クリフトとアリーナの行く末を語らうスレです。
職人さんによるSS投稿、常時募集!
2 :
1:2006/04/16(日) 12:46:28 ID:9+L/yUAT0
_ )ヽ.〃二 、ノ! 俺たち 極悪非道のDQ地雷僧侶ブラザーズ
. ,'´ .__ _ヽ.)ノ;>O<ミ 今日も作戦聞かずにジゴスパとザラキの雨嵐!
i /メ))ヘゝン(#゚.-゚ノ'  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(ソゞ(;-_-ノ "K丶-"ス. + . ,.-− 、 zaki
. K゙ヽY/スニ∪=0=i]J vagikurosu ||田| |
U〉-l=トiJ .Lヽ_ゞ . ,〃彡ミヽ ||_|__| +
/エ_iイi_〉 . し'`J . + 〈((/(~ヾ》. i、_,..」 zaraki
|-/|-| jigosupaku ヾ巛゚∀゚ノ" 八゚∀゚|∩ゝ
 ̄  ̄ . /~'i':=:!}つと{i゙キチ'i!ノ +
. + ん、」"Yヾl !÷-〈 himesamahoimi
. i†=!=iノ . く_i_,_/」
tanbarin 〈゙/.|-l (.ノ`J +
.  ̄
店長乙!!
店長、乙&GJ! まさにネ申!!
職人さん、SSカモ〜ン!!
乙です
>1
乙です。保守
>3
そのAA初めて見るけれど、有名なAA?
_,,:-ー''" ̄ ̄ ̄ `ヽ、
,r'" `ヽ.
__,,::r'7" ::. ヽ_
゙l | :: ゙) 7
| ヽ`l :: /ノ )
.| ヾミ,l _;;-==ェ;、 ,,,,,,,,,,,,,,,_ ヒ-彡|
〉"l,_l "-ー:ェェヮ;::) f';;_-ェェ-ニ ゙レr-{ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ヽ"::::''  ̄´.::;i, i `'' ̄ r';' } | 「バッチリがんばれ」で事後スパーク連発
. ゙N l ::. ....:;イ;:' l 、 ,l,フ ノ | MPを沢山使ってる
. |_i"ヽ;:...:::/ ゙'''=-='''´`ヽ. /i l" < のが今の僧侶なんだよな 今のAIは
.| ::゙l ::´~===' '===''` ,il" .|'". | 「呪文せつやく」を知らないから困る
.{ ::| 、 :: `::=====::" , il | \________
/ト、 :|. ゙l;: ,i' ,l' ノト、
/ .| \ゝ、゙l;: ,,/;;,ノ;r'" :| \
'" | `''-、`'ー--─'";;-'''" ,| \_ 括るよ、べホイミ分すら使い切るなよ。
こちらでも乙です。
タイトルが微妙に変わってるwwwww
お題【うーん うーん】を作成中。
スレタイがクリフト→アリーナの構図になってますな。こっちの方が原作に忠実かw
とりあえず職人待ちwktk
+
+ ∧_∧ +
+(0゚・∀・)
(0゚つと) +
+ と_)_)
なんと!指摘されるまで気がつかなかったとは!
友人の携帯からなので、使い勝手がよくわからないまま立てたから
そこまでチェックできてませんでした…おお神よ、私はどうすれば!
SS書きたかったのですが、体調があまりよくないので
今週はスレ立て逃げでお許しを。
自分もwktkして投下をお待ちしております。
スレ立て乙!
タイトルわざとかと思ってたw
ワクテカしながら投下待ち(・∀・)
店長さん、乙です。容量不足・・・ゴメンナサイ、ワタシノセイデスネ・・・ムダニナガイブンヲトウカシテスマソ。
お題【う〜ん う〜ん】をいただきまして、早速書いてみました。
でも、これ、クリアリか? う〜ん う〜ん・・・。でも、投下!
青ざめた顔、滲む脂汗。乾いた唇からはかすれた呼吸しか聞こえてこない。
ホフマンは額のタオルを変えてやりながら、知らずため息を漏らす。
生家が宿屋であったため、病を得て苦しむ旅人を見る機会は多かったように思われるが、これほ
どひどい状況は稀であったと記憶する。
(中途半端に体力があるのも大変なんだな)
大抵の人間なら、この状態になる前に亡くなることが多いと思う。しかし、幸か不幸か、目の前
に横たわる青年はいまだ苦しみの中にいた。ホフマンはクリフトと呼ばれる青年の顔をタオルで
拭ってやると、窓の外に視線を移した。
(まもなく日が暮れる。ソロさんたちは無事、お姫様とパデキアを見つけただろうか?)
病を怖がる宿の者たちの代わりにクリフトの看護を引き受けたホフマンであったが、共に旅をし
てきた者たちのことを思えば心配は尽きない。
(まぁ、大丈夫だとは思うけど)
そうひとりごちた時、部屋の空気が僅かに動いた。
「う・・・、・・・めさま」
青年の口から呻き声のようなものがあがり、ホフマンは手を止める。
荒い呼吸が乱れ、必死に何かを紡いでいる。
「クリフトさん? 大丈夫ですか?」
いま、ソロさんたちがパデキアを取りに行っています。もう少し、頑張って。
そう励ましたものの、ホフマンは耳を掠めた声に思わず押し黙った。
「う〜ん、う〜ん、姫様・・・、・・・は・・・を・・・」
しばらく無言でクリフトの声を聞いていたが、やがて枕元にあった紙の束を手元に引き寄せると、
クリフトの言葉を猛然と書きつけ始めた。
夕暮れが押し迫る頃、クリフトの呻き声とホフマンが一心に筆を滑らせる音だけが、朱に染まる
部屋を支配していた。
どれほどの時が経ったのであろうか。
宿の従業員がホフマンとクリフトに夕食の膳を届けに部屋を訪れた。そしてそこに広がる光景に
思わず息を呑んだ。
「あの・・・?」
「黙って!!」
鋭い声が宿の従業員の言葉を遮る。その鋭さに驚いた従業員は膳を取り落としそうになり、慌て
て体勢を整えた。
(まさか・・・)
宿の従業員はそっと膳を机の上に置くと、音を立てないように部屋を後にした。
そして階段のあたりにまでやってくると、ふたりのいる部屋を振り返る。
「いよいよ・・・」
脳裏を過ぎった考えに、思わず身震いすると早々に立ち去る。
ホフマンの真剣な面持ち、青ざめた病人のうわ言。
それらが意味するものは何であるのか。
宿の従業員たちはこの話を聞くと、病人に残された時間を思い、皆一様にうなだれた。
「それでは、皆さん、お気をつけて」
走り去ってゆく馬車を見送りながら、ホフマンは手を振る。
ヒルタン老人に弟子入りを希望した彼は、今日からミントスで見習いをすることになり、旅から
離脱することになった。
馬車の影をいつまでも見つめている彼に、同僚となった宿の従業員が話しかける。
「よかったな。あの紙が役に立たなくて」
肩に手を置く先輩を振り返り、ホフマンは怪訝な顔をする。そしてかぶりを振ると視線を馬車の
走り去った方角へ戻し呟いた。
「いえ、いつか役立つことになると思います」
その言葉に宿の先輩は「不吉な」と顔をしかめたが、ホフマンの真剣な面持ちに押し黙った。
そしてホフマンの横にたつと、パデキアによって命を助けられた青年と、彼を救った者たちの
旅の安全を心から祈った。
それから数年が経ったある日のこと。ホフマンはサントハイムの王城を訪ねていた。
「ご婚約おめでとうございます」
そう言う彼に、当事者のアリーナとクリフトが照れたように笑った。その横で、「しゃきっとしなされ、
しゃきっと」と小言を繰り出すブライも、どこかうれしそうである。
ホフマンはそれぞれにあいさつを交わすと、満面の笑みを浮かべる。そして移民の町からのお祝
いを机の上に並べた。それを目にした瞬間、アリーナの顔が輝き、対照的にクリフトとブライの
顔がこれ以上ないほどに青ざめた。
「懐かしいわね〜」
思わず駆け寄ったアリーナが手にしているもの。それは、モンスターを素材にした料理の数々。
ソロと合流するまで、サントハイム三人衆は徒歩での移動が多かった。それゆえ、食糧が尽きて
しまった時はモンスターを狩っては糧食にすることも多々あった。だが、同時にそれは、まさ
にサバイバルなシロモノでもあったのだ。
衝撃からやや立ち直ったクリフトがホフマンに引きつった笑いを向ける。
「あの・・・お気持ちは嬉しいのですが、モンスター料理は少々・・・」
調理法にコツが・・・。
言いにくそうに口を濁したクリフトに、ホフマンが自身ありげに微笑む。
「大丈夫です。調理法もばっちりですよ」
あく抜きというか、毒抜きというか、火の通し具合とか、食べられないものとか!
完璧です!とウインクしてみせるホフマンにクリフトが目を見開く。
「まさか、ご自身で試されたのですか?」
な、なんと剛毅な。
驚きを隠そうとしないクリフトとブライに、ホフマンは「あー」と少し困ったように首を傾げる。
そして少し間をおくと、クリフトとブライに真相を語った。
ミントスの宿屋でクリフトが病に臥していたとき。
彼はうわ言のように語ったという。
「う〜ん、う〜ん、姫様。ドードーどりはしっかりと火を通さないと食中毒を起こします・・・
それからマージマタンゴは、お化けきのこより毒性が強いので食用には向きません・・・・・・ブルホ
ーク・・・は・・・」
これは使えると判断したホフマンは、そのとき一言一句漏らさず紙に書き付け、その後試行錯誤
を繰り返して今の味にたどり着いたのだという。
「下ごしらえ・・・危険部位とか、あく抜きの方法があらかじめ判っていたので、本当に助かりました」
砂漠の町に住み始めた当初も結構役に立ちましたねぇ。
しみじみとした声色が、その有意性を大いに語っていた。
「本当にありがとうございました」
お礼の言葉と共に差し出された分厚い紙の束を見せられたとき、ブライは眉間を押さえてかぶり
を振り、クリフトは力なく笑った。
「お役に立てたようで、何よりです」
いついかなる時も冷静な判断を。
その商魂のたくましさが、砂漠の町を成功に導いたのかもしれない。
(終)
そもそも、「う〜ん う〜ん、私は・・・姫様のことを・・・愛しています」という台詞が
浮かばなかったのが敗因でしょうね。ホフマン物語完結です。甘いシチュを書いてみた
かったのですが、どうしても浮かびませんでした。一応婚約しているということで、これで
勘弁を!!甘いシチュのSS投下待ちです。
姫さまが料理をする夢でうなされてたのかよ!
シリアスなのかと思ってたからワロてしまったよGJ(・∀・)
確かにクリアリというよりホフマン物語だなw
乙乙乙ですスレ初投下!
クリフト料理係ですか?w
私のうーんうーんは玉砕しました。
キスシーンなんて書くもんじゃないですね。
>きのこの人
投下キボン!
さすがにちょっと出来がアレなので
次に取り掛かります……。すみません。
がんばりますよー
|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|| _,,,......,,__ [今日の議題]
||/_~ ,,...:::_::;; ~"'ヽ ・きのこの人がこの先生きのこるには
(,, '"ヾヽ i|i //^''ヽ,,) 。
|| .^ :'⌒i i⌒" /
|| .| ( ゚Д゚) /
|| .|(ノ |つ
||____| |______E[]ヨ__________
ヽ _ノ
U"U
____∧___________________
/
| 知恵を貸してください
|
↑ダジャレ?
きのこの人のキスシーン読みたかったな(´・ω・)
>>22 ちょっwwwwwwww
えーと、エロを書くといいと思います!
>>23 そのうち……。
エロなキスシーンキボンw
>>22 この先生 きのこるには と読んだのは俺だけでイイ(*´ー`)
>>26 結構いろんなとこできのこる先生って見るけど、
見たこと無い?
>>27 探してきたけど色んなとこにあるもんだねw俺は基本的にここを初めとするキャラ萌えスレとDQプレイ日記スレしか見ないから初めて見たよ
というわけできのこる先生しながら職人待ち
+
+ ∧_∧ +
+(0゚・∀・)
(0゚つと) +
+ と_)_)
KNKRKNKR
30 :
1/4 861:2006/04/19(水) 10:56:02 ID:dVObc2dl0
お題【う〜ん、う〜ん】
「う〜ん、う〜ん」
机の上に乗せられている書類の束を前にこクリフトは呻っていた。
世界を救った旅の一面でも見せたことがない表情を浮かべ本気で困っていた。
「はぁ・・・まさか、私がこんな目に合うとは・・・」
深いため息を一つこぼしてから、書類に目を通し始める。
そこに書いてあったのは女性の写真と趣味や特技などだった。
そう、お見合い写真である。
しかも現在お見合いする事が決まっている相手の写真の山であった。
世界を救いサントハイムの人々を無事救出し無事に彼らは元の生活に戻っていった。
だけど完全に以前の生活には戻れないことは覚悟してあった。
姫様は成長しよりお綺麗になられた。
もうすでにご結婚なされてておかしくない年齢を迎えてるし、
民衆は冒険でのロマンスを期待していた。
いくら自分との関係が発展していないとは言え、人々は勝手な噂を立てていた。
もう姫様のお傍には要ることは叶わないだろう、近い将来どこか遠くに出向に
なる事を覚悟していたが、現実は自分の予期してない出来事になっていた。
31 :
2/4 861:2006/04/19(水) 10:57:05 ID:dVObc2dl0
アリーナ姫からクリフトを離すよりもクリフトを誰かとくっつけてしまう作戦を取ってきたのだ。
確かに遠くに出向させても世界中を回ってきた、アリーナ姫ならその気になれば
キメラの翼ですぐ会いに行ってしまうだろう。
考えれみればその方が的を得てるし、そして都合のいい事に世界を救った勇者の一人として、
そして将来的にも有望株であるクリフトにお見合いの申し込みが多数寄せられたのだ。
断ろうにも一介の神官であるクリフトに貴族からの申し込みもあり無碍に断ることも出来ず
相手の顔を立てる為にもお見合いする羽目になったのである。
身分が低いクリフトに、頭ごなしに娘が気に入っているのだから有難く思い結婚しろっと迫る、
横暴な貴族を丁重にお断りをしたり、自分にその気が無いと何度断っても
知り合うところから始めましょうといい、無理やり次の約束を取り付けてくる貴族の方。
だいぶ精神的にも疲れてきている。
ふと、自分のスケジュール帳に目をやると女性との約束でいっぱいになっていた。
日に何度も違う女性と会うことになっている自分は世間にはどうゆう目で見られているのだろう?
少なくとも良い評価は受けていないだろう。このことは姫様の耳にも入っているのだろうか?
いや、きっとこれも計画の内で姫様の自分に対する評価を落させるのも計算に入っているのだろう。
それもとても悲しいことだが何よりも神官としての仕事がまったく出来ないでいる。
「こんなのは私じゃない」
意を決してクリフトは作戦を考えたであろう策士のところに直談判することにした。
32 :
3/4 861:2006/04/19(水) 10:58:18 ID:dVObc2dl0
「ブライ様お願いです。どうか陛下にお見合いを受けて来ない様に頼んでください」
「そんなこといってものぅ、話を持ってくるのは向こうさんじゃ」
「会って余計な期待させるよりは、事前に私は結婚など興味がないと断ってくださって結構ですから」
真剣に訴えてくるクリフトの目を見てブライは一息ついた。
「クリフト、お主もいい加減諦めたらどうじゃ?いつまでも実らぬ恋をしているよりは
新しい恋を見つけて育ててみるのはどうじゃ?」
予想してた言葉、やはり危惧されてこんな無茶なお見合いを組んできたのであろう。
心の底よりあの方を愛している。実らないのも重々承知の上だ。
だけど姫様以外に好きな人を作れるほど自分は器用でもないのだ。
「だからといってこんな、とっかえひっかえの様な女性とのお付合いをするような生活は
神の教えに反します」
「人生そうもてる機会はすくないぞ、今がチャンスじゃろうて諦めて覚悟をきめぃ!」
出て行かれようとする、ブライの腰にクリフトは追いすがり引き止める。
「こんな生活耐えられません、頼れるのは貴方だけです。どうか、どうかお願いします」
「わしとて、辛いのじゃ、しかしお前の為でもある判ってくれ」
「そ、そんな私を見捨てないでください!ブライさまー・・・・・」
クリフトが言い終わる前にブライは無理やり扉をあけ出て行こうとした。
ドタドタドタ〜
いつの間にやら集まっていた女官数名が蜘蛛の子散らすように逃げていく。
つい大声でのやり取りになってしまい、いつから聞かれてたのだろうか?
しかしブライの腰にしがみ付いているクリフトの姿はバッチリ見られてしまった。
33 :
861:2006/04/19(水) 10:59:33 ID:dVObc2dl0
民衆はロマンスを期待している(?)
すぐに妙な噂が広がり、ゴシップ雑誌には『禁断の愛』ブライとクリフトの文字が躍っていた。
おかげさまでお見合いの話はスッカリなくなっり、元の神官の職に戻れた。
ひつこかった女性にも「実らない恋をしております、でもその恋に生きたい」っと素直に
自分の気持ちを延べたら、顔を赤らめ「応援しております」とエールを送られた。
女性の気持ちは本当によく判らない。っとクリフトは思った。
(終)
そうオチるとは・・・ブラクリかよっ!とかなり笑えました。
言いたくないけど、「的を射ている」だってば。
最近は「得ている」の方を使う人が多くなってきているようで
そのうち「得ている」も市民権を得るのかもしれないけど
36 :
861:2006/04/19(水) 19:58:17 ID:dVObc2dl0
>>35 指摘どうもありがとう、正直使い方もあってるかどうか怪しいです。
ボキャブラリー少なくて、それしかいい言葉浮かばなかったので
準備中のHPのほうでは修正しときます。
そしてラブラブ展開期待した人ごめんなさい。
どうもコメディー系が得意っぽいです
861ってIDがハアハア(*´Д`)だった人か!
ってアリーナ出て来ないじゃないか!ひっそりワロてしまったじゃないか!GJじゃないか!
関係ないが俺の親は「い」と「え」の発音が逆になる時がある。
絵馬のことを「いま」と言ってて訳解らんかった・・・
ブラクリ・・・ワロス! GJです。次回作も大いに期待!コメディー大好きです。
日本語って難しい。ちなみに私の家庭でも祖母が「い」と「え」を混同して
いましたね。方言色豊かな家庭だったので、煩悩神官の日本語はかなり怪しいです。
気になる点がありましたら、ぜひ指摘してくださいね。本人、方言だと知らず
に遣うことも多々ありますので。ちょっと体調を崩しSS休止中。
ハ,,ハ
('(゚∀゚∩_ おいらをどこかのスレに送って!
/ヽ 〈/\ お別れの時にはお土産を持たせてね!
/| ̄ ̄ ̄|.\/
| .モツ煮..|/
 ̄ ̄ ̄
現在の所持品:たばこ・ライター・コーヒー・ブラックブラック・枕・ケータイ電話
睡眠薬・聖教新聞 ・ダッチワイフ・外付けSCSI340MHDD・ネットランナー4月号
TYG02・小嶋進社長・ゲルトモ・ディプスファンタジア・抵抗1kΩ(黄紫橙金)・媚薬
バーボン・メシマズ嫁のお手製弁当・吉牛の割引券・銀魂1巻・将棋の駒(角行)
ジンギスカンキャラメル・ホットカーペット・第三のビール・笛・nintendoDS・執刀用メス
善玉ドリンク・ブラジャー・なめこ(んふんふ)・虹鱒・茶碗・猫耳ローブ・
FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の2・5
40 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/20(木) 13:04:44 ID:+6ua6aY10
>>39 とりあえず、DQ4名物「うまの糞」もたせて送ったぞ
買ってないw
DQ関連に流しておこうと思ったけど、流れ速すぎて
旅終わっちゃったくさいな、ゴメンよ
ホイミでスカラ
新スレへの投下待機
+
+ ∧_∧ +
+(0゚・∀・)
(0゚つと) +
+ と_)_)
海辺の村でのクリフトの会話が気になった
お題【日光浴】
お題じゃなくてもいいから投下キボ━━━━ン!!
おまえらこっち来いよw
ほんとこっちにも書き込めヨw
煩悩さんの体調大丈夫かな?
>>46 この台詞かw
アリーナ「ここだと 毎日泳いだり
日光浴したりできるから
たいくつしないわね。」
クリフト「ひ 姫様の日光浴!
そ 想像しただけで……ぶはぁっ!」
そう それw
どんな想像してんだw
「日光浴はお好きですか?」と訊かれれば、クリフトは「はい」と答えるだろう。また、
「海水浴はお好きですか?」と訊かれれば、クリフトは「はい」と答えたに違いない。
では、「日光浴と海水浴ではどちらがお好きですか?」と訊かれたら?
クリフトは海辺の村の外れにある岩場でのんびりと日光浴を楽しんでいた。
海よりのさわやかな風が吹き抜け、彼の蒼い髪をふわりと撫でる。
「海水浴、か」
ふと漏れた一言に彼は自嘲気味に笑い、程近いところで泳ぎを楽しむたびのメンバーたちを見や
った。
クリフトが『海水浴』をしなくなってどれくらいが経つのか。
サントハイムの城下町サランから、海はそれほど遠くない。ゆえに、夏ともなれば子供たちはこ
ぞって海に出かけ泳ぎを楽しむ。クリフトとて、神学校の友人とよく遊びに行ったものだ。
取り立ててうまい方だったとは言わないが、クリフト自身それなりには泳ぐこともでき、海水浴
が好きだった。しかし最近では海水浴より日光浴をするようになっていた。
なぜか?
クリフトは「気持ちいい〜」とはしゃぎまわっている赤毛の少女をちらりと見ると、うっすらと
頬を紅潮させた。
ここ数年でますます女性らしくなったアリーナ。その美しさにクリフトは軽い眩暈を覚える。
そう、原因は彼女。
16の夏、彼は彼女といっしょに海に泳ぎに行った。そしてそれ以来一度も『彼女』とともに
泳いだことはない。
若かったあのとき、彼は判断を誤ってしまった。
彼は知らなかったのだ、日光浴よりも海水浴の方が『危険』だということを。
海の中にいれば『それ』を知られることはない。
しかし、いつまでも海の中にいればどうなるのか。
クリフトはそのときのことを思い出すと、胸が苦しくなる。
冷たい海水に長時間さらされているとどうなるのか。彼はそれを体験した。
足に激痛が走ったと思った矢先、海面が頭上に広がり・・・。
気がつくとクリフトの胸は海水で満たされていた。
息ができずにもがけばもがくほど、苦しみはひどくなり・・・あの時偶然居合わせた友人がいなけ
れば自分は溺死していたのかもしれない。
一瞬だけよみがえった恐怖に身を震わせると、クリフトは己のある部分に一瞬だけ視線を送り、
深々とため息をつく。
「いつになったら・・・」
姫様と一緒に『普通』に泳げるのでしょう・・・。
分厚い神官服はクリフトを辟易させていたけれども、いまはどんな鎧よりも頼もしい。
しばし遠い目をしていたクリフトだったが、邪念を追い払うかのごとくかぶりを振ると瞑目し、
さわやかな光と風を体感することに神経を注いだ。
クリフトは海水浴が好きだ。しかし、「海水浴が好きか?日光浴が好きか?」と訊かれれば、
彼は迷わずにこう答えることであろう。
「私は、海水浴より日光浴が好きです」
しかし、胸のうちではこう答えることであろう。
「いつか私が大人になりきった時は、海水浴と答えたいものですね」と。
―――――少年はこうして大人の階段を昇る。
(終)
朝っぱらからあほなSSスマソです。そしてお久しぶりでございます。煩悩神官、
半復活です。完全といえないところが辛いですが、あとの半分は煩悩力で
押し切ります。
今回書いたSSは友人の体験談を基にしました。彼女と海に行って、海から
出るに出られなくなり溺れかけたそうです。それ以来、パーカーと短パンが
手放せないとか。ご苦労様です・・・。
こんなアホアホ煩悩神官ですが、よろしければまたお付き合いくださいませ。ではでは!
煩悩神官キタ―――(゚∀゚)―――!!!!!!
どんな鎧よりも頼もしいww最強装備はメタキン鎧じゃなかったんすね
これからじっくり調子を取り戻していってください。楽しみにしてます
そーいや、昔溺れたことがあるとか言ってたような・・・。
そんな理由で溺れたのか!クリフトアホスw
メタキンでその状態になったら。ガクガクブルブル。
GJでした。
G━━(゚∀゚)━━J!!
ワロタ!アリーナみて元気になっちゃったのかよw若いなクリフト君よ(・∀・)
57 :
スーパー1:2006/04/24(月) 22:17:43 ID:HC4SdNy60
スーパーあげ
さげます
_, ,_
( ´_ゝ`)お題【レディースタウン】
ズレた・・・・・・orz
ちなみにクリフト君のレディースタウンでの台詞。
クリフト「な なんだか その
はずかしくて……。
あの 私 馬車に
戻ってもよろしいでしょうか?」
通りすがりの若い女性がアリーナの傍らに立つ青年に、意味ありげな視線を送ってくる。
すると、その視線に気づいたクリフトが、居心地が悪そうに身動ぎした。そして少し前方を嬉し
そうに歩いていたソロに小声で懇願する。
「な、なんだか、その、はずかしくて・・・あの、私、馬車に戻ってもよろしいでしょうか・・・」
消え入りそうに囁かれた言葉に振り返ったソロは、片眉を器用にあげるとすげなく断る。
「おまえさぁ、光栄だと思わんのか?折角女性からアツ〜イ視線を送ってくれるっていうのに」
失礼な奴だな。
よく聞けばどこかからかうような響きを含んでいたのだが、余裕のないクリフトはそれに気づく
ことなくがっくりと項垂れた。
ここは移民の町『レディースタウン』。ソロの趣味で作られた女性だけが住むことを許される
地上の楽園だ。
同じ女性だけの国『ガーデンブルグ』は駆け込み寺的存在であるため、男性嫌いの女性も数多く
存在していたが、この『レディースタウン』は単に新しい町に住みたい事情を抱えている女性が
集まってできたため、比較的男性にも好意的なのが特徴である。いや、好意的などというもので
はなく、どちらかというと男に餓えている女性の群れ、といったところだろうか。それ故、男性
は年齢や容姿以前に、『男性である』ということだけで非常に熱い・・・厚いもてなしを受けてしま
うのだ。殊に若い男性は、とかく熱烈歓迎されがちで、居心地がいいような悪いような奇妙な感
覚に陥るのである。
すっかりしょげ返ってしまったクリフトにソロが盛大なため息をつくと、クリフトの横で少し不
機嫌そうにしているアリーナに聞こえないように耳打ちをする。
「なぁ、どうしてそんなに嫌なんだよ」
男冥利に尽きるだろうに・・・。
ソロのその言葉に、クリフトもひそひそと返す。
「別に女性が嫌いというわけではないのですが、この状況は・・・」
ちらりとアリーナの方を見やる。
ソロはニヤニヤと笑い、「なるほどね」と頷く。そしてあごに手を当てて何かを考えていたよう
だが、急にアリーナの方を振り返ると、とんでもないことを言い出した。
「なぁ、アリーナ。おまえさ、クリフトと手、繋いでやってくんね?」
「ちょっ・・・ソロさん!」
そんな畏れ多い・・・と言いかけたクリフトを遮り、ソロは言葉を重ねる。
「恋人のフリをしてやってくれると、クリフトも助かるんだけどな」
駄目かな?
ソロの提案に、ちょっと驚いた顔をしたアリーナだったが、傍らで頬をうっすらと紅色に染めて
いる青年を見上げ笑うと、元気よく頷いた。
「いいわよ」
じゃ、いきましょう。
そういうや否や、クリフトの腕にしっかりと己のそれを巻きつけ、ぐいぐいと引っ張っていく。
その表情は、先程の不機嫌さなど微塵も感じさせないほど楽しげで、嬉しそうだった。
「え、あ、姫様?」
予期せぬ幸運の到来に、戸惑いの隠しきれないクリフトの焦った声が通りに響く。その声に、ア
リーナが彼の腕をぐっと自分の方に引き寄せると何かを耳元で囁いた。すると、クリフトの顔が
ますます赤くなり・・・ついには首まで赤くなってしまった。が、少しむっとした顔で見上げてく
るアリーナの視線に負けたのか、ため息混じりに何かを呟いた。
「なぁに、聞こえないわよ」
いたずらっ子のようなアリーナに「勘弁してくださいよ」とクリフトが片手で顔を覆いつつ抗議
する。
それは、どこからどう見ても恋人同士の会話。
こちらを振り返りもしないで、どんどんと歩いていくふたりの姿を呆然と見送っていたソロだっ
たが、はっと我に返ると頭をかいた。
「おいおい、いきなり腕組みか?なんだよあの会話!」
らぶらぶ、じゃん!
自分からけしかけたものの、思った以上の効果を発揮したのを目の当たりにし、ソロが苦笑する。
「おまえ、何気に、愛されてるじゃん」
早くアリーナの想いに気づいてやれよ。
胸のうちで呟いた言葉がクリフトに届くことはなかったけれども、ソロはどこか満ち足りた気分
で笑った。
「よかったな、クリフト」
(終)
そっこーで書き上げてみました。さんざん迷ったのですが、下ネタではなくノーマルで
いってみました。てか、お題を見て即座に下ネタが浮かぶ私って・・・orz
ちなみに私は『グランドスラム』(1回目)と『ミステリアスタワー』(2回目)と
『キングキャッスル』(3回目)しか見たことがありません。
>>61さん、台詞の情報提供
ありがとうございました。なんだか、レディースタウンが作ってみたくなった。
連投スマン!『ミステリータワー』だった!名称間違いスマソ!!
66 :
61:2006/04/25(火) 15:46:48 ID:qcjhRrNK0
>>64 ほのぼのしてていいですね!幸せな気分になりました!
台詞提供したかいがあったというものです。
もし他の移民の町の台詞等知りたかったら言ってくださいな〜
ハァ━━(*´д`)━━ン!!萌えた。らぶらぶGJ!
腕組んだ途端に機嫌良くなるアリーナがカワイス下ネタバージョンも読んでみたいな〜
>>61オマイを台詞係りに任命だ(・∀・)
「な、なんだか、その、はずかしくて・・・あの、私、馬車に戻ってもよろしいでしょうか・・・」
もう限界です・・・。
早々と出されたクリフトの敗北宣言に、ソロが深々とため息をつく。
「いや、おまえ、ちょっと・・・」
根性なさすぎ。
呆れた調子でそう言うソロに、「なんとでもおっしゃってください!」と切羽詰った声が返る。
よくよく見ると半分涙目になっているようだ。
さすがにソロもかわいそうに思い、口を開こうとした途端、かっと目を見開いたクリフトが絶叫
した。
「うわぁぁぁ、もう駄目だ〜!!!」
「お、おい」
咄嗟に肩を掴んだソロの手を振り切ると、クリフトは一目散に馬車に向かって駆け出した。
あまりのことに言葉を失い呆然としたソロの背後から、聞きなれた声がかかる。
「あれ?クリフトは?」
なんか声が聞こえたと思ったのだけど?
ソロが振り返るとそこには天使のレオタードをまとったアリーナの姿。
(あー、絶叫の原因は・・・)
これか。
今日はホフマン主催、レディースタウン祭。
天使のレオタードをまとった女性にいろいろな特典が与えられるため、町のあちこちにレオター
ド姿の女性が闊歩する日。別名、天使のレオタード祭。
―――どうやらクリフトには刺激が強すぎたらしい。
(おまけ)
「そういえば・・・」
あいつ、馬車で何してるんだ?
1番、「おぉ神よ」と懺悔中
2番、刺激が強すぎて出血中
3番、・・・とても言えないこと。
「気になるなぁ・・・」
そう呟くと、ソロはにんまりと笑いアリーナを手招きした。
「な、アリーナ、わりぃけど、馬車の中、覗いてきてくれないか?」
その後のクリフトの運命は杳として知れない。
要望があったので投下してみた。あほすぎてスマンです。
61さん、何かおもしろそうな台詞があったらぜひ提供してくださいな♪
禿ワロタw
3番でお願いします!!そしてエロに突入w
3
暖かな日差しが降り注ぐテラスで、アリーナはそば仕えのメイドと向か
い合って座っている。ふたりの間の小さな丸テーブルの上には小瓶がいく
つか置いてある。アリーナは右手をメイドのほうに差し出し、少し退屈そ
うな様子だ。
今日は午後からエンドールの使者がサントハイムを訪れるとのことで、
冒険の間していた格好とまではいかないが、普段から動きやすい服装のア
リーナも今日はドレスを身に着けている。ただでさえ好んで着ようとはし
ないドレスを着さされているだけでなく、爪の手入れもするように命ぜら
れ、アリーナは少々不機嫌そうである。
「ねぇ、まだ?」
「まだですよ、姫様。今は爪の形を整えているだけですから。これから
色をつけていくんですもの」
「爪なんてどうでもいいのに」
「もう少し、辛抱してくださいな」
アリーナが小さいころからの長い付き合いになるメイド、メロは彼女の
扱いというものを熟知している。退屈でたまらない様子のアリーナを優し
くなだめ、今度は左手を出すようにと促した。
こうなってはあたりの様子を観察するくらいしかすることがない。さす
がにエンドールからの公的な客人とあってか、城内の様子もいつもよりあ
わただしく感じられる。兵士たちがいつもより大勢警備につき、通路に飾
っている色とりどりの花の手入れをメイドたちが行っている。
74 :
2/11:2006/04/26(水) 17:54:33 ID:TnpmGh+k0
「あれ…?」
兵士長と共になにやら話をしているのは、神官服を身にまとった見慣れ
た彼だ。城内は吹き抜けになっているため、アリーナのいる2階のテラス
から大通路の様子はよく見える。城の入り口の警備についてだろう、最後
のチェックをしているらしい。しばらく兵士長と話した後、クリフトは頭
を下げ足早に通路を歩いて行く。そう言えば数日前に会ったとき、忙しい
と言っていたような気がする。
次にクリフトはアリーナもよく知っている年配メイドと話をし始めた。
クリフトは自分の存在には気がついていないらしい。アリーナは少し楽し
い気分になってきた。クリフトの行動を盗み見しているのは悪いことかも
しれないが、クリフトの表情やちょっとした仕草がいかにも彼らしくて、
少し笑えてさえしまうのだ。
年配メイドとの打ち合わせも終わった様子で、次に目的とする場所へと
歩いて行くクリフト。そこへひとりの小柄なメイドが小走りでやってきた。
「あ」
先日、そのあたり一面を真っ白に変えてしまったあのメイドだった。何
か話をしているようだが、当然その会話の内容まではアリーナのところに
届くはずもなく、ふたりの様子がなぜか気になるアリーナはそわそわとし
てしまう。心なしか彼女の頬は染まって見える。クリフトはというと、い
つものやさしい笑みで対応している。
「ねぇ、メロ」
「はい?」
アリーナの声にメロは手を止めて顔を上げる。
「……クリフトって、女の子に人気あるの?」
75 :
3/11:2006/04/26(水) 17:55:21 ID:TnpmGh+k0
てっきり『まだ?』と尋ねられると思っていたメロは言葉に詰まる。ア
リーナの視線の先を見遣れば、クリフトがひとりのメイドと向かい合って
いる様子があった。
「クリフト様は、とにかくお優しいですから。私たち使用人どものことも、
気にかけてくださいますし…」
「ふぅん……」
「それに、見た目も素敵ですし。整ったお顔立ちをされていますから、メ
イドたちの間では憧れの存在ですよ。私も独身のころは気になっていまし
たわ」
メロは少し冗談めかしたようにそう言った。そしてまたアリーナの手元
に視線を戻し、爪に淡い色を重ねて行く。
「そうなんだ。知らなかった」
クリフトはメイドと別れ、教会のほうへと向かい歩いて行った。メイド
はクリフトの背中をしばらく見送った後、どこかへと行ってしまった。ア
リーナが最後に見た彼女の表情は何とも言えぬうれしそうなものだった。
どういうわけか、アリーナの胸の中はざわついている。ざわつきの原因
を把握できないアリーナは、妙なもやもやとした感情を抱え表情を曇らせ
る。自分の知らなかったクリフトの一面を見てしまったようで、先ほどの
楽しい気持ちが一変、どうしていいのかわからない複雑な気持ちになって
しまった。
76 :
4/11:2006/04/26(水) 17:56:04 ID:TnpmGh+k0
「どうして、そんなことをお尋ねになるのです?」
終わりましたよ、と言う言葉の後にメロはそう続けた。
「どうしてって……、なんとなく」
アリーナはきれいに整えられ上品な色をつけられた自分の手を眺めな
がら曖昧に返事をした。
「姫様がそんな質問をするなんて、初めてです。私、少し驚きました」
「そうかな?」
「ええ。姫様も、男性に興味をもたれるようになられたのかな、と」
「そんなんじゃないわ! だってクリフトは、ずっと前から一緒だから…
違うの」
何が『違う』のかよくわからないまま、ただ否定だけをしたくてアリー
ナはそう言う。
ずっとずっと昔から、アリーナが物心ついたときにはすでにクリフトが
いた。サランの教会で育った彼は勉学が非常に優秀であり、神父の勧めと
国王の希望もあって、神学校に通いながら城にも出入りするようになった。
アリーナの勉強の面倒を見、時には勉強以外の面倒を見るハメにもなった
彼と、世界中を旅したのはもう1年以上も前になる。世界が平和になりサ
ントハイムにも人々が戻り、アリーナにはまた退屈なお姫様暮らしが始ま
った。それまで毎日一緒にいたクリフトは、冒険の間アリーナを補佐した
という功績を認められ、城の庶務を任されることが増えた。もちろん、神
官としての勤めも果たしているのだから、なかなか忙しい立場になったと
は聞いている。
今になってアリーナは気づく。旅に出る前のほうが、旅をしているときの
ほうが、クリフトが近くにいてくれたような気がすると。
77 :
5/11:2006/04/26(水) 17:56:46 ID:TnpmGh+k0
「絶対に、違うの」
焦ったように言うアリーナにメロは小さく笑う。そして立ち上がるよう
に促すとアリーナの背後に回りドレスの襟を整える。座っている間に形の
崩れてしまった背中で結えられているリボンもしっかりとその形を直し
て行く。
「今日お見えになる方、姫様のお気に召されるとよろしいですね」
「え? なんのこと?」
自分の言葉にまったく何のことかわからないという、きょとんとした表
情のアリーナを見て、逆にメロが驚かされる。
「姫様? お聞きになっていないんですか?」
「だから、何が?」
「今日エンドールから来られるお方は、姫様のお見合い相手だと私たちは
大臣様から言われているんですけど……」
「そ、そんなこと聞いてないわ!」
ドレスを身に着けるよう言われ、さらには爪の手入れまで。大臣からは
『エンドールからの使者が来る』とだけしか聞いていない。無論、父王か
らも何も聞いてはいない。今朝会ったブライも『失礼のないように』とし
か言わなかった。
「大臣の奴、だましたわね!!」
78 :
6/11:2006/04/26(水) 17:57:18 ID:TnpmGh+k0
こうなってしまうとアリーナには手がつけられない。
もちろん、アリーナも冒険後は彼女なりに姫として勤めを果たしてきた。
お見合いを大臣がしきりに勧めてくるのも、何のためであるかはわかって
いる。それでもとてもそんな風な気にはまだなれないと大臣には何度も伝
えてきた。それなのに自分に嘘をつき見合いを強引に押し進めるやり方が
アリーナは気に入らない。
いっそ城から抜け出してお見合いをすっぽかしてやろうと思ったが、今
日は警備の兵士が多い上に動きにくいドレスを着ている。アリーナにとっ
て不利な状況ばかりが重なってしまっている中で、できることはと言えば
立てこもりしかない。
「姫!もうお時間ですぞ!」
「出てきてくださいませ、アリーナ姫様!」
数名のメイドと大臣がアリーナの部屋の前でしきりに呼びかけている。
扉には鍵がかかっていて開かないうえに、アリーナが中から鏡台やベッド
を扉の前に寄せてしまっているため強行突破もできない状況だ。
「姫!聞こえておられるのですか?」
「聞こえてるわ!でも、お見合いなんて話は聞いてないの!」
「お相手はもうお待ちになっておられるのですぞ?」
「だから聞いてないって言ってるの!だますなんて許せないわ!」
「姫!」
騒ぎを聞きつけたブライもメイドとともにアリーナの部屋の前にやっ
てきた。アリーナの部屋の前には大臣をはじめ、数名のメイドに兵士まで
集まっていてちょっとした人だかりができてしまっている。
「困ったもんじゃのぅ…だからワシは反対じゃと言うたのに……」
ブライは髭を触りながら深いため息をついた。
「……奴を呼んでまいれ」
79 :
7/11:2006/04/26(水) 17:58:00 ID:TnpmGh+k0
こんな状況になればお呼びがかかるのはクリフトだ。
アリーナがなかなか来ないこと、大臣もメイドに呼ばれどこかへと行っ
てしまって戻らないことを不審に思えども、大臣からエンドールご一行の
接待を任されてしまっては様子を見に行くこともできない。そろそろ接待
のためのネタも尽きてきて、アリーナがいまだ姿を見せないことに対する
言い訳も苦しくなってきた頃。
「申し訳ありません、アリーナ姫は少し気分が優れず……」
大臣が戻ってきてクリフトが何度も繰り返した言い訳を、また今更のよ
うに先方に申し訳なさそうに言い始めた。
「大臣殿?」
「クリフト、交代じゃ」
「は?」
メイドに耳打ちをされ、ようやくこの事態の原因を知ったクリフトは、
先方に向けて愛想笑いをして一旦その場を離れることにした。向かう先は
当然、アリーナの部屋だ。先ほど上の階でなにやら物音がすると思ったが、
メイドからあらかたのことを聞きクリフトはすべてを把握した。物音はア
リーナがバリケードを作っていたときのもの。このお見合いをアリーナが
聞いていなかったと知り『やりかねないな』とクリフトは思った。
階段を上がりしばらく廊下を歩けばすぐに人だかりが見えた。メイドた
ちが必死に呼びかける声と、それに反抗するアリーナの声。
「ブライ様」
人だかりからは少し離れたところに佇み事態を見守っていたブライに
クリフトは近づいて行った。
80 :
8/11:2006/04/26(水) 17:58:33 ID:TnpmGh+k0
「待っておったぞ」
「はぁ…」
「この状況じゃ。お前に任せたからの」
そう言うとブライは『やれやれ』と腰をさすりながら下の階へと向かっ
ていった。おそらくはもうこれ以上間が持たないであろう大臣に代わり、
接待をするためだろう。
「すみません、ちょっと失礼します」
ブライを見送ったあとクリフトは、人だかりをかき分けてアリーナの部
屋の扉の前に立った。ドアノブに手をかけるも鍵のせいで抵抗があり開か
ない。
クリフトはひとつ息をついた後、ドアをノックした。
「姫さま」
応答はない。あたりのメイドや兵士たちも、静かにアリーナの返事を待った。
「姫さま、私です」
「……クリフト?」
「はい。下で皆さんがお待ちです。出てきてください」
「イヤよ」
「姫さま」
「イヤったらイヤなの! わたし、お見合いだなんて知らないわ!」
アリーナの言葉はかたくなな気持ちを表している。今回は手強そうだと
クリフトは苦笑いを浮かべそうになった。
いつだったかもこんなことがあった。あれは何かの行事だったか、習い
事だったか。アリーナがどうしても嫌だと駄々を捏ね、クリフトが説得に
入ったのだ。まだ子供だったその当時のことを思い出すと、アリーナが立
てこもった理由はかわいらしいもので、今は理由が『お見合い』と言う、
クリフトにとってもなんとも言えない深刻なものだからたちが悪い。
81 :
9/11:2006/04/26(水) 17:59:12 ID:TnpmGh+k0
「姫さま。そうおっしゃらず……。大臣殿も、姫さまのことをお考えにな
ってのことですから」
「わたしに何にも言ってくれなかったのに、何でわたしのためなの? お
見合い、クリフトから断っておいて!」
「そんな無茶をおっしゃらないでください」
「絶対にイヤ!」
クリフトはため息をついた。アリーナの言っていることももっともだ。
だがもう既にエンドールから客人がはるばるやってきており、しかもそう
短くはない間待たせているのだ。アリーナにはかわいそうだが、これ以上
待たせるのは当然失礼に当たる上、国家同士の関係にもヒビを入れかねない。
「姫さま。これ以上わがままをおっしゃるのであれば、私も怒らなければ
なりません」
「………」
「今回のこと、姫さまは詳しいことをお聞きになっていなかったと。私も
今メイドより聞きました。大臣殿が勝手に決めたことだと姫さまがお怒り
になる気持ちもわかります。ですが、もうエンドールからお越しになられ
ているのです。お迎えする側として、失礼に当たることだと姫さまもおわ
かりになるでしょう?」
扉の向こう側で、少し語気の強くなったクリフトの声にアリーナは何も
言えなくなってしまう。クリフトの言っていることが揺ぎ無く正しいから
だ。それはアリーナもわかっている。
「わかってるわ。でも!」
「でも、じゃありません!」
82 :
10/11:2006/04/26(水) 17:59:49 ID:TnpmGh+k0
きっぱりと言うクリフトに、アリーナは泣きたい気持ちになってしまう。
勝手に話を進めたのは大臣だ。自分は何も悪くないのに。
「姫さま、出てきてください。ひとまずは出てきて、お会いになってくだ
さい。王様も大臣殿も心配しておいでですよ」
「………」
「この度のこと、大臣殿には私からよく申し上げておきます。姫さまのお
気持ちを無視してお見合いの話を進めたこと、王様にもお話しておきます。
代わりにと言っては何ですが、姫様に数日どこかお出かけできるようにし
て差し上げてくださいと、頼んでみます」
クリフトの声はいつの間にか、いつもの優しいそれになっていた。
「……お願いですから、姫さま」
そう言うとクリフトも黙った。アリーナが怒るのは当然で、もちろんク
リフトもアリーナの肩をもってあげたい。それなのに、傷ついているアリ
ーナを説得し、お見合い相手に引き合わせなくてはならないとは、情けな
くもあり、悔しくもあり。
しばらくの間あたりは静まり返り、妙な緊張感に包まれた。
そうしてもうどのくらいか経った後、部屋の中からガタガタと物音がし
て扉が開いた。
「姫さま!」
そこにはふくれっ面のアリーナが立っていた。クリフトの説得に応じる
気になったのだろうが、やっぱり納得がいかず面白くないからであろう。
不機嫌さを隠すことなく見事に表している。
「上手に言い訳してよね!」
アリーナは少しきつめの口調でそう言うとクリフトを睨んだ。
その様子にクリフトはほっとした様子で微笑むと『はい』と返した。
83 :
11/11:2006/04/26(水) 18:00:28 ID:TnpmGh+k0
そしてアリーナは不意にクリフトに向かって手を伸ばした。立てこもり
を決行したことで、せっかくきれいにした爪も無残なことになってしまっ
ている。
「連れて行って。ひとりで行くのはイヤだから」
突然のことにクリフトは少々戸惑いの表情を浮かべるも、少し間をおい
て意を決したようにうなずくと、アリーナの手を取った。
アリーナの手は小さい。アリーナの手を取ることなど、旅の間もそうあ
ることではなかった。自分の手が汗ばんではいないか、おかしな緊張感を
覚えながらその手を引いて歩いて行く。
あの階段を下りてしまえば、アリーナはお見合い相手と対面することに
なる。本音を言えばそんなことはさせたくもなくて、ずっとずっと、この
手を握り続けていたい。
「クリフト、痛いわ」
「あっ、申し訳ありません」
物思いにふけるあまりに、つい手に力が入ってしまったようだ。慌てて
クリフトは力を緩める。それに対しアリーナはにっこりと笑って無言の返
事をした。切なくなる気持ちを抑え、クリフトも笑顔でそれに応えると、
ゆっくりと階段を下り始める。
「さぁ、皆さんがお待ちですよ」
END.
>>73-83 これは…すごく切ないですね…
お互いの想いを封じ込めて、自分の立場を貫く。
二人の幸せはもちろん願いですが、こういうのすっごく好きです。
激しくGJです!!
前作から思っていたけど心理描写が上手いですね。
手を離したくないが離さねばならないのが切ない・・・。GJでした!次回も期待してます。
キャーまってました。
徐々に気持ちに気づいていく感じが素敵ー。
続き期待してもいいかな
朝からいいもの読ませていただきました。こう、なんていったらよいのか・・・
波紋のようにじわじわと浸透していく想いが切なくて大好きです。
前作の時より若干近づいたふたり、今後どんな展開が・・・?あぁ、気になる〜〜〜!!
続き待っていま〜す。あぁ、私もこんな文章が書けるようになってみたい・・・。
>>71-72 ご希望の3番ですが、こちらでは無理ですよ?
ちなみにエロを書くとSS執筆の原動力である煩悩力が落ちてしまうことが判明。
やはり悶々としてなんぼってことでしょうか。アホです。
お題「姫さまの手作りケーキ」
うわあありがちですみません。
今年もこの日がやってきた。
クリフトは神官衣の襟を正すと、鏡の中の自分に向けて叱咤する。
「大丈夫だ、クリフト。あの辛い旅でさえ切り抜けてきたおまえじゃないか。大丈夫。おまえは
十分強い。大丈夫・・・」
なにやら面妖なことを呟き続ける不審神官だったが、これは致し方ないことだったのかもしれな
い。
今日は、クリフトの誕生日。そしてそれはアリーナの手作りケーキが届く日。
毎年毎年、クリフトはこの日を複雑な思いで迎えていた。誕生日ということもあってか、この日
ばかりは王もブライも、アリーナがクリフトとふたりっきりで過ごすことを黙認してくれている
節がある。それは正直嬉しい。邪魔が入らず、愛しい者と過ごせる時間はとても貴重だから。
ただ、同時に試練の日でもある。それはアリーナの手作りケーキ。過去これを食べて無事でいら
れたためしがない。大抵はそのあまりのまずさに「失神」してしまうのだ。
それをアリーナは喜びのあまり気を失った、もしくは疲れのたまっているクリフトが眠ってしま
ったと思っているようだが、断じてそれはない。
あの気の遠くなるような味、否、実際に気が遠くなるのだが、どうしたらあのような味になるの
か。世界最大の謎とされてきた「進化の秘宝」が明らかとなった今でさえクリフトの前に立ちは
だかる大いなる謎である。
だが・・・。
「今年こそは・・・今年こそは耐え抜いてみせる!」
そして今年こそは姫様と・・・。
(らぶらぶな時間を過ごしてみせる!!)
神官にあるまじき煩悩といえるかもしれないが、若い男としてこの願望は普通だったのかもしれない。
クリフトが鼻息荒く気合を入れなおしていると、部屋の扉が小さく鳴っていまだエプロン姿のア
リーナが姿をみせた。手には少し形の崩れたお手製ケーキ。
クリフトは湧き上がる恐怖心を無理矢理煩悩で押し込め、笑顔で出迎える。
「ようこそおいでくださいました」
クリフトの運命や如何に!!
(バージョン・1)
「おいしゅうございました」
さりげなく紅茶でケーキの塊を流し込んだクリフトが、青ざめた顔で笑う。胃が悲鳴をあげ、
背筋をいやな汗が伝うのを自覚していたが、食べてしまったものは仕方がない。あとは運を天に
任せるのみだ。食前に飲んだパデキアの効力に期待しつつ、クリフトは早急に事を推し進めよう
とする。
「姫様・・・」
真摯な顔を作り、アリーナの手を取る。いざらぶらぶタイムへと意気込んだ矢先、世界が反転す
るようなめまいが襲ってきた。
思わずよろけたクリフトは弾みでアリーナを押し倒してしまう。
「え、ちょっと、クリフトったら」
展開早すぎ!!
焦るアリーナだったが、クリフトの身体が不自然に弛緩するのを感じ、恐る恐る目を開けた。
と、そこには綺麗な青い瞳を伏せたクリフトの顔。
「やだぁ、また寝ちゃったの?」
毎年毎年、仕方のない人ね。
不満半分といった表情で呟いたアリーナだったが、ごそごそとクリフトの身体の下から這い出す
と、人形のように端正なクリフトの顔をじっと眺めた。
「でも、あなたの寝顔を見るのも悪くないわ」
好きよ、クリフト。
アリーナは顔をそっと近づけると、己の唇をクリフトのそれに重ね合わせた。
(バージョン・2)
ややいびつなケーキを切り分け、意を決して口に運んだ瞬間、クリフトは目を瞠った。
「おいしい・・・」
それはまさに奇跡。アリーナのケーキはいままで食べたどんなケーキよりおいしかった。
クリフトが思わず呟いた賛辞にアリーナは、少し照れたように笑った。
「実はね、今日は料理長にアドバイスしてもらいながら作ったの」
いつも焦がしちゃってたから。
いままでの作品の数々を思い出したのか、アリーナが少し遠い目をした。そして目の前のケーキ
に視線を戻す。
「相変わらず、形は変だけどね」
来年はもっと上手に作るから。
はにかむアリーナにクリフトの胸が高鳴った。
「姫様」
思わずアリーナの手を握り、距離を詰める。
いつもと違うクリフトの様子に戸惑ったアリーナだったが、真摯な瞳にまっすぐに応える。
「姫様・・・私は幸せ者です」
僅かに瞳を潤ませながら呟くクリフトに、「いやね、大げさよ」と笑ったアリーナだったが、
クリフトの胸に頭をもたれさせると緋色の瞳を伏せた。
「料理長が教えてくれたの。ケーキにいろいろなものを入れる必要はありません、て」
必要なのは、相手に対する愛情だけでいい、と。
「だからね、あのケーキ」
私の愛情純度100%よ。
囁かれた言葉に、クリフトは嬉しさのあまり気が遠くなった。
お題消化、ふたつのバージョンで書いてみた。姫様のケーキ並に不味い、いや、
拙い文でスマン。いまのうちに謝っておこう。
消化不良の場合は
>>73-83に戻りお口直しを・・・。
>>88 こちらこそベタな終わり方でスマソ。
ファイルの整理をしていて気づいた。「進化の秘宝」って何だよ!「秘法」じゃないか!
誤字、スマンです。
あと、自分の覚え間違いに愕然。「バトランド」だったのね。FC発売以来ずっと
「バドランド」だと思ってた。うわぁぁぁぁぁーーーーハズカシー・・・。
ケーキだけにあっまーい!ごちそうさまでした。GJ!
それって何。
>>95 文法学的には、唇。
妄想学的には、・・・。とてもいえない部分と思われw
どっちもらぶら━━(゚∀゚)━━ぶやんけ!GJ
>>95それってあれ。
98 :
95:2006/04/28(金) 06:22:47 ID:On1ptatK0
頭が悪いと妄想できて楽しいなorz
99 :
95:2006/04/28(金) 06:23:44 ID:On1ptatK0
↑あ、あとありがとうでした。
その妄想をやばくない程度にここに書き込めw
orz orz orz
>>95さん、へたな文章でごめんなさ〜い・・・。
・・・のっけから懺悔中の煩悩神官です。本当にごめん。あれ、意図的にぼかしたんです。
ただ、文章がうまくかけなくてあんな形に・・・。代名詞≒ぼかし→エロ妄想
というなんとも単純な気持ちで。・・・・・・出来心だったんですよ〜。
実は元の文章はこれ「己の唇をクリフト自し・・・(自主規制!)」→「クリフトのそれに
滑らした」→「クリフトのそれに触れていった」→「本文」・・・妄想というかアホです。
煩悩神官はこんな奴です。怪しいところを見つけたらすかさず妄想してくださいね。
そしてその妄想をこちらへw
102 :
1/6:2006/04/28(金) 15:01:18 ID:bSal1y2/0
「ねぇ、これ」
「何ですか?」
「あげる」
「え?」
「ケーキよ」
「景気?」
「ケーキよ。フルーツパウンドケーキ」
「あぁ。ケーキですか。これはありがとうございます…」
「その怪訝な顔はなんなの」
「いえあの、頂けるのは嬉しいのですが、姫とケーキという組み合わせがどうにも理解できなくて…」
「日課なんだからケーキぐらい作るわよ」
「えっ、手作りなんですか!?」
「だから日課なんだって」
103 :
2/6:2006/04/28(金) 15:01:48 ID:bSal1y2/0
「今月はケーキ作りなんですね」
「先月のバイオリンよりはまだマシだわ」
「そうでしょうね」
「否定しないのね」
「だって姫がバイオリンて…」
「講師の性格も含めてあまり好きにはなれなかったわ」
「そうでしょうね…」
「笑わないでよ、これでも努力したんだから」
「好きになるように?」
「違うわ、勢い余って弦を切ってしまわないようによ」
「まずそこですか」
「そんな笑いながら同情に満ちた目で見つめないで」
「いえいえ、同情ではありません。なんだか姫らしい悩みだなぁと思って」
「同情じゃない」
「いえ…その、そういうところがですね、あの」
「?」
「いえ、あの…すみません」
「何?」
「すみません」
「急に下手に出ないでよ、そういうの嫌って前から言ってるじゃない」
「申し訳ありません」
「…(クリフトだけは違うと思ってたのに、やっぱりこういうときは保身に回るのかな…)」
104 :
3/6:2006/04/28(金) 15:02:14 ID:bSal1y2/0
「…姫は、自分の立場を恨めしく思うことはないんですか?」
「えっ」
「好きでもないバイオリンの練習をさせられたり、ケーキを作らされたり。ケーキ作りはまだマシとはおっしゃってましたけれど」
「そういうのはもういいわ。いかにしてうまく手を抜くかって技術も磨かれたりするし」
「姫」
「冗談よ。私そういうの嫌いだもん」
「そうですよね。要領よく手を抜くだなんて姫には似合いません」
「うん。ありがと。でもね」
「はい」
「…人と話をするときの距離感だけはいつまで経っても慣れないような気がする」
「…」
「クリフトも」
「はい」
「なーんかさ…」
「はい?」
「…。やっぱりいいわ」
「言ってくださいよ」
「だって、言うと余計に虚しくなりそうなのよ」
「私も距離を置いているように見えるのですか?」
「…だってそうじゃない、さっきだって」
「違います」
「いきなり黙り込んだかと思えば『申し訳ありません』とか」
「それは違います!!」
ビクッ
105 :
4/6:2006/04/28(金) 15:03:26 ID:bSal1y2/0
「す、すみません」
「一瞬身がすくんでしまった。不覚だわ。私もまだまだね…」
「いえあの、不覚だとかそんな武道家みたいなことを思わなくてもいいとは思いますが、
さっき黙ってしまったのは、とにかくそういうことではありません。
なんていうか、その…姫は偉いな、ってしみじみと思ったんです」
「嫌でもやることはやってるから?」
「そういうことです」
「わかったわ。疑ってごめんなさい」
「いいえ、私こそすみませんでした」
「…ねえ」
「はい」
「こういうのが、友情って言うのかな」
「互いに立場を超えて腹を割った話ができることですか?」
「けんかして、仲直りして」
「そうですね。友情ですね」
「クリフトと私は友達だって思ってていいのよね?」
「ありがたき幸せに存じます」
「その言葉嫌いだわ」
「冗談です」
「へへっ」
「ははは」
106 :
5/6:2006/04/28(金) 15:04:42 ID:bSal1y2/0
「あっ、もう午後の見張り兵が持ち場についてるみたいね」
「今日は確か、ご親族でのお茶会でしたね」
「さっきのケーキを振舞わないといけないらしいのよね。なんか服もそれっぽいの着なきゃいけないらしくて」
「あのものすごいコルセットを付けるドレスですか」
「うん。まぁでも最近鍛えてるから締め付ける分には大丈夫だと思うわ」
「頑張ってくださいね」
「ありがと!じゃぁまたね!」
「こちらこそ、お裾分けありがとうございます」
クリフトは自室に戻って、自分もとっておきの紅茶を淹れることにした。
ケーキの袋を開けると、自筆のメッセージカードが添えられていた。
「親愛なるクリフト
いつも私の愚痴を聞いてくれてありがとう。ささやかながらお礼です。
クリフトと話しているときはとても気持ちが落ち着くし、いろいろと気を廻さなくてすむから楽しくて仕方がないわ。
父様からあてがわれたお仕着せの人形みたいな女の子達より、あなたとのほうがよほど話が合うの。不思議ね。
『友達』って、きっとこういう人のことを言うんだろうと思うわ。大好きよ。わたしにはあなたが必要なの。
だからあなたも、何かあったら私に聞かせて。あなたとの他愛ない会話が私の毎日の楽しみです。
では、また。ケーキの感想を聞かせてね。
あなたの友 アリーナ」
107 :
6/6:2006/04/28(金) 15:05:58 ID:bSal1y2/0
「何かあったら私に聞かせて。」
もっとも大きな悩みは恋の悩み。それだけは当分言えそうもないな。クリフトは苦笑した。
ケーキは、バイオリンを弾くとくれば弦を切ってしまいそうな普段の彼女の様子からは
思いも付かない繊細な味わいで、アリーナの深い孤独とそれに裏打ちされた優しさ
ーー彼だけが知っている、もうひとつの彼女の性格ーーに、クリフトは思いをめぐらせた。
料理は人柄を表すって本当だな、と思った。
彼の中にはひとつのおぼろげな決意があり、何かことが起こるたびに少しずつ形を成して
確固たるものへと変わりつつある。
私は、私だけは、何があっても彼女のそばにいてあげよう。
直情径行ゆえ彼女の何気ない言動にひとり惑わされることはあってもーー例えば『友達』
『大好きよ。』ということばーーその惑いや揺らぎに耐え、彼女をひたすら支える。
彼にはその自信があった。
彼にとっても彼女との他愛ない会話こそが毎日の楽しみであり、彼女は必要な存在だから。
彼女の旅立ちの気配に勘付いたとき、彼は、絶対にひとりでは行かせないと思った。
彼女は嫌がるだろう。他人に面倒をかけるぐらいならひとりで背負い込むほうが楽だろうから。
それでも。いや、それだから。放っておけない。
絶対に、ひとりでは行かせないと思った。
>>102-107 クリフト優しい…そのうえ強さも持っていていいですね〜
あくまで友情だけども、姫にとって必要不可欠という感じがすごく出ていて
この2人の関係性がすごく素敵でした!
