あえて はい と答えて
クリフトにホイミを唱えてもらいたい… ザオリクかもしれない…
おはようございます。
アリーナ視点のクリアリ風味(あくまでも当社比)のお話、
何とか、完成いたしました…が。
苦手分野のせいか、いつにもまして長くなりましたorz
お時間おありなら、お付き合いいただければ幸いです。
アリーナは、最近、不機嫌だった。
「クリフトぉ、また張り切りすぎちゃってさぁ、馬車のテント、焦がしちゃった。」
「マーニャさん、またですか…。あとで、張りなおすの、手伝ってくださいね。」
「クリフトさん、このステッチ、すごく細かくて綺麗ですわね。」
「サントハイムに代々伝わる刺繍方法です。ミネアさんに興味がおありなら、
後で教えて差し上げますよ。」
「クリフトさん、申し訳ないですが、この間の買い出しの値段、分かります?」
「私のノートに控えてあったと思います、トルネコさん。今持って来ます。」
「クリフト、薬草が切れそうじゃ。あとで調合しておいてくれんか。」
「かしこまりました、ブライ様。」
「クーリーフートっ、俺、今日の夕飯、おおにわとりの丸焼きが食いたいなっ♪」
「…そういうなら、まずソロさんが自分でおおにわとりを捕まえてきてください。」
几帳面で、薬草の知識に優れ、手先も器用なクリフトは、勇者達と旅を始めると、
皆から何かと頼られる(雑用を押し付けられているともいう)ようになった。
朝から晩まで、誰かしらがクリフトに呼びかけている。
―――まったく、みんなして…。これじゃあ、クリフトが全然休めないじゃないのよ!
またページ数…学習能力なしorz
旅の途中の小休止。
アリーナは馬車から少し離れた草むらで一人、膝を抱えていた。
さきほど見かけたクリフトは、火のそばで何やら忙しくしていたようだ。
―――前は、こういう休憩時間には、クリフトといろんなことおしゃべりしてたのにな…。
ふくれ面をひざ小僧の上に乗せたアリーナの頭上に、影がよぎった。
「姫様?どうされました?ご気分でも悪いのですか?」
アリーナが見上げると、手に湯気の立つマグカップを持ち、
心配そうな顔をしたクリフトが立っていた。
「…なんでもない。」
むっつりと返事をよこすアリーナに、クリフトは更に気遣わしげに眉を寄せた。
「ならば、良いのですが…。用心するに越したことはありません、
気分をすっきりさせるハーブで入れたお茶です。召し上がってください。」
「…。」
アリーナは、不機嫌な顔をしたまま、無言でクリフトが差し出すカップを受け取った。
クリフトは、そのままアリーナの斜め後ろに腰を下ろすと、そっと語りかけてきた。
「姫様は、サントハイムの者以外の方達と旅をするのは初めてですから…。
何かと慣れないことで、お疲れになっているのではございませんか?」
アリーナは、驚いてクリフトを振り向いた。
「…私じゃないわよ。クリフトの方が、疲れてるんじゃない。」
「は?」
「だって…、だって、ソロも、マーニャもミネアも、トルネコさんも、ブライだって、
みんなみんなしてクリフトに用事を言いつけるんですもの。」
「用事を言いつけるって…。」
「クリフトもクリフトよ。何でもかんでも引き受けて、そんなに無理ばっかりして、
また倒れちゃったらどうするのよ!」
アリーナは、言いつのるうちに、だんだん語気が荒くなってくることに気がついていたが、
自分では止めようがなかった。
クリフトは、呆気にとられたようにそんなアリーナを見ていたが、ふいに破顔した。
「姫様、ありがとうございます。」
「なんでそこで、うれしそうな顔して『ありがとう』なのよ!」
反省するどころか喜んでいるように見えるクリフトに、アリーナはさらに怒ったが、
クリフトはニコニコと動じない。
「姫様に、そこまでご心配いただいて、私は幸せ者です。」
クリフトは、優しい目でアリーナをじっと見つめた。
アリーナは、何故か急に頬に血が上ってくるのを感じ、慌てて前を向いた。
と、背中からクリフトの静かな声が聞こえてきた。
「大丈夫ですよ、姫様。もう、二度とミントスのときのような無理はいたしません。」
「…本当に?」
「はい。」
きっぱりと答えるクリフト。
「それに、そろそろ次の街に着きますし。そこでゆっくり休ませていただきます。」
「…なら、いいけど。」
アリーナの胸の中のもやもやは、だんだん小さくなっていった。
「お茶、全部、召し上がりましたか?」
「うん、おいしかった。…ありがと、クリフト。」
「どういたしまして。お気に召していただいたのなら、また、お淹れしましょうね。」
「うん!」
アリーナの機嫌はすっかり治っていた。
数日後、一行はエンドールに到着した。
