちの系列のホテルで何件
かバイトさん募集してるって。もっと探せば他にも、住み込みOKの働き口は出てくると
思う。ただ、18歳以上じゃないと保護者の承認が必要になるから、年齢はごまかないとい
けないけど」
「ありがとう、助かるよ」
昨日、帰りがけにユリコに頼んでおいたことだ。こっちじゃ経歴に『勇者』なんて書け
ないし、簡単なアルバイトで現実に慣れてから、本格的に生活を考えるのが妥当だろう。
最初はタツミの名前で大学まで行くつもりでいたが、ヤツの家庭の事情がはっきりした今
は、そこまで甘える気にはなれない。
「この3食付きっていいな。ああでも寮費でけっこう天引きされるんだ。となると、こっ
ちの水光熱費とメシ代だけ徴収って方が節約できていいのか……」
バイトの募集要項に目を通していると、向かい側が妙に静かになった。ユリコが、なん
だか曖昧な表情で俺を見ている。
「……もしかしてアル君、自分の世界に帰りたくないの?」
「まさか。帰れるなら帰りたいさ」
即答する。でも心の中ではNOだ。俺はあの世界に帰るわけにいかない。
「万が一の話だよ。昨日も話したけど、タツミが戻ってきたあとも、いったん実体化して
しまった俺が、必ず元の状態に戻れる保証はないし。一応の準備はしときたいんだ」
タツミが戻ってきたあと、か。俺もよく言うな。
だが、もしヤツを犠牲にすることなく俺がこの世界にとどまれる方法があるなら、その
方がいいけど……。
彼女はまだ納得しかねる様子だったが、そこにいいタイミングで店員がオーダーを運ん
できた。
「食べようぜ。こっちってなに食ってもうまいもんな、感心するよ」
これは嘘でもなく本当に思う。東西南北あらゆる食材が集まってる国ならではの、深み
のある味わいというのか。俺が頼んだ照り焼きポークバーガーも、いったい何種類の調味
料が使われてるのか見当もつかない。
ユリコは自分が頼んだフィレオフィッシュを見つめて首を傾げた。
「そうなの? アル君の世界の方が、天然物で新鮮そうで、おいしそうな気がするけど」
「宮廷料理ならともかく、庶民のメシはシンプルだよ。乾パンとたっぷり塩のきいた薄切
りベーコンだけってのが3食とか。干すか塩漬けにした保存食がほとんどだし」
「そっか、冷蔵庫なんて無いもんね。モンスターも食料になるの?」
「食える種類はほんの一握りだからなぁ。ゾンビ系は言わずもがな、毒攻撃を使わないや
つでも体内に毒素を持ってるのが多いし」
食料調達は冒険者にとっても頭を悩ませる問題だ。戦闘なんてこなせば嫌でも腕は上がっ
ていくが、どんな熟達者でも食えなきゃ死ぬ。
「俺も旅の間に食料が底を付いて、仕方なくガルーダって鳥型のモンスター食ったら腹壊
してエライ目に遭ったよ。あ、食事中に失礼」
「いいえ。それにしても――」
ユリコはハンバーガーの包みを片手に、ふう〜と溜息をついた。
「アル君って本当に普通なのねぇ」
っう。そんなしみじみ言わなくたっていいじゃないか。
「どうせ俺は勇者様らしくねえ小物っすよ」
俺が頬を膨らませると、ユリコは慌てたように手を振った。
「そ、そうじゃなくて! 逆よ、感動してたの」
「カンドー? なにが」
「だって、たった数人で世界を救っちゃうんだから、勇者ってすごい人なんだろうなって
思ってたんだもん。世界一の学者みたいに頭が良くて、演説したら大統領みたいにカリス
マ入ってて、それで、一国の軍隊なんか軽くひとひねりで、しかも一目見たら卒倒するく
らい超絶美形で――とか」
「……いまどきのゲームってそんな超人が主役なのか? 俺なら興醒めするな」
「違うけどっ、なんかそういうポテンシャル? 秘めたる力みたいな? そういうのを最
初から持ってる人を想像してたの。だから……」
普通の人が一生懸命に努力して『勇者』になったんだってわかって、感動したの。
一息に言って、彼女は照れたように笑った。
「………」
「やだ、ちょっと黙らないでよアル君。ごめんってば、変なこと言って」
「あ、いや……」
なんか、びっくりした。
初めてかもしれない。こんな風に、俺自身の努力をストレートに認められたのは。
あっちじゃいつも、「あの」オルテガの息子ならこれくらい出来て当然って目で見られ
てたから。何事も人並み以上で当たり前、ちょっとでもしくじれば、まるで俺がとんでも
ない怠け者かと言わんばかりに責められた。身内や仲間は、俺が寝ないで努力しているこ
とを知っていたから決して責めたりはしなかったが、それでも俺は特別な人間だと心から
信じ切っていて。
「あなたはあの人の息子なんですもの。絶対にできるわ!」
「アルス様なら大丈夫です。オルテガ様のご子息なのですよ? 誰にも負けませんわ!」
……結構、プレッシャーだったんだよな。
「普通」だよ、俺は。
どこにでもいる、ただのガキだよ。
ずっと誰かに言いたかった。その上で頑張ってるんだってわかって欲しかった。
それがまさか、こんな別世界の人間にあっさり言われるなんて――。
「あ……あのさ、ユリちゃん」
「ん、なにアル君?」
「もしも、だけどさ。もしも、タツミが……」
プルルルルルル! プルルルルルル!
「タツミから!?」
途端に彼女の空気が一変した。キラキラと期待に満ちた目がジッと俺の手元に注がれる。
携帯の表示は「SHO」。そういえば、わざわざ俺の携帯に登録してくれたっけ。
「ごめん、俺の知り合いだ」
「あ、そうなの……」
見るからに落胆する彼女に、俺の中に生じた妙な気分も、急速に冷えていく。
所詮、他人。
深入りしてはいけない相手だ。
「悪いユリちゃん、ちょっと待っててくれな」
いったん席を離れて着信する。
『良かった! 出なかったらどうしようかと思いましたよ』
いつも落ち着いた印象のあるショウにしては、妙に焦った口調だった。
『今どこにいます?』
「中心街の、なんつったかな、駅前の店でハンバーガー食ってるが……」
切迫するような問いかけに、やや戸惑いつつ答える。
『ああ、わかりました』
そこで気が緩んだのかもしれない。本来なら言わないつもりだったのだろうが……ショ
ウは口を滑らせた。
『昨日ゲームサイドの男に襲われたでしょう。気をつけてください、そいつがまたあなた
を狙う可能性があるんです』
本日はひとまずここまでです。
ここからしばらくはリアルサイドにお付き合い下さい。
せっかく行数規制が緩んだので1レスを多めにしてみました。
投下回数が少なくて楽ですね。
職人サン
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!!
グッッジョッッーーーブ!!!!
待ってたよー・゚・(つД`)・゚・
今回も面白かったよ!
久々のリアルサイド、この先どうなるか気になります。
更新待ってました!!!
今回も夢中になって読みました。
アルスのレイについての誤解が解けてよかったよ。
何よりずっと普通の人として努力を認めてもらいたかったアルスの
嬉しい気持ちが伝わってきて泣きそうになりました。・゚・(つД`)・゚・
今後のリアルサイド、楽しみにしています!
職人さんGJ
我々は待っていたぞ
ほしゅ
久しぶりに覗いてみたら更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
リアルサイドオモスレ〜!
サスペンスの予感!イイ!
hosyu
職人さんたちお疲れさまっす。
総長×タケ×タツミのクロスオーバーもありじゃね?
と妄想してみる。
それなんてカオスww
タカハシや真理奈ちゃんとか冒険の書シリーズの主人公たちとか、
みんな一同に会したらすごいことになりそうだw
錬金術師ユーリルの続きをずっと楽しみに待っている俺が歩いて来ました。
おひさしぶりです。
まとめも出来ず投稿も出来ず、このいくつかの月日を過ごしてしまいました。
生存報告だけ、とりあえずさせていただきます。
>>404 お元気だったようで何よりです。
レス番が「404」でなぜか心配なのはわざとですかw
いつぞやの「作り合わされし世界」は大変楽しませていただきました。
将来また、このようなイベントがあると良いですね。
投稿&まとめについては、まあ、マターリいきましょう。
それがこのスレの良いところだと思っていますので。
もうじき、このアリアハンという町の宿屋で目覚めてから半年が経つ。
約半年前に俺は宿屋のベッドで目覚め、気が付けば名前以外の全ての記憶を失っていた。
なぜここにいる?俺は誰だ?家族は?家は?…………。
…しかし、この町で俺の存在を知っている者など誰一人いなかった。
記憶が無くなる前は俺は何をしていたんだ?
知り合いも無くひっそりと暮らしていたのだろうか?それともそうか、ここの町の人間では無いのか?
しばらくしてこの町から出ようとしたが、なんとこの世界はモンスターという人を襲う化け物共が住む世界だということを知る。
記憶は無いが、これだけはなんとなく感覚で分かった。何かがおかしいと。絶対に違うと。
記憶の無くなる前の俺はこんなモンスターが巣喰う世界ではない平和な世界で暮らしていたはずだと―。
それからの俺は、まずこの世界で暮らすためにともかく金が必要であることは確かだった。
格安の宿屋でさえ2G。しかし俺は1Gさえ持っていなかった。
唯一持っていたのがこん棒と着ていた布の服一枚…。
何かバイトでも探そうと思ったのだが手っ取り早く金を稼ぐ方法があった。
それはこの世界に巣喰うモンスターをぶっ殺すこと。
殺せば金が手に入った。何故だか分からないがこの世界の常識でありルールだった。
他には何も持っていないのにこん棒だけを持っていた理由がここにあった。
他にも金を稼ぐ方法はあるのだろうが俺はこの世界のルールに従い、モンスターと戦った。
危険を伴ったが勝てば金が入る。実に分かりやすい。結果を出せばすぐに金が手に入るシステム。
俺はのめり込む様にくる日もくる日もモンスターを退治し続けた。
戦って得た金で宿で休み、食料や新しい武器等を買い、酒場で酒を飲む。
そんな生活を続けて気が付けば半年が経ち、この町で一番の戦士として名が知れ渡っていた。
お初です。これからチマチマ書いていこうと思います。
よろしくお願いします。
新しい書き手さんいらっしゃい。
楽しみにしています。
おお。続き、楽しみにしてますね〜^^
>>406の続き
その日も俺は朝から晩までアリアハン周辺のモンスターを退治した後、ルイーダの酒場で酒を飲んでいた。
その酒場はこの町一番の賑わいを見せる酒場で、まるでこの世にモンスターなど存在していないかのような賑やかさになる。
皆が笑い、楽しい話し声がいつまでも続く酒場。俺はその雰囲気がとても好きだった。
ちなみにこの国では飲酒は18才から出来るが、俺は自分の歳すら記憶が無い。
ただ、酒は旨いということを知っていたので最低限の年齢には達しているんだと判断している。
でもまぁそんなことはどうでもよく、記憶諸々いずれ勝手に思い出すだろうと楽観的に考えていた。
ところでこの酒場。
いつもは満席状態で座る席を探すのが大変なほどの盛況ぶりなのだが、その日は運がよくカウンター席に座ることが出来た。
俺はこの酒場が好きな理由に雰囲気以外にも理由があった。
それはこの店の看板娘、ルイーダ姉さんに他ならない。
明るく優しくて面倒見の良い彼女をお客は愛嬌を込めて、「姉さん」「お姉ちゃん」などと呼んでいる。
あまりに知識と経験の豊富さから、見た目よりずっと年上なのかも知れないが年齢は22才ということになっている。
この酒場に来初めの頃俺は一人で飲んでいたのだが、彼女がいろいろと話しかけてくれたおかげで毎日来るようになった。
俺はそのルイーダ姉さんの相手にしてもらえるカウンター席に座れたので、今日は遅くまでいるつもりでいた。
しかし、そんな俺のひそかな想いや楽しみがぶち壊されることになる。
そいつは…。その女はあまりに突然やってきたのだった。
レスありがとう。
日本語でおk的なところがあるけどこれから勉強しながらやっていきたいと思います。
おお、謎の女登場。期待を持たせる引き方。
wktkしながら待ってます^^
>>411 乙
文章うまいじゃん
読みやすいし、全然おk
続き楽しみにしてるんだぜ
いつも思うけど、ドラクエ世界ってどれくらいの広さなんだろう?
国から国まで何日かかるか分からん
やつら山とか平気で越えていくからな
ドラクエ3だと、ポルトガからロマリアまで一晩くらいじゃなかったか?
>>416 ポルトガルからローマまで歩いて一晩か・・・
>>410の続き
カウンター席に腰掛けた俺にルイーダ姉さんはすぐに気付き、話しかけてくれた。
「あらお帰り!ソラ君。今日も無事に帰ってきたのね、よかったよかった。」
日中、俺がモンスター退治へ行っていることを知っているルイーダ姉さんは会う度に必ず「お帰り」と言ってくれる。
何気ないこの言葉だが、帰る場所の無い俺にとっては存在理由そのものでもあるくらい大きなものだった。
ちなみにソラと言うのは俺の名前で俺が唯一覚えていた記憶だ。
「そんな心配しなくてももうこの周辺のモンスターなんかに傷一つ負わないですってば。」
心配性のルイーダ姉さんは、いつも俺がたった一人でモンスター退治をしていることを心配してくれた。
この酒場にいる仲間を連れていってと何度せがまれたことか。
実の姉の様に接してくれるルイーダ姉さんに、俺はこのまま記憶が戻らなくても別に構わないとさえ思わせてくれた。
そんな俺の淡い想いをいつしか言葉にして伝えたい。
そう考えていた時だった。
ガタガタンッ!!!
と、やかましいほどに賑わっている酒場を一瞬にして黙らせるほどの音を立てて、酒場入口の扉が開いた。
何事かと店内の客、店員全ての視線が一方に向けられた。
そこに立っていたのは一人の少女。
スレレートロングの黒髪に細身な体型で背中に2本の剣を差している。
外から吹き込む風がその長い黒髪をなびかせる。その姿はまるで人形のようだった。
呆気に取られた店内。いや呆気に取られたと言うより、見とれていたという方が表現が正しいかもしれない。
その少女が動くまで誰一人として声を発することも出来なかった。
その少女がゆっくりと口を開く。
「うぅ…酒くさいぃ…。」
それだけ言うと少女は振り返り店の外へと出ていってしまった。
…。
沈黙…、普段はまったく聴こない店内で流されているレコードの音だけが聞こえていた。
少しして、にわかにざわめき始める店内。
「なあ今のって…」
「見たことあるわ。あの子確か…」
「前にも来たよな…、店をめちゃめちゃに…」
「そうだ!間違いない…奴だ!」
何かを思い出したかの様に店の客達が次々に慌てて席を立つ。
「逃げろ!死ぬぞ!」
「ルイーダ姉さん悪い!お代は今度な!」
「ちょっと待ちなさいあんたたち!!」
ルイーダ姉さんは客達を呼び止めようとするが止まらない。
「おい!裏口どこだ!表でばったりなんかしたらマズイぞ!」
「こっちだこっち!」
「もういい!窓から逃げる!」
パニックになった客達が酒や食べ物を撒き散らしながら脅える様にして店外へと逃げていく。
満席だった店が一瞬にして誰もいなくなった。
…残ったのは俺とルイーダ姉さん、そして散乱した店内。
床に割れた酒瓶や食器を見て溜め息をつくルイーダ姉さん。
「まったくもう、誰がこれ片付けるのよ〜。」
「誰なんですか?今の?」
客全てが逃げ出す程の人物。この酒場にはモンスターと戦える腕を持つ輩もいる。
俺にはまったくあの少女の見当がつかなかった。なぜならこの町で一番の戦士と言われていたのは俺だったからだ。
割れた酒瓶を片付けながら答えるルイーダ姉さん。
「あぁ、ソラ君まだ知らなかったんだ。あの子はね、昔この町にいた勇者の娘さんなのよ。」
これはかなりの良作!期待してます
おお、女勇者きたーーー。
wktk
しかもここまで恐れられているとはw
投下します。
○ザハン○
一週間かかってザハンに着いた。
町って言っても小さな村の集落みたいで住んでいる人口も沢山人が住んでいる訳でもなく
見渡す限りでは女子供しかいない。それに村のど真ん中に大きな神殿があり巡礼者が世界各地から来ているらしい。
タケ「もょ、ムーン。以前から気になっていたんやけど。この世界の宗教は基本的に何なのよ?」
もょ「そうだな。ローレシアでもとくにしゅうきょうはなにもなかったぞ。」
ムーン「宗教ねぇ・・・・・基本的には精霊ルビスを崇めるんだけど。ムーンブルグ場合は別に何も無かったわね。」
タケ「なるほどなー」
ムーン「急にどうしたのよ?」
タケ「いやーまさかこんな辺鄙な場所にこんな建物があるからびっくりしたんよ。
さて、ラゴスに関する事を聞きまくらないとな。」
俺達は情報収集始める時に一匹の犬が近づいてきた。
*「わん!」
タケ「なんやお前。ヨソモンが珍しいか?人懐っこいやっちゃな。」
*「ハッハッハ・・・・」
この犬何故か息が荒い、しかもずーっとムーンの方を見ている。
ムーン「な、何よ・・・?」
犬は急にムーンに飛び掛った!!
ムーン「きゃあっ!?」
ムーンを押し倒した後じゃれ合う様にムーンにジタバタしている。
ムーン「ちょ、ちょっとぉ!やめて・・・・」
しかしこの犬、ノリノリである。何と腰を振っているのだ。
タケ「お、お前いきなり何しているねん!」
もょ「ど、どうした?」
タケ「うらやましぃ・・・・いや!うらやまけしからんぞ!あー代わりてぇ!!」
もょ「ど、どうしたんだよ!?」
ムーン「ちょ、ちょっと!見てないで早く助けなさいよ!いい加減にしなさい!このエロ犬ーー!!」
ムーンが犬を殴ろうとした時犬は走り去っていった。
ムーン「なななな何てふしだらなエロ犬なのよ!見つけ次第処刑よ!処刑!」
タケ「そー怒るなや。可愛い子犬でも思ったんじゃないの?ま、エエモン見せてもらったからラッキーやったけどな。」
ムーン「何か言った!?」
タケ「い、いや。何でもナイッスヨ。ムーンサン・・・・」
ムーン「もう!!さっさとラゴスの情報を集めてこんな町出るわよ!」
怒る女はマジ怖え。冗談抜きでムーンの表情が般若に見えた。『鬼ジジイ』っていう言葉はないが『鬼ババア』はあるからな。
ムーンをからかうのは少し自重しよう。
ムーンと分かれて行動をとり始めた時、さっきの犬がまたやってきた。
タケ「お、またお前か。さっきは中々楽しませてもらったで。」
*「ヘッヘッヘッ・・・・・」
タケ「今度やったら骨付き肉でもプレゼントしよか?」
*「ワン!」
犬は上機嫌だ。しかし別の殺気が俺に向けて感じてくる・・・・・
もょ「タケ・・・・あそんでいるばあいじゃないだろう・・・・・」
タケ「わわわ、悪かったがな・・・ちょっと悪ノリしすぎちまったな。」
*「クゥ〜ン・・・」
タケ「ああ、いや、気にすんな。お前は悪くは無いで。」
犬は申し訳なさそうに離れていった。しかし俺達を呼ぶ様に吠え始めた。
*「ワンワン!」
タケ「何や急に吠え出して・・・・こっちに来いって言っているのか?」
もょ「タケ、あのいぬのいっていることがわかるのか?」
タケ「犬語は流石にわからんけど仕草で何となくわかるんよ。どっかに案内したいみたいやな。」
犬は町の外れに俺達を案内した後立ち止まって鼻を嗅ぎながらまた吠え始めた。
タケ「なになに・・・・・ここに何かがあるって事か?」
もょ「んー・・・どうすればいいんだ?」
タケ「とりあえず掘れって事か?」
完全に「ここ掘れワンワン」である。花咲かじいさんをリアルで体験するとは思わなかった。
掘り始めて10分後、木箱を発掘する事が出来た。
タケ「おー!このわんこなかなかやるやんけ!お宝ゲットだぜ!」
もょ「さっそくあけてみるか!」
タケ「オウヨ!」
ちょっと興奮しながら宝箱を開けると書物と鍵が出てきた。書物を見てみるとけしからん絵がたくさん載っている。
すなわちこの世界のエロ本だったのだ!
タケ「何でこんなもんがここにあるねん!!ありえねえ!てか腹痛え!ニヤけてくるやんけ!」
もょ「・・・・・な、なんだこれ?おんなのはだかばっかりだぞ。」
タケ「ああ!もょ!お前にはまだ早いがな!それはちょっとおいといて。
しかし鍵の方は本物の金を使っていて重量が結構あるで。」
もょ「おくになにかがあるぞ。なんだろう?」
紙を見てみると「この箱を開けた同士へ」と書いてある。誰が同士やねん。とりあえず読んでみた。
ハァイ、同士よ元気ィ? 俺っちだよ俺、ラ・ゴ・ス♪
ザハンってぇ何にもないから、ラゴスってばチョ〜ブルー!!
そこで、ラゴスからプレゼント。コレ!じゃじゃ〜ん!
『金の鍵』 『至高の女体本』ッ!!
でもでも、条件があるからー。やっぱりぃ〜 ラゴス的にはぁ〜カワイコちゃんが好きっていうかぁ〜
だからヘルポイのアンナちゃんにぃ〜 会いに行くみたいなぁ〜。
それでぇ〜 ヘルポイに来て俺っちに合流して欲しいなー!って感じ?
・・・なんつったりしてー! おバカ女風だ! 俺っちイケてる?
笑えバカ。俺っちのように!あひゃあひゃあひゃ・・・
ラゴスさん!あんた天才だよ!画太郎先生並にいかしているよ!
タケ「あー腹が痛かった。まさか情報を得る代わりにこんなに笑えたとわな。久々に新鮮なときめきを感じたで。」
*「ヘッヘッヘッ・・・・・」
タケ「おーよしよし良くやった。お前には後で骨付き肉をプレゼントするわ。」
*「ワン!」
もょ「タケ、このてがみはしんようできるのか?」
タケ「出来るで。紙も結構新しい方やし大雑把やけど最近ここに立ち寄った可能性が非常に高い。
それにこのわんこが案内人みたいな役割やなかろうか?多分な。」
もょ「で、でも・・・・おれたちあてではないだろう。これは。」
タケ「それはもょの言う通りやで。まー今は時間も無いし形振りかまわん状況だから。ちょっと拝借するだけや。
まっ、無事に終わったら返したらええんちゃうか?」
もょ「なるほど。」
タケ「それにしてもどの世界共通やな。貴重な本のゲットできたんやし。中々高レベルやな。こっちも。」
もょ「そ、そうなのか?」
タケ「ほほう。もょも興味が出てきたのか?」
もょ「ち、ちがっ・・・・・・」
タケ「恥かしい事やないで。男なら誰もが通る道や。もょも今は思春期の年頃やし。ふんふん。なかなかええ眺めやね。」
もょ「だ、だから・・・・」
タケ「これなんか見ろよ。ムーン以上のナイスバディやで。くー!なかなかええ体系しとるわい。」
もょ「み、みせてくれないか?・・・・な、なんかドキドキしてきたぞ・・・・」
タケ「おっ!それが男の本能やで。ハメを外してはアカンけどな。それにしてもどれもこれもけしからんなぁ〜ケケケ。」
ムーン「ふーん・・・・確かにけしからんわね。特にあんた達が。」
タケ「げぇっ!関羽!!じゃなくてムーン!い、いつの間に・・・・?」
ムーン「・・・・一体何しているのよ・・・・・しかもエロ犬と一緒に・・・!!」
タケ「あのー・・・・・後ろから何かが見えるんですけど・・・・もしかして怒ってます?」
*「クゥ〜ン・・・」
タケ「お前はさっさと逃げろ。これは俺等の問題やから。」
もょ「ちょ、ちょっとまて!おれもはいっているのか!?もとをいえばタケがほりだしたから・・・」
タケ「しゃーないやろ!一心同体なんやから。諦めろ。」
もょ「じゃあおれはひっこむ!」
タケ「せ、せっけー!お仕置きを食らうのは俺だけかい!潔く諦めんとアカンのかい・・・・」
ムーン「覚悟はいいわね?」
タケ「け、結果的にはあのワンコのお陰で手っ取り早くラゴスの情報が得たんやけどな〜」
ムーン「何ですって?」
タケ「(食付きやがったな)お仕置きするんやったら黙秘したろっかな?それよりムーンは収穫出来たのか?」
ムーン「・・・・・・全く駄目だったわ。そんな事よりも卑怯よ!」
タケ「しゃーないやろ!処刑が怖いんや!取引せーへん?ここはひとつ穏便に・・・・」
ムーン「わかったわよ。もう!」
もょ「(ナイスだ!タケ!)」
タケ「(ちょろいもんや。なーに、うまーく話を纏めるさ。)」
俺は手紙とけしからん本について話した。
けしからん本に関してはラゴスを信用させるための切り札になると言う事で処分は免れた。
しかし・・・・
ムーン「この本に関しては私が預かることにしたわ。」
タケ「何でやねん!そりゃきっついがな!俺の本が!けしからん本が!!心の友が!!!」
ムーン「何が心の友よ!このスケベ!」
タケ「スケベで何が悪い!これは男のロマンや!女が入る隙間は無ぁい!!」
ムーン「偉そうに屁理屈ばっかり言って・・・・処分するわよ?」
タケ「そんな殺生な!!やりすぎや〜・・・」
あーあ、性欲を持て余しているのにキツイ仕打ちですよ。旦那。
*「ガルルルルル・・・」
タケ「お、お前何しにきたんや?俺等は大丈夫やで。」
ムーン「な、何よ・・・?」
その犬はまたまたムーンに飛び掛った!しかも今度は服をグイグイ引っ張って脱がそうとしている。
タケ「おっしゃ!グッジョブや!もっとやったれ!」
ムーン「な、何とかしなさいよ!いい加減に離れなさい!このエロ犬−−!!」
流石にこの光景を眺めていたかったのだが後が怖かったので骨付き肉を買って犬にあげる事にした。
犬は服を脱がすのやめて肉に勢い良く食べかかった。
ムーン「もう!あと少し遅かったら危なかったわ!」
タケ「チッ!あともう少しやったのに。」
ムーン「・・・・何か言った?」
タケ「何もございませぬ。お嬢様。」
ってな感じでザハンからぺルポイに向かう事になりました。チャンチャン♪
連投規制ってまだあるのかな?
とりあえず支援
レッドマンさん、投下乙でございます。
ちょwwwwエロ本wwwww
犬さんもナイスです。
クソワロタw
確かにドラクエの世界ではエロ本は貴重だな。
くやしがるタケの気持ちが理解できる。
お久しぶりのGEMAです。
第17話前半部分を投下します。
LOAD DATA 第16話
>>204-211
「だぁ!こっちはまた行き止まりだ!!」
「こっちの扉は…さっきと同じ道か。おのれ、ここは魔窟か!?」
俺達は今、かつてない難易度の迷宮を彷徨っている。
行く先々を阻む無情な白亜の壁。無限に続くかのような堂々巡り。
神の塔も、魔物の棲家も、俺達をここまで苦しめはしなかっただろう。
―ルラフェンの町―
それがこの巨大な迷宮の正式名称。
ポートセルミから西に存在するこの町は、周囲を深い森に囲まれており、
獰猛な魔物が跋扈する危険な地域。
そんな地域でありながら、自衛力を持たぬ人々は町の周囲を強固な壁で囲い、
町の中にも岩と煉瓦を積み上げ、入り組んだ迷路のような要塞都市を作り上げた。
なるほどねぇ。魔物の一群が襲ってきても、この迷路みたいな町を彷徨ってるうちに
嫌になって殺る気を削がれちまうかもしれないなあ…
ただ、ヘタしたら自分達の逃げ場がなくなるんじゃね?
へとへとになってようやく辿り着いた一軒家。
町の中心に位置する古代魔法の研究をしている爺さんが住むという家。
古代魔法の知識を得れば、長い旅の助けになるだろうというサトチーの意見で、
この迷宮のような街を延々彷徨っていたってわけ。
「や…やっと着いた…もう足が限界…ぐふっ」
「ホント、凄いねえ。まさかここまで難解な町の造りだとはねえ」
精根尽きはて座り込む俺を見て、他人事のような感想を漏らすサトチー。
生真面目なピエールは思案のしすぎで兜から蒸気を上げている。
町に到着した時は燦々と俺達を照らしていたお日様は、
気づけば既に西の空を赤く染め始めている。
「ふぉっふぉっ…そりゃ難儀じゃったろう。この町に住む者ならともかく、
旅人がうっかり路地に迷い込んで一晩中彷徨うのも日常茶飯事じゃて」
「はは…僕達が数時間でここに辿り着いたのは運が良いほうなんですかね」
古代魔法の研究を見学したいと申し出た俺達を快く家に招き入れた爺さんが、
さも愉快そうに笑いながらお茶を注ぐ。
テーブルの上。お茶を煮立てるポットの横で、ドブ色の液体が火にかけられ、
ゴボゴボと灰色の蒸気を上げるのも妙な光景だが、差し出されたそのお茶は
香り高く、ほんのりとした甘さが疲れた体に心地よい。
「ふむ…それでは、わしの研究する古代魔法について説明するかのう…」
疲れた体に若干の英気が戻ったころ、爺さんが静かに口を開いた。
◇
ごりごりごりごり…
「お前さんはなかなか筋が良いのう。思ったよりも仕事がはかどるわい。
わしみたいな非力なジジイじゃと、調合はともかく力仕事は難儀でのう」
ケミカルな匂いの立ちこめる薄暗い部屋。やたら大きな器数個分に詰め込まれた
妙な色の草やら、臭い丸薬やら、ぞわぞわ蠢く破片やらを潰して砕いて粉末にして…
サトチー達は実験に必要な最後の材料を採取しに西の草原へ出かけ、
俺はこの家に残って、爺さんの助手をしている。
「うし。こっちの器はおしまい。次は何をすればいい?」
「いや、もう充分じゃ。あとはサトチー達が最後の材料を持って来るのを待つだけじゃ」
「助かった。いや、さすがに腕がパンパンだわ」
「ふぉっふぉっふぉっ…お前さんのおかげでずいぶん楽できたわい。
あとはわしに任せて、お前さんは少し休むがええ」
怪しげな色の液体がグツグツと煮え立つ釜の前、爺さんが真剣な目つきで
様々な粉末を綿密に計量し、窯の中に放り込んでゆく。
「…なぁ爺さん。一つ質問。その…ルーラって魔法だけどさ。
自分が行ったことのある場所だったら、どこにでも行けるわけ?
それが、どんな遠くでもさ」
瞬間移動魔法『ルーラ』
距離を超越し、遠く離れた場所まで一瞬で移動できる失われた古代魔法。
―その魔法があれば、残された奴隷達を救い出すのも簡単だろう。
いや…もしかしたら…元の世界に帰る事も…
「ふむ…確かにその通りじゃ。お主が行った事のある場所であれば、
どんなに距離が離れていようとも一瞬で移動できるわい」
僅かに揺れる天秤の針を見つめながら爺さんが答える。
それは、俺が最も期待していた答えで…
「ただし『どんなに遠くでも』と『どこにでも』というのは別じゃのう」
そして、期待通りの結末ってのにはなかなかお目にかかれないわけで…
期待通りではない回答を爺さんが続ける。
「まずは、ルーラという魔法の原理から説明が必要かもしれんのう。
そもそも、この魔法の定義は『対象の瞬間移動』と認識されていたようじゃが
その定義からして最初の誤りじゃて。
…例を出したほうがわかりやすいかのう」
立ち上がった爺さんは俺の目の前に白と黒、二枚の紙を並べ、
白い紙の上に小さなボトルを置いた。
「このボトルをルーラの術者。白い紙が現在地。黒い紙が目的地だとしてじゃ。
お主はルーラの定義をこう解釈しているのじゃろう?