GJでした!
SSきてましたねー
それぞれ楽しませてもらいました。職人の皆様、本当に乙です!
及ばずながら自分も一つ製作中です。
その前に宿題を片付けないといけないので、
終わったらうpしようかと思ってます。
∧_∧
(0゚・∀・) ドキドキ
oノ∧つ⊂)
( (0゚・∀・) ワクワク
oノ∧つ⊂)
( (0゚・∀・) テカテカ
oノ∧つ⊂)
( (0゚-∀-) オモイ・・・
∪( ∪ ∪
と_)_)
>>100-101 体を動かすことが好きなアリーナが寝込みを襲っているのかと思っ(ry
あとあと、煩悩神官さんこんな妄想ごめんなさいorz
逆夜這いかよ!
>体を動かすことが好きなアリーナってとこがまた・・・w
>>110乗っかりすぎw
皆様お久しぶりです。そして職人の皆様激しく乙です。
どうも素晴らしいほどにドツボにハマってしまい
何も書けない状態ですよ……。
ちょっとリハビリしてきます。とりあえず生存確認……。
114 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/01(月) 00:36:37 ID:DjnGLbzy0
あげ
少し埃っぽい空気の中に漂うインクの匂い。
クリフトはこの匂いが好きだ。幼いころから親しんできた様々な
書物はみんな、この匂いでクリフトの鼻をくすぐっていた。成長し
た今でもこの匂いの中にいると落ち着きを感じるし、ひとりで本と
対面して過ごす時間を楽しむことができる。
ここはサントハイム城の書庫。書庫と言っても雰囲気は図書館と
いった感じで、城の南側の一角に設けられており、天窓もありとて
も明るい。所狭しと備えられたいくつもの本棚のせいで風通しが悪
いのが難点なのだが、クリフトはこの書庫がとても気に入っている。
ここ最近は忙しい日々が続いていたが、今日は午後からは何も仕事
がない。クリフトは久しぶりに書庫へと脚を向けた。
「懐かしいな」
以前に読んだことのある本を手にしてクリフトは微笑む。昔は本
当によくここに出入りしていたものだ。この書庫の中のどれだけの
本を今まで読んだだろう。子供向けの絵本から世界各地の地図まで
揃うこの書庫の中にいれば退屈しない。それほどクリフトは本の好
きな少年だった。
手に取った本を携え広い書庫の中をゆっくりと歩く。書庫の中に
はいくつかのテーブル席があり、ちょっとした読書スペースになっ
ている。腰を落ち着けて読もうと考えたのだ。
「姫さま…!」
書庫の一番南側。天窓を真上にし、出窓のそばにあるテーブルに
見えたのはサントハイムの姫君、アリーナの姿だった。あまりの日
当たりのよさについうとうととしてしまったのか、テーブルの上に
伏せるようにしてよく眠っているようだ。長いオレンジ色の髪の毛
がふんわりとその華奢な肩を覆いテーブルの上に流れている。
クリフトは少々ためらったが、静かに向かい合う席に腰を下ろし
た。テーブルに上には先日アリーナがメイドから進められたという
恋愛小説があった。本を読んでいる途中に眠くなってしまったのだ
ろう。クリフトの渡した栞が本の間に挟まっている。アリーナはか
なり終盤まで読み進めたようだ。
「……姫さま?」
そっとそう呼びかける。アリーナは目を覚まさない。本当によく
寝入っているらしい。頬のラインに沿うようにして落ちる髪の隙間
から愛らしい寝顔が見てとれて、クリフトは微笑まずにはいられな
い。気持ちよさそうに眠るアリーナの様子は、ただそれだけでクリ
フトの心を和ませる。
向かい合い、こんなにも近い距離にいれば、自然と漂ってくるよ
い香り。香水でもつけているのだろうか。最近の忙しさの中、アリ
ーナと顔を合わす機会も減ってきている中で彼女の姿を久しぶりに
目にすると、不思議なほど大人びて見えるときがありクリフトは少
し戸惑いさえする。見張りの兵士の目を盗んでは城の外に出てドレ
スを泥だらけにしたり、悪ふざけをしているうちに城の噴水の中に
落ちてしまったり、挙句の果てには樹に登り落ちかけてドレスの裾
を破いてしまったり。そんな風だったアリーナが懐かしい。おてん
ばな行動やいたずらを繰り返すが、怒られるときはいつもクリフト
と一緒だった。この書庫で勉強をしているクリフトに泣きついては、
一緒に怒られてくれと頼むのだ。国王や大臣、ブライのお説教を一
緒に聞いていたあのころが急に懐かしまれる。いつしかアリーナは
自分を必要としなくなってしまったのではないかという不安に襲わ
れさえして、クリフトはついいたたまれない気持ちになってしまう。
栞を手渡したあの時、アリーナは「置いていかないでね」と言った
が、置いていかれそうなのはこっちのほうだと。
「はぁ……」
クリフトはため息のような吐息を漏らした。
先日のお見合いは結局なし崩しのような形となり、また機会を改
めてと言うなんとも後味の悪い、すっきりしない形で幕を閉じたの
だが、クリフトにとっては思い知らされた感があった。アリーナの
そばに長年仕えてきたと言えども、それはやはりひとりの家臣と言
う身分の上での話。エンドールからのお相手を目の前に、恭しく接
待する自分はやはりアリーナからは遠いのだ。身分、家柄、血筋…
…何をとってもそれは自分に備わっているものではなく、そしてそ
れを望むことはこの命を与えた神を否定していることであり、神官
としてのクリフトを苦しめた。
それでも……。
「お風邪を召されますよ」
少しだけ開いている窓から吹く風が少し冷たく感じられ、クリフ
トは立ち上がり上着を脱ぐとアリーナの肩に羽織らせた。
こうしてあの旅のときのように安心しきった寝顔を見せてくれい
る。無防備なアリーナの様子が微笑ましい。大切なのは、今この時
間。こうしてこの安らかな寝顔を見ているだけでも幸せではないか。
そういう風にクリフトは思い直す。
『好きです』と繰り返すのはいつも心の中。ふと心のたがを緩めて
しまえば口をついて出てしまいそうだ。今でさえ、そっと手を伸ば
しその滑らかな頬や髪に触れたいと思ってやまないのだから。
***
ふわっと浮き上がるような不思議な感覚と共にアリーナは目を覚
ました。どれくらい眠ってしまっていたのだろう。外はまだ明るい。
そんなに遅い時間ではないことは察せれるのだが……。
「クリフト!?」
壁にかけてあるはずの時計を探そうと視線をあたりにめぐらせれ
ば、真正面にクリフトの姿を捉えた。アリーナが来たときにはこの
書庫には誰もいなかったはずなのにいつの間に来たのだろう。
「クリフト、寝てるの?」
肩にはクリフトの神官服がかけられている。ずれ落ちないように
両手で引っ張りながらアリーナは問いかけた。
帽子を脱ぎ出窓に少々体重を預けるようにしてクリフトは眠って
いた。アリーナが問いかけても返ってくるのは規則正しい寝息のみ
だ。わずかに開いた窓から吹いてくる風がクリフトの髪の毛を揺ら
している。
「クリフト……」
アリーナがクリフトの寝顔を見るのは初めてのことだ。あの旅の
間でも一度も見たことはなかった。お互い何の差もない、旅の仲間
だ。アリーナも当然野宿の際に寝ずの番をすることがあった。もち
ろんアリーナはそれを不服に思うことはなかったし、自分の務めと
責任を果たすつもりでいた。それでもクリフトだけは、アリーナが
見張り番のときは交代を申し出た。仲間であるとはいえ、姫を差し
置いて寝てはいられない。だからアリーナは旅の間も一度もクリフ
トが眠っているところを見たことがなかった。
それが今はなんとも穏やかに、心地よさそうに眠っているではな
いか。アリーナはついついその寝顔をじっと見つめてしまう。城に
いる間はもちろんのこと、旅の最中でもクリフトはいつもピシッと
していて服装にしろ姿勢にしろ乱れたところを見たことがない。そ
んな彼がこちらの視線にも呼びかけにも気づかないまま、ぐっすり
と眠っている様子はとても新鮮だ。
アリーナはそんな様子のクリフトを見つめ、色味のよい唇の端を
キュッとあげて笑う。あどけない寝顔を見ながら、アリーナは少し
安心した気持ちになる。いつもきっちりとしているクリフトの少し
だらしのない一面を見れたこともそうだが、この距離感がなんとも
心地良い。忙しい中で顔を合わす機会も少なくなり、遠く感じてい
たクリフトの存在が物理的にだけではなく精神的にも近づいたように感じる。
「ねぇ、クリフト。起きないの?」
起こそうと言うわけではないが、少し退屈に感じてしまったアリ
ーナはそんな風に優しく声をかける。クリフトからの返答はやっぱ
りなくて、落ち着いた寝息が聞こえてくるのがおかしい。
傍らに置いた恋愛小説のように激しく盛り上がるものが恋愛では
なく、ただ静かに穏やかに、日々の平穏の中で育まれる恋もあるの
だと言うことにアリーナは気づいていない。そして自分の心の中に
小さな恋の芽が芽吹いていることにも気づいてはいないのだ。アリ
ーナの心はまだほころび始めた蕾でしかない。
それでも、なんとも不思議な安心感と居心地の良さ。お互いのす
る呼吸のリズムがぴったりと合うかのような、計らずとも揃う波長
のようなものなのだろうか。クリフトといるときの空気がアリーナ
は好きだ。なんだかとても、落ち着いた気持ちになる。つい比較し
てしまうのは先日、とりあえず形だけお見合いをしたエンドールか
らの訪問者の男性だ。より一層、この空気のよさを感じられる。
「ねぇ、何かおしゃべりしてよ」
小さく笑いながらアリーナは催促する。やっぱりクリフトは眠っ
ている。アリーナは再びテーブルの上に両腕を置き、伏せるように
身体をかがめてクリフトを見上げる。
***
「やれやれ、どこに行ったのかと思えば……」
すっかり日が傾いた夕暮れ時。城内ではアリーナ姫の姿が見えな
いとちょっとした騒ぎになっていた。メイドや兵士たちが城内のあ
ちこちを探し回り、数名の兵士たちが城の外まで探しに出ようかと
いう事態にまでなりかけていた。
半隠居生活を送るブライもそんな騒ぎとなってしまっては引っ張
り出されざるを得ない。メイドから話を聞いたブライは、城の中の
思い当たる場所を順に探し始め、程なくしてこの書庫にたどり着い
た。
ひとつのテーブルに向かい合い昼寝を続ける男女。男は幼いころ
から面倒を見てきたまだまだ未熟な神官で、女は自分の仕えている
主君の姫君であった。
「まったく…、世話の焼ける姫様じゃ」
吹き込む風が冷たくなってきたのを感じ、ブライは出窓を静かに
閉めた。
クリフトの秘めたる想いにブライは気づいている。そしてアリー
ナがクリフトにだけは心を許すと言う部分があると言うことも察し
ている。いいのか悪いのか、許されるのか許されないのか、ブライ
のような老獪にも判断しかねることでありただ静観しているのみだ。
ふたりとも愛おしい。願わくばこの行く先に、あふれるほどの幸
せが待っていて欲しいと思う。
願わくば、願わくば……。
「これ、起きぬか。このバカ者めが」
ブライは杖の柄でクリフトのこめかみを小突いた。
END.
>>115-122 GJ!いいもの読ませてもらいました。
もどかしい二人の距離間が絶妙です。
124 :
861:2006/05/01(月) 15:03:29 ID:VdVs9Y3a0
>>115 お互い幸せになって欲しいけど、私の中では二人がくっついたら終わりって
イメージがあるので、この微妙な距離が素敵です。
こうゆうの自分でも書いてみたいですが、どうもオチとか結論を急いでしまうので、
どうしても書けそうにありませんでした、また期待してます。
>>102-107 アリーナの言動に一喜一憂のクリフト君、かわいいです。こんなことをいうと
年がばれそうですが、若いなぁ、青春だなぁって思ってしまいました。
全スレ506さん、GJです。思わず引き込まれてしまいました。いいなぁ、
切ないのにほのぼの・・・。理想のクリアリです〜。ぜひぜひ、続編を!!
>>111 寝込みを襲うアリーナ・・・ふむふむ、なるほど・・・。
え?何も隠してなんかいませんよ。えぇ、ほんとに。メモなんて取っていませんってば。
ましてやSSのネタにしようなんて・・・ははは(汗)モウソウカモーン!
>>115-122 GJ!なんだかもう…毎度毎度私のツボをついてくる文章で。大好きです。
>>124 >二人がくっついたら終わり
同意。
キャラがキャラだけにすごく穏やかな情景が浮かんでくるんだけど、
この二人のベースはあくまで身分の差を超えられない悲恋だからなぁ…
宿題の群れをやっつけました!意外と手強かったです。
予想より強敵だったため、来るのが遅くなってしまいました。
その間にもSSきてましたね。GJです!
実は自分も『つかず離れず』のシチュが一番好きなんです。
いいもの読ませてもらいました。
良いSSの後に、こんなの投下していいのか迷いましたが、
まあ、よろしければ読んでみて下さい。
ある日の午後、クリフトはサントハイム城内の大聖堂内で一人休憩を取っていた。
その顔には明らかに疲労の色が濃く出ていた。
平和になってからというもの仕事の量が増え、最近は休みなしの毎日が続く。
「ねえクリフト、私ケーキ焼いてみたの。よかったら食べてみて。」
軽いノックの後、アリーナがバスケットに入った苔桃のタルトを持って現れた。
「姫様が私のために…では、遠慮なくいただきます。」
はやる気持ちを抑え、早速クリフトは一口つまんでみた。
一瞬感じるほのかな甘み。その直後、口全体に広がったのは…何とも言えない苦味。
「どう?おいしい?」
アリーナは不安そうにこちらを眺める。
そんな状況で苦いなどとはクリフトにはとても言えなかった。
「ええ、甘くて、と、とてもお、おいしい、で、す。」
そう口に出すのが精一杯。
「本当?まだあるから、もっと食べてね。」
嬉しそうにケーキを差し出すアリーナ。引きつり笑いを浮かべながらほおばるクリフト。
食べれば食べるほど苦味は倍増し、味覚が麻痺していく。
彼に取って唯一の慰めは、無邪気な彼女の笑顔だけであった。
その夜、大聖堂内の一室にある神官の寮からうめき声らしきものが響き渡った。
「うーん、うーん……」
度重なる疲労のあまり、クリフトはとうとう体調を崩して寝込んだらしい。
もちろんその導火線となったのは、例の苦味であることは言うまでもないだろう。
その頃、二階の部屋では今日の出来事を事細かに話すアリーナと、
それに耳を傾けるかつての仲間、踊り子マーニャ・占い師ミネアの姉妹がいた。
姉妹はここからはるか南西の大陸の町、モンバーバラに住んでいるが、
二人の職場である大劇場が改装工事中のため、休みをもらって遊びに来ているのだ。
「何がいけなかったのかなあ…?」
理由がわからず、困惑するアリーナ。
「お話とこのメモから考えても、作り方には特に問題ないと思います。」
彼女から渡されたレシピを眺め、冷静に分析するミネア。
「本当は、何か怪しいもんでも入れたんじゃないのぉ?」
冗談交じりで話を茶化すマーニャ。
「そんなもの入れてないよ。パデキアの根っこをすりつぶして、隠し味に入れただけだもん。」
「ええーっ、パ、パデキアの…」
「根っこですってぇ?」
思わず互いに目を合わせ、そして恐怖におののくマーニャとミネア。
直接口にしたことはないが、以前クリフトからその苦味の凄まじさを聞かされたことがある。
「そう言えば、クリフトがパデキアの味のことを、姫様手作りのケー…うぐっ!」
マーニャの無神経な突っ込みに、すかさずミネアの肘鉄が入る。
そんな二人のやり取りなど上の空で、頬づえをつくアリーナの口からため息がこぼれる。
「クリフト最近忙しそうだし。それに疲れた顔してるから、元気出してもらおうと思って作ったのに。」
ミネアは姫の肩に手を触れると、軽く微笑んだ。
「パデキアの根は病に効く薬草です。残念ながら疲れには効果がなかったんでしょう。
疲れに効くもの、ですよね…そうだ、あれだわ!姉さん、キメラの翼を貸して!」
マーニャから半ば強引にキメラの翼を取り上げると、ミネアは急いで城の屋上に上がり、
翼を空高く放り投げた。彼女の身体も空高く舞い上がり、やがて見えなくなった。
翌日の午後。疲れた身体を押して、クリフトは大聖堂内で仕事に励んでいた。
しかし体調はまだ万全ではないせいか、気力だけで動いているようにも見える。
昨日のこともあってか、心配そうにクリフトの顔を覗き込むアリーナ。
「クリフト、大丈夫?昨夜は大変だったみたいね。」
「あ、姫様。私はもう大丈夫です。ご心配をかけてすみません。」
気丈に振舞う彼だが、青ざめた顔にふらつく足元。どう見てもやせ我慢にしか見えなかった。
アリーナは木苺のシフォンケーキを切り出すと、小皿に乗せかえてクリフトに差し出した。
「昨日はごめんなさい。今日は新しいケーキを焼いてみたの。食べてみて…くれないかな?」
クリフトの顔に動揺の色が走る。彼の気持ちはアリーナも十分理解していた。
「お願い、一口でいいから食べて。もしおいしくなかったら、それ以上食べなくていいから。」
両手を合わせて懇願するアリーナに根負けしたクリフトは、震える手でケーキを口に含んでみた。
「…ああ!これは甘いですね。しかも口に残らないさっぱりした甘さです。」
砂糖とも蜂蜜とも違う、不思議な甘さ。木苺の酸味とケーキの柔らかさともよくなじんでいる。
「…おいしい?」
「はい、とてもおいしいです。特にこの甘み…初めて味わいます。」
アリーナはクリフトの表情に嘘がないのを確認した後、自分も少し味見してみた。
「本当だ、おいしい。ねえ、まだあるけど一緒に食べようか?」
「ええ、いただきます。気のせいでしょうか、一口ごとに身体が軽くなっていく気がするんです。」
久しぶりに言葉を交わすせいか会話が弾み、楽しいひと時が流れる。
大聖堂の外の窓には、こっそり二人の様子を伺うマーニャとミネアの姿が。
「どうやらうまくいったみたいね、ミネア。」
「お二人ともいい雰囲気みたいでよかったです。」
マーニャの隣でちらりと二人の姿を見たミネアが嬉しそうに笑う。
「でさ、ミネア。あんた一体アリーナに何を渡したの?」
「ああ、あれ?『世界樹の雫』よ。勇者様の村に行って少し分けてもらったわ。」
「それに『さえずりの蜜』を混ぜて使ってみたそうよ。蜜の甘みが増して、いい味になったんですって。」
ミネアは右目をウインクさせて目配せした。
「なーるほど。あれなら疲れにはよく効きそうだわね。」
「あら、お二人ともケーキ全部召し上がったみたい。」
二人の様子を引き続き見ていたミネアが思わずつぶやく。
「ちょっと何?あたし達の分はもう残ってないの?薄情ねぇ。あーあ、お腹すいたわぁ…」
「姉さんったら、もう。」
本気で悔しがるマーニャを見て、ミネアの微笑みが苦笑いに変わった。
翌日の午後のひととき。
「はーい、お待たせー」
アリーナが差し出したのは、焼きたての山葡萄のクグロフ。
クリフトは仕事が忙しいため参加できなかったが、それでも多忙の合間を縫って
三人のためにハーブティーを調合しておいてくれた。
「わーい、ケーキよケーキ。ちょっと一口…痛っ、何すんのよミネア!」
「姉さんってば、はしたない真似しないの!」
延ばしたマーニャの右手を、ミネアがぎゅっとつねる。
「いっただきまーす!」×3
早速三人での試食会が始まった。
「うん、おいしくできてる。」
「しっとりとしておいしいです。バターの香りとハーブティーの香りがよく合っていますね。」
「ごちそうさまー。確かにおいしいかったけど…でもさあ、何か普通よねこの味。」
完食一番乗りのマーニャが、フォークを置いてそう言った。
「うん。だって、世界中の雫もさえずりの蜜も、もう残ってないから。」
「え?じゃあ両方とも全部使い切っちゃったわけ?」
「ごめーん。入れ過ぎちゃったみたいで。」
「あーあ、結局あたし達には当たらなかったのか、残念ねー。あ、これもーらいっと!」
マーニャは口を尖らせ、隣にあったミネアの最後の一切れを横取りした。
「ちょっと姉さん!私のケーキ取らないでよ!!」
(ごめんね二人とも。本当はどっちもまだたっぷり残ってるんだ。
でも、それはクリフトのために取っておくことにしたから、許してね。)
アリーナはそんな二人の様子を見ながら、心の中で密かに謝った。
あま〜〜〜〜〜〜い!
GJGJ
その日の夜、城の台所に怪しい影が…
「おお、あったあった。アリーナめ、こんな所にさえずりの蜜を隠しおって。」
影の正体は、サントハイム王だった。
「カラオケで歌いすぎて声がガラガラになってしまった。」
「そんな時には蜜のロックの一気飲みが最高じゃよ!」
王は瓶に入っていた蜜を一気に飲みほした。そのため、蜜の量はあっという間に半分を切ってしまった。
「さて、これで明日のカラオケ8耐レースの勝者はまたわしじゃな。」
瓶を元に戻し、王はそそくさと台所を後にした。
「あーっ、さえずりの蜜が減ってる!!」
翌朝、材料のチェックをしていたアリーナは、蜜の量が少なくなっているのに気がついた。
「お父様ったら、また盗み飲みしたのね!今度という今度は、絶対許さないんだから!!」
アリーナは怒りに身体を震わせ、拳を握り締めながら、父王の玉座へと向かった。
「おや、アリーナよ。どうしたのじゃ?」
冷や汗を浮かべながら、冷静なふりで応える王。
「お父様!勝手にさえずりの蜜を飲むのはやめてって、あれほど言ったじゃない!」
「さあ、わしは知らんぞ。誰かがうっかりこぼしたのではないのかな?」
「…お父様、昨日はあんなに声がガラガラだったのに、今日は美しい声に戻ってるのね。」
「いや、そんなことはないぞよ、ゴホゴホ!」
取ってつけたように咳き込むふりをする王。しかし勝敗はもう見えていた。
「嘘ついたってダメよ、お父様。その声が何よりの証拠です。」
「…悪かった、悪かった。もう勝手に飲んだりせんから許してくれい。」
王は何度も頭を下げるが、アリーナの怒りを静めるには至らなかった。
その後、王は娘のアリーナにたっぷりお説教を食らった。
いつもとは逆のパターンに、傍にいた大臣も、魔法使いのブライも笑いをこらえるのに必死だった。
今日もサントハイムは平和である。
以上でおしまいです。
>>132 早速読んで下さってありがとうございました。
しかし甘いままで終われなかったのは、てんちょの仕様です。
7日にやっと教会から出れることになりました。
しばらくは自宅での療養ですが、やっと大学芋に通えます。
_、_
(,_ノ`) n
 ̄ \ ( E)
フ /ヽヽ//
136 :
806:2006/05/02(火) 12:58:30 ID:GjiN/L/H0
パテキアの根いれちゃったのはやっぱり、変なケーキになってたときの保険だったのかな
いろんな物を入れてしまうのはアリーナらしいですね。
さえずりの蜜のケーキは食べてみたい。
4/4は延ばした→伸ばした
の間違いです。
門限オーバーですが、今から教会に戻ります。
皆さんよい連休をお過ごし下さいノシ
てんちょお大事に(・∀・)
ほしゅ
クリフトは じゅもんを となえた!
「ほしゅ」
意味なくお題【つよい人】
姫様ーーー!!
さらにお題【おしゃれ】
なんか、もう終盤戦になって強くなったクリフトが、
しあわせの帽子と魔法のボレロを装備してる図が浮かんだ。……スマソ
ブライは水の羽衣かなあ。
これがクリフトに装備できないのは
透けそうな素材で恥ずかしくて着れないからかw
148 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/07(日) 09:36:33 ID:Mf7AQ2KJ0
ふぅ
トルネコが「透けません」と明言しているわけだが>水の羽衣
しまいにゃ 着ますよ!
>>149 スケるハズ 水の羽衣 なんだから
願い叶うが 装備者ブライ
152 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/07(日) 14:19:54 ID:WXHYondFO
真面目でシャイなクリフトに萌え☆
腹黒で策略家でも萌え☆
FC版デスピサロ戦でマホカンタかかってるのにザラキ唱えても萌え☆
青みがかった短髪に萌え☆
姫さま一途なむっつりすけべ神官萌え☆
クリフトに萌えてるオマイ達に萌え☆
ねえ。起きてよ……。
窓から新緑の香りが風に乗ってふわりと運ばれてくる。
その窓の近く、ベッドに横たわるクリフトの髪をあたしはそっと撫でた。
荒い息。
滲む汗。
ぎゅっと寄せられた眉間の皺。
嫌だよ。
クリフトのこんな顔、見たくないのに……。
額に手を当ててみる。
その熱さにびっくりして、思わず手を引っ込めた。
「……」
冷たい水でタオルを濡らして、クリフトの首筋をそっと拭いた。
眉間の皺が少し和らいで、ふう、と小さなため息が聞こえた。
気持ちいいのかな……。
少し拭いただけなのに熱を帯びてしまったタオルをもう一度湿らせて、額にのせた。
「ねえ、クリフト……?」
あたし、パデキアと探しに行って、怪我しちゃったんだよ。
いつもみたいに、ホイミしてよ。
あんまりクリフトがホイミばっかりしてくれるから、あたしも覚えちゃったんだよ。
いつもクリフトがあたしにしてくれるみたいに、そっと、ホイミの呪文を唱えてみる。
「……」
何も起こらない。
武術大会で優勝して、あたしは強くなったって思ってた。
でも……。
あたしはサントハイムのみんなだけじゃなくて、クリフトたったひとりすら、
救うことができない。
どんなに、お城の壁を叩き壊すことができても。
どんなに、大きな岩を叩き壊すことができても。
それって、本当に、強いってことなのかな。
だって、力が強くたって、できることは……壊すことと……殺すこと。
クリフトみたいに、怪我で苦しむ人を救うことなんてできない。
ブライみたいに、闘わないで敵をやり過ごす術なんて知らない。
目の前で苦しんでるクリフトひとり、どうすることもできない。
「……起きてよ……」
いつもみたいに、おてんばが過ぎるあたしを叱ってよ。
あたし、ひとりで無茶しちゃったんだよ?
勇者さんたちが来てくれなかったら、死んじゃってたかもしれないんだよ?
そんなあたしを叱らないで、どうしてそんな顔して寝てるのよ。
「……ねえ……」
もう一度、ホイミの呪文を唱えてみる。
──何も、起こらない。
どうして、あたしは呪文ひとつ使いこなすことができないんだろう。
壊すことができるあたしより、治すことができるクリフトのほうが、ずっと、ずっと……。
強くなりたい。ずっとあたしはそう思ってた。
でも、強いって、何だろう……?
何かを犠牲にする強さなんて、いらないよ……。
何度目だったか、あたしが桶の水を換えに部屋を出たとき、勇者さんたちが戻ってきた。
手には、あたしが見つけることができなかったパデキアを持って……。
「ご心配をおかけしました」
パデキアを飲んで二日後には、クリフトは起き上がれるまでに病状が回復してた。
いつものような、優しい笑顔に戻ってた。
「……?」
でも、ふと目を離したとき、クリフトはまだ苦しそうな顔をしてた。
あたしの目線に気づくと、いつもの優しい笑顔を見せた……。
……我慢、してるのかな……心配させないように、って……。
「クリフト……大丈夫?」
「ええ。大丈夫ですよ。姫様のホイミが効いたみたいです」
「え」
や、やだ。聞こえてたの、あれ。
「ば、馬鹿っ!」
照れくさくてあたふたするあたしの姿を見て、クリフトがくすくすと笑う。
ああ、でも、いいなあ、クリフトが笑ってくれるのって、嬉しいなあ。
あたしはクリフトの額に、自分の額をこつんとくっつけてみる。
……もう、あんなに熱くないね。
「……もう、無茶しないでよ」
「姫様にそう言われるとは思いませんでしたよ」
傷を癒すことができて、いろんなことを知ってて、苦しいことも我慢できて……。
「……あたし、クリフトより強くなれるかな?」
「……はっ?」
あたしはそっと、クリフトから身体を離した。
「姫様……もう、無茶は……」
そこまで言って、クリフトがふと目を伏せた。
「……無茶は、させません。ご心配をおかけしました」
「……うん。ごめんね……」
クリフトがあたしにホイミの呪文を唱えてくれた。
暖かくて柔らかい光に包まれて、あたしの傷が癒されていく。
「もう、痛くないから」
「傷が残っては大変ですからね。私には、こんなことしかできませんから」
クリフトにしか、できないことがあって。
あたしにしか、できないことがあって。
きっと、それで、いいんだよね。
「ありがと、クリフト」
綺麗に癒された傷を見て、あたしはクリフトに精一杯の笑顔を向けた。
おわり
まだどつぼから抜け出せません
ぼすけて
165 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/08(月) 01:17:02 ID:ZC37SJXY0
GJ!!!!!
あげてしまいました。すみません。orz
うわー誤字見つけた、恥ずかしいorz
1/5 パデキアと → パデキアを
うわー!!!GJGJ!!!
ほんわかほのぼの癒された(*´∀`)
誤字くらいデフォルトで脳内変換してしまうのでキニシナイ!!
「やっぱり故郷はいいわね。」
日常の中では、自分を縛りつけるものにしか見えなかった故郷の城門。しかし、長旅
から帰った身には、それは砂漠の中のオアシスのように見える。
「そうですね。姫様を無事お守りすることができて、私も肩の荷が下りました。」
あたしの何気ない言葉に、クリフトは、晴れやかな笑顔で答えた。それが昨日。
それなのに。
今、ベッドで寝ているクリフトは、ぴくりともうごかない。せめてもの幸いは、その
死に顔が安らかなこと。
今朝、待ち合わせの時間に現われなかったのを不審に思った神官長が、部屋の扉をこ
じあけ、息をひきとっているクリフトを発見した。荷物を床に置いたなり力尽きた、
という感じだったそうだ。
長旅に出るにしても片づきすぎている部屋から見つかったのは、大量の医学書。それは、
全て、ある特異体質についてのものだった。
その特異体質、いや、先天性疾患の持ち主は、高い魔力を持つが、魔法を使う度に身
体が蝕まれる。高度な魔法を数多く使うほど、その余命は短くなる……。
そうだったんだ。
城付きの神官になったのは、魔法を使う機会をできるだけ減らすため。
ミントスで倒れたのは、病気が末期に入ったしるしの発作。
ザラキしか唱えなかったのは、あたしがここに帰ることができるまでの間、なんとか
命を保つため。
クリフトは、実は強い人だって思っていた。でも、
「こんな強さだったら、いらなかったのに。」
涙さえ出すことができずに、あたしは、心の中で何度もつぶやいた。
FC版をやったときの記憶を掘り返して、突発的に書いてみました。
設定など違うところがありましたらすみません。
バッドエンドになってしまいました。読むのはハッピーエンドが好きなのにorz
お目汚しすみませんでした。
(つд`)つ◆世界樹の葉。……ダメ?
泣くところのはずなのに『ザラキ』って
単語だけで笑えてしまう私を殴って下さい姫様
GJ!どつぼに嵌まってるきのこの人に萌え☆
>>169カナシス(つД`)
本当は昨日教会から出る予定でしたが
神官先生の許可が下りず、今日になりました。
しばらくは週一程度の礼拝が必要ですが、
とりあえず普通の生活に戻れそうです。
きのこさん相変わらずほのぼの系うまいですね。
自分も見習いたいです。
>>171 乙です。
FC版では、わざと全滅させてザラキ使わせないように
したので、SS読んでちょっとだけ罪悪感を覚えました。
176 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/09(火) 03:26:01 ID:+vSEsIl70
あげ
FCの設定ってどんなんだったっけ?教えてエロい人!
・神官学校首席卒業
・女の子に人気がある
アリーナが好きって公式設定はリメイクからだね。
でも「このクリフト…………」のいつもより多いてんてんで
勝手に好きなんだろうなあ、と思い込まされた。
セリフもほとんどないのにすごいよね。
これだけのセリフとAIのおかげでキャラが立ってるんだから。
あそこまでザラキバカじゃなかったらこんなに愛されなかっただろうなあ。
自分のとこのクリフトは全然ザラキ使わなかったんだけどね…
力とかあげまくって育ててた上、「じゅもんせつやく」だったからかと。
だからザラキ魔という印象がないだよな〜
>>178 それと決定的にしたのは4コマ劇場だと思う。
すずやや新山がよくネタにしていた。
>>178エロい人ありがd!そういやそんな設定だったな。忘れてたよw
4コマ劇場ナツカシイナ
>>178 そんな設定あったんだ。
最近DQ4やりだしたんだけどやっぱもう四コマとか売りよらんのかねえ。
FC版公式攻略本上巻P.56
神官 クリフト
「腕もたつ、若き神官
若くして神の道を目指した、サントハイム城の信頼ある神官。
女の子の人気も高い。
傷ついた者をいやす呪文と、高い経験を積めば、生と死をつかさどる呪文を扱える。
ある程度の武器防具も装備できる。」
神官学校主席卒業の設定は「導きの書」からだね。
こちらは持ってないのでワカランが書いてあることは確か。
ついでに下巻も。P.12
「サントハイムから姫といっしょに旅立った若きお付きの神官。
神に仕える職業がら、
回復系の呪文や生と死をつかさどるザキ系、ザオリク系呪文を扱い、
死闘を繰り広げる冒険ではありがたい存在だ。
ある程度の武器、防具も装備できる。
能力すべてバランスが取れており、仲間うちのなかでもなかなかの優等生。
長い冒険の旅には欠かせない人物だ。」
ちなみに自分は台詞係に任命された61です。
ってこれは台詞じゃないけどwもうデータ係でも何でもいいですw
SS書くのがこんなにしんどいものとは、今まで分かりませんでしたorz
職人の方々の凄さを肌で体感したという感じです。
FCと断りを入れたのは、
PS版ではザラキ一筋ではないという話を聞いたので、そのためなのですが。
読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。
「なぁ、この中で一番強いのって誰だと思う?」
夕食後の談笑中、何気なく言ったソロの言葉に、旅の面々は黙ったままある人物を見やった。
視線の先には穏やかな笑みを浮かべた青年神官。
「それはやっぱり」
「そうですわね」
「だと思います」
「うむ」
「じゃろうな」
一斉に漏れた言葉に、のんびりとお茶をすすっていたアリーナが首を傾げる。
「ねぇ、どうしてみんな、クリフトの方を見てるの?」
アリーナの問いに視線を交わした面々が、あいまいな笑みを浮かべる中、渦中の人物が実に
穏やかに言ってのけた。
「姫様、強さにもいろいろございますから」
ソロは思った。「あのことをばらされたらヤバイ」と。
マーニャは思った。「あのことをばらされたらまずい」と。
ミネアは思った。「あのことをばらされたら困る」と。
トルネコは思った。「あのことをばらされたらどうしよう」と。
ライアンは思った。「あのことをばらされたら生きていけない」と。
ブライは思った。「あのことをばらされたら死んでも死にきれん」と。
「そっか、実はクリフトって強かったんだ〜」
尊敬と好意のこもったアリーナの言葉に、頬を少し高潮させたクリフトは、首を振り小さな声で
呟いた。
「それでも私は・・・姫様にはかないませんよ」
―――本当に「つよい人」は闘わずして勝つ?
腹黒神官に勝てるのは、彼が愛する人のみ。
つまり、この中で一番「つよい人」はアリーナだったようだ。
「なぁ、どうせなら、デスピサロの弱みも握ってくれよ」
そしたら、闘わなくても勝てるじゃん。
ソロの呟きを耳にしたクリフトはにっこりと笑った。
「機会があれば」
どうやらクリフトが、デスピサロの弱みを握る日も近いようだ。
(終)
お久しぶりです。煩悩神官です。連休中、身内に不幸があり精神的にまいっていたりも
するのですが、このスレを読んでちょっと復活です。
えぇっと、どれにどうレスしていいやら・・・とにかく皆様GJです。
そして店長さん、お待ちしておりました。また楽しいSS投下してくださいね。
>>184 GJ! FC版の資料はすべて実家にあるので助かります〜。
いいネタがあったらまた投下してください!ぜひ!!
誤字発見。×高潮→○紅潮
情けない・・・orz
弱みを握っててつよいのかよ!wでも姫様には勝てないのが萌える(*´д`)不幸に負けるな〜
>>61名前はせりふぃ〜とせりふぇ〜どっちがいい?(・∀・)
煩悩さんお久しぶり&乙です。
クリフトがネタノートを持ち歩く姿を想像して吹きましたw
いろいろ大変だったみたいですね。あまりお気を落とさずに…
>>183-184 懐かしいですね。あの中で皮の帽子をかぶったイラストがありましたが、
やっぱり神官帽子が彼には一番いいと思いました。
というより、皮の帽子はいけてn(ry
自分もお題で作ってみたのですが、ツンデレは無問題でしょうか?
てんちょバッチコーイ!!
194 :
61:2006/05/11(木) 00:15:03 ID:ELY+FQEt0
>>191 えええ名前つけていただけるんですか?
後者の方が好きかな…じゃぁセリフェー61とかでお願いしますw
>>192 クリフトの装備品イラスト、はぐメタ装備と皮の帽子だけですよね。涙。
私もクリフトは神官帽子が一番似合うと思います。
そしてツンデレSSぜひ!お待ちしてます!
煩悩さん、GJです!もしかして煩悩さんって関○人?
いつも読み終わるとつっこみをいれたくなるのはなぜ?
店長さん、待っていますよー。
>>セリフェー61なんか萌え台詞あったら書いてYo!(・∀・)
店長出勤マダー?
「つよい人」のお題はたくさん出てるみたいなので、
「おしゃれ」で作成中ですが・・・難しいですねこれ。
週末を目標にがんがっております。
ツンデレの方は、その時にろだにでもうpしますので
よろしければ読んでみて下さい。
>>194 名前決定おめ!
そうそうありましたよね、はぐメタ装備。
ちなみにうちの母はクリフトの姿を見て
「神官っていうより足軽よね」と笑ってました。
>>196 萌え台詞ですか…神官は全部萌えなんで選べないw
うーん移民の町の台詞は中々見るの難しいと思うので投下しておきますね。
(グランドスラム)
クリフト「こっ こんな
いかがわしい町っ……。
こんな所に 姫さまを
お連れするわけにはいきません!」
>>197 応援してます!がんばってください!!
クリフト足軽ですかw確かにw
戦国武将の姫君と、一介の足軽とか考えても素敵ですなw
あ、大聖堂を忘れてた。
クリフト「町のみなが 心をひとつに
神に 祈る姿……。
なんと すばらしいのでしょう!
さあ われわれも
ともに 祈りましょう!」
クリフトが話す特殊町はレディースタウン・大聖堂・グランドスラムです。
ちなみにアリーナが話すのは、大聖堂・ミステリータワーだけです。
前回、内容も投下するタイミングもマズイものを出してしまったので、
169はなかったものとして、お題「おしゃれ」で投下します。
それではお気を落とさずに+お大事に+スランプ脱出たのしみにしております+皆様ノシノシ
夕食も終り、たき火をかこんでの憩いのひととき。旅の中で、最もくつろぐこ
とができる時間のうちのひとつと言えましょう。
今日の話題は、装備のこと。とは言っても、幸せの帽子のデザインがどうとか、水の
羽衣の素材がどうとか。
神官として育った私には、正直言いまして勝手の分からない話題でしたので、薪の
上ではぜる火を見ながら黙っておりました。
「ねえねえ、クリフト。」
ひそかにお慕い申し上げている姫様の、しかも近くからの声にびっくりして見上げ
ると、姫様が私のすぐ前に立っておられました。
「その神官の帽子って、けっこうおしゃれだよね。」
私が狼狽していることには、幸いにもお気づきにならなかったのでしょう、姫様は無
邪気に続けます。
「そうでしょうか。」
「うん。さりげなく下とあってるし。ちょっと貸して。」
私は立ち上がり、帽子を脱いで、姫様の指に己の手が触れないように細心の注意を払
いながら、姫様にお渡ししました。
「うわっ、重い!」
「そうですね。布地を幾重にも重ねて、その上に、布地と同色の糸で刺繍がしてあり
ますので。」
「ふーん。これで、よく肩凝りにならないね、クリフト。」
姫様は、帽子の中をのぞき込んでから、それをおかぶりになりました。
「うわっ?」
姫様のお頭が、眼のところまで、私の帽子の中にすっぽりと入っています。予期しな
い状況に不意をつかれたのか、帽子の重さのためなのか、姫様は完全にバランスを崩
してしまわれました。
その後ろには、ぱちぱちとはぜるたき火。
「姫様申し訳ございません!」
と、私は、とっさに姫様の手首をつかんでしまいました。姫様がバランスを持ち直し
たら、すぐに手を放し、お頭から帽子を取るつもりでおりました。
荒野に止まる馬車。その脇で焚火が心地よい音をたてている。
その焚火を囲んでいたであろう面々は、地面に倒れているひとりの青年の上にかが
み込んでいた。
「この、たわけものが!」
と、白髪の老人。よくみると眼の端がそよいでいる。
「心臓発作かしら。」
と、艶然とした雰囲気をただよわせる女性。
「後頭部を打って脳震盪かも知れないわよ、姉さん。倒れるときに受け身がとれてい
なかったから。」
と、かっちりとした服装をした女性。
「しかし、アリーナ姫も、体勢を建て直す時間は十分あったのに、そのまま腕の中に
倒れ込むとは。」
と、いかにも手だれの戦士然とした男性。
「これで俺たちも枕を高くして眠れるなっ!」
と、精悍かつ朴訥とした青年。
「いやー、残念ですが、姫の場合、まだまだ無意識の範囲でしょう。クリフト君の上
から立ち上がる時の反応を見るに。」
と、どっぷりと太った男性。
「姫ー!」
と、先程の女性が、艶っぽい声を張り上げた。
「世界樹の葉、まあだー?」
「あったよー。」
ひとりの少女が、大きな帽子をきゅっと胸に抱きしめながら駆けてくる。
訂正です。『たき火をかこんで』1/3中、
(誤)帽子を脱いで→(正)帽子を取って
でした。すみませんorz
「隣、よろしいでしょうか?」
夜の酒場に場違いな神官服を、これでもかというほどきちんと着込んだ青年が、穏やかな微笑を
浮かべて訊ねてきた。
「・・・・・・いいわよ」
どうぞ。
琥珀色の液体で満たされたグラスを手に、少し身体をずらして見上げると、彼は生真面目に「あ
りがとうございます」と言いながら、優雅に腰を下ろした。
鄙びた町の酒場は人気が少なく、彼ら以外は数えるほどしかいない。それ故、さほど注目を浴びる
ということはなかったものの、こういった場で神官服は妙に浮き上がって見えた。
マーニャは鼻の頭にしわを寄せると、カウンターの隣の席に座る青年に向けて呆れたように呟く。
「クリフト・・・こういっちゃなんだが、その神官服はどうかと思うよ」
「そうですか?」
マーニャの抗議を柔らかな笑みでさらりとかわし、クリフトは目の前に運ばれてきたグラスを手
にした。そしてマーニャの方へ向き直ると、グラスを目の高さに掲げる。そのままグラス越しに
マーニャを見つめると、穏やかな声色で続けた。
「でも、似合っているでしょう?」
クリフトの言葉に思わず吹き出しかけたマーニャだったが、クリフトの真摯な瞳に何を思ったの
か、ふいに視線を逸らすと僅かにうつむいた。
長く艶やかな紫色の髪がさらりと流れ、マーニャの顔をベールのように包み隠す。
クリフトはゆっくりと身体をカウンターに向けると、一口だけ飲みグラスを置いた。
そして視線をグラスに固定したまま優しく語りかけた。
「泣いても・・・。泣いてもよろしいのですよ」
クリフトの言葉にマーニャは小さく肩を震わせ、心もち顔を上げた。いつも勝気な姉御といった
マーニャが、奇妙に顔をしかめていた。
「なんで、あんたが、そんなことをいうのよ」
しかめられたその顔の中で瞳だけがかすかに揺らいでいた。それはひどく儚げで、頼りなげだっ
た。
しばし沈黙をまもっていたクリフトだったが、やがて澄んだ青い瞳を伏せると、ふうっと吐息を
漏らした。
「それは、私が、神官だからです」
そう言い切って双眸を開くと、マーニャの瞳を覗き込んでやんわりと微笑んだ。
「よく、頑張りましたね」
その穏やかで透明な微笑を見つめていたマーニャだったが、ふいにクリフトの神官服を掴むと
己の顔を彼の胸に押し付けてきた。
「迷惑なら言って。でないと、私・・・」
大泣きするわよ。
食いしばられた歯の間から漏れた言葉に、クリフトは瞳を和ませるとマーニャの背に手を回し
優しく擦ってやった。
「辛かったですね」
よく頑張りましたね。
繰り返される言葉と優しい抱擁。
マーニャはこらえきれず溢れた涙もそのままに、クリフトの胸に身を預けていた。
「父さん・・・父さん・・・・・・・・・バルザッ・・・ク・・・」
嗚咽と共に吐き出される魂の叫び。
本当はずっと泣きたかった。
父が殺された時も、キングレオでオーリンを失った時も、そして今日、サントハイムの城で、
変わり果てたバルザックと対峙した時も。
涙が溢れることはあった。だけど、声に出して泣くことはできなかった。
(ずっと、ずっと・・・・・・)
緑の神官服にいくつものシミを落としながら、マーニャは幼子のように泣きじゃくった。
バルザックは父の仇だった。父の弟子でありながら、父を殺し、そしてその研究を奪った。
憎んでも憎み足りない男。それがバルザックだった。
だが、同時に彼は、マーニャが初めて本気で愛した男だった。幼かった自分にとって兄であり、
そしてかけがえのない人だったのだ。
「・・・・・・愛していたのよ」
どんなに極悪人になろうとも、どんなに醜悪な姿になろうとも。己自身が命がけで憎み、そして
全身全霊で、愛していた。
でも、ミネアには・・・ミネアには言えなかった。
多分、自分の気持ちを知っていたと思う。でも、それでも自分からミネアに告げることはできな
かった。言えば、彼女が苦しんだであろうから。
だから、泣けなかった。どんなに辛くても、悲しくても、・・・恋しくても。
ずっと、なんでもないかのように、そっけなく振舞ってきた。
(なのに・・・)
濁流のように押し寄せる様々な感情に翻弄されながら、マーニャはクリフトの神官服を握り締め
ていた。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
マーニャはそっとクリフトの胸を押して身体を離すと、ぐいっと目元を拭い破顔した。
「ありがとう」
すっきりしたわ。
いつもの調子でそう告げたマーニャにひとつ頷くと、クリフトは、いつもは見せない心からの笑
みを浮かべた。
「ね?神官服が役に立ったでしょう?」
イタズラっぽく片目を瞑ってみせる。
その少し得意げな様子に目を丸くしたマーニャだったが、クリフトをまじまじと見つめるとぷっ
と吹き出した。
「そうね。そうやってみると、意外とイケているわね」
ま、踊り子の服には敵わないけどね。
声を立てて笑うマーニャに気付かれないように、ほっと息を漏らすとクリフトはゆっくりと立ち
上がった。
「さてと、神官の役目はここまでです」
そう言うと、少しだけ躊躇ったものの、マーニャの頭にそっと手をのせた。
「もう、大丈夫ですよね?」
思っていたよりも大きくて温かい手の感触にマーニャは不思議な心地よさを覚えながら、大きく
頷いた。そして背の高い神官を見上げると、まぶしげに目を細めた。
「あんたが・・・神官でよかったわ」
本当は少し苦手だった。クリフトが、ではなく、心の深淵までも見抜くような聖職者がマーニャ
は苦手だった。それは、自分の気持ちを悟られまいとする己の防衛本能だったのかもしれない。
酒場のランプに照らし出された緑の神官服が妙に鮮やかで、目に沁みて。マーニャは瞬きを繰り
返していた。
そんなマーニャをやさしい微笑で包み込みながら、クリフトは一度だけ、幼子をあやすかのよう
に頭をくしゃりと撫で、そして静かに手を離した。
「あ・・・」
離れてゆくぬくもりにかすかな寂しさを覚え、マーニャは思わず声を上げた。
慌てて口元を押さえたものの、クリフトの耳には届いてしまっていたようで。
「え?」
マーニャの声を聞いたクリフトが振り返った。
その顔はいつものクリフトのもの。自国の姫を恋い慕う青年のもの。
マーニャはそのクリフトの顔に、心の奥が軋むのを感じながらも、精一杯何気なさを装い笑っ
た。
「ごめん。アリーナのこと心配だったろうに」
私のために時間を割かせちゃってごめん。
そう言ったマーニャにクリフトは頭を振ると、春の日差しのように優しい微笑を浮かべた。
「姫様にはブライ様がついていらっしゃいますから。それに・・・・・・」
真っ直ぐに向けられる視線にほんの少しだけ優しい痛みを覚えながら、マーニャはクリフトの
言葉を遮った。
「クリフト。アリーナの前では、神官服を脱ぎなさいね」
神官としてではなく、一人の男としてアリーナと向かい合いなさい。
マーニャの言葉に僅かに目を見開いたクリフトだったが、踵を返すと無言で扉の前に歩いていっ
た。そして立ち止まると半身だけ振り返り、目を伏せた。
「姫様が、それを望むならば」
クリフトの消えた扉をじっと見つめていたマーニャは大きく息をつくと、紫の髪をかきあげた。
「あんた、いい男だわ」
ふと漏れた一言に自嘲しながら、マーニャはクリフトの手の感触を思い出す。
大きくて温かい手。それは父のような・・・・・・否、恋人のような心地よさ。
「あんたが神官服を着ていなかったら」
私は、どうしていたのだろう。
新しい恋に落ちていたのだろうか?
脳裏を過ぎった考えに、マーニャは僅かに睫を震わせた。
「馬鹿ね」
クリフトはアリーナを・・・。
マーニャはグラスから滴り落ちていた水滴を指でなぞり、その冷たさに微笑む。
緑色の神官服。いつもは趣味が悪いと思っていた。でも、その神官服に救われ、そして阻まれた。
(アリーナ、あんたちょっと贅沢よ)
望めば手に入るんだから。
それは、誰の耳にも届かない心の声。
マーニャはぬるくなったグラスの中身を呷ると、口の端をあげた。
「バルザック・・・・・・私ってとことん男運がないと思わない?」
(終)
朝起きたら、とある人物から指令が。
「やさしい言葉をかけてくださった方々に御礼SSを投下せよ」
「ギャグクリフトではなくたまにはかっこいいクリフトを書け」
お題に【おしゃれ】があがっていたので、それならばと書いてみました。
でも、難しいです。神官服を脱がそうとすると下○タ。
帽子をとりあげるとギャグ・・・ぬわぁぁぁぁ・・・!! で、こうなりました。
お題にうまく添えなくてスマソ・・・。
169さん、乙です。そしてお気遣いありがとうございます。楽しいSSを読ませて
いただいたおかげで、かなり気分が軽くなりました。
店長さん、SS待っていますね〜。
>>203ちょww世界樹の葉ってwwwクリフト君は幸せに逝ってしまわれたのですねw
コテつけないの?
>煩さん
マー→クリ→アリ!?珍しくクリフトがカッコいいJAMAICA!!
レディースタウンでアリーナ喋らんと思ってたらそういうことか。
大聖堂つくってみるわ。セリフェーd!
つお題【フェイント】
つお題[クリフト、王様に結婚を了承してもらう]
>>201-203 どんだけ打ち所が悪かったんでしょうかw笑かしてもらいました(・∀・)
>>205-209 寧ろマーニャにクッハァァァァァ(*´Д`)となってしまった私はこのスレを出てくべきですかそうですか。何かじーんと来ましたゎ…
お二人ともGJであります!
こんにちは!
あたしはアリーナ。今はとある事情でお城にはいないけど、
これでも一応サントハイム王国のお姫様なのよ。
故郷を離れて寂しくないかって?
大丈夫、頼もしい仲間たちと馬車で旅をしてるから、
毎日退屈しなくていいわ。
朝のあたしは忙しい。
まずは今日着る防具を決める。
お城に行くらしいから、光のドレスが無難かな?
朝食をとった後、歯を磨いて顔を洗う。
洗顔はスキンケアの基本ね。
それから粉おしろいを薄くはたく。
オレンジ色の頬紅をそっとつけたら、
今度は淡いピンクの口紅を紅筆に含ませ、丁寧に重ねていく。
おっと、アイシャドウも忘れちゃだめだ。
今日はクールにブルー系で決めよう。
最後は金の髪飾りで背中まで届く髪を何度も梳かし、
鏡でチェックして終了。
うん、今日もばっちり決まってる。
以前のあたしなら、髪がぼさぼさでもすっぴん顔でも
平気だったのに。
でも、ある日からあたしは変わった。
あれは旅を始めて間もない頃。
あたしは西の大国エンドールで開催されるという
武術大会に出場するため、こっそり一人旅をしようとした。
でも、思い通りにはならないものね。
じいやのブライと神官のクリフトが
無理やりついてきちゃったのよ。
で、城を離れて最初に着いたのが、北にあるテンペの村。
何か陰気くさい村ね、って思ってたけど、話を聞いてびっくり。
祭壇にいつの間にか魔物たちが棲みついて以来、
村の娘たちが次々と生贄に捧げられてるっていうじゃないの。
わが国の領土内で、よくもそんな卑劣なことを。絶対許さないわ!
王女であるあたしは、迷わず魔物の退治を申し出た。
お供の二人は微妙だったけど。
でも一つ問題があった。村長の話によると、
魔物たちは今回は生贄の娘を二人よこせと言ってきたらしい。
ずうずうしい魔物たちよね。
でも、村の女の子以外で「娘」はあたし一人しかいない。
かといって一人だけだと、逆上して何するかわかんないし、
どうしようか?
そうか、とにかく「二人」揃えればいいんだわ!
考えが同じだったんだろう。あたしとじいは
隣で座るクリフトを同時に指差した。
彼はあわてて両手を振りながら拒否する。
いつも冷静なのに、あんなに取り乱すなんて意外だったわ。
あたしは人助けのためだと言って必死で説得したの。
神官は悩める人を救うのが仕事だもんね。
で、クリフトはしぶしぶ首を縦に振ったってわけ。
それから一時間くらい経ったかな。
次の生贄になるはずだった女の子に付き添われて、
水色のワンピースを着たクリフトがやってきた。
いつもの神官服も丈が長いから、スカート姿でも全然違和感がない。
というか…すごくきれいだ。顔は硬直してたけどね。
メークが上手だったことはもちろんだけど、あんなに変わるなんて。
もともと顔立ちは悪くない方だとは思ってたけど。
いつの間にかあたしは、クリフトの横顔に見とれていた。
これなら魔物たちもたちまち目を奪われてしまうじゃろうと、
ブライが珍しくべた褒め。だけど、じいの言うとおりかもね。
クリフトは本当にきれいだったから。そう、悔しいくらい。
そう思ったのはあたしだけではなかったらしい。
祭壇に下りたあたしたちに、魔物たちが真っ先に襲いかかったのは…
クリフトだったから。
おーい、本物の女の子はここにいるんだけどー。ねぇ聞いてるー?
でもあいつら、あたしには全然見向きもしなかった。
全く、魔物たちも見る目がないわよね。
頭にきたから、あたし一人でみーんなやっつけちゃった。
乙女心をずたずたにした報いよ、悪く思わないでね。
あーあ、やっぱり何もしないってのはダメなのかしら。
そう言えば、いつもクリフトの周りを囲んでた
お城やサランの町の女の子たちは、みんなおしゃれでかわいかったわ。
あたしも…少しはおしゃれしてみようかな。
これがきっかけで、あたしはおしゃれに気を使うようになった。
今朝の仕度も終わり、馬車から下りたあたしはクリフトにあいさつをする。
『おはようございます、姫様。今日もおきれいですね。』
返ってくるこの一言が、あたしの力の源になる。
不思議ねー。今までお城の玉座でこの言葉を何百回と聞いてきたのに、
クリフトから言われるとすごく嬉しく感じるの。どうしてかなあ?
ねえ、そこのあなた。あなたはどう思う?
(おわり)
女装クリフトに萌えwwwww好きだwww大好きだwwwwww
アリーナ可愛い〜(*´▽`)GJです!
や っ ぱ り ク リ ア リ 最 高
は げ ど う
1/3の27行目は
西の大国 → 東の大国 です。
間違いスマソ
それはともかく、ツンデレの反動なのか
全く正反対のアリーナたんになってしまいました。
女装の元ネタはゲームブックからです。
ツンデレ姫の方はろだ探し中ですので、うp完了したらお知らせします。
>>198 そのシチュいいですね。ぜひ書いてみたいです。
>>201-203 仲間の一人がお逝きになったというのに、みんなのんきだなw
>>205-209 マーニャ姉さん…最後のセリフにもらい泣きしました。
皆様本当乙です。
ニヤニヤしながら読ませていただきました!
職人さん増えて本当嬉しいです!
ようやくアンソロ原稿入稿してきました。
テキストエディタしか使ってないので、実際の本になったら
一体何ページになるんだろう。無駄に長くなってしまった。
226 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/14(日) 10:00:29 ID:jTr2fdxW0
何度見てもGJ
日本の女って顔も体も「無い」よな。
白人女性の顔だったら大きな輝く目、形の整った綺麗な鼻がついてて
スマイルしたら天使になっちゃう。
白人女性の顔は「私はこんなにチャーミングです」っていうアピール機能があるんだけど
日本人女の顔は異常に大きいくせに目の開口部は物を見るための最低限しかないし、
鼻はつぶれてて締りの無い口なんて栄養摂取の機能しかない。
これじゃあ虫と同じ。ていうかそんなの顔じゃないじゃんw
体も最低だね。背が低くて胸が無くて寸胴で尻が無くて短足で脚が曲がってて、
崩れたバランスで周りの景色を破壊するっていう特殊機能まで装備してる。
そんなの人間の体じゃねえんだよ。
人間ってのはもっと美しいものを表す言葉なんだよ。
だいたいお前ら何のために地球上に存在してるんだ?