そこで、残り少なくなった薬草や食料の調達、武器の調整などを行なうのと同時に、
馬車旅で疲れた体を休めようと言うのが今回の滞在の目的だった。
しかし、街に着いてもクリフトに休息はなかった。
「旅に出る夫に神のご加護をお授け下さい、神官様。」
「神官様、魔物に殺された人々のために祈っていただけませんか。」
「街の外れで娘が魔物に襲われて怪我を!神官様、回復魔法をお願いします!」
魔物が横行し、不安と悲劇とが日常となってしまった昨今、神官は忙しい。
神官姿のクリフトを、神の慈悲と救いを求める人々が次から次へと訪ねてくる。
そして、クリフトは、どんなに忙しくても、神の救いを求める人々の依頼を断ることはなかった。
人々のために祈り、回復呪文を唱える合間に、薬草の調達、調合。
アリーナがクリフトの部屋を訪れても、部屋の主は不在、という日々が続いた。
そんなある日、とうとう、アリーナの怒りが爆発した。
アリーナが、ノックもせずにクリフトの部屋のドアを開け放つと、
クリフトは、何やら薬草の袋らしきものをより分けていた。
「姫様?」
不審そうに顔を上げたクリフトに、アリーナはずかずかと近寄ると、
無言で、その手から袋を叩き落した。
「姫様!?何を…」
アリーナの乱暴な行動に驚くクリフトに対し、アリーナは大声で怒鳴った。
「クリフトの、嘘つき!」
「!?」
「エンドールに着いたら、ゆっくり休むって言ったじゃない!
なのに、部屋にも全然いないで、たまに部屋に帰ればずっと薬草いじりして!
そんな薬草の方が大事なんだったら、もう、いい!クリフトなんか、知らないから!」
「姫様!」
一気に言い放つと、クリフトの叫び声を振り切るようにして、アリーナは宿を飛び出した。
勢いよく飛び出したものの行くあてもなく、街中をさまようと、広場に出た。
アリーナは広場の中央にある噴水のふちにしょんぼりと腰掛けた。
晩秋の日没は早い。広場を行きかう人々は、足早に家路に向かっていた。。
―――なんで、あんなこと言っちゃったのかな。
クリフトが、困った人を見捨てたり、やるべきことをおろそかにしたりできない性格なのは、
長い付き合いでよく分かっている。
そんなところもクリフトの美徳だと思っていたのに、最近、何故こんなにも苛立つのだろう。
―――クリフトが、無理ばっかして、心配かけるからよ。
そう自分に言い聞かせながらも、なんだか、それだけではないような気もしていた。
「おーい、何やってるんだ、こんなところで。」
思い悩むアリーナに声をかけたのは、珍しい緑の髪をした少年。
「…ソロ。」
「こんな時間に、こんなところに一人でいたら、クリフトが心配すんぞ〜。」
その言葉に、アリーナはぷいと横を向いた。
「クリフトなんか、知らない。クリフトだって、私のことなんかどうだっていいんだから。」
「んん?なんだ?なんかあったのか?」
苛苛する気持ちを誰かに聞いて欲しくて、アリーナは勇者に、先ほどの出来事をぶちまけた。
「お前さあ、それって…」
勇者は、何か言いかけたが、アリーナの表情を見て言葉を切った。
そして、しょうがねぇなぁとつぶやくと、アリーナの頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「あのさ、心配する気持ちはわかるけど、それなりに、あいつも休んでるし…大丈夫だよ。」
「…。」
「大体さ、何だかんだ言って、クリフトが一番時間割いてるの、アリーナのことだぜ。」
「…え?」
「この間も、お前のマント繕ってたろ。ミネアが代わりにやるって言ってるのに聞かないでさ。」
「そ、そうなの?」
「今調合してるお茶だって、お前に飲ませるためのものだろ。あいつ、何だかずいぶんあちこち
探し回ってたぞ。うれしそうに、『姫様に気に入っていただいたので』とか言って。」
まったく、太平楽だよな〜、と続ける勇者の言葉は、アリーナの耳に入っていなかった。
…もしかして、さっきのあれって、薬草じゃなくて、私のお茶だったの…?
―――お気に召していただいたのなら、また、お淹れしましょうね。
微笑むクリフトの顔が浮かんだ。
「どうしよ…、私、謝らなきゃ。」
「だったら、早い方がいいと思うぜ。ほら。」
勇者が指差す先に、息を切らし、青い顔をして周囲を見回しているクリフトがいた。
「クリフト!」
「姫様!…良かった、ご無事で…。」
クリフトは、アリーナの声に振り向くと、明らかにほっとした顔をした。
アリーナは、それを見て、クリフトに駆け寄ると思い切り抱きついた。
「ひ、姫様!?」
「クリフト!さっきは、ごめんね。」
さっきまでの苛立ちは、いつのまにかすっかり消え去っていた。
…そもそも、私、何であんなに怒ってたんだっけ?