ボトルを白い紙の上から黒い紙の上に移す…」
ことり…と、小さな音をたててボトルが黒い紙の上に置かれた。
ルーラが『瞬間移動』の魔法である以上、これ以外の解釈なんてないだろ?
「ふぉっふぉ…釈然としないようじゃのう。ではこれならどうじゃ?
ボトルは動かさず、白い紙と黒い紙の場所を入れ替える…」
「…あ」
「理解したようじゃのう。これがルーラの本当の定義じゃ。
人々が解釈を違え、誤った解釈を人々が広めたが故にその本質から逸れた魔法。
ルーラという言葉の意味を引き出せなくなった以上、遺失するのも当然じゃの。
この魔法の本来の定義は…もう言わんでもわかるのう?」
「…『術者』の移動じゃなくって、術者の立つ『場所』を入れ替える魔法…」
俺の答えに爺さんが満足したように頷き返す。
ボトルは1ミリも動かず、目的地である黒い紙の上で炎の光を僅かに反射している。
「厳密に言うならば『場』ではなく『座標』じゃがの。
考えてもみい。『対象の移動』だとするならば、行ったことのある場所という
制限もいらんはずじゃ。
自分の現在地の座標と目的地の座標を正確に把握し、視覚化できておらんと
ルーラは何の効力も発揮せん」
ルーラの定義は理解できた。だけど、今の俺にそれが何の意味を持つ?
真っ暗な樽で漂流した俺が神殿の座標を把握しているはずもなく…
元の世界の座標なんて知り得るはずもなく…
救いたい人達も救えず…帰りたい場所にも帰れず…
「…ルーラにはこんな逸話が残っておる。」
ぼんやりと無力感に包まれる俺の意識を爺さんの声が呼び戻す。
「古代文明でルーラという魔法が派生し、文明は大いに栄えた。
じゃが、ルーラが広まるにつれ、次第に人々は歩く事を忘れていった。
歩く事を忘れた人々は。その場で立ち止まったまま前に進むことを忘れた。
前に進むことを忘れた文明は緩やかに衰退し、緩やかに文明が滅びるとともに
その魔法も姿を消した…サトチーやお前さんはそうはなるまいて。
わしはお前さんらの旅の目的は知らぬが、ここまで歩いてきたのじゃろう?
じゃったら、この先も前に進む事ができるはずじゃ。違うか?」
前に進む…
そうだ、俺には…俺達にはそれしかできない。
あの神殿から逃げ出してここに辿り着いたんだ。神殿に繋がる道はどっかにある。
世界中を回れば、何だって見付けられる。何だって見付けられないわけがない。
きっと…元の世界に帰る道だってどっかに繋がってる。
パンッ!…と、両膝を叩いて気合いを入れる。
「当然だろ。こちとら長い奴隷生活で足腰は鍛えられてるんだ。
一週間でも一ヶ月でも世界中歩き回ってやるさ」
「ははは…昼間この町で迷ってクタクタになってたのは誰だっけ?」
扉が開き、静かな月明かりとは別の温かい光源が薄暗い部屋をわずかに明るくする。
「お待たせしました。ルラムーン草を採ってきました」
サトチーの手に握られた一束の草が、水に映った月のように優しい光を放つ。
その光はまるで真っ暗な道を照らすランプのようにほのかでいて力強い。
17話前半はここまでです。
次回はルーラの復活と……です。
5世界でルーラが失われていた理由とその原理について考えてみました。
小難しいことを考えと筆が遅くなる…反省
待ってましたあああああああ!!!!!!!!!!!
ルーラの定義面白い!
確かに物理移動の魔法ならメクラ飛びも出来るはずですねえ
考えたこともなかった(^^;)
GEMAさんも復活か!!
こりゃー面白い年末になりそうだ。
レッドマンさんのシリアス路線とおバカ路線の両方が楽しめるし。
作者さんが来るのは何だか嬉しいもんだ。
乙です!今回も楽しませていただきました!
>次回はルーラの復活と……
……の部分が激しく気になるw
いつも楽しませていただいております。
このたび「保管庫@モバイル」のアドレスが変わりました。
ブックマーク(お気に入り)等の変更をお願いいたします。
【もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら保管庫@モバイル】
http://dqinn.roiex.net/ 便利にご利用いただけるよう頑張りますので
今後ともよろしくお願いいたします。
>>442 乙。それにしてもエロ本は確かに新鮮味があるなぁ。
しかし心の友まで言うかw
>>438 待ってました! ルーラの解釈とかイサミの軸がぶれてないところとか、
相変わらずサトチーの柔らかさとかそれぞれのキャラの立ち方とか
ほんと大好きだ。息止めて読み入っちまった。
>>442 いつも乙です。
>>419の続き
「あの子、そんなに強いんですか?」
誰もいなくなった酒場でルイーダ姉さんと二人きりになれたというのに、俺の興味は先程の少女に完全に奪われていた。
「え〜っとそうね、前にもあの子ここへ来たのよ。あなたがここへ来てくれるようになるより前のことね。」
「何かしたんですか?」
「仲間を探しにきたの。」
「仲間?」
旅に出る仲間?あんな幼いのに?つーかなぜ客はあんな怯えていたんだ?
割れた酒瓶や食器などをひとまとめにすると、山のようになったのを見てルイーダ姉さんは溜め息をついていた。
「あの子、強い人を探すために酒場にいた戦士さん達に片っ端から戦いを挑んでいったのよ。」
「それで?」
と聞き返したが聞き返すまでもなかった。またルイーダ姉さんも答えるまでもなかった。
この、先程のアレと、今のコレを見れば想像が容易についた。
「多分、あの子16歳になれて旅の許可が貰えたからまた仲間を探しに来たんだわ。」
「え?どういうことです?じゃあ前に酒場にきたってときは?」
「歳を1つ間違えていたらしいわ…。」
「は…?」
…理解するのに数秒かかった。
酒場の奴らを打っ倒した後に、自分はまだ旅に出れないと気づいたのか。やられた奴らはたまらないな…。
なるほど天然ボケか。まぁ自分の歳も記憶に無い俺が人のことを言えたものではないが。
それともう一つ、どうしても知りたいことがあった。
俺がこの町で1番強いんじゃなかったのか、と言うこと。俺だってここの酒場の奴らより実力は上なんだ。
「俺なら勝てるだろうか?」
しかしルイーダ姉さんは考えるまでもなく即答した。
「無理だと思うわ、多分。あの子、何と言うか次元が違うもの。」
「そんなに…?」
多分と付け加えられていたが、俺に気を使って言ってくれた言葉だとすぐに分かった。
勇者の血を引かれし者とそうじゃない者の差。そういう意味では普通の人間の中では俺がこの町で1番と言うことか。
それでも俺は、自分の強さを試してみたいと言う気持ちが逆に益々と膨らんでいった。
そんな気持ちが通じたのだろうか。
キイイイ…と酒場の扉の開く音。
目を向けると、そこにその少女が再び現れた。
この扉の加減さが分かったのか先程とは違って、扉は静かに開けられ普通の登場だった。
いや、しかし先程と違う点はその少女の鼻が洗濯挟みのような物で摘まれているということ。
自分の目を疑ったがそれは紛れも無くピンク色の洗濯挟みだった。
いくら記憶が無い俺でも洗濯挟みは鼻につまむ物ではないことくらい分かる。何をしているんだこいつ??
と思ったが先程の少女の言葉を思い出した。
なるほどこいつはたいした天然野郎だ。だがこの俺は記憶喪失野郎だ。相手にとって不足は無い。
少女は荒れた店内を不思議そうに見渡すと俺達の方へと歩いてくる。
「な゛んで、だでもい゛なぐなっだんだろう??…まぁいい゛か。」
鼻声で何を言っているのかよく分からなかったが客がいなくなったことを気にしている様子。
傍までくるとその少女は頭1つ分以上身長差のある俺を見上げたあと、プイッとルイーダ姉さんの方に振り向いた。
横顔から見る鼻の洗濯挟みは実に目立つ。
身長差に加えてこのマヌケな洗濯挟みが幼く見せるが16歳と言っていたっけか。
背中に交差する2本の剣を差しているあたりとのギャップが何とも妙な雰囲気を醸し出していた。
「仲間探しにぎた、誰でもいい、いぢばん強いヤツ紹介してほしい。」
鼻から息が抜けずに喋りづらそうだが外さない辺り、相当酒の匂いが苦手なのだろう。
ルイーダ姉さんは少女の問い掛けに、パンッと手を叩いてそれならばと言うように俺を見た。
「あら丁度よかったわね!彼がこの町でどんな戦士さんより今1番強いわよ。」
一瞬えっ?と思ったがそりゃそうか、とも思った。
俺がこいつの仲間??ちょっと待て。この少女の強さが気にかかるだけで仲間なんて考えてもみなかった。
再び俺を見上げる少女。品定めをされるかの様で緊張する俺。
少女が一言つぶやいた。
「冗談…?」
は?……冗談?って言ったよな、どういう意味だ?冗談ならばお前のその鼻をつまんでいる物が冗談だろう。
喉まで出かかったが俺はなんとか堪えた。
「もっど、ゴツクてムサイ奴かと思ってた。」
そっちかよ…、となぜかホッとする俺。
「そりゃどーも。」
一応誉め言葉として受け取っておく。
少女はもう一言つぶやいた。
「試す…。」
と同時にルイーダ姉さんが「気をつけて!」と言う言葉が聞こえたが、遅かった。
キィィィィン!!!!
ルイーダ姉さんが言い終わる頃に俺はそれにとっさに反応して腰に付けていた剣を引き抜くだけで精一杯だった。
余りに速く突然に少女が何かをしてきたのでよく分からなかったが、俺に向かって高速で振り下ろされたので
俺は引き抜いた剣でギリギリの所でそれを受け止めた。
それは少女の背中に差されていた2本の内の1本の剣。
つまりいきなり斬りつけられたということ。
「何しやがんだテメェ!!」
突然の行動に、理由も分からぬまま殺されかけたことに今まで抑えていたものが爆発する。
俺より強い!?次元が違う!?上等じゃねえか!!テメェがその気ならやってやる!!
「合格…。」
殺気立つ俺とは裏腹に少女は一言言うと剣を鞘に納めた。
「何が合格だ!!?」
完全に闘る気でいた俺だったがルイーダ姉さんに宥められ少しだけ冷静を取り戻した。
「モンスターはい゛つ襲ってくるか分がらない。今の防げない様じゃ話しにならない…。だから試した。」
「んな試し方があるか!!殺す気だったろ!!」
少女は違うと首を横に振ると背中に差していた剣を少しだけ鞘から引き抜いた。
その剣は真剣ではなく木刀だった。興奮していた俺はそんなことも気づかなかったのか。
「昼間に城の兵士にも゛試してきたが防げたのはお前だげだ。だからお前を仲間にする。」
酒場にいた戦士に止まらず兵士にまで襲い掛かったというのか。恐れ知らずな奴だ。
俺はその問いではなく断定的な言葉に流されてしまったのかどうかはよく分からない
が仲間になるならない別にしても興味が沸いてきたことは確かだった。
「そっちの剣は真剣なのか?」
「そうだ。それがなんだ?」
「いや、何でもない。」
小さくて華奢に見えるその体に2本も剣を差す理由が他には思い浮かばなかった。
「明朝また来゛る。準備しておけ。」
まだ俺は何も答えていないんだがな…。
探していたものが見つかったかのように少女は晴れやかな表情をほんの少しだけ見せて酒場を後にしていく。
少ししか合間見えなかったが基本的に無表情、無愛想のようだ。しかし強い。
だが不意の一撃じゃまだどれくらいのものか分からない…、仲間になれば戦う様も見れるか…。
「おい!待て。」
と、呼び止めると振り返る少女。その無表情さだがなぜか俺は興味をそそられた。
「俺はソラ。お前は?」
その問に少女はやはり無表情で答える。
「私は、サキ…。ソラ、覚えておく。」
これが俺と勇者の娘サキとの出会いであり旅の始まりだった。
一応プロローグ的なものが終わりです。
読んでくれてありがとうございます。タイトルとか考えた方がいいんだろうか?
ちょ〜かっこいいっ!!
振りむいて名乗るところもしびれた。
>>448 天然野郎VS記憶喪失野郎
くそワラタww
読みやすくて面白いぜ
盛り上がってきたね
新人から中堅、古参まで息が吹き返しつつあるね。
ガンガン頑張ってくれぃ。
447の続き
次の日の朝。
サキとの待ち合わせ場所であるルイーダの酒場に先に着いたのは俺だった。
酒場に入るとルイーダ姉さんはいつものように元気な笑顔で俺を出迎えてくれた。
店内はあの後、ルイーダ姉さんと俺とで綺麗に片付けたのですっかり元の雰囲気に戻っていた。
「おはようソラ君!旅に出る支度は済んだの?薬草は?毒消し草は?お金はちゃんと持ってるの?」
「大丈夫。ちゃんと持ってるって。相変わらず心配性だからなぁルイーダ姉さんは。」
「それはあなたがいつも忘れて来るからでしょ。ほら!道具袋の中身お姉さんに見せてみなさい。」
「えぇ。めんどくせぇなぁ。」
それはいつもと変わらない会話。
しかし、それも今日で出来なくなるかと思うと途端に寂しくなった。
「ほら見なさい。薬草1個しか入ってないじゃないのよ〜。ダメヨ、あの子も一緒に行くんだから10個くらい持ってきなさい。」
「えぇ?俺達強いんだから必要無いですって…って何入れてるんですか!?」
道具袋にルイーダ姉さんは布で包まれているものを2つ押し込んだ。
「お弁当よ。あの子の分もあるからお昼に食べてね。」
「そんな、俺達なんかに気使わなくても…でもありがとうルイーダ姉さん。」
本当に俺の姉さんのようだった。出来ればずっとこうして甘えていたい。
今頃になって旅に出ることに少し後悔した。
キィィィ、と酒場の扉が開く。
サキがやってきた。
「よう。」と声を掛けたが予想通りの無反応。だが俺はムッとすることも無かった。
この町の中でただ一人俺だけがこいつに選ばれた人間。このことがこいつの態度に寛容的になれる要因だろう。
「それじゃ、行くか?」と聞くと、小さく「うん。」と答えが返ってきた。
酒場を後にしようとする間際、ルイーダ姉さんは最後に告げた。
「いつでも帰ってきなさい。ここはあなたが帰ってくる場所なんだからね。」と。
俺はその言葉に込み上げる物があったが必死でそれを隠す。
「それじゃ行ってくるよ!元気でね!ルイーダ姉さん!」
酒場の扉を開き、この酒場とルイーダ姉さんに別れを告げた。
短いけどとりあえず。
こっから先は何も考えていないw
ルイーダさん、いい人だなぁ・・・・。
やべぇ・・・惚れそう。
主人公とサキの旅路に幸あれ。
ほす
>>453の続き
街を離れる前に俺達は道具屋に寄り、ルイーダ姉さんの言葉通りに薬草を買っていくことにした。
この周辺の魔物には蚊に刺される痛みほどのダメージしか俺は受けないが、まぁ一応のためだ。
サキはそんな俺よりさらに強いと言うんだからそんなに心配はいらないのだろうが…。
後は…行く先。
買い物を終えて街を後にする前に俺は聞いた。
「行く宛てはあるのか?」
「…ロマリア。」
「ロマリア?どこだそれ?」
「………。」
この男はロマリアすら知らないのか?という表情に微妙だが見て取れた俺は、その瞬間サキに言っておくべきことを思い出した。
「悪い。今俺記憶喪失なんだ。とは言っても普通の会話と常識は持ち合わせているから気にしないでくれよな。」
「…………………。」
相変わらず変わることの無いサキの表情からは気持ちを読み取ることが出来なかった。
「……大きな街…。このアリアハンと同じくらい。きっと強い仲間が見つかるはず…。」
「ん…あ、そうか、まず仲間を探すわけな。」
こくっと頷くサキ。
俺が記憶喪失だということなど気にしないというか、そんな事などサキにとってはどうでもいい事のようだった。
街を出るとサキは、ロマリアに行くために洞窟を抜けて行くと言った。
その洞窟へ向かうまでにはしばらく草原を歩かなければならず、途中でモンスターと遭遇することになる。
既に倒し飽きるほど倒したことのあるいつものモンスターしか現れないが、俺は早く遭遇しないかと心待ちにしていた。
そしてようやく一角ウサギ3匹にオオアリクイ2匹が現れた。
これだけいればサキがどの程のものなのか判断出来る。
「あいつら倒して見せてくれよ。」
俺はサキにそう言葉をかけた。………かけた筈だった。
しかし、言葉をかける寸前にサキの姿は消え、言葉をかけた時には現れたはずの全てのモンスターが消されていた。
俺が見たのは散らばったモンスターの残骸と既に剣を背にしまうサキの姿。しかも剣は真剣ではなく木刀の方だった。
「何か言ったか?ソラ?」
「…え?…い、いや、なんでもない…。」
俺は銅の剣を構えたままただ呆然としていた。
ロマリアに通じると言う洞窟にやってはきたのだが………
ここまで現れたモンスターは全てサキによって瞬殺。
モンスターが現れたと思った次の瞬間にはもう死んでいて俺は全く手が出せなかった。
集団で現れようがサキは木刀をまるで鞭でもしならせているかのように次々と蹴散らしていく。
………勝てるわけが無い。サキと対峙しているわけでも無いのに、俺の奥歯はカタカタと音が鳴りっぱなしだった。
この洞窟を抜ければもうロマリアはすぐそこらしいのだが、正直なところ俺は必要無いんじゃないだろうか?
なぜ俺なんか…、なぜ俺ごときを仲間にしたんだ?見誤っただろ?いらねぇだろ俺…、なぁ?
ロマリアで捨てられんなこりゃ…。
洞窟もそろそろ出口に差し掛かる頃、そんな俊敏冷徹で一分の隙も見せないサキに異変が起こった。
「ソラ…。眠い…。」
「は?何?」
「だから…眠いんだ…。」
「いや、我慢しろよそれくらい。洞窟の中が暗いったってまだ昼間だぞ?」
何の冗談を言い始めたのかと一瞬考えてしまったが、冗談なんかでは無いとサキの表情を見て気づいた。
それまで全くと言っていいほど無表情だったのがあからさまに眠い顔を見せた。
まぶたが半分閉じかけ頭をカクンっと落とすほど意識が飛んでいる。
「お、おい!どうしたんだ!?急すぎるだろ!?」
両肩を掴み揺さぶってみるが、サキの体は完全に力が抜けて体を揺らす度に頭がガクガクと揺れた。
「こんな所で寝るなよ!おい!」
「…ん…ソラ…。言い忘れたことが…ある…。」
「な、なんだ!?」
「私のこの力は…膨大な睡眠によって…力が得られている……。」
「何!?何を言っている?」
「…済まないが少し寝る…。後は…頼ん…だ…。」
「お、おい!頼んだじゃねえだろ!!起きろよおい!!」
名前を叫び体を揺さぶってみるがまったく反応が無くなった。眠ったと言うより気絶した感じに近い。
こんなモンスターの住家のような所で気絶して、昨日出会ったばかりの俺に後を任せたと言うのか!?
「なんでだ!?なんで俺なんかに頼れんだよ!!テメエの不意打ち一回防いだだけだぞ!!そんなんで分かんのかよ!!」
馬鹿かこいつは!?天然にも程がありすぎる!
眠くなるほどエネルギー使ったってのか!?だったらセーブ出来ねえのかよ!!
……とりあえず洞窟から出なきゃモンスターが集まってくる。
俺はこいつを背中に背負い洞窟の出口へと向かった
出口へと向かう途中、モンスターが現れた。
お化けアリクイとかいう化け物が3匹だ。
俺は眠りつづけるサキを背負いながら片手で銅の剣を取り出し、そいつらを蹴散らした。
サキに比べれば遥か劣るだろうが、俺はアリアハンではこいつを抜かせば1番強いんだ。
……くそったれ。なめんじゃねぇぞ…。
ビビってなんか…、ビビってなんか無えんだからな!超えてやる!!絶対超えてやる!!
おおおお゛お゛ぉおお゛お゛!!!!!!!
俺は怒りに任せて初見の相手だろうが関係無しに、出現するモンスターに渾身の一撃をぶち込んでいく。
ふっとばす。あいつがやったように。
消し飛ばす!あいつがやったように!!
洞窟の出口に辿り着く頃には俺の身体はズタボロになってはいたが、サキには傷一つ付けてはいなかった。
俺はサキを背中から下ろし薬草で自分の傷んだ身体を治療した。
「いってぇ…。薬草買っといて良かったな…。ルイーダ姉さんに感謝しなきゃな…。」
サキは相変わらず眠っている。
モンスターと対峙した時のサキは恐ろしいとさえ感じるのに、眠っている様は普通の少女にしか見えなかった。
「ったく、こんな小さくて軽いくせに……。まぁあんな動きもすれば眠くもなるか…。ふぅ…、俺も疲れた…。」
俺はモンスターに警戒しながら辺りを見渡していると、遠くに街があるのが見えた。
俺はサキを再び背負いその方向へと歩きだした。
サキさん、Tueeeee。
でも、まさかそんな弱点があったとは。
さて、無事街までたどり着けるのだろうか・・・。
新しい作者さんが来ていたか!
尻に引かれそうな主人公だなw
∧_∧
( ´∀∧∧
〜(つ ̄ (,,゚Д゚)
UU丁と)U
(__)_)
∧_∧ ドルルルルル…
( ´∀∧∧, '
〜(つ ̄ (,,゚Д゚) ミャ ミャ ミャ ミャ ミャ ミャ ミャ ミャ
UU ̄と)U `
し'^ヽ__)
明日(金)の夜10時くらいから投下できそうです。
今回はメ欄もチェックで。
よろしくお願いいたします。
Rです。すみません、仕事が入りまして予定通りの投下は難しくなってきました。
時間がずれるか、明日になるかは現段階ではまだわかりません。
なるべく約束を守れるように頑張ります。
目が覚めるとそこは俺の部屋じゃなかった。
しかも、身体が子供の姿になっている。
「どうなってんだ?これは・・・・」
なにがなんだか分からず戸惑っていると、俺の目の前に髪の毛が少ないおっさんが現れた。
「お前、ドラクエXの主人公になったから。じゃ」
そう言って去ろうとするおっさん。
「待たんかぁぁぁぁ!!どういう事?くわしく説明しろや!」
「無理」
「ふざんけんじゃねえぇぇぇぇぇぇ!!」
思いっきりおっさんをブン殴った。
「いてーよ!なにするんだ!この若造がぁぁぁぁぁぁ!!」
俺とおっさんの20分間にもおよぶ死闘が始まった。
「ちょ、いたいって!」
泣き叫ぶおっさん。
だがムカツクので構わず攻撃を続けた。
「ひゃあ!ひゃあ!ひゃひゃひゃひゃひゃ!!」とフリーザのモノマネ。
ただのチョップだけど。
「こいつでトドメだ!くたばれ!」
そこら辺に落ちてあったナイフでおっさんの最後の希望をきりつけた。
「ぎええぇぇぇぇぇぇ!!バ・・バカな・・・この・・・わたし(の毛)が・・・」
ノリのいい奴だ。だがおっさんがショックでがっくりと肩落とす。
「さらばだ!」
え?ちょ、おい。説明しろって!ちょっとぉぉぉぉぉ!?
俺の叫びもむなしくすぐにその姿が消えた。
・・・・・とにかく、ここはドラクエXの世界と言う事か。
現に俺の身体は子供の頃のX主人公の姿だし。くそっ、どうなってやがるんだ一体・・・
ドンッとドアが開く音がして誰かが部屋に入って来た。
「おいっ、どうした?大丈夫か!?」
おー、こいつがパパスか。相変わらずヒゲだなぁ。
「大丈夫だけど」と返事をする。
「ちっ、なんにもねえなら騒ぐんじゃねーよ、クソガキが・・・」
アレッ?パパスっこんなキャラだったっけ?
もしかして俺がX主人公になったからキャラの性格が変わったとか?
あれからしばらくしたが今は船に乗っているという事が分かった。
よしっ、こうなったらDQの世界をとことんエンジョイしてやるぜ!
フヒヒヒヒ、そうですよ。開き直ってますよ。すいません。
てかドラクエXってやったことないんだよね。だから話とかキャラとか少ししか知らねえ。
そして、時間が経ち港につく。
その港にハゲと2人の女の子(黒髪と紫)がいるんだけどヤバイだろ。この絵ヤバイだろ。
こいつら親子らしいけど知らない人が見たら絶対勘違いするって。通報されるよ?
興味があったので女の子に話しかけてみる。
「こんにちわ」と軽くあいさつ。
黒髪の方は「邪魔よ!」なんて言いやがった。たくっ、これだから近頃のガキは・・・」
紫の方にも挨拶をしてみる。
紫の方はしばらく喋らなかったがやっと口を開いた。
「・・・邪魔だ・・・クズが・・・」
恐っ!
さて港に降りたがなにをしようかと迷っていると
パパスが地図やるからそこら辺で遊んでこいなんて言う。
無責任な親だ・・・・
さて、なにをしようか?ナンパでもしようかなんて思う俺がいる。
とにかく港の外へ出て見ようか。
「ピキキキー」
なんと紫色の奴が3匹襲いかかってきた!
いや俺も紫のターバンとマント来ているから紫と言われかねんけど。
そうか、こいつらがスライムか。
ダチに聞いた話だと2、3ターンでパパスが助けに来てくれるらしい。
いや、どのくらいの時間が2、3ターンか分からんけど、それまでどうかしてろってか?
「まあいい掛かってこい!」
ドガッ!ぎゃっ先制攻撃された!やばい腹に当たったから腹の具合が・・・
10ターン後
「大丈夫か?」
おせえよクソジジイ・・・・
腹が痛くなったため反撃できなかった。スライムにめった打ちにされつつも
何とか避けてパパスが来るまでもっていた。
すぐにパパスがスライムを倒し戦闘終了。だが身体がかなり痛い。
「と、父さん・・・・ホイミとかいう奴をかけてくれ・・・・」
だがパパスの反応は冷たい者だった。
「すぐに楽にはさせねえよ・・・・」
なにこいつ?俺になんの恨みがあるわけ!?
数時間後にやっとホイミをかけてもらった。
それにしてもパパスの態度が酷すぎる。痛がる俺みながらニヤニヤしてたし。
こいつに殴りかかろうと思ったけど強そうなのでやめておく。
パパスに連れられてどこかの村に着いた。
村に着いたので「ギャー助けてー!知らないおじさんに連れられてるんだー!」と叫んでみた。
すると怪しい奴はみんなタイーホ!とか言いながらピーポ君が登場。パパスがどっかに連れていかれる。
ちょ、なんでこの世界にピーポ君が?
そう思っていると誰かが俺の心に話しかけきた。
この声はさっきの変なおっさんだな。
「お前がX主人公になったからちょっと世界が変わっているんだ」
「へー、で?なんで俺をこの世界に?」
「スリルが味わいたいだろうと思ってさ」
「味わえねーよ、こんな世界じゃ!スリルどころか死ぬわ!
なんだあのパパス!わけ分かんねーよ!それに俺20代だからこの子供の身体は歩きづらくてしょーがないわ!」
「・・・・・さらばだ」
「おいっ・・・・また消えたか・・・」
ズドドドドドドとなにか走ってきた。
それはピーポ君から逃げてきたパパスだった。
「てめぇぇぇぇぇぇぇぇ!このクソガキャァァァァァァァァァ!!」
そして俺は死ぬほど殴られる。クソ・・・・・
カオスな主人公が来たか!
今後に期待。
おもしろいw
先が読めなくて楽しみだwww
キャラクターやらなんやら崩壊しすぎワロタww
パパス台無しwwwwwwwwww
メチャおもろい!!!!!
この先まるで展開がつかめんからスゲー期待するよ!
ピーポ君wwwww
新しい作者さんにフキつつ俺も投下↓
とんでも設定理解頂けて良かったです
>>459の続き
「ちくしょう…。俺としたことが、何て様だ…。」
ロマリアの街を眼前にして現れた甲冑を見に纏ったモンスター1匹に俺は苦戦してしまった。
「たかだか1匹に。しかしあのモンスター剣も盾も上手く扱えていた。モンスターにも頭のいい奴はいるんだな…。」
でもまあ、こいつ背負ってるってハンデがなければ俺の相手じゃないけどな、
等と言い訳をしながら自分の負った傷を見て俺は舌打ちをした。
陽が徐々に落ちかけた頃、俺達は街にようやく到着した。
「おい。街着いたぜ。サキ。」
「………すぅ……。……すぅ……。」
起きるわけは無いと分かっていたが俺は俺の背中で眠りつづけているサキに話しかけた。
当然反応は無い。今は小動物の様に静かに寝息を立てて、俺の背に負ぶさっている。
「………はぁ…、なんだかなぁ…、まぁいいや、宿探すか。」
俺はその背中の眠り姫ならぬ小動物をともかくどうにかしようと、適当に目についた宿屋に入ることにした。
チェックインを済ませ、今夜一泊する一室のベッドにサキを寝かせた。
ようやく解放されたところで、既に俺も限界を超えかけていたのでそのまますぐに横になった。
腹も減ったが起き上がる気力さえもとうに失せていた。
「……まてよ…。一緒の部屋で良かったか?……って関係ねーか、既にこいつ寝ちまってるんだし…。あぁ〜あ疲れた…。」
これからどうするか。とりあえずサキが起きるのを待つか。そういや仲間を探すって言ってたっけか…。
アリアハンでの時みたく力量を量るためにいきなり斬りつけなきゃいいがな…。……ってそうなったら俺が止めんのか…?
何か別の方法があるだろ…。何か…………。
……………Zzz………。
俺はいつの間にかそのまま眠りに着いていた。
……カツカツカツカツ……、カツカツカツカツ…。
俺はその音で目が覚めた。
何の音かと思い眼を開けるてみると、まるでウサギが人参をカリカリと小刻みに食べるかの様にサキが弁当を食べていた。
(あぁ…こいつはやっぱり小動物だったのか…。)
って違うだろ、何寝ぼけてんだ俺。
「起きたのか。もう大丈夫なのか?」
「…………カツカツカツカツ………。」
ったくこいつは…。相変わらずマイペースな奴だな。
そういや俺も腹減ってたんだ。俺も食べるとするか。
「上手いだろ?その弁当ルイーダ姉さんが作ってくれたんだぜ。」
俺は道具袋から弁当を取り出そうとした……………が無い。弁当箱は確か2つあったはず。
テーブルの上に目をやると空になった弁当箱が1つ。そしてもう1つもたった今サキが食べ終えて空になっていた。
「お前!2つ食ったろ!1つは俺の分だったんだぞ!」
「………旨かった…。とても…。」
「そうか、ってそうじゃねぇ!これはルイーダ姉さんが俺の為に作ってくれた特製のだな!」
「……ハートマークの飾り付けだった…。」
「何だと!?おまっ!吐け!この野郎!今すぐに!」
「無茶言うな。頭…大丈夫か?」
「…っのやろう…。」
どうしてくれる?今度ルイーダ姉さんの所へ帰った時に、「あの弁当どうだった?」と聞かれたらどう答えたらいいんだ!?
ハートマークの意味は!?本気なのか軽い気持ちなのかどっちなんだよ!?どう答えたらいい!?
俺は食べてもないし中身を見てもいないんだぞ!?