周りを不愉快にさせるのが存在目的なら、その目的は果たしてるけどな。
壮大なスレ違いですね、ご苦労様です
つお題【すれ違い】
ツンデレ版うpできました。
つ
ttp://deaikei.biz/up/up/0559.zip.html >>225 執筆乙でした!楽しみにしております。
それと、とんでもない事実が判明しました。
自分が教会にいる間に、うちの母がノートパソを
落下させたそうなんです。しかも、それには…
書きかけの小論文と新婚旅行後編の原稿が入ってました。
パソ自体がつぶれてたので、データはほぼ絶望だと思います。
書き直そうにも細かい所までは覚えてない・゚・(ノД`)・゚・
裏でどんなトラブルがあっても、お客様の前では平然とした顔で最高の料理を出すのが、一流のレストランというものである。
店長ー!
DLパスとおらない…!
遅レスすみません。
投下して数日は、恐ろしくてスレを見られない現象が発生してしまいました。
皆様、読んで下さり、本当にありがとうございました。
感想を下さった皆様、本当にありがとうございました。
>>211 抜けてはいないのですが、あの箇所で切ったのは、誤解を招きかねなかったと猛反省中です。
すみません。
>>212 まだ、コテを名乗れるほどの者ではないので、はい。
でも、ありがとうございます。
>>205-209 かっこいいクリフトに萌えですっ。マーニャさんいいです〜〜。
>>216-218 きれいなクリフトにも萌えですっ。アリーナ姫可愛いです〜〜。
>店長さん、アリーナかわいいです〜。女装クリフトもイイ!
>きのこの御方、アンソロ楽しみにしております。
>169さん、十分コテ名乗れますよ。次回作楽しみにしています。
感想を下さった方、ありがとうございます。マーニャネタの上、アリーナが出てこない
SS・・・邪道でしたね。今度はちゃんとクリアリを目指します。それにしても、2,3日
これなかったうちに、なんだかたくさんお題が出ているような・・・。暇を見つけて
がんがります!
>>232 「えーん、あたしもパスがわかんないよー。」
「では姫様、このクリフトが解説いたしましょう。」
「その前に姫様、メール欄に書かれていることは理解できていますか?」
「何か暗号みたいなのがあったよ。」
「それがヒントです。DLはダウンロード用のパスのことなんです。」
「でも、ID200って入力してもだめだったんだけど…」
「それは200さんのIDのことを指すんですよ、姫様。」
「まず、200さんのID:の後ろにある9文字を選択してコピーします。」
「それから受信パスの欄に貼り付けて、ボタンをクリックすればOKです。」
「へーそうなんだ。快闘パスも同じように考えればいいの?」
「それを言うなら解凍ですよ、姫様…」
「いいじゃないどっちでも。つまり解凍のパスは、ID198…198さんのIDってことか。」
「その通りです、姫様。」
「やっとわかったわ。よーし、これで怪傑ね!」
「ですから、それは解決…いえ、何でもないです。」
「わーい、できた!SS読んでみようっと…あ、ちょっと勝手に削除しないでよクリフト!」
「姫様はお読みにならない方がよろしいかと。」
「えーっ、いいじゃなーい。」
「こっ、こんなツンデレな話…こんなSS、姫様に読ませるわけにはいきません!」
「あっ、そうか。あたしが読んじゃいけないようないやらしい話なんだ。」
「ち、違いますよ、姫様。そんないかがわしいものでは…」
「あたしお城に帰るわ、じゃあね。」
「ま、待って下さい姫様。…す、すみません皆さん、私はこれで失礼します!」
「誤解ですよ姫様ー。行かないで下さい〜」
正直者のアリーナは『フェイント』というものが苦手だった。旅の途中、何度も何度も練習をし
たが、その直情的な性格ゆえか、それともその幼さゆえか、どうしても習得できず悔しい思いを
したものである。
「ねぇ、クリフト。これなんだけど・・・」
どういう意味なの?
首を傾げてくるアリーナにクリフトは身を屈ませると、アリーナが指し示す本に視線を落とした。
「あぁ、これはですね」
そう口を開きかけたクリフトだったが、その言葉は途中で遮られることとなった。
「隙あり」
アリーナの声が聞こえると同時に、己の唇に温かいものが押し付けられる。
「ひ、姫様!!」
慌てて身を離したクリフトがうっすらと頬を赤らめながら抗議の声をあげると、ちろっと舌を
出したアリーナが悪戯っぽく笑った。
「だって、こうでもしないと、キスさせてくれないでしょ」
先の戦いの折、そのフェイントのうまさで敵を翻弄してきたクリフト。しかし、いまやそれは
アリーナに取って代わられそうな勢いである。
「ね、少しはうまくなってきたかな?」
フェイント。
そう続けようとした言葉を遮り、クリフトはアリーナを己の腕の中に抱き込む。
「えぇ、とてもお上手になられたと思いますよ」
キスが。
熱い吐息と共に耳元で囁かれ、アリーナは瞬時に赤くなった。
どうやら、まだまだクリフトの方がうわてのようである。
(終)
お題消化第一弾です。うまく書けなくてスマソです。
何度か書き直してみたのですが、なぜかその度にエロくなるので一番最初に書いたこれを
うpしました。いたってノーマルなお題だというのに・・・欲求不満なのでしょうか?
>店長さん
ろだの方、読ませていただきました。前々から思っていたのですが、アリーナ一人称が
とてもお上手ですよね。うらやましいです。
えっと、あとお題は【クリフト、王様に結婚を了承してもらう】と【すれ違い】でしたっけ?
あぁ、なんとなく腹黒神官が暴走しそうな悪寒・・・。
GJ!ドキドキしますた(*´д`)
腹黒神官もwktk
>てんちょ
解りやすく面白い説明SSどーもです!携帯厨なんで今度読みに行きます。
>煩悩神官さん
(*´Д`)もうGJ!
煩悩神官さんの腹黒クリフトが大好きです
陰ながら応援&wktkしながら待ってます・・・(*´Д`)ハァハァ
>店長さん
みずみずしくて、いかにも萌えという感じ。アリーナ可愛い〜〜。
説明SSも可愛かったです。
>煩悩神官さん
こちらは一転して甘〜〜い大人の雰囲気。クリフト、テクニシャンですね。
良いものを読ませていただき、ありがとうございました。
お二人とも、GJですっ。
苦し紛れにこんなコテをつけてしまいました。これからもよろしくお願いいたします。
こちらは昇順に、最初は「すれ違い」で投下します。
【ある神官の祈り】
神様、今日も姫と皆様が無事であったことに感謝します。今日は、懺悔
することがございます。
近頃どうも、私と姫様が引き離されているような気がするのです。私が
馬車の外にいるときには、姫様は待機組。姫様が戦闘メンバーに入ってい
るときには、私は馬車の中に入れと言われます。神様、これは一体どうい
うことなのでしょうか?勇者様は、「かなわぬ恋ならば、せめて姫様の近
くにいたい」という私のささやかな望みすらお許しにならないおつもりな
のでしょうか?
いえいえ、勇者様は、全員に対して細やかに心配りをなさるお方、その
ようなことはなさらないと信じております。しかし、神様、この邪推が、
日々私の胸に浮かんでは私を責めるのでございます。神様、神官の身であ
りながら、このような邪念だらけの私をどうかお罰しください……!
【ある勇者の独白】
なんか、このごろ、クリフトがよそよそしいんだよな。こんな邪推をす
る自分が悪いって自分を責めまくってるのがばればれだから、頭には来な
いんだけど。理由も大体分かってる。パーティーの割り振りのことだ。
だけどなあ、人には譲れないものがあるんだよ。
司令塔として言わせてもらうと、アリーナ姫とクリフトの2人は、戦闘
メンバーとしてかなり使い勝手が良い。姫の素早さと強さは、敵をひるま
せるのに効果絶大だし、剣も魔法も使えるクリフトは、いると心強い仲間
だ。できれば、2人とも常に戦闘メンバーに入れておきたい。
でも、現実はそうはいかない。2人を一緒に戦闘メンバーに入れたが最
後、クリフトは、ずっとアリーナ姫のことをちらちら見ている。いや、や
つはそんなことをしてても戦闘の手は抜かないから、その点が不満って訳
じゃない。ただ、(俺が間にいるからよく見えないとか思ってるんじゃな
いだろうな)なんて気を使ってしまう。その一方向だけでも疲れるのに、
アリーナ姫も、クリフトのことをちらちら見ていると来たもんだ。
(も、もしかして、俺、お邪魔虫?)
なんて、2人の視線の応酬の間に入らないように、2歩下がっちゃったり
するわけだ。当然、戦闘の後はどっぷり疲れる。
俺が間に入ったのがまずかったのかと反省して、2人を隣り合わせにし
たとしててもまた大変だ。完全に2人の世界が出来上がってしまって、
(や、やっぱり、俺、お邪魔虫?)
と、また、こてんぱんに気疲れする。この疲れ方は、俺と2人の間に一人
メンバーを入れても、残念だけどほとんど変わらない。だから、俺は決め
たんだ。どちらかは絶対にパーティーに入れる。でも、絶対に同時には入
れない。
あー、なんか叫びたくなってきた。
クリフトォオォ、いいかげんに片思いじゃないって気づけぇえェ〜〜!!
……はー、すっきり。
(おしまい)
お題【すれ違い】2/2中、
(誤)隣り合わせにしたとしてても
↓
(正)隣り合わせにしたとしても
でした。orz
SS読んで下さってありがとうございました。
女の子言葉はすごく苦手なので、正直こんなに
よい感想をいただけるとは思ってませんでした。
>煩悩神官さん
乙です。自分もドキドキしました。
本編でもそのくらいのテクがあればと小一時間(ry
>モンバーバラの音楽隊(169)さん
GJ&コテおめでd。勇者君カワイソス
モンバーバラということは、自分とはご近所になるんでしょうか。
ゴメンナサイ。腹黒神官結婚許可SSの執筆に入ったところで、ふと書きかけのSSを思い出してしまい、
そちらを先に完成させてしまいました。前スレのイムルの夢SSや壁のぼりの続き物かな?
一応結婚に纏わる話ではあるのですが、如何せん長い。とにかく長い。ということで投下は見合わせです。
で、腹黒神官をお待ちいただいていた方に申し訳ないので、お題【すれ違い】の方を以前書いたSSを整形して
投下することにしました。腹黒くないですが、今日はこれでご勘弁を。
腹黒神官ものは近日中にうpできるように頑張ります。
「どうしたの?」
元気ないわね。
そう言いながらアリーナが横に腰を下ろすと、ぼんやりと月を眺めていたクリフトが少し慌てた
ように身動ぎをした。
「・・・何でもありませんよ」
僅かな躊躇いと心を見せないあいまいな微笑み。
クリフトの反応にアリーナの顔が曇る。
「昔は・・・」
クリフトの目を真っ直ぐに見つめながら、アリーナが訴える。
「昔は、何でも話してくれたのに・・・」
悲しげに揺れている緋色の瞳をしばし無言で見つめていたクリフトだったが、ふいに視線を逸ら
す。
「・・・自分自身の問題ですから」
苦しげに紡ぎだされた言葉。
アリーナはクリフトの端正な横顔を見つめながら、自分がひどく傷ついていることに気づいた。
ふたりの間に、隠し事が生まれたのはいつからだったか。
何でも話し合える仲だと、ふたりの絆は堅固なものだと思っていたのは、自分だけだったのだろ
うか。
すれ違う想いに、胸の奥がぎしりと軋む音を聞いた気がした。
アリーナはそれを悟られないように、小さく息をつくと努めて明るく言った。
「そっか」
立ち上がり服についた草を払うと、大きく伸びをする。
そして夜空を見上げたまま、ぽつりと呟いた。
「でも、あきらめないからね」
いつか、貴方から聞き出してみせるわ。
大輪の花のようにあでやかに微笑む。
そう、あきらめない。諦めるわけにはいかない!!
ふたりの間に隠し事は・・・許さない。
アリーナの心の声を聞いたのか、クリフトが息を詰める。
そんなクリフトを一瞬だけ見つめると、アリーナはそっと手を伸ばしクリフトの肩に軽く触れた。
「じゃ、おやすみ」
また明日。
僅かなぬくもりを残し、アリーナが去っていく。その後姿を見つめながら、クリフトはやりきれ
ない思いに囚われる。
「言えません・・・」
貴女だから・・・貴女にだけは・・・知られるわけにはいかないのです。
アリーナのかすかなぬくもりを辿るように肩口をそっと撫でる。
「私は・・・貴女を」
囁かれた言葉は風に攫われ、夜の闇へと消えていった。
(終)
異常・・・ではなく以上です。らしくないSSでスマソです。
>モンバーバラの音楽隊(169)さん
楽しげなコテですね。そしてそのコテに負けないほど愉快なSS、GJです。
それでは腹黒神官物語の構想を練ることにします。ではではノシ
じれったいなぁ…と思うのですが、クリフトらしいですね。
腹黒神官物語、期待してます。
妄想とは快楽
素晴らしいスレです
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|___,.-,ー――-―〇-l
(.`ヽ(`> 、 /__,.-ー´ ''''''::::::::l l.;;;;ヽ+
`'<`ゝr'フ\ + |(●), 、(●)、.l lP;;;ゞ
⊂コ二Lフ^´ ノ, /⌒) | ,,,ノ(、_, )ヽ、,, .://`ー´
⊂l二L7_ / -ゝ-')´ .+ | `-=ニ=- ' .::::□ + .
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(T__ノ Tヽ , -r'⌒! ̄ `":::7ヽ.`- 、 ./|
ヽ¬. / ノ`ー-、ヘ<ー1´| ヽ | :::::::::::::ト、 \ ( ./ヽ
\l__,./ i l.ヽ! | .| ::::::::::::::l ヽ `7ー.、‐'´ |\-、
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ .┃
┃ クリフトはザラキを唱えた! ┃
┃ .┃
クリフト「強いオーラを感じます。
あの相手に 私のザキは
効くのだろうか……。」
上のAAを見てこの台詞しか浮かんできませんでした。
結界守ってる四天王(の右下)のところでの台詞です。
>モンバーさん(略したゴメソ)
(*´д`)ちら見に萌えGJ〜
>煩悩神官さん
(*´д`)苦悩するクリフトに萌えGJ〜
つお題【ライバル】
読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。
>>店長さん
そうですね、そういえば勇者君損な役回りかもorz
私はオケピットに生息していますので、お暇でしたらお声をおかけ下さい。
オケピット、異様に分かりにくいですけれど。
お店にも行きたいのですが、拘束時間が長くてだめなのですorz
>>煩悩神官さん
切ないものは書けないので、お笑いに逃げてみましたorz
煩悩神官さんのSS、とても切なくて、引き込まれました。すごいです。
腹黒もたのしみにしております。
>>254さん
自分でも長いコテだなと思ったので、どんどん略して下さいorz
お褒めいただけてうれしいです。
現在、「結婚承諾話を書こうと思ったら苦手なジャンルなので話が大幅にずれ、
結局お題は話の枕に使っただけ」という物体を書いているのですが、質問があります。
クリフトの神官服ですが、あれを着ない状態だと、
上も下も白い服ということでいいのでしょうか。
どなたかよろしくおねがいします。
>>256 4コマの何巻か忘れましたが、
裏表紙で下の服が披露されてましたよ。
確かに両方とも白でした。
つちわらしの大群に帽子と剣と上着を
取られ、さらに下の服に手をかけようとするのを
必死で押さえていたクリフト君。
青白ストライプの定番パンツがちらりと見えてました。
他はうろ覚えなのに、これだけはしっかり覚えてるとはw
>>247-248 乙です。せつない二人に萌えました。
自分も結婚承諾編書きかけなのですが、
ベタベタな話になってしまいそうで投下は考え中です。
>>257 店長さん、早速の回答、トンですっ。
クリフト君、そんな……ケホンケホン、かわいそうなめにあっていたのですね。
寡聞にして4コマもゲームブックも読んでいないのですが、
めっさ読みたくなってきました。中古漁ってみます。
【クリフト、王様に結婚を了承してもらう】SS、書いてみました。長いです。
そしてくだらないです。そうだ、先に謝っておこう。スマソです。
じゃ、投下しますね。
スタンシアラ王は玉座に腰掛けながら、眉間にしわを寄せた。
「せっかく世界が平和になったというのに・・・」
魔族の脅威が去り、毎日笑い暮らしている予定だったにも拘らず、スタンシアラ王の心中は穏や
かではなかった。
原因はわかっている。それは、世界の不均衡さだ。
世界を平和に導いた者、勇者ソロ、王宮の戦士ライアン、エンドールの大商人トルネコ、モンバ
ーバラの美しき舞姫マーニャ、神秘の占い師ミネア、サントハイム王女アリーナ、サントハイム
の重鎮ブライ、神官クリフト。そして独自の情報網で得た極秘情報によれば、ロザリーヒルとい
うところにピサロというとてつもなく強い者がいるという。
そう、スタンシアラ王が気を揉んでいるのは、この者たちの偏りだ。
勇者ソロはブランカ、ライアンはバトランド、トルネコがエンドール、マーニャとミネアがキン
グレオ、ピサロは小さな連合国が集うロザリーヒル周辺。と、ここまではよい。
問題は、自国スタンシアラに導かれし者がいない上に、親交深いサントハイムに3人という事態。
スタンシアラ王は玉座から立ち上がると、握りこぶしを作り、ぎりりと歯軋りをした。
「ずるいぞ、サンちゃん!!」
遠くサントハイムの城でのんびりと過ごしているであろう友人を思い、スタンシアラ王・通称
スタン君は、娘があきれ返るほどしつこく「ずるい」を連呼していた。
「ほう、スタンシアラから親書、とな?」
「御意」
恭しく差し出された親書を取り上げ、目を通していたサントハイム王だったが、顔色を変えると
わなわなと玉座から立ち上がった。
「な、なんということだ!!」
その切羽詰った様子に、年若い近習は首をすくめ、ブライは眉をひそめた。
「陛下」
どうされました?
言外に訊いてくるブライに、目線だけで指し示しながらサントハイム王が促す。
立ち上がったときに取り落とした親書を拾い上げ、すばやく目を通したブライは低い声で唸った。
「これは・・・」
困ったことになりそうですな。
そこに書かれていたこと、それは・・・スタンシアラの王女とクリフトの縁談であった。
「なるほど、そういうことですか」
内密の話があると告げられ連れてこられた王の私室で、事の次第を告げられたクリフトは
顔色も変えずそう答えた。
てっきり慌てふためくものと思っていた王とブライはお互いに顔を見合わせ、不審そうな顔をし
た。
「それだけ、か?」
他に何か反応は?
そうおずおずと切り出したブライに、クリフトはきっぱりと言い切る。
「まぁ、予想の範疇でしたから」
別段驚くようなことでもないですね。
平然と言ってのけるクリフトに、サントハイム王の目がやや細まった。
「ほう、予想の範疇とな」
で、どうする気じゃ?
王の言葉に、クリフトは少し意地悪げな表情をみせる。
「私を、スタンシアラに差し出すわけにはいかないのでしょう?」
でなければ、内密にする必要もないでしょうし。
クリフトは口の端をほんの少しだけあげる。
「でしたら、そうならないようにするだけですよ」
アリーナと接している時には滅多にみせない不敵な笑い。それは老練な政治家を思わせるしたた
かな笑い。
(こやつ、いつの間に)
こんな表情をするようになったのか、とブライが内心で驚いていると、いつもどおりの穏やかな
雰囲気に戻ったクリフトが、明日の天気のことでも話すかのようにのんびりと口を開いた。
「では、スタンシアラへ行ってまいります。どうかこのことは姫様にはご内密に・・・」
それだけ言い終えると、静かに部屋をあとにした。
残された王とブライは狐につままれたような顔をしていたが、扉の閉まる音で我に返った。
しばらく奇妙な沈黙が部屋を満たしていたが、やがてサントハイム王がぽつりと呟いた。
「のう、何とかなるような問題であったか?」
「さぁ、しかし・・・姫様が絡んでおりますからな」
多分、大丈夫であろうか、と。
そう返したブライであったが、さすがに事が外交問題なだけに完璧に不安を拭い去ることはでき
なかった。
実のところを言うと、この問題を事前に封じ込める手立てがなかったわけではない。
ブライは自室の椅子に座りながら、思考の海に身を委ねていた。
机の上に置かれたお茶がすがしい香りを運んでくる。その香りを堪能しながらブライは蒼い髪の
青年を思う。
この事態を防ぐ事前の策、それは、クリフトとアリーナを婚約させてしまうことであった。
そうすれば、クリフトという重要な人物が国外に流れることも防げる上、何より好きあったふた
りが結ばれるという非常に喜ばしいことであったからだ。ただ、それを許さないのが身分の壁。
アリーナに兄弟があれば別だったのかもしれないが、アリーナはいま唯一の王位継承者といって
よい立場にある。それ故、外交問題上その相手が一介の神官であるわけにいかず、クリフトの官
位がそれ相応になるまでは話を進めるわけにはいかなかったのだ。もちろん、クリフトをただの
お飾りとしてまつりあげることは可能かもしれないが、それではアリーナひとりに外交の負担が
かかり過ぎてしまう上、クリフトの高い外交能力すら押し殺してしまうこととなる。それはサン
トハイムにとって痛手であり、それくらいならば有能な臣下として政務に関わらせたほうが有益
であるとも言える。そう、クリフト自身が問題なのではない。サントハイム国内でクリフトのこ
とを悪く言うものはおそらくほとんどいないであろうし、彼自身言わせないだろう。何といって
も彼には『ザ』から始まる素敵な最終兵器があるから。だが、国外ともなればそうはいかない。
神官の身分のまま王族の仲間入りをしたとて、格式を重んじる伝統国家から疎んじられるのは目
に見えている。表立って事を荒立てなくとも、水面下で貶められるのは必定だ。それ故、アリー
ナの婿は、諸外国から文句の付けようのない身分を持っていることが条件ともいえる。だからと
いって、官位制度をまげてクリフトに高い身分を与えることも反発を呼ぶのが必至であり、クリ
フト当人だけでなく、クリフトを密かに応援するものたちの頭を悩ませてきた。
それはサントハイム王も承知していて、数々数々数々の嫌がらせはしていたものの、一応はクリ
フトとアリーナの仲を認めていたのだ。これはクリフト自身もわかっているらしく、だからこそ
悲観することなく日々精進していたのだが・・・。
ブライはすっかり冷めてしまったお茶をすすりながら、深々とため息をつく。
「こんなことになるくらいなら、無理矢理にでも婚約させておくのだった・・・」
サントハイムでは問題になることでも、お国が違えば事情も違う。
王女が何人も存在するスタンシアラでは、クリフトが平民であろうが全くといってよいほど問題
にならない。むしろ、一神官が王女と結婚するということは民衆にとって喜ばしいことでもあり、
王家にとっても民衆の受けを良くするに、絶好の機会とも言える。しかも、クリフトはただの平
民ではなくサントハイム王宮付神官というしっかりとした身分を持っている上、あの『導かれし
者』のひとりなのである。これで、歓迎されない謂れはない。
正直言って非常にまずい状態なのである。
進退窮まるという言葉があるが、まさにこのことを言うのであろう。
現時点でアリーナとの婚約がなされていない以上、今更それを行えば、「サントハイムに不穏の
動きあり」と近隣諸国にいらぬ疑いを招くことになりかねない。それは平和に向かって躍進して
いる世界の調和を乱すこととなるし、万が一主要国の首脳会談の折に、勢力均衡を唱えられでも
したら、クリフトとアリーナは永遠に結ばれることはないだろう。それでも強引に推し進めれば
他国までもを敵に回しかねないのである。
「どうしたものかのう・・・」
王と丸一日考え続けて、それでも何一つ打開案が見つからず、クリフトに相談したものの、だか
らと言ってどうにかなるとは思っていなかった。
「どうなるんじゃろ・・・」
「ただいま戻りました」
スタンシアラ王の書簡を携えてクリフトが現れたのは、3日後のことであった。
その間、アリーナにクリフトの所在を聞かれては肝を冷やしてきたふたりは、クリフトの姿をみ
てほっと息をつき、同時に不安で胸がいっぱいになった。
それは、クリフトが難しい顔をしていたから。
(やはりだめだったのかのう?)
ブライと顔を見合わせ、内心嘆息したものの、とりあえずはことの経過を知るしかなく、サントハイム王は恐る恐る訊ねた。
「して、どのように?」
これに対して、クリフトは深々とため息をついてみせると、「大変なことになりました」とだけ
言い、書簡を差し出した。
サントハイム王は、このとても心臓に悪そうな書簡を自らが受け取るべきか迷った末、ブライに
書簡を開かせると目を通すように促した。
(陛下、ずるいですぞ)
わしだって命は惜しい。
心のうちで、そう呟いたものの命令に逆らえず、ブライはしぶしぶ書簡に目を落とした。
瞬間、ブライは目が零れ落ちんほどに見開き、絶句した。
「なんじゃ?」
・・・まさか『ザ○キ』とか書いてないだろうな。
サントハイム王がただ事でない雰囲気に恐怖を感じたものの、ブライからの返答が得られないの
で、仕方なく書簡を手にし文字を追った。
と、顎がはずれんばかりに口を開き、クリフトに視線を送った。
スタンシアラ王の書簡には、非常に簡潔に以下のことが書かれていた。
サントハイム神官クリフトをわが養子として迎える。詳しいことは後ほど正式な書簡にて。
スタンシアラ王
「ということです」
何だか大変なことになってしまいましたね。
事も無げに言い切ったクリフトに、ブライが掴みがからんばかりの勢いで詰め寄る。
「おぬし、どうやったのじゃ?」
今にも血管が切れそうなほど興奮しているブライを落ち着かせると、クリフトはにっこりと微笑
んだ。
「娘婿と親子の絆、どちらが堅固でしょう?」
ただ一言だったが、ブライはクリフトの言わんとするところを正確に悟った。
つまりクリフトはスタンシアラ王にこう言ったのである。
万が一そちらの王女とうまく行かず、離婚にでも至れば、私との縁は悪縁となりますよ。
でも、養子という形を取れば簡単には縁は切れません。
どちらを望まれますか?と。
「おぬし・・・」
言うべき言葉が見つからず、口をつぐんだサントハイム王に向き直ると、クリフトは改めて礼を
とった。
「正式な発表はもう少し先になるかとは思いますが、このように事態を収めましたことご報告
申し上げます」
・・・いろいろと忙しくなりそうですね、お義父上。
クリフトはサントハイム王へまっすぐに視線を向け、含みのある微笑を浮かべた。
その微笑の意図するところに気づいたサントハイム王は、赤くなったり青くなったりと目まぐるしく顔色を変えた。
そう、クリフトはスタンシアラ王にもうひとつ話を持ちかけていたのだ。
もし私とアリーナ姫が結婚し子供に恵まれますれば、『導かれし者』同士の間に生まれた子供
になりますね。そして、私を養子に迎えてくださった陛下は、その祖父・・・。
これほどまでにスタンシアラ王の心を揺さぶるものがあったであろうか?自分の娘との間の子
では導かれし者の血は半分に。しかしクリフトを養子に迎え、アリーナ姫との婚姻を結べば・・・。
そしてその子供と自分の国の後継者を娶わせれば・・・。
「スタンシアラ王が非常に『聡明』な方で助かりました」
クリフトはそれだけ述べると辞意を示し、愛しの姫君に会うために静かに部屋を出て行った。
「あ、クリフト。おかえりー」
どこいってたの〜?
クリフトの姿を見つけたアリーナの嬉しそうな声が扉の向こう側から響き、それにやんわりと
答えるクリフトの声が重なった。
「姫様、子供は何人欲しいですか?」
「まぁ、その・・・」
よかったですな、大事に至らなくて。
ブライに言葉に、王はふん、と鼻を鳴らし、そっぽを向いた。
確かに、優秀な人材が国外に流出するのも防げた上、今まで懸念していたアリーナの結婚話まで
一気に解決した事態は歓迎すべきものなのかもしれない。しかも、それがクリフトの機転によっ
てなされたのであれば、彼を心底褒めてやるべきなのかもしれない。
しかし、とサントハイム王は思う。
(なんじゃ、この胸に広がる敗北感は!)
妙に腹立たしさを感じた王は、傍らに控えるブライに八つ当たりをする。
「なんとまぁ、かわいげのない性格に育ったものよな」
そちの育て方が悪かったのだ!
王にそう責められ、ブライは表面上畏まったように見せたものの、心のうちではこう叫んでいた。
(わしの人生において一番の失策は、陛下、あなたを育てたことかもしれませんぞ)
「かわいげのない息子は、いやじゃ、いやじゃ、いやじゃ・・・」
子供のように癇癪を起こし手足をジタバタとさせ、あげくしくしくと泣き出した王の傍らでブラ
イはため息を禁じえなかった。
子供の頃から目をかけていたクリフト。
教育係として仕えたアリーナ。
そしてこのサントハイム王・・・。
ブライの教育の賜物といえる三人を思い浮かべ、己の力のなさを痛切に感じ落胆したブライは、
この日、本気で宮廷を辞すことを考えたという。
スタンシアラの王女は妙に上機嫌な父王の姿に、少しだけ哀れみを感じていた。
「なんと見事にはめられたのでしょう・・・」
昔から、突拍子もなくて「お馬鹿」な父親だとは思っていたが、ここまでとは・・・。
先の魔軍戦争の折のしかめ面はどこへやら、顔の筋肉が緩みっぱなしの王は娘の目から見ても
少々情けない。
王女は言葉巧みに父王を丸め込んでいった得体の知れない青年を思い出し、ため息をついた。
彼が提示した案は確かに悪くはない。だが、父王は肝心なことを忘れている。
「結局、スタンシアラ在住の『導かれし者』は手に入らなかったわね」
如雨露を片手に花に水をやり始めた父王の背中を見つめ、王女はそっと目頭を押さえた。
「アリーナ姫とクリフトさんの子供が成人するのはいつかしら・・・」
長生きしてね、お父様。
娘の心も露知らず。
小躍りを続けたスタンシアラ王はその日、お城のバルコニーから水路へ、2回宙返り1回捻りの
見事な飛び込みを披露した。
この時、この王の勇気ある挑戦にひどく心を打たれたスタンシアラの国民は、王の雄姿を大いに
褒め讃え、子々孫々にまで言い伝えた。
そしてその偉業はこの後、おめでたい行事の折に欠かさず行われこととなるスタンシアラ名物
『王様ダイブ』と呼ばれる危険極まりない余興へと進化を遂げ、国民の間で大流行が起こった。
だが、ある文献によれば、スタンシアラ暦582年スタンシアラ王14世の御世に、そのけが人
の多さから飛び込み禁止令がだされ、一時下火となったという。
それでも昔を懐かしみダイブする者は後を絶たず、スタンシアラ王国も水路の整備や浄化・危険
物の排除といった手段をとり、暗黙のうちに容認していくこととなる。これは王命が民意に負け
たという意味で非常に稀有で画期的な事例となるが、それはまた別の話である。
(終)
終わりました〜。お付き合いくださった方、ありがとうございます。
そしてアホでスマソです。腹黒神官君が登場すると犠牲者が増えていくのはなぜでしょう。
おっと、何か石でも飛んできそうな予感。では、私も某王様を見習って、
ダ〜イブ!!
煩悩神官は逃げ出した!!
>>260-270 サンちゃん可愛いよサンちゃん
最近姫×クリフトより、王様×ブライの掛け合いの方が萌える自分はおかしいですかそうですか
スタンくん阪神ファン?
何はともあれお疲れ様です。
>>269 王様ダイブには笑わせていただきました。
クリフトがスタンシアラ王の養子という手段を取るとは思いつきませんでした。
読んだ時にはそういう手段もあったかと感心してしまいました。
(自分としては国内の有力貴族(王族)の養子という考えだったので)
長編お疲れ様でした〜
煩悩さん、GJです。王様'S、テラワロス。
もうひとつの結婚に纏わる話も読んでみたいな♪
GJ
煩悩さん長編乙でした。
最後の王様ダイブに笑いました。
BGM→六甲おろし、背景→道頓堀川が
脳内から離れない…
こちらは宿題と同時進行のせいか、
なかなか進みません。
しかも暗い長い話ですし、鬱になりそうです。
>>258 あれ3巻でしたか。dクス。
>>煩悩神官さん
乙+GJでした。
なんのかんの言って、スタンシアラの王女も、気に染まない(?)相手との結婚を回避したわけですし、
今回、犠牲者はいなかったように思われるのですが。
こちらは、一度書き上げたのですが、暗くて重くて、
やっぱり、現在投下するにはちょっとタイミングが悪そうなので、書き直しています。
>煩悩神官さん
そうきましたか!ダイブに大分受け!
今回の犠牲者はもしかしてスタン君?
本人がうかれまくっているだけに、あわれ。
>モンさん
重くて暗くても、オケすよー。投下待ちwktk
スタン君ダイブ事件を読んでくださった方、ありがとうございました。
そして感想を書き込んでくださった方、煩悩力UPにご協力頂きありがとうございます。
別にタイ○ースの回し者ではありませんが、六甲おろしを歌いながら執筆したのは事実です。
スタンシアラの第一感想って、「おぉ、どこでもダイブできるぞ」でしたから。ベネチアが
浮かばないあたりが、煩悩神官の仕様なのかもしれません。あ、今回の犠牲者は一応スタン君と
サンちゃんです。不幸ではないけど、腹黒神官君の手のひらの上で弄ばれています。あと、八つ当たりされた
ブライ様・・・。ちなみに私も王様×ブライが大好きです。愛が傾いています。
基本的に結婚の承諾をもらう話は、暗くて重くなるのが普通かと・・・。身分のこととかを考えれば
障害が大きすぎますし、そのあたりをクリアしようとすると長くなる、と。でも、苦悶するふたり
の方が萌えるのは私だけでしょうか?ということで、暗くて重い話、投下キボン!
>>273 半端じゃなく長いです。最近は職人さんが増えていますし、そんなに長い文、
敢えて投下することもないかな、と。なので、投下は未定です。
んじゃ店長みたくどっかのロダにうp!つうのはどう?
長いからやめるとか暗い話だから投下しないとか言うのヤメレ。
こっちはwktkして待っているのにさ。
だったら最初から言うなよ。
>>280 おい、言葉を慎め!
「誘い受けするような職人は自サイト作ってそこでやってくれ。仮にも職人なら作品の内容だけで勝負しろや!」
って今まで何度も言おうとしたのを漏れは我慢してるんだぞ。
おまいの言うことはまったくもってその通りだと賛同しつつも、
2ちゃん慣れしてない気の小さい職人が逃げるかも知れないと思うと、黙っているしかないな。
というわけで沈黙。
4主「俺らはネタを書く人、つまり"職人"さんへの注意を言ってくぞ」
イル「簡単なことばっかりだから、みんな守ってね」
ルカ「まず、他のスレでのネタや設定はここで出さないでね。わからない人が困るから」
キーファ「おう、関連の雑談スレのネタならわかりやすいようによろしくぅ!」
4主「FFDQ板は小さい子も見ているから、アダルトなネタはサロンでお願いする」
イル「実在の人や事件を事件を茶化したりするようなのはナシ」
ルカ「あと、ネタを投下するには黙って投下がいいよ」
キーファ「"〜は未プレイなんで"とか書くと、羊が大量に飛んでくるぞ」
4主「(それはお前だけじゃ…)職人の事情がわかると興ざめする人もいるからな。」
このへんは見習うべきなのかもしれない。
ただ、あっちはコテハン・トリップ禁止、こっちはトリップ推奨みたいだから
そのあたりは違うけどね。
>>281 しかし、きのこの人は自サイト持ってる罠w
>>280-
>>281 おまいら、日本語読めてるか?誰も投下しないなんて書いてないぞ?
投下しようと思ったけど、文章を書き直す必要ができてしまったという経過や、投下するのに適切な環境かをおもんぱかった文章は見受けられるがな。
何でも誘い受けにするのもどうかと思うぞ。
ちなみに、漏れは投下してもらえるように、環境を整えてやるのが、スレの住人の役目だと思ってる。
どんな場面でも相手に対しての気遣いは大事だ
。それがわからんやつが、とやかく言う権利はないんじゃないか?
折角なんだから愉しもうぜ!な?
>>280さん、
>>281さん、
>>276の発言ですが、
「遅くなっていますが、書いていないわけではありません、この理由で遅れます」
と、遅刻届を出したかっただけなのです。
誘い受けをするつもりは全くなかったのですが、
そう取られる発言をしてしまったことをお詫びします。申し訳ありませんでした。
>>282さん
ガイドライン、ありがとうございました。
なにやら該当する項目があるような気がorz
>>283さん
フォローして下さり、ありがとうございました。
でも、
>>276は、やはり誘い受けに見えるのだと思います。反省します。
>>277さん
ありがとうございます!もう一度考えてみます。
いろいろ考えてみました。
誘い受け疑惑を招いたのは、もちろんだめなのですが、
>>282さんの、
「"〜は未プレイなんで"とは言ってはいけない」というのも、
以前、「PS版未プレイ」との趣旨のレスをしてしまっていましたし、
やっぱり、何重にもだめだなあ、と。
他の職人さんの投下の邪魔にもなっているようですし、
騒ぎが大きくならないうちに、消えることと致します。
煩悩神官さん、277さん、エールに応えることができず、すみませんでした。
皆様、短い間でしたが、本当にありがとうございました。
レスの秩序を乱して、本当に申し訳ありませんでした。
だからさあ。
なんでそこですぐ消える、ってなるわけ?
そうなると誰も職人さんに意見できなくなるじゃん。
職人さんは確かに神のような存在だけど、見てくれてGJして
くれる住人がいて、どちらが欠けても成り立たないんだよ。
主スレやキャラスレだっていろんな紆余曲折があってルールができてきた。
ここだって、それでいいじゃん。
何も他スレのルールがそうだからって従うこともないし。
みんなこのスレをよくしたいから言ってるんだよ。
消えてほしいから言ってるわけじゃないんだよ。
うん、否定的な意見された後で「ごめんなさい、じゃあもう投下しませんから」は一番しちゃいけない発言だと思う。
違う板だけど、それで大荒れしたスレを最近見てただけに、ここでもそういう職人さんが出るのはちょっと悲しい。
「じゃあ、期待に応えられるような話に仕上げてくるから待っててよ」って明るく言ってくれる方が、その職人さんの評価も上がるよ。
職人さん本人のちょっとした不注意発言から大荒れになったスレも見たことあるけど、その職人さんは何事も無かったように作品を投下し続けたけど、それに対して批判したスレ住人はいなかったよ。
むしろその姿勢に感動して、職人さんを尊敬し直した人も多かったと思う。自分がそうだったから。
申し訳無く思う必要はないと思うけど、そういう気持ちがあるなら、むしろスレを盛り上げるために投下してよ。楽しみに待ってるからさ。
長文でごめんなさい。つい熱くなっちゃいました。
否定的な意見が悪いとは思わないし、非常に参考になります。ですが、
できれば もう少し書き方に気をつけていただきたいとは思いますね。
住民さんはコテ持ちの私を、もしかしたら少しは身近に感じていてくれて
いるのかもしれません。 そうだとしたら、とても嬉しいことです。でも、
突然あの口調で苦言を呈されるのは、見知らぬ人から突然「おまえさぁ」
と意見されるようなものなのですね。正直きついですよ。 私に悪いとこ
ろがあれば意見してくださって大いに結構です。極力直すように努力いた
しましょう。 でも、意見を言ってくださる方たちも、こちらが意見を受
け入れやすくなるような努力をしてくださいね。 たとえば言葉遣い。
今回のことだってこんなに大事になるようなことじゃないでしょう。
やめて欲しいなら、「できれば○○なことはしないでください」と書けば
いいんじゃないんですか? 何も必要以上に荒い言葉を遣う意味がわかり
ません。これは実生活でもいえることですよね。否定的な意見を 相手に
聞いてもらいたかったら、それなりの態度を取りましょう。それこそマナー
の問題では?いかに 2ちゃんねるがざっくばらんなスレだからといって、
無駄に人を傷つけるような発言をするのはあまりよろしくないかと。
お互いに気をつけましょうね。ペンは剣よりも強し、ですから。
>>286さんのおっしゃるように、ルールを作ればいいんですよね。それには
衝突もあるでしょうけど、それはそれで いいと思います。
そして
>>283の方のように、折角ですから愉しみましょうよ。
あ、それから、誘い受けのことなのですが、どうしてそんなに否定的なの
でしょう? このクリアリスレは恋愛ものを多く扱っているので、結構
そういうことに寛容な方が多いのかと 思っていたのですが。だって、
恋って駆け引きですよね?どうしたら創作意欲を湧かせられるか、
どうしたら投下させられるか、それだって十分楽しいんですけどね。
参考になりますし。
とはいえ、お騒がせの原因を作ってしまった不用意な発言に対して
謝罪申し上げます。 本当にごめんなさい。これからは気をつけます。
最後に、モンバーバラの音楽隊さん、一緒に頑張りましょうよv待っていますよ。
>>モンバーバラの音楽隊
ガンバレ
煩悩さんに侠気を感じた。てか、クリフトの説教を喰らっているアリーナの気持ちw
誘い受けの定義は難しいな。だけど、ただ作品を投下してくれるだけの職人さんが悪いとは言わないが、リクはしにくいわな。感想書き込んでも無反応っていうのは少しサビシス。作品投下さえできればどうでもいいようにみえるかも。
ま、いろんな職人がいていいんじゃね?住民もいろいろなんだからさ。
モンさん、がんばれ!職人さん、がんばれ!応援してるぞ!
気を取り直してイキマショー(・∀・)
お題【仲直り(はあと)】
>モンバー
戻って来ておくれ
渦中の人物が大広間に姿を現した時、そこにいた誰もが息を呑み、そしてざわめいた。
細身でありながらも脆弱さを感じさせない均整の取れた体。不思議な色合いの艶やかな蒼髪と深
い青の瞳。真新しい服を颯爽と着こなし瑠璃色のマントを翻して王の御前に向かうは、救国の英
雄の誉れ高き青年。
先の魔軍襲撃より三年。
すっかり大人の落ち着きを身につけた彼の名はクリフトといい、先頃まで王宮付神官として、ま
たサントハイムの復興の一翼を担ってきた人物であった。
頭脳明晰、容姿端麗と誉れ高い彼だが、その穏やかな物腰からは想像も出来ぬほどの剣術の達人
でもあり、さらに回復呪文や致死呪文といった高等魔法も操る世界屈指の猛者でもある。それに
加え、見かけによらぬ堅固な意志と豪胆な実行力を兼ね備え、近隣諸国の老練な政務官を相手に、
はたまた海千山千の商人連を相手に一歩も引かない駆け引きのうまさを遺憾なく発揮し、ここ最
近敏腕政務官の称号を得、密かに恐れられているという。
クリフトは己に向けられる好意の視線と、それに倍する羨望の眼差し、そして悪意に満ちた眼光
をひしひしと感じつつ、ゆっくりと赤い絨毯を踏みしめ、前に進んだ。
彼の見つめる先には、彼の敬愛する王と、彼が何よりも大切に思う姫の姿。
その脇にうっそりと佇む老人は、幼い頃から目をかけてきた青年の晴れの姿に、僅かながらに鼻
を赤くさせていた。
やがて大臣の声が響き、クリフトが御前で跪くと広間は水を打ったように静まり返った。
「これよりサントハイム王宮付神官兼政務官クリフトの叙爵式を執り行う」
大臣の声に玉座を立ち上がったサントハイム王は、伝家の宝刀を掲げると、クリフトの肩口に押し当てた。
サントハイム王国における叙爵は、先王のとき以来簡略化が図られ、本人の希望があれば非公開
で行うことも可能であったが、この度の叙爵には多くの貴族からの要望があり公開となった。し
かしそれは、平民出身のクリフトを公の場で貶めるために意図されたものでもある。いくら王宮
の一角で育ったとはいえ、貴族の社会とは無縁の生活をしてきたクリフト。当然のことながら貴
族のしきたりなど知りはしないだろうと、高をくくっていた貴族の一派は、衆人環視の中物怖
じひとつせず、粛々と儀式をこなしていくクリフトに苛立ちを感じ始めていた。だが、国王の朗々
とした声が広間を満たすと、好奇も露にクリフトを見やった。
サントハイムが定める爵位は、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の5爵。それに名誉国民に値する
準男爵、士爵、騎士の称号がある。本来であれば、式の前にどの位が与えられるのか公表される
のであるが、此度の叙爵ではあえて事前公表をせず、式での発表となっていた。それ故、クリフ
トがどの爵位を賜ることになるのかは、誰もが注目すべきことであったし、また若い貴族の子息
たちにとっては別の意味でも気になることでもあった。おそらく、クリフトの功績から言えば、
男爵以上を授与されることは疑いないとは思いつつも、それが伯爵以上であった場合、貴族の未
婚の子息にとっては、正直歓迎せざる事態を招くのである。サントハイムにおける伯爵位、それ
は王族との婚姻が可能になることをさす。
国王の声が響き渡り、クリフトが一段とこうべを垂れた。
「此度の功績を以って、そなたに『男爵』の位を授与する」
その瞬間、アリーナは思わず身を乗りだしかけ、傍らに控えていたブライに無言で止められた。
抗議の声をあげかけたものの、ブライが僅かに首を振るのを見ると、姿勢を元に戻し、心配げに
クリフトを見つめた。
己の爵位が明らかにされた時、クリフトは青く澄んだ瞳を伏せ、僅かに身動ぎした。
(間に合わなかった・・・)
国王から言い渡されていた期限は3年。
アリーナが他国と婚姻を結ばなくてはならない状況を回避すべく、寝る間も惜しんでサントハイ
ムの復興に尽力をしてきた。そしていま、サントハイムの復興は軌道に乗り、アリーナの縁談は
ある程度の自由を得た。しかし、クリフト自身が、それに追いつくことができなかった。
予感はあった。
クリフトはともすれば虚ろになりがちな己が心を叱咤し、答辞を述べる。
爵位は国王の采配ひとつで決まるものではない。
何人かの重鎮と話し合いを重ね、そして与えられるもの。その重鎮たちが特に何かことを起こす
ことなく、今日の日を臨んできたことから、おそらくは伯爵位を望めないであろうことはうすう
す勘付いていた。そう、下位の爵位をクリフトが得たところで、何もできないことはわかってい
たから。
貴族の位は簡単に得られるものではない。頭では理解していた。しかし、現実になると虚しさと
憤りで自身が押しつぶされそうな気持ちになる。
クリフトは答辞を述べ終えると、ただ一度だけちらりと愛するものへ視線を送った。
心配げに見守るアリーナと視線が絡まる。
一瞬のうちに胸を満たした苦しさに思わず息を詰まらせ、クリフトはアリーナから視線をはずし
た。
これ以上彼女を見つめることは到底できなかった。
己の不甲斐なさを彼女の前でさらけ出してしまった。
どの爵位が与えられるかを決めるのはクリフトではない。しかし、徒に彼女を惑わせ、それでい
て別離の苦しみを与えてしまったのは、己の罪するところであったとクリフトは自戒する。
先の戦いの折、彼は愛する姫君と共に何度となく死線を潜り抜けてきた。それは辛く苦しい旅路
であったけれども、共有する時間が増えるほど、ふたりの距離は縮まっていった。それは、若い
クリフトを錯覚に陥らせてしまっていた。姫君と神官、ふたりの距離は縮まっていなかったとい
うのに、縮められるのではないかと、淡い期待を抱いてしまったのだ。そしてそれは、ふたりを
相思相愛の間柄に押し上げたものの、立ちはだかる現実の壁の前に敢え無く玉砕してしまった。
クリフトは苦しい息のもと、かすかに唇を噛み締めた。
(姫様に、期待を持たせるべきではなかった)
たとえ彼女から想いをぶつけてきたとしても、かわし続けるべきであったのだ。
クリフトが悔恨の念に囚われている間にも、式は滞りなく進行していき、そして終わりを迎えた。
クリフトは大臣の合図に、ゆっくりと面を上げる。
広間を満たす安堵の空気と、年頃の娘を持つ貴族たちの思惑がクリフトを貫き、その居心地の悪
さに、今更ながらに吐気を催した。
それでも、ただひたすらに自制心を働かせ、御前を辞そうと身体に力を入れたその時だった。
妙な緊張感に溢れたその場にそぐわない、飄々とした声がクリフトの鼓膜を打った。
「陛下、この場を借りてひとつ御許しいただきたいことがございます」
それは、長く苦しい旅を共に駆け抜けてきた矍鑠とした老人のもの。
誰もが一目置きながら、その詳細を知るものがほとんどいないという謎の老人。王の教育係とし
て、そして王女の教育係として、はるかな昔からサントハイム王家の傍らに位置してきたその
者の発言に、広間の誰もが注目していた。
老人はゆっくりと身体を動かすと、誰にもわからぬようにアリーナに小さく笑みを送り、クリフ
トのもとへと歩み寄った。そして、クリフトの傍らに立ち、玉座に向かい合うと、そのまま言葉
を続けた。
「このクリフトめを、わしの養子として正式に迎えようと思っております」
この発言には、当のクリフトも驚き、不敬に値することも忘れ思わず声を上げていた。
「ブライ様・・・」
小さく呟かれた言葉にブライは呵呵と笑う。
「そんなに驚いた顔をするな。ただでさえ締まらないおぬしの顔が、よけいに阿呆に見えるぞ」
それは妙に威厳を感じさせる笑いで、そして誰かを思わせる顔であった。
クリフトがそれを不審がる暇もなく、広間の一角から糾弾の声が上がった。
「王の御前、無礼であるぞ!!」
それはまだ年若い貴族の青年から発せられた。
彼の言うことは正しい。
王が臨席するその席で、如何に重鎮として扱われていようとも、臣下が王に物申すことは火急の
事態でもない限り不敬罪に値する。
この糾弾に勇気を得たのか。もともとこの得体の知れない老人を快く思っていなかった貴族の
面々がそれに呼応した。
「越権行為ですぞ」
「なんたる不敬!」
「即刻立ち去られよ!」
非難の的とされたブライは、それでも平然と佇み、国王を見つめていた。
その悪びれない態度に、さらなる怒号が重なりそうになる瞬間、玉座に腰掛けていた人物から
ため息混じりの声が響いた。
「叔父上も、お人が悪い」
「え?」
驚きの声をあげたのは、国王の横で事の成り行きをはらはらしながらも、いつでも飛びかかれる
体制で見守っていたアリーナだった。
アリーナの疑問は広間にいた人々の疑問でもあったらしい。口を開きかけていた青年貴族たちは
そのままぽかんと口を開けていた。しかしそれは、年若い者たちだけでなく、サントハイムの重
鎮とされていた何人かも同様であった。
国王が叔父上とよぶ存在。それの意味するところは、先々王の遺児、先王の兄弟を指す。水面下
で囁きが交わされる。先々王の私生児が存在するという噂は本当であったのか、と。そういった
噂は以前から囁かれていたけれども、王の側近たちの口は堅く、確証を得るまでにいたれなかっ
たのである。
突如現れた王族。その驚愕の事実も他所に、当の本人たちはいたってのんびりと会話を繰り返す。
「はじめっからそのおつもりだったのですな」
「ほっほっほ」
「またそうやって煙に巻く。どうりで落ち着き払っていると思いました」
「うむ?そうだったかのう」
「本当にお人が悪い。最初からそう言っていただければ、私の気分も幾分か楽でしたのに」
「なんでも楽をしようとするのは、おぬしの子供のときからの悪いくせだったのう。苦労せい、苦労せい」
かっかっかと笑い飛ばすブライに、ばつの悪そうな顔をした国王がわざとらしく咳く。
その様子に目を細めたブライが、言葉を重ねる。
「で、養子の件はお許しいただけるのですかな?」
ピクリと体を震わしたクリフトの肩に手を置き、ブライは問う。
国王は肝心なことを言いそびれていたことに気づき、重々しく頷いた。
「うむ、許そう」
威厳を持って答えた国王ににやりと笑うと、ブライは慇懃に答える。
「ありがたき幸せにございます」
そして目をまん丸にして驚いているアリーナに優しく微笑みかけると、クリフトの肩をバシッと
叩いた。
「ほれ、許可が下りたぞ。ということで今日からわしはおぬしの父親じゃ。かっかっか」
クリフトは、しばしどう答えてよいものか迷っていた。展開が速すぎてどう反応していいのか、
戸惑っているようでもあった。それでも何かを答えなければ失礼に当たると口を開きかけたとこ
ろ、またしても抗議の声が上がった。
「陛下、そのような重要なことを何の相談もなしに決められては困りますぞ!」
それはサントハイムの重鎮の中でも保守的な考えを強く持っていた侯爵位の大貴族であった。
彼は立派な髭を震わせながら、憤りも露にクリフトを睨む。
「陛下、物事には秩序というものがございます。このクリフトめは平民の子供。そのようなどこ
の馬の骨ともわからぬ血の流れているものを、由緒正しきサントハイム王家の血を引くブライ翁
の養子になどと・・・正気の沙汰とは思えませぬ」
彼の弾劾は、一時は国王の心を動かしたかのように見えた。なぜなら、国王は彼の方をまっすぐ
に見据えたから。しかし、国王から漏れた言葉に彼は己の失態を知る。
「そなたは、クリフトがアリーナの乳兄弟であることを知った上で、そのような発言をしたの
か?」
「え?」
唐突に投げかけられた言葉に、疑問を覚えるも、それを深く追求する間もなく国王が睨んだ。
「確かそなたにはアリーナと同じ年の娘がおったな」
その言葉に、侯爵ははっとする。そしてあいまいな笑みを浮かべると、阿るように言葉をつむぐ。
「はい。しかし、妻は病弱でして・・・」
「アリーナが産まれた時、余は国王に即位して間もなかった」
侯爵の言葉を遮り、国王は滔々と続ける。
「王妃は身分の低く、確たる後ろ盾をもっておらなんだ。それでも、出産で身体を壊した王妃は
乳飲み子を抱え毎日必死になって頑張っておった。そう、だれぞに乳母を頼もうとしても、その
年に限って『病弱』なものが多く断られ続けていたからのう」
まっすぐに向けられた視線に居心地の悪さを感じた侯爵は、身動ぎをすると俯いた。そんな侯爵
に構うこともせず、国王は言葉をつむぐ。
「その時じゃった。エンドールへ遊学していた折に知り合った友人が、妻を連れて訪ねてきたの
は。彼は余の窮状を知り、最愛の妻を乳母にと危険も顧みず申し出てくれた。・・・それが、クリ
フトの父母じゃ」
国王は遠い昔に思いを馳せながら、当時の友人にますます似てきたクリフトに笑みを送る。
そして傍らで固唾を呑んで見守っていた娘に微笑みかけると、打って変わって静かな口調で
述べた。
「親子二代にわたる国家への献身を、身分だけで貶めることは許さぬ」
静まり返った広間を見渡すと、国王は件の侯爵の姿に目を留める。
「そなたはクリフトをどこの馬の骨かわからぬ者の子と言ったが、そもそも乳は血液から作られ
るものと聞く。ならば、その乳を飲んで育ったアリーナはどこの馬の骨ともわからぬ者の血によ
ってつくられていると言ってもよいのであろうかな?」
やや意地の悪さを含んだ質問に、いままで血統至上主義できたものたちは一斉に視線を逸らし、
さりげなく後方へ下がった。侯爵にいたっては今にも倒れそうなほど顔色が悪くなっていた。
国王は再度広間を見渡すと、低く押し殺した声で訊く。
「まだ何か異議のあるものはいるか?」
聞くぞ?