結局、その理由は分からないままだった。
でも、こうやってクリフトのごわごわする神官服に顔をうずめていると、
そんなことは、もうどうでもいいような気がした。
―――クリフトの、匂いがする…。
アリーナは、どこかなつかしい感じのするその匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
「ひ、姫様、お体を、お離しください…。」
クリフトの消え入りそうな声が上から聞こえてくる。
えへへ、と離れながら見上げると、クリフトは耳まで真っ赤に染まっていた。
アリーナは、そんなクリフトを覗き込むと、尋ねた。
「ねえ、クリフト。この間のすっきりするお茶、また淹れてくれる?」
クリフトは、しきりに汗をぬぐっていたが、アリーナの言葉を聞いて顔をぱっと輝やかせた。
「…ええ!姫様、喜んで!」
アリーナは、にっこり微笑むと、勇者も誘って帰ろうと噴水の方を振り向いた。
しかし、勇者の姿は、いつの間にか消えていた。
「…あれ?…ソロ、先に帰っちゃったのかな?」
「姫様?どうされました?」
「ううん、なんでもない。…帰ろっか、クリフト。」
「はい、姫様…。」
寄り添うようにして帰っていく2人を建物の影から見送った勇者は、
あたまをぼりぼりとかくと、
「まったく、主従そろって手のかかるやつらだよ…。」とぼやいたのだった。
ホンットに、長文お付き合いいただきありがとうございました。
長さの余り、途中、アクセス規制されてしまいまいた。
なんだか、思い切りベタな展開で…(^_^.)
クリフトもちょっと姫様を放置しすぎですが、私の中ではクリフトの優先順位って
姫様の身の安全>神官としての仕事や、人助け=姫様の身の回りの世話
といった感じでして…。
待望のアリーナ視点SS来てた〜 ペギーさん今回もGJです!
「クリフトなんか知らないから!」って姫様がめっちゃ可愛いし、
青い顔して姫様を探すクリフトも、クリフトらしくていいです。w
離れていてもお互いを思いやってる感じがします。
個人的な主観ですが、今まで勇者とクリフトが仲いいってイメージがなかったので、
勇者&クリアリが好きな自分としては、ペギーさんのSSは嬉しいです!
またお時間あるときお願いします〜
いい
いいよ
ペギーGJ!!!
クリフトの事を心配したり、構ってくれなくてヤキモチ妬いてるアリーナにモエー
アリーナカワイイヨアリーナ(*´д`)
ペギーさんのクリフトに
萌
え
た
キャラが自分のイメージそのままなんで、好きです。
うんうん!ペギーさんのクリフトイイ!
次回作も楽しみにしてます。
ペギーさん毎回GJです!
煩悩さんの女勇者と、前前スレなんとかさんの続きも気になる。
>>910 そうそう。
皆さん、どこにいっちゃたんだ?
アリー
アニータ姫
>>913アニータ姫はやだな…w
煩悩神官さんの女勇者ソフィアの続き、私も心待ちにしている1人です…。
私の書くクリフトは、どうも女々しくなりがちなので、
煩悩神官さんの凛々しくて腹黒な(!!)クリフトに憧れます。
神職人さんたちがお忙しい間、座を暖めるアホ話を1本。
モンバーバラ劇場の舞台のイベントのお話です。
ここは、モンバーバラの劇場。
パノンをスタンシアラ王のところに連れて行きたいと頼む一行に、
座長は、ある条件を出した。
その条件とは。
勇者一行のうち、地元であるマーニャ・ミネア以外の誰かが、
劇場で拍手喝采を浴びたら、パノンを連れて行っても良い、というのだ。
「しかし、あのおやっさんの考えてることは分かんないよなぁ。
素人の俺らに芸をさせて、どうしようってんだ?」
楽屋で首をかしげる勇者に、マーニャはひらひらと手を振った。
「いつものことよ。新しい才能の発掘が座長の道楽なのよ。」
そして、にんまりと楽しそうに皆を見回した。
「…で?誰が芸をやるわけ?」
「はいはいはーーい!」
アリーナが元気良く手を上げた。
「私が、大岩を空手で割ってみせると良いと思う〜!!」
「お、それいいな!」
身を乗り出す勇者に、クリフトが慌てて叫ぶ。
「だめです!姫様にこのようなみだらなところで芸をさせるなど!」
「ちょっと!今の言葉は聞き捨てならないわね。」
目を三角にしたマーニャに、トルネコがおずおずと声をかけた。
名前に昔の残ってた…ページ数もないし…ごめんなさい…