あ〜もうこの野郎は!どうして2つも弁当食いやがったんだ。あんな小さい体のくせに。あんな小動物のくせに。
そういやあいつ背負った時に胸の感触がまるで無かったな。普通背負ったらドキッとするものがある筈だろ。
ぺったんこか。そうか、ぺったんこなのか。まな板のくせになんで2つも食いやがったんだ。
なんで…なんでだ……。
言葉にはしなかったが俺の楽しみを奪われた悔しさと更なる空腹で俺は苛立っていた。
「ここは…ロマリア?」
「あぁ?あぁそうだ。お前背負ってモンスターと戦いながらきたんだ。感謝しろよな。」
「ソラ!」
「なんだよ?」
サキの指が俺の顔に当たる。当たった瞬間痛みを覚えた。
「っつ!なんだ!?」
「傷だらけ…。腕も、体も…。」
腕や体の見える部分は薬草で治療してはいたが顔はしていなかった。
「しょうがないだろ。お前かばってきたんだからな。俺だけなら傷なんかしなかったろうな。」
嫌味に聞こえたろうか。まぁいい。食の恨みは高くつくとよく言うがその通りだ。
「仕方ない…。手当てしてやる。」
「あぁ!?いいよ別に。もう血は止まってんだ。」
「よくない。膿んだらどうする。」
そう言うとサキはすり潰した薬草を取り出し俺の傷口に塗ろうとした。
「いいって。自分で出来る。」
「いいから、動くな。」
サキの顔が近くなる。その間俺は目と目が合わない様に目をそらし続けていた。
こんな小動物のようなガキ相手に何を緊張しているんだ俺は…。
「終わりだ。」
「あ、ああ…。」
「街はもう歩いたのか?」
「いや、すぐ宿に入ったからな。そういや今何時だ?」
時計に目をやると、まだ夜になったばかりだった。宿には夕方頃到着したので俺はいくらも寝ていなかったのだ。
「ちょっと回ってくるか?俺なんか食いたいしな。」
「うん。」
酒場辺りにでも行けば強い奴の情報も得られるだろう。俺達は宿を出た。
ムハー!投下乙です!
おお、やばい、サキさんに惚れそうだ。
だが、弁当・・・orz
貧乳関係ねーww
主人公とサキの関係が気に入りました
>>479 GJ!
先(サキ)が気になるぜ
貧乳もGJ!だぜ
先日は失礼いたしました。これから投下します。
ちょっとパソコンの調子が悪いので、投下の間隔が長くなるかもしれません。
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。昨日は予告したのにお約束が守れなくてすみませんでした。
せめて時間をずらして……と思ったのですが、帰宅が午前4時ではどうすることもできず」
アルス「
>>463様はじめ、お待ちいただいた方すみません」
タツミ「それでは恒例サンクスコールです」
アルス「
>>393様、力一杯のグッジョブありがとう! ちょうど間があいた時期だったからな、
うちの作者も一読者として過疎り具合にドキドキしてたみたいだよ」
タツミ「
>>394様、面白いというそのお言葉が何よりの執筆燃料ですっ」
アルス「
>>395様にも、夢中になって読みました、まで言っていただけて本当に感謝。
俺も例の件が誤解とわかって心からホッとしたよ」
タツミ「キミのトラウマもわかってもらえたしね。たださ……君が普通っていうより、
お父様が遙かに超人なだけって気がしないでもないんだけど」
アルス「だよな。そもそもオヤジは、魔法の玉もナシにどうやってアリアハンから出たんだ」
タツミ「まさに謎の英雄……。
>>396様、いつもお待たせしてすみません。もう少しペース上げられるよう頑張りたいんですが」
アルス「
>>398様、おお、確かにサスペンスっぽいかも。まさか殺人事件に巻き込まれるとか……」
タツミ「うちの作者のことだから無いとは言い切れないねー」
アルス・タツミ『それでは本編スタートです。本日はメ欄もチェックで!』
【Stage.18 SAKURA MEMORY -Part2-】
続・リアルサイド [6]〜[11]
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>>387-391 ----------------- Real-Side -----------------
◇
俺が最初に胸に抱いたのは、慌てたように警告の電話を入れてくれたショウに対する感
謝ではなく、「また面倒ごとかよ」という唾でも吐きたくなるような気持ちだった。
次から次へとなんだってんだ。ここは「テレビゲーム」なんてハイテクな玩具が日常に
溢れてるような、平和な国じゃないのかよ。
それでも冒険者のサガとでも言うか、デートなんてシチュエーションにちょっとふわふ
わしていた俺の意識は、その瞬間に自動的に警戒モードに切り替わった。
「俺が襲われたことを……なんでお前が知ってるんだ、ショウ?」
昨日の晩ショウに会った時、俺はわざと、昼間に起きたことをひとつも話さなかった。
朝早くから花見に行ったことも、行った先で他のゲームサイドの男に襲われたことも、そ
のあと夕方までタツミの女友達の家で寝込んでいたことも……なにひとつ。
ショウの登場のタイミングがあまりに良すぎたから。まるで俺を見張っていたかのよう
で、少し胡散臭いものを感じてカマをかけたのだ。他のゲームキャラに襲われるなんて出
来事、知っていたなら必ず話題を振ってくるだろうし、逆になにも知らないなら、こいつ
を変に巻き込まない為にも俺からわざわざ口にするべきじゃない。
だがどちらでもなく、こいつは「知っていて」話を避けた。俺だって赤の他人を頭から
信じるほど単純じゃない。
「お前、何者だよ」
『なるほど、昨日そのことに触れなかったのは、僕を試したんですね』
電話の向こうでショウは感心したように溜息をついた。そして、
『なかなかキレるじゃないですか、かえって安心しました。少なくとも僕は敵じゃないで
すよ。まずは話を聞いてください、あなたに危険が迫っているんです』
自分のことなどどうでもいいとばかり、あっさり要点を戻された。気に食わないが、俺
が疑っていたこともショウは最初から想定していたようだ。
『あなたを襲った男について、僕も詳しくは知りません。僕と違うゲームナンバー出身の
人ですしね。ただ僕は、こっちに来てからすべてのドラクエをプレイしてるんで、あなた
とあのPCとの関連は知っています。あなたの子孫なんですよ、彼は』
「待て。昨日のあいつが俺の子孫だぁ?」
そう言えばあのサイコさん、アレフガルド流の騎士の礼を取ってたな。
「それにPCって……」
『ああ、僕はゲームサイドの人間のことを『プレイ・キャラクター』の略で『PC』と呼
んでるんです。子孫と言っても、あくまでゲーム上の設定ですし、深く考える必要はない
と思いますよ。とにかくですね、僕が今からそっちに迎えに行きますから、あなたはそこ
を動かないでください』
やはりショウは焦っている。まくし立てるような口調で、俺はロクに言葉を挟む余地も
ない。
『アルス君は今ひとりですか? もし誰かと一緒なら、うまく説得して離れてもらった方
がいいと思います。僕もすぐそちらに向かいますから……』
「だから待てっつってんだろ!」
怒鳴りつけると、はっと息を呑むのが聞こえた。
ったく、従うのが当然みたいに指示すんなよな、シャクに障る。俺への隠し事はもっと
あるだろうし、信用できない人間の言うことを聞く義理はねえぞ。
「今デート中なんだ、邪魔しないでくれるか」
『はぁ? あの、アルス君……?』
俺の投げやりな返答に、ポカンとしているショウの様子が手に取るようにわかる。
『た、確かに僕もいろいろと黙っていたことは悪かったと思いますが、それも会った時に
ぜんぶお話しするつもりです。今だけは信じてもら――』
「ウザいんだっつーの。あのイカレ頭が襲って来るかもってんだろ? そうなった時に考
えるからいい。もう面倒くせえのはたくさんだ」
こっちに来てからずーっとワケのわからん状態が続いてるんだ。ようやく穏やか〜なひ
と時を楽しんでるんだから、少しはノンビリさせやがれ。
はっきり言って、ストレス溜まってんだよバカヤロー!
『冷静になってください。女性と一緒というなら、片岡百合子さんでしょう? 彼女もあ
の男に顔を見られてるじゃないですか、危険なのはあなただけじゃないんですよ』
まあね。それどころかユリコちゃん、ボッコボコの返り討ちにしちゃったし。
「それもこっちでなんとかする。心配なら勝手に来いよ。どうせ見張らせてんだろ?」
『確かに昨日まではあなたを監視してましたけど……今朝になってやめさせたんです。あ
なたがまっとうな人だとわかったから、プライベートを尊重して。だからさっき、そちら
の居場所を聞いたでしょう?』
「あっそ。そりゃどうも」
自分でも少し素直じゃねえなとは思うが、今はまともに対応する気になれない。
互いに沈黙する。
時間にしたら数秒も無かっただろう。さっきとは違う性質の溜息をついて、ショウはワ
ガママな子供に言い聞かせるように言った。
『わかりました。でも、僕があなたを心配してるってことは信じてくれたんですよね?
僕も20分くらいでそっちに行けると思いますから、できればそのあたりにいて下さい、
お願いします』
ップ ツー ツー……
溜息をつきたいのはこっちの方だ。
断っておくが、俺はユリコをあぶない目に遭わせる気はない。ショウは離れろと言って
いたが、彼女もあのサイコ野郎の標的にされる可能性がある以上、かえって単独行動させ
る方が危険だ。
それにショウは最低でも、一日でユリコの身元を割り出す調査力と、人を使って俺を見
張らせるくらいの組織力を持っている。そこから逃げ出して未だに捕まっていないのだか
ら、あのサイコ野郎もそうバカじゃない。こんな街のド真ん中で後先考えずに奇襲をかけ
てくることはまずないだろう。
ならいっそ、いつ襲われるかわからずビクビクしながら隠れてるより、人混みに紛れて
動き回り、相手を引きずり出してやる方が対策を立てやすいと――
「なんか難しい顔してるね、アル君」
いきなりユリコが、ヒョイっと腰をかがめて下から俺を見上げてきた。
「うひゃ!? い、いや別に、たいしたことじゃないんだ、うん」
あのですねユリコさん。その角度だと、隙間というか、谷間というかがですね、よく見
えちゃうんですが。目のやり場に困るんですけど。
一瞬この女ワザとかと思ったが、どぎまぎしている俺をユリコはきょとんと見つめてい
る。もしかユリコちゃん、意外と天然系?
「待たせて悪い。冷めないうちに食べないとな」
慌てて席に戻ったが、ほら〜、どこまで考えたかわかんなくなったじゃねえか。
「今の電話、お友達から?」
無邪気に聞いてくる彼女に、俺は再び思考を巡らせた。どうすっかな。
この子は俺の正体もあのサイコ野郎の存在も知っているから、今さら無理に隠す必要は
ない。でも変に深入りさせて、俺たちゲームサイドの人間――ショウの言う『PC』が、
実はプレイヤーを「犠牲」にするつもりで現世に来ているということまで彼女に知られる
のはマズイ。
<ゲームは所詮ゲーム、絶対に安全だし、もちろん死ぬこともない。
クリアすればいつでも帰れるが、現実世界に戻れば二度と交換できない。
なのでわざとクリアを延ばすプレイヤーもいるらしい……>
俺がユリコにした説明だ。一番最初にタツミにも同じ内容を伝えた。
嘘は言ってないが、肝心なこともなにひとつ言ってない。あのお人好しが庇ってくれた
のをいいことに、俺はこの瞬間も、彼女をいいように利用している。
「友達じゃないんだ。役所の人でさ」
特に悩む間もなく、そんなセリフが出てきた。
「ああ、タツミになんか頼まれてたのね」
「そうそう。ほらアイツ、国から援助金みたいのもらってるだろ。その書類関係のことで
今の電話の人と、タツミの代わりに何度か話してたんだ」
いまさら嘘のひとつやふたつ重ねたところで同じだ。
「了解です。それにしてもタツミのヤツ、アル君を使いッパにするとはねー」
ユリコはまったく疑う様子もなくクスクス笑った。俺も愛想笑いで調子を合わせる。
「まあドラクエもお使いイベントが多いしな」
「もうアル君ったら、勇者様がソレ言っちゃおしまいじゃないw」
勇者様、ねえ……。
残りのハンバーガーを口に放り込むと、まだ温かいのに急に味気なくなったような気が
した。そんなのは無視して立ち上がる。
「ごちそうさま。次はどこに案内してくれるの、ユリちゃん」
彼女もハンバーガーの最後のひとかけらを口に放り込むと、指先についたケチャップを
ペろっと舐めつつ視線を泳がせた。こういうちょっとお嬢様っぽくない仕草は親しみやす
くて好感が持てる。
リアルタイム遭遇キター!
でも2問目わかんねぇw
「できるだけアル君のリクエストに合わせるよ?」
「あんまりこっちのこと知らないからな。普通でいいよ、デートの定番コースってやつ。
俺、職業が職業だから向こうでもあんまりそういう経験ないし」
「あらら、アル君モテそうなのに。よーし、そういうことなら任せなさい♪」
張り切ってガッツポーズを取るユリコちゃん。ウザかわいいってやつだな、うん。
悪いなタツミ君。まあ今日だけだから許せ。
今はまだ、もう少しだけ。
「普通」の16歳でいさせてくれ。
◇
色んな場所を回りたいから、遊園地のような一日がかりになる大型施設は避けることに
した。だいたい、安全を保証されたアトラクションや、動物園や水族館で人形みたいにお
となしい生き物を眺めてても、俺は全然おもしろくない。
まずは映画館に行った。女の子が好きそうな、異国の若い男女が恋愛がらみでごちゃご
ちゃやってる内容だった。日本語字幕(俺にとっては向こうの公用語)だったからいまい
ちストーリーが掴めない部分もあったけど、まあ概ね楽しめたかな。
俺がそう感想を述べると、ユリコは「ああ!」と声を上げた。
「ごめん気付かなくて! そうだよね、日本語が読めるわけないもんね」
「違う違う。それじゃさっき見てたバイトの書類も読めないだろ」
「あ、そっか」
この子やっぱ天然だなw
「実は俺、あんまり目が良くないんだよ」
「え……!? アル君って目が悪かったのぉ!?」
そこまで大げさに驚くことかね。
「もともと小さい頃から弱くてさ。それに俺の世界じゃ夜はロウソクかランプを使うしか
ないから、遅くまで勉強してるとどうしてもね」
冒険に出た最初の頃は、延ばした自分の指先も二重に見えるくらいひどかった。旅をし
てる間にかなり回復したが、まだ映画館のような薄暗いところで字幕なんて読めない。
もっとも向こうは視力を測る習慣が無いから、気付いてないだけで目が悪いやつは他に
も大勢いると思うが。
「じゃあこの世界だとなおさら不便でしょ。なんかゲームの世界より、細かいものが多い
気がするもの」
実はその通り。初めて外出した時も「標識」の多さに圧倒されたが、現実世界はそこら
中に「文字情報」が溢れている。無意識に片っ端から読もうとしてずっと目を凝らしてる
もんだから、結構しんどいんだよな。
ユリコは腕を組んで少しうなっていたが、すぐに俺の手を引いて歩き出した。
「よし、お姉さんが眼鏡をプレゼントしてあげよう!」
「いいの? マジで?」
「現実世界に来た記念にね♪」
ユリコちゃん優しいなぁ。でも以前、インテリ眼鏡ってアイテムを装備した時に仲間に
爆笑されたんだよな。
「俺に似合うかな」
「アル君くらいイケメンさんだったら、なにやったって大丈夫だって」
それは暗にタツミがイケメンだとノロケてることになるんだが、気付いてないな。
映画館から一番近い眼鏡専門店に行った。落ち着いた雰囲気の店内には、ズラリと陳列
された眼鏡が照明を反射してきらきら光っている。
ユリコが店員に話をつけ、俺は妙な機械の前に座らせられた。
「そこのレンズに片目をつけてくださ〜い。奥に何が見えてますか〜?」
妙に間延びした口調の女性店員が、機械を挟んで向かい側でなにやらカチャカチャ操作
している。言われたとおり見てみると、奥に確かになにかの映像は見えているんだが、映っ
ているモノの名称がなんだかわからん。
「ユリちゃん、ちょっと」
俺は目を離して、そばに立っている彼女の袖を引いた。小声で「アレなに?」と聞いた
ら、ユリコもレンズを覗き込んでから「気球だね」と囁き返してきた。
「えーと、キキュウ……ですね」
「二重に見えてますか〜?」
店員のおねーさんがまたカチャカチャなにか操作したら、
「おっ、きれいに見えた。すげえな」
「では反対側の目で見てくださ〜い」
そのあといくつか検査をやって、右が「0.2」、左が「0.8」という数値が出た。かなり
悪い方らしく、結果を聞いたユリコがまた驚いていた。向こうじゃそこまで不自由は感じ
てなかったんだけどな。
「フレームはこれがいいんじゃないかな?」
ユリコが差し出したのは濃い青色の金属製のやつで、全体的に細いタイプのものだった。
一見ヤワそうに見えるが、形状記憶なんとかって金属でできていて、多少なら折り曲げて
も元に戻るそうだ。
「少しくらい暴れても壊れないヤツ、ね?」
にっこり笑う。ゲーム世界に戻ったあとも使えるようにと、強度を重視して選んでくれ
たのだろう。チクッと胸が痛んだが、顔には出さずに素直にそれに決めた。かけてみると、
うん、そこまで変じゃないし。
「じゃあフレームはこれでお願いします。できあがりまで何日かかかるんですよね?」
え……?
「いいえ〜。これだと在庫がありますので〜、40分くらいお待ちいただければ〜」
良かった。何日もかかるんじゃ作ってもらっても無駄になる。
その頃には俺、たぶんこの街から姿を消しているだろうから。
眼鏡が出来上がるまでその辺をブラついて時間を潰すことにした。ずらりと並んでいる
店を片っ端から覗いて歩く。どれも向こうにはない珍しいものばかりでちっとも飽きない。
「こういう時の『金持ちのトモダチ』でしょ! 遠慮しないで買っちゃいなって」
というユリコちゃんに甘えさせてもらい、気がついたら服も靴もフルチェンジしていた。
どんどん増えていく手荷物が邪魔になり、一度駅に戻ってロッカーに荷物をぶち込んだと
ころで、あっという間に約束の時間になった。
さっきの眼鏡屋に戻る。さっきの店員のおねーさんに引換券を渡すと、ケースに収まっ
た眼鏡を持ってきた。さっそく取り出してかけてみると、信じられないくらいクリアに見
える。ってか今までずいぶん見えづらい生活を送ってたんだな、俺。
「世の中ってこんなにクッキリしてたのか……。本当に嬉しいよ、ありがとう」
「どういたしまして。こっちに来て見てみなよ、似合うよ」
ユリコに言われ大きな姿見の前に立つ。そこには、表通りですれ違った若者たちと大差
のない少年が、どこかぼうっとした表情で俺を見返している。
なんだかなぁ、俺ってもう少し賢そうな顔してなかったっけか。
ノシ
店を出て、さてこれからどうしようか、とユリコと顔を見合わせた。さすがにちょっと
疲れてきたな。
少し休もうか――と思った直後、すぐ近くから柔らかいメロディが聞こえてきた。ユリ
コが慌てたようにハンドバックを探る。彼女の携帯電話だった。
「戸田? どうかしたの」
カズヒロからのようだった。そういやカズの方は中途半端になってたっけな。ユリコの
方でうまく誤魔化してくれたようだが……。
「そうよ、けさ言ったじゃない。今日はタツミとデートだからって……え?」
急に彼女の顔がこわばった。
「それ誰に聞いたの!? なに? ちょっと聞こえないよ、あんたどこにいるの? 戸田?
――やだ切れちゃった」
「どうした?」
ユリコは戸惑うように俺を見上げた。
「戸田、アル君のこと知ってる」
「なんだって?」
「あたしは言ってないよ。でもあいつアル君の名前を知ってて、それになんか変だった。
なんていうか、泣きそうなっていうか……すごく怯えてるみたいな感じで」
まさか。
「場所も変だよ、声が反響してるみたいで、とにかく聞き取りづらいの。電波も悪くて何
回も途切れそうになってたし」
俺の中で不安がふくれあがっていく。嫌な予感。いや、ほとんど確信に近い。
プルルルルルル! プルルルルルル!
今度は俺の携帯が鳴った。予想通り表示は「KAZUHIRO」だった。
『……よう、ご先祖様。もうこっちの女をモノにしたのか。なかなか手が早いじゃないか』
確かに声が反響して聞こえる。それはヤツの絡みつくような口調と相まって、嫌でも暗
く湿った洞窟の中を思い出させた。
本日の投下はここまでです。
なんとか投下が終わりました。
実はうちのアルスは目が悪いです。ようやく書けました。
メ欄クイズの答えはこちら。
楽しんでいただけましたら幸いです。
問1:ファルシオン
問2:ルドルフ
問3:エデンの戦士たち
問4:オーディーンボウ
問5:ムオル
投下乙でしたー!
リアルタイムで遭遇したかったw
アルスって目が悪かったんですね。
サイコさんwカズヒロの方にいっちゃったんだ。
確かにあっちも顔見られてたしな。
今後どうなるかますます期待です!
497 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/22(月) 11:58:49 ID:YxR8LolE0
とりあえず50Gもっているか確認する
第二話 「洞窟探検はワクワクドキドキ!ヒデキ感激!」
パパスにボコられ重傷を負いながらも必死でパパスについていく。
村のみんながパパスが帰ってきたことにより喜びの声をあげる。
なんでこんなひどい奴が慕われているんだよ。どんな世の中だよ、コレ・・・
みんなは喜びながらパパスに駈け寄る。
村のみんなからタッチされたりし喜ぶパパス。こんな一面もあるのか。
だが、誰かがどさくさにまぎれて腐ったたまごをパパスにぶつけた。
「みな殺しだぁー!」パパスが叫んだ。
数十分後、村は一面、血の海になった。
パパスはたまごをぶつけた奴はもちろん、関係ない人まで殺したのだ。
俺はあわてて隠れたから無事だった。
神父が生き残っていたのが不幸中の幸い。神父がパパスに殺された人々を
生き返らせていく。だがパパスは問答無用で生き返った人々を殺していく。
パパスが村の人々を殺す→神父のザオリクで村の皆が生き帰る→再びパパスが殺す。
無限ループだよ。どこの地獄絵図だよコレ・・・
さらに数時間後、やっとパパスが落ちついた。村の人々が無事生き返っていく。
パパスは何事もなかったようにとある家に向かっていく。
なるほど、ここが俺の家らしい。サンチョとかいう奴に出迎えられて家に入る。
なんか子供がいたのでその子供と遊ぶことに。
なんで俺がガキの子守りをしなきゃなんねえんだ。あっ、俺は今子供の姿だからか。
この子はビアンカとかいう名前らしい。
今のこの姿の俺の年はこの子供より2歳年下らしい。ビアンカは8歳ということは
今の俺は6歳か。なんでガキになっちまったんだ・・・
ビアンカは俺に本を読ませようとするが難しい文字があるのか読みきれてない。
ビアンカは暗い表情で俺を見始めた。
「やっぱり・・・人生って辛いよね・・・生きてるとロクなことがないわ・・・・」
おい、お前の過去に一体なにがあった。お前、8歳だろ。
しばらくして、ビアンカは自分の母とこの村の宿屋に帰って行った。
パパスもどっかに出かけていった。面白そうなので追いかけてみるか。
だが家を出ようとする俺にサンチョが話しかけてきた。
「あんた主人公だったな?」
おい、なんで知ってんだ。いくらこの世界がムチャクチャだからって
俺が主人公って知ってたらまずいだろ。
「お前、大きくなったら、とある3人の娘から嫁を選べるぜ」
しかもネタバレかよ。やってらんねえ。
「まあ、嫁は1人しか選べないから余った2人、俺がいただいてもいいか?」
「・・・・」
「あれ?無言っことは3人とも俺がいただいてもいいっすか?」
俺はデブことサンチョに地獄に落ちろといいながら家を出ていった。
パパスが入った洞窟に向かったがパパスは俺がいけない通路を通ったため
パパスには会えないだろう。でも道具屋のおっさんがこの洞窟に行ってから
帰ってこないらしいので洞窟に入ることにする。
洞窟に入ると同じにスライムが2匹襲いかかってきた。
この前のようにはいかないぜ!と腹に注意しながらスライム一匹を倒した。
とりのこされたスライムはあきらかにびびっている。
だがスライムは堂々とした表情になると口を開いた
「よくぞスライムAを倒した。どうだ?スライムAの代わりに我が息子にならんか?」
すぐさまスライムBをチョップで倒した。
襲いかかってくる魔物を倒しながら洞窟の最深部にたどりつく。
岩にはさまれて動けないでいた道具屋のおっさんを助ける。
だがおっさんは礼を言わないで去ろうとした。
ムカツクのでひのきの棒でおっさんの脇腹をねらった。
今にも脇腹にひのきの棒が当たろうとしたその時!
おっさんの目がキラーンと光った(ように見えた)
おっさんは体をしゃがみひのきの棒を脇腹ではなく肩に当たらせようとした。
この洞窟の魔物なら一撃で倒せる程強くなった俺だ。当たったらひとたまりもないだろう。
バキーン!とおっさんの肩にひのき棒がぶつかった。
だがおっさんはなにも無かったようにニコッと笑った。
「ありがてえ。ちょうど肩がかゆかったんだ。サンキューな、坊主」
この人に一生ついていきたい。俺はそう思った。
おっさんが帰った後、洞窟の最深部になにかないかなと探しまわった。
宝箱を見つけ中身をとりだし帰ろうとする俺に誰かが話しかけてきた。
「ぷるぷる。僕は悪いスライムじゃないよ」
俺はスライムをサッカーボールみたいにドリブルしながら洞窟を出た。
道具屋のおっさんの所にいった。
「おう!さっきの坊主じゃねえか!そこの引き出しになんか入っているから持っていきな!」
引き出しを開けてみるとエロ本とておりケープがあった。
(どっちだ?どっちなんだ?)
エロ本を取りここを去ろうとしたらおっさんに引き止められた。
「そっちじゃねえ!ておりのケープだ!」
ちっ、そっちか。
村の人々の話を聞き終え家に戻る。
デブがお出迎えすると次にさっきの話をしてきた。
「なー、3人のうち1人でもいいからさ。くれよ〜」
またかよ。それにしてもうぜえな。
「黙れ。この金髪豚野郎が」
この言葉を言うとデブが怒りだした。
「ちょ、おま。金髪だと?金髪と言ったか今?金髪とかふざけんじゃねえぞ!
金髪と言った事、今すぐ取り消せ!前言撤回しろ!」
「いや、どこ怒ってんの!?金髪の他に怒るとこあるだろ!豚野郎に怒れよ!」
「あ、豚野郎は許すわ」
「許すのかよ!普通そこに怒るだろ!」
「てゆうか俺、金髪じゃないし」
「ツっコむのおせーな!」
「それよりも早く寝ろ!」
あれ?こいつツンデレ?こんな奴のツンデレなんて見たくねーよと思いつつ寝ることに。
おっさんが帰ったので最深部になにかないか探す。
宝箱を見つけて中身を取りだし帰ろうとすると誰かが話しかけてきた。
「ぷるぷる。僕は悪いスライムじゃないよ」
俺はスライムをサッカーボールみたいにドリブルしながら洞窟を出ていった。
道具屋のおっさんに会いに道具屋の店に行った。
「おう、さっきの坊主じゃねえか。そこの引き出しに入っているモン持っていっていいぞ」
話の分かる奴だ。だが引き出しを開けるとエロ本とておりのケープがあった。
(どっちだ?どっちなんだ?)
エロ本と決め持ち去ろうとするとおっさんが慌てて叫んだ。
「そっちじゃねえ!ておりのケープだ!」
ちっ、そっちか。
村の人々の話を聞き終え家に帰る。
デブがお出迎えしたと思いきや次にさっきの話をしてきた。
「なー、3人のうち1人でもいいからくれよ〜」
またかよ。それにしてもうぜえな。
「黙ってろ!この金髪豚野郎が!」
するとデブが怒りだした。
「ちょ、おま。金髪だと!?金髪とかふざけんじゃねえぞ!
金髪と言ったこと今すぐ取り消せ!前言撤回しろ!」
「いや、どこに怒ってんだよ!もっと他に怒る所あるだろ!豚野郎と言ったことに怒れよ!」
「あ、それは許すわ」
「許すのかよ!」
「てゆうか、俺金髪じゃねーし」
「いや、ツッコむのおせーな!」
「つーかさっさと寝ろ!」
あれ?こいつツンデレ?こんな奴のツンデレなんて見たくねーよと思いつつ寝ることにした。
間違えました。連投すいません。今日はここで終わりです。
こんな駄作でよければ書いていこうと思います。
何だかめちゃくちゃだ…
だがそれがいい
パパスwwwwwwww
サンチョwwwwwwwwww
こいつらwwwwwwwwwwwwww
続きを期待していますノシ
>>479の続き
ロマリアの夜の城下街を歩く。
この街はとても広く宿屋や酒場などが多く立ち並んでいて、どこを歩いてきたのか分からなくなってしまうほどだった。
遠くの方に微かに城らしき建物の頂上部の明かりが町並みに見え隠れしている。アリアハン城より大きいかもしれない。
夜だと言うのに人通りは少なくなく、旅人とすれ違うこともしばしばだったが皆立派な武器防具を身につけていた。
きっとあのくらいでないとこの周辺のモンスターには太刀打ち出来ないのだろう。
俺も銅の剣では少し不安ではあるが、サキは木刀でそんなモンスターを軽く蹴散らしてしまえるんだからまだ我慢すべき所か。
強い武器防具に頼っていては強くはなれないと言うし。
俺は適当に雰囲気が良さそうな酒場を見つけ、中で夜食兼情報収集をすることにした。
酒場に入る前にサキは少し躊躇っていたが例のごとく鼻に洗濯挟みを付けて中に入った。
俺は見兼ねて外で待ってろと言ったがサキは首を横にフルフルと振った。
店員が不思議そうにそれを見ていたが、「お前ら笑ったら死ぬぞ」と言うオーラを俺が出していたので誰も突っ込んではこなかった。
ルイーダ姉さんの作った弁当より遥かに劣るであろうメニューを適当に注文し、俺はそれを瞬時に食べ終えていよいよ本題へと入る。
「強い人。」
どう聞けばいいか迷ったがこれで十分な筈。
こんな世界だ。強い奴は嫌でもすぐに名前が知れ渡る。アリアハンで俺がそうだったように。
俺は複数人に尋ねた。
尋ね終えると、俺は自分の中の戦士としての心がその名前の挙がった者にすぐにでも会いたいと心臓を高鳴らせた。
なぜなら酒場にいた一般客、旅人、店員全てが口を揃えて一人の男の名前を言ったからだ。
その男の名前は「カンダタ」と言った。
「カンダタ」
詳しく話を聞いてみるとその男は大盗賊の頭であり、この国では知らぬ者はいないほどの人物だった。
悪名高く、あろうことか先日もこの国の王様から王の冠を盗んで逃走したらしい。
この国の兵士ではまったく歯が立たず、捕らえようとした兵士数十名が斧で斬り殺されたという話だ。
熊の様な大柄で巨斧を軽々と振り回し、人間をまるで紙屑の様に斬り殺す様を見た者は、
「あれは人ではなくモンスターだ。」と口を揃えて言う。
「アンタもしかしてやっつけようとか思ってるのか?」
一人の酔っ払った酒場の客が聞き返してきた。
「いや…、少し興味があっただけなんだ。」
俺は微妙な返し方をした。……嘘だな…。
「だよなぁ。悪いけどアンタ強そうには見えないしなぁ。なっはっは。」
…アリアハンでもよく言われたがやはりここでも言われたか。まぁどうでもいいことだが。
そんなことよりカンダタとか言ったか。
話しから察するに俺より上か…。例え俺より上だとしてもサキには劣るだろうか…。
ロマリアでモンスターと恐れられる盗賊の頭カンダタか…
アリアハン一の戦士の俺が怖じけづくほどの勇者の娘サキか…
………そうか…。俺が戦ってみたいんじゃなくてそのどちらが強いのか見てみたいのか。
…くそっ。なんだよ。俺ってこの程度の人間だったのか………?