旗色の悪さを悟ったものたちは俯いたまま、その視線をやり過ごす。
息をするのも気詰まりなほどの静けさが、あたりを支配していた。
すべてが萎縮する中、ゆっくりと自慢の髭をしごいていたブライが、そのような空気を物ともせ
ず口を開き、クリフトの頭を杖の先で小突いた。
「ほれ、しゃきっとせぬか。そんなんではこのわしの・・・フレノール公ブライの跡を継げぬぞ!」
ブライの声が響くと、貴族の中の何人かが泡を食ったように声をあげた。
「フレノール公!?」
「あの流浪の公爵と言われた?」
「いや、しかし、実在していたのか?」
「私も単なる噂だと思っていました」
それらの言葉を煩そうに聞き流していたブライだったが、己の身分を告げたにも拘らず驚きのひ
とつもみせぬ養い子に不服そうに眉をひそめた。
「おぬしは驚かぬのじゃな」
つまらぬのう。
心底つまらながっているブライに、それまで畏まってきたクリフトは思わず笑みを漏らしていた。
「確証を得たのはいまですが、薄々はそうではないかと・・・」
「うむ?」
「先の旅の折、フレノールに立ち寄ったあのときから、ずっと疑問に思っていましたから。どう
してこれほどの規模の町が、『姫様』のお顔を存じ上げないのか、と」
例え公式行事に姿を現さない王女の顔が広く知れ渡っていないとはいえ、絵姿ひとつないという
のは、少しおかしいのではないか。
まるで誰かが意図的に『姫様』の姿を隠しているかのように。
「あれは、やはりブライ様のお心遣いだったのですね」
姫様が、ただ一人の人間として、ただのアリーナとして存在できる場所を作るために。
そしてそれを行っているのは恐らく姫様を心から大切に思っている人物。
耳に届く『幻のフレノール公爵』、水面下でささやき続けられている『先々王の遺児』の存在。
ブライが時折国王に対してみせていた倣岸な態度。ブライの年齢。それらから推測するは・・・。
「ほっ、まさかそんなことで見抜かれるとは」
侮れぬのう。
そうひとりごち、それでも頼もしい跡取りの誕生に、ブライは相好を崩した。
そしてクリフトの手をとり立ち上がらせると、そっと背中を押した。
「ほれ、姫様のところへ行かんか」
「え?」
ブライの意図することがつかめずクリフトが首を傾げると、ブライは眉をあげて「よもや・・・」
と呟く。
「おぬし、まだ自分のおかれた立場を理解しておらんのか?」
わかっておらんようじゃのう。
へんなところで頭が切れるくせに、自分のこととなると全く頭の働かなくなるクリフトに深々と
ため息を漏らすと、疑問符で頭をいっぱいにしている青年に問いかけた。
「クリフト、貴族の爵位についてはある程度知識はあろうな?」
突然問われた内容に戸惑いつつも頷くと、ブライはにやりと笑った。
「父親が公爵の場合、息子の爵位は?」
「爵位を受け継ぐまでは一階下の侯爵を名乗ることができます。また、養子など特殊な事情を持
っている場合は、正式に爵位を譲られるまでは二階下の伯爵・・・」
そこまで言って思い当たったのか、クリフトははっと顔を上げた。
「そう、おぬしは今日から『フレノール伯クリフト』じゃ」
支援(・∀・)
駄目押しとばかりに突きつけられた事実に、クリフトは僅かに体を震わせた。
ちらりと玉座を窺うと、国王が傍らに腰掛けていた娘になにやら囁いている。
アリーナが弾かれたようにこちらを見た。
正面から視線が絡む。
アリーナの瞳が揺れ、声にならぬ呟きがクリフトに届く。
「クリフト・・・」
「姫様」
欲しくて得られなかったもの。
全身全霊をかけて求め続けてきた存在。
それがいま・・・。
「ほれ、行った行った」
女人を待たせるものではないぞ。
くだけた調子で急かすブライの目尻にも、僅かな光がともる。
ずっと二人を見守ってきたブライは、彼らの知らぬところで何度となく心を痛めてきた。
クリフトを養子に迎えることは容易い。しかし、実績が伴わなければ認められない。
度重なる苦難と葛藤。ブライが見守る中、それらを乗り越え、クリフトは自力で爵位を手に入れ
た。それは、男爵という格下ではあったけれども、何の後ろ盾もない青年が得るには並大抵の
努力ではなかったであろう。だからこそブライは、自力で爵位を手に入れたクリフトだったから
こそ、己の養子に迎える決断を下した。それでも、クリフトを取り巻く苦難は形を変えて襲いか
かってくるであろう。たとえどんなに本人が努力をしても、それが通用しない相手も存在するか
らだ。
しかし、とブライは思う。
ひとりであったらくじけてしまう道のりであろうとも、ふたりであったならば乗り越えてゆける
かもしれない。
教育係として長く仕えてきたアリーナは、多少破天荒なことろはあるものの、その実芯の強い
女性である。彼女ならば、クリフトを支え、共に苦難の道を乗り切ってくれる。そう信じている。
衆人が固唾を呑んで見守る中、蒼髪の青年が歩みを進めた。
アリーナが椅子から立ち上がり、クリフトのもとへと駆け寄る。
大臣が、どうしたものかと窺うと、国王は目線だけで頷き、黙認を決め込んだ。
後に、この場に居合わせたものたちは、物語の一節を読み上げるかのようにうっとりと語る。
それはまさにロマンス。
「姫様」
「クリフト」
互いに距離をつめ、手を取り合ったふたりは暫し見つめ合い、微笑んだ。
やがて蒼髪の青年は片膝をつき、王女の手を取ったまま真摯に語りかけた。
「姫様、ずっとずっとお慕い申し上げておりました」
紡がれる一言一言に万感の意を込めて、青年は愛する姫君を見上げる。
姫君は緋色の瞳を微かに潤ませ、小さく頷く。
「もし、お心に叶いますれば、私と永久の契りを交わしていただけませぬか?」
それは、クリフトがずっとずっと告げたくて告げられなかった想い。
初めは苦しい片恋だった。
次に待っていたのは、すれ違う心だった。
そして互いの想いを知りつつ、ただひたすらに想いを隠し続けた日々。
両想いゆえの苦難の数々。
それでも、そこに諦めという言葉はなかった。
ずっとずっと求め続け、喘ぎ続けた。
アリーナの手が震えていた。
それを支えるクリフトの手も。
ふたりの想いが交錯し、そして形を結んだ瞬間だった。
「喜んで、お受けいたします」
桜色の唇から紡ぎだされた言葉。
クリフトはアリーナを見つめた。
アリーナはクリフトに微笑みかけた。
クリフトが立ち上がり、アリーナがそれに寄り添った。
アリーナの手にクリフトの唇が落ち、アリーナがはにかんだ。
穏やかで幸福な時間が流れ、緊張を繰り返してきた広間に、不思議な安らぎを与えた。
あるものは思った。「これは天の采配だ」と。
あるものは思った。「赤い糸は存在するのだ」と。
あるものは思った。「運命だったのだ」と。
どこからともなく拍手が沸き起こり、ふたりを包み込んだ。
驚いたふたりが、自分たちの世界に浸っていたことに改めて気づき、赤面する。
そんな初々しいふたりをある老夫婦は微笑ましげに見つめていたし、アリーナの婿の座を狙って
いた青年貴族はむっとしたように視線を逸らした。
劇的な展開にため息を禁じえなかった大臣が、国王に耳打ちすると、重々しく頷いた国王が、
玉座から立ち上がりふたりのもとへと向かった。
それに気づいたふたりは国王の方へ向き直ると、礼をとる。それを片手で制しながら、国王は
問いかけた。
「アリーナ、彼でいいのだな」
まっすぐに射抜くように見つめてくる父王に、アリーナは迷いのない目で答える。
「はい」
アリーナの言葉に、「そうか」と短く頷くと、クリフトの方へ向き直る。
片膝をついて畏まろうとしたクリフトの手を握ると、僅かに首を振り立ち上がるように促す。
クリフトは若干の戸惑いを見せたものの、国王の意図に従い背筋を伸ばして姿勢を正した。
「クリフト、立派な青年になったな」
それは父親から息子にかけられる言葉のように情愛に満ちていて。
背の高さからやや見下ろす格好となってしまった国王にクリフトは改めて親愛の情を覚えた。
国王はクリフトの気持ちを察したか、少しだけ人懐っこい笑みを見せ、そして真剣な眼差しを
向けると厳かに告げた。
「娘を、頼む」
「はい」
それは、クリフトがアリーナの婚約者として正式に認められたことであり、長年サントハイムの
首脳部を悩ませてきた問題が解決した瞬間でもあった。
胸にこみ上げてきた思いに、思わず涙したブライだったが、その直後に響いた声に激しい頭痛を覚えた。
「よかった〜。ほんとどうしようかと思っていたのよ。クリフトが相手なら喧嘩しても手加減
する必要はないわね〜」
万が一負傷しても、クリフトなら自分で治せるしね。
アリーナの切実な言葉はしかし、多くの者たちにさまざまな反応を呼び起こした。
事実、父親であるサントハイム国王は眉間を押さえて深々と嘆息したし、クリフトは「それはよ
かったですね」とやや引きつった笑みを浮かべた。また、クリフトとアリーナの婚約にいつ異議
を唱えようかと画策していた青年貴族たちは皆、一様に視線を逸らし、一拍おいてクリフトと
アリーナに惜しみない祝福と盛大な拍手をおくった。
アリーナの意図がどこにあったかはわからないが、期せずして反対派を押さえ込むことに成功し
たようである。
こうしてクリフトの叙爵式は、一部波乱の様相はみせたものの終了し、近日中に国内外にアリー
ナとクリフトの婚約の報が伝えられた。
もっぺん支援
終わりました。これが、長くて投下を見合わせていた作品です。たぶん400字詰め原稿用紙
35枚はあるかと・・・。これでもかなり省いたつもりなので、勘弁してください。
あー、この状態で何か書こうとすると、不用意なことを言いかねないのでこれにて。
最後に、読んでくださった方、お疲れ様でした。
>>303 支援ありがとうございます。おかげで一気にうpできました〜。
後日、旅の仲間たちがふたりを祝福するために駆けつけた。
当初はからかう気満々だった面々だったが、次のクリフトの言葉に誰もが押し黙る。
「皆様の『あたたかい』ご協力のおかげで、姫様と婚約することができました。本当にありがと
うございます。そして、これからも『よろしく』お願いしますね」
ソロは、「友情」という名のもとの、辛く苦しい無償労働の日々を思い、マーニャはカジノのコ
インに釣られて、分厚い岩盤を吹き飛ばすため攻撃呪文を連呼した日々を思った。
また、ミネアは「ミネアさんしか頼ることができないのです」と真摯に訴えかけてきたクリフト
を思い出して頬を赤らめ、ライアンは「とある調査」のためにクリフトと共にイムルを訪れた時
のことを思い返して思わず咳払いをした。
そして、トルネコは・・・・・・いつもの陽気さを潜め、ただ一言呟いた。
「もうこりごりです・・・」
それぞれの胸に何を秘めているのかそれはわからなかったが、ブライはこの様子を見て少しだけ
胸が痛んだ。
「クリフト・・・おぬし」
一体何をやらかしたのじゃ?
破竹の勢いで進められたサントハイム復興の裏側で、何が起こったのか。
関係者の口は堅く、その内容は杳として知れない。
(終)
ごめんなさい。エラーが出ていたの見落としてましたorz
>>311 志村ー!!!
後日談だからいいのかww
サンちゃん良い父親だぁ(ノД`)
>モンバーバラの音楽隊さん
ほとんどROMばっかの私だけど、レスさせてもらいます。
いなくならないで〜!
ここで辛口書いてる人も、「ルールに反したから消えろ」って言いたい訳じゃない
と思うし。消えちゃったら逆に責任感じるかもしれないよ。
雑談スレのあのテンプレは>286さんも言ってるとおり、紆余曲折があった末で
できたことだろうし、このスレでのルールはこれから決めていけばいいこと。
「乱した秩序」なんて無いよ。明確なルールはまだ決まってない段階なんだから。
むしろ、職人さんのレスについて一言言うくらい人が出てきたのは、それだけ
モンバーさん含め職人さんたちが、短スパンでかつ質の高いSSを供給して、
スレを活性化させてくれた功績があってのことだとオモ。
これまで何度落ちてorzしてきたことか…。
>287
ソレハモシカシテ職人二人ヲアラシデ失ッタ某漫画ノアノスレノコトカー
>煩悩さん
いつもながらGJ!
このタイミングで投下してくれた勇気にもGJ!
それにしてもクリフト、トルネコにまでそんなに言われるなんて、どんなこき使い方を
したんだかw
今日はビール飲みます。感動をありがとう
。・゚・(ノД`)・゚・。
「ねえお母さん、ここってどうなってるの?」
娘が小学校で性器について習ってきたらしい。
よし、と私は決心した。
百聞は一見にしかず、娘を私の前に座らせ、私の性器を見せて説明することにした。
「これが大陰唇、麻衣ちゃんのはまだお母さんみたいに性毛が生えてないかもしれないけど、あと何年かしたら生えてくるかな。
生え始める時期も性毛の濃さも人によって違うけど、決して恥ずかしいことではないの。
その内側にあるこれが小陰唇、ここも人によって色も形もバラバラなの。
色が濃いとか、形が変だとかで、自分のはおかしいんじゃないかって悩む人も多いけど、全然おかしなことじゃないのよ。
この小陰唇の上のほうにあるこのぽちっとしたのがクリトリス。ここも人によって違うの。
大きい人も小さい人もいるし、お母さんみたいに普段この陰核包皮っていう皮に隠れてる人もいれば、いつも包皮から出てる人もいるの。
じゃ次は小陰唇を開いてみよう。ここには穴が二つあるの。
この上の小さな穴が尿道口っていって、おしっこの出るところ。
下のこの穴が膣口っていって、ヴァギナの入口なの。赤ちゃんはここから生まれてくるの。麻衣ちゃんもここから出てきたのよ。
ここに男の人のペニスを入れて、ペニスから出てくる精子と、ここのずっと奥にある卵子が一緒になって、赤ちゃんができるの。」
その時、私の体にある変化が現れた。
「あ、何か白いものが出てきた」
多くの大人はこういう時ごまかしてしまうかもしれないが、私はむしろこれをチャンスだと思い、自分の生理現象を包み隠さず説明した。
「これは膣分泌液っていって、気持ちよくなるとヴァギナの壁から出てくるの。
これはペニスをスムーズに受け入れられるようにするために、とっても大事なものなの。」
娘は初めて見る女性の体の部分に興味津々で、その後も次から次へと質疑応答が続いた。
大人たちの中には、私の行動に眉を潜める人もいるかもしれない。
けれども性をタブー視したり、ごまかしたりすることは、結局子どもが間違った性の情報に翻弄されることに繋がるのだ。
正しい性の知識を身につけさせることは、子どもを守ることにもなるのだ。
318 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/24(水) 14:00:58 ID:7kB9swRu0
誘い受けが、っていう話は職人さんの作品の内容について
言ってるんじゃなくて、例えば『長いからちょっと…』って
職人さんが言ったりすると、人によってはもったいぶってる
ように捉えられたりするってことじゃないのかな。
そこでスレ住人に『投下キボン』と言わせる意図が図らずとも
あるように感じさせるって言うか、そんな感じ。
そんなやり取りに対してちょっと微妙に思う人もいるし
まったく気にしない人もいるわけで。
職人さんはあんまりもったいぶらせるような感じに
捉えられる発言は控えたほうがいいんじゃないかな。
職人の一人として、そんな風に思ったりするのですが。
ちょっと下がりすぎなのであげます。
いやそれはみんなわかってると思うんだけど…。
>>318 『投下キボン』って言わせる意図を感じさせることがよくないというなら、
乙やGJを連発して次回作を書かせようとする住人の態度も広義では
誘い受けかな?いや、誘い攻めかw でも、職人さんを応援する方は
そんなこと思っていないでしょ? 解釈はいろいろあると思うのですよ。
「投下見合わせ中」(投下して欲しい?)→「投下キボン」(はい)
「次回作楽しみです」(続き書いてよ)→「がんがります」(わかりました)
どちらも同じ構図のような気がするのに、なぜ職人さんだけが責められる
のでしょうね。要するに気の持ちようだと思います。誘い受けがうざい、
とか思うほど心が狭いならこのスレに来なければいいし、黙っていれば
いいんじゃないですか?それでも読みたいと思うなら逆に投下するように
攻めてやればいいと思いますよ。それを職人さんだけ責めて言い逃げはどうかと。
しかも、それによって職人さんが減るとか創作意欲を削いでしまうとかでは、
本末転倒では?
もったいぶる・・・基本的に投下するもしないも職人さんのお心次第ですよね。
たとえ、「こんなの持っていますよ」と見せたとしても、それを投下するも
しないも自由なわけで。それが鬱陶しいとかいうこと自体がおかしい気もし
ます。投下して欲しければそう素直に言えばいいだけのことでしょ?
それが面倒だから誘い受けが悪い・・・変です。人に頭を下げるのが嫌だから、
人を責めるっておかしいですよ。
ただ、それが毎回だと辟易するのも確か。でも、このスレ見た限りでは
そんなに頻発していない気がします。あまりに目立つようになってきたら、
さりげなく合図すればいいのでは?
でもここは良いスレですね。皆さんおとなですよ。煩悩さんが「そんなに
大事になるようなことではない」とおっしゃっていますが、私もそう思います。
こんなにすばらしい作品を投下してくださっている職人さんたちにあまり細かい
ことでトラブルを起こして欲しくないです。穏便にいきましょう。穏便に。
せっかく流れを変えようと投下してくれた煩悩神官さんのSSを無視してまで蒸し返すような話題ではないと思う。
煩悩神官さん、乙でした。
これだけのクオリティの作品なら、長さなんて全く気になりませんよ。
長いと思うより、読みごたえがあると感じました。
テーマによって長くなるのは普通のことだと思うし、他の職人さんもその辺は気にせずにバンバン(職人さんご本人に負担にならない程度に)投下していってください。
影ながら応援してます。
322 :
318:2006/05/24(水) 17:36:17 ID:+l+MnuCCO
すいません。何度か読み返したんですけど、
?って感じたので。みんなわかってますよね。
失礼しました。
職人さんだけを責めてるわけでもないし、自分も
このスレに投下したことのある書き手のひとりだから
書き手としてこういう気持ちで臨みたいなって。
ちょっと思っただけなんです。
蒸し返してごめんなさい。私もまたぼちぼちと
書いてみようかな。
楽しくいきましょうね。
323 :
320:2006/05/24(水) 20:59:25 ID:7pdC5mI+0
やっとパソ復旧!SSの感想を書き込もうと思ったら途中で切れてしまいました。
さて気を取り直して。
>煩悩さん
>>321さんがおっしゃっているように、読み応えがあって長さなんて気になりませんでしたよ。
まさにGJです。クリフトが勇者たちに何をしたのかが気になりますね。いつもオチが笑えます。
煩悩さんってまじめにボケるのがうまいですよね?鼻血噴いたり、壁登ったり超うけです。
>>318さん、ぜひ投下してください(・∀・)
318さんを含めここの職人さん&住人さんは、みんなこのスレを真剣に考えているのがわかるので、
何だか心が温かくなります。蛇足なレスしてすみませんでした。
さぁもう一度、最初からSSを読み直すぞ!!
>煩悩神官さん
長編本当に乙。ブライかっこよかったです。
ある程度落ち着いてきてるみたいなので
長々とは書きませんが、
自分としては読み手も書き手もお互いに
気軽に楽しめるスレであってほしいですし、
ここならそれができると思っています。
煩悩さんのSSを読んでたら、こんなのができました。
ある晴れた日の朝。
俺は新調したばかりの礼服を身につけ、祝辞の練習をしていた。
三日後に行われる、親友の結婚式に出るためだ。
俺の名はソロ。
かつては『勇者様』なんて呼ばれてた時期もあったかなあ。
今は故郷の村で、気ままな一人暮らしを楽しんでいる。
そして親友とは、数年前一緒に旅をしていたサントハイムのアリーナ姫と、
彼女の侍従を務めていた神官のクリフトのことだ。
王族と一民間人との結婚ということで、世界中がこの話題で大騒ぎだ。
しかし、よく王様が許したよなあ。どんな手を使ったのか気になって仕方がない。
会った時に聞いてみるとするか。
それはいいとして、招待状にはこう書いてあった。
『ソロー、友人代表として祝辞よろしくね♪』
『私からもお願いします。ソロさんの良識に期待しております』
おいおい、マジかよ?
まさかこの俺が、祝辞を引き受ける羽目になるなんてな。何考えてんだあの二人は。
俺がこういうの一番苦手だって知ってるくせに。絶対わざとだな、あいつら。
よーし、こうなったら俺も勇者と呼ばれた男だ。
売られたケンカは高価買取しようじゃねーか。
もちろん、王様や貴賓の皆さんの前では美辞麗句を並べてやるよ。
そのために、王宮や王室に詳しいライアンさんからアドバイスもらったし。
…でも、ほとんど例文丸写しだ。ごめんライアンさん。
で、仲間たちだけの前では『もう一つの祝辞』をぶちまけてやるつもりさ。
クリフトは俺にとって、生まれて初めてできた同年代の男友達だった。
最初は堅苦しい奴だと敬遠していたが、付き合いは悪くなかった。
一人で行くのが恥ずかしくて、モンバーバラでの夜遊びに誘った時も
あいつはあっさりOKの返事を出した。絶対断ると思ってたから、正直びっくりだった。
劇場で二人で踊ったときも、嫌な顔一つしなかったしな。
『ああ、こいついい奴なんだな』って思ったよ。
そして、こっそりあのぱふぱふ屋にも行った。
まあ、あれは結局アリーナ姫にばれて、俺は町中引き回しの上痛恨の一撃、
クリフトは渾身のびんた一発を食らったんだっけ。
それにも懲りず、俺たちはアネイルの温泉へ女湯をのぞきに行ったり、
コナンベリーの町でバニーのお姉さんと一晩中…おっと、これ以上は言えねーよ。
どちらか一人だけよ、って言われてジャンケンで決めたんだよな。
壮絶な死闘の末俺が勝ったんだが、その時のあいつの悔しそうな顔は今でも覚えてる。
あの頃からだ。あの二人が何かにつけて場所もわきまえず
人目もはばからず『夫婦ゲンカ』を始めるようになったのは。
事の始まりはたいていアリーナ姫のこの台詞からだ。
『あんたまたソロと怪しい所に行くつもりなんでしょ?』
『いいわよ。あたし一人で馬車に残るから、どこにでも行けばいいじゃない!』
クリフトはその度に誤解を解こうと必死になっていたな。
でもいつも空回りに終わる。何の進展もない、その繰り返しだ。
まあ傍観者として眺めるのなら、それはそれで面白かったんだが、
馬車の中で引きこもりや座談会になるのだけは、正直言って迷惑だったよ。
おかげで他の仲間は馬車で寝泊りできないから、
宿屋での宿泊になったからなあ。その分料金も高くついちまう。
何度エンドールの銀行に預金を下ろしに行ったことか。
ケンカしたり仲直りしたり、本当に忙しい二人だったよな。
でも、俺は思うんだ。大切な人がいてケンカができて、仲直りができる。
これ以上の幸せってないんじゃないかなあ、って。
俺も…本当なら俺も、そんな毎日が過ごせたのかもしれない。
なあ、シンシア。お前も…そう思うだろう?
気がつくと、俺は部屋の隅に飾ってあった写真を見つめていた。
焼け野原になったこの村に残っていた、唯一の写真。
もう戻らない時間の中で、俺とシンシアは無邪気に笑っていた。
クリフト、幸せになれ。そしてアリーナ姫を幸せにしてやれ。
もうその望みが叶わなくなった男のためにも…
チャイムの音とともに、俺は我に帰った。
ドアを開けると、トルネコさんが来ていた。そういや一緒に行く約束をしてたな、忘れてた。
さすがエンドールの商人組合会頭となっただけあって、立派な礼服を着ている。
でも、上着のボタンがはちきれそうだ。また太ったんじゃないか?トルネコさん。
じゃあ行ってくるよ、シンシア。留守番よろしくな。
俺は写真に軽く手を振り、礼服の襟を直すと、そっとドアを閉めた。
>煩悩神官さん
乙&GJ!前のSSを読んだ時、なるほどスタンシアラの養子か!と感動したんだが、
今回は正統派。でも、どちらもおもしろかった。クリアリのための話のはずなのに、
いつもブライや王様に萌えるのはヒミツだw そしてナイスボケ!テラワラタwwwwwwwwww
煩悩神官さん、カワイスw
>店長さん
こちらも乙&GJ!勇者が切ないな。そして「クリフト、幸せになれ・・・」に泣けた。
なぁ、漏れも住人のひとりとして思うのだが、先の件な、モンバーさんや煩悩神官さんが
謝罪しているのに、「わかってくれてありがとう」の一言もないのはよくないぞ。
もしかしたら、軽い気持ちで書き込んだら大事になってびっくりしているのかもしれないけどさ。
それだったら、「大事になってごめんなさい。わかってくれてありがとう」と書くべきだよな。
このスレのことを思ってしたことだったなら、できるよな?それができないんだったら、
荒らしとかわらないと思うぞ。職人さんたちはコテ名乗ってるから、身体張ってるんだよ。逃げられないしさ。
だったらせめて意見した奴だけでも、相手が聞き入れてくれたり、反省してくれたら、
「ありがとう」は言おうぜ。他のスレがどうであれ、やっぱさ、言い捨てておいたんじゃ気分悪いだろ?
よく他スレが荒れているのを目にするけど、たいていは「ごめんなさい、言いすぎました」とか
「聞いてくれてありがとう」っていえば回避できたものが多い気がする。相手に言うことを聞かせたい、
でも感謝はしないじゃ、荒れるだけだな。それじゃ言われた方も納得できないだろうし。
漏れはこのスレ好きだぞ。確かに蒸し返すような話題ではないのかもしれないが、あまりにバランスが
悪く感じたから。職人さんが反省してくれたら、こちらもお礼を言おうな。そしてもしこの意見を
聞いてくれたんだったら、漏れも感謝するからさ。
みんなで良いスレ目指そうぜ!!
今日初めてここに書き込んでみたのだが、勇気いるのなw
煩悩さん、いつもいつもGJ! 同じテーマでこんなにちがうSSを読めるとは。ちょっとお得な気分w
店長さん、GJ!なんかジーンとしますた。シンシアー!つ【世界樹の花】
>>328 初書き乙!言っていることはもっともだと思う。だが、
>>280はともかく、
>>281は便乗犯のような気がするな。
>>280だが。
私の発言でスレが荒れてしまってすまない。だが、色んな方がレスしたように思うところがあったと思う。
私も職人のはしくれ、いいお題を戴いたのでSSを投下する。長いが読んでいただきたい。
因みに最初のアリーナの考えはあくまでもアリーナの考えであって、私の考えではないことを先に述べておく。
モンバーバラさん、また戻ってきてくれ。
煩悩さん、本当に申し訳なかった。
なによ、なによ、なによ!
クリフトったらあんな些細なことで怒っちゃってさ!
本当、心が狭いんだから。もう知らないわ!
アリーナは怒りを全身露わにし、クリフトがいた部屋を後にした。
次の日。
二人が喧嘩をしたということを長年付き合ってきた戦友たちは雰囲気ですぐに分かった。
なぁに、いつものことだ、またすぐにでも仲直りするだろうとタカを括っていたのだが…。
どうもそんな気配はみられなかった。
根が深くない問題だと思うのだろうが、ただ、お互い意地っ張りだし、素直になれない性格だから長引いているのだろう。
二人だけならともかく、二人が醸しだす気まずい雰囲気に他者が圧倒されて闘気を殺がれ、いつもならサクサクと進むはずの戦闘が思わぬ怪我やミスを連発しだし、結果全滅寸前にまで追い込まれることが何度もあった。
当の本人たちはというと。
クリフトは一番傷の深い者をすぐさま見極め、回復呪文を唱えすぐに立て直す。
アリーナはこれ以上犠牲者を増やさないようにと渾身の力で魔物に斬りかかり、一瞬のうちに絶命させる。
自分たちが蒔いた種を自分達で回収するぐらいならまず私情を戦いに持ち込まないでいただきたいとなるべく二人を一緒にさせないようにメンバーを組んでいた勇者は頭をうなだれた。
そんな様子の夜、一行は宿屋で宿泊。ミネアがアリーナの部屋へとやってきた。
ミネアの狙いは無論今現状の二人について。他者がそれとなく聞いてくれと頼んできたのだ。
どんなことにも冷静で、尚且つ話を進められるのはミネアしかいないと他者一致でミネアに白羽の矢が立った。ミネアも気にはなっていたし受けて立った。
他愛もない話から始め、徐々に核心に迫る。
「最近クリフトさんとどう?うまくいってないんじゃないかしら?」
「そうなのよ!ミネアさんは流石にわかっているわね。うん、うまくいっていないのよ。きっかけは私からなんだけど…。本当、些細なことなの。そしたら怒っちゃって。まさかそんなことで、って感じよ。今までそんなこと、なかったのに」
アリーナは一気にまくし立てた。
アリーナがいうその些細なことでここまで周りに迷惑かけて…。とミネアは笑顔を崩さず心の中で呟く。
「ねぇ、アリーナさん。私と姉さん、仲いいように見える?」
唐突に言われたミネアとマーニャの姉妹関係にやや面食らいながらも、え?…まぁ、そうねと言葉を濁す。ミネアは構わず次の言葉を紡ぐ。
「そんなに仲良くないのよ、私達。姉妹だけど真逆な性格しているでしょ。反発なんて昔からあったわ。だけどここまでこれたのは何でだと思う?」
首を傾げるアリーナから言葉が出ないのを確認してからミネアは答えた。
「お互い言い合って、それから言われた言葉を冷静になった咀嚼してもう一度頭で考える」
「それで?」
「自分に落ち度があったら謝るの」
「だけどミネアさんはいつもマーニャさんの言う言葉飲み込んでいるじゃない」
だからストレスが溜まるのよ、とミネアはころころと笑った。
私の我儘にも似た言動をいつもクリフトははいはいと聞いていた。それでストレスが溜まっていたのかな、と思えばミネアの言葉はアリーナの胸を軋ませた。
「まぁ、これは姉妹だからこそなんだけどね。切っても切っても離れられない血が繋がったものだから。甘えもあるかもしれないわね」
アリーナは俯いた。
「だけどあなた達は恋人とはいえ、他人よ。たとえ幼少の頃からの付き合いだとしてもね」
喧嘩が悪いわけじゃないの。恋人たちの喧嘩は恋の更新日よ。それを乗り越えられるのは二人次第ね、とミネアは言葉を締めた。
信頼する仲間に諭され、正しいと思っていた自分にも落ち度があったのかもしれないとアリーナは考え始めた。ようやく冷静になれたのである。
正直気まずい雰囲気が続くのが嫌になったのもある。それで周りもギクシャクしているというのはアリーナでもわかっていた。
これじゃ、いけないわよね…。
ため息を吐きながら呟いた。
クリフトと話そう。今日はもう遅いからに明日の夜にしよう。夜ならゆっくり話せる。
アリーナは布団に潜り、目を閉じた。
次の日。
相変わらず周りはよそよそしかった。
勇者はアリーナをおもんぱかり、アリーナに一日中馬車での待機を命じた。クリフトは戦闘要員、馬車の外で行動。二人を離そうと勇者は考えたらしい。
アリーナは戦うことが好きだ。それは周りの人が嫌と言うほど知っているはずだ。体調が優れなくても大怪我をしてもいつも外にいたい、戦いたいとリーダーである勇者に願ってきた。
それなのに。
体調万全、体力十分、いつでも会心の一撃を食らわす準備はできているのに、馬車で待機という仕打ちは。
戦いは連携プレー。仲間と声を掛け合い、それぞれ役割を果たして勝利に導く。それが、今は自分のせいで周りがギクシャクしている。ここでアリーナが命をかける戦闘に参加しても寧ろ周りの足手まといになるのは目に見えている。
そんな私を戦いになんて出せないのは当然よね…。自業自得じゃない…。
と体育座りをしながら落胆した。
別になんてことないのよ。クリフトと話すだけじゃないの。ねぇ?
少し早足でクリフトの部屋へ向かう。同時に気持ちとは裏腹に心臓は早いビートを刻んでいた。
ノックをし、入室する。部屋には机に向かい本を読んでいるクリフトの姿があった。
「べっ、別にっ。仲直りをしようとしにきたんじゃないからねっ」
クリフトはまだ何も喋っていないのにすらすらと口から言葉が滑ってしまう。
どうぞおかけください、と椅子を出され、お茶を出された。
「まず。お互い謝りませんか」
「なんで謝らなければならないのよ」
「それがいけないのですよ、姫様。お互いの非を心当たりがなくても、いえ。ありますね。それからじゃありませんか」
どうもクリフトを目の前にすると素直になれないのよねぇ…。反発心が働くというか。アリーナは渋々ながら応じる。
「わかったわ…。どうもすみませんでしたー」
「いえ、こちらこそ無礼を申し上げました。申し訳ございません」
お互い頭を下げ、出された茶を啜るとゆっくりした気持ちになる。
「姫様。わたくしはあなた様の臣下。あなたに使えている者です。それはお分かりですね?ですがね、姫様のお言葉、些か失言にもとれるお言葉でしたよ。いくら長年一緒にいるわたくしへとはいえ、いきなりあんなお言葉を投げられたら誰もが怒ると思いですが」
「あなたが心が狭いんじゃないの」
アリーナはぶぅたれた顔で横を見る。クリフトと視線は合わせられない。だが鋭い視線はずっと頬に突き刺さっているのを感じる。
「それでは、わたくしから姫様にあのようなお言葉を差し上げたらどうでしょう。姫様は怒りませんか?」
「…さぁね」
「そういう風にするのは姫様の悪い癖です」
「クリフトならわかってくれると思ったから」
「そんなことはありません。身分の前にわたくしはあなた様と同じ人間。痛む心を持ち合わせているんですよ。恋人同士なら尚更。対等でしょう?」
そりゃまぁ…。とアリーナは体を縮めた。
「アリーナ」
クリフトが二人の時だけ呼ぶ名前を出す。そんな時に名前を呼ぶなんて。アリーナはドキリとした。
「言いたいことがあればまず優しい口調で。それでよいですか」
わかったわよぉ。とアリーナは目を閉じた。
「言いたいことを言えない関係なんて無意味だと思うのです。そうじゃなきゃお互い気づかないでしょ?その時はこうしたらどう?とかね。いきなり言われたら吃驚しますよ」
はぁーい…。と覇気がない声でアリーナは呟いた。
「さて。お話は以上。これで周りの方にもこれ以上は迷惑かかりませんよね。今回の件でライアンさんはだいぶわたくしから離れましたから。ええ。喧嘩するなとは言わないだろうけれど、もう少しわたくしたちは私情を表に出さない様努力しないと」
「それは痛感してる。今度から気をつけるわ。それでね、また戦える場を貰えたらいいと思うの」
「…。じゃあアリーナ。お互い今日言ったことを守っていきましょう。良いですね?」
クリフトはふっとアリーナの身体を抱き寄せ、唇に触れた。
「仲直りしなきゃ、キスができませんから」
クリフトはにこりと微笑んだ。
(追記)気まずい雰囲気は嫌だが、あの時のクリフトはアリーナ優先で回復しないからこれからもそうして欲しいと勇者は語った。
337 :
328:2006/05/25(木) 23:44:09 ID:yVebX1940
良スレだぁ〜!
>>280さん、ありがとう。嬉しいよ!!そしてGJだよ、SSも280さんの態度も!!
うん、みんな思うところはあったと思う。でも、言いたいことを言える関係って
最高だよね。喧嘩って信頼しあっていないとできないものだから。うぉぉぉ〜今日は飲むぞ!!
>モンバーさん、こんな良いスレ他にないっすよ。戻ってきてくれ〜!!
そして投下キボン(・∀・)
>恋人たちの喧嘩は恋の更新日
名言だ〜
>>280さんGJ!
アンソロの人ミケスペースとれたようだ!
GJ!GJ!
GJありがとう。がんばります。
きのこの人の小説最高なんで楽しみにしててください。
コミケ何日目!?行けない日だったらどうしよ・・・
>>341さん
1日目(金曜日)です。
ドラクエの日です。
343 :
341:2006/05/28(日) 00:10:35 ID:Xl9anCn1O
>>342さん
ありがト━━(゚∀゚)━━ン!行けるよ!アンソロ買うぜ!!!!!
誰だよとんでもないとこに誤爆したのは
魔族と人間との戦いから数年後。
魔物にいつ殺されるかとビクビクしていた人々は戦いの勝利を得たとき、もう何も恐れるものはないと胸を張り、世界中は喜びと希望に満ち溢れ、意気揚々として暮らしていた。
そしてここ、サントハイムでも同様。
以前、国王を始め、城内の人がごっそりいなくなるという神隠しにも似た事柄が起きた後。
蛻の空と化したサントハイム城にいつからか禁術にして神秘なる進化の秘法を利用した魔物…バルザックに乗っ取られたが、同国の王位継承権を握る王女アリーナを筆頭にした導かれし者たちによる討伐後、再び城には空虚が流れた。
サントハイム城に人が戻り、廃墟となりきった城の復旧、国の建て直しに東奔西走していた。
王の突然の帰国に不安定な政治政府の配下で暮らしていたサントハイム国領に住む人々は歓喜に沸き、積極的に城の復旧に必要な大工、設計士といった人材が各地から集まってきた。
「美しきことよ」国王も民の献身なる愛国心に頷き、快く受け入れた。人材は確保した。そこでもう一つ必要なものがある。それは、カネ。
流石に好意とはいえ、ボランティアではない。生活の糧がなければ今日の朝餉にもありつけぬ。
また、復旧にあたり建築材料の大きいものから消失した本など細かいものにも購入するにはどうしてもカネが必要になる。
現在のサントハイムの国家予算は微々たるものだ。だが国税を重くすれば今は国を思う民が反対に敵に回る事態が起きかねない。
そのことに頭を悩んでいた、貴族の発言場の貴族院、政治執行部の元老院は一つ考えを提案した。
アリーナは相も変わらず王女らしかぬ格好で自室にいた。
周りが忙しくしている中、体調が優れないという理由で隠っていた。半分は仮病で、ここ最近王女としての公務が重なって疲労が溜まっているというのが理由半分。
布団に潜り込み、目を閉じて考え込んでいた。
アリーナが小さい頃よく読んでいた本には『お姫様』が多く書かれており、その内容の殆どが『王子様とお姫様は結婚して仲良く暮らしました』であった。
わたしはお姫様なんだから、王子様と結婚するのねとぼんやりと考えていたことがあった。実際、今手元にきている見合い話の相手は『王子様』。プロマイドを見せて貰ったが、本で読んだような『王子様』がそこにはいた。
人材はあれど財政難。今のサントハイムの現状を打破すべく元老院が打ち立てたのは王女アリーナと他国王子との戦略結婚であった。
手っ取り早く解消するには土台もカネも安定した国との結婚。
サントハイムは広大で肥沃な国土と魚の打ち上げ量世界一と言われるほど魚類豊富な海域を有す。
悲惨な事例があったことや財政難に苦しんでいるといった事柄と、結婚相手となる王女がやや明るすぎるといったことから目を瞑れば、この国を喉元から手が出るほど欲しい国など数多にある。
互いの利益が一致すればいくらでも。
アリーナはわかっていた。
自分はいつか他国へ売られる商品だと。
自国を背負いこみ、他国へ嫁ぐに粗相があってはいけない。小さい頃から裁縫、マナー、言葉使い、読み書きを叩き込まれた。つまらなくて嫌いだったが。
体が丈夫でなくてはならない。立派な跡継ぎとなる男子を産む為に。
傷物であってはならない。婚前にどこの馬ともわからぬ男子と交わるなんてもってのほか。
それらは反対に婿を迎えるにも同様である。だが今の自分には、商品としては劣化品もよいところだった。
アリーナは寝返りを打った。
それに…。アリーナには結婚したい人がいた。それは平民出身のお抱え神官クリフト。小さいころから幼なじみとして育ったクリフトと、恋仲間になっていた。
いっそ、そのことを父である王に言えたら。否。大反対が起こる。
サントハイム国の法令の記述によれば、王位継承権と平民との結婚は禁止にはなっていない。が、身分の差が大きすぎる。
サントハイムの城下町サランで神官学校を主席で卒業。それは彼が努力家であり勤勉家であったのが実を結んだ結果である。
若くして神官という神に仕える高位に就けたものも彼の人柄と親身に取り組む背景の評価があってこそ。
アリーナが諸国漫遊の旅に出たとき、王はそうなった時のために以前より任命していた付き人を付けた。
アリーナの教育者で王宮魔導師、知られていないがサントハイムの友好国エンドールの貴族であるブライは兎も角、職業の位は高いが身分が低いクリフトが王に任命されたのは異例に等しい。
幼なじみだからと安心していたのであろうか。身分よりも異性を長い間近くにいさせてしまったことを王は悔やむべきだろう。
まるで磁石のN極とS極が惹かれ合うように、若い二人は身分の差などもともとないように惹かれ、愛し合うようになった。
ここサントハイムに帰ってきても人目を憚って逢瀬を重ねる。
王女、身分違いの青年と恋に落ちる。
と言えばどこかの英雄伝承、ロマンチックなものと捉えられがちだが、実際は頭をだいぶ悩ます首脳問題であった。
クリフトのことなんて忘れて、王子と結婚したら。それが私の仕事ではないの。
国が、愛するサントハイムが窮地を脱するなら個人の感情など、どうでもよいことでしょう。私という切り札を今使わずにしていつ使うの?
アリーナは目を瞑った。瞼に焼き付いているのは王子のプロマイドではなく、あの優しい瞳でアリーナを見つめるクリフトの顔であった。
「アリーナ姫様」
聞き慣れた声に飛び起き、ドアを開ける。
「ニケ」
ドアの先には金髪短髪の女官ニケがいた。
アリーナと同い年のニケは幼い頃からアリーナ専属の女官として勤めている平民である。アリーナの公務からプライベートなことまでを把握し、アリーナも他の専属女官より彼女には信頼をおいている。
「クリフト様よりアリーナ様がお疲れと聞いたので薬草茶を渡してほしいと頼まれ参りました。今忙しいのでこれないのは申し訳ないと…。あとこれを」
湯気が立つお茶のカップ受けの下には手紙。
「預かってきました」
「ありがとう、ニケ…」
周りに人がいないことを確認し、こっそり渡す。こんなことがばれてしまえばニケはすぐさまクビになる。それをニケは覚悟の上でアリーナとクリフトの間柄の橋渡しをかって出ている。
「早くそれを読んで良くなってくださいね」
ニケから手紙とお茶を受け取り、ドアを閉めたそのお茶を啜りながら机に向かい、手紙を読む。
読んでいる打ち上げにアリーナの顔から血の気が引いた。目眩がする。本格的に具合が悪くなったのかもしれない。
その手紙の内容を要約すると。
アリーナの結婚話は聞いた。わたくしにも縁談がある。身分違いの恋だったがそろそろお互いの道を歩みませんか…と。
これで…これで良かったのだとクリフトは思った。
最初から禁じられていた恋だったのだ。身分違いの恋。
アリーナと旅の道中、自分から想いのたけを伝え、返事を期待などしなかったが、否、本当はしていた。自分は王女、あなたのような下卑た平民など鼻っから興味はないとおっしゃってさえくだされば諦めがついた。
だが予想と反し、返ってきたのは自分のアリーナに対する気持ち以上に愛してくれていたアリーナの気持ちだった。
想いが通じ合った二人に咎めるものなど何もなかった。近くに王に通じるブライがいたから多少後ろめたいものはあったけれどもそれ以上に互いの気持ちが勝った。
いつか終わるこの旅に、また戻らなければならない城の前に、二人は情熱と愛しさをぶつけ合った。
ずっとずっと一緒にいようねと永遠を誓う言葉を出すのは暗黙の禁句だった。永遠よりも今この一瞬一瞬を大事にしながら生きてゆく…。
城に主君である王が戻ってきたのは勿論喜ばしい。あの激しい戦闘を体験し、また生きて我が家というべき城に帰ってこれたことに感謝を込めて神へ祈りを捧げた。
それと同時に見て見ぬ振りをし、そのことから背を背けたかった…。それはいつかは訪れると思っていたが…。クリフトは目を細めた。
まだ公にはされていないが、愛するアリーナと他国王子との結婚話。
もしわたくしが王子、もしくは王家との婚姻を結べるくらいの身分が高ければアリーナとの結婚は可能なのだろうか。
可能性はあるが多分不可だろう。何故なら戦略結婚にはカネが付き物だ。クリフトは国家予算なみの金額は持ち合わせていない。
身分なし、カネなし、あるのはアリーナに対する誠実にして熱い愛だけだった。
クリフトにも縁談が舞い込む。
優しき心と強き力を携えた蒼き瞳の好青年。世界を救った導かれし者の一人。
頭脳明晰、容姿秀麗といった四字熟語が悉く似合う、誠実な男性。ひけらかすことなくそれでいて謙虚。
クリフトを高く評価してくれている人は多くいたようで、遠方、近郊問わず毎日山のように見合いを申し込む手紙がクリフトがいる城内にある教会に届く。
アリーナが結婚するのであればわたくしも…と積んである手紙の一つを取り出した。
アリーナはいよいよ具合が悪くなり、高熱を誘発して自室にて療養中だった。
食事はすべて拒否、口に入るのは水分のみ。高熱での水分摂取はまだ脱水を防げるが高熱が長く続けば生命の危機。
解熱剤を投与しても一旦は下がるがまたすぐに熱が上がる。解熱剤の活用は血圧降下にも繋がる。もともと血圧が低いアリーナには負担が大きい。また、何も食べていない状態での服薬では胃がやられてしまう。
医者が被りを払う中、気休めの点滴をひたすら体へ落とす日々が続くそんなある日、ドアのノック音と同時に声。
「アリーナ様」
アリーナは熱により意識が朦朧となりつつもその声が誰の者であるかがわかった。
「クリフト様」
「ニケ、アリーナ様の上体を起こしてもらっていいか。粉にしてあるから噎せてはいけない」
クリフトは部屋に入るなりアリーナの身の回りの世話をしていたニケに指示を出す。ニケはアリーナの上体を起こし、クリフトがアリーナに声掛けて口を開かせクリフトの手に握りしめられていた粉薬を服薬させたあと、すぐさま水のみで水を飲ませる。
意識が薄れているアリーナにも眉間に皺がよった。
「パデキアです。どんな病気にも効くという。以前ミントスの町でわたくしがお世話になりました。これで安心ですよ。一週間もすれば良くなります」
「それって以前アリーナ様から聞いたことあります。ソレッタ地方でしかとれない秘薬中の秘薬だと」
「そうです。キメラの翼でソレッタへ行ってきて譲り受けたのです。それではアリーナ様、失礼します」
「クリフト様…っ」
ニケが呼び止める前にクリフトは事務的に仕事を終えるとすぐさま部屋を出てしまった。
「姫様…」
ニケはアリーナに振り返った。口の中のパデキアの苦味が残る中、アリーナの閉じた目から滴がこぼれた。
他国王子との見合い話はなるべく早いければ良いと日程を定められていたが、アリーナの病の療養で先に延びたらしい。
それでもアリーナの病が治り次第相手の都合がつけば早急に話を付けると枕元でニケから聞かされた。
解熱し、食事も漸く摂取出来るようになってきたアリーナには熱が蒸し返されるような話だった。
アリーナとクリフトとの関係を知るニケは職務とはいえ、こんなことをアリーナに伝えるのは大変苦しかった。
「ニケ…クリフトの縁談話はどうなっているの?」
ベッドで上体を起こし水分摂取を出来るまでに回復したアリーナが、洗濯物をたたんでいるニケに聞く。
「縁談話ですか…。アリーナに申し上げても良いのですか?今お伝えしても心身に悪いと思うのですが」
「気にしないで…知らなければ知らないで不安なのよ」
しからば…と。声を絞り上げ、ニケはクリフトの元には沢山の量の縁談話が舞い込み、一人一人に対処し、手紙ならば一通一通目を通していると伝えた。
「そう…」
アリーナは目を伏せた。
「クリフト様は姫様の結婚話が決まれば自分も、と思われています。クリフト様だって苦肉の策だと思います。好きな人が離れ離れになるのは苦しいです…」
ニケの恋人はニケと同平民で軍事力としてエンドールへ赴き、魔物との戦いで戦死したことを知っているアリーナは、アリーナの気持ちを打診ではなく心から共感してくれているニケに感謝した。
「姫様には幸せになって欲しいです」
姫様が納得出来る結果になって欲しい。「ニケ…」
ニケの目からボロボロと大粒の涙がこぼれて床の絨毯にしみを作った。
その日の夜、王女命令としてニケをクリフトへ派遣させた。
いくら王女命令であっても病気療養中であるアリーナの英気を養うのであれば自分は行かないほうがいいと躊躇ったが、非公開で互いに会うのはこれで最後かもしれないと意を決して王女の部屋へ赴いた。
「クリフト」
布団の上に座っていた寝具のままのアリーナは、この様な格好で対面するのはと非礼を詫びた。
「はっ。してわたくしにこの夜分遅く如何様でしょう」
お互いの身分をはっきりさせた態度は馴れ合いを防ぐ遮断方法と得たのか。膝と頭を下げたあくまでも他人行儀にアリーナは些か苛立ちを感じながらも言葉を紡ぐ。
「あなた、縁談話がきているようだけれど。それで良いのかしら」
「構いません」
「嘘」
「嘘ではありません」
「では神官ではない、お互い肩書きも身分をも取っ払った前提で聞くわ。クリフトは私を…今でも。慕っていますか」
クリフトは一瞬目を見開いた後すぐさま唇を噛み、沈黙を挟んで言葉を絞り出す。
「いえ…」
「私はあなたを愛しているのよ」
「…ですが、アリーナ様…」
「私は結婚するならあなたと結婚したいわ」
「わたくしにはあなたにそぐう身分がない」
「私が平民になればよいのよ」
アリーナの言葉に頭を上げた。
「…何をおっしゃるのです?」
額に流れる冷や汗を拭かず、アリーナの言葉に耳を疑った。
「私が王位継承権を却下すればあなたと同じ身分になるわ。そうしたら結婚だって可能よ」
「何を…。何をおっしゃるのかと思えばアリーナ様。そんな…そんなこと許されるわけがない!」
「知っているわそんなこと!」
クリフトの諫める言葉にアリーナは更に声を張り上げる。
「私は国を担う王女アリーナ。いつかはどこかの国へ嫁ぐことを前提にして生まれた…。他国への橋渡し、友好国との同盟を組めばこの国は強力な後ろ盾を得、いつまでも繁栄する」
あぁ支援
ごく王女として全うな意見を述べるアリーナに成長しましたねと関心する間は今のクリフトに持ち合わせていなかった。
「だけど!自分の想いを殺せなかった!」
あなたを知ったから。人を愛すること、大事に慈しみ、想いあえることを知った。あなたがいて私がこんなに生かされていることを知ったの。もう他には同等な感情を持てるそんな人、いやしない。
「アリーナ様…確かにわたくしはあなたを慕い、所謂恋仲間になりました。ですが、わたくしの為に王位継承権を棄却するなど…」
「素直に…言って。私が王女でなくても、平民になったら。お金もなく裸一貫の私をあなたは愛してくれる?」
「わたくしは…寧ろそれが欲しいです」
クリフトの告白にアリーナは微笑んだ。
「ですが…アリーナ様が他国との婚約をせねばそれは…この不安定なサントハイムを救えないことになります」
アリーナの他にサントハイム国王位継承者はおらず、他国との結婚を拒否すれば、王の就任により国が成り立つ王国であるサントハイム国は衰退を辿る。
私はそうなればいよいよ城へ幽閉され、義務の元他国の王子を産むことになる」
クリフトはアリーナの唇から発する言葉の一語一語を傾聴してた。
「嫌だなんていいません。それが私の役目なのだから。個人の感情よりも国の為と考えてきました。だけど…愛を知ってしまった今の私には耐えられない。あなたがいなければ、私はこの世からいなくなってしまいたい」
「アリーナ様…。いいのですか…。あなた一人の問題ではない。一つの国がかかっているのですよ。あなたの愛する国が」
「私の覚悟は一つの国が滅んでしまう可能性をはらみます。ですが、国より、あなたを愛したい。あなたと生きていきたい」
紅蓮の瞳の奥に潜む確固たる意志は揺るがなかった。
気づいたら夜も更けていた。
アリーナの体調は本調子ではないが、他国王子との婚約が調停している今が絶好機。
夜間巡回している兵士の目をかいくぐり、必要最低限の荷物だけ持ち、クリフトはアリーナの部屋へとやってきた。
「お父様に手紙を書いたわ」
最後のサントハイム王女としての執筆、そして印を押した手紙を机上に置いた。
アリーナはニケを呼び、部屋に招き入れた。
「ニケ…いままでありがとう。私たち、サントハイムを去ることにしたの」
「姫様…。最後まで破天荒な方ですね。駆け落ちだなんて」
「ごめんね、最後まで迷惑かけて…。もし結婚することがあれば、サントハイムにこっそり連絡するから」
「姫様がいなくなれば私には仕える人がいなくなります。きっとこの後二人に通じた罪に問われ、サントハイムを追及されます。そしたらエンドールに行こうと思っているのです」
亡くなった恋人に逢いに。
「じゃあこれがもしかしたらニケとは最後ね…。…ごめんね、ごめんね最後まで迷惑かけて…。」
「姫様…。おてんばで我儘で、言うことを聞かないあなたを時には疎ましく感じたこともありましたが、あなたに仕えたことを誇りに思います」
「こんな時にしか本音は言えないものね」
アリーナは目尻を拭った。
「クリフト様。姫様をお頼み申し上げます。姫様。いままでありがとうございました」
握手を交わすとニケは二人を促した。
王女室の窓際にたち、クリフトは天に向かいキメラの翼を放り投げると、一瞬にして二人の姿はなくなった。
ごめんなさい、お父様…。最後まで我儘娘だったね。だけど…。この恋は諦めたくなかった…。
アリーナがむせび泣く中、クリフトはしっかり肩を抱きしめ、共に慟哭した。
サントハイムから足がつかず、尚且つ平和に暮らせる市町村を以前世界中を巡った二人に思い当たるのは一つしかなかった。
鬱蒼とした木々が自生する森の中、景観にそぐわぬ人工的な塔が印象の小さな村だった。
かつてここではルビーの涙を流すエルフのルビーを金にしようとした人間が虐待。
その恋人が人間を根絶やしにすると誓ったという暗い過去を背負う村であったが、今は魔族の地位を脱退した銀髪の元魔王と、善人間の計らいにより命を吹き返したエルフがこっそりと住む村。
ロザリーヒル。
サントハイムを乗っ取った魔物はこの魔族の王の指揮によるものであると信じて酷く憎んでいたし、殺したい思いにとらわれていた。
敵対していたアリーナも、旅を続けるにつれて真実を知り、サントハイムがこの者の仕業でないことを知ると手をとることが出来、行動を共にした。
そんな因縁の地に二人は腰を下ろした。ボビットやエルフが村人が大半であり、ここなら人間は殆どおらず、また周辺に集落はない。元であるが魔族の王が住むならば命危ういと人間は観光しに来たりはしないだろう。ここに住むことを願うと、
「私は村長ではない。勝手にせよ」
とぶっきらぼうに言い放つデスピサロ…。もとい。今は一人の青年、ピサロ。
「歓迎しますわ。部屋はこの塔の二階が空いておりますからどうぞお使い下さい」
とルビーの涙の持ち主、この村の名を冠した名前を持つエルフ、ロザリー。
二人は夫婦になっていた。
二人は理由を聞いてこなかった。人間の事柄に関心などないのであろう。
ありがたく塔に住まわせて貰い、二人での新しい生活が始まった。
畑を開墾し作物を育てる傍ら、クリフトはこの村の神父の地位を得、村人達に信仰を広めた。
独学であったが医者としての知識を持ち、傷を瞬時に回復させる手を持つのは森に入り傷を作って帰る村人に重宝された。
薬草学にも明るいのでボビットと共に森の薬草を摘んできて漢方にし、他の町へ売れば高い金額で売れた。
アリーナは畑に入りせっせと汗水流し作物を作りながら近場の大河へ魚釣りに出かけて魚貝類を手に入れる。鳥獣の狩りにも参加、必ずといって仕留めてくる。それを調理。
いつぞやクリフトにケーキを作ったが、パデキア味と言い示される程悲惨なものをだったが、自分が興味のあることは吸収が早く、また努力を怠らない。
鉄の爪を嵌めて果敢に魔物に斬りかかった頼もしき右腕に今はおたまが握られている。料理の腕前はメキメキ上がった。
二人を始めは快く思わなかった村人たちも、村の中心で火を焚きながら料理に舌鼓を打ち、酒を飲みながら和めば打ち解けた。
この二人は村にはなくてはならない存在になっていた。
風の便りで聞いた、訃報。
遥か西国サントハイムの王が崩御した。病名は明かされないが、心労によるものであったそうだ。
心労…。その言葉はアリーナの胸を痛めた。
アリーナがいなくなってからのサントハイムは大混乱を極めたと聞く。それだけ王女アリーナの失踪は国に打撃を与えた。
無論、いくらアリーナが正式に王位を脱位したと公表しても次期王はアリーナと拘るものは多く、沢山の人を使いに出して捜索したようであった。
ここロザリーヒルにもサントハイムの使いが来村したがピサロにより二人は匿われ、危機を脱した。
王位継承権を持つ者がいなくなった後、王と近しい血筋の者が即位したそうだ。
独裁政治を発足するがその手腕と人々の心を掌握するカリスマ性はいまいちであり、国の象徴である城の復旧に膨大な税を民から徴収し、それは貧困と、金銭的な束縛を民に与え、浮浪者を多く生んだと聞く。
民草の怒りが爆発すればいつ革命が勃発してもおかしくない現サントハイム王国。
もし、アリーナが即位し、国を、民を憂う正当な帝王学をも勉強してきたクリフトがアリーナをサポートすれば、国は一代は繁栄するだろうと民は考えた。
クリフトは身分が低いだけで、王への素質は誰よりもあると、サントハイム城外内問わず彼への評価は高かった。問題は彼の身分に執着する貴族院と元老院だけだったのだ。
だが、王位継承権とサントハイムを捨てたアリーナがここで戻るわけにはいかない。
今すぐ帰りたい。サントハイムに戻りたい。そんな思いがアリーナを貫く。だが、強固たる意志で地に踏みとどまった。
「お父様…」
西の方角へ向き、そんなサントハイムを、王の追悼を涙を流して祈ることしか出来なかった。
漸く生活も落ち着いたころ、正式にクリフトはアリーナに結婚を申し込み、喜んで受理された。
結婚式を挙げるにあたって、かつての戦友と、出来れば二人を取り持った女官ニケを呼びたかった。
叶わぬ恋と知りながらアリーナ達を応援し続けた人たち。想いが実った二人を祝福して欲しかった。
二人で行動すると周囲の人に怪しまれるといけないので、単独にてキメラの翼で各地に飛び、招待状を配った。
幸いニケはエンドール城でどういう繋がりか商人トルネコの元で働いていた。
報告すると皆がおめでとうと祝福してくれた。
ある晴れた日、ロザリーヒルの教会で結婚式が挙げられた。
二人の成長を幼い頃から見守り、アリーナの旅にも同行参加したサントハイム王宮魔導師ブライは高齢もあって既に亡くなっていた。この二人の晴れ舞台を一番に見たかったであろう。
戦友達。勇者ソロ、王宮戦士ライアン、武器商人トルネコ、踊り子マーニャ、占い師ミネア、そして仲人というべきニケ。
魔族の王ピサロとその妻ロザリー。村人が一同に介して、二人の結婚式へ参加した。祝詞を上げるのはクリフトの師匠であるボビットの神父。
今日の主役二人が白いドレスとタキシードに身を包み、バージンロードをくぐると祝福の言葉とフラワーシャワーを浴びせた。
式を挙げるにあたって、泣かないと決めていた二人だが、堪えても堪えてもこぼれ落ちる涙は止まらなかった。
静粛な時の中、神父の前に二人寄り添い、祝詞を戴く。
「汝、クリフト…」
今日という日を迎えるにあたり、沢山のものを犠牲にしてきた。
「妻、アリーナを生涯慈しみ、愛する…」
だからこそ、私たちは幸せにならなければならない。
「汝、アリーナ…」
それが報いになると祈って…。
「夫、クリフトを生涯慈しみ、愛し合い…」
この佳き日に。
「共に一生涯、沿い遂げることを誓いますか?」
『誓います』
夫婦になった二人は凛とした声で、誓った。
「あ〜よい結婚式だったわねぇ〜」
踊り子マーニャが涙を拭きながら感嘆した。
「アリーナたちがサントハイムを出てたなんて知らなかったよ」
勇者ソロが言う。
「結婚っていいものだな。俺もシンシアがいれば結婚するんだけど」
魔族襲来の際自分の身代わりになって亡くなったシンシアをソロは思い出していた。
「姫様…うっうっ…」
ニケは泣き通しだった。トルネコが寄り添い、一緒になって涙を流していた。
「一番に二人の晴れ姿を見たかったであろう父王とブライ殿。亡くなってしまうとは惜しいな」
ライアンが呟く。
「え?あそこにいるじゃない」
ミネアが指を指した。
どこ?ほらあそこよ。え?分からないよ。あ、そうか…。そうよね。ふむ…。そうなのか。
「今日は愛に満ち溢れているわね」
ミネアが指差す方向には優しい顔で微笑む王とブライの姿があった。
携帯から長編乙です!
想いを貫いた二人だけどなんだかカナシス・・・
このエンディングでもまだマシな方っすよね…ブライ(´;ω;`)
長編乙でした!つ旦~
乙です。
二人が幸せになるのはいいのだけど、そのしわ寄せが国民にいってしまって
いるような気がする…革命が起きる前には戻って王位について欲しい。
乙ーーー!!
アリーナ&クリフトの決断が駆け落ち!とても素晴らしくて感動してしまった!
その後の展開も気になる!
いろいろキテタ━━(゚∀゚)━━!!
>店長さん
乙です!ソロに惚れちゃいました!そしてクリフトが俗物だwwwwww
>280さん
ちょっと私用でばたばたしているうちにえらいことになっててビックリ!