「マーニャさん、私に駄洒落ショーをさせていただけませんか?」
「…は?」
「私の駄洒落、スタンシアラ王には通じませんでしたが、ここならばっ!」
「…。」
無言のマーニャに代わってクリフトが答えた。
「いいですね。トルネコさんの駄洒落は面白いですから、きっと受けますよ。」
「…面白がってたのはお前だけだ、クリフト。」
勇者が小さい声でつぶやいた。
案の条、トルネコの駄洒落は全く受けなかった。
「皆さん、私のお腹のことばっかり言って、聞いてくれやしない…。
ねえ、私って、みんなが言うほど太って見えますかね。」
うなだれて戻ってきたトルネコの肩を、ブライがぽんぽんと叩いた。
「気にされるなトルネコ殿。かくなる上は、わしが高等魔法で客をあっと言わせてみせようぞ!」
「…どうしてこう、オヤジ連中ばかりが出たがるのかしら…。」
胸を張ったブライに、マーニャはひそかにため息をついた。
ブライは運が悪かった。
最前列に酔っ払いの集団がいて、舞台に出たブライにブーイングの嵐をかませたのだ。
「かえれ!かえれ!」「ブーブー!」
「…っこの、無礼者!」
ブライの杖の先から氷の柱がほとばしった。
「何考えてるのよ、じーさん!ヒャドでお客さんなぎ倒すなんて、
この劇場が閉鎖になっちゃったらどうすんのよ!」
怒り心頭、といった感じのマーニャだったが、ブライは全く聞いていなかった。
「このブライ、こんなはずかしめを受けたのは、初めてですぞ!」
「ちょっと、人の話しを聞きなさいよー!!」
「姉さん落ち着いて!ここでドラゴラムはだめよ!!」
うなだれるトルネコ、怒りに体を震わすブライを遠くから見守る若者3人組。
「ねえ、クリフト、やっぱり私が大岩割を・・・。」
「だよなあ、アリーナ。」
「だめですったら、だめです!」
そこへ、先ほどから部屋の隅で静かに座っていたライアンが声をかけた。
「どうだろう、クリフト殿。我々2人で剣舞を踊るというのは。」
「けんまい…?何それ?」
はてなマークを顔に貼り付けた勇者に、クリフトが説明した。
「剣を使って行なう舞のことですよ。『けんぶ』とも言います。
…そうですね…私の剣舞は、本来、神に捧げるものですが…。」
クリフトは、顎に手をあてて考えんでいたが、ややするとライアンに向き直った。
「…神学的な解釈の部分を除けば、こちらで踊っても許されるかと思います。」
よし、とライアンが、腰を上げながら言った。
「拙者の方は、宮廷の典礼用のものだが、何、基本は変わらん。
拙者とクリフト殿なら、ぶっつけ本番でも大丈夫だろう。」
ライアンとクリフトは、多少の打ち合わせを行なったのみで、舞台に上がった。
筋骨隆々の堂々たる戦士と、すらりと端正な神官の取り合わせに観客は沸いた。
「おお!新顔だー!」「なんかやれー!」「とりあえず脱いどけ!」
盛り上がる観客の声援とやじに、ライアンは顔をしかめた。
「男に向かって脱げとは、今日の客は趣味が悪すぎる。」
「仕方ありません、はじめましょう、ライアンさん。」
2人は剣を抜くと、切っ先を合わせた。
演技が始まると、観客は、2人の息のあった舞に釘付けになった。
ライアンは猛々しく直線的な動きで、迫力のある太刀筋を残し、
クリフトの優美で繊細な剣の動きが、柔らかくそれに絡む。
「わー、クリフト達、かっこいいね!ソロ!」
舞台裾でこれを見ていたアリーナは、隣の勇者に囁いた。
勇者は目を輝かせて2人の演技に見入っていたが、次第にそわそわし始め、
とうとう、「俺もやりたーーい!」と、剣をひっつかむと舞台に飛び出した。
クリフトは、いきなり飛び出てきた勇者に、ぎょっと目を見張った。
一瞬注意が逸れたところに、ライアンの剣が斜め上から舞い降りてきた。
クリフトは、はっと体をそらせたが、間に合わない。
ライアンの剣の切っ先が、神官服を斜めに切り裂いた。
ざすっ。
アリーナの悲鳴が上がった。
ライアンは、剣を振り下ろした格好のまま、固まっていた。
クリフトも、体をのけぞらせた姿勢のまま、動かない。
勇者は、蒼白な顔で凍りついたように棒立ちになっていた。
観客席は静まり返り、咳一つ聞こえてこない。
そのとき。
ばさ。
クリフトの肩から神官服が滑り落ちた。
クリフトは、ぎりぎりのところでライアンの刀をかわしていた。
並みの人間であれば、完全に袈裟切りになっていたところだ。
しかし、体さえ傷つかなかったものの、ライアンの鋭い剣先は、