「…そいづは…どこに行けば会える…?」
今度はサキが酔っ払いの客に聞き返した。やはりサキはそのカンダタと戦ってみたいのだろうか。
その酔っ払いは、「なんだこのガキは?」という表情を見せたがその少女の背中に差してある2本の剣をマジマジと見ると答えた。
「なんだい嬢ちゃん?あんたがカンダタを倒すなんて言うじゃないだろうなぁ?なっはっは、まさかな。」
「………。」
いつもの様に表情を変えずに真っ直ぐ相手を見据えたまま自分の問いを待つサキ。
「けっ。おもしれぇなぁ。アンタらよく見ると強そうじゃねえか。アンチャンも傷だらけでイイ男だしよぉ。」
「………。」
俺も無言で返してやった。酔っ払いは少し考えた様子の後、手に持つグラスの中のアルコールを一気に飲み干した。
「…っうぅっく。しゃあねぇな。カンダタってのは盗賊団だ。部下を何人か従えている。この街では無い場所にアジトがある筈だ。」
「どこにある?」
「それは分からねぇ。だがこの国の情報によれば北の方からやってくるってことは確かなようだ。」
「北か。曖昧だな。」
「北に行けばガザーブってぇ村がある。知ってるか?」
「いや…。」
「まぁ行ってみることだな。行ったところでどうにもならないかもしれないがなぁ。」
「そうか。ありがとう。」
「はぁ〜あ。俺のせいで死人が出ちまったぜ。若い男女が2人もよぉ。飲まずにいられるかちくしょぉ〜。マスター!酒!」
その酔っ払いは酒場を後にする俺達にわざと聞こえるかの様に酒のお代わりを注文していた。
酒場を出てから俺は、当初の目的が変わってしまっていたことに気が付いた。
俺達はこの街へ強い仲間を探しにやってきたんだった。
それがいつの間にやらカンダタとか言う盗賊の頭に興味が奪われて、戦うか戦わないかの問題になってしまっていた。
どうする?と若干鼻が赤く跡が残っているのを気にしているかの様に、手で隠しているサキに声をかけた。
サキは、あまり自分の顔を見るなと言うような目つきで俺を見た。
…そんなことを気にする奴だったか?やはりこいつの行動には理解し難いものがある。
「…何を…言ってる?」
「いや、だから目的変わっちまってるだろ?」
「…変わってなどない。」
「あ?」
「そいつを…仲間にする。」
「は?」
俺にはそんな発想出来る筈もなく、理解するまで少し間が空いてしまった。
「話し聞いてたのかお前!?盗賊の頭だぞ?極悪野郎だぞ?人も殺してる。」
「関係無い…。」
「か、関係無いことあるか!そんな奴仲間になるわけないだろ!?」
「力でねじふせれば…どうにでもなる…。」
「な!?」
これが女…いや、勇者の娘の言う言葉なのかと俺はその言葉にしばらく度肝を抜かれていた。
強い故に恐ろしい奴に目をつけられたもんだなカンダタとやらも…。
果たしてどうなるんだろうな…。
出発は明日。俺達は宿に戻り明日に備えて早めに眠りに着くことにした。
この先話がめんどくさくなりそうですがよろしくお願いします。
サキと主人公気に入ってもらえてよかったです
サキー!!俺だー!!決闘してくれー!!
一応検討しておきます。
雨がひどい。少しでもアスファルトがへこんでいるところは水たまりになっていて、革のブーツがびじょびじょになる。
ジーンズの膝が色濃くなって、夜道を照らす青い街灯の光りを黒く吸い込んでいた。私は走っている。
夜なのにサングラスもとらずに、ただひたすら自宅アパートに向かった。
組んでいるバンドのボーカルが死んだ。交通事故だった。新聞やニュースを見れば、毎日必ず一度は目にする人の死亡要因だ。
自分やその周りには降りかかる悲劇ではないと、誰もがたかをくくって生きている。
明日になれば、新聞の地域欄に彼が死んだという簡素な記事が載る。
葬儀を終えて、練習スタジオキャンセルがどうしてもできないからと密室でギターを引き続けた私も、
ドラムやベースといった私以外のメンバーも、無表情に意気消沈して時間通りに解散した。
深い水たまりに左足がはまった。高く上がった雨水が細い柱のように伸びてきた。「え?」と思った瞬間、
水は渦を巻き私の腰を絡め取ってずるんと足のつかない感覚へ引きずり込んだ。
反時計回りの激流の中、何が起こったのかもわからず回らない頭でドブにでも落ちたのかと考える。それにしては深すぎた。
脳味噌がかき回されているように意識が体から振りほどかれて、ぱちんと暗転した。
目蓋を開けると視界は白い太陽光に照らされて明るかった。なんだか手足が左右上下ばらばらに引っ張られているような疲れがある。
それでも頑張って体を起こして周囲を見渡した。胸までかかっていた薄い布団をとっさに握り締める。
ここは私の部屋じゃない。
木の板を隙間なく打ち付けた壁に、シンプルな額縁に入った風景画が飾られている。
曇りのないガラスがはめ込まれた窓枠はかなり質素な作りになっていて、必要最低限の技術で固めた建築物、
その一室に置かれたベッドに寝かされていたようだった。
背の低いタンスがベッドの横に置いてあった。手作りらしいリリアンの上に、サングラスがある。
もう少しよく部屋を見回すと、タンスの引き出しは少し開いていて、黒光りする何かがある。
中を覗くと、さっきまで着ていた革ジャンが無理やり畳まれて入っていた。
ドアが開く音に飛び上がる。あわててサングラスをかけてドアを凝視していると、中年の男性が部屋に入ってきた。
誰だろう? 見たこともない。鮮やかな黄緑色の帽子にそろいの上下をあわせ、白いエプロンをつけている。
エプロンはところどころ、食べ物の染みなんかで汚れていた。食事の支度でもしていたんだろうか。
「おや!お目覚めになりましたか?で、どうです?体のぐあいは」
男性の服は、映画や漫画でちらりとしか見たことのない装飾が施されていた。
装飾とは言っても、やっぱりそれはほんの小さなアクセントにしかならない程度のもので、私が見知ったデザインとは違う。
「平気、です。あの、ここは」
「ここはイムル。イムルの旅の宿ですよ。あなた、この村から西にある湖に浮かんで漂っていたんですよ?
よく溺れずにいましたねぇ、あんなに重たい服を着て」
たぶん、彼は私の革ジャンのことを言ってるんだと思う。湖に浮かんでいた、って……なんで沈まなかったんだろう。
疑問だけれど考えたって仕方がない。男性はこの「旅の宿」のご主人らしい。あなたが私を助けてくれたのかと尋ねると、
自分ではないという。隣の部屋に止まった「ライアン」という王宮戦士が、湖に浮かんでいた私を引っ張り上げて、
ここにつれてきてくれたのだそうだ。
湖の中にいたのにどうして沈まなかったんだろう、ということよりも、もっとわからないことがある。
イムルなんていう地名、聞いたことがない。西方に湖がある村なんて日本中探したってそうたくさんはない。
それに、周囲を形作るこれらのものたち。ここは日本じゃない。それだけしかわからない。
宿のご主人がいなくなってから(何かあったらいつでも下の受付に来てくれと言ってくれた)、持ち物を確認した。
水たまりで溺れたときに私が持っていたのは、シザーケースに入れたお財布と携帯電話、市販の鎮痛剤にサングラスのケース、
ジーンズの後ろポケットに入れてたラークマイルドとライター。
それから、命と家族の次に大切なジェームス・バートン・テレキャスター。
湖に浮かんでいた、ってことは……携帯電話とテレキャスターはまさか……両方とも……?!
でも、丁寧に革ジャンと一緒にしまってあったシザーケースの中は渇いていて、
革製のお財布もサングラスのケースもちっとも傷んでいなかった。ベッドの上でシザーケースをひっくり返す。
出てきたのは、お財布・サングラスのケース、のみ。鎮痛剤と携帯電話がない。部屋中よく探してみても、
テレキャスターは見つからない。
お財布を開けて見てさらにびっくりしたのは、ひとつめに硬貨の形や紙幣の絵柄がまったく違うこと。
「100G」と印刷された紙幣が6枚と、「10G」の文字と装飾の硬貨が5枚、それから、「1G」の硬貨8枚。
お財布に入れてたのはだいたい6500「円」ちょっとだったはずなのに。
ふたつめに、クレジットカードや会員証なんかのバーコードや磁気読み取りつきのカードがなかったこと。
人の手でチェックされたり、スタンプを押すようなのは無事だった。
私服に着替えてから一階に降りて(柔らかい布の服にいつのまにか着替えさせられてた。誰がやってくれたかはあえて考えない)、
さっきのご主人にテレキャスターやカード類の特徴を説明してそこらで見なかったか聞いてみるも、そんなものはなかったと返された。
ジーンズのポケットに手を入れると、タバコの箱は入っていたのにライターだけが見つからない。
スタンプカードやタバコはちゃんとあるのに、どうして他のものは出てこないんだろう?
むーむー唸りながら考えていると、二階から背の高い男性が降りてきた。
鉄製の鎧兜に身を包み鋭い槍を手にしたその人は、青くて丸いものに黄色いぱやぱやがたくさんついた奇妙な生き物と一緒だった。
「おお、お嬢さん、この方があなたを助けたライアンさんですよ」
口ひげをたくわえた「ライアン」さんが、私のほうを見た。まんまるい目をくりくりさせた青いのも一緒になってこっちを見ている。
お礼をしようと向き直ると、彼は私に対して一礼し、強い意志を秘めた眼差しを鉄兜を脱いで見せた。
得体の知れない、それでもとても強くてまっすぐな「何か」に胸を貫かれた気がした。
「ご無事なようで何よりです。私はバトランド王宮戦士のライアンと申します」
無駄な線ひとつ描かない会釈に気をとらわれていたが、私もすぐにお礼と自己紹介を口にした。
「助けていただいて、ありがとうございました。私は『メイ』です」
「『メイ』殿、ですな」
彼が「王宮戦士」であることは聞いたけど、さっきこの胸を貫いたように感じたのは、
ライアンさんが持つ地位や、相手をねじ伏せるための強さとかそんな安っぽいものじゃない。
私が今まで覚えた言葉や現象を使っても、けっして説明のつかないような雰囲気を、彼は持っていた。
Lv.1 メイ
HP:14 MP:0
E −
E −
E 革の服(革ジャン)
E −
E サングラス
戦闘呪文:−
所持金:658G
※テレキャスター=アメリカのギター会社フェンダーのエレクトリック・ギター
新参者ですが、以後よろしくお願いします。
新人さんktkr
機械系はダメなのかなーテレキャスで戦うとか想像したw
>>516 期待しちょります
>>517 >テレキャスで戦うとか想像したw
俺漏れもw音撃とか斬鬼さんに変身とか妄想したw
>>512-515の続き
「だいじょうぶ?落ち着いた?」
「宿の主人がミルクを温めてくれたが、……飲めるだろうか?」
イムルの宿屋でライアンさんと対峙して、ホイミンくんという名前のホイミスライムが挨拶をしてくれた瞬間、
緊張の糸が切れて混乱のドツボにはまりこんでしまった。「ここはどこ?どうしてここにいるの?」という、
忘れよう忘れようとしていた不安要素が、ライアンさんを前にして崩れ落ちてきたみたいだった。
多分、ライアンさんが強く優しい人で、なおかつ正しい道を歩んでいるから安心しちゃったんだと思う。
うぅ……まさかハタチをすぎてから人前でわーわー泣くことになるなんて。恥ずかしいよ恥ずかしいよオゥイェーア。
ひとしきり、イムルの旅の宿のカウンターの前で泣いてから、私はありのままこの身に起きたことを彼らに話した。
すると、あまり喋るのが得意ではないライアンさんに代わり、ライアンさんが私を湖から助け出したときのことを教えてくれた。
最近、イムルを含めこのあたりを統治しているバトランドは奇妙な事件でもちきりなんだそうで、それもタチの悪いことに、
「子どもが神隠しにあうように、ふっと目の前から消えていなくなってしまう」というものだった。
ライアンさんとホイミンくんは手にした情報を元に、イムルの村の西にある塔が怪しいと目論んでいたけれど、
塔は湖に囲まれて人の足では近寄れない。イカダを運ぼうにも、距離があり魔物も出るから難しいということだった。
魔物だとか、ホイミスライムだとか、神隠しだとか、そういった件についてはもう割合してしまう。
目の前で見せ付けられている「青いのに黄色いぱやぱや」の生物とか、その生物が唱えた不思議な魔法とかは、
もう喋るよりも頭で整理するよりもさっさと見たほうが早いもん。
それで、ライアンさんたちは「とりあえず、塔の近辺に行って様子を探ってこよう」と湖畔を散策することに決めた。
私を見つけた経緯だった。
「私が湖で仰向けに浮かんでいたメイ殿を岸に上げた瞬間、メイ殿の衣服や荷物を濡らしていた水が蒸発した。
何事もなかったかのように、メイ殿はさらさらと渇いた髪を風になびかせて眠っていたのです」
「あれ、魔法の匂いだったよね。ぼく、わかるもの」
ぬるくなりつつあったホットミルクのカップを握り締める。カップの熱とは裏腹に指先が冷たくなった。
魔法の匂いがする得体の知れない存在になってしまった自分を、せめて私だけは認めなきゃ。
「魔法ってね、魔力を発するだけじゃダメなんだ。魔力を受け取る力と、発する力。
両方を持って理解して、初めて使えるんだよ」
ホイミ、と口にしてライアンさんのケガを治して見せたホイミンは、
湖から引っ張り上げられた私が放つ魔法の匂いの説明をしてくれた。魔法、ねぇ……。なんかもう、信じられない。
つい昨日までは、マーシャルのアンプを力ずくで運んで、ギターのチューニングしてギュインギュイン弾いてた人間が、ね?
今は青くて黄色のぱやぱやに、人間が夢見続けてきた幻想の力について講義を受けているのですよ。
「私のような武術を得意とする者は、たいてい魔力を発する力に長けていないからその道を選んでいる。
メイ殿は、ホイミンが言う限りでは、魔法の才が多少なりともおありなようだ。異界から来たにも関わらず。
目が覚めてここにいたのには、何か特別な理由があるように思いますぞ」
んー……、ああ、なるほど。
インターネット回線でメールやネットするときは、受信と送信の両方が出来て初めて役に立つもんね。
送信ばっかりしてたら相手のメールの内容なんてわかんないし、受信ばっかりしてたら自分の言いたいことが言えないからか。
魔法も、要は同じってことかなぁ。
「魔力を受け取ることが出来ないと魔法の本質そのものを得ることができないから、受け取る力もなきゃいけないと?」
「そうそう!例えば今ぼく、魔法を唱えたよね?魔力を受け取る力がある人は、誰かが魔法を使っていたり、
何かから出てる魔力を感じて『魔法や魔力ってこういうものなんだ』って、感じられるの。
それで、魔法や魔力を理解できたら、今度はそれを自分から出すんだ。それが『魔力を発する』ってことなんだよ」
……えーと。うん。あれか、大切なのは習うより慣れろってことですね。
「メイさん、魔法は使えないの?使ったこと、ない?なんだか素質ありそう〜」
眉間を寄せてやっぱりむーむー唸っていた私の顔をホイミンくんが下から覗き込む。
「いや……私のいた世界は、魔法なんてなかったから。素質なんてないよ。何の変哲もないただのギタリストだもん」
「おお、それなら魔法の素質があるというホイミンの言葉にも、納得がいきますな」
今までやけに静かにしていたライアンさんがずい、と身を乗り出した。
「音楽と踊り、詩文と言葉は魔法を介するものたち。内に秘めた力を外に出すための、最大の方法だと言いますぞ。
メイ殿はおそらく、音楽を奏でることによって、この世界の魔法に似た力を使うことが出来たのでしょうな」
「それはありませんよ」
自分で思っていたよりもずっと、即答で否定が出てきてしまって驚いた。
ステージの上で、音や言葉に乗せて色んな人を力で引き寄せていたのは、私ではなくて―――「彼」だ。
「そんなことないよ!だったら、ぼくが教えてあげるから、魔法つかってみて!ね!?」
必死なホイミンくんに苦笑しながら付き合ったら、あっという間に「ホイミ」を習得してしまった。
自分のギターの音色を、良い方向に自認しているような気がした。
昨夜、ホイミンくんから教わったのは「ホイミ」と「メラ」の二つの魔法だった。
口と声で魔法の名前である「呪文」を唱え、それに魔力を乗せて相手に飛ばす。それが「魔法」というものだった。
私にはなかなかの魔法の才能があるらしい。もといた世界に戻るのにも魔法が必要ならばと、
魔力めいた神隠しの真相を探り帰路へのヒントを掴むため、ライアンさんたちに同行させてもらうことになった。
ちっちゃいころは女の子の大半が、ピンクや赤のふりふりがついたお洋服を着て、星やハートや三日月のついた
魔法のステッキを持って、かわいい魔女になることを夢見ていた。
私だって、三歳や四歳のころからハードロックやヘヴィメタル一色だったわけじゃない。
今でも魔法が使えるなら、そういう「かわいい」杖を持ってシャララーンと悪いやつをやっつけたい。
……なんて、いい大人が持つもんじゃない考えを持っていたのは、つい三時間ほど前のことで―――。
「しゃあッ!」
力むときの妙なクセとなってしまった掛け声と共に私が振り下ろしたのは、ライアンさんとお揃いの「鉄の槍」。
有り金をはたいて武器を買おうと店のラインナップを見て、あんなに重たそうなもの絶対に扱えない!
って思ってました。最初のほうは。だけども悲しいことに、アンプやスピーカを移動させたりとか、
片手にマイクスタンドを三本とか四本とかまとめて持ったりするとか、
そういった肉体労働のおかげで、私はこの世界の重い武器をありがたくもないことに扱えるみたいだった。
これならテレキャスターでギャンギャン騒音聞かせたところをヘッドやネックで殴りかかったほうが私らしい気がするけど、
見つからないものはもう仕方ない。ものすごく悲しいけど。給料半年間貯金しつづけて買ったやつだけども。
ライアンさんのお下がりの「うろこの盾」をもらいうけ「鉄の槍」を手に、私たちは湖の塔の地下を目指している。
ライアンさんがホイミンくんと出会った古井戸で見つけた靴は魔力がこもったものだった。
ホイミンくんを左腕にしがみつかせ、右腕で私を抱きかかえて靴を履いたライアンさんは、二人と一匹分の体重なんて
ものともしないで重力に逆らい大空を舞った。飛び上がった瞬間、稲葉浩志にも負けないぐらいのシャウトをしちゃったのは、
まあここだけの話ということで。
塔なのに地下へ向かうのはなぜか。それは、空飛ぶ靴で着陸したのが塔の屋上だったことと、
屋上から大目玉が子どもを無理やりつれて階下に向かうのを見たから。
長い階段を下りて地下に向かうためには、まず入り組んだ塔の内部を探索して階段がどこにあるのかを探さなくちゃならない。
それに付け加えて、塔には地上とは比べ物にならないほど強い魔物がたくさん出る。
さっきからぜんぜん息が整わない私に、ライアンさんは木製の水筒を差し出しながら言った。
「メイ殿は、力があるのに体力がありませんな。気をつけてください。体力の無さは打たれ弱さの証です。
けっして無理をしませんよう」
呼吸のたびに肺からびゅうびゅう嫌な音がするのは十四歳のころから。ライアンさんたちと同行するのを決めたとき、
覚えたてのメラで残っていたタバコすべてに火をつけて、一口ずつだけ吸ってあとは全部燃やした。
ずいぶんと突拍子のない理由で禁煙することになったけど、これから毎日こんな長距離移動が待ち受けているなら、
タールやニコチンなんて吸ってられない。バンドマンはボーカリストじゃないかぎり、大抵の人が喫煙者。
私も例外じゃないわけで、鼻でらくらく呼吸をしているライアンさんとは違い、さっきからゼーゼー言いっぱなし。
「重い装備が出来る人って、普通は打たれ強いはずなんだけどなぁ」
「常識が通じない人間も中にはいるよ」
気づかれないようにしていたのだろう、ソロ〜リと後ろから近寄ってきたダックスビルを槍でなぎ払う。
トドメに遠距離からメラを打って完了。着々と強くなるのが実感できて、元いた世界でよく味わってた歯がゆさも
忘れちゃいそう。
……ギターなんて、元から弾けたわけじゃないもの。ボーカル下ろされてギタリストにされて、弾けなくて弾けなくて。
「……メイ殿?どうなされた?なんだか遠いところを見ていたようだが」
「っあ、いや、なんでもないです、ごめんなさい」
危ない危ない。魔物が出るところで昔のいろいろを思い出してる時間はないんだった。
「だいじょうぶ?痛いの?ホイミする?」
心配そうにこっちを見つめるホイミンくんが黄色のぱやぱやにホイミの魔力を宿し始める。違う違う!
痛くないから! 大丈夫だから!
微笑みながらも気を抜かないという、そんな矛盾に張り詰めた意識を蹴破ったのは、
ライアンさんの立てる足音が突然早く、強くなったことだった。
「ゼノン!」
ライアンさんが叫んだのは、人の名前らしかった。ホイミンと一緒に、走っていくライアンさんを追いかける。
壊れたバトランド王家の紋章がついた鎧の兵士が、床にはいつくばっていた。鉄の鎧を鋭い爪が抉ったあとがあり、
そこに至近距離からメラを打ち込まれたのだろう。肌が焼け焦げ、赤とピンクの内臓がはみ出している。
ホイミンくんがぎゅっと目をつぶった。私も震える手を隠すためにホイミンくんを抱きしめた。
倒れていたのはライアンさんの仲間のバトランド王宮戦士だった。戦士は語った。
この塔の地下を拠点とした魔物たちは、世界を魔の手から救う勇者の復活を恐れているらしい。
いずれ成長し強くなる勇者を子どものうちに始末しようと、魔族たちは躍起になっているのだそうだ。
子どもたちの遊び場になっていた古井戸に、さっき履いてきた空飛ぶ靴を置いておけば、あとは待つだけというわけ。卑劣極まりない。
「……行こう。この下だ」
友の死に唇を噛み締めるライアンさんの後ろで、ホイミンくんが遺体にホイミをかけていた。
せめて死した後は人間らしくきれいに、と。
「……何がいいとか悪いとか、区別が付け辛い世界なんだね」と独り言を呟いて、ライアンさんに続いた。
破邪の剣と鉄の槍の切っ先が、揃って「ピサロの手先」と名乗ったバケモノの喉元へ突きつけられる。
噴出される炎を避けて、召喚された大目玉たちを突き刺し、殴ったり殴られたりしながら決着をつけた。
ライアンさんは戦士というだけあって、槍づかいもすごかったけれど、塔の途中で手に入れた破邪の剣の扱いはさらにすごかった。
無駄な動きひとつせずに、最低限の一閃で敵を斬る。槍のなぎ払いでよろめいた大目玉たちを一刀両断にするさまは、
まさに剣の神様だった。
「このまま去るか?何もせず、今後も悪事をはたらかないと誓うなら、今ここで見逃そう」
ライアンさんの重く厳しい声に、ピサロの手先は涙を流して頷いて、子どもたちを閉じ込めていた牢の扉を開けた。
「さあ、おいで。もう大丈夫だ」
殺し合いの目をやめたライアンさんが、優しく子どもたちに手を差し伸べた。
背後から火の息の熱気が襲い掛かってくる。とっさに盾で身をかばった私とライアンさんの後ろで防御したホイミンをすり抜け、
ピサロの手先は安心感に顔をほころばせていた子どものうちの一人を掻っ攫い、まるでゴキブリみたいに階段を上っていった。
「しまった!」「嘘っ!?」「たいへんだぁ!」
三者三様の言葉を口に、ピサロの手先を追いかける。屋上まで追い詰めたはいい。だけど、ピサロの手先が持っている
杖の先端は細く小さな首に当てられていて、今にも頚椎をへし折ってしまいそうだ。
「うわあぁあん!助けてぇ!」
「うるせぇぞクソガキ!……おい!武器を捨てろ!」
どこの世界にもこういうタイプはいるものなんだ。と、やけに冷静な頭で思いつつ鉄の槍を手放した。
ライアンさんも同じように破邪の剣を捨てるけど、戸惑いとかうろたえた様子なんて一切無い。
「メイ殿」小さく、私とホイミンにしか聞こえない声でライアンさんが言った。
「メラ!」
さっきの戦闘では肉弾戦ばっかりで使わなかった魔法を、今初めて発動する。火球はピサロの手先の顔面にぶち当たり、
断末魔によろめいて床のないところへとフラフラ後ずさっていく。武器を拾い、みんなで奴と子どものほうへ走った。
「あっ……あ……わぁあ!」揺らぐ視界に子供が叫ぶ。
ぐらり、とピサロの手先が子供を羽交い絞めにしたまま床を踏み外す。子供を拘束する腕の力は緩まない。
吐き気がするのをこらえて、私は鉄の槍をピサロの手先の胸に突き刺した。ライアンさんが子供をしっかり捕まえる。
うん、まあ、お約束というかなんというか。この下は湖だから、死にはしないだろうけれど。
「一緒に落ちるとか、本末転倒もいいとこだー……」
せめてもの衝撃緩和に、事切れたピサロの手先の死体を下敷きに落ちていく。湖水に飲み込まれたのを認識すると、
驚いたことに痛みもショックもまったくないことがわかった。
早く岸に上がって、ライアンさんたちを待たなきゃ。と、思った矢先。
私の頭からつま先まですべてを包み込んでいた湖水が、突然うねり始める。波は徐々に丸まり、反時計回りに渦を巻く。
死の匂いを含んだ雨の降るあの日、私を飲み込んだ水たまりと同じ動きを湖は始めた。
もしかしたら、もとの世界に戻れるのかもしれない。テレキャスターと携帯電話と鎮痛剤は見つからなかったけど、
そんなものまた買えばいい。今度はテレキャスターじゃなくてストラトキャスターにしよう。
鉄の槍の柄とうろこの盾の取っ手を握り締め、続かなくなる呼吸と意識を早く手放そうと目を瞑った。
遠くでライアンさんの声が聞こえた気がする。本当はすぐにでも彼らのところに行きたい気分だったけど、
この渦は私を解放してはくれなかった。
「メイ殿!メイ殿ぉー!」
メイが落ちるのを、ライアンは確かに見ていた。子供を捉えたまま塔から落ちて自害しようとしたピサロの手先にトドメを刺し、
メイはそのまま落ちていった。あの場合、ああするしか子供を助ける方法はなかった。ピサロの手先は、
ライアンたちに討たれ死ぬのなら、せめて子供一人ぐらい道連れにと考えていた。メイのメラでひるんだ隙に子供だけを
連れ戻そうとしたが、執念の強さは子供を拘束する力の強さとなって現れていた。完璧に殺さなければいけなかった。
ライアンはほんの一瞬、躊躇したのだ。あの高さから、トドメの一撃のはずみで落ちてしまうことに。
しかし、メイは躊躇うことなくピサロの手先に鉄の槍を突き刺した。まるでライアンが子供をしっかり受け取ることを
確信していたように。
湖にメイが落ちたのは見た。しかし、一向に彼女は上がってこなかった。
塔の屋上から飛び降り、真昼の太陽がきらめく湖面を見つめたが、物影ひとつ浮かんではこなかった。
ただひとつ―――湖の中が不自然に光っていた。白っぽい糸が集い、丸くなり、渦を巻いているように見えた。
あれはまるで、書物でしか知らない移動魔力の集合体―――旅の扉のようだった。
第一章 完
Lv.6 メイ
HP:21/26 MP:27/38
E 鉄の槍
E うろこの盾
E 革の服(革ジャン)
E −
E サングラス
戦闘呪文:ホイミ・メラ
所持金:345G(湖の塔での戦闘で獲得したゴールドを全額受け取っている)
テレキャスターで戦おうとはメイ本人も考えていたみたいですw
二章への移動は年明けに書かせていただきます。それでは、よいお年を!
おおお!!次は二章か…!
楽しみにしてます
>>428の続き
○ヘルポイの歌姫○
タケ「うっひょー!ついに来たでぇ!!ヘ・ル・ポ・イ〜♪イヤッッホォォォオオォオウ!」
ムーン「ちょっとぉ!何でそんなに浮かれているのよ!」
タケ「ラゴスとアンナに会えるんやで!!新しい出会いが楽しみや!」
もょ「タケのばあいはアンナめあてとおもうけどな。」
タケ「余計な発言すんなや!アホ!しっかしツッコミが冴えてきたなぁ。もょは。」
ムーン「タケに全ての原因があるから仕方が無いわね。」
タケ「何で俺が原因やねん!しっかしムーンもカリカリしているし・・・もしかしてせ・・・・」
バキッ!!
タケ「痛い><」
ムーン「あら、ごめんね。腕が当たっちゃった。」
こいつ絶対にワザとやりやがった。全くジョークが通用しないから困る。
銀の鍵と金の鍵を使い街中へ入場した。
ヘルポイの町は銀の鍵と金の鍵が通行許可証みたいな感じで両方持っている俺達はVIP待遇で入場できた。
金の鍵だけのみなら入場料を支払い、(それでもかなり高いと思うくらいだが)身体検査をされてしまう。
銀の鍵だけのみなら囚人服みたいな番号入りの服を強制的に着せられる。
建前は犯罪防止のためと言われるのだが別の意味も込められていそうだ。
町の人々の会話が聞こえてくる……………………
「おい!今日はやたら人が多いな。」
「無理も無いさ。今日から『ヘルポイの歌姫』のお披露目会だぜ!