こちらこそゴメンナサイ。そしてありがとうございました。
もっと早くコメント出すべきでしたね。こちらにも非のあったことですから気にしていませんよ。
それよりSS、GJです。恋人同士の喧嘩には関わりたくないっすね。あてられるからw
>アンソロ
乙&GJです!・・・って金曜日!? orz・・・イケナイ・・・友人に頼んで購入シマス。
>>365 乙です〜。駆け落ち・・・切ないですね。でも他のすべてを犠牲にしてでもクリフトを選んだ
アリーナにジーンとしました。
>長文読破してくださった方、ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。
前スレに引き続き、またしてもかなりの容量を食いつぶしてしまった・・・。長文投下は心が痛みます。
職人の皆様GJです。このスレは投下が多くて楽しいです。
読み手としては長くても気にならないですが、よくみると、レス数が400いっていないのに、容量はw
皆様、本当に乙であります!( ^-^)⊃旦~
「あれ、これって」
とある町で行われた夜祭でのこと。
その露天で売られていた子供向けのおもちゃにアリーナの視線が釘付けになった。
「どうしたの?」
その背後からひょいと顔を覗かせたマーニャが、アリーナの視線の先にある少し濁った水晶の
かけらを手にとり懐かしげに目を細めた。
「へぇ、月のかけら・・・まだ売っているのね」
マーニャの声にアリーナは、「やっぱり・・・」と呟く。
王族として生まれ育ったアリーナが、こういうおもちゃに触れる機会はそうそうなかった。
しかし、目の前にあるこの水晶のかけらには確かに見覚えがあった。
そうあれは確か・・・。
アリーナの脳裏にいまよりずっと幼い顔をしたクリフトが浮かび、月のかけらと重なった。
「そうだわ、あの時の」
クリフトがくれた『おつきさま』。
その言葉がきっかけとなったのか、アリーナの中の記憶が鮮明によみがえった。
「いやいや、おつきさまが欲しいの!」
こんなのイラナイ〜。
外国製の人形を振り回して癇癪を起こすアリーナに、父王とブライが困り果てた顔をする。
そんな中、蒼い髪をした少年が遠慮がちに声をかけてきた。
「ひめさま、そんなにおつきさまがほしいのですか?」
アリーナの乳兄弟として、そして学友として城勤めをしていたクリフトが大人たちの視線を一身
に浴びながら申し出る。アリーナが「ほしい!」と大きな声で答えると、年より大人びた印象を
もつ少年はやんわりと笑いながら頷いた。
「わかりました。でも、おつきさまはみんなのものです。一日だけ、とおやくそくしてくれます
か?」
そうしたら、ひめさまにおつきさまをとってさしあげます。
一日だけと聞いて、ちょっとだけ迷ったものの、月がどうしてもほしかったアリーナは何度も頷
く。
「おつきさま、とって!」
夜空を指し示し、「いますぐとって」と言い募るアリーナに、クリフトはかぶりを振る。
「きょうはむりです。あと3日まってください」
かならずとってさしあげますから。
そう言い切ったクリフトにサントハイム王とブライが心配げな視線を送るが、クリフトは何も言
わず、ただまっすぐに見返した。その瞳はとても穏やかで自信に満ち溢れていた。
「では、3日間、いい子にしていてくださいね」
いい子にしていないとおつきさまは会いにきてくれませんよ。
クリフトの言葉に、アリーナは「わかったわ」と元気よく答えると小指を突き出した。
「やくそくね」
3日後、クリフトに誘われて城の中庭に立ったアリーナは、クリフトの手に握られたものと
空を見比べ、目を輝かせた。
見上げた空に月はなく、クリフトの手に小さな銀色のかけら。
「ほんとうに、おつきさま、とってくれたんだ」
満面の笑みを浮かべたアリーナの手にそっとかけらを握らせると、クリフトは庭の片隅に腰を
おろす。
「よかったですね、ひめさま」
これも、ひめさまがいい子にしていたからですよ。
3つしか違わないのに、妙に大人びたことを言うクリフトにアリーナは少し不満を覚えたが、
それ以上に『おつきさま』が嬉しくて、クリフトの横に座ると一緒にかけらを眺めた。
「きれい」
「きれいですね」
「でも、いちにちだけなのよね」
「えぇ、いちにちだけです」
「つまんないのー」
「ひめさま、わがままをおっしゃると、おつきさまはおそらにかえってしまいますよ」
思わず口元を押さえたアリーナにクリフトは小さく笑うと、星だけが瞬く夜空を見上げた。
月のない夜。それは新月と呼ばれる。
ふたりはその晩、いつまでも飽きることなく『おつきさま』を眺め続けた。
そして東の空が白み始める頃。
クリフトに促されたアリーナはそっと草陰に『おつきさま』を置いた。
「これで『おつきさま』は、おそらにかえれるの?」
「はい、でも、おつきさまは、はずかしがりやさんなのでみていちゃだめですよ」
いきましょう、と背中を押されアリーナは一度だけ『おつきさま』を振り返ると、小さく手を振
った。
「ばいばい」
そしてクリフトの横に並ぶと、その手をぎゅっと握った。
あんなにほしかった『おつきさま』だったのに、お別れと聞いてもそれほど悲しくないのが不思
議だった。
複雑な思いに、クリフトのぬくもりが重なる。
驚いたようにこちらを向いたクリフトだったが、やがてとても優しい微笑を浮かべると、アリー
ナの小さな手をそっと握り返した。
「いきましょうか」
クリフトの穏やかで透明な微笑み。アリーナの大好きなクリフトの笑顔。
それは『おつきさま』を思わせるやさしいもので。
「どうしました?」
心配げな顔をして、クリフトがぼんやりとしていたアリーナの顔をのぞきこむ。
「ねむくなっちゃいましたか?」
クリフトの言葉に我に返ると、アリーナは屈託のない笑みでこう言った。
「クリフトっておつきさまみたいね」
だからおわかれがさびしくないんだわ。
アリーナの言葉に目を丸くしたクリフトだったが、少し頬を赤らめると小さく「ありがとうござ
います」と呟いた。
記憶の海に沈みこんでいたアリーナを、マーニャの声が現実に引き戻した。
「おじさん、これいくら?」
「30G」
「あいかわらず高いわね〜」
それじゃ、子供のお小遣いなくなっちゃうわよ!
マーニャの呆れたような言葉に、露天商のおじさんが朗らかに笑った。
「だって、安売りしちゃったら、夢が壊れるだろ?」
だからこれくらいがちょうどいいのさ。
そう陽気に言い放ち、アリーナの方へウィンクする。
「お嬢ちゃんもそう思うだろ?」
アリーナは突然話を振られ、少し驚いたが、やがてとても優しい笑みを浮かべて頷いた。
「そうね」
その表情の美しさに、思わずマーニャが息を呑んだ。そしてアリーナに『おつきさま』の話を
聞くと、さも納得したかのように頷いた。
「なるほど、ね」
素敵な思い出ね。
「ありがとう」
少しはにかんで答えるアリーナの視線の先には、あの頃と変わらずに自分を見守ってくれている
『おつきさま』
自分の方を見ていたアリーナに気づいた彼は、小首を傾げると柔らかな笑みを浮かべる。
今ならわかる。どうしてあんなに月がほしかったのか。
「わたし、あんなに小さい頃から」
クリフトのことが好きだったのね。
胸のうちで囁かれた言葉は、誰に聞こえることもなかったけれども、夜空から見守ってくれる月
だけがその想いを温かく包み込んでくれた。
暗い闇の中でも、私は大丈夫。だって私には『おつきさま』が傍にいてくれるから。
(終)
ファイルを整理していたらこんなのが出てきた。
長文が漢字だらけだったので、調和するために投下してみたが・・・。
・・・・・・またしても無駄に容量を食いつぶしたか!?
いつか容量が気にならないくらいハイクオリティーなSSが投下できるようになりたいっす。
がんがります。
うっわ、GJです。リアルで読んじゃいました。
ほのぼのもいいですね。子供クリフトに萌えましたw
こんの極悪神官めがぁぁぁぁぁぁぁ
こんな幼い頃からそのキレる頭を使って姫様の乙女心を掌握しおってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
もう大好きだ
確かに「ほしのかけら」なんてアイテムが売ってるくらいですから
「つきのかけら」があったっておかしくないですよね!
小さい頃から切れ者神官、大好きです。GJでした!
ひめさまに萌え━━(゚∀゚)━━た!!煩悩神官さんGJ!
382 :
365:2006/05/30(火) 23:11:47 ID:yPGmc3CIO
乙くれた皆さんありがとう。
因みに、
>>280=
>>365です。
>>368氏のレスをそういうのも考えられるのか…と書いてみましたが、煩悩さんの以前投下したSSに酷似している?と思ったのだが…。
とりあえず投下します。賛否両論はその後に。
煩悩さん>GJです。子供の頃からクリフトが好きな姫様に萌えますた。
全身鏡に向かい、鏡の脇に控えていた道具を手前に寄せ、化粧を施す。
深い皺が白粉の侵入を拒む。
紅をさすがその手は震え、輪郭が滲む。
瞼は落ち込み、アイラインを引くどころではなくなっている。自慢の長く力強い睫は抜けた。人への印象を決める瞳が欠点だらけのなか唯一緋色の色彩だけは変わらなかったのは救いだった。
道具をしまい、うまくいかない化粧に思わず溜め息をついた。
若い時には自慢の艶やかな赤毛が今は色が抜け、どんなに髪を洗っても潤いを吸収しない白髪へと変化した。
長いとみっともないのでセミロングにカットしているそんな髪を櫛で撫でる。
毛先だけがくるくるしているのは今も昔も変わらない。
ショールを肩にかけ、杖を右手の相棒にし、ゆっくりと歩き出した。
夜間続いていた雨が上がり、青空が広がって大きな虹が架かっていた。
朝夜はまだまだ寒く、暖房を点けなければいてもたってもいられないが、日中は風さえ吹かなければ心地よい陽気である。
風にさらわれ種が落ちたのだろう。足元の床タイルの隙間からは蒲公英が二つ、黄色い姿を見せた。
季節は春。
麗らかな陽気に誘われ、久し振りに外へ出た。
「グランマ!アリーナグランマ!」
「おやおや…」
グランマの後ろから三人の子供が走ってくる。
グランマの孫だ。
『おはようございます!』
「おお、おはよう」
「グランマのお部屋に行ったらいないんだもん。グランマはここがお気に入りよね?きっといると思ったから。だから来たの!ほらグランマが好きな百合よ。綺麗でしょう?」
三つ編みをした女の子は花瓶に飾った百合を差し出した。
「綺麗ねぇ。ありがとう。飾りましょうね」
グランマは女の子の頭を撫でると女の子はへへへっと嬉しそうに笑った。
「ずるいよ!僕だってグランマが好きなお菓子を持ってきたんだ。グランマ、食欲が最近ないって聞いたよ。これは食べれるよね?おいしいよ!」
青髪の男の子が器いっぱいのお菓子を差し出した。
「おいしそうね。これなら食べれそうよ」
「グランマぁ。あたしね、グランマが若い頃グランファとかけおちしたって聞いたの。本当?」
リボンを付けた女の子がまぁるい目を見開き、グランマへ問う。
「おやおや。そんなこと誰から聞いたの?」
「ママよ!ねぇ本当なの?聞かせてグランマ!」
聞かせて!聞かせて!
孫たちは聞かせてと騒いだ。
「ママはろくでもないこと言うねぇ。仕方ない、聞かせてあげよう。テラスのあのテーブルでね」
サントハイム城二階のテラスの一角で円形テーブルを囲み、グランマと孫たちは集った。
「さぁ、一体どこから話せばいいのかしらねぇ…」
「まずグランマはグランファとどうしてかけおちしたの?」
グランマの為に持ってきたお菓子は孫たちが次々消化してゆく。
三つ編みの女の子が淹れてくれた紅茶を啜りながらグランマは語りだした。
「グランファはね。この城の教会にいた神官でね、グランマとは小さい頃からずっと一緒だったの。グランファの名前、覚えている?」
「ん〜確かクリスピーだっけ?」
「違うよ馬鹿だな。クリフトだよ!」
「馬鹿じゃないもん!馬鹿っていうひとが馬鹿なんですよーだ」
「これこれ喧嘩しない。そう、クリフトね。グランファはグランマのことが好きだったの」
「グランファがグランマのこと好きだったの」
「グランマは好きだって言われたとき本当に嬉しかったの。だけどね。グランファは一般人でグランマはお姫様。身分が違った二人が愛し合うのは禁止されていたの」
「身分が違うと駄目なの?」
花瓶に入れた百合を見栄えよく生けていた三つ編みの女の子は問う。
「それはそれは大反対よ。それでもグランマとグランファは人の目に付かないようこっそり逢っていたの」
お菓子は孫たちの手によりなくなった。
「このお城には王様、グランマのお父様がね、いなくなった時があったの」
「僕知ってるよ。王様がいなくなった後魔物に占領されちゃっただよね。それをグランマはやっつけちゃったんだよね。凄いや」
「やっつけたあとまた王様は帰ってこないからまたお城には誰もいない日々が続いたの。
そんなある日、王様は帰ってきたの。まず魔物に占領されてボロボロになったお城を直そうとしたけど、お金が必要だったの」
お菓子を食べ終え、お腹一杯になった孫たちはようやくグランマの話に耳をたてた。
「じゃあグランマとお金持ちの王子様と結婚させればいい。そうしたらお金が入ってくる。お城も建て直せると政治をする人は考えたわけ」
「変なの。政治する人がグランマの結婚を決めるの?」
「昔はそうだったのよ。グランマはね、お金持ちの王子様と結婚するより大好きなグランファと結婚したかったの。だけどグランファは一般人。お金もないの。
グランマは王様や政治をする人にグランファと結婚したいんですと言いたかったけど言えなかった。そんなこと言ったら二人の間柄が裂かれるとおもった。
政治の人はグランファの身分のことばかり気にしていたからね」
「政治の人、なんだかいよいよ変だね」
「それがその時には普通だったのよ。グランマが王子様と結婚するならグランファは他の、グランマ以外の人と結婚するって。
それは当然のことよ。お互いに釣り合った身分の人と結婚するのはね。だけどグランマはグランファが大好きだった。忘れたくなかったの」
グランマは一息つき、渇いた口腔をお茶で潤した。無言で孫たちは次の言葉を待つ。
「一般人が王族に入るのが難しいなら王族が一般人になればいい。グランマはそう考えたの。それにはお姫様を、お城を捨てるしかなかった。グランファも提案に頷いた。これが、駆け落ち」
孫たちはほぅっと感嘆の息をつく。グランマはあさっての方角を見ながら会話を続けた。
「お城から離れて暮らしだしたのはとてもとても遠いところ。お城から探しにこれないようにね。
二人っきりで生活するのは初めてで、一日一日早く過ぎていったわ…。
ある日、お城でグランマのお父様が亡くなったそうなの。お父様は亡くなる前から王権を他の人に、お父様の血筋のものだったと聞いたわ、譲っていた。
そしたらその新しい王様はボロボロのお城をとても立派なものにしようとしてね。そうしたらお金がいっぱい必要になる。お城にはお金がないから国土に住む民へ、納税する金額をもの凄く高くしたの払わせたの。
国民はこれ以上お金がなかった。それでも取り立てはやってくる。お金がなければ土地や家などの不動産を没収した。住むところをなくした人々があちこちに溢れたみたい。
そんな感じだから勿論お城に食ってかかった人もいたみたいだけど…。隠れて罰した」
「それって…」
「拷問ね」
「ひどい…政治の人たちは何も言わなかったの?」
「多分…納税を自分の懐に入れてたみたいね」
「じゃあ、王様と政治の人はおいしい思いをしていたんだ」
「と、思うわ…」
グランマはぬるくなった紅茶を啜った。
「グランマはいくらお城を捨てたとはいえ、そんなお城の情勢に胸を痛めたわ…。
だからグランファと一緒にサントハイム領に帰ったの。
お城に行けばお姫様じゃなくなったグランマは入れない。だからまずお城の城下町サランの町に行ってみたの。
サランは荒んでいたわ。人々の顔には疲れがみえて覇気がない。ずぼらしい人がごみを拾って自分の物にしている。そんな風景があったの。
宿屋へ入ったら各地からやってきた沢山の人が武装をしていた。お城へ入り、民を苦しめる王様をやっつけようとしたの。
勿論会話で穏便に済ませればいいと思うわ。会話をしようとしても反対に捉えられ、牢獄にぶち込まれる。
もう苦しいですって。前の王様の方が、人間らしい生活が出来たと語ったわ。
周りの人たちはグランマがお姫様だったことを知っている。おてんば姫で有名だったからね。皆グランマを見ると泣きながら今の心情を語ってくれたわ。
グランマは皆が知っていたころのお姫様ではなく、既に一般人。じゃあ一般人として一緒に戦おうとした。革命軍の先導者として。皆を統べる主導者としてね。
お城には兵士がいっぱいいる。それは他の人たちが食い止め、グランファとグランマは兵士たちを潜り抜け、王様と謁見を果たす。そんな作戦をたてて、皆寝たわ。
次の日、それはそれは大勢の人々を連れて、グランマたちはお城にきたわ…。
―私たち国民は国の馬車馬ではない!―
―苦しめられるくらいなら死んだ方がマシ!―
―サントハイムを我ら国民の手に!―
―サントハイムに革命を!―
国民が次々と言葉を発した。言葉を聞きつけ、城から兵士がぞくぞく現れた。兵士の扇動者、兵士長は取り押さまえろ!抵抗するものは殺してもかまわん!と叫ぶ。
グランマとグランファは混戦中味方が誤って攻撃をしないよう目立つ格好をしていて戦いに臨んだ。
まず兵士の士気を削ぐ為に、兵士長を倒すことにした。
グランマとグランファは強いのよ。闇の帝王エスタークを倒したくらいなんだから。
下手に武器を持つと殺しかねないからグランマとグランファは素手で抵抗した。
素手でも相手がどんなに硬い甲冑を着込んでいても、壊す自信はあった。
兵士長の目の前にくると兵士長は目を疑った。今まで自分が仕えていた王女アリーナがいたんだもの。
躊躇っている間に手加減した手刀であえなく昏倒したわ。本気でやったら、首が飛ぶからね」
やけに血生臭い話に孫たちは顔をしかめる。
それから兵士たちの統一が崩れた。相手側の士気がなくなっている間に、味方を何十人か引き連れ、開門した。
お城に入ると更にグランマたちに兵士が流れ込む。それらを味方たちは引き受け、グランマは二階の王様がいる謁見の間を目指した。
謁見の間は絢爛豪華だったわ。周りは金でキラキラさせて、宝石で飾って。
兵士を牽制し、その奥へと、謁見の間へと滑り込む。
民草が蜂起して自分の軍が戦闘しているというのに王様は王座にふんぞり返っていたわ。
国民が反乱を起こすのはまたか、と思ったのかしらね。それが元王女が主導者だと知ると途端に襟を正した。
王様はやけに下出に出てきたわ。だけどグランマの気持ちは変わらない。この国を救う、国民として。…元王女として。
今まで王女って気持ちはなかったのに、プライドはどこかあったみたいね。
―サントハイムを奪回します。サントハイムに革命を!―
―弱者を守るのが上の立場のものでしょう。それなのに悪政を働いて民を苦しめる。…そんなあなたに王の座は相応しくない。死をもって償いなさい!―
王を拘束すると、王座の脇に置いてある国旗を掴み、テラスへ出て大きく振った。
それを見た国民たちは歓喜に湧き、兵士たちは戦闘の手を止めた。もっと悔しがるかと思っていたんだけど、王様の政治には心中反対していた人が大半だったのね。
国が、国民の手に翻った瞬間だったの。
王は公開処刑にて斬首した。今まで王の悪政に便乗し、甘い汁を吸っていた政治の人たちや貴族の人たちを逮捕して厳しく罰した。
国が解体し統治する者がいなくなると、ただでさえ不安定なこの国はいよいよ崩壊する。
国民は言ったわ。グランマにもう一度王女として国を建て直して欲しいと。
―私でいいの?私は国を、王女を捨てたのよ?―
―新しい国を創るのに何も存じぬ一国民が王として即位し、新しい法案を立案し執行するには長い年月が必要になります。そうなれば国はいつまでも不安定です。
元王女でありますあなた様ならば早く国を建て直して民を安泰させてくれるでしょう。
クリフト様と共に―
その言葉は王女の身分が自分に帰依したことと、一般人であるグランファと結婚出来るということだったの…。
すぐさまグランマとグランファは結婚式と戴冠式の準備をしたわ。
国の行事に、前王の時にお金をさんざん絞られたから結婚式は国民による手作り。国民はグランマに何もしてやれないと言ったけど。
衣装やブーケはもともとお母様のがあったし、タキシードはお父様のがあったからそれを利用したわ。結婚指輪は前王が所持していたものを利用。
別にグランマとしてはお金を掛けなくともいいの。グランファと結婚する、それだけがグランマの夢だったから。
同日に公開結婚式と戴冠式を行ったわ。これは異例なことよ。あの時は時間がなかったからね。
結婚式にはサントハイム領内の国民が大勢集まり祝福してくれたわ。
戴冠式にはお互いが冠をかぶせあった。
ここに新生サントハイム王国、新生女王アリーナと王クリフトが誕生したの」
孫からは拍手がわいた。
「それからの日々、めまぐるしかったわ…。友好国エンドールとの再度の交流。国民から意見を言える意見場を月一度設け、傾聴したわ。
それらは法案としてまとめる。
金と身分に恵まれた腐心の政治家が国民の為にと創る政治法案は国民の為になってないから政治家は一切いらない。
変わりに法案部として各地に住む国民を選んでその人たちに作ってもらったの。
自己満足による重税廃止。福祉の充実。土地の有効管理、観光業への力入れ…。
様々なことをしてきたわ…。
法案で自分が提案した身分を越えた結婚が可能、というのは受理された。
これで身分違いの二人が結婚を視野にいれた時、残された道は駆け落ちというのはなくなったのよ。
そのうち娘と息子が生まれて、娘が女王に即位するとグランマは王座を退いた。そしてあなたたちが生まれたの」
孫たちは照れくさそうに微笑んだ。
「駆け落ちの話からグランマの結婚話まで喋ってしまったね。つまらなかっただろうけど、今のあなたたちがいるのはグランマの努力があったこそだよ」
「グランマ、頑張ったんだね」
「自分で言うのも何だけど…頑張ったわ」
「あ…ママー!」
「ここにいらしたのね、お母様」
「グランマがね、かけおちの話してくれたの!」
「長かったけど楽しかったよ!」
「そろそろお勉強の時間だから部屋に行きなさい。お母様、ありがとうございました」
「ばいばいグランマ!」
「またね」
母親に連れながら、孫たちが部屋へ戻ってゆく。
「チャオ、ダンケ、ファーウェル」
三つ編みの女の子チャオ。青髪の男の子ダンケ。リボンの女の子ファーウェル。
名前を呼ばれた孫たちがグランマに振り返る。ううん。なんでもない、とグランマは首を横に振った。
孫たちが行ってしまうと途端にテラスには静寂が戻った。
頑張ってきたわよね、グランファ。
グランマは空を眺めた。虹はまだ出ていた。
一緒に頑張ってきたけど、年もあったし疲れていたのかしら、あなたは病に倒れて寝たきりになった。
あなたを置いて、一人で逝けない、と病床で私の手を握ったあなた。約束したのに。あなたは呆気なく逝ってしまった。
話疲れたのかしらね。暖かいせいかしら。なんだか眠くなってきたわ…。
グランマはテーブルに伏せて、少しうたた寝をすることにした。
瞳を閉じるときにあの青空の大きな虹を背景に、若りし頃の、神官帽子と神官服を着込んだ青髪の青年が見えた。
青年はグランマに手を差し伸べた。グランマも手を伸ばした。
一緒に、あの虹を渡って。
「ク……リフ…ト」
花瓶に飾られた百合が、綺麗に咲いていた。
(了)
(*´Д`)乙
(*;д;)な、ないてなんかいないんだからっ
すごくいいお話だったのに、孫の名前の変さですべてぶちこわし。
意味わかって使ってる?「やぁ」と「ありがとう」と「さよなら」
ファーエルって海外版ではメガザルなんだよね。
オリキャラの名前って難しいよな。
挨拶で統一したんだろうけど、どんな言語でも挨拶だけは知ってる、
って人は多いし。
言語がばらばらのほうが気になるかも。
響きが違うから引っ掛かるんだよね。
いろんな職人さんが出てきて嬉しいなあ。
廉価版も出るし、ますます盛り上がるといいな!
398 :
394:2006/05/31(水) 13:05:39 ID:jmiyrmpEO
レスありがとう。
ciaoは多目的な挨拶で、「やぁ」もありますが、親しい挨拶で「こんにちわ」「さようなら」って意味があります。ので使ったんですけど、失敗しましたね。指摘ありがとう。
ファーウェルってメガザルって意味があるんですか。知らなかった。
今度は捻らないどこうかな…。
あ、なんか読み返したらおかしかったな。
海外版では、メガザル→Farawellになってる。
ホイミ→Heal
ザキ→Beat
みたいに。
>>394 私も初めはちょっと孫の名前は引っかかったけど、
>>396が言うように、ぶち壊しになるほど変な名前ではないと思いますよ。
人名のつけ方一つでも書き手さんの考え方や趣味が出るし、そういう個性を含めて楽しんで読みたいです。
そもそも、そういう部分にケチつけるべきではないとも思います。
ですから書かれる方も気にせずに、趣味全開で楽しんで書いてほしいと思います。
>>394 GJです! 以前私が投下した作品に似ているとのことでしたが、悲恋物のあれですかね?
だとしたら、こちらの方がはるかに練れた文章で、おもしろいと思いますよ。
描写がお上手ですし、話の流れも自然だと思います。
あー、登場人物の名前・・・難しいですよね。実は結婚承諾SSを書いている途中で、
ファミリーネームの必要性に気づいたのですが(叙爵の際にクリフト・○○○と
書いたほうが自然だったので)、結局イメージに合う名前が浮かばず、すっ飛ば
したという経緯があります。なので、今回の名前を読んでも、私自身は特に何も
感じませんでしたね。むしろ、「おぉ!そういう手があったか!?」と感心したくらい
ですから。気にすることはないと思います。
それにしても、携帯からこれだけの文字数を投下するのって大変そうですね・・・乙です。
【月のかけら】を読んでくださった方、ありがとうございます。私にしては腹黒くない
クリフトだと思っていたのですが、読み返してみるとしっかり極悪腹黒神官ミニでしたね。
いつかは純真なクリフト君が書けると良いなぁ・・・。純真なクリフト・・・・・・・・・無理だなorz
いや、ここに腹黒萌えもいるから気にすんな。
むしろ暴走希望しますw
ブライ・シュタインコプフ
>>394です。酉と名前つけてみました。
>>400 そう言ってくれるとありがたいです。一応意図して書いているんで。
煩悩さん>そう、あの悲恋物です。
GJを戴きましたがとんでもないです。あなたの足元に及ばない駄文です。
ファミリーネームは私も考えたことがありますが、いまいちパッとしないんですよねぇ…。
クリフトに限ったことではないんですが。
携帯から文作成はメール打つ要領ですから全く無問題です。むしろPCで打ち込むほうが遅いです。
また懲りずに作成中です。SSとテンプレではあるのにまた長文…。
風邪で寝込んでましたので、久しぶりに出現しました。
職人の皆様、SS投下本当に乙です。じっくり楽しませてもらいました。
それと自分の作品も読んでいただき、ありがとうございました。
ソロ君に大暴れしてもらうつもりが、せつない話になってしまったです。
>>399 ホイミ(Heal)、ザキ(Beat)、ザラキ(Defeat)はともかく、
確かにメガザル(Farewell)は微妙ですね。
仲間の命を救って自分はこの世と「お別れ」だからでしょうか?
もっとよくわからないのがクリフトの職業です。
僧侶系なんだから"Priest"(聖職者)かなと思ってましたが、
海外版では"Chanceller"になってます。
ちなみに意味は、長官や大臣、書記官だそうです。
向こうでは偉い人なんですね、クリフト君。
それはクリストですね。
帽子の十字架すらカットされてるくらいだから
やっぱり宗教がらみはヤバイのでしょう。
407 :
スーパー1:2006/06/01(木) 22:56:05 ID:E3p+yiry0
海外出張帰還あげ
お スーパー1だ。どこの国に行ってたの?
409 :
スーパー1:2006/06/04(日) 11:03:53 ID:SDT8GWFI0
スーパー1出張乙!
「わぁ〜い!海だあぁー!」
アリーナが両手を広げて海へと駆け出してゆく。
眼下に広がるのはエメラルドグリーンの大海原。その彼方には綿菓子のような積乱雲が高度を上げて青空を浸食してゆく。
太陽光は水面に反射してキラキラと輝く。
アリーナがこんないい天気なのに城にこもって勉強なんて嫌だ、外に出ないと勿体無いとアリーナの勉強担当のクリフトに散々ごねて、クリフトは仕方なしに王に許可をとり、外へ出た。
アリーナは他の女官の授業にはごねないのだ。渋々ながら受けている。
クリフトなら我儘を言えば自分の要望が通ると思っているし、クリフトも融通を聞かせてしまうからクリフトの授業はいっこうに進まない。
「だって神様の話とか信仰の話ばっかで欠伸がでちゃうんだもん」
とは本人の弁だ。
悪く言えば舐められているのだがそこは幼なじみ故、本音を吐きやすいのだ。
どうせ授業をしたところでアリーナは寝ているし、今日も神様の話なんだからしてもしなくてもいいようなものだ…とクリフトは神学の教科書を閉じた。
外に出る、とは通常は城のテラスに出るとイコールなのだが、今日は年に一度のサントハイム城下町サランの町が祭り。
町内には露店が並び、夜になれば海上から花火が上がり、闇を色鮮やかに彩る日だ。
アリーナとしてはいい天気じゃなくても悪天候でも祭りでも外へ出たいだけなのだが、朝から祭りを告げる空砲があがっていれば祭りへの希望が高まる。
授業中止を伝えると、アリーナはこれ以上ない笑顔で微笑んだ。
一応野外講習として王に許可を貰ったクリフトは、授業は進まないけれど、風光明媚なこの景色を見て、心中では来て良かったな…と思う。
本日はクリフトが保護者として引率するから兵士の同行は必要ないが、通常はアリーナは王の許可がなければ外に出られないようになっている。
それは外でもし大事に至ったら困るし、いつでも所在確認、目の届くところに置いておきたいのだ。
ただでさえお城の中を総出で行方を捜すのに、それが広い場所で行方不明にでもなったら、いよいよ城の全ての人材を派遣し、全力で捜索にあたることになる。
それはアリーナが何かを他でしでかしてしまうという懸念ではなく、可愛い一人娘を愚男から守るという理由が表向きであるが、王自身が娘を慈しみたいだけで城という鳥籠に入れているだけだ。
自己満足である。
いい加減、娘は外へ、世界へ出てみたいと申し上げるのにそれはいかんと王威を翳して閉じ込める。
娘は親離れが出来ているが、親が娘離れが出来ていないのだ。
無論、クリフトはそのことを王に伝えるつもりはないが、小首を傾げるのは確かだった。
クリフトは外にいつでも出られるが如何せん文科系で、部屋に閉じ籠もり本を読破したり城内教会で神官としての勉学を学んでいる方が性にあっている。
身分が反対ならいいと思う。
閑話休題。
既に白浜の波打ち際で白いワンピースを翻せてはしゃぐアリーナへ追いつくように小走りしてクリフトは向かった。
本から得るものより、自然から得るもののほうが遥かにあるとクリフトは思う。
文字を読み、文法を理解し、知識を頭に吸収するのも教養であり人間として大切なことである。
しかし、それはあくまでも自分の想像した範疇内のものであり、現物ではないし、想像していたものと違うこともある。
知識ばかりを頭に蓄えた頭でっかちより、自然に触れ、自己の五感を稼働させて感じるものが良いと思うのだ。
アリーナは海水の冷たさを素足で触れ、海風をその肌に感じ、夏の匂いを嗅ぎ、日差しを肌に焦がす。瞳に天海の青さを焼き付ける。
アリーナは普段外に出る機会がないから、この時ばかりに感覚を研ぎ澄ませ、夏を精一杯学習する。
そんな彼女を羨ましいと思う。
クリフトはアリーナと遊ぶことにした。本で学ぶ知識より、自然から得る、自分が感じる本物の知識に。
今日の授業の先生はアリーナだった。
「海に来るなら水着を持ってくれば良かったわ。そしたら泳げるのに」
アリーナは波と戯れながら呟く。
「はっ。姫様は泳げるのですか?」
「泳げないわよ。だけど人間は太古では海にいたんでしょ」
アリーナの言葉にあっと驚く。
「手に鰭がついていなくても、きっと泳げるわよ」
勉強嫌いのアリーナにどこからそんな知識が刷り込まれたのか。驚きを隠せない。
「ですが、わわわたくしは泳げませんよ。小さい頃溺れたし。海はむしろ怖いです。気が滅入る」
「そうなの。海はそんなに怖いものではないわ。いらっしゃいよ」
アリーナは靴を脱いでおいでと手を振った。クリフトは恐る恐る海に近づく。
海へ入る。素足に浸される水の感覚。戻る幼少の思い出。
「ほら、逃げないで。波は穏やかよ。鮫もこないわ。来たら返り討ちにやるもの」
アリーナの差し出す手を命綱にし、クリフトは必死に波に足を浚われないよう、踏ん張る。歯を食いしばり、目を瞑る。それは刹那が永遠の時のように感じる。
「海は怖くない、怖くない…」
アリーナは暗示のように問いかける。
やがてクリフトは手を緩めた。
「慣れたでしょ?大丈夫でしょ?」
「ええ、なんとか」
クリフトは冷や汗を拭った。
海への恐怖心を克服すると、海で遊んだ。
砂浜に字を書いてそれがどっちが波に浚われても残らないか競争したり、砂でお城を作ろうとしたり。
身体を砂で埋めて砂風呂というのは肌を露出するのを拒んだクリフトに却下された。
二人は空腹を忘れ、海で遊び呆けた。
楽しいことは時間が早く過ぎる。
気付けば日は傾き、水平線へ沈んでいく。空は見事な夕焼け。二人の姿はオレンジ色に染まる。
そろそろ帰りましょうか、とクリフトが提案する。
名残惜しいわ、とアリーナ。まだ、帰りたくない。
アリーナは立ち止まってしまった。
「アリーナ様。日が暮れてしまえば兵士が探しにきますよ」
「…わかってる」
駄々とは違う様子に、クリフトは躊躇う。
「ねぇ。最近サントハイムの女の子達がクリフトに好意を示しているけど、クリフトは好きな子、いるの」
「は?」
唐突な話に眉をひそめる。
「幼なじみだもんね。隠し事はなしよ」
「…?アリーナ様。わたくし良くわかりませんが…」
「惚けているの?」
「惚けてはおりませんが…?」
「じゃあ鈍感なのね」
アリーナの苛立ちに、クリフトは首を傾げる。
「私見たのよ。女の子が恋文渡したり、思いを告白したりしているところ。もうお付き合いしているの?」
そんなところを寄りによって見られてしまっていたか。クリフトは内心舌打ちをした。
「いえ…お断りしましたが」
「何で?皆可愛いし性格もいい子ばかりよ。勿体無い」
「好きな人が、いますから」
「え…?」
「その人はどう思っているかは知りませんよ、ね、アリーナ様。どうなんですか?」
「どうなんですかって言われても?」
「あなたのほうが鈍感なのですよ」
クリフトの顔は真っ赤だが、夕日の色に隠れてわからない。
「…クリフトが、私のこと好きだってこと?」
「…そうですよ」
「…勿論大好きよ!…それだけ?」
「それだけです」
「恋人なら恋人同士の証があるわ」
アリーナは目を閉じ、待っていた。
こ、これはもしや。
「あ、アリーナ様」
他に誰もいないことを確認してから、クリフトはアリーナを抱き寄せ、唇を重ねた。
そんな二人の様子を城の屋上から双眼鏡で覗いている二人がいた。
「うう〜クリフトめ!外に出るのを許可しなければよかった…。アリーナを外に出せば何処の馬の骨がくっつくかもしれんと城内に匿っていたが…。敵は内部におったか!」
「王よ…。子供子供と親は思っているが子供はいつの間にか大人になっているもんじゃ。王もこの機会に子供離れしたらどうじゃ」
「う…うう〜嫌じゃ〜。あ、手を繋いで歩いてきとる…うわぁ〜ん」
「はぁ〜…情けないのう」
夕日の逆光で姿が影のようになっている二人を繋ぎとめる手。
よかったなぁ、クリフト。
隣で泣き喚く王を尻目に、幼い頃からアリーナへの想いを知っているブライは、安堵の様子で二人を双眼鏡で見つめていた。
アリーナのサランへお祭りに行きたいという申し出に、父王は未だ赤い顔して苦し紛れに頷いた。
「わーい。嬉しい。お父様、お土産買ってくるわね!何着ていこう〜」
ウキウキとはしゃぐアリーナとは対照的に、酷く泣き顔の王。
いつもなら王の顔色に敏感に反応するのにこの日ばかりはどうも感じないようだ。
許可を貰うと光の如く自室へ戻ったアリーナを見送った王の脇に控えていたブライが、
「良いのですか?これでは二人の距離が狭まるだけですぞ」
といつもと変わらぬ表情で顎髭をしごく。
「お祭りの日だけは外に出てもいいようにしている。本年だけは駄目だとは言えんわい…。うわ〜ん」
ブライは泣き出す王にハンカチを渡した。
「…どっちが子供かわからんわい」
ブライは溜め息をついた。
お洒落をしたアリーナが教会にいるクリフトを誘った。
昼は白い木綿のシンプルなワンピースだったが、夜は白い絹のベアトップフリルワンピース。膝上だが下品な長さではない。上に黒いボレロを着込んでいるから肌の露出は少ない。
アクセサリーは全てダイアモンドで統一。大きすぎず、小さすぎずのサイズは控えてでいて存在感がある。
少量の後れ毛はそのまま垂らしてあとの髪はアップにして止めている。いつものだらんと垂らしている髪型とはまた違った新鮮さを与える。
それに何より顔に化粧を施している。
お姫様の様な風貌に、クリフトは目を疑った。いや、お姫様なのだが。
「どうしたんですか…その風貌は」
「たまにはお洒落してみようと思ってね。どう?似合う?」
「とてもお似合いです」
クリフトは白いシャツと青いズボンのいたって普通のスタイル。アリーナがこうなら洒落たものを着れば良かったかな…と少し後悔した。
アリーナは元が良いのだから小綺麗な格好をすればそれ相応の淑女。
クリフトはアリーナをエスコートして城を出た。
アリーナの変貌っぷりにサントハイム内の人々は驚愕。
クリフトを好いていた女子達は、嫉妬と、悔しさと、そしてクリフト様の相手がアリーナ様ならと落胆した。
サランの町は既に祭りたけなわ。
灯りはあちらこちらに点っているが夜の闇には負ける。暗いので凝視しなければ人の顔はわからない。
だからこそアリーナが平民に混ざり祭りに参加出来るのだ。人々に混ざって露店で早速買い物。
「んん〜冷たい!毎年このお祭りで食べるアイスキャンディは格別に美味しいわ!あ、あれ。次に食べようっと」
露店で食べ物を購入。次々と消化してゆく。
「あ、これ」
クリフトは玩具露店で立ち止まり、品物を物色。アリーナはその中から箱に一定の間隔で並んだ指輪を指差す。
「このおもちゃの指輪、小さい頃買ったわ…懐かしい」
「これですか?おもちゃじゃなくても、もっといいもの貰っていたんでしょうに」
「そうなんだけど…。これが良かったの。小さい頃にやれルビーだのダイアモンドだの指輪を貰っても価値も可愛げも感じなかったわ。凄く大事にしてた。無くしちゃったけど」
「今はルビーの指輪貰ったら大事にします?」
「大事にしないわ。ジャラジャラして好きじゃないもの」
「この指輪、差し上げたら大事にします?ジャラジャラして嫌でしょうか?」
「…。大事にしようかな」
「それではデザインを選んで下さい。わたくしは…これを」
子供サイズだから大人のクリフトの指にはなかなかあうものがなかったが、かろうじて小指にはまった指輪を購入した。
「私はこれ」
マーガレットが付いた指輪をアリーナは小指に嵌めた。アリーナもクリフト同様サイズがない。
「指輪を買うなんて兄ちゃんたち恋人同士かい?」
露店のおじさんは二人をはやし立てる。
毎年平民のような格好で参加しているからアリーナは人に気づかれないが、召かし込んだアリーナも殆ど見たことがない。
目の前にいるのが王女アリーナだと知る由もないおじさんは指輪を購入する二人を恋人だと勘違いしているのだった。
アリーナはクリフトを見た。クリフトははい、と答えた。
「小指に嵌める指輪はピンキーリングと言って、幸せが訪れるそうですよ」
わたくしは既に幸せがやってきましたが。
クリフトは呟いたがその言葉は喧騒にかき消え、アリーナの耳には届かなかった。
どおん。
轟音をたて、花火が夜空に散る。
「花火だ…綺麗ね」
「ええ」
毎年見ている花火とは今年は違うわね。それは隣りにあなたがいるかしら。
二人は手を繋いだ。花火が閃光を撒き散らすたび、買ったおもちゃの指輪を照らした。
花火よ、どうか我らに祝福を。
この想いよ、この終わらない夏のように永久に続け。
(了)
( ゚д゚)海沿いの町、祭りと花火、ワンピースの姫様…
( ゚д゚ )サランに永住しようと思うんだが
ア
リ
GJ!海辺とか指輪とかいろいろ萌えた。
( ゚д゚ )俺もサランに永住したい
|
>422>424
こっち見るなw
GJ!
アリーナカワユス
駄々っ子王様はこのスレではもはやデフォルト?
ナ
クリフト乙〜!
>>425 ( ゜д ゜)オマイもサランに永住しようZE!
>>425 ( ゚д゚ )
引越代も割り勘でお得だぜ
429 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/08(木) 11:23:10 ID:RmldkaWr0
ひとまずage
hands
それは、よく晴れた日だった。
とある草原の周りに黒色一色で統一した衣類を着込んでいる大勢の人々が亡き人を偲んでいた。
殆どが大人の中、場違いとも捉えられそうな幼女が大人と似たような服を着させられていた。
花を抱え、無表情で立ち尽くしていた。
人々の中心には棺。中には女性が横たわっている。顔以外は全て白い花が飾られていた。
棺の中を覗く度涙を啜る人達。見てはいられぬと遠く一人で泣いている人。
「ねぇ、お父様。お母様はどこにいったの?」
何も知らぬ幼女…アリーナは父に問いかける。その言葉は人々の悲しみを誘った。
「アリーナや。母は天国へ逝ったのだ」
父は目頭をハンカチで拭いながら答える。
「天国?それはどこ?」
「アリーナ様、それは高い高いお空の、とても綺麗なところですよ」
品のある初老の女性がアリーナへ答える。
「お母様は、お空に逝くのね」
「アリーナ。お母様と最後のお別れをしなさい」
父は娘に言う。
幼女は人垣を割って棺内部を覗き込んだ。
死に化粧をした母の面影がある女性…。の胸に花束を無動作に置いた。
棺の傍らに控えていた王宮魔導師、アリーナの教育係のブライは顔に触れよと手を頬に触れさせた。
棺の人は氷の様に冷たく、頬は肉の弾力を失っていた。
アリーナは冷たいとだけ言葉を述べた。
「さぁ、お別れを」
「バイバイ」
アリーナは小さく手を振った。
生前を偲ぶ人の声、嗚咽があちこちから沸き起こり、彼女の名前を呼ぶ。棺の蓋は閉じられ、王家の墓へ入ってゆく。
アリーナは皆がむせび泣いている間、無表情で立ち尽くしていた。
次の日、アリーナは大好きな大きい熊のぬいぐるみを抱えて謁見の間、父がいる王座へやってきた。
葬式の儀は終了したが、喪に服す期間なので黒いレースのワンピースを着せて貰っている。
「ねぇ、お父様。お母様はどうしたの?」
アリーナは父に問う。
「アリーナ…。お母様はお空に逝ったんだよ。とても綺麗なところだ」
と最愛の妻を亡くして呆けている父は、状態を飲み込めてない娘に言う。
「お空にお母様が逝ったの?どうして?」
「お母様は病気で亡くなったんだ」
「亡くなるって何?」
「死ぬってことだ…」
死を理解し享受するのは幼い子どもにはまだ解らないのかもしれない。
「死ぬって何?」
「…」
伝えても無駄というわけでもなく、伝えるのが辛いと父は黙ってしまった。
「お母様!ねぇどこ?お母様ー?!」
謁見の間の彼方の方向へアリーナは叫び、ぬいぐるみを抱えてうろうろしだした。お母様、お母様…。アリーナの声は虚しく天井に吸われてゆく。
「アリーナ様…。まだ小さいですのに母を亡くしたなんて何て可哀想…」
と女官たちは嘆く。
母の面影を探して徘徊し、母の名前を呼ぶ娘の姿に苛立ち、父は大声を上げる。
「アリーナ!いい加減にしないか。お母様はもういないんだ!!」
大の大人が諫めるとアリーナはビクッと竦み、怒られたと解るとひっくひっくと嗚咽を上げる。
泣き出すのに時間はかからなかった。
「あ…お母様ぁー!うわーんうわーん…」
口を開け、大声で泣き出す娘を見、涙がすっと零れる父。
「お前が悲しむのは判る…。お前だけじゃないんだ。私もなんだよ…」
父は、顔を手で覆い、慟哭した。
部屋に籠りきりがかれこれ一週間続いた。
女官たちがアリーナの相手をしたりせめて慰めのものをと綺麗な細工の宝石や可愛いぬいぐるみを与えてもアリーナは見向きもせず、ずっとお気に入りのぬいぐるみを抱えて泣きやまなかった。
泣けば喉が乾くから飲み物は摂取するが胸がいっぱいで食事を取らず、進めるが拒否。
このままでは病み、母の二の次になってしまうと大人たちは今のアリーナの状態を心配した。
次の日。
女官が一人の少年を連れ、アリーナの部屋へとやってきた。
「アリーナ様。失礼します」
部屋には大量のぬいぐるみに囲まれたベッドで端座位になりお気に入りの熊のぬいぐるみを抱きしめて一人落ち込んでいるアリーナの姿があった。赤い顔は泣きはらした後。
「お友達を連れてきましたよ。さぁ」
女官が少年の背中をそっと押した。
「失礼します。アリーナ様。僕、クリフトと言います。どうぞ宜しく」
「…」
アリーナは恨めしそうな顔で二人を見つめた。
「アリーナ様」
クリフトはアリーナに近づいた。アリーナは微動だせず。
「僕が、あなたのお母様代わりになります」
クリフトは右手を差し伸べ、握手を求めた。
「お母様は、そんなに手は小さくないわ」
「僕の手はちっちゃいけど、それ以上に温かい心で包み込むから」
殆ど同い年なのに、クリフトの方が大人びている。
「僕は、母さんと父さんを亡くした孤児なんだ。よく泣いたよ。何で優しい父さんがいないんだろうって。母さん、僕が大好きなクッキーをよく焼いてくれたんだ。そのクッキーももう食べれない」
「お母様もお父様もいないの…?何で?」
「死んじゃったから」
「死んだ…死んだって何?」
「もうここにはいないことだよ」
「嘘よ…お母様、いるもの。きっと私を驚かせようと隠れているのよ」
「アリーナ様。そんなに泣いていると、お母様も悲しいよ。お母様だって好きで死んじゃった訳じゃない。出来るなら生きていたかったと思う。今は好きなだけ泣けばいいと思う。だけどお母様はもういないって受け入れなきゃ」
どんなに自分が求めても、母がいないということと、目の前の少年の優しく諭す言葉に涙腺が緩んでいるアリーナは、表現の仕方が泣くことしかできなかった。
「ひっく…お母様ぁ…うわーん…」
女官は泣かれるのは勘弁と退室した。クリフトは黙って片方の手でアリーナの頭を撫で撫でし、もう片方の手はアリーナの手を握った。泣き止むまで。その小さな手で。
母を失ったアリーナに必要なのは慰めの言葉やモノではなく、共感してくれる気持ちだった。
アリーナには父がまだいるのに、目の前のクリフトは父母を亡くしている。
それでも悲しみを乗り越え、尚且つアリーナの母親代わりになるという気持ちの優しさと心の強さはアリーナの心に響いた。
アリーナはいつしか自室を出て食堂で食事を取り、元気は少しずつだが出てきた。必ず傍らにはクリフトがいた。
死を受け入れた訳ではない。アリーナにはまだ死というものが判っていない。
それでも死は今までいた人がいなくなると理解した。
母の代わりにクリフトを友達にと提案したのはブライである。サランの町の教会で神父見習いをしている孤児の神童がいると聞いた。
孤児…。父母を亡くしたそうだ。アリーナ様とは傷の舐め合いにもなるだろうが、それでも現状打破しなければアリーナ様は衰弱していた…。
本当ならば同性が良かったのだが、探している時間はなかったし、同じ心の痛みを分け合えるような同性は見つからなかった。
ブライの目の付け所は良かったようである。あんなに落ち込んでいたアリーナの姿はなく、元気になって追いかけっこをしているのを見て、安心した。
良かったとブライは一人ごちた。
少女は少年との関わりを通して大人になってゆく。
アリーナはいつしか城を離れ、世界を巡る旅に出た。クリフトも心配だと同様旅に出る。
エンドール半島南端の一角に、サントハイム王国とエンドール王国の共同墓地、王家の墓に仲間と共に訪れたことがあった。
ここ最近誰も来てないようで墓は周囲の草木と同化している。恐ろしく静かだった。
「小さい頃、お父様に連れられここに着たことがあったわ。もうっ。草むしり位しておけばいいのに」
あの頃はまだ判らなかったけど、お母様は死んじゃってここに眠っているんだわ。
アリーナが振り返ると、そこには黒いワンピースを着て花を抱えた女の子が立っていた。
過去の自分だった。
死がどういうものかは判らなくてもいいわ…。
お母様を、あの優しくて温かくて、大きくてすべすべしたお母様の手にはもう二度と逢えないけれど…。
その代わりに、私を包み込んでくれる優しい手に逢えたから…。
だから、最初は悲しいけれど、それ以上に悲しむことはないから。
アリーナは胸の中で呟くと、女の子は消えた。
過去の自分と対話をしたアリーナに、母を亡くして泣いていた幼少の頃の姿はもうなかった。
ねぇ。あの時クリフトはお母様の代わりになると言って手を差し伸べてくれたわね。
私と大して大きさが代わらない手。
こんな手で私を悲しみの淵から抜け出せる訳がないと思っていた。
クリフトは私を喜ばそうとか、笑わせようとかしなくて、ただ私の手を握っていてくれた。
それだけで、私は救われたの。ありがとう。
同じくらいの大きさだったのに大人になるにつれてあなたの手の方が大きくなった。
大きい男の人の手に。
あの可愛い手はなくなってしまったけれど、私を支えてくれるのは変わらない。
あなたは私の母親代わりだった。今度は私がママになるの。ねぇ私、お母様と同じ手を持っているかしら。
記憶の片隅に残る、私の小さな手を握る、お母様の大きな手に。
今度はもう一人、小さな手が加わるから。三人で、手を繋いでいよう。
私の手を離さないでね。私もあなたの手を離さない。
ずっと。
こら彼方!
ちょっぴり涙ぐんじゃったじゃないか・・・(つд`)GJ!
墓に行ったときのセリフが上手く使われてるね。
いただきストリートポータブルより
マーニャ「ね、ね!〇〇ってちょっといい男じゃない?」
ミネア「・・・そうですね。少なくともトルネコさんより見込みがありそうです。」
アリーナ「わたしもザキにばっかりたよるクリフトより、よっぽどホネがあると思うわ!」
私の書いた文章にレスくれた人、ありがとう。
思うのだが。ここはSSだけじゃないといけないのか?
ゲーム内の会話に萌えとか、閉じ込めスレのようなネタでもいいと思うが…。
SSはレスがつきにくいと前いたスレでは言っていた。
コテ職人がいなくなれば過疎してしまうのは嫌なのだが。
皆さんどうだろう。
>クリフトとアリーナの行く末を語らうスレです。
と言う事ならSSだけじゃなくても良いのでは?
ところで
>>432の
>このままでは病み、母の二の次になってしまう
は二の次じゃなくて「二の舞」だよね?
>>438 クリフト「姫さまを見返すべく8のスキル制を習得しました。
これでいろいろ使えます。
剣スキル 斬鉄剣
槍スキル 急所突き
杖スキル ザギクロス
弓スキル ニードルショット
勇気スキル ザギガスラッシュ」
アリーナ「結局即死攻撃頼りじゃない!」
ワロスww
案ソロサイト更新されたね。
19人か。楽しみー。
444 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/12(月) 04:35:45 ID:0f0x2FZrO
あっー
>>440 指摘ありがとう。脳内では二の舞に変換しておいてください。…orz
ネタでもSSでもいいならバシバシ書いてほしいなぁ…。
また人減っちゃったなー。
エラーで書き込めないって職人さんいるけど他にもいるのかな。
俺もPCからだと専ブラはクッキーがらみのエラー、ブラウザだとノートンの反応で
板一覧までしかいけないんだよな。
とりあえず見てる奴挙手ノシ
>>443 アンソロ、絵師変わったみたいだね。
人減っちゃったけど〆切破りかなw
いつも見てるよ(・∀・)ノシ
やっぱアンソロ人減ったのかー。次巻って出るのかな?
見てるよ
アンソロ21人から19人になっただけだと思う
P数見てると結構ボリュームあって今からwktk
いつも見てますよ|∀・)コソーリ
ミケじゃ日付すら違うジャンル者だけど、最近ものすごい勢いでハマったよ。こういうスレがある事に感謝感激。スバラシイ。
冬はクリアリ本出したいな。
出そうぜ!
きのこの人の引用文が気になりすぎるw
むしろ出せ!!
・・・でも冬は買いに行けないorz
もう煩悩さんも店長もモンバーさんもまとめの中の人も前スレ506さんもいないのかなあ…
SS書けない俺ならイルヨ(・∀・)
お久しぶりです。
本業が忙しかったので、しばらくお休みしてました。
自分も
>>443さんと同じ状態になってましたが、
専ブラ最新版にしたら、書けるようになったみたいです。
今週末くらいから、そろそろ執筆再開しようかなと思ってます。
登場早々間違いスマソ
443 →
>>446でした。
おっ てんちょ久しぶ━━(゚∀゚)━━り!ワクテカしながら待ってるよ。
保守で
458 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/16(金) 17:50:03 ID:fzMg4rs/O
ほ
459 :
315:2006/06/17(土) 16:02:19 ID:sTvwtsHx0
まとめ人さんだ(゚∀゚)
お久しぶりです!まだ居てくれてヨカッタ!!
保守
まとめ人さんお久しぶりです。
保管ありがとうございます。
今日は父の日ですので、それにまつわるSSを書いてみました。
自分から見て出来はいまいちですが、とりあえず投下します。
今日も忙しい一日だった。私は書斎で大きく伸びをする。
前任の神官長が急逝され、私が就任してもう半年になろうとしていた。
歴代の長の中で最年少である私は、重圧を感じながらも周囲に支えられ、
非力ながらも自分なりに努力を重ねてきたつもりだ。
早いものだ。私と妻が結婚して、あっという間に六年が過ぎた。
若かりし頃の私は、ある意味妄想に近い夢を抱き続けていた。
小高い丘に庭付き一戸建てを購入。そこで始まる、愛する人とのスウィートな生活。
半分は現実となったが、もう半分は夢のままで終わってしまった。
妻との結婚が決まった時、彼女を補佐し、支えになろうと誓った私だが、
それを許すほど現実は甘くはなかった。
私は神官長としての職務に、妻は王族としての公務に忙殺される毎日。
家族水入らずで過ごす時間もままならない。
私の先輩や同期の中にも、家族を持つ者が多くなってきたが、
最近では、結婚生活にも新鮮さが薄れ、中には会話すら交わさない夫婦もいるという。
これらは『倦怠期』と称されるらしいが、多忙な私たちには別の意味で無縁の話だ。
ため息をつく私の傍らで、幼子が寝返りを打つ。
婚礼の夜にこっそり城を抜け出した私と妻は、世界中のあちこちを旅した。
その旅の途中で授かった、私たちのかけがえのない宝。来月でもう五歳になる。
髪と瞳の色こそ私の方を受け継いだが、愛らしい面差しは幼い頃の妻を思い出させる。
はたから見れば、私たちはこれ以上ない幸せな家族に映っているだろう。
だが、全てが順風満帆にいっているわけではない。
わが国の歴代の王族は、未来を予知する能力を有するという。
武術に長けた妻には、能力が全てそちらに集中してしまったらしく、
予知の兆しすら見られなかった。しかしその血筋は脈々と受け継がれ、
一世代だけ小休止を取った後、次の代での新たな目覚めを待っていたのだ。
私たちが異変に気づいた時、この子はまだ三歳にも満たなかった。
比較的早い方だったとされる義父上でさえ、覚醒されたのは六歳の頃だったそうだ。
彼女は頻繁に未来の夢を見るらしく、うなされては私の部屋を訪れる。
力は強ければよいものではない。それを制御できる肉体と精神が備わっていなければ、
どちらかに異常をきたし、やがては自身を滅ぼすことにもなるからだ。
願わくは健やかに成長し、愛する人と幸せな家庭を築いてほしい。
私は、小さな寝息を立てて眠るわが子の頭を優しく撫で、毛布をかけ直した。
その時、紙切れらしきものが床に落ちた。私はそれを拾い上げ、そっと開いてみた。
『おとうさまへ』
『いつもおしごとおつかれさまです。きょうはおかあさまとふたりで
おとうさまのだいすきなとりにくのシチューをつくりました。』
文はここで終わっていた。しかし、今日の食事にシチューなど出なかったはずだ。
これはどういうことだろうか?
あごに手を当てて考え込む私の背後で、ドアをノックする音が聞こえた。
振り返ると、そこには妻が立っていた。今日は早めに公務を終えたようだ。
私は妻に紙切れを見せ、わが子の真意を尋ねてみた。
妻はくすっと笑うと、娘には内緒だと前置きをし、そっと耳元でささやいた。
明日、私の好物である鶏肉のシチューを作りたいから、作り方を教えてほしいと
妻に相談したのだそうだ。紙切れは食事の際に発表するメッセージの原稿らしい。
私は、この子によく本を読んで聞かせた。かつての旅の話や
わが国の歴史の話、そして異なる世界の話など、内容は数知れない。
数日前に読んだのは、異世界に伝わる風習にまつわる話だった。ある世界では
父親や母親に感謝の気持ちを伝える日があり、そのうち父親の方にあたる日が、
こちらにもまもなく訪れることを話したのだ。母親の日が既に過ぎたことを
悔しがっていたこの子の様子を、私はふと思い出した。
明日、娘と二人で頑張って作るから、今の話は聞かなかったことにしておいてね、と
茶目っ気たっぷりに語る妻。彼女の身体には、新しい生命が宿っている。
出産の予定日は晩秋だそうだ。お腹のふくらみが少し目立ってきたように思う。
最近、わが子が『弟』の夢をよく見ると言っていた。弟とけんかをしたとか、
泣かせたとか。幼い頃の私と妻を思い出してしまい、少し恥ずかしい気分になる。
次の子供が男の子かもしれないと聞いて、特に義父上は大喜びだ。
まあ、私を含めて『女の子』にはさんざん苦労させられたから、
お気持ちはわからないでもないが。
私は健康で丈夫な子なら、男女どちらでも構わないと思っている。
私は、隣に座った妻の手を取り、肩をそっと抱き寄せた。
これが私たちに与えられた、束の間の夫婦の時間。
子宝にも恵まれ、新しい家族の誕生を待ちわびる至福の時。
さあ、もう夜も遅い。明日も早いから今夜はもう休もう。
私は、わが子を起こさぬようにそっと抱きかかえ、先に部屋から出る。
その後、妻がゆっくりとドアを閉め、私たちは寝室へと向かった。
あまりにも多忙なために、『倦怠期』などに陥る暇もないと
周囲には漏らしていたが、どうやらそれは思い違いだったようだ。
暇がないのではない。理由がないのだ。
普通の家庭とは状況も立場も異なるが、私たちは誰にも負けないくらい幸せなのだ。
寝室に入った私は、わが子を再び寝かせ、妻が寝息を立て始めたのを確認する。
そして明日を楽しみにしながら、私自身もゆっくりと眠りに落ちた。
(完)
GJ!ほんわかとした感じになりました。
店長GJ!淡々とした文章だけどほのぼのとした愛を感じた!
長いこと繋がらなかったようで…
やっと復旧&お久しぶりでございます。煩悩神官です。
諸事情でパソから遠ざかって早三週間。本日漸くここへ戻ってくることが
できました。
>店長さん
GJです。父の日ネタ素敵ですね。『倦怠期』知らずのクリアリに乾杯(完敗?)!!