クリフトの服を右肩から左裾にかけて、アンダーシャツに届くまで、
ざっくりと切り破っていた。
神官服は重い。
切られた神官服は、その重みに耐えかね、アンダーシャツもろとも
クリフトの体を滑り落ち、クリフトは、片肌脱ぎの状態になった。
「!!!!」
観客席はどよめいた。
「なななっ!」
クリフトはパニックになって服をかき集めようとしたが、
そのとき、アリーナの心配そうな声が耳に入った。
「クリフト、大丈夫!?」
振り向くと、アリーナが今にも舞台裾から飛び出しそうにしている。
それを見て、クリフトの頭は一瞬にして冷えた。
このまま、クリフト達が演技途中で引っ込めば、一行の目ぼしい演し物は、
あとはアリーナの大岩割くらいしか残っていない。
クリフトは、ぐっと歯を食いしばると、ライアンに言った。
「ライアンさん、このまま続けましょう!」
…勇者はこっそり舞台裏に消えていた。
「…なーんか、客が前よりエキサイトしてない?」
再開した演技を、客席の後方で見ていたマーニャがミネアに尋ねた。
「そりゃあやっぱり、ストイックな神官服からのチラ見せっていうのは
万人共通のそそるコンセプトですもの♪」
クリフトさんお肌も綺麗だし、と嬉しそうに言うミネアに
「…ミネア、あんたって一体…。」
マーニャは呆れた視線を向けたのだった。
2人の演技が終わった後は、拍手喝采、アンコールの嵐が鳴り止まなかった。
座長は2人を絶賛し、クリフトとライアンに対し、
旅が終わったら是非戻ってきて劇団に参加して欲しいと言ったが、
毛布を体に巻きつけたクリフトは、涙目で答えた。
「二度とゴメンですっ。私は人前で踊ったり脱いだりするのはイヤですよ。」
この後しばらくは、勇者はクリフトに口を聞いてもらえなかったらしい。
アホ話にお付き合いいただき、ありがとうございました。
いや、クリフトのセリフを見たとき、「二度と」ってことは、
一度は脱いだことあるのかな、と、ふと思ってしまったものですから…。
しかし、ミネアが変な人になってしまったorz
しかし、ページ数とか、何回やっても同じ間違いしてますね…。
学習能力ないのか、自分。
おお〜ペギーさんGJ!おもろかった!
ミネアは自分の中での思った通りのキャラでした!
むしろミネアは変な方がいいですw
クリフトがちょっとセクシーでしたねw
またヨロシクです(^ω^)
セクシー端正肌見せクリフト萌え!!
クリフトのチラリズムとミネアのキャラ(・∀・)イイ!!
ペギーさんGJです。
しかし・・・このミネアさん、リメイク4やいたスポよりも腹黒だわ。w
929 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/12(月) 03:29:55 ID:5hPkMsBj0
保守age
お久しぶりです。
お休みしている間、別のお話を書いていたのですが、
ペギーさんのSSを読んでて、またまたおバカなネタが浮かびました。
少々下ネタっぽいところがありますが、とりあえず置いていきます。
ここは温泉の町アネイル。あたしが来るのは、これで二度目になる。
長年の持病や病後の回復には、ここのお湯が一番効くらしい。
お湯の中でじっとしてるなんて、あたしの性分には合わないんだけど。
先を急ぎたいあたしたちが、あえてここに立ち寄った目的は二つ。
病み上がりの神官、クリフトの体調を回復させるのと、身体を清潔にするため。
一ヶ月近くも寝たきり状態だったから、歩くとまだふらつきが残るんだって。
ところが、みんな忙しくって…クリフトを温泉に入れてあげる人が誰もいないの。
じいやのブライは、氷の魔法の使い過ぎで、持病の腰痛がまたもや復活。
今は宿屋のベッドで横になってる頃じゃないかな。情けないわね。
ソロは「俺は男の裸には興味ねえから、主君のお前が何とかしろ」とそっけないし、
トルネコさんにも、「長い間滞ってた武器の研磨に入るので…」と、やんわり断られた。
昨日までソロたちの仲間だったホフマンって人は、商売の勉強中で忙しいみたい。
あーあ、これで男性メンバーは全滅か。
他に、誰か引き受けてくれそうな人なんて…あ、いたいた。
「ねえ、ミネアー、ミネアったらー」
いつもなら気軽に応えてくれるのに、ミネアは呼んでも返事してくれなかった。
暗くて狭い馬車の奥で、じっと座ってる。いったい何をしてるのかしら?