外部からの人間が多いから警備も厳重にしているからな。」
「しかし囚人服着てまで見たいとはイカにも罪人ですってアピールしていると思うんだがね?」
「なーに。そこまでしてでも人間離れした美しい歌を聴きたいのだろう。」
お披露目会=歌姫のコンサートのため警備が厳重ってことか。
話をこっそり聞いているうちに分かった事はこの町は紹介制でじゃないと入場できない。
紹介された人間はお金を納めて銀・金そして金銀の両方の鍵を得る事が出来るのだ。
タケ「しかし俺らがここに入れたのは運命的やったって事かい。
(MLMとほざいてネズミ講のと同類なシステムやな)」
ムーン「ここまで厳重なんて・・・・・ある意味怖いわね。」
もょ「お、おい!あれはなんだ!?」
もょもとが指差したところを見ると派手な看板がある・・・・
向かってみるとそこはカジノだ。ポ−カーやビンゴ(ホイミスライム.Ver)・スロットマシーン・・・・・
それに立ち飲みバー、飲食店、さらに×××などがある。
タケ「ちっ・・・・・この町臭いわ・・・・・」
ムーン「ど、どうしたの?急に険しい表情になって。」
タケ「こういう人間の本能を擽るモンを作るのは大概ヤクザまたはマフィアが仕切っているんよ。」
もょ「やくざ?まふぃあ?それはなんだ?」
タケ「こっちではそういう言葉は無かったか。すまん。分かり易く言えば悪党が資金稼ぎのために店を開いているんや。」
ムーン「ま、まさか・・・・」
タケ「察しの通りやで。」
もょ「しかしまちはかなりへいわだぞ?」
タケ「警備している奴らの目を見て見ろよ。ちょっとおかしいで。関わりたくも無いのが普通やろな。」
ムーン「じゃ、じゃあどうすればいいの?」
タケ「普通に成りすませたら問題は無いよ。騒ぎをさえ起こさへん様に頼むで。厄介事は起こしたらあかん。
変に気張る必要は無いわ。ここは無難に歌姫のお披露目会に向かった方がベターやな。」
歌姫のお披露目会場―――――――――――――
開示時間まであと僅かと言う事もあって会場には大勢の人が集まっている。
会場を見る限りではの大規模(って言っても300人程度だが)
VIP・金持ち・囚人服ブロックに分かれている。
VIPである俺達は椅子が用意されいる。
騒ぎ声が徐々に鎮まっていく・・・・・・そろそろ始まりそうだ。
「レディース&ジェントルメェェェェェン!!今夜は世界の楽園、ヘルポイにお越しに下さってありがとうございます!」
「当街のメインでありますヘルポイの・・・・いや、世界の歌姫を紹介致しまぁす!」
司会者が紹介した後には一人の女性が現れた。
「早速歌っていただきましょう・・・・・アンナの『LoveSong探して』」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm286572(←知らない人はこれを参考に・・・・・)
歌姫とはアンナの事だった。アンナは人間離れした美しい歌声で歌っている。
確かに歌は上手い。しかし何か洗脳されそうな感じだ。
聴いていく内に何か似取り込まれる感じがする。
次第に自我が失われる・・・・
意・・織・・が・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「今回も上手くいったな。」
「ああ。これならラーメド様もお喜びになるだろう。」
「金持ちの豚共はどうやら威厳という虚像に弱いみたいだからな。チョロイもんだぜ。」
「女共はいつもの手で行くか。野郎共はどうする?」
「ノルマがある以上は過剰に洗脳させておくぞ。ハーゴン教団の新しい駒としてな。」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
「な、何だ?」
「何かが爆発したぞ!!」
「クソが!周辺が待ったくみえねぇ!!」
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・・
俺は夢を見た。元の世界で友人達と一緒に遊んでいる夢だ。
確か学生時代の楽しい一時だ。
次第に景色が歪んでくる・・・・誰かが呼ぶ声がする。いったい誰だ?
*「ワンワン!!」
タケ「うっ・・・・ううん・・・・」
*「ハッハッハ・・・・ワン!!」
*「おっ!ようやく目が覚めたか。」
周りを見渡すといつの間にか森の中にいた。一人の男が俺達に話しかけてきた。
タケ「ここは・・・・?」
*「安心しな。ヘルポイの町の外だ。ここなら安全だぜ。」
タケ「あんたが俺達を助けてくれたんか?―――――ムーンがおらへん!」
*「一体どうしたんだ?」
タケ「いや、一緒にいた仲間がおらへんのや・・・・・」
*「俺はお前しか助けていない。連れがいたと言う事はもしかしたら捕まった可能性が高い。」
タケ「何やと!?」
*「落ち着け。あの町の事情を話してやる。」
男はヘルポイについて話し始めた。
ヘルポイは元々移民の町だったらしい。人口をかき集めるために犯罪者だろうが何であろうが
町を発展させるために在住の許可を簡単に出したそうだ。
そこでハーゴン教団が目を付けて洗脳させた教徒達を在住させようとした。
当時の町長はもちろん反対したのだが、時はすでに遅し。
数の力で事実上、町を乗っ取られてしまった。
ハーゴン教団にいたアンナを利用し眠りの歌を歌い、訪れた人間の金品を巻き上げたり洗脳させたりするそうだ。
まさに『庇を貸して母屋をとられる』である。
現状起きている日本国の最悪の結末がこの街で起こったのである。
タケ「安易な政策が招いた結果かいな・・・・・しかし何であんたは俺を助けたんや?」
*「こいつが俺に言ったのさ。『助けて貰った恩がある。』ってな。」
男が犬を呼び出すと犬は嬉しそうに尻尾をふっている。確かこいつはザハンにいたエロ犬だ。
タケ「もしかして・・・・アンタがラゴスかいな?」
ラゴス「そうだ。やっと会えたな。同士よ。いや、もょもと王子。」
タケ「!!」
ラゴス「警戒はするな。世界中を旅しているから一国の王子の名前と姿位は知っているさ。
しかしサマルトリアの王子とは違って戦士の目つきをしているな。」
タケ「ふん・・・・」
ラゴス「王子。俺の頼みを聞いてもらえないか?」
タケ「頼みとは?」
ラゴス「ああ。結論から言えばアンナを助けたい。」
タケ「何やて!?アンナはハーゴン教団の人間やろが!」
ラゴス「アンナは無理やりさせられているだけなんだ。」
タケ「それならお前の理由を正直に話せや。何もかもな。」
ラゴスは話し始めた。
アンナは妖精族と言う種族らしく普通の人間や魔物では出来ない特技を持つ種族らしい。
歌を聴いた者は眠らせさせたり、癒されたり・・・・更には洗脳も可能なそうだ。
それをハーゴン教団が目を付けて何らかの方法で無理やり歌わされている。
タケ「しかしラゴス。アンタが何でそんなにアンナに執着しているんや?」
ラゴス「・・・・・・・・・そこまで言わないといけないのか?」
タケ「ああ、話してもらうで。普通ならアンナは処刑するべき存在やからな。」
ラゴス「俺が惚れた女だからだ。彼女を守りたい。」
タケ「・・・・・・・」
ラゴス「馬鹿馬鹿しい理由だろ?」
タケ「ああ。最高級の大馬鹿野郎やで。ホンマ。
けど悪い気はせーへん。逆にそれがエエわ。アンタには助けて貰った借りがある。」
ラゴス「それじゃあ協力してくれるのか?」
タケ「そやで。すばらしぃ本も見せて貰ったしな。ここはスケベ同士で手を組みますか!」
ラゴス「ははっ、王子がそんな発言して良いのか?」
タケ「まぁええんちゃう?男の本能やし。王族と言って威張り散らすなど恥ずかしいマネなんかはしたくないんや。
俺もい・・・いや、仲間を助けんとアカンからな。」
ラゴス「へえ!変わった人間だな。王族だからといえば堅苦しい印象しかなかったんだが。」
タケ「偉そうにしても後で自分が惨めになるだけ。それよりもお互いに協力するって事でええか?」
ラゴス「異議無しだ。それなら決まりだな。よろしく頼むぜ。王子。」
タケ「もょもとでええよ。戦うのに王族も平民も関係あらへん。俺は仲間を助けたい。
お前は惚れた女を助ける・・・・お互いに利害が一致したな。」
ラゴス「ああ。それなら再度ヘルポイに向かうぞ。」
Lv.19
HP:141/141
MP: 12/ 12
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜 錆びた剣
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:隼斬り・魔人斬り・ドラゴン斬り
タケ専用:かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ・火炎斬り
トリップ忘れてました。すんません。
今年もありがとうございました。
では良いお年を。
>>508の続き
次の日。
カンダタの情報を求めて俺達はガザーブの村へとやってきた。
小さな村ではあるが中央にほとりがあり、それを囲むように家が建てられていて綺麗な村だった。
早速カンダタの情報収集に取り掛かると、驚くことに村人一人目にしてすぐに情報を得ることが出来た。
「カンダタ?あいつら村の酒場に時々現れては暴れていく困った奴らなんだ。」
「西のシャンパーニの塔に住んでいるらしい。」
「5人くらいの子分を連れていてそいつらも強いんだ。村の若い連中じゃ手も足も出ない。」
なんだなんだ。すぐに情報が出てきたじゃないか。ロマリアの国もたいした国じゃないのか?
それともモンスターに手一杯でカンダタを相手にするほどお国は暇じゃないってことか。
俺達はこの村で一泊することにして、サキの弱点が芽を出さぬようにたっぷりと睡眠を取り、明朝にシャンパーニの塔へと出発した。
塔は村から微かだが肉眼で見える距離にそびえ立っていたので、おかげで迷うことなく塔へと辿り着くことが出来た。
塔の中にはモンスターが住み着いていたがまるで襲いかかって来なかった。
人間を恐れている?盗賊を?カンダタを?
塔の最上階へ上ると、一人の大柄な男が俺達を待ち構えていた。
「なんだ、誰が登ってきたのかと思えばガキみてえな奴らじゃねぇか。ロマリアの兵士じゃなさそうだが誰だ?」
その男は立ち上がると手の間接をバキバキと鳴らした後に巨大な斧を軽々と手に取った。
悍ましいほどの筋肉美を晒しているがその顔は覆面に被われていて表情は読み取ることは出来ない。
盗賊団のボスだけあって、今までに感じたことのない気迫に押された俺は未だに剣を差し向けることが出来ずにいた。
しかし…奴一人?仲間が見当たらないのはなぜだ?
「んだぁ?俺様を獲りにきたんじゃねぇのか?おい坊主?」
対するカンダタは斧を俺の方へと差し向けて挑発している。
「(……やるのは俺じゃねえんだがな。)…サキ。どうする?」
「とりあえず…倒す。」
と言うと同時にサキは木刀を鞘から抜くと、一気にカンダタ目掛けて飛び出した。
ガタンッ!!!
という音と同時にサキが目の前から突然床に消える。
サキの能力かと勘違いしたがそれはカンダタの罠であったことに気づく。
床がパッカリと抜け落ちていた。
「まさかお姫さんの方から飛びかかってくるとはな。今頃下の階で俺様の子分共にメッタ刺しにされてるぜ。可哀相にな。」
「(なるほどそういう罠か。だったらサキを心配する必要も無いか…。問題は…)俺がお前とやるのか…?」
サキが戻ってくるまでの間、俺がこいつと戦わければならない。
俺はようやく銅の剣をカンダタに差し向けた。
つい先程カンダタに出会うまでの俺は、どうせサキがカンダタを一発でぶっ倒してそれで終わるんだろ、と楽観視していた。
ただの傍観者、そう思っていた俺は全くと言っていいほど俺の闘志はエンジンがかかっていなかった。
「けっ。誰だか分かんねぇが俺様に盾突いたこと後悔させてやんぜ!!」
巨体とは思えぬほどの軽々としたジャンプで落とし穴を回避したカンダタは、そのままの勢いで斧を振り回し切り掛かってきた。
咄嗟に剣と盾の両方で防ぐが、凄まじく重い一撃は皮製の盾を一瞬にして破壊し、さらに俺の体ごと吹き飛ばした。
剣は手離さなかったが握っていた手はジンジンと痺れて震えている。
「……ッ!」
ヒュンヒュンヒュンッ!!!
立ち上がる隙も与えずに風切音を立てて斧が俺目掛けて一直線に飛んできた。
ズガンッ!!!!
間一髪に避けた斧が床に鋭く突き刺さった。その斧に目を奪われた俺はカンダタを一瞬見失ってしまう。
咄嗟にガードの構えを取るが俺の身体は凄まじい衝撃を受けて壁にまで吹き飛ばされていた。
「ガハッ…、」
口から血が流れた。まるでサッカーボールのように俺は10メートル以上も蹴り飛ばされていた。
カンダタは床に突き刺さった斧を引き抜くと、舌打ちをしながら明らさまにつまらなさそうな態度を取った。
「おいおい相手にならんぜ?何しにきたんだお前は?」
「……くそっ…。」
何ボケッとしてんだよ俺…、殺されるぞ俺…。
サキがカンダタをやっつける?って今いないだろう。これじゃ時間稼ぎにすらならねーじゃねーか。
俺はその痛みでようやく目が覚めた。
床に剣を刺して寄り掛かりながらフラフラと立ち上がる。
カンダタは余りに手応えの無さにやる気を無くしてしまい追い撃ちも仕掛けてこなかった。
それどころか俺に背を向けて、階段を降りて行こうとしている。
その態度が、俺の闘志にようやく火が付きエンジンがかかりはじめる。
「まてよ…。」
俺の声に足を止めるカンダタ。
「あぁ?」
「……まだ…、まだ勝負ついてねぇだろうが!!階段降りるなら俺を殺してからにしろッ!!」
アリアハン一番の戦士と言われた俺が、完全に見下されていることに俺は許せなくなっていた。
その声にカンダタは笑みを浮かべる。
「ッハッハ!死にてぇらしいな。馬鹿が。」
「そうだな…。サキならお前を確実に倒せるだろう。…けどそうじゃない。」
俺は剣を床から思い切り引き抜いて、剣先をカンダタの眼先に真っ直ぐに差し向けた。
「サキがお前を倒すのを見たいんじゃない!!俺がお前を倒してぇんだ!!カンダタ!テメェをぶっ倒す!!」
さきほど受けたダメージはどこへいったのか分からないほど、俺は高揚し自分の体から力が沸いて来るのを感じた。
やれる。俺は闘える。「アイツを倒せる!」と身体の奥そこから湯水の様に自信が溢れ出て来る。
俺が本気になったのはこれが初めてかもしれない。
先程までの軟弱な野郎とは掛け離れる物を感じ取ったカンダタは、再び笑みを浮かべたが表情はガラリと変わっていた。
「ハッハッハッ!ぶっ殺すだぁ!?おもしれぇ!テメェみてえな野郎ますます殺したくなってきたぜぇ!かかってこいや!」
「おおおおぉ!!!!」
俺は声を張り上げ、一気にカンダタとの距離を縮めた。
少しでも躊躇えば俺の体は両断される。
奴の振り回す斧は受け止めることなんて出来やしないと先程の一撃で分かった。
避けるか攻撃の前に殺すかの二択。
あんな筋肉ゴリラ野郎の巨体にフェイントなんかいらない。先手必勝だ!
対するカンダタは斧を高く振り上げる。
「隙だらけだ馬鹿野郎!」
俺は渾身の一撃をカンダタの胴体に食らわした。
「ハッ!きかねえよ!」
血が吹き出しているのも関わらずまるで効いたそぶりも見せずに、カンダタは振り上げていた斧を一気に俺向けて振り下ろす!
俺は思い切り上体を反らしそれを紙一重で退けた。
ドガン!!!と空を斬った斧が地面を打ち砕き威力の凄まじさを物語る。
避ける自信はあった。俺の本気の一撃を受けたまま攻撃に転ずることなど出来る筈が無いからだ。
避けることが出来れば奴は隙だらけの筈。
しかし…、俺は剣を握っている手の力が一瞬抜けてしまい攻撃せずに距離をとった。
「…っつ!」と自分の右肩を見るとサックリと服が破れて血が流れ出ていた。
くそっ。確かに交わした筈。間違いなく交わした。まさか!?あの斧の風圧で!?
それに対してカンダタに本気で一撃入れた部分は分厚い筋肉によって守られてまるで致命傷には至っていなかった。
裸の癖に何と言う防御力だ。
くそっ。俺もちゃんと防具買っとくんだったぜ。…じゃねえか。もっといい武器持ってりゃ殺せていたか。
…いや、そうでもない。俺の銅の剣を見てあいつはあんな隙だらけで構えていたんだ。
「よくそんな貧相な武具で俺様と戦えたもんだ。称賛に値するぜ。」
「へっ。貴様なんかこれで十分ってことだ。」
…あの野郎、胴体に思い切り叩きこんだってのに息一つ乱れちゃいねぇのかよ。
…どうする?
「どうした?こねぇのか?怖じけづくにはまだ早ぇぜオイ。」
「作戦考えてんだよ!だったらお前から来いよ!」
その時だった。
「ソラ!」
階段を駆け登ってくる音と共にサキの声が聞こえた。
「ちっ!仲間がきやがったか。俺様の子分共がまさか負けちまうたぁなぁ。」
「へっ。言っとくがうちのお姫様はバケモンだからな。テメエどころかバラモスだって目じゃないぜ。」
サキはフロアに上がり俺達を見つけると全速力でこちらに向かってきた。
そのサキの姿を一目見て俺は一安心した。サキには万が一の弱点があるから。強いくせに心配させやがる、困った奴だ。
「来るなサキ!!お前はそこで見ていろ!!」
俺は今まで出したことのないくらいの声を張り上げてサキを制止させた。
立ち止まるサキ。
「悪い。こいつと決闘したいんだ。一対一で。邪魔したら許さないからな。」
「ソラ…。」
相変わらず無表情で分かり難かったがサキは木刀を背中にしまうと、一言だけ話しかけ壁際の方へと離れた。
「…死んだら、嫌なんだから…。」
「ああ。」
分かってる。負けたくないし負けるつもりもない。
「よし…!(一か八かアレやってみるか!)」
俺は左手をかざし意識を集中させると、ゆっくりだがジワジワと熱を帯び始めた。
「ほう、魔法か。だが戦士が魔法なんざたかが知れてるだろ。」
「やってみなきゃわかんねえぜ…。」
魔法は昨日覚え始めたばかりだ。あいつとの…サキとの差を縮めるためにロマリアの街の本屋で見つけた魔法の書。
辞書の様に分厚く活字ばかりでまだ数ページしか読んでないし、全くと言っていいほどまだ魔法力もない。
初歩の初歩であるメラでさえまともに放てるかも分からない上、放つのにタメが必要なくらい下手くそだがやるだけやってやる。
タメの時間を与えたテメェの負けになるんだ。
「そういやさっきバラモスがどうとか言ったよなぁ!?そんなもん俺様にゃ眼中ねぇんじゃ!!
あるのはテメェみてえな熱くなれる野郎だ!!久々燃えてきたぜ!ほらどうした!?かかってこいやぁ!!」
「言われなくてもいくっつーんだよ!!」
俺は再びカンダタに距離を詰める。カンダタは俺の策略に対応するためか斧を短く持ち俺を向かい討つ気でいる。
俺は左手にメラを溜め込んだまま両手持ちで力一杯切り掛かった。
カンダタもさすがに無視出来ずに俺の攻撃を斧で弾く。
きたっ―。
弾かれた瞬間俺は左手を離しカンダタ目掛けて至近距離で溜め込んでいたメラを放つ。
上手く当たらなくてもいい、ダメージなんか考えてない。少しでも奴のバランスを崩せればそれでいいんだ!
「うぅっ!?」
メラは成功し上手くカンダタの顔面に当たった。威力は無いが目眩ましにはなる。
このチャンスを見逃すわけにはいかない!
少しは脆くはなっているであろう先程一発食らわした箇所目掛けて俺は、再び渾身の一撃を打ち込んだ。
バキバキッ!とカンダタの自慢の巨体が破壊する音とともに、「うがぁ!」と声を上げカンダタは地に臥せた。
「ハァッ……、ハァッ……。」
確かな手応えだった。普通の人間であれば確実に命を絶つほどの感触。
半分気絶しているのかカンダタは起き上がってはこない。勝負あったようだ。
俺は力尽きる様にその場に座り込み、その戦いが終わった様子を見てサキは駆け寄ってきた。
「ソラ…、大丈夫?」
「あ…あぁ…。それよりこいつ…、治療してやんなきゃな。」
俺は薬草を使い、カンダタの体力が回復するのを待つことにした。
サキが倒したカンダタの子分達は気絶させてあるだけで心配は無いとサキは言った。
しばらくしてカンダタが目を覚ました。
カンダタは起き上がると、今までに行(おこな)ってきた数々の盗品や強奪品の全てを俺達に差し出した。
「俺達の負けだ。これはお前らにやる。」
その金ぴかに輝く盗品の中にはロマリア国王の冠も含まれていた。
「いや、別に俺達はこれを奪い返しにきたわけじゃないんだ。なあサキ?」
「…うん。お前を…カンダタを仲間にする。」
「あ?俺を!?」
目を丸くして、こいつらは一体何を言ってるんだという表情のカンダタにこれまでのいきさつを説明した。
「本気かよ。俺様は世界指名手配かかってんだぜ。お前らなんかと一緒に旅はできねえよ。」
「…関係無い。」
「そうだな。世の中の人々を救える旅だ。罪を償えるってもんだぜ?」
「けっ。罪を償う気なんざさらさらねぇってんだ。」
「…そうか。だそうだサキ。諦めるか?」
「………。」
サキは背を向けて何も言わずに去っていく。俺も続いてこの場を立ち去ろうとした。
「…おい待てよテメェら。」
「…?」
「俺様…俺はこの悪行を誇りにすら思ってる。…モンスターだろうがバラモスだろうがそんなの興味も無ぇ。」
「…。」
「だがな、貴様は俺を初めて負かした野郎だ。貴様に興味がある。それじゃダメか?」
「…何が?」
「だから!テメェらについていくって行ってんだボケ!!仲間にしろや!!」
「カンダタ!聞いたかサキ!」
「ふん…。」
「だからといって言っとくけどなぁ!俺様がお前を倒すまでの話しだ!テメェを倒せりゃすぐに抜けてやるんだからな!そこんとこ覚えとけよコラ!」
まさかではあったがサキの思惑通りに盗賊の頭カンダタが仲間に加わり、俺達の旅は続いて行くのだった。
乙
最初のスレからもう4年近くたつんだよね
来年も書き手の皆さん期待しています
皆さんよいお年を!
投下乙です。
今年は年末辺りから、投下ペースが凄かったなぁ…
古参も着々と完結に向けて進んでるし、新人も出てきた。
書き手の皆さん、来年も頑張って下さい。
新年です!あけおめあけおめ!!
作者にも読者にもいい年になりますように
おけおめ
サキかわいいよサキ
第三話「もうだめぽ。レヌール城の恐怖。今夜は湯豆腐」
目が覚めてベットから降り1階に行くと
昨日のビアンカとその母が来ていた。
パパスが「こいつらをアルカパの町までおくってくるからお前も付いてこい」などと言ったので
だが断るというとパパスは「いいからついてこい。逝くぞ・・・あの世へな!」だとさ。
俺を逝かせる気か畜生。ていうか、誤字だっての。
「冗談冗談。行くぞ」
冗談いうなよ。てめーがいうと本当だと思うじゃねーかよ。
パパスに首ねっこを掴まれて無理矢理アルカパまで連れていかれた。クソが。
なんか宿屋に着きベットで寝ている、ダンカンというおっさんを発見。こいつがビアンカの父親らしい。
風邪で寝込んでいるんだってさ。
パパスは心配そうにダンカンに近寄るとダンカンの首に手刀を振り下ろした!
・・・だが、その手刀は誰かに止められた。それは、なんとビアンカの母だったのだ。
「パパス、やらせはさせないよ?」
「おのれ。息の根を止めてやろうとしたのに・・・なら、貴様から殺してやろう」
「そううまくいくかねえ?」
パパスとおばさんが殺し合いを始めた。
それを見ないふりをしてビアンカが話しかけてきた。
「ねえ、遊びにいかない?」
やれやれ、またこの子供のおもりをしなくちゃなんねえのかなどと思いつつビアンカと宿屋を出た。
「く、薬を・・・」
サンタローズから薬を持ってきたのに薬を与えてもらえないダンカンは苦しそうな表情をしていた。
ビアンカと町を歩いてるとトラに似た魔物をいじめてるガキ共がいた。
ガキ共とビアンカは猫と思っているらしい。ガキ共とビアンカの死亡決定か?
「いじめはよくないわ。やめなさい!その子を」
ビアンカが堂々とガキに近づき言った。
「じゃあ、レヌール城のお化けを退治してきたら返してやるよ」
はあ?と思ったのでガキの胸ぐらを掴み
「ふざけんなよ?なんで、んなことしなきゃなんねえんだ。今すぐ返せや!」と叫んだ。
「お化け退治しないと返さないよ。普通に返したら負けかなと思っている。働いたら負けかなと思ってる」
「ちっ!」
将来はニートになるな、この子供。
「分かったわ。退治してきてあげる」
え?ちょ、ビアンカ、なに言ってんの?
というわけでお化け退治引き受けることになりました(泣)
宿屋に戻ると血まみれのパパスが帰るぞと言ってきた。
でも、同じく血まみれのおばさんが「ここに泊まってきな」と言ったので
この宿屋に泊まることに。ダンカンは自力で薬を飲んだのか、やすらかな表情で眠っている。
夜になりビアンカが寝ていた俺を起こしにきたので起きてレヌール城に向かう。
レヌール城に着きガクガクブルブルしているとお化け(女)とかお化け(男)とかにあい
この城に住み着いている魔物を倒すことに。
たいまつがないと魔物の親玉の所に行けないらしくたいまつがある厨房へ向かう。
厨房に向かうとたいまつを発見。なんかめちゃ臭くてまずそうな料理があったので
何故か袋にあったリセッシュを料理に振りかけくさいにおいをきれいにする。
ダッシュで親玉の所に向かって親玉の目の前まで近づいたが床が落ちるしくみになっていて
そのまま落ちる。アーレー。
ドーンと地面に落ちた。ビアンカを見ると首の骨が折れていたが別にいい。
どうやらここはさっきの厨房らしい。ゲッ!さっきの料理の上に落っこちたよ。
なんやかんやでエレベーター的なもので上の階に行く。
魔物が「おいしそうな料理」とか言って襲いかかってきたので
「俺達みたいなメインディッシュは後に食べればどうだ?」と言ったら
魔物達は納得しリセッシュのかかった料理を食べた。
魔物達は奇声をあげながら死んだ。リセッシュつええ。
そして、また親玉の所につき戦うことに。こいつ親分ゴーストというらしい。
変な名前乙。リセッシュをかけながら攻撃しなんとか倒す。
親玉が見逃して命ごいをしてきたので見逃す。
すると、さっきのお化け(男と女)が礼を言い成仏していった。
そういえば!と思いビアンカを見ると首が折れているのに何故か自然に俺についてきていた。何故?
ホイミをかける。
「ふう、ひどいよ。すぐホイミをかけてくれれば良かったのに・・・」
そういうお前もすごい生命力だったが・・・
墓の上に金色の玉があったので貰うことに。
ゴールドオーブという名前らしいが色といい形といいアレなので
コールデンボールと呼ぶことに。
そして、アルカパに戻る。
ガキ共からトラを返してもらった。ビアンカが複数の名前を考えていたらしく
その中から一つの名前を選ぶ。そして俺が引き取ることに。
宿屋に戻るとパパスが帰るぞと言ってきたのでサンタローズの村に戻ることに。
ビアンカがトラの魔物(ベビーパンサー)にリボンをつけ「また会おう」と言いながら
帰っていく俺にバイバイと手を振っていた。あの時すぐにホイミをかければ良かったなぁと思った今日この頃。
サンタローズの村に戻り俺の家に戻ると
サンチョの声と女のあえぎ声が聞こえた。
あの茶髪豚野郎はパパスの家でなにやっちゃってくれっちゃってんの。
パパスは怒りながら家の扉を開けるとこう言った「俺もまぜろ!」
あぁ、普通の子供だったら人生に絶望してるよ。
俺はとりあえず外をぶらついた。
ここはアリアハンの国近くの平原。
スライムやおおがらすと言った弱小モンスターが棲息する地域。
そんな場所を一人の小さな小さな女の子が歩いていた。
「メラゾーマァ!!」
現れたスライム相手に超強力呪文を放つその女の子の名前はマコ。
歳は10。フード付きの導服を頭からすっぽりと被っただけの姿は、少し走ったりするだけでもチラチラと危なっかしい。
その子は今、「満16歳にならぬ者は国外に出てはならない」というアリアハンの掟を破って一人で旅に出たのだ。
目的は内緒。なぜこんな強力な呪文を使えるのかも秘密。彼女を詮索することは許されないのだ。
なぜ許されないのか?それももちろん秘密。
なんだそりゃ?これ書いてる奴ただ設定を考えていないだけだろロリコン!!というツッコミは止めてください。
図星です。嘘です。
ともかくその女の子は少女にして超強力呪文を使いこなす危険な魔女っ娘なのだ。
「べぎらごーん!!」
おおがらすが跡形も無く燃え尽きるのを見た女の子は、「きゃっ!きゃっ!」と飛び跳ね喜んでいた。
ギラで十分倒せると言うのにわざわざ極限魔法を使う辺り、女の子はこの虐殺とも言える行為を楽しんでいるのだろう。
しかし彼女はまだまだとっても幼い女の子。魔力はすぐに使い果たしてからっぽになってしまう。
逃げるようにアリアハンに戻りお家へと帰るのだ。
「おやすみなさ〜い!!」
旅の続きはまた明日。
本編と同じ時間を流れる番外編です。本編の息抜き程度に投下する予定です。
新参ではありますが今年も頑張っていきたいと思います。ノシ
作者の皆さん乙です
かわいい
>>519-524の続き
毎日ジャージだもんね〜。イマドキの歌も歌えないしぃ。
あーあの男女でしょ? アイツ、マジダサいもん。GLAYもタッキーも知らねぇんだってー。
キャハハハ! 時代遅れ女キモッ!
あー、ホンモノだー。ねぇ、ウチらの代わりに今日、音楽室の掃除しといてー。
ウチらお前と一緒にいたくないからー。
キャハハハ……ギャハハ……アハハハ………
……最悪な夢を見させてくれるなぁ、神様も。
まあ、「こんな目」にあってる時点で、神様なんて信じてるほうが変なのかも……。
ああ、もう。心臓と胃のあたりがムカムカする。なんであんな大昔の夢を今更になって見るかなぁ。
小学生だったよね、夢の中では。……あのときのことは、もう気が済んだはずなんだけど。
覚醒し始めた意識でゆっくりと目を開ける。広がる世界が見慣れた私の部屋であることを願ったけれど、
現実はどうしても厳しくあって、優しくはなってくれないみたい。
もともと着ていたシャツとジーンズという格好でベッドに寝かされていた私は、なんだかもう慣れてしまった感じで
革ジャンとサングラスを探し始める。革ジャンは窓辺のタンスの中、サングラスは枕元で発見。
部屋の構造からして、ここも旅の宿屋らしい。でも、イムルの宿屋とは内装が違う。
あの渦に吸い込まれてから目が覚めるたびに宿屋にいるのはどうしてなんだろう。この世界は妙なところで親切かもしれない。
腰にぶら下げていたシザーケースの中身を確認する。……ものっすごく不思議なことなんだけどね、
こっちに来てからというもの、この小さなシザーケースには「なん〜でも」入っちゃうようになった。
「いくらでも」ってわけじゃないけど、どう考えたって・押し込めたって、入らないでしょ〜! っていうものが、
入ってしまうのですよ。そんなこんなで、シザーケースの中にはライアンさんからもらった薬草が五個、
お財布と中身のお金(と、この世界では何の意味もないポイントカード類)、メイク道具、サングラスのケースがあった。
……ライアンさんとホイミンくん、あのあとちゃんとお城に戻ったのかな。
ライアンさんにはバトランドを守るっていう大事な仕事があるし、ホイミンくんは「人間になる」っていう夢があったもの。
う〜ん……心配。
ご丁寧なことに、鉄の槍とうろこの盾は布切れにくるまれてベッドの下に置いてある。
ブーツを履いて、とりあえずこの宿屋のご主人にお礼と挨拶をしようと部屋の出入り口のドアノブを回した。
「おっと、それ以上近づくなよ!少しでも動いて見ろ!お姫さんの命はねぇぜ!?」
人間は、自分で把握している常識からあまりにも外れたことが目の前で起こると、かえって冷静になるらしかった。
ドアの外、三メートル先で屈強なおじさんに両手を縛られて首筋にナイフを突きつけられている女性は、私と、
さっきからそこにいたらしい三人の人たちに声も無いまま「SAVE ME」を叫んでいる。
「女の子を人質にするなんて卑怯よ!彼女を離しなさい!」三人いたうちの、女の子が怒鳴った。
「動くなっつってんだろ!……でなきゃあ、お姫さんのツラに傷がつくぜ」
屈強なおじさん三人組は、じりじりとお姫様らしい人を抱えて廊下の窓から屋根づたいに逃げていく。
どうやらああいった行動には経験があるプロらしい。大変だぁああ! と思ってひとまず後を追ってみる。
私なんかよりもずっと早く、軽い身のこなしで、さっきまで隣にいた三人のうちの一人が窓からぴょんと飛び降りた。
……ちょっ! 待っ! Oh Girl!? ここ二階じゃないの!?