しばらく身辺のどたばたが続きそうですので、あまりこちらに顔を出せないかもしれませんが、
暇を見つけてSS製作に励みますね。ではノシ
煩悩さんお帰りなさいー。
胸に抱いて
「わたくし、クリフトは、ゴッドサイドへ赴きます」
主君アリーナ姫と王宮魔導師ブライと旅している途中で出会った仲間達と立ち寄ったゴッドサイドの街。
ゴッドサイドは神を崇める信心深い者が目指す巡礼の旅の終着点で、聖地の街として知られる。
街全体が聖なる白色で統一され、荘厳な雰囲気が街を包む。
熱心に神に祈る信仰心豊かな人々。神殿で神の啓示を聞き入れる大神官達。
賑わいとは無縁。神が君臨している様な、神聖な街。
旅ではアリーナを護り、支えるのはクリフトの役割だったが、クリフト個人が目指したのはここ。クリフトにとって巡礼の旅でもあった。
願うならば一度は訪問したい憧れの場所に足を踏み入れた。
大神官と話を交わしたことがあった。
大神官はクリフトのことを存じであり、若くして神の道に入り、努力して今の神官の位を得たことを高く評価していた。
そして、良ければこのゴッドサイドで更なる修行をしないか、と話を持ちかけた。
確かにサントハイムの小さな教会よりは、聖地で学べるのであれば願ってもみないことである。
今は我が国サントハイムの治安の不安定さを救う為の旅、また邪悪なる者を討ち滅ぼす旅をしており、良い返事は出来ないが、いずれは是非とクリフトは可能性を残した答え方をした。
それで別れたのだが。
その後、邪悪なる者は倒され、サントハイムには王が帰還して現在サントハイムの情勢は安定している。
ゴッドサイドの大神官は忘れていなかった。
サントハイム在中のクリフト宛てに手紙を出し、その後、大神官自らサントハイムへ訪国し、クリフトとの謁見を希望した。
ゴッドサイドへ、クリフト殿を招き入れたいーー。
返事は今すぐ、との大神官の言葉に、逡巡する間もなく行きます、とクリフトは答えた。
ゴッドサイドへ行くことをサントハイム国王に伝えると、「そうか。気を付けていくのだぞ。身体を大事にな。健康第一だ」と短い言葉であった。
幼少の頃から散々世話になったアリーナへ報告すると、「そうか。クリフト、ゴッドサイドに行くのね。長年付き添ったあなたがいなくなるのは淋しいけれど…。頑張ってね」と笑顔で答えられた。
別に引き留めて欲しいなどとは微塵にもなかったが。
門出を祝う言葉に一抹の淋しいを覚えた。
行くなら早い方がいい。先方を待たせているのだし、と引っ越しの準備を始めた。
幼少の頃から今までの長い間このサントハイムの教会の裏の部屋で暮らしていたが、荷物は殆どなかった。
たかだか大きい箱二個分だけである。
引っ越しするのはとても簡単だな、と荷物を詰め込んだクリフトは肩をすくめた。
クリフトは本棚から一冊の本を取り出した。
自身の教科書として使い古した本で、ところどころアンダーラインやら付け加えをして本文がわかりずらい。
手垢にまみれたこの本のページに挟んである一枚のプロマイド。
アリーナの横顔のプロマイド。
異国の道具、カメラと言うらしい。そのカメラはレンズに写る物をシャッターボタン一つ押せばカメラに内蔵された紙に写すことが出来るという。
その被写体をアリーナに絞り、シャッターを切った。
こっそり撮ったものであるから、アリーナの視線はクリフトに向いていない。
もし、クリフトがアリーナへ心に抱く気持ちを伝え、アリーナをも同等な気持ちであるのであればレンズはアリーナの顔の正面に向けられたのであろうか。
そういえば、クリフトはアリーナを正面きって会話するということがあまりなかった様に思う。
いつも、見てきたのは横顔だった。
ただ側に寄り添い、アリーナの発する命令を聞き入れる腹心。
自分はアリーナにとってそんな存在だった。
ずっと一緒だったのに。アリーナの側には必ずクリフトがいた。
手を伸ばせば触れることが出来るのに。身体は近くにいたのに、心だけは遠く離れていた。
ゴッドサイドに行く前夜。
手続きやら最終的な荷物整理やらを終わらせ、長年身を置いたサントハイムの教会での最後の祈りを始めた。
クリフトは世界中を飛び回り、その都度教会へ足を運び祈りを捧げた。
大きく立派な教会、小さく素朴な教会。いろんな教会を見てきたが、やはり自分の教会が一番だと思った。長年馴染んだ教会。
今度はゴッドサイドの教会を一番に愛せるようにしなければ。
目を閉じ、神への言葉を述べ、正面の神像に最後の祈りを捧げた。
不意に後ろの扉をノックする音がした。招き入れる。その相手は―――ブライであった。
「ブライ様」
「サントハイム最後の夜にも祈りを捧げるか。熱心なことじゃのう」
「最後、だからですよ。ブライ様、夜分遅くにどうなさいました。明日お早いでしょう」
「年寄りは早く目が覚めるから心配なさんな」
クリフトはブライに椅子に腰掛けるよう促した。
ブライがどっこいしょと全体重を椅子に掛けた。
ブライは教会でお祈りするのも久方ぶりじゃとその皺くしゃな手を合わせ、神像へなむなむと拝んだ。
クリフトはそんなブライを見ていたが。ブライは祈り終えると、正面を見据えたままクリフトに問う。
「…お主はこれで良かったのか?」
「…何のことですか」
「しらばっくれているつもりか。お主を幼少の頃から見てきた儂じゃ。その位分かる。隠していてもこの儂にはお見通しだ」
「…何のことか、分かりかねます」
「…なら良い。ゴッドサイドに行くのは…逃げではないか?」
「違います。わたくしはサントハイムで学びうるものは学び尽くしました。自分の憧れの土地で学べるのであればそちらで勉強をしたいです。
別に出世を望んでいるわけではありません。
神官という地位に恥じないほどの知識と実務を学びたい。それは、我儘でしょうか?」
ブライは否、と小さく呟いた。
「こうして会話出来るのも今日で最後じゃな…。だからはっきり述べておく。お主、アリーナ様を慕っていたではないか?良いのか。自分の気持ちを伝えなくても」
「アリーナ様にとってわたくしはただの腹心。それ以外何とも思わぬ存在です。伝えてどうなりましょう。アリーナ様の感情を掻き乱すことになりかねません。ですから、言うつもりも、それ以上の関係を望むこともありません」
「お主なら、アリーナ様を支えると思ったのだが…」
「アリーナ様を支えるのはどこぞの王子ですよ。わたくしには関係ありません」
「それなら…良い。後悔もせぬだろう。ありがとうクリフト。お主ならあちらでも頑張るだろう。せいぜい精進せい」
「今までありがとうございました、ブライ様。頑張ります」
二人は握手を交わした。ブライはさて寝るぞ、と扉を開閉して教会から出ていった。
流石ブライ様。年の功もありますが、人の心を抉る術を持ってらっしゃる。
クリフトは心の内で呟いた。
叶わぬ恋心にいつまでも胸を焦がすより、自分の将来を決めるこの談に乗ったまでのことである。
恋を諦め、仕事に没頭する。サントハイムに決別すれば、アリーナ様を忘れられる。それをブライ様は『逃げ』と捉えたのでしょう。それは半分嘘で半分は…本当です。それでも…。
わたくしは、わたくしの生きる道を見つけました。
アリーナ様はアリーナ様の道を…。王子と手を取り、そのふわふわした赤毛の頭に冠を戴くことがあなたのすべきこと。
ああ。
平民と王家。地と天との差がある。わたくしには身分の差を超えてこの恋を成就させるだけの度胸と勇気はありませんでした。
やるせない気持ちに、涙が止まらない。嗚咽が教会に響いた。
翌朝。
見送りに来てくれる人の中に、アリーナの姿があった。
「クリフト、今までありがとう。言葉に表せないわ。本当にありがとう。あっちに行ってもクリフトのことだから頑張ると思う。身体に気を付けてね。ただでさえ身体弱いんだからね」
アリーナは目尻を拭った。幼なじみがいなくなるのが淋しいのだろう。
「何かあったら帰ってきてね。ここがあなたの故郷なんだから」
「ええ」
優しい言葉をありがとう、アリーナ様。
ありがとう、愛したあなた。正直、別れるのは身が裂かれるくらい苦しいです。
新しい生活が始まります。嫌なことも、辛いこともあるでしょう。そんな時にはあなたと過ごした楽しかった思い出を支えにして生きていきます。
あなたを愛したこの気持ちを胸に抱いて…。
もう二度と逢わないでしょうけれども。
「さよなら、クリフト」
アリーナは笑顔で見送る。両手を振る。あまり見たことのない、正面からのあなたの顔を目のレンズに焼き付けて。
最後のあなたの姿を。
「それでは…。さようなら」
(了)
ぬわーーーーっ!!
切ない!GJ!!
これぞクリアリ…!!切なGJです(;´Д`)
ほんのり泣いたGJ(つд`)
読んでくれてありがとう〜。
今までアリ>クリでしたが漸くクリ>アリで書けました。
客観的に自分の書いたものを読んでみたがだいぶ酷いですね。
精進せねば。
実らぬ恋の切なさ加減がとてもリアルに思えて感動しました。
素晴らしいSSを読ませて頂きました。GJ!!
上記の人ありがとうね。嬉しいです。
…15禁とか駄目?ちょっと性的なものを匂わすのは…?
カモンヌハァハァщ(´д`щ)
某◎悩神官さんとか下ネタ満載だったから大丈夫かと・・・w
投下カモ━━Щ(゚∀゚Щ)━━ン!!
正座してまってます(・∀・)
+
+ ∧_∧ +
+(0゚・∀・)
(0゚つと) +
+ と_)_)
正座こそwktkの極意也
エロ、カ・モ━━(゚∀゚)━━ン!!
のっけからハイテンションでスマソ・・・orz
>彼方さん
いつも素敵SS、GJ!! そしてエロ、楽しみにしていますv
下ネタ・エロ、大好きです。だから下ネタ満載“煩悩”神官・・・。アホスwwwww
>>470 ただいまです!!
目の回るような忙しさも6月末で一段落つきそうな予感。ほっと一息・・・。
ということで、もうしばらくは一住民としてよろしくです。
正座し続けて足がシビレ━━(゚∀゚)━━タァ
SS読んでくださった皆様ありがとうございました。
風邪で寝込んでしまい、お礼が遅れてすみません。
固有名詞なし、セリフも極力なしの縛りでSS書いてみたのですが、
思った以上に難しかった…まだまだ修行が足りませんね。
>彼方さん
毎回GJです。いつも楽しく読ませてもらってます。
次回作は15金とのことで、wktkしながらお待ちしてます。
>煩悩さん
お久しぶりです。お元気そうでよかったです。
最近お忙しいみたいですが、身体には気をつけて下さいね。
治療のため、自分も今月いっぱいは休業になりそうです。
皆様も風邪にはお気をつけてノシ
一応聞いてみましたが良いそうなので作成しております。
エロというか…。その、ライトなもんですよ。
出来たら脈絡なしに投下します。今しばらくお待ちを。
+
+ ∧_∧ +
+(0゚・∀・)
(0゚つと) +
+ と_)_)
正座しながら待ってます!
数日前にきのこの人のサイトやっと見つけた。
すごいね、この人。上手いわ。
+
+ ∧_∧ +
+(0゚・∀・)
(0゚つと) +
+ と_)_)
正座しながら保守
保守代わりに気になるセリフを…
いたストでのクリフトのボツセリフに
「アリーナ様 好きじゃーっ!!」というものがあるそうですw
神官どうしたのその口調??という感じですね。
一体どういう場面で使われる予定だったのでしょうかw
ボツセリフなのかYO!
好きじゃーっ!って本当どんな場面で使う予定だったのか気になるなw
めぞん一刻のパロディか
響子さんですか
年齢がわかるねえ。
クリフトは好きとか軽々しく口にするタイプじゃないと思うのだけどどうよ?
軽々しく言えるような奴だったらこんなに萌えないよ!
アンソロ価格、148ページで800円だって。
かなり安いな。
例え両想いでも身分の差があって言うに言えず、想いを胸に秘めてるところに萌えるんだよ!
アンソロ、ボリュームたっぷりだな!タノシミ(・∀・)
誰かMOON LIGHT SERENADEの裏URLわかるやついねぇ?
行きたいんだがチキンでメールとか送れねぇorz
よりによってここで聞くような香具師に教えてくれる人はいないと思うぞ……。
つかあそこまだ運営してるのか?
裏は知らないが久しぶりに見に行ったら小説一本更新されてたよ。
よいしょ
おおお書けた!
何度バージョンアップしてもなんか途中で失敗するのはなんだろう……。
でも、書けたからいいや。
ご無沙汰してます。
あ きのこの人だ!ご無沙汰です(・∀・)
長らくお待たせしました。
脈絡なく投下、と言いましたがお断りを。
以下の文は15禁であります。読みたくない人は飛ばして下さい。
反対に物足りないという18才以上、性行為の描写OKの方はピンサロドラクエ官能小説へどうぞ。
流れとしては官能小説→このスレになっていますが、どちらも完結していますので片方だけでもいいです。
一度抱いてしまえば、二度と手放せないことは解っていた。
シルクのカーテンを開ければ、漆黒の夜空に月がその姿を現す。深くたれこみ、皓々と光を放っていた。
セミダブルのベッド。私の隣には、安らかな寝息をたて、眠っている少女。
産まれたままの姿に一枚薄いシーツをかけたまま。
安心しきって眠っている無防備なその姿に愛おしくなり、月光に照らされた頬にそっと唇を触れた。
少女は起きなかった。私は視線を月に移す。
身分の差。人間が作り出したただの俗物。服を脱ぐと同時にそんなものも脱ぎ捨てた。
職業の枠。神聖なる神官の仮面を剥ぎ取った私なぞ、ただの男にすぎない。
そして私が愛し貫いたのは王女ではなく、一人の少女。
あなたの総てが欲しくなる。一つ得ればもう一つ。そして二人で交わることを望んだ。
あなたの白いその素肌を慈しむより、自分の今まで抑制していた気持ちの方が先走った。
あなたを感じたい。私を感じて欲しい。加えて、感じさせてあげたい、この指で。
月が照らす。光が、降り注ぐ。
月の光を浴びたあなたのその白い肌は内面から淡い光を放つ。まるで月の女神のよう。
あんなに激しく交わったのに、まだ愛したりない。
湧き起こる情欲。我慢できない。
私は、あなたのその滑らかな曲線を描く双丘に貪りついた。
月の魔力で変化した獣の様に…。
このスレでは紹介だけして、作品はすべて官スレ投下したほうが良かった気が。
あと官スレはピンサロではない、念のため。
GGGGGGGJJJJ!!!!
官スレだけ読んだらちょっとアレだったけど、この文で納得。
ゴチでした!!
ああ…皆さん…すみません…。
○エロパロ
×ピンサロ だし、
一気に投下すれば良かったとか、あちらから誘導し忘れとかあちらの住人にもこちらの住人にも迷惑かけてしまいました。
本当にすみません。
私が荒らしてからしばらく投下してきましたが、この件でだいぶ両スレの皆さんに迷惑をかけました。
15禁はアレなので、これを最後に投下してロム専に戻りたいと思います。
いままで読んでくださった皆さんありがとうございました。
レスくださった皆さん、勉強させてくださってありがとう。それでは。
クリフトのアリーナへの想いは
海の彼方に夕日がゆっくりと沈んでゆく。
波が風をはらんでうねり、浜へと辿り着く。
空は夕焼けでオレンジ色と水色が混じる。闘いの日々を忘れてしまうようなそんな穏やかな夕暮れ。
他の戦士たちは見える所でこの海で採れた幸に舌鼓を打っている。
クリフトと勇者ソロは一足早く頂いて浜へ腰を下ろし、一息付いた。
「ふぅ〜旨かった」
「やたら食べましたね」
「身体動かしているからな。ところで。お前さぁ。アリーナのこと、どう想っているのさ」
「はい?」
「まんまだよ。傍から見ればアリーナは何とも想っちゃあいなそうだが、お前はさ。お前を見ていればアリーナを目で追っているじゃん。あー好きなのかな、と俺は見ていたけどさ」
「それは…主君を守る臣下である私です。いつでもどこにいるか見当を付けるのは当然でしょう?」
「本当に、そうか?熱い視線を感じるのは気のせいか?」
「何で、そんなこと聞くんですか」
「死闘を繰り広げる日々のほんのオアシスだと想ってさ。恋愛は」
「……」
「お前がどうしてアリーナがいいかなんて野暮なことは聞かないさ。俺から見てもアリーナは魅力だ」
「ソロさんもアリーナ様は魅力を感じるのですか?」
「ソロさんもってなんだよ。アリーナは戦闘力が魅力ってことだよ、何焦ってんだよ。何とも想っちゃあいないさ。俺には…シンシアがいるからな」
「ああ…」
「俺はシンシアが好きだったからな…。シンシアも俺を好きでいてくれた。幸せだったよ。だけどシンシアは俺の身代わりになって亡くなった…。俺の形見はこの羽帽子。あいつの顔は…。目を閉じれば思い出せる」
「ソロさんは、シンシアさんのことを未だ好きでいるのですね」
「そうだよ。だからアリーナやモンバーバラ姉妹は何とも思わない。いつまでも昔のことを考えているから。俺の時間は、あの時から止まったまま…。
だから、親友のお前には幸せになって欲しいんだ。せっかく相手がいるんだし」
「ソロさん…」
「湿っぽい話になっちゃったな。こんな話するつもりじゃなかったのに。で、アリーナにはお前の気持ちを伝えるつもりはあるのか?」
「ありませんよ…」
「漸く白状したな。星の数程女がいるのだから、アリーナに固執することはないだろ?他の女と付き合ってみたらどうだよ?別にアリーナが駄目とか言う訳じゃないんだよ。ただ、王族との恋愛は難しいと思って」
「私には、星の数程の女性がいても、その中に輝きを持った女性はほんの一握りしかない。その中からアリーナ様を見つけたのです。それは稀有なことです。
ソロさん。想いを伝えて結ばれるだけが恋ではありません。遠くから見守る恋もあるのです」
「それを片思いっていうんだ」
「あはは、そうですね」
「いいさ、別に付き合いは別として、気持ちを伝えるだけでもいいとは思うけど。お前は引っ込み思案なのは知っているが、アリーナが王族じゃなかったらお前は素直に気持ちを伝えているか?」
「さぁ…どうでしょうね。余り王族王族言わないでくださいな。それは…越えがたい壁です」
「悪かったな」
「いいえ」
「お前は強いよな」
「何がです?」
「戦闘での戦いっぷりとかじゃなくてさ。意志が強いってこと。その越えがたい壁を目の前にして尚自分の気持ちが揺らぐことなく一直線に相手に想っていられるのはさ…」
「私は…。ただ、アリーナ様を愛しているだけです。強いなんて思ったことありません。そしたらシンシアさんを愛しているソロさんだって強いでしょう?
この恋を諦めるのは簡単です。ですが諦めたら終わりですよ、何もかも」
「後は伝えるだけなのにな」
「そう…。いつかは伝えたいとは思いますよ」
「そのいつかは今日か明日か永遠にか?」
「そういじめないでくださいよ。今は…。この気持ちを抱きしめて、今を生きるのみです」
「お互いに、な。…風、強くなってきたな」
「ええ。そろそろ戻りましょうか」
アリーナ様…。私、いつかは伝えますから。この想いを…。
また一人職人さんが減ってしまった・・・ショボ-ン(´・ω・`)
いつでも戻って来てね。
一番下でさすがに焦ったのであげときます。。
>彼方さん、G━━(゚∀゚)━━J!!
禁もの執筆、本当に乙です。感動のあまり思わず小躍りしてしまいました。
いいなぁ、私も下ネタじゃない禁物、書いてみたいっすよ。でも表現力がついてこないorz
彼方さん、また機会があったらぜひSS投下してくださいね。待っています。
相変わらず多忙な日々が続いております。新しいSSを書く暇もありません。
なので、過去に没庫に放り込んだSSを発掘中です。何とか投下できそうなものが
あれば整形してから落としますね。ではでは。
あちらも拝見しましたが、どちらも独立した作品として堪能させていただきました。
厳しい書き込みもありますが、彼方さんを応援している住人も沢山居ると思います。
また新たなるSSの投下、お待ちしてます。
>>520 乙。
ここの板は、『下から落ちるわけではない』事を知っておけば、なお良かったな
コンバンハ。煩悩神官です。いつもは昼に現れることが多いのですが、本日は夜の徘徊です。
ファイルを漁ってみたらかなり前に頂いたお題物が出てまいりました。
ということで、
>>255さん お待たせいたしました。お題【ライバル】投下します。
サントハイム王は玉座にぼんやりと座っていた。
「陛下、どうされました?」
そのあまりの覇気のなさに、少々戸惑いつつブライが訊ねる。
「いや・・・・・・なんでもない」
普段が普段だけに、おとなしい王は正直気持ち悪い。
口に出せば間違いなく不敬罪に問われそうな言葉を内心で呟き、ブライは不可解そうに眉をひそ
めた。王の教育係として、そして重鎮として仕え、この道50年のブライでさえ、ここまで落ち
込んだ王を見た記憶はない。
(一体、何が?)
不気味な不安を感じたブライは小さく身震いすると、重ねて問う。
「一体何があったのですか?わしでよろしければ、相談に乗りますぞ」
ブライの言葉にのろのろと目を上げたサントハイム王だったが、暫し沈黙した上でぽつりと呟い
た。
「父親は、辛いのう・・・」
一度言葉にして少し気が軽くなったのか。
聞くんじゃなかった、と後悔の念を滲ませたブライに気づくことなく、それから半日もの間、王
は己の感情を滔々と吐き出し続けた。
「え? 陛下が、ですか?」
紅茶を注ぐ手を止め、クリフトはアリーナのほうを振り返った。
「そうなの。最近、何だか元気がないみたい」
どうしちゃったのかしら?
いつも無駄に元気な父親のことだけに、娘のアリーナも少し不安げに見える。
「ねぇ、クリフト、どうしたら元気を取り戻してくれると思う?」
アリーナが真摯な瞳を向け訊ねてくる。
クリフトは「そうですね」と答えたところで、紅茶のポットを手にしたままだったのに気づき、
無言でカップに注ぎ始めた。そしてクッキーをのせた皿とカップをアリーナの前に差し出すと、
不安げに見上げてくるアリーナにやんわりと微笑んだ。
「わかりました。私も何か考えてみますね」
クリフトの言葉にアリーナは「ありがとう!」と満面の笑みを浮かべると、クリフトの首に手を
回し、そのまま頬に口付けた。
「なるほど、そういうことですか」
その日の晩、ブライの元を訪れたクリフトは、濃い疲労の色を浮かべる老人に深い同情を覚えつ
つ頷いた。
サントハイム王が落ち込んでいた理由は、政治的なことでも、外交的なことでも、経済的なこと
でもなかった。一国の王としての悩みではなく、ひとりの人間としての、一介の父親としての、
非常にありふれた悩みだった。
「つまり、娘を恋人に取られてしまったことがショックで、自信をなくされた、と」
クリフトの言葉に、「うむ」と遠い目をし、深々とため息をついた。
「陛下のお気持ちはわからんでもないのじゃが、このままでは公務が滞って大変なことになりそ
うじゃ」
どうしたもんかのう・・・。
心底困った様子で呟くブライ。その声を聞きながら目を瞑ると、クリフトは思考の海に身を委ね
た。
(陛下をお元気にする方法・・・)
いくつかの案がクリフトの脳裏を過ぎり、そして消えていった。
ブライが黙って見守る中、僅かに身じろぎをするとクリフトは目を開ける。
「ブライ様、ご協力願えますか?」
「うむ? いま、なんと言ったのじゃ?」
翌朝、王がのろのろと玉間に現れると、ブライがこっそり耳打ちをしてきた。
その様子を大きなバスケットを抱えたアリーナがニコニコしながら見守っている。
「ですから、今日は一日、休養を取られては如何かと」
ブライの言葉尻に乗っかり、アリーナが続ける。
「天気もいいし、一緒にピクニック行きましょうよ」
ね、お父様。
重そうなバスケットを難なく持ち上げて、アリーナが促す。
その愛らしい微笑みに思わず頷きかけた王だったが、ふと眉根を寄せると首を横に振った。
「行きたいのは山々じゃが、公務があるからのう・・・」
娘の前で、良識のあるところをみせようとでもいうのか。
妙に生真面目に答える王にブライは思わず眉間を押さえた。
(昨日その公務をほったらかしにしたうえ、さんざん愚痴ったのは誰ですじゃ)
心の中で思いっきり突っ込みを入れながら、ブライはこほんと咳払いをした。
「あー、その件でしたら、手は打ってあります・・・・・・わし一人ではかなりきついですが、大臣と
あと・・・・・・今日はクリフトもおりますので」
手伝ってくれるのじゃろう?
ブライがそう呼び掛け視線を送った先には、山積みになった書類の数々。玉座からは陰になって
いてわかりにくかったが、どうやらそこにクリフトが控えていたようである。
クリフト、という言葉に肩をピクリと動かしたサントハイム王は、その人影に気づくと思わず背
筋を伸ばし、胸を反らせた。
(こやつだけには気弱なわしを見られとうないわ!!)
変なところで高い王の矜持を知ってか知らずか、ブライに促されたクリフトが穏やかな微笑を浮
かべる。
「及ばずながら、お力添えをさせていただきます。そうですね、これくらいの量なら何とか一日
あれば処理できると思います。あとは玉璽を押されるだけでよいようにしておきますね。陛下、
今日は心ゆくまでごゆるりとお寛ぎくださいませ」
その頼もしい言葉に大臣は思わず相好を崩したが、サントハイム王が睨むと慌てて表情を取り繕
った。
(まずい、まずいぞ)
内心焦りまくりのサントハイム王はむっと口をへの字に曲げたまま、クリフトをまっすぐに見据
える。一方クリフトは、その痛いほどの視線を、底の見えない『微笑』という仮面で迎え撃つ。
王は呻いた。
確かにアリーナとのピクニックはとても魅力的だ。本当なら公務などほったらかして今すぐにで
も出かけたいくらいである。
しかし、そうなるとクリフトが公務を代行・・・大言壮語を吐かないクリフトのことだから恐らく
口にした以上、必ずやり遂げる自信があるのだろう。
(それはまずい、非常にまずい!)
クリフトの政治的能力が公の場で認められることになれば・・・。
(余は隠居街道まっしぐらじゃ!)
それだけはいやじゃ。
内心ではそう思うものの、心底嬉しそうにこちらを見ているアリーナの姿を目にすると、ピクニ
ックへの願望が、否が応でも高まってしまう。
(余は、どうしたらいいんじゃろう)
決断をしかねて思わず沈黙をしてしまった王だったが、次のアリーナの言葉で決心がついた。
「大丈夫よ、お父様。お仕事の心配はいらないわ。だって」
―――――クリフトがいるんですもの。
「アリーナ」
サントハイム王が急に改まった口調で話しかけると、アリーナは無邪気な表情をまっすぐに向け
てきた。
「なあに、お父様」
そのかわいらしい表情に僅かに頬を緩ませた王だったが、威厳を保つためひとつ咳払いをする。
「アリーナよ。公務というものは誰が執ってもよいというものではない。おまえもゆくゆくは
サントハイムを統べる身。よく覚えておきなさい」
そこで一度言葉を切ると、今度は少し済まなさそうに項垂れる。
「公務を放棄するわけにはいかぬ。アリーナや皆の気持ちは嬉しいが、わしは・・・余は王じゃか
ら」
いつになくかっこいい父の台詞に目を丸くしたアリーナが頬を紅潮させる。そして首を横に振る
と誇らしげに笑った。
「さすが、お父様ね」
かっこいいわ。
アリーナの言葉に気をよくしたサントハイム王は、かわいい娘にさらに度量の広いところをみせ
ようと、胸をそらしながらのたまった。
「おまえこそ要らぬ心配をして疲れたであろう。今日は一日自由にしてよいぞ」
「え?本当に?」
やったー!!
諸手をあげて喜ぶ娘の姿に、妙な満足感を抱きながら、王はついでのように付け足す。
「というわけじゃ。クリフトも下がってよいぞ」
さっきまでの覇気のなさはどこへやら。
異常なくらいの意欲を見せる王は早速大臣に命じると、猛然と書類に目を通し始めた。
「わぁ、風が気持ちいい〜」
搭を吹き抜ける風に艶やかな赤毛を靡かせながら、アリーナがうっとりと目を細めた。
「お弁当もおいしかったし、最高ね」
顔にかかる髪をそっとかきあげながら、嬉しそうに笑う。
そんなアリーナに、「そうですね」と相槌を打ちながら、クリフトが琥珀色の液体をカップに落
とす。
「さあ、姫様。紅茶が入りましたよ」
湯気の立つカップを差し出したクリフトに微笑みかけると、おもむろにカップに口をつけ歓声を
上げた。
「おいしい」
病み付きになっちゃいそう!
熱いのも構わず飲み干して、アリーナはおかわりを催促する。そんな子供じみたアリーナの姿に
心からの笑みを零しながら、クリフトが2杯目を差し出す。
「姫様、いくらおいしくても飲みすぎてはいけませんよ。それに・・・」
先の言葉を続けようとしたクリフトの唇に人差し指を押し当てると、アリーナは首を横に振った。
「わかってるわよ。残りは、お父様へのお土産、でしょ」
「その通りです。甘いものは疲れを取りますからね」
答えるクリフトの唇が人差し指をくすぐり、アリーナはその感触に僅かに頬を赤らめた。
父王はピクニックに来られなかったものの、天の采配か、人事の妙か、奇しくもクリフトと一緒
に過ごす時間が生まれた。もちろん、父王と一緒に来られなかったのが寂しくないわけではない
けど、いまのアリーナにとっては、クリフトとふたりっきりで過ごす時間ほど楽しいものはない。
アリーナはクリフトの唇からそっと指をどけ、正面から見つめると、優しい恋人ににっこりと微
笑みかけた。
クリフトがピクニックの行き先にさえずりの搭を選んだ時は正直驚いた。
彼は高いところが苦手だったから。
でも、理由を聞いて驚き以上に嬉しさがこみ上げてきた。
クリフトがさえずりの搭を選んだ理由は、そこで採取できるさえずりの蜜を手に入れるため。
そしてそれは公務で疲れている父王へのプレゼント・・・。
アリーナはその心遣いがとても嬉しく、そして誇らしかった。
(やっぱりクリフトは最高の人ね)
そう心のうちで呟いたものの、言葉にするにはなぜか気恥ずかしくて、アリーナは別の言葉を発
する。
「でも、クリフトも疲れちゃったんじゃない?昨日あまり寝ていないんでしょ?」
クリフトこそ甘いものが必要なんじゃないの。
クリフトの瞳がいつもより少し赤いことに気づいていたアリーナが気遣う言葉をかける。
それが嬉しくて、クリフトはやんわりとアリーナの手を包み込んだ。そして優しく引き寄せると
指先に唇を落とす。
「姫様、いえ、アリーナ」
突然名前を呼ばれて、頬を赤く染め上げたアリーナにそっと囁く。
「甘いものならもういただいておりますよ」
貴女との甘い時間が、私を一番癒してくれますから。
クリフトの言葉に、「もう、クリフトったら」と照れたアリーナだったが、やがて瞳を閉じると
イタズラっぽく笑った。
「じゃ、もっと甘くしてあげるわ」
煩悩神官シ・エ━━(゚∀゚)━━ン
「まだまだ、あやつには負けられんわ」
かっかっか!
恐るべき意欲ですべての仕事を終わらせたサントハイム王が秘蔵の酒まで持ち出して、満面の笑
みを浮かべる。
「ほれ、ブライも飲め飲め。わしの手腕に惚れ直したであろう」
ブライに杯を勧めながら、上機嫌でのたまう。
「確かに、お見事でしたな」
ブライがそう答えるも、その称賛の先は王というよりは蒼髪の青年に向いていたりする。
クリフトの計画を聞いたとき、王の性格を逆手に取ったいい案だと思った。
王はライバルに挑まれて、あっさり引き下がる性格ではないのだ。
案の定、王はクリフトに負けたくない一心で立ち直り、いままで以上のやる気を得た。
申し分のない結果であると思う。
だが、同時にクリフトの抜かりのなさに舌を巻いてもいた。
(どちらに転んでも、己に利あり、か)
もしサントハイム王がクリフトの意図に気づかず、アリーナとピクニックに出かけた場合、彼は
その処理能力を遺憾なく発揮し、確固たる地位を得る。そしてアリーナの尊敬も一身に浴びる。
この場合サントハイム王は隠居に追いやられることになるが、アリーナとピクニックを選んだ時
点で、政治的判断能力の衰えは否めないので仕方がないとも言える。
そして、今回のようにサントハイム王が正解を勝ち取った場合だ。本来ならそれだけで終わりの
はずが、気がつけばちゃっかりアリーナと、王の代わりにピクニックに出かけている。
その手腕があまりに見事で、もはや言うべきことはない。
ブライがそんなことをぼんやりと考えていると、王の能天気な声がブライの鼓膜を打った。
「のう、ブライや。これだけ余が使える男だと証明できれば、アリーナの気持ちも余に戻ってく
るだろうな。『お父様、かっこいいわ』なんちゃって。・・・・・・おぉ、そういえばアリーナはどこ
じゃ?」
そう言いながらきょろきょろする王に、ブライは哀れみを感じた。
「あー、姫様なら・・・クリフトと一緒に、さえずりの搭へ行きましたじゃ」
ブライの言葉に、サントハイム王は笑顔のまま固まる。
「誰と、どこに?」
「クリフトとさえずりの搭へ」
「何のために?」
「デートですな」
「・・・・・・何でさえずりの搭?」
「まぁ、デートスポットとは言いがたいですが、それなりに眺めはいいですぞ」
それが?
「あそこは未だ魔物が出るというではないか!?そのような危険なところにわしの可愛い娘を
連れ出すとは」
許せん、と握りこぶしを作る王にブライは呆れた。
「どちらかというと、姫様は魔物と闘えると喜びそうですが」
「しかし、怪我をしたら」
「クリフトがおりますれば」
「あやつの魔法力が切れたら」
「ほっほっほ。それも心配ございませぬじゃろ。万が一魔法力がきれることになったとしても、
あそこの地下には・・・」
地下には?
自分で言っておきながら、思わず青ざめたブライ。
そう、あそこには「あれ」があった!?
ブライの背筋を冷たいものが伝った。
(しまった、失言じゃ!!)
顔面蒼白状態に陥ったブライを怪訝そうに見返し、サントハイム王は小首を傾げる。
「地下?地下に何があるというのじゃ?」
「な、な、な、何でもございません」
「何でもないことはなかろう?」
脂汗が浮かんでおるぞ?
胡乱気な目つきをするサントハイム王に、ブライは必死にシラを切りとおす。
「何でもございません」
「おぬし、いったい何を隠しておる」
「何でもございません」
「おぬしは後ろ暗いことがあると、いつもそう言ってごまかすのう。で、何があるのじゃ?」
「何もございませんよ」
「うぬ、強情な・・・よかろう。吐かぬなら 吐かしてみせよう きりぎりす じゃ」
「陛下、それを言うならホトトギスでは」
「うるさい、早う吐かんか」
「ですから、何もないと」
「えぇい、吐け、吐け!えい、えいっ」
「お、おやめくだされ。ぶわっはっはっはっは・・・」
「どうじゃ、わしのくすぐり攻撃は、吐く気になったか?」
「ひっひっひ」
「笑っておったらわからぬであろう!いいから吐け、吐け、ハゲ〜」
「む、陛下!!今なんと申されましたじゃ?」
「何でもいいから吐け〜」
「いやじゃ、いやじゃ、いやじゃ〜」
「そ、それはわしの専売特許!」
「いやじゃ、いやじゃ、いやじゃ〜」
「ぬぬ、わしの真似をしおって!こっちこそ、いやじゃ、いやじゃ、いやじゃ・・・」
―――――サントハイム王秘蔵の酒『夢見の雫』、別名『大トラ酒』。
この世のものと思えないほどの芳醇な味わいと、信じられないほどの口当たりのよさから幻の銘
酒と謳われるこの酒は、どんな酒豪であってもその酔いから逃れることは出来ないと言う。
「へ、陛下!ブライ殿!!」
先程までの喧騒もどこへやら。奇妙に静まり返った部屋を恐る恐る覗き見た大臣は、目の前の惨
状に慌てふためいた。
大人になれば一度や二度は経験することではあるが、度数の強い酒を飲んだ後に大声を出し続け
ればどのようになるのであろうか。
「だ、誰か〜、誰かさえずりの蜜を!!」
大臣が見たもの。それは、酒と大声で喉を痛め、全く声の出なくなった王とブライの姿。
クリフトの機転で漸く政事が正常に作動し始めた矢先の不測の事態に、大臣は心神耗弱状態に陥
り、その場に膝をついた。そして誰かが駆け寄ってくる足音を知覚しながらも、力尽きたように
そのまま床に突っ伏した。
翌朝。
「うぬぬ、余としたことが一生の不覚じゃ!!」
よもやあやつに借りを作ってしまうとは!!
すばらしい美声を発したものの、直後すさまじい頭痛が襲い掛かりサントハイム王はこめかみを
揉んだ。
王冠のかわりに頭に載せられた氷嚢が妙に痛々しい。
好敵手に塩ならぬ蜜をおくられてしまったサントハイム王は酒臭い息を吐きながら、同じく氷嚢
を載せた腹心の部下を振り返る。
「リベンジじゃ!!」
よせばいいのに再度大声を出し悶絶する王を横目に、ブライは深々と息をつく。
「陛下・・・」
『借り』を返す『当て』(能力)があればよいのじゃが・・・。
どう見ても分の悪い勝負に遠い目をしつつ、ブライはこめかみを押さえてのたうちまわるサント
ハイム王にそっと冷たい蜜水をさしだした。
(終)
支援ありがとうございます。そして長々とお付き合いくださり、
ありがとうございます。
それにしても、さえずりの塔の地下施設って経営成り立っているのでしょうかね?
煩悩さん、乙でした!
プレイするたびニヤニヤが止まりません>地下施設
趣味経営ですかね?どちらにしても有難いもんです。
天然かもしれないけどクリフトのセリフに悶えまくりでしたよw
ホントは塔の難易度が高いから救済措置であるだけなんだろうけど
煩悩さん、乙でした!
プレイするたびニヤニヤが止まりません>地下施設
趣味経営ですかね?どちらにしても有難いもんです。
天然かもしれないけどクリフトのセリフに悶えまくりでしたよw
ホントは塔の難易度が高いから救済措置であるだけなんだろうけど
父親の葛藤、クリフトの策士さ、アリーナとの甘い一時。そして二人のギャグ・・・!
いろいろ詰まっててスゲーです!煩悩さんGJ!
あの宿屋は道楽でやってるとしか思えないなw
出した本人も忘れてたお題を書いてくれてアリガトウ(・∀・)
王冠のかわりに載せられた氷嚢にテラワロタ!
地下施設利用キボン!そしてエロへwwwww
二重投稿になってた…
すみませんでしたorz
ニジュウトウコウナンテ キニシナイ!(・э・)
545 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/02(日) 13:38:10 ID:VQEdRrX70
煩悩さんGJです!
煩悩さんのクリフトは切れ者で大好きです!
ここの職人たちはレベルがたかい!
いいものよませていただきますた
涙もながしたお
私だけ?クリアリより煩悩さんのサントハイム王に首ったけなのは
ここにもいますよ。
サントハイム王の後妻になりたいくらいです。
>>548-
>>549 ライバルwwwww
私もサントハイム王大好きです!
煩悩さん、GJ!!
>>550 ホントだw
ザラキフォー!
フォー!
って、きのこの人ID変わっちゃってるフォー!
つお題【ガーデンブルグの牢屋】
・・・なんなら二人で入ってもらっても(*´Д`)ハァハァ 無理?
没庫ファイルで、さらにお題【仲直り】を発見。
よっしゃー、これでお題コンプリート!!と思ってやってきたのですが、また
新たなお題【ガーデンブルグの牢屋】が出てましたね。暇見つけてがんがります。
レス、ありがとうございます。長くて読みにくい文章ですみませんでした。
もう少し読みやすい文章が書けるように、精進します・・・。
では、お題【仲直り】投下しておきますね。
―――――いつも仲良しな二人が喧嘩をした。
そんな報がサントハイム城を駆け巡ったものの、城の者たちは「すぐに仲直りするだろう」と笑
って流した。しかし、数日の後には問題が深刻化し、大臣が胃薬を片手に彼らに近しい者のもと
へ駆け込むこととなる。
「お願いです。何とかしてください!!」
数時間後、王の執務室にブライとクリフトが現れた。
執務室の中にはアリーナとサントハイム王。
アリーナは腕組をして、サントハイム王は溜息をついて彼らを出迎えた。
大臣が胃薬を持って駆け込んできたとき、彼らはのんびりとお茶の時間を愉しんでいた。
忙しい日々の幸福なひと時を邪魔されたふたりは渋い顔をしたものの、サントハイム一大事とあ
っては動かざるを得ない。
いい歳して周りまで巻き込んで喧嘩するとは、と溜息を覚えたが、彼らの意地っ張りな性格を
思えば、これ以上悪化する前に手を打つしかなかった。
ふたりはおのおの説得すべき相手のもとを訪れ、そして再三の説得の上、漸く二人を対面させ
ることが出来たのである。それに費やされた時間はもちろん彼らの休憩時間だったわけで。
往生際悪く、この期に及んで意地を張り通す二人に、説得組のふたりは顔を見合わせて、同時
に溜息をついた。その溜息に気づいた二人が居心地悪そうに身動ぎした。そして気まずげに喧
嘩相手に視線を送ると、おずおずと口を開いた。
「・・・・・・あの・・・」
「うっ・・・・・・・」
再び押し黙ってしまった二人を見て説得組のふたりも遂に切れた。
「お父様!!」
「ブライ様!!」
「「『ごめんなさい』は?」」
そう、喧嘩をしていたのはサントハイム王とブライ。ちなみに喧嘩の理由は、王がブライの大切
にしていた『梅昆布茶』を無断で飲み、それに怒ったブライが王秘蔵の『塩せんべい』をやけ食
いしたことに端を発す。
これが一介の人間のすることなら、何も仲裁役などいらないであろう。
しかし悲しいかな、サントハイム王とブライは王国にとって最重要人物であり、それ故、王とブ
ライの不仲はサントハイムの政治の中枢を直撃し、非常に厄介な事態を引き起こしていたのだ。
ふたりっきりの甘いティータイムを愉しんでいたアリーナとクリフトは、非常に機嫌が悪かった。
アリーナは腕組みをしながら父王を睨んでいたし、クリフトはいつもどおりの穏やかな笑顔を口
元に浮かべていたものの、目は笑っていなかった。
アリーナとクリフトの剣幕に押されたのか、王とブライが同時に小さな声で呟いた。
「「ゴメンナサイ」」
仲良きことは美しき哉。
サントハイムを震撼させた世紀の大喧嘩はこうしてあっさりと幕を下ろした。
(終)
ティータイムを邪魔され不機嫌なクリアリに萌え〜♪
サントハイム王とブライに禿萌え!
煩悩さんGJ!!
梅昆布茶と塩せんべい・・・・ワロタ ̄|_|○
【ガーデンブルグの牢屋】投下お待ちしています。ワクワク。
「姫さま、あまりはしゃぐと危ないですよ」
「大丈夫よ、クリフト。わたしは落ちても泳げるから平気」
「そうですか? でも、お気をつけくださいね」
水の都、スタンシアラ。街中に張り巡らされた水路は常に水が循環され
ており水質がよく美しい。多くの荷物を載せた筏や小舟が盛んに往来して
いる様子を見ればしみじみと、世界が平和になったことを実感できる。
アリーナは活き活きとした表情でこの美しいスタンシアラの街並みを
筏に揺られながら眺めている。時折同じように筏ですれ違う人々に笑顔で
手など振っていることもある。もちろん、アリーナの格好はといえば冒険
の間していたもので、街の人々は当然一見しただけではアリーナがサント
ハイムの姫君だということには気づかない。クリフトは筏を器用に動かし
ながら、楽しそうに過ごしているアリーナの横顔を見て微笑む。
例のお見合いの一件からしばらくして、アリーナのご機嫌を相当に損ね
てしまった大臣と国王は、2〜3日国外へ遊びに行きたいと言うアリーナ
のおねだりをいつものように断ることはできなかった。アリーナも今回ば
かりはこちらには貸しもあることだ、と少々意地悪な気持ちになり、本当
ならば1日でよかったものをそんな風に大きく言ってみたのだ。思いのほ
かあっさりと自分の要求が通ったことに少々拍子抜けしつつも、泊りがけ
で遊びに行けることにアリーナの心は弾んでいた。
そしてさすがに一国の姫君をひとりで放り出すわけにも行かず、クリフ
トとブライがお供をするように命ぜられたのだが、最近のブライはどうに
も腰の調子が悪いとのこと。神経痛が季節の変わり目で悪化したらしく療
養中だと言うことで、お付きの者はクリフトのみとなった。
「ブライも一緒に来れたらよかったのにね」
昼過ぎにキメラの翼でスタンシアラに到着し、まず国王に挨拶に行った。
もちろん公的な訪問ではないため、ただの旅人として簡単な面会を果たし
たのみではあったが。その後街のあちこちを探索した。以前3人で旅をし
たことのことを思い出したのだろう。アリーナは少し寂しそうにそう言っ
た。そんな彼女の表情を見、優しくクリフトは声をかける。
「そうですね。ブライ様には何かお土産を買って帰りましょう」
「そうね。それがいいわ」
「もう少し行くと露店街がありますから、そこで何かお探しになってはい
かがです?」
「うん、そうする!」
以前旅をしていたときに訪れたときは、街の中の移動手段は筏と小舟の
みだったが、今はいくつか橋も架かっている。橋はそのほとんどが跳ね橋
となっており、荷物を多く載せた船も通れるようになっているのだ。
「少し以前とは町並みが変わったようですね」
「そうみたいね。前より便利になったのかな」
「やはり橋も必要のようですね。姫さまは以前のように『泳いだほうが速
い』など、言われないんですか?」
冗談交じりにクリフトがそう言うとアリーナは少しむすっとして言い
返す。
「そんな昔のこと、言わなくてもいいでしょ」
「いえいえ。姫さまは以前よりおしとやかになられましたね、と言いたか
ったのですよ」
「どうせわたしはおてんば姫ですよー!」
そんな風に他愛もない会話をしているところ、急に強い風が吹いた。地
面を救い上げるような風にアリーナの帽子が吹き飛ばされてしまいそう
になり、あわててアリーナは筏の上に立ち上がり手を伸ばそうとした。
「姫さま! 急に立ち上がったら…!」
「きゃ…」
帽子はアリーナの手をすり抜けて手の届かないほうへ飛んでいってし
まい、アリーナの身体が大きく傾いた。アリーナの靴が水面を踏みそうに
なり、危ないと感じたクリフトがアリーナの手を取ろうと彼女に近づく。
クリフトがアリーナの手首を取ったかと思えば、二人の体重が一箇所に集
まりすぎて筏のバランスが乱れ、結局二人とも派手な水しぶきを上げて水
路の中に落ちてしまったのだ。
水路はそんなに浅いものではなく、クリフトがようやっとつま先で立つ
ことができるくらいの深さだ。泳ぎが得意なアリーナも身につけたマント
がずっしりと水を吸ってしまい、思うような動きができない。片腕で筏に
つかまったクリフトにしがみついていることしかできない状態だ。
「大丈夫ですか、姫さま」
「う、うん。なんとか…」
「だからあまりはしゃいではいけませんと言ったんですよ」
「帽子が飛ばされたから立っただけじゃない!」
口げんかを始めかけた二人ではあったが、あたりに人だかりができてい
ることに気づくととたんに黙り込んだ。観光客の多いこの街の人々はこの
ようなことは珍しくないようだ。体格の良い男性が筏に乗って二人に近づ
くと、慣れた様子でアリーナから順に引き上げた。二人は恥ずかしさをこ
らえながら助けてもらったことに礼を述べ、びしょ濡れのままそそくさと
その場を立ち去った。ブライへのお土産を買うこともできず、まだ宿へ行
くには早い時間ではあったが、濡れたままの格好ではどこへも行けない。
それに加え水路の水は海水を利用しており塩分が独特のベタつきを感じ
させ、アリーナとクリフトは不快感でいっぱいであった。
「あの、ひとり部屋を二部屋、お願いしたいのですが…」
まだ遊び足りなくていささか不機嫌気味のアリーナを連れ、クリフトは
宿屋へと足を運んだ。宿屋の女性は二人の様子に何があったのかを一目で
理解してくれたようだ。
「申し訳ございません、お客様。あいにく今日はお客様がいっぱいでして、
もう部屋が埋まってしまって……」
「え……」
「二人部屋なら一部屋、ご用意できるのですが……」
クリフトは少し動揺し、少し後ろにいるアリーナを見た。
当然、アリーナと一緒の部屋に宿泊するなど家臣として許されることで
はない。しかし全身濡れてしまいさすがに冷えてきたのだろう。両腕を抱
くようにしてたたずむアリーナを置いて、ほかの宿を探しに行くのもため
らわれる。いざとなれば自分は野宿でもすればいい…そう心に決め、クリ
フトは宿帳に名前を書いた。
***
「申し訳ありません、姫さま。今日は部屋が埋まってしまっていて、この
部屋しか空きがなかったようです」
かろうじて筏の上に引っかかり、荷物が水難を逃れたのは不幸中の幸い
だった。二人はそれぞれ風呂に入り着替えを済ませさっぱりしたところだ。
それでもクリフトには大問題が待っていた。何とかアリーナを水浸しの
格好から救ったものの、この部屋は二人部屋だ。そう広くはない部屋に二
つ並んだベッドがクリフトの動悸を早める。
「私、今宵は外で過ごしてもかまいませんので…」
「別にいいじゃない。わたしは平気よ」
「ですが……」
「気にしない気にしない。それに外で過ごすって行ってもどこに行くの?
わたしをほうっておいたら大臣に怒られちゃうわよ」
「それはそうですが、やはり……」
「早く夕食食べに行きましょ」
何でもないことのようにあっけらかんと言うアリーナ。この状況がわか
っているのだろうかと、クリフトは小さくため息をつく。同時にまったく
『男』として見られていないということを認めざるを得ず、小さかったた
め息が深いものに変わる。
普段なら見ることすらないアリーナの風呂上りの姿。髪を上手にまとめ
楽な部屋着を身に着け、どう考えようとも顔が赤くなるような状況に、お
供としてついてきたことをクリフトは後悔さえした。
そんなクリフトの思いなど露知らず、アリーナはひとり先に夕食を摂る
ために食堂へ向かった。
***
スタンシアラは海に囲まれた島国とあって魚介類が豊富にとれる。宿の
夕食も魚料理がメインで非常に美味なものだった。
夕食を食べ終えたアリーナは部屋に戻り、ベッドの上に横になりくつろ
いでいる。
「おいしい料理だったね。サントハイムでとれる魚とはちょっと違った感
じだったわ」
「…そうですね」
「なんて言う魚だったのかしら。聞く前に食べちゃったから、聞いておけ
ばよかったな」
アリーナとの会話もどこか上の空になってしまい、クリフトは落ち着か
ない。アリーナのいるベッドからできるだけ離れたところに椅子を運び、
いつも身に着けているロザリオの手入れをするも、同じところばかりを布
で拭いてしまっている。意識しすぎるあまり手先がおぼつかなくなり、ロ
ザリオを落とすこと数回。動揺を悟られたくなくてクリフトはずっと気を
張り詰めたままだ。
「ね、明日はどこに行こうか。マーニャとミネアに会いにモンバーバラに
行く? それとも、ソロに会いに行く?」
それとも…、と明日の行き先をどこにするかアリーナは楽しそうに考え
ている。時折同意を求められたり質問されたりもしたが、あいまいな返答
でやり過ごしているうちにアリーナの声が聞こえなくなった。そのことに
ようやく気づいたクリフトが顔を上げると、アリーナは布団もかけぬまま
眠りに落ちていた。
「姫さま…?」
クリフトが声をかけても起きる様子はない。さすがに遊びつかれたのだ
ろう。気持ちよさそうに眠っている。クリフトは立ち上がりアリーナの身
体にそっと布団をかけた。二つ並んだベッドの間に間仕切りになるように
カーテンが設置されている。それを引き二人の間に申し訳程度の壁を作り、
クリフトは明かりを消した。
***
ベッドに横になれどそう簡単に眠れるものではない。部屋を取ったとき
からわかっていたことだったが、クリフトはまったく寝付けず寝返りばか
りを打っていた。
「はぁ……」
隣から聞こえてくる規則正しいアリーナの寝息。意識するなと言われる
ほうが無理だ。このカーテン向こうに、長らく想い続けてやまぬ姫がいる
のだ。
クリフトは額に手の甲を当て、天井の模様をぼんやりと眺めた。いくら
眠ろうとしても目が冴えてしまってどうしようもない。仕方なくクリフト
は起き上がるとふたつベッドの間にあるサイドテーブルにおいてある水
差しを手にして、小ぶりなグラスに水を注いだ。
姫と家臣。ずっと昔から、出会ったときからそうだった。かなわぬ恋と
自覚はしている。いつかはあきらめなくてはならないことも、よくわかっ
ているつもりだ。けれども、祖国を離れたこの地で神官服を脱いだ自分。
本来ならありうるはずのない、アリーナと同じ部屋でベッドを隣合わせと
していると言うこと。
冷たい水を口に運ぶ。頭に浮かぶ邪念を振り払うように一気に飲み干す。
ただの男に成り下がってしまいそうで怖い。それでも、ただの男になれ
たらどんなに楽だろうか。アリーナを傷つけ神に背き欲を満たす堕落の道
を進んだなら、自分はどうなってしまうのだろうか。
「姫さま…」
恋焦がれる情熱が理性の氷を溶かし始めている。この薄く頼りない布一
枚を隔てた向こう側に愛する女性がいる。
「アリーナ姫さま…」
クリフトはカーテンを潜った。その先にアリーナは心地よさそうに眠っ
ていた。その穏やかな寝顔にクリフトの表情も少し和らぐ。そっと近づき
シーツの上をうねるオレンジ色の髪に触れる。なめらかな髪を手のひらに
救うとするりとシーツの上に滑り落ちた。
いつからこの感情を抱くようになっただろう。手のかかるおてんばな妹
のような存在だったアリーナが、いつのころからかかわいらしくて仕方が
なくなった。子供だったころから自分の立場はわかっていたのに、姫に恋
をしてしまうなんて。
髪を掬ったその手を今度は頬へと動かす。指の腹でそっと頬のラインを
辿る。長いまつげ、きめの細やかな肌、小作りな鼻、色味のよい唇。
クリフトはベッドに片腕をつきアリーナに覆いかぶさった。窓から差し
込む月明かりが二人の間を隔てていたカーテンに影を映し出す。黒い二つ
の影が徐々に近づいていく。
クリフトはアリーナと唇を重ね合わせた。
「ん……」
深い眠りについていながらも違和感を覚えたのだろう、アリーナが軽く
眉間にしわを寄せ身じろぎをした。弾かれたようにクリフトはアリーナか
ら離れる。心臓を掴みあげられたような緊張と焦燥感を覚え、クリフトは
いやな汗をかいた。じっとりと背中に熱がこもるのを感じる。
再びアリーナは穏やかな寝息を立て始めた。起きる様子はない。安堵の
気持ちがクリフトの心を通り過ぎた後、じわじわと忍び寄ってくるまた新
たなる感情。
「……っ!」
クリフトは部屋を飛び出した。
***
夜の闇の中を走った。走って走って、息を切らし辿り着いたのは街の中
央に建つ教会。
「はぁっ、はぁっ……」
静かに扉を押し開ける。人の気配はない。張り詰めたような静寂の中に
水の音がやわらかく響いている。クリフトは祭壇の方へと歩いた。
足音もなく心に迫り来る罪悪感から逃げたくて教会を訪れた。これから
懺悔でもしようというのか。アリーナの唇を盗むように奪い取った。しか
も彼女がよく眠っているのを知りながら。彼女が起きていたらこんなこと
できはしないだろうに。そんな卑劣な自分に対する怒りが腹の底から沸い
てくる。その一方で純粋にアリーナを愛しいと思う感情も、穏やかに心の
中に広がっていく。クリフトの心の中隅々まで行き渡りその感情がどんど
んと溢れていく。
クリフトは祭壇の前に力なく膝をついた。片手でそっと顔を覆う。
ふたつの感情の間で確かに生まれたひとつの答え。
『もう、姫さまのおそばにはいられない』
一筋の涙がクリフトの頬を伝い、揺らめきながら落ちていった。
END.
>>560 乙!続きが気になる展開
続き物として期待してもいいんですよね!?
この状況でガマンするところがクリフトらしくてイイ!!
それでまた気づかないところが姫様らしくてイイ!!
ついでに服が濡れて下着が透けて見えそうな姫様・・・(*´Д`)ハァハァ
560さん、乙です。もし続きがあれば投下待ってます。
煩悩さん前スレ506さんGJです!
煩悩さんのところのサントハイムは今日も平和そうでなによりです。
前スレ506さんはますますステキな文章でうっとりです。
続きが気になりますー!
7が重なるこの日、7という数字に重きを置くサントハイム王国では、国の繁栄を願って、
国王の潔斎が行われる。
日暮れから行われるこの儀式は、日付が変わる時まで続けられ、その間国王は城の教会奥に
存在する潔斎場に篭り、ひたすら神に祈りを捧げるのである。
きらめく星空を見上げながら、アリーナが微笑んだ。
「綺麗ね」
その横顔を見つめ、クリフトが頷く。
「えぇ、とても」
そんなクリフトの視線に気づいたアリーナは頬をうっすらと赤らめ、「どこみてるのよ」と小声
で呟いた。
そんなアリーナの肩をそっと抱き寄せると、クリフトはやんわりと微笑んだ。
「星はいつでも見られます。だから」
あなたを見ていました。
衒いも無く囁かれた言葉に、アリーナはますます顔を赤らめる。
「愛しています」
クリフトの瞳にアリーナの姿が映し出される。
「私も、愛しているわ」
アリーナの瞳にうつるクリフトが少しずつ大きくなり・・・。
ふたりの目がそっと閉じられ、唇が重なった。
「日付はまだ変わらぬのか!!」
わしの不在中にアリーナに虫がついたらどうする気じゃ!!
「はよう出せ〜〜〜!!!」
愛し合うふたりを隔てる『天の川』は、美しいが厳しい。
だが、クリフトとアリーナにとっての『天の川』は、どうやら少し我儘なようだ。
(終)
間に合わなかった・・・orz 七夕だと気づいたのが15分前。推敲も一切せず
投下したにも拘らずタイムオーバー・・・。どうやら、サントハイム王の叫び勝ちだったよう
ようです。お目汚しスマソ。
>前スレ506さん、GJです。本当に文章がお上手ですよね。いつも506さんワールドへ
引き込まれてしまいます。ぜひ続きを!!楽しみにしています。
折角お題を頂いたというのに、なかなか書く暇がありません。もう少しお待ちください。ではノシ
煩悩さん、テラワロス!!
日付がかわった時点で王様登場!
腹黒クリフト初の敗北wwwwwwwwww
GJでした〜。
煩悩様、乙乙乙!!
国王の潔斎って、将来クリフトが王様になったときはばっちりでしょうね。
なのに今の国王ときたらw
煩さんも前スレ506さんもGJ!
クリフト君は、同じパーティのアリーナさんと、パーティの活動方針を
めぐりことごとく対立し、険悪な雰囲気になっていました。
クリフト君は、アリーナさんをいつか痛い目にあわせようと考えていま
した。
そんなある日、クリフト君は、「泥酔状態で犯した犯罪について責
任を問われることはない」とブライさんから聞いたことを
思い出し、また、自分は酔うと粗暴になることを自覚していたの
で、飲み会の場にアリーナさんを誘って、酔っぱらった上で殴ってや
ろうと計画しました。
「仲直りをするために、一緒に飲もう」とアリーナさんを誘ったクリフト君。
計画通り泥酔状態になり、記憶がない状態で、アリーナさんを散々に
殴りつけ全治10日間の怪我を負わせました。
このような場合、クリフト君に何か犯罪が成立するのでしょうか。
つお題【武勇伝】
ブライ・・・若かりし頃は浮名を流したらしいが結局独身で終わったツワモノの過去とは
トルネコ・・・ボンモール国NO.1美女をどのように射止めたか・・・
ライアン・・・お城の貴婦人との関係はどこまでどうなってどうよ?
悩めるクリフトに先輩たちから参考になるお話はありますでしょうか・・・
クリフト・・・気球からサントハイム城内に不時着
>>579 そっ・・・そっそれはつまり・・・!!
真夜中に姫様の寝室に不時着ですか(*´Д`)ハァハァ。かなりもののふですねw。
そういや、トルネコの武勇伝は読んだことない。
ネネは人気者で倍率が高かったと思うけど、もしかして町長の娘とか
普通の商人たちには高嶺の花だったぽいな。
でも普通は
・しがない田舎町の武器屋の売り子
・デブ
・おっさん
・ギャグが寒い
こんな奴選ばないよな。
ネネは名伯楽としかいいようがない。
>>582 導かれし者達はみんなネネに聞きたいんじゃないの?その辺。
さすがのアリーナ姫もポポロと遊んであげたりすると子供が欲しくなるかもね。
アリーナって子供好きそうだし。
しかし、ネネってのは多分秀吉の妻の寧々からきてるよね。
良妻賢母、あげまんってことでw
ア「そこで私もネネさんを見習う事にしたわ。はいこれおべんとう」
ク「おおきなパンじゃないですか」
ア「あの一家にとっておべんとうはそうらしいのよ」
ク「不思議のダンジョンで判明した悲しい事実でしたねあれは」
ブ「ヤンガスですら主人公になるこの世の中、少年ブライの不思議の
ダンジョンが出てもいいのではないかと思う今日この頃」
王「少年サントハイム王主役のモンスターズを出した方が売れると思うぞ。
つーか出せ」
ク「スクエニを潰す気ですか!」
DQモンスターズの新作が出るそうだが(ジョーカーだっけ?)
銀髪で髪がたってる男の子が主人公だ。
もしかしてもしかしてブライの小さい頃ですとか言い出したりしないよな!?