あたしがさらに声をかけようとするのを、お姉さんのマーニャに止められた。
「あれは占いの魔力を保つための瞑想なの。一度始めたら、数時間はあのままね」
そんな…困ったなあ、どうしたらいいんだろう。
腕を組んで考え込むあたしに、マーニャはとんでもないことを口走った。
「手伝う人がいないんだったら…アリーナ、あんたがクリフトを温泉に入れてあげたら?」
ちょ、ちょっと。いきなり何を言い出すかと思えば――――
あ、あたしが?クリフトを温泉に入れる、ですって?
「ソロも言ってたじゃん。あんたのお供なんだから、やっぱり主君が面倒見なきゃね。
あ、アタシも野暮用があるからダメよ。じゃ、ヨ・ロ・シ・ク」
マーニャったら、あたしの肩をポンと叩いて、口笛を吹きながらどこかへ行っちゃった。
実を言うと、一緒にお風呂に入るのは初めてじゃない。小さい頃に何度か入ったから。
でも、それは十年以上も前の話。今は…そんなことできるわけないでしょ!
・
・
はあ。ここでずっと悩んでいても、仕方がないわね。
……わかったわ、あたしが入れればいいんでしょ。もう、みんな自分勝手なんだから。
あたしは、誰かに言い訳をするかのように、珍しく独り言を口にした。
だけど、本当は…自分自身に対しての言い訳のような気がする。
とりあえず、湯上げ用と身体を洗うタオルは揃えたし、石鹸も持った。
替えの下着は、トルネコさんが用意してくれてた。よかった、探す手間が省けたわ。
あたしが自分をお風呂に入れると知ったクリフトは、
案の定、首がちぎれんばかりの勢いで「とんでもありません!」と横に振った。
でもね、毎日身体を拭いてもらってたとはいえ、一ヶ月くらい入浴してないのよ。
「不潔なままでいると、みんなに嫌われちゃうから」って説得したんだけど、
変なところで頑固なあいつは、首を縦に振ろうとはしない。
あら、そう。じゃあ「これは王女としての命令だから、従いなさい」って言ったら、
クリフトは、うつむいていた顔を上げ、「…承知しました」って頭を下げた。
そうそう、人間やっぱり素直さが肝心よ。さあ、温泉まで行きましょ。
湯場に着いたあたしたちは、男湯の脱衣場に入った。
平日のお昼前のせいか、お客さんはあたしたち二人だけ。
番台のおばさんが、男湯を貸切りにしてくれた。ふーん、意外と気が利くじゃない。
でも、何か視線が痛いのよね。シワだらけの顔がにやついてるし。
「若い人たちはいいねえ。しっかり楽しんでおいでよ」って、どういう意味かしら?
クリフトが着替えてる途中、あたしはカゴ置き場の陰に隠れてた。
着替えが終わったって言ったから、あたしはクリフトの前まで出てきたんだけど…
…ちょっと、何よその格好は。
あんたね、女の子じゃないんだから、胸までタオルで隠すのはやめたら?
あたしがそう言うと、クリフトはしぶしぶタオルを胸の下まで下ろした。
うーん…さっきよりはましだけど、身体を洗うのには邪魔よね。
あたしはタオルをつかみ、おへそが見える位置まで下ろしてやったわ。
そしたら、クリフトは小さな悲鳴を上げて、あわてて胸までタオルを戻した。
やだ、全部下ろすわけないじゃない。
言ったあとで想像したら、恥ずかしさで顔が真っ赤になっちゃった。
よく見ると、クリフトの顔も赤くなってる。まさか、熱のせい?
あいつの額に手を当てたけど、顔が赤いだけで熱はなさそうだから、たぶん大丈夫ね。
あたしは、足元が危なっかしいクリフトに肩を貸し、ゆっくりと椅子に座らせた。
桶と椅子は、このあたりで採れる最高級の香木を使ってるんだって。
上品ないい香りが浴場内に漂ってる。まるで湯気そのものが香るような感じね。
まずは頭を洗うため、桶で温泉の湯を汲み上げた。
温度を確かめたあと、最初に手足にかけ、それから頭と身体に湯をくぐらせた。
それから、あたしは洗髪用の石鹸を泡立てクリフトの頭になじませる。
くしゅくしゅと頭全体を洗い、かゆいところがないかを確認した。
「特にございません」と言ったクリフトは、目を閉じてじっとしてる。
久しぶりの入浴だから、気持ちいいんだろうな。
ミントスで倒れてからは、ブライや町の神父様が毎日身体を拭いてくれてたし、
ソロたちがブライを連れてパデキアの種を取りに行ってる間は、
ホフマンさんが宿屋に残って、クリフトを世話してくれてたんだって。
あたしが思ったよりも、身体は清潔な状態だった。
頭に何度もお湯をかけて洗い流し、もう一枚のタオルで髪の水分を拭き取った。
今度は身体を洗うため、タオルに石鹸をこれでもか、と何度もこすりつける。
嫌がるクリフトを無視して、あたしは巻きつけたタオルを腰まで下ろした。
まずは背中から洗おうとした時、あたしは思わず息を飲んだ。
だってクリフトの背中、傷痕だらけだったんだもの。
これは間違いなく、今までの戦いでできたものだわ。きっとそうよ。
ちょっと待って。戦いでならあたしの方が傷を受けてきたはずなのに、どうして?