鮮やかな青のマントにお揃いのとんがり帽子、ぱっと目を引くひまわりのような黄色いワンピース型のスカートに
黒のタイツを合わせたその娘は、茂みにもぐりこんで姿を消した人攫いたちに小さく舌打ちして、
私が身を乗り出して彼女を見下ろしている窓を見上げた。
「今の、見たでしょ!?このことは私たちだけの秘密よ!いいわね!?」
「ひっ、姫様!お一人でどこに行かれます!?」
ぐい、と私を押しのけて若い男の人が窓から飛び降りんばかりに叫んだ。……ん? 姫様?
「あいつらの後を追うに決まってるでしょ!クリフト!あなたも一緒よ!もちろんブライもよ!」
「やれやれ……姫様の行動力には敵いませんな。年寄りにあまり無理をさせるものではありませんぞ」
……このおじいちゃんの髪の毛はなにか? 重力というものに魔力で逆らっていらっしゃるのですか?
とでも言いたくなるのを振り払うと、ブライと呼ばれていたらしい怒髪なおじいちゃんから、濃い魔力の匂いが立ち込めてきた。
冷静だった胸が突然激しすぎる鼓動を刻みだす。
ああ、同じだ。ライアンさんと初めて会ったときと同じ、あの不思議な感覚。
言葉で説明できないものに全身を突き刺されるあの感触が、今度は三人分まとめて一度にやってきた。
あまりのショックに膝から崩れ落ちそうになるのを必死にこらえて、私はあわてて武器を取りに部屋へ戻った。
武器を持ってご主人へのお礼もそこそこに宿屋を飛び出すと、外で遊んでいた子が、
「僕の犬が手紙をくわえてきたんだ。とんがり帽子のおねえちゃんか、色めがねのお姉ちゃんに渡してねって書いてあるよ」
と、無邪気に笑いながら人攫いからの手紙を見せてくれた。南の洞窟にある「黄金の腕輪」とお姫様を交換だ、と書いてある。
「黄金の腕輪……強大な力を秘める魔の神器じゃな」
背後から聞こえた声に飛びのくと、さっきの怒髪おじいちゃんが後ろから手紙を覗き込んでしっかり読んでいた。
「見たところお前さん、なかなか腕が立つようじゃの。手紙にはお前さんのことも書いてあったが……どうするかね?」
手伝いなさいオーラをバリバリ出してるおじいちゃんに根負けし、一緒に目撃してしまったのも何かの縁だということで、
私も「黄金の腕輪」の捜索に参加することになった。
「お前さん、どうやら不器用なタイプらしいの。ただ、濃い魔力の匂いは強く感じ取れる。
使用適正としてはメラ系とイオ系じゃな。グループ攻撃魔法のギラ系やバギ系には残念ながら恵まれとらんのー」
痛いところを思い切り突かれて、私はぐっと唸ってしまう。手先の器用さには多少の自信があります。
でも、性格とか内面とか気質とか、そういう精神が司ってる部分の器用さは欠如してるっていうかもう、皆無です。
「対象をひとつ、またはあなたが『味方である』と認識した相手全員に限定する、回復・味方補助の魔法も使えるようになると思います」
暗い洞窟にもぐり、小難しく魔法理論を説いているのは、さっきの三人いた人の二人であるクリフトくんと、
さっき手紙を覗き見て私の同行を決意させたおじいちゃん、ブライ様。
クリフトくんは「サントハイム」という国の神官で、ブライ様は王宮お付の魔法使いだ。魔法に長けているのは当然だよね。
そう言われてからブライ様を見ると、重力に逆らったスーパーヘアもなんだか魔力めいたものに見えてくる。
「ねー、あなたたち二人揃って、もっと楽しい話はできないの?メイさんだって退屈よね?ねっ?」
先頭を堂々と進んでいくのは、彼ら二人が仕えているサントハイム王家のお姫様、アリーナちゃん。
お姫様だなんて、最初は信じられなかった。さっきの人攫いに連れて行かれちゃった娘も「お姫様」って呼ばれてたし。
「魔法は、発動するだけじゃダメなんじゃ。『誰に』『どこに』に向けて発動した効果を影響させるのか。
魔法を使えるということがわかったら、次に重要なステップはそこ、『発動の対象』じゃ」
魔法の効果をぶつける相手は、特例を除いて大きく分けて五つのタイプに分かれる。
ひとつめ、敵と認識した相手単体。ふたつめ、敵と認識した相手一グループ。みっつめ、敵と認識した相手全員。
よっつめ、味方と認識した相手単体。いつつめ、味方と認識した相手全員。
「対象をひとつのグループと認識することは、とても簡単だと思う人と、とても難しいと思う人に分かれます。
メイさんはきっと、そういったことが少し苦手なんでしょうね」
優しい苦笑を浮かべるクリフトくんが、ブライ様が私にさっきからチクチクと突き刺している「不器用」という
言葉をやわらげてくれている。むう……優しさが痛いとはこのことか。
「『あのひと一人!』っていうのとと『あのひとたち全部!』っていうのは簡単でしょう?一か全かですから。
けれども、『あのひとたちの中のあそこだけ!』ってグループ視するのは面倒くさいですよ。
なんかこう、魔法を打ち込んだら効果がはみだしちゃいそうで」
「ぷ……。魔法の発動効果を『はみ出す』なんて言い方で表現する奴は初めて見たわい」
長くて白いひげに隠れた口元で、ブライ様が笑った。
「……あっ、ねぇ!メイさんの話を聞かせて!わたし、外の世界ってまだちゃんと見回れてないのー!」
暴れ牛鳥の角を掴んで投げ飛ばしたアリーナちゃんが、まばゆい笑顔を浮かべて振り返った。
人数が多いと頼もしくてつい忘れてしまう。今が魔物との戦闘中だってことを。
気を取り直すと、たぶん食べたっておいしくはないであろうオバケきのこに、ブライ様から習いたてのヒャドをぶつけた。
「私の話……?」
「うん!メイさんって女の人なのに結構強いし、体も大きいでしょ?メイさんって、旅に出る前はどんなことしてたの?
それとも、生来の旅人なの?いいなぁ〜、やっぱり上背がある方が、攻撃リーチも長くなるし踵落としもカッコよく決まるわよね!」
とんがり帽子を含めても私の鼻先ぐらいまでしか届いていないアリーナちゃんが、先頭から私の隣に寄ってくる。
羨ましがられてる、のかな、これは。身長一七八センチの私としては、アリーナちゃんぐらいの背丈で可愛い感じの
女の子のほうが羨ましいんだけれども。
無邪気な質問攻めに、とりあえず体裁だけはつくろっておこうとした言葉が胸のあたりでつっかえてしまった。
この世界に放り込まれた拍子になくなったテレキャスターに対する喪失感もあった。でも、多分いま胸と喉のあたりで
ぐいぐいつまっているのは、そういう物理的な感覚じゃない。
今朝見た夢がいやに鮮明に後ろ頭をさらさらとよぎっている。眩暈がしそうになるのを笑顔で粉飾した。
「ギタリストだったよ。作曲して、問題の打開策をテーマに歌詞を書いてた」
「ふーん、珍しいのね。音楽をやる人ってみんなマローニみたいに、竪琴持って恋愛の歌を歌ってるのかと思ってた」
そりゃアナタ。ルドルフ・シェンカーのギター聴いて育った人間が「めちゃくーちゃー好ーきやっちゅうねん☆」
なんて歌作ってたら気持ち悪がられるでしょ……。
「ほほう、女だてらにギター弾きとは珍しいのぅ。で?腕前はどうなんじゃ?」
「血ヘド吐くほど練習した結果程度です」
「えっ?元から才能があったわけではなくて、ですか?」
ブライ様への回答に、クリフトくんが驚いた声を上げる。あんまり大声出すと魔物に気づかれちゃうよって言うと、
アリーナちゃんは「そのほうがいいじゃない!」って嬉しそうにぴょんぴょん身軽に飛び跳ねる。
「誰だって元から弾けるわけじゃないよ。ボーカルと違って、自分の意志どおりに動かそうとするものに
直接自分の意志が宿ってるわけじゃないから、言うこと聞かせるのに多少なりとも時間はいるの。
……逆に、ある程度才能がなきゃ伸びの止まるボーカルと違って、ギターは練習すれば可能性は見えてくるから」
弾けないストレスで胃をやられて血を吐いたことがある。私はもともと、ボーカリストだった。
ボーカリストとしての才能がなかったわけじゃない。それを自分でも自覚してた。……でも、ある日突然現れた
「彼」の声は、私の声よりもバンドリーダーの好みや意志に合ったものだったらしい。
強引なスカウトによってうちのバンドに入る前はヘタクソなギターを手に一人で歌っていた明るくて優しいボーカリスト。
……そんな彼に、「独り舞台」という意味のあだ名がつくのには、時間なんていらなかった。
「それだけ頑張ってらしたなら、メイさんのファンもたくさんいらっしゃったでしょうね」
「あはは、もちろん。休みの日は友達つれてライブ三昧だったよ」クリフトくんの笑顔につられて笑ったときだった。
「うそ」
唐突に口を開いたアリーナちゃんの言葉に、私はびくんと背筋をこわばらせた。そんなことする必要はないはずだった。
完璧に作り上げた表情と台詞の言い回しに、クリフトくんもブライ様も聞き入っていた。
「うそついても、わたしにはわかるのよ。メイさんがギタリストだってことも、すごく上手いのも、うそじゃない。
でも、最後の言葉だけはうそよ。そういううそをついたあと、メイさん必ずひとりで落ち込むでしょ?ねぇ?」
嘘をついたことを咎めるわけでも、嘘を見抜いたことを自慢したいわけでもなさそうなアリーナちゃんの口調が怖い。
目の前にいる相手の髪にゴミがついているのを教えるぐらい「当然」のことを口にしているとしか思えなかった。
休日はライブ三昧、ファンも多い。それは真実。でも、「友達つれて」ってのは真っ赤な嘘。友達なんて、
大学で知り合った数少ない人たちしかカテゴライズできない。バンドのメンバーは、友達というよりも「仲間」だと思う。
でも、私が生きてきた社会は「友達がいて当たり前」「人間関係を円滑に進められない奴はコミュニケーション能力に
欠けている」「自分の主義主張や趣味が他者と合わないのは空気を読めないからだ」って言われてるところだった。
―――「違う」ということは、それだけで「悪」で「罪」だから。
「……なんで『わかる』の?」
「『見える』からよ」
いまひとつ、アリーナちゃんが言う理由を理解できないでいると、なんだか残念そうな顔で彼女は先頭に戻ってしまった。
二番目に続く私には、暴れ牛鳥を投げ飛ばすようには見えない小さな背中と肩しか見えない。
「サントハイム王家の血を引く方は、予知能力があるのです。姫様はおそらく、
『嘘をついた後に落ち込むあなた』を、先に見たのでしょう」
理解のための補足を入れるクリフトくんはやけに慣れた様子だった。
「……嘘ついてごめんね。あんまり昔の話はできないけど、今度機会があったらアリーナちゃんたちの前でギターを演奏するよ」
「……ほんと?」
赤茶色の目がくるくる輝きながらこっちを向いた。しっかり頷いてみせると、アリーナちゃんは笑って前を向いた。
「……メイさん、この世界でギターは」
「クリフト。今は何も言うな。ほとぼりが冷めたときに、いずれわかるじゃろうて」
後ろでクリフトくんとブライ様が何か言った気がしたけど、まあいっか。少し安心したところで、洞窟の地下へ
続く階段が見えてくる。
「気味が悪いわね……。なんだか怖いものがいるみたいな気配がするわ」
言いながら、アリーナちゃんが鎖鎌を構える。クリフトくんもブライ様も同じように武器を構えている。
どうにもこうにも、三人が感じ取っているらしい「怖いものがいるみたいな気配」がわからないけど、
私もとりあえず鉄の槍を構えた。
洞窟の一番下の一番奥に、古びた宝箱が置いてあった。錆びた金属細工の装飾が、いかに昔のものかを物語る。
さび付いて動きの鈍い宝箱の蓋をアリーナちゃんがこじ開けると、中身だけ時の経過を忘れていたように輝いていた。
黄金の腕輪。その名が示すとおり、何もかもが純金で作られているバングルだ。
「おお……なんと禍々しい力を発するのか……」
「……神よ。このような恐るべきものを生み出した人とは、愚かなのですか?」
魔力を感じ取って宝箱の中を覗き込むブライ様、その隣には強すぎる力の生誕の正誤を問い十字を切るクリフトくんがいる。
腕輪の輝きは洞窟内の乏しい明かりも貪欲に取り込んでいた。つるんとしたブライ様の額に腕輪の光が反射して
ピカピカしてるのを見て噴出しそうになったけど、そんな空気じゃないことはわかっているから耐える。
「で……誰が持つ?」
こめかみから汗を流すアリーナちゃんの冷静な言葉が、パーティ全員の視線を集める。古びた宝箱の中で
時間の概念を忘れた金色が、爛々とその目を輝かせていた。拳を握り締め、クリフトくんが何も言わずに宝箱の中へ手を伸ばす。
「待て、クリフト。お主は神に仕える者じゃろ。そんな奴がこんなもの持っちゃいかん」
「ですが……姫様やブライ様にこのような危険なものを……!私は、……嫌です」
このメンバー内でのクリフトくんの発言権なんて、ほぼ皆無に等しい。ブライ様は最年長者でサントハイムのお城では
クリフトくんよりもずっと地位があるだろうし、アリーナちゃんにいたってはお姫様だもん。私だって、見知らぬ旅人って
ことになってはいるけど、明らかに彼よりも年上だ。そんなクリフトくんが自分の意志を強く主張するほど、
この腕輪は危なっかしいものらしい。私にはどう見ても趣味の悪いアンティークアクセサリーにしか見えないけれど。
「ですが、お二人とも!」
「ああもう!命令よ!わたしが持ちます!」
「姫様!めったなことを言うものではありませんぞ!」
ぎゃーぎゃー、わーわー、……これってさぁ、「フリ」なの? そうじゃなかったら、私っていま完璧に外野扱い
されちゃってる?
フレノールの街まで持っていくのすら嫌になるような腕輪ってわけでもなさそうなのに。お姫様が偽物だったんだから、
この腕輪だって偽物ってこともありえるんじゃないのかなぁ。なんて、考えていたら出てくるのはため息だけで、
だったらさっさと持って帰ってあの偽者のお姫様を助けてあげないと……。
鉄の槍を小脇に抱えて、うろこの盾をはずす。革ジャンの固い袖を無理やり捲り上げて、むき出しになった肌に
ぐいぐいと腕輪を食い込ませた。手首にするにはちょっと大きくて、限界まで押し込んで行ったら手首と肘の間で止まった。
「なぁんだ。何でもないですよ。さあ、探し物は見つかりましたし、帰りましょう」
ぴったりと私の腕にはまってしまった黄金の腕輪を見て、三人分の悲鳴と驚嘆と叫びが混ざり合って洞窟の天井に
共鳴する。向こうから響いてくるドドドド……って音は、暴れ牛鳥や大ニワトリの足音で、タバコがくすぶるような音は
メラゴーストがこっちにやってきてるってことだろう。
……だから「大声出すと魔物が来るよ」って言ったのに。
「その腕輪、本当にあいつらに渡していいのかしら……」
不安げな声でアリーナちゃんが呟いたのは、夕方に差し掛かる前にフレノールへ戻ってきたときだった。
人攫いたちからの手紙には「黄金の腕輪を持って『夜』、墓場へ来い」と書いてあった。夜までにはまだ時間がある。
確かにね、お三方の言うように、この腕輪が本当に強大すぎる力を持っているものだったら、悪い人に渡したところで
悪いことにしか使われないだろうって考えるのは当然のことだよね。……だけど、なんでよりによって
「黄金の腕輪の偽物を作りましょうよ!それをあいつらに渡して、これはもう一回あの洞窟へ戻しましょう!」
「さすが姫様!このクリフト感激いたしましたぞ!」「バレたとしても、あの娘さんを助け出す時間稼ぎになればいいじゃろ」
ってなるんですか。そんでもって、なぜその腕輪の偽物を私が作るはめになるんですか。
クリフトくんがもっていた聖なるナイフの柄に取り付けてあった金細工をひとつずつはがしていく。ありがたいことに、
私のメイク道具の中にあった金属製の毛抜きや眉きりバサミが、金細工をギリギリはがすのにはぴったりだった。
武器屋のおじさんに取り外した金細工を溶かしてもらってから、道具屋で買ってきた玩具の腕輪にぴったりはまるよう、
形を整えてもらう。玩具の腕輪と外側にする金をくっつけてから、聖なるナイフの柄にはまっていた青い宝石を入れて、完成。
「……ねえ、アリーナちゃん。ちょっと見た目がチープすぎる気がするんだけど」
「大丈夫よ!渡すのはどうせ夜だもの。暗いから奴らの目を欺くには丁度いいわ。それに、人質さえいなくなってくれれば
それでいいの。バレたとしても、あんな連中わたしがぶっとばしてやるんだから!」
静かな墓場の森の影から、腕輪を渡せと人攫いが言う。アリーナちゃんが神妙な面持ちで投げたフェイクの腕輪は、
月の光の中で鈍く光りながら人攫いたちの足元に落ちる。赤いドレスの偽お姫様が突き飛ばされて解放された。
アリーナちゃんが転びそうになる偽お姫様を受け止めると、人攫いはフェイクの腕輪を拾い上げてすたこらさっさとどこかへ
行ってしまった。……神様。今までうそをついたことは何度もありますが、人に対して詐欺をはたらいたことはありません。
今回一度限りでいいので、今だけ見逃してください……。
「ああ、ありがとう。あたしメイ。ごめんなさい、もう気づいていると思うけど、お姫様でもなんでもないただの旅芸人よ。
……そうだ、助けてくれたお礼に、このカギをあなたたちにあげるわ」
アリーナちゃんの手にそっと、変わった形のカギを握らせて、私と同じ名前の旅芸人はドレスの裾を夜風に翻し、
付き人役の男性二人と闇の中へ消えていった。
「……ああまで簡単に騙される悪人なんざ、かわいいもんじゃのぅ」
つぶやいたブライ様が大あくびをしながら宿へ向かって戻っていく。みんなで続いていくさなか、私は左腕にしっくりと
納まっている黄金の腕輪を革ジャンの上から撫でた。魔力の匂いも力の気配も、微塵も感じないのは変わらない。
Lv.9 メイ
HP:34/44 MP:23/51
E 鉄の槍
E うろこの盾
E 革の服(革ジャン)
E −
E サングラス・黄金の腕輪
戦闘呪文:ホイミ・メラ・ヒャド
所持金:647G
あけましておめでとうございます。
今年もこのスレッドや板が大いに盛り上がる年でありますように!
>>554のタイトルですが、文字数制限に引っかかって「フレノール南の洞窟1」
であることが書けませんでしたorz 多めに見てやってください。
腕輪を渡さなかったってことは本編とちょっと歴史が変わるんだな。楽しみ。
>>559 伏線が多くて次が楽しみです
ボーカルの正体はあだなから考えると…
※今日の雑談は主人公sに、新年のご挨拶も含めてお願いします。
アルス「ということで」
タツミ「少々遅くなりましたが――」
アルス「あけましておめでとうございます!」
タツミ「本年もよろしくお願いいたします!」
タツミ「そういえば、アルスは日本の正月の習慣とか、ちゃんとわかってる?」
アルス「正直あんまり。俺は『夢』の中で、お前の意識を通して現実世界の知識を得ていたんだが、
なぜか季節のイベントについての記憶はほとんどねえんだよ。
お正月もクリスマスも、名前しか知らねぇって感じなんだよな」
タツミ「でもその『夢』って断片的なものなんだろ。たまたまじゃない」
アルス「そうかもな。見事になんにも無いのも妙だと思うが……」
タツミ(イベントって誰かと一緒にはしゃぐってのが多いからねー。
虚しくなるから無意識に妄想しないようにしてたんだろうな、僕)
アルス「んでさっそく聞きたいんだが、コレはなんだ?」
タツミ「ああ、『鏡もち』か。見ればわかるだろ、頭に乗せるんだよ」
アルス「食い物をか?」
タツミ「神様にお供えする意味を込めて、もっとも高いところに掲げるんだよ。
黄色いミカンを乗せることで、上から目立つようにしてるんだ」
アルス「首が凝りそうだな……。じゃあこの薄っぺらいのはなんだ?」
タツミ「それは『たこ』だね」
アルス「ほぉ。なんかヤワな作りだが、どう使うんだ」
タツミ「素っ裸になって『前』に貼り付けるんだよ。お正月の挨拶まわりの正装だね。
その長いたこ糸で、外れないようにしっかり身体に縛りつけるのがちょっと難しいんだ」
アルス「か、変わった風習だな」
タツミ「身体ひとつで出向いて、『今年も敵対せず仲良くしましょう』という意思表示をするんだ」
アルス「なるほど。もの凄く寒そうだが、現実の日本には露天で混浴なんておおらかな習慣もあるしな。
じゃあこっちのコレはなんだ?」
タツミ「それは『門松』という武器で、嫌な人間が来たら抱えて全力突進するんだよ」
アルス「さっきと大きく矛盾してないか!?」
タツミ「新年早々外敵の侵入を許すわけにいかないもの。『今年も気を引き締めていこう』という決意表明なんだ」
アルス「な、なるほど。しかしさっきの『たこ』と合わせると、あまりに防御力が低すぎる気が……」
タツミ「なに言ってんだ、守りに入ったらダメだろ。常に特攻の精神で行くんだよ!
アルスも現実で生きていく気なら、日本の武士の魂を理解しなきゃ」
アルス「おいおい、騙された相手にそんな熱心に教えていいのかよ」
タツミ「それも日本の和の心ってやつさ。それに一応さ、友達だろ、僕たち?」
アルス「……ったく、どこまでお人好しなんだよお前は」
アルス「……ところで俺とお前は見分けがつかないほどソックリだという設定なわけだが、
いいんだな? モチかぶって素っ裸にたこ一枚で門松抱えて突進して来るぞ、エージあたりに」
タツミ「すみませんごめんなさいちゃんと本当のこと教えるのでやめてください」
アルス「わかればよろしい」
クソワラタwww
>>552-558の続き
チビとノッポとデブ、三人とも男だった。三対九本の手足は誰のものにも濃い体毛が生えている。
気を遣われたことなどただの一度もないのであろう粗末な衣服とそろいの青銅の鎧が、
彼らのみすぼらしさと汚らしさをさらに引き立てていた。
「兄ィ、これを届けたら、おれたち大金持ちだよなぁ」
「そしたらよぉ、モンバーバラまで行って、オッパイのでっかい踊り子いっぺぇはべらして、イイコト三昧しようぜ」
チビとデブが、黄色い歯をむき出しにして下品な笑いをげはげはと浮かべる。
だが、闇に溶ける笑い声に「兄ィ」と呼ばれたノッポは反応しない。
「お前ら、そんな『消耗品』に金使って楽しいのか?」ノッポの淀んだ琥珀色の目がぎらりと光った。
「いいかお前ら。この腕輪をエビルプリーストの旦那に渡したら、おれたちに入るのは十万ゴールドなんていう大金だ。
それを元手にしてさらに金を増やし、武力を蓄える。……そうすりゃ、南方のボンモール王国みてぇな小せぇ国ぐらいなら、
おれたちの手に落ちる。……一国の王にだって、やり方によっちゃあなれるんだぜ?」
計画されつくされた大きな夢に、チビとデブはひゃー、と甲高い歓声を上げながら飛び上がった。足取りも軽くノッポを
追い抜きながら、「エビルプリースト」と落ち合う約束の場所であるテンペ地方の山深い場所を目指した。
人間のような生活臭でも、エルフのような花の香りでも、純潔なる魔族の闇の匂いでもない、混濁した気配が三人の
鼻を突く。悪趣味な細工が施された肩当に、魔界では死を表す色の白いローブを身に纏い、「エビルプリースト」は
そこにいた。
「エビルプリーストの旦那、約束のモンだ。さあ、金を払ってもらおうか」
「おお、おお、ありがたやありがたや……。これでピサロ様もさぞかしお喜びになろうぞ。よくやってくれたの。
褒美の金じゃ。受け取れ」
伸びて尖った十の爪の先で丁寧に腕輪を受け取ると、足元にあった麻袋を蹴って三人の前に放り出した。
紙の束がぶつかり合う幸せな音がバサバサと袋の中で踊っている。
「……む……?」皺だらけの顔の上部、眉間と額にさらに深い皺を刻み込んで、エビルプリーストは短く唸った。
「まずは祝杯と行くかぁ。サランの町の酒場で一杯ひっかけて、明日からはエンドールを目指して、
資金捻出の策を練ろう」
でこぼこの高さで折線を描く、高さの違う頭が同時に弾けとんだ。脳髄をぶちまけて周りの木々にこびりつかせる
三人の男たちは、ノッポの手からずり落ちて地面に倒れた麻袋が立てる幸せの音を最期に聴くことも叶わなかった。
「誰がこのようなまがい物を持って来いと言った?」
地面に叩きつけられるようにして落ちた反動で、麻袋の口を閉めていた紐が緩んだ。
重力に逆らわずするすると落ちてくる麻袋の中身は紙幣ではなく、インクの染みの一滴もないただの紙束だった。
「黄金の腕輪を取りに行ったのはサントハイムの王女一行だったはずだ……。ククク、面白い。
このワシを出し抜こうなど、よくぞ考え付いた。褒美に、ワシの力のほんのひとかけらをお前たちにくれてやろう」
血の臭いを嗅ぎつけて、暴れ狛犬の群れが涎を垂らしながら集まってきた。
食欲という本能にぎらついたいくつもの赤い双眸を尻目に、エビルプリーストはサントハイム方面に向かって歩き出した。
お城って初めて見たけど、綺麗だったな〜。ヨーロッパの観光名所なんて、きっと比べ物にならないくらい。
本音を言えばもうちょっとゆっくりお城の中を案内してもらいたかったけど、そうは問屋がおろさないって奴だった。
旅芸人のメイさんを助けたあと、フレノールの南の洞窟へ黄金の腕輪を戻しに行こうとしたら、とんでもない問題が
起きてしまいました。うん、話を聞けば誰だって想像はつくだろうけど、案の定……抜けなくなっちゃってました。
腕輪がきつくて抜けないんじゃないのがまたタチが悪いの! なんで抜けないかって言うとね、手首のところまで
きたら、腕輪がきゅう〜っと縮まるのよ、これが! で、二の腕のほうまで持っていくと、ぐい〜っと輪の部分が
広がるの。別に私としては汗疹が出来ないなら困ることもないけど、ほかの三人の心配と不安が痛くて仕方ない。
まーまー、なんとかなりますって〜なんて言いながら、私たち四人は砂漠のバザーにたどり着いた。
この世界のドライフルーツを食べ歩きながら武器屋や防具屋を回って装備を整えていると、
サントハイムの紋章をつけた兵隊さんが、アリーナちゃんを見つけるなり吹っ飛んできた。
こんなところまで兵隊さんが探しにくるなんて、よっぽどのことがあったに違いない! ということで、
バザー見物も終わったからと彼女たちの国、サントハイムに。戻る途中の魔物は鬱陶しかったけど、
クリフトくんと新しく買った「ホーリーランス」はものすごく使い勝手がよくて戦闘が苦にならなかった。
サントハイムに着くと、すぐに玉座の間に通された。アリーナちゃんのお父様であるサントハイム王が、必死に
身振り手振りで何かを訴えようとしていた。なんと、突然声が出なくなってしまったのだそうだ。
泣き出しそうなのを我慢してアリーナちゃんは拳を固く握り締め、玉座に座るお父さんの前から立ち上がった。
「待っててねお父様。絶対に、お父様のお声を取り戻してみせるわ!」
意気込みも強く、アリーナちゃんは旅芸人のメイさんからもらった盗賊のカギで、お城のすみっこにあった
小屋みたいに小さな部屋の扉を開けた。部屋の中では、ブライ様なんかまだ若いって思えるほどよぼよぼの
おじいちゃんが、一生懸命ノートに羽ペンを走らせていた。ゴンじいと呼ばれているその人の話によると、
サランの町にいる吟遊詩人のマローニさんは、喉を痛めたことがあるのに今も美しい声で歌っているから、
話を聞きに言ってみてはどうかと言われた。
マローニさんは「私が喉を痛めたときは砂漠のバザーで見つけた『さえずりの蜜』を飲んだのです」と言う。
砂漠のバザーに行けば「今はもうさえずりの蜜はないんだよ。西にあるさえずりの塔にはエルフが降りてくるって
言うけど、ひょっとしたら……」と、なんとも見事な堂々巡りをやってのけてしまった。
そんなわけで、私たちは今、さえずりの塔にいるんです。が、……。
「きゃあ、やだ!人間よ!逃げなくちゃ!」
「あっ……さえずりの蜜が……」
「そんなのいいから!早く!捕まって虐められてしまうわ!」
肺にこびりついたタールがまだ抜けない私と、高所恐怖症のクリフトくんがひーひー言いながら最上階に
たどり着いてみれば、あっからさまに酷すぎる言われようをされてエルフの子たちに逃げられてしまいました。
堂々巡りの次はいわれのない誹謗中傷ですか……。第一、私には弱者を捕まえて虐めるような趣味なんて
ありません。―――虐めるぐらいなら虐められたほうが、人間としてまだマシです。
逃げ出したエルフたちが落っことしていったさえずりの蜜を手に、元来た道を通って塔を降りる。
「げほっ……げほっ、ごほごほ……っうー……げんげんげん!」
「ひどい咳ですね……大丈夫ですか……?」
私のこと心配するよりも自分の心配したほうがいいんじゃないかってぐらい真っ青なクリフトくんが、
震える手で私の背中をさすってくれる。
「平気……。タバコの悪いものがまだ体から抜けてないだけ」
咳のしすぎで頭までぼんやりしてきた。喉が痛い。階段の上り下りで膝関節がびしびししてる。
塔から出てキメラの翼でサントハイムまで戻った。戻る途中、空へ引っ張られる感覚が気持ち悪くなったけど、
空中でそんなことになったらものすごく悲惨なことになるから我慢した。
「わしは恐ろしい夢を見たのじゃ……。闇の帝王が蘇り、世界を滅ぼそうとしている夢を」
さえずりの蜜でお声を取り戻した王様は、サントハイム王家の血が見せる予知夢の詳細を話した。
闇の帝王が蘇り、世界を滅ぼそうとしている。帝王の名前はわからない。だけど、同じ形で色の違う怪物が
三体、不気味な肉体形成を繰り返して世界を死で包み込もうとする。そんな恐ろしい夢を見たと、王様は言った。
「アリーナよ。お前の強さと意志の固さはよくわかった。世界を見て来なさい。そして、よからぬことが
起きているのなら、その手で止めて来なさい。……行け、アリーナよ。わしはいつでもそなたの身を案じておるぞ」
親子が理解しあうときって、どんなリレーションシップでも勝てない絆が生まれると思う。
しっかりとアリーナちゃんを抱きしめて、王様は彼女たちの旅立ちをようやく快諾してくれた。
よかったね、アリーナちゃん。これで世界を見て回れるね。そんなことを考えたら、安心したのか世界が
回り始めた。いやいや、世界は回らなくてもいいのよ。世界を回るの。私じゃなくて、アリーナちゃんが。
だから、世界は回らなくてもいいんだってば。あららら、膝がガクガクしてぐらぐらり〜……?