…まぁ瞳が青かったから違うよな、、ブライのは黒いよな…??
ハゲてなきゃブライじゃないやい!
トルネコは気球を使って旅行社を作りたいと言っていたけど、
ルーラを使えないクリアリカップルに1つはプレゼントするべきだろう。
ルーラに頼ってデートしているともれなく爺がついてくるじゃねーか。
そんなブライをはげまそう↓
最近の連中はすぐルーラに頼りたがるが
徒歩と船と旅の扉で世界を駆け巡るのがドラクエUの醍醐味じゃないか
なんでドラクエU?w
ブライ様はそんな前(?)から生きていらっしゃるのでしょうか?w
Wならやっぱり気球が素敵だけどクリフトが無理かと。
>>591 いや、やはり気球の中で青ざめているクリフトと楽しそうなアリーナが絵になるので気球キボン。
世界が平和になってモンスターが出なくなるとキメラの翼の値段は高騰してるかもw
593 :
1/4:2006/07/14(金) 10:42:49 ID:2/1BKry+0
「今日は何と言っても初めてのデートだもんね。楽しみ楽しみ。どこ行こうかなあ…」
「でもクリフトったら、どうして『キメラの翼を持てるだけ持ってきて下さい』なんて言ったんだろ?」
「それにしても遅いわね…あ、来た来た。」
「姫様お待たせしてすみません、遅くなってしまいました。」
「どうしたのよその荷物は。何であんたまでキメラの翼ばっか持ってんの?」
「理由は今にわかりますよ。さ、参りましょうか。」
「こりゃーっ!そこの二人待たれーい!!」
「ちょっと、あれブライじゃないの!早く逃げなきゃ!!」
「そうしましょう。さあ姫様、私の肩にしっかりつかまって下さい。」
「これでいい?」
つキメラの翼→エンドール
「ぬぬぬぬ、ならばワシも!」
つルーラ→エンドール
「着きましたよ姫様。エンドールの城下町です。」
「相変わらず賑やかねーここは。人がいっぱいではぐれちゃいそう。」
「それなら、はぐれないように手をつなぎましょうか?」
「…うん。」
「どうやらゆっくり町の見物をしている時間はなさそうですよ。後ろをご覧下さい。」
「げっ、ブライったらまだついてくる気?しつこいわねー。」
「全くですね。他になさるべきことは山ほどあるでしょうに。」
「姫ーっ、お待ち下されー。それにクリフト!このアホタレが、絶対に逃がしはせぬぞー!!」
「さて、次はどこに行きましょうか…」
594 :
2/4:2006/07/14(金) 10:44:03 ID:2/1BKry+0
つキメラの翼→モンバーバラ→×
「そこはイヤ!他の場所にして!」
「は、はあ。わかりました。」
(ブライ様が劇場の踊り子さんに見とれている隙に逃げ切ろうと思ったんですが、仕方ないですね…)
(劇場になんか行かせないわよ。あたし以外の女に鼻伸ばしたりしたら、会心の一撃だからね!)
つキメラの翼→フレノール
「ほっほっほ、LV99のワシのMPを侮るでないぞ。ルーラ50連発くらい余裕じゃわい。」
つルーラ→フレノール
「フレノールです。姫様と噴水を眺めながら、散歩を楽しむのが私の夢だったんです。」
「現実となった感想は?」
「それはもう、最高ですよ。」
「…やだ、びっくりしたじゃない!ファーストキスだったのに…不意打ちなんて卑怯よ。」
「す、すみません。では今のはなかったことにして、あらためてもう一度…」
「見つけましたぞ姫っ!なななな何という破廉恥なことを!絶対に連れ戻してお仕置きですじゃ!!」
「あーもう、いいところなのに邪魔しないでほしいわ。」
「これは長期戦になりそうですよ、姫様。私たちのキメラの翼がなくなるのが先か、
ブライ様のMPが尽きるのが先か。ですが、ブライ様は少々お疲れの様子ですね。」
「ブライももう年なんだから、無理すると持病の腰痛がまた復活するわよ。」
「余計なお世話ですじゃ!」
「では姫様、私たちはそろそろ退散しましょう。」
「ぜえぜえ、まだまだ若いもんには負けはせぬ。地の果てまでも追いかけて、連れ戻してやるわい!」
*** そして、二人の逃避行とブライの追撃は延々と続いた… ***
595 :
3/4:2006/07/14(金) 10:45:43 ID:2/1BKry+0
いい加減にしてよブライ、しつこいを通り越して、もううっとうしいわ!」
「こんなことならソロさんから『おおきなふくろ』をお借りしておけばよかったですね。
キメラの翼の残りもあと二つしかありません。」
「逃げ回ってたから買い足す暇もなかったのよね。どうしよう?」
「ふっ、クリフトよお主の負けじゃ。おとなしく縛につけーい!」
「ブライ様、勝負は最後までわからないものです。私はあきらめませんよ。」
つキメラの翼→サントハイム
「ふん、あっさり敗北を認めればよいものを。まあよいわ、最後のあがきじゃろうて。」
つルーラ→サントハイム→MPが足りない。
「な、なぜじゃ?…はっ、思い出した。王様に頼まれて冷房用にマヒャドを唱えまくったんじゃった。
どうりでMPが尽きるのが早かったわけじゃ。とほほ…ワシとしたことが。」
「ふふーん、どうやらあたしたちの勝ちみたいね。」
「ブライ様、あちらに宿屋がございますから、どうぞゆっくりと休養なさって下さい。」
「もう邪魔も入りませんし、今度こそ二人きりです。では姫様、参りましょうか。」
「うん。ブライもここまでご苦労さま、じゃーねー。」
つキメラの翼→?
「く、悔しいですじゃ。このブライ一生の不覚…ああ、また腰の痛みが…」
596 :
4/4:2006/07/14(金) 10:47:41 ID:2/1BKry+0
「すっかり日も落ちたわね。あれ?またフレノールに来ちゃったじゃない。間違えたの?」
「いいえここで正解です。この町はサントハイム内で星が一番きれいに見られるんですよ。」
「ほんとだ、きれーい。…ねえ、もうちょっとそっちに近づいてもいい?」
「あ、はい。」
「今日は楽しかったね。でもキメラの翼での世界めぐりはしばらくお休みにしたいわ。」
「そうですね。さすがに私も疲れました。」
「今度は気球でゆっくり世界を回りたいよね。」
「えっ、気球ですか?そ、それはちょっと…私は遠慮したいですが。」
「大丈夫よ落ちたりしないから。高すぎるんだったら低空飛行で飛べばいいし。」
「はあ、考えておきます…」
「どうしたのクリフト。さっきまで赤かったのに、顔が真っ青になってるじゃない。大丈夫?」
(おしまい)
>>593-596 乙乙乙乙乙乙(^-^)(*^_^*)(*^。^*)(#^.^#)(^。^)(^o^)☆彡!!
姫様を盗むルパン神官と、それを追う銭形ブライ爺GJ!
王様に冷房を施す爺にワロタw
ここまで根性のあるこの爺ならばトルネコを買収して「たからのにおい+レミラーマ」でどこまでも追いかけてきそうww
G━━(゚∀゚)━━J!!
キメラの翼vsルーラ 楽しませていただきました!
モンバーバラ行きを拒否したアリーナに萌え〜。
ブライの根性に脱帽です!
お題SSがすすまないのに、スレを見ていたらこんなのが出来てしまいました。
ということで、
>>596さんに続き投下!
トルネコから、アリーナの誕生日祝いが届いた。
「ほう、これが気球か」
サントハイム王は目を輝かせている。
「して、どのように操るのじゃ?」
サントハイム王は興味津々になっている。
「このガスのつぼを・・・」
サントハイム王はブライの説明に聞き入っている。
クリフトは様子をうかがっている。
アリーナは黙って見守っている。
クリフトはそっとアリーナの手を握った。
クリフトと視線を交わしアリーナが頷いた。
クリフトとアリーナはこっそり逃げ出した。
クリフト流気球活用法・その1 身代わり
クリフトとアリーナは気球に乗り込み、大空へ飛び立った。
「クリフト・・・大丈夫?」
心配げに覗き込んでくるアリーナに、クリフトは穏やかな微笑を向ける。
「はい。怖くないといえば嘘になりますが、でも私はいま幸せですよ」
「幸せ?」
「高いところが苦手なので、周りの景色を愉しむ余裕はありません。ですが・・・」
クリフトは真摯な眼差しをアリーナに向ける。
「貴女だけを視界にとどめて置けるなら、気球も悪くないですね」
クリフト流気球活用法・その2 口説き文句
アリーナとサントハイム王が嬉々として気球に乗り込んだ。
「じゃあ、クリフト。後はお願いね」
「はい」
クリフトの目の前で気球が大空へと飛び立っていく。
アリーナとサントハイム王はピクニックに出かけた。
クリフトは政治的手腕を遺憾なく発揮している。
大臣は賞賛の眼差しを送っている。
執政官は尊敬の眼差しを送っている。
クリフトのサントハイムにおける称号があがった!
クリフトはサントハイムの「できる男」になった!
好感度が10あがった!
尊敬度が10あがった!
信頼度が10あがった!
腹黒さが50あがった!
アリーナとの結婚に一歩近づいた。
クリフト流気球活用法・その3 地盤固め
ふたりとも、GJ!!
ど根性ブライに萌え、気球活用法にワロタw
腹黒さあがりすぎwwGJ!(・∀・)
書いた時に鳥をド忘れしたため入れてませんでしたが、
正体はお久しぶりの店長です。
2/4 5行目
鼻伸ばしたり → 鼻の下伸ばしたり
3/4 8行目〜最後(矛盾点発見のため書き直し)
つキメラの翼
「ふん、あっさり敗北を認めればよいものを。まあよいわ、最後のあがきじゃろうて。」
つルーラ→MPが足りない!
「な、なぜじゃ?…はっ、思い出した。王様に頼まれて冷房用にマヒャドを唱えまくったんじゃった。
どうりでMPが尽きるのが早かったわけじゃ。とほほ…ワシとしたことが。」
「ふふっ、この勝負どうやらあたしたちの勝ちみたいね。」
「ブライ様、あちらに宿屋がございますから、ごゆっくり休養なさって下さいませ。」
もう邪魔も入りませんし、今度こそ二人きりです。姫様、あと少しだけおつきあい願えますか?」
「いいわよ。ブライもここまでご苦労さま、じゃーねー。」
つキメラの翼→?
「く、悔しいですじゃ。このブライ一生の不覚…ああ、また腰の痛みが。誰か医者を呼んでくれい…」
連投スマソです。読んで下さった皆様、ありがd。
確かに
>>597さんのおっしゃるとおり、
どう見てもルパンvs銭形警部ですね。
煩悩さん、三部作乙でした。
苦手な気球までも逆手に取るとは…腹黒神官恐るべしw
>>605 >どう見てもルパンvs銭形警部ですね
だが、そこがいい。
エロパロが盛り上がってますな
店長さん、乙&GJ!
「待てー、クリフトー」というセリフが頭の中でリフレインされるw
ということは、姫様は不二子ちゃん?
煩悩さんも乙&GJ!
腹黒神官ワロスw
その調子で腹黒さを極めてくれ!
>>607 盛り上がっていうのか?
しかし、あのssの文体に非常に見覚えがあるのだがw
609 :
608:2006/07/16(日) 16:23:55 ID:/mNcYmOUO
盛り上がっているというのか?だな。
スマソ、徹夜明けは日本語が変だ。
このスレから職人さんが出張してるんだよね?
違ってたらスマソ。
少なくともきのこの人と煩悩さんと店長ではないと思った。
きのこの人とは空白行と三点リーダーの使い方が違うし
煩悩さんはもっと難しい言葉を使うし
店長は会話文閉じの前に句点使うし。
どこかでみたことあるような気はするけど・・・。
誰なんだろ?気になるー。
はっ、もしかして新人?だったらこっちにも投下キボン!
>>610 おっしゃるとおり、少なくとも自分ではないです。
会話文閉じる前の句点使いは、友人にも言われました。
それを見て「あのSSお前だろ」ってばれたくらいですから。
皆さんよく見てるなあ。
さて、
>>578にヒントを得て、ちょっと変なのができました。
【エンドール城下町内、トルネコの店舗兼自宅にて】
「えー、この写真って本当にトルネコなの?」
「はい、もう20年ぐらい前のものですけど。びっくりしましたか?」
ちなみにこれはネネと出会って間もない頃のものです。当時まだ10代でした。」
「嘘ぉ痩せてんじゃん。なあこう見るとお前に似てないか?クリフト。」
「ソロさんご冗談はよして下さい。でもこの写真のトルネコさん若々しくて素敵です。
それにしても、時の流れって残酷なものですね。」
「クリフト…お前さりげなくきついこと言ってるな。」
「ねえねえ、身体だけじゃなくて顔も超いけてない?今の姿からは想像できないわねー。」
「姉さん本人の目の前で失礼じゃないの。それとよだれ出てるわよ、よ・だ・れ。」
「はいはい、わかってますってば。」
「キャー、私の服で拭かないでよ姉さん!!」
「まあまあミネアさん落ち着いて。言われるのはもう慣れっこです。
私は別に気にしてませんし、今の姿も幸せの結果だと思ってますから。」
「遠い昔、ワシも結婚を意識した時期があったのう…ふん、ひがんでいるわけではないわい!」
「まあまあブライ殿。お互い気楽な独身同士、酒の一つでも交わしながら語り合いましょうぞ。」
「ライアン殿…ワシの気持ちをわかって下さるのはお主だけですじゃ。
それに比べてわが姫といいあのアホー神官といい…くーっ、情けなや。」
「はいはいお二人様酒場までご案内ー。あとはそっちでよろしくね。」
「あとこちらは婚約した時に撮った写真です。ネネの方は今とそんなに変わってないでしょう?」
「まああなたったら、うふふ。うちの人の噂はボンモール内でも有名だったんですよ。
レイクナバで一番の美形だって。私がこの人と結婚するって決まった時も、
他の女の子たちからどれだけうらやましがられたことか。」
「いやいやネネ、お前もボンモール国bPの美女だと評判だったじゃないか。
私も仲間から手荒い歓迎を受けたからねえ。今は懐かしい思い出だよ。」
「まー年甲斐もなくのろけちゃって。ねえ、こうして見るとあんたたち二人みたいじゃん。
いっそのことここで婚約でもしちゃえば?トルネコご夫妻にあやかってさ。」
「えっ?そ、そんな。私たちが婚約だなんて…マーニャさんからかわないで下さいよ。」
「……」
「どうしたんですかアリーナさん、さっきから写真とトルネコさんばかり見つめて。顔色が悪いです。」
「そ、そう?そうかなあ。あははは…」
【翌朝、2階の食卓にて。二日酔いの抜けない独身老人&中年はまだ夢の中…】
「みなさーん、朝ごはんの用意ができましたよー。」
「ありがとうネネさん。さーて朝メシ朝メシっと。ん?なんであいつだけメニューが違うんですか?」
「アリーナさんが早起きして作られたんです。何でも昨夜恐ろしい夢をご覧になったとか。
それと朝食とどう関係があるのかはわかりませんけど、うふふ。」
「あの…姫様、私の朝食はこれだけですか?」
「そうよ。わざわざあんたのために塩分・糖分・カロリー控えめの特別メニューを揃えたんだから。」
「確かに私は病弱な方ですが、別に肥満とか高血圧というわけでは…」
「なに言ってんの、今は痩せてるからって油断しちゃだめよ。ああなりたくなかったらね。」
「どうして私の方を見るんですか?私はお腹は出てますが、まだ持病もちではありませんよ。」
「アリーナさんのお気持ちはわかりますが…何だかクリフトさんがお気の毒です。」
「トルネコの写真見てよっぽどショックを受けたのね。まああの娘なりの愛情なんでしょ。」
「はは、すっかり『尻に引かれた隊』隊員一号になってるじゃんクリフトの奴。」
「それを言うなら『た』が一個余計なんじゃない?ソロ。」
「もうすでに引かれてるから『引かれた隊』でいいでしょう、マーニャ姐さん。」
「あっそ。それにしても、さっきからあたしらのおかずを見るクリフトの視線が怖いんだけど。」
「いやアリーナの方も怖いぞ。みんな目を合わせるな、あっちは別世界だ。」
(マーニャさんたちのおかずおいしそうだなあ。ああ魚の竜田揚げが懐かしい、厚焼き玉子が恋しい…ぐすっ。)
(あたしは今のままのクリフトでいてほしいの。手は今から打っとかなきゃね、将来のためにも。)
-おわり-
引かれた隊ワ・ロ━━(゚∀゚)━━タ!クリフトガリガリになりそうだなw
病弱なクリフトがますます病弱に・・・
店長様、乙です( ´∀`)
なんだかトルネコが絡むとほのぼのしていいですねーー。
昔は美形だったとはw
アリーナがネネから影響受けるのもかわいいし。
姫様の愛情料理はパデキア入りですごい味なんでしょうかねw。
保━━(゚∀゚)━━守!!
クリフトが優しい瞳で見つめる先には、いつも赤毛の少女がいる。
彼は優しく、そしてとても切なげに彼女を見守り、やがて視線を逸らして思いつめたようなため
息をつく。
彼は彼女に恋している。
それは彼に近しいものであれば誰でも知っていること。あるひとりを除いて。
アリーナの視線の先には、いつも穏やかな笑みをたたえた青年がいる。
彼女は少し戸惑ったように、それでいて真摯に彼の横顔を見つめ、やがて視線を逸らして苦しげ
にため息をつく。
彼女は彼に恋をしはじめた。
それは彼女と親しいものであれば誰でも気がついていること。ただひとりを除いて。
彼らの視線はいつも一方通行。お互いの視線の先がどこにあるのかを知らない。
でもいつか視線が交わる時、彼らはお互いの想いを知ることであろう。
保守目的で投下です。
私の正体ですか? このスレの職人であることは確かですw
職人さんいらっしゃーい(・∀・)ってオマイは誰だ!?w
すれ違いの両想いツボ!GJ!
>>620 GJ!せつないですなぁ・・・(つд`)
官スレの方もみたよ。せつない系が得意なんですね。
このスレの職人さんってことだけど、既存の職人
さんの誰かが正体偽っているってことだよね?
誰なんだ〜?とりあえず店長さんではないみたいだけど。
官スレでたまにみかけるクリミネもしくはミネクリを読んで思ったのですが、
エロでなく、クリフトに心を寄せるミネアの存在をからめたせつない系のストーリーが読みたくなりました。
ミネアがクリフトのこと好きだって設定はゲームブックからきているらしく、
ゲーム本編からははっきりとは読みとれないので難しいでしょうか。
うまくお題って形にしにくいのですが・・・
つお題【伏兵・ミネア】でお待ちしています。
いま、きのこの人のサイトで連載してるのが微妙にミネクリ雰囲気
625 :
スーパー1:2006/07/20(木) 21:58:28 ID:Q7OJyffI0
ほしゅあげ
>>624 おお、ありがとう。しかし、サイトを見つけることができませんでした・・・。がっくし。
やっぱりここの職人さんたちの作品うpに頼るしかないかな。自分にも文才があればいいのに・・・。
>>605 ど根性銭形ブライ、シリーズ化を密かに期待しております。
サントハイムの宝石は何としても死守!!ですねww
サンちゃんに期待
おおおちょっと書きたいお題!
時間かかるかもしれませんが挑戦してみます〜。
深夜ならぬ早朝徘徊・・・。
忙しくて、なかなかss書く暇がないです。お題ssも大体構想は練れているのですが
如何せん、時間が。とりあえず、没庫に何か落ちていないか確認してみます。
投下できそうなものがあればいいんですけど・・・。
とりあえず、今日は寝ますノシ
きのこの人さん、煩悩さん、時間がかかっても投下待ってます!
楽しみだなぁー
>626
クリアリアンソロジーの告知サイトからペンネームにきのこの名称が
入ってる人を探すと幸せになれるよ(・∀・)
632 :
626:2006/07/22(土) 07:41:00 ID:yDniujQ00
>>631 幸せになれました(*´Д`)
感謝です。
あなたはいつでも、誰にでも優しくて。
その笑顔が、誰かに苦しみを与えているということを、考えたことがありますか──?
第一印象。
弱々しい人だと思いました。
「姫様をお守りすることが、私の役目です」
そう言いながら、何度アリーナさんに助けられていたのか判りません。
旅の中で気が付きました。
あなたが、アリーナさんに忠誠心以上の想いを抱いていることを……。
ふとその端整な横顔を見れば、その視線の先にはいつもアリーナさん。
優しくも少し寂しげな微笑み。
その横顔に胸が痛くて、その夜、私は一枚タロットを引いた。
「隠者……」
それはクリフトさんの心の中。アリーナさんへの想いの行き着く先。
そのカードから感じるクリフトさんの想いが、私の心に小さな火を灯した。
叶わない恋。諦めることもできずに、誰にも言えずに、笑顔の中に孤独を隠して。
……その気持ちを、痛いほど理解できるようになってしまうなんて。
「ミネアさん」
愛しいその声で名前を呼ばれる。
ほんの僅かな言葉、特別でも何でも無いそんな言葉にまで、心が喜びと切なさで悲鳴を上げる。
「は、はい」
「お願いしたいことがあるのですが……」
周囲を気にした、小さな声。吐息交じりのその声は私だけに問いかける声。
言葉を聞き取るため、そんなことをひとり言い訳に考えながら、そっとクリフトさんとの
距離を詰めた。
「あの。占いをお願いしたいのです」
「……占い……?」
「はい。あの、その……いま願ってることが、どうなるのか……」
クリフトさんは曖昧に暈かしたつもりなのかもしれない。
でも、それはあなたが抱く想いと同じ。
ばればれですよ、そんな想いは。
……そんなところも可愛らしくて、惹かれたことは事実ですけどね。
生真面目で、一直線で、弱いくせに一生懸命で。
ああもう。何でこんな人に惹かれちゃったんだろう。
もう、その心に住んでいる人がいるのに。
占い師は、自分の未来は占えない。占ってはいけない。
でもクリフトさんの未来を占ってしまえば、それは……。
本当は、占いたくなんて無かった。口実を作って断れば良かった。
だって私は、あなたの恋が叶わずに、あなたが泣くことを願ってる。
辛い辛い気持ちを抱えて泣き叫ぶあなたをそっと抱き寄せることを願ってる。
口先だけであなたを慰めながら、心の中であなたの不幸を喜んでる。
あなたの心の痛みなんて知らない。
あなたの身体を抱きしめながら、どうやってあなたを私のものにするかを画策する。
そんな私にも、あなたは優しい。
それが悔しくてたまらない。
その夜、蝋燭を灯した小さな部屋で、私たちは向かい合って座る。
ずっと長く、多くの人の気持ちを蓄えてきたタロットを、机の上に広げた。
「願ってください」
クリフトさんはタロットに想いを籠める。じっと私の手の動きを見つめる目が
あまりに純粋で、悔しい。
何枚かのカードを、伏せて並べた。
ぴんと空気が張りつめる。
「まずは……クリフトさんの、今……」
慣れた手つきで、一枚のカードを表に向けた。
──魔術師の、逆位置。
「……願いを叶えるために、あなたは何かをしようとしていますか」
「……」
クリフトさんは答えない。
「……でも、その一歩が踏み出せない。だから、私のところに来た。違いますか?」
少し怯えた表情。やっぱり、隠し事のできない方ですね……。
思わず、くすっと笑ってしまう。
「……クリフトさんの、ずっと奥……心の中の、本質を……」
もう一枚、カードを捲る。
──正義の、正位置。
「……あなたが正しいと信じていることは、叶わない願いへの言い訳」
「……あ……」
クリフトさんが小さな声を出す。
アリーナさんとの、身分の差。そんなことを考えているのでしょうね。
それ以上追求することは止めて、次のカードを捲る。
「未来、です」
──死の、逆位置。
「……えっ」
クリフトさんが驚いた声を出す。ああ、このカード……。
「怖い絵ですけど、悪いだけのカードではありませんよ。物事には終わりがあります。
でもそれは新しいことの始まりです。答えを出せなくて誤魔化していたこと、
それに決別を告げることです」
クリフトさんの不安な表情は変わらなかった。
今までも、このカードを見た人は、こんな表情になることが多かった。
終わりとは、始まり。それは悪いことだけでは無いのに。
「障害と、対策は……」
──戦車の、逆位置。
「……黙ったままでは、誰にも気づいてもらえません。どんなに不安でも、
自信が無くても、声を出してください。待っているだけでは、ダメです」
その言葉にはっとしたのは、クリフトさんだけでは無かった。
そう、それは……私。
クリフトさんの顔を、思わずじっと見つめる。
仄かな蝋燭の明かりに映し出される愛しい姿。
誰もいない、狭く薄暗い部屋でただふたりきり。
「……クリフトさん。私……」
最後のカードに手をかけて、私は呟く。
このカードを捲れば、私の未来も見える。
「……ミネアさん」
クリフトさんが、そっと私の手の上に、掌を重ねた。
愛しい感触に、願っていた温もりに、心臓が早鐘を打つ。
「……ありがとうございました。ここまでで、結構です」
手を重ねたまま、クリフトさんが笑顔で囁いた。
そのあまりの愛しさに、思わずひとすじの涙が零れた。
「……申し訳、ありません……」
ふと目を逸らしたクリフトさんが、そっと呟いた。
ああ……気づいて、いたんだ。
私の、想いに。
きっと……。
ゆっくりとクリフトさんが部屋を去る。
今まであんなに暖かいと感じていた部屋の空気が、急に冷たく感じる。
震える手で、私は、最後のカードを捲る。
「……世界……正位置……」
「ミネアの占いってね、ほんとによく当たるのよ!」
姉さんはいつも嬉しそうに私の話をする。
そんな話に、私はいつも、そんなことないです、と答えていた。
でも、今日は笑顔で、言ってみた。
「ふふっ。姉さんに言われなくても、自分が一番判ってるの」
リアルタイムでネ申 キターーーーーーーーー(*´Д`)ハァハァ
激しく乙です!!!ミネアせつないよ、ミネア
おわり
>>626さん
いらっしゃいませw
訪問記念にお題持って参りました!
感動記念保守☆
G━━(゚∀゚)━━J!!
せつない、せつないです〜。タロットカードをめくっていくミネアがせつなすぎて
思わず涙が・・・。リアル遭遇の>640さんがうらやましーーー!!!
えっと、私のほうも【伏兵・ミネア】ssができあがりました。とはいっても、以前
没庫に放り込んだssを手直ししただけのものなんですけどね。
他のお題ss・・・ぼちぼちやっていきますので、気長にお待ちください。ゴメンネ。
地平線の彼方で、一日の始まりを告げる陽光がきらめいた。
「おはようございます。クリフトさん」
いつも早いですね、と声をかけながら近づいていくと、朝日に向かって祈りを捧げていた
蒼髪の青年がゆっくりと立ち上がり、膝についた草を手ではらいながらにっこりと笑った。
「おはようございます。ミネアさん」
共に旅を始めてから毎朝繰り返される会話。否、会話ともいえない代物かもしれない。
しかし、殺伐とした戦いの中に生きるミネアにとって、これは何よりも大切で幸せな瞬間
であった。
(今日こそ……いえ、今日だからこそ)
ミネアは心の中で呪文のように繰り返す。
(この特別な時間を、長く味わいたい)
さわやかな微笑を浮かべる青年に、ミネアはかすかに頬を赤らめながらも意を決したよう
に口を開いた。
「あの、もしよろしかったら、朝食まで、少しお話でもしませんか?」
ミネアの申し出に、少し不思議そうな表情をしたクリフトだったが、「そうですね」と頷く
と草地に腰を下ろし、ミネアを見上げた。
「ミネアさんも座りませんか?」
このあたりはほとんど朝露が降りていませんから汚れませんよ、と優しい微笑で促される。
ミネアは少し迷いながらも、クリフトの側に歩み寄ると、思い切って彼のすぐ脇に座った。
互いの肩が触れ合うほど近くに。
―――それは、いつも彼の大切な人いる場所。
「綺麗な朝焼けですね」
「えぇ。今日はいい天気になりそうですよ」
―――肩越しに伝わる彼のぬくもり。
「そういえばこの前アリーナさんにお聞きしたのですけど、クリフトさん、今年二十歳に
なられるんですよね?」
「はい。秋の生まれですからまだ少し先のことですけどね」
「あら。じゃあ私のほうが少しだけ年上かしら。私も今年の夏で二十歳になるんですよ」
「夏ですか。もうすぐですね」
―――綺麗な瞳。優しい声。
「私、いままで同い年の友人がいなくて。だからクリフトさんが同い年だと知って、すご
く嬉しかったんですよ」
「そうなんですか?そう言えば、私も同い年の方と一緒になったことはないですね」
「神学校。飛び級したうえに主席卒業だったのですってね。アリーナさんが我が事のよう
に自慢してらっしゃいましたよ」
「え?姫様が、ですか?……照れますね」
―――彼には既に想い人がいたけれど。
「アリーナさんのことお好きなのでしょう?」
「あ、いえ、その……。姫様にはご内密にお願いします」
「ふふ。どうしようかしら」
「ミ、ミネアさん?」
―――それでも私は。
「そういうミネアさんは?」
「え?私ですか?」
「おもてになるでしょう?」
「残念ながら。……片想いばかりですよ」
―――本当はずっとその距離に憧れていた。
「まさか。ミネアさんほどの方が片想い?ありえませんよ、普通」
「そう言っていただけるとうれしいですけど。でも私の場合、片想いでちょうどいいんで
す」
「なぜです?」
「私は占い師ですから。占い師をやめるまでは、恋はご法度なのです」
―――そう、彼に恋した瞬間から。それが叶わぬ想いと知っていても。
「……じゃあ、もうすぐ解禁?」
少し長めの沈黙の後、ぽつりと呟かれた言葉にミネアは目を瞠った。
「え?」
思わず聞き返すと、クリフトは優しい微笑を浮かべる。
「ミネアさんが占い師でいる理由は、お父上のことがあるからではないのですか?
だったら、もう少しじゃないですか」
彼らが坐すそこはサントハイム領。
ミネアとマーニャの父エドガンを殺害したバルザックが占拠するサントハイム城に程近い
丘の上。
おそらく、今日の昼過ぎには城へ到達、そのままバルザック掃討に雪崩れ込むことであろ
う。その先にいかなる結末が待ち受けているかはわからないが、そこがミネアの旅の終着
点となるはずだ。
怖かった。勝っても負けてもこの恋は終わるのだと思っていたから。
だから彼との幸せなひと時を少しでも長く感受したくて、勇気を出して話しかけた。
でも。
―――終わりは、始まり?
考えたこともなかった。いつも、あきらめてばかりいたから。
「大丈夫ですよ。今度はソロさんや姫様たちもいますし。及ばずながら私も尽力します」
―――あなたの心が誰に占められていても。
「ミネアさんに思いを寄せられている人は、本当に果報者ですね」
―――たとえ、自分の恋心に気づいてくれていなくても。
「お互いに頑張りましょうね。とはいっても、私の恋は望みが薄そうですが」
―――姉さんがよく言っていた。人生は『人』としてどう生きるかが重要だ、と。
「あ、でも、もしかしてミネアさんは一生占い師でいるおつもりなのでしょうか?それも
またかっこいい生き方ですよね」
―――そして、ひとりの『女』として生きる幸せもあるのだ、と。だとしたら……。
ミネアは顔を上げると、まっすぐにクリフトを見つめた。
―――あきらめなくてもいいのですね。
「クリフトさん、あの……」
「はい?」
「その……」
「何でしょう?」
「私……」
「……」
「クリフトぉ、どこにいるの?」
突如響き渡った声に、クリフトが弾かれたように立ち上がった。
「あ、はい。ここにおります。姫様」
そう声をあげると、クリフトはミネアに頭をさげる。
「すみません。呼ばれているようなので……」
その申し訳なさそうな顔に、ほんの少しだけ胸に痛みを感じながらミネアは微笑んだ。
「大切なアリーナさんをお待たせしてはいけませんものね」
「……からかわないでくださいよ」
ミネアの言葉に照れたように笑いつつも、「それでは、失礼しますね」と断りを入れると、
クリフトは服についた汚れをはらうことすらせず、愛しい人のもとへ急いで駆けて行った。
当たり前のように言葉を交し合いながら去っていくふたり。
その後ろ姿をじっと見つめながら、ミネアはそっと立ち上がる。
そしてスカートに纏わりついていた草を丁寧にはらい落とすと、大きく伸びをした。
「いまはまだ、言えないわ」
引っ込み思案な性格はそうそう簡単に変えられるものではないから。
「だけど、いつかは……」
伝えそびれた恋心。でも、だからこそ、未来への希望となる。
幼かった頃、伝えることすら出来ずにあきらめた恋があった。だけど、その恋に決別する
ことが出来たなら、自分を変えることも出来るのではないか。
女らしいといわれるこの肢体。それはあの頃より齢をいくつも重ねた証。
もう、子供ではないのだとミネアは強く思う。
簡単に引き下がることの出来ない、大人の恋。
―――本気の恋。
「バルザック……あなたに憧れていた私は、もういないわ」
微かなぬくもりの残る肩に手を添えると、天を仰いだ。
「よし!」
気合と共に大きく息を吐き出すと、ミネアは艶やかに笑う。
万に一つも勝ち目はないのかもしれない。それでも―――。
「負けられないわ」
―――この想い伝えるまで。
「たとえ分の悪い勝負でも」
―――あきらめない。
「絶対に、負けないんだから!!」
(終)
お二人と素敵なSS、本当に乙です。
>きのこの人さん
最後のタロットの結果が「世界の正位置」とは…
ミネアにとってはせつない結果ですね。
>煩悩神官さん
今度は自分が煩悩さんの作品にリア遭しました。
神学校飛び級+主席卒業という肩書きにとろけそうです。
ちなみに自分もちょこまかと書いてはみたのですが、
さすがに3人被るのは何でしょうから、
今回は一読者として楽しませてもらおうかと。
ではでは。
訂正箇所発見! 1/6の最後
正:彼の大切な人がいる場所
でした。どうもコピペをしているときに誤って「が」を消してしまっていたようです。
恥ずかしすぎる間違いですね。本当にすみません。脳内変換しておいてください。
>店長さん
リア遭でしたか!ちょっとうれしいかもv
店長さんの書かれる【伏兵・ミネア】読んでみたいですよ。
同じお題でも書かれる人によって全然捉え方が違うので、楽しいんですよね。
なので、機会があればぜひ!
〇〇だから投下しない、ってやめようよぅ…
>>280からの流れを忘れちゃだめだよぅ…
きのこの人さん、煩悩さん、GJです。
ミネアの性格が微妙に違って、すごくおもしろかったです。
次回作も期待しています!
>>652 現在スレ消費405KB。SS容量は今のままだと15KBです。
そのまま投下するのにはあまりに大きすぎるので、
半分の容量を目標に編集しなおそうかと。
ろだで済ますつもりが、鯖が不安定でうpできないんです。
ということで、もう少しだけ時間をいただければ。
では落ちますノシ
深夜に失礼。先程の訂正レスに追加を。
クリフトが主席卒業・・・主席? ・・・・・・『首席』じゃないかぁ!!
あほすぎて、あぁもうorz PCを信用してはいけないということですね。はい。
以後気をつけます。ということで×主席卒業→○首席卒業に訂正しておいてください。
そういえば容量がだいぶ減ってますね。って他人事のように言ってはいけないかも。
私もなるべく短文になるよう精進します。ではノシ
>>641 きのこの人様、サイトで幸せになれました。サイトのほうも頑張ってください!!
ミネアの恋心、やはりせつなくてたまりません〜!!
クリフト以上に隠れた恋心につい身悶え(*´Д`)
最後のカードを見ないであげたクリフトもとても優しくて彼らしいですね。
お題、引き受けてくださってありがとうございました!
煩悩様もありがとうございました!!
こちらのクリフトはミネアの想いには気づきそうもないタイプですね。それもまたイイ!!
煩悩さんのミネアはクリフトよりもちょい積極的なのに肝心の本心を隠すのがうまそうです。
気づくとすればマーニャ姉さんくらいでしょうかね。
首席卒業の設定はたしか攻略本でも萌えました。この設定、いいですよね。
店長様のSSも待ってます。
もちろん店長様のペースでいいですから!
容量ないのに長くてすみません。
エンドール市街地の中央に程近い白亜の大聖堂で、今日も婚礼の儀が執り行われていた。
神に結婚の許しを請う二人は、サントハイム王家の令嬢とエンドールの有力貴族の一人息子。
サランの聖堂の10倍はあろうかという礼拝場の一番後ろの末席にクリフトは座っていた。
彼は、サントハイムの姫アリーナと懇意であった為、平民でありながら特別にここに座る事を許されたのである。
間もなく扉が開き、サントハイムの王様とその娘であるアリーナが互いに腕を組み、ゆっくりとした歩調で礼拝場へと入ってきた。
アリーナは、人々の中に緑の聖服に身を包んだクリフトを見ると、クスリと笑った。
その鮮やかな緑の聖服が彼のトレードマークだった。
彼は、このようなところに着ていく事のできる服を他に持たなかった。
クリフトはまじめな修道士だったから、その理由は金銭的な余裕がないというよりはむしろ清貧の戒めを守るためであった。
クリフトには、白いヴェールに包まれた彼女の表情を読み取る事はできなかった。
彼が思ったのは、この日の彼女は今まで自分が見てきたどの彼女よりもキレイだという事だけだった。
純白のドレス、そしてそこから伸びる乳白色の滑らかな肌の腕、手に持つのは色とりどりの花束。
そして普段の彼女を知る彼は、そのかしこまった格好が彼女にはあまり似つかわしくない事も知っていた。
故郷サントハイムで彼女はおてんば姫と呼ばれていた。
王族が着るに相応しい豪奢な召し物より、素朴な衣服を好み、
貴族たちが開くパーティーよりも、城下の人々の生活に基づいた祭りの方が好きだった。
彼女がお忍びで城外に下るときなどには、クリフトを伴う事が多かった。
サランの下町で育ったクリフトは、城下の地理に明るかった。
子供の頃に遊び回っていた裏道までもよく覚えていて、アリーナが行きたい所へ最短の道筋で連れて行くことができた。
誠実だが気弱で何処かぬけたところのあるクリフトを、アリーナはよくからかっていたが、
このときばかりは彼に尊敬のまなざしを送るのだった。
サランの市場では店々に並ぶ海産物や交易品に目を輝かせ、異国の珍品をせがんではクリフトを困らせた。
海岸に行くと決まって彼女は海水と砂とで衣服を汚し、その度に王や姫の教育係のブライに大目玉を食らうのはクリフトだった。
春や夏には、城の北に広がる草原に行くこともあった。
原っぱは彼女のお気に入り。どこまでも続く草原と空は自由の象徴だった。
クリフトは、瑞々しい感性を押し殺し、城の中で生きなければならないこの少女を不憫に思っていた。
もちろん彼は城の外にあるものが自由だけではない事もよく知っていた。
けれでもクリフトは、アリーナの城の中では見せることのない屈託のない笑顔が好きだった。
それがたとえ王族として相応しくないものだったとしても。
王と姫は新郎の待つ祭壇の所までたどりついた。
新婦は父親の許から離れ、新郎の元へと歩み寄っていった。
そして誓いを立て、指輪を交換し、互いの唇に口づけをした。
クリフトは、その様子を末席からじっと目を凝らして見ていた。
数日前、エンドールに到着した日、クリフトはアリーナの夫となる男を始めて目にした。
二つ三つ言葉も交わした。
エンドールは商人の国。
貴族たちの生活の基盤も領地ではなく、何かしらの商売である場合が多かった。
この男も多分に漏れず、貿易を生業としていた。
船であちこちの国を渡り歩く彼の顔は、浅黒く日に焼けていた。
気取ったところは少しも無く、少々無口だが理知的な若者だった。
王様やブライ殿はよいお相手を見つけなさった、クリフトは素直にそう思った。
姫様もこのような方となら幸せになれる・・・。
新郎新婦が連れ立って聖堂の外に出るとそこには、何十人ものエンドールの民衆があった。
騒ぐのが大好きなエンドールの都会っ子がこんなイベントを放っておくはずが無かった。
人々は次々に祝福の言葉を彼らに投げかけた。
「おめでとう!」
「お姫様、本当におキレイ!」
「ちきしょー!うらやましいぞ、この果報者め!」
「ブラボー!」
「サントハイムの姫は、武道大会に続いて二度もエンドールの話題を独り占めにしおった!」
新しい夫婦は目を丸くして驚き、愉快に笑った。
そしてアリーナはブーケを放り、女たちはそれに群がった。
王、ブライ、両家のすべての人々がそれを微笑ましく見つめていた。
平民たちのようにストレートに言葉に出す事はしなくとも、皆、二人を祝福していた。
その幸せに満ちあふれた光景はあまりにまぶしすぎて、クリフトはそれを直視する事ができなかった。
クリフトはアリーナのことが好きだったのだ。
惨めな気持ちが彼の心を支配し、体中から活力を奪った。
春の事だった。
アリーナはクリフトをお供に原っぱへと出かけた。
彼女は草原を駆け、花を摘み、野うさぎと戯れた。
クリフトも彼女と共に、春の陽気を楽しんだ。
楽しい時間は過ぎ去るのも早く、気付くと日は西に傾き、あたりには夕闇が迫っていた。
クリフトは彼女に、城に帰らなくては、と告げた。
彼女はそれをしぶった。少しでも長くそこに居たがった。
「姫様。もう暗くなります。今度また来ればよろしいではないですか。
お父上が外出を許可してくださるよう私からもお願いしますから。」
アリーナは、すねた子供のように顔を背けた。
いつもと様子の違う彼女にクリフトも困惑した。
冷たい風が吹いた。それはついこないだまで大地を支配していた冬の空気だった。
彼女が口を開いた。
「私、この夏に結婚する事になったわ。」
クリフトの呼吸が止まった。
「相手はエンドール貴族の御曹司だって。
私はその人の顔も見たことはないけれどお父様が選んでくださった人だもの。
きっと悪いようにはならないと思うわ。」
アリーナはクリフトの方に向き直って、言った。
クリフトは彼女の瞳が潤んでいる事に気づいた。
そして次の瞬間には、そこから大粒の涙がこぼれた。
アリーナは、クリフトの胸に飛び込んだ。
「クリフト!私、サントハイムを離れたくない!」
彼女からは、花の香りがした。
背中にまわされた彼女の腕は、つよくクリフトを求め、その指の一本一本から彼女の体温が伝わってきた。
彼女を抱きしめてやりたかった。
だが、それは禁じられていた。
クリフトは彼女を救う事ができる言葉を持ちあわせていた。
だが、それを口にすることは禁じられていた。
だからクリフトは、彼女を泣くにまかせ、立ち尽くすことしか出来なかった。
やがて空の色は、茜色から青へ、青から藍へ、そして漆黒の闇へと変わっていった。
最後までクリフトは彼女を受け入れる事が出来なかった。
そして、彼女は運命を受け入れた。
披露宴が終わる頃には既に夜になっていた。
出席者はそれぞれの家路につき、サントハイムの人々も宿泊している旅館へと帰った。
行きと違うのは、アリーナ姫がいないことだけだった。
今日から彼女は、サントハイム王家の人間ではないのだ。
皆疲れ果てていて(あるいは酔っ払って)、旅館に着くと風呂にも入らず寝床につく者も少なくなかった。
クリフトのような身分の低い者たちは、4人部屋に6人で泊まらされていた。
彼以外の5人は、同じ城内で働いている修道騎士たち。道中の護衛が彼らの任務だった。
クリフトが風呂から戻ってきたときには、既に5人とも眠っていて、けたたましいいびきの大合唱を繰り広げていた。
ベッドは彼らに占拠されていたので、しかたなくクリフトは床の上に毛布を敷いて眠る事にした。
クリフトは眠れなかった。
彼らのいびきもひとつの原因かもしれないが、それは昨日も一昨日も同じ事だ。
今日眠れない理由はそれとは別にある。そしてそれは明白だった。
彼とて子供ではない。アリーナたちの新居で今頃、何が行われているか知らぬはずも無かった。
それを思うと、クリフトの心の中で嫉妬の炎が燃え盛り、手足の指先まで怒気がみなぎった。
そしてそれを理性で抑えると、今度は逆に体中が脱力し、昼間味わった惨めさが再び彼を襲った。
この二つの状態を彼は夜通し繰り返していた。これでは眠れるはずもない。
やがて彼は眠る事をあきらめた。
夜風で頭と火照った体を冷やそうと、クリフトは一階のウッドデッキに向かった。
もう明け方だった。
そこには見慣れた一人の老人がいた。ブライだ。
「ブライ殿。あなたも眠れないのですか?」
クリフトは問いかけた。
「クリフトか。わしはもう眠ったよ。年寄りは朝が早いでな。」
木製のリクライニング・チェアーに身を横たえたままブライは答えた。
「そうでしたか。」
クリフトはそう言って、置かれていた椅子に腰掛けた。
「おぬしは眠れなかったのか?」
「ええ。」
クリフトの返事に、ブライはフム、とだけ言った。
しばしの間、二人の間に静寂が流れた。
先に言葉を口にしたのはブライだった。
「いい結婚式だったな。」
「・・・ええ。」
「お主も姫様もついこの間までほんの子供だと思っておったが。
時が経つのは早いな。特にわしのような老いぼれにとっては。」
「・・・・・・。」
クリフトは何も答えなかった。話したくもない話題だったから。
そんな訳で二人の間にはまた静寂が流れた。
それを破ったのはやはりブライだった。
ブライは上体を椅子から起こしてクリフトの方へ身を乗り出し、言った。
「お主、惚れておったろ?姫様に。」
このクソジジイ!と、クリフトは思ったが口にはしなかった。代わりに沈黙をもって彼に報いた。
「警戒するな。もし認めたとて咎めたりはせぬよ。姫様はもうお嫁に行かれたのだから。
それに、わしはもう公務からは引退するのだからな。」
これにはクリフトも驚いた。王家に仕えていないブライなど想像もできない。
「それはまた一体どうして?」
「姫様を教育する事だけが、わしにできる唯一の仕事だったからじゃよ。
それが終わった今、わしはもう単なる足手まといじゃ。
誰かに迷惑をかける前にいなくなったほうがいいんだよ。ただな。」
ブライは目を細めた。
「お主の事が気になってな。」
「私の?」
「お主の事まで済ませて、初めてわしは自分の仕事を終える事ができる気がするんじゃ。
もしわしに出来ることがあったら言ってほしいのだ。」
このような言われ方をしてはクリフトも弱った。
彼は自分を苦しめるもの全てを洗いざらいブライに話した。
その間中、ブライは何も口を挟まず静かに話を聴いていた。
最初はしぶしぶ話し始めたクリフトだったが、話すうちに感情が昂ぶっていき、
やがて目は真っ赤に、最後のほうはほとんど涙声になっていった。
そしてついには、むせび泣く事しかできなくなった。
ブライは背もたれに身を沈めたまま語りだした。
「お前の気持ちはよくわかった。
これからわしがお前に話す言葉は、所詮、下世話なじじいのたわごとに過ぎない。
そんなものがお前を救う事ができるなどとはわしも思っていない。
しかし、言わせてほしい。聞いてくれるか?」
クリフトは嗚咽で声が途切れ、まともに返事もできなかった。自分の弱さが恥ずかしかった。
ブライは話を続けた。
「仮にお主と姫様が結ばれたとしよう。そしたらどうなっていただろう?
式はエンドールの大聖堂などではなく、どこか小さな村の店舗教会で挙げる事になるだろう。
祝福する客は一人もいない。そしてお主たちは、人目を忍んで人里はなれた場所で一生を過ごさなくてはならない。
そんな生活を、何よりも自由を求めていた彼女が望むと思うのか?
やがて彼女は愚痴ばかりをこぼすようになり、お主にとって重荷となる。
最初に求めていた理想の生活はどこへやら。あるのは厳しい現実ばかりだ。
違う結果を求めたとしても、そこにあるのは違う苦しみだけだ。
だがな、どちらの道を選んだとしても変わらないものがある。
それはな、サントハイムでお主と姫様が共にすごした時間、お主が感じた幸せ、その素晴らしさだ!
だがお主は結果ばかりに目を向け、その素晴らしかった時間さえ苦しみの種としている。
こんな愚かな事があるだろうか?なぁ、クリフト。
人生に結果を求めてはならない。たとえ何かの結果が出たとしてもお前の人生はそこで終わったりはしない。
その先も続いていくんじゃ。だとしたらその結果も所詮過程に過ぎなかったということじゃないか。
突き詰めていけば、人生の結果は死でしかない。それ以外の結果はありえないんじゃ。
だから生きるという事は過程なんじゃ。お主は一人の女性に恋をし、そして破れた。
だがその結果にたいした意味はない。また明日から歩み出せばいいんじゃ。その繰り返しなんじゃ!生きるという事は!」
ブライは、肩を揺らしながらほとんど叫ぶようにして言い放った。
「わしに言える事はそれだけじゃ。」
ブライは椅子から立ち上がり、宿の中へと歩いていった。
「ブライ殿!」
クリフトは、ブライを引き止めた。
「私が彼女に恋をしたことは本当に正しいといえる事だったろうか?
神官としても、王家の家臣としても、それは正しい事とはとても言えない。
そして彼女に自分の想い1つ伝えられなかった私は、男としても中途半端だった。
私は何に関しても中途半端だった!そんな自分に私は・・・・・・絶望する!」
ブライは答えた。
「絶望する事は、何も悪い事ばかりではない。わしを見てみろ。
希望も絶望もとうに摩耗し尽くし、もはや死を待つだけの老いぼれの姿だ。
人は何かを求めるからこそ絶望する。お前は、いつか自分の喜びを見つけだせる。わしはそう信じている。
お前は、姫様たちがまぶしいと言っておったな。
だが、わしには理想を求め思い悩むお主こそがまぶしい。
そして、美しい!」
そう言い残しブライはその場から去っていった。
ウッドデッキにはクリフト一人だけが残された。
不思議と彼の心は穏やかになっていた。
それが一瞬の静けさである事を彼は十分承知していた。
自分はこれからも迷い、苦しみ続けるだろう。
しかし、それも悪くないかもしれない。
クリフトは天を仰いだ。
白みかけた初夏の空に、まだいくつかの星が瞬いていた。
>>665氏、GJ!
すばらしいSSのあとの書き込みということでやたらと緊張しています。
今日ミネアスレから初めてここにやってきました。そして、すべて読破しました。
えぇ、まとめサイトの作品も全部です。
なので記念に一言残させていただきます。
なんじゃこのスレは! ネ申、多すぎ!!
きのこの神様、煩悩の神様、商売(店長)の神様、彼方におられる神様、前スレ506神様、
そのほか多数の神様方(書ききれなくてスマソ)、本当に乙&GJです!!
そして、ミネアネタのSS、感動しました。あらためてGJ!!
ほんと満足です。・・・・・・では古巣へ帰ります。
【ガーデンブルグの牢屋】&【伏兵・ミネア】で33KBのssををうpしたらまずいでしょうか・・・?
その辺のルールがよくわかってないので教えてくださいまし。
新スレ作成を待ったほうがよいのでしょうか??
アリーナがあまり絡まず、かつアリーナへの想いがテーマでないならば、千一夜あたりのほうがいいと思います。
単にミネクリ読んでもらいたいだけってのは勘弁。
>>668 ううむ・・・。一応、アリーナへの想いをミネアサイドからみたらこんな感じか?ってイメージで書いてみたので投下してみるか。
668さんの気に障ったらごめんなさい。
満月の夜、一人で宿を抜け出して森の中に結界を張り、13本のロウソクに火を灯す。
魔法陣の真ん中に私は正座している。
こんなこと、占ってもいいのかしら。
でも、この恐ろしい占いを始めずにはいられなかった・・・
満願叶って父のかたき討ちを果たした私たち姉妹。これからの旅の目的は、父の形見でもある進化の秘法の行く末を見届けること。あともう1つ・・・旅を続けたい理由が私の中に芽生えていた。
それは、もっと彼と一緒に苦楽を共にしたいから。
第一印象は「弱そうな人」。元気すぎて困ってしまう人に振り回されて疲れている
常識人・・・もしかして私と似てる?私の悩みを口に出さずともわかってくれる感じがした。
彼はいつも周囲への配慮を心がけ、誰にでも慈愛に満ちた言動で接してくれる温かい人。
きっとあの病気は心身ともに疲れが蓄積したことが原因に違いない、と思っていました。
「クリフトったら何もないところで突然転ぶなんて面白いわね」
無邪気にアリーナさんが笑って振り返った。
私にはわかった。彼はたちくらみがしてひざをついたのだと。ああ、また無理している。第一、ソロさんまで彼を酷使しすぎなのよ。私はいつのまにか彼の負担を軽くする為に回復魔法を唱えるようになっていた。
「大丈夫ですか?」
私はとっさに彼の手に触れて立ち上がるのを手伝おうとしました。
すごい熱!!
私は一瞬こわばった顔を彼に見せてしまったのかもしれません。
「あ・・・いえ。大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」
彼は私の手を優しくふりほどいてゆっくりと立ち上がりました。
あんなに熱があるのに青い顔をして、体調がよくないのだとはっきりわかりました。
なのに、私は彼を休ませてほしいとソロさんやアリーナさんに言えないまま日を重ねてしまいました。
そんなある日、ガーデンブルグのお城で思わぬ濡れ衣を着せられて、
仲間の一人を人質として差し出すことを余儀なくされる事件が起こりました。
「では、ここは私が・・・」、と進み出るトルネコさん。
しかし、ソロさんが指名したのは意外にも彼・・・クリフトさんでした。
みんな一瞬「何故!?」という空気を出しましたが、
ソロさんの采配に対する信頼で結びついている私たちですからソロさんの決定には異論を唱えようがありません。
アリーナさんが牢屋の中に入ったクリフトさんを一生懸命に励ましている間、
ソロさんは何やら牢屋の番人と長話をしている。悪いとは思ったけれどこっそり聞いてしまいました。
「牢屋に入ったあの神官は体が弱いのです。実は、休ませてあげるつもりで人質になってもらった次第です。
自分もできるだけ毎日様子を見に来るけれど、番人の方はどうか彼の体調を気遣ってあげて欲しいのです。
どうか真犯人を捕まえるまでの間、彼の世話をお願いします。
こんなことを頼める立場ではないのは承知していますが、このような機会でもないと彼を休ませてあげることはできないのです。」
私は番人とソロさんの前に飛び出して言いました。
「私が毎日様子を見に来ます。」
番人は、私一人だけの面会なら認めると約束してくれた。
私は毎晩、牢屋に通い続けました。苦しい想いを胸に秘めて。このまま真犯人がつかまらなければ・・・なんてね。
「病気のこと・・・ミネアさんにはやはり気づかれてしまったのですね。ソロさんにも勘付かれているとすれば、姫様やブライ様は」
病気のことは私たち二人だけの秘密ですよ。あなたのことばかり見ている者でなければそうそう気づくはずはありません。
「今日は姫様にお怪我はありませんでしたか?ミネアさんが傍にいてくれるので助かります。」
彼がアリーナさんのことばかり考えているのを思い知るほど私の胸はきしみます。
実は今日はアリーナさんが一人で泣いていたのをお見かけしたのですが、彼には伝えませんでした。
私の心にどす黒い部分があるのを認めざるをえません・・・。
「・・・姫様はこのクリフトがお傍にいなくても別にお変わりないのですね。頼もしい仲間にめぐまれていらっしゃるのは神の思し召しなのでしょう・・・。」
アリーナさんはクリフトさんが傍にいないとミントスの事件を思い出して辛いとおっしゃってましたがそれもあえて伝えない私。
こっそり取り寄せたパデキアを飲ませてそっと彼の背中をさすってあげました。
彼の広い背中が一瞬びくっとしましたが私は手を止めませんでした。
「たまにはクリフトさんだって誰かに甘えたっていいと思うんです。」
アリーナさんとこうして距離を置いて「仕事」から解放されれば、病気はよくなります・・・
って勝手に思っていた私。あなたの病気を治してあげられるのは私だけです。
「では・・・では・・1回だけミネアさんに甘えてもよろしいでしょうか。どうしても姫様のお姿を拝見してお声を聞きたいのです。
明日の晩は姫様にここに来てもらえるようにお願いしてくれませんか。姫様がおいやなら無理にお願いはできませんが。」
少し、寂しそうな瞳をしてうつむきながら彼はこのように言いました。彼の心の中にはアリーナさんしかいない。
「ねえ、ねえ、ソロ。私、実はすっごく牢屋に入ってみたいの!クリフトと交代したらダメかなぁ?クリフトもそろそろ外の空気を吸いたいだろうし。」
相変わらず無邪気なアリーナさんが妹みたいに可愛くて私を複雑な思いにさせる。
「あー?そう?そんなに牢屋に入りたいなら二人で入っててもらおうかな。そのほうが宿代が浮くんだよね。」
ザキ!!ザキ!!!心の中で私はできもしない呪文を唱えてしまいました。
そんな矢先、真犯人が捕まった。クリフトさんの体調もやや持ちなおしたみたい。
牢屋にクリフトさんを迎えに行ったソロさんは言った。
「俺はクリフトのことすごく頼りにしているから疲れがたまっているからって理由では、もう休ませてあげられない。
もし、これ以上体調がすぐれなくなっても離脱させるわけにはいかない。しっかり頼むぜ。」
「はい。もう大丈夫です。足手まといになるようなことがないようにいたします。」
病が少しずつ進行しているのを知っているのは私とクリフトさん本人だけの秘密。
二人だけの秘密っていうともっとロマンチックなものを思い描いていたのにどうして。
私は彼がいつ倒れるか心配で心配で仕方がない。
だから、今宵、満月の夜。私は彼の寿命を占っている。
アリーナさんが本当の笑顔を取り戻すまで、彼は旅を続けられるのかどうか・・・。
まもなく私の手元の水晶にその答えが浮き出てくるはず。
おわり。
駄文に付き合ってくれた方々、ありがとうございました。
気に入らなかった皆さん、ゆるしてください。
なんか改行の位置も変だし、萎えた方もいらっしゃると思います。
やはりクリアリは王道カップルなのでミネアには一生「伏兵」でいてほしいと思いますw。
いやいや。内容は真面目なのに軽妙な言動が楽しくて面白かったですよ。
ただ……これ、冒頭部ですか?5.5kbくらいしかないですが。
33KBって言ったら20レスは軽く行っちゃうので、ちょっとびびったんですが。
それと。変だと思うのなら投稿前に直してください。
ちゃんとした理由があるなら変だなんて断らなくてもいいです。
>>676 うわー33kbってなんてこと書いてしまったんだ!?
ご指摘のとおり本当は5.5kbって書こうとしたんです・・・。
ですから、これでおわりです。
失礼いたしました。
改行のご指南もありがとうございました。
よかよか
みなさま感想ありがとうございます。
恋の一方通行は萌えます。
>>煩悩さん
GJGJGJGJGJGJです!
こちらのミネアはいつか告白しそうですね。
>>657さん
これまたGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJです!
ブライが漢です!惚れそうです!
>>670さん
GGGGGGGGGGGGGGGGGGGJJJJJJJJJJJJです!
気配りを見せる勇者に漢気を感じます!
ミネアスレからいらした皆様、お題をくださった
>>623さん、
ありがとうございました!
うぉぉぉっ
しばらく見ない間にスレが伸びまくってるー
>>657様
激しくGJ!!激しく乙です!
ブライ、むちゃくちゃ渋くていい味だしてます。
年配キャラの濃さを感じてしまいました〜。
こういうせつない話、大好きなんです。
すみません、連投になってしまいました。
>>670様
ダブルお題クリア、乙乙乙!!!
改行のことなんて話に夢中で気になりませんでしたよ。
ミネアのザキに笑いつつ、クリフトの寿命が気になる・・・。
>>679 きのこの人様
わたくしめが出した妙な名前のお題にお礼だなんてありがとうございます。
ミネアが出てくると切ない話になると期待してましたがまさかここまでとは。
片思い、萌えます〜。
こうなるとミネアの告白ってのも想像してしまって(*´Д`)ハァハァ
つお題【花嫁修業】
今、5やってて修道院って花嫁修業する場所でもあったんだなーと思ったトコ
>>657さん
GJ!ブライ、かっこいい〜。ブライの魅力を再確認しました。
>>670さん
ミネアがかわいいです。
>二人だけの秘密・・・・・・この言葉がこんなにせつなさを呼ぶものとは・・・GJ!