あたしは、袖をまくり上げて自分の腕や肩を確かめてみた。
目を凝らしてよーく見ないとわからないくらい、傷痕は薄くなってる。
マーニャやミネアも、あたしが指差して見せないとわからなかったくらいだから。
そういえば、クリフトはいつもあたしやブライの回復を優先させてたわね。
だから、たとえ傷ついても、自分の回復は後回しにしてたんだわ。
ほんの小さな傷でも、手当てが遅れると化膿したりして傷痕が残るから、って
ミネアが教えてくれたっけ。
バカね。クリフト、…あんた、本当に大バカだわ。
あたしやブライには「私は大丈夫です」って平然としてたくせに。
やせ我慢ばっかりするから、結局ミントスで病気になって倒れたりしたのよ。
昨日までの戦いを思い出したあたしは、自分の目が潤んでるのに気がついた。
やだな、泣くつもりじゃなかったのに。
どうしよう、涙が止まらない。おまけに鼻までぐしょぐしょになってる。
あたしはあふれる涙を腕で拭い、あわてて鼻をすすった。
鼻をすする音が聞こえちゃったのかな。クリフトは振り向いて
「大丈夫ですか?もしかしてお風邪を召されたのでは…」と声をかけてきた。
もう、相変わらず心配性なんだから。
あたしは「ちょっと石鹸が目に入っただけ」ってごまかしておいた。
うん、あたしは大丈夫だよ。
もっともっと強くなって、クリフトが自分に回復魔法をかけられるようにするわ。
これ以上、あんたの身体に傷痕を残させたりしない。
だから、もうあたしや誰かのために無理はしないでね。
おっと、早く身体を洗ってあげなくちゃ。このままじゃクリフトの方が風邪引いちゃう。
あたしは石鹸たっぷりのタオルを背中に当て、ゆっくりとこすり始めた。
でも、無数の傷痕が気になって、どうしても強くこすれない。
傷自体は完全に治ってるんだから、もう痛くないってのはわかってるのに。
時間をかけて背中をこすったあと、今度は胸の方を洗おうとした。
なのに、クリフトは泡立ったタオルをあたしから取り上げ、自分で洗い始めたの。
何よ、あたしがちゃんと洗ってあげるって言ったのに。
上からそっと覗き込むとクリフトはあたしの視線から逃れるように横を向いた。
「す、すみませんが、後ろを向いていてください」
クリフトは小声でそう言うと、腰のタオルに手をかけた。
あ……そっか。
クリフトの言っている意味にやっと気がついたあたしは、少し離れて後ろを向いた。
やだわ、また顔が真っ赤になっちゃったじゃない。
「もう終わりましたから」とクリフトが言ったので、
あたしは元の位置に戻り、桶で湯を汲んで、もう一度あいつの身体を洗い流した。
背中の傷は、今もなお、あたしの心をぎゅっと締めつける。
ごめんね、クリフト。こんなになるまで気がつかなくて、お姫様失格だね。
自分の力の差も考えずに、突っ走ってばかりだったせいだわ。
しえん
あたしは、クリフトの背中に頬を寄せ、首に手を回した。
小さい頃、ここはあたしだけのものだった。温かくて安らげる秘密の場所。
こうして頬を当てると、今も温かくて気持ちいい。
違うのは、あの頃より大きくて広くなってるのと、痛々しい傷跡だけ。
あんまり居心地がよかったから、身体もぴたっとくっつけて目を閉じた。
そしたら、クリフトがか細い呻き声を上げ、前の方を押さえてうずくまってんの。
具合でも悪くなったのかと思って、あたしは様子を見ようとするんだけど、
さっき胸の方を洗おうとした時以上に、真っ赤な顔で反対向くのよね。
こっちは心配してるっていうのに、変なクリフト。
さて、そろそろ湯船に入れてもいい頃かな。
気を取り直して、あたしはクリフトの肩に手をかけて、立ち上がらせた。
平らな岩に座らせ、あいつは湯船に足を踏み入れる。
クリフトが腰のタオルに手をかけるのを見かけたあたしは、
急いでその場を離れ、あいつが湯船に入るのを待った。
チャポン、と小さな水音をたて、クリフトが湯船につかった。
あたしはおそるおそる近づき、湯船を眺めてみた。
濃い乳白色の温泉だったため、上半身から下は全く見えないみたい。
よかった。これなら近くで様子を見ていられるわ。
…やーね、クリフトったら鼻歌なんか歌っちゃって。よっぽど気持ちがいいのね。