「こ、こりゃいかん!すごい熱……カゼじゃな。喉も腫れておるようじゃ。これ、大臣。
残ったさえずりの蜜を、この娘に飲ませてやりなさい。呼吸や喉の痛みがやわらぐだろう」
たかがカゼっぴきで倒れた奴にさえずりの蜜はもったいないからいいです。
と、言おうにも、リンパ腺が腫れてて言葉にならなかった。
キメラの翼でフレノールに行き、南下して小さな祠にたどり着いた。朽ち果てたブロック積みの壁が
崩れて、向こう側が見通せるようになっている。アリーナちゃんたちに敬礼してから見張りのサントハイム兵が
見せてくれたものは、……私をこの世界に連れてきてイアンさんから引き離した、あのぐるぐる水だった。
「この先はエンドール国領となります。出現する魔物もサントハイム国領とは違いますので、どうか、
お気をつけて行かれますよう……。我々は姫様たちのご無事をお祈りしております」
姫様「たち」とは言ってるけど、この兵隊さん絶対アリーナちゃんのこと好きだ。目で語ってる。
クリフトくん。うかうかしてられないんじゃないの……? こんなに優しくて大丈夫なのかな、この人は。
「ここから先がエンドールなのね。武術大会に選手として出場できるだなんて……!きゃ〜っ!夢みたい!」
喜びにくるくる回るアリーナちゃんが、私の目には大回転しているように見える。喉の腫れや呼吸のつらさは
王様がくれたさえずりの蜜の残りでよくなったけど、相変わらず熱は下がらない。
ただ、熱があるのに全然体はつらくないんだよね。我ながらおかしな体だなぁ。
「よーし!行くわよ!いざ行かん、武術大会へ!」
「エンドールへ、じゃろうに……。姫様のおてんばには本当に先が思いやられるわい。
旅の扉なんぞ、老体をいじめるもの以外の何物でもありませんぞ」
ぶつぶつ文句を言いながら、さっさと「旅の扉」に飛び込んでしまったアリーナちゃんを追ってブライ様が
渦の中に脚を入れ、ゆっくり沈んでいった。続くクリフトくんも、新天地への期待と不安で複雑な顔をしながら
入っていく。
もしかしたら元の世界に帰れるかもしれないと淡い期待を抱いた。でも、あのときの渦は「反時計回り」だった。
この旅の扉は、時計回り。右回転をゆっくりと繰り返している。
ものはためしだ。戻れたらそれでラッキー、戻れなかったらまたアリーナちゃんたちについて反時計回りの
渦の謎を突き止めればいい。
洗濯機で洗われている服の気持ちがよく理解できた。向こう側の旅の扉につくなり併設の宿屋のご主人に
「お手洗い貸してください!」と言って返事も待たずトイレ駆け込んで、今朝食べたものと盛大な再会を
決め込んでしまう程度には理解できた。具合が悪いときに旅の扉はヤバイ。本当にヤバイ。
白い顔で出てきてうがいをする私を見るなり、アリーナちゃんは私の横で何か言いたそうにこっちを見ている。
「どしたの?」と聞くと、ぐにゃー、と視界がぶれた。
旅の扉から抜けるなり嘔吐し倒れたメイをアリーナが背負い、三人で魔物と戦いながら一行はエンドールに
たどり着いた。人々の賑わいが八方を流れ、様々な体臭や声や文化が混在している。ブライが宿に部屋を取り、
荷物を置いてメイをベッドに寝かせた。固い革の服を脱がせると、半袖のシャツから伸びる腕にはやはりあの
不気味な金の塊がそこにある。肘と手首の間で眠るように静かな黄金の腕輪は、誰の目から見ても信じがたいほど
当たり前のように落ち着いていた。
「ひとまず、メイはここに置いて行っても平気じゃろう。姫様、この街には大勢の人々が集まる大きなカジノが
ございます。まずはそこで武術大会についての情報を集めるのが先決かとブライは思いますぞ」
一刻も早く出場手続きをしに行きたいと目で訴えていたアリーナを制するように、ブライはクロスボウをテーブルに
寝かせて椅子に腰を下ろした。
「では、私はメイさんを看ていますので、ブライ様と姫様はエンドール見物も兼ねてカジノへ行かれては?」
気を利かせたのであろうクリフトが、青銅の鎧をはずし言う。しかし、ブライは腰を上げようとはしない。
「冗談はよせい。これ以上この年寄りに鞭打つようなことはせんでくれ。お主と姫様で行くがよい」
「で、ですが」「『ですが』は禁止じゃ。ほれほれ、さっさと行けい。姫様がうずうずしとるじゃないか」
クリフトの言葉をさえぎり、ブライは二人に背を向けるように椅子の向きを変えてしまう。
「……ま、ブライがそう言うなら仕方ないわね。ほら、行きましょ!」
「ひ、姫様!あっ、お、お待ちを!わわっ!」
顔を真っ赤にしたクリフトの手を引いて装備もはずさぬまま部屋を飛び出していくアリーナを尻目で見送ると、
ドアが閉まったのを確認してブライはメイの左腕を薄い掛け布から取り出して見つめる。
―――この娘、これほど禍々しい魔力を肌に当ててもなお、ひとの姿を保つとは。……何者じゃ?
メイはまったく意に介していないようだが、彼女を背負ってここまで来たアリーナは武術大会への期待を
その心から抜けば、肉体は疲弊によって倒れこむ寸前だろう。魔力を受けることに才がない代わり、アリーナは
魔法が使えない。幼い頃は父王もアリーナ本人もそれを気に病んでいたことがあったが、ブライは今ここで彼女に
魔法の才がないことに対し、神に感謝した。もしもアリーナに魔法の才があれば、メイの腕に光る黄金の腕輪の
魔力にあてられ、武術大会どころの話ではなくなっていたからだ。
―――ちょっと上背と乳がでかい以外は、異界からやってきたとはいえ何の変哲もない人間じゃ。
だが、普通の人間が黄金の腕輪を身に付ければ、心は壊れ、『命』が無理な進化を遂げるはず。だのに、なぜ。
眉ひとつ動かないメイの顔からサングラスを取り、その顔を覗き込む。切れ長のつり目を閉じた、ただの娘だ。
―――異界からやってきた者に対して我々がとやかく考えをめぐらせるのは粋なことではない、ということか。
ふう、とひとつため息をついて、ブライはメイが眠るベッドから椅子を離した。
黄金の腕輪の魔力に少しあたってしまったらしい。
―――クリフトは姫様と上手くやっているじゃろか?……それこそわしが考えるのは粋ではないか。
備え付けのポットで茶を入れて、老魔道士は一度思考を停止した。
「もし、そこの人。わたしはバトランド王宮戦士のライアン。つかぬことをお伺いするが、
あなたは『伝説の勇者』と呼ばれるお方について、何か知っていることはありませぬか?」
重装備に身を包んだ戦士は、小柄な少女と一緒にモンスター格闘場を見物していた青年に声をかけた。
見たところ、旅の神官らしい。血沸き肉踊る魔物同士の戦いの興奮にすっかり支配された少女が闘技場の柵から
身を乗り出そうとしているのをそっと止め、青年は戦士のほうを振り返る。
「伝説の勇者、ですか……。古い書物では何度かその話を読みましたが、残念ながら私の知っていることは
既存の記録を少し齧った程度です。お役に立てず申し訳ありません」
「伝説の勇者?その人って、勇者ってぐらいだから、やっぱり強いのかしら?もし本当にいるなら一度手合わせ
してみたいわね」
少女の言葉に苦笑する青年を微笑ましい気持ちで見ながらも、戦士は心の中で落胆した。この大きな国でなら、
少しは頼れる情報を得られると思っていたのだが、それも見当違いのようだった。
「……ならば、もうひとつ聞きた」
「ねぇ、あなたも武術大会に出場するの?」
「姫さ……、アリーナ様。初対面の方に失礼ですよ」
「いや、構いません。アリーナさんと言いましたか。残念ながら、わたしにはかのような催しに参加する余裕は
ありませぬ。ですが、こちらから見る限り、あなたも相当腕の立つ方と感じられる。いずれ、またどこかで会った
ときは、ぜひ手合わせ願いたいものですな」
戦士の言葉に気をよくしたアリーナは、にっこり笑って青年を見上げた。花のような笑顔に目を白黒させる
青年に丁寧に礼を言って、戦士は賑わうカジノを静かに去った。
三年前―――バトランド地方イムルの村では、子供が神隠しに遭う事件が頻発していた。子供たちをさらった
魔物を倒す旅に同行した女が、湖の中央に聳え立つ塔の屋上から落ちて、湖水に飲まれ姿を消した。
女とは、未だ再会できていない。ほんの数日の間、旅を共にしただけの女が、なぜか三年という月日が経った今でも
忘れられない。伝説の勇者を探す旅を続ける限り、この広い世界をくまなく見て回ることになるだろう。
その旅の一端に、水の中で姿を消した「メイ」という心優しい異邦人を見つけ出すことも、彼の目的であった。
戦士の大きな背中を見送り、再び闘技場に視線を戻したアリーナがぽつりと呟く。
「ねえ、クリフト。メイさんも今日、ここに来られたらよかったのにね。……あ、見て見て。あそこのステージ。
ギター弾いてる人がいる。帰ったらメイさんにも教えてあげよ?カゼひいて来れなかった分も、いっぱい教えて
あげなくちゃ」
「そうですね。……アリーナ様。柵を乗り越えてはいけません」
「はぁい」
広いエンドールの街の隅にある安宿に戦士が帰り着いたころ、カジノの上に併設された宿の一室でメイは目を覚ました。
Lv.12 メイ
HP:51/51 MP:53/53
E ホーリーランス
E うろこの盾
E 革の服(革ジャン)
E −
E サングラス・黄金の腕輪
戦闘呪文:ホイミ・メラ・ヒャド
所持金:821G(メイ個人の所持金額)
>>562 パンツマスクよりも変態な格好になるwww
>>570乙でした。
黄金の腕輪を装着していても大丈夫な身体。何故だろうか?
続きが気になります〜。
>>570 こいつはくせえッー! 名作のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!!
wktkが止まらねえッー!
第四話 「邪悪な存在」
家がアレなのでサンタローズの村を散歩することにする。
だが、のんびり歩いている俺に女が話しかけてきた。
見た目からしておばさんと思えるが・・・
「ねえ、あんたパパスの子供だね。これお食べ」
そういいおばさんは俺に箱を渡してきた。
「パパスさんによろしく伝えておいてね」
ニッコリと笑いながらおばさんはで去っていった。
おかしい。あのおばさんはこの前パパスに殺されかけた人だ。
というより殺されたんたんだよな。でも、神父のザオリクでなんとか生き返った。
普段、パパスに世話になっていたとしても自分を殺した相手に物なんかあげるか普通?
まあ、この世界の人々はわけ分からん人が多いからあまり気にしないでおこう、うん。
箱を開けて中を見てみると美味しそうなクッキーがたくさん入っている。
あまりにも美味しそうだったのでその場で食べることにした。
「こりゃ、うまそうだな。いただきまー・・・」
クッキーを口に入れようとしていると、連れていたベビーパンサーが俺の事を見つめていた。
「お前も食べたいのか?」
そう聞くとベビーパンサーは「くぅ〜ん」と物欲しそうな声を上げた。
「そうか、ほら、お食べ」
クッキーをベビーパンサーの口に近づけてやると一口でぺロリと食べてしまった。
「さて、俺も食べるか」
俺はクッキーをもぐもぐと食べて飲み込む。
しかし、ベビーパンサーはいきなり泡を吹いて倒れた。
「な、どういうことだ!?ま、まさか・・・うっ」
俺は倒れて薄れゆく意識の中こう思った。
(あのババア・・・許さん・・・)
その頃、クッキーをやったおばさんは
/〃// / 〃l lヽ∨,〈ヾ、メ〈 }} ;l リ ハ l`!ヽ.
//' /,' ,' 〃 l l川/,ヘ丶\;;ヽ/:'/〃∧ l ト、:l !
〃,'/ ; ,l ,'' ,l| レ'/A、.`、\;;ヽ∨〃/,仆|│l }. |、
i' ,'' l| ,l ' l. !| l∠ニ_‐\ヽ;\,//,イ| l | l ト/ λ! 、
. l ; :|| ,'i:/ l| |:|: |``'^‐`ヾ∨`゙//|斗,l ! | ,タ /l.| l 三__|__
l ' l |」,' l' lハ |'Ν  ̄´ /` ,|l_=ミ|! ly' ,〈 :|| | 口 |
|l .l H|i: l | ゙、| l _.::: ,!: l厂`刈/ /!} :l| ‐┬‐
|! :l |)!| ! | ヽ '´ ’/'_,. ノイ.〃/|! │田│
l|l |l 「゙|l |`{ .. _ |}/,ハ l  ̄ ̄
|!l |l、| !l :|. ‘ー-‐==ニ=:、__j:) l'|/|l リ 、 マ
ヽ ̄ニ‐、__.」乢!L!lヱL」__ ー、 `'''´ 从「 / 了 用
\ `ヽ\ /l | / ̄´ // '"`ー‐
. ,、 l ゙、 / ' |、 { /l/ ,
'} l ゙, / |:::\ } ,.イ/ レ |
l l l ,.イ l:::::::::\__ `'-‐::"// |′ ノ
l ! K ヽ,、 \「`''''''''"´:::::::;;:" //
. l l ト、\( _.... ヽ .:.::::::::;;″ /' _
\ | l| 八、ヽi´ | .:.:::::::::::::i' .:/'"´ ̄ ̄ ̄ ,.へ\
あのパパスのガキは今頃、死にかけているだろう。
ガキにやったクッキーには動物の嗅覚でも気づかない猛毒が入っている。
これと同様の手でパパスを殺してみせる。
そして、世界の人間達や魔物共を殺し私は・・・
新世界の神となる。
数分後、このおばさんは村の兵士に連行された。
理由はおばさんがクッキーを主人公に渡し
そのクッキーを食べた主人公が倒れたという状況を見ていた村人が通報したためである。
「ふう、ひどい目にあったな・・・」
俺とベビーパンサーが毒のクッキーを食べて倒れた後、
この村によって旅人がどくけし草っていうどんな毒でも消し去る草を俺達に食べさせてくれたので
死なずすんだ。やっぱりこの村にもいい人がいるんだな。
「あの、ありがとうございました」
俺が素直に礼を言う。恩人に礼を言うのは当たり前のことだ。
「別にいいよ」
その旅人を見てみるとどこがでみたことがある。なにやら俺と同じ格好をしてるし・・・
・・・あっ!もしかして未来の・・・・
「もしかしてあなたは未来の・・・」
だが、その旅人は俺の言葉をさえぎるように別の話しをしてきた。
「ん?君はきれいな玉を持っているね。ちょっと見せてくれるかい?」
きれいな玉ってこのゴールドオーブか。
でも、これってどこからみてもゴールデンボールじゃねえかと下ネタを思う俺。
我ながらツマンネ、もうゴールデンボールなんて言わないでおこうと思いつつ旅人に渡す。
「うん、きれいだね。ありがとう」
ゴールドオーブを見ている旅人にアレを言ってみるか。
「俺のゴールドオーブを見てどう思う?」
「すごく大きいです・・・」
やっぱり!こいつ俺だ!!見た目は未来の俺の姿っぽかったけど中身の人格とかが
別人だったら恥ずかしい事になるので聞かなかったけど・・・
ん?こんな方法で未来の俺かどうか確かめている時点で恥ずかしいんじゃ?
ま、まあいい。とにかくこんなノリをしてくるってことはこいつ俺だ!
「あんた未来の俺なんだろう?」
「さあね。今の君が知る事じゃないよ。このオーブ返すよありがとう」
旅人は俺にオーブを渡すと「どんな事があっても絶対に負けちゃいけない」といい去っていった。
あいつは本当に未来の俺なのだろうか?それとも俺が変わっていったのだろうか?
・・・俺はしばらくしてから散歩を再会した。
村では変な事が次々、起こっていることが分かった
それは民家のタンスの中に入れてあった物がタンスの別の段にあったりとか
作ってあったシチューがなくなっていたりとか
最近、妻に浮気の疑いをかけられている夫がいるとか・・・まあ、最後のは多分関係ないと思うが。
とりあえず、気になるので情報の調査をしている。
「まだ情報を聞いてない所は・・・酒場か。よし行ってみよう」
酒場にいるとなんと人間ではない生き物、そう妖精がいた。
「な、なんですか?この妖精と言わんばかりの妖精っぷりは!?」
思わず口に出してしまった。
だが妖精は何故か嬉しそうな表情になり俺に近寄ってきた。
「あなた私の姿が見えるの?」
「え?見えるけど・・・」
「良かった!他の人間達は私の姿が見えなかったみたいだから困ってたの!」
「へ、へえ・・・」
「ねえ、私達の世界に来て!今、妖精の世界で大変な事が起こっているの!」
暇だったので行く事にした。ちなみにこの妖精はベラという名前らしい。
べラはとある所に来て欲しい。そこで待ってるといい一足先にその場所へと向かった。
妖精の世界の入り口は俺の家の地下室にあるらしい。
そんな所にあったっけ?そんに疑問を持ちながら家へと向かった。
キイ、俺は家のドアを開く。
すると目の前にはパパスに血祭りにされたサンチョの死体があった。
「たぶん、なんか知らないけどパパスの怒りを買ったんだな・・・」
そう言い、俺は地下室の階段を下り地下室に向かった。
地下室に着くとべラがいた。
「ふう、じゃあ行きましょ。くわしくはポワン様から聞いて!」
ポワンという人は精霊の世界の村で偉い人らしい。
「どんな人か早くみてみたいな」
「とてもきれいな人よ。あっ、誰か来るわ!」
コツコツコツ、階段を下ってくる音が聞こえた。
そして、その人物が俺達の所に来た。その人物はパパスだった!
「お前、誰かと話してなかったか?」
パパスにも妖精の姿は見えないらしい。
なのでべラの姿も見えないのであろう。
「だ、誰もいないけど」
俺が答えるとパパスはチッと舌打ちすると「次に間際らしい事をしたら殺す」と小声でいい
殺気だった顔をしながら階段を登り戻っていった。
(恐い・・・・!恐!・・・逃・・・この家を出るとどうやって生きる?無理!!
この家にとどまる?無事で?出来る!?否・・・死!!)
色んな事を俺は思っていた。
「やっぱり大人には誰も妖精の姿が見えないのね・・・まあいいわ」
べラは俺の様子に気づかないのかそう言っていた。
そして、いきなり光の階段が出てきた。これで妖精の世界へ行けるらしい。
俺、そして空気だったベビーパンサーが光の階段を渡るべラについていった。
妖精の世界とはどんな所なのだろうか?俺は少し緊張していた。
一方、ベビーパンサーは将来の事を不安に思っていた。
レベル 10
最大HP 76
最大MP 28
装備 ブーメラン 皮の鎧 うろこの盾 木の帽子
呪文 ホイミ キアリー バギ スカラ
>>565-570の続き
「ギター弾けるようになった?」
「そんなにすぐにはなれないよ。……私は『佐呂間さん』と違って弦楽器弾く天才じゃないんだから」
高校の制服姿のままでスタジオに入ったボーカリストは、椅子に腰掛けるメイの足元に座り、
床に置かれた譜面を覗き込んでいる。
成長途中のボーカリストと練習中のギタリストは、他のメンバーよりも早くスタジオに入ることが自然と多くなっていた。
「ごめんね。元はと言えば俺が『佐呂間さん』のベースで歌えたら最高なのに〜!
なんてミーハーなこと言ったから悪いんだよなー。……反省してるから恨まないで?」
「恨まないよ。今はもう、あなたの歌を引き立てる音を出そうと夢中なんだから。ね?」
笑顔の裏にある邪とも取れるであろう思いを隠すため、メイはギタリストになってからサングラスを
かけるようになった。演奏中、手元から目を離した時、真っ先に視線を向けるのはまだあどけなさの残る顔で
歌うボーカリストだった。悪魔が味方しているのか、サングラスをかけて鋭さを増したメイの評判は、
男性人口の多いメタル系バンドの世界にいても引けをとらないと噂になった。
「……俺がボーカルになったこと、後悔してない?」
黒いレンズに隠れた瞳を覗こうと、ボーカルは精一杯メイの顔を見つめた。
薄く小さなメイの唇が優しくつりあがり、子どもを相手にするための笑顔を作る。
「してないよ。……この先、『木暮くん』が高校を卒業しても大学生になっても、社会人になったって、
ずっとこうして隣でギターを弾いていられればいいなって、いつも思ってる」
「ほんと?ずっとだぜ?ずーっと。俺たち一蓮托生?」
「うん。……私たち、ずっと一緒にいられたらいいのにね。『佐呂間さん』も『木暮くん』も私も、ほかのみんなも」
「……ねー、メイさんはいつになったら俺のことあだ名で呼んでくれるの?
『木暮くん』って呼ばれるたびに、なんか背中のあたりがもぞもぞするんだけど」
「えー……?あだ名呼びってなんか恥ずかしいなぁ。おばさん、『木暮くん』みたいな若い子と違うんだから」
「何言ってんだよ。十分若いじゃん。ほら、一回呼んだら癖になるかもしれないよ?はい、呼んで呼んで?」
「んー……じゃあ。―――」
―――目が覚めて、よかった。呼んでしまってからじゃ遅かった。この歳になって起き抜けに泣くとかは勘弁。
思春期の中高生じゃあるまいし。よりによって一番楽しかった頃の夢を見るなんて。何年前の話なんだか。
私が彼を苗字で呼んでいたのは、彼がバンドに加わってから間もない時期だけ。一緒に活動してきた四年間、
ずっとあだ名で呼んでいた。この世界に来てから忘れてた。彼はもういない。忘れようとすると、ふとした
瞬間に記憶は蘇ってくるものらしい。
落ち着けと言い聞かせても、嫌な汗は止まらずに寝間着をぐっしょり濡らしている。
……未だ夢に出るほど、私は彼のことを好きでいたんだと痛感した。そして、……違う世界にいるときぐらいは
聴きたくも口にしたくもない名前が出てきたことに、年甲斐も無く強烈なダメージを受けているのを自覚した。
無責任な発言は結局のところ自分の身を滅ぼすことになる。これをよく覚えておこうと思った。
「頼む、アリーナ姫よ。どうかこの武術大会で優勝し、モニカの結婚をなかったことに!」
最近、魔物の動きが活発になっているからと、エンドール王はつわものを集めるためにこの武術大会を開いたそうで。
武術大会で優勝した人はなんと、この国のお姫様と結婚する権利が与えられる。
つまり、王様の隣の玉座で浮かない顔をしているモニカ姫は、優勝者が男性だった場合、嫌でも結婚させられてしまう。
少しだけむっとしたアリーナちゃんがエンドール王の前でスカートをつまみ頭を下げ、無理な頼みを聞き入れる。
「……王様、ひとつお願いしたいことがございます」
跪いて顔を上げ、アリーナちゃんはとんでもないことを口にした。
「ギターを、ください。わたしの後ろで控えている色眼鏡の者は、人々を魅了する音色を奏でるギタリストです。
ですが、旅の道中に魔物に襲われてギターを壊されてしまいました。わたしたちの旅の資金では、高価なギターを
買うことはできません。ですので、どうかわたしが優勝した暁には、この国にある最高のギターをお与えください」
ななななな何を言い出すのこの子は! 魔物に壊されたなんて大嘘までついて!
いや……理由はあるんだ。昨日は一日中ずっと熱出して寝込んでいた私を、ステージでギターを弾いていた人が
いるから観に行こうとアリーナちゃんがカジノへ誘ってくれた。砂漠を放浪する民の衣装を着てギターを爪弾く
男性を、ステージが終わったあと二人で訪ねて「一度そのギターを貸してくれませんか?」と申し出た。
すると、返ってきた答えは悲しいものだった。
この世界ではギターはすごく高価な楽器で、ひとつ買うだけでも二万ゴールド近くかかるのだという。
そんな高価なものを、見ず知らずの他人に貸すわけにはいかないと突っぱねられてしまった。
そうなると、いつかギター演奏を聴かせると約束した私も、それを楽しみにしてくれていたアリーナちゃんも、
意気消沈してがっくり来てしまう。とぼとぼと宿に戻った私たちを見て、ブライ様とクリフトくんは
「いつかご自分で気づいたほうがよいと思い、フレノールの洞窟では何も言わなかったのです」と頭を下げた。
確かに、あのときは「いつかギターを弾いてあげる」という約束でその場の空気を取り持ったから、
真実を伝えられれば一気にしらけてしまっただろう。
けれども、なんかなぁ……。出場するのはアリーナちゃんなのに、高価なギターをもらえるのは私、
っていうのも、ちょっと腑に落ちない部分がある。……よし。決めた。
「……姫様、わたくしなどのために貴重な優勝賞品を選ぶ権利を棒に振ってはいけません」
「で、でも、メイさん……、わたし、メイさんのギターが聴きたいよ」
「ええ、ですから、姫様」
床に置いて攻撃の意はないという態度を取らせていたホーリーランスを握り、切っ先を天井へ向けた。
「わたくしも、武術大会に参加させてください。もしも決勝戦でわたくしと姫様が戦い、わたくしが勝ったら、
その時は国王陛下からギターをいただきます」
王様に拒否権なんかなかった。むしろ拒否する理由がない。女が二人、決勝戦まで残れば、大事な娘を嫁にやる
必要なんかなくなるからだ。
これだけ大きな街だと、武器や防具の品揃えもすごく豊富だった。防具屋でうろこの盾を「鉄の盾」に
買い換え、クリフトくんは今まで装備していた青銅の鎧を売って鉄の鎧を買い、武器屋でブライ様は
毒蛾のナイフを買った。でも、アリーナちゃんのような武道家が装備できる軽くて丈夫な防具は売ってなかった。
何かいいものはないかと探していたところで、さっき立ち寄ったカジノの景品リストを思い出す。
景品の中に「スパンコールドレス」っていうキラキラのドレスがあった。交換所のバニーさんの話を聞いても、
優秀な防具として、旅する女性に大人気だって。
それじゃあコインを買うお金をどうやって捻出しようかと、カジノの入り口付近で考える四人。
「……ん?ステージの上にギターが置きっぱなしになっとるぞい。ははぁ、さてはあのヘタギタリスト、
休憩時間に入ったんじゃな。……こりゃ、何をぼんやりしとるか。さっさと行ってこんかい」
はい? 行ってこんかいって、どこにですかブライ様。
「ぼやぼやしとるとあのヘタクソが帰ってきてしまうぞ。さっさと一曲弾いて、おひねりを稼いで来なさい」
「無茶言わないでくだ」「メイさんギター弾くの!?聴きたーい!」「わ、私も興味があります!」
トリプルアタックに負けて、しぶしぶ私はステージに向かった。深呼吸ともため息ともつかない二酸化炭素を
吐き出して、なるべく人目につかないようにステージに上がる。
ギター欲しさにここまでやるなんて、例のテレキャスターの購入を決めたとき以来だよ、もう……。
木製のスタンドに立てかけられているギターを勝手に拝借して、バンドを肩にかけた。
曲目はー……、よし、スタンダードに「禁断の遊び」で行ってみよう。
爪の長さはあまり変わっていない。むしろまったく伸びてない。こっちに来てから体質が変わったんだろうか。
前は爪でアコギ弾いてよく爪の先をぼそぼそにしてたのに。
一番細い弦を弾くと、思いのほか澄んだ音がした。エレキではないけど、
シンプルな造りのギターはこの世界でもちゃんとしている。
……この腕輪はギターの音を聴けるだろうか。聴けるんだったらこの曲を聴いて、
禍々しいとか怖いとか言われるその魔力を、少し優しいものにできないだろうか。
左手に何かが乗り移ったようにフレッドを抑えた。久しぶりの感触に指先が喜んでいる。指すべてにそれぞれの
意志が宿ったように右手が動いた。鈍ってはいない。あー、私、ギターが弾きたかったんだなぁ。
黄金の腕輪が熱を持ち始めた。火傷をするとか、そういう熱じゃない。ホットコーヒーを注いだマグカップを
当てるような、よく働いてくれたアンプに触れるような、そんな熱だった。
―――心なしか、ギターの音が大きくなる。弦の弾き方は変えていないのに、左手に伝わる振動が強まった。
あっという間に一曲を弾ききってしまうと、ライブとは違う歓声がどっと沸きあがった。
ステージに投げ入れられる硬貨と時折見える紙幣を一つ一つ丁寧に集めてステージを降りると、
さっきのギタリストに恨めしそうな目で睨まれてしまった。おひねりは全部で三千ゴールドちょっと。
これを元手にして私がポーカーテーブルでちまちまダブルアップを繰り返していると、
アリーナちゃんに引っ張られてスロットマシンをプレイしていたクリフトくんが、なんとスリーセブンをたたき出した。
……カジノでの手柄は取られたけど、装備は整った。コロシアムからは、観客の気配が地響きのように伝わってくる。
回復魔法の素質があってくれて、本っ……当に良かった。私の世界のどこに、人に向けて弓矢を打つ人がいると。
アリーナちゃんと戦うまでに、四回の「予選」があった。予選の「せん」は「戦闘」の「せん」のほうが、
この場合しっくり来そうだけれども。二回目の予選で戦った弓使いのクラウスとかいう人に、思いのほか苦戦を
強いられてしまった。こっちは接近戦向きの槍、あっちは遠距離戦向きの弓矢。刺さったところが悪かったらと
考えると、今でもぞっとする。鉄の盾で必死に防御しながら、ホイミと物理攻撃を何とか駆使してここまできた。
途中の魔法使いの踊り子さんも、女の子なせいか打たれ弱くて助かった。
なんか分身する変な魔物は、ホーリーランスを横凪に振り払えば必ずどれかには当たったから、意外とすんなり。
今まで、槍は「突く」とか「振り上げる」しかしなかったけれど、こういう使い方もあるんだね。
この方法なら、ブライ様に「グループ魔法の才能がないのぅ」と言われたのも、ある程度カバーできそう。
アリーナちゃんと当たるのは決勝戦かと思ってたけど、実際は準決勝でぶつかった。
「デスピサロ」という、やたらと強くて残酷な人がいるらしい。コロシアムに入ったときも、中の人たちはその
デスピサロの話題で盛り上がっていた。対戦相手を殺すまで攻撃をやめないらしい。物事にはたまに、手加減と
容赦が必要なのを知らない人なんだろうなぁ。……そんな危ない人とアリーナちゃんを戦わせるわけにはいかない。
彼女は曲がりなりにも、一国のお姫様だ。何かあったらサントハイムの国中が大変なことになっちゃう。
ギターのため、そして彼女のためにも、ここでアリーナちゃんに負けるわけにはいかない。
試合開始の声がかかった。アリーナちゃんは良い意味での手加減なしに、こっちに向かって飛び掛ってくる。
彼女の動作は風みたいに速い。ときどき目で終えなくなることもあるぐらい。強烈な蹴りを鉄の盾で受け止める。
左手に伝わってくる衝撃はすごかった。鉄を蹴ったら脚が痛くなるだろうと思って心配すると、
そんなそぶりはまったく見せずに次の攻撃動作に入っていた。
ホーリーランスを振り上げると、アリーナちゃんの「鉄の爪」についている鉤と鉤の間に受け止められてしまう。
盾を装備できないアリーナちゃんは、とてつもない動体視力で相手の攻撃を見切っている。
腕力では彼女のほうが上。ってことは、ここで私が勝つには、温存していた魔力で魔法攻撃に出るしかないってこと。
ちょっと情けなく映るけど、私はアリーナちゃんに背中を向けて走り、距離をとった。外野からちょっとした
ヤジが飛んできたけど、……そんな言葉程度で傷ついちゃうほどこっちは若くないんです。くぅ……。
「メラ!」
ハンドボール大の火球が飛ぶ。予想では、アリーナちゃんにメラがぶつかるのはもっと遠い場所のはずだった。
けれど、背中を向けて距離を取ろうとする相手をみすみす逃がすほど、アリーナちゃんは容赦を持ち合わせてない。
アリーナちゃんのスパンコールドレスにぶつかって煙を上げる火球が弾けるのと同時に、右腰のあたりを思い切り
蹴られた。吹っ飛ばされて壁際に転がる。かなり痛いけれども、寝っ転がってる暇はない。わああ来た来た来た来た!