ぜひまた投下してください!
>>682さん
思わずお題に反応してしまったじゃないですか!睡眠時間削っちゃったじゃないですか!
でも、せっかく書きあげたので投下しときますね。
サントハイム王は、その日も玉座で唸っていた。
「何とかいい方法はないものか・・・」
せっかく旅を終えて帰ってきたというのに、自分の傍にちっともいてくれない愛娘アリーナ。
もっとも、活発でじっとしていられる性分でない娘を、自分の傍に縛り付けておくことが不可能
なことは重々承知なのだが、それでもやはり譲れない一線はある。
「ブライ、アリーナはどこにおる?」
「自室におられぬのなら、おそらくゴットサイドでしょうな」
またか!!
王はむっと口をへの字に曲げた。
そう、サントハイム王のイライラの原因はここにある。
傍にいてくれないというのは、寂しいが我慢できないことではない。
たとえアリーナがエンドールのカジノに入り浸っていようが、諸国漫遊武者修行の旅にでようが、
はたまたモンバーバラのステージに立とうが・・・いや、それはさすがに問題があるかもしれない
が、とにかくあやつのもとにさえ行ってくれなければ問題ないのだ。
だが、現実はどうだ。
せっかくクリフトをゴットサイドに派遣し、アリーナと引き離したというのに、愛娘は暇さえあ
ればかの地を訪れているという。
知らず握り締めた肘掛けがぎりりと鳴った。
(どうすれば、あやつから娘を引き離せるかのう?)
そう考えるもなかなかいい案が浮かばない。
無意識のうちに自慢の髭をもてあそびつつ、何気なく傍らの書簡に目をやったサントハイム王は、
次の瞬間、瞳を少年のように輝かせた。
「これだ!」
突如叫んで立ち上がった王にちらりと視線を送ったブライは、「そういえば書庫に用事が」と口
にしながらそっと立ち上がった。
(陛下、わしは関わりとうございません)
経験は人に生きる術を与える。
老いたりとはいえど、向上心豊かなブライはいままでの数々の経験から学んでいた。
―――君子、危うきに近寄らず。
すわ、巻き込まれては一大事、と老人のものとは思えぬほどの軽やかな身のこなしで、御前を
辞そうとしたブライだったが、踵を返した途端、その肩をがしっと掴まれた。
「ブライ、忙しいところ悪いんじゃが、ちと“余”の頼みごとを聞いてくれぬかのう?」
王が敢えて「わし」ではなく「余」という一人称を使うときは、国事に絡むといって大過ない。
否、たとえ絡まなくてもその言葉を耳にしては、逆らえるはずもなく・・・。
悲しきは、宮仕えの身。
この日ブライは王宮勤め50年の矜持を以って、必死に拒絶の言葉を飲み込んだ。
「え?花嫁修業?」
「そうですじゃ。姫様もそろそろ本格的に始めませんとな」
どんな命令が下るのか、内心戦々恐々としていたブライだったが、意外や意外、サントハイム王
が命じたことは至極尤も、且つ、国にとっても重要なことであった。
(陛下がちゃんと国のことを考えておいでだったとは・・・)
わしは嬉しいですぞ!
国の王たるものに抱く感想とは思えぬ失礼な言葉を胸のうちで呟き、ブライは感動に浸る。
(姫様の花嫁修業を真剣に考えてくださるとは)
教育係として仕え、いままでも何度となくアリーナの花嫁修業を奏上したにも拘らず、「まだ早
いじゃろ」とまともに取り合ってくれなかった王が、ついに愛娘を手放す決意をされた。
その事実が、何よりも嬉しい。
(思えば、王の教育係として宮廷に上がったのがいまから50年ほど前・・・)
胸の前でこぶしを握り締め、思考の海に身を投じるべく目を瞑ったブライ。
その長くなりそうな老人の述懐を読んだのか。
アリーナは疑問をぶつけることで、ブライを現実にひきもどした。
「でも、今更何をするのよ。礼儀作法とか、刺繍とか、大体のことは城の女官に学んでいるわよ?
これ以上、何を学ばせようというの?」
我に返ったブライはアリーナの言葉にひとつ頷くと、僅かに目を眇めた。
「そうですな。最近の姫様は以前と違って、そういった花嫁修業も(さほど)嫌がらずに頑張っ
ておられましたからな。じいは嬉しく思いますぞ」
ブライに小言を言われることは多々あれど、滅多に褒められたことのなかったアリーナは、
驚いて目を見開き、そして気恥ずかしげに頬を赤らめた。
そんなアリーナを微笑ましく見つめると、ブライは先程の質問に答えるべく再び口を開いた。
「強いていうなれば・・・そうですのぉ。行儀見習い、といったところですな」
「行儀見習い?」
「そうですじゃ。まぁ、なんというか。親元を離れてですな、その、いままでの勉強の成果を
試すことを兼ねた、いわば精神修養のようなものですじゃ。そうそう、清貧を心がけるというこ
とも大切ですな」
「親元を離れて? ということは、どこかに下宿するってこと」
素敵、と目をきらきらと輝かせ、アリーナは問う。
「で、どこに?」
「一応候補としては、この修道院なんですがの。我が国と交流のあるエンドールにも程近く、ま
た、サントハイム正教の修道院でもありますじゃ。まさにうってつけのところだと思いますがの」
アリーナの眉根が寄った。
「修道院? それって決定なの?」
「と申されますと?」
「だって、全然おもしろくなさそうなんだもの」
唇を尖らし、そっぽを向いたアリーナだったが、ふと視線を宙に彷徨わせると脳裏を過ぎったあ
る考えに、ぽんっと手を打った。
「ねぇ、要するに花嫁修業の出来るところならどこでもいいのよね?えぇっと、つまりお料理や
お裁縫の修業が出来て、さらにそれを指導できる人がいて」
「まぁ、そうですな」
「礼儀作法にも厳しく且つ精通していて」
「うむ」
「そのうえ、清貧な生活の出来るところならいいのよね?」
「我が国は宗教国家でもありますからな。できれば、宗教、サントハイム正教に明るい者がおる
所が理想的ですな」
「もう、ばっちり! で、他にも何かある?」
「そうですなぁ。特にはございませぬが・・・ちなみにそんなところに心当たりがおありなのです
か?」
「うん、まあね。それより、その条件を満たしていれば、絶対反対しないわよね?」
「まぁ、そうですな」
「絶対反対しないわよね? 確約してくれないなら花嫁修業なんてしないで、武者修行の旅に出るわよ」
アリーナの脅しに内心冷や汗をかきつつ――なぜなら彼女が武者修行を心に決めた時点でそれ
は回避不能になることがわかっていたから――先程の言葉を反芻していた。
(料理裁縫の修行ができ、礼儀作法の指導ができる人物がいて……うむ、特に問題ないじゃろ)
いつになく強気のアリーナに、僅かな不審を抱きつつも、ブライは大きく頷いた。
「まあ、よろしかろう」
その瞬間、アリーナが飛び上がって喜んだ。
「ありがとう、ブライ。私、頑張るわね」
じゃ、いまから行ってくる、と走り去ろうとしたアリーナに、ブライは慌てて声をかけた。
「姫様、で、どちらに参られるんですじゃ?」
ブライの言葉に、一瞬だけ振り向くと、アリーナはにっこりと笑って答えた。
「ゴットサイド。クリフトのところよ!」
「え?ちょっとお待ちくだされ。わしが申し上げたのは……」
申し上げたのは?
料理、裁縫の修業ができ、礼儀作法に精通し、清貧の志を持った、サントハイム正教を教示でき
る者がいるところ……。
「あーーーっ、し、しまった!! 修道院という言葉に惑わされて、『女性だけのところ』と言
い忘れておったわい」
言質を取られてしまうとは、何たる失態!!
その事実に突き当たると、ブライは頭の先からつま先まで真っ青になった。
「えらいこっちゃ」
慌てて自室に向かい駆け込むと、ブライは急いで荷物をまとめ始めた。
「のう、ブライを見かけなかったか?」
サントハイム王の問いに、明日の謁見の順番を確認していた大臣が手元から目を上げ答えた。
「先程、何やらものすごい勢いで自室を飛び出していかれるのをお見かけしましたが?あぁ、それに
してもあのように慌てたブライ様を拝見するのは初めてでした。まさに青天の霹靂と申しましょうか・・・」
大臣の言葉に、王は首を傾げる。
(慌てていた?ブライが?)
不思議なこともあるものだ。
そう感じたものの、根っから楽天的なサントハイム王はむしろそれを吉事と受け取った。
(おぉ、もしかしたら『膳は急げ』というやつかの!)
心の文字を読むことができたなら、「善」ですぞ!っと突っ込みを入れられそうな間違いを犯し
つつ、王はにこにこと笑う。
「して、ブライは?」
喜色満面、今にも踊りださんばかりの上機嫌ぶりに、大臣は何事かと思いつつも、はっとしたよ
うに書簡の山を見つめた。
「そうでした。私、うっかりしておりました。先程ブライ様から陛下に書簡を預かって……。
あぁ、これです。申し訳ございません」
畏まって書簡を差し出す大臣に、王は鷹揚に手を振ってみせる。
そしていそいそと書簡を開き、そこに書かれた文字を追った。
『わしも花嫁修業に赴きたいと存じます。探さないでください。ブライ』
「なんじゃこりゃぁぁぁぁあぁーーーー!!」
その日が青天であったかは定かではないが、奇しくも先程の大臣の言葉が現実となり、サントハ
イムの玉間に霹靂が鳴り響いた。
蒼い髪の青年は、己の足元に三つ指ついてひれ伏す老人に困惑していた。
「クリフト、頼む。掃除でも洗濯でも肩揉みでも何でもするから、わしをここにおいてくれ!」
(終)
以前、私は難しい言葉を遣うということをおっしゃられていた方がいましたね。
すみません。読み方や意味がわからない言葉がありましたら遠慮なくおっしゃって
くださいね。ってよく考えたら、夏休み中。
もしかして小学生の方とかもご覧になっていたりするのでしょうか。
次はもっと読みやすい文章を書けるよう努力します。
とりあえず、今日は寝ます。ではノシ
うぉほほほほぉー
おぉ、押しかけ女房はブライだったのかw
煩悩さん、GJでした。
695 :
sage:2006/07/29(土) 21:12:32 ID:JtNmAXyi0
GJ!
ついでに良サイト見つけた記念カキコ。
SSもいいけど雰囲気もいいんだ。
浮かれすぎて間違えた。ごめん。
そんないいサイトをひとりじめしようなんて思ってないよな?
ヒントきぼんぬ
>>682です。
煩悩さん、お題投下後この速さでSSとはあなたはネ申。
毎度毎度のことながら激しく乙です。
ブライがシスターの格好をしてクリフトに三つ指ついている姿を想像してしまたw。
ゆっくり休んで睡眠不足を解消してください。
>>695さん
ここは良い職人さんと良い読者によって支えられているスレです。
タダですばらしきものを読ませてくれるすべての職人さんたちに感謝しつつも
浮かれちゃうのわかりますww
皆様すばらしいSS本当に乙です。
>>665 読めば読むほど、せつなさが強まりますね。
>>675 寿命を占うミネアが健気ですな。
>>煩悩さん
腹黒神官がこの後どうするのかが非常に気になります。
さて、編集一応終わりましたが、9KBにまでしか
短縮できませんでした。あと、暗い・痛い・黒いの三重苦SSに
なってしまいましたので、先に謝っておきます。
目を覚ますと、私はベッドの上で横たわっていた。
額に手を当て、記憶を手繰り寄せようとするけど、何も思い出せない。
私はどこでどうしていたのかしら…
「あ、ミネアさん。気がつかれましたか。」
聞き覚えのある低くて落ち着いた声。クリフトさんだ。
「まだ動いちゃだめですよ。肉体と魂の融合がまだ完全ではありませんから。」
「融合…?完全…?」
私はまだ意識が朦朧としていて、クリフトさんの言ってる意味が理解できなかった。
「私…何かしたんですか…?」
クリフトさんはふっと小さなため息をつくと、そばにあった椅子に腰掛けた。
「全く無茶な方ですね、ミネアさんは。まさかあの状況でメガザルを使われるとは。」
「私が、メガザルを…ですか?」
「ええ。私も驚きました。いつの間に覚えていらっしゃったんですか?」
メガザルの呪文。
自らの生命と魔力の全てと引き換えに、詠唱者が望む者の体力を全快させ、
散った生命をこの世に呼び戻すという、究極の魔法。
亡き父のエドガンが、錬金術とともに日々研究を重ねていたようだ。
父の秘密の研究室で、偶然この呪文に関する書物を手に入れた私は、
旅の合間に少しずつ読みあさり、先日ようやく習得したばかりだった。
そうだ、私はあの時メガザルの呪文を使ったんだわ。でも、どうして?
苦労の末に覚えたものの、その代償が怖くて呪文を唱える勇気がなかったというのに。
頭の中に散らばった記憶の断片を拾い集め、私はゆっくりと目を閉じた。
記憶の中の私たちは、人界ならぬ場所で魔物の群れと戦っていた。
でも、予想以上に奴らの猛攻は凄まじく、それに加えて体力も魔力も
消耗しきっていた矢先に遭遇したのも、また不運だった。
百戦錬磨の戦歴を誇る仲間たちが一人、また一人と倒れていく度に、
クリフトさんの悲痛な叫び声が辺りに響く。その様子は、馬車の中にいた私にも伝わった。
馬車の中で水晶玉を抱えて震える私。もうホイミを唱える魔力すら残っていない。
こんな時に、足手まといにしかならない自分の情けなさ。私は我が身を呪いたい気分だった。
どうか、生き延びることができますように。
そんな私の願いは、金切り声に近い悲鳴で無残にも切り裂かれた。
「姫様、しっかりなさって下さい!姫様、姫様ぁー」
馬車の幌から覗き込んだ私の目に飛び込んだのは、半狂乱になって叫びながら
事切れたアリーナさんを必死で揺り動かすクリフトさんの姿だった。
こんな時に非常識だったかもしれないけど、私はクリフトさんの腕の中にいる
アリーナさんに微かな嫉妬を覚えた。あれが私だったら、と。
私はすっと立ち上がり、馬車から不毛の大地へと降り立った。
「ミネアさん、来てはなりません!せめてあなただけでも…逃げて下さい!」
満身創痍のクリフトさんが、最後の力を振り絞って私を諌める。その右胸には
魔物たちの牙が深々と刺さり、出血のショックで剣を支えに立っているのがやっとだった。
このままでは、他の仲間たちと運命を共にするのも時間の問題だろう。
クリフトさんを死なせたくない。
私は無意識のうちに両手を組み、覚えたばかりのメガザルの呪文を詠唱し始めていた。
体力も魔力もほんのかけらしか残っていないが、今はこれに賭けるしかなかった。
お父さん…どうか私に力を貸して下さい!
魔物たちの爪や牙が私を襲う。それでも私はさらに祈りを込め、詠唱を続けた。
どちらが先に目的を果たし終えるか、一分一秒を争う大勝負だった。
先に呪文の最終節を唱え終わったのは私だった。辺り一面に、まばゆい白い閃光が走る。
力尽き倒れた仲間たちの目覚めの声が次々と聞こえ、お互いに手を取り合って喜びの声をあげた。
クリフトさんの傷が完全に癒えるのを見届けた直後、私の視界が黒一色に染まった。
全身が脱力感に覆われ、呼吸と心拍が少しずつ速度を落としていく。でも、思ったより苦しくない。
ありがとう、お父さん。みんなを、そしてクリフトさんを助けてくれて。
私の意識は少しずつ薄れ、先ほど仲間たちが旅立った世界へと、一人旅立った。
記憶の世界から離脱したばかりの私に、クリフトさんは優しく微笑みを浮かべた。
「この町で宿を取って休養した後、ザオリクの呪文を使いました。」
「あの後、私たちは魔物たちを倒し、何とかあの邪悪な世界から戻ることができたのです。
これも全てミネアさんのおかげです。本当にありがとうございました。」
お礼を言うべきなのは私の方だ。あなたがいたから、私はメガザルを使う勇気が持てたのに。
「とにかく気がついてよかった。重湯を用意しますから、少しだけ待ってて下さい。」
クリフトさんの背中を見た瞬間、置いていかれそうな不安に駆られた私は、
思わずベッドから立ち上がった。でも、脚に力が入らない。私は2、3歩も歩かないうちに
よろめいてしまった。気がついたクリフトさんが、素早く私を抱きとめる。
危なかった。おかげで私は転倒せずにすんだ。
「無茶をしてはなりません。あなたは4日間も眠り続けていたのですよ。」
私の現在位置は、クリフトさんの広くて温かい胸の中。あまりにも突然のことで、私は窒息しそうだった。
胸の鼓動が伝わるのを恐れ、息をひそめてしまったからかもしれない。
クリフトさんも私と同様、顔が赤くなっていた。それでも体勢を整え、私を軽々と抱きかかえると
再びベッドに戻した。部屋を出た後、大きな靴音を立てて階段を駆け降りる音が聞こえた。
その時の彼の顔を想像して、私はくすっと笑った。
私たちの関係は、決して良好なものとは言えなかった。
最初に出会った時、私は病気がうつるのではないかと心配して、
重い病のために苦しそうだったクリフトさんに近寄ろうともしなかった。
その後、クリフトさんたちが仲間に加わってからは、私は馬車で待機することが多くなった。
勇者様の判断は間違ってはいない。回復役としては彼の方が優秀だったから。
でも、私は悔しくて…いつしかクリフトさんのことを逆恨みしていた。
クリフトさんは、王女であるアリーナさんに恋心を抱いていた。
本人は密かに想いを寄せているつもりらしいが、当のアリーナさん以外には周知の事実だった。
だから私は、そんな彼に意地悪をしてやろうと思った。
私は袖をまくり上げ、銀色に輝く腕輪を見つめる。浪費家の姉、マーニャのせいで
大嫌いになったカジノにこっそり通い続け、やっとの思いで手に入れた『星降る腕輪』。
装着する者の敏捷性を倍増させる、不思議な装飾品だ。
腕輪を身につけてから、その効力を生かして、私はアリーナさんを最優先に
回復の呪文を施すようになった。本来、それは臣下であるクリフトさんの役目のはずだ。
それが彼の使命であり、生き甲斐でもあるからだ。
つまり、私の行為はそんな彼にとって邪魔でしかなかったのだ。
でも、クリフトさんはそんな私に嫌な顔を一つせず、笑顔で優しく接してくれた。
始めは悪意の捌け口に過ぎなかったアリーナさんへの回復が、やがて別の意味を持つようになった。
そのことに気がついたのは、スタンシアラ城で故郷のサントハイム城のことを思い出し、
悲しみにくれるアリーナさんを優しく慰める、クリフトさんを見た時。
私は今までにない胸の痛みを感じ、そこで初めて彼に惹かれている自分に気がついた。
だから、クリフトさんがアリーナさんに呪文を施す所を想像すると、気が狂いそうだった。
そんな場面を見るのが辛くて、私は彼女の回復係に専念し続けたのだ。
アリーナさんや他の方にばかり回復系の呪文を優先させるため、私自身へのケアは
自然とおろそかになる。気がつくと、切り傷や噛み傷が身体のあちこちに。
時々身体に激痛を感じたが、本当に痛かったのは、身体よりも心の方だったかもしれない。
私の状態に気がついたクリフトさんがこちらに駆け寄り、すぐさま私の手を取って、
ベホマの呪文を唱えた。身体が軽くなり、傷がすっと消えていった。手を握り締めているのに
気がついた私は、お礼を言うのも忘れ、思わずクリフトさんの手を振り払ってしまった。
私よりずっと大きいが、手袋を通してでもわかる、繊細で柔らかなその手。
私は大馬鹿だ。本当はずっとその温もりを感じていたかったくせに、自分から放すなんて。
顔を赤くしてうつむく私に、ますます心配そうな表情を見せるクリフトさん。
ごめんなさい。あなたを困らせるつもりではなかったのに。
別の戦闘が終わった頃、私はまたも傷だらけになってしまった。
でも、心のどこかで嬉しさを隠し切れない自分がここにいた。
だって、治癒の呪文を受ける間だけは…クリフトさんを独り占めできるから。
あの頃は、ただクリフトさんを想っているだけで幸せだった。でも、今は違う。
私は、彼の胸の暖かさと腕の温もりを知ってしまった。
今度は彼の愛する女性として、あの胸の中に飛び込みたい。恋する女なら誰でも抱く素直な気持ち。
アリーナさんを一途に想うクリフトさんの気持ちを振り向かせるのは、簡単ではないだろう。
でも、私に勝算が全くないわけではない。二人には身分の差があるし、何よりアリーナさんの
態度があれでは、進展どころか後退になりかねない。
だけど、私にはわかる。少しずつではあるが、アリーナさんが確実にクリフトさんを
一人の男性として意識するようになっていることを。
だから今のうちに、二人をなるだけ近づけさせないようにするのだ。
アリーナさんが自分の本当の気持ちに気づいてしまったら、私にもう勝ち目はないから。
そうだ、この旅が終わったら、クリフトさんに私の故郷のコーミズ村に来てもらおう。
村には教会がないから、教会を新設するということなら怪しまれることもない。
ブライさんにでもお願いしてみようかな。モンバーバラの劇場で何度か接待を繰り返せば
二つ返事で首を縦に振るだろう。だめなら接待の事実を告げると脅しをかければいい。
私がまだ見ぬ未来に思いを馳せていた頃、クリフトさんが重湯を持ってきてくれた。
「熱いですから気をつけて。むせないように、ゆっくり飲んで下さい。」
「わざわざすみません。ありがとうございます。」
ぎこちない手でコップを持つ私の手を、クリフトさんがそっと支えてくれた。
温かい重湯がゆっくりと喉を通っていく。全部飲みほした私に、彼はまた笑顔で応えてくれた。
いつか彼を私だけのものにする。アリーナさんになんか絶対渡さない。
私の密かで壮大な計画は、まだ始まったばかり。
(完)
>>699 うおおおお〜!リアルタイム遭遇! 店長さんGJ! ミネアさんの腹黒さ(誉めコトバ)がいいですね。
>>683 そして煩悩さんもGJ! なんか、諺の「朱に交われば赤くなる」ではないけれど
クリフトの腹黒がアリーナにも伝染してきたような・・・w
そして「膳は急げ」&三つ指ブライに萌えてしまいました。
>>煩悩さん
GJ!それ花嫁修業じゃなくてまさに花嫁ですって!w
>>店長
GJ!腹黒ミネアですね!
クリフトのおいしいところをしっかり持っていく策士ミネア。
>>695さん
私もそのサイトを知りたい……!
>>店長様
お題引き受けてくださって、ありがとうございます。
愛のメガザル、いいですねぇ。
今まで、何にも気づいていないアリーナを可愛いと思ってましたが、
ミネアの想いに気づかないクリフトにも萌え〜
>>煩悩様
恋は人間を腹黒くさせる・・・そんな一面を書いてくれる煩悩様の作品も萌えです。
695です。
クリアリナビからいけました。
あったかい感じのとこ。
クリアリナビか…
あそこもう一年動いてないよね。
新規開拓かと思って期待したんだけど…
紅茶のとこかな。
姫様ほしゅ
姫さま、おはようございます。
>>710 「おはよう、クリフト。今日はどこ行こっか?」
>店長さん
GJ! 腹黒いのにかわいいミネアが大好きです!
どうしよう、ミネアへの愛がとまらないw
お題ss読んでくださった方、ありがとうございます。でも、よく考えたら全然
修業になってない罠w ということで、実践編追加しておきますね。
早朝、足音を忍ばせると、目的の扉をそっと開けた。
(今日こそは絶対に一番乗りね)
ほくそえみながら部屋の中に入る。
すると、朝食の皿を並べていたふたつの人影が同時に振り返った。
「あ、おはようございます。姫様」
「遅いですぞ。これでは修業になりませんな」
「……うそーーーーー!!!」
年寄りと神官の朝は、異様に早かった。
「ねぇクリフト。もしかして洗濯しちゃったの?」
私がやるって言ったのに〜。
そう言いながら部屋に入ると、クリフトはきょとんとした顔で振り返った。
「え?今日は何もしておりませんが?」
「え?でも、神官衣が乾してあるわよ?」
早寝早起き、ピオリム。
ブライの行動はすばやかった。
「今日は暑いわね。ねぇクリフト、買い物行くんだけど、何か欲しいものある?
冷たいものでも大丈夫よ。『ブライと違って』私の脚力なら市場からあっという
間に帰って来られるわ」
足には自信があるのよね。
そう言い、ミニスカートを翻しながらその場でくるりと回転してみせる。
と、厚着をしすぎているせいだろうか。
クリフトが頬を上気させながら応えた。
「買い物でしたら、先程ブライ様が行かれましたよ。しかも帰りにゴット
サイドでおいしいと評判の氷菓子を買ってきてくださるそうです」
「それって町外れのお店の?」
「えぇ、そうでしょうね。行きは大変かもしれませんが、帰りはルーラで
街の入口に戻ればすぐですし、まぁ、ブライ様の場合徒歩でも大丈夫で
しょうが」
「……そうね」
サントハイム宮廷魔術師、ブライ。
ヒャド一筋50年。
伝説はそこから始まった。
「あ、クリフト、お疲れ様〜。持ち帰ってきたお仕事終わったの?だったらお茶でも飲まない?」
休養日ぐらいのんびりしないと〜。
紅茶ポットを片手にいそいそと立ち上がる。
するとクリフトはやんわりと微笑み、アリーナのもつポットにそっと手を添えた。
「えぇ、終わりました」
クリフトの大きな手がやさしく包み込む感触に、自然、頬が赤らむ。
「……クリフト」
甘いティータイム到来の予感に、胸が高鳴った。
「正直終わらせられるか微妙なところだったのですよ。ですが、先程お茶の差し入れのついでに、
ブライ様が手伝ってくださいまして。本当に助かりました。さすがはブライ様ですね、憧れてし
まいます。あ、姫様、これは陶器ですからそのような持ち方をしては危ないですよ」
「………気をつけるわ」
賢さと経験。
サントハイム重鎮の名は伊達ではない。
「今日はほんとに暑いわね。こんなに暑くちゃ寝られないわ」
クリフトが寝付くまで煽いでいてあげようかな。
団扇を片手に寝床を抜け出す。
そして小さくノックをするとクリフトの部屋の扉を薄く開けた。
と、ひんやりとした心地よい空気が流れ出てきた。
「…………」
熱帯夜 氷の柱で 快適に
寝つきもバッチリ 届け『ラリホー』
「もう、なんとしてでも明日は一番乗りしてやるんだから」
イライラと団扇をもてあそんでいると、名案が浮かんだ。
「そうだわ。ダイニングで寝ればいいんだわ」
思い立ったら即実行。
ダイニングの椅子に腰掛ける。
「これで明日の朝は…だ…いじょう…ぶ」
気が抜けたせいか、眠りの波が押し寄せてきた。
「ふふ、あしたこそは…私の手料理を…」
クリフトに食べてもらうんだから。
そう呟くとテーブルにうつ伏せ、そっと瞳を閉じた。
「姫様……」
優しい声が聞こえた。
次に感じたのは、ため息と浮遊感。
(ねぇ、クリフト……)
心地よい揺れに身をまかせながら夢心地で囁く。
(わたし、あしたこそがんばるからね)
―――アリーナの花嫁修業は続く。
>>712 「そうですね。スタンシアラで夏祭りがあるそうですが、どうでしょう?」
>煩悩さん
伏兵ブライ、テラワロスw
続きキボンヌ
ううっ。この伏兵ブライは完璧な良妻賢母。
勝てそうにないw
ところで、今このスレは458KBらしい。何KBまでカキコ可能なのかな。
店長さんが容量削ってまで投下してくれているので、気になってしまって。
容量気にして投下が減る。投下が減ると過疎化する。本末転倒だな。なので容量気にせず、投下キボン!
読んでいただきありがとうございました。
きのこさんと煩悩さんのせつない系の後に、
こんな腹黒なのを投下していいんだろうかと、正直すごく迷いました。
>>707 愛のメガザル、ですか。いいですねー
勝手ながら、原稿のファイル名として使わせてもらいました。
>>煩悩さん
お題発表からわずか4時間で書き上げられるとは…
はっやーい、びっくりしました。
こちらのミネアと煩悩さんのブライの伏兵同士が
手を組んだら最強かもしれませんね。
せつない系SSが続いておりますが、やや変り種を一発。
オールメンバー出演(トルネコかなり微妙)で、告白するミネアとドキドキアリーナです。
告白まで前置きが長いし、他のキャラにも愛を注いでいる分、長めです。
長文が苦手な方はお許しくださいまし。
壮絶なキングレオ戦に勝利した後、モンバーバラの宿屋にて体を休めることになった。
夕食後に宿屋の井戸でうずくまっているソロにライアンはそっと近づいて後ろからポンと
肩をたたいた。
「俺って勇者とか言われつつ実はリーダーシップに欠けてるかも。」
と落ち込んだ様子のソロ。
「トルネコさんはもともとああいうキャラだとしても、あの真面目なクリフトまでが
姫様ホイミとかしちゃって俺の命令って認めてもらえてないのかな。」
「いや、クリフト殿のアレは仕方ないでしょうな。それより、ソロ殿がそこまで落ち
こんでおられることのほうがこのライアンは心配ですな。」
「ううっ。こんなこと相談できるのはやっぱりライアンだけだ。・・・実は」
「実は?」
「チェックインした後、財布をなくしてしまって今の俺らの持ち金は¥0。
銀行から下ろしたお金までどうやらすられちゃったみたいなんだ。もうリーダー失格決
定!」
頭を抱え込んで座り込むソロ。
「なぬ!?・・・いや、拙者はソロ殿を責めるなんてことはしませんぞ?こうなったら拙
者が一晩で稼いでくるでござる。ソロ殿はここで待っていてくだされよ。」
そう宣言するやいなや、ライアンはすごい素早さでソロの前からいなくなった。
「ライアン、戦闘中もこのくらい素早ければいいのになぁ・・・って何するつもりだろ?」
「クリフト殿ー。おられるか?ライアンでござる。ちょっと相談があるでござるよー。」
男部屋を激しくノックするライアン。
「どうしましたか?ライアンさん。そんなに慌てて。」
とドアを開けてくれたクリフトの手にはアリーナの破けたマントが。
「むむむむむうぅ!?おぬしがそのように乱れておるからソロ殿があのような気苦労を
背負うでござるよ!?まったくもうっ。」
「はぁ?何怒っているんですか。うわっ」
ライアンはクリフトを担ぎ上げ、どこかへ走り去っていった。
「これから姫様ホイミのお仕置きをするでござる〜!!!」
「???」
その後、ブライの監視つきで町を散歩して帰ってきたアリーナが、男部屋の入り口に
落ちている自分の破けたマントに気づいた。
「まあっ。クリフトったら。マントを直しておいてってお願いしたのにどこへ行ったの
かしら。」
「姫様・・・たまには自分でお裁縫してくだされ。はぁー・・・」
「ライアンさんっ。下ろしてくださいっ。一体、劇場に何の用ですか。」
「なに。これから二人で舞台に出て、金を稼ぐのでござるよ。ご協力あれ。」
クリフトの頭は真っ白になった。
「えええええ!?絶対イヤです。勘弁してください。わー」
暴れるクリフト。しかし、腕力でライアンにかなうはずもなく、担ぎこまれたまま舞台
の上に躍り出てしまった!
ライアンはクリフトを投げ飛ばして剣を抜いた!
クリフトは華麗に着地した!
「さあー!覚悟めされよ!」
「(ううう。ライアンさんにはなにか訳があるに違いない。冷静になるんだ、冷静に!)」
クリフトも剣を抜いた。
ざわめく観客。
「なんだーチャンバラかー!?いいぞ、やれー」
観客のテンションは最高潮に達した。そんな群集のなかに青ざめたミネアがいた。
「な、なんでライアンさんとクリフトさんが舞台に!?」
きっと姉さんが楽屋でなにかけしかけたに違いない。助けなければ、と一歩踏み出した
ミネアの袖がぐっと引っぱられた。
「ね、姉さん。いつの間に観客席に。それより二人が大変なの。助けましょう。」
「あー、余計なことはしなくていいから楽しみましょ!」
舞台に目をやると、そこにはチャンバラ劇ではなくモンバーバラの民族音楽に合わせて
剣舞が披露され始めた。時には激しく時には優雅に、音楽のリズムに合わせて繰り広げ
られる美しい剣の舞。観客はこの珍しくも素晴らしい演目にすっかり魅了されている。
「わぁお。あの二人にこんな特技があったなんて。やるぅ。安心したね、ミネア。」
姉が妹のほうをみると、妹はすっかり舞台に集中している様子。目は・・・クリフトを
追っている。
「ミネア・・・。(そうだったんだ。今まで気づかずにいてごめんね)」
剣の舞が終わると、観客は劇場がはちきれんばかりの歓声を二人に浴びせて沢山のゴー
ルドを投げている。
「わ〜。こりゃ大もうけね!プロの踊り娘としてちょっとくやしいわ。」
姉妹が楽屋にいくと、疲れ果てたクリフトの傍らでゴールドを計上するライアンがいた。
「二人とも!すっごくよかったわよ〜ん。」
楽屋には、姉妹にとって懐かしい人がもう一人。
「なんだ、この二人はマーニャちゃんの知り合いだったのかい?なるほどね。パノンも
いなくなっちゃったことだし、これからも出演頼むよ。」
「二度とゴメンですっ」
慌てて否定するクリフトを見て、ライアンとマーニャは大笑い。ミネアはそっとクリフト
の額の汗を拭いてあげた。
4人で劇場を後にすると、外の空気が冷たくてとても心地いい。
「私、クリフトさんがあのようなことをなさるとは本当にびっくりしました。リズム感も
あるし、ぶっつけ本番であそこまでできるなら踊りの才能があるのではないでしょうか?」
「いえいえ、とんでもない。もともとライアンさんは王宮戦士の嗜みとして剣舞をされて
いたのでしょうが、私は神に仕える者の儀礼的なものでしかありません。今日はひたす
らライアンさんに合わせて乗り切っただけですよ。」
早くあんな恥ずかしい舞台のことは忘れたいといった感じで顔を赤らめるクリフト。
「ライアンさんもとても・・・・・」
ミネアがライアンのほうを向くと、すでにライアンとマーニャの姿はなかった。
「あ、あれっ!?はぐれちゃったのかな。でも、ライアンさんが一緒なら大丈夫かな。」
ミネアがきょろきょろしている間にクリフトはすたすたと早足で宿屋に向かっている。
アリーナから頼まれたマントの修理のことで頭が一杯になっていたのである。
「ま、待って・・・待ってくださいクリフトさんっ」
とクリフトの背中に向かって叫ぶや否や、ミネアは足元の石に躓いて思い切り転んでしま
った。薄暗くて足元の石に気づかなかったのだ。
「大丈夫ですか!?」
「あいたたた・・・す、すみません。」
駆け寄ってきたクリフトにつかまって起き上がるミネア。ひざだけでなく、鼻もすりむい
てしまって血が滲んでいる。ミネアは自分で治そうとしたが、クリフトのほうが呪文の詠
唱が早かった。
「はい、治りましたよ。暗いから気をつけて。」
きっと私の顔は真っ赤になっているんだろう・・・密かな想いに気付いてほしいようなほ
しくないような、でもやっぱり今あんまり顔を見ないで欲しい。宿に着くまでのつかの間
の時間だが、ミネアは幸せな気持ちでいっぱいになっていた。
クリフトはミネアの歩く早さにあわせてゆっくり歩き出した。
そんな様子を木陰から覗いていた人物が一人・・・・
マントを持ってクリフトを捜し歩いていたアリーナだった。
「私、何で隠れているのかしら?」
(知らなかった・・・クリフトとミネアさんが夜のモンバーバラを一緒に過ごす仲だった
なんて。今までもこうやって私が寝ている間に二人で夜の街を散歩とかしていたのかな。
散歩とか散歩とか散歩とか・・・?)それ以上想像が膨らみようもないアリーナであった
が心臓のドキドキは収まりそうもない。そもそも何故ドキドキするのかも分からない。
ミネアがクリフトの袖を引っぱっている。
そして二人で木陰のベンチに腰掛けて何か話し出した。
さらに、建物の間から様子を伺っている二つの影。
「一体、何を話しているのでござろうな?」
「なんだか長話になってるようだけど、気になるわねー。」
「ところで、マーニャ殿は拙者に何の用でござるか?拙者は早くソロ殿にこの8000G
を届けて安心させてあげたいでござる。」
「え?てっきりその金でこれから飲むのかと思ったのに・・・。」
いつになく艶っぽい目つきをしてマーニャが可愛らしく拗ねる。ライアンは深く息を吸い
込んで言った。
「・・・拙者は今度舞台にあがるとすればマーニャ殿と剣の舞をしたいでござる。」
「なあに、それ?口説いてるの?どうしてもって言うならいいわよ?でも、練習の前に1
杯だけおごってよね。」
アリーナはいまだかつて経験したことのない気持ちで一杯になっていた。今までクリフト
が自分のために色々世話をやいてくれることは当然だと思っていなかったか。大所帯とな
った今はクリフトだってみんなの共通の目的のために動かなければいけない。頭では分か
っているけどクリフトが自分以外の女性に優しくしているのを見るのは何だか抵抗がある。
(私はクリフトのことを束縛して所有物みたいに思っていたのかな・・・そんなの最低。
サントハイムでは聖職者の恋愛や結婚は自由なわけだから、クリフトとミネアさんが愛し
合っているのなら私は喜ばなければいけないのよね?盗み聞きなんて良くない。クリフト
はいつか私には話してくれるよね・・・)アリーナは静かに宿に戻った。
「ミントスで出会った頃は、ミネアさんと共通の宿敵を持つ運命だとは思いもよりません
でしたよ。いよいよ、夜が明けたらサントハイムへの船旅になります。サントハイムの城
にいるというバルザックとやらを倒したら、城の人々は戻ってくるのでしょうか・・・ミ
ネアさんに聞いてみたいけど聞かないほうがいいでしょうね?」
クリフトの透き通った青い目から不安と焦燥感が感じられた。今日のクリフトは色んな表
情をみせてくれる。
「ソロさんは、バルザック討伐のパーティーはサントハイムのお三方と姉さんの4人と決
められました。私はソロさんたちと一緒に後方から健闘を祈っています。」
ミネアはサントハイムの人々が無事に戻ってくるように祈っている、とは言えなかった。
もし、サントハイム王家そのものがなくなってしまえばアリーナは王女でもなんでもない
ただの女の子。クリフトも王家直属の神官ではなく、ただの聖職者になる。二人の身分の
差はなくなり、二人が恋愛するにも支障はない。城の人々にはまだ戻ってきてほしくな
い・・・・ミネアにはそんな気持ちもあった。逆に無事に戻ってきたとしても、クリフト
がそれで旅をやめてしまわないかと不安になったりもする。しかし、ミネアの返答を聞い
たクリフトは、ミネアはサントハイムの人々が戻ってこないことが分かっていてはぐらか
したのだな、と思って小さなため息をついて目を伏せた。
「・・・・私ではアリーナさんの代わりにはなれませんか?」
ミネアの声は震えていた。今日こんなことを言うつもりはなかったのに、秘めたる想いが
溢れ出て言葉に出てしまった。引っ込み思案なミネアにとって精一杯の告白。
クリフトは目を開いてミネアのほうをまっすぐに見た。ミネアは肩を震わせ目を合わせよ
うとしない。いや、合わせられずにうつむいていた。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
沈黙の時間がとても長くて重くて、ミネアは押しつぶされそうになった。クリフトの返事
が怖くて涙が出てきた。叶わない恋だって分かっていたし、伝える勇気なんてなかったの
に、どうして言ってしまったのだろう。クリフトはミネアの涙をハンカチでそっと拭いな
がら優しい声で言った。
「ミネアさんは今のままでいいのですよ?なにも姫様みたいに今から武術を会得しような
んて考えなくても・・・。一緒にバルザック討伐に加わりたい気持ちは痛いほど分かりま
すが、ソロさんにはソロさんの考えがあってのことでしょうから。」
全然、伝わっていない。ミネアは全身の力が抜けていった。が、力を振り絞って言った。
「私・・・待ちます。」
クリフトがアリーナのことをあきらめるのを待つ、私だって負けない・・・そう決意する
とますます涙が出てきて止まらなくなった。
「え?マーニャさんたちをですか?そろそろ寒くなってきたし、モンバーバラの夜道を女
性一人で歩くのは危険ですから一緒に宿に戻りましょう。」
やっぱり伝わらない・・・私のこのせつない想い。ミネアはますます全身の力が抜けてつ
いには立てなくなった。
「相当お疲れのようですね。キングレオ戦では本当にお疲れ様でした。」
そういってクリフトはミネアをおんぶして宿に早足で戻っていった。鈍い、鈍すぎる。
宿のロビーにはライアンの帰りを待っていたソロがテーブルに伏して寝ていた。家計簿と
正義のそろばんを枕にしてぐっすり寝ている。もう、ブライ様やトルネコさんも部屋で寝
ていらっしゃるのだろう、そう思って寝ているソロの傍をしのび足で歩くクリフト。ミネ
アを女性部屋まで送り届けようと角を曲がると、女性部屋のドアの前にはなんとアリーナ
が立っていた。
泣いているミネアをおんぶして夜遅くこっそり戻ったクリフトを見たアリーナのこころの中
でなにかがはじけ飛んだ。アリーナは目に涙を浮かべてむりやり笑顔を作って言った。
「私はクリフトに何でも相談して頼っていたのに、(クリフトは私に自分のことを何にも話
してくれていないのね。)」
ミネアは慌ててクリフトから離れた。ミネアにははっきり分かった。
アリーナもまたクリフトを一人の男性として意識しはじめているのを。
「ア、アリーナさん、違うんです。私・・・」
誤解を解こうとするミネアのか細い声はクリフトの力強い声にかき消された。
「姫様!?泣いていらっしゃるのですか?このクリフト、姫様を悲しませるようなことは
決してしないと王様と神に誓っていたのになんという不覚!!すぐにマントを修理いたし
ます。たとえ、徹夜してでも!!」
「ううん。私、何でもクリフトに頼りすぎて反省してたの。自分でやってみるから、やり
方を教えてほしくてクリフトが帰るのを待っていたのよ。」
この男、どこまで鈍いのか・・・でも、こんな感じなら私にだってまだチャンスはあるわ、
ミネアはそう思った。
夜も明け方・・・酔っ払ったライアンとマーニャが宿に戻ってきた。昨日の夜、剣舞で稼
いだ8000Gはたったの8Gになっていた。ライアンは8Gを寝ているソロのポケット
に入れて、小声でつぶやいた。「スマンでござる。うっかり飲みすぎたでござる・・・ヒッ
ク。」「ごめん・・・ソロ。あたしったらバルザック戦を前にしてテンション高くなっちゃ
って。ヒック。」マーニャも小声でささやいた。
ソロが寝ているテーブルとは別のテーブルでは徹夜でお裁縫をするクリフトとアリーナが
いた。マントを縫う前に何故かトルネコが破いてしまったという網タイツを練習がてら修
理しているところだった。
「このクリフト、姫様に必要とされているこの瞬間がとても幸せです。さあ、頑張って仕
上げましょう。」
「大袈裟ね。お裁縫ぐらいで。これからもっと色々教えてもらうんだから、私の傍をはな
れないでよね。」
このあとしばらく、ソロが自分の統率力に疑問をもって悩みぬいたことは言うまでもない。
クリフトの姫様ホイミの回数は増えるし、アリーナはクリフトが馬車の中だと改心の一撃
を出さない。ミネアはクリフトばかり回復させるし、いままで捨て身で自分を助けてくれ
ていたライアンまでがマーニャばかりかばうようになった。トルネコとマーニャは以前か
らああいう性格だったけど、最近ますますみんな変だ。みんな立派な職業についているけ
ど、俺は何でもないんだよな・・・勇者ってそもそも何だ?悩む17歳、ソロ。
勇者っていうのは世界を変えていく力がある人なのだ、とマスタードラゴンに教えてもらえ
るのはまだまだ、先。
おわりです。
長文に付き合ってくれた方々、ありがとうございました。
GJ!ソロがかわいいw そしてクリフト、鈍すぎwwwww
>店長さん
ブライならモンバーバラ接待であっさり歓楽・・・いや陥落しますよ。そしてクリフト奪取へw
容量のこと忘れてましたorz ごめんなさい・・・。
容量容量って騒ぐスレなんてあんまり他に見ないんだけど…
このスレ、投下多いから、職人さんもお互いに気をつかってるんだろうな。
過疎っていた頃とはえらい違いだw
あ、レスし忘れてた。
>>734、GJ!こういうのもいいな。鈍クリフトに萌えた。
でもさ
ここより投下が多い主人公雑談なんかは容量気にしてないよね?
でも容量オーバーってみたことないよ。
ここは何でそんなに気にするのかなあ、ってちょっと疑問だったんだよね。
>>739 ・SS形式のため1レスあたりの投下容量が劇場形式より平均で若干大きい。
・投下でない通常レスの容量も比較的大きい。
・閲覧者がそれほど多くなく、スレッドを自前で新たに立てるのが難しい。
とまあそういうわけで残りは約25KB。短編ならまだあと2作はいける?
ただ、まとめサイトを含めたテンプレは作っといたほうがいいかな。
>>739 大量のSS投下で、容量不足になったスレを実際に見たことあるよ
そこもここと同じカプスレだった
だけどこれだけ職人さんがいて賑わってるから、容量オーバーになっても
誰かが必ず新スレ立てるとは思うけどね
うん。良スレですなココ。
でもアリーナスレはなんでないの?
マーニャ・ミネア・勇者女・ルーシア・さらにライアン・ジジィスレまであるのに。
昔あったのにな、アリーナで去ってみよとかアリーナと結婚したいとか。
常連だったからさびしーよ。
たててもすぐ落ちるからかな。
そういや、クリフトスレもないな。単独スレ、あればいくのだが。
姫さま、おやすみなさいませ。
クリフトスレはあったよ。すぐ落ちた。
やっぱり、クリフトとアリーナは切っても切れないっていうか、
クリフトを語るにはアリーナが必須で
アリーナを語るにはクリフトが必須なわけで。
だったら、ここでいいんじゃないかと思う。
あんまり容量容量騒ぐと書き込みが減るだろうから、
容量オーバーしたらそれはそれでいいんじゃないの。
もしも声優がいたら。
クリフトは顔がヤムチャだし古谷さんでもいいけど、
ヘタレ具合なら堀川りょうさんかな。
で、アリーナはパンの中の人てレスがよくあったけど…
俺も思ってたが、少し幼くなりすぎか?
逆に声質に変な色気もあるし。
なので日高のりこ姉がいいと思うのだが。
747 :
スーパー1:2006/08/03(木) 00:58:07 ID:/qQteUxJ0
>パンの中の人
皆口裕子さんか。
あの人は母親、おてんば娘、優しいお姉さん、清楚で可憐なお嬢様、ちびっ子等と役幅が広い人だ。
おてんば娘役は結構得意な方だからそういうレスが多いのかも。
>>745に激しく同意
他のキャラのスレを見る限り、個別スレになってしまうとあまりSSが投下されない気がする。
やはりカップルスレは必要かと思う。
ただし、声優の話をしたい人のためにアリーナスレやクリフトスレがあってもいいような気がした。
レスしそびれ、スマソ。
>>734 鈍クリフトもワロタけど、自分は剣舞をするかっこいいクリフトの一枚絵が欲しいでつ。
スレッド残り容量を気にするというのは、
レスが950超えて、あと何レスしたら次スレ立てなきゃ、というのとまったく同じ議論。常識。
職人さんのためにも485KB超えたら次スレ立てましょう。現在約479KB。
私の場合、容量気にする理由に、他の職人さんのssもたくさん読みたいという
願望が含まれているんですけどね。(だから自分以外の人の書き込み容量は気になりません)
それより、アリーナの声、日高のり子さんっていうの、いいですね。イメージぴったりだ!
クリフトの声・・・古谷さん、堀川さん・・・うん、わかる気がする。でもシリアスクリフト君なら
池田秀一さんが好みだったり・・・ごめん、趣味に走った。逝ってくる。
753 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/03(木) 11:51:13 ID:pmhOdywIO
誰かファミコン版のアリーナの画像貼ってください
>煩悩さん
シャ○の声で腹黒してたのか!ワロスw
せっかくだから
>>720の流れに乗ってみるテスト。
>>720 「スタンシアラの夏祭り!?いいわね、じゃ、行こっか」
「ほうほう、スタンシアラで夏祭り。風情がありますな。」
ブライ が あらわれた
756 :
前スレ506:2006/08/03(木) 19:42:00 ID:Fsh3Rq5p0
こんばんは。
あまり登場しませんが前スレ506です。
よっこらよっこら書いてます。
続く話になっていいのか悪いのかわからんですが、
楽しんでくださってる住人さんがおられるので
ひっそりとがんばっとります。
クリフト大好きだー。
姫さまかわいいんじゃー。
>>734 GJです。クリフトの天然さにバギワロス
容量の件ですが、自分も基本的には煩悩さんと同じ考えです。
あと、現スレを立てる時に結構苦労したので、
自分のSSではできるだけ余計な消費をさせてはいけないかな、と。
まあ、必要以上に神経質になってたのかもしれません。スマソです。
>>756 こちらもひっそりと待っております。
落ちる前に
>>755の続き
「あら、ちょうどいいところに来たわ。ねえブライ、あたしクリフトと夏祭りに行ってくるから
ルーラで送ってくれない?帰りはキメラの翼を使うから、先にお城に戻ってていいわよ。」
スレに容量があるなんて知らなかった私です。
(調べ方すら知らない訳ですが……)
何と言うか、容量を気にして投下しない、とかって
投下があるから容量が減る訳で、
容量を節約するために投下をやめます、っていうのは
本末転倒な気がしてならないのです。
別にSS投下だけのスレでは無いと思いますので、
雑談で埋まっていくのも全然問題無いんですけど。
私はやっぱり読んでもらいたいものが完成したら
すぐ読んでもらいたいと思ってしまうし、書き上げた勢いで
さくっと上げてしまいたい、という思いが強いですね。
大抵、時間置くと恥ずかしくなってきます。
携帯とIE閲覧者に優しくないテンプレ。
( ⌒ヽ _,,...-‐‐''"" ̄ / / | \ ( ⌒)
ゝ ⌒ヽ,, __,,,....--―-..、 / / | \ ,,.( )
( / ,,,,,,,,,;;》》》〉〉ゞ / / | (
_,,...-‐‐--..,,,_ / ミ'' / / /> />
>〉〉》》》》>>,, `ヽ、,r'~ ̄ ̄`ヽ、 ̄+; ̄ ̄ __ ̄ ̄ /  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄,,_p/>
_____,,,...(,;;)/⌒ヽ、"",,, ヽ、 。..: _'. !
,,r''~ ̄,,,,,,;;;;《《(,;;);;)彡 ヽ 彡,,ゝ / | クリフトとアリーナの行く末を語らうスレです
《《《<"" ,r';i;i/ ..::. 彡 ) +::: | / 職人さんによるSS投稿、常時募集!!
。.... ::::: ,r'ww/ :::::::::: 彡ノ::. / ̄ ̄| 。..::::.... ,. -−、 萌え画像も大歓迎です
〜;,,。,r';i;i;i;i;i/ :::::::... :: / | .........::::::::::::| |田||..:::::::...::::::::::::::.....:::::::::::::。::::::....
/www,'.。.... 。.... . . | /。.....゚ __△__|__,|_|| 。。..::::...... 。...::::::::... ......:::::
/;i;i;i;i;i´ヽ ^^゚〜〜~゚^ |__/〜〜・.ヽ.____L..、_,i ゚''〜。,,, 。....゚....... 。.....::::::::
/w;w;w,0>》 . . i ,ノノ'ぐ/*゚.-゚ノゝ ~^^゚〜・,,。,, 。....
/;;;i;;i;i;i;i;i -゚ノ! ._ ,, -ー 、,, . (9ノノ(,^ヮノK~キチス
.;w;w;w;iiと) . ヾミ# 、 ,.ヾ彡 @ノノ.(゙フづ∪i÷-|j まとめサイトと過去ログは
;;i;;i;i;i;i;i;i;ソ . . ヾ(!,`ム´,ノ . んく/__i.〉 Li_,_/」
>>2-4あたりにあります。
. . . ,. '.".゙:´"´゙`" : , . . . . . . .じ'ノ ..し'`J
テンプレ終了。
現在、スレッド残り容量は約14KB。
職人さんのためにも誘導レスをつけるためにも、スレを立てる努力をしたほうがいい。
漏れはいつもながら無理ですので。
>>758 正直、萌えスレでしかやってほしくない投稿の仕方ですな。
>>762 テンプレ製作、乙です。夏らしいAAに心も夏模様。ブライ埋まっててカワイスw
>前スレ506さん
いつも素敵な文章にどきどきしています。投下楽しみにしていますね。
容量を気にするのは悪文・長文の私に対する一種の戒めですから。多分これがないと際限なく長くなります。
お気を悪くされた方、ごめんなさい。それにしても容量で悩むなんて幸せですよね。投下を始めた頃は・・・・・・
いや、何も言うまい。
私もスレ立て、できないので、誰かお願いします。
じゃ、私も
>>757からの流れに乗って。
「いえいえ、それには及びませんじゃ。わしもご一緒させてもらいますでな。
行きも帰りもしっかりとルーラで送らせていただきますぞ」
ダメだ。立てられん。力及ばずスマソ。誰か頼む!
ついでに漏れも流されてみる。
「えー、ブライもついてくるのー」
アリーナが不満げにそう呟く。
>>762 乙だけど…ひとの投稿方法にケチつけなくたって。
大丈夫、没問題だ。なぜならここは萌えスレで、しかも
>>762もそれがわかっているからw
新スレ立ててくれるネ申はまだか・・・。
767 :
スーパー1:2006/08/04(金) 21:05:12 ID:Dcr/+pqx0
ク
リ
ム
ト
どうすればいいんだ。
夏ですから。
暑は夏いですから。
>>772 じゃ、このスレでの思い出でも語りましょうか。
今回もいいss読ませていただきましたねぇ。一番心に残ったのは、煩さんの
『結婚承諾秘話』ですかね。感想を書き込もうと思ったのですが、直後の誤爆(317)のせいで
気分がそがれてそのままにしてしまったのが心残りです。なのでここでGJさせてください。
>煩さん、GJ!新スレでもお待ちしております。
そして職人の皆様、本当に乙&GJです。では次の方ドゾー。
776 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/09(水) 01:04:13 ID:IjLEFj9T0
「あっ、あっ!もっと、もっとしてぇ〜!」
白いたわわな胸が揺れ、赤い髪がパサパサとシーツに擦れる。
「姫さま…もっとなにをして欲しいのですか?」
長身の男が、少女の顔を覗き込みながら言った。
「そんな…っ、いじわるしないでよ…ぉ!クリフト…」
サントハイムの王女アリーナと若い神官のクリフトは幼馴染で、
まるで兄妹のようだったが、最近は密かに性的な関係を持つようになっていた。
「…っ、クリフトの…んぽで、もっと突いて欲しいの!」
「こうですか?姫さま」
ぬぷっ!ぬちゅっ!
限界まで張り詰めた男根を抜き差しする度に、
アリーナの小さな肉ひだが卑猥な音を立てながら捲れあがった。
777 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/09(水) 01:07:46 ID:IjLEFj9T0
ピンク色の割れ目の奥からは、収まりきれない白いミルクがこぼれ出した。
「ほら、中にいっぱい出して差し上げますね!!…うッ!」
778 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/09(水) 01:18:42 ID:IjLEFj9T0
・・・・・・・・・
「…ふぅ!書けたぞ『夜もおてんば〜はじめての夜這い編〜』」
「な〜に書いてるの?クリフト!!見せなさいよ!!!」
「あっ!姫さま!いつのまに!」
「アリーナ!クリフトが居ないんだけど知らないかい?」
「…見てないわよ」
↑クリフト、出て来い!!なんてけしからん。
いいから続きを書くんだw
前スレ506さんの続きが気になる罠。次スレでの投下待ち。
ア
リ
サ
ン
マ
|
ク
ノ
ヒ
ャ
ダ
ル
ココ
イ
チ
ソ
バ
シ
ル
|
ラ
イ
803 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/18(金) 11:38:42 ID:RVnXNa3GO
麦
畑
山
|
ニ
ャ
807 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/18(金) 16:39:34 ID:RVnXNa3GO
ン
ガ
809 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/20(日) 08:40:40 ID:SrVosodVO
ー
Z
ン
ヌ
813 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/22(火) 23:40:00 ID:3xyz0KBCO
ラ
三
都
主
どうすればいいんだ。
汝のしたいようにするがいい
メガンテ!
ほ〜
ほけきょ
821 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/31(木) 15:38:41 ID:30OYfqEw0
サントハイムの3人組、大好き。
823 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/08/31(木) 22:11:20 ID:8EZzqzTB0
FC版がでて16年経つのに、すげー人気。
16年というとアリーナももう30過ぎか
すっかりおばさんだな
ア
リ
827 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/04(月) 14:32:37 ID:xHPJ3Chk0
│
ス
まだ埋まっていなかったのかーーー
埋まりませんね。
まったり埋め
切ない感情が切り離せないクリフトに泣き泣き埋め
埋めぼし食べてスッパマン
あと3KB……
ウホッ
独り言
クリアリが気になり出してリメイク4もう一度プレイしようと思ったのにあるはずの場所になかったー!!
もう一度よく探せー!!w
うん、がんばるw
このスレが埋まる前に見付けたって報告できるとイイナ♪
見つかるといいね。ガンバレ(・∀・)
ブ
ライ
842 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/12(火) 09:25:42 ID:PLQA/oyt0
838 見つかったのか?
埋めぇ。
843 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/12(火) 13:36:06 ID:PLQA/oyt0
Part6の方に職人さん達が来てて嬉しい埋め。
埋めさせねぇぜ!
あ〜な〜掘り掘り、あ〜な〜掘り掘り、う〜めて、う〜めて、トントントン♪
「王様の耳はロバの耳〜、SS書けねぇ、頓挫中〜〜〜、駄作埋めぇぇぇぇ」
ちょっとすっきりした(・∀・)
846 :
838:2006/09/15(金) 11:51:36 ID:kfOIX3v+O
>842
ドラクエ6が見つかりました。
未プレイなので「!?」だったのですが、今私が探してるのはクリアリなんだよぉお!!
…という訳で、クリアリ不足で胃に穴が開きそうな勢いです。
皆様のクリアリエネルギーが今の私の命の糧ですので、>845さんもめげずに筆を持ち続けていただきたいです。
梅。
847 :
845:2006/09/15(金) 13:04:00 ID:HfKei5OT0
>>846さん
ありがとう。がんばるよ〜。ドラクエ4みつかるといいですね。そしてぜひ
ムフフなネタをこちらにw
皆様の妄想がSSの糧です埋め。
いつもぼんやりしていると言われる私ですが、
その時ふと頭の中が冴え渡り目に見える世界が澄んで見えました。
そして何故か物置がわりになっている隣の部屋に行こうと思ったんです。
普段はもう誰も出入りしないあかずの間です。
そこにはいくつかのダンボールが積んであり、一番小さな箱にすっと手が伸びました。
そこには…… 捜し求めていた ド ラ ク エ 4 が!!
ありがとう!!みなさんありがとう!!
励ましてくださった方ありがとう!!
応援してくださった方ありがとう!!
全てのクリアリスキーにありがとう!!
神様を信じているクリフトの気持ちがちょっと解った瞬間でしたw
長文でごめんね。産めー。
発掘おめでト━━(゚∀゚)━━ン!!
応援した甲斐があったぜw
発掘おめでとう。
ぜひクリアリで萌え萌えしてくれたまへ〜
851 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/19(火) 19:09:48 ID:bBSxdbsh0
age
あ、あと一息……
The裸気
蓙邏覊
…どこのDQNだろ…
魁!!ドラクエ塾を思い出した。
苦離負屠
鐚黐醫梛
856と857のクリアリならきっと最凶だろうねw
なんかタバコすってるようなキャラしか浮かばんよ…
じゃあ付け加えて。悔裸尉w