そういえば、クリフトが鼻歌歌ってるの、あたし初めて聴いたわ。
そうだ、あたしも足だけつかっちゃおうかな。
桶で湯をすくって両足を洗ったあと、右足を上げて湯船に入ろうとしたら、
あたしは床で足を滑らせ、よろめいてしまった。
「きゃあっ!」
あたしはバランスを崩し、大きなしぶきとともに湯船へと落っこちた。
深さはそれほどでもなかったのに、あたしの全身は湯船へと沈んでいく。
クリフトがすかさずあたしを抱え、水面へと上げてくれたけど、もう遅いわ。
あーあ、全身ずぶ濡れになっちゃった。髪の毛もびしょびしょになってる。
「ご無事ですか?」と問いかけるクリフトのそばに、折りたたまれた白い布が。
あれって、もしかして…さっきまで腰に巻いてたタオルなんじゃ。
今のクリフトは、何も身につけてない。ということは――――
「きゃーっ、きゃーっ、あっち行ってー」
パニックに陥ったあたしは、湯船から上がり、岩の上にぺたりと座り込んだ。
あれ?クリフトの様子がおかしい。顔がまた赤くなって、両手で鼻を押さえてる。
白い温泉があいつの周辺だけ赤いわ。たぶん鼻血ね。のぼせちゃったのかしら?
その理由は、あたしにもすぐにわかった。
さっき湯船に落ちたせいで、あたしの服は濡れてしまった。そのせいで服が透けて、
つまり…あたしの出っ張ってるところが、丸見えになっちゃったのよね。
「やだーっ。見ないでよ、バカっ」
あたしが両手でふくらみを隠し、水面で足を強くばたつかせていた時、
聞き覚えのある声が、湯気の奥から聞こえてきた。
「大丈夫かい?悲鳴が聞こえたから、様子を見に来たんだが…
お取り込み中だったのかい。こりゃ、お邪魔だったかねえ。いひひひ」
「おや、兄ちゃん。あんた鼻血出してるじゃないか。でかい図体して、意外とうぶなんだねえ」
湯気の中から現れたのは、入り口にいた番台のおばさんだった。
あたしは着替えを受け取り、いつも以上に素早く袖を通した。
クリフトは気を失っているらしく、おばさんが湯船から上げ、着替えさせたみたい。
もう、世話が焼けるんだから。
ようやく心が落ち着いたあたしは、離れにある休憩所で、意識が戻ったクリフトの顔を眺めてた。
もういいわ、って何度も言ってんのに、クリフトは「申し訳ありません」の一点張り。
しょうがないから、「恥ずかしかったけど、本当は楽しかったよ」って本音を言っちゃった。
そしたら、クリフトは「実は……私も…です」だって。
どちらからともなく、あたしたちは大きな声で笑い合った。
こんなに笑ったのは久しぶり。それに、クリフトが笑うのを見たのは、もっと久しぶりだわ。
「あ〜ら、お二人さん。ずいぶんとまあ、仲睦まじいことで」
「よう、クリフト。また鼻血なんか出して、何かやましいことでもしたのか?」
やだ、マーニャにソロ!…まずいわ。よりによって、この二人に見つかっちゃうなんて。
「何だよ、その嫌そうな顔は。俺は町の娘とのデートを中断してまで、捜しに来たってのに」
「そうよぉ。あたしだって、お化粧の時間を削って捜してたのよ。感謝してほしいわ」
だったら、自分の用事しててよ。他の人に頼めば済むことじゃない。
「あら、アリーナの髪の毛濡れてる…そうか。あんた、クリフトと一緒に入ったんでしょ!」
「へえ。よかったな、クリフト。そのうちお前も『あれ』から卒業できるぞ」
ち、違うわ。これはあたしが足を滑らせて、って……あたしの話、全然聞いてない。
それに、『あれ』って何よ。クリフトが卒業したのは、神官学校だけなんだけど。
いい加減からかうのも飽きたのか、二人は「もうすぐ昼飯だからな」と言い残して去っていった。
そっか、もうお昼なんだ。あたしたちもそろそろ帰らなきゃ。
帰り道の途中、あたしはクリフトの肩や背中をじっと見つめていた。
小さい頃は、あたしより痩せっぽちで弱々しかったのに、
いつの間に、こんなにたくましくなったんだろう。全然気がつかなかったわ。
今日は、あたしがまだ知らないクリフトを見つけられた、大切な思い出の日。
クリフトにとっては、どんな日になったんだろう……いつか、こっそり聞いてみよっかな。
これで終了です。
ではこれにて落ちますノシ