やばい! 距離はあんまりない! 回復しないとノックアウトされちゃう! でも攻撃もしないと勝てない!
……よし決めた。ヒャドを唱えよう。それでなんとか距離を作って、そのあとはホイミで行く!
……確かに、「ヒャド!」って、二回唱えた。ほら、人間あせると同じこと何回も繰り返して言っちゃうでしょ。
それだよね。うん、それだったんだ。
左手から発動したヒャドは、唱えた回数どおり、ふたつの氷をアリーナちゃんに飛ばした。こんなこと初めてだった。
魔法は、一度唱えるなら一回しか発動しない。魔力で魔法を発動したら、次の魔法を唱えるまでには魔力の「タメ」が
必要だから、連続して一度に二回、今みたいに発動するはずなんてない。
出会ったばかりのころ、戦闘でメラを連呼していた私に、ブライ様は確かにそう言っていた。
左腕で、黄金の腕輪が熱くなる。嫌な熱ではないけど、私は初めてこの腕輪のことが怖くなった。
今、魔法を連続で唱えられたのは黄金の腕輪のせいだとはっきりと自覚できた。
アリーナちゃんの選択は正しかった。こんなことが出来てしまうものを悪い人に渡したら、一体なんのために悪用されていたんだろう。
「くっ……」
氷の塊に吹っ飛ばされたアリーナちゃんが起き上がり、薬草を齧る。咥えている葉っぱをそのままに、
アリーナちゃんは戦いの意志を宿したまんまの目で私を見据え、笑った。今まで見たアリーナちゃんの笑顔の中で、
一番いい笑顔だった。つられて私も笑う。距離は十分に取れた。
クリフトくんから即興で教えてもらった「スカラ」とホイミを一度ずつ唱えて、ホーリーランスを握りなおす。
この戦いではもう、黄金の腕輪には頼らない。彼女は純粋に私との戦いを楽しんでくれている。だったらもう、
アリーナちゃんが使えない「魔法」なんてナシ。向こうも薬草を持ってるし、スパンコールドレスと革ジャンの
耐久性の差があるから、ホイミとスカラは使わせてもらうけど、それ以外は唱えっこなしだ。条件は互角だ。
「てやあああ!」
気合一発、アリーナちゃんは掛け声と共に鉄の爪を繰り出す。この一撃に耐えたら、勝算は十分すぎるほど整う。
スカラで耐久性は上がってる。防御すればなんとかなるはず……だったんだけど。
―――姫様の「会心の一撃」には十分ご注意ください。武器による攻撃は時折、体で繰り出すのに最高の条件が
整うことがあります。いつものように攻撃をしたら、とても上手く決まった、ということが、メイさんにも
あるでしょう?姫様のお体はそういった、会心の一撃を打ち出す条件が整いやすいという特徴があります。
打たれたが最後、物理的な防御力など一切関係なくなります。いくらスカラを唱えていても、です。
……姫様に優勝していただきたいのはやまやまですが、私は……姫様がデスピサロと戦うことがとても心配なのです。
身勝手とはわかっています。ですが、どうか……。メイさんがデスピサロと戦うことになったら、私はルールを無視して
加勢いたします。
スカラを教わったとき、クリフトくんがロザリオを握り締めながら言ってたことが今更になって蘇ってくる。
そ、走馬灯……!? いやいや、アリーナちゃんも多分、死なない程度に力は抜いてくれてるはずだよね……。
ボディに入れられた強烈な一撃は、「吹っ飛ぶ」なんて表現では表しきれないほど綺麗に私の体を宙に跳ね上げた。
あんまりにも強烈なのを叩き込まれると、いくらみぞおちに入ったとしても出るものは出ないらしい。
壁に背中をぶつけて地面に落ちる。ホーリーランスを杖代わりに立ち上がってみたものの、背中を打った拍子に
衝撃が肺にまで伝わってきてたものだから、呼吸困難になって結局倒れこんでしまった。遠くで試合終了の声がする。
コロシアムの救護室で目を覚ました私は、まだずきずきする体を起こしてあたりを見回した。
「デ、デスピサロは?」
隣のベッドで横になっていた武道家さんにいきなり尋ねると、「棄権したんだ」と教えてくれた。
私がアリーナちゃんにやられて気を失っている間に、決勝戦が行われたらしい。相手はやっぱり、あの悪評高い
デスピサロって人で、アリーナちゃんも相当緊張していたって話だった。だけど、待てども待てどもデスピサロは
決勝戦の場に現れず、痺れを切らした王様が控え室を兵士に調べさせたら、なんとまあそこはもぬけの殻だったそうだ。
「じゃ、じゃあ、優勝は」
「サントハイムのアリーナ姫だよ。なあ、アンタはサントハイムつきのギタリストらしいけど、
ありゃホントにお姫様か?男の俺よりも強烈な拳打を打ち出しやがる。並の剣士だって彼女にゃ勝てねぇよ」
ああ、思い出した。この人「ミスター・ハン」って人だ、一回目の予選で、アリーナちゃんにやられちゃってた。
「よっ……こいしょ」
ホイミを唱えて体のずきずきを消して、ベッドから起き上がる。やっぱり優勝はアリーナちゃんだったんだ。
それにしても、デスピサロが棄権してくれてよかった。あの子にはまだ、「世界を見て回る」っていう夢が残ってる。
ギターがどうのって、そんなことこの際どうでもいいや。早くあの子の顔が見たい。
「メイさぁん!」
美しすぎる放物線を描き、アリーナちゃんが飛び込んできた。ベッドに腰掛けていたのにぼすんと押し倒されて、
脚が天井向いて体がL字になる。……一応けが人なんですけど、私。
「あっはは……。アリーナちゃん、優勝おめでとう」
「へ?なんで知ってるの?」
「そこの人から聞いた。……でも良かった。デスピサロが棄権したんだってね」
「いくじなしのデスピサロなんて、わたしにかかれば秒殺よ!それであの、メイさん。これ、優勝商品。はい」
柔らかい木綿の布にくるまれた、何か大きなものを差し出された。な、なんですかコレは。……ん?
こ、の、輪、郭は、ま、まさか……。
「……うっそ!?えっ、いや、何これ何これ、うわあああホントに!?あっ、ありがとう!」
布を取り去ってそこに現れたのは、上品な木目の茶色が存在感を強く引き立たせる一本のアコースティックギター
だった。この世界でも普及している楽器製造の技術がふんだんに使われているみたい。喜びに興奮して、ギターの
細部の特徴を若い娘みたいに口に出した。
「すっごい、うわ、ソリッドボディになってる!しかもネックはデタッチャブルワンピースメイプルネック!?
信じられない……この世界にもこんな技術があって、しかもそんなギターが私の手にあるー!」
遅れて、王様の従者さんから黒い革で造られたハードケースが届いた。幸せの絶頂でふわふわ足のつかない地面を
歩きながらみんなでお城を出た。
その直後、嬉々とした気分をぶち壊すようなとんでもない光景が目に飛び込んできた。
(※
>>585のタイトルは「武術大会3」でした。すみません)
「ひ、姫様……姫様……!ああ、ようやくお会いできた……。大変、です。サントハイムのお城が……っぐ、ふ」
傷一つ無いサントハイム王家の紋章がついた鎧が、がしゃんと崩れ落ちた。鎧の中には今この瞬間まで、人がいた。
なのに、突然おびただしい量の血と最後の呼吸を吐きながら、サントハイム兵士さんは白い煙になって消えるように
いなくなった。
「フレディ!お、おい、フレディ!」空っぽの鎧にすがりつくようにクリフトくんが地面にはいつくばった。
「ああ……なんということだ……!ひ、姫様!」
たぶん、今ここで事切れた兵士さんはクリフトくんの知り合いだったんだろう。この街にはこんなにたくさんの
人がいるのに、誰一人として空っぽになった鎧にもクリフトくんの嘆きにも気づいていない。幸か、それとも不幸か。
「いったい我がサントハイムに何が起こったと言うんじゃ?……姫様、ここは一度サントハイムに戻りましょう!」
「……っええ!急ぐわよ!旅の扉まで走りましょう!」
空っぽの鎧を持ち上げてみる。鉄製の重く頑丈なもののはずなのに、片手ひとつで軽々と持ててしまった。
密度が薄くなったように軽い鉄の鎧は、私の手からちぎれ落ちて、鉄くずとなって風に吹かれ飛んでいく。
尋常じゃない、大変なことが、サントハイムのお城で起こっている。それぐらいしかわからないけれど、
ただ風邪を引いただけの見ず知らずの女に貴重なさえずりの蜜を分けてくれた王様や、倒れた私を甲斐甲斐しく世話して
くれた大臣やメイドさんたちの国が危機に瀕している。みんなの後を追って私が走る理由なんて、それだけあればもう
十分だった。背中に背負い込んだギターが揺れる。
息切れは以前と比べて大分らくになった。少しずつだけど禁煙の効果が出てきてるみたい。
旅の扉でアリーナちゃんや私たちの無事を祈ってくれた見張りの兵士さんはいなかった。彼も消されてしまったんだ。
……いったい誰がそんなことを? そこらじゅうをちらほらと舞っている「闇の帝王」の話は、噂じゃなくて真実だった
とでも言うの?
「お父様……お父様!」
アリーナちゃんが真っ先に旅の扉へ飛び込んだ。クリフトくんがそれに続き、ブライ様も老体に鞭打つように、
ゆっくりではあったけど彼なりの速さで時計回りの渦に入った。私もそれに続こうと、旅の扉へ続く短い階段をとばし、
中へ飛び込む。
回転の向きが変わった。途中までは確かに時計回りだったはずなのに、いつのまにか渦は反時計回りを繰り返している。
まさか、こんな大変なときに元の世界に戻そうって言うの?
……冗談じゃない。
アリーナちゃんの優勝商品としてもらったギターを、まだ彼女たちに聞かせてない。
お世話になったサントハイムの人たちの安否を確認してもいない。
やめて! 誰がこの渦を回してるのか知らないけど、邪魔しないで! サントハイムへ行かせて!
回転が止まった。恐る恐る目を開けてみると、そこはエンドール側の旅の扉だった。もう一度渦に入りなおしてみても、
時計回りの渦は内部に私を抱いたままで、反時計回りに切り替わってしまう。
本当に移動すらしてないの?と思って、確認のために外へ出た。
「なに、これ……」
ギターをもらったときと同じ台詞なのに、その意味合いはまったく違う。
武術大会が開かれたついさっきまで、エンドール国領は春の盛りだった。淡い色の花がたくさん咲いていて、
ちょうちょが飛んでいた。だけど、ここは……。
ぎらつく陽光がサングラス越しにも眩しかった。木々の青々とした若葉は、夏空に向かって精一杯伸びている。
遠くからも近くからもセミの鳴き声が耳を劈くように充満していた。じっとりと水気を含んだ暑い空気が、
ぬるくてのろまな風に吹かれて革ジャンの中へもぐりこむ。
どこをどう見ても夏だった。肌は暑いのを感じ取っているのに、不快感がまったくないのが怖かった。
汗ひとつかいていない。そういえば、あのときはまったく気にしていなかったけれど、ライアンさんとイムルで
出会ったのは、確か秋口だったはずなのに、アリーナちゃんたちとフレノールで出会ったときは、さっきみたいな
うららかな春だった。
時を越えて、魔力めいた渦に移動させられている―――。
真夏の気温だというのに暑苦しいとも感じず革ジャンを着ているのもばかばかしかった。
彼女たちを追えないなら、この世界で行く当てなんかどこにあるって言うんだろう。背中のギターの重みだって、
ただ単に虚しいだけなのに。
久々に覚えた苛立ちに唇を噛み締めながら、私は革ジャンを脱いだ。
攻撃的な太陽光線は、サングラスの黒いレンズ越しに私の目を突き刺している。それが痛くて、涙が出た。
第二章 完
Lv.12 メイ
HP:51/51 MP:53/53
E ホーリーランス
E 鉄の盾
E 革の服(革ジャン)
E −
E サングラス・黄金の腕輪
戦闘呪文:ホイミ・スカラ・メラ・ヒャド
戦闘特技:なぎ払い・連続魔法(黄金の腕輪の効果)
所持金:171G
※ソリッドボディとかデタッチャブル〜は本編とは関係ないので気にしないで下さい。
興奮のあまり小難しい単語を喋ってるだけですw
>589
乙です!
>>539の続き
「おいおいおい!なんなんだあの化け物は!!」
カンダタは目の前の光景に驚愕していた。
遭遇した暴れ猿やキャットフライなどのモンスターの群。その群れが一瞬にして花火の様に飛び散っていた。
バキッ!ガスッ!ボキッ!ドガッ!ガンッ!
見えるのは敵が吹き飛ぶ姿のみ。
十匹以上のモンスターが一瞬の内に葬らさられた所で、ようやく木刀を背にしまうサキの姿を見つけることが出来た。
「あの女、あんなに強かったのか!?」
「カンダタ、やっぱりお前でも驚いたか。」
「驚くっつーかよぉ!動きが早過ぎて目がついていかねえ!!」
より強いモンスターが生息していると言うロマリアから東の地を目指していた俺達。
10匹以上にもなるモンスターの群れを見つけるやいなや、サキは一目散に切り掛かりあっという間に蹴散らしたのだった。
その姿をカンダタは俺と同じようにただ唖然として見ているだけだった。
「モンスター以上にバケモンじゃねえか!!あの女!!俺様の子分共が簡単にやられるわけだぜ!」
カンダタの子分達はアジトに残してきた。
カンダタが仲間に加わり、子分達もついてくるつもりだったのをサキは「いらない」と一喝していた。
「おいおいこんなんじゃ俺なんか仲間にして意味あんのかよ!聞いてねーぞあの強さは!」
「あぁ…それ俺も思った。だけどな、アイツには弱点がある。」
「あぁ!?弱点だぁ!?あんなバケモンのどこに弱点があるってんだ…。」
サキはモンスターをひとしきり倒し終え、俺達の所へと戻ってくると満足したのかあくびを上げた。
「ふぁぁ……んん…。ソラ。眠くなった…。」
「もうかよ。ペース考えられないのか?」
「そんなこと知らん…。あと頼む…。」
それだけ言うとサキはその場に倒れ込んだ。
「ったく…。ほら、な?」
「なにが?」
「コイツは力を使い果たすと眠ってしまうんだ。所構わずな。おかげで俺は死にかけた。」
「な、なんだそりゃ…。」
アッサラームの町まではまだ距離がある。
仕方なく俺は眠りこむサキを背負い、俺とカンダタで出くわすモンスターと戦いながら町へと向かった。
アッサラームの街に着いた。
この街の南にはすぐ砂漠が広がっていて、砂漠の国イシスへと向かう者の立ち寄り場として名が知れている。
サキを背負いながら俺とカンダタもこの街へと立ち寄っていくにした。
「おい。着いたぜサキ。って言ってもなかなか起きないんだよな…。」
「とんだ眠り姫じゃねーかよ。モンスターが襲ってこようがぐっすり眠りやがって。コイツ殴っていいか?」
「よしておけよ。バレたら死ぬぞ多分。」
「けっ。いつか俺様の実力でぶっ倒してやるぜ。」
「ん…んん………。」
そんな眠りについているサキから微かな声が聞こえた。
「起きたのかサキ?」
「ん…。もう夜……。ソラ。」
「なんだ?」
「面倒だからこのまま宿屋まで頼む……zzz……。」
「お、おい寝るなよ!お前背負ってんの疲れるんだよおい!……ったく眠りやがった。なぁカンダタ交代してくれ。」
「けっ。そんなガキの面倒なんざゴメンだね。もっと胸のある魅力的な女だったらおぶってやってもいいがな。」
「ちぇっ。仲間が増えればコイツのおもりもしなくていいと思ったんだけどな…。」
仕方なく宿屋を探す。
しかし割と広い街。知らない間に俺達は路地裏へと迷い込んでいた。
「あ〜ら素敵なお兄さん!ねえぱふぱふしましょっ。いいでしょ?」
そう言いながら一人のあられもない格好をした女が話しかけてきた。それを見たカンダタが興奮している。
「おお!ソラ!分かるだろ?俺はこういうナイスバディな女がいいんだ!!はぁはぁ!喜んで行くぜねぇちゃんよ!」
「ちょ!ちょっとあなたじゃないわよ!あなたみたいな変態に声かける訳無いでしょ?」
「な、なにぃ!?」
上半身裸でパンツ1枚のカンダタは、変態ではないと否定するもののまるで説得力が無かった。
「お、俺?」
「そう!お兄さんぱふぱふしましょっ。いいでしょ?」
…………………ごくりっ。
「お、おいカンダタ。サキ頼む。後でなんかおごってやるから。」
「嬉しい!じゃああたしについて来て!」
「あっ!おいテメエ!!卑怯だぞテメエばっか!」
その女はサキには備わっていない、たわわなものを俺の腕にぐいぐいと押し付けて、路地裏のさらに裏へと連れて行こうとした。
「………ん……、ソラ…?…どこへ行くんだソラ?…その女は誰だ?」
眠りが浅かったのかサキは再び目を覚ました。
……ちっ、起きてしまったのか。肝心な所では起きないくせになんで今目覚めるんだまったく。
「あの野郎、女とぱふぱふするんだってよ。ヘッヘッヘ。」
「ばっ!カンダタ!何言って!」
薄ら笑っているカンダタ。わざとバラシやがったに違いない。くそっ、軽蔑されるのか俺。ほんのちょっとした過ちで…。
恐る恐るサキの方を見る。
相変わらず表情は読み取ることがが出来ない。
「………ぱふ、ぱふ…?ぱふぱふってなんだ?」
……助かった。サキはぱふぱふを知らない。
纏わり付いている女を振りほどいて何事もなかったのようにごまかして事を済ませよう。
「気にするな…。さあ宿に…」
「あぁ?ぱふぱふも知らねぇのかこのガキは?…あぁそうか、お前無いもんなぁ。」
「…無い?私の何が無いんだ?」
「カッ!カンダタお前!!気にするなサキ!なんでも無い!なんでもな…っ!」
「黙れソラ。」
突如俺の顔面に突き付けられる木刀。切っ先が俺の鼻先に数ミリの所で止まっていた。
「自分に無い」ということに苛立ちを感じているのか、今のサキは戦闘モードのサキになっていた。
(なんでこんなことに…!!)
なす術が無い俺。サキはカンダタから真意を聞くだろう。そして俺は軽蔑される。
いや、それだけじゃなく俺は仲間から外されるかもしれない。いやいや、数秒後には俺はこの世にいないかもしれない。
どっちにしろ俺は選択肢を間違えたのか。こんなのでバッドエンドか…。
バキッ!!!
鈍い音が鳴り響いた。木刀で骨を打ち折る音。サキがモンスターをぶっ倒すときによく聞こえる音。
しかし俺は無事だった。
サキはなぜかカンダタをぶっ叩いていたのだった。
「わ、わたしはぺったんこなんかじゃない!!!ぺったんこなんかじゃないんだから!!!」
既に倒れて泡を吹いているカンダタに対して、サキは別人に変わってしまったかのように叫んでいた。
「お…おいサキ…。」
俺の声に反応し、今度は俺を睨むサキ。
「私はぺったんこなんかじゃないぞ!!」
「わ、わかったから落ち着けよ、な?」
「……ソラ。ひょっとしてソラも私がぺったんこだと思ってるのか?」
俺はぶんぶんっと首を横に振った。縦に振ることは間違いなく選択肢を間違えるということ。
「…ふん、私はまだ16歳なんだ…。これからおっきく…な……zzz……。」
言い終えぬままにその場に倒れるサキ。
「おいまさか眠った…のか?…ったく、なんで急に眠れるんだお前は……。」
ともかく助かった俺はサキを背負い、カンダタを引きずって宿屋を探すことにした。
(やっぱ胸無いなコイツ…)
>>548の続き
旅に出たアリアハン生まれの超弩級の魔女っ娘。マコ。
今日も彼女はアリアハン城近くの平原でスライムを見つけるなり大はしゃぎ。
たった1匹に関わらずメラゾーマを3発も放ち、跡形も無く消し去るとまたしても跳びはね喜んでいた。
そこへおおがらすが彼女を発見。遥か上空の死角から鋭いくちばしで急襲をしかけてきたのだ。
普通の人間であれば頭が割れてしまうくらいの勢いがついている。
しかし彼女の頭にくちばしが触れる寸前。
ぶしゅ〜!!!
まるでマグマの中に飛び込むかの様におおがらすは蒸発。
なんと彼女は魔法の不思議な力によって体全体をガードしているのだ。
まさに完全無欠!無敵!すうぱあようじょ!ぱんつ!
「もう〜!ばりあ張ったら魔力無くなっちゃったじゃない!!カラスさんのばかぁ!」
今日も先へと進めずにアリアハンのお家へと帰るマコなのであった。
梅
>>594 ダブルで乙乙
まだあと11KB逝けるぜ
ひとまず保守だ
598 :
1/5:2009/01/15(木) 01:57:33 ID:CTI4cp3N0
1主「あのさ。」
3主「何?」
1主「なにかおかしくないか。」
3主「そんなことないだろ。」
1主「だったらいいんだ。」
3主「ああ。」
1主「……あのさ。」
3主「何?」
1主「やっぱりおかしくないかな。」
3主「どこが?」
1主「どこかが。」
3主「どこかがじゃ分からないだろ。」
1主「そうだけど、何か違和感があるんだ。」
3主「お前霊感強い方だっけ?」
1主「そんなことないと思うけど。」
3主「やだー、ここ何かいるーとか言っちゃう?」
1主「言わないよ。あ、でもさ。」
3主「何。」
1主「ゴーストってモンスターは普通に見えていたな。」
3主「ああ。じゃあ霊感あるんじゃないか?」
1主「そうなのかな。」
3主「きっとそうなんだろ。」
1主「じゃあ、ここに何かいるのか。」
3主「何で?」
1主「だから違和感があるんだって。」
3主「ああ、そう言う話だったな。」
599 :
2/5:2009/01/15(木) 01:58:49 ID:CTI4cp3N0
2主「ご先祖様も何か変だと思うのか?」
3主「お前も何か感じるのか?」
2主「何かいつもと違う気がするぞ。」
8主「そんなことないですよ。」
2主「そんなことないか。」
1主「変な横槍を入れるなよ。」
8主「何がいつもと違うと思うんですか?」
2主「いつもと景色が違う気がするんだ。」
8主「それは2主さんの経験値が増えたからですよ。」
2主「そうなのか。」
8主「そうですよ。経験を積めば同じものを見ても違って見えるものです。」
2主「俺はレベルが上がったんだな。」
8主「きっとそうですね。」
2主「ロンダルキア攻略ももうすぐできるかな。」
8主「きっとできますよ。」
3主「お前も経験を積んだってことで済ませていい?」
1主「できればもう少し真剣に聞いてもらいたい。」
4主「おい、何か変だよな。」
1主「4主も異変に気づいたか。」
6主「そうか?」
4主「絶対何か変だって。」
6主「3の倍数の主人公と、3人でロンダルキアを目指す主人公と、
3人の候補から嫁を選ぶ主人公と、3つの国を作った主人公と、
海でサンマを捕る主人公と、山でサン菜を採る主人公と、
錬金釜でサンザンな目にあう主人公だけがアホになるいつもの宿舎じゃないか。」
4主「全員アホかよ。」
6主「おかしなことなんてないさ。そんなこと言う4主がおかしいのさ。」
4主「いや、絶対おかしいって。」
6主「おかしかったら笑えばいいさ。ウヒヒ、グヘヘ、うひょひょひょー!」
4主「少なくともお前はいつもと同じようにおかしいな。」
3主「さすがにいつもより変だとは思うが今は放置しておこう。」
7主「放置プレー?」
1主「違います。」
5主「なにか根本的なことが間違っている気がするんだけど……」
6主「根本的と言うと、まさかこの中に主人公じゃない人物が紛れ混んでていると?」
5主「いや、そう言うことじゃないと思うんだ。」
7主「犯人はこの中にいる!」
1主「偽物が紛れているかもしれなら一人ずつ尋問をして確かめてみよう。」
600 :
3/5:2009/01/15(木) 01:59:50 ID:CTI4cp3N0
3主「じゃあ、まずは1主への質問。お前が愛用する乗り物と言えば何?」
1主「いきなりひっかけかよ。俺は乗り物なんて使わない。」
3主「でも、なにか乗ってるんじゃないのかなあ。」
1主「……強いて言えば、玉の輿に乗っている。あ、逆玉って言うのか。」
3主「こいつは調子に乗ってる。まあ、本物っぽいな。」
1主「じゃあ次は2主への質問。ムーンが呪いによって変えられていた動物は?」
2主「犬だぞ。ラーの鏡を使って元の姿に戻ったんだ。」
1主「正解だ。」
6主「もう少し難しい問題じゃないと判断できないと思うぞ。」
8主「それじゃもう一問。2500Gの剣を25%引きで買ったときの値段はいくらでしょう?」
2主「むむむ。ちょっと待ってくれ。2500Gの10%が250Gだから……」
3主「考え込んでしまった。本物っぽいな。」
1主「じゃあ次はご先祖への問題。ラーミア復活のためのオーブの色全部言ってくれ。」
3主「レッド、パープル、ブルー、イエロー、グリーン、シルバー」
4主「正解みたいだな。」
3主「そんな俺は今むしょく。って、誰がニートやねん!」
1主「まあ、本物と見て間違いないだろ。問題は残っているが。」
5主「次4主。英雄リバスト伝説のある温泉町と言えば……」
4主「アネイル。」
5主「アネイルですが、女性だけの城と言えば……」
4主「ガーデンブルグ。」
5主「ガーデンブルグですが、歌と踊りの町と言えば……」
4主「モンバーバラ。」
5主「モンバーバラですが……」
3主「もういいだろ。たぶん本物だ。5主の方は。」
7主「ちなみに4主さん、好きな武器は?」
4主「ドラゴンキラー。」
7主「本物だよね。」
601 :
4/5:2009/01/15(木) 02:00:52 ID:CTI4cp3N0
6主「念のため5主への質問。お前のラスボスは誰?」
5主「ゲマ。じゃなくってミルドラース。」
6主「そんなことを覚えているなんて不自然じゃないか?」
4主「別に不自然じゃないだろ。」
5主「地味ルドラースって呼ばれてもラスボスはラスボスだからね。」
7主「6主さんへの質問。テリーさんの職業は?」
6主「ミレーユの弟からドランゴ引換券を経て酒場警備員へ。」
7主「じゃあ、6主さんの職業は?」
6主「ターニアのお兄ちゃんからレイドック王子を経てみんなのお兄ちゃんへ。」
7主「まあ、本物かなあ。」
8主「じゃあ7主さん。世界一高い塔で仲間になったのは誰でしょう?」
7主「メルビンだよ。」
8主「それでは、神の祭壇で別れることになる仲間は?」
7主「そんな仲間いたかな。」
4主「なに、偽物は7主だったのか?」
7主「勝手に出て行く金髪王子野郎なんて仲間とは言えないもんなあ。ふふふ……」
6主「本物じゃないかな。」
4主「8主の地雷踏みっぷりも本物っぽいな。」
3主「まあ、8主にも質問しておこう。キングアックスを錬金で作る時のレシピは?」
8主「金のオノとスライムのかんむりです。」
3主「正解だな。」
8主「昔話でも、正直者は新しい斧を手に入れることができるんですよね。」
4主「キングアックスを錬金して手に入れる者。人はそれを馬鹿正直と言う。」
8主「あれがきっかけだったのかも知れません。僕が腹黒と呼ばれるようになったのは。」
602 :
5/5:2009/01/15(木) 02:01:53 ID:CTI4cp3N0
2主「偽物の主人公はいなかったぞ。」
5主「ここには主人公しかいなかったってことだね。」
4主「すまん! 主人公じゃないシンシアがいた。」
7主「あ……」
1主「ご先祖。」
3主「何?」
1主「俺やっぱり霊感ないわ。」
3主「みなまで言うな。」
5主「それで、結局この違和感の理由はなんだったんだろう。」
6主「いつもの歴代主人公が雑談するスレと違うから不自然に感じているだけだ。」
7主「普通にぶっちゃけちゃうんだ。」
1主「言っちゃいけない気がして遠慮してたんだけどな。」
8主「結局これはなんだったんでしょうか。」
6主「もし目が覚めたらもし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったらスレだったら
と言うネタだったんだよ!」
7主「分かりにく!」
梅乙
ここでこいつらの会話を見られるとはwww
・・・主ってなに?
ドラクエの各ナンバリングの主人公の略でいいの?
スレ違いだからやめてくれ
向こうにも迷惑かかる可能性あるし
埋め立てなんだから良いんじゃね?って思うけどなあ。
この話題を新スレや別のスレに持ち込むのは言語道断だけど、まあ色んな考え方があるやね。
>>598-602 てっきり
「プレイヤーしか知らないネタをうっかりしゃべっちゃう」っていうトリックだと思って読んでたw
未クリアのシリーズもあるから正確じゃないけど、そう言うネタも面白いかなーなんて。
でもドラクエの場合はプレイヤー=主人公だから無理?
きついかもしれないけど 埋めとか関係なくスレ違いだよ
宿スレは割とのんびりした空気だから誰もそこまで怒るヤツはいないとは思うよ?
でも向こうも老舗の良スレで住人も保全に努力してるんだし
よそで勝手に設定拝借されたら面白くないんじゃないかな?
(向こうで許可できるか聞いてみて住人総意でOKだっていうならともかく)
598-602の作者です。
私の浅はかな思いつきで書いたネタでご迷惑をおかけしたことをおわびします。
主雑スレとは携帯保管庫が共通であることから姉妹スレのようだと思っていました。
ですが認識が甘かったようです。申し訳ありませんでした。
いや、面白かったです。超乙!
ドンマイ
ネタにマジレスry
これは悪い夢なのよ。
目が覚めたら見知らぬ場所にいたわ。木賃宿とでもいうのかしら、粗末な宿泊施設。
ぜんぜん知らない世界に迷い込んだんじゃないかしら。馬鹿げた話だけどさ。
どんな世界でも食べるためには働かなきゃならないでしょ。
しばらくは酒場でホステスの真似ごとをしてしのいでいたわ。
そんなある日、お城で女の人を集めているって話が耳に入ってきたの。
酒場での待遇よりよさそうだったからすぐに飛びついたわ。
それが何を目的にしたものかなんて気にもしなかった。
しばらくはお城で遊んでいればよかった。飲めや歌えやでそれは楽しかったわ。
でも、そのうち集められた女の人が少しずついなくなっていることに気がついた。
そして、私も宴の席から連れ出される時が来たわ。
それはどこかの実験室みたいだった。進化の秘宝の実験施設だとか。
実験は最終段階だった。私はその実験のモルモットにされるらしい。
人間と違う何かが実験を行っていた。私はこいつらの仲間にさせられるんだ。
薄れいく意識の中、「実験は成功だ!」って声だけが頭の中に響いていた。
気がつくとそこは私の部屋だった。元の世界に戻れたらしい。
あれは悪い夢に違いない。長い長い夢。恐ろしい夢。
だけど、悪夢は終わってなかった。私はまだ夢を見ている。
これは悪い夢なのよ。
そうじゃなきゃ説明できないじゃない。
鏡に映る化け物がいったい誰なのか。
>鏡に映る化け物がいったい誰なのか。
ただの素顔だったりして・・・
┃ ∧
┃ω・)
┃O)
梅
┃ ∧
┃ω・)
┃O)
梅